WARFRAME~二番目の太陽系~ (アイゼンパワー)
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人物、艦隊紹介

たのしんでね!


ワン将軍

 

一応グリニア=コーパス連合の最高指導者になった。

他のグリニア士官よりは優しいが一般人類基準だと十分残虐。グリニア帝国の機械研究界の権威である。tyl regor 遺伝子学博士とTengus博士とは親友。スタディ艦隊と呼ばれる移動研究所と強力な戦艦を数十艦保有する艦隊を率いている。

 

 

スタディ艦隊内訳

 

グリニアガレオン船 130隻

新型 グリニア戦艦 “ジェネラル”級 70隻

新型 グリニア戦艦 “シスターズ”級 2隻

 

 

評議員Vay hek

 

ヴェイ ヘック と読む(少なくとも筆者はそう読んでる)

体を全て機械化しており、戦闘時は《テラフレーム》と呼ばれる戦闘用に調整されたフレームを着用する。外見についてはご自分で調べることをおすすめする。グリニア軍人らしく、残虐な性格で、政治において掲げる標榜は「プラズマグレネードに始まり、プラズマグレネードに終わる外交」。コイツに外交は任せられない。掲げる標榜通り暗殺を好む。グリニア=コーパス連合の軍事と敵対的国家に対する外交担当。

 

タスク艦隊内訳

 

グリニアガレオン船250隻

新型 グリニア戦艦“ジェネラル”級 50隻

新型 グリニア戦艦“アングリフ”級 45隻

 

 

 

Nef Anyo

 

ネフ アンヨと読む(少なくとも筆者は以下略)

コーパス取り締まり委員会の幹部(要はお偉いさん)。宣教師のような格好をしており、それがいつTyl rengor博士にいじられる原因である。太陽系(オリジン・ソーラーシステム)一のペテン師であり、金星に存在するフォーチュナー債務者収容コロニーを管理している。コーパスが利益を信奉するカルト集団だと思われる原因。フォーチュナーにおいては労働の効率第一を掲げ、非効率な労働者には容赦しない。委員会の一員としてコーパス艦隊を率いている。

 

コーパス艦隊内訳

 

スカウト・コーパスシップ 160隻

アタック・コーパスシップ 90隻

新型 コーパス戦艦 “クレジット”40隻

新型 コーパス戦艦 “プロフィット”10隻

新型 コーパス旗艦 “トレードセンター” 2隻

 

 

フォーモリア艦隊

 

太陽系(オリジン・ソーラーシステム)最強の戦艦、バロール・フォーモリアン戦艦のみで組成された艦隊。初戦闘はコーパス艦隊のど真ん中にワープアウトして行われた。一瞬でコーパスシップを破壊し、tennoリレーをいくつも破壊したが、宇宙最強生物tenno(プレイヤー)の前では無力。小回りが利かないので、出撃のたびにスタディ艦隊とタスク艦隊が護衛に駆り出される。

最近流石に懲りて小型戦闘艇が何隻か配備された。

 

フォーモリア艦隊内訳

 

バロール・フォーモリア戦艦 700隻

新型 グリニアフリゲート“コンシラー”級 20隻

 

 

重要施設防衛移動要塞群

 

元の世界では独立した指示系統を持つが、この世界に転移してきてからはグリニア=コーパス連合の最高指導者の指示に従うようになった。ワン将軍とTengus博士(無責任マッドサイエンティスト)によって、双女帝陛下が拠点とするKUVA(クヴァ)要塞をより量産性と攻撃力を高めた形で再設計された、新型移動要塞“オボロヌィ”と補助のための小型戦闘艇と中型戦闘艇によって組成された部隊。防衛だけでは無く、移動要塞と呼ぶに相応しい攻撃力によって敵を殲滅することもできる。転移したのはほんの一部だけで、全部隊が出動すればその鉄壁の守りは、虫一匹通すことはないだろう。

 

重要施設防衛移動要塞群内訳

 

新型移動要塞 “オボロヌィ” 17隻(?)

新型 グリニアフリゲート“コンシラー”級 78隻

新型 グリニアガードデストロイヤー(防衛駆逐艦)“ステナ”級 102隻

 

Lieutenant Lech Kril

 

リューテナント レック クリルと読む(少なくとも以下略)

グリニア軍大尉。どうやら体を機械化したものの、温度調節ができないらしく、背中に冷却装置を取り付けている。グリニア軍人らしく残虐な性格をしている。単純で脳筋非常に勇猛果敢であり、双女帝から信頼されている。ワン将軍の忠実な部下。艦隊は任されていないが、大規模な部隊を率いている。しばらく出番は来ない。

 

General Sargas Ruk

 

サルガス ルクと読む(少なくとも以下略)

ワン将軍と同じく将軍だが、最高指導者になれなかった。理由は冷静になれない、ワン将軍の方が戦略的思考ができるというもの。ヴェイ ヘックと同じように体の大部分を機械化。右腕を巨大な火炎放射器に置き換え、目を一つの高性能カメラアイに置き換えた。グリニアの増強を喜ばしく思っており、この新太陽系(ニューソーラーシステム)でもグリニアにさらなる栄光をもたらすため、日々奮闘するだろう。

 

 

Tengus博士

 

テングス博士と読む(少なくとも以下略)

ワン将軍の部下で研究者、遺伝学と心理学界では有名。

遺伝学の知識を駆使してグリニアのために生物兵器を作ったり、双女帝陛下の前で生物兵器のお披露目をする時、ヴェイ ヘックを生物兵器の群れの中に突き落としたり、自分の作成した生物兵器が暴走しても放って置いたりして、なかなかに狂っており(マッドであり)、無責任である。

 

 

Tyl regor博士

 

タイル レジャー博士と読む(少なくとも以下略)

ワン博士の親友であり、良き部下であり、グリニアの遺伝子学界の権威。グリニア兵士たちのクローンベースになった一人であり、損傷した遺伝子修復のキーマンでもある。グリニア帝国の未来を左右する非常に重要な人物。グリニア兵士の制服とも言えるスーツに強いこだわりがあるようだ。




次回、艦艇や各種兵器について。


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艦艇、兵器設定 (グリニア編)

艦艇で新型って書いてあるやつはオリジナルです。
陸上と戦闘機類は全てオリジナルです。


グリニアガレオン船

 

外見:曲線的で大昔のガレオン船のように多くの砲身が横から突き出している。(調べれば出る)

 

武装:40.6cm砲 片舷十門 合計二十門

2cm対空連装ガトリング砲 片舷十一門 合計二十二門

 

新型 グリニア戦艦 “ジェネラル”級

 

外見:銀河英雄伝のヒューベリオン級+片舷砲塔二基

 

武装:艦首固定レーザーキャノン十六門

艦首固定フォトンレーザー砲八門

(冷凍ビームの上位互換)

艦首固定熱エネルギー砲八門

(宇宙戦艦ヤマトの火炎直撃砲のイメージ)

側面長砲身51cm連装砲塔 片舷二基四門 合計四基八門

側面無砲身15cm対空レーザー砲片舷二十五門 合計五十門

 

 

新型 グリニアフリゲート“コンシラー”級

 

外見:クリピテラ級航宙駆逐艦(宇宙戦艦ヤマト)+下部砲塔二基 上部砲塔一基

 

武装:35cm連装艦載砲一基二門(前部甲板)

25cm三連装艦載砲一基三門(前部甲板)

35cm連装レーザーキャノン一基二門(後部甲板)

25cm連装レーザーキャノン一基二門(下部甲板)

40.6cmクラスター砲一基一門(下部甲板)

ミサイル発射管八門(後部甲板)

 

 

新型 グリニア重巡洋艦“アングリフ”級 45隻

 

外見:カイデロール級航宙戦艦(宇宙戦艦ヤマト)

(かなり大型化:1.5kmくらいまで)

武装:35cm連装艦載砲三基六門 (艦上二 艦底一)

35cm連装レーザーキャノン二基四門(艦上二 艦底一)

25cm連装レーザーキャノン二基四門(後部甲板)

25cm三連装艦載砲二基六門(後部甲板)

艦首固定レーザーキャノン八門

艦首固定熱エネルギー砲四門

艦首固定フォトンレーザー二門

レーザー対空砲、実弾対空砲多数

小口径レーザーキャノン、実弾砲多数

 

新型移動要塞 “オボロヌィ”

 

外見:まんまKUVA要塞(調べれば出る)

高さ5km 幅400m

 

武装:100cm対地対空両用レーザー砲六門(底部)

350cm対艦連装砲一基二門

35cmレーザーキャノン多数

25cm要塞砲多数

120cm要塞砲四門(要塞前面)

対空砲多数 ミサイル発射管多数

 

 

新型 グリニアガードデストロイヤー(防衛駆逐艦)“ステナ”級

 

外見:ヴェクター級スターデストロイヤー

 

武装:35cm連装レーザー砲片舷四基八門合計八基十六門

35cm連装砲 片舷二基四門 合計四基八門

35cm対空間クラスター砲片舷二基四門 艦底六基十二門 合計二十門

25cm艦首限定可動レーザー砲16門

40.6cm艦首限定可動実弾砲四門

レーザー対空砲多数

実弾対空砲多数

 

バロール・フォーモリア戦艦

 

外見:筆者の語彙力では表現できませんでした(調べれば出る)

 

武装:フォモーリアン レーザーキャノン一基一門 (正面)

15cmレーザーキャノン多数

対空砲多数

 

新型 グリニア狙撃戦艦“カノーネンフォーゲル”

 

外見:エクリプス級スターデストロイヤー

 

武装:艦首固定グリニアスーパーレーザーキャノン4基

(ハイパーのだいたい三分の二の威力)

67cm八連装レーザーキャノン12基96門

レーザー対空砲多数

 

新型 グリニア軌道爆撃艦“オービター”

 

外見:メガ級スタードレッドノート

 

武装:軌道爆撃機関砲8基

八連装レーザーキャノン4基32門

レーザー対空砲多数

 

新型 グリニア戦艦 “シスターズ”級 2隻

 

外見:ガレンテ連邦タイタン級戦艦(EVE online)

全長14km

 

武装:艦首固定大型フォトンレーザーキャノン二門

艦首固定大型熱エネルギー砲二門

艦底大型小惑星採掘用レーザー砲一基一門

グリニアハイパーレーザーキャノン六基

(波動砲のようなイメージ、六個の)

プラズマブラスター砲(射程は短いが、圧倒的な威力を誇る)多数

対空砲多数

トラクタービーム十基 (艦底)

グリニア ボルカー(ドロップシップ)

 

外見:球体をいくつも寄せ集めた感じ(調べれば出る)

 

タスク艦隊ver.

 

武装:20mmリボルバーキャノン一基

 

搭載可能人数:六人

 

スタディ艦隊ver.(タスク艦隊のよりも大型)

 

武装:20mmリボルバーキャノン三基

搭載可能人数:十人

 

 

 

グリニアファイター

 

外見:Bウイングのコックピット十字の真ん中に+機関砲

 

武装:75mm対艦レールガン三基

40mmチャージ式レーザーキャノン三基

30mmガトリング砲二基

 

 

グリニアボマー

 

外見:オルクボマー(war hummer 40k)

 

武装:75mm対地機関砲二基

40mm機関砲四基

チャージ式レーザーキャノン二基

 

グリニアインターセプター

 

外見:Aウイングインターセプター+ガトリング砲二基

 

武装:30mmガトリング砲二基

チャージ式レーザーキャノン2基

ミサイル発射管二基

 

 

 

陸上兵器

 

 

グリニアアーマードウォーカー(二足歩行兵器)

 

外見:war hummer 40k ドレッドノート

 

武装:六連装40mmグレネードランチャー一基

15mm連装重機関銃一基

 

 

グリニアホバータンク

 

外見:装甲型強襲用戦車(スターウォーズ)

 

武装:150mm戦車砲一基一門

補助57mm戦車砲二門

正面固定短距離レーザーキャノン八基

 

 

グリニアヘヴィーアーマードカー

 

外見:クローン・ターボ・タンク(スターウォーズ)

 

武装:110mm四連装機関砲一基(胴体上)

補助20mm機関砲2基(胴体横)

15mm重機関銃二丁(胴体横)

連装照射式レーザーキャノン(操縦席下)




グリニア軍兵器製造におけるコンセプト

バ火力!重装甲!使いやすければなお良し。


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艦艇、兵器紹介 (コーパス編)

スカウト・コーパスシップ

 

外見:大型のアタック ドローン(調べれば出る)180mくらい

 

武装:スキャナー二基

高性能カメラ三基

自衛用レーザーマシンガン多数

自衛用レーザーキャノン多数

 

 

アタック・コーパスシップ

 

外見:星系マップで金星FOSSAに停泊しているやつ(調べれば出る)

 

武装:35cm連装レーザーキャノン片舷四基八門 合計八基十六門

小惑星採掘用レーザー八基

レーザー対空砲多数

 

 

新型 コーパス戦艦 “クレジット”

 

外見:インペリアルI級スターデストロイヤー(艦橋なし)

 

武装:35cmレーザーキャノン多数

40cm対艦レールガン六基

80cmコーパス製レーザー砲30基

(スターウォーズのターボ・レーザーのイメージ)

 

 

新型 コーパス戦艦 “プロフィット”

 

外見:スーパースターデストロイヤー(全長6kmくらいまで小型)

 

武装:80cmコーパス製レーザー砲十二門

35cmレーザーキャノン多数

その他小口径砲多数(面倒くさくなった)

対空砲多数

 

新型 コーパス軌道爆撃艦“プラチナム”

 

外見:モン・カラマリクルーザー

 

武装:80cmコーパス製対地レーザーキャノン3基

35cm連装レーザーキャノン多数

四連装レーザー対空砲多数

八連装45cmレーザーキャノン16基128門

 

新型 コーパス旗艦 “トレードセンター” 2隻

 

外見:アマー帝国タイタン級戦艦(EVE online)15km

 

武装:35cm三連装レーザーキャノン多数

25cm連装レーザーキャノン多数

小惑星採掘用レーザー一基

無砲塔80cm連装レーザー砲一基二門

対空砲多数

対惑星大型レーザーキャノン二基

(スターウォーズのスーパーレーザーのイメージ)

 

コーパスファイター

 

外見:TIEディフェンダー+レーザーガトリング三基

 

武装:レーザーキャノン三基

レーザーガトリング三基

対艦レールガン三基

ミサイル発射管一基

光子魚雷発射管三基

 

コーパスソニックファイター

 

外見:Xウイング

 

武装:大口径レーザーキャノン四基

レーザーガトリング一基

ミサイル発射管二基

 

コーパスボマー

 

外見:TIEボマー

 

武装:チャフランチャー一基

レーザーガトリング銃塔二基(前部一 後部一)

熱核爆弾(サーマルデトネーター)7トン搭載可能

 

コーパスインターセプター

 

外見:TIE/sk x1試作型制空戦闘機

 

武装:レーザーガトリング四基

重レーザーキャノン二基

ミサイル発射管一基

 

コンドルドロップシップ

 

外見:箱を組み合わせたような形(調べれば出る)

 

武装:連装レーザーガトリング三基

 

搭載可能人数:10人

 

 

コーパスキャリアー

 

外見:ミレニアム・ファルコン

 

武装:四連装レーザーマシンガン四基(上二 下二)

 

 

 

陸上兵器

 

コーパスアーマードウォーカー

 

外見:war hummer40kのインペリアルナイト(大体高さ9m)

 

武装:(右腕)大型チェーンソー

(左腕)採掘用レーザー

 

コーパスタンク

 

外見:war hummer 40kのランドレイダー

 

武装:210mm連装重レーザーキャノン

15mm連装重機関銃二基

 

 

コーパスヘヴィーアーマードカー

 

外見:ストライカー装甲車

 

武装:120mm連装レーザーキャノン一基

 

搭載可能人数:十二人

 




コーパス軍兵器コンセプト

手数が多い!安い!速い!


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本編
転移~voidの渦によって~


この話においてコーパス語が《》、グリニア語が『』、 人類語が「」で区別しています。よろしくお願いします。


『Tenno--!!このウジ虫め!次こそは絶対にこの私が自ら、直々に捻り潰してやる!覚えておれ!!』

 

 

やあ、諸君。私は “General Wang(ワン将軍)”。部下からは単に“将軍”とだけよばれている。

今、隣で激怒している彼は“councilor vay hek(評議員 ヴェイ ヘク)”。我々が所属するグリニア帝国の評議会のメンバーだ。その他にもこの太陽系(オリジン太陽系)最強の艦隊、バロール・フォーモリア艦隊と優秀な兵士を集めたタスク艦隊を率いている。見てわかるように非常に怒りやすい“危険”な奴だ。そのくせ人心掌握に長けているため、我らの双子の女帝陛下、“双女帝(シスターズ)”に信頼されている。

地球を担当する士官はもう一人いたが、今はもういない。tennoの奴に真っ二つにされてしまった。彼の名前は“Captain vor (ヴォー隊長)”部下によると彼はvoidのセキュリティシステムに組み込まれてしまったようだ。

彼もまた、非常に優秀で“双女帝(シスターズ)”陛下に信頼されていた。

私かい?私はさっき言ったように“将軍”だ。戦いのことだけではなく、技術的なことを担当している。

我らグリニア帝国には問題がある。それこそ山のように。

我々グリニア人の多くはクローンによって産み出された。何百年もの間ずっと同じ遺伝子から産み出された。そこまではいいのだが、長年同じ遺伝子を使い続けたせいか、遺伝子の劣化が激しく、長く生きるにつれて、体が腐ってしまう。

そのため我らの多くは体を機械化している。

その体の機械化技術や、クローン技術、なんなら軍用の兵器の研究もしている。

グリニアの兵器の多くは火薬を利用した実弾兵器が多い、しかし我らの敵、重商主義でケチの“コーパス”はエネルギー兵器を採用している。

奴らの宇宙船、もしくは陸上基地を襲撃し、エネルギー兵器や無人二足歩行兵器“モア”、攻撃型の“バーサ”を奪い、自分に与えられた研究所に持ち帰り、グリニアの技術とする。

他にもコーパスシップ(コーパスの宇宙船、直線的なデザイン)の技術を組み込んだグリニアガレオン船(グリニアの宇宙船、コーパスとは違い、曲線が多い)の艦隊を率いている。

 

さて、今の状況を説明しよう。

Vay hekのフォモーリア戦艦がまたtennoリレー(tennoが所有する宇宙ステーション)を“太陽系最強”のフォーモリア戦艦で襲撃し、破壊に成功した。しかし数日後、つまり今、tennoに攻撃されてしまったところだ。

これは1度目ではない、かと言って2回目、3回目でもない。これで56回目だ。破壊されるたびに思うのだが、これは果たしてtennoが強いのか、はたまたフォーモリア戦艦が弱いのかわからなくなる。だがフォーモリアは数秒でコーパスシップを破壊したため、tennoがありえない強さを持つだけだろう、そうに違いない。そうだ次はtennoの技術について研究してみよう。もしかしたら奴らの外骨格(WARFRAME )も身にまとえるようになるかも

『兄弟!もっとフォーモリア戦艦を改良してくれ!』

現実逃避は終わった。

Hekの言うように私と彼は兄弟の仲だ。同じクローン生産場の同じクローン生産機から生まれたのだ。ちなみにcaptain vor もそうだ。

『これ以上どうしろと…ああ、そうだ。この前襲撃したtennoの基地から奪った武器とアークウイング(個人用翼型推進装置、主に宇宙空間と水中で運用される)があったはずだ。あれを護衛の兵士に装備させるのはどうだろう。』

《おや、お困りのようですね。》

『何しに来た!nef anyoooo!』

hekが叫んだように、彼の名前はNef Anyo (ネフ アンヨ)、商業カルト集団でケチでがめついコーパスの取り締まり委員会の幹部だ。彼がまだ駆け出しの小僧の頃からの付き合いであるけど、太陽系随一のペテン師でもあるため、信用できない。しかし彼から買った商品は信頼に値する。

『残念だが、今回、貴様の出番はない。むしろこの素晴らしいアークウイングを売りつけてやりたい。もちろん解析後にな。』

《それは残念。》

Tengus (テンガス)博士とTyl Regor (タイル レジャー)博士を私の研究所に呼べ。早速この素晴らしい機械の翼を解析して、我らがグリニアのものとしよう。』

 

 

 

その時、我々が停泊していた周辺の宙域に激震が走った。

 

 

『評議員様!将軍閣下!大規模なvoidの暴走です!』

 

『なんだと!速くこの宙域から離脱しろ!』

 

《何故離脱しないのですか?!》

 

《voidの渦に引き寄せられているのです!委員殿!》

 

『おい!見ろ!hek!フォーモリア戦艦生産工場とクローン生産場が吸い込まれているぞ!』

 

『何てことだ!天王星とお前の研究所も吸い寄せられている!』

 

『《離脱できません!全艦衝撃に備えよ!》』

 

 

そうして我々の艦隊といくつかの惑星とテラフォーミング施設がvoidの渦に飲み込まれてしまった。

 

 

次に目覚めた時、我らは見知らぬ惑星を前にしてい




ご覧くださってありがとうございます

軽い人物紹介

ワン将軍

コーパス嫌い、しかし何とかコーパスの技術を我がものとするためそれをコーパス側にバレないようにしている。有能。他のグリニア軍人よりは優しいが、一般人類基準だと十分残虐。他の士官より優しいため、部下に好かれている。座右の銘は「知恵こそが力」。本編では書かなかったが移動研究所と多数の戦艦によって組成された艦隊
、“スタディ”艦隊を率いる。


評議員vay hek

同じくコーパス嫌い。こちらは隠そうともしていない。自身の外交の標榜「プラズマグレネードに始まり、プラズマグレネードに終わる外交」に則って、何回もコーパスに宣戦布告しているが、ことごとくtennoに邪魔されている。それでも部下からは信頼されている。なぜならカリスマ性があるからだ。グリニア軍人らしく残虐な性格で激情家。

コーパス取り締まり委員 ネフ・アンヨ

コーパスの教義「紛争にこそ、利益がある」を信じて、実行している太陽系随一のペテン師。ワン将軍とは旧友であるにもかかわらず信頼されていないのを知っているし、なんとも思ってない。しかし彼は腹芸においては将軍の何枚も上をいくため、彼の考えはお見通しである。よって裏切られる前に裏切れるため、彼を信頼している。


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発見~“健康的”な地球を添えて~

地の文が少ないです。ご留意ください。


『ここは、一体…?』

最初に目覚めたのは私だった。

『おい、hek、起きろ!hek!Nefもだ!全艦状況を報告せよ!報告せよ!』

《あまり騒がないでください。こちらコーパス艦隊隊長、確認できる限りの範囲においては全艦無事です。もちろん委員殿も。》

『こちらタスク艦隊副隊長、全艦無事です。』

『こちら残存フォーモリア艦隊隊長、tennoとの戦いで負った傷以外は無事です。しかし今すぐにでも修理が必要です。』

『所長!ここはどこなのですか?!いきなり吸い寄せられたと思えば、フォーモリア戦艦生産工場が近くにあり、なんと火星や天王星、ケレス、木星。しかもあのコーパスの支配下にある水星やら金星やらもあるではありませんか!』

《それはいいことを聞きました。金星と水星があるならば我々の陸上基地もそこにあるはずです。》

『無事でよかった!nef anyo。』

『なんと美しい星だ…』

『hek!目を覚まししたのか。』

『あの美しい星を双女帝陛下に捧げれば、私の名誉も回復できるはず!タスク艦隊!出撃だ!』

『いや、待て!何もわからないのならば迂闊に動くべきじゃない。』

《私も将軍の意見に同意します。もし、あの美しい星に住んでいるのが、tenno並みの戦闘力を持つ敵対的な知的生物だったらどうするのです。それに、いきなり攻撃しては、大儲けの機会が消えてしまいます。》

『それならどうすればいい!そうだ!お前が指揮を執れ!兄弟!』

《私も賛成します。それなりの観察眼や知恵、戦略的思考を持つあなたなら、間違いないでしょうから。》

『…わかった。艦長!今、我々はどこにいる?』

『わかりません。』

『なぜ?』

『星間マップが未知の領域を指し示しています。』

《こちらコーパス艦隊隊長。我々の航法ナビも同じような反応を示しています。今すぐ偵察ドローンをあの星とこの辺りに展開することを提案します。》

『どうしてそう考える?』

『こちらフォーモリア艦隊隊長。あの惑星からは多くの生体反応が確認されています。もしそれが知的生命体であれば、これ以上艦隊を損耗させずに、話し合いによって修理や休息のための場を勝ち取る事が出来るでしょう。』

『こちらグリニアスタディ艦隊副隊長。将軍兼所長閣下、あの惑星の大気はオリジン太陽系の地球に酷似しています。防護服や酸素ボンベは必要ありません。』

『そうとくればここでくすぶっている理由はない。その提案を承認する。偵察ドローンの展開を急げ!コーパス艦隊!貴様らは確か大気中でも活動できる超音速戦闘機を所持していたはずだ。我らのドロップシップと同行し、ついでに地形と環境、できれば生物についてもスキャンしてくれ。』

《こちらNef、了解しました。》

『タスク艦隊には何かする事はないのか!将軍!』

『タスク艦隊とフォーモリア護衛艦隊にはファーストコンタクトを頼みたい。コーパス艦隊もだ。レーダーを見る限り、人工衛星が確認できない。すなわち人工衛星を打ち上げる程の技術がないと推測できる。それならば我々の艦隊はそれなりのインパクトをあの惑星の奴らに与えられるはずだ。』

『了解!』

『残存フォーモリア艦隊は今すぐ近くにあるはずのフォーモリア戦艦生産工場に寄港し、修理と補給を受けろ。そしてファーストコンタクトに備えよ』

『了解。』

『それが全て終わり、惑星の住人が無害であることが確認でき次第、あの惑星の住人たちにコンタクトを取ろう。そしてあの“健康的”な地球をグリニア帝国の居住地とするのだ!』

《我々コーパスの事も忘れないでください。我々もあの“健康的”な惑星を居住地としたく思っています。もし、あなたたちが征服に成功したのならば、我々は貴方がたの言い値であの惑星の半分を買い取ります》

『『わかっている!ただ今から仮称:新太陽系(ニューソーラーシステム)における再探索作戦開始を宣言する!』』

 

 

将軍と評議員の一喝によって“再探索作戦”は始動した。

 

 

 

新太陽系第三惑星 地球

ロデニウス大陸 クワトイネ

勢力:クワトイネ公国

 

中央暦1639年1月24日、この日は風もなく、穏やかな一日になりそうだった。

クワトイネ公国竜騎士隊所属のマールパティアは今日も公国北東部の警戒任務に従事していた。

彼の仕事は、もし、敵国であるロウリアの軍船や、ワイバーンによる奇襲を早期に探知、対策を取る為に今日も相棒のワイバーンとともに北東部の海の上を飛んでいた。

 

そして彼は奇妙なものを発見した。

 

「なんだあれは!」

 

自分と相棒以外存在しないはずの空に、二つの奇妙な点がた飛んでいた。

 

 

通常は、味方のワイバーン以外に考えられない。ロウリアからここまで、ワイバーンでは航続距離が絶対的に不足している。

 三大文明圏には、竜母と呼ばれる飛龍母艦があるらしいが、この文明圏から外れた地にあるはずがない。

 粒のように見えた飛行物体は、どんどんこちらに進んで来た。

 それが近づくにつれ、味方のワイバーンでは無いことを確信する。

 

「羽ばたいていない」

 

 彼は、すぐに通信用魔法具を用いて司令部に報告する。

 

「我、未確認騎を確認、これより要撃し、確認を行う。現在地・・・・」

 

 高度差はほとんど無い。彼は一度すれ違ってから、距離を詰めるつもりだった。

 未確認騎とすれ違う。

 その物体は、彼の認識によれば、とてつもなく大きかった。羽ばたいておらず、翼に付いた何がが4つぐるぐる回っていた。

 胴体と翼の先端がピカピカ点滅し、光り輝いている。

 機体は白色、胴体と翼に赤い丸が描かれていた。

 

もう一つの物体は更に奇妙だった。さきほどの物体と比べるといくらか小さかったが、十分大きい。

しかも腹からはよくわからない光を出しつつ飛んでいた。

翼と思しきところからは前に向けていくつかの奇妙な形をした棒が突き出ていた。

あのよくわからない光を浴びてしまったが大丈夫なのだろうか?

