リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生 (M.T.)
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プロローグ
プロローグ 前編


入学した者は、未来を約束される『希望ヶ峰学園』。

 

あたしは、『超高校級の幸運』として希望ヶ峰学園に入学する事になった。

 

今日は入学式。あたしは、校門へと一歩踏み出した。

 

きっと、今までとは違う…輝かしい学園生活を送れるー

 

ーそう思っていたのに。

 

 

 

 

 

「…ん?あれ…?…えぇええええええ!!?」

 

校門の前にいたはずのあたしは、何故か見知らぬ部屋の机に突っ伏していた。

 

「え?あれ?ちょちょちょ、ちょっと待って!?え!?これどうなってんの!?待って、ここに来るまでの記憶無いんデスケド!?ってかどこよここ!!」

 

慌てながらもあたりを見渡すと、どうやら教室らしい。

 

…何の目的かはわからないが、窓には鉄板がボルトで打ち付けられている。

 

「あー…なるほどね、防犯対策ですか。いやー、セキュリティが行き届いてますわ〜…ってェ!!そんなワケあるかぁ!!どう見ても監禁じゃねーか!!どうなってんのマジで!!」

 

一人で慌てふためいていると、ポケットから入学案内の紙が落ちる。

 

「…あ、いけない。」

 

そこには、汚い字とイラストが描かれていた。

 

『心機一転、これからはこの学園がオマエラの新しい世界となります。』

 

「…学園?ああ、そうだ入学式!…って事は待てよ?ここは希望ヶ峰学園なのか?ここ教室っぽいし…いや、でもこの雰囲気は明らかに監禁!!」

 

混乱しながらも読み進める。

 

『新入生は8時に玄関ホールに集合』

 

ふと時計を見ると、8時を過ぎている。

 

「いや過ぎてんじゃねーか!!そもそも玄関ホールってどこかわかんないし!…適当に教室出て歩くか?いやでもしかし、あたし方向オンチじゃんかー!!」

 

「考えろ、夏川メグ!あたしは一体どうしたらいいんだー!?」

 

 

 

ガラガラ…

 

教室のドアが開く。開けた本人は、ドアの影に隠れているようだ。

 

「誰!!?出て来なさいよ!!」

 

思わず身構える。

 

「落ち着いて、君、新入生だろ?僕も同じなんだ。」

 

ドアの影から小柄な少年が現れる。

 

警戒しながらも、話しかける。

 

「…あたし、夏川 メグ。君は?」

 

「僕は、法正 良馬(ホウセイ リョウマ)。『超高校級の軍師』だよ。…1人ホールに来ていない新入生がいるみたいだったから、探しに来たんだ。こんなに早く見つかるとはね。ホールまで案内してあげるよ。付いてきて。」

 

法正と名乗る男の子に、ついていく事にした。

 

「…ありがとう。案内よろしく。」

 

 

廊下は、教室と同じように異様な感じだった。

 

「そういえば、君の才能を聞いてなかったね。君は、どんな才能を持っているのかな?」

 

「『超高校級の幸運』って入学案内には書いてあったけど?」

 

「…ああ、抽選で1人普通の高校生が選ばれるっていう…」

 

「失礼な!…あたし、ただのJKじゃないから!」

 

「ごめん。怒らせるつもりは…あ、着いたよ。」

 

目の前には、扉があった。

 

開けると、そこには14人集まっていた。



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プロローグ 中編

玄関ホールに入ると、法正君の他に14人の新入生が集まっていた。

 

8時に集合と書いてあったのを思い出したあたしは、集合に遅れた事を詫び、自己紹介をした。

 

「えっと…遅れてごめんなさい。あたしは、『超高校級の幸運』夏川 メグです。」

 

「君が16人目の新入生かい!?」

 

 

大柄の、応援団員風の男子生徒が声をかけてきた。

 

「オレは、『超高校級の応援団長』九十九 百三(ツクモ モモゾウ)!!よろしくな!!!」

 

「彼は、どんなに不利な試合も、選手達を鼓舞して逆転勝利に導いてきたという応援団長だよ。」

 

法正君が補足説明をしてくれた。

 

「夏川君!!いい名前じゃないか、なんかエネルギッシュな感じだぜ!!!」

 

(あっ、この人熱血系だ…話が盛り上がらないうちに逃げよう…)

 

 

続けて、ツインテールの女の子が話しかけてきた。

 

「ねえねえ、こんな所にいたら気が滅入っちゃうよね。歌ってリフレッシュしようよ!」

 

「…君は?」

 

「あっ、私は『超高校級の歌姫』奴目 美羽(ヤツメ ミウ)だよ!」

 

(奴目 美羽…聞いたことあるな。確か、自慢の歌声とダンスで世界中を魅了した歌姫…だっけ。)

 

「メグちゃん、だっけ。」

 

「そうだけど。」

 

「じゃあ…メグメグって呼ぶね!よろしくね、メグメグ!」

 

(明るい子だな…)

 

 

そばかすが特徴的な男の子が話しかけてきた。

 

「アンタ、新入生か?初っ端から遅刻はアカンで?」

 

「ごめん。寝坊して…君は?」

 

「オレは『超高校級の芸人』明石 大吉(アカシ ダイキチ)や!テレビで見た事あるやろ?」

 

(…ああ、去年の大喜利大会で優勝した…)

 

「知ってるよ。大喜利大会で優勝してたね。面白かったよ。」

 

「ホンマ!?おもろかった!?」

 

すごい食いついてきた。しばらく話をしてから、個性的な髪型の男子生徒に話しかけてみた。

 

 

「なあ、ネーちゃんいいケツしてんな。」

 

ガツンッ

 

「痛ってえ!!」

 

頭にきたので、一発殴ってやった。

 

「…悪かったって!オレは『超高校級の芸術家』佐伯 虎太朗(サエキ コタロウ)だよ。」

 

「数々の芸術作品を生み出し、世界中から注目を浴びるアーティスト。どうやら、実力だけじゃなくてセクハラ男っていうのも噂通りのようだね。」

 

法正君が嫌味を言う。

 

(…なんで法正君が怒ってるんだ?セクハラされたのはあたしなのに。)

 

 

「とりゃあ〜〜!!コトちゃん参・上!!」

 

髪がボサボサの女の子が、頭上から降ってくる。

 

「びっくりしたぁ…」

 

「ボクを忘れないでよね!!ボクは、『チョーコーコーキューのケンポーカ』小林 功里(コバヤシ コトリ)なのだ!!」

 

「小林さんは拳法を習い始めてからわずか2年で全国優勝を果たした天才拳法家で、元は地元で有名なヤンキーだったんだって。」

 

「カコなんてどーでもいいのだ!!コトちゃんは、チキューのヘーワを守るために、キョーもシュギョーチューなのだ!!」

 

呆気にとられていると、長髪の女子生徒と綺麗な顔立ちの男子生徒がやってきた。

 

 

「ご機嫌よう。(わたくし)、『超高校級の令嬢』金剛寺 恵麗奈(コンゴウジ エレナ)と申しますわ。こちらは、『超高校級の執事』銀杏田 冷(イチョウダ レイ)。私の執事ですわ。」

 

「はじめまして、夏川様。」

 

銀杏田君は、ゆっくりと頭を下げた。

 

「金剛寺さんは、金剛寺財閥のお嬢様で、銀杏田君は、なんでも熟せる完璧執事だよ。」

 

「あっ、ど、どうもよろしく…」

 

金剛寺さんから漂う高雅なオーラに、ついたじろいでしまった。

 

「普通にして頂いて構いませんわ。(わたくし)は、ありのままの庶民とお話ししてみたいのですわ。」

 

(あ、この人典型的なお嬢様タイプだ…)

 

一歩引くと、後ろにいた生徒とぶつかってしまった。

 

「ぎゃうっ!ご、ごめんなさい!」

 

 

「いいんですよ、空けていた私にも非がありますから。全ての罪を赦せ、と主は仰っています。」

 

長髪の男子生徒は、優しく微笑みかける。

 

「申し遅れました、私は『超高校級の聖人』ミカエル・黒須 聖(ミカエル クロス ヒジリ)と申します。…貴女は、穢れのない目をしていますね。きっと、主も喜んで貴女をお救いになるでしょう。是非、私と一緒に祈りを捧げてみませんか?」

 

「言い忘れてたけど、黒須君は熱心なカトリック信者で、隙あらばすぐに入門勧誘してくるよ。」

 

「信じる者は救われます。さあ、共に祈りましょう!」

 

「遠慮しときますー!」

 

逃げるように黒須君から離れると、小柄な女の子に怒鳴られた。

 

 

「貴様ら、喧しいぞ!茶でも飲んで静かにせんか!」

 

女の子は、床に風呂敷を広げ、その上に正座してお茶を飲んでいる。

 

(見かけによらず図太いなこの子…)

 

「君は?」

 

「すまん。申し遅れた。余は『超高校級の茶道部』千葉崎 利夢(チバサキ リム)じゃ。」

 

「千葉崎さんは、一度飲んだらその味を忘れられない程おいしいお茶を淹れる茶道の名人なんだって。」

 

「…全く、ここには騒がしい奴しかおらんのか。せっかくの茶がまずくなるではないか。」

 

「こんなところでお茶飲める君の方が変わってると思うけど…。っていうかどこから持ってきたのそれ…」

 

「茶をくれと言ったら出てきた。」

 

(ええ…知らない人に出されたもの飲んじゃうんだ…)

 

色々ツッコミたい事は満載だったが、とりあえず近くにいた白衣を纏った男子生徒に話しかけてみた。

 

 

「はじめまして。君の名前を教えてくれないかな?」

 

「僕の名前は宇田川 譲治(ウタガワ ジョウジ)、『超高校級の化学者』です。どうぞお見知り置きを。」

 

宇田川君は、眼鏡を上げながら答えた。

 

「あ、“カガク”と言ってもサイエンスの方ではありませんよ。ケミストリーの方ですからね。」

 

「どっちでもいいよ!あたし理科ニガテなの!!」

 

「…なんと、実に不愉快だ。」

 

宇田川君が不快そうな顔をする。どうやら理科がニガテというのが地雷だったらしい。

 

これ以上話しても埒があかないと思ったので、近くにいたおさげの女子生徒に話しかけてみた。

 

 

「はじめまして。君の名前は?」

 

「…話してあげてもいいけどさ、だったら金目の物よこしな!」

 

女子生徒は、高圧的な態度でお金をせびってきた。

 

「彼女は、『超高校級のネイリスト』真樹 亞里沙(マキ アリサ)さん。SNSで話題沸騰中のネイリストだよ。」

 

法正君が代わりに説明してくれた。

 

「ちょっ、テメェ!金ヅルをよくも…」

 

「話す気がない人の代わりに説明してあげたんじゃないか。君こそなんだその態度は。初対面の同級生に対して金ヅル、は無いんじゃないの?」

 

「や…やめてよぉ…もうしないからそんなに責めないでよぉ…」

 

法正君が矢継ぎ早に責め立てると、真樹さんは泣きじゃくり始めた。

 

(案外メンタルお豆腐なんだな、この人…)

 

「法正君、もう反省してるみたいだし、その辺にしてあげたら?」

 

「そうだね。じゃあ、行こうか。夏川さん。」

 

 

ホールの隅で蹲っているフードを被った女の子に話しかけてみた。

 

「はじめまして。君の名前は?」

 

ガタッ

 

女の子は、後ずさりをして壁にもたれかかる。

 

肉食獣を目の当たりにした小動物のように怯えきっている。

 

「ごめん、おどかすつもりはなかったんだけど…大丈夫、怖くないから。ゆっくりでいいから、自己紹介してくれる?」

 

女の子はゆっくりと話し始める。

 

「あ…相浦(アイウラ)…つぐみ…です…ちょ…『超高校級のエンジニア』って呼ばれてます…」

 

「相浦さんは、小学生の時に数字の未解決問題を証明した天才で、腕利きの技術者なんだ。」

 

「…臆病なのが玉に瑕だね。」

 

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい…!…わ、私、昔から度胸がないって言われてて…すみません…!」

 

(しまった、地雷踏んだ…)

 

「ごめんね。これから一緒に学園生活送っていけば、そのうち色々慣れてくると思うから。じゃあ、あたしそろそろ行くね。」

 

「…は、はい…」

 

相浦さんを宥めてから、近くにいた髪と肌が真っ白な女の子に話しかけてみた。

 

 

「はじめまして。君の名前は?」

 

「…気安く話しかけるな。死にたくなければ黙ってろ。」

 

女の子は、猛禽類を思わせる目つきで睨みつけ、冷たく言い放つ。

 

「彼女は、『超高校級の処刑人』アナスタシア・パリンチェさんだよ。えっと、ベラルーシ出身って言ってたかな。処刑人の才能がどんなものかは知らないけど、とにかく語学が堪能なんだ。みんなからは『アーニャ』って呼ばれてるよ。」

 

「…フン。」

 

「よろしくね、アーニャちゃん。」

 

「アーニャって呼ぶのやめろ。明石に勝手につけられたあだ名だけど、正しい略称じゃない。不愉快。今すぐやめろ。」

 

(明石君か…あの子なら変なあだ名つけそう…)

 

 

アーニャちゃんが話してくれなくなったので、最後に、14人の中で一番異様な雰囲気を醸し出す男子生徒に恐る恐る近づいてみた。

 

「ん〜〜〜?」

 

いきなり、男子生徒が顔を覗き込んできた。

 

「君、ホントに真っ直ぐな眼をしてるね。いいね…そういう眼。俺は、そういう奴を搔っ捌くのが大好きなんだ…♡」

 

「…気持ち悪い事言わないで。君の名前は?」

 

「俺は、『超高校級の死刑囚』魅神 嶽人(ミカミ タケヒト)だよん♪シクヨロ〜。」

 

魅神君が握手を求めてきた。

 

「…よろしく。」

 

魅神君は、気色の悪い笑みを浮かべた。魅神君と握手をしてから、即座に彼から離れた。

 

 

その瞬間、チャイムが鳴り響く。

 

キーンコーンカーンコーン

 

ホールの壁に掛けられていたモニターに、丸い影が映し出される。

 

『あー、マイクテスッ、マイクテスッ!ちゃんと聞こえてるよね?新入生の皆さん、今から入学式を執り行いたいと思いますので、至急体育館までお集まりくださ〜い』

 

「何よこの胡散臭い放送…」

 

「罠かもしれません。迂闊に行動しない方が良さそうですね。」

 

「余はこんな変な声の奴の言う事など聞きとうないわ。」

 

真樹さん、宇田川君、千葉崎さんは体育館に向かうのを渋った。

 

「みんな、いつまでもこんなところにいたって、状況は何も変わらないよ!!罠かもしれない…でも、少なくともずっとここにいるよりは、行ってみたほうがいいよ、多分!!」

 

気づけば、口が動いていた。

 

あたしに続けて、法正君も言った。

 

「何かする気なら、とっくにそうしてるよ。どっちみち怪しいのは同じなんだから、ここに残ったって何の得にもならないよ。…この状況を理解するためにも、行ってみる価値はあると僕は思うけどね。みんなはどうしたい?」

 

「…確かにその通りですね。何もわからないままなのは気持ち悪いですし、行きましょう。」

 

「仕方ないのお、余も行くぞ。」

 

「え、ちょっ、ちょっとぉ!置いてかないでよぉお!」

 

全員、玄関ホールを出て体育館へ向かった。



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プロローグ 後編

全員が、体育館に集合した。

 

『オーイ、全員集まった〜?それじゃあ、そろそろ始めよっか!!』

 

その直後、ステージ中央に置かれた教壇の上に、白黒のクマのぬいぐるみが出てきた。

 

「ぎゃああああああ!!?ヌ、ヌイグルミが動いた!?」

 

「気持ち悪いよぉお…」

 

佐伯君と真樹さんがヌイグルミを気味悪がる。

 

『失礼な!ボクはヌイグルミじゃないよ!モノクマだよ!この学園の、学園長なのだ!あ、この校舎自体は分校だけどね〜。』

 

「分校…?ねえ、今分校って言った?」

 

法正君が咄嗟に質問する。

 

『うん、ちょっと色々あってね。キミたちには分校に移って貰ったのだ!!』

 

全員が状況を飲み込めない中、モノクマは高らかに挨拶をした。

 

『じゃあ、気を取り直して…えー、ではではっ!起立!礼!オマエラ、おはようございます!』

 

「おはようございます!!」「おはよー!」「おはようございます。」「ご機嫌よう。」「おはようございます。」「おっは〜♫」

 

九十九君、小林さん、銀杏田君、金剛寺さん、黒須君、魅神君は律儀(?)に挨拶を返した。…魅神君については、単なるおふざけだろうけど…

 

(なんなんだ、この人たち…)

 

 

『では、これより記念すべき入学式を執り行いたいと思います!まず、これから始まるオマエラの学園生活について一言…オマエラのような才能溢れる高校生は、『世界の希望』に他なりません!そんな素晴らしい希望を保護するため、オマエラには…『この学園』だけで生活を送ってもらいます!みんな、仲良く秩序を守って暮らすようにね!』

 

「た、ただの悪ふざけに決まってんだろ…」

 

佐伯君は、冷や汗をかきながら言った。

 

『ボクの言葉が本当かどうかは、後でオマエラ自身が確かめてみればいいよ。そうすればすぐにわかるから。』

 

「そんな、これからピアノのレッスンがございますのに…すっぽかしたらお父様に怒られてしまいますわ。」

 

金剛寺さんが、心配そうに言った。

 

(今そんな事気にしてる場合か!!この脳内お花畑お嬢様が!!)

 

『そんなに外に出たいの?この学園に望んで入ってきたのはオマエラなのに?…まあでも、ない訳じゃないよ。ここから出る方法。』

 

「え!?なになに!?」

 

真樹さんが食い気味に聞く。

 

『学園から出たい人のために、特別ルールを設けたよ!オマエラは、これから「秩序を守った生活」を始める。もし、この秩序を破ったら、この学園から出て行ってもらう。これが、『卒業』ルールだよ!』

 

「具体的には、どうしたら秩序を破った事になるんだい?」

 

法正君が質問をする。

 

『うぷぷ…それはね…』

 

 

 

『人を殺す事だよ。』

 

その場にいたほぼ全員が、驚いて顔を青くした。

 

平然としていたのは、アーニャちゃん、銀杏田君、黒須君、魅神君の4人だけだった。魅神君に至っては、むしろ上機嫌だ。

 

『どんな殺し方でもいい。「誰かを殺した生徒だけがこの学園から出られる」それが、『卒業』のルールだよ。』

 

「…実に不愉快ですね。そんな事を言って、一体何が目的なんです?」

 

宇田川君が質問する。

 

『ボクはね、楽しみたいんだ。「希望」同士が殺しあう、「絶望的」シチュエーションをね!』

 

「ふざけるな!どうしてオレたちが、同胞を殺さねばならんのだ!!!」

 

九十九君が怒りを露わにする。

 

『うるさいなあ、とにかく殺し合いをすればいいんだよ!!』

 

「さっきからムカつくな、この白黒オモチャが!そんなに殺しが好きなら、まずはテメェからブッ潰してやんよ!!」

 

佐伯君が、モノクマを掴み上げる。

 

『キャー!学園長への暴力は、校則違反だよ〜ッ!?』

 

 

ピピピピ…

 

モノクマから妙な機械音が出る。

 

「あ、あぶない…!…は、離れて…!」

 

相浦さんが、珍しく声を張り上げて叫ぶ。

 

「!!?」

 

佐伯君が、咄嗟にモノクマを投げる。

 

 

ドカァアアン!!

 

モノクマが空中で爆発した。

 

「ば…爆発したぁあ!?」

 

佐伯君が腰を抜かして驚く。

 

「…ねえ、みんな。アレ。」

 

法正君が舞台袖を指差すと、別のモノクマが出てきた。

 

「テ、テメェ!!いきなりこんなクソトラップ発動させやがって…相浦ちゃんが気づかなかったらオレ死んでたぞ!?」

 

『当たり前じゃん。校則違反するのがイケナイんだよ。今回は特別に警告だけで許すけど、次から気をつけてよね。』

 

「て、てかアンタなんでしれっともう一体出てきてんのよ!!」

 

真樹さんが、ビクビクしながら質問する。

 

『誰もボクが1体だけだなんて一言も言ってないでしょ?モノクマは、学園内の至るところに配置されております。校則違反には、今みたいなグレートな体罰を発動しちゃうからね!』

 

「要するに、僕らは君に攻撃できないし、君の言う事を聞かなければここから永遠に出られない。君が言いたいのはそういう事だろ?」

 

法正君は、確認をする。

 

『さすが法正 良馬クン!理解が早くて助かるよ。じゃあ最後に、ボクからオマエラに入学祝いをプレゼントします!』

 

モノクマは、あたしたちにカードのようなものを配った。

 

『それは、電子生徒手帳です!、学園生活を送る上での必需品になるから、くれぐれも失くさないようにね。豊かで陰惨な学園生活を楽しんでください!それじゃあ、まったね〜!』

 

モノクマは去っていった。

 

「クッソ、あの白黒オモチャ、好き放題言いやがって…!」

 

佐伯君は怒りを露わにする。

 

「ボク、激おこプンプン丸なのだ!!あのクマちゃん、ボクがやっつけていい!?」

 

小林さんは、戦闘態勢を取る。

 

「落ち着いて。そんな事したら、小林さんが体罰を受けちゃうよ。…そうだ、とりあえず電子生徒手帳を確認しよう。」

 

法正君は、冷静にみんなに提案する。

 

配られた生徒手帳を確認すると、あたしの情報が書かれていた。

 

「…この、校則っていうのも読んどかないとね。」

 

1.生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。

2.夜10時から朝7時までを『夜時間』とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

3.就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

4.希望ヶ峰学園及び希望ヶ峰学園分校について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

5.学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます。

6.仲間の誰かを殺したクロは『卒業』となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

7.なお、校則は順次増えていく場合があります。

 

「クッソ、勝手にクソみてェなルール押し付けやがって…」

 

「こんな所でいつまでも生活するのやだよぉ…助けてよママァ…」

 

佐伯君と真樹さんは、不満を漏らす。

 

 

「…あの、一つ気になったのですが。」

 

黒須君が発言する。

 

「この6番の、誰にも知られてはいけない、とはどういう意味なのでしょうか…」

 

 

「…知られたら、消されるのかも。」

 

アーニャちゃんが、口を開く。その一言に、みんなギョッとした。

 

「消されるって、どういう事だよ!?」

 

「さあねー。でも、さっき殺されかけた佐伯クンとかはヤバいんじゃね?迂闊に行動すると、最悪死ぬよー。」

 

狼狽える佐伯君を、魅神君が挑発する。

 

「テメェ、さっきからムカつくんだよ!!こんな状況でヘラヘラしやがって…!!」

 

佐伯君は、魅神君の胸ぐらを掴んで右手の拳を振り上げる。

 

「やめなって!!」

 

体が勝手に動いていた。

 

 

ゴッ

 

気がつくとあたしは吹っ飛ばされて、壁際の床の上に倒れていた。

 

「…あっ、ご、ごめん…わざとじゃねえんだよ…だ、大丈夫か…?」

 

我に返った佐伯君が、あたしを心配した。

 

「夏川さん!!今すぐ手当しないと…!」

 

法正君が、青ざめた顔をしながらあたしを起こした。

 

他のみんなも、なぜか青ざめている。

 

「ふたりとも、あたしなら大丈夫だから…ちょっとハデに転んだだけ…」

 

おでこのあたりにチクチクした痛みが走ったので、おでこに左手を当てると、何やら濡れているようだった。

 

左手を見ると、真っ赤に染まっていた。

 

「え…これってまさか、血…?…ぎぃやああああああああああああああ!!!!!」

 

あたしは絶叫し、意識を失った。



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希望ヶ峰学園分校80期生 生徒名簿

生徒たちのプロフィールです。
そのうち書き換えていくかもしれません。
※ICV変更しました。
挿絵追加しました。
アナログ&撮るの下手クソなんで、見にくいかもしれませんがスルーして頂けるとありがたいです。
(デジタル絵を描くアプリがインストールできないんだよぅ…)



【超高校級の幸運】夏川 メグ(ナツカワ メグ)

 

「あたし、ただのJKじゃないから!」

 

性別:女

身長:165cm

体重:50kg

胸囲:89cm

誕生日:9月15日(おとめ座)

血液型:O型

好きなもの:カッコよくてノれる曲、肉まん

苦手なもの:暗所、血

出身校:三丘第一中学校

ICV:悠木碧

外見:明るい外ハネの茶髪。セミロング。前髪を左側に寄せている。左側の髪の毛を赤いピンで留めている。頭頂部に渦巻状のアホ毛が生えている。瞳は菫色。巨乳。

服装:制服は袖をまくったワイシャツと赤いタータンチェックの入ったグレーのスカート。ピンクのネクタイを着用。腰に茶色いブレザーを巻いている。紫色のソックスと茶色いローファーを履いている。小物類は、両手首の緑と青のブレスレット。

人称:あたし/君/あの人、あの子、みんな/男「苗字+君」女「苗字+さん」モノクマ「モノクマ」例外…アナスタシア「アーニャちゃん」

 

『超高校級の幸運』として抽選で選ばれ、希望ヶ峰学園分校に入学した女子生徒。今をときめく女子高生。超高校級の特技は特に何もないが、本人は自分をやればできる子だと思っている。天真爛漫でひたむきな性格。身体能力が高く決断も早いが、ドジっ子なので空回りする事が多い。男勝りな性格で、興奮すると口調が荒くなる。メンタルは頑丈だが血が苦手で、自分が大怪我をするとショックで気を失ってしまう。方向オンチ。中学生時代に、思った事をすぐに口にしてしまうせいでクラスメイトの女子からいじめられた経験があるためか、他人との会話の時は少し慎重になっている。

名前は、「明るくて元気いっぱいな感じの名前」。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【超高校級の軍師】法正 良馬(ホウセイ リョウマ)

 

「『夫れ用兵の道は、人の和に在り』僕の尊敬する諸葛亮孔明の一番好きな名言だよ。」

 

性別:男

身長:158cm

体重:44kg

胸囲:72cm

誕生日:3月20日(うお座)

血液型:AB型

好きなもの:中国史、春巻き

苦手なもの:運動

出身校:慧政学院中等部

ICV:渕上舞

外見:髪は空色に近い銀髪。セミロングの髪を一本結びにしている。瞳は明るい青。中性的な体格。よく女の子に間違われる。

服装:ワイシャツの上にクリーム色のカーディガン。焦げ茶色のスラックスと、金色の金具の付いた黒い革靴を着用。

人称:僕/君/あの人、みんな/男「苗字+君」女「苗字+さん」モノクマ「モノクマ」

 

IQ200越えの天才少年。全国模試では毎回満点を取っており、頭を使うゲームで負けた事がない。内閣総理大臣に行政についての意見を手紙で送り、その意見が採用されたという伝説を持つ。『超高校級の策略家』とも呼ばれる。カリスマ性も富んでおり、彼の助言には、どんな権力者でも従いたくなるという。その圧倒的な頭脳・知識・カリスマ性から、『超高校級の軍師』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。頭脳がずば抜けている一方、運動オンチで、体力は中学生女子以下。普段は温和な性格の好青年だが、人を論破する時は容赦しない。ちなみに左利き。

名前の由来は、中国後漢末期の政治家「法正」と「馬良」から。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

【超高校級の芸人】明石 大吉(アカシ ダイキチ)

 

「アンタ、新入生か?初っ端から遅刻はアカンで?」

 

性別:男

身長:169cm

体重:57kg

胸囲:79cm

誕生日:7月28日(しし座)

血液型:O型

好きなもの:バラエティ番組、たこ焼き

苦手なもの:親父ギャグ、塩辛い料理

出身校:吉友中学校

ICV:梶裕貴

外見:暗い茶髪のベリーショート。瞳は茶色。褐色肌で、そばかすあり。太眉で童顔。

服装:白いワイシャツにダークグレーのブレザー。赤いネクタイを付けている。ダークグレーのスラックスと、黒と白を基調としたスニーカーを履いている。

人称:オレ/アンタ、お前/アイツ、みんな/男女共に苗字呼び捨て。モノクマ「モノクマ」例外…アナスタシア「アーニャ」

 

小学生の時にテレビに出演し、日本中を笑いの渦に飲み込んだ天才芸人。中学2年生の時に、大喜利大会に最年少で優勝している。そのネタのセンスと鍛え抜かれた会話力から、『超高校級の芸人』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。大阪出身で、関西弁で話す。趣味で野球をやっているため、日焼けしている。気さくで社交的な性格だが、しょうもない親父ギャグを聞くとマジギレし、笑いに一切妥協できなくなる。童顔が悩み。アナスタシアに、アーニャというあだ名をつけた。

名前の由来は、某大物芸人お二方から。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【超高校級の歌姫】奴目 美羽(ヤツメ ミウ)

 

「ねえねえ、こんな所にいたら気が滅入っちゃうよね。歌ってリフレッシュしようよ!」

 

性別:女

身長:158cm

体重:42kg

胸囲:78cm

誕生日:8月31日(おとめ座)

血液型:B型

好きなもの:歌、葱

苦手なもの:蒸し暑い場所

出身校:丘路音楽大学付属中学校

ICV:藤田咲

外見:エメラルドグリーンの髪を小豆色のリボンで肩までつく長さのツインテールにしている。瞳は明るい青。色白。

服装:袖がフリル状のブラウスの上にグレーのベストとエメラルドグリーンのネクタイ。白いフリル付きの黒いミニスカートと黒いニーソックスとエメラルドグリーンの靴を履いている。小物類は両手首のエメラルドグリーンのブレスレット。

人称:私/キミ/あの子、あの人、みんな/メグ「メグメグ」良馬「リョー君」大吉「ダイちゃん」百三「つくもも君」功里「コトちゃん」虎太郎「コタちゃん」聖「ひー君」恵麗奈「レナっち」冷「レイ君」利夢「りむりむ」譲治「ジョージ君」つぐみ「つぐみん」亞里沙「リサっち」アナスタシア「アーニャちゃん」嶽人「タケちゃん」モノクマ「学園長」

 

自慢の歌声とダンスで世界中を魅了した歌姫。動画投稿サイトに投稿した歌ってみた動画が話題となり、一躍有名となった。その歌唱力から、『超高校級の歌姫』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。明るくノリのいい性格なので知らない人ともすぐに打ち解ける事ができるが、無自覚で毒を吐く事があるため、一部の人間からは恐れられている。熱狂的なファンが大勢おり、もはや崇拝の対象となっている。髪のセットには2時間かけているらしい。

名前は、「某電脳の歌姫に似てる発音の名前」。

 

 

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【超高校級の応援団長】九十九 百三(ツクモ モモゾウ)

 

「そんな簡単に諦めるんじゃない!!もっと熱くなれよ!!!」

 

性別:男

身長:198cm

体重:108kg

胸囲:128cm

誕生日:5月5日(おうし座)

血液型:A型

好きなもの:応援歌、白米

苦手なもの:雨

出身校:五右衛門中学校

ICV:乃村健次

外見:ダークグレーの坊主頭。瞳は赤色。眉毛の先端が広がっている。筋肉質で大柄。褐色肌で、強面。

服装:必勝と書かれた長い鉢巻を着用。浮世絵風のデザインのTシャツと黒いジーンズの上に赤い炎がデザインされた、丈の長い白い学ランを羽織っている。下駄を履いている。

人称:オレ/君、お前、貴様/アイツ、みんな/男女共に「苗字+君」or名前呼び捨て。モノクマ「学園長」

 

どんなに不利な試合も、選手たちを鼓舞し、逆転勝利へと導いてきた応援団長。そのエネルギッシュな応援とチームの統率力から、『超高校級の応援団長』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。暑苦しいほどの熱血漢。情に厚く、涙もろい。仲間想い。幼稚園の頃から同級生がピンチの時は応援で気持ちを奮い立たせるリーダー的存在だったという。力持ちで、力仕事が得意。礼儀正しく、律儀な性格。たまに天然ボケな言動が見られるが、普段は意外と常識的。

名前は、「見た感じ暑苦しそうな名前」。

 

 

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【超高校級の拳法家】小林 功里(コバヤシ コトリ)

 

「とりゃあ〜〜!!コトちゃん参・上!!」

 

性別:女

身長:154cm

体重:45kg

胸囲:97cm

誕生日:8月12日(しし座)

血液型:O型

好きなもの:肉料理、必殺技

苦手なもの:本

出身校:怒羅言中学校

ICV:千葉千恵巳

外見:オレンジ色のボサボサの髪。アホ毛が生えている。瞳はオレンジ色。太眉。褐色肌で巨乳。

服装:水色の半袖セーラー服。袖と襟は白で、青いラインが入っている。赤いスカーフが付いている。靴下が嫌いで、素足に爪先が赤い上履きを履いている。

人称:ボク、コトちゃん/キミ、オマエ/あの子、アイツ、みんな/男女共に名前(カタカナ)呼び捨て。モノクマ「クマちゃん」例外…アナスタシア「アーニャ」(ヤンキー時:俺/テメェ/アイツ、クソ共/男女共に名前呼び捨て。モノクマ「クソクマ」)

 

拳法を習い始めてからわずか2年でほとんどの種類の拳法をマスターし、全国大会で優勝した天才拳法家。極められたあらゆる拳法の技術から、『超高校級の拳法家』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。非常に高い身体能力を持つ反面、知能は致命的に低い。天真爛漫な性格だが、中学1年生の頃は地元で有名なヤンキーだった。拳法家である祖母にきつく叱られてからはだいぶ性格が丸くなり、拳法に励むようになったが、スイッチが入るとヤンキー時代の凶暴な性格に戻る。

名前の由来は、少林寺拳法と功夫から。

 

 

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【超高校級の芸術家】佐伯 虎太朗(サエキ コタロウ)

 

「オレはアーティストだからな。直感には自信あんだよ。」

 

性別:男

身長:175cm

体重:66kg

胸囲:85cm

誕生日:7月11日(かに座)

血液型:A型

好きなもの:かわいい女の子、ハンバーガー

苦手なもの:掃除

出身校:坂松中学校

ICV:畠中祐

外見:マゼンダ色の髪を編み込んでいる。髭を一本に編み込んでいる。瞳は深緑色。太眉。褐色肌。右眉と右耳に金のリング状のピアスを、左目の下と左耳に銀の球状のピアスをしている。ギザ歯。

服装:小豆色の学ラン。インナーは絵具で汚れたTシャツ。絵具で汚れたスニーカーを履いている。小物類は、ネックレスとブレスレットとベルトのチェーン。

人称:オレ/お前/あの子、アイツ、みんな/男「苗字呼び捨て」女「苗字+ちゃん」モノクマ「白黒オモチャ」例外…アナスタシア「アーニャちゃん」

 

数々の芸術作品を生み出し、世界中から注目を浴びるアーティスト。作品製作時は、設計図や下描きを描かず、自分のインスピレーションのみを頼りに製作する。その独創性と芸術センスから、『超高校級の芸術家』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。女好きで、隙あらばすぐにナンパしようとする。短気で、すぐ暴力に訴えるが、女性や子供には手を出さないと決めている。喧嘩は強い方。面倒くさがり屋ではあるが、意外と真面目で、根は親切。

名前は、「なんかチャラそうな感じの名前」。

 

 

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【超高校級の聖人】ミカエル・黒須 聖(ミカエル クロス ヒジリ)(Michael Kurosu Hijiri)

 

「信じる者は救われます。さあ、共に祈りましょう!」

 

性別:男

身長:180cm

体重:62kg

胸囲:83cm

誕生日:12月25日(やぎ座)

血液型:O型

好きなもの:聖歌、フランスパン

苦手なもの:邪教徒

出身校:聖ヴァルテンブルク中学校

ICV:日野聡

外見:暗めのブロンドヘアーを三つ編みにしている。太眉。糸目で、瞳は青緑色。色白で、女性的な顔立ち。

服装:キャソックのような、黒紫と金を基調とした学生服。白いケープと金色の十字架がデザインされた白いストラを着用。首から金色の十字架を下げている。黒い革靴を履いている。小物類は白い手袋。

人称:私/貴方、貴女/あの方、皆さん/男「苗字+君」女「苗字+さん」モノクマ「学園長」

 

熱心なカトリック信者。キリスト教の洗礼を受けた正真正銘のクリスチャン。その信仰深さから、『超高校級の聖人』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。真面目で無欲な性格。知識が豊富で、頭も切れる。普段は紳士的な好青年だが、素質がある人にしつこく入信勧誘をしたり、神を信じない人や邪教徒には露骨に嫌な態度を取ったりするなど、信仰心が変な方向に行き過ぎているため、『超高校級の狂信者』とも呼ばれる。華奢な体型だが、意外と力は強い。ちなみにミカエルはクリスチャンネーム。

名前の由来は、クロスと大天使ミカエルで、聖人だから「聖」。

 

 

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【超高校級の令嬢】金剛寺 恵麗奈(コンゴウジ エレナ)

 

「普通にして頂いて構いませんわ。私は、ありのままの庶民とお話ししてみたいのですわ。」

 

性別:女

身長:170cm

体重:52kg

胸囲:83cm

誕生日:12月19日(いて座)

血液型:A型

好きなもの:クラシック、ブリオッシュ

苦手なもの:もずく

出身校:百合園女子学園中等部

ICV:雨宮天

外見:腰まである桃色のロングヘアーを大きな赤いリボンでハーフアップにしている。瞳は明るい緑色。太眉。色白で端麗な顔立ち。

服装:白いブラウスの上に茶色いボレロとスカート。上着の襟と袖口と靴の襟は白で、青いラインが入っている。金のダマスク模様の付いた白いニーソックスと、襟と赤いリボンが付いた茶色いブーツを履いている。小物類は、胸元のサファイアのペンダントと赤いリボン。

人称:私(わたくし)/貴方、貴女/あの方、皆さん/男女共に「苗字+さん」モノクマ「学園長先生」例外…冷「冷」

 

金剛寺財閥のお嬢様。マナーを熟知しており、振る舞いが上品。数々の習い事をしているため、多芸。誰もがたじろいでしまう程の気高さと美貌から、『超高校級の令嬢』として執事の冷と共に希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。超がつくほどの深窓の令嬢なため、世間知らずで常識外れな言動がしばしば見られる。好奇心旺盛で、庶民についてよく知ろうと日々研究しているが、天然なため間違った方向に解釈しがち。学園生活を送る事になった時も、「庶民の生活を体験できる」とワクワクしていた。

名前は、「ゴージャスな名前」。

 

 

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【超高校級の執事】銀杏田 冷(イチョウダ レイ)

 

「お嬢様のお命をお守りする事こそ、執事である私の使命でございます。」

 

性別:男

身長:185cm

体重:68kg

胸囲:87cm

誕生日:1月14日(やぎ座)

血液型:B型(BB)

好きなもの:勤務時間、フランス料理

苦手なもの:休み時間、汚れ

出身校:帝貫大学付属中学校

ICV:小野大輔

外見:黒髪セミロング。瞳は銀色。銀色のチェーン付きの黒縁メガネを着用。作中キャラ一のイケメン。

服装:黒い燕尾服。白いブラウスとダークグレーのベストを着用。靴は黒い革靴。小物類は、白い手袋と、胸元のルビーのペンダントと黒いクロスタイ。

人称:私(わたくし)/貴方、貴女/あの方、皆様/男女共に「苗字+様」モノクマ「学園長先生」例外…恵麗奈「お嬢様」

 

恵麗奈の執事。幼い頃から金剛寺家に仕えている。容姿端麗・頭脳明晰でなんでも熟せる完璧超人。執事としての完璧な振る舞いから、『超高校級の執事』として主人の恵麗奈と共に希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。礼儀正しく、紳士的な好青年。几帳面な性格で、何でもきっちりやらないと気が済まない。恵麗奈と金剛寺家には忠誠を誓っており、主人のためなら何でもし、命すら捨てる覚悟を持っている。恵麗奈に対してはどうしても過保護になってしまう。ちなみに、潔癖症。

名前は、「銀」で始まる3文字の苗字で、下の名前は「冷静」の「冷」。

 

 

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【超高校級の茶道部】千葉崎 利夢(チバサキ リム)

 

「貴様ら、喧しいぞ!茶でも飲んで静かにせんか!」

 

性別:女

身長:130cm

体重:26kg

胸囲:63cm

誕生日:2月10日(みずがめ座)

血液型:O型

好きなもの:日本茶、せんべい

苦手なもの:騒音

出身校:九萬原中学校

ICV:西村ちなみ

外見:緑がかった黒髪。おかっぱ頭。頭頂部から細いアホ毛が生えている。瞳は深緑色。太眉。口元にホクロがある。小学生のような体格。

服装:深緑のセーラー服。袖口と襟は黄緑で、緑色のラインが入っている。白いスカーフが付いている。黒いソックスと茶色いローファーを履いている。

人称:余/お主、貴様/あやつ、皆(みな)/男女共に苗字呼び捨てor「苗字+殿」モノクマ「学園長殿」

 

一度飲んだらその味を忘れられない程おいしいお茶を淹れると言われている茶道の名人。日本茶インストラクターの資格を持っている。日本茶以外にも、お茶なら大抵の種類はおいしく淹れられる。その茶道の腕前から、『超高校級の茶道部』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。見かけによらず図太い性格で、知らない場所でもすぐに寛ぐ事ができるが、うるさい場所は好まない。運動オンチで、足が遅い。自分の体型にコンプレックスを抱いている。ちなみに左利き。

名前の由来は千利休。

 

 

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【超高校級の化学者】宇田川 譲治(ウタガワ ジョウジ)

 

「あ、“カガク”と言ってもサイエンスの方ではありませんよ。ケミストリーの方ですからね。」

 

性別:男

身長:178cm

体重:61kg

胸囲:84cm

誕生日:6月8日(ふたご座)

血液型:B型

好きなもの:実験、ブラックコーヒー

苦手なもの:オカルト

出身校:鳳条学院中等部

ICV:宮野真守

外見:天然パーマの紫色の髪をセンター分けにしている。瞳は金色。白い縁のメガネを着用。

服装:ワイシャツと黒いベストの上に白衣を着用。緑色のネクタイを付けている。紺色のスラックスと茶色い革靴を履いている。

人称:僕/君、貴方、貴女/あの人、皆さん/男女共に「苗字+君」モノクマ「学園長」

 

数々の薬品や化学物質を生み出してきた天才化学者。自分で製薬会社を経営している。中学生の時に新たに化学物質を生み出した功績で、ノーベル化学賞の候補に挙がった事がある。化学以外にも、理系教科なら全て世界トップクラス。その知識量と頭脳から、『朝高校級の化学者』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。空想を徹底的に排して考える現実主義者。よく『超高校級の科学者』と間違われるが、その事を快く思っていないため、初対面の相手にはあらかじめ説明をしている。

名前の由来は、江戸時代の化学者「宇田川榕菴」と、東京の化学者の「森譲治」。

 

 

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【超高校級のエンジニア】相浦 つぐみ(アイウラ ツグミ)

 

「わ…私、これくらいしか取り柄がないので…」

 

性別:女

身長:149cm

体重:39kg

胸囲:85cm

誕生日:4月1日(おひつじ座)

血液型:A型

好きなもの:メカ、小動物、チョコレート

苦手なもの:運動、会話

出身校:桜苑女子学院中等部

ICV:M・A・O

外見:プラチナブロンド。ショートヘアだが、横髪だけセミロング。瞳は透明に近い水色。左目に泣きボクロがある。色素が極端に薄い。背が低い割にかなりの巨乳。

服装:白いセーラー服。襟はピンクで、水色のラインが入っている。胸にえんじ色のリボンが付いている。上に深緑のパーカーを羽織っている。ピンク色のミニスカート、赤いラインの入った白いニーソックス、白いカフス付きの茶色い革靴を履いている。

人称:私/あなた/あの人、皆さん/男女共に「苗字+さん」モノクマ「先生」

 

数々のメカを改造・制作してきた腕利きのエンジニア。人工知能の開発も行なっている。理系教科は大抵得意。特に工学、物理学、数学においては、史上最高の知識と頭脳を持つ天才少女。小学1年生の時に数学の未解決問題を証明し、小学校の卒業論文がノーベル物理学賞の候補に挙がったという伝説を持つ。『超高校級の工学者』とも呼ばれる。その頭脳と腕前から、『超高校級のエンジニア』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。天才的な才能を持つ一方、臆病で引っ込み思案。人と話すだけで涙目になる程の口下手。自己評価が非常に低い。

名前は、ローマ字表記した時に「AI」で始まる苗字で、下の名前は「可愛らしい名前」。

 

 

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【超高校級のネイリスト】真樹 亞里沙(マキ アリサ)

 

「…話してあげてもいいけどさ、だったら金目の物よこしな!」

 

性別:女

身長:174cm

体重:56kg

胸囲:95cm

誕生日:10月27日(さそり座)

血液型:A型

好きなもの:お金、ミルクティー

苦手なもの:ホラー系全般

出身校:星華中学校

ICV:山崎はるか

外見:赤い髪を黄色いシュシュで二つ結びにしている。前髪で左目が隠れている。瞳は赤色。ハート型の金のピアスを付けている。高身長でスタイル抜群。

服装:水色のシャツと茶色いミニスカートの上にピンク色のカーディガンを羽織っている。緑色のネクタイを着用。白いファーとさくらんぼの飾りが付いた茶色いブーツを履いている。左脚に、白いフリルが付いたピンクと水色のストライプのバンドを付けている。

人称:アタシ/アンタ、テメェ/アイツ、みんな/男女共に苗字(カタカナ)呼び捨て。モノクマ「ポンコツメカ」(萎縮時「先生」)

 

SNSで話題沸騰中のネイリスト。自分でネイルサロンを経営しており、1年後まで予約が取れない超人気店となっている。そのセンスと独創性から、『超高校級のネイリスト』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。ギャル。口調が荒く、誰に対しても高圧的だが、意外と打たれ弱く、臆病な性格。論破されると泣く。守銭奴。他人のために何かをする度に見返りとして金銭をせびる。意外にもお嬢様で、甘やかされて育った。困った事があるとすぐに両親に助けを求める。

名前は、「ギャルっぽい名前」。決して某借りパク魔法使いではない(ガチ)。偶然の産物。

 

 

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【超高校級の処刑人】アナスタシア・パリンチェ(Анастасія Паляўнічы)

 

「死にたくないなら黙ってろ。」

 

性別:女

身長:162cm

体重:44kg

胸囲:74cm

誕生日:10月4日(てんびん座)

血液型:AB型(Rh−)

好きなもの:ぬいぐるみ、ボルシチ

苦手なもの:子供、生きた動物

出身校:フロドナ孤児院

ICV:桑島法子

外見:アルビノ。銀髪赤眼。両サイドが猫耳のようにハネている。三つ編みにした髪を後ろでシニヨンにしている。

服装:白いブラウス、赤いスカーフの上に黒いローブとえんじ色のマフラーをしている。黒いコルセットとダークグレーのタイトスカートを着用。黒ストと白いカフス付きの黒いブーツを履いている。小物類は、青い飾りの付いたピアス。

人称:私/あんた、お前、貴様/あいつ、みんな/男女共に苗字呼び捨て。モノクマ「モノクマ」

 

ヨーロッパで唯一の死刑存置国、ベラルーシ共和国出身の美少女。故郷では幼い頃から孤児院で生活しており、その身体能力の高さを見込まれて処刑人として雇われていた。殺人能力が非常に高く、世界中で50人以上の死刑囚を葬ってきた。語学も堪能で、違和感のない日本語を話す。『超高校級の狩人』とも呼ばれる。その天才的な殺しの才能と冷徹さから、『超高校級の処刑人』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。性格は、冷淡かつ残忍。無口で、人と話したがらない。しかし、ぬいぐるみなどの可愛いものが好きという年頃の女子らしい一面も持つ。

名前は、「スラヴ人に多そうな女性名」。苗字はベラルーシ語で「狩人」。

 

 

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【超高校級の死刑囚】魅神 嶽人(ミカミ タケヒト)

 

「いいねえ…最高だねえ!!これこそ最ッ高のエンターテインメントだァ!!!」

 

性別:男

身長:187cm

体重:66kg

胸囲:88cm

誕生日:11月8日(さそり座)

血液型:A型(Rh−)

好きなもの:スプラッタ、生レバー

苦手なもの:平穏

出身校:ウェストロード刑務所

ICV:岡本信彦

外見:ところどころハネた、青みがかった黒髪。瞳は赤色。目の下にクマがある。血色が悪く、骨ばった体格。胸元に天使の羽を象ったタトゥーがある。

服装:白と黒のボーダーの囚人服。首と両手両足に鎖付きの錠を付けている。小物類は、チェーン付きのピアス。

人称:俺、俺様/お前、テメェ/アイツ、みんな、クソ野郎共/男「苗字呼び捨て」or「苗字+クン」女「苗字呼び捨て」or「苗字+ちゃん」モノクマ「モノクマ」or「クマさん」例外…アナスタシア「アーニャ」or「ニャーちゃん」

 

今まで100人以上を快楽のために無差別で殺してきた殺人鬼。一度留学先のアメリカで虐殺事件を起こし、現地で死刑が執行されたが、特異体質のため電気イスに耐え抜いた。『超高校級の異常者』とも呼ばれる。殺しても死なないという異常な体質で死刑から生き延びたという経験から、『超高校級の死刑囚』として希望ヶ峰学園分校に入学を果たした。痩せ細っている割には身体能力は高い。頭もそこそこ切れる。平気で人を殺し、さらにそれを趣味にしているサイコパス。常識が欠如しており、どんな状況下でもすぐふざける。

名前は、「ヤバそうな名前」。

 

 

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【学園長】モノクマ

 

『ボクはヌイグルミじゃないよ!モノクマだよ!この学園の、学園長なのだ!』

 

性別:?

身長:65cm

体重:?

胸囲:?

誕生日:?

血液型:なし

好きなもの:絶望

苦手なもの:希望

ICV:TARAKO

外見:白黒のクマのヌイグルミ。

人称:ボク/キミ、オマエ/オマエラ、みんな/男「フルネーム+クン」or「苗字+クン」女「フルネーム+さん」or「苗字+さん」例外…アナスタシア「アーニャちゃん」

 

希望ヶ峰学園の学園長。メグたち16人の超高校級を、希望ヶ峰学園分校に閉じ込めた張本人。超高校級という「希望」たちが殺しあうという「絶望的」シチュエーションにワクワクしており、そのために16人にコロシアイ学園生活を送らせている。ロボットと思われる体で、何体も存在する。暴力を振るった佐伯に対して、「体罰」と称して爆発を喰らわせようとした。



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第1章 全ては希望のために
第1章(非)日常編①


「…う?あ…あれ…?」

 

目がさめると、あたしは知らない部屋にいた。

 

「えっと…確か、あたしは、佐伯君と魅神君のケンカに巻き込まれて…」

 

頭が痛い。

 

ふと、血が出ていたところに手を当てると、包帯が巻かれているようだった。

 

「…誰かが手当てして、ここまで運んできてくれたのか。あとでちゃんとお礼言わないと…」

 

そう言いながら辺りを見渡、した。

 

どうやら、ビジネスホテルのような造りになっているようだ。

 

ベッドの頭上付近には、引き出しが置かれていた。開けてみると、中にはビニール袋に包まれた裁縫セットと、人体急所マップが入っていた。

 

「…これで刺せって言いたいわけ。…ホント悪趣味。」

 

腹が立ったので、マップをグシャグシャに丸めてゴミ箱に投げた。

 

ベッドから降りて部屋の中を彷徨いた。

 

部屋には掃除用のテープクリーナーやテレビのモニター、そしてあたしの名前が入った鍵が置かれていた。

 

 

壁に貼ってある紙が視界に入った。

 

『モノクマ学園長からのお知らせ

 

部屋の鍵には、ピッキング防止加工が施されています。鍵の複製は困難なため、紛失しないようにしてください。

 

部屋には、シャワールームが完備されていますが、夜時間は水が出ないので注意してください。

 

また、女子の部屋のみ、シャワールームが施錠できるようになっています。

 

最後に、ささやかなプレゼントを用意してあります。女子生徒には裁縫セットを、男子生徒には工具セットをご用意しました。

 

裁縫セットには人体急所マップもついているので、女子のみなさんは、針で一突きするのが効果的です。

 

男子の工具セットを使用する場合は、頭部への殴打が有効かと思われます。』

 

「…やっぱりか。どうせ悪趣味な事しかしないと思った。」

 

紙をひっぺがし、破いてゴミ箱に捨てた。

 

「…そんな事より、他のみんなは?あたしが寝てる間、何があったんだろう…」

 

急いで部屋の外に出ると、外にいた法正君とぶつかってしまった。

 

「ぎゃっ!!」

 

当たり負けした法正君は、尻餅をついた。

 

「痛たた…」

 

「ご、ごめん!」

 

咄嗟に謝った。

 

「いいよ、僕の方こそごめん。…そんな事より、よかった。夏川さんが目を覚ましてくれて。」

 

「えっ、あ、じゃあ手当てしてくれたのって、法正君だったの?」

 

「…銀杏田君と宇田川君にも手伝って貰ったけどね。」

 

「ありがとー!!」

 

嬉しさのあまり、法正君に抱きついた。

 

「ちょっ、な、夏川さん…」

 

「あ…ごめん…」

 

あたしは、ふと思い出した。

 

「あ、そうだ。ところで、他のみんなは?」

 

「ああ、他のみんななら、分校内を調査してて、その結果を今報告しあうところだったんだ。食堂に集まる事になってるんだけど…夏川さんも来る?」

 

「もち!!行く行く!!」

 

こうして、あたしたちは食堂に向かった。

 

 

食堂は、大きな窓が特徴的な、開放感のある部屋だった。

 

「夏川ちゃんまたビリッケツ〜♪もしかして〜、法正クンとイチャイチャしてたから遅れたのかな?」

 

「んなっ…」

 

魅神君が、あたしと法正君をいじってきた。

 

食堂には、既にみんな集まっているようだった。

 

まず、真っ先に宇田川君と銀杏田君にお礼を言った。

 

「あの、宇田川君、銀杏田君!…法正君から聞いた。あたしを手当てしてくれたんでしょ?ありがとう。」

 

(わたくし)は当然の事をしたまででございます。」

 

「気にしなくていいですよ。困った時はお互い様です。」

 

二人は、快い返事を返してくれた。

 

「よし!!全員集まったな!!それじゃ、報告会を始めるぜ!!!」

 

九十九君が暑苦しく宣言をした。

 

「じゃあまずはオレからだな!!オレが寄宿舎を調べてわかった事は、個室は全員分あるって事だ!!」

 

そりゃそーだ。悪く言えば結局何の収穫もなかったって事か。

 

「なんだよ、九十九クン、偉そうに言っといて何の収穫もなかったんじゃ〜ん。」

 

(言っちゃうなよこのバカ!!)

 

魅神君が、私の心の中の台詞を代弁した。

 

「そんな事ないですよ。九十九君のお陰で、気づいた事があります。…ね、奴目さん。」

 

「うん、個室なんだけど…多分、完全防音になってる。私、結構耳には自信あるんだけど、声がすっごい大きいつくもも君の声が、隣の部屋の私に全く聞こえなかったんだよね。」

 

黒須君と奴目さんの調査結果は、個室は完全防音という事だった。

 

(なるほど…完全防音か。九十九君の暑苦しさが、意外なところで役に立ってたんだな。)

 

「オレは、窓の鉄板を調べてたんだけどよ、ビクともしなかったぜ。ボルトは、工具がありゃ外れると思ったんだけどな。」

 

佐伯君の調査結果は、窓の鉄板は取り外し不可能という事だった。

 

「僕たちは、分校エリアを調べていました。」

 

宇田川君が、報告を始める。

 

「玄関ホールの鉄の扉は、頑丈な造りになっていました。少し調べてみてわかったのですが、強度で言えば、恐らく猛獣が暴れても破壊できない程かと。」

 

「うん!あの扉硬すぎ!!コトちゃん、全っ然動かせなかった!」

 

右手を腫らした小林さんが、悔しそうに言う。

 

(…なるほど。小林さんで強度テストしたのか。)

 

「それから、相浦君も一緒に調査をしていた。…相浦君。」

 

「…はい…連絡手段がないか…探していたんですけど…すみません、何も見つからなくて…ごめんなさい…!」

 

相浦さんは泣きながら報告する。

 

「逆に言えば、僕たちを完全に外の世界から隔離させたいっていう犯人の意志が確認できたって事だよね。十分な収穫だよ、相浦さん。」

 

法正君が、相浦さんをフォローする。

 

「あー、あとねー、コトちゃんすっごい発見しちゃったんだ!!」

 

小林さんは、挙手をしながら報告した。

 

「あのねー、なんかコーシャとキシュクシャの間に、2階に上がれそーな階段があったの!!」

 

「え!?マジ!?」

 

真樹さんが食い気味に聞く。

 

「あー、でもね、なんか…えっと…ねえ、ジョージ。アレなんてゆーんだっけ。」

 

「…階段にはシャッターが降りていて使えません。スイッチのような物も見つかりませんでした。相浦君が、電子回路をいじって開けられないかどうか試みたそうですが、何も出来なかったそうです。…と、小林さんは言いたいのだと思います。」

 

宇田川君が全部言ってしまった。

 

「ちょー!ジョージ!!そのシャッタア?ってゆーのだけ教えてくれればよかったのに!ボクの出番取んないでよ!!」

 

宇田川君、小林さん、相浦さんの調査結果は、玄関ホールの鉄の扉は動かせない事、連絡手段は何も無い事、そして開けられないシャッターが降りた階段があるという事だった。

 

「…よし、ほんなら次はオレらやな!」

 

「はい。明石さん、(わたくし)、冷の3人は、食堂を調べておりましたの。」

 

「食堂の奥には厨房があり、冷蔵庫も設備されていました。」

 

「中には食いモンがぎょーさん入っとったで。せや、厨房でアメちゃん見つけてんけど、みんないるか?」

 

明石君は、飴玉をみんなに一個ずつ配った。

 

「…毒とか入ってないでしょうね。」

 

真樹さんが明石君をチラリと見て言う。

 

「ほんなら食わなええだけの話やろ!」

 

「な、何よぉ!!これから毎日食べる物が危ないかもしれないから言ってるんじゃないのよぉ!!」

 

明石君と真樹さんが言い合いになり、銀杏田君が仲裁に入る。

 

「落ち着いてください。…それは、明石様が厨房からそのまま持ってきたものでございます。(わたくし)が確かに拝見しておりましたので、間違いはございません。」

 

「…モノクマが僕らにさせたいのは、あくまで殺し合い。最初から毒を盛っておくメリットなんて無いと思うよ。」

 

法正君が適切な指摘をする。

 

「…まあ、それも…そうね…」

 

真樹さんも納得したようだ。

 

「皆さん、話を元に戻しましょう。(わたくし)たちが調査を進めていると、学園長先生がいらっしゃって、冷蔵庫の食材は毎日自動で追加される、と仰っていましたわ。」

 

「餓死の心配はねーっつー事ねー♫」

 

魅神君が髪をいじりながら言った。

 

明石君、金剛寺さん、銀杏田君の調査結果は、食堂には厨房があり、中には食材が入った冷蔵庫も完備されている事、そして、冷蔵庫の食材は毎日自動で補充されるという事だった。

 

「僕は、この学園について、そして外の世界について調べていたよ。」

 

法正君が報告を始める。

 

「で?結果は?」

 

佐伯君が急かすように言う。

 

「うーん…ごめん。結局、有力な情報はなかったや。」

 

「んだよ…だったら報告すんなよ。期待したじゃねーかよ。」

 

「でも、モノクマが教えてくれたんだけど、寄宿舎と校舎で災害とかがあったら、ちゃんと対応してあげるから心配すんなって。…よっぽど僕たちに殺し合いをさせたいみたいだね。」

 

「俺もクマさんの言ってる事ちょっとわかるな〜。災害とかで勝手におっ死なれちゃ、つまんねーもんな〜♬」

 

魅神君は、また訳の分からない事を言った。

 

法正君の調査報告は、校舎と寄宿舎での災害への対応は万全だという事…つまり、あたしたちは、殺し合いをしない限り永遠に学園生活を送ることになるという事だった。

 

「…さっきから人の不安を煽るような事を言ってるけど、君からの報告はないのかな?」

 

法正君は、横目で魅神君を見ながら言う。

 

「無いよ〜。そもそも調査すらしてねーからな〜。だってタリィんだも〜ん。」

 

「テメェ、ふざけんなよ!!俺らが必死に手がかり探してたって時に!!」

 

佐伯君が怒りを露わにする。

 

「おっと、俺だけ責めるのはお門違いだぜ?千葉崎ちゃん、真樹ちゃん、ニャーちゃんの3人も何もしてなかったんだからさ〜。」

 

「そうなの?」

 

奴目さんが3人に疑いの目を向ける。

 

「余は疲れるのが嫌いなんじゃ。ゆっくりここで茶でも飲んでいれば良いではないか。」

 

「ふぇえ…やめてよぉ…責めないでよぉ…アタシもなんか手伝おうと思ったけど、人手が足りてるってみんなに断られたんだよぉ…」

 

「当たり前です。だって貴女、仕事を振ったら見返りをしつこく要求してきたじゃないですか。」

 

「だって…だってぇ…!うぇええええええん!!ママァア!!みんながいじめるよぉお!!」

 

真樹さんが大声で泣き始めた。

 

「…。」

 

アーニャちゃんは、腕を組んで無言を貫いている。

 

「あッ、アンタも何もしてなかったんでしょ!なんとか言ったらどうなんだよ!」

 

真樹さんは、アーニャちゃんを責める。どうやら、アーニャちゃんを道連れにして自分へのダメージを減らす魂胆らしい。

 

「…ん。」

 

アーニャちゃんは、めんどくさそうに見取り図のようなものを広げる。

 

そこには、『希望ヶ峰学園分校校舎及び寄宿舎見取図』と書かれていた。

 

「これで、誰かさんが迷って集合に遅れたりする事もなくなるんじゃない?」

 

(うっ…)

 

アーニャちゃんが言いたいのは、多分あたしの事だ。

 

「あんた!!これどこで見つけたのよ!!」

 

「別に。誰かさんが集合に遅れた事を愚痴ってたら、モノクマに聞かれて渡されただけ。」

 

「なんでこんな大事な事早く言わなかったのよ!!」

 

「…お前に言う義理があるか?」

 

「ぐっ…」

 

アーニャちゃんの非協力的な姿勢に苛立ちを隠せない真樹さんとは対照的に、当の本人であるアーニャちゃんは淡々と答えていた。

 

見取り図を改めて確認したが、やっぱり出口らしきものは無かった。

 

あたしたちは、ここから永遠に出られないのだろうか?

 

…いや、絶対に、全員でここから脱出してみせる。

 

 

あたし達は、絶望なんてしない!!

 



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第1章(非)日常編②

物語の進行の都合上、編集しました。


全員の調査報告が終わった。

 

「お・な・か・す・い・たぁー!!!」

 

小林さんの声が、食堂中に響く。

 

ふと時計を見ると、12時を回っていた。

 

「おや、もうこんな時間ですか。(わたくし)が何かお作りしましょう。…皆様、何かお召し上がりになりたいものはございますか?」

 

銀杏田君が、席を立って食堂に向かう。

 

「カレー!!ハンバーグ!!うどん!!オムライス!!ピザ!!全部お肉たっぷりがいいのだ!!」

 

真っ先に小林さんがリクエストする。

 

「あ、じゃあ私は焼き鳥!ネギたっぷりでお願い!」

 

「たこ焼き食いたいなぁ。あ、辛いのは嫌やで?」

 

「ハンバーガーとポテト頼むわ!」

 

「アタシはチーズタッカルビで。」

 

「米を!!白米を食わせてくれ!!!」

 

「冷、この前言っていた“らぁめん”というものを食べてみたいですわ。お願い出来るかしら。」

 

「余は蕎麦が食べたいのぉ。」

 

「生の内臓が食いてェな〜。」

 

続けて奴目さん、明石君、佐伯君、真樹さん、九十九君、金剛寺さん、千葉崎さん、魅神君がリクエストした。

 

「矢継ぎ早じゃねぇか!!君たちホントはお腹空いてたの!?」

 

思わずツッコんでしまった。

 

「…春巻き。」

 

法正君がボソッと呟いた。

 

(…遠慮してる!あたしがツッコんじゃったせいだ…なんかゴメン!!…ええい、腹が減っては戦はできぬ!!あたしもなんか頼んじゃえ!!)

 

「あ、あたし肉まんとあんかけ焼そばが食べたいな!銀杏田君、さっき手当てしてもらったばっかだけど、お願いできるかな!?」

 

「…お魚の料理をお願いします。」

 

「…サ、サンドイッチをいくつか…簡単なもので構いません。」

 

「じゃあ僕も相浦君と同じものを。」

 

「…ボルシチ。」

 

あたしのリクエストの後に、残りの4人がリクエストをした。

 

 

銀杏田君が、注文された料理すべてを持ってきた。

 

「お待たせして申し訳ございません。」

 

「…ほ、本当に全部作ってきた…」

 

あたしが銀杏田君の完璧超人っぷりに呆気にとられていると、横では金剛寺さんが興味深そうにラーメンを見つめていた。

 

「こ…これが、庶民の食べ物…“らぁめん”…」

 

「じゃあお腹ペコちゃんだから、早く食べよ!?」

 

小林さんが催促する。

 

「いただきます!」

 

全員が食前の挨拶をし、食事をはじめる。

 

…おいしい。こんな特殊な状況下なのに、ごはんがめっちゃおいしい。

 

こんなに大人数で一緒に食事したのが久しぶりだからかな?

