屋根の下で(中断中) (神無月 フラット)
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出会いは雨と共に
レインコート


こんにちは。神無月フラットです
星輝子のSSは投稿していなかったので初投稿です


雨の日

こんな時は憂鬱になる

買い物中だったため、メモを見ながら今日買った食材を確認する

 

「よし、忘れ物なし....と」

 

買い物バッグを肩に引っ掛けて傘を広げる。天気予報よりも自分の鼻の方が信用できるのはこんな時だ(今日は降水確率30%)

近くまで歩くと店の前の花壇に1人の女の子?が背中を向けてしゃがみこんでいる

 

「あの〜....」

 

「ヒィ!?」

 

ヒィって....そんなに怖い顔してたかな....

 

「あの....驚かせてすみません....」

 

「だ、大丈夫だ....うん。トモダチ....見ていたから....」

 

そう言って彼女の指先を見るとそこには花壇の隅っこによく分からないきのこ?が生えていた

 

この人今きのこを『友達』って言わなかったか....?????

 

「えっと....ここだと寒いですし中入りませんか?」

 

「お、おしゃれなお店は、ぼっちにはハードルたkクシュン....」

 

鼻水がたらーっと垂れる

 

「入ってください」

 

「....はい」

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

「お待たせしました。簡単なものですが」

 

テーブルに紅茶とシフォンケーキを数切れ程出す。風邪をひいてはいけないので女の子には既に毛布を渡し、店内をヒーターで暖めた

 

「ここの店員さんだったんだな....」

 

「まあ店員というか居候というか....」

 

先程はレインコートを着ていたためよく分からなかったがその中はすごく薄着だった。どれ位かって言うと真夏の暑さでぐーたらしている田舎の少年少女並である。そんなきのこさん(仮名)が両手でハムスターのようにもぐもぐ食べていると奥から人が来る

 

「お、なんだ翔ちゃん、もう帰ってたのか」

 

「その呼び方は止めてくれ、マスター」

 

「はっはっはっ、孫のことくらい好きに呼ばせてくれ....っと、お客さんがいたのね、ごめんごめん」

 

細く長身、白髪が似合うこの人が自分の祖父(御年66歳)だ。なんていうかステッキを持ってシルクハットを身につけても違和感のない人だ。数学教授とか似合いそう

 

「どうも、本日は喫茶フジにお越しいただいたきありがとうございます」

 

「あ、えっと....お、お邪魔してます...はい」

 

「おいおい翔ちゃ〜ん?この子どこから連れてきたんだい?」

 

肘でツンツンしながら耳打ちしてくる

我ながら元気なじいちゃんだよほんと

 

「店先で座り込んでいたからな、風邪ひきそうだったから店に入れたんだよ」

 

「やっさし〜」

 

「うるせっ!」

 

こんなことをしている間もきのこさん(仮名)は両手でもぐもぐと食べている。あと紅茶を飲んだ時熱かったらしく舌を少しペロッと出していた

 

突然店内にハードな音楽(ロック?メタル?)が流れる。じいちゃんにそんな趣味は無いし俺もそんなに音楽は聴く方ではない。とすると....

 

「は、はい....あ、親友....」

 

きのこさんだった

えっ?この見た目であんな曲聴くの?人は見た目によらないと初めて実感したわ

 

「うん....うん....えっと、喫茶フジってところ。うん、ありがとう....」

 

電話を切るとはっとした顔できのこさん(仮名)がこちらを向く

 

「えっと、今日お金持って....ないです」

 

「いいって、俺が無理に店に入れたんだし、お代はいらないよ。それとさっきのは親御さんの迎えとかかな?」

 

「あ、はい....そんな感じ」

 

お皿を見るともうシフォンケーキが無くなっていた。意外と気に入ってくれたのかな

しばらく待つとスーツ姿の男性が入ってきた。保護者にしてはあまりにも似ていないがきのこさんは彼を親友と呼んでいたからまた大丈夫....かな?

その後喫茶フジは特に客がたくさん入ることもなく、部屋には紅茶とコーヒーの香りが漂っていた

 

「....これ忘れ物じゃん」

 

店内の掃除中に気がついたが席にはきのこさんが身につけていたレインコートが置いてあった

え、どうしようこれ....てか普通着ていたもの忘れるか?まあこんな大きなもの今まで気が付かなかった俺も大概だけどさ....

 

「持って行ってやんなよ」

 

「いや俺さっきの人のこと知らないんだけど....」

 

「えっ?知らない人連れ込んだの?ワシに似たのかね」

 

じいちゃんも昔知らない女の子を連れ込んでコーヒーや紅茶を振舞ったことがあるらしい。それが今の祖母だ(存命)

 

「さて、どうしたものかね....」

 

黄色のレインコートはとりあえずハンガーにかけて乾かしておいた

レインコートだし紅茶とかコーヒーの匂いは染み付いてない....はず

 

「そういや店手伝ってくれるのはありがたいけど今お客さんもいないし宿題済ませてもいいんだぞ?」

 

「宿題ならとっくに終わってるよ」

 

そう、俺は学生だ。17歳の高校2年。誕生日も早くて(4月6日)学年上がる=年齢が1つ増えるって感覚だった

幸いなことに転勤族とかそういうものではないので話す程度の知り合いならちらほらと....いればいいなって感じだ

 

「んじゃあ今日は学校の準備してさっさと寝るか。いつも遅くまで店の仕込みの手伝いとかメニュー考案とかしてくれるからたまには早く寝なきゃな」

 

「はいはい。そんなことより自分の体の心配しなよ」

 

「はっはっはっ!若いもんにはまだまだ負けんよ!」

 

「って言っておきながらこの間腰やったのじいちゃんじゃないか」

 

「まぁ....それは....そうだが....」

 

時間を確認するともう19時を過ぎていた。

お客さんもいないし店を早めに閉め、夕食をとった



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忘れ物にもいい面はある

こんにちは、神無月フラットです
なんでこんな忙しい時にドリームアウェイイベ来るんでしょうね、狂いそう(輝子まゆ比奈光沙織P)
短いですがどうぞ!


月曜日というのは社会の中(主に学生や働き疲れた社会人)に最も忌み嫌われている言葉の一つ、だと思っている

正直な話俺も学校に行くのは好きではない

いやだって使うか使わないか分からない数学の勉強するよりかは料理の研究していた方が有意義ではないか、常にそう思っている

 

「それで、このザマだと?」

 

目の前に立つ巨漢、強面、ヤのつく自由業の三拍子で有名なボスがいた

 

「いやボス、俺だって一応頑張ってはいるんですよ」

 

「ボスではない!黒田先生だ!」

 

「イェス!ボス・ブラック」

 

「俺はダイドー派だ!」

 

出席簿の角で頭を叩かれる。めっちゃ硬いしめっちゃ痛い

 

「んで、なんで数学だけだめなんだ?」

 

「いや....あまり使わないので....」

 

実際使わないじゃん?俺生きていく中で方程式とかやったことないんだけど....

 

「やかましい!放課後再テストやるからな!」

 

「ボス!それはあんまりです!」

 

「黒田先生だ!」

 

 

☆★☆★☆★

 

 

ボスのケジメ(という名で親しまれる放課後プリント学習)を終えて喫茶フジ、もとい自宅へと向かう。レインコートは確かに毎日使うものではないが雨の日とか必要だろう、てか今どき傘を使わないでレインコートなんて珍しい。雨の日が好きなのだろうか

そう考えて歩いているとまた店の前にきのこさん(仮名)がいた。というかまたきのこを見ていた。いや友達と本人は言っていたな

ぽんぽんと肩を叩く

 

「ヒィ!?」

 

「あっ、ごめん....」

 

なんていうか既視感?前もこんな感じだった気がする

 

「あっ....昨日の....」

 

「そうそう。君、えーっと....」

 

「名前....言ってなかったな」

 

少女が立ち上がりこちらを向く。両手を自身の前に置いてぺこりとお辞儀をした

 

「星、輝子です....よろしく....ふひっ」

 

ふひっ....?まあそれは置いといて

 

「大野翔太郎です。ここの喫茶店でバイトやっています。よろしく」

 

「ば、バイトだったんだな....てっきり大人の人かと....」

 

「確かに身長はそれなりに(182cm)あるけどまだ高校生なんだよね、今年で17歳の高校2年だ」

 

「ひ、1つしか違わないのか....」

 

「えっ....こ、高校生だったの....?」

 

俺の胸のあたりだから恐らく150cmはない....見た目だけだと小学生って言っても通じるレベルだぞこれ....

 

「翔ちゃーん、ナンパするなら中に入ってもらえ〜」

 

「おじっ....マスターからかうなよ!」

 

 

とりあえずレインコートの件もあるし中に入ってもらった。何故かそのまま紅茶を注文されてしまったがお店としては嬉しい限りである

 

「そうそう、これ忘れてたから」

 

「ありがとうございます....」

 

受け取ると星さんは小さくお辞儀をした。なんていうか小動物的なかわいさだ

 

「そういえばここ、喫茶店なのにご飯も置いてあるんだな....」

 

「まあ、軽食だけですけどね。パスタとか」

 

「じゃあ....きのこのクリームパスタ....頼もうかな....」

 

時計を確認すると時刻は18時、夕食にしては早いかもしれないが丁度いい時間かもしれない

 

「はい、ありがとうございます。きのこパスタオーダー入ります」

 

そのまま厨房へ行き、レシピを確認する。大体は見なくても作れるようになったが久しぶりの料理は確認するようにしてる。配分ミスったら怖いからね(1敗)

 

しばらくしてクリームパスタをトレーに乗せて運んでいくと星さんの座る席の対面に頭が2つ増えていた。いやお客さんか

 

「お待たせしました。きのこのクリームパスタでございます」

 

「おお....シメジくんとエリンギくんだ....」

 

シメジくん?エリンギくん?

聞きなれた単語から繰り出される謎の名前を聴き流しながら同席の2人にお冷をだす

金髪で目隠れしている子とピンク色で横っパネしている女の子だ。同級生か?顔だけ見ると普通にかわいい

 

「いらっしゃいませ」

 

「あっ、ありがとうございます」

「フフーン!カワイイボクが座るだけでカワイイオーラでお店が満たされますねえ!」

 

前言撤回、このピンクっパネさん(仮名)やかましい。あとドヤ顔やめろ同意を求めるな

 

「えっと、こっちはじむsムグッ」

 

じむ....なんだって?

 

「輝子さん!そういう発言には気をつけてください!ちゃんとしっかりしなきゃダメですよ!」

 

「ご、ごめん幸子ちゃん....」

 

あっ前言撤回、この横っパネピンク、もとい幸子さん意外と常識人だ

2人は軽食ではなく普通に紅茶とお菓子を注文した。遠くから見るとクラスの女子とは違いなんていうか穏やか?楽しげ?な雰囲気だ

 

「翔ちゃんにも彼女ができたらねぇ....」

 

「何言ってんだじいちゃん、俺は」

 

「いくらそう言ってもね、別れは来るもんだよ。ワシだって例外じゃない。翔ちゃんにもいつか大切な人と過ごすってことの意味がわかる日が来るさ」

 

「そういうもんかね....」

 

ちらっとボックス席の方を向く。3人が紅茶を飲みながら楽しそうに話している姿だ。いずれは俺もあんなふうに....か

すると幸子さんがこちらを向いてニヤッというかドヤッ?としてきた

 

「いくらボクがカワイイからってジロジロと見ないでください!まあ、ボクがカワイイからなんですけどね!」

 

レジカウンターからボックス席の方まで歩く

 

「すみませんお客様、店内ではお静かに願います」

 

営業スマイルでそう言うとシュンとして「あっ、ごめんなさい」と謝られてしまった。やっぱりなんだかんだドヤるけど根は真面目で常識人なんだなこの子

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「───!───野!大野!」

 

「フガッ!?」

 

どうやら寝ていたらしい。この時期の窓際はぽかぽか陽気で眠気を誘う。てか必中催眠術だよ、きのこのほ〇しレベルだよ

 

「な、なんだ?」

 

「ボスが呼んでたぜ?数学今日も寝てたろ?」

 

ボスに呼び出されて職員室へと向かう。テスト期間中ではないためノックをして名前を言い、そのままボスの元へ行く

 

「お呼びでしょうか、ボス」

 

「いい加減お前はだな....まあいい、そんなことよりお前、これからどうするんだ?進路」

 

あ〜進路か。確かにこの前のホームルームで進路書いた気がする....気がする

 

「お前は数学以外は学年トップレベルなんだからそこさえやればどこでも行けるだろ。どうすんだ?」

 

「まあたぶんあの喫茶店を継ぐでしょうね。あそこが好きなので」

 

「そうか....まあ進学の相談なら乗るからな。あとちゃんと数学m」

 

「失礼しました!」

 

脱兎のごとく走り抜ける(気持ちで歩く)

入口付近の先生(社会科パンチパーマ、通称パンチ)に呼び止められてノートを持っていく。集めたノートを運ぶとか意外とめんどいんだよね、前は見えないしコケてばらまいたら回収が大変だし

 

「フガッ」

 

それ見たことか

何かにぶつかりノートのタワーが崩れる。バベルかなにか?

 

「あれ?星さん?」

 

目の前にいるのは見覚えのある銀髪と低身長だった。うん、これ星さんだわ

手持ち的に移動教室か?

 

「あっご、ごめん....!」

 

あたふたしてノートを集めているとチャイムが鳴る

 

「星さん?先に行ってもいいですよ。移動教室なんでしょう?」

 

そう言って星さんを無理に返させてノートを集め直す。1、2、3....29、30、31、32....あれ?枚数が同じなのに何故かピンポイントに俺の分だけ無い

取り違えたか?そんな漫画じゃあるまいし....でも星さんのノートここにあるんだよなぁ....

授業終わったら返しに行こう

1年生2組か

 

 

眠たい眠たい必中催眠術な数学を終えて休み時間、普段ならぐでーっと卵みたいにぐでぐでしてるのだが珍しく起き上がり1年の教室へと向かう

 

教室のドアを開けてそう、本来なら「星さんいます?」と声を出すべきではある

けどなんていうか....うん、教師ってすごいわ

こんなたくさんの人の前で声出せるんだもの

俺には無理、てかなんか俺の方見てみんなざわざわしてるんだけどってそりゃそうか、上級生来たら普通怖いもんな

 

っと隅っこに星さんを発見

これより接触をする!

 

「あの〜星さん?」

 

「ふひっ....?」

 

常日頃からその口癖なのか....

