メイくんのぼうけん。 (ばなナイン)
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にゅうがく!

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・ピピピピピピピピ・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・・・ ん〜〜〜ン《カチッ》・・・・スゥ・・・・・・・・」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

『・・・・ ちゃん、おきて〜、朝だよー!《コンコン!》』

 

「・・・・ ンンンン・・・・ ンっ?・・・・???・・・・」

 

『ねぇ、おきたの〜? 《カチャ、》・・・・ちゃん??」

 

「?・・・・ ん??・・・・ハッ! わ、わっ!・・・・ ワア〜〜〜ッっ!!!・・・・」

「・・・・ どおしたの?・・・・ ちゃん??」

 

・・・・ 朝だ! 8時過ぎだ! 朝食だ! 遅刻だ〜〜〜!!! 入学式なのに〜〜〜!!!

制服着て顔洗って髪整えて....おお! 食卓にはジャムトースト!! ならばこれを(くわ)えて....!

 

「ひってきま〜〜〜ふっ!!」

「へ? ....いってらっしゃーい....なんだろう?? あ、お姉ちゃんおはよー!」

「ん・・・・ な〜にぃ〜? えっ!? もおいっちゃったのぉ!?」

 

 

今日入学式を迎える高校!ここ平沢の家からそう遠くはない....とはいえ徒歩で約10分ぐらいか? 走れば....てオレそんなに速くないしすぐ息がきれる....ウイ〜! ねえちゃ〜ん!! なんで一緒に起こしてくれなかったんだ〜!!....

....て、俺はともかくね〜ちゃんまで同じ高校に入れるとは思ってなかったな。それに俺がこの高校に入ろうとした理由ももともとはあの姉ちゃんの弟離れのために少し姉....(ユイ)には届きそうにないとこを選んだつもりだったんだし。受験先を口にしたときも、

 

『決めた! 《決めポーズ!!》わたしも(メイ!)とおなじとこ受ける!!

《ジャーーンッ》』

 

・・・・とあっさりと宣言してそのまま....いや直前までろくに受験勉強をしているようでもなかったのに....試験の前日に『メイ〜っ!!』て俺に泣きついてヤマカンどころを教えただけなんだけどまさかアレでアイツまで合格するなんて....!

 

『銘〜! メイ〜〜っ!! あった! メイの名前あったよ〜〜〜っ!!

《ガバッ!!》やった〜〜っ!! ありがとうございます! ありがとうございますっ!!

ここにいるみなさんのオカゲです〜〜〜!!! ウワ〜〜〜っ!!!《ムギュムギュ〜!!》』

 

合格発表の日、唯に引っ張られてこの高校の合格番号の貼紙の前で俺より先に俺の名前を見つけたとたん人眼を憚ることなく俺に抱きついて泣きじゃくる....チャンとまわりへの御礼も欠かさずに....てかね〜ちゃんハズカシイ....それより自分の名前は!?

 

『え?? あ! そおだった!! えへへへへ・・・・』

 

....たく、このね〜ちゃんときたら....やっぱり姉ちゃんは姉ちゃんだ。自分のことよりも(うい)や俺....

一応これでもオレが弟なんだよな? 双子だけど....まあそれだけにこの姉にはオトウトとしてとことん可愛がられているんだし。

 

『あった〜〜〜っ! わたしのあったよ〜〜っ!!

....て、メイのすぐ下だった! テヘッ《ペロッ!!》』

 

俺はともかく、父さんと母さんは唯のこの高校への受験には半ば諦めを決め込んでたし、滑り止めの合格に期待を寄せていたんだけど....この報告に俺同様喜びを通りこしてしばらく『・・・・』と呆気にとられていたっけ。妹の憂は『お姉ちゃんすご〜い!!』....と素直に喜んでたけど。じゃ俺の合格には....唯の合格という『衝撃の事実』のおかげですっかり影が薄くなりましたとさ....ハイ。でももちろん合格祝いは二人名義で祝ってもらいましたよ? 憂の手料理で....!!

....おおっ!もうここは新しい学校の側面! 校舎の桜並木!! スチュエーションも満開!!

ここで俺も高校生主人公デビューか!? いやが上にも高まる思春期満載の妄想!!

おおお!! もう少しで正門か!! ブレーーキっ!! 《ザザザーーッ!!!》・・・・あれ??

 

「ひとがまばらだ・・・・」

「あら、メイ? おはよう。早いのね」

「ん? お、おはようのどか・・・・」

 

高校の門前で俺と唯と憂の幼馴染みの真鍋 和(のどかと()む。一応注)と鉢合わせした。幼稚園の頃からのくされ縁....というのは失礼かな?俺と憂の前ではお姉ちゃんブッている唯もこののどかを前にしては飼い猫のようにゴロニャ〜ン....と妹のように甘えてしまうしっかり者だし。もっとも普段の唯も俺たちの前でゴロゴロニャ〜ンしてたっけ。んで、いま何時?

 

「八時ちょうどぐらい。ほら、校舎の時計も」

 

おお....俺の早とちりか....まだまだ余裕があった....息切らしてきたのに!

 

「入学式まで時間があるわね。メイはなんでこんなに早く?」

「あははー.....目ぼけてたんだよー....」

「ふふっ! なるほどね。さすが唯の弟、血は争えないのかしら」

「まーね。そういうのどかは?」

「私? 私はこれから職員室に生徒会室。新入生代表で宣誓を担当することになったから今から打合せなの」

「ほー」

 

....て、宣誓? この高校、市内でも指折の進学校だったんじゃなかったっけ? のどかにとっては楽勝の高校受験だったんだろうけど入学式で宣誓を依頼されるって....受験トップの点数だったってコト!? 俺たち姉弟にはギリギリだったってのに!! とんでもない幼馴染みダッタンだな・・・・

 

「・・・・韃靼(ダッタン)人のダンスだったんスね・・・・」

「え? なに?? まあそういう訳だから。それにもう教室も開けてあるんじゃない? じゃあ、またあとでね。あっ! それに....まあいいわ。ふふ!」

「おお・・・・」

 

わがココロの駄洒落が漏れていた....のどかのやつ最後の『フフッ!』てなんだ....少しはウケたのか? まあいいや。のどかとは玄関口で別れてまだ式には時間があるし校内でもぶらついていようかな。運命の出逢いもあるかもしれないしー・・・・

 

 

 

 

 

・・・・結局プラプラ歩いてても何事もありませんでした。そんなもんですよねー。さてと、そろそろギリギリだし決められた教室へまいりますか。それから講堂に移動して入学式ね。唯のやつももう自分の教室に着いてるよな? まあ学校までは『いっしょにいこおねー! クフフ〜!!』と念を押されていたんだけど....さて、1年○組、ここか。お?

 

「あらメイ、遅かったのね。それに奇遇ね。同じクラスなんて」

 

のどかが先に教室に着いていた。同じクラスだったの?? 教室にもほぼ新しいクラスメイトが集合しているようだし、俺そんなにポケ〜と歩いてたのかな?

 

「んー? おつかれ。そうだな、なんか小学生振りかなー?」

「そうなるわね。で、唯は? あの子も同じクラ....」《....ガサっ!》

「....いたーっ! メイ〜〜っ! ナンでおこしてくれなかったのさ〜〜〜っ!!いっしょにいこうね! ていってたのに〜〜〜っ!!! あ! のどかちゃんおはよ〜〜〜っ!! なに!? のどかちゃんもいっしょのクラス?? わぁーーー!!!」

 

おい! 姉ーちゃん! 初めての登校なのに騒がしい....! ていうか唯まで同じクラスなの!?....オレ自分の名前しか探さなかったからなー。それにさすがはうちの姉、『さんにんそろっておなじクラスだー!』 なんて無邪気にはしゃぎはじめてさっそく新しいクラスメイトの視線と注目を集めているし。まあこの姉ちゃん幼いころから大人しくしてても騒がしかったし(矛盾してるんだけど....)俺ものどかも慣れているからいいんだ....けど、

 

「ほら! 姉....ユイ、口の横に....」

「へ? ユイ?? ....ヤ〜ダ〜メイったら〜!『ユイ!』だなんてぇ〜! テレるじゃん!

そんなたにんきょうぎに〜!! ぬふふふふ〜! あ! メイ! ほっぺにジャム!」

「あら」

 

なにクネクネしてるのさ。新しいクラスの中で『姉ちゃん!』て呼ぶのが恥ずかしいんじゃん!

んでオレとユイは人さし指で相手の頬についているジャムを互いにすくい取りそのユビを自分のクチにくわえる....家では何気ない仕草だけど・・・・ん?

 

 

・・・・・・・・ぇえええええええええええエエエエエエ〜〜〜〜っ!!!!・・・・・・・・

 

 

この様子を目にクラスメイトたちが一斉にどよめきはじめた・・・・

そおだ・・・・ここは公共の場、教室のなかだった・・・・ああ・・・・

俺たち姉弟....高校生活の一日目にしてなんてことを・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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にゅうがく!!

 

 

 

 

「じゃあ平沢さんと平沢君てホントに兄弟なんだねー!」

「えへへへへ・・・・ もちろんわたしが姉! メイがおとうと!!」

「それに机も隣同士だしー! 振りむくとおなじ顔がふたつ!! キャハ!」

「も〜ヤダよ(ネエ)さん! てそんなににてるー? クフフフフ〜ゥ!!」

「うわ〜! 顔おおっちゃって! カワイ〜!!」

「いや〜! それほどでもぉ〜! ゥファハハハ〜ァ!!」

 

なんて笑い方なんだよー・・・・ 入学式の一日も終え新入生はもう下校時、まえもって目的の部活動に参加する生徒はもうそれぞれの部室に向っているみたいだけど、俺たち一般の新入生は明日からの在校生による新入部員獲得競争に巻き込まれる運命にあるし、俺と唯はそれからでも遅くはないかなー。どこに入部するか、あるいは帰宅部か、まだ未定だけど....唯をとり囲んでクファハハ! やってるクラスの女子たちもおそらくそんなだろう。俺の周りの男子共も似たり寄ったりだし。

 

「平沢ってホント平沢さんに似てるよな....!」

「なんか紛らわしいからメイ....だっけ? でいいか?」

「僕は平沢君で....てやっぱり似てるし....カワイイ....」

「おい、やめとくれw まあ呼び方はご自由に....」

「そーよねー! 身長も同じくらいだしー! それにこのクラス、他にも『オトコノコ』候補生が....クフフっ!!」

 

最後に会話に混ざったのは女子なんだけど、積極的に俺たち男子の話の輪のなかに入りこんでくる女子も多いなー。この子も背も高い方だしボーイッシュだし出るとこは出ているし....こんな女子に話しかけられて嫌がる男なんていないんじゃない? もちろんオレも。でも『オトコノコ』って

ナニ?? 候補生てオレオトコですけど?

 

 

「じゃーねー! またあした!!」

「じゃーなー!! 平沢! 平沢さん!!」

「ユイー! メイー!! まったねー!! あ! 銘君までメイー! て! ハハ!!」

「うわ〜! アピール!? あざと〜い!!」

「や〜めて〜!! キャハハッ!!」・・・・

「「じゃあね〜〜! みんなーー!!」」

 

先ほどのメンツのなかで帰り道が同じ数人とこの交差点まで雑談して、ここで俺たち姉弟はみんなとわかれた。一日目にしては上出来だよな? あのジャム事案が俺たち姉弟をクラス中の話題の中心へと巻き込んでしまったんだけど....のどか様の冷静な解説のおかげでこの件はまあるく収まったわけだし(流石は入学式の祝辞を仰せつかっただけのはあるなー)結果としてこの姉ちゃんもまたもクラスのマスコットとして安泰に納まりそうだな。まあ....ベツに俺たち二人特に高校デビューなんて考えもしなかったし? こんなんでいいだろう! 部活は....どうしよ。

 

 

「へー! のどかさんもなんだー!」

「そう! きいとくれよウイ! のどかちゃん生徒会に入るんだって!

だから今日はいっしょに帰れなかった....クウウっ!」

 

帰宅し着替えて食卓にて憂の夕食を頂く。憂は中1のときからわが家の食卓の担当をしてくれていてもちろん帰宅部。俺と唯もだったけど....

 

「ずっとじゃないか? でも同じクラスだから毎日会えるし」

「ウン! そう!! わたしたち三人が同じクラスになるなんてなかったじゃん!ねーメイ!!」

「幼稚園のとき以来かな? 憶えがないなー」

「うん! おねーちゃんとお兄ちゃんが同じクラスだったのは幼稚園の年少組と年長組で小学校のときはたしか一二年生のときで中学生のときはなくてー! のどかさんとお姉ちゃんは幼稚園のときやっぱりお兄ちゃんと三人でー! 小学校のときはお姉ちゃんとのどかちゃんは三四年生のときと中学一年生と三年生のとき! のどかさんとーお兄ちゃんはー・・・・」

 

んー・・・・もう聞きてる端から忘れてるんだけどねー・・・・ 姉ちゃんも目と口を丸くして

ポケ〜! としてるし。てか憂さん、自分の学年でもないのによく憶えてますねー。

 

「うん。だって、わたしだけ学年がちがうから....いっしょに登校してもお姉ちゃんとお兄ちゃんとのどかさん三人で同じ階のクラスにのぼっていっちゃうし.....わたしだけいつも....ううう....っ、

グスっ....」

 

....しまった! 憂のトラウマスイッチがはいっちった!! そう、この憂サン俺と唯が好き過ぎて今でも立派なシスコン・ブラコンだ。加えて泣き上戸だし。まあすぐに治まるんだけどそれでもそれまでの間が気まずい....! やむを得ん!姉ちゃん!!

 

《あいよ! メイっ!!》d(^_-)☆

 

目配せひとつで気合いは十分! ....せーので「「ホイっ!!」」 《ガバガバっ!!!》

 

「わっ!! お姉〜ちゃんっ!? お兄ちゃん?? ん?! ・・・・ キャハハハハっ!!!」

「ウイ〜! ウイ〜!! どおだ〜っ!! ホレっ! おにいちゃんもっ!」

「ウイ〜! え〜のか? え〜のんか〜っ!!??」

「ウキャハハハーっ!! おにいちゃんダメーっ!! ソコはーっ!! クルシ〜〜〜ィっ!!!」

 

フと我に帰ると・・・・ああ、何やってんだオレ・・・・ 小学生ぐらいならともかく、高校生になってまでこんなこと・・・で相手は妹とはいえもう中3....!? そうだった....もうイケナイんじゃないか? ほらこの年頃の女の子って男の兄弟には....

 

『ウザい! キモい! それにクサい!! コッチくんなっ!!』

 

....て反応するんだろ? まさかこの憂も....それに唯も憂も今はナントカ成長期ってゆうじゃん....? 手触りも....オイ。憂が泣くたびに俺と唯が飛びかかってウイをコチョコチョするこの儀式....もう引退しようかな....?

 

「....え? お兄ちゃん!? もおやめちゃうの?? ヤダ〜っ!! じゃわたしからもぉ〜〜〜っ!!! エイっ!!」

「クッっ!? ....グハハハハハハハ・・・・・・・・っ!!! やめてっ! やめてケレっ!! イキが〜〜〜っ!!!」

「おーーー!ウイ〜っ!! わかっているね〜っ! ならこのワタシも〜っ! ゥオリャッ!!」

 

ぅわあ〜〜〜〜・・・・・・・・っっっ!!!! ふたりそろって〜〜〜〜っ!!?? ナンでオレなの〜〜〜〜?? ないてたのウイだったし〜〜〜〜!!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「あはははは・・・・・・・・」

「えへへへへ・・・・・・・・」

「アアアアア・・・・・・・・」

 

本当はアの字に濁点を付けたいんだけどなー・・・・ ようやくおさまった・・・・ 憂は泣きやむのを通りこしてはしゃいでたし唯も便乗してこのオレをキズものに・・・・ 爪のあとなんだけど。いまは三人横並びに仰向けになって....唯はうつ伏せだった....息を落ち着かせている・・・・ はあ、結局のところ俺たち三人兄弟みんななかよくシスコンブラコン! てワケなのね・・・・ これまたおあとが宜しいようでー! て・・・・ はあ・・・・

 

 

 

 

 

 

 



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そうだん!

《1年○組の平沢銘、1年○組の平沢メイ! 昼休みに生徒指導室にまで来るように! 繰り返す....》

 

「んー? 今度はメイか? ユイさんじゃないのか? 平沢~! ナニやらかした?」

「ん? なんも」

「ここ数日平沢さんはよく呼ばれていたのに、いよいよ保護者のお出ましというところかな?

平沢君?」

「イヤ~! それほどでも~! エへへ!!」

「姉ちゃんがほめられてるわけじゃないんだけどなー」

「ほら唯、部活のことでしょ? もう二週間もたっているのにまだ入部届をどこにも提出してないから」

「ユイ~! まだどこも入ってなかったの~! て帰宅部? キャハ!」

「「幽霊部員、というテもありますよ。ようこそ、オカルト研究会へ」」

「え~! でも、ここのガッコ部活は自由だって!」

「自主性のある生徒ならね? でも唯! あなたは何か部活に入ったほうがいいわよ。あなたみたいにメリハリもないままこのままダラダラと高校生活を送っていたら、卒業しても即ニートよ!

ニート!! わかる!??」

「えええ~っ! ニートぉ~!? ナンでブカツにはいっていないだけで~!! のどかちゃん

ヒドイっ!! それによばれたのって~・・・・!」

 

あーあ、のどかの奴はっきと言うなー....確かに入学して二週間、ユイはただ家と学校を往復しているだけの生活を送っているようにもみえるし。え? 俺も? まあパッと見ならそうかもしれないけど、少なくともオレは授業を居眠りせずに過ごすし、小テストにいたっても手を抜かず赤点を回避し続けているし、体育の授業中も丁寧に一時限かけてトラック一周を周遊するほどの優雅さも持ち合わせてもいないし? 清掃時もただポ~とつったってて一ヶ所を懸命に箒で掃き清めてたりしなかったし? 取り立てて問題があるようにはみえないんだけど?? のどかレベルからしたらドングリの背比べかもしれないけどねー。オレなんで呼ばれたんだろう??

 

 

「んじゃいってくる....」

「おーうキミの弁当はオレにまかせた!!」

「メイ~っ! がんばってね~!! なにがあってもぎをおどさないように~っ!! おねえぢゃんもついてるよ~っ!!」

「ご愁傷様だね、平沢君?」

「キャハ! チャオ!!」etc etc ・・・・

 

・・・・ みな言いたい砲台だっ! 好き勝手にブチかましてからにー!

 

 

《カチャっ》「失礼しまーす・・・・」

「おお君か! まあ! 入りたまえ!!」

「はあ・・・・」

 

生徒指導室のドアを開けたとたん中からモクモクと煙が出てきた。おい....校内でバルサンなんて吸っててもいいんですかー? しかも勤務中の教師が....それにこのセンセ何か白衣を纏っておりますよ....化学の選任講師? こんなところでなんかの実験中?? ....てデカっ! 背が俺より20センチ以上ぐらいある! で長髪! 美人!!ナイスバディ!!! 歳は....グフっ!!??

 

「おい....レディーを前にして年齢を推し量ろうとするのはマナー違反だ....わかったな?」

「グイ....」

 

いきなり腹パン....てかナンでわかったのさー??

 

「まあいい! そこに掛けたまえ! 平沢君! 平沢....銘、メイだな?」

「ふぁい....」

 

この腹へのパンチで思い出した....この教師、生徒指導室のヌシと怖れられている通称『独身アラフォー女史』。。。特に二年のクラス担任を歴任する現国担当教師で、波居る歴代の問題生徒たちをあの腹パンひとつで(男子専用....)自らの下僕となさしめてきたという....もはや先生御自身が『要注意人物』なんじゃないの....

 

「んー? 君のクラスは1年○組? だな! 君のクラス担任の♤♡君から私に君の姉である唯君への懸念を伝えられたんだ。心当たりはあるよな?」

「はあ....」

 

俺が指導を受けるんじゃなくて....やっぱり。まあ実際心当たりアリアリなんですけど。

 

「正直に申し上げますと、ウチの姉....平沢唯にはこの高校のレベルについていけていないように思っています。ここ二週間での姉の様子を見ていましても....まず教科書を開いているのかも怪しいのかと....えー・・・・」

 

「いいから、《・・・・スウ~~・・・・》続けたまえ」

 

「はい。もともと中学生のころの姉の成績ではこの高校の入学は無理でした。けど・・・・」

 

「キミが唯君の勉強を観てあげてたんだな?」

 

「ハイ・・・・」

 

う~ん? もはや姉ちゃんの学力の問題は弟のオレじゃなく父さん母さんを呼び出すぐらい重大なんじゃない? てまだ授業開始から二週間弱なんだけど....でも授業中もポ~としてるかス~としてるかだし、テストなんかほぼ白紙....隣の席なんだから毎日気が気でない....

 

「まあ、ここは市内でもそこそこの進学校だからな、やる気のない生徒にいちいち注意を払ったりはしない。赤点を取れば追試、それでも駄目なら留年。最終手段は中退だ。要はやる気だよ。そうは思わないかね? メイ君!」

 

はあ....それを言うならウチの姉に....

 

「それはそうなんだがな~キミ! 私は男子生徒への生徒指導には定評があるんだが! ....女子生徒にはチョットだな~! ハハッ!!」

 

レイの腹パン指導でですかね? 御歴々の方々心中お察しします....で、健全な未成年の前でもプカプカしながら話を続けるわけですね? ハイ。

 

「だいたい女生徒というものはだな....! 若い男性教師や同世代のイケメンとやらの前では媚びを売ったりシナを作って見せたり....そういうタイプの女共ほどウラでは・・・・!!」

 

あのぉ・・・・

 

「・・・・コホン、でもまあ? 唯君の人となりも♤♡君から聞き及んでいる。なかなかの愛されキャラ! という話ではないのかね? メイ君」

 

「その点は私も請け負います....」

 

そう、もはやわが姉ちゃんはうちのクラスのマスコット....ただ自分の席に座って『あははははあ・・・・』としているだけでその場がホワ~とやわらいで....空気でさへ『読む』ものでは無くてみんなでス~ハ~するものだと再認識させられるぐらい....なくてはならない存在になってるんじゃないの? ちとオーバーかな。

 

「周りからの人気はなかなかだとのことだな? ウム、私としてもそのような人材を落ちこぼらせてしまうのも惜しい! まあ進学はともかくとしても少なくともここに居続けるぐらいの学力は維持させないとだな!」

 

「はい....」

 

それができれば苦労はない。ここに受かったのだって....ハア....

 

「そこでキミに提案がある! いや、まだ時間があるな....よし! 付いて来たまえ!!」

 

ヘエ旦那....オラまだ弁当も喰ってないんですぜ....ハア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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そうだん!!

 

 

 

 

「・・・・着いたぞ! じゃまする! いるかー!!」《ガラガラ!》

 

「・・・・ あら先生、よくぞここまでたどり着かれたものね。お褒めいたしますわ・・・・

それにこの封印されし暗黒幻視門(ダーク・イリュージョン・ゲート!)をお(くぐ)りになるみぎりにはノックを! との御自身の誓いを自ら破られる御所存で? フフフ!」

 

えー・・・・ あのー・・・・ これはー・・・・

 

「まあまあ! これはお久しぶりで御座る! 顧問殿!! 前持って連絡して頂けたら御茶や御茶受けの御用意も致しましたものを! オヤ? ひょっとして・・・・ 依頼人でござるな!! 部長殿!

仕事で御座るぞ!!」

 

アラフォー・・・・いや、『未だ穢れを知らぬ高原の白百合(自称)』さんに連れられ、高校敷地内でも授業を行う校舎からやや離れた所にあるこの建物の一室に入った。特に書籍や実験用資材、鉱石資料など、滅多に使われない物資を保管するための倉庫だと聞いていたんだけど、休憩室なんて部屋もあったんだねー。で? このヒトたちは・・・・?

 

「あら、『部長』だなんて、社畜として飼い慣らされている腐れ一般人供が互いを引きずり押し合いながらもその頂きに達すること無く程々の処で『安住の地』として決め込んだ社会的地位の事よね? そんな不粋な肩書でわたしを呼ぶのは辞めて頂戴?」

 

えええ・・・・ ナニ言ってんの・・・・ オレたち姉弟にはレベルが違いすぎる・・・・ やっぱしこの高校って秀才たちの集まりなんだな・・・・ のどかなら理解できるのかな??

 

「そうで御座った! テヘっ!! さてお立会い!

・・・・ ここに御ましまするは幾万光年の時を隔てしも邂逅すべき宿命の相手と巡り逢うため! 幾度と無くこの未開の地に転生せし暗黒界の堕天使!!・・・・

・・・・『黒猫!』殿!! で!あらせられますぞー!!・・・・」

 

ああ・・・・そういう・・・・ でもアタマが良過ぎて、て話も聞いたことあるしなー・・・・

でも目の前で拝むのは・・・・ で、そういうアナタは?

 

「拙者で御座るか? 拙者はこの部における副部....いや黒猫殿第一のサーバント!

『クワトロ・バジーナ』!! 『大尉』とお呼び下され! 依頼人殿!!」

 

 

この部屋におられる二人組のひとり、部ちょ....いや、元・天使の『黒猫』さんはこの休憩室の奥の執務机の向うに(まし)まし、服は....ドレス? 白いブラウスの上に黒のレースで編み込んだ上着? を纏っていて、サラッとした長い黒髪、前髪パッツンの頭には紫の薔薇を左右に付けたカチューシャを載せている。もうひとりのこの『大尉』殿はまずデカいなー....ここに俺を連れこんできた自称『白百合』さんぐらいあるんじゃない? しかもメイド服....んでマンガに出てくるようなグルグル

眼鏡を掛けてペイズリーのバンダナを巻いてお下げ髪....チグハグだなー。ふたりとも一応ここの学生、先輩だよねー? わざわざ昼休みの間にこの衣装に着替えているってわけ??

 

「ふふっ! で、貴方はこの(わたく)シたちに何の用かしら? まさか何の覚悟も無く俗界との結界を張り巡らしたあの曙光至天門(エンライトメント・ ヘブンズ・ドア!)を潜り抜けて来た訳ではないわよね....?」

 

えーとさっきとドアの名前が違うんですが....お、オレはただここに連れられて来たってだけで理由は....あ! 白百合先生は?

 

「先ほどお帰りになられたで御座る。特に何も仰られておりませんでしたが? まあ若い者は若い者同士! で御座ろう! では我々に何なりと!! ゥワッハッハッハッ!!」

 

それ、当人の前で言ったら....もう知らん。で、センセイ、オレはここでナニをすればいいのさー?? う〜ん・・・・

 

「ま、いいわ。先ずはそこに御掛けなさい。沙織? 御茶を」

「ガッテンで御座る!」

「はあ....」

 

執務机の前には低めの長テーブルがあり両側にはソファーが置いてある。テーブルの上には分厚くて重そうな革表紙の本が積み重なり隙間隙間には何やら怪しげなグッツが無造作に置かれている。定番の髑髏やら模造品であろう時代がかった洋風ナイフとか....お? 拳銃まで。これ、『Luger P08』? おお! こっちには『Walther P38』!! なんと! 『Mauser C96』まで!! 壁には....『Winchester M??』!....うーんなんかコレは趣旨が違うような....他にも色々とあるしここの部長! 分かってんじゃん!!

 

「ほほう! 流石は男子生徒! 食い付きが早いで御座るな! ではこれは如何でありましょう?」

「ん???」

 

俺がモデルガンを手に取ってるところに大尉殿がお茶を運んで下された。なんか気恥づかしい....

んで大尉殿から渡されたこの銃って....ナニ?

 

「流石にこれは御存知ありませぬか! なにしろこの銃、まだ四丁しか存在を確認されていない

幻の銃なのですからな」

 

ほーん。四丁? なんか今風ではなくクラシック調ともSFチックともとれるデザインだけど?

柄には髑髏の模様も刻んであるし。んでこの限定グッツ、国内で? いや世界で??

 

「いや、『銀河系星系』で御座るよ! 依頼人殿!!」

 

ブッっ!? ....ってまだお茶を飲む前だった....しかし大きくでたなー! まあでも宇宙で四丁て設定も。

 

「あら沙織、それは違うのでは無いかしら?」

 

ん? 黒猫さん、やはりここは部長、常識的に対応するつもりかな?

 

「『アンドロメダ星雲』も含めて、でしょ! フフッ?」

 

・・・・ズコっ!!

 

「おおっ! そのとおりで御座った!! 流石は黒猫殿! 《テヘペロっ!!》」

 

はいそおですかー・・・・! まあこれでここの部の趣旨が理解できたぞー! つまり....

 

「あのー、つまりはここは漫研かアニメ研、てことで....」

「「・・・・っ!!」」

 

....ん? 俺のこの発言に心なしかふたりの身体がピクッ! としたような....

 

「あ・・・・ 依頼人殿! ・・・・ここでその言葉を口になされるのは・・・・ !!」

「ふっ! ふふふふふふふっ!!! 貴方....どうやら貴方は此処では口にしてはならない台詞を口にして仕舞ったようね....ふっ! ぅフフフフフフフフフ!!!」

 

「へ? あ! いや・・・・て、ええ??」

 

机の向こうの黒猫さんがうつ向き加減にヌ〜と立ち上がる....身長はそんなにないみたいだし華奢だけど何か雰囲気がヘンだ....操り人形みたいに腕もダラ〜と垂らしてるし....コワイ。

 

「貴方は・・・・ あの門を潜り抜けておきながらまだその様な世迷い言を口にするおつもり?

ならば仕方が無いわ・・・・

『・・・・ 我は千の葉の舞い散る闇の住民! ・・・・ 堕天使黒猫っ!! 《バッっ!!》・・・・

・・・・この俗界に在らざりし事象を具現せしめる妄想的触媒(イリュージュナブル・メディウム!)なりっ!!・・・・』

・・・・・・・・」

「....止めて! 止めるで御座るっ!! 今此処でその力を解放しては....っ!!!」

 

今度はその腕をバッっ! て開いて大声で呪文? を発している....?? ナニ? 千葉県?? ここは別の県なんだけどー....? て?? ナニっ!?!?

床がっ!? 俺の座っていたソファーの床から青白い光が!?!?

 

『千の精霊よ! ・・・・ 汝が肢体に纏いしその力を我に注ぎ淹れその輪郭をも解放せしめよっ!! 然してこの空間・時間と供にその力を解き放たんっ!!!』

「黒猫殿〜〜〜っ!!!」

 

思わず立ち上がって周りを見渡すと部屋の壁、天井も....!? 何か青い光の線で円やら三角やら四角やらの図形が綺麗に浮き上がって組合わさって回転までしてるんだケドっ!?!? えええ???!

 

『しかして目前に茫然と我が道行を見失いしその者の忘却の記憶! 立ち現しめんっ!!!!』

《・・・・・・・・ゴゴゴゴゴゴ〜〜〜〜・・・・!!!!・・・・・・・・!!!!》

 

今度は地響き? いやまた床がゴソゴソと!? んっ!!?? 《ガサッっ!!!!》・・・・

 

・・・・??? ! へ? 床が?? ・・・・・・・・!?・・・・・・・・っ!

 

・・・・ ぅわあぁ〜〜〜〜っ!!!!ーーーー・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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とりっぷ!

 

 

 

 

 

《・・・・・・・・ ゴオオオオオオオーーーーーー・・・・・・・・》

 

・・・・・・・・・・・・足や手やからだ全体がまるでなにも触れている感じがしない・・・・

・・・・・・・・そのかわりなんか全身に凄い風圧を感じるんだケド・・・・

・・・・ 耳からは風の当たる轟音が聞こえ・・・・

・・・・ 口を開けるとシャワーで口の中に水を吹き掛けられるような圧力を感じる・・・・

・・・・ 生きた心地もしないし・・・・目を開ける勇気も出ないし・・・・

・・・・ もし目を開けてソウだったら・・・・

・・・・ ナンでこうなったワケ・・・・??

 

 

 

「・・・・殿! 目を開けるで御座る!! 依頼人殿っ・・・・!!」

 

・・・・ 大尉殿?? 近くにいるのっ!? てドコ?? 声もどこからっ!!??

 

「・・・・依頼人殿っ! 勇気を持って目を開けるで御座るっ! そしてこちらに腕をっ!!」

 

・・・・ 目の前・・・・ ていうか頭の向う?? エエいっ!! 止むえんっ・・・・!

・・・・ でもソ〜と・・・・ ゥワーーーーっ!?

 

「・・・・ オオっ! 依頼人殿っ!! こちらで御座るっ!! この拙者の腕をっ・・・・!!」

 

ホントに空中を落下していた・・・・ いやなんでっ?? ナンか余計にパニ喰っちゃうん

ダケドっ!!?? ぅわっ!? うわっ!! ウワーーーっ!!!

 

「・・・・暴れないでっ! 落ち着いてっ!! ・・・・そう! 貴方なら出来るわっ!!!

・・・・ だからわたしを信じて腕を前へっ!!」

 

・・・・え・・・・とさっきと・・・・ 声が・・・・ 違う・・・・ あー・・・・

・・・・ 落ち着いてきた・・・・ 恐いのは変わらんけど・・・・ 腕って・・・・ どこだ・・・・ ??

・・・・ まあいい・・・・っ! こうかっ!!?

 

「・・・・ キャッチっ! OKですわっ!! ふふっ!!!」

 

・・・・ 俺の手首に掴まれる感覚が・・・・ てアレ? さっきと風圧が....へ??

 

「上出来ですわ! 依頼人さんっ!! ウフッ! さっ! 落ち着いて周りを眺めて見て下さらない?」

 

なんか....浮いてない? まあ落下しているのは変わらんけど....て!俺の右腕を両腕で絡めて胸の真ん中で押さえつけてくれているこの綺麗な娘って....誰?? 顔もチカいしっ!!!

 

「あらヤですわ....! わたし、大尉ですわよ! た・い・い! フフッ! て....わたし....眼鏡....掛けていませんの?」

 

「....はい」

 

「....キャッっ! はづかしっ!! あ〜〜〜〜っ!!」

 

....俺の腕を離して両手で顔を覆った....てことは・・・・? ゥワアーっ!!

 

「....ごっ! 御免なさいっ!!・・・・ あはっ!・・・・」

 

....真っ逆さまになった瞬間にオレの足首をとっさに掴んでくれていた....フゥ....で先ほどの体勢に戻ったんだけど....顔と顔は触れあいそうだし右腕もなかなか見事な谷間に挟まれてるし....

また違った意味で生きた心地がしない....ふぅ....

 

「どうです? この空! 綺麗でしょう!! まだ雲の上ですから空気が澄んでいるんですわ」

 

おお....たしかに....青いぞ! 当たり前だけど....数年前家族で飛行機に乗って旅行に行ったとき窓から観た空もこんなだったっけ。いやもっと青い....! 少しづつ頭もクリアになってきてるようだし、

これは一体なんなの! 夢??....て問いただしてみると....

 

「....まあ夢? というなら夢、ですし? 現実というなら現実....現実というなら夢でもありますし、夢というなら現実でもありえます。まあ! よくあるはなしです! うふふ!」

 

えええ....貴女と同じ高校に入学できたオレでも理解できるように説明してほしいんだけど....

 

 

 

「・・・・ やっと降りて来たのね、手間のかかる後輩だこと」

「もう! 五更(ごこう)さんが急にあんなことするからですよ!!」

「・・・・ はぁ」

 

ここは何となく....どころじゃないオレんチの近所の公園、しかも夕暮れ時....ナンデ??

俺は先輩大尉殿にゆっくりとここの地面まで降りてきてもらったけど黒猫先輩はもうすでに降りたっていたのか。てまた手間のかかる手品....魔法だなー。

 

「別に瞬間移動しても構わなかったのだけど、貴方があの『禁忌の章句』を唱えてしまったのでカッとなって落っことして差し上げたのよ。感謝なさい。フン」

「んもお・・・・」

 

いや普通に○ぬでしょっ!! ....まあ、普通に疑問もぶつけるけど。

 

「....ここは....ウチの近所の公園ですけど....一体なんでこんなとこに?」

 

「あら? 貴方方一般愚民にとっては異様なこの状況の中、なかなか冷静に物事を観察しているじゃない? ああ....成る程ね....フフフッ!」

 

ん? そういえば・・・・

 

「ええ? ・・・・ だって〜! カワイイんですもの〜っ!!《ムギュギュ〜!!》

ウフフフフっ!!!」

 

今のオレはこの長身ナイスバディ先輩大尉殿に背後から肩の上に腕を回されて抱きつかれているのでアル....んで俺のアタマの後ろには....こっちのほうが気になって超自然的スペクタクル体験などまるで記憶に御座いませぬ....

 

「フフッ! 役得な後輩だこと。そういえば沙織、貴女の口調....ああ、眼鏡もバンダナも飛ばされて仕舞ったのね」

「五更さんのせいです〜!! おかげでこの素顔を後輩君に観られてしまいましたわ〜!! ハヅカシ〜!!! あ、そういう五更さんも!」

 

いや大尉殿、部室でのあのキャラのほうがもっと恥かしいですぞ。で? 黒猫先輩にはどんな変化が? ああ、薔薇の髪飾りが....

 

「あら、カチューシャも飛ばされて仕舞ってたのね。お気に入りなのに。まっ、いいわ。スペアがあるから」

 

....て持ち歩いてるんかい!

 

「あら、五更さん? それ猫耳なのでは?」

「アラやだわ。私としたことが。でも構わないわ」

 

....結局着けるんかい!! というわけで、俺んチの近所の公園に高校生三人、猫耳を着けた小柄なドレス部長、風圧のせいかおさげも解けてややフワリとした長髪を(なび)かせている清楚なメイド大尉、そして極々普通に高校の制服を着ている俺....俺はともかくこの先輩二人はかなり浮いてるよねー。通報されちゃうんじゃない? 女子高生ならいいのかな??

 

「先程貴方が何故ここに? との質問をしていたけれど、今、その答がでるわ。まあ観てなさい」

 

いや『観てなさい?』って俺たちが観られちゃうんじゃない? 通りにはまだ人も歩いてるし。

 

「貴方、バカなの? こちらからは観えてもあちらからは観えない。このテの鉄則でしょ?」

 

でしたねー!

 

 

 

 

 

 

 

 



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とりっぷ!!

 

 

・・・・ ん?

 

「・・・・ グスっ、グスっ....! うわ~んっ!!」

「・・・・ だからやめろ~っていってんじゃんっ!!」

「るせー! そんなのかんけーねーだろーっ!!」

「おいっ! まだかばおってのか!? ヒヒっ!!」

 

・・・・ 通りの向こうから幼い子たちがこちらに駆けきた。4人? いや5人かな。で、一方は追われてきてるのか? 小学校低学年ぐらいの男の子が同じぐらいの女の子の手を引っ張ってこの公園の中に入ってきた。そのあとを追って男の子が3人も。悪ガキだな。そういやこの公園には....俺たちだけだ。

 

「だーかーら! メイーっ! おめーつきあいわるいってんだよー!」

「それに今日はおんななんてつれてきやがってー!」

「そんなのカンケイないだろー!!」

「・・・・ ごめんなさ~いっ! わたしがかってについてきちゃったからー! ぅわ~んっ!!」

 

・・・・ これってオレ? ナンでこんな幼い時の事が?今目の前で?? てかここは昔?! 過去に戻ったてコト?!? えー・・・・

 

「あのー・・・・ これはいったい・・・・」

 

「シッ! 説明は後。先ずはじっくり観察する事ね」

 

俺たち3人は物陰に隠れるでもなく目の前で子どもたちを眺めている。本当にあちらからは観えないのかな・・・・

 

「メイ! おまえらいつもふたりで歩いてるじゃん!いつもおんなのと!! フーフー!!」

「ふけてねーぞwそいつのほうが俺たちよりいーってんのかっ! エっ!?」

「そだそだ!」

 

なんちゅう言い掛かりをしてんだこのガキ!! あームカついてきた! ヨシ! このオニーサンが

少し世間の厳しさ教えてやる! おまえら! そこに....ん??

 

「依頼人さん? シーっ! ふふっ!」

 

大尉殿に肩を軽く掴まれて微笑みまで向けられました....まあ仕方がない、ここはひとつ貴女に免じて大目にみよう....通報されてもかなわんし。

 

「もうお分かりかと思うけど、喧嘩を売られている男の子と女の子、貴方と妹さんね」

「え~っ!? うわー! か~わい~っ!! 二人ともソックリ!!

依頼人さんて昔から可愛いんですねー!!」

「えー・・・・ ええ・・・・ それほどでも・・・・」

 

泣きじゃくってるオレたちにカワイ~! なんて言われても....黒猫先輩にはお見通しってわけなのね。そうか....一緒にいるのは憂の方か。こうして見ると俺たちって本当によく似てたんだなー・・・・ じゃあ姉ちゃんは? ん? 誰か駆け足で近づく音が・・・・

 

・・・・・・・・・・・・たたたたたたタタタタタタッタッタッタッタッタッっ!!!!!!

・・・・・・・・ いた~っ!!!! ウイ~~っ!! ・・・・ メイーーっ!!! ・・・・

・・・・ チョットあんたら~~~っ!! ウチのおとおとといもおとにナニしてくれてるのさーーーーっ!!!!ーーーー !!!!・・・・・・・・!」

 

姉ちゃんっ!! てあんなに猛スピードで!? へえ???

 

「・・・・ へ? こいつは?? え?? え~???」

「おなじかおがみっつ!!! こいつらみつごだったのか!?」

「あっ! おもいだした! こいつがユイだ! おなじクラスの!」

 

おい姉ちゃん! 通りから公園の中まで駆けて来ちゃって止まる気配がない! まさか・・・・ !

 

「・・・・・・・・ ゔわあああああ~~~~~・・・・・・・・っ!!!!・・・・・・・・

《ドスッっ!!!》・・・・・・・・」・・・・・・・・

 

そのまま悪ガキ三人組に突っ込んでいっちゃった・・・・

勢いで四人とも倒れちゃったけど・・・・ ええ・・・・ そおだったっけ???

 

「ぐわあ~~~っ!!! うわーーーっ!! うが~~~っ!!!」

「イタっ!! ヤメロっ!!」

「おい~っ!! かみつかむな~~~っ!!!」

「うわ~~~っ! あしカムな~~~っ!? は~な~せーーーっ!!!」

 

・・・・ えええ・・・・ あの姉ちゃんが・・・・ 俺たちのために・・・・

・・・・ 砂まみれになって取っ組み合いをしてくれてたの???

 

「ねーちゃんっ!」

「おねえちゃんっ!! グスっ・・・・ じゃあわたしもーーーっ!!!」

 

あああ・・・・ 憂まで加勢しちゃった・・・・ 女の子ふたりでなんてこと・・・・

おい!? 俺は?! オレはどーした!???

 

「もおいいっ! もういいからっ!! ふたりともーーーっ!!!」

 

5人の仲裁をしてたのか・・・・ いくじがねえーーー・・・・

 

 

「グスっ・・・・ ググッ! グワア~~~ァンっ!!! ウワ~~~ンっ!!!・・・・」

「・・・・ おねえちゃ~ん! もおおわったよ~! なきやんでよ~っ!!」

「・・・・ うい! ねえちゃんをつれてかえろ・・・・っ!」

 

姉ちゃんの奮闘に3人の悪ガキどもは音をあげて公園から走りさり、残された俺たち3兄弟は....

泣きながらグチャグチャになっている姉ちゃんの両腕をそれぞれ俺と憂の肩に載せて、抱きかかえながら公園を後にしようとしている・・・・ うーん・・・・ 記憶があるような・・・・

 

「・・・・ よかったですね! 大事なくって! 《....ススっ!》」

「・・・・ ええ・・・・ あの姉ちゃんが・・・・ あそこまでしてくれてたなんて・・・・」

 

記憶が無いとは言え、多分この光景は現実にあった事なのかもしれない。今も昔も唯姉ちゃんはいつもポ~としてるかエヘヘヘヘ~てしてるかだったし、とてもあんな喧嘩なんてするような雰囲気じゃ無いもんな。だからすっかり忘れてたんだろう。たぶん唯も憂も....そういえばあの悪ガキの3人、同じクラスだったけど二年の途中から疎遠になって、三年のクラス別けの時に離れて以来そのままだったっけ。これが原因だったのか? それにこの喧嘩の原因だって目の前の映像? だけでは理由もよくわからないし。黒猫先輩は一体何でこんなものを観せようとしたんだろう??

 

「・・・・ あ~あつまらないわ。こんなものを観せられて仕舞うだなんて、翔んだ時間の無駄遣いだったわね」

「・・・・ 五更さんっ!」

 

なんてこと言うんだ! ちっちゃな頃の事とはいえ一応幼い子たちには立派なシュラバだろー!!

 

「だからなのよ。この光景が貴方達三人にとっての最大の修羅場なの、少なくともこれまでの、ね」

「へ?」

 

黒猫先輩のこの事も無げな台詞に俺と大尉殿がキョトンとなる....ハイ??

