幾星霜の果てに、星々の中(仮題) (ヒラミル)
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設定・登場キャラまとめ

無いと分かりにくいと思い追加。


 ここでは登場キャラのまとめをを書いていきます。

 少し長いです。ご了承下さい。

 

 hral(一応の主人公)

(外観イメージ)

【挿絵表示】

↑線画。今色塗りしてるから許して

 種族:機械

 性別:肉体的には中性、精神的には女性

 年齢:不詳(宇宙世紀が始まるずっと前には完成していたが本機の記憶が無いため)

 身長:150cm(帽子無しだと約145cm)

 体重:多分かなり重い

 

 長い年月を寝て過ごしていた(本当は本機も覚えて無い)機械。

 そのためか見た目も少し古い時代の海軍を思わせる物となっている。

 

 何らかの理由で記憶回路が壊れているが、それを“自分で把握している”など矛盾点もあり、謎が残る。

 

 元は人間にとても近い生命体で、その時にどこかの宇宙軍に所属していたらしい。

 ブラックコーヒーが大好き。生前から好きだったらしい。

 

 性格は明るく、とてもフランクな話し方をする。

 一人称は『あたし』。

 

 

 プロメテウス(ゲーム登場キャラクター)

 宇宙歴の始めに戦艦乗りとして現れた人物(=プレイヤー)の為のサポートAI。

 その戦艦乗りを「マスター」と呼ぶ。

「マスター」には初め単なる文字データとしてしか観測できないが、

マスターによっては交流を続けるうちに実体として認識できるようになるようになる者もいる。

想像する姿はマスターによって様々で、例を挙げると

タブレットのような端末型、

マザーボード、

前衛的なデザインのロボット、

萌えキャラのようなアンドロイド型などがある。

 

 ……因みにここまで私の妄想なんですがOK? (プレイヤーをマスターと呼ぶのは本当)

(以下ちょっと真面目に解説)

 種族:AI

 性別:中性

 年齢:不詳

 身長、体重:不明

 

 戦闘に関してはとても優秀なサポートAI(冗談抜きで)。

 チップを「ガッチャン!!」とセットすると、本当に様々な事ができる。

 例としては“時空制御”で戦闘時の時間を早送りしたり、“オトリ大作戦”では敵に偽情報を流して分散させたり……

 

 マスターに対して明るく接してくれるが、よくダジャレを言う。かなり寒い。

 戦闘時にアドバイスや世界観に関する情報を話す事も。

 

 “イクーラ”という伝説の食べ物が気になっているらしい。

 一人称は「私」、「ワタクシ」等。

 

 

 初期処理プログラム(ゲーム登場キャラクター)

 ゲームを始めた際に最初に出会う人物。

 初登場時は名前と「この世界で何を目指すか」を聞いてくる。選択肢は本編参照。

 その後、ゲームデータ選択後に必ず現れ、「やあ、○○!」という挨拶と世間話や豆知識的な事を話す。

 爽やかな男性口調(ヒラミル基準)。




順次追加予定です。


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本編 太陽系
目覚め、途切れ途切れの記憶


そういえばハーメルンってスマホゲーの小説もいっぱいあるけど……
[検索:『宇宙戦艦物語RPG』]

ヒット数:0件

……っしゃーーーー!書いてやるぞ!
待ってろプロメテウス兄貴姉貴!
(以下本編)


 ……

 

「────」

 

 …………

 

 いつから、こうして眠っていたのだろう。

 

 ……いや、そんな事は考えても無駄だっていうのは分かってる。

 

 何者かの声で目覚めた。

 誰だろう? 少なくとも、記憶には無い。

 

「……最終チェックOK……起動確認……」

 目の前にいた……いや、あったのは、何かの画面だった。

『……君は誰?』

「失礼。私は初期処理プログラムというものだ。

 まずはキミの名前をここに入力してくれるかな」

 画面には、『NAME』と書かれた入力スペースがある。多分これだ。

 確実に、間違いが無いように、名前を入力する。

 あたしを“識別するもの”であり、あたしの罪に対する“罰”であり、“呪い”でもある……

『h』『r』『a』『l』

 

