ラブオーズ!「Anything goes!『旅はまだ途中』」 (ゆっくりシップ)
しおりを挟む

0話 変身と怪物と覚悟



なに書けばいいか分からないけどとりあえず、
ラブオーズ、はーじまーるよー!(今回はすっごく短いし本編と言っていいのかすら怪しい)


ようつべかなんかでオーズ1話を視聴してからだと分かりやすいかも


「ここで全員死ぬか、それともこいつを倒して全員生き残るか。」

「選ぶのはお前だ」

 

 変な腕が俺に問い掛ける。

 恐らく俺1人なら目の前いてしかも怪我をして動けない穂乃果先輩達を囮にするなりして逃げ切れる。

 そして素手で殴った所で先程銃弾すら弾いたあの身体にダメージが入るとは考えにくい。

 本来は1人で逃げるのが正解なのだろう。

 でも......

 

「分かった、やるよ」

 

 ここで見捨てるなんて選択肢は元より選ぶ気はない。

 

「こいつ......馬鹿だな。それもとびっきりの」

 

「なっ! 何を言っているんですか貴方は!」

 

 止めようとする海未先輩の手を振りほどいて俺は前に出た。

 もう覚悟は決めた、震える足を必死に誤魔化しながら前方の緑色の化け物と対峙する。

 

「お前、名前は?」

 

 いつの間にか隣まで来ていた腕だけの化け物が聞いてくる。

 

「俺の名前は繋音、近江繋音だ。お前は?」

 

「ふん、俺の名はアンク......繋音、俺の賭けに乗る気はあるか?」

 

「賭け?」

 

「あぁ。勝てばこいつを倒せる力が手に入るが負ければ......お前は即座に『死ぬ』」

 

 そう言うと何処からか長方形の細長い石板を取り出すアンク。

 そして俺の腰に石板を当てると、

 表面が剥がれ落ち石板がその真の姿を顕にする。

 

「これは......」

 

「こいつも使え」

 

 渡されたのは先程俺が拾った赤いメダルとそれとは別に黄色と緑色のメダル。

 

「そのメダルをそこにはめろ。力が手に入る。だが......」

 

「死ぬかもしれないんだろ? 分かってるって」

 

 躊躇いなくメダルを言われた通りに石板だったものにはめていく。

 

「お前、怖くないのか?」

 

「怖いさ......でも仲間は助け合うものだろ」

 

「仲間?」

 

「あぁそうさ。穂乃果先輩や小鳥先輩、海未先輩達もお前も、今日1日の長い付き合い、俺にとっては大事な仲間だからな。それに繋がったこの縁を......離すわけにはいかない!」

 

「......仲間」

 

「チッ、御託はいい! 早く変身しろ!」

 

 腰に巻かれた石板だったものーー後に聞いた名前だがオーズドライバーを斜めに倒し、ドライバーにはまったメダルをベルトの横にあった円盤ーーオースキャナーで読み込むようにスライドさせていく。

 何故か身体が自然に動いた。まるで昔から知っていたかのように。

 

「......変身!」

 

 

『タカ! トラ! バッタ!』

『タトバ! タトバタトバ!』

 

 

 自分の姿が一瞬で変わっていく。

 薄いベージュだった肌色の面影はどこにも無く、赤、黄色、緑の3色をベースにした姿に文字通り『変身』していた。

 

 

「これが......俺!? いやいや鷹、虎、バッタってどうなってんの!?」

 

「そいつの名は『オーズ』。どれ程の力かは......戦ってみれば分かる」

 

 

 少し困惑したけれど、力が手に入るというのは本当らしい。

 身体が物凄く軽い。

 

「これなら......いける気がする!」

 

 

 -----

 

 ここから始まるのは、少年ーー近江繋音と少女達とメダルの怪物が織り成す物語。

 歌で誰かを笑顔にする者達とその笑顔を守る為に戦う者のちょっとした怪奇譚。

 

 

 

 

 

 




近いうちに設定も投稿します


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1話 『日常と修羅場と陰』

1話です、誰が何と言おうとラブライダーなのに戦闘も変身もしないけど1話です。


これは1人の少年が運命という名の本編へと向かう数日前の出来事である。

別に全く筆が進まなくて最初の投稿から一ヶ月以上経ってしまったからお茶を濁しとこうとかそんなやましい気持ちは一切無い。

やましい気持ちは無いのだ......!

