甲子園を魅了し続けた二刀流 (焼肉定食)
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プロローグ主人公の野手ステータス

カーン

 

たった一つの音が球場内を駆け巡る。

 

『打った!!打った瞬間分かる大きな当たり!!』

 

手を回す審判団の中を俺は片手を上げガッツポーズをしている。

 

『入った。代打逆転サヨナラ満塁場外ホームラン。杉田。決勝でアメリカ相手にやりました。』

『いや。物凄い当たりですねぇ。これで中学生なんだから期待できますね。』

『羽田ジャパンに世界の杉田あり。それを見せしめる最後のアメリカとの試合でした。』

 

「……お前何回俺のその試合見るの?」

「え〜カッコいいじゃん。その試合。」

 

俺は幼馴染の家で朝食を食べていると、もう見飽きたほど見たビデオを見て呆れてしまう。

俺こと杉田光輝の幼馴染の秋山未来はトーストを食べながら目を輝かせる。

 

「たく。それ半年前だろ?それもピッチャーやっていた時の話だし。なんで代打に使うのかね。」

「だってこうちゃんはショートが基本でしょ?」

 

俺がピッチャーとしては最終回しか投げてはいない。それ以外は基本ショートとして出ているのだが

 

「抑えとして国際大会一点も取られてないのだけど。」

「そういえばそうだったね。」

「お前も観戦に来てたんだろ?なんで見てないんだよ。」

「だって私はこうちゃんしか興味ないし。」

「…たく。なんでそう恥ずかしいこというのかな?」

 

おそらく天然発言だろう。こいつは小学校のころからこういうことを簡単にいう。

 

「世界大会で6ホーマー打率3割盗塁4のMVPのバッターならピッチャーではなく野手として注目されるのは当然でしょ?」

「……そうだけどさ。」

「でもなんで薬師高校なの?青道や稲実。帝東からも誘いがあったんでしょ?」

「……お前俺にそれだけの学力とお金があると思うか?」

「うっ!」

 

というのも俺の家は少し貧しいのである。

俺は小さいころから野球をやっていたのだが、それのおかげで俺は誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントを全部野球のためにつぎ込んできた

理由は家のローンが払い終わってないからなんだけどなぁ。

平社員の親父とお袋で精一杯で寮生活は厳しいのである。

 

「とりあえずいくぞ。さすがに初日から目立ちたくないし。」

「は〜い。」

 

と俺たちは朝飯を食べた後に学校へと向かった。

 

春の陽気が俺を包み込む。

季節は春。

新しい陽気が包み込む。

 

「ふぁ〜ぁぁ。」

「相変わらずだな。お前。」

「まぁいつもの通りでしょ?」

 

小学校から幼馴染の葉山純平が俺の方を向く。

今は入学式の最中で

 

「いやだって暇だろ?」

「まぁ。そうだけど。」

「…お前らな。」

 

と呆れたように俺と未来を見る純平。

 

「でも野球に関してだけはお前は熱心だからな。だから薬師に来たんだろうし。」

 

薬師はこの付近の学校では一応強豪と言える。去年の夏と今年の春はベスト8。十分強いはずだしな

 

「二人の二遊間も見たいね。もちろん私はマネージャーになるからね。」

「またいつものか。」

「いいでしょ。」

「「そうだけどさぁ。」」

 

と少し小声で話す俺たち

 

「とりあえず帰りしなグラウンド集合。キャッチボールがてら投球練習しようぜ。」

「お前の球取りづらいんだけどなぁ。緩急えぐ過ぎだろ。」

「時速40kmくらい違うもんね。」

「まぁ後からな。」

 

とすると校長の話が終わるとくだらない話をしているうちに時をしている。

これは高校野球からプロ野球人生をかけて甲子園を魅了し続けたとある天才二刀流選手の物語である。




杉田光輝 ポジション ピッチャー兼ショート

弾道 4
ミートB  76
パワーSS 101
走力 B  78
肩力 B  76
守備 A  87
補給 B  73

得能 
チャンス◎  鉄人 盗塁◎ 走塁○ 送球◎
真・アーチスト 真・広角砲 固め打ち おかわり バント 初球 恐怖の満塁男 威圧感 ローリング打法◎ 精神的支柱 守備職人 三振 お祭り男
調子安定 強振多用 選球眼 積極打法 積極盗塁 積極守備 

直球に強く特に甘い球はとことん捉えるバッターで向かい三振を怖がらず追い込まれてもフルスイングを続ける
特にチャンスや満塁時はとことん強く広角に強い打球を放てるので多数のスカウトに中学時代はいたのだが金銭的事情により薬師高校に進学した


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最初の出会い 及び投手ステータス

「久しぶりだな。ボール。」

「お前何ヶ月ぶりだ。キャッチボールするの?」

「二ヶ月ぶりだな。マジで感覚抜けてないか心配。」

 

と俺と軽くキャッチボールをしていると

 

「あれ?もしかして一年か?」

「……?」

「おぅおぅ早いもんだぜぇ〜よっぽど野球に飢えているのか?」

「誰だ?おっさん。」

「おい。こら純平。お前は少しは言葉を選べよ。」

 

髭面おっさんの中年男だけども多分

 

「この人多分野球部関係者だぞ。」

「えっ?」

「おう。坊主。なんで分かった?」

「手のマメですよ。遠目から見ても俺たちと同じような手をしているので。」

 

実際手のマメが尋常ではない。おそらくバットを何十年も振っていないとできない手だ。

 

「……ほう。」

「お前本当に野球のことだけは優等生だよなぁ。普通気づかないだろ。」

「いいからやるぞ。せっかく上がって来たんだし後30球投げたら肩温まるから。」

「あいよ。この人数じゃ投球練習くらいしかできないしなぁ?」

 

俺は苦笑すると

 

「おっ?ポジションはピッチャーか?」

「いやメインはショートですよ。ピッチャーはバッティングに影響してしまうんでクローザーだけです。」

「クローザー?珍しいな。」

 

中学校の野球ではクローザーとしてセーブ成功率100%を記録しているのだがそれは置いておいて。

 

「それなら俺の息子も混ぜてもらっていいか?」

「息子?」

「あぁ。そこにいるだろ。」

 

するとキョロキョロとした少年が俺の方を見ていた。その瞬間

 

ゾクッ

 

寒気が急に押し寄せてくる。

……もしかして

 

「別にいいですけど。」

「……いや。純平マスクつけてくれ。多分俺と同じタイプだ。」

「えっ?」

 

純平は驚いたようにしているが、おそらく俺が本気で投げることは滅多にないことだから分かったんだろう。

 

「あぁ。それじゃあ本気で投げるんだな。すいませんマスクとプロテクター借りてもいいですか?」

「えっ?お、おう。部室の鍵は持ってきているからいいぞ」

「ありがとうございます。」

 

俺は軽く息を吐く。

 

 

……やべぇ。久しぶりのマウンドだ。

 

俺はマウンドで軽くロージンをつけながら息を吐く。

するとバッターボックスに構えている。

俺は少しボールを持ち軽くボールを持つ。

 

「……ふぅ。」

 

俺は軽くジャンプをし、マウントへ立つ。

そして純平がミットを構えたのが見えた。

 

んじゃいくか。

 

