BEYOND YOU~WORLD TRIGGER Another Story~ (ポンコツ創作者 リオロス)
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作者視点の雑なキャラ紹介(プチネタバレ&裏話あり)

レヴィア

レヴィアは自分が創作を始めようとしたきっかけである「好きな作品のなかに自分の分身をいれたい!」というところにあるためにさっさと作れたキャラです。

自分のモテ期は幼稚園児の頃に過ぎ去ったのでショタです。

結構、元設定がぶっ壊れてきてるんでどうしたものかと…

 

イフ

主人公にレプリカ的な相棒が欲しくて作っただけのキャラな上、根本にある設定も二人を繋げるために作ったテキトー設定です。

まぁ後々色々やります。今は空気になってるけど。

個人的にはレプリカとかカロンのビジュアルが大好きなのでほぼパクりです。

なかなかぶっ壊れてますがなぜ暴走しなかったのやら。

 

サヨ

最初にできた周辺キャラです。

キャラ作り中にやってたゲームのキャラがモデルになってます。

偽装者…よく考えたらチートofチートですねハイ。

どうにかせねば。

セルヴァル族も元キャラが京都弁キャラのさだからつくった設定です。

テキトーに作った設定だったのにキャラ作りで後々助かってますが。

 

キイラン

これは単にサヨと対立(?)させたくて真面目系のキャラを作っただけです。

これもまた当時やってたゲームキャラがモデルになってます。

まだ戦闘描写がないからこれもどうにかせねば。

よくある「私にはかわいいのとか似合わないしっ!」系ですね。

 

エリミス

これはサヨと同族を作りたくて、なおかつもとからそういう京都弁なキャラを漁って(いやそんなに時間かけてないよ。好きなキャラがモデルになったんだもん)作ったキャラです。

ほぼ元キャラのまんまです。

彼女がいるから後に語られる因縁ネタができました。

因縁の相手もしっかりといます。

普段はつかみどころがないけどその奥では復讐の炎がメラメラと…

 

ラクサ

エリミスと同じ作品出身です。

彼女と同じく因縁持ちなのでその因縁の相手もいます。

復讐のために騎士になりました。

 

ミルナ

若い頃は忍田本部長、今はウィザ翁、そんなハイブリッドモンスターじーさん。

かなりいい人ではあります。

完全にイメージだけもらったキャラなので因縁は持っていません。

今のところはね。

 

ヤンジ

ラクサの因縁のネタのために必要だったのでそのまままるごと持ってきました。

黒トリガーも能力をそのまんま持ってきたのさハッハッハ。

まだ作中では出てきてませんが副作用持ってます。

ちゃんと副作用も活躍しますよ。

 

黒服の男

こいつがキーマンです。

え?モンシ?あれは踏み台役だよ。

こいつが鍵となって因縁が明らかになっていきます。

因みにこいつ、さらにやべーやつです。

色々ありますが結局敵です。



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設定資料 人物・国家関係

人物

 

レヴィア

主人公1。年齢9歳。身長121cm。体重21kg。H.L6.8。

物心ついて間もなくに他国家に襲撃され、高いトリオン能力故に捕虜とされ、その後も今に至るまで何度も他国家に略奪された、既に波瀾万丈の人生を歩んできた少年。

今住む国家に来る前の国家でイフと出会い、ずっと一緒にいる。

既に感情の起伏が無に等しいほどに精神を病んでおり、「人型トリオン兵」と揶揄されている。

ただし、それまでの環境故に女性免疫がなかったりするところがある。

 

イフ

主人公2。全長40cm。質量2,4kg。HL4,9。

自律トリオン兵としてとある国家で作られたが、シンギュラリティに到達してしまったためガラクタ扱いされて捨てられたところをレヴィアに出会い、相棒のように一緒にいる。

様々なシステムを独自に構築でき、「もし」に常に対応することができる。

本人曰く、その能力は「カルワリアにいた『白髪の黒き悪魔』に似ている」という。

シンギュラリティに到達しているため、人間らしさが随所で見受けられる。

 

サヨ・トロギア

19歳。身長169cm。体重45kg。H.L4.2。

密偵を主な任務とする騎兵隊員。

なぜかレヴィアを可愛がるが、理由はよく分からない。

専用トリガー「偽装者(イミタピオリス)」を持つ。

上層部や同僚等にも、彼女の素性を知る者は少なく、年齢・出自・性別に至るまで真偽のほどは不明。

密偵を主な任務としてはいるが、戦闘能力もかなり高く、主要任務柄階級は低いが、実力は並のエリートを凌駕するという。

やたらと謎が多いのでよく「腹黒」と言われるが、本人曰く「こんなか弱い美少女に腹黒やなんていけずやわぁ」とのこと。

 

キイラン・フニマリュス

19歳。身長164cm。体重47kg。H.L4.0。

レヴィアやサヨと同じ寮に住む少女。

ストイックに強さを求める武闘派。

負けを知らない天才肌であったが、同世代(?)のサヨにボロ負けしてからより一層精進するようになった。

少女趣味があるようにはみえないが、時々こっそりとそういった趣味に興じているとか。

 

エリミス・ニルギオ

3?歳。身長170cm。体重??kg。H.L4.9。

歴代最強といわれる射程持ち。

(ブラック)トリガーには適合しなかったが、その実力は(ブラック)トリガー使いをも凌駕する。

サヨと同じくセルヴァル族出身でレヴィアに世話を焼く。

どこかつかみどころのない言動や行動が目立つ。

常に笑っているが、時折見開く目はルモアさえ畏怖させる…という専らの噂。

サヨの師匠。

 

ラクサ・キバサダ

29歳。身長161cm。体重50kg。H.L4.2。

キイランと同じく武闘派騎士。

戦闘となるとやたら暑苦しくなるが、普段はそうでもない。

ただ、戦闘以外では所々間抜け要素があるとか。

父親の死をきっかけに騎士となった。

キイランの師匠。

 

ルモア・キルリア

アポミミシ騎士団第一隊隊長。

優れた剣の使い手で、後世に名を残すことは確実と言われる。

 

オーデム・アイロト

アポミミシ騎士団総指揮。

騎士団の一番偉い人。

 

ミルナ・イロオイ

67歳。身長176cm。体重64kg。H.L4.8。

現役最年長騎士であるじいさん。

今でこそ貫禄しかない人だが、若い頃は「やんちゃ小僧」とまで呼ばれた人であった。

未だに生身で「栄誉の鎧(ホノリス・アルミス)」を纏った騎士五人を剣一本で秒殺(訓練なので殺してはいない)した、という超元気じいさん。

<やんちゃエピソードの例>

・研究室(三階)の窓から出て会議室(六階)の窓から入った

・トリオン体で海の上を走って敵地に攻め込んだ

(ごめんなさい忍田本部長のパクりです)

 

 

ヤンジ・ミサヨ

65歳。身長149cm。体重39kg。H.L3.2。

ミルナ翁に次ぐ古参(ブラック)トリガー使い。

 

モナーチアの人物

 

モンシ・ガルカイ

モナーチアの貴族。

新たな「神」を見つけるため、アポミミシに侵攻する。

 

 

 

国家関係

 

弱小国家・アディナモ

レヴィアの出身国。非常に小さく、ある国の侵攻で滅んでしまった。

 

小規模国家・プレダトール

アディナモを滅ぼした国家。

レヴィアの腕前はほとんどここで培われた。

モブにすぎないので気にしなくていいです。

 

兵役国家・イピレシア

トリオン兵を主戦力とする国家。

やり口はロドクルーンに似ているが、その最期まで敵にダメージを与えられる(最後の最後に自爆とかする)ようなトリオン兵開発をしている。

 

模倣国家・アポミミシ

現在レヴィア達が住む国家。あらゆる国家の特徴を取り込んで進化してきた、いわば「後出しじゃんけんの王様」ともいえる、手口の汚い国家である。しかし、実際にばかにならない国力を有するため、かのアフトクラトルやキオンからも警戒されている。

国名は「真似事」を表す。

 

セルヴァル族

アポミミシ西部を本拠地としていた温厚な民族。

民族特有の訛りがあり、京都弁に似ている。

なぜか美人が多いことで有名で、純セルヴァル族はかなり人数が減ってきている様子。

中には性奴隷などとして人身売買されている者もいるとか…

サヨとエリミスの件を見るにセルヴァル族の女性のストライクゾーンはレヴィアだと思われる。

 

恵みの泉(ヴィーテ)

アポミミシの地下にある泉。

ここにある水をなんやかんや(考えるの面倒になりました)するとトリオンへと変換できる。

 

王政国家・モナーチア

絶対王政をとる国家。

アポミミシと軌道が重なるとかなり長い期間重なるため、幾度となく衝突があった。

 

 



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設定資料 トリオン技術関係

トリオン関係

 

ハザードレベル(H.L)

トリオン器官の優秀さを示す。

アポミミシで使われる基準である。

また、イフは様々な情報から「個人の戦闘能力」としてハザードレベルを算出でき、トリオン器官の方を「トリオンハザードレベル」と区別することもある。

 

 

トリガー

 

アポミミシのトリガー

 

アポミミシのトリガーの構造について

アポミミシのトリガーは、武器トリガーと防御トリガーをトリオン体やその他のシステムが含まれた接続機で繋いで一本にしている。

特製トリガーは防御機能等もまとめて作られているので単体である。

 

栄誉の鎧(ホノリス・アルミス)

アポミミシの騎士団のなかでも上位騎士に与えられる補助装甲型トリガー。

トリオン体の機能を補助し、その防御力も高める。

本来、トリオンの装甲は重いため、装備時の機動力が危惧されて他の国家ではどこを見ても導入されていない。

そのため、その機動力をサポートするためのトリオン噴出機構を組み込み、さらに単純な火力さえ向上させている。

しかし、当然ながらトリオン噴出機構のトリオンまで自前であればそのトリオン消費量はばかにならない。

そこで、アポミミシは地底湖である「恵みの泉(ヴィーテ)」に大量のトリオンが存在し、それが常にトリオンを産み出しているため、そこからトリオンをこのトリガーに供給するシステムを構築した。

これにより、高い火力、機動力、防御力の両立を実現させたのだ。

 

天駆ける風(ケイルン)

トリオンを噴射して栄誉の鎧(ホノリス・アルミス)の重量を補う機能。

 

鋼の鷲(アクィラ)

アポミミシ騎兵隊の白兵(ブレード)トリガーの一つ。

シンプルかつ性能のバランスがとれたトリガーで特に使い手を選ぶようなことはない。

アポミミシにあるほとんどの白兵(ブレード)トリガーは、これをベースとして形状や性能をいじっている。

 

金の雀(バッセル)

アポミミシ騎兵隊の白兵(ブレード)トリガーの一つ。

「鋼の鷲」より軽量で、サイズも小振り。

手数が売りなので、二刀流で使う者が多い。

 

風の獅子(レオ)

アポミミシの騎士団の基準装備である火兵(マグナム)トリガー。

射程、弾速、威力など安定した性能をほこり、取り回しやすい。

白兵(ブレード)トリガーと比べ威力で劣るが、射程を得られるのは強みとなる。

 

嵐の虎(ディーグリス)

アポミミシの騎士団の基準装備である火兵(マグナム)トリガー。

風の獅子(レオ)」と比べると大型ではあるが、連射性能が高い。

 

火の鮫(シゥーク)

アポミミシの騎士団の基準装備である狙撃(スナイプ)トリガー。

火兵(マグナム)トリガーと比べて狙撃に重点を置いており、撃ち合いは無視して射程、威力、弾道の安定性を強化した決定打を叩き出すための設計になっている。

 

山岳の砦(カストラム)

アポミミシの騎士団の基準装備である(バリケード)トリガー。

壁や地面からバリケードを出すことで、射撃戦の陣形を組んだり敵の進行を遮ることができる。

 

鋼鉄の盾(クレイペウス)

アポミミシの騎士団の基準装備である(シールド)トリガー。

手持ち式で「鋼の鷲(アクィラ)」より少し重いくらい(=基本トリガーのなかで一番重い)が、その防御性能はかなり高い。

 

水面の壁(ウォゥル)

アポミミシの騎士団の基準装備である(シールド)トリガー。

出し入れ自由の半透明のシールド。

他の国家で使われるものと同じ形式である。

色は淡い青。

 

偽装者(イミタピオリス)

サヨが専用携帯する「容姿偽装トリガー」。

身長や性別から声色、口調に至るまで様々な要素を偽装して他人になりすますことができる。

トリガー反応が発生しないためバレにくい上、本人を捕らえて記憶データをトリガーにダウンロードすれば、上層部の人間になりすまして機密情報を盗み出すこともできる。

なりすまし性能は高く、(ブラック)トリガー使用者になりすませば、(ブラック)トリガーさえ使うことができるとか。

 

城塞の砲槍(トルミントム)

レヴィア専用のトリガー。

形状はランスタイプで、砲撃機構を持つ。

この砲撃機構を利用して推進力を得たり、強固なシールドや装甲を砕くことができる。

また、実際の銃器のようにトリオン消費による熱が籠るので、それを一気に放出することで自爆モードのイルガーさえ消し飛ばすほどの高威力の砲撃を行うことができる。

 

戦火の女神(ベイルム・デア)

エリミスが保有する射撃戦特化トリガー。

様々な銃を操ることができ、いくつかのフォーメーションを組んでそれを呼び出して使っている。

 

光の刃(ルークス)

ミルナ・イロオイが保有する(ブラック)トリガー。

シンプル過ぎる形状で、(ブラック)トリガー感がない。

曰く、「振るに軽く受けるに重し。斬るに利なり突くに鋭なる」とのこと。

つまり最強。

その性能の割には適合者は少なく、今までにミルナ翁以外に三人しかいなかった。

 

傀儡の宴(アウトマータ)

アポミミシが誇る(ブラック)トリガーである。

無機物にトリオンを流し込んで操ることができる。

トリオン消費効率は流石は(ブラック)トリガーとも言うべき規格外のものである。

普通のトリガーで再現しようものなら起動すればトリオン切れといったレベルである。

「操り人形」はトリオン弾や電撃程度の攻撃しかできないが、数があればそれも驚異となる。

本人には何の武装もないことが最大の欠点である。

 

 

トリオン兵

 

模倣国家・アポミミシのトリオン兵

 

多目的自律トリオン兵・イフ

強力な機能を持つ自律トリオン兵。

元々はイピレシアで製造されたもの。

その機能はカルワリアの黒トリガー使い「白き悪魔」の黒トリガーの能力から作られたという。

あらゆるトリガーを複製し、自らの機能として搭載することができる。

 

モナーチアのトリオン兵(?)

 

フィシュ

陸海空対応の捕獲形態と、人型の戦闘形態をもつ新型トリオン兵。

腕力が桁外れで、腕の装甲が特に硬い。

トリガー使いの捕獲を目的としていると思われる。



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第一章 AWAKEN~目覚め~
第1話 孤独


空には無数の星が光っている。

夜の闇の中、一時の安らぎと言える満天の星空だ。

しかし、この星々は全て、いつ襲ってくるかもわからない「敵」である。

 

「なぁ、イフ」

「どうした、レヴィア」

 

非常に無機質な性別の違いもわからぬ声が答える。

 

「この綺麗な星も、いつ襲ってくるかわかんないんだよな」

「その通りだ。今見えている星々も、所詮は他の国家に過ぎない。こうして見ている星がいつ敵となるかわからない。」

「そっか…」

 

レヴィアと呼ばれた少年は、ベランダから空を見上げ、白い浮遊物体と会話している。

イフと呼ばれた白い浮遊物体は些か機械とは思えない反応をしている。

 

少年は既に帰るべき場所を見失ってしまっている。

彼の本当の生まれ故郷は、ずっと前に居た場所に壊されてしまったのだ

 

× × ×

 

「敵襲だ!トリガー使いは総員、南城門へ急げ!住民を避難させ、敵国の兵を迎え撃て!」

 

見張り台の上から男が大声で叫んでいる。

その視線の先には黒い穴のようなものが無数に現れ、そこからロボットのようなものが大量に出てきている。

 

「くそ!トリオン兵の数が多すぎる!こっちにもトリオン兵を送ってくれ!」

 

またしても男が叫ぶ。

トリオン兵ーそれはこの世界で基本となるシステムの一つである。

トリオンと呼ばれる生体エネルギーが発見されたのはいつ、どこであったか…今やこの世界はトリオンを用いたシステムがほとんどだ。

精々食料がトリオン製でないくらいのものだ。

トリオン兵とは、トリオンで作られたボディにトリオンを動力とする、一言で言うなら戦争ロボットだ。

使用目的毎に様々なタイプがおり、複雑なプログラムに沿って活動する。

 

「隊長!砲撃型トリオン兵(バンダー)数体を確認!砲撃に注意してください!」

「衝撃に備えろ!」

 

ドォン!

