愛ちゃんGoing! (イチゴ侍)
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愛さんとの恒例行事

初めまして、イチゴ侍です。

同時連載しております歩夢ちゃん作品だけでは飽き足らず、愛ちゃんにも手を出しました。
この子めっちゃいい子でめっちゃ可愛いやんけ!と思った末に筆が走り書きました笑

ちょっと疲れた時の休憩中、そんな時に軽く読める短編集として書いていこうと思っておりますのでよろしくお願いします。


「よし! 準備OK!」

 

 その日、一人の女子高生が立ち上がった。彼女の名は宮下(みやした)(あい)。虹ヶ咲学園に通う普通の女子高生。

 

 

「ついに来るか……」

 

 さらにもう一人、立ち上がった男子高校生。彼の名を不波(ふなみ)(まなぶ)。虹ヶ咲学園の隣の隣の隣に位置する男子校に通う、これまた普通の男子高校生。

 

 彼らは俗に言う昔なじみ……という訳ではないが、とにかくウマの合う仲なのだ。愛はとにかくダジャレが好きだった。それも中年の親父が好むような、親父ギャグの分類に入るやつで、特技はダジャレ100連発とか言っちゃうくらい好きなのだ。

 

 その一方で、その外面はというと、一言で言うならばギャルだ。ピアスなんかは付けてはいないが、制服を着崩し、スカートもだいぶ短い。なんと言っても目立つのはその綺麗な金髪だろうか。

 

 

 そんなギャルとウマが合う男、学だが、これと言って特徴がない。むしろそれが特徴と言っても過言ではないほど特徴が無かった。ファッションには無頓着、髪を遊ばせる気もなし、イケメン……でも無い。だが、協調性はあった。あくまで個人的に興味は持たないだけであって、誰かの好きな物を自分も好きになる。それが学のポリシーだ。

 

 ひょんなことから出会い、ウマが合う事から、仲良くなった二人。そんな二人は、今日も公園のベンチで話し合っていた。

 

 

「ずばり愛さんはアイドルです!」

 

「おう」

 

「愛だけに!」

 

「上手い! 座布団一枚!」

 

「しゃぁ!」

 

 思わずガッツポーズする愛。それを横目でチラ見し、通りすがるOLの女性。目の前のベンチで新聞を読んでいる男性。遊ぶ子ども達。

 この場の空気には絶対に合わないダジャレが響き、盛り上がる公園ベンチ前。

 

 

「うん、今日も冴えてるね。愛ちゃん」

 

「でしょでしょ〜、ほらほら学っちも!」

 

「う──ん」

 

 次は学の番。二人は、会うと決まって最初にダジャレを言い合う。これはある意味二人の挨拶のようなものだった。

 もちろん愛と知り合うまではダジャレへの興味など微塵も無かった学だが、知り合ってからというもの常日頃からダジャレをストックしていた。それも全ては、愛の好きな物を好きになるための行為。

 

 

「では行きます」

 

「ばちこい!」

 

「……はい」

 

 学はおもむろにポケットからハンカチを取り出した。ハンカチには何かの動物がモチーフのようなキャラクターの刺繍がされていた。

 

 

「そのキャラってゾウ……?」

 

「そうだぞう! ……ゾウだけにね」

 

「おおー! まさかの誘導ダジャレ……!」

 

 誘導ダジャレとは! 

 自分からダジャレに繋がるキーワードを発するのではなく、相手にそのキーワードを言うように誘い、そこにダジャレを添えるという高等テクニックである。

 しかし、今回に限っては、ダジャレの言い合いという名目がある。そこにゾウだと分かりやすい物を見せてしまえば、愛は学が発するよりも前に"ゾウ"から"そうだぞう"に繋げられると察してしまう。

 

 だが、そこを"何かの動物のキャラクター"にしてしまえばどうか。そうすることによってまず「キャラクターがなんの動物なのか?」という思考から始めてしまう。そして"ゾウ"だと気づき、口にしたその瞬間、畳み掛けるようにダジャレを発する。それは紛れもなく不意をつく一撃となるだろう。

 

 

「腕を上げたね……」

 

「それほどでもないよ〜」

 

「うう……今回は潔く負けを認めるよ。よし! 愛さんの座布団……さっ、ズドンっと持ってけ!」

 

「くっ……さり気ないダジャレ……負けてもなお勝ちに来るかぁー」

 

「次こそは勝つ!」

 

 こうして二人は固い握手と再戦の約束を結び、ようやくベンチに座った。

 

