DRACU-RIOT!~もう一人の吸血鬼喰~ (清春)
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チャプター1

ここは日本のどこかの山、自殺志願者でもない限り立ち寄ることはない奥深く。そこは今戦場になっていた、いや、【今】という表現はもうおかしいだろう、だってその戦闘は終わろうとしているのだから。

 

「フン、数を集めれば何とかなるとでも思ったのか、人間風情が。」

 

「ぐっ」「糞が」「化物(ファッキンサッカー)の分際で」

 

そこに立っているのは、身長2メートルを軽く超える、下手をすれば3メートルある

かもしれない大男だけだった。

 

「今」

 

その大男は、右腕を挙げた。俺は知ってる、大男はそれだけでここにいる全員を始末できることを。

 

(クソっ動け動け動け動け動け動け動け動け、何のために今まで鍛えてきたんだ。今、この瞬間のためだろ!動け動け動け動け動け動け動け動け)

 

「楽にしてやる。」

 

大男はその手を、振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

一週間前、日本で唯一カジノが認められている場所、海上都市アクアエデンが国際テロ組織に襲われるという事件が起こった。

 

ただし、それはあくまで表向きには、である。

 

実際はアクアエデンは吸血鬼が住むことを許された世界で唯一の土地であり、吸血鬼による自治を認めはしたものの、その力を恐れた日本政府が彼らを皆殺しにしようとした事件である。

 

自分で認めておいて怖くなったら手のひらを返すとは、醜いことこの上ないがそれが人間の本質なんだと思い知らされたものだ。

 

なぜこの俺、牽牛遥人がそんな国家機密を知っているかというと、俺は日本政府と繋がりのあるヴァンパイアハンターなのだ。まあ、正確な名前は【狩人】というそうなのだが、それだと分かりづらいので俺はヴァンパイアハンターと名乗っている。一部の武闘派の吸血鬼もこの情報をつかんでいるようなので、それの迎撃、及び抹殺を依頼されたのだ。

 

「しかし、この事件を見てみると、人間と吸血鬼、どちらが悪なのかよくわからなくなってくるな。」

 

「何言ってんだよ遥人、吸血鬼は存在自体が悪、それが俺たち狩人にとっては常識だろ。」

 

この黒髪の長身で眼鏡をかけていていかにも真面目そうな男は鵲健生、俺と同じ狩人で同い年ということもあり比較的よくしゃべる奴だ。

 

「まったくおまえってやつは、狩人としての使命感にかけているぞ。お前は天才だからと言

って調子に乗りすぎるところがあるからな。」

 

悪い奴ではないのだが、はっきりしてないものが許せない、ちょっと小五月蠅いやつなのである。

 

「お前、今失礼なこと考えていただろ。」

 

「考えてねーよ。」

 

「二人ともなに喋ってんの。早くしないと出発するよ。」

 

「あっ悪い、健生のやつが突っかかってきたから。」

 

「なっおい、人の所為にするな!」

 

こいつは織女玲奈、身長は150センチあるかどうかわからない小柄なくせに胸のでかい少女で俺や健生よりひとつ年下なのだが、狩人も少子化で子供が減っているので遊び相手が俺たちくらいしかいなかったのでよく遊んだものだ。

 

俺達三人は狩人でも期待の新人で、チームで行動することが多かったので、今回もこのチームと狩人屈指の実力者数名で任務にあたることになった。

 

まあ期待の新人といっても結局新人なので、ベテランの狩人の狩りを見学するのがメインとなるわけだが。

 

「おい餓鬼ども、ピクニックじゃないんだから静かにしろ。今から化け物共と殺し合いに行くんだからよ。」

 

「あ、すいません。」

 

「まったく、近頃の餓鬼は。一応確認しておくが、今回の任務は襲撃が予想される吸血鬼の迎撃と抹殺だ。俺たちだけで対処する予定だが不測の事態になればお前らの力も借りることになるから常に警戒を怠るなよ。」

 

「「「了解!!」」」

 

「よし、それじゃ出発だ。」




初めての作品ですので、誤字脱字やアドバイスなどがありましたら書いていただけると助かります。



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チャプター2

牽牛遥人 主人公、狩人の中でも武闘派のチームに所属している。
誕生日 7/7
身長178㎝
体型 少し筋肉質だが無駄な筋肉は一切ついていない
特技 将棋


「こちら牽牛、ターゲット確認。」

 

『気づかれてないだろうな。』

 

「はい、ターゲットが気づいた様子はありません。」

 

『よし、そのまま気づかれないように待機だ。』

 

「了解。」

 

今俺たちがいるのは、名前もよくわからない山の中だ。例の吸血鬼の進路予想で最も可能性が高かったのがこの山だったからだ。

 

張り込むこと7時間、ちょうど夜が明けてきたところで身長2メートル以上の大男を確認した。渡された資料と一致するので間違いないだろう。

 

この資料だが、少し情報が少なすぎる気がする。

 

書いてあるのはダフヌスという名前と外見について書かれているだけだ。写真がないのは仕方ないにしても能力が書いてないのは不安を感じざるを得ない。

 

『こちら狙撃班α、こちらでも確認、いつでも行けます。』

 

『こちら狙撃班β、こちらでも確認、いつでも行けます。』

 

『こちら狙撃班γ、こちらでも確認、いつでも行けます。』

 

どうやらほかでも確認できたらしい。

 