 

まぁ要するにーー

初回は主要キャラの説明回である。

 

-----

 

 

「ほら姉ちゃん起きて!練習遅れるぞ?」

「むぅ......おぶって?」

 

ここは虹ヶ咲学園の保健室、時間帯はちょうど放課後。

そして先程から保健室の質素なベッドで寝惚けているのは皆様ご存知虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーである『近江彼方』。

そして彼方を揺さぶり、起こそうとしているのが今作の主人公にして彼方の弟。

 

『近江繋音(けいね)』である。

 

「そろそろライブだろ?しずく達も頑張ってたし」

「......よし、彼方ちゃんちょっと本気だす...!」

 

かっと目を見開いた姉に唖然としていると、視界には既に姉の姿は無く、薄い毛布がふわりと宙を舞っていた。

 

「はぁ......本気だしたらこんなに速いなら毎日本気だせばいいのに」

『お前も急げよ、マネージャーさん?』

「はいはい。わかってるよ......『啓太』」

 

空を見上げなにもない所に向け声を発している繋音。

そして彼は姉のあとを追い開いたままになっている保健室の扉を閉め、部室へと向かうのであった。

 

 

-----

 

場所は変わって時間も過ぎて、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部室。

練習を終えた彼女達が寛いだり談笑したりたまに枕だとかコッペパンとか色々なものが飛んだりしていた。

 

「『賢兎』部長ー!練習場の鍵返してきましたー!」

「むぅ......だから部長とか付けなくていいのに。ありがとうね繋音君、あっそれはあっちに置いといて」

 

そう言って微笑むのは『叶賢兎(けんと)』。

この虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長である。

見た目は短めのツインテールにくりっとした目、そしてパステルカラーを好んだり一人称が私だったり声が高いなどの理由で女と間違われがちだがれっきとした男である。

実際繋音自身や他の面々も初めて会った時は制服が男用でなければ女性だと勘違いしていただろう。

 

「先輩も大変ですよねーこんな面々を纏めたり作詞とかもしてるのに内海とかにもよく手伝いに行ってますし」

 

「あはは、私が好きでしてるからね~楽しいよ。それにね、今度また曜ちゃんと遊ぶ約束したんだ~!」

 

「よかっ「へー......」ひぃ!?」

 

後ろから呪詛のようななにかを感じ思わず跳ね上がる繋音。

そこには虚ろな目をしてぶつぶつと呟いている賢兎の幼馴染である『上原歩夢』がこちらと言うより繋音の正面にいる賢兎を凝視していた。

 

「ふーん......曜ちゃんかぁ......あの子も邪魔しちゃうのかなぁ......」

 

「歩夢ちゃん?どうしたのそんな怖い顔して」

 

「(貴方のせいですよパイセン!!)おっおいかすかす......お前なんとかしろよ」

 

「はぁ!?やですよまだ死にたくないですよかすみんは!てかかすかすって言うな繋音!えーと、しっしず子、任せた!」

 

「えぇ!?先輩に任せとくのが一番じゃないかなぁ......?」

 

「私もそれでいいと思うな。寧ろ繋音がやるべき。 璃奈ちゃんボード『うんうん』」

 

「えっ」

 

繋音の体から大量の汗が溢れ出てくる。

先程撤退した地獄に自らの足で赴けと言っているのだ彼女は。

もしかしたらこの中で1番Sなのは璃奈かもしれない。

 

「鬼だ......璃奈が鬼だ......」

                  

「あれ?そういえば彼方さん達は?」

 

「そっそうだ!せつ菜先輩達なら!」

 

「愛さん達なら練習終わったあと皆でケーキ食べに行ったよ?」

 

「えっ私初めて聞きましたけど......」

「えっ俺初めて聞いたんだけど......」

 

「あれ?しず子もあの時一緒にいたような......繋音は知らなくて当たり前ですよ更衣室で話してたんだから知ってたら逆に引く」

 

救いはないらしい。色々と。

スマホを確認すると確かに姉ちゃんからLI○Eが届いていた。

了解とだけ返信しておく。

 

「あ!そういえばあの時は演技の練習の事をずっと考えてて......」

 

「成程、だからしずくは知らなかったのか。でもなんでかすみんと璃奈は行かなかったんだ?」

 

「私はこの後少し用事があるから断ったんだけどかすみちゃんは?」

 

「ヴェ!?べっ別に繋音がぼっちだと可哀想だなとかしず子と二人きりになったらギャルゲ展開になりそうだなとか思ってませんけど?かすみんも用事あるんですよこの後!多分......

 

「おっおう......なんでキレ気味なのかわかんないけど」

 

「......っ!!りな子ぉぉぉ!!」

 

「よしよし、馬鹿で鈍感な繋音が全部悪いから。 璃奈ちゃんボード『やれやれ』」

 

「完全に先輩と歩夢さんの事忘れてますね......あと私も」

 

「歩夢先輩をどうやって止めるかって話だったなそう言えば......」

 

「ぐすっ......繋音にキズモノにされた......これは特盛パフェを奢ってもらうしか......よよよ」

 

わざとらしくよよよと言いながら流れてもいない涙を拭うフリをするかすみ。

 

「まぁ......週末はライブだしな。肥ってもいいならそれくらい奢ってやるよ」

 

別に懐は寒くないしバイトしてる癖に金の使い道も特にない。

マネージャーなんだしこれでかすみの英気を養えるなら安いものだ。

 

「ほんとちょろいです......ってなんか思ってたリアクションと違う気がしますケド。かすみんはアイドルの中のアイドルだから肥らないんです!」

 

「はいはい、璃奈達はどうする?別に3人くらいなら問題ないけど」

 

