ロマン兵器ヲ愛シ者、彼方ナル世界ヘト転生ス (ELDIAN)
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第1話:死はパンジャン印の電子機器を呼ぶ
2019年3月13日 日本 某所 12:??
日本。
そんな伝統ある神州の、とある地方都市。少子高齢化の影響を諸に受けつつあるその街のある家屋の2階に、“ソレ”は住んでいた。
「今日も元気にロマン兵器を探求探求っと!」
そんなことを呟きながら青ジャージの“ソレ”は、ステップを踏みながら自室のドアを開くと、勢いよくイスに着席。慣れた手つきで、パソコンにパスワードを打ち込む。そこからロードが始まり何やかんやで、ホーム画面に。次にどデカく『Go〇gle』と書かれた検索フォームを開いて、
その背後……即ち、部屋に入って左側にはやけに大きな本棚。そこに入った本の題名を見て行くと、『ザ・グレート・パンジャンドラム1943〜英国式国防戦術〜』やら『〜核兵器は全てを救う〜あ
「えっ……ファッ!?」
しばらくタイプ音やクリック音を鳴り響かせたと思えば、それを突如として中断。それと同時に、“ソレ”は奇声にも、驚きのそれにも似た何かを発した。ちょっと視点をディスプレイに写して、何を見ているのか見てみよう。んーと、どれどれ……。
『この『SLAM*』、正式名称『
ですが、“原子力”とあるように、燃料には放射性物質を使用するという超危険構造。もちろん発射事故を惹き起こせば国内外から批判の雨が溢れんばかりに降りそそぐことは想像が容易いですが、何とこのミサイル、
その結果、この『SLAM』は発射された後の地域に敵味方見境なく被害を与える終末感極まった、究極の破壊兵器に変貌しました。字面だけ見てもわかりますが、いくら冷戦期では終末的思想のもとに兵器が設計されていた*とは言え、これは流石に常識を逸しています』。
……何だこれ? 原子力……巡航ミサイル? 空を飛ぶ原子力発電所か何かですか?
こんなもの見るなんて、恐らく、いや、確実に常人ではない。えいやだって敵味方関係なく放射線ブッパしまくるんでしょそんなの兵器じゃないじゃんただの自滅兵器じゃん……——なんて戯言は置いておいて。今こうしてソレを読んでいる、常人でない者がいるのは事実。一体全体こんな物を好き好んでみる輩は誰か……ではここで、“ソレ”の名を明かすとしよう。
“ソレ”の名は
“非凡人的”なんて言っちゃったが、その理由は至極単純。日本では唯でさえいい目で見られることのない軍事界隈のオタク、それも『試作兵器』や『珍兵器』、『魔改造兵器』に『ペーパープラン』と言った物を引っくるめた、『ロマン兵器』を愛しているからだ。
そりゃもちろん、生まれて以来、まるで天命のようにずっとロマン兵器を愛してきたトンデモ人生をお持ちの訳ではない。決して両親が両者とも軍オタだったとか、そんなことは無いのだ。……いや、ほ、本当ですよ。え、えぇ!!!
とは言え、物心が付いた頃からロマン兵器を愛してきたのは事実。偶然目にした『パンジャンドラム*』を始まりとして、今やこの有様だ。
本棚にはどこから発掘したか、試作兵器やら珍兵器やらが連合国を蹂躙するだとか、異世界に転生して世界をカオスに導くだとかそんな趣旨の書籍がごまんと並べられていて、彼が今使用するPCだって、検索サイトを移動させればそこには大量のシミュレーションゲームの数々が露わになる。これが年頃の大人ならばまだ納得できるが、よりにもよって“学生”なのだから、それはもう
そんな彼がしている儀式……では無く、『SLAM』を調べているという行動は、新たなるロマン兵器の発見という、それはそれはとても崇高な理念のもとに行われている。
何せ、ロマン兵器は希少。そもそもそれを愛する人だって現実世界の人口と対比すれば、とても少ない。それつまり情報量の少なさに直結するので、ロマン兵器に関して調べる際は必然的に情報量が少ない日本語よりも、情報量が多い英語等海外文献に頼ることとなるのだが……今日は違った。何せ、つい先日発見した9M730*に関連する兵器が無いかな〜と言った感じで探した結果、偶然この『SLAM』に辿り着いてしまったからだ。それも、日本語サイト。やったね!!!
何をどうしたらこんな兵器にぶち当たるのかは、恐らく日頃の行いが素晴らしいからに違いないだろう。
「……まぁ、うん」
だが、そのテンションは徐々に暗転する。
なんかもう兵器の要綱を見て嫌な気配はしていたが、この『SLAM』は例の如く試作止まりだったからである。この手の兵器には特に多いが、今回のこの『SLAM』に関しては2億6千万ドルの計画費用をつぎ込んだ末の結果であると考えたら勿体無いような……いや、まあ、うん。そんなことはないし、これに関しては納得せざるを得ない。幾ら何でも敵味方関わらず放射性物質を撒き散らす兵器はさすがに、ね?
……え? X-6*にTu119*、それに『オリオン計画*』……? あれは原子力推進航空機だからセフセフ! それに『オリオン計画』は核推力を用いた現実的な惑星間宇宙船です! それで失われる犠牲はコラテラルダメージですから! コラテラルコラテラル!!!
「……いや、待って。まさかだけど、他にも同系列の兵器があったりしないよね……?」
そんな疑問とともに新しく検索サイトを立ち上げようとする刹那、パソコン上部に一つの通知が表示された。
「ん?なんだ——」
いきなりなんだろう、と言いたげな表情で、通知をクリックしよう——としたと同時に、彼の意識は暗闇の向こうへととてつもない勢いで投げ込まれた。
それと同時に、彼の住む家……いや、住んでいた街に、巨大な爆発が発生した。その爆発は、彼の住む街に存在した木々を、家々を、車両を、人を……その全てを粉砕し、焼き尽くして焦土へと変える。
それはまさしく、平和国家日本にあるまじき光景。その破壊をもたらした存在——それは、『神の杖*』。都市伝説上でしか語られることのなかった……存在しないと思われていた、究極の破壊兵器。小型戦略兵器の威力に匹敵し、なおかつ放射能汚染を残さない環境にクリーン(迫真)なソレによる、タングステン弾頭の誤発射によるものだった。
—
——
—……
【——……Dqimpy Ed.135098, Rggdv yarezmna yd Vdago 13,cgnrzn……】
【——……Adlna ykry. Rggdv yarezmna yd Vdago 13……Lddo gxph】
……—
——
—
芝生の上に突っ伏すような感覚。風が心地よく吹き……って、え?
「……ハッ!!!」
その状況に違和感を感じた繋は、目をハッと見開く。それと同時に、勢い良く起き上がった。
「い、一体何が……?」
頭がやけに痛い。だが、そんなことはお構いなしに周囲を見渡す。
ハッと見回した数秒後、沈黙が訪れる。繋のその目は予想外の光景に釘付けになっていたのだ。
「……え、なんで木があるんだ? それに……天井は?」
堂々とそびえ立つ、茶色の樹皮に大量に生える葉っぱを要するソレ……木。それが一本や二本どころではなく、数え切れないほど、自身のいる5m四方ほどの空間の周囲一帯を取り囲むように生えていた。頭上には、ぽっかり空いた空間とともに大きな青空が広がる。
さっきまで自室にいたはず……。脳をフル回転させ、どうしてこんなところにいるのか思い出そうとする。
だが、思い出せない。自室でパソコンに表示された一つのメッセージ。それを確認しようとしたところまでは覚えているものの、そこから先は……。
「……いや、一旦落ち着こう……。まずは状況確認だ」
『スーッ……ハァッ(ねっとり)』と深呼吸をして、再度周囲を見渡す。だが、やはり周りには木や雑草だらけ。当然だが、先ほどまでいたはずの自室の面影は一つもない。おそらく森の中、と考えるのが妥当なのだろうが、だとして森にいるのかがわからない。もしかしたらFBIが家に
ともなれば、まずは人に出会うことが先決。そこから次の手段を考えることになるだろう。とは言え、それを実行する名案なんて物、現在絶賛持たざる者の自分には思い浮かばないが……。
「って、うん?」
何かないか、再確認も兼ねて周囲を見回していた時、その目線に黒色に染まった板状の何かが入り込んだ。怪しげに思って体を起こすと、雑草の上に落ちているソレのそばへと歩み寄る。そうして、その黒色に染まった板状の何かを手で持つ。
「これは……Pad? どうしてこんなところに……?」
そこに落ちていたものは、一つのPadだった。黒色に見えたものは、どうやら液晶画面だったらしい。ただ、一般的に馴染みのあるPadと違い、それには液晶画面上部に直径5cmほどの、円形のカメラらしきものが付いている。
なんで森にPadが落ちているんだという疑問はもちろんあるが、それ以上に気になることはその新しさである。汚れひとつ、傷ひとつついていない。雑草の上にあったにもかかわらず、だ。
「何だこれ……って、こっ……これは……!!!」
何も考えずに裏面を見ると、そこには彼にとってとても馴染みのある物がペイントされていた。
「『パンジャンドラム』ッ!?」
一面が緑色の迷彩色に染まったPadに、一つ大きく浮かび上がるボビン状のシルエット。それはまさしく、珍兵器界隈でお馴染みの珍兵器オブ珍兵器、『パンジャンドラム』。見ただけでわかりますね、この英国らしさ! 英国の匂いもプンプンします!
「ど、どうしてこんなものが……!」
驚愕と、自分以外にもロマン兵器を愛する人間はいるんだなという再認識で、変態は打ち震える。え? ネットにはその界隈の人間がいるだろ、だって……? あれはネットだから、ほら……。現実じゃコミケくらいじゃ無いですかね、まともにこの道の人と会えるのって。
「この所有者が誰かは知らないけど美味い酒が……ん?」
が、改めて裏面を見返すと、あることに気がついた。
「……え?」
裏面の右下部分に、汚れひとつない真っ白な文字で小さく『多田野 繋(Ed.135098)』と書かれていることに。
「自分の名前が……なんで!?」
全く身に覚えがない名前がソレに記入されていることに、変態は戸惑う。お前のPadなんじゃないかと言われるかもしれないが、自身が持っているものといえばスマホやPCだけ。こんなPadは身に覚えもない。
「ま、まさかだけど……使える、とかないよね?」
これで使えたらもはやホラーである。半ば恐怖に染まった顔でPadを表に返すと、どこにでもありそうな電源ボタンを一押しする。
「……あっ、そっかぁ」
そんな不安をよそにPadは無事立ち上がるのだが、その画面にはパスワード入力画面どころか、ご丁寧に『Welcome to “多田野 繋”』との吹き出しが表示されていた。予想の斜め上を行く結果に、一瞬これがドッキリか何かなのでは、と疑う。
が、いつまでたっても『ドッキリ大成功!!』と書かれたカンペを掲げた輩と、それを見て驚く様を公衆の面前にテレビを介して曝け出すカメラマンは現れない。願わくばこれがドッキリであって欲しかったのだが、どうやらそうではないらしい。
「ととと、とりあえず! このPadがどんなものか確認しておこう、うん!」
もしかすると地図アプリが使えるかもしれないという僅かな希望を胸に、吹き出しの右上のバツ印をタップしてそれを消去。また画面に表示されるものが変わる——のだが、その画面は繋の思考を強制停止させた。
「なっ……なっ……」
なんと、画面一杯にロマン兵器たちが表示されているではないか。『パンジャンドラム』はもちろんとして、『80cm列車砲ドーラ&グスタフ*』や『ツァーリボンバ*』などの有名なものから『H45*』などと言ったマイナーなものまで、多種多彩に前方斜めからのアングルで撮られた画像で掲載されている。
その量たるや凄まじく、画面を横にスライドしてもロマン兵器、ロマン兵器、ロマン兵器。下手をしたら海外文献を漁るよりも遥かに情報が多いのではないか、と思わせんばかりの量だ。
更に言えば、どうやらこのPadはざっと見た様子では全て日本語に対応している模様。ネットの情報は日本語:英語の比率が1:99と言われるほどなので、これは素直にありがたいね! これでGo〇gle先生とも卒業! バイバイ先生!
また、兵器の種類ごとにタグ等で区分けすることが可能なようで、現在は『試作兵器』、『珍兵器』、『変態兵器』、『ペーパープラン』が表示対象として指定されていた。……というか、その4つのタグ以外、存在しないのだが。
一般的にロマン兵器と調べれば、全く関係ない画像や有名なものばかりが出てくる。自身がそうして新たなるロマン兵器の開拓に困ってきたことを考えれば、その点この機械は正直。はっきりわかんだね。
「……って、いやいや。そもそもなんでこんな自分に都合のいいものが落ちてるんだ!?」
うっかり流されそうになったが、元はと言えばこのPadはこんなどこかもわからない森の中に落ちていたものである。思い返せば偶然近くにパンジャン印のPadが落ちていて、偶然パスワードなしに『Welcome to “多田野 繋”』と表示され、偶然ロマン兵器が大量に表示されている……。なんだこの偶然の連鎖は、たまげたなぁ(白目)。ここまで都合のいい偶然が続くとなると出来のいい嘘なのではないかと考えてしまう。
「でも、今はこうして手元にあるしなぁ……」
本来なら警察に届ける方がいいのかもしれないが、Padの裏面に自身の名前が書いてあり、機械も『Welcome to “多田野 繋”』と表示している。これは……。
「……よし!これは自分のものだ!誰も異論はないね!!!」
……異論はないようなのでとっとと自分のものにしてしまおう! きっと自分のものだそうに違いない!!!
「じゃ、まずは物色物色……」
そんな感じで強引な理論を用いて自分のものだと決めつけると、近くの手頃な木にもたれてPadの物色を始めるのだった。
______
作中で登場した兵器の解説で登場した兵器は後々解説しようかと思います。
*
ちなみに、書籍の名前が『時空要塞
*架空戦記:主に、戦争の転換点と呼ばれる戦闘で勝ってたり負けたりしてたら……というものを、漫画や小説に記したもの。
*SLAM:プロジェクト・プルートにより発案された原子力巡航ミサイル。作中での説明に加え、兵器の性能試験で必要な実験をしようにも『まともに実験できる場所……ねえじゃん!』と言うことで無事お釈迦に。
*トリープフリューゲル:末期ドイツが、あまりにも航空基地をボコされるので画策したトンデモ兵器。滑走路を使わずに離陸できるという点を主軸にしたのは間違いじゃなかったんだけど、何をどうトチ狂ったか、なんかもう色々おかしい。少なくとも、航空機ではない。
申し訳ないけど言葉では形容できないので、気になった方は是非『トリープフリューゲル』で検索を。
*冷戦期では終末的思想のもとに兵器が設計されていた:例を挙げるとアメリカの『空対空“核”ロケット弾ジーニー』や、『空対空“核”ミサイルAIM-26』、『M65 280mmカノン砲“
*パンジャンドラム:搭載した紅茶噴射型自走紅茶樽で後方に紅茶を撒き散らしながら敵味方関係なく1.8tの紅茶をお届けし、大地を紅茶に染め上げる恐怖の英国面満載イギリス最終決戦兵器。……すみません。半分くらい嘘です。ただ、1.8tの部分と敵味方関係なく突っ込むのは本当。
*X-6:B-36ピースメーカーと言うアメリカの戦略爆撃機に、原子力推進機構を搭載した試作航空機。原子炉は外気で直接冷却する方法だから……結果は言わなくてもわかるよね!!!
*Tu-119:上に同じく、ロシアの保有する世界最速のプロペラ機Tu-95(こいつもなかなかのゲテモノ)に原子力推進機構を搭載した試作兵器。こっちは空気中に放射能撒き散らさないからまだマシ。ただ、上と違って放射線遮断シールドがなかったから……その。そういう意味では下手したらこいつの方がひどい。(実はこの当時実験に参加した搭乗員の大半は死んで……ん?こんな夜遅くに誰だろ……)
*オリオン計画:宇宙船後部60m地点で核兵器を起爆し続けることで発生する衝撃波を利用し、すごい速度で宇宙航行しようぜって言う宇宙船。一番太陽と冥王星が近づく時期であれば1年で地球と冥王星を往復できるとかなんとか。それは色々と大丈夫なんですかね???
*神の杖:都市伝説の塊的兵器。低軌道からタングステン弾頭を地表に衝突させるだけで、小型戦略核兵器レベルの威力を出せる……らしい。こんなのあってたまるか。
*9M730:ロシア連邦で開発中の原子力巡航ミサイル。2018年にP大統領が提示した6つの新型戦略兵器のうちの一つだそう。最新兵器なので情報は少ない。
*ツァーリボンバ:言わずと知れた、正真正銘世界最強の単一破壊兵器。ツァーリボンバはロシア語で『皇帝の爆弾』という意味。もちろんその名前にふさわしい威力を持っており、実際の核実験時には”威力を半分にした状態”だったにもかかわらず、その爆風は地球を3周半吹き荒れた。威力フルで使ったら関東圏壊滅するとかなんとか。
*80cm列車砲ドーラ&グスタフ:世界最大の列車砲。
ドーラの名称はこの列車砲の設計主任の妻の名前から、グスタフの名称はこの列車砲を製作したクルップ社の社長の名前から取られた。
もともと要塞攻略用の兵器として作られただけあって、セヴァストポリ要塞(ソ連の要塞で、ドイツ軍相手に約1年持ちこたえた)の、厚さ10mのコンクリートで保護された地下30mにある海底弾薬庫をぶち壊した実績があります。頭おかしい。
戦艦大和が搭載していた主砲が口径460mm、この列車砲が口径800mmと考えると、いかに巨大か分かる……かも、しれない。——あっ!!口径920mmのリトル・デーヴィット迫撃砲がこっち見てる!!!
