ライザー・フェニックスの受難 (疑似百合姉妹(姉))
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ライザー・フェニックスという男、レイヴェル・フェニックスという女

冥界フェニックス領にあるフェニックス邸の執務室にその人はいた。

 

積み上げられた紙の束が大量にありそれの高さにより容姿は今のところ確認できない。

でもその手際は見事としか言いようがないものでみるみるうちにその山が消えていく。

 

紙の山で隠れている人こそ冥界では一番有名と言っても過言ではない人。

その名をライザー・フェニックスという。

今は見えない容姿ではあるが稲穂のような輝く髪を腰まで伸ばし、その瞳はサファイヤの様に青く輝いていて、白磁のような肌の人であった。

 

人の気配を部屋の外から感じるのか筆を置いた。

 

コンコンコンと扉が音を奏でる。

 

「お兄様、お茶をお持ちしましたわ。」

 

「ああ、レイヴェルか入っていいぞ。」

 

ガチャと扉が開けられお茶が乗ったお盆を持ちながら入ってくる少女。

彼女はライザーの妹であるレイヴェル・フェニックスである。

 

やはり妹だからかその容姿はライザーに非常に似ていた。

似ていない点を強いて挙げるとすれば背丈と胸の大きさ位であろうか。

 

部屋を見回したレイヴェルがふと何かに気付く。

 

「あら、お兄様少し疑問なのですが・・・」

 

「どうしたレイヴェル、遠慮なく言っていいぞ。」

 

「はい、そういえば今日は朝からお兄様の眷属の方々を見てないのですが・・・」

 

「ああ、あいつらならそうだな・・・」

 

少し考えこむライザー。

レイヴェルは不思議そうな目で彼を見つめる。

 

「多分、サーゼクスのところじゃないか?」

 

その答えにレイヴェルは呆れた様子になる。

 

「もうお兄様ったら・・・自分の眷属なんですから居場所位ちゃんと把握しとくべきだと思います。」

 

「俺は眷属を束縛したくないからな、仕事以外の時は自由だよ。」

 

兄の答えを聞いても納得してない様子のレイヴェル。

そんな妹を見て苦笑するライザー。

 

「それに・・・お兄様。」

 

「どうした。」

 

「部屋に籠って作業してからすでに何時間経っているかお気付きですか。」

 

「ん、ああ・・・」

 

何より彼は・・・

 

「そうだな、たったの52時間だな。」

 

ブラック企業に勤めてる人も驚きのワーカーホリックであった。

 

「また寝ないでやってたんですね・・・」

 

その時間を聞いて流石に呆れるレイヴェル。

このやり取りはいつもの事だったのでもう止めるのも諦めてる様子だった。

 

「お兄様、倒れる前に少しでもいいので仮眠を取ってくださいね。」

 

「ああ。」

 

といいつつも資料に向かうライザー。

流石にこの様子を見て彼女は手札を切る。

 

「お兄様、寝ないとお父様とお母様を呼びますわよ。」

 

「ああ、分かったよ。」

 

観念した様子で返事をする兄を見てほっとするレイヴェルであった。

 

「そのお茶が飲み終わったら部屋に戻ってくださいね。」

 

「じゃあお茶を飲んでいる間はレイヴェルの話を聞かせてくれ。」

 

ライザーのこの言葉に待っていたかのようにレイヴェルは物語を紡ぐ。

ライザーにとってもレイヴェルにとってもこの時間は一番の楽しみであるのだ。

その証拠に二人は朗らかに笑っている。

 

それから数十分後。

 

「ありがとう、レイヴェル。」

 

「私もお兄様にお話しできてよかったですわ。」

 

仕事ばかりでレイヴェルとの時間を最近作れてないと思いライザーは大幅に予定を変更した。

 

「レイヴェル、明日は久しぶりに街に出ないか。」

 

「結構資料がたまってる様子でしたが大丈夫なんですの。」

 

紙の山を見てレイヴェルが不安そうな様子だ。

 

「ああ、大丈夫だ。さっきやっていたのは来月分の仕事だからな。」

 

「・・・・・・っ」

 

その答えにレイヴェルは絶句した。

 

そう、兄はこういう人なのである。

ライザーは様々な権限を有しているのでその分仕事量も多くなる。

さて、ライザーの役職を考えてみよう。

まずは冥界の顔である外交官。

つぎに冥界の軍事象徴である軍団長。

そしてフェニックス家当主候補。

有事の際動くことになりそれらの資料が多い軍団長に加えそれ以上に忙しい外交官そして毎日が仕事の当主それの候補である。

普通の悪魔であると仕事を投げ出してしまうほどの量であるのだ。

 

そりゃぁやってもやっても減らないから仕事を生きがいにしちゃうよね・・・

 

納得したくはないが納得してしまった。

ライザーはワーカホリックにならざる負えなくなったのだと。

そんな仕事人間・・・?いや、仕事悪魔な兄が一日休むという滅多にない事が起きたのだ。

それも婚約者のいる兄が婚約者ではなく妹に時間を割くという奇跡的な事が起きたのだ。

 

レイヴェルは歓喜した。

 

ついに兄がワタシのことを見てくれた。

 

そう、何を隠そうこのレイヴェルは極度のブラコンでありライザー・フェニックスとリアス・グレモリーの婚約を猛反対している子なのである。

それこそ兄を独占したいほどに愛してしまったのだ。

だけどそれを表に出してしまったら兄に嫌われるだろう。

なので表ではただただ兄想いの妹を演じているのだ。

そんなレイヴェルは今日も兄と過ごせて幸せである。

 

(ワタシが夢にまで見た美少女な兄と疑似百合デートが。)

 

このレイヴェル末期である。



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