電脳冒険記GRIDMAN (残夏)
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1話

電脳冒険記ウェブダイバーの物語とは関係なく、同姓同名なキャラはあくまで名前が同じなだけです。

結城ケント 15歳
180cm

宝多六花の幼馴染み兼恋人。
両親は海外で仕事をしている為一人暮らしをしている。
中学まで剣道をやっていたが、六花との時間を増やすため高校では帰宅部。
毎朝宝多家で朝食や六花のお弁当を作っている。
六花と放課後デート中に怪獣の襲撃にあい重傷を負うが、グラディオンと一つになる事で一命を取り留めた。



「私もピアス開けよっかなぁ〜」

「お、どうした?あれだけ怖がってたのに」

デートの帰り道で立ち寄った雑貨屋のピアスコーナーで真剣な表情で様々なピアスを選ぶ六花の横に立ち、一体どんなピアスを選ぶのか興味深々で様子を伺う。

「先週の日曜日に見た恋愛映画でオソロのピアス付けてたカップルいたじゃん?、それでいいなぁって思ってさ」

「俺とお揃いのピアスにするって事!?」

「アハハ、はしゃぎすぎだって!」

「ごめん…でも六花とのお揃いが嬉しくてさ…」

「もう…改まって言われると恥ずかしいよ…」

「あの…お客様…お決まりになりましたか?」

『あっ…すいません…』

 

その後俺達の惚気を見せつけられ顔が引きつった店員の気迫に押され、お揃いのピアスとピアッサー諸々を購入してそそくさと店を後にした。

 

「あー…やばい穴開けるの緊張してきたかも…」

「アハハ、大丈夫だよ!全然痛くないから」

夕日が照らす帰路の中、立花を励ます様に手を繋ぐ。お互い少々高くなった体温を感じる。

「ありがと…折角買ったんだし頑張らないとね!」

「うん!ファイトファイト!」

「あ!、そうだ剣人今日家でご飯食べてぎな…よ…」

「六…花?…」

突然立ち止まる六花に一歩遅れで止まり、彼女の目線を追い夕焼けに染った茜色の空を見上げた瞬間言葉を失った。

「ねぇあれなんだろ?」

「ん、なんだろ…鳥か?」

「ねぇケント…あれ…なに?…」

「…」

他の歩行者達も上空のそれに気づき初めざわめくなか、俺は六花の問に答える事は出来なかった。

「ねぇ!ケント!」

上空のそれは徐々に降下し始め、地上に近づくにつれ、巨大で異形なモノだと理解しは始めた。

「怪獣!?…六花逃げるぞ!!」

テレビや映画の中だけの存在である怪獣が上空に現れ、もうすぐ地上に降り立とうとしている。

そんな状況を目の当たりにして頭の中は混乱するのが当たり前だが兎に角今はここから離れる為、行き先など考えず六花と共にひたすら走った。

「ケント!何処に逃げるの!?」

「分からない…分からないけど今は出来るだけ遠くに逃げよう」

まだ現状の深刻さに気づかないでその場に立ち止まる人々を掻き分け出来るだけ離れるが、やがて上空の怪獣が地上に降り立ったのと同時に、かなりの距離が離れていたが砂埃と衝撃波が襲い六花と繋ぐ手を離してしまった。

「きゃぁ!?ケント!!」

「グァッ!?…六花ッ!!」

衝撃波に飲まれ六花に手を伸ばすが目の前が暗転し、意識を失った。

 

 

「クッ…痛って…ハッ…街が…」

目を覚ますと街は瓦礫の海と化した変わり果てていた。

「そうだ…六花!!どこだ!六花ッー!!」

痛みが激しい左腕を抑え、瓦礫の海から六花を探し始める。

「六花ッ!!何処だ!!六花ッ」

「クソッ…見つけた!!六花ッ!?…よかった…気を失っているだけだ…このッ…動け…」

自分が倒れていた所から数m離れた場所に下半身を瓦礫に挟まれ気を失っている六花を発見し、急いで瓦礫を退かそうとするがビクともしない。

「ハァハァ…クソ…ダメだ…何か棒状の物があれば…」

(ウェーンッ)

「ハッ!?」

てこの原理をで瓦礫をどかそうと考え丈夫な棒状の物を探し始めると後方から雄叫びを上げ、その時怪獣が自分達のすぐ近くまで接近しているのに気づいた。

「そんな…いつの間に…」

俺達の存在に気がついているのか怪獣は口をあけ、巨大な紅火の球を放った。

「クソ…六花ッー!!」

意識のない六花を庇い、目を閉じる。

 

