それでも月は君のそばに (キューマル式)
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原作開始前
プロローグ


色々あって小説から遠ざかっていましたが、リハビリをかねて執筆している作品。
不定期更新になると思いますが、気楽にご覧下さい。


 白昼の街に悲鳴と怒号が飛び交う。数分前まで何の変哲もない日常の光景だったそこは、まるで戦場の様相に即座に様変わりした。

 ……否、これは戦場ではない。こんな一方的な虐殺など戦場では断じてない。

 『屠殺場』……これが今の光景にもっともふさわしい言葉だろう。

 

 なんの前触れもなく空間から現れ、人々を炭素の塊へと変えていき最後には自壊する。人間以外には目もくれず、人を次々に殺す作業を繰り返す。

 そこに感情などなく、ただただ人を殺すだけの正体不明の化け物……それが『ノイズ』と呼称される異形たちだ。

 ノイズに対して、人が今まで培ってきた武器は何一つ通じなかった。銃弾もミサイルも、或いは核さえもノイズの前には等しく無力。だからノイズに出会ってしまったときに人ができることはただ一つ、『逃げる』ことだけだ。

 

 我先にと逃げ出す人々。そんな人々に追い縋り、次々に炭に変えていくノイズ。ここは阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 

「ああ……」

 

 ほんの数秒前まで生きた人間だった存在が炭へと変わる姿を、目の前ではっきりと見せつけられ、その女性は地面へとへたり込む。

 ガクガクと恐怖で震えが止まらない。逃げなければと分かっているのに、腰が抜けてしまって立つことができない。そんな彼女にノイズがゆっくりと迫る。

 

「誰か……誰か助けてぇぇ!!?」

 

 無駄なことだと頭の片隅で分かっていても生き物としての本能が叫び声を上げさせる。しかし、そんな彼女の声を聞き届けるものはそこにはいなかった。

 神や仏様への祈りも届くはずもない。それが届いているのなら、とうの昔に世界は平和になっていだろう。

 この世に神も仏もいないのだ。

 だが……!

 

「えっ……?」

 

 白銀の風が、駆け抜けた。

 その女性に迫っていたノイズたちが一瞬にして弾け飛ぶ。自壊したわけではない。明らかに何かによって破壊させられたのである。

 そしてそこには、白銀の戦士が佇んでいた。

 まるで西洋甲冑のような、全身を覆う白銀の金属質な外見。深い緑の複眼のような眼。そして黒いベルトの中央には緑の光が輝く。

 

 その姿に脅威を感じたのか、ノイズたちが一斉に白銀の戦士へと襲い掛かる。

 凄まじい数のノイズ、しかし白銀の戦士はまるで動じることもなく構えをとるとノイズへと躍りかかった。

 

「ふんっ!!」

 

 『圧倒的』……その戦いはまさにその一言に尽きる。

 白銀の戦士が廻し蹴りを放てば、まるで稲穂を鎌で刈り取るかのごとき容易さでまとめてノイズが弾ける。運良く接近したノイズが攻撃しようとするが、そこに肘打ちが叩き込まれノイズが崩れ去る。

 今まで人類を蹂躙する立場だったノイズはもはやその立場を逆転させられ、白銀の戦士に一方的に蹂躙されるままであった。しかし、未だノイズの数は多い。残ったノイズすべてが、白銀の戦士を倒そうと集結する。

 視界を埋めるであろうノイズの群れ。しかし白銀の戦士はそれに動じることもなく、腰を落とし構えをとる。

 

「バイタルチャージ……」

 

 白銀の戦士のベルトが、緑色の光を放つ。すると、緑色の光が白銀の戦士の身体を駆け巡り、それが両足へと収束した。

 

「シャドーキックッッ!!」

 

 空中に飛びあがった白銀の戦士は、両足を突き出しながら目にも止まらぬ速さでノイズへと突っ込む。両足でのキックだ。まるで天空から振り下ろされた神々のハンマーのようなそれは、ノイズの集団の中央に突き刺さる。

 その一撃に空間が震えた。直撃を受けたノイズはもちろん、そこを中心として緑色のエネルギーの波が広がり、その場にいたすべてのノイズを吹き飛ばす。つい数分前までノイズによって阿鼻叫喚の地獄と化していたその場所は、元の日常へと帰還を果たしたのだった。

 

「……」

 

 戦いを終わらせた白銀の戦士の元に、一台のバイクが走ってくる。バッタを模したような茶色と灰色のバイクだ。

 そこには誰も乗っていない。まるで自分の意思を持つかのように走ると、主人を迎える名馬のように白銀の戦士の前で停車する。

 バイクに跨り戦場を去ろうとする白銀の戦士に、助けられた女性は思わず言葉を口にする。

 

「あなたは……一体……?」

 

 その言葉に一瞬だけ白銀の戦士は動きを止めた。そして……。

 

「俺は仮面ライダー……。

 『仮面ライダーSHADOW』だ」

 

 それだけを呟くと白銀の戦士……仮面ライダーSHADOWは凄まじいスピードで戦場を後にする。

 

「仮面ライダーSHADOW……」

 

 九死に一生を得た女性はその名を繰り返す。そして自分の命があることを安堵しながら思った。

 

 神にも仏にも祈りは届かなかった。

 この世に神も仏もいない。だが人の祈りを聞き届ける者は……仮面ライダーは存在するのだ、と。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 ノイズを屠り、そのあとに追ってくる人間を振り切って白銀の戦士こと『仮面ライダーSHADOW』は人気のない裏通りへとやってきていた。

 バッタを模したようなそのバイクを降りると呟く。

 

「まったく……こっちは入学したてで結構忙しいんだぞ」

 

 カシャリと金属質な音を立てながら肩を落とすその姿。そしてその体躯とは明らかに合わない、先ほどまでとは違う少年の声に、ノイズを一方的に屠った強き戦士の面影はない。

 仮面ライダーSHADOWは2・3度辺りを見渡す。何かを探っていたのか、まるでセンサーのようにその緑の眼と額が数度点滅する。

 

「周りには……何もないな。 よしっ」

 

 すると、淡い光とともに仮面ライダーSHADOWの姿がほどけて消えていく。白銀のその姿が消えると、そこには変わりに一人の少年の姿があった。

 着ている学生服は真新しく、見る人が見れば近所の中学のものだというのが分かるだろう。

 

「さて……さっさと帰ろうか、バトルホッパー」

 

 少年がそう声をかけると、『少年の引いたママチャリのかごに入った、バッタのようなオブジェ』が電子音のような声をあげた。 

 少年はそのまま、表通りへとママチャリを引いて出ていく。

 

 これがどこからともなく現れノイズを屠っていく存在、『仮面ライダーSHADOW』の正体だとは、まだ誰も知らないことだった。

 




作者「ムッ! 弟者弟者、唐突に閃いた!」

弟「うん、絶対にロクでも無いことだって分かってるけど、なんだ兄者よ?」

作者「シンフォギアの393って、響にとって『ひだまり』なわけじゃん」

弟「うん、そうだな兄者」

作者「『ひだまり』ってことは……つまり『太陽』、『ブラックサン』なわけじゃん」

弟「うん?」

作者「ということは、『シャドームーン』が響の傍に出てくるシンフォギアSS書いても何もおかしなことはないわけだ!」 

弟「OK兄者、このまま病院に行こう。
  頭は専門じゃないけど見てやるから」

作者「やめろぉ、ジョッカー! ぶっとばすぞぅ!!」


と、こんな感じのやり取りを経て発掘したSSを改造しながら見せれるレベルにしたのが本作です。
シャドームーンって人気キャラなのに、ハーメルンではジオウとかのライダーものはよく見かけるけど、シャドームーンは見かけないなぁと思い、『無いなら俺が書く』のマイノリティー精神が働きました。
うん、私は謝らない。
次回もお楽しみに。


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第1話

 突然だが、俺こと月影信人はいわゆる『転生者』である。

 だがいつどうやって死んだとか、前世の名前はとかはまったく分からない。気がつけば赤ん坊として泣き声を上げていたという状態だ。

 だが、自分に前世があったというのだけは確信を持てる。それを裏付けるように記憶には『仮面ライダー』と呼ばれるヒーローたちの物語や物事が存在していた。

 動けるようになって調べたが、この世界には『仮面ライダー』という単語は物語にも都市伝説にも存在していないのだ。それを知っているというのは、自分という存在が普通ではないという証拠である。まぁもっとも、産まれたばかりの赤ん坊の状態から完全に自我がある段階で普通でないことは確定なのだが。

 

 とにもかくにも俺は『転生者』なわけだが、『だからどうした?』といえばそれまでだ。漫画じゃあるまいし特別な使命を背負った子、なんて話は両親やら親戚の会話で今まで聞いたこともない。うちはごくごく一般的な家庭だ。

 俺にあるのは『仮面ライダー』と呼ばれるヒーローたちの物語だけ。むしろ誰も知らない『仮面ライダー』たちの物語を知ってるなんてお得だね、程度にしか思っていなかった。最初は……。

 

 で、世の男というのには必ず通過儀礼というものがある。ヒーローへの変身願望……つまり変身ごっこ遊びだ。

 当然俺も男なわけで当時3歳になった俺はさっそく、この世界で自分だけが知っている『仮面ライダー』の変身ポーズをとって見たんだが……本当に変身できてしまったのである。あの時は両親不在の時で本当に助かった。

 

 鏡の中にうつるのは変身前の3歳の自分とは似ても似つかない、2m近い背格好の姿だ。

中身である俺を無視して、完全に仮面ライダーの姿に『変身』し、声すら変わっている。

 だが……。

 

「なんでシャドームーンなの? BLACKの変身ポーズやったんだけど」

 

 『シャドームーン』……それは『仮面ライダーBLACK』、そして続編である『仮面ライダーBLACK RX』に登場したライバルキャラ、史上初の『悪の仮面ライダー』である。

 その力は絶大で、しばしば最強ライダー論争で名前のあげられる『仮面ライダーBLACK RX』とも互角以上の戦いを繰り広げるなど、『チートのライバルは当然チート』な存在であると同時に、悪のカリスマ性に富んだダークヒーローとして下手をすると主役ライダーよりも人気のある存在だ。

 鏡では白銀のボディに緑色の眼を持つ姿が肩を落としていた。間違いなく鏡にうつるシャドームーンは俺である。

 

「……これ、どうやったら戻るんだ?」

 

 嫌な予感がしたものの、変身を解除したいと心の中で願うと割と簡単に変身が解けてくれた。

 ホッと安堵の息をつく俺。

 

「もしかして、他にも変身出来るんじゃ……?」

 

 気になった俺はさっそく片っ端から変身ポーズをとって見たものの、変身出来たのはシャドームーンだけだった。

 シャドームーンに文句があるわけじゃない。むしろシャドームーンは一番好きなくらいだが、だからといって他が惜しくないわけでもなく少し肩を落とす。

 そんな俺の肩に背後から何かが飛び乗ってきた。

 

「うわっ!?」

 

 シャドームーンの姿と声で情けない悲鳴を上げてしまった俺が見たのは、何やらバッタ型のオブジェのようなもの。

 

「んー……ホッパーゼクター?」

 

 感覚的にはそれが一番近い。色はパンチホッパー側の茶色と灰色だ。

 そんなホッパーゼクター(仮)はどこからともなく現れると、そのままついて来いとでもいうように跳ねだす。

 その後ろについていくと、庭に出た。ご近所様にこの姿が見られたらとビクビクしながらホッパーゼクター(仮)を眺めていると、ホッパーゼクター(仮)が庭に転がっていた三輪車に飛びつく。

 すると何と三輪車が光とともに形を変えていき、そして……。

 

「嘘だろ……」

 

 目の前に鎮座しているのはバッタを模したバイク。

 

「お前……バトルホッパーか?」

 

 その言葉にうなずく様に目の部分を点滅させる。

 カラーリングは灰色と茶、それに目の部分は緑とシャドームーン専用っぽくなっているものの、その形状は間違いなくバトルホッパーだ。

 

「つまり……お前がくっついた乗り物はすべてバトルホッパーになるってこと?」

 

 またもうなずく様に目を点滅させると、光とともに三輪車とバトルホッパーが分離する。こいつゴウラムみたいになってるな。まぁ、三輪車をバイクにするとか強化どころの騒ぎじゃないからゴウラムってのも厳密には違うけど。

 ホッパーゼクターっぽい外見でゴウラムっぽい特性を持ったバトルホッパーって、どんなごった煮なんだ?

 というかそれ以前に三輪車に乗るシャドームーンって……ああ、『マイティライダーズ』で乗ってたなそう言えば、と現実逃避ぎみに考える俺はもうすでに理解力がキャパシティーオーバーをしていた。

 

 時間をかけて色々と状況を呑み込んで分かったことは次の通り。

 

 

1、シャドームーンに変身できる

 

2、ホッパーゼクターのように呼べば空間を超えてどこへでも現れるバッタ型オブジェで、どんな乗り物でもバイクに変化させるバトルホッパー

 

 

 というところだ。

 1に関してだが、これは俺の知っている仮面ライダーに出てくるシャドームーン同様の能力があると、感覚的にだがわかる。腰の辺りに力の源である『キングストーン』の存在も明確に感じられる。どうやら今まで気付かなかっただけで『キングストーン』は最初から俺の中にあったらしい。それが覚醒したようだ。

 

 2に関しても無茶苦茶。三輪車がバトルホッパーに変わるのも頭を抱える光景だが、廃車場にあった大型トラックまでバトルホッパーに変形した。もう物理法則さんが息をしていない、あまりの無茶苦茶さである。

 

 自分には恐るべき能力が隠されていたことが分かったわけだが……「じゃあ、どうするの?」と言われても正直、反応に困る。

 いくらシャドームーンだからってこの力で何か悪事をとは考えられないし、日常生活にはあまりに過ぎた力だ。使いどころがない。

 せいぜいたまに一人コスプレを楽しもう……その程度に考えていたのだが、その考えはそうかからずに改めることになる。

 人類共通の脅威とされ、人類を脅かす認定特異災害―――ノイズの存在である。

 

 空間からにじみ出るように突如発生し、人間のみを大群で襲撃。人間の行使する物理法則に則った一般兵器ではダメージを与えられず、触れた人間を自分もろとも炭素の塊に転換させ、発生から一定時間が経過すると自ら炭素化して自壊する特性を持つ異形の怪物。その有効な対処法は『逃げる』ことだけだ。

 

 そんな神出鬼没の怪物であるノイズなのだが……俺はノイズの現れる気配を何となく察知することができた。さらにキングストーンの力なのだろうが、変身したシャドームーンならば本来ダメージが与えられないはずのノイズを容易く葬ることができる。

 ならば、と俺はノイズと戦うことを選んだ。

 

 正義感もあるし、誰かのためになるならという気もある。無論俺もすべての人々を救えるなど思ってはいないし、シャドームーンの力で戦うのを楽しんでいる一面も否定しない。

 戦いを決めた理由はちょっと一言では言い表せないくらい複雑だ。だがその中に『恐怖心』があることは否定しようもない。

 俺は転生してからの今の生活に満足している。両親も出来た人だし、周りにいるのも気持ちのいい人ばかりだ。

 自分が何もせずに、もしノイズの被害がそんな自分の身近な人に及んだら……そう思うと『怖い』のである。

 シャドームーンの姿をしながら、『怖い』という理由で戦うなんて何とも情けない話だが、それが俺の限界である。

 だから後悔しないようにやれる限りのことはやろう……そう考えてノイズとの戦いに身を投じて早数年、というのが今の俺の状況である。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「はぁ!!」

 

 腕を振り回すように水平チョップ。エルボートリガーのエネルギーも加わり凶悪な威力のそれがノイズを吹き飛ばす。

 

「シャドービームッ!!」

 

 遠くで人を追おうとしていたノイズの集団に、キングストーンのエネルギーを左手に集め放つ。稲妻のように枝分かれした緑の破壊光線はそのままノイズの集団を蹴散らした。

 十分、避難する人とノイズの距離は稼いだ。あとはいつも通り薙ぎ払う。

 

「バイタルチャージ!」

 

 構えてそう叫ぶと、キングストーンのエネルギーが全身を駆け巡り、右手に収束する。

 

「シャドーパンチッ!!」

 

 飛びあがってからノイズの中心に拳を叩き込む。するとエネルギーの余波でノイズたちは粉々に吹き飛んでいった。

 

「……」

 

 ノイズとの戦いが終わりいつものようにバトルホッパーで戦場を去ろうとすると、男の子と目が合う。震える母親に抱かれた5歳くらいの男の子は満面の笑みでこう言った。

 

「ありがとう、仮面ライダー!」

 

「……」

 

 俺はそれに静かに頷いて返すと、バトルホッパーを発進させる。

 ノイズと戦い続けて数年、俺はノイズとの戦いでは『仮面ライダーSHADOW』を名乗っていた。そのせいで『仮面ライダー』という単語が都市伝説くらいには知られるようになっている。世間では、『ノイズを倒して人を助ける謎のヒーロー』くらいにかなり好意的に受け入れている。

 正直に言えば奇妙な化け物呼ばわりや、石を投げつけられるくらいはあるかと覚悟していたので嬉しいことだが……どうも作為的なものを感じるのは気のせいか?

 

 何故俺が『仮面ライダー』を名乗っているのかというと、これは自分への戒めのためだ。

 俺は本家本元の仮面ライダーのように、『正義の味方』ができるとは思っていない。身近な何かを救う程度がせいぜいの器だろうと自覚している。だが『仮面ライダー』を名乗る以上その名を汚すようなことはしないよう精一杯をしよう、という自己流の誓いである。

 

 しかし……バトルホッパーを走らせながら考えるが、このシャドームーンの力は本気でヤバい。ノイズなど物の数ではない圧倒的な戦闘能力だ。しかもそれを完全に使いこなせている。

 産まれてこのかた格闘技などの経験のない俺が、変身をするとまるで最初から戦う術を知っているかのように身体が動くのだ。何と言うか、ここまでくると半自動のロボットに乗っているような感じだ。

 だがシャドームーンの凄さは単純な戦闘能力だけでなかった。むしろ、キングストーン『月の石』の与える数々の能力が凄い。大きなところでは回復能力だ。

 シャドームーンは月光を浴びることで死んでも蘇ったが、同じように夜になると回復力が爆発的に跳ね上がる。たまに戦いで手傷を負うこともあったが一晩で傷跡すら残らない完全回復しているし、ここ数年ノイズとの戦いで不規則な睡眠時間になっているが、身体が疲れることは一度もなく、産まれてこのかた病気にもかかったことがない。睡眠をとらなかったとしても疲労もなく、常にベストコンディションを維持している。

 他にも列挙すればきりがないくらいにキングストーン『月の石』の力はすごかった。まさしくチートである。こんなシャドームーンの互角以上に強い『仮面ライダーBLACK』と『仮面ライダーBLACK RX』がいかにチートか間接的によく分かった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 いつものように人気のない裏路地で変身を解除し、バトルホッパーをバイクから通学用ママチャリに戻して表通りを歩きながら、俺はノイズたちのことを考える。

 

(奴らは明らかに人工物だった)

 

 シャドームーンの持つ分析透視能力『マイティアイ』でノイズを分析してみたが、あれは生命ではなく、何らかの目的があって何者かに造られた『人工物』であることが分かっている。

 

(だとしたらノイズの裏にいる何者かとは一体……?)