*H45:WW2末期、ナチス・ドイツ(というかちょび髭伍長)が計画した超巨大戦艦。全長600m超えの船体に、上記の80cm列車砲を連装化したものを4基搭載する。当然ながら計画止まり。逆に建造しようとしてたら正気じゃない(一方日本には50万トン戦艦というものがあってだな……)。
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第2話:発見は活用の母でして、活用は発見の母なのです
「ん?この銃は……」
愉悦に浸った気分でPadを物色する最中、とある銃の画像が繋の目に止まった。それは以前、何のひねりもなく安直に“変態銃”と調べた結果に偶然発見した物なのだが、それも随分前の話。今はといえば……。
「……あー、なんだっけ。……思い出せないや」
コンセプトが強烈にロマン魂(?)に刺さったあの衝撃は、今でも忘れられないのだが。そりゃもうよだれが滴れ落ちる程に……っと、そんなことはどうでもよくて。
普段の繋は、いくらロマン兵器が好きだからと言っても、兵器を調べる際には洪水よろしくドバドバ脳内に流れ込む大量の画像や文字を流し読みするだけで、その実詳細なんて覚えちゃいない。基本は兵器ごとの特徴のみで記憶しており、例えばXF-84H“サンダースクリーチ”*とか言う軍用機の皮を被った騒音発生機であれば、『近くに居るだけで体調崩すなんかやばいアメリカの単発ターボプロップ機』程度の記憶である。当然それと似た方法でこの銃も記憶しており、この場合は『バレルが2本あるハンドガン』と言う情報のみを鮮明に記憶していた。
特徴以外の全てを忘れた繋は、小さな興味心を辿りに特に何も考えることなく画像を見るためにクリックするのと同じような感覚でタップする。
「おわっ!? ……う、浮いてる!?」
そこに現れたのは、Padの上に投影された銃器の立体画像。現代技術では到底なし得ないはずのものが、彼の眼前に存在していた。
いくらロマン兵器ばかり漁っている身とはいえ、空中投影技術が現代の技術では未だ発展途上であることくらい知っている。そんなものスター〇ォーズくらいだよきっと! (実際は存在するけどね?)
ただしそんなこと一切知らない繋は、本来存在しない(はずと勝手に思い込んでいる)それに対し心底驚く。
「ど、どんな原理だ……これ!?」
恐る恐る手をかざすが、その手に感触らしいものは無く、ただ空振りするのみ。どうやら、本当に空中投影された画像のようだ。
「『AF2011-A1*』……そうだ! 思い出した!」
驚きであっけにとられた後、同じく空中に投影された『AF2011-A1』という文字を見て、その武器のことを思い出した。
『AF2011-A1』。横から見れば一見通常の『コルト1911*』に見えるが、正面から見ればあらびっくり……銃口が2つあることが見て取れるコルトシリーズの変態カスタム仕様である。機関部を連結したことで横幅も大幅に増えており、それに合わせてフレームも新設計のものに変更されている。ただ、機関部を横に連結してしまった影響でグリップがとても図太く、片手で持つことは大抵の常人には難しいことから基本は両手で持つのがノーマルだ。
現実では
これらはまあなかなかのゲテモノで、前者は有名なアサルトライフル『AR-15*』を横に2丁繋げて連結。火力を2倍にしたはいいものの、排莢が左右両方から行われるおかげでエイムが出来ず、軽機関銃のような運用しかできないとか言う『お前本当にアサルトライフル?』を地で行く銃。
後者はソビエトの誇る変態銃設計士コロボフおじさん*の設計した銃で、銃身が3つ存在し各2000発/分計6000発/分*とか言う尋常じゃない射撃レートで撃てるとか、AK-74*の後継選定のために行われた次期主力小銃選定トライアル計画に大真面目に提出されたとか、これまたマガジンが太いとか言うレベルじゃないとか、話題に事欠かない銃である。
そんな妄想を脳内でぐるぐるさせつつ、繋は気持ち十分になるまで立体画像を舐め回すように見た。
「ん……《実体化》に《削除》……?」
お腹いっぱいに立体画像を見た後、Padの画面へと目を移す。
そこには、《実体化》と《削除》。それら2つの項目がPadに表示されていて、その下には何やら小さな注意文。目を凝らして、何が書かれているか確認してみる。
「《実体化》は、文字通り兵器等が召喚可能で、使用方法は脳内に直接伝達・インプットするため、精神的負荷がかかる……え”?」
あまりの内容に繋は目を疑った。それはもう『カスピ海の怪物*』が復活するかもねなんてニュースを見た時と同じ程度には。……あれ見てビビったわ。うん。
まさか、先ほど立体投影画像を見たばかりだと言うのに、次は脳内に直接伝達などと言うワードが登場すると誰が予想しただろうか。
もしこの『AF2011-A1』を《実体化》すると共にその使用方法を直接習得できるのであれば、他の様々な兵器も同様に《実体化》、そして使用が出来ると言うこと。ともなればロマン兵器ハーレムが作れるわけで……。そんなことが出来るのなら、よもや『ロマン兵器を実戦にぶち込んで活躍する様を見たい……』と言う願いが叶えられるのでは???
何せ、一般的にロマン兵器と呼ばれるものは実戦で投入されたことは一部例外を除けばほとんど無い。だが、これらに開発者らによる『(捻れた)愛情』や、『(間違った方向への)努力』があったのは事実。その大志を無下にすることなど、できるだろうか? ——断じて出来ないね! 折角開発されたんだし、どうせだし戦闘に突っ込んだりしたい……と言う建前の元、実際は、『敵の反応……私、気になりますッ!!!』と言う好奇心と、『ゲーム感覚で色々面白い事してぇなぁ』と言った考えが彼を突き動かす。だって、そんなことが実際に叶うなら、例えわけのわからないPadであれ試さない手はないよなぁ!? ……いや、例えロマン兵器を実戦で運用するとしても、現状それが投入できる場所なんて
そんなこんなで画面に表示された《実体化》の項目をタップ。すると、画面にはでかでかと”個数制限に関する注意”と言う注意文が表示される。
それ曰く『兵器の《実体化》制限は、それの生産数、そして空気中に存在する各種『
「うーん、流石に、そこまで甘くないのね」
ペーパープランだとそりゃもう頭おかしい性能の兵器がぞろぞろいるわけだし、それを『大量に《実体化》出来ないよ』、なんて対策を講じているあたり、何処かゲーム味を感じる。
『生産数に影響されるのねOK』と納得して注意文を閉じると、左下に《キャンセル》、右下に《実行》と言う文字、画面中央に空白の項目が表示されている個数記入画面が現れた。
「ん〜……まぁ、一つでいっか」
世の中には『AF2011-A1』を両手で持ち、射撃すると言うとんでもない動画も存在するが、自分は腐っても一般人。そんなふざけたことはしないほうがいいに決まっている。ということで今回は、捨て難いが仕方なく『ロマン』を捨てることにしよう。
空白の項目をタップして、画面下からせり上がって現れたキーボードを用いて“1”と打ち込む。それが終わった後、《実行》をタップした。
「さて、どうなるか——痛っ!」
その叫びと共に、Padの画面上部で
脳の痛みに、閃光。その2つが脳内でグルグルしながら数秒が経過した。
「さ、さっきのが……脳内に直接伝達された——って、こっちも浮いてる!!」
しみじみと先ほどの感覚の感想を言いつつ、繋はゆっくりと目を開く。するとそこには、さっきの立体画像と同じようにPad上部で浮遊する『AF2011-A1』の姿があった。先ほどの者との違いといえば、より質感がリアルに、そして、何やら青い粒子を纏っていることくらいだろうか。
腕を恐る恐る伸ばし、『AF2011-A1』のグリップを持つ。それと同時に、纏っていた青い粒子のようなものがスーッと消え去った。
今回は先ほどと違い、画像ではないようだ。その証拠に、冷えた無機物で形成されたグリップ感触が手を通して伝わる。
「ほ、本当に……本物、なのかな?」
そのグリップを持つ感触と質感に、その重量。一見、とても本物に近いが……。
「いや、まさか?」
半信半疑の中、グリップを両手でしっかりと握り、近くに堂々とそびえ立つ一本の木へと銃口を向ける。照準を定めて、ゆっくりとトリガーを引いた。
ダァンッ!!!
「ッ!」
発砲炎と共に、『コルト1911』2丁分の反動で銃とそれを持つ腕が上へと大きく跳ね上がる。スライドの後退と共に排出された空薬莢が宙を舞い、地面へと落ちた。
「う、嘘でしょ……」
呆気にとられた様子で狙いをつけた木を見ると、そこには2つの弾痕が刻まれている。もはや本物で確定したようなものだが、一応『AF2011-A1』のマガジンリリースボタンを押し——やっぱり、絶句する。
「や、やっぱり……実弾……!?」
手に握られているのは、『AF2011-A1』のマガジン。それには、確かに実弾が装填されていたのだ。
「い、いやいや……」
繋は信じられないような口調であたふたする。そりゃもちろん本物の——。
「これ……本当に全て《実体化》できるの!? 最高じゃん!!」
……え? あ……は、はい、そうだね!! ……うん。
た、ただまぁ……実際、このPadを用いて出した『AF2011-A1』のマガジンに実弾が装填され、なおかつ発射できたという事実があることを考えれば……本物であることは間違いない。
それに、この『AF2011-A1』を人生で使ったことがなかったにもかかわらず、今回こうして何のわだかまりもなく使えたと言うことは、Padに書かれていた『使用方法を脳に直接伝達・インプットする』と言うのは本当なのだろう。
「って、これを使えば、この森から脱出することもできるんじゃ……?」
脳内が喜びに包まれるのも束の間、早速このPadの活用方法を見出す。それは最終的には、現状の目標である『人に出会う』ということにも繋がることだろう。
でも、こんな狭い空間に出すことができ、なおかつ森からの脱出に使える兵器なんてあるわけ……いや、あります!(迫真)
「“アレ”なら……きっと……!」
繋は狂ったように画面を操作する。
「……よしっ! あった!」
彼が探していたもの。それは……。
「『X-ジェット』!」
『X-ジェット』。ウィリアムズ・インターナショナル社によって1970年代に試作された、小さく丸い胴体に積み込んだ1基ターボファンエンジンを用いて垂直離着陸・飛行を行う小型VTOLジェット機だ。その飛行方法は単純で、自らの体を傾けることで加速、減速、旋回を行う……それだけ。一般的に航空機で使用されるラダーやエルロンと言ったものは搭載されておらず、性質的にはヘリコプターに近い。ただこの機体の場合、ヘリにも一応存在する垂直安定翼と言ったものすら搭載されていないため、安定性は無いに等しいのだが。
更に言えばこれが開発された当時、既にヘリや無人機などが台頭していたことで、『わざわざこいつ使う必要ないじゃん。危険だし』ということで、敢え無く開発が中止されてしまった(ロマンが足りねぇんだよ、ロマンが!!!)。……もっとも、パイロットの真下にエンジンがあるおかげで故障した場合足が吹っ飛びかねないという危険性を孕んでいたり、安定性が悪かったり、さらにエンジン音がうるさいともなれば仕方ない。3種の欠点ですねクォレは。
そんな理由で開発が中止されてしまった『X-ジェット』。だが、今回はこの機体の特性である『垂直離着陸が可能な点』、『ローターを使用していないため、離着陸に必要な面積が少ない点』、『理論上ドーバー海峡の往復を”無補給”で可能なほどの航続距離を有しているため、航続距離に困ることはない点*』を考えれば、ここから脱出する分には性能が事足りるはずだ。こんな真似はヘリじゃできないね!
繋は『X-ジェット』を選択。Padの上に立体画像が投影され、画面の《実体化》を選択し……等々動作を書くと長くなるので、『AF2011-A1』を《実体化》した際と異なる点があった場面を除いて割愛する。
「ん、《実体化位置指定》?」
個数指定画面へと移動するが、先ほど『AF-2011-A1』を《実体化》した際とは違って空白の項目の下に《実体化位置指定》と言う項目が増えていることに気づく。
「なんだろ……」
その項目をタップすると、画面右下には小さく『実体化位置を指定可能な距離は、所有者を中心とした半径1キロ以内。任意の場所をタップすることで位置の指定が可能』との文章が表示されている他、それを除いた画面一面には自分を中心としているのであろう円形の地図が表示される。
「……いや、まぁ。想像はしてたけど。うん。——案の定、かぁ……」
一面緑に包まれた画面を見ながら、落胆したような口調で呟く。
——ま、そゆこと!!! ここは完全に森の中! 遭難確定です!!! こうなってしまえば、この『X-ジェット』で脱出できることを望む他ないということだ。
自分のいる位置をタップすると《実体化位置指定完了》との文字が画面に表示、その後すぐに個数記入画面へとスッと戻る。
「これで大丈夫なのかな……?」
何の報告もなく画面が切り替わり、一瞬困惑する。だが、先ほどは確かに《実体化位置》をしたはずなので、大丈夫なはず……恐らくね!
「ちょっと試しに《実行》してみよっと」
《実行》の項目をタップし、それと同時に眼前に眩い光が発生した。
「——おぉ……」
ゆっくりと目を開くと、そこには実在するものと同様のカラーリングの、青や赤を基調としたカラーリングの『X-ジェット』が鎮座していた。どうやら、《実体化位置指定》はちゃんと動作していたようで、要らぬ心配だったようだ。
「さっきの『AF2011-A1』と同じことが適用されるなら、きっと操作できるはず……」
覚悟を決めたかのような表情で『X-ジェット』に後ろから乗り込む。内側にはいくつもの機器がずらっと並んでおり、一見どれがどれだかわからないが……。
「わかる……わかる……!!」
まるで思い出すかのように、脳の奥底から『X-ジェット』の操作方法がこみ上げてくる。
「これを……こうして……」
それら機器を手慣れたような手つきで操作し——
キィィィィィィィィン……
「動いた!!!」
彼の両足に挟まれたジェットエンジン。それのタービンが回転を始め、高音をあたり一帯へと撒き散らし始める。
繋は『やったぜ』と言いたげな表情でガッツポーズして、一言。
「これを使えば……この森から脱出できるね!!!」
______
*XF-84H“サンダースクリーチ”:アメリカ合衆国が
ところがそのパンドラの箱を開けてみれば、あら大変。方向安定性の欠如に振動など多くの問題が露呈。さらには40km先でも地上でのエンジンテストの音が聞こえたほど騒音が酷いし、何なら近くにいればそれだけで体調を崩すレベルの欠陥兵器に仕上がった。実質航空機の兵器を被った地上設置型非殺傷音響兵器。
ちなみに、この機体が採用したエンジンを搭載した他の機体(A2DやA2Jスーパーサーベージ)もことごとく
*AF2011-A1:作中で解説した通り、コルト1911を横に連結した(フレーム自体は新設計で、実質機関部くらいしか同じじゃない)ロマンの塊。両手に持てば実質コルト1911が4丁分の火力。こわい。
*コルト1911:天才技師ジョン・ブローニングの設計に基づいて誕生した、正真正銘の名銃。米軍では1911年に採用して以来、名だたる戦争を経験し1985年まで現役だった。
前述の『AF2011-A1』のような変態カスタムや、性能向上型等様々なバリエーションが存在し、その数は計り知れない。M2ブローニングと言い、マジですげえよジョン・ブローニング。
*TWIN AR Double Devil:驚異のAR-15連結銃。中心にピカティニーレールがないおかげでスコープは2丁それぞれにつける必要があるとか左右に排莢されるとか問題はあるけど火力は多いに越したことはない。古事記にもそう書いてある。
*TKB-059:
*AR-15:アメリカ軍が採用しているM16だとかM4だとかのご先祖。と言うかこれが正式名称。一般に販売されている仕様のもので、軍用のものと違う点は単発射撃しかできない点。
*コロボフおじさん:知る人ぞ知るソ連屈指の変態銃設計士。設計した銃の大半は年代的には変態だけど先進的な構造であるのは確か。今後もちゃんと登場します。期待してください……期待しろ(強制)。
*6000発/分:当時ソ連が採用していた主力小銃AK-74の射撃レートが600-650発/分と言うことを考えれば、どれくらい常軌を逸しているかわかる。1秒に100発撃てるとか人をひき肉の元か何かだと思っていませんか?
*AK-74:ソ連で正式採用されていた小銃。これの原型であるAK-47は1年くらい土に埋めてても動作するとか色々すごい。AK-47とAK-74の大きな違いは、AK-47の使う弾が7.62mm弾、AK-74の使う弾が5.45mm弾と弾の大きさが違うこと。
*カスピ海の怪物:詳細はここでは述べません。どうしても知りたいという方はご自分でお調べください。何故解説がないか、その理由は……(ヘッヘッヘ)。
*理論上ドーバー海峡の往復を”無補給”で〜:ドーバー海峡の往復距離は直線距離で約68キロ。『X-ジェット』は最高速度96km/hで30-45分で飛行できるとの情報から、航続距離は72kmと考えられるため。もっとも、これはあくまでも”理論上”の話。実際はわからん。航続距離とかの情報一切ないからね、仕方ないね。
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第3話:ESCAPE FROM FOREST
—
——
—……
【——……Re rqedafrgjyt vrz mdxeo je ykn oryn dm Ed.135098. Cgnrzn yat yd mjv jy.】
【——……Adlna ykry. yat mjvjel.】
……—
——
—
「これで森から脱出する準備は整ったんだけど……」
繋はつい先ほど《実体化》した『X-ジェット』を前に、心配げな表情でボソッと一言。と言うのも、ドヤ顔で宣言したはいいが、繋の脳内には2つ心配な事があったからだ。
それ即ち、右手に握っている『AF2011-A1』と、左手で抱えた『Pad』についてである。
「『AF2011-A1』に関しては《削除》っていう項目でどうにかできるんだろうけど……Padはなぁ」
もしかしたらPadでバックパックを出せるかも……なんて考えが湧き出るが、先ほどPadで物色していた際には兵器しか掲載されていなかった。色々試しても兵器しか表示されていなかったので……兵器以外は出せないという事だろう。と言うことでこの案は却下。じゃあ足に挟んで飛行するかとか考えるが、それはそれで色々やばそうなのでやめておこう。じゃ、どうすんの?(思考放棄)
「う〜〜〜ん……」
繋は困った様子で唸る。なんかこう……考えただけでパッと消えたり出したりできるのなら楽なのだが……。
「どうし……んっ!?」
その瞬間、繋は左腕の感触に違和感を覚える。
「き、消えてるッ——!!!」
今、脳内で:thinking:の顔文字が回転してる。うん。
何を隠そう、彼の左腕に先ほどまで収まっていたはずのPadが、跡形もなく消滅しているではないか。地面に落とした形跡もないし、猿に持って行かれたかなとかそんな想像をするが……
「まさか、『Padよ現れろ!!』って考えたりしたら……」
そうやって念じてみれば、左腕に先ほどのPadを持っていた時の感覚が戻る。見てみれば、そこにはすっぽりとPadが収まっていた。
「え、あ……うん。はい」
もうPadに関して考えるのはやめよう、と言いたげな口調で呟く。
と……とにもかくにも! これでPadと『AF2011-A1』に関しての問題は解決したということで! 良かったねあっはっは!!! はは……
「と、とりあえず『AF2011-A1』を《削除》したら乗ろうか……」
右手に持つ『AF2011-A1』を地面に置くと、Padに持ち替える。
ホームボタンを押し、Padを起動。その画面は『X-ジェット』の画像を表示した。どうやら先ほど『X-ジェット』のページを開いたままの状態だったようだ。その画面を閉じて、
「『AF2011-A1』は……えーっと」
画面をスクロールし、『AF2011-A1』を探す。『検索履歴使えYO!』と言う声が聞こえてきそうなものだが、このPad、何故か検索履歴を見る事ができない。もっと言ってしまえば、そもそもそんな項目自体存在しない。この手の検索ソフトやらにはあって当然のようなものなのだが……。という事で、残念ながら手動で探すほかない。
画面を指でスライドしていると、陳列されたロマン兵器の中で
「あっ、これか」
その銃……『AF2011-A1』を繋はタップし、《実体化》と《削除》の2つの項目が画面に表示。Pad上には『AF2011-A1』の立体画像が投影されているが……それは気にしないでおこう。そもそも関係ないしね!