 

背の高いトリオン兵が口から砲撃…というよりビームを放った。

あまり威力の在るものには見えない細いビームだが、トリオンの技術は見た目だけで容易く威力を判断できるものではない。

城壁に砲撃が当たり、一気にダメージを受けた。

さらにその混乱に乗じたかのように、敵のトリオン兵とトリガー使いが次々と城門の方へと進軍する。

トリガーとはいわばトリオン技術の総称であるが、主に武器のトリガーをトリガーと呼ぶ。

武器や乗り物などの機械技術全般や建築どころか、国さえ(マザー)トリガー、或いは女王(クイーン)トリガーと呼ばれる巨大なトリガーである。

トリガーを使える者は、全体的に見て多いとは言えない。

強大な国は、他国家を攻めた際に捕らえた者を戦力とするなどして次々と戦力を上げている。

この国・アディナモは非常に小さく弱く、これまでも攻められる度に国難に陥ってきた。

今回もまた、滅亡に瀕しているのである。

 

「くそっ!数が多すぎる!主力部隊はまだなのか!?」

「同規模で全方位から襲撃されたためトリガー使いの動員が間に合いません!」

「何!?この規模で全方位だと!?まさか…敵国は本気で我々を滅ぼしに来ているのか!?クソッ!簡易トリオン銃の使用許可!トリガー使いが来るまで敵の進行を抑えろ!」

「「「了解!」」」

 

レヴィアの父親やその同僚、レヴィアは面識さえないような人…

トリガー使いが次々と戦線に到着し、敵国のトリオン兵やトリガー使いと戦闘を繰り広げる。

 

「なんとしても敵を退ける!命令だ!必ず敵を倒し、全員生き残れ!」

「「「「了解!」」」」

 

レヴィアの父親の怒声が響いた。

レヴィアの父親・ラーバスはアディナモのトリガー使いの中でも特に有名で、その怒声は一億のトリガー使いよりも恐ろしい、とまで言われた。

 

白兵トリオン兵(モールモッド)確認!敵の増援です!」

「簡易トリオン銃を総動員しろ!トリガー使いを援護するんだ!」

「「「了解!」」」

 

その後、レヴィアの父親達の善戦虚しくアディナモは滅ぼされ、高いトリオン能力をもつレヴィアは捕虜として連れていかれた。

 

レヴィアはその国・プレダトールに連れていかれ、兵として鍛えられた。

そこでかなりの腕を身に付けたが、またしても他国家に襲撃され、その国家の捕虜となった。

このような流れが繰り返され、何度目かわからぬ捕虜として住む国家・イピレシアで、運命の出会いをした。

 

その日、レヴィアは日々に嫌気がさしてスクラップ置き場に隠れていた。

その時…

 

「何かないかなぁ」

 

暇に任せ、レヴィアがスクラップをどかしたりして物色する。

 

ガタンッ

 

積み上げられたスクラップの山から、白い物体が転げ落ちた。

 

「…なんだろうこれ」

 

スクラップのほとんどは使わなくなったトリガーやトリオン兵の残骸であったが、「白い物体(それ)」はどう見ても損傷があるようには見えなかった。

白いボディに溝が走っており、そこは青い線になっている。

後部には捕獲型トリオン兵によく見られる「(レーダー)」と思わしきものがついている。

形からして他のトリオン兵の頭部かとも考えたが、そのような形のトリオン兵は見たことがないし、胴体との接続部と思わしき部分はなく、全体がつるっとしていた。

 

「ほんとに何これ…」

 

キュゥン

 

「わっ!?」

 

白い物体に光のラインが走るのがはっきりと見えた。

 

「これ…もしかして…」

 

「システム再起動」

 

とても無機質な機械音声が聞こえた。

 

「トリオン兵…なのか?」

「否、私はトリガー搭載自律トリオン兵、イフ。あなたの名前は?」

「…レヴィア」

「データベースに記録なし」

「…捕虜だからね」

「先ほど、あなたのトリオンを拝借しました。同時に、あなたのトリオン器官と私のトリオンはリンクされました。」

「勝手に…」

 

トリオン器官とはそのまま、トリオンを生み出す見えない内蔵である。

ふつうの手術などでは取り出せないが、トリオン技術の取り出しシステムで取り出されると肉体へのダメージが大きく、抜き取られると死んでしまう。

 

「私はとある国家で生まれた(ブラック)トリガーから着想を得て製造された。あらゆるトリガーを模倣することができる。」

 

(ブラック)トリガーというのは一言で言えば「桁外れに強いトリガー」である。

優れたトリオン能力を持つ人間が、自分の全てを注ぎ込んで作るものであり、その後作成者は死に至る。

通常のトリガーを遥かに凌駕する出力を誇り、その性能は通常のトリガーでは作り得ないようなものが多い。

その代償として、使用者との相性が良くないと起動さえ出来ない。

たった一本でも国家勢力図をひっくり返すようなものであり、弱小国に対し勝利目前の大国が、黒トリガーに逆襲されて敗走した例も多い。

その数は必然的に国力を表すことになり、万が一使い手が敗北し略奪されることなどがあれば一大事となるため、基本は本国の防衛に動員される。

 

(ブラック)トリガーを模倣した…?」

「その通りだ。だが、私がシンギュラリティに到達してしまったため、スクラップとして廃棄された。」

「それがなんでいきなり動き出したのさ。」

「恐らく、レヴィアのトリオン能力が高かったため、トリオン器官とリンクさせるシステムが勝手に作動してしまったのだと思われる。」

「勝手に…」

「ところで、先ほどから会話しているが、レヴィアには表情の起伏が見えない。レヴィアもトリオン兵なのか?」

「違うよ。僕はふつうの人間だよ。」

「ではなぜそこまで表情の起伏がないのだろうか?」

「さぁね。色々あったからね…」

 

そこで二人は意気投合し、レヴィアはイフを相棒とした。

しかし、廃棄したはずの危険なトリオン兵を捕虜が従えるなど言語道断、レヴィアはすぐさま命を狙われた。

レヴィアはイフの「力」を使いなんとか国を脱出し、今いる国「アポミミシ」に逃げてきたのだ。

 

× × ×

 

アポミミシはやり口こそ汚いものの、そのやり口故に他国の逃亡者などを広く受け入れている。

また、アポミミシは元々複数の民族が混在していたという珍しい国家であるため、少しくらい面立ちが違っても気にする人は少ない。

 

アポミミシのスタイルは他国の後出しじゃんけんなため、(ブラック)トリガーを搭載した自律トリオン兵など、明らかに研究対象だ。

しかし、そこはレヴィアのトリオン能力故の立場のおかげで、研究解体は免れた。

 

一応、他国からの逃亡者ということで後ろ指を指されつつ、国賓レベルの扱いを受けると言う妙な生活を続けて半年、彼は色々とありすぎる生活に疲れ果てて、ボーッとしているのである。

 

「レヴィアたんどうしたん?」

 

不意に後ろから声をかけられる。

振り向くとそこにはサヨが立っていた。

サヨはアポミミシの西部を本拠地としていた民族「セルヴァル族」の出身で、民族の訛りがかなり強い。

なぜかレヴィアを可愛がるが、理由はよく分からない。

専用トリガー「偽装者(イミタピオリス)」を持ち、密偵を主な任務としている。

上層部や同僚等にも、彼女の素性を知る者は少なく、年齢・出自・性別に至るまで真偽のほどは不明。

密偵を主な任務としてはいるが、戦闘能力もかなり高く、主要任務柄階級は低いが、実力は並のエリートを凌駕するという。

 

「こんなとこおったら風邪引いてまうよ?」

「別にいいよ。」

「なんもよかないて~。」

 

サヨがレヴィアの手を引いて屋内へ連れていく。

 

「え、ここ…」

「さ~一緒に寝よかぁ?」

 

サヨが嬉々とした表情で言う。

 

「いや、いいよ」

 

レヴィアは少し照れた様子で赤くなった顔を見られないようにして自分の部屋へと歩いて行く。




彼の「これから」は彼が思っている以上に凄まじいものとなる。
しかし、その波乱の気配はまだ遠い。


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第2話 入団

「もう一年経っちゃったのか…」

「レヴィア、少し急いだ方がいい。遅刻するよりは、多少早い方が良いだろう。」

「そうだな」

 

レヴィアが急いで丘を駆け上っていく。

 

今日は待ちに待った「騎士団模擬入団」の日である。

騎士団への入隊を望むものは、必ずこの模擬入団をし、「模擬入団完了証」を持っていないといけない。

模擬入団では国家や騎士団の歴史、トリガーの使用体験等ができ、その裏で適正テストも行われている。

模擬入団は9歳以上であること以外に特に規定はないため、殆どの子供は9歳で模擬入団をする。

 

ワイワイガヤガヤ

 

模擬入団会場の受付付近は既にかなり込み合っていた。

当然、模擬入団ではトリガーを触ることができたり、生で騎士を見ることができるのだから、皆胸が高鳴っているのだろう。

 

「はい、レヴィアさんですね。では、模擬入団中はこちらの札を持っていてください。」

 

受付の人が布札を手渡す。

これが模擬入団員の証である。

これがあれば、普段は騎士隊の活動拠点でもある会場を自由に動くことができる。

まぁほとんどは団体行動ではあるが。

 

「お~広いな」

「かなり余裕をもって作られているようだ。訓練場というより、こういったことを想定しているようだな。」

「ふーん…」

 

メインとなる会場は普段は訓練場として使われている空間だ。

ここで映写機で映像を見せたり、騎士の戦闘の様子を生で見せるのだ。

訓練場がコロシアムのようになっている訳は、騎士同士の模擬戦も行われているかららしい。

 

「間もなく模擬入団講話開始となります。ロビーにいらっしゃる方々は、お早めにメイン会場へお集まりください!」

 

係員の声が聞こえる。

 

「おっと、急げ急げ~」

 

ロビーにいた他の子供達も急いで会場に走ってきた。

会場内は期待で目を輝かせた子供で溢れかえっている。

 

「え~、皆様ようこそ!本日は模擬入団ということで、この国の歴史やトリガー体験をしていただきます!では、騎士団総長より挨拶をいただきます。」

 

子供らが口々に驚きや喜びの声をあげる。

騎士隊総長とは、簡単に言うなら騎士隊で一番偉い人だ。

そう簡単にお目にかかれるものではない。

 

「皆さん、今日はようこそ国家騎士団訓練場へ。私が騎士団総長の云々…」

 

騎士団総長の話は子供にも分かりやすく、退屈しないような話だった。

総長の人柄が垣間見えた。

 

そして、映写機による映像を交えた騎兵隊や国家の歴史の説明がされた。

 

「さて皆さん、いつ何時敵国のトリオン兵が送り込まれるかわかりません。そのために、国内に開く門(ゲート)を制御する装置があるのです。そのため、騎士団はゲート制御装置でゲートを集める区域だけを守っているだけで国を守ることができるのです。では、その戦闘の様子を騎士の方に見せてもらいましょう!」

 

バチッ…バチバチッ

 

黒い球体のようなものが空中に現れた。

これが(ゲート)である。

空間を繋ぎ、トリオン兵やトリガー使いを送り込んだり、人員を迅速に移動させたりすることができる。

 

ズンッ…!

 

虫のような形のトリオン兵が(ゲート)から現れた。

 

白兵トリオン兵・モールモッドである。

全長は5m弱、虫のような脚が二対あり、背中には三対のブレード付のアームが折り畳まれている。

そのブレードの強度はあらゆるトリオン兵の戦闘装備のなかでも最強で、全身の耐久力も十分な上、機動力も決して低くない。

高速のブレードを掻い潜り、弱点である「目」を破壊するのが常套手段である。

とはいえ、こんなことを考えているのはレヴィアだけ。

他の子供らはそんなこと知るわけがない。

間近で見るトリオン兵に興味津々だ。

 

「こちらは白兵トリオン兵・モールモッドです。高速のブレードで云々…」

(はいはい知ってる知ってる)

 

レヴィアは心のなかで呆れたように呟いた。

 

「では、騎士の方に実際に倒してもらいましょう。」

 

司会が指差す先には騎士が立っている。

子供らは驚きと歓喜の声をあげた。

それもそのはず、ただの騎士ではなく、栄誉の鎧(ホノリス・アルミス)を纏っている騎士だ。

 

栄誉の鎧(ホノリス・アルミス)は騎士の中でも上位騎士にしか支給されない特殊なトリガーである。

 

通常、防御トリガーというのは空中に広げるシールドタイプが一般的だ。

しかし、シールドでは耐久力の問題や展開管理などで弱点がある。

かといって鎧のようにしてはコストや重量の問題が発生する。

それを解決したのが栄誉の鎧(ホノリス・アルミス)に搭載されたトリオン補給システムである。

アポミミシの地下には地底湖の「恵みの泉(ヴィーテ)」があり、そこからトリオンを入手できる。これを利用して栄誉の鎧(ホノリス・アルミス)にトリオンを補給し、重量を補う機動力補助加速装置が「天駆ける風(ケイルン)」である。

これにより高い防御力と機動力を両立させたのである。

 

それを纏った姿は国を守る英雄であり、子供らにとっては最高の憧れである。

 

「おぉ~!」

 

子供達が歓声を発する。

 

ビュゥン

 

騎士の手元に白兵(ブレード)トリガーが現れる。

レヴィアはこの国のトリガーを知っているため、人目見ただけでそれが汎用のものでないことに気づいた。

恐らく専用トリガーだろう。

兜で顔は見えないが、この騎士はかなり上位の人物と見えた。

 

ダッ!

 

騎士が鎧の重さを感じさせぬような軽やかな動きでモールモッドへ突進する。

普通はこんなことをするのは馬鹿なものだが、するにはそれだけの自信があるのだろう。

 

バッ!

 

モールモッドもブレード付のアームを展開し、臨戦態勢に入る

 

ズバンッ!