 

 だが思考は一瞬で終わった。

 シャドームーンである俺の存在。そして人類を襲う正体不明の異形の人造怪物であるノイズ。この二つの事実から、俺は即座に真相にたどり着いたからだ。

 

「なるほど、ゴルゴムの仕業か!」

 

 おそらくこの世界にはどこかに『暗黒結社ゴルゴム』が存在し、ノイズは奴らの使役する戦闘員のようなものなのだろう。実際、戦闘能力としては怪人のほうが遥かに強く、ノイズは簡単に倒せる程度の耐久力だ。だが、それは俺にとっての話である。

 個ではなく集団、しかも突如として現れ対抗手段もなく無差別に人を襲うなど、怪人よりもタチが悪い。『人類皆殺し作戦』とか、そういうゴルゴムの作戦なのだろう。間違いない。

 

「おのれ、ゴルゴムめ!」

 

 ゴルゴムがいるのなら、黙って見過ごすわけにはいかない。奴らの行いは確実に世界を暗黒に変える。そうなれば確実に俺の身近な人々が害を受ける。それが怖い。ならばやるしかないだろう。

 俺はまだ姿を見せぬゴルゴムに闘志を燃やす。

 

「しかし、そうなるとブラックサン……仮面ライダーBLACKもこの世界にいるのか?」

 

 それが気がかりだ。もしゴルゴムにいて敵だとすると最大の脅威になるだろう。

 だが、何となくだが俺の中のキングストーンが『違う』といっているような気がするし、そんな気配も感じない。ブラックは俺のようにキングストーンがまだ覚醒していないのかもしれない。

 

「原典のように戦う気は俺にはないし、共闘できたら心強いんだが……」

 

 そう呟いて俺は帰り道を急ぐ。

 中学生には学業も大事なのだ。帰って勉強しないと中間試験で酷いことになってしまう。

 学生と仮面ライダーの両立は中々に難しいのだった。

 




SHADOW「正義の味方として認知されて嬉しいんだが……何だか作為的な感じがするぞ」

OTONA「いつでも味方になれるように、情報操作で好印象にしておいたからな!」

SHADOW「なんという厚いお・も・て・な・し。
     それにしてもノイズを使い人々を襲うゴルゴムめ、ゆ゛る゛さ゛ん゛っっ!!」

フィーネ「ファッ!?」

いわれないゴルゴム認定がフィーネさんを襲う。

次回もよろしくお願いします。


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第2話

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


 ノイズと切った張ったを繰り返す俺こと『月影信人』だが、それでも中学生である。学生生活を送る義務があるわけで、こうして夜中までノイズと戦った後に学校へ向けて五代目バトルホッパー(通学用ママチャリ)を走らせていると、声が聞こえてくる。

 

「ノブくん、おはよ!」

 

「ああ、おはよう響」

 

 俺はママチャリから降りて、同じ中学の学生服を着た少女にあいさつを返した。

 彼女の名前は立花響、俺の幼馴染だ。家がすぐ近くの響との付き合いは長く、それこそ初代バトルホッパー(三輪車)で一緒に遊んでいたくらいである。そんな彼女とはそのまま小学校・中学校と一緒の学校に通っている。

 

「聞いたよ、昨日も猫の救出してたんだって?」

 

「だって木から降りられなくてかわいそうで……」

 

 俺が少し呆れたように言うと、そう言って響は頬を掻いた。

 立花響を一言で表すなら『善人』という言葉で事足りるだろう。困っている人がいたら見捨てられない強い正義感に前向きで明るい性格は見ていて好ましい。まるで、仮面ライダーたちのような性格だ。ただ少し向こう見ずなところは幼馴染としては直して欲しいものだが。

 そうやって響と取り留めのない話をしていると、またも声をかけられた。

 

「おはよう響、信人」

 

「おはよう、未来!」

 

「おはようさん、未来」

 

 そこにいたのは後頭部のリボンが特徴的な少女、俺のもう一人の幼馴染であり響の親友である小日向未来だ。彼女とも付き合いはかなり長い。三代目バトルホッパー(子供用自転車補助輪付き)のころには一緒に遊んでいたか。

 未来はすぐに響に並ぶと、通学路での取り留めのない話に加わる。いつもと変わらない、見慣れた日常の風景だ。

 そんな中、今日は少しだけいつもと違うことがある。

 

「そうだ、はいこれ」

 

 そう言って未来が取り出したのはいく枚かの音楽CDだ。

 

「ありがとう、未来」

 

「それが未来が言ってた?」

 

「そう、ツヴァイウィングの曲」

 

 響がCDを受け取ったのを横目に俺が聴くと未来が答える。

 『ツヴァイウィング』とは今をときめくアイドルユニットらしい。かなりの人気で、未来もファンらしく俺も響も何度も勧められていたのだ。

 

「信人も響の後に貸すよ。かっこいいからきっと気に入ると思うな」

 

「ふぅん……じゃあ、響の後にでも聴いてみようかな」

 

 正直あまり興味はなかったが幼馴染のここまでのおすすめだ。無下にするのもどうかと思いそう答えて、何気なく響の手の中にあるCDを見る。

 

「……ん? ちょっといいか?」

 

「? どうしたの?」

 

 響からCDを一枚受け取って、そのジャケットをマジマジ見つめる。そこに写ってるのは二人組の女、これが件の『ツヴァイウィング』らしい。

 

「……いや何、この間テレビでチラッと見たのが噂のツヴァイウィングだって納得しただけ」

 

 しばらく眺めてから響にCDを返すと、俺はそう当たり障りのないことを言って誤魔化した。だが本当はそんなわけもなく……。

 

(数時間前に会いました、とは言えないよな)

 

 そんなことを考えながら、俺たちは学校への道を急いだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 始めてあの白銀の戦士と出会ったとき、風鳴弦十郎は戦慄と同時に歓喜で心が震えたのをよく覚えている。

 突如として現れ、ノイズを倒していく謎の白銀の戦士『仮面ライダーSHADOW』。その出現を聞きつけ、その真意を見極めようと現場へ急行した弦十郎が見たものは、噂に違わぬ強さを見せつけるSHADOWだった。

 場所は深夜の郊外の廃工場。

 今まで人類では手も足出なかったはずのノイズ。人々の絶望の権化だったその恐怖の軍団が、歯牙にもかけられずにSHADOWによって蹂躙されていく。

 チョップが、蹴りが、SHADOWが何か動作を一つとるごとにノイズが集団で弾け飛ぶ。

 

「バイタルチャージ……」

 

 決め技を放つつもりだ。見ているだけで魂を鷲掴みにされるような強烈なエネルギー、それがSHADOWの全体を駆け巡り両足に収束していくのが弦十郎にもわかる。

 

「シャドーキックッッ!!」

 

 空中から打ち下ろされた飛び蹴りがノイズの集団の中心に突き刺さる。インパクトと同時に空間が打ち震え、緑色のエネルギーの余波がノイズを一匹残らず消し飛ばした。

 ノイズの殲滅を終わらせた仮面ライダーSHADOWはカシャカシャと足音を立てながらゆっくり去って行こうとするのを見て、弦十郎は隠れていた物陰から出ると彼を慌てて引き止める。

 

「待ってくれ!!」

 

「……」

 

 現れた弦十郎に、SHADOWはゆっくり振り向いた。その時、空を覆っていた雲が割れ、月が顔を覗かせた。廃工場の崩れた天井から月明かりが差し込む。

 

「!?」

 

 月明かりに佇むその白銀の美しさに、弦十郎は一瞬言葉を失う。月明かりを従えた王の風格を、弦十郎は幻視していた。

 

「何か用か?」

 

 その言葉にハッと意識を取り戻すと、改めて弦十郎はSHADOWに向き直る。

 

「聞かせてくれ、君は何のために戦っている?」

 

 その言葉にSHADOWは視線を頭上の月へと向ける。その時、エンジン音を響かせながら、バッタを模したようなバイクがやってきてSHADOWのそばに停車する。

 無論誰も乗っていない。自我を持つかのようなその様子に弦十郎は驚きながらもSHADOWの言葉を待った。

 SHADOWはバイクに跨りながら弦十郎を見る。

 

「無論正義……と答えたいが、少し違う。俺は正義の味方ではないからな」

 

 そう言うと、SHADOWは再び頭上の月を見た。

 

「月は一人では輝かない。そばにいる何かがあって初めて光り輝く。

 俺はそばにある光を、どれも消したくないだけだ……」

 

 それだけ言うと、SHADOWはバイクを発進させ廃工場を後にした。後に残されたのは弦十郎ただ一人。そして心の中で今しがたの言葉を反芻する。

 

「君は……君のそばにある大切なものを守るために戦っているのだな」

 

 彼にとってはそれが第1、他の人々が助かったことは『ついで』でしかないのだろう。確かに、皆を助ける『正義の味方』とは少し違う。

 

「だが……そっちの方が『人間』らしい理由だ」

 

 ノイズを圧倒的な力でなぎ倒す正体不明の怪物……仮面ライダーSHADOWをそう恐怖し警戒する者もいるが、弦十郎はもうそんな風には思わない。むしろ仮面ライダーSHADOWの人間らしさを知った。それが嬉しいのだ。人間同士なら、手を取り合えるはずなのだから。

 

「仮面ライダーSHADOW……いつか必ず、仲間として共に戦えるときが来るだろう。

 その時を、楽しみにしているぞ」

 

 そして弦十郎も自分の仕事に戻るために、廃工場を後にした。

 

 そんな彼がまず着手したのが情報管制だ。

 ノイズについての情報は全て管制しているが、その管制する情報の中に仮面ライダーSHADOWについての情報も一部追加したのである。全ての情報は隠さないが、あまりに否定的なマイナス要素の強い情報、デマの類いは消していくようにしたのだ。

 「もしデマや悪評によって暴走し暴れ回ったら止めようがない。敵に回らないように刺激しないようすべき」と弦十郎は上をなんとか説得したのである。

 上はSHADOWを刺激せずに様子見するこの案に渋々頷いたが、直接SHADOWと邂逅した弦十郎は、SHADOWと供に戦うときに悪評が彼の足枷にならないようにしたのである。

 そんな準備を着々と進めている弦十郎だったが、彼を仲間とすることには未だ成功してはいない。

 そして、今日も……。

 

 

 特異災害対策機動部二課本部。

 ノイズ被害の対策を担っている部門であるが、その存在を知るものは少ない秘匿部署。

 その存在が秘匿される最大の理由は、ノイズに対抗できる『シンフォギアシステム』を保有しているからだ。

 

 『シンフォギアシステム』―――身に纏う者の戦意に共振・共鳴し、旋律を奏で、その旋律に合わせて装者が歌唱することによって稼働する対ノイズの希望ともいえる存在。

 その歌は位相差障壁を操り物理攻撃を無力化するノイズの存在を調律し、強制的に人間世界の物理法則下へと固着させる。

 さらに炭素変換を無効化するバリアコーティングを発生させることで、触れただけで炭素の塊にされるというノイズの圧倒的な攻撃力という優位性を消し去る。

 この2つの特徴を併せ持つことでノイズと戦うことのできる唯一の存在、それが『シンフォギアシステム』……だったのだが、『仮面ライダーSHADOW』というノイズを倒す白銀の戦士がいるためすでに『唯一』ではない。

 

「……」

 

 弦十郎は目の前のモニターを見つめる。そこにはノイズの発生と、現れた『仮面ライダーSHADOW』が交戦中だということが映されていた。

 

「仮面ライダーSHADOW……」

 

「あら、また彼なのね」

 

 そう言うのは弦十郎の隣で同じくモニターを見る特異災害対策機動部二課所属の技術主任、シンフォギアシステムの生みの親である櫻井了子である。

 

「相変わらず早いわね。 一体どんな探査能力をしてるのかしら?」

 

 SHADOWのノイズ探査能力はこの二課の施設を超えているらしく、二課がノイズの出現を察知する前にSHADOWが現場でノイズと戦闘を始めていることも多い。

 

「ああ、仲間になってもらったらその辺りも教えてもらおう」

 

 そう弦十郎が言うと、了子は処置なしといった感じでため息をつく。

 この二課の司令である弦十郎が、『仮面ライダーSHADOWを仲間にする!』と言っていることは有名な話だ。色々もっともらしい理由はつけているが、あれはただのヒーローファンの子供の目だと了子は内心で呆れている。

 

「しかし彼の力……あれはシンフォギアなのか?」

 

「少なくとも私の知っているものではないわね。

 新しい聖遺物なのか、それとも別の由来の力なのか……今あるデータで判断することは不可能よ」

 

 お手上げ、と肩を竦める了子。

 ノイズと戦えることから何かしらの人智を超えた力を持っているのは分かるが、それがどんなものなのかは予想すらできず、技術部はいつも頭を悩ませている状態だ。

 

「装者、現場に到着します!」

 

「市民の安全確保とノイズの殲滅を最優先だ。

 SHADOWへはあちらから敵対行動があった場合以外は戦闘行為は禁止、戦闘後に交渉にあたるように」

 

「了解!」

 

 二課全体が慌ただしく動くのを横目に、了子は頰に手を当てたまま考えを巡らす。

 

 あの力はいったいどんな力なのか?

 自分にとって利用価値はあるのか?

 

 とにもかくにも、まずは情報収集だ。どんな力であろうとも、情報があればとれる手立てはいくらでもある。

 

(場合によっては、計画の変更が必要ね)

 

 目的のために走り続ける了子は決意を新たにする。

 

 だが……先史文明期の巫女としては、よくよく思い出しておくべきだった。

 

 それは先史文明期にですら『伝説』とされていた逸話。

 神々すら凌駕する暗黒の存在たちが支配する時代。その王子がその支配を断ち切り、この惑星を先史文明人に託したという『創世伝説』。そこに登場する月を司る『影の王子』の姿。

 とはいえ現代にはまったく伝わっていない伝説であり、彼女にこの状況だけでその伝説を思い浮かべろというのも酷な話だ。

 

 ともかく、彼女がそれを思いだすことはなく物語は続いていくのだった……。

 

 




よく分かるこの世界の歴史

ゴルゴムの皆様「この世界は俺らのもんだ、いやぁ住みやすい住みやすい!
        カストディアンくん、ここにきて馬になりなさい」

カストディアン「うぐぅ……ゴルゴム強すぎ。この惑星ブラックすぎだろ。
        でも、あんなんどうしようもないっす」

ゴルゴムの皆様「あ、新しくウチの頭になった王子から挨拶があるんで夜露死苦!」

影の王子さま「うん、やっぱ暗黒の世界ってオワコンだと思うんよ僕ぁ。
       これからのトレンドはホワイトで。
       というわけで……今日限りでゴルゴムはこの世界の支配者を卒業しまぁす!!
       あ、ゴルゴムの連中は封印な」

ゴルゴムの皆様「「「えぇぇぇぇ!!?」」」

影の王子さま「この星はあとはカストディアンくんたちに任せる! いい星造ってね!
       あ、時代が必要としたときは僕は転生して戻ってくるからヨロシク!」

光の王子さま「お前が転生するなら俺も行くぞぉ!」

カストディアン「我が世の春が来た!
        よぅし、いい星造っちゃうぞ!」



シェム・ハさん「ワレハ、ソウセイオウ。
        ゴルゴム、フッカツサセル」

カストディアン「なんかシェム・ハがおかしな電波受信しちゃったぞ!
        これダメだろ、伝説の2人の王子はどうした!?」

影の王子さま「あ、ちょっと立川で休暇中です」

カストディアン「シェム・ハ何回倒しても復活するんだけど!
        こりゃもう言葉乱して封印するしかないぞ!」

シェム・ハ「ぬわーーっっ!!」

カストディアン「こりゃもう無理!
        我々は脱出する、未来に向かって脱出する!
        というわけで人類くん、あとこの星ヨロシク!」



月の石「というわけで、そろそろ人類に転生しようと思うんよ」

太陽の石「お前行くなら当然俺も人間に転生するぞ。
     転生先は最近のトレンドの美少女かな。
     あ、俺が転生する子にはちっぱいのまま成長しない因子植えこんどくから」

月の石「お前……いくらナイチチスキーだからって女の子になんという呪いを……」

太陽の石「何を言ってるんだ?
     例えば太陽光パネルとかには凹凸はないだろ。あれは太陽の光を受けやすいためだ。
     つまり……凹凸のないナイチチボディは、太陽の祝福をもっとも受けた身体ということなんだよ!!」

月の石「ナ、ナンダッテーー(棒」

太陽の石「で、そっち転生先どうすんの?」

月の石「うーん、今選んで……ん、ナニコレ凄い面白い魂みっけた!
    なんか並行世界あたりから紛れ込んできてる魂なんだけどさ」

太陽の石「ああ、あのギャラなんとかだかギャラドスだがの影響で最近多いよな、そういうの」

月の石「その世界、俺とお前の話みたいなのがある。
    俺の力持った奴、悪の組織のドンだって」

太陽の石「マジウケるww」

月の石「よし、俺こいつに決めた。
    この仮面ライダーって話の記憶だけ維持させて転生させるよ」



SHADOW「ゴルゴムめ、ゆ゛る゛さ゛ん゛っっ!!」

フィーネ「ファッ!?」←今ここ


次回もよろしくお願いします。


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第3話

 時刻は真夜中の12時近く。

 都市は眠らない。繁華街のネオンの光が、昼以上の明るさで夜の闇を切り裂く。そしてそんな光に、1日の疲れを癒そうとする人々が数多く集まっていた。

 そんな中にノイズ出現を知らせるサイレンが響く。

 人々は政府によって設置されたシェルターへ避難しようと急ぐが、酒の入っている人間が多く、まともに走ることができない者が続出。瞬く間にそこは助けを求める声が響く阿鼻叫喚の地獄になっていた。

 

「ひ、ひぃぃぃ!!?」

 

 酒も入り、腰が抜けて立てない中年男性が恐怖の悲鳴を漏らしながら、それでもノイズから精一杯離れようと後ずさる。だが、そんな距離などノイズにとってはゼロに等しい。すぐにノイズはその中年男性に近付こうとするが……。

 

 

 ブロロロォォォォォ!!!

 

 

 夜の闇を切り裂くようにエンジン音が響き渡る。

 そして……。

 

「ダイナミックスマッシュ!!」

 

 突如現れたバイクの体当たりによって、そのノイズは周囲にいたノイズごと轢き潰された。

 ブレーキ音とともに急停車するそのバイクに乗っていたのは。

 

「か、仮面ライダーSHADOW!?」

 

「早く逃げろ」

 

 仮面ライダーSHADOWは中年男性を一瞥するとそれだけ告げて、バイクを降りる。カシャカシャという特徴的な足音とともに前に出ると、ベルトのバックルから緑の光が放たれる。

 

「シャドーフラッシュッ!!」

 

 緑の光が放射状に放たれると、周囲にいたノイズが一斉に弾け飛ぶ。

 

「おぉ!!」

 

「何をしている! まだノイズはいるのだ、早く逃げろ!!」

 

 身近に迫っていたノイズが消え、一時の安堵とともに先ほどまで悲鳴を上げて逃げ惑っていた市民から歓声が上がったが、SHADOWの苛立たしげな一括に慌てて避難を再開する市民。

 その様子を見てため息でもつくように肩を揺らしたSHADOWは、自身を優先目標としたらしく一気に集結してくるノイズに向けて腰を落として構えをとる。

 その時だ。

 

「相変わらず早いね、アンタ」

 

 その声とともに2人の女性がSHADOWの前へと着地した。

 2人とも身体にぴったりとしたインナースーツに各所に装甲のようなものが施された鎧を身に纏い、片や槍を、片や剣を手にしていた。

 この2人こそ特異災害対策機動部二課に所属するシンフォギアの装者である天羽奏と風鳴翼である。

 仮面ライダーSHADOWとこの2人は初対面ではない。とはいえ、ここ何度かノイズ殲滅のために出動した現場で顔を合わせている程度でせいぜいが顔を知っている程度、SHADOWとしては相手の名前すら知らないというレベルだ。

 

「知らん。お前達が遅いだけだろう」

 

「そうかい。その秘訣を是非教えてもらいたいもんだね」

 

 そう言って奏はアームドギアをノイズに構える。

 

「また、とりあえずはノイズを倒す共同戦線ってことでいいかい?」

 

「そう言うなら、そっちの女の殺気を消せ。

 今にも俺に斬りかかろうとしているように感じるが?」

 

「……」

 

 言われた翼は無言だ。その姿からはSHADOWに対する警戒心がありありと感じ取れる。それを横から奏が制した。

 

「悪いね。ウチの相方は心配性なのさ」

 

「俺を警戒しているというのは理解する。殺気を向けるくらいは構わん。だが、降りかかる火の粉は払いのけさせてもらうぞ。

 それが嫌なら行動には移さんことだ!」

 

 そう言うとSHADOWは大きくジャンプしてノイズの集団へと飛び込んでいく。

 

「翼ッ!」

 

「わかってる!!」

 

 奏と翼もそれを追うようにしてノイズへと接近した。

 奏と翼のコンビネーション、そしてSHADOWの圧倒的な戦闘能力によってノイズは瞬く間に殲滅されていく。

 

「シャドーキックッッ!!」

 

 そして最後に残った集団をSHADOWが決め技で吹き飛ばすことで、その日の戦いは終わった。

 すぐさまバトルホッパーで戦場を去ろうとするSHADOWだが、それを奏が止める。

 

「待った待った。 話を……」

 

「お前たちの仲間になれ、だったか。

 その話なら前に断ったはずだ」

 

 実を言えばSHADOWは今回のように今まで何度か2人に接触しこうしてスカウトまがいのことを受けていたがいつも「断る」の一言で切って捨てていたのだ。

 

「そこを何とか、さ」

 

「断る」

 

 そう言うとSHADOWはバトルホッパーを発進させようとするが、その進路を翼が塞ぐと手にした剣の切っ先をSHADOWに向けた。

 

「……何の真似だ?」

 

「おい、翼……」

 

 奏は翼を止めようとするが、それよりも早く翼から言葉が飛び出す。

 

「それだけの力を持ちながら、何故私たち二課に協力しない!

 お前が正義や人を助けるために戦うのなら、私たちに協力するのがもっとも効率的なのは分かっているはずだ!

 何故それをしない!

 それを拒み続けるのは、何か悪しき企みでもあるとしか思えん!!」

 

 翼はSHADOWの存在そのものを嫌っていた。正体不明の、人類の敵か味方かも分からぬ存在など無秩序極まりない。

 師父である弦十郎は『SHADOWは大切なものを守るために戦う戦士』と称していたが、それなら人類を守るために戦う自分たちに協力しない道理が分からない。

 返答次第ではこの場で斬って捨てると翼は剣を向ける。

 

「……俺が『正義の味方』ではないのは確かだがな」

 

 そんな翼に、表情は分からないのに呆れたような様子のSHADOWは言葉を続ける。

 

「お前たちの協力を断る理由は簡単、それはお前たちが信用できないからだ」

 

「貴様がそれを言うか! 正体不明の怪しげな貴様が!」

 

「それはお互い様だろう。まわりを見ろ」

 

 そうSHADOWに言われると、ノイズがいなくなって安全と思ったのか避難しそこねた人々が遠巻きにこちらを見ている。

 

「お前たちと何度か共闘したが……ネットでもニュースでも『仮面ライダーが現れてノイズを倒した』という話は見ることはあっても、『2人組の美少女がノイズを倒した』という記事は一度も見たことがない。

 こんな悪人顔より『美少女2人』の方がよほど話題性があるだろうに……」

 

「悪人顔だって自覚はあったんだな、アンタ」

 

 奏のツッコミは無視してSHADOWは続ける。

 

「明らかに国家、またはそれに類する組織が情報統制をしているのだろう?

