幽世の聖杯は戦闘用の神滅具なんです! (ハズレアタリ)
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遭遇

最初は期待をしていた。

 

明確に誰かに期待し、望んでいたわけではない。

でも、誰かには期待していた。

こちらが与える代わりに、誰か与えてはくれないだろうかと。

心のどこかで願っていた。

 

結局は叶わなかったけれど。

 

 

雪解月(ゆきげつき)那由他(なゆた)の朝は遅い。夜中の0時に寝たとしても、目覚しをかけない限り昼の12時までは起床することはまずない。

 

季節は7月の下旬。そろそろ冷房をつけないと寝苦しい季節。

もうすぐ本格的な夏が始まる。湿度が高くなり、今よりも更に気温も上昇することだろう。日が照っていても、雨が降っていてもうっとうしい季節だ。

そんな季節、気温、気象状況でも那由他の睡眠は変わらない。

寝てい時に寝て、起きたい時に起きる。それが最も健康に良いと那由他は信じていた。確証は持っていないが。

早起きは三文の徳?そんなことは知ったことではない。寝たいから寝るそれが一番。肉体的にも、精神的にも。

高校に通っていたときは、無理にでも朝早く起きて学校に通学していたけれども。

 

♢♦♢♦

 

5月初旬、普通の高校生にとって、一生に一度しかないビックイベント

青春の思い出の一ページ。楽しさも、少しのほろ苦さも兼ね備えている高校の修学旅行。中学の時の修学旅行とは違く、さぞや羽目を外すことだろう。

 

那由他が通っていた陵空高校もその例には漏れず、豪華客船でハワイ諸島を巡る10日間のツアーが予定されていた。

小学校、中学校とまともに学校に通っていない那由他にとっては、初めての修学旅行であった。

しかし、虫の知らせと言えばいいのか、それともなんとなくと言えばいいのかわからないが,参加しようとは考えなかった。

 

七月の下旬の今となって考えてみれば、参加しなくて正解だった。青春の思い出の一ページを無駄にしても、命の危険とをはかりにかけるのならば、那由他は命を選ぶからだ。参加できなかった生徒は幸運だっただろう。

なぜなら、修学旅行に参加していた陵空高校の生徒233名は、修学旅行中の豪華客船で海上事故に遭い、帰らぬ人となったのだから。

 

虫の知らせに従い修学旅行に参加しなかった結果、事故を回避したとは、那由他の勘も捨てたものではなかった。

昔から、ひどい目に遭ってきた人生ではあったが、こんなところで幸運の貯金を使うことになるとは。

海上事故程度(・・・・・・)のことで使いたくはなかったが・・・

 

なんでも、後から聞いた話では、那由他以外にも修学旅行に参加しなかった生徒が、10人弱ではあるが少しはいたらしい。哀れなことである。

さぞや楽しみにしていたに違いない。今となっては参加しなくて正解ではあったが、不幸な選択が最も良い生き残る選択だったとは、何とも皮肉が効いている。

 

そのため、通っていた陵空高校にも通い続けられるはずもなく、生き残りの生徒はそれぞれ別の高校に散っていった。

那由他も別の高校に通うことも考えたが、那由他が通いたかったのは、高校ではなく陵空高校であったため、どの高校にも転校しなかった。

高校に通うということ自体が、那由他にとっては気まぐれだったのだ。

高校卒業という学歴が欲しいのではなく、思い出作りのためだけに入学したのだから。

 

そもそも、那由他は14歳になるまでまともな教育を受けるどころか、日本にすらいなかったのだ。

5歳で日本を出国し、中国に密入国。古くにシルクロード呼ばれた道を歩き、中東、欧州で表の人には言えない活動をしてきた。

悪魔や堕天使、人間などと殺し合いを繰り広げてきた那由多には、まともな一般教養を学ぶ時間も、学ぼうとする気もなかった。

そんな人間が表の一般教養や常識などは知るはずもなく、通っていた陵空高校では、友人は一人もできずボッチだった。ほかの生徒と話が合うこともなく、他とは違うという理由で物理的に手を出してきたいわゆるヤンキーの部類に入る者に対しては、物理駅に再起不能にしてしまったりといろいろとやらかしてしまった。これらはすべて、表の一般常識をまったく知らないから起きたことであった。裏の事情には詳しいが・・・。

 

そんなこんなで約2ヶ月ちょっとの間高校にも通わず、特に何もしていなく自堕落な生活をしている那由多は

 

「・・・・・・・・・腹減った」

 

平日の昼にもかかわらず、寝起きの眠気で何も考えられず、ただ枕に顔をうずめていた。

 

♢♦♢♦

 

12時30分。うたた寝から20分が経過し、一般家庭であれば母親に4回はたたき起こされているはずだが、そんなことは知らんとばかりにようやくベッドから這い出てきた。那由他の部屋には朝のニュースならぬ昼のニュースがついていた。

