鬼滅の世界に魔術師現る!! (魔剣グラム)
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救われない者を確かに救うために

今作は鬼滅の2作品目になります。なんか昼飯での帰り道にふと思いついた設定をそのまま掘り起こして書いたモノになります。今作の主人公は人間側ですね。鬼側と人側両方書いていきたいですね!!


ぎゃあぎゃあと夜空に響く声。それと同時に悲鳴が上がっては紅い噴水と共に消えていく。

あぁ、ここにもいるのか。救われない者が。駆けつけてみるとそこにはまるで。

鬼の波濤が打ち寄せるかのよう。普通に考えるのならば、実に驚異であろう。

だが、俺にとっては、

実にくだらない(・・・・・・・)

怪物退治、その為に。1言、2言口にすれば。

まるで示し合わせたかのように、取るに足らぬと消え去るのみ。

弱い。

あぁ。こんなのに自分はあんなにも手こずったのか。

闘い方さえ弁えれば、こんなにも弱くなってしまうのかと。

これが鬼。この世界での妖。

…実にたいしたモノではない。

俺の操る聖なる稲妻に、呑み込まれては消えていく。

魔力炉を最大限活動させるまでもない。

「あ、貴方様は鬼殺隊ではないですよね!?」

どうやら人に見られていたらしい。迂闊だった。こんな山奥だから人がいないと勝手に思い込んでしまっていた。

そうか。コレを退治する輩。それを鬼殺隊というらしい。

ここでも(コレ)を倒す輩がいるみたいだ。

それはそうか。身体を治すワクチンの様に異物を排除する機構は世界にも当然備わっている。

「そうだな。俺はそんな輩ではない」

ここでもまた俺は歯を食いしばるのか。救われない者を救う為に。…実に俺にはお似合いだ。泥に塗れてばかりの俺にな。

そう自分で自分の事を自嘲する。

「貴方様のお名前を教えてください!」

名前を教える代わりに。重たい唇を開く。魔術を使えると知っている人間は少ない方がいい。だから申し訳ないのだが、消させてもらおう。

炎よ集え。魔術師の叫ぶ怨嗟の如く(Flama est lego vis wizard)

魔力を最適化させ、魔術を放とうとした時。

「待ってください!!」

なんだこの男は。魔術のジャマをする気か。

「助けていただき、ありがとうございました!!」

…消せなくなってしまったじゃないか。この人もまた救われない者だったのだろう。俺が救った救われない者を自分で消しては本末転倒である。

しょうがないのであさっての方向ヘ魔術を放つ。

完成した魔術は消せなくはないのだが、消すと無駄な労力が発生する。放った方が楽なのだ。

だがその男をギリギリに外した所に放ったせいで、男は腰を抜かしていた。

「今みた事は忘れた方がいい」

脅すように俺が言うと、その男はコクコク頷いた。…ワザとではないのだが。

証書(・・)を取り出すのもめんどうだし、コレでいいだろ。

「せめて。貴方様のお名前だけでもお聞きしたいのですが」

「名乗るほどの者じゃない」

そう言い捨ててそのまま立ち去ろうとすると、

「お名前だけでもお聞きしたいのです!!」

しつこいな。コイツ。じゃあちゃんと名乗るか。ちゃんと義理を果たすために。

「現代魔術師、八鍵水明。世界の全ての不幸を否定する為に神秘を志した、現代日本の神秘学者だ」

現代魔術師、鬼滅の世界を歩き始める!!!




なんかすげぇ思いつきでガーッと書き上げた作品になります(どれもそうな気がする)。ただただ面白そうって理由だけで。続かなかったらごめんなさい!


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魔術師、異世界転移した後、考えるのを後まわしにする

叫ばせたかったんですけど、そんな事したら死ぬので、叫ばない事に決定。グチグチ言いながら助けてくれるお人よしらしいですよ?