 

「えっと....ノート落としてたよ」

 

「えっ?あ、ありがとう....」

 

ノートのやりとりをしていると後ろからなんか囁かれている。「えっ星さんあんな人と知り合いなの?」「背たっか〜い....」「先輩かな?」って具合に

なんか居づらくなってきた

 

「じゃあ、俺戻るから。またお友達連れてきてお店寄ってね」

 

いつものスマイルの後1年の教室を出る

 

「めっちゃ恥ずかしかった....」

 




こんな漫画みたいな展開
してみたいですよねぇ....青春した〜い!(ダミ声)
はい、次回から多分更新遅くなります
原因はドリームアウェイイベです(白目)


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お友達は突然に

明日からイベントですね
締切が月曜日だったのに明日までに終わらさなければならなくなりました(白目)


喫茶フジの内装はアンティーク調である

それに木工の装飾品とかを飾っている。まあ全部じいちゃんの趣味だ

まあそんな感じなのでナウなギャル(死語)には「ふるーい!」「イケてないよね〜」って言われそうではあるが(実際お客さんはあまり来ない)今日はお客さんの入りがとても多い。いくら土曜日とはいえど多い

 

「マスター!1番テーブルのオーダー上がったよ!」

 

「はいよ、あと3番カウンターのお客さんからティーセットお願いね」

 

「セット前に置いといたでしょたまにはやってくれ!」

 

春の陽気に包まれた土曜日、店の前には買い物客やら学生やらで賑わっていた。そのせいか休憩がてらこの店に入る人も増えた....という訳だ

 

「翔ちゃーん、コーヒーのお菓子出しといて〜こっち淹れちゃうから」

 

「お湯沸かす時に準備しろや!」

 

珍しく忙しいせいかちょっと焦り気味ではある。こんな時にレシピ覚えておいてよかったって思うわけ

まあ普段通りのマスターにも見えるが見る限り少し忙しそうだ

 

「ウチもなんかで有名になったんかね」

 

「うーん....特に変わったことは....星さんが時たま遊びに来てくれるくらいか?」

 

あときのこのクリームパスタの注文が多い気がする。そんなに変わらない?いやいや、いつもなら週に1回あるかないかなのが今日だけで15皿の注文だ。変わりすぎだろきのこブームか?

 

「ま、忙しいことはありがたいことだけどね。あとクリームパスタ美味しかったよ」

 

「勝手につまみ食いすんなって!」

 

わちゃわちゃやっている間にピークは過ぎたのか、食事よりかは休憩目的で入る人がちらほらと。まあ少しお客さんもはけたからお店にいる人も2、3人程しかいないけどね。マスターがカウンターでコーヒーを作っている間にお菓子のセットをテーブルに運ぶ。おーっとそこのリア充イチャコラすんな禿げろ

 

「あ、翔ちゃん、表掃いてもらっていい?落ち葉そこそこあるからさ」

 

「はいよ」

 

新型改造箒「エクスカリバーMk-2」を持って入口前の掃除をする。というか人、人、人だ。なんで今日こんなに人多いの?みんな暇なの?あ、休日だからか。でも人混みって怖いよな、ほらあそこの小さい子とかふらふらして危ない....ん?なんか見覚えのある銀髪のアホ毛なんだけど....てかなんかあと2人いるな

 

「あれ、星さん。いらしてくれたんですね」

 

「あ、大野さん....こ、こんにちは」

 

「後ろのお2人はお友達で?」

 

「佐久間まゆです。よろしくお願いします」

 

「森久保は....さんくちゅありに帰りたいんですけど」

 

「乃々ちゃん、せっかくだからお茶していきましょう?ね?」

 

ドリルカール(森久保さん?)の女の子を佐久間さんがなだめている。なんか....ペットと飼い主みたい

てか佐久間さんの俺への視線がきつい。え、なんか俺やっちゃいました?

 

「まあまあ入ってよ、お客さんも今ならあまりいないから席空いてるよ」

 

3人を店に入れて席へ案内する。時間も既におやつタイムを少し過ぎた辺りなので注文されても恐らくお茶のセットくらいだろう

 

「じゃあ....きのこのクリームパスタで....」

 

「よ、よく食べますねぇ....まゆは今日の紅茶とお菓子のセットで」

 

「森久保も....それで」

 

「はい、かしこまりました」

 

厨房へと向かうと中からマスターが出てくる

 

「おっ星さんまた来てくれたんだね。しかもこの前とは別のお友達を連れてきてくれたんだ。ありがとうね」

 

「マスター....こんにちは」

 

「佐久間まゆです。こんにちは、マスターさん」

 

「森久保....乃々です」

 

クリームパスタを作っていると店内の方からは楽しそうに談笑している声が聞こえる。常連さんになってくれるとありがたいんだけどね

パスタを皿に盛り付けてトレーに、お菓子のセットも一緒に載せる

 

「はい、きのこのクリームパスタとお菓子のセットです。アドバイス通りきのこはこの前と少し変えてシメジとマッシュルームにしたんだ」

 

「おお....美味しそうだ」

 

「輝子ちゃんがアドバイスを?」

 

「昨日来てくれた時にきのこの話で少し盛り上がってね、その時色々と聞いたんだ」

 

 

────────────────

 

昨日

 

「エリンギよりもマッシュルームの方が合う!きのこにも相性があるんだ!」

 

「ふむふむなるほど....エリンギよりマッシュルームを....と」

 

「まあ....好みなんだけどな」

 

「星さんのきのこ愛は確かだしその気持ちを信じるよ」

 

「そ、そうか....?まあトモダチだしな」

 

 

───────────────

 

 

「そういやマスター、紅茶は?」

 

「はいはい、今日の紅茶はアールグレイだね」

 

コトっとカップを置く

元々は軽食無かったお店らしいしこっちの方がマスターも得意なんだろうな

 

「星さんそんなにアクティブな人に見えないけど来てくれてありがとうね」

 

「「え?」」

 

森久保さんと佐久間さんから声が上がる。なんていうかその声は驚きの声というか....びっくりした感じ?のやつだ

 

「し、知らないんですか....?まゆ達のこと」

 

「え?俺ストーカーとかそういうんじゃないから知らないんだけど....」

 

「そ、そうなんですか....森久保的には少し安心です」

 

「輝子ちゃんがお気に入りになるのもわかる気がします」

 

なんか会話に付いていけないなんだけど....ナニコレ

 

俺は料理を運んだ後カウンターで休憩していた。いやだってお客さん3人しかいなくね暇だし....マスターも休憩入ったから店番してる。聞き耳立てて3人の会話を聞いていると

「まゆ達もまだまだなんですねぇ....」「あうぅ....泣かないでまゆさん....」「まゆさん....頑張ろう」

なんかすごく申し訳なくなってきたな....

 

3人共お会計して店を後にした

なんか合間合間で佐久間さんにジロジロと見られていたような気がするけど....気のせいだよな?

 

 

───────────────

 

 

前日

 

最近輝子ちゃんの様子がおかしいんです

いつもレッスンが終わったらシャワーを浴びて着替えて机の下でオトモダチと話しているのに最近はよくお外に行ってしまうんです。あの輝子ちゃんがです

 

「というわけで何かあったんですか!?輝子ちゃん」

 

「い、いや特に何も無い....けど」

 

「嘘です。輝子ちゃんの目が泳いでいる時は嘘をついた証拠です」

 

「輝子ちゃんが嘘ついた証拠なんてね」

 

「楓さん」

 

うっすらと違うオッドアイにショートボブが特徴のHHEMの村出身との噂もある25歳児こと高垣楓その人だった

 

「私も気になります。あの輝子ちゃんが楽しそうにお出かけしていますから」

 

どうやら楓さんもこちら側の陣営らしい

 

「え、えっとだな....実は綺麗なきのこを」

 

「まゆ、この間見ちゃったんです。とあるお店に行くところ」

 

「み、見てたのか!?」

 

「嘘です♡」

 

にっこりと笑顔でそう答えると輝子はがっくりとうなだれてしまいました。心做しかぴょこんとハネている毛もしおれています

 

「じゃあ聞かせてもらいましょう?輝子ちゃんがどんなお店に入ったのか」

 

「うぅ....」

 

楓さんはすごく楽しそう

でもどんなお店に入ったんでしょうか

 

「じ、実は喫茶店なんだ....」

 

「「喫茶店!?」」

 

友達と映画館とかゲームセンターに行くだけで「あうぅ....」となってしまう輝子ちゃんが喫茶店!?これは何かありそうです

 

「く、詳しくお願いします!」

 

お友達として気になっちゃいますよね

 

「い、いや....普通?の喫茶店なんだ....学校の先輩が働いているだけで特になにもk」

 

「輝子ちゃんが見ず知らずの人のお店に通っているんですか!?」

 

まゆが机から乗り出すくらい勢いよく出ると楓さんはもうそこにはいなかった。なんででしょう?

 

「男の人ですか?それとも女のひt」

 

「お、男の人だ....」

 

「輝子ちゃんにも遂に....まゆは嬉しいです....」

 

「ま、まゆさん....?なんで泣いてるんだ?」

 

「今度一緒にそのお店に行きましょう!まゆもその人のことチェックします!」

 

「わ、わかった....?」



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絶対運命主張します?

前からも後ろからもギュッとされてます....やばい、MVめちゃくちゃいい....好き
ただサイグラやTAKAMARIの時みたいに運良く休みが被らなかったので2桁や3桁は厳しいので2000位入れるように頑張りマッシュルーム



珍しく今日の店は休みだ

それというのもマスターと奥さん、2人っきり久しぶりに夫婦で旅行に行ったらしい。しかも沖縄に

4月とはいえと沖縄だ。暑くて倒れないか心配になるだろうが

 

 

───────────────

 

 

「翔ちゃ〜ん、お土産は泡盛でいい?」

 

「俺まだ酒飲めないんだけど....」

 

「ジョークジョーク、美味しそうなもの適当に買っていくからよろしくねん」

 

 

───────────────

 

 

こんなことを言えるならまだ大丈夫か

一安心というか旅行に行くなら前もって言って欲しかったのは内緒だ

 

という訳で今日はショッピングモールに来ている。まあ遊ぶ相手はいる....かもしれないからそのとき用に服を買ったり食材を買ったり、あとは趣味だ

1階に食品、2階に服やゲームコーナー、3階に小物品やサブカルチャーコーナーがある。食品は最後かな

というかやはり日曜日、人人人、人しかいない。それにしても普段の日曜日もこんなに人が多かったか?ってくらい人が多い

人の合間を縫ってエスカレーターを乗り継ぎ何とか3階まで上がったが....

 

「なに....これ....」

 

3階には1階の比じゃないくらい人混みがすごかった。というかCDショップ前が1番すごい。まるで角砂糖に群がるアリのように

でもお目当ての小物品店はその奥、仕方がなく人の間を通らせてもらう。しっかし何でこんなに局所的に人がいるのか、ちらっとCDショップの方を見てみる

ほう、女の子が5人....ってことはアイドルか?....ん?まて、俺はあの銀髪を知っているぞ

ふわっとしたあほ毛に長い髪の毛、そしてあの低身長....視線を5人から外すと正面にはポスターがあった

 

「あ、あいつアイドルだったのか....」

 

恐らくサイン会か何かだろう、せっかくだし時間もあるから列に並んでみよう

 

が、これがまずかった

その列は1分に1歩進むかどうかというレベルだった。前には恐らく20人以上....多分ざっとした計算だと1時間は待つんじゃないか?

あ、進んだ

1歩踏み出す

 

「まさかここでゼッケンズの手渡しサイン会やってたとはな〜」

 

「俺もびっくりだよ!でもラッキー!」

 

「俺....もうとときんの顔見れない....」

 

「お前とときん派なのかよ!ちな俺ゆっこ派」

 

「いい趣味してんじゃん....」

 

ゼッケンズというのか、あのユニットは

俺はどんなユニットなのかどんな曲を歌っているか全く知らないがなんかふわふわしてそう。きっと明るい歌を歌っているユニットなんだろう

 

しばらく周りの人のアイドル談義を聞いているといくつかの情報を得ることが出来た

 

・ポニテのいかにも元気な子は日野茜。お茶とカレーが好きらしい。よくランニングしている姿を見かける。合言葉は「ボンバー」

 

・スプーンを持っている子は堀裕子、(自称)サイキッカー....らしい。ゼッケンズの妹枠(3女的な)感じ。サイキックでいろんな人のボタンを弾け飛ばした経験がある(どゆこと?)

 

・一番大きい(いろんな意味で)の子が十時愛梨、通称とときん。ゼッケンズの長女、時たま服が弾けるらしい(?)

 

・ふわふわしている子が高森藍子、ゼッケンズのまとめ役のはずだが固有能力のゆるふわ空間(体感で時の流れを遅くするものらしい)を発生させていつの間にかタイムオーバーなどもしばしば

 

・ゼッケンズの妹枠星輝子。きのこきのこきのこ、そしてメタル。いやメタルってなんだよ。メタルきのこ?巨大化メタルマ〇オか?

 

....ナニコレ(ナニコレ)

これがアイドルなのか?

いや、目の前にいるしアイドルか

346プロ?って大手事務所の所属らしい。随分と個性的なんだな(棒)

とか考えているうちに自分の番が来た。並んだ列はもちろん

 

「あ、ありg....ふひっ!?な、なんでここに!?」

 

やっぱりふひって声は驚いた時とか反応を示す時のクセらしい。あとアホ毛がブンブンしてる。生きてんのか?てかあの動き方だと筋肉でも繋がってるのか?

 

「たまたま通りかかったんだ。1枚、いいですか?」

 

「あ、う、うん....はい、どうぞ」

 

「ありがとうございます。またぜひお店に来てくださいね」

 

「う、うん....」

 

係員の誘導のもと外に出た

なんかものすごいどっと疲れたのと共に達成感?のような何かを手に入れた気分だ

 

「アイドル....かぁ....」

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

サインCDをもらった後は雑貨屋や小物品店を巡っていた。店内の雰囲気似合うようなものや自分の趣味のものを探しに

1つ1つ時間をかけて眺めていたせいか3時間くらい経ってしまっていた。あと残すは最近できた「森」がテーマの雑貨屋だ

 

店内に入ると森、というか緑が多かった

壁に付けるタイプの木の枝(恐らくなにか物を引っかけるのだろう)や植木鉢の小物、そしてきのこをモチーフにしたものもあった

 

「こういうの置いたら星さん喜ぶだろうな....」

 

いやなんで俺は....普通1人の趣味に合わせるのはダメだろう

とりあえずそれらを棚に戻し、趣味のものだけを買って店を出た

 

時間が経ったせいか人混みはほとんど無くなりいつものショッピングモールみたいになっていた。恐らくサイン会が終わったのだろう。エスカレーターに乗るために先ほどのCDショップの前を通りかかると人が出てくる

 

「みんな、お疲れさまです」

 

「お疲れ様です!いやあすごい人でしたねえ!」

 

「あ、茜ちゃん、お店の中だから静かにね?」

 

「私のさいきっく占いでは今日は大成功と出てますからね!」

 

「みんな....お疲れ様」

 

見たことあるな〜というかさっきの人たちだこれ。個性強すぎるでしょ、これユニットとして纏まるの....?絶対舵取りで胃痛の人いるよ....声、かけた方が....いやかけない方がいいのか?どうしようこれ

 

「!?」

 

あ、これ多分星さんに見つかったわ

うわ〜(多分)十時さんの後ろに隠れちゃったよ。てかみんなこっち見てるし

 

「こ、こんにちは....星さん」

 

「ふひっ!?」

 

あっこれダメだ。なんかほかの人から白い目で見られてる

 

「輝子ちゃんになにかしたんですか?」

 

色々と大きい人....だから十時さんか?がこちらにずんと近づいてくる。まってまって近い近い!

 

「いやそんなことは決して....」

 

「ち、違うんだ....この人は知り合いで....」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「あっ....」

 

4人の息があった瞬間だった

 

「「「「輝子ちゃんに男の人の友達が!?」」」」

 

あ〜あ、俺知らねえぞ....?