那由他の部屋はマンションの最上階にあり、5LDKであるが、それぞれの部屋がとても大きくリビングに至っては、10人が雑魚寝をしてもスペースがあるという高級住宅だった。

どうもこの昼のニュースは昼に放送している番組にもかかわらず、星座占いをやっているようだ。もう既に仕事に出ている人は見れないだろうに。主婦層に必要なのだろうか?朝から洗濯やら朝食を作るやらしている主婦層に。この時間帯に。

そんなニュースの星座占い。どうやら今日のうお座の運勢は最悪。最下位でありとことんついていない一日になるらしい。朝から(もう昼だが)気分が下がる話である。そして頭上にも注意らしい。何だろうか?那由他達うお座の者だけに、雨でも降るのだろうか?

 

寝間着である半袖半ズボンから、Tシャツジーパンの私服に着替えた那由多は昼食を外で済ました後、そのまま帰宅せず、気まぐれに散歩をしていた。

住宅街を抜け、商店街に出る。この辺りは駅をまたがないとショッピングモールがないため、下町然とした商店街は昨今では珍しいくらいに賑わっていた。

近頃、それなりに近場で誰かが戦っている気配がする。しかし、魔法の気配は一人分にも関わらずどうも2人で戦闘をしているようではないようだった。

神器使いが悪魔と戦っているのか?それとも堕天使か。

 

詳しくはわからないが、どうにも那由多を狙っているわけではないようだった。

それにしてもお粗末な連中である。結界も張らず周りを顧みず戦闘をするなど宴会でもしているつもりなのだろうか?

そんなことをしていれば、この国にいるほかの組織にバレバレだと思うのだが。何か考えがあってのことなのか、それともただあのバカか、はたまた結界を張ることができないのか。

しかし、そうなると誰かが那由他とは関係ないところで戦っているということなのだろう。話に聞いていたほど、日本も平和ではなかったということか。ちょっと残念。

自分に関係がなければ放っておこう。もし自分にもそいつが関わってくるのならば、そのとき考えよう。

そうのんきに結論付けた那由多は、それらのことに対して不干渉を決め込むことにした。

 

後に自分も巻き込まれるとは露知らず。

 

♢♦♢♦

 

夜の6時、日が暮れ周囲が薄暗くなった逢魔時。那由多は夕飯を食べるために、住宅街を抜けて商店街に向かうため、またもや道を歩いていた。

何を食べようか、昼はチャーシューメン大盛りを食べた。店自慢の超特大ラーメン。完食したら賞金5000円、失敗したら5000円払うというメニューもあったが、流石に食べきれないだろうと思い遠慮した。あれは食べきれない。そもそも、ラーメン10杯分を一人で食べきれるものなんて居るのだろうか?

道も薄暗くなり、鳥目の人ではまともに歩けないだろう暗さになってきていた。

暗い。街灯があるのだから早くつければいいものを・・・。電気代がかさむからなのか?そもそも一つの市で一日に使う電気代って幾ら位なのだろうか?

そんなしょうもないことを考えていたときだった。

 

突然、周りの民家から人の気配が消え失せた。

先ほどまでは確かに気配があり、外にまで話し声が聞こえていたにもかかわらずだ。

 

「人払いか」

 

人を指定した範囲に寄せ着けない結界。日本の術師はこのような『隠す』『退ける』といった『祓い』に長けている。

よく見ると、那由他を中心にして結界が張られている。

周りに戦っている気配がないのも関わらず、那由多だけが人払いの結界の中にいた。

そもそも一般人が遭遇しないようにするための結界なのだ。間違えて巻き込まれるという考え方そのものがありえない。

つまり、結界を張った術者は那由多が目的ということなのだろう。

 

だが、なぜ那由他を狙ったのか。まぁ、那由他からしてみれば理由は両手の指では数えきれないほど思い当たるけれども。しかしそれは、欧州や中東、東南アジアでの話だ

東アジアの、それも日本で襲われる理由は那由他には思い浮かばない。一つだけ思い浮かぶが、それは那由他が思い浮かぶものであり、周囲には隠しているものだ。

だとすればこの襲撃は那由他の行動が招いた結果ではなく、何かしらの事情に巻き込まれたと考えるべきだ。

と、那由他はこの事態の原因を自身の独断と偏見で勝手に結論付けた。

 

「最悪だ。誰だか知らんが俺を巻き込みやがって。……巻き込んだやつはいつかシバく」

 

一方的な決意を新たに、那由他は改めて周りを見渡した。

逃げ道も何もない住宅街の一本道。

時刻は午後6時過ぎ。周囲は薄暗く、月は雲で隠れてり、光源は電柱に取り付けてある該当4本のみ。

しかし、周囲がどれほど暗くとも那由他には全く問題ない。気配のみでも戦うことはできるし、ちから(・・・)を使えば暗視ゴーグル以上に鮮明に見ることができるからだ。

 