 俺もお前たちの存在は知っていても目的もその力のことも、それどころか名前すら知らん。『正体不明』なのはお互い様だ。

 そんな『正体不明』な相手にホイホイ着いていって、気がついたら全身を縛られてモルモットとして切り刻まれる……そんな最後はごめんだ」

 

「私たちをそんな外道だと思っているのか!!」

 

「思うも思わないも、判断できるだけの情報がないと言っているんだ。

 逆にそこまでして何故自分たちの存在を隠す?

 こちらも一市民としてノイズに対抗する戦力があると大々的に発表してもらった方が安心できるのだが?」

 

「おいおい、アンタが『一市民』ってのは無理がないかい?」

 

「これでもノイズの件以外では平和に暮らしている、ごくごく一般的な一市民のつもりだ。

 とにかく、俺にも事情はある。ノイズを倒すために戦場で共闘することは構わないが、そちらを全面的に信用して協力しろというのはごめんこうむる。

 少なくとも今のところはな」

 

「『今のところは』、なんだね?」

 

「状況は変わるものだ。そういうこともありえるという話にすぎん」

 

「OK、今はそれだけで十分さ」

 

 そう言うと奏は翼の手を掴んで剣を下げさせる。するとその間にSHADOWは方向転換するとバトルホッパーを発進させて去っていった。

 

「奏ッ!」

 

「いや、あいつの言うことはもっともだよ。

 私たちも秘密があって、あっちにも秘密がある。それで一方的にこっちを信じて従えって言ってもね」

 

「でも、私たちは人類を守るために……!!」

 

「それを知ってるのは結局私たちだけ。

 他の誰も、日本に住んでる普通の人はそのことを知らないんだよ」

 

「……」

 

 そう言われ、翼は黙ってSHADOWの去って行った方を睨む。その胸中はどんなものであるか、窺い知ることはできない。

 

(真面目なのはいいんだけど、融通が利かないのがね)

 

 奏は内心でそう思いながら肩を竦めると、同じくSHADOWの去って行った方を眺める。

 奏としてはSHADOWの印象は悪くない。むしろここ数回の接触で、SHADOWは『正体不明の怪物』ではなく、弦十郎の言うように『話の分かる人間』だと好感を持っている。

 それに……。

 

(アタシには、タイムリミットがある……)

 

 奏は、自分の時間がそれほど長くないことを理解していた。シンフォギアの装者として必要な適合係数、それが低い奏は『LiNKER』と呼ばれる薬品を投与することによって適合係数を無理矢理引き上げているが、その無茶による激しい薬理作用によって確実に身体が蝕まれていっていることを理解していた。

 戦えなくなってリタイアか、あるいは『死』か……どちらにせよ、奏が翼とともに戦場に立てる時間には限りがある。その時間が尽きる前に、翼とともに戦う仲間が欲しいと奏は思っていた。だから弦十郎の言うように、SHADOWには本当にいつか仲間として戦う時が来ると期待しているのだ。

 

「早いところそうなってくれたら心強いんだけどね……」

 

 そう言って空を見上げた奏の視線の先では、今日も月が綺麗に輝いていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 今は学校の昼休み、学生にとっての憩いの時だ。俺はアンパンを片手に雑誌を読んでいる。

 

「ツヴァイウィング、ねぇ」

 

 俺の見ているのは音楽雑誌だ。その表紙はツヴァイウィングの2人組、特集記事が組まれており、かなりの紙面が使われているあたりその人気が伺い知れる。

 俺は特に音楽に興味はないのだが、今回はよくノイズと戦ってるとやってきて成り行き上共闘する機会のある2人組について、確認するためにこの音楽雑誌を買ってきていた。

 

(ああ、やっぱりどう見てもノイズと戦う2人組、このツヴァイウィングの天羽奏と風鳴翼で間違いないな)

 

 というか、あの2人は戦闘中は普通にお互いに名前で呼び合ってるし、正体を隠そうという気がないんじゃなかろうか?

 おまけにあのノイズと戦うための装備らしきプロテクター、顔が丸わかりだし、これで間違えろという方が無理がある。

 しかし……。

 

(当然だがノイズ退治のことは書いてないな)

 

 『人気アイドルはノイズを倒すスーパーヒロインだった』……なんて最高のネタだろうに雑誌にはもちろん、ネットやニュースでもそんな話はまったく出てこない。それだけ2人の所属する組織の力は強いのだろう。

 そんな風に思っていると、響と未来がやってくる。

 

「あっ、ノブくんがツヴァイウィングの記事見てる」

 

「まぁ、せっかくの未来のお誘いだからな。

 予習くらいはしっかりしておこうと思ってさ」

 

 やってきた響にそう答える。

 ツヴァイウィングのファンである未来はどうやったのか、今週末に行われるツヴァイウィングのライブチケットを3枚手に入れて俺と響を誘ってきてくれたのだ。

 俺はライブというもの自体が生まれて初めてであるが、こういうものは友達と一緒に行く事自体が楽しい訳で、俺も楽しみにしている。

 

「えへへ、私ライブって初めて」

 

「俺もだ」

 

「楽しみなのはいいけど、時間には遅れないでよ2人とも」

 

「「は~い」」

 

 そんな楽しい幼馴染たちとのやり取り。ふと俺は響と未来を眺めながら思う。

 向日葵のような大輪の笑顔を見せる響。そんな響を『太陽』のように照らす未来。そして俺。

 ああ、なんて光あふれる優しい世界なんだろうか。

 だが……運命の分岐点は刻一刻と迫っていた。

 




今回のあらすじ

防人「この悪人顔めっ!」

SHADOW「いや、元々悪の仮面ライダーなんで当然というか……お前らこそ、その対魔忍みたいなエロいインナーなんなん?
    しかもお前らがゴルゴムじゃないって保証はないし……」

フィーネ「ゴルゴムって何よ?」

SHADOW「えっ?」

フィーネ「えっ?」


毎日投稿は明日辺りが打ち止めです。
次回もよろしくお願いします。


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第4話

 今日はツヴァイウィングのライブ当日だ。

 

「あっ、ノブくん!」

 

「よっ、響」

 

 待ち合わせの場所で俺を見つけて走ってくる響。

 響は女の子らしい可愛らしい恰好だ。ちなみに俺は白の光太郎ルック。白の指抜き皮手袋は外せません。

 俺は走ってくる響に手を振って答える。笑顔で走ってくる響を見ていると、なんだか人懐っこい大型犬のようなイメージを思い浮かべてしまい、クスリと笑ってしまった。

 

「あれ、未来は?」

 

「ああ、俺も探してるけど見当たらなくてな」

 

 そう言って周囲を見渡すがそれらしい姿は見えない。しっかり者の未来らしくないと俺は首を傾げる。

 

「じゃあ私電話してみるね」

 

 そう言って響はすぐに携帯をかけ始めた。

 

「未来、いまどこ? 私とノブくんもう会場だよ」

 

 響が電話をしている間、俺はボーっと周りを見渡してみる。

 

「えっ、どーして!?」

 

「ん?」

 

 突如、隣で電話していた響が素っ頓狂な声を出す。

 何事かと見ている俺の前で響は電話を終えると、ため息をついた。

 

「未来、叔母さんが怪我したらしくて家族で今から行くことになっちゃったって。

 だからライブには来れないって」

 

「一番楽しみにしてたのに、残念だな」

 

「私って呪われてるかも……」

 

「おいおい、俺が一緒じゃ不満なのか?」

 

 そんな風に少しふざけて意地悪く聞いてみると、響はブンブン首を振る。

 

「そ、そんなことないよ!

 ノブくんと二人っきりなんて、なんかデート見たいで嬉しいかな、って……えへへ~」

 

「そ、そうか……」

 

 少し顔を赤くしながら言う響を見ていたら、こっちも顔が赤くなるのを感じる。

 幼馴染として一緒の時間がそれこそ物心ついたころ辺りまで長い俺と響、当然気の置けない友人であるのだが、最近こういう響のふとした言葉や動作に思わずドキリとする瞬間がある。

 『意識している』、という自覚はある。だが、この感情を言葉という形にするのはまだまだ難しい。

 ……ちなみに未来は同じ幼馴染だし大切な友達ではあるんだが、そういう浮ついた感情がどうしても沸いてこない。響とは違う方向で負けないくらい美少女の未来なのだが……時折、響を見ている眼が何やら重い想いに溢れていて怖い。それでもってそんな時に俺を見る眼はもっと怖い。なんか『宿敵』でも見ているような眼なのだ。

 もしかして未来は響のことを……いや、考えるのはよそう。

 

 ……なんだか未来の視線を思い出したら寒気がしてきた。

 ブルブルと頭を振ってそれを振り払うと響に話しかける。

 

「それにしても……すごい人数だな」

 

「だね」

 

 周囲は人、人、人、どこを見ても人だらけだ。これがすべてツヴァイウィングのライブの客だというのだからすごいものである。

 

「何だか俺たち、場違い感が凄いな」

 

「あはは……」

 

 ツヴァイウィングのチケットは大人気で完売御礼だというから、ここにいるのはみんな熱心なファンなのだろう。そんな中にツヴァイウィングのことをあまり知らない俺と響はある意味異分子だ。

 ライブは初めてということもあり、少しその熱気に引き気味な俺たちである。

 こうだと少し楽しめるか不安なのだが……。

 そんな心配をよそに遂にツヴァイウィングのライブが始まる。

 

 結果だが……俺たちの心配はまったくの杞憂だった。

 ステージに立つツヴァイウィングの2人、その歌声は俺も響もすぐに魅了していたのだ。

 

「すごいね! これがライブなんだね!」

 

「ああ、これは確かに凄いな!」

 

 気がつけばノリノリで歌声に夢中になっている俺たち。

 何かで『歌は人類の生み出した文化の極み』という言葉を見たことがあるが、なるほどこれがその歌の力かと納得してしまう。それほどまでに凄いものだった。

 だが、だからこそ何故ノイズと戦っているのか疑問である。

 

(アイドル稼業一本でやっていけるだろうに、何だってノイズ退治を?

 戦いの中でも歌ってたし、あのプロテクターはノイズを倒すのに『歌唱力』でも必要なのか?)

 

 まぁ、今そんなことを考えるのは無粋だろう。

 俺も響もサイリウムを振りながらライブを楽しむ。そんな時、それは起こった。

 

「!!?」

 

(この感覚は!?)

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺がその感覚に反応するのとほぼ同時に、ライブ会場に爆発音と悲鳴が響き渡る。

 

「ノイズだぁぁ!?」

 

「早くシェルターに!!」

 

 逃げ惑う人々、それに追い縋り容赦なく炭素の塊に変えていくノイズ。ライブ会場は一瞬にして地獄絵図に変わった。

 

「響、シェルターに!!」

 

 そう言って響の手を引こうとするが、必死に逃げる人の波に呑まれてしまう。

 

「響っ!」

 

「ノブくん!」

 

 繋いだ手が離れ、別々に人の波に流される俺と響。

 

「くそっ!!」

 

 これではもう簡単には合流できないだろう。響を追うのを諦め、俺は避難のための時間を稼ぐべきだ。

 俺は苛立ちに舌打ちしながら、ノイズの方へと向き直った。

 バッと慣れ親しんだ、身体を丸めるようにする動きをとる。握り締めた拳で、皮手袋がギリギリと音を立てる。そして……。

 

「変……身ッッ!!」

 

 キングストーンの放つ緑色の光、その中でキングストーンの強大なエネルギーが全身に駆け巡ると俺は仮面ライダーSHADOWへと変身を果たした。同時に一気に跳躍する。

 

「きゃぁぁぁ!!?」

 

 転んだ少女に圧し掛かろうとジャンプしたノイズを空中で粉砕しながら着地した。

 

「仮面ライダー!?」

 

「立てるか?」

 

 俺の登場に驚きと、命が助かったことへの安堵の表情を浮かべるがすぐに顔が絶望に染まる。

 

「こ、腰が抜けて立てない!?」

 

「くっ!?」

 

 彼女一人を守って戦うわけにもいかず、かといって動けない彼女をここに置いていけばすぐにでもノイズに殺されるだろう。

 視界の中では、同じような人が何人も見える。

 

(やってみるか……)

 

 俺はキングストーンエネルギーを操作して、解き放った。

 

「シャドービーム!!」

 

 両手から発射した稲妻のような緑の光線が幾条も放たれる。だがそれはノイズには向かわず、この少女を含めた動けなくなった人々に向かった。そして人々が光線に抱えられるように空中に浮く。

 

「とぁ!!」

 

 そしてその人々をそのまま、出口付近まで移動させた。

 シャドービームの派生形の一つ、本来は敵を拘束するための念動光線だがそれを使って動けない人々を強引に動かして投げたのだ。少し着地は荒いが、この場で死ぬよりはマシだろう。

 

「早く逃げろ!!」

 

「は、はい。ありがとう仮面ライダー」

 

 一喝すると、その少女も他の人々もノロノロと立ち上がると避難していく。

 もう目の前に残っているのはノイズだけだ。

 

「はぁ!!」

 

 ノイズの集団に飛び掛かると、チョップを叩き込んで近くのノイズを一刀両断する。そして大きくまわし蹴り、レッグトリガーによって威力を増大させた一撃がノイズたちを薙ぎ倒す。

 すると、俺は視線の先に見知った顔を見つけた。先ほどまでライブの主役だったツヴァイウィングの片割れ、風鳴翼だ。今は先ほどまで纏っていた煌びやかなステージ衣装ではなく、あのプロテクター姿で倒れたノイズに剣を突き刺しトドメを刺している。

 

「SHADOWか!」

 

 あちらも俺に気付いたらしい。だが随分切羽詰まった状況だからだろう、驚きの声の中にはいつもの俺への警戒は見られない。

 

「手を貸す!」

 

「いいや、こっちはいい! それより奏を!

 頼む、奏を早くっ!!」

 

 すぐに手を貸そうとするが、それを拒否して必死の顔で叫ぶ翼。

 何事かと視線を探ると……いた。もう一人のツヴァイウィング、天羽奏だ。

 

 だが、その動きにはいつものようなキレがない。迫るノイズに悪戦苦闘している。何かしらの不調か?

 だが、奏の後ろの人影に俺は言葉を失った。

 

(!? 響ッ!!)

 

 それは紛れもなく響だ。奏は足を引きずりながらも逃げようとする響の盾となり、守っていたのだ。

 ノイズの攻撃によってボロボロと砕けていく奏のプロテクター。

 

 そして……俺は見てしまった。

 岩か何かだろうか、高速で飛んできた銃弾のようなソレが響の胸を貫いた。

 何が起こったのか分からないような顔で倒れる響。そして、広がっていく赤い液体。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 その光景を見た俺の中の何かが弾ける。

 自分でも分からない叫びを上げながら、俺は響の元へと跳躍していた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 天羽奏はすでに満身創痍だった。

 すでにガングニールの出力は最低にまで落ちており、その身に纏う鎧も見る影もないほどボロボロだ。だが、それでも奏は一歩も退かずに戦い続ける。それは自身の後ろにいる少女を守るためだ。

 しかし、どんな想いがあろうと戦場での現実は過酷だ。逃げようとしていた少女の胸を、何かの破片が貫く。

 奏は残された力で周りのノイズの薙ぎ払うと、血だまりの中に倒れる少女に駆け寄った。

 

「おい、死ぬな! 生きるのを諦めるなッ!!」

 

 奏の叫びに、少女は閉ざそうとしていた目を再び開けた。

 まだ少女の命があることに安堵し、そして決意した。

 

(ここで……『絶唱』を使う!)

 

 シンフォギアに備えられた最大最強の攻撃手段―――それが『絶唱』である。

 増幅したエネルギーを一気に放出することで得られる攻撃力はまさに最強の一撃。しかし、それは代償なしには放てない。高めたエネルギーはバックファイアとして装者にも襲い掛かる諸刃の剣なのである。

 すでにボロボロの状態の今の奏が使えば、その力は奏の命を奪い尽すだろう。

 

 恐怖は、当然奏にもある。

 だが、だがそれでもこの歌が守るべき未来に繋がるのなら!!

 

 吹っ切れた顔で奏は自身の槍を拾い、今まさに『絶唱』を歌おうとしたその時だった。

 

 

 ズサッ!!

 

 

 白銀の輝きが、奏の目の前に降ってくる。それは……。

 

「アンタか……仮面ライダーSHADOW……。

 今日は、アタシらの方が早かったね」

 

「……」

 

 おどけたような奏の言葉に、SHADOWは無言だった。

 そしておもむろに『奏の方に向かって』腰のベルトから光が放たれる。

 

「シャドーフラッシュ!!」

 

「なっ!?」

 

 今までの共闘の経験で、それがノイズたちをまとめて吹き飛ばすような攻撃であることを知っていた奏は、何故このタイミングであのSHADOWが攻撃をしてくるのか分からないが咄嗟に背後の少女を庇う。

 

 

 その時、不思議なことが起こった。

 

 

 いつもノイズを吹き飛ばしている閃光を受けたのに痛みはまったくなかった。それどころか奏の傷ついた身体が癒され、活力を取り戻していく。

 

「ありがとう。 その技、攻撃のためのものじゃなかったんだね」

 

「シャドーフラッシュは俺の持つエネルギーを放射する技。その効果は俺が望む通り、相手を破壊することも傷を癒すことも可能だ」

 

 奏が傷が癒えたことに驚きとともにSHADOWに礼を言うが、それに応えるとSHADOWは奏の隣を素通りし、傷ついた少女の前でしゃがみ込む。

 血だまりに倒れた少女、だがその傷から新たな血が溢れることはない。それを確認し、SHADOWが胸をなで下ろしたのが分かる。

 その様子に奏は理解した。SHADOWがさっきの光で本当に癒したかったのはこの少女で、自分の傷を癒してもらったのはほんのおまけに過ぎなかったのだ。

 

「知り合い、なのかい?」

 

「……黙っていてもらえると助かる」

 

 そう言ってゆっくりとSHADOWは少女に背を向けて、ノイズたちの方へと向き直った。

 

「ノイズは俺が相手をする。

 お前はここで彼女を守っていてくれ。出来れば医者も早急に呼んでくれればありがたい」

 

「お、おい。 いくらアンタでもあの数のノイズを1人じゃ……」

 

 傷も癒してもらったし自分も戦えると奏は声をかけるが、その言葉は最後まで言うことが出来なかった。

 まるでオーラのように怒りがSHADOWから立ち上っているのが、奏には分かった。怖くて触れることなどできやしない。

 ノイズの行いは、完全にSHADOWの逆鱗(さかさうろこ)に触れたらしい。奏にはこの先の、今までを超える蹂躙劇が目に見えるようだ。

 

「バイタル、フルチャージ!!」

 

 SHADOWは構えをとると、腰のベルトから緑色のエネルギーが全身へと駆け巡る。全身を緑色に光らせたまま、SHADOWは宣言する。

 

「貴様ら……ゆ゛る゛さ゛ん゛っっ!!」

 

 ノイズの命運はここに決定した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 胸が痛い。意識が呑まれそう。そんな朦朧とした意識の中で、響はそれを見ていた。

 

 大量のノイズ。

 炭素の塊に変えられていく人々の断末魔。

 槍と剣で戦う『ツヴァイウィング』の2人。

 

「おい、死ぬな! 生きるのを諦めるなッ!!」

 

 その叫びに、響の意識はまだ反応する。だが、それも時間の問題だ。忍び寄る死の闇は、今にも響を呑み込もうと迫っている。いつまでも抗えない。

 そんな時だ。

 

(あれ、この光……)

 

 気がつけば、響は光を浴びていた。

 だがそれは『太陽』の温かい光ではない。もっと違う……。

 

(ああ、お月様の光だ)

 

 響は直感的にそう悟る。

 太陽の強い、ともすれば煩わしくなる光ではない、優しい眠りに誘う柔らかい『月』の光……それに自分は包まれている。

 いつの間にか、響に忍び寄る死の闇はその月の光に切り裂かれていた。

 朦朧とする意識の中で響は目を開ける。

 その目に映ったのは、ノイズたちに立ち向かう白銀の背中。それを瞼に焼き付けると響はそのまま気を失う。

 

「私、生きてる……」

 

 次に響が目を覚ましたのは、すべてが終わった後、病院でのことだった……。

 




今回のあらすじ

SHADOW「ああ、響が大怪我を!貴様ら完全に俺の逆鱗(さかさうろこ)に触れたな!
      不思議なこと+ゆ゛る゛さ゛ん゛っっ!」

奏+防人「なんてわかりやすい今日の10割。もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」

フィーネさん「『急募 こいつに勝てる方法』っと」

ゴルゴム+クライシス帝国の皆さん「そんなものはない(無慈悲」

フィーネさん「(´・ω・`)ショボーン」


シンフォギア二次では鉄板な奏生存ルートでした。
次回もよろしくお願いします。


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第5話

 あれから……あのライブでの惨劇から3ヶ月が過ぎた。

 響は何とか一命を取り止めた。

 何となく出来ると感じてやってみたシャドーフラッシュでの回復はしたものの、胸を完全に貫通した傷だ。どうなるかと思ったので、ホッとしたというのが正直なところだ。

 医者の処置も早かったことが功を奏した。この辺りはあの時奏がすぐに医者を手配してくれたおかげだ。今度共闘する際には、一言礼を言わなければならないだろう。

 しかし胸を完全に貫通された傷がすぐに良くなる訳もなく、傷が癒えてからもリハビリが必要となった。欠かさず未来と2人でお見舞いに足を運んでいるが、本人の「へいき、へっちゃら」という言葉が逆に痛々しかった。

 

 ここ最近、ノイズは現れていない。ライブ会場であれだけ倒したのでいい加減数が減ったのか、はたまた別の理由か……とはいえ今は助かっている。

 ツヴァイウィングの2人は現在活動休止中。ライブ会場であれだけの惨劇があったのだから仕方ないだろう。

 そう、惨劇だ。『死者・行方不明者合わせて8856人』……これがあのライブでの戦いの最終的な結果である。

 改めて凄まじい数だ。しかし、それでも世間は冷静だ。

 『ノイズだから仕方ない』と、諦めにも似たような感情で処理し、昨日と同じ日々を送っていく人々。これがいいことなのかと言われれば分からないが、ヒステリーが起こるよりマシである。

 そんな世間と人の意外な冷静さに俺は感心していたのだが……俺は甘かった。心の底から甘かった。

 世間や人は感情を冷静に処理したわけじゃない、ただ心の奥底に無理矢理沈めていただけだったのである。

 そしてそれは、ジッと『生贄』を待っていたのだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 響が無事退院した。

 実はこっそりとシャドーフラッシュ、というかキングストーンエネルギーを流し込んで回復を後押ししていたので医者の予想をはるかに上回る速さで完治に至った。

 これで前と変わらない日々が戻ってくる……そう思った矢先に俺と響への迫害が始まった。

 

 始まりはあのライブ会場での被害者でノイズの被害にあったのは全体の1/5程度、 残りは混乱によって生じた将棋倒しによる圧死や、 逃走の際に争った末の暴行による傷害致死であることが報道されたことだ。

 死者の大半がノイズによるものではなく人の手によるものであることから始まる『生存者バッシング』。そして被災者や遺族に国庫からの補償金が支払われたことから、民衆による『正義』が暴走を始めた。

 

 そしてウチの学校であのライブの被害者は俺と響、それにサッカー部のキャプテンだった。キャプテンは行方不明……ノイズによって殺され炭となり、遺品すら回収されていない。

 そんなキャプテンを慕っていたとある少女のヒステリックな叫びが始まりだった。

 

「何でキャプテンは死んだのにあんたたちは五体満足で生きてるの!