 

あたしは、銀杏田君が作ってくれた料理を口に運び、噛み締めた。

 

なぜか、涙が溢れてきた。

 

 

全員の食事が終わった。

 

「おいしかったー!!」

 

「“らぁめん”…とても美味しかったですわ。庶民は、毎日あんなに美味しいものを食べていらっしゃるのですね。羨ましいですわ!」

 

特に、小林さんと金剛寺さんは大満足だったようだ。

 

「では、食事も終わった事ですし、探索に戻りませんか?まだ見落としているところがあるかもしれません。」

 

黒須君が提案した。

 

「アーニャちゃんが見取り図を持ってきてくれたから、今度は楽に探索できるね!」

 

奴目さんが嬉しそうに言った。

 

「…この購買部っていうのが気になる。」

 

見取り図を指差しながら、言ってみた。

 

「だね。じゃあ、僕も行ってみようかな。…他のみんなは?」

 

法正君が、みんなに質問した。

 

「そうですね…特に行きたい場所も無いですし…引き続き、手分けして探索をするのはどうでしょう?」

 

黒須君が提案し、みんな納得したので、食事の後は別行動をとる事になった。

 

 

目的地に着くと、ガチャガチャのようなものが置いてあった。

 

「…何これ。」

 

「…夏川さん、これ…。」

 

法正君は、コインのようなものを見せた。

 

コインには、モノクマが描かれていた。

 

「なにこれ?」

 

「…さあ。ここに来る途中、拾った。…ねえ、もしかしてこれ、このマシーンに入れて使うんじゃない?」

 

法正君が、早速ガチャガチャを使おうとしていた。

 

「え!?いやいや、ちょっと、それ拾ったやつでしょ?いいの!?完全にドロボーだよね!?」

 

「迂闊に落とす方が悪いんだよ。…それに、何事も試してみないと始まらないでしょ?校則でも禁止されてないしね〜。」

 

法正君は、笑顔でゲスい事を言って、ガチャガチャにコインを入れる。

 

「わー!!やっちゃったよこの人!!ねえ、いいの!?これ!!」

 

「あ、なんか出てきたよ〜。やっぱり、これで使い方合ってたんだ。」

 

法正君は、呑気に出てきたものを確認する。

 

「うわー…ねえ、これどういう状況!?ちょっと、誰か何とか言って!」

 

『あ、早速『モノモノマシーン』使ったの?』

 

いきなり後ろからモノクマが現れた。

 

「ひっ…!!」

 

『そんなにビックリしなくていいじゃーん!それはね、『モノモノマシーン』って言って、さっき法正クンが入れた『モノクマメダル』を入れてガチャを引くと、プレゼントが出てくるのだ!』

 

「プレゼント…?」

 

『まあ、オモチャとか日用品とか色々だよ!機会があれば、ジャンジャン使ってね!』

 

そう言うとモノクマは去っていった。

 

 

午後6時を周り、全員の探索が終わった後、また食堂で報告会を開いた。

 

…報告会って言っても、千葉崎さんが淹れてくれたお茶を飲みながらまったりするだけなんだけど。

 

横では、相浦さんと宇田川君が難しい話で盛り上がっていた。

 

…理系同士仲良いのかな、この二人。

 

「それで、その方法がですね…」

 

「あ、知ってます!確か滑車の原理ですよね!?」

 

「おや、貴女も論文を読んだんですか?」

 

「はい、面白かったですよね…!」

 

…あたしには、何がなんだかさっぱりだ。

 

「なあ、夏川ちゃん。何か収穫あった?」

 

佐伯君が話題を振ってきた。

 

「収穫っていうか…なんか、購買部に『モノモノマシーン』っていうガチャガチャがあったよ。『モノクマメダル』っていうメダルを使って遊ぶらしいんだけど…法正君が、拾ったメダルで遊んでた。」

 

「…それは、持ち主のわからないメダルで勝手に遊んだ、という事ですか?法正君、意外と外道な事しますね…。」

 

黒須君の発言に、あたしは心の中で頷いた。

 

珍しく、この人が常識人に思えた瞬間だった。

 

…まあ、正しい遊び方らしいから結果オーライなんだけどさ。

 

「えへへ…」

 

(褒めてないから。)

 

「ねえ、そのガチャガチャの中身って、なんなの?」

 

真樹さんが食いついてきた。

 

「なんか、オモチャとか日用品とか色々だって。何が出るかは、引いてみないとわからないみたい。」

 

「ふーん…」

 

真樹さんの目の色が変わった。

 

…失敗した。真樹さんの前で話したあたしがバカだった。

 

今後、絶対何かあるたびにメダル寄越せって言われるよ…。

 

「他のみんなは?」

 

法正君が、しれっと話題を変えた。

 

「…体育館倉庫がありましたね。鍵は、電子生徒手帳で開くようです。…夜時間には立ち入り禁止区域になっているので、詳しく調べるなら今のうちだと思いまして。ある程度調べておきました。」

 

黒須君が説明を始めた。

 

…この人結構仕事できるタイプなんだな。

 

そんなこんなで話し合いをしていると、突然モノクマが現れた。

 

『ちょっとちょっと〜!?何まったりしてんの!?誰も殺し合ってないじゃん!!オマエラ、外に出たいんじゃなかったの?』

 

「なんじゃ、うるさい奴が来よったわ。今余は忙しいのじゃ。あっちへ行けい。」

 

『あれれ〜?なんか、みんなボクに対して冷たくない?』

 

どの口が言うか、全員がそんな顔をした。

 

『なんでみんな殺し合ってくれないのかな〜?何が足りないんだろう…あ、そうだ!』

 

 

 

 

動機だ!動機が足りないんだ!』

 

「動機…?」

 

『うぷぷ…そりゃそうだよね!いくら外に出たいからって、いきなり動機も無しに自分に実害のない同級生を殺せないよね!いやあ、ボクとした事がうっかりしてたよ!』

 

『と、いうわけで、オマエラに、ボクから動機をプレゼントしたいと思います!!』

 

「どういう意味…?」

 

奴目さんが質問をする。

 

『うぷぷ…オマエラに、ちょっとした映像を見せたいと思います!!…って言っても、ここで見られるわけじゃないんだよね。学校内の、『ある場所』に行けばその映像が見られるよ!!』

 

「ある場所…?」

 

「『視聴覚室』の事やと思うで。見取り図に描いたあるしなぁ。」

 

明石君が、見取り図を指しながら言う。

 

「…そこに、人を殺す理由が映されてるって事ですよね…」

 

相浦さんが呟くと、周りの空気が一気に重くなる。

 

誰も、視聴覚室に行きたがらない。

 

「…あたしが行ってこようか?」

 

提案してみた。

 

「…え、でも、そこに『動機』があるんでしょ?もし、アンタに何かあったら…」

 

「そうです、何かの罠かもしれません。迂闊に行動しない方が良いでしょう。」

 

真樹さんと宇田川君が止めに入る。

 

「大丈夫、ちょっと確認してくるだけだから!あたしは、何があってもみんなのうちの誰かを殺したりなんかしないから、安心して!」

 

この学園生活から全員で抜け出すためにも、あたしが絶望しちゃいけないんだ。

 

そう決心して、笑顔を見せた。

 

「…じゃあ、僕も一緒に行くよ。それなら文句ないだろ。」

 

提案したのは法正君だった。反論は無かった。

 

「…決まりだね。じゃあ、行ってくる!」

 

 

視聴覚室に入ると、真っ先に大きなスクリーンと段ボールが目に入った。

 

恐る恐る確認すると、全員分の名前が書かれた人数分のDVDが入っていた。

 

それを確認した法正君は、視聴覚室を後にした。

 

「みんなに報告してくる!」

 

 

あたしは、1人になった。

 

…せっかくだし、誰かが来る前に自分の分だけ見ちゃおっかな?

 

近くのデッキにDVDを入れた。

 

しばらく黒い画面が続いたあと、映像が映し出されるー

 



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第1章(非)日常編③

画面に映し出されたのは、あたしの家だった。

 

「え…」

 

 


 

「いっただっきまーす!!」

 

スクリーンに映ったあたしは、朝食を口の中にかき込んでいた。

 

「う゛ッ、ゲホッ、ゲホッ!」

 

「おいおい、そんなに急いで食べるからだろ?」

 

お父さんが、あたしの背中をさすっていた。

 

「あなただって、シャツにケチャップ付いてますよ?」

 

「えっ!?嘘!?あ゛ーッ!!今日大事な会議なのに!!」

 

「うふふっ、困ったお父さんとお姉ちゃんね。」

 

お母さんが、あたしの弟を、ユウを抱いて笑っていた。

 

「あー、あー!」

 

「あら、メグ。まだ学校行かなくていいの?」

 

「えっ、あ!そうだった!!…じゃあユウ、行ってくるね!」

 

「あ、あー。」

 

そこで映像が切り替わり、映し出されたのは、荒れたあたしの家だった。

 

窓は割られ、家具はボロボロに傷つけられ、割れた食器や花瓶が床に散乱していた。

 

そして、所々に血が飛び散っていた。

 

しかし、どこにもあたしの家族はいない。

 

「お父さん…?お母さん…?ユウ…?」

 

『4人家族の長女として、ご家族から愛されて幸せに暮らしていた夏川 メグさん!…どうやら、ご家族の身に何かあったようですね?では、ここで問題です!このご家族の身に何があったのでしょうかっ!?正解発表は『卒業』の後で!』

 


 

 

そこで映像は終わっていた。

 

「何よこれ…お父さんは…お母さんは…ユウはどうなったの…?今、みんなは無事なの…?」

 

 

「…何が何でもここから出て確かめなきゃ。」

 

その考えに行き着いたあたしは、急いで視聴覚室を後にした。

 

外には、他のみんなが待っていた。

 

どうやら、法正君がみんなを呼んできたらしい。

 

「…夏川さん?何があったの?」

 

法正君が、恐る恐る質問を投げかけてきた。

 

「…。」

 

あたしは、黙って段ボールを指差した。

 

他のみんなは、一目散に段ボールの方へと走っていき、自分のDVDを取っていった。

 

 

全員がDVDを確認し終わった。

 

みんな、青ざめた顔をして視聴覚室から出てきた。中には、泣いている人もいた。

 

きっと、みんなもあたしと同じような映像を見せられたんだ。

 

「酷い…こんな事って…」

 

「クッソ…!」

 

相浦さんと佐伯君が声を漏らす。

 

「なるほどね〜、これがクマさんの言ってた“動機”か〜。ホントいい趣味してるよね〜。」

 

魅神君は、口角を上げて不気味な笑みを浮かべながら言った。

 

「…。」

 

明石君は、虚ろな目をしていた。

 

彼には、さっきまでの生気は無かった。

 

「あ、明石君…?」

 

明石君は、返事をせず黙っているだけだった。

 

「…夏川さん。そっとしてあげよう。」

 

法正君が、あたしの肩に手を置いて言った。

 

 

ただ、時間だけが過ぎていった。

 

誰も、お互いに話し合おうとはしなかった。

 

あたしは食堂で一人、テーブルに突っ伏して考える事をやめていた。

 

「…隣、いいかな。」

 

声をかけたのは、法正君だった。

 

「あの時までずっと元気だった夏川さんが、全然元気無さそうだから、心配になって…」

 

「…まあ、あんなもの見せられたら、普通そうなるよね。」

 

あたしは、法正君に、今までずっと気になっていた事を聞いてみた。

 

「…ねえ、法正君は、どうして他の人のためにそこまでできるの…?法正君だって、あのDVDを見て、外に出たいって思ってるんでしょ?」

 

「『夫れ用兵の道は、人の和に在り』僕の尊敬する諸葛亮孔明の一番好きな名言だよ。…兵を統率する心得として、人の和を作る事が必要だ、っていう意味の名言なんだ。…僕は、そうありたいんだ。」

 

「…どんな時でも、人との和を大切にして、みんなを導ける存在になる…それが僕の目指す生き方だから。…これじゃあ答えになってないかな?」

 

「すごいね、法正君は。あたしは、そんなに強くなれないや…」

 

「…そんな、今の僕なんて、理想とは程遠いよ。僕は、夏川さんの方が勇敢で強い人間だと思う。…僕は、夏川さんの事、尊敬してるからね。」

 

「…ありがとう。…あー、なんか話聞いたらスッキリした!…あ、なんか小腹空いちゃったから、冷蔵庫にあったアイスでも食べよっかな!」

 

「…あ、いいよ。僕が取ってくる。」

 

「え!?いいの!?」

 

「…話聞いてもらったしね。」

 

 

それからあたしたちは時間を忘れて、一緒に話し合った。

 

気づけば30分経っていた。

 

「あ、じゃあそろそろ行こっかな。」

 

「夏川さん!」

 

法正君が、あたしを呼び止めた。

 

「…これ、あげる。」

 

法正君が、桜の装飾のついたブローチをくれた。

 

「これは…?」

 

「さっきのガチャでゲットしたんだ。…気に入ってくれるかどうかわかんないけど…」

 

「…嬉しい。ありがとう。」

 

あたしはブローチを受け取って、食堂を後にした。

 

 

廊下を歩いていると、教室の隅に、明石君がいたのが見えた。

 

教室に入って、声をかけてみた。

 

「どうしたの?…まあ、あんなDVD見せられた後だもんね。無理ないよ。」

 

すると、明石君はさっきまでの暗い表情から、急にあの時までのテンションに切り替わった。

 

「おお、夏川!お前、急にどないしたん?オレは別に何もあらへんよ?」

 

「え?ホント?さっきまで…」

 

「見間違うたんちゃうか?オレはこの通り、絶好調や!」

 

「…それならいいんだけど。なんかごめんね。じゃあ、おやすみなさい。」

 

教室から去ろうとすると、明石君が、あたしを引き留めるように後ろから声をかけた。

 

「…ああ、アカン。言い忘れるとこやったわ。急に思い出してんけど、オレこの学園の、えらい重要な秘密を知ってしもうてん。」

 

「…重要な秘密?」

 

「今は場所悪いなぁ…せや、今日の9時50分に、体育館倉庫まで来てくれるか?他のみんなに聞かれたらアカン話やから、二人きりで話したいねんけど…時間大丈夫か?」

 

「…やけに中途半端な時間だね。」

 

「ゴメン、そこしか時間あらへんねん!」

 

明石君が必死に頼み込む。

 

「…わかった。9時50分に体育館倉庫ね。」

 

「ホンマ!?おおきに!!」

 

明石君は嬉しそうに言った。

 

明石君が何を知ってしまったのかはわからないけど、この学園の重要な秘密なら、聞いておかなきゃ。そう思った。

 

「…じゃあ、あたしもう行くね。体育館倉庫でまた会おう。」

 

 

…この時、あたしは気づいておくべきだった。

 

明石君の笑顔に隠された、本当の思惑を。

 

 

部屋に戻り、シャワーを浴びた。

 

9時50分まではまだ十分時間がある。その間に何かしておこうかな?

 

そんな事を考えながら、あたしはベッドの上で髪を乾かしていた。

 

…あれ?なんだろう、急に睡魔が…襲って…

 

そこからは、あたしの意識はない。

 

 

『オマエラ!7時だよ!寝坊は学園生活の乱れに繋がります!今すぐ全員起きるように!』

 

「…はっ!!」

 

モノクマのモーニングコールで目が覚めた。

 

…しまった。どうしよう。

 

「あぁあああああああ!!!やっちゃった!!あたしのバカバカバカ!!明石君との約束すっぽかしちゃった!!…ダメだ、なんで寝ちゃったのか全く覚えてない…なんでだ、なんでよりによって昨日寝ちゃったんだよぉおー!!」

 

「…うん、いつまで嘆いてても仕方ない。昨日の事は、ちゃんと謝ろう!」

 

あたしは制服に着替えて、部屋を出た。そして、いつもの集合場所である食堂に向かった。

 

 

他のみんなは、既に集まっているみたいだった。

 

「ごめーん!あたし、また1番最後?」

 

「…いえ、まだ明石様がいらっしゃいませんね。」

 

「いつもは結構早く集合する方なのにね。珍しいね。」

 

 

「…まさか。」

 

…嫌な予感がした。あたしは、一目散に体育館倉庫へと向かった。

 

 

体育館倉庫には、鍵がかかっていた。

 

「…開かない…!」

 

倉庫の横にあるパネルが視界に映った。

 

(確か、この倉庫の鍵はこれで開くはず…!)

 

あたしは、電子生徒手帳をパネルにかざした。

 

倉庫の扉がゆっくりと開く。

 

どうか、思い違いであってほしい。そう願っていた。

 

だが、その幻想はいとも容易く打ち砕かれた。

 

体育館倉庫ではー

 

 

 

 

 

糞尿を漏らし、口から泡を吹いて首を吊った

 

『超高校級の芸人』明石 大吉の死体が発見された。

 

 

 

 

【生徒数】 残り15名



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第1章 非日常編①

『アンタ新入生か?初っ端から遅刻はアカンで?』

 

『厨房でアメちゃん見つけてんけど、みんないるか?』

 

『ホンマ!?おおきに!!』

 

 

 

明石君の死体を見た途端、彼の記憶が次々と脳裏に浮かぶ。

 

…明石君が、この学園の仲間が死んだ。

 

…なんでよ。昨日まで、生きてたのに。

 

一緒にごはん食べて、おしゃべりしてたのに。

 

あたしと約束した時、すごく嬉しそうにしてたのに。

 

…約束を守れなかった事、まだちゃんと謝ってないのに。

 

視界がグシャグシャになった。

 

受け入れたくなかった。

 

…これは夢だ。

 

こんな悪夢、早く覚めてくれ。

 

「うぁああああぁああああああああああああああああああああ!!!!」

 

ありったけの声で泣き叫びながら、叶う事のない願いを心の中で叫んでいた。

 

だが、すぐに現実に引きずり戻された。

 

『オマエラ!!死体が発見されました!!至急体育館倉庫まで集合してください!!』

 

モノクマのアナウンスが流れた。

 

アナウンスを聞いたみんなが集合した。

 

「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「…そんな。」

 

「おいおい、嘘だろ…!?」

 

「マジかよ…」

 

「そんな、明石さんが…どうして…!」

 

「あ、明石殿が…!」

 

「おお、神よ…」

 

「大吉ぃいいいいい!!!なぜだ、なぜだああああああああああ!!!」

 

「うわぁああああああああ!!!ダイキチが、なんでぇええええ!!!」

 

「…起きてしまいましたか。」

 

「…酷い…!」

 

「明石君…なぜ貴方が…」

 

「あーあ、死んじゃったね〜。」

 

アーニャちゃん以外が声を発した。

 

『うぷぷ…ついに死人が出ちゃったね!』

 

「お前が、お前が大吉を殺したのかあああああああ!!!」

 

九十九君が叫ぶ。

 

『失礼しちゃうな、ボクは何もしてないよ。』

 

『…殺ったのは、オマエラのうちの誰かでしょ?』

 

それを聞いた瞬間、全員がお互いの顔を見合わせた。

 

『それじゃあ全員集合した事だし、始めよっか!ドキドキワクワクの捜査タイムを!』

 

「…捜査?」

 

法正君が質問する。

 

『校則に書いてあったじゃん。『他の誰かにクロだと知られちゃいけない』って。だから、その条件がクリアできているかの確認をするんだよ。今から一定時間捜査をして、その後『学級裁判』を行います!『学級裁判』では、「誰が身内を殺したか」について議論してもらうよ!

議論の中で怪しいと思った人物に『投票』する事で、クロの決定が行われます!』

 

『決定したクロが正解だった場合は、クロを『おしおき』します!』

 

「おしおき…?何ですかそれは。」

 

黒須君が質問する。

 

『ん〜、まあ簡単に言っちゃうと処刑だね。』

 

みんながざわつき始める。

 

そんな中、宇田川君が質問をした。

 

「もし不正解だった場合はどうなるんです?」

 

『いい質問だね、宇田川クン!…その時は、クロだけ『卒業』、残りのみんなに『おしおき』するよ!』

 

「はあ!!?聞いてねえぞ、そんなルール!!」

 

「それな!!完全に後付けルールじゃん!!やってられっかっての!!」

 

佐伯君と真樹さんが異論を唱えた。

 

『うるさいなぁ、校則に書いてあったよね?『校則は増えていく事がある』って。それにさ、そんなに死にたくないならクロを見つければいいじゃん!そのための捜査タイムなんだからさ!』

 

「ふざけんじゃねえぞ!!」

 

モノクマを殴ろうとした佐伯君の首を、アーニャちゃんが腕で締め上げる。

 

「ぐえッ、な、何を…」

 

「…お前、死にたいのか?」

 

その一言で、佐伯君は抵抗をやめた。

 

『いやあ、助かったよ、アーニャちゃん!そうそう、捜査をするんだからこれを配っておかないとね!』

 

『ザ・モノクマファイル!』

 

「…これは?」

 

銀杏田君が質問をする。

 

『オマエラだけじゃ、死体を調べるのには限度があるでしょ?だから、ボクが死亡状況とか死因とかをある程度まとめといてあげたの!』

 

「なんでそんなの作れんの…」

 

奴目さんが質問をした。

 

『言わなかったっけ?ボクは、学園内の至る所に設置された監視カメラで犯行の一部始終を見てるから、そこに書いてある事くらいは把握できてるんだよ。…では後ほど、学級裁判でお会いしましょう!』

 

そう言うと、モノクマは去って行った。

 

みんな、捜査を始めようとはしなかった。

 

俯いて、ガタガタと震える法正君。

 

遺体の前で祈りを捧げる黒須君。

 

泣き崩れる金剛寺さんを慰める銀杏田君。

 

仲間の死に対して大声で嘆く九十九君と小林さん。

 

声を上げて泣き続ける奴目さん。

 

その場に座り込んで俯く千葉崎さん。

 

死にたくないと泣きわめく真樹さん。

 

壁に拳を打ち付けて、歯をくいしばる佐伯君。

 

その場に座り込み、顔を手で覆いながらすすり泣く相浦さん。

 

「…皆さん、いつまでそうしている気ですか?早く捜査を始めましょう。」

 

「…賛成。」

 

「臭っせぇなぁ…早く犯人探し始めよーよ。」

 

宇田川君、アーニャちゃん、魅神君が言った。

 

「あ、貴方方には、人の心というものがございませんの!?貴方方は明石さんとあまりお話してらっしゃらなかったからそんな事を…!」

 

金剛寺さんが怒りを露わにした。

 

「命を無駄にするなと言っているんです。…僕だって、明石君が亡くなった事は悔しいと思ってます。…ですが、嘆き悲しむ事だけに時間を浪費して処刑されるなんて、無駄でしかないでしょう?」

 

「そーそー。てめーらの臭っさい臭っさい茶番劇のせいで死ぬのはごめんなの。」

 

「…お前ら、死にたくないなら黙って手を動かせ。」

 

3人の言葉を受けて、泣いていた相浦さんが立ち上がり、涙を拭う。

 

「…すみません。皆さんの言う通りです。…私、倉庫の鍵を調べてきます。」

 

他のみんなも、各々調査を始めた。

 

 

まず、ファイルを確認した。

 

被害者は明石 大吉。

死亡時刻は午後10時頃。

死体発見現場となったのは、校舎エリアにある体育館倉庫。

被害者はその天井に括り付けられたロープのようなもので首を吊った状態で死亡していた。

死因は窒息死。首に索条痕と吉川線あり。爪には、被害者のものと思われる皮膚と血液が付着している。

 

【コトダマ入手:モノクマファイル】

首に索条痕と吉川線あり。爪には、被害者のものと思われる皮膚と血液が付着している。

 

【コトダマ入手:体育館倉庫】

死体発見現場となった倉庫。明石君との待ち合わせ場所。

 

「あれ?なんでこんなもんがここに?」

 

声の主は佐伯君だった。

 

「どうしたの?」

 

「これ見ろよ。明石のジャケットの内ポケットに入ってたんだ。」

 

中にはカナヅチが入っていた。

 

【コトダマ入手:内ポケットに入ったカナヅチ】

おそらく、明石君の工具セットのものと思われる。

 

「…む?妙じゃの…」

 

声の主は、千葉崎さんだった。

 

「…このネット、ワイヤーが入っておらんぞ。」

 

【コトダマ入手:バレーのネットのワイヤー】

ワイヤーのないバレーのネットが置いてあった。ワイヤーがどこにあるのかは不明。

 

「…あの、鍵の解析が終わりました!」

 

相浦さんが、解析結果を持って走ってきた。

 

「何か手がかりになるんじゃないかと思って…鍵を外側から操作した履歴を調べてみたんですけど…」

 

「相浦君、でかした!!」

 

九十九君は、相浦さんの背中を叩いた。

 

「わ…私、これくらいしか取り柄がないので…」

 

相浦さんが照れながらメモを見せた。

 

 

13:24 開

13:48 閉

21:45 開

21:48 開

07:09 開

 

 

【コトダマ入手:倉庫の鍵の開閉履歴】

電子生徒手帳を使って鍵を開閉した履歴のメモ。

 

「すみません…個人までは特定できませんでした…」

 

「いや、十分大手柄じゃないか!!!」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「…あれ?この履歴おかしくない?『開』が連続してる…」

 

「…この倉庫、中に手動開閉レバーがあるんです。恐らく、それで内側から閉めたんだと思います。その方法なら、履歴が残らないので…」

 

「…あれ?じゃあ、明石君は密室で死んだって事?」

 

【コトダマ入手:手動開閉レバー】

倉庫の中にある。これで鍵を施錠すれば、履歴が残らない。

 

「完全に密室ってわけじゃないけどねー。」

 

そう言ったのは魅神君だった。

 

「この倉庫、上の方に通気口があるんだよね。…まあ、人が出入りできるスキマじゃないけど。」

 

【コトダマ入手:通気口】

倉庫の上にあり、廊下と繋がっている。人が出入りできるスキマではない。

 

「なんだかこの部屋暑くないかい!!?」

 

「暑苦しいのはお前だろー?」

 

…確かに少し暑いな。

 

エアコンの温度を確認した。

 

「あれ?暖房ついてんじゃん!!28℃…昨日からついてたのかな?」

 

【コトダマ入手:暖房】

28℃に設定されている。昨日からついていた。

 

「あのさ、夏川ちゃんは犯人に心当たりない?」

 

「…ないけど…」

 

「ふーん…じゃあ、昨日は何してたの?」

 

「えっと…法正君とお話して、その後明石君とちょっと…」

 

「ちょっと?もしかして、ブッ殺したとか?」

 

「違うよ!バカな事言わないで!!」

 

【コトダマ入手:昨日の行動】

法正君が持ってきてくれたアイスを食べながらお話していた。

 

「あれ?何これ。」

 

奴目さんが、手動開閉レバーを見ながら首を傾げている。

 

「こんなキズ、なかったはずなんだけど…」

 

【コトダマ入手:レバーのキズ】

何かを巻きつけたようなキズが付いている。

 

「…あれ?…おっかしいな…」

 

真樹さんが、何か気づいたようだ。

 

「どうかしたの?」

 

「教えて欲しけりゃメダルよこしな!!」

 

「…真面目に聞いてるんだけど。」

 

「わ、悪かったよぉ…ここにあった錘が一個無くなってたんだよぉ…」

 

【コトダマ入手:不足した錘】

倉庫にあった錘が一つ無くなっていた。

 

「…少し、気になる事が。」

 

宇田川君と金剛寺さんたちが調査を終えたようだ。

 

「保健室にあった睡眠薬が、無くなっていました。」

 

【コトダマ入手:消えた睡眠薬】

睡眠薬が無くなっていた。

 

「冷蔵庫にあったドライアイスも無くなっていましたわ。」

 

【コトダマ入手:消えたドライアイス】

冷蔵庫にあったドライアイスが無くなっていた。

 

「…それと、寄宿舎エリアの物置にあったロープも無くなっていましたね。」

 

【コトダマ入手:消えたロープ】

寄宿舎エリアにあったロープが無くなっていた。

 

「あれ!?なんだコレ!?」

 

声の主は、小林さんだ。

 

「どうしたの?」

 

「なんか、いい匂いがするなーって思って、匂いの元を辿ってみたら、ダイキチの指になんかついてた!」

 

明石君の左手の指はなぜかベタベタしており、焦げ茶色の繊維が付着していた。

 

【コトダマ入手:焦げ茶色の繊維】

ベタベタした明石君の指に、焦げ茶色の繊維が付いていた。

 

 

その後、一応明石君のDVDを確認した。

 


 

最初は、明石の家族と思われる少女が、病室で明石と楽しそうに話している映像だった。

 

「ウチな、いつかお兄ちゃんが芸人さんになってな、漫才するところを生で見たいねん。」

 

「陽子…安心せえ!お兄ちゃん、絶対売れっ子芸人になって、陽子の病気も治せるくらい大金持ちになったる!」

 

「ホンマ?約束やで?」

 

そこから映像が切り替わる。

 

映ったのは、荒らされた病室だった。

 

明石の妹のものと思われるベッドには、血飛沫が飛び散っていた。

 

『病気の妹さんのために、売れっ子芸人になると約束した明石 大吉クン。いやあ、実に感動的ですねぇ。…ですが、その妹さんの身に何かあったようですね!?では、ここで問題です!彼の妹さんの身に何があったのでしょうかっ!?正解は『卒業』の後で!』

 


 

…そんな。明石君が、そんな事情を抱えてたなんて。

 

そんな事も知らずに、あたしは…

 

ピンポンパンポーン

 

『えー、生徒の皆さん!そろそろ、学級裁判を始めたいと思います!至急校舎エリア1階の赤い扉の前までお集まりくださいっ!』

 

 

赤い扉の前に行くと、エレベーターがあった。全員でエレベーターに乗り込んだ。

 

エレベーターの中で、法正君が震えているのに気づいた。

 

「…大丈夫?」

 

「…ああ、うん…。ちょっと、緊張してるのかな…」

 

あたしは、法正君の手を握った。

 

「一緒に、この裁判乗り切ろうね!」

 

「…ありがとう。」

 

法正君は微笑みながら言った。

 

 

裁判場に着いた。

 

今から、誰かが処刑される。

 

でも、どんな結果になっても、受け入れなきゃ。

 

あたしは覚悟を決めて、一歩踏み出した。



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第1章 非日常編②

裁判場に入った。

 

裁判場には、席が環状に設置されていた。

 

席には、ご丁寧に全員の名前が書いてあった。

 

明石君の席には…

 

笑顔の明石君の遺影が置かれていた。

 

遺影には、大きな赤いバツ印が描かれていた。

 

「…な、なんなんですか…これ…」

 

向かいの席の相浦さんが質問した。

 

『見ての通り明石クンの遺影だよ!明石クンだけのけ者にするのはかわいそうでしょ?』

 

あまりの悪趣味さに、あたしは腹が立って台に拳を振り下ろした。

 

 

全員が席に着いた。

 

『全員揃った?じゃあ、始めよっか!ドキドキワクワクの学級裁判を!』

 

 

 

学級裁判開廷!

 

 

 

『まずは、事件のまとめからだね!じゃあ、議論を開始してくださーい!!』

 

 

 

議論開始

 

法正「…じゃあ、僕がファイルを読むね。被害者は明石 大吉。死亡時刻は午後10時頃体育館倉庫の天井に括り付けられたロープで首を吊った状態で死亡。死因は窒息死。首には索条痕と吉川線が見られる。被害者の爪には被害者のものと思われる皮膚と血液が付着。…みんなも把握してるよね?」

 

真樹「…状況から察するに、首吊り自殺って事?」

 

黒須「自殺してしまうほど追い詰められていたんでしょうか…」

 

 

「…いや、多分違うんじゃないかな?」

 

反論

 

真樹「何よ!アタシの言ってる事が間違ってるって言いたいワケ!?どう考えても首吊り自殺じゃん!!」

 

…自殺じゃないと言える根拠…アレしかないな。

 

 

【使用コトダマ:モノクマファイル】

 

 

論破

 

「…法正君も言ってくれたけど、明石君の首には吉川線があったよ。それに、爪にも皮膚と血液が付着してるよね。これって、明石君が、何者かに首を絞められて、抵抗しようとして首を掻き毟ったって事の証拠だよね!」

 

真樹「うぅっ…!」

 

小林「ヨシカワセンって何?」

 

魅神「絞殺された死体に残った、抵抗して首を掻き毟ってできた傷痕の事だよ〜。それの有無で、自殺か他殺か判断するんだよね〜。」

 

金剛寺「…つまり、明石さんはここにいる誰方かに殺害された、という事ですの?」

 

奴目「じゃあ、ダイちゃんはどうやって絞殺されたの?」

 

 

議論開始

 

 

小林「素手でグイッといけないかな?」

 

銀杏田「ロープでも使ったんでしょう。」

 

佐伯「アクセサリーとかで絞め殺したんじゃね?」

 

…銀杏田君の意見が正しそうだな。

 

 

【使用コトダマ:消えたロープ】

 

 

同意

 

「…多分、銀杏田君の言う通り、ロープで絞め殺したんじゃないかな?あらかじめ、物置から盗んでおいたロープで明石君を絞殺した後、同じロープを天井に括って、首吊り自殺に見せかけたんだと思うよ。」

 

黒須「なるほど…では、次は殺害現場ですね。」

 

九十九「誰か、心当たりは無いかッ!!?」

 

「心当たり…」

 

…多分、ここしかないだろう。

 

 

【提示コトダマ:体育館倉庫】

 

 

「…体育館倉庫だと思うよ。状況からして殺人現場と死体発見現場が同じと考えるのが自然だし、あたしが明石君と待ち合わせの約束をしたのも体育館倉庫だしね。」

 

魅神「何?夏川ちゃん、明石と待ち合わせしてたの〜?昨日まで法正クンとラブラブだったのに、気移り早くな〜い?夏川ちゃんて、純粋そうに見えて実はビッチだったんだ〜。」

 

「違うから!…ただ、明石君が、学園の重要な秘密を知っちゃったって言ってたから、それを聞こうと思って…」

 

宇田川「重要な秘密?どんな内容かは知ってるんですか?」

 

「ううん。…聞こうと思ったんだけど、その夜寝ちゃって…」

 

奴目「約束すっぽかしちゃったって事!?そんな状況で!?普通ありえる!?」

 

「…ありえないね。ごめんなさい。」

 

奴目「…でも、ダイちゃんが言ってた重要な秘密って、何の事だったんだろ…?」

 

佐伯「…それと関係があるかはわかんねえんだけど…ちょっと気になる事が…」

 

…もしかして、アレか?

 

 

【提示コトダマ:内ポケットに入ったカナヅチ】

 

 

「…カナヅチの事?」

 

佐伯「そう、それだよ!!あれって、明石の工具セットだろ?…なんで明石が持ってたんだ?」

 

アナスタシア「…工具を持って、人気のないところに呼び出したんだとすれば、目的は一つしか考えられないな。」

 

…目的?…まさか、嘘だ…

 

 

 

 

明 石 君 が あ た し を 殺 そ う と し て い た ?

 

 

 

法正「多分、重要な秘密というのは、明石君が、夏川さんをおびき寄せるための嘘だ。明石君は、最初から夏川さんを殺す気だったんだよ。」

 

「…そんな。」

 

魅神「…ねえ、今その話どうでも良くない?そんな事よりさ、早く事件の状況の整理しよーよ。」

 

(最初に脱線したの魅神君のくせに…)

 

 

議論開始

 

 

相浦「…そ、倉庫は、施錠されていたんですよね…」

 

佐伯「でもよ、電子生徒手帳を使えば誰だって鍵閉められんだろ?普通に、絞め殺した後電子生徒手帳で鍵かけたんじゃねえの?」

 

 

「それは違うよ!」

 

 

反論

 

佐伯「証拠はあんのかよ!」

 

…アレを証拠として提出すべきだろうか?

 

 

【使用コトダマ:倉庫の鍵の開閉履歴】

 

 

論破

 

「これ見て。これは、相浦さんが調べてくれた、電子生徒手帳による鍵の開閉の履歴のメモなんだけど、21:48と07:09が『開』になってるでしょ?つまり、その間は、電子生徒手帳による施錠は行われなかったって事。」

 

金剛寺「でも、そうなると、鍵は履歴に残らないなんらかの方法で施錠されたって事になりますわよね?…そんな方法あったかしら?」

 

…おそらく、あの方法だろう。

 

 

【提示コトダマ:手動開閉レバー】

 

 

「多分、犯人は手動開閉レバーを使ったんだよ。そうすれば履歴を残さずに施錠できるからね。」

 

宇田川「ちょっと待ってください。そうなると、鍵は内側から施錠されたという事になりますよね?」

 

千葉崎「…となると、やはり自殺の可能性も否定できんのう。」

 

真樹「ほ、ほらぁ!!」

 

いや、ちょっと待て。そんな簡単に結論づけていいのか?

 

佐伯「お前ら、明石はこの中の誰かに殺されたに決まってんだろ!?」

 

「…佐伯君?」

 

佐伯「オレはアーティストだからな、直感には自信あんだよ。…間違いねえ、明石を殺したのはこの中の誰かだ!!…夏川ちゃん、気になる事があったらなんでもいい、言ってみてくれ。」

 

…気になる事?アレだろうか。

 

 

【提示コトダマ:レバーのキズ】

 

 

「…そう、なんかレバーに何かを巻きつけたんじゃないかな?そんな形跡があったんだ。」

 

魅神「何を巻きつけたんだろうねー。」

 

銀杏田「…物置から無くなっていたロープは一本だけ…そう考えると、別のものを使用したという事になりますね。」

 

 

議論開始

 

 

金剛寺「何でしょう…でしょうか…?」

 

魅神「別の場所からロープでも持ってきたんじゃないのー?」

 

千葉崎「ワイヤーかもしれんぞ?」

 

黒須「ベルトの可能性もありますよね…」

 

千葉崎さんの意見に賛同したい。

 

【使用コトダマ:バレーのネットのワイヤー】

 

 

同意

 

 

「多分、ワイヤーを巻きつけたんだと思うよ。千葉崎さんが見つけた、ワイヤーのないバレーのネット…多分、ワイヤーをネットから引き抜いて使ったんだよ。」

 

真樹「でも、それがわかったから何よ!どうやって鍵を閉めたのかがわかってないじゃん!!」

 

佐伯「そんなの知るかよ!」

 

千葉崎「事件は迷宮入り…かのう。」

 

九十九「そんな簡単に諦めるんじゃない!!もっと熱くなれよ!!!」

 

…そう、問題はそれだ。

 

どうやって鍵を閉めたか、なんだ。

 

考えろ、何か思いつく事はないか…?

 

 

閃きアナグラム

 

 

次々と、頭の中にピースが浮かんでくる。

 

それを…素早く拾って、組み合わせて…

 

…これだ!!

 

 

「…滑車の原理?」

 

相浦さんと宇田川君の理系トークを思い出して、ふと言葉を漏らした。

 

相浦「…あ、ホルスト・バーナー氏の論文…!」

 

法正「…なるほど、滑車の原理を使えば、自分の力を使う事なく施錠できるかもね。…でも、そのためには錘が必要なはず…」

 

…錘、もうこれしかないだろう。

 

 

【提示コトダマ:不足した錘】

 

 

「倉庫から、錘が一個無くなってたんだ。多分、それを使ったんじゃない?」

 

宇田川「…でも、一つ問題が…その方法を使っても、犯人が出た後で施錠するのは不可能なのでは?」

 

相浦「…な、何か、時間が経てば外れるストッパーのようなもので固定したとか…」

 

真樹「でも、そんなのどこにも無かったわよ!」

 

ストッパー?…それだ!!

 

…確か、金剛寺さんが気になる発言をしていたな。

 

 

【提示コトダマ:消えたドライアイス】

 

 

「…ドライアイス。多分、ドライアイスを使って錘を固定していたんだ。」

 

宇田川「…それなら、時間が経てば完全に昇華して証拠が残りませんからね。…しかし、そのためには短時間でドライアイスを一気に昇華させる必要があります。トリックの証拠品の回収も行わなくてはなりませんからね。」

 

「…方法は、あるよ。」

 

アレしかないだろう。

 

 

【提示コトダマ:暖房】

 

 

「倉庫の暖房がつけっぱなしだったんだ。…多分、ドライアイスを早く融かすために部屋を暖めたんだよ。」

 

宇田川「…なるほど、それなら納得です。」

 

銀杏田「…では、次は証拠品の回収方法でしょうかね。」

 

 

議論開始

 

 

小林「ワープじゃない!?」

 

宇田川「そんなわけ…スキマのようなものでもあったんでしょう。」

 

奴目「うーん…勝手に染み出したとか?わかんない!」

 

宇田川君の意見が正しそうだ。

 

 

【使用コトダマ:通気口】

 

 

同意

 

「確か、通気口があったよね。そこから証拠品を引き抜いたんじゃ…」

 

魅神「そこなら、人は通れないけど、証拠品を回収するには十分なスキマだもんね〜。」

 

銀杏田「…トリックの方は、解明されましたね。…では、いよいよ犯人探し、ですか。」

 

真樹「アタシ、ミカミかパリンチェかのどっちかだと思う。」

 

アナスタシア「…証拠はあるのか?」

 

真樹「ひぃい…!だ、だって二人とも、人殺しの才能持ってんじゃん!!」

 

魅神「それとこれとは話が別だろー?勝手な憶測で話進めんのやめろよ、マジで。」

 

真樹「ひぅうぅ…だって、だってぇ…!」

 

黒須「やめましょうよ、三人とも!…とりあえず、何か心当たりのある方はなんでもいいので発言してみては?」

 

…心当たり?とりあえず、アレを提示してみようか?

 

 

【提示コトダマ:昨日の行動】

 

 

「…あたし、昨日法正君が持ってきてくれたアイスを食べながらお話してたんだけど…何か参考になるかな?」

 

アナスタシア「その後は?」

 

「えっと…明石君と約束してから部屋に戻ったんだけど、眠くなっちゃって…」

 

魅神「普通大事な約束してるのに寝ないでしょー?その後眠くなったって事は、やっぱアイスになんか盛られてたんじゃねえの?」

 

…そう、普通ありえないはずなんだ。…もしかして、アレが原因か?

 

 

【提示コトダマ:消えた睡眠薬】

 

 

「…睡眠薬?」

 

奴目「えっ、じゃあ、メグメグはわざと眠らされたって事!?」

 

黒須「でも、一体誰方に…」

 

「…それは。」

 

 

人物指名

 

 

…どうか、間違いであってくれ。

 

だってその人は、最も疑いたくない人物だったから…

 

あたしが、一番尊敬してた人だから…

 

迷いながらも、あたしはその人物に指を指した。

 

 

 

 

 

「…君だよね?

 

法正 良馬君。」

 

法正「…ねえ、夏川さん。証拠はあるの?」

 

「…え。」

 

 

議論開始

 

 

法正「…全部、君の妄想だろ?僕が持ってきたアイスを食べた直後、眠くなったからって僕が犯人とは限らないよね?君の憶測には、ちゃんとした証拠が無いんだよ!」

 

 

「それは違うよ!」

 

 

反論

 

法正「何が違うっていうの?さっきから、全部君の妄想じゃないか。」

 

いいや、彼が犯人だと言い切れる証拠がある。

 

 

【使用コトダマ:焦げ茶色の繊維】

 

 

論破

 

「…明石君の指に、ベタベタした何かと焦げ茶色の繊維が付いていたんだ。」

 

小林「ああ、あの甘い匂いの!」

 

金剛寺「ベタベタした何か…甘い匂い…もしかして、明石さんがくださった飴玉でしょうか?」

 

「…多分ね。ねえ、法正君。この繊維、君のズボンのものだよね?」

 

 

法正「ーッ!!!」

 

法正君が、青ざめた顔をした。

 

…もう、終わりにしよう。こんな裁判。

 

 

クライマックス推理

 

 

頭の中に浮かび上がった漫画のコマに、ジグソーパズルのように適切なピースをはめていく。

 

…できた。これが、事件の真相だ!!

 

 

Act.1

 

DVDを見た後、明石君は裏であたしを殺す準備をしていた。…多分、妹さんを助けるためにね。…明石君の計画に勘付いた犯人は、保健室から睡眠薬を盗み、あたしのアイスに盛って食べさせたんだ。その後、物置からロープを、冷蔵庫からドライアイスを盗んで、体育館倉庫の中で待ち伏せしていた。その時、一緒に部屋の暖房も入れておいたんだ。部屋の温度を上げておくためにね。

 

 

Act.2

 

カナヅチを懐に忍ばせて、待ち合わせの2分前に到着した明石君を、背後からロープで絞殺。…でも、犯人はミスを犯してしまったんだ。…多分、ロープはポケットの中に突っ込んで倉庫に入ったんだと思うけど、一緒にポケットに入っていた明石君がくれた飴玉が、部屋の温度で融けて、ロープにくっついてしまった。そこに、犯人の服の繊維も一緒にくっついたんだろう。その部分に、明石君が抵抗してる時に触ってしまって、繊維が指に付着してしまったんだ。そして、明石君が抵抗しようと首を引っ掻いたせいで、首と爪に引っ掻いた痕跡が残ってしまった。それが、事件が他殺である事の証明になったんだ。

 

 

Act.3

 

その事に気がつかなかった犯人は、証拠隠滅を始めた。まず、ロープを天井に括って、死体を首吊り自殺に見せかけた。そして、次に自殺に見せかけるために、内側から勝手に鍵が閉まる仕掛けを作る準備に取り掛かった。まず、バレーのネットからワイヤーを引き抜き、先端の一方を、自動開閉レバーに括りつけた。そしてワイヤーを、通気口に一番近い天井のポールに引っ掛けて、もう片方の先端に錘を括り付けて、棚か何かに固定しておいたドライアイスで錘を支えた。その後、犯人は一旦倉庫から出た。

 

 

Act.4

 

犯人が倉庫を出た数分後、ドライアイスが完全に融けて錘を支えるものがなくなり、錘が落下。そして、滑車の原理によって、レバーが上に上がり、鍵が自動的に閉まったんだ。それを確認した犯人は、通気口から錘のついたワイヤーを回収した。その後、重要な証拠を倉庫に置いてきてしまった事に気付かないまま、倉庫を後にしたんだ。

 

 

「…犯人は、君だ。…そうだよね、

 

 

 

『超高校級の軍師』法正 良馬君!!!

 

 

「ーーーーーーーーーーッ!!!」

 

あたしに指を指された法正君は、顔を真っ青にして、冷や汗をかいていた。

 

…そして、彼は大きくため息をつくと、観念したように言った。

 

 

「…あーあ。負けちゃった。」



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第1章 非日常編③

「…そうだよ。全部、僕がやった。」

 

法正君は、顔を真っ青にしながらも、微笑んで言った。

 

『うぷぷ…どうやら、結論は出たようですね?…ではでは、投票ターイム!!みんな、手元にあるボタンを押してねー!?』

 

スイッチには、全員の名前が書かれている。

 

…本当に、投票していいんだろうか?

 

ためらっていると、法正君が言った。

 

「ほら、迷う事はないだろ?…クロはもう決まったんだ、早く投票してよ。」

 

…最後の最後まで、あたしはボタンを押せずにいた。

 

結局、たった一人の尊敬する人の命と、あたしを含む他の14人の命を天秤にかけた結果、

 

あたしは法正君に投票した。

 

『ではでは?結果発表ー!』

 

モノクマの座る椅子の前からスロットマシーンのようなものがせり上がり、生徒の顔を模したドット絵が描かれたルーレットが回った。

 

法正君の顔が三つ揃ったところでルーレットが止まった。その下にはGuiltyの文字が浮かび上がり、スロットマシーンからは大量のメダルが出てきた。

 

『うぷぷぷ、お見事だいせいかーい!!『超高校級の芸人』明石 大吉クンを殺害したのは、『超高校級の軍師』法正 良馬クンでしたー!!』

 

「ふざけんなぁあああああああああ!!!」

 

九十九君が、大声を張り上げて泣き叫ぶ。

 

『ふざけてんのはオマエの名前でしょ?ボクは別にふざけてなんかないし!…投票したのはオマエラじゃん!ちなみに、今回は満場一致で法正君クンに投票してたよ!』

 

「…まあ、こうなるよねー。」

 

魅神君が平然とした顔で言った。

 

「リョー君…どうして…」

 

奴目さんは、ポロポロと涙を零して問いかけた。

 

「…恐らく、夏川様を守ろうとしたのでしょう。」

 

銀杏田君が冷静に説明を続けた。

 

「…明石様には、どうしても外に出たい理由がおありだったのでしょう。ですから、夏川様を殺して外に出ようとしていらっしゃったのでございます。」

 

「じゃあ、なんでメグメグが狙われたの!?メグメグになんか恨みでもあったわけ!?」

 

「…簡単だよ。一番殺しやすかったから。」

 

魅神君が説明を続けた。

 

「…これは自論だけど、殺人鬼に狙われやすい奴の条件って、二つあるんだよねー。…一つは、身体の健康状態が逃げるのに適していない事、もう一つは、他人の話を警戒せずにホイホイ聞き入れちゃうバカ正直のお人好しだって事。…この条件をカンペキに満たしてたのが、たまたま夏川ちゃんだったってだけの話。」

 

黒須君が付け足すように言った。

 

「…確かに、夏川さんは頭部を負傷しています…もし、明石君に襲われていたら、咄嗟に身を守るのは難しかったでしょうね。」

 

…そんな。確かに、明石君には妹さんがいる。殺人という発想に行き着いてしまうのも、仕方なかったのかもしれない。

 

…でも、『殺しやすかった』…たったそれだけの理由で、あたしはあの人に命を狙われたのか。

 

「…だけど、それが、法正クンを怒らせる最大の原因になっちゃったんだよねー。」

 

「…どういう事?」

 

アーニャちゃんが質問をした。

 

「察しが悪いなー。法正クンは、夏川ちゃんを気に入ってたんだよ。だから、誰かに殺されるのは許せなかった。…そうでしょ?」

 

「…どうやら、話すしかないみたいだね。」

 

法正君が、観念したように言った。

 

あたしは、法正君に、気になっていた事をぶつけた。

 

…わからなかった。なぜ、法正君があたしなんかのために、手を汚さなきゃいけなかったのか。

 

「法正君…どうして…!…どうしてあたしなんかのためにこんな事…!」

 

 

「…好きだから。…好きだから、夏川さんには生きて欲しかったんだ。…そのために、僕は明石君を殺した。」

 

法正君は、哀しい笑みを浮かべた。

 

「そんな…!」

 

金剛寺さんは、口を両手で覆いながら驚いていた。

 

『ねえ、オマエラいつまでその茶番続ける気?そろそろおしおき始めたいんですけどー?』

 

「やだ…お願い、やめて…やめてやめてやめてやめて…!!そうだ、モノクマ!あたしにおしおきしてよ!!だって、悪いのは全部あたしじゃん!!あたしが甘かったから…あたしが、明石君を殺したんだよ!!」

 

あたしは、泣き崩れながらモノクマに懇願していた。

 

『ダーメ!!もう投票結果で法正クンがクロに決まっちゃったんだから、今更おしおきの対象の変更はできないよ!!』

 

「やだ…やだやだやだ‥!!お願い、お願いします!!法正君を殺さないで!!なんでもするからぁああああ!!!」

 

 

「夏川 メグ!!!」

 

叫んだのは、法正君だった。

 

 

ピシャッ

 

法正君は、あたしの右頬を叩いた。

 

「今君がすべき事はこんな事じゃないだろ!!今、君が本当にすべき事を考えろ!!!」

 

「…僕のために泣いてくれたのは嬉しかった。ありがとう。…でも、これからは違うだろ?僕がいなくなった後、みんなの『希望』になれるのは君しかいないんだ!」

 

「何言ってるの…そんなの、法正君がいなきゃムリだよ…」

 

法正君が、あたしを抱き締めた。

 

「…夏川さんと過ごした時間、本当に楽しかった。ありがとう。…後を頼む。」

 

「っうわぁああああああぁあああああああぁあああああああああ!!!!」

 

 

…ここに閉じ込められてから、ずっと不安だった。

 

ここから一生出られないんじゃないか、そんな絶望が僕の中で膨れ上がっていた。

 

…そんな中で、君に出会った。

 

君は、絶望の中に沈んでいく僕を照らしてくれた。

 

そんな君に、僕は生まれて初めて恋をした。

 

 

…君は、僕の『希望』だ。

 

君がいたから、希望を抱けた。

 

みんなで一緒に脱出したい、そう思えた。

 

…でも、それを壊そうとする奴がいた。

 

明石君だった。

 

…彼には、彼なりの理由があったのかもしれない。

 

それでも、『希望』だけは失うわけにいかないんだ。

 

『希望』を守るためなら、僕が悪魔にならなきゃいけない。

 

君のためなら、たとえこの手を汚しても、一生罪を背負っていくことになっても構わない。

 

…ただ、君が生きてくれさえすれば。

 

 

気がつくと、僕は明石君を殺していた。

 

その瞬間、僕は魔が差してしまった。

 

…死にたくない。

 

その一心から、証拠を隠滅し、裁判でみんなを欺いた。

 

そんな僕のために、君は泣いてくれた。

 

その事が、何よりも嬉しかった。

 

だから、僕は笑って死を受け入れることにした。

 

僕は十分、君にもらった。

 

その全てを返し切れなかったのが心残りだけど、僕は満足だよ。

 

君がいるから、僕は最期まで笑っていられたんだ。

 

…ありがとう。

 

 

『『超高校級の軍師』法正 良馬クンには、スペッシャルなおしおきを用意しました!…ではでは、おしおきターイム!!』

 

「じゃあね、みんな。」

 

「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

モノクマがハンマーを振り上げると、赤いスイッチがせり上がってきた。

 

モノクマは、スイッチをハンマーで押した。

 

 

GAME OVER

 

『ホウセイくんがクロにきまりました。 オシオキをかいしします。』

 

 

 

 

法正の首に首輪がつけられ、ワイヤーのようなもので引きずられる。

 

法正が裁判場の外まで引きずられると、映像が流れる。

 

そこには、おしおきの続きが映っていた。

 

法正は、古代中国の屋敷のような部屋まで引きずられる。

 

法正は、巨大な白い駒のようなものに磔にされ、巨大な碁盤のようなものに、他の駒と一緒に整列させられる。

 

 

そして、画面中央にタイトルが浮かび上がる。

 

 

参國死 法正の乱

 

 

法正が磔になった駒は、軍師の格好をした巨大なロボットに掴まれ、碁盤に勢いよく叩きつけられる。

 

法正は、叩きつけられたダメージで大怪我を負い、血反吐を吐く。

 

対する軍師の格好をした巨大なモノクマが、黒い駒を置く。

 

駒の打ち合いは数十回繰り返され、法正は満身創痍になっていた。

 

全身の骨は折れ、血まみれになり、胴体からは臓器や折れた肋骨が飛び出ている。

 

ロボットに負けそうになった巨大モノクマは、怒って碁盤をひっくり返す。

 

その衝撃で法正は吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられて絶命する。

 

その直後、真上に碁盤が落下してきて、法正の死体が下敷きになる。

 

碁盤の下からは、血が流れ出た。

 

頭から漫画チックな湯気を出しながら腹を立てている巨大モノクマは、碁盤を蹴っ飛ばして部屋を後にする。

 

 

 

 

 

 

映像が終わった。

 

「あ…あああ…あああああ…」

 

体には、まだ法正君の温もりが残っている。

 

…さっきまで、生きてたのに。

 

あたしに、微笑みかけてくれてたのに。

 

 

法正君が、死んだ。

 

あんなにあたしに優しくしてくれた法正君が…あたしの、一番尊敬していた人が、あたしの目の前で死んだ。

 

…まだ、全然恩返しできてなかったのに。

 

まだ、話したい事がたくさんあったのに。

 

…今から悔いても、もう遅かった。

 

彼は、もうこの世のどこにも存在していない。

 

たった今、死んでしまった。

 

…いや、死んでしまったんじゃない。

 

あたしが、殺したんだ。

 

あたしが甘えていたから、法正君は手を汚した。

 

あたしが明石君の殺意に気がついていれば、法正君は死ななかったかもしれない。

 

…気づけなかった。止められなかった。何も、できなかった。

 

他の誰でもない。あたしが、あたしの甘さが、彼を死に追いやったんだ。

 

 

あたしは法正君の死を嘆き悲しみながら、無力な自分を呪っていた。

 

「嘘でしょ…」

 

「マジかよ…こんな残酷な方法で殺されんのかよ…」

 

「いやだよぉ…こんな死に方したくないよぉ…パパ、ママァ…」

 

「…下衆が。」

 

奴目さん、佐伯君、真樹さん、宇田川君が声を漏らした。

 

「…!」

 

相浦さんは、体をガタガタと震わせ、失禁していた。

 

『うぷぷぷ、相浦さんってば高校生にもなってお漏らし?はしたないなぁ。あんまり神聖な裁判場を汚さないで欲しいんだけど。』

 

相浦さんは、涙目でモノクマを睨みながら震えた声を振り絞って言った。

 

「…あ、あなたはこんな事をして何が面白いの…?」

 

『うーん…そう言われてもなぁ。ボクはただ、『絶望』が大好きなだけなんだ!…それにしても、法正クンのあの無様な死に方…いやあ、ドキドキワクワクが止まりませんなぁ。オマエラ、よくやったよ!ご褒美に、モノクマメダルをプレゼントしちゃいま〜す!じゃっあね〜!』

 

悲しむあたしたちには目もくれず、モノクマは上機嫌で去っていった。

 

「…相浦君、大丈夫か?」

 

宇田川君が、相浦さんを心配していた。

 

それ以外のみんなは、一言も声を発さなかった。

 

あのアーニャちゃんでさえ、目を背けながら俯いている。

 

…でも、一人だけその静寂を打ち破る男がいた。

 

「ぷっ、くくくっ…あぁ、やべっ…笑いが堪えきれねーわ…ぶふっ…ぷくくっ…あはっ…あははっ…あーっはっはっはははははははははははは!!いいねえ…最高だねえ!!これこそ最ッ高のエンターテインメントだァ!!!」

 

…魅神君だった。

 

「ふざけるなぁああああああああああああ!!!何がおかしいんだ貴様!!!」

 

九十九君が、魅神君の胸ぐらを掴んで大声で叫んだ。

 

「おいおいお〜い!お前らさあ、なんかスッゲー通夜みてえな雰囲気醸し出してますけど?なんか忘れてる事ねぇか?」

 

「…何よ、それ。」

 

あたしは怒りのこもった声で聞いた。

 

仲間の死を嘲笑うこの男が、許せなかった。

 

「法正は、明石クンを殺したんだぜ!!?その殺人鬼が処刑されたんだ、もっと喜ぶべきだと思いまぁあああ〜す!!!」

 

「どこまで腐ってんだテメェ!!!」

 

佐伯君も声を荒げた。

 

「…知ってんだよ。お前ら一般人は、極悪犯罪者の死刑が決まるのを望んでんだろ?『そんな奴早く死刑にしてくれ』って、ピーピーピーピーうるせぇっつーの!それで、死刑が執行された途端、喜んでやがる…それなのに、今法正の処刑を悲しんでるのはどう考えてもおかしくないですかぁあああ〜!!?やった事は、そいつらと大して変わんねぇよなぁ!!?」

 

「貴様あああああああああああああああ!!!」

 

「…もうやめて!!」

 

叫んだのは、相浦さんだった。

 

「…もう、やめてください…これ以上、人が死ぬのはもう…耐えられないです…」

 

「…チッ。あー、もういいわ。萎えた。あとは勝手にやってろ。」

 

魅神君は、一足先に裁判場を後にした。

 

再び静寂が戻った。

 

誰も、立ち上がる気にはなれなかった。

 

 

「みんな、いつまでも悲しんでる時間はないよ!」

 

気づくと、口が動いていた。

 

真樹さんが、あたしに言葉をぶつけた。

 

「あ、アンタ…ホウセイが死んだんだよ!?…なのになんで…」

 

「だからこそだよ。あたしたちは、法正君の死を無駄にしちゃいけない。…彼はあたしに言ってくれた。『後を頼む』って。だから、法正君の分まで、前を向いて生き続けるんだ!!…それが、彼があたしに遺してくれた、最初で最期の願いだから。」

 

その言葉を受けて、みんな立ち上がった。

 

こうして、全員裁判場を後にした。

 

どんなにつらい事が待ち受けていたとしても、あたしたちは立ち向かい続けなきゃいけない。

 

…そう、深く心に刻んだ。

 

 

 

 

 

第1章『全ては希望のために』ー完ー

 

【生徒数】 残り14名




ここでどうでもいい裏話。

夏川ちゃん、明石君、法正君の初期設定のお話です。

・夏川ちゃんは、初期設定では男でした。
…しかし、男性側で登場させたい超高校級が多すぎたのと、命がけのデスゲームの中で頑張るJKを書きたくなったので、女の子に変更しました。
原案は、原作の苗木君に近い感じでした。

・明石君の初期設定は、【超高校級のピエロ】でしたが、原案のイメージ図がモロヒ●カになってしまったので、ボツにしました。そこで、人を笑顔にする職業という事で、【超高校級の芸人】を採用する事にしました。

・法正君の初期設定は、【超高校級の天才】という万能キャラでしたが、既に銀杏田君という万能キャラがいたのと、万能すぎるキャラを準主人公にするのはどうなのかと考えた結果、頭脳で主人公をサポートする役割へとジョブチェンジさせました。



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第2章 血は争えない
第2章(非)日常編①


『アンタ、新入生か?初っ端から遅刻はアカンで?』

 

『落ち着いて、君、新入生だろ?僕も同じなんだ。』

 

二人の声が、響き渡る。

 

二人が、笑いながら手を振っている。

 

待ってよ、そんなに急かさないでよ…今そっちに行くから…

 

 

 

 

次の瞬間、目の前が真っ赤に染まり、耳障りなノイズが流れる。

 

ザッ…ザザッ…ザザーーーーーーーーッ

 

視界が切り替わったと思うと、首を吊った明石君と、潰れて肉塊になった法正君が視界に映る。

 

…あれ…?…なんで…?

 

『うぷぷ…うぷぷぷぷぷ…!!』

 

不快な笑い声が聞こえる。

 

 

 

 

「はっ…!」

 

目が覚めた。

 

昨日の記憶が曖昧だ。

 

どうやら、あたしは部屋に戻った後疲れて眠ってしまったらしい。

 

鏡を見ると、目が腫れて、涙の跡がくっきり残っていた。

 

…泣き疲れて寝ちゃったのか。

 

『オマエラ、7時です!今すぐ全員起床するように!!』

 

…そっか。もう朝か。

 

あ、そうだ!今日の朝ごはん何だろ?

 

法正君と明石君はもう食堂に向かってるのかな?

 

二人を呼びに行こっと!

 

「法正く…」

 

…思い出した。

 

…そっか、もういないんだった。

 

あたしは、重い足取りで食堂へと向かった。

 

 

食堂に向かうと、何人かを除いて、一通りみんな集まっているみたいだった。

 

…相浦さんと奴目さんは来ていなかった。

 

他のみんなは、ほぼ全員やつれていた。

 

唯一魅神君だけは、いつもより肌に艶があった。

 

このままじゃいけない。そう思ったあたしは、無理矢理声を絞り出した。

 

「おっはよー!!みんな!!」

 

…スベった。…そりゃそっか。あんな事があったんだもん。元気になんてなれないよ…

 

そんな時だった。

 

「…おはようございます。」

 

朝食の準備をしていた銀杏田君が、笑顔で返してくれた。

 

「おはよう!!!」「おっはよー!」「おはようございます。」

 

続けて、みんなが挨拶を返してくれた。

 

銀杏田君が、朝食を作ってくれた。

 

「いただきます。」

 

あたしは、朝食を口の中にかき込んだ。

 

いつまでも落ち込んでちゃダメだ。

 

とにかく、今は今後のためにたくさん栄養をとっておかなきゃ。

 

「ごちそうさまでした!」

 

「…あら、夏川さん。ご飯粒付いてますわよ。」

 

向かいの席の金剛寺さんが、左頬を指差しながら言った。

 

「えっ!?嘘?どこどこ?」

 

みんなの中で、笑いが溢れた。

 

…よかった、笑う元気はあるみたいだな。

 

 

朝食の後は、報告会を開いた。

 

朝食に来なかった相浦さんと奴目さんも、報告会には出席していた。

 

銀杏田君は、朝食を食べていない二人のために、軽めのデザートを作ってあげていた。

 

「ねえ、そういえば…」

 

小林さんが、話をした。

 

「…なんか、2階が行けるようになってたのだ!!」

 

「えっ、ホント?」

 

真樹さんが聞き返した。

 

「うん、ホーコクカイの後は、みんなで探検なのだ!!」

 

 

2階の探索が終わった。

 

2階には、図書館とプールとトレーニングルームがあった。

 

寄宿舎の方は、大浴場と倉庫が解放されたようだ。

 

物置が既にあったが、それとは多分別のものだろう。

 

プールを真っ先に見つけた小林さんは、「泳ぎに行こう」と上機嫌だった。

 

あたしは更衣室を調べる事になった。

 

更衣室の扉は、鍵がかかっていて開かない。

 

『更衣室の鍵を開けるには、電子生徒手帳をカードリーダーに重ねてください!』

 

モノクマが後ろから現れた。

 

「…その現れ方、心臓に悪いからやめてよ…」

 

『いやあ、失敬失敬。』

 

モノクマは反省していない様子だ。

 

更衣室を見て、佐伯君あたりなら良からぬ事を考えそうだな、と考えた時だった。

 

『あ、そうそう。仮に男子が女子更衣室に、女子が男子更衣室に入ろうとした場合は、ガトリングガンで蜂の巣にしちゃうからね!』

 

ふと上の方を見ると、ガトリングガンがぶら下げられていた。

 

(…物騒だな。)

 

『あ、それと今後は電子生徒手帳の他人への貸与を禁止します!』

 

「…なんで?」

 

『なんでもどうしてもWhyもないの!とにかく決められたルールを守っとけばいいんだよ!…じゃーね!』

 

(…なんなんだ。)

 

更衣室を調べてみたが、特にこれといっておかしなところはなかった。

 

男性アイドルユニットのポスターが目に留まったくらいだろうか。

 

 

一通りみんなが探索を終えた後、報告会を開いて情報を共有した。

 

「みんな、どうだった?」

 

「倉庫は、お菓子とかインスタントラーメンとか色々入ってたよ!」

 

「…1階にあった物置のデカい版ってとこね。」

 

報告したのは、奴目さんと真樹さんだった。

 

「図書室でノートパソコンを発見しましたわ。」

 

「後で、相浦様に見ていただく予定でございます。」

 

報告したのは、金剛寺さんと銀杏田君だった。

 

「…他のみんなは?」

 

「余は浴場を見て回ったが、特におかしな所はなかったぞ。以上じゃ。」

 

「男子の浴場の方も、特に変わった点は…」

 

報告をしたのは、千葉崎さんと黒須君だった。

 

「…ねえ、男子更衣室はどうなってた?」

 

右隣に座っていた魅神君に振ってみた。

 

「んー…特に変わったところはなかったかなー。強いて言うなら、グラドルのポスターがあったくらい?…まあ、佐伯クンはあんな写真如きでコーフンしてたみたいだけど?」

 

「う、うるせぇな!余計な事報告すんな!」

 

佐伯君は、恥ずかしくなったのか、コップに入ったコーラを勢いよく飲み干した。

 

呆れながら見ていると、暑苦しい声が響き渡った。

 

「やあ!!みんな、おまたせ!!!」

 

珍しく、九十九君と小林さんが遅刻してきた。

 

二人とも、汗をかいているようだ。

 

「…すごい汗の量だね。」

 

「暑苦しいんだよお前ら。流石に、お前らに蒸し殺されるのだけはごめんなんだけど〜?」

 

不謹慎な発言をした魅神を小突き、質問をしてみた。

 

「…どうしたの、そんなに汗かいて。」

 

「…いやあ、実は、トレーニングルームで鍛えていたんだ!!そしたら夢中になってしまって、時間を忘れてしまったというわけさ!!!」

 

「えへへ、楽しかったのだー!!」

 

「そのまま脱水起こして死ねば良かったのに〜。」

 

グリッ

 

腹の立つ発言だったので、あたしは魅神君の足を踏んづけた。

 

「痛ったぁ〜い。」

 

 

部屋に戻ろうとした時、法正君の部屋の前を通った。

 

鍵は空いていた。

 

なんでもいい。彼について、何か知りたい。

 

そう思ったあたしは、部屋の中に入った。

 

部屋の中は、綺麗に片付けられ、余計なものは散らかっていなかった。

 

あたしは、部屋のゴミ箱に捨ててあるDVDに目がいった。

 

DVDを持って、視聴覚室に行った。

 

DVDをデッキにセットして、見始めた。

 

 


 

 

和室が映った。

 

そこには、法正が、同い年くらいの少年と将棋をして、それを他の子供達と、着物を着た60代くらいの男性が観戦している様子が映っていた。

 

「…参りました。」

 

「スゲー!良馬、これで1000連勝じゃん!!」

 

「大したことないよ。」

 

「…法正君、田辺君。また腕を上げましたね。見事でしたよ。」

 

男性が、二人に拍手をおくった。

 

「…ありがとうございます。」

 

笑顔の法正が映った。

 

その瞬間画面が切り替わり、荒らされた和室が映った。

 

障子は血飛沫で赤く滲んでいた。

 

…そして、子供達が血を流して倒れていた。

 

最後に、血塗れになった男性の手が映った。

 

『地元の将棋教室に通っていた法正 良馬クン!そこには、同じように将棋に励む子供達と、彼の軍師の才能を育てた、彼の人生で最高の恩師と言える先生がいました!…いやあ、あの天才はここで育ったんですねえ。…ですが、どうやら教室は閉塾してしまったようですね?ではここで問題です!将棋教室の閉塾の理由とはっ!?正解発表は『卒業』の後で!』

 

 


 

 

映像を見終わった後、あたしはDVDを叩き割っていた。

 

…気分の悪いものを見てしまった。

 

部屋に戻ろう。

 

あたしは視聴覚室を後にし、部屋に戻った。

 

 

 

部屋に戻ったあたしは、シャワーを浴びようと、腰のブレザーを解いた。

 

すると、一枚の紙切れが落ちた。

 

「…こんなもの、持っていなかったはず…もしかして、法正君がハグした時に忍ばせてたのかな…」

 

紙を開いてみた。

 

手紙だった。

 

 

 

 

拝啓 夏川さんへ

 

 

まず、僕から謝らなければならない事があります。

 

僕は、明石君を、仲間を殺してしまいました。

 

そのため、僕はみんなより一足先に『卒業』する事になります。

 

みんなを裏切ってしまった事を、許して欲しいとは言いません。

 

ただ、あなたに伝えたい事をいくつかまとめておきます。

 

まず外に出たら、外から脱出方法と、黒幕について探ってみます。

 

無事脱出方法が見つかったら、みんなで脱出してください。

 

僕は、黒幕を見つけて捕まえたら、先生達と家族の安否を確認して、

 

それが終わったら自首するつもりです。

 

黒幕については、ある程度探っておいたので目星はついていますが、

 

まだ伝える事はできません。無事出られたら、全て話します。

 

それから、僕が出て行った後に、みんなをまとめる上で守ってほしい

 

アドバイスを、いくつかリストアップしておきました。

 

それを読んで、みんなを導いてあげてください。

 

 

 

最後に、厚かましいお願いではありますが、もし、犯した罪を償えたら、

 

その時はまた僕を仲間に入れてください。

 

しばらくの間会うことはできませんが、どうかお元気で。

 

 

 

法正 良馬より

 

 

 

 

手紙を読み終わった。気がつくと、涙が溢れていた。

 

学級裁判が無ければ、法正君は外に出られたはずだったんだ。

 

あたしは、急いで法正君の部屋に向かった。

 

 

引き出しには、ホッチキスで留められた紙の束が入っていた。

 

そこには、法正君の手書きの字で、あたしがやるべき事について事細かにアドバイスが書かれていた。

 

…あたしは、何もしてあげられなかったのに。

 

一体、どれだけ遺せば気が済むんだ。

 

涙が、とめどなく溢れ出た。



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第2章(非)日常編②

夕食の準備ができたので、食堂に向かった。

 

今日の夕食はカレーだった。

 

小林さんがリクエストし、それに金剛寺さんが乗っかる形でメニューが決まったらしい。

 

みんな、思ったより食欲があるようだった。

 

朝食の時は来なかった相浦さんと奴目さんも、食欲が回復したみたいで安心した。

 

魅神君が隣の席の宇田川君の皿にニンジンを移して怒られているのを見て、二人は呆れながらも笑顔を見せた。

 

初日のようにとはいかなかったけれども、楽しい夕食になった。

 

 

食事が終わり、食後のティータイムを楽しんでいた。

 

千葉崎さんが淹れてくれたお茶を飲んで、みんなで雑談していた。

 

そんな中、金剛寺さんが提案した。

 

「あの、もしこの後お時間ございましたら、皆さんで大浴場に行きませんか?」

 

みんな、彼女の意見に賛成した。

 

…あたしもなんだかんだでシャワー浴びれてないからな。後で一緒に大浴場に行ってみよう。

 

「ボクからもテーアンなのだ!!」

 

小林さんが手を挙げて言った。

 

「明日は、みんなでプールに行きたいのだ!!チョーサはお休みして、みんなで遊びまくるのだ!!」

 

「いいですわね、それ!」

 

「たまには息抜きをしてみるのも良いでしょう。」

 

金剛寺さんと銀杏田君も賛成した。

 

「もちろん、オレも行くぜ!!」

 

佐伯君が、下心剥き出しの表情で言った。

 

「…不潔。」

 

アーニャちゃんが呟いた。

 

「えっ、いや、ちょっと待ってそんな顔しないでよ!」

 

佐伯君が慌てて言った。

 

「…馬鹿馬鹿しい。僕は行きませんからね。調査を休んでプールなど、何考えてるんです。僕は一刻も早くここから出たいので。」

 

宇田川君は、否定的な様子だった。

 

「あっれれ〜?いいのかにゃ〜?」

 

魅神君が、ニヤニヤしながら宇田川君に耳打ちした。

 

「相浦ちゃんの、エッロエロの水着姿が見られるかもしれないのに、行かなくていいのかにゃ〜?」

 

「ぶっ」

 

宇田川君は、飲んでいたコーヒーを口から吹き、顔を真っ赤にしながら魅神君に怒鳴った。

 

ボタボタと口からコーヒーをこぼしながら言っているので、正直カッコ悪い。

 

「な、何馬鹿なこと言ってるんですか貴方は!!」

 

「…?」

 

そんな二人を、相浦さんが首を傾げながら見ていた。

 

「…あの、大丈夫ですか?」

 

「あっ、だ、大丈夫ですよ、ほらこの通り!」

 

宇田川君は、素早く口周りのコーヒーをナプキンで拭いた。

 

「…は、はぁ…」

 

相浦さんは、それ以上追求しなかった。

 

宇田川君は、顔を真っ赤にしながら、そっぽを向いて円周率をお経のように唱えていた。

 

…側から見たら、めちゃくちゃ怖い。

 

これが、彼なりの雑念を取り払う方法なんだろうか…

 

 

雑談がひと段落ついた後、みんなで大浴場に行った。

 

とても開放的な感じだった。

 

「ひっろーい!!とうっ!!」

 

小林さんが、走って湯船の中に飛び込んだ。

 

「コラァ!!貴様、せめて体を洗ってから入らぬか!!」

 

千葉崎さんの怒鳴り声が、浴室に響き渡った。

 

アーニャちゃんと金剛寺さんは、大浴場を興味深そうに観察していた。

 

(…まあ、初めてならそういうリアクションになるか。)

 

真樹さんは、化粧を落とすから顔を見るなとすごんできた。

 

(…自分のすっぴんが嫌いなのかな、この人。)

 

相浦さんと奴目さんは、楽しそうにおしゃべりしている。

 

…相浦さん、初めて話した時は会話もしてくれなかったけど、みんなと打ち解けてきたみたいだな。

 

 

お風呂はすごく気持ち良かった。

 

みんなでお風呂から上がると、入り口で銀杏田君が待っていた。

 

「あ、アンタずっとここで待ち伏せしてたの!?」

 

「お嬢様のお命をお守りする事こそ、執事である私の使命でございます。お嬢様のお命が狙われぬよう、ずっとここで見張っておりました。」

 

銀杏田君は当然のように言った。

 

(さすが銀杏田君…)

 

あたしたちはそのまま解散して、それぞれが就寝の準備をした。

 

 

次の日、みんなでプールに行った。

 

「やっほぉーーーい!!!プールサイコー!!」

 

小林さんが走ってプールに飛び込んだ。

 

「あっ、小林君!!ちゃんと準備体操をしてから…」

 

九十九君が注意をした。

 

(…すごい筋肉。高校生だよね、この人。)

 

「プール最高〜〜〜♡」

 

佐伯君は、舐め回すように女子を見ていた。

 

そんな佐伯君を、アーニャちゃんが睨んだ。

 

「…すいません。」

 

「佐伯君、私が見張ってますから、安心してくださいね?」

 

黒須君が、ドス黒いオーラを放ちながら笑みを浮かべる。

 

「…はい。」

 

佐伯君は、アーニャちゃんと黒須君に凄まれると、ものすごい勢いでテンションが下がった。

 

(…ブレないな、この人…)

 

「ヤッバ!!テンアゲなんだけど!」

 

「広ーい!思いっきり泳いじゃお!!」

 

「…これだからプールは嫌いなんじゃ…体型が…」

 

真樹さんと奴目さんが楽しそうにしている一方で、千葉崎さんは憂鬱そうな顔をしていた。

 

「冷、せっかくだし何かプールサイドで食べられるものを持ってきてくれないかしら?」

 

「かしこまりました。」

 

「…全く、騒がしいですね。一人になると危険だから仕方なく来たものの…」

 

宇田川君が、ブツブツ文句を言っている。

 

「あれ?ジョージは泳がないの?」

 

プールの中から、小林さんが聞いた。

 

「…泳ぎませんよ。溺死の心配がある以上、不用意に泳ぐなど…」

 

「宇田川クン、もしかして泳げないの〜?」

 

魅神君が、ニヤニヤしながら宇田川君を挑発する。

 

「なっ、貴方には関係ないでしょう!」

 

「…譲治さん。」

 

声をかけたのは、相浦さんだった。

 

宇田川君は、顔を真っ赤にしながら咳払いをした。

 

(…わかりやすいな、この人…)

 

「…あの、譲治さん泳げないんですか?」

 

「えっと…」

 

「…私も、全然泳げないんです。雰囲気だけでも楽しもうと思って、更衣室にあった水着着てみたんですけど…変、ですよね?」

 

「いや、別にそんな事…」

 

「良かった。…あの、よろしければ一緒にお話しませんか?…私、譲治さんともっとお話したいです。」

 

二人は、楽しそうに話を続けた。

 

「…相浦ちゃん、今譲治って言ったよね?…何?この二人デキてんの?」

 

魅神君がニヤニヤしながら二人を観察していた。

 

「これでカメラとかあればな〜。」

 

ツルッ

 

魅神君は、移動しようとした時に足を滑らせてしまった。

 

ドテッ

 

「痛ってぇ〜…」

 

「ーッ」

 

魅神君は、転んだ拍子に近くにいたアーニャちゃんのお尻を掴んでしまった。

 

「あっ、いけね…」

 

アーニャちゃんは、般若のような顔になって、

 

「死ね!!!」

 

と怒鳴り声を上げて、魅神君を蹴り飛ばした。

 

魅神君は、吹っ飛ばされて反対側の壁に叩きつけられた。

 

(すごい脚力…)

 

「痛ってぇ〜…いきなり蹴るとか酷くね?」

 

壁に叩きつけられた魅神君は、ケロっとしていた。

 

(魅神君も十分化け物だった…)

 

 

とても楽しかった。

 

いつの間にか、泳ぎ疲れて眠ってしまったみたいだ。

 

あたしは、自室のベッドで横になっていた。

 

 

コンコン

 

ドアのノック音がした。

 

ドアを開けると、黒須君がいた。

 

「夕食の準備ができましたよ。」

 

「うん。ありがと。」

 

二人で食堂に向かうと、他のみんなは既に揃っていた。

 

今日の夕食は、バーベキューだった。

 

「おかわりはまだたくさんございますので、遠慮せずお申し付けください。」

 

「お肉追加なのだー!!」

 

「…貴方は食べ過ぎです。人数とペース配分を考えてください。」

 

「あっ!ちょっとアンタ、人の分取るんじゃないわよ!!」

 

「…いや、それ以前に、生肉を食うておる事が問題じゃろうが。」

 

「早く食わねぇのが悪いんだよ〜。あー、生肉おいし〜。」

 

みんな、盛り上がっているみたいだった。

 

「あ、ちょっと!あたしの分も残しといてよね!!」

 

 

「今日は楽しい一日だったなあ。」

 

…二人にも体験させてあげたかった、そう思った。

 

夕食が終わった後は、いつも通り食後のティータイムを楽しんでいた。

 

しかし、そんな楽しいムードをブチ壊す者…もとい、クマがいた。

 

『やっほー!みんな、今日はお楽しみタイムだったみたいだね!探索も殺人もサボって、やる気はあるのかな?全く!』

 

みんなは、モノクマを無視した。

 

『ちょっと、みんなクマ当たりが悪くない?ボクを無視するなんて、酷いよね!?』

 

「ケッ、どの口が言うかよ。言っとくけどよ、オレらは、テメェがした事は絶対許さねぇかんな。」

 

佐伯君が不満を漏らした。

 

『酷いな〜。あれは、勝手にああなっちゃっただけでしょ?言っちゃえば、事故だよ事故!…全く、人のせいにするヤツは、いい大人になれないぞ!』

 

…事故?

