この顔にピンと来たら (B立)
しおりを挟む

この顔にピンと来たら


沖矢昴が好きなのであって、赤井秀一が好きなわけではないのです

新作映画に沖矢昴さんの出番がある事を大いに期待していますが赤井さんが歩ってるの見ると望み薄そうで僕は私は悲しいです

元々やってた方が一向に進まないのでぺらっとメモに残ってたの投げます




 

 

 ────米花町

 

 電車に揺られて遥々来たこの街が、一人暮らしする事となった自分のこれから過ごす場所。町の名前は噂によく聞く。人付き合いはあまり得意な方では無いし、ご近所トラブルとか、やだなぁ…なんて、軽い気持ちで改札を抜け、足を踏み入れた街。

 もしこの時に戻れるのならば、戻った瞬間に回れ右してせめて隣駅で降りたい。出来ることならこの街に来る必要の無いようにしたかった。

 

 少なくとも、ここで降りるべきではなかっただろう。

 

 

 

 目の前にあるそれを見て、思わず口から迸ったのはみっともない悲鳴。勿論自分の口から、なのだが。

 ちょっと近道しよう、と路地に入っただけなのに。大通りからそう遠くもない場所なのに。

 自分の悲鳴でか、そもそも気配でかはわからないけれど、一斉に飛び立った烏の翼の向こう。生々しいそれは、けれど動く気配もなく。口と腹から液体を散らして、乾いた眼球が路地の上から射し込む光を反射する。春先の陽気に似つかわしくない羽虫の音。そして鼻につく鉄の臭い。

 

 それは、紛れもない、“死体”だった。

 

 

 

 いやいやまさかそんないくらかの有名な米花町と言えどいきなり人の死体があるわけないじゃないですかやだなぁ(願望)。

 

 そんな希望を打ち砕いて地に降り立って1時間もせずにミーツコープスとは恐れ入った。流石である。投了である。もう参ったからコレ片付けてもらいたい。無理か。おかげさまで悲鳴の他にも駅弁の牛タン迸りそう。

 

 改札を出て、キャリーケースを引きながらスマホを開き、マップで目的地までのルートを適当に出して、コンビニやファミレスに寄りながら歩き出した頃の自分に、その道を使うなと念を送りたい。もう無駄なんだけれども。

 兎にも角にも見てしまった見つけてしまった見たくはなかった路地のご遺体。まぁそれは良くあっては欲しくないが、仕方があるまいここは米花町。御噂はかねがね、である。

 

 この問題は、有り得もしないけど“路地で轢かれた”としても綺麗に腸ぶちまけられた感のある遺体の現状にある。いやな例えだが、なんだか彼岸花が咲いているように腹が開いているのに、顔は口から零した血以外は綺麗なものだった。俯く顔は近づいて覗き込まなければわからない。自分の腹部を覗き込む形で置かれたそれと、それを見つめる自分。そしてそれらをビルの上から見ている烏達。こんな相関図嫌だ。もっとハッピーな図を描きたい。

 

 ビルの間のエアコンダクト上に「燃え尽きたぜ…真っ白にな」の姿で置いてあるそれ。どちらかと言えば「紅に染まったこのオレを」か。見たところ、ここで殺ったにしては周りは綺麗(液体の飛び散り具合が彼の体だけ)で腹から垂れて足元でまあるく拡がる足元の血溜まりには作為的なものを感じる。完全にサイコな奴が、道行く善良な自分みたいな一般人にエキセントリックなトラップ仕掛けて反応楽しんでるタイプのアレなんじゃないだろうか。

 

 とりあえず警察には電話すべき。だよね。

 

 厄介事間違いなし。正直見ないふりしたかったが、俯き見開いた目が恨めしそうで恨めしそうで。仕方が無いので全国統一の番号で現在地をお手元のスマホのマップから読み上げながらやばいものがある事を伝えると、すぐに向かうのでそこにいろと言われた。事情聴取とかされちゃうんだろうか。先方には遅れる事を断らねばならない。