俺は投球フォームをゆったりと取る。

俺の野球人生で始めてみた試合はとあるオールスターだった。

当時俺は両親の影響でオールパシフィック側にいたのだが、

俺が目にしたのは相手チームの黒と白の縦縞のユニフォームを着た今も現役でやっているあのクローザーだった。

 

ストレートは150km前後。でもクルクル対戦バッターを空振りにとっていく投球スタイル。

 

あの日俺は二つの意味で野球に取り憑かれた。

あのボールを打ってみたい。

そしてあのボールを投げてみたいと。

 

今でもあの場面を試合前に見るのは当たり前になっている。

 

俺はワインドアップからボールを投げる。

自前の手首や全身の柔らかな体から放たれたボールに回転数が伝わり球は一球でミットに収まる。

バッターは完全にとらえたと思ったのであろうが物凄いスイングでボールの下を振っており捉えられる気は自然としなかった。

 

「ス、ストライク。」

 

俺は審判の髭面のおっさんが驚いたようにしている

 

「す、すげぇ!!球がブワァと浮き上がってきた。ガハハハ。生き物みてぇ!!」

 

俺はボールを受け取る。すると結構汗が漏れる。

風圧がここまでくるか。

こいつものすごいスラッガータイプの化け物だ

 

「……」

 

俺は少し息を吸いそしてサインを見る。

キャッチャーそして二回ほど首を振りそして頷く。

 

俺は息を吸いそして二球目。

 

俺が放ったボールはそのまま最後までスピードが落ちることがなくインコースに突き刺さった。

 

「ストライク。ツー。」

 

俺はボールを構えるとそしてすぐにマウンドに向かう。

決め球はやっぱりこれだよな。

 

俺はそうしてワインドアップでゆっくりと構える

そして俺は中三本の指を曲げ親指と小指で挟みそして中三本の指で押し出す

無回転のボールは不規則な回転を描きながらフラフラと落ちバッターの空振りを誘いワンバンでミットに吸い込まれていった

 

「しゃー!!」

 

俺は声を出し闘志を炸裂させる

 

「……」

 

ありえないような顔しているが俺は中学での防御率は0.38

クローザーとしてはずば抜けているのだ。

 

「……こりゃ。本当にすげぇな。雷市に三球三振なんて。」

「……」

 

バットを抱えながら項垂れる雷市と呼ばれる少年は項垂れていた。

 

「お前先発経験は?」

「ないですね。ナックルはかなりの握力使うのでバッティングに影響でますし。」

 

実際ナックル一つでかなりの握力を使う。

 

「スタミナはあるけど後は高速スライダーとスローカーブですからね。キレが凄いので俺以外誰も取れないっていうのもありますけど。」

「スローカーブと高速スライダーか。お前ショートって言っていたな。バッティングはどれくらいの実力なんだ?」

 

恐らく先発で使いたいと思っているんだろうけど

 

「中学二年と三年の時は日本代表で殆どの試合で4番を任されてました。」

「……は?」

「ついでに中学通算47ホーマーですよ。こいつ。」

「……杉田光輝か。なんでうちに!!」

 

どうやら詳しいのか俺の方を見て驚いている。

 

「家が近いのとバイトをしてもいい学校はここくらいしかないので。」

「……」

「こいつも日本代表で俺の前を打ってましたよ。セカンドですけど。」

「こりゃ。本当に逸材が揃ったみてぇだな。雷市といい。光輝といい。こりゃ化け物だ。金の匂いがプンプンするぜぇ。」

 

するとニヤリと笑っているが

 

「いいんですか。雷市でしたよね。泣いているんですけど。」

 

大きな涙を流しながら泣いている一人の少年の姿があった。

 

「……いいんだよ。こいつにとって初めて同級生にズタボロにされたんだからな。」

「……初めてですか?」

「俺の家は貧乏でシニアに入れる金なんてなかったからな。俺も40過ぎまで社会人野球をやっていたし。」

 

なるほどなぁ。でも珍しいな。そのまま社会人の監督やコーチではなく高校野球で働いているなんて。

 

「まぁ。俺はここの監督の轟雷蔵だ。これから3年間死ぬ気でしごくからな。覚悟しとけよ。」

 

と俺と純平はキョトンとする。

そしてその後純平が悲鳴をあげることが誰も予想はつかなかった。




杉田光輝 投手能力
適正 先発 抑え

球速 138km
コントロールB 72
スタミナ D 58


ストレート ツーシームファースト スローカーブ6 スローカーブ4 高速スライダー 3 ナックル7 チェンジアップ 4 (縦スラ5)

得能
対ピンチ ◎ 真・怪童 回復◎ 打たれ強さ○ クイック◎ 驚異の切れ味 緩急 軽い球 球持ち ドクターK ハイスピンジャイロ 威圧感 投打躍動


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チームメイト

入学してすでに一ヶ月がたちとある日の練習終わり

 

「クッソ。こうか?こうか?」

 

なんどもスイングする雷市に俺は苦笑する

 

「おいおい。雷市。また抑えられたのかよ?」

「よう。ミッシーマ。」

「ミッシーマじゃねぇ。てか反則だろあのスローカーブとストレート。」

「それにナックルだろ?高速スライダーも普通にキレているし。」

 

同じクラスの秋葉もその会話に加わってくる

 

「生憎もう握力ないんだけどな。今日だけですでにナックルだけでも20球近く放っているから。」

「取る方が大変だぞ。俺本職セカンドなんだけど。キャッチャーやらせられるし。」

 

とワイワイ騒いでいると

 

「でも、こうちゃんはショートの方が凄いでしょ!!」

 

と未来が薬師のユニフォーム姿で答える。マネージャーとしている未来に俺以外の全員が明らかに膨らんでいる一点を見つめていたので俺は一発ずつ軽く叩く

 

「あの練習試合の外角の打球はバカげているだろ。」

「なんであんな広角に馬鹿げた打球が飛ぶんだよ。」

「馬鹿げたってあれくらい雷市でも飛ばしているだろ。」

「「「雷市と一緒にするな!!」」」

 

全員が俺に突っ込んでくる。

 

「守備範囲も広いし俺たちにとったら化け物みたいなんだよ。」

「雷市はピッチャーできないし。守備もうまい。4番争いは今年の夏は多分お前だろうな。」

「…いや。このままだろうな。」

 

今俺たちのベストメンバーのスタメンはこうである

 

1番 セカンド   葉山純平

2番 レフト    秋葉一真

3番 ショート   俺

4番 サード    轟雷市

5番 ファースト  三島優太

6番 ピッチャー  真田先輩

7番 ライト    山内先輩

8番 キャッチャー 渡辺先輩

9番 センター   太田先輩

 

となっている

 

「ん?なんでだ?」

「いや。俺が敬遠されても雷市。そして二人とも結果がでなくても勝負強い三島と真田先輩がいるんだぞ?得点圏で一番回ってきやすく後ろに良いバッターがいると俺たちも楽だろ。」

「……まぁ俺か秋葉がでてお前が返すっていうのはもう安定しているよなぁ。」

「それも得点圏打率今何割だよお前。」

「21の18だから……えっと8割5分7厘だね。」

「「「ぶほっ!」」」

 

電卓で計算した未来に俺たちは少し吹き出してしまう。練習試合は週に1回で二試合。平日に紅白戦をやってきているのもあるがその得点圏打率が明らかにおかしいことになっていた。

