バンドリ 無口なギタリスト Re:Try (NoMuSoN34)
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1話


その名の通りリトライです!


ライブハウス「circle」

 

そこはガールズバンドの聖地とされ、毎月沢山のガールズバンドが演奏を行い人々を沸かせている。

 

そう、1例外を除いては……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃあ!!皆気合い入れるぞ!!」

 

「おー!」

 

「あぁ!」

 

「…」

 

彼らの名は「AXELL」

 

元々YOHTUBEに演奏した動画を配信する。アーティスト達が集結したバンドだ。

 

 

湊悠博

 

ボーカル担当で、何時も皆をまとめるリーダーの様な存在である。

 

その歌声は天使のように優しく、時にナイフのように鋭い。攻守整った。オールラウンドなボーカリストだ。

 

中濱蒼二

 

ドラム担当 このバンドのムードメーカーの1人

 

彼の迫力があり、人々を魅せるドラムテクニックでバンド全体を支えている。まさに大黒柱である。

 

双葉雫

 

ベース担当 ムードメーカーその2

 

時々お茶目な行動を取り、悠博を困らせている。

 

しかし、ベースの演奏は幅広く、ゆったりとして安定感のあるオーソドックスな演奏から、スラップを持ちいたテクニカルな演奏をする。

 

まさに気分屋な司令塔である。

 

 

 

 

そして、このバンドで1番異彩を放つ者が1人

 

 

野村大規

 

ギター担当 沈黙を貫く者

 

何時も黙々としていて、その声を聴いたものは両手で数える程…

 

しかし実力はプロ同等、もしくはそれ以上である。

 

 

 

 

以上4名で結成されたこのバンドは数々のライブハウスのイベントを総ナメにして、とうとうガールズバンドの聖地であるcircleにも特別に出演する事になった。しかもそれだけでは飽き足らず大トリを務めるという快挙を成し遂げた。

 

 

 

「見て!お客さん始まる前から盛り上がってる!」

 

「向こうは準備万端と言うことか」

 

「俺達も負けてられねぇな!」

 

3人は観客の歓声を前に身が締まる思いを感じてるが、彼は変わらない。

 

やることは1つ、全力でやりきるだけ。それだけを頭に入れ、その時を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「AXELL」さんお願いします!!

 

 

 

スタッフに呼ばれたため、俺達は意を決して楽屋を後にする。

 

その時の4人の顔は、何かを感じているようだ。

何かがここから始まる。ライブではなくまた別の、もっと大きなことが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「3人とも、準備はいい?」

 

「おう!」

 

「おっけー!」

 

「……」頷く

 

準備が整ったことを聞いた悠博は、スタッフに合図を送った。

 

その数秒後、seが始まる。

 

 

 

「GOahead!」

 

「year!!!」

 

「うちはいつからゴリゴリのバンドに……」ため息

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、俺達が!!」

 

「AXELL」

 

「AXELL」

 

…………

 

「AXELLだぁ!!」

 

 

 

 

 

こうして、俺達4人の長い、長い道のりを歩む旅が始まった気がした。

 



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2話

こんばんは!

今まで投稿が出来なくて、すみませんでした。m(__)m

あの後の事が全然思い浮かばなくて、結果、あの小説は1度打ち切りにすることにしました。

先をたのしみにされていた。皆様に深くお詫び申し上げます。

今回のこの小説ですが、題名にある通りもう一度「1からリトライ」するという意味でつけさせて頂きました。

更新は頻繁には出来ないと思いますが。もっと鮮明にグダグダにならない様に書きたいと思う所存です。

彼には、口を開かせないよう頑張ります!


始まった。

 

いよいよ幕が上がった。

 

3人が、俺を見つめてくる…。

 

それは俺に対していつでも行けるの合図である。

 

その合図を受け取り、俺はシャッフルビートを刻みながらリフを弾き始める。

 

すると観客が歓声を上げる。

 

すると蒼二、雫も2小節目から合わせてくれて、そのままボルテージは一気にボルテージがMAXになる。

 

 

 

ウォォォォ!!!!

 

きゃァァァァァ!!!!

 

 

「OH yeah!! I’m Diamond!!!」

 

 

そして、悠博のナイフのような鋭い声が、観客達の心に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名前は戸山香澄!

 

花咲川学園に通う高校一年生です!

 

突然ですが、私はバンドをやっています!

 

poppin party て名前で、キラキラドキドキを追い求めて結成したバンドです!

 

さっきまでcircleでライブをしていて、私達が最後だと思って演奏し終わると、突然アナウンスが流れたの!

 

「本日は!スペシャルゲストが起こしになっています!是非お楽しみに!」

 

 

当然私達は興味を持って、その人たちのライブを見ているの!

 

もうね!言葉にできないくらいカッコよくて!キラキラドキドキしてる!

 

「……ここって、ガールズバンドしか出演出来ねぇって聞いたけど」

 

「有咲、AXELL知らないの?」

 

「知らねぇよ!誰だよ!」

 

「有咲ちゃん、あの人達はAXELLって名前のバンドで、今1番波に乗ってるんだよ!」

 

「うんうん、確かこの前までこの地域にあるライブハウスを総ナメして、全部お客さんが入り切らないぐらい来てるんだって!」

 

「マジかよ……って、香澄?」

 

「凄いよ有咲!!!!」

 

「うぉ!?いきなり大声出すな!」

 

「あの人達!キラキラドキドキしてる!!」

 

「うん!カッコイイね!」

 

「楽器隊も言わずもながら、ボーカルの歌唱力も負けてない」

 

「……あの人達、プロじゃないんだよな?」

 

「そうだよ?」

 

「なんかそこら辺のプロより全然すげぇ……それだけは分かる」

 

「ねぇねぇ!後で声かけようよ!!」

 

「はぁ!?やめろって絶対ろくなことにならないぞ!!」

 

「恥ずかしい〜!」

 

「私、ベースの人なら知り合いだよ?」

 

「「「「えぇ!?」」」」

 

「おたえ凄い!!」

 

「だってうちの学園の先輩だもん」

 

「意外と身近の人なんだな…」

 

「優しいよ?何時もお菓子くれるの!」

 

「ハイハイ、まぁ話はしてみてぇな」

 

 

という訳で!後でお話しに行くことになったよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「りんりん!凄いよ!!」

 

「そっ、そうだねあこちゃん」

 

「湊さん、彼らは………」

 

「AXELLね、まさかここまで来てるとはね」

 

「悠博君テンションアゲアゲだね!」

 

「今井さん、それは誰ですか?」

 

「あっ!今ボーカルやってる子、友希那の従弟なんだ!」

 

「えぇ!?そうなんですか友希那さん!」

 

「そう、湊悠博……優しい子よ」

 

「従兄弟同士で担当が一緒ってあこと一緒だ〜!」

 

「ただ、彼はまだ飛び道具を出てないわね」

 

「飛び道具……ですか?」

 

「あー、あれか!」

 

「えぇ、多分今回は使わないようね…目を見たら分かるわ」

 

「流石は従姉、目だけで分かっちゃうんだ…」

 

「それにしても、楽器隊のレベルも尋常では無いわね……リズムの狂いはさる事ながら、それぞれの特徴を全面にだしている。」

 

 

「でもでも、ギターの人はなんかこう……漆黒の闇をまといし不動明王見たいですよ?」

 

「宇田川さん、銅像が闇を纏ったら不味いでしょう?」

 

「そこ?……」

 

「彼……噂のとおりね」

 

「ギターの人?」

 

「えぇ、悠博は彼の事をこう言っていたわ」

 

 

 

俺達をかえてくれた奴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、3曲目に入る頃には皆はノリノリで熱気が押し寄せてくる。

 

 

「ガルパ!!もりあがってますかー!」

 

いぇぇぇい!!

 

雫がMCをはじめる。

 

大体のMCは3人で回して、俺は相槌を打ちギターを少し鳴らすのがうちのやり方である。

 

最も、ここで雫が悠博を困らせるのだが…

 

 

「にしても、私達よく出れたよね?」

 

「まぁな、人気とはいえ…男子禁制だよな?」

 

「多分……でもガールズバンドが多いのは、ボーカルやってる身としては学べることも多くて、すごく見てて楽しいけどな!」

 

きゃぁぁぁ!!

 

悠博カッコイイ!!

 

「ありがとう!蒼二はどう思う?」

 

「俺はドラムだからな、ここは男女の差は殆ど出ないと思うが、個人的にドラム叩ける女の子はマジでカッコイイな!」

 

蒼二サマー!!!

 

こっち向いてーーー!!!

 

 

「おうおう、そう焦らんでもちゃんと全員見えてるぞ! 雫は………ガールだから特にないか」

 

「ちょっと!聞いてよ!……いや確かに同性だから他のベーシストさん達と変わらないけど。でも私、ガールズバンドってやった事ないからいつかやってみたいな〜。」

 

「確かに、…雫は紅一点でこのバンド居苦しいとか思ったことある?」

 

「全然!だって、私はこのメンバーが好きだから!特にNoMuSoN!!」

 

oh......

 

 

「男性の皆さん、ウチの雫がすみません。ほら!恐らくlikeの方だから…」

 

「え?」

 

「え?」

 

「バッチリLoveですけど何か?」

 

щ(゚ロ゚щ) オーマイガーッ!!

 

fuck!

 

「いつから外国に来たんだ俺ら…」

 

「まあまあ、NoMuSoNは……愚問か」

 

コクッ

 

「やっぱり、でもギター弾いてる女性もココ最近増えてきてるね。練習しやすいからかな?」

 

「さてね、ギターはさっぱりだから。」

 

「でもでも、弾き語りは出来たらカッコイイよね!」

 

……………………

 

そんな感じてギターの話をしている。

 

1個人としては尊敬してるよ。上手いとか下手とかどうでもいい。

 

チャレンジしているその姿に人は惹かれていくものだ。

 

そう思いながら俺は時計を見るとそろそろ始めないと時間が無いので全員に目配せをする。

 

 

「おっと、そろそろ時間だ、皆!!あと2曲もりあがれますか!!」

 

いぇぇぇい!!

 

「しゃあ!行くぜ、running!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!!AXELLでした!!」

 

 

そして、俺たちはガルパデビューを無事に成功、いい幕開けとなった。…………はず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お疲れ様でした!!

 

「じゃあ!ファミレスいこ!」

 

「おう!」

 

「そうだな……大規来る?」

 

コクッ

 

「やった!大君好き!」

 

(。-∀-)

 

そして、4人でファミレスに向かう途中で。

 

 

 

 

 

 

「待ちなさい!」

 

 

「ふぇ?」

 

「へ?」

 

「お?」

 

「…」

 

 

「あなた達がAXELLね?」

 

唐突に銀髪の女性が後ろから声をかけてきた。

 

「友希那!挨拶しないと!悠博君久しぶり!」

 

「リサちゃんに……姉さん、なんかあったの?」

 

「いやね?友希那が悠博君がお世話になっているからって挨拶したいって言ったからさ!」

 

「皆さん、初めまして。Roseliaのボーカル、湊友希那よ。何時も従弟がお世話になっています。」

 

「初めまして!双葉雫です!」

 

「俺は中濱蒼二!こっちがNoMuSoNだ。」

 

(*・ω・)*_ _)ペコリ

 

「今日の演奏、とても素晴らしかったわ。特にギターは常軌を逸していた。」

 

(・Д・)?

 

「NoMuSoN 貴方にお願いがあるの。私達Roseliaの練習を見て欲しいの」

 

「えっ」

 

「は?」

 

「ひ?」

 

(・◇・)

 

「私達はFWFに出るのを目標にしているの、でも今の実力では遠く及ばない。練習も日々重ねてはいるけれど、メンバーだけだと気づけない事も沢山あると思うのよ、そこで貴方の力を貸してほしいわ。」

 

 

 

 

彼女はそう言うと頭を下げてきた。

 

しかし謎がある。

 

1、何故他にも3人いるのに俺を選んだのか。

 

2、Roseliaは何故FWFに出ようとしているのか。

 

3、何故そんなにも悲しい目をしているのか。

 

 

彼女らの実力は、今回出たバンドの内では間違いなく1番だ。

 

恐らく彼女を筆頭にストイックなメンバーの集まりなのは分かった。

 

しかしな、俺は誰かに物を教えれるほど大した人間では無い。嫌味とかじゃなくて、本当に不器用で人一倍努力しないと追いつけないだけ……。

 

 

 

「姉さん、彼に教えを乞うのは難しいと思うよ。」

 

「何故かしら悠博」

 

「見ての通り、彼は滅多なことがない限り口を開かない。」

 

「そうだよ湊さん。私達もかなり付き合い長いけど、会話したの両手で数えられる程だよ?」

 

「しかも、かなり捻くれてるおまけ付きだ。」

 

「姉さんの思いは分かってるつもり、だからこそ彼はお勧め出来ないよ。」

 

 

 

君たち……(٭°̧̧̧ω°̧̧̧٭)

 

庇ってくれてるのか、馬鹿にしてるのかどっちなんだ!?

 

 

 

 

「……今日はご挨拶だけしたかったから、ここで引下がるわ。でも、私は貴方を諦めはしない。」

 

その目は静かに闘志を燃やし、俺を見つめる。

 

きっと彼女は、本気でバンドの事が大好きで、本気で頂点を取ろうとしている。

 

だけど、俺にその責任は重た過ぎるよ。いくら俺達が人々を魅了するバンドだったとしても、AXELLとRoseliaは根本から存在概念が違う。

 

Roseliaは明確な目標があり。俺達は自分達の限界を求めるだけ。

 

果たして、その俺が頂点を目指す彼女らのジャンプ台になれるか。

 

今1度俺は考えなくてはならないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大規、姉さんの事は気にしなくてもいいよ、荷が重いだろ?」

 

「でも、なんで大君なんだろ?私達も居たじゃん。」

 

「恐らく、全て見抜いてるから。」

 

「大規が作曲や演出をしていることをか?」

 

「そうだ。……帰ったら俺が聞いとくよ」

 

m(__)m

 

「礼はいい、身内の事だからな。それに、そう易々とギターをやる訳にはいかんだろ?」

 

「ゆっ、悠博がかっこいい!」

 

「悠博君!男前!」

 

 

そう言ってこのバンドは、賑やかに打ち上げを楽しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?

これから主人公の喋るところやその場の表情を、顔文字で表現して行くことにしました。

かなり違和感があると思いますが宜しく御願いします。m(__)m


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3話


こんばんは!

昨日初めて1人で県外に行きました!

新幹線の乗り換えで手こずって、千聖さんの気持ちがよく分かりました。(´ー`*)ウンウン


湊さんから練習を見て欲しいと言われた日から1日経った日曜日の昼。

 

今日は学校は当たり前だが休みで、俺はギターを弾きながら、アニメを見ていた。

 

こうやってギターを練習しながら大好きなアニメを見るのは、俺にとってこの上ない至福のひとときである。

 

こうやって過ごすと、たまにフレーズやリフが降ってくるので、一石三鳥といい事づくめなのだ。

 

しかし、その一時も束の間、彼がやってくる。

 

「大規〜!来たぞ!」

 

中濱蒼二

 

彼とは付き合いが長い。元々AXELLに加入をしたのは、彼の誘いがあったからであり、言わば、俺にバンドの楽しさを改めて教えてくれた大切な友達なのだ。

 

「今日は何見てるんだ?」

 

( ̄∀ ̄)

 

「あ〜、魔族と魔法少女が小競り合いするアニメか」

 

皆様は、この光景を見て驚かれるだろう。

 

そう、彼は一言も喋らないのだ。

 

AXELLのメンバーは、彼の言いたいことや感情が全てわかるのだ。

 

関係の良さが滲み出てるだろう?

 

一応声も聴いたことあるけど、すげぇよなイケボかと思ったら声真似やボイパ。口で出来ることは何でも出来る器用な奴だ。

 

封印しているのが勿体ない位に。

 

何でも、大好きなギタリストが無口だからその真似してるんだってよ。

 

「飯あるのか?」

 

(*゚▽゚)ノ

 

「おうおう、今日はパーティーでもする気か?」

 

(・o・)?

 

「何で七面鳥があるんだよ!?はじめてみたわ!」

 

 

何でも、親父さん達が送ってきたらしい。

 

本当に親バカだからなぁ……

 

大規の両親は海外を転々とする人達で殆ど家には帰ってこないらしい。

 

元々プロミュージシャンだった為、蓄えは腐るほどあるとかないとか。

 

「これ食うなら2人も呼ばないと食べきれんだろ?」

 

(・_・;

 

「まさか、1人で食うつもりだったのか?」

 

……

 

「はぁぁ、お前の腹の中はブラックホールかよ。2人呼んだから4人で食うぞ?」

 

\(^^)/

 

 

 

 

 

そうだ。なんで俺が大規の家に来たか言ってなかったな。

 

俺達は週一でバンドのミーティングをして、その時その時で次作る曲の詳細やライフでの衣装、セトリの作成とかやるんだ。

 

まぁ、これ聞くと驚くだろうが……大規の家はでかい。家の中に30畳位のスタジオがあり、AXELLはミーティングが終わった後ここで全体練習をするのが習慣になっている。

 

「そうそう、大規に聞きたい事があるんだ。」

 

(・o・)?

 

「今度やる新曲のギターソロ前のドラムのフィルインなんだが、もう一小節伸ばしていいか? カッコイイフレーズ降りてきたんだよ!」

 

(★‿★)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ?」

 

蒼二の考えたフレーズはドラムが高速フィルインして、テンポ良くギターソロへ移れるものだった。

 

これなら勢いに乗ったまま、迫力あるギターソロを演奏出来そうだ。

 

「じゃあこれでやろうぜ!」

 

( *˙ω˙*)و グッ!

 

「大規〜!蒼二〜!いるかー?」

 

「悠博!今日は七面鳥だ!!」

 

「え?」

 

「これ!」

 

 

 

「大規……一人で食べたらお腹痛くなるからやめな?」

 

( ̄∀ ̄)

 

「しかし、親父さん達が七面鳥送ってくるってことは…今は北京にいるってことか。」

 

まあ、普通に考えたらそうなるんだが……あの人は現地関係ない物を送ってくる。

 

「今何処に居るんだ?」

 

♫ヽ(゜∇゜ヽ)♪

 

 

「イギリス!?」

 

「音楽の聖地じゃねぇか!」

 

「いいなぁ、ロンドン行ってみたいよな」

 

( ̄∀ ̄)

 

「大君!来たよ!」

 

雑談していると、どこからとも無く雫が抱きついてきた。

 

「雫、今日はパーティーだぞ!」

 

「へ?なんで?」

 

 

 

 

「七面鳥……ちょっとカロリー高そう…」

 

「女の子って大変なんだな。」

 

「演奏の時大分動く方なんだけどなぁ、もっと運動しないと行けないかな〜」

 

「運動部に入ったら?テニスとかかなり動くだろ?」

 

「それも考えたんだけど、ベースの練習時間が減るのは避けたい所。」

 

「俺と悠博は、演奏中の運動量が比較的多いが、弦楽器は中々動かないしな。」

 

(。-∀-)

 

「大君は良いよね…、スタイル良いし、モテるし」

 

(・◇・)?