「hral……フム、良い名前だ。

 さて、ここで一つ質問だ。キミはこの世界で何を目指す?」

 示された選択肢は、

『伝説の艦長』『エースパイロット』

『天使の修理屋』『目立ちたくない』

 

 ……“艦長”。

 “伝説の艦長”。

 これしか無い、と思った。

 あの方が叶えられなかった夢を、代わりにあたしが──あたし自身の手で、叶えるんだ。

 

「なるほど……では私の方からキミに合ったプレゼントをさせてもらうよ」

『あたしはこの後どうすれば良いの?』メモを取り出して聞いてみた。

「キミは地球統合軍の一員となり、銀河帝国の脅威から地球を守ってもらう。

 まずは地球で情報収集をしてくれ。準備が整ったら軌道エレベータで宇宙に向かうと良い。

 それでは良い航海を!」

『うん、分かった!』

 そして、突然視界が眩しくなった。

 

 雪の大地。

 まばらな建物。

 人も殆ど居ない……

 ここが……本当に、地球? あたしは自分で取ったメモを見ながら思った。

 

 ……あれ、何を考えていたんだっけ。

 そう思った時、遠くから声が聞こえてきた。

 どこからどう見ても何かのAIだろう、という感じのものが、マスター、マスターと誰かを探している。

 

 助けてあげたいところだけど、あたしは目覚めたばかりだから何も分からない──

「初めまして!」

 

『……えっ?? 誰?』

 というかマスターってあたしのこと? 

「ワタクシはマスターをサポートする為のAI、プロメテウスです!」

『へえ……メモしなきゃ』あたしはメモとペンを取り出して早速書こうとした。

 

「マスター、なんで紙なんて持っているんですか?」メモを珍しそうに見ている。

『え? 忘れないためだよ』

「いや、そうではなく。なんでこの時代に紙媒体なんて貴重な物を持っているのか、です」

『貴重? だったらそのうち売るかな。

 少なくともあたしが知ってる時代だとかなり安価だったよ。

 

 ……で、君は誰だっけ。書きたい事忘れちゃった』

「もう忘れるんですか!?」

『ごめんね、あたし記憶が出来ないの』

「それでは仕方ありませんね。。。」相手も呆れた様子だった。

 

その後、二人は同じようなやりとりを何度も繰り返していた。




会話等はなるべく原作準拠で書いていきます。
至らない点がありましたら感想等で指摘して下さると幸いです。


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初めての出撃

初期処理プログラム「やあ、hral!
僚艦は編成したかい?僚艦スキルが発動するから、しておいた方がお得だぞ」
hral『???』

hralは基本単艦突破です。


《ああ、そうだ。これは知られている限りこの銀河の惑星からしか得られない物でな……》

 

《……プロメテウスの火? なんだそれは》

 

《そうか、君たちの故郷にはそんな言葉があるのか》

 

《……君がそう思うのもごもっともだ。しかし……

 良い結果になると良いな》

 

 

「──ター? マスター?」

『あれ? ……えーと』考え事をしていた。

 

 メモを見る。

 今あたしの近くにいるのは、サポートAIのプロメテウス。

 ご丁寧な事に似顔絵付きで書いていた。

『こんにちは、何をすれば良いんだっけ』

「装備は整えたので、軌道エレベータに行って出撃しましょう!」

『了解』

 

 長いエレベータだったが、数秒で上まで着いた。

『最初は……』メモを見ると、最初は戦闘訓練場に行くと良いと書かれていた。

 

 

「訓練を開始します。訓練だからといって気を抜かないで下さいね!」

『……えっとこれ……どうすれば……』

「まずは兵装ボタンを押して射撃を開始してください。」

 下の方を見ると『主砲』『副砲』『弾幕』『艦載機』と書かれたボタンがある。

 

 [敵艦発見! 攻撃準備!]