なお打率は42打席30安打で7割1分4厘らしい

打点は30。ホームランが3。三振が4で盗塁が10、エラーが1。これが俺の打者の成績で防御率が1.12、8イニング奪三振が20、被本塁打1。これが俺の投手成績になっている。

 

「ま、まぁまだ東京3強と当たってないしなぁ。ほとんど都大会一回戦か二回戦負けのチームだろ?」

「東京三校?確か市大と青道と稲実だったよね?」

「まぁな。まぁ相手になりそうなのは稲実の成宮先輩と市大の真中さんくらいかな?」

「青道は?」

「打線重視。前もエースの丹波先輩が飛翔してた。」

 

一応春大は全部ネットで見ていた。まぁその時は真中さんもひどかったけど。

 

「……まぁお前以上のピッチャーはそうそういないだろうな。」

「真田先輩のホームラン以外打たれてないしな。」

 

実際にナックルが抜けてど真ん中に入ったボールをスタンドに運ばれたのだ

 

「ナックルってリスクが高いんだよなぁ。コントロールはもう諦めているし。」

「その分落差がすごいのがお前だよなぁ。」

 

そして俺たちは苦笑する

 

「……マジで甲子園行けるかもな。」

 

秋葉がそんなことを言い出す。

 

「……行けるかもなじゃねぇよ。行くんだよ。」

「そうだな。中学の頃は全国制覇できなかったしな。」

「お前らが全国制覇できないとかどんなんだよ。」

「ヒント今の青道。」

「光輝。それヒントじゃない。答えや。」

 

そういうと俺たちのグループが笑いあう。

案外俺たちはうまくやっているのであった。



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投球術

「……あ〜。」

「どうしたミッシーマ。」

「ミッシーマいうな。」

 

と俺はスポドリを飲みながら俺はミッシーマと練習試合終わりに話していた

 

「いや。今日の試合。やっぱり真田先輩に敵わないなって思ってな。」

「あぁ。そういうことか。」

 

というのも今日の練習試合一試合目は三島が先発でその後に真田先輩が投げたんだけど…

ミッシーマは3イニング2失点。

真田先輩は6イニング無失点でやっぱりエース争いに大きく差をつけられていた

 

「いやミッシーマって変化球が一つしかないだろ?そうすると結構狙い安いんだよ。コントロールが良い訳でもないしな。」

「……うっ!お前だって今日9回3失点じゃねーか。」

「それを言われるのは辛いけど。自責点は1だぞ。……雷市の3エラーだけはなんとかしてくれないかなぁ。」

 

先発時はナックルと高速スライダーを封印して新しく覚えた、ツーシームファーストとチェンジアップ、先発時のウイニングショットのスローカーブで打たせてとるピッチングをしているのだが。なんというかサードの雷市がエラーしまくって俺の無失点の日はほとんどないのだ。

さらに先発時は打率が3割程度に落ちるので監督は頭を悩ませているのが現状だった

 

「…ミッシーマはカーブとか投げないのか?同じ抜く変化球だし。フォーク投げるってことは肘かなり柔らかいんだろ?俺カーブなら教えられるけど」

 

フォーク。俺が投げたいのだが肘を壊しやすいために断念した変化球なのだがミッシーマは普通に投げている。

 

「えっ?いいのか?」

「もちろん。俺の決め球は真似できないだろうし。」

「140kmのストレートを投げてそれに大きく曲がるスローカーブにさらにナックルなんて誰が真似できるかよ。」

 

ナックルは実際かなりの握力と挟む力を必要とする変化球でありほとんどの選手が真似できないウイニングショット。俺の決め球はとことん曲がりちゃんと投げられた時はほとんどバットに当たりはしない。

 

「俺からしたらフォークの方が羨ましいんだけどなぁ。」

「てめぇ俺の武器まで奪うのかよ。」

「フォークは俺は投げられねぇよ。というよりも落ちる系はチェンジアップとナックルで十分だっつーの。」

 

実際これだけでも通用するのになぁ。俺は主に緩急をつけたピッチングをすることが多いのだけど

 

「まぁ、とりあえずチェンジアップとカーブ覚えてみようか。カーブはともかくチェンジアップは簡単だし。」

「おい。増えているじゃねーか。」

「いいからいいから。」

 

ジト目で見られるが無視をして握りから教えていく

そしてフォークだけではなくチェンジアップと、カーブはミッシーマの投球幅を広げ将来的にエース争いをすることになるのはまた後の話。

 

 

カーン

 

木製のバットから快音が流れる

大きな弧を描いた打球をライトは一歩も動けずにただただ見過ごすだけだった。

 

「いった!!今日2本目のホームラン。」

「誰かこいつ止めてくれよ。」

 

俺はダイヤモンドを回りながら軽く手をあげる

これで他校との試合の10本目のホームランなのだが俺は笑顔がなかった

 

きっつ

 

先発として7回を過ぎた辺りから毎回少しバテてしまう。

腕の柔らかさを利用してボールに回転を加えているのでかなりの独特なフォームで投げている。

スピードガンには表示されない速さを俺はあのオールスターで実際に見た

 

……このフォームやっぱりクローザー向けだな。

全身が柔らかく憧れの選手のフォームを自分の形にしてきた俺にとっては結構厳しい現状だった。

オフにかなり走り込んできたのもあり体力面でも自信があったんだが。

 

球の回転と伸びに重点を置いているため元々俺は球が軽い。

中学の時のコーチによると球の重さを重視するのであれば投球フォーム自体を治した方がいいとのことだった

しかしそのコーチはまた別に自分の長所を伸ばすアドバイスをしてもらったのだ

 

リリース点をギリギリにして手首の柔らかさから生まれるジャイロボールは間違いなく憧れの選手以上になると

だから俺はストレートの球威を捨て伸びに重視するようになった

そしてそれはピッチャーとしてかなりの結果が出ていたのだ

 

中学三年時ストレートの被打率 0.10

 

高校になってからもそれは変わってはいない。滅多にストレートを当てるバッターはいないし先発時でも7回までは今のところ全ての試合で一点も与えていない。

 

変化球の被打率は結構終盤ばててすっぽ抜けるからかなり高いけどなぁ

 

「お疲れさん。今日はここまでだ。アイシングして体休めとけ。」

「うっす。」

 

と頭を下げ俺はベンチへと下がる

 

薬師 19−0 修北

 

これが今の俺たちの実力だった

 

 

 



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夏の始まり

飛ばしすぎて、すいません。この辺りはまだ薬師は無名校に近いので強豪との練習試合とかはしていないので全部カットさせてもらってます。恐らく夏休みの練習試合はいくつか書くと思います


6月の最終週になり蒸し暑く今年もこの季節がやってんだと感じる

 

「今年もこの季節かぁ。」

「真田先輩ランニングしている時にそんなこと言わないでください。」

 

俺がジト目で見ると悪い悪いと呟く

 

「でも鬼畜だろあの監督。投手陣は開会式会場までランニングでなんて。」

「まぁそうですけど。シードありますし今日帰ってから練習ですよね?俺は昨日の紅白戦投げたんで休みっすけど。」

「あ〜そういえばお前昨日は珍しく自滅してたな。」

「縦スラ試していたんですよ。でもキレすぎて見せ球くらいにしか。」

「お前の体の体幹の強さと体の柔軟性は本当に野球部一だからな。変化球簡単に覚えるのは羨ましい限りだな。」

 