 どうせ誰かを犠牲にして生き残ったんでしょ、この人殺し!!」

 

 ……意味が分からない。

 百歩、いや千歩譲って全くの無事な俺だけがそれをやったとバッシングを受けるなら分かるが、響は胸を貫くような大怪我をしていたのだ、普通に考えてその状態で他人を押し退けて殺せるわけないだろう。そう指摘してやると「怪我を負う前に人を殺して生き残った」と屁理屈としか思えない言葉を返してくる。

 そこまで言うなら俺たちが人を殺したって証拠持ってこいと返すと、「そんなもの無くてもやったに決まってる!ニュースでやってた!」と話にならない。

 

 普通ならば無視を決め込むだけの話だが、この根拠のないヒステリーを世間が後押しした。

 

 俺や完治して間もない響に押し寄せるマスコミ。

 その報道がまた『生存者バッシング』を煽るような内容で、それを見た学校の生徒が『正義』として迫害を行ってくる。

 教師たちも『正義』として、その迫害に加担していた。

 

 その様を見ながら、俺は思った。

 人々はノイズへの恐怖を冷静に処理していたんじゃない。無理矢理心の奥底に沈め、それを発散する生贄をジッと待っていただけだった。

 そして、その生贄に俺と響が選ばれたのである。

 

 だが、俺の方は正直なんとかなっている。というのも最初期の頃に俺をリンチしようと集まった連中を返り討ちにしたからだ。

 キングストーンのエネルギーを常に循環させている俺の身体能力は、変身しなくてもかなり向上している。ノイズとの戦闘経験も多いし、今さら普通の中学生が束でかかってきても後れは取らない。

 男のいじめというのは結構単純なもので、相手が強ければ恐怖して表立った行動はしなくなる。せいぜい目に見えない嫌がらせ程度、それなら耐えられる。

 問題は響の方だ。

 

 女のいじめは陰湿でねちっこく、そして精神的に追い詰めていく。それが抵抗できない響を容赦なく襲っていた。

 机の落書き、私物がどこかに捨てられるのは序の口。その内容はすべてを上げていれば枚挙にいとまがない。たまに石を投げつける、不良たちに襲わせるなど本当にシャレにならないものが混じっているので、俺は常に響といるように心掛けている。

 とにかく大変な状態の響だが、それでもギリギリの笑顔で「へいき、へっちゃら」と言う。響の状態はギリギリのところで保たれていた。

 未来はこんな状態になろうと常に響の味方をしてくれている。そして俺は同じライブに行き、同じ迫害に合う当事者、いわば『同族』だ。そんな2人の幼馴染が、響の心を支えていると自惚れでなく思う。

 そして俺たち幼馴染3人は誓い合ったのだ、「支え合ってこの苦境を乗り越えよう」、と。

 だが……そんな俺たちの誓いは思わぬ形で崩れてしまった。

 未来の転校である。

 

 ……仕方ないことだと思う。

 『生存者バッシング』は世間全体を巻き込んでいた。生存者の家族・関係者にもその被害は広がっており、実際に俺や響の家は落書きがされたり窓を割られたりしている。

 未来も、学校で俺や響の味方をしていることで危ない場面がいくらでもあった。そんな娘を守るため、と未来の両親の決断だろう。仕方ないし、理解は出来る。

 

「信人……響を……お願いっ!!」

 

 未来の最後の別れの言葉は響にではなく、俺へ響を託す言葉だった。

 涙を流しながらの血を吐くようなその言葉を、俺は忘れない。誓いを守れないことへの無念がありありと伝わってくる。

 

「大丈夫だ。 次に未来と会えるその時まで、俺が響を守る!」

 

 そう未来に約束し、俺たちは次に会う時まで別れることになる。

 

「未来はね……私にとってあったかくてかけがえのない、『太陽』だったんだ……」

 

 響はその日、帰り道で俺にそう零す。

 未来は響の幼馴染であり親友だ。そして響をいつでも守ろうと戦っていた。そんな未来がいなくなると、響への学校での迫害はさらに加速した。

 俺も常に傍にいるが男では防ぎきれないシーンが出てきてしまう。

 そして加速した迫害は家族にも及び……ついに耐えられなくなった響の父親が失踪した。

 ただでさえボロボロの響の心に、父親の失踪。このままでは響の心が崩壊すると心配していた矢先、最後の一手が追い打ちをかける。

 

 響とともに一緒に学校から無言で帰っていた時のことだ。

 俺と響の進む方向から、モクモクと昇る黒煙が見える。嫌な予感に駆られて駆けだした俺と響の見たものは、燃える響の家だった。

 後に分かったが、これはのうのうと生きている『人殺し』に罰を与えようという『正義の味方』たちによる放火だった。

 幸い、響の母と祖母はうまく逃げ出せたのか、家の外にいた。

 血相を変えて家族の無事を確認しようとする響に、響の母と祖母が振り向く。

 酷く疲れた、生気のない顔だった。そして打ちひしがれる2人の瞳を前に、響は金縛りにあったかのように動きを止め、まるで恐怖で後ずさるように2、3歩下がる。

 そして……。

 

「ッッ!!?」

 

「響ッ!!?」

 

 俺の叫びを無視して、響は全力でどこかに走り去って行ってしまった。しかし響の母と祖母はそのまま燃え広がる家に視線を戻している。

 

「……」

 

 俺は拳を握りしめ決意を固めると、自宅へと全速力で走った。手早く着替え、すでに心のどこかでこうなることを予想して部屋に用意しておいたバックパックを肩にかける。

 そして部屋を出たところで、俺は両親に出くわした。

 

「そんな荷物を持ってどこに行くつもりなんだ、信人?」

 

「……響の家が放火されて、響が家を出た。

 響を一人にはしておけない。俺も響と行く」

 

 それは両親への家出の宣言だった。

 

「俺のせいで父さんと母さんには迷惑がかかってる。

 俺も、ここにはいない方がいい」

 

「バカなことを言うな!

 こんな風評なんて長続きはしない、お前が気にすることじゃないんだ!」

 

「そうよ、信人も響ちゃんもただ巻き込まれただけで悪いのはノイズなの!

 なのに何で家出なんて……」

 

 両親は俺のことを心から心配してくれている。

 ああ、俺の両親は本当に素晴らしい人間だ。そんな2人の子に産まれたことが心から誇らしい。

 

「父さんと母さんには本当に心から感謝してる。嘘じゃない。

 でも、今の響を1人にはしておけないんだ」

 

 そう言って、俺はそのまま2人へと土下座した。

 

「今の響を1人にしたら駄目だ。

 だから頼む、父さん、母さん。俺のわがままを……聞いてください」

 

「「……」」

 

 十秒か二十秒か、どれだけの時間そうしていたかは分からない。おもむろに両親はどこかへ行き、しばらくすると俺のところへ帰ってくると封筒を突き出した。

 

「今、家にあるお金をかき集めてきた。 持って行きなさい。

 あと、この通帳も。 お前が産まれてからずっと貯めていた、お前のための口座だ」

 

「ほとぼりが冷めたら、必ず響ちゃんと一緒に帰ってくるのよ。

 いい、わかった?」

 

「父さん、母さん……!」

 

 耐えられず、俺の眼からは涙が止まらない。

 その涙を拭い去ると、俺は立ち上がり玄関へと向かっていく。

 そして……

 

「いってきます!」

 

「「いってらっしゃい……」」

 

 俺は家を飛び出した。

 涙を拭い、渡されたものをバックパックにねじ込む。

 

「行くぞバトルホッパー、響を見つけるんだ!」

 

 空間から呼び出したバトルホッパーが電子音で答え、跳ねながらどこかに消えていく。

 俺も夜の街へと走った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 私は呪われている……響はそう確信している。

 あのライブ会場……ツヴァイウィングの2人が変身しノイズと戦う光景を見て、何かが自分の胸を貫いた。

 迫る死に朦朧とする意識の中で聞いた奏の「生きるのを諦めるなッ!!」という言葉、そして優しい『月』の光と白銀の背中のおかげで生き残れた。

 だが、「生きていてよかったの?」と響は何度も自問自答していた。

 

「何で生きてるの! この人殺し!!」

 

 見知らぬ誰かから、そんな言葉をかけられたのは一度や二度ではない。

 辛くて苦しくて、そして心が痛かった。

 それでも「生きたい」という理由はまだ響の中に残っていた。それは大切な幼馴染たちのため、そして家族のため。

 だが……それがどんどん崩れていく。

 

 『太陽』とも言える幼馴染で親友の未来の転校。

 父の失踪。

 疲れ切っていく母と祖母。

 

 その原因が自分だと思うと、「自分はあの時死ぬべきだったんじゃないか?」……そんな風に思ってしまう。

 そして……最後の決定打が今日の火事だ。

 自分のせいで燃やされた家。

 そして疲れ切り擦り切れたような母と祖母の空虚な瞳が、『すべてお前のせい』と言われた気がして耐えきれなくなった響はそのまま逃げ出した。

 

「はぁはぁ……」

 

 どこをどう走ったのかは覚えていない。見ればそこは見たこともないような路地裏だ。

 

「あぅ!」

 

 足がもつれ、そのまま倒れ込む響。

 いつの間にか振りだした冷たい雨が、容赦なく響を叩く。

 

「う……うぅ……」

 

 耐えられなくなり、倒れたまま涙を流す響。

 次々に自分が大切だったものが無くなっていく……まるで真っ暗な闇の中にたった1人で放り出されたような心境だ。辛くて心細い。

 

「助けて……誰か助けてよ……」

 

 いつも「へいき、へっちゃら」と必死で耐えてきた響は、絶望に染まりながら今まで押し隠していた本音を漏らす。

 彼女を覆う闇は濃い。

 しかし……どんなに闇が濃くても、それでも闇を切り裂き道を照らし出してくれる『月』は彼女のそばにあったのだ。

 

「見つけた! 響!!」

 

 響が誰かに抱き起こされる。それは響にまだ残っている大切なものである幼馴染、信人だった。

 

「ノブくん……どうして……?」

 

「話は後まわしだ。 とにかく、落ち着けるところに行くぞ」

 

 そう言って響は抱き起こされるように立ち上がると、2人はゆっくりと移動を始めた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 炎……キャンプ用品の缶の固形燃料の炎が俺の前でゆらゆらと揺れている。

 あの後、俺は響を連れて街はずれの廃工場に来ていた。雨風が凌げて人の目のないところというのがここのため、俺はここを当面の拠点にしようと考えている。

 

「ノブくん……着替えたよ」

 

「ああ」

 

 声をかけられ振り向くと、俺の持ってきていたジャージに着替えた響が立っていた。響の着ていた制服は雨に濡れていたので着替えてもらったのだ。

 そのまま響は俺の隣に座ると、一緒に暖をとる。

 

「飲み物入れるよ」

 

「うん……」

 

 力なく頷く響をよそに、俺はケトルに水を入れると固形燃料の上に置く。

 

「用意、いいね」

 

「うちは元々キャンプとか好きで行ってたから、道具はあったからな。

 それに……いつかこういうことになるんじゃないかと準備してた」

 

「そう……」

 

 それっきり響は黙ってしまう。

 

「なぁ、響。 家には……」

 

 俺の言葉に、響は首を振る。

 

「今は帰りたくない。 もう学校も家も嫌……」

 

 膝を抱える響。

 

「そうか……なら俺も響と一緒にいる」

 

「……いいの?」

 

「俺だってあの事件の生き残り、当事者だ。学校がいい加減うんざりなのは同感だよ。

 未来にだって響を守るって約束してる。

 それに……何より俺が響と一緒にいたいんだよ。

 だから、俺は響と一緒にいる!」

 

 ゆっくりと顔を上げる響。

 

「俺はいつだって響の傍にいて守る。

 だから……1人で抱え込まないでくれ。

 俺を、頼ってくれ」

 

「ノブくん……」

 

 そのまま響は涙を流しながら、俺の胸に顔をうずめた。

 

「ありがとう、ノブくん……」

 

 そう涙ながらに言う響の頭を、俺はゆっくりと撫でた。

 

 

 しばらくそうしてから、俺と響はお互いに顔を赤くしながら離れた。

 ……そうだ、ここまで来れば隠し事はなしにしよう。

 

「これで俺と響は運命共同体、なら……響には俺の秘密を見せるよ」

 

「えっ……?」

 

 何のことか分からない響をよそに、俺は立ち上がると響の正面に立った。

 そして……。

 

「変身ッ!」

 

 キングストーンの緑色の光とともに、俺はSHADOWの姿に変身する。

 

「ノブくん、その恰好は……!」

 

 驚きに目を見開く響。その時、雨がやみ雲の切れ目から月光が廃工場内に飛び込んできて俺を照らし出す。

 何故自分がシャドームーンの力を持って生まれたのか、それに意味があるのならきっと、それは響のためだ。

 『太陽』である未来とともに、『月』として響を守り襲い掛かる闇を払うために俺はこの力を授かったのだ。

 だからこそ、今ここで『月』に誓う。

 

「俺は月影信人。またの名を……仮面ライダーSHADOW。

 どんなことになっても響を守る、響の味方だ」

 

 そう俺は宣言した。

 




今回のあらすじ

SHADOW「さぁ蘇るのだこの電撃でー(キングストーンエネルギーびりびり)」

ビッキー「あべべべべべべ!!」

SHADOW「メタルマックスゼノは色々許せんがドクターミンチの存在を消したことは特に絶許」

ビッキー「『翳り裂く閃光』系ルートだから迫害酷いわ未来もいなくなるし家燃やされて、もう家出する。一緒に来る者はいるかぁ!」

SHADOW「ここにいるぞぉ!! 問おう、君が俺のマスターか?」

ビッキー「あ、私インド村の女代表なんで、インド人、ぶっちゃけカルナさん以外は別にいいッス」

SHADOW「中の人がはみ出てるぞ。俺はさくら……じゃない、響だけの正義の味方だ」

ビッキー「それだと私ラスボスじゃない?」

SHADOW「安心しろ。さくらはさくらでも、色といいエロいインナーといい『井河さくら』の方が近いと思う今日この頃」

ビッキー「それ対魔忍! 鼻フックはいやぁ!!」

ビッキーとのドキラブ家出生活はっじまるよー(棒
次回もよろしくお願いします。


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第6話

「えへへっ♪ おはよう、ノブくん♪」

 

「ああ、おはよう」

 

 目覚めれば目の前には響の顔がある。抱き合うように身を寄せ合い、2人で包まっていた毛布からもぞもぞと出る。

 最初は毛布は1枚だし、俺はキングストーンのおかげで身体はありえないほどに丈夫だから響に使ってもらおうと思ったのだが響がそれを頑なに拒否、最後には「不安」「一緒にいて」「いなくならないで」など涙目で言われたら断れず、こうして一緒に抱き合って寝ている。

 ここはあの廃工場の片隅、二階の事務所か何かだったと思われる場所。外からは見えないこの場所に、そこにあったものや拾ったブルーシートで造った簡単なテントのようなものが俺と響の寝床だ。

 

 2人で家出して、こうして一緒の朝を迎えるようになっておおよそ2週間が過ぎようとしている。

 最初の夜、俺の力の話をした。とはいっても前世があるやらの話はしない方がいいだろうから詳しいことはすべて省いて、あくまで『物心ついたときからあるノイズを倒せる不思議な力』として響に説明した。

 少しだけ受け入れてもらえるか不安だったのだが、それは杞憂だった。響は俺のことを微塵も怖がるようなことはせず、むしろ格好いいと言ってくれた。

 響はあのライブ会場でのことを朧げに覚えていて、俺に「助けてくれてありがとう」とお礼まで言ってきた。

 俺としては怪我を負わせてしまい守りきれていないわけで、お礼なんて言われる資格はないのだが。

 

「おはよっ、バトルホッパー」

 

 響の言葉に、バトルホッパーが電子音で答えた……響の服の中で。

 最初の夜にバトルホッパーも紹介したのだが、響は「可愛い」と妙に気に入ってしまった。バトルホッパーもなんだか妙に懐いている。だがバトルホッパーよ、いくらなんでも響の服の中から出てくるのはいい加減にしろよ。

 どういうわけか相棒(バトルホッパー)は響が呼ぶと、必ず響の服の中、もっと言えば同年代と比べても大きな胸の谷間から出てくるのだ。実は相当駄目な自我なんじゃないかと、この2週間で少しだけ相棒(バトルホッパー)を見る目が変わった。

 響は手早く、アウトドア用の折り畳みウッドストーブに、拾ってきた木で火をつけると湯を沸かし始める。

 響の精神はこの2週間でかなり安定していると思う。

 しかしそのかわりなのか、一緒に過ごしていると腕を組んできたり、抱きついてきたり、一緒に寝たりと随分と甘えるようになってしまった。あの状況で弱音を吐いて甘える場所がなかったせいだろう。その反動が来ているのだとは分かっている。

 だが、意識している相手のこれは刺激が強すぎて困るんだが。響はそういうことはないんだろうか?

 というか、もしかして意識しているのは俺だけで響は俺のことをただの幼馴染としか思ってないんじゃなかろうか?

 ……やめておこう。とにかく今は、今後の話をするべきだ。

 

「響……朝食をとりながらでいい。 今後の話をしよう」

 

 俺の言葉に響は頷いた。

 2人で朝食にアンパンをかじりながら、今後の話をする。

 

「正直に言うと……今のままの生活は長続きしない」

 

 そう俺は断言する。

 今の俺たちの状況など、キャンプの延長線上でしかない。長期的に同じことをするのは無理がある。

 両親から当面の間は心配ないお金は貰っているが、それでも長続きはしないだろう。そもそも、俺たちはどう言ったところで中学生だ。家を借りたり働いたり、そういうことが『まともな方法』では一切できない。今の状態では、生きるのに必要な衣食住すべてが心もとない状態なのだ。

 

「それは……もう元のところに戻るってこと?」

 

 不安そうに言う響に俺は首を振る。

 

「違うよ。

 たった2週間ばっかり程度じゃ何一つ状況は変わってないだろう。何もかも同じままだ。

 だから家出はこのまま続行。でも、続行するには今のままじゃ無理だ」

 

「それじゃあどうするの?」

 

 響の問いに、俺は残っていたアンパンの欠片を口に放り込みながら答える。

 

「無論、大人に保護してもらう」

 

「それは……」

 

 響が不安そうな顔をする。

 俺たちのようなあのライブでの生き残りをターゲットにした『生存者バッシング』は世間全体、当然のように大人だってそれに加わっていた。世間全部が自分たちを攻め立ててくる敵のような状況で、まともな保護など望めるはずもない。

 頼った瞬間、何をされるか……そんな不安が響からありありと感じられるし、俺もそれはありえるとは思っている。

 だが、俺には1つ勝算があった。

 

「絶対……とは言わないが1つ勝算がある。

 それは……俺の力だ」

 

「ノブくんの力って……」

 

「実は何度かノイズと戦う現場で、ツヴァイウィングの連中に「仲間にならないか?」って言われてるんだ。

 ノイズを倒せる『仮面ライダーSHADOW』の力が欲しいんだろう。

 今までは連中のことを何も知らないし、何をされるか分からないから断ってたんだが……俺たちの保護や、まぁ色々……こっちの条件を受けるんなら、その話を受けようと思ってる」

 

 これが俺が考え抜いた結論だった。

 正直、正体のまるで分らない組織に身売りするのは気が引ける。仲間になった翌日には手術台のモルモットという結末だってあり得るだろう。

 

(いや、それ以上に……ゴルゴムの息のかかった組織という可能性もある)

 

 あのノイズと戦うためのプロテクターからして、現在の科学から一線を画すものだ。それを運用している以上、普通でないことは間違いない。ゴルゴムの一員、そうでなかったとしても組織内にゴルゴムの息のかかった人間がいる可能性は否定できないだろう。

 ノイズを操って人類を抹殺しようとしているだろうゴルゴムとは、俺は確実に敵対する。その疑いのある組織の懐に飛び込むなど、普通なら正気の沙汰じゃない。だが、響のためを思うとどこかでの保護は必須だ。他に当てがない以上、賭けるしかない。

 それに何度かツヴァイウィングとは戦場で共闘し、悪い相手ではないとは理解している。何より天羽奏は身体を張り命懸けで響を守ってくれたし、そこに邪な他意は感じられなかった。

 そもそもツヴァイウィングのいる組織がゴルゴムの一員だと仮定すると、ノイズを操るゴルゴムが自分でそのノイズを倒しているという構図になってしまう。それもおかしな話だ。だから大丈夫じゃないか、という希望的観測を持っているのも事実だ。

 

 しばらくして響はゆっくり頷く。

 

「……分かった。ノブくんの判断を信じる。

 でも……もしそこの大人も他と同じだったら?」

 

「その時は……俺が本気で戦う。それで2人で逃げよう。

 そのあとは海でも渡って、誰も知らないところで2人で暮らすか」

 

 その時は多分、俺は『仮面ライダーSHADOW』ではなく『シャドームーン』となるだろう。力で他者の幸せを踏みにじってでも、俺と響の居場所を造る『悪』となる。

 俺もそのぐらいの覚悟を持って響と一緒に家を出たのだ。

 

「だからツヴァイウィングのところに突撃かノイズ待ちか、ってところかな」

 

 そんな風におどけて笑ったときだ。

 背中を駆け巡るような予感、ノイズの前兆だ。

 

「……ナイスタイミング、なのか?