 警察のあと、ちゃんと先方に電話を入れて一息。ちょっとパニックになったし、動転して一周まわって頭の回転がものすごく早くなっていた気もするのでもう一息と言わず目も閉じていくらか気分を入れ替えた。とは言え生臭い匂いもするし、口から色々出そうだし、ひとまず警官が来た時わかりやすい場所に移動しておくべきだろう。荷物を持って移動を始めた。

 すると、人気のないこの路地に…自分のこれから向かう方、先程大通りから来た方からランドセルを背負った子供達がやってきた。小学生か。小さいの4人と大きめの1人。大きめのを含めた3人がきゃいきゃいと騒がしく、その後ろを2人が後ろを着いてきている。確かにさっき電話した時間は小学生の帰宅時間だろう。このくらいの子供は可愛い盛りだよなぁ、なんて弱った心を回復させながら、人数の多い彼らのために道を開けようと壁際に寄ろうとして、いやいやこの子達の行く先には警察にお願いレベルのやばいものがあるじゃないかと思い直す。道の真ん中で立ち止まった自分を訝しげに見上げた子供達の中の1人、そばかすの子が「あっ」と声を上げて自分を指さした。大きめの子も声を上げる。

 

 

「すばるの兄ちゃんだ!」

「ホントだー!」

「お兄さん、こんな所で何してるんですか?」

 

 

 こんな所で何してるのかはこっちのセリフである。

 すばるの兄ちゃんってどちら様???

 

「え、昴さんじゃないの?」

 

 大きなメガネの少年が不思議そうに首を傾げて、続いて他の子もウソだーとか、ただのソックリさんですか?とか言ってくる。とりあえず、自分はスバルお兄さんではない事を伝えてみるが、疑わしそうな目をされた。でも、メガネの少年が上から下までじっと見て、シャツの襟元辺りで首を今度は逆に傾げて、そうして何かを勝手に納得したように頷いた。丸い目がさっきより鋭い気がするが、知り合いじゃない人に道を阻まれたらそりゃ良い顔にはならないだろう。

 

「ええと、なら知り合い…じゃないんだよね……?」

 

 メガネの少年が後ろの子達…ここで、さりげなくメガネの少年が前に、大きめの子とそばかすの子が下がり、さらに後ろにカチューシャの女の子がずっと後ろにいた女の子に庇われるようにして移動していた事に気付いた。いつの間に。

 あれ、これもしかしてだけど自分、不審者に見られてるな?

 

 慌ててこの先にスプラッタ的にやばいものがあって、自分が警察を呼んだから、ちょっとここは通らないで引き返して欲しい事を伝えた。すると子供たちが血相を変える。怯えもあるけれど、好奇心にも。特に、警戒心をじわじわと出していたメガネの少年だ。素早く自分の脇をすり抜け、駆け出そうとしたのでランドセルの蓋の隙間に指を引っ掛けたがするりと逃げられた。行くなって言ったばかりだってのに。とりあえず、さりげなくついていこうとしている他の子を押し留め(後ろの器量の良さげな女の子が一緒にストップをかけてくれた。大人びている)、さっきの子を追いかけて現場に戻る。

 現場は、さっきよりも烏の羽が増えていた。また戻ってきていたらしい。それが少年に散らされたわけだ。見上げれば恨めしそうな目がまだ見ているが、それよりその少年の方。

 

 唇に指を当て、何かを考え込んでいる。例のものには触らないようにはしているが、辺りを見回す目付きも動きも、あんまりに子供らしくない。こんなの見て声も上げずにじっくり見つめるなんて、生まれながらのサイコパスか何かかよと思ってしまう。

 声をかければ振り向いてくれたし、その目付きも先ほどより余程可愛げが戻っている。自分がコレを子供たちに見せたくなかった、というのは分かってくれたらしい。いや、察し良いなこの子。

 

「お兄さん、コレを見つけたのはいつのこと?」

 