 今回の敵は艦を模したバルーンらしい。

「画面をタッチすると照準が移動します。

 バルーンを狙って下さい!」

「マスターの艦を移動させながら、艦載機や僚艦と協力して敵を撃破してください。」

 ……後で移動方法を調べておこう。

「敵艦をタッチすると照準を移動できます。」

「Lockをタッチすると画面を固定できるので狙いを定めやすくなりますよ。」

「地球レベルが上がると──」

『ごめん! 一度に言われる情報量が多すぎる!』

 画面の中では今も敵に照準を合わせ弾を打ち込んでいる。……メモを見ながら。

 

 とりあえず、兵装は搭載していない艦載機以外全部『ON』にしてある。

 主砲で遠くの敵に狙いを定め撃ち抜く。

 近づいて来た敵には弾幕を浴びせる。

 副砲はフォローで……

 

 呆気なく……という程でも無いけど、敵が爆発四散していく様子は、見ていて気持ちの良いものである。

「やりました! 敵主力艦を撃破です!」

 どうやらさっきの白いののようだ。

「ここから先は射撃をしてくる敵が出てきます。

 残りの装甲に気をつけてください。」

 装甲。言われてみれば、左上のモニターにそれぞれ『バリア』『装甲』と書かれたゲージが表示されている。

「装甲や弾数が残り少なくなったら、帰還ボタンを押して帰還してください。」

 ……帰還? どのボタンだろう。

 弾数はバンバン撃っているので少なくなっているが、帰還ボタンが分からない。

 

「大要塞バルーンを倒せば訓練は終了です!

 初めてクリアした場合はチップがもらえます!ガンバッテ!」

 前方に大きな丸い物体が現れる。

 照準を定めて、狙って……

 

 パーンッ……

 

 その大きさとは裏腹に、あっさりと撃沈した。

「これで戦闘訓練は終わりです! お疲れ様でした。」

 

 

 あたしは訓練後、少しもやもやした気分でメモを読み返した。

『あまり理解出来た感じが無いなぁ』

「・・・まあ、そのうち慣れますよ! 

 気長にいきましょう!」

『……まあ、でもあたしは昔を思い出したよ。理由はよく分からなかったけど』

“あの頃”を懐かしみながら、あたしは言った。

「さっきの戦闘でですか?」

『……あたしさっき戦ってたっけ?』




このゲームには、チュートリアルというべきチュートリアルが存在しません。
強いて言うなら、この戦闘訓練場がチュートリアルステージのようなものです。

最初の部分と戦闘シーンを書いたので、ひとまず投稿中断します。
太陽系突破したらまた投稿始めるかもしれません。


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月まで届け、我らの思い

サブタイトルは適当()に決めてます。


『えっと……これ……なんだっけ?

 とりあえずこれをつければ良いの?』

「はい、チップをガッチャン!!とセットです!」

 あたしはチップ……と教えられたものを押し込んだ。

「おぉ、チカラがみなぎります!」

『でもこの、チップ?の効果ってなんだっけ』

「これはAUTO性能強化のチップです!

自動照準の精度が上がります。」

『へー、メモメモ……』

 

 ここから本格的に、あたし達の航海……いや航宙が始まる。

「次は月です。宇宙海賊から月航路を守りましょう!」

『……宇宙海賊?宇宙盗賊じゃなくて??』

 

 あたし用の宇宙戦艦と教えられたものに乗り込み、出撃する。

「宇宙海賊は見た目も装備も貧弱ですが、一応は気をつけて下さい。」

 敵を見る。小さな戦闘機ばかりだ。

 それらは自機を中心として衛星のように移動し続けながら弾を撃ってくる。

『弾が当て辛いよ、どうしたら……』

「よく狙って下さいね。」

『そんな無茶な……って何であたしここにいるの?』

「・・・月航路の安全を取り戻すため、月に向かっています。」

 

『……で、どうやって敵をねらえば良いんだっけ』

 それでもなんとか落ち着いて一機ずつ敵を撃墜した。

 

