淡色の傘のキミ (高瀬あきと)
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一真とユキホの物語

昔に書いた小説で先日のバンやろクリスマスデュエルギグの一真とユキホを見て、思い出したから昔のスマホから発掘しました!自己満足小説です(汗
文章もすごくつたないですm(._.)m


ある日の午後

俺はふらっとCD屋に立ち寄っていた。

 

「あ、このバンド…新曲出したのか…」

 

何気なく知っていたバンドの新曲

暇潰しがてらに視聴してみた。

 

……どこかで聴いた事あるようなラブソング。

悪くない。

けど、ありきたりの言葉、流行りの曲調。

俺には"いい曲だ。"

それ以外の感想はなかった。

 

特に気になる曲もなかったし、

そろそろ暇潰しという名の気分転換にも飽きた俺は店を出ようとした。

 

「葵陽のやつに合う新曲……か……」

 

今俺はFairy Aprilの新曲作りに行き詰まっていた。

たまには息抜きに他のバンドの曲も聴いてみるのもいいかもな。

そう思ってCD屋に来たのが

………間違いだった。

 

「雨かよ………」

 

さっき店に入るまでは快晴。

朝の天気予報でも雨とは言ってなかった。

そんな俺が傘を持っているわけがない。

近くのコンビニまで走って傘を買ってもいいが………。

 

「本降りか。コンビニに着く頃にはびしょ濡れだよな。」

 

この店から近いコンビニでも走って数分かかる。

雨が止むのを期待してもう少しCDを見て回るか?

そんな事を悩みながら空を見てると、ふと肩を叩かれた。

 

「Fairy Aprilの……一真さんですよね?」

 

名前を呼ばれた事にも驚き後ろを振り返ってみる。

 

「ユ……ユキホさん…!?」

 

俺の肩を叩き、

俺の名前を呼んでくれたのは

………ユキホさんだった。

 

 

「やっぱり♪先程から気になってはいたのですが…お声をかけてもいいものか迷ってまして」

 

ドキっとする。

こんな笑顔で声をかけてもらえるとか……

でも……

 

「い、いや、べ、別に声かけるくらい……な?

エデンでライブやる仲間…そう!仲間みたいなもんだし…!!」

 

ヤバい。かなり動揺してる。

 

「ぜ…全然声かけてくれていいですから。その……声かけてくれていいですから!」

 

「………」

 

まずい…!

すごくまずい……!!

俺、何言ってるんだ!?

ユキホさんも黙ってしまって怪訝な目を俺に向けている……!

 

「ぷっ………」

 

ほら!すごくまずい……!!

……

………

…………ぷ?

 

 

「ぷっ…あは、あはははは♪

す……すみません…ごめんなさい。あはははは♪」

 

え?俺笑われてる……?

 

「あ……あの……」

 

「あ、ほんとにごめんなさい。一真さんの反応が面白くて……♪」

 

「え?え?ユキホさん……?」

 

「一真さんってほんとに面白い方ですね♪」

 

「いや、笑いすぎ……」

 

「あ、ごめんなさい」

 

いや、別にユキホさんの笑った顔が見れたし。

じゃない!ちがう!ユキホさんは……男……だし…?

いや、男だ男…。

 

「いや、別に怒ったりしてるわけじゃないから……」

 

「いえ!……ちょっと笑いすぎでしたね。本当に申し訳ございません」

 

あ、ユキホさんのこんな申し訳なさそうにしてる顔……

見たくない……

って!違う違う!!

 

「いや、本当に気にしないでいいんで…あの…」

 

「あ、今日は私の好きなバンドの新曲の発売日でしたので♪それを買いに来たら一真さんをお見かけしまして♪」

 

俺がさっき視聴したバンドの曲かな?

V系のバンドだしユキホさんとはイメージ違うけど……

 

「一真さんも気になるバンドさんのCDでも買いに来られたのですか?

そのわりには何も買ってらっしゃらないようですが……」

 

「いや、俺は特に……その…新曲作りに行き詰まってたから気分転換というか……」

 

「そうだったのですね。曲作りお疲れ様です♪

私、Fairy Aprilの曲好きです。

元気になれるというか……新曲も楽しみにしてますね」

 

「おお……ありがとう……」

 

よし、頑張ろう!

 

「そしてお店を出ようとしたら雨……で、傘も無いし困ってたって感じですか?」

 

「ああ…そんなところ。天気予報でも雨って言ってなかったから傘なんて持ってきてなかったし」

 

「それはお困りですよね」

 

「近くのコンビニに走っても数分かかるし、今日は練習もないから誰かに傘を持ってきてもらうように頼むのも気がひけるしな」

 

まぁ、練習があってもあいつらに傘を持ってこさせるのも気がひけるが……

 

「……それでしたらどこかそこら辺でお茶でもしながら雨が止むのを待ちますか…?」

 

ドキッ……!