 子供の肩に手を置き、ソレから離そうとすればそんな質問が返ってきた。そんなの、本当についさっきの事だったと思う。110番に電話した時間からも10分、いや、5分と経っていない。

 

「他に人が居たりとかは?」

 無いはずだ。見つけた瞬間、行き過ぎたドッキリを警戒して見回したし。

「触った?」

 触りたくもない。いや、歩きスマホで靴底が少しだけ血に触れてしまったのはある。だけどそこは乾いていたのか、血が粉になっただけだ。

「警察には連絡してるんだよね…通った人、ううん、出てきた人はいた?」

 出てきた人はいなかった。人気の無さが際立ってたから間違いない。

「……お兄さん、ここら辺の人じゃないよね?なんでこの道を通ったの?」

 なんでそれを。いや、キャリーバッグだからか。

「ううん、それもあるけど…すぐそこ交番あるんだよ。警察を呼ぶとしたら、近くの人ならまずはそこに行くでしょ?」

 ほら、とこの手に持っていたスマホの、正しくはその開きっぱなしのマップアプリを指差した。駅とこの路地の間の道沿いビル、に交番のマーク。歩いている時は道しか見てなかった。「それに、こうして地図開いてるみたいだしね」と少年の言葉が続いた。

「地図を見ながら、キャリーバッグを引いてるお兄さんが、不慣れなのにわざわざこの道を通ろうとしたのはなんでかなーって」

 それはたまたまでしかない。本当に、ちょっと近道しようと思っただけで。

 

「ふーん…」

 

 ふーんて。

 

 とりあえず少年の背を押して子供たちの所まで戻る。見上げてくる顔は、警戒心が疑問に負けていた。

 

「あっ、コナンくーん!!お兄さーん!」

「高木刑事と佐藤刑事が来てくれましたよ!」

「高木刑事と佐藤刑事?」

 

 子供たちが手を振る後ろに、スーツの男女がいる。カチューシャの子にコナンくん、と呼ばれた少年は、そのスーツの男女を見て丸い目をさらに丸くしている。確かに。

 

 

それに何故刑事なんて肩書きの人が。それこそ、交番の方の仕事だったはずでは?

 男性の方が子供たちの前で膝に手をつき、目線を合わせて話をしている。早く帰るように言っているんだろう。女性の方がドラマでしか見たことがない手帳をだしてその名前と顔と所属を証明している。なるほど、佐藤刑事。つまりあっちが高木刑事。高木刑事、子供たちと面識あるんだろうか。仲が良さそうだ。

 

「通報者の方ですね?警察です。現場はどこですか?」

「こっちだよ!」

 

 多分“コナンくん”が早速来た道を引き返して走っていく。いや、君たちもう別の道使って帰ってくれないかな?

 佐藤刑事と現場に行くと、早くも烏が降りてきている。散らして見せた現場の状態に、眉根を寄せながらも彼女は「やっぱり」と呟いた。

 

「やっぱり?」

「……コナンくんなら、毛利探偵や工藤くんに相談してくれるかもしれないわね。……おかしな事があったから、その調査でもあるの」

「えっ!?どんなこと?」

「交番に、落し物が届いたのが始まりなのよ。

その内容が…『おおきなかぶ』の絵本なんだけど、中身のページの順番が逆になってて、赤いクレヨンで書き込みがしてあった。最後のページは『おじいさん』と『おばあさん』が『かぶ』を抜こうとしている場面で、登場人物がみんな真っ赤に塗り潰されているものよ」

 

 絵本と赤いクレヨンの組み合わせ。目の前の光景と合わせて頭に浮かぶのは、『わぁサイコパスっぽい組み合わせ』、だった。

 

「最初はイタズラかと思ったみたいなんだけど、話を聞くと東都各地の交番に似たようなものが落し物として届けられたみたいで、そして…」

「これ?」

「ええ、でもその前があったわ。人為的に置いたであろうネズミの死体が見つかるようになったのよ。どれも酷いものばかりで、通報者が多数居たわ。これも東都各地のこと。そして、今朝から数件通報が入っているのが、猫の死骸の件」

「どれもこれみたいに?」

「ええ。凄惨な有様だったわ」

 

 ふわりと、まだ柔らかそうなそれの額の毛が揺れる。腹の毛はすっかりカピカピで、額と足先からようやく毛並みはダイリュートキャリコだろうかと推測できる。

こんな“猫“の死体が数件だって?