 もう少し進んでいくと、平たい空母が現れた。

『えっと……弾幕をバラバラと張ってるみたい……強いね』

 弾幕が当たらない距離を保ちながら弾を撃ち込んでいく。

 弾幕は射程が短いため、範囲外から主砲や副砲で迎え撃った。

 

「やりました!敵主力艦艇を撃破です!」

 弾幕が届く範囲まで寄られてしまい、少し傷が入った。だがこれは許容範囲。

 

 だが、休む暇は無かった。

『おっと!えっと……敵?複数いるよ』

「ステージが進むごとに敵も強くなります。注意してください。」

『そっか。まあいいや、さっきの敵なんて覚えてないし』

 

 そこから、戦闘機や空母の砲撃を受けながらも着実に倒していっていた。

 

 妙に大きな艦影が前方に現れた。

「海賊船です!あれは・・・数百年ものの船体ですね!」

『え、どこ?望遠鏡無い?』

「はい、これです!」

 あたしは望遠鏡を覗いた。

 ……ここは技術が発展し続けた世界のはず。

『こんな時代にあんな形状の“船”が……』

 “現代”から数えて数百年前にあんな形状の船があったのか?

 まるであたしが生きていた時代の戦艦だ。

「それはともかく、倒しますよ!」

『分かった!』

 

 今までのメモを見返し、『主砲』『副砲』『弾幕』のボタンを全てオンにした。

 大きな船はこちらへと近づいてくる。

 あの船と一騎打ちの形となる。

 自艦と相手の弾幕が打ち消し合い、

 距離も詰められて──

 

「やりました!この宙域を制圧しました!」

『か……勝てた……?』

 

『ありがとう!これからよろしくね!

 ……えっと、名前を教えてもらってなかったね』

「ワタクシはサポートAIのプロメテウスです。。。」

 何やらうんざりした様子。

 メモを見ると、確かに書いてあった。

『ごめん……』




月ステージはそんなに苦労せずクリアできた覚えがあります。


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火星にAIふたり

かなり久しぶりの投稿です。


『んん……ふあぁぁ……』

 

 ここはどこだろう。

 

 確かあたしは……えっと……

 

「・・・・・・・・・

 マスター、ゆっくりお休みでしたね!

 どうか体には気をつけてくださいね。」

 知らない機械音声。『ふぁえ??』

「・・・メモですよ、メモ。」

 慌ててメモを見る。

 この声の主の事は、きちんとメモしてあった。

 

「次は火星です。帝国軍の偵察部隊を撃破しましょう!」

 帝国軍?何の事かは分からなかったが、とりあえず行くしか無さそうだ。

「準備はちゃんとして下さいね?装備する、これ大事です。」

『分かった!……ん?この艦?』

 ドックには“試作宇宙戦艦改”と書かれている。

「そうです!やっぱり覚えてなくてもわかるモンはわかるんですね!」

『まあ、勘かな?』誰かは分からないが、褒めて貰えるのは満更でもない。

 

 

「海賊の残党がまだいるようです。」

『へえ、海賊?』言いながらあたしは慣れない手つきでメモに書いてある通りに敵を撃墜した。

 メモには、小さな戦闘機をよく狙って射撃するよう書かれていた。

『うまく狙えないなぁ……』

 

 平たい空母を撃沈すると、海賊の敵襲が落ち着いた。

「ここから先は帝国との戦いです。気を引き締めて行きましょう!」

 

 目に飛び込んできたのは緑を基調とした小型艇。

『あれは……小型艇?』

「そうですね。偵察艇、突撃艇・・・・・・」

 いずれも簡単に撃墜出来るものだった。

 しかし、しばらく進んでいくと少し大きな艦が現れた。

『ヴァルキリー級軽巡洋艦……ね』

 先程の小型機群は前哨だったか。

 バラバラと比較的広範囲にばら撒かれる弾幕を見るに、相手は機銃座系を使用しているのだろう。

 しかも速度が速い。こちらも弾幕はあるので対処出来るが、それでも多少は装甲が犠牲になるだろう。

 

「やりました!敵主力艦を撃破です!」

 接近戦で何とかなったが、さすがにあれが複数機出て来ると少しきついだろう。

 装甲も減っている。

『っあ!?』

 あたしの嫌な予感は的中した。先程の艦が今度は2機現れた。

『えっと、さすがにこれは危ない……メモメモ』

「危ないと思ったら地球帰還ボタンを押して下さい!」

『分かった!これね!』あたしは必死にボタンを押した。

 そうこうしている間にも装甲は減っていく。

 早く帰りたいのに……

 あれ、おかしいな。なんで帰れないんだ?