繋は画面上の《削除》の項目をタップして、案の定画面は切り替わる。
「えーっと、なになに……」
切り替わった画面に表示された文章の羅列曰く『個数指定して削除しろOK?』だそうだ。それを示すように中心に真っ白い空欄が、左下には《キャンセル》、右下には《実行》と言う文字が表示されている。
「多分、さっきと同じでこの空欄をタップすれば……」
そう呟きながら空欄をタップ。画面下からニュルッとキーボードが現れる。どうやら先ほど『AF2011-A1』を《実体化》した際と、その操作方法は変わらないようだ。キーボードを用いて白い空欄の中に“1”と打ち込み、《実行》をタップする。
「おっ!?」
足元に置かれた『AF2011-A1』が、青い粒子を纏わせながら次第に消えてゆく。それはまるで、
その青い粒子はあっという間に『AF2011-A1』を包み込み、やがて跡形もなく消え去った。そこに、『AF2011-A1』の姿はない。本当に《削除》されたのだろう。
「これが削除……なんだかあっけないな」
それを見て繋は小さく呟く。別に爆発して粉々に粉砕されるとかそんなことは期待してはいなかったが……まぁ、何はともあれ平穏に済んでよろしいと言うことにしておく。
「……とりあえず『X-ジェット』に乗って上まで飛んでみようっと」
2つの問題が無事(?)解決したので、『Padよ消えろ』と念じてPadを消去。そうして繋は『X-ジェット』に乗り込んで、先ほどと同じように慣れた手つきで機器類を操作。エンジンを始動。あたり一面にクソほどうるさい騒音がこれでもかと撒き散らされ始める。それを少し我慢しつつ、エンジンのスロットルレバーを操作、エンジンの出力を上げる。そうして離陸体制を整えてゆっくりと離陸し、そのまま上へと上昇を開始した。
_数分後 森林上空
「おーっ……いい景色——な訳ないね!!!」
エンジンの放つ騒音が辺り一面を包み込む中、繋は『X-ジェット』でホバリングしつつ周囲を見渡す。だがその見る果て隅々までに緑の大地が広がっていて、当然ながら人工物らしきものは一切見当たらない。ま、大体想像は出来てたことだけども……。
出来るものならせめて何か人工物でも見つけたかったのだが、それが無い以上森の範囲外までひたすら飛行、そこから更に効率よく人工物を探すために何らかの航空機に乗り換える必要がある。
ともなれば、問題は森の外部までの距離。つまるところがこの森がどこまで広がっているかだが、航続距離の問題に関しては暫くの間は大丈夫だろう。
と言うのも、この『X-ジェット』は記録上では3機生産されているし、似たようなコンセプトで作られた物は幾つか存在するんだもんね! それらを用いて『ブラックバック作戦*』よろしくリレー飛行をすればいいだけの話だよ、うん!
……まぁ、その実態と言えば、あの紅茶全開珍作戦のように空中給油を繰り返すわけでもなく、どこか手頃な場所に着陸して乗り換えるだけなのだが。繋くんはまだ完全に紅茶に染まり切るには至っていないようで。
それに、そもそもがこの手段は保険に近い。もっと踏み込んで言ってしまえば、最終手段。この『X-ジェット』で都合よく着陸出来る場所を探すのはもちろん必要だし、そもそもの話『X-ジェット』以外の機体はだいたいアレで……その。まぁ、率先して使わない*に越したことはない。それでもどうしてもという時は……覚悟を決めるほかないだろう。真下でローターが高速回転して飛行するおかげで、一歩足を踏み外せば無事ミXチになるような機体に乗りたいなんて言う輩はいない、そうでしょ? ……そうだよね? つまり『X-ジェット』は比較的マシな兵器なのだ。みんなも是非使おう!(おい待て)。
「少し高度上げたら何か見えるかな」
『X-ジェット』のエンジンが更なる高音を撒き散らし始めると同時に機体が上昇を始める。
数分後、高度計は現在高度を約100m程と示していた。
「ふぉ……ふぉぉ……」
予想よりも体感高く感じるその高度に、繋は若干怖気付く。これがガラス越しならまだ良かったのだが、よりにもよってこんな機体に……いや選択肢なんてあってなかったようなもんだけどね!!!
「どっちに向けて飛ぶべきか……」
繋はその感情を押し殺し、どの方向に向けて飛ぶか考える。何か気になるものでもあればいいのだが……。
しばらく地平線を見つめていると、あることに気づく。
「あれは……なんだろう……」
霞んでよくわからないが、自分から見て左側、その地平線が、うっすらと黄緑がかっている。まさか……。
「草原……?」
もしそうなのであれば、これから取り得る選択肢は大きく広がる。Fi156シュトルヒ*で遊覧飛行をするもよし、ICBMを打ち上げるもよし。もっと言えば、“ホ
機体の安定を崩さないよう、慎重に『X-ジェット』の向きを西側へと向ける。そのまま前傾姿勢になり、飛行を開始した。
「燃料、足りるといいけどなぁ……」
繋の顔に、
_数十分後
「や……やっぱりだ!」
眼下でひたすら続いていた森。それは遂に終わりを迎え、一面の大草原が大地を染めていた。燃料はと言えば……。
「残りの燃料は……ギリギリじゃん!」
燃料計の針は、ほぼほぼ端を指している。もし草原までの飛行距離がもう少し長かったなら?
「——そ、そんなことより……着陸。そう、着陸しなきゃ……」
今も油断できないよね落ちたらどうすんのとかそう言う感情は全部押し殺し、エンジンの出力を下げて、ゆっくりと着陸態勢に入る。
「慎重に……慎重に……」
チラチラと下を見ながら、機体を慎重に操作。……そうして、何事もなく着陸に成功する。繋はエンジンを停止させ、その足を地へと降ろした。
「……はぁぁぁぁぁぁ」
繋はそのまま脱力するかのように地へと倒れ込んだ。飛行するだけで横風の影響もろに受けたらどうなるかなだとか、落ちたらどうしようだとか考えてしまうくらいには精神面でよろしくない機体だということは身を以て感じたのは言うまでも無いだろう。いや、感じざるを得ない。ヘリもこんな感じなのかなとか考えつつ、大空をぼーっと見つめる。
「……今度は、何に乗るか決めないとな」
周囲に広がる大草原。森から脱出した次の段階に踏み込んだ現在、これからどうするかを繋は少し思慮するのだった。
______
ハーメルンの登場希望兵器アンケート、怒涛のホームガードウェポン率に草がは、生えますよ……。
Pad機能の解説に関してはどうしても似たような文章が増えてしまうのは仕方ない……仕方ないよね?(威圧)
*ブラックバック作戦:ありそうでなかった夢の英国式渡洋爆撃作戦。その概要は、当時発生していたフォークランド紛争において英国と戦争状態にあるアルゼンチン。その国が占領したフォークランド諸島に存在する唯一ジェット戦闘機の運用できる空港を叩くべく、当時英国の保有していた3Vボマーの一つ、ヴァルカン爆撃機で爆撃しようぜというもの。とは言えフォークランド諸島までは最寄りの航空基地から見ても6000km離れており、最大飛行距離約6000kmのヴァルカン爆撃機では迫真片道爆撃しかできず、かと言って空母で攻撃しようにも……まぁ、その。ハリアーで航空基地に突っ込むなんて……ね?
つまるところ、詰んでいた。でも航空基地は叩きたいし……せや!空中給油で爆撃機持って行ってやろ!と言うことで、最大航続距離3700kmのヴィクター給油機10機を投入。島に辿り着くまでの過程で『空中給油した空中給油機で空中給油した空中給油機で空中給油した空中給油 機で空中給油した空中給油機で空中給油』することでバルカン爆撃機を無理やり飛ばし、航空基地を爆撃したよっていうのがこの作戦の全容。これは一度限りではなく、中止も含めば7回、実際には5回が実施された。英国は最高、はっきりわかんだね。
*率先して使わない:例を挙げるとすれば、『HZ-1』や『VZ-8 エアジープ』、『VZ-1 パウニー』等々。この中でも特に危険なのが『HZ-1』。足元で飛行用のブレードが高速回転してるから落ちたらミンチとなることは言うまでもないね!……あっ、言っちゃった。
ま、まぁ……うん。そ、それで、『VZ-1 パウニー』や『VZ-8 エアジープ』など、頭文字にVZが付いているもの。これはVTOL機の研究として開発された機体に付いてて、そのシリーズは全て合わせて12種類。
試行錯誤をしまくった結果かは知らないが、他はちゃんと航空機してる(動詞)にも関わらずこの『VZ-1 パウニー』や『VZ-8 エアジープ』は航空機していない。現実は小説よりも奇なりってね。
*Fi156シュトルヒ:1937年、ドイツで負傷兵輸送や弾着観測、偵察といった任務のために開発された
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第4話:Революционный ударный вертолет
題名は日本語で『革命的攻撃ヘリコプター』です。——えっ、急なロシア語はやめろ、だって……?すみません許してくださいなんでもし(ズザッ
______
「うーん、そうだなぁ……」
草むらに寝転りつつ、繋は未だ尚何に乗るかで悩んでいた。
『X-ジェット』はあくまでも森林からの脱出を目的として使ったもので、今回こうして草原があるにもかかわらず使用する必要が無いのは周知の事実。かと言って、『Fi156 シュトルヒ』などの“マトモ”な兵器や“傑作兵器”を何の捻りも無く脳死で出すのもなんだか……。うーーーん。
「別に航空機でもいいんだけど……」
この周辺の地形がどうなっているのか分からないし、もし航空機で着陸出来ない場所に街でもあれば、航空機の場合は滑走距離の関係等も考えればあまりいい選択肢とは言えない。それにこの地域が“もし”紛争地帯なんて危険地域であれば、攻撃される可能性も考えられる。万が一……いや、億が一にでもそんなことはないだろうが、対策をしておくに越したことはない。あとついでに、反撃もできるよう武装も欲しいね!!!
上をまとめれば、垂直離着陸が可能、かつ耐久性・攻撃性を兼ね備えた航空機が必要となる。そうなると《実体化》候補は絞られてくるわけだが……
「……どうせだし、ロシアの“アレ”にしようかな?」
そんな気持ちで《実体化》するものを決めると、繋は『Padよ出ろ!』と当然のように脳内で唱えてPadを出現。それのホームボタンをタップして起動して、ロシアの“アレ”を探し始める。
_数分後
「……見つけた!」
文字検索も閲覧履歴も糞食らえと言うPadなので探すのに少々手間取ったが、無事ロシアの“アレ”を発見する。それは——
「『Ka-50*』!!」
『Ka-50』。ソビエト連邦が採用、そして現在も運用されている『Mi-24』の後継として、ロシア連邦が“1995年”より運用しているカモフ社の設計した世界初の単座攻撃ヘリコプターである。
彼がどうしてこの機体を選んだか……その理由は何と言っても、二
まず初めに二重反転ローターとは、早い話がヘリのローターを上下に連結したようなもの。これの利点は、ヘリにとって不利とされる速度の追求が容易なことや、ローター一基のサイズを小さくできる点、テイルローターを使用しないことで全長を削減できる点等が挙げられるが、それと同時に欠点として構造が複雑になることで『整備性?死んだよ』と言った感じで、メンテナンスが難しくなる点等が挙げられる(そもそもヘリ自体部品点数が多いからやばい)。
そんな二重反転ローター、もちろん“
なんて言ったって歴代開発機で見ればKa-27*やKa-32*等、そりゃもうたくさん二重反転ローター搭載機を開発しているわけだし、そんな中でこうして二重反転の攻撃ヘリを作り上げたのだ。そう考えるとさして驚くことは無いだろう???(それでも世界基準で見れば十分おかしいんだよなぁ?)。
まぁ、世の中には交差式ローター*とかNOTAR*、ホットサイクル式ローター*にチップジェット*なり複合翼機*と、それはもうロマン満載なものがまだまだいるし……多少はね?
さて、二重反転ローターの素晴らしさは置いておいて……この機体一番の特徴……そして、同時に“敗因”と化した単座について。
先述の通り、攻撃ヘリとしては世界初の単座攻撃ヘリと言った。では逆に、何故『単座』攻撃ヘリは存在しないのか? これの原因は、パイロットが一人だと“ブラック企業もびっくりな重労働”になるからだ。
常に最前線での行動を強いられる攻撃ヘリは、いくら機動性が良いとは言え四六時中どこから飛んでくるかもわからない対空兵器を警戒しつつ飛行、そして目標に対する攻撃を行う必要がある。それだけのことをたった一人の脳味噌で行えるのかと言われれば、答えは簡単。難しいだろう。A-10*やSu-25*のような近接支援を前提とした航空機ならば離脱や被弾時の脱出が比較的容易としても、速度や被弾時の高度が航空機と比べれば欠如するヘリであれば……その答え、推して知るべし、である。
その激務を分担するために、通常の攻撃ヘリは複座型(2人乗り)……操縦者をガンナー(武装を操作する人)とパイロットに分けているのだ。
こうして書いてみるとわかるが、これを『攻撃ヘリ』と言う部類で解決するのは難しい。……でも、それを実現できる会社、あるんです。そう、カモフならね!
と言うのも、カモフ社が以前手がけた『Ka-25*』と言う哨戒ヘリで既に自動飛行システム等を実用化、それを特徴としており、その他もカモフ社の技術を持ってすれば単座攻撃ヘリなんて代物を作ることも可能だと考えられていたし、そうして実際、誕生した。それがこの機体、『Ka-50』である。
こうして開発された『Ka-50』にはアフガニスタン紛争で得られた教訓による防御性能の向上や、最大12日間のメンテナンスを行わずとも運用できる信頼性、成人男性が立つ範囲だけでメンテナンスができることなど、多数の利点が存在する……が、これ以上書くと明らかにこの小説の趣旨である『ストーリー性』が失われるため、最後に記述しておくこととしよう。とりあえず覚えておいて欲しいのは、『Ka-50』はロマンの塊である、と言うこと。これだけ覚えたら万事OK! この機体の悪い点とかないからね! うん!
「よし……早速《実体化》だ!!」
繋はPadを操作。『Ka-50』を《実体化》する。
ちなみに、今回《実体化》するにあたって、どうやら機体に装着された4つのパイロンにもそれぞれ武装が装着できるとの文が明記されていた。今回はどうせ対戦車ミサイルなんて使わないでしょと言う判断により、それら4つのパイロンの内、2つは増槽、残りのパイロン2つにはS-8ロケット弾用の20連装ポッドを搭載している。そもそも敵対勢力なんているのかと言う話だが、まぁ……観賞用! そう! 観賞用だよ!
眼前が『X-ジェット』を《実体化》した時よりもさらに眩く光り、それと同時に先ほどよりも遥かに度を超えた脳の激痛。そのあまりの痛さに、思わず頭を抱えて野に倒れ込んでしまう。
少し時間が経過して、脳の激痛が止んだ。恐る恐る頭を上げると、そこには……
「……『Ka-50』!!」
彼の眼前には黒一色に塗られた攻撃ヘリ……『Ka-50』が鎮座していた。無骨なボディに、特徴的な二重反転ローター。
「よしっ!早速乗ろう!」
繋はPadを消すと、『X-ジェット』のことを忘れて一気に『Ka-50』に駆け寄る。コックピットの防弾ガラスで構成されたドアを開いて、中に顔を入れた。
「はえ〜……」
機内にはHUDやら何かよくわからない機器類と、一本の操縦桿、照準器等々。パイロットが座る部分には、ポツンとヘルメットが置かれている。
「よいせっと」
ヘルメットを手に持ち、コックピット内へと入る。Hs129*ほどではないのかもしれないが、厚い装甲板に囲まれているおかげでだいぶ窮屈だ。
繋はドアを閉じると、手に持っているヘルメットを被った。それは大きいわけでも小さいわけでもなく、自分の頭にちょうどフィットする。
「よしっ!」
繋は期待に満ちたような顔で、右腕で操縦桿を握る。
「……わかります……これが、神の啓示ですね……」
なんかいきなりキャラ変えるなとかそんな声が聞こえそうだがそんなことは置いておいて!繋は慣れた手つきで後ろを向いたり前を向いたり……そんな感じで各所に配置されたボタンやら機器類やらを操作する。それはもう大した違和感なんてないかのように。そうやってしばらく機器類を操作していると……。
キュィィィィィィィィン……
「動いた!」
歓喜に満ちた声で叫ぶ。機体に上部に配置されたローターは2つとも回転を始め、やがてその速さは目にも留まらぬ速さとなった。
「そろそろ……いけるかな」
右ヨシ!左ヨシ!右ヨシ! はいOK! じゃ、スロットルレバーを前に倒して……
「離陸!」
2基合わせて出力3200Kwを発揮する機体に積まれた2基のターボシャフトエンジンがその唸りを一層と増すと共に、総重量9.8tの『Ka-50』がゆっくりと持ち上がる。
「と、飛んだ! 飛んだッ!!!」
『X-ジェット』とは違い、コックピットがあることで密閉され、外気に晒されない点がとても素晴らしい。寒くないからね!
「……よしっ!とりあえず周辺に何かないか探してみよう!」
そうノリノリで叫ぶと、繋は『X-ジェット』のことを放置……と言うよりも、その存在を忘れた状態で、大空へと飛び立ってしまった。
______
アンチャー〇ッドすこ。曲もストーリもすきすき。あれってロマンあるよね……地底世界に眠る古代都市とか!
