真・龍神†無双 (ユキアン)
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第1話

「これが世界の狭間?図書館にしか見えない」

 

「苦節2849年、ようやく完成した世界を渡る術だ。図書館っていうのは間違いではないかな。この一冊一冊が1つの世界で、棚の塊ごとに類似した平行世界って感じだな。で、この棚はISを元に構成されている。だからIS登場前20年位まではほぼ同一の世界だ。開いて読むことも出来る」

 

簪が適当に一冊手にとってパラパラと流し読みする。蘭とクラリッサも似たように適当に一冊を流し読みする。

 

「こっちは織斑君がまともな感性をしてて、ラウラのデルタみたいなサイコミュ兵器を搭載した一本角から二本角に変形するISを使ってる」

 

「こっちのは織斑君以外に元士郎みたいに男だけどIS動かせてハーレム作ってるんだけど」

 

「こっちはISそっちのけで料理漫画みたいになってますね」

 

「まあ、そんな感じだな。これで無限の時を退屈せずにすむだろう。まずは美味いものを食いに」

 

そこまで言った所で懐かしい気配が感じられた。

 

「どうかしたの元士郎?」

 

「オレ達の居た世界とは違う世界の棚にオーフィスが産まれたというか宿った。ちょうどオレたちがこのISの世界に産まれたように」

 

「それは私達の知っているオーフィスが?」

 

「力を一度分けたんだ、間違えるはずがない」

 

「なら、決まりね。オーフィスに、娘に会いに行きましょう」

 

最初に行く世界が決まったな。オーフィスの気配を感じた棚に移動して一番左上にある一冊を開く。これがこの世界の一番のベースとなるものだからだ。

 

「三国志、ただし武将の一部が性転換してる世界。真名がある世界。そこに未来から一人の学生が天の御遣いとして現れる。三国の誰に拾われるかはループ要素も含んでいるのか毎回変わるようだな。たぶん、武将の誰かに産まれてるんだろう」

 

「なら分かれて捜索するのが一番だね。真名はソーナでいいでしょう」

 

「なら私は留流子、クラリッサはセラフォルー、元士郎は?」

 

「あの男女から付けられた九十九だろうな。とりあえず、向こうに行ったらバラバラに行動するか。中国は広いからな」

 

「とりあえずは三国に分かれるの?」

 

「時期的には三国の全部が存在してない。いや、時系列がなんか変だ。黄巾の乱に諸葛孔明がいるだと?」

 

気になって他の本も広げて確認する。

 

「劉備が居なかったり、孫堅はほとんどで死んでいる。孫策もたまに居ない」

 

「確実にいるのは?」

 

「曹操、孫権、董卓、馬超、袁紹、あと関羽もか。あとは、男の時もあったりするな。くそ、ブレが大きい世界だ」

 

「それでも何とか三国は成立するみたいね」

 

「そうだな。とりあえずは、三国と董卓の所で別れよう。反董卓連合後に合流する形で」

 

「そうしますか。バラバラに世界に降りれるようにする。何とか近くの三国志の武将か軍師に合流する運びで」

 

「元士郎、元士郎だけは降りる場所をちゃんと指定した方がいいと思うんだけど」

 

「絶対指定した方がいいって」

 

「そうですね、指定したほうが」

 

三人にリアルラックの問題でランダムは止めろと言われる。そう言われると反発したくなるのがオレなのだ。

 

「いいや、絶対にランダムで飛ぶ」

 

術式を発動してランダムでオーフィスのいる世界に転移する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「砂漠かよ。え~っと、北極星があれだから、現在地は、エジプトかよ!!げっ、転移と飛行がレジストされる。竜化も出来ない。まじかよ。世界の法則か。魔術は、燃費は悪いが使えるな。おっ、道術だけは燃費が良い。三国志がメインだからか?」

 

現状を確認し終えたあと、とりあえずは北に向かう。いつぐらいに到着できるんだろうな。己のリアルラックを恨みながら砂漠を走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元士郎だけ連絡がつかない。大分遠くに落ちたみたいだね。蘭はどの辺り?」

 

『こっちは南東だから呉が近いかな。クラリッサは?』

 

『北の方、ちょい東寄りだから有名なのだと公孫瓚だった?』

 

「私は中央に近いね。どこを中央と言って良いのか分からないけど。うん?あれは、旗、曹に夏が2つってことは曹操を引いたみたい」

 

土埃を巻き上げながら掲げられている旗を確認する。

 

「とりあえず、遠くから魔術、こっちだと妖術になるのかな?まあ、それで飛ばされてきたって設定で行くから」

 

『こっちもそれに合わせようかな』

 

『それが無難ですね』

 

そこで念話を切って、こちらに向かってくる曹操の軍を待つ。軍が私の前で止まり、奥から金髪でツインドリルテールの女の子とその娘に控えるように黒髪の女性と青髪の女性が出て来る。

 

「まさか管路の占いどおりだとはね。貴方が天の御遣いとやらかしら」

 

「管路?占い?」

 

私達を予測した?いや、本来の天の御遣いが居たからそちらと勘違いしているのだろう。

 

「簡単に説明すれば、管路は大陸一と呼ばれる占い師よ。その管路が今の乱れた世を天の御遣いが正すという占いを出して、それが民達の間に広がっているのよ。そして、その天の御遣いは流星と共に現れるとも」

 

「なるほど。まあ、何を天の御遣いとするかは知りませんが、私の見解から言わせてもらえば、答えは否。私がどういった存在かを説明するならば、魔術師と名乗っておきましょうか」

 

「魔術?」

 

「見たほうが早いでしょう」

 

右手を掲げて、水の槍を作り出して、遠くに見える岩に射出して粉々にする。

 

「妖術使い!?」

 

三人どころか軍全体がざわめいて若干引いている。なるほどなるほど、まあ、そういう扱いですよね。

 

「妖術?こちらではそんな呼び方なんですか。ああ、ちなみにこれは私達の国では少しの才能と勉強さえすれば飲水とか火種に困ることはありませんから殆どの人がある程度までは使えますよ。殺傷力を持たせるには専門の学校に通う必要がありますが」

 

「学校、私塾のような物かしら」

 

ああ、なるほど。後漢時代を舐めていた。

 

「識字率はどれ位?」

 

「識字率?」

 

「文字の読み書きが出来るのは一般的な民が100人いればどれ位?」

 

「ふむ、20もいれば多い方かしら」

 

「はぁ~、未開地よりはマシ程度。そうなると他国の言語はほぼ国境に数人って所か。はぁ~、時代まで飛ばされてるね。どれだけ過去に飛ばされたのか」

 

「全く訳が分からんがバカにされたのは分かる」

 

「姉者、落ち着け」

 

黒髪の女性が姉ということはそっちが夏侯惇か。じゃあ、こっちが夏侯淵ね。

 

「バカにしたわけじゃなくて事実を言っただけ。服装や武器を見ればどれぐらいなのかは分かるよ。服が自然由来の物だけで一般の兵士の武器は剣や槍、弓が少々に移動は徒歩と騎馬、私達の国とは大体3000年強の差があるよ」

 

「3000年ね。その差はそれぐらいなのかしら」

 

「あ~、質問は最後にまとめて聞くから途中で邪魔をしないで。まず、全人口、役所で登録されている人数は国内だけで230億人、登録されていないのを合わせると30億ぐらいのブレがあるかな。それだけの人数が飢えることはまず無いぐらいに食料は豊富。戦争が起こるとだいたい40億は死ぬかしら。武器は白兵戦時はブラスター、銃、もなさそうね。後で実物を見せてあげる。基本は艦隊戦、大きさは色々だけど、一番小さいのでコレぐらいかな」

 

あまり得意ではない土系統の魔術で一番小さい駆逐艦の形を作り出す。小さいと言っても全長120m、全高50m、全幅30mほどある。

 

「識字率は98%、100人中98人が読み書きが出来て、そのうちの半分以上が他国の読み書き会話が可能。まあ、そんなことをしなくても道具を使えば簡単に話せるし、変換もできる。この世の理もほとんどが解明されているから迷信なんてものはほとんど存在しない。どうせ地動説も、この大地が球体であることも知らないのでしょう。この世に世界の果てなんてものは存在せず、ある意味で閉じられた世界。私達はその閉じられた世界のすべてを、空をも征し、星を征し、銀河を征そうとしている。今のをどこまで理解できましたか?」

 

どうやらほとんど理解できていないようですね。それでも何とか理解しようと曹操と夏侯淵はしている。夏侯惇は重度の脳筋みたいだね。

 

「前半は、まあ、突拍子もない事だけどまだ理解できるわ。だけど後半はこちらと隔絶しているということだけは分かる程度ね」

 

「まあ、そうですよね。この大地が球体というのも分かっていないでしょうし」

 

「何をバカなことを言っているんだ?そうしたら球の下の方に行けば落ちてしまうではないか」

 

「はいはい、そういうと思っていましたよ。全部理論的に証明してあげれますけど、理解しきれるでしょうかね?」

 

「長くなるのか?」

 

「簡単な説明ならすぐですよ」

 

足元の石を拾い上げる。それを三人に見せてから、手を離す。石は重力に引かれて地面に落ちる。

 

「さて、とある天才は今の出来事だけで世界の理の1つを発見しました。まあ、実際はりんご、果物が落ちる姿を見てですが」

 

「それがどうかしたのかしら?」

 

「そう、普通の人はそうしか思わない。それが当たり前だから。ですが、その天才はこう思った。何故下に落ちる。別に横でも上でもいいし、動かなくてもいいではないかと」

 