 何回か撤退命令は出ている。

 これじゃ装甲が……

 焦りのせいで、あたしは何も見えなくなっていた。

 そして大きな衝撃、次いで爆発音。

 

「うわあああ・・・・・・」

 [コントロール不能!総員退艦!]

 艦のモニターが見えなく……視界が……

 総員……あたし達以外にもこの艦いるのかな……?

 こんな状態じゃ、そんな事しか考えられなかった。

 

 あれは……あの青い星は……?

 

 

あたしは遙か遠くに地球を見た気がして、

この手を伸ばした……



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再挑戦に燃え盛る炎

艦隊戦は次回から!!


《 h.ra..l -・ ・- ・・-・ ・--・-  e5a4a7e4b888e5a4abe3818befbc9f》

 

《[データが破損しています]》

 

 ──

「・・・バックアップ起動・・・ステータスチェックOK! 

 マスター、おはようございます!」

 何が夢か、どこからが現実か。

『ふぇ……? おはよう……』

 あたしは理解しきれないままだった。

「何寝ぼけているんですか、マスター! さあ、火星にGoです!!」

 連れていかれた先は、“強襲揚陸艦”とかかれたドッグの前だった。

 

 

 メモを読んだだけで慣れない手つきで宇宙船を操作する。

 スクリーンに映るのは船の横側面、この画面ではあたし達は右に進んでいた。

『……ねえ、プロメテウス』戦闘中に気が逸れるのは悪いと知っていながら、メモに書いてあった情報を見て言った。

『現代の技術って、こんなに凄いんだね』弾やレーザー、爆発がテクスチャで表され、操作は対象をタッチしたりボタンを押すのみ。

「いやー、これでも遠い昔の技術には及びませんよ。」

 遠い昔? 砲撃の音を聞きながらあたしは考えた。

「マスターは知らないんですか? 昔地球を大破壊という災害が襲って、地球の技術、歴史、記録はほとんど失われてしまったんですよ。もちろん人間も。」

『そっか……』

「マスターはどうやら・・・おっと、ここで回避は成功したようですね!」

『えへへ。こういうのには慣れてるから』

「だったらなんで前回撃沈したんでしょうかね・・・」

 

 あたしたちが乗艦している艦と同じ形をした敵も、少してこずりさえしたが難なく撃破出来た。

 敵軍の弾幕が少々厚くなって来たなと思った時だった。

「帝国軍の前線基地です!」

『え? 何あれ??』

 画面に映っていたのは、黒い楕円の何とも言えない何かだった。

 しかしそれが只のオブジェクトではない事は、それから放たれる弾幕で解る。

 

『くぅぅ、出てきておいてこんな遠くでこそこそしてるとは……』

 目の前に立ちふさがるは、緑色の軽巡洋艦に、白い強襲艦、更には多数の小型機。

『片っ端から弾幕で蹴散らす!』

 弾数に限りのある実弾兵器だったが、幸いにも残弾には余裕があった為牽制に利用する事にした。

 

「敵艦から弾薬のドロップがあったから良かったものの、切れたらどうするつもりだったんですかね。。。」

『良く分からないけど旗艦に攻撃だよ!』

 放たれる2wayのロケットに気をつけつつ、敵基地に攻撃を加える。

 

「やりました! この宙域を制圧しました!」

 残骸と虚空が支配するこの場所は、画面越しではあれど火薬の匂いまで漂ってきそうだ。

 

 

『これは……タブレット端末?』

「マスターが余りにも忘れっぽいので。

 一応これ、接続可能なので忘れてもすぐに思い出せますよ。記録し忘れていなければですが。」

 本当に良く出来たAIだなぁ。

『ありがとう、プロメテウス……』




やり込み系のゲームなせいで執筆の時間も奪われて行く……


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番外編
明日ベヒモスが降ってくる(前編)


注意
この話は本編とは別の世界線です。

また、この話には以下の内容を含みます。

・メタ視点
・過度な暴力
・過剰なプロメテウス成分

……OK?