 

「鈍感野郎、炸裂!」

 

「雫、それならボーカルの練習してみたら?雫がボーカル出来たら曲の幅広がるし良いよな?」

 

(´ー`*)ウンウン

 

「大君がそう言うなら…、悠博君!君に決めた!」

 

「俺はモンスターじゃないぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

さてとミーティングを始めましょうかね。

 

 

 

本日の議題は

 

新曲の衣装決め

 

次回のライブの詳細説明

 

セトリ

 

パーティーだ。

 

「おい!最後はなんだ!?」

 

(・o・)

 

「可愛い顔したってこの中濱蒼二はみのがさねぇ!」

 

「先進めるぞ。まずは衣装だな。」

 

「はいはーい!」

 

雫がキラキラしながら挙手をする。

 

「今回は、春がテーマの曲だから……スーツとかどう?」

 

「新たなステージに立つ……てことか?」

 

「そう!社会人一年目ってくらいビシッと決めようよ!」

 

「成程、雫にしてはまともだな」

 

「私何時もまともだよ?」

 

(コイツ……)

 

「俺からもいいか?」

 

「?珍しいな、蒼二が衣装に口を挟むのは」

 

「春だしスーツもカッコイイけどよ。俺らまだ高校生で、社会人一年目って訳じゃねぇよな?」

 

「まぁな」

 

「やっぱりよ、スーツを着るのは社会人じゃないと意味が無いだろ?」

 

「お前も今日はまともな事を言うな?」

 

「俺は何時もまともだ!」

 

(蒼二お前もか)

 

( ´ ▽ ` )ノ

 

「大規もあるのか?」

 

雫と蒼二の意見も的をいているので、このままいたちごっこするのも時間の無駄だと判断した俺は、爆弾を投下することにした。

 

「「「ピンクの衣装!?」」」

 

(´ー`*)ウンウン

 

「お前、桜のイメージで言ってるだろ?」

 

(゚∀゚ )

 

「大君の意見なら賛成!!」

 

「けどよ…」

 

「蒼二、たまには大規の意見も聞いてやろう。」

 

「…仕方ねぇ、確かに春といえばピンク色のイメージあるしな。」

 

(≧◡≦)

 

 

 

 

 

 

「次はライブの詳細説明だな、実は皆に伝えなきゃ行けないことがある。」

 

「なんだ?」

 

「……湊友希那、元いRoseliaから対バンの申し込みがあった。」

 

「「マジで!?」」

 

………

 

「あぁ、場所は前回と一緒でcircleだ。皆はどうしたい?」

 

「うーん、湊さんがウチをこんな早くに呼ぶとは思ってなかったからな〜」

 

「湊さんの狙いは、大規か?」

 

( °Д°)

 

「あぁ、Roseliaの方が盛り上がったら、指導してくれと言っていた。」

 

「大君、どうする?」

 

(ーー゛)

 

「……大規、これはチャンスかもな」

 

「え?」

 

「なんで?」

 

「ここで圧倒的に盛り上げられたら、暫くはちょっかいが無くなると見たんだよ」

 

「なるほど!」

 

「姉さんがそんな簡単に引き下がるとは思えないが……」

 

まぁ、ここで圧倒的な実力の差を見せて止むんなら、それしかないか……何より逃げたなんて言われたら今後に多大な影響を及ぼす。

 

щ(゚Д゚щ)

 

「大規はやる気になったぜ。」

 

「じゃあ、受けていいんだな?」

 

( *˙ω˙*)و グッ!

 

「頑張ろう!!」

 

おう!!

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあセトリだな」

 

「最初は安定のstrikeだろ」

 

「うん!」

 

1、strike

 

 

「2曲目か……」

 

「星の行方とかどうよ?実はライブでやったことない曲やったら盛り上がるぜ?」

 

「いいね!」

 

\(^^)/

 

2、星の行方

 

「3曲目は?」

 

「ここで一発ドカンとやっちゃえ!」

 

「I’m Diamond!!」

 

「よし!」

 

3、I’m Diamond

 

「4曲目は?」

 

「ここらでバラードで一旦ゆったりしたいな〜」

 

「そうだな……」

 

「あれどうよ?愛し合い」

 

「ラブバラード!」

 

(´ー`*)ウンウン

 

「じゃあこれで」

 

4、愛し合い

 

 

最後だな、俺はここで3人に提案を試みる。

 

そう、Roseliaの曲をカバーするのだ!

 

「え!?」

 

「何故だ?」

 

これにはちゃんと意味がある。

 

Roseliaへの尊敬と敬意を込めるため

 

そして、自分達の曲を俺たちの演奏にして、こっちの方が盛り上がると……

 

「下手すると戦意喪失するだろうな。」

 

「大君、意外とSだよね?

 

「姉さん……気を強く持ってね。」

 

 

 

 

 

セトリも決まった。後は練習あるのみだ。

 

Roseliaと全力で戦うため俺達は練習を始め……

 

 

 

 

「おりゃ!手羽先は頂くぜ!!」

 

「蒼二君ずるい!私も欲しい!」

 

「お前ら暴れるなって!」

 

その前にパーティーがあったわ。

 

まぁ、前夜祭みたいなもんだと思えばいいか。

 

 

 

 

 

その夜、食べ過ぎた4人は動けなくなりそのまま泊まることになった。

 

 

前途多難だ…。

 

 



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4話

早弾き

 

 

皆様はこの奏法をどのように思いますか?

 

左手の指蜘蛛の様に指を指板に這わせ、右手の親指と人差し指で持ったピックを最小限の動きで上下から弦を弾く。

 

ギターの知識の無い人でも凄いと思われる方は多いのでは無いでしょうか?

 

 

勿論すごいことである。

 

しかしながら、俺はギターで人に凄いと思って欲しいとは思わない。

 

俺は、人に「感動」して欲しいからだ。

 

 

 

 

 

 

ここからは持論だが、人を感動させるのはチョーキングとビブラートとだと思っている。

 

1件、1番最初に習得すると言っても過言ではない奏法だが、それが何よりも重要だ。

 

 

簡単なものほど奥が深い、この奏法は一人一人が全く違い、1億のギタリストがいれば、1億のチョーキングとビブラートがある。

 

そこから自分だけの奏法やテクニックを編み出して、物にしていく。

 

こうやって唯一無二のギタリストになっていくものだと俺は信じている。

 

 

 

 

何故こんな事を語っているかと言うと、新曲のギターソロを考えているからだ。

 

今回のテーマは「春」

 

春といえば、新しい事に挑戦したり、沢山の状況が一変する季節だ。

 

曲調は季節通り暖かく、明るいものにしている。

 

現在考えているギターソロは先程語った通り、新しい挑戦を意識してメロディ重視で、今まで使ったことの無い奏法やテクニックを用いるつもりだ。

 

 

「大規、そろそろ一息入れたらどうだ?はいミルクティー」

 

 

………

 

「新しい挑戦か、……俺はもっと飛び道具増やしたいな。」

 

「分かるー!高速でフィンガーしようかな?どう思う?」

 

「雫、これ以上やったら変態を超えるぞ?」

 

「えー!そんな事ないよー、最近のベーシスト皆やってるじゃん!」

 

「ならピックでやったら?俺ベースのピックで弾く音好きなんだよな〜」

 

「確か、大規も好きだよな?」

 

俺は音の全てが好きだから取り分け嫌いとかは無い。

しかし、尊敬するバンドのベーシストはピックが多いのでそのサウンドは極めて大好物である。

 

 

「分かった!ピックする!!」

 

「見事なまでに手の平返しだな」

 

しかし、新たな挑戦はいい物だ。

 

こうやって、皆が前へ前へ進んで行こうとする気持ちや行動は「AXELL」の本当の意味を成しえているからな。

 

 

 

「ギターソロ決まったか?」

 

そう言うと、彼は頷いた。

 

「じゃあ、もう1回合わせようぜ!」

 

「はーい!」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆どうだ?」

 

「今までで、1番いい出来かも!」

 

「だな!ライブまで日にちはまだあるからもっと全体の底上げしたいがな」

 

 

「とりあえず、今日はここまでにしようか。ライブまでじっくり煮詰めよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、俺達は血のにじむ努力をしてきた。

 

お互いの間違いを指摘しまくり、俺は寝る間を惜しんで練習しまくり、

目が廃人になる寸前で皆に止められ説教までされた。

 

俺は好きなことに真っ直ぐ突っ込むタイプだからこんな展開も度々ある。

 

しかし、それでも止めてくれるアイツらは本当の意味でいいメンバーだなっと思ってしまう。

 

だから、アイツらが嫌じゃ無かったら……ずっと一緒にいたい。

 

そう思う。

 

 

 

 

「いよいよ明日、対バンだ!皆!!気合い入れて行こうぜ!!」

 

いぇーー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはようございます。

 

次の日の午前四時、俺は起床した。

 

早くに起きて来た理由は、練習と今回使うギターをメンテナンスする為である。

 

 

なぜ当日やるのかは、完璧にチェックして新鮮な音を出したいからである。

 

 

今回使用するギターは2つ

 

prs se custom22

 

これはレギュラーチューニング、元いポップとロック系の曲を演奏する為である。

 

なぜ廉価版のseを使ってるか?

 

普通のcustomも持っているが高価なため、中々外に持ち出せないからである。

 

安心してください、モディファイしてるので音は最高である。

 

 

2本目は 自作したギターで見た目はespのスナッパーそのままのギターである。

 

特徴はアームレスタイプのブリッジにEMGのピックアップを搭載している。

 

チューニングはドロップDで、ハードロックやメタルの曲をやる時に使う。

 

 

今回のライブはとてもあつい物になりそうだ。

 

 

 

 

さて、メンテナンスを完了した。後は、待つのみだ

 

 

 

 

 

楽しませてくれよ、Roselia

 

 

 



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5話

朝7時、蒼二が家に来た。

 

「はよーっす。」

 

一応説明すると、ライブハウスに行く前にここで全体の合わせを確認してから向かう予定だ。

 

もうすぐ2人も来るだろう。

 

「大規、髪セットしてねぇのか?」

 

蒼二よ、自分でセットするとどうなるかわかっているだろう?

 

爆発する。つまり雫にまかせるのだ。

 

 

「成程、俺は軽く慣らしておくかね。」

 

そう言って蒼二はドラムを軽く叩き始めた。

 

なんやかんや1番体力を使う楽器だから入念にチェックする蒼二を見て、俺も乗ってギターを弾き始める。

 

 

 

 

「おはよう!大君!セットのじかんだよ〜!」

 

「おはよう雫!大規、俺ドラムソロの練習するから行ってきな?」

 

そう言われたので、邪魔をするのは野暮だ、早々にギターを片付けてリビングに向かう。

 

 

 

「そろそろ髪空かないとね〜、ボサボサになってる。」

 

「………」

 

「私は髪切るのは専門外!ちゃんと美容院で切って!」

 

大君は、少しだるそうな目をした。仕方ない。私には美容師のスキルは備わっていないからな〜、練習しようかな。

あっ、髪の根本が黒くなってる。

 

「美容院行ったら髪も染めてもらってね?伸びてるからプリンになってる。」

 

そう言うと、彼から予想外の事を言った。

 

「え?色変えるの!?何色?」

 

「……」

 

「紗夜ちゃんと同じ色ー!?パステルグリーン似合うかな?」

 

「おはよう!……大規は、髪の毛セット中か。蒼二は?」

 

「ドラムソロの練習してるよ?」

 

「そっか、皆気合十分だな!」

 

「うん、だってRoseliaだもんね。それに……大君を取られるのは嫌だから」

 

雫はその時…少し辛い顔をしていた。

 

練習に付き合うとはいえ、相手は彼にとって異性、自分より先を越されないようにしたい思いがあるのだろう。

 

「大丈夫だよ、俺達は負けない。」

 

「え?」

 

「どんな困難だって、4人で乗り越えて来ただろ?だから絶対負けない!」

 

「おうよ!負ける前提で行ったらそりゃ負ける、だから負ける以外の事を考えようぜ!」

 

悠博君と蒼二君がそう言った。すると、彼も私の手を握って…真剣に見つめてくる。

 

3人に励まされた私は、何処か気が楽になった気がした。

 

「そうだよね、勝たないと行けないよね!」

 

「おうよ!これだけ練習したんだ。負けることなんてない!」

 

「よっし!じゃあそろそろ行きますか!」

 

「うん!」

 

私は、何を怖がっていたんだろう、こんなにも強くて、かっこいい3人がいる。それだけでいいんだ。

 

決意が固まった私は、大君のセットを終わらせて。足早にスタジオへと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、やってきました。ライブハウスcircle

 

遠目で入り口を見ると、まだリハーサルも始まって無いのに数人は並んでいた。

 

「あの人達、来るの早いね」

 

「俺らの対バンがそれだけ待ち遠しいって訳か」

 

「そうだろうな、早く入ろう。練習したがってるやつもいるしな」

 

悠博がそう言うと、ソワソワする大規がいた。1件普通だが目が座ってる。

 

「大規、本番でそんな目したらダメだかんな?」

 

「…」

 

「ハイハイ、さっさと行こうぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう!悠博君」

 

「おはようございます!今日は宜しくお願い致します」

 

俺が頭を下げると後ろの3人も頭を下げる。

 

「Roseliaの皆はリハーサル終わって楽屋にいるから、先に挨拶に行く?」

 

「いえ、先にリハーサルをお願い致します、個人練習したがってる子がいるんで」チラッ

 

おいおい悠博君よ、俺を見るな。完璧にする為には必要な項目だろ?

 

「分かった!じゃあステージ上がって!」

 

 

 

 

 

 

「じゃあ蒼二君、全体でお願い!」

 

「うぃ!」

 

現在、サウンドチェックの最中だ。蒼二は軽い感じで16ビートを刻んでいる、仕上がりは上々の様だ。

 

俺は横目に、アンプのツマミを定位置に設定して、ボリュームゼロの状態でギターソロの練習を延々と繰り返す。いつもながら絶対これは外せない。だって時間があるからな。

 

「次、雫ちゃん!いいよ!」

 

「はーい!」

 

雫のチェックが始まり、彼女はノリノリでステップを踏みながらベースの演奏をしている。相変わらずよく動きながら弾けるよな、すげぇ尊敬するわ

 

「次ドライブお願いしまーす。」

 

次はドライブ、スラップ用の音源のチェックが始まった。

 

何時になく早いそのスラップを見て、まりなさんは苦笑いしてるよ。

 

「以上でーす!宜しくお願いしまーす。」

 

 

「次、野村君!いいよ!」

 

待ってました!そんな気持ちで、クリーンの音源でアルペジオを引き回す。 もう少し反響が欲しいな……チラッ

 

「まりなさーん!大君がリバーブあげたいって!」

 

「いいよ!あげてー」

 

こういう時雫は直ぐに分かってくれるから有難い。

 

納得が行くと俺は演奏を辞める。

 

「次ドライブだね!いいよ!」

 

おっと。まりなさんも俺の事少しは分かったみたいだな。いい兆候だ。

 

俺はドライブを迷いなく踏み、バッキングしていく

 

「大規、少し嬉しそうだな。」

 

「まりなさんが察したのが良かったんじゃない?」

 

「そうだな!」

 

さてさて、そろそろ……ソロだ。

 

俺は更にエフェクターのスイッチを踏む。

 

アンプから出る大きく歪んだ音に俺はひとりでに酔いしれる。

 

このライブが終わったら、また新しい音作りしよっと。

 

「OK!、他にある?」

 

そう聞かれたが、今回使う音色は無いので首を横に振る。

 

「じゃあ悠博君!声出しお願い!」

 

「あー!マイクチェーック!!」

 

悠博はキーを合わせ。シャウトする。

 

湊家のシャウトはやっぱりひと味違う。俺も都合でボーカル関連のテクニックを色々出来るが、ここまで人を魅せるシャウトは過去に数回しかない。

 

 

 

 

「以上でサウンドチェック終わります!」

 

あっという間に終わったな。さて、次は……

 

「Roseliaに挨拶しに行くか」

 

「っしゃあ、宣戦布告だな!」

 

「うん!」

 

3人とも燃えてるな、やっぱり対バンって言うのが一番の理由だろう。

最近波に乗ってるつもりの俺らだが、実は対バンはこれが初めてだ。

しかも相手は相当腕の立つバンド。これは誰でも燃えるだろう。

 

「失礼します。AXELLです。ご挨拶に伺いました。」

 

どうぞ!