真後ろにあったため気づかなかったが、更にそれは何かを牽引していた。

まるで球体がいくつも寄せ集められたかのような形相をしており、こちらも同じく大きかった上に、足と思われる部分から火を噴いていた。

前の物体の機体と翼は銀色に塗られており、青の丸の中に三角があるようなマークが描かれていた。

牽引されている物体は緑と黄色に塗られており、真っ赤な三角が二つと四角が描かれていた。

 

 

その三つの未確認機はそのまま経済としマイハークへと進んでいった。

 

 

 

彼は、反転して、愛騎を羽ばたかせる。風圧が重くのしかかり、飛ばされそうになる。一気に距離を詰める・・・つもりだったが、全く追いつけない。ワイバーンの最高速度時速235km。生物の中では、ほぼ最強の速度を誇り、馬より速く、機動性に富んだ空の覇者(三大文明圏にはさらに品種改良を加えた上位種が存在するらしいが)

が全く追いつけない。

 相手は、生物なのか何なのかも全く解らない。

 

「くっっっ!!なんなんだ、あいつらは!!」

 

 驚愕

 

「司令部!!司令部!!!!我、飛行騎を確認しようとするも、速度が違いすぎる。追いつけない。未確認飛行騎三騎は本土マイハーク方向へ進行、繰り返す。マイハーク方向へ進行した」

 

 報告を受けた司令部では、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

 ワイバーンでも追いつけない未確認騎が、しかも三騎もよりによって、クワトイネ公国の経済の中枢都市マイハークに向かって飛んで来ると言う。

 攻撃を受けたら、軍の威信に関わる。

 機は速度からしておそらくすでに本土領空へ進入しているはず。

 通信魔法で、指令が流れる。

「第六飛龍隊は全騎発進セヨ、未確認騎がマイハークへ接近中、領空へ進入したと思われる。発見次第撃墜セヨ、繰り返す発見次第撃墜セヨ」

 滑走路から、どんどんワイバーンが発進する。その数12騎、全力出撃である。

かれらは透き通るような青い空に向かい、舞い上がっていった。

 

 

 第六飛龍隊は、運良く未確認騎たちの正面に正対した。報告に寄れば、相手は超高速飛行が可能な者のようだ。

相手が速すぎる場合、チャンスはすれ違う一瞬のみ。

飛龍隊12騎が横一線に並び、口を開ける。

火炎弾の一斉射撃。これが当たれば、落ちない飛龍はいない。

口の中に徐々に火球が形成されていく。その時、未確認騎達が上昇を始めた。すでにワイバーンの最大高度4000mを飛んでいた彼らにとって、それは想定外の事態であった。

すさまじい上昇能力でぐんぐん高度が上がっていく。

特に異形の飛行物体は凄まじい。

空の果てまでも行ってしまいそうだ。

第六飛龍隊は、未確認騎達をその射程にとらえる事無く、引き離された。

 

「我、未確認騎三騎を発見、攻撃態勢に入るも、未確認騎達は上昇し、超高々度でマイハーク方向へ進行した。繰り返すーーーーーーーーー」

 

 マイハーク防衛騎士団、団長イーネは、第六飛龍隊からの報告を受け、上空を見上げた。

 一般的に、飛龍から地上への攻撃方法は、口から吐く火炎弾である。矢をばらまいたり、岩を落とす方法も過去には検討されたが、空を飛ぶ生き物は重たい物を運ぶ事が出来ない。

 単騎で来るなら、攻撃されても大した被害は出ない。おそらく敵の目的は偵察と思慮される。

 しかし、いったいなんなのだろうか?

 飛龍でも追いつけない正体不明の物。飛龍の上昇限度を超えて飛行していく恐るべき物たち、それがまもなく経済都市マイハーク上空に現れる。

 団長イーネは、空を睨んでいた。

 

  遠くの方から音が聞こえ始めた。ブーンといった聞き慣れない音とキーンという高い、聞き慣れない音だ。しばらくして、それはマイハーク上空に現れた。

  物体は高度を落とし、上空を旋回した。

  奇妙な物体、大きくて白い機体、羽ばたかない翼、怪奇な音、翼と胴体に赤い丸が描かれている。

直線的で、ギラギラとした銀色の機体、同じく羽ばたかない翼と怪奇な音、翼に青い丸と三角が描かれている。しかも腹からよくわからない光を出している。

球体を寄せ集めたようなおかしな形状、翼はなく、足から火を噴いている。機体には小さく赤い二つの三角と、それに囲まれている赤い四角形がえが

  明らかな領空侵犯、しかし、飛龍は遙か遠くからこちらへ向かっている最中、攻撃手段は、あることにはあるが、今回は接近が速すぎて、何も準備が出来ていない。

  事実上現時点では無い。

  物体は、マイハーク上空を何度も旋回し、北東方向へ飛び去った。

クワトイネ公国 政治部会

 

 国の代表が集まるこの会議で、首相のカナタは悩んでいた。昨日の事、クワトイネ公国の防衛、軍務を司る軍務郷から、正体不明の物体が、三騎もマイハークに空から進入し、町上空を旋回して去っていったとの報告が上がる。

 空の飛龍が全く追いつけないほどの高速、高空を侵攻してきたという。

 国籍は全く不明、機体に赤い丸や四角に三角、青い丸の中に青い三角が書いてあったとの事であったがそのような国旗を持つ国など、この世界には存在しない。

 カナタは発言する。

 

「皆のもの、この報告について、どう思う、どう解釈する」

 

情報分析部が手を挙げ、発言する

 

「情報分析部によれば、同物体は、三大文明圏の一つ、西方第2文明圏の大国、ムーが開発している飛行機械に酷似しているとのことです。しかし、ムーにおいて開発されている飛行機械は、最新の物でも最高速力が時速350kmとの事、今回の飛行物体は、明らかに600kmを超えています。ただ・・・。」

 

「ただ、なんだ?」

 

「はい、ムーの遙か西、文明圏から外れた西の果てに新興国家が出現し、付近の国家を配下に置き、暴れ回っているとの報告があります。かれらは、自らを第八帝国と名乗り、第2文明圏の大陸国家群連合に対して、宣戦を布告したと、昨日諜報部に情報が入っています。彼らの武器については、全く不明です。」

 

 会場にわずかな笑いが巻き起こる。文明圏から外れた新興国家が、3大文明圏5列強国のうち2列強国が存在する第2文明圏のすべてを敵に回して宣戦布告したという事実。

 無謀にも程がある。

 

「しかし、第八帝国は、ムーから遙か西にあるとの事、ムーまでの距離でさえ、我が国から2万km以上離れています。今回の物体が、それであることは考えにくいのです」

 

会議は振り出しに戻る、結局解らないのだ。

ただでさえ、ロウリア王国との緊張状態が続き、準有事体制のこの状態で、頭の痛いこの情報は、首脳部を悩ませた。

味方なら、接触してくれば良いだけの話、わざわざ領空侵犯といった敵対行為を行うという事自体敵である可能性が高い

 

その時、政治部会に、外交部の若手幹部が、息を切らして入り込んでくる。

通常は考えられない。明らかに緊急時であった。

 

「何事か!!!」

 

 外務郷が声を張り上げる。

 

 

「報告します!!」

 

 若手幹部が報告を始める。要約すると、下記の内容になる。

 本日朝、クワトイネ公国の北側海上に、長さ230mクラスの超巨大船が現れた。

 

そして、それ以上に巨大な2隻の空飛ぶ異形の船が現れた。

 

 

 

海軍により、臨検を行ったところ、230Mクラスの巨大船には日本という国の特使がおり、敵対の意思は無い旨伝えてきた。

捜査を行ったところ、下記の事項が判明した。なお、発言は本人の申し立てである。

.日本という国は、突如としてこの世界に転移してきた。

 

.元の世界との全てが断絶されたため、哨戒機により、付近の哨戒を行っていた。その際、陸地があることを発見した。

   哨戒活動の一環として、貴国に進入しており、その際領空を侵犯したことについては、深く謝罪する。

 

.クワトイネ公国と会談を行いたい。

 

.我々はあの空飛ぶ船を所有する集団とは無関係である。

 

 突拍子もない話、政治部会の誰もが、信じられない思いでいた。

 しかし、昨日都市上空にあっさり進入されたのは事実であり、230Mという考えられないほどの大きさの船も、報告に上がってきている。

 

 

 

そしてそれ以上に巨大な異形の空飛ぶ船の方にはグリニア帝国とコーパス商業連合という二つの国の特使が乗っていた。(コーパスは商業連合であるため果たして国と言えるのか甚だ疑問だが、ひとまず置いておいて)

彼らもまた今はまだ敵対する意思はないことを伝えてきた。

彼らは以下の事を要求している。

.一つ、我々が駐留するための土地を分けて欲しい。代わりに我々コーパス=グリニア連合が貴国を守ろう。

 

.一つ、我々は日本国と同じく異なる世界からやってきた。

 

.一つ、貴国との会談の場を設たい。

 

.我々は日本国と無関係である。(あのような腑抜けた国家と同じにして欲しくないとは特使の言)

 

 

国ごと転移などは、神話には登場することはあるが、現実にはありえないと思っている。

 

 しかし、その日本とグリニア=コーパス連合という国の力は本物なので、まずは特使と会うこととした。

 

 

 




次回、日本国側の反応

次もよろしくね!


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転移~日本国の反応~

新太陽系第三惑星 地球

日本国所属哨戒機

勢力:海上自衛隊

 

 

哨戒機に乗っていた彼は驚愕した。進んだ科学技術を持っている旧世界のアメリカでもあのような航空機を見たことがない。

銀色に輝き、ジェットなのか、何なのか分からない動力を有し、機体腹部から謎の光を出していた。

その後ろにある機体はもっと奇妙だった。まるで球体がいくつも寄せ集められたかのような形をしていて、普通ではとても考えられないような形をしていた。

あの腹部から発せられている光を浴びてしまったが、大丈夫なのだろうか。そして、複数の龍のようななにかに出会い、回避行動をとるために上昇した時、奇妙な航空機の実力を見た。

我々とはそれこそ桁違いの上昇力と速力を持っていて、上昇する際、宇宙まで行ってしまうのではないかと思うほどだった。結局は大陸の主要都市と思われる所まで同行し、帰還した。

帰還後、念のため放射能検査を行ったが、何も問題なかった。一体何だったんだろう。

 

 

数日後…

 

 

新太陽系第三惑星 地球

日本国所属イージス艦

勢力:海上自衛隊

 

 

 

我々は無事に大陸の住民と国交を結ぶことに成功した。しかし、そこで私は理解の範疇を超える代物を見た。

SF映画に出てくるような空に浮かぶ宇宙船らしき船が二隻、このイージス艦の上に浮かんでいた。

大きさは軽く300mを超えるだろう。その上、曲線的な方の船には、大昔のガレオン船のように無数の砲身が突き出しているのが見えた。

直線的な方の船はギラギラと銀色に輝いていたうえに、もし、彼らが本当に、SF映画に出てくるようなレーザーキャノンだろうと思われる部分がいくつもある。

 

曲線的な船の乗員はグリニア帝国と名乗り、直線的な船の乗員はコーパス商業連合と名乗った。彼らも我々と同じように異世界に転移してきてしまったらしい。そのため元々敵対していたのを、仕方なく手を組み、グリニア=コーパス連合を名乗っているがやはり仲が悪く、別々の名を名乗っている。

 

グリニア帝国人の姿は酷く歪んでいるように見えた。それにやたらと義肢を使っているものが多い。その上彼らが身につけている装甲服は非常に頑丈そうだ。

コーパス人は青い化学繊維のようなもので作られたであろう防護服のようなものを身につけ、その上、ビルのよう形をしたヘルメットをかぶっていた。

 

このようなものがいる事は想定外だ。哨戒機からは“見たこともないような、まるでSF作品に出てくるような航空機に遭遇した”と言う報告があったがまさか同じように、異世界から転移したとは。

彼らと国交を結び、味方につけられれば非常に頼もしいだろうが、もし敵となれば、厄介な、いや、もしかしたら一瞬で制圧されてしまうかも知れない。慎重に事を運ばなければ。

 

 

新太陽系第三惑星 地球

日本国 総理執務室

勢力:日本国

 

「総理!あの未確認飛行物体を所有している集団との接触に成功したと報告がありました!」

「でかした!」

 

ここ総理執務室は少し前のクワトイネ政治部会と同じように、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

イージス艦を新たに発見した大陸に送って見れば、SF作品に出てくるような宇宙船と遭遇したときた。騒ぎにならないはずがない。

 

「それで?集団の名前は?」

「彼らはグリニア帝国とコーパス商業連合と名乗っております。グリニア帝国に関しては非常に強大な星間軍事国家であることがわかっています。コーパス商業連合は非常に先進的な技術、それこそレーザーキャノンやエネルギーバリアなどの技術を持つ、巨大な星間商業連合と言うことが判明しました。補足ですが、グリニアもコーパスに負けるとも劣らない技術力を持っています。」

その情報に執務室内は凍りついたような空気に包まれた。

 

「これをどうやって国民に説明すれば良いと言うんだ……」

「ありえない!それではまるっきりSFの作品ではないか!」

「しかし幸運なことに、彼らは私たちと国交を結びたいと、言っています。友好条約を結び、味方にするしかないと思います。」

「総理!彼らは非常に強大です。あのような強大な集団を味方にできるのは今のみです!」

「しかし、どうやって国民に説明すれば…それにどんな要求をふっかけられるか…」

「総理、説明について悩むことはありません。ありのままを説明し、マスメディア各社にそのまま報道してもらうのです。そして条約を結んだのち、クワトイネで大規模なパレードをしてもらうのです。」

「何故日本でやらないんだ?」

「危険だからです。相手の本質もわからないのに、自国内に招き入れることはできません。しかも、今の状況で、“日本こそが最強!他の国家など恐るるに足らず!”と盛り上がっている右翼がどういう行動に出るか、わかりません。」

「総理!これで問題はなにもありません。どうか、ご決断を!」

 

 

 

 

そして翌日、日本国内は再び大騒ぎとなった。

 

 

 




何故毎回グリニアが優先されているのかだって?
筆者がグリニア好きだからだ!

(もちろんコーパスも好きよ)

フォーモリア戦艦艦隊とコーパス艦隊、スタディ艦隊はギム動乱の際に威嚇と攻撃のために出撃させる予定です。
タスク艦隊はロウリア王都への降下、スタディ艦隊とフォーモリア艦隊は海戦にも出張ります。お楽しみに!


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動乱~超科学世界の住民たちを添えて~

中央暦1639年3月22日午前―――

 

日本とグリニア=コーパス連合という国が転移してから、2ヶ月が経とうとしていた。

 

彼らと国交を結んでから2ヶ月、クワ・トイネ公国は、今までの歴史上最も変化した2ヶ月であった。

 

2ヶ月前、日本は、クワ・トイネ公国と、クイラ王国両方に同時に接触し、双方と国交を結んだ。

しかしグリニアはクワ・トイネ公国のみと国交を結び、国防に協力する代わりに領土を得ることに成功した。

コーパスは猛烈にクイラ王国の土地を欲しがった(それこそ異常なまでに)。

 

日本からの、食料の買い付け量は、とてつもない規模での受注であったが、元々家畜にさえ旨い食料を提供することが出来るクワ・トイネ公国は、日本からの受注に応える事が出来た。

 

 クイラ王国にあっても、元々作物が育たない不毛の土地であったが、日本によれば、資源の宝庫であるらしく、クイラ王国は、大量の資源を日本に輸出開始していたが、コーパスは独自に土地の開発を進めて、銀色に輝く塔をいくつも地面に突き立て、彼らが“フェライト”と呼ぶ黒く輝く金属、“ルビドー”と呼ぶ赤い結晶を地の底から掘り出し、主にグリニアに売っていた。

 

 

一方、日本は、これらをもらう変わりに、インフラを輸出してきた。

 

 大都市間を結ぶ、石畳の進化したような継ぎ目の無い道路、そして鉄道と呼ばれる大規模流通システムを構築しようとしていた。これが完成すると、各国の流通が活発になり、いままでとは比較にならない発展を遂げるだろうとの、試算が、経済部から上がってきている。

 

 

グリニアは“旧式の武器”をクワ・トイネに輸出しただけではなく、強固な要塞線を国境に沿って建造した。

  

 いくつかの小さな町や、特に突出している町、国境に近すぎる町(例.ギム)は要塞のために必要な敷地面積の関係上囲い込むことは出来なかったが、それよりも内側の町は今までの努力は何だったのかと、自問自答したくなるほどに強固に守られていた。

 

 

コーパスもまた彼らの技術をクイラ王国に輸出し、同じくコーパスにとっては旧式の武器を輸出した。

 

 彼らの高度なロボット技術によってさまざまなロボットが開発され、クイラの貴重な労働力となり、日夜問わずに働き続け、クイラに富を今も献上し続けている。

 

かと言って日本以外の国家(とはいえ、それ以外の転移国家はグリニア=コーパス連合だけだが)はよく分かっていないので政治部会での話し合いにおいての話題はもっぱら日本にかかわるものだった。

 

 

「すごいものだな、日本という国は・・・。明らかに3大文明圏を超えている。もしかしたら、我が国も生活水準において、3大文明圏を超えるやもしれぬぞ」

 

 

 

 クワ・トイネ公国首相カナタは、秘書に語りかける。

 

 まだ見ぬ国の劇的発展を、彼は見据えていた。

 

 

 

「はっ。しかし、彼らが平和主義で助かりました。法律で軍隊の所持が禁止され、必要最低限度の自衛組織しかもっていないとの事、彼らの技術で覇を唱えられたらと思うと、ぞっとします」

 

 

 

「そうだな、しかし問題はグリニア=コーパス連合と名乗る奴らだ。彼らはかつて“太陽系”という世界を支配せんとする超巨大帝国だったらしいじゃないか。」

 

「はい。しかし彼らはわが軍に多量の武器を輸出し、あの強固な…なんというんでしたっけ?“タスク要塞線”でしたっけ?…まあ、いいでしょう。それを建築し、我々を守ると約束してくれたでしょう。」

 

「それなら…いいのだが……」

 

 

 

 カナタは、夕日を見ながら、そう嘆いた。

 

 

 

 

______________________________________

 

 

 ロウリア王国 王都 ジン・ハーク ハーク城 御前会議

 

月の綺麗な夜、秋になり、少し涼しくなったこの日の夕方、城では松明が集れ、薄暗い部屋の中、王の御前でこの国の行く末を決める会議が行われていた。

 

 

 

 「ロウリア王、準備はすべて整いました」

 

 

 

 白銀の鎧に身を包み、筋肉が鎧の上からでも確認出来るほどのマッチョで黒髭を生やした30代くらいの男が王に跪き、報告する。

 

 彼の名は、将軍、パタジン

 

 

 

 「2国を同時に敵に回して、勝てるか?」

 

 

 

 威厳を持ち、34代ロウリア王国、大王、ハーク・ロウリア34世はその男に尋ねる。

 

 

 

 「一国は、農民の集まりであり、もう一国は不毛の地に住まう者、どちらも亜人比率が多い国などに、負けることはありませぬ。」

 

 

 

 「宰相よ、1ヶ月ほど前接触してきた日本という国の情報はあるか」

(注※グリニア=コーパス連合は自分たちのことを必死に隠蔽しているので彼らは連合のことを知りません。)

 

 

 

  日本は、ロウリア王国にも接触してきたが、事前にクワ・トイネ公国と、クイラ王国と国交を結んでいたため、敵性勢力と判断され、ロウリアには門前払いを受けていた。

 

 

 

 「ロデニウス大陸のクワ・トイネ公国から北東に約1000kmの所にある、新興国家です。1000kmも離れていることから、軍事的に影響があるとは考えられません。

 

また、奴らは我が部隊のワイバーンを見て、初めて見たと驚いていました。竜騎士の存在しない蛮族の国と思われます。情報はあまりありませんが」

 

 

 

 ワイバーンの無い軍隊は、ワイバーンの火力支援が受けられない分、弱い。

 

 空爆だけで、騎士団は壊滅しないが、常に火炎弾の驚異にさらされ続けるため、精神力が持たない。

 

 

 

 「そうか・・・。しかし、ついにこのロデニウス大陸が統一され、忌々しい亜人どもが、根絶やしにされると思うと、私は嬉しいぞ」

 

 

 

 「大王様、統一の暁には、あの約束も、お忘れ無く、 クックック」

 

 

 

 真っ黒のローブをかぶった男が王に向かってささやく。気持ちの悪い声だ。

 

 

 

 「解っておるわ!!」

 

 

 

 王は、怒気をはらんだ声で、言い返す。

 

 

 

(ちっ、3大文明圏外の蛮地と思ってバカにしおって。ロデニウスを統一したら、フィルアデス大陸にも攻め込んでやるわ)

 

 

 

「将軍、今回の概要を説明せよ」

 

 

 

「はっ!説明致します。今回の作戦用総兵力は50万人、本作戦では、クワ・トイネ公国に差し向ける兵力は、40万、残りは本土防衛用兵力となります。

 

  クワ・トイネについては、国境から近い人口10万人の都市、ギムを強襲制圧します。なお、兵站については、あの国は、どこもかしこも畑であり、家畜でさえ旨い飯をたべております。現地調達いたします。

 

  ギム制圧後、その東方250kmの位置にある首都クワ・トイネを一気に物量をもって制圧します。

 

  彼らは、我が国のような、町ごと壁で覆うといった城壁を持ちません。

 

  せいぜい町の中に建てられた城程度です。籠城されたとしても、包囲するだけで干上がります。

 

  しかしその後方に存在する壁は脅威です。ギムは囲まれていないので大丈夫でしょう。

 

  かれらの航空兵力は、我が方のワイバーンで数的にも十分対応可能です。

 

  それと平行して、海からは、艦船4400隻の大艦隊にて、北方向を迂回、マイハーク北岸に上陸し、経済都市を制圧します。

 

  なお、食料を完全に輸入に頼っているクイラ王国は、クワ・トイネからの輸出を止めるだけで、干上がります。」

 

 

 

「次に、クワ・トイネの兵力ですが、彼らは全部で5万人程度しか兵力がありません。即応兵力は1万にも満たないと考えられます。今回準備してきた我が方の兵力を一気にぶつけると、小賢しい作戦も、圧倒的物量の前では意味をなしません。

 

6年間の準備が実を結ぶことでしょう。」

 

 

 

「そうか・・・ふっふっふ・はっはっはっはあーっはっはっは!!!今宵は我が人生で一番良い日だ!!世は、クワ・トイネ、クイラに対する戦争を許可する!!!」

 

 

 

 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 王城は喧噪に包まれた。

 

 

 

クワトイネ公国日本大使館

 

 

 

 「と、言うわけでロウリア王国と戦闘が始まったら、貴国に対して約束された量の食料品の輸出が出来ません」

 

 

 

クワトイネとロウリア国境にて、ロウリア王国の兵力が集結しており、戦闘が近いと判断したクワトイネ側は、日本大使館に説明に来ていた。グリニア=コーパス連合はホログラム通信でこの会談に参加していた。

 

 

 

外務省キャリアの田中は、その言葉を聞いて絶句する。

 

 突然の国ごとの転移、地球から遮断され、外務省に科せられた使命、それは国民を飢えさせないことだった。

 

 大穀倉地帯で、肥沃な土地を持つクワトイネ公国と友好関係を結べ、かつ日本国民に必要量の食料が確保出来たのは、まさに奇跡であった。

 

 さらに、日本の幸運は続く、クイラ王国、日本で必要な資源はほぼこの一国でまかなえるほどの埋蔵量が確認されている。資源の面でも、日本にとっては奇跡的に転移後いきなり解決できた。

 

 まあ、採掘が始まるまでは、国内の備蓄でなんとかやっていかなければならないが、それでも国民生活に支障の無い程度には出来る。

 

 それが、ここに来ていきなり、絶対に守らなければならない食料の輸入が途絶える可能性がある事を知らされる。

 

 もしも、クワトイネからの輸入が途絶えたら、国民に1年以内で1000万人以上の餓死者が出る。

 

 

 

 「なんとかなりませんか?我が国は、輸入が途絶えると、非常に困るのです」

 

 

 

 「我が国としても、心苦しいのですが、ロウリア王国は、強大な軍事力を持っています。彼らは、国境付近で、どんどん兵を増員している模様です。数が多すぎるため、戦闘が始まったら、都市を何個か放棄しなければならない事態も考えられます。その状況下で、流通を確保し続ける事は、非常に困難なのです」

 

 

 

 「援軍があると助かるのですが・・・。」

 

 

 

 「日本国は、武力による紛争の放棄が憲法にあります。軍事的支援は・・・。」

 

 

 

 「では、残念ですが、食料輸出は困難になる可能性が高い、あなた方の国内問題に口を出すつもりはありません」

 

 

 

『我々は軍を派遣しよう。』

 

 「本当ですか!将軍殿!」

 

『ああそうだ。我々グリニア=コーパス連合所属、グリニアは今回の戦争に介入することをここに宣言する』

 

《コーパスは戦闘に参加しませんが、できうる限りの支援を行うことを、ここに宣言しましょう。》

 

 「ありがたい!それでは、『部隊は既に移動している。一日後には到着する』」

 

 『それで?あなた方はどうしますか?ここでダンゴ虫のように丸まり、外界に怯えて、震えながら待っていますか?そうだ、兄弟。もっと言え!