だが、何故こんな戦い辛いところで仕掛けてきたのだろうか。もっと別にいい場所があったと思う。

開けた公園とか、廃工場とか。周りの家に被害が及ぶということが分からないのだろうか。

馬鹿なのだろうか?馬鹿なのだろう。馬鹿なんだと思う。

 

「—————ッ」

 

ふと突然、那由他は頭上に気配を感じた。見上げてみると、ずんぐりした物体が空から降ってくる。

大きな動物だろうか?灰色というよりもネズミ色に近い。

落下の衝撃で注意に土煙が舞った。土煙で周りが見えない。一寸先は闇ならぬ一寸先は土煙な状態だった。

 

地面はアスファルトなんだが、この土埃はどこから来たのだろう。

 

「邪魔」

 

土煙が鬱陶しかった那由多は、少しだけ力を使うことにした。魔力を少量練り上げ、無造作に周囲に解放したのだ。

瞬間、那由多を中心にした突然の突風が発生。周囲の土煙が晴れるどころか、周囲にあった家の屋根の一部が吹き飛び、電線が切れ、挙げ句の果てに複数の電柱がただの風で根本から折れ、周囲の民家に向けて倒れ込んでしまった。

 

・・・ちょっとやりすぎた。

 

周囲の惨状を見て見ぬふりをして、土埃が晴れたため、改めて落ちてきたものを見てみる。

 

「うっわ~~~。サイアク」

 

那由多は落下してきたものを目で確認すると、呆れとドン引きを足して2で割ったような声を出してしまい、思わず眼前の物から目を逸らしたくなってしまった。

ネズミだった。正確に言えば、とても大きなネズミだった。ミニバンほどの大きさのネズミだった。大きさは違えど、まごうことなきネズミであった。

 

そのネズミの目がとても怖い。あのクリッとした目が異様に怖い。円らな目をしているにもかかわらず殺意がむき出しなのが異様に気持ち悪かった。

・・・だって・・・白目がないんだもの・・・

その異様に気持ち悪い目をしているネズミの背中には、白いシャツを着ている高校生くらいの女が乗っていた。

まるで、馬にでも乗っているかのような乗り方。ネズミの乗り心地とはいかほどの物なのだろう。そんなしょうもないことが那由他の頭にふと浮かんでしまった。

 

上から落ちてきた一人と1匹。攻撃してくるのなら、ぬっころす。攻撃してこないのなら、シバき倒す。そう決め、いったい何の要件かと那由他は要件をうかがうことにした。

 

「何用か?」

 

目の前の、一般人なら腰を抜かすレベルの異常事態に対して、那由他は実に冷静に、観光地で旅行客に道を聞かれた地元住民くらい気軽な問いかけをした。

 

「・・・・・・・・」

「———————ん?なぜそこで止まる?」

 

那由他は思わず、相手の予想外の行動に対してあきれたような声を出してしまった。

女は動かなかった。何の行動もなく何の発言もしないまま、ネズミの上に乗った状態でその場に固まってしまっていた。まるで派手な登場の際に頭を強くどこかにぶつけてしまい、フリーズしてしまったロボットのようだ。

——————あれ?

なぜか動かないので、那由他はネズミに乗っている女の顔をよく見ると、どこかで見た覚えがあるような気がした。

どこかで見たことがあるようなないような。しかし、どこかで見たとしても、どこで見たかは覚えていない以上どうしようもない。何とも後味が悪い。

——————まぁ、どうでもいいかな。うん。見たことないということにしよう。

気にしないことにした。

 

「何か用か?」

 

再度、那由他は相手に問いかける。すると、女はようやく動き出した。乗っていたネズミから降り、ゆっくりとこちらに体ごと振り返る形でふり向いた。

その動きはまるで、幽霊のようで、腰を起点に振り向き、指先に力が入らないのかだらんとした手をしていて、重心も片足にかかっていた。

決して健康的な状態には見えなかった。

 

「・・・ミツケタ」

 

女から声が発せられる。とても平坦で、感情がこもっていない声だった。

次の瞬間、女の隣でじっと那由他を見ていた巨大なネズミが、その巨体からは到底想像することができない速度で上空に飛び上がった。

飛び上がったネズミの高度は周囲の民家の屋根に高さを軽く超えて、近くにあった5階建てのマンションの屋上ほどに達していた。

 

(よし、殺そう)

 

殺意と殺気を隠さず、襲い掛かってくるネズミに対して、那由他は簡潔に判断を下した。

那由他は非常事態にもかかわらず、外出する支度をするように、ズボンのポケットから黒い綿手袋を取り出し、両手につけた。

ネズミはその高さから、まっすぐ那由他の立っている地点に、ボディープレスを仕掛ける。

殺すと判断したはいいが、まったく動こうとする気配がない那由他。ネズミが落ちてくるまでにしたことといえば、ポケットにしまっていた黒い綿手袋をつけたことくらいだった。