 

「失礼します!」

 

俺許可が降りたので悠博が静かにドアを開ける。

 

そこに居たのは

 

クッキーをチビチビ食べている今井さん、宇田川さん白金さんと……ギターの練習をしている氷川さんに、スマホを見ながら少しニヤつく湊さんだった。

 

「友希那!紗夜!AXELLさんが来たよ!」

 

「はっ!ごめんなさい、ツイ夢中になってたわ」

 

「今日は宜しくお願いします。お互いにベストを尽くしましょう!」

 

「うん!宜しくね悠博君!」

 

「悠博、リハは終わったのかしら?」

 

「うん、終わった。」

 

「そう、それで…私達が勝ったら…彼を借りるわよ?」

 

湊さんがそういった時、雫が少し身構えた。

 

「大君は渡さないから!」

 

「友希那!それは終わってからにしよ?雫もそんなに身構えないで!」

 

「リサちゃん、私達は負けない!絶対に!」

 

「まぁ、負けるつもりなんてお互いないだろうしな。」

 

なんか湊さんと雫と蒼二が火花散らしてるのを今井さんが宥め始めた。

 

「野村さん」

 

話掛けて来たのは、Roseliaのギター担当の氷川さん。その目には闘志が宿っている。

 

「私は、今日貴方を超えます!そして、努力が天才に勝る事をここで証明してみせます!」

 

「…」コクッ

 

「氷川さん、大規がすごく楽しみにしてるって」

 

悠博が通訳してくれる。

 

「えぇ、今日は宜しくお願いします。」

 

氷川さんが手を前に差し出してきたので、俺はそっと握る。

 

全力を出し切り悔いのない演奏をしよう。俺は心の中で氷川さんに誓った。

 

「ほら、3人もあれくらい出来ないの?」

 

「……大君はそんな人だから。」

 

「おう、まぁあいつの面子を潰すのは一切ごめんだな。」

 

「……紗夜の為にも、絶対に負けられない。」

 

友希那が紗夜の為って言ったのは間違いではない。

 

野村君が練習を見てくれることで1番のメリットがあるのは間違いなく紗夜だ。同じ楽器を使う人間として、沢山の知識や技術を盗める大チャンス、そしてそれがRoseliaの成長を著しくする事だから。

 

「あっ!AXELLの皆もクッキー食べる?」

 

「食べたい!」

 

「おっ!いいのか?」

 

「持っちろん!色んな話しようよ!ライブまでまだ何時間もあるし!」

 

「ありがとうリサちゃん」

 

「野村君も食べてね?」

 

コクッ

 

 

 

 

 

「でさ!スラップした時に爪にヒビ入っちゃって焦ったんだよ〜!」

 

「分かる!私も始めた時何回もあった!」

 

「やっぱり?あれ何とかしたいな〜」

 

「ずっとやってると固くなってヒビ入らなくなるから大丈夫!ね?大君」

 

「……」

 

「俺もギター指弾きしてた時しょっちゅう入ったって!」

 

「そうなんですか?私もこれから指弾きを取り入れてみようと思ったのだけど…」

 

「……」

 

「どんどんやった方がいいだって!紗夜ちゃん!」

 

「野村さんがそう言うなら、やってみる価値はありそうね。」

 

 

「Roseliaさん!そろそろスタンバイをお願いします!」

 

「時間よ、行きましょう」

 

湊さんが声をかけると、Roseliaの皆の雰囲気が一瞬変わったきがした。

 

「OK!」

 

「頑張ろう!りんりん」

 

「うん」

 

「では、行ってまいります。」

 

「じゃあ、俺らは自分らの楽屋に戻ろうか」

 

「そうだね」

 

3人は楽屋に戻るらしい。

 

俺はRoseliaさん演奏をまじかで見たいからステージ脇へと向かう。

 

 

 

 

「あれ?大規は?」

 

「Roseliaの演奏見たいからって脇に行った。」

 

「そうか、俺らもモニターで見よう」

 

「そうだね。」

 

 

 

 

そして、いよいよライブは始まろうとしていた。

 

「……」

 

Roseliaを見るために脇に来た。彼女らはもうステージに立って少しの確認をしている。

 

今この瞬間にも俺の心はアツいモノを求めているのが分かっている。

 

負けたら面倒な事になるけど、Roseliaの俺を求める為の演奏は、どこまで俺をアツくしてくれるだろうか。

 

「行くわよ!BLACK SHOUT!」

 

そして、俺をかけた対バンは幕を開けた。



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6話

 

「行くわよ!BLACK SHOUT!」

 

いよいよ、幕は切って落とされた。

 

BLACK SHOUT

Roseliaが一番最初に披露した曲で、このバンドの決意とも取れる歌詞は初めて聴いた俺の心に深く刺さった。もう何度も聴いた曲だが、何度聴いても彼女らの決意は鋼のように硬いものだと思い知らされる。

 

そういえば、Roseliaの事を知ったのは、今は亡き「space」というガールズバンド限定のライブハウスで演奏を見たのが初めてだった。

 

その当時、俺はAXELLにも入っていなくて、1人で放浪していた時だったが、野村大規という名義でインストを演奏して、全国のライブハウスを周り金稼ぎをしていて、そこそこ楽しませてもらったので東京へ帰って来て早々に、「space」のオーナーに見ていけと言われ拝見したのが、俺とRoseliaの始まりだった。

 

その当時、ボーカルの湊さん、ギターの氷川さんは一方的に俺の事を知っていて、その頃からスカウトは現在まで続いていたのだ。

 

俺はRoseliaの演奏には何度も学ばして貰った。

本人達にこれを言うと拒否されると思うので言わないが、それ程にも彼女は凄い演奏をして見せるのだ。

 

だからこそ、俺はそんなRoseliaに手を出すのは嫌で断り続けているのだ。

 

俺はRoseliaを対等以上にみている。これだけは本人達に知って欲しいところだが生憎と俺の話を聞こうとしないのでこの現状である。

 

「今日は、あたし達Roseliaと、AXELLさんの対バンイベントなんだけど、個人的にすっごい嬉しいんだ!友希那どう?」

 

「そうね、私もまさか従弟と対バンする日が来るとは思ってもいなかったわ。」

 

「だよね〜!紗夜は?」

 

「私も、今井さんと同じです。ギターの野村さんは今まで一方的に音楽が好きで良くライブを見に行っていました。数奇な運命ですが、こうやって同じ日にステージに上がれるなんて過去の私には想像もつかないです。とても嬉しく誇りに思います。」

 

氷川さん、俺のライブを見に来る時いつも最前列に居たよな。恐らく手元を研究していたんだろうけど。

 

「あこは、ドラムの蒼二君好きって毎日言ってたよね!」

 

「うん!!あの…大地をも揺るがすような足踏み、叩けば……りんりん!」

 

「(岩山を砕く轟音だよ!)」

 

「そう!岩山も砕く轟音に我は心を奪われたのだ!」

 

「うん……スネア叩いて岩山砕いたらやばい人だから……燐子は…今日AXELLとして皆に会うのは初めてだったよね?」

 

「はい……その、個人では何度か、お会いする事も、あったんですけど」

 

「うんうん!まぁ、こんな感じでRoseliaはAXELLさんとの対バンを心待ちにしてたんだ!、だから私達の演奏をしっかりと聴いて欲しいです!」

 

「そうね、それじゃあ最後の曲、行くわよ! LOUDER!」

 

Roseliaの皆はそれぞれの心境を明かしてくれた。そんな思いでこの日を望んでくれたのは、俺達AXELLとしてはこの上ない喜びである。悠博も、雫も、蒼二も、きっと喜んでいるはずだ。かくいう俺も凄く嬉しい。あのRoseliaに、そんなにも心待ちにしてくれていたんだって。そう思うと、演奏にも力が入る。俺達は、お互いにいいライバルなんだって、こちら側は先に感じてしまった様だ。これは次の演奏、今までにないくらい「本気で」やらなくてはな、いつも本気だか。

 

「大規!」

 

「準備完了!」

 

「しゃあ!Roseliaにあそこまで言わせたんだ。このまま本気で演奏するだけじゃあ終わらねぇな!」

 

どうやら3人もステージ脇に到着した。

 

そして、思いは一同一緒の様だな。

 

「AXELLも思いの丈をRoseliaに見せつけてやろうぜ!!」

 

「おう!!」

 

「うん!!」

 

俺たち4人はテンションが最高の状態でRoseliaを待つ。

 

 

 

 

 

「今日はありがとう!次は、いよいよAXELLだよ!!」

 

「しばし待たれよ!」

 

「あこちゃん!前!」

 

あこが、ステージの柱にぶつかりそうになる。しかし本人は気づいてない。

 

「ふぇ?」

 

「あこ、ぶつかるぞ?ちゃんと前見ねぇと」

 

「蒼二兄!」

 

ぶつかる寸前に蒼二が割って入り、それを防いだ。

 

「かっこよかったぜ!」

 

「ありがとう!蒼二兄も頑張って!」

 

「おうよ!」

 

「雫!楽しみにしてるね!」

 

「うん!Roseliaの作ってくれた空気、無駄にはしないよ!」

 

「悠博、最高の演奏を期待しているわ」

 

「あぁ!姉さんの顔に泥は塗らないさ!」

 

「野村さん、楽しみにしていますね。」

 

コクッ

 

「頑張って……下さい。」

 

白金さんが、そう言ってくれたので、俺はグッドサインを送った。

 

「しゃあ!円陣だ!」

 

「悠博君!」

 

「おう!行くぜ!AXELL!!」

 

GO!!!

 

俺達は手を重ねて円陣を行う。毎回やっているが、今日は一味違う。

Roseliaに感化された俺達は、最高のテンションでステージへ向かう。

 

 

蒼二〜!!

 

悠博!!!

 

ステージに出ると、観客のテンションもRoseliaの演奏により。最高潮である、これには流石に俺も少しにやけてしまう。

 

3人は手を振ったり、拍手でリズムを取ったりと少しでもテンションを維持するためにアクションを取るが、俺はそそくさとギターを肩にかけ、チューニングの確認をする。あっていることを確認するとボリュームを一気に上げ、ギターをかき鳴らし、観客を煽る。

 

その間に皆に準備をしてもらう。

 

なんの打ち合わせもしていないのに、ここまで出来るのは、やはり共に駆け抜けて来た4人だからこそ、出来る芸当なのかもしれない。

 

どうやら、3人とも準備出来たようだ。

まりなさんもGOサインが出ているので、楽器隊は悠博を見る。

 

すると悠博は全員の合図を受け取ると、スイッチが入ったらしい。雰囲気が一変した。

 

「お前らぁ!!、俺達が!!!」

 

「AXELL!!」

 

「AXELL!!」

 

何時もここで間が空くのだが今回はやはり違った。

 

AXELL!!!!

 

観客が、俺の代わりにそう答えたのだ。

これには俺達は一瞬驚いたが、すぐ切りかえて

 

「AXELLだぁぁぁぁ!!!!!!」

 

悠博は今までにないくらい迫力と声でそう叫ぶ。

 

 

 

 

 

さぁ、ここからは俺達のステージの始まりだ。




如何でしたか?

個人的に書いてて凄く盛り上がってました。

完全にナルシストです。

双葉つくしちゃんの件、またご意見を頂けると幸いです!

宜しくお願いします!


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7話

「AXELLだぁぁぁぁ!!!!!!」

 

その言葉を引き金に、俺はリフを弾き始める。

 

俺達のステージが、幕を開ける。

 

「お前ら!殺す気でかかってこいやぁ!!」

 

観客も一気にテンションが上がって行く。

 

何時もなら俺はあまり動かないのだが、今日はガンガンステージの前線へと出ていってヘドバンをかます。

 

今日だけは、特別な日にしようと、そう思った。

 

俺は一心不乱にギターをかき鳴らす。

 

理論や基礎なんて今は関係ない。俺達は思いだけをまっすぐ観客に向けている。

 

こんなにも音楽を素直に楽しんでいるのは、あの時以来だろう。

 

忘れもしない。初めてこのメンバーと一緒にライブをした時だ。

 

蒼二、雫、悠博が俺に手を差し伸べてくれたあの時、俺は光を見た。

微かにしか見えないほど小さい光だったが、それは少しづつ大きくなっていき、今は暗闇すら見つけられないほど輝いている。

 

あぁ、俺はやっと見つけたんだ。本当の居場所を、守るべき場所を。

 

そんな事を考えていると、ライブは中盤に差し掛かった。

 

今までなら本気でやる以外何も考えていなかったが、今は違う。

時を早く感じてしまう、周りに目を向けられるようなったのだろう、観客席を見回すと、この前出演していたガールズバンドのメンバー達が大きな声で俺達の名前を叫んでいる。

 

こんなにも求められていたのだろうか、俺は本気でやってるつもりだったが、それは勘違いだった。観客の声を聞こうとしていなかった俺は、ただの弾きたがりだったのだろう。こんな時に自分の不甲斐なさに気づいたのも1つの成長だな。

 

「皆!楽しんでるー?」

 

うぉぉぉ!!

 

「今日は、私達AXELLとRoseliaさんの対バンなんだけど、Roselia凄かったよね!」

 

「おう!いつにも増してやけどしそうなくらいアツく、かっこよかったぜ!」

 

「MCでね、5人が私達の事をどう思ってるか聞いた時ね、嬉しくて蒼二君思いっきり叩いちゃった!」

 

「あれマジで痛かった。多分背中に紅葉出来てるわ」

 

「私そんなに力ないもん!」

 

ははは!!

 

「まぁ、雫の気持ちも分かる。天下のRoseliaにあそこまで言わせられたんだと思うとな。」

 

「だから、私達も私達も普段言えないRoseliaの思いを言っていこう!」

 

「しゃあ!悠博、お姉さんにどうぞ!」

 

「俺からかよ!? そうだな、皆は知ってるか知らないけど、俺とRoseliaの湊友希那さんは従姉弟なんだけど、小さい頃から姉さんは先へ先へと歩いて行く人で、俺はそんなに前向きではなくて、良く姉をダシに使って叱られる日々をおくっていたんだ。その時俺は歌うのを辞めようっていつしか考えるようになって、覚悟を決めて両親に言おうとする前に、姉さんに言われたんだ。

 

「私は、悠博の歌が好き、ずっと聴いていたい。」

 

「そう言われて、俺は心底驚いた。俺の事なんか眼中にないって思ってたけど。そんな事ない、ずっと見てくれてたんだって。そっからかな、もう姉さんの後を着いていくのは辞めよう。自分だけの歌を求めていこうってな。そして、このメンバーと出会い今の自分がある。この際だから言っておこう。姉さん、何時も見守ってくれて、ありがとう!」

 

パチパチパチ!!!

 

悠博ーー!!

 

かっこいいぞ!!

 

「あっ!友希那が笑ってる!」

 

「別に……笑ってないわよ」

 

「じゃあ蒼二行こうか!」

 

「お前、いきなりいい話しやがって!俺の話が霞むじゃねぇか!まぁ、悠博みたいないい話かはわからねぇけど、俺はドラムのあこにはいつも驚かされるな。なんでそんなにもドラムに打ち込めるんだ?って聞いたらよ、お姉ちゃんが居るからって言ったんだよ。巴ともそんなやり取りがあって、俺は凄く宇田川姉妹が羨ましかった。俺は一人っ子で始めた当時周りにドラムやってる奴なんていなかったし競い合う事も無かったからな。俺にもそんなライバルがいたら、もっとちゃんとドラムもやっただろうしなって思った。以上!」

 

蒼二!!

 

蒼二兄!!

 

蒼二さーん!!

 

「ではでは、うちの姫さんにも白状してもらうぜ!」

 

「回ってくるの早!……うーん、私はね、リサちゃんとはお互いに知り合ったのは実は最近で、仲良くしてもらってからよくショッピングするんだけど、ある日リサちゃんがネイルを剥がして来た時があってね、なんで剥がしたの?って聞いたら、最近ベース始めたんだって言ったの。私はえぇ〜!?ってなって自分もベースやってるんだ。って話したら、それこそ土下座をしそうな勢いでおしえて!!ってお願いされて、そこからリサちゃんの取り巻く事情を知って、これは厳しく教えた方が良いって思った私はスパルタで修行させたの、ただ当時はもしかしたら途中で投げ出さないかな?とか縁起でもない事考えたりしたんだけど…

投げ出すどころかもっと厳しくして!って言われた時、幼馴染の為にそこまで出来るのは凄いなぁって感心しちゃった。バンド内では1番練度が低い彼女だけど、バンドに対する思いは1番だ!って私は思ってます!」

 

ふぅー!!

 

「雫……ありがとう!」

 

「リサ……」

 

「じゃあ、最後にNoMuSoNも氷川さんへの思いを手紙に書いたそうなので、僭越ながらこの悠博が読ませていただきます!」

 

俺は生憎と口を割らないのは知っての通り、今回の話の流れも打ち合わせ通りなので、事前に手紙を書いて読んでもらうようにしておいた。

悠博に読まれるのも少し恥ずかしいが、こんな機会もそうそう無いだろうし、我慢しないとな。

 

「俺は、氷川さんとは面識が無く、氷川さんが一方的に俺のライブ来てくれていたらしいです。当時は全く気づかなかったのですが、話を聞いて凄く嬉しかったです。お世辞にも万人受けする曲とは言えず、素人同然の曲だったけど、それでも好きでCDも買ってくれてくれた氷川さんですが、知り合って数日、何か思い詰めたような顔をしていて、話を聞かせて欲しいと頼んで、戸惑い、泣きながら俺に話を聞かせてくれました。家族との関係性や、それぞれのポテンシャルの違いに、ストレスを感じていた。彼女に僕は当初、解決までサポート出来るか心配でした。

蒼二と同じく、血の繋がった兄弟や姉妹がいない俺は、どんな行動で彼女を導く事が出来るだろう。俺は悩んだ結果、その家族との接触を図りそっち側の思いを教えてもらいました。

そこからは意外とあっさり解決方法が思いつき、すぐさま実行して、無事に2人は少しづつではあるけど距離は縮んだそうです。

氷川さんの何事にも熱心に取り掛かる姿勢は、凄く尊敬しています。ギターを通して、もっともっと仲良くしたいです!

これからも末永くよろしくお願いします!

 

PS、悠博、くそ恥ずいので読み終わったら燃やしてくれ〜! by NoMuSoN」

 

 

パチパチパチ!!!!

 

「悠博さん、その手紙下さい!」

 

「燃やしたら怒るわよ!」

 

「姉さん!?氷川さん!?ちょ、ステージ上がってくるなよ!」

 

読み終わった瞬間、氷川さんが半身身を乗り出し手紙を強奪した。

ふっ、そんな事想定済みだ、後でこっそり抜きだして自分で燃やすさ!

 

「氷川さんやべぇ……」

 

「紗夜ちゃん……良いなぁ」

 

「はぁ……大規、すまん」

 

俺は首を横に振る。普通強奪するとは思わないからな。俺以外

 

「なんか辛気臭くなったな!そんな訳で、俺達AXELLはRoseliaの事が大好きです!!」

 

いぇぇぇ!!!!

 

「そして、次の曲でラストです。」

 

えぇぇぇ!!!

 

もっと!!

 

「でもね皆!最後は……あんな話もしたから」

 

「Roseliaのカバーするぞ!!!」

 

 

おおーーー!!!

 

「えぇーー!?」

 

「ウソ…?」

 

「皆、そしてRoseliaの皆も聴いてください!Re:birth day!」

 

おぉぉぉ!!!

 

「友希那さん!」

 

「あこ、落ち着きなさい。今はしっかりと聴きたいから」

 

「えぇ」

 

「ヒック、これは泣いちゃうよ〜!」

 

 

 

最後の曲は Re: birth day あの余興の後に1番しっくり来る曲だと、皆で決めた。

 

俺達も、まさかここまで盛り上がるとは思っても見なかったが、嬉しい誤算である。

 

ふとRoseliaの皆を見ると、湊さんと氷川さん意外はボロボロ泣いてる。

 

他にもチラホラと感動してくれていて、やってよかったと思いつつ演奏に集中する。

 

 

 

 

 

最後の1音がなり終わり、観客から沢山の拍手や声が聞こえる。

 

「ありがとうございます!AXELLでした!」

 

俺達は楽器を置いて、ステージ脇へと履ける…すると

 

アンコール!!アンコール!!