*Mi-24:ロシアのガンシップこと『Mi-24』。又の名をハインド。なんか『対地支援しながら兵員輸送できたらカッコ良さそうだし強そう……強そうじゃない?』とかなんとか言って開発したら、『デカイ!脆い!遅い!』の三銃士を持ち合わせる最高に見た目がクールなゲテモノが誕生した。でも私は……南アフリカ産の改良型、Mi-24/35 Mk.Ⅲ スーパーハインドが……しゅき!(ダァンッ!!!
*Ka-50:ロシアのカモフ社が設計した革命的単座攻撃ヘリコプター。
……作中で利点は紹介した。なので今回は欠点……と言うよりも、悲しい点について解説することとしよう。
まず、第一の悲しい点。これは大体のソ連後期製兵器にあることかもしれないが……ソ連崩壊の煽りをまともに受けたこと。この機体は崩壊以前であれば『Mi-24』の代替機体として正式採用されており、数百機が導入されるはずだった……のだが、ロシア政府が『お金足りなˆ〜い』と言うことで、たったの12機で導入が中止してしまった。
そして、上に繋がる第二の悲しい点。それは、単座攻撃ヘリコプターという機体を他国が信頼しなかったこと、だ。上記の出来事で売り手が消えたカモフは当然困り、少しでも売り手を掴もうと各国の航空ショーにこの機体を展示するのだが、他国でも異例の二重反転ローター、しかも単座ともなれば、いつもスタンダートな形である複座・メイン/テイルローターがセットの攻撃ヘリコプターしか運用してこなかった
……そ、そこでね!慌てたカモフは『じゃ、じゃぁ……こんなの、どうですか(複座型のKa-52をスッ』したら、『ほーん……ええやん』と言うことでロシア空軍が72機を購入した。……え?『Ka-50』が本来埋めるはずだった部分はどうしたんだ、だって……?この機体の競合機である『Mi-28』が主力に採用されてた。タヒね!
ちなみに『Ka-50』はヘリコプターで初めてイジェクション・シート(上に射出されて脱出するやつ)を装備していたり。脱出するときは上のローターを爆砕して吹っ飛ばすので、半ば震電みがある。
*Ka-27:カモフお手製いつもの二重反転ローター搭載対潜艦載ヘリ。これの派生型に尾翼をレドームにした『An-71』の代替機として開発された『Ka-31』がいる。……あ、『突然だが、自己満でロマン兵器について解説してみようと思う(ry』も、宜しくお願いします……。
*Ka-32:Ka-27の民間機バージョンとかのこと。
*A-10:A-10!!A-10!!世界に冠たる我らがA-10神!!GAU-8アヴェンジャーと数多の兵装を用い、地上に存在するありとあらゆるものを粉砕せしめるルー〇ル閣下のご意向により現世に降臨された破壊神也!!
*Su-25:北極に住まうA-10の血縁関係のない子供。大体A-10と同じ。
*Ka-25:Ka-27にその役割を奪われつつあるカモフ社製元祖哨戒ヘリ。
*交差式ローター:早い話、ローターを横に並べて回転させる方法を用いるやつ。世界で初めて実戦投入されたナチスのヘリコプター『Fi282』とか輸送用に特化させたらいつのまにか無人機になりつつある『カマン K-MAX』が該当。
*NOTAR:コアンダ効果を利用して、ローターの発生させるトルクの反対方向にガスやらを噴射してトルクを打ち消すシステム。テイルローターがないおかげで患者搬送とかに使われるドクターヘリに積んであったりする。欠点は燃費がクソ。
*ホットサイクル式ローター:機内に設置したピストンエンジンまたはターボファンエンジンの動力を用い、上部のローター先端の散布口から排気とかを噴射。その回転で飛行すると言うもの。これの利点は、ローターそのものが回転するわけではないためトルクが発生しない点、ローターの回転に必要な機構が削減できる点。欠点は排気を誘導する耐圧管が腐食して破損したりすること。これは結構マイナーだと思う。
*チップジェット:原理的には上と同じ。何が違うかと言えば、ホットサイクル式ローターは一つの動力からローターを回転させて飛行するのに対し、こちらはローター先端にラムジェットエンジンを搭載、それを起動させて回転させることにより飛行する点。要は動力の位置と数。利点は上に同じ。欠点は燃費がクソ。あとうるさい(XF-84Hサンダースクリーチほどでは……ない?)。『ヒューズXH-17』とか言う化け物輸送機がいたりする。
*複合ヘリコプター:これロマンの塊。端的に言ってしまえば、ヘリコプターとプロペラ機の間に生まれた子供。速度追求が容易とか色々利点はあるけど、何よりも素晴らしい点はコンセプトだと思う。代表機に『X-47』や『RAH-57 シャイアン』がいる。
*Hs129:ドイツの空飛ぶ缶切り。色々バリエーションはあり、その中でも群を抜いて頭がおかしいのがB-3型。この機体は機体下部に長砲身7.5cm砲を装備しており、敵戦車が現れようものなら天板側背面と言ったありとあらゆる戦車の弱点部分をぶち抜く。
もっとも、機内が狭すぎて(装甲置きすぎたせい)エンジンカウルに直接機器類を付けるとか、あまりの重さとフランス国内で徴収したエンジンの馬力の低さとかでめっちゃ遅い(まぁ、そもそも対地攻撃機だから速度はいらないと言えばいらない)おかげで制空権がなかったらメタメタにされるとか、ある意味特性はA-10に近い。
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ほんへ
第5話:街らしき物に行けば、道は開かれよう
『Ka-50』の離陸を無事終えた繋は、コックピットの防弾ガラス越しに外を眺めていた。高度計がゆっくりと右に回転して、防弾ガラス越しに見える地上の風景が徐々に小さくなってゆく。その中には『X-ジェット』の姿もあり……
「……あっ」
それを目にした繋は、ハッとした表情で『X-ジェット』を《消去》し忘れていたことを今頃思い出す。とは言え、今は『Ka-50』を操縦している真っ最中。下手に事故を起こすのも怖いので、ひとまず今度着陸した時にでも消しておこう、と考えて脳内に留めておくことにした。……え? それまでに覚えているのか……だって? そんなこと知らん!
と言うかそれよりも深刻な問題が一つ。
「……行く先、どうやって見つけよう?」
『頭空っぽすっからかんだね君』とか言われそうだね、うん。こうして『Ka-50』を出すと言う指標までは決めても、そこから先は何も決めていなかったことが災いに転じてしまう結果になってしまった。“今度からは”ちゃんとそこらへんも考えないとななんて考えつつどうするか考えていると、一つの妙案が思い浮かぶ。
「……そうか。GPSを使えばいいんだ」
『どうして思いつかなかったのかなぁ(白目)』とか考えながら、繋は腕を『Ka-50』のコックピット正面に備え付けられたディスプレイへと伸ばす。そうして特にこれといった違和感もなく、ディスプレイに次々と表示されてゆく様々な設定を操作した。
「おっ、ついた」
ディスプレイに、Go〇gleMapで表示されるような緑や茶色の地面と思われるものに、灰色の線……道路と思われるものなどで構成されている地図画像が現れた。それは繋の乗る『Ka-50』を中心として表示されており、地図画像は『Ka-50』の動きに連動して動作している。
「とりあえず人と会って、この辺りのことを知るのがベストでしょ。
となると、問題は、人工物らしき物があるかどうかなんだけど……」
お願いだからま、心配しなくても多分okok! ……慢心? 何です、それは?
ディスプレイに表示された地図画像を拡大して、何か目立つ物……街などがないか確認する。
「って、ん……?」
灰色の線を目でなぞるように見ていると、ディスプレイ右上の端っこに散らばる、これまた灰色の点々を発見。『もしや?』と思った繋は、それを凝視する。
「……これって、街じゃ!?」
繋は嬉々とした表情でそう叫んだ。
と、言うのも、灰色の点々……それらは皆一様に、大小形様々なれど直線的な線で構成されており、まばらではあってもある程度密集している。こんなものが幾ら何でも自然パワーで成し得るとは思えないし、じゃぁなんだって言われたら……もう街くらいしか選択肢はないだろう。実際行って見ないことにはわからないが、街でなくても何らかの人工物である可能性は高い。
「ま、為せば成るとか言うし……」
どうせ行く道すらないんだし……こんな機会、逃すわけがないよなぁ? たとえ人がいなくても——ま、其の時は其の時だ! ね!
「よしっ!れっちごー!」
……——
「……残りは?」
どことなく旧
一方の尋ねられた兵士らしき男は、ドラム缶や木箱などと言った物資が置かれた場所の中から、一つのジェリカンを手に取りつつ、感情を一切感じさせない表情で答えた。
「ここにあるものが全てです。あとは“焼却”すれば、ここでの任務は完了ですね」
その兵士らしき男は、そう答えると同時に、山のように積まれた『人のような何か』の側でジェリカンの蓋を開く。そして、中に入った液体を勢いよくそれらにぶちまけた。かけられた液体は、山のように積まれた『人のような何か』の着る布にじっくりと染み込んでゆく。
それと同様の行動を、その周りで複数の兵士が行なっていた。そこに迷いはなく、ただただ黙々と作業しているように見える。
「そうか……ようやく、ここでの“駆除”も終わりか」
どことなく達成感に満ちたかのような表情、そして口調で、後ろのものを見つめる。
背後にあるのは、何やら砲撃されたかのような跡が残る、未舗装の通りに沿って作られた家々。それらは皆一様に黒い炭と化しており、その原型を一切留めていない。また、それらからは、全くと言っていいほど煙が出ていないことから、燃やされたのは随分と前であることが伺える。
「とはいえ、ここで“駆除”した数はスズメの涙程度……“夢”には、まだまだ程遠い」
少し暗い表情で、思いに
(だが、これは全て“夢”の為……。この世界から、“憎しみ”の根源足り得るもの全てを絶やし尽くすことが、我々の使命。
『退避』や『点火準備』と言った声が上がる中、小さく呟いた。
「全ては“真の世界平和”の為……。
その時、山のように積まれた『人のような何か』に、火が灯った。それは急速に燃え広がり、あっという間に火の玉と化す。それと同時に、あたり一面に
それが燃え尽きることを確認するよりも早く、士官らしき男は指示を下す。
「ここでの任務は完了した! 撤収準備が完了次第、次の対象地域に向かう!」
『了解!!』
その声と共に、兵士らしき男達は慌ただしく動いて、ドラム缶やら木箱やらを担いで、『23rd E.P.U』との文字が車体横に白色で書かれた、複数台のトラックへと積み込んでゆく。
——そんな時だった。
「……ん?」
ある一人の兵士らしき男が、物資運搬の手を止める。周囲の人間も、それにつられるように手を止めた。
「……なんだ? この音は」
空一面に響く、どこかレシプロ機の音に聞こえるそれ。音が徐々に大きくなっていることから、こちらに向かっているのだろうか。
「——お、おいッ! あれッ!!!」
ある一人の兵士らしき男が、声を荒げて右方向を指差す。その場にいる全員が、つられるようにその方向に顔を向けた。
「あ、あれは……航空機?」
その視線の先に存在したのは、航空機のような“ナニカ”。ただ、彼らの見慣れる航空機とは打って変わり、本来機首に付いているはずのプロペラが上部に、それも2つも付いている。更に言えば、彼らにとって航空機には絶対ついているはずの、主翼と呼べるものが見当たらない。
その奇妙な見た目に、一同は首をかしげた。
(新型機……? いや、そもそもこんな場所を空軍が、何の情報通達もなしに飛行しているはずがない……)
一方の士官らしき男も、他と同様に首をかしげ……いや、正確には“困惑”していた。
と言うのも、既にこの地域に展開していた敵はそのほぼ全てを先遣部隊が制圧していて、その戦力は前線に投入されているはず。前線の防空網も厚く、並大抵の航空戦力での突破は困難と聞く。まれに友軍の連絡機が飛行したりはするが、それは事前に空軍から通知がある。だが、今回それは無かったし、そもそもあんな形の航空機、見たことすらない。
本来あるはずの情報を求めて士官らしき男は通信兵を呼ぶ。
「空軍から何か情報は?」
「い、いえ……特に何も」
だが、当の通信兵も『何が何だかさっぱり』と言いたげな表情で答える。この様子から見るに、どうやら通信兵もあれに関して知らないようだ。
そうして通信兵を呼んだりしている間にも、あの航空機らしきものは、確実にそのシルエットを大きくしている。すなわち、明らかにこちらに向けて飛行している、ということ……。士官らしき男はどうするか決断を迫られる。
……だが、やはり空軍が構築した厚い前線の防空網を突破。そして、他にも
士官らしき男は、ふと周囲を見渡した。
見渡す限り目に入るものは、燃え盛る炎に、あちこちへと置かれた物資やトラック。そして、人。それらを一通り見て、熟考する。
(ここからの撤収には時間が必要だ……。とは言え、“アレ”が敵であった場合、対空火器も碌にない我々では蹂躙されて終わることは目に見えている)
思考をどれだけ張り巡らせても、魔法のようにそれが実現することはない。ただただ、今この場で選べる道は、二つに一つ。“戦う”か、“逃げる”か、のみ。
「…………いかがされますか」
ある一人の兵士らしき男が、そう尋ねた。その顔には、覚悟を決めたかのような表情が現れている。周りの者達は皆、一様にその顔をしていた。
士官らしき男はそれを見て、“戦う”と言う選択肢を選ぶことを決める。そこに、人間としての感情……『生きたい』と言う欲望、そして感情は存在しない。おそらく、この場にいる誰もがそうだろう。
彼は……いや、周りにいる誰もが、理解している。この命は世界に一つしかないことが。死んだらどうなるか、それは彼らにもわからない。それでも、彼らは“
ここで我々が命を失おうと、必ず『真の世界平和』と言う理想を継ぐ者は、
命は、各々に時間が違えど、必ず
それに、全員が死ぬ、と決まったわけではない。きっと、誰かは生き残る。そこからまた、『理想』までの道を紡いで行けばいい。何なら、誰一人死なないかもしれないのだから……。
「——総員、戦闘に備えろ。……全ては『真の世界平和』の為に」
『『真の世界平和』の為にッ!!』
______
そのうち挿絵もぶち込みたい。と言うことでペンタブを買ったものの、時間がないおかげで描けねぇ!ってかそもそもデジ絵は練習してないから画力が……!
*Sten Gun:第二次世界大戦初期、ダンケルク撤退戦でクソほど兵器を失ったイギリスが『エンフィールド工廠くん、支給、安価で大量生産できる武器くれや』とか言ったら出来た超安価サブマシンガン。その価格、驚異の7ドル60セント。当時アメリカがこれと同じ感じで採用したM3グリースガンが22ドルと考えると、如何に安いか想像できる。
名前は2人の技師の頭文字(Sさん、Tさん)と、エンフィールド造兵廠の頭文字(EN)に由来。
その安さや設計の簡素さから、軍需工場はもちろん自転車部品メーカーに装身具メーカー、果ては醸造所に至るまでの町工場やカナダなど英連邦の兵器工場とかもうお前銃かよと言わんばかりに、至る場所で量産された。Mk2では200万挺以上が生産されたり、レジスタンスにこれでもかと言わんばかりにばら撒いてナチスをいじめたりと、まぁ“
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第6話:えちち! 熱源感知装置!
「あそこ……街、なんだろうけど」
操縦桿を片手に、繋はどこか不安げな呟く。
「明らかに……“煙”、出てるよね」
ついでに言えば、明らかに家らしいものが見えない。それどころか焼け跡みたいなのが見えるんですけど。まさか火事だったりする? ……いや、気のせいか。うん、ソウニチガイナイネ! だって、火事が放置されるわけないもん!
……いや、でももし本当にそうなら、GPSで唯一見つけた街が燃えてましたって事に……そんな結末、あーもう嫌になりますよ!
「と、とりあえず近づかないことには、わからない……かな」
『まぁあそこに着いたらなんかわかるでしょ』とか言う明らかな楽観視と少々の不安を抱えつつ、飛行を続ける。
_数分後
時は経過し、数分後。繋の駆る『Ka-50』は、GPS上で発見した“街かもしれない何か”のすぐそこまで差し迫っていた。
それと同時に、繋の目には、信じがたい光景が写っていた。
「……えーっと、嘘でしょ、これ」
空から見えるもといえば、明らかに砲撃されたかのように感じさせる、幾つものクレーターが刻まれた未舗装の道路。そして、それに沿って建てられたのであろう焼け焦げた家屋らしきもの。また、どこか古臭さを感じさせる無人のトラックがあちこちに複数台停車していたり、“街らしきもの”の外れには深緑色のテントがいくつも立ち並んでいる。
遠くから見えていた“煙”もどうやらここがその発生源のようで、その証拠に、先述のテント群の近くで明らかに『煙出してまーす』と言わんばかりに、巨大な炎が上がっている。……あれ何燃やしてるの? すっごい燃えてるんだけど。
「一体ここで何が……?」
ここで何が起きたんだろうなぁとか考えつつ、“街らしきもの”の周りをぐるりと一度旋回する。
繋は本来、人と出会うためにここまで飛んできたわけだが、見た限り、ここに
「……一応、
赤外線を用いて何か生物がいるか確認しておこうと言う算段で、操縦桿を左に対して、『Ka-50』を“街らしきもの”から距離を取る。
“街らしきもの”の方向に機首を据えると、先ほどGPSを見るのに利用したディスプレイをまたまた操作。設定を変更して、サーマルモードに切り替えた。繋は操縦桿を掴む手は離さずに、ディスプレイに顔を近づける。
「んーと、どれどれ……?」
サーマルカメラを“街のようなもの”に向けて、ゆっくりと右から左へと動かす。
ディスプレイは、ゆっくりと黒色のドラム缶や木箱、トラックにぼんやりと白色に光るテント……ん、待て?
「……???」
繋の脳内で:thinking:の顔文字が激しく四方八方に飛び回る。なんだこれ。白色のテント?
サーマルにおいて、赤外線の強弱は白黒で表示される。そして、その赤外線を多かれ少なかれちゃんと出すものといえば、人を含む生物や、炎。もちろんその他の物も赤外線を少なかれ発生させているが、生物が発するそれに比べれば微量。そう考えるとただのテントそのものが、周囲よりも目立って赤外線を飛ばすとは考えられず、おそらく“中にある何か”が赤外線を発生させているのだろう、と踏む。
と言うことは、何か熱源を発生させるもの……人が密集しているか、はたまた何か火事でも……いや、ないか。とにかく、周りと比べて白色に光っているのは事実。それが一つ二つ……“街らしきもの”に存在する、ほぼ全てのテントに見受けられることから、ただの表示バグではないのだろう……違うよね?