俺の球速は最速135km。変化球はナックルとスローカーブにツーシームファースト。それとチェンジアップと高速スライダーの最近神奈川の横学と戦い俺は9回7失点したこともあり、新しい変化球として縦のスライダーを取得したのであった。取得しただけでコントロールはまだできていない現状だが。

 

「しかし雷市も変わったな。無駄に騒ぐんじゃなくて打った時に騒ぐようになったからな。」

「その分怖さが増しましたけどね。どうせ明日からも雷市のバッティングピッチャーですよ俺。」

「お前、雷市の引き立て役だよなぁ。」

「高校ホームラン数じゃ勝っているんで別にいいですよ。」

 

と俺は他校との練習試合で今高校通算12本。雷市は10本で2本差で俺も雷市も明らかに引くぐらいのホームランを打っている

 

「……しかし、青道の丹波先輩が練習試合で怪我したのはさすがに驚きましたね。フォークを覚えたばかりで投球術も増えてきたと思った矢先だったし。」

 

偵察部隊が西東京地区の強豪青道と稲実、そして修北高校の試合を見に行かせた時の話だった

デッドボールが顔面にあたり怪我の具合は分からないが俺が監督であるならば恐らく本戦までは戦えないだろう。

「まぁな。俺も去年のこの時期は怪我で悩まされてきたからな。マネージャーに渡されたトレーニングがやけに効率的で怪我の防止になるって監督が言っていたが。」

「あいつの母さんがスポーツトレーナーなんですよ。あいつの親父さんに限ったら今プロ野球選手ですし。」

「……へ?」

 

すると真田先輩が驚いたように俺の方を見る

 

「もしかしてライアンズの秋山慎二選手か?」

「はい。俺のスローカーブもそこ譲りですよ。小学生の時に習ったので。」

「あぁなるほどなぁ。そりゃあんなカーブになるよな。」

 

40になったライアンズの秋山選手は今でも大きく曲がるスローカーブと140km程度ながら伸びるストレートを武器にライアンズで22年目のシーズン途中で8勝1敗防御率2.98を記録している。通算勝利数は231勝でチームの首位独走の元凶でもある。今でも現役ばりばりのすごいおっさんである

なお、オールスター投票でも五年連続1位という球界のエースと言っても過言ではない

 

「……でも、お前はタイガースファンなんだろ?」

「はい。」

「即答かよ。」

 

そうしながらもペースを落とさずに球場へ向かう

季節は夏。高校生初めての夏が始まる

 

 

「……ふぅ。」

 

3回戦俺はボールボーイとしてうまく仕事をこなしていたんだが

 

「なんか新鮮だね。」

「ん?」

「試合出たくて仕方がないんでしょ?こうちゃん。」

 

スコアブックを書いている未来には気づかれているらしい。

俺は少しそわそわして目線をキョロキョロさせると

 

「お前ベンチから見るのは始めてだろうが。三年生に限ったら最後の試合になるかもしれないんだ。来週は市大と試合なんだ。」

「……雷市。後からホームラン幾つ飛ばせるか勝負しようぜ。お握り食わせてやっからよ。」

「いいのか?」

「暇なんだよ。俺も。」

 

スコアボードを見るとすでに4回終了時13ー2。どうせコールド勝ちは確定している

 

「しかし、強いですよね。清秀ってベスト16常連校ですよ。」

 

真田先輩が苦笑しながらいうとまぁなと監督も続く

俺たちの相手はベスト16常連校であり、そして去年までうちの実力でもある高校であるはずなのだがこのスコアだ

 

「まぁ、投手陣に優秀なコーチがついたからだろうな。カーブもチェンジアップも覚えやすいとはいえそれでも緩急を使えるようになったお陰で投球の幅が広がった。」

 

カーブとチェンジアップは俺が教えたので、幅が広がりさらに真田先輩は俺が教えたツーシーム、そして監督からこの夏で教えてもらったカットボールを覚えていた。

……若干真田先輩に苦手意識があるんだよなぁ

140kmのシュートにツーシーム、そしてチェンジアップ。

俺は真田先輩にとことん相性が悪く最近の紅白戦での10打席では10ー1、1本塁打。5三振

…とことん合わないんだよなぁ。まぁ大きく曲がる変化球を合わせるのが得意なだけで

特に俺のバットが木製っていう点が真田先輩を嫌っている一つでもあるのだが

 

「そういえば。来週の市大戦お前先発な。」

「俺ですか?」

「えぇ?監督?」

「ミッシーマも大会じゃ王手タイガースに負けていただろ?こいつ全国経験者だし真田は青道に使いたいからな。お前は準々決勝でも投げてもらうぞ。」

「お前なら7回までは安心して見てられるからな。それまでならばコールド決められるだろう。三島はクイックが未だに甘い時が多いし四球が多いから隙を与えることもなるしな。今の現状のエースはお前だ。」

 

なるほどなぁ

思っていた以上に考えているな。この監督

 

「了解です。」

「どうせ青道の奴らも見ているんだ。お前のピッチングを見せつけろ。」

「どうせバッティングピッチャーやれってことですよね。」

「まぁな。お前の投球術は俺たちのチームでは正直誰にも真似できないだろうしな。」

 

まぁ認めるけどさ

 

「キャッチャーは誰っすか?」

「秋葉だな。今年の夏以降は秋葉になるだろうしお前の球取れるの秋葉と純平くらいだろ?純平はセカンドで守らせた方が心強いだろうし。」

「あ〜なるほど。」

 

俺はそういうと最後のバッターが打ち取った先輩の姿がいた

 

「試合終了。市大戦決定しましたね。」

「あぁ集合だぞ。いくぞ。」

「雷市は?」

「ベンチ裏で素振り中。」

 

と俺たちは集合場所へと向かう

 

「13−2で薬師の勝利。礼」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

そして試合が終了する。俺たちはそうしながらも強豪市大との試合に想いを寄せていた



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市大戦

「…ストライク。バッターアウト。ゲームセット。」

 

俺たちの前の試合が終わるとするとパチパチと拍手が送られる

 

「いい試合だったな。」

 

投球練習のため他の人たちよりも早く先にマウンドで見ていた俺が秋葉にいうと頷く。

 

「あぁ。本当にいい試合だったな。」

 

俺と秋葉はそれをみてキャッチボールを始める

 

……いい試合を確かにしていた。

でもいい試合はいい試合。

決して勝ったわけではなく寧ろ敗北だ

……悔しいだろうな

 

マウンドで投球練習をしながら俺は台湾からの留学生を見る

 

楊舜臣か

 

俺はそう思いながら自分の投球にはできない技法に俺は苦笑する

俺も正直なところコントロールにはそこそこ自信があるのだが本当にミットに全球投げられたとなるとさすがにできない。

球速はそこそこで変化球も曲げれないのだが扱いの難しいフォークまでコントロールされたいいピッチングだった

 

これで感化されないピッチャーはいないよな

 

普段より調子がいいのを感じる

息を吐き体が温まっていくのを自分の身で感じていた。

 

「秋葉。ラス一。」

 

俺はそうやってラスト一球。そして一球だけ俺の切り札を投げる

 

ボールは大きく曲がり内角高めからふんわりと落ちていく

そして外角低めにワンバンのボールでミットに収まった

 

「……やべっ。曲がりすぎだな。」

「本当にこのカーブやばいな。」

 