「なら私もご一緒してもいいですか?」

 

「私はさっきも言ったけど用事があるから。3人で行ってらっしゃ~い。 璃奈ちゃんボード『にこにこ』」

 

「そっか。んじゃまた今度な。よし、それじゃあ『あちら』の邪魔したらあれだしさっさと退散するとしますかー」

 

そそくさと荷物を纏め部屋から出る4人。

部屋の中ではいまだに歩夢先輩の重い声と裏腹になにもわかってない賢兎先輩が頭の上に『?』マークを浮かべているが気にしない。

心の中で曜さんに黙祷を捧げると俺達は町へと歩きだした。

 

-----

 

「あれ?」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、なんか誰かに見られてたような......」

 

「繋音をストーキングする奴とかいませんよww」

 

「まぁそうだよな......」

 

何気ないいつも通りの日常にほんの少し陰る暗い欲の渦。

そしてそれが彼らの運命を少しずつ狂わせていく。

繋音が振り向いた道。その横にひっそりと在る路地裏で嗤う少女。

紫色の眼と髪の少女の足元に転がるのは銀色の小さなメダル達。

 

「ようやく見つけた♪待っててねお兄ちゃん♪」

 

繋がりは決して消えない。

例えそれが何百年経とうとそれを覚えているものがいる限り。

 

 

それが幸となるかは別だが。




1話なんです。軽く失踪してたけどこれが第1話なんです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 メダルと全力疾走と謎の腕

悪いのは私だ、なので私は謝ろう。
いやほんとごめんなさいサボタージュしてました


 

「......なぁ『』、お前の願いってなんだ?」

 

荒廃しきった世界が段々と形を崩していく。

崩壊が進む世界の中で俺は誰かに話しかけていた。

 

「あぁ......そうだな......俺は『人間』になりたい。お前らみたいに自分なりに思う存分に生きて、世界を味わい尽くせる命が欲しい。それが俺の......今の願いだ」

 

「そっか......叶うといいな、その夢」

 

訳のわからない会話。なのにどこか安心する感覚。

その正体に気がつく前に、俺の見ている世界は完全にーー

 

 

壊れた

 

 

 

 

 

 

 

......音!

 

「......ん?」

 

 

誰かが俺を呼んでいる。

 

 

「繋音!」

 

「うわっ!?」

 

 

聞き覚えのある声が耳元で反響する。

その音量に驚き意識が引き上げられる。

微睡みから徐々に意識が覚醒していき瞼の重りが消えていき、瞳に刺さる太陽の光に若干の鬱陶しさを覚えながらもゆっくりと身体を起こす。

すると視界のど真ん中にパステルイエローが飛び込んできた。

 

 

「なんだかすかすか......おどかすなよ」

 

「かすかすって言うのいい加減やめませんかね???ってそれは置いておいて、早くしないとライブ始まりますよ!」

 

 

急いでいる中須に手を引かれ、ようやく回りだした脳から今の状況を引っ張り出す。

 

あ、そうだ今日ライブだった。

 

「あのμ'sとAqoursとの合同ライブなんですから「やらかしたぁぁぁ!!」今度はなんですか!?」

 

「やべぇよかすかす!皆の飲み物とか準備するの忘れてた!ちょっと急いで買ってくるわ!」

 

 

それだけ言って全速力で最寄りのコンビニまで走り出す。

中須?知らんな。

 

 

「......もうセンパイが準備終わらせたって言おうとしたのに」

 

 

 

 

 

 

「はぁ......はぁ......どこだよコンビニ......」

『ここら一帯にはお前が走ったのと逆方向にしか無いな』

『あたしが変わってそっちまで走ろうか?』

 

「いいよそこの自販機で買うから......」

 

 

酸素不足でとにかく楽に早く飲み物を手にいれたかった俺は目の前の自販機でペットボトルを人数分買おうと手を伸ばす。

 

 

「......あれ?なんだこれお金入んないぞ?」

 

 

何度100円玉を入れても自販機はうんともすんとも言わない。

 

 

『......その下にあるメダルを使うんじゃないか?』

 

 

そう言われ自販機の下を覗くと赤いメダルが1枚、落ちていた。

 

 

「外国のお金か?まぁいいやダメ元で......」

 

 

その時、風かなにかで手からメダルがこぼれ落ちてしまった。

 

 

『......ついてないな。しょうがない、1度皆の所に戻ろーー』

 

 

身体を急激に悪寒が襲う。

心臓は跳び跳ね汗が噴き出す。

直感とは違うナニカが叫んでいる。

「急げ 守れ」と。

気がつけば俺はさっきまで息切れしていたのも忘れ無我夢中で先程走ってきた道を引き返し会場まで向かっていた。

 

故に繋音は気がつかなかった。己のズボンのポケットに落としたはずのメダルが残っていたこと、そしてそれを追いかける『手』の存在を。

 

 

 

 

「......なんでしょうかあれ?」

 

 