 

なんとアンコール入りました。

 

「どうする?」

 

「いくしかねぇだろ」

 

「だな、何やるよ」

 

行く事は前提だったが、曲までは決めかねていた。なんせ来るとはおもわないからな。

 

俺はとりあえず、今やってる新曲どうよって目で訴える。

 

「新曲か、俺は大丈夫だけど…蒼二と雫は?」

 

「行けるよ!」

 

「当然俺もな!」

 

「じゃあそれで行こう!」

 

決まると4人で回れ右して再びステージへ向かう。

 

 

「アンコールありがとう!」

 

うぉぉぉ!!

 

きゃーー!!!

 

「せっかくなんで、まだレコーディング途中の新曲をやります!」

 

そういうと観客のテンションはまた最高潮に到達する。

 

「じゃあ、本当にこれで最後です。Roselia、circleのスタッフの皆さん、そして観客の皆!ありがとう!! 聴いてくれ!SKY-HI!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ライブは終了した。

 

これ程にも充実したライブは、初めてかもしれない。

 

楽屋で半裸で汗を拭きながらそれが頭から離れない。

 

「大規!やばかったな!」

 

蒼二も熱が冷めやらぬままで俺の方を組んでくる。

 

「3人とも、お疲れ様!」

 

「今回は凄かった、語彙力ないけどそれしか思いつかないな。」

 

4人で黄昏ていると……

 

「蒼二兄!!」ドサッ!

 

「おう、あこ…お疲れ様!」

 

宇田川さんがドアを開けて蒼二兄!飛びかかる。

その流れで他の4人もぞろぞろ入ってくる。

 

「雫!お疲れ様!」だきっ

 

「リサちゃんもね!」

 

今井さんも感極まったのか、雫を強く抱きしめる。

 

「悠博、素晴らしい演奏だったわ」ニコッ

 

「ありがとう、姉さん」

 

湊さんは珍しく笑顔を悠博に向けて、悠博も笑い返している。

 

「野村さん、お手紙ありがとうございます。」

 

氷川さん、是非燃やしたいので返してくれ。

 

「ダメよ!これは私の宝物にするわ!」

 

「あれ?紗夜ちゃん大君の心読めるの?」

 

「え?……あっ…」

 

どうやら今回のライブを通して、心が通じあったのかもしれないな。

 

「そう、なんでしょうか…?」

 

「紗夜ちゃん凄いよ!!私たち以外で心読めたのは初めて!」

 

雫よ、なんでそんなにもテンションぶち上がってるんだ?確かに個人的には嬉しいけども察してくれるから。

 

「私も嬉しいよ!大君の理解者が増えるのは……でも…個人的にはちょっと妬いちゃうな?」

 

「し、雫!打ち上げどこでやる!?さっきつぐみが是非家で!って行ってきたのだが…」

 

「つぐちゃん!?よし!羽沢珈琲店へGO!」

 

いつまでも現金な雫でいて下さい。

そっか、つぐみの店なら落ち着けるから良いか。

 

「Roseliaも来るよな?」

 

「私達はこれから…」

 

「行くいく!!」

 

「今井さん、反省会の事を忘れたんですか?」

 

「一緒にすれば良いじゃん!こうやって細かいところから練習方法とか学べるんだから!」

 

「それは……」

 

なんか早くも打ち上げの話をしているが、まだ結果は出てないぞ?

 

「もう出てますよ、私達の負けです。」

 

「はっ?」

 

「えぇ、演奏もトークも負けたわ。完敗よ」

 

「トドメと言わんばかりのRe:birth dayに泣かされたしね!」

 

「あれ考えたの大規だぞ?」

 

蒼二のその一言で湊さんと氷川さんに睨まれる。

 

「でもでも!私達の普段やっているバージョンとは違って凄い新鮮だったよね!」

 

「えぇ、編曲したのは野村さんなの?」

 

そう聞かれたので素直に頷く。

 

「やるわね、負けたのにますます貴方には練習を見てもらいたくなったわ」

 

「もう諦めてよ〜!」

 

「雫、貴方に決定権はないはずよ?」

 

「まあまあ、姉さんも今回は退いてくれ!」

 

こんな感じのやり取りを見て、俺は少し微笑ましく思う。やっぱりバンドって良いなぁ。

 

「あっ!大規が笑ってるぞ!」

 

蒼二の言葉に一同が振り向き俺を見る。笑ってないが?

 

「いや!確かに俺は見たぞ!」

 

「ハイハイ、そろそろつぐみちゃんの家に行こうか!」

 

皆が頷き、circleを出ようとすると…

 

「すみません、AXELLさんはいらっしゃいますでしょうか?」

 

ドアを開けて姿を見せたのはスーツを着た男性だった。

 

「はい、僕達がAXELLです。」

 

悠博が対応する。

 

「私は……事務所の者です。」

 

「え?」

 

「それって…」

 

確かパステルパレットの事務所だよな?日菜が受かった時に聞いた。

 

「今回、お伺いしたのはある相談をさせて頂くためです。」

 

雫と蒼二から息を飲む音が聞こえた。このタイミングで言うことなんて、俺は1つしか知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「是非、うちの事務所で活動して頂けないでしょうか?」

 

 

 




如何でしたか?

アンケート結果ですが、姉妹にした方がいいと答えてくれた方が多く見られましたので、姉妹としてこれから書かせていただきます!

あと、これから投稿したことを伝えるためにTwitterを使わせていただきます!

もしよろしければ、登録宜しくお願いします!

https://mobile.twitter.com/OGgbNrB0ugcKoj1


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8話

 

「是非とも、うちの事務所で活動して頂けないでしょうか?」

 

「えっと…」

 

やはりスカウトだったか…、こんな展開になると流石に3人もなんとも言えないよな。

 

俺は悠博に、1度話し合って決めると目で訴えた。

 

「そうですね、急なお話ですし、我々も未成年と沢山の課題がありますので1度持ち越させて頂けないでしょうか?」

 

「はい、それは是非にご検討してください。お邪魔してすみません。それと、本当に最高のライブをありがとうございました!」

 

そう言って男性は静かにドアを閉めた。

 

 

「……宝くじ当たるとこんな気持ちなんだろうな」

 

「うん、そうだね」

 

蒼二と雫が呆然とそう呟く。

 

一方のRoseliaは、また噴火しそうだ。

 

「凄いじゃん!!スカウトされるの初めて見たよ!!」

 

「うんうん!!あこ達、凄い瞬間見ちゃった!」

 

しかし、湊さんと氷川さん、白金さんは至って冷静にこう言った。

 

「2人とも、しばらく出ましょう。4人には考える時間が必要みたいだから」

 

「野村さん、私達は先に羽沢さんの所へ行ってますね?」

 

Roselia一行はそう言って、出ていく。こういう時はその行動に助けられるな。

 

「三人ともどうする?」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

俺達は考える。これは大事な事だと流石に分かっているだけあって、早々には口を開かない。

 

「私から言っていいかな?」

 

雫が俺たちを見て一言。

 

「私は、もし演奏でこれから長い未来生きていくのなら、このメンバー以外には今の所一切考えて無いんだ。それが1つで、私の両親はベースやバンドをすっごく応援してくれているの。多分この話をしたら両手放しで大喜びしてくれると思う。けど……この先お母さん達にも沢山親孝行したい。美味しいご飯を一緒に食べに行きたい、けどこの仕事で本当にやって行けるかまだ不安があるの。」

 

「俺も雫とほぼ同じだ。不安はあるよな?」

 

この2人、何時もケンカばかりだけどこういう時は団結するんだよな。

 

「そっか、俺は親が元々プロだったから、親に近づくという意味では大きな前身……けど、叔父さん元い姉さんのお父さんの1件から、やっぱり恐怖もある。まぁ、2人と一緒か。」

 

要約すると、三人とも嬉しいしやりたいけどあと一歩足りない訳だ。

 

最後は、俺の意見か。

 

「大規」

 

「大君」

 

「大規、お前は?」

 

「……」

 

俺はなんの不安も無く、何時でも行ける。だから、3人の決意が固まるのを待つ。その意志を伝える。

 

「わかった。1週間考えさせてくれ。」

 

「よっしゃ!じゃあ行こうぜ!」

 

それだけ決めると、皆いつも通りになる。俺は3人の意思を尊重すると決めていたし、特に変わらないけど。

 

でもな、俺達ならどんなステージにだって立てると確信がある。

理由はさっきのライブ、あの時感じた思いは間違いない。俺達の音楽の集合体は誰にだって崩せはしない。

 

この思いは、大御所アーティストさえも凌駕する。

 

「大君!着いたら何食べる?」

 

「食べもんなんて、甘い物しかないだろ?」

 

「さっき聞いたら在庫を消化したいから多少の無理ならなんでもいいんだってさ!」

 

俺は真っ先にポテトとMonster energy を思い浮かべる。好きな物頼んでいいんだろ?

 

「わかった!伝えとくね!」

 

「雫、俺はガッツリ系で!」

 

「紅茶で1度気持ちを落ち着けたい」

 

「2人も伝えたよ!」

 

 

 

 

「おっ!お前ら!あそこで皆が手を振ってるぞ!」

 

蒼二の目線に目を向けると、確かに大勢の女の子達が手を振ってる。

 

「身近にこんなにも私達を待ってくれてる人が居るんだね。」

 

「あぁ、なんか長い度から帰ったみたいだ。」

 

そう感じるのも、無理もない。今日の為に俺達は過酷な練習をこなしていたから暫くアイツらとも会ってなかった。

 

きっと彼女らも今日のライブを楽しみで仕方なかったと思う。そして俺達のライブを見た彼女らの心に沢山の衝撃と感動を与えられた。そして、恐らくRoseliaがバラしてるだろうスカウトの話。ここまでがまるで夢物語の様な出来事だ。あれだけテンションアゲアゲで迎えられても仕方ないだろう。

 

「AXELLさん!お疲れ様でした!!」

 

お疲れ様でした!!!

 

「香澄!あんまり押すなって!」

 

「ありさぁー!!」

 

「雫ちゃーん!!」

 

「あれー?蘭は手を振らないの〜?」

 

「なんか、恥ずかしい。」

 

「悠博君!雫ちゃん!本当にお疲れ様!!」

 

「えぇ、とてもいいものを見せてもらったわ」

 

「野村君……儚い。」

 

「あー、薫さん、それだけだと何言ってるか分からないと分からないと思うな〜?」

 

 

「やっと来た!さぁ!打ち上げしよ!」

 

「リサ、少しは落ち着いてはどう?」

 

「そうですよ、今井さん」

 

「りんりん!大規さんと話して来なよ!」

 

「あ、あこちゃん!」

 

 

皆、凄くテンションが高いな。ライブ後で疲れているのでこのテンションに着いて行けるか心配だ。てゆうか今井さんの体力は底なしだな。

 

「皆!今日はありがとう!」

 

「おっしゃあ!このまま朝まで俺に着いてこい!!」

 

「酒飲みじゃないからな?」

 

「……」クスッ

 

俺はさっき心配と言っていたが、以外に悪くないと思った。

 

この先の事はその先考えて、今はこの打ち上げを楽しもう。

 

 

 

 

それが1番の最善だから。




Twitterをフォローして頂いた皆様、本当にありがとうございます!

そろそろ動画も更新したいと思いますので、そちらもどうぞ宜しくお願い致します!

ギターソロが思いつかないんだ!


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9話

皆様、おはようございます。

 

時刻は8時半、平日なら学校……なのだか、本日は日曜日。

 

あのライブから早くも1日学校立つ。

 

あの後は思い思いに盛り上がり解散した。いや、言葉に出来ないくらい盛り上がった。

 

かく言う俺は、程々にして、皆より少し早く別れたのだかな。

 

ライブ中に沢山の曲を思いついたので全部作っている。ちなみにこれで最後の20曲目。

 

本当に意味のあるライブだったな。

 

これからも、毎回あれ程のライブをして行けるように努力しなくては。

 

作曲もあらかた片付き、俺は一息着くためミルクティーを飲む。朝のミルクティーは至福だな。あとはジャズ流れたらもうこの上ない極上の世界、とは行かない。

 

実はまだ寝ているのだが、蒼二がそのまま家で泊まっている。

疲れすぎたのかフラフラしていたのと、家が1番遠かった理由で俺が方を貸して俺の家に泊まり込むかたちになった。多分昼まで蒼二は起きないだろう。本当にお疲れ様である。

 

「………」

 

静寂の中、ミルクティーを啜る音だけが響く。日が暖かく俺を包む…

 

なんか眠たくなってきたな。

 

俺はそっと目を瞑る。

 

お休み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1000っと! よっしゃ!ノルマクリアだ!」

 

おっす!蒼二だ!

 

たった今日課の筋トレを終えたぜ!

 

この肉体美をキープするのには一苦労だぜ。

 

元々ドラムを演奏するにあたって迫力を増すために始めたんだが、ハマっちまったな。

 

達成感もだが、気持ちよく汗がかけるのが何よりも好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、これからおかんのお使いに行くんだが…、折角だし買う前に楽器屋で寄り道するか!

 

「いらっしゃい!」

 

「店長!いつものスティックまた取り寄せ出来る?」

 

「おう!そんな事だろうと思って、もうきてるぜ!」

 

「ふぅぅ!店長やるぅ!」

 

「そういやぁ…、スカウトされたって聞いたが本当か?」

 

「あ〜、うん。実はほんの少しだけ不安でさ、向こうを待たせてるんだ。」

 

「なんだそりゃ、悩む事なんて無いだろ?やりたいことやれば良いじゃねぇか」

 

「そうなんだけどさ、やっぱりこう…な?」

 

「まぁ、俺から言えるのは、お前なら絶対大丈夫だ!自信を持って挑んだらいい。これだけだ。」

 

「……そっか!ありがとな!」

 

「おう!お前が売れたらこっちも鼻が高いからな!」

 

「ホントはそっちが狙いだろ?」

 

「バレたか…」

 

俺と店長は大声で笑い合う。

 

答えなんて、とっくに決まってたんだな。

俺は、アイツらとずっと音楽をやりたい。死ぬその時まで…いや、死んでもな!

 

 

俺はグループで気持ちを素早く打ち、送った。

 

鬼が出ようが蛇が出ようが関係ねぇ!俺達が最強だからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったじゃない雫!」

 

「おぉ!流石我が娘だ!」

 

「お姉ちゃん凄いよ!!」

 

こんにちは!双葉雫だよ!

 

今ね、家族にバンドがスカウトされた事を話したんだ!

 

「うん、とっても嬉しい事なんだけど、ほんの少しだけ……やって行けるか不安なんだ。」

 

「そうね、スカウトされたからってそれで生きていけるかはまた別問題だもの。」

 

「あぁ、普通の社会とは全く違う世界だ。困難も沢山あるだろう。」

 

両親は私の気持ちを察してくれたらしい。

 

「お姉ちゃん!きっと大丈夫だよ!」

 

「つくし?」

 

そう言ってくれたのは、妹の双葉つくし。現在中学校3年生で、私の大切な妹。ちなみにドラムをやっている。

 

「だって!お姉ちゃんはカッコいいもん!私は知ってるよ!お兄ちゃんや他の人の為に沢山努力してるの!」

 

つくしは何かのスイッチが入ったのか饒舌に私を褒めだした。拷問かな?

 

「それでね、お姉ちゃんは私の為に勉強を教えてくれたり、ドラムの練習に付き合ってくれたりする!そんなお姉ちゃんなら絶対大丈夫!」

 

「つくし、ありがとう!」

 

つくしは、私の自慢の妹だ。そんな彼女にそこまで言われたら、もうやるしかないよね!

 

「お父さん、お母さん。私!大君達とプロになる!」

 

「おっし!今日はパーティだな!」

 

「そうね、お父さん、飲みすぎはダメよ?」

 

「なっ!今日はめでたい日だぞ!?飲まずにいられるか!」

 

「お父さん!飲みすぎはダメ!」

 

「つくしまで!?…うぅ」

 

私は、その光景を見て少し微笑ましく思う。

 

家族に後押しされた私は、グループを開く。

 

蒼二君も覚悟を決めたんだね。私も書こう。

 

私も蒼二君の後に続いて、意志をグループに伝えた。

 

あの4人なら、出来ないことなんでないよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は悠博、さっき蒼二と雫から意志を綴った文章が送られて来て、いよいよ俺だけか。

 

両親や叔父さんは凄く喜んでくれた。

 

勿論、姉さんも。

 

俺は、叔父さんの悲劇を聞いた時から闇を知り、恐れをずっと抱いてきた。ただ純粋に音楽を楽しむだけじゃ プロとして生きられないことも同時に叩き込まれた。

 

しかし、俺は決めた。

 

あの3人となら、どんな壁だって越えられる。

そして、日本に知らしめてやる。

AXELLの底力を!

 

「姉さん、俺はプロになるよ。頑張って、4人で生きてみる。」

 

「そう、悠博……私はずっと応援しているわ、貴方なら大丈夫よ。」

 

「ありがとう姉さん!」

 

「だからNoMuSoNをRoseliaの練習に連れてきなさい。」

 

「姉さん……台無し。」

 

大規、強く生きような……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはよう、起きたら夕方になってたわ。

 

とりあえず瞼をかき、スマホを覗く。

 

するとグループに3件の通知が来ていた。

 

どうやら三人とも覚悟を決めたらしいな。

さてと、俺も一言書いとくかな。

 

 

3人の意思は確かに聞いた。

俺は3人覚悟入れば何処だっていい、それがライブハウスかドームかの違いだからな。

だから、4人で果てしなく続くこの道を進もうぜ!

 

 

そう書くと一瞬で既読がつく。

 

蒼二 よっしゃあ!やるぜ!!

 

雫 うん!!

 

悠博 じゃああの人に連絡する!また後で!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、俺達の新たな道が開けた。

 

アクセル全開で走ります。

 

 

 

 





つくしさんを出したのは良いですけど、キャラが定かでは無いのは御容赦下さい。

それでは!