「……人、なのかな?」
確証はないが、どこかそんな感じはする。まぁ、それだとテントで
ま、まぁとりあえず、だ。現在までの出来事を整理すれば、『“なんか街みたいな何か”に着いた!』、『なんやこれ!燃えカスやんけ! 人すら居ねぇ!』、『サーマルで確認……なんかテントの中にいる?』……と言った感じの流れになる。この間ずっと周囲を飛行していたにも関わらず、おそらくテントにいるのであろう“何か”は、一切その中から出て来ることはなかった。もちろん、テントの中にいるものが“人ではない、何か熱源を発する物”と言う可能性は十二分にあるが……。
そこまで色々考えても、この“街のようなもの”の状況は、どうにも腑に落ちない。何かが焼け落ち、今も現在進行形で炎が燃え盛っているにもかかわらず、そこに人は一人も居ない……。
……こんな状況、何が起きるかわかりませんね! ハイ! と言うことは、判別する方法は一つ! そう——
「……撃とうか!」
あっ、そっちね。てっきりヘリから降りて一つ一つ
繋はそんな誰かの声を全く耳に貸すことなく無視し、機体右下の30mm機関砲を操作。その照準を一番右端のテント……ではなく、その2mほど手前に向ける。
「へっへっへ……」
繋は
内心で『これを押したら法律破ったよって言われて投獄されそうだなぁ怖いなぁ』とかそんなことは一切考えず——
「ポチッ!」
その擬音語とともに、なんの
______
ツイッターでアカウントを新造した。小説の進捗を呟いたりしようと思います。
アカウントこ↑こ↓:https://twitter.com/ELDIAN18850378
アカウント画像とかは多分後々追加されます。
ポーランド国家好き。
*
日常ではなんかこう……色々使われます(語彙力の壁崩壊)。
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第7話:忘却は蘇り、己の世界は戻る。
繋くん目線は脳死して見るものですね間違いない。
______
……——
士官らしき男と多くの兵士らしき男たちが詰め込まれた少し大きなテント内。そのむさ苦しい場所には、外から聞こえる聞いたこともない大きなシャフトの回転音だけが、ひたすらに低く共鳴していた。
「…………」
そんな中、その場にいる全員は皆一様に静寂を保っている。緊張した様子で、まるで“何か”を待っているような——その時。
「——ッ!!」
彼らからして右方向か、突如として大きな爆発音が発生する。音の大きさから見るに、かなり近くで発生したようだ。真剣な眼差しで、一同は息を飲む。
……が、いくら待てども爆発が再来する気配はない。
「……様子がおかしいですね」
体感数秒ほどか、ある一人の兵士らしき男が不審に思うかのような口調で、静寂を破った。その腕にはボルトが引き下げられ、発射準備の整っているのであろうことが伺えるSten Gunのようなものが握られている。
「……油断するな。今ここで我々がテントに隠れていることが知られれば……」
士官らしき男は小さな声で、兵士らしき男にそう忠告する。彼らの目的がバレてしまえば、蹂躙されているのは見えているのだ。
……だが、先ほどの爆発音が『想像通り』であれば、どうやら判断は正しかったか。彼らの見た航空機のような“ナニカ”は、少なくとも味方ではないことになる。何せ、『連絡を何も寄越さず、突如として味方を攻撃する』ような軍はこの世に存在しないのだ。そんなことをするのは、精々味方に偽装した敵や、味方との連絡不足の末に発生する事例くらいで、加えてしまえばその可能性も今や存在しないに等しい。
「……あと、20秒」
士官らしき男が腕に巻いた腕時計を見てそう呟くと、それを聞いた周りの兵士らしき男達の表情が一気に引き締まる。
士官らしき男は体の後ろに手を伸ばし、ホルスターの中から一丁のエンフィールド・リボルバーらしきものを取り出す。
「……今だッ!!」
士官らしき男がそう叫ぶと同時に、テントの外へと繋がる布切れが勢い良く開かれた。
——……
「……あれ? 何も起こらないな?」
そのほんの少し前。繋は、操縦桿片手に“街のようなもの”を見つめつつ、そう呟いていた。その顔は至って平然としており、
「中にいるのが動物か人なら確実に出てくると思ったんだけどなぁ……」
しょんぼりした顔でそう呟く。
『一応もう一回射撃して反応がなければ降りようかな』なんて思って、火に油を注ぐとかそんな言葉を彷彿させるような半ば
「あっ! テントが——」
繋はそれを見て、思わず声を上げる。先ほどなんの音沙汰もなかったテント。その扉の役割をしているのであろう布が、いきなり開かれたのだ。そして、その次には……。
「って、おわぁっ!?」
間髪入れず、乾いた銃声音が次々と防弾ガラス越しに機内に伝わり、それと共に金属の衝突音が機内を包むかのように、低く反響する。
それが何を意味するか、瞬時に察知した繋は脊椎反射的に操縦桿を後ろに引く。機首が上を向いて後退する中、テントからクソほど湧き出る明らかに『私兵士です』と言わんばかりのカーキ色の見た目をした男たちが視界の端に一瞬入る……が、そんなの関係ねぇ! 今はここから距離を取るのが先だ先!
「やばいやばいやばい!!流石に銃はまずいでしょ!!」
悲鳴にも似た声で叫ぶものの、『全部お前のせいだろ』と言わんばかりの
「……はぁ、はぁ」
間一髪、か。繋を乗せた『Ka-50』は“街のようなもの”から距離を十分に取る。射程距離の限界なのか、射撃音は現在も継続して聞こえるものの、着弾音らしきものが聞こえることはない。ホッとした表情で操縦桿をゆっくりと前に倒してホバリングに移行する。
「ま、まぁ……いきなり機関砲を撃つのはあれかもしれないけど……」
防弾ガラスにいくつか刻まれた弾痕を見て、少し溜め……
「流石に銃はダメじゃない!?」
どっちもどっちだろとかそんな声が散々聞こえて来そうなものだが……ま、まぁあの時は
「って、そうだ! 機体の被害は……」
繋はハッとした表情で、『Ka-50』の被害状況を確認する。先ほどは少なく無い数
と、踏んでいたのだが……
「被害は……特になし?」
念のため機器類に異常がないかチェックするが、特にこれと言った異常は見当たらない。どうやら、本当に被害らしい被害は無いようだ。……防弾ガラスの破損?それは被害ではありません!(大本営発表)
果たして敵の使用した銃の威力が低かったのか、はたまた当たりどころが良かっただけなのかはわからないが、先ほどの攻撃で被害が無かったことは不幸中の幸いだった。流石ロシア製ガチムチ攻撃ヘリ! 民間ヘリじゃ死んでいたね!
「いやぁ……少し驚きはしたけど」
明らかにパニクっていた様子が脳内で再生されようとするが、即座に中止。
「目には目を、歯には歯を、銃撃には銃撃をって感じで……」
おい、待て。また同じ轍を踏むつもり……
(“正当防衛”だし許されるよね!)
え?“正当防衛”?あっ、じゃぁ
「仕方ないね♂」
繋はその言葉と共に、『お返しだよ♡』とか言いたげな
——……
兵士らしき男たちが、各々の持つSten Gunらしきものを『敵』に向けてトリガーを引き、その度に幾度となく乾いた銃撃音が周囲一帯に響く。排莢口から排出された空薬莢が宙を舞い、地面へと堕ちる。時折、『リロード!』の掛け声と共に射撃が中断するが、それもすぐに元通り。継続した
「……待て! 射撃中止!」
が、士官らしき男がエンフィールド・リボルバーらしきもののリロードをしつつ、そう声を上げた。少しのタイムラグと共に射撃が止んだ。
「流石に射程外か……せめてライフルさえあれば」
士官らしき男は、何事も無かったかのように平然と
と言うのも、彼ら『23rd E.P.U』は、あくまでも後方部隊。基本ゲリラやパルチザンと言った武装集団との戦闘を想定した近接特化の装備しか配備されておらず、取り回しが悪いものの、遠距離の相手に有効打が与えられるライフルが今このタイミングで無い事が悔やまれる。
だがそもそもの話、完璧とは言えない奇襲ではあったものの、多数の命中弾を与えたはずにも関わらず墜ちる気配すら見せないあの航空機のような“ナニカ”の耐久性は異常。並大抵のものではないな、なんて考えも頭の中には浮いていた。
『さて、どうするか』なんて言いかけた、その時だった。
「敵、発ぽ——」
誰だかわからないが、その声と共に発生したいくつもの大きな連続した発砲音と共に、爆発や破片、爆発により舞い上がった土砂が彼らを襲う。士官らしき男は、無意識に近くに形成された手頃なクレーターへと飛び込む。
「な、何がッ!?」
士官らしき男が、頭を抱えて驚きのあまりに上げたその声も、何度も何度も繰り返し発生する爆発音に掻き消された。熾烈さのあまりその場から動くことすら能わず、その状況把握を著しく阻害する。
ただ、その爆発の合間でわずかに耳で聞き取れる『痛いッ!! 痛いッ!!』だとか、『目がぁぁっ!!』などと言った悲鳴が、その被害を容易く想像させた。
しばらくして、まるで嵐のように吹き荒れた爆発が何の前触れもなく止んだ。士官らしき男は恐る恐る頭を上げ、周囲を確認する。
「……な、なんてことだ」
その視界に入り込んだのは、一般人目線では『
道端には何やら得体の知れない“肉
耳には、うめき声や火の燃える音。遠くからは、低くシャフトの回転音が入り込む。
嗅覚を刺激するような、硝煙や血肉の焼け焦げたかのような匂い。
そして、巻き上がった少々の土煙の間からかすかに見える、航空機のような“ナニカ”。
「……そう、か」
まるで諦めきったかのような表情で、そう一言。
彼はこの時点で、今現在あるどのような手段を以ってしても、あれが“撃破”出来る事は能わない……そう感じていた。
何せ、彼らは奇襲のつもりで攻撃したにも関わらず、結果はこのザマなのだ。相手に被害らしきものは見れず、逆にこちらには甚大な被害。それに、彼我の距離からして見れば、こちらから反撃する事は出来ず、逆に相手はいつでもこちらを蹂躙できる……生殺与奪を握られた状況。
その時、彼の脳内に変化が訪れた。
——それは、『開放感』。
「…………私は」
さも別人かのような口調で、ただ一人そう呟いた。右手で強く握りしめていたエンフィールド・リボルバーらしきものが、腕から力なくポトリと落ちる。
「……嫌だ」
彼の何がそう思わせたか、突如、どこか深い憎しみを交えたかのような口調で、そう叫ぶ。
「私は……死にたくないッ!!!」
刹那、航空機のような“ナニカ”から、光の槍のようなものが発射された。それも、まるで連射するかのように、連続して。それら全てが一様に、まるで流星のように弧を描いてこちらへと飛翔する。
「……に、逃げ、逃げなければッ……!!」
“流星”の向かう向きとは反対へと一心不乱に走る。遅れて発生する、幾重もの爆発。それら全てが先ほどとは比べ物にはならない威力である事は、その衝撃波、そして音で、後ろを振り向くまでもなく想像できた。
「うぁっ!!」
“流星”の一つが、彼にそう近くない場所に着弾。その衝撃波で前方へと吹き飛ばされる。頭から地面に突っ込み、全身を強打。加えて……
「あ、足が……足がぁぁぁァァァッ!!!」
太ももから下が無くなり、勢い良く血を吹き出すその右足を抱えてひたすらに悲痛な叫びを上げる。そこに先ほどまでの威勢はなく、ただ死を恐れていた。それはさも、戦争に行く覚悟がない人間……
激痛に苛まれて意識が朦朧としゆく中、彼ははっきりと、思い出す。
「そ、そうだ……」
“記憶”を。
「私たちは……私たちは、“奴”に——」
無情にも彼の意識は、大きな爆発と共にそこで途絶えた。
—
——
—……
【J mjejzkno yd mjv ykn cadqgnf. Ore J torch jy?】
【RH,ed cadqgnf. Cgnrzn od jy.】
……—
——
—
______
さて、初めての戦闘回でしたが、如何でしたか?……え?生々しい?お前頭おかしい?……そうです。その通り!
これからもこの調子で、変な戦闘描写にギャグもどきとシリアスもどきが入り混じるカオス、そして空を飛び交うパンジャンドラム(大嘘?さて、それはどうかな……)をお届けいたしますので、どうぞ乞うご期待ください。
さて、話は変わりまして。数日前、ツイッターや近況報告でも報告しましたが、登場兵器等に関するアンケートを新設しました。気が向いたらアンケートに回答したりして頂けると嬉しいです!!!!!!!!!!
アンケート:https://forms.gle/DG6e7KpQ6UPqUhiF7
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第8話:TABLET EVOLUTION
WW2時のイタリア軍機はやっぱりエロい。Re.2005とかG.55とか。ヘタリアなんていません!全ては工業力の低さが悪い!!!
毎日1000文字前後とかだったら毎日投稿が可能かもしれないので実験。
______
いくつもの痛々しいクレーターに、人の亡骸。燃えるトラックの残骸や、布が切り裂かれたテントといったものが散乱する“街のようなナニカ”に、一機の『Ka-50』が舞い降りる。いくらか周囲を旋回した後、着陸に適した、街の少し外れでホバリング。真下に突風をこれでもかと言うほど撒き散らしつつ、ランディングギアを展開、機体を安定させて、ゆっくりと着陸する。着陸の際、その自重でランディングギアのサスペンションが僅かに軋んだ。
盛んに勢い良く回転していたシャフトがその勢いを徐々に弱めて、やがて完全に停止。コックピット横の防弾ガラスで構成されたドアが、ゆっくりと開かれる。
「うわぁ……」
『やっちゃったよ……やべぇよやべぇよ』みたいなことを言いたげな表情をした、
「……やり過ぎたかな」
眼前に広がる一面の荒野を前にして、そう感じた。何せ、そこら中で何か燃えてるし、明らかに死体らしきものもある。更に言えば、それを啄ばまんとするかのように、空には数羽のカラス。
『い、いや。“正当防衛”だから……』みたいな、某合衆国も真っ青な脳内正当化工作を行うが、おそらく世間一般からは『人殺し!』だとか、『鬼畜!』、それに『外道!』やら、『オタンコナス!』なんて声が無差別空襲よろしく雨あられと浴びせられるんだろうなぁ、と考える。まぁ、さっきの状況だと平和的解決は望めない事は分かりきっていた事だしね! 平和的使者に攻撃をしていいのは中世までです、ハイ!
とはいえ、彼らには、『戦わない』と言う選択肢もあったはず。なのに、なぜかこうして戦う道を選んだのは不思議ではある。そもそも、ことの発端はテントの中から出てこなかったことから始まったわけで……。
とはいえ、これ以上考えてももう後の祭り。何か
「ロマン兵器で初めて戦えたし、いっか」
そんな考えでとりあえず帰結とする。これからもロマン兵器の活躍の場を期待しましょう!
そうして、先ほどの
「……おょ?」
前回同様ただのホーム画面が出るかと思えば、あら不思議。そのホーム画面にはどデカく『UPDATED YOUR TOOL』との通知が。なんだなんだと感じ、それをタップする。
「えぇっと……えぇ——えぇっ!?」
画面の表示が切り替わり、大量の文字の羅列が表示される。それら一つ一つを読んでいくと、『閲覧履歴確認機能の追加』だとか、『《実体化》可能対象の追加(注意:制限あり)』、『文字化けの修正』と言った、明らかに『これ誰かが手をつけたでしょ』と言いたげな文章が書かれていたのであった。
______
凡人よりも変人の方がわたしはすきです。だからロマン兵器もすきです。あなたはどんなロマン兵器がすき?