ライブ会場がやけにざわついている事に気がついたしずくが訝しげにその方向を指差す。

他の面々がその方に視界を移動させた時丁度、それは現れた。

 

まるで全身に包帯を巻いたミイラのような外見の怪物が観客を次々と襲い始めたのだ。

 

 

「なに......あれ」

 

 

その怪物は人々を襲い金目の物、主に指輪やブレスレットなどを奪いそれを捕食していく。

すると姿がガラリと変わり、まるでカマキリのような見た目に変貌した。

 

 

「俺の『コアメダル』を探せ」

 

「御意」

 

 

姿を変えた怪物は、もう1人の怪物からなにかを申し付けられた後、先程まで襲っていたはずの人間や金品には目もくれずどこかへと歩きだしたのだった。

 

 

 

 

 




変身を先伸ばしにしていくスタイル。
今年中に変身......できたらいいね(((
しかも執筆サボってたせいで書き方を完全に忘れてるっていう......
リハビリしなきゃ(使命感)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話 啓太と死と空とぶ腕


命削って書いたやつですお納めください。
命を削っている様はTwitterで私のアカウントを見ていただければわかるかと......


「な、なんだよ......これ......」

 

つい十数分前まで確かに辺り一面に溢れていた筈の沢山の笑顔、日常は呆気なく崩れ落ちていった。

 

生きた人間の気配は最早なく、辺り一面に在るのは人だった『ナニカ』。

灰色のコンクリートは赤黒く染まっており肉片が気味の悪さを更に際立たせている。地獄という表現ですら生温い光景に、繋音はただただ立ち尽くしていた。

 

『おい...!しっかりしろ繋音!あーしょうがない、体借りるぞ!』

 

一瞬繋音の体が光に包まれ、その光が治まるとそこには繋音の姿はなく、別の少年が立っていた。

 

「お前は少し休んどけ。とにかく今は歩夢さん達が無事か確かめないといけないからな」

 

『あ、あぁ......悪いな『啓太(・・)』』

 

「あんなの見りゃ普通誰だってああなるさ。さて、急ぐか......っと!」

 

一面に散らばる死体には目もくれず、啓太と呼ばれた少年は真っ直ぐに走り出した。

 

 

 

「ここだと思うんだが......誰かいますかー!」

 

啓太が向かった先はライブ会場の待機室だった。

 

『確かに、ここなら外よりは安全だし姉ちゃん達やμ'sかAqoursの皆もいるかもしれないな。啓太やっぱ頭いいなお前!』

 

「はいはいどうも」

 

「だ、誰にゃ!?」

 

「この声は確か......μ'sの凛さんだったか。虹ヶ先スクールアイドル同好会の者なんですが!開けてもらっていいですか!」

 

中から何人かの話し声がしたあと、鍵が開く音がした。

 

「失礼しまー「穂乃果ちゃん達を見なかったかにゃ!!?」うわ!?」

 

 

-----

 

「なるほど......穂乃果先輩、海未先輩、ことり先輩達と途中ではぐれてそれを彼方さんが探しに行ったと......」

 

「そうなんです......急に変な怪物が観客の人達を襲いだして......」

 

『はぁ!?ちょ、姉ちゃんが!?』

『落ち着け繋音』

 

「わかりました、俺が探してきます」

 

「大丈夫なの......?外は酷い事になってると思うけれど......」

 

果南が目を横に反らす。

何人かは部屋の隅に縮こまっておりそれを歩夢や絵里、ダイヤ達が慰めている。そうでなくても皆頬に泣いた痕や怪我がないのにも関わらず服が血で濡れている。あの惨状から必死に逃げてきたのだろう。

 

「まぁ任せてください、すぐに戻りますんで」

 

「うん......」

 

「あ、あの......穂乃果ちゃん達と彼方さんの事......お願いします!」

 

声を搾る様に花陽が言う。

啓太は頷くと、来た道を戻りだした。

 

 

-----

 

 

「ここだよな確か......」

 

『は?なに言ってんだ啓太......っていたぁぁぁ!!』

 

 

先程と同じ光に啓太が包まれ、光が治まると今度は繋音に戻っていた。

繋音はそのまま彼方に向かい走り出す。

 

だが。

 

「よかった、早く皆の方に戻......」

 

刹那、彼方の身体がコンクリートへと崩れ落ちる。

 

 

「は?」

 

 

目の前に伏した彼方から赤い液体が流れてくる。

繋音がそれが血だと理解するまで、そう秒数はいらない。

突然の事に脳の処理が追い付かず、繋音は機械人形のように前方に首をむけた。

 

視線を向けた先には黄緑色の人型の怪物が立っていた。

そしてその足元に、穂乃果先輩達が恐怖のあまりかへたりと座り込んでしまっている。

 

 

「あっ......あぁ......ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

まずは恐怖。この怪物が先程の惨劇の犯人だと直感的に理解したから。

そして次に目前の怪物への殺意。

ただただ純粋に許せないという強い意思。

繋音はこの衝動に身を任せ怪物に殴りかかった。

 