 

…がそれもすでに遅く、攻撃する前にモールモッドは一刀両断された。

 

「すげー!」

「かっこいー!」

 

子供達が口々に歓声をあげる。

同時に、先程の騎士が司会の方へと歩いていく。

 

「ふぅ…」

 

兜を外した中から現れたのは、いかにもなおっさんだった。

 

「まったくなぁ。俺なんかより若いイケメンがやった方がよかったんじゃないか?ハッハッハ」

 

そう笑うのは騎士団第一隊団長であるルモア・キルリアである。

彼は後世に名を残すことは確実と言われる程の剣の達人だ。

これまでの戦いでもいくつもの武勲を上げ、その名を知らないものはいない。

剣速もさることながら、熟練の腕前からくる威圧のような「重み」は並の(ブラック)トリガー使いをも圧倒する。

 

「皆さんご存知、ルモア・キルリア団長です。今一度、拍手を!」

 

パチパチパチパチ

 

「ハハッ。照れ臭いからやめてくれ。さて、皆にはこれからトリガー体験をしてもらう。それに当たって注意事項があるからよく聞いてくれ。まずきちんと順番を守ること、次に係員の言うことには従うこと、この二つだ。君たちはトリガーを使うのが楽しみでワクワクしているとおもうが、トリガーも使い方を間違えたら、周りの人を傷つけてしまう。わかったかな?」

「はーい」

「うんうん。いい返事だ。一度休憩してから、もう一度集まってくれ。では一度解散!」

 

ぞろぞろと散ってロビーへと行く子供らの中に、一人だけやたら澄ましている少年がいた。

(一応言っておくがレヴィアではない)

 

「珍しいな。レヴィア以外にもはしゃいでいない子供がいるとは。」

「悪口に聞こえるんだが。」

「しかし珍しいものだな。」

「誤魔化すなよ。まぁ確かにそうだな。」

 

かといって何をするわけでもなく時間を潰していた。

 

「そろそろ休憩を終了します。会場へ戻ってくださーい。」

「おっといけない」

 

子供らが騒ぎながらぞろぞろと戻っていく。

 

「やれやれ…」

 

レヴィアも面倒そうに戻っていく。

既にトリガーが三本机に用意されており、風船のようなものが会場内に浮いていた。

 

「では、今回はこの風船型ターゲットを相手に「鋼の鷲(アクィラ)」を使って貰います。持ち時間は一人一分間です。では、並んで順番にいきますよ。」

 

一番前に並んだ少年がトリガーを受け取り、起動する。

その目はとても輝いていて、眩しいものだった。

 

「よーし…」

 

少年が脚をぐっと踏ん張り、地面を蹴る。

 

「うわぁっ!?」

 

少年は明らかにオーバーアクションなまでに飛び上がった。

 

そう、トリガーを使用すると肉体は「トリオン体」に換装される。

トリオン体は視力などの身体能力は回復し、身体能力は大幅に強化される。

かといって、その体を自由に扱えるようになるためには訓練が必要だし、生身の「動く感覚」もトリオン体を扱う上で重要になる。

 

最初の少年はターゲットを一つも破壊できずに時間切れとなった。

その次の子も、そのまた次の子ももちろんそうだ。

 

後半になるとなんとなく掴んできたのか、ターゲットをなんとか追いかける者もいたが、ターゲットを破壊できたのは一人もいなかった。

 

「おっ」

 

次に挑戦するのは、さっきの妙な少年だ。

 

レヴィアはその少年を少し観察することにした。

 

「レヴィアのようにトリガー経験があるかもしれないな」

「うん。だからそれを見極めたい。」

 

少年がトリガーを起動した。

やや緊張しているような、強ばった表情をしている。

さっきまでのすました様子とは雰囲気がまるでちがう。

 

「トリガーを起動したら顔が強ばった」

「トリガー起動で緊張するということはやはり経験者ではないのか…」

「…いや、まだわかんないよ」

 

少年は今までの子と比べれば圧倒的に腕のあるように見えたが、惜しいところでなかなかターゲットに当たらない。

それどころかわざと当てていないようにも見えた。

 

そして列の最後、レヴィアの番である。

レヴィアは既に風船の行動パターンを把握していた。

 

トリオン兵は複雑ではあるがプログラムに沿って行動している。

この風船とて例外ではないようだ。

最適なパターンを導く解析のなかには、今目の前にいる相手のこれまでの動きさえ組み込まれる。

自分の行動も把握して相手の行動を読まなければならないのだ。

 

ビュゥン

 

レヴィアがトリガーを起動し、「鋼の鷲が (アクィラ)」をその手に構築する。

 

「さて…」

 

脚をぐっと踏ん張り、一気にターゲットを破壊していく。

 

トッ…

 

「ふぅ…」

 

周囲は唖然としている。

それも当然、いままでが噛ませ犬だったかの如き腕前だ。

 

「えーと…君…」

 

司会がおずおずと声をかける。

 

「はい?」

レヴィアは至って平静を装って返事をする。

 

「君は…何者だい?」

「何者…とは?」

 

とぼけた様子で答える。

 

「いや…君だけこんなに上手いから、何者なのかと…」

「何者と言われましても…」

 

その後ろで聞いていたルモアが何かに気づいたらしく、司会にこそっと何かを話した。

 

「っ!ごめん、なんでもないよ」

 

司会も察したらしく、それ以上に詮索はしなかった。

 

そして、一人の少年がやたら目立っただけで、騎士団模擬入団はお開きとなった。

 

他の子らがぞろぞろと帰るなか、レヴィアも帰路につく。

 

× × ×

 

「ただいま戻りました~」

「レヴィアたんお帰り~♪」

 

リビングには住人が思い思いにくつろいでいる。

そう、レヴィアが住んでいるのは騎兵隊の寮だ。

捕虜ではあるものの、重要戦力(になる予定)であるため、待遇はなかなかいいほうである。

今までにないようなクセの強い同居者に翻弄されることもしばしばあるが…

 

レヴィアとしては祖国にいた頃に並ぶほど、充実感を感じている。

 

× × ×

 

カチャカチャ

 

夕食の時間、基本的に料理をするのはサヨだ。

その腕は店を開けるほどである。

 

「ところでレヴィア、模擬入団はどうだったんだ?」

「どうと言われても…」

「どうせトリガー体験でやたら目立ってきたんだろ?」

「お察しの通りです。」

「(一同笑)」

 

こんな家族のような会話が交わされるのもまた、日常である。

 

「目立ちすぎると妬まれるぞ?」

「別に妬まれても手出したら出した側の負けだし。」

 

騎士団に入ってしまえば、騎士団内での争い事や揉め事には厳罰が下る。

なかには国外追放されたものもいるとか…

そのあたりはきっちりしている。

 

「さ、レヴィアも疲れただろ。早めに寝とけよ」

「はーいムグムグ」

「返事するのはいいが飲み込んでからにしろ」

 

× × ×

 

《二週間後》

 

今日は騎士団「本」入団式である。

今日から正式にレヴィアも騎士団の一員だ。




この日から、レヴィアのさらなる波瀾万丈の歩みが始まる。


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第3話 記憶

ザッザッザッザザザッ

 

「ふぅ、そろそろ残り半分くらいか?以外にみんなタフだな」

「どちらかというと、レヴィアがあまり出ていないから、実力のない者同士で終わりの遠いやり合いをしているのだろう。」

 

少し荒廃した街でレヴィアが壁に隠れている。

 

今行われているのは模擬戦闘訓練だ。

実際の街をトリガーで再現した空間内で完全サバイバル戦闘をし、戦場で生き残るための戦闘技術の向上と戦線離脱の技術を身につけるという訓練である。

 

実際の戦闘では、トリオン体が破壊されて戦線から退くということも十分あり得る。

そういった場合に生きて離脱するのもまた、兵としての心得だ。

 

ドドドドッ!

 

「おっと」

 

レヴィアが頭を下げる。

 

後方から銃撃されたようだ。

 

レヴィアが選んだのは白兵(ブレード)トリガー・「鋼の鷲(アクィラ)」である。

障害物の合間を縫っていかないと、射程持ちを攻略することはできない。

 

「厄介だな全く。」

 

タッタッタッ

 

レヴィアが細かく動き回って相手の照準を合わせないようにしながら、近づいていく。

 

「よっと」

 

鋭い動きで相手を仕留めた。

実は彼が今回の訓練でのレヴィアが最初に撃破した相手であったりする。

 

「たあっ!」

 

死角からブレードが襲いかかる。

 

「おっと」

 

レヴィアは鋼の鷲(アクィラ)でいなして後方へ下がった。

 

「よっしゃ見つけたぜ!お前を倒して目立ってやる!」

「できるもんならやってみなよ」

 

レヴィアが構え直す。

 

「おりゃあっ!」

(全く…無闇に突っ込むもんじゃないっての)

 

突っ込む相手の攻撃をかわし、真っ二つにする。

 

「なっ…!?」

 

ボシュッ

 

相手のトリオン体が破壊され、すぐさま逃げ出した。

 

「やれやれ…」

 

ドッ!!

 

安心したのもつかの間、目の前にあった建物の壁に穴が開いた。

 

「あっぶね!」

 

これにはさすがのレヴィアも驚く。

 

単発でここまでの破壊力となると狙撃トリガー・火の鮫(シゥーク)だろう。

 

「後ろの方か…」

 

レヴィアが障害物の合間を縫って狙撃手がいると思われる方へと走っていく。

 

バッ!

 

物陰からいきなり飛び出してくる者があった。

 

「おっとぉ?」

 

レヴィアが後ろに下がって体勢を立て直す。

 

「よっしゃ、かかったぞ」

「二人がかりならいけるぜ!」

 

どうやら待ち伏せだったらしい。

 

「へぇ…考えたじゃん」

 

二人が一斉に襲いかかるのをかわし、あえて攻め気を見せずに対応する。

 

「よっしゃ、いけるぞ!」

(あ~あ。んなわけないじゃん。)

 

ドッ!

 

(来たな)

 

レヴィアはおもむろに頭を動かす。

 

「?」

 

ドンッ!

 

後方からの狙撃を避けて二人まとめて撃破した。

 

「甘いなぁ」

 

そのまま次々と敵を撃破し、残りはレヴィア含めて四人、そしてレヴィア以外はお互いに対面している。

 

レヴィアは正直なところ面倒なので共倒れを待ちたいところだ。

 

こそっと建物の陰から覗くと、三人がお互いに牽制しあって睨みあっていた。

 

それもかれこれ十数分である。

 

「いつまでやってんのかね…」

「レヴィアを待っている可能性がある。そうだとすれば、彼らが共謀してレヴィアが乱戦と思って入ったところを囲んでくると思われる。」

「うっわめんどくさ」

 

レヴィアは重苦しいため息をつき、一瞬で三人を撃破して訓練を終わらせた。

 

× × ×

 

「あーやれやれ。」

 

レヴィアがロビーのソファでだらしなくくつろいでいる。

 

「レヴィア、疲れたか?」

「あーもう疲れた。めんどくさ~。とっとと上位騎兵隊員になりたーい。」

「入団から一年以上所属していないと上位騎兵隊員にはなれない。レヴィアとしては面倒だろう。」

「はぁ~…」

 

レヴィアは大きなため息をつき、ソファに横になった。

そこへ

 

「失礼、レヴィアさんでよろしいですか?」

「えあっ!?」

 

突然のことに変な声が出てしまった。

急いで座り直し、声の主を見た。

 

声の主は例の妙な少年であった。

 

「驚かせてすみません、少しお話よろしいですか?」

「はぁ…」

 

二人はロビーの端の方へと移動した。

 

「自己紹介がまだでしたね。僕はトルロ・ヤクーツォと言います。以後、よろしくお見知りおきを。」

「それで…話というのは?」

「いえ、模擬入団の時、僕のことを見ていませんでしたか?」

(気づかれてたのか…なかなか鋭いな…)

「見ていたよ。他の子とは様子が違ったからね。他の子とくらべて興奮してる風には見えなかった。」

「それはお互い様ですね。」

 

少年が初めて笑顔を見せた。

といってもほんの苦笑い程度であるが。

 

「模擬入団なんてしなくてもよかったんだよ。だから退屈だったのさ。」

「…レヴィアさんはトリガーを使ったことがあるのですか?」

「…あるよ。」

「なぜ?」

「…さぁね。話す必要はないよ。で?話っていうのはそれ?」

「…はい。」

「ふーん…じゃぁね」

 

嫌なことを思い出さされて気分が悪くなったレヴィアはそそくさと寮に戻っていった。

 

「いいのか?」

「別に。関わっても面倒なだけだ。」

「…彼はレヴィアに興味をもっているように見えた。」

「どうせやたら強いから気になってるだけだろ。他のと違って蹴落とそうとしないだけだ。」

「…そうだろうか…?」

 

些か荒々しい口調でイフと話しらがら、自室に戻った。

 

バタンッ!

 

ガタッ

 

レヴィアが自室の机の引き出しを開ける。

そこには綺麗な石が使われたペンダントがあった。

 

このペンダントはレヴィアが父・ラーバスから貰ったものである。

もとはレヴィアの母親がラーバスに贈ったもので、レヴィアにとっては唯一の家族の記憶である。

 

「父さん…母さん…」

 

レヴィアが手にペンダントを握りしめて、啜り泣く。

 

すでにどの国かもわからなくなってしまった祖国に戻ることはできない。

彼にとっては一人でペンダントと共にいるのが、一人で思いに更けることができる数少ない安らぎでもある。




彼の近くには、少しずつ運命が近づいている。
それはまさに災難。
そして、アポミミシ有史以来の国難も近づいている。


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第4話 上位

《早朝》

 

コンコン

 

「ん~?」

 

寝ぼけた顔でレヴィアが起き上がる。

 

「なに~?」

「レヴィア!早く起きろ!すげぇもんが届いてるぞ!」

「え?」

 

タッタッタッタッタッタッ

 

レヴィアが着替えながら忙しい階段を駆け降り、リビングに行く。

 

「すごいものって何?」

「これ!開けてみろ!多分マジですげぇぞ!」

「手紙…?」

 

レヴィアが差出人欄を見ると、差出人は「アポミミシ騎士団」と書かれていた。

 

「え…?」

「な?やべぇだろ!?」

「なんかやらかしたっけ…」

「ネガティブすぎるって!なんかいいことかもしれないから開けてみろよ」

「うん…」

 

ペリペリ…

カサカサッ

パラッ

 

 

騎士レヴィア殿

本日正午頃、騎兵隊本部事務室へ来たれよ。

子細は現地でお話ししよう。

アポミミシ騎士団

 

 

「え…?」

「どうするんだ?」

「…行くよ。気になるし。」

 

《午前11時頃》

「そろそろ行ったほうがええんやない?」

「うん。いってきます」

「いってらっしゃい」

 

× × ×

 

コンコン

ガチャッ

 

「失礼します。騎兵隊員レヴィアです。手紙の件で…」

「わかっている。とりあえず、座りたまえ。」

「失礼します。」

 

事務室には騎士団総指揮オーデム・アイロトと騎士団総長ルモア・キルリアがいた。

 

「今回君を呼んだのは、とても内密な話だからだ。」

「存じております。」

「単刀直入に言おう。君を、上位騎士に昇格させようと思う。」

「…はい?」

「うむ。そう思うのも無理もない。順を追って説明しよう。」

 

長い話なので要約すると、こういうことだった。

 

上位騎士にもレヴィアの腕前は知れ渡っており、「レヴィアを早急に戦力として取り立てるべき」という意見が多かったため、本人の意思を確認した上で上位騎士に昇格させたい。

そうなった場合、幼いながらこれまでに培われてきた経験を発揮させるため、研究室に以来することでトリガーの自由改造(カスタム)ができるようにする。

ということだった。

 

これは願ってもいない話ではある。

しかし、

 

「どのようにして口実をつけるのですか?」

「口実…とは?」

「先日入団したばかりの自分がいきなり上位騎士になれば、中位騎士や同期の者達から反感を買う可能性があります。」

「うむ…盲点だったな…何か案はあるか?」

(完全に忘れてたみたいだな…)

「いえ…特には…」

「ふぅむ…それは配慮が足りなかったな。こちらで検討しておこう。その前に、君の意思を確認したい。この話、乗ってくれるか?」

「はい。是非とも。」

「うむ。では口実についてはこちらで検討しておく。また後日、連絡しよう。」

「はい。失礼します。」

 

× × ×

 

騎士団本部から少し離れた辺りで、レヴィアはしゃがみこんだ。

 

「マジか…」

「どうした?レヴィア」

「いや、拍子抜けして…」

「口実…どのようにするつもりなのだろうか。」

「さぁ…とりあえず、寮に戻って報告しようか…」

 

× × ×

 

ガチャッ

 

「ただいま戻りました~」

「おっ!お帰り!なんだった?」

「えーと…」

 

レヴィアは事をまとめて話した。

言い終わっての第一声は

 

「「「はぁ!?」」」

 

当然だ。

こんなこと、普通はあるわけがない。

どれだけすごいかというと…

 

「わーっ!サヨが倒れたーっ!」

 

サヨが…頭が追い付かずに倒れた。

そのくらいすごいことだ。

 

「なるほどなぁ…捕虜のくせにずいぶんなご身分だなこのやろ!」

「えっ、あっ、いやっ、」

「やめときなって。さすがのレヴィアも困ってるから」

「ま、実力が認められたってのはいいことだろ。」

「うん…」

 

レヴィアが少し俯いて答える。

 

「…何か不満げ?」

「不満っていうより…なんか…わかんないです」

「そっか。わかったら言ってくれればいいさ。」

 

× × ×

 

《数日後》

 

「失礼します」

「うむ。よく来たな。例の件なのだが、まだ…」

「その件について、一つ案があります。」

「ほう?」

 

レヴィアが少し俯き、息を飲む。

そして再び顔を上げて

 

「捕虜であるとして、公表してください。」

「なんだと!?」

「僕も考えましたが、口実も思い付かず、自分を偽るようなことも、できる自信がありません。素直に公表すべきだと思いました。」

「たが、そうなれば君の立場が…」

「問題ありません。既にどの国の者かも自覚していない身です。例えどう言われようと、自分のために戦い抜く所存です。」

「…よかろう。」

「総指揮!?」

「彼の覚悟は本物だ。彼の目を見れば君にもわかるだろう?」

「ですが…」

「本当に、いいんだな?」

「後悔はしません。」

「よかろう。後日、昇格式を行う。それまでに云々」

 

× × ×

 

訓練所にて、任命の儀式が行われている。

 

「騎士レヴィア、そなたの固き意思、強き思いを称え、今ここに、上位騎士に任命する。」

「はっ!」

 

レヴィアが儀式用の剣を受け取り、訓練所は拍手で満たされた。




彼の運命が大きく動き出すのは、すぐ後である


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第5話 序章

「こちらレヴィア、現在異常なし。警戒を続行。」

 

今日はレヴィアの最初の防衛任務である。

他国家からの(ゲート)を制御して集約した区域・警戒区域を徘徊し、30分ごとに報告し、(ゲート)が開いたらすぐに対応しトリオン兵や敵兵を迎撃する。

また詰所があり、交代制で見回りをしてもし手に負えないと判断したらすぐに本部(詰所)に連絡して増援を要請するのも大切だ。

 

シンプルではあるが、常に戦線にいるという大変な仕事でもある。

 

「今のとこ特に何もないな」

「まだ油断はできない。受け持ち時間はまだ半分も過ぎていないぞ」

「大丈夫。わかってるっt」

 

そう言おうとした瞬間だった。

 

バチバチッバチッ

 

「っ!」

 

ゴゥン!