落下によるエネルギーもプラスして、ネズミは全体重をかけて那由他を押しつぶした。

————刹那、周囲に衝撃が走った。衝撃は周囲の大気を大きく震わせ、ともに発生した爆発に似た大きな音は、もし周囲に人がいたならば、数秒の間は耳が聞こえなくなるであろう程の音量だった。

 

一拍あけ、衝撃と爆が止むと同時に周囲に肉片が散らばった。その肉片になかには、毛深い表面の肉片も含まれており、とても人間の肉体の成れの果てとは思えなかった。

それもそのはず。死んだのは那由他ではなくネズミのバケモノだったのだから。

衝撃があったであろう場所にはクレーターは出来ておらず、ネズミのバケモノではなく那由他がそこに立っていた。

傷を負うこともなく返り血を浴びることもなく、多々悠然とつまらなそうな顔をしてその場に立っていた。

先ほどの衝撃は、ネズミが那由他を押しつぶし地面に激突したために発生した衝撃ではなく、刹那がネズミを右手一本の搏撃で消し飛ばしたために発生したものだったのだ。

 

先ほどのネズミのバケモノの攻撃は、普通の人間ならば即死だっただろう。それほどの重量と体格をネズミは持っていた。

しかし、残念ながら那由他は普通の人間ではない。いや、種族としては普通の純粋な人間だけれども、一般人ではないという意味で、普通の人間ではない。

 

「しょうもない」

 

那由他は目の前の相手に、心底あきれていた。攻撃に何のひねりもなくただ単に重い重量の物体(今回は生き物)をぶつけただけの今回の相手に対して。

これで勝てると思ったのだろうか?これで殺せると思ったのだろうか?確かに相手が一般人ならば、この攻撃で大半は殺すことができるだろう。

しかし、今回の相手のターゲットは自分だったのだろう?ならばなぜもっと綿密な計画を立てて、万全の態勢で奇襲をかけてこなかったのだろう?

そもそも、今回は奇襲ですらなかったのだが。人払いの結界を張り、目の前に登場し、攻撃を行う。小学生か?もしや相手は小学生なのではないだろうか。もしそうなのであれば保護者をぬっころす。親権者には子供を監督する義務があるのだから。責任を取ってもらうために一回死んでもらわないと。もし相手が小学生でないのであれば、ただのバカであろう。ヒーロー漫画の読みすぎである。もしそうなのであればそいつをぬっころし、輪廻転生させて新たな親の子宮の中からやり直させてやる。まあ、次も殺すけれども。

 

「・・・はぁ~。・・・さてと・・」

 

いらん奴もぬっころし、さて本命と那由他は女のいたほうを振り返ってみると、なぜか女も倒れていた。

 

(なんでだよ)

 

気絶か?いや、そもそもなんかこいつ正常な生き物って感じがしないんだけど。なんか、使い魔っぽいというか、独立具現化型の神器っぽいというか。

詳しいことはわからないが、普通ではないということは那由他にも分かった。

どうするべきか?放っておくか?

 

「間に合ったのですよ」

 

突然、ウンウンどうするべきか悩んでいた那由他に頭上から若い女の声がかかった。またしても上かよ。今日は頭上注意の日なのかな?そういえば朝(昼だったが那由他からしてみれば朝)の占いでそんなことをいっていたな。ドンピシャじゃないか。明日からちゃんと見よう。

 

那由他が本日、何度目かわからない程のうんざりした顔で空を見上げると、魔女がいた。とんがり帽子をかぶり、マントを羽織っていた。THE魔女としか言えない魔女のような服装のため、逆に魔女っぽく見えなかった。だが、魔力を使い魔法を発動し空を飛んでいるのだから正真正銘の魔女以外の何者でもないのだけれども。

魔女っ子A(仮)は那由他と同年代ほどの外国人の少女だった。とても端正な顔立ちをしており、普通に街を歩いたら10人中10人がすれ違いざまに振り替えるほどの美少女だった。現状の服装では100人中100人が振り返りそうであるが。服装という意味で。

 

「何に対して間に合ったんだ?俺が襲撃犯を殺す前だったからか?それとも、俺が帰る前だったからか?」

「あなたが帰る前だったからなのですよ。あなたがウツセミ程度にやられるわけがないのですよ」

 

目の前の魔女っ子A(仮)は那由他のことを知っているらしかった。確かに、那由他は裏の世界では有名人ではあるが、名前や存在などが有名なのであって、決して那由他の顔が広く知られている訳ではない。

何より、那由他の名前は悪い意味で有名なのだ。そんな那由他の顔を知っている。ましてや、怖がらず、正面から警戒せずに会話してくるとは、那由他自身もこの現状にとても驚いていた。