 

「......邪魔だ」

 

「ぐっ......!」

 

 

怪物が軽く腕をはらっただけで繋音の身体は数10メートル吹き飛ばされる。

 

 

『落ち着け繋音!彼方さんはまだ死んでない!』

『くそっ、もう少しなはずなんだが......』

 

 

啓太達の声で繋音に冷静さが少しだけ戻っていく。

確かに彼方の出血は中々に酷いが息はあり既に血は止まりつつある。

これならすぐに病院に連れていけば助かる可能性は高いだろう。

穂乃果先輩達だってそうだ、彼女達に関しては怪我も少ないしそれにまだ目が諦めていない。

 

 

「けど......!俺だけじゃ皆を助けられない......」

 

 

そう、どれだけ諦めない意思があったとしてもこの状況が絶望的な事に代わりはない。

怪物の攻撃は全て即死レベルなのにこちらからは傷ひとつすらつけられないのだから。

それこそ圧倒的な力でも手に入らない限り。

 

 

『それでもいい!とにかく時間を稼げ!あと少しのはずなんだ......!』

 

「それしか今はないか......!」

 

 

辺りを見渡すと、何故か地面に警察関連の人間が落としたのか拳銃が落ちていたのでそれを拾い上げる。

 

 

「これで......どうだ!」

 

 

ドラマの見よう見まねで照準を合わせ、怪物めがけ発砲する。

 

 

「ふん......その程度で効くとでも思っているのか」

 

「思っちゃいないさ......でもこれで時間は稼げた......だろ?」

 

 

確かに1ミリほど効いてくれる事を期待したが目的はそこではない。

 

 

「はぁ...はぁ......大丈夫ですかことり!」

 

「うん......なんとか」

 

「な?時間稼ぎも捨てたもんじゃないだろ?」

 

 

これで最悪の事態は免れた。あとは彼方を連れ逃げるだけなのだが

 

 

「まぁそれが一番難しいよな......」

 

 

ただでさえ怪物の注意をこちらに引き付け更に飛ばしてくる衝撃波を避けなければならないのだ。

 

 

「危ない!」

 

「くそっ避けれない......!」

 

全方位から襲う衝撃波に繋音が死を覚悟した時だった。

なにかが衝撃波を全て弾き返したのだ。

 

 

『ようやく来たか......』

 

「はぁ?ど、どういう事だよ」

 

「おいそこのお前!」

 

 

誰もいないところから声が聞こえる。

 

 

「おい!聞いてんのか!」

 

「うわっ腕!?」

 

 

そこにいたのはまさに異形と呼ぶに相応しい、羽の生えた『腕』だった。

 

 

「俺のメダル返せ!」

 

「は?」

 

 





これでようやく0話に繋がります。
なので次はいきなり戦闘描写からになる予定......です、多分。
あと作中だいぶ矛盾だったりおかしな台詞があったと思いますが全て『意図的』にやっております。誤字?知らんな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 カマキリと姉と缶

うわぁぁぁんちゅかれたよぉぉぉ!!

はぁ、はぁ......どうも、ゆっくりシップです。
戦闘描写の難しさと外出自粛とか色々あってストレスを爆発させながら書きました。
今回が人生初の戦闘描写......ごめんなさい嘘ついた。
正確には人生2度目こ戦闘描写なので拙いところやおかしい点があったら比較的『マイルドな言葉』で教えてくれると嬉しいです


「ば、馬鹿な......!」

 

「さぁ、期待通りにやれよ」

 

 

繋音の姿が異形のモノへと変貌した。

その名は仮面ライダーオーズ、(無限)の力を振るいグリードを封印する者。

 

『ここからはお前の独壇場だ。暴れてこい、繋音!』

「そんな事言われてもおなしゃ俺戦った事とかないって!」

 

「オーズ......■●▩に成り果てる前に葬ってやる...!」

 

カマキリヤミーが両腕と一体化した鋭く尖った鎌を振りかぶり繋音の身体を切り裂こうとするのを咄嗟に両腕で防ぐ。

 

「ぐっ...!これでも喰らえ!」

 

衝撃に微かに声が掠れるが肉薄してきたカマキリヤミーに対して腕を振り上げる。すると、胸のオーラングサークルの虎の紋章が輝き、オーズの両腕のトラクローが展開しカマキリヤミーの胸を切り裂きその勢いで大きく吹き飛ばす。

 

「おぉ...!なんか力が身体にみなぎってくる!」

 

銀色のメダルを切り裂かれた胸部から出しながら立ち上がるカマキリヤミーに近づく。再びオーラングサークルの今度はバッタの紋章が光ったかと思うと足元に緑色のオーラが現れそれが波のように広がったのと同時に勢いよく飛び上がり5発ほどの跳び蹴りを浴びせていく。

 

「す、凄い......これが...オーズ...」

『油断するな!』

 

「この...っ!」

 

しかし受け身をとられ仕返しとばかりに胸元を何度も鎌で切り刻まれる。

 

「ぐっ...うわ!」

 

大きく仰け反る繋音の胸元のオーラングサークルが1部分だけ光を失い黒ずんでいく。

 

「えっえぇ...?なんだこれ......」

 

「繋音!真ん中を『こいつ』に変えろ!」

 

アンクが薄緑色の繋音に投げ渡す。

 

「えっわ、わかった!」 

 

トラメダルをドライバーから取り出し、先程受け取ったメダルを代わりに嵌め込み変身した時と同じようにオースキャナーで読み込む。

 

タカ!カマキリ!バッタ!