 ノイズが来る!」

 

「えっ!?」

 

 キングストーンの感覚の方がノイズの警報よりも早い。

 

「変身ッ!!」

 

 俺は驚く響を尻目に、仮面ライダーSHADOWに変身する。

 

「バトルホッパー!!」

 

 俺の声に答え、バトルホッパーが捨ててあった廃自転車に張り付くと、バイクへと変形した。

 

「……」

 

 さっそくバトルホッパーに跨ろうとするが、その時ふと不安になり、バトルホッパーから降りる。

 

「ノブくん?」

 

「バトルホッパー、今日はここに残って響を守っていてくれ」

 

 よく考えたら今の響はノイズが現れてもシェルターにも避難できない。万一を考えておいた方がいいだろう。

 

「ノブくん……いってらっしゃい!」

 

「トォ!!」

 

 響に見送られ、俺はノイズの現れる現場へと急ぐ。無論徒歩で。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 俺が現場にたどり着くと、ツヴァイウィングがすでにノイズとの戦闘を始めていた。

 

「久しぶりだね、仮面ライダーSHADOW。

 今日はちょっと遅いじゃないか。 いつものバイクはどうしたんだい?」

 

「車検中でな。 徒歩で来た」

 

「車検!? あれ車検に出せるの!!

 しかもライダーなのに徒歩!?」

 

「冗談だ」

 

 はじめに俺に気付いたのは奏の方だった。相変わらずこちらにフレンドリーに話しかけてくる。

 一方の翼の方はというと、こちらも以前までのように殺気をぶつけてくることはない。警戒はしているようだが、どういう事情か随分と丸くなっていた。

 

「久しぶりで話したいこともあるけど、まずはノイズ殲滅が先だね」

 

「分かった。 トォッ!!」

 

「翼、アタシたちも行くよ!」

 

「わかった、奏!!」

 

 今回のノイズは数もそれほどではなかったので、SHADOWとツヴァイウィングの2人の活躍によって殲滅はすぐに終わった。

 

「さてっと……それじゃあちょっと話に付き合ってもらうよ、SHADOW」

 

 戦いが終わると、奏と翼は俺の前に立つ。

 

「まずは礼を言わせて。

 ライブの時はありがとう。 アンタのおかげでアタシは今もこうして生きていられる」

 

「私からも。奏を救ってくれてありがとう。

 あの時、あなたがいなかったら奏は……」

 

 どうやら翼が俺への不信感が減っていたのは、ライブの一件で奏を助けたことが原因らしい。

 ……俺としては響が怪我を負い、正直それを助けるついでだったので、こうも感謝されると逆に恐縮してしまう。

 

「その……面と向かって言われると、少し照れる」

 

「照れるって顔かい、ソレ?

 それにアンタのあの回復のおかげで、最近はすこぶる調子もいいんだ。

 そこも感謝してるんだよ」

 

 するとスッと奏は俺に近付いて小さな声で「あの子のことはナイショにしてるよ」と言ってきた。どうやら約束を律儀に守ってくれていたようだ。

 

「……実は俺からも話がある」

 

「へぇ、アンタの方からとは珍しいね。 何だい、サインでも欲しいのかい?」

 

 奏はそう少しおどけて言うが、それを無視して俺は切り出した。

 

「前にあった俺にお前たちの仲間になれという話……受けてもいい」

 

 その言葉に、奏と翼は息をのんだ。

 

「どういうことだ? あれだけ私たちが信用できないと拒んでいたのに」

 

「何度も共闘しているし、お前たちはそれなりに信用できる。

 正体の分からないお前たちの組織が信用できないことは変わらないが……俺の方でも大きく事情が変わった」

 

 突然の方針転換に訝しむ翼に、俺は答えて続ける。

 

「ただし、当然だが条件がある」

 

「……いいよ、言ってみなよ」

 

「いや、事情が込み入っているから直接話をしたい。

 明日朝10時、今から言う場所に意思決定のできる人間を連れてきてくれ。

 場所は……」

 

 そして俺は、拠点にしている廃工場の位置を教えた。

 

「OK、必ず司令を連れてくよ」

 

「ああ、待っている」

 

 それだけ言って、俺は大きく跳躍し、そのまま全力でその場を離れていく。

 これで賽は投げられた。あとはどんな目が出るのやら……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ここか……SHADOWに指定された場所は……」

 

 車から降りた弦十郎は目の前の廃工場を見上げる。同じように車から降りた奏と翼も揃って廃工場を見上げた。

 

「弦十郎のダンナ、随分燃えてるね」

 

「やっと仮面ライダーSHADOWを仲間にできる機会がやってきたんだ。

 興奮するなという方が無理だ」

 

 何やら全身からオーラのようなものがみなぎる弦十郎の様子に、奏は肩を竦める。

 一方の翼は、少し不安げな顔だ。

 

「しかし……こんな人気のないところに呼び出す真意が見えません。

 万一のことも考えないと。それに向こうの言っていた条件というのもまだ分かりません」

 

「いや、SHADOWの今までの行動は一貫して人を守る側についていた。あまり初めから疑うものじゃない。

 それに彼ほどの力の持ち主だ、秘密もあるだろう。それに関係する条件じゃないかと思うぞ」

 

 弦十郎はそう言うと、軽い足取りで廃工場に入っていく。それを追って奏と翼も廃工場へと入っていった。

 しばらく中を進むと、広い場所にでる。そこには、2人の人影があった。

 

「子供?」

 

 それは中学生くらいの少年と少女だった。

 その2人がキャンプ用品のウッドストーブでたき火にあたりながら、ケトルで湯を沸かしている。

 こんなところでキャンプの真似事というわけでもないだろう。普通なら学校に行っている時間、しかも少しくたびれた恰好の2人は明らかにおかしい。

 『家出』……節度ある大人である弦十郎は、すぐにその単語にたどり着く。

 すると……。

 

「ああ、来たのか……待ってたよ」

 

 そう言って、少年の方が立ちあがって3人の方を見る。

 そして……。

 

「変……身ッ!」

 

 少年の腰のあたりから緑色の光が溢れだす。

 そして、気付いたときには少年のかわりに立っていたのは、白銀の戦士『仮面ライダーSHADOW』だ。

 それは、仮面ライダーSHADOWの正体があの少年だという事実。

 

「君は……」

 

「自己紹介だ。

 俺は月影信人、そしてまたの名を……仮面ライダーSHADOW」

 




今回のあらすじ

ビッキー「なんかヒロインである私とのドキラブ家出生活2週間が、一瞬で終わった件について」

SHADOW「まぁ、家出って言うほど簡単じゃないし長々できんからしょうがないだろ。
    俺はデュエリストじゃない、リアリストだ!
    ……それよりこのままの生活だと俺はともかく響はまずいんで、ゴルゴムっぽいけどツヴァイウィングの組織のスカウト受けようと思う」

【悲報】特異災害対策機動部二課にゴルゴムの疑い

OTONA「何と言う風評被害」

フィーネさん「だからゴルゴムって何よ、ゴルゴムって!?」

SHADOW「というわけで徒歩で参った!」

奏「緊急事態なんだから少しは急いで来なよ!」

SHADOW「シャドームーンは威圧感たっぷりにカシャカシャ言いながらゆっくり歩いてくるのが王道と信じる俺がジャスティス」

防人「わかりみが凄い」

SHADOW「お前らの仲間になってもいい。だが俺はレアだぜ」

OTONA「やっとSHADOW仲間にできると思ったら家出中学生だった件」


毎日更新はさすがにここまで、ここからの更新は不定期になると思います。
次回もよろしくお願いします。


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第7話

 やってきた3人……ツヴァイウィングと、いつだかノイズとの戦いの時にあったことのある男を前で変身して見せると、驚きのあまりか目を見開いて動かなくなってしまった。

 俺はそのまま変身を解くと、たき火の近くの手近なところに座るように促す。3人は戸惑いながらも、手近な瓦礫に座った。

 

「響」

 

「うん」

 

 響が紙コップに安物のティーパックを入れて、そこにケトルから湯を注いでいくと紙コップを3人に渡していく。

 

「悪いね、天下のツヴァイウィング相手にこんなものしか出せなくて」

 

「それはどうでもいいんだけど……」

 

 俺の言葉に奏は驚きで何を言ったらいいのか混乱しているようだ。隣の翼も同様である。そんな中、唯一の大人である男は一つ咳払いすると話し始めた。

 

「俺は特異対策機動部二課司令官の風鳴弦十郎だ。

 ノイズ対策を行っている、この2人の上司だと思ってくれればいい。

 さっそくだが……君たちのことを聞きたい」

 

「さっきも言ったが、俺の名前は月影信人。それでこっちが……」

 

「立花響です。 奏さん、あの時は助けてもらってありがとうございました」

 

 そう言って響はぺこりと奏に頭を下げる。

 

「知り合いか、奏くん?」

 

「ああ、あのライブ会場で助けた娘だよ。

 元気になってよかったよ……」

 

 奏も気に掛けていたのか、響の無事を喜んでくれた。

 ……まぁ、実はあまり無事ではないとこれから話すわけだが。

 

「話の続きだが、俺も響も現役中学二年生。

 でもって絶賛家出中、といった状態だ」

 

「やはり家出か……」

 

 どうも俺の提示する条件というのが、何となく察しがついたようだ。

 

「察しが付いたみたいだが、俺からの条件の1つは俺と響の保護だ。

 俺たちに衣食住を提供してほしい」

 

「それは『家出先になって欲しい』、ということか?」

 

「まぁ、そういうことだよ」

 

 その言葉に、弦十郎は渋い顔をする。

 

「確かに対ノイズのために、仮面ライダーSHADOWという戦力はぜひとも欲しい。

 しかし中学生の家出を手助けするというのは、大人としてはとても頷けないな」

 

 どうやら、この風鳴弦十郎という人物は良識ある大人のようだ。

 

「言うことはごもっとも、でも俺も響も好きで家出中なんじゃない」

 

「何? 何か事情があるのか?」

 

「ああ、これが俺からの2つめの条件……『俺たちの事情を解決してほしい』」

 

 そして、俺は現在の俺と響の置かれている状況を説明した。

 学校、世間での『正義』の名の元に行われる陰湿な嫌がらせ。

 その標的が家族にまでおよび、家に火までつけられたことを、だ。

 

「そん……な……」

 

 話を聞き終えた翼がその内容に絶句する。

 

「何だ、あれだけ世間で生存者バッシングが巻き起こってるのに知らなかったのか?」

 

「生存者へのバッシングがあることは知ってたよ。

 でも、ただのヒステリー程度で、そこまで腐ったことが平然と行われてたなんて……」

 

 奏もバッシングの存在自体は知っていたが、具体的な状態までは知らなかったらしい。その凄惨な内容に顔を青くしている。

 

「確かに、報道のいうように自分の命のために他人を犠牲にした奴もいるだろう。

 でもそうでない奴だっている。そんな響のような境遇の奴が『ただ生きているだけで悪い』とされているんだ。

 恐らく家庭崩壊して俺たちみたいに家出したやつ、それを苦に自殺したやつや、『正義』の名の元にリンチで殺された奴だってたくさんいると思うぞ」

 

「私と奏が戦って救ったはずの命が……そんな風に散らされているなんて」

 

「弦十郎のダンナ……」

 

「分かっている、みなまで言うな。

 こんなまだ中学生の子供が心身をボロボロにされるような話を黙って見過ごせるほど、俺は無責任な大人になったつもりはない!」

 

 おもむろに弦十郎が立ち上がり、俺に向かって手を差し出してくる。

 

「わかった。 君の言う条件を呑もう、月影信人くん!」

 

「……じゃあ契約成立だな。

 あんたが信用を裏切らない大人だって信じるぞ」

 

 そう言って俺はその手を握り返した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 俺と響はそのまま車に乗り、特異対策機動部二課の本部へと向かうことになる。

 その道すがら、俺と響は特異対策機動部二課やツヴァイウィングの2人についてを聞くことになった。

 

 『シンフォギアシステム』―――これが奏と翼の纏う対ノイズプロテクターらしい。

 聖遺物というものを核として、歌のエネルギーによってノイズに攻撃を通し、歌のバリアであるバリアコーティングでノイズの炭素変換を無効化する、文字通り『歌で戦う戦士』だそうだ。

 ただしその適合者は少なく、今までの戦いで他の人間を見たことがないので何となく察していたが、今のところ二課の戦力は奏と翼の2人だけのようだ。

 人不足甚だしいことこの上ない。明らかに怪しい俺でも、仲間に引き入れたいわけだ。

 と、ここまで明らかに機密だろうことを俺だけじゃなく響にも聞かせていいのか気になったが、響はこれから民間協力者という扱いになるらしい。

 やがて車が到着したのはかなりの敷地面積を誇る高校だった。

 『私立リディアン音楽院』―――ツヴァイウィングの特集を読むために買った音楽雑誌に書いてあった、奏と翼の通っている女子高だっただろうか。

 

「学校の地下に秘密基地か……まるで映画だな」

 

「それ、地下研究所で造られてた謎のウイルスのせいで、学校がゾンビで溢れるような話じゃなかったっけ?」

 

「いやいや、アタシらそんな物騒なことはしてないから……多分」

 

 俺と響の会話に奏が突っ込みを入れるが、その言葉が途中で小さくなっていく。

 ……本当に大丈夫か、ここ?

 エレベーターはかなりの速度で降下していく。かなり深い地下施設のようだ。

 案内されるまま、SF映画に出てきそうな廊下を進んでいく。

 暫く歩くと弦十郎があるドアの前で立ち止まり、俺に開けるよう促したのでゆっくり開け放つ。

 

 するといくつもの破裂音が響いた。

 すわ発砲音かととっさに響を庇うように立つが、音の正体はパーティー用クラッカーの炸裂音。

 

 

『特異災害対策機動部二課へようこそ!!』

 

 

 歓迎の声が唱和する。大勢の拍手の出迎えに俺も響も呆気に取られていた。 

 室内は制服やスーツ、研究者のような白衣の格好をした者達が大勢おり、テーブルの上には様々な料理とグラスと飲み物が用意されている。

 

「改めてようこそ、月影信人くん、立花響くん!

 我々は君たちを歓迎する!」

 

 こんな豪勢な食事は2人で家出してからは縁遠かったせいもあって、そこからは俺も響も遠慮もなく料理をかき込んだ。

 特に響は食べることが大好きだ。だが、家出中はお互い最低限の食事だけだったし、少しひもじい思いをさせてしまったかもしれない。そんな響が久しぶりに思いっきり食べて笑顔を見せてくれていることが嬉しかった。

 

 やがて夜も更け歓迎パーティはお開きになり、詳しい話は明日以降ということになって俺と響はこの施設に泊まることになった。

 俺と響は部屋をあてがわれ、寝る前に案内された浴場で汗を流す。

 

「ふぅ……」

 

 家出中はまともに風呂は入れなかったので、余計に気持ちいい。湯につかりながら、その気持ちよさに思わずため息が出る。

 と、そのときガラリとドアが空き、独占状態だった風呂に誰かが入ってきた。

 

「邪魔するぞ、信人くん」

 

 入ってきたのは腰に巻いたタオル一丁の弦十郎だ。

 

「君ともっと話をしてみたくてな、裸の付き合いというやつだ。

 響くんの方も、奏くんと翼くんが行っているよ。

 隣はいいかね?」

 

「……どうぞ」

 

 身体を手早く洗った弦十郎はそのまま湯につかると、俺の隣に座る。

 

「俺は数年前に出会った仮面ライダーSHADOWに、いつか必ず仲間になってもらおうとずっと考えていたよ。

 それがまさか中学生の少年だったとは……」

 

「幻滅しました?」

 

「いいや。

 逆にどんな力があろうと、10歳そこそこでノイズたちと戦って誰かを助けるなんて普通にはできない。

 俺が君くらいのころは、向こう見ずでやんちゃなガキだったよ。

 それに比べて君は立派だ。いつも、ノイズから人を助けて戦っていた。

 だからこそ……君に聞きたい」

 

 そこで弦十郎は一度言葉を切る。

 

「……君や響くんの受けていた仕打ち、調べさせてもらった。

 思わず目を覆いたくなるような、酷いものだった。

 君はこれだけのことがありながら、まだ人を助けるために戦えるのか?」

 

 弦十郎が真っ直ぐに俺を見ながら、そう問うた。

 

「……前にも言ったけど、俺は『正義の味方』じゃない。だから人のために戦っているかって言えばノーだ。

 俺は常に『俺の大切な者の味方』だ」

 

 俺は浴室の天井を向いて目を瞑る。目蓋に浮かぶのは両親や響や未来の姿。

 

「俺は、俺の大切なもののために戦ってる。その結果、救われてる他人がいるだけなんだよ。だからこれからもそう、人のためじゃない、俺の目的のために戦うんだ」

 

「なるほど……」

 

「……もっとも、俺の大切な者はみんな『善人』だ。誰かがノイズに殺されて涙を流す人がいると知ると悲しむんだ。

 だから、そうならないようにできる限りは人を助けるよ。

 この答えで満足か?」

 

「もちろんだとも。君が思った通りの『善』であることが分かったからな。

 これからよろしく頼む」

 

「こちらこそ、よろしく」

 

 そう言って、俺は差し出された手を握る。

 その手は大きく、温かかった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 男湯で信人と弦十郎が裸の付き合いをしているころ、女湯では響も奏や翼と裸の付き合いをしていた。

 

「ほれー、うりうり~」

 

「や、やめて下さい奏さん!」

 

 まるで大型犬を丸洗いするように響の身体を洗う奏に、響は困惑気味だ。

 

「ほれほれ。 翼も来なよ。面白いよ」

 

「奏がそう言うなら私も」

 

 助けを求めるように響は翼の方を見るが、奏の言葉で秒で敵に回る翼。

 結局、響は終わるまで大人しくツヴァイウィング2人から身体を洗わ続けるしかなかった。

 

「うー、酷いですよ2人とも。

 すっごく恥ずかしかったです……」

 

 洗い終わり湯船に浸かった響が、恥ずかしそうに顔を赤くして顔を隠すように湯に口元辺りまでブクブクと沈みながら言うと、それがまた何やら奏と翼の琴線に触れる。

 

「あーもう、可愛いなぁこの娘!」

 

「なんだろう、今ちょっとドキッとしたぞ!」

 

 実はツヴァイウィングの2人を前に緊張気味だった響をリラックスさせようとした奏なりの気遣いなのだが、それは成功したと言っていいだろう。

 奏と翼が響を左右から思わず、挟み込むようにして頬ずりをする。

 一方の響は悟ったような顔をしながらも、内心ではどこか嬉しそうだった。もともと響は明るく、他者との繋がりを大切にする娘だ。他者とのスキンシップも多かった。それがあの事件によってそう言った絆はほとんどが切れてしまったため、こうして久方ぶりに誰かとスキンシップを図るのは結構嬉しいのである。

 

「……ごめんね、その傷。

 アタシが守りきれなかったばっかりに……」

 

 しばらくじゃれるようにしていた奏だが響の胸に残る、ライブ会場での傷を見て少ししんみりした声で奏が謝る。女の子としては、身体に消えない傷があるというのはつらいことだろう。

 しかし、その言葉に響は首を振る。

 

「あの会場では、ノイズのせいでたくさんの人が死んじゃいました。それに比べたらこんなの、へいき、へっちゃらです。

 その後のつらい時にだって、あの時の奏さんの『生きるのを諦めるな』って言葉が私の支えの一つでした。

 奏さん、翼さん。2人やノブくんのおかげで、私は今こうして生きています。

 だから改めて……助けてくれて、ありがとうございました」

 