 

那由他は人の機微にはそれほど敏感ではないが、それでも、相手がおびえているのか警戒しているのか程度は、目を見れば大体わかる。つまり、那由他の目を正面から見て怯えの一つの見せないということは、少なからず那由他の性格、人柄を知っているということだ。

 

「その口ぶり、オレのことを随分知っていそうだな。誰?お前」

 

那由他は目の前の魔女っ子A(仮)に対しての少しだけ警戒度を上げることにした。

そんな那由他の警戒を感じ取ったのか、はたまた素の性格なのか、目の前の魔女っ子A(仮)はマイペースに自己紹介を始めた。

 

「私の名前はラヴィニア・レーニなのです。よろしくなのです」

 

ラヴィニアと名乗る少女は那由他に対して笑顔で自己紹介をした。何が楽しいのかわからないが、なぜか満面の笑みだった。

いや、確かに誰だとは聞いたけれども。

 

自己紹介オンリーでも困るのだけれど。しかし、こちらが聞き、あちらがそれに対して答えたのならば、こちらも答えるのが礼儀というものだろう。

 

「そうか。オレの名前は雪解月那由他。何がよろしくなのかはわからんが、まぁ・・・よろしく」



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雇用

エタっていたわけではありません。
これが私の執筆スピードなんです。




本当なんです!!!


エタるってそういう意味ですよね?


「ここなのです」

 

予期せぬ襲撃から一夜明け、那由他は会わせたい相手がいるということなので、ラヴィニアと名乗る女に朝の10時からとある場所に連れてこられてた。その場所は、指定された駅から徒歩15分ほどにある、何の変哲もない雑居ビルだった。

整備はされているのだろう。雑居ビルには目立ったヒビや損傷もなく、どこかの名前も知らぬ会社がテナントを借りて利用しているのだろう。と、一般人ならば思うであろう装いだった。

その雑居ビルには、人除けの結界が張られており、人の気配どころか生物の気配すらなかった。その手のことに敏感な者には、逆に何かあると思わせてしまうのではないかという程の違和感を那由他は感じていた。

 

————————もう少し工夫したほうがいいんじゃないか?確かに一般人は入ってこないだろうが、逆にこちら側(・・・・)の奴にはバレバレなんだが……。

 

ラヴィニアの後に続き、雑居ビルの中に入る。エレベーターは使わず、階段を上り目的の部屋を目指す。場所は4階の一部屋。中は特に目立ったものは何もなく白くて長い椅子と、複数の椅子があるだけだった。特に気になるといえば、暗幕が窓にかけられていて、とても暗い部屋ということだけだった。

何よりも、目的の相手がいない。部屋の中にいるのはラヴィニアと那由他だけだった。

 

「ここで待ち合わせなのか?」

「はい。ここで会う約束なのですよ」

 

一応、ラヴィニアに確認をとる那由他。確かに、一般人は寄ってこないだろうけども、話し合いの場にしたら随分と殺風景な部屋だった。何より暗い。

立って待つのも面倒だからと、那由他はいくつかあった椅子の一つに座った。使いまでよこして自分は遅れてくるとか、なにを考えているのやら。そんな文句を心の中で垂れ流していると、不意に、部屋に最初から備え付けてあったスピーカーに音が入りだした。

 

《……よう。初めまして。雪解月那由他》

 

スピーカーから聞こえてきた声は男性の声だった。声からして若くはなく・30代~40代ほどの年齢だろうか。何やら軽薄そうな声のトーンだ。

 

《こちらの招待に応じてくれて感謝しているよ》

「感謝という割には、姿を見せないんだな。どこかの誰かさん」

 

招待したくせに、名前どころか顔さえ見せない相手に対して、那由多は少し不信感を感じた。

—————礼儀も知らんのかこいつは

 

「それについては済まないと思っている。だが、俺の立場的に安易にそっちの世界に行くわけには行かなくてな。顔を見せないことは勘弁してほしい」

「……世界?」

 

世界。その言葉を聞いた途端、那由他の動きが止まった。

世界各地には、様々な勢力の世界がある。北欧神話、オリュンポス、インド神話、須弥山、日本神話などだ。

そんな勢力が世界に渦巻く中、日本を主に勢力下に収めているのは日本神話だ。那由他は日本神話のことは詳しくは知らないが、それぞれの神話勢力の本拠地である土地では基本的に、その勢力たちの行動を縛るものなどそうそうない。そんな中、人間界に出てくるのに都合が悪く、そして、日本に干渉する勢力といえば、那由他には心当たりが一つしかない。三大勢力だ。キリスト教、聖書の神話体系。天使、悪魔、堕天使からなる、常に三つ巴に戦いを繰り広げている勢力だ。