 

トラの紋章がカマキリに置き換わり更にオーズの姿が変わる。

トラクローのあった腕は緑色の『カマキリソード』に変化しオーラングサークルもカマキリに変化した。

 

「よし!」

 

「アンク...コアメダルを渡せぇぇ!!」

 

再びカマキリヤミーが鎌を振りかぶり繋音に襲いかかるーーが

 

「それはもう...見切った!」

 

身体を捻らせ斬撃を避けがら空きの背中を踊るように切り裂く。

 

「これで......終わりだ!!ハァァァ...セイッヤー!」

 

オーラングサークルのカマキリの紋章が輝きカマキリソードに力が溜まっていく。

そして高く跳躍し飛びかかりカマキリヤミーを真横に切断する。

 

切り裂かれたカマキリヤミーが爆発し、辺りに先程と同じメダルが散らばる。

 

「メダル...?で出来てたのか今のあいつ...そうだ、姉ちゃん!」

 

繋音は全速力で彼方の元へと走り出した。

 

 

「姉ちゃん!しっかりして!今救急車をーー」

 

繋音の動きが止まる。

そこには、彼方の右腕と同化したアンクがいたのだ。

 

「こいつはちょうどいい身体を見つけた...」

 

閉じていた筈の彼方の瞼が開く。だが瞳の色が普段とは違い赤く染まっていた。

 

「これで少しは...マシに動ける」

 

 

-----

 

「こう...か?」

 

ドライバーを斜めから元に戻す。

すると変身が解け、本来の繋音の姿が現れた。

 

「お前どうして...どうやって姉ちゃんのか...」

 

右腕を掴むがそこにあるのは普通の腕、先程までの赤い翼の生えた禍々しい腕とは似ても似つかない。

 

「フン、この身体は俺が貰った。あの格好じゃ不便だからな」

 

「奪ったって...!それじゃあ姉ちゃんはどうなるんだよ!」

 

繋音がアンクもとい彼方の胸ぐらを掴み問いただす。

 

「どうなってもいいだろ。どうせ死ぬ寸前だったんだ」

 

「そんな......」

『ふむ、どうする?無理矢理にでも奪い返すか?』

『あたしもそれさんせー!』

「いやいやそんな事したら姉ちゃんの身体が!」

 

「おい、さっきから誰と話し...ぐっ...!」

 

「えっちょ、どうした!?」

 

突然アンクが苦しみだす。

するとーー

 

「ふぁぁ......久しぶりだよこんなにぐっすりすやぴしてたのは~」

 

「はぁ!?はぁぁぁぁぁ!!?えっなんで姉ちゃん!?と、取り敢えず身体は無事なの!?」

 

「う~ん...お姉ちゃんにはよくわかんないけどなんとかなったみたいだし、もう1回すやぴするからあと宜しくね~」

 

そう言うとまた目の色が赤に戻る。

 

「ハァ、ハァ......なんなんだコイツ......」

 

「えっと......その......なんかごめん」

 

 

姉の回復力もとい肝の太さに若干引きつつ、肩越しに息をしている姉の姿をしたアンクを見て、繋音はそれしか言う事ができなかった。

 

 

-----

 

「......はい、わかりました」

 

そんな彼らを影から眺める存在が1つ。

『彼女』は肩から下げた鞄からおもむろに缶を大量に取り出すとその1つのプルタブを開ける。

すると、缶だったモノが鷹のようなロボットに変形しそれに合わせ地面に転がった他の缶も変形し鷹の群れが出来上がる。

 

そして鷹達が繋音達の方ーー具体的には地面に散らばったメダル目掛け飛び出したのを確認すると彼女はバイクに乗り、去っていった。

 

 

 

 

 




これ書く為にオーズ見直してたんですけど、カマキリヤミーさんめっちゃいい人やん......


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 タカと意地と姉

半年ぶりっていう事実に戸惑いを隠しきれない系チンパンですどうも。
理由としては新生活が始まって中々書く時間が取れなかったのとネタが浮かばなかったのとサボってたせいです、はい。
待って!石を投げないで!!


