クリスマスプレゼント (藤河ひとひ)
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クリスマスプレゼント

どうやら、彼女は寝たらしい。

空っぽで、暗いリビングに足を進める。リビングの端にはクリスマスツリー、ダイニングテーブルにはホットミルクとクッキー、流石イブの夜だ。

壁際のPCを起こせば最初に目に入るのはNORADのページ。世界地図をくるくる動き回るサンタのソリが映っている。少し笑って、PCを閉じて、ホットミルクに口を付ける。

飲み干してから、予め隠してあったプレゼントを取り出す。クリスマスカラーの包装紙に包まれた、彼女への贈り物。

美咲ちゃんが、以前じっと覗き込んでいたショーウィンドウの先にあったもの。鮮やかな白蝶貝の文字盤にブルーの針で彩られた、控えめなシルバーの腕時計。それをツリーの下に置いて、クッキーを頂き、準備は完了。

あとは、最後の作業だけ。と、鞄の奥から小箱を取り出した。

ちなみに、彼女はサンタクロースを信じている、最初にそれを察したときは驚いたけど、割となんとかなりそうだ。

全部指差し確認をしてから、寝室へ入り、布団へ潜り込む。穏やかな寝息を立てている美咲ちゃんの安らかな寝顔を眺めながら、意識は遠い眠りの淵へ落ちていった。

 

 

――

 

 

目が、ゆるく開いて。

朝を自覚して、途端に覚醒する。

隣に寝ている彼のことなんて気にもとめずに寝室を飛び出して、リビングのツリーの下へ駆け寄る。

お飾りのカラーボックスに紛れて、ひとつ。見たことのないクリスマスカラーの包装紙に包まれた何かが置かれていた。勢いよく振り返って、ダイニングテーブルの上を見れば、置いてあったクッキーは無く、マグカップを覗き込めば、ホットミルクも空。みるみるうちに、胸が暖かくなって、飛び跳ねたくなる。

それを見たPさんが、壁際で笑った。

「もう!何笑ってるんですか!!」

小走りに掛けていって、彼の胸を軽く叩く。彼は堪えた様子もなく、笑って。

「はいはい。結局、プレゼントはなんだったの?」

「あっ」

忘れてた。

また、小走りでツリーの下に置きっぱなしだったプレゼントを取り上げて、包装紙を丁寧に破いていく。

その奥に秘められていたのは、ブランドの銘が刻まれた箱。蓋を開ければ、そこには私が以前から欲しかった時計が収まっていた。鮮やかな白蝶貝の文字盤にブルーの針で彩られた、控えめなシルバーの腕時計。

思わず、ため息が漏れる。

「ついでに僕からもプレゼント。」

と言って、彼が取り出したのは小箱。

 

紫色のリングケース。

 

それは、女性の夢のひとつで。

 

顔に、熱が集まっていって。

 

彼が、片膝をついて、私の手を取って、そこにはいつの間にかダイヤモンドが煌めくシルバーのリングがはめられていて。

 

「美咲さん、僕と結婚してください。」

 

 

 

 



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