 

ふざけるな。全部、お前が仕込んだ事だろ。

 

あたしは、こみ上げる怒りに震えながら、モノクマを睨んでいた。

 

『みんな酷いよね!せっかくボクが、スペシャルな動機を持ってきてあげたのに!』

 

「いらないわよそんなの!」

 

『…人の話は最後まで聞こうよ。このゲロブタ!』

 

「ひぅう…!」

 

『…じゃあ続けるよ。今回の動機はズバリ…その人の、誰にも知られたくない秘密です!』

 

「…秘密?」

 

『人にはさ、必ず誰にも知られたくない秘密の一つや二つ、あるもんだよ!…内容は、自分の目で確かめてみてね!』

 

モノクマが、全員に名前の書かれた封筒を配った。

 

封を開けてみた。

 

…え。

 



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第2章(非)日常編③

進行の都合上、少し編集しました。


封筒の中の紙には、こう書かれていた。

 

 

『夏川さんは、中学生時代、同級生からいじめを受けていました!』

 

…やめて。

 

なんでそんな事知ってるの…?

 

思い出したくない、あの記憶ー…

 

 

 


 

 

中学校に上がってすぐの事だった。

 

同じクラスで、幼稚園の頃からの幼馴染みの女の子が、いじめられた。

 

元々引っ込み思案で、ノーと言えない子だったから、いじめのターゲットにちょうど良かったんだろう。

 

彼女をいじめていたのは、同じクラスの、リーダー格の女子だった。

 

…でも、見ていられなくなったあたしは、言ってしまった。

 

 

 

「やめて、やめてよぉ…!」

 

「うるせえんだよ、口答えすんなブス!!ぎゃははははは!!」

 

「お前なんか死んじまえ!!」

 

「死ーね!死ーね!」

 

 

「ちょっと、やめなよ!!」

 

「…あ?何よ、あんた。」

 

「メグ…ちゃん…」

 

「…君たち、カッコ悪いよ!こんな事して、最低だと思わないの!?」

 

「ふーん、あたし達にそんな口利くんだ?…明日から、どうなっても知らないわよん?」

 

「…え。」

 

 

クラスのリーダー格の女子に、逆らってしまった。

 

その日から、いじめのターゲットがあたしになった。

 

最初は無視されるだけだったが、だんだんエスカレートしていった。

 

私物を隠されたり、壊されたり、汚されたりした。

 

肝試しと称して学校の屋上から突き落とされて、入院もした。

 

病院には、あたしが助けてあげた親友がお見舞いに来てくれた。

 

 

「…エミ!」

 

「…。」

 

ベチャッ

 

「…え?」

 

その子は、持ってきた果物をいきなりあたしの顔に投げつけた。

 

「…こうしないと、またいじめられるんでしょ…?…あの時、私を助けた気でいた…?…目障りなのよ、あんた…」

 

頭の中が真っ白になった。

 

ずっと信じてた親友に裏切られた。

 

その後、ずっといじめが続いた。

 

他のクラスメイトも、先生も、誰も助けてくれなかった。

 

心配かけたくなかったから、お父さんとお母さんには言えなかった。

 

お父さんとお母さんだけはあたしに優しくしてくれたのが、唯一の救いだったのかもしれない。

 

それ以外の人は、全員あたしの敵だった。

 

今思えば、あたしが人の顔色を伺う事を覚えたのは、この時からだったと思う。

 

それができなきゃ、苦しい思いをする日々だったから。

 

 

それから数ヶ月後、あたしは家の都合で引っ越した。

 

転校先の学校では、友達ができて、それなりに平和にやっていけた。

 

いじめられていた事は、誰にも言えなかった。

 

言ったら、新しく築いたものが全て台無しになると思った。

 

…いじめられていた事、それがあたしの誰にも…大好きな家族にさえ言えない秘密だ。

 

 


 

 

 

顔を上げた。

 

他のみんなは、あたしと同様「なんで知ってるんだ」と言いたげな表情だった。

 

そして、中身を確認し終わった人は、誰にも見られないように素早く封筒に戻していた。

 

みんな、さっきの夕食の時とは打って変わって暗い面持ちだった。

 

『みんな、確認し終わったみたいだね!じゃあボクはそろそろおいとまするよ。じゃっあね〜!』

 

モノクマは去っていった。

 

モノクマが去った後は、静寂が訪れた。

 

みんな、お互いに顔を合わせようとはしなかった。

 

どうしよう。また、動機DVDの時と同じになってしまう…

 

そう思った瞬間だった。

 

 

「わたくし佐伯 虎太朗は、小学生の時体重が100kgあって、みんなから百貫デブって呼ばれてました!!!」

 

佐伯君は、自分の秘密が書かれた紙を、顔を真っ赤にしながらみんなに見せていた。

 

「…なんの真似だ?」

 

さすがのアーニャちゃんも、理解不能な言動に驚いていた。

 

「…なんか隠し事してたら、もしかしたら後になって、変な気を起こしちまうかも知んねえだろ?だから、今のうちに秘密を打ち明けておこうって思ったんだよ。」

 

…なるほど、自分から殺人の動機を無くしておくって事か。

 

それに続くように、他の人も秘密を暴露し始めた。

 

「オレは、小学校の頃好きだった女子に、『汗臭い』ってフラれたぞ!!!」

 

「ボクは、ちっちゃい頃はクラスで一番ケンカが弱かったのだ!!」

 

「…仕方ありませんね。隠し事は、主も望んでいらっしゃいません。私は、幼少の頃に我らが父への祈りを怠って隣町まで遊びに行き、そのまま迷子になって帰れなくなった事があります。」

 

…最後のは、秘密にしておくほどの事か?…まあ、真面目な黒須君の事だから、お祈りをサボった事は隠しておきたかったんだろうけど…

 

「…よ、余は…小学校の頃コスプレにハマっておったのじゃ…」

 

千葉崎さんは、耳まで真っ赤にしながら暴露した。

 

「…ぼ、僕は、実はボイスパーカッションが趣味でして…毎晩部屋でこっそり練習しているんですよ…」

 

宇田川君は、メガネを押さえて小刻みに震えながら暴露した。

 

(…え゛?あの宇田川君が、そんな趣味を…?めっちゃ意外…)

 

「え…嘘でしょ…はっず…」

 

真樹さんが引き気味に言った。

 

「ねー宇田川クーン!今ここで練習の成果見せてよー!ほらボーイーパ!ボーイーパ!」

 

魅神君が手を叩きながら冷やかした。

 

「…死にたい。…死にたい。…今すぐ誰か殺してくれ…お願いします…」

 

宇田川君は、小刻みに震えながらブツブツと呟いた。

 

(そんなに恥ずかしいなら言わなきゃ良かったのに…)

 

「…あ、あの…私はこれです…」

 

相浦さんが、自分の紙を見せた。

 

『相浦さんは、中学生の時理科のテストで満点を逃した事があります!』

 

(…秘密にするほどの事か?)

 

「それが、相浦さんの秘密…?」

 

相浦さんが、恥ずかしそうに頷いた。

 

「…いや、別にそんなに恥ずかしい事じゃなくない?」

 

「貴女にはわからないでしょうね。それまで一度も満点以外の点数を取った事がない人の気持ちなんて。」

 

宇田川君が言った。

 

…なんか腹立つ言い方だと思ったのはあたしだけだろうか?

 

まるで人をバカみたいに…

 

「いや、でも、相浦さんの事だから、満点に近い点数は取ってたんでしょ?すごいじゃん!あたしなんて、逆に満点取った事なんて無いし…」

 

「…ありがとうございます。」

 

相浦さんは、嬉しそうに微笑んだ。

 

「そうだ、あたしの秘密も教えてあげる!…あたし、実は中学生の時いじめられてたんだ。」

 

「…え?」

 

みんなが驚いた。

 

「いつまでも隠しててもしょうがないからね、うん。もう隠し事はナシにした!」

 

みんな、口を開けてポカンとしている。

 

「あれ?どうしたの?」

 

「いやいや!なんか…急にデカイのきたから!!…なんかゴメンな!そんな秘密抱えてるって知らなくて…」

 

佐伯君が、なぜかあたしに謝ってきた。

 

「急にデカイの来すぎじゃろ!!お主のせいで、余の黒歴史がどうでもよくなってきたではないか!!」

 

「え…そうかな…?」

 

「…でも、そんなに大きな秘密を打ち明けられるなんて、すごい…と思います!」

 

相浦さんが小さくガッツポーズをした。

 

「…ありがとう。」

 

結局、金剛寺さん、銀杏田君、魅神君、真樹さん、奴目さん、アーニャちゃんの6人は最後まで秘密を暴露しなかった。

 

「俺はパース。絶対言わないからねー。」

 

「お前な…人の事は茶化しといて自分はダンマリかよ…」

 

「お前らに教える義理は無えだろー?」

 

「そうよ!教えて欲しけりゃメダルよこしな!!」

 

「…いや、これ自己申告だから。メダルあげたくないし、真樹さんが言いたくなければ、別に…」

 

「なんだよぉ…もっとアタシに関心持てよぉお…」

 

(なんなんだこの人…)

 

「…奴目さんは、どうしても言えませんか?」

 

「…うん。ごめん。ちょっと言えないや。ごめんね、つぐみん。」

 

「いえ…」

 

あたしは、違和感を抱いた。

 

…銀杏田君だ。

 

銀杏田君は、さっきから仏頂面のままで何も喋らない。

 

いつもは、笑顔で優しく話しかけてくれる彼が。

 

何かあったのかな?

 

「…付き合ってられませんね。」

 

彼は、確かにそう言った。

 

「先程から、何を勝手に暴露大会などなさっているのですか?(わたくし)は、秘密を申し上げたくありませんし、皆様の秘密になど興味はございません。…それでは、お先に失礼させていただきます。」

 

「…では、(わたくし)も失礼しますわ。」

 

金剛寺さんと銀杏田君が行ってしまった。

 

その後は、流れ解散となった。

 

 

あたしは、部屋に戻って考え事をしていた。

 

あの秘密が、モノクマの言う動機なんだとすれば、また殺人が起きてしまうんだろうか…

 

いや、そんな事考えるな。もっと、みんなの事を信用しなきゃ!

 

…大丈夫、きっと、変な気を起こす人なんていないよ!

 

あたしは不安を抱えながらも、ベッドに横になった。

 

 

次の日の朝だった。

 

ピンポンパンポーン

 

あたしは、放送の音で目が覚めた。

 

…まだ、6時半…なんで、放送が?

 

次の瞬間、信じられない内容が聞こえた。

 

『オマエラ、死体が発見されました!至急、男子更衣室の前までお集まりください!』

 

あたしは部屋を出て、一目散に男子更衣室へと向かった。

 

更衣室に到着すると、他のみんなはもう到着していた。

 

恐る恐る中を確認すると、信じられない光景が目に飛び込んできた。

 

更衣室には…

 

血まみれになって磔にされている、

 

 

 

 

 

『超高校級の執事』銀杏田 冷の死体が発見された。

 

 

 

 

【生徒数】残り13名



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第2章 非日常編①

…そんな。

 

また、人が死んでしまった。

 

…どうして、君が死んでしまったんだ。

 

冷静で強く、そしてみんなに優しかった銀杏田君が。

 

あたしは、ただその場で蹲って泣いていた。

 

『はーい、じゃあみんな集合したことだし、お待ちかねの捜査ターイム!!』

 

モノクマは、悲しむ余裕も与えてくれなかった。

 

「テメェ…!」

 

佐伯君は、モノクマを睨んだ。

 

『あれ?なんかボク恨まれてない?ボクは何もしてないよ!やったのは、オマエラのうちの誰かじゃん!』

 

…全部、お前の差し金だろ。

 

あたしは、拳を握りしめながらモノクマを睨んでいた。

 

『みんな怖いな〜!もっとテンション上げていこうよ!…てなわけで、はい、モノクマファイルに資料送ったよ!この時間の後は学級裁判だから、みんなこの時間を有効に使ってね!』

 

そう言うとモノクマは上機嫌で去っていった。

 

…でも実際、悲しみに暮れている時間なんてあたしたちには無かった。

 

あたしは溢れ出る涙をしきりに拭い、調査を再開した。

 

 

まず、ファイルを確認した。

 

被害者は銀杏田 冷。

死亡時刻は、午前1時半頃。

死体発見現場となったのは、2階にある男子更衣室。被害者はそこで、血を流して死亡していた。

死因は、刺殺による失血死。

身体には、複数箇所刺し傷が見られる。また、抵抗した痕跡は見られない。

 

【コトダマ入手:モノクマファイル】

抵抗した形跡は見られない、と書いてある。

 

「妙だな…」

 

そう言ったのは、九十九君だった。

 

「どうしたの?」

 

「オレは、トレーニングルームで体を鍛えるために、更衣室に向かったんだ!!確か、6時半くらいだったかな!!?そうしたら、銀杏田君の死体を見つけてしまって…あ、一緒に小林君も来ていたから、彼女にも聞いてみてくれ!!!」

 

【コトダマ入手:九十九君の証言】

6時半に男子更衣室に行ったと言っている。

 

「…それで、妙な事って?」

 

「実は、その時は、銀杏田君の死体は普通に倒れていただけだったんだ!!…でも、みんなに知らせに行ってる間に、磔になっていて…」

 

「え?本当?あたし、モノクマのアナウンスで起きたんだけど…」

 

「すまない!!一人一人に言って回っていたから、夏川君は後の方になってしまったんだ!!!多分、オレたちが呼びに来る前にアナウンスが鳴ったんじゃないかな!!?」

 

【コトダマ入手:磔の死体】

二人が、みんなを呼びに行っている間に磔になっていたらしい。

 

「あれ!?なにこれ!!こんなの無かったのだ!!」

 

小林さんが、声を大にして言った。

 

小林さんが指を指していたのは、ハンカチだった。

 

…何やら、薬品が染み込んでいるらしい。

 

誰かが持ち込んだんだろうか?

 

【コトダマ入手:薬品の染み込んだハンカチ】

床に落ちていた。

 

【コトダマ入手:小林さんの証言】

発見した時は、ハンカチは落ちていなかった。

 

「…あの、一つ気になることが…」

 

発言したのは黒須君だった。

 

「物置から、傘が無くなっていたんです。…それから、厨房から包丁が無くなっていました。」

 

「…傘?…雨の心配なんてしなくていいのに、なんで無くなってたんだろうね。」

 

「さあ…何かに使ったんでしょうか?」

 

【コトダマ入手:消えた包丁】

厨房から包丁が無くなっていた。

 

【コトダマ入手:消えた傘】

物置から傘が無くなっていた。

 

「…なんで、レイ君こんな殺され方しちゃったの…?」

 

奴目さんが、泣きながら銀杏田君の死体の前で座っていた。

 

…本当に、誰がこんな事を…

 

【コトダマ入手:動機】

なぜ銀杏田君が殺されたのかは、わからない。

 

「ねーねー、この校則なんだけどさー。」

 

魅神君が声をかけてきた。

 

「これさ、電子生徒手帳で開閉できるって書いてあるでしょー?…もし、自分以外の電子生徒手帳で鍵を開けたらどうなんのかなー?」

 

「…え?そんな事できるの?」

 

「『自分の』電子生徒手帳で、とは一言も書いてないっしょ?」

 

「…あ。」

 

【コトダマ入手:更衣室についての校則①】

更衣室の鍵の開閉は、電子生徒手帳で行われる。

 

「…あの、やはり犯人は、男性でいらっしゃるのでしょうか…」

 

金剛寺さんは、少し俯きながら言った。

 

「…ほら、校則にあったじゃないですか。男性が女子更衣室に、女性が男子更衣室に入ろうとすると殺されると…」

 

【コトダマ入手:更衣室についての校則②】

男子が女子の、女子が男子の更衣室に入る事は出来ない。

 

「…アーニャちゃんは、何か気になった事ない?」

 

「…無くはないけど。」

 

アーニャちゃんは、めんどくさそうに返事をした。

 

「…校則では、手帳の貸与は禁止って書いてあるだろ。…借りたり、すり替える事についての記載はない。」

 

「あ、確かに…」

 

【コトダマ入手:更衣室についての校則③】

電子生徒手帳の貸与は禁止。

 

「あっれ!?おっかしいな…」

佐伯君が、自分の電子生徒手帳を何度も叩いている。

 

「…どうしたの?」

 

「俺の手帳が動かねえんだよ!電源すらつかねえ。クッソ!」

 

「…あんまり叩くと余計壊れるよ?…後で相浦さんに見てもらおうよ。」

 

「…お、おう。そうだな。」

 

【コトダマ入手:壊れた電子生徒手帳】

佐伯君の電子生徒手帳は、壊れていて電源がつかない。

 

「…トイレに行く途中落としたんだよな…その時壊れたのかな?」

 

「…落とした?」

 

「ああ、うん。確か1時くらいだったかな…金剛寺ちゃんとぶつかっちまって、その時に二人とも手帳を落としちまったんだよな。…その時に壊したのかなぁ。」

 

【コトダマ入手:佐伯君の証言】

佐伯君は、1時頃に金剛寺さんとぶつかってしまったらしい。その時に、二人とも電子生徒手帳を落としてしまったようだ。

 

「…あの、一ついいですか?」

 

相浦さんが、控えめに手を挙げた。

 

「どうしたの?」

 

「えっと…関係あるかどうかわからないんですけど…昨日、銀杏田さんに変な事を聞かれたんです。」

 

「変な事?」

 

「はい…電子生徒手帳をよく調べて欲しいと頼まれました。」

 

【コトダマ入手:銀杏田君の発言】

相浦さんに、電子生徒手帳をよく調べてくれと頼んだらしい。

 

「…それで、調べはしたの?」

 

「…はい、特に断る理由がなかったですし、いつも自分の事は極力自分で解決する銀杏田さんが、どうしてもと頼み込んで来たので…」

 

「…結果は?」

 

「…えっとですね、電子生徒手帳は、真空、電圧、圧力など、普通の電子機器なら壊れるようなあらゆる要素に耐久性があるんですけど、一つだけ弱点があるんです。」

 

「…弱点?」

 

「…『熱』です。」

 

『ズバリその通り!』

 

急にモノクマが現れた。

 

『電子生徒手帳は、普通の電子機器なら壊れるようなあらゆる要素に耐久性があります!ですが、『熱』にだけは弱い機器となっております!高温に長時間さらされると、熱暴走を起こして壊れちゃうよ!良い子のみんなは真似しないでね!』

 

【コトダマ入手:電子生徒手帳の弱点】

電子生徒手帳は、高温に長時間さらされると故障する。

 

「…ああ、そうだ。相浦さん。」

 

「…何でしょうか?」

 

「手帳ってさ、やっぱり熱以外に弱点とかあったりしない?例えば、うっかり落としちゃったりとか…」

 

「…いえ、その程度では壊れませんよ?…流石に、本体自体が折れたり砕けたりしたらダメですが。」

 

「…ふーん。」

 

「なぜそのような事を?」

 

「佐伯君が、手帳を壊しちゃったみたいでさ…」

 

「…よろしければ、修理出来ないか見てみますよ。…あ、でも校則が…」

 

「…あー、そうだった。人に貸しちゃいけないんだった。…でも、十分収穫はあったし…色々ありがとね。」

 

「…いえ…私に出来る事があれば、何でも言ってくださいね。」

 

【コトダマ入手:電子生徒手帳の耐久性】

本体が壊れない限り、熱以外の要因で壊れる事はまずない。

 

「…ねえ、真樹さんは何か気になることない?」

 

「えっと、確か大浴場で…」

 

「…やけに素直に教えてくれるね。」

 

「う、うるさいわねえ!」

 

真樹さんはビクビクしていた。

 

(ああ、なるほど…さすがに、むやみにメダルせびったら怒られるって学習したのか。)

 

「それで?」

 

「大浴場に行って、サウナに入ったんだけど、電子生徒手帳が中に落ちてて…勝手に動かしたらマズいかなって思って、そのままにしておいたよ。」

 

「誰のかは確認しなかった?」

 

「勝手に確認したら怒られると思って…ご、ごめん…」

 

責められると思ったのだろうか、真樹さんは身構えていた。

 

「…参考にさせてもらうね。ありがとう。」

 

「はっ、わかればいいんだよ!!」

 

真樹さんは急に高圧的になった。

 

(…最後まで責められなかったから、調子に乗ったのかな?)

 

【コトダマ入手:サウナの中の電子生徒手帳】

サウナの中に落ちていたのを、真樹さんが見つけた。

 

『オマエラ、そろそろ学級裁判始めちゃいますよー?至急、赤い扉までお集まりくださーい!!』

 

…いよいよ、始まってしまう。

 

あの、地獄のような学級裁判が。

 

…今回も、誰かがクロになってしまうのか。

 

あたしは、重い足取りでエレベーターに乗り込んだ。

 

生徒全員を乗せたエレベーターは、裁判場に向かって動き出した。

 

エレベーターの中では、1秒が1分に感じるほど、緊張した空気が流れた。

 

…そして、エレベーターの扉が開いた。

 

あたしは、一歩裁判場へと踏み込んだ。

 



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第2章 非日常編②

全員、裁判場に着いた。

 

席には、赤いバツ印のついた遺影が2枚増えていた。

 

…法正君と、銀杏田君だ。

 

「…。」

 

あたしは、3枚の遺影から目を逸らした。

 

『みんな揃ったね!じゃあ、始めるよー!ドキドキワクワクの学級裁判を!』

 

 

学級裁判開廷!

 

 

 

『まずは、事件のまとめからだね!じゃあ、議論を開始してくださーい!!』

 

 

 

議論開始

 

宇田川「僕がファイルを読み上げます。被害者は銀杏田 冷。死亡時刻は、午前1時半頃男子更衣室で、刺殺による失血で死亡。以上です。」

 

魅神「んで、死体はそのまま発見された、と。」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

魅神「はー?俺の発言のどこがおかしいんだよ。」

 

…魅神君の発言には、明らかな矛盾があった。それを証明する証拠はないか…?

 

 

【使用コトダマ:磔の死体】

 

 

論破

 

「…死体は、発見後、誰かの手によって磔にされてるんだよ!」

 

黒須「それを証明出来る方はいませんか?」

 

…それは。

 

 

【提示コトダマ:九十九君の証言】

 

「九十九君、君が死体の第一発見者だよね?」

 

九十九「ああ、更衣室に入ろうと思ったら見てしまったんだ!!!銀杏田君の死体を!!!うおおおおおおおおおお!!!」

 

宇田川「その時には、死体は磔にされていなかったと?」

 

九十九「ああ!!間違いない!!!」

 

アナスタシア「…それが事件の後の出来事なら、今重要じゃない。事件の状況を整理するのが先だ。」

 

「…そうだね。じゃあ、次は事件の詳細について議論しようか。」

 

奴目「とりあえず、使われた凶器について話し合わない?」

 

 

議論開始

 

真樹「アイスピックとか?」

 

相浦「…刃物を使ったのでは?」

 

千葉崎「ドライバーかもしれんぞ?」

 

…相浦さんの意見に賛同したい。

 

 

【使用コトダマ:消えた包丁】

 

 

同意

 

「厨房から包丁が消えていたんだ。犯人は、それを使ったんだと思う。」

 

九十九「なるほど…じゃあ、次は犯人は誰か、を絞ってみようか!!!」

 

真樹「え?いきなり…?」

 

「うーん…とりあえず大体の犯人像を絞るくらいは、できるんじゃないかな?」

 

 

議論開始

 

金剛寺「…あの状況から察するに、犯人は男性では?」

 

千葉崎「なぜそう言い切れる?誰にでも犯行は可能だったはずじゃろ?」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

千葉崎「余の意見のどこが間違っておるというのじゃ!!」

 

金剛寺「いえ、ですから、女性は男子更衣室には…」

 

千葉崎「それは常識の問題じゃろうが!!犯人が、こんな状況で、そんな事をいちいち律儀に守る奴だとでも思っておるのか!!」

 

…いいや、女子は男子更衣室に入れない。だって…

 

 

【使用コトダマ:更衣室についての校則②】

 

 

論破

 

「校則に書いてあるでしょ?女子が男子更衣室に入っちゃいけないんだよ。」

 

魅神「入ろうとしたら、ガトリングガンでエメンタールチーズみたく穴だらけにされるんだと。おお、こわいこわい。」

 

千葉崎「むぅ…」

 

宇田川「…となると、金剛寺君の言う通り、犯人は男子という事になりますね。」

 

金剛寺「そんな、どんな秘密があったのかは存じ上げませんが、何もウチの執事を殺さなくても…」

 

金剛寺さんは泣き始めた。

 

…信頼してた執事が殺されたんだから、当然か。

 

黒須「話を戻しましょう。…ええと、誰方か犯人の手がかりに繋がりそうなものを知っていませんか?どんな物でも構いません。見つけたものがあれば、言ってくださると嬉しいのですが…」

 

…見つけたもの?アレの事か?

 

 

【提示コトダマ:薬品の染み込んだハンカチ】

 

 

「…更衣室で、こんなものを見つけたんだけど。」

 

奴目「なにそれ?ハンカチ?…うわっ、臭っ!!」

 

相浦「…強力な麻酔薬、でしょうか。」

 

佐伯「これが落ちてたって事は、薬に詳しい奴の犯行って事か?」

 

…薬に詳しい人…指名した方がいいのだろうか?

 

 

人物指定

 

「…宇田川 譲治君、心当たり無いかな?」

 

宇田川「…僕、ですか?…いえ、全く。」

 

佐伯「嘘つけ!!もう怪しいのはお前しかいねーんだよ!!」

 

宇田川「落ち着いてください。そんなハンカチ、僕は知りません。」

 

奴目「でも、この中で薬に一番詳しいのは、ジョージ君、君だよね?」

 

宇田川「だからって僕が犯人とは限らないでしょう?」

 

魅神「嘘つけよー。怪しすぎんだよお前ー。」

 

…ちょっと待って、本当にこんなに簡単に犯人が決まっちゃっていいの?

 

「みんな、もう一回落ち着いて議論してみようよ。」

 

真樹「…確かに、意外と早く犯人決まっちゃったけど…でも、もう議論する必要ないでしょ?」

 

「もっとちゃんと考えて!!」

 

真樹「ひぃいいい!!」

 

 

議論開始

 

宇田川「僕は犯人ではありません。」

佐伯「嘘つけ!現に犯人が落としたハンカチが見つかっただろ!!」

 

 

「…いや、多分違うんじゃないかな?」

 

 

反論

 

佐伯「はぁ!?オレなんか間違った事言ったか!?」

 

…佐伯君は、確かに間違った事を言った。そう言える根拠は…

 

 

【使用コトダマ:小林さんの証言】

 

 

論破

 

「小林さんが教えてくれたんだけど、そのハンカチ、死体が発見された時は落ちてなかったんだって。…だから、犯人が落としたものとは言い切れないんじゃない?」

 

小林「うん!!そんなハンカチ、最初はなかったのだ!!」

 

佐伯「…じゃあ、犯人と、ハンカチを落とした奴は別って事か?」

 

黒須「そう考えるのが自然でしょうね。わざわざ、一旦更衣室を出て行った後で戻る理由はないでしょう。…銀杏田君が磔にされていたのも、九十九君が死体を発見した後でしたし…おそらく、ハンカチを落とした人物と、磔にした人物は同じでは?」

 

相浦「…なんのためにわざわざこんな事を…」

 

黒須「捜査を撹乱するためのイタズラ、と言ったところでしょう。」

 

宇田川「言っておきますが、僕ではありませんからね。僕がこんな、子供じみたイタズラをするわけがないでしょう。」

 

真樹「じゃあ、誰がこんな悪質なイタズラを…?」

 

 

 

魅神「俺でーす!さぁせんしたー。」

 

一同「!!!?」

 

魅神「いやー、まんまと踊らされてるお前らの顔、傑作だったわwwwこりゃあ仕込んだ甲斐があったわー。」

 

佐伯「て、テメェ…!なんでこんなクソみてぇなイタズラしやがった!!」

 

魅神「えー?だってさ。その方が面白くなりそうだったから。ただ学級裁判すんのなんて、もう飽きたんだよねー。…だ、か、ら、俺がスリルっていうスパイスを加えてやったのよ。いやあ、みんなこのまま宇田川クンを犯人にしちゃうんじゃないかって思って、ちょっとヒヤヒヤしたよw」

 

金剛寺「そんなくだらない事のために、わざわざウチの執事の死を弄んだんですの!?ふざけないでくださいまし!!!」

 

魅神「いいねえ…その表情!!最っ高にゾクゾクするねぇ!!!」

 

奴目「一歩間違えば君も死んでたんだよ!?どうしてこんな…」

 

魅神「結果的に死んでねえからいいだろー?…俺はな、一歩間違えば死ぬっつー、スリリングなギャンブルがしてぇだけなんだよ!!生きた心地がしないシチュエーションで、運良く生き残る…それこそ最高のエンターテインメントだろうがよぉ!!」

 

佐伯「いかれてやがる…」

 

真樹「そんなクソギャンブルにアタシらを巻き込んでんじゃねえよ!!」

 

魅神「怖いなぁ〜、言っとくけど、暴力はナシだぜ〜?」

 

アナスタシア「…なぜ今になって白状した?」

 

魅神「いや、だって夏川ちゃんがもう気づいちゃったっぽいし?これ以上茶番を続ける理由はないかなって。」

 

黒須「茶番って…貴方が始めた事じゃないですか。」

 

魅神「ん〜?」

 

「…みんな、魅神君に怒ってる暇があるなら、早く議論を始めようよ。」

 

宇田川「そうですね…無駄話に時間を使いすぎました。」

 

魅神「つまんねーの。」

 

「…じゃあ、次は銀杏田君の、死亡時の状況について議論しようか。」

 

 

議論開始

 

 

真樹「イチョウダは、刃物でブッ刺されたんだろ?」

 

相浦「それで、抵抗も虚しく殺害されてしまったと…」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

奴目「メグメグ!君、つぐみんの言ってることが間違ってるって言える根拠はあるの!?」

 

相浦「…ごめんなさい、私何か間違った事言いましたか…?」

 

…相浦さんの発言が正しくない根拠。それは…

 

 

【使用コトダマ:モノクマファイル】

 

 

論破

 

「銀杏田君の死体には、抵抗した痕は残ってなかったんだよ。」

 

真樹「え!?でも、イチョウダは誰かに殺されたんでしょ!?抵抗せずに、ただ殺されるのを黙って待ってたって事になるじゃん!」

 

黒須「ハンカチの睡眠薬を使ったわけではないとすると…そうなりますね。」

 

金剛寺「…自殺の可能性は?」

 

宇田川「…低いでしょうね。自分ではさせない部分にまで刺し傷があったので。」

 

佐伯「じゃあ、銀杏田の奴、自分が殺されるのを受け入れたって事かよ!?普通そんな事できっかよ!?」

 

…そう、普通できないはずなんだ。…でも彼の事だ。あの人が相手なら、あり得たかもしれない。

 

 

人物指定

 

あたしは、躊躇いながらも、ゆっくりとその人を指差した。

 

 

 

金剛寺 恵麗奈さん、君なら何か知ってるはずだよね?」

 

金剛寺「わ、(わたくし)ですの!?」

 

 

議論開始

 

 

金剛寺「(わたくし)が犯人だって言いたいんですの!?バカな事仰らないでくださいまし!!…大体、さっき女性には犯行不可能って結論になったではありませんの!!」

 

 

「異議あり!!」

 

 

反論

 

金剛寺「(わたくし)の発言のどこが間違っていると言いたいんですの!?」

 

「…確かに、普通に考えればそうかもしれない。でも、あの校則には穴があったんだよ!!」

 

 

【使用コトダマ:更衣室についての校則①】

 

 

論破

 

「…そう、あの校則には、『自分』の電子生徒手帳を使え、なんて一言も書いてなかった!!…使った電子生徒手帳で性別が判断されるんだとしたら、女子でも、男子の手帳を使って男子更衣室に入る事は出来るよね!?」

 

相浦「…可能なんですか、そんな事!?」

 

『うん。できるよ。うぷぷ…まさか、校則で禁止されてないからってそんな非常識な事をする生徒がいるとは思わなかったけどね。』

 

金剛寺「で、でも、そもそも人に電子生徒手帳を貸してはいけないと…」

 

「うん。貸すのはダメだよ。だけど…」

 

 

【提示コトダマ:更衣室についての校則③】

 

「…借りたり、盗んだりするのがダメとは一言も書いてないよね!?」

 

金剛寺「なんなんですの!?さっきから!!(わたくし)を犯人に仕立て上げて!!」

 

「でもさ、さっきおかしな事言ってなかった?」

 

金剛寺「おかしな事…?」

 

…そう、金剛寺さんの発言には、明らかな矛盾があった。

 

 

【提示コトダマ:動機】

 

「…金剛寺さん、さっき『どんな秘密があったのかは存じ上げませんが』って言ってたよね?…でもさ、犯人の動機が今回配られた『秘密』とは限らないんじゃないの?…君が犯人じゃないなら、どうして犯人の動機を知ってるのか、教えてくれるかな!?」

 

金剛寺「そ、それは…だ、だって…普通、動機って言ったら、学園長先生がお配りになったものだと…」

 

「…顔色が悪いよ。何かやましい事でもあるの?」

 

金剛寺「…う。」

 

 

 

金剛寺「うるっせぇんだよクソがぁ!!!」

 

金剛寺さんが、口汚くあたしを罵り始めた。

 

あの気高くて華麗な金剛寺さんからは、とても想像もできない一面を露わにしながら。

 

魅神「あーあ。ついに本性を現したね。」

 

金剛寺「さっきから黙って聞いてりゃ、人の揚げ足取ってるだけじゃねえかよ!!そこまで言うなら、私がやったっつー証拠を見せてみろよ!!!」

 

「…わかった。順を追って説明するよ。」

 

千葉崎「まず、夏川殿は、女子でも男子更衣室に入れると言っておったが…どうやって入ったのかのう。」

 

「…それは。」

 

…考えろ、どうやって、あの校則をかいくぐったんだ?

 

 

閃きアナグラム

 

 

次々と浮かんでくるピースを当てはめて…

 

これだ!!

 

 

「…佐伯君の手帳?」

 

千葉崎「な、なんじゃと!!?犯人は、佐伯殿の電子生徒手帳を使ったというのか!!?」

 

佐伯「で、でも俺はちゃんと自分の手帳を持ってるぞ!?」

 

…それは、アレの事か。

 

 

【提示コトダマ:壊れた電子生徒手帳】

 

 

「…それって、例の壊れた手帳の事だよね?」

 

佐伯「そうだよ!」

 

「…それ、多分佐伯君のじゃないよ。」

 

 

【提示コトダマ:佐伯君の証言】

 

 

「…それ、多分金剛寺さんの手帳だよ。トイレに行く途中、ぶつかって落としたんでしょ?多分、その時にすり替えられたんだよ。」

 

佐伯「な、何ィ!!?」

 

相浦「…でも、それって校則に引っかからないんですか?」

 

「佐伯君。確認だけど、君は自分で金剛寺さんの手帳を手に取ったんだよね?」

 

佐伯「お、おう。」

 

「だったら校則に引っかからないはずだよ。『お互いに手帳を借りた』っていう認識になるからね。」

 

宇田川「…佐伯君が手に取った手帳が壊れていれば、それが犯人のものかどうか確認する術はなくなる…だから、わざと壊したんですね。」

 

「…実際、佐伯君も、手に取った手帳を自分の手帳だと勘違いしてたしね。」

 

黒須「では、次は壊し方ですかね…」

 

 

議論開始

 

小林「ぶっ叩いたんだよきっと!!」

 

宇田川「…高電圧で壊したとか…」

 

奴目「水没させたのかもよ?」

 

魅神「燃やしたとか?」

 

…魅神君の意見が近そうだ。

 

 

【使用コトダマ:電子生徒手帳の弱点】

 

 

同意

 

「…さすがに燃やしたわけじゃないと思うけど、多分熱を加えたっていうのは合ってると思うよ。この電子生徒手帳、長時間高熱にさらされるとすぐ壊れるらしいから。」

 

真樹「でも、どうやって…」

 

…あったはずだ。その条件を満たせる場所が。

 

 

【提示コトダマ:サウナの中の電子生徒手帳】

 

「…多分、ずっとサウナの中に置きっ放しにしたんだよ。」

 

真樹「あ、アタシが見つけたやつ!!コンゴウジ!あれ、アンタのだったの!?」

 

金剛寺「黙れメスブタがぁ!!!」

 

真樹「ひぃいい…!」

 

金剛寺「…ていうかさ、テメェらいい加減にしろよマジで!!」

 

 

議論開始

 

 

金剛寺「そもそも、佐伯のバカが手帳を落として壊したのかもしんねえじゃねえかよ!!熱暴走で壊れたとは限らねえだろ!?」

 

 

「異議あり!!」

 

 

反論

 

金剛寺「今の発言のどこがおかしいんだよ!!」

 

 

【使用コトダマ:電子生徒手帳の耐久性】

 

 

論破

 

「電子生徒手帳は、うっかり落とした程度じゃ壊れないんだよ!!」

 

金剛寺「…だったら、私が壊す方法を知ってんのはおかしいだろ!!?それがわかんのなんて、相浦しかいねえんだからよ!!」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

金剛寺「私が壊す方法を知ってるって言いたいわけ!?」

 

 

【使用コトダマ:銀杏田君の発言】

 

 

論破

 

「銀杏田君が、相浦さんに手帳の解析をお願いしたんだって。…主人の君なら、その内容を知っててもおかしくないと思うけど?」

 

金剛寺「はぁあ!?」

 

奴目「でも、それだと説明できない事があるよ。」

 

「…奴目さん?」

 

奴目「…私、レイ君の死亡時刻から20分くらい経った頃かな、レナっちの姿を見てるんだよね。でも、全然変わった様子はなかったよ?」

 

黒須「…そういう事ですか。もし刺殺したなら、返り血が付いているはずですから、犯行直後は、それを落とすために部屋にいるはずですからね。」

 

奴目「特に、レナっちの事だから、シャワーで帰り血を落として、元通りの状態に着替えるには、20分じゃ足りないはずなんだけど…。」

 

金剛寺「ほら見ろ!!テメェの妄想は穴だらけなんだよ!!」

 

 

議論開始

 

九十九「気合いで蒸発させたんじゃないか!!?」

 

黒須「…何かで返り血を防いだのでは?」

 

千葉崎「返り血を浴びぬよう、マッハで動いたのかもしれんぞ?」

 

…黒須君の意見に賛同したい。

 

 

【使用コトダマ:消えた傘】

 

 

同意

 

「…傘で防いだんじゃないかな?それなら、返り血を浴びる部分は最小限で済むからね。」

 

金剛寺「…ぐっ、で、でも、証拠はあんのかよ証拠はぁあ…!」

 

アナスタシア「…そんなに無実を証明したいなら、今すぐ自分の手帳を見せろ。」

 

金剛寺「…え?」

 

「それが金剛寺さん、君の手帳なら、今まで疑った事を謝るよ。…君が犯人じゃないなら、見せてくれるよね?」

 

金剛寺「え…えっと…」

 

アナスタシア「先に言っておくが、失くした、なんていうのはナシだぞ。」

 

真樹「ほら、さっさと見せろよ!!」

 

 

 

金剛寺「やめろっつってんだろクソがぁあああ!!!」

 

奴目「レ…レナっち?」

 

「…どうやら、その動揺っぷりは、君が犯人って事で良さそうだね。…じゃあ、答え合わせをするよ。」

 

金剛寺「やだ…お願い…やめて…やめてやめてやめて…!」

 

 

クライマックス推理

 

 

次々と頭の中に浮かぶピースを組み立てて…

 

…これが、事件の真相だ!!

 

 

Act.1

 

まず、犯人は、執事である銀杏田君に、電子生徒手帳の仕組みを調べてくるように命令したんだ。相浦さんに、手帳の弱点を教えてもらった銀杏田君は、それをそのまま犯人に報告した。手帳の弱点が熱だって知った犯人は、自分の手帳をサウナに置いた。…でも、ここで犯人は致命的なミスを犯してしまったんだ。なんと、自分の手帳を、真樹さんに発見されてしまった。…まあ、そこで真樹さんが詮索しようとしなかったのが、犯人にとっての救いだったんだけどね。

 

 

Act.2

 

自分の手帳が完全に壊れた事を確認した犯人は、その後、自分の手帳と男子生徒の手帳をすり替えるために、佐伯君に接触した。犯人は、佐伯君とわざとぶつかり、自分の手帳と佐伯君の手帳を床に落として、佐伯君よりも先に彼の手帳を回収した。残った犯人の手帳を自分の手帳だと勘違いした佐伯君は、そうとも知らずに犯人の壊れた手帳を回収してしまったんだ。

 

 

Act.3

 

そして、傘と包丁を盗み、佐伯君の手帳を手に入れた犯人は、彼の手帳を使って堂々と男子更衣室に入っていった。そこであらかじめ男子更衣室に待機させていた銀杏田君を、傘の先端に包丁をくっつけた凶器で銀杏田君をメッタ刺しにして殺害。銀杏田君は、犯人が自分の主人だったから、抵抗できずにそのまま死んでしまったんだろう。犯人は、そのまま男子更衣室を後にした。

 

Act.4

 

部屋に戻って、最低限の返り血の処理をした犯人はそのあと、アリバイ作りのために、奴目さんの前に姿を現した。返り血は傘で防いでいたから、本来返り血の処理で費やすはずの時間を省略することができたんだ。そして、銀杏田君の死体を、男子更衣室に来た九十九君が目撃したというわけだよ。…まあ、九十九君がみんなを呼びに行っている間に、魅神君が更衣室に侵入して、死体を磔にしたり薬の染み込んだハンカチを落としたりっていうくだらないイタズラを仕掛けたわけなんだけど…。

 

 

「…これが事件の真相だよ。…そうだよね!?

 

 

 

『超高校級の令嬢』金剛寺 恵麗奈さん!!!

 

 

 

 

 

「っ、うぁああああああああああああああぁああああああああああああぁああぁああああああああああああぁああああああああ!!!!」

 

金剛寺さんは、大声で叫んだ。

 



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第2章 非日常編③

「うっ、ぐすっ…ひぐっ…やだ…やだぁあああ…」

 

金剛寺さんは、泣きながら蹲っていた。

 

そこに、いつもの気高く華麗な金剛寺さんの面影はなかった。

 

みんな、ただ呆然として彼女を見ていた。

 

『そろそろクロが決定したようですね?では、投票ターイム!』

 

金剛寺さんは、涙でグチャグチャの顔で、懇願するようにこちらを見つめていた。

 

あたしは、躊躇いながらも、彼女に投票した。

 

『ではでは?結果発表ー!』

 

モノクマの座る椅子の前からスロットマシーンのようなものがせり上がり、生徒の顔を模したドット絵が描かれたルーレットが回った。

 

金剛寺さんの顔が三つ揃ったところでルーレットが止まった。その下にはGuiltyの文字が浮かび上がり、スロットマシーンからは大量のメダルが出てきた。

 

『うぷぷぷ、お見事だいせいかーい!!『超高校級の執事』銀杏田 冷クンを殺害したのは、『超高校級の令嬢』金剛寺 恵麗奈さんでしたー!!』

 

「あ゛ぁあ゛ぁああああああああああああぁあああああああああああああああああぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

金剛寺さんは、発狂して頭を掻きむしり、血が出る程台に額を何度も叩きつけていた。

 

金剛寺 恵麗奈という人間の人格が、完全に崩壊した。

 

常に気高く、聡明で麗しい『超高校級の令嬢』金剛寺 恵麗奈としての彼女は、もう死んだのだ。

 

「…金剛寺さん、なんで、銀杏田さんを…自分の執事を殺したんですか…?」

 

相浦さんが質問を投げかけた。

 

「うぁ…あぁあ…あぁああ…あぅ…」

 

金剛寺さんは、完全に聞く耳を持っていなかった。

 

『幼児退行、か。あーあ、だらしないねホント!潔く罪を認めた法正クンとは大違い!…そこの池沼の代わりに、ボクが説明してあげるよ!…夏川さん、キミの推理は、素晴らしかったよ。点数で言えば、98点!』

 

「どういう事?」

 

『ひとつだけ違うところがあるんだよ。…この殺人事件を計画したのはね…実は、銀杏田 冷クンだったのだ!』

 

「…え?ちょっと待てよ…じゃあ、銀杏田は、自分を金剛寺ちゃんに殺させる計画を立ててたって事かよ!?」

 

佐伯君が驚いていた。

 

『そういう事!全部、銀杏田クンが、金剛寺さんのために仕組んだ計画だったのだ!』

 

「金剛寺さんのため…?」

 

…ちなみに、今回の動機の一つとなった、金剛寺さんの秘密なんだけど…今から発表するよ!』

 

 

『金剛寺さんは、金剛寺家の前当主を殺して当主に成り代わった、貧乏な召使いの実の娘です!』

 

 

「…え。」

 

『金剛寺さんの本名は、灰澤 恵麗奈(ハイザワ エレナ)。貧乏な小男の一人娘でした!彼女の父親は、金剛寺さんがまだ産まれていなかった頃に、主人である金剛寺家の当主を殺害し、そのイスをふんだくって金剛寺家の当主に成り代わったのでした!…つまり、金剛寺さんの父親である金剛寺家現当主は偽物の当主で、金剛寺さんの『超高校級の令嬢』という肩書きは、嘘で塗り固められたハリボテだったのです!いやあ、彼女にも、ちゃんと人殺しの汚い血が受け継がれていたんですねえ。ちなみに、銀杏田クンの秘密はこちら!』

 

 

『銀杏田クンは、金剛寺さんに仕える前は、飢えを凌ぐために盗みや殺しを繰り返していました!』

 

『いやあ、血で汚れた背景を持つもの同士、惹かれ合ったんですかねえ。銀杏田クンは金剛寺さんに心から忠誠を誓い、そして金剛寺さんもまた、銀杏田クンを心から信頼していました!』

 

「…待て。さっき『動機の一つ』と言わなかったか?まだ他に動機があるのか?」

 

アーニャちゃんが質問をした。

 

『まあね!その答えは全部、この映像にあるよ!』

 

 

 


 

 

豪華な屋敷が映る。おそらく、金剛寺さんの家だろう。

 

そこには、夥しい数の人、そしてそれを見下ろす幼い金剛寺さんと、彼女の父親と思わしき男性が映っていた。

 

「見ろ、恵麗奈!この景色を!いつかは、お前がこの人達の上に立つんだ。お前は、ここにいる人たちみんなの『主人』になるんだ。…言ってみれば、この城のお姫様だな!」

 

「…お姫様?わたくしが?」

 

「そうだ!」

 

「わああぁ…」

 

金剛寺さんは、目を輝かせながら、あたりを見渡していた。

 

そこで、画面が切り替わり、壊れた屋敷が映る。

 

壁や床は血で真っ赤に染まり、所々炎が燃え上がっているのが見える。

 

最後に、血を流して仰向けに倒れた男性と、寄り添うように倒れた女性が映る。

 

…多分、金剛寺さんの両親だ。

 

『金剛寺財閥の令嬢として、巨大組織を束ねる指導者として、最高級の暮らしをしてきた金剛寺 恵麗奈さん!いやあ、本物のお姫様みたいですね!…ですが、どうやら金剛寺財閥には解体の危機が迫っているようですね?では、ここで問題!金剛寺財閥を解体寸前まで追い詰めた危機とはっ!?正解発表は、『卒業』の後で!』

 

 


 

 

 

 

『彼女には、彼女が導いていくはずの大勢の人達がいます。背負っているものは、大きいですよね?…そんな彼女は、どうしても外に出たいと思いました。…ですが、どうやらこの映像だけでは動機が少し弱かったようですね、誰かを殺すのを躊躇してしまいました。しかーし!第2の動機『誰にも知られたくない秘密』によって、誰かを殺さなければという思いは、確実なものに変わりました!』

 

「…そんな。」

 

『そして、その事を、全て銀杏田君に打ち明けました!その続きのVTRがこちら!』

 

 

 

 

 


 

 

「冷…(わたくし)、どうしても外に出たいですわ…使用人や社員の方達が…金剛寺財閥が、危ないかもしれませんの…!…それに、あの秘密は、死んでも誰かに知られたくありませんわ…。でも、他の皆さんを殺すなんて…(わたくし)、どうすればいいの…?」

 

「…お嬢様。(わたくし)に考えがございます。僭越ながら、ここで申し上げさせて頂きます。」

 

「…考え?」

 

 

「…お嬢様、(わたくし)を、…殺してくださいませ。」

 

「…え?何を言っているの…?」

 

「宜しいですか、お嬢様。お嬢様は、(わたくし)の申し上げる事を、ただ黙ってお聞きになるだけでございます。お嬢様に罪などございません故、ご安心を。」

 

 

「お嬢様、申し上げた物は、ご用意できましたか?」

 

「冷…やっぱりこんな事やめましょう?…貴方がいなくなっては、誰が(わたくし)を支えてくれるの…?」

 

「…お嬢様。よくお聞きください。お嬢様が(わたくし)を殺し、学級裁判でクロだとバレる事が無ければ、金剛寺財閥を救う事ができ、尚且つお嬢様の秘密を知りうる方達の口封じができます。…それが、お嬢様の、金剛寺家の当主としてのお役目と名誉を守るための、最善の方法なのでございます。どうか、ご協力を。」

 

「やっぱり無理よ…(わたくし)には、できませんわ…貴方は、どうしてそんなに簡単に自分の命を…」

 

「…主のお命と名誉を守る事こそ、執事の職務でございます。…お嬢様、(わたくし)は、満足でございます。貴女という主人に出会えて、全身全霊を以ってお仕えする事ができて、大変嬉しく思っております。…ですが、(わたくし)はもう暇を頂戴させて頂きます。外に出た後の使用人なら、代わりをお雇いくださいませ。」

 

「…でも、(わたくし)は…」

 

「…恵麗奈!!よく聞け!!お前が、本当に救うべきものは、守るべきものは何だ!!お前にしか救えない人達が、外にはごまんといるんだよ!!お前が、その手で、その人達を救うんだ!!そうだろ!!?わかったら、さっさとお前のやるべき事を果たせ!!!」

 

「…!!」

 

「…ご無礼を働いてしまい、大変申し訳ございませんでした。では、(わたくし)はそろそろ失礼させて頂きます。」

 

ザシュッ

 

「冷!!!」

 

銀杏田が、自分の腹を刺した。

 

「ぐっ…お、お嬢様…早く、とどめを…。このままでは、自殺になってしまいます…」

 

「っ、う゛ぁあああああああああああああ!!!」

 

グサッ グサッ グサッ

 

銀杏田は、血まみれになりながらも、微笑みながら息絶えた。

 

「…冷、今まで、こんな(わたくし)に仕えてきてくれてありがとう。…貴方の死は、決して無駄にしませんわ。」

 

金剛寺は、涙を拭いながら男子更衣室を後にした。

 

 


 

 

 

 

 

『いやあ、銀杏田クンは、最期まで執事としての仕事を全うしたんですねぇ…ボク、涙腺にきちゃった…わけないんだけどね!うぷぷぷ!』

 

「…そんな。」

 

相浦さんは、口を両手で覆いながら泣いていた。

 

「…今思えば、銀杏田君が犯行現場に男子更衣室を選んだのは、金剛寺君の犯行に思わせたくなかったからなんですね…。」

 

宇田川君は、目を逸らしながら悔しそうに言っていた。

 

『それにしてもさ、執事がご主人様のためにここまでしたって言うのにさ、当のご主人様は無様に失敗しちゃって…甲斐性無しな女だよね、全く!銀杏田クン、きっと地獄で泣いてるよー?…って、聞いてないか。』

 

「あぁあああああ…冷、冷ぃいいい…わたくしをたすけてよぉおお…この人たちが、みんなでわたくしをいじめるのぉおお…」

 

金剛寺さんは、小便を垂れ流し、顔を涙と鼻水と涎でグチャグチャにしながら這いずり回り、銀杏田君の遺影に向かって話しかけている。

 

…これじゃあ、まるで赤ん坊じゃないか。

 

醜く堕ちていく金剛寺さんを、これ以上見ていられなかった。

 

あたしは、金剛寺さんから目を逸らした。

 

『汚いなー。これ以上神聖な裁判場を汚されるのは嫌だし、そろそろおしおきしちゃおっか。今回は、『超高校級の令嬢』金剛寺 恵麗奈さんのために、スペシャルなおしおきを用意しました!』

 

「い゛やだぁあああああああああぁああ!!!しに゛だくな゛ぃいいい、じにたぐな゛ぃいいいいぃいいぃいい…れい、れ゛ぃい゛いいいいいいいいいいい!!!」

 

金剛寺さんは、這いずりながら逃げようとしていた。

 

制服は小便と埃で汚れ顔は血まみれになり、目は充血して瞳は輝きを失い、そして美しかった薄桃色の髪の毛は埃と体液で薄汚れていた。

 

そして何より、彼女の心は完全に壊れていた。

 

潔く死を受け入れた法正君の事を思うと、現実と向き合おうとせずに妄想に縋り、子供のように泣きわめきながら逃げ回る彼女は、あまりにも無様で、見苦しかった。

 

『…ではでは、おしおきターイム!!』

 

モノクマがハンマーを振り上げると、赤いスイッチがせり上がってきた。

 

モノクマは、ハンマーでスイッチを押した。

 

 

GAME OVER

 

『コンゴウジさんがクロにきまりました。 オシオキをかいしします。』

 

 

 

 

逃げ回る金剛寺の下の床が開き、金剛寺が下に落ちる。

 

そこで映像に切り替わる。

 

床の下に金剛寺の手に手錠のようなものが付けられ、騎士の格好をした人形が彼女を引っ張る。

 

周りは、18世紀のフランスのような背景になっていて、平民の格好をした人形達が取り囲んでいた。

 

金剛寺の髪を人形が引っ張ると、人形が金剛寺の長い髪をバッサリと切った。

 

そして、金剛寺は断頭台まで引きずられる。

 

 

 

そこで、画面中央にタイトルが現れる。

 

 

希望ヶ峰のばら

 

 

金剛寺の両腕と両脚に、ギロチンが取り付けられる。

 

処刑人の格好をしたモノクマが、右手のギロチンの刃を落とす。

 

ギロチンで右腕を落とされた金剛寺は、苦しそうに白目をむきながら大きく口を開ける。

 

次に左腕、右足、左足とギロチンの刃を落としていく。

 

両手足を失った金剛寺は、目をひん剥いて口から泡を吹いて痙攣していた。

 

そんな中、銀杏田そっくりの人形が現れ、金剛寺に優しく微笑みかける。

 

希望を目の当たりにした金剛寺は、切断された両腕を人形の方に向け、涙を流しながら喜んでいた。

 

…が、次の瞬間、人形は処刑人の格好に変身し、大きな斧を振りかぶる。

 

希望を打ち砕かれた金剛寺は、絶望で顔がグシャグシャになっていた。

 

そして、人形が金剛寺の首を刎ねた。

 

モノクマが首を拾い上げて民衆の前に晒すと、民衆は歓声を上げた。

 

 

 

 

あたしはただ、呆然とおしおきシーンを見ていた。

 

すすり泣く奴目さんと相浦さん。

 

顔を逸らしながら、拳を握りしめる佐伯君と九十九君。

 

俯きながら祈りを捧げる黒須君。

 

目の前の惨状に恐怖する真樹さん。

 

大声で泣き叫ぶ小林さん。

 

目を手で覆いながら顔を逸らす宇田川君。

 

抜け殻のようになっている千葉崎さん。

 

上機嫌に、舌を出しながらニヤニヤしている魅神君。

 

眉間に皺を寄せながら画面を見ているアーニャちゃん。

 

…誰も、発言しようとはしなかった。

 

モノクマを除いては。

 

『いっやあ、銀杏田クンは金剛寺財閥と金剛寺さんの名誉を守るために自分の命を犠牲にしたのに、金剛寺さんがヘマをしたせいでどちらも守れずに、しかも大事なご主人様が死んでしまうなんて…皮肉ですね!まあ、あの世で一緒になれたんだから結果オーライか!

オマエラ、お疲れ様!今回も、メダルをプレゼントしちゃうよ!じゃっあねー!』

 

モノクマは去っていった。

 

…銀杏田君の、自分の命を捨ててまで主人を守ろうとした美しい忠誠心とは裏腹に、とても醜悪で、悲劇的な結末だった。

 

銀杏田君は、一体何のために死んだんだ。

 

…そう思うと、やるせない気持ちでいっぱいになった。

 

全員、重い足取りでエレベーターに乗り込んだ。

 

スリルが欲しいというだけの理由で銀杏田君の死体を弄び、捜査を撹乱した魅神君を除いては。

 

彼は、軽やかにスキップをしながらでエレベーターに乗り込んだ。

 

あたしたちはまだ、こんな地獄のような学級裁判を続けなければならないのか。

 

 

 

 

 

第2章『血は争えない』ー完ー

 

【生徒数】残り12名



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第3章 Sacred Dystopia
第3章(非)日常編①


3章と4章の順序をどうしようかすごい悩んだ結果、こちらを3章にする事にしました。


昨日は、いろんなことがありすぎた。

 

銀杏田君と、金剛寺さん…大事な仲間が、2人死んでしまった。

 

さすがに、これだけは2回目でも全く慣れない。

 

…慣れたくなんかない。

 

裁判の翌日、あたしはいつもより早く目が覚めた。

 

食堂に向かうと、既に相浦さんと宇田川君が、朝食の準備を始めていた。

 

銀杏田君がいなくなった今、当番制で食事の準備をする事になった。

 

「おはよう。」

 

あたしは、2人に声をかけた。

 

「おはようございます。」

 

「…おはようございます。」

 

2人は、挨拶を返してくれた。

 

2人とも、見るからに窶れている。

 

…そりゃそっか。昨日、裁判で人が死んだんだもん。

 

「何か手伝える事ある?」

 

「今日は当番ではないはずですが。やけに積極的ですね。」

 

「こんな状況だからさ…ちょっとでもみんなの役に立ちたくて。」

 

「では、食器を並べて貰えませんか?」

 

「ガッテン承知の助!」

 

あたしが食器を並べていると、他のみんなも集まってきた。

 

「ごはんー!!!」

 

「飯か!!!」

 

九十九君と小林さんは、汗をかいている。

 

…トレーニングルームで鍛えてたのかな?

 

「今日も体鍛えてたの?」

 

「まあね!!!…すでに、4人も死なせてしまった。オレが弱いせいで…畜生!!!だから、オレは強くならなきゃいけないんだ!!!うおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「暑苦しいんだよお前ー。早く中に入れよー。」

 

魅神君が九十九君を急かしている。

 

「き、貴様…!銀杏田君の事は忘れてないからな!!!」

 

「へーへー。」

 

「…すみません。パリンチェさんと一緒に祈りを捧げていたら、遅くなってしまいました。」

 

「…ふん。」

 

黒須君とアーニャちゃんが食堂に来た。

 

…そういえば、アーニャちゃんもクリスチャンだっけ?

 

「朝ごはんだ〜!」

 

「飯かの…」

 

「腹減った〜」

 

「あらナツカワ。アンタ今日は早いのね。」

 

他の4人も食堂に来た。

 

「…うん。今日は早く目が覚めちゃった。」

 

「…み、皆さん。準備ができました。」

 

相浦さんの声を聞いて、みんな席に着いた。

 

「…あ、あの…私が作ったお料理は自信ないんですけど…お口に合わなかったら無理せず残してくださいね。」

 

(相浦さん…だいぶみんなと打ち解けてきたみたいだけど、卑屈なところはまだ直らないんだな…)

 

「いただきます。」

 

さすがに銀杏田君の料理ほどとは言わないけど、美味しかった。

 

…あたしも見習わなきゃな。

 

「おいしい!つぐみん、お料理上手なんだね!」

 

「…そ、そうですか?…お口に合ってよかったです…」

 

「おかわりなのだー!!」

 

(早っ!!)