それを聞いて曹操は表情を変えた。そして何かを考え始め、最後には地面を見た。そして石を拾い上げて落とし、もう一度拾い上げて真上に軽く放り上げる。今度は高く放り上げ、最後に横に投げる。

 

「これが世界の理の一部なのね。常に下への、大地へ向かって何かが押している」

 

「結果的には同じですが、大地が引っ張り寄せる力。それを重力と私たちは呼んでいます。さて、それを踏まえてもう一つ先に進みましょうか。ここではあれですので少し移動、する前に」

 

先程作り上げた駆逐艦の模型、模型?まあ、それの地面から1cm程を赤く染め上げる。

 

「あそこの街まで移動しましょうか。興味が無いのならそれで構いませんが」

 

「いえ、興味があるわ。秋蘭、先に行って茶屋を1つ貸し切っておきなさい。春蘭、兵を街の西側に移動させて陣を敷かせなさい」

 

「「はっ、華琳様」」

 

「ふむ、そう言えば名前を名乗っていませんでしたね。私の名は匙簪、そちらは何と呼びましょう」

 

「珍しい名前ね」

 

「性、家を示すのが匙。名、個人を示すのが簪です。旧姓は更識ですけどね」

 

「ふぅん、名前の構成は似ているわね。私は性は曹、名は操、字は孟徳。真名は華琳よ」

 

「真名を平然と名乗っているとか正気ですか!?」

 

予め元士郎に聞いていたとは言え、こんなに簡単に名乗っていたとは。

 

「良かったですね、私のような魔術師と出会えて」

 

「それはどういうことかしら?」

 

「真名を知っていれば魔術師はその者を自由自在に操ることが出来るからです。こんな風に」

 

パスを通して曹操の右手のコントロールを奪う。

 

「なっ!?」

 

「そういうわけです。私は操られているかどうかを感知なんてのも出来ますから安心していいですよ。少なくとも、今の軍勢とあの二人は操られていませんから。結構疲れますから局所的に操るなんてことはありますが、痕が残って分かりやすいので」

 

「……そう、分かったわ。他に使える者に心当たりは?」

 

「私の家族ですね。夫とその側室達、私を含めて4人ですね。最悪、私達と敵対していた奴が1人。そいつにバラバラに飛ばされましたから」

 

そんな相手はいませんが、そうですね、最初の世界の曹操みたいな奴でいいでしょう。英雄を名乗っておきながら英雄らしい所は一切ありませんでしたけど。中途半端なんですよね。正にも邪にもどっちつかずで。元士郎はリアスとのレーティングゲームで己の芯を作り上げた途端にプライベートでは変な方向に迷走しながらも、仕事になれば自分の役割を徹底してこなす。主の私の命令も曖昧に受け取って。裏でこそこそと暗躍しつつ表でも大活躍と扱いにくかったですが。常に令呪で縛ってないと何をしでかすか分かったものではなかったです。

 

さてと、このまま相談役みたいな位置に転がり込めれば楽なんですけどね。どうなることやら。

 

 

 

 

 

 

 

「はいは~い、それじゃあ、今日も袁家のために元気に働こうねぇ~。毎日言ってるけど、消えた人間は気にしないように。分かるよね?真面目に働いていれば他の所で働くよりは多く貰えてるよね。身の丈にあったことをしないとすぐに破滅だから。はい、解散」

 

袁紹ちゃんの元に身を寄せて早三ヶ月。筆頭軍師として部下を右から左に振り分け抜き打ち査察と確認と許可を出すだけの簡単なお仕事で、袁家の資産は日々増え続け、上から下への好景気を促す。袁紹ちゃん、乗せやすい性格で考えが薄いけど、根は善良だし、そこそこの部下が大量に集まってるからよっぽど酷いのを排除してもまだまだ普通に運営できる。

 

財は貯めるだけでは意味がない。常に流動させることで膨れ上がっていくものなのだ。あと、袁紹ちゃんの運が凄い。黄金律もB+位はある。そしてお金は寂しがり屋だから仲間がいる所にどんどん集まる。集まったお金をばら撒いてまた集め直す。ばら撒く時に兵士の訓練代や装備費に給金、街の工房や職人に色を付けたり競争させたり、街の拡張工事と区画整理、派手好きな袁紹ちゃんのために月に一回お祭りもやって。

 

このまま経済による大陸平定を目指してみようとした所で南から1万の賊が領内の最南端の街を襲っていると報告が入った。

 

「どうするんだい、クラちゃん」

 

軍議の場で筆頭武官の文ちゃんが尋ねてくるけど答えは簡単だ。

 

「常備兵の半分の4万」

 

「はい?」

 

「騎兵を五千、弓兵を四千、弩兵を千、歩兵を二万、工兵やら補給部隊を一万。文ちゃん、先に騎兵だけで良いから先行して割って後方に広く広がっておいて。顔ちゃんは歩兵とかを連れて行って文ちゃんと共に包囲殲滅。賊が相手ならそれで十分。田豊ちゃん、街の復興をお願いね。建材も食べ物もお金もがんがん送るから1ヶ月で前以上に発展させてね。ついでに道の拡張整備もお願い。お金はガンガン使っていいから。蕎麦とかも忘れずにガンガン蒔くのも忘れないように。はい、質問は?」

 

「えっと、そんなに動かすんですか?」

 

「このままで五百の犠牲が出るのと、半分にして三千の犠牲が出るのと、どっちが良い?」

 

「ごめんなさい」

 

「はい、よろしい。何度も口を酸っぱくして言うけど、数は力よ。そして練度はある程度気合で上げれる。気合を上げるにはこうやって自信をつけさせるのと、生活が豊かであること。生活が豊かであるにはお金がいる。生活が豊かなら民の人気者。人気者になりたいかー!!」

 

「「「なりたいです!!」」」

 

「はい、迅速に動く。その前に袁紹ちゃん。時は金なり、一言激励を」

 

「みなさん、雄々しく華麗に、賊を退治なさい」

 

「散開!!」

 

みんなが急いで動き始める。私は私で出陣の準備を整えさせながら性格があれだけど使える郭図を呼び出す。

 

「郭図、敗残兵に紛れ込ませなさい。どこから発生した集団なのかだけでいいわ」

 

「へい。10人ほど紛れ込ませます」

 

「最初に脅したときにも言ったけど」

 

「へい、高望みはしませんよ」

 

「それでいいの。闇は全部、貴方が受け持ちなさい。知っているのは私だけで十分。分かっているわね。その分、色を付けてあげてるんだから」

 

「回りくどい方法ですが、確かに誰も気付けないですな」

 

「あれ、私の国じゃあまだまだ普通よ。もっと複雑でドロドロの機構も存在してたし。取り締まる方だったけど、利用できる以上は利用させてもらうわ。全く、私は本来は外交官の方が適任なのに」

 

「コレだけの能力があってですか?」

 

「ああ、夫はもっと凄いわよ。一番下っ端だった頃から容赦の二文字が無い性格だったから。運も変に悪くて、突発的に案件の難易度が跳ね上がることなんてよくあったけど、それを全部切り抜けて予定以上の成果を上げ続けてたから。一度だけ外交を任せたらやり過ぎで相手に同情が集まる位に酷かった。こう内乱を起こしている内の片方が援軍を要請してきた時に、理路整然と相手の非を突きまくり、別に1人で暗躍して総取りしてもいいと堂々と言い放ったぐらいだから。で、実際に許可を出したら本当に総取りしそうで、それをすると周りとの関係がこじれそうだったから許可は出さなかったんだけどね。それで、援軍として送り出したら3日で敵側が壊滅して晒されて、完全に援軍を要請してきた方まで恐怖のどん底に突き落としちゃったから」

 

「3日、ですか」

 

「そう。3日で裏で糸を引いていた豪族は全員首だけになって、内乱を起こしていた方は党首から100人長まで全員が首だけ、身体は磔で心臓に特別な木の杭を打ち込まれて並べられたの。誰にも気付かせずにね」

 

「誰にも?」

 

「変装とかも得意でね。全く区別がつかないほどよ。それを利用して殺して入れ替わってを繰り返して気付かせなかった。本人はしれっとした顔で帰ってくるし、夫がやったって証拠が一切出てこないのよ。本人がやったって言う証言以外がね。援軍の詳細を詰めるように見せて、部下の変装させて詳細を詰めているように見せかけて本人は現地で活動するとか。上司の私とかまで騙して勝手に功を上げるんだから。定期的に勝手に何かやってないかと聞いておかないと、いつの間にか反抗的な豪族が変わってたりするからね」

 

「どんな化物ですか!?」

 

「普段は優しいんだけどね。どうしても仕事になると容赦が欠片もなくなっちゃうのよ。部下も直属の間者が10人だけだったし。それ以上は臨時で指揮をとるぐらいで、影から影へ、裏から闇への、裏社会の頂点に君臨してたから。その上で表社会でも普通に活躍してたんだよね。まあ、それ位の功績がないと私達を娶るなんて不可能だったしね」

 

「どういうことでしょうか?」

 

「あ~、こっちの国で説明するなら、出会った頃は私は皇族に近い地位で妹は州牧、夫は妹の親衛隊の新人なの」

 

「大出世以上じゃないですか!?いや、戦功を考えれば」

 

「はいはい、考え込むのは後にしなさい。まずは行動」

 

「はっ、すぐに指示を出します」

 

「よろしくね。ああ、そうだ、例の件の方はどんな感じ?」

 