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10話

後日、俺達は事務所に向かった。

 

着くやいなや応接間に通されて、説明を受けた。覚悟を決めていた俺達だが、説明を聞くと改めて緊張が走った。

 

本当に音楽で食べていくんだと。

 

「それでは、これから宜しくお願い致します!」

 

そして、正式にプロとしてのスタートを切ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はひとまず解散となった。レコーディングはしていたので、シングルで様子見する手筈をとる。

 

俺の予想通りなら、何かしらの反応がこのシングルで帰ってくるはずだ。

 

俺達のスタートに相応しいあの曲で。

 

 

 

 

 

とまぁ、直ぐには帰ってくるはずもなく。俺はギターを背負ってとあるライブハウスを訪れた。

 

GALAXY

 

ここは俺が中学からお世話になっている場所の1つで、理由は……入ればわかるだろう。

 

「あっ!野村君。ますきちゃん呼んでくるね!」

 

そう言ったのは店長さん。そこそこ長い付き合いがあるのでさっきのように直ぐに俺の用を察してくれるいい人だ。

 

「うぃ〜す」

 

どうやら来たみたいだな。俺が今日来たのはこの子……佐藤ますきに会いに来たのだ。

 

一見ヤンキーにしか見えないが、中身は可愛いものが好きでケーキを作るのが得意な女の子だ。

 

「今日はセッションしに来た……だけじゃ無さそうだな」

 

以外にも鋭い反応をした俺は素直に首を縦に振る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇじゃん!流石大規さんだ。」

 

そう、プロになったことを報告しに来た。

 

彼女も付き合いが長い、中学の時にもう1人の女の子と3人で一時期バンドを組んでいて、一時はSNSで、人気になるほどーだった。

 

訳ありで解散して、彼女はまだフラフラしているようなので時たまにこうやってセッションの相手をしている。

 

「あたしもバンドやりてーな。」

 

じゃあやればいいだろう? と、普通は言うのだが、彼女はちょっと悪い癖がある。

 

それは、即興で音数を増やしてしまう癖だ。

それのせいで彼女は周りにバンドメンバーとして加入するのを良しとしないのだ。

 

俺から言わせれば、それはとても素晴らしい事だと思う。

悪く言えば、原曲通り演奏しない。

しかし、よく言えばアドリブは最高レベルだからな。

 

周りがそれに合わせられるほどのレベルなら、それこそ俺たちのようにプロになれるぐらいだからな。

 

「まぁ、今はセッション楽しようぜ!先輩」

 

彼女の前向きな言葉に、俺は微笑みながら頷く。

彼女にも、きっと素晴らしいメンバーが集まることを信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ますきとセッションを楽しんだあと、俺はその足で楽器屋に向かった。

 

実は、次にレコーディングする予定の曲を演奏するように新しいギターを探しにきたのだ。

 

内容は皆がよく聞くようなロック調なんだが、サウンド的に今所有しているギターでは出せない内容なので、今回新たに調達することにした。

 

のだが……

 

「あら、野村さん。」

 

そこに居たのは、氷川紗夜さんと。

 

「大規君!」

 

氷川日菜さんだった。

 

この2人の組み合わせは久しぶりに見た。

 

「確かに中々この3人で会うことは無いわね。」

 

「えー?私はしょっちゅうあってると思うけどなぁ?」

 

日菜、君の感覚でいくと後々ややこしくなるから…、2人もギター見てるのかな?

 

「えぇ、2人でギターを見るのもこれが初めてだけれどね」

 

「じゃあ大規君もギター見に来たの?」

 

ふっふっふ、俺は、買いに来たのだよ。決して、見るだけでは終わらない。

 

「えー!良いなぁ」

 

「どのギターを買うの?」

 

俺は、一応目当てのギターが置いてあるブースを目で見る。

 

「るんって来た!着いて行っていいよね!」

 

「日菜、野村さんは仕事関連でしょ?大丈夫なの?」

 

紗夜の言う通り、レコーディングで使うギターだから一応仕事?だけど、特に問題は無い。この業界、仕事と趣味が混同することが多いからな。

 

「なら、言いけれど。」

 

紗夜さんも渋々了承してくれた。

 

さてと、そろそろご対面しようか。

 

 

 

 

 

 

「野村さん?ここは……」

 

うん、言いたいことは分かるよ。

 

俺が連れてきたのは俺がライブで使うお馴染みのギターのブースだ。

 

日菜はともかく、紗夜のような一般の高校生には手に余るような金額のギターばかりなのである。

 

「全部色綺麗だね!宝石みたい」

 

このメーカーさんは元々宝石商だったからね、その名残りだってさ。

 

「だから高いのですか、私が買えそうなのでせいぜいこのモデルくらいですよ?」

 

仕方ない……あれ?話少し変わるけど紗夜はesp使ってたよな?このモデル相当のやつ……。

 

「あれは……詮索しないでください!」

 

「私は渡されたギター弾いてるから高いか分からない!」

 

貴方もお高いギター使ってるよね、俺もそのモデル欲しかったよ

 

「今度かそうか?大規君なら何時でもいいよ!」

 

サンキュー、じゃあレコーディングで使おうかな。

 

「大規さん、良ければ私のギターもお貸ししますよ?」

 

2人の好意が今はとにかく嬉しい。

 

2人のギターは今回のレコーディングでかなり戦力になるからな。ジャンルの相性も良いし。

 

なら特別に、俺のギターを暫く貸すよ。

 

「良いの!?やったー!」

 

「あのメーカー、ですよね?ぶつけたりしたら…」

 

大丈夫、怒らないよ……直せるから。

 

「でしたら、お願い致します。」

 

 

 

 

 

 

その後、なんやかんやでギターを購入して、話が膨らんで2人が家に泊まりに来ることになった。

 

 

普通は女の子を家に泊めるのは宜しくないのだが、本人達も了承しているのでここは受け入れることにした。今夜は寝ずにセッションするか。



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11話

3人で俺の家に帰宅した。

 

「広いわね…」

 

「お姉ちゃん!リビング凄いよ!!」

 

「日菜!勝手に上がってはダメでしょ!」

 

日菜、靴は揃えような。俺はそそくさに日菜の靴を揃えて紗夜に上がってもらう。

 

「野村さん、ここで一人暮らししてるのよね?とてつもなく広いのは一体…」

 

あー、スタジオとか、普通の家にない部屋とかあるからだよ。

 

「スタジオ!?家の中にですか?」

 

「大規君!お姉ちゃん!早くこっち来て!」

 

「全く……日菜がすみません。」

 

いいよ、実は一人暮らししてるけど、寂しいから。メンバーがほぼ毎日来てくれるけど、今日は来ない日で寂しかった。

 

「…そうですか、でも…今日はより楽しい日になりますよ。私達が居ますから」

 

だな。

 

俺と紗夜は笑い合いリビングへと向かう。

 

 

 

 

とりあえず、紅茶を2人に出す。

 

そう言えば、夜ご飯何食べたい?

 

「焼肉!」

 

外食か、じゃあ○々苑に…

 

「大規さん!高級焼肉なんて私達には早いです!!」

 

「えー!お姉ちゃん行こうよ!」

 

「日菜も自重なさい!!」

 

「えー?」

 

悪い紗夜、もう予約したぜ?

 

「ちょっと!本当に大丈夫なんですか?」

 

けどごめん。メンバーも呼んでいいか?大人数の席しか空いてなくてな。

 

「うん!皆で焼肉!!」

 

「はぁ……本当にすみません。」

 

良いよ、金はあるから気にするな。なんせ音楽以外の趣味が無いんだ。

 

「そうなの?」

 

ああ、そうだ。2人共、俺のギター見せてやるよ。着いてきな。

 

「るんって来た!」

 

「これだけは同感ね。」

 

 

 

 

 

 

「こっ、こんなに!?」

 

紗夜はギターを目にしてすごく驚いている。

 

まぁギター家の中だけでも100近くはあるからな。

 

「すごいすごい!!」

 

方や日菜は、テンションがぶち上がる。

 

「貴方、一体何者なの?」

 

高校生です。あっ、最近プロになりました。

 

「にしても、これだけのギターを管理するのは大変ですよね?」

 

紗夜の言うことは最もである。コイツらの中にはビンテージ物かかなり多い。普通の管理の仕方ではダメになってしまうのだが…、ある人にここのギターを管理させてるんだな。勿論金は払ってる。今日は来てないか、また会うことも有るだろう。

 

 

びーんぽーん

 

「大規!来たぞー!」

 

俺は玄関に目をやると、3人が来ていた。

 

「大規、良いのか○々苑行くって書いてたが…」

 

悠博はこうやって気を使ってくれる。とても有難い、しかし、今日はついでにプロ記念も兼ねて居ると伝えた。

 

「あっ、そう言えばまだしてなかったな。」

 

「しゃあ!食うぜ!」

 

「大君、今日は2人と泊まるって言ってたけど本当?」

 

雫よ、そんな心配するなよ。粗相のないようにするから。

 

「いやね、そこじゃないんだけどな〜?」

 

「じゃあ雫ちゃんも泊まる?」

 

日菜さんや、それでいいのか?

 

「今日は妹とセッションの約束があるから行けないんだ。」

 

「……以外ですね。二葉さんにも妹さんがいらっしゃるのですか?」

 

「そうだよ!ドラムやってるんだ〜。」

 

「しかもめちゃくちゃ可愛い」

 

「蒼二君にはうちの妹はあげません。」

 

「お、おう。」

 

「取り付く島もないな」

 

何かとだべり始めたので、俺は皆に行くよと目で訴える。

 

「そうだな!行こうぜー!」

 

 

そんなこんなで俺達は店へと足を運んでいった。

 

2人のほっぺが落ちるところを拝めるとしますかね。

 



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12話

俺達は焼肉を頂いたあと、メンバー達と解散して3人で帰宅した。

 

「美味しかった!ありがとう大規君!」

 

「そうね、私からもお礼を言わせていただきます。」

 

それは良かった。

 

内容はまた後日教えるとして、俺はこの後どうするか迷っていた。

 

風呂は女の子に先に入らせた方が良いのだろうか?

 

こんな経験ないから如何せん戸惑う。

 

「では野村さんが先に入った方がいいのでは?」

 

「うん、私達は後でいいよ!」

 

なるほど、ではそれまで退屈させないようにしないとな。

 

ギターを弾いて貰うのも良いのだが、2人とも少しだけ疲れてそうだった。じゃあどうするか……まぁ、少しだけ眠ってもらおうか。

 

俺はスマホをスピーカーに接続して、作曲したインストをかけて風呂へ入る。

 

 

 

 

「この曲、凄く癒されるね〜。」

 

「えぇ、彼の趣味かしら?」

 

私は、彼の作る曲が好きだ。

 

王道のロックや、万人受けしやすいポップ、メタルやクラシックに至るまで、彼が作ったもの全てが。

 

「大規君って、凄いよね。」

 

「え?」

 

「こんな事言ったらお姉ちゃんに嫌われるかもしれないけど……私も作曲なら出来ると思う。」

 

「……そうね」

 

「でもね?こんなにも惹き込まれるような曲は絶対作れないな。だから、本当に尊敬してるんだ。」

 

驚いた。あの日菜から、尊敬という言葉が出てくるとは思いもしなかったから。

 

もしかしたら、日菜も私と同じ気持ちなのかもしれない。僅かにそう感じた。

 

でも、日菜にだってそれは出来ると私は信じている。今までこの子はどんな高い要求が来てもいとも簡単にこなして来た。

 

そして、人を思う心を手に入れた日菜ならば、きっとそれができるはず。

 

「貴方にも出来るわ。」

 

「え?、なんで?」

 

「だって貴方は、私の自慢の妹だから。」

 

「……お姉ちゃん大好き!!」抱きっ

 

「日菜!?……もう」

 

悪くない。妹とこんなにも仲良くできるのは、他でもない彼のお陰だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか、リビングに行きずらいな、選曲ミスったかも?

 

なんで自分の家なのにこんな思いをせないかんのだ……なんて言えない。

 

2人の笑顔は、とても輝いている。

 

微笑ましい……しかし、俺は空気をあえて読まずに突入。

 

ガチャ

 

「あ!出てきた。」

 

そりゃでてくるわい。逆に出てこないと死んでまう。

 

とりあえず、俺は2人に風呂へ行くように伝えた。

 

一応タオルとかの説明はしているので問題ないだろう。

 

「じゃあ行ってきます!」

 

俺は手を上げて返した。

 

 

 

さてと、スタジオの準備をしておこう。

 

俺の家には隠し扉がある。

 

場所は通路の突き当たりで、取っ手が不自然に壁に取り付けられてある。その扉を開けて地下へ行くとスタジオがあるのだ。

 

 

 

一応ギターアンプ等、機材も充実してある。父親のお下がりだがどれも1級品だ。

 

さてと、紗夜はハイゲインアンプ……確かDIESELだったか。

 

日菜は王道のマーシャルでいいか。

 

 

 

俺は最近、練習でオーディオインターフェースを使っている。端末で沢山のアンプやエフェクターがセレクト出来るからな。何かと便利だ。

 

…お姉ちゃん!ここあいてるよ!

 

勝手に入っては…

 

 

 

 

どうやらお風呂から出たようだな。

 

さてさて、お姫様達を迎えに行くとするかね。

 

俺はスタジオを一旦後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!居た!」

 

階段を上がると案の定、日菜と紗夜さんが居た。

 

俺はとりあえずここで待機するように伝え、風呂の片付けに向かう。

 

と思ったのだか……、綺麗に片付けられていた。

 

紗夜さん、やりますな。

 

 

 

 

 

 

 

俺は2人の所に戻りスタジオに案内する。

 

「これは!?」

 

「すごい、機材がいっぱい!!」

 

2人とも、これはほんの一部だから、隣の大きい倉庫にもっと機材あるから、俺でも何持ってるか把握出来ないくらいにはな。

 

「えぇ……?」

 

紗夜がなんとも言えない顔で俺を見る。

 

まぁ、奇跡的に紗夜の機材が用意できたのは、俺の出したい音に限りなく近いものを紗夜は持っていると分かった。

 

俺は紗夜と日菜に自分の機材を見せてみた。

 

「凄いエフェクターの数だ!」

 

「野村さん、これだけ繋げると音痩せが酷くないですか?」

 

紗夜はいい所に気づいた。そう、エフェクターを沢山繋ぐと「音痩せ」という現象が現れる。主に原音が聴こえなくなり周りの音に埋もれたりする。

 

しかし、そこをその間放っておく訳には行かない。

 

現在ではバッファーと言われる機材が存在していて、それを1番最初か、1番最後に繋ぐことによって音痩せを防ぐことが出来る。

 

「そうなんですか?私もエフェクターが増える度に音痩せには悩まされていたので、導入しようかしら?」

 

そんな彼女に俺は余っていた物を差し出す。

 

元々沢山ある機材の山を1度整理していたら見つけたものである。

 

「え?良いのですか?」

 

構わない、使われた方がこいつも喜ぶだろう?

 

「ありがとうございます、大切にしますね。」

 

紗夜は喜んでくれた。なんというか、いい笑顔を向けてくれて俺もつい頬が緩んだ。

 

 

 

 

 

 

 

その後、3人でひたすら演奏を楽しんだ。

 

またお泊まり会しようかな。



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13話

昨日は楽しかったな。

 

まさか深夜までギターを弾き続けるとはおもわなかったよ。

 

2人の情熱は計り知れない事を知った俺は現在、AXELLのメンバーとmvの撮影中である。

 

内容はアクションが多めで、爆発が演出で加えられるようなものである。

 

いや、このご時世で爆発の演出は何かと問題になるのではと演出家に問い合せたところ、AXELLは将来有望であるからと社長達が警察やらなんやらに色々交渉したらしい。

 

「大君、爆発が怖いよ…」

 

雫が足をガクガクにしながら俺の腕を組む。俺はそっと雫の耳に耳栓を入れて、これでとりあえず我慢してくれと伝えた。

 

「大規!爆発の迫力やべぇ!」

 

お前の語彙力がやべぇよ、

 

爆破初体験前でその反応は無い。

 

悠博は……

 

チーん

 

気絶していた。

 

AXELLの将来が心配になった俺は即座に悠博を揺すって起こす。

 

「はっ!?爆発は!?」

 

「まだだ!」

 

「なん……だと?」

 

おいおい…

 

「それでは始めます!合図をしたら前方へジャンプして下さい!」

 

スタッフの声で、俺達により一層の緊張が走る。

 

 

「よーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ…終わったな」

 

「私まだ足が震えてるよ……」

 

「楽しかったな!」

 

蒼二のお気楽さはともかく

 

やはりこのご時世で爆破はやり過ぎたと思うが…果たして世間的にウケるかはまだ分からないな。

 

とりあえず、これで今日は終了。俺達はそれぞれ別れることとなった。

 

 

今夜は雫の両親がいないらしく、雫の家でご飯を食べていくことになっている。

 

雫の家に行くのは久しぶりで、小学校以来だな。

 

「大君、今夜は何食べたい?」

 

雫はニコニコしながら俺に聞いてくる。

 

俺は特に偏食も無いので、雫の得意料理が食べたいと伝えた。

 

「じゃあ、オムライス!」

 

彼女はとても浮かれている。何となく、俺も好意を寄せているのは知っているが…果たしてそれが「異性」としてか「幼なじみ」としてかは理解出来ていないのが現実である。

 

 

 

「つくし!帰ったよ〜!」

 

「おかえり、お姉ちゃ…」

 

つくしと呼ばれた女の子は俺の顔を見て立ち止まった。

 

二葉つくし……雫の妹で俺のもう1人の幼なじみである。

 

彼女は俺の事を理解したのか、いきなり飛びついてきた。

 

「お兄ちゃん!!」

 

「あぁ!?つくしずるい!」

 

俺は間一髪で受け止めた。

 

「お兄ちゃん!やっと逢えたね!」

 

俺は感動しているつくしの頭を撫でながら久しぶりと伝える。

 

「うん!久しぶりだね!」

 

甘えん坊なところは変わってないようだ。

 

なんでも学校では真面目な生徒だと両親からは伺っているからこの顔は学校では見せていないのだろう。

つくしは俺と雫にはベッタリで、3人の時や俺と2人きりの時はとてつもなく甘えてくるのだ。

 

「お兄ちゃん、今日はどうしたの?」

 

「つくし、今日は大くんうちでご飯だべるんだよ!」

 

「ほんと!?やった!」

 

姉妹揃って俺の事で喜ぶところを見ていて、何故か微笑ましい気持ちになる。

 

ふと思い出したのだが、昔も同じような事があったな。

 

雫とつくしが家に泊まることになった事を知るや否や2人で喜んでたよな。

 

高校生になっても同じ光景を見られる事は、とても幸せだ。

 

「大くん!早くリビングに行こ!」

 

「お兄ちゃん!」

 

2人が俺の両腕を取り引っ張られ、俺は微かにわらいながらリビングに向かうのだった。

 

 



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14話

「雫!俺はハードロックがやりたいんだ!!」

 

「蒼二君!私はポップロックがやりたいよ!」

 

 

 

 

 

こんにちは、2人のケンカを見ながらミルクティーを飲んでいる野村です。

 

状況を軽く説明する。

 

今日は新しいシングルを出すための会議をしているのだが。2人が恒例の理想押し付け大会に発展したのだ。

 

タイトル曲は決まっていてレコーディングまで終わっているのだが。

 

問題はカップリング曲をどうするかで揉めている。

 

「2人とも、気持ちは分かるが、今は大事な時期、慎重に曲を決めたい。」

 

悠博の言葉は最もである。俺達はデビューしたばかりでファンや知名度もまちまち、今こそ慎重に行動しなければ将来に悪影響を及ぼす。

 

「それなら尚更ポップロックの方がいいじゃん!!」

 

「なにおー!今はハードロックの方が受けが良いんだよ!」

 

ぐぬぬぬ!