気がつくと見覚えのない山の中にいた。

木々の植生から見てみると、そこまで高い山ではないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はアスファルト舗装がなされた道をのんびり歩いていた。代執行(お仕事)の帰りだったのである。お仕事弟子を実家に置いてくるのは初めてで、めちゃくちゃ怒ってるであろう弟子をどう宥めようか。そんな事をぼんやり考えていた。

その時だった。急に足元が大きく輝いたのは。あまりの急な出来事に、俺は思わず唖然としてしまった。それが後から考えると大きな大きなミスだった。

魔方陣はかなりの強い光を放ちながら、グルグル回る。回り切って光が収まったあとは何も。影も形も残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっちゃあ…!」

しまった。ほんの一瞬だが、手をこまねいてしまった。外殻世界の力が加わっていたとはいえ、現代魔術師としてコレでは。大失態である。

「マジで異世界転移ってあるんだな…」

そうぼやき。気を反らすために空を見上げる。そうすると、

「ここ、地球の空じゃねえか!!」

見覚えのある星の天蓋がそこには広がっていた。

それで少し落ち着く。

…だがいくら山の中とはいえ、こんなに綺麗に星が見えただろうか?こんなに空気が澄んでいただろうか。

「…少し昔に飛ばされたのか?」

その可能性が高い。だったら知り合いも多少いるだろう。議長や妖怪博士。結社の盟主(化け物クラスの知り合い達)も助けてくれるに違いない。

困っていた人を助けてくれるという彼らの心意気を利用するのは心が痛むが、

「そんな事言ってられないな」

そう四の五の言ってられないのも事実であった。

「…きっと助けてくれるさ。きっとな」

とりあえず、良い方に考えるとして、まずは。

「…この山降りねぇとな」

人里に行かないと何も始まらないという厳しい現実があった。

 

 

人里に行く途中で独特の気配が動いた。

 

 

 

「あ"ぁぁぁぁぁ…。なんとか人里についた…!」

まぁ山村ではあるが、小さな人里につき、ホッとため息をつく。

「今日はここで宿を貸してもらうか」

ドルも持ってるし、円も持ってる。なんとかなるだろ。…どんだけ昔なのかにもよるが。

「ごめんくださーい」

山村なので、どういうモンなのか理解不能だが。とりあえずいつもの様に声をかけてみる。コレでダメなら野宿決定だな。

…ここまで来て野宿したくねぇな…。

「あ、あんたは!?」

村の中から女性が1人出てきた。いい年齢したお姉さん(婉曲表現)だ。

日本語を喋った。日本人だ。俺は胸中でため息をついた。日本なら安心した。

だが、落ち着いた俺とは反対に、なんか慌てた様子だ。

「俺は八鍵水明。旅の者だ」

顔色1つ変えずに返す。

「…鬼じゃあないね!?」

「鬼にみえるか?」

そう返すと、「そうだね。そうだね」と頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その人の家に入れてもらい、お茶を出してもらう。

…マジでありがたい。

ちょっと事情を聞くと、

「最近、近くの山で鬼が出るって噂が出てね。怖いねってみんなで話していたのさ」

鬼なんて魔術師以外には幻の存在だと思われてるぞ。元の世界では。

テキトーに話をあわせながら鬼とはどんなモンかを聞いていく。

その結果、幾つかわかった事があった。

1.鬼は日の光に弱い。

2.特殊な武器で頸を斬ったら死ぬ。

という事らしい。マジでファンタジー世界なんだな。

それと今は大正時代らしい。俺がいたのは令和だからな…。

…ざっくり百年前に飛ばされたのか。

「それにしてもいい縫製の布だね?陸軍の人かい?」

あぁ。そうか。元々制服だったな。俺は。学ランは陸軍の制服がベースだからそう思ったのか。ちなみにセーラー服は海軍の制服がベースだったり。学ランって、もうすっかり希少価値になりつつあるな。

 

軽く談笑していたその時。凄まじい破壊音と爆発音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次に闘います!!
まだ時系列決めてなかったな…。


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魔術師、鬼になる

やっぱりここらへんは必要ですよね!


俺は慌てて走った。救える命なら救いたい。最悪、魔術で記憶の操作も視野にいれながら。視界に写ったのは(がいあく)と1人の女性。目が赤い男が女性に襲いかかっている。

まずは。

パチン!

使うのは指弾の魔術。フィンガースナップで鬼は目に見えぬ爆発でも喰らったかのように吹き飛んだ。鬼と人との距離ができた。その時点で唱えるのは、

炎よ。集え。魔術師の叫ぶ怨嗟の如く(Fiamma est lego vis wizard)

そこで唱えるのは短縮詠唱。コレで十分だろう。

魔方陣が幾重にも重なり、空気を多量に纏いながら赤い炎が噴き出す。それはまるでバーナーの様に一直線に炎が吹き上がり夜闇を赤く、紅く染め上げた。

…だが。

全身に火傷を負いながらもまだ生きている。そして…

…治って来ている。

俺は思わず瞠目した。

俺の得意な火属性。その中でも特に強力な魔術を使ったのにな。いくら短縮詠唱だからといって、そんじゃそこらのヤツに耐えられるモンじゃあない。俺は覚悟する。本気の魔術を撃つ事を。