星さんはあたふたと「ち、違うんだ」とか「よく行くお店の人で」とか言ってるけどむしろ店員と顔馴染みになるくらい通ってるって自白しているようなものだからね?それ

 

「と、とりあえずここだと騒ぎになりそうですしお店の方に来ませんか?」

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

「休業日なので簡単なものしか出せませんが....どうぞ、ジャスミンティーとセットのお菓子、パウンドケーキです」

 

今朝いつものクセで作ってしまったパウンドケーキといつものお菓子、お茶を出す。普段なら店内BGMとか落ち着いた曲が流れるが今日は休みだからね、無音だ

 

お茶を出したあとは「こっちこっち」と招かれ左右の奥に星さんと俺、俺側の席に十時さんと堀さん、星さん側に高森さんと日野さんが座った

日野さんと堀さんはずっと「このお菓子美味しいですねえ!このお茶も美味しいです!」「むむむむーん!サイキックが成功すればこの紅茶に波紋が....」とか言ってる。また見た目通りというかなんというか

好物はカレーって聞いたし足りないみたいだったら後で出すか()

 

「それで、輝子ちゃんとはどのような関係なんですか?」

 

「えっと、高森さん....でしたっけ?星さんは前店の前で座り込んでいたのでこの店に入れて以来結構通ってくれているお客さんです」

 

「えっ?もしかして私たちのこと知らないんですか?」

 

「はい....ついさっきお店の前で見かけるまでは....」

 

「そ、そうだったんですか....結構有名になったと思ったんですけどね....」

 

「俺があまりテレビ見ない人ですから....すみません」

 

とりあえず俺は話せることをすべて話した

ノートの取り違い事件やお店のきのこメニューの話をしたことなど

 

「あれ?てことはこの前来た横っパネピンクと金髪目隠れの女の子、あと森久保さんと佐久間さんって言ったっけ?あの人たちも....」

 

「はい、同じ事務所のアイドルです」

 

ふわっとした笑顔でそう答えられる。いやこれどんな反応するべきなのよ

 

「マジかよ、マスターが聞いたら喜んだだろうに」

 

以前「有名人のサインが並ぶ喫茶店にしたい!」って言ったからな。まあ俺達3人はテレビとかなかなか見ないけど

 

「しかしこの店にアイドルが9人も来てるなんてね....ちょっと待って、もしかしてこの間星さんのアドバイスをもらったきのこのクリームパスタが異常なほど売れたのって....」

 

「じ、実は事務所の方針でつぶやき?ってのを始めたんだ....その時投稿したんだけど....やっぱり私のせいだな....ごめん」

 

やっぱり星さんが原因だったか....謝った後星さんの特徴的なアホ毛がしゅんと萎れてしまった。ほんとにこれはただの髪の毛なのか?実は筋細胞があったり自立型アホ毛で感情を表していたりする?しないか、ゲームやマンガじゃあるまいし

 

「大丈夫ですよ。むしろお客さん来なくて困っていたくらいですから。良ければこれからもぜひ遊びに来てください。精一杯お飲み物や料理でサービスさせていただきますから」

 

料理、という言葉に反応したのか日野さんが顔を上げてこちらを向く

 

「カレーはありますか!?」

 

やっぱり好物なんだろうな。ありますよ、と答えて厨房からカレーを持ってくる。こんな小さな体のどこにこんなにカレーが入るのか、しかも超スピードで食べてるし....

 

 

しばらくみんなと談笑したあともうそろそろ暗くなるからと5人は店を出た。さて、星さん効果もあってお客さんも入るようになったからには頑張らないとな




どうも、神無月フラットです。ポケモンの厳選作業やりながらデレステをやりイカをやり....(いろんな意味で)多忙な毎日です
え?クリスマス?そんな日あったかな....?
今更ですがこの小説?はほぼ見切り発車でして
「星輝子で検索してもあんまり出ないやん!なら書いて増やしたろ!」っていうのが発端です
まるでチャートを組んでいないRTAみたいだぁ....(白目)
なんとか頑張って書いていきますのでどうかこれからも読んでください(


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雨は悲しみと出会いを運ぶもの

クリスマスですね。性の6時間?
私にとっては静の6時間(下書き)でしたよ
ハハッ....


4月という時間は意味不明な体験が多かった。いや、意味不明というよりかは脳が処理しきれなかったと言うべきなのだろう

店先の女の子を店に入れたら週に4、5回くらいで通うようになるわ、きのこのクリームパスタのアドバイス貰ったら次の日から注文がめちゃくちゃ増えるわ、実はその女の子がアイドルだったわ....はちゃめちゃだな

 

ともあれ今は5月の末、もうそろそろ梅雨になる

そう....6月になってしまうのだ

 

 

 

「はあぁ〜....」

 

降ったり止んだり、雨というものはどうしてこんなにもころころと変わるのだろうか

眠たくてしょうがないボス(黒田先生)の数学を終えて昼休み、ものすごい憂鬱な日々だ

今日も今日とて落ち着きと安らぎ、静けさを求めて屋上へと向かうももちろん雨のためごろごろとすることも出来ず、かと言って購買や教室で食べようものならうるさい笑い声で溢れる。今日はそんな気分ではないな....

 

仕方がなく屋上のドアの前、その階段にに座って壁に体を傾ける。手すりの金属部分がひんやりとしていて気持ちいいんだなこれが

 

「や、やぁ....大野さん」

 

「んにゃ....?」

 

閉じていた目を開き正面を見つめる。いや、見つめるまでもなく声で分かった

 

「やあ星さん。君もこの静けさを求めてかい?」

 

「ぼっ....ぼっちの私はここが落ち着くからな」

 

「あんたアイドルでしょうが....」

 

改めて星さんの顔を見ると少し楽しそう?に見える。星さん雨の日が好きなのか?まあきのこ好きって言ってたしありえない話ではないか

 

お互いにお弁当を食べ始める。今日は野菜炒めとその他おかずに米(梅干し入)だ。星さんのお弁当はなんていうか....すごく綺麗で栄養バランスも整っていて....完璧と言っても差し支えないものだった

 

「これ星さんが作ったの?」

 

「えっと、前一緒に来たまゆさんいるだろ?あの人と一緒に作ったんだ」

 

まゆさん....?

 

「はい、まゆですよぉ」

 

「ファッ!?」

 

「あ、まゆさん」

 

え、なに....影にでも隠れてたのか?って位の登場をする。めっちゃ怖いんだけど....この子アサシン向きなんじゃないか?それか探偵とか....

 

「えーっと佐久間さん?どうしてここが....」

 

「輝子ちゃんがにこにこしながら階段に向かう様子が見えたので下で聞き耳たててました」

 

「めっちゃ心臓に悪いんですが....人を驚かす趣味とかは」

 

「ないですよ?」

 

「そ、そうですか....」

 

最近知ったことだがもふっとした髪の毛にたれ目、時たま恋する乙女のような表情で世の男の心を射抜いたアイドルの1人だ(ゼッケンズが来店した後調べた)

 

「これはまゆさんが?」

 

お弁当を指さしてそう言う

 

「まゆもお弁当ですからね、朝一緒に作ったんです。まゆもご一緒してよろしいですか?」

 

どうぞ、と言うとまゆさんは星さんの隣に座った。(並び順は 俺 星ま)

あとはお弁当を食べながら雑談、と言うか世間話をした。最近こんなことがあった〜やお店が〜とか

静かというよりかは深い森の木の下で楽しく話をする森の精みたいな感じだ

 

「そう言えば二度あることは三度あるってよく言いますけどもしかしてこの学校にまだアイドルの方は....」

 

「いますよ?」「い、いるぞ?」

 

「いるのか....ちなみに学年は....」

 

「確か大野さんと同い年のはず....」

 

ウッソだろおい、まさか同い年ときたか

まあクラスは静かなもんだし同じクラスってことはないだろうな。うん、ないない

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

金曜日、6月の中旬だが今日の昼間は珍しく晴れていた。心も晴れやかだ

だが明日の土曜日から2日間、じいちゃんとばあちゃんの2人は俺の実家....だった場所へと帰省することになっている

だがそんなことはつゆ知らず、店は大繁盛?だ。もちろん出かけるため今日は早閉め、5時に閉店だ

事前に看板を出してはいたためか、4時30分を過ぎると客足は少しずつ少なくなっていた。まあ俺だけだと喫茶店の営業することはできない....と言ってもあの人は4時くらいになると「翔ちゃん!店任せたよ!」と言って食器を残しさっさと行ってしまった

 

という訳で今は4時56分、閉店間際で俺は残された食器類をひたすら洗っている。お客さんもいないし少し鼻歌を歌ったりしながらだが

チリンチリーン

ドアを開けた時特有の鈴の音が鳴る、お客さんだぁ....(白目)

 

「いらっしゃいま....せ」

 

「や、やあ....クチュン!」

 

ドアを開けた星さんの頭....と言うか全身ずぶ濡れだった。外を見るとさっきまで晴れていた空は黒く陰り雨を降らせていた

 

「ちょ、ちょっと早くこっち来て!」

 

星さんの手を強く握る。その腕を引っ張り店の奥....いや、居住スペースまで連れ込む

 

「まず体拭いて!そしたら今お風呂入れるから早く体温めなさい!」

 

「い、いや大j」

 

「いいから早く!」

 

「はい....」

 

星さんを風呂に入らせてからは服(比較的綺麗なジャージ類)、毛布、生姜茶etc

とにかく色んなものを準備した(星さんの服は乾燥機にかけている)

 

「こ、これでよし....」

 

準備に恐らく10分程度かかっただろうか、リビングに1通りの準備が出来た

 

「お風呂、ありがとう....」

 

風呂から出た星さんは先程準備したジャージを着ていた。まあ予想通り上着の袖はダボダボでスボンも裾を少し捲らないといけないくらい

 

「ほら早く毛布にくるまって!ほらこれ飲んで体あっためて!」

 

「あ、あうぅ....」

 

毛布をくるくると巻くとどこかまゆにくるまったような、草にくるまったジト目の虫ポ〇モンみたいな姿になった。もちろんアホ毛はぴょこんと跳ねている

 

「こ、こんなにしなくても」

 

「風邪は体を弱らせてそんな時にほかの病気になるんだから!特に星さんはアイドルなんだから体調管理はしっかりしないと!」

 

「なんか....お母さんみたいだな」

 

「ッ....」

 

反射的にリビングを飛び出して店側へと歩いていた。星さんが「あのこと」を知るわけもないし本当はこんな態度を取ってしまっては失礼なんだが....その足を止めることは出来なかった

店側で冷えた水を1杯飲む。体の芯が少し冷たくなる感触と共に頭も少し冷えたか、思考がゆっくりと落ち着いてきた。鏡を見ると特に暑くもないはずなのに額には汗が滲み出ていた

汗を拭い、顔を洗う。とりあえずしばらく星さんには体を温めてもらうとして、外の様子を確認しに行く。ついでに看板を「今日の営業は終了しました」にするため店のドアを開けると雨は強く突風が吹いていた

 

「風も強いな....これ帰れるか?」

 

と、ここまで言ってハッとなる

1.年下の女の子とひとつ屋根の下

2.ずぶ濡れの女の子を奥に連れ込む

3.今家には他に誰もいない

4.その女の子はアイドル

 

「完全に事案じゃねぇか....」

 

うわーまってこれどうしよう....星さんのプロデューサーさんに連絡して迎えに来てもらうか?いやそうするべきだそれしかない

リビングに戻ると星さんは毛布にくるまり少し申し訳なさそうな顔をしていた

 

「さ、さっきは....ごめん」

 

さっき....多分星さんは自分が失言したと思っているんだろう。むしろ言ってないこっちが悪いし星さんは何も悪くない

 

「いや、大丈夫だよ。変に慌てちゃったのはこっちだし。それと星さん....迎えでプロデューサーさんとかって呼べる?」

 

「親友は.....今日出張なんだ」

 

はい詰んだ〜!終わり!終わり!

えっこれどうしよう....責任とってセプク案件か?

 

「えっと....泊まっていく?」

 

ちょっと待て、俺は何を言ってるんだ?

普通付き合ってもいないのにお泊まり提案とか正気の沙汰じゃないぞ?

特にアイドル(じゃなくてもこの年齢の女の子)は知らない人について行かないって言われるだろ、普通

あ〜ちょっとまって星さん俯いちゃったし黙ってるんだけど

 

「へ、変な事言ってごめん....ちゃんと駅までおくっt」「いいぞ」

 

「....へ?」

 

「お泊まりもトモダチっぽいから....べ、別に大丈夫だ、うん」

 

「い、いやいやいやいや!自分から言っておいてアレだけど知らない人について行かないって教わらなかったの!?」

 

「? 大野さんは知らない人じゃないぞ?」

 

純粋な目でこちらを見てくる。まって、その目がすごく痛いし刺さる。変な事考えてごめん....

 

「で、でもお泊まりとかそういうのは普通は友達とかつk」

 

「お、大野さんとは....その....トモダチだと思ってたんだけど」

 

しゅんと少し俯く。あ〜もうまってなかせてないから!泣かせてないから!

しばらくしたら落ち着いたようで少し雑談をした

 

イベント発生!

星さんのお泊まりが確定しました




ここまでお読みいただきありがとうございます
UA600、お気に入り10を越えて正直驚いてます
これからも頑張って書きますので読んでいただけたら幸いです
はい、本文ではお泊まりが確定しました
あと書いた通り同級生でアイドルが出ます
設定では17歳高校2年生なんですけどもここでは「今年17歳を迎える高校2年生」とさせて下さい!お願いします!なんでもはしませんけど!


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来客にはご用心

皆様、お正月はいかがお過ごしでしょうか
私は初売りに駆り出された挙句3日からは実家とハチャメチャな生活をしていました。ようやく落ち着いて書ける....
心は落ち着いていないけど(モバ輝子SRデレステ森久保SSR)


お爺様へ

お元気していますか?僕は今お爺様達が僕の実家だった場所に向かっている間店では大変なことが起きています

 

よし、状況を確認しよう

Q.ここはどこ?

A.喫茶店フジの裏にある居住スペース。ちなみに2階は俺の部屋です

 

Q.今いる場所は?

A.リビング

 

Q.最後の質問いいか....?目の前にいる子、誰だ

A.勘のいい(ry

アイドルで常連客で同じ高校の後輩の星輝子さんです

 

ど う し て こ う な っ た

 

いやまあ奥へ連れ込んだのは俺だけどさ....まさか帰れなくなるとは思わないじゃないですか。しかも俺の初お泊まりが星さんとかおかしいよね?おかしい絶対におかしいよこんなの....

 

ともあれ時刻は6時、うちは喫茶店なので夕飯は比較的遅めなためリビングでごろごろしている。本当にやることが無いだけだ

当の星さんは

 

「泊まるのに少し買い物だけさせてくれ」

 

と言って近くのコンビニに行ってしまった。まあ徒歩3分もかからないところだし今度はレインコートも渡したから大丈夫だろう

 

「いやでも何しよう....」

 

そう、俺こと大野翔太郎はまず友人などを家に招いたことがほぼ無い。というか全く無い

時間が余った時や暇つぶし用にソーシャルゲームなどは良くやるがパーティゲームや対人ゲームのように多人数で遊べる家庭用ゲームなどの類を全くもっていないのだ

 

「風呂入るか....」

 

2階の部屋から着替えを持ち出し電気は付けっぱなしなのでいつも通り浴室へと入る

髪の毛は短めなのでササッと洗い、顔、体と順に洗っていく。泡を流すとすっきりした

湯船に人差し指をちゃぷっと浸けると熱過ぎずちょうどいい湯加減だった。冷たい雨の中この暖かさは体にしみる

 

「生き返るわぁ....」

 

タオルを頭の上に乗せてゆっくりと浸かる。ジジ臭いと思っているんだろうがそれは違う。気がついたらこうなっていただけなんです、うん、俺は悪くない(何が?)