 

「2人ともいい加減にしろ!!」

 

悠博の罵声で2人は黙る。

 

「いずれ2人のやりたい事が必ず出来るようになる。だから、大規に任せよう。なっ?」

 

悠博はそう言って俺を見つめる。

 

結局は俺のセンスに全てかかっているか、プレッシャーを掛けてくるなんてテクニシャンだな悠博。

 

「今こそリーダーに任せるんだよ」

 

俺はリーダーになった覚えはないが?

 

「「「いやいや!」」」

 

「大くん以外にいる?」

 

いやいや、喋らないリーダーとか聞いたことねぇから

 

「いいじゃん!ひまりがリーダーやるくらいだぜ?」

 

あいつはちゃんとまとめようと努力してるから良いんだよ。

仮にも俺が3人をまとめようとしたことなどない。

 

「まぁ、それは後にしよう。カップリング曲のジャンルは何にするんだ?」

 

3人は緊張気味で俺のことを見る。

 

本気なのが伝わってくる。まぁ時代の流れを考えて俺は伝える。

 

ミクスチャーロック。

 

「まじか!?」

 

「あの〜マニピュレーターいないよ?」

 

俺が何もなしにするとは思ってはいまいな?

 

「宛があるんだな?」

 

俺は頷く。

 

実は最近、海外で出会ったある人が日本に来ているらしい。

俺はアポをとって、この後会いに行く予定になっている。

 

「じゃあ先に俺らは新曲を練習に入るか」

 

「そうだな」

 

 

こうして、一旦会議は終了して各々スタジオに入って練習を始めた。

 

さて、俺も向かうかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はギターを1本背負って来たのは。

 

高級ビルの最上階。

 

事情は理解しているからあまり驚いていないが、傍から見たらすげぇの一言だろうな。

 

部屋入るのに顔認証とか、時代の進歩は早く感じるのは決して俺だけではないだろう。

 

とまぁそれは置いといて、俺はインターホンを鳴らしその人を待っているのだが……

 

突如ドアが独りでに開いた。

 

「welcome!中に入って来て。」

 

突如声が響く。

 

その言葉に従い、道を真っ直ぐに進むと、そこには小さな女の子が立っていた。

 

「Hello、NoMuSoN!」

 

彼女が、今回マニピュレーターをお願いした……玉手ちゆ

 

 

またの名を、CHU×2

 

俺は適当に挨拶を済ませるとスタジオに通された。

 

勝手な予想だが、口じゃなくて実力で示せという事だろう。

 

「音源を頂ける?貴方の音楽を早く聴きたいわ」

 

ごめん、こいつ俺のファンだったの忘れてたよ。

 

 

 

 

 

 

「OK.貴方のこのExcellentな曲、私がマニピュレートします!」

 

ちゆはオレの曲を気に入ったようだ。

 

今回はお仕事として頼むので、然るべき報酬も用意してある。

彼女から見ても悪い報酬では無いはずだ。

 

 

「それにしても、貴方の音楽はますます進化しているわね。時代の最先端を射抜いているのがわかっている。」

 

お褒めいただき光栄です。

確かに俺は時代に流れを見ている。俗に言う流行だな。

自分の中では決して折れないプライドはあるが。流れに逆らってばかりでは上手く生きれないものだ。

 

勿論流されっぱなしでは終わるつもりは無い。たまには自分の思い描くものを演奏するさ、アイツらがそうするようにな。

 

「では改めて、会えて嬉しいわ大規!」

 

ちゆは、笑顔を俺に向ける。

 

彼女はチュチュと呼ばないと怒るのだが、俺だけは違うらしい。

 

現にあだ名しか呼ばないはずが、俺の事は名前で呼んでいる。

 

「また、会えたわね。」

 

そっとお腹の当たりに腕を回してきた。

相変わらず、自分の思い描く音楽を作りきれていないようだな。

 

「No、出来てはいるけれど、見合った演奏者がいないのよ。」

 

確かに、それが1番辛いところだよな。

実際俺もソロでやって来て、合間にサポートを頼まれることも多々あり、スカウトもあったのだが、俺は全部断っていた。

 

理由は、演奏していて閃くバンドではなかったからだ。

なんというか、かっちり当てはまらない感じがしたから。

 

だからこそ、綺麗に意志が揃うメンバーを探すのは一苦労だ。

 

「私は諦めない。貴方が見つけたように、私も探し続けるわ!」

 

ちゆも、見ぬ間に逞しくなったようだ。

絶対見つかる。何故なら、ちゆは音楽が大好きだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は打ち合わせを終わらせて、次にやってきたのはとあるスタジオ、ある人に会うためにここに来たのだが、すぐに見つかった。

 

「あっ……先輩」

 

綺麗な髪の毛に袖のない革ジャンを着ている彼女。和奏レイ

 

彼女に会いに来た。

 

俺は軽く挨拶をする。

 

「先輩、今日はどうしたんですか?」

 

俺は事情を説明する。俺がバンドでプロになった事と、ちゆの事、説明すると祝福の言葉が帰ってきた。

 

「おめでとうございます!ついに先輩もプロになったんだ!」

 

レイは嬉しそうだった。

 

昔はますきと3人でバンドを組んでライブハウスを沸かしていたものだが、まさか3人揃ってプロになるとは当時の俺は思いもしなかった。

 

「それと、そのプロデューサーの件ですが、1度会ってみます。」

 

頼むと、俺はお願いしておいた。あいつにもバンドをやる辛さと、演奏した時の楽しさをしっかり受け止めて欲しいからな。

 

「先輩、この後お時間有りますか?」

 

レイが唐突に予定を聞いてきた。勿論忙しいが、少しだけなはあると伝えた。

 

「実は、ますきがご飯食べに行こうってさっきから誘ってきてるんですよ」

 

 

 

ますき、絶対狙って連絡入れたな……

ラーメン屋に行くらしく、俺は強制連行を余儀なくされた。

 

 

 

 

 

 

 

到着後、ますきが前で待機していた。

 

「レイ、先輩、おそいじゃねぇかよ」

 

「お話しながら来てたら、つい足を止めたりしちゃって遅くなっちゃた。」

 

ますきとレイが話を始めたので、俺はスマホで時間と通知を確認する。

 

湊さんやら、香澄やらとチャットが来ているが返すのは後にしよう。

 

俺はスマホをしまい2人に顔を戻すと………

 

「先輩、デート中にスマホを見るのはダメなんだぜ?」

 

ますきからデートなんて言葉が出るとはな明日は槍が降るな

 

「うるせぇ!」

 

「ふふっ」

 

何時ものじゃれ合いをしているとレイが笑う。

 

 

「先輩、何食べますか?」

 

レイが注文を聞いてきたので、俺は塩ラーメンを頼むことにした。

 

こってりしたのは得意ではない、年甲斐もなく胃もたれがするのだ。

 

「店長、塩と醤油2つ」

 

「あいよぉ!」

 

「にしても、3人揃ってご飯も何年ぶりだ?」

 

「大規さんが中学を卒業してからだから、約2年とかだね。」

 

「……」

 

そうか、もう2年にもなるのか……

 

俺達3人でバンドをやっていた時は、主にコピーが多く、たまに俺の作ったインストを演奏するのが基本だった。

 

それが以外にも有名になって、各地のライブハウスにちょくちょく呼ばれていた。

 

その後は進展も無く、静かに解散したな。

 

その気になれば、3人でプロのバンドとしてやっていくことも出来たが、2人の可能性はもっと先にあると感じた俺は、あえてプロの道を今は諦めたのだ。

 

「先輩……、AXELLは楽しいですか?」

 

レイの表情は一変して、少し心配そうな顔をしている。

 

「レイ、どうしたんだ?」

 

「大規さん、私達が演奏していた時よりも今の方が楽しそうだから」

 

「嫉妬かー?可愛いな」

 

「ますき!」

 

確かに可愛いな。

 

レイの言っていることは概ね正しい。

 

確かに今のバンドは楽しい、どんな音楽をやっても必ずみんなの反応や

演奏を聴いていて本当に飽きない。

 

2人と共に駆け抜けたあの時よりも演奏は上達し、心構えも変わっている。

 

だからこそ、レイが嫉妬するのも無理もないということだ。

 

「大規さん、1回でいいからまた3人でライブしようぜ!そうすれば、レイも納得するだろ!」

 

「ちょっとますき!」

 

いや、一理あるか……プロになってから予定が立て込んでいるが、近いうちに予定を開けておこう。

 

「先輩、お嬢の賄いいる?」

 

俺はますきの問に頷いた。

ますきのチャーハンは上手いからついつい食べてしまう。

 

なんか、このメンバーとあって思い出したが、あいつは…元気でやっているのだろうか。

 

ずっとギターを教え続けていたのだが、高校はこっちに通うと言われて2年ほど音沙汰が無い。

 

まぁ、あいつは絶対来るだろう。根性は俺に似た者だ。

 

「さてと、そろそろお開きにするか」

 

「そうだね。私これからリハがある。」

 

俺はこの後は家で寝る。

 

「じゃあ先輩!今日はありがとう!」

 

「先輩、ありがとうございます。」

 

こうやって見ると、2人とも可愛い後輩だな。

 

以前に比べ、音楽に対する思いや、技術は凄く上達したが。それでも根っこは変わらない。俺の大事な人達。

 

 

また、みんな集めてどっか行こう、そう思った。



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15話

こんにちは、サークルで1人練習している野村です。

 

俺は月に1回こうして1人で練習しに来ている。

 

しかも、まりなさんに頼み込んでその1時間は誰一人として近づかないようにしてもらっている。

 

ここまでしてもらってまで俺がする事は1つ

 

「♪♪♪♪」

 

そう、ボーカルの練習をしている。

 

そりゃ俺だって声を出したい時もある。

緊急の時だって会話出来ないとまずいからな。

こうやって練習していないと言葉すら話すことが出来なくなるのだ。

 

「♪♪♪♪♪♪〜」

 

今更だが、俺は歌が得意ではない。

 

ハモリも練習をかなりしないと安定しないほどにな。

 

ラップとか、ボイパは何故か安定するのだがな。

 

そんな事を1人ブツブツと心の中で喋っていると、複数人の気配が近づいてきた。

 

あれおかしいな?近寄らないようにしてもらったはずだが。

 

俺は声を潜め咄嗟に電気を消した。

 

その勢いでアンプの後ろに隠れてスマホを確認する。

 

なんで焦っているか?知人だとめちゃくちゃ追求されるからな。

 

見てみるとまりなさんから謝罪文が来ていた。

 

「ごめん、日程の調整間違えてRoseliaが来ちゃった!後でなんか奢るからやり過ごして!!」

 

まりなさん、今度から気をつけてくれよ…

 

そんな事を思いつつ、やり過ごそうとした矢先

 

ガチャ

 

!!!?

 

 

「友希那〜そこじゃなくて隣の部屋だよ?」

 

「ごめんなさい、人の気配がしたのよ。」

 

「えぇ!?」

 

「アンプの電源が入ったままですね、全く誰ですかね?」

 

俺だよ!!

 

と言いたいところだが、俺はさらに息を潜め気配を最小限消す。

 

「とりあえず、行きましょう。時間も有限たから。」

 

そう言って3人はドアを閉める。さて、そろそろ出るか

 

そう思ってアンプの裏から立ち上がると。

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

3人が俺を見ていた。

 

あれだな、某スニーキングミッションとかで命懸けでやっている人が敵に見つかった時もこんな感じなのだろうか?

 

とりあえず………何も無かったように外へ出る。

 

「大規さん。どこへ行くのですか?」

 

氷川さんが俺の肩をがっちり掴んだ。痛い。

 

「何してたのかな〜?」

 

「詳しく聞きたいわ」

 

2人も俺に詰め寄ってくる。

 

こうなったらもう………

 

 

 

 

 

ち〜ん

 

俺はRoseliaの面々に連れられて外のカフェで尋問される羽目になった。

 

まりなさんがコーヒーとパフェを苦笑いしながら持ってきた。

 

(ごめん、野村君……これ奢りだから食べてね?)

 

まりなさん、ありがとう。

 

「さて、何をしていたんですか?」

 

氷川さんが詰め寄ってくる。

 

そうか俺の心読めるの彼女だけなのか。

 

何もしていない。無罪だ。

 

「嘘をついてはダメですよ?罪が重くなるだけです。」

 

氷川さんが俺を尋問している最中、俺はパフェに手をつける、溶けたら不味いからな。

 

俺は何もしていない。

 

「ではなんで暗闇でアンプをつけたまま隠れていたのか教えてください。」

 

「吐かないとこそばしの刑だそ〜?」

 

ふっ、今井さんよ、俺にそんな技は通じない。俺が今までどれだけの拷問を受けてきたと思っている。

 

「今井さん、もっときつくても良いらしいです。」

 

この鬼!!氷川さんのS!!

 

「鬼ではありません!早く吐きなさい!」

 

紗夜の剣幕に少し驚いたが…、ここで口を割るくらいなら……。

 

「!?何をしているのです!」

 

俺は湊さんにの肩に手をかけながら後ろに隠れる。

 

「大規?」

 

湊さん、彼女は危険だ。俺は君を盾にするよ。

 

「そう…」

 

「友希那?さっきと今とで変わってない?」

 

「湊さん、彼を渡してください。」

 

「紗夜、あまり追い詰めると今後、AXELLとの関係が崩れるわ。ここまでにしましょう。」

 

「紗夜さん、練習の時間が無くなりますよ?」

 

「ぐぬぬぬ!」

 

どうやら氷川さんも諦めてくれたようだ。

 

俺は席に戻り優雅にまたパフェを食べ始める。

 

「野村君は面白いな〜」

 

まぁ、わちゃわちゃしてるのは嫌いではない。口と顔はこうだが行動は普通の学生と変わらないと思う。

 

「そろそろ行くわ。大規、また後で」

 

友希那が別れの挨拶をしてきた。

俺は手を振りながら背中を見つめる。

 

あの対バン以来、俺への態度が柔らかくなったよな。

 

Roseliaは今後とも贔屓にしたいバンドである。

あの世界観やサウンドは俺の中で五本の指に入る程好きな音楽だ。

 

さてと、俺はギターを調達に行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お!来たね。」

 

俺はある楽器屋を訪れている。

 

ここはあるひとつのメーカーを専門に取り扱う店で俺の使うギターは殆どここから調達してきているのだ。

 

「今日は何をさがしてるんだい?」

 

ちなみにここの店長も俺の心が分かる。

 

俺はpsをお願いしたいと伝えた。

 

「ps!? 大きくなったね……」

 

まぁ、プロになった事で楽器も出来るだけ手の込んだものを使いたい思いはあった。既存の楽器ではなく究極までこだわった楽器が俺も欲しいからね。

 

「了解!ちなみに……勿論1本だけダヨネ?」

 

なんか店長が震えているのが笑える。

 

2本。

 

「まじかよぉぉ!!」

 

この後、俺はこだわりを余すことなく店長に伝えて注文は成立した。

 

金額は………秘密だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は帰ってきた後、暇つぶしでnfoにログインした。

 

最初期から俺はやっているのでレベルはトップクラスで、職業は王道の剣士。近接攻撃が最も強い。

 

なんか久しぶりのログインしたら大陸のど真ん中にいた。

 

やべぇ、最果ての村に移動しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきは死ぬかと思った。ど真ん中でログアウトしたのを忘れてたよ。

にしても、ここはやっぱり平和で、ビギナーも多いな。

 

ちょっとウロウロするか。

 

 

今現在、招待イベントが開催中のようだな。

 

報酬のアイテムは超レアだ。しかし、俺は持っているから必要ない。

 

「りんりん!みんな居たよ!」

 

 

 

 

なんか、聞いた事ある声だな。

 

りんりん……?

 

俺はふと声のする方に目を向ける。

 

そこには見知った…昼間にあった5人がいた。

 

何やってるんだ?

 

じゃあ!手紙を鉱山まで持っていこう!」

 

あぁ、リンダさんに手紙を届けるやつね。

 

すると、あこの奴…鎌が欲しいのだろう。

 

なんかゲームの中でも会うとか、縁とは怖いものよ。

 

「そういえばさっきフレンド一覧見たら大規さんもログインしてたよ!!」

 

「!!」

 

俺は盛大に噎せた。そうだった。フレンドがログインしているか分かるんだった。

 

しかもだ、俺はあこと何度も遊んだことがある。つまり、フレンドなのだ。

 

「へぇ!野村君もゲームやるんだ!」

 

「うん!!しかもすごく強いんだよ!!」

 

よし、ここはあこが俺の自慢している間に……

 

「あの…」

 

……落ち着け、別の誰かかもしれない。そう淡い期待と共に振り向くと。

 

 

「NoMuSoNさんですよね?」

 

名前の所にはRINRINと書かれていた。

 

誰ですかね?としらを切る。たとえ相手が白金さんだろうとな。

 

「あこちゃんから聞いてます。見た目とレベルが一致するので話しかけたんですけど…」

 

俺は即座に白金さんにどうか隠密にと頼もうとした時…

 

「りんりーん!どうしたの……ってああ!!)