  

 

 将軍は冷たい、まるで虫を見るような目で田中を見下ろした。

 

 「ふざけるな!我々、我々もこの戦争に参加する!……あっ。」

 

 「おお!ありがたい!それではよろしくお願いしたい!」

 

 

 ここで宣言してしまったからにはもうひき戻せない。憲法を守って1000万人の餓死者を出すか、憲法を超拡大解釈して、国民及びクワトイネ公国を危機から救うのか。

 

 日本大使館への、食料輸出に関する勧告後、3週間というスピードで、日本国は、戦後初の海外派兵を決定することになる。

 

 

 

中央暦1639年4月11日午前―――ロウリア・クワトイネ国境付近

 

ロウリア王国東方討伐軍 本陣

 

 クワトイネ公国外務部から、何度も何度も国境から兵を引くよう魔法通信にて連絡があった。

 

 すべてを無視する。

 

 もう戦争することは、決定しているのだ。

 

 

 

 「明日、ギムを落とすぞ」

 

 

 

 Bクラス将軍パンドールは、ギムに攻め込む先遣隊約3万の指揮官の任を与えられていた。歩兵2万、重装歩兵5千、騎兵2千、特化兵(攻城兵器や、投射機等、特殊任務に特化した兵)1500、遊撃兵1000、魔獣使い250、魔導師100、そして、竜騎兵150である。

 

 数の上では、歩兵が多いが、竜騎兵は1部隊(10騎)いれば、1万の歩兵を足止め出来る空の覇者である。それが150騎もいる。

 

 パンドールは、満面の笑みを浮かべ、部隊を見つめていた。

 

 ワイバーンは高価な兵器である。ロウリア王国の国力であれば、本来国全てをかき集めても、200騎そろえるのがやっとである。

 

 しかし、今回は、対クワトイネ公国戦に、500騎のワイバーンが参加している。

 

噂では、第三文明圏、フィルアデス大陸の列強国、パーパルディア皇国から軍事物資の支援があったとされている。

 

実際はなのか、不明であるが・・・。

 

いずれにせよ、先遣隊に150騎のワイバーン、この明らかに過剰な戦力に、パンドールは、満足だった。

 

 

 

「ギムでの戦利品はいかがしましょうか?」

 

 

 

副将のアデムが話しかける。彼は、冷酷な騎士であり、ロウリア王国が、領地拡大のために、他の小国を統合した時代、占領地での残虐性は、語るに耐えない。

 

 

 

「副将アデムよ、お前に任せる。」

 

 

 

「了解いたしました。」

 

 

 

 アデムは、将軍に一礼すると、後ろを振り返り、すぐさま部下に命じる。

 

 

 

「ギムでは、略奪を咎めない、好きにしていい。女は嬲ってもいいが、使い終わったらすべて処分するように。一人も生きて町を出すな。全軍に知らせよ」

 

 

 

「はっ!!!」

 

 

 

 アデムの部下は、すぐさま天幕を出ようとする。

 

 

 

「いや、待て!!!」

 

 

 

 アデムに呼び止められる。

 

 

 

「やはり、嬲ってもいいが、100人ばかり、生かして解き放て、恐怖を伝染させるのだ。それと・・・、敵騎士団の家族がギムにいた場合は、なるべく残虐に処分すること」

 

 

 

 恐怖の命令、このアデムの心は人間ではない。そう思いながら、部下は、天幕を飛び出し、命令を忠実に伝えた。




ぼかしの部分はヴェイ ヘク評議員の叫びです。

次回!グリニアによる超大規模漁業(震え声)!
  
  
   お楽しみに!

(ギムは途中まで原作通りに進行します。ご了承ください。)


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ギム動乱~異物を添えて〜

すいません、漁業は次回に持ち越しです(汗
これは時系列を間違えてしまった自分が悪いです。
もう一度時系列について勉強し直してきます。




許して(涙)


クワトイネ公国、西部、国境から20kmの町、ギム

 

 中央歴1639年4月11日午後―――――――――――

 

 クワトイネ公国、西部方面騎士団、及び西部方面、第一飛龍隊、第二飛龍隊

 

 西部方面騎士団団長モイジは、焦燥感にかられていた。

 

 西部方面隊の兵力、歩兵2500、弓兵200、重装歩兵500、騎兵200、軽騎兵100、飛龍24騎、魔導師30人

 

 準有事体制であり、クワトイネの総兵力から考えると、かなりの兵力、しかし、国境沿いに張り付いている敵兵力はこちらの兵力を遥かに凌駕する。

 

 それに加え、こちらからの通信の一切を、ロウリア王国側は、無視しつづけている。

 

 すでに、市民の一部は、ギムから疎開を開始している。

 

 クワトイネ公国政府も、市民に対し、疎開を励行していた。

 

 

 

「ロウリアからの通信はないか?」

 

 

 

 モイジは魔力通信士に尋ねる。

 

 

 

「こちらからの通信は、確かに届いているはずですが、現在のところ、返信はありません。こちらからの通信は無視し続けています。」

 

 

 

 多少の兵力差なら、作戦で、負けない戦いはできる。しかし、今回は圧倒的すぎる差がある。いったいどうすれば良い?

 

 

 

「司令部からの、増援要請の回答はどうなっている?」

 

 

 

「司令部には、再三に渡り、要請していますが、「現在非常召集中」とのみ回答が着ており、具体的な回答はありません」

 

 

 

「ちっっっ!!のんびりしている暇は無いというのに!!!さっさと今ある兵力だけでも増援をもらわないと、ギムを放棄することになるぞ!!!畜生!!」

 

 

 

 それぞれの思いを乗せ、無常にも時は過ぎていった。

 

 

 

中央歴1639年4月12日早朝―――――――――

 

国境から20kmの町、ギム

 

 

 

 突如として、ギムの西側国境から、赤い煙が上がる。と、同時に通信用魔法から、緊迫した通信が入る。

 

 

 

「ロウリアのワイバーン多数がギム方向へ侵攻、同時に歩兵・・・数万が国境を越え、侵攻を開始した。繰り返す、はっ!!!!!!!!逃げろーーーーーーー!!ぐあぁぁぁ」

 

 

 

 魔法通信が突如途絶える。

 

 赤いのろし、ロウリアがクワトイネに侵攻した合図、それを目撃した西部方面騎士団団長モイジは吼えた。

 

 

 

「第一飛龍隊及び第二飛龍隊は全騎上がり、敵ワイバーンにあたれ!!軽騎兵は、右側側面から、かく乱しろ!!騎兵200は遊撃とする、指示あるまで待機!!最前列に重装歩兵、その後に歩兵を配置、隊列を乱すな。弓兵は、その後ろにつけ、最大射程で支援しろ!

 

 魔道士は、攻撃しなくて良い、全員で、風向きをこちらを風上としろ。」

 

 

 

 飛龍が舞い上がる。全力出撃の24騎、高度を上げる。隊を2隊に分け、1隊を水平飛行、2隊目に上昇限度まで高度を上げさせる。

 

 

 

 やがて、ロウリア王国の方向の空に、黒い点が大量に現れる。その量に、クワトイネの飛龍部隊は、驚愕する。

 

 

 

 ロウリア王国東方討伐軍先遣隊 飛龍第一次攻撃隊 その数75騎

 

 

 

 クワトイネの飛龍部隊は、勇猛果敢に、ロウリア側の飛龍へ突っ込んでいった。

 

 

 

 ロウリア王国の飛龍部隊75騎は、クワトイネの飛龍を視界に捕らえた。

 

 

 

 「火炎弾の空間制圧射撃を実施する。」

 

 

 

 飛龍を指揮する竜騎士団長アルデバラン、彼は一気にケリをつけるつもりだった。

 

75騎のワイバーンが、面のように、並び、口を開ける。

 

 口の中には、徐々に火球が形成されていく。

 

 

 

「発射5秒前、4,3,2,1、発射!!」

 

 

 

75騎のワイバーンの火炎弾一斉射撃、火炎弾の回転方向により、面の内側の火球は推進力を経て射程距離が面外側よりも伸びる。

 

この特性を使い、クワトイネの龍が射撃を開始する前に、一斉射撃を実施。

 

クワトイネの飛龍12騎に直撃、落ちていく。

 

 

 

「隊を2つに分けていたか・・。上空に警戒せよ」

 

 

 

 アルデバランが指揮をした40秒後、太陽を背に、上空から12騎のワイバーンが1列になって突っ込んでくる。彼らは、すれ違いざまに、火炎弾を発射した。

 

 3騎の飛龍がこれに直撃し、落ちていく。

 

 

 

 彼らはすぐに乱戦となった。ロウリア側は、5騎1騎にあたる。バタバタと、クワトイネの飛龍が落ちて行き、数分ほどで、クワトイネ公国飛龍部隊は全滅した。

 

 

 

「地上部隊を支援する。全騎、支援射撃を実施セヨ」

 

 

 

ワイバーンたちは、クワトイネの地上軍に襲い掛かった。

 

 

 

「ち・・・ちくしょう!!!敵の飛龍は、量も多い上に、技量も高い!!」

 

 

 

クワトイネ公国西部方面騎士団団長モイジは、壁に拳を打ち付ける。

 

 

 

「まさかこんなに早く竜騎士団が全滅するとは」

 

 

 

 敵の飛龍は、攻撃目標を地上軍に絞り、空から火炎弾を打ち下ろしていた。

 

被害が拡大する。

 

 こちらからの反撃方法は、ただ一つ、風の魔法を付与した大弓を打ち上げるのみ。

 

しかし、基本的に魔力を滞留させる技術は難しく、数がそろえられない。

 

 せいぜい10発程度であり、しかも無誘導である。

 

 対空の大弓は、空しく空を切る。

 

 この世界の対空攻撃は、ほとんど当たらない。気持ち程度である。

 

(三大文明圏には、もう少し効果的な兵器があるらしいが・・・)

 

 

 

 大量のワイバーンの対地支援により、クワトイネの騎士団は大打撃を受けていた。

 

 すでに戦力の3分の1が失われている。そこへ、ロウリア先遣隊歩兵、重装歩兵合わせて2万5千がなだれ込む。

 

 30分で、クワトイネ騎士団は壊滅、動く者はいなくなった。

 

 

 

西部方面騎士団団長モイジは、後ろに縄をかけられ、捕虜となっていた。ギムは、すでにロウリア先遣隊により包囲されている。

 

 

 

「あのモイジも、こうなると形無しだな、弱い。魔獣を投入するまでもなかった」

 

 

 

 ロウリア先遣隊副将アデムは、モイジを見下し、勝ち誇っている。

 

 

 

「そういえば、お前の妻と娘はギムにいたな」

 

 

 

「何をする気だ!」

 

 

 

「おい!」

 

 

 

 アデムは部下に命じる。

 

 

 

「モイジの妻と娘は、ここにつれてこい。こいつの前で、散々嬲った後に、魔獣に生きたまま食わせろ」

 

 

 

「きさまぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 モイジは飛び掛ろうとするが、すぐに取り押さえられる。

 

 

 

「大丈夫だ。全て見届けた後で、お前も魔獣の餌にしてやるから」

 

 

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」

 

 

『グリニア海兵隊!両手を上げて投降しろ!!』

 

 

「なんだ?あいつらは?」

 

『撃て!将軍閣下から射撃許可は下りている!』

 

ぱぱぱぱぱっ

 

 

 グリニア海兵隊、エリートランサー(上位兵士)の持つHIND(五点バースト銃)から放たれた死をもたらす恐るべき鉄の物質が、吸い込まれるように、先遣隊の体の中に消えていった。

 

「なに!なんだお前らは!」

 

『全員殺せ!許可は下りている!久々の祭りだ!』

 

 

 

 アデムの恐怖の命令は、その日のうちに実行され、町のあらゆる所で、強盗殺人、強姦殺人、略奪、暴行が行われ、モイジの一族も、悲惨な運命をたどる。

 

 

かのように思われた。

 

 

間一髪のところでグリニア海兵隊が到着した。

 

全ての生存者は救出され、モイジの一族もなんとか九死に一生を得ることができた。

その後全グリニア海兵隊はギム先遣隊を全滅させたあと無事に脱出したが、結局後続部隊によってギムは占拠されてしまった。

 

 

 この行為は、日本にも伝わり、ジェノサイドからクワトイネ公国の民を救うという大義名分を与える事になる。

 

 

 

中央歴1639年4月22日 クワトイネ公国 政治部会

 

 西の町、ギムはロウリア王国に落ちた。しかも、町のほとんどの民が虐殺されるといった大惨事、政治部会は重苦しい雰囲気に包まれた。

 

 

 

「現状を報告せよ」

 

 

 

首相カナタの命令に、冷や汗をかいた軍務卿が答える。

 

 

 

「はっ!現在ギム以西は、ロウリア王国の勢力圏となっております。奴らの総兵力は、先遣隊だけで3万を超えましたがグリニア海兵隊により全滅、スパイの情報によると、作戦兵力は50万に達する模様です。また、第三文明圏、フィルアデス大陸の列強国、パーパルディア皇国が、彼らに軍事支援をしているとの未確認情報もあり、現に今回500騎のワイバーンを投入してきております。また、4000隻以上の艦隊が港を出航した模様です。」

 

 

 

 絶句―――

 

 

 

会議の誰もが息を飲み、その情報を頭の中で繰り返す。50万という数値、これは、クワトイネの予備兵力も入れた総兵力の10倍、しかも、ワイバーンが500騎もいる。

 

 さらに、何処にいったか分からない4000隻以上の艦隊。彼らは本気で国を取りに来ている。そして、自分たちにそれを防ぐ力が無い。

 

 絶望・・・・

 

 会場は、静粛に包まれた。

 

 その時、外務卿が手を挙げる。

 

 

 

「首相、よろしいでしょうか?」

 

 

 

「何だ?」

 

 

 

「実は、政治部会が始まる寸前に、日本大使館から連絡がありまして・・・。」

 

 

 

「内容は?」

 

 

 

「はい、全文を読み上げます。(日本国政府は、クワトイネの都市ギムで発生した武装勢力による虐殺に関し、とても見過ごす事は出来ない。クワトイネ政府に、徹底した武装勢力の取り締まりを要望する。なお、クワトイネ政府からの要望があれば、日本国政府は、クワトイネに対し、武装勢力排除のための自衛隊を派遣する用意がある)との事です。」

 

 

 

「??援軍を送ってくれると言うことか?」

 

 

 

「遠まわしではありますが、こちらから要望すれば、援軍を送るといった意味かと思います。彼らは、憲法で、武力による紛争の解決を禁止しているので、かなり無理やりでありますが、ロウリア王国を国とは認めず、武装勢力と表記したのかと思われます。また、クイラ王国と同じく、食料自給率が低いようなので、わが国からの輸出が途絶えると困るようです」

 

 

 

 会場がざわつく。

 

絶望の淵を、静かに朝日が上ろうとしていた。

 

 

 

「よし!!すぐに日本に武装勢力排除のための応援を要請しろ!援軍の食料はこちらで準備するとも伝えろ。また、領土、領空、領海での行き来を、武装勢力排除までの間、自由に往来を認めるとも伝えるように、そして軍務卿!」

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

「全騎士団及び飛龍部隊に、日本に協力するよう伝えろ」

 

 

 

「了解しました!」

 

 

 

 

____________________________________________________________________________

 

 

グリニア=コーパス連合

グリニア軍旗艦“シスターズ”

勢力:グリニア

 

 

 

『兄弟!観測衛星からの報告によると4000を超える大艦隊が我らの友人に近づいているようだ! 我輩の艦隊に出撃させてくれ!自分の力を奴らに見せしめたい!フォーモリア艦隊出撃の許可をくれ!』

 

 

『わかった。兄弟。 ん゛ん゛っ!評議員vay hek!貴公のフォモーリア艦隊の出撃を将軍の名において許可する!存分に我らの力を見せつけてくるがいい!』

 

 

『評議員vay hek、確かに拝命した!護衛に“コンシラー”級フリゲートを持って行っていいか?』

 

『許可する。』

 

 

『ありがたい!それでは、フォモーリア艦隊!出撃する!今!すぐにだ!』

 




次こそグリニア海軍による大規模漁業!
果たしてシャー君は助かるのか!
次回!シャークン、死す!(死にます)



お楽しみに!


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海戦〜死を添えて〜

up主は学生ですのでここから先はある程度更新速度が落ちます。ご了承ください。


中央歴1639年4月25日 マイハーク港

 

ついに、ロウリア王国が、4000隻以上の大艦隊を出向させたという情報が伝えられ、マイハーク港に基地を置く、クワトイネ公国海軍第2艦隊は艦船を終結させていた。

各艦は、帆をたたみ、港に集結し、きたるべき決戦の準備をしていた。敵船に切り込むための梯子を水夫がチェックする。

打ち込む火矢と、それを漬ける油が続々と船に詰まれる。

 矢を防ぐ木盾が、等間隔に並べられていく。

 大型弩弓バリスタが船横に配備される。

 艦船の数はおよそ50隻。

 

「壮観な風景だな」

 

 提督パンカーレは、海を眺めながら、ささやく。

 

「しかし、敵は4000隻を超える大艦隊、彼らは何人生き残る事ができるだろうか」

 

 側近に本音を漏らす。圧倒的な物量の前にどうしようもない気持ちがこみ上げる。

 

「提督、海軍本部から、魔伝が届いています」

 

 側近であり、若き幹部、ブルーアイが報告する。

 

「読め」

 

「はっ!本日夕刻、日本国の護衛艦隊8隻が、グリニア軍から“フォーモリア(FORMORIA)船2隻とその護衛4隻が援軍として、マイハーク沖合いに到着する。彼らは、我が軍より先にロウリア艦隊に攻撃を行うため、観戦武官1名を彼らの旗艦に搭乗させるように指令する」

 

・・・との事です。

 

「何!?たったの8隻だと!!??800隻か80隻の間違いではないのか?」

 

「間違いではありません」

 

「グリニア軍に関してはたった6隻!!しかもその内4隻は戦闘に参加しないだと!!!!??」

 

「やる気はあるのか、彼らは・・・。しかも観戦武官だと?合計14隻しか来ないなら、観戦武官に死ねと言っているようなものではないか!!明らかに死地と解っていて、部下を送るようなまねは出来ないぞ!」

 

 沈黙が流れる。

 

「・・・私が行きます」

 

 ブルーアイが発言する。

 

「しかし・・・。」

 

「私は剣術ではNo1です。一番生存率が高いのは私です。それに、あの鉄龍を飛ばして来た日本の事です。もしかしたら勝算があるのかもしれません」

 

「すまない・・・。たのんだ」

 

「はっっっ!」

 

その日の夕刻

 

 ブルーアイは、目を疑っていた。

 その船は、彼の常識からすれば、とてつもなく大きかった。日本との接触の際に、第一海軍が、200mクラスの船を臨検したという話を聞いていたが、自分たちの仕事の成果を誇張するために、嘘をついていると思っていた。

 しかし、今彼が見ている船たちは、遠くの沖合いに停泊しているにも関わらず、とてつもなく大きく、そして帆が付いていない。

 やがて、一際大きな船から、竹とんぼのような金属で出来た物が飛んできた。

 

 事前に連絡は受けていたが、どうやら乗り物らしい。それが近づくにつれ、大きな風を受ける。

 理解不能な乗り物に乗り、沖合いへ移動した。

 フワフワのシートに座り、ほとんど揺れずに「それ」は進んだ。ワイバーンよりも遅いが、遥かに快適で、人が大量に運べる。

 やがて、母船が見えてくる。

 その大きさに驚愕する。

 

(いったいなんだ!この大きさは。そうか、これだけ大きければ、人員もたくさん搭載できる。切り込みの際は、中から大勢の人が出てきて一気に一隻づつ制圧していくのだろうな。これなら、一回の戦闘に投入できる人数が多いから、1隻あたりの戦力は大きいだろう)

 彼は、自分の理解の範疇で、ヘリコプター搭載護衛艦を理解しようとしていた。

 ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」

 全長248メートル

 基準排水量1万9500トン

 建造費1140億円

 ヘリコプター5機が同時発着出来る、海上自衛隊最大の護衛艦である。

 やがて、騎馬戦が出来そうなほど広い船の上に降り立つ。

これは・・・。鉄で出来ているのか?どうやって海に浮いている?

疑問は尽きない。彼は、自衛官に言われるがまま、艦内に入っていった。

・・・中が・・・明るい。

 何か燃やしているのか?それとも、光の魔法?これは魔導船か?

 

 彼はやがて艦長と出会う。

 

「艦長の山本です」

 

「クワトイネ公国第二海軍観戦武官のブルーアイです。このたびは、援軍感謝いたします」

 

「さっそくですが、我々は、武装勢力の船の位置をすでに把握しており、ここより西側500kmの位置に彼らはおります。船足は、5ノット程度と非常に遅くはありますが、こちらに向かってきております。我々は明日の朝出航し、武装勢力に引き返すように警告を発し、従わなければすべて排除する予定ですので、明日までは、ゆっくりとされてください。」

 

 

「なお先ほどグリニアからの通信で『補給中ニツキ少々遅レル』とのことです。こうなっては彼ら無しで作戦を進行することも考えなければなりません。」

 

 ブルーアイは驚く。彼らは、自分たちだけで、グリニアの助けも、クワトイネ海軍の協力も得ずに、4400隻の大艦隊に挑むつもりなのだ。

 確かに艦は大きく、切り込み用水夫を大人数を収容できるだろう。しかし、たったの8隻で、4400隻に挑んでいくのは、やはり自殺行為を思われた。

 また、バリスタや、火矢を防ぐ木盾が無いのが、不安に思われた。

 

 

翌日早朝―――――――――――

 

 護衛艦隊は出航した。

 

 ブルーアイは驚愕する。

 

(いったい何回驚愕すればいいんだ、驚愕のしっぱなしだ)

 

 速い!我が軍の帆船最大速力を遥かに凌駕している。そして・・・他の艦との距離が遠すぎる。密集する必要はないのか?

 艦隊は約20ノットで西へ向かう。やがて、水平線の向こう側に、ロウリア王国軍が、姿を現した。

 

 

 ロウリア王国東方討伐海軍 海将 シャークン

 

「いい景色だ。美しい」

 

 大海原を美しい帆船が風をいっぱいに受け、進む。その数4400隻、大量の水夫と、揚陸軍を乗せ、彼らはクワトイネ公国経済都市、マイハークに向かっていた。

 見渡す限り船ばかりである。

 

 海が見えない。そう表現したほうが正しいのかもしれない。

 

 6年をかけた準備期間、パーパルディア皇国からの軍事援助を経て、ようやく完成した大艦隊。これだけの大艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸には無い。

 いや、もしかしたら、パーパルディア皇国でさえ制圧できそうな気がする。

 

 野心が燃える

 

いや、パーパルディア皇国には、砲艦という船ごと破壊可能な兵器があるらしいな・・・。

 

 彼は、一瞬出てきた野心の炎を理性で打ち消す。第3文明圏の列強国に挑むのは、やはり危険が大きい。

 

 彼は東の海を見据えた・・・・ん?

 

 何かがこちらに飛んでくる。

 

 まさか、飛龍か?・・・いや、違う。何だ!あれは!?

 

 虫のような形をした無機質な物体が、2つ、バタバタバタ、と音をたて、こちらに飛んでくる。

 

 見たことの無い物体が、飛んでくる様は、異様な光景であり、わずかに恐怖の心が芽生える。

 

「こちらは日本国海上自衛隊です。あなた方は、クワトイネの町ギムにて、虐殺を行いました。これ以上の虐殺を認めるわけにはいきません。直ちに引き返しなさい。繰り返すーーー」

 

『我らはグリニア軍である!これ以上先への立ち入りを禁止する!直ちに引き返せ!繰り返す。直ちに引き返せ!さもなければ、恐ろしい目にあうことになるだろう!』

 

 

 飛行物体の中には、人が乗って話している。

 

やがて、「それ」に向かって、弓矢が射られる。「それ」は、しばらく上空で旋回し、東の空へ立ち去っていった。

 

 

 

 

しばらくすると、海の向こうに1つ小島が見えてきた。

島が動いている・・・・。まさか、船か!?

 

 小島と思われた船は、すさまじい速度で艦隊最前列の帆船の横に回りこみ、同船と平行に走り始めた。その距離300m

 

「直ちに転回して引き返せ!さもなくば、貴船に対し、発砲する!

直ちに転回して引き返せ!さもなくば、貴船に対し、発砲する!!!」

 

 いくら船が大きいとはいえ、こちらは4400隻、あちらは見える範囲で1隻、海将 シャークン

は、攻撃を命じた。

 帆船は、右に旋回し、護衛艦との距離を詰める。

 距離が200mを切ったところで、船から一斉に、火矢が、護衛艦を襲う。

 バリスタの射程距離は100m前後であったので、投射されなかった。

 全く影響が無かったが、護衛艦は、火矢の有効射程距離から遠ざかる。

 護衛艦は、船団を一瞬で引き離し、約3km距離を置き、旋廻した。

 

「ひゃっはっはっはははあはあぁぁぁぁ、逃げやがった!」

 

 水夫たちが、護衛艦を馬鹿にし、聞こえないが、野次を放つ。

 海将 シャークンはその光景を見て、不安がよぎる。

 

「逃げ出したか、まあ1隻では、いくら大きいとはいえ、どうしようもあるまい。しかし・・・・でかいくせに速いな。風を受けずに、あれほどの速度を出せるとは・・・」

 

「攻撃を受けた。これより敵船団に攻撃する。主砲打ち方始め!」

 

 イージス護衛艦みょうこうの前方に設置された、127mm速射砲が敵船に向かい旋廻する。目の良いシャークンは、みょうこうのわずかな変化に気が付く。

 

「あの棒はなんだ?」

 

 次の瞬間、轟音と共に破壊が吐き出された。

 距離は3km、至近距離射撃

 

 「なんだ?勝手に燃え始めたのか?」

 

 シャークンが疑問に思った瞬間、最前方を走る帆船が突然大爆発を起こす。爆散した木や、船の部品、人間だった物があたりに撒き散らされ、密集隊形にあった見方の船上に、人間のパーツと共に降り注ぐ。

 

「!!なんだ!!あの威力は!それにあの距離から当てやがったのか?」

 

 経験したことの無い威力に、それを見ていた船団全員が驚愕する。

 

「まずい!!・・・しかし、まだここが、ワイバーンの届く距離でよかった。通信士!!ワイバーン部隊に上空支援を要請しろ!!敵主力船団と交戦中とな」

 

 船は、無事だった乗員を乗せたまま、自重に耐え切れなくなり、沈んでいく。

砲弾は、みょうこうに火矢を射掛けた船に直撃し、1発で、その船は爆散、轟沈した。

 

「これで、驚いて引き上げてくれると良いが・・・。」

 

 イージス艦、みょうこう艦長、海原は無用の殺傷は避けたかった。こちらの戦力の一部を見せ、勝てないと理解させ、引き返させる。

 平和ボケと言われても仕方ないが、彼は、帰ってくれることを願っていた。

 現に、隊列は乱れ、船足も警戒して減速していたため、淡い期待を描く。

 

「ふ・・・。あれほどの威力の魔導、そう連射は出来ないようだな・・・。」

 

 ロウリア王国、海将 シャークンは、みょうこうが2発目を撃ってこないため、このように判断していた。

 

「艦隊の速度落とせ、ワイバーンの航空支援と同時に、一気にたたみかけるぞ」

 

ロウリア王国 ワイバーン本陣

 

「ロウリア王国東方討伐海軍より魔伝入りました。敵主力艦隊と思われる船と現在交戦中、敵船は巨大であり、航空支援を要請する」

 

「ほう、敵主力か・・・。よろしい。350騎全騎を差し向けよ」

 

「し・・しかし、先遣隊に150騎ほど分けてあるため、本隊からワイバーンがいなくなりますが・・・。」

 

「聞こえなかったか?全騎だ。敵主力なら、大戦果となろう。戦力の逐次投入はすべきではない」

 

「了解しました」

 

ワイバーンは、次々と、大空に飛び上がった。

 

 

 イージス艦のCICでは、すでに「それ」を捕らえていた。

 

「これは・・・まずいな、中途半端な攻撃は、こちらの命を危うくする」

 

 レーダーに現れた飛行物体は350を超えており、敵は全く諦めていないということを痛感する。

 

「射程距離に入りしだい、全力で迎撃セヨ」

 

 

 突如、3km先の巨大艦から煙が上がる。そして、何かが光の尾を引きながら、ロウリア艦隊上空を通過していく。

 さらに、その巨大艦の後方にあり、なんとか見える範囲にいる船からも、何かが飛び出し、同じ方向を目指し、飛んでいく。

 さらに、後方から、(艦は見えないが)複数の何かがすさまじい速度で飛んでいくのが見える。

 海将 シャークンにいやな予感が過ぎるが、彼の経験上最良の選択を命じる

 

「そろそろ、ワイバーン部隊がこの海域に到達する。全軍突撃セヨ」

 

 ワイバーン部隊には、悲劇が襲いかかった。

 いきなり仲間23騎が爆散し、黒い塊となって海に落ちていく。何が起こったのか、全く解らないまま、十数秒後に12騎、さらに数秒後に18騎、と、次々と落ちていく。

 こんなことは、歴史上1度も無い。

 一通りの嵐が去ると、ワイバーンは数を350騎から200騎まで減らしていた。

 部隊はパニック状態になったが、その時、船団が見える。

 200騎のワイバーンがロウリア艦隊上空に到達する。

 その先に見えるのが、一際大きい灰色の船。

 

 彼らは、その船に襲い掛かろうとしたその時、船から光の矢が立て続けに発射され、直撃したワイバーンが雨のように落ちていく。

 彼らは次から次に数を減らし、みょうこうに近づく。

 なんとか、船まで7kmまで近づいたとき、ワイバーンは残り50騎まで数を減らしていた。

 不意に、艦が大砲を放つ。1発あたり1騎が大砲に絡め取られて落ちていく。

 装填が思ったより遥かに早い。

 さらに、見えないところから光の矢が降り注ぐ。

 

 彼らの距離が3kmまで近づいたとき、砲弾の嵐が止む。

 その頃、数を3騎まで減らしていた。

 

「魔導が切れたか、仲間たちの無念を晴らしてやる!!」

 

 ワイバーン3騎が口を開け、火球を形成する。その時、2騎が突如としてミンチになり、黒い雨を降らす。

!!!!!