 

「これだけじゃない、ってことだね」

「そうよ。今日だけで4件、内、家猫が被害にあっているのが1件。他は野良猫よ」

「ネズミ、ネコ……『おおきなかぶ』なら…次は犬?」

「の、可能性が出てきたわ。そして、本当にそうなったら…」

「最後は…」

 

 おじいさん、おばあさん、って事か。なるほど、確かに警戒に越したことはない。

 

 はた、と佐藤刑事の目が瞬く。自分の事を見ている。もちろん自分も彼らを見ていた。え、凄い情報小学生に渡すんですね刑事さん。

 

「ボクに探偵の知り合いが居るんだ!その人にも聞いてみて欲しいって事だよ!ね、佐藤刑事!」

「え、ええ……」

 

 コナンくんが訂正しているが、そもそもの不穏な情報を小学生に渡す辺り凄い。でも、聞いた限りでは完全に頭のおかしな犯人が頭のおかしな事をおかしく仕出かそう、というか仕出かしているようだけど。

 となると、やっぱり小学生は早く帰すべきなんじゃないだろうか。不審者じゃないか。

 

「そうですね…コナンくん、引き止めてしまってごめんなさいね。今日は寄り道せず、みんなと一緒に早く帰りなさい。出来ればこの件、毛利探偵とか工藤くんに聞いてみて貰えたら嬉しいわ。あと、もし何かを見つけてしまっても、すぐに警察や、私達に連絡すること」

「はぁーい」

 

 可愛らしく返事する少年が、子供たちのいた方に走っていく。刑事さんと二人きりだ。

 

「遅くなってごめんなさい。早速ですが、発見に至るまでの動向をお伺いしても?」

 

 もちろんだ。駅からの動きを説明していく。

 

 

 

「佐藤さん!」

 

  さっきの刑事さんが戻ってきた。

 

「高木くん。子供たちは?」

「ハイ、今日は大通りを通って帰路につくよう言っておきました。あとしばらくは早めに帰るのを心がけて欲しいとも」

「ちゃんと聞いてくれたら良いんだけど……」

 

 刑事さん達は子供たちの事をよく知っているようなふうに話す。知り合い?

 

「ええ、彼ら、探偵の知り合いが居るから、……ってワケでも無いとは思うのだけど なんだか事件に巻き込まれたりする事が多い子達なんです」

「通報を受けて駆けつけたら彼らが〜とか、良くあるので次第に…特にコナンくんとは良く逢いますよね」

「毛利探偵に良く付いてきてるものね。毛利探偵が…その……事件に合うことも多いし」

「僕としては毛利探偵がってよりは……ああ、ともかく!彼らの事は心配無いですよ!」

 

 あわあわと高木刑事が話を無理やり終わらせてしまう。子供たちが警察と仲が良いというのが、この町の特徴を垣間見た気になるが、そこはそれ。今すぐ必要な話ではない。

 先程の聴取内容を佐藤刑事が高木刑事に見せ、自分がこの件にあまり関係無さそうである事を二人で頷きあい、連絡先だけ渡して解放された。後日、改めて聴取に伺うかもしれないという事だったので住所も知らせたのはいいのだけど。

 

「あれ、そのアパート……」

「ちょっと前の事件で聞いた名前ね。確か、火事で全焼したんじゃ無かったかしら」

 

 

 えっ

 

 

 

 

 

 

 大家さんに電話するも繋がらず、案内してくれた不動産に連絡すると、確かにそこ、木馬荘は火事の被害にあっていた。マジか。

 

 

 

 





昴さんどこ…?…ここ…?



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。