「大丈夫か?」

「ん、ん?…あれ…生きてる…!?六花!!」

誰かの声が聴こえ恐怖で閉じた目を開くと、六花を抱きしめ瓦礫の街ではなく暖かい光空間に包まれていた。

「無事な様だな」

「なっ!」

再び声が聴こえ辺りを見渡すと、突如目の前に光の巨人が現れた。

「お願いがある」

「お願い?、お前は一体…あの怪獣は何なんだ!?」

「時間がない、私と共に怪獣と戦って欲しい」

「怪獣…街を壊し…六花を傷つけた…お前はアイツを倒せるのか?」

「あぁ、君と一つになればどんな敵にも負けない!」

「分かった…お前の力をよこせ!!」

「叫べ、我が名は…」

「ウェブダイブ!!グラディオン!!」



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2話

「んんッ〜…おはよーケント」

何時も通りの朝。

俺は何時もの様に六花の家でカフェの調理場を借り昼食の弁当と朝食を作り終え、エプロンを外すのとほぼ同時に寝ぼけ眼を擦りながら六花が起きてくる。

「おはよ六花、お母さんは?」

「ん〜起こしたけどまだ寝てる…」

「起きなかったか…仕方ないしまっておくか、朝ごはん出来たばかりだから冷めないうちに食べちゃって」

「はーい、頂きまーす」

カウンター席に座り上品に朝食を食べ始める六花をしばらく見つめ、そのまま自分の左手首に付けられたウェブダイバーの証。グランモバイラーに目を移す。

怪獣が現れ俺が怪獣と戦うヒーロー、ウェブダイバーになって二週間、まだ謎は多いが分かった事も幾つかある。

まずは、怪獣が破壊した物はその怪獣を倒すと次の日には綺麗に元通りになっている。

怪獣の目撃情報も怪獣を倒せば次の日には俺以外誰もその事を覚えていない。

最後は怪獣によって死んだ人間は存在を忘れられ、事故等の別な形でなくなっていることになる。

「本当…馬鹿げてるよな…」

「ん、何か言った?」

「何か飲むって聞いただけさ」

「ん〜…オレンジジュースで」

「分かった」

六花を上手いこと誤魔化し持参したオレンジジュースが入ったボトルを冷蔵庫から取り出し、グラスに注ぐ。

「ありがと、出た!やたら大きいオレンジジュース、ケント本当にそれ好きだよね」

「美味いからいいだろ?コスト〇でしか取り扱ってないから買い貯めしてあんの!」

「まぁ確かに美味しいよね…ふぅ…ご馳走様でした」

「お粗末さま、食器は洗っておくから学校の支度してきな」

「はーい」

六花が部屋に戻り、洗い物を始めると左手首のグランモバイラーにいる彼が口を開いた。

「本当に君と六花は仲がいいんだな?」

「あぁ…謎がもう一個あったわ…」

グランモバイラーのディスプレーに映る西洋の騎士の甲冑を纏った様な見た目のロボグラディオン、怪獣達と同じくらい謎多き存在だ。

「まぁな、幼馴染みで彼女だから…それに」

「君の守りたい存在…か?」

「そうだ、なぁグラディオン…」

「なんだケント?」

「お待たせーケント、学校いける?」

「あぁちょうど終わった所だ、…すまんグラディオンまた後で話す…」

「分かった」

グラディオンとの会話を中断し、高校へ向かった。

 

13日前

 

「叫べ…我が名は…」

 