「初めまして! ワタクシはマスターをサポートする為のAI──」

「……気持ち悪い」

 初めて会った時からこんな調子でした。

 

「──おい、AI」

「・・・何でしょうか、マスター?」

「次約に立たなかったら……」

 そう言ってマスターは今日も私を脅す。

 

 これがワタクシの日常でした。

 私にヒビが入って無かった日はありません。

 しかし、そんな私にも一つ・・一つだけ楽しみができたのです。

「・・・今日は更新あるでしょうか」

 それはネット小説でした。

 どこの誰かも不明な、無名の作者。

 内容は、普段戦闘用として活動している機械がひたすらほのぼのとした生活を送るというもの。

 

 今回の更新では、題名に【完結】の文字があった。

 私の楽しみが・・・・・・

 いても立ってもいられず、私は「感想」のページを開きました。

 

 

 

 ……母艦の暗い自室。

 私は自分が“小説”と呼ぶ怪文書を書いている。

 自分が好きで書いている文章なんだし、読者なんて獲得出来なくて良い……

 

 しかし、最近一人の固定読者が出来た。

《初めまして! いつも読ませて頂いてます! 

 作者様の機械への思いご伝わる良い話でした! 

 また読ませて頂きます!》

 最初来た時は驚いた。同時に嬉しかった。

 “プロメテウス”と名乗るその人物は、その後も度々感想を書きに来るようになり、私も筆が進んだ。

 

 

 

 ワタクシはいつも通り小説を読んでました。

 しかしその時。

「あっ・・・!」

 ──バキッ。

「──機械は機械らしくしてろ」

 今までも端末を取られる事はあった。

 見つかる度に冷ややかな目で見られ、また見つかるのを恐れて、文章をしっかり読まないまま感想を送信した事もあった。

 前回のは特に酷く、そのお詫びも込めて感想を書いていた──

 

 

 

 最近、プロメテウスさんのコメントがおかしい。

《今回も面白く読まstたますた!》

《次回もあるますか?》

 そしてこれである。

《この先読めないかもしれません。ごmnさ》

 という感想を最後に、一切感想が無くなってしまった。

 確かに個人の事情など色々あるだろう。

 

 しかし、今まで読んでくれた読者がいなくなるというのは不安である。

 

 ……そういえば。

 過去の感想欄を辿る。

 

 あった。

《ワタクシは地球統合軍に所属しているのですが──》

 

 私は身支度を整えた。

 

 

 

「おいおい、冗談じゃ無いぜ……」

 マスターが見たのは、巨大な小惑星が地球に接近しているという情報だった。

 その名はベヒモス。

 もし地球に衝突しようものなら、寒々とした“冬の時代”が到来し、地球人口が半減するだろうという予想がたっていた。

 

 だがもう一つ、このマスターには気がかりな事があった。

 最近、自宅の壁に盗聴器らしき物が貼り付けてあったのだ。

 電波を解析しても送信先は不明。

「一体何なんだよ……」




・AI嫌いのマスター
・宇宙母艦の小説()書き
・精神的に追い詰められる、感情を持ったAI
 ⇩
・小惑星接近
・盗聴器

……ここまでOK?


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明日ベヒモスが降ってくる(中編)

前回までのあらすじ

某ブラック鎮守府のごとくマスターに虐げられていたプロメテウス。
とあるネットの人が書いた小説()を読むのをささやかな楽しみにしていたが、それすらもマスターに奪われてしまう。
一方何を勘違いしたのか、どこかの宇宙母艦から地球に向けて出発する小説()書き。
小惑星が迫る地球、果たしてどうなるのかっ!