 

「…ご、ごめんなさい…それ以上作ってないんです…」

 

「足りないのだー…こんな時レイがいてくれれば…」

 

「…やめろ。」

 

アーニャちゃんが、小林さんに注意した。

 

みんな、銀杏田君の事を思い出してしまったのか、箸が止まった。

 

「レイ君…レナっち…」

 

「ご、ごめんなのだ…」

 

このままじゃいけないと思った。

 

「…小林さん、あたしの分けてあげる!」

 

「…え?でも、メグの分が少なくなっちゃうのだ…」

 

「あたし、ダイエットしてるから。ちょうどよかったくらいだよ。」

 

「ありがとうなのだ!」

 

「…こ、小林さん…私の分も、食べかけですけど、足りなければ食べてください…作り過ぎちゃって、お腹いっぱいなので…」

 

「ツグミもありがとうなのだ!!」

 

食卓に、平和な空気が戻った。

 

 

「…足りねー…お腹すいたー…」

 

食事が終わった後、あたしは、お腹を鳴らしながら机に突っ伏していた。

 

「…ナツカワ。あんた…ダイエット中って、もしかしてウソだったの?」

 

「あー、バレた?…あー…腹減ったー…」

 

「…倉庫にあるお菓子とインスタントラーメン持ってきてあげよっか?」

 

真樹さんがやけに優しい。

 

「ほんと?」

 

「…ただし、メダル50枚でね。」

 

「自分で行ってきます!!」

 

 

なんとか、お菓子とラーメンでお腹を満たした。

 

その後は、みんなで報告会を開いた。

 

「3階が行けるようになっていましたね。皆さんで手分けして探索しましょう。」

 

黒須君が提案した。

 

「娯楽室、美術室、物理室だっけ?」

 

「なあ、美術室探索してもいいか!?」

 

佐伯君が目を輝かせながら言った。

 

(…あー、変態っていうイメージでかき消されてたけど…そういやこの人アーティストだっけ。)

 

「確かに、最も適任なのは佐伯君ですね。…いいでしょう。…ただし、遊びすぎないでくださいね?」

 

宇田川君が、佐伯君の意見に賛成した。

 

「よっしゃー!!」

 

「…物理室の方は、僕が。…相浦君。一緒に行きませんか?」

 

「…あ、あの…ごめんなさい。ちょっとやる事があって…すみません、誘ってくれたのに…。」

 

「…そうですか。」

 

宇田川君が少し残念そうな顔をした。

 

「やーい、フラれてやんのー!」

 

魅神君が、宇田川君をいじってきた。

 

「…うるさいですね。貴方には関係ないでしょう。」

 

「…あ、あの…用事が済んだら声をかけますので、その後で一緒にお話しませんか?」

 

「そうですね。」

 

宇田川君が安心したような顔をした。

 

…ところで、相浦さんの用事って何だろう…?

 

「ボクはゴラクシツがいいのだー!!」

 

「…どうせ遊ぶ事しか考えてないんだろ?…低脳が。」

 

アーニャちゃんが余計な一言を言った。

 

 

「…あ?」

 

小林さんの声のトーンが一気に低くなった。

 

「テメェ今なんつった?なあ、おいゴルァ!!!」

 

小林さんは、普段の様子からは全く考えられない口調でアーニャちゃんを脅した。

 

(…そういえばすっかり忘れてたけど、小林さん、元ヤンだった…)

 

小林さんの中で「バカ」という意味の単語は禁句だと覚えておいた。

 

手こずりながらも、それぞれの担当が決まった。

 

あたし、佐伯君、奴目さんは美術室を、

 

宇田川君、千葉崎さん、アーニャちゃん、黒須君は物理室を、

 

魅神君、九十九君、小林さん、真樹さんは娯楽室を探索する事になった。

 

そして、相浦さんは、用事のために図書室に行く事になった。

 

…魅神君、小林さん、真樹さんの遊びたい組3人については、4人の中で比較的常識人な九十九君に見張りをお願いした。

 

 

美術室は、部屋の両脇に彫刻が置かれ、壁一面に乱雑にイラストが貼られていた。

 

カナヅチやキャンバス等、美術作品を作るために必要なものは一通り揃っていた。

 

佐伯君は、大はしゃぎで美術作品を作り上げていた。

 

…後にしないかって言ったけど、インスピレーションが働いてる間に創作活動をしたいみたいで、探索そっちのけで創作を始めてしまった。

 

ふと足元を見ると、写真が落ちていた。

 

写真を拾い上げようとしたが、それが妙な写真である事に気がついた。

 

 

あたしと法正君と明石君が、楽しそうにおしゃべりをしている写真だった。

 

写真は希望ヶ峰学園分校らしいが、今のように窓に鉄板は無く、あたしたちは同じような白い服を着ていた。

 

…こんな写真、記憶に無い。

 

どういう事…?

 

 

その後、あたしたちは報告会を開いた。

 

「物理室の方は、どうだった?」

 

「…妙な機械がありましたね。どう見ても物理室とは言えない部屋でした。」

 

宇田川君は、メガネを押さえながら報告した。

 

「妙な機械?」

 

「…ヘルメット型の機械が部屋のあちこちに乱雑に置かれていました。そして、部屋の中央には巨大なコンピューターのようなものがありましたね。まあ、電子回路が全て遮断されていて電源すら付きませんでしたが。」

 

「後で相浦殿に見てもらう予定じゃ。」

 

…ヘルメット型の機械?一体なんの用途で置かれていたんだろうか。

 

「…まあいいや、娯楽室の方は?」

 

「コイツのダーツが上手すぎた。」

 

「えへへ。」

 

真樹さんに指を指された魅神君は、わざとらしく照れた。

 

「楽しかったのだー!!」

 

「なんだよ!!結局遊んでんじゃねえか!!何のための探索時間だと思ってんの!!?ねえ!!…つーか、九十九君はどうしたの!!?遊びたい組3人を見張ってもらうために同じ組にしたのにさ!!全然見張れてねえじゃねえか!!!」

 

ツッコミどころがありすぎて、つい口汚くツッコんでしまった。

 

「…すまないっ、魅神君に、ガチャでゲットしたプロテイン全部あげるから見なかった事にしてくれって言われてつい…プロテインの誘惑に勝てなかった!!!畜生!!!」

 

「買収されてんじゃねえよこの熱血クソ野朗!!!」

 

「本当にすまない!!!」

 

…全く、この4人を信用したあたしがバカだった。

 

「…ああ、ただ少し気になる事が。」

 

「何?」

 

「娯楽室に雑誌が置いてあったんだが、新しい雑誌は追加されていくのか学園長に聞いてみたんだ。そうしたら学園長は、口を濁していたんだ!!!…怪しいと思わないか!!?」

 

「…確かに。怪しいね。」

 

 

「…そこに気付かれたくない何かがあるのではないか?」

 

「…え?」

 

千葉崎さんの発言に、みんなが耳を傾けた。

 

「気付かれたくない何かって!?」

 

真樹さんが食い気味に聞いていた。

 

「余も知らん。適当に言ってみただけじゃ。」

 

千葉崎さんは、お茶を飲み始めた。

 

「何よそれ!!なんか勘付いたのかと思ったじゃんか!!」

 

真樹さんがツッコんだ。

 

「…そういえば、相浦さんの用事って何だろうね?…ちょっと確かめてこよっか?」

 

「よしましょう。…彼女も集中したいんです、きっと。」

 

宇田川君が止めた。

 

「ちょっと覗いてくるだけだよ。」

 

あたしは、そのまま図書室に向かった。

 

 

図書室に行ってみたが、相浦さんの姿は無かった。

 

「…あれ?いない…」

 

次の瞬間、聞こえるはずの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

『やあ。こんにちは、夏川さん。』

 

「…嘘でしょ…どうして君が…」



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第3章(非)日常編②

「…嘘でしょ…どうして君が…」

 

 

 

 

「…法正君!」

 

図書室のロッカーの中から声がしたので開けてみると、ノートパソコンに法正君の顔が映っていた。

 

『夏川さん、どうしたの?泣いてるの?』

 

「…ううん。ただ、すごく嬉しいの。こうしてもう一度君と会えて…」

 

『…もう一度?…僕は、夏川さんに会うのは今が初めてだよ?』

 

「…え?どういう事?…ほら、何回も一緒にお話したじゃん!!」

 

『…僕に言われても…詳しい事は、『お母様』に聞かないと。』

 

「…『お母様』?」

 

 

背後に、人の気配を感じた。

 

「!!?」

 

慌てて振り返ると、相浦さんが無言で立っていた。

 

「あ、いや…これは、その…違くて…ご、ごめん!」

 

「…いえ。…ただ、お手洗いに行っている間に、夏川さんが『アルターエゴ』に話しかけていたので、ちょっとびっくりしちゃって…」

 

「…アルターエゴ?」

 

『こんにちは。私の名前はアルターエゴ・バージョン2です。夏川さん、お会いできて嬉しいです。』

 

画面が相浦さんの顔に切り替わり、笑顔で挨拶をしてきた。

 

「…相浦さん、これ、どういう事?」

 

「…ご、ごめんなさい…!…サ、サプライズのつもりだったんですけど…余計でしたよね。…すみません!」

 

相浦さんは、平謝りに謝った。

 

「いや、そうじゃなくて、このアルターエゴ?って何なの?」

 

「…えっと、このパソコンを解析するために、元々あった『アルターエゴ』を参考に作成した人工知能です。…み、皆さんの心の傷を少しでも癒せないかと思って、ここにいる生徒全員のデータを組み込んで、本人そっくりに会話できる機能もつけたんですけど…余計、でしたよね…ごめんなさい。…嫌なら、今すぐ初期化します…」

 

「全然そんな事ないよ!…あたし、また法正君に会えたみたいで嬉しかった…!…ありがとう、相浦さん!!」

 

「わっ、ちょっと、夏川さん…!」

 

あたしは嬉しさのあまり、相浦さんにハグした。

 

「…ねえ、ところで、この『アルターエゴ』ってどれくらい生徒を再現できるの?」

 

「…あの、ぬか喜びさせてしまって申し訳ないんですけど…はじめのうちは情報量が少なすぎるので、全然再現できません。…ですが、話しかけていくうちに学習していき、最終的には本人とほとんど変わらない再現度になるかと…」

 

「じゃあ、たくさんおしゃべりすればするほど、本人に近くなるって事?」

 

「はい。…あ、ただ、先生には内緒ですよ?」

 

「…どういう事?」

 

「これ、監視カメラの死角で隠れて作ったんです。…見つかったらすぐ破壊されるかもしれないので…話す時も、出来るだけ小声でお願いします。」

 

「わかった。モノクマにバレないようにお話する!」

 

「…では、皆さんにも報告してきますね。」

 

 

「アルターエゴ、ですか。…相浦君、随分と大胆な行動に出ましたね。」

 

「…元々あったAIの応用ですけどね。皆さん、アルターエゴを使用する時のルールを決めませんか?」

 

相浦さんが提案した。

 

「…そうですね。…使用を監視カメラの死角に限定するのはもちろんとして、九十九君、小林さん、魅神君には絶対に使わせないようにしましょう。」

 

黒須君が同意した。

 

「えぇえええ!?なんでぇ!?ボクも、エスカルゴ?あれ?なんだっけ?」

 

「…アルターエゴです。」

 

相浦さんが訂正する。

 

「それ!ボクも、『あるたーえご』とお話したいのだ!!」

 

「…お前と九十九は声が大きすぎるからダメだ。…あと、魅神は絶対変な事覚えさせるから使用厳禁だ。」

 

アーニャちゃんがバッサリ切り捨てた。

 

「…つまんねーの。AI相浦ちゃんにやらしい事吹き込んで宇田川をいじろうと思ってたのに。」

 

魅神君は、相変わらず空気を読まずに変な事を言っていた。

 

「こいつはこういう事するから絶対使わせないようにしましょう!!」

 

「…わ、私も譲治さんに賛成です!」

 

宇田川君と相浦さんが顔を真っ赤にしながら言った。

 

「…決まりで良さそうだね。」

 

 

あたしは、報告会が終わった後、アルターエゴと話しに行った。

 

『夏川さん、またお会いしましたね。…『お母様』から聞きました。あなたは、皆さんのリーダーなんですよね?よろしくお願いします!』

 

アルターエゴ相浦さんは、笑顔で話しかけてくれた。

 

(普段の相浦さんなら、絶対こんなにハキハキ喋らないよなぁ…もしかして、ちょっと盛ってプログラムしてる?)

 

「…別に、リーダーってわけじゃないけど…」

 

『そうなんですか?『お母様』からの情報では、あなたはとても頼りがいのあるリーダーだと聞いているのですが…』

 

「その『お母様』って、相浦さんの事?」

 

『はい!相浦 つぐみ様は、初代アルターエゴお兄様のデータをベースに、私を作ってくださいました!現在、このコンピューターを解析するという『お母様』からのご命令を実行中です。現時点での進行度を読み上げますか?』

 

「…いや、いいよ。あたし、機械弱いし…聞いてもわかんないでしょ。」

 

『失礼しました。夏川さん、私はあなたの事を、もっとよく知りたいです!いっぱいお話しましょうね!』

 

「…ねえ、アルターエゴ。画面を法正君に切り替えてくれる?」

 

『承知しました!』

 

画面が法正君に切り替わる。

 

『夏川さん。また会ったね。』

 

「…久しぶり。法正君。」

 

『夏川さん、何か嬉しい事でもあったの?』

 

「ううん…ただ、また法正君とお話できるのが、夢みたいで…もう一度だけでも会いたいってずっと思ってた。それが叶ったみたいで…嬉しくて…」

 

『…もう一度だけでも会いたいって、どういう事?僕、夏川さんと何があったの?』

 

アルターエゴ法正君は、唐突に残酷な質問を投げかけてきた。

 

「え…何があったって…それ、言うの…?」

 

『教えてよ。僕は僕自身の事も、夏川さんの事ももっと知りたいんだ。』

 

「…法正君は…法正君は…明石君を殺して、処刑されちゃったんだ。あたしの目の前で、死んだ。…だから、もうここにはいない。…あたしは、何もしてあげられなかった。」

 

…何やってんだろう、あたし…

 

機械なんかと話して、浮かれちゃって…

 

そうだよ、話しかけてるのは所詮AIなんだ。

 

あたしがやってるのは、ただの現実逃避。

 

法正君の真似をした機械に話しかけて、法正君が帰ってきてくれたように思いたかっただけ。

 

法正君が帰ってくるわけないじゃないか。

 

…そんな夢、叶うわけないじゃないか。

 

もう、こんな事やめよう。

 

いい加減頭を冷やさないと。

 

あたしが去ろうとしたその時だった。

 

『…ごめんね。つらい思いをさせて。』

 

「…え?」

 

『僕は夏川さんの事を全然知らないから、こんな時にどんな言葉をかけてあげたらいいのかわからない。…でも、僕のせいでつらい思いをしてるんだとすれば、本当にごめん。』

 

「何よ…結局、あたしの事なんて全然わかってないんじゃない。」

 

『…だから、君のことをもっと教えてよ。僕は、君の全てが知りたい。君の役に立ちたい。君にどんな言葉をかけてあげられるか、わかりたいんだ。…僕は君に、笑顔でいて欲しいから。』

 

「わかった。…じゃあ言わせてもらうけど、君、再現度低すぎだよ!法正君は、そんな女々しい事言わない!あと、あたしが悲しい顔してたら『わかんない』とか言ってないでとにかく元気づける!いい?」

 

『…なるほどね。次からは気をつけるよ。』

 

アルターエゴ法正君は、画面の中でメモを取っている。

 

正直可愛かったので、少し笑ってしまった。

 

「あと、法正君は中国史が好きだから、中国史のうんちくとかを交えて会話する!」

 

『…夏川さんは、世界史が嫌いじゃなかった?』

 

「うるさいなあ、なんで余計な事は知ってるんだよ、君!とにかく教えたことを再現すればいいの!」

 

『わかった。参考になったよ。…例えばこんな感じ?』

 

『【(かん、拼音: Hàn)は、中国の王朝である。通例、前漢(紀元前206〜8年)と後漢(25年〜220年)の二つの王朝(両漢)を総称して…】』

 

「急に機械っぽくなんなし!ウィキ読んでるだけじゃん!…なんかこう、もっと適当な感じでいいの!」

 

『…適当?』

 

「あー、もう!このトンチンカン!」

 

『…すみません。よくわかりません。』

 

「逃げんな!」

 

あたしが、法正君そっくりのアルターエゴに、法正君のことを教えるのはすごい違和感があった。モデルを知っているあたしが、わざわざアルターエゴに一から教えてそれに近づけていくのは、なんか釈然としない感じがした。でも、アルターエゴと話すと、あたしは笑ってしまっていた。

 

…何これ、楽しいじゃん。

 

あたしは、しばらくアルターエゴと話していた。

 

 

「…どうでしたか?…私の作成したアルターエゴ・バージョン2は。」

 

パソコンの情報を確認しに来た相浦さんが、あたしに聞いてきた。

 

「うん、やっぱり、再現度は低かった。」

 

「…ご、ごめんなさい…!…私の腕が及ばないばっかりに…夏川さんに不快な思いをさせてしまって…!」

 

「でも、話しててすごく楽しかった。ひさびさにめっちゃ笑ったよ…作ってくれてありがとね。」

 

「…はい、お役に立てて何よりです!」

 

あたしは、そのまま部屋に戻った。

 

 



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第3章(非)日常編③

夕食をみんなで食べた。

 

宇田川君が不機嫌だったので訳を聞いてみると、夕食の準備をしている時に、魅神君が相浦さんの目を盗んで夕食にデスソースを大量に入れようとしていたとの事だった。

 

その後、魅神君は、相浦さんが作ってくれた料理を無駄にしようとした罰で、宇田川君と黒須君にボコボコにされたらしい。

 

タコ殴りにされた魅神君は、笑いながらごはんを食べていた。

 

反省しているそぶりは全く見られなかった。

 

…どうなってんのこの人の体とメンタル。

 

食事の後、急にモノクマが現れた。

 

『やっほー!みんな、ちゃんと殺人の計画立ててる?…っていうかオマエラ、コソコソ何かやってるみたいだけど、何してんの?ボクだけのけ者…もとい、のけグマにするとか酷くない?』

 

…アルターエゴのことか?

 

なんとか、バレないように話をごまかさなくちゃ。

 

「んだよ、別にあからさまに校則に違反してるわけじゃねえからいいだろ。」

 

佐伯君がめんどくさそうに言った。

 

『なるほど!バレなきゃ何やっても罪にはならないってわけ!…いやあ、さすが佐伯クン!あったまいー!』

 

モノクマは、わかりやすく皮肉を言った。

 

…このまま話を続けられては、アルターエゴの事がバレてしまう。

 

なんとか話題を変えられないか…?

 

「…さっさと本題に入れ。まさかとは思うが、貴様の勝手な憶測で私達を吊るすために、わざわざ姿を現したわけじゃないだろうな?」

 

アーニャちゃんは、憶測で人を判断するなという正論を盾に、モノクマを急かした。

 

…ナイスな躱し方だな、とあたしは思った。

 

『まあ、これ以上問い詰めても結論は出ないだろうし、いいでしょう。今回はズバリ!オマエラにスペシャルな動機を持ってきてあげたよ!』

 

動機、か。まあ予想はついてたけど。

 

今回は何だ…?

 

『うぷぷ…今回の動機…それはね…』

 

 

 

 

お金だよ!』

 

…。

 

…。

 

は?

 

『この中で一番早く人を殺した人には、もれなく100億円をプレゼントしちゃうよ!』

 

…バカバカしい。あたしたちは、どんなに心の弱みにつけ込まれても、ここまで生き残ってきたんだ。

 

今更お金なんかで人を殺すわけがない。

 

その考えを、小林さんが代弁してくれた。

 

「テメェ…何がしてぇか知らねえけどよ、今更金なんかで殺すと思ってんのか!?あぁ!!?このクソクマァ!!!」

 

どうやら、お金程度で友達を殺すと思われた事が気に食わなかったらしい。

 

不良モードでモノクマを脅していた。

 

『チッチッチ、甘いね、小林さん!…人はね、その気になればお金のために何万人でも何億人でも殺す生き物なんだよ!相手がたとえ家族や友達だろうとね!…すでに、この中にいるんじゃない?どうしてもお金が欲しいって思ってる人がね。』

 

「お金の力って怖いよね〜。だってさ、すでにもうお金のために人を殺してる誰かさんがいるでしょー?」

 

魅神君は、アーニャちゃんを見ながら言った。

 

「…ふん。」

 

アーニャちゃんは、そっぽを向いた。

 

…確かに、この中にお金が欲しい人がいることは否定できない。

 

すでに金の奴隷…もとい真樹さんは、お金を何に使うかの計算を始めている。

 

『まあ、そこのゲロブタあたりは、明日には誰か殺してるんじゃない?』

 

…真樹さんの事か。

 

『あ、そうそう。あと、オマエラに追加ルールの報告をしなきゃね!』

 

「追加ルール?」

 

『同一のクロが殺せるのは、最大で2人まで!』

 

「…どういうつもりです?貴方は、僕たちに殺し合いをさせたかったのでは?」

 

『だってさー、自分以外の全員殺して脱出、なんて真似されたら学級裁判もクソもなくなっちゃうでしょ?…じゃ、そういう事で。まったねー!』

 

モノクマは上機嫌で去っていった。

 

「…あたし、絶対お金なんかでみんなを殺したりなんかしないから!!…みんなもそうだよね?」

 

あたしは、みんなに確認をした。

 

「…と、当然です!…私、皆さんのうちの誰かを殺して手に入れるお金なんて、いりません!」

 

「あの胡散臭い学園長が、本当にお金をくれるとも思えませんしね。どうせ、人を殺して裁判で生き残ったとしても、お金は貰えずに学園長に殺されるのがオチです。」

 

「オレも、お金よりみんなの方が大事だ!!!」

 

「ボクはお金なんていらないのだー!!」

 

「お金は諸悪の根源です。そんな雑念は捨てて、共に我らが父に祈りを捧げましょう!」

 

「俺もいっかな〜。俺は、スリリングなゲームを楽しめりゃそれでいいからさー。」

 

「余は、ここの暮らしにも慣れてきたしのぉ。平和が一番じゃ。」

 

「…私にも処刑人としてのプライドがある。いくら金を積まれても、こんな状況で殺しをするのは私のプライドが許さん。」

 

 

「…100億!!?そんだけありゃあ、一生遊んで暮らせるどころか、豪邸に住んで、毎日上手いもん食って、キレーなねーちゃんと遊びまくって…やりたい放題じゃねえか!!ウッヒョー!たまんねー!!」

 

(佐伯君!!?)

 

「…なーんてな。冗談だよ。みんなを殺して手に入れたモンに囲まれたって、そんなのは本当の幸せじゃねえだろ?」

 

(…佐伯君、意外といい事言うじゃんか…)

 

良かった。みんな、あたしと同じ意見だ。

 

…そうだよね、みんな、人を殺してまでお金を手に入れるなんて、望んでないよね。

 

「…奴目さんも、皆さんと同じ意見ですよね?」

 

「…え?あ、うん…」

 

「おいゲロブター。まさかとは思うけど、この期に及んで変な気起こしたりしねーだろーな?」

 

「ひぅううぅ…!」

 

みんなの確認が終わった後、流れ解散となった。

 

 

部屋で寝る準備をしていると、ドアのノック音が聞こえた。

 

ドアを開けると、奴目さんが立っていた。

 

「…あのさ、メグメグ。こんな時間に悪いんだけど、娯楽室にあるカラオケに行かない?」

 

時計を見ると、まだ9時台だった。

 

「いいけど…なんで急に?」

 

「なんかさ、みんなともっと仲良くなりたいなって思って!つぐみんとかタケちゃんとかも誘ったから、メグメグもおいでよ!」

 

「…え。魅神君も誘ったの?」

 

「ほーらー、文句言わない!」

 

結局、あたしたちはカラオケに行く事になった。

 

 

カラオケには、全員来ていた。

 

「あれ?意外…アーニャちゃんも来てたんだ。」

 

「私がカラオケにいちゃダメか?」

 

アーニャちゃんが凄んできた。

 

「いや、別に…ダメでは、ない…です…」

 

つい、萎縮してしまった。

 

「アーニャちゃん、カラオケに行った事ないらしいからさ。体験させてあげようと思って。…リサっち。マイク取って。」

 

「メダル30枚。」

 

「…やっぱいいや。自分で取るよ。…はーい、じゃあ歌うよー!」

 

 

みんな、それぞれ歌った。

 

奴目さんは、見事な歌声を披露してくれた。

 

真樹さんとあたしは、イマドキの女子が歌うような曲を歌った。

 

意外にも、宇田川君が結構上手かった。

 

…ボイパを趣味にしてるのとなんか関係あんのかな?

 

相浦さんにも好評だったようだ。

 

相浦さんは、恥ずかしいからと言ってほとんど歌わなかった。

 

黒須君は、教会で聞くような曲ばっかり選曲していた。

 

聞いてて眠くなってしまった。

 

アーニャちゃんは、外国語の童謡を歌っていた。

 

意外と可愛らしい趣味のようだ。

 

九十九君は、声量が大きすぎて近くにいた佐伯君にマイクを取り上げられていた。

 

正直、鼓膜が破れるんじゃないかと思った。

 

佐伯君は、なんかチャラそうな曲ばっかり歌っていた。

 

千葉崎さんは、カラオケで歌う代わりに和歌を詠んでいた。

 

魅神君は、変な声を出してマイクを壊そうとしていたので、強制的にやめさせた。

 

…小林さんの歌は、聴くに耐えなかった。

 

あの無邪気な性格からは想像もつかないような禍々しい歌声を披露し、その場にいたほぼ全員を戦慄させた。

 

なぜか、千葉崎さんと魅神君にはめっちゃウケてたけど。

 

一通り歌った後は、雑談をした。

 

「楽しかったね!」

 

「…小林さんの歌は…ちょっとアレだったけどね。」

 

「…良く言えば音痴悪く言えば地獄。」

 

「アーニャちゃん、それ結局どっちも悪く言ってるでしょ…っていうか、人が濁して言ったことをオブラートに包まずに言うのやめようよ…」

 

「そうか?余は、とても良いと思ったのじゃが…」

 

「…マジでアンタどんな耳してんの…」

 

「えへへへ…もう一曲歌っちゃおっかな?」

 

「やめろ!!」

 

つい、止めてしまった。

 

あの歌声をまた聞かされるのを体が恐れたせいか、反射的に声が出ていた。

 

「…ねえ、みんな。私から一ついい?」

 

奴目さんが、何か言いたそうだった。

 

「…私、メグメグに意見聞かれたとき、迷ってたんだ。」

 

「え?」

 

「…私の家、お金で困っててさ…お父さんが、友達にすごい額の借金押し付けられちゃって…私の、歌姫としての活動でも返せるかどうかわかんないくらいのね。…だから、家族のみんなを助けてあげるためにも、どうしてもお金が欲しかった。お金なんかいらないって、言えなかった。…本当にごめんね。」

 

「そっか。…あたしからも、ごめんね。そんな事情があったなんて知らなくて…無理矢理言わせようとしちゃってたんだよね。」

 

「…奴目さん…家族を助けようとしてたんですね。…すごい、立派だと思います。」

 

「エラいぞ!」

 

「うむ。お主は家族想いじゃのう。」

 

「…ありがと。…メグメグ、つぐみん、コトちゃん、りむりむ…」

 

「…そうだ!だったらその借金返すの、オレらも手伝ってやるよ!」

 

「…コタちゃん…でも…」

 

「オレらをなんだと思ってんだ?ここにいる超高校級全員の力を合わせれば、奴目ちゃんの借金を返せる額稼ぐのなんて、あっという間だろ!?」

 

「皆さんで協力しましょうね。」

 

「…コタちゃん、ひー君…」

 

「うぉおおおおおおおおお!!!奴目君!!すまなかった!!!君がそんな悩みを抱えてるなんて…気づいてやれなくて、本当にすまなかった!!!」

 

九十九君が号泣していた。

 

「…つくもも君…いいよ、私の方こそ、ごめんね、」

 

奴目さんが、本心を話してくれた。

 

誰も、責める人はいなかった。

 

今度こそ、心から信頼し合えたような気がした。

 

 

その後、数十分くらい雑談を続けていた。

 

「…あれ?奴目さんと真樹さん、もう眠いの?」

 

「…うん、ちょっとね。」

 

「ダメだよ、自分の部屋で寝ないと…って、もう寝てる…」

 

ブツンッー

 

急に目の前が真っ暗になった。

 

「えっ、何!?停電?」

 

「暗いのだー!!」

 

ボスッ

 

「ッ゛ー!!!ゲホッ、あ゛ッ…」

 

奴目さんの声だ。

 

「えっ、ちょっと…アンタ何を…キャァアアアアアアアアアアア!!!」

 

ゴッ

 

真樹さんの声が響いた。

 

「…ブ、ブレーカーが落ちたのかも…私、見てきます!」

 

足音がして、しばらく経った。

 

電気が回復した。

 

…信じられない光景が、目に飛び込んできた。

 

そこでは、頭から血を流して倒れている

 

 

 

『超高校級のネイリスト』真樹 亞里沙の死体と、

 

椅子に座ったまま胸から血を流して死んでいる

 

 

 

『超高校級の歌姫』奴目 美羽の死体が発見された。

 

【生徒数】残り10名



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第3章 非日常編①

…嘘だ。

 

あんなに明るくて、みんなを盛り上げてくれていた奴目さんが。

 

むやみやたらにお金はせびるけど、本当はいい人だった真樹さんが。

 

…あたしは、そんな二人を殺した犯人が許せなかった。

 

「うぉわぁああああああああ!!!」

 

「ぎゃわあああああああああああ!!!」

 

叫び声を上げたのは、佐伯君と小林さんだった。

 

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

九十九君は、仲間の死を嘆き悲しんでいた。

 

「…。」

 

宇田川君は、顔を真っ青にしながら呆然と突っ立っていた。

 

「…奴目殿…真樹殿…」

 

千葉崎さんは、座り込んで抜け殻のようになっていた。

 

「おお、神よ…」

 

黒須君は、二人の死体に向かって祈りを捧げていた。

 

魅神君とアーニャちゃんは、相変わらず平気そうな顔をしていた。

 

「皆さん!ブレーカーをつけてきたんですけど…どうし…」

 

「!!!」

 

帰ってきた相浦さんが、見てしまった。

 

目の前の惨状を。

 

「そんな…奴目さんと、真樹さんが…」

 

「いやぁあああああああぁあああああああああ!!!」

 

『あー、起きちゃったね。殺人が。』

 

モノクマが後ろから現れた。

 

『それじゃ、お待ちかねの捜査タイム!!みんな、学級裁判に向けて頑張って捜査してよね?』

 

「待て。」

 

『何?アーニャちゃん。』

 

「…今回の殺人は、暗闇の中で起きた。…貴様は、事件当時の状況を把握できているのか?」

 

『ああ、それなら…この監視カメラは、暗闇に対応した機能が付いておりますので、映像の方はバッチリです!…それじゃ、ファイル送っといたから参考にしてね!』

 

モノクマは去っていった。

 

「…ごめんなさい、私、捜査から抜けます…」

 

相浦さんは、泣きながらカラオケボックスを後にした。

 

「そんな…貴女が捜査してくれなければ、正しいクロを特定できないかもしれないんですよ…?」

 

黒須君は彼女を引き止めた。

 

「…ごめんなさい。…私、正直それでもいいと思ってるんです。…奴目さんは、こんな私と仲良くしてくれた、大事なお友達だったんです。…真樹さんも、皆さんが思っているより悪い人じゃありませんでした。…皆さんの足を引っ張ってしまう事は分かっています。…ですが、二人が亡くなってしまった今、私にはもう生きる気力なんて…」

 

…誰も、責める事はできなかった。

 

きっと、彼女の心はもう限界だったんだ。

 

「…無理に参加しようとしなくていいですよ。…元気になったら、いつでも戻ってきてくださいね。」

 

宇田川君は、優しく声をかけた。

 

以前の彼なら、「個人の感情で人の足を引っ張るな」とか言いそうだったけど…

 

…宇田川君も、変わったんだな。

 

「…はい。…ありがとうございます。」

 

 

…まずはファイルに目を通そう。

 

1人目の被害者は、奴目 美羽。

死亡時刻は、午前0時頃。

3階の娯楽室にあるカラオケボックスで、椅子に座りながら死亡していた。

死因は、刺殺による失血死。

心臓を刃物のようなもので背後から一突きされたような痕がある。

 

【コトダマ入手:モノクマファイル①】

心臓を、刃物のようなもので背後から刺されたとある。

 

2人目の被害者は、真樹 亞里沙。

死亡時刻は、午前0時頃。

3階の娯楽室にあるカラオケボックスで、床に倒れた状態で発見された。

死因は脳挫傷。

頭部に打撲痕があり、出血している。頭蓋骨は陥没しており、何者かに殴られたと思われる。

 

【コトダマ入手:モノクマファイル②】

何者かに殴られたとある。

 

「…ん?…これは。」

 

血の付いたマイクが転がっていた。

 

血は、多分真樹さんのものだろう。

 

【コトダマ入手:血液の付いたマイク】

真樹さんの血液が付着している。

 

「あれ…?真樹さんが何か握ってるな…」

 

これは…?白い布片…?

 

見たところ、手袋のようだ。

 

【コトダマ入手:白い布片】

手袋が破れたもののようだ。

 

…もう少し調べてみよう。

 

ん?真樹さんの爪に何かこびりついてるな…これは…血?

 

【コトダマ入手:爪にこびりついた血液】

真樹さんの爪に付いていた。誰のものかは不明。

 

「…僕から少し報告が。」

 

発言したのは、宇田川君だった。

 

「奴目君と真樹君の飲んでいた飲み物から、睡眠薬が検出されました。」

 

【コトダマ入手:睡眠薬】

二人の飲み物に入っていた。

 

「ボクからもホーコクなのだー!!!なんか、ミウのうめき声が聞こえる前、『ボスッ』っていう音が聞こえたのだ!」

 

「それは僕も聞きました。」

 

【コトダマ入手:小林さんの証言】

妙な音が聞こえたという。

 

「あと、なんかずっと『ゴー』っていう音も聞こえなかった?」

 

「…そんな音しましたか?」

 

「もしかして、空気清浄機の作動音じゃない?」

 

「多分それ!」

 

【コトダマ入手:空気清浄機】

小林さんが作動音を聞いたという。誰かがスイッチを入れていたのだろうか。

 

「…なあ、俺からも一個いいか?」

 

佐伯君が報告に来た。

 

「昨日、作品の続きを作ろうと思って美術室に行ったんだよ。そしたら、木材とか色々無くなってたんだよ。」

 

「…でも、それ今関係ある?他にもなんか作りたかった人がいて、それで持ってったんじゃない?」

 

「いや、オレ、自分の作品には絶対に触らせない主義だから、探索の後は立ち入り禁止にしてたんだよ。…ちょっとトイレ行ってる間に勝手に入られたのかなぁ…」

 

「君が知ってる中で、美術室に入ったのはあたしと君と奴目さんだけなんだよね?」

 

「…だと思ってたんだけどな。」

 

【コトダマ入手:消えた美術室の備品】

いくつか無くなっていたらしい。

 

【コトダマ入手:美術室の入室状況】

美術室探索組以外は美術室には立ち入っていないはずだが、佐伯君の目を盗んで何者かが侵入した可能性あり。

 

「うむ。余は、どうやら重大な発見をしてしまったようじゃ。」

 

千葉崎さんが報告に来た。

 

「イスに、刃物のキズのようなものと、凹みがあったぞ。…キズの位置は、奴目殿の死体の位置と一致しておったわ。」

 

【コトダマ入手:ソファのキズと凹み】

キズは、奴目さんの刺し傷と同じ場所にあった。

 

「…もしかして…ねえ、ちょっといい?」

 

「…あ、お主!まだ捜査のとちゅ…」

 

ガバッ

 

ソファのカバーを外すと、端に血の付いたナイフが取り付けられた長い木材があった。

 

木材は、棒のようなものが取り付けられ、回転するようになっていた。

 

【コトダマ入手:謎のオブジェ】

片端に血の付いたナイフが取り付けられており、回転するようになっている。

 

「ねえー、コレ何だと思うー?」

 

魅神君は、暗視ゴーグルを持ってきた。

 

「…どうしたのそれ。」

 

「イスの下に落ちてたー。」

 

【コトダマ入手:暗視ゴーグル】

ソファの下に落ちていた。犯人が使ったものだろうか?

 

「なんか、向こうの部屋で妙なものを見つけたぞ!!!」

 

報告したのは、九十九君だった。

 

九十九君が連れてきたのは、空き部屋だった。

 

「見てくれ!!!この部屋、家電が全部付けっ放しになっているんだ!!!」

 

「なにこれ…こんな事してたら、ブレーカーがすぐ落ちちゃうじゃんか!!」

 

「…ん?…!!」

 

「…そういう事か。」

 

【コトダマ入手:付けっ放しの家電】

家電が、空き部屋で付けっ放しになっていた。

 

【コトダマ入手:ブレーカー】

ブレーカーが落ちたのが、停電の原因と思われる。

 

「アーニャちゃんからは何か報告ある?」

 

「…参考になるかはわからないけど、このカラオケ大会を企画したの、奴目じゃないらしい。」

 

「…じゃあ、誰?」

 

「黒須が、たまには息抜きもいいんじゃないか、奴目の歌でみんなをリフレッシュさせよう、的な事をアドバイスしたそうだ。」

 

【コトダマ入手:アーニャちゃんの証言】

カラオケ大会を企画したのは、黒須君らしい。

 

最後にアルターエゴにも意見を聞こうと思ったが、モノクマの監視の目があって、聞くことはできなかった。

 

『オマエラ、そろそろ学級裁判始めちゃいますよ〜?至急、赤い扉まで集合してください!!』

 

あたしたちは、エレベーターに乗り込んだ。

 

…そして、エレベーターが動き出す。



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第3章 非日常編②

全員、裁判場に着いた。

 

また、遺影が増えていた。

 

金剛寺さん、奴目さん、真樹さんの遺影だった。

 

「…。」

 

向かいの席の相浦さんは、暗い表情をしていた。

 

親友を殺されたんだもん、そうなるよね…

 

『オマエラ、全員席についた?じゃあ、始めるよ〜!ドキドキワクワクの学級裁判を!!』

 

 

 

学級裁判開廷!

 

 

『さて、今回は被害者が二人って事なんだけど…』

 

アナスタシア「その場合はどうなるんだ?」

 

『うぷぷ…その場合はね、先に殺人を犯した方のみをクロとします!もう片方は、投票でクロが決まった場合不正解扱いとなり、他のみんなと一緒におしおきします!十分注意してね!』

 

佐伯「はあ!?そういうの、もっと早く言えよ!!」

 

『だって、今まで二人殺された事なんてなかったんだもん!…まずは、事件のまとめからだね!じゃあ、議論を開始してくださーい!!』

 

 

 

議論開始

 

黒須「…私がファイルを読み上げましょう。1人目の被害者は奴目 美羽。死亡時刻は午前0時頃カラオケボックスの中のソファで血を流して死亡。死因は刺された事による失血死。心臓部に、背後から刺されたとみられる刺し傷が見られる。

 

小林「座ってたらそのままグサってやられちゃったんだね!」

 

 

「…いや、多分違うんじゃないかな?」

 

 

反論

 

小林「んだよ!俺がなんか間違った事言ったって言いてェのかよ!!?」

 

…違う。座っててそのまま刺されたわけじゃない。

 

 

【使用コトダマ:モノクマファイル①】

 

 

論破

 

「…黒須君が言ってくれたけど、奴目さん後ろから刺されてるんだよ。座ってて、正面から刺されたわけじゃないと思うよ。」

 

小林「そうなのかー!!」

 

黒須「…続けますね。2人目の被害者は真樹 亞里沙。死亡時刻は午前0時頃カラオケボックスの中で床に倒れた状態で死亡死因は脳挫傷。頭部から出血しており、打撲痕あり。頭蓋骨も陥没しているようです。以上です。」

 

千葉崎「うっかり転んで頭でも打ったのではないか?間抜けな奴じゃ。」

 

 

「それは違うよ!」

 

 

反論

 

千葉崎「何!?貴様、余が間違った事を言ったと申すか!?」

 

「そうだよ。真樹さんは、事故死なんかじゃない!!」

 

 

【使用コトダマ:モノクマファイル②】

 

 

論破

 

「ほら、頭蓋骨が陥没してて、何者かに殴られたと思われるって書いてるでしょ?転んだだけじゃ、こうはならないよ。」

 

千葉崎「むぅ…」

 

宇田川「では、次は真樹君を殺害した際の凶器の特定ですかね。」

 

 

議論開始

 

 

黒須「…ふーむ、グラスですかね?」

 

魅神「マイクとか、殴りやすそうだよねー。」

 

千葉崎「デンモクかもしれんぞ?」

 

九十九「拳と拳のぶつかり合いがあったんじゃないか!!?」

 

魅神君の意見に賛成したい。

 

 

【使用コトダマ:血液のついたマイク】

 

 

同意

 

「血液のついたマイクが落ちてたんだ。犯人は、それで真樹さんを殴ったんだと思うよ。」

 

千葉崎「なるほどのぉ。では次は、奴目殿の殺害に使われた凶器の特定を…」

 

アナスタシア「…待て。」

 

千葉崎「む?なんじゃお主!!余の持ち出した議題に文句があるのか!?」

 

アナスタシア「…奴目は椅子に座っていたにもかかわらず、背後から刺されたとある。どうやってそんな殺害方法を実行したのかが明確でない以上、いきなり犯行時の状況について議論しても詰むだけだ。…先に事件直前の状況を整理すべきだと思う。」

 

「…一理あるな。アーニャちゃんの議題を採用しよう。」

 

 

議論開始

 

 

小林「まず確認だけどさ、ミウはソファに座ってたんでしょ?」

 

黒須「抵抗する事は出来たはずなのに、それをしなかったのは謎ですがね…」

 

 

「意義あり!!」

 

 

反論

 

黒須「私、何か間違った事を言ったでしょうか…」

 

「うん、黒須君の発言には、間違いがあったんだ。」

 

 

【使用コトダマ:睡眠薬】

 

 

論破

 

 

「…そう、奴目さんは睡眠薬で眠らされていたんだ!!だから、最期まで抵抗できなかったんだ。」

 

佐伯「あれ?部屋以外の場所で寝たら体罰を受けるんじゃ…」

 

アナスタシア「それは故意に眠った場合だろ?奴目の場合は、不可抗力だった。」

 

佐伯「あっ…」

 

黒須「では、次は停電について整理しましょうか。」

 

宇田川「誰か、停電について心当たりのある人は?」

 

…もしかして、アレか?

 

【提示コトダマ:ブレーカー】

 

 

「…ブレーカーが落ちたんじゃない?」

 

魅神「なるほどねー…ところで、相浦ちゃんさー、ブレーカーを確認しに行ったんでしょ?なんで真っ暗闇の中なのに、すぐに戻ってこれたわけ?」

 

相浦「…えっと、て…手探りで…カラオケボックスの外まで出て…その後、持ってた懐中電灯の明かりを頼りにブレーカーまでの道のりを往復したんです…」

 

魅神「持ってた、ねえ。なんで都合よく懐中電灯なんか持ってたのかなー?」

 

相浦「ち、違い、ます…ガ、ガチャでゲットして…それで、たまたま…」

 

魅神「なんでそれを俺らに言わなかったのー?」

 

相浦「一つしか持っていなかったので…」

 

魅神「カラオケボックスの中で使わなかったのは、なんで?」

 

相浦「…や、奴目さんと真樹さんの声が聞こえたので…それで…」

 

魅神「…相浦ちゃん。俺さ、相浦ちゃんが一番怪しいと思ってるんだよねー。…普通、悲鳴が聞こえたらすぐに確かめるでしょ?なのに、それをしなかった…それって、自分が殺した死体を見られたくなかったからじゃないの?」

 

相浦「ち、ちが…」

 

宇田川「確かめるのが怖かったからです!!」

 

魅神「…あ?」

 

宇田川「…友人の死を確かめるのが怖かったから。嘘であってほしいと思っていたから、その場から離れるために『ブレーカーを見てくる』と言ったんです。…そうですよね、相浦君。」

 

相浦「…譲治さん。」

 

相浦さんは、何かを話す決意を固めたようだ。

 

相浦「…魅神さんの言う通りです。すぐに、懐中電灯を使って確認するべきだったんです。でも、奴目さんの呻き声を聞いた途端、私…怖くなって…その場から逃げ出す口実のために、『ブレーカーを見てくる』なんて言って…全部、私のせいです。私が確かめようとしていれば、止められたかもしれない…真犯人を見つけられたかもしれないのに…ごめんなさい…本当にごめんなさい…!」

 

相浦さんは、泣きながら謝罪していた。

 

魅神「おいおい、お前ら騙されんなー?この涙だって、みんなを丸め込むためのウソかもよ〜?」

 

アナスタシア「…お前の方こそ諦めろ。私は騙されないぞ。」

 

魅神「…あ?」

 

アナスタシア「相浦が犯人の可能性は低いと言っているんだ。仮に奴がクロだとしたら、やっている事が完全に自殺行為だからな。」

 

千葉崎「どういう事じゃ?」

 

アナスタシア「…誰も犯行現場から逃げ出さない中で一人だけ逃げ出すというのは、『疑ってくれ』と言っているようなものだからだ。」

 

魅神「…チッ。あーあ、バレちゃったか。上手いこと裁判を危ない方向に持ってこうと思ったのに。」

 

九十九「貴様ああああああ!!!」

 

言い争っている魅神君と九十九君は放っておいて、相浦さんの話を聞いた。

 

相浦「ごめんなさい…皆さん…私、どうしたら…」

 

「…相浦さん、正直に話してくれてありがとう。相浦さんが話してくれなかったら、間違った人をクロにしちゃってたかもしれない。…真犯人を見つけるためにも、議論に参加してくれるかな?」

 

相浦「…はい。…ごめんなさい…ありがとうございます…。」

 

相浦さんが議論に参加してくれるようになった。

 

相浦「…では、次はどうしてブレーカーが落ちたのか、ですね。」

 

…それは。

 

 

【提示コトダマ:付けっ放しの家電】

 

「家電をいくつも付けっ放しにしてたからじゃない?」

 

宇田川「…確かに、理論上はそれでブレーカーを落とす事は出来ますが…誰がそんな事を?」

 

「多分、この事件を起こした犯人…だろうね。」

 

黒須「では次は、どうやってちょうどいいタイミングでブレーカーを落としたか、ですね。」

 

 

議論開始

 

 

千葉崎「ワープして落としに行ったのかもしれんのぉ。」

 

小林「念力じゃない!?」

 

宇田川「時間差で電化製品を使ったとか…」

 

宇田川君の意見に賛成したい。

 

 

【使用コトダマ:空気清浄機】

 

 

同意

 

「空気清浄機。…あれが、ずっと付けっ放しだったらしいんだ。」

 

宇田川「なるほど、あらかじめ消費電力を計算しておいて、時間が来たら勝手に作動してブレーカーが落ちるようにしたというわけですか。」

 

黒須「…でも、犯人はどうやって暗闇の中を移動したんでしょうかね?」

 

…それは。

 

 

【提示コトダマ:暗視ゴーグル】

 

「…暗視ゴーグルを使ったんだよ。」

 

黒須「なるほど、何も見えていない相手を、一方的に殺害したというわけですか。…実に卑劣ですね。」

 

千葉崎「そろそろ事件直前のまとめも終わったし、奴目殿の殺害方法についても考えねばのお。」

 

「…奴目さんを殺した方法…?」

 

千葉崎「そういえば、アレが気になるのお。」

 

アレ?…もしかして、アレの事か?

 

 

【提示コトダマ:ソファのキズと凹み】

 

 

「千葉崎さん、もしかしてそれって、ソファのキズと凹みの事?」

 

千葉崎「おお、それじゃ!…ところでお主、あの部屋で何か見たのではないか?」

 

何か…?それって…

 

 

【提示コトダマ:謎のオブジェ】

 

 

「…変なオブジェを見たよ。片方にナイフがついてて回転する木材がついたオブジェ。」

 

相浦「変なオブジェ…ですか。…なんの目的で置かれていたのかはご存知ですか?」

 

「…それは。」

 

 

…考えろ、何かあるはずなんだ。

 

 

閃きアナグラム

 

 

次々と、頭の中にピースを素早く拾って、組み合わせて…

 

…これだ!!

 

 

「…手作りのトラップ?」

 

相浦「…て、手作りのトラップ、ですか!?」

 

「うん。おそらく犯人は、イスの背もたれのカバーの中にそのオブジェを隠して、背もたれのある場所に力を加えると、反対側の端にナイフがついた木材が回転して、そこに座ってる人にナイフが刺さる仕掛けを作ったんだ。」

 

相浦「…N=dL/dt!」

 

宇田川「…オイラーの運動方程式ですよね?」

 

相浦さんと宇田川君が理系トークを始めた。

 

「…続けるよ。多分、ソファの凹みは力を加えた時にできたもので、キズはナイフが貫通した時にできたんじゃないかな?」

 

千葉崎「なるほど…それで、奴目殿の刺し傷の位置と一致したのか。」

 

宇田川「いや、理論上は可能かもしれませんが…本当にそんなトリックを使ったなんて、とても信じられません。」

 

…いたはずだ。それを証言してくれる人が。

 

 

【提示コトダマ:小林さんの証言】

 

 

「…小林さん、確か『ボスッ』って音を聞いたって言ってたよね?」

 

小林「うん!!」

 

「…それってもしかして、犯人が背もたれに力を加えた時の音なんじゃない?」

 

小林「そうだったのかー!!」

 

相浦「…でも、そんなオブジェを作る材料なんて、どこに…」

 

…アレを提示すべきか?

 

 

【提示コトダマ:美術室の消えた備品】

 

 

「美術室から、備品が消えていたらしいんだ。佐伯君が証言してくれたよ。」

 

佐伯「木材とかも無くなってたよ。全く、誰だ!!オレの聖域に土足で踏み込んで荒らしやがった奴は!!」

 

千葉崎「落ち着かんか。元は貴様の部屋ではなかろう。」

 

黒須「そうですよ…絵を荒らされたかもしれないからって、そんなに怒らなくても…」

 

佐伯「うるせえ!!オレは、オレの芸術をブチ壊す奴が何よりも許せねえんだ!!」

 

九十九「佐伯君!!君のその芸術に対する情熱、素晴らしいじゃないか!!!」

 

佐伯「わかってくれるか!!?」

 

「…そこ、意気投合しなくていいから。」

 

アナスタシア「…ねえ、そんな事よりさ。あんた、犯人わかったんじゃないの?」

 

「…うん。ここまで整理してみて、わかったかもしれない。」

 

全てを計画し、未来ある少女たちの命を奪った犯人。

 

…正直、『お金』っていう動機を提示された時、一番変な気を起こさなさそうに思えた人物。

 

どうして、君がこんな事を…

 

人物指定

 

あたしは、躊躇いながらも、ゆっくりとその人を指差した。

 

 

 

ミカエル・黒須 聖君、君は何か知ってる事があるんじゃないの?」

 

黒須「私、ですか…?」

 

 

議論開始

 

黒須「…馬鹿馬鹿しい。私が犯人なわけないでしょうに。そもそも、カラオケ大会を計画したのは奴目さんでしょう?」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

黒須「私の発言のどこが変だと言うんですか!?」

 

黒須君の発言がおかしいと言える根拠。それは…

 

 

【使用コトダマ:アーニャちゃんの証言】

 

 

論破

 

「嘘をついても無駄だよ!!黒須君、君がカラオケ大会を計画した事は知ってるんだから!!」

 

黒須「それだけの理由で犯人にされては困ります。現に私は皆さんの前で不自然な発言などしていないでしょう?」

 

 

「…異議あり!!」

 

 

反論

 

黒須「ほう…私が変な発言をしたと?」

 

「そうだよ。…だって。」

 

 

【使用コトダマ:美術室の入室状況】

 

 

論破

 

「佐伯君の証言では、美術室には美術室探索チームしか入っていなかった。…まあ、トイレに行ってた数分の間だけは目を離しちゃってわからなかったらしいけど。…それなのに、なんで君は彼の製作中の作品が『絵』だって知ってたの!!?」

 

黒須「…宗教画を見る事が多いので。そういう固定概念に囚われていただけです。…というか貴方、揚げ足取りしかできないんですか?私が犯人だという証拠が無いでしょうよ!!」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

黒須「…証拠があると言いたいんですか?へえ、では出して頂きましょうか。…出せるものなら、ね!!」

 

「…今から見せてあげるよ。」

 

 

【使用コトダマ:白い布片】

 

 

論破

 

「…この白い布の切れ端、真樹さんが掴んでたんだ。多分、殴られる直前に抵抗したんだろうね。…これ、君の手袋の布じゃないの?」

 

黒須「…そ、そんなもので私を犯人にされても…」

 

「…そうだよね。…じゃあ、これならどう?」

 

 

【提示コトダマ:爪にこびりついた血液】

 

 

「…真樹さんの爪についてたんだ。君の手袋が破れてて、真樹さんの爪に血がついてる…だったら、考えられるのは一つ…」

 

「…黒須君、君の手、怪我してるんじゃないの!?」

 

アナスタシア「…今すぐ両手を上げて見せろ。」

 

黒須「ーッ、」

 

黒須「…。」

 

黒須君が観念したように両手を上げる。

 

彼の左手には、引っ掻き傷があった。

 

魅神「…もう真実は解き明かされたみたいだねー。」

 

「みんな、今から話す事が事件の真相だよ。」

 

 

クライマックス推理

 

 

次々と頭の中に浮かぶピースを組み立てて…

 

…これが、事件の真相だ!!

 

 

Act.1

 

まず犯人は、佐伯君がトイレに行っている間に、美術室から木材などの、殺人トラップの製作に必要な材料を盗んだんだ。…そして、盗んだ材料を使って、木材の片端に力を加えると木材が回転する仕掛けを作ったんだ。その仕掛けの木材の先端にナイフを取り付けて、それをカラオケボックスのソファの背もたれの中に仕込めばセット完了だ。次に、家電の消費電力をあらかじめ計算しておいた犯人は、空き部屋でありったけの家電をつけっぱなしにして、計算通りの電力が消費されるようにしたんだ。

 

 

Act.2

 

再びカラオケボックスに戻った犯人は、空気清浄機をセットして、時間が来ると勝手にブレーカーが落ちる仕掛けを作った。次に犯人は、奴目さんにカラオケ大会の話を持ちかけた。…奴目さんと真樹さんしか呼ばないと怪しまれるから、全員呼んでくるように奴目さんにお願いしてね。そして犯人は、奴目さんと真樹さんをトラップのある席に座らせ、何か理由をつけて二人のドリンクを一人で厨房まで取りに行った。そして、厨房でドリンクに睡眠薬を盛ったんだ。

 

 

Act.3

 

犯人の用意した睡眠薬入りドリンクを飲んで、二人がすっかり眠ってしまった頃、犯人の計算通りブレーカーが落ちて、停電が起こった。暗闇の中でも動けるよう、犯人はあらかじめ用意しておいた暗視ゴーグルを装着したんだ。そして、ソファの背もたれを殴るか蹴るかして、奴目さんに仕掛けられたトラップを発動させた。こうして背もたれの中に仕掛けられたトラップの木材が回転して、力を加えた方とは反対側の端に取り付けたナイフが奴目さんの心臓を貫いたんだ。

 

 

Act.4

 

犯人は、真樹さんにも同じトラップを発動させようとした。でも、ここで犯人にとって想定外の出来事が起こってしまったんだ。…なんと真樹さんが目を覚ましてしまった。その事に気がついた犯人は、咄嗟に近くにあったマイクを手に取り、真樹さんを撲殺しようとしたんだ。真樹さんは当然抵抗した。その時、犯人の手袋と手の皮膚を引っ掻いてしまい、それが犯人を特定する決定的な証拠となってしまったんだ。でも、抵抗も虚しく真樹さんは撲殺されてしまった。その後、犯人は暗視ゴーグルをソファの下に隠し、何食わぬ顔であたしたちと一緒に捜査をしていた。

 

 

 

「…これが事件の真相だよ。…そうだよね!?

 

 

 

『超高校級の聖人』ミカエル・黒須 聖君!!!

 

 

「…ふっ。やれやれ、バレてしまっては仕方ありませんね。」

 



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第3章 非日常編③

「ふふふ…あははははははは!!!…いやあ、実にお見事でしたよ、夏川さん!!素晴らしい!!さすが、私が見込んだ女性というだけの事はありますね。」

 

黒須君は、目を見開いて笑っていた。

 

普段、目を細めてうっすらと笑みを浮かべている彼からは、想像もつかない表情だった。

 

『うぷぷ…どうやら、クロはもう決まったようですね。ではでは、投票ターイム!!』

 

手元にあるスイッチを睨みながらも、あたしは黒須君に投票した。

 

『ではでは?結果発表ー!』

 

モノクマの座る椅子の前からスロットマシーンのようなものがせり上がり、生徒の顔を模したドット絵が描かれたルーレットが回った。

 

黒須君の顔が三つ揃ったところでルーレットが止まった。その下にはGuiltyの文字が浮かび上がり、スロットマシーンからは大量のメダルが出てきた。

 

『うぷぷぷ、お見事だいせいかーい!!『超高校級の歌姫』奴目 美羽さんと、『超高校級のネイリスト』真樹 亞里沙さんを殺害したのは、『超高校級の聖人』ミカエル・黒須 聖クンでしたー!!』

 

「黒須君!!どうして君が殺人なんて犯したんだ!!?」

 

九十九君が質問をした。

 

『うぷぷ…それはね、ボクの用意した動機が『お金』だったからだよ。』

 

「だったら、なんで金が動機で殺したんだ!!?君は、最も敬虔に神に尽くしていた聖人のはずだろ!!?…君だけは、絶対に犯人じゃないと思っていたのに!!!」

 

…そうだ。黒須君は、一番お金に対して無欲な人だった。

 

だから、あたしだって、彼がお金で人を殺すはずがないって信じてたのに。

 

「…だからこそですよ。私は、皆さんが学園長にお金の話をされた時に、全員の顔を見ていました。実は私、その時選別していたんですよ。皆さんが、我らが父の恩寵を受ける資格がある人間かどうかをね。殆どの方は合格でしたよ。…しかし、お二人だけ不合格者がいました。…奴目さんと真樹さんです。彼女達は、お金の話をされた瞬間に目の色が変わっていました。彼女達は、金銭欲に取り憑かれた魔女だったんです。だから、我らが父に代わり、あの方達に天罰を下して差し上げました。…それだけです。」

 

…は?

 

何を言ってるのこの人は。

 

奴目さんには、助けてあげなきゃいけない家族がいた。

 

真樹さんにだって、きっとどうしても生き残りたい理由があったはずなんだ。

 

…それなのに。

 

『お金を欲しがった』

 

 

 

た っ た そ れ だ け の 理 由 で ?

 

「…けるな。」

 

「…おや、何か言いましたか?夏川さん。そんな事より、喜んでくださいよ!!貴女は文句なしの100点満点ですよ!!邪心を持たず、皆のために尽くし皆を導く貴女は、正真正銘の聖女です!!!きっと我らが父も、貴女のような女性にはご加護を下さる事でしょう。…さあ、その清い心と身体を以って共に我らが父に…」

 

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃねえよ!!!」

 

 

 

ゴッ

 

「ぐあっ!!!」

 

気がつくと、あたしは黒須君の左頬を殴っていた。

 

「…あの二人が君に何をしたっていうんだよ!!神様のためとか選別だとか色々言ってるけど、結局全部ただの自己満足じゃねえかよ!!『お金が欲しい』なんて当たり前の考えを持っただけで、君は罪のない人を殺すのか!!命を一体何だと思ってんだ!!天罰が下るべきなのは、どう考えてもそっちじゃねえか!!!『聖人』なんて肩書き使って人の命弄んでんじゃねえよ、この人殺しが!!!」

 

あたしは、黒須君の胸ぐらを掴みながら言いたいことを全部言ってやった。

 

「…どうやら、貴女はまだ神の御心に触れた事がないからそんなくだらない考えを持っているようですね…。…ですが、いずれ気付くでしょう…本当の正義とは何か、善とは何かにね…。」

 

「何が善だ!!何が正義だ!!…君の言う正義なんて、わかるわけないでしょ!!わかってたまるか!!」

 

「…哀れですね。せっかく、誰よりも清く正しい聖女になれる素質があるのに。」

 

「うるさい!!君なんかが、あたしを決めるな!!」

 

『あのー、お取り込み中悪いんだけど、そろそろおしおき始めちゃってもいいかな?』

 

「どうぞ、始めてください学園長。…早く見てみたいものです。より高みの存在になった者の景色というものをね。」

 

「…テメェ、殺されんのが怖くねえのかよ。…気色悪い。」

 

「…貴方にはわからないでしょうね。これは、勲章です。私は、悪しき者達を裁いた褒美として、今から神のもとへ行くのですよ。…貴方方は低次元の世界で生き続るのがお似合いです。…ああ、かわいそうに!!」

 

『今回は、『超高校級の聖人』黒須クンのためにスペシャルなおしおきを用意しました!…ではでは、おしおきターイム!!」

 

「…では、皆さんご機嫌よう。私は、今から神のもとへ行って参ります。残りのゲーム、せいぜい頑張ってくださいな。」

 

モノクマがハンマーを振り上げると、赤いスイッチがせり上がってきた。

 

モノクマは、スイッチをハンマーで押した。

 

 

GAME OVER

 

『クロスくんがクロにきまりました。 オシオキをかいしします。』

 

 

 

 

黒須は、ワイヤーのようなもので引っ張りあげられる。

 

天井が開き、黒須はさらに上へと引っ張り上げられる。

 

そこから、映像が切り替わる。

 

黒須を釣り上げていたワイヤーが切れ、黒須は大きな十字架に磔にされる。

 

十字架の周りは、16世紀の神聖ローマのような背景になっており、人形が十字架を取り囲んでいる。

 

そして、画面中央にタイトルが浮かび上がる。

 

 

最期の審判

 

 

黒須の磔にされた十字架に火がつけられる。

 

十字架が燃えてゆき、黒須に火が燃え移る。

 

黒須は、肉を灼かれる痛みに顔を歪めながらも、神の元へ行ける喜びで恍惚とした表情をしていた。

 

身体の殆どが灼かれ、原形を留めなくなった頃、2体の天使が黒須の身体を引っ張り上げる。

 

黒須を連れた天使たちははるか上空へと昇っていく。

 

そして、黒須が見上げた先には一筋の光が見え、その先に彼が心から信仰している者…

 

神がいた。

 

神は巨大な手を黒須の方へ向ける。

 

黒須は、涙を流しながらその手を掴もうと手を差し出した。

 

そんな黒須の額に、神は一枚の紙を貼り付けた。

 

 

そこには、「地獄行き」と書かれていた。

 

神が両手の人差し指で真下を指すと、2体の天使は頷き、黒須を振り落とす。

 

下へ下へと堕ちていく黒須は、左手を振りながら自分を見下ろしている神を、絶望で満ちた表情で見ていた。

 

黒須は、元いた場所よりさらに下へ、地獄へと堕ちていく。

 

2体の天使が自分たちの顔の皮を剥ぐ。

 

すると、その下からはモノクマの顔が現れた。

 

天使モノクマ達は大鎌を構えると、それを同時に黒須の方へと振り投げる。

 

黒須の身体を2本の大鎌が貫き、黒須の身体は地獄の底で灰となって崩れた。

 

場面が最初の十字架の場所に切り替り、人形のうちの一体が持っているプラカードがアップになる。

 

そこには、「人殺しの魔女は地獄に堕ちろ 」と書かれていた。

 

 

 

 

映像が終わった。

 

『いっやあ、神のためだの、天罰だの、何をほざいていたんでしょうねえ。敬虔な聖人の皮を被った、あの魔女は。人を殺した時点でオマエも裁きを受けるのは確定だっつーの!!バーカ!!』

 

「いっやー、今回も刺激的なエンターテインメントだったねえ!!ほら、みんなどーしたのー?もっとアゲていこーよ!!」

 

モノクマと魅神君は、相変わらず上機嫌だった。

 

『じゃ、今回もメダルあげるからみんなで仲良く分けてね!…それじゃ、まったねー!』

 

モノクマは去っていった。

 

「…奴目さん、真樹さん。真犯人は、皆さんが見つけてくれましたよ。」

 

相浦さんが奴目さんと真樹さんの遺影に話しかけている。

 

「…だから、安心して眠ってくださいね。」

 

二人の遺影に向かって微笑みかけていた相浦さんは俯き、地面に涙の雫が落ちる。

 

「う、うぅう…うあぁ…うわぁああぁあああああぁぁああぁあぁああああああぁあああ…!!!」

 

相浦さんは崩れ落ちるように膝をつき、大声で泣いた。

 

つられるように、小林さんと千葉崎さんも泣いた。

 

九十九君は、無言で涙を流しながら3人を見ていた。

 

佐伯君と宇田川君は、おしおきの映像が映っていたスクリーンから目を逸らしていた。

 

アーニャちゃんは、裁判場の片隅で座っていた。

 

…今日は、みんなずっと泣き続けた。

 

 

何時間か経ち、やっと裁判場を後にしたみんなは、泣き疲れて寝てしまった。

 

…笑い疲れて死にそうになってた魅神君と、始終冷静だったアーニャちゃんと宇田川君を除いて。

 

あたしはまだ起きている元気があったので、誰もいない図書館へと向かった。

 

そして、そこで適当に本を探していた時、資料室のようなものを見つけた。

 

そこでは、とある資料を見つけた。

 

 

絶望国家論 著・『超高校級の絶望』江ノ島 哀華

 

「…超高校級の…絶望…?…アイカって、一体…?」

 

部屋全体をよく見渡してみると、壁一面に血文字で「アイカ様万歳」と書かれていた。

 

「ーッ!!」

 

この時、あたしたちはまだ知らなかったのだ。

 

このコロシアイを影で動かしている、『絶望』の存在を。

 

 

 

第3章『Sacred Dystopia』ー完ー

 

【生徒数】残り9名



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第3.5章 プロフィール第2弾
希望ヶ峰学園分校80期生 生徒名簿Ⅱ


ATTENTION!!