吸血鬼は人間を超越する力を持つので警戒するに越したことはないが三方向からの長距離射撃を同時に行えばさすがの吸血鬼といえど隙くらいならできる。そこに近接戦闘に特化した部隊で襲えばまあ確実にしとめることができる。

 

ちなみに、今回地理的条件がよく敵が単体なので実戦経験ということで俺たちも参加することになり俺と玲奈は近接部隊で健生は狙撃班だ。

 

『それじゃ、スリーカウントで作戦開始だ。』

 

『スリー』

 

『ツー』

 

『ワン』

 

『撃て!』

 

「「「ドン!」」」

 

三方向からの狙撃、しかも対物銃での狙撃なので一撃でも当たればこっちのかちだ。

 

「なっ」

 

最初に気付いたのは俺だった。打つ瞬間、大男は不敵な笑みを浮かべた。

 

次の瞬間、俺の目には信じられない物が映った

 

「嘘だろ」

 

大男を習った弾はすべて空中で停止していた。資料には書いてなかった奴の能力は【念動力】だったようだ。

 

吸血鬼は人間の血を吸うことで肉体が活性し、超常の力が使える、それが能力だ。

 

ただしこの能力は一部の例外を除いて人間の血を吸わなければ使えない

 

能力を使ったということは、大男はすでに人を襲ったということだ。この大男が能力を使うために吸血された人間は、最悪死んでいる可能性もある。死んでいなくても吸血鬼の存在が知られてしまう。どちらにしても最悪だ。

 

『ぐわぁ!』

 

『おい、どうした、応答しろ、応答しろ、クソ。』

 

どうやら奴の念動力で狙撃班は全滅したらしい。

 

「健生君、健生君!」

 

「おい、玲奈敵から目を離すな!」

 

健生がやられて動揺している、それに気を取られて気づくのが一瞬遅れてしまった。

 

大男は隠れていた俺たちに気付き向かってきているのだった。

 

「ちッ馬鹿野郎が。」

 

俺は玲奈と大男の間に割って入った。

 

「玲奈!今すぐ逃げろ、任務は失敗だ、さっさと逃げろ!」

 

(近接型の俺なら時間くらい稼げるはず。)

 

俺はこれまで何人か吸血鬼を倒したことがある。暗殺だけでなく正面から戦ってもだ。そんな俺の自信を、あっけなく崩すように大男は俺を一蹴した。

 

「なかなかの技術力だがパワーが足りん。それが人間の限界だ。」

 

その言葉を最後に、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

どのくらい気を失っていただろう、周りを見ると、狩人の仲間たちは虫の息といったところだ。

 

「フン、数を集めれば何とかなるとでも思ったのか、人間風情が。」

 

「ぐはっ」「糞が」「化け物ファッキンサッカーの分際で」

 

そこに立っているのは、大男だけだった。そしてその前には玲奈が倒れていた。

 

「玲奈!!」

 

「今」

 

その大男は、右腕を挙げた。俺は知ってる、大男はそれだけでここにいる全員を始末できる

ことを。

 

(クソっ動け動け動け動け動け動け動け動け、何のために今まで鍛えてきたんだ。今、この瞬間のためだろ!動け動け動け動け動け動け動け動け、今玲奈を守れるのは俺しかいないんだぞ!動け動け動け動け動け動け動け動け)

 

「楽にしてやる。」

 

大男はその手を、振り下ろした。

 

 

 

「なっ」

 

だがその手は途中で止められた。いや、俺が止めた。

 

「貴様、なぜ動ける!」

 

「おめーさっき言ったよな。それが人間の限界だって。」

 

どうやら大男も無傷ではなかったらしく、左腕から血が出ていた。

 

「だったらその限界、超えてやる!!」

 

そして俺はその血が滴る左腕に噛みついた。

 

 

 

 

 

有名な話で「吸血鬼に血を吸われると吸血鬼になる」というものがあるが、実際には「吸血鬼の血を吸えば吸血鬼になる」だ。ただしそのためには一定量を数日間飲み続けなくてはならないのである。もちろん俺もそのことについては知っていたが、一瞬だけならそれなりの量を吸えば吸血鬼になれるかもしれないという希望にすべてをかけたのだ。

 

 

 

 

 

「あり得ない。」

 

そしてその賭けにどうやら俺は勝つことができたようだ。

 

一瞬体が爆発したかのような感覚に包まれたが気にしない。

 

体が燃えるように熱いが気にしない。

 

必要なのは目の前の敵を倒す力だけだ。

 

キン!

 

高い金属音が鳴ったと思えば、大男の右腕は細切れになっていた。

 

どうやらこれが俺の能力だったらしい、いや、正確には能力の応用だ。なぜかわからないが初めてのはずの能力をかなり精密にコントロールできるようだ。いつもなら気になるが。今は関係ない。

 

「なめるな小僧!!」

 

大男も反撃してきた。だがそれもとてもゆっくりに見える。

 

「はぁ!!」

 

ゆっくり迫ってくる大男の鳩尾を一発殴る。するとそこが爆発した。

 

「ぐふぁ、ば、馬鹿な、能力が複数あるだと!貴様まさか【ライカンスロープ】か!!あり得ん、あり得ん、あり得んぞ!!貴様のような小僧が」

 

「ごちゃごちゃうるせぇ。」

 

俺は炎を大男の肺の中に発生させた。

 

「苦しんで死ね。」

 

「ぐわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

 

 

 

(俺、守れたよな……玲奈)

 

その断末魔を最後に、俺は深い眠りについた。

 

 



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