 奏と翼はその言葉に何も言えなくなった。

 感謝の言葉……それが欲しくてノイズと戦っているわけではないが、それがあるというのは嬉しいものだ。しかもその相手は生死の境を彷徨うような大けがをし、守れたとは言い難い相手である。

 それに……。

 

(この娘……あれだけのことがあっても……)

 

 奏も翼も、響たちの状況については詳細を聞かされていた。

 響たちは『あの惨劇を生き残った』、ただそれだけでいわれのない迫害を受け、大切な家族まで被害にあっている。ともすれば「何で助けたの!」と恨み言を言われることも覚悟していた2人にとっては、この言葉は嬉しいものだった。

 

「ほんっとにいい娘だね……」

 

「強いのだな、立花は……」

 

 まだ出会って少しだというのに、その人となりを知りいつの間にか『守るべき妹分』と言えるくらいにまで2人は響を気に入っていた。

 そのあとは3人は打ち解け、たわいない話をしていく。そんな話は必然的に『仮面ライダーSHADOW』こと月影信人のことになった。

 

「何回も戦いで共闘してその強さは知ってるからね、あいつが仲間になってくれるってのは心強いよ。

 できればもっと早く仲間になってもらいたかったけどね」

 

「まぁ、ノブくんなりの考えがあってだと思います」

 

「翼なんてSHADOWのことを『目的が分からなくて不気味なやつだ』ってずっと言ってたんだよ」

 

「し、仕方ないだろう。彼は今まで何も語ってくれなかったんだから。

 こんなに家族や幼馴染想いの男だと知っていれば私だってそんなことは言わなかった!」

 

 そんな話を続けていく。

 奏も翼も、信人の話になると響が饒舌になるのを気付いていた。

 

「好きなの? 彼のこと?」

 

 不意に奏が問うが……。

 

「……好きに決まってるじゃないですか。

 幼馴染でどんなにつらいことがあっても、いつだって一緒にいてくれた。

 私を襲うたくさんの嫌なことから、未来と一緒に守ってくれた。

 逃げ出して家出しても、それでも私と一緒にいて守ってくれる。

 そんなの、大好きになっちゃうに決まってるじゃないですか」

 

 顔をほんのり赤くしながら、それでも迷いなく、すぐにはっきりと断言する響。

 そんな響のことを、奏と翼は綺麗だと純粋に思う。同時に素敵な恋をしている響をうらやましく思った。

 そしてそんな純粋な想いを見せられ、奏と翼は『この娘を全力で応援しよう』と決意する。『響の恋を応援する会』が人知れず結成された瞬間であった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 風呂も終わり、用意された部屋で就寝という時間になったのだが……。

 

「別々で部屋用意してくれたのに、何で一緒に寝てるんだか」

 

「えへへっ♪」

 

 少し呆れたような信人の言葉に、響が笑って答える。眠ろうとベッドに入った信人の部屋に響が訪ねてきて、そのままベッドに潜り込んできたのだ。信人は未だに響が心細くなっているのは理解していたので、拒否するようなことはせず響のしたいようにしている。

 

「……まぁ、まだ完全に信用したわけじゃないし、万一を考えれば離れないほうがいいか」

 

「奏さんや翼さんはいい人だったよ」

 

「それは分かってるけど……いつだって万一の可能性はあるさ」

 

 明日から2人の生活は家出生活からまたガラリと変わる。そこには期待もあれば不安もあった。

 

「……これから私たち、どうなるのかな?」

 

「いい方に転がることを祈りたいな。

 ただ……どうなっても、俺は響と一緒だ。1人にはしないよ」

 

「……うん」

 

 頭を撫でられ安心したような響が目を瞑り、信人も目を閉じる。

 寝る直前まで、2人は考え事をしていた。だが、その時考えていたことは……。

 

(えへへっ、ノブくん大好き♪

 一緒に寝る男の子なんてノブくんだけだし、こうしてそれを許してくれるんだからきっと私のことを……。

 でも、一緒に寝るなんて結構大胆なことしてるのに反応が薄いような……?

 ただの幼馴染程度にしか思ってない、ってことはないよね?

 うーん……)

 

(俺は響のことを意識してるんだけど、響は俺のことをどう思ってるんだろうな?

 こうやって甘えてくれるんだし嫌いってことはないだろうけど、逆に男として意識もしてくれてないってこともありえるんじゃ?

 いっそ思い切って……いやいや、不安で頼れるのが俺だけって今の状況でそれを言うのはいくら何でも卑怯だしなー。

 でも……うーん……)

 

 寝る直前にお互いが考えていたのは今後への不安ではなく、そんな胸の内のもやもやとした想いだった。

 奏や翼がこのことを知ったら『つべこべ言わずさっさと付き合えバカップル!』とお互いの尻を蹴りあげていたことだろう。

 しかし不幸なことにそんなツッコミができる人間はここにはおらず、やがてゆっくりと部屋には2人の寝息が聞こえてくるのだった。

 




今回のあらすじ

SHADOW「そっちに協力するから家出先になってくれよな。あと生存者バッシングの火消しヨロシク」

OTONA「OTONAとして当然助けよう」

防人「しらそん」

奏「つーか、警察は一体何してるんだよ?やってることが完全に魔女狩りで社会全体がヤバい」

SHADOW「学校地下の秘密基地とか燃えるが……ちょっと深過ぎね、ここ?」

フィーネさん「そ、そんなことないわよ(目そらし」

OTONA「裸の付き合いだ! あんなんひどいことされて、まだ人助けできるん?」

SHADOW「いやいや、響とか未来とか助けてるだけなんで。ついでで助けるけど」

OTONA「男のツンデレ発言は流行らないぞ」

奏「あのカシャカシャ銀色お化け好きなん?」

ビッキー「当たり前ですやん。でも響様は告らせたい」

SHADOW「選択肢ない状態で告白するのは卑怯(キリッ」

防人「何だろう、砂が吐けそうだ」

奏「さっさと付き合えこのバカップルが!」

自分の書いてる他作品のように、寝る前の主人公とヒロインの一緒の布団での会話が一番スラスラと書ける不思議。
次回もよろしくお願いします。


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第8話

 俺と響が保護された翌日から、俺たちの二課での生活が始まった。

 朝食を終えると、俺と響は会議室のようなところに通された。司令や奏や翼、そしてスタッフだろう人間が何人もいる中で話し合いが始まる。

 

「まずはいくつか約束して欲しいことがあるが、構わないだろうか?

 一つ目はここでのことは誰にも口外しないこと。国の重要機密に関わることだからだ。

 二つ目はこの後信人くんにメディカルチェックを受けてもらうこと。

 とりあえず以上の二点を約束してもらいたい」

 

 秘密を守れというのは当然のことだし、俺の力のことを知りたいのは当たり前だろう。このことは最初から覚悟の上なので俺は頷く。

 

「そのメディカルチェックっていうのが『人体解剖』の別名じゃないっていうなら構わない」

 

「そんなことはない! ……はずだ」

 

 ……ホントに大丈夫だろうな?

 すると、メガネに白衣という女性が不満そうな声を上げる。

 

「失礼な、この私がそんなことすると思うの!

 解剖は一番最後のお楽しみ、まずは隅々までくまなくデータをとってからに決まってるじゃない!!」

 

「……ヲイ、司令」

 

「いや、大丈夫。 了子くんなりのただの冗談……のはずだ」

 

 今の間は何だ? 急に不安になってきたぞ。

 俺は胡散臭げに白衣の女性―――櫻井了子を見る。彼女は二課の技術主任らしく、あの『シンフォギアシステム』の開発者であるらしい。

 

「それよりもさっそく、あなたの話を聞かせて頂戴」

 

 技術者として、未知の存在である『仮面ライダーSHADOW』に興味津々なのだろう。パンパンと手を叩きこの話はおしまいと強引に切ると、さっそく俺のことを聞いてきた。

 

「……期待して貰ってるところ悪いけど、あまり大した話はできないと思うぞ」

 

 そう言って、俺は説明を始めた。といっても前世やらの話はできないのであくまで『物心つく頃から使える不思議な力』『自分の中に大きな力があることが分かる』『戦い方は何となく分かる』という程度の話になった。

 ゴルゴムの話はできない。

 未だ二課を完全に信用しきったわけではないし、俺の知っているゴルゴムは様々なメンバーが参加していて、大学教授に優秀な研究者、芸能人に政治家とどこにでもその息のかかった人間がいた。例えば目の前の彼女、優秀な科学者である了子さんがゴルゴムメンバーでないという保証はどこにもないからだ。

 同じようにSHADOWの力に関しても今まで見せたことのあるものくらいしか教えないようにしている。

 そんなわけで与える情報をかなり選択したわけだが、それでも彼女は興味深そうに俺の話を聞いていた。

 

「何らかの聖遺物の効果? それが使用者に制御方法や戦闘技術をインストールしている?

 とても興味深い話ね……他には何かないかしら?」

 

「ああ、俺の相棒の……」

 

「呼ばれてるよ、バトルホッパー」

 

 響の声に電子音のようなもので答え、もぞもぞとバトルホッパーが出てくる。響の服の中から。 

 ……そろそろこの相棒は一度〆るか分解したほうがいいのかもしれない。

 

「それは?」

 

「バトルホッパー。 俺のいつも乗ってるバイクだ」

 

「……はぁ?」

 

 そうしてバトルホッパーのこと、『能力に目覚めた時に現れた』『自我がある』『呼べばどこへでも現れる』『どんな乗り物でも合体することでバイクに変える』といったことの説明をする。

 

「使用者を支援するための、自立起動型の聖遺物……かしらね?

 能力の覚醒と同時に使用者の元に駆け付けるようにプログラムされている?

 空間跳躍能力を持っているみたいだし、それでノイズの位相差障壁を無効化できるのかしら?

 そして『どんな乗り物でも合体することでバイクに変える』……物理法則に真っ向からケンカを売るような能力ね」

 

「いやアンタの造った『シンフォギアシステム』だって大概、物理法則さんにケンカ売ってると思うぞ。

 ……もちろんだけど相棒(バトルホッパー)の分解とかも無しだ」

 

「……ちぃっ」

 

 舌打ちが聞こえた気がするが、聞かなかったことにしよう。その方が精神安静上、楽だ。

 その日はそのまま、俺はメディカルチェックを受けることになった。その結果だが……『不明』である。

 検査の結果、俺の身体は普通の人と何ら変わりはないそうだ。身体の中に聖遺物でもあるんじゃないかと思っていたらしいが、レントゲンや各種スキャンでも、俺の体内には何も異物は発見されなかったらしい。

 

「何度調べても、身体の中に異物は存在しなかったわ。

 中に聖遺物でもあった方が分かりやすいのに……つまりあなたの力は『不明』、今のところ現在の科学では解明できない『超能力』の類としか表せないわ」

 

 俺としては体内にある『キングストーン』の存在を明確に感じ取れるから、そこに『キングストーン』があることは間違いないはずなんだが……どうやら『キングストーン』が自らの存在を隠しているようだ。自動ステルスとか、チートな機能である。

 ちなみに変身後の俺は、そもそも分析しようとしても分析機材が謎のノイズだらけでまともに調査できないようだ。恐らく『キングストーン』によるジャミングか何かだろう。

 バトルホッパーの方は、破損もなく自立行動していることから『完全聖遺物』に属するものではないか、という結論に至った。

 そしてバトルホッパーの存在から、俺のような力の持ち主が過去にもいて、それらをサポートする目的で造られたのではないかという推測が出る。

 

「人を超えた人……いわゆる『超人』の伝説は世界各地に存在しているわ。

 それはもしかしたら、あなたのような力を持った人たちだったのかもしれないわね」

 

 そう、俺を検査した了子さんは締めくくる。

 何だか俺の正体不明度やうさん臭さが爆発しすぎている気がするが……前世の記憶を持ってるというだけで最初から怪しさ大爆発なのだ、俺自身もう細かいことは気にしないことにした。最悪、対ノイズのための戦力にさえなれば二課としても文句はないのだろう。

 

 それからしばらく、行く場所のない俺も響も二課での生活を送っている。

 俺の方はさまざまな検査やシンフォギアを纏った奏や翼との訓練戦闘、そしてたまにノイズとの実戦といった生活サイクルだ。

 響の方も、機密の関係やらでまだ二課から出られないため、色々なところで雑用手伝いなどをしている。

 あとは……。

 

「俺と戦ってくれ!!」

 

 弦十郎司令に最初そう言われた時には何事かと思った。なんでも司令は武術をやっているらしく、俺と戦ってみたかったらしい。

 俺は正直何も考えず、軽くOKを出して変身して戦い始めたのだが……戦った時の記憶は正直思い出したくない。仮面ライダー的にいうと『おやっさん』とか『滝』とか、生身の人間なのに場合によっては怪人を圧倒できるバグキャラのような人だった。

 この人は本当に普通の人なんだろうか?

 俺の力はあのライダー界の悪のカリスマ『シャドームーン』なんだぞ。何でそれを相手に正面から殴り合えるんだよ。

 というか『超人』ってこういう人を言うんじゃないのか? この人用のシンフォギアかなにかが開発できたら最強な気がするんだが……。

 とにかく司令の強さをいやと言うほど思い知らされた俺は司令に弟子入りすることにした。多分、俺はこれからの人生で戦いから抜けることはできないだろう。今後のことを考えると、変身前の生身もしっかり鍛えなければどこかで絶対にダメになると思ったからだ。

 ただ、予想外だったのは響だ。

 

「私も弟子にしてください!」

 

 俺と司令の戦いを間近で見ていた響まで、司令に弟子入りしたいと言いだしたのだ。

 理由を聞くと、あのライブ会場で自分がノロノロしていたせいで奏を苦戦させてしまったから、せめて邪魔にならないように逃げるだけの力が欲しいというのだ。

 そんな俺と響の弟子入りを司令は快諾、そんなわけで俺は響と2人で、毎日のように司令の漫画のような特訓を続けている。そのせいで一日が終わるころには2人揃ってヘトヘトのボロボロなのだが、その疲れが翌日まで続いたことはない。

 何故なら……。

 

「ノブくん、アレやって~」

 

 そう言ってヘトヘトになって俺の部屋にやってきたパジャマ姿の響は、ベッドにごろんと仰向けで転がる。まるで大型犬がじゃれてお腹を見せているみたいだ。

 

「はいはい」

 

 俺は若干呆れながら、キングストーンのエネルギーを放射する。シャドーフラッシュによる体力回復だ。これを毎日、俺は響に頼まれるままかけている。

 

「あ~、生き返る~♪」

 

「俺は温泉か何かか?」

 

 この回復があるおかげで、俺も響も前日の特訓の疲れも身体の痛みも残すことなく翌日の特訓に臨めるのだ。おかげで教わっている武術の実力は俺も響もメキメキと上がっていると司令も驚いている。

 ちなみにこの回復だが、奏にも時折かけている。

 なんでも奏は戦うために『LiNKER』と呼ばれる薬品を投与しているらしいが、その副作用でかなり身体に無理がきているらしかった。だが以前ライブ会場でシャドーフラッシュを浴びてかなり調子が良くなったらしく、奏に今後も戦えるようにと頼まれたのである。

 薬物まで使って無理矢理戦うのはどうなんだとも思うが、奏には奏の戦う理由がある。聞けばノイズに殺された家族の復讐らしい。

 そんな話を聞いてしまえばそれに俺が口出しするわけにもいかないし何より今は仲間だ、助けることに異存はない。

 

 そんな二課での日々がおよそ1ヶ月ほど続いたある日のことだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「響……始まるみたいだぞ」

 

「……うん」

 

 ここは俺に宛がわれた部屋だ。俺に寄り添うようにして膝を抱えながら座る響と一緒に、テレビを見ている。

 今日は俺と響にとって重要なことがテレビで行われるのだ。

 

 そして、俺たちの前で始まったのはツヴァイウィングの2人の活動再開の会見だった。そこで『生存者バッシング』について語ったのである。

 自分たちのライブで不幸にもノイズが現れ沢山の人が犠牲になったこと。そしてそれに生き残った人たちが謂われない誹謗中傷や暴力の対象となっていること。それによって家庭崩壊や家族離散、そしてそれを苦にした自殺が凄まじい数あるということ、そして『正義』の名の元に正当化された暴行殺人などの事実を語る。

 そして悪いのはノイズであり、生き残った人を攻撃するなんて間違っていると『生存者バッシング』を批判した。

 

「生きていていけない人間なんていやしない。

 だから、生きるのを諦めるな!」

 

 そんな奏のライブ生存者への言葉で、その会見は締めくくられた。

 

 この会見によって、世論の流れが変わった。その裏には二課お得意の情報操作もあったらしく、もはや『逆流』とも言っていい急激な変化だ。

 あれだけ過熱していた『生存者バッシング』は一気になりを潜め、逆に『正義』を称して行われた過激な生存者バッシングがクローズアップされるようになり、数多くの者が法によって裁かれることになる。

 結果、器物損壊に集団暴行、放火に殺人と、『正義』の名の元で行われた非道がそこらじゅうから出るわ出るわで、ワイドショーのネタには事欠かない状態だ。

 無論、俺や響の家に石を投げて壊した奴らは器物損壊、響の家を燃やした奴らは放火という罪で警察に捕まった。

 

 とはいえ、失われたものは戻らない。

 調べてみれば生存者バッシングの中で自殺したもの、家庭が崩壊したものなどは凄まじい数に上っているし、リンチで殺されたものもいる。

 多くの場所……例えば学校では『生存者バッシング』に加担したり傍観した教師が一気に消え、『生存者バッシング』に加担した生徒も同じ学校には通えなくなったりで大混乱が起こっている。

 それらはどうやっても、元には戻らない。

 だがそんな高い授業料を支払うことになりながら、社会は『生存者バッシング』という狂気から元に戻っていっていた。

 

「これで終わったな……」

 

「うん……」

 

 すでに完全に『生存者バッシング』は下火、あれだけ誰も彼もが熱に浮かされたように生存者バッシングに参加していたのが嘘のようだ。

 こんなにもすんなりと解決するものに俺も響も、そして家族も振り回され続けたのかと思うと複雑な心境だ。

 

「契約完了。 これで俺はアンタらのものだ。

 好きに使ってくれ」

 

「そういう言い方をするな、信人くん。

 君を仲間にする交換条件として提示されはしていたが、まだ中学生の少年少女があんな状態になっているのをいい大人が黙って見過ごしていいわけない。

 これは大人として当然のことをしただけだ。

 それに、まだしっかりとは終わっていないさ。

 最後まで君たちのことを面倒見なければな」

 

 こうして、まともな『善人』である大人が傍にいてくれる……ああ、本当に俺は運がいい。

 

「それじゃ改めてよろしく……『おやっさん』」

 

 俺は最大の信頼と感謝を込めて、司令のことを『おやっさん』と呼ぶことにした。

 この出来事で、俺と響は本当にこの二課の一員になったのだった……。

 

 




今回のあらすじ

SHADOW「二課はゴルゴムの心配もあるし、教えることは最小限にするよ。特に了子さんのような優秀な科学者はゴルゴムのメンバーの可能性が……」

フィーネさん「だからゴルゴムって何よ、ゴルゴムって!! おまけに調べても全然分かんないし!!」

SHADOW「キングストーンさん空気読み過ぎ」

OTONA「俺と戦ってくれ!!」

SHADOW「何なの、このバグキャラ……とはいえ今後も戦いからは抜けられなそうだし、OTONA塾に弟子入りします」

ビッキー「あ、私も私も!」

奏&防人「ライブ生存者のみんな、生きるのを諦めるな!」

OTONA「こっちも情報操作全開だぞ」

SHADOW「なんか一気に状況が変わったぞ。トップアイドルの影響スゲェ! 国家権力の印象操作ヤベェ!」

ビッキー「というかこの魔女狩り状態をなんでこれをやってもっと早く収めてくれなかったのか? この世界の日本、法治国家として駄目過ぎなんじゃ……」

OTONA「安心しろ、この世界の世界各国はすべてこんなもんだから」

SHADOW&ビッキー「「ダメダメじゃねぇか!」」

次回もよろしくお願いします。


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第9話

 ツヴァイウィングの2人や弦十郎(おやっさん)、そして二課の働きかけによって、俺と響の家出の理由である迫害は無くなった。

 となれば次は俺たちの家族との問題だ。そこで動いてくれたのはやはり弦十郎(おやっさん)だ。

 弦十郎(おやっさん)は家出していた俺たちを政府が保護してくれていたと、俺たちを連れて保護者へと説明に向かってくれたのだ。

 そこで俺は両親と再会した。両親は俺や響の無事な姿を泣きながら心底喜んでくれた。本当に、俺はこの2人の子供に生まれたことを心底運がいいと思う。

 響も(おばさん)祖母(おばあちゃん)と再会、2人はあの時は気が動転していて響を気にかけられなかったと泣きながら謝罪し、家出した響をずっと心配してくれていた。それは響にも伝わり、晴れて立花家は和解を果たした……失踪した親父さんを除いて、だが。

 感動の家族の再会ではあるのだが、未だに逆恨みをする輩が出ており保護は継続すべきであるとの弦十郎(おやっさん)の言葉に、少し戸惑いながらも家族は静かに頷く。

 俺たちの一件で、俺たちの通っていた中学は転出者続出、教員も多くが罰を受ける形で消え去り、もう学校としての機能そのものがマヒしかかっている状態。さらにお互いの家に嫌がらせをしてきていた近所の人は逮捕者も多く出ている。

 これだけの大事の中心にいた俺と響にとってここは住みにくい場所だということは家族も理解しており、割とすんなりと弦十郎(おやっさん)の保護の継続を受け入れた。

 