 

「どういう意味です? 五更さん??」

「理解出来無いかしら? つまり貴方が私達に依頼をしてきた時点での貴方達三兄弟にとっての最大の修羅場がコレ、というワケなの。わかる?」

 

えーーー・・・・ つまり俺たち三人ってこの一件以外たいしたケンカもした事が無いってワケなの?? このケンカだって俺たちの中でのケンカって訳でも無かったし・・・・

 

「今日私達の処へ依頼をしに来た理由は貴方のお姉さんの事よね。だから貴方と貴方のお姉さんとの関係の中に何らかの(わだかま)りが在るのではと思ってこうやって探りを入れて観たのだけど....余りにも微笑まし過ぎて拍子抜けして仕舞ったわ。もっとサスペンスでバイオレンスでインシスト△▽ー! なモノを期待していたのにこれでは同人のネタにもなりはしない。あ~あつまらないわ」

「五更さん・・・・ もう!」

 

そうだったのか・・・・ 俺たち三人ってものすごく仲が良かったんだな....まああんな姉ちゃんでもこれと言って不満があるわけでもないしもちろん憂にたいしてはナニもない! あの二人から見てオレはどうかは知らんけど....んで俺、あの部室に着いてからこの超常センパイ二人に何か相談事なんてしてたっけ??

 

「!....貴方というヒトは....この期に及んでまだそんな世迷い言を....!! まあいいわ....フフフ!《バッっ!!》『....我の名は『黒猫』っ!! 此の世の総てを観通す全能の・・・・っ!!』」

「・・・・ああ! 分かりましたわ五更さん! このまま瞬間移動で部室まで戻りましょう! ね?

うふふっ!」

 

オレまた何か怒らせちったの?? まあキュートな大尉殿が宥めて下さってるしもうあんなメは勘弁....!

 

「まあいいわ。貴方の依頼は私達の分野とはまるで違うようだから、これから学校に戻ってちゃんとした処で相談する事ね。ついでの事だけど? 貴方達三人兄弟が余りにも仲が良過ぎるのでチョッと恨めしいわ。だから貴方達三人にはこれからもずっと仲良く楽しく幸せに過せるよう『呪い』を掛けて置くわね。少し計りスパイスを降り掛けておくけど....フフフッ!」

「五更さんたら....フフッ! では後輩君? 名残惜しいのですけれど貴方と私達とはこれでお別れ

です。これから貴方を安全な方法でお送りしますので安心して下さいね? ウフフッ!」

「ええ? お別れって! もうこれで・・・・?」

 

なんだいきなり! 出逢いも唐突だったけどお別れも....? なんかさみしいじゃん!

貴女達はいったい・・・・!! 《パッっ!!》ゥワッっ!! ....まぶしいっ!!!

・・・・・・・・・・・・!!!

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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そうだん!!!

 

 

 

 

「・・・・ ついたぞ! 邪魔する! いるか....ノックだったな《コンコンコン!》・・・・ ん? あっ!そうだった!! いや〜スマンスマン! 最近部室を替えたばかりだったのでな! もとの部屋に来てしまった! 少し計り余計に歩かせてしまったな! 悪い悪い!! ハッハッハ!!

ん? 平沢、どうした?」

 

「・・・・ ん? ....は! いえ別に....」

 

へ? ここは....例の部屋の前、まだドアを開ける前に戻った....のか? あの時の記憶は....

あるよな??

 

「あ〜! もう時間がー! イヤ済まん! 放課後は用があってなー、悪いが一人で部室に

行ってくれ! 場所のメモを渡しとく! いや〜! 私とした事が! フハハハハ!!!

じゃ! 行くぞ!」

「あ? はい....」

 

結局開けず仕舞だったけど....開けたらどうなったんだろ? またあの先輩たちに会えるのかな?

愉快で楽しかったのに....

 

《....もしそうだったら嬉しいわ。もしまた私達に逢いたくなったら....このドアの前に

いらっしゃい? ノックをするかしないかは貴方の選択次第よ》

《左様で御座る! ではその時まで暫し御去らば! ニンニンっ!!》

 

・・・・ ん!? ・・・・ 「どおしたー?平沢!」え? はい! ・・・・

 

 

 

 

「・・・・ ん〜! 入り組んでんなー」

 

放課後、俺は白百合先生からメモを渡され授業を行う校舎から二つ向うの校舎に向かっている。

この高校て教室が余ってるんだなー。空き教室は大体文科系の部活で使用されているみたいだけどここの校舎のはがら空きだぞ! ひと気もないし、日が沈むと結構コワいかも....あんなこと

あったあとだしー・・・・ えーとここの怪談....じゃない! を登ってすぐの教室....そこの教室だけ白いプレートを付けてあるって書いてあるけど....ここだな! ん? このプレートには小っちゃなシールがいっぱいペタペタ貼ってあるんだけど? いいのかなー・・・・ まずは....

 

《コンコンコン!》

 

『どうぞ....』

 

《ガラガラ....》「失礼しまーす....」

 

ドアを開けてみた....普通の教室だけどガラーンとしている。机と椅子は教室の後側に積み重ねられて、前の方に会議で並べられる長机が横一列に置かれている。その机の前に生徒が二人....

 

「今日は。貴方が依頼人の一年○組の平沢銘さんですね。お話しは平塚先生から伺っています。

まずはこちらの椅子へどうぞ」

 

うわ....これは....超正統派美人! 窓の側に座っているあの女子生徒、あの猫耳先輩のような黒の長髪の持ち主でもなんか佇まいと清楚さが違う! こんなヒトっているんだねー・・・・

 

「わあー! やっはろー!! メイメイっ!!」

 

めいめい?? いきなりなんてニックネームで呼ぶんだ! もう一人の先輩は....ショートの髪を茶で染めているつもりだろうけど加減を間違えたのかなんかピンク色だし....可愛い先輩なのに....

残念?

 

「おお....うす」

 

ん?『紅茶で宜しいかしら』あ? はい。

 

「....では平沢さん? 平塚先生の話では、ここでの依頼は貴方のお姉さんの平沢....ユイさん? の

学業と生活態度、についてのご相談で宜しいのかしら」

 

「はい」

 

「では何故唯さんでは無くて弟である銘さんが? それに比企谷君、本来この様な相談事は生徒指導の先生方の担当なのでは無いのかしら?」

 

「....おお、そうだな」

 

ん?? えと....とりあえず俺への質問には返しておくか。

 

「それは....平塚先生の都合です....オ....僕はただ先生にここへ来いと言われただけなので....」

 

「はあ....成る程....確かに、平塚先生は常日頃、女子生徒の指導と相談は苦手であるとの発言はしていていたのだけれども....そんな理由で本来教師の担当である生徒指導の権限まで私達奉仕部に廻して来るなんて....」

 

「ゆきのんどうするのー?」

 

「先ずは貴方のお姉さんの抱える今時点での問題点と、そして貴方のお姉さんの人と成りを

伺がってからね。対処はそれからよ。ふう・・・・」

 

「はあ....お願いします....」

 

....俺の目の前でこの美人部長先輩に深い溜息をつかれてしまいましたけど....なんか気苦労の多そうな人だなあ....たぶん生徒内の厄介事を押し付けられている部活とか? それにたいして....

 

「ねぇねぇ〜! 新入生でしょ〜! どう? このガッコには慣れたー?? メイメイはどこの部活にはいってるしー!! エヘヘヘヘ・・・・!!」

 

隣のピンク先輩は....てかいつのまに座ってたの?! さっきまで机の向う側だったのに! て....?

 

「テヘヘへ....メーイメィっ!!《ダキっ!》えへへへへへ・・・・!!」

 

チョッっ!? センパイっ!? えええまた・・・・ しかも今度は頬をスリスリ・・・・ イヤ肩にもホラ、これもまた見事なモノが当っているんですが・・・・? ああ・・・・ 姉ちゃん今でもよくはしゃぎながら抱きついてくるけど・・・・ それとはちがってなんか意識が抜けでそう・・・・

 

「ちょっと....由比ヶ浜さん! 身をわきまえなさい!その子は男子生徒なのよ!」

「えーーー!? いいじゃんっ! こんなにカワイんだしー! ねー!!!」

「エエエエエ・・・・」

「エヘヘヘヘヘ〜〜〜っ!!!」

「お・・・・ おお・・・・」

 

ああここでも....俺ってそんなに抱きつきたく見た目なんですかね? まあ唯だけじゃなく憂だって

まだまだ甘えついでに抱きついてくるし....

 

「コホ....では平沢さん? 貴方のお姉さんの唯さんについてお話しをして下さらないかしら?」

 

そこで俺はこの高校に入学してからの姉ちゃんの生活態度について説明をした。と言っても授業中居眠り、テストは白紙....ぐらいしか話すことが無い.....

 

「そこが問題なのね。こう言っては何だけれども、この高校では生活態度そのものではそんなに(うるさ)く問われる事は無いわ。ただ成績に影響が及べば、という事なの。まだ中間試験の前でもあるし、今度の試験で赤点以上の点数を取れれば周りも何もいう事も無くなるわね」

 

「どうも話を聞くとだな、つまり、お前の姉ちゃんの成績は普段の生活態度、習慣だな....とリンクし過ぎているんだろう。何にもしなくても成績上位って奴もいるけどな。でもまあここの受験の話ではそれまでの勉強の蓄積の結果じゃあ無く一夜漬けで通したみたいだし、本番に強いタイプなんじゃねえの、知らんけど」

 

「うんわかる! わたしも何かわかんないうちにここに受かってたし!

だからメイメイ! 大丈夫だよ! わたしみたいにちゃんと卒業できるから!!」

 

この先輩たちは三年生なんだな。来年で卒業だしもう受験に力を入れてるのかもしれない。

こんなこと頼んでよかったのかな....

 

「由比ヶ浜さん? 私達はまだ卒業出来ると決まっている訳では無いのだけれども」

「おう、お前のことだ。最後のどんでん返しで留年もあり得るしな」

「え?! わたしたちまだわかんないんだっ!!」

 

留年....なんか不安になってきた....三年生になっても今後の成績によってなのか....

 

《コンコンコン!》

 

ん? お客かな? あの先生からの事前連絡なしにここに来ることもできるのかな。

 

「どうぞ....」《ガラガラっ!!》

 

「・・・・ せんぱ〜い!! やばい!ヤバいっ!! ヤバイですよ〜〜〜っ!!!

聞いてくださいよ〜っ!! ....て、あ! 先客ですかあ〜!! テヘっ!!」

「会長、落ち着いて下さい....あら、メイ?」

「は? のどか??」

 

この部室のドアが開いた瞬間、麻茶色をしたセミロング髪のヘンな女子が舞い込んできた。

で、その後ろからナゼかのどかが入ってきてこのヘンな人を会長と呼ぶ....そのココロは?

 

「あら騒がしい。これは会長様、何の御用かしら? 今は相談中なのだけれども?」

「あー! いろはちゃん! マナミン! ヤッハロー!!」

 

へ? 『まなみん』!?!

 

「メイ! その名前で呼ぶのは....由比ヶ浜先輩も....雪ノ下先輩、すいません。

やはり予め連絡するべきでした」

 

おお流石はのどか。受け応えがしっかりしている。確かのどかの奴は放課後生徒会室に赴くようになって俺たちと帰宅するのも稀になったしそれに今は放課後、しかもこのヘンなのを会長と呼んでいる....ここの部長さんもだ。てことは?

 

「おい一色、今は予約客の接待中だ。それにここは生徒会の下請じゃあ無い。生徒会の事は生徒会で解決しろ。これにてQED、証明終了だ。とっとと帰れ」

「なんですかーせんぱい!! ちょっと厄介事....お茶しに来ただけじゃないですかー! そんなに邪険に....て何です!? その仕草! わたしをおさわりしようとするんですかー・・・・ ちょっとせんぱーい・・・・・・・・《ガラガラ....パタン》

 

....例の会長さんが出て行ってしまわれた....なんかブツブツ言いながら....

アレでも生徒会長だったのね。なんかフリフリしてる先輩だけど。のどかもアノ生徒会長に付いて仕事をこなし始めていたのか。ここの先輩たちとも顔見知りみたいだし。

 

「あの、申し訳ありませんでした。追って連絡しますので私もこれで失礼....」

 

「真鍋さん、少しばかり待っては頂けないかしら? この平沢さんともお知り合いのようだし、

貴女の意見も伺いたいの」

 

「はあ、私がですか?」

 

 

 

 

 

 

 



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そうだん!!!!

 

 

 

 

「・・・・ えええ〜〜〜!!! じゃコの子と同じ顔があと二人もーーーっ!! うわ〜〜〜っ!

見てみたいし!!!」

 

「・・・・ 由比ヶ浜さんっ! ....あの、御免なさいね、平沢君」

 

「・・・・ え、ええ・・・・」

 

のどかが俺より細かく姉ちゃんの説明をした。その内容にあれから俺に寄りかかっているこの

由比ヶ浜? 先輩も俺の顔を確認しながらコーフンしてんだけど....

 

「つまりは生活に張り? でしょうか。成績もですが唯にはもう少し背筋を伸ばして生活をする習慣を必要とするのではないかと思うんです」

 

「分かりました。きちんとした生活習慣ですね。それもあるかも知れないけれど、優先順位としては授業中の態度、テスト用紙に答を書き込むこと、兎に角勉強への習慣漬けが必要だと思うのだけれども...」

 

この二人の受け応えはホント優等生だなー! のどかとの付き合いも長いし当り前だと思っていた

この丁寧な言葉使いもダブルで聞いているといつもの感覚からズレてくるし。そうね....? このオ....

ボクも、少しばかりこの二人に感化? されてみようかしら?? 「・・・・ 平沢君?」

 

「・・・・ はっ、ハイ! ナンで御座いまショウ??」

「メイ?」

「アッハーっ! ゴザいましょうだし!! えへへへへへ!」

 

ウケて仕舞ったで御猿。で? 御用件は?

 

「貴方は、勉強の方は、良く出来る方なのかしら?」

「え? え、えーとお....」

「メイは割とコツコツ自分でこなす方です。受験の時も自室に篭って勉強していましたしね」

 

のどかに褒められちゃった....よく分からないところはのどかに教えてもらってたけど。

のどかだって塾にも行かずにいつもコツコツ勉強してるほうじゃん。

 

「では、唯さんにも可能性が在るという事ですね。ただ話に聞く唯さんには、自習・独学を

身に付けるには動機付けというか....友人の助けが必要かと思います。唯さんにご友人は?」

 

「ええと、それはもう....」

「はい、沢山おります。が、ただ....」

「ただ? 何かしら?」

「クラスメイトの殆んどが部活に所属しているんです。入学した頃にはまだ放課後に残って

雑談する相手がいたんですが....」

「今はお....僕と唯ふたりで家に帰ってます....」

「なるほど、そうですか....」

 

部長さんが軽く腕を組みながら俺とのどかの返事を聞いている。

何かしら考えてくれているようだ。《ガラガラ....》

 

「あら、比企谷君。一色さんは?」

「おう、いろいろブツクサ言ってたが納得して帰ってもらった」

「ヒッキー! また独りで....?」

「....バッカ! もうアンなことしねーよ。お前らにちゃんと話しするって約束もしたしな....」

「ヒッキー....」

「そう....そうよね。ところで何の用件だったのかしら?」

「ああ、部活の総会だ。なんか予算配分で揉めているらしい。ったくこの高校の部長連中

ときたら!」

 

高校の生徒会ってそんな事まで引受けてんの? 予算なら先生のチカラで何とかなるんじゃん?

 

「この学校ではなるべく生徒の自主性を尊重する、という事ですよね。雪ノ下先輩」

「ええ、そうなの。ただ自主性が行き過ぎて部活は乱立するし無許可のまま教室を私物化する

団体もいたりするし、この高校は自由過ぎるのよ....フウ....」

 

またも部長さんが溜息をつかれている。この部活もいろいろあったのかな。

 

「ねえ! その『ユイちゃん』! って部活には入らないのー?」

「へ? いや、そんな話は....」

「私も唯には何か部活にも、と勧めてはいるのですが....」

「....クフっ! ....由比ヶ浜さんが『唯ちゃん』! ユイちゃんっ! て....ククク....っ!!」

「雪ノ下先輩?」「ゆきのん??」

 

んんん? 部長さん今度はとなりの由比ヶ浜サンの発言に声を殺して吹き出しそうにしてる....? チャンと口を覆っているところがまた御上品なんだけど....ナンかツボったのかなー?

 

「....ゴホン! ....そうね、部活....それなら放課後に新しい部活仲間とも勉強会でも開けそうね。

今からでも間に合うのかしら?」

「ええと....もう二週間も経っていますから大方の所は定員を満たしているかと思われます。

それに今からの入部というのは....その....」

「おう、もう大方人間関係が出来上がってるとこだしな」

「じゃあ! 定員割れのとこ探せばいいし! 廃部寸前の!!」

 

となりの由比ヶ浜サン? なかなかナイスな意見を出しますね! そうか! 廃部寸前なら新入部員を大事にしてくれそうだし姉ちゃんにも居心地がよさそうだ! センパイやるぅ〜っ!!

 

「廃部寸前....もっともな意見ね。真鍋さん? 御足労だけど生徒会の部活名簿を暫くの間奉仕部に

貸与して頂けないかしら? ここで条件に合う部活を絞り出したいのだけど」

 

「....いえ!その様な事で先輩方のお手を煩わせるのは。唯の部活の事なら私が生徒会室で

調べますから」

 

「真鍋さん? 貴女方には生徒会のお仕事があるのでは? 先程の部長会議の件もあるようだし。

唯さんの事は私達奉仕部に任せては貰えないかしら。ね?」

 

「はい....ありがとうございます。ではお言葉に甘えてお願い致します....メイ?」

「あ! はい! よろしくお願いします!!」

 

どうやら解決の糸口が見えてきたのかなー? しかし姉ちゃん一人を巡ってこんなに先輩たちが

動いてくれるなんて。なんか悪い....て姉ちゃん自身は何もしてないんだけど。ん〜。

 

「では、私はこれで失礼します。唯の事、お願いします。メイ? 貴方はどうするの?」

「え? ええ....じゃ僕もこの辺で失礼しまーす....」

「え〜! もういっちゃうし!!」

「そうね、後は此方に任せて頂戴? 連絡は真鍋さん経由で、宜しいかしら?」

「はい!」

「おう、じゃあな」

「....?? あ....失礼しまーす....」《ガラガラ....パタン》

 

これで一応今日のお勤め? は終わりかなー? 姉ちゃんには先に帰っててー、て言ったら

ナンデサ〜! ブーブーブゥ〜っ!! てスネてたけどまだ教室にいるのかなー? ・・・・ ん?

 

『....ね〜! あのメイメイすっごくカワイかったね〜!!』

『....お、おう....まあな....」

『....フフっ! 顔が赤いわね。目覚めてしまったのかしら? キマシタヶ谷君?』

『....ヒッキーきちゃったんだっ!!』

『....ば....ヴァっかっ! チゲーよ!....』

 

・・・・ ドアを閉めて廊下に出ても部室の中の声が聞こえてくる....なんか3人いない?

・・・・ 男の声も・・・・ へ??

 

「え? そうだったかしら? 気にしていなかったけれど」

 

・・・・ いやもうやめよう・・・・ 超常ものの次が階段?・・・・ なんて・・・・

 

 

「じゃ、私生徒会室に戻るわね。メイは帰るの?」

「一応念のため教室に戻るわー。まさかとは思うけど」

「フフッ! そうね。じゃ、また....」

「ああ、そうだ。聞きたいことがあるんだけど....!」

 

そう、この教室に来る前の昼休みでのあの異次元休憩室....アノ映像は本当だったのか?

のどかには手短かに話をしよう。もちろん超常現象には触れずに....

 

「....そうね。確かそんな事あったわね。私が憶えているのは小学二年生の二学期の終り頃、

私がメイと唯の家に遊びに来てたじゃない? 私と唯が一緒になって絵を描いてる間にメイが外に

遊びに行っちゃって、そのすぐ後に憂も付いて行っちゃったの。暫くしたら唯が何かハッっ!

とした顔をして立ち上がってそのままあわてて外へ出て行っちゃったわ。私はただ呆然とする

事しか出来なかったけど。仕方なく私独りで家の中で待っていたら憂とメイが唯を抱えて家に

帰って来たわね。あの時の三人、顔がクシャクシャだったわ」

 

....やっぱり現実に起こってたことだったのか....それに姉ちゃんカンで家を飛び出してきたなんて....のどかはその時の話、オレたちから聞いてなかったっけ?

 

「さあ....あの後すぐに彼方のお母さんに家まで送ってもらったから....でも次の日の登校時には

三人ともケロっとしてたわね。こっちが拍子抜けしたわ。ふふ!」

 

そうか....次の日には俺たちもうスッカリ忘れていたってのか....三兄弟仲が良い! ってわけだ....

 

 

さて5時近くになってきた。のどかと別れて教室の前まで来たけど、いるのかなー・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ すぅ〜すぅ〜すぅー・・・・ えへへ・・・・」

 

 

いた・・・・ 自分の席でうつ伏せて眠りこけてた・・・・

もう誰もいないなか独りで待っててくれたのか....しょうがない姉ちゃんだなー。

 

「姉ちゃんおわったぞー....! おーきーろー....!」

 

「ムムムムム....エヘヘヘヘヘ....うい〜....! もおたべられないよ〜....!!ヌフフフフ〜....!」

 

ゆすれどもゆすれども....ああ....これはテコでも動かんやつや。ほなら耳元で呪文をひとこと....

....憂の口真似で!

 

「お姉ちゃん! ケーキもあるよ! 食べるー?」

「....ハイっ! ケーキはべつばらっ!! はやく〜! うい〜っ!! ....ホエ??」

 

ささやいてみた....こおかてきめん....姉ちゃん俺の顔見ながらアレっ?? て顔してるし。....ククっ!

 

「・・・・ クククククっ....!!」

「・・・・ メイ?? ....なにさ〜! .....ク! クフフフフ〜!!」

 

「「・・・・ アハハハハハハハ〜〜〜・・・・っ!!!!」」

 

んで俺と姉ちゃんふたりしかいないこの教室で大爆笑コイた・・・・ やっぱりこの姉ちゃんと

いると笑いがとどまらない・・・・ 成績はともかくこの姉ちゃんにはこのまんまでいて欲しいんだけどなー・・・・勉強、部活か....俺自身は部活を勧められていないけど姉ちゃんが部活に入っちったらもうこんな放課後迎えられなくなるのかな・・・・

 

 

 

 

 

 

 

以上、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』と『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』とのクロスオーバーでした。

特に『俺妹』からは『黒猫』こと『五更瑠璃』さんと『クワトロ・バジーナ』(原作では『沙織・バジーナ』)こと『槙島沙織』さんを《魔改造》して出演して頂きました。お疲れ様です。

 

 

 

 



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おえかき!

 

 

 

しばらく『けいおん!』とはまるで関係のないお話しが続きます。

筆者の趣味による脱線です....

 

 

 

 

 

「・・・・ この部室かー? 絵画部って」

 

のどか経由で奉仕部の雪ノ下部長からウチの姉ちゃんでも間に合う! ....定員割れの部活の

リストを渡されて、ナゼかオレが姉ちゃんの代りに放課後の部活巡りをする羽目になっている。

....のどか曰く、

 

『このメモを直接唯に渡しても部室にも行かないでプラプラしてるか嫌がって逃げ出すか、

でしょ?先ずはメイ! 彼方が見学して唯に合いそうな所をリストアップして頂戴? 後は私が

何とか誤魔化してでも無理矢理入部させるから! お願い!!』

 

....なんてこと言われてしまったんで....ナンでオレが....まあ暇だし。暇なのは姉ちゃんも同じなんだけどなー・・・・ そんなわけで、俺はここ『絵画部』の部室の前でこれからドアをノックをしようとしている。ハア....ここって別に廃部寸前てわけじゃないみたい。年中部員募集をかけている部活だから紹介されたんだけど....

 

《コンコンコン....》

 

『はい! どうぞ!』

 

「失礼しまーす....」

 

《ガラガラ!!》「....ああ! あなたが入部希望の方ですね! ありがとうございます!!

では早速この席に座って....!」

 

ええ!? 俺が?? て入部希望てナニ?? 前持って連絡してあったみたいだけどいきなり入部!? ドアを開けるなりいきなりツインテールの女の子が俺を引っ張りこんでとある席に座らせようと

する。イヤ俺は....!

 

「これの使い方はご存じですね? では早速何か描いて....!」

「....あのお....コレは??」

 

俺の座ったテーブルの前にはパソコン....?手元にはキーボードと何か黒いボードが置いてある....

一般教室の半分ぐらいの大きさの部屋の中にはこれと同じような机が並べられて、部員さんたちが

その前に座ってカチカチカリカリやっている....えーとお....ここって絵画部ですよね? キャンバスとか絵の具とかは??

 

「え? ....やですよ〜! ここは『絵画部』! ですよー! 『美術部』じゃないんですからー!!

アハハ!!」

「へ? 美術部?? 絵画部とどう違うの??」

「アハ! だからここは『絵画部』ですって〜! もう新人さんたら!」

 

えええ・・・・ なんかこんがらかってきた・・・・ つまり・・・・

 

「・・・・ どうゆうことです???」

「ですから〜! ・・・・」

「・・・・ ああ! あと私が説明するわ! 青葉〜! アンタの説明だとこんがらがるから!

イヤごめんねー! この子も新人なんで!!」

「なんですか〜! 八神せんぱ〜い!!」

 

机に向ってカリカリやってた部員の一人がこのやり取りに声を出した。こりゃ見事な

金髪ロングの先輩! 染めてるんだろうけどこの高校ここまでしててもイイのー??

 

「あ〜、ひょっとして美術部と間違えた? アハ! まあそーよね〜!

この青葉だって間違えて美術部の方行っちゃってたし!」

「八神さ〜ん!! もおっ!」

 

それはイイですから説明を早く....

 

「ここは主にパソコンで絵を描くとこなの。普通に油絵描くとこが美術部なんだけどね〜!

あっちは普通だけあって毎年定員数取れててそのおこぼれがコッチに来ることもあるけどさー!

ただコッチはあらかじめパソコンやペンタブや液晶タブレットやってる子たちが入部して来るんで初心者にはちょっとハードルが高いかなー! それにここ数年ほど動画にも手を出してるし、即戦力が必要なのよね〜! どう? あんたは?

・・・・一応聞くけど....あんたって男子よねー・・・・?」

 

「もおー! やですよ〜! 八神さん!! なに言ってるんですか〜!

こんな可愛い子男子なわけ・・・・ ぇえええ〜〜〜・・・・!!??」

 

ああまた・・・・ この青葉って子、俺の手を引っ張って椅子に座らせてしかも両腕をオレの肩に

押し付けていたままだった・・・・ あわてて手を引っ込めたけど・・・・

制服確認しなかったわけ??

 

「あああ〜〜〜!!! ごめんなさいごめんなさいゴメンなさいっ!!! わたしてっきり....

だって入部希望って女子って言ってたじゃないですか〜っ!!」

「涼風さん、より正確には見学希望者です。貴女が見学希望の平沢....唯さん? ですね?」

 

んん? 奥の方からこれもまた長髪の女子が姿を現した....私服だ! カーキのタンクトップに

オリーブのカーゴパンツ、裾の上から紐ブーツを重ねて履いている!なるほど....肌も日焼して

いて健康的な先輩だなー。

 

「....いえ、その代理で来ました。弟の....銘....です....はい」

「「「「・・・・ おとおと〜〜〜っ・・・・ !!??」」」」

 

俺の返事にこの部屋の部員たちがどよめき始めた....ああマタ....あの姉ちゃんの弟ってだけで

どおしてこんなに混乱するのさっ!!

 

「見学希望って普通一年だよね〜!」

「 その弟ってことは....」

「「「「・・・・ふたご〜っ!? キャ〜〜っ!!」」」

 

ああ・・・・ もう知らん・・・・ そういえばここの部員って女子ばかりだなー? 男子禁制?

 

「いえ、この手の技術に心得のある男子生徒も見学には来るのですが、ここの部の趣旨を

説明すると大抵の男子が諦めるか、入部しても来なくなるか退部するかなんです。我々はただ

健全な絵画を目標としているだけだというのに何故なのでしょう?」

 

....いや私服先輩、わかりません....女子ばかりだからきまりが悪くなるのかなー?

姉ちゃんなら女子だから問題なさそうだけど。でも俺もだけど姉ちゃんにパソコンなんて....

 

「まあソリャねー....パソコンで絵を描いてる男子ってさ〜! キモオ....まあいいわ! とにかく

軽く見学してって! 『阿波根(ァハごん)』もそれで《....パンっ!パンパンっ!!!》・・・・っ!!??

・・・・バっカっ!! 見学の子の前でそんなもんブッ! ぱなすヤツあるか〜〜〜っ!!!」

「....黙りなさい。私の事は『うみこ』と呼ぶようにとあれほど!!」

 

私服先輩がどこからか拳銃を取り出して金髪先輩に向ってブッぱなしておりました....もちろん

モデルガンで弾もプラスチックだろうけど....お!? それは『FN5-7』!! さり気なく出しますねー!!

 

「ん? ほう!! 貴方、詳しいですね....! まさかその方面で心得のある方なのですか....?」

 

うわ....『うみこ』先輩喰いついてきた....! 顔もどアップなんですけど....

 

「いえ....そんなには....ただ写真で見たりネットで検索したりで....特別詳しいわけでは....ハイ」

「あ〜っ! ダメー!! 平沢さん! その話に乗っては〜〜〜っ!!」

「あーダメだこりゃ! 青葉諦めな、こうなった『うみこ』はさ〜!」

「え〜っ!? なになに!! 武器のはなししてんのっ!!」

「はじめ〜! アンタまで乗ってどないすんね〜んっ!」

 

「この拳銃はベルギーのファブリク・ナショナル・エルスタル社という会社で開発されたもので、口径が5.7mmなので5-7、会社名の略称がF.NとなりますのでFN5-7と名付けられたそうです。

因みに口径の5.7mmは英語ではFive-Sevenと表記されますので綴りの最初と最後を採ってFNとも

言うそうです。弾丸の形状も普通の拳銃の弾と違ってライフルの様に先が尖っています。これは

同社の短機関銃、『P90』とも互換性があり....」

 

「P90!! うわ〜! わたしもってる!! いま見せてあげるねー!!」

「ちょっとはーじーめ〜っ!! なにはしゃいでるねんっ!!

....ゴメンな〜! ヘンなのバッかりで〜!!」

「え、ええ・・・・」

 

ウミコさんの薀蓄が止まりそうにないんですが....突然現れたショートカットでボーイッシュな先輩もこの雑談に喰いついて何か持って来るそうだし....ツッコミを入れているもう一人の先輩は何故か関西訛りだけど....でも今ウミコさん短機関銃て言いましたよねー? 確かに『アレ』の形状は独特で小型なんだけど、そんなモノまで学校に持ち込んでるわけ?? しかもひょっとしたら....

 

「....色がピンク、とか?」

「....ほほう、貴方! 『....GGO!』も嗜んでおられるので??」

「....いや、タブレットでネットのゲーム実況をチェックしてるだけです....はい」

 

ウミコさん相変らず顔がチカいなー....この先輩、フルダイブFPS『ガンゲイル・ オンライン』で

遊んでるのかなー? あんなの一般の高校生が参加できるの??

 

「はいコレ!! いいでしょ〜っ!! これ『ピンクの悪魔!』略して『ピーちゃん!』

仕様なんだー!!」

 

はじめ! て呼ばれている先輩本当に持って来ちゃった....しかもピンクだ....

これもモデルガンだろうけど高くなかったの??

 

「『デザートピンクの悪魔』とも言いますね。篠田さん、お持ちでしたか!

私もノーマルタイプを購入するつもりでしたが別の物を購入してしまったので予算が尽きて

しまいました。今度お貸し下さい」

「いいよー! そういやGGOでのチーム戦『スクワッド・ ジャム』でこの銃撃ってた小ちゃな

ピンクの子って女子大生ってウワサあるけどホントかなー!」

「高校生でトーナメントに参加している子が居るとも噂されています。同じくGGO内での

あの『バレット・ オブ・ バレッツ』本戦でも決勝まで登りつめていたあの『シ○ン』という

スナイパーと、同じく決勝で対決するはずだった『キリ▽』、あの二人は共に女子高生では

ないかとネットでは囁かれていますし」

 

うん、俺もそんな噂を聞いたことがある。でもあのゲームのソフトもハードも結構値段がするん

じゃない? フルダイブ型のゲームはここ数年盛り上がりを見せているけど一般の高校生でも

以外と遊んでいたりするんだねー!

 

「でも『キ△ト』さんの振るっていたのはライ....光剣でしたよね? あれでよくも弾丸を跳ね返し

てましたよねー」

「キミっ! ガンゲイル観てたの!? あの『キリ子ちゃん!』凄かったよね〜っ!! 特に決勝前の

あのボロいマントとの剣での対決!! 銃で撃ち合うゲームなのに魅入っちゃた!! あの黒いロン

毛を振り乱しながらの死闘! シビレるぅ〜〜っ!!! あ! それもあるから持ってこよっと!!」

「チョい! はじめっ!? もお....後輩ちゃんも二人を焚きつけんどいてやー!」「はい....」

 

つい夢中になって関西先輩に叱られてしまいました....

 

 

 

 

 

この中の銃に関する記述は別サイト『MEDIAGUN DATABASE」様の情報から『コピーレフト』致しました。言い回しを変えておりますが、なるべく正確な情報を転載しようと心掛けております。省略している部分の方が多いので、より正確な情報を得たい方は上記のサイトに直接お伺いすることをお勧めしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 



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おえかき!!

 

 

 

 

 

「平沢さんもご存知でしたか! 実はこの銃もその『◇リト』さんがメインの武器『フォトン・ ソード』のサブとして持っていた物と同型なんです。元々P90のサイドアームとして開発されたという経緯を経ているので不思議な因縁ですね。私もあの中継で愛用の拳銃が使用されているのを

観て驚きました。どうです?」

 

....うみこ先輩がさっき撃ってた『愛用』モデルガンをオラに手渡してくれた....はあ、確かにカッコいい! あの『幻の部室』に置いてあったクラッシックなのもいいけど銃ってなんかオトコノコの

気持ちをくすぐるよなー! 憂や姉ちゃんにはわからんだろうけど....でもここのうみこ先輩もはじめ先輩もキレイな先輩なのになー....かなり残念?

 

「これ! どお!! ホラ! 振ると音もするんだよー!!《ブォンブォンっ!!》貸して欲しい?

イヤーそうか! そうだよね〜!! じゃハイっ!!」

 

はじめ先輩からも光ってる剣を貸し与えられてしまいました...もちろん本物のビームが出ているわけじゃないLEDで光らせてる模造品だけど....う〜ん....たしかに振り回したくなる....ここの部活って姉ちゃんよりオレの方が向いてね??

 

「うわ〜! この二つ揃えると『キリ子!』ちゃんじゃん! 誰かあの衣装作ってないかな〜!!」

「・・・・ あの、それ....ある....」

「「「へ??」」」

 

向う側の机からチラっチラっ! とこちらを伺っているなんかおっとりとして伏し目がちな長髪美人の先輩が会話に挟まってきた。照れ症なのかな?

 

「ひふみせんぱ〜い! ホント!? うわ〜!!」

「滝本先輩まで....こらまいるわ〜!」

「ひふみ先輩ってコスプレが趣味って言ってましたもんね....」

「....うん。私も....あの中継を観て....ファンに....なったから....!////〜〜〜〜っ!!!!」

 

あらあらこのヒフミ? 先輩顔を覆って仕舞われました....コスプレが趣味といっても....こんなに

照れてて着られるものなの? あれ? うみこ先輩はー?

 

「ああ阿波根? なんか対抗心に駆られたんじゃない? 何か持ってくるってさー! あ〜あ部活に

一番厳しい阿波根にここまでさせるなんて! あんた中々見所あるじゃん!! ヒヒっ!」

「コウちゃん! それじゃ困るのよ〜! 毎日これじゃスケジュールに合わなくなっちゃうじゃ

な〜い!!」

「んー? そうなの? りん??」

 

またも美人の先輩が割って入ってきた。なんか高校生というよりOL?みたいで清楚で大人びた

ひとだなー....

 

「そういえば桜さんは? 桜さんには今日までのプログラムのノルマをここでこなして貰わないと。うみこさんまた激怒するわよ?」

「ああ....ねねっち....遠山先輩すいません。クラスが違うので連れて来られませんでした....あはは....」

 

はあ、女子の部員てまだいるの? ここってほんと女子の巣窟なんだねー! でも姉ちゃん向け

じゃないよな....技術も問われるみたいだし、あのウミコ先輩も怒らせたら恐ろしそうだ....

 

「....ねえ、その、平沢....君? 着て、貰える....かな?」

「....ハイ??」

「わ〜!! みてみたい!! 平沢くんカワイイしいいでしょ〜?!」

「あぁあ....このコが着るならウチも....チョっと興味あるわ....」 

「飯島せんぱいまで....アハハ....」

 

えええ....しかも入部したらもれなく先輩方のコスプレ趣味にもつきあわされるの? いや俺は....

そちらの方は姉ちゃん向きかも....

 

「そうだ! ジャーン!! これももってきたんだー! どお!?」

「もういいかげんにしいやっ!!」

「んもぉ〜いいじゃんユン! ついでだし〜!!」

 

そんでもってまたもはじめ先輩がなにか三日月の飾りを付けた短い杖のようなものを振り回して

おります....ん? コレ....日曜日の朝の!!

 

「そう! 『魔法少女! ムーンレンジャー!!』のだよっ!しかもボイス機能付き!!

じゃ! いっくよ〜っ!!

《・・・・ メガ粒子〜! レクイエム〜!! シューーーっトォ!!!・・・・っ》!!!

・・・・・・・・うわ〜っ! やっぱり! イケル〜〜〜っ!!!」

 

「わあ....ウチもやってしもうた....」

「....わた....しも....!////〜〜〜〜っ!!!」

「やっぱやっちゃいますよね〜! て、平沢....さん??」

「....ああ....はい....」

 

思わずオレも....ついついつられて胸の前で両掌をハートにして前に突き出すポーズを決めてしまいました....オトコノコなのに....いや! ただ憂につきあって観てただけだよ! 憂は小学生のころからニチアサの魔法少女物のファンでグッツだって持ってるし! ....てかもともと俺が観てたのにつきあって一緒にはまったクチだけど....姉ちゃんわって? やですよ〜! ウチのユイが日曜の午前中

起きてるワケないじゃないですかー!

 

「....わあ〜〜〜っ!! やっぱコノコっ!! この子がい〜〜〜っ!! ねえねえ〜!! キミがこの

部活に入ってよーーーっ!!!《ダキツキーーーっ!!》」

 

「あああ・・・・ はじめさんっ!!」

「あかんっ! その子は男子やで〜っ!!」

「いーじゃんいーじゃん!! はいってよ〜〜っ!!!」

 

ああ....結果、ここでも抱きつかれて仕舞いました....この先輩も....身長はオレよりある方だし

その《ムギュギュー!!》....ありますよねー・・・・

 

 

「....わあ〜あおっち! ナニこれ?? どおしちゃったの〜?」

「....ああ、ねねっち....これは....アハハ!! て遅かったじゃないの〜!!」

 

....いつのまにか『ねねっち』サンて子も部室に顔を出している....こんな姿が初対面なんて....

 

「あ〜あおっちゴメンゴメン!! なんかクラスで話しこんじゃってさ〜!! てまだうみこ先輩来てないのー? ヤッタ〜ラッキー!! クっクっク〜!これで堂々とサボれ『....さくらさん』....!!

....ヒィッ〜っ!!??」

 

....そのさくらさんの背後から、部室に戻ってきたウミコ先輩が静かだけど凄みのある声で名前を呼んでいる....何かスゴい物担いでません??

 

「....貴女という人は....さくらさん。今日中に貴女に課せられた全てのプログラミング、終らせて

頂きますよ....残業も厭いません。さもないとコレで《ガシャっ!》貴女のドテッパラに風穴が空く

事になります。宜しいですね....?」

「わ〜っ!! ナニっ!? ソレっ?? じゅうとうほう違反ダ〜っ!!」

「阿波根....それって....やりすぎ....」

「うわーーーっ!! さすがうみこさん!! やるぅ〜〜〜っ!!」

「....なんやん? あのデカいの....??」

「アハハ....さあ....」

「まさか....この流れでいくと....『PGM HecateⅡでは....」

「平沢....君、あれ、『Barrett M82A1』....」

「エエ!? あの超有名な!?」

「うみこさんまで....もう....」

 

コレが!? 50口径セミオート対物『ライフル』っていうけどもうバケモンじゃんっ!! 全長150cmぐらいあるらしいしモデルガンでも実物大ってスゴいよなー! 映画やアニメで引っ張りだこなわけだわ〜! それにコレって射程距離2000m以上もあるんだよねー? アッチの国では一般人でもコレを買うことができるって聞いたことあるけど....まさか本物? こんなもんまで学校に持ちこんでくるなんて....ドコに置いてあったのさー!!

 

 

「・・・・ 《パンパン!》はいはい! みんな! おしゃべりはこれまで!! 今日もこれから部活

終了時まで作業に勤しんで頂戴ね!」

「「「「「は〜い!!」」」」」

 

遠山? 先輩がシメに入った....これからお仕事モードになるのかな?

 

「....では。平沢さん。今日の処はこの辺で....さあ、さくらさん。貴女は私の隣りの机で。みっちり

といきますよ」

「う〜〜〜!! 部活なのにブラックだーーーっ!!!」

「じゃあ先輩! わたしたちも!! 平沢さんもお疲れさま!」

「ええ....じゃ、平沢....君? また....」

「ええ〜〜っ! コノコにキリ子ちゃんの格好させたかったのにーー!!」

「はじめ〜! もうアホなこと言わんと机にもどりやー! じゃあ後輩ちゃん! あとでな〜!!」

「ああ! 気が向いたらまた来て! こんな風におもてなしするから!! ヒヒっ!」

 

「あ、はい! お世話になりましたっ!!」

「あ? 平沢さん? ちょっと....!」

「はい?」

 

ここにいる皆さんとお別れを言っていたらこの遠山さんという先輩に呼びとめられました....

部室とは別に自販機のある休憩所で話をするんですか?

 

「ええーと! 私、副部長の遠山といいます。挨拶遅れてしまって御免なさいねー! 一寸観察させて貰ってたの....どうも....平沢? くんがいると....ああなっちゃうみたいね....うちの部活って結構時間に追われる処があるのでああも雑談で盛り上がってしまうと....これまでも男の人が部員になるとどうも仕事にならなくなっちゃって....その、御免なさいね? 」

 

遠回しに言ってるけど....なんとなくわかるかなー。それもあっていつも部員を募集しているのか。

 

「いえ、もともと僕が入部するわけでもなかったですし、ウチの姉もおそらく無理でしょう。

見学させてもらったのにすみません....」

 

「いえいえ! むしろ悪いのは私の方です! せっかく雪ノ下さんから直々にお話が来たのに....

申し訳なくって....」

 

ああ、あの奉仕部の雪ノ下部長からこの遠山先輩に直接話が行っていたのか。俺の姉ちゃんのために先輩方が手を回してくれてるなんて....こっちが申し訳ない....

 

「....でも、あの雪ノ下さんが!....わざわざ私のクラスに出向いて私を呼び出してくれるなんて....! この高校に入学して以来、三年間同じクラスになった事も無かったしお話しをする機会も無かったのに....! 平沢君! ありがと〜〜っ!!

・・・・ コウちゃんもいいけど雪乃さんも....!イヤ〜〜〜っ////!!!・・・・♡♡♡♡」

 

あのお....この遠山先輩ってひともその....まともなタイプだと思っていたのに....この部活も女子ばかりというのも....結構私情をはさんでいたりして....お役にたててなにより....

 

 

 

 

 

以上、『NEW GAME!』の舞台を高校の部活動に置き換えて、さらに『ソードアート・オンライン・ガンゲイル・オンライン編』&『SAOオルタナティブ・ガンゲイル・オンライン』の話題を織り交ぜてお送り致しました。入り組んでいて読みにくい処もあったかもしれませんが、筆者の趣味(ニワカ)をつらづらと書き連ねている内にこんな内容になってしまいました....

 

 

 



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おえかき??

 

 

 

「はい....ここが彫塑(ちょうそ)部ね....」

 

姉のため....新たな部活を求めて三万歩....ここの部室の場所も入り組んでるなー! この部活も廃部寸前ではないみたいだけど部員数がギリギリ4人だから或いは、てなわけで紹介を受けて来てみました....さてと、

 

《コンコンコン》

 

『どおぞー』

 

おお、中から男の声がした。今度は男女混合の部活なんだな?

 

「失礼しまーす....」

 

「おお、いらっしゃい。まあ自由にしてくれや。お前たち、誰かジュースでも買ってきてくれ」

 

「わかりました! ブチョー! サン!! エヘっ!!」

 

彫塑部の部室の中もこの前の絵画部と同じぐらいの大きさだけど広く見えるなー。キャンバスも

二つ立て掛けてあって椅子も人数分だし。で、先ほどの声の主とも思しきブチョーさんは....部屋の

側面のソファーの上で布団にくるまって寝ておいででした....