「クラ様のような変わった知識などを持つ者ですな。一人は曹孟徳の元に居るようです。たまに街で見かける程度でクラ様のように表に出るようなことはありませんが、夏侯惇がよく文句を言っている姿は確認されています。おそらくは簪様だと思われます。もう一人なのですが、その、どうも河賊もどきになっているみたいで」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お頭、また甘寧の奴らが来てやす!!」

 

「野郎共、全速よ!!矢は全部撃ち落としてあげるから、ケツは気にせず漕ぎな!!」

 

「「「へい!!」」」

 

「この積荷を届ければ少しは落ち着くわよ。家族のためにも気合を入れな!!」

 

部下を鼓舞しながら船尾に立ち、蹴りの風圧で矢を全て撃ち落とす。そして全速の指示を受けた部下たち全員が櫂を握り、タイミングを合わせて漕ぐことによってばらばらに漕ぐよりも少ない力で速度を上げる。船の形も櫂の形も3000年以上先の最先端の物だ。積載量も半端ではない。ここまでしなければこの国では人として暮らしていけない。さすが世に悪行轟く漢民族だとしか言えない。いや、この時代だとどこも似たようなものか。日本は、今は邪馬台国だっけ?それ位原始的か、エジプトとかローマならまだ少しはまともになるんだっけ?あっ、エジプトは属国時代だっけ。

 

 

 

 

 

「ローマの属国になっていないとか、スフィンクスがガチの神獣として存在している時点で嫌な予感がしてたけど、なんでオジマンディアスがこの時代に生きてるかな!?あぶねぇ!!」

 

「ふははははは、ファラオは滅びん。何度でも蘇ってくるのだ。それにしてもデンデラ大電球の雷撃を潜り抜けてきたか。呪詛も殆ど効いていないようだ。ならば最大出力だ!!」

 

「だあああ!!めんどい!!こっちは早く妻のもとに戻りたいだけだってのによ!!お前もネフェルタリの元に行ってイチャイチャしてろよ!!」

 

「これすらも防ぐか!!ならば奥の手だ!!」

 

「ふぁっ!?大質量攻撃だと!?神秘はどこに行った、神秘は!?ええいっ、侵食異空結界作動。竜化!!」

 

「これすらも受け止めるか!!やるではないか」

 

「話が聞けないのかよ、このファラオ。もうやだこの世界」

 

 

 

 

 

なんか変な電波を受け取った気がするけど気にしない方向で。鈴の甘寧が既に孫家に仕えていたのは少し想定外だが、私は今の部下たちとその家族を見捨てることが出来ない。もう少し勢力がまとまるまで、三国に分かれるまではどこの勢力にも付けない。英雄は国の、民のためと言って民に負担をかける。見捨てられなかった。当初の予定を変更して船を利用した運搬業、それと漁業に襲い掛かってくる河賊を潰して物資を奪い、河沿いの村を傘下に収めながらある程度、最低限の食に困らない程度には復興に成功している。

 

いつも通り、荷を運び終えて代金を貰い、村の生活に必要な分の物資を購入して拠点に帰還する。黄巾の話をよく聞くようになった。傘下の村からはそれほど参加していないようだけど、参加するものとは縁を切らせた。こちらに被害が来ても困るから。

 

はぁ~、他のみんなはどうしてるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍も飽きたけど、お腹が膨れる。今度は象でも食べに行こ。行くよ、スコル、ハティ」

 

 

 

 

 




リアルラックを信じてはいけない(FGOの300連ガチャの結果を見ながら)


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第2話

 

「荀彧、貴方、軍師としては正しいのでしょうけど、上に立つものとしては失格ね。自分の策なら兵糧が半分でも大丈夫だなんて。今から出陣する兵の前で宣言しなさい。頭でっかちには現実を知ることから始めましょうか」

 

「曹操様、この方は?」

 

「ウチの大賢者よ。故郷の大妖術師に飛ばされてきたそうよ。この国より遥かに発展した技術と広い領土を治めている、ね。彼女はその中でもかなり広い範囲を治める州牧よ。将でも軍師でもなく客人に近いけど、その対価にその知と経験を分けてくれる存在よ。簪、色々と説明してくれるかしら」

 

「それでは色々教授してあげましょう。まず、自分の首を掛けることですね。自分の首にそれほどの価値があるとお思いで?恥ずかしくないんですかね、戦うのは民です。兵とは言いますが、それも民です。今回、三千の兵士が集まっています。これと貴女の首が等価値?ありえませんね。貴方一人で何が出来ます?軍師とは一人では何も出来ない存在です。従う者がいて初めて動くことの出来る役者です。その軍師が従う者の士気を挫いてどうします。貴方には実績がまるでないと言うのに。実績があればある程度の不満を飲み込んではくれるでしょうが。今、上に立つには曹操の威を借りるしかない。ただ上に立つだけなら問題はなかったですが、兵糧を半分に減らす?不満が爆発しますよ。隠しておいても無駄ですね。普通に気が付きます。いつもより兵糧が少ないと。それが知られれば兵が不安に思いますよ。そもそも、曹操は規定量用意しなさいと命令している。それなのに半分しか用意出来ませんでした。職務怠慢ですね。私なら規定量用意した上で報告書には半分しか用意してませんと書いて提出しますね。そして規定量は用意していますが、私の策ならその程度で十分ですと売り込む。いらないと言われれば、書類一枚書き直すだけ。いると言われれば荷駄隊を半分出すだけ。まあ、私は荷駄隊を全部持っていきますけどね。自分から選択肢を減らすなんてバカな真似はしたくありませんからね。途中の村で施しも一切出来ない、余裕もない。絶対に嫌ですね。はい、反論があればどうぞ。理解が出来ないのであればその首貰ってあげますよ」

 

「……ありません」

 

「はい、そういうわけです。ちなみにこの会話は周囲にも聞かれていますので、荀彧に指揮を取らせるというのなら最初に説明を。でなければ士気は保てませんよ」

 

「分かっているわ。貴方は本当に私とは間逆なのね」

 

「才あるものを好むのは悪いことではありません。ですが、それにしか目を向けないのは悪です。この世は無い者の方が多いのですから。それらを万全の状態で扱えて初めて上に立つ資格があるといえるでしょう。では、頑張ってきて下さい」

 

曹操が演説を行い、多少の不満を腹に収めて兵士たちが出陣する。兵糧は半分か。やれやれですね。私も動きますか。街に出て、そこそこ大きな商家に今回の規定量だった兵糧の2割ほどの量を用意させて、それを持って3日後に軍を追わせる。それを守る傭兵も私の資産から出して用意する。これだけの量があれば不測の事態は免れるでしょう。

 

一週間後、案の定途中で兵糧が足りなかったのか荀彧が悔しそうな顔をしている。

 

「私が送ったのは役に立ったようで何よりです。とりあえずは貸しにでもしておきましょう」

 

「……どこまで予測していたのですか?」

 

荀彧が力なく問うてくる。

 

「何も。ただのリスクマネジメント、危機軽減運用とでも言いましょうか。兵糧なんて足りないより余るほうが良いんです。軍が通った後なので最低限の護衛だけでも十分でしたしね。余っていたら余っていたでそっくりそのまま私に返すか、戦勝祝として少し豪華な食事にして代金を私に払うか。どちらかをしていたでしょう?」

 

「ええっ、そうね。今回は不測の事態で足りなくなるところだったわ。代金は後で払うわ」

 

「不測の事態ですか。そちらの子ですか」

 

「私の親衛隊にするわ。最低限の知識を与えてあげてくれるかしら」

 

「構いませんよ。これでも教師をしていましたから。私は匙簪です。客人扱いの大賢者ですよ」

 

「許褚って言います。大賢者?えっと、仙人様ですか?」

 

「ふふっ、仙人みたいに世を捨てたつもりは全くありませんよ。ですが、色々なことを知っていて、それを教えてあげれます。最低限の読み書き計算と簡単な兵法までは覚えてもらいますね。そのあとは、貴方が聞きたい、覚えたいということを教えてあげます」

 

「はい、よろしくお願いします、簪様」

 

「はい、よろしくね。ああ、それと私には出来るだけ真名を名乗らないでね。私の住んでいた国では、この国以上に真名が重いの。親の真名すら知らないのが普通なぐらいに重い重いもの。理由は曹操が知っているから、そっちに聞いてね」

 

「はい」

 

素直な良い子ね。だけど、武将ってことは強いみたいね。

 

「それで、荀彧をどうするつもりですか?」

 

「貴方から見てどう思う?」

 

「経験不足の一言ですね。ちゃんと下積みからさせていけば大成しますよ。能力的には。男嫌いをもう少しどうにかしないと要らぬ所で足を引っ掛けられて思い切り顔面強打で転ける可能性があります。公私はしっかりと分けさせて下さい。それが出来ないなら上には付けないほうが良いでしょう。勿体無いですが。まあ最終的な判断は曹操がすることです。ただ、何度も言いますが覇王は常に見られる存在です。それをお忘れなきように」

 

「身内びいきには気をつけろと言いたいのね。分かったわ、肝に銘じておきましょう」

 

「そうして下さい。それと私の家族が見つかりました。夫以外ですが、皆無事なようです」

 

「へぇ~、見つかったの。それで出ていくのかしら?」

 

「いえ、全員それぞれの立場を得ていますからね。もうしばらくは付き合いますよ。バラバラのほうが夫との合流できる確率が増えますからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ローマ)がローマだ」

 