那由他は、三大勢力の中でも悪魔という種族が、とてつもなく嫌いだった。どれほど嫌いかといえば、人間界で見かけた瞬間速攻で殺してしまうほど嫌いであった。ランクで言えば、ゴキ〇リと同順位ほどであった。

 

……あんた、冥界側の奴か?まさか、あの悪魔(コウモリ)どもじゃないよな?もしあのクソどもだったら…………殺すぞ?」

 

空気が、震える。その瞬間、那由他を起点に殺気が周囲を走った。重く、鋭く、何よりも濃厚な殺気だった。部屋にあった窓ガラスはガタガタと揺れ、閉まっていた黒い暗幕は、その役割を果たさぬ程はためいている。まるで、ビルの屋上で天日干ししてい時に、突風が吹いたかの様に。那由多の放つ殺気に耐えられず、那由他が座っている以外のイスには大きくヒビが入る。

那由多が放つ威圧感、気配、そして何よりその殺気が部屋のみならず建物全体を揺らしていた。それらは、その場にいたラヴィニアがその様に感じたのではなく、物理的に揺れていたのだ。

 

「なぁァ……どうなんだ?」

 

那由多は鋭く、そして低い声で再度問い掛けた。顔に浮かんだ嫌悪感と憤怒を隠しもせず、殺気が体から溢れ出し周囲に放たれている。

その目は今にも暴れ出しそうなほど凶暴に、そして同時に冷たい目をしていた。一般人だけではなく、殺気に耐性のないものや心が弱いものが居れば、卒倒してしまうほどには重苦しい気配だった。

偽りは一切許さないとその目は語っている。

 

「————ッ!」

 

共にその場にいたラヴィニアは、那由多のその変わり様と放つ殺気に、思わず身震いを覚えてしまった。

その身震いは、最初に戦場で異形のものと相対した、命をかけた戦いの武者震いに似た身震いではなく、圧倒的な強者に睨まれた時のような身震いの感覚だった。

 

《あー、待て待て、早とちりするな。…まったく、相当悪魔(あいつら)嫌われてるな。……挨拶がまだだったな。俺はグリゴリの総督アザゼル。お前に偶に依頼を送っていた相手だよ》

 

———————グリゴリ。堕ちた天使たち。堕天使の集団。

やはり、世界にある様々な勢力の中でも俗に三大勢力と呼ばれている集団の一角。そのトップ。

三大勢力ではあったが、悪魔ではないということ。

そして、アザゼルと名乗った相手が発した、依頼という言葉。那由他は、日本に戻ってくる以前、世界中を廻っていたころはちょくちょく依頼人不明の依頼を受けていた。どんなにアウトローな生活をしている者にも金銭というものは必要なのだ。

学歴もなく、働ける年齢ではなっかた那由他は主な収入源として、その依頼人不明の依頼を受け、資金を稼いでいた。

 

「……本当か?」

 

アザゼルと名乗った男の話を聴いた那由他は、アザゼルの声が聞こえるスピーカーにではなく、隣にいる自分の殺気に気押されているラヴィニアに対して問いかけた。

 

「ハイなのです。提督はあなたが嫌っている悪魔ではなく、本当に堕天使の提督なのです。ですが、その依頼の話に関しては、私はグリゴリのメンバーではないので分からないのですよ。」

 

ラヴィニアの答えを聞き、相手が悪魔ではない可能性が強まったと考えた那由他は、暫定的に相手が悪魔ではなく、堕天使であると納得した。

一応納得した那由他は、無作為に発していた殺気を収めた。冥界に本拠地があるとしても、相手は堕天使。神器狩りをしているという話もあるが、実際は何をしているのかを那由他は知らない。

何より那由他は今まで、依頼人と名乗る相手と会ったことがない。そして、那由他と依頼人以外は依頼に関することは知らないはずだった。依頼人が情報を漏らしたりしていなければ。

那由他は堕天使とは戦ったこともなければ、実際に堕天使を見たこともない。そのため被害を受けたことがない。というよりも直接受けようがない。

顔を見せない以上相手が本当に悪魔かなどは、那由他には分かりようがない。以上のことから、相手を悪魔だとは決めつけることはできず、逆に一方的に悪魔だと決めつけ、殺気を放ち威嚇した自分に落度がある。

 

「失礼した、堕天使アザゼル。冥界と聞いてあの悪魔(コウモリ)どもだと勝手に勘違いをしてしまった。俺が日本で陵空高校に通うことができたのは、あなたが裏工作をして戸籍や入学手続きを済ませてくれたおかげだ。その恩あるあなたに対して、礼儀知らずなことをしてしまった……謝罪を」

 