 

「コレちゃん? いいの? ありがとー! わたしは....」

「おう、面倒だから全部りんごジュースでいいわ」

「リョーカイしました! ブチョー!? 行ってくるデース!! キィーーーンっ!! ・・・・」

 

んで、女子部員が二人。一人は黒のショートボブ、髪の左側にはうさぎのヘアピンをつけている。ジュースを買いに行ってくれているもう一人は....本物の金髪!? 足までスラッと伸びてるサラサラヘアーだ! なんかスゴい!! 顔もアチラっぽいし....でも頭のテッペンで前髪をチョン! とまとめているのは....微妙に残念?? それにまだ小学生ぐらいにしか見えないんだけどー??

 

「えええと....すみません」

「いえいえ! いいんです! 貴女が見学希望の平沢さ....制服が....ええと....」

「....ハイ、男子です。僕は見学希望の平沢ユイの代理で来ました。弟のメイです....」

『ええー! 女子じゃないんですかー?』

「.... 内巻くんっ! 失礼でしょっ!!」

 

ん? もう一人男子部員がいたのか。部室の左奥にドアがあってその奥から声が聞こえてくる。倉庫かな?

 

『んもー!女子って言ってたから楽しみにしてたんですよー!これではボクの計画が台無しに....」

「ケイカク??」

「....チョッ!....とっ!? ウチマキくんっ!? なんてコト言うのよっ!! この子に誤解されちゃうじゃないっ!!!」

 

ナンだ? 計画っていうのは....奥のドアからそのナゾの計画の立案者が姿を現した....まあ普通の? 髪を軽く茶に染めて? ブレザーの下にフードを着た今時の男子....先輩ですけど?? ・・・・

まさかっ!ハーレム??ハーレム計画なのかっ!?!?そういやこのショートの先輩も金髪ロングの子も結構可愛いし....随時募集を掛けているわけではなさそうだけどあわよくば....てコト?

....ダメだっ! コンなトコに姉ちゃんを入れるわけにはいかない!! ここはひとつ退散と・・・・!!

 

「折角モデルになってもらおうとしてたのにー、だいなしですよー! て、キミ....?」

「....内巻くん?」

 

はぁ....モデルかー....! ったくややこしい言い回しを....! ん? この内巻って先輩オレの顔を

ジー・・・・と見てめてんですけどー・・・・??

 

「・・・・ キミ! そこに座って!! ほら宇佐美さんもキャンバスを!!」

 

「「へ??」」

 

「これからキミをモデルにするから! そこに掛けてて! んー? その制服では....宇佐美さん!

宇佐美さんの制服をこの後輩に貸してあげてください! 着替えなら奥の....!」

 

「・・・・ ななななななななナニっ!! いってんのよ〜〜〜〜っ!!! そそそソンなことっ!

できるわけナイじゃないのーーーーっ!!!」

 

オレがモデルって....女子の制服で?? てオイ!! このセンパイナンてコトいいだすんだーっ!! 宇佐美? 先輩ってひとももう顔がマッ赤だしー! 部長さんは....! 例のソファーで寝息をたててました....ブチョーサン!!!

 

「....おおおう、にぎやかだなー....ん、着替えなら制服に限らないぞー、奥にあるメイド服でも

バニーガールでも....ふわああああ・・・・」

「部長ーーっ!!」

 

えええ....いまは姉ちゃんより俺の方が危険なの??....やっぱり退散しょーと....

 

「もお〜、わがままですねー! 仕方ありません。そのままでいいです」

「内巻くんっ! 平沢さんに失礼でしょっ!!??」

「オオー! 女子の制服に着替えるんデスかー! なんならコレットの制服貸してあげるデスねー! チョット小さいからピチピチのギャルになるデスよー!!」

「もおーっ! コレちゃんっもーーーっ!」

 

あああ....この部活って....この宇佐美先輩以外には問題があるみたいだなー....

 

「あ! コレ! ジュース買ってきたデース! じゃブチョーさん! 新人ちゃん! 宇佐美センパイ!

えーとお....」

「ん? どうしたの」

「アハハ〜! ひとつ忘れてきたデス! いつもの癖デス!!」

「じゃ、宇佐美さん、 半分飲んだらボクにください。 ゆっくりでいいですよー」

「・・・・ ああああああああ・・・・ そそそそそそそ・・・・えええええええええ・・・・」

 

内巻先輩の台詞に今度は....肝心の宇佐美先輩の言動が不審だ....えええと....

 

「えー?いやなんですかー?しょーがないですねー、じゃコレットさん、半分飲んだらボクに....」

 

「!!・・・・ いやややややややややややや!!!! ....しょ! しょうがナイなー・・・・!

そんなに飲みたいなら・・・・ ホラ! さきにのんで・・・・・・・・////////」

 

あ・・・・ なるほど・・・・ そーいうことねー・・・・ 宇佐美先輩が赤い顔をしながらまだ

口をつけてないジュースを内巻先輩に手渡してるし・・・・ この様子を観ていたブチョーさんと

コレットさんも、

 

『....GJ!』『テヘっ!!』

 

って顔してる....計画通りなわけね? この部活ってこういう楽しみかたもあるのかー。でも、なんで『彫塑』部なんですかー? 内巻先輩も俺をモデルにして油絵を描こうとしているし、これじゃ普通の『美術部』と変わらないじゃないですかー。なんて結局モデルになりながらも質問してみる。

 

「ふむ、ここはもともとオレ一人で活動していたんだ。部室があれば一人でのんびりできるし、

この部室の奥には隠し部屋もあるから授業サボるのも便利だしなー」

 

そんな理由ですか....でもたしか部活って4人からでしたよねー? 部長さんが一年の時の部員は?

 

「ああ、他の部員は俺のクラスメイトの3人から名前だけ借りてたんだわ。あとは一人でこの部室でのんびりと自主活動をしてたってワケさ!」

 

なるほど....いろいろやりようがあるわけなのね....

 

 

 

「部長って中学の頃から部長ですよねー」

「そうね....なんの成長もしてませんけど!」

「ソコがいいデス!」

「ん? どういう意味です?」

 

「俺たちは中学のときも『美術部』で一緒だったんだ。中学のときは部員も俺たち4人だけでのんびりしててよく眠れてたんだー! だがこの高校に入学してここの『美術部』を覗いてみたんだが....俺の居場所がなさそうなんで入部するの止めたんだわ、ハハっ!」

 

「ここの美術部はガチですからねー!」

「単にソファーで寝転べなかったからじゃないですか....?」

「ハイ! おかげでこのソファーでブチョーとソイネできマス! 気持ちいーデス! どうです? メイちゃんもー?」

 

ええ....高校でソファーで異性と添い寝って....今でも時々憂や姉ちゃんが深夜寝ぼけて俺の部屋のベッドに潜り込んで結局朝まで気が付かずに....てことあるけど放課後に部室で....

マズくありません??

 

「.....コレちゃん!」

「宇佐美センパイも遠慮なく潜り込むデス! 4人でソイネしまショー! あ! メイちゃん入れたら5人デスねー!!」《バっ!!》

 

....冗談じゃない! ウチのユイをこんなフシダラな部活には....! て冗談なんだろうけど....しかしながらまたレイによって?....椅子に座っているこの俺にコレちゃん? が抱きついてきました....はあ、もお慣れた。でもこのコレットさんならうちのユイやウイに抱きつかれてるのと変わらん感じだなー? あまり異性を感じさせないからかも。でも同学年なんだよね・・・・

 

「チョッとコレちゃん!! 平沢さんに迷惑....」

「....ぅわあ〜〜〜っ! ソレっ! それいいですっ!! そのままでいてください!! このポーズのまま描き続けますよーーーっ!!!」

「へ???」

「ハイ! イイデスっ!」

「内巻くんっ!!??」

 

えええ....このままモデルを続けるの....? なら話はべつ....なんかからだが火照ってきた....だってこのコレットさん、椅子に座っている俺のクビに両手を回して頬と頬まで触れ合いそうなんだよ....! 近くで見てると綺麗だし息もかかるし....あとどんぐらいかかるんだ....!! とりあえず話題をそらして....

 

「....『彫塑』ってなんですか? 彫刻と違うんですか?」

 

「まあ、彫刻は美術部でも扱っているしなー、特別ここでやることじゃない。ただ、彫刻って木材だの大理石だの『掘り出す』てイメージだろ? 彫塑だと『練り上げる』て感じかな。ま、そのうちわかるさ」

「はあ....」

「はい! 出来ましたよー! デッサンだけど」

「OH! デキましたカ! 見せてほしいデ〜ス!!」

 

あれ、結構はやい....中学のころから美術部だから慣れてるのかも。んじゃ俺も見せて....

 

「....あー、平沢さんは....覚悟してくださいねー....」

 

宇佐美先輩? ま、とりあえずとその内巻先輩のデッサンの腕を観てみましょうか? ....て、

 

「・・・・・・・・ ダレです??」

 

「ああ、これですかー?『俺の二次元嫁』No.263と264ですよー。あ! でもひとつのキャンバスに二人の『嫁』が収まるのって初めてかもしれませんねー! ね? 宇佐美さん?」

 

「....あああ、平沢さん? 気にしないで....このヒト昔からこうだから....」

 

 

 

 

 

 

 



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ねりもの!!

 

 

『俺の二次元嫁』....これが....? キャンバスには肩まで髪のかかっている少女と金髪ロングの美少女が描かれているけど....『肩までショート』の娘の頭には左右ケモノの耳が生えていて、『金髪の娘』の方の両耳の先はとんがっている....服は『肩まで』のが白のブラウスの上にフリルを付けた黒のエプロン? にさらにコチャコチャヒラヒラしたものを足したスカートを履いて....ゴス□リ?? 『金髪』のは肩をはだけた白いドレス? のような露出度が高い服を着せられてる....しかもともに....アニメ顔....はあ....

 

「どうです? この二人! よく描けてるでしょー! 平沢? くんの顔を見てたら新しい『俺の嫁!』のインスピレーションが浮かんだんです!! これで女子の服装をしていたら....! どうです? 次はこの奥にあるモデル用の衣服を着てモデルになって....」

 

「?・・・・ !!っ ・・・・ わ〜〜〜〜!! ダメダメダメ〜っ!!! もうこれ以上平沢さんに迷惑かけちゃダメーーーーっ!!!! ・・・・」

 

ホンとめいわくだー!! モデルの結果がこの絵とはーーー!!! モデルも要らんじゃん!! ナニ? ここは『彫塑?』部でしょ!? こんなアニメ絵とどんなかんけーがあるのさーーー!!! て言おうとしたら(言わんけど)宇佐美センパイのほうが顔を真っ赤っカ! にして怒ってる....しかもオレのほうにも顔を向けて涙目でム〜! としてる....えーと....ナンデ??

 

「おおおー! これは以外な進展だなー!!」

「デスねー! 宇佐美センパイにオモワぬライバル! しかもソレはオトコノコ!! ホンと二次元の世界が実現するデース!!」

 

「....ちょちょちょちょっ....!? チョっとっ!! ブチョーっ! コレちゃんっ!!ナニいってっ....!!!」

 

「ちょっとまってください?二人とも!ボクの夢は現実の女の子を絵画の上で理想の二次元嫁に変化させて、それを三次元の世界に実現することですよー? このデッサンはまだその前段階です」

 

「えええと....ハイ???」

 

・・・・ ナンかもうナンだか....内巻先輩にはさらにモデルをたのまれ、その様子に宇佐美先輩には睨まれ、ブチョーとコレさんには囃したてられ....オトコノコ? 二次元? 三次元?? もうこんがらかってきてるし来るんじゃなかった・・・・

 

「おう、内巻、もうそろそろお前の計画を明かす時がきたようだな。みんなに奥の物見せてやれ」

「はあ、アレを、ですか?」

「オー! いよいよ見せてくれるデスね!!」

「....なにを....ですよ....」

「・・・・・・・・」

 

....なんだかもうどうでもよくなってきた。つまりこの部活での問題点は、この4人だけで完結してるってことじゃない? 奉仕部の誰かが言ってた「人間関係ができあがってる」てこーゆうことか....でも『計画』が気になったからまだ付き合うけど。

 

「しょーがないですねー。ほら、ここへ来て見てください?」

「この棚...引戸に鍵が掛かってるって....」

「....オー! ソレがソノ鍵ですネー!」

「じゃ、開けますよー!」《カチャっ! スススー!》

「....えええと、コレ....?」

 

内巻先輩が俺たち3人を奥の倉庫に招き入れて壁の側面に並んでいる棚の中の木製の引戸を開けた....ああ成る程....そうでしょうよ....

 

「....なに? コレ?? この人形たち....!?」

「見ればわかるでしょ? 『俺の嫁!』のフィギュアたちですよー」

「ウワー! たくさんデス!!」

「これ、普通に売ってるの....ですか?」

 

棚の中には十数体のいわゆる『美少女フィギュア』が横一列にならんでいた....もう驚けない....一応無難な質問もしてみた....答えはおそらく....だろうけど。

 

「なにいってんですかー! 『俺の嫁!』が普通にショップで売られているわけないでしょー!!」

 

....ですよねー!!

 

「....じゃあ! これ、全部....内巻くんが作ったの!?」

 

「そーですよ! さすがに中学のときは技術もまだまだでしたけど高校に入ってこの作業場を部長から提供してもらってから『俺の嫁!』の三次元化がはかどるようになりましたからねー!」

「OH! ブチョッ!! GJデス!!」

 

そういやこの倉庫には机もあるけど上は片付けられてるし....ここでかな?

 

「作業を見られても別に困らないんですけど部長が片付けとけって! まあいいですけど?」

 

まあ学校で美少女フィギュアを作ってるなんて他に知られたら体裁悪そうだしなー! でも仕上りは良く出来てるみたいだけど?

 

「そうですか! じゃコレ見てください! これは渾身の一作なんです!!」

 

内巻先輩から20センチぐらいのフィギュアを手渡された。んーコレ、さっきのデッサンの服と似たようなデザイン....かな? 髪はショートボブで白ブラウス黒エプロン?スカートも黒で膝上、白いニーソを履いていて靴はパンプス? の立ち姿。右手にはりんごを乗せたお皿を掲げている....ん? このヘアピン....?

 

「これ、中学の時に宇佐美さんがモデルをしてくれたでしょ? その時のデッサンを使った作品なんです! どうです? よく出来てるでしょう!!」

「....えええと....これ....あの時の!?」

 

宇佐美先輩もこのフィギュアを喰い入るように見始めた。自分がモデルと言われりゃそうなるかな?

 

「オオオ〜! コレ! 可愛いデスね〜! 内巻センパイ! ヤルデス!!」

「え、え〜! と....ええ....これわたし....えへへ〜....////////!!」

 

ああ....宇佐美先輩トロかされてますね....てかチョロいんですね〜....なんか相好? がユルユルなんですけど....わかりやすい先輩デス!

 

「でもスゴいですねー! 市販品とは違う質感ですけど細いところも良く作り込まれてますし」

 

「ああ、あれは量産品ですから。コレは一からパテで捏ね上げたものです。重さも少しありますからね」

 

ああ、だから『彫塑』部! なワケなのかー! 間違ってはいない部活名だしコレを売りにするつもりかな?

 

「....でででも! これって....服....ぬがせられない....わよね....??」

 

宇佐美先輩、妙なことを仰る。女子ってそんなこと....自分がモデルとわかったら気になることなのかな?

 

「まあこれは、服の部分もパテで塗り固めて作ってますからねー」

 

「そう、よかったあ....」

 

「でもまあ、下から覗いて貰えれば宇佐美さんがあの時履いてたのと同じ柄の....」

「・・・・っ! へ?? えっ!? 《グァシっ!》・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・っ!・・・・・・・・エェエエ〜〜〜〜っ!!!! ・・・・!」

 

宇佐美センパイがあわててフィギュアをオレから奪い取った....! そして『下』から....またまた顔が

沸騰して捲し立てる!!・・・・

 

「・・・・ ななななななななナンてモノつくってクレたのよ〜〜〜〜ッ!!!! こんなモノ!

ヒトに観せられないじゃないのーーーー!!!!////////・・・・ 没収っ!!!」

 

「えーーーーっ!! なんでですかーーーーっ?? オレのヨメですよーーーーっ!! かえしてくださいっ!!」

「ダメダメダメダメ〜〜〜〜ッ!!!! かえさないんだからーーーーっ!!!!・・・・』

 

 

 

・・・・ はあ、このやり取りしばらく続きそうだからコレさんと倉庫から出てきたけど....ここは

ダメだ。楽しそうだけどコレじゃない!!

 

「おうお疲れさま。どうだあの二人は?」

「ダメダメですネー! 中学から成長してナいデス!」

「ははっ! そうか! まあその平沢? 君、ここはこういう部活だ。ちょっとばかし君たちの要望とは違うとこだったろー!」

「ええ....はい??」

 

....てコトは....ここって、あの二人の青春ラブコメを暖かく見守る部活なの....!? 時にはちょっかい出して二人の距離を縮めるとか??

 

「まあそんなとこだ。せめて俺が卒業するまでにはあの二人をくっ付けさせたいんだがなー!」

「まだまだミチは遠いデス! ねーブチョ!!」

 

ナンてブカツだっ! とはいっても....コレはこれでありかも....ここの部活の実績はどうかは知らないけど部として存続できるなら文句は無いか。

 

「実績? んー、まあこれだ。ほれ」

 

部長がソファーの下から....数枚重ねられているキャンバスを出してきた。見せてもらうと....

 

「....これ、凄いですねー....」

「ああ、全部俺の絵だ。幽霊部員の署名も付けてコンクールに出したんだ。まあ賞は取れんかったがなー、コンクールに出した、てことで実績は積んである。これでこの部活にも問題は無いだろう! ハハハ!」

 

いやでもこの絵って....なかなかのモンですよ!! 肖像画が四枚、そのモデルは....

 

「アー! これコレットですネー! 可愛いデスー!!」

「これは内巻先輩ですね。実物よりも美形に描いてますけど....」

「ンー? この絵は....誰デス??」

「おう!俺の自画像だ!」

「修正し過ぎデス!!」

「なんだとー! ハッハッハ!」

「えーこの絵は何です?」

 

ん? 奥の倉庫から痴話喧嘩を終えて出てきたのかな? 内巻先輩が四枚目の絵を取ってジー・・・・と見つめてる。

 

「....この絵! 部長っ! この絵をボクに下さいっ!! ボクの嫁にしますっ!!」

「「「「へっ???」」」」

 

....コレさん内巻先輩ブチョーの肖像画ときて最後の絵は....内巻センパイ気付いてないの?? 後ろでは先程まで内巻先輩とケンカしていた宇佐美先輩がモジモジしながら気づいて貰いたそうにしてるけど....

 

「どうです! 宇佐美さんこれ! 今度はこの絵をモデルにしてフィギュアを作りますよー! これなら宇佐美さんも文句無いでしょうからねー!!」

「....えー、そう、....フン! 好きにしたら!? ....うん....////」

 

・・・・ もうこのへんで部外者はオサラバといたしますよー....コレさんと部長さんに見送られながら部室をあとにしたけど....それにしてもこの手の喧嘩? って見守るほうも結構疲れるもんなんだねー。このひとたちは面白いのかも知れんけど。でも部長さんの絵にはなんかとても暖かいものを感じたよなー....みんなお互いが大切なんだ。中学の頃からの仲間ってはなしだったし....さて! 俺も大切? な姉ちゃんのため! 残りの部活へと足を引き摺りますかね! はあ....

 

 

 

 

 

以上『この美術部には問題がある!』からでした。公式には登場人物の『内巻すばる』には『フィギュア製作』の設定はありませんが(アニメのみ視聴)ここでは筆者の独自の設定とさせていただきます。

 

 

 



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のりもの!

 

 

 

 

 

もはや、『けいおん!』のあとかたもありません・・・・

 

 

 

 

「はあ、けっこう歩くなー・・・・」

 

俺は今、正体不明のとある部活へとむかっている。生徒会でも、この部活をリストアップしてくれたあの奉仕部の雪ノ下先輩でさえも全体像の把握が不可能と言っていた部活の部室へとあゆみを進めているのだ。でもここって一応高校の敷地内なんだよねー? いつまでたっても部室にたどり着けないんだけど....この道だって校内通路じゃなくて密林の小径みたいだし....野生の肉食動物が出て来たっておかしくないじゃん!! 部活の名前だって『フライング・パンツァー部?』だし....なんか異次元断層に潜り込んでんじゃない?? 引き返えそおかなー....ん? 森が途切れてきた。この先か? ふう....森を抜け出たはいいけど....なに? ここ??

 

「ただっ広いなー・・・・ 地面は....アスファルト....かな? ずぅーと一直線に先に伸びているし....で、部室はドコなの?? 連絡先に掛けてみるか....」

 

俺がケータイを取り出して見学先の部員に連絡を取ろうとする。どういうわけかあの密林の中では圏外だから森を抜けてから、て話だったし。

 

「....はい、平沢です! いま森を抜ました。ここは....」

『ああ、君の居場所は既に把握している。今迎えを行かせたからそこで待機していてくれ。以上』

 

把握? 通話も切れちゃったし....ん? 広場の向こうから何やら車の音がする? ここの部活ってハイヤーで出迎えなの? ....え、ジープっぽいのが見えてきた....うわ....これまたクラシックなのだなー! そのテの映画によく出てるのじゃない? フロントにはタイヤも乗せてるしカッコいい!

 

《・・・・ キュー!》「ええと、貴女が奉仕部から見学希望の依頼をした、平沢、ユイ殿ですね!」

 

「いえ、その代理の弟のメイです....」

 

車から身長は俺ぐらいで髪の毛モシャの女子が降りてきた....このやりとり何回やったんだろう? 最初から代理のオレが訪問すると連絡しとけばよかったのに....

 

「いや、これは失礼しました! 平沢、メイ殿ですね! 自分、名前を秋山! と申すものであります! 以後お見知り置きを! では平沢殿、乗って下さい!」

 

《キィ....ゴンゴンゴンゴン・・・・ スルスル〜!!》

 

おお! オープンカーに乗るのはじめて! 見た目は無骨だけどシートは心地いいし! ただ....ドアが付いてないんでこれはコワい....これはどこのメーカーのジープ?

 

「平沢殿、これは『ジープ』ではござりません! でもいま平沢殿が言われていたのは商標登録名としてのジープではなく一般名としてでありますね? まあ広い意味ではこの車両もジープと呼ばれるものでありましょう! これはフォルクスワーゲン社の『キューベル・ワーゲンTyp82』であります! キューベルと呼ばれるこの種のタイプの車両では大戦中最も多く製造された物でありまして、今でもレストアされながらもホラ! この様に現役の車体もあるのですよ! どうです? 乗り心地も宜しいでしょう!!」

 

そうだ....ジープって某複合自動車メーカーグループ内のブランド名だった....この秋山さんてひともすごいねー! これを自分で運転するんだから! 四月に免許を取った3年の先輩なのかなー?

 

「いえいえ! 自分はまだ2年生であります! でもこのぐらいの車両なら教官殿に運転を叩き込まれたので普通に運転できます! ま、ここは公道では無いので見付からなければ、ですけれどね? ハハっ!!」

 

オイ....その一言で不安になってきたじゃん....

 

「・・・・ 着きました! 平沢殿! ささっ! この奥の事務室に!」

 

まああっという間に着いたんだけど....この建物デカいねー! ここナニ? 格納庫?こんなに広いアスファルトの大地の隅にでっかい平屋でアーチ型の倉庫みたいのがデーン! としてるんだけど....! こんなのうちの高校にあったの? 俺んちだってこの高校から歩いて10分ほどなのにこの学校がこんな広い敷地を持ってるなんて気がつかなかったし。

 

「いったい何があるんです?」

「まあ入ってくだされ! シャッターもこの様に開けてありますし、御自由に、てことでしょう! ささ!」

 

秋山さんと一緒にこの倉庫に入ってみたけど....中もデカい....! いろいろとなんらかの重機めいたものが置いてあるけどいくつかのものはシートに包まれてて見ることができないなー。で、このドアの向うが事務室?

 

 

 

《コンコンコン!》『入れ』

《カチャっ!》「秋山です! 見学者を一名連れてただいま戻りました!」

「ん、ご苦労」

「ささっ! どうぞ!」

「えーと、失礼しまーす....」

 

俺じゃなくて秋山さんがノックをしてドアまで開けてくれました....ここってなに部? 受け応えが

体育系を超えてるんですけど....

この部屋は普通の教室ぐらいの広さで、ドアの正面の奥に執務机があり、その向うに部長と思しき女子生徒がこちらを向いて座っている。

他には5人ほど女子部員が壁側のソファーとテーブルでおのおのくつろいでる。バーみたいなカウンターもしつらえてあるなー....対面型のテーブルではオセロをしてる二人組もいればホットケーキを旨そうに頬張るヒトも....

 

「ん? 君が奉仕部から連絡のあった平沢、メイ君だな?」

「ええ? ハイ!」

 

あれ、メイで通っちゃった....あのおー....

 

「君は姉の代理、という事でこの部活へ、だね?」

「あ、はい。そうです」

 

俺への面接をしているのは....いや尋問みたいだけど....体格のいい、でも女性的なラインもキッチリとしているポニー髪の先輩だ。貫禄もあるし(綺麗だし....)高校生て感じじゃないなー。

 

「本当は当人に来て貰いたい処だがまあいいだろう。これから演習がある。君も参加してくれ。以上だ」

「はい? 演習....ですか?」

「いやー平沢殿も! いきなりですねー! これは整備のしがいがあります!」

 

演習? 何それ? ぜんぜん聞いてないんだけど??

 

「えーもう出るの〜! すごいねーキミ!! 入部初日から出撃なんてメッタにないよー! ねえねえ玲於奈(レオナ)ー! なにに乗せるのー!! 私たちのはこれから乗るんだしー! スペアでも修理してたり点検中だったりー!! ネエネエなにに乗せるつもりー!!??」

 

「....ちょッ桐絵(キリエ)ウルさいッ! なにさッ! ワタシうたた寝してて気持い〜夢見てたのにッ! アンタの声のせいでせっかくの御馳走が台無しだよーッ!滅多に食べられない厚さ50mmのハンバーグステーキとカップカレー饂飩だったのにさ〜ッ! あ〜悔しいからアンタのそのパンケーキ一掴み貰うからね〜ッ!!」

 

「ナニよーっ! チョッ! 千華(チカ)っ!! わたしのパンケーキ盗らないでよっ! この万年シンガリ鈍足オンナ〜っ!」

「ナニさ〜っ! 桐絵の命令ムシムシ猪突猛進自爆ムスメ〜っ!!」

「ナニよ〜〜っ!」「ナニさ〜〜っ!!」

「「なによーーっ!! バ〜カ馬鹿っ!! バァっかバーカッっ!!!」」

 

壁側の奥のテーブルでくつろいでいた内の二人が何やら騒ぎはじめた。どちらも口の減らないセリフ回しだなー!

 

「お前達! 静かにしろ! 見学者の前ではした無い遣り取りなどするな!

よし、今日お前達はチームを組め! 先鋒か後方かはお前達が決めろ」

「「エエなんで〜〜〜っ!!!」」

 

どちらも部長さんに叱られ仲良く連帯責任を取らされる様でした....それにこのやりとりの中には....演習? 出撃? 修理? チーム??? て単語も....オイ....これってまさか....かつては茶道や華道と並ぶほどの女子の嗜みとして全国の高校に部活として広まっていたけど、近年では入部する女子も少なくなって一部強豪校のみで対校試合を行っているというアレ?? あと数年後のこの国での国際大会のために文部科学省が全国の高校に部の設立や復興を勧めているともいわれているアノ競技のこと?? まさかこの高校も? そんな話も聞いてないんだけど....??? そういや部の名前も....

 

「あらあら! いきなり新人さんに無謀な事させるのね? 鬼の隊長さん?」

「ねえ部長、判っていらして? そんな素人を行き成りで乗せても演習中に大泣きされるのがオチですわよ。フン」

「ん。誰もが一度は通る道。泣き腫らし涙の涸れるその日こそ熟達への第一里塚」

 

他の皆さんもなんか大仰なこと仰ってますけど....おい、俺はアレに乗るのか? だってアレって女の子の嗜みでしょ?? そんな清楚なものにオレのようなオトコが乗っちゃっていいものなの? ここの人たちも俺のこと姉ちゃんと勘違いしてないみたいだし....代理だからいいのかな? 俺もオトコノコだからいろんな意味で興味もあるけれど....ウムム。

 

 

 

 

 

この章『のりもの!』ではミリタリー要素が強いお話しとなります。苦手な方はスルーをお勧めします・・・

 

 

 

 



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のりもの!!

 

 

 

 

 

事務室を出て格納庫に向かう。やっぱり広い倉庫だねー! さてこの中に例の『アレ』があるのか....俺は『アレ』には詳しくないし、そこは先輩方が優しく教えてくれるのかなー....でもこの演習の参加には『無謀』とか『大泣き』とも言っていたし....

 

「まだ演習まで時間がある。各自用意しとけ!」

「「「「「は〜い!!」」」」」

 

部長さんの真剣度に比べて他の部員さんたちのユルさも感じる....大丈夫かな....とにかく、どんな『アレ』を見せてくれるんだろ?

 

「整備班さーん! ワタシの愛機、出来てるかしら〜?」

「「「はい!! 座羅先輩!!」」」

 

先ずはここにいる背が高くて腰辺りまでの栗色の髪をフワリとさせている『座羅(ザラ)』先輩のアレを

見せてくれるのか。整備班の人たちは男性部員だけどいいのかな? すべて女子だけでメンテナンスするものかと思ってた。そういや秋山さんはアレには乗らないのかな?

 

「わたくし! 管制担当にはなりましたが未だ座羅殿の愛機を拝んだことがありません! 今日こそは拝見出来るのでありますね!!」

 

「そうよ〜! ぜひ見てあげて頂戴〜! わたしの『P40』も喜ぶわ〜!!」

 

「P40! 左様でしたか!! あのイタリアの王国時代に開発されながらも計画通りに生産が進まず紆余曲折を経て『本場!』アンツィオ!! においてあの連合軍側の上陸作戦『シングル作戦』を阻止すべくドイツ軍側の車両として60両投入されたあの『Carro.Armato P26/40!』 通称『P40』! なのですね!! いや〜なつか....いやいや! ぜひホンモノを拝んでみたいものです!

ハイ!!」

 

秋山さん、あいかわらず詳しいですねー。でも管制担当なのか。無線でやり取りするヤツね。ていうかやっぱり....ここはやはり『アレ』に乗る部活なんだねー....『パンツァー』なんて名前の部活だし。俺も恐いけど姉ちゃんはもっと恐がるだろうな....ここもダメかも。

 

「じゃ! このシート、外して頂戴〜!」

「「「イエスっ! マムっ!!」」」

 

整備班によってシートが取り払われた。アレ? これは....飛行機? プロペラの??

 

「アッチャーっ! やられました! コレは一本取られましたねーっ!! ハっハっハっ!」

「んもぉー! ユカリちゃん! わかってたクセに!ウフ!!」

「テヘっ!」

「あのぉ....これ....」

 

アレに乗るつもりだったんだけど....コレなの??

 

「平沢殿! これはカーチス・ライト社の軍用戦闘機、『Curtiss P-40!』 であります! 型番は....」

 

「F型!『P-40F』よ〜!」

 

「そうでした! 通称『ウォーフォーク』! エンジンはロールスロイス製!『マーリン28』搭載のやや後期型ですねー!」

 

ええと....秋山さんてアレだけじゃなくてコレにも詳しいのねー....

 

「そうなの〜! 見て! この無骨なアメリカンスタイル! 垢抜けない南部の田舎みたいなこの色使い! エンジンを掛ると土埃りが立ちそうじゃな〜い!!」

 

えええ....と自慢してるの?ディスってるの?? こんなこと言いながらも座羅さん御自分の愛機に頬を付けて撫でてもいるけど....これも愛情表現なのかなー....

 

「えぇえ〜っ! 『P-40』〜っ!? なに自慢してんのさー! P40なんて南太平洋でゼロ(零戦)オスカー()にコテンコテンにヤられてたくせに!!」

「そうだそうだーーっ!!!」

 

おい! さっきの口喧嘩してた二人組じゃないか! なに気が合ってるのさー!!

 

「それは初期型の方ですねー! 『P-40』も後期の型番になるにつれて機体の細かい処の改良や

エンジンの提供先を換えることなどで性能を向上させてきたのですよ! 一時は後発でありながらもその後塵を拝さざるをえなかったあの『North American P-51 マスタング!』の性能にまで匹敵しようとしてたのですから!!」

 

ふ〜ん! 一口に同じ型の飛行機といってもいろいろと改良を重ねてくるんだねー。

 

「でも『P-51』て〜性能もデザインも洗練され過ぎて高性能スポーツカーて感じじゃなーい? それもいいんだけどやっぱりわ・た・し〜! 故障ばかりで燃費も悪いし無駄に馬鹿デカいんだけど〜どこか憎めない古き良き時代のア・メ・車! のようなこの『P-40!』 ....から離れられないのよ〜っ!!! ウフフ〜!!」

 

....ああ....なんかこの座羅さん? て先輩、飛行機を撫で回す仕草も語り口も凄くナヤマシイ....それでいて『ダメんず』とかいうのにも引っかかりやすいタイプのヒトなのかも....それにこの先輩....制服の上からでもわかるけど....さっきの部長さんよりもまた....見事すぎるんじゃありません....? 本当に高校生なのかなー....??

 

「あら、『P-40F』も『P-51B』も、元はと言えばイギリス製のエンジンを積んで居らっしゃるのよね? だったら最初からイギリスの飛行機を操縦なさったら宜しいのに、二度手間ですわね。

フン」

 

あらあら、なんか鼻....誇りの高そうな方が口を挟みにきましたよ。金髪ロングの(この高校って金髪が多いねー....)何処かしらのお嬢様の風貌を持つ先輩で御座いますか。先程の賑やかな二人組に比べて挑発が洗練されてますの。で? 貴女はどのようなお飛行機に御乗車で?

 

「私シのですの? まあ、紹介するのも吝かではありませんわ....! 貴方方! 今直ぐ私シの愛機の

カバーをお取りなって下さらない?」

 

「「「畏まりました。恵摩(エマ)お嬢様」」」

 

なんてまあこのお嬢様、言葉遣いは丁寧でも態度は高飛車ですねー。それにここの整備の男子部員って女子のパイロット一人ひとりに違う掛声で呼んでんの?? 飼い馴らされてるのかなー、美人揃いだし。

 

「おお! これは美しい!! 英国の誇る『Supermarine・スピットファイア』ではありませんか!! でも型番までは、えーとお....」

 

「『Mk.Ⅴ』、ですわ。エンジンも勿論ロールスロイス製!あの『バトル・オブ・ブリテン!』における英国本土防衛の要となった名機ですの。あのドイツの『Messerschumitt・Bf109』と互角に渡り合って最終的にはお蹴散らしなされた真の『英国紳士!』ですのよ! ドイツのエースパイロットでさへ『わが部隊の戦闘機を総てスピット・ファイアにして頂きたい』とまで言わせた最高のレシプロ機なのです!! どこかの植民地上がりの成り上がり国家の田舎戦闘機と一所になされるなんて思い上がりもいい処ですわ。オホホホホ!」

 

うわ〜! マンガに出てきそうなお嬢様だ! 観た目も一応ね。でもそれ程までのお嬢様が何で部活で戦闘機なんて乗って居りますのです? 紳士淑女の嗜みですの?

 

「え〜エマ〜! あんたイギリス生れ〜? 地元生れじゃん! アンタわたしらと一緒にこの辺でガキ大将やってたじゃんねー! 今さらお嬢様ブったって全部お見通しだからー!! ヒヒヒっ!!」

 

「!! ....チカ黙りなさいっ! 世が世なら私シも財閥華族の一令嬢としてこんな地元の高校などに通ってなど居りませんわ! 今頃ケンブリッジかオックスフォードで本場の『放課後ティータイム!』を学友と一緒に愉しんで居る処です!! フンっ!!」

 

没落貴族の末裔さんだったのかなー....拗らせてもいるんですねー....

 

「でも恵摩〜! これだって南方では『隼!』にパタパタ落とされてたじゃん!

ヤッパ『隼』サイコーっ!!」

「あ! キリエず〜る〜いーっ!! 『ゼロ!』だってブチのめしてたんだから〜っ!!」

「ふたりともだまりなさいっ!! あれは整備不良からです! それに赤道近くの気候条件では英国本土で出せていた本来の実力を発揮出来なかったからです!!」

 

ああ....ついてけなくなった。後は仲良し? 三人で仲良くやっててもらって俺は何をすればいいの?

 

「平沢殿! ついて来て下さい! 平沢殿にはコレに乗って貰うことになっております!!

整備班殿! 取って下さーい!!」

「「「わかりやしたー! 秋山殿ー!!」」」

「これは....二人乗り?」

 

秋山さんに連れられてとある飛行機を見せられた。これなんて飛行機?

 

「これは八九....いや!『九十九式艦上爆撃機』略して『九九艦爆』の『二二型』ですよ! 今手持ちの飛行機の中では複座式はこれしかないのでこれに乗って頂きます!」

 

これが爆撃機なの? ずいぶん小さいけど。普通の戦闘機と変らん大きさみたい。

 

「まあ〜、これは250kgの爆弾一つと60kgの爆弾二つを着けて飛ぶものですからねー! 空母から飛び出すための小型化仕様なのです。はい」

 

はあ....もおいいや。乗るだけなら....そういや事務室でも仲良く喧嘩してたあの二人の飛行機は?

 

「ああ、あの二人ですか! 背の高くておかっぱの方の『桐絵』殿のは『一式戦闘機・隼! 一型』ですね。もう一人の背はソコソコで自分より髪モジャで両側を軽く纏めている『千華』殿は『零式艦上戦闘機! 二一型』あの『ゼロ戦!!』ですよ!!」

 

おお!『ゼロ』!! それなら俺でも知ってる!! 超有名だし!! あとで見せてもらお〜っと! 《ブォ〜〜〜・・・・ン・・・・!!!》あれ? エンジンの音? 外から聴こえてくるんだけど?

 

「あの音は....! 景都(ケイト)殿ですね! 事務室でも淡々と話をしていた銀髪ロング! の人が居たで

しょう? 黙々とされながらも仕事が早い!流石は才女!! 」

「ええ....エンジンの音でわかるんですか....」

「はい! しばらくすれば平沢殿も区別がつく様になりますよ! 『景都』殿の愛機は

『FFVS-J22』、スウェーデン製だそうです!」

 

いやエンジンの区別が付くまでここにいるつもりはないんですが....でもスウェーデンの飛行機!

初めて聞いた! スウェーデンて飛行機造ってたの??

 

「いや〜自分は飛行機に『ついて』はあまり詳しい方では無いので自分も驚きました!

でも現代でも『JAS39』通称『Gripen(グリペン!)』という有名な小型ジェット戦闘機もあるので昔から

航空産業には力を入れていたのでしょう!」

 

いや素人に比べたら十分詳しいですよ....

 

 

「みんな用意出来たか! これより演習を始める! 私は自分の機体が修理中なので『九九』で出るつもりだが平沢! 用意はいいか!」

 

「は、はい!! ゴーグルも貸してもらいましたしいつで....」

 

「ちょっと玲於奈〜! そ、の、ま、え、に〜! わたしからのプレゼント!! これを見て頂戴?」

 

「ん? 何だ座羅?」

 

いよいよ出撃....いや演習だから出動かなー? こんな制服のままで大丈夫なのかなー....寒くないのかな....? 俺の乗る飛行機の操縦は部長さんがするのか。厳しいけど堅実そうだし一安....ん?

 

「コレよコレ! さっ! 取って頂戴〜!」

「「「ヘイ姉御!」」」

 

「これは....」

 

「おおおっ!! これは!『究極のレシプロ機!』と呼び声も高い『Focke-Wulf Ta152!』ですよっ!!すごいモノが手に入りましたねー!!」

 

「そう! 高々度H型じゃなくてレアな標準C型よ〜! エンジンもダイムラー・ベンツ製! 『DB603』!」

「うわ〜っ観た目も中身もいかにもドイツ製〜!って感じだよね〜っ! ザラ〜! よく手に入れたねー!!」

「昔のツテをチョッと、ね? ウフ!!」

「ね〜桐絵〜! コレってそんなにスゴいモノなの〜??」

「カタログスペック上ではその様ですわね? ただ実戦上のデータも不明瞭で初期不良も酷い代物との呼び声も高いですわ。看板倒れもいい処ではなくて? フフっ!」

「そこは整備班の方々の腕前を信じて、ですね!」

「「「お任せ下さい! 隊長!!」」」

「私は....今日、これに乗るのか....?」

 

もう新参者? にはついていない状況だけど....パイロットが代わるってことなの? もう誰でもいいや....あの騒がしい二人組とお嬢以外なら....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上の航空機と車両のデータは殆んど『Wikipedia』からの情報です。ここでの執筆においての省略の折、何か勘違いした内容を記述しているかもしれません。もしその様であったら申し訳ありません。あと、航空機と車両のデザインの描写は省かせていただきました....筆者の能力不足からです。

 

 

 

 



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のりもの!!!

 

 

 

 

《・・・・・・・・ブオオオオオォ〜〜〜〜・・・・ ン・・・・・・・・・・・・・》

 

「・・・・ で、なんで私シが貴方を乗せてこんな鈍重なのを操縦しなければならないのです?

ハア....」

 

「・・・・ ハア....スイマセン....」

 

そんなこといわれてもですねー・・・・ ジャンケンに弱い貴女が悪いのです....よりによってこの

お嬢様とペアになるなんて....ハア....

 

~『....はは! 恵摩殿! そう落ちこみなされますな! その機体は大戦初期では最も多くの艦艇を撃沈させたという歴戦の名機なのですよ! もっと自信をもって下さい!! どうぞっ!《カチっ》』

 

「はあ、それは初期の話ですわよね? ....出来ればこの演習で私シの『スピットファイア!』のメンテナンスの確認をしてみたい処でしたのに....ったく!!」

 

~『ハハー! そうでした! それにその機体は残念ながら末期になると『九九式棺桶....!』などと

呼ばれて誰も乗りたがらなくなってしまいましたからねー。心中お察しします....どおぞっ!』

 

~『『や〜い! 棺桶カンおけ〜〜〜っ!!』』

 

「だまりなさいっ!! 秋山さんも縁起でも無い事言わないでくれますっ!! もうっ!!」

 

~『ん、空中戦とは、撃墜されても誰も屍拾う者無き荒野の掟、皆平等。』

 

「景都まで! ナンですのっ!」

「ははは・・・・」

 

俺と恵摩さんはいま空中にいる....恵摩さんの操縦で『九九艦爆』というものに乗せられて二人で空を飛んでるんだけど音がスゴい!! 心配していた寒さはそんなでも無かったけど。後ろ向きの座席に座ってるんでなんかヘンな感じだし慣れるのかな....あと無線での会話も可能なのね。みんな一緒に喋ってるし。

 

「エンジンは当時のものをレストアしながら使ってますので仕方ありません。でも空調なら最新のエアコンを使っているので程良い気温を保っているはずです。いかがかしら?」

 

「はい、制服には丁度いいです。でも80年も前のものにエアコン付けるなんて何かヘンですねー」

 

「古き良きものは遺す。でも最新の設備も供える。伝統あるイギリスの邸宅でも同じ事です」

 

はあ、このお嬢様はナンでもイギリスが基準なんですねー。んで聞き忘れていたけど、この部活って一体ナニをするブカツなんです??

 

「ハアっ? 貴方! それも知らないで今この飛行機に乗っているのですか?!呆れはてましたわ・・・・!」

 

~『いやいや! 平沢殿は悪くありませんよ! 隊長殿にいきなり演習に参加しろ! なんて言われて周りも動転してましたからねー! はは! で、何をする部活だと思います? どうぞっ!』

 

秋山殿、いきなりクエスチョンですか。え〜と、レースとかですか?

 

~『『ブっ! ブゥ〜〜っ!! ハッズれ〜〜っ!!』』

 

気が合うねえ....あのふたり。じゃ、模擬戦とか? この座席の前には機銃も備えてあるし、ペイント弾で!!

 

~『まあ、当らずも遠からずね〜! まあ楽しみにしてて頂戴! エキサイティング! よ〜っ!!』

 

まあ今の高校の部活って『アレ』もそうだしスゴいね〜! どれだけ費用がかかってんだろ。部員の自腹!? まさかねー....どこからか補助金が出てるとか? 『アレ』だって文科省推薦! てだけあって資金は潤沢だって話だし、講師陣は家元制? というしっかりとした組織で纏め上げているとも聞くから、この部活もそうなのかなー?

 

「....まさか! この部活は各校で創部されて以来、まだ全国的に統一された組織という物を設立してはいないはずです。そうですよね?」

 

~『そうね〜、わたしもそんな話聞いたことないわ〜!』

 

~『それぞれのガッコがさー、勝手に部活創って勝手にやるー! そーゆう部活じゃなかったっけー? 千華〜!』

 

~『そんな難しいコトわかんな〜い! 楽しけりゃいいジャーんっ!! ひひっ!!』

 

~『ん、組織化とは硬直化。『アレ』は雁字搦めのヒエラルキー組織。部外者が入り込めても組織の上位には組み込めず、組織の家柄に捉われている者はその柵(しがらみ)から抜け出ることは事実上不可能。常に伝統校が上位を占める出来レース競技』

 

~『....そんな事はありません! いずれは我が校....いや、失礼しました! そろそろ予定のポイントに到着しますので各チーム態勢を整えて下さい! それでは部長! 後の指揮を! どうぞ!!』

 

秋山さんは基地内の管制塔内でレーダーを使って無線でのナビケートをしてくれているらしい。

オレにはよく分からんけど....ナンか声を荒げてたような....ん? 二チームに分かれるのかな?