 

「いやーしっかし、学っちとのダジャレ勝負は楽しいー!」

 

「俺もだよ。もう毎日のように愛さんに聞かせるためのダジャレを考えるようになっちゃったよ」

 

「ほっほーう、それはつまり愛さんに染まってきてるって事だな〜?」

 

 学の顔を覗くように近づく愛。当然その距離は近く、学の腕に、愛の体の一部分が触れている。必死に耐える学。それもそのはず、ギャルの見た目をしていようが、愛は可愛い。それを十分に承知している学は、これ以上くっつかれないように、

 

 

「ま、まぁ、そうなるかな」

 

 目を逸らしながらではあるが、そう返した。それを聞いた愛は、満足したのか早々に離れてくれた。

 

 

「そっかそっかー」

 

「うん」

 

「い、いやー愛さんも嬉しいなー!」

 

 特に変化はない。学からはそう見えているだろう。だが、愛にも少なからず変化は起きていた。

 

 

「そ、それじゃぁー愛さんは急用を思い出したので戻ります!」

 

「え、もう?」

 

「……そんじゃバイバイ学っち!」

 

「お……おう……」

 

 有無を言わさず立ち去った愛の後ろ姿を、学はただ見つめるのだった。

 

 

 

 一方その頃、

 

 

 

(かぁー! めっちゃ恥ずい……ちょっと大胆すぎたかなぁ。引かれてない……よね? ううん、大丈夫大丈夫! こんなことじゃ愛さんめげないよ!)

 

 密かに小さな愛を持っていた愛さんだった。

 

 愛だけに。




……こんな感じでくだらないダジャレがメインな感じでやっていきます。
ダジャレって意外と難しい……。


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愛さんの秘密1

 その日、学は愛と共に買い物に来ていた。

 大きなショッピングモールや、高い買い物なんかではなく、極々普通の商店街。人で賑わう様は、少しばかり昭和を思い出させる。

 

 

「いやー、ごめんね。荷物持ち手伝わせちゃって」

 

「なんのこれしき……」

 

 現在、学の両手には、野菜やら調味料でいっぱいになった袋がぶら下がっている。その中身は全て愛の買い物だった。

 

 

「てか、こんなに買ってどうするのさ」

 

「? もちろん家で使うよ!」

 

「こんなに大量に!?」

 

 何故こうなったかは、今からほんの少し前に遡る。

 

 

 

 

 

 二人は今日も今日とて公園のベンチ前にて、

 

 

「愛あるダジャレを言うのはだれじゃ! 愛さんじゃ!」

 

 仲良くダジャレを言い合っていた。

 休日であろうがなかろうが、家がそこそこに近い二人は、軽く会える距離に住んでいる。が、お互いの家にはお邪魔したことはない。

 

 

「さぁ、見たか! 愛さんのダジャレ融合を!」

「こいつは一本取られた……まさかダジャレを素材に新たな上級ダジャレを召喚するとは!」

 

 ダジャレ融合! 

 一つでは弱いダジャレ同士を融合する事により、より強い強力なダジャレを進化させる技だ。ダジャレの可能性を追求する愛だからこそ出来た芸当である。

 

 

「完敗だ。今日は俺の負けだ……」

 

 学は潔く白旗を掲げた。

 

 

「よっし! 約束通り、愛さんのお願い聞いてもらうよ〜」

 

 今回特別ルールとして"勝った方のお願いを聞く"という景品を用意して行ったダジャレ勝負。

 結果、敗北した学は、これから愛のお願いを聞かなくては行けないのだ。

 

 

「な、なるべく聞けるお願いでお願いしやっす……」

 

「どうしよっかなー? ────……ん?」

 

 まだかまだかと気を張っていた学。そこに愛の携帯が突然鳴りだした。

 

 

「……もしもし、どうしたの?」

 

 着信相手は、家族のようだ。愛は、学から少し離れ話している。

 

 

「……暇だ」

 

 少しして、愛が電話を終えて学の元にやってきた。

 

 

「それで、お願い事は決まった?」

 

「あはは……それがさぁ」

 

「ん?」

 

 なにやらもじもじとし始めた愛。何かを喋ろうとしては口を閉じを繰り返している。

 少しするとようやく愛は話し始めた。

 

 

「愛さんから申し出た手前、ものすごく申し訳ないんだけど、これから買い物に行かなきゃ行けなくなっちゃった」

 

「さっきの電話?」

 

「そそ、それでなんだけど、やっぱお願いごとは……」

 