那由他は謝罪の言葉とともに、アザゼルの声が聞こえるスピーカーに向けて頭を下げた。相手が悪魔ではないということが確定したわけではないが、悪魔であるという確証もない。早とちりしてしまったのは自分だ。相手が悪魔と確信がない以上、こちらが勝手に決めつけるわけにはいかない。悪魔という言葉で先走ってしまったが、そもそもしっかりと考えてみれば違和感がある。那由多の悪魔嫌いな話は、その筋では有名な話だった。那由他もそのことを隠してはいない。そうなると、悪魔がコンタクトを取ってくるということは考えづらい。何より那由多が領空高校に通うことだできていたのも、依頼人が便宜を図り、戸籍を用意してくれたから平穏に日本にいられたのだ。

 

「ああ、気にするな。そういう反応をするだろうなと思ってあえて言ったんだ。むしろ、お前が顔も見せない相手に謝罪をするとわかって、こちらとしても僥倖だった。ちゃんと話せる奴だってわかったんだからな」

 

アザゼルの声はとても嬉しそうな声だった。その声のトーンだと、本当にそう思っているのだろう。そう那由他は感じた。

 

「感謝を。堕天使アザゼル」

 

 

♢♦♢♦

 

 

挨拶も含めた話がひと段落したところで、那由他は改まって話を切り出した。

 

「堕天使アザゼル改めて聞きたいのだが、何故今回は俺を呼び出したんだ?」

 

那由他には今回呼び出された理由に、まったく思い当たることがなかった。

 

『今回、俺がお前をここに呼んだのは、直接話したかったというのもあるんだが、本題は別にある。……雪解月那由他。君に依頼があったからだ』

 

君。アザゼルの言葉遣いが変わった。毎回、那由他に依頼が来るときには、手紙やメール時には伝書鳩など様々な連絡手段で送られてきたが、そのすべてに共通する点は言葉遣いがすべて同じという点だ。

君、してもらいたいなど、スパイ映画の指令が下される時のような言葉遣いだったのだ。今回もその例に漏れなかった。

 

「内容を聞いてから決めてもいいなら、話を聞こう」

『ああ、それで構わない』

 

アザゼルの依頼は、簡単に言えば子守りだった。

 

現在、ウツセミ機関を名乗る集団が陵空高校2年生の生き残りを狙って暗躍している。その集団は、ウツセミと呼ばれる元陵空高校2年生の生徒を素材に使った独立具現型の神器の模造品を作り出し使役している。先日、那由他を道端で襲ったものがそうらしい。今、アザゼルの下には神器に覚醒した陵空高校2年生の生き残りの一部が身を寄せている。彼らはウツセミ機関と戦い、ぞれが失ったと思っていた友達や大切な人を取り戻すと決めたそうだ。那由他にはそいつらの支援と監視をしてほしいそうだ。

 

なんでも、降りかかる火の粉を払うのは、セイクリッド・ギアを宿した者の宿命らしい。

アザゼル達ができるのはサポートまで。

那由他は、元陵空高校の2年生であり、セイクリッド・ギア保有者でもあることから参加しても問題ないらしい。

だが、他の陵空高校の生徒たちとは違く、那由他はすでに自分の神器を使いこなせていて、たとえ一人であってもウツセミ機関程度の組織ではとてもではないが那由他には歯が立たない。

しかし、彼らとともにいるのがラヴィニアだけでは、もしもの場合に彼らを完璧に守りきることができるかと言われれば、そうは言いきれない。また、ラヴィニアにはラヴィニアの目的があるため、常に彼らと一緒にいられるわけではない。

だからこそ、那由他に依頼を出し、今回の事件に関わらせようと決めたそうだ。

 

─────なるほど。昨日の奴はそういう理由で自分を襲ってきたのか。納得。

 

 

♢♦♢♦

 

 

駅にほど近い、見た目はごくありふれた普通のマンション。しかしそれは、一般人視点な見方でしかなく、実際には高度に組み上げられた結界が所狭しと作用しており、少なくとも、そこいらのちんけな結社の本拠地よりも、防犯防衛に優れている立派な拠点だ。

そんなマンションの一室で、幾瀬鳶雄、皆川夏梅、鮫島綱生ら陵空高校の生き残り3人と自称魔王の血を引くドラゴンと名乗るザ・厨二病少年ヴァーリ・ルシファーは仲間の1人である、ラヴィニアを待っていた。

 

「助っ人を連れてくるって言ってたけど、どんな人なのかしら?」

 

夏梅はラヴィニアが連れてくる予定である人物に対して、不安と興味を寄せていた。鳶雄達から見ればラヴィニアやヴァーリも助っ人という立ち位置だろう。そんな者達が、助っ人を呼んでくると言い、そしてその助っ人が頼りになると言った。つまりその助っ人は少なくとも異能異形の世界である裏と繋がりがある者ということだろう。

 

「さあな。だがラヴィニアは頼りになる奴だって言ってたな。どんな奴が来るんだか」

 