 

~『了解! よし! 座羅と桐絵と千華はAチーム! 私と恵摩と景都はBチームとなって模擬戦を

行う! それぞれ所定の位置に....ん!? どうした!!』

 

~『部長! こちら秋山! 他校の機体六機確認です! ここからですと....丑寅の方角!!』

~『え〜〜っ! こっから反対側じゃ〜んっ!』

~『....こちら桐絵! 視えたっ! わたしからだと4時の方向!!』

「何でですの? 試合の申込みでもあったのですか!?」

~『そんな報告請けてないぞ!』

~『玲於奈....これは奇襲よ。基地が留守になった処をね?』

~『ん、油断大敵。また荒される。玲於奈の機体が小破された様に』

「はい??」

 

なに?? 試合? 奇襲? 小破?? これも部活動の一環なの??? ....《・・・・!!グゥワアアァァ・・・・ン!!・・・・!!》ゥワアアァーーーー・・・・!!! ・・・・っ!! 機体がーー! 胴体が〜〜〜っ!!!・・・・

 

~『予定変更! これより他校掃討に向う! 私と座羅は前! 恵摩と景都は両翼! 桐絵と千華

は後方を固めろっ!!』

 

「了解ですわ! 平沢さん! チョッと揺れますわよっ!!」

 

・・・・ もお揺れてます〜〜〜っ・・・・ !!!

 

~『ん、承知。』

~『ええ〜〜キリエと後方なんてヤダーーっ!! 前がイイ〜〜っ!!』

~『コッチのセリフよチカっ! ナンであんたと一緒に仲良くチーム組まなきゃならないのよっ!!』

~『それはコッチのセリフだっ! 『バ〜か!馬鹿バーーカっ!!』』

~『! 二人ともいい加減にしろっ!! 行くぞっ!! 秋山! 対空砲火の指揮権を与える!

アレを使え!!』

 

~『えっ!? アレでありますか! ハイ!! よろこんでっ!! 整備班さ〜〜ん・・・・』

《ジー、ガチャっ》

 

・・・・ もう飛行機の揺れと振動と飛び交う無線の会話で初心者にはなにがなんだか....オレには

命令も無いしいいか....『平沢さんっ! 正面の風防を開いて、機銃の安全装置を外して撃って下さらない!?』へっ!!??

 

へ? オレが?? てコレを撃つの?? まあペイントの弾みたいだしまあいいか....ええと前の窓を....《ビュ〜〜っ!!》....ぅわーっ! 風がー!! 寒いかも....あと安全装置て....これでよかったかな....よくわからないなー....拳銃に興味のあるお年頃といっても飛行機の機銃まではねー、て・・・・ 酔った・・・・ウプ。

 

「貴方っ! こんな事このご時世に言いたくありませんが....『男』なのでしょっ!気を確かに持ちなさいっ!!!」「ハイ....っ」

 

いわれてしまった....でも部活巡りで初めてじゃない? オレを『男』扱いにした女子って....じゃっ、しょうがない....オラもいっちょヤりますか!! あと、どうすれば?

 

「背後に、貴方からすれば正面にうちの部以外の機体が入り込んできたら構いません!撃って

下さい!! でも尾翼に当てたらダメです!! そのぐらい解りますよね!?」「あ、はいっ!!」

 

ああ目の前のあの翼かなー....責任重大だー....でもペイント弾でしょ? ダメージがあるのかなー??

.... ん?? なんか聴こえてくる! なに? 音楽? 歌声も??? 空の上なのに?

 

 

〜《....わ〜れら☆◇校せーいと会〜っ! ゆ〜めとき望ーをつ〜ばさに乗せてっ!♪ あ〜あーーっ我〜等はっ! エリ〜ヰトっ! いいんーかーいーーーっ!!♪》

 

 

~『あいつ等かっ!』

~『あらあら! いつも景気のいい事ね! フフっ!!』

「相変わらず趣味の悪い歌を流してやって来ますのね。いい加減ウンザリですわ....!」

~『『うわ〜〜〜! キっシょっ!! オエ〜〜〜!!!』』

~『ん、存在誇示は弱さの代償。本当は寂しい構ってちゃん。』

 

「あの〜、アレはいったい....」

「あれは我が部の宿敵! ☆◇校の『エリヰト委員会!』の連中です!また性懲りも無く....!!」

「エリート....ですか。生徒会とも聴こえるけど....」

~『あー! あの連中ねー! この先の男子校で生徒会ゴッコやってるバァ〜カの集まりだから〜!』

~『それに宿敵ってほどじゃナイじゃん! ヒヒっ!』

~『まああいつ等ならそんなに脅威では無いな』

~『そうね〜、この前基地を襲って来たのはこのコたちよりもっとアブないヒト達だったわよ?

んー??』

 

〜《! ・・・・ やいやいやいっ! テメエらっ! ナ〜メやがってっ!! このオレ様たちが脅威ではないだとっ!! おうヤロウ....当校生徒会役員殿方! この方々をお懲らしめになりやがって頂きやがれーーっ!!》

〜《わかりましたっ! 会長サマーっ!!》《ゥオオオオオオォォォ・・・・・・・・ン・・・・っ!!!》

 

~『ぅわーっ、わたし達の会話盗み聴きしてたよーこいつら〜!』

~『無線傍受?? キモ〜っ! エッチっ! ヘンタイっ! ストーカーっ!! こーれでーもくー

らえ〜〜っ!!』《グォオオオオオ〜〜〜〜・・・・ンっ!!!》

~『おい! 千華っ! 隊列を乱すな!!』

~『まあ玲於奈いいんじゃない? チョッとおイタのお相手をしてあ・げ・る・の・も!!』

~『ん、怪我の功名。』

「景都、ソレ違うんじゃ無くって? では! 私シ達も参りますわよー!! 平沢クン! さっき言った

様に遠慮は無用ですっ!!」

「はっ、はいっ!!」

~『ではっ! 行くぞっ!!

『『『『『 ・・・・フライング! パンスァーーっ!! 一気....入魂っ!!・・・・』』』』』』

《・・・・ グゥワワワワワワワワーーーー・・・・!!!! ・・・・ ン・・・・っ》

 

 

ワアアアアア・・・・!!! もうワケが分からなくなった・・・・!! カラダは捩れるしアタマも揺れる!! 上から地面が落ちてくる!!! コレが空中戦か!! もう外の様子がわからない!! 前で操縦してる恵摩さんならわかるんだろうけど・・・・ 後ろ向きだしシロウトだし!! 《!!!タタタタタタっ!!! 》んわ!? 機銃の音っ?? 撃ってるのっ?? 何か火薬の臭いがするんだケド!! へ? 外の飛行機から火が噴いてる!....ナンでっ!!?? ペイント弾じゃないのっ!!

 

~『こちら! 自走式対空砲車から無線連絡!! 秋山です! どうです? 繋がりますか!

どうぞ!!』

~『ああ! こちら部長の玲於奈! いいぞ!』

~『こちら基地滑走路上! 東方約二キロ先上空にて戦火を確認! 一機墜落を確認しました!! 残りの機体も連絡乞ウ! どうぞ!!』

~『こちらは全機異常なしよ! ね〜! みんな!!』

~『『『『は〜い!!』』』』

 

オイっ!! ノーテンキ過ぎないか!? 飛行機が墜ちてるんだし!! なかのひとも....ああああああ・・・・!!!

 

 

 

 

 

 

・・・・当面、こんなお話が続きそうです。もはや何がメインなのか分かりませんね・・・・

完全に筆者の趣味丸出しの自己満足の作品となってしまいました。スミマセン・・・・

このお話はアニメ『荒野のコトブキ飛行隊』の舞台を高校の部活に置換えてお送りしております。

登場人物も女性用心棒『コトブキ飛行隊』の隊員6名を女子高校生に、相手高の男子もアニメの 

中で『会社ゴッコ』をしている空賊『エリヰト興業』の『社長』と『社員』からです。

 

・・・・・・・・秋山殿?ハテ何者でしょう?しかもナゼこの高校に??正体は追ってまた!!

 

 

 

 

 



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のりもの‼︎‼︎

 

 

 

 

〜《・・・・ あ〜〜〜! 副会長ーーっ!! ・・・・ よ〜くも〜っ! 俺のかわいい生徒会役員共を〜〜〜っ!!》

 

 

~『桐絵と千華は! 恵摩機の援護に当たれっ! 景都は私とあいつ等の隊長機を追う! 座羅は滑走路上空中で待機! 撃ち漏らした敵機との防戦に当たれ! いいなっ!!』

 

~『『『『了解っ!!』』』』

 

「んもうっ! 護衛など要りませんわっ! 私シの事なら私シだけで....!」

 

~『恵摩〜! カ〜レシ連れてるんでしょー!! カッコイー! とこ魅せたいわけ〜っ!!』

 

~『それに『鈍足』じゃあデートにはならない〜っ?! ネェかーれしーっ! ワタシの『ゼロ!』に乗り換えな〜い!! ヒヒっ!!』

 

「いい加減になさいっ!! あなたたち! これが終ったら....ヒドいですわよっ!!」《・・・・ !!タタタタタタタタタっ!! バンッっ!! ・・・・・・・・ ゥオオオオオオォ・・・・ン・・・・!・・・・》

 

ああ....誰が撃ったんだろう・・・・ また相手の機体から火が噴いた・・・・ 黒い煙を掃きながらゆっくり墜ちてくけど・・・・ パラシュートとかあるのかな・・・・

 

〜《!!・・・・ うわ〜〜〜っ! 選挙広報係〜〜〜っ!! もおーーー容赦はしねえっ! 残りの役員共っ!! ヤってヤルぜーーっ!!》

〜《ヘイッ! ウチの会長に清キ一票っ!!!》

 

わああ....どちらも戦闘のマっ最中ってのになんて軽口だ....相手の飛行機だって何機墜ちたの?? こんな生き○にが懸る部活なんて....いったいナンなのさっー!

 

~『平沢殿! こちら秋山! 聞いておりますか? どうぞ!』

「・・・・ ハ? はい! こちら平沢! どうぞ....!」

 

俺のイヤホンに直接秋山さんの声が響く。部員全員との会話では無線を使っているけど個人会話ではケータイの回線を使うらしい。

 

~『平沢殿! 心配なさりますな! 弾は実弾でも安心であります! これらの機体には『アレ』と同じく最新の『カーボン!』がコーティングされてあるのです! 多少穴が開いて燃料が漏れ出ても大事ありません! どうぞ!!』

「えっ? でも火が出てるのも....!」

「平沢クン! 何を呑気な事を....! 敵に銃弾を浴びせれば敵の機体が火を噴くのは当然です!! ヤラれる前にヤる! これが空戦の鉄則では無くてっ....!!」

 

なんか二人の言っていることがかち合わない....落されたヒトが無事かどうかなんだけど....

 

~『ああ! 大丈夫です! これらの機体は火を噴いても爆発したり四散したりしませんから! この最新の『特殊カーボンコーティング!!』の威力を信じて遠慮なく撃って下さーい! どうぞ!!』

 

....そういうモノなの?? はあ....

 

 

 

~『この連中の機体はいつもと同じ『隼・三型』だが隊長機が違うな....! あれは!?』

~『ん、玲於奈。あれは『彗星・一二型』。艦上爆撃機としては戦闘機並の戦闘能力。』

~『へえ〜やるわね〜!☆◇の会長さん!! これでオトコが上がったのかしらー??』

〜《アっタボーよ〜っ!! 今日こそはオメ〜等に勝って我が生徒会選挙の暁にはウグイス嬢並びにバニーガールのカッコしてビラ蒔いてもらうぜ〜っ!! 覚悟しとけっ!! ガハハハハハっ!!!》

 

はあ・・・・ 盗聴してた上に飛行中メガホンで話するなんて・・・・

 

~『うわ〜趣味ワル....? でその会長ー! ドコ行ったのさー??』

~『え〜〜っ? 視えな〜い!! 桐絵!! アンタがボケ〜っ! としてたからでしょっ!!』

~『恵摩! ヤツは上だっ! 急上昇している....しまったっ!! くるぞっ!!!』

「え! 何ですのっ!」「恵摩さんっ! 上っ! 真上〜〜っ!!」

 

思わず叫んじゃった....! でもここからなら上空も視られるし!!

 

《・・・・カンカンカンっ!・・・・カンっ・・・・!!!》

 

・・・・へっ? ナニ?? この音・・・・

 

「・・・・ 被弾しましたわっ! あんな上からっ! メイさんっ! 今から機体の角度を下げます! そして撃ってっ下さい! その角度なら撃てます!! いいですねっ!」《・・・・ ヴオオオオオオーーーー・・・・ン!!!》

「お、オレがっ!?」

 

おいっ! この銃を撃つの!? 俺が!! ?? オレ本物の銃なんて撃ったことなかったし!! ナンでこんな事に....でも撃たなかったら....!?

「・・・・ ナニをしているのですっ! 撃ちなさい!! 当たるか当らぬかではありません! やり返す為なのです!!」

やり返すって....俺ケンカらしい喧嘩は....!

「・・・・今更なにを躊躇しているのですっ! 貴方は喧嘩を売られたのですよ!! 貴方は売られたケンカを女性に買わせるお積りなのですかっ!!死にたいのですか・・・・っ!!・・・・」

・・・・えええ?? ナニ? 言ってんの....? ○なないんじゃなかったの?? それにこの会話、一瞬の間のはずなのに時間も長く感じられるし....? それに....この感触....どこかで憶えがあるし・・・・

「・・・・! 平沢....っ! メイっ!! 撃ちなさいっ!! 撃たなければ....貴方が死にますっ! 貴方の中の『男』が死ぬのですっ!! ・・・・ メイッ!っ!!・・・・!!・・・・」

 

・・・・っ! ....あ! ・・・・ 《カチっ!! ・・・・ダダダダダダダダダダダダダダダダーーーーーーー・・・・・・・っダダダっ!!!!》・・・・っ・・・・・・・・

 

《・・・・ !! グゥワアアアアアアーーーー・・・・ン・・・・!!・・・・・・・・》

 

・・・・・・・・ 撃っちゃった・・・・ これ本当に火薬の弾なんだ・・・・ あの飛行機....当たらないで俺たちの機体の側を急旋回してったけど・・・・ フウゥ・・・・・・・・

 

~『・・・・ まて〜〜っ! 逃げるなーーっ!!』

~『・・・・ おっちゃえうっちゃえーーっ!! ヒヒーっ!!・・・・』

《《ブオオオオオォーーーー・・・・・・・・ン!・・・・》・・・・》

 

 

「・・・・ 上出来です。初めて撃つ割には、ね。平沢...君」

「すいません....当らなかったみたいですけど....」

「最初はあんなものです。それにいきなりの実戦でしたしね?」

「....はい」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

~『もうあらかた生徒会さん達の機体を撃ち落としちゃったみた〜い!

後はあのしぶとい生徒会長さんの機体だけね! ウフっ!!』

~『みんな、済まない。まだこの機体に慣れるまでの時間が無かったようだ....言い訳にもならないが....』

~『いきなり急上昇で切込みで急降下するんだもん! あんなの反則だー!!』

~『千華〜! あれ木葉落しじゃん!? わたし等もヤってるし〜!!』

~『ん、でもあれは急降下爆撃機。本職には叶わない。』

 

「急降下爆撃....! そうですわね....平沢....君? ....貴方を『男』と見込んでお願いします。もう少しお付き合い....お願い出来ます....?」・・・・・・・・・・・・

 

 

~『『『『『「・・・・・・・・ えーーーーーーっ!!!!!!・・・・・・・・』』』』』」

 

 

....恵摩サン!....こんなときにいきなりなんなの?? ここでその....交際宣言....!!?? 空中戦中に???

 

~『・・・・ デレた! ・・・・あの恵摩がデレたーーっ!!』

~『ナニ! なにが起きたのっ! ねえキリエ〜!!』

~『これは驚いた...あの撃墜率100%!『告白頃しの閻魔!』と怖れられたあの恵摩が....』

~『あ〜らメイちゃんヤるじゃな〜い!! 恵摩ってこういうカワイイ系の男の子が好みだったのね〜!!ワハッ!!』

~『こちら秋山! なんです? 平沢殿が何機か撃墜したのでありますか!! やりますね〜! さすが部長殿が見込んだだけはあります!!』

~『ん、驚天動地。そしてこの世はトコハルの桃源郷。ふたりだけの楽園へ。』

 

「・・・・ ちょちょちょチョッとっ! 何ですかっ!! 誤解ですっ!! 私シはただ....!」

〜《・・・・ ナ〜〜ニィーーっ!! 聞き捨てならないなーっ! エマっ!! テメエ俺との交際断わっておいてその『メイ』とヤラとイチャコラしけこもおって魂胆かーーっ!! ゆーるせねえっ! ・・・・・・・・・・・・オレとツキあってくれーーーー・・・・ っ!!!・・・・》

 

 

~『『『『『『・・・・・・・・・・・・・・・・』』』』』・・・・ あのおーこちら秋山、☆◇校の機体が皆さんの機体に紛れ込んでるんですけどー状況を説明して下さーい・・・・ どおぞ・・・・《カチ、》』

 

....アタマがまた混乱してきた....空中戦もだけどナンでここの高校の部活連中ってどうしてこうもこんがらかるのさー!! てウワ! いつのまにか敵さんの紅い飛行機がウチらの隣りで飛んでるし!!

 

「・・・・ 丁度いいですわ。この誤解は後で晴らすとして、『鳥平』! 聞いてますね....!」

〜《オイっ! オレを本名を呼ぶな!! 『会長!』と呼んでくれ〜! ・・・・ で、何だ》

「貴方と一対一で勝負いたします。宜しいですわね....!」

 

 

 

 

 

 

各機体の特色を活かす空中戦の描写は今の筆者には荷が重過ぎるので

ウヤムヤにさせていただきます....

ちなみにコトブキ飛行隊6名の機体は全て『隼・一型』ですが、このアニメの 

戦闘機の配分について、放映中ネットでの書込みで賛否に分かれていたのを憶えています。

6名全員の機体がおなじ『隼』という設定では混乱する、各自違う機体だったら....といった

指摘もありました。筆者自身はあまり気にもしていませんでしたが、この機会にコトブキの

メンバー各自に戦闘機を充てがうとしたらどの様な機体がいいのかと筆者なりに想像を巡らし

てみました処、この様な配分に至りました。

最初に浮かんだのはザラ姐の『P40』、エンマ嬢の『スピットファイア』ですが、

ケイト氏の戦闘機には少し頭を悩ませました。『銀髪』キャラのケイトさんにはロシアか

北欧の戦闘機、或いはフランスか思い切ってイタリアか....そういえば同シーズンに

『ガーリーエアフォース』というのもあったな....あれには確かスウェーデンの小型ジェット

戦闘機『グリペン』という機体が出ていたなー、なんて連想を巡らして第二次大戦での

スウェーデンの戦闘機を検索して調べていた処、『FFVS-J12』なる機体を発見し、ケイトさんの

搭乗機とさせて頂いた次第です。キリエとチカ姉さんにはお手軽に『隼』と『零戦』に、

部長殿のレオナ様にはやはりコレ!....という事で『Ta152』とさせて頂きました。

・・・・・・・・みな筆者の好みと独断です。生徒会連中にはアニメと同じ『彗星』と

『隼・三型』に致しました。単に面倒だったからですが・・・・

 

 

 

 



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のりもの‼︎‼︎!

 

 

 

 

~『『『『『「《・・・・・・・・ 決闘〜〜〜〜〜〜っ!!??・・・・・・・・』』』』』」》

 

お嬢様....もうワタクシにはついていけません....そもそもここに来たのも姉の部活の見学のためでしたのですけど....でも何だろう....このもどかしさって....ん・・・・

 

・・・・〜《・・・・おうっ! エマ! その刺しの勝負! 受けて立とうじゃねえかっ!! で! 条件てのはオレと....!》

 

「条件? その様な物など御座いませんわ。勝つか負けるか、それ以外何がございますの? まあ、強いて述べるなら我々からある提案があります。これは貴方方にとっても悪い話では無いと思いますけれども?」

 

〜《よ〜〜し乗った! じゃあオレからの提....》

 

「ハア? ....私シが貴方の様な者からの提案など受け容れるとでも思っているのですか! 安く見積もられたものですわね....!」

 

〜《....ナニッっ?! テメエ....》

~『....おい恵摩! いくら相手がこんな連中でもそれはないだろう! こちらが勝負を挑んで提案を出した以上相手の提案を呑むのも....』

 

「・・・・ 玲於奈! 私シはこういう女ですわ!! 傲慢チキで横暴で、私シ以上の能力や人格を持つ者で無い限り誰の指図を受ける事は無い!・・・・でも一旦こころに決めた殿方が現れた以上! 私シは身もこころも全てそのお方に捧げる所存です!! その様な魅力を持ち合わせても居ない男供には何の礼儀も遠慮もありませんわ!! どうです!? ここまで言われて鳥平! 貴方悔しくも何とも無いのですの!!?? オホホホホっ!!!・・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

~『・・・・・・・・繰り返しまーす! 状況の説明を・・・・!』

~『・・・・ うわ〜! エマ言っちゃったよ〜!!』

~『えー? キリエ! これって挑発? 告白〜??』

~『ん、両義的言説。受け取る側の解釈による。景都的には挑発と解釈。』

 

~『ふ〜ん!・・・・ いいわー! 会長サンの提案! わたしが買ってあ・げ・る!! エマ〜! 思う存分たたかいなさ〜い!! 貸しもなしよー!!!』

~『おい座羅っ!!』

〜《オイ本当かっ! オレが勝ったらあの座羅サンを....あんなコトしたりコンなことしたり....オオっ!! もう文句はなしだ!! いつでもかかっていっ! ってんだ!! グァハハハハっ!!!》

 

~『『・・・・ ゥエ~~~~~~~っ! トリヘイやっぱキモぉ〜〜〜っ!!!』』

 

 

「・・・・ 座羅、余計な事を・・・・フフっ! 借りにする積りもありませんよ! ・・・・

メイっ! 行きますっ! 今暫く私シにお付き合い願いますっ・・・・!!」「あ、ハイっ!」

《・・・・ヴオオオオオオオオォォォーーーーーーーー・・・・・・・・ン・・・・!!!》

 

なんかオレにはよくわからない事情があるみたい....でもまあいいか....! これも乗りかかった船! 飛行機!! 今はこのお嬢について行こうじゃないの!! ○ぬこともなさそうだし....

 

〜《おい待てコラ〜〜っ! エマ〜〜っ!! よおし....テメエここまでこのオレをコケにするってんなら....! 真の『男女同権主義者』のこの俺サマがオメエ等二人に情熱! の鉄槌をブチ噛ましてやる〜〜〜っ!! て・・・・・・・・ まってくれ〜〜〜〜っ! エ〜マーーーっ!!!

・・・・・・・・・・・・》《・・・・ グオオオオオォ・・・・・・・・・・・・っ・・・・》

 

 

~『・・・・ ねえ、恵摩とトリヘイ! って付き合ってたの??』

~『じゃ〜っ!そこに『あの子!』が喰い込んできて三角関係〜〜!!やるじゃんヒヒーっ!!』

~『ん、より正確な推測として鳥平が恵摩に告白、恵摩が鳥平をフって暫くして『あの少年』が

この部に見学。恵摩が見染める。合理的解釈・・・・。』『『おお〜っ!!!』

 

 

~『やはり受けるべきでは無かったのか....』

~『....何をです? 部長殿? どうぞ《カチッ》』

~『あら、あの子の体験入部のことー?』

~『体験入部! 見学希望では無かったのですか? どうぞ!』

 

~『ああ、奉仕部の雪ノ下部長から、あの平沢の姉の我が部への見学希望の依頼を受けて承諾したあと、暫くして別の奉仕部部員から『体験入部への依頼へ変更、依頼人も弟に』、との連絡を直接受けたんだが....』

 

~『そう、あの娘! 雪ノ下さんと同じ長さの髪の娘で小柄で、ちょっと不気味なところもあったわー! ああゆうのを『中二病!』って言うのかしら? 忽然と何食わぬ顔して事務室の中に『居た』りしたモンだから何かヘンだったわよね〜!』

 

~『えええ....この学校ってこの『場所』以外にも得体のしれない何かがあるんでしょうか....どおぞ....』

 

~『まあわたしたちも正体不明のこの『場所』を勝手に使わせてもらっているんだし〜他に何があっても不思議じゃないんじゃないかしらー?』

 

~『いや十分不思議。この現象のここでの解明の為には数十回の落第が必要。不経済。』

 

 

 

 

《ヴオオオオオオオオオ・・・・・・・・ン・・・・っ・・・・!!》

 

恵摩さんの操縦するこの『九九』機が割と角度を急にして駆け上がっていく....この機体のエンジンやや窒息気味? みたい?? 『鈍重』だの『鈍足』だのひどい言われようだけど、なんとなく機体も苦しそうに感じるなー....大丈夫なのかな....?

 

「....一度基地に戻って恵摩さんの『スピットファイア』に乗り換えたらどうです....? この機体ってあの会長? の機体よりも遅いんでしょう?」

 

「色々遣り用があるのです。私シの見込が正しければ....この機体の能力を最大限にまで発揮できれば....! もう誰もこの飛行機を『棺桶』などとは呼ばせません!! それよりメイ! ....ごめんなさい....平沢さ....」

 

「メイ! でいいです! 皆にそう呼ばれ慣れてますから。姉ちゃんにも!!」

 

「うふふ! ....貴方方は兄弟仲が宜しいんですね! ....羨ましいことです。じゃ! メイ! 私シの事もエマっ! て呼んで下さらない?」

 

「えええ....恵摩さんをエマって呼び捨てに....ですか....?」

 

「その敬語も! 私シ、貴方と同い年、同学年なのですから!」

 

「・・・・・・・・・・・・っ! ェエエエエーーーーっ!!!!・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・ なんですかっ!! その驚き様はっ! 私シも貴方と同じ今年ここの高校に入学したばかりの新入生なのですよっ!! メイっ!!!」

 

・・・・ あ〜〜〜・・・・ 驚いた! イヤそんなに歳上だとは思ってませんでしたよ!! ....三年生ぐらいかと....

 

「・・・・ イヤ二年生なのかと....スイマセン....」

 

「ハア....いいですわ。でも私シが歳上に観られやすい....というのも、根拠が無い訳ではありません。理由を説明するのが難しいのですけど。因みにあの騒がしい二人....桐絵と千華も同学年なの。あの二人とは同じクラスで?」

 

「ええと....違いますねー....でもあの二人なら同学年でも違和感が....! イヤ! ソノ....!?」

 

「フフっ! まあいいです! ではメイ! 後方を宜しくお願い! あのトリヘイの機体が近付いて来たら遠慮無く....ですわ!!」

 

「わかりました! 恵....エマっ!!」・・・・

 

・・・・〜《・・・・ テメ〜等! イチャコラ垂れ流してるんじゃねえ〜〜っ!!このトリヘイ様がお前等二人の『愛の巣!!』の上に地獄を叩き落してくれてやるぜーーっ!!喰らえーっ!!》《・・・・ タタタタタタタタタターーーー・・・・・・・・っ!!》

 

・・・・ウワーーーっ!! 話し込んでたらーーーっ!!! でもどこから?? 《グオオオオオオーーーーン・・・・っ・・・・!!》・・・・旋回してなんとか乗りきったけど!!

 

「....下から! ですわね!! 流石『彗星』! 上昇力が半端在りませんのねっ!!」

「声が聴こえるってことは....! 近いですねっ!!」

「『高度3000』....まだですわね....メイっ!」

「ハイっ!!」《・・・・ ダダダダダダダダダっ!!!》

 

空中で機体を捻りながら飛んでいる処で銃を撃つ!! この感覚に慣れてきた! とはいえなかなか当たるもんでもない....あの会長の紅い機体も縦横無尽に飛びかってるしなー....

 

「威圧だけでも効果はあります! 弾は....有りますわね! ドラム型弾倉の交換時には手袋を! 着けてますね! 遣り方は....」

「見よう見まねでなんとか!」

「....また来ましたわね....! 揺らしますよ!!」

「ハイっ!!」・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

~『・・・・ 北北東4000、高度約4000で二機が交戦中!あの高さでも足の速い『彗星!』を恵摩殿が翻弄してますよ!!流石は『九九!』ゼロ戦並に小回りの効く機体ですねー!どうぞ!!』

 

~『あんな高度に上がってまでする事か? 恵摩、何を企んでいる!』

 

~『....ねえ玲於奈、桐絵と千華と景都を降ろさせない? わたしと玲於奈が空中待機、高度400で!』

 

~『! ....そうか! そういう....恵摩の奴め! でもあの機体には平沢が乗っているんだぞ! 危険だ!!』

 

~『だからじゃな〜い!あの子、なにか守るモノがないとはりきれないというか....『護られたい!』のかしら....ウフフっ!!』

 

~『『え〜〜〜! やっぱり〜!!??』』

~『ん、この『分野』に関して疎い景都でも推測可能。やはりマジ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相変わらず騒がしいお話ではありますが....騒がしいと言えば、このクロスオーバー先の作品

『荒野のコトブキ飛行隊』の第一話放映後、ネット上での様々なコメントの中に音響への言及も

みられました。ヘッドホンでこの作品を視聴すると効果音がもの凄いのだそうです。

試しに次回放映時にテレビ(家庭用)にヘッドホン(ヘッドホンアンプ無し)を接続してみたところ、確かに凄い音です。家庭用のテレビ、しかもアンプ無しで聴いていたので、音質はさほど期待はしていなかったものの、それでも迫力がありました。エンジン、操作音、空中戦での戦闘音、風を斬る音、機体の軋む音、重低音!などなど、これはスゴいっ!と感激したものです。

さらにコメントを閲覧してみますと、このアニメの監督さんである『水島努』という方は『音響監督』も兼任してこの作品を製作なされていたとか。当時、名前だけ聞いていても未視聴だったアニメ『ガールズ&パンツァー』なる作品もこの水島監督の作品であると知り、にわかにガルパンにも興味を持ってヘッドホン付きで視聴したところ....これもスゴい!筆者がガルパンファンになる切っ掛けになる理由の一つとなりました。

 

 

 

 

 



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のりもの‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

「・・・・なんとか高度5000! まで上昇出来ましたわね! では! メイっ! 行きますわよ!! 只今から降下致します!! ベルトはOKですね!?」

「・・・・ へ? こうか? 降りるんですか?? ベルトの方はいいかと....?」

「では! 行きますっ! 『九九!』! 貴方の実力! 拝見させて頂きますわ!!・・・・!」《・・・・カタっ! ヒュ〜〜・・・・ ス・・・・〜〜〜ーーーー!・・・・ っ・・・・!! ヒュルヒュルヒュル〜〜〜ーーー・・・・っ・・・・!!》

 

ん? エンジンが止まった? いやプロペラが停まったのか?? 後向きの座席では確認できないから何ともいえないけど、なんかフワッとしたなー、とおもったら・・・・っ!!?? ジェットコースターーー!!?? ・・・・ !!落下してるのコレ!!目の前がもう青い空しか見えないんだけど!・・・・ でもそんなに怖くない? ....ベルトでシートに括り付けられているとはいえ体がなんとなく宙に浮きそうな感覚を覚えるけど....

 

「・・・・只今落下中です! プロペラを止めておりますがエンジンはアイドリング状態にしてあります! メイ! 後ろの様子は!?」

「ええと・・・・ ここからでは・・・・ 左右も紅い機体は見当たりません!」

「いましたわ! 私シの前方10時の方向で....! さあて、上手く行きますかしらっ!!」

 

〜《おーーう! エマっ!! オメーがそのつもり! ってんならこの勝負で決着着けてやるぜー!! 精々空中分解しねーようにきぃーつけるんだなっ!! この『彗星!』サマ!! の実力をトコトン見せ付けてやろーじゃねーかっ!! カッ! ハッ! ハーっ!!!・・・・》

 

「・・・・・・・・ フっ! 単純な男....!・・・・」

「・・・・ん・・・・?」

 

 

 

「こちら秋山! 基地滑走路上『メーベルワーゲン!』Ⅳ号対空戦車上望遠鏡から!北東約3000、高度5000からの二機の急降下を確認!! 自然落下状態で下降を続けている模様!! どうぞ!!」

 

「うわ〜! やっぱり! 恵摩って『チキン・ レース!!』で勝ち負け付けようとしてたんだ〜! ねえねえわたしにも望遠鏡観せて〜!!」

「へえ〜! ユカ〜! 戦車の中ってこんな風になってるんだねー! おもしろ〜い! ねえ千華〜! こんど『コレ』にも手を出してみない〜!!」

「わたしは『ゼロ!』だけでいいから〜! どおしてもってんなら桐絵だけでド〜ぞ!! ヒヒっ!」「なによーーっ!!」

「ん、景都も千華に同意。硬直したシステムは学校制度だけでも十分辟易。」

 

「はっはっは! 景都殿! 痛いとこをつきますねー! まあ、これも厳密には戦車と言える物なのかは分かりませんけどねー! これはかの有名な『Panzerkampfwagen.Ⅳ!』通称『Ⅳ号戦車!!』の車体を使用した対空[自走砲]戦車! というものであります!! 上部回転砲塔の代りに『3.7cmFlakvieling43/1』という対空砲を備え付けている『H型』です! いや〜! まさかこの部活でこのようなブッタイ! を拝めただけではなく、操縦も任せて頂けるとは! ここに潜り込んだ甲斐がありました!! ハイ!」

 

~『こちら玲於奈! 秋山! どうだ? 二機の様子は!』

「あ、はい! 会長さんの機体の方が若干速いですね! でもあまり距離を離している様でもありません! どうぞ!!」

~『やはりあんな事で勝敗を着けようとは....恵摩の奴....!』

~『あら、それはどうかしら?』

「はい? なんです? 座羅殿!」

~『んー? チョっと、ね? フフっ....!』

 

 

《・・・・・・・・〜ーーーーヒューー〜〜ルーーーーーー〜〜・・・・・・・・・・・・》

 

「・・・・高度3000....まだです....メイ? これから先かなり揺らす事になります。心の準備をしていて下さいね」

「・・・・ あ、はい! でもこの降下中て風のぶつかる音だけですねー! もっと凄い音で落下するものだと思ってました。エンジンを止めているからですか?」

「あら、メイもこころに余裕が出てきたのですね? エンジンでは無くプロペラだけを停めているのです。自動車でいうニュートラル? 状態でしょうか? それより....寒くありません? 今暫く辛抱をお願いします。まだその機銃を使う機会があるかもしれませんので」

「ああ、はい....」

 

・・・・ ホントは凄く寒い....制服ではかなりキツいなー....ハナ水がでそお....窓を締めれば暖房が効くんだろうけど....エマも同じだろうな....ちょっと頭を捻れば右隣にはあの紅い飛行機が並んで落ちている....結構速く降りているしどちらかが先にブレーキ? を掛ける勝負なんだろうけど以外と時間が経つのが遅く感じるなー....いつ終わるんだろ・・・・??

 

「・・・・より正確にはブレーキを掛けたまま降下しているのです。高度2000....そろそろですわね....! 《・・・・ ゥヴオオオ・・・・・・・・オ・・・・!!!・・・・っ!》メイ! 加速します! でもしっかりと目を開けて観ているのですよっ! 」「ん! はいっ!!」

《・・・・・・・・グワアアアアアーーーーーー・・・・ンっ・・・・!!!》

 

 

「・・・・ん! こちら秋山!! 一機加速しました!! 一気に高度を下げています!! ・・・・ 恵摩機ですっ!! どうぞ!!」

~『高度はっ?!』

「約2000!!」

「「・・・・えええーーーー・・・・っ!!!!」」

~『馬鹿なっ!! 普通なら加速を止めている処だぞっ!! ブレーキを掛けている様子は!!』

「・・・・ 『ダイブブレーキ!』ですか....? ここからでは確認出来ません! どうぞ!!」

「....無謀。下手すると地面に激突か空中分解・・・・。」

~『わたし達では場所も確認できないわねー....でもあの子達からなら....玲於奈、貴女は高度400、ワタシは200で基地半径2kmを周回する、ていうのはどう? ユカリちゃんから恵摩に連絡ね? 玲於奈、それでいいわね』

~『そうだな....秋山! 頼めるか!?』

「了解しました! 秋山! 基地レーダー室にて恵摩機と交信します! どうぞ!! ....千華殿! 桐絵殿!! ここをお願いします! 目視で異常を確認したらこの無線機で部長殿に連絡を! 自分は景都殿とレーダーにて位置を確認しながら恵摩殿に情報を連絡いたします! では景都殿も!!」

「ん、」

「「えーっ! わたしが〜〜っ! コイツといっしょにーー!!??」」

「流石! 仲がよろしい事で! では!!・・・・・・・・」

 

 

 

《ギュワアアアアアアーーーー・・・・ン・・・・っ・・・・!!》

~『・・・・ 恵摩機! どうぞ!! こちら基地レーダー室内の秋山!! 部長殿から伝言! 部長殿は高度400! 座羅殿は高度200にて基地半径2kmを周回飛行致します!! それを目安に、という事でしょう!! 部長殿! 恵摩機の落下座標は....!《カチっ!》』

「・・・・承知致しました....でも今は集中をする時! 無線を切らしていただきます・・・・ メイも! 私シを信じて頂戴ね・・・・!」

「・・・・はい!」

 

・・・・ さっきと違って凄い轟音だっ! 機体もギシギシッっと軋みをあげているし....! 時間も一気に早回りしている感じだ!! 風だって俺の座席では乱気流? でオレの髪もグシャグシャだし....! そういや....トリヘイさんの機体も見えないな・・・・!

 

 

 

「・・・・ ん! 恵摩殿?! 応答を!! ....部長殿! 恵摩殿との通信が途絶えました!! どおぞ!!」

~『....こっちもだっ! エマめ....!」

 

~『・・・・ おいっ! お前らっ!! ナンのつもりだっ!? エマのヤツがこんな高度で跳ばしてイキやがったぞーっ!! あんなのアリか〜〜〜っ!!!』

 

~『ん! 鳥平か!?』

~『あ〜らー! 恵摩を心配してくれてるの〜?』

「「うわ~~~~~! 今度は混信してきたよーっ!! どこまでもキっモーーー!!」」

 

~『るせいっ!! ハンソクだってーーのっ!! アレじゃヤツの機体....持たねえんじゃねーかっ!!』

 

「ん、『九九』のオリジナルの機体ならそう。でも....」

「一応はあの! 『最新カーボンコーティング!!』が施されてはいるのですが....どおぞ」

「そう。ブレーキの掛け具合では、急上昇、さらに失速。地面すれすれなら地面に激突。そこまでのカーボンの耐久性は未知数・・・・。」

 

~『・・・・ よおーしっ!! エマがそのつもりなら....オレもやってヤるぜ〜〜〜っ!! まってろエマ〜〜っ!! この俺様がアッ!というマっ!!に!!! テメエを追い抜いてやるからなーーーっ!! ヒャっホ〜〜〜っ!!!・・・・』

 

~『オイ! 鳥平っ! お前まで!! はあ・・・・』

~『・・・・ ホンっと! 飛行機乗りって!・・・・♡』

「「・・・・馬〜鹿っ! バっか〜〜〜っ!!!」ひひっ!」

「さすが....『ヒコーキ野郎!』たちって『丘の連中』とはまた一味ちがった『馬鹿さ加減!』を持ちあわせているんですねー・・・・」

「そう。それが『飛行機乗り』の生きるサガ。御粗末。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次いでの事ながら、『コトブキ飛行隊』について気になっていた事をひとつ。ここから先は筆者のエッセイの様なものですので興味のない方はスルーをお願いします。

アニメ『荒野のコトブキ飛行隊』を視聴していた方々ならお気づきでしょうが、主役のコトブキ隊の六人の搭乗している『隼・一型』のコクピットに、望遠鏡の様な長い筒が前面のガラス(アクリル?)を通して操縦士の前に突き出しているのを確認した方々も多かっただろうと思います。勿論あれは前方の敵機に狙いを定める為の『望遠型照準器』ですが、ここである違和感を持ちました。

コトブキの面々の空戦シーンでは、照準器越しであろう映像も流れておりましたが、コトブキの誰一人としてこの照準器に直接眼を付けて機関砲を撃っているシーンが見当たらず(見逃した可能性も。他の部隊のパイロットでは描写あり)、割と離れた所から(とはいえ数センチぐらいか?)両眼を開けて筒の先を覗いていた様に記憶しております。天体望遠鏡では接眼レンズには目をつけるぐらい近づけて覗きこみますが、戦闘機の照準器ではその必要が無いのかな?と疑問に思い、先ずはネットで検索してみましたが....中々見当りません。(検索の仕方が間違っているのかもしれませんが)

ちなみに、空戦アニメの傑作の一つ『紅の豚』では、主人公『ポルコ・ロッソ』の乗る紅い水上飛行艇のコクピットには隼と同じく前面の風防に望遠型照準器が付けられていて、蒼い『カーティス』を操る『ドナルド・カーティス』との最後の決闘ではポルコ自身照準器に目を当てて(片目は閉じて)銃を撃っておりました。(『カーティス』の機体の照準は『照星と照門?』というシンプルな構造)これが普通だと思っていたので『コトブキ』の描写では違和感を持ってしまった次第です。

ところが、とある以外な処から解答が齎されました。しかも純文学作品!『森 敦』という芥川賞受賞作家の作品『意味の変容』という書物からです。 照準器について何となくネットで検索を続けて芋づる式に情報に当たっていた処、『リアリズム1.25倍説』なるワードに辿り着き、この小説を知りました。普段純文学には何の縁も無い筆者でしたが、何となく気になって書店での立読みの後、購入までしてしまいました(文庫なのに高かった....)。

しかし....難解な本です。コレは本当に小説なんですかね??抽象的な命題がそこらに散りばめられていて、論理記号?まで載せられていて、主観?客観??外部?内部??ナドナド、数学や論理学を理解しないととても全体を把握するのは不可能な内容ですよ。。。しかし『小説』と銘打つだけあって会話調で話が続き、一応具体例的な?物語も付いています。その中の一つ、『死者の眼』という章に、今回の疑問点についての解答が述べられておりました・・・・つづく

 

 

 

 



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のりもの‼︎‼︎‼︎!