 こうして俺と響の一人暮らしは始まった。 一人暮らしとしては十分すぎる広さのマンションの一室が、二課の用意してくれた俺の新しい家である。

 ちなみに響の部屋は隣で、ベランダ越しに会話も出来る。何だか実家暮らしより互いの家が近くなってしまった。

 挙句の果てにしょっちゅうお互いの部屋に入り浸り、食事は基本的に一緒に作ってるものだからほとんど一緒に暮らしているも同然の状態である。

 

 そんな暮らしを続けていた俺たちに、学校への復学の話が持ち上がってきた。もう問題もなくなったのだし、中学生らしく学校に行くべきだという弦十郎(おやっさん)のもっともな意見に押され、響には『私立リディアン音楽院中等科』に、そして俺にはその姉妹校である『私立ファリネッリ男子音楽院中等科』へ編入ということになったのだ。

 二課のある『私立リディアン音楽院高等科』でも分かるように、この2校は二課の息のかかった学校であり、護衛や協力など今後のために都合がいいからの選択だろう。とは言え、今まで音楽にあまり触れる機会のなかった俺や響が音楽院などに編入して大丈夫なのか、という不安はある。

 

「私、リディアン音楽院なんかでやってけるかな?」

 

「あら、響ちゃんの声はすごく綺麗で、間違いなくやっていけるわよ。

 この私が太鼓判を押すわ」

 

 不安の声を漏らす響を了子が心配ないと請け負うと、そのまま俺に視線を移す。

 

「信人くんの歌も……まぁ、味があると思うし、ウケるところにはウケると思うわ」

 

「それ、どういう意味だよ?」

 

 俺は思わずジト目で睨み返した。

 

 

 ……実は以前、実験として俺に歌を歌ってみてほしいと言われ、困った俺は『Long long ago, 20th century』を歌ってみたのだが……。

 

 

『なんだろう。上手いとかじゃないのにまた聞きたくなるような……』

 

『噛めば噛むほど味が出るような、何とも面妖な歌声だな……』

 

『ノブくんの歌って上手いとか下手とかじゃなくて、『のぶと』って感じ』

 

 

 トップアーティストであるツヴァイウィングの2人と響に散々、意味不明な評価を受けたのだ。

 特に響、歌の評価が上手い下手じゃなくて、『のぶと』っていう名前のところが訳が分からん。

 とにかく、音楽には全く自信がないというのに音楽院へと編入することが決まってしまったわけだ。

 それにしても……。

 

「『私立ファリネッリ男子音楽院』か……。 学校名が随分とまぁ……」

 

「あら、沢山の女性がそのあまりに美しい歌声に失神したと言われている有名な男性歌手の名前よ」

 

「で、入校条件は『アレ』をちょん切ることか? だったら絶対にごめんなんだが」

 

「……よく知ってるわね」

 

「親が映画好きでね、子供のころファリネッリの生涯を描いた映画で見て覚えてるよ」

 

「……あの映画を幼少期に見せてる親御さんは少し問題がある気がするわ」

 

「幼少期に見ると『去勢』って言葉の意味が分からなくて親に聞いて、親がかなり困る代物だ」

 

「そんな困る映画を子供に見せるなって話なんだけど」

 

「そりゃごもっとも」

 

 そう言って肩を竦める。

 『ファリネッリ』とは1700年代のイタリアに実在した有名な男性歌手だ。そのあまりに美しい歌声に多くの女性が魅了され失神したという逸話をいくつも持つ凄まじい歌手なのだが……彼は『カストラート』という、現在では存在しない、特殊な歌手だったのだ。

 『カストラート』とは、去勢することで男性ホルモンを抑制して人為的に『声変わり』をなくした男性歌手のことだ。そうすることでボーイソプラノの声質と音域を、成人男性の肺活量で歌い上げることが出来、甘く官能的な声を出せたという。

 

「多分分かってると思うけどこの2校はそのまま、フォニックゲインの研究を行っているのよ。

 特にファリネッリ男子音楽院は『男性の歌声でのフォニックゲイン活用や生体データ収集』や『男性が使える対ノイズ兵装の研究』などの『男性』をテーマにして研究を行っているの。

 シンフォギア装者が女の子だけだし、『男が戦う力を!』っていう声が結構根強くてね。

 まぁ、私から言わせてもらえばそんな『男(イコール)戦う』って考え方がもう前時代的でナンセンスだと思うけどね」

 

 なるほど、ファリネッリは去勢という犠牲によって美声を手に入れた。同じように生徒をモルモット替わりにデータをとってフォニックゲインの技術のさらなる発展を手に入れようとする、ということだ。なかなかに皮肉のきいた校名である。

 

 そんな学校での新たな生活も始まり、新しい友人も出来て俺も響も次第にそれに慣れていく。

 

「んっ! この気配……ノイズだな!

 少し遠いな」

 

「行くの?」

 

「ああ」

 

 一緒に部屋で夕食をしていたところでノイズ発生の気配を感じ取り、俺は素早く二課に連絡を入れるとベランダへと移動する。

 

「ノブくん、いってらっしゃい!」

 

「ああ、行ってくる!!」

 

 響に見送られ、俺はベランダから空中へと身を投げ出した。

 

「変……身ッ!!」

 

 俺は空中で仮面ライダーSHADOWに変身すると、月明かりを背に地面に着地する。

 

「バトルホッパー!!」

 

 俺の呼び声に答え空間から飛び出したバトルホッパーが、六代目バトルホッパー(マウンテンバイク)に取り付くとバイクへと変形を果たす。

 それに跨りアクセルを吹かして、俺はこの感覚の告げるノイズの方へと走り始めた。

 

 響と学校に行って、学校で授業を受けて学友とたわいない話で盛り上がり、二課で訓練やミーティングをやって、響と一緒に食事をして眠る。それに時々、ノイズとの戦いが混じるという生活サイクルで俺たちの生活は安定していた。

 以前と変わらないような日常……だが、どうしてもこの日常に欠けてしまったピースが一つだけある。

 それは俺たちにとってあまりにも大きなピースだ。それを理解している俺たちは、筆を取ることにした……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 木枯らしが吹く夕方、たった1人で歩く少女の姿があった。

 

「……」

 

 学校帰りの少女―――小日向未来は無言で家路を急ぐ。

 あれから……ここに未来が突如として転校してからしばらくがたった。

 未来は突然の転校によって、あまり新しい学校に馴染めないでいた。今でもその心を占めるのは2人の幼馴染の存在だ。

 

「響……信人……」

 

 意識せず、その名が口から漏れ出る。

 

 幼馴染3人で誓った、『3人で支え合ってこの苦境を乗り越えよう』という誓いを、未来は転校によって果たすことが出来なかった。そしてその直後、響の家が焼かれたこと、そして響と信人が家出をしたことも未来は知っていたのだ。

 それを知った時の、やはり転校なんてどんな手を使ってでもすべきじゃなかったという後悔、そして2人の身を案じる心は筆舌に尽くしがたい。それほどに未来の心は乱れていたが、それでも心のどこかで確信があった。

 響が心配で心配で仕方ない。だが信人が一緒にいるのなら絶対に無事だと、未来は心から幼馴染を信用し、確信していた。しかし、その無事だという確証が欲しい……そんな晴れない霧がかかったような心で今、未来は日々を生きていた。

 

「……」

 

 あれほど過熱していた『生存者バッシング』はもう完全に下火、今ではもう過去のこととして世間の誰も彼もがなかったことにして流そうとしている。まるで流行り物の流行が過ぎたかのようだ。

 こんなことのために響たちはあんなにも傷つけられ、自分は大切な幼馴染たちと離れ離れになってしまったのかと思うと悔しくて仕方がない。だが、その感情を向ける先などどこにもなく、まるでポッカリと穴が開いたような空虚な思いが募る。

 そんな思いで家に帰り、いつもの習慣から家のポストを覗いた時だ。

 ドクン、と心臓が跳ね上がる。それは未来宛ての封筒だった。差出人の名前は書かれていない。だが、その字には確かに見覚えがある。

 

「ッッ!?」

 

 未来はその封筒を持って自分の部屋に駆けあがるとペーパーナイフで封を切る。そして、取りだすのももどかしいと封筒を逆さにして中身を机にぶちまけた。

 何枚かの手紙、そして最後にハラリと一枚の写真が机に広がる。そして写真を一目見た瞬間、未来の瞳から涙が溢れ出た。

 

「響……よかった……よかったよぉ……!

 信人、約束……守ってくれたんだね」

 

 それは響と信人の写った写真だった。どこかのアパートか何かだろうか、その一室で2人で寄り添うように写っている。

 写真の響はあのころの、迫害が始まる前のころのような大輪の向日葵のような笑顔だ。それは信人があの時の約束……『響を守る』という約束を確かに果たしてくれた証拠だ。それが分かると、自然と未来の目から涙が溢れ、止まらない。

 

 しばらく喜びの感情のまま泣いていた未来は涙を拭うと、手紙を読み始める。

 そこには2人で家出していたところを政府の機関に保護されたこと、生存者バッシング騒動は下火になったものの騒動の中心人物であったため今度は逆恨みなどの危険があって地元には戻れないこと、今は政府の保護と援助で響が『私立リディアン音楽院中等科』に、そして信人はその姉妹校である『私立ファリネッリ男子音楽院中等科』に通っているという近況が書かれていた。

 大切な幼馴染たちが無事だと確証ができ、元気にやっていると分かって未来はホッと胸をなで下ろす。

 胸にあったつかえがとれたようだ。同時に、今までの空虚な心が満たされたという実感があった。自分にとって幼馴染たちがどれほど大切だったのかを、未来は噛みしめる。

 

「『私立リディアン音楽院』……あそこは確か高等科の編入試験があったはず!

 今度こそ、今度こそあの時の誓いを……3人で支え合ってどんな苦境も乗り越えるために、私はリディアンに行く!」

 

 高校入試でなんとしても『私立リディアン音楽院高等科』に受かり、再び響たちと一緒の時を過ごす。未来は再び幼馴染たちと過ごすために決意を固めた。

 今度こそあの誓いを果たす。どんな苦境があっても3人だ、離れることなく3人の力で乗り越えるのだ。

 

 

 ドクンッ……

 

 

 そんな未来の想いに呼応するように、『太陽』のように温かい何かが未来の中で脈動する。

 しかし、未来はそれには気付かない。

 今はまだ……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 暗い部屋で、カタカタと端末を打つ音が響く。

 

「仮面ライダーSHADOW……か。

 シンフォギア装者を超える謎の超能力の持ち主、といったところか……」

 

 SHADOWの様々なデータを見ながら呟く。それはシンフォギアを超える凄まじい数値を叩き出していた。

 

「あの力を見た時には私の大事な計画に支障を来すかと肝を冷やしたが……」

 

 そう言って、ニィっと口を釣り上げる。

 例えば、人は野生の熊を怖がる。だが、動物園の熊が怖いという人はそれほど多くはいないだろう。それは動物園の熊は、分厚いガラスや檻という『安全装置』によって管理出来ているからである。

 どんな猛犬であっても鎖で繋がれていれば、鎖の扱い方次第でいくらでも管理することは可能だ。

 そしてこの猛犬……仮面ライダーSHADOWは愚かにも自分から『鎖』をつけてやってきた。

 

「立花響……このただの一般人さえ押さえれば、SHADOWはいくらでも制御できる。計画の変更は必要ない。

 計画が動き出すその時まで、じっくりとその力を研究させてもらうとしよう」

 

 そんな声が暗闇に消えていく。

 もし仮面ライダーSHADOWの真実に気付いていたら、こんな悠長なことはしなかっただろう。

 だが、何も気付かないまま、時は流れていくのだった。

 




今回のあらすじ

SHADOW「おやっさんのおかげで1人暮らし&復学することになったぞ。まぁ俺の歌の評価はおかしいが……」

ビッキー「上手い× 下手× のぶと○。 というか何で『Long long ago, 20th century』を選んだし。ノブくんがカシャカシャ歩いてくるイメージが浮かんで仕方ないんだけど」

SHADOW「いや、他のBLACKとかRX関係の歌だとほとんど『仮面ライダー』って単語入るし、仮面ライダーが自称してる俺一人しかいないこの世界でそれやったら俺、自分の応援ソング作って歌う痛い子だよ」

ビッキー「作者が大好きなRXの挿入歌『すべては君を愛するために』は?あれも『仮面ライダー』って単語入らないよ?」

SHADOW「アレはそのうち、外伝劇場版って感じで題材にした異世界をやるらしいから保留。ぶっちゃけ、マジモンのラブソングを意識してる相手の前でいきなり歌えるかい」

ビッキー「ぽっ♡」

フィーネさん「しっかしオリジナルの男子音楽院の名前が随分とアレよね……」

SHADOW「これは『フィーネ』がイタリア語だし、『イタリア』『逸話持ちの男性歌手』って条件で作者が思い浮かんだのがこれだから、らしい」

フィーネさん「その条件で真っ先にあの映画が頭に浮かぶあたり、この作者相当バカだわ」

393「響も信人も生存確認! 私もリディアンに行く!!」

????「アップをはじめました」

???「お前の出番しばらく無ぇから座って、どうぞ」

????「(´・ω・`)ショボーン」

フィーネさん「ふっふっふ……立花響などしょせんただの一般人。こいつ人質にでもとればSHADOW対策はもうバッチリ!勝ったな、風呂入ってくる!!
       ……これ冷静に考えたら私にハードモード過ぎない?ちょっと本編開始前の現状を書き出してみるけど……」

①シャドームーンが正義に目覚めて敵
②奏生存、翼の精神安定
③シャドームーンと響が本編1年前から二課に合流
④シャドームーンと響が本編1年前からOTONA塾で修行

フィーネさん「……なんか①の段階で無理ゲー以外の何物でもないんだけど……。
       他のも二課の戦力アップになるのばっかじゃない。これで本編開始となると私、フルボッコにされるんじゃ……。
       でもウチのキネクリなら、キネクリなら何とかしてくれる!」

キネクリさん「ファッ!?」

キネクリさんはこの先生きのこれるのか?

次回はしないフォギア風の幕間の物語の予定。
次回もよろしくお願いします。


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戦姫絶唱するまえシンフォギア 幕間の物語その1

その1『脅威の生体メカ バトルホッパー』

 

 爆音のごときエンジン音が響きわたり、エキゾーストが金切り声を上げる。

 力強く大地を噛みしめるタイヤは高速で回転し、そして産まれ来る速度はまさに風のごとく。

 灰と茶のボディに緑の眼を持つそのバイクこそ、仮面ライダーSHADOWの相棒とも言える生きるマシン『バトルホッパー』だ。

 そしてそれに跨るのは当然……。

 

「ひゃっほぅぅぅぅぅ!! サイッコーだぁぁぁぁ!!」

 

 シンフォギアを纏った風鳴翼(SAKIMORI)が、ちょっと人には見せちゃいけない系の顔をしながら走っていた。

 それを遠くから見つめる人影が3つ。天羽奏に立花響、そして俺の3人だ。

 

「……なんだあのファンの方々には絶対に見せちゃいけない顔をしたアイドルは?

 ここにファンがいたら絶対に百年の恋も覚めるぞ」

 

「ノブくん、私もツヴァイウィングのファンなんだけど……」

 

「大丈夫、明日からはツヴァイウィングの奏のファンだって言えばいいだけだ」

 

「あっ、そっか!」

 

「2人とも、何気に酷いこと言ってるね!」

 

 さすがに奏がツッコむが、俺は爆走する風鳴翼(SAKIMORI)を指さす。

 

「いや、だってあれは完全にアヘ顔っていうかアホ顔というか……」

 

「ファンの私でもちょっとこれの擁護は……」

 

「……」

 

 相方として何かフォローをと思う奏だが、何も言葉が出ないようで途中で諦める。

 

「あひゃははははははは!!!」

 

 3人の視線の先では風鳴翼(SAKIMORI)が爆走しながら爆笑していた。風鳴翼(SAKIMORI)が楽しそうで何よりです。

 何が起こったのか……それは今から数日前のこと。

 

 

「月影、この通り伏して頼む!!」

 

「おいおい……」

 

 ここは二課の食堂だ。

 新しい学校生活にも慣れはじめたこの日、俺と響はいつものように弦十郎(おやっさん)に修行をつけてもらっていた。それも終わってシャワーで汗も流し、ちょっと家に帰る前に一服しようかと食堂に足を運んだところを翼に見つかり、今の状態になる。

 今にも土下座でもしそうな勢いで翼が俺に頭を下げるその理由は……。

 

「バトルホッパーに乗せてくれ!!」

 

 というものだった。

 聞けば翼は大のバイク好きでずっとバトルホッパーに興味があったらしく、どうしても乗ってみたいというのだ。

 俺は気持ちは分からなくもないものの、はいそうですかとはすぐに頷けない。バトルホッパーは俺にとって相棒だ、軽々しく貸すような真似はできないし、何より形状が特異すぎて乗り回せば目立ってしょうがない。

 そう思って断ろうとしたのだが……。

 

「あら、面白そうな話をしてるわね」

 

「櫻井女史! 櫻井女史もそう思うか!」

 

「……」

 

 偶然、そばで聞いていた了子さんが興味を持ったのをいいことに仲間に引き込もうと必死の(SAKIMORI)

 この段階で厄介ごとは避けられないだろうと諦めた俺は深い深いため息をつく。

 そのあとはとんとん拍子に話が進み、『バトルホッパーの能力を測る』という名目で二課がサーキット場を貸し切って今に至るというわけだ。

 

 

「ああ……ヤバいよぉ、これぇ……」

 

「うん、一番ヤバいのは今のあんたの顔だからな。そこのところ自覚してるか、うん?」

 

 サーキットを一回り走ってきた翼がもう蕩け切った顔でバトルホッパーから降りてくるのを、俺は呆れた顔で見つめる。この顔を写真にとってSNSで拡散でもしたら、確実に大炎上だろう。

 

「翼さん、タオルです」

 

「ああ、ありがとう立花」

 

 響からタオルを受け取り翼はキリッとした表情に変えるものの、あの顔を見せた後では後の祭り。ツヴァイウィングの2人を尊敬していた響でさえ明らかに引いていた。

 しかしそんなものは気にせず翼は言う。

 

「凄まじいマシーンだな、バトルホッパーは。

 今までに見てきたどんなマシーンもバトルホッパーにはかなわない。

 最初はシンフォギアを纏ってから乗れと言われたときには大げさな話だと思ったが……バトルホッパーの力を知った今ならシンフォギアを纏っていてよかったと心底思う」

 

「そりゃ変身した仮面ライダーSHADOW()専用のマシーンだからな」

 

 バトルホッパーは最高時速500km、自我を持って行動し、悪路走行にジャンプに水上移動なんでもござれの文字通りのモンスターマシーンだ。どんな名レーサーでも常人がその全力を出せるはずがない。

 ちなみに専用マシーンとは言っても俺以外誰も背に乗せないという気難しいタイプではない。その証拠にその後試しにと響が乗ってみたいと言いだしたが、響がアクセルとハンドルに触れることがなくとも、バトルホッパーは安全な自動運転で走ってくれた。俺が許し、俺が味方だと認識する相手は普通に乗せてくれる融通の利くマシーンなのである。

 

「ところで……当然月影は16歳になったらバイクの免許を取るんだろうな! 仮面『ライダー』なんだし!!」

 

 翼は目を輝かせながら言ってくる。翼は大のバイク好きだが身近にバイク趣味に付き合うような知り合いがおらず、絶対にバイクの沼に俺を引きずり込むとやる気満々だ。とはいえバトルホッパーを三輪車やら自転車から変形させるのは何とかしてやりたいとも思っていたし、バイクの免許はすぐに取るつもりだ。

 

「確かに、いい加減バトルホッパーを普通のバイクで変形させてやりたいからな」

 

「うっしゃらぁぁぁ! 今度、今度絶対カタログ持ってくからね!

 これでボッチライダーから卒業できるぅ!!」

 

 俺を自分の趣味に引きずり込めると踏んだ翼は上機嫌で鼻歌まで歌い出す。

 のちに俺がバイクの免許を取りバイクを購入してからも色々と振り回すバイクバカの先輩、『芸人ライダーSAKIMORI』の誕生である。

 ちなみにのちに俺が購入したバイクにちょっとした遊び心で『ロードセクター』と名前を付けたら2週間ほどバトルホッパーが返事をしなくなり、あえなくその名前は没になった。相変わらずバトルホッパーの自我は、『これ設定したの誰だよ?』と思ってしまう茶目っ気溢れる仕様である。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その2『SHADOW的な日常風景』

 

「ふぅ……」

 

 チャイムがなり授業が終わって、俺は硬くなった身体をほぐす。ここは俺が通うことになった『私立ファリネッリ男子音楽院』である。

 転入からしばらく経ち、この学校にも慣れてきた。最初危惧していた音楽の授業に付いていけないという事態も起こっていない。

 むしろ『リディアン音楽院』同様、かなりの進学校のため編入組にとっては勉強の方が問題である。響も『リディアン音楽院』でかなり勉強には苦労させられているが、俺はそこはキングストーンさんの力で乗りきった。

 仮面ライダーSHADOWとしてノイズと戦う時俺はとてつもない集中力で戦いに臨んでいるが、その集中力を俺は日常生活でも発揮できるのだ。そんな生死を分かつ戦いで使う、針に糸を通すような集中力を勉強で使うとどうなるか……普通に授業を受けるだけでテストでは十分すぎる点数が取れるということだ。しかもキングストーンさんの力で、何徹しても体調不良を起こさない。というより、本来は根本的に睡眠すら必要なさそうだ。

 うん、普通にすがすがしいチートである。さすがはキングストーンさんだ。

 そう言えば仮面ライダーBLACK RXでは南光太郎は設計図があったとはいえあのライドロンを完成させるほどの天才的な頭脳を発揮していたが、なるほどこう言うカラクリだったのかと納得してしまった。

 

「よっ!」

 

 帰り支度をしていた俺の肩を、誰かが後ろから叩いた。振り返ると、そこにいたのは少し軽そうな感じの男だ。こいつの名前は『霞野(かすみの) 丈太郎(じょうたろう)』。この『ファリネッリ男子音楽院』に来てから出来た友人である。愛称は『ジョー』。

 

「何だ、ジョー? 今日は何も予定はないはずだが……急な用事でもできたのか?」

 

「いやいや、今日はお客さん(ノイズ)が来なけりゃ何もないよ」

 

 少し周囲を伺い、誰も聞いていないことを確認してから俺はいつもの愛称で呼ぶと、ジョーは違う違うと手を振る。

 この男実は二課の関係者で、ツヴァイウィングのマネージャーであり二課の一員であり忍者である緒川さんの親戚にあたる。なんでも姉のくノ一が緒川さんの婚約者らしい。

 ……今おかしな単語が大量に入ったが、頭の痛いことにすべて事実だ。

 ツヴァイウィングのマネージャーの緒川さんは正真正銘の忍者で、仮面ライダーSHADOWの状態で影縫いを受けて動きを封じられたときには本気で驚いたものだ。

 弦十郎(おやっさん)といい、二課にはなんで人類の規格外みたいなのが揃っているんだろう?