 残りの1騎も、すぐに彼らの後を追った。

 CIWS分速3000発(1秒に50発)の20mmバルカンファランクス。

 イージス艦の最終防御システムに彼らはからめとられた。

 

 静粛が大海原を支配した。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 だれもが信じられずに、声が出ない。

 ワイバーンは、1騎落とすだけでも、船にとっては至難の技、それが見ている範囲だけでも200騎以上!!

 200騎以上の数が、精鋭のワイバーンが血の雨を降らせながら落ちていった。

 夢?いや、違う。

 

「我々は、悪魔を相手に戦っているのか?」

 

 海将シャークンは、悲壮な心境でつぶやく。

 なんと表現していいのか解らない。

 しかし、悲劇は自分たちだけを見逃してはくれなかった。

 

 やがて、7隻の灰色の艦が見えてくる。

 その全てに、帆船をなぎ払った魔導兵器が付いている。

 

 7隻は、破壊の嵐を打ち出した。

 後にロデニウス沖大海戦と呼ばれる歴史を動かした海戦が始まろうとしていた。

 

 ロデニウス大陸の歴史において、海戦を決するのは、水夫の切り込みである。

 バリスタ(大型弩弓)等により、ある程度船にダメージを与えたり、火矢で燃え上がることも稀にあるが、船を根本的に破壊できない。

 最後は、切り込みによるため、結局は水夫の数がものをいう。

 それを4400隻そろえている。

 三大文明圏の列強相手ならともかく、辺境で負ける訳がない。

 いや、これほどの数があると、三大文明圏の列強相手でも、ある程度渡り合えると思っていた。

 

 

そして心に撤退の二文字が浮かんだ時それは起こった。

 

『こちらグリニア艦隊。ただいま到着した。遅れて申し訳ない。そこを少しどいて欲しい。さもなければ巻き込んでしまう。』

 

 

空からとても生き物が発したものとは思えない咆哮が響きわたった次の瞬間

 

 

 

空を赤い光が貫き、残存艦隊の三分のニをなぎ払った。

 

「な、何が、何が起こったのだ。一体全体何が起こったんだ?!」

 

「なんだあのバケモン?!上を見ろ!」

 

 

『ウハハハハハ!これこそ我がグリニア軍の真髄、これこそ我が艦隊最強、これこそが!この我輩!評議員ヴェイ ヘク(Councilor vay hek )の船、バロール・フォーモリア(Balor・formoria)だ!』

 

 

耳に入る通信を聞きながら、ブルーアイと山本艦長、いや、敵味方全てが呆然としているのがわかった。

 

一切の戦闘が行われず、全員が空を見上げていた。

 

そこには、まるで悪魔のようなものがあった。タコのような姿をしているが、あれはそんなに生やさしいものではない。あれはまさに、そう、

 

『この船こそが!キサマらに不可避!かつ!不可逆的な死を与えるのだ!この船こそが!キサマらにとっての死神だ!』

 

そう、まさに、赤い、一つ目の死神だ。

 

 

 

ーーーー数十分後。赤い光の雨が降り注いだ海には、もう、熱で焼けてしまった魚しか残っていなかった。




シャークンが死んだ!このひとでなし!
(もちろんヴァルハルも死んだ)

大規模農業まであと3回!!頑張るぞ!


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海戦その後〜混乱を添えて〜

視察は書くかなあ。
まあ、が頑張って見ます。
今回は内政回です。


ロウリア王国 ワイバーン本陣

 

 敵主力艦隊発見の報を受け、その攻撃に飛び立った350騎、悲鳴と共に通信を途絶して3時間が経過した。

 司令部に重苦しい沈黙が流れる。

 何故全く通信が無いのか?そして、時間になっても全く帰ってこない竜騎士達、司令部は焦燥に包まれていた。

 

 「何故帰ってこないのだ?」

 

 問い合わせに答える者はいない。

 

 まさか?全滅!?

 

 ロデニウス大陸の歴史において、ワイバーンは最強の生物である。しかし、貴重な種でもあり、数がなかなかそろえられない。

 ロウリア王国の500騎というのは、ロデニウス征服を前提に、パーパルディア皇国からの援助を得て、6年かけてようやくこの数に達した。

 圧倒的戦力であり、確実にロデニウス大陸を征服できるはずであった。

 そして、敵主力の報を受け、飛び立っていった精鋭350騎圧倒的に歴史に残る大戦果を挙げて帰ってくるはずだった。

 しかし、現実は一騎たりとも帰ってこない。

 考えたくない。考えたくないが、全滅した可能性が高い。

 普通に考えて、敵が大艦隊だったとしても、350騎のワイバーンを全滅できるとは考えられない。

 まさか、敵は伝説の神龍バハムートでも使役しているのだろうか?

 ロウリア王になんと報告したらいいのか、解らない。

 

 「・・・先遣隊へ連絡、竜騎士団のうち、半分を緊急に本陣によこせと伝えろ」

 

 

中央歴1639年4月30日 クワトイネ公国 政治部会 

 

「以上が、ロデニウス大陸沖大海戦の、戦果報告になります」

 

 参考人招致された観戦武官ブルーアイが、政治部会において報告する。

 政治部会の各々の手元には、戦果の記載された印刷物が配布してある。

 付近に沈黙が流れる。

 

「では、なにかね?日本はたったの8隻で、ロウリア艦隊4400隻に挑み、1400隻を海の藻屑とし、撃退。さらに、ワイバーン300騎以上の空襲も、上空支援無しで全て退け、撃墜し、その上、8隻には全く被害が無かったというのかね?

 人的被害ゼロと記載がある。死者は無しか!?

わが国の艦隊は出る幕が無かったと・・・。

そんな御伽噺でも出来すぎた話だ。政治部会で、観戦武官の君がわざわざ嘘をつくとも思えないが、あまりにも現実離れしすぎて、信じられないのだよ」

 

 誰もが同じ思いだった。観戦武官の彼でさえ、信じられない戦果だった。

 

「外務卿!大体、彼らは必要最低限度の戦力しか持ってないのではなかったのか?」

 

 野次が飛ぶ。

 本来は、ロウリアの侵攻を防ぎ、国の危機が少し去ったので、喜ぶべきところが多いのだが、あまりにも1会戦の戦果としてはすさまじすぎるので、政治部会にはある種の恐怖が宿っていた。

 

 首相カナタが発言する。

 

「いずれにせよ、今回の海からの侵攻は防げた。まだ3000隻残っているが、たった8隻にここまでやられては、警戒して海からの再侵攻には時間がかかるだろう。陸のほうはどうなっている?軍務卿?」

 

「現在ロウリア王国は、ギムの周辺陣地の構築を行っております。海からの進撃が失敗に終わったため、ギムの守りを固めてから再度進出してくるものと思われます。我がほうでは、電撃作戦は無くなったと解しております」

 

軍務卿は続ける

 

「日本の動向についてですが、首都クワ・トイネの西側30kmの地点にあるダイタル平野の縦横3kmの貸し出し許可を求めてきております」

 

「ギムと首都の直線上だな・・・。陣地を構築するつもりなのか?」

 

「対武装勢力の陣地を構築したいとの申し入れがありました」

 

「あそこは何も無い平野で、土地も痩せていたな・・・よし!外務卿、日本に対して、陣地構築の許可を与えよ。好きに使えとな。」

 

 政治部会内でわずかな反発もあったが、日本の力無くしてロウリアを撃退できない事は誰もが理解しており、さらにこれほどの力を持つ日本が万が一牙をむいてきたらどうしようもないことも理解していた。

 日本の要請を断る理由は無く、後日、同場所に日本は飛行場を建設することになる。

 

 

 

 

「で…問題は日本なんかじゃない。グリニアだ。なんだねこの報告書は。赤い光?一つ目の死神?日本以上に信じられん。」

 

そう言って政治部会のメンバーの一人が、胡散臭そうに資料を叩いた。

 

「しかし……そうとしか表せないのです。日本の艦隊よりも少ないにもかかわらず、一瞬であの大規模船団を殲滅、木屑一つ残りませんでした。」

 

政治部会内に嫌な空気が流れ込んできた。皆、グリニアの力をよくわかっていなかった。侮っていたというのが本音だった。しかしここまで圧倒的な力を見せつけられてしまっては現実逃避もできない。

 

「そうか………今度、グリニアに視察団を派遣してみよう。」

 

「そうなされた方が良いでしょう。そういえば、日本もグリニアを視察したがっていました。合同で視察を行い、ついでに日本を視察するのは?」

 

「そうしよう。それでは今から準備に取り掛かってくれ」

 

その言葉を最後に、今回の政治部会は解散となった。

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グリニア=コーパス連合

グリニア旗艦“シスターズ”

 

『それで、どうだった?ヘク。ロウリアと日本は?恐れるべきか?それとも否か。見たものを全て報告せよ。』

 

明るく、暖かい黄色みがかった光に照らされている部屋の中で、将軍は評議員に問う。

 

『ロウリアは恐るるに足らず!奴らはまさにゴミのようだ!我がフォーモリア戦艦の攻撃に一網打尽にされる様は、見てみるべきだ!』

 

『そうか、それならば次に行われるだろう陸上戦はレック大尉とサルガス将軍に任せよう。ヘク!少しタスク艦隊をかしてくれ。』

 

『おう!いいとも!』

 

『日本は?日本はどうだった?あそこは必要最低限の武力しか持たないと聞いたが。』

 

『その言葉の通りだ。相手が木造船だったから無双じみたことが出来たが、もしこれが鉄製戦艦、ミサイル搭載型巡洋艦であれば彼らはまず間違いなく負けていただろう!』

 

『そうか……よし、わかった。報告感謝する。』

 

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日本国 防衛省

 

「彼らは…一体なんなんだ。あのように強力なレーザー砲。前世界のアメリカでさえ、研究中であったレーザー砲を所持しているのだ!あんなの反則ではないか!」

 

「しかし大臣、事実として彼らはレーザー砲を所持しています。一瞬で、4400隻の大船団を、チリさえ残さずに消し飛ばせる、レーザー砲を。」

 

「……今ならあの時の総理の気持ちがわかる気がするよ。どうやってこの戦闘の経緯を説明すれば………」

 

「総理のように素直に発表する他無いと思います。幸いここには記録映像があります。これを公開し、ありのまま説明する。それが一番です。正直なところ、それ以外の方法が浮かびません。」

 

「……今度グリニアに視察団を出そう。コーパスにも。」

 

「そうしましょう。それがいい。」

そう呟く秘書の声は、悩める防衛大臣の耳に届かなかった。

 

 

 

 




番外編入らないなら次回!
例のエルフ疎開!
果たしてグリニアはどういう立ち位置なのか!

次回!エルフ追っかけてる奴ら死す!


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疎開するエルフたち〜より短い避難経路を添えて〜

もっとコーパス出したいんじゃあ〜〜〜
でもグリニアも活躍させたいんじゃ〜〜〜
どうしよう。

本編どうぞ


「はぁ、はぁ、はぁ」

 村人たちは、息を切らして東へ向かう。ロウリア侵略軍から逃れるため。

 ギムの東へ約20km、ある名も無き小さなエルフの村、外界からの交流は少なく、ギムの大虐殺の報が来るのが遅れた。

村人全員が疎開を開始したが、付近にクワトイネ軍はすでに無く、ロウリアの勢力圏での生死をかけた疎開活動になった。

 現在の位置、村から東へ10km

 

 長の短い緑の草原が広がる大地、小鳥は歌い、野生の牛は草原で美味しそうに草を食べている。

どこまでも長閑な光景。

進みやすいが、遮蔽物が少なく、見つかりやすいため、風景とは裏腹に、本人達にとっては、生死を賭けた行進、その数200名。

 

 少年は、妹の手を引いて東へ向かっていた。

 少年の母は、病気で早期に他界し、父と3人暮らしだったが、ロウリア侵攻の可能性があったため、父は、予備役招集の軍務に着いた。

 「パルンよ、アーシャを頼んだぞ。お兄ちゃんなんだからな」

 父は笑って、全てを少年に託して家を出て行った。

 

 疎開集団の速度はなかなか速くならない。

 若者が、集団の後方警戒をしている。

軍の召集で残された数少ない若者たち、10名

 

 あと25km、あと25km東へ進めば、クワトイネ公国の前線基地がある。

 

 

しかし彼らは知らなかった。あと200m先に、グリニアの前哨基地があることを。

 

『止まれ!止まれ!』

 

グリニア海兵隊は叫ぶ。もし侵入者なら大変だ。ここから先に通してしまうと、前哨基地司令官である彼の責任となるからだ。

 

 

それでもエルフたちは走る。立ち止まることなく、必死になって走る。

 

「ロウリアの騎馬隊だ!!!」

 

 少年が振り返ると、ロウリアの騎兵隊100人が、約3km後方から、こちらに向かってくる。

 亜人の殲滅をとなえるロウリア王国、その軍隊が向かってくる。

 村人たちは、悲鳴をあげ、東へ走る。しかし、騎兵の足には遥かに及ばす、軍はどんどん近づく。

 

 

 ロウリアのホーク騎士団所属、第15騎馬隊隊長、赤目のジョーヴは、目の前の獲物に舌なめずりをした。

 

「獲物・・・発見」

 

 200名くらいの、女、子供が草原を東へ歩いて向かっていた。3kmくらいはなれているが、遮蔽物が無く、余裕で見通せる。

 ギムではいい思いをした。嬲って良い、好きにしろという上からの命令は最高だった。

 ギムにいた猫耳の亜人を思い出す。

 親が必死に殺さないでくれと、懇願していたが、殺し、その娘を死体の前で散々犯し、いらなくなったら殺した。

 猫耳の亜人は、わめき散らかして泣いていたが、その悲鳴がたまらなかった。

 赤目のジョーヴは獲物を見てどす黒い感情が駆け巡る。

 ロウリア王国東部諸侯団所属の中でも精鋭と言われ、一騎当千を謳われるホーク騎士団、

その中の第15騎馬隊は荒くれ者の集まりと言われている。

 山賊、海賊がロウリア王国拡大期に活躍し、爵位を賜り、貴族となった者達。

隊長、赤目のジョーヴは、その中でも特に残虐な性格だった。彼は気に入らないと、戦場において部下を殺し、戦死扱いする。

 

「さてと・・・狩るか」

 

「おい!あの亜人どもを、皆殺しにするぞ!!獲物だ!突撃!!」

 

「ひゃっはーーー」

 

第15騎馬隊は奇声を発し、エルフの集団に向かって走り出した。

 

 

 少年、パルンは、妹アーシャの手を引いて走った。

 

「大丈夫、お兄ちゃんが必ず守ってやるからな!心配するなよ!」

 

「うん」

 

必死で走る。こわい!こわい!!

 

 

『おい!聞いたか?ロウリア騎兵隊だとさ!』

 

『ああ、聞いたとも!』

 

ランサー(グリニア軍一般兵士)達は話す。

 

『おい!警報を鳴らせ!要塞に連絡しろ!』

 

『ランバート(グリニア固定機銃銃塔)とバリスタ(グリニア狙撃兵)を連れて来い!』

 

『ここで食い止めるぞ!さもないとまた評議員にどやされる!』

 

『ランバートとバリスタを連れて来たぞ!』

 

こうしている間にも、騎兵隊は迫る。

 

『よし、狙え!!』

 

彼我の距離は1km、騎兵隊から避難民まで、600m。

避難民から最寄りのグリニア タスク要塞まで、1.4km。

要塞からの砲撃支援着弾まで、あと5秒。

4秒、

3秒、

2秒、

1秒、

 

 

 

 

着弾、今

 

 

地面に黒い花が咲き誇り、横からは鉛の突風が吹く。

やってきた自衛隊のヘリがすでに避難民を救助したにもかかわらず、海兵隊は撃ち続ける。

 

やっと旧式のGRAKATA(精度が悪く、威力も低いが連射力は抜群、制式ライフルの座を追われたが、セカンダリとして持つ者が多い)から解放され、より強く、より精度の高いKARAS(AK-74のようなライフル)に交換されたランサーの鬱憤をぶつけるようにして、グリニア海兵隊員達は撃つ。

 

 

 

そして数分後、

鋼鉄の雨が止み、鉛玉の突風も止まった今。

グリニア前哨基地の前にあるのは、“騎兵隊”だったミンチだけだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

日本国所属 自衛隊

チヌーク ヘリコプター

勢力:自衛隊

 

「なんだ?あれは、やり過ぎじゃないか?」

機長は呟く。

「避難民が無事ならそれでいいんじゃないすか?だってロウリアって敵なんでしょう?」

それに返すは一般自衛隊員。

「まあ、それもそうだが…」

 

数分後、グリニア タスク要塞からの砲撃が止んだ。

 

「やっとか。おい、着陸するぞ。何かに掴まれ。」

 

「!!!太陽!!!太陽のシンボルが書いてある!!太陽の使いが本当に着てくれたんだ!!」

 

「はいはい。ん?なんか言ってますね?」

 

「そうだな。よし、着陸。お前が迎えに行ってやれ。」

 

「了解。」

 

そう言って一般自衛隊員の彼はドアを開け放った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

バタバタバタバタ

 

 恐怖をそそる音を響かせ、大地を焼いた強大な魔導を放った(であろう)それは、村人の上空を通り過ぎる。

 

パルンはそれを見上げる。

 

 様々な形を持った特殊な箱舟、目を奪われる。

 

「!!!太陽!!!太陽のシンボルが書いてある!!太陽の使いが本当に着てくれたんだ!!」

 

 やがて、村人の前に多数、空の船―――(前と後ろ両方ぐるぐる回る物体が付いている船)が舞い降りる。

 

 中から、緑の服を着た異形の者たちが降り立つ。

 

恐怖―――

 

「お怪我のある方はおられませんか?」

 

 拡声器を使っているため、エルフにとっては人間とは思えないほどの声で、1人の指揮官らしき人物が声を張り上げる。

 

 村人たちは、恐怖で何もいえない。

 恐怖のロウリアの騎馬隊を一瞬で消滅させるほどの強大な魔導を持った者たち。

 怪我をした役にたたない労働力は、強大な魔導を放つ魔獣の生贄にでもされるのであろうか?

 

 パルンが進み出る。

 

「助けてくれてありがとう。おじちゃん達は、太陽の使いですか?」

 

「(?太陽の使い?まあ日本は太陽が国旗だし、日本の組織かを聞いているのかな?まあ子供の言う事だし)うん、まあそうだけど」

 

 どよどよどよ

 

 場がどよめく。

 

「あ、あの強力な魔導を放ったのも?」

 

「(あれはグリニア軍だからなぁ、どうやって説明しよう。

あっ!そうだ!)違うよ、あれをやったのはね、“グリニア”って言う人達なんだ。僕達よりもとても強くて、大きいんだ(?)。だけど“グリニア”が撃ち漏らした奴らをやっつけたものは、そうだよ。」

 

「じゃ、じゃああの醜い奴らは?」

 

『おい、助けてやったのにその言い方はあるか。』

 

「ひっ!」

 

「そうだよ、さっき話した“グリニア”の人達だよ。」

 

 突如、村人たちが、大地にひれ伏す。

 

 救助に来た自衛隊員は、村人全員にひれ伏され、説明にさらに時間を要することになる。

 

一方、グリニア コマンダーは我関せずの態度を貫き通すのであった。




次回!グリニア軍による大規模農業!
果たしてアデムはどうなるか。
次回!ロウリア陸上軍、死す!


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準備〜グリニアを添えて〜

戦闘開始まではほとんど丸写しです。ご了承ください。



許して(涙)


ロデニウス沖大海戦での大敗北は、前線での士気低下を招く懸念から、最前線の兵に対して、その情報は遮蔽された。一部の高級幹部を除いて・・・。

 

 ホーク騎士団の所属するロウリア王国東部諸侯団クワトイネ先遣隊では衝撃が走っていた。

 威力偵察に出たホーク騎士団第15騎馬隊の約100名が、ギムの東方約25km付近で消息を絶った。

 導師によると、ワイバーンほどの魔力は一切探知されていない。

 高出力魔法が発せられた形跡が無いにも関わらず、100名もの騎士達が1人も帰ってこない。

 何かがあったとしても、1人くらいは帰ってきてもよさそうなものである。

 大軍に包囲殲滅された可能性はあるが、騎馬隊という、機動的な部隊が全滅するとは、どう考えてもおかしかった。

 

「何かおかしいとは思わないか?我々は、本当にクワトイネの亜人と戦っているのだろうか、導師ワッシューナよ、どう思う?意見を述べよ」

 

 東部諸侯団を取りまとめるジューンフィルア伯爵が問い糺す。

 

「魔力探知には、一切反応が無く、誰も気がつかなかったので、ワイバーン等の高魔力生物の使用や、ワイバーンの導力火炎弾のような高威力魔法の使用は無かったものと思われます」

 

「では何だと思う?」

 

「まさかとは思うのですが・・。」

 

「何だ!」

 

「最近、導師の間で・・・導師魔信掲示板に記載されていたのですが、あまりにも現実離れしており、荒唐無稽な書き込みなので、信じてはいなかったのですが・・・。」

 

「うむ」

 

「マイハーク攻略部隊が、船団全滅、さらに敵船に向かっていたワイバーン350騎が全滅し、作戦は失敗に終わったと・・・。」

 

!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 その場にいた全員に衝撃が走る。

 

「いや、待て待て、今回の派遣船団とワイバーンは、それだけでクワトイネを征服出来るほどの大部隊だった。仮にその戦力で列強パーパルディア皇国に攻め入ったとしても、彼らの艦隊包囲網を力でこじ開け、上陸させられるだけの量と戦力だ。1会戦の戦力としては、歴史上最大かもしれない。それが負けただと?たかがクワトイネに!?」

 

「実は・・・。ギムの粛清後に、日本とグリニアという国が参戦してきたらしいのですが、日本の操る船は、轟音と共に船を1撃で沈めるほどの魔導を連続して放ち、ワイバーンに対しては、追尾してくる光の槍を使い、光の槍が当たったワイバーンは粉々に吹き飛んだそうです。導師掲示板に、私の同期生が書き込んでいました。しかしグリニア軍についての情報は荒唐無稽であるとしか思えません。野太い咆哮が響き渡った次の瞬間に赤い光の線が空を貫き、一撃で船団のほとんどが、チリも残さずに消し飛んだそうです。」

 

 一同は考え込む。よくある戦場伝説なのか、突拍子も無い話だが、まさか本当なのか。

 

 先遣隊配備のワイバーンが150騎から75騎に減らされたことを疑問に思っていたが、話が事実なら納得できる。

 

「ホーク騎士団といえば、勇猛果敢で全滅した隊の騎士長も戦闘に関してはかなり優秀だ。馬も他の騎士達が使う馬よりはるかに速い。それが簡単に全滅とは・・・。」

 

ロウリア王国東部諸侯団クワトイネ先遣隊の将たちを悩ませる事態があと一つある。本隊からの指令書、指令主は主将名だが、問い合わせは恐怖の副将アデムである。

指令書にはこうある。

 

「城塞都市エジェイの西側3km先まで兵を集めよ。そこで、本隊合流まで待て」

 

 ジューンフィルアは、指令書を読んで、ますます胃が痛くなる。

 城塞都市エジェイ、国境の町ギムや、周辺の村々とは訳が違い、クワトイネ公国がその生存を賭け、来るべき対ロウリア王国戦のために作り出した町である。

 町そのものが要塞であり、城であり、基地である。

 ギムとは防御力の次元がちがう。

 城塞都市エジェイはギムから東に約50kmの場所に位置する。

 しかし!!!だ。先遣隊の現在地、ギムから東へ約5km、威力偵察の部隊が全滅したのは、現在地から東に約20km行った場所である。

 つまり、エジェイへ行くための半分の地点に高速移動のできる騎馬隊を1人も逃がさずに全滅させるほど強力な敵がいる。

 しかし、アデムの指令に逆らったら、自分が死ぬのはもちろんのこと、家族も恐らく惨たらしい死を遂げる事になるだろう。それだけは避けなければならない。

 ロウリア王国東部諸侯団クワトイネ先遣隊約2万名の兵は、東へ兵を進め始めた。

 

 城塞都市エジェイ

 

 城塞都市エジェイには、クワトイネ公国軍西部方面師団約3万人が駐屯しており、クワトイネの主力と言ってよかった。

 内訳は、ワイバーン50騎、騎兵3000人、弓兵7千人、歩兵2万人という大部隊である。

 将軍ノウは今回のロウリアの進攻をこの城塞都市エジェイで跳ね返せると思っていた。

 高さ25メートルにも達する防壁はあらゆる敵の進攻を防ぎ、空からの攻撃に対しても、対空用に訓練された精鋭ワイバーンが50騎もいる。

 まさに鉄壁、まさに完璧、いかなる大軍をもってしても、この都市を陥落させることが出来るとは思えなかった。

 

しかし今となっては無用の長物、ここから40km西にグリニアによってさらに堅牢な要塞がいくつも建設されたからだ。今回の戦闘はその要塞線の外側で行われる。グリニアはよほど自信があるのか、エジェイの住民を要塞の近くまで呼び寄せ、見物させると言って譲らない。

 

 

 「ノウ将軍、日本国陸上自衛隊の方々が来られました。」

 

 政府から協力するよう言われているため協力しているが、彼は正直自国にのり込んで来た日本軍が気に入らなかった。

 日本は我が国の領空を犯し、力を見せ付けた後に接触してきた。信じてはいないが、ロウリアの4400隻の船の進行も、たった8隻でくいとめたという。

 しかし、陸戦は何といっても、数がものをいう。今回、日本が送り込んで来たのは、陸上自衛隊第7師団とかいう、6千名弱の兵力だ。

 奴らはエジェイの東側約5kmのところに星型の基地を作って駐屯している。

 政府が許可を与えたらしいが、国土に他国の軍がいるのは良い気分ではない。

 6千名という数も、伝え聞いている日本の人口1億2千万人という人口からすると、ずいぶんやる気の無い兵力だ。

 いずれにせよ、自分たちがロウリアを退ける事が出来るので、彼らの出番は無い。

 

 コンコン

 

 ドアがノックされる。

 

「どうぞ」

 

 将軍ノウが立ち上がり、彼らを迎える。

 

「失礼します」

 

 一礼し、室内に入る人間が3名

 

「日本国陸上自衛隊、第7師団長の大内田です」

 

 自分の着ている気品のある服とは違い、シンプルな服を着た人物、こやつが今回の日本の派遣軍の将軍というのが、ノウには信じられなかった。

 

「これはこれは、良くおいで下さいました。私はクワトイネ公国西部方面師団将軍ノウといいます。このたびは、援軍ありがとうございます。感謝いたします」

 

 まずは社交辞令から入る

 

「日本の師団長殿、ロウリア軍はギムを落とし、まもなくこちらエジェイへ向かって来るでしょう。しかし、見てお解かりと思うが、あなた方の軍は少な過ぎる。」

 

 ノウは続ける

 

「我が国は侵略され、ロウリアに一矢報いようと国の存亡をかけ、立ち向かおうと思います」

 

「日本の方々は、東側5kmの位置にある、あなた方が作った基地から出ることなく、後方支援をしていただきたい。ロウリアは我々が退けます」

 

 ノウは(邪魔者はひっこんでいろ)という意味を込め、このような発言を行った。相手も国の命令で派遣され、プライドがあることを承知の上で。

 

「解りました。我々は基地から後方支援を行います。ただ、お願いがあるのですが・・。」

 

「なんでしょうか」

 

「敵の位置、戦局を伝える必要があるので、観測要因と機材を50名ほどエジェイに置かせてもらえませんか?」

 

「わかりました」

 

 日本の将は退室した。ノウは思う。5km後方から支援してくれとは、皮肉であり、実質的に5kmも離れていたら、何も出来ない。つまり何もするなという意味である。

彼らにプライドは無いのだろうか?