秋葉は苦笑すると俺の方に近づく

 

「ストレートもカーブも切れている分今日に合わせて作ってきたのか?」

「いや偶然。さすがにここまで調子がいいと変化球の扱いが厳しくなるだろうしな。」

「どっちにしろストレートで押していくぞ。今日明らかに走っているからな。」

「了解。初っ端から飛ばしていくからな。最近物足りなかったしな。」

 

俺は切り替え集中力を高める

 

「薬師高校ノックを始めてください。」

「んじゃいくか。」

「おう。」

 

といい俺たちはグラウンドに走ってくる。

衝撃のデビュー戦まで後30分くらいだった。

 

 

『お願いします。』

 

集合が終わると俺は少し歩きながらマウンドに向かう

先発なんて何年振りだろうな

俺は軽く投球練習をしながら苦笑する

 

抑えているのだが結構球が暴れている。

ヤベェ。ワクワクしてしまう。

 

「ラストボールバック。」

 

俺はそういうと頷きそして構える

軽いボールを投げ終えると俺は上をみる

そして真上にジャンプで三回飛びミッシーマを見る

 

「楽に行こうぜ。」

「おう。バックは任せた。」

「こう。こっち側飛ばせてこい。」

「エラーすんなよ雷市。」

 

そして声をかけていくと俺はマウンドに立つ

 

音声全ての声が鮮明に聞こえる

 

「プレイボール。」

 

サイレンの音が聞こえるとサインが出される

 

……わかっているじゃん

 

俺はそして振りかぶる

もう何度も経験してきたボールを俺は振りかぶり

そして投げた

 

パーン。

 

綺麗なストレートがど真ん中の高めキャッチャーミットの中に収まる

 

「ス、ストライク。」

「えっ?」

 

するとミットを見直す。それもそのはず

バッターが振ったのはボール2つ分下の位置だったからだ

 

二球目

またも同じところを投げると簡単にツーストライクが取れる。

遊び玉はいらない

そして

 

「ストライク。バッターアウト。」

 

バッターにとって屈辱と言える真ん中3球連続で空振り三振を奪う

最後ボールの球速はボード状には138kmと表示されている。

球もはしっている分調子がいい

速いとは言い難いが一番バッターは全部下をバットを振り遅れていた

テンポよくポンポンと直球を投げていく

甘すぎて多くのバッターがおお振りになっているがそれじゃあ当たらないんだよなぁ

 

「ストライク。バッターアウト。チェンジ。」

「しゃあー!!」

 

3者連続3球三振

すると歓声が聞こえてくる

 

「いいぞ。ナイピッチ。こう。」

「コウナイピ。」

「ナイピッチこうちゃん。」

「全くあってないな。今日は調子が良さそうだし市大のピッチャーは初見でお前のボールを捉えるのはちょっと酷かもしれないな。」

 

と監督は答える

 

「おいお前ら今日負けたらお前らのせいだぞ。」

「「は、はい。」」

「純平くん。真中さんの立ち上がり狙っちゃって。」

 

と一番バッターの純平が笑う

 

「3番にこうがいるのが頼もしいな。真田先輩以外は打てるしな。」

「真田先輩の話しないで。昨日も4−0だったし。打てる気しなくなるから。」

「おいおい。本当に俺のこと苦手なんだな。」

「ピッチャーとしてですけど。シュートが本当に面倒くさいです。」

 

と笑いながら真中さんを見る

 

「まぁ真中さんのはスライダー結構曲がるの早いのでどちらかというと打ちやすいんじゃないですか?」

「お前あれを打ちやすいってどんな変態だよ。」

「まぁ今更驚くことではないだろうけどな。」

 

俺はバットを構えながら苦笑いをすると

金属音の音が聞こえる

センター前にきちんと運んだボールは先頭バッターが出たサインだった

 

「ナイバッチ純平。」

 

俺はネクストに向かう。先頭バッターの純平が出たってことはおそらくあれだな

 

そしてピッチャーはクイックモーションから振りかぶろうとした瞬間

純平は初球から走り出す

 

「スチール。」

 

そんな声が聞こえてきたのだが

 

カキーン。

 

秋葉の打ったボールは一二塁間を抜けていく

エンドラン成功。で純平も悠々3塁に到達

ノーアウトランナーは一、三塁

 

先制のチャンスにバッターは俺か

真田先輩風に言うのであれば

超激アツでしょ。

 

『3番ピッチャー杉田くん。』

 

すると俺の好きな球団のチャンスマーチが流れてくる

俺は軽く自分で口ずさみながらその曲をバックにバッターボックスに立つ

 

初球からいくか

狙いを絞り込む

そして初球

すると動揺したのか甘い高めのボールを俺は見逃さなかった

 

カーン。

木製バットの乾いた音が球場内を響かせる

ストレートをフルスイングで捉えると打球は物凄い速度で飛んでいきバックスクリーンの真上を飛び越していった

 

「入った。スリーランホームラン。」

「すげぇ。たった4球で3点だと。」

「なんだあの飛距離はてか角度がヤベェ。」

 

すると明らかに騒めき始める観客に俺は笑う

ダイヤモンドを一周しベンチに戻ると

 

「ナイバッチ。」

「ナイス先制打。」

 

とベンチで手荒い歓迎受けていると

カキーンと続けて快音が響く

 

流した打球が場外に飛んでいく

雷市が笑いながら

 

「相変わらずのスラッガーだな。」

「こりゃコールドになるかもな。相手ピッチャーの心完全に折れてしまったらしいしな。お前今日カーブ以外禁止な。」

「うえっ。縦スラ試してみたかったんだけどなぁ。」

 

すると全員が絶句していると次のミッシーマも快音を響かせスタンドに運んでいく

 

三者連続ホームラン。

これにより、相手ピッチャーは完全にノックアウトした。

その後も勢いは止まらなかった

連打連打に励みをつけそして俺のファインプレーで一回が終わる頃には

 

8ー0

 

残酷なまでのどうしようもない点差になってしまっていた。

それを気にせずにマウンドに立つ

4番の大前をスローカーブを見せ球に最後はインコースの直球を詰まらせゴロに打ち取るとテンポ良く放っていくピッチングに市大打線を5回1失点(4回に一番にヒットを打たれ盗塁からの内野ゴロのかんに三塁に進まれ、3番の犠牲フライで一点を取られた。)に抑える。バッティングは今日は5打数1安打だったものの。今日の投球はこう言う結果だった。

試合が終わると

 

12ー1

 

5回コールドで薬師高校の勝利となったのであった



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インパクト

「おぉ。新聞一面俺だ。」

 

翌日の新聞の一面を見ると市大との試合でのホームランを打った写真が載ってあった

 

「へぇ〜。投打に躍動するスーパールーキーね。」

「大きく曲がるカーブは今村や秋山を彷彿とさせる。スピンがきいたボールと伸びるストレートは強力市大打線を5回1安打10奪三振。打っては5打数1安打一本塁打。市大の心をへし折った一打だって。」

「中学では世界大会で4番を務めた経験も有り三年後のドラフトが楽しみな選手であるって。」

 

ニヤニヤ笑っている未来に俺は苦笑する

 

「まぁ、やっぱり、先制のホームランがインパクトあったんだね。」

 

直撃でもインパクトあるのにバックスクリーンの上を越していったからなぁ。雷市の逆サイドのホームランが霞むほどに。

クリーンナップ三連続ってことで関西の新聞社では某優勝した時の最強クリーンナップの再来とも言われているしな

 