「えっ、何?自分をローマと言ったのか?ということはロムルスか!?あっちの旗はカリギュラだし、あれは確かカエサルだろ、ネロもアウグストゥスもある。なに、このローマ皇帝連合は!?ファラオラッシュもキツかったけど、こっちもこっちでキツイだろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~ん、飛将軍呂奉先ね」

 

郭図からの報告を聞きながら三国志最強と名高い呂布の戦力報告が凄いことになっている。

 

「はい。その武勇、並び立つ者おらず、単騎で賊3万の首が飛びました」

 

「それは比喩?」

 

「いえ、本当に3万近くの首が並べられました。首から下は、飛将軍の飼っている獣に食われたと。病気を広げないためと陛下に報告がなされたと部下からの情報です。また、裏が取れていませんが竜を狩って腹を満たさなければならないほどの大食漢であるとも報告を受けております」

 

「もうちょっと詳しい情報を集めなさい。特にその飼っている獣の情報をね。それから飛将軍の姿絵もなんとか手に入れなさい」

 

「御意」

 

「急いでね」

 

玉の詰まった袋を投げ渡して、それを確認した郭図が急いで部屋から出ていく。確かにこの世界のTSしている武将は強い。だが、話半分だとしても呂布は強すぎる。かなりの高確率でオーフィスちゃんだよね。獣の方はもしかしたらスコルちゃんとハティちゃんかもしれない。

 

「クラさん、クラさん、どこに居るのです」

 

遠くから袁紹ちゃんが大声で私を呼んでいるので物置に使っている部屋から出る。

 

「はいは~い、どうかしたの袁紹ちゃん、どうしたの?」

 

「軍の用意を!!この私が大陸に平和をもたらすのですわ!!」

 

「じゃあ、準備しよっか。詳しい話も聞きたいから皆を集めるね。色んな街からも袁紹ちゃんのために民が集まってくれると思うからちょっとだけ時間をちょうだいね」

 

「そうですわね。皆さんも私のために集まってくださるのですものね。どれぐらいの時間がかかるかしら?」

 

「早馬を飛ばして集まれ~っていうのに2日、そこから皆が歩いて集まるから5日、袁紹ちゃんの兵士だぞって見せるために装備を配って訓練をして、疲れていたら意味が無いから休ませて全部で2週間かな?」

 

「そんなにですの?もっと早い方が」

 

「大丈夫大丈夫。大陸中の諸侯に文が来たんでしょう?だったら、他の皆は小さい集団をちまちま潰すしか出来ないから。賊も小さいままだと危ないからって集まって、大きくなったら私達が一気にドカーンってまとめて退治して目立てるよ。ほら、袁紹ちゃんが一番目立てるんだから、下々の皆にもちょっとぐらい、そう、身分相応の活躍ぐらいさせてあげようよ。それが上に立つ者の優しさと寛容さってやつだよ」

 

「それもそうですわね。それではおまかせしても?」

 

「任せときなさいって。あっ、袁紹ちゃんの神輿は自分で設計してね。民を安心させるためにもね」

 

「わかりましたわ!!」

 

はい、袁紹ちゃんの説得完了っと。それじゃあ、そこの人。武官と文官を集めてね。できるだけ早く。あと、早馬に各町に募集をかけてくるようにって伝えて。予算は懐に入れない限りはガンガン使っていいからとも。

 

治安維持を考えて3ヶ月動くと想定すれば、15万程動員出来るね。お金があると楽だわ~。安全圏に資金と人材をこれでもか投入してデカイ農園を作るだけの簡単なお仕事。6公4民とかウハウハだね。困窮作物の豆と蕎麦と雑穀からは税を取らないから不満も溜まりにくいし、戦争は数と装備だよね。ただし、オーフィスちゃんっぽい呂布は除く。

 

それにしても黄巾の乱かぁ~。もう1年、準備期間が欲しかった。そうすれば黄巾の乱自体が起きなかったのに。ちぇっ、とりあえずは常備兵の練度を上げさせておかないとね。大量生産大量消費が許されるのが袁家なのだ。私腹を肥やすとクビが飛ぶけどね。物理的に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おそらくお姉様と一時的にでも合流できるであろう黄巾の乱を治めるために出陣した曹操の軍に付いていく。自分の資金で用意した馬の上で魔力の鍛錬を行う。とは言っても魔力を練ったり回したりする程度だけど。まあ、多少の魔力を馬の方にも流して魔物化もさせてるんですけどね。

 

「簪、この先で賊と義勇軍が戦っているようだけど、貴女はどうする?」

 

「邪魔になるでしょうから離れておきますよ。自衛ぐらいは余裕なんでお気になさらずに」

 

脇道にそれて簡易式神を飛ばして戦場がどうなるかを見ておく。賊の横腹を夏侯惇隊が突き破ってから後方に回り込み半包囲ってところですか。義勇軍にしてはそこそこ纏まった動きをしていますね。士気も高いようですし、旗は劉と関と張に十文字、劉備御一行と何でしょうね、あの十文字の旗は?えっと、倍率を上げて十文字の旗の近くを見てっと。ああ、確実に天の御遣いですね。どこかの学校の制服みたいですから。おっと、戦いが終わりそうですね。では、曹操の元に行きましょうか。

 

こちらに逃げてきて私を襲おうとした賊の首を刎ねながら曹操の元へたどり着く。ちょうど義勇軍と接触するそうなので一緒についていく。普通は下の者から接触するのが礼儀なのだが、言っても無駄だろう。

 

そして義勇軍と接触して話を後ろで聞いていたんだけど、頭が痛くなる。まるで織斑一夏と話しているみたいに。

 

「どうしたの、簪?」

 

「この人たちのバカさ加減に頭が痛いだけです」

 

「なっ!?我々を侮辱するつもりか!!」

 

「関羽でしたっけ?問題点を全部あげてあげましょう。一番危険なのは天の御遣いを神輿にしていることですね。ここで私がいきなり本郷一刀を斬っても、むしろ私は賞賛されますよ。天を冠することが出来るのは帝だけなんですから。勝手に帝の名を語っているんです。その危険性がわからないのなら貴方達に未来はないですよ。次、思想に矛盾しかありません。皆で仲良くと言いながら右手で握手を求めて左手に武器を持っている存在と誰が仲良く出来ると?いつ攻撃されるかわからない相手と握手なんて出来ませんね。ああ、戦わないと駄目だからって言い訳は聞きませんよ。遥か西の国のとある王は武力を一切認めませんでした。その代わりに他のことはなんでも認めました。脅し、買収、虚言。武力を使わずに国をまとめてみせましたよ。既にそれだけの事ができるのが証明されているのですから。あと、貴女の言う大陸とはどの範囲のことを言っています?そこの本郷一刀なら知っているでしょう?貴方達の言う大陸の小ささを。そして民族性から纏める事は絶対にできないということを。服装を見たところ出身は大体西暦2000年頃の日本でしょう?標準語ですから関東地方ですね」

 

「っ!?どうしてそれを!?」

 

「まあ、私は更に未来から来てますしね。裏の世界、魔術なんかが普通に残っている世界で頂点に君臨してましたから力のない貴方と違って楽に生きていますよ。お姉さまは世界が違うんだからタイムパラドックスなんて関係ないよねって活動してますし。中華以外は結構面白いことになっているみたいですよ。それから一つだけ言っておきましょう。平和ボケしてる頭を切り替えなさい。ここは平和な日本ではないのよ。特にそこの軍師二人には気をつけなさい。劉備の見る世界と彼女たちが見る世界は微妙に異なっているわ。あらあら、そんなに怯えなくてもいいのよ。私はこうやって口を挟むのと自衛だけと決めているから。まあ、多少の商売はしているけどね。貴女達軍師は分かりやすくていいわ。欲が丸見えで。頭は良くても心が未成熟だから。演技や誘導が甘いわ。なんで劉備を選んだのかも分かりやすくていいわ。光が強ければ強いだけ影は目立たないものね。うふふ、怖がらなくていいのよ。そう、貴方達の方がちゃんと世界に目を向けているわ。だからこそ劉備の元を離れたほうが良いわ。振り回されてぼろぼろになる前に。世の中がきれいごとだけで済むと思っているお馬鹿さんではないのでしょう?」

 

「簪、そこまでにしてあげなさい」

 

「まだ4分の1も話していないのですが。まあ、最後に一言だけ。あとどれだけの人を殺し殺されれば皆が笑顔になれるんですかね?一緒に笑いたかった人が死んでいる人に笑えと押し付ける貴女達の意見がぜひとも聞きたいです。ちなみに私の計算では70万ぐらいですよ。良かったですね、少なくて。ああ、ちなみに兵士の人数だけですよ。兵士以外は重税や略奪から来る被害で大体200万程度ですかね。ね、少ないでしょう本郷一刀。WWⅡに比べれば微々たるものですよ。さて、まだまだ言いたいことはありますが曹操が言うので止めておきましょう。私は離れておきますね」

 

「その前に一つだけ、貴女から見て天の御遣いと劉備の評価は?」

 

「最低ですね。現実を見てないんですもの。夢を追い求めるのは良いですけど、夢以外を見ていないのは下の者達が可愛そうです。麻薬と一緒ですね。貴女の言う夢のために何人の笑顔が失われたのか、数えたことはありますか?数を数えるというのは大事なことです。とある偉人は自分が起こした戦争で亡くなった者の名前を覚えきっていました。他にも自分の罪の数を数え、それを背負いながらも国の涙を拭うために親友を討った男がいました。戦とは本来それだけの覚悟が必要な行いなのです。貴方達にそれだけの覚悟はありましたか?上に立つってそういうことですよ。では、これで」