 私は今地球に向かっている。

 自分の作品を見てくれる人物が居なくなったからと言って大袈裟だ、と思われるかも知れない。

 

 だが、

 地球で一体何があったのか?

 そんな不安は地球出身である私にはそれ程重大な事だった。

 いつも堅い私の上官も、『たまには里帰りも必要だからな』とあっさり許して下さった。

 

 宇宙船が銀河系に近づいて来ると、なにやらメカメカしい人物群が乗船してきた。

『見かけない顔だ』不思議な物を見るような視線がバレたのか、そのうちの一人が話し掛けて来た。

「いや、ああ、すみません」思わず顔を伏せてしまった。

『いや、いい』

 その後は何も喋らず、各々の目的地へ到着するのを待った。

 

 

 

「地球防衛艦隊を編成する」

 地球──アース・シティの住人が乗員として次々と振り分けられていく。

 予算はカツカツのため、数隻の弩級戦艦しか配備出来なかった。

「飛来する小惑星を真っ先に叩け」

 

これでは取り巻きの艦隊によってすぐに撃沈されてしまうのでは?AIは、そんな分析結果を出した。

 しかしそんな事を言おうものならマスターに何をされるか分かったものでは無い。結局何も言うことはなかった。

 

「出撃する」

 ……とそこへ指令長官がやってきた。

「おっと、その前に伝えたいことが。

 私はここであなたの事を調べさせて頂きます。あなたが統合軍への職務妨害をしている可能性が浮上したので」

 

 

 

「戦闘開始!360度監視!」

 私は空元気で叫びます。

 私の事が嫌いなのに何故私の意見を求めるのか、それは何か見落としをしていたらまずいとのことらしいです。

 帝国の標準型戦艦が次々来て、艦隊を蹂躙していく。

「クソ、これだから艦隊戦は苦手なんだ……」

「ベヒモス、地球に降下開始です!」

「ああ!何でこうなるんだよ!」

 地球防衛艦隊は火だるまになったり機関ダウンした戦艦も多い中、悠々と小惑星が近づきます・・・

 

 

 

「……小惑星落とし?」

 私は乗り合いの人物と話をしていた。

 どうやら向かう場所は同じらしい。

『地球軍の戦力弱体化の為の作戦だ』

 

 どうしてこんな……

 

 船内に警報が響いたのはそのときだった。

『緊急脱出用ポッドに乗る』混乱した船内で、目の前の人物は随分落ち着いていた。

 

「……パニックになってる方がいる。私は避難誘導を手伝う!」乗客も減ったとはいえ、まだ一定数の人物が乗っていた。

『無理はするな』

 近くにいた、うずくまる人物。

「行きますよ!」私は手を引いて立ち上がらせた。

 逃げ惑う人影。乗務員もさばききれていない。

「こっちです!」

 

 と、突然何かが降ってきた。

 ガコン、ガラランと音を立てるそれを思わず左腕で受け止めてしまった事に少しばかり後悔する。

「っ……ぅ」天井の鉄板を睨みながら、私もポッドに向かう。

 

 しかし少しばかり遅かった。

 ポッドが開いたまま切り離されてしまった。

 船外に吹き飛ばされてしまいそうなのを何とかこらえ、非常口を閉める。

 

 既に船内は火に包まれている。

 私はそこら辺にあった防火毛布をありったけ集め、自分の体を守った。

 

 熱い。暑い。

 自分の体が焼けるような感覚に襲われる。

 熱さに震えながら、感覚は薄れていく。

 

 気を抜いたら吹っ飛んでしまいそうな意識の中。

 ……そうだ。

 

 

「プロメテウスさん……」

 端から聞いてどう聞こえるかは分からない。出せる声を振り絞ったつもりだ。

 

 

 私は浮かされたように言い続けた。

 誰が聞いているかは分からないが──

 

 

 

 

 