 

「ノウ将軍、グリニア軍の方々です」

 

そしてノックもせずに入ってくるのは、体を奇妙な鎧に身を包んだ二人組の大男だった。

 

『サルガス ルク 将軍だ。 どうぞ よろしく。』

 

『レック クリル大尉だ。よろしく。』

 

「これはこれは、良くおいで下さいました。私はクワトイネ公国西部方面師団将軍ノウといいます。このたびは、援軍ありがとうございます。感謝いたします」

 

日本の派遣軍の司令官に使った社交事例をもう一度使う。

 

「グリニアの方々には深く感謝しています。しかしあなた方、正気ですか?陸戦なのに、“船”を出すなど、信じられません。」

 

彼は信じられなかった。書類に載っていた彼らの派遣軍の内訳。そこには“ガレオン船 30隻”と書いてあった。その時、ノウは思った。

(もしかして奴ら、とんでもない馬鹿なんじゃ?)

陸戦に船など、言語道断。そもそも陸上で船が動けるわけがない。

 

『いーや、 大丈夫 だ。 貴公らは 後ろで 見ているが 良い。』

 

『そうだ。我々には我々の考えがある。』

 

これ以上はいけない。ノウの勘がそう訴えていた。

 

「そうですか……それではよろしくお願いします。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ロウリア王国東部諸侯団クワトイネ先遣隊約2万の兵は、特に障害を受ける事なく、城塞都市エジェイの西側約5kmの位置まで進軍した。

 あと3km進んだ場所が、指示された場所だが、そこには大きな壁があった。ジューンフィルアはここで野営することにする。

 いやな予感がする。彼らはこの場所で1週間とどまる事を決めた。

 

 ノウはあせっていた。敵兵2万が、要塞から西側5kmの位置に布陣している。

 ロウリアの兵力からすれば明らかに先遣隊であり、こちらから撃って出ると、ロウリア軍本隊が到着する前に、戦力をすり減らしてしまう。

 では、要塞に篭れば良いのだが、問題は敵騎兵が300名ほど城の外で怒声をあげ、去っていく事をくり返している。

 本格的進攻かどうかの判断がつかず、兵が神経をすり減らす。

 ワイバーンを使用しての強襲も考えられたが、ワイバーンは夜飛べない上に、着陸時を敵ワイバーンに狙われたら終わりのため、動かせなかった。

 このままでは、敵本隊が着くころには、兵はヘトヘトになってしまう恐れがあった。

 伝令兵が駆け寄ってくる。

 

「日本軍から連絡が入りました」

 

「読め!」

 

「はっっ!エジェイ西側5km付近に布陣する軍は、ロウリア軍で間違いないか?ロウリアであるなら、支援攻撃を行ってよろしいか?又、攻撃にクワトイネ兵を巻き込んではいけないため、ロウリア軍から半径2km以内にクワトイネ軍はいないか確認したいとの事であります」

 

「基地から出るなと言っているのに・・・。結局は手柄がほしいのだな・・・。まあ良い。日本軍がどんな戦いをするか、高みの見物をするとするか・・・。許可する旨伝えろ!」

 

「はっ!!」

 

 

 晴れ渡る空、その日は雲の少ない良い天気だった。朝は少し肌寒く、空気は乾燥している。空気に埃などの不純物が無いため、遠くの空まで良く見渡せる。

 ジューンフィルアは少し高い丘から2万もの兵を見下し、深呼吸する。

 空気がうまい。

 彼らは士気旺盛だった。交代で300名ほどの騎士が夜間威嚇に向かう。他のものはしっかり眠れる。ギムで奪った食料は美味く、申し分ない。

 敵はエジェイに引きこもって戦うつもりのようだ。密偵の情報によれば、ワイバーンは50騎近くいるらしい。脅威ではあるが、使用してこない。

 このまま本隊の到着まで待てば、ワイバーンによる上空支援を受けられる。圧倒的兵力をもって、エジェイを落とせる。

 彼はそう思っていた。

 東の空に、白い点が現れる。

 何か、空気を叩くような音が聞こえる。

 

 バタバタバタバタ・・・・。

 

「!?何だ?あれは」

 

「新種の龍か?」

 

 例えるならば、変な形をした箱、そしてその箱の上で、何かが超高速でぐるぐる回っていた。

 やがて、軍の上空にそれはやってくる。

 弓の届かない高空、

 その箱から、白い何かが巻かれた。ヒラヒラ舞って落ちるそれは、上質の紙だという事に気がつく。

 ジューンフィルアはその紙を手に取る。

 ロウリア語で書かれたその紙を手に取り、凍りつく・・・。

『2時間以内に荷をまとめ、退却を開始セヨ、さもなくば、貴軍を攻撃する。 日本国陸上自衛隊第7師団長 大内田 和樹』

 

 ついに来たか・・・。噂に聞く日本という国、かつてない敵に対し、ジューンフィルアは武者震いする。

 こちらとて、2万の大軍、少し攻撃されたくらいで崩れるものではない。

 しかし、攻撃をわざわざ教えてくるとは、律儀な国だ。

 ジューンフィルアは隊列を組み、戦闘準備を取るよう指示した。

 

 

 「これ・・・持ってきてたんだ・・・。」

 

 ある隊員がつぶやく。

 その目の先には、一時廃棄されたはずの兵器が見えていた。

 MLRS、12発のロケットを内蔵し、1発あたり644個の子弾をばら撒き、サッカー場6面程度を瞬間的に制圧、非装甲物に対して絶大な効果をもたらす。

 クラスター爆弾の禁止条約に加盟してから姿を消したはずの兵器、日本の異世界の転移により復活していた。

 それが12台西を向いている。さらに、155ミリ自走榴弾砲が多数。展開している敵のほぼ全てを効果範囲に納める。

 

その横には155ミリ自走榴弾砲よりはるかに大きい砲台があった。

 

「あれはなんだろう?」

ある隊員はまた呟く。

 

「ああ、どうやらグリニア軍の砲で、なんつったかな。そうだ!空間制圧砲だ。」

別の隊員が返す。

 

「なんだそれ、」

 

「どうもクラスター弾専用の砲らしい。ま、要は大きなショットガンだな。」

 

「はえー。」

 

そうして隊員間の特に意味のない会話が終わった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 2時間が経過した。

 

「敵に動きはないのか?」

 

「隊列を組み、戦闘態勢を整えつつあります。なお、付近にクワトイネ軍は存在しません。」

 

「そうか・・・。しかたがないな。攻撃を開始セヨ!!」

 

 轟音と共にロケット弾が連続して発射され、さらに155mm榴弾砲が砲撃を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

『日本の腑抜けに遅れをとるな!空間制圧砲砲撃開始!』

 

『グリニア ガレオン 出撃 せよ!』

 

そうして空を大勢の船が空を埋め尽くしながら、敵陣に向かって飛んでいった。




次回!ついに農業開始!お楽しみに!


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陸戦〜砲撃とともに〜

やっと!大規模農業じゃあ!
書きたところかけて満足。
上手くかけた自信があまりないので批評をお願いします。


ジューンフィルアは、2万の大軍が隊列を整えているのを眺め、満足していた。

 

 壮大な眺めであり、兵の士気、錬度も高い。

 日本なる国がいかに強くても、簡単にはやられはしない。

 

 !?・・・・突然、興奮していた頭が冴える。不思議な感覚、敵はまだいない・・・。

 何故だろう、確かな死の予感がする。いったい何なのだろうか?

 

 ドーン!!!バラバラバラバラバラドーン!!!!!!

 

 「な・・・何だ!!!???」

 

 味方の中で大爆発が立て続けに起こり、味方が消滅する。そして、小さな爆発が味方をなぎ倒す。

 何かが弾け、兵がバタバタ倒れる。

 

 「バ・・・バ・・・バ・・・バカなぁっつ」

 

次には大きな爆発が連続して起こった。

 

「なんだ?これは・・・。敵陣で火山が噴火したのか?」

 

 爆散し、煙に包まれる敵、次々と大爆発し、そして小さな黒い花が咲く度に、敵がなぎ倒される。

 敵は錬度も高く、隊列も極めて整っていた。整然と整列していた敵の姿が掻き消える。まるで蟻に火炎の魔法をかけたかの如く、文字どおり消滅する。

 小さな範囲で爆発が起こるのではない。

 広く、広大な範囲で展開していた敵が!強敵が・・・己の人生をかけ、長い時間をかけ、鍛えあげてきたであろう武技を発揮する事無く、一方的に虫のように殺される。

 そこに、華やかな戦いや騎士道は無く、ただただ効率的に殺処分される哀れな敵。

 

「な・・・な・・・なんという威力の爆裂魔法だ!!!なんという魔力投射量だ!!日本軍はすべての兵が大魔導師クラスなのか!?いや、大魔導師6000人でもこの威力は無理だ!日本は神龍でも味方についているのか!?」

 

 要塞線の観測所内から、クワ・トイネの住民たちは、ただ唖然としてその光景を眺めていた。

 

 

 

『これで終わりではない!』

 

『見ておれ! 我が グリニア 艦隊 の 威光を!』

 

グリニアの指揮官二人がそう叫んだ直後、カタツムリのような形をした空飛ぶ船が、敵陣上空で止まった。

 

「なんだ?あれは?」

ノウはそう言わずにいられなかった。

『あれこそが、我々の言う“船”だ。』

認められない。あれが船だと、脳が理解したがらない。

 

そして死を宣言する号令が下された。

 

 

 

『グリニア ガレオン 船 、 砲撃 開始!』

 

 

 

空からは遠雷のような音が絶えず、聞こえてきた。

 

地面には黒い花が咲き誇り、これを花畑とするなら先程の日本の砲撃はまるで枯れかけの花だ。

 

グリニアガレオン船の横っ腹から突き出た棒から鋼鉄の塊が撃ち出される。そのたびに地面には黒い花が咲き、兵士が死んでいった。

 

 

そこにあるのは騎士の誇り高き決闘でも魔導師による腕の競い合いでも、ワクワクするような冒険談でもなかった。

 

そこにあるのは、全てに、分け隔てなく、平等に与えられた、“死”のみだった。

 

 

ジューンフィルアは効率的に殺処分される大量の部下を見て絶望していた。

 今まで戦ってきた戦友、歴戦の猛者、優秀な将軍、家族ぐるみの付き合いのあった上級騎士、共に強くなるため汗を流した仲間たち。

 すべてが・・・虚しくなるほど、泣きたくなるほど、あまりにもあっさり死ぬ。

 死神は、彼だけを逃がしてはくれなかった。

 押されたような衝撃とともに、自分の体がバラバラになって飛んでいく姿、それが彼の人生最後の記憶になった。

 よく耕された大地、その強大な魔導が去り、土煙が去った後、ロウリア軍に立っている者は馬を含めて1人もいなかった。

 

 

 ノウは眼前の攻撃を目にし、何と形容していいのか解らなかった。

 自分たちの戦闘概念からかけ離れた短時間の猛烈な攻撃により、強力な敵、ロウリア軍は消滅した。

 

 

『わかったか?ノウ将軍。あれが、我々にとっての“船”であり、我々にとっての戦争なのだ。』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

クワ・トイネ公国政治部会

 

「・・・・以上が日本軍、グリニア軍と、ロウリア軍のエジェイ西方の戦いの報告になります」

 

・・・・・・・・・・・・

 

「では、誰も日本がどうやって高威力爆裂魔法を使用したか、見ていないのか?」

 

「はい、報告書のとおり、日本は駐屯地から攻撃を行ったとの事であります」

 

「何を言っている!日本の駐屯地から、今回の高威力爆裂魔法が使用された戦場まで、13kmは離れているのだぞ!!13kmも!そんな魔法は古代魔法帝国の御伽噺でしか聞いたことが無いわ!!」

 

 会場がざわつく。

 手を挙げて、首相カナタが会場を静まらせる。

 

「手元の資料を見てほしい」

 

 日本から安く輸入した上質の紙が議員に配布される。

 

 ロウリア・・・首都攻撃許可願い!?

 

「日本は我が国から発進した鉄龍で、ロウリアの首都の一部を強襲し、ロウリア王を大量殺人罪で逮捕したいとの事だ。併せてエジェイとギムの間に展開する敵、ロウリア王国クワトイネ征伐隊東部諸侯団と、ギムの西側を国境から我が国内を東へ進軍する本隊に対し、鉄龍と共に、地上部隊を投入して攻撃したいとの事だ。敵主力がギムから出ているため、攻撃がもしも成功すれば、我が国も軍を送り、ギムを奪還したいと思う」

 

「グリニアもこの作戦に兵を出すと言うが、流石に“船”は出せないそうだ。」

 

 ザワザワザワザワ・・・場がざわつき始める。

 

「別にいいんじゃないか?得しかないし」

 

「いや、他国の地上軍が侵攻するのは・・・」

 

「しかし、このままでは我が国は滅ぶ・・・今回は日本とグリニアに頼るしかないのではないか?」

 

「敵の首都・・・うまくいくとは思えないが・・・。」

 

「しかし、うまくいけば、今回の戦争が終わる・・・。もっとも被害の少ない方法だ」

 

 政治部会では、全会一致で日本軍の国内及びロウリアでの陸、海、空の戦闘許可を行った。

 

 

 ロウリア王国クワトイネ征伐隊東部諸侯団

 ギム東側20km地点・・・。

 

「先遣隊に連絡はとれないのか!?」

 

 副将アデムが、軍の通信隊を怒鳴りつける。

 

「導師から、魔通信を送っていますが、返信がありません」

 

 昨日から先遣隊が消息を絶っている。

 先遣隊とはいえ、2万もの軍、1会戦としては非常に多い大軍だ。通信を送る前に全滅するなんて事は考えられなかった。

 

「偵察隊はどうなっている?」

 

 アデムは偵察隊として、ワイバーン12騎をエジェイへ向け放っていた。

 

「間もなく先遣隊の消息を絶った付近の上空です」

 

 

ロウリア王国クワトイネ征伐隊東部諸侯団所属、ワイバーン小隊 竜騎士ムーラ

 

「そろそろ・・か」

 

 エジェイ周辺の偵察隊12騎は、それぞれ分かれ、様々な方向に向かっていた。ムーラはその中でも先遣隊が消息を断った付近が割り当てられていた。

 今日は少し涼しく、晴れた空ではあるが、雲が多い。少し飛び辛いが気分は良い。

 先遣隊が消えた。

 彼の任務は状況の確認・・・。

 

「ん!?・・・」

 

 何か、人の鎧の後が見えた気がした・・・・上空に達する。

 

「な・・・なんだ!!!これは!!」

 

 月に見られるクレーターのようなものが、あちこちにある。そして、クレーターの無い所にも、元人だった物が放置されている。

 人の一部や馬のパーツもすべて混ざっていた。そして、ロウリア王国の悪魔の象徴である漆黒の鳥がその肉をついばんでいる。

 着陸してみる。

 動く人間は、1人もいない。

 

「全・・・・・滅?」

 

 そんなバカな・・・。恐怖・・・。

 グワァッ!グワァッ!

 相棒のワイバーンが警戒の鳴き声を発する。

 ワイバーンは東の方向を見ている。

 バタバタバタ・・・

 微かな音、空気を叩く音が微かに聞こえる。目を凝らす。竜騎士の視力は抜群に良い。

 

「あの竜は何だ!?」

 

 遠い・・・けし粒のような大きさの黒い点が見える。何か、魂の無い者、竜というよりはむしろ物。

 

「!!!!!!!!!!!!」

 

 突如としてその竜から煙が吹き上げ、小さな火炎が音速を超える速度で自分に向かってくる。

 

「導力火炎弾か!」

 

 遠い・・・そして速い!自分のワイバーンの導力火炎弾よりも遥かに射程距離は長いようだ。これほどまでに遠いとは、ワイバーンロードをも凌駕しているかもしれない。

 しかし・・。

 ムーラは飛び立つ。いくら遠くから速い攻撃を受けても、気付いていれば避けることができる。こういった攻撃は、不意打ちでこそ効果がある。

 敵の目は悪いようだ。

 

「!!!ついてくる!!!」

 

 敵の火炎弾は曲がって自分についてくる。

 

「うわぁぁぁっぁぁぁ」

 

 全力で飛び立ち、ワイバーンで後ろに付かれた時の戦術、ジグザグ飛行を行う。敵の火炎弾は、その度向きを変える。そんな攻撃は聞いたことが無い。

 

「導力火炎弾がついてくる!!」

 

 ムーラは魔通信具に向かって叫ぶ

 

「ち・・・ちくしょう」

 

 顔に叩きつけられる合成風、死の予感、脳の中を様々な思考が廻る。

 

(「いってらっしゃい」妻は、戦に行く時、笑顔で送り出してくれた。「ほら、お父さんにいってらっしゃいは?」「あっ、あっ」1歳になったばかりの娘が笑顔で抱きついてくる。「これ・・・お守り、持っていって」良く解らない軽い金属性の物体を渡された。いつもお守りとして腰に着けている。)

 

「死んで・・・たまるかぁぁあ!!!!」

 

 急上昇、導力火炎弾は、やはり軌道修正し、自分に向かってくる。急降下・・・。

 腰に着けた妻からもらった大切なお守りが外れる。

 火炎弾が迫る。

 

 ダーーーン!!!!!!!!

 

 ムーラの後ろで火炎弾が何故か爆発した。

 彼とワイバーンは西の空に向かって帰って行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『リューテナント、ジェネラル、報告せよ。』

 

『はっ。此度の戦いは我らのグリニアガレオン船による大規模砲撃により、勝利しました。』

レック クリル大尉は言う。

『この 勝利は 必ずや 我ら グリニアの 増強に 繋がる でしょう』

サルガス ルク将軍は満足そうにしながら言った。

 

『そうか、…そろそろ敵の首都を叩こう。』

 

『しかし領土はどうなされるので?』

 

『もちろんコーパスの出す金額次第で少し分ける』

 

『なるほど 少し ですか。』

 

『そうだ。少し だ。さて、今回の作戦に船は出せない。理由はわかるな。将来的に我が領土となる場所に不発弾を埋めたく無いからだ。』

 

『了解しました。ぜひこのリューテナント レック クリルにお任せください。』

 

『サルガス ルク将軍。君には市街制圧部隊を率いてもらう。同士討ちをしないように慎重に、かつ建物を崩してもいいから大胆に動いてくれ。』

 

『了解 しました。閣下。』

 




次回!番外編!
日本とクワトイネ公国、クイラ王国によるグリニア視察!存分に驚いてもらいます!


次回!視察団、死す(メンタル的に)!

お楽しみに!


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終戦~取引を添えて~

番外編よりも速くできたので投稿します、

次回こそ!次回こそ番外編ですので!

お楽しみに!


 偵察ヘリOH-1が発射した自衛用の近距離空対空誘導弾(91式携帯式地対空誘導弾の改良型)は、敵機追尾中、金属製の落ちて来た物体に奇跡的にぶつかり、接触信管が作動したため、竜騎士には命中しなかった。

 

 

 

 ムーラは西に向かって飛行していた。何故助かったのか、解らない。妻からもらったお守りは気付かないうちに落ちている。通信魔法具も壊れてしまっていた。

 

 

 

「もしかしたら・・妻が助けてくれたのかもな」

 

 

 

 つぶやく

 

 

 

 !!!??

 

 何かを感じ、上空を見る。

 

 自分の飛行しているはるか上空を、白い尾を引き、とんでもない速度で何かが数十個、西へ向かい、飛行していった。

 

 

 

 

 

 ロウリア王国東部諸侯団

 

 副将アデムはイラついていた

 

 

 

「どうなっているのですかぁ!」

 

 

 

 部下たちは冷や汗を掻く。悲鳴と共に12騎の偵察隊とは、連絡が途絶えた。

 

 導力火炎弾がついてくる、といった言葉を最後に連絡が取れなくなった者もいる。

 

 

 

「現在調査中でして・・・」

 

 

 

「具体的にどのような方法で調査しているのか!たわけがぁ!」

 

 

 

 静まり返る。

 

 

 

 将軍パンドールが話し始める。

 

 

 

「まあしかたがない。出来る事をしよう。本軍の護衛は?」

 

 

 

「ワイバーンが50騎常時直衛にあがります。残りはギムの竜舎で休ませています。もちろん、命あれば、いつでも出撃いたします」

 

 

 

「50も?多くないか?」

 

 

 

「いえ、今までの軍の意味不明の消失、もしかしたら敵はとてつもない力を手に入れたのかもしれません。本軍が壊滅したら、今回のクワトイネ攻略作戦は失敗します」

 

 

 

「そうか・・・。」

 

 

 

 上空には多数のワイバーンが編隊を組み、乱舞している。その雄姿は何者が来ても勝てると思わせるほどの威容だ。

 

 伝説の「魔帝軍の行進」でさえ、これほどの軍があれば、きっと跳ね返せるだろう。

 

 しかし・・・敵はいったい・・・。

 

 

 

 パンドールの思考は強制的に一時中断させられた。

 

 

 

 上空を乱舞していたワイバーンのうち、16騎が突如として煙に包まれ、バラバラに寸断される。さらに8騎!見えない何かによって24騎がいきなり消える。

 

 

 

「なっ何だ!?何が起こったあ!」

 

 

 

 やがて、東の空に黒い点が6つ、音も無く近づく。超音速!

 

 6機各機が2発づつ光弾を放つ。

 

 光弾は超高速で飛行し、それを避けようとするワイバーンに喰らい付く。

 

 さらに12騎がバラバラにその肉体を寸断され、落ちていく。

 

 

 

「あああああああああ」

 

 

 

「バカな・・バカなぁ!」

 

 

 

 様々な声が聞こえる。

 

 軍上空を『それら』は凄まじい速度で通り過ぎた。矢じりのような形、灰色に塗られた機体、後ろから炎を2本吐きながらそれは通り過ぎた。

 

そのすぐ後に逆さまの剣のような形をした、緑色のなにか。それは二本の白い線を引きながら、さっきの機体よりもはるかに上回る速度でそれは通り過ぎていった。

 

 

 

 ドーーーーン!!!!!!

 

 

 

 衝撃波が彼らを襲う。彼らが見たのは、マッハ2.5という猛烈な速度で軍上空をフライパスしたF-15J改の姿と亜光速で巡行するグリニアファイターだった。

 

 

 

「は・・・は・・・速すぎる!!!!!」

 

 

 

「なんなんだ!!!!」

 

 

 

 恐怖・・・。

 

 

 

 しかし、悲劇は待ってくれなかった。

 

 先ほど飛び去った敵の鉄龍が戻ってくる。さらに光弾を2発づつ発射・・・。

 

 精鋭竜騎士団が一方的に殺戮されていく・・・。

 

ワイバーンの数こそが軍の力と思っていた。これだけの数のワイバーンがいれば、炎神竜にさえ勝てると思っていた。

 

 それが・・まるで何かのゲームのように一方的に撃破される。

 

 

 

「ちく・・・しょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 

 

 上空から精鋭ワイバーン部隊が一掃された。

 

 すぐに、東の空から大きい鉄竜が多数飛来する。

 

 大きい何かが多数投下される。将軍パンドールの脳裏、先遣隊の消滅が頭によぎる。

 

 

 

「何だ、あれは!何かを落とされたぞ!!」

 

 

 

 誰かが声を上げる。

 

 ゆっくりと・・・・。

 

 自分の・・・。

 

 人生の・・・。

 

 終わりを告げる・・・。

 

 片道切符が・・・。

 

 あの世が近づく。

 

 光――。

 

 灼熱の業火が軍を襲う。

 

 それは一瞬の出来事だった。

 

 将軍パンドールは、光と共にこの世を去った。

 

 

 

 

 

 竜騎士ムーラは、西へ飛行していた。

 

 クワ・トイネは蛮族を思い、舐めていた。しかし、偵察の際に見たのは、城塞都市エジェイの西側にて全滅した先遣隊の姿だった。

 

 クワ・トイネ公国には魔王が味方にでもついたのだろうか?まさか・・・伝説の古の魔法帝国が・・・。その伝承に記されし、復活の刻でも来たのだろうか。

 

 ムーラの脳裏に、世界でも知らない者はいないと言われるおとぎ話が思い出される。

 

 

 

 かつて、世界を統べた大帝国があった。

 

 古の魔法帝国、絶大なる力をもって、すべての種を統べる者たち。1人1人が人間より遥かに高い魔力を持ち、高度な知識を有し、超高度文明によって他の種から恐れられた人間の上位種、彼らはその高すぎる文明ゆえに、神に弓を引いた。

 

 怒った神々は、古の魔法帝国のあったラティストア大陸に星を落とす。

 

星の落下を防げないと判断した帝国は、ラティストア大陸すべてに結界を張り、大陸ごと時を超越する魔法をかけ、未来に転移させた。

 

『復活の刻来たりし時、世界は再び我らにひれ伏す』と記載された不壊の石版を残し・・・。

 

 ラティストア大陸の外れに少数住んでた魔帝の生き残りを、人間は数で圧倒、吸収、絶滅させ、出来たのが、誰もが認める世界最強の国、中央世界にある神聖ミリシアル帝国と言われている。

 

 ゆえに、神聖ミリシアル帝国は、古の魔法帝国復活を恐れていると言われている。

 

 

 

 ムーラは、自分たちが戦っている相手は、もしかしたら、古の魔法帝国なのではないかと思い始めていた。

 

 2万もの強軍の全滅、追尾してくる導力火炎弾、どれも常軌を逸している。

 

 

 

 ドーーン・・・ドンドンドーーン

 

 

 

 鈍い音が響く。

 

 前方に、火山が噴火したかのような猛烈な火炎が上がる。

 

 それと同時に多くの建物が崩れる。

 

 

 

「ま・・・まさか・・・あの位置は!」

 

 

 

 嫌な予感、彼は本隊へ急ぐ・・・。

 

 彼が本隊上空へ達した時、その予感は的中している事を知る。

 

 そこには黒く焦げた人間だったものが散乱していた。

 

 

 

 

 

 数日後――――――

 

 ロウリア王国 ジン・ハーク ハーク城

 

 

6年もの歳月をかけ、列強の支援と、服従と言っていいほどの屈辱的なまでの条件を飲み、ようやく実現したロデニウス大陸を統一するための軍隊、錬度も列強式兵隊教育により上げてきた。

 

 資材も国力のギリギリまで投じ、数十年先まで借金をしてようやく作った軍、念には念を入れ、石橋を叩いて渡るかのごとく軍事力に差をつけた。

 

 圧倒的勝利で勝つはずだった。

 

 しかし、どうだ。今や王城の上空は不気味な音を立てながら飛ぶいびつな物体が空を埋め、その体の中から続々と兵を吐き出している。

 

 日本とグリニアというでたらめのような強さをもつ国の参戦により軍事力の全てを失った。

 

 

当初、国交を結ぶために訪れた日本の使者を、丁重に扱えば良かった。もっとあの国を調べておくべきだった。

 

 ワイバーンのいない蛮国?とんでもない。

 

 ワイバーンが全く必要の無いほどの超文明を持った国家ではないか!