炎よ集え(Fiamma)魔術師の叫ぶ怨嗟の如く(est lego vis wizard)その断末魔は形となりて斯く燃え上がり(Hex agon aestua sursum )そして我が前を阻む者に恐るべき死の(Impedimentum)運命を(mors)

魔術行使と同時に唸りをあげて周囲の空気が魔術師のもとに。それを喰らいながらも爆発じみた空気の圧力に体勢を崩されたのも束の間。火星の印が中央に描かれた魔方陣が組み上がっていく。炎が渦巻き、やがて空中にも無造作に魔方陣が展開していく。周りを火の粉が舞って空を覆い、更に赤く、紅く輝く。

行使の時を待ち焦がれるかのように空をもどかしそうに。ゆらゆらと炎がうねりをあげる。

「さっきとは違う」と本能で悟ったのか、逃げようとする鬼。だがもう遅い。

ならば輝け。アッシュールバニパルの眩き石(Fiamma o Ashurbanipal)

俺のてのひらの上には紅に染まった宝石が握られていて。

それを容赦なく圧壊する。

その魔術師の炎は爆音と共に鬼を容赦なく焼き尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(アッシュールバニパルの炎を使っても焼き尽くすのに15秒もかかるのか…)

周りが快哉を上げているのを聞きながら俺の心は冷めていた。

大抵の物なら数秒で跡形もなく燃やし尽くす事が可能なアッシュールバニパルの炎。

それを約15秒も使ってしまうという事は…。

…もっと有効な手段があるという事か?それとも―

考えにふけろうとした時、ある言葉に遮られた。

「鬼だ!」

は?どこに鬼がいるんだ?

俺がキョロキョロ辺りを見回していると。石が飛んできた。俺に(・・)

「この鬼!この村から出ていけ!!」

村の子供から大人までみんな石をこちら目掛けて放ってくる。

…あぁ。そう言う事ね。俺が魔術を使ったのが、この村人達には鬼の妖じみた術に見えたのか。なるほどなるほど。

…はぁ。出ていくさ。せっかくいい村見つけたのになぁ。記憶の操作だけやってさっさと出ていこう。喋られるのもめんどうだしな。

 

 

 

 

 

 

 

俺はいつの間にか叫んでいた。目の前の男が鬼から助けてくれたのは知っている。だが、あんな不気味な力を操れるのは鬼に違いない。鬼が鬼から助けたからその代わりに村人達を要求するに違いない。そう思い、思わず叫んだのだ。

目の前の男は石を投げられても、平然としていて、ただ肩を落とした。

その男が無造作に手をかざしたので思わず目を閉じてしまった。

その瞬間、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野山で野宿とはね。ずいぶんと久しぶりだ。俺はため息をつきながら寝袋に包まる。()にいれといて良かった。

明日は本格的に山を降りないとな。そんな事を思いながら、俺はゆっくり眠りに落ちていった。

 

 




この魔術師、自分が言うには「中の下クラス」なんだって。コイツで中の下なら上の上はどんだけ凄いんだろうね。


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柱との邂逅

書いてる途中でこの柱が一番絵になるだろうな…と思いながら書きました。


のんびり山を降りていく。

思い出すのはさっきの事。誰ともなしに呟く。

「…なんだよ。鬼って」

確かに怪しい技術(魔術)を使ったが、一応助けたのに。恩を仇で返された気分だが、グチグチ言ってもしょうがない。

 

さっさと気分を切り替える事にした。

 

昨日、寝る時から魔術を使っていた。無防備はさすがに危ないので、寝る時は魔術を発動させたのである。不可視や物音がしなくなる魔術等、様々な魔術を。

その魔術を切った。特に要らないと判断したためである。

コレで普通の人からも見える様になった。その瞬間。

「あなたは(だあれ)?」

…しまった。最後の最後で警戒を忘れた。まさかこんな山奥に人がいるとは。

…考えもしなかった。俺の落ち度だ。

まるで蝶の様な羽織りを纏ったお姉さんが降りてくる。

若干戸惑っている様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花柱に任命されてからの最初の任務。鬼は森に逃げたという事で追いかけて来たのだけれど。

…どこにも見つからない。

…マズいわね。

 

 

ちょっと焦っていた時に、いきなり妹くらいの男の子が木立の中に現れた。そこだけぽっかりと。まるで元からいたかのように。

…血鬼術で身を隠していたのかしら?