「そういやおやっさんは?」

「仕事。今日先発だってさ。」

「ありゃりゃ。タイミング悪い。」

 

折角昨日の投球について聞こうと思っていたのに

 

「……お父さんは元々俺の教え子なんだからこのピッチングは当たり前だってさ。」

「厳しいなぁ。」

「でも成長したなって言っていたよ。バッティングに関してはいうことはないって。」

「……ふ〜ん。」

 

と俺はトーストを食べながら少し笑みがこぼれる

まぁやりたいことは変わらないしな。

そうしながら今日学校に行くまで次の試合のことを考えていた

 

 

「ミッシーマナイピ。」

「だからミッシーマいうなっつーの。」

「次の回から真田いくからな。一年は全員下げるぞ。」

「おそいっすよ監督。」

 

と監督がそういう。スコアは18−0

3回の時点でこんなに差が開くとはな

 

さすがに俺も苦笑いする

俺は今日は4打数4安打ホームランこそないもののスリーベース1本にツーベース2本。打点が5。

雷市が4打数2安打1ホームラン。打点が4

投げてはミッシーマが3回被安打0。四球が1

圧倒的な数字にグラウンドでも息を呑む人が多かった

 

「次は青道戦だ。無駄な情報を与えるつもりはないからな。」

「まぁそうですね。俺の変化球の情報を与えるなんて真似はしない方がいいでしょうしね。」

 

元々俺の長所は三振を恐れない思いっきりのいいバッティングとストレートだ。

 

そして選手の交代を告げられると観客席からブーイングがなる

しかしもはや試合は決まったのであとはアイシングをする

そして追加点を重ね結果的に20−0で5回コールドを決めたのだった



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粋な計らい

俺はバント練習を終えると校舎にあるビデオ映像を見にきていた

 

「こいつら俺と同じ一年だってよ。」

「この降谷っていうやつえげつない球投げやがる。」

「……いや。おそらく沢村の方が打ちづらいと思うぞ。」

 

俺の言葉に純平と一真、そしてミッシーマが俺の方を向く

 

「なんでだ?インコース攻めがうまい変則型のサウスポーだろ?」

「いや。天然のムービングだと思う。フォーシームも投げれているんだけど秋川の楊に投げたボール明らかに変化していたからな。」

「……なるほどな。ゴロが多いのはそのせいか。」

 

純平が納得したようにしている

 

「ストレートの質もいいし俺みたいに球威はあまりないけどそれでも結構伸びるからな。それとおそらくボールのリリース点が分かり辛いな。」

「変則サウスポーか。そりゃ知らないと結構厄介だな。」

「見た所雷市みたいに野球をちゃんとしたところでやってこなかったんだろう。冒頭や最初に四死球を与えることも結構多いしな。」

「……投手としてはどうなんだ?」

「4番の結城さんと6番の御幸さんの前にランナーを貯めないことが鍵になりそうだな。」

 

俺は軽く締めくくる

 

「なんだお前ら。まだビデオ見てたのか…。」

「あ…真田先輩。」

「雷市の親父さんによく見とけって言われたので。」

 

すると驚いたように真田先輩は俺たちを見る

 

「この親子ってこういうことに妥協しないよなぁ。市大の真中さんの時も穴が開くほど見てたし。」

「あの人は、イメージ通りのすごい球だった。」

「……ふーん。で今度の青道はどうよ。」

「今の所降谷とサウスポーの沢村ですかね。後は丹波さんがいつ戻ってくるかで試合は変わるかと。」

「ん?サウスポーもか?」

「練習に強く引っ張るようトスバッティングしておいた方がいいですね。恐らくムービングなんで。」

「…あぁ。監督には伝えておくよ。」

 

俺はそういうとビデオに戻る

雷市は俺と対戦してから明らかに目の色が変わった

騒ぐこともなくなりただ冷静に敵を殺すような目に俺は少し震えてしまう

こいつ味方でよかったと

次の土曜日に備えながら俺は何度も二人のピッチャーを見ていたのであった

 

 

「ナイスボール。」

 

青道との試合前俺は投球練習をしている。

今日のキャッチャーは純平らしく。打者でも俺は今日は4番ピッチャー。3番キャッチャー純平になっている。

一番の雷市はどうやら早く戦いたいらしく一番打席を回ってくるところになったらしい

 

「……監督も粋なことをするよな。」

 

青道も一年のピッチャー降谷と、薬師の俺を見に多くの見学客がきている。

 

「……これ恐らく決勝もお前だろうな。」

「だろうな。最近は絶好調だしな。生憎青道打線に通じるかはどうかわからないけどな。」

「謙遜はやめとけよ。お前なら完封できるだろうしな。」

 

できないんだよなぁ。これが。

恐らく俺の予想じゃ2点くらいは取られるだろうな

 

「……初回からチェンジアップ。4回からツーシームを使う。稲実まで縦スラだけは封印するから。」

「あいよ。サインは。」

「いつも通りな。」

 

と俺は軽く叩く。

 

「それじゃあ行きますか。」

「最初はバッティングからだけどな。」

「ほぼ、直球しかほとんど投げないピッチャーを攻略するなんて簡単だろ?雷市とお前以外は直球しか打たなくていいって伝えてあるしな。」

 

俺は軽くミットを叩く。

青道との試合はもうすぐに控えていた



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緊張感のない4番バッター

夏の予選、俺にとっての先発ピッチャーとしての二試合目

緊張感は全くなくむしろ大歓声に包まれている方が俺にとってはありがたかった

降谷の投球を見ながら笑っている俺に監督が少し俺の見て

 

「……お前は緊張ってもんを知らないのかよ。」

 

と呆れたような目で呟く。

 

「それはあんたの息子も同じもんでしょ。」

「光輝の度胸はそれ以上だと思うけど。」

「そうか?」

 

未来の言葉に俺は首を傾げる。

 

「……まぁピッチャーとしては俺は3点以内に抑えられたら御の字でしょ。」

「お前な。もう少し欲とかあってもいいんじゃねーの?」

「欲はバッティングで出しますから別にいいんですよ。」

 

と今日のスターティングメンバーは

 

1番 サード    雷市

2番 ショート   一真

3番 キャッチャー   純平

4番 ピッチャー  俺

5番 ファースト  ミッシーマ−

6番 レフト    真田先輩

7番 ライト    山内先輩

8番 セカンド 渡辺先輩

9番 センター   太田先輩

 

となっている超攻撃型布陣になっている。真田先輩は得点圏打率がかなり高く、さらに今日の6回からは真田先輩。9回に抑えとしてまた俺に継投予定になっていることから、監督もこの夏は継投で勝ちに行くことは決まったのであろう。

降谷の投球練習が終わるとそういえばと真田先輩が俺の方を見る

 

「そういえば雷市が今日整列時に睨まれていたけど。あれ何でだ?」

「知らないですよ。俺も雷市とずっと一緒にいるわけじゃないんですから。」

「それもそうか。」

 

と真田先輩は苦笑してしまう。

 

「雷市!!打てよ。」

「てめぇ打たなかったら俺のバナナ返せよ!!」

 

と味方からのヤジは相変わらず大きいよな

それほど期待のバッターであることには違いはない

俺たちの狙いはただ一つ

 

高めのストレート

 