 

「はふぅ....」

 

体が温かさを求めて少しずつ少しずつ湯の中へと引きずり込まれていく。冬の時のこたつ現象だな

眠くなる訳では無いが疲れていた体がほぐれてきたのと温まってきたからか少しずつとろ〜んとしてくる。あ〜極楽極楽

 

あふ〜なんぞ言っているとドアの閉まる音がした。恐らく浴室へのドアだろう

あれ?じいちゃんとばあちゃん帰ってきてたっけ?あれ....?

そんなことを腑抜けた頭で考えていると目の前のドアが開いた

 

「ふひっ....濡れちゃった....な...?」

 

お互いに目が合う

 

Q.目の前には何がいますか?

A.銀髪の人です

 

Q.男ですか?

A.とても小さい子です

 

Q.誰ですか?

A.星輝子さんです

 

事案だーーーーー!!!!

 

「ヴア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?」

「ヒャァァァァァアアアアア!?!?」

 

浴室内には叫び声が響いた

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

「ご、ごめん....入ってるなんて知らなくて....」

 

「俺こそ風呂に入ってるよって連絡なりしておくべきだった....ほんとごめん」

 

お互いに謝っていると星さんが両手人差し指をつんつんし始めた

 

「えっと....その....『見た』か?」

 

ここでもし「見た」と言ってしまえば通報→連行→裁判→ブタ箱直行ルート確定だろう

 

「ミ、ミテナイデスヨ」

 

嘘です。見えてました

ぷにっとした二の腕に柔らかそうなお腹、すらっと細い足にうっすらとピンク色になっているアレ

あの時は寝ぼけ眼だったが見えてしまった瞬間脳が急に覚醒し脳内で喧嘩が始まるくらいにはがっつりと

 

「そ、そうか....トモダチだもんな....信じるぞ」

 

「ごめんなさい嘘です!ちょこっとだけ見えてしまいました!」

 

その純粋で人を疑うことを知らない目がものすごく痛かったためかいつの間にか全力土下座をしていた。おでこめっちゃ痛い

 

「そ、そうか....見えてたか....ひんそーだし見ても何も面白くないけどその....は、恥ずかしいから....」

 

「ごめんなさいごめんなさいお巡りさんに突き出してくださいほんとごめんなさい!」

 

「だ、大丈夫だから....ほんと大丈夫だから....」

 

 

 

「そろそろ夕飯食べるか」

 

時刻は8時、先ほどのお風呂騒動から謝り倒してからはお互い気まずく俺はずっと部屋に篭っていた。部屋から出てエプロンを装備し、キッチンに立つ

 

「晩御飯、作るのか?」

 

ひょっこりと星さんが顔を出す。なんか少し前に流行った芸人みたいだな

 

「あ、うん。簡単な炒め物とかくらいしか出せないけど....」

 

「だ、大丈夫だ。手伝うよ....」

 

星さんも袖を少し捲りキッチンへと足を踏み入れる。と、そこで静止してエプロンの着用を促す。着させたはいいが身長のせいか、エプロンに着られてる感がすごい

 

「じゃあまずはこれを切ってもらえるかな?」

 

野菜と星さんの好きなきのこ類、少しのお肉を出す。とりあえず星さんにはきのこ類(しめじとか)を渡し、切ってもらうことにした

 

「さてと、苦手なものとか味付けの好みとかはある?」

 

「大丈夫だ....うん」

 

その声を聞き味噌汁の準備をする。一般的(少なくとも俺にとっては)な大根とわかめ、油揚げと豆腐の味噌汁だ

我が家では大根と油揚げは短冊切り、ワカメは食べやすいサイズに切って入れる。豆腐も一口サイズに切る。おっと、ここで細かく切りすぎると入れた時に崩れてしまうので注意だぞ!

....と、ここで味噌を溶かしている間に冷蔵庫から和物をさらに盛り付ける。あれ?和物だっけ?酢の物か

あっさりさっぱりとしていて食べやすいからみんなも食べよう!

 

ちらりと隣を見ると星が「み、みくさんの手....みくさんの手だ....」と呟きながら切っている。みくさんって誰だ?猫なの?

 

「ど、どうした?」

 

星さんがこっちの目線に気づいたのか、こちらを見てくる。というか身長差があるため見上げる、と言った方が正しいのだろう

 

「いや、なんでもないよ」

 

「なんか....付き合ってるみたいだな....」

 

「えっ?」

 

「あっ....」

 

瞬間、星さんの顔が紅くなる

それはまるで熟したりんごのようだ

 

「ヒャッ....」

 

「ひゃ?」

 

「ヒャァァァァァァァァァァッッッッッハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

 

「!?」

 

瞬間、星さんは両目を見開き両腕をクロスした。大きく開いた口から覗く歯は尖っているように見えた

 

「ほ、星さん....?」

 

「なぁぁぁぁにがリア充だぁぁ!!みんな纏めてゴートゥーヘールッ!」

 

「星さん落ち着いて!き、近所に聞こえちゃうから!」

 

「あっ....ご、ごめん....つい....」

 

お、驚いた....星さんがいきなり目を見開いてあんな声を出すなんて....

星さんと言えばかわいらしい曲を歌うイメージだったのに....(絶対特権しか知らない)

 

「大丈夫、うん....少し驚いただけだから....そういえば切り終わった?」

 

「お、終わったぞ」

 

「よし、じゃあ....」

 

油をひいたフライパンに野菜やきのこ、肉類を入れて炒める。少しずつ肉の匂いがしてくる。と、ここで我が家特製のタレを入れてる。ほうら、いい匂いがしてくるだろう?

 

調理を終えてさらに盛り付け、2人で食卓を囲む。2人で囲めるか?

今日のメニューは先ほどの炒め物と味噌汁、酢の物に白米だ

 

「「いただきます」」

 

 

 

ご飯を食べ終えて皿を洗い、寝室へと移動する。星さんには僕の部屋で寝てもらうことにした。ちょうどリビングにソファあるからそこで僕は寝られるからね

 

「じゃあおやすみ、星さん」

 

「お、おやすみ....」

 

ドアを閉じてリビングに戻り、毛布にくるまるとぬくぬくとした温かみを感じる。あぁ....温い

何も音が出ないからか外の音が聞こえてくる。強い雨の打ち付ける音、時折雷が鳴る

 

鼓動が早くなる

 

1回1回脈の打つ音が聞こえてくる

 

ドクン、ドクン、また聞こえてくる

 

雨の中のサイレンの音

 

聞こえてくる叫び声と泣く声

 

「ハッ....ハァッ....」

 

自分でも呼吸が荒くなるのが分かる

 

嫌だ、雨は嫌だ、こんな....雨の夜は嫌だ....

 

誰もいない、嫌だ、1人にしないでくれ

 

「僕を....置いていかないでくれ....」

 

強い吐き気に襲われる。洗面所の鏡に写った自分の顔は酷いものだった

顔を洗いコップ1杯の水を飲む

少し気持ちが落ち着つく

体が震え、温かさを求めている

 

 

その足は、2階へと歩んでいた




読んでいただきありがとうございます
まさかこの作品がUA1000も越えるとは思いませんでした
本当にッ!ありがとうございますッッッ!!!!!
励みになります!!!
お気に入りも20件も付いてほんと嬉しい限りです....ありがとうございます
これからも頑張りますので応援のほどよろしくお願いします
P.S モバ星輝子SRは引けませんでした


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深夜という時間は本能を動かす

前回言い忘れてたのでここで
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
それと限定森久保早く事務所に来てください....
あと今回も短いです


朝とは憂鬱なものだ

体は重く、思考も途中で途切れてしまう

毎日来るがなんとも厄介な時間だ

 

「んんっ....」

 

朝の寒さを体が受け止めるようにいつも通り抱き枕をギュッとする

抱き枕と言っても柄も何も無い無地の長い枕のようなものだ

それはさておきその抱きしめようとした手は何も掴むことは無かった

しかしその意識が覚醒しつつある今、なんかやけに頭側が暖かく感じる

というか撫でられてる?ような感じがする

うっすらと目を開ける上を見上げる

 

星さんが頭を撫でていた

ん?なんで?

こちらが起きたことに気がついたのか星さんの手が一瞬ビクンと反応する

 

「お、おはよう....ございます」

 

「お、おはよう....」

 

まって、重い。空気が重い

いや普通こうなるよね

だって膝枕なんて普通付き合っている人同士がやるものだし

 

「あれ?てか待って、ここどこ....?」

 

「お、大野さんの部屋....だ」

 

ん?俺の部屋....?

あれ?昨日俺はソファで寝てたんじゃあ....

あっ、少しずつ思い出してきた

確か昨日は....

うん、全部俺が悪いわこれ

 

「ど、どうしたんだ?」

 

立ち上がり星さんの方を向く

今の俺にはこれしか出来ない....

 

「どうもすみませんでしたああああああああ!!!!!」

 

そう、全力の土下座だ

星さんの方をちらっと見ると「えっ?えっ?」と少し困惑しているようだ。まあいきなり土下座されたら困惑するだろ

 

「いやこれほんと俺が悪いんで....」

 

「だ、大丈夫だ....でも....なんで泣いていたんだ?」

 

「えっ?」

 

泣いていた....そう星さんは言った

 

「泣いていた?俺が?」

 

「た、たぶんだけど....私が起きた時は泣いていたぞ....」

 

手身近な鏡をのぞき込むと確かに頬のあたりや目の周辺にうっすらと涙が流れた跡があった

 

「そっかぁ....俺泣いてたのか....」

 

「な、何かあったのか?相談になら乗れるぞ....?トモダチ....だからな」

 

「友達....友達、か」

 

久しぶりに聞いた言葉だ

 

「いや、大丈夫....あとそれから早く上着羽織って....」

 

近くにあったジャージの上着を星さんに投げる。なんで星さんはこんなにも無防備な格好しているんだ....?肩は丸出しだし事故とはいえ他の人の家に泊まってることをもう少し意識して欲しい

 

起きた後はいつも通りの朝食を食べてから星さんは家をあとにした。なんて言うか本当にやらかしてしまった1日だったな....

 

 

 

───────────────

 

 

 

時は数時間ほど遡る

私は今日知り合い....いや、友達の家に泊まっている....というかは泊まらされていると言った方が正しいかもしれない

いつも通りレッスンを終えてご飯を食べに行こうと喫茶店に向かっていたら雨に降られて濡れ、そんなところを保護(?)された

風邪引くから風呂入って温かくしろとかまるでお母さんみたいなこと言っていたけど自分のことを心配してくれていると思うと悪い気分ではなかった

 

大野さんがお風呂に入っているのに気が付かなくてドア開けちゃったのは完全に私が悪いからな....

 

夜ご飯は2人で一緒に作っていた。隣で料理に真剣な彼の姿を見ると心がむずむずするというか....こそばゆくなる感じがした。不思議な感じだけど少しうきうき?楽しみ?にしている自分がいる

途中でまゆさんが好きなドラマのシーンみたいに思えてきて「付き合っているみたいだな」って言ってしまったけど気がつけば2人で叫んでしまった....うん

 

その後少し過ごしたあと部屋に案内されて寝るように言われた

私が寝る部屋は大野さんの部屋らしくてベッドに寝た時に少しあの人の匂いがした気がする....たぶん。抱き枕を抱きしめると匂いがほんとに強くなった。そんな布団に包まれて抱き枕を抱きしめて寝るのも悪くなかった....というか少しドキドキしていた

 

しばらく寝れなかったけどそのまま布団の中にいたらドアが開いてびっくりした。でも目を開いてよく見ると大野さんが布団の中に入ってきた....

その時微かに聞こえたんだけどボソボソと

 

「嫌だ....どこにも行かないで....」

 

そう言っていた

彼はそのまま私を抱きしめていた。多分抱き枕か何かだと勘違いしているのかな....?

頭が胸の辺りに当たる。なんだか大きい子供みたいだ....好奇心から頭を撫でてみたけどなんていうか不思議な気分だ

楽しいとも嬉しいとも違うけどずっとこうしていたい気分だ

 

しばらくすると私も寝ちゃったみたいだけど早く起きたのも私だ。目の前には未だにすやすやと寝ている先輩の顔がある。いつもはキリッとしているのに涙のあととが付いた寝顔はかわいいものだ

と、ここであることを思いつく

よくアニメである「膝枕」なるものがどんなものなのか興味が湧いたのだ

 

「少しだけなら....うん、大丈夫」

 

ベッドの上に正座し、頭を乗せるように持ち上げる。人体の中でも重いと言われる頭だ、太ももの上に乗せるとズシッとした重みを感じる。あと髪の毛がちくちくとしてこそばゆい。頭を撫で始めるとまたクセになる感覚だ

くすぐったいのか時たま頭を転がしている。ただお腹に頭を当てた時はちょっとびっくりしたかな....

 

そんな感じでしばらく経つと大野さんも目を覚ました。お互い目が合った時はちょっと気まずかったけど私は普通に接することができた(はず)だ

 

で、朝ごはんを食べたあとは家を出た

そのまままっすぐ女子寮に戻るとまゆさんや幸子ちゃん、みんなが心配していたみたいだ....その場では「ごめんなさい」と謝り何があったかを(少し隠しながら)言った。一応友達の家に泊まったと伝えた。間違ってはないぞ?友達だしな....

でもあの日から少し物足りなさを感じている。部屋にひとりでいると寂しいとか....もちろんみんなとおしゃべりしている時は楽しいんだ。でもなんだろうな....1人でいると少し寂しいんだ




次回から新章になります
ほんとこんな上手くかけてないものを見てくださりありがとうございます
読んでくださっている方々にはほんと感謝しかないです
拙いものしか書けませんが今後とも精進しますので応援の程よろしくお願いします


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仲直りは直すものではなく広げるもの
顔と目線は口の答え合わせ


前回言い忘れていたので
あけましておめでとうございます(2週間の大遅刻)
実家に帰ったりなどリアルで忙しい期間を過ごしていました


朝だあ〜さ〜だ〜

と、頭の中では陽気にリズムを刻む

しかし内心落ち着いていられる状況ではない

俺は「やってしまった」のだ

いくら寝ぼけていたとはいえ(恐らく)女の子の布団に潜り込んで(恐らく)抱きついてしまって挙句の果てに膝枕させるとか事案か?いや逮捕もんだろこれ

星さんが警察に駆け込んで訴えれば社会的にも人間的にも抹殺される。主に事務所やファンの手によって

 

ということもあって今すごく学校に行きづらい。数学が2時間もあることもそうだが学校に行くと星さんと目を合わせる機会が多い上、出合い頭にどう反応すればいいのか分からない

てか最近避けられてる?気がする

こっちも星さんを見かけたらUターンすることは多いけどこっちから見ても星さんもUターンしてる

そりゃまあ....嫌われるよなぁ....

 

 

月が変わったということで(ようやく5月)クラスでは席替えが行われていた。隣の席が誰になろうとも俺はこのアニメ主人公御用達の窓際一番後ろの席のため敵なしだ。この席は最高だぜ

 

「おっ、よろしくな。えっと....大野だっけか?」

 

茶髪のもじゃ毛が話しかけてくる。てかもじゃ毛ってなんだよ、ボキャ貧か?