 

時すでに遅かった。

 

「ノムさんだ!!」

 

「え?」

 

「野村君?」

 

俺は諦めて、みんなに挨拶をした。

 

その後、成行きで皆と同行することになった。

 

「それじゃあ!洞窟に行きましょう!」

 

白金さんはメッセージだと饒舌になるんだな。

 

多分そんな感じでは会ったんだけど。

 

にしても湊さんはパソコンも怪しいのは笑ったけど。

普段作曲どうやってんだよって突っ込んだら

 

「譜面を書いて皆で考えてるわ」

 

あれだな、Roseliaすげぇわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後無事にあこは鎌を手にしてRoseliaの団結力はさらに強固なものとなった。

俺は喜んでいる間にログアウトして、曲の手直しをまた始める。

 

負けてられないよな。

 

俺は、Roseliaの団結力を見てやる気が出てきたのだった。



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16話

「大規、オリコン見たか?」

 

蒼二が唐突に聞いてきた。

 

内容は知っている。

 

オリコンの1位から3位が、俺達の曲で埋められたということ。

この事実を蒼二は受け止められないのだろう。

 

「なんか、なんとも言えねぇよな。俺達が時の人になるとは。」

 

ご最もである。

 

俺もオリコンに入ったら嬉しいな位の気持ちだったよ。

まさか1位から3位だからな。

 

「これはパーティーだな!」

 

俺は蒼二の顔を見て笑う。

 

俺達は、スタートを切ったんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の昼に3人がパーティーを今夜やろうとのことで俺の家に集まることが決まった。

 

トントン拍子で話は決まったが、食材などが不足していたのは明らかで、今から買い出しへと向かうのだった。

 

やって来たのは商店街。ここなら沢山の新鮮な食材が手に入るからな。

 

さてとたくさん買うのは良いのだが、1人ではとても持てそうに無いな……、蒼二を呼ぶか。

俺はスマホを手に取り蒼二に来て貰えるよう連絡をとった。

 

 

 

 

 

 

「わりぃ!ちと遅れたな。」

 

30分程で蒼二は到着した。

 

走ってきたのにも関わらず、全く息を切らしていないところを見ると、ドラマーよりアスリートに見えてくるのは俺だけではないだろう。

 

「うるせ!それより食材の買い出しだな。どこから行く?」

 

とりあえずメインに食材を確保する事にした。

肉とかな。

 

北沢さんの家が安牌だな。世話になってるし。

 

 

 

 

「あ、のむ先輩!いらっしゃい!」

 

タイミング良く、北沢さん本人が店番をしてくれていた。

 

「あ!大規、他のバンドのメンバーも呼ぼうぜ!多い方が楽しいからな!」

 

成程確かに一理ある。俺はまたスマホで悠博にRoselia、雫にはパスパレ、ポピパを誘うように連絡を入れ、蒼二にはぐみと交渉してもらうように頼んだ。俺は羽沢さんの店に向かい交渉しに行く。ワンチャン5人いる可能性もしあるしな。

 

 

 

「いらっしゃいませ…野村先輩!?」

 

戸を開けると羽沢さんが驚いた顔をしている。

 

チラリと後ろを見ると、ビンゴだった。

 

羽沢さんが俺の心を読めないと悟ったのか、蘭が歩いてきた。

 

「大規さん、どうしたの?」

 

言っていなかったが、蘭は俺の心が読める。昔色々あってな。

 

俺は蘭に今夜打ち上げパーティーするから5人で来ないと伝える。

 

「ちょっと待ってて。」

 

すると5人で円陣を組み話し合いが数十秒した後にまた蘭が寄ってきた。

 

「皆行きたいって、何時に行けばいいの?」

 

18時に俺の家に来るよう伝え、このまま帰るのも失礼なのでアイスティーを1杯だけ頂いた。

 

しかも羽沢さんが入れてくれたとの事、とても美味しかったと伝えると少し頬を赤らめてお礼を言われた。

 

それを見た蘭が少し頬を膨らませていたがあえてスルーした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店を出たあと、3人からも連絡がきて、どのバンドも予定が空いていたので俺の家に集合が決まった。

 

はぐみと沙綾とこころが祝いの品で沢山の食材をもって来てくれるそうなので俺は普段の買い物程度で終わった。

 

さてと、準備しますかね。

 

実はパーティーの中でミニライブをしようと考えている。

 

蒼二と雫にはそれを伝えており、楽譜も少し前に送った。あの二人なら30分もあれば暗記できるだろう。

 

音楽に関しては2人ともそこらのプロより全然レベルは上だ。

 

やる楽曲は俺のインストから3曲だけやる。

 

楽しんでくれたらいいのだが…。

 

ステージのセッティングを終えて。これからご飯の準備を始める。

 

勿論1人では何かと厳しいので、助っ人を呼んでいる。

 

「野村君!これテーブルにお願い!」

 

「リサちゃん、そっちは俺がやるよ。あっちの料理作り始めてくれ!」

 

「分かった!悠博そっちはよろしく!」

 

「飲み物の準備も終わりました!」

 

「つぐ!それなら足りないもの買ってきてくれない?」

 

「分かった!」

 

今井さんに悠博、羽沢さんに、山吹さんがわざわざ手伝いに来てくれたので進行は上々だ。

 

みんな知らないのだが悠博は料理が上手だ。

従姉は全く料理が出来ない分こっちにステ振りされているのだろう。

 

「大規、姉さんにそれ言うとキレるぞ?」

 

大丈夫、適当にあしらうから。

 

「あら、私の悪口を言っているのかしら、悠博?」

 

すると悠博は冷や汗をかきながらゆっくり後ろを見た。

 

案の定腕組みした湊さんが睨んでいたのだ。

 

悠博よ骨は拾うからな。

 

「大規ぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「それでは!本日は皆集まってくれてありがとう!これからもAXELLをお願いします!!乾杯!」

 

 

乾杯!!

 

 

さて、パーティーは始まった。

 

にしてもこの人数よく入ったな、合計30人だぞ?

 

poppin party

 

after glow

 

pastel Palette

 

Roselia

 

ハロー、ハッピーワールド

 

にしてもガールズバンドばっかりだと野郎である俺ら3人は何かと気を使う、ので3人で別席を構えて粛々と祝い事にした。

 

「あっという間だったな。」

 

「あぁ、普通なら下積み生活をするんだろうけど時代の発展があるからこそだな。」

 

元々、動画投稿でやっていた悠博、蒼二、雫は人気もあったからね。

 

「そうか、大規は下積みしてるんだよな〜」

 

まぁ、人気は貴方達とは月とすっぽんだった。

 

そこの氷川さんとかは見に来てた様だけど。

 

「それはない、俺が見に行った時客が入り切ってなかっただろう?」

 

ソレでも、だよ。

 

なんせ曲は良くても喋らんし、無愛想で結構叩かれてた。てゆーか今もな。

 

「嫉妬だろ?大物には付きもんだよ。」

 

いや、俺はこれで押し通すから。この先もな。

 

そう、このキャラクターを押し通す事は俺にとって、理想に近づく為の最短の手段だとおもっている。

 

元々口下手で喋りたくなかったから、本望だ。

 

「大規の分も俺が喋ってやるから安心しろ!」

 

そう言って蒼二は肩を組んできた。

ありがとう。その言葉以外見つからなかった。

蒼二がいなかったら、俺はこの景色を見られなかったのだろう。

 

「勿論、俺もな!大規の思いをしっかり歌うから、これから先もずっとな!」

 

悠博はそう言って別の肩を組む。悠博にも頭が上がらない。

 

俺の作った歌詞を予想以上の歌唱力でうたっている所を見て、何度も感動と感謝を感じていたから。

 

「これから先も頑張ろうぜ!!」

 

「おう!!」

 

俺はその言葉に笑顔で答えた。

 

 

「ちょっと!!私は!?」

 

そう言って雫も肩を組んで円陣が出来上がった。

 

周りからおおー!とか聞こえるけど。

 

 

「しゃあ!そしたらやるか!」

 

「そうだね!いい時間だし。」

 

蒼二と雫と俺は立ち上がってステージに向かう。

 

皆は話に夢中で見えていないようだ。

 

しかし、蒼二のドラムにすぐに振り向いた。

 

「みんな〜! きいてください!!『月』。」

 

雫が曲を紹介を終えて俺を見ながら合図を待ち始めた。

俺は頷いた後、コードをゆっくりなテンポで弾き始める。

 

この曲、俺の中ではかなりの傑作だと思っている。

何気ない日常を4人と過ごしていく中で、ふと思いついたメロディから生まれたのだ。

 

1サビが終わったのだが、みんなの目がうるうるしているのが分かる。

 

悠博はもう涙が垂れてるし。

 

その光景を見るとなんか俺も涙が…、だがしかし、ここで泣いたらダメだ俺は自分に暗示を掛ける、2人も本当は涙が出そうになっているが、我慢して演奏してるんだ。ここで俺が泣くのはキャラ的にもダメだ。

 

そんな自分との戦いを続けていたら、いつの間にかアウトロまで来ていた。

 

あぁ、終わるんだ。

 

でも、これから、ここから始まるんだ。

 

俺達の通る道はずっとアスファルトでは無いだろう。

時に砂利道、時に雪道。

 

でも俺達はアクセルを緩める事は無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、長いドライブの始まりだ。

 

 

 




あけましておめでとうございます!

今年も亀更新ニコニコなると思いますが、気長にお待ちいただけると幸いです。

今年も宜しくお願いします!。


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17話


皆さんこんばんは!

唐突なんですけど、今回新キャラクターが登場します。
想像しながら書いてるとこうなりました。

変だと思いますがよろしくお願いいたします。


皆、突然だが聞いて欲しい。

 

オリコンが発表され、はや1週間が経ったのだが……ふと通帳の更新した後に内容を見ると……

 

 

5000万入ってたんだ。

 

流石の俺も焦った。

すぐに事務所に連絡入れたらさ。

 

「たったそれだけなのか?多分次は10倍になると思うぞ?」

 

と言われた。

 

音楽業界怖い。

 

 

 

 

 

 

 

俺は3人を強制で招集して、事を話した。

 

 

「5せ!?はぁ!?」

 

「大規、嘘つくなら持っと上手くつけ。」

 

「大くん、そんな嘘には騙されないよ!」

 

とか言うからさ。

 

俺は個人情報とか無視して通帳をテーブルに叩きつけた。

 

 

流石にその態度に3人は驚いていたが、渋々中を覗いて……

 

「ワッツ!?」

 

「リアリィ?」

 

「なんで英語!?マジかよ……」

 

3人は発狂した。

 

聞けば3人にはサラリーマンの月給程は入ったらしい。

それでも普通は凄いんだが……

 

「印税って2文字が恐ろしいな。」

 

「大くん、どうするの?」

 

まぁ、貯金かな。家はあるし、機材も注文して困ってない。

 

「大規、提案がある。」

 

蒼二が悪い顔しながら手を上げる。

 

却下。

 

「なんでだよォ!!聞けよ!!」

 

「蒼二君、印税欲しかったら作曲すれば?」

 

雫も悠博も流石に冷たい目で蒼二を見つめた。

 

「仕方ない。これもリーダーのお陰だな!」

 

「それは同意する。それは大規が使ってこそだ。」

 

「うん!」

 

3人の心遣いに感謝しつつ。せっかく集まったしティータイムする事にした。

 

 

 

「大規、思ったんだが。そろそろマニピュレーターを誰か雇った方が良いんじゃないか?」

 

悠博が紅茶を片手にそう言った。

 

確かに、それは思っていた。

 

現在のバンド編成ではCDと同じクオリティーで演奏が出来ない。

つまりは俺が作った曲の世界観を完全再現出来てないのが現実である。

 

「俺達の名前は、オリコンのお陰で広く知れ渡ったはずだ。なんなら明日明後日と雑誌のインタビューやら、テレビ出演が入ってる。誰かしら力になってくれる人がいるはずだ。」

 

「そうだね、これを機に探してみようよ!」

 

「そうだな!……オーディションとかやってみるか?」

 

それが良いだろうな。

そう思った俺は。早速事務所に連絡して、予定をくんで貰えるようにした。

 

レコード会社にも連絡したのだが、好意で人を集めてくれるようになった。

 

これは、波乱の予感がするな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、オーディション当日。

 

場所は事務所の面接室にて行われる。

 

俺達4人は面接官として、受けてくれた人達と面接する事になっている。

 

「いやー、前までは受ける側だったのにな〜」

 

「ね〜。」

 

「こら、シャキッとしろ。舐められるからな。」

 

悠博は2人に喝を入れる。

 

確かに、そうして欲しいところだ。

 

手元に資料があるのだが…受けてくれた人は全部で50人とかなりの人が来てくれている。

その中のたった1人だけがサポートメンバーになるのだ。

これは気が抜けないな。

 

「で、どんな奴を選んで行くんだ?」

 

「とりあえず、音楽が好きで真摯に向き合っている人が大前提…だよな?」

 

悠博が俺に聞いてきたので、頷いた。

 

「だよな〜、プロになってから音楽を趣味で聴かなくなる人もいるしな。」

 

「後は?」

 

女の子が良い。

 

「大くん!あたしだけじゃ飽き足らず他の女にも手を出すの!?」

 

「落ち着け……理由があるんだろ?」

 

俺はまた頷いた。

 

理由はいっぱいあるが……まず1つ

 

雫だ。

 

このバンドで紅一点な彼女は中々男通しの会話に入れなかったりすることが多い。

少しは居心地良くしてあげたいのだ。

 

2つ、これから先作る曲で、女性に歌って欲しい曲があるから。

 

雫が、新しい人に歌って欲しいのだ。

 

3つ、男臭いので花が欲しい。

 

 

「おい!男臭いとはなんだ!」

 

「大くん……そんな事考えてくれてたんだ。抱いて!」

 

抱かない。

 

「けち!でも、ありがとう!」

 

「分かった。なら女性は……って1人しかいねぇよ!?」

 

マジで?

 

俺は慌てて資料を見直すと……確かに1人だった。

 

 

「やっちゃったな。」

 

「うん。」

 

「オワタ。」

 

まて!その人が大前提に当てはまって常識がある人か分からん!

 

「おっ、おう。そうだな。」

 

「確かに……で、どうする?野郎は追い払うか?」

 

一応面接する。コネは多い方が何かと便利だ。

 

「了解!じゃあ始めようぜ!」

 

 

 

そして、面接は始まった。

 

いやー、色んな人が来た。

 

見た目がやばい人から、ガリガリな人。

 

頭が硬そうな人から、何考えてるかわからない人。

 

4人揃って頭を抱えそうだった。

 

 

そして、時は来た。

 

 

「大規、次は例の女の子だ。」

 

俺は3人に次はより一層の観察をするように伝えると3人からOKが来た。

 

「次の方どうぞ!」

 

「しししし、失礼します!」

 

入ってきたのは……

 

「(待って、可愛い。お持ち帰り!)」

 

「(アホか!ちゃんと面接しろ!)」

 

小動物みたいな女の子だった。

 

身長は150あるかないかくらいで、髪の毛は赤毛の襟でツインテール。

年齢は歳下だと思う。

にしても……

 

「(凄く緊張してるな。)」

 

「(私に任せて!)」

 

「お名前おしえて?」

 

「ははは、花見茜でででです!!」

 

「茜ちゃん!可愛い名前だね!緊張しなくていいよ?普通に話する感じで終わるから!」

 

「は…はい!」

 

どうやら少しは落ち着いた様だ。雫様様だな。

 

「じゃあ、始めるね!茜ちゃんは、今回応募してくれた理由はある?」

 

「えっと、私……家族が音楽一家なんです。小さい頃から世界中の音楽に触れてきて。音楽が大好きになったんです。中学生の頃から自分で色んな音楽を探すようになったんですけど。これだ!って思えた音楽に中々巡り会えなかったんです。、そこからDTMを始めて、自分で音楽を作ることの楽しさを知ってのめり込みました。そんな日々を送っていくうちに高校生になり、私は「これだ!」ってなった曲を見つけたんです!その曲を作ったアーティストさんの名前は「AXELL」さんだったです。そこからAXELLさんの曲を沢山聴いていたんですけど、今回AXELLさんがマニピュレーターを募集すると聞いて、是非とも応募したいと思って、今回応募しました!」

 

「そうなんだ!ありがとう!」

 

「俺から質問良いですか?」

 

蒼二が花見さんに問いかける。

 

「はい!」

 

「その、これだ!ってなった曲の名前は?」

 

「crimerです!」

 

「おぉ、マニアックな所から入ったね。」

 

「友達が教えてくれたんです!この曲聞いてって。」

 

「成程分かりました。」

 

「では、僕からも良いかな?」

 

「はい!」

 

「もしAXELLのサポートメンバーなれたらまず何をしたい?」

 

「皆さんと演奏したいです!」

 

「はい、分かりました。」

 

俺は雫を見つめる。

 

「茜ちゃん、もう1つ質問いいかな?」

 

「はい!」

 

俺は雫に質問を投げた。

 

「この先ね、多分いい事ばかりじゃないと思うんだ。悔しい思いや辛い思いもすると思うんだけど。これからもずっと…音楽好きでいられる?」

 

「……私、今まで辛い事が沢山あったんです。泣いたこともありました。でもそんな時、音楽が慰めてくれたんです。だから、私は音楽通して誰かを慰められる人になりたいと思ってます!いえ、なります!だから音楽を嫌いになんかなりません!!」

 

彼女は真剣な表情で訴えた。

俺はその目に濁りを感じられなかった。

ふと3人を見ると、薄ら笑っていた。

どうやら同じ考えらしい。

 

俺は3人に笑顔で頷いた。

 

「茜ちゃん。これで面接は終了だよ!お疲れ様!」

 

「はっはい!」

 

「じゃあ、そこの扉の奥にソファがあるから座って待ってて!」

 

「え……?」

 

「おめでとう、合格だ!」

 

「……ヒック」

 

花見さんは緊張の尾が切れたのか、今にも泣きそうな顔になった。

彼女はとてつもない覚悟を持ってオーディションに望んでいたのは面接途中で気づいた。この世界で生きるのは並大抵の気持ちでは無理なのをしっていたのだろうな。

 

「花見ちゃん、良く頑張ったな。」

 

「うぇぇん!」

 

彼女は泣き出した。

 

雫が急いで駆け寄りながら扉の向こうへ連れて行き介抱する。

 

「大規、担当に伝えた。」

 

「彼女の面接を最後にして良かったな。途中で追い払うのはきついしな。」

 

「おう。とりあえず茜ちゃんの親族はこの事了承してくれてるらしいから挨拶だけでも伺うか。」

 

「そうだな。」

 

「茜ちゃん、落ち着いた?」

 

「はいぃぃ!」

 

「ほーら、目が真っ赤だから顔洗っておいで?」

 

「こうやって見るとお姉ちゃんしてるな〜。」

 

「いや、お姉ちゃんだろ?」

 

2人を見ていると、昔の思い出が蘇った。

 

公園で雫とつくしと俺で遊んでる時つくしがコケて泣いてるのを雫がずっと慰めていた。その時を思い出して、俺はふと笑みが零れた。

 