…でもあそこは日向よね?

それに鬼の気配ではない。どちらかというと人間に近い気配だわ。

…完璧に人間というワケでもないけど。

有効的に接したら反応あるかしら?

「あなたは(だあれ)?」

その男の子はびっくりした様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然掛けられた言葉に、

「そっちから名乗れ」

俺は自分でも恐ろしいほど冷たい声で答えた。魔術師にとっては名を名乗るという事の意味を知っているのか?という意味の問いだったのだが、お姉さんにとってはどうでもいい事だったらしい。

「あらあら。では私から名前を名乗らせてもらうわね。鬼殺隊、花柱、胡蝶カナエといいます。そちらの名前は?」

どうやら知らないらしい。お姉さんになら名乗ってもいいか。お姉さんの名前だけ知っておいて、こちらも名乗らないのは不義理だしな。

「八鍵水明だ」

「あら。珍しい名前なのね!」

そういう事なら聞き飽きてる。

「それで…」

そのお姉さんの気配が変わった。肌がピリピリするような。鋭い気配だ。

「どうしてこんな所にいるの?」

単刀直入に聞いて来たな。だが。こんな時、答えは一つだ。

「俺にもわからん」

欧米のヤレヤレみたいなポーズをとる。

こんな所(この世界)にいる理由なんて俺にはわかんねぇよ。そう解釈したその言葉は割りと説得力があったらしい。そのお姉さんはそれが真実だと悟ったようだった。

「鬼は何処にいるか知ってる?」

そのお姉さんが聞いて来た。

「知らんよ。鬼なんて。なんでそんな事聴くんだ?」

ウソだ。今もこうしている間にバレない様に魔術を使って探している。

ようやく一つ見つけたのを魔術を使って追っている。

 

鬼は太陽に弱い。

特殊な武器にも頸を斬られたら死ぬ。

 

どっちも向こうの世界の弱い(・・)悪魔に匹敵するような弱点だよな…。

悪魔に似た特性なら向こうの悪魔に効く魔術を使うか…?

そんな事を考えたりしてると。

 

「ヤバい!!」

魔術でわかった!!人が襲おうとしている!!

考え事に熱中しすぎた!!

俺は慌てて魔術を掛ける。重力と質量が軽くなる魔術を。

俺は襲われている方に向かって全力でダッシュした。

柱の事はすっかり頭から飛んでいた。




大正コソコソ噂話的な事をしましょう。ただし、私のちょっとした知識はかなりエグめ。覚悟はいいですかね?

切腹には作法があります。最初のうちは本当に腹を切っていました。切り方も、まずは胡座をかき、腹に漢数字の一を描く様にする事。二番目には漢数字の十を描く様にする事。最後に頚を斬る事。という斬る順番があるんですね。
それでも死ねない人の為に介錯人が頚を落とすというものでした。
しかし、時が進むと、特に江戸時代の時は、切腹は主に頚を斬っていました。
どういう事かというと、最初は短刀を胡座の状態で拾って腹を斬ってもいたのですが、それが後に扇子になります。扇子を拾う時に前かがみになります。そこであまり苦しむのが見てられないから、介錯人が頚を落とすんですね。つまり、本当の切腹でも頚を斬らない切腹とは作法に反しています。
辛いのですが、鳴柱さんは作法に則っていないという事ですね。
…もしくは原作のワニ先生が知らないだけなのかもしれませんね。


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魔術師の覚悟

ここからは覚悟をするシーンですね!
…なるべくカッコよく書ける様に頑張ります!


パチン!

フィンガースナップの音と共に吹き飛ぶ(害悪)。 

大丈夫。なんとか間に合った。

「あぁ…」

あぁ馬鹿らしい。何が鬼だ。人間とは相容れぬが決まり文句の、小説やゲームに出てくる様なおファンタジー(・・・・・・・)な存在だ。創作の中でしか出てこない様な存在。そんな胡乱な生き物となぜ現代魔術師である自分が戦わねばならないのか。馬鹿らしい。結社の理念を、父親のささやかな夢を追いかけねばならない、この自分が。

両目をつぶったしかめ面から呆れに染まった溜息を吐くそんな自分に。鬼は真っ直ぐ突っ込んでくる。猪の様に。闘いの機微など知らぬといった風に。

這いつくばれ(Et cadens in terram)