え?どうする!?嬉しい。嬉しい?

いやいや、いや…嬉しい。

 

「なーんて♪

一真さんとお話をしたいのは山々なのですけど、この後私練習がありまして」

 

「そ……そうなんだ?いやー残念だ…本当に……残念…」

 

うおおおおおおおお

しっかりしろ俺!

ユキホさんは男だ!男!!

……お茶したかった………

 

「その…ユキホさんも練習頑張って下さい…」

 

「ありがとうございます♪

それで……さっき笑いすぎたお詫び…と言いますか。どうぞ」

 

そう言って彼女は…じゃない。

ユキホさんは傘を差し出してくれた。

彼女(もういいや)の着物に合う、淡い色合いの蛇の目傘。

 

「あの…気持ちは嬉しいですけど、俺が傘を借りてしまうとユキホさんが…」

 

「私は大丈夫ですよ。普段から折り畳み傘を常備してますし」

 

そう言ってバッグから折り畳み傘を出し見せてくれた。

 

「もし風邪でもひかれたら新曲作りどころではなくなると思いますので、是非お使い下さい。」

 

そのまま傘を押し付けられて受け取ってしまう。

その時に触れた指が…柔らかくて…温かくて…

 

「あ…ありがとう。助かる……」

 

「いえいえ、笑ってしまったお詫びもありますが、エデンで演奏する仲間……ですもんね♪」

 

そう言ってクスクスと悪戯っぽく笑うユキホさん

 

「ああ……仲間…だもんな」

 

すごく照れくさくなる。

笑ってしまったお詫びとか言ってたくせに忘れてなかったのかよ。

 

「仲間…ですから。」

 

あれ?ユキホさんも顔が…赤い……?

 

「また…エデンでお会いした時にでも返していただければいいので」

 

また…エデンで…

 

「そうだな。またエデンで会った時に……」

 

 

…………

……………

…………………

 

 

少しの無言

すごく気恥ずかしい。

何か…何か言わないと……。

 

 

「あ、そろそろ時間です。私は行きますね。」

 

「あ、ああ。その…ありがとう。また…。」

 

「それでは失礼します♪」

 

そう言って折り畳み傘をさして店を出るユキホさん。

また…とは言ったけど……

 

「ユキホさん…!」

 

聞こえるか聞こえないかの声。

雨の音に消されて聞こえてないかもしれない。

 

そもそも呼び止めて何て言うんだ?

 

そのまま胸にモヤモヤしたものを残しながらユキホさんの後ろ姿をずっと見てた。

 

そんな時、ユキホさんがクルッと振り返って……

 

「一真さん!貸し1つですよ♪

傘を返していただける時に……きっとお茶をしながらお話しましょう♪

ご馳走して下さいね♪」

 

そう言って笑うユキホさんを見て

顔が熱くなる……

胸に熱いものが込み上げてくる。

でも、何でもない様子でいつも通りの俺で…

 

「笑ったお詫びじゃなかったのか?

まぁ、傘は助かったし……お茶くらいならご馳走させてもらう」

 

「期待してますね♪」

 

またクルッと向こうを向いて歩き出すユキホさんに俺は……

 

「ユキホさん!」

 

今度は聞こえるように名前を呼んだ。

そして俺の方に振り返ってくれる。

俺が何を言うのか待っててくれている。

 

「……?」

 

「あ、あの…」

 

「?」

 

俺は……

俺は………

 

「こないだユキホさんのお兄さんに偶然会って…追いかけられたんだけど……その同じエデンでライブする仲間なだけって説明しといてくれないかなって……」

 

何言ってるんだ俺……

 

「兄……?」

 

ほら、ユキホさんもキョトンとしてる…

首を横に傾けたりして……可愛い……。

って違う!!

 

「………あっ!お兄様ですね。」

 

そう言ってまたクスクス笑うユキホさん。

 

「ちゃんと一真さんは同じエデンの…バンドの仲間だと説明しておきます♪」

 

良かった…。変には思われなかったかな……?

 

「でも………」

 

ん………?

 

「今度、デートする約束しましたって言ったらすごく怒るかもしれませんね♪」

 

「デ……デート!?」

 

「それでは♪」

 

手を振った後また向こうを向いて

本当に急いでるんだろう。

小走りで去っていくユキホさん。

……って、デート!?デートなのか!?

俺達男同士だろ……!?

 

「はぁ……」

 

溜め息が出る…

でも心は温かくて…

 

借りた傘をソッとさしてみる。

 

「また……。また会うって約束…また会えるんだよな。」

 

傘にあたる雨の音が心地好い音色になって

 

「なんか…今いい曲が浮かびそうな気がする」

 

そう思った俺は雨の中を歩き出した。

少し遠回りしながら帰ろう。



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