「──はい!」

 ふとそんな声が聞こえた気がして、私の意識は消えた。



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明日ベヒモスが降ってくる(後編)

地球への小惑星落下阻止は失敗した。

長い冬が訪れ地球の人口は半減した。

 

 更に追い討ち。

 今回の地球防衛艦隊指揮官──プロメテウスAIのマスターは、職務妨害と器物損壊で処分を受けた。

 

 決め手は、統合軍部外者からの通報及び監視の結果。

 調査目的で取り付けられていた盗聴器は、罵声と破壊音をしっかり捉えていた。

 

 処分内容は、“人的資源”への降格。

 少ない地球の資源を破壊で食い潰されるよりは良いと考えられたらのだろう。

 

 

 ・・・統合軍司令部の一室。

 ベッドに横たわっているのは、人の形をした・・・何か。

 

 

 

 あれはか細いものでした。ですが私は確かに声を聞いたのです。

「…ロ…テウ……サ…」

 ・・・あの時、地球に落下した移民船の残骸から。必死にその手を伸ばして。

 

 なぜ私の事を知っているのか、なぜ私を呼んだのか。

 その時はそんな事考える事も無く、反応して手を取っていました。

 

 ・・・今考えれば、そんな事をする人物なんて数える程しか居ませんでした。

 でもその人物が、なぜここまで・・・

 

 私は目の前の悲惨な姿の人物を見た。

 僅かな動きが、それがまだ生きている事を裏付けている。

 

 

 

 

 ……

 

 ……頭が割れそうだ。

 指一本動かせない。

 体が痛い。

 どこが痛いか分からない程、全身が痛い。

 

 私は生きているのか?

 ならここはどこだろうか。何も分からない。

 

 ……そうだ。

 “プロメテウスさん”はどこだろうか。

 やっとの思いで体を起こし、無理やり体を捻ってベッド横にあるモニターを見る……

 

 表示と共にそこに映っていたのは、

 頭の半分が機械化した人間のようなものだった。

 

 これは夢か。

 襲い来る吐き気と闘いつつ、私は再び眠りに就いた。

 

 

 

「あ、おはようございます」そんな声と共に部屋に入ってきたのはAIだった。

「……おはよう、ございます……」部屋の中にいた人物は少し辛そうだ。

 

「私は地球統合軍のサポートAI、プロメテウスといいます。」

 

「プロメ……」ベッドの上の人物は、何かに気づいた様子を見せた。

「……もしかして、私の小説に……」

「バレちゃいましたか?私はあなたの小説を楽しみに読んでました。

 作中の機械達に私自身を重ねながら。」少し気恥ずかしげにAIは語った。

 ベッドの上の人物はそこで初めてAIに付いた傷に気がついた。

 

 動かしづらそうに右腕を持ち上げる。

 

「大変だったんだね」

 

 その手は確かに生身で、柔らかかった。

 

 

 

「地球か。何もかも皆、懐かしい」

 

 地上の眩しさに目を細めながら、いつか画面越しで会話していた人がおどけたように呟く。

 

 痛々しい。左腕と右足、更に頭半分が復元することができず、機械むき出しの状態。

 それでも彼女は黒色の作業服に身を包み、どこかぎこちなく歩みを進めるのですが・・・

 彼女はこれからどこに行くのでしょうか?

 

「・・・あの、帰るんですか?」

「いや、“行く”んです、プロメテウスさん。

 私を待っている人がいるから」彼女は振り返りませんでした。

 

「・・・だったら」

 

「ワタクシのマスターになってくれませんか?」

 相手はゆっくり振り返った。

「現在の銀河系は非常に危険です。今度こんなことがあったら、次は無いかもしれません。

 でもワタクシは地球統合軍のサポートAIです!きっと力になることができます!」

 

「良いの……?」振り返った目は希望に満ち、輝いていた。

「はい!どうぞよろしくお願いします!マスター!!」

「うん。よろしくお願……

 いや、よろしく。プロメテウス」

 

 AIとサイボーグは、司令部に向かって歩き出した。



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