 

義勇軍から離れながら吐き気を我慢する。あの劉備、ディルムッド・オディナの愛の黒子のような魅了スキルを持っている。完全にレジストしたとは言え、気持ち悪さがこみ上げてくる。しかも常時発動の上に敵か味方で無意識に効果を切り替えている。その効果は味方には絶対的な信頼感を植え付け、敵にも一定の評価と好感を植え付け、甘い対応を取らせる。あれだけダメ出しをしても曹操は甘い対応を取るでしょう。それは仕方のないことです。ああ、気持ち悪い。流れ矢で死んでもらいたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お頭!!前方に組合じゃない船が、逃げ出しました!!」

 

「追うわよ!!ウチの島を荒らすような真似をしているはずよ!!接舷して捕縛するわよ」

 

「「「了解」」」

 

接舷すると同時に漕手以外が相手の船に飛び移り、船員をしばき倒して縛り上げる。見れば全員黄色い布を身に着けている。例外は明らかに性的暴行を受けた女性だけ。

 

「お頭、こいつら甘寧が言っていた」

 

「黄巾賊ね。身ぐるみを剥いで沈めなさい。略奪行為をしているようだし、因果応報よ」

 

「いんがおうほう?」

 

「悪いことやってると酷い死に方しかしないってことよ。縛ったまま河に突き落としな」

 

「へい」

 

「おらっ、今更騒ぐな!!潔く死ね」

 

部下たちが次々と賊を河に叩き込む中、捉えられていた女性に話しかける。

 

「これからどうしたい?楽になりたいなら送ってあげる。生きたいのなら組合に所属している何処かの村を紹介してしばらく暮らしていけるだけのお金を用意してあげる。力がほしいのなら鍛えてあげる。どうしたい?」

 

「……らくに」

 

「そう。分かったわ。痛みも何もなく眠るだけよ」

 

頸動脈を綺麗に締め上げて眠るように落ちて、そのまま息を引き取る。岸に接岸して丁寧に埋葬してあげる。私達がしてあげれるのはこれだけだ。

 

大分治めている地域が増えてきたけど、それは川辺周辺だけ。水上戦はともかく陸戦は圧倒的に不利だ。何しろ武器と防具がないから。水上戦では取り回しの良い短剣と徒手空拳が一番なのだ。よくアニメなんかでカトラスが使われているのは取り回しと扱いやすさから来ている。普通の剣よりは軽く、いざという時にロープを切れるだけの切れ味があり、手入れもしやすい。それが手にはいらないために組合員には短剣と徒手空拳を叩き込んで水上戦で戦うしかないのだ。あと、私に陣形なんかの知識がない。だから陣形がない水上戦専門になるしかないのだ。

 

クラリッサからは袁紹の元で色々派手にやってて、オーフィスらしき武将を見つけたと手紙が来た。おそらくは呂布らしい。3万の賊をすべてクビだけにしたと。比喩でもなんでもないらしい。普通は逃げられるから半分ぐらいしか出来ないんだけど、逃げる隙を与えなかったのかと思ったのだが、3匹のトラよりも大きな狼が群れを率いて囲んでいたらしい。2匹はスコルとハティだろう。残りの1匹は元士郎が話していた惑星グルメでの相棒のクロスだと予想する。

 

転生して無限龍として力を持っていないはずなのにこれだけの強さか。惑星グルメで身につけた色々な技法のおかげでしょうね。単純に食義と食没がチート臭い。ゲームで言えば技の威力10倍でMP消費量90%カットとMP上限値開放なんてことになってるから。

 

「お頭、積荷に蜂蜜があるんですが」

 

「袁術への賄賂に使うわよ。鮮度の問題もあるし、急ぐわ。徴兵免除をもぎ取るわよ!!陸戦なんて勘弁してほしいわ」

 

「お頭、上から劉表の軍船が!!数は中型が3」

 

「やってやれないことはないけど、面倒だから後ろに向かって全速前進!!船団を組むよ。狼煙を上げな!!」

 

「へい!!」

 

船上の一角には火を熾せるように簡易的なかまどが設置してある。そこを使って狼煙を上げて組合の船を集める。向こうが追ってきている内に領地を超えた所で船団を組み終えて反転。そのまま劉表の軍船に乗り込み全員を河に放り込む。これでまた新しい船を組めるわね。古臭い思考の船なんて使ってられない。

 

ああ懐かしの万能航行艦。運び屋と海賊退治、たまの航路開拓の日々が懐かしい。宇宙怪獣相手に格闘戦ってのも楽しいけど、船を操るのも別の楽しみなんだよね。今は亡きお兄も店を息子に譲ってからはウチの船団の料理人として夫婦で宇宙を巡っていたわね。最後は地球に戻って寿命で死んでいった。宇宙もいいけど最後は丘で死にたいって。地球からは結構遠かったけど、それは元士郎に頼んでちょっとばかりズルをして地球まで連れ帰ってあげた。船乗りの最高の死に方よね。無事に何度も航海を潜り抜けて故郷に骨を埋める。うん、幸せだっただろう。

 

「引き上げるわよ。いずれは黄河全域を私達の縄張りで染め上げるわよ!!」

 

「「「「「応!!」」」」」

 

 



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第3話

 

お姉様から招待を受けて袁紹軍の兵士にお姉様の天幕へと案内される。

 

「お久しぶりですね、お姉様」

 

「やっほ~、久しぶり。元気にしてた?」

 

「暇で死にそうですが、元気にしてますよ。お姉さまの方は?」

 

「元気にしてるよ。あと1年も内政だけをやってて良いのなら経済的に中華を余裕で治められれるかな?蘭ちゃんとも提携すれば怖いものなしだね。黄河の半分以上はもう蘭ちゃんの運送業者の物で中華一番の水軍を築き上げてるから」

 

「……昔の元士郎みたいじゃないですか。何をやってるんですか二人共」

 

「いやぁ~、流石に民の暮らしが酷すぎて見捨てられなかったんだ。袁紹ちゃんは根は良い子だから、そこをついて色々頑張ってるんだよ。だからこれだけの兵力を普通に運用できるんだから」

 

「それがこの丸一日中の投石機による飽和攻撃ですか」

 

現在も天幕の外では袁紹軍の30機の投石機による飽和攻撃が行われている。民の命をお金で買ったのだと思えば安いものだろう。

 

「向こうが白旗を振るなら丸一日にはならないけどね。これで今回の討伐は袁紹ちゃんの功績一位。横取りしようものなら顰蹙を買うからね。まあ、投石をやめるつもりはないから巻き込まれても自己責任だけどね」

 

「おかげで曹操は苛ついているみたいですけどね。完全に脇に追いやられてしまいましたから。これ以上は戦果の上げ様がありません」

 

「ふむ、ヘイトが溜まるのはあまりよろしくないし作戦を切り上げますか。郭図」

 

手を二度打ち鳴らしながら郭図を呼ぶと天幕の入り口に影がよぎる。

 

「ここに」

 

「油玉と炎玉を用意させて。後は相手が飛び出してくる可能性もあるから弓兵と弩兵の準備。近づける前に粗方削りなさい。降伏は両手を上げて何も持っていないのが条件よ。それ以外は全て打ち取りなさい。あと、袁紹ちゃんに派手に行くからって言って観戦させなさい。黙ってたらうるさいわよ」

 

「へい、すぐに。諸侯へはどうされます」

 

「最初に言ってるでしょ。後ろに下がっていなさいって。向こうはそれを了承したんだから、前に出れば矢を撃ち掛けなさい。一回は威嚇でね。それ以降は黄巾賊に襲いかかっている所にまとめてやってしまいなさい。私が全部処理するから思う存分やってしまいなさい」

 

「はっ」

 

それから数時間後、黄巾賊は壊滅した。郭図が調整したのか門周辺が特に炎の勢いが強く、殆どの者が業火の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「円卓の騎士か。もう驚くのも飽きたな。不倫で内部崩壊する前に貴様ら全員エクスカリバーとアロンダイトのサビにしてくれるわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「簪、私と麗羽、袁紹の差は何?」

 

「えっ、お金の差でしょ?」

 

「そんなものに私は負けるのね」

 

「そんなものと思っている時点で袁紹を裏で操っているお姉様には絶対に勝てませんよ。お金っていうのは凄いものなんですから。お金は力です。お金さえあれば一握りの物以外はなんでも買えます。それを効率良く使い、どんどん増やしていますからね。2年でお金によってこの中華は袁紹のものになります。そして、それに逆らうってことは民のためという大義名分は絶対に使えません。向こうの民のほうが裕福で幸福に生きていますから」

 

「……どうすれば勝てるかしら」

 

「その考えが間違ってますね。貴方は何のために戦っていますか?自分が上に立ちたいのなら宦官共と変わりませんよ。民のためなら、袁紹に下ればいい。そこで政を一手に振るえばいい。袁紹の性格は分かっているでしょう?乗せて好きにさせればいい。筆頭軍師のお姉様も夫と合流すれば袁紹の元から離れますしね。行けばわかりますけど、お金が大量にあるって色々楽ですよ。というわけで、はい、経済書です。これを読めばお金の偉大さが分かります」

 