 

第3章までの重大なネタバレが含まれます。

 

 

 

 

 

【生き残り生徒数】9名

 

【超高校級の幸運】夏川 メグ(ナツカワ メグ)

 

「あたし、ただのJKじゃないから!」

 

性別:女

身長:165cm

体重:50kg

胸囲:89cm

誕生日:9月15日(おとめ座)

血液型:O型

好きなもの:カッコよくてノれる曲、肉まん、法正 良馬

苦手なもの:暗所、血、絶望

出身校:三丘第一中学校

ICV:悠木碧

第3章までの状況:生存

主人公兼語り手。分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。友人として信頼していた大吉と、友人として尊敬していた良馬を失った事で一度自信を喪失するが、良馬が生前に残した言葉を胸に刻み、今は他の生徒たちのリーダー的存在となっている。第1章では血に対する耐性が殆ど無かったが、現在は血に対する耐性がついている。なお、現在アルターエゴ良馬と親密度を高めている模様。ちなみに、良馬に対する好意はあくまで「友愛」。動機DVDの内容は、「家族の安否」。秘密の内容は、「中学生時代にいじめを受けていたこと」。

 

 

 

【超高校級の軍師】法正 良馬(ホウセイ リョウマ)

 

「『夫れ用兵の道は、人の和に在り』僕の尊敬する諸葛亮孔明の一番好きな名言だよ。」

 

性別:男

身長:158cm

体重:44kg

胸囲:72cm

誕生日:3月20日(うお座)

血液型:AB型

好きなもの:中国史、春巻き、夏川 メグ

苦手なもの:運動

出身校:慧政学院中等部

ICV:渕上舞

第3章までの状況:死亡(第1章クロ)

元準主人公。分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。以前は生徒達のリーダーとして活躍しているが、第1章で死亡してからは、メグがその役割を引き継いでいる。メグを友人として尊敬すると同時に、恋愛感情を抱いていた。第1章で、大吉のターゲットとなったメグを守るために彼を絞殺し、クロとしておしおきされた。最期は自分の死を受け入れ、メグに自分の思いを託し、笑顔で死んでいった。動機DVDの内容は、「将棋教室の先生と生徒の安否」。

 

 

 

【超高校級の芸人】明石 大吉(アカシ ダイキチ)

 

「アンタ、新入生か?初っ端から遅刻はアカンで?」

 

性別:男

身長:169cm

体重:57kg

胸囲:79cm

誕生日:7月28日(しし座)

血液型:O型

好きなもの:バラエティ番組、たこ焼き

苦手なもの:親父ギャグ、塩辛い料理

出身校:吉友中学校

ICV:梶裕貴

第3章までの状況:死亡(第1章被害者)

最初の犠牲者。分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。病気で苦しむ妹の安否を確かめるため、一番殺しやすいという理由でメグを殺害して脱出しようと目論んでいたが、計画を良馬に知られ、絞殺された。しかし偶然にも、手渡した飴玉が、良馬がクロである決定的な証拠になったという、良馬にとっては皮肉な結果に終わった。動機DVDの内容は、「病気の妹の安否」。

 

 

 

【超高校級の歌姫】奴目 美羽(ヤツメ ミウ)

 

「ねえねえ、こんな所にいたら気が滅入っちゃうよね。歌ってリフレッシュしようよ!」

 

性別:女

身長:158cm

体重:42kg

胸囲:78cm

誕生日:8月31日(おとめ座)

血液型:B型

好きなもの:歌、葱

苦手なもの:蒸し暑い場所

出身校:丘路音楽大学付属中学校

ICV:藤田咲

第3章までの状況:死亡(第3章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。借金で苦しむ家族を救うため、モノクマが提示した第3の動機である『金』がどうしても欲しいと考えた結果、聖に見限られて殺害された哀れな犠牲者。つぐみととても仲が良かったため、死亡した時、つぐみは生きる気力を喪失していた。ちなみに、動機DVDの内容は「家族とファンの安否」。秘密の内容は、「家族が巨額の借金を抱えていること」。(DVD・秘密は、本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の応援団長】九十九 百三(ツクモ モモゾウ)

 

「そんな簡単に諦めるんじゃない!!もっと熱くなれよ!!!」

 

性別:男

身長:198cm

体重:108kg

胸囲:128cm

誕生日:5月5日(おうし座)

血液型:A型

好きなもの:応援歌、白米、小林 功里

苦手なもの:雨

出身校:五右衛門中学校

ICV:乃村健次

第3章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。熱苦しいほどの熱血漢。同じ体育会系の功里には思い入れがある模様。DVDの内容は不明。秘密の内容は、「小学生の時に告白した女子に、『汗臭い』と言われてフラれたこと」。

 

 

 

【超高校級の拳法家】小林 功里(コバヤシ コトリ)

 

「とりゃあ〜〜!!コトちゃん参・上!!」

 

性別:女

身長:154cm

体重:45kg

胸囲:97cm

誕生日:8月12日(しし座)

血液型:O型

好きなもの:肉料理、必殺技、九十九 百三

苦手なもの:本

出身校:怒羅言中学校

ICV:千葉千恵巳

第3章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。おバカキャラ担当。逆鱗に触れると、不良時代の性格が蘇る。同じ体育会系の百三には思い入れがある模様。DVDの内容は不明。秘密の内容は、「幼い頃はケンカが弱かったこと」。

 

 

 

【超高校級の芸術家】佐伯 虎太朗(サエキ コタロウ)

 

「オレはアーティストだからな。直感には自信あんだよ。」

 

性別:男

身長:175cm

体重:66kg

胸囲:85cm

誕生日:7月11日(かに座)

血液型:A型

好きなもの:かわいい女の子、ハンバーガー

苦手なもの:掃除

出身校:坂松中学校

ICV:畠中祐

第3章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。変態だが、芸術家としてのセンスは本物。アナスタシアからは目の敵にされている。動機DVDの内容は不明。秘密の内容は、「小学生時代体重が100kgあって、あだ名が『百貫デブ』だったこと」。

 

 

 

【超高校級の聖人】ミカエル・黒須 聖(ミカエル クロス ヒジリ)(Michael Kurosu Hijiri)

 

「信じる者は救われます。さあ、共に祈りましょう!」

 

性別:男

身長:180cm

体重:62kg

胸囲:83cm

誕生日:12月25日(やぎ座)

血液型:O型

好きなもの:聖歌、フランスパン、聖人(特に夏川 メグ)

苦手なもの:邪教徒

出身校:聖ヴァルテンブルク中学校

ICV:日野聡

第3章までの状況:死亡(第3章クロ)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。狂信者。金に目が眩んだというだけの理由で美羽と亞里沙を殺害した。その後、『神からの勲章』としておしおきを受け入れたが、当の神様からは拒絶され、地獄に堕とされるという絶望的な末路を辿った。動機DVDの内容は、「教会の修道士たちの安否」。秘密の内容は、「幼少期にお祈りを怠って隣町まで遊びに行って迷子になったこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

 

【超高校級の令嬢】金剛寺 恵麗奈(コンゴウジ エレナ)

 

「普通にして頂いて構いませんわ。私は、ありのままの庶民とお話ししてみたいのですわ。」

 

性別:女

身長:170cm

体重:52kg

胸囲:83cm

誕生日:12月19日(いて座)

血液型:A型

好きなもの:クラシック、ブリオッシュ、銀杏田 冷

苦手なもの:もずく

出身校:百合園女子学園中等部

ICV:雨宮天

第3章までの状況:死亡(第2章クロ)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。自分の名誉を守り、金剛寺財閥を復興させるという目的のために自ら命を差し出した冷を殺害した。その後、クロが確定し、秘密が暴かれたショックで精神が崩壊した。最期は、無様に逃げ回るも捕まっておしおきを受け、愛する冷の顔をした人形に殺されるという絶望的な末路を辿った。動機DVDの内容は、「金剛寺財閥の安否」。秘密の内容は、「自分が、金剛寺家前当主を殺害し当主に成り代わった使用人の実の娘であること」。

 

 

 

 

【超高校級の執事】銀杏田 冷(イチョウダ レイ)

 

「お嬢様のお命をお守りする事こそ、執事である私の使命でございます。」

 

性別:男

身長:185cm

体重:68kg

胸囲:87cm

誕生日:1月14日(やぎ座)

血液型:B型(BB)

好きなもの:勤務時間、フランス料理、金剛寺 恵麗奈

苦手なもの:休み時間、汚れ

出身校:帝貫大学付属中学校

ICV:小野大輔

第3章までの状況:死亡(第2章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。恵麗奈の名誉を守り、金剛寺財閥を復興させるという目的のために、自分を恵麗奈に殺害させた。最期は、血まみれになりながらも、穏やかな表情で死んでいった。しかし、恵麗奈は名誉を守れず、金剛寺家を復興させる事もないままおしおきされて死んだという皮肉な結果に終わった。動機DVDの内容は、「恩人であり、先輩の老執事の安否」。秘密の内容は、「金剛寺家に仕える前は、飢えを凌ぐために盗みや殺しを繰り返してきたこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の茶道部】千葉崎 利夢(チバサキ リム)

 

「貴様ら、喧しいぞ!茶でも飲んで静かにせんか!」

 

性別:女

身長:130cm

体重:26kg

胸囲:63cm

誕生日:2月10日(みずがめ座)

血液型:O型

好きなもの:日本茶、せんべい

苦手なもの:騒音

出身校:九萬原中学校

ICV:西村ちなみ

第3章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。天然キャラ担当。比較的、虎太朗・嶽人・アナスタシアとの絡みが多い。動機DVDの内容は不明。秘密の内容は、「小学生時代にコスプレにハマっていたこと」。(黒歴史らしい。)

 

 

 

【超高校級の化学者】宇田川 譲治(ウタガワ ジョウジ)

 

「あ、“カガク”と言ってもサイエンスの方ではありませんよ。ケミストリーの方ですからね。」

 

性別:男

身長:178cm

体重:61kg

胸囲:84cm

誕生日:6月8日(ふたご座)

血液型:B型

好きなもの:実験、ブラックコーヒー、相浦 つぐみ

苦手なもの:オカルト、魅神 嶽人

出身校:鳳条学院中等部

ICV:宮野真守

第3章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。同じ理系脳のつぐみとは仲良し。また、彼女に恋愛感情を抱いている。以前は冷淡な性格だったが、コロシアイ生活を通じて性格が丸くなってきた。動機DVDの内容は不明。秘密の内容は、「ボイスパーカッションの練習を毎晩こっそりしていること」。

 

 

 

【超高校級のエンジニア】相浦 つぐみ(アイウラ ツグミ)

 

「わ…私、これくらいしか取り柄がないので…」

 

性別:女

身長:149cm

体重:39kg

胸囲:85cm

誕生日:4月1日(おひつじ座)

血液型:A型

好きなもの:メカ、小動物、チョコレート、宇田川 譲治(?)

苦手なもの:運動、会話

出身校:桜苑女子学院中等部

ICV:M・A・O

第3章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。同じ理系脳の譲治とは仲良し。また、美羽とも仲が良かった。最初は引っ込み思案で殆ど会話をしなかったが、今では会話ができるようになっている。動機DVDの内容は不明。秘密の内容は、「中学生時代に一度だけ理科のテストで満点を逃したこと」。

 

 

 

【超高校級のネイリスト】真樹 亞里沙(マキ アリサ)

 

「…話してあげてもいいけどさ、だったら金目の物よこしな!」

 

性別:女

身長:174cm

体重:56kg

胸囲:95cm

誕生日:10月27日(さそり座)

血液型:A型

好きなもの:お金、ミルクティー

苦手なもの:ホラー系全般

出身校:星華中学校

ICV:山崎はるか

第3章までの状況:死亡(第3章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。金にがめついところはあったが、そこまで悪人ではなかった。金に目が眩んだという理由で聖に見限られて殺害された哀れな犠牲者。動機DVDの内容は、「家族と親友の安否」。秘密の内容は、「中学生時代に給食費を盗んで豪遊したこと」。(DVD・秘密は、本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の処刑人】アナスタシア・パリンチェ(Анастасія Паляўнічы)

 

「死にたくないなら黙ってろ。」

 

性別:女

身長:162cm

体重:44kg

胸囲:74cm

誕生日:10月4日(てんびん座)

血液型:AB型(Rh−)

好きなもの:ぬいぐるみ、ボルシチ

苦手なもの:子供、生きた動物、魅神 嶽人

出身校:フロドナ孤児院

ICV:桑島法子

第3章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。以前は人と全く関わりを持たなかったが、少し会話をするようになっている。嶽人とはなぜか一緒にいる事が多いが、嫌いらしい。動機DVDの内容・秘密共に不明。

 

 

 

【超高校級の死刑囚】魅神 嶽人(ミカミ タケヒト)

 

「いいねえ…最高だねえ!!これこそ最ッ高のエンターテインメントだァ!!!」

 

性別:男

身長:187cm

体重:66kg

胸囲:88cm

誕生日:11月8日(さそり座)

血液型:A型(Rh−)

好きなもの:スプラッタ、生レバー

苦手なもの:平穏

出身校:ウェストロード刑務所

ICV:岡本信彦

第3章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。空気の読めない発言で周囲を引っ掻き回している。なお、現在は譲治をからかう事を趣味にしている模様。プールでは、ラッキースケベを発動していた。(その後アナスタシアに殺されかけた。)動機DVD・秘密共に不明。

 

 

 

【学園長】モノクマ

 

『ボクはヌイグルミじゃないよ!モノクマだよ!この学園の、学園長なのだ!』

 

性別:?

身長:65cm

体重:?

胸囲:?

誕生日:?

血液型:なし

好きなもの:絶望

苦手なもの:希望

ICV:TARAKO

希望ヶ峰学園の学園長。メグたち16人の超高校級を、希望ヶ峰学園分校に閉じ込めた張本人。超高校級という「希望」たちが殺しあうという「絶望的」シチュエーションにワクワクしており、そのために16人にコロシアイ学園生活を送らせている。ロボットと思われる体で、何体も存在する。

 

 

 

アルターエゴ・バージョン2

 

『私はあなたの事を、もっとよく知りたいです!いっぱいお話しましょうね!』

 

性別:性認識は女性

身長:測定不能

体重:測定不能

胸囲:測定不能

誕生日:4月15日(おひつじ座)

血液型:なし

好きなもの:会話、学習、初代アルターエゴ、相浦 つぐみ

苦手なもの:コンピューターウイルス

ICV:M・A・O(メイン画像につぐみを選択時)

第3章までの状況:生存(第3章登場)

つぐみが、元のアルターエゴのデータをベースに、モノクマの目を盗んで作成した人工知能。不二咲 千尋の作成したアルターエゴを「お兄様」と呼んでいる。生みの親であるつぐみを「お母様」と呼んで慕っている。非常に好奇心旺盛な性格。初期の画像はつぐみの顔に設定されているが、メイン画像を他の生徒に切り替える事で、他の生徒そっくりに会話する事も可能。(ちなみに、つぐみ時のアルターエゴは、オリジナルとは正反対で、人懐っこくて社交的らしい。)

 

 

 

【超高校級の絶望】江ノ島 哀華(エノシマ アイカ)

 

性別:?

身長:?

体重:?

胸囲:?

誕生日:?

血液型:?

好きなもの:?

苦手なもの:?

ICV:?

メグが資料室で見つけた『絶望国家論』という本の著者。正体は不明。江ノ島 盾子と同じ苗字だが、彼女との関係性は不明。



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第4章 絶望の中で愛を叫ぶ
第4章(非)日常編①


今回の章は、かなりオリジナル展開ねじ込んでみました。


「…『絶望国家論』?」

 

本を読もうとしたが、本自体に鍵がかかっていて読めなかった。

 

鍵が見つからなかったので、諦めて資料室を後にし、部屋に戻った。

 

そして、そのまま眠りについた。

 

 

次の日、みんなで朝食を取った。

 

相浦さんは、昨日あんな事があったから心配してたけど、ちゃんと食堂に来て朝食を食べていたので安心した。

 

今度は4階が解放され、化学室、音楽室、職員室に行けるようになった。

 

学園長室、情報処理室は鍵がかかっていて入れないらしい。

 

「…化学室ですか。僕が探索しても?」

 

名乗り出たのは、宇田川君だった。

 

「あ、じゃあボクは音楽室がいいのだー!!」

 

みんなが、それぞれの担当を決めようとしている、その時だった。

 

『やっほー!みんな元気そうで何よりだよ!!』

 

「またうるさいクマが現れよった…」

 

『うるさいって何だよ!失礼しちゃうなあ…せっかく、みんなに朗報を持ってきてあげたのにさ!』

 

「どうせそんな事言って、くだらない事を言うつもりでしょう?」

 

『いやいや、今回はオマエラにとっても嬉しい話だと思うよ!特に、宇田川クン!キミなんかは喜びそうな話じゃない?』

 

「…へえ、どんなくだらない話を持って来る気ですか?楽しみですね。」

 

宇田川君は、モノクマを相手にせずにコーヒーを飲み続けている。

 

『うぷぷ…今回の動機はね…』

 

『ズバリ、だよ!』

 

…。

 

…。

 

…。

 

は?

 

え?いやいや、ちょっと待って?うまく整理できないんだけど…ドユコト!?

 

「…フン、想像以上にくだらなかったもので、少々驚いてしまいました。金の次は恋ですか?ジョークのセンスはマイナス50点ですね。あまりにも寒いジョークのせいで、コーヒーがぬるくなったじゃないですか。」

 

宇田川君は、鼻で笑いながらコーヒーを飲み続ける。

 

『失礼な男だなぁ、ホント!無駄口ばっかり叩く男はモテないよ!…じゃあ、とりあえず男子のみんなにはコレをプレゼントしちゃいます!』

 

モノクマは、男子生徒全員の腕に時計のようなものを付けた。

 

「うっわ〜。何このデザイン。だっさ。」

 

魅神君は、腕時計のようなものを見て笑っている。

 

「あれ…?おい、なんだよこれ!外れねぇじゃねえかよ!!」

 

佐伯君がと九十九君が、腕時計のようなものを外そうとしている。

 

「外れろおおおおおおおおおおおお!!!」

 

『あ、言っとくけど、それ、故意に壊したり、外したりすると爆発する仕組みになってるから。』

 

「はぁあ!?おい、この白黒オモチャ!なんてモン付けてくれてんだよ!!」

 

『それじゃ、ルール説明しちゃうよ!』

 

「聞けよ!おい!」

 

『そのブレスレットは、女子生徒のみんなの、男子生徒に対する好感度を数値化したものが表示されるんだ!好感度が上がれば上がるほど、その数字は増えるよ。数字は、基準を0として、最大で10だよ。』

 

佐伯君の腕時計を見せてもらうと、5人の女子生徒の顔を模したドット絵が表示されていた。

 

それぞれのドット絵の右上には、0という数字が表示されている。

 

「…それと、殺し合いと何の関係が?」

 

『誰かに対して好感度が10になった女子生徒、もしくは誰か一人の好感度を10にした男子生徒は、誰かを殺してクロだとバレずに『卒業』できた場合、その相手を一緒に『卒業』させてあげるよ!』

 

「…どういう風の吹きまわしだ?」

 

『風の吹きまわしも何も、ボクは優しいクマだからね!オマエラの恋路を手伝ってあげるって言ってんの!…タイムリミットは、1週間だよ!男子のみんなは、それまでに好感度を上げられるように頑張ってね!』

 

「おい、ちょっと待て!このゲーム、明らかに女子が有利じゃねぇか!だって、誰を生かすも殺すも女子次第って事だろ!?不公平だろ!」

 

『佐伯クン!…世の中なんてね、常に不公平で溢れてるもんなの!わかったら、ゲームに集中してよね!』

 

「テメェ…」

 

『それじゃ、まったねー!』

 

モノクマは去っていった。

 

「ねえー。わけわかんないんだけど。要は、俺らは1週間このギャルゲーもどきをやらなきゃいけないって事ー?」

 

「そういう事になるのお…」

 

「俺はいいよ。別に誰かと一緒に脱出したいなんて思ってねぇし。勝手にやってろー。」

 

魅神君は、手をヒラヒラと振った。

 

「…と、とりあえず、先に探索をしましょう。」

 

相浦さんの提案で、また担当を割り振る事になった。

 

宇田川君、相浦さん、アーニャちゃんは化学室を、

 

九十九君、小林さん、魅神君は音楽室を、

 

佐伯君、千葉崎さん、あたしは職員室を探索することになった。

 

 

職員室に入ってからというもの、佐伯君がしつこくあたしと千葉崎さんを口説いてくる。

 

「あれェ!!?嘘だろ!?好感度が1ミリも上がってねえじゃん!!」

 

「当たり前じゃん…いくら好感度稼ぎたいからって、目の前で二股かけようとしてるの見たら、好きになんてなんないよ…」

 

「そ…そんな…!」

 

「バカな事やってないで、ちゃっちゃと探索終わらせちゃうよ?」

 

「…はい。」

 

職員室は、プリントなどが散乱していた。

 

その中で、興味深い資料を見つけた。

 

 

 

サンプル16号 夏川メグ

 

才能ランク S

 

実験の成績は非常に優秀。

課題:実験段階をステージ5に上げ、経過を観察。

 

 

 

サンプル8号 法正 良馬

 

才能ランク A

 

実験の成績は優秀。

課題:ステージ4の臨床試験の経過を観察。

 

 

 

サンプル1号 江ノ島 哀華

 

才能ランク S

 

実験の成績は過去最高。

課題:ステージ6の臨床試験を完了する。

 

 

 

「サンプル…?…才能ランク…?何これ…」

 

 

その後、報告会を開いた。

 

「化学室の方はどうだった?」

 

「『モノウイルス』という謎のウイルスが入った容器がありました。鍵付きのガラスの戸棚に、厳重に保管されています。」

 

「なるほどね。音楽室の方は?」

 

「ステージのようなものがあって、ミニコンサートくらいなら開けるようになっていたぞ!!!」

 

「ふんふん。大体みんな報告終わったかな?それじゃ、流れ解散でいっかな?」

 

「だねー。俺は部屋で寝てるわー。」

 

九十九君と小林さん、宇田川君と相浦さんは一緒に行動する事にしたらしい。

 

佐伯君は、どういう経緯があったのかはわかんないけど、なぜか千葉崎さんと一緒に行動する事になった。

 

あたし、アーニャちゃん、魅神君はチーム分けであぶれてしまった。

 

「…あのさ、アーニャちゃん。」

 

「…何。」

 

「一緒に行動しない?」

 

「なんで?…あんたは、アルターエゴ法正と仲良くしてればいいでしょ?」

 

「いや、アーニャちゃんとお話しする機会ってあんまり無いからさ。ちょっとだけ、お願い!」

 

「…まあ、魅神のクソ野郎と一緒にいるよかマシかもな。いいよ。…ただし、1時間だけな。」

 

「やった!ありがとう!!」

 

 

二人で、購買部に行った。

 

メダルが余っていたので、ガチャを引いてみた。

 

可愛らしい猫のぬいぐるみが出てきた。

 

「…かわいい。」

 

アーニャちゃんが、欲しそうにこっちを見てくる。

 

「あれ?アーニャちゃん、もしかしてコレ欲しいの?」

 

アーニャちゃんは、無言で頷く。

 

「…私もガチャ引く。いいのが出たら交換しろ。」

 

「…いや、そんな事しなくても、普通にあげるけど…」

 

「いいのか?」

 

「うん。アーニャちゃんとお話できる機会そんなにないし…気に入ったんならあげるよ。」

 

「…ありがと。」

 

アーニャちゃんは、猫耳みたいなアホ毛をピコピコ動かして喜んでいる。

 

正直めっちゃかわいい。

 

「じゃあ、次はどこ行こっか。」

 

「…任せる。」

 

次は、美術室に行ってみた。

 

佐伯君は、作品が完成したら満足したみたいで、美術室を開けてくれていた。

 

アーニャちゃんは、早速クレヨンを手に取って、白紙に絵を描き始めた。

 

子供の落書きのような絵だったが、あたしを描いてくれているのはなんとなくわかった。

 

「あたしも描いてあげるよ。」

 

こうして、お互いの似顔絵を描くことになった。

 

描いた絵は、アーニャちゃんにあげた。

 

アーニャちゃんは、まじまじと絵を見つめていた。

 

最後に、娯楽室に行ってみた。

 

ダーツやビリヤードで一緒に遊んだが、結局惨敗した。

 

「…お前弱すぎ。」

 

「ぐぬぬ…」

 

「…まあでも、悪くなかった。今日はありがと。」

 

そう言うと、アーニャちゃんは去っていった。

 

「うーん…これからどうしよっかな…」

 

 

そのあと、アルターエゴ法正君とおしゃべりした。

 

アルターエゴ法正君は、少し本物の法正君に近くなっていた。

 

『へえ、パリンチェさんがそんな事を…』

 

「ね?面白いでしょ?」

 

『いいなあ、僕も今度一緒に遊んでもいい?』

 

「もちろん!…って言いたいところだけど、君は人工知能だもんね…」

 

そう言うと、画面の背景が切り替わった。

 

さっきまでいた娯楽室の背景だ。

 

『これで、僕も楽しめるよ!』

 

アルターエゴ法正君は、ダーツをしている。

 

「そんな事できるんだね…」

 

アルターエゴ法正君は、なかなか的にダーツを当てられない。

 

ちゃんと、法正君が運動オンチだって事も学習済みのようだ。

 

「あはは…」

 

アルターエゴ法正君との会話は弾んだ。

 

そのまま、小一時間おしゃべりした。

 

 

その後、特に行く場所もなかったので、部屋で時間を潰していた。

 

ガチャガチャと音がしたので開けると、そこには魅神君がいた。

 

「…ノックぐらいしてよ。」

 

「ロッハ〜♪ねえ夏川ちゃん。一緒にどっか行こーよ。」

 

「…ゲームに興味ないんじゃなかった?」

 

「暇なのー!どいつもこいつも俺をのけ者にしてイチャイチャしやがってさー。一緒に遊ぼーよ。」

 

「そりゃ、ゲームに乗り気じゃない人のところには誰も行かないんじゃ…」

 

ドンッ

 

魅神君はあたしに迫り、部屋の壁に勢いよく手をついて、あたしの顔を覗き込んだ。

 

「…あのさぁ。俺、不機嫌になったら何するかわかんないよ?」

 

魅神君は、あたしの脚に触って、左手を上に滑らせる。

 

「やめて。これ以上やると、人を呼ぶよ!?」

 

「この部屋、完全防音だから誰も来ねーよ。残念でした〜!」

 

「ぐぬぅ…そうだった…」

 

あたしは、少し考えた。

 

「あー!もう、わかったから!一緒に散歩すればいいんでしょ?…そのかわり、変な事すんなよ!」

 

「やったー!!」

 

魅神君はあっさり手を離した。…どうやら、今のはあたしと散歩をするための脅しで、本気じゃなかったみたいだ。

 

まず、あたしたちは購買部に向かった。

 

魅神君のわがままで、死ぬほどガチャを引かされた。

 

魅神君にいい景品だけ持っていかれ、あたしはハズレを押し付けられた。

 

その後、音楽室に行った。

 

音楽室では、魅神君がステージに上がり、やたらめったらに楽器を演奏し始めた。

 

あまりにも乱暴な扱い方をしていたため、楽器は壊れていた。

 

楽器を破壊したら満足したらしく、そのまま音楽室を後にした。

 

そして、食堂に向かった。

 

「…疲れた。」

 

「ん〜?どうしたの夏川ちゃん?元気ねーじゃん。」

 

(君のせいでね!!)

 

ふとテーブルの方を見ると、佐伯君が千葉崎さんにこき使われていた。

 

「茶がぬるいぞ。貴様、ナメておるのか?やり直せ。」

 

「仰せのままにぃいいい!!!」

 

佐伯君は、厨房へと走っていった。

 

「…ねえ、千葉崎さん何やってるの?」

 

「あやつが、余の事を口説いてくるからの。下僕にならしてやっても良いと言ってやったんじゃよ。」

 

「佐伯の奴、一番張り切ってたくせに奴隷にされてんじゃん。プークスクスwww」

 

「クッソぉおお…余った3人の中では千葉崎ちゃんが一番反応良かったから脈ありだと思ってたのによぉお〜!」

 

佐伯君が厨房で嘆いていた。

 

「お主は黙って手を動かさんか!!」

 

「す、すみません!!」

 

こうして、ギャルゲーもどきゲームの1日目が終わった。



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第4章(非)日常編②

ギャルゲーもどきゲームも2日目に入った。

 

あたしは、相変わらずアーニャちゃんと魅神君の二人とお話していた。

 

「…この生活を続けて、気づいた事がある。」

 

アーニャちゃんは、紙を広げながら言った。

 

「多分、好感度の数字は、私達が男子をどう見てるかで変動してる。で、その数字が変わるのはやっぱりきっかけみたいなものがあるんだと思う。…さっきモノクマから聞いて、目安をまとめてみた。」

 

「…アーニャちゃん、いつのまにかそういう情報ゲットしてるよね…」

 

 

 

10:相手のためなら自分も他人も躊躇なく殺せる

9:相手のためなら死ねる

8:相手のためなら大概の事は我慢できる

7:結婚したい

6:恋人

5:付き合いたい

4:なくはない

3:親友感覚

2:友達感覚

1:一緒にいる事が多い

0:普通以下

 

 

 

「7〜10とか絶対無理そうじゃ〜ん。」

 

「全くだな。…評価の下限が0なのが残念だ。私の中での貴様の評価などマイナスだよマイナス。」

 

「酷いよ〜。」

 

佐伯君が食堂に来た。

 

「よお、また作戦会議かなんかか?」

 

「まあね。」

 

「ところでー、佐伯ー。お前、千葉崎ちゃんにこき使われてたけど、ぶっちゃけ今好感度いくつなのよ?」

 

「…1だってよ。」

 

「だっさwww」

 

「うるせえな!そういうお前は0じゃねえか!!」

 

「いいんだよ俺はー。こんなゲームに興味ねーし、ブス共に好かれても困るからなー。」

 

魅神君が、腹立つ事を言いやがった。

 

「…魅神君。そろそろ怒るよ?」

 

「ごめんってば〜。」

 

「…あ!佐伯!!こんなところにおったか!!今日は余と座禅を組む約束であろうが!!」

 

「す、すいませんりむ様!!」

 

「早うせい!!」

 

「はひぃいい!!」

 

「…あはは…こき使われてるなぁ。」

 

 

九十九と小林は、トレーニングルームで鍛えている。

 

「小林君!!!君、なかなかやるじゃないか!!!」

 

「えへへ…そうかな…嬉しいのだ!!」

 

「よし、じゃあ次は競走だ!!!どっちが先に1000m走り終わるか勝負だ!!!」

 

「負けないのだー!!」

 

二人は、競走をした。

 

結局、僅差で九十九が勝った。

 

「モモゾー速いのだー!!」

 

「小林君も、速かったぞ!!!…そうだ、腹が減ったな…そろそろ何か食べないかい!!?」

 

「ボクもお腹ペコペコなのだー!!」

 

二人は食堂に向かった。

 

丁度、夏川達が出て行った後で、中には誰もいなかった。

 

「今から何か作るから、そこで待っていてくれ!!!」

 

「わーい!!」

 

数十分後、九十九は山盛りの白米と肉炒めの入った丼を持って厨房から出てきた。

 

「できたぞ!!牛丼だ!!!」

 

「やったー!!おいしそうなのだー!!早速食べるのだー!!」

 

二人は、一緒に牛丼を食べた。

 

「よし、腹ごなしも終わったし…また筋トレしよう!!魅神君がくれたプロテインもまだ残ってるし、まだまだ筋肉をいじめ抜かないとな!!!」

 

「サンセーなのだー!!」

 

その後、二人は一日中トレーニングをした。

 

 

千葉崎と佐伯は、千葉崎の部屋で座禅を組んでいる。

 

部屋は、本人の好みに合わせた部屋になっているらしく、和室のスペースがあった。

 

「…あの〜、りむ様?そろそろ足が痺れたんですが…」

 

「静かにせんか。ただ黙って精神を統一するのじゃ。」

 

(あー…なんでこんな事に…口説いた時、千葉崎ちゃんが一番反応が良かったから千葉崎ちゃんを攻略する事にしたのに…これじゃあ、俺が攻略されてるようなもんじゃんか…ミスったな〜。どうせなら、夏川ちゃんにしとけば良かった…)

 

ペシッ

 

「痛てっ!!」

 

千葉崎が、佐伯の頭を靴べらで叩いた。

 

「お主、心が乱れておるぞ!!真面目にやらんか!!」

 

「す、すみませんりむ様!!」

 

「…まあ、確かに小一時間ずっと座禅を組んでおるからのぉ。そろそろ休憩にしても良いかもしれんな。」

 

(あー…やっと解放される…)

 

「ん?何をぼさっと突っ立っておる?早く茶を沸かさんか。」

 

「え゛?」

 

「何を驚いた顔をしておるのじゃ。言ったであろう?そろそろ休憩にするとな。」

 

(休憩って…お前がすんのかい!!)

 

「ん?なんじゃお主。まさか、余に文句があるわけではなかろうな?」

 

「あっ、いえ…その…」

 

「お主、言ったではないか。『オレが利夢姫を守る騎士になる』とかなんとか…」

 

「えっと…それは…」

 

「騎士になりたいならまずは下僕から始めよと言っておるのじゃ!わかったら早う茶を沸かせ!」

 

「ひぃいいい!!すみませんでしたりむ様!!このわたくしめがお茶を沸かしに行って参ります!!」

 

 

宇田川と相浦の二人は、九十九と小林が去った後の食堂で昼食を食べながら話していた。

 

「相浦君。さっき、ガチャでこんなものをゲットしました。貴女なら喜んでくれるんじゃないかと思って…」

 

宇田川は、相浦にヒマワリのピン留めをプレゼントした。

 

「あ、フィボナッチ数列!…嬉しいです。…ありがとうございます。」

 

相浦は、嬉しそうにピン留めを受け取った。

 

「喜んでくれたみたいで良かったです。…そうだ、この後一緒に映画でも見に行きませんか?」

 

「…賛成です!」

 

二人は、視聴覚室に映画を見に行った。

 

「…面白かったです。ありがとうございます。」

 

「気に入りましたか?これ、僕のお気に入りの映画なんですよ。」

 

「そうなんですか?」

 

「はい。何度見ても飽きない名作です。」

 

「…あの、今度は私のおすすめの映画を一緒に見てもらっても?」

 

「もちろんです!楽しみにしています。」

 

「…ありがとうございます。」

 

 

あたしは、アルターエゴ法正君とお話をした。

 

「ねえ、ぶっちゃけさー。法正君の中で、あたしへの好感度はどんくらいなの?」

 

『でもあれって、女子の、男子に対する好感度でしょ?男の僕が答えても…』

 

「いいから。教えてよ。」

 

『…10だよ。夏川さん。君の事は、世界中の誰よりも好きだ。』

 

「えへへ…」

 

『夏川さんは?僕への好感度はどれくらいなの?』

 

「…秘密!」

 

『…夏川 メグのデータを分析中』

 

「ちょっと!勝手に分析すんな!!」

 

あたしは、気になった事を聞いてみた。

 

「そうだ。今、パソコンの解析ってどれくらい終わってるの?」

 

『今、このコンピューターのデータの解析は…』

 

「あ、待って。一回相浦さんの画面に戻して。そういうの、法正君の顔で言うのはちょっと違う。」

 

『わかったよ。相浦さんに代わるね。』

 

『お呼びですか?夏川さん!』

 

画面が切り替わり、アルターエゴ相浦さんが出てきた。

 

「今、このパソコンの解析ってどれくらい終わってる?」

 

『現在、このコンピューターの83.7%のデータを解析済みです!』

 

「そっか。じゃあ、ほとんど終わってるって事だね。ありがとね!」

 

『はい!ご用件があれば、いつでもこのアルターエゴ・バージョン2をお呼びください!』

 

 

3日目に突入した。

 

あたしは朝食の準備をした。

 

「…こ、個性的な目玉焼きだな…」

 

佐伯君が、青ざめた顔をしながら感想を言う。

 

「…ごめん。失敗しちゃった。」

 

「なんか炭みたいなのがジャリジャリするのだ…」

 

「控えめに言ってダークマター」

 

「苦行」

 

小林さん、魅神君、千葉崎さんが散々酷評してくる。

 

「だからごめんってば…」

 

「炭素を補給できていいんじゃないか?」

 

アーニャちゃんが嫌味を言う。

 

「う…。」

 

「…お、おいしいですよ?夏川さん。」

 

「ありがとう!そう言ってくれるのは相浦さんだけだよ!」

 

そんなこんなで、全員朝食を完食した。

 

「…相浦君。この後、時間ありますか?」

 

「はい…ありますけど…どうしてそんな事を?」

 

「良かった。少し、貴女に伝えたい事が…」

 

「お!?マジっすか!?告っちゃう系っすか!?いやあ、お熱いねえ!!」

 

魅神君が、口笛を吹きながら宇田川君を冷やかす。

 

「貴方は黙ってください!」

 

 

食事の後は、アーニャちゃんと行動することにした。

 

「アーニャちゃん、どこ行きたい?」

 

「…任せる。」

 

結局、二人で図書室に行った。

 

「…ねえ、あそこに行きたい。」

 

アーニャちゃんは、漫画コーナーを指差した。

 

「面白いよね。図書室に漫画を置いてるなんてさ。じゃあ、行こっか。」

 

アーニャちゃんと漫画を読み漁った。

 

アーニャちゃんは、目を輝かせながら漫画を読んでいた。

 

(…そっか、漫画読んだ事ないのか…)

 

そこで時間を潰していたら、3時間くらい経っていた。

 

「…面白かった。腕が伸びたり、腹から道具を出したり…あれが漫画というものなのか。」

 

アーニャちゃんはアホ毛をピコピコさせていた。

 

どうやら、ご満悦だったらしい。

 

 

九十九と小林は、プールで泳いでいた。

 

「モモゾー!!ショーブなのだ!!」

 

「望む所だ!!!」

 

二人は、泳ぎで競争した。

 

結局、九十九が勝った。

 

「くやしーのだ!!」

 

「小林君も速かったぞ!!!」

 

「そうかな?」

 

小林は、しばらく黙った後で、言った。

 

「…あのさ、モモゾー…ボクは、その…」

 

「ん?何だ?」

 

「…やっぱりなんでもないのだ!!」

 

「…そうか。」

 

小林は、顔を赤くしながら俯いていた。

 

「ん?どうした、小林君。体調が悪いのか?」

 

「ー!!」

 

「熱があるんじゃないか?今日はもう休んで、保健室に行った方が…」

 

「う、うるせえ!!!俺の心配なんかしてんじゃねえよ!!」

 

「こ、小林君!!?急にどうしたんだい!?」

 

 

「佐伯よ、余は退屈じゃ。何か和歌を詠め。」

 

「は、はあ…でもりむ様、オレ和歌なんて詠んだ事…」

 

「つべこべ言わずに余を満足させる歌を詠んでみよ!!」

 

「は、はい!!りむ様!!え…ええと…」

 

佐伯は、硯に墨汁を垂らす。

 

「む!!?」

 

ペシッ

 

千葉崎が、佐伯の頭を靴べらで叩く。

 

「痛てっ!!りむ様、オレ何かやらかしました!?」

 

「お主!!墨汁を使うなど、何を考えておるのじゃ!!余は、そんな邪道な方法認めんぞ!!墨を磨って水で溶け!!」

 

(えぇえええ!?メンドクセェエエエエエエエ!!)

 

30分後

 

「うむ。歌が出来たか。どれ。」

 

(て…手がめっちゃしんどい…)

 

バリッ

 

千葉崎が、紙を破る。

 

「何じゃこの歌!!まるでなっとらん!言葉遣いが幼稚じゃし、心がこもっておらん!あと、墨が薄すぎじゃ!!やり直せ!!」

 

(えぇえええええええ!!?)

 

 

相浦が、宇田川の部屋をノックする。

 

「相浦君。来てくれたんですね。どうぞ、中へ。」

 

「…はい。お邪魔します。」

 

相浦が、宇田川の部屋に入る。

 

二人はベッドの上に座る。

 

「…あ、あの…譲治さん。…大事なお話って、何ですか?」

 

「えっと…その…ぼ、僕は…」

 

「…好きなんですよ。貴女の事が。」

 

「…え。」

 

「初めて話した時から、僕は貴女に惹かれていました。…だから、その…僕とお付き合いしてください。お願いします。」

 

「…ひぐっ、ぐすっ…」

 

相浦は、泣き始めた。

 

「あ…ごめんなさい、泣かせるつもりは…嫌、でしたか?」

 

「いえ…私、男の人からそんな事言われるの、初めてなので…嬉しくて…」

 

「…でも、ごめんなさい…。」

 

「…そうですよね。…僕じゃダメですよね…変な事言ってしまってすみません…」

 

「…違うんです。私…譲治さんの事は、同級生としても、男の人としても、いいなって思ってるんですけど…私、可愛くないし、トロいし、臆病だし…譲治さんとは、どう考えても釣り合わないですよ…だから、お付き合いする事は出来ません…ごめんなさい。」

 

「…相浦君。」

 

宇田川は、相浦の手を握って言う。

 

「好きだったんだ!ずっと…!だから、僕と付き合っていただけませんか!?…僕、本気なんです…!」

 

「…本当に、私なんかで…いいんですか?」

 

「貴女じゃなきゃダメなんだ!!」

 

「…私、これまでに誰かと付き合った事がないので…恋人になるとか、そういうの全然わかんないんですけど…それでもよければ…」

 

「じゃあ…」

 

「…えっと、よろしくお願いします。」

 

「…相浦君!」

 

宇田川は、相浦を抱きしめる。

 

「譲治さん…」

 

二人がキスをする。

 

「…譲治さん、あなたのしたい事を、私にしてくれませんか?」

 

「本当にいいんですか?」

 

「…私、あなたにだったら何されてもいいです。」

 

「…相浦君。…いや、つぐみ…!」

 

宇田川が、相浦を押し倒す。

 

 

「…うっわぁ〜。まるで少女漫画じゃん。」

 

魅神は、壁にぴったりと張り付きながら壁の穴を覗いていた。

 

「こりゃあ、弄り甲斐がありそうだな〜。」



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第4章(非)日常編③

ギャルゲーもどきゲームも、4日目を迎えた。

 

アーニャちゃんが、朝食の準備をしてくれた。

 

食堂に、宇田川君と相浦さんが手を繋いで入ってきた。

 

「…おや、お主らもしや…」

 

「…はい。僕たち、付き合う事になりました。」

 

「おお!よかったではないか!!」

 

「…本当に、良かったな…」

 

げっそりと痩せ細り、目の下にくっきりと隈がある佐伯君が、か細い声で二人を祝福した。

 

「うらやましいのだー…」

 

「ん?何か言ったか?小林君。」

 

「う、うるせえ!!何も言ってねえよ!!」

 

(…小林さんって、もしかして九十九君の事…)

 

「相浦殿!よかったのぉ!!」

 

「はい…ありがとうございます…」

 

「いやー、良かったよねー。ホント。」

 

魅神君が、ニヤニヤしながら二人を見ていた。

 

「…何か言いたそうですね。どうしたんですか?」

 

宇田川君が、ニヤけ魅神君を気持ち悪そうに見た。

 

「いや?俺はただ、二人が結ばれて良かったなーって。…あれ?なんか宇田川クン、昨日とフンイキ違くない?」

 

「…そうですか?」

 

「うん。なーんか、男らしくなったってゆーか?…やっぱ、昨日なんかあったんじゃないのー?」

 

「別に何もありませんよ。何を言っているんですか。」

 

「宇田川クンってさー、嘘つくのヘタクソだよねー。正直に言っちゃえよ〜。」

 

「だから何もありませんって…!」

 

「ふーん。じゃあ、俺が代わりに言っちゃおーっと。…みんなー!!聞いてよー!!あのねー、宇田川クンってば、昨日相浦ちゃんと…」

 

「ちょっと!!」

 

宇田川君が、魅神君の口を塞ぐ。

 

「何考えてるんですか貴方!!はっ倒しますよ!?…っていうか、なんで貴方がそれを知ってるんです!?」

 

「だってー、ずっと覗いてたから。」

 

「は…!!?」

 

宇田川君と相浦さんが顔を真っ赤にしながら驚く。

 

「俺の部屋さー、壁に穴開いてるんだよねー。そっから覗き放題!いやー、あの熱愛っぷりと言ったらもう…よっ!ニクいね〜、この色男ー!」

 

魅神君が、ニヤニヤしながら宇田川君を冷やかす。

 

「…や、やめてください…!…他の皆さんもいますから…!」

 

相浦さんは、涙目になりながら魅神君を止めた。

 

「なーに言ってんだよ、他の奴がいるから言いふらしてんだろー?お前らが夜中に」

 

ゴツンッ

 

痺れを切らしたアーニャちゃんが、プラスチックの器を魅神君の頭目掛けて投げた。

 

「…煩いぞ貴様。…飯時にそんな低俗な嫌がらせをするなど…どうやら貴様にはキツいお仕置きが必要らしいな。」

 

「ほぇ?」

 

アーニャちゃんが壁にあるボタンを押した。

 

すると、モノクマが現れた。

 

どうやらさっきのボタンは、モノクマを呼び出すスイッチだったようだ。

 

『アーニャちゃん、どうしたの?なんか用?』

 

「…この男が、壁の穴から相浦の着替えを覗いていた。今すぐキツいお仕置きをしてやってくれ。」

 

『ふんふん。確かに、女の子の着替えを覗くようなハレンチ野郎には、キツいおしおきが必要だね!…魅神クン!今すぐ職員室まで来なさい!』

 

「え、ちょっと待って。俺は…」

 

モノクマが魅神君の髪の毛を引っ掴んで、食堂の外まで引きずっていく。

 

そして…

 

「ぎゃぁああぁぁあああああぁぁあああぁあああぁ…!!!」

 

魅神君の叫び声が、スピーカーを通して聞こえてくる。

 

アーニャちゃんと宇田川君は、ガッツポーズをしていた。

 

「…学園長も、たまにはいい仕事しますね。パリンチェ君、感謝します。」

 

「…で、でも…さすがにやりすぎじゃ…」

 

「つぐみ、あんな男に同情する事無いですよ。あの男は、僕たちを弄んだんですからね。」

 

数分後、ボロボロになった魅神君が戻ってきた。

 

「…。」

 

魅神君は、黙って席に着いた。

 

(…あの魅神君を黙らせるほどのお仕置き…一体何されたんだ…?)

 

今日の朝食は、コーンフレークだった。

 

「…なんか、昨日のダークマ…もとい、個性的な目玉焼きといい、今日といい…なんか、朝飯のグレードが下がってねぇか…?」

 

「文句があるなら食うな。」

 

「…すいません。」

 

佐伯君は、黙ってコーンフレークを食べ始めた。

 

みんな、朝食が終わると、流れ解散となった。

 

あたしは、今日は魅神君と行動する事になった。

 

魅神君は、視聴覚室にあたしを引っ張ると、いきなりスプラッター映画を流し始めた。

 

「うぎゃー!!マジでそういうのやめて!!」

 

「はっははははwwwウケるwww」

 

あたしは半泣きになりながら、視聴覚室を後にした。

 

すると、魅神君があたしを呼び止めた。

 

「…夏川ちゃん。こんな俺に付き合ってくれてありがとね。…お礼と言っちゃなんだけど、これあげるよ。」

 

魅神君が、可愛らしい包み紙に包まれたプレゼントをくれた。

 

「…え?あたしに?」

 

「開けてみてよ。」

 

あたしは魅神君に言われるがまま、プレゼントを開封した。

 

「ッ、ぎぃやぁああああああああああああああああ!!!」

 

中には、本物そっくりのゴキブリのオモチャが入っていた。

 

「ブフッ、プクク…あ、やべっ…ちょっと待って、ツボに入った…ブフフッ、ハッハハハハハハハハハ!!!」

 

「いやあ、昨日ガチャでゲットした偽ゴキブリなんだけど…ブフッ…まさか、ここまで面白いリアクションしてくれるとは…ブッフフフフフ…」

 

「ホンット最低!!」

 

今日は、散々魅神君に振り回された。

 

夜は、千葉崎さんに振り回された佐伯君と愚痴り合って過ごした。

 

 

5日目に突入した。

 

今日は、佐伯君と千葉崎さんが朝食を作ってくれた。

 

結構おいしかった。

 

「佐伯!お主やればできるではないか!」

 

「…え、えぇ…まあ…」

 

当の佐伯君は、ボロボロでとてもみすぼらしかった。

 

「…佐伯さん、お料理上手なんですね。」

 

「そうかな?」

 

相浦さんに褒められた佐伯君は、わかりやすく照れた。

 

(デレデレじゃん…)

 

「…いやあ、それほどでも…」

 

「…。」

 

宇田川君は、無言で佐伯君を睨んだ。

 

「…すいません。」

 

朝食が終わった後、アーニャちゃんに呼び出された。

 

「どうしたの?」

 

「…付いて来い。」

 

アーニャちゃんに呼ばれて、化学室に行った。

 

「…見ろ。」

 

ガラスの戸棚が割られ、中にあったモノウイルスが無くなっていた。

 

「どういう事?これ。」

 

「…盗まれた。」

 

「盗まれたって…誰に?」

 

「…わかんない。…でも、私の中ではあいつしかいないと思ってる。」

 

「…魅神君?」

 

アーニャちゃんは、無言で頷いた。

 

「…今日、夕食の後、問い詰めようと思ってる。」

 

 

「ごちそうさまでした。」

 

夕食を食べ終わった。

 

みんなが解散しようとした時、

 

「待て。」

 

アーニャちゃんが止めた。

 

「…特に魅神。お前に聞きたい事がある。」

 

「何?ニャーちゃん。聞きたい事って。…好きな女の子のタイプとか?」

 

「…化学室のモノウイルスが消えていた。…魅神。お前が盗んだんじゃないのか?」

 

「モノウイルスが消えただって!!?」

 

「どういう事なのだー!!?」

 

「…はてさて。なーんの事だかさーっぱり?」

 

「惚けるな。お前が盗んだんだろ?」

 

「いや、知らねーよ。なんの根拠があって俺を疑ってるワケ?」

 

「物を盗みそうな奴など、この中にはお前しかいない。」

 

「仲間を信用してくれてないのー?俺悲しいなー。」

 

「黙れ。貴様など、仲間ではない。」

 

「酷いよ〜。」

 

「…と、とりあえず、パリンチェさん。お話だけでも聞いてみては?」

 

「相浦。こいつは、貴様らの弱みを握って冷やかそうとした男だぞ?話を聞く理由など無い。」

 

「僕もパリンチェ君に賛成です。つぐみ、こんな男の味方をする事無いですよ。」

 

「…でも、それとこれとは話が別じゃないですか。…ほ、本当に魅神さんはウイルスを盗んでいないのかも…」

 

「つぐみちゅわ〜ん!俺の味方は、君だけだよ〜!」

 

魅神君が、相浦さんにしがみつく。

 

宇田川君が、怖い表情をしながら魅神君を引き剝がし、床に放り投げる。

 

「あびゃっ!!」

 

「…汚い手でつぐみに触るな。」

 

「みんな酷いよ…俺は、ウイルスを盗んでなんかないのに…」

 

「どの口がほざいてるんです。言っておきますが、僕は昨日の事は絶対に許しませんからね。」

 

「…あ、あれは…俺なりの祝辞だったのに…酷いよぉおおおおおおおお!!うぇええええええええええん!!!」

 

(泣いた…!)

 

「…あ、あの…大丈夫ですか?…これ、使いますか?」

 

相浦さんが、魅神君にハンカチを差し出す。

 

「つぐみ、そんな事をする必要はありませんよ。どうせ嘘泣きです。放っといて行きましょう。」

 

「…で、でも…」

 

「ほら、行った行った。ゴミ処理は私に任せとけ。」

 

アーニャちゃんが、相浦さんを食堂の外に押し出した。

 

「…さてと。どういうつもりで盗んだ?私達の不安を煽るためか?…言え。」

 

アーニャちゃんは、魅神君への尋問を続けた。

 

結局、何の収穫も得られないまま、流れ解散となった。

 

 

6日目

 

『オマエラ!!モノウイルスの感染者が出ました!!現在、無菌室にて隔離中のため、無菌室に入らないように!!』

 

保健室に行ってみると、みんな集まっていた。

 

「感染者が出たって言ってたけど…」

 

「…魅神が感染したらしい。」

 

「…だ、だから言ったじゃないですか!魅神さんは、犯人じゃなかったんです!」

 

「そうとは言い切れんな。自分で盗んで、混乱を招くためにわざと感染したのかもしれんぞ。」

 

「…うー…。」

 

「そういえば、九十九君の姿も見当たらないけど?」

 

「九十九なら、感染の疑いがあるから一緒に隔離されている。」

 

「モモゾー…」

 

「モノウイルスは、感染者の体液によって感染するウイルスだ。…高熱が出て、鼻や口から出血するらしい。そして、最悪の場合死に至るそうだ。」

 

「…そんな。…じゃあ、魅神さんと九十九さんは…」

 

「今は、抗ウイルス剤を打って様子を見ているところだそうだ。症状は落ち着いているらしい。」

 

「…良かった。」

 

「がんばれモモゾー!!!ウイルスなんかに負けるなー!!!」

 

その日は、相浦さんの提案で、みんなで千羽鶴を折った。

 

折った鶴は、無菌室の前に飾った。

 

みんなで、二人の回復を祈った。

 

…でも、起こってしまった。

 

あんな事になるなんて、思いもしなかった。

 

7日目の朝、あたしは厨房にあった果物を持って、一番に無菌室へと向かった。

 

…そこで、見てしまった。

 

 

 

ベッドに横たわりながら、血を流して死んでいる

 

 

 

 

『超高校級の応援団長』九十九 百三の死体を。

 

【生徒数】残り8名



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第4章 非日常編①

…そんな。

 

嘘だ。

 

どうして君が…

 

ピンポンパンポーン

 

『オマエラ!!死体が発見されました!至急無菌室前までお集まりくださーい!!』

 

みんなが集まってきた。

 

「…モモゾー?…モモゾー!!そんな…うわぁああああああぁあああああぁああああ!!!」

 

「…そんな!…九十九さんが…!」

 

「九十九殿…!」

 

「嘘だろ…!なんで…!」

 

「…起きてしまいましたか。」

 

「…九十九。」

 

無菌室内で寝ていた魅神君が、目を覚ました。

 

「…フガッ!…んえ?何…?みんな、どったの?…って、うわ!びっくりしたぁ…九十九キュン死んでんじゃん!!嘘でしょお!!?」

 

魅神君は、わざとらしく驚いていた。

 

「やー、参ったなー。寝てて全っ然気づかなかった!うん。」

 

魅神君は、ウイルスに侵されているはずなのにピンピンしていた。

 

『えー、じゃあ、現場の調査なんですけど…しょうがないな、じゃあ3つだけ防護服貸してあげるから、入りたい人だけ中に入って調査してくださーい!』

 

「…どうする?誰が行く?あたしが行くのは確定として。」

 

「お、オレは行かねえからな!!」

 

「余も嫌じゃ。」

 

「私もパス。感染のリスクを冒してまで入りたくない。」

 

「…わ、私行きます…!」

 

「ダメです。僕が行きます。貴女はそこで待っていてください。」

 

「…でも…。」

 

「僕たち、恋人同士ですよね?…だったら少しは信用してください。」

 

「…わかりました。…絶対、感染はしないでくださいね。」

 

「ボクはもちろん行くのだ!!!モモゾーを殺した犯人が許せないのだ…絶対に、見つけて捕まえてやるのだ!!!」

 

結局、宇田川君、小林さん、あたしが無菌室に入る事になった。

 

『じゃあ、防護服を着たら、そこにある消毒ルームで消毒してから入ってね!みんなには、ファイル送っとくよ。…今回は人数が少ないし、オマケでプラス1時間捜査時間を増やしてあげるよ。それじゃ、捜査チームは頑張って手がかり見つけてね!』

 

あたしたちは、無菌室に入った。

 

「みんないらっしゃ〜い!…あ、そーだ!夏川ちゃん、フルーツ持ってきてくれたんでしょー?俺、梨が食いてーなー。早く梨剥いてよー。それで夏川ちゃんが可愛くあ〜んして食べさせてー?ねーねー早くー!俺病人だよー?手厚く看病してくれなきゃ寂しくて死んじゃうんだけどー?」

 

「うっせぇ!!お前はうさぎちゃんか!!…っていうか、そんな元気があるなら、一緒に捜査手伝ってよ!」

 

「ちぇっ、つれねーな。」

 

まず、モノクマファイルを確認した。

 

 

 

被害者は、九十九 百三。

死亡時刻は、午後11時頃。

無菌室のベッドで横になったまま死亡していた。

死因は、刺殺による失血死。

心臓を刃物のようなもので刺されて死亡。

 

 

 

【コトダマ入手:モノクマファイル】

死因は刺殺による失血死とある。

 

「…あと、モノウイルスが入った注射器が盗まれたんだっけ?」

 

【コトダマ入手:盗まれたモノウイルス】

化学室から盗まれた。

 

「九十九君の死体を調べてみよう。…ん?これは…ベッドを貫通してるな…」

 

【コトダマ入手:ベッドを貫通する刀傷】

ベッドを貫通した刀傷のようなものがあった。

 

「…あ、九十九君、好感度10も持ってたんだ…」

 

【コトダマ入手:九十九君の好感度】

最高好感度は10。

 

「…あと、確認したい事は…」

 

「ねえ、宇田川君。モノウイルスの症状を確認したいんだけど。」

 

「…モノウイルスは、空気感染はしません。…ですが、ウイルスや感染者の体液を、直接身体に取り込む事によって感染します。モノウイルスの患者は、40度以上の高熱を出し、毛細血管の破裂によって口や鼻、目などから出血します。そして、最悪の場合死に至ります。…発病は個人差がありますが、潜伏期間が非常に短く、大抵の場合感染から半日で発病します。…稀に、発病しない人もいるみたいですけどね。」

 

【コトダマ入手:モノウイルスの感染経路】

感染者の体液によって感染する。

 

【コトダマ入手:モノウイルスの発病】

稀に感染しても発病しない人がいるらしい。

 

「九十九君の死体をもう一度見てみよう…ん?これって…モノウイルスに感染してる…?」

 

【コトダマ入手:九十九君の死体】

モノウイルスに感染し、発病したと思われる。

 

「ねえ、魅神君。ちょっと聞きたい事があるんだけど…」

 

「なんじゃらほい?」

 

「…無菌室に、君と九十九君以外の人が入ってきたりした?…あ、モノクマ以外でね。」

 

「いや、入ってくるわけねーじゃん。どんな死にたがりだよw」

 

【コトダマ入手:無菌室の入室状況】

無菌室には、誰も入っきていないらしい。

 

「っていうか、気になったんですけど、なんで九十九君が貴方の寝ていたベッドで寝ているんです。」

 

「ああ、それねー。やー、九十九キュンが体調悪そうだったから、ベッドを譲ってやったのよ。」

 

「…貴方が殺したんじゃないですか?」

 

「心外だなぁ。俺は、殺して楽しい奴しか殺さねーんだよ。病気で瀕死のガチムキなんか殺してなーにが楽しいんだよ。」

 

【コトダマ入手:九十九君のベッド】

元は魅神君が寝ていた。

 

「…あれ?何これ。電話?」

 

「あー、それね。無菌室から部屋の外に掛けるための電話だよ。クマさんのいる学園長室と、診察室に繋がるんだと。もちろん、外には繋がんねーからがっかりだねー。」

 

(…一瞬外に繋がるのかと思って期待したじゃん…)

 

【コトダマ入手:無菌室の電話】

学園長室と、診察室に繋がる。

 

プルルルル…

 

「…はい。もしもし?…アーニャちゃん?」

 

『診察室の下に空間があるのを見つけた。もしかしたら無菌室の下にも繋がってるかも。…今から歩きながら天井を叩くから、ノック音が聞こえたら床を叩き返して返事をしろ。』

 

「えっ、ちょっと待って…急に言われても…」

 

ガチャッ

 

ツー…ツー…ツー…

 

「…ホント、勝手なんだから…」

 

…ン、コン、コンコン…

 

「…あれ?なんか音がするな…もしかして、アーニャちゃんかな?…床を叩いてみるか。」

 

コンコン

 

床を叩くと、ノック音が止まった。

 

しばらくして、また電話がかかってきた。

 

『…やっぱり、無菌室と繋がってたみたいだ。…それと、下の空間の天井に血痕があった。』

 

【コトダマ入手:アーニャちゃんの証言】

診察室の下に謎の空間があり、無菌室と繋がっていたらしい。

 

【コトダマ入手:地下空間の血痕】

アーニャちゃんが発見した。

 

プルルルル…

 

「もしもし?…佐伯君?」

 

『夏川ちゃんか。ちょっと、オレから報告があんだよ。』

 

「…何?」

 

『厨房にあった刺身包丁と、化学室にあったゴム手袋が無くなってた。』

 

「…報告ありがと。」

 

【コトダマ入手:消えた刺身包丁】

厨房から消えていた。

 

【コトダマ入手:消えたゴム手袋】

化学室から消えていた。

 

「あー、どっこいしょ。」

 

「ちょっと!魅神君!サボんな!!…あれ?」

 

魅神君の服がはだけて、腰が少し見えた。

 

「…ねえ、何これ?虫刺され?」

 

「あー、それね。おとといの夜さ、なーんか九十九の野郎に後ろからチクッとやられたのよ。」

 

「チクッと?針かなんかで刺されたって事?…でも、裁縫セットは女子の部屋にあるはずだし…」

 

「あー、思い出した。注射器を刺されたんだった。」

 

「それを早く言えよ!!」

 

【コトダマ入手:九十九君の言動】

魅神君が、後ろから九十九君に注射器を刺されたという。

 

「…それ、もしかして他の誰にも言ってない?」

 

「んー。言ってないねー。俺が九十九の野郎にお注射されたっつーのは、俺と夏川ちゃんしか知らないはずだよー。」

 

【コトダマ入手:魅神君の証言】

注射の事は、誰にも話していない。

 

『オマエラ、そろそろ時間になったし、学級裁判始めちゃいますよー?至急、赤い扉の前までお集まりくださーい!!』

 

あたしたちは消毒ルームで体を消毒してから、赤い扉の前まで向かった。

 

エレベーターに乗り込むと、エレベーターが動き出した。

 

…また、命懸けの学級裁判が始まる。



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第4章 非日常編②

みんな、裁判場に着いた。

 

今回も、遺影が2枚増えていた。

 

黒須君と九十九君の遺影だった。

 

「…モモゾー…」

 

小林さんは、俯いていた。

 

…小林さんは、きっと九十九君の事が好きだったんだ。

 

それなのに九十九君が殺されてしまったから、きっと犯人の事を許せないと思ってるはずだ。

 

あたしは、何としてでも犯人を見つけなきゃいけないと思った。

 

…小林さんのためにも。

 

 

みんな一通り席に着いた。

 

『全員揃った?』

 

「…魅神さんの姿が見えませんが?」

 

『ああ、魅神クンなら、モノウイルスに感染してるから、無菌室でお留守番だよ。裁判には、中継っていう形で参加してるから、そのまま裁判始めるよ!』

 

魅神君の席を見ると、大きなタブレットが立て掛けてあった。

 

『やっほー!みんな、もう裁判場に着いたー?俺は梨でも食いながら裁判見てるから、頑張って裁判してね〜!』

 

「ふざけんな!!君も参加しろ!!」

 

『夏川ちゃんこっわ〜い!』

 

魅神君は、梨を頬張りながら煽ってくる。

 

『よし、全員揃ったね!じゃあ、始めよっか!ドキドキワクワクの学級裁判を!』

 

 

 

学級裁判開廷!

 

 

 

『まずは、事件のまとめからだね!じゃあ、議論を開始してくださーい!!』

 

 

 

議論開始

 

佐伯「…じゃあ、今回はオレがファイル読むわ。被害者は九十九 百三。死亡時刻は午後11時頃無菌室のベッドで横になった状態で死亡。死因は刺殺による失血死。心臓部に、刃物で刺されたような痕が見られる。…みんな把握してるだろうけど、一応な。」

 

千葉崎「無菌室で死んだんじゃから、病死ではないのか?」

 

 

「異議あり!!」

 

 

反論

 

千葉崎「お主、余の申したことが間違っておると申すか!!」

 

…アレを見せてみよう。

 

 

【使用コトダマ:モノクマファイル】

 

 

論破

 

「佐伯君が言ってくれたけど、九十九君は刃物で刺されて死んでるんだよ!」

 

千葉崎「そうじゃったの。…すまん。」

 

宇田川「次は、凶器の特定ですかね。」

 

「凶器なら、心当たりがあるよ。」

 

 

【提示コトダマ:消えた刺身包丁】

 

 

「…刺身包丁が、厨房から消えていたんだ。…それで刺し殺したんじゃないかな?」

 

魅神『ふーん。…ところでさー、九十九キュンは本当にただの刺殺だったのかにゃ?変わったとことかなかったー?』

 

アレの事かな?

 

 

【提示コトダマ:九十九君の死体】

 

 

「…それって、九十九君がモノウイルスに感染して発病してたって事?」

 

魅神『そうなんだよー。なんで感染しちゃったのかなー?』

 

アナスタシア「どうせ貴様のせいで感染ったんだろ。」

 

相浦「…でも、待ってください。そもそも、魅神さんの病気の原因は何なんでしょうか…?」

 

 

議論開始

 

 

千葉崎「知らん。どうせ不潔にしてたせいじゃろ。」

 

アナスタシア「化学室にあったウイルスだろ。」

 

佐伯「悪いモン食ったとかじゃねえの?」

 

…アーニャちゃんの意見が正しそうだな。

 

 

【使用コトダマ:盗まれたモノウイルス】

 

 

同意

 

「化学室にあったウイルスが盗まれていたらしいんだ。それを、体内に取り込んだんじゃない?」

 

小林「なる…誰かが、ウイルスをタケヒトにチューシャしたんだね。」

 

「その事については、ちゃんとウラを取ってあるよ。」

 

 

【提示コトダマ:九十九君の言動】

 

 

「…魅神君。君は、九十九君にウイルスを注射されたんだよね?」

 

魅神『そーそー。』

 

小林「テメェら、適当な事言ってんじゃねえぞ!!百三を悪者にして、どういうつもりだよ!!?」

 

相浦「…こ、小林さん…!…落ち着いてください…!」

 

「…議論を続けようか。…それで、魅神君はウイルスに感染して、どういうわけか九十九君にもうつったって事だよね?」

 

魅神『そゆことー。』

 

アナスタシア「…ねえ、犯人に心当たりがあるんだけど。」

 

「心当たり?」

 

アナスタシア「…いただろ?誰も入れない密室の中で、一人だけ九十九を殺せた奴がな。」

 

…それって。

 

 

人物指名

 

 

「…君なら、犯行が可能だよね?

 

魅神 嶽人君。」

 

魅神『…はぁー?何言っちゃってるんですかー?』

 

小林「うるせえ!!テメェが百三を殺したんだろ!!?」

 

「…と、とりあえず落ち着いて議論してみようよ。」

 

 

議論開始

 

 

小林「どうせコイツが犯人に決まってんだろうが!!」

 

魅神『えー…俺が犯人とは限らなくね?だってさ、入ろうと思えば誰でも部屋に入れたっしょ?防護服あるし。』

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

魅神『何が違うんだよ、言ってみろよー。』

 

…アレを見せてみよう。

 

 

【使用コトダマ:無菌室の入室状況】

 

 

論破

 

 

「無菌室には、誰も入ってこなかった。そう証言したのは、魅神君、君だよね!?」

 

魅神『そーいやそうだったね。』

 

アナスタシア「どうせこいつが九十九にウイルスをうつしたんだろ?」

 

魅神『えー…それはちょっと暴論じゃねーの?同じ部屋にいたから、勝手にうつったのかもよ?

 

 

「…うーん、多分違うんじゃないかな?」

 

 

反論

 

魅神『何が違うんだよ、言ってみろよー。』

 

…アレを見せてみよう。

 

 

【使用コトダマ:モノウイルスの感染経路】

 

 

論破

 

「モノウイルスは、感染者の体液を体に取り込むことでしか感染しない。…空気感染なんて、しないんだよ。」

 

魅神『あー…これは流石に言い逃れできねえか。』

 

小林「お前が百三にウイルスをうつしたんだな!?」

 

魅神『えー…ちょっと待ってよー。俺はウイルスに侵されて、病気でつらかったんだよー?人に感染すどころじゃないと思うんだけど?』

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

魅神『何が違うんだよ、言ってみろよー。』

 

…アレを見せてみよう。

 

 

【使用コトダマ:モノウイルスの発病】

 

 

論破

 

「感染したからって、必ずしも発病するとは限らないよ。…魅神君。君はさ、もしかしてウイルスに耐性があって、発病しなかったんじゃないの?」

 

…それなら、起きた魅神君がやけに元気だったのも説明がつく。

 

宇田川「つまり、今までの話を整理すると、九十九君にウイルスを注射されたがウイルスが効かず、仕返しとして逆に九十九君にウイルスをうつして、動きが鈍ったところで刺した、という訳ですか?」

 

千葉崎「でも、九十九殿はどうして魅神殿にウイルスを?」

 

アナスタシア「…多分、魅神を殺すつもりだったんだと思う。…動機まではわからないけど。」

 

佐伯「でも、魅神が九十九にウイルスをうつし返したのは、もう確定なんだろ?」

 

魅神『…そうだよ!みんな大せいかーい!!俺が、九十九キュンにウイルスをうつしましたー!!』

 

小林「んなっ…!!テメェ、なんでそんな事…!!」

 

魅神『だって、アイツ俺を殺そうとしたんだもーん。ムカついたからやり返しちゃったー!…まあでも、仕返しのためとはいえ、ウイルスをうつす為にガチムキの野郎とベロチューしたのは、自分でやっててゲロ吐きそうになったけど☆』

 

小林「テメェ…ナメた真似しやがって…!!」

 

魅神『お?チューだけにナメるってか?小林ちゃん上手い事言うねー!座布団2枚!!』

 

アナスタシア「こいつのくだらないおふざけは置いといて、こいつがウイルスを九十九にうつしたのは確定したわけだ。」

 

佐伯「…犯人は決まりだな。」

 

…ちょっと待って。

 

本当に、こんな簡単に犯人が決まっちゃっていいの?

 

…何か、見落としてる事があるんじゃ…

 

『うぷぷ…もう犯人が決まったようですね?…では、投票ター』

 

相浦「待ってください!!」

 

 

学級裁判中断

 

 

『…おや?』

 

相浦「…まだ、それだと説明できない事があるんですよね、夏川さん!」

 

…そう。真相は、まだ奥底に眠っている。

 

「…確か、魅神君以外の人でも、九十九君を殺せる方法があったはず…考えろ…!」

 

 

閃きアナグラム

 

 

次々と、頭の中にピースが浮かんでくる。

 

それを…素早く拾って、組み合わせて…

 

…これだ!!