 

カキィーーン。

 

金属の心地よい音がする

引っ張った打球はぐんぐん鋭い打球で伸びていく

そしてフェンスに直撃。あわやホームランの右中間真っ二つのツーベースだ。

 

「ナイバッチ雷市。」

「あ〜くそおしぃ!!」

 

と一気に歓声が湧く俺たち。まぁ当たり前だ。球質の重いピッチャーはうちにもいるしな。

 

「一真続けよ。」

「おう!!」

 

と俺たちが一気に流れを呼び込むことになる。できるだけこのピッチャーから点をとっておきたい。

怪物と呼ばれているけど世界には物凄く多くのピッチャーがいる。

……生憎うざったるいほど球速が早い化け物が北海道にいるからな

 

そして秋葉も流れに乗ったのか初球のスピリットは空振りにしたものも綺麗に流しレフト前に運ぶ。

雷市がこれで先制のホームを踏む

 

「オッケー先制先制!!」

「ガハハハ。やばぇ。イメージよりももっとすげぇ。」

「力あったんだな。まぁあんまり俺は関係無いけど。」

 

と木製バットを持ちながら俺は苦笑する

さてと純平。狙いは分かっているよな。

 

純平の後ろを打つ俺にとって純平はとてつもなくやりやすい

 

だってあいつ変態だし。俺とは全く違うタイプだから高確率で得点圏までくるからな。

初球。ボールが高めに外れワンボール。

 

そして二球目ランアンドヒットの指示がでる。(ランアンドヒット ボール球でもバットに当てるエンドランとは違いボール球だと、見逃しランナーだけが走ること)

ピッチャーが振りかぶると一真がスタートを切る。ちょっと遅れただろうか。おそらくギリギリだろう

投げられたボールはスプリット。そしてワンバンになろうかというボールだが純平がそのままバットに捉える。

金属音が聞こえベースカバーに入ったショートが入れず三遊間を抜けレフト前に転がる。

 

あいつ変化球打ちほんとに得意だよなぁ。

 

スプリットそう簡単に捉えられる気はしないんだけど。

と自然と力が抜けバッターボックスへと向かう

 

「すいません。タイムをお願いします。」

 

とキャッチャーがピッチャーの元に向かい何かを落ち着かせるように言っている。伝令も使うらしくあっち側ベンチも大変そうだな。

まぁ狙いは一つだけだけど。

これで変化球がほぼなくなっただろう。

 

これで打たれた球を投げる勇気はおそらくないだろうな。

キャッチャーとの話し合いが終わりそしてピッチャーがマウンドでゆっくり息をする

となると狙い球はストレートのみ。

思う存分力比べといこうか。

 

『4番ピッチャー。杉田くん。」

 

アナウンスが流れるとバッターボックスに入り集中力を高める

 

……御託はいらないよな。

 

ピッチャーが振りかぶる。そしてその初球を見逃さなかった

 

高めのストレート。

少し高めに外れているが関係ない。

腕がしなりバットが自然と出てくる。真芯で捉えてバコーンと大きな当たりが飛んでいく。

 

「完璧。」

 

俺は手を上に掲げる。その打球は目で追う必要はない

レフトの観客席を飛び抜け推定飛距離は130mを優に超える当たりがその結果を表していた。

 

わぁ〜〜〜!!!

 

と歓声が巻き起こり審判の手が回り始める

 

「すっげ!!何ちゅう打球だよ。」

「あいつピッチャーだけじゃないんかよ。怪物じゃねーか。」

 

とスタンドに消えていった打球を降谷はただ呆然と見上げていた。

レフト場外に運ぶホームランはその無情な結果だけを表していた



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手加減なし

「ナイバッチ。コウ!!」

「いいぞ。さすが4番バッター。」

「一回あの剛腕投手から4点先制!!」

 

とベンチに戻るとクシャクシャにされ手荒い歓迎を受けていた。

 

「いつつ。」

「おい光輝。手が痺れているとかそんなことはないよな?」

 

すると監督がそんなことを言い出す

投手として手の痺れは確かに重大な問題になりかねない。だけど

 

「まっさか。軽いボール一つ打ったくらいで痺れる訳ないじゃないですか。」

 

俺は軽く笑うと一真と雷市が驚いたようにこっちを見る

いや。世界大会でもっとすごい奴と対決しているんだぞ。

 

「お前どんな筋力してるんだよ。体細いのにパワーじゃ雷市以上って。」

「いや。そうでもないですよ。木製って芯に当たれば金属以上に飛ぶんで。」

「それが難しいつーの。」

 

そんなことを言いながら笑いが起こる。先輩たちも笑顔であり、すでに柔らかな笑顔が全体に浸透していた

するとマネージャーである未来は手を出してくる

 

「ナイバッチこうちゃん。」

「おう。」

 

と軽く手を叩く俺とミットを叩く

 

「お〜い。純平。キャッチボール付き合ってくれ。」

「ちょっと待ってろマスクつけているから。」

「はいはい。」

 

と思った矢先だった

 

「ストライクバッターアウト。」

 

審判の声が聞こえる

球速は143kmと計測されていて黄色のランプが消え赤のランプが一つつく

こりゃギアが一つ上がったな。

 

「……監督恐らくあのピッチャー後のことを考えていません。」

「は?」

「多分二巡目からピッチャー変わります。スタミナ温存からこの回を投げ抜くことにシフトしました。後々のスタミナを残すことなんて考えず。全部抑えることに集中してます。」

 

すると監督の目がぎらりと睨む

本当にこの監督野球のことになるとなると一直線だよなぁ

 

「分かった。二巡目だな。ということは二巡目からはあのサウスポーか?」

「えぇ。ベンチが少し慌ただしくなっているのとペースが少し上がっているので。ムービングなんで俺は苦手確定ですけど。」

「お前諦めるの早くないか?」

「木製バットはマジでムービング苦手なんだよ。てか青道はいいピッチャーはなんで連れてくるかな。全国どころか東京地区予選にいなかったぞ?」

 

まぁそういうピッチャーの対応は気分任せになるし俺はいつものスイングをすれば絶対に結果はついてくる

 

「大丈夫そうだね。」

「まぁな。今日はピッチングに専念するつもりだったし。……ちょっと試してみたいことがあってな。」

「試してみたいこと?」

「あぁ。変化球抑えの時の変化球も混ぜてみる。控え投手には真田先輩もいるし三島もいるからな。」

 

すると全員が絶句する。それはバッティングを捨ててこの試合は投手に専念するという宣言ということだ。

 

「……7回までは2失点以内で抑えます。残り2回とバッティングはお願いします。」

 

と目の色を変え宣言する。そして俺はグラウンドへと走りっていった。

 

 

結局一回は4点止まりで守備の時間に備える

青道はいつものメンバーのスターティングメンバーがならび予習していた通りだ。

いっておくが俺は本来なら先発には向いていない。

それは投手には必要な握力に制限があるからだ。特にナックルに関しては他の変化球やストレートだけならまだしもバッティングにものに影響を与える。

 

でもそのデメリットを外してやるとすれば。

恐らく相手はスローカーブとストレートの対応に追われていると監督は推測していた。だから監督は練習中にこう告げたのだ。

 

明日の試合1回に4点以上点差がついた時お前はバッティングを捨ててピッチャーにしろと。

それをベンチで宣言してチームメイトの起爆剤となれ

 