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第9話:異変に気付く者、平然とした者
これでようやく前菜が終了。次回から遂にほんへのほんへに入ります。
______
焼け野原。空にカラスが数羽ビュンビュンと飛び交う中、いつの間にか『Ka-50』の機内に戻っていた繋は、外のことなんて気にせず——
「……おぉ、おぉ!!!」
パンジャン印のPadを抱えて歓喜した。必ず、何者かにより手を加えられたかのPadの数々の新機能を試さねばならぬと決意したのだ。繋には、Padを更新せし者など誰かわからぬ。繋は、ただのロマン兵器を愛し凡人である。毎日パソコンの前で、四六時中ロマン兵器を漁って暮らして来た。だからこそロマン兵器の《実体化》が出来るPadの機能更新には、人百倍敏感であった。
……さて、以上で走れメ〇スリスペクト(?)は終了しまして。
前回“怖い人たち”を倒してこの地に降り立ち、何か護身用の武器を《実体化》しようと思ってPadを召喚。
すると何やらPadの機能が何者かの手で更新されていたわけで。そのPadに記載された文章を色々と読んでいたのだが、読み始めてまず繋の目を引いたものは何と言っても『人員の《実体化》機能を追加』との文章。これが事実なら、
「……え」
は、ならなかった。その文章を目で追っていくと、後ろに『《実体化》可能数は、敵殺害数とイコールになる』と言う文章が書かれていたのだ。つまりこのPadの言うことが正しければ、人員を確保する為には必然的に
しかも、《実体化》可能人員の種類は、『海軍』『空軍』『陸軍』の3つで区分けされている模様。全部出来る
「まるで、殺害を強要してるみたいだぁ……」
こんなことを強要するなんて、余程タチの悪い運営チームですね間違いない。人殺しを強要するなんて酷すぎるわ!!!(建前)。
その他に追加された機能として、『軍事施設の《実体化》機能の追加』やら、『食料品の《実体化》機能の追加』と言ったものが見受けられた。両者とも本質的には《実体化》出来ると言う点では変わらないが、前者であれば『事前に用意された施設“のみ”《実体化》が可能』で、後者であれば『戦闘糧食“のみ”《実体化》が可能』とのこと。まぁこの時は『あー制限かかっちゃうかー』みたいに感じていたのだが、最後にポン付けされたかのような文章を見て、驚愕した。
「……え?」
Padの最下部。そこに書かれていた文章は——
『現有の《実体化》機能及び今回追加された3つの機能(人員・軍事施設・戦闘糧食)、即ち4つの機能の内、1日に使用できる機能は上限“2つ”までとする』
ぽかーんとした表情で、その文章を繋は脳内で復唱するのだった。
……——
_この世界のどこか 同時刻
海に面したとある街。どこかヨーロッパのそれを彷彿とさせるレンガ造りの建造物に、ガス灯と言った物が各所に置かれていて、近代チックな雰囲気を醸し出す。
平和な世の中なら人が行き交っていそうなものだが、今は違う。一般人の代わりに皿形のヘルメットを被った兵士が行き交い、石造りの道の脇には車の代わりに、Valentine歩兵戦車やCromwell巡行戦車に酷似した物が鎮座。そのすぐ側では、それら各種戦車の搭乗員であろう兵士たちがビール片手に談笑をしている。その背後には弾痕がいくつも刻まれ、場所によっては窓ガラスが破損、さらには焼け焦げた跡の残る家々が伺えた。空には数羽のカラスが、太陽の光に照らされながらゆっくりと弧を描いて飛んでいる。
誰一人、民間人と思しき人影の伺えない街。その光景は、日本人が見れば間違いなく“平和”と言う要素からかけ離れた場所と答えることだろう。
そんな街の、かつては広場とされていたのであろう場所。そこに所狭しと立ち並んだ幾つものテントの内の一つで、とある報告が行われていた。
「……“第27他民族処理部隊”との連絡が途絶えただと?」
如何にも指揮官らしき見た目をした男は、伝令兵から伝えられた『第27他民族処理部隊との通信途絶』との報告を聞いて、驚愕の表情と共に『間違いではないか?』と聞き直した。その質問に、伝令兵は無表情に切り返す。
「間違いではありません。“第27他民族処理部隊”とは他と同様、2時間間隔で定期的に通信を実施していました」
『ですが』と言い、続ける。
「現在は定時交信が不通。再三通信を試みましたが……」
伝令兵は尚も無表情のままで、そう告げる。一方の指揮官らしき男は、何も言わずとも伝令兵の言いたいことを感受する。
指揮官らしき男は、裾を捲り上げて腕時計を確認した。それの針は12時16分を指している。
「……通信の途絶、か。
流石に、通信機の故障を願いたいが……」
現状全軍に配備されている通信機の性能や信頼性は、即座に『高い』だなんて答えられる代物ではない。尤も、それを軍上層部は知っているので、こういった事態が起きた場合の対処に関してのマニュアルが存在する。
「……ひとまず、マニュアル通り2時間後に交信を試行。それでダメであれば、偵察部隊を派遣……だな」
『まぁ、十中八九通信機器の故障だろう』と楽観的に考えて、伝令兵に退出を促す。
伝令兵は『失礼しました』とだけ威勢の良い声で告げて、テントから退出。テント内にはただ一人、指揮官らしき男のみがポツンと残っている。
彼は、テント中央にドンと置かれた机……その上に敷かれた一枚の大きな地図を見る。
そこには手書きの文字や矢印、飛行場と言った施設が描かれて居て、彼はその中の一つ……『メタスタード』と書かれた地名を指でなぞる。そここそが、“第27他民族処理部隊”の展開する場所……既に“平和”に導いた街だ。
「……現在の我が軍は、無敵だ」
彼は思い出すように呟く。
その思い出しているものと言えば、前線部隊の戦闘報告。それによれば、『敵軍は30年近く前の兵器を使用』だとか、『何やら奇妙な攻撃を使うなれど、脅威能わず』などと言った報告が上がっているのだ。それを裏付けるように、予想以上に戦力の消耗が少ないおかげで、この港湾都市へ本国から日々送られてくる備品や兵器は、不足しているどころか、余っている有様。
連戦連勝を重ねているこの現状、敵が後方にいるとしても、それは結局が非力なパルチザンや、敗残兵のみ。そんな小戦力、簡単に捻り潰せる。
「それに……仮に後方部隊の一つや二つが潰れたところで、換えはいくらでも存在する」
続けざまに一つ、捻れた笑顔で小さく呟いた。
「『真の世界平和』が実現する日は、近いな」
——……
______
今回は走れメ〇スリスペクト(大嘘)。
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人を殺すは生きる為、そして夢の為に。
第10話:Let's!勝手に人員配備!
「……って、ハッ!!」
繋はその叫びと共に、『制限』の内容による衝撃から立ち直って現世へとカムバックした。『かえってっこないで(切実)』とかそんな声、完全無視で。
「まぁ、うん。そりゃね……」
『ゲームと同じ物でバランス調整みたいなもんか』なんて付け足し、脳内で正当化する。
いやまぁ?決して『これでやりたい放題人員とか軍事施設とか大量に設営できないじゃん』とか、『バランス調整するような必要あるんかク〇運営が!わしゃ単にロマン兵器を嗜みたいだけなんじゃ!タヒね!!!』とかそんなこと考えていなくてですね……
「あ、でも」
救済措置なのか何なのかは知らないが、『但し、これと同時に弾薬や燃料、その他機材等の《実体化》機能も追加とするが、こちらは制限外とする』と書かれているので、補給面で問題は無さそうだ。肝心のそれを使うブツが無いと意味ないけどね!!!
『うーん。まぁ、無いよりはマシかな……』程度に考え、視点を機外に向ける。
「……とりあえず、ここに拠点でも作ろうかな?」
さらっと法律に反することを言うあたり既にPadに染まっているのかもしれないが、そんな自覚あるわけもなく。
だって30mm機関砲をぶっ放した挙句調子に乗ってロケットを乱射したお陰でこんな更地が出来たのだから、これを有効活用する以外選択肢は無いね! 土地の所有者なんてもう死んだんだ、そうに違いない! つまりここは所有者不明の土地なんです(お目目グルグル)!
「そうと決まれば、まずは何を置くか決めないと……」
勝手に話を進め、何を置くかと言う段階に移行する。
先ほど撃退したのがどこぞやのテロリストだったりマフィアだったりすると怖いし、これはまぁそう強い欲望じゃないんだけど……何かこう、地下施設みたいなのが作りたいんです。だって、ロマンがあるんだもん! 決してICBMサイロを併設しようだとか、そんなことは目的ではありません!
……とは言えそれを実行しようにも、何せ今回追加された『1日に使用できる機能の数は“2つ”まで』なんて制限が問題だ。
既に兵器を《実体化》していることから今日使える能力は残り“一つ”と考えられるので、果たして人員の《実体化》か、はたまた施設の《実体化》かで悩む……ことなんて無かった
「とりあえず人海戦術で今日は凌ごうかな。と言うかそれしか選べないし」
繋の脳みそでは、『とりあえず人員《実体化》して兵器に乗せておけば何とかなるでしょ』と言う楽観主義が形成されていたのだ。
まぁ確かに、施設を今現在出したって全部一人で管理する必要があり、その点を考えればまともな判断ではあるが。それに食料だって、今は格段空腹というわけでもないので必要ないだろう。
ではそこで、じゃあ人員を《実体化》しようと言う話に発展するのだが……
「……果たして、何人が《実体化》できるか、が問題かな……」
問題はそこである。つい先ほどの明らかな
——まぁ頭デッカチに考え続けても物事は進まないので、兎にも角にもまずはどれだけ《実体化》できるか拝見といこう。
繋はPadを起動し、ホーム画面へと移動。そうしたら、早速『兵器』、『人員』、『施設』、『その他』などの4つの項目が現れた。『施設』や『その他』に関しても気になるが、今は御構い無しに『人員』をタップした。
するとまたまた項目が現れ、『海軍』、『空軍』、『陸軍』の3つの項目が出現。今回は陸上兵器を運用してもらうつもりなので、『陸軍』の項目をタップする。すると……
「おっ、数の指定か……」
以前『X-ジェット』や『Ka-50』を《実体化》した際と同様、左下に《キャンセル》、右下に《実行》と言う文字。そして、画面中央に空白の項目が表示された個数記入画面が現れる。
前回同様空白の項目をタップ。すると、ある注意書きが表示された。それ曰く、『現在実行可能な、人員の《実体化》最大値は【30】。一度使用すると、再度の使用に2日を必要とします』とのことだ。どうやら先ほどの
また、《実体化》が連続して使用できないことは『兵器』でも分かっていたことなので、『まぁ当たり前か!』と言った感じに考える。
これの他にも、『『陸軍』の項目で《実体化》した人員は、その全ての陸上兵器を、兵科に関わらず運用することが可能です』との文章も書いてあった。即ち、『砲兵だとか戦車兵、歩兵に工兵と言った兵科の概念がクソも無い中途半端な
だが、今回の懸念事項であった『《実体化》できる人員少ないかも問題』に関しては心配する必要は無いだろう。とりあえず現代MBTを贅沢に監視・防衛用に置くとしても、メルカバ*やレオパルト2*でも搭乗員4人なので7両、10式*やT-14*なら自動化の恩恵で搭乗員は3人と、10両は軽く運用が可能。今回は特に何を配備するかなんて考えていないが、最悪それらに加えてソ連の試作戦車やらを使えばいいだろう。
「まずは《実体化》しよっと……」
何か変な事が起きると怖いので、『Ka-50』から降りる。『Ka-50』の側に立ち、空白の項目をタップする。画面に現れたキーボードを用い『30』と入力。そのまま、右下の『実行』の項目をタップした。
その瞬間、眼前に眩い閃光が走った——
______
*メルカバ:四六時中戦争やってる国イスラエルの生み出した乗員絶対守るマンMBT。
*レオパルト2:みんな大好き戦車大国ドイツ製の高性能MBT。
*10式戦車:恐らく抑止力以外にはあまり出番はないであろう日本の最新MBT。
*T-14:露国製最新鋭MBT。無人砲塔かつ将来的には車体自体が無人になるそうで。
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第11話:ヤバそうなのが生まれた
閃光が晴れ、繋は目をゆっくりと開く。
「——おぉっ!!!」
そこには、繋の眼前にはずらっと2列に並んだ兵士たちが鎮座していたのだ。誰もが微動だにせず、胸を張って『休め』の姿勢で立っている。やったね! 実験は成功だ!!!
それらを繋が嬉しみの表情で見ていると、その中の代表者だろうか、一人が前に出て、繋の前へと移動する。そうして繋の前に立つと、固く閉ざした口をゆっくりと開き——
「……貴殿が、私たちを《実体化》した“多田野 繋”ですね。我ら30名、《実体化》の命に従い、馳せ参じました」
右腕を繋へと差し出し、付け加えるように一言。
「何なりとご命令を」
『あっ、もしかして握手かな?』とか考えて、こちらも右手を差し出す。そうして握手すると、Padがブルブルと震えるとと同時に、通知音が。右腕で握手をしつつ、左腕でそれを見てみると、画面には『認証を完了。これより“第一次部隊”は、貴方との行動を開始します』と表示されていた。ということは……
「……これから直属として働くのかな?」
それを質問と勘違いしてか、目の前の男は『そうです』と答える。『単なる独り言だったんだけど……』と心の中でボソッと言う。
『そもそも今まで独り言を言ってきた自分もヤバイよなぁ』としみじみ実感しつつ、独り言なんて聞かれちゃ流石に恥ずかしいので今後は気をつけようねと心に刻んだ。
「……ところで、ですが」
繋の前に立つその男は、周囲を見渡しながら繋にあることを訪ねる。
「この状況は……一体?」
もちろん彼がそんなことを訪ねる理由なんて、一つしかなく。それ即ち、繋がつい先ほど調子に乗って焼け野原にした周囲一帯のことだ。
「あっ、これは……えっと」
なんと言うか色々後ろめたいことはあるので伏せる——が、そんなこと言わずともその男は瞬時に心の内で理解。
「……この状況が原因で我々を《実体化》した……それで間違い無いありませんか?」
繋はあっうんそうだよと言いたげな表情で焦りを交えつつ、勢い良く顔を縦に振った。
するとその男は、『詳しいことは知りませんが』と言って、続ける。
「わかりました。では、貴殿が我々に何を求めるか……それをお教え頂きたい」
要するに『命令よこせ』と言うことなのだろう。
うーん、そんなこと言われても、どう言えばいいんだろう……。だって、ねぇ?ろくな防御施設も無しに戦車で防衛しろ、なんて言うのもあれだけど……物は試しだね!
「今から兵器を《実体化》するから、それを使って……そうだな。ここ周辺に警戒網を作って欲しいんだ」
そんな“命令”をするのだが、一方のその男は何やら不思議な顔をする。
「警戒網……ですか」
「そうそう」
ウンウンと頷くが、一方の男は何やら不思議な顔だ。
「私たちは、貴殿の決定権に反する権限はありません」
『ですが』と言い、続ける。
「流石にその判断は……軽率では?」
「ウ”ッ!!!」
なかなか痛いところを突いて来るね……君?
「い、いや……でも、ほら。ロマンが……」
そんな説得力のない言い訳に、男は無下に切り返す。
「貴殿に《実体化》された以上、我々も大なり小なり『ロマン兵器を愛する心』があります。
ですが、ロマン兵器とて無敵ではありません。ともなれば……」
一旦貯めたかと思えば、次の瞬間彼の口からとんでも無い言葉が超音速で飛び出した。
「まずは“陸上戦艦”を配備しましょう! そうすれば警戒網なんてものは作る必要はありませんよ!」
「……えぇ、えぇ!?」
何を思ったかトチ狂ったように放ったその言葉に、先ほどの雰囲気とのギャップで思わず驚く。
「い、いや……今話してるのは」
「分かっています、警戒線の策定、ですよね! ですから——」
そこで繋は、彼のトチ狂ったかのような『陸上戦艦運用論』が何を意味するか理解する。
「それそのものが基地、かつ警備線……!?」
「そうですよ! それに、何の抵抗力もない敵軍が呆気なくやられる姿が……ゲフンゲフン」
あれ、なんか漏れてない?なんて言う隙もなく。
「貴殿の要望にもピッタリ! みんなのニーズにもピッタリ! これぞまさに世界平和!!! ラブアンドピース!!!」
フム……。中々ええやん、その案? 言ってることとやろうとしてることは完璧に矛盾してるけど。でもね……
「まだそこまで運用できる人員は……ナオキです」
「あっ……アッアッアッ……」
繋のその一言で、その男は泣き崩れる。いや泣いてないけど。
「じゃぁ……じゃぁですよ!? どうしたら運用出来るって言うんですか!!! 陸上戦艦を!!!」
「それはね……」
泣き崩れたその男の耳元に近寄り、静かに囁く。
「ここに警戒線を作って、拠点を作って……そして敵を
「——ッ!!!」
それを聞いてか彼の目にやる気の炎が宿り、勢い良く立ち上がる。
「……本当ですね?」
「うん!!!」
『……わかりました』。渋々納得したかのような口調でそう言うと、その男は素早く後ろへと振り返った。そこには、20余名のつい先ほど《実体化》した兵士達が。
「総員、我々の任務は『拠点の構築』だ!」
その男がそんな掛け声を上げると、兵士たちが皆一様に『FXで有り金全部溶かしたわ』みたいな顔をする。いや君たちもこの男と同類なのね?
「あぁ——もちろん、諸君らの失望の念は重々理解している! 私もその一人だ……」
『だが』と、威勢良く切り返す。
「これは全て、我々の夢たる『陸上戦艦』の為だ!!!」
その声を聞いた兵士たちが、ハッとした顔をする。
「全ての陸上兵器を粉砕せしめる、我らが理想……それを叶える為の、第一歩だと考え、それぞれの任に取りかかれッ!!!」
『『了解ッ!!!』』
その掛け声と共に、Padに通知。更にそれと同時に発生する、幾重もの閃光。短期間に色々起きすぎて、脳がパンクしかける。
「あ、あれ……あれ!?」
目を開けてみれば、そこには大量の『そこに無いはずの物資』達。
『そういえばさっきPadになんか通知来てたな?』なんて考えてPadを見てみれば、『野戦築城・及び拠点構築の為、以下の道具を『第一次部隊』を対象に《実体化》します』とのメッセージ。それの下には、テントや各種工作機械の名前が表示されていた。スコップにブルドーザー、大量に積まれたヘスコ防壁や土嚢袋と言ったものから、有刺鉄線。そう言った物がこれでもかと通知に書かれていて、眼前にはそれを示すかのように、所狭しに置かれた大量の物資。
驚きの表情でそれを見ていると、男がケロッとした声で、一言。
「我らが任を遂行する為、これより“拠点の構築”に取り掛からせて頂きます」
『では』と申し訳程度に付け加えると、その男自身も深みどり色のヘルメットを装着。スコップ片手に、兵士たちと共に作業を開始するのだった。
——どうしてこうなった。
そんな思考が幾度となく、繋の脳みそをぐるぐる回り続けるのだった。
______
創作意欲が上がって文字数が激変したりするので、少しでも良いなと思えば是非フォローや評価等宜しくお願いします。
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第12話:Pistola portante mobile a terra / Greedy set
題名前半部はイタリア語で『陸上の動く艦載砲』、後半部は英語で『欲張りセット』です!!!
あまりにも久しぶりに書いたので、文章等違和感あるかもしれません。そのくせ今回は総文字数が一万八千文字(本編/兵器解説それぞれ約八千文字)とか言う頭わるわる文字数です。
また、投稿できなかった期間で下記の内容を追加・修正しました。
・時間軸がごっちゃ混ぜになる危険性に今更気づいたため、第9話の相手目線の時間軸を数時間後から現在に移行。それに伴い相手の対応も(多分)軍隊らしく変更。
9話の内容は個人的に満足(は?)
今後とも、繋くん小説をよろしくお願いします。
______
「……ま、いいや。」
ヘルメットを被った30名キッチリの男たちが、手にスコップを持ったり重機を操縦するだとかそんなことをせっせとし始める。それを横目に繋は後ろに振り向くと、『Ka-50』に再度乗り込んだ。
もっとも、何も『Ka-50』を飛ばそうと言う訳ではない。『どっか座りてぇなぁ』なんて言う、単純思考の結果だ。
「あの人、『ロマン兵器を愛する心がある』って言ってたけど、
陸を制するロマン、『陸上戦艦』。でっかい主砲に、分厚い装甲!!! あと、車体がでかい。これ即ち男のロマン。はっきりわかんだね。
いやそりゃ自分も好きだよ? うん。『
とは言え、暗い話題を出すとすれば……現実はそう甘くない。『陸上戦艦』なんて代物を作るとなれば、資源はバカみたいに食うわ、デカ過ぎたら攻撃機の的だわ、重すぎて地面に沈み込む可能性があるわ……極め付けは、機械の信頼性がう〇ちと化す。
それを裏付けるかのように、第三帝国で総統閣下迫真の夢を抱き、完成した『Ⅷ号戦車マウス*』は……
「ま、それも含めて『ロマン』か!!!」
実際Padで《実体化》した場合一体どうなるか(主に機械的信頼性と大重量による影響、それと資源やランニングコスト)興味はもちろんあるが、今は人員が足りない……と言うよりも、先に拠点の構築が重要だからね! 当分はお預けってことだ!
