幽霊少年は消えたくない (ウロボロスの蛇)
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1話
自分が大嫌いだった。
それは俺に優秀な姉がいたからだ、両親は直接言うことは無かったが、学校ではいつも比べられてばかりだった。
何よりそれを当たり前に感じて、ヘラヘラ笑って生きている自分を一番憎んでた。だから姉が死んだ時俺の世界は変わった、死ぬべきだったのは姉ではなく俺だったのだろう。
変化に気が付いたのは高校に入学してからだ。
最初は鏡に移る自分に違和感を感じた、何がおかしいのかその時はわからなかったが、一週間ほどたってそれは明確になった。
鏡に映る自分が透けているのだ。
他の誰にもわからないらしい、そして日が経つ事に透明に近づいていった。
向こう側の風景が透けている。それと合わせて他人からもまるでそこに誰もいないように扱われた。
さらに追い討ちをかけるように手足の感覚もおかしくなってきた。今までは何か物を掴めがそこに硬さなどの感覚、がはっきりとあったものが薄れてきた。
硬いもの、柔らかいもの、尖ったもの、丸いもの
何を持っても何も感じない。地面の上を歩いてる感覚も、寝転ぶことも、立っているのかさえ怪しくなってきた。
「そこで何をしているんですか?」
自ら命を絶とうと覚悟を決めた時、彼女が現れた……
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『牧之原さんはこっちの高校に通うんだね』
「はい、体調も落ち着いてきましたし。峰ヶ原高校にもまた、通ってみたいです」
『そっか。楓もまた会えるから喜んでるし、何か手伝えることとかあるなら、遠慮なく言ってね』
私……牧之原翔子はこれから高校生になります。
あの時の未来とは違う高校に通うかもと、危惧していましたが幸運なことにお父さんの転勤に合わせて神奈川に引っ越すことになりました。
「大丈夫です。咲太さんたちにご迷惑をかけるわけにはいきませんし。もう荷解きも終わりました。今度はやてを連れていきます」
『何かあったら遠慮なく言ってね。おやすみなさい』
「おやすみなさいなさい」
本当はすぐにでも、会いに行きたいのですが。一日中動いていたのでもうクタクタです。
部屋の窓からは七里ヶ浜の浜辺が見えます、窓を開けて暫くボーとして海を見てると、人がいました。いえ、正確に言うなら
這うようにして何度も転ぶように蹲りながらも、海の方に向かって進んでいきます。
目を凝らしてみるとそれはやはり人のようで、スマートフォンのカメラで撮って見ることにしました。
「え!?」
慌てて外へ飛び出しました。
「ハァハァ……」
手術して数年、ランニングなど心臓に多少なら負荷がかかっても大丈夫だとわかっているので全力疾走で海へ向かいます。
「そこで何をしているんですか?」
海についた私が見たのは、泣きながら海に入ろうとしてる男の子でした。
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