「よし分かった。荷物持ちだな! 任せとけ」

 

「……へ?」

 

 思わぬ学の発言に、呆気に取られる愛。愛の中では今回のお願い事は無かったことにしようとしていた分、学の提案は半分嬉しく半分申し訳ない気分だった。

 

 

「ん? 違ったか?」

 

「……ううん! そうそう、愛さん是非ともお願いしたいんだよー」

 

「任せとけ、荷物持ちなら得意中の得意だ!」

 

 その一方で、学は内心とても喜んでいた。予想としては、もっとめんどくさいお願いをされると確信していた分、荷物持ちという男なら誰でもやったことのあるお願いをされてホッとしていた。

 

 

 こうして学は、愛の行きつけの店が集まる商店街へと行くこととなった。

 

 

 

 

 そして時は現在。

 

「しっかし、愛さん人気だな」

 

「そうかな?」

 

 何店か巡っているうちに学は、愛の人気が高いことに気がついていた。

 

 

「そうでしょ。お店の人さっきから"愛ちゃん愛ちゃん"って寄ってきてたし」

 

「あー、確かにそうかも! みんな優しい人ばっかりだから、もう友達? みたいな感じだもん」

 

「愛さんならどんな年齢層とも友達って呼び合いそうだな」

 

「うん! みんなあい友だよ!」

 

 と、話し合っていると誰かがやってきた。そこでも現れたのは、やはり愛さんの"あい友"のおばちゃんだった。

 

 

「えっへへーサービスしてもらっちゃった〜!」

 

「(うん、可愛い)」

 

 両手に果物を持ってきた愛。それも学の両手の袋に入れられた。

 

 

「おばちゃんの所の果物で作るシャーベットは美味しいんだよね〜」

 

「シャーベット!? 随分とオシャレなのを家で作るのね……」

 

 家で食べるとなれば、市販のシャーベットアイスとかが普通のはず。しかし愛は、果物から作ると言った。一瞬聞き間違いかと考えた学だったが、

 

 

「ようやく到着〜! さっ! ここが愛さんの家だよ」

 

「……ん? ここ……が?」

 

 目の前の光景を見た瞬間、両手にかかる重さや度々引っかかっていた事などが一瞬で無くなった。

 

 

「愛さんの家って……お店だったのー!?」

 

「あれ、言ってなかったっけ? うち、もんじゃ焼き屋なんだよ!」

 

「もんじゃぁ!?」

 

 初めてその事実を知った学。

 

 

「ささっ! 入って入って! ごちそうするからさ!」

 

「え、えぇ〜!?」

 

 緩和入れず、学は愛と共に店の中へと消えていったとさ。





2話に跨ぐぞ!
次回!
「学散る! 無敵のもんじゃワールド!」
デュエルスタンバイっ♪


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愛さんの秘密2

ほんっと更新遅くてごめんなさい。


 予想外な自宅訪問となった今日。現在、愛に準備があるから待っててと言われ、学は、言われるがまま静かに座っていた。

 

「(しかしまさか愛さんの家がもんじゃ焼き屋だったとは……)」

 

 お互いに深くは話さないため、こういった家の事やらは全く知らない仲なのだ。

 

 

「(それにしても……)」

 

 学の視線の先では、愛が常連のおばちゃんと楽しく話していた。

 

 

「お、今日は豚なんだ! いいねー! あ! お茶屋のおばちゃんは今日も、もち明太? あはっ、好きだね〜」

 

 少し歩く度にお客さんに声をかけられる愛。部活でアイドルをやってるだけあって、ファンもたくさんいる愛だが、もんじゃ焼き屋の看板娘としての人気も引けを取らない。

 

 そんな彼女だからこそ、自分は彼女に、こうして家に招いてもらえるのだと思う学だった。

 

 

「はーい、美味しく召し上がれ〜!」

 

 笑顔で注文の品をテーブルに持っていく彼女はとても輝いていて、見ているだけで惹かれる。学は自分が待たされているのを忘れ、忙しく歩き回る愛を眺めていた。

 

 

「(やっぱ可愛いよな)」

 

 普段から思っていないわけではなかったが、改めて愛を見て思う学。ギャルな見た目に反してダジャレが好きで和食を好むというギャップですら惹かれる要因であるのにもかかわらず、それでいて、もんじゃ焼き屋の看板娘でもあるという事実を知ってしまえばいつも以上に魅力が溢れてくる。

 