 

ついに(ゲート)が開いた。

これがレヴィアの正式な初陣となる。

 

「こちらレヴィア!(ゲート)出現を確認!トリオン兵モールモッド、バンダー、バド、数十体の出現を確認!(ゲート)及びトリオン兵は依然増加中!」

「本部了解!すぐに増援を送る!」

 

ビュゥン

 

レヴィアがその手に新武器・「城塞の砲槍(トルミントム)」を構築する。

これはレヴィアが一から作成を要請した遠近防御に隙のない、オールラウンドな一本だ。

 

形こそランスタイプの近接武器だが、そこには協力な砲撃機構が備わっており、強固な盾もある。

 

砲撃はあまり射程はないが、バムスターの装甲を一撃で破壊するほどの威力がある。

遠近両立とはいっても、正確には遠距離からの攻撃にも距離を詰められる、という利点があるからである。

 

砲撃の威力を推進力にして、盾を構えながら突撃すれば、余程のことがない限りは安全に距離を詰められる。

 

「とはいえ…どこから相手をすべきか…」

 

射程持ちがいるなかで前衛から相手するのは得策ではない。

かといって射程持ちを先に攻められるような前衛もいないだろう。

 

「先に武装のないバドか。」

 

レヴィアが槍を地面に突き刺す。

 

ドォン!

 

そのまま砲撃を推進力にしてバドへと突撃する。

 

「おらっ!」

 

ドォン!ドォン!

ザシュッ!ズバッ!

 

砲撃と斬撃を合わせながら次々とバドを撃墜していく。

 

ドッ!

 

「あっやべっ!」

 

ドンッ!

 

バンダーの砲撃を避けるため急いで砲撃で距離をとる。

 

ザザッ

 

「っと…なかなかうまい組み合わせだな…」

「レヴィアの注意不足もあると思われる。」

「わかってるよ」

「レヴィア!」

 

後ろから名を呼ばれ振り替えると、詰所に待機していた増援が到着していた。

 

「大丈夫か!?」

「大丈夫です!すみませんがバドとバンダーを抑えてもらえますか?」

「策があるんだな?」

「あります!」

「よし、総員、騎士レヴィアの援護のため、バド及びバンダーを抑える!」

「「「了解!」」」

 

ジュゥゥゥゥゥゥゥ

 

城塞の砲槍(トルミントム)の砲口から火が出る。

 

ガコン

プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

 

「赤熱充填完了!撃ちます!」

「総員退()がれ!」

 

ザザッ

 

バドやバンダーの相手をしていた騎士達が下がる。

 

「放熱砲!発射ァ!」

 

ドォン!

 

「うおあっ!?」

 

砲口から放熱というにはあまりに太い砲撃が放たれた。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

 

「やったか!?」

 

だんだんと煙が収まっていく。

 

「う…嘘だろ…!?」

 

煙が消えると、そこには一体のバムスターが残っていた。

 

表面を見る限り、放熱砲は直撃したはずだ。

放熱砲は自爆モードのイルガーを空中で処理できるように設計されているのだから、いくら他のトリオン兵に当たっていたとしても貫通してほとんどそのまま奥まで届くはずだ。

 

どうやらこのバムスター、相当…いや、桁外れに固いらしい。

 

バカッ

 

「バムスターの腹が…開いた…?」

トスットッ

 

バムスターの腹から十数体のラッドが現れた。

 

バチバチッバチッ…ゴゥン

 

「な…!?ラッドが(ゲート)を開いた!?」

 

ラッドが開いたと思われる(ゲート)からは、さらにバムスターとイルガーが出てきた。

 

「レヴィア!お前の大技、冷却がいるんだったよな!?」

「すみません!まさかあの量にさらに増援がくるとは思わず…」

「問題ない!それは俺もそう思っていたからな。総員、バムスター及びイルガーを破壊しろ!」

「「「「了解!」」」

 

騎士達が次々とバムスターとイルガーを倒していく。

 

幸い、やたら固いバムスターも「目」は弱点のままのようだ。

 

ボシュッ!

 

最後の一体が撃破された。

 

「よし、これで終わりみたいだな。」

「助かりました。」

「なに。もともと、そういうもんさ。」

「さ、戻るとするか。レヴィアも交代だろ?」

「はい」

 

一同、詰所へと戻っていく。

その途中、

 

「…!止まって下さい!」

 

レヴィアが突然に叫んだ。

 

「え?」

 

騎士達は足を止めずに振り返る。

 

ズガッ!

 

その時何が起こったのか…

地面から巨大なトリオン兵が現れ、騎士達を何人か飲み込んで(ゲート)へと消えていった…




騎士団の中でも指折りの騎士がさらわれた。
これはまだほんの序章に過ぎない。


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第6話 不穏

《アポミミシ騎士団本部 会議室》

「では、騎士数人がさらわれたと?」

「はい…申し訳ありません。」

「ふむ…その巨大なトリオン兵というのはどのようかものだったのか、聞かせてもらおうか。」

「それが…あまりに突然の事であった上、ほんの一瞬でしたので…」

「ふむぅ…」

 

先程の襲撃についての報告及び対策会議が行われている。

 

「…総指揮様」

「ん?どうしたレヴィア。」

「…イフを出してもよろしいでしょうか?」

「何故だ?」

「イフなら、ほんの一瞬でも先程のトリオン兵について記録しています。」

 

イフは普段はレヴィアの首に巻き付いており、常に会話や映像記録の保存などをしている。

イフが稼働できる限り、ほんの一瞬のことでも情報を収集でき、そこから様々な情報を読み取ることができる。

 

だが、イフの存在は一部の人間しか知らない。

もし公になれば、「研究解析すべき」という意見を持つ者も出かねない。

 

「ふぅむ…いいのか?」

「構いません。イフも承知の上です。」

「よろしい。承認しよう。」

「ありがとうございます。」

 

にゅ~…

 

レヴィアの首もとから白いものが伸びてくる。

その先でだんだんと膨らみ、車のおもちゃのようなフォルムに(レーダー)の付いたトリオン兵が現れた、

 

「イフ、頼んだ。」

「了。では、まず当時の様子をお見せしよう。『像』印(ビジョン)。」

 

ブゥン

 

イフが口を開け、そこに魔方陣のようなものが現れる。

そこから光が出て壁に映像を投影した。

 

「これがその瞬間だ。」

「速い…それに大きい…」

「この巨体でここまで素早く動くとは…」

 

騎士達が口々に驚きの言葉を発する。

 

「地中から…ということは地中に(ゲート)を出されたのか?」

「否。検査の結果、地中へ(ゲート)が開かれた形跡はなかった。恐らく、どこかのタイミングで、混乱に乗じて出現し地中に隠れたものと思われる。」

「となると…レヴィアが撃った時か?」

「解。その他に可能性の高いタイミングは存在しないので、そうだと見て間違いない。」

「そうか…」

 

騎士達が頭を抱える。

それもそのはず、また「あれ」が来ることがあれば、またかなりの損害が出ることになる。

なんとしても次は阻止しなければならない。

そして…

 

「そのトリオン兵の出所は判明したか?」

「否。出力計算から、現在アポミミシ周辺に存在する国家のものではないということは断定できる。だが、他の国家と共闘しているとなるとまだわからない。」

「そうか…」

「ではまず対策として、騎士レヴィアは常に警戒区域に留まり、件のトリオン兵が再び現れるのを待つ。また、これより後の防衛任務に就く者はできる限り上位騎士になるようにする。」

 

× × ×

 

《???の遠征挺内》

 

男二人が話している。

 

「どう言うことだ!トリガー使い5、6人程度しか捕らえられなかった!むしろロスの方が大きいではないか!」

「まぁ落ち着いてください。まだあのトリオン兵も…「フィシュ」も試運転段階です。いずれ、更なる成果を上げてご覧にいれましょう。」

「フン!」

 

プライドの高そうな男はドスドスと足音を立てて去っていった。

黒ローブの男がニヤリと笑うのにも気づかずに…

 

「フフフ…なかなか面白いガキだ…」




アポミミシを襲う不穏な影は、刻一刻と近づいている。


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第7話 安息

《於・レヴィア自室》

 

謎のトリオン兵によって騎士がさらわれてから数週間、それからは特に何もなかったためレヴィアは久しぶりの休暇(とかなりのボーナス)を貰った。

 

イフは情報収集などの目的もあり、防衛任務に従事している。

そして今、レヴィアは一人クローゼットの前で頭を抱えていた。

 

「うーん…」

 

あのレヴィアが今までにない程に苦悩している理由は、昨日の夕食後に遡るとこになる。

 

× × ×

 

《昨夜 夕飯の後片付け中》

 

今日の当番はレヴィアとサヨであった。

 

「レヴィアたん明日お休みなんやって?」

「え、あ、うん。そうだけど…」

「それやったらぁ…♪うちとデート行かへん?」

「え!?」

 

× × ×

 

というわけで、断る口実もなくサヨとデートすることになった。

 

レヴィアはずっと捕虜として生きてきたのでデートなんてもの経験がないし、イフもいないから助け船を求めることもできない。

 

(どうしたものか…)

 

レヴィアは基本的に事務仕事や任務ぐらいしかすることがなく、娯楽など殆どしてこなかったのでそういった時に着る服など持ち合わせていなかった。

 

「いっそサヨさんと一緒に買いに行くかなぁ…」

 

× × ×

 

《街の噴水広場》

 

「あ、遅れちゃった…?」

「大丈夫やよ~♪」

「よかった…」

「はぁ~…」

 

サヨが大きなため息をついた。

 

「あ…どうしたの…?」

「レヴィアたん…かわいい… 」

「ふぇ!?」

 

珍しくレヴィアが赤面する。

 

「はぁ~… かわいい… 」

「ど、どこが!?///」

「とにかくかわいいんよ… 」

「うぅ…」

 

言われ慣れない言葉にレヴィアが困惑する。

 

「今日はどうする~?」

「えっ、あっ、えっと、できたら…服を買いたいです…」

「そっかぁ~レヴィアたんあんまり遊んだりするための服もっとらへんもんなぁ…それじゃまずはお洋服屋さん行こか~」

 

× × ×

 

ここにきてまたしてもレヴィアは頭を抱える。

服選びなどしたことがない。

これまでの殆どの期間を捕虜として過ごしていたし、まだ普通の子供だった頃は親が選んでいたからだ。

 

「フフフ… お姉さんが選んだろか?」

「あ…うん」

(なんか嫌な予感が…)

 

《数分後》

 

シャッ

 

試着室のカーテンを開けて、レヴィアが出てきた。

その身を包むのは今までのレヴィアでは想像もできないような洋服であった。

 

「よぅ似合っとるわぁ♪」

 

ただでさえまだ幼い面立ちのレヴィアが、さらに可愛らしくなっている。

 

「ちょ、これ…。」

「あの子が着てるのまとめて。」

「かしこまりました。」

 

レヴィアの声を気にせず、サヨが会計を済ます。

 

「どしたん?」

「…なんでもない。」

「よしよし♪」

 

サヨがいきなりレヴィアの頭を撫でる。

 

「ちょっ!」

 

レヴィアは慌てて後ろに下がった。

 

「どしたん?」

 

レヴィアにとっては突然異性に頭を撫でられるなど、異常なことだ。

だがサヨはそれを意に介さずにきょとんとした顔でレヴィアを見ている。

 

「あ…」

 

サヨの目線がレヴィアの頭を越えてその先に向いた。

 

「ん?」

 

レヴィアが振り返るとそこにいたのはキイランであった。

キイランは男勝りでストイックに強さを求める武闘派女子である。

 

同じ寮に住んでいて、よく早朝から鍛練に勤しんでいる。

騎士になって直ぐの頃にサヨにボロ負けしたらしい。

当時から努力を欠かさない天才肌であったが、その敗北以降より一層精進するようになったそうだ。

 

「あれ…キイラン…だよね…?」

 

キイランではあるが、らしくない格好をしている。

普段からトリオン体の服装に似た服を着ているため、ほとんど機能性重視の練習着のようなものしか見たことがなかったが、今彼女が来ているのはよくあるフリフリの洋服である。

 

「キイランはん…珍しい格好やなぁ」

 

サヨも気づいたらしく、キイランに近づいていく。

キイランのほうはまだこちらに気づいていないらしい。

じっと洋服とにらめっこしている。

 

「キイランはん?」

「えおあっ!?」

 

キイランが驚いて手に持っていた服を放り投げて尻餅をついた。

 

(何もそこまで驚かなくても…)

 

「え、あ、えっと…」

「どうしたん?そんなやましいことないやん」

「あわわわ…」

 

完全にやましいことが見つかったような反応だ。

別に何もしてないとは思うが…

 

「ちょ、ちょっと来てーっ!」

 

キイランがレヴィアとサヨの手を引いて急いで路地裏に逃げ込んだ。

 

「えっ、ちょっと!?」

「今日見たものは誰にも話さないでね!?いい!?」

「え?」

「こんなことしてるなんて広まったら恥ずかしいじゃん!」

「別にええと思うけどなぁ…なぁ?レヴィア?」

「えぇっ!?」

 

突然話を振られてレヴィアも困惑する。

 

「うん…まぁ…いいとおもうけど…?」

「っ~!///」

 

キイランが赤面する。

こう言うのもあれだがまさにリンゴのようにだ。

 

「…そう…かな?」

「ええて~♪」

 

その後はキイランも含めて街を周り、のんびり話したりして一日を過ごした。




ほんの少しの時であったが、この安息が大切なものだと実感するのはまだ少し先の話となる。


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第8話 対策

《夕方》

 

「今日は楽しかったなぁ、レヴィアたん?」

「うん…」

 

ヴィー!ヴィー!

ヴィー!ヴィー!

