拾壱の型誕生秘話 (嘘吐天邪鬼)
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拾壱の型誕生秘話
ここはとある定食屋。
二人の男が向かい合っていた。
片や、市松模様の羽織りを着て前髪を後ろに流している少年。
おでこにある大きな傷痕が目を引く。そばにある大きな箱はなんだろうか。
片や、半々模様の羽織りを着て後髪を一つに括っている青年。
鮭大根を心底幸せそうに食べている。
ふと、少年が青年に疑問を投げた。
「義勇さん前から思っていたんですが、拾壱の型・凪はどうやって完成させたんですか?」
義勇と呼ばれた青年は鮭大根を飲み込んでから答えた。
「...凪か。あれは(俺が柱になって間もない頃だった────)
☆ ★ ☆ ★ ☆
ある日、俺は水柱としての任務で東京にいた。
既に10人以上の隊士が行方不明になっていて、血鬼術を使う鬼だと予想されていた。
ともすれば、十二鬼月やもと。
街の人に話を聞こうにも俺はそういうことにあまり向いていない。
調査は難航していた。
しかし、俺が滞在している間にも犠牲者は増えている。
焦りのあまり、夜の街を駆けずり回って鬼を探した。
今思えば余り良い手とはいえなかったな。
そのまま2日程が経った時、剣戟の音を捉えた。
その間、何も手掛かりを掴めなかった俺は焦っていた。
だから急ぎ現地に駆け付けたのだが、そこでは鬼と老人が斬り結んでいた。
老人はやたらと後頭部が伸びていたが、特に体格がいいということもない。むしろ細いくらいだった。
対して鬼は体格もよく、瞳には下参の文字。
十二鬼月だ。
どれだけ考えても鬼の方が優っている。
それなのに老人の方が押しているのだ。
しかも、拮抗もしていない。
最初は元鬼殺隊士だと思った。
しかし、老人の振るう剣は日輪刀ではなかった。
証拠に何度首を斬っても鬼が消滅しなかったからだ。
「首を落としても死なぬとは、また面妖な。お主、随分と畏を蓄えとるの」
「おそれ?なんの事だかわからんなぁ!」
「祢々切丸があればのう」
老人がボソリと呟いた言葉が聞こえた。
祢々切丸?あの老人の日輪刀の銘だろうか。
日輪刀がないならば助太刀した方がいいだろう。
「ここまで手こずらせた剣士は久しぶりだぜ!普段は老人なんぞ不味くて食えたものじゃないが、てめえは食ってやるよ」
「食われるわけには行かんのう」
血鬼術を使うつもりか!ならば隙を伺っている場合ではない。
鬼が僅かに見せた隙をついて首を斬ろうとした時、老人の気配が変わった。
まるでそよ風のようにぬらりくらりとしている気配から一転、周囲を圧迫するような気配に。
その気配に俺は気圧されてしまった。
するとどうだ。老人の姿が消えていくではないか。
実は老人は鬼で、血鬼術を使ったと考えるのは簡単だ。
だが、俺はどうも老人が
おそらくは呼吸の技なのだと。そう思った方が納得出来た。
鬼も俺と同様姿を見失ったのか、あたりを見回していた。
「どこに消えた!今更怖気付いたのか!?」
しかし、老人が消えた所からヒタヒタと歩く音がする。
まるで散歩に行くかのような穏やかな足音だった。
その時俺は
「いや違う!そこにいるのか!?」
この技の恐ろしいところは認識できない、その一点に尽きる。
そう、きっと老人が何かをした訳では無いのだろう。
先程の威圧、それに気圧された者が己から認識を拒むのだ。
まるで、捕食者に脅える小動物のように。
「
そう呟くと同時、鬼の体は細切れになった。
鬼も体力が尽きたのか、再生が酷く遅れていた。
「さて、そこに隠れているお主に後始末を任せても良いのかの?」
......いつから気づいていたのだろうか。
「鬼殺隊、冨岡義勇だ。任せておけ」
「鬼殺隊か。なるほどの」
老人は何かを考えはじめた。
鬼の体が再生していたためとりあえず首を斬ったが、塵になって逝く鬼の体に酷く驚いていたように思う。
「首を斬るだけで倒せるのか?」
そう聞いてきたから間違いないだろう。
「元鬼殺隊士なら知っているだろう。日輪刀以外では殺せない」
からかっているのか?