 

「ええ、よろしくお願いします。確か....神谷さんでしたか?」

 

「えっと....もしかしてあたしの事見たことない....とか?」

 

「ええ、すみません....あまりクラスの人の名前を覚えてなかったので....」

 

「あちゃーこれ本格的な知らない感じだ....」(ボソッ)

 

何か言っているような気がするが特ににもないだろう。とりあえず雑談をしてどんな人なのかを探ろう

 

結論から言うと神谷さんは何かを隠している。クラスで「ある話題」が出る度に耳がピクッと動いている

 

「えっと....神谷さんってもしかしてオタク?」

 

「そ、そそそんなんじゃないし....」

 

目線が少し斜め下に動く。嘘をついている証拠だ

というかこの時代に「そ、そそそんなんじゃないし....」なんて言う人いたんだ....アニメの世界か?ここは

 

「そっかぁ....まあ俺はアニメとかあまり詳しくないしそう言う話題振られてもいい返事できないからな....」

 

「大野は趣味とか無いのか?」

 

「趣味....というか好きなことは料理だな。あと家事系とか。工作とか裁縫も好きだぞ」

 

「女子力の塊みたいだな」

 

「今や男女の役割についてうんたらいう時代じゃないんだぞ?男の趣味が家事とかでもいいじゃないか」

 

「お、おう....そうだな」

 

若干引いてるか?まあこれだけ言えばしょうがないか

 

「そういやさ、気になったんだけど....最近何かあったのか?」

 

どういうことだ?なんの確信があってそんなこと....

 

「いや、顔見れば誰にでもわかるって。それと声に出てるぞ」

 

マジか....口に出てたか

 

「その根拠は?」

 

「バレてないと思ってるならそれでいいけど学校終わる度に早歩きでうきうきした顔で帰ったりするからな。普段は無表情な大野が、それで今は寂しげな顔をしてるってところかな」

 

この女....なかなかやるな

なんて考えているがまるで人の領域に土足で踏み込むみたいな感覚だ。だがなんでだろうか、不思議と嫌な気分ではない

てかまってこれ普通に恥ずかしい

うん、顔が熱を帯びているのがわかるくらいじわ〜っと熱くなる。自分自身が体験するとは思わなかったわ

 

「まあ....喧嘩というかなんというか」

 

「えっ?」

 

唐突に後ろから声がする

 

「ん?」

 

状況を整理しよう

俺の席は窓際一番後ろだ

そして今は隣の席の神谷さんと話をしている

んで、後ろを見ると何故かロッカーを綺麗にしているボスがこっちを見ている

普段は目つきが悪いと言われているボスの目が次第に丸くなる

 

「お、大野に友達がああああああ!?!?」

 

「んだとコラ!」

 

まるで昭和のギャグ漫画みたいな顔をしたボスがいた

 

「でも俺は嬉しいぞ?ようやく友達ができたみたいだからな」

 

男泣き?みたいな顔をしながらこちらの肩に手をポンと置くボス。これは青春映画じゃないんだぞ

 

「っ....」

 

「まーまーそんなことはともかく、大野はあたしに相談事があるんだろ?ここじゃ話しにくいなら場所を変えてもいいけど」

 

「じゃあ放課後、うちの店で。場所は-」

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

「と、いうわけなんだ」

 

「ふ〜ん....歳下の女の子とねぇ....」

 

流石にうちに泊まらせたなんてことは口が裂けても言えないし言ってしまった場合明日から俺の名前が「性欲大明神」みたいになるのはごめんだからな

 

「まさか大野が歳下の女の子を侍らせているなんて思わなかったよ」

 

「おい待てクラスでの俺の印象どうなってんだ」

 

「えっそりゃあ....ほかの女子の話だと目つきは悪いけどシュッとしていてイケメンとか喫茶店のイケメンお兄さんとか言われてるな」

 

「んだよそれ全員面食いじゃねえか。確かにうちはパスタとかも出してるけどさ」

 

「その麺じゃないって....」

 

くだらない雑談をいれつつ本題へ

とその前に紅茶を1杯いれる

 

「それで....その人と仲直りしたいんだけどどうすればいいかな....」

 

ちなみにこんな話をしているがお客さんがいる訳では無い。今日はじいちゃんの気まぐれで店は休みになっているからな

 

「ふ〜ん....その人と話はできてる?」

 

「いや、ちょっと気まずくてお互いに避けあってる感じかな....」

 

「うわぁ...その人はどういう人?」

 

どういう人、か

そう言えば星さんのことをよく知らなかったな....流石に「アイドルの星輝子さんです!」

なんてこと言ってしまったらオタク(だと思われる)神谷さんになんと言われるだろうか分からないからな....濁すか

 

「え〜っと....さらさらとした長い髪の毛でいつも1人で過ごしているみたいだけどきのk....気に入ったものを『トモダチ』って呼んだり、とても恥ずかしがり屋なんだけど俺にも話しかけてくれる人で好きなことに夢中になったり情熱を持っている女の子だよ。たまに恥ずかしさがオーバーフローして暴走するけど」

 

「へ〜....んん!?ちょっと待て大野、今なんて言った?」

 

「....普通の女の子だよ」

 

気がついたら自白していた。やっべぇ....これ神谷さんが星さんと知り合いだったら通報されて詰みなんだけど....

 

「え〜っと....年齢と学年は?」

 

「1年生で15歳です....」

 

「....その人の好きなものは?」

 

「黙秘します」

 

「あのさ、その人にあたしとても心当たりがあるんだけど」

 

あっ....詰んだ

これ関係者説あるぞ

....あっ、なるほどな

関係者でそこそこ有名だからあの時知っているか聞いてきたのか

ん?でも一般スタッフとか普通顔出るか?てか神谷さんも高校生だからマネージャーとかありえんだろ....

まさか神谷さんもアイドル....?

ないないない

そんなアイドル大量発生してたまるかってんだ」

 

「あの、聞こえてるぞ」

 

また声に出てたのか....

 

「まあ、大野の言う通りあたしもあ、アイドルやってんだ」

 

「そ、ソウナンデスネー」

 

「んで、さっきの女の子に凄く心当たりがあるんだ。星輝子って言うんだけど」

 

「アーアーアーキコエナーイ」

 

「こいつ....」

 

 

色々と話をしたあと神谷さんには紅茶とお菓子のセットを出して帰ってもらった

やはり星さんとは知り合いだったらしく話をつけて俺が謝る場を整える手伝いをしてくれるとは言ってくれた。神様仏様神谷様だ....ほんとに

というかあれから既に1週間以上も過ぎてる。それなのに星さんがお店に来るどころか話すらできていない

寂しい?なんて感じるのは久しぶりかもしれない。それと共に怖いとも思う

ここでふとボスの言葉が浮かんでくる

 

「大野に友達が」

 

普通ならここで「失礼な!」とか怒る場面だろう。だが生憎と俺には友達がいない。正確にはいないのではなく作らなかったのだ

友達といる時よりも

その幸せを失う方が怖いから

 




読んでいただきありがとうございます
という訳で随分前に設定が噛み合わないキャラが出ますとお伝えしましたがそのキャラは神谷奈緒です。高2で17歳、誕生日が9月だけど今は5月、うん噛み合わない
ホント出したかっただけなんです許してください
ここで私事なのですが恐らく次の投稿以降しばらく投稿できなくなるかもしれません
理由としては
・リアルが忙しい
・大阪公演の準備
などですがリアルが忙しくなるのが大体の理由です
まあ今までも投稿は不定期でゆっくりでしたがそれ以上にゆっくりになるかもしれません。某隊長ではないので新作投下速度が上がったりもしません
こんな私ですが応援していただけると幸いです
それでは次回またお会いしましょう!ありがとうございました!


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屋上では定番の仲直り

投稿遅くなりました
堕ちた生活して紗南SS書いていたらこんなことになってました
それと....UA2000ありがとうございます!
お気に入りも40件越えててほんとありがとうございます
これからも精進していきますので暖かい目で見てくだされば幸いです


最近調子が出ない

レッスンをしても体は上手く動かなくて、声もあまり出ない

風邪かなにか病気なのかなって思って病院に行ったけども体はすこぶる健康らしくてむしろ褒められた。あとはもう少し体重増やした方がいいよとも

 

「またため息ついてますよぉ?」

 

事務室のソファで座っていると頬に温かさを感じる。振り向くとまゆさんが頬に缶を当ててた

 

「あったかいレモネードです。スッキリとしますよ」

 

「まゆさん、ありがとう」

 

「はい、まゆですよぉ♪」

 

まゆさんはそのまま私の隣に座り一緒にレモネードを飲んだ季節を考えると暑くなるけど今の私には丁度いい温かさだった

 

「輝子ちゃん最近元気無いですけど何かあったんですか?まさかこの間のあの人と!?」

 

「ち、違うんだ!大野さんは悪くないんだ!」

 

「ふ〜ん....つまり輝子ちゃんがあの人になにかして、それで顔を合わせにくいと思っていたら最近避けられているように感じるってことですかぁ?」

 

ふふっとした笑みを浮かべながらまゆさんはこちらを見る。まるでこちらの考えていることを見透かされているような、そんな目つきだ

 

「ど、どうしてそれを....」

 

「カマかけたんですけどね....まあまゆにもそういう経験ありますから、その気持ち分かります」

 

「まゆさんにもあったのか?」

 

「はい....恥ずかしながらPさんにチョコをあげた次の日からドキドキしてしまって顔とか....見れなくなっちゃったんです」

 

ポッと顔を赤らめ両手で頬を隠した。まるで恋する乙女のようだ

既に恋する乙女だったわ

 

「ま、まゆさんはその時どうしたんだ....?」

 

「Pさんにごめんなさいした後一緒にまゆが作ったお弁当を食べました」

 

「そうか....やっぱりまずは謝らないといけないか....」

 

まゆさんに相談に乗ってもらいつつ雑談をする。内容の殆どはまゆさんの担当Pさんの好きなところとか惚気話だった

途中で奈緒さんが入ってきてまゆさんと2人で色々と計画してくれた

それと奈緒さんはどうやら大野さんと同じクラスらしく手引きしてくれるとも言ってくれた

本当にありがとうとしか言えないな....うん

 

「なんて言うか....輝子が男の人とよく付き合っているなんて意外だな」

 

「つ、付き合ってない!まだ付き合ってないぞ!」

 

「『まだ』ですかぁ....」

 

まゆさんはまたもにっこりとした笑みでこちらを見てくる。奈緒さんも微笑みながら頭を撫でてきた

悪い気分じゃないけど....なんか複雑だ

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

「んで、俺はどこに連れていかれるんだ?」

 

目隠しされたままいろんなところを歩かされる放課後、幸い先生や他の生徒には見つからずに進んでいる。見つかってしまったらどんな特殊プレイだよと言われるだろうしなにより神谷さんとの関係性を噂されてしまう。それだけは避けなければならない

 

「もうすぐ着くよ。あっ、階段あるから注意してな」

 

階段....ということは屋上か?

そう思いながら進んでいるとドアを開けた音がし、トンと軽く背中を押され後ろからドアの閉まる音がする

 

「神谷さん....神谷さん?」

 

返事がない、ただの虚無のようだ

目隠しを外すと目の前には星さんがいた

 

「ほ、星さん....」

 

「やあ....大野さん」

 

放課後に少し沈む夕陽、外からは野球部の声とバットの金属音が響く

今まで避けて避けられの関係だったため少し顔を合わせにくい

 

「えっと....その....」

 

「ごめん!大野さん!」

 

星さんが思いっきり頭を下げる。その反動か長く綺麗な髪の毛が大きな円を描きながら前に垂れる。顔を上げると一部がそのまま残りキョンシーのお札のように垂れ下がっていた

 

「こっちこそごめん....ずっと避けてしまって」

 

「い、いや....私が悪いんだ....先に避けちゃったから」

 

お互いにごめんと言葉を交わし、仲直りをした。終わった時は少し....いや、かなりほっとした。この楽しさが壊れなくてよかったと、そう思っている

 

「お、大野さん....少し座らないか?」

 

何故か屋上に設置されているベンチに2人で腰掛ける。あと星さん少し距離が近い

 

「えっとだな....その、お詫びの意味も込めてちょっと作ったんだ」

 

カバンの中から一つの袋を出す。手渡されたので中を開けるとカップケーキが入っていた

 

「お菓子作りできるんだ....得意なの?」

 

「いや、頑張って作ってみたんだ。一応味見はしたんだけども初めてだから....め、召し上がれ....ふひっ」

 

1口食べる。サクッとしたカップの中からふんわりといちごの味がする

うん、程よい甘さだ

口触りもベタベタとしてなくてふんわりと柔らかい。さくさくと食べ進められるなこれは

と思いながら食べているといつの間にか食べ終えていた。本当にお菓子作りに慣れてないのか?

 

「ど、どうだ....?」

 

星さんが恐る恐る聞いてくる。味見したんだから結果分かってるんじゃないのか....?

 

「好みの味とかあまり知らなかったから食べやすいようすっきりとした味付けにしてみたんだが....どうだ?」

 

「これが初めてってのが信じられないくらいに美味しいよ。ありがとう」

 

そう微笑みながら返事をすると星さんは少し俯いてしまった。そして膝のあたりをぐっと抑えている

 

「そのま、まだあるから....食べるか?」

 

少し顔を赤らめながらこちらを向く

たぶんトレーナーさんとか女の人から褒められるのは慣れているけど同年代の男から褒められるのは慣れなくて赤くなっているのか?多分そうかな

 

「じゃあありがたく頂こうかな」

 

バッグの中から袋を数個取り出し俺に手渡す

なんというか新鮮だ

 

いちご味、ちょこ味、ばなな?味、あとなんかよく分からない味とか食べた。久しぶりに誰かの手作りを食べた気がする

心に温かさが伝わる

 

「....ありがとう、星さん」

 

「ふひっ....お粗末さまでした」

 

「良かったら店に来る?1杯奢るよ」

 

「今日は打ち合わせがあるんだ....終わったらお店行こうかな」

 

屋上を出る

さっき食べたばかりのはずなのに体の中から少しずつじんわりと温かくなる

 

風が吹く

冷えた夕方の風

2人は屋上を出た

 

だけど今は少し暖かく感じた



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「学校で」が使えるのは学生特権

お久しぶりです....限定荒木比奈来たり星輝子が2年ぶりにイベ楽曲参加したりリアルが忙しかったりサンドバックになってました....



あれからしばらく経った

星さんはレッスンやお仕事の合間にちょこちょことお店に顔を出してくれている。そしてなんかサインも飾ってくれた。本人曰く「お世話になっているから」だそうだ

そのせいなのかなぜか最近やたらと客が多い。それもほとんどの人がきのこメニューや星さんが美味しいとデレぽ?に投稿したやつばかり注文してくる。まあお店が賑わうのはいい事だと思うけどね

 

「翔ちゃん!1番テーブル様できたよ!あと3番とカウンター1、2番もすぐ出来るよ!」

 

「はいよ!」

 

連日満席....とまではいかないがそれなりに席は埋まっている。まあ大体お昼の時間から3時間がピークだ。閉店1時間前になると大抵お客さんいなくなるんだけどね

 

 

 

「いただきます」

 

「い、いただきます....」

 

学校では最近お昼ご飯を星さんと一緒に食べるようになった。星さんはいつも目線が気になるから〜と言っているのは知っているからここで2人で食べている。屋上なら落ち着いて話すことも出来るし気も楽だからな

 

「どうだ?俺の新作のきのこドリアは」

 

「うん....美味しいぞ。ただしめじくんよりかは王道のマッシュルームくんとかの方が合ってると思うんだけど....」

 

「う〜んそれは....挑戦かな?」

 

「ふひっ....大野さんらしいな」

 

今日は俺の考えた最強の新メニューを作ってきて星さんに食べてもらっている。正直事務所の許可を取っていないからメニューとかに『あの星輝子も絶賛!』とかは書けないんだよね....