 

けたたましい警報音がレヴィアのポケットから鳴り響く。

 

「!」

「どしたん?」

 

レヴィアがポケットから白い小粒の物体を取り出す。

これはイフの子機であり、イフと連絡ができたり、精度は多少落ちるが解析等の機能を使うことができる。

 

今回は緊急のためにと携帯していた。

 

「イフ!何があった!?」

「告。件の大型トリオン兵出現。防衛任務にあたっていた者は全滅した。」

 

イフが無機質な声で答えた。

 

「ウソ…だろ…!?」

「否。事実だ。」

「クソッ!イフ!すぐに『門』印(ゲート)を繋いでくれ!」

「了。『門』印(ゲート)。」

 

バチッバチバチッ…

 

レヴィアの子機から小さな(ゲート)が開いた。

これもまた、イフの機能で複製し搭載したものである。

 

× × ×

 

トッ

 

レヴィアが警戒区域に到着すると、そこには破壊されたトリオン兵が群れているだけであった。

 

「そんな…」

 

レヴィアが膝から崩れ落ちた。

 

「レヴィア、緊急会議が行われる。レヴィアも行かなければならない。」

「…わかった。」

 

× × ×

 

《騎士団本部 会議室》

 

ガチャッ

 

レヴィアが部屋に入ると、中にいた全員がレヴィアを見た。

 

「レヴィ…」

 

オーデム総指揮がなにか言おうとするのを遮るようにしてレヴィアは土下座し、

 

「申し訳ありません!」

 

大声で謝罪した。

 

「なっ…」

 

誰一人として困惑していない者はない。

レヴィアがここまでして謝罪する必要などないからだ。

 

「まるで狙ったかのような敵の行動…そしてこれだけの被害…この首を以てどうか…!」

「頭を上げなさい、騎士レヴィア。君が悪いのではない。こういったことを計算しなかった私のミスだ。」

 

オーデム総指揮がそう言うが…

 

「いえっ、今回は僕が休暇を拒否して任務にあたっていればさらわれる騎士を減らせたかもしれません!」

 

レヴィアが食い下がると、ルモア隊長が

 

「騎士レヴィア、君は気づいていないかもしれないが、君は働きすぎなのだよ。今回の休暇は、オーデム総指揮の命令だ。」

 

と明かした。

 

「休暇の命令…」

「今回、確かに君がいればなにか違ったかもしれないだろう。だが、それならばそれは私のミスだ。君がなんと言おうと、君を処罰することはできない。」

「ぐっ…」

 

あとから知ったことだが、これはレヴィアの様子を見かねた僚の同居者達が総指揮に頼み込んだものだったらしい。

 

「では改めて会議といこう。先程の件でさらわれた騎士は16人となった。イフ特別顧問、先程の襲撃時の記録を。」

 

イフは騎士団特別顧問という立場になり、これで研究解体は何があってもできないようになった。

総指揮の計らいである。

 

「了。『像』印(ビジョン)。」

 

ヴゥン

 

壁に映像が投影される。

 

「今回も、前回と同様に地中からの奇襲が行われた。しかし、私のレーダー記録を解析した結果、それらしきトリオン反応が現れた形跡はなかった。奇襲直前になってトリオン反応が現れた。」

「奇襲の直前だと!?」

「憶測に過ぎないが、現実味のある流れとしては地雷のように反応してから展開した、と考えるのが妥当だと思われる。」

「そうなると…」

「どこから持ってきたのか…が問題だな。」

「単純に考えれば他のトリオン兵が格納していたと見るべきだろうな。しかし、それをどのようにして仕掛けたのかがまたしても問題だ。」

 

騎士達が皆頭を抱えて悩むなか、レヴィアが打開策を見つけた。

 

「オーデム総指揮、自分に考えがあります。」

「聞かせてくれ。」

 

× × ×

 

「ふむ…確かにそれはあり得るかもしれん。だが、そうした場合、君の身に危険が及ぶことになるぞ。」

「イフの力があれば、大丈夫です。」

「…よし、今出た案を直ぐに取り入れる。今ここにいない何人かの上位騎士にも通達をし、これまで同様上位騎士のみで防衛に当たる。」

「「「了解」」」

 

× × ×

 

《翌日 正午過ぎ》

 

「では、作戦を開始する。」

 

イフが無機質な声で呼び掛ける。

 

「よし、どうにかして尻尾だけでも掴むぞ!」

「おう!」



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第9話 激突

バチッバチバチッ…ゴゥン!

 

「告。(ゲート)出現。トリオン兵モールモッド、バンダー多数確認。待機中騎士は迅速にトリオン兵を排除せよ。」

 

騎士達が次々と飛び出し、トリオン兵と戦闘を始める。

しかし、その中にレヴィアの姿はなかった。

 

次々とトリオン兵が撃破され、その増援がなくなってきたところでレヴィアが到着した。

 

「遅くなってすみません!」

「おいこら!もう終わるぞ!」

「すみません!」

 

そういいながらトリオン兵を次々と撃破していき、最後の一体も破壊し終えた。

 

「イフ!」

「了。『門』印(ゲート)。」

 

バチバチッ…ゴゥン!

 

「じゃ、任せたぞ」

「はい。」

 

レヴィア以外の騎士が(ゲート)に消えていく。

 

そう。これが作戦だ。

 

× × ×

 

「まず、今までの記録を見るに撤退時を的確に狙ってきています。つまり、行き帰りの道のりを見て、そこに待ち構えていると思われます。」

「ほう…」

「そして、そうそう終わりがけに件のトリオン兵を投入してるとは思えません。多少早めのはずですです。そして、僕がいないときに投入されたとなると、僕を警戒してると考えられます。」

「理屈ではあるな。」

「ならば、僕がいないと思わせてギリギリで僕が入れば、件のトリオン兵がいる状態で僕が対処できます。そして、イフの(ゲート)で他の方を先に撤退させることで、多少無茶にはなりますがやつを仕留めることができます。」

「…よしいいだろう。」

 

× × ×

 

「よし、戻るか。」

 

ズズッ

 

「告。巨大なトリオン反応を検知。」

「イフ!行くぞ!」

「了。」

 

ビュゥン

 

レヴィアの体にイフが融合する。

これがイフの能力を引き出す形態である。

 

ズゴッ!

地中からトリオン兵が現れた。

 

『弾』印(バウンド)!」

 

「弾」と書かれた印が現れ、レヴィアがそれを蹴って飛び退いた。

 

ザザッ

 

トリオン兵は逃げずにレヴィアに狙いを定めている。

 

「レヴィアを狙っているようだ。収穫なしでは帰らないらしい。」

「みたいだな。『強』印(ブースト)二重(ダブル)!」

 

レヴィアの背面に印が付く。

 

ギュンッ!

 

トリオン兵が真っ向から襲いかかる。

 

ダンッ!

 

レヴィアも真っ向から迎え撃たんとばかりに突っ込む。

 

ドゴッ!

 

レヴィアの拳がトリオン兵の頭にヒビを入れた。

 

『強』印(ブースト)はトリオンの働きを強める効果があり、他の印を強化したりトリオン体そのもののパワーを強化することもできる。

 

ズズンッ…

 

頭部にダメージを受けてトリオン兵が倒れ伏す。

 

「思ったより固くはないか。」

「捕獲目的の割には装甲が薄いようだ。だが油断はできないぞ。」

「バンダーみたいになんか武装があったりしそうだな。」

 

ズズッ

 

トリオン兵が起き上がる。

 

ガコンッ ガコンッ ガコンッ

 

トリオン兵が人に近いフォルムに変形した。

 

「おいおい…なんだよアレ…」

「捕獲型かつ戦闘可能…トリガー使いを捕獲対象としていると考えられる。」

「こりゃ厄介だ。」

 

レヴィアの目付きが真面目になる。

 

ドッ!ゴッ!

 

トリオン兵が突進し、レヴィアを殴り付ける。

 

「なっ!?」

 

ドッ!ザザッザザザッ

 

レヴィアが大きく後ろにぶっ飛ぶ。

 

「いつつ…なんだ今の腕力!?」

「過去に例がない程のパワーだ。救援を呼ぶべきだと思われる。」

「いや、多対一の連携はほとんど経験がない。下手したらむしろ捕まる可能性が高まる。」

 

トリオン兵が一つ目でレヴィアを見つめる。

それは勝利を導く策士ものか、獲物を狙う狩人のものか…

 

『強』印(ブースト)四重(クアドラ)!」

 

『強』印(ブースト)をさらに重ねがけしていく。

 

「正面突破だ。『弾』印(バウンド)

 

ドッ!

 

バギッ!!

 

トリオン兵が腕でガードするが、ヒビどころか貫通する。

しかし…

 

「うお!腕硬った!どんだけ腕大事なんだよ…」

 

『強』印(ブースト)三重(トリプル)もあれば、自爆モードのイルガーを粉砕できる。

それよりさらに強い四重(クアドラ)でやっと腕を破壊できるなど、並大抵の耐久ではない。

 

「こりゃほんとに厄介なことになってきたな…」



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第10話 サヨ

「こりゃほんとに厄介なことになってきたな…」

 

レヴィアが体勢を立て直す。

 

「さて…どうしたものか…」

「先程も行けたのだからこのまま強行突破でも問題はないと思うが?」

「いや、向こうも学習してるはずだ。どう来るか…」

 

ドッ!

 

「また突進か。あの巨体でよくやるもんだよ。」

 

ガッ!

 

レヴィアも真正面から受け止めて取っ組み合いになる。

 

「ぐっ!やっぱ腕力が並じゃない…」

 

レヴィアが徐々に押されていく。

 

ドゴッ!

 

「ごほっ!」

 

トリオン兵の拳がレヴィアの腹に炸裂し、そのまま大きく後ろに吹っ飛ばされた。

 

ドッ!

 

そこに追い討ちをかけるかの如くトリオン兵も突進する。

 

(不味い、逃げ切れねぇ!)

『射』印(ボルト)!」

 

ドドドッ!

 

トリオン兵に効いた様子はない。

 

(クソッ!)

 

ドドドドドドッ!

 

トリオン兵を何かが撃ち抜いた。

 

「っ!?」

 

レヴィアが後方を振り返ると、そこには両手に「嵐の虎(ディーグリス)」を携えたサヨが立っていた。

 

「レヴィアたん大丈夫!?」

「サ、サヨさん!?」

 

レヴィアもサヨが武器トリガーを使っているところは見たことがない。

レヴィアはその姿に呆気にとられている。

レヴィアだけでなく、サヨが武器トリガーを使っているところを見たことがある者はかなりすくないだろう。

 

しかしサヨはそんなことは意に介さない様子でレヴィアの顔を覗き込む。

 

「どうしたん?」

「あ、いや、なんでもないで。」

 

ズズ…

 

「「っ!」」

 

まだ破壊しきれていなかったらしく、トリオン兵が再び動き出した。

 

「くっ!」

 

チャキッ

 

サヨが冷徹な目付きで両手の「嵐の虎(ディーグリス)」をトリオン兵に突きつけたところまでは見えた。

 

「せめて、美しく散りなはれ。」

 

ドドドッ!

 

一体どうやってあの一瞬でここまで音が出る量の射撃をしたのか…見当もつかない

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

 

サヨが撃った後には蜂の巣になったトリオン兵が残っていた。

 

「え…」

 

あまりに突然のことでレヴィアも意識が追い付かなかった。

 

「さ、これ持って帰ろか♪」

 

今見たものは…いつもの不思議な女性(ひと)ではなく、まるで殺人鬼であった。

レヴィアはその目が頭から離れず、初めてある種の恐怖を覚えた。

 

× × ×

 

《アポミミシ騎士団 総指揮室》

 

「なるほど…よくやってくれた。では、そのトリオン兵の残骸を研究室へ持っていってやってくれ。すぐに解析させる。そうすればトリオン兵の出所も分かるだろう。」

 

カッカッカッカッ…

 

静かな廊下に、レヴィアとサヨが歩く足音だけが響く。

 

まださっきの「目」が頭から離れず、目を合わせることができない。

 

「レヴィアたんどうしたん?何か変やよ?」

 

サヨが心底心配そうにレヴィアの顔を覗き込む。

 

「えっ、あっ、何でもないよ…」

「そないないらん嘘はつかんでええの!正直に謂ってみなはれ?」

「…さっきの…目が…怖かった…」

 

半ば震え声で答えた。

 

「あっ…」

 

完全に「忘れてた」と言うような顔だ。

 

「かんにんな?よしよし」

 

サヨがレヴィアを胸元に抱き寄せて頭を撫でる。

 

「~っ!」

 

サヨは意識しているのかしてないのか、レヴィアには刺激が強すぎる。

レヴィアはあまりの出来事に赤面して気を失ってしまった。

 

「わーっ!」

 

サヨはとりあえずレヴィアを抱え、そのままトリオン兵の残骸を研究室に届けて寮に戻った。



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第11話 外敵

《アポミミシ騎士団 研究室》

 

件のトリオン兵の解析結果が出たとのことで、レヴィアがその資料を受け取りに来ている。

 

「失礼します。」

「おお。よく来てくれた。少し待っていてくれ。たった今資料を散らかしてしまってな。」

「お手伝いします。」

 

床に散乱した資料をレヴィアと研究員がまとめ直す。

 

そのなかに目を引く資料があった。

どうやら新型トリオン兵の設計資料のようだ。

 

「これは…?」

「トリオン兵を運搬して空中から投下するための新型トリオン兵だ。形状はイルガーをそのまま流用して、「(圧縮トリオン兵)」を積んでおき投下するといった流れだ。」

「なるほど…」

「コストは高くなるが、これを使えば、城壁越えといった地上進行の問題を解消できる。」

「なるほど…」

 

そんな会話をした後、資料を受け取って騎士団会議室へ向かった。

 

× × ×

 

《アポミミシ騎士団 会議室》

 

「わざわざ足労をかけてしまったな。では、頼む。」

「はい。イフ、資料を投影してくれ。」

「了。『像』印(ビジョン)。」

 

会議室に着くまでに読み込んでおいた資料を投影する。

 

「まず、このトリオン兵はかなり製造コストが高いことがわかりました。少なくともイルガー三体分はあると思われます。陸海空対応のの捕獲形態と、人型の戦闘形態があり、トリガー使いの捕獲を目的としていると思われます。捕獲能力は高いので、このトリオン兵を複数運用するのは些か賭けとはなりますが、リターンのあるものだと言えます。」

「なるほど…して、出所は?」

「現在接近している国家、王政国家・モナーチアのものである刻印がありました。」

「ではモナーチアのもので間違いないと?」

「断定するにはまだ早いかと思われます。モナーチアの技術でこのような高度なトリオン兵を製造できるとは思えません。」

「ほう…ではまだわからないと?」

「他国家が関与していると思われます。」

「厄介なものだな…」

 

しかし、このような高度なトリオン兵を作る技術力を持っている国家などそうそうない。

真っ先に思い浮かぶのは「トリガー使い捕獲用トリオン兵」を実戦運用したという神の国・アフトクラトルだが、アフトクラトルがわざわざモナーチアに手を貸してまでアポミミシを攻めようとする理由は見当たらない。

 

「仮に背後がアフトクラトルだとしたら、相当な損害が予測される。そうでないことを祈ろう。」

「もしかするとデータがないものである可能性もあります。」

「乱星国家か…」

 

生憎、モナーチアとアポミミシの軌道はかなり長い間接近するのでまだこれからも攻めてくる可能性はある。

まだレヴィアが戦線に立ち続けることになりそうだ。



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第12話 新生

件のトリオン兵を撃破してから数日、今のところ新たに送り込まれたものはないため、少しばかりゆったりとした時間が過ぎていた。

 

× × ×

 

《モナーチアの遠征艇》

 

「どういうことだ!フィシュが仕留められた!完全にマイナスではないか!」

 

そう叫ぶのはモナーチアの貴族モンシ・ガルカイである。

 

「まぁ落ち着いてください。フィシュを仕留めたあのガキ、計測では神に相応しい。あれを狙いましょう。戦力としてはフィシュを複数送り込めば潰せるでしょう。」

「なんとしてでも「神」を見つけなければならない。わかっているな?」

「もちろんでございます。」

 

× × ×

 

《アポミミシ騎士団 会議室》

 

今回は何人かの上位騎士が呼び出されていた。

なんの共通点も見えず、何の用かと思っていたら…

 

「君たちを呼んだのは他でもない。先日決議された件についてだ。」

「先日決議された件といいますと…」

 

先日、警戒区域の拡張という意見が出た。

そこで、今の警戒区域の二まわりほど小さな警戒区域を多数設け、そこにそれぞれの部隊を配置しよう、というものだった。

 

「君達には、警戒区域に設置される部隊の隊長になってもらいたい。」

「なるほど…」

 

殆どの騎士は多少驚いた様子だが、一人だけ明らかに様子が違っていた。

レヴィアである。

 

「オーデム総指揮、お言葉ですが自分はまだ若輩者等という言葉では足りぬ者です。自分にそのような大役が勤まるとは…」

「それは違う。君でなければできないのだ。」

「自分でなければ…?」

「君の受け持つ隊はなかなか曲者揃いなのだ。他の者にそれをまとめ上げることはできない。」

 

自分でなければまとめられない、そのようなことがあるのかと頭を悩ます。

 

「恐縮ですが…自分が受け持つ部隊の部隊員をお教えいただけますか?」

「よかろう。サヨ・トロギア、キイラン・フニマリュス、エリミス・ニルギオ、ラクサ・キバサダの四人だ。」

 