後漢時代に合わせた内容に編集した経済書を手渡す。まあ、無駄になる可能性が高い。本当にオーフィスをどうしよう。それと配下の我狼団。スコル、ハティ、クロスを筆頭とする五千頭の魔狼の群れ。龍の肉で腹を満たしているのは間違いではなかったらしく、配下の、家族の狼達にも食べさせているのか普通の狼とは比べ物にならない強さを誇る。1頭を相手にしても曹操の親衛隊が5人は必要になるだろう。群れを相手にすると更に人数が必要になる。筆頭の3頭は言わずもがな。

 

「さて、そろそろ許褚と典韋の勉強の時間ですね。これで失礼させていただきます」

 

「ええ、よろしく頼むわ」

 

曹操の執務室から退出して二人の勉強を見ている部屋に向かいます。教材を揃えて黒板とチョークも用意しました。便利だということで曹操と荀彧も同じものを作らせています。しばらく待っていると許褚と典韋がやってきました。

 

「「今日もよろしくおねがいしま~す」」

 

「はい、頑張りましょうね。それじゃあ、この前の宿題の確認ね。戦っていうのは最後の手段であり、愚かな行為である。なぜそうなるのか、二人はどんな答えを出したのかしら?」

 

「ええっと、戦になると男の人が兵士として出て行って、畑の手入れとかが大変になります」

 

「猟も難しくて、子供たちがお腹を空かせて、場合によっては死んじゃいます」

 

「お年寄りも似たような感じです。それに戦場が近くだと略奪とか、そうでなくても畑が荒らされて収穫が厳しくなります」

 

「それに税が増えたりもして、でも、村を捨てれなくて」

 

「戦が終わっても、帰ってこない人も多くて」

 

「だから、戦は最後の手段だと思います」

 

「ええ、その通りよ。よく考えてきましたね。それも答えの一部です」

 

「「一部ですか?」」

 

「そうよ。今、二人が言ったのは下の、民達から見た戦の悪い点ね。それじゃあ、次は曹操の、統治者から見た悪い点を見ていきましょうか」

 

「「は~い」」

 

荀彧では自分の知識を押し付けるだけで典韋はともかく許褚は理解し切ることが出来ない。統治に関しては絶対的な正解なんてものは存在しないのだから教え子が納得できる答えと、考え続けることが大事なのだというのを教えてあげれば良いのだ。だからこうやって二人で考えて話し合って答えを探し出させていく教え方が適しているのだ。読み書き計算は別ですけど。あれは半分以上が慣れですから。

 

「はい。今日の所はこんなものでしょう。次の時は計算の勉強ですね。この前渡した算盤を忘れないようにね」

 

「「ありがとうございました」」

 

私にとっては可愛い生徒ですが、オーフィスと対峙すれば一瞬でその命を散らしてしまうでしょう。元士郎が間に合うかどうかが全てを決めるでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

「ゴルァ!!何、禁輸品に手を出してんだ!!舐めたマネしてんじゃないわよ!!」

 

民族性から理解していたが、多少の余裕ができるとすぐに腐敗が進むのが漢民族だ。今も古参の船長たちが禁輸品に手を出していたのが判明したので沈めにきたのだが、私の船の船員も私に武器を向ける。当然、全員見せしめに首を刎ねて並べて罪状を分かりやすく書いた看板と共に船を放流する。

 

「別に一人でも操船可能だけど面倒を起こして。全く面倒な民族ね」

 

流れに乗せながら舵を操作して拠点に戻る。拠点の村に戻ると他にも仲間がいたのか私に襲い掛かってきたので蹴り殺す。

 

「これが貴方達の答えね。ならいいわ、後は好きにしなさい。私は私で好きにする。船も販路も運転資金も残しておいてあげる。好きにしなさい。私はもう手を貸さないから」

 

恩を忘れるのが漢民族だ。さてと、とりあえずはクラリッサの所に行こうかしら。向こうなら仕事はいくらでもあるでしょうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

「個対軍はもう慣れたぞ、こら!!最果ての海にたどり着くこと無く滅びやがれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変だったみたいね、蘭ちゃん」

 

「ええ、もう、本当に。折角7割は征したのに。全部水の泡ですよ。当分、黄河は荒れますから放っておいたほうが良いですよ。陸路を整えて道の駅を作って、今度は陸運王でも目指そうかと」

 

「ああ、うん、予算とかはすぐに用意するからお願いできるかな?」

 

「円状と碁盤状、どっちにしておきます?」

 

「円状かな。これからのことを考えるならそっちのほうが良いでしょ」

 

「了解。ローマ兵に負けないぐらいに立派な石畳の道路を作ってくるわ」

 

「ウチの兵士は進軍しながら石畳の道を作っていく工兵なのか歩兵なのか分かりにくいチート兵と比べたら雲泥の差だけどね。まあ、不正をしたら普通に首を切っていいよ。物理的に。ちゃんと国の兵士として十分な給金も与えてるからね。訓練兵時代に叩き込んでるけどそれでも不正をするようなのは邪魔だから。逆に私達の目をかいくぐるほどの悪党なら、それはそれで使い道があるからね」

 

「その前に、反董卓連合で全員クビを並べられそうなんだけど、私達以外」

 

「というか、食技と食没って私達身につけてないから、出力で勝てるかな?簪ちゃんはなんとか出来るかもしれないけど、三人がかりで何とか抑えられるかどうかってところだよね?」

 

「その間、狼の群れが完全にフリーになるから地獄絵図になるような」

 

「だよねぇ~、早いところ元ちゃんが戻ってきてくれると嬉しいな~。抱いてもらってなくて欲求不満だもん」

 

「ですよねぇ~」

 

 

 

 

 

「ブケファラスごと死ねええぇ!!48の殺人技+1、キン肉ドライバー!!」

 

 

 

 

 

 

「3班に分かれて行動するわよ。1つが天幕を移動させたりした後は休憩、残り2つが道を作っていくわよ。それを一定距離ごとに交代して作っていくわ。つまり、素早く働けばそれだけ休憩時間が増えるわよ。ガンガン道を作りなさい。完成した暁には袁紹様からお褒めの言葉とクラさんから特別手当が出るわ!!さあ、ガンガン道を作りなさい」

 

ああ、最低限以上の規律があるって素晴らしいよね。やっぱ漢民族の田舎の民を纏めるのが失敗だった。最低限のコミュニティだけで生きてる奴らをまとめれるわけがない。こうやってこの時代の都会の兵士だと大きなコミュニティで生きているし、実力主義があるから一度絞めれば従順に働いてくれる。ちゃんと餌もぶら下げてあるから不満も溜まりにくい。

 

指示を出した後は班長に任せて資材を乗せた荷駄隊と共に道路の敷設予定先に道の駅、少し大きめな宿屋みたいな物を作りに行く。賊はクラリッサが軍を出しまくって虱潰しにして治安を回復させているからこそ城壁もない場所に宿屋を作れるのだ。簡易的な馬小屋も作って商人が行き来しやすいようにする。無論、治安を良くするために巡回兵用の兵舎も立てる。お金があるって素晴らしいよね。資材も人材も好きなだけ投入できるのも楽。日本人みたいな職人が少なくて船の品質が一定にならなくてどれだけ苦労したことか。

 

あっ、ウチの組合員が各地で暴れ始めたみたいだけど弓で全滅だって。所詮はそんなものよね。調子に乗った報いよ。いくつかの組は今までと同じく荷運びで慎ましく生きているそうだ。まあ、新参だからあまり強くないのと追い詰められない程度に貧しい状態だからでしょうね。さらば我が艦隊。余裕があればまた他の世界とかで艦隊を作ろう。燃2弾4鋼11?知らない子ね。あの娘達が戦うより私達が直接戦ったほうが速いもの。

 

 

 

 

 

 

 

「懐かしい匂いがする。お母さん?でも、微妙に違う。お父さんがいたら分かるのに」

 

「どうかしたんか、恋?」

 

「懐かしい匂いがした。でも、気の所為」

 

「懐かしい?なんや、家族とちゃうんか?」

 

「もう会えないはずの家族の匂い。死んで、ちゃんと綺麗に埋めた。お父さんと一緒に」

 

「へぇ~、そんならけったいな話やな。にしても初めて狼以外の家族の話を聞いたな。恋のお父さんはどんな人なんや?」

 

「お父さん、私に何でも教えてくれた。料理も家事も、動物の世話も、読み書き計算も、武器の使い方も手入れの仕方も、何でも知ってて教えてくれた。私よりも弱いのに守ってくれた。私に家族のぬくもりを教えて、与えてくれた。とても、大切な人。だけど、もう会えない」

 

別れた時の私なら自分から別の世界まで探しに行けた。今の私じゃ、この世界の中しか探せない。スコルとハティとクロスに再び出会えたのだけは幸運だった。

 

「そっか。すまんな、こんなこと聞いてもうて」

 

「別に良い。大事な物は今も此処にあるから」

 

家族の皆がいた、あの大事な思い出は今も胸の中で輝いている。一人だった時、祭り上げられていた時とは違う、私が変わり始めた思い出。微妙に違うけど懐かしい匂いを嗅いでちょっとしんみりする。

 

「会いたいな。お父さん、お母さん」

 

 

 

 



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第4話

 

「ついに恐れていたことが起こっちゃったか」

 

郭図が持ってきた報告に頭を抱える。歴史通りに何進が誅殺され、宦官の皆殺しに出た袁紹ちゃんたちが失敗。陛下達を連れ去られ、董卓が保護し、そのまま相国にまでなってしまった。そして呂布は董卓の元に。指揮権は直接じゃないけど董卓が握っているから反董卓連合を組んでも勝ち目はない。

 

いや、諦めるのはまだ早い。何か方法があるはず。一番有効な手段、分進合撃。これしかない。時間は掛かるかもしれないけど、タイミングを合わせれば、駄目だ。通信機器がない以上タイミングを合わせることが出来ない。最悪各個撃破されて終了だ。というか、オーフィスちゃんが本気を出せば、匂いで分進合撃を悟られる。

 

かと言って史実通りの汜水関・虎牢関のルートだと横振りの斬撃飛ばしで全滅だよね。先行して押さえ込むしかないかな。まあ、300秒保てばいいかな?