 

 

 

 

《ギュゥ〜〜〜ーーー・・・・ ギュルルゥ〜〜〜ーーー・・・・!!》

「・・・・ 500! ・・・・ 400!! もう少し・・・・ !!!」

 

~『・・・・ こちら玲於奈! 恵摩機が400を切った! まだ持ち上がらない!!』

~『!おいマジかよっ! ヤム得んっ! 機体の重いコチとらはコレが限界でいっ!! クソーーーっ!!!』

 

「・・・・・・・・・・・ 200っ!!!」

 

~『こちら座羅....200を切ったわ....! あの()やっぱり....!!』

~『『チョッっ・・・・!とっ!! エマ〜〜〜っ!!!』』

~『これは・・・・ いったい・・・・』

~『ん....これはもうレースとは言えない。恵摩の目論みは他にある....。』

 

「・・・・・・・・・・・・ 100っ!! メイっ! 衝撃にそなえてっ!!! ・・・・!」

「・・・・ えっ? あ! はいっ!!!」

 

《・・・・ ヴァサッっ・・・・っ! ・・・・ グゥオオオオオオオーーーー・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・ン・・・・!!!!・・・・》

 

~『『・・・・ ゥワアアアアーーーーっ!! エマーーーー!!!』』

~『・・・・ こちら秋山!! 恵摩殿が滑走路ギリギリを高速で通過!! 凄い衝撃波ですっ!! どおぞっ!!!』

 

「・・・・・・・・ !! 操縦桿が・・・・ 重い・・・・っ! ですわっ!!! ・・・・ もう少し・・・・ イケェ・・・・っ!!・・・・」

 

・・・・! エマ! 基地の滑走路の手間で一瞬にして機体を持ち上げたのか・・・・? 素人にはまるで状況も読めないし口出しもできない・・・・ エマは操縦に集中してるし・・・・! 窓の外はもう地面スレスレで土ぼこりも立ってるし・・・・! 音と振動で声も届かない・・・・! でももうエマに任せた以上信じて待つしかない!! イケ〜〜〜ェっ!!! ・・・・・・・・・・・・

えぇ・・・・・・・・

 

 

 

「・・・・ あの〜.... もしあのまま着陸しようとしていたら....?」

「ん....あのスピードのまま普通に着地しようとしても衝撃で前転の恐れがある。寧ろ胴体着陸なら安全性が高い。しかし『九九』の脚は固定式....」

「でも恵摩全然スピードを落とそうとしてないじゃん!!」

「....あっ! 機首を持ち上げてきたっ!! まさかこれ....ひひっ! 恵摩ヤるつもりじゃんっ!」

「え!? どういう意味です??」

「ん、ショータイムはまだまだ。お楽しみはこれからだイエイ。てこと....。」

 

《・・・・ グゥワアアアアアアァ・・・・・・・・ン・・・・っ・・・・》

 

~『・・・・ おおっ! エマのヤツ持ちこたえやがったっ!! ふぅ〜〜ぅ・・・・! まったくハラハラさせやがってっ!! ヨシ! 今日の処はオレの負けだ! あとはお前らの提案とやらを聞いて・・・・ てオイ??・・・・』

~『恵摩! 何でまた上昇している!?』

~『また宙返りでもするつもりね〜! で、その先には....フフっ!!』

「・・・・トリヘイっ! 背後が甘いですよっ・・・・!!」

~『・・・・ なにっ!!?? 』

 

《ヴオオオオオオオーーーー・・・・っ・・・・!!・・・・! ダダダダダダーーーー・・・・・・・・っ!!!! ・・・・》

 

 

~『部長殿! 恵摩殿が鳥平殿の機体に発砲!! 戦闘続行でしょうか!!?? どうぞっ!!』

~『・・・・ あいつ! 懲りもせず!!』

~『あらあら! エマったら!! でもあの急降下で決着を着ける、なんて誰も一言もいってなかったわよね〜? ん??』

 

~『・・・・ ぅわっ....!?! エマーっテメエ....キったね〜ぞっ!!!・・・・ よぉ〜し!! そのつもりでもな〜! テメーの最高速度400程度の『九九』がこのオレの『彗星!』様!!の600近い足に追いつこう!ってんのはお門違いも甚だしいってもんだーっ! ヒヒーーンっ!!・・・・ て・・・・ アレ?・・・・』

 

~『・・・・ おおおーーー! あの『鈍足!』がトリヘイに取り付いてるよ〜〜〜っ!!』

~『ホンとだーーっ! なんでナンでっ!! 桐絵〜!!!』

~『・・・・ 景都殿....ひょっとして! さっきのあの急降下は!?』

~『ん、『九九』の速度を上げる為の助走走行。ジェトコースターと同じ原理。たぶん。そしてこれもあの『最新特殊カーボン!』の恩恵。』

 

~『・・・・ ヤベ〜〜〜っ!! 振り切れねえーーっ!! エマーっ! 計りやがったな〜〜〜っ!!!・・・・』

「・・・・ ふっ! そのトリ頭の中身が悪いのです! では! これにてTHE・END! ですわっ!!!」《カチッ! ダダダダダダダダダーーーー・・・・っ!!!!・・・・ ヴァンッ!! ・・・・ グゥルルルル・・・・・・・・っ・・・・!!・・・・》

 

 

「・・・・ こちら秋山....! 鳥平殿の機体より黒煙発生....自校の基地に向かう模様....どうぞ」

~『終ったのか・・・・』

~『やるわね〜恵摩! これも愛する坊や! の為かしら? フフっ!』

 

〜《・・・・ テヤンで〜〜〜っ!! エマーっ!! これでおわったと思うなよーーーっ!! この借りは必ず返してもらうからな〜〜〜っ!! その時はこのオレ様にゾッコン惚れてもらうぜ〜〜〜っ!!! 憶えてけーーーっ!!! エ〜〜マーーっ!!!!・・・・》

《・・・・ ゥオオオオオオォ・・・・ン・・・・っ・・・・・・・・》

 

 

「うわ〜〜〜〜! メガホンでまだあんなコト言ってる・・・・! 最後までキシょいヤツ・・・・!」

「やーーいトリヘ〜! バ〜いバ〜いキーーんっ・・・・!! ヒっヒ〜〜〜っ!!!」

「あっ! 皆さん!! 恵摩殿が降りてまいりますよ! 平沢殿もご無事でしょうか!? 整備班さーん! ・・・・」

「ん、恵摩? 何か様子がおかしい・・・・」

 

《・・・・ キュルっキュルキュル・・・・・・・ パタパタパタ・・・・っ・・・・・・・・

ガタっ!・・・・》

 

「・・・・ 平沢くん! メイっ!! ・・・・ 返事が無いのですっ!! 後部座席を!

メーーイっ!!!・・・・っ・・・・」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・ ん・・・・・・・・・・・・ もおおわったのかなー・・・・ んーー? ・・・・ 『ひらさわどの! ひらさわどのーー!・・・・』・・・・んんん・・・・ まどのそとにあきやまどの? がー・・・・?? 『メイっ!? メーーーイっ!!!! ・・・・』ああ・・・・ エマさんかなーー・・・・ んー・・・・? ナンかあたたかいのにつつまれててるような・・・・・・・・ えーーー・・・・とお・・・・・・・・

 

ン・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・ メイ? メイ! ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・ン・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・ よかった・・・・気がついたのね・・・・」

 

 

・・・・・・・・ん・・・・ ここは・・・・ みしらぬ天井?カーテンまで ・・・・・・・・

 

 

「・・・・・・・・・・・・ほら!唯も!!・・・・」

 

・・・・・・・・ ほわあ?ユイ??・・・・ のどかの声も・・・・ ここ・・・・ ドコ? ベッドの中??・・・・・・・・んわっ! ダレ!!??

 

「・・・・・・・・ ほわあ〜・・・・ メイ〜〜! ヌフフフフ〜〜〜・・・・・・・・!!」

 

・・・・ ねーちゃんっ! ・・・・ ナンで俺ベッドの中でのどかに見つめられながら姉ちゃんと添い寝してるワケっ?!?

 

「メイ! 大丈夫? あなた自分が気の失った時の事思い出せない?」

 

「・・・・ 俺が気を失って・・・・ ?? てココドコ! ナンで姉ちゃんと!!?」

 

「憶えていないのね....あなた敷地内の北側の区域で雑木林の草むらの中で横になっていた処を通りすがりの生徒たちが見付けてくれたのよ。外傷は無いみたいだけど起そうとしても目を覚まさないものだから保健室まで運んで下さったんですって。後で御礼を言っておきなさいね。で、何があったの? 思い出せないかしら??」

 

えー・・・・ 俺って確かエマさんの操縦する飛行機の中で・・・・ 気が付いたらココに居たんだけど・・・・ コレって夢オチ?? ユメだったての???

 

「ふわ〜〜〜ぁ・・・・ ムニュ〜〜・・・・ メエ〜・・・・ くふふぅ〜〜・・・・」

 

あああ・・・・ 横で添い寝してたユイがオレに抱きついてきた・・・・ いまだアタマがフワ〜としてこの状況が把握できてない・・・・ まずは・・・・

 

「・・・・ なんで姉ちゃんが俺とおネンネしてるワケ??」

 

「あなたを見つけてくれた生徒があなたの生徒手帳を確認して同じクラスの私のとこまで携帯で連絡してくれたの。他の子達ってほとんどが部活中でしょ? 唯は私と一緒に生徒会室にいたものだから連絡を聞いて私より先にこの保健室へ飛んできたのよ。もうワンワン泣き出しちゃったものだから大変だったわ。で、泣き疲れてウトウトし始めたから仕方なく同じベッドに寝かしつけちゃった訳。それからずーっとこのまんま。フフっ! やっぱりあなた達双子なのね! 一緒に寝ている姿を観てたら昔を思い出しちゃったわ。ウフっ!」

 

なるほどそう....姉ちゃんこのところのどかと一緒に生徒会室で放課後を過ごしてるからなー。俺が姉ちゃんに合った部活を探し出すまでの間だけど。でもあの飛行場にたどり着いたところからが夢だった....のかな?? すごくリアルだったし。飛行機の中で振り回されたり寒くて凍えそうだったり....そうだ、

 

「・・・・ その俺をここまで連れてきてくれた人というのは」

「ええと、三人の女子生徒よ。保健の先生には西住さん、武部さん、五十鈴さんと名乗っていたようだけれど。それ以上のことは言わずに保健室から立ち去っていったらしいわ。知り合い?」

「いや....知らない....」

 

あの場所にいた人たちにそんな名前の人なんていたのかな....みな名前か苗字? で呼びあってたし。う〜〜ん・・・・ ところでいま何時?

 

「んー、四時ちょっと過ぎね。あなたがここに運ばれたのは三時半ごろ、今日は三時にHRが終ったからその間に何かがあなたに起きたのね。メイ、身体に痛い処とか無い?」

 

ん〜別に痛いところは....アタマはまだまだスッキリしないけど....て放課後になって一時間チョットっ?? 夢の中では数時間経ってたような気がするけどなー....まあ夢ってそういうもんだけど。

 

「ま、あなた達二人はもう少しここで休んでなさい。保健の先生もそう言ってくれてるし。五時になったら迎えに来るから。それまで二人でなかよくお愉しみにね。フフ!」

「....んーそおするー....ありがとのどかー....今度なにかおごるわー....」

《・・・・ パタン、》

 

ふう....またのどかに世話になっちゃった....俺たち姉弟....憂はそれほどでもないけど....のどかに迷惑かけっぱなしだなー....唯まで生徒会室で預かってくれてるし....仕事の邪魔になっていないかなー....んー....まだフワ〜としているし姉ちゃんとのお寝んねも久しぶりかなー....学校の保健室だけど....お言葉に甘えてこのまま五時までふたりで....ふわわわぁ....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・ 前回のつづきです。

元々、航空機用の照準器は、天体望遠鏡の横に取り付けられている小さな筒状の『ファインダー』と呼ばれる物の流用品、との事です。

ガリレオの発明以来、天体望遠鏡の倍率が高くなるにつれて、対象とする天体を捉えるのが難しくなってきた為に、改めて倍率の低い小型の望遠鏡を並行に取り付けて、対象の天体を捉え易くする為に創られた物が『ファインダー』で、(現代では)倍率も5倍から10倍、口径も25mmから50mm程。覗くと中に十字の標が浮かび上り、その中心に目標の天体を捕捉することで望遠鏡本体にもその天体を捉えさせるのが目的の装置だそうです。(その十字の標は光学的原理上『無限遠』の彼方を捉えているらしいのです....)勿論望遠鏡本体とファインダーとの微調整も必要です。

戦闘機の『照準器』も、パイロットが空戦中に照準器(ファインダー)で敵の機体を捕捉して、(望遠鏡に相当する)機関砲を撃ち、相手の機体に命中させる為の装置ですが、(それまでの照星・照門式の照準に替わり、望遠型照準器に映る無限遠の十字の標に弾丸を命中する様に調整する事で、敵機への命中率が格段に上がるそうです)少し違うのは、天体望遠鏡用は天地逆に映る処を、照準器では自然の視界と同じに映るように造られていて(最近では天体望遠鏡用のもある)、しかも、倍率が『1.25倍』に調整してあるというのです。(『意味の変容・死者の眼』の章は第二次大戦中の照準器工房が舞台)・・・・1.25倍?何故なのでしょう??ライフルの照準器の様に倍率がもっとあってもいいじゃないかとも思いましたが.... 戦闘機では普通の視界での操縦も兼ねているので、そうそう倍率を上げられないのかもしれません。興味のある方はぜひ本書に当たって頂くとして、内容を要約しますと、片眼を照準器に、もう片方の眼も開いたままで飛行機を操縦するには、照準器の倍率を1倍にするよりも1.25倍に調整する方が、両眼の視界を違和感無く対象に『接続』する事が出来ると、筆者はその様に理解しました。

つまり、望遠型の照準器のレンズを少し離れた処から両眼で覗いても、照準器の円形の内部の視界と、その外側の(自然な)視界は違和感無く全体の視界として収まる....(照準器を覗いた事が無いのでなんとも言えませんが....)という事でしょうか??少なくとも筆者はそう理解しましたが、本書ではそれが哲学的、数学的に説明されていて、もはやついていけません....でも本書の内容をこの様に理解する事で、この『コトブキ』でのナゾが解けた思いがしました(たぶん)・・・・

後に開発される『光学型照準器』の原理も『意味の変容』内で説明されておりますが....疲れました。『光学型』はネットでも色々と解説が充実しておりますので、ここでの説明は不要ですよね....

 

 

 

 

 



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のりもの‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・ ひらさわどの ・・・・ ひらさわどのっ!! ・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・ んー・・・・ んんん? なんかよびごえがきこえるなー・・・・ あきやまどの・・・・ ? そおか・・・・ ゆめのなかにはってきたんだなー・・・・ あれからどおなったかきになってたし・・・・ ゆめのなかならこわくもナンもないしなー・・・・

 

 

 

・・・・・・・・ ひらさわ殿....! ....失礼! ....カーテンを開けまーす....どおですかー・・・・ ? ・・・・ フワっ!!?? ....平沢殿がフタリ〜〜っ!? ナニゴトですかっ! コレはっ!!??」

 

「・・・・ ふえ? ・・・・! わ〜〜〜っ! あきやま殿??!! ・・・・」

「・・・・ ふわっ・・・・ えへへへへ〜〜〜〜・・・・ おかわり・・・・ むにゅ・・・・」

 

 

 

「....いやあ〜〜! そおでした! 確か平沢殿は姉上の後名代として我が部に見学に来ていらしたのでしたねー! でも双子! とは思いもつきませんでした! テヘっ!」

 

「....じゃあ、あれは夢ではないんですね....あの場所も飛行機も....」

 

「ええ! あの方々も健在です! 本当は皆さんここに来て平沢殿を介抱したいところなのですが....自分と桐絵殿と景都殿で平沢殿をここまでお運びした次第です! はい!」

 

さっきまでのどかが座っていたベッドの横の椅子にはいま秋山さんが腰を掛けている....夢では無いみたいだけど....まだ頭がはっきりしない....とにかくアノ場所は実在する! のね....でもなんか釈然としないなー....

 

「まあこの事はあまり部外者には明かしたくないんでしょうけどねー。自分もアノ部活に潜入するのも手こずりましたから」

 

潜入? どおゆうコト? 秋山さんあの部活の部員じゃないの??

 

「まあ自....私の事でしたら。私、『秋山優花里!』 はこの高校の生徒では無く交換転入生としてこの四月に東北の某学園艦からやって来た者であります! 表向きは友好校同士の交流、でも私個人の目的は....この高校に存在すると伝えられているある部活! についての調査の為なのです....! はい!」

 

「それがあの部活、ですか....?」

 

「いや〜! 私の求めていたのはアレ! では無く『アノ!』部活なのですよ! もうお解りでしょう!」

 

ああ『アレ』....でもこの高校に入学する前も今も『アノ』部活について何の噂も話も聞いたことないんだけど....ん〜。

 

 

「兎に角! 私は独自の情報網を駆使し、この高校のとある部活、『フライング・パンサー部!』と名乗る部活に目星をつけたのです! 表向きはこの部活、高校の北側の雑木林とその裏の丘を使ったサバイバル・ゲーム! の活動として生徒会に登録しているのですが、活動実態が不明、実態把握も不可能、しかし部費の配分も不要ということで生徒会からも半ば放置、黙認とされてきたナゾの部活だったのです。そこで私の直勘! が働き、この部への接触を幾度と試みたのですが....中々シッポを出そうと致しません。ところがある日、授業の合間の休み時間、屋上のベンチでボ〜と空を眺めていた処、とある二人の雑談、いや軽い口喧嘩をを耳にしたのであります....!」

 

ああ....あの二人ね。その二人が秋山さんの居るのも気付かず例によって『部活活動内容』について言い争っていたとか。

 

「ご明察! その時の口喧嘩の内容が『模擬戦!』だの『弾丸!』だの、サバゲーではよく聞く話なのでもしや! と思いさらに聴き耳をそばだてていた処『砲撃!』や『電撃戦!!』更には『ガソリン!!!』などという言葉まで....! コレは当り! と隠れながら小踊りして居りました!! そこで私は授業開始のベルが鳴ってそれでも口喧嘩しながら教室へと戻る二人に気付かれないように跡を付け、二人のクラスを確認したのであります。 そして放課後も....! どうです? 私の諜報活動も中々なものでしょう!!」

 

いや、ひとはそれを『....ストーカー行為』というんじゃないかと....でも『独自の情報網』てなんです?? 秋山さんこの高校に来てまだ二週間でしょ? 『諜報部!』とか『隠密倶楽部!!』なんて部活立ち上げたほうがいいんじゃない??

 

「はっはっはっ! それもいいですねー! ではいつか私が『アノ』部活に潜り込めた暁には別動隊! として創設致しましょう!」

「・・・・ ううう〜ん・・・・ ウヒヒ〜・・・・! スゥ・・・・」

 

「....おっと! 声が大きかったですねー....しかしよく寝てますねー....」

「....まあ、このぐらいの声ならまだまだ....」

「....しかし仲の御宜しい....! このお姉様とは毎晩このような格好で....!」

「....いやマサカ! 今日はとくべつ....」

 

今、俺はベッドの上でユイに首に手を回され胸の上に顔を埋められながら熟睡されきっている状態で秋山さんと話をしている....それにホントは毎日スキ! あらば抱きついてくるんだけどなー....(もちろんベッドはNG!)まああらぬ誤解も受けそうなんでこう言ったけど....ホンとよく寝ているなー....

 

「では話を続けますよ....! そして放課後、例のクラスからレイの二人組が出てきたところを見計らって跡を付け、この高校の敷地の北側、雑木林のほとりに至り、あの二人がその中を突き進んで行く処を見届けたのです! そこで私も二人の跡を追い、森の中に入って行ったのでありますが....」

 

「....森の中はほぼジャングル....でしたね」

 

「そう! その通りなのです....!! 途中から方向感覚が狂い、何度も引き返そうかと迷いましたが前の二人の踏みつけていた小道を頼り、なんとかアノ飛行場へと辿り着いたのであります!!」

 

アノ場所ね....だだっ広い所だったねー....この高校、いやこの街全体にもそぐわない妙な場所だったけど。

 

「そうです! その余りもの広さに只々ボーゼンとしている処にあの! 部長殿が座羅殿の運転するキューベル! で私の所までやって来て私を車に押込み、格納庫に着いてすぐ私をロープでグルグル巻きして倉庫内のクレーンに吊して尋問を始めたのであります....!」

 

それって拉致、監禁、拷問....じゃないの....? 当の秋山さん自身、事も無げに喋ってるけどなんともなかったのかな....

 

「そこで私は自らの身分証明、ここに至る動機、方法、そして『アレ!』についての熱意を得々と! ....私もこの部活への参加を認められたし!!との熱弁! を払ったのですが....」

 

「『アレ』ではなくああだったと....」

「ははは....部長殿を始め皆さんにも呆れられて笑われて仕舞いましたが....私が尋問されたのも他校からのスパイ! のと嫌疑を受けての事ですし、独自の調査でアノ場所にたどり着いた! という諜報能力も認められて特別にあの部活への参加を認められたのであります! 『アレ!』もですがこれもイイですねー! すっかり虜になってしまいました! はい!」

 

そういうことねー....でもそこまでして部活内容を隠そうとしていたのに何で俺の見学が認められたんだろ??

 

「ああ、それはですねー、以前部長会議があった際、ウチの部長殿と他の部長達との間でいざこざがあったのをあの奉仕部の雪ノ下部長殿が仲介を買って出てくれて、それを恩義に思って、との事だそうですが....」

 

「それだけではないと?」

 

「....どうも、あの部員の中に平沢殿の知合いが居るのではないか、との見解を私自身、持っているのですよ....! 心当たりは?」

「....へっ? オレの???」

 

イヤっ? 知らない! てか全然憶えてない!! こちらが忘れててもあちらさんが....てこともあるかも知れないけど、だったら本人が俺に何か言ったらいーじゃん!!

 

「そうですか....いや失礼しました。忘れて下さい。私の憶測です! どうかお気になさらず....! すいません....」

 

「いえ、べつに....そういや、時間! なんか時間の感覚がおかしいんだけど....!」

 

「それもなんです! あの場所がどうもヘンなのは....! あの空間では時間の流れがここよりもユックリ進むみたいなんです....!」

 

「....ゆっくり?」

 

「そうです。しかも景都殿の話では流れ方も一定では無く、こことの時間の流れとのズレを正確に割り出せないのだそうです。おおまかには把握できるそうですけれど....それ以上の事はまだ私自身よく解っておりませんし、部長殿をはじめ他の方々も多くを語りません。そもそもなぜあの部活が存続出来てるのか? なぜ延々と『空戦』を続けているのか? もよく分からない処なのです。それに私もあと二週間でこの高校を去る事になってますし」

 

「そうですか....秋山さんもあと二週間で....」

 

そう....あの『場所』は異世界? 異空間?? はたまたヘーコウ世界???

とにかく俺の頭ではあの部活のこともふくめて理解が追いつきそうにないなー....それでもまたあの『場所』へは行けるのかな? エマさんとかも....

 

「それは『あちらさん』次第だと思いますがねー。誰もが入れる『場所』ではないみたいですし。平沢殿は『選ばれた!』のではないでしょうか? いきなり飛行機に乗せて頂けたのだし! あ! そうそう! コレは当人から固く口止めされていたのですが....クフフっ!!」

 

「....なんです?」

 

「....平沢殿はどこまで憶えておられるか分かりませんが、恵摩殿! あの鳥平殿との勝負に勝って無事滑走路に降り立つや否や! 気を失われていたメイ殿に抱き付いてしかも号泣して仕舞われたのでありますよ!!」

 

....えええ....あのエマさんが....! オレに....!!

 

「なんとか部員総出で平沢殿を機体から運び出したのですが....その間もその後も『私シの所為です! 私シの責任です! メ〜イーっ!!』と取り乱して介抱中にも抱きつこうとしたりして大変だったんですよ? クフフ〜!! あの恵摩殿が! ....でもみんなそんな恵摩殿を責めるなどなく優しく接していたのはやはり大切な仲間だからなのでしょうね。あの例の二人も恵摩殿を励ましておいででしたから!」

 

そうか....なんとなく朧げに憶えているような....あの『あたたかい』感触も....それでここの保健室へ?

 

「はい、私と桐絵殿と景都殿三人で。恵摩殿も介抱する! と息巻いておりましたが、その時分ではまだ落ち着きもみられませんでしたので部長殿に止められ私たち三人で平沢殿を抱き抱えてここまで連れて参りました次第です。はい」

 

「じゃああの三人の名前は....」

 

「おお、聞き及んでおられたのですか。あれは咄嗟に浮かんだ偽名です。保健の先生に名を訊ねられたので、すかさず出した名前ですよ。もし本当の事がバレたら大変ですからねー! ....でも何であの三つの名前が直ぐに浮かんだのでしょう? 偶然にしても何か....ですが、う〜む....」

 

自問自答が始まったようだけど....もうすぐ五時か....そろそろのどかが迎えに来るころかなー? 姉ちゃんも起こさなきゃならないし。

 

「もうそんな時間ですか! いやー長居をしてしまいました。私、この顔を生徒会関係者に憶えられてもマズいですからねー! では私はこれで....!」

 

「あっ! もうひとつ!! あの部活の名前!! なんで飛行機を飛ばす部活なのにあの名前なんですか? 『パンツァー!』て『戦車!』の事ですよね?」

 

「ああ! あれですか! あの名前には私も引っ掛かりました! 正確には『Flying・Panthers!』元々は『Flying・Female・Panthers!!』と名乗っておられたようです。つまり、『空飛ぶ女豹!!』大戦中、座羅殿の御執心のあの『カーティス P-40!』を飛び回していたアノ国の飛行機乗りの義勇兵のチームの名称『Flying・Tigers!』からモジったもののようです! でも名前をカタカナにした過程で生徒会の誰かが間違って『パンツァー!』と表記してしまったのでしょう! 実際『豹!』よりも『戦車!!』のほうが知名度が高いですからね....!『Panther!』と『Panzer!!』ん〜似ているようなそうでないようなー? はっはっは! では! またいつか! どこかの校舎で....!」《ガラガラ....パタン》

 

はっはっはあ・・・・ そんなオチかい!! でも....そうか....秋山さんはあと半月でここから居なくなっちゃうのか....面白い先輩だったのに....あの部の部員たち、エマさんにもまたちゃんと会えるのかなー・・・・ て秋山殿! アンな話聞かされたらエマ! とドウイウ顔をして会えばいいのさー!! たく....《ガラガラ、》

 

「....メイー、ユイー! 起きてるー? そろそろ時間よー? あなた達の荷物持って来たから、早くおきなさいねー!!」

 

「ん? ああ、のどか! ありがとー。ホレ、ユイ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・ ん〜? もう朝〜?? おはよ〜〜! ・・・・・・・・ってメイ!

アンタ何でわたしのベッドで横になってるのさ〜〜っ!! ・・・・ アラ? ウっフっフ〜〜っ!

メイ〜! そんなにわ・た・し! と一緒にオネムリしたかったわけえ〜〜! ん〜モウ! 素直じゃ

ないんだからあ〜〜〜っ! じゃ! メイっ! めざめのチュ〜〜〜〜っ(´ε` )!!!・・・・」

 

「....オイっ! ねーちゃん寝ぼけるなっ! ここは保健室だってーの! のどかも見ているしー!!」

 

「あらあら! 私は構わないわ。どうぞ仲良く御接吻のほどを! ウフフフっ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

以上『荒野のコトブキ飛行隊』の面々から七人と、『ガールズ&パンツァー』から『秋山優花里』を特別ゲストとしてお送り致しました....秋山殿に出演して頂いたのは『ガルパン』の中で筆者のお気に入り、というのもありますが、物語のナビゲーターとして申し分ない人材、と思いいたった次第でもあります。ただ、秋山殿の飛行機についての薀蓄は筆者のシナリオに従って台詞を述べて下さったもので、当人に戦車以外のマニアックな知識を持ち合わせている、というのは筆者のオリジナル設定です。御容赦下さい。

 

補足として。

作中における飛行機についての情報は総てネットから、特に『Wikipedia』からの情報からの引用、要約です。省略の過程で各航空機についての記述に誤りがある可能性もあります。もしその様な記述がございましたら申し訳ありません。さらに、筆者はミリタリーについては『にわか』でありまして、当小説の内容は筆者よりミリタリー関係に詳しい方々には食い足りなく物足りない処もあるかと思われますが、今の筆者の力量ではこれが精一杯でした。空戦の描写も不足(擬音、効果音の過剰演出で誤魔化しております....)である事は承知しておりますが、実力よりも情熱を優先してしまいました。とにかく描きたいという衝動が優ってしまったのです。どうぞお汲み取り下さい。

 

あと、『九九艦爆』の急降下の描写についての補足です。

5000mの高度から急降下してジェットコースターのように....の下りの元ネタは、筆者が且つてどこかで観たか聞いたか曖昧な記憶からの引用で、現実ににその様な事が可能なのか、まるで検討も付きません。間違っている可能性の方が高いかも知れませんが、マンガ的な展開を優先してあの様に描きました。

さらに、『荒野のコトブキ飛行隊』の第七話でキリエがトリヘイの機体『彗星』を借受けて急降下をするシーンがありましたが、あの描写の中で、『彗星』が高度2000mから急降下して高度200mで爆弾を落し、機体を持ち上げるシーンがありました。その際、キリエはプロペラを回して加速しながら降下していた様ですが、いろいろ調べて観た処、実際の急降下爆撃の際にはプロペラを止めて(エンジンは掛けた侭)自然落下状態で降下し(その際はダイブ・ブレーキというものを掛けて速度を上げ過ぎ無いように、との記述も)400m付近で爆弾を落しそれからプロペラを回して加速、離脱するという手順をふんでいるとの事でしたので、当小説ではその説を採って描写しております。専門家の監修を受けているアニメの描写の方が正確なのでしょうが、どちらもあり得たことかもしれません。いずれにせよ、当筆者が間違った描写をしているかどうかが悩ましい処ですが、ここは二次小説として多目に観て頂きたいと思います。

 

さらに、『ガルパン』の世界観について少々批判的なコメントを出演者に述べさせてしまいました。これは決してアニメ『ガルパン』全体を否定している訳では無く、飽くまで『ガルパン』世界の中にある『戦車道』という組織に対する批判的見解ですので、『戦車道』の枠内で試合をしている主人公たち学生に対してではありません。その辺りをお汲み取り頂けたら幸いです。

 

まだお付き合い下さい....秋山殿の交換転入について、ですが、アニメ『ガルパン』の中で大洗女子学園が『戦車道』を復活させる時期が今時点で不明なので、それ以前に当『けいおん!』高校へ短期転入、という設定に致しました。この時点で秋山殿は高校二年生、まだ西住、武部、五十鈴、冷泉とは面識がないうえ、まだ大洗校での『戦車道』復活の計画も一学生の立場では知り得ない、という事にしております。

ここからは筆者の勝手な想像ですが、秋山殿はこの様な方法で各校の『戦車道』の状況を確認していた、だけではなく、『戦車道』のある弱小校(強豪校は入学もハードルが高そう....)への転入を真剣に考えていたのではないか....と。またあるいは、大洗校での『戦車道』復活! をその独自の情報網(筆者独自の設定....)で聞き付けて、その復活を後押しする為に自主的に活動し、様々な高校へと潜り込み情報を収集していた、とか.....あの愉快なキャラクターなら、そういう妄想も掻き立てられてしまいます....

 

....追記、『ガルパン』第一話・二話の画像を改めて見返す機会がありましたので、よく目を凝らして観ていた処、第一話の学園風景では桜並木が満開でしたので、おそらく新一学期初頭の頃。二話目の、秋山殿が立木に隠れて西住殿一行を盗み見していた時のシーンでは桜は一切咲いておらず、

おそらくながら勝手に五月頃と推測しました。ここでは、その頃に秋山殿が『けいおん』高校から大洗校に帰ってきたという事にしておきます....

 

とにかく平沢銘による部活行脚の話の中では思わぬ長編? となってしまいました....(三章ぐらいで終らせるつもりでした....)飛ばしてしまっても一向に構わないお話ですが、それでも楽しんで頂けたとしたら幸いです。

 

 

 

 

 

 



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とりかえ!

 

 

 

・・・・ ふわわあぁ・・・・あさだ・・・・ へいじつだ ・・・・ がっこうだー・・・・ ん?

少しばかり寝すごしたかなー? じゃ、顔を洗うまえに着替えるとするかー。えーと? せいふくっと....ん? ああ、そおだった。クリーニングに出していたのが返ってきて袋に入ったままだったなー....よし、まずシャツ....スカート....黒のタイツに紐タイにジャケットと....! んじゃ洗面台....! んー・・・・ん? んんん???・・・・

 

 

 

《・・・・タドタドタドタっ!!!》

「・・・・ ウイ〜〜っ! ウ〜〜〜っ!! イーーーっ!!! ・・・・」

 

「・・・・ あー! お姉ちゃんおはよー!! て、あれ? お姉ちゃんが上から・・・・??

じゃあさっき出かけてたのってお兄ちゃん? でも今日朝早く出てのどかさんと生徒会の手伝いをするって言ってたのはお姉ちゃん・・・・ ?? えええ???」

 

「・・・・ オレだっ! メイだー!! 姉ちゃん! わっ!?!?」

「・・・・ へ? お兄ちゃん?? お兄ちゃんがお姉ちゃんに? ・・・・???

《・・・・ ガサゴソ・・・・ カシャっ!》・・・・ エヘヘっ!!」

「・・・・ おいっ! ナンで写真を撮るんだよー!!」

「えーー!! だって・・・・ 可愛かったから! ウフフっ!!! 待受けにしよっ! と!!」

「・・・・ おいウイ〜〜〜・・・・ !!!・・・・」

 

ああそうだ....今日は月曜日....オレ昨日返却されたクリーニング済みの制服を憂に手渡されて、そのまま中身も確認もせず部屋に放置してたのをそのまま着ちゃったんだ....じゃあ姉ちゃんも!!

 

「ウイ〜〜!! ナンで姉ちゃんのこと気づかなかったんだよ〜〜!!」

「え〜、お姉ちゃんいつものようにジャムトーストを持ってってそのまま家を飛び出してっちゃったから....わたしキッチンの前にいたし。あ! でも!」

「なに!? スペアでもあったっけ?」

「お兄ちゃん! こっち来て! ほら!!」

 

んで憂に連れて来られたのがさっきの洗面台。椅子に座らされて髪をいじくり回されております....

....ん?前髪にヘアピンふたつ??

 

「はい! できた! ウフ! これならどう!!」

 

そして、鏡の前に立ち現れた姿とは....!

 

「・・・・・・・・ ユイだ・・・・・・・・ てチョッと!!」

「うふふ!! お兄ーちゃん! 今日はこの格好で! キャ〜〜〜っ! カワイ〜〜〜っ!!!」

 

俺の髪を整えてくれたウイはその出来映えに感極まってオラに抱きついてキマシたとさ....ちなみに俺とユイとウイの髪の長さは同じ(身長も....)。違いを出すために三人とも髪型を変えてるんだけど....ユイは髪を下ろしたままで右の前髪にヘアピン、ウイは後ろの上で髪留め、ポニーテール。オレは中学まではただ軽く耳の上に乗せて後ろに流してただけのお手軽セット。時に首の後ろで纏めることも。最近じゃクラスの女子に面白がられて髪をいじくられ、結果耳に乗せた髪を左右それぞれヘアピン二つで留められて、それが今の俺の定番の髪型になっちゃった....オレオトコなんだからも少し髪を短くして耳を出すぐらいにしたいところなんだけど、ある理由でユイとウイに止められている。説明は追ってまた! ....てかウイさん! その抱きついてくれるほどの気持ちはまあいいとしても! オレこのカッコのままガッコまで歩くワケ?? おい!!

 

「うふふ〜! お兄ーちゃん! えへへ〜!」

「えええと....いや〜! てれますな〜! フウ....」

 

朝食を終えて俺はいまウイと一緒に途中まで登校している....いや一緒に登校すること自体はいつも通りなんでべつにいいんだけど、今日は俺とウイと二人きり....ウイのヤツがなんかハイテンションなんだけとなー....俺と腕を組んだりして....まあ仲のいい女の子や姉妹なら自然なポーズなんだろうけど....『女装....』しているオレに嬉しそうに抱きついてくるってんのは....ドウなのよ!? 手をつないで歩くことぐらいは幼い頃なら当たり前だったんだけど....こんなの久しぶりなのかもなー....

 

「ねえねえお兄ちゃん! 今日はこのまんま学校で過ごすのー?」

「おい....ユイと制服交換するに決まってんじゃん....」

「え〜! もったいな〜い!! せっかくカワイくしたのにー! お兄ーちゃん!!」

「勘弁してくれー・・・・」

 

そしてウイと途中で別れて一人で登校中....他の生徒たちとも並んで歩いているけど....なんだ? この居心地の悪さは....! 何ともいえない背徳感は....! クセになったらどおしよお....て別に俺そんなに違和感も感じていなかったりするし。その理由も追ってまた! でも登校中や学校の中、てんのはチョッとなー....なんて思いを巡らしていたら教室に着いちゃった....さてユイのヤツは! まだ生徒会室にでもいるのかな?

 

「「おはよー! ユイ!!」」

「「「ユイ〜! おはよ〜!!」」」

「平沢さん、お早う」

「「お早う御座います。平沢さん。オカルト研究会は貴女の入部を心待ちにしております」」

「え、え〜と! みんな〜! おはよ〜〜っ! えへへ〜!」

 

お、おう....みんなオレのこと『ユイ!』だと思ってるのか? 違和感とか持ってないってのか?? ふうー....てか姉ちゃんは?

 

「でも珍しいねー! メイが朝っぱらから机で伏せてるなんて! キャハっ!」

「うん、あの平沢君がさも嬉しそうに朝から寝言を言いながら熟睡するなんて。やはり平沢さんとは双子の血が争えないのかな? フム」

「そーいやメイって今日髪纏めてないで学校きてたねー、なんかユイみたいだったし! アハっ!」

「《....ドキッっ!!》....いや〜、えへへへへ〜! 昨日遅くまでテスト勉強してたみたいで〜!! ぬふふふふ〜....! ・・・・」

「あ、そーなんだー! やっぱり! ユイとはちがって出来のいい弟だね〜! キャハハっ!!」

 

・・・・ エヘヘヘヘ....ほめられちゃった....ハア....ユイの口まねはつかれる....オレの声は変声期前の少年ボイス! て音楽の山中先生にほめられたこともあったし、少しトーンを上げればまだまだ似ているのかも....て! 姉ちゃんに会ったらどこか人の居ないとこで制服を交換するするつもりだったのに....これじゃ出来ないじゃん! それまでオレ姉ちゃんのモノマネし続けなけりゃならないの?? はあ....しんどー....いや! そうだ!! このテがある!!

 

「「・・・・ ス〜〜〜・・・・ ス〜〜〜・・・・ エヘヘヘヘ・・・・」」

 

「・・・・ あ〜あ! ユイまで寝ちゃった! アハっ!」

「さすが、双子だね。制服を交換しても誰も気付かないんじゃないかな? ウム」《....グキっ!!》

「おい、ユイさんはいいとして、メイ! は起こさないとヤバいんじゃ無いか? ユイさんにはもう先生もお手上げだし」

「なんかこのまんま寝かしといてあげたい〜〜! だってカワイ〜〜! じゃん!! キャハっ!」

「あ〜あユイったら....ちょっとユイ! まだ生徒会の手伝いが残ってたの! もう少しいいかしら? 唯?」

 

あー....のどかだ....のどかまで俺のことユイだと思ってるのかなー....俺のことつついてるし....まあいいや....寝たふりしてるだけだし。

 

「・・・・ んー....わかったー....のどか、....ちゃん....ホワアアアァ....」

「じゃ、いくわよ、ユイ。みんな、あとでね」

「アハ! のどかにコキ使われて目を冷ましてきなー!」

「んじゃねー! キャハっ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

のどかに連れられやって来たのは二階の渡り廊下....生徒会室ってここ渡ったとこだったっけ??

それにもう少しで一時限目....

 

「・・・・ はあ、ユイもだけど貴方までそんな格好でここまで来るなんて....血は争えないわね、

全く」

 

・・・・ へ? のどか....ちゃん? ナニいってるの〜? やだよ〜! ワタシがメイ! なワケ!

....あはははは〜! はあ??

 

「メイ! 貴方も貴方よ....! おとなしく学校を休むかユイか私に連絡するとか、考えなかった訳?

はあ....」

 

はあ、とおにのどかにはバレてたワケね....! 当たり前か。だって姉ちゃんのどかの仕事を手伝いに朝早く家を出たんだし! そのまま生徒会室へ行ってのどかと....でも姉ちゃんもここに来るまで制服の違いに気づかなかったんかい!!

 

「そこが血の争えない処ね! フフ! まあ生徒会の方ではユイの代理のメイ! が手伝いにきた、

という事にしておいたから。でも二人とも早いとこ着替えなさいよ。今日は選択授業はないから

良かったものの、メイ、貴方には部活見学という仕事が残っているんだから」

 

と、このようにのどかには念を押されていまいました....が、

 

「・・・・ ス〜・・・・ ス〜・・・・ えへへへへぇ〜〜・・・・」

 

「・・・・ 『メイ』・・・・ 結局放課後まで起きなかったわね・・・・ あきれた・・・・」

「もう先生たちもお手上げだったからなー! メイにしては珍しい!」

「ねえこれってユイを追い越して入学以来最長記録じゃん? キャハーっ!!」

「うむ、昼食まで摂らないでぶっ通しで寝ているとは、むしろ羨ましい....」

「あはははは〜! いや〜ウチのメイ? が御迷惑をお掛けしました〜〜!!

エヘヘヘヘェ・・・・」

 

はあ・・・・ユイのヤツ! 結局このまま放課後までオネムで通してしまったとは・・・・ たく!

 

「じゃあねー! ユイ! のどか!!」

「んじゃオレもいくわー! ユイさん! 出来の悪いオトオトをよろしく! へへ!!」

「では僕も。平沢さん? 御愁傷様」

「キャハっ! チャオっ!!」

「じゃあね〜〜! みんな〜〜〜!!! ・・・・ はあ・・・・」

 

・・・・ そして今日一日・・・・ みんなを誤魔化せてしまった....みたい....ソンなにオレたちってウリ二つなの??

 

「はあ・・・・ 私もちょっと責任を感じるわ....ユイの生活態度に張りを持たせようとして朝早くの仕事を手伝わそうとしたんだけど....副作用がこんなだなんて....まだまだユイには早起きは早かったのね....」

「のどかどうしよう....」

「ま! 暫くはこのままでいいんじゃないかしら? 起きたら生徒会室へ、て置き手紙書いとくから。メイ、貴方はどうするの?」

「んーオレこのまま最後の部室行ってみるわー。ユイで通せそうだし」

「フフ! そうね。でももう最後なのね....でもあそこって...」

「うん....そう、アソコだし....」

 

そうアソコ....ガラの悪い新入生女子生徒三人組が旧校舎の一角を不法に占拠して勝手気ままに飲み喰いしているとウワサされているあの部活....部員募集を掛けているけどみんな恐がってその部屋にも近づこうとしないあの部室....! へとオレはいま! 赴かんとしているのだ....!

 

「....雪ノ下先輩にはそういう噂が届いていなかった頃にリストしてくれた部、だったのよ。メイ、なんならあそこだけはスルーしてもいいんじゃないかしら」

 

「....でも行ってみるわ。最後だし。これがダメだったら生徒会室に行くわー」

 

「そう? じゃ! お願い! 気をつけてね!!」

 

 

 

 

 

 

 



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しょうたい!

 

 

 

 

またものどかに念を押されて旧校舎の近くまでやって参りました....ん〜、この周りってむしろ体育会系の部活の集まってる長屋みたいなとこじゃん? この中の一つの部屋が例のあそこ....かな?

もうほとんど使われていない部屋が多いみたいだけど?? ここかな....ゴクン....

 

《コンコンコン! ガチャ!》「失礼しまーす....」

 

「あ〜! 新入部員〜?? やったあ〜っ!!」

「おう! お前! 入部希望者かー? ・・・・ どうだい? 真夜中のツーリーグを終えての目覚めのブラックコーヒー....! 登る朝日と潮風を海岸で浴びながら高校生活! という儚い青春! を....わたし達と一緒に思いっきり謳歌しようじゃないか....! なあ『(リン)』!新入部員が来た以上! これでお前はお払い箱だ....! ひひひっ!」

「なによー! 『モジャ』っ!!....べっ! 別に最初から入部しているワケじゃないし!!」

「あらあら! 貴女! 部員になって下さるのね〜! これでまた『ワル!!』のお仲間がお一人ふえますわー! うふふふふ!!」

 

「・・・・・・・・ええとー・・・・ 失礼しましたー・・・・ 《バタン!》」

 

『....え〜〜〜っ!!!』

『....おいっ! ワタシらの出番ってコレでオワリか〜〜っ!?』

『....し! 仕方ないわね〜! モジャ! しょうがないからワタシが正式に部員になってあげてもいいのよ....! フン!!』

『....おい凛、よく聞け。『ス○キ乗り!』は所詮『○ズキ乗り....!』....『バイク乗り!!』じゃあ無いんだ....そしてココは『バイク部!!』! わかったな....!』

『....なによ〜〜っ! モジャっ!! アンタんトコの『ヤ○ハ!』だってモトは楽器屋じゃないの!! おとなしくピアノやラッパ! 作ってりゃいいのよー!!!』

『....じゃあわたしの『ホン○!』はバイクしか売ってないからいいんだ〜!』

『....あら、『ハネ』さん?『○ンダ』さん! てお車も御売りになっておりませんでしたっけ?

バイクのみ! というのなら『○ゥカティ!!』ですわね! でもこのバイク、故障ばかりで....ねえ?早川』

『....はっはっは! 御冗談を....! お嬢様。私の『ドゥ○ティ!』が故障なんてする訳が無いじゃないですか....!都市伝説ですよ』

『....でも! 私達の出番がコレだけだナンて! 我が『三ノ輪グループ!!』の財力と権力! をもってすればこれからも....!!』

『....[何か忘れてません? Ka◎asaki来夢先輩より]』

 

・・・・ まだ何かわめいてますけど・・・・ 同じ『○○おん!』でも

『○○!』違いだったのねー・・・・ さて、本場の『○○!』は....!

 

 

 

 

・・・・ ここだったー・・・・ この旧校舎内最上階、旧音楽室....ちょっと古風で洒落た感じの建物だけど、この中であの不良たちが....ふう、

さて、『軽音部!』!....昔は活動範囲を校外まで広げてて? ライブも大盛況? てほどの一応年季のある部活だ!....て話だけど、いまは廃部寸前....時代の流れ、てのもあるのかなー? いまじゃ

ワル! の集まりだし....

でも『軽音!』てぐらいだから軽い音楽なんだろ? 何だろう....縦笛? タンバリン? カスタネット??? カスタネットなら幼稚園で俺もユイも『ウンタンっ!『 ウンタンっ!!』!』て先生に褒められたコトあるけど....髪を染めてジャージ着たレディース! みたいのがジャンクフード摘まんでコーラ呑んでカスタネットや縦笛吹いて『ピーヒャラっ! ウンタンっ!!』なんてやってる

ワケ?? うーん想像が....