確かに曲者揃いだ。

はっきり言って彼女らをまとめられるような腕利きなど、そんじょそこらにはいないだろう。

 

「察したと思うが、彼女らはかなりクセが強い。他の部隊に分散させるわけにもいかず、まとめたはいいが君以外に隊長として適任なものはいないのだ。どうか、頼む。」

「…わかりました。謹んで拝命いたします。」

 

× × ×

 

《第三警戒区域 基地》

 

「…というわけでこの隊の隊長になってしまいました。」

「この子がサヨはんとこの?」

「そうです。」

「えらいかわええ子やなぁ♪」

「えっ…」

 

白いドレスに身を包み大きな防止を被った貴婦人(?)がエリミス・ニルギオである。

サヨと同じくセルヴァル族の出身で、サヨの師匠であり、つかみ所がないようなところなどもよくにている。

 

火兵戦特化トリガー・「戦火の女神(ベイルム・デア)」を操るアポミミシ随一の射撃戦のスペシャリストである。

 

「よしよし♪」

 

エリミスがレヴィアの頭を撫でる。

 

「あぅ…」

 

相変わらずこういったことに弱いので、どうすることもできずに狼狽える。

 

「レヴィアたんお気にになってまったなぁ♪」

「相変わらずですね…」

 

そう飽きれ気味に言うのはラクサ・キバサダ。

彼女はキイランの師匠で、同じ武闘派騎士である。

戦闘になるとかなり暑苦しくなり、煩くなるらしい。

戦闘以外では結構隙だらけとかなんとか…

その性格は父親譲りだとか。

 

「レヴィア、隊長としての任務も忘れないように。」

 

なかなかにKYなタイミングにイフが忠告する。

 

「うん。大丈夫だよ。」

 

隊長の任務は、襲撃があった際のトリオン兵の種類などを記録した報告書の作成・提出、隊員の体調管理、会議などへの主席などがある。

 

これから、忙しくなりそうだ。



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第13話 火砲

(ゲート)発生!(ゲート)発生!>

 

警報アナウンスが鳴り響いた。

 

「おっ、(ゲート)。」

「どうやらここが最初の襲撃になるようだな。これでこの体制の優劣が見えるだろう。」

「そうやなぁ。」

「そもそもなんでうちだけ人数が少ないんだろう?」

「確かに。他のところは20人程度だと聞きますし…」

「そんだけ信頼されてるちゅうことやろなぁ」

「さーて、出撃だ!」

「「「「「了解!」」」」」

 

× × ×

 

「モールモッドとバンダーが数体か…」

「また『アレ』ではないみたいだね。」

「また『アレ』をやるにしては少ないしなぁ。」

 

キィ…パッ!

 

バンダーがレヴィア達めがけて砲撃をする。

 

「トリガー起動(オン)!」

 

ドッ!

 

レヴィアがとっさにトリガーを起動し、「城塞の砲槍(トルミントム)」の盾でガードする。

 

「!?」

 

レヴィアが妙な顔つきになる。

 

「どうしたん?」

「今の砲撃…いつもより威力が上がってた…」

 

レヴィアは既に歴戦とも言うべき量の経験を積んでおり、微かな反動の変化さえ感じ取っていた。

 

「威力が…?」

「となると…」

「前来てた国家とは違う国家が攻めてきている…?」

 

パッ!

 

そんなこと考える余裕もなく、バンダーが再び砲撃を行う。

 

「あっやばっ」

 

五人ともバラバラに避ける。

 

「はぁ~…面倒やなぁ。うちやらんでもええんとちゃう?」

 

エリミスがそう呟く。

 

「お望みでしたら私一人でも済ませますが?」

 

ラクサもそう答えた。

 

「いややわぁ冗談やんけ。ほんま真面目やなぁ」

 

エリミスがトリガーを起動する。

 

「『戦火の女神(ベイルム・デア)』ぁ 」

 

シュゥン

 

見た目は何の変化もない。

だが、その威力は桁外れだ。

 

散華(ざんげ)無限彈狂騒曲(エンドレスラプソディ)

 

エリミスの周囲に大量の銃が現れた。

 

「せめて、美しく散りなはれ。」

 

ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!

 

かなりオーバーキル気味に、弾幕がトリオン兵の群れを一掃した。

 

「これが…『戦火の女神(ベイルム・デア)』の威力…話には聞いていたけど…本当に凄まじい…」

 

アポミミシの中でも指折りの火力に、あっけにとられた。

これは敵には回したくないものだ。

彼女が女性騎士最強と言われるのも納得である。

 

なぜ彼女ほどの人物が(ブラック)トリガーに適合しないのか…

いやはや、(ブラック)トリガーというのは妙なものだ。

 

「レヴィア、他の区域もほぼ同時に襲撃されたようだ。それについての会議があると通達があった。」

「わかった。ちょっと行ってくる。」



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番外編1 サヨとエリミス

《アポミミシ騎士団名物 騎士団御前試合》

 

「騎士団御前試合女子の部、次の試合は期待の新星と現クイーンの対決です!」

 

舞台に向けて橋が架かり、エリミスが入場する。

 

「その弾幕、正に雨あられ!どっかにええ男はおらへんやろか~?現クイーン!エリミスゥゥゥ・ニィルギオォォォーッ!」

「ほな、やっていこかぁ?」

「対しますはぁ~!」

 

司会が反対側を示す。

 

舞台に向けて橋が架かり、サヨ・トロギアが入場する。

 

「怒涛の連射!ホッピンジャンピン!ラピッドファイア!期待の新星!サヨォォォ・トロギアァァァーッ!」

「よろしゅうおたのもうしますなぁ」

 

 

これは、深き傷を負った女王と、偽りを被る少女の出会いの物語である

 

 

「では、御前試合女子の部第五試合、開始です!」

「『戦火の女神(ベイルム・デア)』ぁ 」

「トリガー起動」

 

双方トリガーを起動し、構える。

が…

 

「…!?」

 

サヨの目が見開く。

 

「どしたん?どこからでもかかってきてええんよ?」

「そないな無防備で…」

「あんたはすきなようにすりゃええんよ?あんたがどう足掻いても、うちには傷ひとつ付けれへんからなぁ?」

「いくらなんでもトリオン体すらないなんて…」

「こぉへんのならこっちからいくで?」

 

エリミスの後ろに大量のミサイルランチャーが出現する。

 

無明(むみょう)真聖円舞曲(インヴィジブルインフォニー) 」

 

パシュシュシュシュッ!!

 

「っ!」

 

ダッ!タッタッタッタッタッ!

 

サヨが競技場内を走り回る。

 

「防御を…トリオン体に換装しとぉくれやす!」

「そないなこと気にせんと攻めて来ぃゆうとるやろ?」

「生身じゃ…あんたを傷つけてまう!!」

 

会場にざわめきが走る。

 

「なんという暴挙!期待の新星とはいえルーキーがクイーンに対して勝利宣言か!?」

 

観客席からブーイングの嵐が巻き起こる。

 

「安心しぃや。あんたが何しようと、うちには傷ひとつ付けれぇせんよ。『廻向(えこう)破壊夜想曲(デストラクションノクターン)』」

 

巨大ミサイルがサヨ目掛けて飛ぶ。

 

「っ!」

 

ドドドドッ!

 

サヨが堪らずミサイルへ射撃する。

 

「そうそう人やないんなからそうやっとればええんやて。」

 

ビュッ

 

ミサイルが2つに別れる。

 

「なっ!?」

「はい、おしまい♪」

 

ドォンッ!

 

ミサイル二発がサヨに直撃した。

 

「こ、これは流石に耐えられないかっ!?」

 

シュゥゥゥゥゥ…

 

土煙の中から、かなりダメージを受けたサヨが出てくる。

 

「くっ…」

「耐えている!『戦火の女神(ベイルム・デア)』最高クラスの火力に。耐えている!」

 

サヨが伝達系へのダメージで不安定なまま立ち上がる。

 

「なんでそないになってまで戦うん?あんた元々は機関員志望だったんやろ?そのままでおればこないなことにならんかったんに。」

「うちが戦うんは、ただ…弱い自分に嫌気がさしたさかいな。」

「ふぅん…こないなつもりやなかったんやけどなぁ…ハンデつけて勝って「どやウチすごいやろ?」ってなる予定やったのになぁ。」

 

ビュゥン

 

エリミスがトリオン体になる。

 

「どう?これで本気で戦える?」

「有難うございます!」

接続機(コネクター)ON>

 

サヨの銃が連結する。

 

「なんだあれ!?」

 

再び会場内にざわめきが走る。

 

「!」

(あれは試作段階のトリガー…一部の騎士だけに試験導入してる()うてはったけど…あの娘が…)

 

 

「トリガー接続機(コネクター)

当時試験的に一部の騎士が被験者として使用していたトリガーである。

トリガーを連結することでその火力を格段に上昇させられるというものだ。

現在は廃止され、サヨのみが使い続けている。

 

 

キィィィ…

 

サヨのトリガーにトリオンが集中する。

 

「ふふふっ 」

(ええわぁ さっきまでより…)

 

ビュゥン

 

エリミスの手元に巨大ビームランチャーが現れる。

 

(ずぅっとゾクゾクする )

「ほな、いくでぇ!!」

「はい!」

「『久遠(くおん)無影交響曲(インヴィジブルシンフォニー)』ぃ 」

 

ドッ!!!!!!!

 

双方の砲撃が正面からぶつかり大爆発を起こす。

 

「りょ、両雄激突ゥゥゥゥゥゥ!!!!!!こ、これは相討ちかっ!?」

 

シュゥゥゥゥゥ…

 

「エリミス様は無事!では…サヨ様は…!?」

 

ザリッ…

 

「ぐっ…」

 

フラッ

 

サヨが倒れかける。

 

「あーっと!?これはまさか!?」

 

パシッ

 

「っ!」

 

エリミスがサヨの手を掴む。

 

「な?()うた通りやろ?」

「…ごめんなさい散々失礼なことを」

「あほ!こちとらあんたの(ピー)から生きてんねや。そう簡単に追い抜かれてたまるかいな。それに見てみぃ。」

 

エリミスが帽子を指差す。

 

「トリオン体ごと持ってかれてまったでお気にの帽子が台無しやわぁ(泣)。生身やったら公衆の面前で身ぐるみ剥がれとったかもしれへんなぁ。」

「…っ!」

「ふふふっ 気ぃめた。あんたは今日から、うちが稽古つけたるよ。」

「えっ…?」

「あんたはまだ、強ぅなれるよ。」



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第二章 BRAVE~勇気~
第14話 準備


《アポミミシ騎士団 会議室》

 

「先程、全警戒区域に同時に襲撃があった。総数を見れば、宣戦布告とみることもできる。」

「では、大規模な侵攻も近いと?」

「可能性は高いとみている。」

 

どうやら、個々の区域毎に見れば少なかったものの、その総数はかなりのものだったらしい。

 

「そこで、侵攻に備えて、この場でできる限りの対策をしたい。何か案があればどんどん出してくれ。」

「すぐにできると言えば万が一に備えて城壁の強化ですね。」

 

アポミミシの街は城壁に囲まれており、その更に外側に警戒区域がある。

市民を守るためにも、城壁の耐久度を上げておくのは備えとして十分である。

 

「オーデム総指揮。」

「どうした、騎士レヴィア。」

「騎士を安定して撤退させるために、玄界(ミデン)の技術を取り込むというのはいかがでしょう。」

玄界(ミデン)のと…?」

 

玄界(ミデン)には、トリガー使いの生身を保護するための脱出機能がある。

それを取り入れれないかと考えたのだ。

 

「なるほど…確かにガロプラがそういったシステムを組み込んでいるとの情報はある。しかし脱出トリガーの数が足りるかどうか…だな。」

「上位騎士、(ブラック)トリガー使い中心に導入し、できる限り上位の戦力から守っていくことができれば、それだけでも十分意味があります。」

「よし、騎士レヴィアは研究室へ向かい、研究員とその件について検討してくれ。」

「了解!」

 

× × ×

 

《アポミミシ騎士団 研究室》

 

「なるほど、玄界(ミデン)の脱出機能を…」

「できるでしょうか…」

「トリオン体が破壊された瞬間に作動して、小型の(ゲート)を使ってどこかに転送する機能にすれはできるかもしれないね。」

「本当ですか!?」

 

レヴィアが歓喜の表情で尋ねる。

 

「あぁ。だが、間に合うかどうかはまだわからない。実験を手伝ってくれる騎士が何人か必要だし、作成のために費用を出してもらわないといけない。あまりにコストが高いと(ブラック)トリガー限定に装備されることになる。」

「そうなった場合は、イフがいます。」

「あの自律トリオン兵か!」

「イフには小型ながら、(ゲート)を作る機能があります。足りない分の騎士の撤退はイフが受け持ちます。」

「なるほど、ではその旨をオーデム総指揮に伝えてきてくれ。」

 

× × ×

 

《再び会議室》

 

「~とのことです。」

「費用については最大限工面しよう。しかしなるほど、イフ特別顧問の機能か…」

「ただ、イフの処理能力にも限界はあります。なので出来る限り、脱出トリガーを用意できればと。」

「よし、では騎士幾人かの交代制で、脱出トリガーの開発実験にあたるようにする。」

 

× × ×

 

《数週間後 アポミミシ騎士団 会議室》

 

上位騎士や(ブラック)トリガー使いが集まっている。

 

「昨日、緊急用脱出トリガーが完成した。これより配布する。」

 

緊急用脱出トリガーが騎士達の手元に渡る。

 

「騎士レヴィア、説明を。」

「はい。イフ。」

「了。『像』印(ビジョン)。」

 

映像が投影される。

 

「こちらのトリガーは、騎士の生身を保護するための脱出トリガーです。玄界(ミデン)のトリガーから着想を得たものになっています。トリオン体の破壊を検知すると作動するようになっており、小型の(ゲート)が開いて最寄りの基地に転送されます。」

「ふむ。若い者の考えることは奇抜ですなぁ。」

 

そう笑うのは現役最年長騎士、ミルナ・イロオイ氏。

彼は並外れた等という言葉では表せないような剣の使い手で、その実力者から「剣鬼」とも呼ばれている。

因みに若い頃はあだ名が「やんちゃ小僧」だったとか。

(ブラック)トリガー史上最もシンプルな(ブラック)トリガー」と言われる「光の刃(ルークス)」を操る根っからの剣豪である。

 

「これで(ブラック)トリガーを遠征に投入することもできるということかな?レヴィア殿。」

「現在検討中ではあります。国越えとなると負担が大きいかと思われます。」

「ふむ。そうですか。しかし、これで心置きなく攻め込めるというもの。次の侵攻、損害など無いも同然の成果を上げましょうぞ。」

 

ミルナ翁が嬉々とした様子でそう言った。

その表情に会議室の全員が恐れ(おのの)いたのは言うまでもないだろう。



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第15話 開戦

レヴィアの住む模倣国家 アポミミシに、大規模な侵攻の影があった
レヴィアは様々な策を巡らせ、国家は臨戦態勢を整えていた。


《第三警戒区域 基地 ダイニング》

 

「レヴィアたんあ~ん♪」

「むぐっ…」

 

抵抗できないレヴィアをいいようにエリミスとサヨが手懐けている。

キイランとラクサは我関せず。

(ここでは)いたって普通なランチタイムの様子だ。

 

それを壊したのが、空に開いた漆黒の穴である。

 

バチッバチバチッ…

 

(ゲート)発生。大規模な(ゲート)の発生を確認。」

「うっそ!」

「大規模な侵攻か…よし、行くよ!」

「「「「「了解!」」」」」

 

五人がすぐさま準備をし、出撃する。

 

「イフ!脱出トリガーの配布状況は!?」

「今朝、全騎士の手元に渡った。問題ない。」

「おっけー!」

 

ザザッ

 

「うわぁすごい量だよ。」

「モールモッド、バンダー、バムスター、バド…ざっと百体はいるよ」

「えらい本気みたいやねぇ」

 

トリオン兵達が動いて陣形を作る。

いたって普通の、バムスターを守ってバンダー、モールモッド、バドが取り囲む陣形だ。

 

「僕、キイラン、サヨ、ラクサさんでモールモッド、エリミスさんがバンダーを。」

「「「「了解」」」」

 

レヴィア達が前に進む後ろで、エリミスが巨大ミサイルランチャーを作り出す。

 

「『無明(むみょう)真聖円舞曲(インヴィジブルインフォニー)』」

 

パシュッ!