その言葉の通りにしたらその効果は光輝の目にも明らかだった。

なるほど。かなり気引き締まっているな。

 

監督の命令通りもはや守備も明らかに動きが素早くそして雷市でさえ声をかけながらも低めの送球を送っている

 

俺は一息つく。2点。いや後1点あれば勝てる。

それは俺自身の見解であり多分純平も思っているだろう。

 

初回から全力でいくか

 

先頭バッターの倉持先輩が立つ。

セーフティがあるからサードは比較的前に立っている

そしてサインを見る。するとサインからは思った通りのサインがでる

初球。やっぱりというかバントの姿勢を見せるのだが

 

「っ!!」

 

バッター自体が驚いたように目を向ける。初球はゆっくりとスピードにブレーキがかかったボールは大きく変化する

コツンとバットに当たるのだがボールは完全に死にすぎている。

 

「キャッチャー。」

 

純平がボールを取りそしてファーストに送球し余裕で間に合った

俺のスローカーブはバント殺しと呼ばれるくらいにバント成功率がかなり低い。

それは元々ボールの勢いがほとんどないからであり、球がほとんど死んでいるボールだからだ。

 

「ナイピーグッチ。」

「雷市ワンアウトな。」

 

ボール回しで雷市からボールが返ってくると俺が軽く声をかける。みんなが笑う。

やっぱり野球は楽しいよな。

そう思いながら俺はマウンドに立つ

そして2番、小湊先輩、3番伊佐敷先輩を市大戦とはことなりスローカーブ中心の打たせてとるピッチング内野ゴロ二つに抑え、1回の裏を完璧な投球で締めくくるのであった。



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降谷覚醒

真ん中の黄色いマークが光り、三振の山を気づいていく降谷。

これで俺がホームランを打った後4連続で三振を奪っているので完全に火がついたらしい。

 

「うげっ。気持ち乗っているな。」

「なんかまずいよな。この流れ。」

 

俺と純平はすぐに状況の流れを掴んでいた。

 

「そんなに悪いのか?」

「悪いです。初回の降谷とは別人すぎる。立ち上がりが苦手なピッチャーってことは知ってましたけど。一度スイッチが入ると真ん中ばっかりでも三振の山が築いているんですよ。本当に怪物ですね。これで一年だと思うとゾッとします。」

 

俺はさすがにゾッとしてしまう。これは明らかに別人だ。初回の俺が打ったことでスイッチが入ったのだろう。

 

「……前の試合の反省はしっかりしているらしいですね。まぁ短かいイニングってこともありますけど一応雷市までは投げさせるかもしれません。」

「…雷市はどうだ?打てるか?」

「分かりません。ただ。俺はこのまま投げてほしくはないですね。さすがに俺もあの球は少し打つの嫌です。」

「……それほどか。」

「まぁこの回まででしょう。このままなら降谷を投げさせるっというプレッシャーをかけ続けるにはこの回で降りてライトかどこかに守らせる方がいい。」

 

純平がそういうと俺も頷く。こう言った作戦は純平は明らかに頭が回る

 

「……それで次は?」

「沢村です。一応丹波さんの可能性もありますがこっちがムービング使いだと知らない場合では積極的なバッティングが売りの俺たちにとっては沢村が有効的だからです。」

 

と言った矢先だった。

ズバンと大きなミット音が聞こえる。雷市が一つも動かなかった。

電光掲示板を見ると真ん中の黄色いランプと赤いランプが二つついて青色のランプは一つも移っていない

球速表示を見ると俺は絶句してしまう

 

150km

 

「ストライクバッターアウト!!チェンジ。」

 

審判の声が響く。その瞬間だけは球場内が静かになった。

金属音は一つも聞こえなかった。それどころかこの回に入ってからミット音も9球しか聞こえない。

 

三者連続3球三振だと。

それも雷市までもが俺までが少し言葉が固まるほどに

 

少しマウンドの投手を見てしまう。すると不服そうな顔をしながらマウンドを降りていく一年ピッチャーがいた

 

「……バケモンかよ。」

 

俺の言葉に誰も否定できなかった。そして俺は小さく息を吐く

 

「まぁ4点以内に俺が抑えればいいだけだしな。」

 

すると純平が笑う。

 

「緊張は?」

「ねぇよ。てかまだ勝っているしな。」

 

ミットを持ち俺はマウンドへ向かっていく。さて4番結城さんは打たれてもいいバッターの一人だけど

 

……全力でねじ伏せてやろうか。

 

 

 

『四番ファースト結城くん。』

 

投球練習が終わり球場のアナウンスが流れる。

ルパンのテーマが応援歌で流れすでに期待されている一人だ

初球のサインに首を横に振る。

すると純平が少し首を傾げるがそして次のサインが出ようとするがそれも首を横に振る。

純平が驚いたようにこっちを見る。初球から投げることはほとんどなかったボールを選択したからだ。

 

三回目のサインで頷く。意識を向けるだけでいい。

 

早速いくぞ。

 

俺は投球フォームに移る。そして投げるまでに少し笑ってしまった。

やっぱりこの緊張感たまんねぇ

俺は投げたボールは無回転でキャッチャーの元に向かう。不規則に無回転を投げたボールは急激に落ち、ギリギリであるのだがストライクゾーンに入る。

 

その一球に誰もが黙りこむ。そして受け取るとすぐにサインを決め俺次のフォームに取り込む

俺はサインはすぐに決まった

出し惜しみすることもなくもう一球同じ球種を投げ込むと大きく空振りを奪う。

 

「ストライク。」

 

変化球が二つ。でももうウイニングボールは決まっている。

キャッチャーがインコースに構える。そして今日初披露のボール

俺は振りかぶる。もはや誰も予想はできなかっただろう。

 

 

俺は軟投派であること

 

 

キレた高速スライダーがインコースをえぐる。腰を引けたバッターに対してスライダーがストライクゾーンに突き刺さった

 

 

「す、ストライクバッターアウト!!」

 

青道高校の応援席が絶望に変わっている。

本性をバラす方が今後に関係してくるのだがそれでもこの回で一点取られる方がムードが悪くなる

そして結城さんを三振に取った変化球を絞れば後は簡単になる

 

反対に今度はストレートで押していく。変化球はスローカーブを一球増子先輩に見せただけ。6番の御幸先輩を空振り三振に取ると俺はベンチに戻っていく。

 

2回のお互いの投球は9球。そして三振三つ。

これが投手戦始まりの狼煙だった。

そして3回のマウンドには降谷がたっていた。

青道監督も後のインタビューであの場面は降谷に託すしかないと判断したらしい。

そしてその判断が正しかったのも

3、4、5薬師高校は全員三者凡退で終わったのだ。

そして当然薬師バッテリーも変わらない

こっちも同じように三者凡退の山を掴んでしまう

力ずくで降谷が抑えたと思えば

変化球とコントロールそして配球で抑える薬師バッテリー

誰一人ランナーを出さず、誰一人外野にボールがほとんど飛ばなかった

お互い5回までで奪った三振はすでに二桁を超えている

この異常さがわかるだろうか

特に降谷は15個のアウトのうち14個を三振でとっている

俺は三振が10でありながら未だにヒット四球はない完全投球。

お互いに遊び球がないにも関わらず三振をとりまくっていた

打撃チームと呼ばれるチームはいつしか投手戦になっていた。



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