 

 軍のほとんどを失った。残っていたはずの船団も、夜間停泊中に空からの猛烈な攻撃を受け、港ごと灰燼に帰した。

 

 こちらの軍は壊滅的被害を受けているのに、相手は、日本人、グリニア人は1人も死んでいない。

 

 とてつもないキルレシオ、文明圏の列強国を相手にしても、ここまで酷い結果にはならないだろう。

 

 もっと、最初にきちんとした対応をとるべきだった。くやんでも、くやんでも、くやみきれない。

 

 敵は、もうそこまで来ている。

 

 今や空では羽虫のような音を立てる物体によって埋め尽くされている。

 

ワイバーン部隊も全滅した。

 

 もう、どうしようもない・・・。

 

 

 

 タタタタタ・・・タタタタタ・・・。

 

 

 

 連続した聞きなれない音が王城の中で聞こえる。

 

 近衛兵の悲鳴が聞こえる。

 

 

 

 ドン!

 

 

 

 王の謁見の間に、醜い顔をした、いびつな鎧を身にまとった変な軍がなだれ込んでくる。

 

 その中に、2人ほど、特に体の大きい兵が混じっている。

 

 その内の1人の手には、大槌を持っている。

 もう一人の腕は見当たらない。腕の代わりに大筒がある。どういうことだろう?

 

 剣は帯剣していない。どうやら全員魔術師のようだ。

 

 王の脳裏に、古の魔法帝国軍、魔帝軍のおとぎ話が浮かぶ。

 

 

 

「ま・・・まさか・・・魔帝軍か!?」

 

 

 

 ハーク・ロウリアは恐怖に慄き、尋ねる。

 

 

 

 大槌をもつ、青い鎧の者が、王に迫る。

 

『魔帝軍?んなもの聞いたこともない。我々はグリニア軍だ!貴様を連行する!』

 

 腕を大筒に置き換えた橙色の鎧のものが言う。

 

『貴様ら の領土は 我ら グリニアの 糧と なるだろう!喜べ!』 

 

 

 

その場でハーク・ロウリアの両手に手錠がかけられ、空から降りてきた物体のなかへと投げ込まれた。

 

 

 

 

_________________________________________________________________________________________________

 

 

ここは、どこだ?

奴らは私を不気味な物体のなかに乱暴に投げ込んだ。

『おい。降りろ。』

 

言われるがままに降りたはいいが。ここはどこだろうか。

あそこに窓がある。見てみよう。

「なんだ……!これは……!」

 

そこには無限の闇が広がっている。その中に、ただ一つ煌々と輝く青い星があった。

『喜べ、お前はこの世界で初めて宇宙へと至った人間だ。』

 

いびつな奴らが何か言っている。

『あれこそが貴様が先程までいた場所だ!美しいだろう!だからこそ、我らが将軍閣下たちはこれに執着しておられるのだ!』

 

 

なんということだろう、

あれに比べれば、ロデニウス大陸なぞ、バーパルティアなぞ、なんとちっぽけなことだろう!

 

 

 

『来い!将軍閣下が待っている!』

 

 

 

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グリニア=コーパス連合

グリニア艦隊旗艦 “シスターズ”

指揮艦橋

 

 

『よく来た。ハーク・ロウリア、私はジェネラル・ワン。グリニア軍の総司令官だ。』

 

総司令官という彼は真っ黒な鎧に赤い線がいくつも走っている鎧を身にまとい、金色の勲章のようなものを胸に付けていた。

 

『貴様は……そうだな。仮にもロウリアの国王でいられるだけの為政力があるわけだ。』

 

私はどうなるのだろう。奴隷となって死ぬまで働かされるのだろうか、それとも殺されるのだろうか。

 

『よし、決めた。ハーク・ロウリア、貴様はグリニアの軍門に下れ。貴様に任せたい事がある。』

 

死の恐怖に怯えていた私に断る理由はなかった。

 

 

 

 

《将軍殿。戦勝おめでとうございます。》

 

いきなり人の形をした光の塊が現れた。

 

『なんだ?The Sergeant(軍曹)?』

 

その光の塊はグリニアとはまた違う格好をしていた。青い、継ぎ目のない服に、銀色の箱のような被り物。

 

『そうだ、ハーク。グリニアの軍門に下るのなら紹介しておくべきだな。』

 

『彼らは“コーパス”。我らと何百年に渡り、敵対してきたものだ。』

 

それなら、彼らはやはり。

 

《そうです、あなたのご察しの通り技術力には自信があります。ところで、話は変わりますが、例の件は?》

 

『どれくらいの金を出す?』

 

なんの話なのだろうか?

 

《とりあえず、前金で四十一億クレジット、》

『だめだ。あの広大かつ、大量の鉱産資源が埋まっているであろう土地のことを考えてみろ。』

《それに加えて、この先五年間のフェライト、ルビドーなどの鉱石を三割引き、》

『乗った』

 

どうやら土地の取引らしい。よく考えなくとも、ロウリアの土地だろう。

 

『よし、ハーク。これから貴様には教育を施してやる。これを着ろ。』

 

そういって渡されたのは彼らの制服であろうもの。異常に硬い、なにで出来ているのだろう?

 

『それも含めて教えてやる。来い、将来的には貴様には惑星探索プロジェクトの一端を任せる。』

『だから、なるべく早く、今から教えてやることを覚えろ。いいな?』

 

その言葉になぞの圧力を感じた私は、うなずく他なかった。




具体的には指揮官用クアトロバレルライフルのQUARTAKKの撃ち方、アーマーの特性、軍の規模、グリニアの歴史、近代的(グリニアにとって)な軍の動かし方、偉大なる双女帝陛下への忠誠心を教え込まれます。


次回こそ!視察団(メンタル的に)死す!
時間かかりますけどお楽しみに!


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番外編〜グリニア視察団〜

やっとかけたばんがいへん、
たのしんでね。


疲れた。たちゅけて。(涙)

試験怖い。


クワ・トイネ公国

グリニア租界

勢力:グリニア帝国

 

 

『ようこそ!視察団の諸君!』

なんだかグリニアの視察団引率担当はやけにテンションが高い。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なあ、ヤゴウ。お前グリニア行くんだろ?なんかいい女にあったら紹介してくれよ。」

 

そう出発前に言ってくれた友よ、すまない。

今回の視察は軍事施設と工場が中心なんだ。

 

グリニアと言う国は、なんでも空の向こうからやって来たらしい。なんだ、やはりおかしいと思うか。しかしあの空飛ぶ“船”や、その同盟国であると言うコーパスの高い技術力を見てしまった今では信じざるをえない。

 

今日、私、クワ・トイネ公国グリニア視察団代表のヤゴウは、日本国グリニア視察団代表と共に、クワ・トイネ公国内に存在するグリニア租界に訪れた。

そこは租界として貸し出す前に比べると、とてつもなく発展していた。空を飛び交う平べったい何か、大地を駆ける鋼鉄の馬(日本によると車と言うらしい)、一人でに動く鋼鉄の腕。そして極め付けは空の向こうへと登る何かであった。

 

我々視察団が到着した十分後に視察は始まった。

 

 

そこでは驚きっぱなしであった。

 

門のところで見たものはほんの一部。中に入り、まず案内されたのは造船所。そこでは、巨大な鉄塊が一枚の鉄板となり、鋼鉄の腕が勝手に動いて鉄板を組み合わせ、瞬く間にグリニアの“船”が出来上がっていった。

 

造船所から軍事施設までの移動中にも度肝を抜かれた。

 

なんだ!あの天を突くような高さの建物は!

なんだ!あの目から光を出しながら、ごうごうと音を立てて走り去る、あの鋼鉄の龍は!

 

引率のグリニア人の話によるとグリニアは元々“太陽系”と言う世界を支配せんとする巨大な帝国であったと言うことだ。(日本人はやたらと太陽系について聞き出そうとしていたが、何かあるのだろうか?)

しかしある日、voidの渦と言うモノに巻き込まれ、いくつかの星と共にこの世界に来たという。

 

その後、軍事施設に着いた時、ちょうど軍事演習があったらしく、見学させてもらった。

 

 

そこでは彼らが重装甲車と呼ぶものや、航空機、銃器の強さをまたもや見せつけられた。

 

どうやら彼らの陸上戦における戦術は“縦深戦術”と呼ばれるものらしい。

 

あの陸戦で見せ付けられたあの砲撃で、敵の防衛線を“全て”破壊し、“戦車”とやらと歩兵、“航空機”で連携して一気に突破する。

 

彼らの航空機は光の速さに近い速度で飛ぶらしい。解説を信じるとすれば、視認できた次の瞬間には、近くまで迫っているとのことだ。しかも見たところでは優れた機動性を持ち、自由自在に空を駆け巡っていた。(これには日本人も驚いていた)

 

彼らが重装甲車と呼ぶモノも非常に強大らしく、石づくりの壁をやすやすと突き破り、敵として設置された人形をなぎ倒していた。あれには我々がどのような壁を築こうと突破されるだろう。

 

これらを全てうまく組み合わせることができれば、ロウリアと言わず、文明圏の国々でも容易く打ち破ることができるだろう。

 

 

日本の視察団によると、“縦深戦術”という戦術は言うのは簡単だが、実際に行動に移すには多大な労力を必要とし、かつて日本があった世界でも防御策が確立されていない。極めて扱いづらいが、一度モノにすると極めて強い威力を発揮する戦術らしい。

 

(視察後に軍事教練と、さらなる兵器輸入を依頼したのは秘密だ。)

 




次はついにフェン王国かな?
それともあの伝説調査回かな?
気がむいた方を書くよ!
それでは


お楽しみに!


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軍祭〜コーパスも添えて〜

ついにバーパルティア編開始!
筆者は受験生なのに小説を書く愚か者なので、
これから先三月まで更新頻度は落ちると思います。




許して(涙)


グリニア=コーパス連合

コーパス 旗艦“トレードセンター”

勢力:コーパス

 

《どうでした?バーパルティアとの交渉は?》

 

Nef Anyoはバーパルティアにいる使者に問う。

 

《話になりません。第1外務局にいくと第3外務局に行けと言われ、第3外務局に行けば三ヶ月待てと言われ、現在、激怒しているグリニアの評議員殿を日本人と一緒になだめているところです。》

 

そう言うのはグリニアに不信感を抱いていたコーパス委員会所属委員 Frohd Bek。彼は外交の使者としてパーパルティア皇国に派遣されていた。

 

《それはいけません。彼らは恐らく、グリニアが下手をしなければ、我々のことを知りません。前回はグリニアに先手を打たれ、あのちっぽけな土地に大金を出す羽目になりました。今回は、我々が先手を取るべきです。あの土地には宝物の香りがします。》

 

Nefは険しい顔をしていた。

 

《そのためにはきっかけが必要です。何かきっかけとなりそうなものは……》

 

《失礼します。》

 

《何ですか?提督。》

 

はいってきたのはコーパス艦隊提督。手には報告書を持っている。

《監視衛星によるとバーパルティアの大軍がフェン王国という国に向かっているそうです。》

 

《それで?》

 

《この時期フェン王国では軍祭と呼ばれる大規模な閲兵式があるようです。日本もこれに招待されており、グリニアも参加するようです。これなら、比較的廉価な船と引き換えに、バーパルティアに宣戦布告が出来るのでは。》

 

《そうですね……》

Nefは少し考えるそぶりを見せたが、すぐに決断した。

《船を壊すのは心苦しいのですが…やりましょう。成功に犠牲は付き物です。》

 

_____________________________________________________

 

 

「あれが日本の戦船か・・・まるで城だな」

 

 正直な感想を洩らす。

 

「いやはや、ガハラ神国から事前情報として聞いてはいましたが、これほどの大きさの金属で出来た船が海に浮かんでいるとは・・・。」

 

 騎士長マグレブが同意する。

 

「私も数回、パーパルディア皇国に行った事がありますが、これほどの大きさの船は見た事がありません」

 

 彼らの視線の先には、海上自衛隊の護衛艦が8隻浮かんでいた。

 

「剣王、そろそろ我が国の廃船に対する日本の艦からの攻撃が始まります」

 

 剣王シハン直々に、日本の外務省に頼んだ

〔日本の力を見せてほしい〕

その回答が今出る。

 護衛艦のさらに沖合いにフェン王国の廃船が4隻、標的船として浮かんでいた。

 距離は護衛艦から2km離れている。剣王シハンは望遠鏡を覗き込む。

 今回はイージス艦とかいう船が、1隻だけで攻撃を行うらしい。

 

 日本の船から煙が吹き出る、僅かな時間の後、音が聞こえる。

 ダン・・・・ダン・・・・ダン・・・・ダン・・・・

 4回、

 直後、標的船は猛烈な爆発を起こし、水飛沫をあげ、船の残骸が空を舞う。

 標的船4隻は、爆散、轟沈した。

 

「・・・・・・・これは・・・声も出んな・・・なんとも凄まじい」

 

 剣王シハン以下フェン王国の中枢は、自分たちの攻撃概念とかけ離れた威力を目の当たりにし、唖然としていた。

 1隻からの攻撃で、4隻をあっさり沈める。しかも、とてつもない速さの連続攻撃で沈めた。列強パーパルディア皇国でも、そんな芸当は出来ない事をここにいる誰もが理解している。

 

「すぐにでも、日本と国交を開設する準備に採りかかろう、不可侵条約はもちろん、出来れば安全保障条約も取り付けたいな・・・。」

 

 剣王は満面の笑みで宣言した。

 

「次はコーパスという日本と同盟関係にある国の船が来るそうですが、どこにいるのでしょうか?」

 

おい!上を見ろ!

 

その声が聞こえてくるとともに、民衆のざわめきが強まった。

 

剣王が上を見上げてみると、信じられないようなものが見えてくる。

 

「何と、あれが、船というのか」

 

銀色の船体に青い丸と三角が描かれている巨大な、日本の船よりも巨大な、まるで空飛ぶ島のようなものが巨大な蝶のようなものに囲まれて降りてくる。

 

「ありえない…船が飛ぶなんて……はっ。申し訳ありません。取り乱しました。あれがコーパスの船です。なにぶん光で攻撃するという情報しかなかったので……」

 

「…あれは何という船だ?」

剣王は問う

「あれは、確か…」

資料をめくり、急いで探す。

「あった!…えーと、どうやら周りを飛んでいる蝶のようなものは“スカウト・コーパスシップ”、真ん中のクサビのようなものは新型の戦艦で、“プロフィット(利益)”と呼ばれているようです。」

 

 

「そろそろコーパスの攻撃が始まります。」

 

今回は日本のよりさらに遠く、14kmは離れている。

またもや望遠鏡を覗き込むが、その必要はなかった。

 

青白い光の奔流が棒の先から放たれ、廃船は全て、チリと化した。

 

「…………すばらしい!すさまじい威力だ!コーパスと国交を開設し、友好条約と安全保障条約、できれば同盟を結べ!」

 

「次はグリニアと言う国で、かつてはコーパスと敵対関係にあったようです。」

 

「ほう…それならその“グリニア”とやらもかなりの力を持っているだろう。」

 

「船は…やっぱり飛んでますね。」

 

「……しかも呆れるほど大きいときた。」

 

それは空のはるか彼方に浮かんでいた。両翼が大きく、巨大なブーメランのようだ。

 

「グリニアは“衛星軌道”……つまりは空のさらに上から“軌道爆撃”と言う攻撃を行う予定です。」

 

「攻撃が始まります。」

 

空の果て、グリニアの船の下から赤い光の球が発射され、迫って来る。

 

「あの、ちょっと、危ないのでは?」

 

そう思う者もいたが、その心配は正しかった。

 

赤い光の球が廃船の近くの海面に着弾し、大きな爆発が起こった。海は煮えたぎり、水蒸気爆発を起こし、廃船は全て木片となった。

 

その余波は観客席に襲いかかり、観客はほとんど全てがびしょ濡れとなった。

 

「…………あれはグリニア軍の中でも、中の上にあたる部類のようです。」

 

「……と言うことは、あれより強いものがあるのか。」

 

「はい、そう考えられます。」

 

「……同盟を結ぼう。」

「そうしましょう。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 イージス艦みょうこうのレーダーを見ていた者は、西側から近づく飛行物体に気がついた。時速にして約350kmで、20機ほどが近づいてくる。

 艦隊指令に報告があがる。

 

 

「西は、パーパルディア皇国という国があったな」

 

「はい」

 

「フェン王国の軍祭に招かれているのではないのか?」

 

「とは思いますが・・・一応確認をします」

 

 その飛行物体はフェン王国首都アマノキ上空に至ったが、王国からの返答は無かった。

 

「一応グリニアとコーパスにも警告しろ。“未確認飛行物体が接近、注意されたし。”とな。」

 

「了解」

パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード部隊20騎は、フェン王国に懲罰的攻撃を加えるために、首都アマノキ上空に来ていた。

 軍祭には文明圏外の各国武官がいる。その目前で、皇国に逆らった愚か者の国の末路はどうなるか知らしめるため、あえてこの祭りに合わせて攻撃の日が決定されていた。

 これで、各国は皇国の力と恐ろしさを再認識することだろう。そして逆らう者の末路、逆らった国に関わっただけでも被害が出ることを知らしめる。

 

 ガハラ神国の風竜3騎も首都上空を飛行している。

 風竜が皇国ワイバーンロードを見ると、ワイバーンロードは、不良に睨まれた気の弱い男のように、風竜から目を逸らす。

 

「ガハラの民には、構うな。フェン王城と、そうだな・・・あの目立つ白い船と飛んでる船に攻撃を加えろ!!」

 

 ワイバーンロードは上空で散開した。

 

 !?西側から飛行してきた、ワイバーンと呼ばれていた竜は、隊を2つに分けフェン王国王城に向け、急降下を始めた。

 

「何のデモンストレーションだ!?」

 

 誰もが疑問に思った時、急降下していた竜が口を開け、口内に火球が形成され始める。

 

「!!!!!!!!!!!」

 

 次の瞬間、10騎のワイバーンから放たれた火球は、王城の最上階に着弾し、木製の

王城は炎上を始める。

 

「!!!!!巡視艇いなさにワイバーン5騎が急降下中!!!」

 

 イージス艦みょうこうの艦橋で悲鳴に似た報告があがる。

 

 

「いかんっっっ!!!!!!!」

 

 次の瞬間、パーパルディア皇国の皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード10騎は、直下約500m付近に停泊中の海上保安庁の巡視艇 いなさ に向かい、導力火炎弾を放出した。

 

「コーパススカウトシップに向かって五騎が急降下!コーパススカウトシップはレーザーキャノンと思しきもので応戦!!」

 

「ああっ!!!コーパススカウトシップ撃沈!沈んでいきます!!」

 

巡視艇いなさ

 

 軍祭に、事前情報の無い未確認機が多数接近中との自衛隊からの事前連絡を受けていた巡視艇いなさ は、エンジンを始動し、上空の監視を怠ってはいなかった。

 

「未確認機が我が方へ発砲!!!!!」

 

「エンジン出力最大!回避せよ!!!」

 

 いなさは、出力を最大にし、移動を始める。

 降り注ぐ火炎弾を次々と回避する。

 いなさの後方で、海上に火炎弾が着弾する。

 

 ドーーーーン・・・・

 

「ちっ!船体後部に被弾!火災発生!!!!!!」

 

 火炎弾のほとんどを回避したいなさ、1発だけ船体後部に被弾した。

 

「消火活動を実施しつつ、最大船速へ!!!上空の監視を厳とせよ」

 

「何!!あのタイミングで、ほとんどかわされただとぉ!!?」

 

 急降下から、水平飛行に移行したワイバーンロード10騎は、必中タイミングで撃ったにもかかわらず、そのほとんどをかわされた事に唖然としていた。

 

 

「くっっっなかなか消えないな・・・。」

 

 導力火炎弾が命中したことによる火災は、炎が粘性を持っているらしく、消火活動に手間取る。

 

「正当防衛射撃を実施せよ!!!」

 

 いなさの対不審船用の20mm機銃が上空を向く。対空用の機銃ではないのは、十分理解している。

 しかし、自己の生命を守るため、「いなさ」は、持てる武器を上空へ向けた。

 

「はい現在正当防衛射撃中!撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

 タカタカタカターーーン・・・ピッピッピッピッピッピ

 タカタカタカターーーン・・・ピッピッピッピッピッピ

 

 画像により、上空を飛ぶワイバーンにしっかりと照準を合わせ、発射する。

 曳光弾を交えて上空に弾は発射される。

 連射の後、砲身冷却のため、一定時間艦内に電子音が鳴り響く。

 いなさの放った弾は、10騎中1騎に着弾し、血飛沫をあげ、ワイバーンロードは、上空でのたうちまわる。

 竜騎士は振り落とされ、海中へ落下した。

 

 各護衛艦は、いなさが攻撃された時点で、「敵」への反撃の意思決定を下していた。

 みょうこう の主砲が上空に展開する「敵」へ向く。

 各護衛艦で的が重ならないように、振り分けられる。

 FCS射撃管制システムにより、敵との相対速度が計算され、飛行する敵の未来位置で迎撃できるよう、寸分違わず、主砲の砲身が上空を向く。

 

 次の瞬間、各護衛艦の主砲が炸裂し、いなさを狙っていたワイバーンロードは消滅した。

 

 

 

コーパススカウトシップ内部

 

コーパススカウトシップは無人機である。しかし今回は運悪く、数人のメンテナンス要員が搭乗しており、不慣れな対空戦闘を強いられていた。

 

《しっかり狙って撃て!》

 

《撃て、撃て、撃て!!》

パパパパパ、パパパパパ、カシュー

レーザーマシンガンの発射音と弾切れを知らせる音が聞こえる。その音が聞こえるたびにスカウトシップの乗組員は急いでマガジンを入れ替える。

《左上方敵機!注意せよ》

スカウトシップは次々とワイバーンを撃ち落とし、火炎弾を回避していたが、努力虚しく、機体の両脇にあるエンジンが被弾した。

《浮遊エンジン被弾!!炎上!!!》

 

《戦闘を続行しろ!》

 

《エンジン停止!!墜落します!》

 

《仕方ない、総員退避!!》

 

スカウトシップから乗員が次々と脱出し、無人のスカウトシップが海の底へと沈んでいった。

 

その後、戦艦“プロフィット“がそのレーザーキャノンを用いて、上空を飛ぶワイバーンを全てチリにした。

 

 

 剣王シハン及びその側近たちは、開いた口が塞がらなかった。

 ワイバーンロードは、間違いなくパーパルディア皇国のものだろう。

 我が国が、ワイバーンロードを追い払おうと思ったら、至難の技だ。

 1騎に対して一個武士団でも不足している。そもそも、奴らは鱗が硬く、弓を通さない。

 バリスタを不意打ちで直撃させるか、我が国に伝わる伝説の剛弓、「ベルセルクアロー」を使うしか無いが、ベルセルクアローは、硬すぎて、国に3名しか使える者はいない。

 戦闘態勢にあるワイバーンロードを仕留めるのは、事実上不可能に近い。

 文明圏外の国で、1騎でもワイバーンロードを落とすことが出来れば、国として世界に誇れる。

 我が国は、ワイバーンロードを叩き落すことが出来るほど精強であると・・。

 それを、異世界から来たと言う奴らは、いともあっさりと、怪我をして動けなくなったハエを踏み潰すかのように、自分はほとんど怪我を負わず、列強の精鋭、ワイバーンロード竜騎士隊を20騎も叩き落してしまった。

 しかも、日本の白い船は、軍ではなく、警察的な役割を果たす[武力を削った]船らしい。

 

 奴らは、文明圏外の武官が集まっている軍祭で、各国武官の目の前で、各国が恐れる

列強パーパルディア皇国の精鋭ワイバーンロード部隊を赤子の手をひねるように、叩き落とした。

 歴史が動く、世界が変わる予感がする。

 ワイバーンロードは、おそらく自分たち、フェン王国への懲罰的攻撃に来ていたのだろう。

 コーパス=グリニア連合と日本をこの紛争に巻き込めたのは、天運ではなかろうか・・・。

 剣王シハンは、笑いながら燃え盛る自分の城を眺めていた。

 

 

--------------------------

グリニア=コーパス連合

コーパス旗艦“トレードセンター”

《よろしい、人員の損失なく作戦を遂行できたことは賞賛に値します。後で私の執務室に来なさい。昇給して差し上げましょう。》

Nefは満足そうに自分のヒゲを撫でて、スカウトシップの乗員に向かって微笑んでいる。

《委員殿、報告です。》

提督が声を掛ける

《何ですか?》

そしてまた提督が報告する。どうやら監視衛星からの情報らしい。

《フェン王国西の沖にパーパルティアの船団を発見しました。つきましては“プロフィット”と“クレジット”艦隊の出撃許可を求めます。》

Nefは一瞬逡巡したが、利益を求める彼らしい返答をした

《いいでしょう、許可します。ただし利益を上げることを念頭においてください。》

 

《はっ!》




多分次もそれなりの間隔が空きます。
お許しください。


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開戦〜灰色のクサビを添えて〜

お久しぶりです!試験も終わって、今筆者は超ハッピーです。感想くれると執筆速度とやる気が出るので、感想ください!