 

その前に反董卓連合なんて組まれないように動くほうが大事だよね。蘭ちゃんにどんどん道を整えるように指示を出して袁紹ちゃんを満足させておかないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまんな。オレに毒は効かんよ」

 

「そんな!?」

 

「毒手の全身版みたいな物だろうが、所詮は対神秘を持たない毒だ。オレは毒と呪いを司る龍。生半可な毒はスパイスと変わらん。それから一つ、唇を簡単に許してんじゃないの!!抱きつくだけで十分だろうが!!」

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらほら、気合入れなさい!!今日中にこの荷物を届けないと違約金を払うことになって給料が減るわよ!!」

 

今の私は袁紹軍での内政実働部隊隊長兼商会の会長を務めている。国の血液たらんと日々邁進を続けている。

 

「商会長、後方から騎馬が一騎。えっと、白っぽい、いや青っぽい華の旗を振ってます」

 

「クラリッサさんから?頭取、後を任せるわよ。絶対に間に合わせなさい」

 

荷馬車から飛び降りて伝令と思われる騎馬を待つ。

 

「蘭様で間違いないでしょうか」

 

「そうよ。クラリッサさんからかしら?」

 

「はい、至急お戻り下さい」

 

「あちゃ~、これは最悪なことが起こるかな?君、生き残りたいなら退職届早めに出したほうが良いわよ」

 

「はい?」

 

「これから負け戦が起こるのよ。超大規模な屠殺場が出来上がる。死にたくなかったら今すぐ兵を止めたほうが良いわよ」

 

「我々が負けるのですか?」

 

「相手、飛将軍よ。3万の賊を一人残らず首だけにして身体は配下の狼に食わせたって噂の」

 

「ですが、噂でしょう?」

 

「残念だけど事実なのよね。ついでに狼は5000頭、まとめ上げるのは虎よりも大きな3頭よ。その3頭は並の武将よりも強い。既に華雄って言う武将が食われて死んでるのよね。結構強い武将らしかったけど、弄ばれて武器の斧も噛み砕かれて心が折られた所で下っ端の狼に食い殺されてるの」

 

「ぶ、武将がですか?」

 

「そうそう。それだけヤバイ相手。ちょっくら私もクラリッサさんも、曹操殿の元に居る簪さんも本気を出して戦うけど、3人で呂布を300秒止めれれば良い方かな?逆に呂布を自由にして良いのなら狼は止めれるけど結果は同じかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「信託は下った。聴くが良い、晩鐘は汝の名を指し示した。告死の羽ーーー首を断つか『告死天使』(アズライール)!!」

 

「うん?うおっ、首が落ちた!?針と糸は何処やったっけ?」

 

「確かに死んでいる、なのに何故死なん!?」

 

「あ~、うん、すまんな。概念系即死技なんだろうが、オレにとっては死なんてただの隣人だ。伊達に3回も死んで蘇ってない。いきなり首を断たれたのはびっくりしたけど、それだけだな。繋ぎ直すだけで済むし。それにオレはヴリトラでもある。乾季を司るヴリトラは倒されても何度でも蘇る。さあ、殺してみろ!!簡単に死ぬが、何度でも蘇るオレを殺せるならな!!あっ、こら、影から出てこようとしないの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わった。全てが終わった」

 

袁紹ちゃんの説得に失敗し、諸侯を集めて汜水関・虎牢関ルートでの進撃が決定してしまった。郭図には治安維持部隊を全部預けて置く。逃げるのは許さないけど、生き残れるように細工を施しておいてあげる。郭図に説明はしてあるから問題ないでしょう。

 

「史実通りだよね。狭い谷間で、狭い?」

 

「平原に比べればね。そこそこ横に広がれるだけの広さはあるわよ。だけど、斬撃を飛ばされたら横には逃げられないからしゃがむかジャンプしないと」

 

「縦に太い斬撃が飛んできたら?」

 

「その時は私達三人だけでも生き残るしかないわね。また元ちゃんと完全に離ればなれになるつもりはないよ」

 

「ですよね~。まあ、生き残るのに精一杯な気がしますから」

 

蘭ちゃんが机に突っ伏しながらお茶を啜る。私もお茶を啜り、二人同時に溜息をつく。

 

「簪ちゃんは大丈夫かな?一人で溜め込んでないかな?」

 

「毒を振りまいてる気がする。押さえ役がいないから誰も止められないよね」

 

「伊達にレーティングゲームの個人ランカー最上位クラスじゃないものね。なんせ、素で斬鉄をするような腕前なんだもの。そこに魔力と術式を乗せた一撃に耐えられるのは超一流と呼ばれる剣士か、元ちゃんみたいに斬られても平気な顔を出来るのだけだもんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、見ての通りです。私に勝てないようでは呂布と戦えば死が確実に待っていますよ」

 

閻水に纏わせている水を払い捨てて練兵場に転がる曹操軍の武将たちを見渡す。全員が倒れ、側には愛用の武器が真っ二つに切り捨てられて落ちている。

 

「呂布はこの私よりも強い。袁紹の所に身を寄せている側室の二人と協力しても時間稼ぎで精一杯です。配下の狼は親衛隊と同格、群れの分だけ親衛隊以上の力を持ちます。それが5000に武将よりも強い群れの主である巨狼が3頭。その3頭は私並みだと思って貰えればどれだけ反董卓連合に勝ち目がないのが分かるでしょう?わからないのなら狼の腹に収まるでしょう。私も今度ばかりは命がけです」

 

簡単に命を取られるつもりはないけど、気は絶対に抜けない。同じ土俵に立って入るけど、熟練度は大幅に放されているのだから。

 

「これ以上の強さがあると!?」

 

曹操が驚いていますが、中華以外はもっと恐ろしいことになっているでしょうね。未だに元士郎と連絡がつかないんですから。

 

「故郷では公式の模擬戦の順位で800から900を彷徨っていましたね。公式に出てこないのとかも合わせれば2000位じゃないですか?最も、相性や状況なんかでも変わってきますから一概には言えません」

 

「そう、貴方の上が最低でも2000人。世界は広いのね」

 

「中華は広いけど、世界全体から見れば僅かな範囲よ。この世界の大半は海で出来ているんだから」

 

地面に簡易ではあるが世界地図を書いて中華を塗りつぶす。

 

「これが曹操たちが言っている天下。ちなみに今一番大きな国である羅馬は大体これ位」

 

記憶を掘り起こしてローマの支配地域を塗りつぶす。確か、コレぐらいの大きさだったはず。

 

「……何故、こんなことを知っているのかしら?」

 

「ああ、使い魔、魔術を使って契約を施した動物、今回は鳥ですが、それを日頃から飛ばしていますから。夫が暴れたらしい跡も見つかっているので距離的にはあと2ヶ月と言ったところでしょうね」

 

「暴れた跡?」

 

「地形が大きく歪んでいるところとか、辺り一面血で真っ赤に染まっているのとかですね。どうもこのエジプトと呼ばれるあたりに飛ばされてたみたいですね。そこからこういう道で大規模に3回ほど戦ってます」

 

「えっ?少し待ちなさい。貴方の夫は一人よね?」

 

「当たり前でしょう?何を言っているのですか」

 

「辺り一面が血で真っ赤になるってことは軍勢と戦ったってことでしょう?」

 

「ああ、言いたいことがわかりました。先程話した私の上に2000程居ると言いましたが、夫の上には誰もいません。つまりはそういうことです」

 

「貴女の故郷で最強。呂布と比べるとどうなのかしら?」

 

「夫が上ですね。まあ、横並びに二人ほどいますけど、呂布ならそこまで追いつけるでしょう」

 

なんせ横並びの一人なんですから。

 

「さてと、遺書の準備でもしておきましょうか」

 

死んだとしても術式を残しておけば元士郎が拾い上げてくれますからね。

 

 

 

 

 

 

 

「世界最大の支配面積を誇るモンゴル帝国か。こいつらの向こうが中華だ。てめえら、覚悟しやがれ!!そろそろ皆に会えないストレスで堪忍袋の緒が切れそうなんだよ!!静謐は静謐で寝込みを襲おうとするし、いい加減我慢するのが限界なんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~、いい天気だね。まさに虐殺日和」

 

「本日の天気は快晴後に局所的に血の大雨が降るでしょうね」

 

「私達の血も混ざらないと良いんだけど。少量ならともかくね」

 

久しぶりに三人揃ったけど、お先は真っ暗だ。汜水関まで3日の位置だけど、既にオーフィスちゃん、呂布一家の縄張りに入っている。はっはっはっ、完全に向こうの必殺圏内だ。何度も此処で狩りの演習を行ったあとがある。狩人出身の兵士が不安になっている。一応、会議の時に言っておいたけど誰も信じていなかった。まあ、足跡を見れば分かる。あれは逃げる兵士を食い殺すための陣形だ。

 

殿を武将が受け持ち、一番に逃げ出す兵士を食い殺して押しとどめて包囲殲滅。誰も生きて帰れないでしょうね。既に周辺の村から物資を摘発しちゃってますから逃げ延びても餓死が待っている。