 

大量のミサイルがバンダー目掛けて飛んでいく。

 

ドドドドッ!

 

バンダーが一瞬にして全滅し、他にも何体かが破壊された。

 

(相変わらずすごい威力…)

 

次々と順調にトリオン兵を撃破していく。

 

「腑に落ちないな。」

「順調すぎる。絶対に何か企んでるよ。」

「本部より通達、本部より通達、戦況として劣勢となっている。第三基地所属隊員から二名、市街の避難誘導に充ててくれ!」

「レヴィア、了解。っと誰が行くべきか…」

「エリミスさんが抜けたら火兵戦で押し負けそうだし…」

「じゃぁキイランとラクサさん、お願い。」

「了解!」

 

二人が直ぐに市街へ向かう。

 

「本部より通達、本部より通達、他基地が数に押されている!基地所属騎士全員で行動し、警戒区域毎の各個撃破に切り替える!」

「レヴィア、了か…」

「どうした、レヴィア?」

「イルガー!?レヴィアから本部へ、レヴィアから本部へ、イルガー三体を確認!市街地へ侵攻しています!」

「本部了解、トリオン障壁を展開する。」

 

市街地の上にドーム状のトリオン障壁が展開する。

 

「トリオン兵の量、爆撃型、そして捕獲型…っ!」

「どうしたん?」

「こちらレヴィア!総指揮、すぐに(ゲート)誘導を市街地外一定区域にまとめてください!」

「何!?どういうことだ?」

「敵の狙いは…騎士です!」

「なんだと!?」

「こちらが分散していることをわかっていてあえてさらに手薄なところを作っているんです!おそらく、どこかに件の…」

「こちら第二警戒区域!件の捕獲型が出現!応戦している!」

「第四警戒区域もだ!」

「同じく第一警戒区域にも捕獲型を確認!」

 

第三警戒区域以外すべてに、件の捕獲型が現れた。

 

「まずい…!イフ!ここの(ゲート)誘導装置を完全閉鎖に切り替えろ!他の区域にもそう通達するんだ!どこかに集めてから相手をする!今の分散状態で相手してたら勝算は低い!」

「了。(ゲート)誘導を完全遮断する。」

「あと三ヶ所、三人で分散してサポートし、片付き次第誘導を停止して旧警戒区域に門(ゲート)を誘導する。」

「「了解」」

 

× × ×

 

《第二警戒区域》

 

「騎士レヴィア!よく来てくれた!」

「一度それぞれの警戒区域を片付けてから旧警戒区域にまとめます。件の捕獲型は僕が相手をします!」

「よし、騎士レヴィアをサポートする!何があっても他のトリオン兵を近づけるな!」

「「「了解!」」」

 

他の騎士達がトリオン兵を抑え、レヴィアが捕獲型目掛けて走る。

 

「ブラストダッシュ!」

 

砲撃を推進力として突進する。

 

ブンッ!

 

「危なっ!」

 

トリオン兵が打ち落とそうと手を振り下ろし、レヴィアは盾で防ぐ。

しかし、

 

バギッ!

 

盾にヒビが入った。

 

「嘘だろっ?」

「既にここまで戦ったなかで耐久は消耗していた。だがそれにしてもおかしい。」

「確実にパワーアップしてる…」

「サヨ、エリミスさん!捕獲型が明らかにパワーアップしてる!気をつけて!」

「サヨ、了解~」

「エリミス、了解(りょ~かい)。」

(さて…ここからどうする…?)



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第16話 戦線

《第二警戒区域》

 

「さて…どうするか…」

「以前通りにはいかないだろう。かといって、それ以上の策も存在しない。」

「随分はっきり言ってくれるね。」

 

レヴィアとトリオン兵の間には、未だにらみ合いが続いている。

 

《モナーチア遠征艇》

 

「…見つけましたよ。『神』の候補です。頃合いを見て、人員を投入しましょう。」

「あれを連れ帰れば私の天下だ…ハッハッハッハッハ!」

(さて…お手並み拝見といこうか、少年。)

 

《再び第二警戒区域》

 

「イフ、いくぞ」

「了。」

 

ビュゥン

 

再びイフの能力を展開する。

 

「とはいえ、闇雲に使うわけにもいけないしな…どうしたものか…」

 

ドッ!

 

痺れを切らしたか、トリオン兵が突進する。

 

「うおっ!」

 

レヴィアも直に受けた。

 

「やべっ、『強』印(ブースト)二重(ダブル)!」

 

押されそうになり慌てて『強』印(ブースト)を展開する。

 

「まずい…油断したら簡単に押し負けるぞ。」

 

ブンッ!

 

トリオン兵が腕を振り下ろす。

 

ドゴッ!

 

「ぐっ!」

 

トリオン兵がレヴィアを鷲掴みにし、腹部から回収しようとする。

 

(まずい!)

 

ドン!ドン!

 

側面からトリオン兵が銃撃される。

 

「っ!」

「騎士レヴィア!大丈夫か!?」

「有難うございます!」

 

タッ

 

レヴィアが後方へ下がり体勢を立て直す。

 

「ここは一気に決めるぞ!『強』印(ブースト)七重(セプタ)『弾』印(バウンド)!」

 

ドッ!

 

レヴィアが『弾』印(バウンド)で一気に突っ込む

 

トリオン兵が腕でガードする。

 

バギギッ!!!

 

が、胴体もまとめて貫通されて大破した。

 

「ここのは片付いた。旧警戒区域に移動します!そこで改めて応戦します!」

「了解した。」

(あとは…ほかの区域だな…)

 

× × ×

 

《第一警戒区域》

 

「レヴィアたんに任されたんやし、下手なことはできへんなぁ…けど、あの硬いのを弾丸(タマ)で削るんもキツいしなぁ…」

 

サヨが間合いをとりながら睨みあっている。

 

「目を撃ち抜ければええんけど角度がキツいしなぁ。」

 

接続機(コネクター)ON>

 

「ここは、突貫工事やな。」

 

キィィィィィィ…

 

トリガーの銃口にトリオンが集中する。

 

ガパッ

 

トリオン兵が「口」を広げる。

 

ドパッ!

 

双方の銃撃がぶつかり、双方が巻き込まれる。

 

ドォンッ!

 

「くっ!なんやあの威力!」

 

サヨはかろうじて「水面の壁(ウォゥル)」でガードした。

トリオン兵は…

 

ザリ

 

ほとんど無傷であった。

 

「相当な耐久力やな…レヴィアたんのメンタルもこのくらい強いとええんやけどなぁ。とはいえ、耐えられるんやったら無駄撃ちはできんし…」

 

《旧警戒区域》

 

「レヴィア、子機から連絡があった。サヨが苦戦しているようだ。トリガーを連結させた上で防がれたようだ。やはり弾丸では装甲を破るのには無理があるらしい。」

「どうする…救援に行くべきか…でもその間にこっちに来たら…」

 

レヴィアが悩む。

 

「レヴィア、トリオン兵を動員すれば、レヴィアが戻るまでなら耐えられるぞ。」

「!」

(そうか!イフならトリオン兵を指揮して…)

「わかった。オーデム総指揮!トリオン兵指揮権限をイフに与えてください。新型撃破のためにここを離れることになります!」

「よし、わかった。そちらにトリオン兵を送ろう。」

 

バチッバチバチッ

 

(ゲート)が開き、バンダーとモールモッドが数体出てくる。

 

「イフ、任せたぞ。って言っても子機の方だけど。」

「急ごう。『門』印(ゲート)。」

 

《第一警戒区域》

 

ザッ

 

「レヴィアたん!?」

「サヨ、弾丸では攻めきれない。我々で隙をつくる。そこに確実に撃ち込め。」

了解(りょ~かい)♪」

「イフ、いくぞ。」

「了。」

 

ビュゥン

 

『強』印(ブースト)二重(ダブル)!」

 

ドッ!

 

トリオン兵の頭にレヴィアの拳が炸裂する。

サヨによって受けたヒビが更に深く割れる。

 

ドズン!

 

トリオン兵がバランスを崩し倒れ込む。

 

「今だ!」

了解(りょ~かい)

 

キィィィィィィ

ドッ!

 

ドォンッ!

 

トリオン兵の頭が消し飛び、活動を停止した。

 

「よし、ここの人たちも連れて戻るぞ!」

(あとは…エリミスさんが…)

「イフ、悪い知らせだ。」

「!?」

「エリミスのいる第四警戒区域に、トリガー使いが現れた。」

「何だって!?」



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第17話 陰謀

《第四警戒区域》

 

「くっ…」

「威勢がよかったのははじめだけのようだなぁ!」

 

エリミスとトリガー使いが戦っている。

エリミスは既に片腕を失っている。

 

「あのガキのついでにお前も引っ捕らえて奴隷にでもしてくれようか。」

「勝手に言っとり!」

「口だけは達者なようだなぁ?だが…」

 

バチッバチバチッ…ゴゥン!

 

「な!?」

 

(ゲート)が開き、新型三体が出てくる。

 

「さぁ!こいつを引っ捕らえてあのガキも捕らえろ!国の贄としてなぁ!」

「贄やて!?」

「ああそうだ!この侵攻は神を見つけるための侵攻だ!さっさとそいつを引っ捕らえろ!」

 

キィィィィィィ

 

トリオン兵が砲撃の体勢に入る。

 

ドパッ!

 

「くっ!」

 

エリミスがシールドを展開する。

 

『盾』印(シールド)二重(ダブル)。」

 

…より早くレヴィアとサヨが到着する。

 

「なるほど。神の獲得か…この規模にも合点がいくな。」

「結構なこった…神の候補だってガキは誰だか。」

「明らかにレヴィアだな。他に思い当たる者がいない。」

「なるほど。じゃぁ…」

 

レヴィアが一歩前に出る。

 

「僕が大人しくついてけばみんなは見逃してくれる?」

「レヴィアたん!?」

「それはできねぇな。せめて、奪還しに来ない程度にはダメージを与えとかなきゃなんねぇしな。まぁ、せっかくだし隊長に進言してやろうか?」

「…いらないよ。」

 

レヴィアが普段のトリガーに換装し直す。

 

「きっちり手ぶらで帰ってもらうから。」

「この国はなかなか生意気なのばっかだな、オイ。」

「イフ、皆を連れて旧警戒区域に逃げろ。」

「ならば子機をこちらに残しておこう。」

「…助かる。」

 

ニュー…ポコン

 

イフが子機分裂する。

 

『門』印(ゲート)。」

 

ゴゥン!

 

イフ達が(ゲート)で離脱する。

 

「さて…始めようか。」

「カッ!生意気なガキだ。痛い目見ないとわかんねぇみたいだな。」

「お兄さんの名前は?」

「そうだな。冥土の土産に教えてやるよ。俺はモナーチア随一のトリガー使い、タラア・ギナイイ様だ。俺の獲物になれることをありがたく思えよクソガキ。」

 

ギィン

 

タラアの背中からアームが伸びる。

 

「オラオラァ!行くぞゴラァ!」

 

ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!

 

アームの先の銃口から一斉に大量の弾丸が放たれる。

 

「うわっ!」

 

レヴィアが急いで飛び退いて避ける。

 

「エリミスさんのよりすごいかもしんないぞこれ…」

「どうしたどうしたァ!」

 

タラアが休むことなく撃ち続ける。

 

「ぐっ!」

 

城塞の砲槍(トルミントム)」の盾で受けるが、威力に押されて後退していく。

 

「まずい…このままじゃ押し負ける…!」

 

ドンッ!

 

砲撃する。

…が、

 

「どうした?その程度でどうこうできるとでも思ってんのか?」

「できるよ。」

 

ゴオオオオ…ガコン!

 

「大放熱砲!照射ァ!」

 

ドッ!!!!!!

 

レヴィアが大放熱砲を放った。

以前の放熱砲より更にパワーアップしているものだ。

 

「何っ!?」

 

そう叫ぶが早いか、トリオン兵ごとタラアのトリオン体が消し飛んだ。

 

「やべ…そろそろトリオンが…」

「またしても悪い知らせだ。旧警戒区域にトリガー使いが二人現れた。」

「うっそだろ…」

 

《旧警戒区域》

 

「さて、面倒なことだ。なぜ私が…」

「仕方のないことです。」

 

モンシと黒の男が(ゲート)から出てきた。

 

「さっさとガキを引っ捕らえて帰るぞ。」

「承知しました。」

「どうするん…もうトリオンもほとんど…」

 

ザッ…

 

「やれやれ、まさかレヴィア殿が狙いとは…」

「わざわざ本部から来るとか超面倒、超無駄足。」

 

ミルナ・イロオイとヤンジ・ミサヨ、アポミミシ屈指の(ブラック)トリガー使い二人が到着した。

 

「ミルナ翁!」

「ヤンジ様!?」

 

ヤンジ・ミサヨはなんかこう色々とすごい人である。

ミルナ翁と同じく高齢であるが、今も現役で引退する気配もない。

トリオンで肌を活性化させて若々しい姿を保っているらしい。

趣味は裁縫だそうで自室にはぬいぐるみが溢れ、仲の良い人に渡したりもしているとのこと。

体質上非常に小柄で、そのためか跡継ぎに恵まれなかったとか。

さらにラクサにとっては騎士としての心得などを説いた師でもある。

 

「ミルナ翁とヤンジ様が来たんだ!もうお前達に勝ち目はないぞ!」

「フンッ!やれ。」

「はっ。」

 

ビュゥン

 

黒の男がトリガーを展開する。

 

「ふむ。御仁、なかなかの目をしておられる。これは歯応えがありそうだ。」

「黙れジジィ。」



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第18話 終結

《旧警戒区域》

 

バチッバチバチッ…ゴゥン!

ザッ

 

レヴィアが到着する。

 

「うそだろ…?」

 

…と同時に、そこにいた全員の脱出トリガーが作動するのが見えた。

レヴィアが到着すると同時に、前線で行動できる騎士がレヴィアのみとなったのだ。

 

「ほぅ、自ら来るとはな。その覚悟は誉めてやらんでもない。やれ。」

「はっ。」

 

ビュッ!

 

「なっ…!?」

 

視界が上下でずれた。

というより、トリオン体の頭部にダメージを受けた。

 

(やべっ!)

 

<緊急脱出機能OFF>

 

緊急脱出のトリガーをあえて切り、普段のようにその場に生身で残った。

 

《騎士団本部》

 

「あいつ何やってんだよ!」

「自分で提案しといてなんて使わねぇんだ!」

 

× × ×

 

「騎士レヴィア!すぐに撤退しろ!」

「…拒否します!」

「何!?」

 

レヴィアがポケットから新しいトリガーを取り出す。

 

「あと三分だけ、時間を下さい。」

「オーデム総指揮…!?」

「よかろう。お前に託す。必ず、勝て。」

「了解!」

 

レヴィアがトリガーを改めて握り直す。

 

「『(フル)トリガー』起動!」

 

トリオン体に換装され、肩や腕に武装が展開する。

 

「なんだよあれ…」

「レヴィア君…あんなもの作ってたの…!?」

「『均衡崩し(バランスブレイク)』…!」

 

シュゥン!

 

 

均衡崩し(バランスブレイク)

レヴィアが密かに開発したトリオン体強化トリガーである。

トリオン体内部のトリオンバランスを崩し、武器や四肢などにトリオンを流し込むことでその能力を飛躍的に上昇させることができる。

ただし、その特異性ゆえにトリオンの漏出が発生するため、レヴィアのトリオンが満タンでも6分程度の制限時間が存在する。

 

 

「残り…174秒…」

 

フッ…

 

黒の男が消える。

 

「消えた…?」

 

ヒュッ!

 

レヴィアの死角からブレードが襲いかかる。

 

「なるほど…」

 

ガギィン!

 

レヴィアもその方向を見ることなくブレードで受ける。

 

「何…?」

「透明化か…それとも高速移動か…」

「ほう…なかなか鋭いな。」

 

フッ…

 

二つ男が消える。

 

ダッ!

 

と同時にレヴィアも消える。

 

「あいつ…」

 

ガギィン!ガイン!ギャリン!

