病は気から?身体から? (八雲白龍)
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病は気から?身体から?

フォローしてる人がやっとこさカリオストロを引けたと言うので、お祝いがてら随分前に書いてた下書きを引っ張り出して無理矢理完成させた物です。
文才?ああ、破局受けて消し炭になったよ…


カリおっさん→グラン

 

 

夜も遅く、お子様の団員は自室で寝静まった時間…

ファスティバに任された副料理室、今や虹(ラードゥガ)の名を冠する場所に、今宵も多様な団員が集う

 

 

が、どうやら本日は珍しい方が来られたようだ

 

 

カラン… カラン…

 

「はぁ〜い、いらっしゃ……アラ、珍しいわねぇ貴女が来るなんて?」

 

 

「………」

 

 

そこに居たのは、周りの人と比べればだいぶ小柄な少女

しかし、中身は覇空戦争の時に、星の民を追い返す程の実力を備えた開闢の錬金術師 カリオストロであった

 

 

 

 

「なにか、ご注文はあるかしら?」

 

「…エールで良い、酒はあんま飲まねーからな」

 

ファスティバからの言葉に、やや不機嫌そうに答えながらもカウンターに座るカリオストロ

注文を受けたファスティバは静かにコップを取り出し、冷えたエールを注ぐ

 

 

「はい、エールよ…それで?何か悩み事でもあるんでしょう?」

 

「ッ……」

 

「でないと、わざわざこんな場所に来ないでしょ?」

 

わざわざファスティバの前のカウンターに座った、というのは、「今からあまり聞かれたくない話をします」という合図であるとされている

 

「1000年以上も生きてる開闢の錬金術師さんにアドバイスなんて出来ないかもしれないけど、話すだけでも楽になるわよ?」

 

「ン、実はな…」

 

冷えたエールで喉を潤したカリオストロは、ポツリぽつりと悩みを零す

 

曰く、最近になって団長(グラン)の側に居ると動悸が激しくなる

曰く、団長と顔を合わせると顔が熱くなる

曰く…曰く…曰く…

 

 

「なるほどねぇ…」

 

「恋、なんて、らしくもねぇとは思ってる。認めたくねーが、どうやったって事実だ…」

 

そこまで言うなら、何を悩んでいるのか

ファスティバが疑問に思うと同時に、カリオストロが続ける

 

 

「俺様は美少女錬金術師だ、けどな…中身は男なんだよ、いくら美少女錬金術師の身体を造って外見を整えても、な…」

 

そう呟いてカリオストロは、エールを一気に飲み干す

なるほど確かに、こういった性別の問題をファスティバに相談するのは英断なのかもしれない

 

 

「そうねぇ、私も専門家じゃないから詳しい事は解らないけど、持論で良ければ聞くかしら?」

 

「ん…そうだな…」

 

かちゃりと、先程から洗っていたグラスを乾燥台に置き、ファスティバは少し佇まいを直す

 

 

「私は男性が好きで、女性になりたいから、貴女は究極の美少女になりたいから、今の格好をしてるでしょう?それで、身体の方に精神(こころ)が引っ張られたんじゃないかしら?」

 

「はぁ…?」

 

何を言ってるんだ、とでも言いたげな視線を寄越したカリオストロだが、あくまで持論である、と言っていたのを思い出したのか何も言わずにエールを口にする

 

 

「ほら、団長さんもそうだけれど、着てる服で気分や性格が変わる人だっているじゃない?」

 

確かに騎空団の団長グランは、その身に纏う(ジョブ)で若干性格が変わる

 

 

「それと同じで、長年女性の身体でなるべく美少女らしく言葉遣いまで変えて過ごしてきたのでしょう?なら、精神(こころ)が自分を女性なんだと、認識してもおかしくないんじゃない?」

 

ファスティバはカリオストロが自分の身体を造る様になった最初の理由を知らないが、なる程となる程度には合点のいく話だった

病(身体の異変(びょうき))は気(精神(こころ))から等という言葉を思い浮かべたカリオストロだったが、この場合は病(男から少女(美少女になった))から気(精神(こころ))が変わった(少女になった)と言うべきなのか、はてさて

 

 

「だとしたてもどうすんだよ…アイツ(グラン)だって俺が男だって思ってるだろうし…」

 

「大丈夫よ!団長さんも事あるごとに可愛いって褒めてくれるでしょ?」

 

「いや、ありゃ流石に世辞だろ…?」

 

「お世辞を言う相手にバレンタインデーにチョコを渡されて、喜ぶと思う?錬金術師のジョブを手に入れた時、貴女に教えを乞うかしら?」

 

「そりゃあ……」

 

無い、とは言い切れないが、可能性は低いだろう

 

 

「そ・れ・に…」

 

「あん…?」

 

ウィンクをする様な顔で、ファスティバが続けた

 

 

「私みたいな漢女(おとめ)をちゃんと女性扱いしてくれるんですもの、きっと、問題ないわ♡」

 

そうだ

 

(グラン)は差別などしない、底抜けのお人好しで、敵だった相手も船に乗る仲間となれば許してしまう様な甘ちゃんだった

 

そんな人物が、既に出会ってから何度も四季を巡る間、何十倍以上もの人生経験を持つ自分を相手に世辞を世辞と悟られずに接する事が出来るのか?否、ほぼ不可能だろう

 

つまり(グラン)は、今まで本気でカリオストロが可愛いと言い続けていたのだ。たとえ中身が男であろうと、美少女らしくあろうとするカリオストロ(彼女)は可愛いのだ、と

 

 

「マジか…あぁクソッ…顔が熱くなってきやがった…」

 

世辞では無い、そう自覚した途端に羞恥心が湧き上がるカリオストロ

 

これは何だ、これが恋なのか

 

ただのガキの言葉に一喜一憂するのか?開闢の錬金術師たる自分が?

 

嬉しさと悔しさと恥ずかしさが混在する感情の中、ふとカリオストロの動きが止まる

 

 

「ちょっと待て…てことは…」

 

「そうね、チャンス、あるんじゃないかしら?」

 

「……」

 

チャンス、(グラン)と恋仲になれるかもしれない

そのチャンスは、逃したくない

 

 

「悪ィ、今日はもう良い」

 

グラスに僅かに残っていたエールを飲み干すと、カリオストロは席を立つ

 

 

「あら、おつまみぐらい食べない?」

 

席を立ち、足早に出口へ向かうカリオストロにファスティバが引き止めるかの様に声をかけるが…

 

 

「美少女なら此処でお酒飲むよりも、早くお部屋で熟睡しないとイケないんだゾ☆」

 

 

と、美少女モードでの返事と共に、扉がバタン、と閉じられる

 

カツカツと足早の音が離れるのを聞きながら

 

 

「団長さん倍率高いものね、頑張って」

 

と、そっと呟くのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たりめーだ、この美少女錬金術師の俺様が本気で落としてやる、覚悟しとけよグラン」

 

 

数カ月後、そこには勝負水着でグランに迫るカリオストロの姿があったとか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に数カ月後…

 

 

 

「最近ししょーがすっごい雌の顔してる…怖い…」

 

 

こんな悩み相談があったとか無かったとか

 



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