 「どうなってんだよこれ!」

 

空に繋音の声が響き渡る。

 

 「なんで......なんで昨日の『アレ』を誰も覚えてないんだよ!」

 

 「......ふん」

 

頭を掻き毟っている繋音とそれを鼻で一蹴するアンク。

 

話は1日——もとい前話まで遡る。

 

 

 

————————

 

 

 

繋音がカマキリヤミーを撃破した直後、突如現れたタカのような機械達は地面に散らばった銀色のメダルに群がりそれを咥え飛び去っていく。

 

 「触るなそいつは俺のだ!」

 

彼方——の右腕に取り憑いているアンクがタカ擬きの掴もうとしたメダルを強引に奪い獲ろうとするがメダルの殆どを持ち去られあんなに山積みだったメダルが一瞬で綺麗さっぱり無くなってしまった。

 

 「おい繋音!今のヤツはなんだ」

 

繋音の胸ぐらを掴みアンクが問い詰める。

 

 「俺も知らないよ!それより説明しろよ色々と!」

 

繋音自身も一応機械系統の事は璃奈ちゃんボードを作成した時、手伝いの為に一通り学習し様々な機械に触れたのだが先ほどのような物は見た事がなかった。ましてやあのメダルを持ち去るマシーンなど目が点になるのも是非もないだろう。

 

 「チッ......どうも妙だな......800年封印されてた間に、なにか起こってる」 

 

タカ擬きが飛び去っていった方を睨みながらアンクは呟く。

 

 『おーい、取り敢えずそこら辺の話は1回置いておいて皆のとこ戻った方がよくなーい?』

 

 「そうだ!穂乃果先輩達!」

 

 

 

はっと顔を上げ走り出す繋音、その後ろでアンクは身体の本来の持ち主に語りかけていた。

 

 

 

 「おい女」

 

 

 

 『女じゃなくて彼方って名前があるんだけどな〜。で、どーしたの?』

 

 

 

 「お前、馬鹿だろ。いや......大馬鹿野郎だな」

 

 

 

 『......なんのことかなー?』

 

 

 

少し彼方の声質が低くなったのをアンクは見逃さず更に続ける。

 

 

 「今は俺の身体だ、どんなもんかはよくわかる。いくら完全体じゃないとはいえグリードは並大抵のダメージじゃ傷つきすらしないが......こんな傷、あまり食らいたくはないからな」

 

 「ましてやただの人間なら生きてるのが不思議なくらいだ」

 

 

 『あちゃー......バレちゃった......』

 

 

腹部が服に隠れて繋音達には見えなかったが彼方の身体は見るもおぞましい程ボロボロだった。

 

それでも繋音の前で平静を装ったのは姉としての意地か。

 

 

 『......ねぇアンクちゃん』

 「あ゛!?」

 

 『ちょっとだけでいいから繋音の事見てあげてくれないかな?』

 

アンクは少し考えた後、彼方に向かってこう告げた。

 

 「アイス。アイス3年分寄越せ」

 

 




今回はリハビリも兼ねてかなり短めの前後編形式です。
いつも通りだろって?オッシャルトオリデゴザイマス。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 ビルとアイスとセルメダル

最後に更新したのいつだっけ?と思い情報欄を見た時のあの恐怖を私はきっと忘れない——



「大丈夫だろうか皆......」

 

走りながらアンクの言っていた事を思い出す。

 

「いいか、コアメダルとセルメダル。コアを中心にセルがくっついてるのが俺たち封印されたグリード。お前が倒したのがヤミー、セルメダルだけで出来てるグリードの分身みたいなもんだ」

 

彼の言っていた事はなぜかすっと頭に入ってきた。別に納得したわけではないけど。

それに姉のこともあるし頭の中はパンク寸前だった。

 

「とにかく今はこの状況をなんとかしないとな」

 

息も絶え絶えになりながらもなんとか先程のところまで戻ってきた。

あたりを見回すと、荒らされてはいるが幸いな事に怪我人はいれど死者はいないようだ。

 

「繋音!」

 

不意に背中に誰かが抱きつく感触をおぼえ振り向く。

それはある意味今繋音が最も求めていたものでもあった。

 

「かすm」

「バカっ!!」

「みぞおち!?」

 

かすみの拳が鳩尾に突き刺さる。

知らないとはいえ命がけで戦っていた親友に対しての仕打ちがこれとはあんまりにも程がある。

 

「バカ、ばかばかばかばか!」

 

「痛い、痛いってかすかす!」

 

「うっさいアホ繋音!人がどれだけ心配した思ってるの!」

 

ぽかすかと胸板を叩いてくるかすみだが、その声は確かに上擦っている。

 

 

「......ごめんな」

 

今はただ謝る事しかできなかった。

 

「おい、行くぞ」

 

「は、えっ?ちょっと彼方先輩?今はかすみんのターンなんですけど?それに少し変じゃないです?」

 

心底興味がなさそうにしていたアンクが突然右手を掴みどこかへ向かおうとする。

 

「メダルの匂いだ。それもかなりの大物......さっきのやつより稼げそうだな」

 

体が微かに震える。

 

「めだる?いやそんな事言ってる場合じゃないですよ早く逃げないとまた!」

 

「......いや、ここはもう安全だよ、もうあいつはこない」

 