 

「《コンコンコン! ガチャ!》失礼しまーす....」

 

....誰もいないなー....んー、ここ、音楽準備室で例の方々がおタムロして居らっしゃる場所なのですねー。ん? 奥にテーブルが....よく見たら机を四つ並べて椅子も四つ。うん。その上には、んー? アルバム?

 

「《パラパラ....》・・・・ んんん....なにコレ....」

 

....なんか化粧が濃くて派手な衣装の女人たちがギターだのドラムだのと一緒に写ってるんだけど....

これってアレ!? あの『悪魔!』だの『血塗られたー!!』だの『地獄からの使者ガ〜っ!!!』だののセリフを吐きながら叫ぶ!! あのアレ!!?? うわー・・・・っ!!! レディース! どころじゃナイじゃんっ!! ダメっ! こんなトコねえちゃんには〜〜!!

 

「....ん? あらっ?」

 

《ギクッっ!!》「・・・・ は、ハイ! あのお....て先生?」

 

「あら! 平沢さんじゃない! なんでここへ?」

 

「え、えーとお....えへへへへ....おんがくしつとまちがえちゃってぇ〜!

エヘヘヘヘ〜〜!」

 

おお、俺の後ろに山中先生が! なんで?? でも旧校舎とはいえここは音楽室(旧)だから音楽の先生がここに来るのはおかしくはないかなー。そう、この『山中さわ子』先生は俺と姉ちゃんが

選択科目でとっている『音楽』の専任の先生。まだどこのクラスの担任になったことが無い清楚で温厚でピチピチの新任教師だ。男女を問わずに生徒からも人気があるし。で、ここには何か用事かなー?

 

「え? ええと....ちょっと忘れ物を取りにねー・・・・・・・・ !?っ」

 

ん? 山中先生? なんかピクっ! とした声をだしたけど? 語尾の発音が裏返ってたし。クシャミ

かな? しゃっくりかなー??

 

 

「・・・・・・・・ 平沢クン、貴方・・・・ コレ、観たの・・・・」

「へ? あ、はい。なにか? ....てエエ?」

 

ふと....山中先生に振り向くと....先生のメガネの奥に妖しい光が見えたような....んでその視線の先には....アルバム? 写真?? そういえば....アルバムから数枚写真が抜き取られたのか机のうえに散らばってたし。

 

「ハっ! い、いいえ!!・・・・ しょ! しょうがないわねー・・・・! アノ子たち! こんなに机の上を散らかしちゃってー・・・・ 片づけなくっちゃ〜!! ウフフフフ〜・・・・!! 《・・・・ガサゴソっ....! パラ....!》」

 

「ん? これ....先生これ落ちましたよー。ん? この写真....?」

 

床に落ちたこの写真、例のゴテゴテした化粧姿にヤサグレた派手めの衣装を纏っている内の一人の写真だけど....眼つきが三白眼! て言うんだっけ? それにもともと美人さんなんだろうにナンで

ここまで化粧をドギヅクしなきゃならんかったんだか! んー? でもこのヒト、どっかで見たようなー? そうここ最近! いやつい最近!! いや....ついさっき....??? えーとお・・・・

『・・・・ ひらさわさん』・・・・ヒっ! ナニ? この凄味のある低い声はっ!!・・・・

 

「・・・・ フっ・・・・ フフ! フフフフフっ!!あなた! 平沢・・・・ さん?・・・・」

 

ふ!・・・・ とその声の主の先生を見つめると....ぅわあ....!『般若!』だあ....!! あの能面のっ!!・・・・

 

「そう・・・・ 平沢さん・・・・ あなたは・・・・ 観てはならないモノ! を観てしまったようね・・・・っ!!」

 

わああ・・・・ もうメガネ越しでもわかる....この眼付きは! この写真のっ!!!・・・・

 

「・・・・ ハっ! ・・・・ 平沢さん!? チョッっ! とコッチ! へ来なさいっ!!・・・・

《カチャ!....バタンっ!!》」

 

・・・・ ンでもってなんか我にかえったのか?? 無理やり山中先生に腕を掴まれ準備室内の 

物置? に連れ込まれてしまった・・・・ ナニ? このシチュエーション?? なんか空中に

放り出されたアノ記憶が蘇るんですけど・・・・?

 

「・・・・ アアアアァ.....あなた....観たのねっ!....あのひたすら隠し通してきた! あの私の黒歴史を見てしまったのね....!! せっかく! ここに残されていた私の過去の遺物を....数年ぶりに抹消しようとしてこの高校に舞い戻って来たというのに~~~っ!!・・・・」

 

いや・・・・ 聞いてもいないのにそんなに詳しく説明されましても・・・・

 

「・・・・ ふふふっ! ・・・・ それなら平沢クン? ....私もいまあなたが抱えている秘密を....! 

ここで暴いてあげるわ....! ウフフフフフ!・・・・」

 

・・・・ へっ? 『クンっ!』?? え....とお....エヘヘヘヘ〜! ナン! のコトでしょ〜〜!

わたし! わぁ〜!・・・・

 

「・・・・隠したってムダよ! ・・・・ アナタっ! 『メイ!』 ....平沢! 『銘!!』クン!!

でしょうっ!!」

 

「《グっ! キ〜〜〜ッっ!!》な、ナンっ! のコトですぅ〜? わたし〜! わあ〜!!」

 

「誤魔化したってダメっ! あなたの胸! 唯さん! より大きいんだからっ!! パッドを仕込んだ

のねっ!!」

 

「《グハッっ!!!》・・・・へっ??!! ・・・・ハイ・・・・?」

 

うわあ・・・・! この先生お見通しだあ・・・・ そう、家を出る前にウイのヤツ面白がってオレにブラジャーまでつけさせたんだー・・・・ スポーツ用のだけど....ご丁寧に中にパッドまで仕込ませて・・・・ ウ〜〜! イーーー!!!

 

「....ウフフ! これでフィフティー! フィフティー! ねっ!! ....ところで! モノは相談だけど

....あなた! コレ、着てみてくれないかしら?....ウフフフフフフ!!」

 

そう言って山中先生、物置の中から何やら服の様なものを掻き出してきましたが...! ナンですか 

ソレ....メイド服??

 

「そう! わたし!! この服に似合う子をずぅ〜! と探してたの! そう! あれは今年の入学式の日!! 式典を前に私が何気なく渡り廊下を歩いてたら!!・・・・」

 

・・・・ なんか独り語りを始めたんですがー ・・・・ 山中先生ってこんな先生だったんだー・・・・ ああ・・・・ あの清楚な先生のイメージがあ・・・・

 

「・・・・ 一人の少年が! あてどもなく敷地内を歩いているところを見掛けてしまったのよ!! そう....まだあどけなさが残りながらも大人びて魅せようとしているかのその物腰! オトコノコだと分かってたけど! どうしても私の作っていたコスプレの衣装に合わせてみたくなったのよ〜!! そしたらアナタ! 私の選択授業に出ていてくれたじゃな〜い! そう! これはカミサマがワタシに与えてくれたご褒美なの!! そして今、私たちはこうしているのよ....!!

ヌフフフフ〜〜っ!!! ・・・・ ぅキャァ〜〜〜〜っ♡♡♡!!!《ガバッっ!!》」

 

ゥワアアーーーっ!! センセー!! コレは....! マズいでしょうっ!! 仮にも生徒と教師!!

イケナイ関係はオレが卒業してからでもっ!!オレ男としてこんな美人の先生に抱きつかれてイヤなワケが無い! ただバケの皮が剥がれたこのセンセっ....ってのがチョッとっ!!! それにコスプレ! ならウチのユイの方が適任だし〜〜〜!!!

 

「あ! それは大丈夫よ! そう思ってペアで作っておいたから! テヘっ!!」

 

織り込み済みだった・・・・ このセンセ俺と姉ちゃんとペアで双子のメイド姿をさせてみたい

ワケ?? ウイなら喜びそうだけど・・・・ ソウじゃないっ!!

 

「さあ! サアっ!! 恥ずかしいのは最初の一瞬だけよっ!! ・・・・繰り返す毎に・・・・

『カイカンっ☆!』 になってきちゃうから・・・・!!」

 

わわわわわ・・・・ 今度は脱がしにかかり始めた・・・・っ!! ダ~レっ!カあ〜〜ーっ!!

オレの貞操を〜〜〜っ!! ィヤアーーーーンっ!!!・・・・

 

 

《・・・・ ガチャ!》

・・・・へ? ドアが開いた? ・・・・ ダレ? このコたち・・・・

《・・・・ カシャっ!・・・・カシャカシャカシャっ!!!》・・・・へ?? この音?

・・・・カメラ???

 

 

「・・・・ へっへーーーん!! コレで顧問は決まったあーっ!! ヨロシクーーー!

サーワちゃんっ!! ひひーーっ!!!」

「・・・・ うわあ・・・・!! 山中せんせ〜〜い! やっぱり・・・・ キャアアアアっ!!! ////////♡♡♡♡・・・・」

「・・・・ おいムギっ! なに喜んでるっ! 先生! これはいったい・・・・!!」

「・・・・ あああああ・・・・あなたたちっ! ・・・・アアアアァ||||||||・・・・」

「・・・・ エエエエェ・・・・」

 

....俺が山中先生に襲われてる最中に現れたナゾの三人組! そのうちの一人の手の中からほとばしる謎の光!! さて! この事件の展開は! そして新たに現れた三人組の正体とは! 続きはもう一章先! 乞うご期待!!!

 

 

 

 

 

 

 



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であい!!

 

 

 

 

 

そして時間は少々さかのぼる・・・・

 

《・・・・ カツン、カツン、カツン、カツン・・・・》

 

『....あ〜あ! こんな時にサワちゃんどこにもいな〜いなんてー!!』

『....おい、もうやめろ! こんなコト....!』

『....アハっ! 校内を聴き取りながらの人探しってなんか事件の捜査みた〜い!! あした捜すときは! アンパンと瓶牛乳を用意して...! ウフフ!』

『....おい! おっさんかー....』

『....とにかく! 先ずは部員勧誘だ! 顧問の依頼はそれからだって!!』

『....だってえ〜! ダレも来ないんだも〜〜ん!!』

『....まあまあ! まだ諦めるのって早いんじゃなーい? 事件の捜査に行き詰ったら! 現場に戻る!

って言うでしょ〜!!』

『....事件って! ここは犯罪の現場か! たくムギまで....て、ん?』

『....どおした? ミオ?』

『....ヒっ!....部室の中で....なにか騒ぎ声が聴こえるぞ....!』

『....キャっ! じゃあ! 本当に事件が現場で....! わああ....!!』

『....んじゃ、そ〜とあけるぞー....《ソ〜〜〜〜、、、》」

『....おいリツぅ....ん? 物置の中からじゃないのか....? あの声....山中先生??』

『....もうひとりいるんじゃん? なんか争ってないかー?』

『....キャー....! もうひとりの子も女子!? じゃオンナノコ同士で....うわあああ....!!!』

『....おーいムギー....じゃ、あけるぞー....!』

『『『....いっせーのーで....!!!』』』《ガチャっ!!》

 

「「「「「・・・・・・・・《・・・・カシャっ! カシャカシャっ!!!》・・・・」」」」」

 

 

 

 

 

 

「・・・・ このアルバムの写真で〜サワちゃんを脅してーウチらの顧問になってもらうつもりだったのにぃ〜向こうの方から飛びこんで来るなんて〜こりゃラッキー!!! キャハハハハ〜!!!!」

 

「・・・・ リツ! でも、どうして山中先生がここに? ここは私たち以外はあまり近寄りたがら

ない場所なのに....」

 

「・・・・ そうです〜! それに〜! この子! カワイ〜っ!! メイド服が似合ってます〜〜!!!」

 

「・・・・ え・・・・ ええ・・・・ それほどでもお・・・・」

 

「・・・・ あああ・・・・ こんなコトになるなんてー・・・・ 来るんじゃなかったわー・・・・ ハア・・・・」

 

先ほどのシュラバが一転、今は『現場』の『参考人』たちが四つの机のテーブルを挟んで和やかなお茶会と洒落込んでいる。テーブルの周囲には五人がとり囲んでその前には紅茶専用であろう高そうなカップとソーサの組合せが人数分に行き渡っている。その中に注がれた紅茶はその香りを周囲に漂わせており、となりに添えられたお茶請けのモンブランへの食欲をそそらんとしている。さらにはクッキービスケットのたぐいをお皿に盛り付けて置いていて....なに? この高級感....? ゆったりとした高尚な空気感は....! あの想像していたヤンキーの姉チャンたちはドコへ行っちゃったんだ!....

 

「・・・・ はあ、わかったわ・・・・ 顧問を引き受けてあげる! どうせここのOGなんだし・・・・ これで吹奏楽部と兼任ねー・・・・ ブラックだわ」

 

「....やった! やったあ!! これでもうここも『軽音部!』として認められるのね〜!!」

 

「おいムギ、部の認定は四人からだ。あと一人! あと一人なんだ!....」

 

「そーだよな〜! あとひとり、なんだよ....なー....」

 

「「「「・・・・ ジーーーーっ・・・・」」」」

 

....紅茶を啜りながらメイド服で佇んでいるこのオレに『・・・・ 』な視線が集まっている....結局、あの混乱の中でもマンマとこのセンセにこの服に着せ替えられてしまった....それに俺は....! ただの代理人だし? まだ入る! とは決めていないんだし?? でもお茶もお菓子も頂いちゃったし??? おい....オレ何か詰んでないか....?

 

「そう! 襲われてる写真も撮られちまったしー! こりゃ入部しかないだろー!! カハハっ!!

これからヨロシ....《ガツンっ!!》オイ! ミオ〜〜!!」

 

「リツ! それは脅迫だろう!! いや、済まなかった! その、気にしないで....てー、 

何々さん??」

 

「あら! じゃあ私も! 脅迫されてる訳だから! この辺で....!」

「いえ、先生は加害者ですので。却下」

「んもお〜!!」

「おう! ミオ! ナイスフォロー!!」

「うふふふふ! でも、その....メイドさん? 貴女のお名前は? 何て仰るんですー?」

 

 

ん! そおだ....オレ、まだこんな格好だし、物置で制服に着替えたとしても....おい!! どおすりゃいいのさ〜〜〜!!??

 

 

「んー? この子? この子はねー、貴女たちと同じ一年の〜、ひらさわ....」

 

「!・・・・ ユイっ! 平沢 『唯!』ですぅ!! ・・・・ ど、どーぞお見知りおきをぉ!!!・・・・」

 

 

・・・・ あぁあ言ってしまった....どおしよお....まあ、今はこれで乗り切ったし、あとは入部をおことわりするかホンモノをここへよこすか....

 

 

「・・・・ へ? あっ? そ、そう!! コノ子『ユイさんっ?』 てゆうのっ!! よ、ヨロシクね〜!!!」

 

先生もとっさに合わせてくれてるし! よし、いけるか....!

 

 

「....わあ! 平沢さん!『ユイ!』 さん! ていうのね〜! 初めまして〜! わたし、琴吹(ことぶき) (つむぎ)

『つむぎ!』ていうの!! みんなからは『ムギー!!』て呼ばれてるの!! よろしくねー!!!」

 

うん、『ムギ』さん。俺よりちょっと背が高くて淡い薄茶色のロングヘアー。おっとりとして 

ものごしも柔らかく、どこか育ちのいいお嬢さんタイプ....

 

「おーう! で、わたしは『リツっ!』田井中(たいなか) (りつ)! ってんだ!周りからは『あの田井中サン!』

とかー!『田井中チャン!!』とか『リツ様!!』とか!! まっ! どれでも好きな呼び方で....

《ゴツンっ!!》....ミ〜オ〜!! 冗談だろ〜〜〜!!!」

 

隣の黒髪美人にゲンコで殴られてるこの『リツ』っあん! てヒト、アゴあたりまでの髪で

おでこをばっ! と出していて身長も俺ぐらい。まあ、ツッコミ待ちのお祭り要員....かな?

 

「....気持悪いってーーのっ!! ....ああ! え〜〜と、その....わたし、わ〜〜....その....」

「おーい! どおしたー? さっきのいきおいわ〜!!」

「....るさいっ!! ....ヒャっ!? ....その、平沢....さん、ご、めんなさい....《....グスっ....!....》」

「「「お〜〜〜!!!....」」」

 

ん〜、その、この長身長髪美人さん....先ほどとはうって変わってしおらしい....いや内気な仕草を

見せるこのお方、この姿もなんとも愛おしい....

 

「....わ、たし....(あき)(やま)....(みお)....! 『ミオ....!』て呼ばれてるの....! よ、よろしく....」

 

「....ミオちゃん! よく出来ました〜! 《パチパチっ!!》」

「....おう! 初対面の相手によくやった!! ほめてつかわすっ!!」

「....るさいっ!!」

 

おお、ここにも『秋山殿!』が!この子たちが....この校舎で呑んで喰らってどんちゃんやってて....

なのか....うわさってのはどこでどう変わってくのか....いい手本なのかなー....

 

「あとは! この平沢....『ユイ!』ちゃん!! が、入部してくれるかどうかなのよねー! どう?  

『ユイ!』ちゃん!! あ・な・た・わっ?!」

 

山中先生....いきなりハードルを高くしてくれちゃって....もう本性がみんなにバレちゃったから

こわいモン無しなんですかい??

 

「え、えええ〜〜とぉ....! わ! わたしぃ....! そのぉ〜! なにも楽器やったことなくってぇ〜〜!!」

「....ブッっ....! ....えっ? なになに!! なんでもないの....ブフフっ!!....」

 

せんせい....飲んでるお茶を吹き出そう! なんて身構えてたのかい!! オレがせっかくユイの

口まねして正体をゴマかしているっていうのに〜〜!!

 

「ユイちゃん! 楽器わね〜、ここで憶えればいいの! ウン! みんながユイちゃんのこと教えて

くれるから! ね? せんせい!」

「....え? え、ええ〜〜!! そうよ! ドーンとまかせておきなさい!! ....掛け持ちがぁ....」

 

「おうそうだぞユイ! みんな手取り足取り....」

「....お前はドラムを叩く事以外なにも出来ないだろう!」

「そんな〜ミオ〜〜! お前だってぇ〜〜〜!!」

「ドラム....! やっぱりここって....こんな風にして『悪魔が〜〜!』!『地獄ガーー!!』!

なんて叫ぶ部活....なんですかあ???」《ピラっ》

 

ここで先ほどの写真をみんなに見せた。だってほら....もしそおだったらこわいじゃん....

 

「「「・・・・ おおおお〜〜〜〜っ!!!!」」」

「ブハっ....!! ちちちちょっとっ!! アナタまだそんなの持っていたのーーーっ!!!」

 

「ぅわ〜〜〜! こりゃイタイわーーー!!」

「ええ!!? カッコいいじゃな〜い!!」

「!....ヒッっ!!! コココココレは....えぇえ〜〜〜っ!!!....」

 

ああ....この写真、まだこのセンセのだとは気づかれてなかったのかー....この写真の感想も三つに 

分かれてるし....ヨシ! これで少しは溜飲? も落ちたかなー?

 

「そおか....! この中の誰かとは踏んでいたんだが....サワちゃんやるわ〜〜!!」

「そ! そお!! そおよね〜〜〜っ!! ....わたしイケてたから〜〜っ!!!」

「でもやっぱイタイわ〜〜〜!!」

「ズコーーーっ!!!」

 

 

・・・・ なんてことやってる内に時間が過ぎてきてしまった・・・・ どおしよう・・・・

でもいごこちもいいし・・・・ ゆったりとした時間を過ごせそうだし・・・・ みんな愉快で

楽しい人たちだ・・・・ユイなら・・・・ ここでもやっていけるかな・・・・でも・・・・

 

「わたしね! ユイちゃんとなら、きっと楽しくやっていけると思うの! だって、こんなに

いい子だから!!」

「うん、そうだな....私も平沢さんとならうまくやってけそうだ。私からも....私たちと一緒に、

『軽音部!』で『音楽!』をやってくれないか? 頼む!!」

「おーう! これで決まったーっ! じゃ! この入部希望書にサイン! と!!《ボカっ!!》

....お〜い〜、ぜんはいそげ〜! てゆ〜じゃん〜!!」

「ばかリツ!! 平沢さんの意志を尊重しろ! 入部届はそのあとだっ!」

 

なんだろう・・・・ ここまで部活めぐりをしてきて・・・・ こんなにこころがおどりはじめるって初めてかもしれない・・・・ 姉ちゃんにはわるいけど・・・・ この部活には・・・・!!

 

「・・・・ はいります・・・・!」

 

「「「え?」」」

 

「わたし・・・・ 平沢ユイ! は・・・・ この・・・・ 『軽音部!』に・・・・ 入部したいと

おもいます!!・・・・」

 

 

 

 

 

 

 



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ねまわし!

 

 

 

 

「・・・・ 貴方、思い切ったわね....!」

「・・・・ 誰のせいだと思ってます....?」

「・・・・ 入部の希望は....貴方の決意なのよ?」

「・・・・ はい、覚悟しています....!」

「・・・・ はぁ、わかった! 私も協力してあげる! あの三人に貴方の正体がバレなければいいのよね」

「・・・・ はい。お願いします....」

 

お茶会が終わって、今日の『軽音部』の活動は終了した。三人で楽器を演奏してくれるところだったけど下校時間が迫っていたのでまた明日ということになった。今は山中先生と二人でここ旧校舎最上階旧音楽準備室、窓ガラスの向こうには....

 

『....おーう!』

『....またなっ!』

『....あしたね〜!!』

 

この校舎を離れていく三人の姿がある。その姿に軽く手を振りながら山中先生と今後について話し合っている。

 

「まあ、こうなった責任は私にもあるから! そうね....貴方たちはクラスは別々なのよね?」

「はい、選択科目も重なることもありません」

「一年間なら、なんとか誤魔化せそうね....! あとはなるべくここ以外であの三人には会わないこと! すれちがいも危険ね....ここはひとつ!」

「....なんです?」

「ここの物置に隠し置いていた私のコスプレコレクション! を着て授業中を過ごすの! もちろんこれなら廊下もOK!」

「センセイ....」

「まあ真面目な話、私以外の助けも必要ね....! ユイ! 唯さんなら協力してくれるんじゃない?」

「姉ちゃんですか....ウチのユイにはそんな器用なこと出来ませんよ....部活の斡旋まで弟の俺がやらされてるんですから。でも....『のどか』なら!」

「のどか? あの真鍋 和さん? うん! あの子ならしっかりしてるし生徒会役員だし! お知り合いだったの?」

「俺と唯の幼馴染です」

「こころ強いじゃない! じゃ、私も教師仲間の誰かに協力をお願いしようかしら! でも、私はまだここでは一年目、なのよね〜。まだまだ教えられる事ばかりでこんなの私から頼むのって....」

「....生徒指導室の白百合先生....」

「え? なに?」

「....いや! たしか生徒指導の先生に煙をパコパコ吸っていたヒトがいたような....」

「ああ! あの『ヌシ!』ね! ええと確か名前は....」

「「んんん???」」

 

俺たち二人に名前を憶えられていない可哀想な先生....でもあの先生も結構世話焼きっぽい人だし。

 

「話だけでも聴いてもらえそうね....! そう! あのヌシ先生! 格好イイわよね〜〜っ!!」

「はあ....」

 

俺、そのカッコいいセンセにいきなり腹パン喰らったんですけど....

 

「他には? 誰か心当りは?」

「他ですか....奉仕部の先輩方....」

「奉仕部....て、あの雪ノ下雪乃....さん?!」

「ええ、そうです。俺の部活巡りの訪問先をリストしてくれた先輩です」

「あなた! 凄いじゃない!! あの雪ノ下雪乃さんと面識があるなんて!!」

「そんなに....すごい人なんですか?」

 

なんか、教師であるはずの山中先生が興奮気味に喋っている! 教師のあいだでも一目置かれている先輩なのかな?

 

「私、ここ一年目だからまだ会ったことないのよ〜! 何か入学以来成績学年トップで! 超美人で! 近寄り難いオーラ! を出している! なんて聞かされたらお知り合いになりたいじゃないのよ〜!! ウフフフフ〜〜〜!!!」

 

ああ、この先生もわりかしミーハーなのね。でもあの先輩、ものすごく綺麗だったし。あの先輩を前にしたら俺たち一般男子はお呼びもされないただのモブだよな〜。そんなすごい先輩に相談にのってもらってたのか。

 

「まあ、私の出来る事はなんとかするから! 貴方も! こうした以上やれる事はやるのよ! ....でも一番手っ取り早いのは、貴方が『男』である事をあの三人に正直に打ち明ける事なのよねー....」

「それは....そうなんですけど....」

 

そう....正直に明かせばすぐに解決すること。でも、あの三人が必要としてくれたのは『ユイ』

....三人とも女子だし、新しい仲間も女の子のほうがすんなりとけ込めて部の活動がうまく運ぶ

はず。でも、オレ....なんでだろう....あの三人の中に割り込んでいきたい....! そういう想いに

かられているんだ!....姉ちゃんに嘘をついてでも....

 

「わかったわ....何か面白くなってきたし! 次は! 貴方のする事は!!」

 

 

 

 

「....はあ、まさか、あなたが入部するなんて....」

「....ごめん、のどか」

「....まあいいわ、こんなことを頼んだ私のせいでもあるし。でも、メイ!がねえ....!あなたは

まだユイよりは自分の事をこなすことができるとはいえ、部活とか、そういうのには積極的じゃ

なかったから少し驚いたわ。どういう心境の変化なのかしら?」

「....俺にも、わからない....で、のどかにも助けて....協力してもらおうと思ったんだけど....虫が

よすぎるかな....」

「流石に....『女装!』して部員になる! ....なんて突拍子もいいとこだわ! はあ、要するにこの

事はその....『軽音部』の三人には....てことね?」

「....のどか〜〜〜!!....」

 

今朝、学校の授業が始まるまでの間、俺とのどかは例の渡り廊下で密談をしている。 

昨日の『軽音部』での一件をのどかに説明して協力を仰ぐためなんだけど、のどかから 

したらオレの女装があの『軽音部』の連中にバレないように、止むを得ず入部するための

『裏工作』のように見えるのかも....確かに、半分は俺にもそういう想いがあるのかもしれない。

でも....半分以上はやはり、俺自身の『決意』のつもりなんだけどな....どちらにしても、

のどかには頼りっぱなしだなー....

 

「はいはい! たく....貴方たち姉弟は! フフフっ!....じゃあ私、先輩方に頼んで制服のお古が 

あるか聞いてみるから! それと....」

「なに?」

「唯は生徒会で預かるわ。私と一緒に色々と手伝わせるつもり。それに....」

「ん?」

「ウチの会長....この前奉仕部で会ったわよね....一色会長というんだけど....なぜかユイととても

ウマが合ってるのよ....!」

「ふーん?」

 

ああ、あのフリフリ....うん、べつに珍しいことじゃないなー。ウチの姉ちゃんならそんなの

お茶漬け前だし。でも生徒会かー、ウチのユイにはなんの縁もゆかりも無さそうなところだしー。

 

「ここの会長....男子には受けがいいけれど....女子たちの間では....なの。まあ私は一年だし、

そういう面倒な事には巻き込まれはしないけど、でも唯だけは、どう言う訳か会長も気に

入っちゃって、毎日手作りのお菓子やら紅茶やら率先して唯に振舞ってるの! もう唯も

喜んじゃって....他の役員さん達も唯のこと可愛がってくれてるし」

「おお」

 

おお、さすがはウチの姉! 生徒会なんてお堅たそうな所まで周りをトロかしてしまうとは!

姉ちゃんて俺たちが何もしなくてもちゃんとやっていけるんじゃん?

 

「あとは....問題が発生する度に対処することかしら? どんな事態が発生するかわからないけど。

あと、放課後は唯をうちで預かるとして....」

「あとは?」

「あなたの放課後での仮りの居場所ね。いくらユイ相手にも本当の事は言えないし....こんな事、

あの先輩に頼めるかわからないけど」

「ん?」

 

 

 

「・・・・ はぁ・・・・ まさか貴方が・・・・ 女子として・・・・ あの『軽音部』に

入部だなんて・・・・ 前代未聞もいいところだわ・・・・」

「え〜〜〜〜! スゴいじゃんっ!! おもしろ〜〜いっ! ねえねえ! 女子の制服で! 髪も

女の子みたいに!! うわ〜〜! わたしもソコ入るし〜〜〜っ!!!」

「由比ヶ浜さん? 貴女ももう三年生、もう受験の対策を優先する処なの。 貴女....アノ男と同じ

大学を受験する! て息巻いて居なかったかしら?」

「....わっ! わ〜〜〜っ!! わああ〜〜〜〜っ////!!! ゆきのんナニを言うしっ!! こんな

人前で....!! メイメイ! これは秘密だし! ヒッキーにはナイショだし〜〜〜っ!!!」

「は、はあ....」

 

のどかが昼休みの間にここ『奉仕部』での相談依頼をセッティングしてくれた。俺の話を聞いた

雪ノ下先輩は自分がお膳立てした部活訪問の提案の『想定外の結果』に呆れ果ててしまったのか....

頭を抱え込んでしまったし....由比ヶ浜先輩はこの話に俺以上に興奮してはしゃぎ出すし....それに

ここって授業をする校舎から結構離れてるとこなのに二人とも昼食をわざわざここに来て食べて

るのね。今日はナゾの現象は起きないのかな....んで、『ヒッキー』てナニ??

 

「つまりは....貴方が放課後、この部室に来て、奉仕部活動を行う、という設定をする。早い話が

『幽霊部員』という事ね」

「《ビクっ!!》幽霊....ですか....あの....」

「お断りするわ」

「....チョっ! ユキノンっ!!」

「はあ....」

 

....この先輩、真面目でかなりお堅い、て話だったけどやっぱり....まあ、こんなムシのいい依頼、

引き受けてくれるのはのどかぐらいなモンだからな....

 

「....わかりました。ここは自分で何とかします。雪ノ下先輩、由比ヶ浜先輩。相談に乗ってくれてありがとうござい....《カタっ》」

「....その、待ちなさい、平沢....君。まだ....話は終っていないのだけれども」

「はい?」

 

椅子から腰を上げたら雪ノ下先輩が俺を軽く制止した。話がつづくのかな?

 

「....幽霊部員であるならば即却下よ。でも、正式な部員であるならば....ここに在籍しているという正統な事由になるわね」

「ほんとっ! ゆきのん!!」

「えーとお....」

「....つまり、例え週一日でも、部活動に参加しているという実績があれば、部員としての正統な

資格が得られる、そういう事」

「週一! ですか?」

「例えば....そうね....週一日でも、この部室に来て、部員達と昼食を共にする....というのも....有り! で....いいのかしら....?」

「....うわあああっ!! ソレっ! それあるーーっ!! ヤッターユキノ〜〜ン!! これから毎日!

メイメイとお昼だしーーーっ!!!《ダキツキーーーっ!!》」

「....ちょっ! 由比ヶ浜さんっ!!??」

「ゆ〜きの〜〜〜んっ! えへへへへ〜〜〜〜!!!!」

 

うわああああ・・・・ こりゃボリューミー! だあ・・・・ オレより背の高い高三の女子同士が

頬擦りあってイチャイチャするなんてコト・・・・! オレたち三兄弟とはレベルが違いすぎる!

・・・・ ん?『・・・・ エへへへへ~~!!』 由比ヶ浜さん? 今度はオレを見て、ニカ〜っ!

としてません??

 

「....わ〜〜〜メイメイ〜〜っ!! 毎日ここでお昼を食べようねーーっ!! メーイメイっ!!!

《ムーギュギューっ!!!》」

 

ああ・・・・ 今回も・・・・ そのボリューミー! なナイスバディ!! ・・・・ に抱きつかれてしまいました....前回は椅子に座った状態だったけど、今日は全身だあ・・・・

 

「はあ、二人とも、程々にしておきなさいね....それに、平沢君には平沢君の付き合い、という

ものがあるのだから、週に一度よ。由比ヶ浜さん?」

「えぇえ〜〜〜っ!!!」

「ハイ・・・・ ! ありがとうございます・・・・!!」

「はあ....私も甘くなったものね・・・・ フフフ!」

 

・・・・ というわけで、俺もはれて! ....奉仕部部員(昼食要員....)! とあいなることとなりました! ....おかしい....俺は軽音部! に入部しようとしているだけなのに....(この高校は部活の掛け持ちOK! てことだけど...)さて、今日の放課後、正式な軽音部部員!! としての初めての部活動となるのだが! さて、どうなることやら・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 



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しょにち!

 

 

 

 

「・・・・ じゃあね〜〜〜っ!! メイーーっ!! ざみじくなっだら! いづでもオネ〜〜ぢゃんがあぞびにいぐからね〜〜〜っ!!!・・・・ メ〜〜イーーーっ!!!・・・・」

 

「・・・・ ほら、ユイ! なにもそんなに!! これで最後! て訳じゃないんだから!!」

「・・・・ 姉ちゃん....時間が合えば一緒に帰れるんだしー・・・・」

「おお! これが姉弟の今生の別れ! の名シーンなのか??」

「うわ〜〜! ユイったらホントにブラコ〜ン〜〜っ!!」

「キャハっ! もうグチャグチャっ!」

「これはこれは、両者共ご愁傷様」

 

そして放課後の教室....新しい部活先へと赴こうとする俺にユイがこんなに泣きじゃくるなんて思いもよらなかった....しかしっ! このオレはそんな姉ちゃんを振り切り! 新たなる我が居場所へと旅立たんとしている....! でもこれじゃ後ろ髪引かれる....どこじゃないな....ハア....

 

 

 

《・・・・ カツン、カツン、カツン・・・・》

 

本棟から少なからず離れているこの旧校舎の、さらに最上階の三階まで階段を昇ってゆく....ひょっとして、ここの部活に人が来たがらないのは単に面倒なだけなんじゃない? 俺のこれまで巡った他の部室は入り組んでても渡り廊下なんかでつながってたし。はあ、慣れなんだろうけどしばらくはしんどい....

 

《・・・・ カチャ・・・・!》

「・・・・ 失礼しま〜すぅ....! んー、まだ誰もいないの....」

「・・・・ ぅ....ワッっ....!!! ・・・・」

「・・・・ ヒャっ!!!」

「・・・・ やったー! やったあ〜〜〜っ!! 驚いてくれた〜〜っ!!!」

「....ムギさんっ!?!?」

「わ〜〜〜! ユイちゃん! おはよ〜!! ユイちゃんいちばんのり〜〜!!」

 

オレ....ワタシが音楽準備室のドアを開けたとたん! ドア越しに隠れていた『ムギ!』さんが掛け声をあげた....! ワタシの驚いた様子にムギさんは素直に足を弾ませながら喜んでる....

 

「わ〜〜! ユイちゃんが初めて驚いてくれた〜!! わたし! いつもこうやってみんなを驚かそうとしてるのに〜、なんかいつも失敗しちゃうのーー!」

「あはは〜! よかったねー! ムギさん!! ・・・・」

 

....なんて素朴な子なんだろう....なんてノドカな部活なんだろう....! どうしてこんな子たちが不良呼ばわりされてたんだか! まあいいや....じゃ、ワタシは今日ここでやることは....?

 

「あら、ユイちゃん、今日は制服じゃなくてジャージなのね? どうしたの??」

「え? ....ええ〜と! ちょっ! ....とよごしちゃったから〜! あはははは〜〜・・・・!!」

 

はあ....ホントはまだ替わりの制服が調達されてないだけなんだけど....それに、ムギさんに驚かされてユイの口まね忘れるとこだった...コレずっとしないといけないワケなのか....地声がばれたらヤバいし....

 

「で、他の部員さんたちわあ....?」

「んー? もうそろそろかしらー? ミオちゃん! とリッちゃん! は同じクラスだから来るのはいっしょなの!! もう少しかかるならー・・・・」

「え〜と・・・・ 練習・・・・ なのお?」

「・・・・ お茶にしましょう!! ユイちゃん! いま淹れますからね〜〜!!・・・・」

「・・・・ はあ〜〜〜い・・・・」

 

いきなり休憩タイム! になった....よかったあ....この口調....思った以上につかれる....ワタシい....だいじょうぶなのかしらぁ....

 

「うふふふふ!! ユ〜〜イちゃん!! うふふふふ〜〜〜っ!!!」

「えええええ〜〜〜と! あははははー・・・・!!」

 

例のテーブルの上には、例のティーカップに紅茶にお茶請け....ちなみに今日はロールケーキ....

コンビニで売ってるようなのじゃなくてホールごとのケーキを二カットづつお皿に載せた豪華版....

ココア味なのかな? 軽くパウダーまでふりかけてあるみたい....こんなのタダでもらっていいの

かなー....? 食べちゃったけど....

 

「ユイちゃんって! 美味しそうに食べてくれるのね〜!お茶の淹れ甲斐があるわあ〜! おかわりは? ウン! 淹れてくるね〜!! ・・・・」

「あはは....ありがと〜〜!! はあ....」

 

おい....オレお菓子を食べてるあいだは緊張ほぐれてるんかい!!でも喋るときわ...ああ.....顔まで引きつれてきた....! がんばれ! くじけるな! わが顔筋〜〜!!

 

《ガチャっ!!》「おーう! きたぜー! ムギー! ユイーーっ!! いるかーー!」

「ああ! 遅くなった! すまないムギ! 平沢さんは....来ているか....?」

 

「ああ〜! おはよう! リッちゃん! ミオちゃん!! ユイちゃんなら....!」

「....あ、おはよ〜〜!! 田井中さん! 秋山さん....!!」

 

「キテター!! よかった〜〜! ユメじゃナカトじゃ〜〜〜っ!!!」

「おい....どこのおバサンだ....! そうか、来てくれてたのか....! ありがとう! 平沢さん! じゃあ! 昨日できなかった演奏の....」

「うおーーう! 今日はロールケーキか〜〜! ムギー! いつもすまね〜〜っ!!!」

「さ! ミオちゃん! お茶が冷めちゃうわよ〜〜!!」

「おいっ!!」

 

こうして、部員四人が集まったところで改めてお茶会が催された。そうか....部活ってこんなもんだったんだー....これなら帰宅部なんてもったいない!! でもタダで食べた分はカラダで払ってもらうとか?? で、ワタシは何の楽器を担当するんだろう....カスタネット! じゃあダメだろうなー....

 

「私はベース、ムギはキーボード、リツはドラム。あと欲しいパートといえば....」

「アレ! よね〜!!」

「ああ、アレだな」

「....アレってナンですかぁ??」

「アレ! といえば! アレなんだよ〜〜っユイ〜〜!!《ガバっ! グリグリ!!》」

 

となりのリっあん! が後ろから抱きつきワタシの頭をグリグリし始めた....ああ....女子同士の

愛嬌あるスキンシップだろうに罪悪感がハンパない....

 

「え、え〜とぉ....わたしぃい!・・・・こうゆうことってぇ〜・・・・・!

・・・・よくわからないからぁあ〜〜!!・・・・」

 

「!・・・・ そうよね〜〜! わたしもここにくる前までこういう編成の音楽なんてあまり

知らなかったし〜!!」

「? ....ああ! でも慣れだ。この手の音楽は普通にそこらで流れているから楽器の構成を憶えて

しまえばあとはその組合せで鳴らすだけだ。私たちのバンドは....四人ギリギリだからドラム、

ベース、キーボード、そして、」

「ギターだっ! ユイっ! おまえ!『ギター!』をやれっ!それしかおまえの生きる道はーっ!!

《ゴツンっ!!》....ミ〜オー!!」

「....オーバーなんだ! 平沢さんも驚いてるだろう!! それに平沢さんにも楽器を自由に選ぶ

権利がある!!」

「....ギター?? あのぉ!? でもぉ....わたしぃ....! ギタアなんてぇ〜!! ・・・・」

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

なんか....あやしい流れになってないかなー....なんだろう? ワタシ、唯の仕草や口調を忠実に

マネしてるだけなのにー??

 

「・・・・ ま、まあ! そうよねー、ここはユイちゃんのやりたい楽器をさせてあげるのがこの

部活のいいところなのよね〜!」

「....あ、ああ....でも、リツの言う通り、ギターを演ってくれたならここでのバンドのバランスが

取れるんだが....」

「そう! ユイっ? アナタはここでギターをやる運命だったのっ!! だからっ! ここはワタシタチの言うコトをきかないとっ! やまなかセンセーにオシオキされちゃうのよーっ! ウフっ!!!《デコピンっ!!》イッターっ!! ナニよーっ! ミオの....バ....カっ!!《シナリクネリ....》」

「....気色悪いんだっ! 平沢さん? こんなのに関係なく自由に....な!」

「....え〜とぉ、ハイ! じゃあぁ〜、わたしぃー! あははははぁ〜〜〜・・・・!!!・・・・」

 

 

 

なんだ・・・・ ますますマズくなってない?? ・・・・ みんなだまっちゃったし・・・・

まさか! オレがオトコってコトが・・・・? おいっ!こんなにがんばったのにー・・・・

これでここの部活も・・・・ いやだっ!!・・・・ オレ・・・・・・・・!

『!!・・・・ わーーーーっ!!!!・・・・』・・・・・・・・・・・・へっ!!??

 

「....うわ〜〜〜っ! もうっ! ムズムズする〜〜!! ユイっ!! ここじゃそんな取り澄まなく

たっていーーーっての!!!《ムギュ〜〜ンっ!!》もっと自然でいいんだーーー!!!」

 

・・・・ いきなりとなりのリッっあん! に大声で驚かされた!! だけでなく両手で俺の両頬を

引っ張りあげだした!! ・・・・ なに?? どおしちゃったの???

 

「おい! リツ!! ....でも、そうだよな。平沢さん、まだ緊張してるのかも知れないけど、

そんなに取り作らなくてもいいんだ! 私たちも、ほら!!」

「そう! ユイちゃん! ユイちゃんはそのままでも素敵な子のはずだから! もっとリラックス

してくれてもいいのよ! わたしたちみたいに!!」

 

・・・・・・・・・・・・ みんな・・・・・・・・・・・・《グスっ!》・・・・ ・・・・

 

「え? なに??」

「おいっ! ユイ!!」

「....すまない! きつく言いすぎたか? ごめん! あやまる!! おいリツも!!」

「あ! ....いや〜〜! わるかった! いたかったかあ? じゃ! わたしのほっぺも!!」

 

「ううん....ちがう。ごめん....みんな....わたしがわるかったの....。ちょっと....浮ついてたのかも....」

 

「ううん! ユイちゃんはわるくない!! 初めてのことばかりでよくわからなかったのよね?

それに、わたし....ユイちゃんの本当の声、聞いてみたいの....! いい?」

「わたし、のこえ....?」

 

なんか....無理してたのがばれていたのか....ここでの俺は『ユイ』....唯になりきらなくちゃ

いけないと思ってたから....それに....涙まで出てくるなんて....

 

「....うん、これが....わたしの....ほんとうの....こえ....おかしい?」

 

....俺のほんとうの声は唯よりトーンが低い。普通の男子よりは高いみたいだけど....

どうだろう....女の子としては不自然かな....

 

「....わあーー・・・・! 素敵っ! いいっ! なんかボーイッシュで〜〜っ!!」

「ああ....そうだな...! この声なら....私たちの出ない音域のボーカルも出来るかもしれないし....!」

「コレ! サワちゃんがいってた女性声優の少年ボイス! てんじゃないか? これイイわ〜〜!

おーうユイ! おまえこれからこの声なー!!」

《ボカっ!!》

「強制するなっ!!」

「してないだろー....自然にしろー! てんのに....! ミオ〜〜〜!!!」

「ハハっ!!」

 

なんだ、普通で....自然でいいのか....そうだな....うん! じゃあ....!

 

「....わたし、こんな声だけど、歌を歌え! ていうならうたえるかも....! でも、音痴かもしれない....いい? 」

「おお....! 平沢さん! そうか? そうだよな〜! うん!! リツ! これでボーカルは決まった!! これでもう私が歌うことは....!」

「おー! ツインボーカルバンド! になるのかー!! これで曲のレパートリーもふえるなー

ムギーっ!!」

「ええ! 作曲の意欲も増すわ〜!! ユイちゃん! ありがと! ミオちゃん! これからもよろしくね〜!!」

「えぇえ・・・・私もぉ・・・・」

 

こんなこんなで今日の部活は過ぎていった。結局昨日約束していたバンドでの演奏もすっかり

忘れて、部活終了時間まで好きな音楽やバンドの心得、おすすめ曲などの話でもりあがった。 

....楽しかったー! 部活ってこんなだったんだー。もう声や仕草でうそをつく必要はないんだ。

そう、あのことは別としてだけど....

 

 

 

 

 

 

 



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まんねり!