「おおそうじゃったそうじゃった。歳をとるといかんな」
はははと誤魔化すように笑っていたのが印象深い。
その後、老人は俺に後始末を任せると帰っていった。
戦闘時と違い、掴みどころのない雰囲気だった。
その任務が終わってから数日、あの時幻視した水面が頭から離れない。
あの技を俺も使えれば、鬼殺も楽になるだろう。
それから俺はあの鏡のような水面を再現するため鍛錬を行った。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「(────だが、今もまだあの技を再現できていない。凪はその最中に偶然出来た技だ。だからあの技と比べると)まだ未完成だ」
「ええ!まだ未完成なんですか!?」
(既に下弦の血鬼術を防げるのにまだ満足しないなんて......。さすがです。義勇さん)
心なしか少年が青年を見る目に一層の尊敬が混ざっているように感じる。
「おばちゃん、相変わらず鮭大根は美味しいねぇ。おかわりもらえるかい?」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない!少しおまけしてあげるよ」
そんな彼らから少し離れたところに後頭部が伸びている老人が女将に鮭大根のおかわりを注文していた。
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拾壱の型完成秘話
また自己解釈のオンパレードですが見ていただけると幸いです。
無限城。
鬼の首魁、鬼舞辻無惨の潜む虚の城。
虚の城というのは、上弦の肆の血鬼術によるものだからである。
通常であれば人間の存在を許さぬ虚の各地で、人と鬼の戦いが起こっていた。
それはまさしく総力戦であり、平安の世から続く血塗られた歴史の終幕を飾る戦いであった。
1人、また1人と死にゆく中でここにも一つ、決着する戦いがあった。
鬼殺隊、"水柱"冨岡義勇と竈門炭治郎。
対するは十二鬼月が一角、"上弦の参"猗窩座である。
☆ ★ ☆ ★ ☆
猗窩座の頸は斬った...!
炭治郎がやってくれた!
これで上弦の一角を、煉獄の仇を討てた。
だが、猗窩座は頸を繋げようとしていた。
そうはさせるかと折れた刀を投げつける。
あとは、気絶した炭治郎を庇いながら身体の崩壊を待つ。
だが、待っていれば崩壊するのか?
鬼舞辻のように頸が弱点でないのなら、いずれ頭が生えてくるのではないか?
その可能性が僅かでもあるうちは、楽観できない。
故に、俺は今から猗窩座の頸を再び断つ!
まずは動きを......ッ!
水の呼吸、肆の型"打ち潮"
炭治郎を狙った奴の肩を、腹を、袈裟に斬る。
斬ったはずだ。手応えはあった。なのに、何故もう傷がない?
折れた刀とはいえ、頭をなくして尚この再生速度。
流石は上弦の参ということか...!!
驚愕に身を竦ませたその瞬間、重い乱撃が俺を襲う。
なんとか直撃は防いだが正直、立っているのもやっとな状態だ。
視界は狭窄している。左耳は聞こえない。右手には感覚がない。いつ失神してもおかしくない。
全身の
むしろ、気絶してしまえば楽になれるだろう。
だが、まだ
姉さんに、錆兎に、託されたものを後に継ぐ。
もう二度と、家族や仲間を喪いたくない。決して俺が死なせない。
あの日、
だから炭治郎は俺が守る。かつて自分が守られたように。
今度は俺が守る番だ。
止まっていた猗窩座が動き出す。
手の届く場所全てに攻撃する。
それでも拳の重さは、脚撃の鋭さは変わらない。
力のこもらない全身に鞭打って折れた刀で攻撃をいなす。逸らす。
ふと、猗窩座の動きが止まった。これ幸いにと呼吸を整える。
拙いな。全身が痙攣してきた。こんな時、錆兎なら...ッ。
いや
今炭治郎を守れるのは俺だけだ。
だが、俺に守れるのか?かつて見た技の再現すら満足にできていない俺が。
否。否。守るんだ。俺が諦めれば俺も炭治郎も死ぬ。猗窩座は再生して他の隊士を襲うだろう。
駄目だ。心が折れそうになっている。落ち着け。落ち着け。なんとか頸を──。
ふと、猗窩座の頸を斬った時の炭治郎を思い出した。
闘気も殺気も削ぎ落とした静かな斬撃。まるで植物の様にただそこに在る気配。
あれを体得できれば再現できるかもしれない。猗窩座ほどの強者が認識
あの時憧れた、どこまでも静かな鏡の様な水面を。
呼吸を整える。呼吸を深める。深く深く、全集中よりもなお深く。
酸素を回せ。一瞬でいい、震えを止めろ。
そうして未だかつて無いほど好調になった時、猗窩座が動いた。
☆ ★ ☆ ★ ☆
冨岡義勇の気配が変わった時、猗窩座は動いた。
繰り出すのは周りの全てを屠らんとする破壊の嵐。頭、内臓、人の致命を的確に狙った破壊の人災。かつて猗窩座が人であった頃、67人もの命を奪った武技。
気圧されたように焦って繰り出したのだとしても人1人を破壊するのは容易い。
全集中・水の呼吸、拾壱の型 明鏡止水・凪
柱が折れた刀を下げた時、部屋に満ちるあらゆる波紋が凪いだ。
己の過去を見つめていた猗窩座が鏡のような水面を幻視するほどに。
そう、"水柱"冨岡義勇は確かに至ったのだ。かつて憧れた明鏡止水に。
そして確かに守り抜いた。匂いすらも凪いだ異変を感じとり、竈門炭治郎は意識を取り戻した。
作中語れなかったこと
・猗窩座が冨岡さんを認識できていなかった。というのは、視界がない上に血鬼術の羅針盤が反応しなかったからです。
私の考え
・いくら冷静な冨岡さんといえど、死にかけたら心も折れかけるし、つい弱音が出てしまうと思うの。
それはそれとして誰か鬼滅×ぬら孫小説書いて!
できれば妖怪は影に徹しているエモいやつ!
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