 

「あ~、いやだいやだ。なんで地位や権力なんて求めるかな。面倒なだけなのにね」

 

「お姉様は元士郎に仕事を任せて自由にしてたでしょうが。元士郎はすぐに甘やかして仕事を全部済ませちゃうし、変装も分身も得意中の得意だったから余計に」

 

そっぽを向いて口笛を吹いて誤魔化そうとしたけど、誤魔化されてはくれないでしょうね。まあ、あまり誤魔化す気もないんだけどね。

 

「あっ、向こうも気づい全員飛べ!!」

 

騎乗している馬を跳躍させ、その一撃を躱す。だが、それだけだった。躱せたのは私達三人と騎乗している馬の魔獣、それと騎馬の兵士と歩兵の武将の一部だけ。それ以外は全員膝から下を切り落とされた。馬も全て脚を切り落とされた。あ~、いきなり詰んだ。

 

「生きているものは持てるだけの糧食を持って逃げなさい。殿は私達3人が受け持つ。他人を助ける余裕はないと知りなさい。来たわよ!!」

 

スコル、ハティ、クロスの三頭が正面から、群れの五千頭の狼が左右の崖から突っ込んでくる。馬から飛び降り、狼の群れに突っ込ませて時間を稼がせる。簪ちゃんと蘭ちゃんが前に出て武器を構える。私も魔力を練っていつでも氷を扱う準備をする。だけど、その前にダメ元で試す。声に魔力を一定量乗せて叫ぶ。

 

「お座り!!」

 

反射行動で三匹が地面を削りながらお座りの体勢で滑ってくる。三匹の顔は狼なのに唖然としているのがよく分かった。

 

「体が変わっても魂までは変わっていないみたいでよかったよ、スコルちゃん、ハティちゃん。そっちは元士郎に聞いたクロスちゃんで合ってる?」

 

その言葉に三匹は同じ行動を取る。空へ向かって吠える。あっ、これはやばい。そう思った瞬間に氷の壁を渓谷いっぱいに広げたけど、力任せに叩き割られ、氷の散弾が襲い掛かってくる。後ろで倒れている兵士たちが次々と死んでいくけどどうすることも出来ない。

 

「ごめん、余計なことをした!!」

 

「仕方ありま右!!」

 

簪ちゃんの警告に反応して、武器を振り切らせないように障壁を張りながら右に体当たりをする。それでも強引に振り切られ、崖に叩きつけられた。

 

「あたたたた、強引にも程があるって」

 

崖を崩しながら埋まってしまった身体を強引に引き抜く。

 

「死んでない。それに懐かしい匂い」

 

目の前には褐色の肌に龍を意味する入れ墨が入った赤い髪の女性が立っていた。

 

「あ~、記憶はバッチリ?オーフィスちゃん」

 

「……セラフォルー?」

 

「やっほ~、4人で迎えに来たよ」

 

「4人?」

 

「私にソーナちゃんに留流子ちゃん、それに元ちゃんもだよ」

 

「お父さんも、お母さんも、本当に?」

 

「と言うより、ソーナちゃんは其処にいるよ」

 

クロスちゃんと激しく争っている簪ちゃんの方に指をさすと、オーフィスちゃんが強引に二人を引き離す。だが、すぐに牙と爪と水の刃が交差し合う。

 

「邪魔をしないで待ってなさい!!上下関係は最初にきっちり叩き込まないと」

 

いやいや、もう明らかに勝負は着いてるって。クロスちゃん、変なハゲになってるし、銀毛は血の赤と泥の茶色で斑になってるから。返り血とかじゃなくて、クロスちゃん自身の血なんだよ。ほら、オーフィスちゃんも寂しそうにしてるから。

 

「これで終わり!!」

 

閻水を後方に投げてからクロスちゃんの首根っこを掴んで強引に投げ飛ばし、そこに閻水が降ってきてクロスちゃんの頭を掠める。

 

「これで分かりましたね。どっちが上か。スコルよりも格下なのに私に勝てるわけ無いでしょう。分かったら返事!!」

 

クロスちゃんが弱々しく鳴く。それを聞いてから簪ちゃんが戦闘態勢を解いて優しい笑顔を見せる。そして閻水の水を治癒効果のある物に変化させてからクロスちゃんの全身を包み込ませる。30秒ほどで全身が綺麗になったクロスちゃんを蘭ちゃんと二人でブラッシングをして毛並みを整えていく。

 

「これでよし。それじゃあ、これからよろしく、クロス」

 

クロスちゃんがまた弱々しく鳴くが、理由はスコルちゃんとハティちゃんとオーフィスちゃんからの嫉妬の視線が痛いからだろう。

 

「さて、待たせてしまいましたね。オーフィスで間違いないですか?」

 

「本当にお母さんなの?」

 

「ええ、そうですよ。最後の約束を覚えていますか?」

 

「うん。私怨で暴れない、命を粗末にしない、それから出来るだけ楽しみなさい」

 

「そうですね。では、聞きます。守れていましたか?」

 

「守れているはず。寂しい時もあったけど、またスコル達と出会えた。それにお母さんたちにも」

 

そこまで言った所で我慢ができなくなったのかオーフィスちゃんが涙を流しながら簪ちゃんに抱きついた。

 

「お母さんお母さんお母さん」

 

「はいはい、私は此処にいますよ、オーフィス。甘えん坊なのは変わりませんね」

 

そうは言うけど、元ちゃんと再会した時は大体皆同じような状態なんだけどね。とりあえず、このまま戦わずに済んでよかった。普通に立っているようにみえるけど、身体のあちこちがガタガタになっちゃってるから。

 

 

 

 

 

 

 

「飛行とか龍化の封印が解けた!?ちょうどいいわ!!ひゃっはー、汚物というかレイプ魔は消毒じゃあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

汜水関での虐殺から2週間、董卓軍は粛々と中華全域を支配下に収めていっている。私達三人は一応捕虜という形でオーフィス、呂布の元にいる。賈クは文句を言おうとしていたけど、威嚇されて黙った。董卓は家族が一緒に暮らすのは普通のことだし、直接的な配下ではない(レン)の、オーフィスの真名、好きにすればいいと言ってくれた。そういう経緯で首都である洛陽から少し離れた場所の土地に申し訳程度に柵を作って狼達の牧場みたいな感じになっている場所の側の屋敷で現士郎を待っている。

 

そして、狼達の牧場の一角には骨が大量に山のように積まれている。殆どが人骨だというのが異様だろうが、中には竜の骨も混ざっている。少なくとも20頭ほどかしら?頭蓋骨が20個ほどありますから。

 

久しぶりに皆でのんびりしながらスコル達や狼達のブラッシングや料理を作りながら暮らしていると、西の方から大規模な索敵魔術の波が押し寄せてきた。荒々しいけど、元士郎しか考えられないので庭に出て待つと、西の空に見慣れた龍の姿を確認した。狼達は驚いて東側に逃げているけど、スコル達は私達の側で待機している。しばらくすると龍の姿がどんどん大きくなり、また小さくなってヴリトラの姿から元士郎の姿に戻る。

 

「やっと会えたーー!!もうボスラッシュはお腹いっぱいだーー!!」

 

元士郎がそんなことを言いながら私に抱きついてきた。ボスラッシュは大規模戦闘のことだろうとは思うけど、一体何と戦っていたのだろう?

 

「お疲れ様、元士郎。それからオーフィスだけじゃなくて、スコル達もいるよ」

 

「お父さん!!」

 

私が離れると同時にオーフィスたちが元士郎に抱きつく。

 

「よ~しよし、久しぶりだな皆。元気にはしていたみたいだな」

 

押し倒されながらも器用に皆の頭を撫でている。

 

「ほらほら、一回離れて。今日はご馳走を、オーフィスのフルコースを再現して用意してやるぞ」

 

オーフィスのフルコース。ということは惑星グルメでの食材を使ったものだ。しかも、オーフィスがフルコースにするような物だ。これは楽しみだ。

 

「あ~、それから相談事があってだな」

 

この反応、お姉さまを初めて抱いてしまった次の日に似ている。

 

「浮気ですか、元士郎」

 

「いや、浮気にまでは行ってないんだが、恐ろしく懐かれた。今は肉体の維持に努めてもらってる。今の状態なら年単位で大丈夫だからゆっくり相談して決めたい」

 

あ~、元士郎がそこまで言うってことは結構重いみたいね。同情しちゃってるっていうのがほぼ決めて。はぁ~、1年近くも傍にいないとこうなっちゃうのは仕方ないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後の世にまで伝えられる後漢再生史。数多の綺羅星とまで言える英雄たちがゴミのように一人の武将と狼の群れに殺され尽くした創作物のような史実。数多の英雄を殺し尽くし、龍とまで恐れられた武将はその戦の後に姿を消す。また、その戦の前後にエジプトからアジアの各地に地形を変えるほどの大規模な天災が襲ったが、それによる死者がほぼ見つからないという謎が残され、歴史家達はこぞってこの謎を追うこととなる。この謎の通説は時の相国である董卓やその周りの重鎮が西洋のドラゴンのイメージそのものとも言える龍を目撃したという書物が多く残していることから、その龍が暴れた痕とされている。また消えた武将は龍と共にどこかへと旅立ったとされる。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、と言うわけでさらっと終了させました。この作品は次の作品への繋ぎです。と言うわけで、この続きは次回作へと持ち越させていただきます。


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