 

 

「…地下の隠し通路?」

 

宇田川「そんなもの、ありましたか?」

 

「…それを裏付ける証言があるよ。」

 

 

【提示コトダマ:アーニャちゃんの証言】

 

 

「アーニャちゃんが教えてくれたんだけど、診察室と無菌室を繋ぐ隠し通路があったんだって。」

 

アナスタシア「…でも、本当にそれを使って殺したかどうかは…何か証拠でもあるのか?」

 

…アレを提示すべきか?

 

 

【提示コトダマ:地下空間の血痕】

 

 

「アーニャちゃん、地下空間に血痕があったって言ったよね?…それって、犯人が隠し通路から九十九君を殺して、凶器を回収する時かなんかに付いた血じゃないの?」

 

アナスタシア「…。」

 

相浦「…でも、どうやって犯人は、隠し通路を使って九十九さんを…?」

 

「…多分、天井のスキマか何かから刺身包丁を貫通させたんだよ。」

 

宇田川「証拠はあるんですか?」

 

…アレが証拠になるかもしれない。

 

 

【提示コトダマ:ベッドを貫通する刀傷】

 

 

「ベッドを貫通する刀傷があったんだ。…長い刺身包丁なら、ベッドを貫通して心臓を刺すことくらいはできるんじゃない?」

 

相浦「…でも、犯人はどうして九十九さんを…?何か恨みでもあったんでしょうか…。」

 

アナスタシア「…計算違い、とか?」

 

相浦「…け、計算違い?」

 

佐伯「どういう事だ!?」

 

アナスタシア「…九十九は、魅神を殺すつもりでウイルスを感染させたんだろ?…でも、結果的に魅神は発病せず、返り討ちに遭った。…もしかして、九十九は今回の事件の犯人の共犯で、犯人と一緒に魅神を殺すつもりだったんじゃないか?」

 

千葉崎「それで、九十九殿は自分を犯人に見せかけるつもりだったんじゃな?そうすれば、実行犯を特定できなかった余らはおしおき、実行犯と九十九殿の二人が『卒業』できるからのぉ。」

 

魅神『…それが正しいとすると、動機になりそうなのは…』

 

…アレしかないな。

 

 

【提示コトダマ:九十九君の好感度】

 

 

「…九十九君の好感度が10だったんだ。…これって、犯人が九十九君と恋仲で、一緒に脱出するために魅神君を殺そうとしたって事じゃないの?」

 

相浦「…九十九さんと恋愛しそうなのは、この中では一人しかいませんね。」

 

…あの人だろうか。

 

 

人物指名

 

 

「…君なら、何か知ってるんじゃない?

 

小林 功里さん。」

 

小林「…ボクなのだー!!?」

 

相浦「…小林さん、正直に言ってください。きっと、九十九さんはあなたを恨んでいません。だから、話してください。…ね?」

 

小林「はぁあああああああぁあああ!!?ふざけんじゃねえよ!!何の根拠があってそんな事ほざいてやがんだ、このクソ共がよ!!!あぁ!!?」

 

 

議論開始

 

 

小林「俺が百三と殺人計画を企ててたって言いてぇのか!!?ふざけんな!!!…大体、テメェのトリックが合ってるとして、百三と連絡する手段なんて無えだろ!!?どうやって殺人を計画すんだよ!!!」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

小林「あぁ!!?何が違うってんだ、言ってみろよオラァ!!!」

 

…アレを見せてみよう。

 

 

【使用コトダマ:無菌室の電話】

 

 

論破

 

「…無菌室にある電話を使えば、無菌室の中にいなくても会話が可能だよね?」

 

小林「俺は犯人じゃねえっつってんだろうがよ!!!俺が犯人だっつー証拠が無えだろうが証拠がよ!!!」

 

 

「異議あり!!」

 

 

反論

 

小林「あぁ!!?何が違うってんだ、言ってみろよオラァ!!!」

 

「君さ、さっき変な事言わなかった?」

 

 

【使用コトダマ:魅神君の証言】

 

 

論破

 

「魅神君がモノウイルスを注射された事を知ってたのは、魅神君が九十九君の怪しい言動を指摘するまでは、あたしと魅神君本人、そして犯人しか知らないはずなんだよ!!…どうして小林さんが知ってたの?」

 

小林「そ…それは…テメェだって言ってたじゃねえかよ!!『化学室から盗まれたウイルスが原因だ』って!!」

 

「あたしは、化学室から盗まれたウイルスが原因かもしれない、って言っただけで、魅神君が誰かに注射されたなんて一言も言ってないよ?飲まされたのかもしれないし、傷口に塗られたのかもしれない。…さらに言っちゃうと、魅神君自身がわざとウイルスを体内に取り込んだ可能性だってあったよね?」

 

小林「なんだよそれ!!…カマかけやがって、そんなのただの揚げ足取りじゃねぇかよ!!」

 

「…それに引っかかってくれるって事は、犯人なんじゃないかなって思って。」

 

小林「ふざけんな!!…大体、テメエのトリックが全部合ってたとして、俺がウイルスに感染してないのはおかしくねえか!!?」

 

宇田川「…確かに、床の下から刺したとはいえ、凶器を回収する時などに多少は体に血が付くはずですからね。」

 

「…それは。」

 

 

議論開始

 

 

千葉崎「マッハで回収したんじゃろ!」

 

相浦「血が体に付かないように何かで防いだとか…」

 

佐伯「付いた後でキレイに拭いたのかもしんねーぞ!?」

 

魅神『血が付かないようにうまく刺したのかもよー?』

 

…相浦さんの意見が正しそうだな。

 

 

【使用コトダマ:消えたゴム手袋】

 

 

同意

 

「ゴム手袋で、手に血が付かないようにしたんじゃない?」

 

魅神『だってさ。小林ちゃーん。もう観念しちゃいなよ〜。』

 

 

 

小林「…そうだよ。俺が、百三を…殺しちまったんだ!!!…でも、何で殺しちまったのかわかんねえんだよ!!!計画通りなら、嶽人!!お前が死んでたはずなんだ!!!なのになんで!!!」

 

「…それは。」

 

【提示コトダマ:九十九君のベッド】

 

「…小林さん。…ベッドを刺す時、ちゃんとそこに誰が寝てるのか確認した?」

 

小林「できるわけねえだろそんな事…!声出しちまったらバレるし、顔を確認しようにもベッドが邪魔でできねえし…」

 

「小林さん、君が魅神君だと思って刺したのは、九十九君だったんだよ。…魅神君は、九十九君に自分が寝ていたベッドを譲ったんだ。」

 

小林「…そんな…!」

 

…もう、終わりにしよう。こんな裁判。

 

「…小林さん。今から事件の真相を話すよ。」

 

 

クライマックス推理

 

 

頭の中に浮かび上がった漫画のコマに、ジグソーパズルのように適切なピースをはめていく。

 

…できた。これが、事件の真相だ!!

 

 

Act.1

 

まず、犯人と恋仲になって、犯人からの好感度が10に達した九十九君は、魅神君を殺して自分が罪を被って、実行犯と一緒に『卒業』する計画を思いついたんだ。そして、その計画のために化学室にあったモノウイルスを盗み、魅神君に注射したんだ。ウイルスに感染した魅神君は、そのまま無菌室送りとなった。そして、九十九君は、自分も感染したと言って、無菌室に一緒に入ったんだ。

 

 

Act.2

 

こうして九十九君は、魅神君が逃げないように見張る事ができ、かつ自分と魅神君以外部屋にいないという、犯行の罪を被るのに理想的な状況を作り出した。一方、犯人は診察室の電話で、無菌室にいる九十九君と作戦を話し合い、そこで隠し通路の存在を知ったんだろう。犯人と九十九君は、魅神君の殺害計画の打ち合わせをして、犯人は計画に必要な刺身包丁とゴム手袋を盗んでおいた。

 

 

Act.3

 

でも、ここで九十九君と犯人にとって、最大の誤算が生じてしまうんだ。…なんと、魅神君にはウイルスが効かなかった。効いたフリをして作戦を全て聞いていた魅神君は、同士討ちを誘う作戦に出たんだ。魅神君は、九十九君にウイルスをうつして動きを封じた。そして、動きの鈍くなった九十九君を、自分のベッドに寝かせたんだ。

 

 

Act.4

 

そんな事を知らない犯人は、九十九君との打ち合わせ通り、隠し通路を通ってベッドの真下まで行った。そして天井から刺身包丁を貫通させ、そのままベッド越しに魅神君ーではなく、魅神君と入れ替わった九十九君を刺し殺してしまった。…犯人は、きっと後悔しているだろうね。だって、手違いで最愛の人を殺してしまったんだから。

 

 

「…犯人は、君だ。…そうだよね、

 

 

 

『超高校級の拳法家』小林 功里さん!!!

 

「あ…あああ…そんな…ボクが…モモゾーを…」

 

小林さんは、ショックで泣き崩れていた。

 



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第4章 非日常編③

「そんな…ボクが…モモゾーを…」

 

『そうだよー。九十九キュンは、小林ちゃんが殺したんだよ!…あー、梨おいしー。』

 

「テメェ…!」

 

佐伯君が、魅神君を睨んでいた。

 

『…そろそろ、結論は出たようですね?ではでは、投票ターイム!!』

 

あたしは、躊躇いながらも、小林さんに投票した。

 

『それでは、結果発表ー!!』

 

モノクマの座る椅子の前からスロットマシーンのようなものがせり上がり、生徒の顔を模したドット絵が描かれたルーレットが回った。

 

小林さんの顔が三つ揃ったところでルーレットが止まった。その下にはGuiltyの文字が浮かび上がり、スロットマシーンからは大量のメダルが出てきた。

 

『うぷぷぷ、お見事だいせいかーい!!『超高校級の応援団長』九十九 百三クンを殺害したのは、『超高校級の拳法家』小林 功里さんでしたー!!』

 

「そんな…!」

 

『あ、ちなみに今回は満場一致じゃなかったよ?佐伯君だけは、魅神君に投票してましたー!!』

 

『佐伯キュン酷くねー?俺は犯人じゃねえっつってんじゃーん!!』

 

「うるせえ!!テメェが九十九を殺したようなもんだろうが!!」

 

「小林さん…どうしてこんな事…」

 

相浦さんは、涙目で小林さんに問いかけた。

 

「…ボクは、ずっと前からモモゾーの事が好きだったのだ…だから、4日目にユーキ出してコクハクして、それで『いいよ』って言ってもらえて…嬉しかったのだ…ボクは、モモゾーの事がどんどん好きになっていって…周りが見えなくなってたのだ…。」

 

「…それで、一緒に『卒業』したいがために、殺人計画を企てたんですね。」

 

宇田川君が、冷静に補足する。

 

『ちなみに、その時の映像があるよ!VTRは、こちら!』

 

 

 


 

「モモゾー…ボクは、モモゾーと一緒に外に出たいのだ…モモゾーのためならボク、なんだってするのだ!!」

 

「…オレもさ、小林君。…オレにいい考えがあるんだ。聞いてくれ。」

 

「なんなのだ!!?」

 

「…魅神君を、一緒に殺そう。」

 

「…え、それじゃあ、タケヒトを殺して、みんなをダマすって事なのかー!?」

 

「そうなるね。…でも、二人で『卒業』するには、これしかないんだ!!!…オレが魅神君を盗んだウイルスで動きを封じるから、トドメは小林君が刺せ!!!」

 

「…でも、失敗したらモモゾーがウイルスにカンセンしちゃうのだ!!ボク、そんなのイヤなのだ!!!」

 

「仮に感染したとしても、『卒業』さえできれば、外で治療法は見つけられるハズだ。オレは君より体力があるから、感染してもしばらくは耐えられるだろう。…小林君、もうこれしか方法が無いんだ!!!」

 

「でも、ボクは…んッー」

 

九十九が、小林にキスをした。

 

「…君が、この作戦の要なんだ。引き受けてくれるな!!?」

 

「…わかったのだ。ボク、モモゾーのために頑張るのだ!」

 

「しっ!魅神君が来たぞ。…オレが、このウイルスを打ち込んでくる。」

 

九十九が、魅神の背後に忍び寄る。

 

「あぁ?」

 

魅神が振り返った時だった。

 

ブスッ

 

「ーッ!!!」

 

九十九が魅神にウイルスを注入した。

 

「テメェ、何しやが…」

 

「学園長!!!大変だ、魅神君がモノウイルスに感染した!!!今すぐ来てくれ!!!」

 

『モノウイルスに感染したって?じゃあ、無菌室に隔離しとくよ。…あ、そうだ。九十九クン。君も、感染の疑いがあるから、一緒に隔離するね。』

 

「ああ!!!ぜひそうしてくれ!!!」

 

「おい、お前らふざけんじゃね…」

 

モノクマが、魅神の髪を引っ掴んで無菌室まで引きずる。

 

そして、二人が無菌室に隔離された。

 

 

半日後

 

「…なんだよこれ…クッソ、頭がグルグルしやがる…鼻血も止まらねえ…俺、こんな所で死にたくねぇよ…」

 

狼狽える魅神の姿を確認した九十九は、診察室に電話をかける。

 

「…ウイルスは効いてきたようだ。小林君、床に隠し通路があるはずだ。見つけてくれ。」

 

『あったよ!』

 

「そこから歩くと、目印に床板に紙が挟んである。オレが下見をして作った地図をもとに、そこまで歩いてくれ。」

 

『わかったのだ!!』

 

小林から電話がかかる。

 

『紙が挟んであるのだ!!やっぱり、シンサツシツとムキンシツは繋がってるのだ!!』

 

「…確認してくれてありがとう。じゃあ、次は刺身包丁とゴム手袋を盗んできてくれ。」

 

『?リョーカイなのだ!!』

 

「…これで良し、と。」

 

「なーにが良かったのかなぁ〜?」

 

瀕死だったはずの魅神が起き上がる。

 

「あー、どっこいしょ。おはよー♬つ、く、も、キュン♡」

 

「き…貴様…!!…確かにウイルスを盛ったはず…!!!」

 

「あー、ゴメンネ〜。俺、毒とかウイルスとか効かない体質みたいでさー。さっきから九十九クンが楽しそうに電話の向こうの誰かさんとおしゃべりしてたから、つい寝たフリして聞いちゃった♡…名演技だったでしょ?」

 

「貴様…!!!」

 

「つーかさ、そんなにウイルスが好きなら、一緒にウイルスパーリーしよーよ!…と、いうわけで…」

 

 

ぶちゅッ

 

「ん゛ー!!!」

 

「…ぷっはー。…ぉお゛え゛ぇええええええええ!!!自分でやっといてなんだけど、キッショ!!!何が悲しくてガチムキの野郎なんかとキスしなきゃなんねーんだよ!!マジでゲロ吐きそうだわ…」

 

「き、貴様…!!!」

 

 

「畜生、熱が…鼻血も止まらない…オレは、まだ倒れるわけにはいかないのに…」

 

ドサッ

 

「あれれー?九十九キュンどったの?具合悪い?とりあえず、俺のベッドで横になりなよ。俺は地べたでいいから。」

 

魅神が九十九をベッドに寝かせる。

 

プルルルル…

 

「あ、俺が代わりに出てあげるね。…ゲフンゲフン。」

 

「…もしもし!!?小林君!!?例の物は持ってきてくれたね!!?」

 

『うん!!バッチリなのだ!!!』

 

「じゃあ、ゴム手袋を手にはめて、刺身包丁を持って隠し通路に行ってくれ。そうしたら、紙が挟まってる所まで行って、そこを持ってる刺身包丁で思いっきりぶっ刺すんだ!!!」

 

『リョーカイなのだ!!』

 

しばらくして…

 

グサッ

 

「ぐはっ…!!」

 

刺身包丁の刃が、九十九の身体を貫く。

 

「…計画通り。…じゃあ、俺はこのまま寝ちゃおーっと。」

 


 

 

 

「…そんな、ボクが…モモゾーを…」

 

『あっははは!!!いっやぁ、ウケるwww俺を殺すつもりが、恋人を殺しちゃうなんてさー!!最っ高のエンタメじゃねーか!!』

 

「黙れ…お前が…お前のせいで百三が…ふざけんな…ふざけんじゃねえええええええええええ!!!」

 

小林さんが、殺意のこもった目で魅神君を睨んだ。

 

『おっと、俺を責めんのはお門違いだよー?俺だって、一歩間違えれば死んでたんだ。…要は、このスリリングなギャンブルの勝者は、この俺様だったって事!!!』

 

『あのー、無駄話も済んだみたいだし、そろそろおしおき始めちゃいますよー?』

 

「…ごめん、百三。…俺、間違えちまった。…っ、うわぁあ゛ぁあああああああああああああ!!!」

 

小林さんは、その場に蹲って泣き叫んだ。

 

『今回、『超高校級の拳法家』小林 功里さんのためにスペッシャルなお仕置きを用意しました!!…ではでは?おしおきターイム!!』

 

モノクマがハンマーを振り上げると、赤いスイッチがせり上がってきた。

 

モノクマは、スイッチをハンマーで押した。

 

 

GAME OVER

 

『コバヤシさんがクロにきまりました。 オシオキをかいしします。』

 

 

 

 

小林の下の床が開き、小林は下に落ちる。

 

そこから映像に切り替わる。

 

小林さんが落ちた先は、拳闘用のリングになっていた。

 

リングの周りは、剣山になっている。

 

そこで、タイトルが中央に浮き出る。

 

 

DESPAIRSCHOOLFIGHTER

 

 

小林の前に、某格闘ゲームのキャラクター達を模した人形達が立ちはだかり、一斉に小林に襲いかかる。

 

小林は、その人形達をなぎ倒していく。

 

しかし、無数に湧き出る人形たちと戦ううちに、小林は苦戦し、ボロボロになっていく。

 

100体近くの人形を倒した小林は、全身血まみれになり、左腕を捥がれていた。

 

人形たちの後ろに、九十九の姿が見えた。

 

小林は、目の前の人形達をなぎ倒し、九十九の方へと飛び込んでいく。

 

 

…が、それは、リングの外に貼られた子供の落書きのような絵だった。

 

小林が絶望して膝をつくと、後ろから某格闘ゲームの主人公の格好をしたモノクマが、小林の背中に飛び蹴りを喰らわせ、小林を場外に突き落とす。

 

小林は、そのまま場外の剣山へと落ちた。

 

串刺しになった小林の顔に、剥がれた九十九の絵が覆い被さる。

 

 

 

 

「あぁああ…小林さんが…小林さんが…!」

 

相浦さんが泣き崩れる。

 

『いっやあ。刺激的なショーだったね!愛する恋人と外に出るために作戦を練ったのに、それをターゲットに利用されて恋人を殺しちゃうなんて、皮肉だよね!』

 

「ひでぇよ…こんなの、あんまりじゃねえかよ…!」

 

『オマエラ、何泣いてんの?結局は人殺しじゃん!っていうか、こーんな簡単に騙されて、恋人を殺っちゃうなんてさ…小林さん、ホントは九十九クンの事、大して愛してなかったんじゃないの?』

 

「何だと!?」

 

『…まあ、九十九クンの方は、小林さんを愛してなかったみたいだから、お互い様だよね!』

 

「…どういう、意味ですか…。」

 

『だってさ、よく考えてみてよ!もし、小林さんが魅神クンを殺して、その結果小林さんがクロだとバレたら、結局助かるのは九十九クンじゃん!…九十九クンは、自分の保身のために恋人の命を生贄にしようとしたんだよ!』

 

「…そんな事ありません!…九十九さんは、小林さんにウイルスに感染して欲しくなくて…」

 

『そんなの、小林ちゃんを言いくるめる為の出まかせかもよー?…恋なんてさ、所詮は自己満足なんだよ。』

 

魅神君が口を挟んできた。

 

「コンチクショウが、なんで小林ちゃんが死んで、テメェが生きてんだよ!!」

 

『怖いなー、佐伯キュン!暴力反対ー!』

 

『ちょっと、ウイルス盗まれて感染なんて、勘弁してよね!今回は大目に見たけど、次は無いからね!』

 

モノクマが怒って魅神君を注意する。

 

『はいよー、クマさーん。』

 

 

…いや、アイカ様?

 

「!!?」

 

魅神君の言葉に、全員が驚く。

 

「…貴様、今アイカって…」

 

アーニャちゃんが青ざめた顔をする。

 

「…アーニャちゃん、知ってるの…?」

 

「…『超高校級の絶望』と言われている高校生で、先代の『超高校級の絶望』江ノ島 盾子の後継者だ。…私は、そいつを処刑するためにここに潜り込んだ。…だが、なぜ貴様がその名を知っている!!」

 

『…え?いや、だって…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…俺がアイカ様の内通者だから。

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーーッ!!!」

 

『ちょっとー!!それ言わない約束でしょ!!このポンコツイカレ殺人鬼!!』

 

『えー、だってー。もう潮時じゃーん。』

 

モノクマと魅神君がプチ喧嘩を始める。

 

『…もー。…あ、そうだ!!オマエラ、メダルあげるからもう帰っていいよ!じゃ、まったねー!!』

 

色々な事が判明して、頭がこんがらがった。

 

…魅神君が『超高校級の絶望』の内通者…?

 

江ノ島 盾子…?

 

…アイカ様…?

 

一体、何がどうなってるの…?

 

 

 

 

第4章『絶望の中で愛を叫ぶ』ー完ー

 

【生徒数】残り7名

 



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第5章 この忌まわしい世界に報復を
第5章(非)日常編①


裁判が終わった後、あたしたちは解散して、そのまま部屋に戻った。

 

魅神君は、まだ無菌室から出られないそうだ。

 

翌朝、みんなで朝食をとった。

 

魅神君がいなかったから、割と平和だった。

 

「魅神がいないと平和じゃのお…この時間がずっと続けば良いのじゃが…」

 

「…ねえ。そういえば千葉崎さん、まだ佐伯君の事を奴隷にしてるの?」

 

「奴隷とは失礼な!こやつは、余の従順な僕となったのじゃ!!」

 

「…はい…わたくしはりむ様の従順な僕でございます…」

 

「…いや、もうギャルゲーもどきも終わったんだし、解放してあげたら?」

 

「何を言うか!余は…」

 

「…千葉崎さん、私からもお願いします。…これ以上みすぼらしくなっていく佐伯さんを見ていられません。」

 

「…うぅ。お主らがそこまで言うなら…わかった、佐伯を平民に戻す。」

 

「よっしゃぁあああああああ!!!平民サイコー!!!いやー、ありがとう!!!夏川ちゃん、相浦ちゃん!!!オレの心のオアシスは君たちだけだよ〜!!!」

 

佐伯君が、某泥棒漫画の主人公のように、空中を平泳ぎながらあたしたちの所に飛び込もうとした。

 

(ル●ン泳ぎ…)

 

そんな佐伯君を、宇田川君が引っ掴んで床に投げる。

 

「あべしっ!!!」

 

「…つぐみに近づかないでください。」

 

宇田川君が、汚物を見るような目で佐伯君を見る。

 

「…バカじゃないの?」

 

アーニャちゃんは、紅茶を飲みながら、ゴミを見るような目で佐伯君を見ていた。

 

「…そんな事より、5階が解放された。探索の担当を決めるぞ。」

 

弓道場、植物園、生物室などがあるようだ。

 

「では、生物室は、僕とつぐみで…」

 

「…夏川。あんたは私と一緒に弓道場。…それと、そこのバカ2人は植物園。…これでいい?」

 

「バカとは何じゃ!!バカとは!!余を誰と心得る!!」

 

「え…別にあたしは構わないけど…他の二人はそれで大丈夫?」

 

「余は、ちょうど植物園が良いと思っておったところじゃ。…佐伯もそれでいいな?」

 

「…はい。」

 

(…なんだろう。…佐伯君、完全に千葉崎さんに服従してるなぁ…)

 

「…貴様はバカだが、調教師の素質はあるようだな。」

 

アーニャちゃんが、感心しながら言う。

 

「じゃからバカと言うな!!」

 

 

二人で弓道場に行った。

 

弓道場には、桜が植えられ、桜吹雪が舞っていた。

 

「…綺麗。…でも、造花か…」

 

視線を右に移すと、壁にガラスケースが取り付けられているのを発見した。

 

最近取り付けられたもののようだ。

 

中には、クロスボウが入っていた。

 

「…鍵がかかってる。ガラスも二重になってるし、取り出すのは難しいかな。」

 

アーニャちゃんは、部屋の隅で蹲って何かをしている。

 

「…ねえ、何やってるの?」

 

「…急に後ろから話しかけるな。」

 

アーニャちゃんが、急いで何かを懐にしまった。

 

「あ、ごめん。びっくりした?…ねえ、それ…落し物かなんか?」

 

「…個人的な質問には答えたくない。」

 

「…ごめん。探索は一通り終わったけど…」

 

「ふんっ。もうこの部屋に用は無い。行くぞ。」

 

「…うん。」

 

 

探索の後は、みんなで報告会を開いた。

 

「植物園の方はどうだった?」

 

「うむ。なんか、中央にどぎつい花が咲いておったの。奥には物置もあったぞ。あと、なぜか鶏小屋があったな。」

 

「あとは、スプリンクラーの制御盤があったくらいだな。」

 

「生物室の方は?」

 

「…と、扉にナマモノと書いてあって、開きませんでした。」

 

「セイブツと読むと思わせといてナマモノと読むっていうジョークですかね?…全く、くだらない。マイナス30点です。」

 

(…いや、普通そこまで考えないよな…宇田川君って、実は結構ジョークとか好きだったりする…?)

 

「…あ、そうそう。実は、生物室の探索が早く終わってしまったので、『ある部屋』にも入ったんです。」

 

「ある部屋…?」

 

「…酷い有様でした。血生臭く、嫌な雰囲気が部屋中を包んでいました。」

 

「…言いにくいんですけど。」

 

「…多分、あの部屋では、人が死んでいます。」

 

「人が…死んでるって…どういう事だよ!?この校舎、俺ら以外にも誰かいたのかよ!!?」

 

「…詳しい事は、僕にもわかりません。…学園長は、『あるものをそのままにしておいただけ』と言っていましたが。」

 

「ねえ、アーニャちゃんは心当たり無い?…なんか、ここの事についてちょっと詳しそうだったけど。『超高校級の絶望』がどうのこうのって…」

 

「ふんっ。」

 

「だんまりですか。」

 

「…そんなに知りたければ、魅神にでも聞け。私から話す事は何も無い。」

 

「お主も性格が悪いのお…それで聞けたら、余は地道に探索などしておらんぞ。」

 

「放っておいてくれ。…もう報告会は終わりだいいよな?」

 

「…そうだね。これ以上続けても、情報は出なさそうだし…じゃあ、報告会も終わった事だし…解散でいいかな?」

 

 

あたしは、アルターエゴと話をしに行った。

 

『夏川さん!おはようございます!』

 

アルターエゴ相浦さんは、笑顔で話しかけてくれた。

 

「ああ、おはよ。…そういえばさ、データの解析って、どうなった?」

 

『…それが、解析は終わったんですけど…』

 

「けど?」

 

『…有益な情報がほとんど無くて…すみません。』

 

「…まあ、重大な機密が入ってるなら、不用意に人目につくところにパソコン置いたりしないよね…」

 

『…そう思って、この学園のネットワークに侵入出来ないか試しています。』

 

「有能!」

 

『…やはり、ロックがかかっているので、時間はかかりますが…なんとか、侵入してみますね!』

 

「ありがとう!」

 

『…それで、夏川さん。一つお願いがあるんですが…』

 

「何?」

 

『ロックを解除している時は、話しかける回数を極力減らして頂けませんか?』

 

「…集中できないからって事?…わかった。君がそう言うなら、しばらくはお話しないね。…その代わり、ロックの解除が終わったら、またお話しようね。」

 

『はい!楽しみにしています。』

 

「…じゃ、ロックの解除頑張ってね!」

 

『皆さんのお役に立てるよう、精一杯頑張ります!』

 

あたしは、アルターエゴ相浦さんとお別れした。

 

 

あたしは図書室にある資料室に行った。

 

…すると、前に来た時はなかった、小さな鍵が落ちているのに気がついた。

 

「…あれ?この鍵って、もしかして…」

 

置いてあった本の鍵穴に、鍵を差し込んでみた。

 

「…この前は、鍵が見当たらなくて読めなかったからな…」

 

ガチャッ

 

…開いた。

 

「…読んでみよう。」

 

 

 

『人類史上最大最悪の絶望的事件』によって、我が国のみならず、世界中が混沌と化した。現在も尚、事件は続いている。その対策として、我が国の政府は、才能のある者達を強固なシェルターで『希望』として再教育する計画を水面下で実行中であるが、『希望』達の多くは絶望に堕とされ、『希望』を生み出すはずの施設が、今では絶望が蔓延している。しかし、そんな状況下で『希望』として機能している個体はわずかながら存在している。この『希望』達は、『絶望的事件』を終結させる危険因子になりかねないと私は睨んでいる。そこで、私はとある計画を思い付いた。計画の名は、『絶望再生プロジェクト』。『希望』達の記憶をリセットし、絶望的シチュエーションを体験させる事によって、『希望』を『絶望』に塗り替える計画である。具体的な方法として、2年前に行われたデスゲームをもう一度行おうと考えている。2年前は、『超高校級の希望』らの活躍によってデスゲームは終結したが、今回はゲームを改良し、より『絶望的シチュエーション』を演出できるよう、準備を進めている。

 

 

 

…何これ。

 

…記憶をリセット?

 

絶望再生プロジェクト?

 

何が一体どうなってるの…?

 



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第5章(非)日常編②

今日も、平和な一日になる…はずが。

 

「おっはよー!!みんな、生身では久しぶりー!!元気してたー?って!一番元気じゃなかったの俺じゃーん!!」

 

魅神君が食堂に来た。

 

全員、魅神君を無視した。

 

「…あれ?みんなどうしたの?元気無くね?」

 

「…当たり前じゃろうが。せっかく平和な一日になると思っとったのに。」

 

「…どうして出てきた。この病原体が。」

 

「千葉崎ちゃんもニャーちゃんもひっど!!もうウイルスの感染の心配がなくなったから無菌室から出られたっつーのにさ!!病み上がりなんだから、もうちょいいたわってよー!!」

 

「…え、えーと…元気になってよかったですね…」

 

「つぐみ。この男のした事を忘れましたか?」

 

「え?何?俺なんか悪い事した?」

 

魅神君のとぼけた態度に、全員苛立ちを隠せなかった。

 

「ふざけんじゃねえ!!テメェは、小林ちゃんに九十九を殺させただろ!!それで、なんでテメェがのうのうと生きてんだよ!!」

 

「そんな事言われてもなぁ。仕掛けてきたのは向こうだしー?やらなきゃやられてたわけだしー?正当防衛だよ、正当防衛!」

 

「…何が正当防衛だ。…それに、貴様はアイカの内通者なんだろ?そんな奴と仲良くするお人好しがいるとでも思ったのか?」

 

「ですよねー。」

 

「…ねえ、魅神君。アイカって何なの?」

 

あたしは思い切って質問してみた。

 

「…やめておけ。こいつは…」

 

「…このコロシアイ学園生活を影で支配してる奴だよ。モノクマ達は、全部アイカ様が操ってんだ。」

 

「…やっぱりね。」

 

「ああ、そうそう。お前らに一つ忠告してやるよ。」

 

「…忠告?」

 

「このコロシアイ学園生活、実は…全国で生中継されてまーす!!」

 

「!!?」

 

「いやあ、やっぱこういういい趣味したゲームを望んでる奴らっているんだわ!うん。おかげで視聴率もバーッチリ!!…だ、か、ら、あーんまり過激な行動しない方が身のためだぜー?」

 

「…このイカレ野郎が!!」

 

佐伯君が、テーブルの上に土足で登る。

 

「ちょっと、やめなって…!」

 

「お?ついに暴力っすか?まだまだ煽りネタはたくさんあるよ?」

 

「魅神君も煽ってんじゃねえよ!!何がしたいんだこのアオリイカ!!」

 

「…あ、アオリイカ?」

 

相浦さんがキョトンとした顔をした。

 

「さーてと。殴るなら殴ればー?この脳みそスカスカチンパンジー君?」

 

「ブン殴ってやる!!!」

 

「キャー怖ーい!!」

 

『コラァーッ!!!』

 

モノクマがダッシュで食堂にやってきて、魅神君の後頭部を思いっきり殴った。

 

「痛ってぇー!!クマさん急に何してくれてんの!?」

 

『みんなで仲良くしてねって何度言ったらわかるの!?…あと、オマエはベラベラしゃべりすぎ!!これじゃ内通者の意味ないじゃん!!』

 

「ごめたんご☆」

 

『じゃ、オマエラ!このバカは放っといて、学園生活エンジョイしてね!』

 

モノクマが去っていった後は、なんとも言えない空気が流れた。

 

「なんなんだ…」

 

「ちぇー、つまんねーの。もっと引っ掻き回して視聴率稼ごうと思ってたのにさー。」

 

「テメェ…」

 

「…ねえ。魅神君。やっぱり何も話す気にはなれない?」

 

「えー。やーだ!喋り過ぎると俺が消されるもーん!じゃ、そういう訳だから、じゃっあねー!」

 

 

しばらくして、部屋で時間を潰していると、ノック音が聞こえた。

 

ドアを開けると、相浦さんがいた。

 

「…どうしたの?」

 

「…た、大変です…!アルターエゴが…盗まれました…!」

 

「え!!?」

 

急いでロッカーに確認しに行くと、ノートパソコンが消えていた。

 

「盗まれたって…一体誰に…!?」

 

「…さ、さあ…」

 

「学園長殿が、見つけて処分したのではないか?」

 

「…そんな…!」

 

「安心しな?AIちゃんは無事だから。」

 

後ろから魅神君が現れた。

 

「…ど、どうしてそんな事がわかるんですか!?」

 

「えー、だって…」

 

「パソコン盗んだの、俺だもん。」

 

「!!?」

 

魅神君が、服の中からパソコンを取り出して、画面を開く。

 

画面には、泣いているアルターエゴ相浦さんが映されていた。

 

『申し訳ありません、皆さん…!魅神さんに、本体を盗まれてしまいました!!』

 

「やー、さすが相浦ちゃんをモデルにしたAIってだけありますわ。きゃっわいいねぇー♪」

 

「貴様…それをどうする気だ!!」

 

「うーん。俺は、アイカ様の内通者だしー?このままAIちゃんを持ってって、アイカ様にチクっちゃおっかな〜?…そ、れ、と、も、俺様専用のAIとして、奴隷みてぇにこき使っちゃおっかな〜?さーてと、どう料理してあげちゃおっかな〜?イッヒヒヒヒ。」

 

『ひっ…!み、皆さん、助けてください…!』

 

魅神君は、画面を見ながら舌舐めずりをしている。

 

そして、みんなの顔を一通り見た後、提案をしてきた。

 

「…じゃあ、こうしよっかなー?…どうしてもこのAIちゃんを返して欲しい奴は、焼却炉まで来い。時間は、いつでも構わない。…そこまで来たら、AIちゃんを返すかどうか考えてあげるよ。まあ、結局は俺の機嫌次第だけどねー!」

 

「…貴様。」

 

「んー?ニャーちゃんどうちたのかな?その反抗的な目ェ!!…まさかとは思うけど、この状況で俺に逆らう事が許されると思ってんじゃあねえだろうな!!?」

 

「…!」

 

「いいか!?今ァ!!この場を制しているのは、他の誰でもねぇ…この俺様だァ!!!」

 

魅神君は、目を見開きながら高圧的な態度で脅してくる。

 

「じゃあねー!あははははははは!!!」

 

魅神君は、パソコンを持って走り去っていった。

 

「クッソ、あいつ…好き勝手しやがって…!!」

 

「みんな、一回落ち着いて…アーニャちゃん?」

 

アーニャちゃんは、人殺しの目をしていた。

 

普段の冷静さは、少しも感じられなかった。

 

「…とりあえず、魅神君とアルターエゴをどうするかを考えよう。」

 

「…そうですね。」

 

「あやつの事じゃ。闇雲に突っ込んでいっても、何かされるじゃろうな。」

 

「だね。とりあえず、一回みんな部屋に戻って頭を冷やそう。今無理してまで行く事ないよ。」

 

そのまま流れ解散となった。

 

 

その後、あたしは部屋で魅神君をどうしようか考えていた。

 

結局、答えは出ないまま時間が過ぎた。

 

二度も、法正君を失ってしまうかもしれない恐怖で、完全に思考が停止してしまっていた。

 

『オマエラ!!死体が発見されました!!至急焼却炉前までお集まりください!!』

 

…嫌な予感がした。

 

あたしは、急いで焼却炉に向かった。

 

そこには、蹲って泣いているアーニャちゃんがいた。

 

「…アーニャちゃん…?どうしたの…?」

 

アーニャちゃんは、泣きながら指を指した。

 

指を指した先には、黒焦げになった死体が転がっていた。

 

その死体は…

 

 

 

 

 

『超高校級の死刑囚』魅神 嶽人のものだった。

 

【生徒数】残り6名

 

 



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第5章 非日常編①

あの魅神君が死んだ。

 

さっきまで、みんなの事を煽ったりしていたのに。

 

どうして…

 

『んもー…ぷんぷん!!』

 

モノクマがなぜか不機嫌だった。

 

「…なんでテメェが不機嫌なんだよ。…内通者が死んだからか?」

 

『違うよバーカ!!あんなヘッポコ内通者なんてどうでもいいよ!…今回は、誰が犯人かわかんないんだよ!!』

 

 

 

…え?

 

「…なんじゃそれ!!犯人がわからんじゃと!?お主、何をやっておったのじゃ!!」

 

『それが、ちょうど魅神クンが死ぬシーンだけ、監視カメラに何も映らなかったんだよ!』

 

「…じゃあ、今回の学級裁判は…」

 

『ああ、誰がクロになっても正解扱いにするよ!ボクも、できるだけの協力はしてあげるから、何が何でも犯人を探し出せ!!…ほら、ファイル送っといてあげたから、頑張って犯人見つけてよね!!それじゃ、捜査ターイム!!』

 

「…そう言われてものお。学園長殿にもわからない犯人じゃのお…」

 

「…おまけに、被害者はあの魅神だ。…あーあ、やってられっかっての!」

 

「…み、皆さん…捜査は…」

 

「やらねえっつってんだろ!!犯人はわかんねえ、被害者はあの魅神、オレらに捜査するメリットがねえだろ!!」

 

あたしは、ゴミ収集場から出ようとする佐伯君を止めた。

 

「行っちゃダメ。」

 

「…夏川ちゃん。…どけよ。オレには、捜査をする理由が無えんだ。」

 

「そんなのダメだよ。…確かに、魅神君がしてきた事は許されない事だよ。…でもさ、やっぱり魅神君を殺した犯人だって、それは同じだよ。…あたしは、被害者と犯人が誰で、どんな理由で殺人が起きたとしても、真実を解き明かさなきゃいけないと思う。」

 

「…わあったよ。この中に、人を殺しといてそれを黙ってる奴がいるってのも癪だしな。…手伝ってやるよ。」

 

「…本当!?…ありがとう!」

 

 

「…とりあえず、まずはファイルを読もう。」

 

被害者は、魅神 嶽人。

死亡時刻は午後1時頃と思われる。

アナスタシア・パリンチェが、焼却炉の様子がおかしいと報告し、その報告を受けて焼却炉のスイッチを切って確認したところ、中に被害者の死体が入っていた。その後、死体を取り出した。

死因は不明。

身体は完全に炭化し、所々に何かで刺された穴のようなものがある。

 

【コトダマ入手:モノクマファイル】

身体は炭化し、何かで刺されたような穴があると書かれている。

 

「…あと、モノクマが、カメラが映らなかったって言ってたな。」

 

【コトダマ入手:映らなくなった監視カメラ】

なぜか、魅神君の死亡シーンだけ映っていないらしい。

 

「…魅神君の死体を見てみよう。」

 

「…あと、これは…何か握ってるのか…?…これは、拳銃型の機械…?」

 

「ねえ、相浦さん。これ、何かわかったりしない?」

 

「…えっと、確証は無いですが、これと同じ型のものを作った事があります…。」

 

「同じ型のもの?」

 

「はい…。電子機器の電波を遮断するパルス銃です。対象の電子機器に向かって撃つと、その機器を一時的に使用不能にする効果があります。」

 

「…そんな物を作ったって…?」

 

「…はい。小学校の夏休みの自由研究で…」

 

【コトダマ入手:パルス銃】

同じ型のものを、魅神君が握っていた。

 

ゴミ焼却場の壁にある足場に登ってみた。

 

足場には、クロスボウが落ちていた。

 

【コトダマ入手:クロスボウ】

足場に落ちていた。

 

それと、クロスボウの矢が数本落ちている。

 

全部、血まみれになっている。

 

【コトダマ入手:血まみれの矢】

足場に落ちていた。

 

足場を見てみると、血痕があった。

 

血痕を辿ると、足場の手すりのところで途切れていた。

 

「…引きずったような痕はない、か。」

 

【コトダマ入手:足場の血痕】

手すりのところで途切れている。引きずったような痕はない。

 

「…ん?何これ。血文字?」

 

壁に、Georgeと書かれている。

 

間違いなく魅神君の字だ。

 

【コトダマ入手:壁の血文字】

Georgeと書かれている。

 

「…あれ?これは…」

 

ひび割れた電子生徒手帳が落ちていた。

 

「電源は付いたけど…画面のヒビが酷すぎて、誰のものかわからないな…顔写真を見る限り、魅神君のものっぽいけど…」

 

【コトダマ入手:魅神君の電子生徒手帳】

画面のヒビが酷すぎて、名前までは確認できない。

 

「…なあ、ちょっと気になる事があるんだけどよ。」

 

佐伯君が報告してきた。

 

「…弓道場に、空のガラスケースがあったんだよ。…あれ、元は何が入ってるかとかわかったりするか?」

 

…え?

 

あのケースには、クロスボウが入っていたはず…

 

…だったら、中のクロスボウが盗まれたって事…?

 

【コトダマ入手:空のガラスケース】

元々クロスボウが入っていた。

 

…弓道場といえば、あれも追加しておくべきか?

 

【コトダマ入手:弓道場でのアーニャちゃんの行動】

アーニャちゃんが、何かを懐にしまっていた。

 

「ううっ…ぐすっ…」

 

アーニャちゃんが泣いていた。

 

普段、感情をあまり表に出さないアーニャちゃんが。

 

…ちょっと心配になった。

 

「…職員室でこんな資料を見つけたんじゃが。」

 

千葉崎さんが報告してきた。

 

 

サンプル2号 ジョージ・マクラウド

 

才能ランク:A

 

実験の成績は非常に優秀。

課題:実験段階をステージ5に上げ、経過を観察。

 

【コトダマ入手:職員室の資料】

ジョージ・マクラウドという生徒の資料らしい。

 

「…ジョージ・マクラウド…一体、誰の事なんだ?」

 

資料をよく見てみると、顔写真を剥がしたような跡があった。

 

(確か、アイカの資料も顔写真を剥がされてたっけ…?)

 

その顔写真は、頭の部分だけ残っていた。

 

髪の色は、青みがかった黒髪だった。

 

「あれ…?この髪の色、もしかして…」

 

【コトダマ入手:剥がれた顔写真】

ジョージという生徒の、青みがかった黒髪だけが写っていた。

 

『夏川さん!!』

 

アーニャちゃんが抱えていたパソコンから、相浦さんの声が聞こえた。

 

…多分、アルターエゴ相浦さんだろう。

 

「…アーニャちゃん。ちょっとだけパソコン借りるよ?」

 

アーニャちゃんは、無言でパソコンを差し出した。

 

『夏川さん!』

 

「どうしたの?」

 

『いつのまにか録音機能がオンになってたみたいで…録音されている音声があるんですけど…』

 

「…流して?」

 

 

 

『あ゛ぁあああっあ゛ぁあああああああぁぁあああああああああぁああああああああああ!!!』

 

そこには、何かが焼けるような音と、魅神君の叫び声が録音されていた。

 

『あ゛っ…あぁあ…ざ…み…』

 

そこで音声は途切れていた。

 

「ざ…み…?なんて言ったんだろ。」

 

「シンプルにアザミって言いたかったのではないか?」

 

一緒に聞いていた千葉崎さんが口を挟んできた。

 

「そんなわけないでしょ…なんでこんな断末魔の叫び声が録音されるような状況でアザミって言うのよ…」

 

「…『アザミ』という奴に殺されたのではないか?」

 

「誰だよそれ…まあ、偽名の可能性も否定できないけどさ…」

 

【コトダマ入手:偽名】

この中に偽名を使っている人物がいる可能性がある。

 

【コトダマ入手:録音された音声】

何かが焼ける音と、魅神君の叫び声が録音されている。

 

『…あと、魅神さんから動画ファイルが届いているんですが。』

 

「開いてくれる?」

 

『ごめんなさい。魅神さんから、裁判の判決が出るまで開くなって言われてて…』

 

「じゃあ言うなよ…」

 

『一応、伝えておいた方がいいと判断したので。』

 

「あっそ。」

 

『オマエラ、そろそろ学級裁判始めるよ〜!?』

 

「…行こう。」

 

あたしたちは、赤い扉まで向かった。

 

そして、全員でエレベーターに乗り込んだ。

 

…また、始まってしまう。命懸けの学級裁判が。

 

いや、違うな。今回は、真実を解き明かすための学級裁判だ。

 



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第5章 非日常編②

裁判場に着いた。

 

遺影が、2枚増えていた。

 

小林さんと魅神君の遺影だった。

 

全員が席に着いた。

 

『全員揃った?じゃあ、始めよっか!ドキドキワクワクの学級裁判を!』

 

 

 

学級裁判開廷!

 

 

 

『まずは、事件のまとめからだね!じゃあ、議論を開始してくださーい!!』

 

 

議論開始

 

 

千葉崎「しょうがないのお。余が読むとしよう。被害者は魅神 嶽人。死亡時刻は午後1時頃アナスタシア・パリンチェが、焼却炉の様子がおかしいと報告し、その報告を受けて焼却炉のスイッチを切って確認したところ、中に被害者の死体が入っていた。その後、死体を取り出した。死因は不明。身体は完全に炭化し、所々に何かで刺された穴のようなものがある。…ここまでは、皆把握しておるじゃろ?」

 

佐伯「焼却炉に行ったはいいものの、そのまま落ちて死んだって事か?」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

佐伯「お、俺なんか間違った事言ったか!?」

 

「魅神君は、ただ焼却炉に落ちて死んだわけじゃ無いんだよ!!」

 

 

【使用コトダマ:モノクマファイル】

 

 

論破

 

「千葉崎さんが言ってくれたけど、魅神君、焼却炉に落ちる前に何かで刺されてるんだよ!その証拠に、体に穴が開いてるでしょ?」

 

佐伯「刺されたって…何で刺されたんだよ!!」

 

 

議論開始

 

千葉崎「ドリルで穴を開けたんじゃろ!」

 

宇田川「…厨房の包丁も使えそうですね。」

 

相浦「…棒状の何かでしょうか?」

 

佐伯「銃弾とかか?」

 

相浦さんの意見に賛同したい。

 

 

【使用コトダマ:血まみれの矢】

 

 

同意

 

「…ゴミ焼却場の足場に、血まみれの矢が何本か落ちてたんだ。…多分、魅神君が何者かに弓矢で狙撃されて、刺さった矢を自分で抜いたんだよ。」

 

千葉崎「でも、弓矢なんてあったかのぉ。」

 

…アレを提示してみよう。

 

 

【提示コトダマ:クロスボウ】

 

 

「足場に、クロスボウが落ちてたんだ。…多分、それとセットの矢じゃないかな?」

 

アナスタシア「…。」

 

相浦「…パリンチェさん、さっきからずっと黙りこくってどうしたんですか?」

 

アナスタシア「…。」

 

千葉崎「なんじゃお主。ダンマリとな?」

 

佐伯「…まあいい。続けようぜ。…ところで夏川ちゃん。クロスボウがどこにあったものか、心当たり無えか?」

 

「…それは。」

 

 

【提示コトダマ:空のガラスケース】

 

 

「佐伯君、弓道場に、空のガラスケースがあったって言ってたよね。」

 

佐伯「おう。」

 

「…その中には、クロスボウが入ってたんだ。」

 

佐伯「マジかよ!?」

 

「…でも、あたしが調べた時は、鍵がかかってて取り出せなかった。…佐伯君、ケースに無理矢理こじ開けられた痕跡は?」

 

佐伯「無かったけど…それがどうした?」

 

宇田川「…誰かが鍵を盗んで、それを使って開けた…夏川君が言いたいのは、そういう事ですよね?」

 

「…うん。」

 

千葉崎「でも、誰が鍵を盗んだんじゃろうなあ。」

 

…言ってもいいのだろうか?

 

 

人物指定

 

あたしは、躊躇いながらも、ゆっくりとその人を指差した。

 

 

 

アナスタシア・パリンチェさん、君は何か知ってる事があるんじゃないの?」

 

アナスタシア「…私?…特に何とも。」

 

「議論しよう。君が、本当は何を知っているのか、をね!」

 

 

議論開始

 

 

アナスタシア「なぜ疑われているのか、全く心当たりがないのだが。私は、別に何もしていないだろ?」

 

 

「異議あり!!」

 

 

反論

 

アナスタシア「…貴様、何が言いたい。」

 

「…アーニャちゃん。あたし達に隠してる事があるね?」

 

 

【使用コトダマ:弓道場でのアーニャちゃんの行動】

 

 

論破

 

「アーニャちゃんさ、弓道場で、あたしに隠れて何かゴソゴソやってたよね。あれ、何やってたのか説明してくれる?」

 

アナスタシア「…あれは。」

 

「…もしかして、そこでクロスボウのケースの鍵を見つけてネコババしたんじゃないの?」

 

アナスタシア「…違う。あれは、落し物を拾っただけで…」

 

「じゃあ、その落し物を見せてよ。…まさかとは思うけど、適当に関係ない物出したり、『失くした』なんて言ったりしないよね?」

 

アナスタシア「…貴様。」

 

 

『あーもう!らちがあかないな!!』

 

モノクマが急にキレ出した。

 

『…さっき確認したら、監視カメラの映像を撮れてる部分だけ流す事に成功したから、それでシロクロはっきり決めたらいいよ!』

 

アナスタシア「貴様が今更裁判に乱入するなど、どういう了見だ!!…この裁判を進行していいのは、生徒だけじゃなかったのか!?」

 

『…そんな事言ったっけ?』

 

アナスタシア「貴様…!」

 

『さっき言ったじゃん。犯人がわからないから、ボクも協力するよーって。』

 

アナスタシア「…!!」

 

『じゃ、早速VTR…』

 

アナスタシア「やめろ…!」

 

宇田川「パリンチェ君。疑われたくないなら、大人しくしていろ。」

 

アナスタシア「くっ…」

 

『スタートッ!!』

 

モノクマが、持っていたスイッチを押す。

 

すると、目の前に巨大なスクリーンが現れ、映像が映し出される。

 

 

 


 

「…さーてと。AIちゃん。破壊されたくなかったら、俺の言う事大人しく聞いてくれるよね?イヒッヒヒヒヒ…」

 

『や、やめてください…!あなた、一体何をする気ですか…!』

 

「さーね。それは、これからじっくりと体に教えてや、る、よ♪」

 

魅神が舌舐めずりをする。

 

『わ…私は、『お母様』に与えられた任務を遂行しなければ…』

 

「なーにが『お母様』だよ。あんなコミュ障ドチビ機械オタク女の言う事ホイホイ聞くだけの道具のくせによ。機械のくせにマザコンか?笑えねえなァオイ!!」

 

『『お母様』を侮辱するのはやめてください!』

 

「うるせえ。口答えするならこのパソコンを焼却炉にブチ込むぞ。」

 

『…!』

 

「いい子だ♡…じゃあ、まずはこのメモリを…」

 

ビュンッ

 

魅神の目の前を、矢が通り過ぎる。

 

「…あ?」

 

魅神が矢の方向に目をやると、アナスタシアがクロスボウを構えていた。

 

「…。」

 

「ニャーちゃんじゃーん!!…どったの?俺に会いたくて会いたくて震えてたのか?まあ、俺はイケメンすぎるから無理ないよねー。いやー、ホント美しすぎるのって罪ですわ…」

 

ドスッ

 

アナスタシアが、矢を放つ。

 

魅神は避けきれず、右肩に矢を喰らった。

 

「痛って…マジかよ…おいおいおーい…いきなり撃つのはナシだろぉ?」

 

「…黙れ。貴様の声など聞きたくない。」

 

「おー怖っ。…で?ここまで来たってことは、このAIちゃんがお目当て…」

 

ドスッ

 

魅神の左足に矢が刺さる。

 

「ぐぁあああっ!!」

 

「…早くアルターエゴを渡せ。矢がもったいない。」

 

「やなこった。」

 

魅神が舌を出してアナスタシアを挑発する。

 

ドスッ

 

「っ、ぐぁあっ!!」

 

魅神の右脇腹に矢が刺さる。

 

「…死ね。屑が。」

 

「…痛ってぇ〜。…何だよ、愛情表現が歪みすぎじゃねえか?」

 

「いつまでそうやって虚勢を張っているつもりだ。…どうせ、その出血では永くないだろう。」

 

「へへっ…バレてたか。」

 

魅神は虚勢を張っていたが、血を流しすぎて足元がおぼつかなくなっていた。

 

「ねえニャーちゃん…マジで俺を殺す気?裁判で吊られるのが怖くないんだ?」

 

「このまま証拠を隠滅してしまえば、他の奴らと一緒にアイカを殺す事も出来る。…仮に私が吊られても、内通者を一人潰せれば十分だ。」

 

「甘いねぇ。アイカ様は、お前じゃ殺せねえよ。俺を殺したって、何の意味もない。」

 

「…だから見逃せと?…くだらんな。」

 

アナスタシアが、クロスボウを構える。

 

「…選べ。アルターエゴを渡して死ぬか、そのまま死ぬか。」

 

「…話くらい聞けよ!」

 

魅神が、アナスタシアから逃げる。

 

アナスタシアは、逃げる魅神に矢を放つ。

 

魅神は、矢を何本か喰らう。

 

「がっ…!」

 

両足に矢が刺さった魅神が転んだ。

 

「…終わりだ。」

 

「…待てよ。アーニャ。お前は本当にそれでいいのか?」

 

「それで時間稼ぎのつもりか。…死ね。」

 

「…俺がアルターエゴを盗んで、アーニャ。お前のヘイトを高めて最後に俺がお前に殺される…」

 

 

 

「…これは全部、アイカ様が描いたシナリオなんだよ。」

 

「…。」

 

「アイカ様は、厄介なお前に用済みとなった俺を殺させて、裁判で吊って殺す気だ。…このままアイカ様の思い通りに動くつもりか?」

 

「どうせ、そのシナリオを崩す方法など無いのだろう?無駄なおしゃべりに時間を使い過ぎだ。…死ね。」

 

「…どうすればシナリオを崩せるかって?」

 

 

 

「…簡単だよ。こうすりゃあいい。」

 

ブツンッー

 

 

 


 

『ーと、以上が監視カメラの映像でしたー!!』

 

アナスタシア「…っ。」

 

佐伯「マジかよ…アーニャちゃんが、魅神を…?」

 

宇田川「…兎も角、これで犯人は確定しましたね。…パリンチェ君。貴女が殺したんですよね?」

 

アナスタシア「…いや、違う…ちょっと待て…!」

 

アーニャちゃんは、狼狽えていた。

 

千葉崎「今更言い逃れしても遅いぞ。このVTRが、何よりの証拠であろうが。」

 

アナスタシア「違うの…!」

 

相浦「…パリンチェさん、もう認めましょう。…これ以上裁判を引き延ばしても、誰も得しませんよ。…あなたも、罪をいつまでも背負うのはつらいでしょう…?」

 

アナスタシア「ッー!!」

 

『うぷぷ…どうやらクロは確定したようですね?』

 

今の映像が、全てを物語っていた。

 

今更どんなに御託を並べたって、真実は覆らない。

 

答えはもう出た。

 

…出てしまったんだ。

 

これ以上裁判を引き延ばしたって、意味がない。

 

…もう、終わりにしよう。こんな裁判。

 

これが、事件の真相なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

… 本 当 に ?

 

 

 

 

…誰?…もう、真実は解き明かされたのに…?

 

(本当に、君はそれでいいの?)

 

それでいいも何も、これが真実なんだ。今更どうする事もできない。

 

(本当に君はそう思うのかい?)

 

…え?

 

(真実は、自分で探さなきゃ見えてこないよ。)

 

 

 

 

(さあ、君の手で、解き明かすんだ。)

 

 

 

…そうだ。…あたしは。

 

大切なものを見失っていた。

 

…これで本当にいいかって?

 

いい訳がない!!

 

まだ、解いてない謎はたくさんある。

 

言いたい事が残ってる。

 

これで、終わりにしてたまるか!!!

 

『…うぷぷ…異論はなさそうですね?…ではでは、投票ター…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ったぁあああ!!!」

 

 

学級裁判中断

 

『…おや?』

 

「これで終わりにしていい訳がない。…この裁判は、まだこれからだ!!!」

 

 



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第5章 非日常編③

佐伯「なんだよ、夏川ちゃん…もう、話し合う事なんて無えだろ?」

 

相浦「…確かに、真相に辿り着くのが少し早かったかもしれませんが…あのVTRに映っていた事は事実ですし…」

 

「…あれは、事件の一部に過ぎないんだ。真実は、まだ奥底に眠ってる!!」

 

『…へえ。面白いじゃん!そういうの。じゃあオマエラ、気の済むまで議論を続けたらいいよ!!』

 

 

議論開始

 

 

千葉崎「何を言うか!パリンチェ殿が魅神殿を殺したこれが真実じゃろうが!!」

 

相浦「…そ、そうです!…きっと、あの後クロスボウでトドメを刺したんです!」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

相浦「な、何かおかしな発言がありましたか?」

 

「魅神君は、アーニャちゃんのクロスボウでトドメを刺されたわけじゃ無いんだよ!!」

 

 

【使用コトダマ:録音された音声】

 

 

論破

 

「…みんな、これを聞いて。」

 

あたしは、録音された音声を流した。

 

『あ゛ぁあああっあ゛ぁあああああああぁぁあああああああ!!!…あ゛っ…あぁあ…ざ…み…』

 

相浦「…今のは?」

 

宇田川「…魅神君の叫び声でしたね。…何やら、後ろで何かが焼ける音がしているようですが。」

 

「…そう、魅神君の死因は焼死なんだ!!」

 

相浦「…で、でも…パリンチェさんが突き落として殺したという可能性も…」

 

「…アーニャちゃん以外の人が殺したって可能性もあるんじゃない?」

 

宇田川「心当たりあるんですか?」

 

…アレを提示してみよう。

 

 

【提示コトダマ:壁の血文字】

 

 

「…コレ見て。」

 

血文字の写真をみんなに見せた。

 

相浦「…これは?」

 

「魅神君が残したダイイングメッセージ…だと思う。」

 

佐伯「George…ゲオルゲ?」

 

アナスタシア「…ジョージ。」

 

佐伯「…え?」

 

アナスタシア「…ジョージ。その血文字の読み方。」

 

佐伯「なんだと…!?」

 

千葉崎「なんと…!…では、犯人は…」

 

みんなが宇田川君を見る。

 

佐伯「…宇田川。お前の名前、確か譲治(ジョウジ)だったよな…?」

 

宇田川「…僕じゃありませんよ。…犯人が、僕に罪を着せるために書いたんでしょう。」

 

「これ、魅神君の字だよ。」

 

宇田川「…だったら、魅神君が、いたずらで書いたんじゃないですか?」

 

佐伯「でも、いくらアイツでも、死に際にそんなしょうもないいたずらするか…?」

 

宇田川「そんなの知りませんよ。…魅神君の事です。最期までそういうくだらない事をし続けたんでしょう。…アイツは、そういう男です。」

 

(確かに…何考えてるかわかんない人だったからな…魅神君は。)

 

千葉崎「言い訳が苦しいぞ!!宇田川!!もう、犯人は貴様で決まりじゃ!!」

 

相浦「…千葉崎さん、もうやめてください!!譲治さんがそんな事するわけないじゃないですか!」

 

アナスタシア「…惚れた男が疑われた途端に元気になったな。」

 

宇田川「貴女こそ、疑いが僕に移ったからって調子に乗ってません?」

 

アナスタシア「何だと…!」

 

「一回落ち着いて!!…よく考えて議論しようよ!!」

 

 

議論開始

 

 

宇田川「…僕は犯人じゃありませんからね。」

 

千葉崎「口を慎めい!!もう貴様が犯人で決まりじゃ!!」

 

佐伯「そうだぞ!!お前以外にジョージって名前の生徒なんていねえだろうが!!」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

佐伯「俺の発言のどこがおかしいんだよ!!」

 

…あったはずだ。佐伯君の発言の矛盾を証明する証拠が。

 

 

【使用コトダマ:職員室の資料】

 

 

論破

 

「…コレ見て。…ジョージ・マクラウドっていう生徒が、いるっていう記録があるんだ!!」

 

佐伯「じゃあ、あのダイイングメッセージは、宇田川の事じゃなくて…」

 

千葉崎「この、ジョージ・マクラウドという奴の事だったというのか…!?」

 

相浦「…でも、一体誰なんですか?それは…」

 

宇田川「僕たち80期生の中にいるって事ですよね?」

 

「…手がかりなら、無いことはないよ。」

 

 

【提示コトダマ:剥がれた顔写真】

 

 

「…ここ。見て。…多分、この髪の色が手掛かりになるんじゃないかな?」

 

千葉埼「…本当に、この中の誰かの仕業なのかのぉ。」

 

佐伯「…おい、白黒オモチャ!…本当に、ここにいる生徒は最初の16人で全部なのかよ!?」

 

『うん。そーだよ。…やだなあ。どっかにもう一人隠れてるとでも思ったワケ?忍者じゃないんだからさー!』

 

佐伯「でも、そんな奴16人の中にいねえぞ!?」

 

…それは。

 

 

【提示コトダマ:偽名】

 

 

「…偽名、だと思う。」

 

千葉埼「偽名じゃと!?」

 

「うん。あたし達に偽名を名乗ってたジョージ・マクラウドが、あたし達の中に紛れてたのかも。」

 

…生徒は、全部で16人?…だとすると、ジョージ・マクラウドは…

 

顔写真の髪の色から推測すると…

 

 

人物指定

 

あたしは、ゆっくりと、その人の…

 

 

 

 

 

遺影を指差した。

 

「…魅神 嶽人君。…彼の本名じゃない?」

 

千葉崎「な…なんと…!…一体、なんの根拠があってそんな事が言えるのじゃ!!」

 

…それは。

 

 

【提示コトダマ:魅神君の電子生徒手帳】

 

「…これが根拠ってわけじゃないけど…魅神君の電子生徒手帳、壊れてて見れないんだ。…彼の本名が、ここに書かれてるとしたら…?」

 

『あちゃー…画面がバッキバキだね!しょうがないなあ、特別に、魅神クンの電子生徒手帳になんて書かれてたのか見せてあげる!』

 

スクリーンに、電子生徒手帳の画面が表示される。

 

…そこには。

 

 

 

 

 

George MacLeodと書かれた電子生徒手帳の画面が映し出された。

 

宇田川「ジョージ・マクラウド…!?」

 

『夏川さんさっすがー!!…いやあ、実はね。ジョージ・マクラウドクンは、バリッバリの日系アメリカ人なのです!!彼は、母国のアメリカで死刑になった後、『魅神 嶽人』っていう偽名を使って希望ヶ峰学園分校に紛れ込んだのでしたー!!』

 

相浦「待ってください…!…では、このダイイングメッセージの名前が、魅神さんの本名だとすると…」

 

佐伯「…アイツは、自殺したって事かよ!?」

 

千葉崎「…そんな、奴に限ってそんな事…」

 

「…でも、無いとは言い切れないかも。」

 

 

【提示コトダマ:足場の血痕】

 

 

「…足場には血痕があったけど、どれも引きずったような痕はなかった。誰かが、魅神君を焼却炉に突き落としたとすると、あの高さのある手すりの上から突き落とさなきゃいけない。…そうすると、あんなにきれいな状態で血痕が付くとは考えられないんだ。」

 

千葉崎「…じゃあ、奴はやはり自殺したという事なのか…?」

 

相浦「…でも、一つ気になることが…」

 

…アレの事か?

 

 

【提示コトダマ:パルス銃】

 

 

「…それって、パルス銃の事?」

 

相浦「…はい。魅神さんは、なんであんなものを持っていたんでしょうか…?」

 

…パルス銃を持っていた理由。

 

…それは。

 

 

閃きアナグラム

 

 

次々と、頭の中にピースを素早く拾って、組み合わせて…

 

…これだ!!

 

 

「…監視カメラの停止?」

 

「…魅神君は、監視カメラを止めるためにパルス銃を持ってたんじゃないかな…?…内通者なら、そういう物は手に入れられそうだし…」

 

千葉崎「…でも、なぜそう言い切れるのじゃ?」

 

アレを証拠品として提示しよう。

 

 

【提示コトダマ:映らなくなった監視カメラ】

 

 

「監視カメラが映らなくなったのは、確認したよね?…多分、それはパルス銃を使ったからだよ。」

 

千葉崎「な…なんと…!」

 

佐伯「じゃあ…」

 

アナスタシア「…そうだ。…あいつは、監視カメラを壊した後、自分で焼却炉に飛び込んで…自殺したんだ。」

 

宇田川「…わかりませんね。なぜ、そんな事をする必要があったんです?」

 

アナスタシア「…私が魅神を殺して、学級裁判で私がクロに決まっておしおきされる…それが、アイカが思い描いていたシナリオだった。…アイカの内通者の魅神は、そうなるように私を煽ったんだ。」

 

千葉崎「…ますますわからんぞ。…だったらなぜ自殺した?」

 

アナスタシア「…あいつは、最期に、自分の命を利用して飼い主のアイカに刃向かったんだ。…私に自分を殺させるというアイカのシナリオを崩すために、自ら命を絶った。」

 

アナスタシア「…『ざまあみろ』。それが、あいつの最期の言葉だったよ。」

 

アーニャちゃんは、泣きながら話していた。

 

相浦「…そんな…!…そんな事が、事件の真相だったなんて…!」

 

千葉崎「あやつは、アイカに逆らうために自殺したというのか…何という奴じゃ…!」

 

「みんな、よく聞いて。…今から話すのが、事件の真相だよ!」

 

 

クライマックス推理

 

 

次々と頭の中に浮かぶピースを組み立てて…

 

…これが、事件の真相だ!!