 

「そういやまだ『これ』を使ってなかったな」

 

そう言って醤油さしに使われる魚の形をしたアレを取り出す。中には黒っぽい液体が入っている

 

「なんだ?....それは」

 

「まあ待てって」

 

その液体を星さんの食べかけきのこドリアの上に少しかける。傍から見れば醤油にも見えるだろう

 

「じゃあこれを少し混ぜて食べてみてよ」

 

「うん」

 

少しかき混ぜるとチーズとご飯にさっきの味付けが絡まっていく。ちょ〜っと色がおかしいかな....これ

 

「食べてみ」

 

星さんがスプーンですくって口元に運び、食べる。少し目を見開いてこちらを見ている。お、美味しかったのか....?

 

「ど、どうだ?」

 

「うん、ちょっとピリッとしたスパイスが効いてて美味しいぞ....飽きないなこれ」

 

「よっし成功だ。メニューに加えても良さそうかな」

 

スパイス数種類とかその他調味料をそれぞれ混ぜ合わせたこれ、ピリッとした辛さが特徴だけどそこまで辛くなく苦手な人でも食べられるくらいには抑えてあるものだ。物足りない人はタバスコでもぶっかけてろ(暴言)

 

実はこの屋上お昼会にはもう1つ目的がある

 

「最近上手くステップができなくてな....練習はしているんだけど何故か上手くできないんだ」

 

「うーん....俺には技術的なことはわからないけど焦ってしまったり無理にステップしようとして足が上手く動かないってこともありえるんじゃないか?」

 

そう、2人のお悩み相談会だ。時には俺が、今は星さんが相談を持ち込んでいる。まあこれは解決が目的ではなく話すことで心を軽くしたり解決への糸口を探したりなどをするだけだ

 

「実際星さんはよくやっているよ。俺は現場を実際に見ているわけじゃないからあれだけど大丈夫だと思うよ。あとは自分を信じてやるだけだよ」

 

「そっか....そうだな。ありがとう、大野さん」

 

ご飯を食べて相談会、そして軽くおやつを食べていると予鈴が鳴る

持ってきた弁当箱を持ち教室へと戻る。教室に入るとこちらを見ながらヒソヒソとみんな話している。まあ恐らく「おいおいあいつが星さんとずっといるやつかよ」くらいか?まあファンの人から見たらどこぞの人間が擦り寄っているように見えるんだろうな....うん

 

放課後はいつもお店を手伝っているが今は星さんと一緒に下校している。というか目的地はうちの喫茶店だ。今日はレッスンや仕事が入っていないらしい

いつものセットに新作メニューのきのこグラタン(改)を出して俺もカウンター(店側)で1杯を一緒に飲む

うん、いい香りだ。程よい甘さのお菓子が紅茶を上手く引き立てている

マスターは先程までのお昼のお客さんを捌いて「疲れたから休むね」って言って奥へと行ってしまった

まあ....2人っきりというやつだ

 

「ふぅ....やっぱりここの紅茶は美味しいな」

 

「褒めてくれてありがとう....と言いたいけどこれは茶葉がいいやつだからな。あまり上手さは関係ないと思うけど」

 

「褒め言葉は素直に受け取るものだぞ....」

 

「おっ?言うねぇ....んじゃありがたく受け取っておくよ」

 

また再びの沈黙

カップが皿にカチャっと当たる音のみがその空間には響いていた

無言でも2人でいられるこの空間がある種の癒しだ。というかなぜかここに来ると星さん喋らなくなるんだよな....まあアレがあったから気まずいのはわかるけどさ....

 

☆アレ

星輝子がお泊まりに来た時にお風呂で起きてしまった事件のこと。詳しくは過去回参照

 

 

閑話休題

 

 

無言で続くこの時間も閉店間際になり終わりを迎えた。代金を支払い帰ろうとする星さんを引き止めついて行く。いやこんな時間に1人で帰すわけにはいかないだろ。5月終わり頃とは言えどもう6時近いし

 

「いつもありがとうね。星さんが投稿したあれのおかげでお客さんが結構増えてマスターも喜んでたよ」

 

「どういたしまして....?」

 

まあ、一番感謝しているのは俺なんだけどな....」

 

「ん?なにか言ったか....?」

 

「いや言ってない。気にするな」

 

決して近いとは言えずかと言って他人の距離とも言えない2人の間隔、いつもより長く感じる駅までの道のりが今はありがたい、不思議とそう思う

 

しかしこれはなんだ?楽しい?嬉しい?どういう感情なんだろうか

 

「ふひっ....じゃ、じゃあ....また明日学校でだな」

 

数歩先に行きくるりと回りこちらを向く。両手を大きく広げて回る姿はなんか小動物みたいな愛らしさを感じる

 

「あぁ、じゃあまた明日学校で」

 

駅の構内に入っていくのを確認すると俺は家へと歩き出す。誰かと一緒にいて楽しいと思うのは久しぶりだ。大抵は誰かと遊ぶよりかは1人で作業したりゲームしたりする方が楽しいと思っていたけどね

 

帰り道は寂しいものだ。話す相手がいるかいないかの違いだけ、それも行きは隣で歩いただけで話すことはほぼなかった。それなのに今は寂しく感じる

これは、なんだ....?




読んでいただきありがとうございます
正直投稿はもう少し遅れると思っていましたが気合と根性とイベ終わり特有の達成感で投稿できました
私はよく話のスタートと終わりを考えて中身はその場のテンションで書き上げるのが多いのですが今まさにその状況です。次話どうしよう....
とまあ悩んではおりますが頑張って書いています
どうかこれからも応援のほどよろしくお願いします


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若き頃の楽しさは大人になって後悔するかもしれない

すみません....気がついたら2ヵ月経っていました....
2月は本当に忙しくて構想を練っている時間なかったんです....
3月は....サボってました(土下座)


時期は既に5月末....学生達は「中間テスト」なるものに苦しめられる時期だ

 

無論一般高校生の俺も例外ではない

うちの学校は難しい訳では無いけど変に捻った問題とか妙な引っかけが多い。もちろんたっぷりと対策して余裕をもって点数を稼がねば後々が面倒だ

 

なぜかこの高校では中間テスト→球技大会or体育祭→期末テスト→夏休み

というスケジュールになっている。今年は偶数年だから球技大会だが体育祭よりはマシというか俺にとってはありがたい。走るのはあまり得意ではないからな....

 

という訳で今は喫茶フジにて勉強をしている。まあ大体の学校はそうなんだろうけどテスト期間中はバイト禁止だ。曰く勉強に専念しろと。それは休日でもダメだということらしい。

ボs....黒田先生に直接申し立ててなんとか忙しい時は入ることを許してもらったが基本的には勉強しろとのことだ。そりゃそうだ、学生は勉強が仕事だもんな

 

勉強が仕事なら勉強した分だけ金をくれ()

そんなことを考えているとからんからんと入店の音がする。入口を見ると長い銀髪に特徴的なアホ毛の星さんがいた

 

「いらっしゃい....って言えないか。今は店の手伝いじゃないし」

 

1冊のノートと隣にはマグカップを置いてテーブルに座っていた。まあ所詮テスト勉強というものだ

 

「べ、勉強中なのか....?」

 

星さんが黒いノートを指さしてそう言う

 

「あぁそうなんだ。読み方とかよく分からなくてな....どう読めばいいんだか....」

 

「ど、どれどれ....」

 

星さんの顔がすぐ横に来る

近い近い近い近い!ちょっとビクってしちゃったよ

 

「え、えーっと....き、『禁断の果実』『深紅の秘薬』....学校の勉強じゃないのか....?」

 

「いやまあ....実はね....」

 

 

 

───────────────

 

数日前

 

ランチタイムのお客さんが帰りお店の賑わいは少しずつ収まってきた。お客さんがいなくなったので皿洗いと材料のチェックをしていると入口の方からからんからんと音がする。お客さんが来たな

 

「いらっしゃいませ」

 

「灼熱の業火が我が身を焦がす時!(こんにちわ!)」

 

すごいお嬢様ヘアー?でゴスロリ服の女の子だ。てか今なんて言った?灼熱?業火?

何を言っているんだ....?

 

「い、1名様ですか?」

 

若干苦笑いっぽくなるが我慢我慢、スマイルスマイル

 

「我は片翼なり」

 

まってほんとに何言ってるんだ....?本当に日本語か?日本〇で遊ぼに出られるぞ。謎の言語枠で

 

「それではこちらへ〜」

 

席へ案内しお冷を運ぶ。メニューを見てはいるが案外すんなりと決まったらしくすぐ呼ばれた

 

「ご注文お伺いします」

 

「禁断の果実を所望する。深紅の秘薬により魔力を高めよ!(ハンバーグ、ソースはケチャップで!)」

 

「禁断の....すみません、もう1度いいですか?」

 

「あっ....えと....は、ハンバーグ....ソースはケチャップでお願いします....」

 

メニューで口元を隠し目線を少し逸らしながらそう言う。最初からそう言えば良かったのでは....?

 

注文をマスターに伝え、待っていると銀髪の少女は店内をキョロキョロと見始めた。アンティーク調なのがそんなに珍しいのか、それともこういう内装が好みなのか、しばらくしてから料理をテーブル席に運ぶ

 

「どうぞ、ハンバーグのセットです」

 

「わあ!美味しそう!」

 

なんていうか....こういう所の反応は見た目通り少女みたいなんだな....

 

「いただきます」

 

しっかりと両手を合わせている。そこは普通なのか....案外育ちのいい子だったりするのか?

 

「んん!美味しい!肉汁が溢れ出てくる!」

 

まってもう普通の女の子じゃん。どう見てもハンバーグ>>壁>>魔王キャラだよ。というかこっちが素なのか?魔王様行方不明か?

 

食べ終えたゴスロリ魔王様(仮名)はレジにてお会計をする。まあランチとしてはそこまで高くない値段だ。高校生もそれなりに来るし

 

「我が名は神崎蘭子!今宵は狂気の反逆者との縁により降臨した。(私の名前は神崎蘭子ら今日は輝子さんに勧められてこのお店に来ました!)」

 

「は、反逆者....?」

 

とりあえずこのゴスロリ魔王様(仮名)は神崎蘭子さんということだけはわかった。誰だよ狂気の反逆者って....てか昼下がりなのに今宵ってどういうことなの....?

 

「お友達からの紹介ですか、わざわざ来てくださりありがとうございます」

 

「ん?あれって....」

 

神崎さんが指さす先には以前来店したゼッケンズのメンバーそれぞれのサインが飾ってあった

 

「ふっ、ならば我も刻印を遺して往こうぞ!」

 

刻印....サインのことか?てことはもしかしてこの人もアイドル....?マジ?

 

色紙を取りに店の奥へ行きつつスマホで神崎蘭子と調べる。がっつりアイドルだった

 

 

_______________________________________

 

 

「という訳なんだ」

 

「ら、蘭子さん....」

 

どうやら星さんもあの人とは面識があるらしい。そりゃそうか、だって同じ事務所だし年齢も近いし

 

カランカランと入口のドアに付いたベルが店内に響く。お客さんかな

 

「灼熱の業火が身を焦がす時!(こんにちは!)」

 

ドアを開けた先には黒いゴスロリ服を纏ったあの神崎さんと....もう1人は誰だろ、なんか髪の毛+ピンク色のやつが垂れ下がってるんだけど....それになんか服の趣味が神崎さんと全く違う人だ

 

「あ、神崎さん。また来てくださったんですね」

 

ペコリと小さくお辞儀をすると「うむ!」とにっこり満足気な顔をしてなぜか俺の座っているテーブル席の向かいに座っている。今の状況を説明すると俺の隣に星さん、向かいには神崎さんにその隣に座るのがホイ〇スライムさん(見た目がそれっぽい)

 

「そ、そちらの人は?」

 

同じテーブルに座ったことに内心驚いてはいるが流石に知らない人と同じテーブルに座っていると気まずいしな....せめてと思って名前は聞いておこう

 

「ボクは飛鳥、二宮飛鳥だ。今キミはボクのことをこう思っただろう?『痛いヤツだ』ってね。まあ、思春期の14歳なんてそんなものさ」

 

あぁ〜そういうキャラのアイドルさんか....

そういうキャラだと後々バラエティとかで過去の映像流されて悶え死ぬパターンだぞ....絶対そうなる....

 

「よ、よろしく。大野翔太郎だ」

 

ホイミスライム改めて二宮さんはどうやら神崎さんと仲がいいっぽそうだ

 

マスターが水を持ってきた後にそれぞれ注文をした。星さんはいつものきのこのクリームパスタ、神崎さんはハンバーグセット、二宮さんはコーヒーのセット(ブラック)だ。飲めるのかよブラック....(甘党人間)

 

「供物の運び手よ、その書は....(大野さん、そのノートは?)」

 

神崎さんがノートを指さしてそう言う。触れられたらそれはそれでどう答えるべきかすごく悩むな....

 

「えっとこれは....この間神崎さんお店に来てくれたじゃないですか。その時言われたことが上手く理解できてなくて....それで次はちゃんと接客できるように勉強してたんですよ」

 

「我が言の葉を紡ごうとは....(私の言葉を理解しようとしてくれてるんですか!?嬉しいです!)」

 

何も喋らないな....と思いながら二宮さんの方を見るとコーヒーセットのパンケーキを少し食べつつコーヒーを飲み、「う"っ....」とたぶん苦いのを我慢しているような顔をしていた。ミルクと砂糖....持ってくるべきだろうな

 

その後神崎さんはハンバーグを物凄い笑顔とキラキラと輝いた表情で、星さんはきのこのクリームパスタを食した。俺はと言うと神崎さんの熊本弁(とファンの間では呼ばれている言語)を履修していたため学校のテスト勉強は全く進まなかった



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テストあとのポテトは罪の味

お久しぶりです。生きていました
4月は奇跡公演やオタク is LOVE、Athanasia、5月は不埒なCANVASなどに刺されていました
最近銀河図書館とLast kissにぶっ刺さされて文香さんや三船さんの物語を書いてみたいなとか思い始めてしまってます

追記 サブタイトル書き忘れてました


キーンコーンカーンコーン

 

チャイムの音とともに教室内からは鉛筆が転がる音と多くの学生が息を吐く音が響いた

やはり数学は悪だ

公式を覚えても変にこねくり回した回答を求められるから本当に苦手だ

赤点にはならないと思うが....いや赤点になるかもしれない

ともあれこの数学のテストで前期中間テストは終わった。国語、英語、生物、社会系科目はそれなりに上位に行けるだろう

 

さて、今はテスト週間だ。それにテストが終わったということはこれから俺を縛るものは無くなった、という訳だ

 

時刻でいえば今は午後2時30分、お昼ご飯の弁当は軽くしたから今は少し小腹が空いた感じだ

 

「さ〜て、高校生活初の帰りがけファストフード店と行きますか!」

 

そう、帰り道を少し外れるとそこには某有名ファストフードチェーン店が存在する

前々から行きたいとは思っていたがそんなきっかけも無かったしずっとスルーしていた。それが今日は!突撃できるのだ!