夏梅とは逆に、鮫島はこれから現れるであろうにあまり興味を寄せていないようだった。確かに、どんな奴が来るのかわかったものではない。つい3日前に童門計久と名乗る、黒幕の1人と相対したのだから。ラヴィニアとヴァーリを除き、こちら側の世界に関わって初めて会った異能力者が外道だったのだ。新たに裏に関わっている者と会うというのは、未だ経験が浅い3人には難しいものがあった。

 

「確かに、不安だよな」

 

鳶雄も今回のラヴィニアが連れてくる相手に不安を感じていた。そもそも、連れてくる相手が人間かどうかさえ分からない。そんな中で、不安にならないという方が難しかった。

鮫島はヴァーリの方に顔だけ向け尋ねた。

 

「ルシドラ先生は何か知らないのか?」

「俺が知っているのは、今回来るやつは人間で、以前はヨーロッパで暴れていたというくらいしか知らん」

 

暴れていた。その言葉を聞いた途端、3人の表情には先ほどよりも不安な色が濃くなった。

 

「それは……大丈夫なのか?」

 

鳶雄がそう口にすると、夏梅もその言葉に同意の声をあげた。

 

「確かに。不安になる情報ね。その人、呼んでも大丈夫なの?ちゃんと協力してくれる?」

「フッ、安心しろ。どんな奴が来ようともこの魔王ルシファーの血を引きながらも、伝説のドラゴン『白い龍(バニシング・ドラゴン)』をこの身に宿した唯一無二の存在ヴァーリに敵うものなど────」

『ここなのですよ』

 

ラヴィニアの声がドアの向こう。玄関の扉側から聞こえてきた。

どうやら、件の助っ人を連れてきたようだ。

 

『神器使いは3人じゃなかったのか?気配が一人分多いんだが』

『それはヴァ―くんなのですよ』

『ヴァーくん?それは名前か?』

『はいなのです。とってもいい子なのですよ』

 

何やら二人はリビング前の廊下で話しているようだ。ラヴィニアが話している相手は声からして若い女のようだ。その女が助っ人なのだろう。気配を感じるだけでなく、その人数を感じ取るとは、最近まで一般人だった鳶尾達にはできない芸当だ。

 

『神器使いだな?そのヴァーくんって奴も。封印系か?ドラゴンの気配がするぞ、それもとびっきりのが』

『はいなのです。ですが、とってもいい子なのですよ。なのでナユも仲良くなれると思いますよ?』

『だといいがな……おい待て、なんだその呼び方は。俺とお前は会って精々1日だぞ。馴れ馴れしすぎるだろう』

『では入るのですよ。挨拶はきちんとするのですよ』

『待て、話を聞け。そしてお前は俺の母親か何かか?余計な世話だ』

 

ドアが開いた。先に入ってきたのは、やはりラヴィニアだった。もう一人もラヴィニアに続いて部屋に入ってくる。

 

「連れてきたのですよ」

 

入ってきた者は一見、凛々しい印象を受ける女……少女と女性の中途半端な時期を切り抜いたような容姿をしていた。年齢は、鳶雄達と同じく高校生くらいの年頃だろう。

身長は、隣に立っているラヴィニアと同じか、少し高いくらい。

髪型は長い黒髪をうなじのあたりで包帯のようなものでシンプルに一纏めにしており、長さはもう少しで地面に着きそうなほど長い。しかし、毛先のあたりは赤く染まっており、荒々しい印象も受ける不思議な髪色だった。

容姿はとても整っていて、和服を着て髪型を整えれば、外国人が真っ先に想像しそうな大和撫子に見えるだろう。髪の色を変えれば……。

 

しかし、鳶尾達はその人物に見覚えがあった。というよりも、その人物を知っていた。

 

「雪解月くん!」

 

夏梅が名前を呼んだ。

彼女が那由他の名前を知っているのは、ある意味当然だった。雪解月那由他は鳶尾や夏梅、鮫島と同じく、陵空高校の2年生、同級生であると同時に学校では有名人だったからだ。

 

それも、不良で有名だった鮫島のような理由ではない。学校一の変わり者という理由でだ。

容姿端麗でありながら運動神経抜群という上っ面だけを見れば、所謂勝ち組に属しているはずの人物であったにもかかわらず、突飛な行動や発言などの一般人では決して行わないような行動、普通に日本で生活していれば考えつかないような思想の吐露。そのような行動や言動が理由で、学校では浮いた存在として有名だったのだ。

 

那由他はまるで今回の事件を今回の出来事を何とも思っていないような軽いノリで

 

「ん?ああ……俺のこと知ってんのか?まぁ、それならちょうどいいか。俺の名前は雪解月那由他。お前らと同じく陵空高校に在籍していた。俺のことを知っているなら分かっているだろうが、俺はこう見えても男だ。忘れんなよ?……今回、提督にお前らの子守りを頼まれてここに来た。そんなわけで、ヨロシク」



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