 

 

 

 

 

「・・・・ ここじゃないかー? ユイのクラスってー?」

「・・・・ ああ、そうだ。ここ、○組だな」

「・・・・ あ! あの~! このクラスにユイちゃ....平沢ユ....」

「あら貴女達、久しぶりね? 貴女達は確か軽音部の....」

「・・・・ へ? けいおん?? わたしらのこと知ってんの??」

「おいリツ! 憶えてないのか!! このひとは....!」

「・・・・ あ! お久しぶりですー! え~と....?」

「のどかよ。真鍋のどか」

「・・・・ のどか?? ダレだっけ???」

「リツ!! 失礼だぞ! 真鍋さんは....!!」

「ああ~!! そうでした~!! 生徒会の~! なんでこちらに??」

「何でって、ここ私のクラスだから」

「「「おお~~~!!!」」じゃあ真鍋さん、ここに平沢さんって子が....」

「唯? ....ユイならいま教室を出てどっか行っちゃったけど。なに?」

「ええと....ユイちゃんに今日の部活について~! ちょっとお話がしたかったの!!」

「うん、べつにたいした用じゃないんだ」

「おうー! ただ顔見せになっ! わたしらのクラスって階がちがうしー!」

「そう、丁度よかった。田井中さん? 貴女に会いに部室まで行くつもりだったから手っ取り

早いわ」

「んーなに?」

「あなた、部長でしょ? 部活申請書は? 人数が四人揃ったら生徒会室まで持ってくるはずじゃ

なかったの?」

「・・・・ え、え~とお....あははははっ! ....わすれてた....」

「....おいリツぅっ!!」

「リッちゃん!!」

「....はあ、まあ、今日中に持って来て頂戴? いや? 私から部室に伺おうかしら? 唯がお世話になってるし。じゃ、それまでにね?」

「「「は~い!!」」じゃあのどかさ~ん! またあとでね~! フフ!・・・・」

 

 

 

「・・・・ あんなものでいいかしら? メイ?」

 

「・・・・ ありがとう....のどか....ふう」

 

昼休み....あの三人がウチのクラスに顔を出しにきた....まあ入部申請書にはクラス何組? かの明記をしなきゃならなかったし? 俺の名前は....のどかのチカラで生徒会側の部活名簿のそのへんのところを....だし? なんとか誤魔化してはいるけど....?

 

「・・・・ 直接クラスに来られるのはね。このやり方は次は通用しそうにないかしら」

「・・・・ どうしよう....のどか」

「ハア、乗りかかった船だし、何とか頭を絞らない? 貴方も!」

「....うん」

 

まあ、ほかのクラスへの訪問ってそんなにするもんじゃないし、でも緊急事態! なんてことが

あったらすかさずやって来るだろうなー....どおしよう....で、本物の姉ちゃんは....

 

「・・・・ すぅ~~・・・・ えへへぇ~~~・・・・」

 

「・・・・ いい気なもんだなー・・・・」

「メイ? こればかりはユイの責任じゃないのよ? あなたのまいた種なの、わかる?」

「はい....」

 

のどかにクギをさされちゃった....ははは....でも、対策かあ....

 

 

 

「ん~! ユイちゃん? どうしたの? ボ~としちゃって??」

「ん?? ....はい? うん! べつに....あはは....」

「んー! ユイー!! 眠いのか~!? じゃ! わたしのあぐらでお休みにならないかいー!

それぐらいお安『み』ご用でいっ....!」

「リツ....それが言いたかったのか?」

「え~! それ、駄じゃれ~~!? わ~! はじめて生できいた~! おもしろーい!!」

「おーいムギー....じぶんで言うのもナンだが....面白いかー?」

「....あははははあ....」

「平沢さん....そんな脱力したウケかた初めてみたぞ....」

 

放課後....ここ旧音楽準備室にて今日も和やかに....力の抜けてしまう部活動がつづいている....

この部活、なにをやる部活だったっけ? ムギさんの淹れてくれる紅茶を飲んで、ムギちゃんの

持ってきてくれたお菓子を食べて、ただ取りとめのないお話を続けて~、それから....

 

「....ぁああああ!! こうじゃないっ! こんなんじゃないんだっ!! リツ! 私たちの部活は

こんなものじゃないはずなんだーっ!」

 

「「「「・・・・ おおお~~~・・・・!!!!」」」」

 

秋山どの! が....! やおら立ちあがり! 大声でまくしたてた! なにか不満があるのかなー?

お菓子がたりないとか??

 

「ムギも平沢さんも!! ここが何をする部活かわかっているはずだろ! さあ! いって

みろー!!」

 

「・・・・ なんだったっけー??・・・・」

「・・・・ なんだったかしらー??・・・・」

 

「ムギ!! 平沢さんまで!!」

「まあ、いいんじゃない? 高校の校舎でこんなに優雅なティータイム! を楽しめるなんてめったにないのよー? 教師になってもここでユッタリくつろげるなんてここの顧問になってよかったわー!!」

「先生まで!!!」

 

そうだ....ここはけいおんぶっ! 音楽をする部活だった....

 

「そういえばっ! せんせ~っ! 先生はここのけいおんぶ! のOG! なんですよね~!!」

「ええ! そうよ! わたし! あなたたちの先輩なんだから!」

「じゃあ! ここで演奏した音楽のデータ! 聴かせていただけるでしょうかー!!」

「おーそれ聴きたい!! ミオー、たしかこの部屋の物置きにー!」

「カセット・テープ? ていうのが段ボールの中に入ってたよな!」

「カセット? なにそれ??」

「ユイちゃん知らないのー? カセットっていうのはね、昔ムカシ大むかし! に録音する

ときにつかったー....!」

「....そうよ! 大昔よっ!! わるいっ?」

「この棚に置いてあるのがカセット・テープ・レコーダー! だな! よし! 動きそうだ」

「よーし! じゃ! きくぜー!!」

「わあ~~・・・・!!♡」

「ふ~ん! こうなってるんだー!!」

「あなたたち....後悔するわよ」

「「「んー??《ガシャっ! ・・・・・・・・》」」」

 

『・・・・ ふふふフフフフっ! フハハハハハハハアァーーーー・・・・っ!!!! ....おめぇらがくるのをマっ! ていたぁあーーーっ!!! サア行くゼっ!『DEATH DEVILっ!!』・・・・!

・・・・1、2、3、フオォーーーっ!!!! 《ガガガガガガガガガガガガ~~~~~~~~~!!!!~~~~~~~~!!!!~~~~~~~~☆★☆★☆》・・・・・・・・』

 

「・・・・ ヒイイイイイーーーーっっっっ!!!!・・・・」

「・・・・ うひゃあーーーーっ・・・・!!」

「・・・・ ぅわあぁ・・・・!!!」

「あわわわわわ・・・・・・・・・・・・」

 

ぅわああああ~~~~!!!! ナニコレっ! これが! あの『悪魔ガー! 地獄の! 一丁目デー! 亡霊の?? ちまつりダー!!!』 てヤツー!!??

 

「あああ・・・・ あのころは・・・・ わたし・・・・ おハダのツヤも・・・・ よかったのよね~~~!!!」《・・・・カチっ》

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」・・・・ きいてないきいてないきいてないきいてない・・・・!!!」

 

・・・・ あまりにも予想以上の絶叫!! にワタシたち四人は一時思考停止状態?? におちいったみたい・・・・ 秋山どのは両手で両耳をふさいでなにか呪文をとなえてるし・・・・

 

「あ~あ! ミオのやつ! じぶんでボリュームセットしといてー!! ああコレ? ミオはさー子どものころから怖がりなんだー!」

「おいりつ~!! なにもこんなときにそんなことを~!!」

「へ~!! そうなんだー! ミオちゃん凛々しいのに~! 可愛い~よねー! ユイちゃん!」

「うん! なんか以外! 秋山さんとてもカワイイ!!」

「....平沢さん....ほんと?」

「うん!!」

「ありがと....グスン....ねえ....ついでだけど平沢....さん」

「ん? なに、秋山さん」

「平沢さんのこと、ユイ、てよんでいい?」

「へ? あ! いい! いいよ!! じゃ、わたしも! 秋山さんのこと、ミオ....て呼ぶから....いい?」

「うん! ・・・・ じゃ! ユイ!」

「・・・・ ミオっ!!」

「ユイっ!!」

「ミオ~っ!!」

「ユイ~~・・・・!!!「ミオ~~・・・・!!!《・・・・ダキダキっ!!》」」

 

「「「・・・・・・・・ おおお~~~~っ・・・・・・・・」」うわあ・・・・♡」

 

 

 

 

「「・・・・・・・・あははははぁ~~~〜・・・・!!!・・・・♡♡♡」・・・・♡」

 

 

 

 

おおお・・・・ ことのついでに秋....ミオどの! とハグハグしてしまった・・・・!!! いいのかな・・・・ まあむこうからだし・・・・ でもワタシの正体がバレたら・・・・ リッちゃん以上にボコボコにされてしまうとか?・・・・でももう○んでもいいかもー・・・・

 

「・・・・ へえ~! 人は見かけによらないものね~! じゃあ! このわたしが! とっておきの....! ここの学校の怪談!! 教えてあ、げ、る!! ....ききたい?」

「はいっ! せんせえっ! きかせてくだせえましっ!!」

「ハイは~い! ぜひぜひ!!」

「え、え~とお....わたしわぁ....」

「....ヒイイィっ!!」

 

おい....怪談とか....七不思議ってやつなんじゃん....? もうワタシ入学してから三つも妙なことに巻き込まれているんだけど....四つならまだいいよな??

 

「そう....! この話は幽霊とか、ドッペルゲンガー! とか....! いろいろ噂されてるけど! 目撃件数も多くて、毎年のように報告されてるのよ! 詳しいことはここの『オカルト研』で統計がでてるみたいだけど」

「ええ....? あのオカルト研?? 一応こんな研究してるんですかぁ? ウチのクラスにも部員がいるけれど....」

「それでそれで~! ワクワク!!」

「おい! ミオ!! お前のあしもとに....!!」

「!! イヤーーーっ!!《ボカボカボカっ!!》」

「....じょうだんだろー....トホ....」

「....でる! のよ~!! おなじ姿のヒトが!! でも同じ姿であらわれるのはいつも普通の生徒で、当人にはまるで心当たりもないし、自覚もないわけ! ただ! 当人じゃなくて、観たっ! てヒトがね~....」

「....どうなるんですー??」

「....同じ姿を同時に! 同じ視点で観てしまったら!! 観たヒトが....!!!!」

「....きいてないきいてないきいてないきいてない....」

「....まあ、観てしまったヒトの証言は記録されていないみたいだけど!」

「....なんだ~! そりゃ!! それじゃ証拠にならないじゃん!」

「そりゃそうよねー! だって....観たヒトは....その場で....○えてしまうのだもの....ふふふふふっ!!!」

「....ヒイイイイっ!!!! ....うそだうそだうそだうそだうそだ....!!!」

 

....うわ~ワタシこういうのもふつうに怖いんだよ~!! てか今日もこんな話ばかりで部活が終わっちゃうわけ? う~ん、秋....ミオ! ほどじゃないけど本当にこの部活、これでいいのかなー....お茶とケーキはこのままでいいけど....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ほうこく!

 

 

 

 

「・・・・ふわあ〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・」

「....まあ、貴方、昼食時とはいえ随分リラックスしているのね? 毎日が充実しているのかしら? リア充沢くん?」

「メイメイ! これも食べてもっと充電を充実! するし! はい! ア〜ン!!」

「....あ! ハイっ!! あ〜ん、、、おいし〜! です....!」

「ホント!! えへへへへ・・・・!」

 

軽音部に入って一週間が過ぎた....部室でのやりとりは初日のあのノリからなんにも変わらず、ただ旧音楽準備室でお茶とお菓子を食べながらワイワイ! 雑談するという居心地のいい日々が続いている。あの三人、ムギちゃん、リツさん、ミオさん....時々山中先生もやって来ては本棟では見せない本物のサワちゃん! ブリを発揮して俺たちを楽しませてくれるし(単に突っ込まれるボケ要員なのかも....)、これといった不満はないんだけど....

 

「....で? 平沢君、貴方は何を担当する事になったのかしら?」

「へ? えーとぉ....なんでしたっけ??」

「....貴方....軽音部に入部したのでしょう? なら私の言っている意味を理解できると思うのだけれども....?」

「あー! 担当? わかったー!! メイメイ!『ボケ!』!か『ツッコミ!!』! どっちだし!!」

「....由比ヶ浜さん、私達はこの子に『漫才部....』や『落語倶楽部....!』への入部を勧めた訳では

無かったはずよ.... ハア」

「わわわ分かってるし!! メイメイはナニを担当してるし!!」

「....はいっ! ワタシはボケ担当! せんぱいとおなじだし!」

「! わ〜〜〜! やっぱり! わたしのスイリ! があたったしーっ!!」

「ユイユイ先輩! よくデキましたっ!」

「オソマツさまでした〜〜! アハハ〜!!」

「貴方達ったら....気が合うのね....ウフフっ!!」

 

今日の昼は、ここ奉仕部部室にて雪ノ下、由比ヶ浜両先輩と昼食を食べている。ワタシのお弁当はもちろんウイの手づくり! 昨日の夕食の残りだけじゃなく姉ちゃんとワタシの分の食材をわざわざ朝に調理して弁当箱に詰めてワタシら二人に持たせてくれるんだ! もちろん朝食もルンルン♪♪! こさえた上で....! 憂自身は学校の給食なのに....

 

「なかなか出来た妹さんなのね。由比ヶ浜さん? 比企谷君の妹さんみたいじゃない?」

「そうだしー! あ! メイメイ! ヒッキーの妹さんの『小町』ちゃん!て子もこの高校の一年なんだよー! どこかで会えるといいね〜!!」

「えー? ハイ」

前々からここで名前のあがる『ヒッキー?』てなんだろ?? まあいいや。

 

「冗談はアレですけど、『ギター!』を担当することになりそうです。それで、楽器屋まで

みんなと一緒に見にいったんですけど....」

 

 

『いっぱいあるんだね〜! このなかから選べばいいの?』

『ああ、でもユイ! はギターは初めてだろ? だからこのぐらいの!《カタ!》安いギターでも

いいと思うんだ』

『ふーん? て、ウワ! 結構重い!』

『なれだぞー! ミオの『ベース!』はこれよりも大きいからな! おかげでウデとコシがふと

《....ボコっ!!》....なんだよ〜! 職業病みたいなもんだろ〜!!』

『ひとこと多いんだ! ....ああ、このギターは『ストラトキャスター!』ていって、初心者にも

扱いやすいし、いろんなジャンルに使われているオーソドックスなギターなんだ』

『なんかカワイー! 色も色々あるし』

『うん! いろもいろいろ〜!! うふふふふ〜〜〜!!!・・・・』

『ムギー....なんかツボったかー....』

『で、これが『テレキャスター!!』音のキレ味が特徴で、ソロもだけどコードやリズムキープをするのに使われることが多いんだ。たとえば....!....! ....!』

『....え〜と....』

『おいミオ〜! ユイがついてけないぞー!』

『....ああ! ゴメン! でも選ぶのはユイだからな! 好きな音のギターを選べばいいよ! デザインで選ぶ人も多いし』

『でも種類もイッパイ!! しばらく観ててもいーい?』

『いいぞ! 私もベースを観てくるから!』

 

そのままギターのコーナーでなんとなく観てたり眺めたりしてプラプラしてたんだけど、ん?

コレ....

 

『ん? どおしたーユイ!』

『なんか欲しいギター見つかったの??』

『うん! コレ!!』

 

床に立て掛けてあったひとつのギターから目がそらせられなくなった。丸みのあるデザインで

ヒョウタンみたいだけどなんかいい! 赤い感じの色彩で木目調だし濃淡のグラデーションも

ある! カワイ〜!!

 

『おお! 『レスポール!!』ユイ! シブいギターを選んだな! これもいいぞ! 名だたるロック

ギタリストが愛用する名品だし!でも初心者には....重いしネックは太いしユイにはまだ....』

『でもユイちゃん、これがいいの?』

『うん....でももう少しほかを観てから....』

『おーいみんなー! ここにアクセサリー! の安売りコーナーがあるぞー! スティックとかー

ベースの弦とかー!!』

『リツ! 少しは空気をよめ!!』

 

 

「....『レスポール』ね、うん....」

「ゆきのん? どおしたの?」

「ただ....値段が....25万くらいするんです」

「....え〜〜〜っ! 二十五まん〜っ!? それっていったい何百まんえんだし!!」

「....由比ヶ浜さん、桁が増えているのだけど」

「そうなんです! だからすぐ諦めるつもりだったんですけど....」

「どうするつもりなのかしら?」

「なんか諦められないというか....だから、バイトすることに決めたんです! なんかみんなも

協力してくれるみたいで!」

「わ〜バイト〜!! わたしもメイメイと一緒にバイトするし!!」

「....貴女は、連休中は私と勉強でしょ? あの男とキャンパスライフ! を共にするために、

ではなくて?」

「わ〜〜っ! ゆきのんここでは〜!! ヒッキーといっしょにキャンバス! にはいるつもり

ないし!!」

「あはは〜!! ・・・・」

「平沢君? 貴方はいい部活の仲間に恵まれたようね。よかったわね」

「はい!」

「あ〜〜あ!! わたしもあと二年! メイメイといっしょにいたいな〜!!!」

「別に、貴女だけこの高校に残ってもいいのよ? 留年ヶ浜さん?」

「....わたしだけなんだ! ユキノンひど〜いっ!」

 

 

 

 

そして連休! とある街で三日のあいだ泊りがけでアルバイトをすることになりました!

ムギちゃんの斡旋で! 部員全員で! でも....

 

「・・・・ スっゲ〜なー! この車!」

「....ああ、普通のバン! て聞いてたけど....」

「内装がスゴいっ! ムギちゃん! これキャンピングカーてゆうんじゃない!? ソファーに

キッチンまで!!」

「そうなの〜? じゃ! お茶が入ったわよ〜! どうぞ! ウフフ!」

「「「おおお〜〜〜! 淹れたてだーーー!!!」」」

 

ムギちゃんちの自家用車でバイト先の街まで送ってくれることになったんだけど....これってもう走る家! じゃん!! この車を普段使いにしてるわけ??

 

「え〜と? これは長距離移動のときかしら〜? 普段は家族全員それぞれの車で運転手さんの運転で通勤しているんだけど〜??」

 

まあいいや....このムギちゃん、ただの育ちのいいお嬢さん、て訳じゃあなかったんだねー....

 

「見えてきたわよ〜! ほら、アレ!!」

「うおーーーっ!!!」

「きれーーいっ!!!」

「ああ! まるで西洋の古都のようだな!!」

 

ムギちゃんちの車にゆられて数時間、車窓からまるでおとぎの国のような街並みが見えてきた!

おとぎの国、ていってもあの『デイスティニーランド!』じゃあないよっ! 念のため。

 

 

「この街って車は入れないんだねー」

「うん! 登録された車しか走っちゃいけないんだって!」

「でっも広いよなー! このなか全部歩き! というのは....はあ」

「リツ! しっかりしろ! でもここは市電もあるし自転車ならOKなんだろ?」

「そう! でも街の中を歩いていると時間も距離もわすれちゃう〜! ほんとヨーロッパ!

みた〜い!!」

 

ムギちゃんちの車から降りて、この街の入口の門から中へ入った。うわ〜! 洋風の木組みの

たてもの! 石畳み!! こりゃほんとヨーロッパだあ!!

 

「これがテーマパークなんて、にわかには信じられないな! お店の店員も一般人なんだろ?」

「そうなの! この街は観光と居住を一体化させた所だから普通にひとがくらしてるの〜!」

「ホントー? じゃあわたし達がここで暮らすこともできるんだー!」

「うん、でもここの空き家の競争率はいつも高いから、だれかがここから引っ越してもすぐ

だれかがその家に入っちゃうの〜! 数千件待ちなんだって!」

「うわー、じゃここに引っ越すのはムリだわー!」

 

「ん? じゃ、ここからわたしはこっちの道ね! ユイちゃんとミオちゃんはこのまままっすぐ、

リッちゃんはそこの角を左ね! じゃあ!!」

「じゃあな! ムギ! また後で!」

「ムギちゃんまたね〜!」

「おい....わたしもひとりでそこを曲がるのかよー....」

「ジャンケンだ。かみさまの言うとおりだ」

「リっあんどんまい!!」

 

わたし達のバイト先は一カ所じゃあないのさっ! 三軒のお店をそれぞれシャッフル! して訪問

先を決めたのだ! いま別れたムギちゃんは和風喫茶店に、リっあんはそこを曲がってハーブ

専門店に、ワタシとミオはなんか動物喫茶みたいなところらしいけど、ムギちゃんがおもしろ

がって詳しいことを教えてくれてない。でも、店の名前ですぐわかっちゃうけどねー。

 

「ここだな....」

「『RABBIT HOUSE』....ウサギ喫茶だー!!」

「....じゃ、ユイ....はいるぞ....はいるぞぉ....はいるぞー....!!!」

《カランカランっ!!》「こーんにーちわーっ! おーりまーすかーっ!!」

「おいユイっ!! ....あああ、私も入っちゃった....」

 

 

 

 

 

 

 



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おしごと!

 

 

 

 

「・・・・ ああ....ココアさん、もう帰ってきたのですか。べ、別にわたしはそんなに寂しかった

わけでは....あ、」

 

「あのおー、ここ、『ラビットハウス』でよかったですよねー?」

「....そそそそう! そうですよねっ....!」

 

店の中に入って、すぐ店員さんに声をかけられた。まだ子どもかなー? 幼く観える女の子が

ひとりいるけど。それにココア? 今日のおすすめかなー? でもまずはっ!

 

「・・・・ いえ....失礼しました。・・・・ いらっしゃいませ。どうぞお好きな席へどうぞ。

ご注文はのちほど....」

「ハイっ! おねがいしますっ!」

「・・・・ はい??」

「おい.... ユイ??」

「ご注文はうさぎですっ! どこにいるんですっ??《キリっ!》」

「....こらっ! ユイ! 私たちは遊びに来たんじゃない! 早く挨拶を....!」

 

「・・・・ ハイ、あなた方が琴吹さんからここへのアルバイトを申込みをした、秋山 澪さんと

平沢 唯さんですね....どうぞお待ちしておりました。私はここのオーナーの孫で『香風(かふう)智乃(チノ)』、

と申します。先ずはこちらへどうぞ」

「あ! はい、これはご丁寧に。宜しくお願いします! おい! ユイも!」

「ェエエ〜〜っ!! うさぎ〜〜っ!!」

「小学生か!」

 

こうしてワタシとミオは、この小柄で長髪銀髪で頭に白い毛皮の帽子? を乗せている小学生の

女の子に更衣室へと案内された。ここでユニフォームに着替えるのね....ミオどのと一緒に....

 

「《....ムっ!》わたしは中学三年生ですっ。では、これに着替えて下さい。ピンクが平沢さん、 

紫が秋山さんです。サイズは大体合っていると思います」

「「はい!」」

「着替えたらカウンターに来て下さい。接客やレジ、コーヒーの淹れ方などお教えします。では」

 

んー....ここでワタシとミオが二人きり....一緒に着替えにゃならんけど....ただワタシには目算が

ある! つまり、

 

「・・・・ あのぉ....着替える前に....いいですか....?」

「え? はい....どうぞこちらです。では平沢さん、先に着替えたらカウンターまでお願いします。

秋山さん、ご案内します」

「ハイ....ユイ! 後でな!! ・・・・」

「うん、いってらっしゃーい・・・・」

 

・・・・ こういうことなのだ! つまりはミオは恥ずかしがり屋っ! 着替えるときはひとりでっ!

と、これも山中先生やのどかとの対策会議で導き出された結論なのだっ! ほんとに予想通り....

あの二人、頭イイ!!・・・・《カチャっ》

 

「・・・・ あの....平沢?さん....お着替え....終わりましたか?」

「! ・・・・ ははハイ! いま着替えてるトコですぅ!!・・・・」

「着にくいでしょうか....サイズが合わないとかないですか?」

「・・・・ イイイエ! だいしょぶですっ! あはは・・・・」

「そうですか....では、カウンターでおまちしております・・・・ フム!《パタン》」

 

・・・・ あぶなかった・・・・ちょうどユイからちょろまかしたTシャツ(おだんご!)を脱いだとこだった....でも山中サワちゃんに『念には念!』と、『シャツの下には『ブラ(スポーツ用パッド入り....)』を常に身につけるように!』 と強制させられていたし....なんか慣れてきたけど。

さらにその上にも『キャミ? を着れば二重に安心!』 とも....よかったあ〜....でも、あの

チノさん、ここから出るとき軽くガッツポーズきめてたけど? なんだろ?

 

《カタ、カタ、カタ、、、》「あのぉ・・・・」

「フム、来られましたね。ではこちらへどうぞ。コーヒーの淹れ方をお教えします」

「はーい」

 

....このチノって女の子、すごく醒めてて冷静で、う〜ん! 同じ中三でもウチのウイ! とは

ずいぶん違うなー「平沢さん」

 

「あ、はーい!」

「フム、この様にサイフォンの上部にお湯が溜った処で軽くこのスプーンでかき混ぜて下さい。

軽くです。ムキにならないで下さい。面白がって何回もかき混ぜてお客さんに出せないコーヒー 

を作って喜んでた困ったアルバイトの人がいたものですから。ハイ」

「はい! で、そのアルバイトのひとは?」

「連休中は帰省しています。もう一人いるのですが、その人は自分のお父さんの部隊と一緒に

山岳キャンプ中です」

「部隊....? でもキャンプなんて健康的だねー!」

「食糧を全て現地で賄うサバイバル・キャンプだそうです。私も一度付き合わされて大変な目に

遭いました。もう二度と御免です《フム!》」

「あははは....」

 

あああ....はなしが続かない....! この子スゴく冷静だし感情も表に出さないし〜どお接すれば〜!!

 

「ああ! 遅くなってすまない! あ! いや....香風さん、その....遅れました....ごめん....なさい」

「!! ....いえ、いいんです。では、秋山さんには・・・・・・・・ あの....いいですか?」

「あ、はい!」

「秋山さんのその髪....両側で....纏めてもらえないですか........?」

「へ??」

 

んー? チノさん、ミオの姿をジーと見つめて妙なお願いをするなー。なんだろ?

 

「....こ、こうか....?」

「....フムっ! ありがとうございますっ。なんか落ち着きます・・・・ フン!・・・・」

 

わあ! ミオのツインテール! これは新鮮!! ケータイで二人に送ってやーろお!《カシャっ!》

 

「おいっ! やめろー!! こんな姿写すな〜!!」

「エ〜! こんなにカワイイのにっ! ミオのケチっ!」

「....はずかしいんだよっ!! こんな、髪形、わたし、似合わないし....」

「....そんなことないですっ! 秋山さんっ....似合ってます! 《フンッっ!!!》・・・・」

 

んんん・・・・ なに急に?? なんでチノさんミオの髪形でこんなにコーフンするわけ???

フェチなの?

 

「秋山さん....今から秋山さんを『ミオさん』とお呼びします....いいですね?」

「え? あ、いい! いいぞ! うん....!」

「ではミオさんっ、レジの打ち方をお教えします《フムっ!!》」

 

あー....なんかチノさんに教えるスイッチ! がはいったみたい....なんかよくわからないけど

まあいいや。で、ワタシは次なにやるの?

 

「ユイさんっ、あなたはコーヒーの続きをです!私が納得するまで何度も淹れて貰いますよっ。

覚悟はいいですよねっ?《指差してフフフンっ!!!》」

 

....わー! ワタシの『ユイ!』呼びには許可なしなのっ?? チノさん以外とスパルタ性格なのかな??ま、言われたとおりにするけどっ....!

 

 

「・・・・ ユイさん、まだまだです。もう数回淹れて頂きます」

「えええ・・・・ もう休もうよ〜〜!! チノさ〜ん!!」

「私もだ....コーヒーをこれ以上試飲するのもなー。香風さん、少し休憩しては....」

「はい、わかりました....でも、それには....条件が....あります....////」

「「なに?」」

 

 

「・・・・ 私....のことを....『チノ』と....呼んで下さい....その....お願いします....////////」

 

 

「えーと『チノ!』か? じゃあ『チノさん』!」

「....ミオさんは、『チノ』....と呼び捨てにして下さい....」

「じゃあワタシもっ!『チノっ!!』! どお?」

「ユイさんは『....ちゃん』付けで....おねがい....します....////////》

「どうなってるの〜!!」

 

「はあ、わかった....じゃあチノっ!・・・・」

「・・・・ はいっ!」

「じゃあチノちゃんっ!!・・・・」

「・・・・ ハイっ! ユイさんっ!・・・・! フム!」

『・・・・ おおおーーー! チノ! やっと元気が出てきたのおーー!!・・・・』

「・・・・ はい! おじいちゃん!・・・・!! あ・・・・」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・ ななななななナニ!! ・・・・ユイっ!」

「・・・・ なんかおとこのひとの声がきこえた〜〜っ!!!」

 

エエエ・・・・ アレとおなじだあ・・・・ あの奉仕部の時と・・・・ まさか! ワタシに取り憑いてきたとか・・・・! ウギャあーー・・・・!!!

 

「うわわわわわわわ!!」

「!・・・・ ないきこえないきこえないきこえない・・・・!!!」

「・・・・ ふたりとも落ち着いて下さいっ....! ・・・・ これは....私の腹話術です・・・・っ!」

「・・・・こえな「....ふくわじゅつ〜〜??」」

 

・・・・ あれがっ? なんか人生の年輪をかさねたような含蓄? のある声だったじゃん!

 

「・・・・ お二人を歓迎次いでにサプライズで驚かそうとしただけです。まさかこんなに驚かれるとは思ってもいませんでした....申し訳ありません....」

『・・・・ おおそおじゃ! なにも心配せんでええ! ほっほっほ!!!』

「・・・・ ヒッっ!!!」

「....ティッピーっ!! あ、いや....これ『ティッピー』ていうんです....はい、これ、どうぞ....」

「....あ、ありがと....あはは〜〜!....」

 

チノ....ちゃんが頭に乗せていた毛玉の大きいのをワタシに手渡した....けっこう重い....なんか

グニャ、としてるし....えええ? 勝手にグニャグニャしてきた〜〜!!!

 

「....わわわわわわわっ!!!....」

「ユイさん落ち着いて下さい! これは貴女が先ほど注文した『ウサギ』ですっ」

「へ?? ウサギ....? コレが!! え〜〜〜っ!! ....わっ!!??」

 

手に持っていた毛玉に目が点々!! いや! これはホントのウサギの目なのかなっ??

 

「これは『アンゴラウサギ』といわれるもので、この辺りに生息している野良うさぎにもいない

外国のうさぎなのです。私はこれを使って腹話術の練習と『コーヒー占い』をしているのですっ。

《フフフンっ!!》・・・・」

 

なんかアタマの整理が付かないけど....つまり〜、

 

「チノ....はこのウサギを腹話術の人形の替りにして腹話術の練習をしているってことだな?」

「はい、そうです。簡単な話でした....ではユイさん、このティッピーをカウンターにおいて

下さい」

「....は〜〜い....あははははあ....」

「....ユルい笑いかただな....ユイ」

「えへへへへ....ミオだってぇ....」

 

....あ〜〜! びっくりした....まだここに着いてからそんなにたってないのに....なんか疲れが

ドっとでた〜!!

 

 

 

 

 

 

 



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おしごと!!



 

 

 

 

 

「ありがとうございました。またのご来店を《....パタン、カランカラン....》・・・・ これで私たちのパートはおしまいです。食事をご用意しますのでしばらく休憩して下さい。部屋の場所は憶えましたね」

 

「うん! ありがと~!....はあ~~! おわった~っ! つっかれた~っ! ミオっ! ワタシさき自分の部屋にいってるよ~、ミオ~??」

 

「....いらっしゃいませまたのおこしをいらっしゃいませまたのおこしをいらっしゃいませまたのおこしをいらっしゃ『....ドッペルゲンガー....!』!ヒイイイイ・・・・っ! てユイ!!!」

 

「あはは~! きがついたっ! ミ~オ! おつかれさまーっ!!」

「....ユイ~! こわかったよお~! おバケよりもお客さんガ~~っ!!」

「あはは・・・・ よしよし・・・・!!《アタマナデナデ....》」

「・・・・ ユ~~~イーーーっ!!!・・・・」

「・・・・ えへへへへ~~~っ・・・・!!!」

 

 

・・・・ 午後の夕陽も沈み込んてしばらくしたらこのお店は少しの間休憩にはいる。しばらくしてチノちゃんのお父さんの『タカヒロ』さんがバーテンダーとしてカウンターに立って夜の部を切り盛りするんだって。でワタシ達はこれから夕食を摂ってお風呂に入ってそれぞれあてがわれたお部屋で就寝! これが明日も続くんだけど、ミオがな~。

 

 

「....ミオさんがあんなに引っ込み思案だとは思ませんでした。ユイさんの方が接客業として使い物になるとは以外です」

「....あああキツい....どうせ私はそうですよ~だ....トホホ....」

 

キッチンのテーブルをはさんでチノちゃんお手製のお食事をいただきながらの反省会....ミオは

お客さん相手に揚がりまくってたところをチノちゃんに指摘されてズーん....としている。ワタシは

エヘヘ! ほめられてるのかなー?

 

「あ、ほら! ミオはコーヒー淹れるの上手いじゃんっ! だからわたしは接客! ミオはカウンターでコーヒー係! これでどお??」

 

『うむ、それはどうかのお?....チノ、そろそろじゃの』

「「ん??」」

「....はい、おじいちゃん」

 

んー?そう言ってチノちゃんはワタシとミオどのが食事の前に飲んでソーサの上にひっくり返して置いていたコーヒーカップを元に戻した。その手前にチノちゃんの頭の上に乗っていたティッピーがピョンと降りたって何やらコーヒーカップの中をクンクンしている。

 

『ふむふむ。ユイ、お主はこう見えても凝り性で、一度何かに(はま)ったらとことん追求する性格の

持ち主じゃの。楽器もじゃがコーヒーのテイスティングにも向いている人材かと思うぞ。フム』

「えー? そおなの??」

 

へ?なに?腹話術にコーヒー占いがセット??『カフェ・ド・マンシー』って言ってたっけ。

でも....そうなのかな? それにこれまでなにか一つのものにとことん追求!てこともなかったし。

 

『ミオ、お主は何事も毎日コツコツ続けて物事を成し遂げるタイプだと診た。コーヒーもじゃが、意外と人前に出る仕事にも向いているかもしれんのお』

「....えぇえ私が?? 自分じゃそんな風には....」

 

えーとチノちゃん....これって占いというより人物鑑定? なんじゃないの?....でもチノちゃんの言ってることにワタシもだけどミオ自身も『??』て顔しているし....ほんとに当たってるのかな??

 

 

 

 

 

「ほんと~! よかった~!! 元気になったのねー!」

「ほんと~? よかったね~!! 元気になって~!」

「「・・・・うふふふふふふ・・・・っ!!!」」

 

「わあ~・・・・! わたしもわたしも~~~!!!・・・・」

 

「「「・・・・うふふふふふふ~~~っ!!!・・・・」」」

 

「・・・・ おいユイ....お前もか....ふう....」

「なんかいつもより二倍、三倍騒がしいですね」

 

そして二日目の朝、ここはムギちゃんのバイト先の和風喫茶店『甘兎庵』の店のなか。ワタシと

ミオのバイト&宿泊先である『ラビットハウス』の開店前に、チノちゃんの提案でムギちゃんとリッっあんのバイトの店を三人で回ることになった。そしていまはこのお店っ!

 

「そうか、ムギとここの宇治松さん? とは知り合いだったんだな。それでこの街でのバイト先を

紹介してくれたのか」

 

「うん! 香風さんのところのお店のアルバイトさんが二人とも店を留守にする、というので

千夜さんからアルバイト募集の依頼を受けることになったのー!」

 

「そうなの~! そしたらうってつけの二人が来てくれたのねー! これならチノちゃんも喜ぶと思って~~!! 「ウフフ~!!」」

 

なるほど、それでワタシ達がこの街に連れてこられたわけね。でもうってつけの二人ってワタシとミオのこと? どういう理由なんだろ?

 

 

「・・・・ 別に....そんなこと頼んでません....《フン....》」

 

『まあ、ほんとのところはチノも嬉しかったんじゃろ! 素直じゃないのおーー!』

「・・・・ ティッピー、帰ったら洗濯機に放り込みますよ」

『....うわーーっ! ヤメテ~~~っ!! またマックロ焦げになる~〜!!! ・・・・』

《・・・・ピョンピョンっ!!》

 

「わあっ! ティッピーがチノちゃんの本音の代弁をしたっ!」

「腹話術を使って本当の気持ちを伝えるなんて、チノも結構引っ込み思案じゃないか! 仲間だな」

「あ~じゃワタシもーっ!! えへへ~!!」

「ユイ....お前の心臓にはケが生えてるんじゃないか?」

「ミオさん、そんなんじゃないです・・・・」

 

 

「でもここの制服ってきものなんだね~! ムギちゃんよくにあうっ!」

「ほんと~? うれしぃ~! ふだん着物を着る機会ってないからー!」

「紬さんもここに住み込みに来てくれたら毎日でも着られるのよ~!」

「ほんと~? そうしようかしらー??」

「「おほほほほ~っ!!」」

「おい! 軽音部はどうする!!」

 

ムギちゃんとここの店員の『宇治松(うじまつ)千夜(チヤ)』さんは緑で縦縞の和服を着て接客している。黒髪長髪の

千夜さんは和服とマッチしているけど薄茶色の髪色のムギちゃんもなかなか似合ってるし!

 

 

「でねー、こういうのも作ってみたの~! 試食してみてー!」

「ハイこれ! 紬さんの初仕事!」

「これパフェっ! ムギちゃんの?」

「そうなの~! 試作品だけど好評ならここでおいてくれるんだって! どう?」

 

「おお、賑やかなモンだな....抹茶アイスに餡子、クリームは定番だけど小豆アイスバーとチョコバー! を捻じ込んてバナナの輪切やらも色々デコレーションして....方向性がまるで見えない....! 何かよくわからないけど凄いな!!」

 

「ミオちゃんありがと~! 名前もあるの! 千夜さん!」

 

「は~い! これは!『()つ国の! 琴(なび)かせむ言の葉に載する想いの(とどろ)く地響き!』ていうの!

紬さんが洋琴? の御稽古を初められたと聞いたからそれに合せて! どう~?」

 

「えーなに?? ミオわかる???」

「ええ...と、和歌....なのか? それとこのパフェとどういう関係があるんだ??」

「ユイさん、ミオさん、これがこの店の商品のネーミングセンスです。理解出来なくても

当然です。安心して下さい」

 

「わ~ひどいっ! チノちゃん! いつからこんなにイケズっ! な子になったのかしらっ! わたしとココアちゃん! の育てかたが悪かったのね~っ!!・・・・」

「え~! そんなことないです~!! 千夜さんは立派にチノさんを育てあげたんですよ~! きっとわかってもらえる日がやってきます! ウン!!」

「....ほんと? 紬さん....?」

「....ほんとです! 千夜さん!!」

 

「「・・・・ うわあああん・・・・っ!!!・・・・」」《ダキダキ~~っ!》

 

おおお! なんかどうなるかと思ったら最後はふたりのムギちゃんがムギュムギュしてハッピー

エンドだっ! 雨降って地固まるだねっ!!

 

「....おいユイ....真に受けるな....! アタマが....」

「千夜さんが二人いると毎日がお昼の奥様劇場ですね」

『まあ、たわいのない寸劇じゃ! こんなもの見せられても腹の足しにもならんわい! まあ眼福じゃがのお・・・・』

「....ティッピー? なにか言いましたか?」

『いや何も? ・・・・フム』

 

 

 

《カチャ! キィーー、》

 

「・・・・・・・・ いらっしゃいませー! 『フルール・ド・ラパン!』へよおこそー!!

....ほら! アナタも....!」

 

「・・・・・・・・ い、いらっしゃい....ませ~~!! ふ、ふ~るど....」

 

「「「・・・・ わああああっ・・・・!!!」」あら~!」

 

「・・・・ らっ、ぱんっ! え~~~、、、・・・・・・・・・・・・わ~~~~////////!!

おマイら! のまえでこんなことヤってられるかーーーーっ!!!・・・・」

《ジダンダ~~~っ!!》

 

「・・・・ タイナカさんっ!! いくら知り合いのマエだとしてもっ! 接客時の挨拶はキチンと

決められたようにしてくださいっ!!・・・・ シゴトなんですからっ!!!・・・・」

「・・・・ はい....桐間(キリマ)さん....ううう....////////・・・・」

「「「・・・・ おおおーーー!!!」」」

 

ワタシ達ユイ、ミオ、チノちゃんそしてムギちゃん四人はムギちゃんの仕事先の『甘兎庵』を

後にしてここハーブ専門喫茶『フルール・ド・ラパン』というお店の中にいる。ここでリっあん

が働いているんだけどお~、ククっ....! リっあん顔をまっカ! にしてトレーで隠してるし!

 

「「・・・・ クククククク~~~っ!!!!」」

「・・・・ わあーーー・・・・! !」

「シャロさん、私はいつものでお願いします」

『ワシもじゃ』

 

「はい! かしこまりました! 『カモミール』と『レモンバーベナ』ですね! 少々お待ちを!

....田井中さん....!お客様のご注文を....!!」

「・・・・ あ、はいい~っ!! あの~、お客サマ? なににいたしますかあ~? 今日のおススメは肉汁したたるトリプル! バーガー!! 当店ご自慢の汁ダク牛丼! ご一緒にポテチなどいかがで....『! タイナカさんっ!!』ハイ~っ!!! ・・・・」

 

....タイナカさんたいへんっ! リっあんと同じぐらいの髪の長さでしかもフワリとした金髪!

をなびかせている先輩の店員さんもきびしそうだし! しかもその格好....ふたりとも

ヒラヒラついた白いブラウスに黒のチョッキ? 『観えるか観えないか!』ほど切りつめられてる

白フリル付き黒スカートに白いニーソ、黒の厚底パンプスを履いている姿....だけでもアレなのに、

髪にはいつもの髪留でなくカチューシャ....なんと言ったらいいのか分からないデザインでしかも

ウサギの耳のような白いものが両側に垂れ下っている....ふう、なんかメイド姿をぎりぎりイカガワ

しくする寸前のデザイン?....見た目の説明だけでも面倒だしこんなのリっあんじゃない~~っ!

ブフっ!!

 

「・・・・ その、おたがいいろいろ大変だな....ブフっ!....」

「わあ・・・・! カワイイっ!! リッちゃんよくにあう!!」

「・・・・ そ、そうかー? ハハ! そうかー! それほどでもー!」

「ブフっ! リっあんのクセにっ! ....ブフフ~っ!!」

「オイっ! こらユイ~っ!!」

 

まあここで桐間さん? おすすめのハーブティーをいただいて? 一同ホッとして?

『・・・・ おおお~い! ワタシを置いてかないでケロ~!!』『タイナカさんっ!!』

なんてのを聴きながらここをあとにしたんだけど....幻聴かな?

....さて! 今日も一日! コーヒーを淹れるぞー!! ミオは? あーあ....

 

 

 

 

 

 

 



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おしごと!!!

 

 

 

 

 

「・・・・ お昼時も過ぎましたのでしばらく休憩にします。ユイさん、ミオさんお疲れです」

 

「・・・・ わ〜! まかない賄いご飯っ!!」

「・・・・ あああ・・・・ 慣れない・・・・ トホ・・・・」

「・・・・ ミオさんもゆっくりしていて下さい。コーヒーをお淹れしますから」

 

二日目の午前中の部が一段落ついてワタシ達はいまカウンター席で休憩している。といってもお店まで一時休憩にするわけではないので、お客さんが来たらまた接客をするんだけど、昼食時の混雑にくらべたらそれほどでもないのでミオだけはとりあえず休ませておこう、てチノちゃんが気づかってくれたんだ。でも....

 

「もう二日目だというのに慣れないのは困りものです。ミオさん、皆さん『軽音部』とのことですが、そんなことで舞台に立てるのですか?」

 

「・・・・ ぶたい....あ〜〜っ!! そおだったー! ライブをするには人前で演奏しなくちゃならないんだ〜〜〜!! ....もう私、ここで○んでもイイ・・・・ ウウウっ!!!・・・・」

「ミオ〜! そんなオーバーなあっ!」

「ユイ〜っ! お前に私のベースあげるから代わりに舞台に立ってくれよ〜!! なんならボーカルもゆずるから〜〜!! ユ〜イーーっ!!!」

「えええ....ギターはどおなるのさー....!」

 

あああ・・・・ 思った以上に重症だあ....ここで接客のバイトをこなせるようになったらミオの

恥ずかしがり屋も少しはやわらぐ! というのもこのアルバイトの隠された理由だったのに....