「ニヤニヤしてんじゃねぇぞ色男!」

 

脇を来ずかれたので裏拳を入れといた。

 

「花見さん。とりあえず今日は帰って休んでね。また事務所から連絡するから。」

 

「分かりました!今日はありがとうございます!」

 

そう言って彼女は帰って行った。

 

さてと、また忙しくなるな。

 

「そして騒がしくもなる。」

 

「大いに結構、その方が楽しいだろ?」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

「AXELLに、新メンバー!?」

 

「えぇ、とは言ってもサポートメンバーよ」

 

友希那が唐突にアタシ達5人の前でその話題を振ってきた。

 

「そうなんですか!良いなぁ〜!」

 

「あこ、私達は今のこのメンバーで十分よ。彼らは世界観を完全再現すると言っていたわ。」

 

「確かに、CD音源とライブの演奏で明らかに違いましたね。」

 

「じゃあ新しい人はキーボード担当なのかな?」

 

「違うわ、マニピュレーターよ。」

 

「「「ま、まに?」」」

 

リサとあこと燐子が首を傾げる。

 

「マニピュレーター、音源を操作する人ね。」

 

「後で調べておくといいわ。この担当がいるか居ないかで世界観や迫力が違ってくるのよ。」

 

「へぇ〜、これは次のライブがたのしみだね!」

 

「えぇ。」

 

「そういえば、大規さん、印税が沢山入ったって噂が立ってましたよ!」

 

「あこ、それは本当に?」

 

「友希那、なんでそんな食いつくの?」汗

 

「いえ、失礼したわ。」

 

「印税ですか。彼らはここ数ヶ月で大きくなりましたね。」

 

「そうだよね〜、前まで一緒に対バンとか沢山してたのにな〜。」

 

「私達も、負けていられないわよ。見習ってどんどん前へ進まないと。」

 

「そうだね!」

 

「友希那さん!早く練習しましょうよ!」

 

「えぇ。」

 

「同感ですね。」

 

「がっ、頑張ります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではこれから会議を始めます!」

 

という訳で唐突だが、会議が始まった。

 

あの後、花見さんのご両親に挨拶をしに行ったのだが…好きな音楽で意気投合した。

 

そこからはトントン拍子でことは進み、無事彼女は俺達のサポートメンバーとして、これから共に活動する事になった。

 

とりあえず会議をしようとのことで、彼女をうちへ招待したらアワアワと言って何故か震えていた。

 

やはりうちの環境に驚いたのだろう。

説明はしていたのだが…。

 

「とりあえず花見さんにはマニピュレーターの練習をしつつまずやって欲しいのは……」

 

「大君との意思疎通だね!」

 

「がっ、頑張ります!」

 

「あー、茜ちゃんそんな気張らなくてもそのうち出来るようになるから大丈夫。コイツ意外と分かりやすいし。」

 

とりあえず蒼二にチョークスリーパーを決める。

 

「悪かったァァ!!俺がわるかったぁぁぁ!!。」

 

「あわわ!中濱さんが!」

 

「大丈夫!いっつもだから。それより皆のこと下の名前で呼んでいいよ?もう仲間なんだから!」

 

「はっはい!しっ雫さん?」

 

「いいね!」

 

「そうだな。その方が助かる。」

 

「おうよ…ゲボっ!俺も蒼二でいいぜ!」

 

「はい!悠博さん、蒼二さん!…あっ、私の事も茜って呼んでください!」

 

「分かった。よろしくな茜ちゃん!」

 

ちょっとづつ打ち解けて言ってくれたら助かるな。

 

「そうだね!」

 

「え?」

 

「あぁ、大規が今テレパシー飛ばしてたんだ。ちょっとづつ打ち解けて言ってくれたら助かるって。」

 

「そ、そうなんですか……。」

 

彼女は俺の事を見つめてくる。

 

こうやって見ると、どこか幼さが残っていて、守ってあげたくなるような可愛らしい顔だ。

 

「だっ、大規さん!」

 

 

「私はマニピュレーターの事……実はまだ分かってない所があるんですけど…教えて下さい!」ペコっ

 

そう言って頭を下げる彼女、そんな彼女をつい……

 

 

なでなで

 

「ふぇ?」

 

頭を撫でてしまった。

 

別にそんな頭を下げなくても元々教えるつもりだったけどな。

 

「ふにゃ〜」

 

どうやらとろけてしまったようだ。

 

「可愛い〜!!」だきっ!

 

「しっ雫さん!?」

 

「どうやら、上手くやってけそうだな。」

 

「そうだな!」

 

 

 

 

という訳で、あれから2人で基礎のおさらいをした。

茜は飲み込みが良く、言ったことをすぐ出来る子だったのは本当に助かった。

 

そこから改めて、新曲の会議を始めることになり、現在5人で卓を囲んでいる。

 

「新曲はせっかくなら茜ちゃんに活躍して欲しいな〜。」

 

「えぇ!?私ですか?」

 

「そうだな、茜ちゃんここにあり!って感じ。」

 

「えーっと…。」

 

「大規、お願い出来るか?」

 

俺はその願いを受ける前に1つ、茜ちゃんに聞きたい事があるので、それをシカトして茜ちゃんに聞く。

 

それは、彼女が中学の頃に吹奏楽部に入部していた事だ。

 

「はい!トランペットやってました!」

 

「……おいまさか!?」

 

出来る?

 

「えっと……ライブでですか?」

 

彼女は……少し悩む仕草をしつつも

 

「今でも家では趣味で練習してたので……楽譜と練習時間があれば出来ます!」

 

自信満々でそう言った。

 

俺は彼女の言葉を信じて、ある曲をスピーカーから流す。

トランペットを基調とした楽曲で、トランペットのソロもある曲だ。

良ければこれを皆で演奏したい。

 

「この曲……凄い好き!!」

雫もやる気になったようだな。

 

「本人が良いなら、俺も賛成だ!」

 

「茜ちゃん、大丈夫か?」

 

「任せてください!皆さんをあっと言わせてみせます!」

 

どうやら皆同意の様だ。

これからこの曲に詞をつけないといけないな。

 

テーマは

 

 

 

 

 

 

「新しい仲間」にしよう。

 

 



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18話

こんにちは、現在circleで練習中のAXELL一行です。

 

なぜcircleで練習しているかというと、茜ちゃんの機材がまだ届いてないからだ。

 

故にcircleで機材を借りて練習している。

 

ついでに他のバントやまりなさんとの交流も兼ねていて現在練習という名のプチライブ状態である。

 

「いやー、やっぱ茜ちゃんが入ってくれて良かったね!前より世界観がはっきりした!」

 

「だな!前は良い意味で無骨な感じだったけど今回はThe AXELLって感じだ。」

 

「茜ちゃん、大丈夫か?息上がってるけど。」

 

「だっ、大丈夫…です!」

 

やはり管楽器は肺活量がないと困難な一面があるな。

練習はいいが、本番の事を考えると3曲が限界だな。

 

「すみません、私運動が苦手で…」

 

「仕方ないよ。人それぞれだし、逆に蒼二みたくアスリート馬鹿だったらビビる」

 

「うんうん!茜ちゃんはそのままでいいんだよ!」

 

そうだ。脳筋なったら終いだぞ?

 

「うるせ!脳筋で何が悪い!?」

 

そうやって調子に乗るところだよ。

 

そう思ったがグッと抑えた。

ケンカなんかしてる暇はアイツらにはないからな。

 

次のライブは……2週間後、circleで行われる。

機材が届くのが1週間後である。

 

茜ちゃんが新しい機材に早く慣れるのを祈るばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「野村君!ちょっと良いかな?」

 

唐突にまりなさんが俺に声を掛けてきた。

 

ちょうど練習も終わったところなので各々解散ということで散ってもらった。

 

で、用とはなんだろうか?

 

「えっと、来週の水曜と木曜にちょっと出勤して欲しいんだけど……ダメかな?」

 

珍しい、俺に出勤要請が出るということは……

 

機材の搬入かメンテナンスですか?

 

「えっと……両方、かな?」

 

疑問形じゃなくてもいいんだが……

彼女なりに気を使ったのだろう。

 

了解しましたと伝えると詳しい予定はチャットで送られてくるそうなのでそのまま俺は帰宅する事にした。

 

 

 

 

 

 

俺は帰ってきて、次のライブで使う機材のメンテナンスをしている。

 

セトリの内容的にジャンルがバラバラなので1曲に1本変えるという忙しい内容になりそうだ。

 

それにしても……これは1度機材整理をしないと面倒だな。

 

ギターだけでも100はあるし、アンプも50ちかくある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。印税で倉庫を建てて専属の管理人を雇おう。

 

それがいい使い道だと思った俺は、その勢いでマネージャーに連絡して、近くの土地と良さそうな倉庫を探してくれと頼んだ。

 

流石のマネージャーも驚きを隠せなかったようだが、知り合いにその界隈の人が居るらしく連絡してくれるそうだ。

 

いやー、楽しくなりそうだな。

 

 

あっ、まりなさんから連絡きた。

 

えーっと、機材搬入はマーシャルのJVM……と

修理はJCを3台か。

 

この2台の名前を聞くとthe スタジオって感じだな。

 

報酬は5万……日払いで5万てやばいな。

 

 

 

とりあえず修理する為の工具箱を用意しておけばいいか。

 

後は必要に応じて召使い(脳筋)をこき使うからな。

 

さてと、来週は鬼忙しいな。

 

とりあえず、寝溜めとくかな。

 

それに合わせて今週の予定を変えて、俺は就寝することにした。

 

 

 

 

 

 

 

そして、無事に機材が届いた。

 

開封の儀を行い。出てきたのは丁寧に包装された機材達。

 

茜ちゃんは目がキラキラしていた。

 

モチベーションが上がった茜ちゃんの勢いを活かしそのまま練習を始めた感想なんだが。やはり最新の機材は出来ることの幅が広く今回俺の奏でたい演奏が完璧に仕上がった。

 

ここまで出来が良いと、もう感極まるな。

 

「大規、確か明後日と明明後日はバイトだよな?俺らで練習した方がいいか?」

 

蒼二が真面目な顔で聞いてきた。

 

それでも良いのだが、皆かなり仕上がっているので個人練習にしようと俺は思っている。その方がプライベートの予定も立てやすいだろうからな。

 

「分かった、それで行こう。」

 

「じゃあ練習続けようぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

そして、バイト当日。

 

時刻は朝8時。俺は必要な荷物を確認、その後戸締りをして家を出た。

 

今日は力仕事も多いだろうから3日程前から体を動かし調整をしていたので差程苦労もしないだろう。

 

恐らくだが受付もするはずなので作業者と普段着の2着持って来た。

 

無口な俺が受付?…と思った方も居るだろう。

 

安心してください。

 

circleに今日来る予定のバンドはRoseliaとafterglowだけ。この2組は俺と念話出来るし顔見知りなので全く問題ない。

 

午後からは機材搬入の為半日休業だ。

 

 

 

 

 

「おはよう野村君!」

 

おはようございます。本日はよろしくお願いいたします。

 

「早速だけど、受付お願いできるかな?afterglowを待たせちゃうから!」

 

あらあら、それは不味いな。

 

俺は受付に向かい。レジの確認と備品の確認をして。afterglowを呼んだ。

 

「今日は大規さん出勤なんだ。」

 

「珍しいですね〜」

 

まぁ、ここ入るの3ヶ月ぶりだしな。そう思われてもおかしくないか。

 

「そうだ、後で演奏聴いてよ。プロの評価が聞きたい。」

 

別にいいけど、お前らはかなり完成されてるから言えることほぼないぞ。

 

「そんな事ない。まだまだ成長してみせるから。」

 

「私達蚊帳の外なんだけど!私も大規さんとお話したい!」

 

「ごめん、あたし達に言えることなんて無いと言われたからさ。」

 

「大規さんにそこまで言って貰えるのは素直に嬉しいことだよ!」

 

とりあえず俺はひまりを宥めるつもりで頭を撫でた。

4人からの視線が怖いけどな。

 

「ふぇぇ!」

 

ひまり、それは松原のアイデンティティが失われるからやめなさい。

 

「だってさひまり。」

 

「むー、大規さん!声を聞かせて下さい!」

 

ひまりが急に我儘を言い始めた。

 

しかし、俺は首を横に振る。この声はもう安売りは出来ないんだ。

このキャラクターを貫くことが今のAXELLを繋げていると言っても過言ではない。

 

「蘭!どうやったらテレパシー使えるの!?」

 

「なんでムキになってるのさ、やっぱり長く一緒にいることが1番の近道かな。自然と出来るようになったし。」

 

「まぁまぁひまり。そう言わずに練習するぞ!」

 

さすが巴、ナイスフォローだ。

 

「とりあえずスタジオ入ろうよ。大規さんにも早く聴いて欲しいし。」

 

と言いながら5人はスタジオへ入っていった。

 

予定ではあと20分後にRoseliaが来るはずだ。

俺の勝手な予想だが、紗夜さんが10分前に到着するな。

 

「あら?今日は野村さんが受付なの?」

 

臨時のバイトだから今日だけだよ〜。

 

「そうなの。あっ、ちょうど聞きたい事があったんです。」

 

紗夜さんが思い出したように俺に質問を投げてきた。なんだろ?

 

「実はこのフレーズを少し手を加えたいのだけれどアイデアが浮かばないのよ、何かいい案はないかしら?」

 

紗夜さんが見せてきたのは演奏中あまりギターが目立つところでは無いフレーズだった。この楽曲、キーボードがリードしてギターはバッキングメインの内容になっている。

 

参考程度にどういう感じにしたいのか聞くと。

 

「リズムを取りつつ、少し目立つ感じにしたいの。」

 

成程、だったらブリッジミュートしつつリフを取り入れたフレーズにしたら面白いかもな。

 

俺は受付の脇にあったギターを取り、チューニングをサッと合わせてアイデアをそのまま演奏した。

 

「それは考えてなかったわ、5人にも言ってみますね。」

 

紗夜はにこやかになり、俺もついにやけてしまった。

彼女の笑っているところはつい前までは滅多に見られなかったからな。

 

「紗夜、早いわね。…あら?」

友希那も来たみたいだな。

 

「今日はバイト?」

 

俺は頷き、ほかの3人の事を聞いた。

 

「外にいるわ先に受付を済ませに来たの。」

 

成程、じゃあRoseliaは1番のスタジオに入ってもらうことにしよう。

 

「あー!ノムさんだ!」

 

「大規?珍しいね。」

 

どうやら3人も来たようだ。

 

「早速使わせてもらうわね。」

 

そう言ってそそくさとスタジオへ入っていった。

相変わらずストイックな事で。

 

とりあえず、この後は2時間暇だから今のうちにサッと1台治しておくかね。

 

 

 

 

どうやらイコライザーのポットの調子が悪いみたいだな。かなり使い古されてるから1度新品に交換したら調子は良くなった。

 

あと2台はジャックの線がちぎれ掛けてただけなので直ぐに戻った。

 

まさか2時間以内に終わるとは思わなかったよ。

 

まりなさんにも報告して、残るは最大の難関アンプの移動か。

これまたキャビネットはキャスターがあるから楽だがアンプがやたらと重いんだよな。

 

まっ、その前に2バンドの受付を終わらせようと向かうと。

 

「……」

 

「……」

 

いつもの2人が睨み合っていた。

 

あれー?時間調整してかち合わないようにしたはずだけどな。

 

「練習がおもいのほかすすんだのです早めに撤収して自主練になったのよ。」

 

成程。

 

「湊さん、その言い方はないんじゃないですか?」

 

「私は正しいと思ったことを言ったまでよ。」

 

「蘭やめろって!」

 

「友希那も!」

 

巴とリサが割って入ろうとしているが中々止まらないらしい。

 

はあ…、問題児は手がかかるな。

 

俺は無理やり2人の中に割って入った。

 

「大規さん、どいてください。」

 

「そうよ、貴方は下がっていて。」

 

下がるのはお前らの方だ。決闘ならライブでしろ。と訴える。

 

「けど!」

 

蘭は食い下がる。ほんとこの子は…。

 

内容は知らないがお互いのやり方に共感できないのが原因だろうな。

しかし、どっちも間違いではない。

 

いつも通りの練習も、頂点へ行くためのハードな練習も、どちらも必要な事だと思うしな。

 

AXELLはこのどちらもやっている。

 

だから、どっちも悪くない。

 

「……分かった。」

 

「……そうね、失言だったわ。ごめんなさい美竹さん。」

 

「いえ、私も言いすぎました。」

 

「すご、2人を止めちゃった。」

 

「どちらの気持ちが分かる大規さんにしか出来ないからな。」

 

俺は、Roseliaもafterglowも凄いバンドだと思うよ。

 

「そう、ですか。」

 

さてと、止めた所で俺は店前に1台のワゴン車が駐車いるのが見えた。恐らく機材を載せた車だろうな。

 

俺は倉庫から台車を取り出し、車へと向かう。正直マーシャルを載せるのは心もとないが慎重に移動すれば問題ないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、無事に設置を完了して、俺は報酬をもらいお役御免となった。

 

今は贔屓にしている静かなカフェでコーヒーを嗜んでいる。

 

ライブは目前なのに呑気にしていていいのかって思われるかもしれない。しかしライブ前だからこそこうやって落ち着いていたいのだ。

 

 

思えば、茜ちゃんは初ライブだったな。

 

俺は茜が緊張しているのが少し心配だったのでちょっと呼んでみることにした。

 

 

「こんばんは!」

 

ちびちびコーヒーを飲んでいると、茜ちゃんが話しかけてきた。

 

いつの間にか挙動も安定して、俺の心の声も聞こえるようになった。

 

この子は要領が良いのは練習している時に分かってはいたが、いやはや原石だったな。

 

緊張してる?

 

「はい…、ライブは初めてなんです。」

 

俺はコーヒ牛乳を差し出し、こう言った。

 

俺も、初めてライブした時は今の茜ちゃんと同じくらい緊張してたと思う。でもそれも1曲やったら楽しくなるから、肩の力抜いてゆったり構えてたらいいよ。

 

「そう、ですかね?」

 

大丈夫、俺が保証する。俺達が背中支えてやるから、ライブを楽しもうぜ。

 

「…はい!」

 

茜ちゃんはニッコリ笑ってそう答えた。

 

この子は、きっとAXELLの一番星になる。

 

そう思った。

 

その後俺は支払いを済ませて茜ちゃんを家まで送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ライブ当日

 

俺達は新たな歴史を刻むためライブハウスへと足を向けた。

 

 

 

 

 

 



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