「どうせだし、後で名前聞いておこっかな」
30人も《実体化》したおかげか(?)誰が誰だか一切見分けがつかないので、名前くらいは聞いておいても損はしないだろう。
『拠点作り終わったらがベストタイミング……かな』と、外で作業をする兵士たちを見つつ、脳内で付け足す。
それから数分、無言の時間が続く。時折そわそわしたり、ふと外の作業風景を見たり……そんなことをしているうちに、小さく呟いた。
「……にしても、暇だなぁ」
『暇なら外の作業を手伝えYO!』なんて意見が聞こえてきそうなものだが、個人的な感情込みで言えば、外で兵士たちがしているような肉体労働はしたくない、と言うのが本音。かと言ってすることもなく……。
「いつも通り適当に『兵器』でも見て……寝ようかな」
拠点の構築にはまだ時間がかかるだろうし、それがいいね、うん。
繋は脳内で『出でよPad』と念じ、ソレを召喚。手で持つ。
電源ボタンを押してPadを立ち上げると、狭いコックピットの中で、Padの画面をスクロールしたり、タップしたり……そんなことを数十分ほどして、一区区切り付けた繋は、一人少しの眠りに落ちるのだった。
_数時間後
空一面、綺麗なオレンジ色に染まった世界——つまり、夕方。
別に秋ではないので、キリギリスだとか鈴虫の奏でる音色は聞こえないが、山の向こう側へと徐々に沈んでいく太陽は、なんか……芸術的。あとついでに言えば、空に目を向けたらまだカラスが飛んでる。……いつまでここに居る気なの、君達?
「——繋殿。貴殿の命令通り、拠点構築を終了! 次の命令を……」
ま、それはともかくとして。
「……あのー。聞こえてますー?」
その声も虚しく、若干の反応も無きかな。『ビンタしたり体揺らしたら起きるかな……』とか、『あれ、死んだ? ……いや、でもそれだと……』なんて考えつつ、最後に一言、こんな言葉を試してみる。
「……アッ! パンジャンドラムガ空飛ンデル!!!」
「ふぁっなんやて工藤!?」
「あ、起きた」
ま、そんなこと言えば案の定起きるわけで。繋は勢い良く『Ka-50』から降りると、気迫少々で
「いや、居ませんが?」
「え」
繋は、あゝ悲しきかな。一語文を言い残して泣き崩れた。んなオーバーなリアクションしなくても……。
一方の
「それよりも、です。繋殿の命令通り、拠点の構築を終了しました!」
「……い、いや。もうここまで出来たんだ」
「ヘスコ防壁に土入れて積んで、また土入れて積んで……それを脳死で続けたら完成しますから」
見てみれば、周囲一帯……フィーリングで奥行き120mくらい、幅80m程の区域が、
どこを見てもヘスコ防壁、ヘスコ防壁、ヘスコ……いや待て? 四面それぞれの中心部にそれぞれ一つ穴が
ヘスコ防壁に取り囲まれた空間には、もう使用されていない重機が並べ置かれている他、はたまた使い切れなかったのであろうヘスコ防壁と言った器材。あとは焼け焦げた角材に、壊れたトラックなどが積まれた瓦礫や、半円を横に倒したような形の緑色のテントが3つ程立っている。
繋がそれらを一通り見終わるのを見計らって、
「……あとは、対空兵器を3基ほど置いて完成、と言ったところです」
「対空兵器、かぁ……。って、え? それ置いちゃう?」
その質問に
「何かあるかなぁ……対空兵器」
記憶の中から現状思い浮かぶ対空兵器といえば、イ
頭を抱えてなんとか
「…………」
……ところであの。なんかさっきから
「……な、何か『私に案がある』みたいな顔つきしてるね……」
「あ、気づきました?」
いや気づくもクソも無いよ? 明らかに『案ありますあります!!!』ってオーラ出してたよ???
「その……対空兵器はやっぱり……『OTOMATIC*』と『ADATS*』がいいと思うんです」
「……なに、それ?」
それを聞いた
「……実物を見た方がいいかもしれません。えぇ」
『Padで出しましょう』と言う意見に賛同した繋は、『興味』と『好奇心』で脳内を占めつつ、『Ka-50』の機内に放置していたPadを取り出す。あれ? 詐欺の匂いがするぞ?
「えぇーっと……『OTOMATIC』……っと。これでいいかな?」
検索ワードにそれを記入すると、Padには4件の画像が表示される。一つは
砲塔だけのものも含め、全て共通で何やらおっきくて太い♂主砲、そして2つのレーダーを保有していることが伺える。
「あっ、これですね。これを《実体化》して下さい」
いつも通り目の前に閃光がバッと光って目をつむり、続けざまに目をひらけば……
「……で、出た……」
『Foooooooo!!!』なんて叫び声を
『『Fooooooooooo!!!』』
この有様だ。
……え? あの。自分空気になってませんか?
「え……いや。ちょっと待って!!!」
明らかに空気な流れを繋が静止して、
「オート・メラーラ社製の開発した、艦載砲である76.2mmスーパー・ラピッド砲……それを車載化した地対空両用対空車両。それが、この『OTOMATIC』ですよ!!!」
「……!!!」
なんてこった! 艦載砲を車載化なんてだけでも十分希少だと言うのに、なおかつ地対空両用……そんなの革命的対空兵器じゃないか!!!
「これは……素晴らしいじゃん! 100点満点!!!」
まさかこんな兵器があったとは……。自分の無知さとイタリアの
「って、待って? さっきPadに表示されてた装輪車両とかって、もしかして……」
「えぇ。そのまさかですよ。この『OTOMATIC』……砲塔そのものをレオパルトや
「ファァァァァァァ!?」
うーん。これはスコい。ついでにエロい。
「こんなの……配備するしか無いじゃないか!!!」
『『『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!』』』
繋の歓喜にも満ちた声に続き、兵士たちも歓声を上げる。
いや喜び過ぎでしょこの人達。
「じゃぁ『ADATS』もついでに……」
「あ、そうそう。それも気になるんだけど……」
繋のその質問を聞いた
兵士たちが『OTOMATIC』の周りで万歳したり胴上げしたりとかそんな光景を敢えて無視しつつ、Padに『ADATS』と入力する。
「……これはまた随分と子沢山だなぁ」
Padの画面に広がるのは、砲塔のみのものや、それを搭載した装輪車両と装軌車両。そのどれもが4連装ミサイルポッド2基、また一部の車両は一門の機関砲らしき物を搭載していることが伺える。
先ほどの『OTOMATIC』がお財布に優しい週刊誌を攻撃方法に用いるとすれば、『ADATS』はお財布に厳しいルイ○ィトンのバッグを攻撃手段に用いるような物であろうことは想像に固く無いが……。
繋はあーだこーだしてそれを《実体化》。閃光(ry。
「お、おいッ!!! あれは……」
その瞬間、兵士と
『『『ADATS!!!』』』
「いや本当に仲良いね君たち!?」
『『『そうだよ』』』
「いやもういいわ!!!」
仲が良いのは(多分)よろしいことで。
「……それで? この『ADATS』はどんな兵器なの?」
「この『ADATS』はですね、作り込みの甘い戦争ゲームよろしく地対空両用ミサイルを搭載する兵器なんです!!!」
「……ゑ? 地対空両用?」
うん、気のせいかな? 地対空両用ミサイル???
「対空と対地じゃ求められる性能は全然違うのに、そんな男の子のロマンを実現したような兵器あるわけが!!!」
「それが驚き、あるんですよ!!!」
『まっさかぁ』なんて便宜上は言うが、実際興奮が止まらない。……いや、でも待てよ?
「……百歩譲って、対空は分かるよ? でも、対地は、その……どうなんですか」
欲張りセットじゃ対空には使えても、例えば有名なMBTであるM1エイブラム*ス、その改良型であるM1A1*ですら、
そんな疑問に、
「成形炸薬を弾頭に使用しているので、記憶が正しければその貫通力は
『そもそも対空兵器ですし』と、
いや、
しかもそれに続けて、
「あぁ、それとですね……。『ADATS』は砲塔のみでレーダーやミサイル等、対空兵器に必要なシステムが帰結しているので、砲塔単体を地上に設置しての運用は勿論の事、M113装甲兵員輸送車にM2歩兵戦闘車、チェンタウロ偵察装甲車にも搭載できますよ」
「へー、そうなんだ凄い……って、ファッ!?」
つまる所、この変態的対空兵器一つで、地上部隊に基地の防空任務、更には限定的なれど現代MBTにも対抗できると言うことになる。何その欲張りセットは……。
もはや驚きや興奮を超えて、呆れすら感じる繋。だが、人員不足の今、(一体どんな用途に使うのか知らないが)こうして地対空両用の兵器を運用しない理由はないわけで。
「う〜〜〜ん、これは……採用!!!」
『『『やったぜ!!!』』』
あ、またハモった。
何はともあれこうして鶴の一声、そして圧倒的支持で拠点への配備が決定された『OTOMATIC』と『ADATS』の二機種。さてどこに配置するか……。
それに関しては既に
『ADATS』に関してはと言えば、既に《実体化》済みの25mm搭載版『ADATS』を、拠点上空から見て上側に位置するヘスコ防壁の凸部分に配置。左右のヘスコ防壁凸部分には、カナダ軍仕様である『M113』の『ADATS』搭載版をそれぞれ一輌ずつ配置し、下部分にもヘスコ防壁の置かれていない空間はあるが、出入り口として使用する為のものらしく『『ADATS』が置けないね』と判断。そこで、拠点外部のすぐ側に『ADATS』の基地設置型が一基配備されることが決定された。
「……じゃ、その手筈でぱぱっと配備しようか!!!」
「わかりました!!!」
兵士達は意気込んで『俺初めて『ADATS』操縦するわ』とか、『『OTOMATIC』エロい!!!』、『そんなことよりスターゲイジーパイ食べたい』など関係ある話も明らかに関係ない話もしつつ、各々が『OTOMATIC』や『ADATS』に乗り込み、所定の位置へと移動させてゆく。
「んーっと……これを……こうしてっと」
一方の繋はパパッとPadを操作して、ヘスコ防壁の凸部分等に『ADATS』やら『OTOMATIC』を即座に《実体化》した。これで防空は完璧だね!
「……そう言えば、もう夜ですね」
既に《実体化》していた『OTOMATIC』と『ADATS』を所定の位置に配置し終えた後、
……いや急だね? まぁ確かに太陽が山の向こうに沈んで、辺り一面暗くなり始めてるけどさ。でも、上に目を向ければ相変わらずカラスは飛んでます。しつこい(こなみ)。
「そろそろ、夕飯にされますか? 私たちも、そろそろ……」
「あ〜……」
腹を抱えつつ、間接的に『腹減ったから飯寄越せ』と訴えかける
よくよく考えたら、今日の昼ごろにいきなり森に放置プレイされてから、ずっと何も食べてないんですね、えぇ。そんなのだったら当然、腹の一つや二つ減るわけで。
「……じゃ、夕飯にでもしようかな!!!」
「はい!!!」
「全員揃いましたが……『ADATS』に何名か人員を割いておきますか? まさか、攻撃があるとは思えませんが」
「ん……そうだね」
『了解しました』と
「では、テントの方で食べましょう」
かくして20余名の兵士達と、
……食事の最中に
……——
_同時刻 この世界のどこか
場所は、この世界のどこかに位置する
昼頃には姿があったValentine歩兵戦車やCromwell巡行戦車に酷似した物の姿はなく、時折歩哨がそこを通るばかり。やはり、非常に閑散としている。
そんな状況下で、この街に存在する広場に設けられた幾つものテント。そのうちの一つの内部には、服装から見て指揮官クラスなのであろうと見て取れる男が2名、集合していた。
「まさか、4時間近く出撃予定時間が伸びるとは……」
昼頃に伝令兵と会話していた指揮官らしき男は、半ばイラつきを垣間見させる口調で呟く。
「ウェーナー中尉。普段であれば一切故障しないにも関わらず、突如としてここに配備された車両……それも、予備も含めた
ウェーナー中尉と呼ばれた男の対面に立つ初老の男は、煙草をふかしつつ落ち着いた口調でそう告げた。
彼らが今話し合っている趣旨は、もちろん“第27他民族処理部隊”の消息について。更に詳細に言えば、偵察部隊が使用する予定であったオートバイやジープと言ったもののは勿論、ここに配備されて居た車両の全てが突如として前触れも無く故障した事に関してだ。
故障の理由はエンストからパンクまで様々。始めは敵の破壊工作かと考えられたかが、どれだけ探してもそれを確固付ける証拠は見つからず、原因すら不明。
ただ事実として、本来マニュアル通りであれば音信不通より2時間が経過した場合、即座に偵察部隊を派遣するという内容を実施する予定時刻が大幅に狂ってしまった。
「それに、偵察部隊はそろそろ出撃と言うじゃないか? それなら問題はないだろう」
「フェイン少将……確かに、その通りですね」
謙遜する口調でウェーナー中尉は、フェイン少将と呼ばれた男の意見に頷く。時間の遅れが取り戻せない以上、ここからどうにかしてその遅れを巻き返す他ない。
そんなことを考えていると、テントの出入り口が開かれた。入ってきたのはヘルメットを手にした男で、その身なりから見るに偵察部隊の者だろう。
「現在、19:09……我々特設偵察部隊はこれより、“第27他民族処理部隊”の任地への偵察任務に入ります。以上!」
「おぉ、任務、頑張りたまえ」
フェイン少将の声掛けに応じて『はい!』と威勢の良い返事をすると、その兵士はテントから退出する。
「……後は、結果次第だろう」
「……ですね」
フェイン少将の呟きに追随して、ウェーナー中尉は賛同した。
しばらくして、閑散とした街中にはただひたすらに、バイクの奏でるエンジン音が響き渡るのであった。
——……
______
え? ボフォース40mm機関砲? 何それおいしいの(白目)。
チェンタウロ・ドラコも出せるなら出したいけど、ざっと調べても一体いつから運用開始なのか、生産数は如何程なのかがわからないので今回は割愛。そっち方面をご存知の方、是非情報提供をお願いします()。
基地の図に関しては、できれば連休中に画像作ってTwitterに投稿したい所。
そんなことよりUSA!USA!USA!USSA!USSR!
*
これを動かす機関には8基の船舶用ディーゼル機関を採用し、その総出力はティーガー1のエンジン出力約700hpの大体24倍、17000hpだ!!! わかりづらいね!
完成? 試作……? なにそれ(すっとぼけ)
参考・引用:http://combat1.sakura.ne.jp/M247.htm
*
エンジンには4基の船舶用ディーゼルエンジンを搭載し、一輌の運用に要する人員は驚異の100名以上だ!!!
当然、こんなの完成することすらなかった(白目)。
参考:http://combat1.sakura.ne.jp/M247.htm
*FCM 2C:日本では『シャール2C』の名前でお馴染みのフランス軍初の重戦車にして、多砲塔戦車。しかもガソリン+電気駆動のハイブリッド戦車。いくらサン・シャモン戦車っていう前例があるとしてもこんなのが初めての重戦車とか、フランス軍お前頭おかしいんじゃねぇの???
開発開始時期はなんと第一次世界大戦中。ただし『作りたく無いから無理な要求出しまくって開発中止させたろ』とか言うめちゃ
主武装には75mmカノン砲を装備するほか、多数の機関銃を装備。一輌魔改造されて、155mm榴弾砲を装備したものも存在する。イスラエルかな?
一応第二次世界大戦時にも8輌が運用されたけど、ガソリン+電気駆動とか言う凝った作りでエンジントラブルは頻発し(これポルシェティーガー味あるね)、更に言えば重戦車のくせして一番厚い車体正面ですら装甲厚45mm、かつ搭載火器は旧式なので、フランス軍が第二次大戦中に運用していたルノーB1重戦車の正面装甲厚が60mmと考えても、その巨大な図体も加味してしまえば実戦で活躍できたかは謎。
実は歴史上存在する戦車で一番車体が長い(12m。TOG2は全長10m)。
参考・引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/シャール_2C
*FCM F-1:シャール2Cの後詰めで開発されたおフランス重戦車。ついでに多砲塔戦車。
主武装に90mm砲を装備し、副武装には47mm砲及び機関銃6挺、対空用として連装20mmボフォースを装備。
製造はされず、モックアップのみで終了。『よっしゃ生産や』って所まではたどり着いたけど、生産開始する前に工場抑えられてそのままフランス敗戦。ドイツの攻勢が遅ければ完成していたかもしれない。
あと自全備重量は優に100tを超える。お前、そんな大重量で(運用)大丈夫か?
参考・引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/FCM_F1
*Ⅷ号戦車マウス:今は亡きナチスドイツの戦車開発、その頂点にそびえ立つロマンオブロマンの化身。
『当時の連合国のどの戦車にも貫通されず、なおかつこちらは貫通できるようにしろ』とか言う無茶苦茶な仕様要項を実現しようとしたら、全備重量188tとか言うわけわからん重量になった戦車。
実車はダミー砲塔を積んだ1号車と完成品である2号車の合わせて2輌完成。
主武装には55口径12.8cm砲を装備し、副武装には36.5口径7.5cm砲、あと7.92mm機関銃を装備する。
主砲の55口径12.8cm砲は細かい差異あれど大凡ヤークトティーガーに装備したものと同じで、その貫通力は当時連合国が使用していたT-34-85中戦車やIS-2中戦車、あと装甲ペラッペラ量産ガンギメシャーマンの装甲を皆平等に3500m離れても尚貫通が可能。そりゃこれを積んでたヤークトティーガーの逸話として、農家の家の裏に隠れた戦車を家ごと貫通して撃破したとか言うとんでもエピソードがあるわけで……。
と言うかいくら超重戦車でも、(口径自体は違うけど)大戦初期に使われてた7.5cm砲を副武装に使うとかおかしいんだよなぁ???