 

所々で二人がぶつかる音とトリオン衝撃波が発生する。

 

「嘘だろ…!?あいつどうやって…」

「一言で言うなら、瞬間演算だ。」

 

イフの子機が後ろから現れた。

 

「イ、イフ特別顧問!?」

「レヴィアはトリオンを余分に消費することで、通常のトリオン兵の数百倍の処理演算速度をもつトリオン伝達脳の作成を実現した。これにより、その瞬間ごとの最適解を導きだして行動している。」

「そんなのありかよ…」

「ただし、代償は『使用者の限界を越えた元気の前借り』となる。」

「『限界を越えた元気の前借り』…?」

「使用者の体力限界が来ようとそのまま戦い続けるということだ。そのため、前借りした分だけ、使用後の活動に支障を来すことになる。もし下手すれば、そのまま死ぬこともあり得る。」

「死ぬってそんなバカな…」

「騎士レヴィアはそれをわかってやっているのか!?」

「当然だ。私自信も存在を知ったのはつい昨日のことだ。レヴィアが個人で作成していたらしい。」

 

総指揮も含め、本部の騎士達が青ざめた。

 

ガギィン!

 

レヴィアが弾き飛ばされる。

 

「くっ…!」

 

と同時に、両手を広げる。

 

キュゥン!

 

レヴィアの周囲に大量のトリオン弾が浮かぶ。

 

「行けっ!」

 

パッ!

 

弾幕が雨あられと男に襲いかかる。

多角的にバラバラな方向に飛ぶ弾幕に翻弄され、男は避けきれず直撃する。

 

「ぐっ!」

 

トリオン体のあちこちにダメージを受け、男が体勢を崩す。

 

「やったぞ!これならレヴィアが…」

 

レヴィアがブレードで止めを刺そうとする。

 

「チッ…」

 

男がモンシを掴み、盾とする。

 

「何っ!?」

「悪く思うなよ?仕方ねぇことだからなぁ。」

 

ドスッ!

 

「あいつ、仲間を盾に!?」

「お前…」

「勘違いすんじゃねえぞ?俺達は痕を残さずに色々するためにこいつらを利用してただけだ。必要なくなれば切り捨てる程度の同盟ってとこだ。ついでに、こいつらは返してやるよ。」

 

ガラッガランッ

 

トリオンキューブが投げ捨てられた。

 

「お前らんとこからさらったトリガー使いどもだ。フィシュの試運転さえできりゃ、もう用済みだ。じゃあな。」

 

ゴゥン!

 

「待っ…」

 

レヴィアが男を追おうとする。

 

「いい。深追いする必要はない。騎士レヴィア、よくやってくれた。」

「…はい。」

 

ビュゥン

 

レヴィアがトリガーを解除する。

 

「うっ…」

 

バタッ…

 

同時にレヴィアが倒れ込む。

 

「騎士レヴィア!?救護班!すぐに騎士レヴィアを救出しろ!」



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第19話 暗躍

《特別治療室》

 

ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…

 

暗い病室に心電図モニターの音だけが響いている。

病室の外のソファには、サヨ達やが座っている。

 

病室で寝ているのは先の戦いで勝利に貢献した騎士・レヴィア。

もうかれこれ一週間は意識不明のままである。

まだ死んではいないが、生きているとも言えない状態が続いている。

 

「レヴィアたん…」

 

キィ…

 

「オーデム総指揮…」

「騎士レヴィアの容態はどうだ?」

「命に別状はあらへんらしおすが…」

「まだ目が覚めないと…う~む…どうしたものか…イフ特別顧問は?」

「緊急措置として「恵みの泉(ヴィーテ)」からトリオンを引いています。今も解析などをしてくれています。」

「そうか…」

 

空間に沈黙が走る。

 

× × ×

 

《三日後》

 

ガチャッ!

 

「オーデム総指揮!」

「なんだ騒々しい。」

「騎士レヴィアの意識が戻りました!」

「本当か!」

 

× × ×

 

《レヴィアの病室》

 

ガチャッ!

 

「騎士レヴィア!」

「オーデム総指揮…わざわざ有難うございます…」

 

レヴィアが体を起こそうとする。

 

「そのままでいい。まだ万全ではないのだろう?」

「面目ありません…」

「いや、君は最大限の貢献をしてくれた。」

「…有難うございます。」

「もうあのような無茶は控えてくれ。君が命を投げ出してまで戦うように、我々もまた君を失うわけにはいかないのだ。」

「はい…」

「現在他の国家が接近している。君には、一刻も早く現場に戻ってほしい。しっかりと療養してくれ。失礼するよ。」

「はい。わざわざ有難うございました。」

 

キィ…バタン

 

レヴィアがデバイスの電源を入れる。

 

「今近づいているのは農耕国家(ギューリティア)要害国家(イピヴィアベス)か…モナーチアもまだ離れきってはいない。まだ体力もトリオンも回復してないし、医者達が行かせてくれるわけもない…いつ来るかが問題だな…」

 

× × ×

 

《モナーチア王城 王の間》

 

「何だと!?」

 

豪華な装いの男がそう叫ぶ。

 

「もう一度申してみよ!」

「ですから…その…モンシ・ガルカイ様は敵の手に落ちてしまい…亡くなられました…我々も逃げることで精一杯で…」

「むぅ…」

 

男が歯ぎしりをし、拳を握る。

この男こそ、王政国家・モナーチアで絶対王政の政権を執る王、ウロクンカ・カサトミである。

 

「もうよい。下がれ。」

「はっ。」

 

カッカッカッ…

 

静かな暗い廊下に、男の足音が響く。

男がポケットから小型デバイスを取り出し、誰かに連絡する。

 

「そちらはどうだ?」

「こちらも取り付けることができた。アポミミシが滅ぶのも時間の問題だな。」

「あぁ。」



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第20話 誤算

《アポミミシ騎士団 会議室》

 

「それでは、緊急防衛対策会議を開始する。今回の議題は現在接近している二つの国家、ギューリティアとイピヴィアベスについてだ。騎士レヴィア曰く、まだ侵攻の可能性があるとのことだ。」

「まだ…というのは?」

「騎士レヴィア曰く、敵には黒幕がおり、それが何かしらの目的でモナーチアを利用して攻めてきたと見られるとのことで、その黒幕がギューリティアとイピヴィアベスを利用して来る可能性も否定しきれないという状況だ。」

「黒幕…ですか…」

 

全員が深刻な表情になる。

それもそのはずだ。

前回の侵攻で、人的被害はなかったもののかなりの資源が消費され、はっきり言って複数国家の侵攻に耐えられる状況ではない。

今複数の国家から侵攻されればたまったものではないのだ。

 

ガチャッ!

 

やや荒々しく会議室のドアが開けられる。

 

「き、騎士レヴィア!?」

「ゼェ…ハァ…」

 

荒い息づかいのレヴィアが会議室に入ってきた。

 

「ハァ、ハァ…モナーチア、ギューリティア、イピヴィアベスは同盟関係です…ゴホッ、奴らも盾にした等と王に報告するはずがありません。ゴホッゴホッ、今のアポミミシは、あの男の仇です。共闘する可能性も低くありません…ゲホッゲホッ。」

「お、落ち着きなさい。とりあえずそこに座って。」

 

レヴィアが少しづつ呼吸を整える。

 

「ハァ…敵方は中規模の国家ばかりとはいえ、共闘すればかなりの戦力となるのは明確です。それぞれがお互いに穴を埋め会うことができる上、国家軌道自体もお互いに近い動きをしています。完全に計算された同盟を、完全に計算して利用しているのです。」

「たしかに辻褄は合う。だがまだ決まったわけではない。急いては事をし損じる。まだ状況を見る必要がある。」

「確かにそうですが、今の状況では待っていては間に合わない可能性があります!」

「騎士レヴィア、この状況で根拠もなく動けば、市民の反感を買う可能性もある。自国の防衛だけでなく、国内のことにも目を向けなければならない。そして、君は療養が最優先だ。分かったな?」

「…はい。」

 

× × ×

 

《三国連合遠征艇》

 

「ったく面倒くせぇな…」

「仕方ないだろう。『同盟国に他国家からの攻撃の予兆及び侵攻による大規模な損害が出た場合、同盟にのっとり共闘する。』、これが盟約なんだからな。」

「いくらアポミミシといえど、三国同時に相手にできるわけでもないだろう。ここで最大限のダメージを与えなければならない。」

「トリオン兵も人員も通常の遠征の比ではない。うまくいけばアポミミシを潰すこともできるでしょう。」

 

遠征艇内で12人の人物が机を囲んでいる。

その中には、先の戦いでモンシ・ガルカイを盾としたあの男もいた。

 

× × ×

 

「オーデム総指揮、騎士レヴィアはあまりに気負いすぎています。療養させようにも、少し目を離すと働こうとします。療養目的睡眠薬投薬の許可をいただけますか?」

「許可する。一刻も早く騎士レヴィアを戦線に復帰させねばならない。」

 

この判断が、むしろ悲劇を生むことを、まだ誰一人知らない。

 

混沌とする戦争まで、あと僅かとなった昼下がりのことである。



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第21話 三国連合侵攻 進撃

アポミミシは三国連合に対し、現状においては万全のさらに上とも言える警戒体制を敷いた。

ただ一つ、この戦いでの運命を握る誤算を除けば、ではあるが…

 

第一から第四までの警戒区域それぞれにさらなる防衛設備を用意し、緊急脱出トリガーの完全配備、市民の避難誘導のための誘導要員の訓練、トリオンの備蓄、トリオン兵の増産といった防衛体勢を整えた。

さらに(ブラック)トリガー使用者は通常トリガーに加えて黒トリガーも必ず携帯することになった。

 

…しかし、大規模な対策をしているのは、三国連合も同じであった。

 

× × ×

 

「まず新型トリガーを用いて潜入し、撹乱及び戦力削減を図る。そして頃合いを見てトリオン兵を投入し、一気に攻める。潜入部隊の仕事が作戦の成功率を高めることになる。頼んだぞ。」

 

まだ若い冷静な目付きの男がそう説明する。

恐らく今回の指揮官だろう。

 

「「了解。」」

 

まだ年端もいかぬだろう少女と少年がそう答える。

 

「モナーチアの先の遠征によると、アポミミシは(ゲート)をいくつかの区域に分担して制御していらしい。潜入班のつくる混乱に乗じ、その誘導装置を新型で破壊する。(ブラック)トリガーの持ち主は判明している。顔は覚えたな?」

「はい!」

「大丈夫です!」

「どうにかしてその者の換装を解除させ、肉体に深手を追わすのだ。それだけで十分だ。一人でも成功すれば様子を見て撤退しろ。場合によってはそのまま戦力削減及び撹乱を続行しろ。三時間後、作戦を開始する。」

 

× × ×

 

《アポミミシ騎士団 総指揮室》

 

「様子はどうだ?」

「今のところ目立った異変はありません。むしろ何も無さすぎて気味が悪いほどです…。嵐の前の静けさとは今のような状態を言うのでしょうね…。」

「確かに気味が悪いほどではあるな…」

「総指揮、少しお休みになられてはいかがでしょう?この頃働き詰めでいらっしゃいますし…」

「…そうだな。少し仮眠をとってくる。」

 

ガチャッ

 

オーデムが総指揮室を出て仮眠室に入る。

 

「ふぅ…うん?」

 

オーデムが視界の隅に違和感を感じて立ち止まる。

 

「トリガー起動!」

 

咄嗟にトリガーを起動しのけ反った。

少なくともギリギリでかわすことはできたようだ。

 

「何者だ!?」

 

視界の違和感の正体は「透明な何か」であった。

恐らく人型である「それ」は明らかにオーデムの命を狙っている。

 

「くそっ!どうやって入り込んだ!」

 

オーデムが「鋼の鷲(アクィラ)」二本を構え、緊急警報装置を作動させる。

けたたましい警報音が鳴り響き、それに弾かれたように騎士達が次々と臨戦体勢を整えて動き出す。

まもなくして十数人がオーデムのもとに駆けつけた。

 

「総指揮!あれは…!?」

「恐らく探知類を無効化し姿を消すトリガーだ。武器を持たないところを見るにトリオン体そのものがブレード状になっている。」

「オーデム総指揮は下がっていてください。我々だけで十分です。」

「わかった。だが油断はするなよ。」

「「「「はい!」」」」

 

× × ×

 

時を同じくし、アポミミシ騎士団倉庫にも襲撃者が現れた。

 

「ジジィてめぇ…どっから入ってきやがった。」

「ふむ…もう見つかってしまうとは…」

 

そこにいたのは初老程の容姿をした男であった。

既にヤンジが駆けつけており、臨戦体勢にある。



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第22話 三国連合侵攻 前哨

「ふむ…もう見つかってしまうとは…」

 

老人の首もとからマントが広がる。

 

「わざわざマントを広げた…?トリガーか。」

「ふむ。なかなか察しの良いお嬢さんだ。」

 

ヤンジが(ブラック)トリガー『傀儡の宴(アウトマータ)』を起動する。

 

 

傀儡の宴(アウトマータ)

アポミミシが誇る(ブラック)トリガーである。

無機物にトリオンを流し込んで操ることができる。

トリオン消費効率は流石は(ブラック)トリガーとも言うべき規格外のものである。

普通のトリガーで再現しようものなら起動すればトリオン切れといったレベルである。

「操り人形」はトリオン弾や電撃程度の攻撃しかできないが、数があればそれも驚異となる。

しかし、本人には何の武装もないことが最大の欠点である。

 

 

パカッ

ボトボトボトッ

 

ヤンジが箱を開けぬいぐるみを落とす。

 

「ったくめんどくせぇ。」

 

ぬいぐるみ達がゾンビのように起き上がり、空中に浮遊する。

 

「とっとと引っ捕らえて、どっから入ってきたか聞き出すとするか。」

「ふむ。それは無理な相談と言うものでしょう。こちらとしても、あなたをどうにかせねばなりませんからなぁ…」

「ほざいてろ。」

 

《アポミミシ騎士団 仮眠室付近廊下》

 

ボシュッ

 

一人のトリオン体が壊され、緊急脱出トリガーが作動した。

数の有利があるとはいえ、相手が完全に姿をくらましていてはやや劣勢になっているようだ。

 

「伏せや!」

 

後ろから突き刺さるような鋭い声が聞こえ、騎士達が一斉に姿勢を低くする。

 

ドドドドドドドドドドドッ

 

後方から凄まじい弾幕が飛んでくる。

 

ブシュッ!

 

トリオンの煙が吹き出るのが確認された。

命中はしたようだ。

 

「随分と大層なもん使(つこ)てはるなぁ。よっぽどこの侵攻が大事みたいやね。」

「エリミスさん!」

「早めに終わらして、情報聞き出さんとなぁ。」

 

エリミスが銃器を作り出し構える。

 

ギャリィン!

 

狙いを定めるエリミスの後方から、刃物が擦れ合う音が響いた。

 

「よっと、アポミミシ屈指のトリガー使いを狙うとはなかなかお目が高い。」

「レヴィアたん!」

「なんとも厄介なトリガーだな。ちゃんと置いていってもらうからね。きっちり解析してもらわないと。」

 

レヴィアが「城壁の砲槍(トルミントム)」を構える。

 

「総指揮、一気にやっちゃってもいいですかね?」

「構わん。」

了解(りょ~かい)

 

レヴィアが「城壁の砲槍(トルミントム)」を構える。

 

発射ァ(ファイヤー)!」

 

ドッ!

 

廊下をぶち抜く勢いで強化された砲撃が炸裂する。

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

 

砲撃後の大きく抉られた廊下には、少年と少女が倒れ込んでいた。

 

「な、子供!?」

「むごいなぁ…」

 

タッタッタッ

 

少女がエリミスに近付く。

 

「どしたん?」

 

少女がにこにこしてエリミスを見つめる。

 

「…どうしたんかな?」

 

エリミスがしゃがんで目線を会わせる。

 

タッ!

 

…と同時に隠していたナイフを取り出してエリミスに駆け寄る。

 

ドシュッ!

 

エリミスの純白のドレスが鮮血によって真っ赤に染まった。

 

「ぐっ…!?」

「てめぇ!」

 

レヴィアが二人を蹴り飛ばして床に押さえつける。

 

「すぐに救護班を呼べ!」

「は、はい!」



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