 

「グスン....チノ....はまだ中学生なのに....よくこんな仕事が出来るな....ウン」

「....仕事だと割り切ってますから。それにこのお店はおじいちゃんが開いて切り盛りしていた

お店です。私としてはこの店の後を継いで盛り立てていきたいと思っています。できればあの

二人とも....」

「スゴイね〜チノちゃんっ! ワタシひとつ歳上なのにそこまで考えたことなかったよ〜!!」

「・・・・ お店があったからです。私もお店がなかったらミオさんのように....あ、ごめんなさい・・・・」

「・・・・ いや! いいんだ! そうだよな....あと明日でここも終りだけど、それまでにはなんとか....!」

「おお〜〜っ! ミオそのいきっ!」

 

《・・・・ カランカラン....!!》

 

「こんにちは〜〜。いらっしゃいますかーー?」

 

「ヒイイっ!!」

「ミオさんっ! ・・・・ あ、いらっしゃいませ、青山さん。いつもの席が空いています。

どうぞ。ユイさん、『ブルーマウンテン!』をひとつ」

「ハーイ! かしこまりましたー!!」

 

「ユイさん....? 新しい店員さんですかあ? あら! そこの方もですね〜。」

「ハーイっ! はじめまして!!」

「ははハイイっ!! こ、こんにちわっ! いらっしゃいませっ! おのみものはっ!!!・・・・」

「落ち着いて下さい。もうユイさんが淹れてくれてます」

「・・・・! ああぁ・・・・」

「ミオどのドンマイっ!」

「うん....」

 

 

「そうなのですかー。秋山さん、あがり症なのですねー、わかりますうー、かくゆうワタシも

そうなのですから〜!」

「・・・・ そそそうなのか....なんですか! やったぞユイっ! ここにもおなかまがいたっ!!」

「そうなんだっ! ミオ! よかったねーっ!」

「そんな話初耳です」

 

このお店の常連、『青山さん』というひととお話することになった。ムギちゃんと同じような色の髪をフワリと肩にかけさせていて、ものごしまでムギちゃんなみにホワ〜!(でも歳は二十代半ばくらい??)としたひとだからとても話しやすいし。

 

「ほら! よくゆうじゃないですかー! 揚がるときは周りのひとをキャベツかじゃがいも!

と思えばいいって〜!」

「それ、小学生のころリツに言われたことある....うん」

「そうだよっミオ! じゃあ練習! わたし達をジャガイモだと思って!!」

 

 

「じゃがいも....うん....じゃがいも....じゃがいも....ジャガイモ....んんん・・・・・・・・ 

 

じゃがいもが・・・・ ジャガイモが話かけてくる〜〜っ!! イヤ〜〜〜っ!!!・・・・」

 

 

「あらあら〜〜」

「うわ〜〜ダメなのっ?? ああ〜!!」

「もはやホラーですね」

「ハイ! キャベツとジャガイモの縄張り争いに巻き込まれる恥ずかしがり屋の少女の!

その宿命と克服に立ち向かうバイオレンスサスペンス大作! 浮かんできました〜!

ありがとうございますうーー!!」

「へ? なーに??」

「気にしないで下さい。この方の職業病です」

 

「じゃあじゃあ! そのジャガイモと闘ってみたらどうです〜? 参考になります〜!」

「じゃがいもと? マッシュポテトにするの??」

「喋るジャガイモとどう闘うんだよ〜〜!!」

「安心して下さい。これがあります」

 

ミオのあがり症克服のため、とうとうジャガイモとまで戦うことになってきた!

さてチノちゃん! どのような作戦!を立ててくれるというのかっ! ん? そ、それはっ!!

 

「....これ? て....っ!! ....ヒエ~ッっ!?!」

 

....わあ〜〜!!コレは!イタリア製拳銃の大ベストセラー!『ベレッタ92F2!!』だ〜!!

ナンでコンなものチノちゃんが〜??

 

「これは『例の』長期アルバイトの人から無理やり貸し与えられてしまったものです。

これをどうぞ。きっとお役にたてると思います」

 

チノちゃんナンてモノ!! こんなしゃれたお店でウエイターやってる中学三年生が持つもの

じゃない!! 貸してもらったって言ってたけど....こんなの持ってる中高生! ってどんなヤツ

なんだよっ!! ....てウチの高校にもおりましたよねー。飛行機乗って機関銃ブっぱなしてた

ヒトもいたし。『拳銃女子!』なんて層もあるのかなー??

 

「あらあら、これでジャガイモとどう闘うんですー??」

「ミオさん、裏庭にきてください。皆さんもどうぞ」

 

そして連れてこられたのはこの店の庭。表通りとは反対の洗濯物を干したりお花を植えたりする

ところかな。でここがあのジャガイモ! との決闘場所なわけね。

 

「これはイメージ療法みたいなものです。ようはひとに模したじゃがいもを克服すれば、大勢の

人前でも揚がらなくなるのではと思いました」

 

なーるほどー! それでこの場所で決着をつけるんだな! で? あいてのじゃがいもは?

 

「さすがに本物の喋るジャガイモを調達することは出来ませんが、代わりならだれでもOKで

しょう。ミオさん、これを」

「へ? なに??」

 

そう言ってチノちゃんはミオに拳銃を持たせて数メートル離れたとこに立ったんだけど....なに?

 

「さあミオさん、そのピストルで『この』ジャガイモを撃って下さい。遠慮はいりません。

どうぞ」

「・・・・ へええええ〜〜っ!!!」

「あらあら〜〜! 面白くなってきましたね〜!」

「ミオがチノちゃんを撃つのっ!!」

 

「心配ありません。それはモデルガンです。いわゆるサバゲー? 用のですね。空気圧縮? の銃とのことですからプラスチックの弾でも少しばかり痛いかもしれません....が、たいしたことはありません。どうぞ....私を撃って下さい」

 

「....チノちゃん、そんなあ....」

 

....チノちゃんなんてことっ!これもミオのことを想ってのことだろうけど....まだ出逢って二日しかたっていないのにこんなことまでしてくれるなんて!それに....チノちゃんだけにそんなこと....させるわけにいかないじゃんっ!....よしっ!!

 

「....そうだっ! ミオ! このワタシをジャガイモだと思って撃ってごらんっ! きっと恥ずかしがり屋もなくなるよっ!」

「....ユイさんっ?」

「おいユイまで!!」

「あーら〜! ユイさん!オトコらし〜ですう〜〜!」

「でででででも! ユイまで怪我をしたら・・・・」

 

「ミオっ! なにも心配いらないよっ! わたし! ミオはほんとはすごく強くてがんばり屋だって

こと知ってるから!! ベースだって昼休みのあいだに内緒で部室で練習してたんでしょっ? 放課後のお茶の時間に一人だけ練習してたらわたし達にわるいって気をつかってくれてたんだから!

だから! ミオっ! あとはジャガイモをたおすことだよ!! そうすればわたし達! みんな同じ舞台に立てるんだから!!!」

 

 

 

「・・・・・・・・ ユイ・・・・・・・・・・・・っ!・・・・・・・・」

 

 

 

・・・・ それから少しばかりだれも話さなくなった。でも、みんなミオのこと見守ってる・・・・

 

・・・・・・・・ ミオが....ワタシにむかって構えたな・・・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・・・じゃあ、チノ、ユイ、、、うつぞ・・・・ 撃つぞ....撃つぞ....っ!・・・・

 

・・・・・・・・撃つぞおーーーー・・・・っ!!!・・・・・・・・!!・・・・・・・・」

 

 

 

《・・・・・・・・ パンっ! ・・・・ パンパパパパパンッっ!!!!・・・・・・・・》

 

 

 

・・・・・・・・ イタッっ....! おもわず目をつぶっちゃった....でも.... いたく....ない....? 発砲した音は聴こえたのに・・・・ ん・・・・?

 

 

 

「・・・・・・・・ あらあら・・・・・・・・」

「・・・・ ミオさん・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・わたし・・・・ 撃てない・・・・ うてないよ・・・・ たいせつな仲間をうつなんてできないっ!! ・・・・」

 

「・・・・・・・・ミオ・・・・・・・・」

 

 

 

ミオの持つ拳銃の銃口は自分の足元辺りに向けられていた。地面にむけて撃ってたのか・・・・

 

 

 

「・・・・ たとえモデルガンだってともだちには撃ちたくないんだっ! ・・・・・・・・

だから! あと半日! これからの時間と明日の昼までにちゃんとお客さまに向き合うから!

チノ....! さん....わたしをビシバシ鍛えて下さいっ!! おねがいしますっ!!!・・・・」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・ミオぉ・・・・《グス....!》・・・・」

「・・・・ ミオさん、私が浅はかでした。手っ取り早く解決できる方法だと思ったんです・・・・ ユイさんも・・・・ 巻き込んでしまってもうしわけありません・・・・」

『・・・・・・・・いや、チノのせいじゃない。ワシの入れ知恵じゃ。チノを許してやってくれんかのお?・・・・』

 

 

「・・・・ え?」

「・・・・ なにナニ? またチノちゃんの腹話術?? ....でもチノちゃんティッピーを頭に乗せてないよねー??」

「・・・・ あの声は....マスター! あの『白いお髭のマスター!』 ですよねっ!!・・・・」

「・・・・ ティッピー....余計なことです....」

 

・・・・ どこからか、『おじいちゃん』の声が聞こえてきた....家の中からかな....いくら腹話術だからといってもあんなところからチノちゃんの声を飛ばすことなんてできないだろうし....でも、

 

「・・・・ うん、そうだよな....チノは悪くない。自分の弱さを他人に頼っちゃだめなんだ....ユイ! コーヒーを淹れるのは任せた! この時間からは私が接客をする! チノ! どんどん私に指示してくれ! ....して下さい....!!」

「ハイィっ! ミオどの! りょうかいしましたあっ!!」

「わかりました。もうそろそろお客さんも増えるころです。ミオさん! ユイさん! いきますよっ」

「「りょうかいっ!!」」《ケイレイっ!!》

「わああ・・・・! なんか復活の儀式! みたいですね〜! これはいいものを取材させていただきましたーー!!」

 

 

《・・・・ カランカラン!》

『チノーー! お客さまだぞ〜〜〜!!!』

 

 

「「「「はーーーい!!!」」」....あらあら! わたしまでつられちゃって! ウフフっ!」

 

 

・・・・ こうして、ワタシとミオはお店の午後の部を陽が暮れるまで奮闘した。ミオはおっかなビックリでもちゃんと背筋を伸ばして接客してたし、わたしのコーヒーの腕前も時間が経つにつれてチノちゃんにほめられるようになった。そして、時間もすぎて・・・・

 

 

 

 

 

 

 



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おしごと‼︎‼︎



 

 

 

 

《ガチャっ!》「「こんばんわー!」」

 

「・・・・ いえーーーい・・・・ おまいらがくるのをマ!っていた~~~・・・・っ!!!

コンやはかえさないからかくごしておけ~~~・・・・っ!!!!

プハァ~~~・・・・!!!・・・・」

 

「わあ~っ! これあのリっあんとこの~・・・・?」

「え・・・・? ....リツっ! おまえ! このひとにナニをしたっ!!」

「・・・・ イヤイヤイヤっ! ワタシはナニもしてないっ! このヒトが勝手に~~~っ!!!・・・・」

「「あらあらあら!!!」・・・・ シャロちゃんたらっ! うふふ! 照れ臭いのね~!」

「千夜さん、やりましたね」

 

ここはムギちゃんのバイト先『甘兎庵』のとなりの一軒家、リっあんのバイト先の先輩

桐間(きりま)紗路(シャロ)』さんのお宅にわたし達『軽音部』の四人とチノちゃん千夜さんがお邪魔をしている。このおうちはこじんまりとしているけど庭の手入れは行き届いてるし、部屋の中もウイが片付けてくれたあとのわが家みたいにきれいにしている。まだ高二だというのにここで一人暮らし!

すごいっ! ワタシにもユイにもできないことだっ!!

 

「・・・・ ぷふ~い! サササっ!!! ソコのアナタも! コレ飲んでもりあがろうじゃな~い!!・・・・」

 

「うわ....ナニ? 高校生が飲んでもいいものなの~??」

 

「でもほんとにこの酔っぱらいぶりは....マズくないか? おいリツ! お前お酒でも....!」

 

「チャウチャウちゃう!! わたしが一緒にここに来たときはまだこんなんじゃなかったんだっ! お酒なんて呑んでるとこなんか見てないし!!」

 

そう、わたし達三人が部屋に案内された時にはすでにこうだった....でも部屋のテーブルには食材や食器が並べられてるし、桐間さんはちゃんと用意はしてくれてたんだ。

 

「おい、わたしだってチャンと手伝っんだぜー! その時はまだ桐間さんはこんなんじゃなかったんだよー!!」

 

「うふふ~!! 今晩このシャロちゃんちで『軽音部!』のみんなと打ち上げしましょう?

と言ったら『ななナンでワタシのウチでっ! チアのとこかチノちゃんのトコですればイーぢゃナイのっ!! ....でもどうしても! て言うなら....部屋を貸してあげないコトもナイのよ....? フン!!』

....て! ほんとは嬉しかったのよね~! でも素直じゃなくてテレ症だからわたしがさっき一服!

盛ったのよー!! フフフ!」

 

「わあ~! そんなに良く効くおくすり! てあるんですか~? わたしもほしいですー!

ミオちゃんもどお〜〜??」

 

「おいムギ....! それって何かヤバい薬のように聞こえるぞ....!」

「んー? そんなにコレおいしいの??」

「大丈夫よ~! ヤバく効くのはシャロちゃんだけだからー! 安心して下さい~! どうですう?」

 

そうやって千夜さんにとある液体の入ったマグカップをわたされた。

黒々としてるけどこれってアレじゃん....

 

「んー? じゃ! ・・・・ほわ?? ・・・・ぷっふあーっ! やっぱりブラックコーヒー・・・・ チノちゃんとこのよりにがあ....」

 

「そーなの~! シャロちゃんコーヒーを飲むとこうなっちゃうのー! インスタントを濃目に淹れたんだけど! うふふふふ~!!」

 

「....ブラックは効きすぎです。せめてミルクと砂糖を加えるべきでした」

 

「んー?これがブラックー??・・・・」

 

・・・・ そんなこんなで今夜の打ち上げが始まった!わたし達『軽音部』四人は明日の午後には

ここを離れなくてはならないので、千夜さんがチノちゃんとシャロさんを巻き込んで歓迎&お別れ

パーティーを開いてくれることになった。食事はそれぞれ持ち込みで、定番のフライドチキン、

サラダ、オムレツ、巻き寿司にお稲荷さん、ケーキにクッキー....などなどのジャンクフードを

テーブルに並べながらも、ワタシ達七人はもうすでにクライマックスな盛り上がりを繰り広げ....

「....うふふふふっ!・・・・・・・・あははははあ〜〜〜・・・・っ!!!・・・・」....へ?

ナニ??

 

「?・・・・ おいムギ、どうした? ・・・・おいユイ、リツ....!」

「え~ナニ?? ぅわっ....ムギちゃんっ!?」

「ん? へ?? おいムギ? どしたんだー?」

 

となりに座っていたムギちゃんの様子もヘンである....なんかムギちゃんの頭もふらふらフワフワしてきたし....ん?ムギちゃん!そのマグカップ!!飲んじゃったのっ??

 

「・・・・・・・・ な〜〜んか〜〜!・・・・ あたまがフワフワしてきたの〜〜!!《・・・・ フワリフワリ・・・・》ウフフフフウ〜〜〜!!!・・・・」

 

ムギちゃんにとっては初めてのコーヒー、だったのかな?部室じゃいつも紅茶か緑茶しか淹れてなかったし。しかもブラック!! というのはチと効きすぎたかも?? 『あら!』....ん? ムギちゃん、シャロさんと目をジーと見つめあってるなー....

 

「・・・・ シャロさん? ・・・・」

「・・・・ ムギ? ....さん?・・・・」

 

えー・・・・と・・・・??

 

「・・・・ シャロさんっ!!!」

「・・・・ ムギさんっ!!!《・・・・ カタっ!ムギュギュ~~っ!!!》

 

 

「「・・・・ あははははははは~~~~・・・・っ・・・・!!♡♡♡」・・・・♡」

 

 

「おいっ!ムギまで!!」

「・・・・ ムギーお前もかー・・・・ ナンかガラにもなくはちきれてんなーー・・・・」

「あらあら~! 紬さんも~! けっこうイケるクチなのねー!!」

「え~~! いいなあ~!!」

「....おいユイっ!」

「今晩はなおさらうるさいですね....」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「....それにタイナカさんっ! アナタ! あの対応! ナン度いったら分るのっ! ....もし明日になっても改善できない時は....ザンギョーよっ! 残業!!」

 

「えぇえ~! ....明日わたしら帰るんですけどお....へへへ!」

「そうよ~シャロちゃん! 明日午前の仕事が終わったらこの『軽音部!』のみんな、帰っちゃうのー! わかるー??」

「....ええーー・・・・ じゃ! イマが残業よ! ザンギョ~!! だいたいタイナカさん! アナタってヒトはーーーー! ・・・・!! ~~~~っ!!!・・・・」

「・・・・ おーい・・・・ミオー・・・・」

 

「わ~! 紗路さんって可愛いのになんか会社の上司みたーい!!」

「うわ・・・・ これが社会に出たら受ける『洗礼....』なのか・・・・」

「んー? チノちゃんのお説教とはずいぶんちがうねー」

「これはもはや絡み酒です。ウチの店も夜の部は『バー』ですから、この様な光景も見慣れたものです。私はコレで、大人になってもお酒を飲むまいと決めました」

「....チノ、大人だ....」

 

・・・・ まあリっあんと桐間さんとの会話はさておき、パーティーの中盤に差しかかってみんなそれぞれめいめい雑談に花を咲かせている....んだけど、やはり『出来上がってる』ひとの声には勝てないみたいで....

 

「....リツ~!! あなたはワタシの最初の後輩なのよーー!! これで最後なんて言わないデ~~!!!....」

「....そんな~....これで最後のお別れってわけじゃないし~!....」

 

「....なんか凄い事になってるな....リツ大丈夫か....?」

「....うわ~泣き落としだー....シャロさんこれでイイのっ?」

「....ねえ千夜さん? なんか....紗路さんってコーヒーを飲むたびに酷くなってませ~ん?」

「ムギは酔いが醒めたのか....」

「んー??」

「ん~? どうせならお酒と同じで酔い潰そうとしたんだけどー、んー??」

「千夜さん....逆効果です。すぐ麦茶に切り替えることをオススメします....」

 

なんだかんだでリっあんはシャロさんに気に入られてたんだなー。手間のかかる後輩ほど....てことかな?

 

「....ヨシ! わたし! 歌う! チヤっ! チノっ!! 合いの手はイイわねっ!!!....」

「あら~! アレを歌うのねー!!」

「アレですか....まあ歌い慣れてますが」

「アレってナーニ??」

「まあっ! せつめいはワタシタチのうたを聴いてからにしてカラっ!....いくわよ~~~っ!! ....チアっ!?」

「は~い!!《ポチっ! ・・・・ ♪♪♪♪!・・・・♯♯♯♯!!・・・・ ♭♭♭♭!!! ・・・・》この曲ね! じゃ! 最初から~!!」

「いっくわよ〜〜〜っ!ミュージックっ!スタ〜〜トおっ!!!...」

 

千夜さんが自分のスマホの画面をクリックしたら音楽が流れてきた....これがバックミュージックかなー? 聴いたことない曲だけど。『せ~のおっ!』

 

「「「♪ こころピョンピョンまちっ! カンガえるフリしてもうチョっとっ! ち~かづいちゃえっ!!」」

 

「「「「・・・・ おおお~~~っ!! 」」」わあ~~~!!!」

 

「....カンタンにはおしえな~いっ! こんなにスキ! なコトわ~! ナイショなのお~~~!!!「「ふわふわドキドキナイショですよ! はじめがカンジンつ~んだつんだっ! ふわふわドキドキないしょだって! い~たずらエガオでピョンっ! ピョン!!....!」」」♪♪♪♪!!!!

 

ちょっと間があいて三人でコーラス!! ソロパートもふくめてみんなの歌声がキレイに絡み合ってる!! そのあともメロディーと合いの手? とコーラスが絶妙に組み合わさっててこれはスゴいっ!!

 

「・・・・ わあーーーー・・・・!!!!・・・・」

「なんだーっ! 一糸乱れぬこの歌声はっ!!」

「・・・・ これは・・・・ 凄いな・・・・ !!」

「うわあああ・・・・!! スゴいっ! すごいよみんなーっ!!」

「・・・・ 『ふわふわ・・・・ ドキドキ・・・・』 か・・・・」

「んー? どおしたミオー?」

 

 

「・・・・ ごせいちょうありがとうゴザイマシター!! じゃあつぎわあ・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・ふわあぁ・・・・・・・・・・・・《・・・・コテン》・・・・」

「おいっ!!」

「チョっ! キリマさんっ!!」

「え~~・・・・ だいじょおぶ??」

 

「・・・・・・・・・・・・ スピ~〜~、、、スピ~~〜~、、、、・・・・・・・・・・・・」

 

「「あらあら~!」やっと酔いつぶれたのねー! 何杯かかったのかしら~!」

「コーヒーを飲み過ぎて眠りこけるなんて本来ありえません。良い子はまねをしませんように」「「ないない!」」

 

こうして....桐間家の夜は深けていった....酔いつぶれ? た紗路さんを千夜さん、

ムギちゃん、リっあんにまかせてわたしとミオとチノちゃんは『ラビットハウス』にむかう....

今日は昼の一件もふくめて濃い一日だった....ミオもチノちゃんもそう思ってるだろうな....

 

 

 

 

 

 



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おしごと‼︎‼︎!

 

 

 

 

「....ありがとうございました! またのおこしをっ!《カランカラン....パタン!》....ふぅ〜....」

 

「ミオさん、お疲れさまです。もうすぐ一時になります。ユイさんもそろそろ帰宅のご用意を....」

 

「....はーい! あぁあ〜! もうこれでおしまいかぁ....」

「....ああ、なんかあっという間だったな。ここに来たのはずいぶん前のような気もするけど....」

 

バイト三日目の昼、午前の部を過ぎたあたりにわたし達四人の仕事が終了する。そして帰りは行きの自動車とはちがって列車に乗ることになった。ムギちゃんのたっての希望だ。乗り換えの時間も考えて早めにこの街を出なければならないらしい。そしてこの『ラビット・ハウス』が待ち合わせの場所なんだけど....

 

「まだ時間もあるし、もう少しここで仕事をこなすか? ユイ」

「そーだね、もう荷物は詰め込んであるし、あとは着替えるだけだから」

「そうですか、助かります。でも今はお客さんもおりませんし片付けぐらいなものです。少々休憩しましょう。コーヒーをお淹れします」

「わ〜ありがとう!」

「チノ....さん! いろいろとありがとう....おかげで少しは人前も慣れたかも....」

「いえ、そんな....私もお二人に生意気いってすいませんでした....」

 

そんな会話をしながらわたしとミオとチノちゃんはコーヒーを口にしながら別れを惜しんでいる。あ〜あ、せっかく仲よくなれたのにー....

 

「今だから正直に明かします。お二人はここで長期のアルバイトをしている従業員の二人にどことなく似ているのです。『....そうじゃそうじゃ』それでついついその二人を相手にするように軽口でお二人とお話しをしてしまいました。もうしわけありません....『うむ、ワシからもスマン....!』」

 

「いやいいんだよっ! そのほうが気が楽だったし!!」

「....そうさ! わたし達『軽音部!』のみんなもこんな感じで毎日話しをしているんだ。そのなかにチノが加わって楽しかった! むしろこれが自然だよな」

「....自然、ですか....」

「そおだよチノちゃんっ! 自然がいちばんだよっ! うんウン!!」

「....そういうユイだってはじめてうちの部に来た時はけっこうブっ! てたじゃないか....!

はは!」

「....えー!ミオだって!けっこうガチガチだったじゃん! あ! ごめん....」

「いいさ! ....あ、そうだチノ! この借りていた....」《カチャっ! カランカラン....》

 

「チーノちゃんっ! たっ! だいまーっ!! こっちに帰るの待ち切れなくって一日早く帰って

きちゃったーーっ!!! えへへーーー!!!」

「ああ! 私もだ! 今ここでコイツと一緒になってなー!!」

『ほえ?』

 

「あ! いらっしゃ〜〜いっ! お客様はおふたりですかあー?」

「いらっしゃいませー! おすきな席へどうぞっ!」

「・・・・ ココアさん....? 」

 

お客さんだっ!さて!最期のお仕事かなー?

 

「っ! ・・・・ えっ・・・・??? ・・・・ だれっ?!? このふたり・・・・・・・・」

「ん? どうした? ココア」

 

....て、このふたり、チノちゃんのお知り合い....??

 

「ああ、ココアさん、リゼさん、お早いお帰りですね。お疲れさまです。このおふたりは....

ココアさん?」

 

「え・・・・ なんで・・・・ わたしの制服着てるの・・・・ わたしのいないあいだに・・・・

なんでナンでっ!!わたし、わたし・・・・っ! いらないコだ〜〜〜っ!!!うわ〜〜〜〜んっ!!!! ・・・・《ガタっ! テケテケテケ〜〜〜っ!!!》・・・・」

 

「おいココアーっ!!」

「・・・・ ココアさんっ! 誤解です!! 待ってくださいっ! ココアさ〜〜んっ!!!・・・・」

 

・・・・ なんか....お客さんがふたり来たと思ったら? ・・・・ えーとナニ??・・・・

一気に急展開だー・・・・ 理解が追いつかない・・・・

 

「・・・・ えーとお・・・・ ナニがおきたの? チノちゃん....」

「・・・・ あ、ああ・・・・ これはいったい....?」

「・・・・ ななナンだっ! そういうお前達はっ!! ナニモノだあーーーっ!!!」

「「・・・・ヒイイッっ!!!」」

 

えええ??? なに!!?? ホンとになにがおきてるのっ?? 髪も背もオレぐらいの女の子が泣き

ながら店を飛び出していったら! もう一人のミオと同じツインテールの娘がオレ達ふたりを指さし

睨みつけて凄んでいるっ! すごくコワイ....!!!

 

「リゼさん! 落ち着いてください....! このふたりは....」

「....まさかっ! このふたり! 私とココアの『ドッペルゲンガー!』かあっ!!」

「....ヒヤッっ!! どどどっペルっ!!??」

「....ならば仕方がない....! もしどちらかが消えなければならない運命ならば....! このワタシが

オマエたちを消してやるーーーっ!!!《ガチャッっ!!》」

「リゼさんっ!!」

「....おいユイっ!! アブないっっ!!! ・・・・!!!《バサッっ!!》・・・・」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・ ミオーっ!」

「・・・・ ミオさん! リゼさん!!」

「・・・・ お、おお・・・・」

「・・・・ あっ!・・・・ え・・・・ ??・・・・・・・・ えぇえ〜〜っ!!??・・・・」

 

 

「「『・・・・ おおお〜〜〜っ!!!」」・・・・ こりゃまたハードボイルドじゃのお〜!!』

 

 

....次の瞬間!ミオともうひとりのミオ? が互いに拳銃を片手に持ってお互いの額の前にくっつけるように構えていた....! もちろん全身のポーズも万全! こりゃアクション映画のワンシーンだわっ!ミオ! いつのまにそんなワザを!!!

 

 

 

 

 

「・・・・ ハハハハハ! そういうことか〜〜!! それならそうと私達二人が出かける前に

言ってくれたらいいのに〜!」

 

「....千夜さんが勝手にお膳立てしたんです。私は当日の朝になるまで知らされていませんでした」

 

二人のガンマンショー! が終わってホっと一息....チノちゃんの説明でわたし達のドッペルゲンガー

疑惑? は幕を閉じ? 今はここ、『ラビットハウス』での長期アルバイト店員のひとり、『天天座 (てでざ)理世(リゼ)』さんと共にカウンターでコーヒーを頂いている....

 

「しかし! この私に銃口を避けさせる暇も与えないその銃捌き! 手馴れたものだな!

お前! どこの部隊の所属だ!」

 

「ぶたい....? わたしは....へ??」

 

「リゼさん、この二人は堅気(かたぎ)です。ミオさんとユイさんといいます」

「わたしはユイっ! ムギちゃんのさそいでこの店に来たの!」

「....私は、ミオ....です。先ほどは失礼しま、した....!」

「イヤ私も済まなかった....! でも凄かったなー! いつもこの拳銃を身に付けていたのか?」

「ええ、と....これは....」

「これは私がジャガイモへのお護りにと貸し与えました。お陰で役に立ちましたね、ミオさん」

「じゃがいも?」

「「ははは....」」

 

お互いの健闘を讃えあったのか? 和やかな雰囲気でコーヒーがすすんでいるけど。そういやもう

一人のお連れさんは? あのままでいいのかな??

 

「ああ、あいつか....」

「行く所は決まってますからね。そのうちに帰ってきます」

「ええ....それでいいの? でも、ミオ! さっきのアレ! カッコよかった〜!!

隠れて練習してたのっ?」

「....! アレ? は....ユイが危ないっ! て思ったら....勝手に....」

「?....あれ! ワタシのタメだったのっ!!」

 

オレのためだったんだ....ミオって自分より仲間のためなら揚がらずにスッと動けるのかな?

こっちの方がすごい....

 

 

「....なるほど、揚がり症を克服するために、か。でもミオ、その揚がり具合はは必ずしも悪く

働く訳ではないみたいだな。さっきみたいに」

 

「??....そう、なのか? リゼさん」

 

ん? ミオの揚がり症が....? なんでだろう??

 

「ま! そのうちわかるさ!! でも人前に出ようとする努力は無駄じゃあないぞ! それはそれだ!

ハハ!!」

「うん! ミオ! すっごくがんばってたし! これでライブもいけるねっ!」

「そうか....ライブか! よし! もし気に入らない客がいたら舞台からそれでブっパなしてやれ!

はははっ!!!」

「....いいいいいや....それは....!!」

「物騒なこと言わないで下さい。では、この銃をミオさんにさしあげてもいいんですね?」

 

「ああミオ! これを持っていってくれ! お護りだ! これはいいモノだぞお〜! コレはなー! 『Beretta Modello 92F2!』といってな! イタリアで開発されてここやアメリカでも....!....!」

 

「えぇえ〜! コンな大事なモノ! わたしには〜〜!!」

「まあ遠慮するな! そうだチノ! アレもあるか?!」

「アレですか....はいここに」

 

ミオ、この二学年上のリゼさんって人にものすごく気に入られたみたい。それにこのヒトも....拳銃女子って裾野が広いのかなー? それにまだなんかあるみたい。チノちゃんがカウンターの下をゴソゴソしているし。....ておい! コレはっ!!

 

「おうチノ! 備えがいいなっ! これは『H&K G36KA2!』といってなー! ドイツの『H&K社』が開発した突撃機関銃で、私が初めて買った銃なんだ!」

 

「ええ、重度のクレーマーにはこれで連続掃射しろ! とリゼさんがここに置いていったモノです。これもミオさんに?」

『ナニ!? ソンな物騒なモノここに置いてあったのかー!! 客にソンなコトしたら店が潰れるぞー!! リゼ! チノ〜!!!《ピョンピョンピョンっ!!》』

「ああ! ぜひ貰ってくれ! この銃も喜ぶ!!」

「ちちちちちちチョっとまったっ!! コンなオーバーなっ!! それにこれって初めて買った思いでのモノなんだろっ!?」

「だからさ! 是非受け取ってくれないか! ミオを観てると他人には思えないんだ! たのむ!!」

「えぇえ〜〜....」《カランカラン....!》

 

「「あらあら! ウフフ!」リゼちゃんもここにいたのねー!」

「ユ〜イちゃ〜ん! ミ〜オちゃ〜ん! おまたせー!!」

「おーう! ユイ! ミオ〜! てなんだ〜? まだ着替えてないのかー??」

「こ、こんにちは....昨晩はどうも....ほら、ココア!」

「う、うん....シャロちゃん・・・・ チノちゃん、リゼちゃん....さっきはごめんなさ〜〜いっ!

ユイさんも、ミオさんも〜!!!」

 

おお、リっあんムギちゃんにチアさんシャロさんそしてさっきのココア? 『保登 (ほと)心愛(ココア)』さんも! これで役者がそろったねっ!!

 

「....チーノちゃ〜〜んっ!!」《ガバっ! ムギュ〜!!》

「ちょっ!?....たく、しかたのないココアさんです....////」

 

「うん!そうなのー!ココアちゃんがウチに駆け込んだときも大変だったのよ〜!泣きながら店に入ってきたのはいいけれど、わたしと紬さんを見たとたん〜・・・・、

『・・・・・・・・ ここにもドッペルゲンガー・・・・・・・・ ガク』

『『あらあら〜!!』』て気を失っちゃってたのー。だから少し遅れちゃった! テヘ!!」

 

ああ....となりのドッペルさん....てどこまでも付いてまわりますね....!

 

「ココア....お前はいつも大げなんだ!!」

「さっきのリゼさんもです」

「あ....じゃあ! これで全員集まったようだな! よし! 折角だしみんなでパーティーでも!」

「ああそれね〜、昨日の晩シャロちゃんのおうちですましちゃったのー!!」

「ええーーっ! せっかくユイちゃんとミオちゃんとも仲よしになりたかったのにー!

プンプン!!」

「ココアさん、もうすでにお二人に『ちゃん!』付けですよ」

「じゃあ! ユイちゃん! ミオちゃん!! 更衣室いこー!! 着替えなくっちゃ!!」

「おお、そうだな! ミオも!」

「はい! いきましょう!!」

「えええ....四人いっしょに....」

「どーしたの? いこっ! ユーイちゃんっ!!・・・・」

「・・・・ あ....ハイ....」

 

こうしてオラはココアさんに手を掴まれて更衣室へと連行された・・・・  

眼のやり場に困ったー・・・・ ココアさんとリゼさんは平気にブラパン! になるし、

恥ずかしがりのミオでさえもう難なく一緒に着替えている・・・・ あああ・・・・ バレたら○○される〜〜!! 女の子の下着姿なんて憂と姉ちゃんとで見慣れていたと思ったら! この三人は

ボリュームが違いすぎた・・・・ かくゆうオレは例のキャミ! のおかげで『上』はバレそうにないけれど、『下』がねー・・・・

 

「え〜〜? ユイちゃんのパンツ変ってるねー! ショートパンツ? じゃなーい??」

「え? うんそうっ! これならスカートがめくれてもあんしんっ!! あはははは・・・・!!!」

「わ〜そおなんだ〜! おもしろ〜い!!」

「・・・・ はあ」

 

これも山中先生の入れ知恵だ・・・・ スポーツ用のこの手の短パンをアレンジしたモノだ・・・・用意してくれたのも先生だったけど・・・・ ふう〜〜〜・・・・ んでもってやや緩めのカーゴパンツにおしるこ! Tシャツを着て〜・・・・なんとかのりきったあ・・・・ ふう。

 

 

 

 

 

 

 



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おしごと‼︎‼︎‼︎ & After!

 

 

 

「この駅もすごいね〜!」

「うおーう! 全面ガラス張りだしー!」

「なんか外国の旅行番組でこんな駅見たことあるよな!」

「そうなの! この駅ってイギリスの『パティントン駅』かフランスの『北パリ駅』をモデルにしてるって聞いたことがあるの〜!」

 

「んも〜!もうこれだけでみんなとお別れなの〜〜!!もっと早く帰ってくればよかったー!!」

「ココアさん、それではこの方たちのバイトの意味がありません。このふたりはココアさんと

リゼさんのピンチヒッターなのですから」

「ああ! そしてその任務は十二分に果たされた! 我が部隊に所属していたら褒賞ものだぞ!!

ウム!」

「リゼ先輩....なんなら私が先輩の部隊に入隊しても....『ん?』! いいいイヤっ! ナンでもありません....! フウ....」

「もうすぐ夕暮れ! 駅の中の陽射しも様になってきたわね〜!」

「そうですね〜!「ウフフフフっ!!」」

 

わたし達『けいおん部!』の四人は、ここ『木組みの家と石畳みの道と野良うさぎの街』の喫茶店従業員の先輩方とともに、この『レンガとガラス張りの駅』のホームで別れを惜しんでいる。このガラス張りの天井からもやや傾いた陽の光が射し込んできていやが上にもお別れのシチュエーションを盛り上げているし、これから乗る列車も....ムギちゃんがこれに乗って帰りたがるのもわかるような何ともクラシックでメルヘンなデザインだし。

 

「皆さん、もうすぐお時間です。これをどうぞ」

「あ〜ありがとうっ! チノちゃんが淹れてくれたのー?」

「はい、帰りの列車の中で、と思いまして」

 

そういってチノちゃんはワタシに四人分のコーヒー紙パックを持たせてくれた。このコーヒーともお別れかー・・・・

 

「....ほら、リツ....私もこれ....お店のハーブ入りクッキーだけど....////」

「わ〜〜! いただきますうっ! キリマさんっ!! ありがてえ〜ことでゴザいますう〜!!」

「アナタの! ....そういうトコはTPOをわきまえなさいよね! ここならいいけど....お店で働く時はっ!! ....っ!....!!!」

「....えー....桐間さん....もう耳がタコなんですけどー....」

「それにっ! 仕事以外のときはっ! べつに敬語でなくたっていいのよ....私のことも『シャロ』....でいいんだし....////」

「あ〜らー! シャロちゃん三日目にしてやっとデレてきたのね〜!」

「....ち! ちがうわよっ!! チヤったら! もう..../////////!!」

 

リっあん達はリっあん達で進展があったのか? こういう別れの惜しみかたもあるんだねー....!

 

「はーい! 紬さん! これ、わたしが練り上げた羊羹! にこれも!」

「わー! ありがとうございますうー!!」

「んー? ムギちゃん? その冊子はー??」

「これー? これねー、『甘兎庵』のお品書きなのー!」

「でコレがね〜、その初心者用の解説書! これをよく読んでウチのメニューを研究して頂戴ね〜!」

「はい〜! 歌詞の参考にさせて頂きますー!! 「うふふ〜〜!!!」」

 

ムギムギちゃん達はあいも変わらずあのノリのままだった....こちらのムギちゃんが受けとったのは和菓子と? ああ、あの古典の教科書みたいなメニュー表と参考書ね....あれを歌詞にして歌うの? なんか百人一首の歌会みたいになるかもしれないけど....ウムム。

 

「ではっ! ミオ隊員! 三日の勤務、御苦労だった!!」

「はいいっ!! リゼ教官どのっ!! 教官どのの教えとこの拳銃は!

必ずや部活動と演奏に活かしますうっ!!」

「いい心掛けだ! でも拳銃だけで本当にいいのか? 遠慮するな! この『G36KA2!』も持って行っても....!」

「....そそそそそソレはっ!! 今のジブンには荷が重すぎますうっ!!」

「....リゼさん、その機関銃をケースに入れて下さい。今のご時世、テロリストと間違えられますよ」

「....なにいテロリストっ!?! このワタシがこの銃でハチの巣! にしてくれるうっ!!!

《ガシャっ!!》」

「....ヒヤアっ!!」

「リゼさんっ!!」

「!....あ? あはは....」

 

コッチの『ダブルツインテール』の別れ方はー....ああミオどの教官殿に染まっちゃって....でも

少しは恐がりを克服したのかなー??

 

「....じゃあ、ユイちゃんっ! ハイこれ....今日一日だけだからねっ!!」

「....はい??」

「....ちょっとココアさん?」

 

そしてこのオレの前では....さっき逢ったばかりのココアさんがナゼか涙目でオレにチノちゃんを

押し付けてきた....ナニ?? 持って帰っちゃっていいの???

 

「....ちちちちちチガうの〜〜っ!! すこしだけ! わたしの『カワイイ妹!』を貸して

あげるのーーーっ!!」

「....ココアさん、私はココアさんから貸し借りされる様な妹になった憶えなんてありません。

でも、どうしても、というなら....《....ギュっ!....》」

「....へ? チノちゃんっ??」

 

....チノちゃんがオレに抱きついてきた....まあ....確かに、妹みたいだな....と思えば妹みたいだし....

でも憂とは違って頭がオラの胸のあたりに押しつけているし....て、ことは....

 

「....ん? ユイさん、これは....?」

「....いいいいイヤ? ナニ??」

 

....しまった! オイラのおムネはパッド入り!! 感触だってホンモノとは違うはず!! おい!

いままで女子たちに抱きつかれてきても身長が同じぐらいか高い子にしかされて無かったし!!

ここにきてオレの正体がバレてしまうというのかー!!?? わああ〜〜〜!!「ユイさん」

 

「....はっ! ハイ!!!」

「....ユイさんは....」

「....! ナンデショウ....!!」

「《....フっ!》お仲間ですねっ....♡《フフフんっ!!!》」

 

....そう言ってチノちゃんはワタシを見つめて笑顔でグっ! と親指を立ててくれましたとさ....

フウ〜〜〜....! 危なかったあ〜!!『FL△T!』おなかま! でよかった〜〜!!!

 

「チーノちゃん? お仲間ってな〜に??」

「ココアさんには関係ありません。私とユイさんだけの秘密です」

「《ガーーンっ!!!》....わたし! やっぱりイラナいコだ〜〜〜っ!! うわ〜〜〜ん!!!」

「おい! どうしたココアー!!」

「あらあら! またチノちゃんに勘当されちゃったのー??」

「チョっ! ココア! いいかげんにしなさいよー!!」

「....え、え〜とお....あははははあ〜〜〜....」

「ユイ....また気の抜けた笑い方を....」

「おっ! なんだー? 痴話げんかかあー!! ウリウリっ!!」

「うわあ! こんなに惜しまれちゃうなんて! ユイちゃんにんきもの〜!!」

「もう....////しょうがないユイさんとココアさんですね....!////」

 

こうして時はすぎ、我われ『軽音部!』四人組は列車に乗ってこの街を後にした。二泊三日の短いバイトだったけど楽しかったー!! これで少しはギター購入の足しになったし、部活動も本格的になってくる。あ、でも姉ちゃんと憂のおみやげ忘れてきちゃった....とくに姉ちゃんは連休中俺と離れることにそうとうゴネてたんだし、ああ、どうしたもんか....乗り換えの駅でそこの名物でも買って帰ろうかな....

 

 

 

「....ほんとうにこのお金、使っちゃっていいの?」

「ああ! そのためのお金だからな」

「そおだぞーユイ! そしてその金を全部使っちまった以上! ....お前のカラダはわたしらの好きかってにさせてもらうことになるぞ〜!!」

「....ヒイイっ!!」

「....ってナンでミオが悲鳴をあげるのさー!!」

「....ばかリツ! ユイをおどすな〜!!《ポカポカっ!!》」

「ハイハイわかったわかった!!」

「うふふ! こうしてみんなで学校帰りも久しぶりね〜!」

「ウン! ここだっけ! はいってみよーっ!」

「「「お〜〜っ!!!」」」

 

連休が明けて久しぶりの帰り道、軽音部のみんなで前にギターを見てまわったあの楽器屋による

ことになった。さっそくこのアルバイトの給金でわたしのギターを買うことになったんだけど....

なんかわるいな....

 

「でもいいんじゃないかしら〜? 部の備品、ということにしておけば!」

「そうだそうだ! ついでにユイ! ....お前も生ケル我が部の備品にへと....!」

「....ゥキャ〜〜っ!!!《ボカボカボカっ!!!》」

「....おーいミオー....恐がりにしちゃホラー映画のシチュエーションよく憶えているよなー....」

「お前が無理やり見せるからだっ!!」

「アタシもアレ駄目....」

 

....オレもああゆうのコワいんだよなー....でもこの高校に入ってから妙な事が続いているのも

確かだけど。みんなもそうなのかな??

 

「このギターでいいかな?」

「『ストラト』だな。いい選択だぞ! ユイ!」

「よーしこれで決まったーっ!! 予算もピッタリだしー!」

「でもユイちゃん、ほんとうにこのギターでいいの?」

「うん....結局このギターの値段まで届かなかったし」

 

予算で買えるギターを手にしながらも、みんなの視線はあの『ギブソン・レスポール』に向かっている。わたしだけじゃない、みんなこの赤みを帯びた丸っこく人懐っこいギターになんか愛着を持ってるみたいなんだ。でもお金がなー....

 

「わたし、ちょっとレジに掛け合ってくるから〜! 待っててみんな!」

「ん? ムギー?」

「どおしちゃったのかなー? ムギちゃん」

「ああ?」

 

ムギちゃんがひとり、レジに向かって小走りをはじめた。かけ合うって? まさか値切るってこと??

 

「....どうしても駄目なのー?」

「....はあ、たとえ紬お嬢様でも....これは委託販売のビンテージ品なので、委託者の許可が

下りませんと....こちらで勝手に値を下げることは....すいませんっ!!」

「いえいえ! 無理言ってごめんなさいねー! わたしのワガママですから〜!」

 

なんかレジでこんな会話が聞こえてたけど....お嬢様? この店でも結構顔の効く凄い子だったの

かなー....でも本当はこんなことムギちゃんに求めてちゃいけないんだし。

 

「いいよ! ムギちゃんありがとう! わたし、これ買うから! 早くみんなで練習しよっ! ね?」

「うん! ユイちゃん! そうしよう! 明日から部室で練習ね〜!」

 

「・・・・ ユイさん....? 失礼ですが、皆さんはこの近くの高校の、

『軽音部』の方々でしょうか?」

 

「あ? はい、わたしも一応軽音部ですけど....?」

「お嬢様もですか! では、部長はたいなか....」

「へ?? あ、ハイハーイ! わ、た、し! が部長の『田井中 律!』でーす!!」

「....はい! わかりました! 少々お時間をいただけますか? 依頼主に確認しますから!」

「え? あ、ハーイ! お願いします〜! ・・・・ どおしちゃったんだろ? んー??」

「「「んー???」」」

 

えーとなにがおこったの? 店員さんがあわてて奥の事務室みたいなところへ駆けこんでいったし....この店でも顔の効くムギちゃんまで『???』な顔をさせているこの顛末、いったいどうなるんだろう?

 

 

 

 

 

 

 



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