利益、利益、と、

委員殿も無茶をおっしゃる。

戦闘で利益を得るなどあり得ないだろうに。

 

第一攻撃小艦隊をNefに任せられたThe Sergeant(ザ・サージェント)はそう思った。

 

今回の任務はフェン王国の海軍……水軍だったか?……まぁ、良い。海の軍隊であれば皆海軍なのだ。

 

話を戻そう。

 

今回の任務はフェン王国海軍と共に北西から迫るパーパルティア海軍を“出来るだけ消耗せずに”撃破、もしくは撃退しろ、というものだ。

 

消耗したくないなら船を出さなきゃいいのに。

 

Sergeantは過去に左遷されたことを思い出しながら考える。

 

今回の辞令も左遷なのでは?

 

しかし理由が思い当たらない。

 

結局、彼は考えるのをやめた。

うまくやればまた過去の栄光を取り戻せるかもしれない。

ならば、今できることは消耗を抑えて、勝利を収めるだけだ。

 

そして、彼は会議室へと赴き、参謀達と共に作戦を練ることにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

フェン王国 水軍

 

 フェン王国、王宮直轄水軍13隻はパーパルディア皇国との戦争の可能性があったことから王国西側約150km付近を警戒していた。

 警戒にあたる水軍は、フェン王国の中では精鋭をそろえており、比較的経験の浅い者は、今回警戒の任にはつかず、軍祭に参加している。

 水軍は木製の船に、効率の悪そうな帆を張り、進む。

 機動戦闘が必要な場合は、船から突き出たオールで全力で漕ぐ。

 船には、火矢を防ぐための木製盾が等間隔に整然と置かれ、敵船体を傷つけるためのバリスタが横方向へ向かい、3機づつ設置されていた。

 火矢を放つための油の壺も、船上に配置されている。

 13隻の水軍を束ねる旗艦は、他の船に比べひとまわり大きく、船首には1門だけ大砲が設置されている。

 水軍長 クシラ は西方向の水平線を睨んでいた。

 

「軍長、パーパルディア皇国は来ますかね・・・。」

 

「先ほどワイバーンロードが我が国に向かい飛んでいった・・・必ず来る!」

 

「・・・勝てますか?」

 

「ふ・・・列強国相手とはいえ、タダではやられんよ。うちはかなりの精鋭揃いだからな。

それに・・・。」

 

 軍長は艦首にある大砲を見る。

 

「あれを見よ!文明圏でのみ使用されていると言われる魔道兵器だ!球形の鉄の弾を1km近くも飛ばして、船にぶつけ、その運動エネルギーをもって破壊する。これほどの兵器を船に積んだんだ!」(グリニアが聞いたら鼻で笑い、コーパスが聞けば嬉々として自分たちの兵器を売り付けようとするだろう)

 

 軍長は艦長に話す。

 部下の前で不安は口に出来ない。しかし、軍長は知っていた。列強には、砲艦と呼ばれる船ごと破壊出来る超兵器が存在することを。

 フェン王国のトップシークレットだった。

 おそらく砲艦は、このフェン王国最強の船、旗艦剣神のように、文明圏に存在する大砲と呼ばれる魔道兵器を船に積んだものだろう。

 しかも、その最強クラスの船が、列強では普通に存在するのだろう。

 水軍長クシラの頭の中は、来るべき列強パーパルディア皇国との戦闘に備え、フル回転を始める。

 

(どうすれば・・・勝てる?)

 

「艦影確認!!!!艦数22!!!」

 

 マストの上で見張りをしていた見張り員が大声で報告する。

 ついに、来たか!

 

 水平線に艦影が見える。

 望遠鏡と通して見えるその艦は、フェン王国王宮直轄水軍の船に比べ、遥かに大きく、先進的である。

 デザインと機能性を兼ね備えたマストに風の魔法で吹き付けられる風を受け、フェン王国式船より速い速度で船は進む。

 水平線から徐々に大きくなっていく敵艦隊は、フェン王国水軍長クシラの目を持ってしても優雅であり、美しく、力強い。

 各艦の乱れない動きから、錬度の高さが伺える。

 

「総員、戦闘配備!!!!」

 

 船員が慌しく動きまわる。

 

「・・・思ったより接近が早いな・・・。」

 

 彼の想定する船速よりも速く艦隊は近づいてくる。

 

「くっっっ・・・初弾だ!最初に一番威力のある攻撃を行ない、その後魔導砲を放ちながら最大船速で敵に突っ込むぞ!!!!」

 

「各自、戦の準備を!!!旗艦剣神を最前列とし、縦1列で敵に突っ込むぞ!!!」

 

・・・たのむぞ・・・。

 水軍長クシラは旗艦剣神の船首に1門だけ設置された魔導砲に願いを込めた。

 

 

 

 「艦影確認、あの旗は・・・フェン王国水軍です」

 

 パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊の提督、ポクトアールは報告を受ける。

 

「フェン王国か・・・。ワイバーンロード部隊の通信が途絶している。新兵器を持っているのかもしれないな・・・。」

 

 ポクトアールは声を張り上げる。

 

「相手を蛮族と侮ってはいかん!列強艦隊を相手にする意気込みで、全力で叩き潰すぞ!!」

 

 艦隊は速力を上げ、フェン王国水軍へ向かって行った。

 

 

 

 フェン王国水軍

 

「間もなく敵との距離が2kmに接近します」

 

 報告があがる。

 

「あと1kmで敵の砲艦の射程に入るか・・・。」

 

 水軍長クシラの額に汗が滲む。

 

「最大船速!!!オールを漕げ!!!」

 

 各船からオールが突き出る。

 太鼓のリズムに合わせ、一定のリズムでオールが漕がれ始める。

 フェン王国水軍13隻は、速度を上げ、進む。

!!!!!!

 

「敵船が旋回しました!」

 

 敵の艦隊が一斉に横を向く。

 

「何をする気だ!?」

 

 水軍長クシラは、敵船の動きの理解に苦しむ。

 

 パパパパパパッ・・・・・敵船が多数の煙に包まれる。

 ドドドドドドーン・・・・少し遅れて炸裂音が海上に鳴り響く。

 

「ま・・・まさか!!!ま・・・魔導砲!?」

 

 そんな馬鹿な!文明圏で使用されている魔導砲は、射程距離が1km、現在の敵との距離は2km、まだ倍もの距離がある。

 しかも、こちらは艦首に1門だけ魔導砲を設置しているが、敵は・・・1艦あたりに比較にならないほどの数の魔導砲がある。

 

 シュボンシュボンシュボンシュボン・・・・・

 

 砲撃の落ちた場所に水柱があがり始める。

 

 く・・・当たるなよ!!

 水軍長クシラは神に祈る。

 ドーーン・・・シュバーーーーーン!!!!!

 旗艦剣神の後方を航行していた船に、敵の魔導砲が着弾する。

 砲弾は炸裂し、船上に設置してある火矢を放つための油壺をなぎ倒し、撒き散らされた油に引火、船は爆発炎上を初める。

 フェン王国の精鋭部隊が・・・鍛え抜かれた肉体、練習に練習を重ね、地獄のような訓練の後に得られた剣術が発揮される事無く船上で焼かれ、転げまわる船員

 

「なんということだ!!!」

 

 次々と砲はフェン王国水軍に着弾し始める。

 多数の船は炎上してゆく。

 

「少しでもけん制しなければ!!魔導砲撃てーーーーっ!!!」

 

 旗艦剣神の船首に1門設置されている砲が、轟音と共に、球形砲弾を放つ。

 次の瞬間、敵砲が旗艦剣神に着弾し、爆発!船上に大穴が開く。

 

「これが・・・列強かぁっ!!!」

 

 砲艦の数、1艦あたりの砲数の差、砲の射程距離及び威力、そして艦の船速、どれもが桁違いであり、水軍長クシラは、力の差を思い知る。

 これほどの差とは思わなかった。列強とは、文明圏内での規模のみの差で、「列強」と名乗っていると思っていた。

 しかし、現実は違った。「質」、「技術」においても列強は文明圏を遥かに凌駕していた。

 これでは、敵が1艦だったとしても勝てない。

 水軍長クシラの意識は、燃え盛る旗艦剣神の弾薬室への引火と共に、永遠に失われた。

 

 

 

「フェン王国水軍の艦は13隻すべて撃沈しました。我が方の損失ゼロ、人員装備異常なし」

 

・・・・・

 

「・・・考えすぎだったか・・・。」

 

「敵はやはり蛮族でしたね、大砲を1発だけ撃ってきましたが、文明圏通常国の使用している、我が国からしたら、旧式の砲でした。艦隊の遥か手前に着弾しています」

 

「そうだな・・・進路をフェン王国首都、アマノキへとれ!!!」

 

 艦隊は1隻の損失も、僅かな被害も出す事無く、さらなる敵を求めて東へ向かった。

 

その先に栄光は無く、ただ死のみが存在することも知らずに……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

《レーダーに感あり。西へ76km、IFF反応なし。パーパルティア海軍であると思われる。》

レーダー担当船員は顔を持ち上げ、船長であるサージェントに向かって報告する。

 

それに対し、サージェントは軽く頷き、有線マイクを握って、指示を出す。

《全艦砲へエネルギー装填を始めろ。シールド起動、第一級戦闘用意。》

 

瞬間、滑らかな灰色のクサビ型をした船から、80cmレーザー砲がせり出し、その他にも局所防衛用対空砲や、35cmレーザー砲がせり出す。

砲塔からは青い光が溢れ、いかにも危険そうな香りを撒き散らしている。

 

《すでに射程距離内です。撃ちますか?》

砲雷長から尋ねられるが、サージェントは首を横に振る。

《機関長、短距離ワープの用意は?》

《ええ万端ですが……》

サージェントに尋ねられた機関長は内線越しに答え、訝しむ。

 

《短距離ワープ起動用意。少々驚かせてやろうじゃないか。》

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

順調な航海だ。雲は無く、敵もいない。

ポクトアール提督は望遠鏡を覗いている。

「今のところ、何も障害はありません。アマノキまであと100キロほどで到着します」

「そうか」

部下からの報告に応えるが、明らかに心ここに在らずと言った感じの返事だった。

「……何を心配しておられるのです?」

「何か、嫌な感じがしてな、まあ、何も無いなら良いのだが……」

 

その時、空間に割れ目が走る。

 

白い鱗粉をまとい、亀裂から灰色の、空飛ぶクサビが現れた。

 

《聞こえるか?こちらコーパス海軍、ここから先は我が友邦の領域である。侵入を禁止する。直ちに回頭せよ。》

 

傲慢さすら感じられるような声で告げられる。

 

恐れを抱き、今にも跪き、声に従いそうになる。

しかしそうはならなかった。

彼には誇りがあった。

列強国軍人としての誇りが。

 

「旋回!船腹を向けろ。砲戦用意!」

 

何隻もの木製戦列艦は船体をギシギシ言わせながら砲が何十門と並ぶ船腹を向け、砲弾を放った。

 

パパパパパパパ……船体が再び煙に包まれる。

 

しかし悲しきかな。

相手は空を飛んでいるのだ。

前時代的な丸い鉛の砲弾にライフリングのない砲身では届くはずも無く、くさび形の影の中に水柱を作るだけであった。

 

《回頭する気がないのはよくわかった。しかも攻撃してくるとは!……その選択を後悔するがいい。》

 

声がそう言い残した直後、僚艦がいる場所を青い光線が貫く。

 

木片が飛び、焦げて炭となったものまで飛んでくる。

 

一瞬で、残っている船は自分の乗船だけになった。

 

《……何?Nef殿がお呼び?……運が良いな。今帰還命令が出た。貴様らはどうしようか。二つの選択肢をやろう。1、ここで貴様の仲間と同じく消し炭になるか。2、我々に投降するか。サァ、どっちを選ぶ?》

 

彼には軍人としての誇りがあったが、生存を望む生物的本能には勝てなかった。

 

--------------------------

 

《あなた……私の命令を覚えていますか?》

 

《ええ……もちろん。出来るだけ無駄遣いせずに殲滅しろと……》

 

《なのになぜ短距離ワープなんて使ったんです?あれの燃料がものすごく高いことがわからないあなたではあるまいし……》

 

《…申し訳ございません……》

 

《元の任地に戻りなさい。燃料代の一部はあなたの給料から天引きさせていただきます。》

 

《……そんな……》




コーパス内では
オロキン(古代文明)の遺物>>>>>>>金>>>>>>>>>>>>>>(超えられない壁)>>>>>>>人の命
なのでもしかしたらサージェントくんのお財布からはシールドエネルギー代も支払わされるかも……?

そろそろ新兵器出したいなあって、
新兵器開発の様子を書きたいなって思う今日この頃です。


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抗争〜いつも通りのグリニアとコーパスを添えて〜

いやはや申し訳ない、受験後のゴタゴタですっかり忘れておりました
こんなのでも良ければ見て行ってくださると幸いです


木星プロキシマ、

ここはコーパスの領域である。

木星に眠る大量の希ガスやヘリウム3などの気体資源を採取し、船の燃料やエネルギー銃のバッテリーの材料とする。

グリニアガレオン船の動力源であるリアクターもこれらの気体資源を燃料とするので、コーパスの商人諸氏はどれだけ高くグリニアにガスを売りつけられるか…という方法で商人としての腕を競っているとか。

 

しかし毎度ガス代をぼられる方としてはたまったものではない。

馬鹿みたいなクレジットを払い、雀の涙レベルの量のガスを持ち帰る。

グリニアはついに怒り、木星圏までその醜悪で、見るに耐えない手を伸ばした。

 

オレンジ色の光が煌めき、その直後、轟音と共に大質量がコーパスシップに叩きつけられる。ラム・スレッドだ。

ラムスレッドというのはグリニア 、コーパス双方が運用している一種の強襲揚陸船であり、一切の武装を持たない代わりに高い機動力を持ち、敵船に向かって突撃、装甲板を貫き、中に登場している兵員を侵入させるものである。

 

『総員着剣!第一小隊はリアクター制御室へ、第二小隊は兵装制御室へ、前進!』

 

警報が鳴り響き、空気が漏れ出す中でグリニア 中隊長は命令を下す。それと同時に隊員は駆け出し、閉鎖された隔壁をこじ開けた。

《警戒!警戒!敵兵が船に侵入!コードブルー、コードブルー!》

《隔壁はどうなってる?!》

《こじ開けられた!》

《くそぅ!脳筋どもめ!》

クルーマンたちがコーパス警備サービス制式エネルギーライフル、DERAを乱射しながら受け答えをする

『ボンバード!頼んだ!』

『ホイさ!!』

爆音、グリニア重装擲弾兵、ボンバードがZARR携帯榴弾砲を撃ち放ち、バリケードを吹き飛ばす。

《あぁ!せっかく建てたのに!》

『前進!前進!』

コーパスが懸命に建設したバリケードを吹き飛ばし、グリニアは船内を進み続ける。弾丸と爆発、火薬と暴力と共にグリニアは進む。

『第二小隊から報告!兵装制御室に到着、全兵装の機能を停止!』

『よぉしよくやった!ガレオンに連絡して応援を呼べ!』

『総員突撃!双女帝陛下万歳!グリニアに勝利を!』

グリニア ガレオンの接近を脅かす兵装は全て停止した。

そう遠くないうちにガレオンがコーパスシップに接舷するだろう。

それまで進入口であるエアロックを確保した上で、自爆などをされないようにリアクター制御室を制圧するのだ。

《コーパステック小隊到着!持ち場を守れ!》

《一歩も下がるな!許可なく後退したものは今後10年間の減俸とする!》

《撃て!撃てぇ!!》

レーザー光が煌めき、エネルギー光線が飛び、高圧電流が流れる。

物理的に分厚く、硬い装甲服を見に纏うグリニアであれど高圧電流には無力である

『ウギャア!』

『高圧電流!注意!警戒!』

『イデデデデデ!電流痛え!』

『ボンバードはいいよなぁ!重装甲でよぉ!』

《死守せよ!これ以上先に進まれてはならん!》

ここまで攻め込まれているがコーパスにはまだ最終手段があった

《ブロック分離は進んでいるか?!》

そう、船のブロックを丸々切り離してしまうのだ。

これは確実に敵を葬り去れるが、味方の兵員も巻き込んでしまい、何よりブロックの新規建造費がかかるのだ。

拝金主義のコーパスにとってはこの建造費と遺族に出す保険料が何よりも惜しいのだ。

《ブロック分離間に合いません!グリニアガレオン接舷しまぁす!》

『ガレオンの接舷を確認!』

『第一小隊より通信!リアクター制御室の制圧に成功したと!』

『諸君!この戦いは我々の勝ちだ!掃滅を開始せよ!グリニア万歳!』

《総員退艦!急げ!死にたくなければ一刻でも早く脱出ポッドへ!》

斯くして、グリニアは木星の一区画を占領。ガスを多少なりとも自力調達できるようになったおかげで台所事情は改善された。

 

 

……少なくとも、今のところは。




感想もくださるとものすごく嬉しいです


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〜開戦〜あんまり関係ない評議員のブチギレを添えて

評議員ヴェイ ヘク
座右の銘:プラズマグレネードに始まり、プラズマグレネードに終わる外交
好きなもの:プラズマグレネード、HEK(ショットガンの一種)とグリニア
嫌いなもの:自分に敵対する者

困ったことの解決法:『プラズマグレネードのピンを引き抜き、投げる。ほぉら!困りごとなんて無くなっただろう?なぜならその原因が消えたからな!ハアッハハッハッハ!』


 話しは少し戻る。

 パーパルディア皇国のワイバーンロード部隊をあっさりと片付けたコーパス商業連合、その活躍を見て、文明圏に属さず、軍祭に参加した各国武官は放心状態となっていた。

 

「な・・・なんだ!!!あの凄まじい魔導船は!!!」

 

「なんという恐ろしい力だ!!常軌を逸しているぞ!!」

 

「あの列強ワイバーンロードをあっさりと叩き落とした!!いったい・・・何なのだ!あの船たちは!!」

 

「日本と、コーパスとかいう新興国家らしいぞ・・・」

 

「まさか・・古の魔帝の流れを汲む者たちでは!?」

 

 海岸から海を眺めていた文明圏外の国々の武官たちは、自分たちの常識とかけ離れた力を持つ巨大船に恐怖を覚えると共に、味方に引き入れる事は出来ないかを考え始めていた。

 パーパルディア皇国を遥かに超える力を・・・もしかしたら、あの船の国は持っているのかもしれない。

 フェン王国の軍際に来たのであれば、フェンとは友好関係にある*1という事だ。

 フェン王国と良好な関係を築き、あの船の国と仲良くなれば、もしかしたらパーパルディア皇国の属国化を防げるかもしれない。

 奴隷としての国民の差出や、領土の献上等、もしかしたら・・・*2

 

 フェン王国がパーパルディアの領土租借案を蹴った時は、フェンが焼き尽くされるのではないかとも思ったが、あの船の国と友好関係にあるのであれば、フェンが強気に出るのも理解できる。

 

 後にフェン沖海戦と言われた海戦後、日本は急激に多数の国と国交を結ぶ事となる一方で、コーパスは人気がなかった。

 

理由はたった一つ。莫大な額の“仲良し税”の支払いを求めたからだ。

一応コーパスの指導者に当たるコーパス運営理事委員会暫定委員長nef anyo殿曰く《我々コーパスがタダで戦力を差し出すわけがないでしょう。せめて弾薬代や食費、維持費諸々をお支払い願わなくては。……金がない?何を馬鹿なことを、ほら、そこに金の塊がいるでしょう?(国民を指しながら)》

………コーパスはどこへ行っても銭ゲバ、守銭奴、拝金主義者のドケチなのだ*3

 

ーーーーーー

 

パーパルディア皇国 第3外務局

 

 局長カイオスは、その報告を聞き、脳の血管が切れるのではないかと思われるほど激怒していた。

 事の始まりは、フェン王国が皇国の領土献上案を拒否した事からはじまる。

 498年間の租借案という「慈悲」も、双方に利があるにも関わらず、拒否される。

 

「フェン王国は、皇国をなめている」

 

 このような意見が第3外務局内で主流になった。

 数多の国々が存在するこの世界において、文明圏5カ国、文明圏外67カ国、国の大小はあるが、計72カ国もの属国を持つ列強パーパルディア皇国にとって、文明圏外の蛮国からなめられた態度をとられる事は、とても許容出来るものではない。

 他の国々の恐怖の楔が外れては困る。

 このような事情もあって、パーパルディア皇国第3外務局所属の皇国監査軍東洋艦隊22隻と、2個ワイバーンロード部隊が派遣されたのであった。

 

 ワイバーンロード部隊により、フェン王国首都 アマノキ に攻撃を行い、フェン人に恐怖を植え付け、軍祭に参加している文明圏外の蛮国武官に力を見せつける。

 そして、艦隊による無慈悲な攻撃により、フェン王国首都 アマノキ を焼き払い、パーパルディア皇国に逆らったらどうなるのかを他国に見せつける・・・計画だった。

 しかし、結果は惨憺たるものだった。

 空襲に向かったワイバーンロード部隊は魔信を入れる間も無く、消息を絶った。

 どうやったのかは不明だが、おそらく全滅したものと思われる。

 これについては、当初 ガハラ神国 の風竜騎士団が参戦したのではないかと疑われた。しかし、風竜は確かに強いが数が少なく、通信する間も無く全滅するのは考えにくい。

 その後に入ってきた情報、

 フェン王国水軍と、東洋艦隊が会敵し、敵水軍を一方的に撃破!我が方に損傷なし。

 これは良い。蛮族相手なら当然の結果だ。

 そして、問題は次に入った情報だ。

 「皇国監査軍東洋艦隊 敗北」

 第3外務局に激震が走った。

 しかも、提督は海戦の恐怖で頭がおかしくなったらしく、たったの1隻にやられたと、ありえない報告をしている。

 提督の言い分によれば、

○灰色の空飛ぶ超巨大船と会敵する。

 ○ 皇軍が攻撃を行ったとこ、魔導砲の射程圏外へ、砲がまるで届かなかった。

 ○ 敵巨大船は、距離3.5kmで艦隊に射撃、青い光が走った後、そこに船はもうなかった。

 ○ 敵巨大船は飛ぶ、近づいてから砲を撃っても届かなかったであろう

 ここまでの報告でも、おかしい所は多々ある。まず、船が我が方よりも大きいのに速いし飛ぶという部分。

 船が大きいと、当然水の抵抗は強くなる。パーパルディア皇国の使用している風神の涙は、はっきり言って世界一であり、神聖ミリシアル帝国でも、これほどの風神の涙は作れない。  

極め付けとしては船が“飛ぶ”という報告。どんな船であろうと、飛ぶことはないのだ。船とは、水の上を走るものであり、空を飛ぶものではないのだ。

そして、3.5kmもの距離を置いての威嚇射撃。

文明圏の列強でさえ、現在は2km飛翔する砲弾しか造れない。それを遥かに超える射程距離など、しかも文明圏外で、ありえるはずが無い。

敵対する船があり、物語のような超高性能船が仮に存在したとしても、光が走っただけで船が消えるとは……かわいそうに、頭が壊れてしまったに違いない。

 古の魔帝でも光の砲撃など無理だ。しかも、船のような巨大な物体を一撃で消しとばすなど、提督はなんて想像力が豊かなのだろうと感心する。

 しかも・・いや、もうやめよう。これらの報告は、完全に負けた言い訳だ。文明圏外の蛮国がそんな超高度な兵器を持っている訳が無い。

 提督以下の兵士たちは、口を噤んでいるという。提督に脅されているのかもしれないため、今後どんな敵で何隻いたのか、詳細な調査が待たれるところである。

 

皇国に泥を塗った敵がいるのは事実であり、ふざけた敵を殲滅する必要がある。

 しかし、敵が誰か知らなければ、攻めようが無い。

 今回は負けている。皇帝の耳にも入るだろう。次は、監査軍ではなく、最新鋭の本国艦隊が動くこととなろう。どこかの列強がバックについている可能性も高い。

 第3外務局は「敵」を知るため、情報収集を開始した。

 

ーーーーーーー

 

 パーパルディア皇国第3外務局 窓口

 

「もうしわけありませんが、今日課長と会う事は出来ません。」

 

 日本国外務省の職員と評議員ヴェイ ヘク(とその取り巻き)は、約束したパーパルディア皇国外務局の課長と会議のためやってきたが、窓口で再度足止めをくらう。

 

「何故ですか?約束したではないですか!!」

 

「ちょっと込み入った事情が発生いたしまして・・・。申し訳ありませんが、文明圏外の新興国と会議をしている状況ではないのです。予定は未定です。また1ヶ月以上後に連絡を下さい」

 

そして、案の定というべきか、短気なグリニア人の中でも一際凶暴で残忍な評議員殿の堪忍袋の緒がまた切れた。外務省職員にとっての苦難の時間はこれからだった

 

『き、貴様!ふざけるでない!このような小国など、貴様のような小役人などに!!このようにたらい回しにされるなど!我慢ならん!今夜からは震えて眠るがいい、もしかしたらプラズマグレネードが貴様の枕の下に潜んでるかもな!フフ、ハァハッッハッハ!』

 

「ま、まぁまぁ、評議員閣下。今日のところは、今日のところは帰りましょう?そんなにかっかせずに、ほら、次は面会できるかもしれないじゃないですか。ね?」

 

『やかましい!このヴェイ ヘク。座右の銘は“プラズマグレネードに始まり、プラズマグレネードに終わる外交”なのだ!今こそ、この座右の銘が生きる時だ!今でなく、いつ生きるか!』

 

この評議員、先述した通りかなり短気で、凶暴なのだ。一回怒り出すと終わりが見えないし何より怖い。とにかく怖い。

顔も怖いしすぐに持ち出すプラズマグレネードが怖い。

ていうかプラズマグレネードって何?なんなの?なんでいつも持ってるの?