 学は、まだ愛のアイドルとしての側面を見ていない。今の時代、ネットで少し調べれば出てくるであろう。しかし、アイドルである彼女を見てしまえば、果たして自分はこれまで通りに接していけるのか。そう考えてしまうと動いた手が止まり、いつも検索せずやめてしまっていた。

 

 そんな学だったが、少しずつ変化が訪れていた。

 

 

 ────もう少し彼女のことが知りたい、と。

 

 

「あ、ごめん! すっかり君のこと忘れてたよー! 待ってて、今から愛さんスペシャル作ったげるから!」

 

 考えにふけっているところに、少し余裕が出来たのか学のことをやっと思い出し、愛が声をかけた。

 

 

「いや、俺のことはいいよ。忙しいだろうし」

 

「いやいや、ここまで荷物もってくれたお礼だよ! それと、今までとこれからのお礼もかねて……ね?」

 

「今までとこれから……って、」

 

 愛の物言いに疑問を浮かべる学。それに答えるように愛が話し始めた。

 

 

「うん……改めて言うのやっぱ恥ずかしいな……あのね、いっつもアタシのダジャレに付き合ってくれてありがとね」

 

「そんなお礼を言われるほどのことした覚えはないんだけど……」

 

 口ではそう言うものの、学は少し照れくさくなっていた。

 

 

「もう、素直に受け取ってよ」

 

「ごめん」

 

 少し意識するだけで相手の顔が見られない。

 テキパキともんじゃを作る愛をただ眺める学。いつも意識したこともなかった彼女の髪型は、後ろで束ねていて、首元がくっきりと見える。

 

 お互い無言になった空気の中、愛は想いを綴る。

 

 

「アタシ、ダジャレが好きだけどさ、あんまり同じく好きになってくれる人とかいなくて、笑ってくれるんだけど笑い合うなんてこと出来なかったんだ」

 

 今どきの女子といえば流行に乗る生き物だ。オシャレな食べ物を撮ってSNSに上げるのも、タピオカを飲むのも流行の一種。

 ダジャレが好き、なんて女子高生は愛くらいのものだろう。

 

 

「それでも環境に不満はなかったんだよ。みんな優しいし楽しいしさ、それで高校に入って、スクールアイドル同好会に入って……」

 

 そして学に出会った。

 学と愛の出会いはもちろんあの公園だった。スクールアイドルとして活動を始めた愛は、よくあの公園で発声練習を行っていた。そこにたまたま通りかかったのが学だ。

 素通りしていく人達の中、学だけがじっくりと愛を見ていた。

 

 

「君に初めて会った時の、綺麗な声ですね。ってあれすっごい嬉しくってもっとアイドル頑張ろって思えたんだ」

 

 率直な感想だった。

 何かに自分から興味を持ったことのなかった学が初めて自分の目で見て、そして惹かれたのが愛のアイドル活動だ。

 それから学は何度か公園に行っては、愛に声をかけ続けた。その時、学の目には頑張っている愛の姿が輝いて見えていた。

 

 

「君に励ましてもらいながら君と息抜きにダジャレ勝負をするのがほんと、たのしーんだ。君のたった一言でアタシの毎日はもっともっと楽しくなった。ほんと君には感謝!」

 

 屈託の無い笑顔を向ける愛。それはまさに太陽の輝きで、学は直視できずにいた。

 それでも、

 

 

「えへへっ、なんか真面目になっちゃったね。さ、さぁさぁ! 愛さんスペシャルももうすぐ────」

 

「────こっちこそッ! ……ありがとう」

 

 学はこのまま黙っていたくはなかった。

 

 

「愛さんのおかげで何かが変わった気がするんだ。自分でもよく分かんないんだけど、確かにあの日、あの場所で、愛さんに出会って何かが変わったんだ」

 

 今までの在り方、考え方、見方、ありとあらゆる色の無かったものに次々と色が塗られていった。それはまさに不波学という一人の男の世界を変えたといってもいい。

 

 

「だから、ありがとう」

 

 まとまらない自分の想いをたった一文に乗せて学は愛に伝える。

 

 

「…………も、もう……なんなの君! 愛さんを泣かせてどうするのさ!」

 

「ご、ごめん」

 

「あははっ……今日謝ってばっかりだね。うん、大丈夫。ちょっと愛さん涙脆いからさ…………って、ほら! もんじゃ出来たからじゃんじゃん食べちゃって!」

 

 

 初めて食べた愛さんスペシャルは、とても熱々で、体の芯まで温めてくれた。



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