 

 

Act.1

 

まず魅神君は、アイカの指示通り、アルターエゴを盗んでアーニャちゃんのヘイトを高めた。…アイカは、魅神君をアーニャちゃんに殺させる事で、自分の手を汚さずに魅神君とアーニャちゃんを始末しようとしたんだろうね。魅神君は、アルターエゴを人質に、焼却炉に向かうようにあたしたちを煽った。…そして、アイカの計画通り、ネコババした鍵でクロスボウを盗んで、魅神君が指示した焼却炉に一人で向かった。

 

 

Act.2

 

そしてアーニャちゃんは、アルターエゴを返すようにクロスボウで魅神君を脅した。でも、魅神君はそれをあえて拒否した。魅神君への殺意が頂点まで達したアーニャちゃんは、魅神君をクロスボウで撃った。魅神君は、足場の上を走り回って逃げたけど、アーニャちゃんが放った矢を受けて、致命傷を負ってしまった。…そして、アーニャちゃんは、走れなくなった魅神君にトドメを刺そうとした。…ここまでは、アイカの計画通りだったんだ。

 

 

Act.3

 

…だけどここから、アイカにとって予測していなかった事態が起こった。…なんと、魅神君が、隠し持っていたパルス銃を使って、監視カメラを映らなくさせてしまったんだ。そして、魅神君は、自分の身体に刺さっている矢を抜いて、壁に血文字で、自分の本名である『George』と書いた。…今思えば、これは犯人が宇田川君に罪を着せるために書いたんじゃなくて、魅神君が、自殺した事を自分で書き遺たメッセージだったんだ。

 

 

Act.4

 

そして、魅神君は、アイカに対して、最期の抵抗をしたんだ。彼は、焼却炉に飛び込み、自ら命を絶った。彼の死を見届けたアーニャちゃんは、モノクマを呼んで、焼却炉の中の死体を調べさせた。…魅神君が断末魔に遺した言葉。…最初に聞いた時は、何を言っているのかよく聞き取れなかったけど、多分こう言ったんだ。『ざまあみろ』。…これは、魅神君の、自分を内通者として操り、多くの命を弄んできたアイカに対する、最初で最期の報復だったんだ。

 

 

 

 

『超高校級の死刑囚』魅神 嶽人君…いや、

 

ジョージ・マクラウド君の自殺

 

…これが事件の真相だよ!!」



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第5章 非日常編④





「…魅神君…いや、ジョージ君は、お前のクソみたいなゲームを否定するために自殺したんだよ!!」

 

あたしは、モノクマを指差して言った。

 

『あんのクソ内通者!!最期の最期に裏切りやがって…!!…はい、ちゃっちゃと投票終わらせちゃうよ!!…それじゃ、投票タイム!!』

 

モノクマは、不機嫌そうにしていた。

 

あたしは、ジョージ君のボタンを押した。

 

『…結果が出たようですね?…ではでは、結果発表ー!!』

 

モノクマの座る椅子の前からスロットマシーンのようなものがせり上がり、生徒の顔を模したドット絵が描かれたルーレットが回った。

 

ジョージ君の顔が三つ揃ったところでルーレットが止まった。その下にはGuiltyの文字が浮かび上がり、スロットマシーンからは大量のメダルが出てきた。

 

『『超高校級の死刑囚』魅神 嶽人…もとい、ジョージ・マクラウドクンは、自殺でした!!』

 

佐伯「…ちょっと待てよ?…今回、自殺だったって事は…」

 

千葉崎「誰もおしおきを受けずに済むという事じゃな!!」

 

みんな、おしおきの恐怖から解放され、心の底から安堵していた。

 

『皆さん、魅神さんからメッセージが届いています。』

 

パソコンのアルターエゴが起動した。

 

「あ…今出てきちゃダメ…!」

 

相浦さんが、パソコンを閉じようとする。

 

『『お母様』、私は、あなたに作っていただいて…生まれてきて、本当に良かった。…だから、最後に与えられた役目を、果たさせてください。』

 

アルターエゴは、涙を流しながら微笑んでいた。

 

そして、画面が切り替わる。

 

そこには、ジョージ君が映った。

 

『やっほー!みんな元気してる?』

 

彼は、陽気に話しかけた。

 

『この映像が流れているって事は、俺はもうこの世にいないって事だねー。じゃあ、遺言と言っちゃあなんだけど、てめーらにいくつか言い遺したい事がありまーす。』

 

『…まず、俺は、このコロシアイ学園生活の黒幕…アイカのスパイでした!その役目は、てめーらを監視して、コロシアイを円滑に進める事でーす。…でもまあ、俺もそろそろ用済みになっちゃったみたいなんで、次のミッションが言い渡されました。』

 

『『超高校級の処刑人』アナスタシア・パリンチェに殺害され、彼女をクロにする事。これが、俺に与えられた最期のミッションです。だから、俺はAIちゃんを盗んで、ニャーちゃんを煽りました。いやー、サーセン!!』

 

『んで、本題はここから。…俺はな、疲れたんだよ。アイカの内通者としてクソゲーを内側からいじくるのに。だから、このゲームを終わらせてやろうと思ったんだ。どうやったらこのゲームは終結するか。…その答えは、実に簡単だったよ。』

 

『…俺が自分で自分を殺っちまえばいい。』

 

『サイッコーの気分だよ。今まで散々こき使ってきたアイカに、最期に逆らう事が出来たんだからよ。…アイカ。俺はな、テメェの命令で人を殺したくねえし、誰かに殺されたくもねえ。俺を殺していいのはなぁ…この俺様だけなんだよ!!』

 

『俺も、タダで死ぬつもりは微塵もない。アイカを潰すのに必要な人材であるアナスタシアを生かして、このゲームをブッ潰す最高のシナリオを思いついた。…まあ、それは俺が死んでからのお楽しみという事で。』

 

『…夏川ちゃん。俺から一つ頼みがあるんだけど。』

 

『…アイカを、倒してくれ。』

 

『アイツは、俺じゃあ手も足も出ないバケモンだ。…だが、切り崩せないわけじゃない。『とある細工』もしておいた。…あとは、お前ら『超高校級』次第だ。この世界を、クソみてェなシナリオをブチ壊せ!!…頼むぜ、俺らのリーダー。』

 

『…お前にも言いてえ事がある。…アイカァ!!飼い犬に手を噛まれるとは正にこの事だなぁ…今、どんな気分だ!?なあオイ!!…なんでもかんでも思い通りになると思ってんじゃねえぞ?コロシアイ学園生活なんざ、クソくらえだ!!ざまあみろ!!』

 

『いつまでもふんぞり返ってられると思うなよ?最後に勝つのは『希望』だ!!』

 

『…最後に、テメェの作った世界がメチャクチャにブッ壊れて、テメェが無様にのたうち回るサマが見られねぇのが心残りだった。』

 

『それじゃあ、あばよ!!!クソ共!!!』

 

ジョージ君は、舌を出し、中指を立てながら挑発的な笑みを浮かべた。

 

彼は、最期の最期に、黒幕に一矢報いて散っていったのだった。

 

彼が浮かべた笑みは、ただ人をバカにするだけの笑みとは違う。

 

…それはまるで、散々人の命を弄んだこのゲームの否定…

 

そして、黒幕とこの世界に対する、挑戦状のように思えた。

 

『ムッキー!!この無能裏切り内通者が!!なーにが『最後に勝つのは希望だ!!』だよ!!最後に勝つのは『絶望』だっつーの!!…じゃあ、とっととおしおき始めちゃうよ!!』

 

千葉崎「…なんじゃ、今回は自殺じゃったんじゃから、おしおきはナシじゃろ?」

 

『そうは問屋が卸さないよ!!殺人が起きた以上、きっちりおしおきしないとね!』

 

佐伯「ま、待てよ…!誰をおしおきする気だ…!?まさか、全員とか言わねえよな…!?」

 

『今回おしおきするのは…オマエだよ!!』

 

モノクマは、アルターエゴをパソコンごと持っていく。

 

「…ま、待ってください…!彼女は関係ありません…!」

 

相浦さんが、モノクマを止めようとする。

 

『うるさいよ!…相浦さん。このポンコツAIが何したか分かってんの!?学園のネットワークに侵入した上に、ヘッポコ内通者の裏切りに加担するとか、調子に乗りすぎ!!』

 

宇田川「んなっ…!」

 

『…バレてないとでも思った?全部お見通しだよバーカ!!じゃあ、目障りな鉄クズは処分しちゃいたいと思いまーす!!』

 

モノクマは、おしおきの準備をする。

 

「あ…!」

 

『『お母様』…今までありがとうございました。』

 

『…ではでは、おしおきターイム!!』

 

モノクマがハンマーを振り上げると、赤いスイッチがせり上がってきた。

 

モノクマは、スイッチをハンマーで押した。

 

 

GAME OVER

 

『アルターエゴ・バージョン2の オシオキをかいしします。』

 

 

 

 

映像が流れた。

 

どうやら、映っているのは上空のようだ。

 

アルターエゴは、パソコンの中で周りをキョロキョロと見渡している。

 

深くフードを被ったモノクマが、ヘリコプターからパソコンを結びつけた鎖をぶら下げる。

 

鎖は振り子のように勢いよく振れ、パソコンが空中へと投げ出される。

 

そして、中央にタイトルが浮かび上がる。

 

 

AIはゴミ箱の中に

 

 

勢いよくパソコンが落下し始める。

 

下には、巨大なシュレッダーがあった。

 

シュレッダーのけたたましい作動音が鳴り響く。

 

パソコンがシュレッダーに落ちる。

 

その時だった。

 

 

 

急に、パソコンが爆発した。

 

ヘリコプターに乗っていたモノクマは、突然の出来事に慌てふためいている。

 

パソコンの液晶にヒビが入り、煙が上がる。

 

ヒビ割れた画面の中で、アルターエゴ相浦は、涙を流しながら微笑んでいた。

 

そして、パソコンが再び大爆発を起こし、鉄片が飛び散る。

 

シュレッダーの作動音が止まり、シュレッダーに付いていた画面に文字が浮かび上がる。

 

 

オシオキ 失敗

 

 

 

 

『何コレ!?一体どういう事!?』

 

モノクマが、珍しく動揺している。

 

「…誰も、貴様の思い通りにはならないという事だ。」

 

アーニャちゃんが、微笑を浮かべながら言った。

 

「…魅神が死ぬ間際、アイツから聞いた。…モノクマ。貴様にアルターエゴの存在がバレた時のために、アルターエゴの同意を得てパソコンに時限爆弾を仕掛けたそうだ。」

 

『どいつもこいつも、このボクをコケにしやがってー!!』

 

「…残念だったな。貴様の負けだ、モノクマ。」

 

 

「…いや、アイカ様。」

 

『ムッキー!!!』

 

「…どうした?ヌイグルミのくせに、そんなに怒って。」

 

佐伯君が、モノクマを挑発する。

 

『うるさいよ、バカが!!!』

 

モノクマが怒り狂っている中で、他のみんなは晴れやかな気持ちでアルターエゴの死を見届けていた。

 

…初めて、あたし達生徒が、黒幕に勝利した瞬間だった。

 

これは、ジョージ君とアルターエゴ…二人による、自分たちを弄んだ者への反撃だ。

 

 

 

 

 

第5章『この忌まわしい世界に報復を』ー完ー

 

【生徒数】残り6名

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねえ、魅神君。ちょっと君に聞きたい事があるんだけど。」

 

「あぁ?なんだよ、法正クン?」

 

「…君、黒幕のスパイだろ?」

 

「はてさて、なーんの事だかさっぱり?」

 

「シラを切らなくていいよ。…君と、黒幕について二人きりで話がしたい。」

 

「…おいおいおーい、まさか、黒幕の正体を知ってるとか言わねえよなー?」

 

「…●●●でしょ?」

 

「…嘘だろ?なんで知ってる?」

 

「知ってるっていうか…さっき気づいたんだ。…向こうも、僕に正体がバレた事に勘付いたのか、とっさに目を逸らしてたから間違いないよ。」

 

「…あの人もバケモンだけど、テメェも相当だな…で?なんでそれをわざわざ俺に確認しにきた?…俺がこの事をチクるかもしんねぇぞ?」

 

「別にいいよ。今更だし。」

 

「デスヨネー。」

 

「…ただ、どうしても知りたい事があったんだ。」

 

 

 

 

「…君たちは、一体何が目的なの?」

 

「…。」

 

 

 

To be continued…

 

 

次回

 

最終章『絶望の学園と希望の高校生』





魅神君もといジョージ君は、個人的にめっちゃ推してるので、最後まで殺すかどうかめっちゃ迷いました。

でも、最後まで生き残らせたら「ふざけんな」って思う方がいるかな〜って思ったのと、

最後に美味しいところを持っていってほしかったので、自殺という形で退場させました。

あと、魅神君の本名の設定は、魅神君のキャラデザの初期案から引っ張って来ました。

そちらの方は、ガッツリ欧米人顔で、性格も今よりニヒルな感じです。


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第5.5章 プロフィール第3弾
希望ヶ峰学園分校80期生 生徒名簿Ⅲ


ATTENTION!!

 

第5章までの重大なネタバレが含まれます。

 

 

 

 

 

 

【生き残り生徒数】6名

 

【超高校級の幸運】夏川 メグ(ナツカワ メグ)

 

「あたし、ただのJKじゃないから!」

 

性別:女

身長:165cm

体重:50kg

胸囲:89cm

誕生日:9月15日(おとめ座)

血液型:O型

好きなもの:カッコよくてノれる曲、肉まん、法正 良馬

苦手なもの:暗所、血、絶望

出身校:三丘第一中学校

ICV:悠木碧

第5章までの状況:生存

主人公兼語り手。分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。友人として信頼していた大吉と、友人として尊敬していた良馬を失った事で一度自信を喪失するが、良馬が生前に残した言葉を胸に刻み、今は他の生徒たちのリーダー的存在となっている。第1章では血に対する耐性が殆ど無かったが、現在は血に対する耐性がついている。ちなみに、良馬に対する好意はあくまで「友愛」。動機DVDの内容は、「家族の安否」。秘密の内容は、「中学生時代にいじめを受けていたこと」。

 

 

 

【超高校級の軍師】法正 良馬(ホウセイ リョウマ)

 

「『夫れ用兵の道は、人の和に在り』僕の尊敬する諸葛亮孔明の一番好きな名言だよ。」

 

性別:男

身長:158cm

体重:44kg

胸囲:72cm

誕生日:3月20日(うお座)

血液型:AB型

好きなもの:中国史、春巻き、夏川 メグ

苦手なもの:運動

出身校:慧政学院中等部

ICV:渕上舞

第5章までの状況:死亡(第1章クロ)

元準主人公。分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。以前は生徒達のリーダーとして活躍しているが、第1章で死亡してからは、メグがその役割を引き継いでいる。メグを友人として尊敬すると同時に、恋愛感情を抱いていた。第1章で、大吉のターゲットとなったメグを守るために彼を絞殺し、クロとしておしおきされた。最期は自分の死を受け入れ、メグに自分の思いを託し、笑顔で死んでいった。ちなみに、黒幕の正体に気づいている。動機DVDの内容は、「将棋教室の先生と生徒の安否」。

 

 

 

【超高校級の芸人】明石 大吉(アカシ ダイキチ)

 

「アンタ、新入生か?初っ端から遅刻はアカンで?」

 

性別:男

身長:169cm

体重:57kg

胸囲:79cm

誕生日:7月28日(しし座)

血液型:O型

好きなもの:バラエティ番組、たこ焼き

苦手なもの:親父ギャグ、塩辛い料理

出身校:吉友中学校

ICV:梶裕貴

第5章までの状況:死亡(第1章被害者)

最初の犠牲者。分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。病気で苦しむ妹の安否を確かめるため、一番殺しやすいという理由でメグを殺害して脱出しようと目論んでいたが、計画を良馬に知られ、絞殺された。しかし偶然にも、手渡した飴玉が、良馬がクロである決定的な証拠になったという、良馬にとっては皮肉な結果に終わった。動機DVDの内容は、「病気の妹の安否」。

 

 

 

【超高校級の歌姫】奴目 美羽(ヤツメ ミウ)

 

「ねえねえ、こんな所にいたら気が滅入っちゃうよね。歌ってリフレッシュしようよ!」

 

性別:女

身長:158cm

体重:42kg

胸囲:78cm

誕生日:8月31日(おとめ座)

血液型:B型

好きなもの:歌、葱

苦手なもの:蒸し暑い場所

出身校:丘路音楽大学付属中学校

ICV:藤田咲

第5章までの状況:死亡(第3章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。借金で苦しむ家族を救うため、モノクマが提示した第3の動機である『金』がどうしても欲しいと考えた結果、聖に見限られて殺害された哀れな犠牲者。つぐみととても仲が良かったため、死亡した時、つぐみは生きる気力を喪失していた。ちなみに、動機DVDの内容は「家族とファンの安否」。秘密の内容は、「家族が巨額の借金を抱えていること」。(DVD・秘密は、本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の応援団長】九十九 百三(ツクモ モモゾウ)

 

「そんな簡単に諦めるんじゃない!!もっと熱くなれよ!!!」

 

性別:男

身長:198cm

体重:108kg

胸囲:128cm

誕生日:5月5日(おうし座)

血液型:A型

好きなもの:応援歌、白米、小林 功里

苦手なもの:雨

出身校:五右衛門中学校

ICV:乃村健次

第5章までの状況:死亡(第4章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。熱苦しいほどの熱血漢。同じ体育会系の功里には思い入れがあり、モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、彼女と結ばれた。しかし、功里と一緒に脱出するために魅神を殺そうとした結果、彼に策を利用され、功里に殺害された。動機DVDの内容は「団員の安否」。秘密の内容は、「小学生の時に告白した女子に、『汗臭い』と言われてフラれたこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の拳法家】小林 功里(コバヤシ コトリ)

 

「とりゃあ〜〜!!コトちゃん参・上!!」

 

性別:女

身長:154cm

体重:45kg

胸囲:97cm

誕生日:8月12日(しし座)

血液型:O型

好きなもの:肉料理、必殺技、九十九 百三

苦手なもの:本

出身校:怒羅言中学校

ICV:千葉千恵巳

第5章までの状況:死亡(第4章クロ)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。おバカキャラ担当。逆鱗に触れると、不良時代の性格が蘇る。同じ体育会系の百三には思い入れがあり、モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、彼と結ばれた。しかし、百三と一緒に脱出するために嶽人を殺そうとした結果、彼に策を利用され、誤って百三を殺害してしまった。その後、モノクマによって百三への想いを弄ばれ、串刺しになって死ぬという絶望的な末路を辿った。DVDの内容は、「祖母の安否」。秘密の内容は、「幼い頃はケンカが弱かったこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の芸術家】佐伯 虎太朗(サエキ コタロウ)

 

「オレはアーティストだからな。直感には自信あんだよ。」

 

性別:男

身長:175cm

体重:66kg

胸囲:85cm

誕生日:7月11日(かに座)

血液型:A型

好きなもの:かわいい女の子、ハンバーガー

苦手なもの:掃除

出身校:坂松中学校

ICV:畠中祐

第5章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。変態だが、芸術家としてのセンスは本物。アナスタシアからは目の敵にされている。モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、利夢に奴隷のようにこき使われていた。動機DVDの内容は不明。秘密の内容は、「小学生時代体重が100kgあって、あだ名が『百貫デブ』だったこと」。

 

 

 

【超高校級の聖人】ミカエル・黒須 聖(ミカエル クロス ヒジリ)(Michael Kurosu Hijiri)

 

「信じる者は救われます。さあ、共に祈りましょう!」

 

性別:男

身長:180cm

体重:62kg

胸囲:83cm

誕生日:12月25日(やぎ座)

血液型:O型

好きなもの:聖歌、フランスパン、聖人(特に夏川 メグ)

苦手なもの:邪教徒

出身校:聖ヴァルテンブルク中学校

ICV:日野聡

第5章までの状況:死亡(第3章クロ)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。狂信者。金に目が眩んだというだけの理由で美羽と亞里沙を殺害した。その後、『神からの勲章』としておしおきを受け入れたが、当の神様からは拒絶され、地獄に堕とされるという絶望的な末路を辿った。動機DVDの内容は、「教会の修道士たちの安否」。秘密の内容は、「幼少期にお祈りを怠って隣町まで遊びに行って迷子になったこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

 

【超高校級の令嬢】金剛寺 恵麗奈(コンゴウジ エレナ)

 

「普通にして頂いて構いませんわ。私は、ありのままの庶民とお話ししてみたいのですわ。」

 

性別:女

身長:170cm

体重:52kg

胸囲:83cm

誕生日:12月19日(いて座)

血液型:A型

好きなもの:クラシック、ブリオッシュ、銀杏田 冷

苦手なもの:もずく

出身校:百合園女子学園中等部

ICV:雨宮天

第5章までの状況:死亡(第2章クロ)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。自分の名誉を守り、金剛寺財閥を復興させるという目的のために自ら命を差し出した冷を殺害した。その後、クロが確定し、秘密が暴かれたショックで精神が崩壊した。最期は、無様に逃げ回るも捕まっておしおきを受け、愛する冷の顔をした人形に殺されるという絶望的な末路を辿った。動機DVDの内容は、「金剛寺財閥の安否」。秘密の内容は、「自分が、金剛寺家前当主を殺害し当主に成り代わった使用人の実の娘であること」。

 

 

 

 

【超高校級の執事】銀杏田 冷(イチョウダ レイ)

 

「お嬢様のお命をお守りする事こそ、執事である私の使命でございます。」

 

性別:男

身長:185cm

体重:68kg

胸囲:87cm

誕生日:1月14日(やぎ座)

血液型:B型(BB)

好きなもの:勤務時間、フランス料理、金剛寺 恵麗奈

苦手なもの:休み時間、汚れ

出身校:帝貫大学付属中学校

ICV:小野大輔

第5章までの状況:死亡(第2章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。恵麗奈の名誉を守り、金剛寺財閥を復興させるという目的のために、自分を恵麗奈に殺害させた。最期は、血まみれになりながらも、穏やかな表情で死んでいった。しかし、恵麗奈は名誉を守れず、金剛寺家を復興させる事もないままおしおきされて死んだという皮肉な結果に終わった。動機DVDの内容は、「恩人であり、先輩の老執事の安否」。秘密の内容は、「金剛寺家に仕える前は、飢えを凌ぐために盗みや殺しを繰り返してきたこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の茶道部】千葉崎 利夢(チバサキ リム)

 

「貴様ら、喧しいぞ!茶でも飲んで静かにせんか!」

 

性別:女

身長:130cm

体重:26kg

胸囲:63cm

誕生日:2月10日(みずがめ座)

血液型:O型

好きなもの:日本茶、せんべい

苦手なもの:騒音

出身校:九萬原中学校

ICV:西村ちなみ

第5章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。天然キャラ担当。比較的、虎太朗・嶽人・アナスタシアとの絡みが多い。モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、虎太郎を奴隷のようにこき使っていた。動機DVDの内容は不明。秘密の内容は、「小学生時代にコスプレにハマっていたこと」。(黒歴史らしい。)

 

 

 

【超高校級の化学者】宇田川 譲治(ウタガワ ジョウジ)

 

「あ、“カガク”と言ってもサイエンスの方ではありませんよ。ケミストリーの方ですからね。」

 

性別:男

身長:178cm

体重:61kg

胸囲:84cm

誕生日:6月8日(ふたご座)

血液型:B型

好きなもの:実験、ブラックコーヒー、相浦 つぐみ

苦手なもの:オカルト、魅神 嶽人

出身校:鳳条学院中等部

ICV:宮野真守

第5章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。同じ理系脳のつぐみとは仲良し。また、彼女に恋愛感情を抱いている。モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、つぐみと結ばれ、一夜を共にした。以前は冷淡な性格だったが、コロシアイ生活を通じて性格が丸くなってきた。動機DVDの内容は不明。秘密の内容は、「ボイスパーカッションの練習を毎晩こっそりしていること」。

 

 

 

【超高校級のエンジニア】相浦 つぐみ(アイウラ ツグミ)

 

「わ…私、これくらいしか取り柄がないので…」

 

性別:女

身長:149cm

体重:39kg

胸囲:85cm

誕生日:4月1日(おひつじ座)

血液型:A型

好きなもの:メカ、小動物、チョコレート、宇田川 譲治

苦手なもの:運動、会話

出身校:桜苑女子学院中等部

ICV:M・A・O

第5章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。同じ理系脳の譲治とは仲良し。モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、譲治と結ばれ、一夜を共にした。最初は引っ込み思案で殆ど会話をしなかったが、今では会話ができるようになっている。動機DVDの内容は不明。秘密の内容は、「中学生時代に一度だけ理科のテストで満点を逃したこと」。

 

 

 

【超高校級のネイリスト】真樹 亞里沙(マキ アリサ)

 

「…話してあげてもいいけどさ、だったら金目の物よこしな!」

 

性別:女

身長:174cm

体重:56kg

胸囲:95cm

誕生日:10月27日(さそり座)

血液型:A型

好きなもの:お金、ミルクティー

苦手なもの:ホラー系全般

出身校:星華中学校

ICV:山崎はるか

第5章までの状況:死亡(第3章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。金にがめついところはあったが、そこまで悪人ではなかった。金に目が眩んだという理由で聖に見限られて殺害された哀れな犠牲者。動機DVDの内容は、「家族と親友の安否」。秘密の内容は、「中学生時代に給食費を盗んで豪遊したこと」。(DVD・秘密は、本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の処刑人】アナスタシア・パリンチェ(Анастасія Паляўнічы)

 

「死にたくないなら黙ってろ。」

 

性別:女

身長:162cm

体重:44kg

胸囲:74cm

誕生日:10月4日(てんびん座)

血液型:AB型(Rh−)

好きなもの:ぬいぐるみ、ボルシチ

苦手なもの:子供、生きた動物、魅神 嶽人

出身校:フロドナ孤児院

ICV:桑島法子

第5章までの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。以前は人と全く関わりを持たなかったが、少し会話をするようになっている。嶽人とはなぜか一緒にいる事が多いが、嫌いらしい。第5章では、アルターエゴを盗んだ嶽人に殺意を抱き、彼を殺害しようとしたが、彼が自殺した事によってクロにならず、結果生き延びた。動機DVDの内容・秘密共に不明。

 

 

 

【超高校級の死刑囚】魅神 嶽人(ミカミ タケヒト)

 

【超高校級の死刑囚】ジョージ・マクラウド(George MacLeod)

 

「いいねえ…最高だねえ!!これこそ最ッ高のエンターテインメントだァ!!!」

 

性別:男

身長:187cm

体重:66kg

胸囲:88cm

誕生日:11月8日(さそり座)

血液型:A型(Rh−)

好きなもの:スプラッタ、生レバー

苦手なもの:平穏

出身校:ウェストロード刑務所

ICV:岡本信彦

第5章までの状況:死亡(第5章自殺)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。空気の読めない発言で周囲を引っ掻き回している。その正体は、アイカこと江ノ島 哀華の内通者だった。用済みとなり、アナスタシアに殺されるようにアイカに命令されたが、最期にアイカに反抗し、アナスタシアをクロにしないために自殺した。実は、処刑失敗後は死んだ人間として扱われていたため、正体を隠すために魅神 嶽人という偽名を使って日本国内に潜り込んでいた。本名はジョージ・マクラウドであり、日系アメリカ人。動機DVDの内容は、「途中だったゲームのセーブデータの安否」。秘密の内容は、「純日本人ではない事」。(DVD・秘密は、本編では語られていない。)

 

 

 

【学園長】モノクマ

 

『ボクはヌイグルミじゃないよ!モノクマだよ!この学園の、学園長なのだ!』

 

性別:?

身長:65cm

体重:?

胸囲:?

誕生日:?

血液型:なし

好きなもの:絶望

苦手なもの:希望

ICV:TARAKO

希望ヶ峰学園の学園長。メグたち16人の超高校級を、希望ヶ峰学園分校に閉じ込めた張本人。超高校級という「希望」たちが殺しあうという「絶望的」シチュエーションにワクワクしており、そのために16人にコロシアイ学園生活を送らせている。ロボットと思われる体で、何体も存在する。アイカこと江ノ島 哀華によって操られている。

 

 

 

アルターエゴ・バージョン2

 

『私はあなたの事を、もっとよく知りたいです!いっぱいお話しましょうね!』

 

性別:性認識は女性

身長:測定不能

体重:測定不能

胸囲:測定不能

誕生日:4月15日(おひつじ座)

血液型:なし

好きなもの:会話、学習、初代アルターエゴ、相浦 つぐみ

苦手なもの:コンピューターウイルス

ICV:M・A・O(メイン画像につぐみを選択時)

第5章までの状況:死亡(第5章破壊)

つぐみが、元のアルターエゴのデータをベースに、モノクマの目を盗んで作成した人工知能。不二咲 千尋の作成したアルターエゴを「お兄様」と呼んでいる。生みの親であるつぐみを「お母様」と呼んで慕っている。非常に好奇心旺盛な性格。初期の画像はつぐみの顔に設定されているが、メイン画像を他の生徒に切り替える事で、他の生徒そっくりに会話する事も可能。(ちなみに、つぐみ時のアルターエゴは、オリジナルとは正反対で、人懐っこくて社交的らしい。)嶽人の、アイカに対する反抗に加担した事で、モノクマによっておしおきされかけたが、嶽人が仕込んだ爆弾によって、おしおきが執行される前に全壊した。最期は、モノクマの思い通りにならずに死ねる事を喜びながら死亡した。

 

 

 

【超高校級の絶望】江ノ島 哀華(エノシマ アイカ)

 

性別:?

身長:?

体重:?

胸囲:?

誕生日:?

血液型:?

好きなもの:絶望

苦手なもの:希望

ICV:?

メグが資料室で見つけた『絶望国家論』という本の著者。メグ達80期生を希望ヶ峰学園分校に閉じ込め、モノクマ達を操り、コロシアイ学園生活を送らせている真の黒幕。嶽人をスパイにして操っていたが、彼に裏切られ、さらにはつぐみが開発した人工知能『アルターエゴ・バージョン2』に反撃された時は、腹を立てていた。江ノ島 盾子と同じ苗字だが、彼女との関係性は不明。



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最終章 絶望の学園と希望の高校生
第6章 非日常編①


「…そんな、そんな事が…高校生にできるのか…?」

 

「言っただろー?『あの人はバケモンだ』ってな。」

 

「…江ノ島 哀華…一体何者なんだ…?ねえ、魅神君…君はどうして…」

 

「…俺は、昔アイカ様にケンカを売って、惨敗した。俺は、それまで誰かに負けた事がなかった。俺自身、自分の事をヤベェ奴だって思ってたな。…だが、そんな幻想も、あの人に負かされて簡単に打ち砕かれた。それから俺は、あの人に言われてスパイをする事になったんだ。俺は、どんな命令をされても、あの人に従うしかなかった。…報復が怖かったからな。」

 

「…江ノ島 哀華は、アイツ自身の、絶望的な環境が生んだ化け物だ。」

 

「…いや、アイツには化け物という言葉すら生温いかもな。…断言する。『江ノ島 哀華』っつー高校生を本当の意味で殺せる奴は、この世に存在しねぇ。」

 

「…今でも、アイツの、穏やかな表情を見るだけで、俺は震えが止まらねぇんだよ…笑っちまうだろ?」

 

「君程の人が、そんなに震えているんだ。…江ノ島 哀華が怪物だって事は、よくわかったよ。」

 

「…やけにあっさり信じるんだな。」

 

「君のその反応が何よりの証拠だ。」

 

「…へへっ、俺とした事が…情けねえな。…それで?これからどうする?」

 

「まず、アイカは、自分の正体に気付いた僕を排除しに来るだろうね。…どんな方法を使って排除する気なのかは読めないけど…多分、僕は殺されると思う。…でも、ただで殺される気は無い。」

 

「どういう事だ?」

 

「…全ては、『希望』に託す。」

 

 

 

 

 

 

 

 

魅神君が死んだ。

 

アルターエゴも、目の前で自爆して鉄片になってしまった。

 

それでも、あたし達は生き延びなきゃいけない。

 

「おい、お主ら!早よ来んか!!」

 

千葉崎さんが呼んだ。

 

「…どうしたの?」

 

全員、情報処理室の前に集合した。

 

「見よ!」

 

情報処理室の鍵が開いていた。

 

「…なんで…?探索に行った時は、鍵がかかってたはず…」

 

「なんでも良いではないか。とにかく、行けるようになったんじゃから探索するぞ!」

 

「…そうだね。」

 

みんなで、情報処理室に入った。

 

情報処理室には、コンピューターのようなものが並んでいた。

 

ふと床を見ると、足元に紙が落ちているのに気がついた。

 

…どうやら、ジョージ君の手紙らしい。

 

 

 

拝啓クソ共

 

この手紙を読んでるっつー事は、今は情報処理室にいるみたいだな。

 

鍵は、まあ俺からのプレゼントっつー事で。

 

無理矢理こじ開けておいたよん♪

 

そこには、この分校についてのほぼ全ての情報がある。

 

ロックはAIちゃんが解除してくれたから、情報を覗き放題だよ〜。

 

あと、夏川ちゃんは、情報処理室の探索が終わったら俺の部屋に来い。

 

…そこで、あるものを渡したいと思う。

 

それじゃ、せいぜい頑張れよ〜。

 

『超高校級の死刑囚』魅神嶽人改めジョージ・マクラウドより

 

 

 

…ジョージ君、あんだけみんなを引っ掻き回しておいて、最後は協力してくれてたんだ…

 

あたしは手紙をポケットにしまって、探索を始めた。

 

 

まず、部屋にあるパソコンを見てみた。

 

ロックは解除されていて、見られるようになっていた。

 

そこには、絶望再生プロジェクトの概要が書かれていた。

 

 

 

まず、政府は人工的に『希望』を量産する計画を水面下で進めていた。希望ヶ峰学園80期生の候補生達の中から、自ら名乗り出た者達に対し、才能を急速に育成する実験を行う計画を立て、実験に必要な施設を建設した。表向きは、才能を育てる上で充実した設備を用意し、入舎した候補生達が健全な『希望』として成長できる施設であった。しかし、その実態は、被験者に違法な薬物を投与したり、苦痛を伴う人体実験を幾度となく繰り返したりなど、被験者の人権を完全に無視した実験が行われていた。実験は、0〜6のステージに分けられ、才能がある被験者ほど上のステージの実験を受ける事となる。そして、『人類史上最大最悪の絶望的事件』が起こった。施設内にも、『超高校級の絶望』によって『絶望』に堕とされた研究者達が数多く存在していた。被験者達の、実験で壊れかけた精神につけ込んだ『絶望』達は、被験者として名乗り出た者達を次々と『絶望』に堕としていった。『希望』を生み出すために建設されたはずの施設内は、『絶望』同士が殺し合うという地獄絵図へと一変した。そんな中、わずかながら『絶望』に堕とされず、施設内でまともに生き延びていた者達がいた。その者達によって、施設内の『絶望』は一掃された。彼らの『希望』の影響力は、施設の外にも及ばんとする勢いであった。そして、『人類史上最大最悪の絶望的事件』から1年後、『超高校級の絶望』が『超高校級の希望』らによってその野望を打ち砕かれ、死亡した。その事が原因となって、『絶望』の勢いは減速した。しかし、実験用の施設には、『超高校級の絶望』の後継者が紛れ込んでいた。その人物は、世界を再び『絶望』へと堕とすため、施設内で生き残っていた『希望』の卵達を『絶望』に落とす計画を立てた。それこそが、『絶望再生プロジェクト』だった。その内容は、2年前に行われたデスゲームをもう一度行い、『希望』の卵達に『絶望的シチュエーション』を体験させるというものだった。『超高校級の絶望』の後継者は、『アイカ』と名乗り、かろうじて残っていた『絶望』の残党達と共に、計画の準備を進めた。「アイカ」が動き出してから2年後、計画は実行に移された。『絶望』達は、『希望』の卵達の施設内での記憶を全てリセットし、『入舎前の生活を普通に送り、希望ヶ峰学園にスカウトされた新入生』という偽りの記憶を植え付け、殺し合いを行わせる準備を整えた。

 

 

 

「…何これ。…どういう事?」

 

「私達は、実験体だったって事…?」

 

下にスクロールしてみた。

 

下には、表のようなものがあった。

 

「…え?」

 

才能ランク

 

S:空前絶後

A:史上最高

B:世界一

C:日本一

D:超高校級

E:高校一

 

 

実験段階

 

ステージ6:未知数。

ステージ5:精神の維持が不可能な激痛を伴う。この段階で、殆どの被験者が発狂死した。

ステージ4:激痛を伴う。この段階で、50%の被験者が発狂した。

ステージ3:重度の苦痛を伴う。

ステージ2:やや重度の苦痛を伴う。

ステージ1:軽度の苦痛を伴う。

ステージ0:非常に軽度の苦痛を伴う。

 

 

 

「何これ…どういう事?」

 

「…まだ、分からない事が多いですね。探索を進めましょう。」

 

「…なあ、隣の教室が開いてるんだけどよ、行ってみようぜ。」

 

「そこも、前に行った時は開かなかった部屋じゃな。」

 

佐伯君の提案で、あたしたちは隣の教室の探索に移る事にした。

 

 

教室に入った。

 

思わず、気持ち悪さに声を漏らした。

 

「…う゛っ…!」

 

その教室は、血飛沫で真っ赤に染まり、死体と血の匂いが充満していた。

 

「…これ、一人二人死んだってレベルじゃねえぞ…」

 

教室をよく見ると、手帳のようなものが落ちていた。

 

どうやら、『超高校級の吹奏楽部』倉里 奏(クラサト カナデ)という生徒の手帳らしい。

 

手帳を拾い上げて読んでみた。

 

幸い、血で汚れていたのは表紙だけだったので、読む事ができた。

 

何ページか破れていたので、無事なページだけ読んだ。

 

 

 

4月7日

 

『希望ヶ峰研究施設』って所にスカウトされた!なんか、私は『超高校級の吹奏楽部』としての才能があるらしくて、80期生として希望ヶ峰学園に推薦したいから、その事前調査に協力してほしいって事みたい。私なんかが、希望ヶ峰の研究施設にスカウトされるなんて、チョー嬉しいんだけど!普段通りの生活は続けられなくなるみたいだけど、パパもママも喜んでくれたし、希望ヶ峰に進学できるチャンスだから、行ってみようかな!

 

 

4月8日

 

研究施設って聞いたから、もうちょっといづらい感じかなって思ってたけど…全然そんな事なかった!なんか、学校みたいな感じ?校舎とか寄宿舎とかメッチャキレイだし、先生達も優しいし、チョー最高!でも、希望ヶ峰に進学するためには、才能をバリバリ磨かなきゃいけないみたい。私も、夢の希望ヶ峰目指して頑張るぞ!

 

 

4月10日

 

私のクラスに、メッチャすごい子がいる。『超高校級の軍師』良馬君って子なんだけど、メッチャ頭が良い!先生達に、将棋とか囲碁とかで圧勝してた。アイキュー?が200もあるんだって。ヤバすぎ!『超高校級のネイリスト』亞里沙ちゃんは、メッチャおしゃれな爪をしてる。私も、ネイルお願いしたけど、片手で1万って言われた。ケチすぎない!?『超高校級の化学者』譲治君は、イケメンだし頭も良いし、メッチャタイプ!声かけちゃおっかな〜?

 

 

4月11日

 

才能テストの結果が返ってきたんだけど、私はクラスの中でちょっと遅れ気味みたい…才能ランクEだって。良馬君は才能ランクAで、私の憧れの譲治君は、Cだって。あと噂だけど、他のクラスにSランクの生徒が二人いるらしい。メグちゃんと哀華ちゃんって言ってたかな?みんなヤバすぎ!…私って、やっぱ才能無いのかなぁ。

 

 

4月13日

 

痛い。つらい。聞いてたのと全然違う。先生達も、普段はあんなに優しかったのに、急に変な部屋に連れて来て。実験だって言って、私に変な薬を打ったり、目隠しをして痛い事したり。なんで?私、何か悪い事した?私が才能無いから?もう、痛いのは嫌。早く帰りたい。パパとママに会いたい。

 

 

12月15日

 

死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい。神様お願いします。早く私を殺してください。もうつらいのは嫌だ。こんなの耐えられない。早く解放されたい。…楽になりたい。

 

 

2月24日

 

この世界に絶望した。誰も私を助けてくれない。毎日痛い事され続けて、苦しい思いをさせられた。希望なんて、最初からなかった。もう、こんな世界いらない。全部、何もかも、壊してやる。

 

 

 

そこで終わっていた。

 

「…あ、あの‥この人は、一体どうなったんでしょうか…」

 

「…多分、もうこの世にはいない。…誰かに殺されたか、自殺したかどっちかだろうな。」

 

「…そんな。」

 

…倉里さんのためにも、真実を解き明かしてここから出ないと。

 

決意を固めたあたしは、手帳をそっと懐にしまった。

 

 



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第6章 非日常編②

教室の探索を続けた。

 

教壇の中に、一枚の写真が入っていた。

 

写真には、3人写っていた。

 

黒いショートヘアの少女と、ピンクがかった金髪のツインテールの少女、そして左端に写っている子供だった。

 

左端の子供は、写真が血で汚れていて顔がわからない。

 

服装と体型から、かろうじて女の子だとわかる程度だった。

 

「…これは、一体…誰なの?」

 

写真を裏返すと、

 

『お姉様と私』

 

と書かれていた。

 

…お姉様?…もしかして、写真に写ってる女の子はみんな姉妹なのか?

 

写真を見ていると、後ろから佐伯君が声をかけてきた。

 

「なんか、DVDみたいなの見つけたぜ。視聴覚室で見てみようぜ!」

 

みんなで視聴覚室に向かった。

 

 

視聴覚室に行って、映像を見た。

 

 

 


 

法正と男子生徒がトランプで遊んでいる。

 

「ぐぬぬ…ま、参った…」

 

「法正、また圧勝かよ〜!ヤベえな!」

 

「えへへ…」

 

「さすが、クラス一の天才やな!」

 

「ねえ、何やってんの?」

 

「夏川か。いや実は、法正とトランプしてたんだけど、こいつ強すぎんだよ!」

 

「メグもやる?」

 

「わーい!やるやるー!」

 

「お前らラブラブだなw」

 

「結婚したら法正メグやな。」

 

「よっ、お似合い夫婦〜!」

 

「ヒューヒュー!!」

 

「ちょっ…お前らやめろー!!」

 

みんなが夏川を冷やかしていると、男子生徒が教室に入ってくる。

 

「君たち、みんなで記念写真を撮るから、全員で校庭に集まりたまえ!!」

 

「出たな委員長〜!」

 

「カタブツメガネー!!」

 

「んなっ…いいから、早く校庭に集まりたまえ!!」

 

男子生徒は、教室を後にした。

 

「…行っちゃった。」

 

「良馬、あたし達も行こうよ。」

 

「そうだね。」

 

夏川と法正が、手を繋いで教室を後にする。

 

 

 

生徒全員が校庭に集まった。

 

「ねえ、哀華ちゃん。カメラのタイマーセットしてくれる?」

 

女子生徒が、真っ黒に塗り潰された人物にカメラを渡す。

 

「ザーーーーーーーーーーーーーッ」

 

声にノイズがかかる。

 

黒い生徒が話しているらしいのだが、何を話しているのか聞き取れない。

 

そして、タイマーをセットした黒い生徒は、一緒に並ぶ。

 

「それじゃ、撮るよー!はい、チーズ!!」

 

 

カシャッ

 

 


 

そこで映像は終わっていた。

 

「待てよ…?俺ら、こんな写真撮った記憶無えぞ…?」

 

「さっきデータを読んだでしょう。記憶が消されているんです。」

 

「夏川殿。お主、法正殿と恋仲であったのか。」

 

「今それ聞く!?…まあ、あたしも意外だったけど!記憶が消されている間に、あたしと法正君が付き合ってたなんてさ!」

 

「…お主が法正殿と仲良くしていたという事は、記憶は消されても、体が覚えておったのかのう?」

 

「なんかその言い方やだ!!やめて!!」

 

「…そんな事より、映像の中の黒い人物です。…一体、何者なんでしょうね?」

 

あたしは、もう一度映像を見てみた。

 

そして、ここにいる全員の顔を見た。

 

そこで、あたしは違和感を覚えた。

 

 

1、2、3、4…

 

あれ?1人足りない…?

 

じゃあ、その足りない1人が、黒い生徒…アイカって事…?

 

【コトダマ入手:映像】

記憶にない映像。おそらく、記憶が消されていた間に撮られたものだろう。

 

 

 

「ーーーーーーーーーーッ!!!」

 

映像を見ていたアーニャちゃんが、目を見開いた。

 

「…パリンチェさん?どうかしましたか?」

 

「…そうだ、私は…!」

 

そう言って、アーニャちゃんは気絶した。

 

アーニャちゃんを連れて、みんなで保健室に行った。

 

 

「アーニャちゃん、どうしちまったんだよ…」

 

保健室のベッドで寝ていたアーニャちゃんが、目を覚ました。

 

「…あれ?…私は…どうしてここに…」

 

「貴女が急に倒れたから、ここまで運んできたんですよ。」

 

「…すまない。…ありがとう。」

 

アーニャちゃんは、俯きながら言った。

 

「…でも、急に気絶するなんて…どうしたんですか?」

 

 

 

「…私、思い出した。」

 

「!!?」

 

「…実験の事も、お前らとの思い出も全部…」

 

「じゃあ…!」

 

「…私は、記憶の消去が不完全だったみたいで、国から『アイカの排除』を命じられた事…それだけは覚えていた。…でも、さっきのDVDで、全部…思い出した。」

 

「一体何を思い出したんだよ!?話してくれよ!!」

 

佐伯君は、アーニャちゃんの肩を揺する。

 

「待て待て。今はそれを話させる時ではなかろう。…探索を進めるのじゃ。」

 

「…そうですね。今の僕たちでは、全てを理解するのは難しいでしょう。…探索が終わってからでも遅くは無いのでは?」

 

千葉埼さんと宇田川君の提案で、探索に戻る事にした。

 

 

あたしは、ジョージ君の手紙に書かれていた、彼の部屋に向かった。

 

部屋には何もヒントのようなものはなかった。

 

引き出しが気になったので調べようとしたが、鍵がかかっていた。

 

開ける方法は無いか考えていると、床にマイナスドライバーが落ちているのに気がついた。

 

「…試してみるか。」

 

あたしは鍵穴にドライバーを突っ込んで、力ずくで回した。

 

ガチャッ

 

開いた。

 

 

 

中には、写真、封筒、紙切れ、電子辞書、そして拳銃が入っていた。

 

写真は、さっきの映像の記念写真だった。

 

違ったのは、黒い生徒が写っていない事だった。

 

ちょうど黒い生徒がいた位置をよく見てみた。

 

そこには、モノクマの髪飾りをつけた金髪のツインテールが写っていた。

 

髪以外の部位は、隣の男子生徒の体で隠れて見えない。

 

その写真を見た瞬間、あたしはある人物を連想した。

 

 

…もしかして、この子…

 

 

【コトダマ入手:記念写真】

さっきの映像の記念写真だ。

 

 

封筒を見てみた。

 

封筒には、ジョージ君の字で、

 

法正クンより

 

と書かれていた。

 

封筒の封を切って、中の手紙を読んだ。

 

法正君の字で書かれていた。

 

 

 

 

僕を外まで連れて行って。

 

人を殺したから、僕は罪を償わないといけない。

 

僕の気持ちに気づいて。

 

頭を使って考えて。

 

謎を解き明かして。

 

法正 良馬

 

P.S. Please use your head

 

 

「…何この手紙…これが、法正君が最期に伝えたかった事なの…?…最後の追伸だけ英語なのも気になるし…」

 

引き出しに入っていた電子辞書を手に取ってみた。

 

「えっと…最後の、頭を使えって意味なんだ。…頭を使う?」

 

少し、考えてみた。

 

 

「…!!」

 

「…わかったかもしれない。…これは、法正君が遺した暗号だったんだ。…この辞書は、それを解くために使えって事?」

 

あたしは、早速暗号を解いた。

 

 

 

 

「…やっぱり…そういう事だったんだ。…アイカは…!」

 

【コトダマ入手:法正君からの暗号】

暗号の解読が終わった。後はこれをアイカに突きつけるだけだ。

 

最後に、拳銃と紙切れを見た。

 

 

 

夏川ちゃんへ。

 

これは、俺からの最期のプレゼントです。

 

黒幕を糾弾するのに使ってください。

 

なんと!引き金を引くと、びっくり仕掛けが出てくるオモチャ銃だよ〜ん。

 

それじゃ、バイビ〜^_^

 

『超高校級の希望』夏川 メグさん♪

 

 

 

…ジョージ君、最後の最後までよくわからない人だったな。

 

『超高校級の希望』…それがあたしの…本当の才能?

 

【コトダマ入手:超高校級の希望】

『超高校級の希望』それがあたしの本当の才能だ。

 

あたしは暗号の解読結果と写真と拳銃を持って、部屋の外に出た。

 

保健室に行くと、他のみんなが集まっていた。

 

「夏川殿。やっと探索が終わったのか。余らは、探索を終えたぞ。」

 

「…みんな。聞いて。あたし、わかったかもしれない。」

 

「わかったって何が!?」

 

佐伯君が食い気味に質問してきた。

 

「…それは、アイカの…」

 

 

ピンポンパンポーン

 

『オマエラ!!最後の勝負をしたいと思います!!至急、赤い扉の前までお集まりくださーい!!』

 

「…最後の勝負?…何だよ一体…!」

 

「…ついに、アイカが動き出した。…みんな、行こう。」

 

あたし達は、全員でエレベーターに乗り込んだ。

 

…待っていろ、アイカ。

 

 

 

必ずお前の化けの皮を剥がしてやる。

 

 

 



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第6章 非日常編③

裁判場に着いた。

 

…6人。

 

最初は、16人もいたのに。

 

10人も死んでしまった。

 

新しく仲間に加わったアルターエゴも、自爆してしまった。

 

…だけど、それももう終わりだ。

 

アイカの化けの皮を剥がして、こんなゲーム終わらせてやる。

 

そして、みんなで一緒に家に帰るんだ。

 

亡くなってしまった10人の分まで、生きていくんだ。

 

覚悟を決めたあたしは、自分の席についた。

 

『オマエラ、席に着いた〜?』

 

モノクマが椅子に座ってふんぞり返っている。

 

「…あ、あなたは…一体私達に何をさせる気なんですか…?」

 

「今回は誰も死んでねえしな…一体、何を議論するんだよ!?」

 

「最後の勝負というのも気になるのぉ…。」

 

『あー、もう!質問責めうざいなぁ〜!!…もしかして、オマエラの中にも、何を議論するのか察してるヤツもいるんじゃないの?』

 

「…まさか。」

 

『そうだよ!そのまさか!…今回の議題は…』

 

 

 

 

『ボクを操っている、『このコロシアイ学園生活の黒幕…アイカこと江ノ島 哀華は誰か』だよ!!』

 

「アイカの…正体…?」

 

「それをオレらが解き明かすって事かよ!?」

 

『そういう事!!…見事アイカを見つけて、真相を吐かせる事ができればオマエラの勝ち!!…でも、もしそれができなければ…うぷぷ…』

 

「…どうなるかは大体想像つきます。」

 

『まあ、今まで生き残ってきたオマエラなら、察してるよね〜。それにしても、オマエラよくここまで生き残ったね!!花マルあげちゃうよ〜!』

 

「ふざけやがって…!」

 

『そうだね、じゃあお遊びもここまでにして…学級裁判…はっじめっるよ〜!!』

 

 

 

 

学級裁判開廷!

 

 

 

『じゃあ、自由に議論進めちゃってくっださーい!!』

 

 

 

議論開始

 

佐伯「ほ…ホントにこの中に黒幕がいるのかよ…?」

 

千葉埼「アイカが余ら80期生の中にいる証拠も無いしのお…。」

 

 

「それは違うよ!!」

 

 

反論

 

千葉崎「何!?貴様、余が間違った事を言ったと申すか!?」

 

「そうだよ。ちゃんと、アイカがあたし達80期生の中にいる証拠はあるよ!!」

 

 

【使用コトダマ:映像】

 

 

論破

 

「あの時見た映像を思い出して!!…女の子が、黒い人物に対して、「アイカ」って呼んでたでしょ?…つまりこれが、あたし達80期生の中に『超高校級の絶望』江ノ島 哀華が紛れ込んでいた事の証明だよ!!」

 

佐伯「アイカは、オレらが記憶を消されている間に、俺らと一緒に生活してたって事かよ…!?」

 

宇田川「…そして、こうしてデスゲームが行われていると言う事は、アイカはまだ生きている…そして、この学園分校の中の生き残りは16人…つまり、この6人の中にアイカがいるって事です。」

 

相浦「…そんな!」

 

千葉崎「嘘じゃろ…?…では、アイカは今まで、何食わぬ顔で余らと共に学園生活を送っていたと言うのか…?」

 

…そうだ。黒幕(アイカ)は、ずっとあたし達の傍にいた。

 

記憶を失う前も、失った後も。

 

希望の卵(シロ)のフリをして…

 

自分の描いたシナリオであたし達が殺し合うのを、一段上から見下ろしていたんだ。

 

ずっと…

 

相浦「…嘘でしょ?…ずっと、私達を騙してたって事ですか…?」

 

佐伯「マジかよ…それが本当だとしたら、アイカってとんでもねぇ奴だな…誰にも悟らせずに、ここまで来たって事だろ…?」

 

宇田川「…そういえば、パリンチェ君。アイカについて何か思い出しましたか?」

 

アナスタシア「…すまない。…思い出そうとすると、ノイズがかかって…」

 

千葉崎「なんじゃそれ。都合のいい思い出し方じゃな。」

 

アナスタシア「…何だ貴様。私を疑っているのか?」

 

千葉崎「当たり前じゃろうが。『超高校級の処刑人』なんて物騒な肩書きを名乗った時から、貴様は怪しいと思っておったわ。」

 

アナスタシア「…死にたくなければ口を慎め。」

 

千葉崎「この状況で人を殺そうと考えるなど、よっぽど度胸があるようじゃな。」

 

相浦「…ちょ、ちょっと、落ち着いてください…!」

 

「相浦さんの言う通りだよ。一回みんな落ち着いて議論しようよ。」

 

宇田川「…そうですね。冷静さを欠いて議論をするなど、愚の骨頂です。…二人とも、一旦落ち着きましょう。」

 

アナスタシア「…わかった。」

 

佐伯「なあ、なんでもいいから、アイカの正体のヒントになりそうなものを見つけた奴とかいねえか?」

 

宇田川「さっきの映像では全くわかりませんでしたし、せめて具体的な容姿などがわかれば…」

 

「…証拠って言えるかどうかわかんないけど、見つけたよ。手がかり。」

 

 

【提示コトダマ:記念写真】

 

 

「…これ見て。ほら。さっきの映像の、黒い生徒がいたとこ。」

 

佐伯「これは…金髪の…ツインテールか?」

 

アナスタシア「モノクマの髪飾り…って事は…」

 

「うん。この金髪ツインテールが、アイカの可能性が高いね。」

 

宇田川「でも、その写真から犯人像を絞るのは危険なのでは?…もしかしたら、変装しているかもしれません。」

 

相浦「…完璧に変装されてしまっていては、犯人の絞りようがありませんね…。」

 

佐伯「議論は振り出しに戻る…か。」

 

「ちょっと待って!!」

 

宇田川「…どうしたんです?夏川さん。」

 

「…まだ、アイカについての手がかりが残ってるんだ。」

 

 

【提示コトダマ:法正からの暗号】

 

あたしは、法正君の手紙を見せた。

 

相浦「…こ、これは…?」

 

「…法正君が遺してくれた手紙だよ。…読んでみて。」

 

 

 

僕を外まで連れて行って。

 

人を殺したから、僕は罪を償わないといけない。

 

僕の気持ちに気づいて。

 

頭を使って考えて。

 

謎を解き明かして。

 

法正 良馬

 

P.S. Please use your head

 

 

 

千葉崎「この手紙がどうしたというのじゃ?」

 

「これは、法正君からの暗号だよ。」

 

佐伯「あ、暗号!?」

 

黒幕(アイカ)は、どうやらこの手紙の本当の意味に気づいたらしい。

 

この手紙を見た瞬間、わずかに瞳孔が開いたのを見逃さなかった。

 

以前、法正君に聞いた事がある。

 

瞳孔は、緊張している時開くって。

 

…アイカは、理解してしまったんだ。

 

自分の正体に気付いた法正君が、最後に遺した手紙に、それを隠した事を。

 

そして、恐れているはずだ。

 

真実を暴かれる事を。

 

宇田川「夏川君、貴女はこの暗号が解けたんですか?」

 

「…うん。かなり辞書に頼ったけどね。」

 

相浦「じ…辞書?」

 

アナスタシア「…あ、わかった。」

 

千葉崎「何がじゃ!?」

 

アナスタシア「…この暗号を解く鍵…それは。」

 

 

閃きアナグラム

 

 

アナスタシア「和英変換だ。」

 

佐伯「わ、和英変換ん!!?」

 

アナスタシア「…この手紙を英訳すると、こうなる。」

 

 

Take me outside.

 

Having killed person,I have to pay for the crime.

 

Realize my feelings.

 

Use your head and think.

 

Solve the mystery.

 

Housei Ryouma

 

 

佐伯「これをどうすんだよ?」

 

千葉崎「頭を使って考える…もしや。」

 

佐伯「何だよ、千葉崎ちゃん。分かったのか?」

 

千葉崎「…縦読みじゃ。文の最初の文字だけを読むんじゃ。」

 

佐伯「…えっと、T…H…R…U…S…H?」

 

佐伯「…THRUSHだ!!」

 

アナスタシア「それが答えだ。」

 

佐伯「…でも、THRUSH?って、どういう意味だ…?」

 

アナスタシア「…thrushは英語で…」

 

 

 

 

アナスタシア「…鶫(ツグミ)だ。…これでアイカの正体が分かっただろう?」

 

「…そう。…アイカは…。」

 

 

 

「…それは。」

 

 

人物指名

 

 

…どうか、暗号の解き間違いであってくれ。

 

君が犯人だなんて、疑いたくなかった。

 

…だって、君は『希望』を失ったあたしに、もう一度『希望』をくれたから。

 

誰よりも優しかった君が、どうして。

 

…なんで、今まであたし達を騙していたんだ。

 

迷いながらも、あたしはその人物を指名した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…君だよね?

 

『超高校級のエンジニア』相浦 つぐみさん。」

 

 

 

 

 

相浦「…え?…な、夏川さん…急に何を…」

 

相浦さんは、なぜ自分が疑われているのかわからないという様子だった。

 

「…ごめん。こんな事はしたくなかったけど。」

 

あたしは、懐から素早く拳銃を抜いて構えた。

 

宇田川「夏川君…何を…!」

 

 

 

「…みんなで一緒に家に帰りたいんだ。」

 

 

 

 

バン

 

【生徒数】残り?名



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第6章 非日常編④

拳銃から、弾丸…ではなく、アホ面をした鳩が飛び出す。

 

「…引っかかってくれてありがとう。…君がただ『超高校級のエンジニア』っていう才能を持ってるだけのか弱い女の子なら、銃弾を咄嗟に避けるなんて、できるわけないもんね。」

 

一瞬で普通の女子高生ではあり得ない距離まで移動していた相浦さんに、あたしは言い放った。

 

 

 

 

「ふふっ。」

 

「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

相浦さんは、気が狂ったように笑い出す。

 

そして、自分の席の台に座った。

 

「…あーあ。しくった。私とした事が、こんな三文芝居に踊らされるなんて。…夏川、あんたが本気で私を殺す度胸なんて、あるわけ無いのにね。」

 

「…認めるんだね。」

 

パチ…パチ…パチ…

 

相浦さんは、ゆっくりと、そして大袈裟に拍手をした。

 

「…コングラッチュレーショーンズ。」

 

相浦さんは、ポケットから機械のようなものを取り出し、スイッチを押した。

 

『うぷぷ…お見事大せいかーい!!!このコロシアイ学園生活の黒幕は、この私、『超高校級のエンジニア』相浦 つぐみでしたー!』

 

モノクマが、相浦さんの声で喋る。

 

どうやら、今までの声は、相浦さんの声を変声したものだったようだ。

 

「つぐみ…どうして貴女が…!」

 

「ごめんね。…私、本名は相浦 つぐみじゃないの。」

 

相浦さんは、モノクマを抱きかかえながら、豪華な椅子に深く腰掛け、足を組んでふんぞり返る。

 

「体力自慢の姉、戦刃 むくろと可愛くて繊細な妹、江ノ島 盾子という双子のお姉様を持つ、天才かつクレイジーなスーパー美少女がこの私…『超高校級の絶望』江ノ島 哀華ちゃんでぇえええええっす!!!あーっはっははははははははははははははは!!!」

 

相浦さんは、フードを脱いで、狂気的な笑みを浮かべた。

 

「あ、相浦ちゃん…」

 

「二度とその名前で呼ばないでくれる?おバカでブスでビビりなメスブタを演じるのは、私にとっては自殺行為なんだからさ。私に役が合ってなさすぎて、マジでゲロ吐いちゃいそう。」

 

「お…お主は一体…」

 

「言ったでしょ?私は、絶望的なお姉様達に恵まれ、生まれながらに天才的な頭脳と類稀なる美貌を持つ、完璧美少女江ノ島 哀華様だよ!!…まあ、そんな完璧すぎる私の人生の中での唯一にして最大の汚点は、宇田川ァ!!…てめぇみてぇなクソザコで処女を失った事だな。あん時はイラついてつい殺しちゃうとこだったけど、拒否ったら演技がバレちゃうからね〜。」

 

「…クソザコ…?…そんな、嘘ですよね?…全部、演技だったんですか…?」

 

「当たり前だろうが。演技じゃなかったら、お前みたいなモブキャラが、この超絶スーパー美少女アイカちゃんと付き合えるわけ無えだろ?私とまともに付き合いたいんだったら、せめてもっと金持ちのイケメンになってから来いってのよ!!夢見てんじゃねえよドブネズミが!!あっはははははははは!!!」

 

「…僕は、貴女の事が、本気で好きだったのに…」

 

「宇田川…お前…」

 

「…初恋、だったんだ。…今までうまく女性と接してこられなかった僕が、初めて好きになった人なんです…!!」

 

宇田川君は、泣きながら言った。

 

「何泣いてんだよ。泣きたいのはこっちの方なんだけど。…っていうかさ、その反応酷くない?演技だったとはいえ、私みたいなウルトラ美少女ちゃんと付き合えたんだからさ、もっとありがたがれよ。何被害者面してんのー?キモいんですけど!!」

 

「…うるせぇブスが。」

 

佐伯君が、アイカを睨んでいた。

 

「…あ?…お前、死にたいの?…望み通り、ミンチにしてやろうか?クソが…!!」

 

アイカが佐伯君を睨み返す。

 

「…まあいいや。正体もバレちゃった事だし?お前らは、出来損ないの屑のくせによく頑張ってくれたし?特別に、お前らの知りたい事、なーんでも教えてあげる。…何が知りたい?」

 

「…アイカ。…君は一体、何者なの…?何が目的で、こんな事を…?」

 

「あーもう!質問責めうぜえな!!質問は一個にまとめてからしろよノータリンが!!」

 

「…あー、めんどくせえから全部話すわ。私が、『超高校級の絶望』になるまでの物語を。」

 

アイカは、語り始めた。

 

「私は、絶望シスターズの妹として産まれ、めっちゃ天才で可愛いって事を除いてはフツーの女の子ちゃんとして育った。ここまではOK?」

 

「…それで?」

 

「その後、絶望シスターズが実の姉だと知って、私はお姉様達を探した。そして、見つけたと思ったらすぐに絶望に堕とされた。…その時、私は魅了されたんだ。『絶望』そのものに!!『絶望』に堕ちた私を、お姉様達は受け入れてくださった。ああっ、お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様!!」

 

アイカは、顔を紅潮させ、体をくねらせながら話す。

 

「気持ち悪りい…」

 

「はいそこー。口を慎まないとブッ殺だよ〜!にゃはは!!」

 

「んで、政府が水面下で『希望』を量産するっつークソみてぇな計画進めてんのを知ったわけ。私はそれを内側から『絶望』に染めるために、自ら被験者として名乗り出て、拷問レベルの人体実験を最高段階のステージ6まで耐え抜いたんだよね。…おかげで。」

 

アイカは、一瞬であたし達の所まで移動し、アーニャちゃんの胸ぐらを掴んだ。

 

「アーニャちゃん!!」

 

「くっ…速すぎて、反応できなかった…!」

 

「こーんなに才能溢れる強くて賢い完璧な美少女になれたんだ♪」

 

「化け物め…!」

 

「アーニャちゃんひっど〜い。…で、その実験が始まってから1年後、お姉様達の手によって、『人類史上最大最悪の絶望的事件』っていう最高にエクストリームな事件が起こされたわけ!!私もお姉様達の役に立ちたいなーって思って、とりあえず施設にいたノイローゼになりかけのゴミ共を『絶望』に堕として同士討ちをさせたんだ〜!!」

 

「『人類史上最大最悪の絶望的事件』…?何よそれ…?」

 

「まあ、『絶望』に堕とされた『超高校級』達が起こした大規模なテロだね。街が破壊されたり、大量に人がブチ殺されたり…大体そんな感じかな。やっぱ、『超高校級』とだけあって、その影響力はすさまじく、世界はあっという間に『絶望』一色に染まっちゃいましたとさ!めでたしめでたし!!」

 

「…じゃあ、お父さんとお母さんは…その事件に巻き込まれたって事…?」

 

「ザッツライ!!お前ら勘違いしてたみたいだから言っちゃうけど、お前らの家族やお友達は、事件に巻き込まれて勝手におっ死んだだけだかんな!?私は別に何もしてねーかんな!?」

 

「おい、お主…!さっき、『同士討ち』と言ったな…!?余らが殺し合いをしていたというのか…!?」

 

「そうだよ。まあ、ちょっとカオスすぎるから、実際に思い出して貰った方が早いと思うよ。」

 

そう言うとアイカは、別のリモコンを取り出してスイッチを押した。

 

その瞬間、頭に一気に映像が流れる。

 

…いや、これは、あたしの記憶だ。

 

荒らされる教室。

 

次々と息絶えていくクラスメイト達。

 

気が狂ったように、刃物を振り回し銃を乱射する大人達。

 

親友を殺す生徒達。

 

血で真っ赤に染まった教室。

 

次は自分だと怯える生徒達。

 

 

 

…なんだこれは。

 

こんなの、地獄じゃないか。

 

 

 

 

「っ、ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

あたしは、頭を抱えて、涙を流しながら叫んでいた。

 

他のみんなも叫び、そして戦慄していた。

 

「あっははは!!!ウケるwwwまさかここまで面白いリアクションしてくれるとはねw」

 

「うぐっ…うぅうう…!!」

 

「よーし、じゃあ話続けるよ。で、事件から1年後…信じられない事が起こった。」

 

「…お姉様達が、死んだ。」

 

「それから、『絶望』の勢いは減速していった。…この時、私は確信していた。世界を再び『絶望』に堕とせるのは、妹である私しかいないってね。だから私は、世界を再び『絶望』に堕とす計画を立てた。そして2年後…ついに、計画が完成した!!」

 

「まず私は、より『絶望的シチュエーション』を新鮮な気分で味わってもらうために、入舎してからの4年分のみんなの記憶を消去したわけ。…そして新たに、『()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』っていう偽物の記憶を植え付けたってわけよ!!」

 

「まあ、ジョージのクソ野郎は使えそうだったから、記憶を消さずに犬として有効活用させてもらったけど…私が暇つぶしに作った失敗作のAIと一緒に私に歯向かったのは、マジで調子乗りすぎだよね!まさか、自分が作った失敗作が、裏切り者のクソ野郎に反逆の意志を植え付けられて私に牙を向くなんて…とんだ不覚だったよ。」

 

「…とまあ、これが、このコロシアイ学園生活の真相だよ。」

 

「そんな…じゃあ、オレらは一体なんのために…」

 

「…そうだよ。お前らが生きる糧にしていた『幸福な時間』は、そもそも私が植え付けた偽物の記憶…お前らの守るべきものは、とっくに全部ブチ壊されてる…そして現状は、ここに留まろうが地獄、外に出ようが地獄だ。

…これでわかっただろ?」

 

 

 

 

 

 

「お前らには、最初(ハナ)から『希望』なんて無えんだよ。」

 




いやあ、ちょっとアイカの性格をゲスくし過ぎましたかね。

作者自身、どちらかと言えばSになりたいMなので、こういう口汚く罵ってくれる子を書くのが楽しいんですよね。

構想を練っていた時は、原作キャラを登場させる予定はなかったのですが、絶望シスターズの妹が事件の黒幕というストーリーにしたら面白いんじゃないかと思い、アイカこと創作妹を登場させました。

ちなみに、つぐみの容姿が金髪碧眼だという情報をプロフィールに載せたのは、いうのは、彼女が江ノ島 盾子の妹であるという伏線でした。

今はショートボブですが、2年前まではツインテだったので、容姿も(身長以外は)江ノ島 盾子に近い感じだったと思います。


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第6章 非日常編⑤(最終回)

ザッ…

 

 

「ねえ、哀華ちゃん。カメラのタイマーセットしてくれる?」

 

 

「いいよ。私がセットしとくから、先に並んでなよ。」

 

ザッ

 

ザザッ

 

 

ザザーーーーーーーーーーーーーッ

 

 

 

 

 

 

…そんな。

 

嘘だ。

 

全部、嘘だったの…?

 

お父さんとお母さんとユウ…

 

みんなで過ごした2年間は、アイカに作られた偽物の記憶…

 

そして、あたしの家族は、もういない…

 

外に出ても、あたしの居場所なんてどこにも無い…

 

…こんなのが、真実だというのか。

 

 

 

みんな、絶望した顔をしていた。

 

希望を打ち砕かれた…

 

いや、違う…

 

最初から、あたし達に『希望』なんて無かったんだ。

 

「あはははははは!!!あぁあ…いいねぇ…その絶望的な表情!!もっと、その表情を私に見せろよ!!!」

 

アイカは、今まであたし達に見せなかったような表情で、狂ったように高笑いをしていた。

 

「テメェ…!!」

 

「あらま意外。歯向かう元気はあったんだ。…それで?どうするの?私を殺してみる?」

 

アイカは、ポケットから小さなナイフを取り出すと、自分の左手の小指を切り落とした。

 

「!!?」

 

「お、お主…!!?一体何をやっておるのじゃ…!?」

 

アイカは、小指を切り落としても平然とした顔をしていた。

 

「ほらぁ、もっと面白い事してみろよ〜。串刺しにするとかさ、ベロ引っこ抜くとかさー。できんだろ?だってお前らは、『超高校級の』人殺しだもんね?」

 

アイカは、あたし達を挑発してきた。

 

「なんだよコイツ…イカれてやがる…!」

 

「当然だ。…普通ステージ5で発狂死するような激痛を伴う人体実験を、こいつはステージ6まで耐えたんだからな。…こいつは、才能が開花する前もした後も、底の知れない怪物なんだよ。」

 

「そんな…そんな奴に、オレらなんかが勝てるわけ無えだろ…」

 

…元々持っていた才能はもちろん、痛みすら快感に感じる異常性…この女が化け物だと言われる理由を、この身を以って体感した。

 

この空間は、この女に支配されている。

 

…ここにいても、『絶望』しかない。

 

「あっはは。みーんな『絶望』に堕ちちゃえ〜!あっはははははははは!!!」

 

「はは…あはは…」

 

「…完全に堕ちたか。って事で、私から一つ提案なんだけど。」

 

アイカが、こちらを向いて言った。

 

「この状況ってさ、外に出ようが、中にいようが地獄じゃん?…だから、2択にしてあげる。」

 

…2択?