 

テスト終わりに荷物をまとめ、帰宅の準備をする。傍から見ると変なやつに見えるかもしれないが無視だ無視

 

「お〜い大野....ってなんでそんなにウキウキしてるんだ?」

 

もう5月で少し暖かくなってきたのにもふっとした髪の毛は変わらない女が近づいてきた。俺にとっては貴重な数少ない話し相手だ

 

「いや、テスト終わったから予定があるんだ」

 

「なるほどな〜、それが楽しみと」

 

「まあ....そんな感じかな」

 

ふ〜ん....と彼女は何かを言おうとするがその先を言葉にはしなかった

 

廊下は走ってはいけないので少し早歩きで昇降口へと向かい、靴を履き変えて店へと向かった

 

 

 

初めて入ったファストフード店は制服の学生がちらほらと見られた。たぶん俺と同じでテスト終わりなんだろう

そんなに食べる方ではないので500円バリューセット(サイドメニューとドリンクはポテトとコーラ)を頼んで席につく

下校時に寄っただけなのになぜこんなにも犯罪的に美味しく見えるのだろうか....まずはポテトを1本、サクッと

外は少し固めではあるが中はアツアツでとても美味しい。油っぽい食感と味は正しく「ジャンク」と言うにふさわしいものだ

数本ポリポリと食べたあとにドリンクのコーラを1口、ゴクリと飲む

油っぽい口の中にキンッキンに冷えた甘い炭酸がシュワシュワと広がる....は、犯罪的だッ!美味すぎるッ!数本ポリポリと、それからまたドリンクを1口....まさに無限ループ!

いや、まだメインのハンバーガーが残っている....

今回のバーガーはチーズとチキンというシンプルなもの、食べた感じではシンプル故に美味い!まさにそんなものだった

ポテトとドリンクの途中でバーガーを食べたため半分くらい残っているポテトとドリンクをまた交互に食べる

やばい....幸せ....

 

「あれ、大野じゃん」

 

声がするほうを見ると教室で見たもふもふ&知らない顔×2がいた

 

「へぇ〜大野も放課後こういう店寄るんだな〜」

 

「まあな、と言っても今回が初めてだけど」

 

神谷さんがこっちに寄って煽ってくる。あれ?神谷さんってそういうキャラだったか?

 

「へぇ、奈緒に男いたんだ」

 

「まさか奈緒に、ねぇ〜」

 

後ろの女子が少しニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらを見てくる。ストレートの人とチョココロネ(?)みたいな人だ

 

「なっ!?そ、そんな訳ないだろ!クラスメイトだよクラスメイト!」

 

おいおい....そんなあからさまな反応して信じてくれる人なんて

 

「ふーん....そっか」

 

えっ....信じるのか....

 

「お隣失礼しま〜すっと」

 

チョココロネ(仮名)さんがポテトのLサイズを4つほどトレーにのせて持ってきた。座ったその人はさくさくとポテトを食べる、食べる、食べる....とりあえず食べている

え〜っと....こういう場合どうすればいいんだっけ....?とりあえず自己紹介か?いやでも合コンってわけじゃないしなあ....

 

っとそこでチョココロネ(仮名)さんがポテトをつまむ手を止め、こちらを向いてきた

 

「私北条加蓮、今奈緒の髪の毛をもふもふしているのが渋谷凛、よろしくね」

 

神谷さんが髪の毛をもふられめやめろと抵抗している。やめんかい、お店の中やぞ....

 

「大野翔太郎です....よ、よろしく」

 

「んで....奈緒とはどういう関係なの?」

 

ズイっと少し前に乗り出してそう聞いてくる。その目は真剣....というかなんだか興味津々な、『弄るためのネタ集め』みたいな感じだ

 

「いや....神谷さんも言った通りクラスメイトですけど....」

 

「ほらな!だからクラスメイトだって言ったろ!」

 

「な〜んだ....『遂に奈緒に恋人が!?』ってなると思ったのに」

 

流石に立ちっぱなしでは他のお客さんにも迷惑ということで4人席に座り直した

俺の左側はチョココロネ(仮名)さんこと北条さん、正面には渋谷さん、対角線上に神谷さんだ神谷さんと渋谷さんもドリンクと各々食べるものを注文して席につき、ゆっくりと話を始めた

と言っても俺と神谷さんは渋谷さん、北条さんと歳は違うためテストの話題などではなく

 

「へ〜本当に知らないんだ。私達のこと」

 

渋谷さんのその目は不思議そうな、本当に?と少し疑っているようにこちらを見ていた

 

「本当だよ、ゲームとかよりも裁縫とか料理とかのほうが好きなんだってさ」

 

「「女子?」」

 

「女子なのはお2人の方では....?」

 

なんだろう....この人達(特に北条さん)といると少し、いやかなり疲れる。途中で一緒にツッコんでくれる神谷さんが癒しだ

そう思うとこの2人に加わる神谷さんってすごいのでは....というかいつもこう弄られてるのか....

 

「神谷さん....大変だったんだね」

 

「んなっ!?同情するより前にこの弄り魔達を何とかしてくれ!」

 

『達』と言うよりかは北条さん1人が弄っているように見えるけどな....渋谷さんはその様子を止めもせず少し笑って眺めているだけだ

 

「渋谷さん....でしたっけ?止めないんですか?」

 

「まあね、加蓮がいきいきしているのもそうだけど奈緒が面白いから」

 

「そういうものですか....」

 

2人のやりとりはどこかケンカ?しているようにも見えるけどなんていうか....お互いが楽しんでいるように見える(なお神谷さんはものすごく疲れているっぽい)

 

お店の中ということもあり時たま間に入って落ち着かせたりポテト食べたり事情聴取という名の聞き取りをされたりなど、気がつけば既に17時を過ぎていた

5月ということもあり、辺りはまだ暗くは無いが日も暮れ始める時間だ

俺達は店を出て通りに出る

 

「もうこんな時間ですし駅まで送っていきますよ。流石に女性だけで返すわけにはいきませんし」

 

「奈緒〜いい人見つけたね〜」

 

ニコッとしながら神谷さんの方を北条さんがポンポンとたたく。ばっと振り向いて即座に否定しようとした神谷さんだったがその口元には北条さんの人差し指が「シーッ」を表すかのように添えられていた

 

「知ってる。奈緒は私の大切な人だもん」

 

「なっ!か〜れ〜ん〜!」

 

また神谷さんと北条さんがじゃれ始めた。まだ人通りもある道だというのに

鴨川の近くでイチャつくカップルか?俺は平安貴族だからそんな人前でいちゃつかないし....

 

「いつもこんな感じなんですか?2人は」

 

「うん、奈緒の方が年上だけどこうしている方が自然というか、気がついたらこうなってた」

 

不憫な....でもいじられている時の神谷さんは確かに怒っているけどなんていうか....本気で怒っているんじゃなくて本当に楽しそうなんだ。肩を叩いて頬をつついて「やめろよ〜」って言う感覚に近いかもしれない

 

「ほら奈緒、加蓮、行くよ。ボーイフレンドが送っていってくれるみたいだし」

 

「ボボボ、ボーイフレンドって!ってそれじゃああたしと大野が付き合ってるみたいじゃないか!」

 

ケラケラと北条さんは笑い、楽しそうにも微笑む渋谷さん、神谷さんはぷんすかと少し怒り、それをなだめる俺

これが男女同数だとか全員男or女なら仲良しメンバーくらいに見えるんだろうけど今は1:3な訳で....周りからの視線は心地よいものでは無かった

だけども駅に向かう最中、1人で下校していた今までとは違う『楽しさ』というものを知ってしまった



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雨の音は寂しさを紛らわす

なぜか前回は書き終えるまでに時間かかっていたのに今回はすぐに書き終えてしまいました

それと星輝子26位おめでとうございます


「なあ翔ちゃん、1人暮らししてみんか?」

 

全てはこの一言から始まってしまった

まあ何があったかはもうわかると思うが

 

「ちょっと待ってくれ....1人暮らし?俺が?」

 

「まあこうしてもう10年近くなったが....高校生じゃし1人でいろいろとやってみるべきだと思うんじゃよ」

 

「いやでも店の手伝いとか....それに1人暮らしったってお金だってどうするんだよ」

 

1人暮らしするにはお金が必要だ。まず部屋を借りたり家電類などを揃えなきゃいけない上に毎月の電気ガス水道食費....まあこの都内ではかなりかかるだろう。それをこの店一筋で生きてきたじいちゃんが持っているとは思えない

 

「店の手伝いはバイトだからシフト表を組んでそれで出てもらえばいいじゃろ。まあ一種の社会勉強だと思ってな」

 

「じゃ、じゃあお金の方はどうするんだよ!」

 

「お金に関しては心配せんでもいい。いざという時にと息子から託されているからな」

 

じいちゃんの息子....つまりは俺の父親だ。もう約9年前、俺が8歳の頃に事故で死んだ。その父親から託されていたということか?

つまりは逃げ道はもう既に無い....ということか

 

「....ばあちゃんはなんて?」

 

「『いい加減翔太郎も1人で立てるようにならなくちゃだめだね』ってさ」

 

「っ....」

 

図星だった

 

 

 

 

「という訳で1人暮らしすることになったんだ」

 

学校の昼休み、屋上で昼食をとる俺達の会話はそれが中心になっていた

神谷さんは大人気アイドル(本人談)で事務所の女子寮に1人暮らししているためなにかアドバイスが聞けるかもしれない、と相談している次第である

 

「んでまずなにが必要なんだ?冷蔵庫とか一通り家電類は必要だから買ったけど....」

 

「あとは自分の好きなものとか置いておくといいぞ。音楽聴いたり本読んだり心が落ち着くからな」

 

ふむ好きなものか....

 

「なるほど、だいたいわかった。ありがとう神谷さん、これお礼」

 

弁当を入れているバックから小さい包みを取り出す。中にはクッキーとかのお菓子類だ、もちろん手作りの

 

「ほんと大野って器用だよな....女子力が高いよ」

 

「慣れだよ慣れ。むしろこれしかしてこなかったから他はできないしな」

 

そう、じいちゃんの家に住み始めてからゲームは無かったからおやつを自分で作ったりほつれとかを直したりしてばっかりだった。高校に入ってからも図書室に行って本読んだり店の手伝いだったりとあまりサブカルチャーには触れてこなかった

 

「そうだ....今日は小物類とか買いに行かないと」

 

「ん?神谷さんも?よかったら一緒に行かないか?オススメの小物とかアイデアグッズみたいなの教えて欲しいし」

 

「いいぞ。さっき貰ったクッキーのお礼もあるしな!」

 

キンコーンカーンコーン

 

ここで昼休みが終わる鐘の音が響く。教室が遠いわけでは無いがあまり遅くてもいい顔はされないだろうしすぐに戻ることにした。5限は数学だ、昼休み終えた直後の数学とか眠くなる

決してついていけないわけではないが多少は頑張らなければならない。あまりにも酷くて高校2年生で留年しましたとか笑えないからな

 

憂鬱な授業を終えた放課後、俺達2人は近くのショッピングモールに来ていた。神谷さんは小物や本など、俺は引越ししたばかりだから雑貨類などのオススメを聞きつつ購入、という訳だ

平日の夕方ということもあり人はあまり多くはないがゲームセンターなどに足を運ぶ制服姿はちらほらと見られた

 

まずは近くにある雑貨屋に向かった。店内は黒や茶色系統の落ち着いた色の小物などが多い。雑貨屋ではあるが本棚や洒落た小さめの収納なども売っていた

この店では小さめの収納やそれに合わせた棚などを購入した。ショッピングモール全体で使えるカートを借りているから持ち運びには何ら問題はない。やったね

 

その後は100円ショップ「ダイナソー」でキッチンを広く使うためのグッズや調理アイデアグッズなどを購入した

次は本屋に向かい神谷さんの用を済ませる。欲しかったシリーズの最新作が出たから発売日に買いたかったらしい。別に発売日じゃなくても....と思ったがこればかりは価値観の違いというやつだろう

買えたであろう神谷さんはホクホク顔で本屋を後にし、俺達2人はモール内のフードコート買ったポテトをつまみながら家路へとついていた。北条さんがいたら突撃してくるだろうな

まあ話と言ってもテストが終わったばかりの俺達の話題は次の特大イベント修学旅行と文化祭だった。どうやら修学旅行は沖縄に行くらしい。班決めに関してはほとんど話す人がいないから誰と班になってもあまり変わらない気がするが....言わない方がいいか

 

「んで班どうするんだ?明日までだぞ?」

 

「まあ....俺はどこでも変わらないよ。そもそも話す人がいないから」

 

「じゃあ....あたしの班来るか?」

 

唐突な提案に少し戸惑うがありがたい話だ。神谷さんならここ最近ではあるが話はよくするし意見を言ってくれる人だから一緒にいると助かる

 

「じゃあ....そうさせてもらおうかな。ありがとう」

 

「いいっていいって」

 

班員は他に2人ほどいるが沖縄に行ったらどこに行きたいかで盛り上がる俺達だったが1つ忘れていたことがある

もう6月、つまり梅雨の時期だ

いくら天気予報が雨だと出していなくても注意はしなければならない

ちなみに買い物に行く前の神谷さんのセリフは

『いやこんな青空で雨降るわけないだろ?天気予報だって今日は1日晴れって出てたし』

だった

いや、これは降るね

2ポンド賭けてもいいよ

 

その話を思い出したからなのか、ぽつぽつと雨が降り始めた。ショッピングモールから離れ落ち着いた住宅街、近くにコンビニや雨をしのげる場所などあるわけがなく....

つまり言うと傘で耐えるしかないというわけだ

俺がバックから折りたたみ傘を取り出し広げると申し訳なさそうに神谷さんが傘に入れてほしそうな目でこちらを見ている。傘の中に入れてあげますか?

 

入れる←

入れない

 

「ほら、早く入りなよ。その髪の毛だと濡れると大変だろうし」

 

折りたたみ傘にしては少し大きめだから一応2人は入れる(まあ俺の方は肩が少し出てしまうが)

 

「あ、ありがとう....」

 

サーッと雨が降る。あまり思い出したくない光景が今でもまぶたの裏にくっきりはっきりと焼き付いている。もし今あの時と同じことが起こってしまったら....平静を装ってはいるが頭の中からこのことが離れない

 

「助かったよ、大野が傘持ってて。やっぱり梅雨時は折りたたみ傘持っておくべきか....」

 

「沖縄の修学旅行の時も持ち歩いた方がいいかもね」

 

そんなこんなを話しながら歩くこと数十分、気がつけば女子寮近くまで来ていたようだ。時間は既に5時30分を過ぎ、人通りはあまり見かけなくなっていた。とりあえず屋根のあるところまで行き、それから自宅へと向かう....はずだった

 

「あれ?大野さん....?」

 

目の前にいたのは美しい銀の長髪の女の子だった




『100円ショップダイナソー』
基本100円+税で均一のショップ。別段恐竜モチーフや柄の商品が多い訳では無い

『マグルナルド』
この世界では一般的に全国展開しているファストフードチェーン店。ポテトは細長くカリカリしている。世界中の店舗で出身を問わず雇用しているらしい。魔力を持っていない人のことではない

『喫茶フジ』
なぜかきのこのクリームパスタが人気になっているが一応紅茶やコーヒー、軽食類の喫茶店である。最近女の子のお客さんが多いらしい


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雨に始まり雨で繋がる

まさかのブライダルSR2週目でまゆPとしての私は放心状態でした



今日の授業を終えた私は図書室で今日の課題に取り組む。寮に戻ってからだとみんなとおしゃべりしちゃうからな....