 

 日本が原因で第3外務局は忙しくなっていたため、この日も重要人物とは面会できず、日本国外務省の職員は、この日もトボトボと、グリニア 人と共に評議員殿を引きずりながら帰っていった。

 

『この恥は忘れんぞ!貴様らの局長、カイオスと言ったか?に伝えておけ、貴様だけは必ず殺してやるとな!一番苦しい目に合わせた後に殺してやる!必ずだ!』

 

 

フェン王国の軍祭の後、日本は文明圏に属さない国々と、次々と国交を結んでいった。

 今までは、日本から出て行き、調査して国交を申し込んでいたが、フェン沖海戦の後はレトロな船にのって次々とやってくる国が増えた。

 海上保安庁は忙しくなったが、日本と国交を結んだ国は22カ国に増え、通商が始まった。

 

一方、コーパスも宣伝を始めた。値段は張るが、強く、大きい傭兵としてコーパス警備サービスを売り出したのだ。しかも今なら始業記念として出血大サービス、通常1週間の契約10万クレジット(任務により変動します)のところ今ならなんと半額以下の4万!契約しない手はありません!(なお料金の支払いが滞った場合コーパス警備サービス月間最優秀社員が取り立てに赴きます、ご了承ください)

 

グリニア はというと……昔と変わらず、喚き散らしているだけだった。

ワン将軍は賢明と言えど、“グリニア人の中で”最も賢明なのだ。軍事的な技術や知識は他の種族と比べても最高峰に位置するが、政治や外交はというと……なんというか、控えめに言って下手くそである。これは前世界でグリニアが歓迎されなかった原因の一つである。

なので苦肉の策として同じく傭兵サービスを始めた。(なお個体によっては異常に凶暴になり、味方を撃つ可能性がございます。導入の場合はよくご検討ください)

 

ーーーーーーー

 

 パーパルディア皇国第3外務局

「なんだと!?今年は奴隷の差出が出来ないだと!?」

 

 外務局職員が、トーパ王国(文明圏外)大使に怒鳴りつける。

 

「我が国の民を、奴隷として貴国に差し出すのはもうやめとうございます」

 

 大使が冷汗をかきながら答える。

 

「ふん!では、各種技術供与の提供を、貴国だけ停止させるぞ!!」

 

 皇国は、超旧式技術の供与を文明圏外の国々に少しずつ行っていた。少しずつ国力が増す・・・が、周辺国家も少しずつ国力が増すため、パワーバランスは変わらない。

 一国だけ供与が停止されると、他国との発展速度に差が出るため、他国に先を超され、国力は衰退する。

 皇国は、各種技術供与も外交手段の一つとして利用していた。

 言うことを聞かなければ、工具や、釘などの部品の輸出の停止まで視野に入れていた。

 これで完全に国が立ち行かなくなる・・・はず。

 

 トーパ王国の大使はいやらしい薄ら笑いを浮かべる。

 

「技術ですか・・・。ならば、我々は奴隷を差し出さない。皇国は我が国への各種技術供与を停止する。これでいかがですか?」

 

 今までのトーパ王国からは考えられない強気な態度だ。

 大使は話を続ける。

 

「我々は・・・あの日本と国交を結んでいるのですよ」

 

 フッと笑い、大使は締めくくった。

 

コーパスに魔導技術を売り、代わりにその科学技術を買い、グリニアに治癒魔術を売り、無尽蔵な人的資源の一部を貸与してもらう、最後にセーフティーネットとして日本と国交を結び、二カ国に見捨てられても日本に守ってもらう。これが文明圏外国の流行りであった。

 

 

*1
一応言及するが友好関係にはない。フェン王国宣戦布告の正当化に使われたのみである

*2
莫大な税金が待っているのでそれはない。コーパスの教義は搾取なのである。払えなかった場合は体(有機部品としての価値が高い)と労働力で支払わされるのだ

*3
これでかなり強いんだからタチが悪い




ヴェイ ヘク殿は叫び声が好きなんですよね……
伝説の話も書きたいな……
コメントと評価くださると励みになります
一言だけ!関係ないことでもいいので!


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番外編 依頼〜莫大な依頼金を添えて〜

ガンバッタ


コーパス警備サービス本社、オペレーター室。

ここは特に仕事はなく、同僚と話すことしかやることがないので陸の孤島と言われているが唐突にクビになることもなく、テンノに強襲されて死ぬこともないことを考慮すれば楽園と言っても差し支えないだろう。

今日も多くのオペレーターは暇を持て余し、同僚とたわいの無い話で盛り上がっていた。

 

通信機は鳴ることのない置物として扱われ、気にするものは誰一人いなかった。

しかし今日、その置物が大きな声をあげて喚き散らかしたのだ。

 

『コーパス警備サービスとやらであっているか?!』

⦅はいはい、こちらコーパス警備サービス。ご依頼を承ります。⦆

 

全オペレーターは即座にお喋りをやめ、持ち場についた。

ここに勤めから初めての仕事だ、みんな気合が入っているのがよくわかる。

 

『こちらトーパ王国!助けてくれ!』

ーーーーーーーーー

 

コーパス警備サービス実働部隊

 

⦅それでは、今回の依頼の概要を説明しよう。私は今回の実働部隊隊長John prodmanだ、よろしく頼む。⦆

 

john prodman。生きる伝説にして、コーパス従業員の憧れの的。そしてなによりもコーパス月間最優秀社員賞を取ったことのある大人物だ。

悍ましい感染体の怪物、PHORID*1を相手に自らのprova*2のみで殴り合い、勝利をその手に収めた。その業績と名声は方々に轟き、コーパス取締委員会ですら彼のことは無視できなくなっていた。

そこで持ち上がっていたPMCの展開案を利用して名誉職(体のいい厄介払い)として彼を実働部隊隊長に割り当てた。

Johnが話し始める。

 

⦅今回は、トーパ王国へ、有害鳥獣駆除の名目で我々は派遣されるんだが・・・今回の害獣は知能を持ってる。まぁいつものことだな。⦆

 

コーパスはエウロパにおいて非常に高い頻度で“感染体”の脅威に脅かされている。感染体の一般個体に対した知能はないが、PHORIDやLEPHANTISなどの成長した感染体は人間すら上回る高い知能を持つ。

 

彼らにとって化け物退治は日常茶飯事だったのだ。

 

各人は配布されたレジュメを見ながら説明を聞く。

 

⦅魔王と呼ばれた個体は強力な魔法を使用するそうだが最大のものでもその射程距離は1kmくらいらしい。⦆

 

 

 説明は続く。要約すると下記のとおりになる。

 

○ 魔王と呼ばれる害獣は知能を持ち、他の害獣を配下に置き、組織的に人間等各種族に対して害を与えようとする。

   なお、彼らの主食は人間である。

 ○ 魔王は寿命が無く、不老である。

 ○ 魔王は古の魔法帝国と呼ばれた古代文明が作り出したものらしい。おそらくは遺伝子操作に類似した技術であると思われる。

 ○ レッドオーガ、ブルーオーガと呼ばれる魔獣も相当の強さを誇るらしい。

 ○ オークと呼ばれる魔獣は全長2・5m程度の巨人のような者であり、知能は低いが弓は通る。

 ○ ゴブリンと呼ばれる魔獣は人間より力は弱いが強暴であり、すぐに数を増やす。

 ○ 現在、トーパ王国騎士団が城塞都市トルメスで魔王軍をくいとめている。

 

⦅今回の任務内容はオーガの抹殺及び人質の救出。さっさと終わらせよう。⦆

ーーーーーーーーーー

 

コーパス降下船団がトーパ王国に到着した時、地面は見たこともない怪物の群れによって埋め尽くされ、悲鳴と怒号がそこら中で飛び交っていた。

⦅こりゃすごいな……⦆

⦅給料分の仕事くらいはしようじゃないか⦆

 

降下船は轟音を上げながら、地面に近づき、着陸シークエンスを始める

⦅そこの兵士たち!死にたくなければ場所を空けろ、ご協力に感謝する⦆

スラスターから青い炎が吹き出し、地面を焦す。忠告を聞かず、その場に居座っていた兵士は不運にもチリとなって消えてしまった。

地に着陸脚をつけ、コーパス人とロボティクスがぞろぞろと船の腹から降りてくる。

壁の上にいるトーパ王国軍の騎士ーー現場の責任者のようなものであろうーーにして今回の依頼主、モアが降りてきた。

「おお!あなた方がコーパス警備サービスとやらの!」

⦅ええ、そうですとも。御依頼はあの化け物の掃滅ですね?⦆

「ええ、ええ!本当にやれるんですね?!成し遂げてくだされば相応の額を支払いましょう!」

モアはすっかり興奮している。

その一方コーパスはひと抱えもある紙の束を持ち出し、説明を始めた。

⦅ではこちらの契約書にサインを、なおコーパス中央取引法に基づいてこの契約書はサインしたその時から発効します。免責事項やその他各種注意事項に目を通し……⦆

彼方で悲鳴が聞こえようともコーパスは淡々と説明を続ける。

モアはあの悲鳴が自分の同僚であることに気づき、居ても立っても居られないようだ。しかしながらコーパスは一向に戦い始めようとしない。未だに紙の束を抱えてページをめくりつつ何かを話し続けている。

⦅免責事項その52、乙*3の広域攻撃に甲*4が巻き込まれた場合乙は一切の責任を負い兼ねる。免責事項その53……⦆

「わかった!わかったから早く戦っていただきたい!こうしている間にも前線のみんなは傷ついているんだ!」

ついにモアの堪忍袋の緒が切れた。前線で兵士が傷ついているにもかかわらず、ゆったりと緊張感も無く。滔々と何かの説明をしている。根っからの武人であるモアには耐えられなかった。果たして彼らは本当に戦おうとしているのか、果たして彼らには戦士としての誇りがあるのか!

モアは契約書を奪い取り、サイン欄に自らの名前を記した。

⦅では契約成立ということで……オペレーター!座標を伝える。衛星爆撃用意。⦆

コーパスの一人がそう叫ぶと空の彼方が輝き始めた。

⦅座標。194386の5E0M67⦆

⦅砲撃開始。⦆

空から光線が迸り、前線の半分を消し飛ばした。

前線とともに魔物のほとんども消し飛んだがトーパ王国軍にも多大なる被害が出てしまった。前線に構築したバリケードも無に帰し、戦っていた騎士も溶けた鉄の塊を残して蒸発してしまった。

一人の幸運な生き残りがその悲惨な状況を報告し、モアは激怒した。

「何をするんだ、何をしたんだ!!味方が、味方が!消し飛んだぞ!」

モアはコーパスの代表者と思しき人物に掴みかかった。コーパスの体は思ったよりも軽く、簡単に持ち上げられた。

⦅契約書をよく読まないからですよ、閣下。しっかりと書いてあったでしょう?!⦆

「何がだ!」

⦅免責事項その52、我々の攻撃に巻き込まれても我々は一切の責任を負わない。これを読んでいれば巻き込まれる可能性に気づいて我々ではなくグリニアや日本に依頼すると言う手もあったはずですが………それを説明している途中に奪い取ってサインをしてしまった。キチンと読まなかったあなたが悪いのです。 ⦆

コーパスはやはりどこまでも商人だった。より効率的により多くの利益を上げる方法を常に考え、この場合においてはトーパ王国軍諸共化け物どもを攻撃すると言う方法だったわけだ。

「うっ…くっ……」

痛いところを突かれたモア将軍はもはや沈黙するしかなかった。手の力は緩み、コーパスの体は地面に落とされてしまった。

⦅いっってえ……戦闘を続行する。戦線の状況は?⦆

⦅ロボティクスを展開、生身の人間の代わりに前線を張っています⦆

いつのまにか降下船がもう一隻現れ、金属の箱状のものをどんどん投げ落としていた。

そして金属の箱は地面に接触するや否や即座に二本の鳥のような足を展開し、自律行動を始めた。コーパスが誇るセキュリティロボットが一種、“モア”である。なお騎士のモアとはなんの関係もない。語源は鳥のモアだ。

その背に背負ったレーザー砲で魔物への砲撃を開始し、一匹一匹と確実

仕留めていく。

殲滅速度は遅いものの確実に魔物の数は減っていく。

⦅よし……これで前線はひとまず安定するだろう。⦆

⦅この後はいかがいたしますか?⦆

⦅上にジャッカルもしくはハイエナパックの出動要請を送る。⦆

ジャッカル。コーパスが誇る汎用型セキュリティロボットが一種にして汎用型最強を誇る。テンノでさえ油断すれば瞬きする間にやられてしまう*5

これほどの戦力があればこの戦線は安泰だろう。

⦅それでは諸君、会議室へ。⦆

 

ーーーーーーーーー

コーパスの商人にとって真の戦場とは会議室であり、銃火飛び交う前線ではない。会議室で自らの主張を通し、より多くの予算を分捕り、より多くの利益を上げる。その裏では破壊工作、情報戦、暗殺など様々な工作がされており、戦争の前線に勝るとも劣らない血が流れ続けているのである。

⦅それではロボティクスオペレーター諸君、報告を。⦆

コーパス傭兵隊隊長が言う。これを合図に会議は踊り始める。

⦅モア部隊により前線は安定。しかし押し返すことは不可能かと。⦆

⦅上層部よりジャッカルの使用許可が下りました。現在輸送中。⦆

⦅衛星爆撃はいつでもいけます。前進観測隊が降りてきます⦆

情報が一気に押し寄せ、情報の高波、そして津波と化していった。

ロボティクスによる奮闘の様子、衛星砲の状態、上層部の判断、その他多数の情報が銃弾のようにそれぞれの口から撃ち出される。それを隊長は受け止め、うまくそれぞれの情報を繋いで現状を把握する。

⦅現状把握は完了した。それではこれからの戦略を練ろう。モア殿、情報提供を求める。⦆

「うぬ……この戦場より北にはミナイサ地区があり、そこに人質は囚われていると考えられている……」

 

ーーーーーー

 

先程の会議で得られた情報をまとめるとこうだ。

 

○ 魔王軍約2万は突如としてグラメウス大陸からトーパ王国管轄、「世界の扉」へ侵攻、守備隊は全滅した。

○ その後、魔王軍は城塞都市トルメスの北側に位置するミナイサ地区に侵攻し、これを陥落させる。

○ ここにおいて、トーパ王国軍の援軍が到着し、これより先の侵攻を被害を出しながらくいとめている。

○ 魔王はミナイサ地区の領主の館を使用し、外には出てきていない。

○ ミナイサ地区には、まだ逃げ遅れた民間人約600名がおり、彼らはミナイサ地区中心部の広場に、昼間に一度集められ、毎日数人がつれていかれ、魔王その他の餌にされている。

 そのため、当初600名いた逃げ送れた民間人もその数を減らし、現在は200名まで減っている(食されたため)

○ 魔王軍に与えた被害はゴブリン約3000体、オーク10体であり、こちらの損害は騎士約2000名がすでに死亡している。

○ 3回ほど、ミナイサ地区の人質救出作戦が行われたが、広場に至る大通りには必ずレッドオーガもしくはブルーオーガのどちらか1体がおり、多大な損害を受け撤退、細道を行った騎士は各個撃破され、戦線は硬直している。

○ 人質は毎日食されており、早く助けなければならない。

 

 コーパスとしては人質が会社の重役やコーパス取締委員会会員でもなければ別に救出しなくてもいいと考えているが、今回は契約に盛り込まれているため人質を出来るだけ四肢が揃ったまま確保しつつ、オーガを抹殺せねばならない。

⦅面倒だ……ジャッカル突っ込ませて済むならいいが……⦆

 

ーーーーーー

なんだあいつらは。

モアが彼らに抱いた感想だった。

 

頭には箱のような形をした兜をかぶっており、声も人間のものとは思えない。

前線で皆が傷ついていると言うにあの長ったらしい話が終わるまで誰も戦おうともしなかったし、先程は仲間ごと魔物を撃った。

奴らには誇りと呼ばれるものはないに違いないが、この仕事はきっちりこなしてくれるだろう。

 

にしても奴らはどうやってオーガを倒すつもりなのだろうか?

あの鉄の怪鳥は素早いが力がそんなにあるとは思えない。

コーパス人にしてもあの細っこい体で戦えるとも思わない。

 

これから軍議だと考えると気が滅入る……

 

そう考えながらも部下を従え、彼は会議室へと入っていった。

 

コーパス人はすでに代表であろう者とその護衛を従えて席に座っており。私と部下が入室したのを見て立ち上がった。

代表はかなりがっしりとしている。戦士らしい体型だ。腰にも剣だかなんなのかわからんがつけている。

 

とにかく彼らを着席させ、私も座った。軍議の始まりだ。

最初に口を開いたのはコーパスだった。

⦅モア殿、この先の地形について……⦆

 

その言葉を打ち切って、音が響き渡った。

 

パリン!!!

 

天窓のガラスが砕け散る。

入ってくる黒い物体。

物体は漆黒の羽を生やし、白い服を着て会議室に降臨する。

 

「魔王の側近、マラストラス!!!」

 

誰かが叫ぶ。

剣を抜き、マラストラスへ向け、構える。

私が剣を構えたところ、会議室にいた他の騎士たちもすでに剣を抜いていた。

 

「ホホホ・・・人間の頭を討ち取るために、我が足を運ばねばならぬとはな・・・。永き時をへて、なかなか進化したようだな、人間どもよ」

 

マラストラスはそう話すと、騎士隊長へ向かい、手を向ける。

手の先は、魔力により空気が歪み、黒い炎が現れる。

 

「させるかぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

副騎士長が距離を詰め、魔族マラストラスの横から斬りかかる。

気持ちの悪い笑みを浮かべ、マラストラスは手を副騎士長へ向け、魔法を発動する。

 

「ヘル・ファイア」

 

 黒い獄炎の炎が副騎士長に襲いかかる。

 

「ギィアァァァァァァァァ!!!」

 

黒い炎は彼を焼き尽くす。断末魔と熱風が辺りを支配する。

コーパスの者たちは、あせった顔をしている。

マラストラスから離れようとしているようだ。

やはり、数々の伝説は噂だったのか?

彼らは、背負っていた鉄塊を魔族マラストラスへ向ける。

いったい何が出来るというのか。

 

バシュン!

 

 

一言も発さずに彼らは鉄塊についている引き金のようなものを引いた。そして鉄塊からは光の玉が一発とそれに伴う光の板のようなものが飛び出した。

それは光の板と玉が触れたあらゆるものを燃やし、消滅させながら魔族マラストラスへ飛んでいき……

 

 

断末魔どころか声ひとつ上げることもなく彼もしくは彼女は蒸発した。

 

モアが見た鉄塊はコーパスが誇る携帯プラズマ砲arcs plasma。放射線と高い熱を伴う衝撃波をプラズマ弾と共に射出する強力な兵器である。テンノの中にも愛用しているものは少なくない。

 

⦅それでは話の続きをしようじゃないか。⦆

 

代表は何もなかったようにモアに向き直って言った。

顔は兜のせいで窺い知れないが声は落ち着き払っており、護衛も鉄塊を抱えて側に立っている。

 

侮れない相手だ。

 

その後軍議は深夜まで続き、朝日が見えてからようやく会議室から皆は解放された。

ーーーーーーー

 

怖い・・・怖い・・・誰か、た す け て )

 

城塞都市トルメス、ミナイサ地区で飯屋を営んでいたエレイは恐怖に震えていた。

 

魔王の侵攻で生き残った者たちは、昼間に一旦広場に集められ、夜には魔物に管理された建物内へ移動させられる。

広場では、周囲を魔物が警戒し、逃げ出せない。

現に逃げようとした人はいたが、すぐに捕まり、民衆の前につれてこられ、その場で料理されてしまった。

魔物たちは料理される被害者を指差して、「生き踊り、はっはっは」などと笑っていた。

毎日、何人かが料理のために連れて行かれた。

 

「今日は・・・おばえと、おばえと・・・おばえだな。」

 

隣に住んでいた幼馴染の少女メニアも昨日連れて行かれた。

メニアの両親は娘をつてれいかれまいと、必死に戦ったが、3人そろって連れて行かれてしまった。

生き地獄。

何故今、魔王が・・・御伽噺に載っていたような恐怖が復活したのだろうか。

神様がいるなら、助けてほしい。

幼馴染で、傭兵になったガイ君、騎士モア様がいたな。助けに来てくれないかな。

モア様は、世界の扉に勤務していたから、もう死んじゃったかも。

 

何回か、王国騎士たちが助けに来ようとしたけど、今広場と城門を結ぶ大通りに立っているレッドオーガにやられてしまった。

昔話では、魔王軍とエルフの戦いで、エルフの神の祈りを聞き届けた太陽神がその使いをこの世に降臨させたとあった。

私はエルフだ。

神ではないけれど、祈ろう。

神様!神様!どうか皆を、そして私たちを助けて下さい。

魔を滅して下さい!!再び太陽神の使いを降臨させて下さい。お願いします!!

 

祈るが、何も起きない。

 

「ええと、今日の肉はと・・・」

 

また、魔物が料理のために各種族を見ている。

 

「魔王様は、今日はあっさりしたものがいいと言っていたな」

 

「今日は野菜をメインにして・・・」

 

皆に安堵の雰囲気が流れる。

 

「味付け程度に、エルフの女くらいが丁度いいだろう。おばえな」

 

魔物がエレイの右手を掴む。

 

「イヤァァァァァァァァァ神様ァァァ助けてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

「ゴラ、暴れんな」

 

その時だった。

 

ドウン・・ドウン

 

レッドオーガの周りが煙に包まれた。

 

ーーーーーーーー

⦅脅威判定……大。排除を開始⦆

合金で作られた四足歩行の化け物、コーパスの科学技術の真髄が作り出したものの一つ。the jackal。

コーパスセキュリティロボットの傑作と名高い製品であり、テンノの妨害がなくなった今では量産され、各戦線で猛威を奮っている。

二機の大口径機関砲でゴブリンを薙ぎ払い、マイクロミサイルで集ってくる有象無象を吹き飛ばし、その屈強な四肢でオーガへ飛びついた。

⦅分析完了。レッドオーガ、脅威レベル低下。このグズめ。⦆

ちなみにであるがthe jackalには煽り機能がついている、誰だこれ取り付けたの。

 

その言葉に激昂したレッドオーガは棍棒を振り上げ、渾身の力で持って振り下ろした。しかしながらthe jackal は合金製の装甲板で易々と受け止め、逆に持ち上げてオーガのバランスを崩し、その醜悪な赤い体の上に覆い被さった。

⦅グリッドウォール起動⦆

その無慈悲な一言とともに赤い光が見えた、高出力のレーザーだ。

哀れなレッドオーガはレーザーによって体を無数のサイコロに切り刻まれ、そのまま死んでしまった。

ーーーーーーーーーーーー

 

人質救出作戦に参加している別働隊は、涸れた上水道を通じ、広場の真ん中にある涸れた噴水から飛び出してきた。

 

 ゴブリンロードが10体ほど民を見張っている。

 

パパパパパパパパ……パパパ…

脅威判定……小。抹殺開始。

 

 噴水だった建物の上の少し高い位置から、ゴブリンロードを排除する。

 騎士モアと、傭兵ガイも噴水から飛び出す。

 

「まったく・・・こんな敵の真ん中に出る作戦を考える奴は、正気の沙汰じゃないぜ」

 

 そんな事を言いながら、ガイは辺りを見回す。

 ゴブリンロードに手を引かれるエルフの女性を発見する。

 

「あ・・・あれは!!!!!」

 

 ガイは一直線にエレイへ向かい、ゴブリンロードに剣をふり下ろす。

 

 ピギャァ!!!

 

 ゴブリンロードは、ガイの剣撃により、絶命した。

 

ーーーーーー

 

 エレイは死を覚悟した。

 魔王の食事の肉にされるため、化け物が私の手を引く。

 

「イヤァァァァァ」

 

「ゴ・ゴラ、暴れるな」

 

 なおも手を引こうとされたとき、大通りにいた鬼の足元が爆発した。

 鬼は怒りの顔を浮かべ、脇道に入っていった。

 

 ドグン!!ダダダダダ・・・!!

 

 大きな何かが破裂する音が聞こえる。

 他の魔獣たちも、僅かな魔物を残し、音のする方向へ走っていく。

 その時、広場の真ん中にある涸れた噴水塔から、緑色の変な格好をした人間が現れた。

 斑模様で気持ち悪く、一瞬魔物と間違えたが、良く見ると人間であり、手には黒い杖のような物を握っていた。

 彼らはその杖を使い、激しい音の出る何かの攻撃魔法で魔獣を葬りさった。

 

 私の手を握っていた魔物は唖然としている。

 1人の剣士がその魔物を斬って捨てた。

 彼は・・・私の良く知る人物だった。

 

「よ・・・よぉ、エレイ、大丈夫だったか?」

 

幼馴染の傭兵ガイだ。

彼は、良く私の店にも食べに来てくれた。

3年前には付き合ってほしいと告白されたが、丁重にお断りした。

だって、現実を見たら、傭兵って安定していないんだもん。

 

でも・・・私が死にそうな時、助けてくれた。

こんなに怖い魔物がいる戦場に、私を助けに来てくれた。

 

(ちょっぴりカッコ良かったよ・・・)

 

そう思って、ガイに話しかけようとした、その時、

 

「エレイさん、大丈夫ですか?」

 

後ろからの声に反応し、光の速さで振り返る。

 

「モ・・モア様ん」

 

(いかんいかん、一瞬気が迷ってしまった。戦場まで助けに来てくれたのは、モア様も同じ。やっぱりモア様は、私の白馬の王子様よ。絶対に逃がさん)

 

「私のために来て下さったのですね。エレイ、カ・ン・ゲ・キ!」

 

報われぬ傭兵ガイだった。

ーーーーーーー

 

⦅市民の皆様ー、慌てずに落ち着いて避難してくださーい。全員の席がありますよ、全員登場できますよーー⦆

 

コーパステックがヘルメット内蔵のボイスチェンジャーを拡声器がわりにしながら避難誘導をしていた。

手にsupra……レーザーガトリングを持ちながら叫び続ける。

 

その時、後方から雄叫びが聞こえた。

「ちくしょう!ブルーオーガだぁぁぁぁ!!」

 

市民は一瞬にしてパニックに陥った。

ーーーーーーーー

 

彼らはよくやってくれた。あの四角い兜をかぶった、真っ赤な兵士は手に持っている鉄の塊をブルーオーガに向けて、光の球を放っている。

あの伝説のブルーオーガがオークを数十匹率いてこちらに向かっている。今度こそダメだろう。ああ、神よ、なぜ我々を見捨てたもうたのか。

 

⦅arca plasmaあったろ!持ってこい!⦆

四角い兜の者たちが一斉に動き始める。

しばらくすると鉄塊を抱えた者がやってきてオークを消しとばし始めた。鉄塊から光の玉と板が発射されるたびにオークが消えていく。だがオーガにはあまり効いていないように見える。肌と筋肉が焼けていっているが焼けたそばから治っていっている。

 

⦅モアをありったけ連れてこい、jackalもだ!⦆

叫び声を聞いてから鉄の鳥と獣ががどんどん集まってきた。

光の球は光の塊のように見えるほどに多くなり、オーガを押し始めていた。

焼けたそばから治っていくが、治る前にもっと焼けさせる。なんと言う頭の悪い戦法だろう。

しかし有効だ。

ブルーオーガはすでに腕が一本なくなっている上に腹の肉が半分以上なくなっている。

鉄の鳥は頭から光を撃ち、獣は腹から光の壁を打ちだす。

オークはとっくに全滅しており、残すはブルーオーガのみ。果たしてこの削り合いはどちらが勝つのだろうか?その答えを我々は見た

 

 

 

 

ズゥーン……

 

ブルーオーガがついに倒れた!

その死体はひどい状態だった。穴だらけで、ほとんどの肉がなくなっている。死肉を食うハゲタカですら寄り付こうとしないだろう。

我々は……伝説を見たのかもしれない。

ーーーーーーーーー

⦅ミナイサ地区制圧完了!旗を掲げろ!⦆

一人が合図を出した。

合図を聞いた他のものが壁の上からホログラムを展開し、壁一面にトーパ王国のシンボルとコーパスのシンボル……青い円の内側に三角がひとつ……を映し出した。

 

これよりこの街は魔物の支配より抜け出し、栄光ある人類の名の下に再び栄えるのだ。

*1
バイオハザードのタイラントの超凄いやつみたいなもの

*2
スタンロッド

*3
コーパス警備サービス

*4
トーパ王国軍

*5
ソーティーだと割とやられる、やられない?



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