肝心の装甲厚もぶっ飛んでいて、車体正面が純正で200mm、傾斜も加味すれば300mm近くある。砲塔も前面装甲だけで220mm、防盾で240mm。それらすべてを加味すると、合計装甲厚は驚異の440mm。ジークフロントライン対抗用に開発された“固定砲塔”戦車であるアメリカの
ついでに近接防御火器もある程度積んでいるので、肉薄攻撃に対する対策もバッチリ! ……あれ? 最強かな?
あ、それと現存します(クビンカ戦車博物館で検索!)。
参考・引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/マウス_(戦車)
*イ
*
この開発計画は1970年代、冷戦真っ只中でのDIVAD(師団防空兵器)選定の際に遡る。
当時米軍が採用していた対空兵器であるM163自走対空砲は、母体であるM113のちっちゃな車体に色々詰め込んでいたせいで拡張性が不足。更に、
この兵器の仕様としては、Bofors40mm機関砲2門、及び捜索・火器管制レーダーを装備。それらを砲塔にまとめて、旧式の
装備としてはまぁ妥当かつ保守的で良かったものの、システムの信頼性の低さに加えて、『米空軍が制空権失ってる状況ってあるのwwww』なんて言った『油断も大概にしろよ』を地で行く意見と共に、『絶対的制空権下で高価かつ複雑な対空兵器必要なの???』と言う意見も出たので、一度量産が命令されてすぐに量産が中止に。結果的に50輌完成したが、その大凡は演習用の標的として、少数が博物館に強制送還された。
参考・引用:http://combat1.sakura.ne.jp/M247.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/M247サージェント・ヨーク
*
これの開発には1980年代、英国が『ここ最近自走対空砲作ってないんだけどさ、そこに……ほら。チーフテンあるから……ね?(圧力)』と言ったので、企業側が『おう作ってやろうじゃねぇか(震え声)』と答え、開発。王立造兵廠とフランスのトムソンCSFが『
両者ともにイギリス軍の要望通り『レーダーや対空火器等のシステム全てを砲塔内で完結』させていて、前者が30mm機関砲を2門、後者が35mm機関砲を2門装備した砲塔を完成させ、イギリス本国に送付。そこでチーフテンへの搭載試験を行ったが、紅茶の前には無力か、何故か採用されなかった。あの『
ただし“本国”と言う条件付きであり、国外は違った。
当時採用していたZSU-57-2の陳腐化に迫られていたフィンランド軍が『ん? 君……安いね!!! こっちこない???』と言うことで、7基購入したのだ。結果としてムーミ○谷に颯爽と変態対空車両が現れ、ムーミ○谷は非武装中立の破棄を宣言……とかそんな冗談は置いておいて。
こうして本国以外の場所に活路を見出した『
中の人的に、デザインはこれと同時期に開発された『チーフテン・セーバー』の方が好きです。気になった方は『Chieftain Sabre』を画像で検索!!! この
参考・引用:http://combat1.sakura.ne.jp/MARKSMAN.htm
*OTOMATIC:日本語での読みはオトマティック。作中では粗方解説はしているので、ここでは解説していない部分を解説するものとする。
まずこの『OTOMATIC』、その開発は1980年代後半まで遡る。
とは言っても、何も軍部から『これ作れ』と命令されて作ったわけではなく、半ばオート・メラーラ社による自主開発のようなもの。
試作1号車ではオート・メラーラ社の製造するパルマリア155mm自走榴弾砲の車体に搭載したものを1987年に製作、同年のパリ航空省で披露される。
1990年には、レオパルド1の車体をベースに、電力を補う為
主砲には本文の通り、何らスペックダウンを実施していないオート・メラーラ車謹製『76.2mmスーパーラピッド砲』を装備。これは最大発射速度が分間120発と、単純計算であれば1秒間に2発と言うとんでもない速度で発射が可能な代物で、それを実現する為砲塔には自動装填装置を搭載している。ただし実際には給弾等の関係で持続しての発射は出来ない為、通常は3-5発のバースト射撃を行う。
射程は最大で16km。動きの速い航空機相手であれば有効射程は6km。
砲弾には近接信管付破片効果弾、近接信管付多目的弾、地上の装甲目標用の
主砲弾薬の搭載数は90発で、内64発を砲塔内に、残り26発を車体内に収容。砲塔内の64発の内29発は、即用弾として主砲の装填機構内に装填された状態とされた。砲塔内の64発の内9発、装填機構内の29発の内3発は、地上目標用のAPFSDSが搭載されている。
捜索・追跡用いずれのレーダーも最大探知距離は14~15kmになり、少なくとも8個の空中目標を同時に追跡することが可能だとされている。
データリンク機能も搭載しており、それを用いて目標情報の車両間授受を行えば、特定の車両のみがレーダーを使用して得た情報を他の車両にリアルタイムで伝送することで、他の車両はレーダーを一切使用せずに目標と交戦することもできる。
……この他様々な機能を搭載しているものの、当然ながらその価格は高騰に高騰。チェンタウロ・ドラコを除けば現状採用した軍は現れていない。
参考・引用:http://combat1.sakura.ne.jp/OTOMATIC.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/OTOMATIC
*ADATS:日本語での読みはアダッツ又はエイダッツ。名前の由来はシステム名である『Air-Defence Anti-Tank System:防空/対戦車システム』を短縮したもので、砲塔で完結した対空システムのことを指す。ある特定の対空兵器の名前ではないことに注意。
作中では粗方解説はしているので、ここでは解説していない部分を解説するものとする。
本システムは1979年よりスイスのエリコン・ビューレ社とアメリカのマーティン・マリエッタ社の手で始められ、1981年には試射を、1984年にはそのプロジェクトを完了した。
本システムのレーダーは超低高度から高度7,000mまでの目標に対して25km以上の探知距離を持っており、走行中であっても同時に20個までの目標に対する同時追跡能力と、その中から10個までの目標を選び出して攻撃の優先順位を決定する高度な能力を保持する。
『ADATS』が使用するミサイルは発射された際、燃焼時の白煙を抑えた固体ロケット・モーターによりマッハ3以上に加速され、60Gを超えるような高機動が可能である。ブースターの燃焼時間は約3秒で、その後は慣性で飛行する。
高度7,000mまでの飛行目標に対する最大有効射程は10,000mで、最小有効射程は1,000mとなっている一方、地上目標に対する最大有効射程は8,000mで、最小有効射程は500m。
またデータリンク機能を備えており、ADATS部隊(最大6両)の指揮車に指定された場合には車長が指揮官として部隊の動きを完全に把握することができ、車両間データリンクを通じて各車輌に指示を与える他、目標の割り振りを行うが可能である。
アメリカ陸軍では『FAADS(Forward Area Air-Defense System:前線防空システム)』計画に際して『LOS-F-H(Line-of-Sight Forward-Heavy)』として、M2歩兵戦闘車ベースのADATSシステム(これは『XMIM-146 ADATS』と呼ばれた)を1987年に一旦採用、367基発注したものの、システムそのものが高価であり、レーザー誘導方式であることから悪天候に弱い等の欠点を指摘され、結局量産には移されずに終わっている。
また、1986年には本システムをカナダ軍が36基購入し、『M113』に搭載したものを『LLAD(Low Level Air-Defence:低高度防空)システム』として運用。30年近く運用した後、カナダ軍は本システムの後継を模索するも見つからず、2012年には全てが退役した。
参考・引用:http://combat1.sakura.ne.jp/ADATS.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/ADATS
*チェンタウロ・ドラコ:前述の『OTOMATIC』を、あろうことかイタリアの戦闘偵察車『チェンタウロ』に搭載してしまったゲテモノ。ついでに今までイタリア陸軍の防空を担っていた『SIDAM25自走対空砲』の後継。
ただしそのまま搭載したわけではなく、『OTOMATIC』の砲塔、その軽量型である『AMRAD』を更に改良した『ドラコ』砲塔を搭載している。ややこし過ぎやしませんかね。
参考・引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/チェンタウロ戦闘偵察車
*
こちらも
防御面では車体前面に複合装甲を採用し、各国IFVのソレを凌駕する、
……と言うかアルマータアルマータアルマータうるさいな!!!
参考・引用:http://combat1.sakura.ne.jp/T-15.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/T-15_(歩兵戦闘車)
*
開発は『
主砲には105mmライフル砲を装備。高度な各種電子機器を搭載したことで、第二世代MBTを凌駕する主砲弾命中精度がある。
燃費は劣悪で、
現在アメリカが運用しているのはM1A2シリーズだけど、既にM1の生産ラインは閉鎖されているから全部M1A1等の改修により生まれてる。
参考・引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/M1エイブラムス
*M1A1:
湾岸戦争ではM1A1(HA)なる、装甲強化を目的として装甲板に“劣化ウラン”を装備したものが生まれたけど普通の戦車!!! ついでに“劣化ウラン弾”も使用するけど普通の戦車!!!
参考・引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/M1エイブラムス
*
そもそもの攻撃ヘリ誕生の起源はベトナム戦争。B-52でジャングルを絨毯爆撃しても、ナパーム弾をバラ撒いても、はたまた枯葉剤をこれでもかとふりかけても、全く降参する気配を見せないベトコンによるヘリボーン部隊等への攻撃に度々被害を受けていたアメリカ軍が、『せや、UH-1に武装山ほど載せたろ!!!』と言う発想で『UH-1』のガンシップモデルを製作。すると効果自体は見られたものの、今度は重量の都合で巡航速度が遅くなり『あのぉー、米軍ですけど。ヘリボーン部隊の護衛はどうなりますかね』みたいな感じになり、ヘリボーン部隊にも難なく追随出来る攻撃ヘリの開発が急務となる。
そこで米軍は、将来的な運用を予定する『
そして時は経過し、ベトナム戦争終了後。本来本命だった『
結果として米軍は、今は亡き『
内容としてはプロジェクトをフェーズ1、フェーズ2の二通りに分け、フェーズ1で機体そのものを、フェーズ2で武装や火器管制装置を開発することが決定。これは『AH-56』を開発していた際に、開発費用が高騰してしまったと言う前例を元に講じられた対抗策だった。
まずフェーズ1において、企業側から送られてきた各種機体を選定。その結果、『YAH-63』と『YAH-64』の2機種が最終選考を通過。二機の競争試作となり、(何故かは知らないが)『YAH-64』、後の『AH-64』が設計的に優れていると言う判断の下、晴れて採用されることとなる。
……と、ここまでが
まず何よりも重要なのが『Hellfire (Helicopter launched fire-and-forget。ヘリコプター発射の撃ちっぱなしミサイルの意)』対戦車ミサイル。これは『AH-64』開発プロジェクトのフェーズ2で製作されたもので、それまでに使用されていた『TOW』対戦車ミサイルと異なり、誘導方式が有線方式からセミアクティブレーザー方式に変更。有線誘導方式ではないことで飛翔速度が向上し、標的までの到達速度が短縮。母機の生存性に寄与している。
射程は8-9kmで、対装甲目標用の『Hellfire』対戦車ミサイルの装甲貫通力は1350mm程。トップアタック方式を用い、戦車のよわよわ部分である天板を狙い、攻撃する為、戦車側から言わせれば結構絶望。
初期型でこそファ
本機ではこれを最大16発搭載可能。
その他『ハイドラ70』ロケットが19発入るロケットポッドを最大で4基、基本武装として30mmチェーンガンを装備する。
……これだけ強い武装積んでても所詮ヘリなので、湾岸戦争では砂漠地域での作戦運用を想定していないことも重なって稼働率がう〇ちになり、代わりに『A-10』が活躍したのは秘密。
参考・引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/AH-64_アパッチ
*
開発動機はCIAが『空軍と違って、機体サイズが小さくて軽量、かつ見つかりにくいアサシンみたいな無人機欲しいな♪』と言う所有願望の元、ゼネラルアトミックス社が1994年より開発指令を受諾。同年1月から1996年4月までは『心神』のような先端概念技術実証が行われ、その期間中の1995年4-5月に作戦における実戦運用を完了。同年7月には進行形で勃発していたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で、混乱するバルカン半島への実戦展開を実施する。なんか初めておもちゃを買って貰った子供みたいやな。
2000年には60機の
現在も米軍等で使用されており、パイロットの損失を気にする必要がない為被撃墜リスクの高い偵察やテロリストの本拠地攻撃、トップの暗殺等なんでもかんでもとりあえず投入されている。
搭載可能武装は『Hellfire』対戦車ミサイル、又は『Stinger』のどちらかを2つ。
参考・引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/RQ-1_プレデター
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第13話:発見
いつも通り燃料切れ。
______
場所は変わり、テント内。角に置かれたランプがほんのりと内部を灯す中、繋は訳わからん表情で眼前の光景を見ていた。
「……あの。何これは」
「えっ、何って……」
『『食事』ですが?』と、
「あっ、えっ……えっ?」
一方の繋は動揺を隠せない表情、口調で『じゃぁ——』と、質問を叩きつける。
「これは……何だよゥッ!?」
「ですから、それが『食事』ですって」
繋はそう言ってがむしゃらに、あちこちへと綺麗に並べられた寝袋を指差すが、一方の
「いやいや、『食事』って、何かしら食い物食べることじゃないの!?」
まさか世界常識がすり替わったわけでもないでしょうに……そうだよね?
だが、そこでやっと繋の言いたい事が伝わったか、
「……確かに、『食事』とは食物を食べる事である……そう記憶しています」
「いや君妙な言い方するね? だいたいその通りではあるけど……」
「えぇ……まぁ」
繋のボソッとした呟きに
「ですが……“この世界”では、必ずしもそれだけではありません」
例えば、呼吸をする、睡眠を取る……そう言った、本来『食事』とは関係ない事でも……“この世界”における『食事』です」
「成る程ね……確かにそれなら納得——」
繋は納得げな表情を見せて、深く何度も頷きながら……
「する訳ないじゃないか!!! そんなのが『食事』な訳ないだろ!!!」
どんでん返しした。
いやだって、『食事』って食い物を食べる……それしか指さないしね?
「えっ、いやっ、でも……」
「それを“知っている”んだから、仕方ないじゃないですか!!!」
「なんだその言い訳!?」
知っているとしてもその理論は無茶なんじゃないですかね。寝てる間に『食事』だなんて……。
一方のどうしようもなさそうな口調で
「私だってそりゃまともな『食事』したいですよ!? ですけど——もう、今日は《実体化》のリミッターが掛かってるじゃないですか!!!」
「あっ、そういえば……」
『Padの通知にそんなこと書いてたなあ。確か『2つ以上の機能は使えましぇん!!!』とかだったか……』なんて今更のように思い出す。
「瓦礫の中に食べ物ないかななんて探してみましたけど……全部炭、炭、炭! ろくに食べられる状態じゃないですし!!!」
あっ。それは本当にごめんなさい。私がやりました。
「本来この方法は“エネルギー”回復量が少ないですから、最終手段に近いんです!!! でも……もう……これしか……方法は……ウッウッウ」
「あっ、あぁっ! 大丈夫ですかッ!!!」
泣き崩れる
さすがに泣くことなのか……な? 私にはわかりません! てか“エネルギー”ってなんのことですか。タンパク質?
「——っと、言うことでですよ」
その声とともに、
兵士たちは、安堵の表情で支えるのをやめた。
何はともあれ、
「繋殿。私たちには現状、『
繋殿が空腹である中、こんな行為が『食事』なんて言われても、ご期待に添えないことは承知ですが……」
『どうか理解してね!!!』とか言いそうな顔で
「あ、えー……ハイ」
「御理解、感謝します」
その後すぐ、
「では、私も
「ん……うん」
『どれでも好きな『
(……また、名前聞けなかったな。うん)
……——
「本部の情報通りであれば、この丘を越えると“第27他民族処理部隊”の任地が見える。各員は、周辺警戒を怠るな。
ジョニー伍長は私と共についてこい。」
『了解』
歩兵たちがバイクから降り、各々が『Sten Gun』らしきものを手にして周囲警戒を始める。
この部隊の隊長らしき者に呼ばれたジョニー伍長なる男は、古臭い2眼レフカメラを手にして男と同伴して丘を登る。
やがて丘の頂上までたどり着き、“第27他民族処理部隊”の任地をその目で捉えた。
「あれ、か……」
隊長らしき者はうつ伏せの姿勢になり、右手で胸元に掛けていた双眼鏡を、左手で、胸元のポケットから丁寧に折られた一枚の写真を取り出した後、懐中電灯をポーチから取り出す。その写真は以前空軍が撮影した、“第27他民族処理部隊”の任地の空撮写真だ。
これを持っているワケと言えば単純で、彼らにとってどれが“第27他民族処理部隊”の任地かどうか、見分けが付かないためである。
男は片手に懐中電灯、片手に双眼鏡。地面には写真を置いて、それを懐中電灯で照らしつつ、
「……ん?」
だがそこで、男は大きな違和感に
何せその写真には、小さなテントや数台のトラック。それくらいしかないのだが、彼が今目にしているソレには、大きな壁。明かりも激しく灯っていて、あからさまにそれが別物であることを表していたからだ。
「違う。何もかもが……違う」
「……そのようですね」
ジョニー伍長は、カメラのシャッターを切りつつ小さく受け答えする。
「……ですが、あれが“第27他民族処理部隊”の任地……いや、拠点でないとして、一体誰がいるんでしょう?」
「さぁな……。だが、そんな事は我々に関係ない。
全部、
その後も男は幾ばくか
「これくらいでいいだろう。司令部からのお達し通り……この場合は、証拠の確保次第、本部に帰還だ。
ジョニー伍長は数枚写真を撮影した後、下に戻れ。私は下の奴らにこのことを伝える」
「……了解」
男がそそくさと下に戻り、遅れて『帰還だ』と言う声が耳に入った。
ジョニー伍長はアングルを変えての写真を数枚撮影し終えると、下に戻る。
そこにはエンジンが掛かりいつでも出発できる状態のバイクが数台と、それにまたがる兵士が数名いた。
「来たな、ジョニー伍長」
先行して下に戻っていた男が、ヘルメットを被りつつバイクに乗るよう促す。
「少しお待ちを——っと」
ジョニー伍長はサイドバックにカメラを突っ込み、男から手渡されたヘルメットを被る。そうして後ろに座ると、『もう出発して構いません』と、男に伝えた。
「わかった。では、本部に戻るとしよう」
彼らはこうして、“謎の施設を発見した”と言う情報を抱いて静かに本部へと帰還する。
……その存在が脅威と見られるまでの時間や如何に?
……——
『ここすき』機能ってなんじゃ!?
……あっ、評価と感想、後兵器のリクエスト等お待ちしてます!!!
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