図書室は自分の部屋以下、教室以上の安心感がある。静かだしな....それに疲れたらキノコの本もある。まあほとんどが図鑑だけど、それでもやっぱり見ていて楽しい

 

課題を終えた後はいつもなら自主レッスンしたりするけども今日は休憩の日だ....親友からも『たまには休まないとダメだぞ』って言われているからな....お気に入りの喫茶店で一息だ

 

ドアを開けるとカランコロンと子気味いい鈴の音が響く。もう時間も夕方だからなのかお客さんは見当たらなかった

出迎えてくれたのはこの店のマスターさんだ

 

「いらっしゃい。おや星ちゃん、よく来てくれたね」

 

「ふひ....こ、こんにちは」

 

アンティーク調で落ち着いた雰囲気のこのお店に問題があるとするならカウンターのイスが自分には少し高く、足がふらふらすることくらいだ

と、ここでいつもなら聞こえる声が無いことに気づく

 

「あれ?大野さんは....?」

 

出会ったのはたった2ヵ月ほど前、だがご飯を食べたり雨に降られてお泊まりしたりケンカ?したり....まるでアイドルになった時と同じくらい濃く楽しい時間だった

 

「あぁ翔ちゃんね、一人暮らしさせているんだ」

 

「ひ、一人暮らし....!?」

 

あの日の夜のことを思い出す

 

『嫌だ....どこにも行かないで....』

 

ギュッと握りしめられたその感触もはっきりと、この目で見た涙も覚えている

お祝いも兼ねて家に行くのもいいかもしれないな....なんか遊びに行くなんてリ、リア充っぽいけど....

 

「翔ちゃんのこと、お願いね。あの子丈夫そうに見えて無理している時とかあるから」

 

 

そして現在、女子寮前

 

 

寮の前では大野さんと奈緒さんが1つの傘の下でとても楽しそうに話している。その姿を見て胸がきゅっと痛くなった。少し前までは私と仲良く話していたのに気がつけばその隣には人が増え、私だけじゃなくいろんな人と話すようになった。マスター....大野さんのおじいさんはダメそうって言っていたけどとても元気そうにしか見えない

 

「や、やあ大野さん、奈緒さん」

 

「あっ星さん、久しぶり」

 

「じゃああたしは部屋に戻るからな!じゃあ!」

 

奈緒さんはその場から全力疾走で寮に戻ってしまった

よく見ると大野さんが傘を持っていない方の手はぎゅっと握りしめられていて傘を持つ方のでも固く握っていた

 

「お、大野さん....あの....大丈夫なのか....?一人暮らしって聞いたけど」

 

「大丈夫大丈夫、俺が家事とか得意なの知っているだろ?それに」

 

「じゃなくて....1人で....寂しくないのかなって」

 

サーッと雨の音が強くなる。少し俯いたあと、顔を上げてこちらを見る

 

「泊めてもらった時....凄く寂しそうで、震えていたんだ」

 

「そっか....なんか恥ずかしいところ見られちゃったか」

 

恥ずかしそうに手を頭の後ろに回し、ポリポリと首の後ろをかく

 

 

──────────

 

 

そっかあ....あの時

よくよく考えたら....というか考えなくても分かる。男が女と1つ屋根の下で寝泊まりしたあの日、たしかあの時は激しい雨の夜で....いつもなら自室だし枕とかを握りしめるだけだったのがソファーで寝ていたから落ち着かなかった、と

 

「実はさ、俺には親がいないんだ」

 

いっその事話してしまおう。普段誰かといたとしてもこういうことは絶対に話さなかったのに不思議と星さんといると話せる。そういう気持ちになることが多かった

 

「あの時もこんな雨の夜だったんだ....運転席に父親、助手席には母親、俺は後部座席に座っていたんだ」

 

指先が少しずつ震えていくのがわかる。その度にゆっくりと深呼吸をして落ち着かせる

 

「それでスピードをつけすぎた車が突撃してきてさ、後ろにいた俺は助かったけど父親も母親もその時に....な。それ以降はじいちゃんばあちゃんが育ててくれたんだ」

 

「そうだったんだな....」

 

話の途中から少しずつ雨は弱くなっていき今ではぽたぽたと、屋根から雨水が垂れてくる程度になっていた

何言ってるんだろうな....俺は

 

 

 

日付が変わって6月5日、全国の人間は明日の休日を渇望し今日の活動にあたっているだろう。俺も明日は休みだからと今日は頑張るぞと少し気合を入れていた

 

「おはよう大野、そういやなに渡すのかもう決めてるのか?」

 

少し楽しそうな顔で神谷さんが寄ってくる。あの時星さんと2人にしたの少し根に持ってるからな?

 

「渡す?なにを?ホワイトデーはとっくに過ぎてるぞ?」

 

「えっ....輝子の誕生日の事なんだけど....」

 

驚いた様子の神谷さんから話を聞くとどうやら明日は星さんの誕生日らしい

誕生日....誕生日!?しかも明日!?

 

「まって何それ聞いてない....」

 

「まあまあ今日決めてもいいんじゃないか?」

 

「あの....今日お願いしても....?」

 

「まあ、そうなると思ったよ....でも今回は大野が『これつけて欲しい』って思うものを買っていった方がいいと思うんだ」

 

「えっ、好みとかどういうのがいいとかそういうアドバイスは....」

 

「そんなことより似合いそうなもの考えたりとこれつけて欲しいって心の込めたプレゼントの方がいいんだよ!」

 

「そういうものなのか?」

 

「そういうものだ」

 

とりあえず放課後はプレゼントを買いに行くことに決めた。昨日あの後にうちに遊びに来る話にはなったから明日誘ってみようかな....だとしたらプレゼント以外にも少し用意しておかないとな




読んでいただきありがとうございます
今日は6月4日ですね、早いものです
よくよく考えたら投稿してからもう半年、飽き性な私もここまで書けたのかと少し驚いています
1話自体は短く、まだまだ稚拙な文章ではありますが読んでいただいている方々、評価を付けてくださる方々には本当に感謝しています。本当にありがとうございます
これからも少しずつではありますが書き続けていきますので応援などしていただけたのなら幸いです

それはそうと6月のデレステのイベントには星輝子が来ます。これは真実です


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Dear my friend

星輝子さん、誕生日おめでとうございます



日付が変わって当日、俺は料理を作っていた

というのも今日、6月6日は星さんの誕生日だ。前日に神谷さんから誕生日の情報を聞いた俺は急いでプレゼントを選び、料理の材料を購入してきた

今まで誰かの誕生日を祝うなんてじいちゃん達くらいしか無かったからプレゼント選びとか不安だった。予算に関しては店の手伝いでもらったお金は特に使い道とかは無く、それなりに貯まっていたため余裕はあった

 

事前情報で星さんはモンブランが好き(NAOOO調べ)ということなのでモンブランを作ることにした。というわけで甘栗で作るモンブラン制作(R T A)、はーじまーるよー

はい、よーいスタート

 

普段ならカップは市販のものを購入したりしますが今回は昨日のうちに焼き上げておきました。時間短縮の基本ですね

まず最初にマロンペーストを作りましょう。というわけで甘栗を温めて柔らかくします。こうすることで後の舌触りなどが変わってきますよ〜

今のうちにホイップクリームを作っておきましょう。暇な時に別のことをやっておくのもタイム短縮のコツです

 

温め終わったら生クリーム、砂糖と先程温めた甘栗をフードプロセッサーに入れて攪拌します。無ければ地道にやるしかありません

もちろん攪拌の後は裏ごしですね、こういうやつの基本です。なめらかさが違います(2回目)

 

お次は生クリームを5分〜6分立てにハンドミキサーでかき混ぜ、目標くらいになってきたら先程裏ごししたものと混ぜます。はいはいはいこれでマロンクリームの完成ですね!

もちろんこれはモンブラン用の口金付きの絞り出し袋に入れます。まあ一般生クリーム用でもできないことは無いので代用としては有りですね。タイムにあまり差はありません

 

ここまで来たら次は昨日のうちに作っておいたカップにホイップクリームを円状に盛ります。と言っても栗の固定用なのでそこまで多くなくても大丈夫です。そこにちょこんと甘栗をいい感じにのせます。固定できないからと言ってグリグリとしてはいけません。真ん中が少しくぼむようにクリームを盛るのがコツです

 

さて、栗もセットしたことですしマロンクリームをいつものモンブラン状になるようにぐるぐるぐるぐるグルコ〇ミンと回していきます。体操はしてもいいですが集中できなくて失敗することもあるので注意してください(1敗)

 

マロンクリームがいい感じになったら仕上げに飾り用のミニ甘栗をのせ、粉砂糖を軽〜く振りかけたら完成です。タイムは....キッチンタイマーはカウントダウンしていくものですので計測できていませんでした。制作した感想は、ケーキだけでなくいずれバケツプリンみたいなものなどにも挑戦してみたいです

 

とまあ、まずはモンブランを作り終えた。ケーキ類は冷蔵庫に入れておけばとりあえず1日はもつので安心安心

合計で5つほどできたので1つつまみ....もとい味見を....うん、美味しい!

マロンクリームが滑らかだしカップはサクサク、栗も程よく甘くてちょうどいいですね

 

冷蔵庫にモンブランを入れたところでデザート二品目を作りましょう。内容はキノコ型の二層チョコ....うん、どう見てもき〇この山だこれ....

あっ、俺はき〇こでもたけ〇こでもきり〇ぶでもなんでも好きです。だって美味しいし

 

作り方としては型にチョコ(一層目)を流して冷蔵庫で冷やす。固まったら二層目のチョコを流してそこにクッキーをぶっ刺す。これは木でいう所の幹、きのこだと()というらしい。これを冷やして完成だ

ちゃんと固まっていないのに二層目を流し込むと変に混ざりあってめっちゃぐにゃっとした模様ができるからそれもそれであり?なのかもしれない。俺は好きじゃないが

一応飾り付けに使う分をよせておいて残りは小袋に分けてお持ち帰りできるようにしておこう

 

さて次は食事を....といきたいところだが星さんとの約束は18時、今はまだ12時過ぎた頃だ。今から作ってしまっては星さんが来る頃にはひえっひえの美味しくないものになってしまうので少し休憩を....の前に部屋を片付けておこう。流石に人を招くのに汚部屋だと歓迎しても嬉しくなくなってしまうからな

 

あまりにも時間があるため隅々まで掃除をした上に流し台やベッドの下、更には電子レンジや冷蔵庫の中など、まるで大掃除と言わんばかりに掃除をした

 

適度に時間が過ぎた後は料理に取り掛かった。星さんはきのこ料理....と言うよりかはきのこが好きなため、今回はきのこをメインにして作ってみよう

 

 

閑話休題

 

 

気がつけば18時30分、約束の時間から30分過ぎていた。メッセージアプリに連絡を入れようと思ったがそもそも星さんと連絡先を交換していないため、何かを聞くこともできない。アイドル関係と言えば神谷さんしか連絡先を持っていないため神谷さんにメッセージを送っても

 

かみやん「大丈夫だって、ちゃんと待ってろよ!」

 

としか帰ってこない。bot....って訳じゃないだろうけどそれでも不安になってくる

信用できる神谷さんの言葉だから信じて待つべきなんだろうけどそれでも星さんが心配だ。いくら日は伸びたとはいえ既に18時30分、少しずつ日は沈んでいた

 

ピンポーン

 

焦る気持ちでいた空気の中、1つの音が割り込んでくる。ドアホンの画面を覗くと見知った少女が息を切らせながら立っていた

急いで鍵を開け、ドアを開けるとそこには星さんがいた

 

「ご、ごめん....すごく遅くなった」

 

額には薄らと汗が浮かんでおり、走って向かってきたことが分かる。いくらアイドルのレッスンで体力があるとはいえ星さん自身運動は得意という訳では無いらしいし、とても大変だっただろう

 

「だ、大丈夫....?と言うか1人で走ってきたのか!?」

 

「な、奈緒s....走ってきたんだ....遅刻しちゃったし....」

 

とりあえず玄関先で立ち話という訳にもいかないので部屋の中へと入れる。よくよく見ると水玉スカートに白いシャツ、ピンク色の上着と結構オシャレな格好をしていた

 

「もしかして事務所で誕生日パーティがあったとか?」

 

座ってもらって一息ついたところでそう問いかける。答えは「うん」と返ってきた

 

「それなら今日無理しなくても....明日は日曜日なんだし明日でもよかったのに....」

 

「い、いや....せっかく大野さんがお祝いしてくれるって言ってたから....う、嬉しくてな....」

 

「お、おう....」

 

斜め下に視線を逸らした星さんは頬をぽりぽりと人差し指で掻く。頬はうっすらと赤くなっていてなんていうか....いつものきのこシャツとは違っていてかわいいというか....「とても良い」という感想しか出てこない

 

まあとりあえずとジュースをお互いに飲み、作っておいたきのこ料理を食べた。きのこ料理を持ってきた時の星さんの表情はまるで網焼きのしいたけの模様と同じように輝いていて綺麗だった

 

料理を食べた....と言っても他にもあるので少なめだったがメインの自作き〇この山とモンブランを

星さんも甘いものは好きらしく少しずつ食べていた。なんか小動物みたいでかわいい

 

ある程度食べ進んだところで後ろから袋に入った箱を取り出す

 

「これは....?」

 

「誕生日おめでとう星さん。誕生日プレゼントだよ、出会ってからは短いけどとても楽しかったからそのお礼だよ」

 

「こ、こんなに貰えないぞ....」

 

「いいんだよ。俺が楽しかったし、好きで俺が渡しているんだから」

 

「す、好きって....」

 

「い、いや違うんだ!意味が違うというか、いや違わないけど....」

 

「....開けていいか?」

 

もちろん、と返す。気まずい空気を察してくれたのかプレゼントの梱包を開け始めた。ありがとう....星さん

 

「す、すごいな....これ」

 

まず1つめの箱にはオレンジの髪飾り、きのこの模様を描きつつオレンジと白で程よく色合いを出している。星さんには良く似合うかと思って選んだ

 

「これは....」

 

2つめの箱には首飾り....というかネックレスだ。きのこをモチーフにしたものだけど細かくハートなどがあしらわれている。ライブだとガッチガチのメタル装備らしいが普段はこういうワンポイントのアクセサリーなんかもいいかなって

 

「い、いいのか?本当に貰って....」

 

「いいんだよ。星さん髪の毛長いでしょ?ヘアアクセサリーとかそういうもの似合うかなって思って買ったんだ」

 

「ふひ....ありがとう」

 

その後は自作き〇この山を2人で食べつつジュースを飲んで雑談に花を咲かせていた。最近のアイドルとしての活動についてや同じ事務所のアイドルについて、最近こんな事があったのだの色んなことを話していた。話が楽しくなるということはもちろん同じくらい時間が過ぎるということだ

気がつけば夜の9時を回っていた

 

「ご、ごめん....すっかり話し込んでしまって」

 

「いいんだ....私もたくさんお話したから」

 

立ち上がり玄関に向かおうとしたその時、ピシャッと窓から白い光が入り込む

数秒ほど遅れてゴロゴロと大きな音が辺りに響く

窓から覗いてみると外は強い風が吹き、横殴りの雨となっていた

つまり....

 

「えっと....ど、どうしよう」

 

「と、泊まっていく....?」

 

 

拝啓 お爺様へ

一人暮らし、とても楽しんでおります。家では学べぬことなど、たくさんの経験をすることができ、有意義な生活を送っています。それと私、大野翔太郎は「年下の女の子と1つ屋根の下で一夜を明かす」ことになりました




読んでいただきありがとうございます
気がつけば私もデレを知り、星輝子を好きになってからもう3年半が経ちました。本当に早い
拙い文章ではありますがこれからも頑張って書いていきますのでこれからも読んでいただければ幸いです


大野翔太郎のウワサ①
奈緒から勧められたアニメを観ているらしいが
料理や作業時に観ると丁度いいらしい


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