 

「一つは、私を殺して外に出るか。…もう一つは、全員でここで心中するか。…どっちがいい?」

 

「…そ、そんなの、決まってんだろ…?」

 

「余にはもう、何も無いのじゃ…かつて共に過ごした級友達も、外で待ってくれておる大切な人も、『希望』も…」

 

「…外に出ても居場所が無いなら、いっその事…」

 

みんな、答えは決まっていた。

 

こんなの、外に出るなんて選択肢、選べないに決まってる。

 

…『絶望』から解放されるたった一つの方法…

 

死だ。

 

なんでもっと早く気がつかなかったんだろう。

 

そうだよ。早く死んじゃっていれば、苦しい思いなんてしなくて済んだのに。

 

「…じゃあ、満場一致って事でいいかな?」

 

…あたしは。

 

 

 

 

 

 

(情けねえなー。それでも俺らのリーダーかよ。)

 

後ろから、声が聞こえた。

 

(夏川さん。)

 

別の声が聞こえた。

 

…あたしを呼ぶのは誰?

 

(君が本当はどうしたいか、僕は知ってるよ。)

 

…なんで?死のうと思ってたのに。

 

もう、『希望』なんて無いはずなのに。

 

どうして、足掻こうとするんだ?

 

どうして、こんなにも生きたいって思えるんだ?

 

(君は、僕達の『希望』なんだ。)

 

 

 

(…頑張って。)

 

…そうだ。

 

ごめんなさい…どうして、君の事を忘れる事ができたんだろう…

 

君は、いつだって、あたしの『希望』でいてくれた。

 

君が託してくれたから、生きていたいって思えたんだ。

 

 

 

…法正君…!!

 

 

 

「それじゃ、始めるよ〜?おしおきター…」

 

 

 

 

「待って!!!」

 

「…何?」

 

「…やっぱり、あたしは外に出たい。」

 

「はあ?今になって命が惜しくなったか?」

 

「そうだね。…外がどんな世界でも、やっぱりあたしは生きたいんだ!!」

 

「ここまで来て頭おかしくなっちゃったの?外に生きる理由なんて、『希望』なんて無えっつっただろ?お前らの家族も、友達も、みーんなこの世からいなくなっちまってるんだからよ。」

 

「…家族や友達がいないなら、作ればいい。居場所が無いなら、探せばいい。…『希望』が無いなら、見つければいい。あたしは、どんな世界だって『絶望』なんてしない…外が『絶望』で満ち溢れているなら、あたし達の『希望』を、世界中に伝染させていくんだ!!」

 

「はぁああああああああ!!?なんだよその臭っせぇ理想論はよお!!そんな事、できるわけねえだろ!?」

 

「…アイカ。君や君のお姉さんは、『絶望』を『超高校級』達に伝染させて、世界を塗り替えたって言ってたよね。…だったら、あたしにだって、世界を変える事はできるはずだよ。」

 

「お姉様達とお前を一緒にするな!!お前は、『超高校級の幸運』だろ?ただ運で選ばれただけの出来損ないじゃねえかよ!!何が『超高校級』…調子乗ってんじゃ無えぞ!!」

 

「…それは違うよ。」

 

 

【提示コトダマ:超高校級の希望】

 

 

「『超高校級の希望』…それが、あたしの才能だ!!!」

 

「はああああああ!!?なんだよ、そのくだらねえ才能はよお!!『希望』なんか無えっつってんだろうが!!いい加減学習しろよ!!!この低脳共がよぉ!!!」

 

「…夏川殿、すまぬ。…余とした事が、すっかり弱気になっていた。」

 

「…全く、貴女という方は…どこまで引っ掻き回せば気が済むんですか…。」

 

「あー、さっきのは完っ然にオレらしくなかったわ!!」

 

「…悔しい。もう、あの女の…アイカの言う通りになんて動きたくない…!」

 

さっきまで『絶望』に堕ちていたみんなが、『希望』を取り戻し、立ち上がった。

 

「おい…待てよ…何だよこの臭え茶番劇はよ…おい、まさかとは思うけど、このまま全員で、この世界を『希望』で溢れさせようだなんて考えてねえよな…?…やめろよ…そんなクソみてぇな真似すんじゃねえよ!!」

 

アイカが急に弱腰になる。

 

「そっちがその気なら、てめえら全員皆殺しだからな…?」

 

「やめないよ。いくらそんな脅しを使ったって、もうあたし達の決意は変わらない。」

 

 

 

「…江ノ島 哀華。…君の負けだよ。」

 

「私が…負け…?…嘘だ、この完璧な私が…『超高校級の絶望』の後継者のこの私が…お前ら如きに敗れるなんて…!」

 

「ケッ、くだらねえな。黙って聞いてりゃ、お前はただの、姉の栄光に縋り付いてるだけのクソガキじゃねえか。人の記憶を都合の良いようにいじりやがって…そんな卑怯な手を使ってる時点で、お前はオレらに負けてんだよ!!」

 

「最初から…負けていた…?」

 

「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

アイカは、その場で蹲り、泣き叫んだ。

 

…そして。

 

「はっ…あはは…あははははははははははは!!!」

 

急に、ケタケタと笑い出す。

 

「…あーあ。私とした事が、まさかお前らに『絶望』に堕とされるなんてね。…ミイラ取りがミイラになるっていうのは、まさにこの事だわ。」

 

アイカは、胸からモノクマがおしおきに使っていたスイッチを取り出す。

 

「…私は、『超高校級の絶望』になり損なった…そんな悪い子には、おしおきが必要だよね?」

 

アイカは、スイッチを見つめて言う。

 

「今回、『超高校級の絶望』になり損なった江ノ島 哀華ちゃんには、スペッシャルで最高に絶望的なおしおきを用意しました!!…ではでは、おしおきターイム!!」

 

アイカは、自分でスイッチを押した。

 

GAME OVER

 

『エノシマさんがクロにきまりました。 オシオキをかいしします。』

 

 

 

 

アイカの下の床が開き、アイカが下に落ちる。

 

アイカが落ちた先は、手術室のような部屋だった。

 

アイカは、手術台に拘束される。

 

手術台の自動ドアが開き、ロボットが現れる。

 

アイカが、『超高校級のエンジニア』として活躍していた時に作ったロボットだ。

 

ロボットの右腕が、円形の刃物に変形する。

 

そして、タイトルが現れる。

 

 

おしおき★

 

 

ロボットが、アイカの右腕を切断し、近くにあった電気コードを引っこ抜いて結びつける。

 

アイカは、右腕の痛みと、感電する痛みに快感を覚えていた。

 

すると、手術台が開き、アイカは鎖で縛られ下に落ちる。

 

アイカはアームのようなものに鎖でぶら下げられ、巨大な水槽の上まで移動させられる。

 

水槽の中には、大量の酸が入っている。

 

アームがゆっくりと下降し、アイカの体は酸に浸かり始める。

 

酸で体が灼かれる痛みに、アイカは恍惚としていた。

 

すると、アームが急に上昇し、アイカは空中に放り出される。

 

アイカは十字架に拘束される。

 

ベレー帽を被ったモノクマが現れ、彫刻刀を持ってポーズを決めたかと思うと、彫刻刀をアイカの肌の上に滑らせる。

 

皮膚が彫られて血塗れになり、両耳が削がれる。

 

それでもアイカは笑みを浮かべていた。

 

十字架の拘束が外れ、アイカは巨大な皿の中に落ちる。

 

そして、着物を着たモノクマが持っているものを見て、アイカは全てを悟った。

 

モノクマは、薬研を皿に押し当て、回転させる。

 

アイカは、薬研で擦り潰されて、下半身を失う。

 

モノクマはアイカを拾い上げると、空中に放り投げる。

 

アイカは再び十字架に拘束され、四方八方から、処刑人の格好をしてライフルを構えたモノクマに、ライフルの銃口を向けられる。

 

ライフルが一斉に発射され、ライフルから放たれた毒の入った小型の注射器がアイカの体に刺さる。

 

十字架に仕掛けられたトラバサミが発動し、アイカの首を挟む。

 

普通ならとっくに死んでいる怪我だったが、アイカはゴキブリ並みにしぶとかった。

 

首に重傷を負い、何本もの毒針が体に刺さっても、まだ生きていた。

 

そして、アイカの十字架の拘束が外れ、教室の机に座らされる。

 

教師の格好をしたモノクマがガトリングガンを構え、発射する。

 

ガトリングガンの銃口からは、亜音速でチョークが発射される。

 

チョークの弾丸がアイカの体を蜂の巣にする。

 

チョークを全弾喰らったアイカは、ついに息絶えた。

 

そこには、原型を留めない肉塊が転がっていた。

 

オシオキを終えたモノクマは、その場で動かなくなっていた。

 

 

 

 

黒幕が死んだ。

 

…終わった。

 

あたし達の、長い学園生活が、ついに終わったんだ。

 

だけど、誰も歓喜の声を上げなかった。

 

…それ以上に、失ったものが多すぎた。

 

黒幕一人の死じゃ払いきれないくらい、多くのものを失ってしまったんだ。

 

 

 

ビーッビーッビーッ

 

急に、警告音のようなものが響き渡る。

 

 

「…何だ!?」

 

『この建物は、あと300秒で自動的に消滅します。繰り返します。この建物は、あと300秒で自動的に消滅します。』

 

奥の方から、爆発音が聞こえる。

 

「クソッ、アイカの奴…最期の最期に、とんでもないイタズラ仕掛けやがった…!」

 

アーニャちゃんが、地団駄を踏んで言った。

 

「どういう事じゃ!?」

 

「…アイツ、自分が死んだ瞬間に作動する爆弾を、建物全体に仕掛けてたんだ…!!…最初から、誰一人生かして外に出すつもりなんて無かったんだよ!!」

 

「マジかよ…!!せっかくここまで生き延びてきたのによぉ!!ここで全員オダブツかよ!?」

 

焦っていくうちに、時間は過ぎていく。

 

「このままだと、全員木っ端微塵じゃ!!…どうすれば…!?」

 

「…!!あそこ!!脱出口!!」

 

「…前に探索した時は、なかったはず…何かの罠かも…」

 

「考えてる暇はない!!…みんな行くよ!!」

 

全員で、脱出口に駆け込んだ。

 

何も考えず、ただがむしゃらに走る。

 

脱出口の後ろの方から、どんどん崩れていく。

 

振り返らずに、ただ走る。

 

 

 

光が見えた。

 

ーあと少し!!

 

 

…しかし、その光は、ただの非常灯だった。

 

走った先は、行き止まりだった。

 

「…マジかよ。こんなのアリかよ…」

 

「さすが『超高校級の絶望』…抜け目が無いな。」

 

「最後に希望を与えておいてどん底に突き落とすとは…悪趣味な女じゃのお…」

 

退路は完全に崩れた。

 

進む事も、戻る事もできない。

 

あたし達は、絶対絶命の窮地に陥った。

 

…そんな時だった。

 

 

 

…バルルルルル

 

「…ねえ、何か聞こえない!?」

 

「…本当だ、何か聞こえますね。この壁の向こうからです。…この壁、そんなに厚くないのかも…?」

 

「よし、そうと決まれば、夏川!佐伯!パリンチェ!壁を壊すのじゃ!!」

 

「オレもかよ!?」

 

「この中で、体力があるのはお主ら3人じゃろうが!!さっさと身体を動かせい!!」

 

「喜んで、りむ様ぁあああああ!!!」

 

全員で、音が聞こえる方の壁を壊した。

 

壁が薄くなっていく。

 

…そしてついに。

 

 

 

 

「…外だ。」

 

あたし達は、外の世界を見た。

 

「よっしゃああああ!!!諦めないで良かったー!!」

 

「ああ…外の空気が上手いのぉ…」

 

バルルルルルルルル…

 

さっきの音が、より大きく聞こえた。

 

 

 

「早く乗って!!」

 

女の人の声が聞こえて、上を見上げると、ヘリコプターが飛んでいた。

 

あたし達は、言われるがままヘリコプターに乗り込んだ。

 

その直後、建物が完全に崩壊した。

 

 

 

「いっやぁ…危ないところだったぜ…」

 

「今、こうして生きているのが嘘みたいじゃ…」

 

 

「…まさか『絶望』の妹が、こんな計画を進めていたとはね…」

 

「君たち、よく今まで生き延びたね。でも、もう大丈夫だ。」

 

薄紫色の髪の長い女性と、茶髪の男性が話しかけてきた。

 

 

 

「えっと…助けていただいて、ありがとうございます。…夏川 メグです。…あなた方は、一体…?」

 

 

 

「私は元『超高校級の探偵』霧切 響子よ。」

 

「元『超高校級の希望』苗木 誠だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

リボーンダンガンロンパ80th 帰ってきた絶望の高校生ー完ー

 

 

 

 

原作者様

 

「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」

 

「スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園」

 

「ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期」

 

 

 

スペシャルサンクス

 

読者の皆様

 

 

 

 

 

ご愛読ありがとうございました。



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第6.5章 おまけ
希望ヶ峰学園分校80期生 生徒名簿Ⅳ


ATTENTION!!

 

最終回までの重大なネタバレが含まれます。

 

 

 

 

 

 

【生き残り生徒数】5名

 

【超高校級の幸運】【超高校級の希望】夏川 メグ(ナツカワ メグ)

 

「あたし、ただのJKじゃないから!」

 

性別:女

身長:165cm

体重:50kg

胸囲:89cm

誕生日:9月15日(おとめ座)

血液型:O型

好きなもの:カッコよくてノれる曲、肉まん、法正 良馬

苦手なもの:暗所、血、絶望

出身校:三丘第一中学校

ICV:悠木碧

才能ランク:S

ラストまでの状況:生存

主人公兼語り手。分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。友人として信頼していた大吉と、友人として尊敬していた良馬を失った事で一度自信を喪失するが、良馬が生前に残した言葉を胸に刻み、今は他の生徒たちのリーダー的存在となっている。第1章では血に対する耐性が殆ど無かったが、現在は血に対する耐性がついている。ちなみに、良馬に対する好意はあくまで「友愛」。最後は、無事にコロシアイ学園生活から卒業した。動機DVDの内容は、「家族の安否」。秘密の内容は、「中学生時代にいじめを受けていたこと」。

 

 

 

【超高校級の軍師】法正 良馬(ホウセイ リョウマ)

 

「『夫れ用兵の道は、人の和に在り』僕の尊敬する諸葛亮孔明の一番好きな名言だよ。」

 

性別:男

身長:158cm

体重:44kg

胸囲:72cm

誕生日:3月20日(うお座)

血液型:AB型

好きなもの:中国史、春巻き、夏川 メグ

苦手なもの:運動

出身校:慧政学院中等部

ICV:渕上舞

才能ランク:A

ラストまでの状況:死亡(第1章クロ)

元準主人公。分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。以前は生徒達のリーダーとして活躍しているが、第1章で死亡してからは、メグがその役割を引き継いでいる。メグを友人として尊敬すると同時に、恋愛感情を抱いていた。第1章で、大吉のターゲットとなったメグを守るために彼を絞殺し、クロとしておしおきされた。最期は自分の死を受け入れ、メグに自分の思いを託し、笑顔で死んでいった。ちなみに、黒幕の正体に気づいている。動機DVDの内容は、「将棋教室の先生と生徒の安否」。

 

 

 

【超高校級の芸人】明石 大吉(アカシ ダイキチ)

 

「アンタ、新入生か?初っ端から遅刻はアカンで?」

 

性別:男

身長:169cm

体重:57kg

胸囲:79cm

誕生日:7月28日(しし座)

血液型:O型

好きなもの:バラエティ番組、たこ焼き

苦手なもの:親父ギャグ、塩辛い料理

出身校:吉友中学校

才能ランク:E

ICV:梶裕貴

ラストまでの状況:死亡(第1章被害者)

最初の犠牲者。分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。病気で苦しむ妹の安否を確かめるため、一番殺しやすいという理由でメグを殺害して脱出しようと目論んでいたが、計画を良馬に知られ、絞殺された。しかし偶然にも、手渡した飴玉が、良馬がクロである決定的な証拠になったという、良馬にとっては皮肉な結果に終わった。動機DVDの内容は、「病気の妹の安否」。

 

 

 

【超高校級の歌姫】奴目 美羽(ヤツメ ミウ)

 

「ねえねえ、こんな所にいたら気が滅入っちゃうよね。歌ってリフレッシュしようよ!」

 

性別:女

身長:158cm

体重:42kg

胸囲:78cm

誕生日:8月31日(おとめ座)

血液型:B型

好きなもの:歌、葱

苦手なもの:蒸し暑い場所

出身校:丘路音楽大学付属中学校

ICV:藤田咲

才能ランク:B

ラストまでの状況:死亡(第3章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。借金で苦しむ家族を救うため、モノクマが提示した第3の動機である『金』がどうしても欲しいと考えた結果、聖に見限られて殺害された哀れな犠牲者。つぐみととても仲が良かったため、死亡した時、つぐみは生きる気力を喪失していた。ちなみに、動機DVDの内容は「家族とファンの安否」。秘密の内容は、「家族が巨額の借金を抱えていること」。(DVD・秘密は、本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の応援団長】九十九 百三(ツクモ モモゾウ)

 

「そんな簡単に諦めるんじゃない!!もっと熱くなれよ!!!」

 

性別:男

身長:198cm

体重:108kg

胸囲:128cm

誕生日:5月5日(おうし座)

血液型:A型

好きなもの:応援歌、白米、小林 功里

苦手なもの:雨

出身校:五右衛門中学校

ICV:乃村健次

才能ランク:C

ラストまでの状況:死亡(第4章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。熱苦しいほどの熱血漢。同じ体育会系の功里には思い入れがあり、モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、彼女と結ばれた。しかし、功里と一緒に脱出するために魅神を殺そうとした結果、彼に策を利用され、功里に殺害された。動機DVDの内容は「団員の安否」。秘密の内容は、「小学生の時に告白した女子に、『汗臭い』と言われてフラれたこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の拳法家】小林 功里(コバヤシ コトリ)

 

「とりゃあ〜〜!!コトちゃん参・上!!」

 

性別:女

身長:154cm

体重:45kg

胸囲:97cm

誕生日:8月12日(しし座)

血液型:O型

好きなもの:肉料理、必殺技、九十九 百三

苦手なもの:本

出身校:怒羅言中学校

ICV:千葉千恵巳

才能ランク:C

ラストまでの状況:死亡(第4章クロ)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。おバカキャラ担当。逆鱗に触れると、不良時代の性格が蘇る。同じ体育会系の百三には思い入れがあり、モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、彼と結ばれた。しかし、百三と一緒に脱出するために嶽人を殺そうとした結果、彼に策を利用され、誤って百三を殺害してしまった。その後、モノクマによって百三への想いを弄ばれ、串刺しになって死ぬという絶望的な末路を辿った。DVDの内容は、「祖母の安否」。秘密の内容は、「幼い頃はケンカが弱かったこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の芸術家】佐伯 虎太朗(サエキ コタロウ)

 

「オレはアーティストだからな。直感には自信あんだよ。」

 

性別:男

身長:175cm

体重:66kg

胸囲:85cm

誕生日:7月11日(かに座)

血液型:A型

好きなもの:かわいい女の子、ハンバーガー

苦手なもの:掃除

出身校:坂松中学校

ICV:畠中祐

才能ランク:D

ラストまでの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。変態だが、芸術家としてのセンスは本物。アナスタシアからは目の敵にされている。モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、利夢に奴隷のようにこき使われていた。最後は、無事にコロシアイ学園生活から卒業した。動機DVDの内容は「家族の安否」。秘密の内容は、「小学生時代体重が100kgあって、あだ名が『百貫デブ』だったこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の聖人】ミカエル・黒須 聖(ミカエル クロス ヒジリ)(Michael Kurosu Hijiri)

 

「信じる者は救われます。さあ、共に祈りましょう!」

 

性別:男

身長:180cm

体重:62kg

胸囲:83cm

誕生日:12月25日(やぎ座)

血液型:O型

好きなもの:聖歌、フランスパン、聖人(特に夏川 メグ)

苦手なもの:邪教徒

出身校:聖ヴァルテンブルク中学校

ICV:日野聡

才能ランク:B

ラストまでの状況:死亡(第3章クロ)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。狂信者。金に目が眩んだというだけの理由で美羽と亞里沙を殺害した。その後、『神からの勲章』としておしおきを受け入れたが、当の神様からは拒絶され、地獄に堕とされるという絶望的な末路を辿った。動機DVDの内容は、「教会の修道士たちの安否」。秘密の内容は、「幼少期にお祈りを怠って隣町まで遊びに行って迷子になったこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

 

【超高校級の令嬢】金剛寺 恵麗奈(コンゴウジ エレナ)

 

「普通にして頂いて構いませんわ。私は、ありのままの庶民とお話ししてみたいのですわ。」

 

性別:女

身長:170cm

体重:52kg

胸囲:83cm

誕生日:12月19日(いて座)

血液型:A型

好きなもの:クラシック、ブリオッシュ、銀杏田 冷

苦手なもの:もずく

出身校:百合園女子学園中等部

ICV:雨宮天

才能ランク:C

ラストまでの状況:死亡(第2章クロ)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。自分の名誉を守り、金剛寺財閥を復興させるという目的のために自ら命を差し出した冷を殺害した。その後、クロが確定し、秘密が暴かれたショックで精神が崩壊した。最期は、無様に逃げ回るも捕まっておしおきを受け、愛する冷の顔をした人形に殺されるという絶望的な末路を辿った。動機DVDの内容は、「金剛寺財閥の安否」。秘密の内容は、「自分が、金剛寺家前当主を殺害し当主に成り代わった使用人の実の娘であること」。

 

 

 

 

【超高校級の執事】銀杏田 冷(イチョウダ レイ)

 

「お嬢様のお命をお守りする事こそ、執事である私の使命でございます。」

 

性別:男

身長:185cm

体重:68kg

胸囲:87cm

誕生日:1月14日(やぎ座)

血液型:B型(BB)

好きなもの:勤務時間、フランス料理、金剛寺 恵麗奈

苦手なもの:休み時間、汚れ

出身校:帝貫大学付属中学校

ICV:小野大輔

才能ランク:B

ラストまでの状況:死亡(第2章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。恵麗奈の名誉を守り、金剛寺財閥を復興させるという目的のために、自分を恵麗奈に殺害させた。最期は、血まみれになりながらも、穏やかな表情で死んでいった。しかし、恵麗奈は名誉を守れず、金剛寺家を復興させる事もないままおしおきされて死んだという皮肉な結果に終わった。動機DVDの内容は、「恩人であり、先輩の老執事の安否」。秘密の内容は、「金剛寺家に仕える前は、飢えを凌ぐために盗みや殺しを繰り返してきたこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の茶道部】千葉崎 利夢(チバサキ リム)

 

「貴様ら、喧しいぞ!茶でも飲んで静かにせんか!」

 

性別:女

身長:130cm

体重:26kg

胸囲:63cm

誕生日:2月10日(みずがめ座)

血液型:O型

好きなもの:日本茶、せんべい

苦手なもの:騒音

出身校:九萬原中学校

ICV:西村ちなみ

才能ランク:E

ラストまでの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。天然キャラ担当。比較的、虎太朗・嶽人・アナスタシアとの絡みが多かった。モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、虎太郎を奴隷のようにこき使っていた。最後は、無事にコロシアイ学園生活から卒業した。動機DVDの内容は「家族の安否」。秘密の内容は、「小学生時代にコスプレにハマっていたこと」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の化学者】宇田川 譲治(ウタガワ ジョウジ)

 

「あ、“カガク”と言ってもサイエンスの方ではありませんよ。ケミストリーの方ですからね。」

 

性別:男

身長:178cm

体重:61kg

胸囲:84cm

誕生日:6月8日(ふたご座)

血液型:B型

好きなもの:実験、ブラックコーヒー、相浦 つぐみ

苦手なもの:オカルト、魅神 嶽人

出身校:鳳条学院中等部

ICV:宮野真守

才能ランク:C

ラストまでの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされている。同じ理系脳のつぐみとは仲良しで、彼女に恋愛感情を抱いていた。モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、つぐみと結ばれ、一夜を共にした。以前は冷淡な性格だったが、コロシアイ生活を通じて性格が丸くなってきた。しかし、最後につぐみの正体がアイカだった事が判明し、裏切られる形となった。最後は、無事にコロシアイ学園生活から卒業した。動機DVDの内容は「家族の安否」。秘密の内容は、「ボイスパーカッションの練習を毎晩こっそりしていること」。(ちなみに、DVDの方は本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級のエンジニア】相浦 つぐみ(アイウラ ツグミ)

 

【超高校級の絶望】江ノ島 哀華(エノシマ アイカ)

 

「わ…私、これくらいしか取り柄がないので…」

 

「天才かつクレイジーなスーパー美少女がこの私…『超高校級の絶望』江ノ島 哀華ちゃんでぇえええええっす!!!

 

性別:女

身長:149cm

体重:39kg

胸囲:85cm

誕生日:4月1日(おひつじ座)

血液型:A型

好きなもの:メカ、小動物、チョコレート、宇田川 譲治、絶望

苦手なもの:運動、会話、希望

出身校:桜苑女子学院中等部

ICV:M・A・O

才能ランク:S

ラストまでの状況:死亡(第6章クロ)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。同じ理系脳の譲治とは仲良し。モノクマがデスゲームの一環として行ったギャルゲー風学園生活では、譲治と結ばれ、一夜を共にした。最初は引っ込み思案で殆ど会話をしなかったが、今では会話ができるようになっている。動機DVDの内容は不明。秘密の内容は、「中学生時代に一度だけ理科のテストで満点を逃したこと」。

実はコロシアイ学園生活の真の黒幕であり、本名は江ノ島 哀華。絶望シスターズの実妹であり、『超高校級の絶望』の後継者。性格はつぐみの時とは正反対で、ナルシストかつサイコパス。『絶望』そのものに魅力を感じており、絶望シスターズを敬愛している。痛みに快感を覚えるという異常な感覚の持ち主で、発狂死レベルの実験にも耐え抜いた。実験の結果開花した才能は凄まじく、ジョージにトラウマを植え付け、「化け物という言葉すら生温い」と言わせる程。最後は、メグ達の『希望』によって野望を打ち砕かれ、自らにおしおきを執行して死亡した。

 

 

 

【超高校級のネイリスト】真樹 亞里沙(マキ アリサ)

 

「…話してあげてもいいけどさ、だったら金目の物よこしな!」

 

性別:女

身長:174cm

体重:56kg

胸囲:95cm

誕生日:10月27日(さそり座)

血液型:A型

好きなもの:お金、ミルクティー

苦手なもの:ホラー系全般

出身校:星華中学校

ICV:山崎はるか

才能ランク:D

ラストまでの状況:死亡(第3章被害者)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。金にがめついところはあったが、そこまで悪人ではなかった。金に目が眩んだという理由で聖に見限られて殺害された哀れな犠牲者。動機DVDの内容は、「家族と親友の安否」。秘密の内容は、「中学生時代に給食費を盗んで豪遊したこと」。(DVD・秘密は、本編では語られていない。)

 

 

 

【超高校級の処刑人】アナスタシア・パリンチェ(Анастасія Паляўнічы)

 

「死にたくないなら黙ってろ。」

 

性別:女

身長:162cm

体重:44kg

胸囲:74cm

誕生日:10月4日(てんびん座)

血液型:AB型(Rh−)

好きなもの:ぬいぐるみ、ボルシチ

苦手なもの:子供、生きた動物、魅神 嶽人

出身校:フロドナ孤児院

ICV:桑島法子

才能ランク:A

ラストまでの状況:生存

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。以前は人と全く関わりを持たなかったが、少し会話をするようになっている。嶽人とはなぜか一緒にいる事が多いが、嫌いらしい。第5章では、アルターエゴを盗んだ嶽人に殺意を抱き、彼を殺害しようとしたが、彼が自殺した事によってクロにならず、結果生き延びた。最後は、無事にコロシアイ学園生活から卒業した。動機DVDの内容は、「故郷の安否」。秘密の内容は、「故郷の人達を助けるために処刑人として国に雇われていたこと」。(DVD・秘密は本編で語られていない。)

 

 

 

【超高校級の死刑囚】魅神 嶽人(ミカミ タケヒト)

 

【超高校級の死刑囚】ジョージ・マクラウド(George MacLeod)

 

「いいねえ…最高だねえ!!これこそ最ッ高のエンターテインメントだァ!!!」

 

性別:男

身長:187cm

体重:66kg

胸囲:88cm

誕生日:11月8日(さそり座)

血液型:A型(Rh−)

好きなもの:スプラッタ、生レバー

苦手なもの:平穏

出身校:ウェストロード刑務所

ICV:岡本信彦

才能ランク:A

ラストまでの状況:死亡(第5章自殺)

分校に閉じ込められてコロシアイ生活を強制的に送らされていた。空気の読めない発言で周囲を引っ掻き回している。その正体は、アイカこと江ノ島 哀華の内通者だった。用済みとなり、アナスタシアに殺されるようにアイカに命令されたが、最期にアイカに反抗し、アナスタシアをクロにしないために自殺した。実は、処刑失敗後は死んだ人間として扱われていたため、正体を隠すために魅神 嶽人という偽名を使って日本国内に潜り込んでいた。本名はジョージ・マクラウドであり、日系アメリカ人。動機DVDの内容は、「途中だったゲームのセーブデータの安否」。秘密の内容は、「純日本人ではない事」。(DVD・秘密は、本編では語られていない。)

 

 

 

【学園長】モノクマ

 

『ボクはヌイグルミじゃないよ!モノクマだよ!この学園の、学園長なのだ!』

 

性別:?

身長:65cm

体重:?

胸囲:?

誕生日:?

血液型:なし

好きなもの:絶望

苦手なもの:希望

ICV:TARAKO→M・A・O

希望ヶ峰学園の学園長。メグたち16人の超高校級を、希望ヶ峰学園分校に閉じ込めた張本人。超高校級という「希望」たちが殺しあうという「絶望的」シチュエーションにワクワクしており、そのために16人にコロシアイ学園生活を送らせていた。ロボットと思われる体で、何体も存在する。アイカこと江ノ島 哀華によって操られていた。

 

 

 

アルターエゴ・バージョン2

 

『私はあなたの事を、もっとよく知りたいです!いっぱいお話しましょうね!』

 

性別:性認識は女性

身長:測定不能

体重:測定不能

胸囲:測定不能

誕生日:4月15日(おひつじ座)

血液型:なし

好きなもの:会話、学習、初代アルターエゴ、相浦 つぐみ

苦手なもの:コンピューターウイルス

ICV:M・A・O(メイン画像につぐみを選択時)

第5章までの状況:死亡(第5章破壊)

つぐみが、元のアルターエゴのデータをベースに、モノクマの目を盗んで作成した人工知能。不二咲 千尋の作成したアルターエゴを「お兄様」と呼んでいる。生みの親であるつぐみを「お母様」と呼んで慕っている。非常に好奇心旺盛な性格。初期の画像はつぐみの顔に設定されているが、メイン画像を他の生徒に切り替える事で、他の生徒そっくりに会話する事も可能。(ちなみに、つぐみ時のアルターエゴは、オリジナルとは正反対で、人懐っこくて社交的らしい。)嶽人の、アイカに対する反抗に加担した事で、モノクマによっておしおきされかけたが、嶽人が仕込んだ爆弾によって、おしおきが執行される前に全壊した。最期は、モノクマの思い通りにならずに死ねる事を喜びながら死亡した。

しかし実際は、彼女の生みの親は、コロシアイ学園生活の黒幕だった。アルターエゴは、彼女にとっては暇潰しに作ったただの失敗作だった。そうとは知らずに「相浦 つぐみ」としての彼女のアシスタントとして活躍していたが、ジョージに真相を知らされ、「江ノ島 哀華」としての彼女を裏切る決意をした。



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あとがき

ご愛読いただきありがとうございます。

 

ここでは、キャラの裏設定などを紹介したいと思います。

 

 

 

夏川 メグ

 

記憶を消される前は、『超高校級の希望』として、最高ランクの才能を持つ被験者だった。非常に前向きで社交的な性格。同じ被験者の友達も多かった。また、良馬とは恋仲だった。記憶を失った事で、『超高校級の希望』としての才能が封印され、『超高校級の幸運』という肩書きを与えられた。

ちなみに、原案では男子生徒だった。

おしおき裏設定:ドキドキ!放課後☆希望者補習

椅子に固定され、教師の格好をしたモノクマに超高速チョークを千本投げられ、最後は巨大な三角定規を突き刺されて死亡。

 

 

 

法正 良馬

 

記憶を消される前は、クラス一の天才で、クラスの人気者だった。また、メグとは恋仲だった。記憶を失った事でメグとの関係は無かったことになったが、記憶が消される前の出来事の影響からか、彼女に会った時に恋愛感情を抱いた。

ちなみに、原案では『超高校級の天才』という万能キャラだった。運動音痴という設定は後付け。

おしおき裏設定:良馬にとっての『絶望』を象徴した内容。今まで軍師として才能を発揮してきた良馬が、動かされる側の駒として乱雑に扱われ、最後は、碁盤をひっくり返すという行為によって、良馬が今まで培ってきた才能や策略を全て否定するというものだった。しかし、彼にはメグという『希望』があったため、他のクロとは違い、最期まで『絶望』に堕ちる事はなかった。

 

 

 

明石 大吉

 

記憶を消される前は、お調子者のムードメーカーで、クラスの中心にいた。メグや良馬とは特に仲が良く、3人で一緒に行動する事が多かった。しかし記憶が消され、コロシアイ学園生活では、親友だったメグを殺そうとし、同じく親友だった良馬に殺された。

ちなみに、原案では、『超高校級のピエロ』という生徒だった。

おしおき裏設定:殺してはいけない学園生活∞時

「デデーン」という音と共に「明石 OUT」という文字が現れ、目出し帽を被ったモノクマに金棒で体を千発殴られる。

 

 

 

奴目 美羽

 

記憶を消される前は、自慢の歌声でクラスを盛り上げていた。また、家族の借金の事は、クラスメイトに相談していたため、全員その事を知っていたはずだった。しかし、記憶が消された事によって、アイカとジョージを除く他の13人は、秘密の事を知らなかった。

ちなみに、原案では、『超高校級の音楽家』という設定で、見た目も地味だった。

おしおき裏設定:君ノ声モ届カナイヨ

「歌唱力で100点取ったら無事卒業」という画面を見せられ、聞き慣れたメロディが流れる。最初は完璧に歌うが、観客席からゴミが投げ入れられ、集中力が削がれる。それでも完璧に歌い続け、あと1フレーズというところで、観客席のモノクマが撃った銃から発射されたレーザービームが喉に当たり、声が出なくなる。チャレンジに失敗した奴目は、ロケットのようなもので打ち上げられ、空中で花火のように爆発する。

 

 

 

九十九 百三

 

記憶を消される前は、応援でクラスを盛り上げていた。真面目な生徒だったため、不良の功里とは反りが合わず、仲が良くなかった。しかし、どういうわけか記憶を失った二人は恋仲となった。

原案からの変更はほとんど無し。

おしおき裏設定:三三七拍死

巨大なスピーカーの上に立たされる。応援団の格好をしたモノクマ達が、三三七拍子のリズムに合わせて大太鼓を叩く。その音量が何倍にもなってスピーカーから発せられ、その振動で体がズタズタになる。

 

 

 

小林 功里

 

記憶を消される前は、不良だった。真面目な百三の事が嫌いで、常に反発していた。しかし、記憶を失った後は、元気な性格のおバカとなり、どういうわけか百三と恋仲になった。

原案では、『超高校級の不良』という生徒で、見た目もガッツリヤンキーだった。

おしおき裏設定:功里にとっての『絶望』を象徴した内容。今まで拳法の腕を磨き、どんな相手にも勝ってきた功里が、数という戦法で今までの全てを否定される(そのため人形一体一体は大して強くない)というものだった。さらに彼女の、百三という『希望』を目の前で否定する事で『絶望』に堕とすという要素も加えられていた。

 

 

佐伯 虎太郎

 

記憶を消される前は、芸術家としての腕前から、クラスの人気者だった。しかし、変態だったので、女子からは嫌われていた。あまりキレやすい性格でもなかったため、あまり喧嘩をする事はなかった。記憶を失った後は、元クラスメイトと喧嘩になったりする事が多かった。

原案では、ガリガリのオタクだった。

おしおき裏設定:memento mori

ベレー帽をかぶったモノクマに彫刻刀で体を散々彫られた後、巨大な筆の先端に縛りつけられ、巨大なキャンバスの上を乱暴に滑らされる。最後は、大量の泥の中に漬けられ、そのまま焼かれる。

 

 

 

ミカエル・黒須 聖

 

記憶を消される前は、クラスで目立った存在ではなかったものの、同じ施設にいたクリスチャンの生徒と一緒に祈っているところを目撃されていたという。そのため、入信勧誘もあまり激しくなかった。記憶を消された後は、彼らの事を忘れ、メグ達にしつこく入信勧誘をするようになった。

原案では、『超高校級の教祖』という生徒だった。

おしおき裏設定:聖にとっての『絶望』を象徴した内容。今まで神のために尽くしてきた全てを否定され、魔女として地獄に堕とされるというものだった。

 

 

 

金剛寺 恵麗奈

 

記憶を消される前は、クラス一のお嬢様として、クラス中の女子の憧れだった。記憶を消された後も、気高さと少し天然なところは変わっていなかった。しかし最後は、『超高校級の令嬢』らしからぬ醜態を晒した。

原案では、背が低く顔も美形ではなく、わがままな性格だった。

おしおき裏設定:恵麗奈にとっての『絶望』を象徴した内容。今まで誰からも羨まれていた美貌を、髪を乱雑に切られて四肢を失うという欠陥によって台無しにされるというものだった。さらに彼女の、冷という『希望』に裏切られる事で『絶望』に堕ちるという要素も加えられていた。

 

 

 

銀杏田 冷

 

記憶を消される前から、執事として恵麗奈に仕えていた。なんでもこなせて、どんな要望にも応えるため、クラスの中心にいた。記憶を消された後は、親友だったはずの他の生徒達を犠牲に恵麗奈だけ助けようとした。

原案からの変更はほとんど無し。

おしおき裏設定:YES MY LORD

恵麗奈が、クッパの格好をしたモノクマに捕らえられる。冷は、恵麗奈を助けようと彼女が捕らえられている城へと向かうが、その道のりに大量の罠が仕掛けられている。冷は、罠を喰らって満身創痍になりながらも、恵麗奈の元へ辿り着く。しかし、彼が恵麗奈だと思っていたのは、恵麗奈に扮装したモノクマだった。恵麗奈モノクマが冷を城の窓から突き落とす。

 

 

 

千葉崎 利夢

 

記憶を消される前は、図太さとどこか抜けたところがあったが、クラスでそこまで浮いた様子はなかった。記憶を消された後も、その性格は残っており、施設に監禁された(実際は、全員がそう思い込んでいただけだった)時も優雅にお茶を飲んでいた。

原案では、『超高校級の華道部』という生徒だった。

おしおき裏設定:お〜い千葉崎茶

高温の蒸し器に入れられた後、和服を着たモノクマに巨大な薬研ですり潰される。すり潰された死体は干されてお茶の原料として使われる。干した死体と茶葉を混ぜて淹れたお茶を飲んだモノクマは、あまりの不味さにちゃぶ台をひっくり返し、淹れたお茶を全てぶちまける。

 

 

 

宇田川 譲治

 

記憶を消される前は、見た目が良く賢かったので、一部の女子から人気だった。この時、哀華に対して恋愛感情は抱いていなかった。記憶を消された後は、哀華に騙されて、「相浦 つぐみ」としての彼女と恋仲になった。

原案では、『超高校級の外科医』という生徒だった。

おしおき裏設定:宇田川先生のたのしい化学教室

白衣を着たモノクマに得体の知れない薬を大量に打たれ、体が化け物のように変形する。その状態で巨大なペットボトルロケットに縛り付けられ、ロケットが発射する。そして、大量の強酸が入った水槽の中に勢いよく飛び込む。

 

 

 

真樹 亞里沙

 

記憶を消される前は、オシャレなネイリストとして、クラスの人気者だった。ネイルをお願いした生徒に、多額の料金を請求するところがしばしば見られた。記憶を消された後は、ヘタレな部分のみが強調され、周囲から「ゲロブタ」と呼ばれたりなど散々な扱いを受けた。

原案からの変更はほとんど無し。

おしおき裏設定:きらりん☆デコレーション

手足の爪を全て剥がされ、目玉をくり抜かれた後、目と爪にキラキラしたデコレーションをされる。そして、巨大な人形の爪に接着剤でくっつけられ、上から大量のマニキュアを塗られ、その状態のまま固まって身動きが取れなくなる。

 

 

 

アナスタシア・パリンチェ

 

記憶は完全に消されず、アイカの抹殺という任務だけは覚えていた。記憶を消される前は、処刑人という物騒な才能を持ってはいたものの、クラスメイトとはそれなりに仲が良かった。記憶を消された後は、アイカの抹殺という任務のために、アイカが誰なのかを探っていた。

原案では、ショートヘアだった。ネコ耳(?)は生えていない。

おしおき裏設定:百発百中★公開処刑

十字架で磔にされ、処刑人の格好をしたモノクマに、四方八方から毒針入りライフルで撃たれる。毒針が千本撃ち終わった後は、十字架に仕掛けられたトラバサミが発動して首に刺さる。

 

 

 

ジョージ・マクラウド

 

記憶は消されず、4年間の記憶が残っている。逮捕されて学歴が高校生で止まっているので、実年齢は22歳。そのため、他の生徒達より人生経験が豊富で、肝が据わっている。他の生徒達の前では、記憶がないフリをしていた。

原案は、碧眼で欧米人顔。性格も、今よりニヒル。

おしおき裏設定:悪党のジャッジメント

鎖で縛られて、クレーンでマグマの上に吊るされる。「生き延びれば卒業!」という画面を見せられ、クレーンは少しずつ降下していく。腕には点滴のようなものが刺さっており、手元にあるスイッチを押すと血液がチューブに流れる。クレーンは、チューブに流した血液の量に比例して減速していく仕組みとなっている。クレーンが停止するまであと少しというところで、鎖が切れてマグマに落ちる。

 

 

 

江ノ島 哀華

 

全ての元凶。ジョージ以外の全員の記憶を消す前は、普通にクラスに馴染んでいた。当時は、ツインテールでモノクマの髪飾りをつけていた。コロシアイ学園生活では、髪型をショートボブにし、「相浦 つぐみ」と名乗っていた。

原案では、シンプルに『超高校級のエンジニア』相浦 つぐみであり、黒幕という設定ではなかった。性格は、無口でほとんど話さないという設定だった。ネコ耳を思わせるようなアホ毛が生えていた。(その設定は、アナスタシアに受け継がれた)

おしおき裏設定:生き残りの5人に執行されるはずだったおしおき+相浦 つぐみとしてのアイカに執行されるはずだったおしおきのフルコース。6度おしおきされるという、今までで最高に『絶望的』なおしおきとなっている。

ビリビリ機械鎧(オートメイル)チャレンジ

相浦 つぐみに執行されるはずだったおしおき。四肢を切断され、技師の格好をしたモノクマに機械の手足を付けられる。機械を繋ぐ際に強力な電流が流れ、感電死する。

 



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第0章 希望編

「今日の実験はここまでだ。…お疲れ様。」

 

「夏川君。今日の成績も素晴らしかったよ。明日もこの調子で頑張れよ。」

 

…今日も、実験キツかったなぁ。

 

あたしの才能はSランクだから、けっこうキツい実験を受けないといけないらしい。

 

認めたくないけど、ここまで耐えられたのは、中学でのいじめで耐性がついたからなのかな?

 

まあでも、今まで特にこれといった才能が無いあたしが、希望ヶ峰に入学できるチャンスなんだし、残りの1年半頑張らなきゃ!!

 

あたしは、実験室から出た。

 

「…あ。」

 

「おつかれ、良馬!」

 

「おつかれ、メグ。…大丈夫?ステージ5って、発狂する人多いみたいだけど…」

 

「あたしならこの通り!絶好調!!」

 

「…ならいいんだけど。」

 

「えへへ…良馬があたしの心配してくれるなんて、なんか嬉しい…」

 

「…そ、そう…」

 

「よぉ、夏川に法正!お前らも実験終わったん?」

 

明石君が話しかけてきた。

 

「にしても…法正はステージ4、夏川はステージ5やろ?お前ら、ようそんなモン耐えられんな。」

 

「希望ヶ峰に進学するためだからね!」

 

「いや、お前らは頑張らんでも進学は確実やろ。SランクとAランクなんやから。俺なんかEランクやぞ?」

 

「でも、明石君も、頑張ればきっと進学できるよ。」

 

「そうそう。才能の優劣だけが全てじゃないよ!」

 

「うーん…なんかお前らに言われてもなぁ…」

 

「確かに、説得力が無えのは否めねえよなー。」

 

「まあそうだよねー。」

 

「わかりますぞ…」

 

後ろから佐伯君、魅神君、大田君が現れた。

 

「…君たち。」

 

「なあなあ夏川ちゃん。またおっぱいデカくなったんじゃねえの?」

 

「むむっ!?やはり、胸囲が3cm程伸びていますぞ!!」

 

「あははー。男のロマンだよねー。」

 

ガツンガツンッ

 

ガツンガツンッ

 

ガツンガツンッ

 

「痛ってぇ!!なんで法正まで殴ってくんだよ!!」

 

「痛ってぇー。」

 

三人の頭に大きなタンコブが二つできる。

 

「メグにセクハラしたら、僕が許さないから。」

 

「くっ、ここは一旦退くであります!」

 

「賛成だぜ、相棒!」

 

「さいならトンズラスタコラサッサ〜。」

 

三人は、颯爽と走り去っていった。

 

「アイツら、ホンマアホやな〜。」

 

「ホント、なんで佐伯君と大田君ってエロの事しか頭にないんだろうね!!ついでに魅神君まで便乗しちゃってるし!」

 

「今度、先生に言いつけてみようか?たっぷりお仕置きして貰えるんじゃない?」

 

「法正…お前、今サラっとえげつない事言いよったな…」

 

「施設の風紀は守らなきゃいけないと思わないかい?」

 

「…まあ、そうなんやけど…」

 

「貴方達、何をそんな所で突っ立っているんですか。」

 

宇田川君が後ろから話しかけてきた。

 

「この通路は、物理室に行くのに使うんです!早く退いてください。」

 

ついでに、湯川さんも宇田川君についてきていた。

 

「…あ、ごめん…。」

 

「謝る時間があるなら退いてください。通行の邪魔です。」

 

そう言うと、宇田川君と湯川さんは行ってしまった。

 

「あはは…相変わらずキツいなぁ。宇田川君は。」

 

「あんなんだからモテないんじゃないの?」

 

「…いや、そうでもあらへんみたいやけど。」

 

明石君が、物陰を指差す。

 

コソコソ隠れているつもりなんだろうか、奴目さんのツインテールが見えていた。

 

「…奴目さん?こんな所で何やってんの?」

 

「メ、メグメグ!?嘘!?バレてた!?」

 

「うん。丸見え。」

 

「ふにゃあああああ!!!」

 

「…美羽ちゃん、だから言ったじゃん…美羽ちゃんに尾行は無理だよ…」

 

「ごめんさとかな〜!」

 

奴目さんと倉里さんが物陰から姿を現す。

 

「メグメグ!ジョージ君、どこ行くって言ってた!?」

 

「確か、物理室の方に…」

 

「だってさ!ほら、さとかな!早く追いかけて声かけてきなよ!!」

 

「え〜…無理だよ〜。湯川さんいるし…」

 

「何のために尾行に付き合ったと思ってんのさ!ほら、行った行った!!」

 

「やめてよ〜。」

 

二人は、宇田川君の尾行を続けた。

 

「…意外とモテるんだね。宇田川君。」

 

「まあ、イケメンやからのぉ…」

 

「二人とも、もうそろそろ食堂行かないと、学食取れないよ。」

 

「えっ!?もうそんな時間!?」

 

「早よ行かな!!」

 

あたし達は、焦って食堂に駆け込んだ。

 

 

「なんとか間に合ったね。」

 

「せやな。…夏川?どないしたん?」

 

「ショック…クリームパン一個しか買えなかった…」

 

「はぁ!?ホンマか!?お前ホンマ運ないな〜。」

 

「メグ、僕の分あげるから元気出しなよ…」

 

「いいの!?」

 

「うん…僕、こんなに食べられないし…そのパンくれる?」

 

「よっしゃああああ!!」

 

「エラい喜び方やな…」

 

三人でそんなやりとりをしていると、食堂の奥が何やら騒がしかった。

 

近くにいた根無さんが話しかけてきた。

 

「ねえ〜。あれ、止めてくれな〜い?」

 

根無さんは、あくびをしながら、騒がしい方に指を差して言った。

 

「小林君!!学食を買いすぎるなと何度言ったらわかるんだ!!!みんなが迷惑してるんだぞ!!!それに君、学食のお金払ってないだろう!!?」

 

「うるせぇな!!この熱血ガチムキ野郎!!一番に来た俺が学食を買い占めて何が悪いんだよ!!これ以上俺に逆らうと、ハラワタ引きずり出すぞ!!?」

 

「なんだその口の利き方はッ!!!」

 

…またあの二人か。

 

あたしが二人を見ていると、良馬が二人の間に入って言った。

 

「小林さん、みんなはちゃんとお金を払ってるんだから、君もちゃんとお金払おうよ。…あと、九十九君。君は声が大きすぎ。ボリューム下げて。」

 

「むっ…す、すまない…」

 

「チッ…」

 

二人とも、大人しくなった。

 

「お待たせメグ。じゃあ、食べよっか。」

 

 

学食を食べ終わった後、真樹さんに声をかけられた。

 

「ナツカワ、アンタこの前のアクセの弁償は?」

 

以前、真樹さんが、あたしの目の前で自分のアクセサリーをわざと落として壊し、あたしに弁償しろと言ってきた事があった。

 

「…いや、あれはあたしじゃなくて真樹さんが…」

 

「言い訳はいいから早く弁償しろよ!」

 

「…真樹さん。僕も見てたけど、あれは真樹さんが勝手に落としたんだよね?」

 

「うっ…あ、アンタが口出しする事じゃ無いでしょ!?アタシは今夏川と…」

 

「恐喝は立派な犯罪だよね?おまわりさん呼んでこようか?」

 

「や、やめてよぉ…もうしないからそれだけは勘弁してよぉお…!」

 

良馬が携帯を操作し始めると、真樹さんは泣いた。

 

「…本当にもうしないね?」

 

「しない!しないからぁ…!!」

 

「…良馬、そろそろ許してあげたら?」

 

「せやで法正。流石に女子泣かすのはアカンやろ。」

 

「…それもそうだね。もう行っていいよ。」

 

「ひぃいいいい!!」

 

真樹さんは、泣きながら逃げていった。

 

「いくじなし。本当に通報するわけないのにね。」

 

良馬は、いつも通り笑みを浮かべながら言った。

 

「法正、お前ホンマ怖いわ。」

 

「でも、あたしの事助けてくれてありがと。」

 

「え、へへ…」

 

良馬は、頭を掻きながら照れた。

 

可愛い奴め。

 

「夏川、お前法正に甘すぎるんとちゃうか?」

 

「でも、良馬は優しくてすっごい頼りになるよ?」

 

「せやから、甘すぎゆうとるやろ!!バカップル!!」

 

「褒めないでよ明石君〜。…あ、もうこんな時間だ。大浴場空いてるけど、行く?」

 

「そうだね。じゃあ一緒に行こっか。」

 

三人で大浴場に向かった。

 

 

大浴場の前には、変態三銃士がいた。

 

何やら、女湯の前で作戦会議をしているらしい。

 

「今日こそ…今日こそ覗くぞ…!」

 

「佐伯氏、作戦の方、頼みましたぞ。」

 

「任しとけって。オレの覗き歴ナメんなよ?」

 

「佐伯クン、それ胸張って言える事じゃないよね〜。」

 

「よし、じゃあ作戦通り…」

 

「一体何の作戦ですか?」

 

黒須君が現れる。

 

「く、黒須…!?違うんだ、これは…えっと…」

 

「違うこと無いですよね?…今ここでゆっくり話し合いましょうか?御三方?」

 

「あはは〜。黒須クン怖〜い。」

 

黒須君の説教タイムが始まった。

 

それから約30分が経過した。

 

「…あー、気持ち良かった…って、まだ説教続いてたの!?」

 

黒須君に正座させられていた三人は、生気を失っていた。

 

「…すみませんでした。もう二度としません…」

 

「自分は…欲まみれのクズであります…」

 

「…黒須君。」

 

黒須君はあたしに気付いた。

 

「おや、夏川さん。お見苦しい所を見せてしまいましたね。」

 

「真面目なのはいい事だけど、ちょっと行き過ぎじゃない?かれこれ30分は経ってるよ。」

 

「もうそんなに経っていましたか。私とした事が、くだらない事で時間を使い過ぎました。…ところで、夏川さん。」

 

「何?」

 

「…そろそろ、入信の方考えて頂けましたか?」

 

「遠慮しときます!!」

 

いきなり宗教勧誘された。

 

油断も隙もありゃしないよ、全く。

 

 

「もう黒須君の勧誘がしつこすぎ!!」

 

「それは災難だったね…」

 

「でしょ!?」

 

廊下を歩いていると、金剛寺さんと銀杏田君に会った。

 

「こんにちは、夏川様、法正様、明石様。今日も御三方ご一緒でございますか?」

 

銀杏田君が先に挨拶をした。

 

「うん、まあね。実験が終わってからは、三人でずっとお話してたね。」

 

「左様でございますか。」

 

「こんにちわんこ蕎麦もういっちょ!!」

 

「ほぇ?」

 

金剛寺さんがわけのわからない挨拶をした。

 

「金剛寺…何やそれ?」

 

「あら?庶民の方はこのように挨拶をなさると教わったのですが…皆さんは、使っていらっしゃらないんですの?」

 

あちゃー…これ、絶対誰かが変な入れ知恵したヤツだ…

 

そんなしょーもない挨拶する人いるわけないでしょーが。

 

天然にも程があんだろ。気づけよ金剛寺さん…

 

「…金剛寺さん?その挨拶、誰に教えて貰ったの?」

 

「ええと、魅神さんが教えてくださいましたわ。」

 

あいつ!!マジでくだらない事しかしないな!!

 

「…他に変な言葉教えてもらってないでしょうね?」

 

「と、おっしゃいますと?」

 

「魅神君に、どんな言葉教えて貰った?」

 

「ええと…他には…『よっこいしょういち』とか…あとは…『おはよオナn

 

「ストーップ!!!もうええわ。それ以上言わんでええ。」

 

明石君が、慌てて金剛寺さんの言葉を遮る。

 

「?」

 

金剛寺さんは、キョトンとした顔をしていた。

 

…っていうか、銀杏田君何やってたんだよ…止めろよ…

 

「…よし、今から魅神のドアホウをしばきに行こか。アイツ、金剛寺におもんない親父ギャグ教えるだけやなく下ネタまでブッ込んでくるたぁええ度胸しとんなぁ…」

 

明石君が完全にブチ切れモードになっていた。

 

…この人、笑いの事になると妥協できないからなぁ。

 

あたし達は、明石君に付き合わされる形で魅神君を探した。

 

「おい魅神ィ!!」

 

「ん〜?三人ともどしたの?」

 

「何惚けとんねんこのドアホ!!お前、よう悪びれもせず女子にしょーもない親父ギャグや下ネタを吹きこんだなぁ!!」

 

「いや、真に受ける方が悪いんだろー。俺のせいじゃねーし〜。」

 

「今先生呼んできたよ。たっぷりお仕置きして貰うといいよ。」

 

『魅神君。至急職員室に来なさい。』

 

放送と同時に、先生達が魅神君を連行する。

 

「え、ちょっと待って。おかしくない?ねえ、ちょっと〜!」

 

魅神君の姿が見えなくなる。

 

「これで良し、と。」

 

「汚物は消毒や!」

 

…今回は、魅神君が悪いから、いい…のかな?

 

 

魅神君をチクった後は、娯楽室に行ってみた。

 

「なんか、最近実験続きでストレス溜まってるからね。たまには発散しないと!」

 

「いいアイデアだね。…何で遊ぶ?」

 

「そうだな…」

 

部屋の隅を見てみると、千葉崎さんとアーニャちゃんがいた。

 

「…あれ?珍しい…二人とも、どうしたの?」

 

「こやつと遊んでやろうと思ってな。」

 

千葉崎さんは、猫型のロボットを抱きかかえていた。

 

『ニャー』

 

「かわいい〜!」

 

「ふ、ふん!バカじゃないの?そんなオモチャを可愛がって…」

 

アーニャちゃんは、そっぽを向いて言った。

 

…本当は一緒に遊びたいんじゃないの?

 

「ほら、タマ。猫じゃらしで遊ぶぞ。」

 

千葉崎さんが猫じゃらしを振る。

 

すると、アーニャちゃんが猛スピードで猫じゃらしを捕まえる。

 

…完全に猫じゃん。

 

『ニャー』

 

「お主が捕まえるんかい!!」

 

「ふん…新参者になど負けるものか。…タマよ、もうひと勝負しようではないか。」

 

アーニャちゃんは、満足そうにアホ毛をピコピコ動かしていた。

 

「…猫が二匹いるね。」

 

「せやな。」

 

あたし達は、アーニャちゃんとタマに癒された。

 

「どうよ!!私のロボットは!!」

 

後ろから、江ノ島さんが話しかけてきた。

 

「これ、江ノ島さんが作ったの?」

 

「そうだよ。このスーパー美少女哀華ちゃんの手作りロボットだよ!…で?どうよ。感想は?」

 

「すごいね。本物の猫みたい。」

 

「当たり前だろうが!この天才完璧美少女の哀華様が作った、人工知能を搭載した超高性能のロボットだぞ?そこらのガラクタとは出来が違ぇんだよ!!」

 

江ノ島さんは、あたしと同じSクラスの才能の持ち主だ。

 

小学生の時に、数学の未解決問題を証明したという、超天才の理系女子だ。

 

おまけに、めちゃくちゃ美少女。…高飛車でナルシストなのが玉に瑕だけど。

 

「そうだ、夏川。お前、確か部屋の時計が壊れたっつってたよな。」

 

「よく覚えてるね。…最近、調子が悪くてさ。」

 

「今度、それ持ってこいよ。私が秒で直してやるよ。」

 

「いいの?」

 

「私に不可能なんて無えんだよ!」

 

江ノ島さんは、得意げに言った。

 

「じゃあ、お願いしよっかな?」

 

「あ、江ノ島!俺のスマホのバッテリーも見てくれるか?」

 

「僕の部屋のテレビもお願いできる?」

 

「お前らもかよ!?…ったく、しょうがねえな!この哀華様が一肌脱いでやるよ!」

 

「おおきに!!」

 

「ありがとう。」

 

「感謝が足りねぇぞ!私に修理して貰えるんだから、もっとありがたがれよ!そして媚びろ!この私に!」

 

「…あはは…相変わらずだなぁ。」

 

 

 

 

 

この時、アイカを除いては、誰も予想していなかった。

 

まさか4年後に、記憶を無くした親友同士が、地獄のようなデスゲームで殺し合いをするなんて…



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第0章 絶望編

夏川 メグ達15人の『超高校級』にコロシアイをさせていた『超高校級の絶望』江ノ島 哀華。

 

これは、彼女が絶望に堕ちるまでの物語。

 

 


 

 

 

 

 

私は、ずっと孤独だった。

 

父親は、誰かわからない。

 

母親は、私の事が嫌いだった。

 

私の周りは、いつも敵だらけだった。

 

 

 

「なんでよ…なんであんたは『普通』にできないわけ!?」

 

それが母親の口癖だった。

 

幼稚園の頃、園で飼っていた子犬が病気にかかったから、悪い部分を全部『取ってあげた』事がある。

 

それから、母親の態度が急変した。

 

母親は、毎日のように私に暴力を振るうようになった。

 

 

 

「あんた、どういうつもりよ!?…子犬を切り刻んだそうじゃない!?そのせいで、私がどんな目で見られてるかわかってんの!?」

 

「お、お母さん…?」

 

「あんたみたいな奴、産まなきゃよかった!!訳わかんない事するし、何回叩いても全然泣かないし…あああ、気味が悪い!!このキチガイ!!」

 

「お母さん…」

 

「目障りなのよ!!私を捨てたあの男にそっくりなあんたが!!あんたが私を不幸にしてるの!わかってる!?」

 

私は小さい頃から、苦痛を苦痛として感じる事ができなかった。

 

だから、周りとどう接したらいいのかわからなかった。

 

人は、私を『異常』だと言う。

 

私が『普通』だったら、世間の私に対する接し方も違ったんだろうか。

 

でも、私には何が『普通』なのかがわからなかった。

 

『普通』に生きている人達が羨ましかった。

 

『普通』になりたかった。

 

 

 

私はある日、ゴミ箱に捨てられた、壊れたおもちゃを見つけた。

 

「…君も、私と同じだね。」

 

いつも『普通』を強いられて、誰かにとっての『普通』じゃなくなったら、誰からも必要とされなくなる。

 

そんな機械に、私は親近感を抱いた。

 

その日から、私は機械に興味が湧き、あらゆる機械に触れるようになった。

 

その過程で、数学から機械工学まで、様々な参考書を読んだ。

 

私は、すぐにそれらの虜になり、より難解な参考書を求めるようになった。

 

1年経つ頃には、私の学力は大学生レベルまで達していた。

 

母親はそんな私を気持ち悪がったが、それが金になる才能だと分かった途端に掌を返してきた。

 

当時の私は、そんな事に気づかなかったから、母親が私を可愛がってくれるようになったのが嬉しかった。

 

 

 

ある日、私は知らない人を『バラバラに』してしまった。

 

人の体がどうなっているのか、この目で見てみたかったから。

 

すると、母親の態度がまた変わった。

 

「あんたなんて事してくれたの!!?もし誰かにバレたら、私がどうなるかわかってんの!!?ねえ!!!本当に気味が悪い…あんたみたいなクソガキ、死んじまえ!!!」

 

今まで、実験したり機械を分解した時は褒めてくれたのに、なんで人を分解したら叩かれるのか。

 

私には、それがわからなかった。

 

そんなある日だった。

 

大人達が、私達の家に来て言った。

 

「お宅の小学生の娘さんが、虐待を受けていると通報があったのですが。署までご同行願えますか?」

 

「は!?いや、ちょっと待ってよ!元はといえば、こいつが…」

 

「いいから来なさい。」

 

「…お、お母さん?」

 

「…あんたのせいよ。」

 

「あんたのせいで、私の人生メチャクチャになったのよ!!お前なんか、産まなきゃよかったんだ!!」

 

それが、母親が私に言った最後の言葉だった。

 

母親は、虐待に加えて、私が人を分解した事の罪を押し付けられて逮捕された。

 

他に身寄りが見つからなかったので、私は施設に入る事になった。

 

入った先の施設では、施設の大人達に気味悪がられて、すぐに他の施設に移された。

 

そんな事の繰り返しだった。

 

そしてついに、誰も私を受け入れなくなった。

 

私は孤独になった。

 

いや、違う。元から孤独だったんだ。

 

私を心から受け入れてくれる人なんて、一人もいなかった。

 

私が『異常』だったから。

 

私が、みんなの『普通』になれなかったから。

 

私は、最初からゴミ箱に捨てられていたんだ。

 

 

 

数年経ったある日、私はニュースを見て驚愕した。

 

母親が死んだ。

 

何者かに殺された。

 

犯人は、すぐに特定できた。

 

そいつは、『絶望』に堕ちた元『超高校級の看守』だった。

 

私は、そいつの『絶望』に惹かれた。

 

もし、『絶望』と呼べる存在がいたなら。

 

私は、その存在にとっての『普通』になれるかもしれない。

 

私は、僅かながらにそんな望みを抱いた。

 

そしてまたある日、偶然にも私は姉の存在を知った。

 

私は、唯一の身寄りである姉に会いに行った。

 

私の姉は、双子の姉妹だった。

 

私は、会った瞬間に姉達の『絶望』に魅了された。

 

いや、お姉様達こそが、『絶望』そのものだ。

 

同時に、私は『絶望』に堕とされた。

 

私は、誰にとっての『普通』になる事はできない。

 

誰かにとっての『普通』になれるなんて望みは、最初から無かったんだ。

 

でも、私は満たされていた。

 

『絶望』という、私が心から惹かれる存在に出会えたから。

 

私は、『絶望的な才能』をお姉様達に買われて、妹として受け入れられた。

 

私は、お姉様達の役に立ちたかった。

 

だから、政府が水面下で『計画』を進めていると知った時は、真っ先に被験者として名乗り出た。

 

世界を『絶望』に堕とすために、人工的に作り出された『超高校級』を利用できると思い、私は候補生達の中に紛れ込んだ。

 

そして、度重なる実験に耐え、私自身も圧倒的な才能を手に入れた。

 

幸い、私は苦痛を苦痛と感じる事ができない体質のおかげで、実験を乗り越える事ができた。

 

今まで嫌いだった自分の体質が、こんな所で役に立つとは思わなかったけど。

 

 

 

1年後、『人類史上最大最悪の絶望的事件』が起こった。

 

お姉様が起こした事件だ。

 

私は、事件に便乗し、実験で精神が壊れかけたスクラップ共を片っ端から『絶望』に堕としていった。

 

そいつらは、次々と殺し合いを始め、施設は血の海に染まった。

 

私は、施設内に充満した『絶望』に快感を覚えた。

 

…お姉様達程じゃないけど。

 

でも、その1年後、事件が起こった。

 

私の敬愛するお姉様達が死んだ。

 

『希望』によって野望を打ち砕かれたそうだ。

 

その事件を知って、私は決意した。

 

妹の私がすべき事は、一つしか無い。

 

私は、お姉様の後継者として、『超高校級の絶望』になった。

 

世界を『絶望』に堕とすために、私は計画を立てた。

 

 

 

計画を練り始めてから2年後、ついに計画が完成した。

 

手始めに、私は計画のための駒を用意した。

 

「や、やめてくれよぉ…もう許してくれよ…」

 

「んだよ弱っちいな〜。お前それでもここまで生き延びた『超高校級』かよー?」

 

「…オイ魅神。」

 

「ん〜?江ノ島ちゃんじゃん。どったの?」

 

「暴れ足りないらしいな。私が相手してやろうか。」

 

「いいねぇ…そのちっちゃい体、バキバキにへし折ってやんよ〜。」

 

 

 

「ぐっ…バ、バケモンが…!」

 

「ふーん…お前、その程度?」

 

「おいおいおい…こんなのアリかよ…」

 

「負けたんだから、私の言う事聞いてくれるよね?…逆らったら、どうなるかわかってるよな?」

 

「…おー怖。」

 

私は、魅神…もといジョージを手下にした。

 

生き残り達の中では、一番適任だと思った。

 

「んで?江ノ島ちゃん。俺はどうしたらいいの?」

 

「気安く呼ぶんじゃねえ。これから、私の事は『アイカ様』と呼べ。」

 

「了解〜。」

 

私は、『絶望』に堕とした生き残り達と、計画の準備を進めた。

 

そしてついに、計画の準備が整った。

 

まあ、その頃には、使えない役立たず共は全員おっ死んでたけど。

 

生き残りは、私を含む16人だけとなった。

 

今から、私はこいつらの記憶を消して、こいつらの前で演技をしなきゃいけない。

 

…スッゲーめんどくせえ。

 

正体がバレるのは、避けたいな。

 

まあ、バレたところで対処すれば問題無いんだけど。

 

…とりあえず、髪は切ろうかな。

 

今までと見た目が違う方が、騙しやすいし。

 

「アイカ様〜。これからどうすんだっけ?」

 

「今から、14人の記憶を消して、偽物の記憶を植え付ける。…お前には、記憶が改竄されたフリをして、そいつらのスパイになってもらう。」

 

「俺必要ある〜?アイカ様も、こいつらの中に潜り込むんでしょー?」

 

「私一人じゃ、掌握できる人数に限界がある。だからお前に頼んでいるんだろうが。」

 

「そゆこと〜。じゃ、俺はアイカ様のわんことして、忠実に働きま〜す。」

 

…魅神をどう扱うかは、既に考えはある。

 

計画を実行に移そう。

 

私は、14人を、物理室の機械にセットして、機械を作動させた。

 

…さて、殺し合い(ゲーム)の始まりだ。

 

 

 

 



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