かすみの頭をわしゃわしゃと撫でながら宥めるように言う。

なにか言いたげな目つきでこちらを睨むがそんな事にかまけている余裕は残念ながらないのだ。

ふわふわとした髪を堪能しつつ思案する。

彼女には大丈夫と言いはしたが正直なところここが安全とは言い切れないのだ。

ここを襲ったやつ——間違いなく先ほど倒したヤミーの事だろう。

ならばもうここを襲われる事はない、と言いたいところなのだがアンクの言葉が本当だとするとそうとも限らない。

アンクのメダルに対する執着がかなりのものであるという事は先ほどよく理解した、彼?がコアメダルとセルメダルに関する情報で嘘をつくとは思えない。

かなりの大物、そう言っていたがあのヤミーよりも強いのだろうか。

あの化け物どもと戦えるのはオーズ、つまり俺だけ。

mそして俺にそんな相手を止める事ができるのか。

 

「ちょっと!撫ですぎ!」

 

「ん、あぁごめん」

 

慌てて手を止めるが何故かかすみからは鋭い視線で睨まれた、女の子って難しい。

だが、心の整理はできた。

 

「皆は無事なんだよな?」

 

「う、うんもう避難してるよだから繋音達も!」

 

「——それはできない」

 

既にアンクの姿はなかった、もうヤミーのところに向かっているのだろう。

遠くでビルが倒壊する音がした。

それはもう迷っている時間はないと確かに俺に告げていた。

 

「行かなきゃいけないんだ、助けられる命があって俺にはそれだけの力があるんだから」

 

かすみははっとした表情を浮かべるがすぐに厳しい表情に変わる。

そしてこう言った。

 

「......帰ってこなかったら許さないから」

 

「——了解!」

 

それだけ言って俺たちはお互いの行くべき方向へと走りだした。

会場にはもう誰の姿もなかった。

 

_____

 

「はぁ、はぁ、悪い遅くなった」

 

「ふん......あれを見てみろ、誰の欲を元にしたのかは知らないがこのままいけばこいつはたんまり稼げそうだな」

 

アンクの異形の手が示す方へ視線をずらす。

そこにいたヤミーは先程のやつとは比べものにならないほどの巨体だった。先のビルを倒壊させた犯人はこのヤミーだという事ははっきりとわかった。

高層ビルを喰らっていくその姿は怪獣と呼ぶにふさわしい。

こんなのを放って置いたらどうなるかは火を見るより明らかだった。

 

「ほら」

 

アンクへと手を伸ばす。

 

「あ?なんだよ」

 

「メダルだよ、メダルがなきゃ変身できないだろ!」

 

前回の戦闘が終わったあと、変身が解けた際にいつの間にかメダルを抜き取られていたので今の状況では俺1人じゃ変身できないのだ。

 

「まぁ待て、あいつはまだ成長しきっていない」

 

「はぁ?」

 

「いいか繋音、ヤミーってのはな棒のないこいつみたいなもんだ」

 

いつの間にか咥えていたアイスキャンデーを指差す。

 

「こいつぁいい、あーアイス、だとか言うんだか」

 

こめかみ辺りを押さえながらアンクは続ける。

 

「棒が俺たちグリードの核になるコアメダル、それでこのアイスがセルメダル、体になるってわけだ」

 

「それはなんとなく分かったけどそれとこれがどう関係あるんだよ」

 

確かにグリードとヤミーの関係性については納得のいくような説明ではあったがあのヤミーを倒さない理由にはならなかった。

 

「アイスは多い方が旨いだろ?そしてヤミーは宿主の欲を満たす度セルメダルを蓄えていくんだ、こいつはまだデカくなる。その後倒した方が一気に稼げるんだよだからもう少し待て」

 

「んなこと言ってる場合じゃないだろ!誰かが死ぬかもしれないんだぞ!?」

 

「あ゛?」

 

アンクに対し捲し立てるが普段の姉からは想像もできないような鋭い目で睨み付けられ一瞬言葉が詰まる。

 

「勘違いすんな、お前の役目はメダル集めだ」

「とにかくセルメダルがいるんだよ」

 

目の前の高層ビルが1つ、また1つと倒壊していく。

 

「タダで助かる命なんて無いんだよ、黙って俺の言う通りに動け」

 

「お前なぁ......!」

 

こんな事をしている場合ではないというのに。

今この瞬間にも誰かの命が消えていくのに。

その人たちにも大切な人がいて、そして何よりも明日が来るはずで。

でもそれがこんな事で壊れてしまうなんて。

そんなのを黙って見ているなんて俺には——

 

『なにをすべきか......分かってるだろ?』

 

「——あぁ」

 

脳裏に声が響く。

そうだ、やる事なんてとっくに決まっていた。

 

「俺は後悔したくない」

 

固く拳を握りしめ走り出す。

行先は次にあのヤミーが標的として選んだビル。

 

「おい!」

 

アンクの静止を振り切り再び全速力で駆け出す。

この手で掴める命が、まだそこにはあるのだから。

 

 




今年もあと半分ですが今年最初の更新でした執筆をサボってやるゲームは楽しいですね


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 5~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。