そう、ただ一言。地面をしかと踏み潰して前に出る。

それだけで鬼はぐしゃりと潰れて地面の赤い染みと化した。

弱い。

こんなのが驚異だと感じていた自分は本当にどうかしていたらしい。闘い方さえ心得ればこんなのは所詮ものの数ではないのだ。

向こうには鬼が複数匹いる。今ここに来て始めて気がついた。

どうやら捨てられた寺の中にいるらしい。全く不調法な輩達である。寺の中ですら血で染めるとは。現代魔術師としては宗教的な場所は大嫌いだが、その気概は気に喰わない。

寺の扉を開け放つとそこには人間をバリボリ貪っている複数の鬼が。全部で5匹。

消えて無くなれ(Ex hoc loco evanescent)

扉を開け放したおかげで月明りが差し込む様になった部屋で急に不自然な雷光が迸る。黒衣の男が右腕で描いた刀印を始点として。

それだけ。たったそれだけで2匹鬼が倒れた。どちらも胸から上が消し飛んでいる。頸などもとよりなかったかの様に。

バチバチという稲妻の残滓を振り払いながらため息をついている男の仕業だ。

血鬼術・岩山城壁(てんねんじょうへき)

一匹の害虫が妖じみた術を使う。地面を壁とする(すべ)。これが血鬼術か。

…実にくだらない。

俺が脚を踏み鳴らすと即座に地に消えた(元に戻った)

それと同時にその鬼は血を口から噴き出す。

リターンオーバー(・・・・・・・・)の対策も施していないとはね。もうちょい勉強した方がいいぞ。向こうと違って術式を解く(・・・・・)連中がいなかったのかな?

「敵襲だ!力を…」

這いつくばれ(Et cadens in terram)

変な術を使った鬼の言葉を遮り、文字通り這いつくばる3匹の鬼。まだ力を十全に込めてはいない。質問したい事があるからだ。

憎しみの目6つが魔術師を睨むがそんな事、こちらは知ったことではない。

「この近辺に鬼はいるのか?」

「俺たちにそれを聞いてなんになる?」

さっきの血鬼術だったか?を使った鬼が挑発的に答えた。

地面を踏む力を少し強めてやる。

「ぎぎぎぎぎぎ」

「できれば素直に答えてくれると嬉しいな」

俺は非常ににこやかに答えを促した。

「知らんよ」

「そうか」

グシャ。

魔術を使ってあっさり潰すと残りの鬼2匹は震えあがった。コレは俺が魔術を使ってウソじゃないと判断したからである。そうとは知らない鬼2匹がどうにかウソをつこうと、時間稼ぎをしようと画策している所までわかった。魔術を使わずに。まったく。魔術師はウソがわかるというのに。そういう魔術があるのだから。それを魔術師でもない連中がわかるくらい動揺しているとわね。

…実にくだらない。

…話す事もないようだな。今度は全力で地面を踏み潰す。残り2匹もあっさり潰れた。

…有益な情報なんて何もなかったな…。そんな事を考えながらも、とりあえずは。

「埋葬するか」

鬼に食べられていた連中を埋葬する事にした。花柱もいつの間にかいたのか、手伝ってくれた。

でも埋葬が終わり、後ろを振り向いた頃にはどこかに行ってしまっていた。

次の目的地、マジでどーしよ…。

とりあえず、東京に向かってみるかね?もしここに東京みたいな大都市があるんなら。

そんな事を考えながら。一つ俺は大事な事を思い出した。

 

「花柱!の記憶!消し忘れた!!」

 

魔術を使えると知っている人間は1人でも少ない方がいい。

まぁでも。

「…1人の記憶を消し忘れたくらいでそんな大事にはならないだろ」

そうそう。そうに決まってる。そう思い直し、俺は元の世界に帰る事を大前提にする事にした。そのためには。

「まずは人の多い所に行かないとな。魔術の基礎は人だ」

魔術の全ては人が関わると言っても過言ではない。だからまずは人が多くいる大都会に行かねば。それに人が多ければ溶け込むのも簡単だ。

そう目的地を決め、のんびり歩きだすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




大正コソコソ噂話的な第二弾。
雷の呼吸はよく似た実在の剣技があります。その名はジゲン流。壱ノ型の霹靂一閃がそのまま奥義になった様なものですね。抜刀術ではなく、普通に刀抜いてるけど、その前にとる格好がよく似ています。弐ノ型稲魂もよく似た剣技があります。…瞬間三連斬だけど。
…いや。瞬間三連斬も凄いんですよ!!→*こんな感じで斬りつける剣技なんです。割りとカッコいいですよ!!


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