「ウェブダイブ!!…グラディオン!!」

光の巨人の名を叫ぶと彼の体に吸い込まれ光が弾け、神々しい騎士の風貌のボディーが現れた。

「な…なんだ?…ここは…」

眩い光がはけると、SF映画に出てくる宇宙船のコックピットの様な空間に六花を抱く形で佇んでいた。

「ここは私の中だ」

「グラディオンの?…」

「そうだ、共に戦おう!」

「アイツを…六花を傷つけたアイツを…倒す!」

六花を横たわらせ、目の前で暴れ回る怪獣に向かっていく。

「ケント!グランブレードを使え!一気に決めるんだ!!」

「グランブレード!!」

グラディオンに言われるがまま、叫ぶと自分とグラディオンの手に同じ形をした剣が握られていた。

「いいねぇ剣か、久しぶりの剣道だ!!」

「ブレイクザーンだ!ケント」

「必殺技か?行くぜ!ブレイクザーン!!」

怪獣との間合いを詰めるが炎を吐き抵抗するが、グランブレードで炎ごと怪獣を両断した。

「なんか…ノリと勢いでやっちまったけど…スゲーな…」



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3話

「ん?もうこんな時間か今日はここまで、気を付けて帰るんだぞ」

今日最後の授業が終わり、教師が教室から出ていく。

退屈だった授業が終わり各々帰り支度を始める者や部活へ向かう者がいる中、廊下側の一番後ろの俺の席に向かって来る者が一人。

「なぁすまねぇケント!」

「ん、どうした?」

そして俺の目の前に来るや否や両手を合わせ、頭を下げるのは友人の神谷条だ。

「今日掃除当番変わってくれ!」

「は…なんでだよ?」

「今日バイトの人が風邪で休みで人手が足りないから変りで出てくれないかって店長から連絡あってさ…頼む!!もちろんタダでとは言わないから!」

と言い彼のバイト先であるカフェの無料クーポン券を机にだしてきた。

「はぁ…仕方ない、分かったよ」

「サンキュー!!んじゃよろしく」

まるで台風の様に教室から出て行くと、廊下から「廊下を走るな!」と教師のお叱りが飛び交った。

「全く…」

「ケント帰ろー、てか神谷君なんだったの?凄い慌ててたけど」

カフェの無料クーポンをしまうと次は既に帰り支度を終えた六花が目の前に来ていた。

「ごめん六花…さっきジョーに頼まれて掃除当番変わったから先に帰っててくれ…」

「そうなんだ、私も手伝おうか?」

「いや大丈夫だ、ありがとう」

「分かった、んじゃ家で待ってるね」

「おう、気を付けてな」

名残惜しいが教室から出ていく立花に手を振り、掃除当番代行として掃除に取り掛かった。

 

 

「何故だ…何故俺ばっかり…」

掃除当番を引き受けてから既に二時間半も過ぎた。

「いやぁ結城が居て助かった!もう大丈夫だ!気を付けて帰るんだぞ!」

「い…いえいえ…了解です」

掃除自体は順調に終わった。

だがその後に教師達に呼び止められ授業で使う教材の準備を手伝わされたり、備品の在庫測定を手伝わされ挙句の果てに電球交換までやらされた。

「はァ…クソ…もう二度と掃除当番は変わらないからな…地震?…違う…まさか!?」

「ケント!!」

誰もいなくなり茜色の夕日に染まる教室から荷物を持ち、いざ帰路に着こうとした瞬間、地響きと共に窓から見える街に巨大な怪獣が現れ、グランモバイラーのグラディオンも反応した。

「あぁ怪獣だな…こんな時に出てこなくても…クソ!秒で決めるぞ!ウェブダイブ!!グラディオン!!」

 

 

「え…嘘…」

「響が…古いPCに飲み込まれた…」

怪獣が現れ街が大混乱のなか売り物の古いPCの画面にグリッドマンと名乗る訳の分からない存在が、いきなり記憶喪失の響を飲み込んだのを響の友人内海将と目撃し、只々唖然とすることしか出来なかった。

「内海君私…夢でも見てる?…」

「た…多分現実か?夢であって欲しいが…クッこの地響き…」

「もしかしてグリッドマン!?」

慌てて店の外に出るがビル等により状況を確かめる事が出来ない。

「ここからじゃよく見えない…もう!!」

「おい!宝多危ないぞ!?」

たまらず高いビルに駆け上がり、屋上から状況を伺う。

「あれが…グリッドマン…」

「すげー…怪獣映画みたいだ…」

燃え盛る街と向かい合う怪獣と巨大化したグリッドマン。その風景は内海君が言う様に映画の世界に恰も自分がいる様な錯覚に陥ってしまう。

「な…なぁ…宝多…」

「なに?」

「蒸気機関車って空を飛べたっけ?…」

「銀河鉄道じゃあるまいし、こんな時に何を馬鹿な事…を…嘘…」

内海の視線を辿り上空を見上げると、確かに蒸気機関車がこちら目掛け飛んでいる。

「ハ…ハハハ…もう訳わかんねぇ…」

「わ…私も…」

 

 

「見つけ…って今回は怪獣二体か?なんだあのウルトラマ〇みたいな奴は敵か?」

「分からない、だが邪悪な気配はない」

「それじゃとりあえずあっちの明らか怪獣を倒すぞ!ウェブダイブチェンジ!!グラディオンファイターモード!!」

ケントの掛け声と共に蒸気機関車だったグラディオンが変形し、何時もの人型になり怪獣の目の前に着地した。

「な…なんだお前は?」

「な!?コイツ喋った!?…」

後ろにいるウルトラマ〇に気を取られた隙をつかれ、怪獣が口から火球を撃ちだした。

「甘い!グランシールド」

シールドで防ぎきったが数発の火球が街の方に飛んで行ってしまった。

「やべぇ…邪魔だ!ウルトラマ〇グランバルカン!」

「ドワ!?」

ウルトラマ〇を射線からどかし胸部からグランバルカンを放ち火球を打ち消すが、二発うち漏らし落ちた場所から巨大な火の手が上がってしまった。

「クソッ…グラディオン決めるぞ!」

「あぁ分かった」

「グランブレード!ブレイクザーン!」

グランブレードを構えそのまま怪獣との間合いを詰め、怪獣を両断した。

「被害が広がっちまった…」

両断した怪獣の消滅を確認し、ウルトラマ〇の方に体を向ける。

「お前…一体何者だ?」

「それはこちらのセリフだ、ウェブダイブナイトではないな」

グラディオンとウルトラマ〇が問いを問で返す中、ウルトラマ〇の左手首から光状の剣が現れた。

「殺気?グラディオンこいつやる気だ」

「油断するなケント!」

グランブレードを構え、グラディオンとウルトラマ〇の両者が一気に間合いを詰めた。



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