 明らかに人類の規格外であるこの2人が対ノイズ戦力になれば心強いことこの上ない。そう考えると『男がノイズと戦う方法』を研究しデータをとっている『ファリネッリ男子音楽院』の重要さが分かる。

 とにかくそんな関係者であるジョーはコイツ自身も忍者(とは言っても緒川さんとは違い駆け出し程度らしいが……)であり、俺のサポートをする連絡員のようなものらしい。

 名前と愛称、そして役目を聞いて「こいつはこの世界の『霞のジョー』か?」と思ってしまった俺は悪くないはずだ。

 

「で、どうしたんだ?」

 

「なに、ちょっと遊びにでも行かないかってお誘いだよ。

 帰りにゲーセンでもどうだ?」

 

「それいいな、いくか」

 

「おうっ!」

 

 そう言って連れだって俺とジョーは学校から外に出てゲームセンターへ向けて移動を始める。

 そしてゲームセンターの近くに来た時だ。

 

「あっ、ノブくん!」

 

「やあ、響」

 

 偶然にも学校帰りの響と鉢合わせた。響は1人ではない。他に3人のリディアン音楽院の生徒を連れている。

 それに気付いた響が3人を紹介してくれた。

 

「あ、この人が噂のビッキーの幼馴染のノッブ?」

 

 そう言ってきたのは安藤創世という娘。個性的なアダ名を付けるのが好きな娘らしい。俺にも名付けられた結果、なんかガチャでも廻しそうな名前になっている。

 

「思ったよりかっこよくてナイスです!」

 

 この娘は寺島詩織。なんとなくお嬢様っぽい感じで、響曰くどんな事でも褒めてくれる娘らしい。

 

「物心つく頃から一緒で家がすぐ近くの幼馴染なんて、まるでアニメじゃない」

 

 そう言ってきたのは板場弓美という娘。アニメをこよなく愛する娘だそうだ。

 この3人は響がリディアン音楽院に編入してから出来た友人たちだ。よく一緒にいるときに響が話しをするので名前だけは知っていたが初顔合わせである。

 

「ノブくんは何してるの?」

 

「いや、特に何もすることがないからジョーと一緒にゲーセンでも行こうかと思ってな」

 

「あっ、それじゃあ一緒に遊びません?」

 

 そう創世から誘いをかけられる。俺もジョーも特に断るような必要もなく、二つ返事で了承すると6人でゲームセンターへ向けて歩き出す。

 俺は歩きながらさりげなく響の横に並ぶと、小声で言った。

 

「学校、楽しいか?」

 

「……うん。未来がいなくて寂しいけど、新しい友達も出来て楽しいよ」

 

「そうか……俺もだ」

 

 あの日失った、楽しかった学校生活というのは戻りつつある。あとは未来がいれば……だがそれもそう遠い話ではないだろう。

 そう思いながら、俺と響は友人たちと歳相応の放課後を過ごすのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その3『お出かけは幸せごはん』

 

 

「おお、これは……」

 

「どうしたの、ノブくん?」

 

 ある日、部屋で唸る俺に遊びに来ていた響は小首を傾げる。

 

「いや、今通帳を見てるんだが……二課から結構な額の金が入ってるんだよ」

 

 そう言って手にした通帳をヒラヒラと振る。

 

『君は今はこの二課、政府の特務機関の一員であり最前線で命をかけて戦っている。それに対し、正当な報酬は払わせてもらう』

 

 弦十郎(おやっさん)からはそう言われていたがどうせ中学生相手、小遣い程度だろうとは思っていたのだが、これがかなりの額だ。

 こちらを子供と思って甘く見ていないというのは非常に好感が持てるのだが、何と言ってもこちらはしがない小市民だ、いきなりの大金を前に喜ぶよりも困惑が勝ってしまう。

 貯金は当然としてあれやこれや考えるが、それでも多い。

 そこで俺は、膝を叩いて立ち上がった。 

 

「よしっ、この金で今日は何か喰いに行こう! 今日は俺の奢りだぞ、響!」

 

「でもノブくんのお金だし、奢りは悪い気が……」

 

「いや、でもな……なんかこの金を自分のためだけに使ったら、なんだか『仕事』として仮面ライダーやってるような気になって、ちょっとイヤなんだ」

 

 『職業=仮面ライダー』はロクなことがない、というのは俺は仮面ライダーの記憶で何となく知っていた。特に剣。

 えっ、響鬼さん? あれは『職業=鬼』ですよ。

 

「そういうわけで今日はパーッと何か喰おう。俺の金で喰うごはんは美味いぞぉ、響」

 

「ウェヒヒ……ごはん&ごはん!」

 

 俺の奢りということで悪いと思っていた響だが、乗り気になってくれたらしい。ごはんの魔力は偉大、人類はだれもそれには勝てないのだ。

 

「それで、何食べに行くの?」

 

「ふっふっふ……そんなものは決まっている!」

 

 そしておもむろに響に両手を向け、

 

「カルビーム!」

 

「私は焼肉が食べたいのッ!!」

 

 2人で映画を見に行くと必ずやってるCMを真似ておどける。

 

「というわけで今日は焼肉だ!! 今すぐ用意だ響隊員!!」

 

「はい、ノブくん隊長!」

 

 ビシッと敬礼をして響は出かける準備を始める。

 

「ポンポンポンカチッポンカチッ~♪」

 

 またも映画館で毎回聞くドレッシングのCMソングを口ずさみながら一端自分の部屋に戻る響。

 すぐに響が準備を終えて戻ってくると、俺たちは連れだって焼肉店へと向かった。

 

「ふぉぉぉぉ!!」

 

 店の前に来ただけで食欲を煽る香ばしい肉の匂いの洗礼に響が興奮の声を上げる。もう完全にしいたけみたいな目だ。

 そんな響の手を取って焼肉店に突入した。席に座り、メニューを開く。

 

「さぁ行くぞ響!」

 

「うん! まずはどこから行く?」

 

「それはもちろん……初手にて『タン』で仕る!!」

 

 運ばれてきたのは表面に切れ目の入った『厚切りタン』。

 トングを使い表面と裏面をしっかりと焼き、茶色くなるまでしっかり焼いたところを塩レモン汁を少々。そしてそれを口に運んだ。

 

「「んんっっ~~!!」」

 

「この口の中の心地よい肉に歯を立てるときの食感!」

 

「これぞ『ザ・お肉』って感じだよね!」 

 

 タンの余韻はそのままにその流れを継続、お次は『ネギ塩タン』。肉の上にたっぷりと載ったネギが眩しい。

 

「ネギ塩タンって裏返すとネギが落ちちゃうから、私が焼くといっつもただの塩タンになっちゃうんだよね」

 

「クックック! そういうことならば俺の秘儀を見せてやろう!

 秘儀ねぎ包み焼き!!」

 

「なにぃぃぃ!!」

 

 トングを二つ使い、ネギがこぼれないようにタンで包みながら焼く。

 表面がしっかりと焼け、包まれたネギが肉からの熱でゆっくりと熱せられていく。それをそのまま口へと運んだ。

 

「くぁぁぁ! ネギとタン、これぞパーフェクトハーモニー!!」

 

「ジューシーなお肉とネギが口の中で奏でる相性抜群の絶妙なハーモニー! これこそ『肉のツヴァイウィング』状態だよ!!」

 

 テンションが上がり過ぎてお互いにおかしなことを口走る俺と響は、その勢いのままコーラをグビグビと流し込む。

 心地よい炭酸の刺激が喉を滑り落ちていく。

 

「「かぁぁぁ! 悪魔的だぁぁぁ!!」」

 

 そしてついにやってくるのは、焼肉の定番『カルビ』だ。肉厚にカットされカラメル色に輝くそれはまるで肉の宝石。

 その肉の宝石を小細工なしでしっかりと焼き上げる。

 

「うまい、うますぎる!!」

 

「噛めば噛むほどに溢れる旨みが口の中で絶賛ライブ中だよ!

 ごはん、ごはんのおかわりを!!」

 

 口の中に溢れる旨みにごはんを放り込めば、そこは桃源郷。口の中では幸福な気分になる『不思議なこと』が連続発生中である。

 響はかきこむごはんが無くなったことに気付き、即座にごはんの追加注文をした。

 

「響……これでまだ(いくさ)は序盤戦だ……」

 

「肉は多いね、ノブくん……」

 

「大丈夫だ、今夜は俺とお前でダブルライダーだ。

 行くぞ、響! 俺たちの作戦目的は……肉!!」

 

「うん!!」

 

 そしてその後も『ホルモン』や『ロース』など、様々な肉との戦いを繰り広げる。

 

「美味しかったね、ノブくん。

 私お腹いっぱいだよ」

 

「俺もだ」

 

 焼肉店を出るときには、俺も響も腹いっぱいで幸せな気分だ。

 

「よし、今度もいろんなものを一緒に食べに行こう!」

 

「うん!」

 

 やはりごはんは偉大だ。響をこんなにも笑顔にしてくれるのだから。

 そう思いながら、俺たちは家路についたのだった……。

 




今回のあらすじ

防人「あひゃははははは!! バトルホッパーしゅごい!!
   最高にハイッてやつだぁぁぁ!!」

奏&SHADOW&ビッキー「防人が楽しそうでなによりです」

防人「で、お前は当然免許取るんだろうな?」

SHADOW「よく考えたら本来バイク動かせない年齢だって思い出したぞ」

ビッキー「新しい友達できて学園生活楽しい! でも勉強は勘弁な!!」

SHADOW「俺はキングストーンさんの力で乗り切りました」

ビッキー「すがすがしいほどのチート乙」

SHADOW「で、俺も友達できたけど……」

ジョー「俺は忍者DAZE!」

SHADOW「普通の人間は二課関係者にはいないのか……?」

ビッキー「ウェヒヒ! ごはん&ごはん!」

SHADOW「俺の金で喰う焼肉は美味いだろう、響」

ビッキー「最高! 作者、こういう飯テロを一度やってみたかったって。今回はそのお試しみたいよ」

SHADOW「しかし……今回の内容で作者の住んでる地域バレるんじゃなかろうか?」

ビッキー「大丈夫でしょ、多分」


ついに次回からシンフォギア無印編がスタート。
来週用事で投稿できないので、かわりに次話は2月2日に投稿します。
次回もよろしくお願いします。


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無印編
第10話


 一人の少女が、電車に乗っている。

 彼女の名は小日向未来、高校に入学するために上京してきた少女だ。

 桜舞う景色を車窓から眺め、しかしその向こうに乱立するビルにもうここが故郷では無いことを悟るものの、未来はどうでもいいと首を振る。

 彼女にとっては、もう故郷とはあの場所ではないからだ。

 望まぬ転校、誓いを果たせず置き去りにしてしまった幼馴染たち……そんな嫌な思い出に塗りつぶされた場所など、未来にはもはやどうでもいいのだ。

 やがて電車は駅に到着し、未来は人の流れに押されるようにしてホームに降り立つ。広い駅構内に若干戸惑いながらも、未来は目的の場所へとやってきた。

 

「……」

 

 自分が落ち着きが無くなっているのが分かる。心臓もドキドキと早鐘のようだ。

 当然だ、未来は今この瞬間のためにこの1年近くを努力し、リディアン音楽院へと合格したのだから。

 そして、その間違えるはずのない声が未来の耳を打つ。

 

「未来~~!!」

 

「響ぃ~~!!」

 

 手を振りながらこちらへ走ってくる響。

 久方ぶりに見る本物の響だ。一緒に過ごした記憶のままの響を見た途端、未来は抑えが効かなくなる。

 思わず走りだした未来は、そのまま響へと抱きついた。

 その感触に、未来にやっと故郷に帰ったかのような安心感が湧き上がる。

 

(ああ、やっと私は響のいるところに戻ってこれた……)

 

 そんな言葉を考えつつ、未来は響との再会を喜ぶ。

 

「やっと会えたね、響!」

 

「うん!」

 

 手紙やメールでのやり取りは頻繁にしていたが、こうして直接会うのはあの別れ以来だ。2人はたわいのない話から近況報告と様々な話をしていく。

 

「じゃあ響は寮じゃないんだ」

 

「うん。あの一件以降、一応国に保護されてる状態だから……大丈夫、すぐ近くだから未来も遊びにくればいいよ」

 

「そっか……それで、信人のほうは?」

 

 そんな話をしながら、話題は信人のことになる。

 

「ノブくんは今ちょっと忙しいんだけど、未来には絶対に会いたいって言ってたよ。

 夕方には戻れると思うから後で合流して一緒にごはん食べようって」

 

「そっか、忙しいんだ。

 バイトとかやってるの?」

 

 そう未来が聞くと響は少し目を泳がせる。

 

「まぁ、バイトって言えなくもないかな。 お金ももらってるし……」

 

「?」

 

 響の歯切れの悪い言葉に、未来は首を傾げた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 夕暮れ迫る山間部の村に、連続した銃声が響く。

 突如として発生したノイズの集団に対し自衛隊が攻撃を仕掛け時間を稼ぐが、その攻撃はまるで効果がなく、ノイズの歩みは止まらない。

 

「装者はまだか!」

 

「それが、他方面のノイズ掃討がまだ完了しておらず、こちらへの到着は……」

 

「くそっ! おい、撃ちまくって一分一秒でも時間を稼げ!!」

 

 止まらないノイズの歩みに悲壮感すら漂う現場、だがその現場にバイクの爆音が響きわたる。

 

「こ、このバイクの音は!!」

 

 その音はまるで福音のラッパのように、たったそれだけで現場の悲壮感漂う空気を吹き飛ばした。

 

「彼です! 彼が来てくれました!!

 仮面ライダーSHADOWです!!」

 

「ああ、見えている!」

 

 彼らの視線の先には、夕陽を背負いながらやってくるバイクに跨った白銀のボディ。そして深緑の双眸が煌めく。

 神も仏も助けてくれないこの世界で、それでも存在した救い……『仮面ライダー』の到着を全員が祝福していた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ブロロロォォォォォォォ!!

 

「ダイナミックスマッシュ!!」

 

 バトルホッパーの速度をそのままに、俺はノイズの群れを轢き潰して停車する。

 

「来てくれたか、仮面ライダーSHADOW!!」

 

「ここは任せて後退しろ!」

 

 俺の登場に歓声を上げる自衛隊員にそういうと、俺はそのままノイズへと躍りかかった。

 

「シャドーチョップ!!」

 

 エルボートリガーを高速振動させて威力を倍加、巨大な岩すら一撃で両断する水平チョップで大きくノイズの集団を薙ぎ払う。

 

「シャドービーム!!」

 

 俺を援護しようとしていた自衛隊員たちに、空中から襲い掛かろうとしていたノイズたち。それに向けて左手に溜めたキングストーンエネルギーを稲妻状にして放射する。

 空中で稲妻は幾条にも枝分かれし、そのすべてが空中にいたノイズたちを吹き飛ばした。

 

「SHADOW! デカいやつがこっちに!!」

 

「ムっ!」

 

 自衛隊員の言葉にその方を見ると、首が無く両手がハサミのようになった人型の大型ノイズが地響きを立てながらこちらにやってくる。

 

「バイタルチャージ!!」

 

 構えを取り叫ぶと、黒いベルト『シャドーチャージャー』に収められたキングストーン『月の石』から凄まじいまでのキングストーンエネルギーが全身を駆け巡り、それが両足へと収束する。

 

「トオッ!!」

 

 そのまま俺は空中高くへと飛びあがる。大型ノイズを眼下に望みながら空中で体勢を変え、両足を突き出す。

 

「シャドーキック!!!」

 

 そのまま俺の必殺キック、シャドーキックは大型ノイズへと突き刺さった。30mを超えるだろうノイズの巨体が、シャドーキックで天からハンマーで叩きつけられたように地面へとめり込む。同時に、キックを通して大型ノイズの体内にキングストーンエネルギーが叩きつけられ、そのエネルギーが内側から大型ノイズを喰い破る。その攻撃に耐えきれず、大型ノイズが爆散した。同時に俺のキングストーンエネルギーである、緑の波動が衝撃を伴って周囲に拡散、ノイズを一匹残らず吹き飛ばす。後に残ったのは元の夕方の静寂だけだ。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

「SHADOW! 仮面ライダーSHADOW!!」

 

 ノイズが一気に殲滅されたことに自衛隊員たちから歓声が上がる。俺はそれを尻目に通信機に話しかけていた。

 

弦十郎司令(おやっさん)、こっちのノイズの掃討は終わった。 他はどうだ?」

 

『奏や翼の方も掃討は完了した。付近にノイズの反応はない。 状況終了だ、後始末は俺たちに任せてくれ』

 

「なら一足先に上がっていいか? 今日は大切な日なんだ」

 

『分かった、今日はこれで上がってくれていい。お疲れさま』

 

「ありがとう、弦十郎司令(おやっさん)

 

 そう言って通信機を切る。こちらに向かってくるバトルホッパーに、カシャカシャと足音を立てながら跨ると俺はアクセルを吹かして街へと急ぐ。

 今日は大切な日、響にとっての『ひだまり』、俺たちの大切な幼馴染である未来との再会の日だ。

 あれから……俺と響が二課に身を寄せてから1年少々、俺と響も高校1年になった。

 俺と響はそのまま『私立ファリネッリ男子音楽院高等科』と『私立リディアン音楽院高等科』へと進学。高校の編入試験に合格した未来も『私立リディアン音楽院高等科』に進学、寮生活になる。これでまた俺、響、未来の幼馴染3人が近くで過ごせるのはいいことだ。

 

 しかしこの1年、二課の一員として動くかたわらで周りに気付かれないようにそれとなく二課でゴルゴムのことを探ってみたのだが、その影は全くつかめない。二課に入った途端にいきなり実はゴルゴムのメンバーだった二課の人物に襲われるような事態が起こらないのはいいんだが、それにしても静かすぎる。

 俺は正直、このシャドームーンの姿でいる以上、勧誘にせよ敵対にせよすぐにでも何かしらのアクションがゴルゴムの方からあるものだと思っていた。だが、予想に反してそれがまったく無いのである。

 これは一体どういうことなのか?

 

(俺の存在をゴルゴムが認識していないから、接触がないのか?)

 

 だがそれもおかしな話だ。

 俺は二課に所属することで、完全な機密ではあるものの存在自体は国の中枢に知られているはず。『仮面ライダーBLACK』でのゴルゴムは日本の政治中枢にまでその一員を送り込んでいるくらいの高い組織力があった。この世界のゴルゴムがそれと同等なら、俺の存在を認識していないはずがないのだが……?

 となるとまさかとは思うが……。

 

(この世界……まさかゴルゴムが存在していないのか?)

 

 ここまで影も形もないとその可能性も考慮した方がいいだろう。だが、そうなるとノイズの存在が完全に宙に浮いてしまう。

 ノイズは間違いなく『人工物』、何者かが何らかの目的を持って作り出した存在だ。しかも現在の科学では解析不能、俺の透視分析能力である『マイティアイ』だからこそ人工物だと分析できた代物である。このことから『現在の科学力より数段優れた技術力を持ち、人類を無差別に殲滅しようと考える何者かの存在』がそこにはあるということだ。

 だからこそ、それがゴルゴムなのだと思っていたのだが……。

 

(ノイズの裏にいるのがゴルゴムでないとしたら一体何者が……ハッ、まさか!?)

 

 その時、俺の脳裏に閃くイナズマが走る。

 

(そうか! そういうことなのか!?)

 

 瞬間、俺は思い至った。

 『突如として空間から現れる』『現代科学よりも高い技術で造られた人工物』『人類抹殺が目的』……ノイズについてのそれらのキーワードが、まるでパズルのピースを合わせるかのようにカチリと合わさっていく。

 何と言うことだ!? 何故気付かなかったんだ、俺は!!

 

 

 

「これは……クライシス帝国の仕業か!!」

 

 

 

 ノイズがクライシス帝国の先兵だというのなら『突如として空間から現れる』という特性も納得だ。クライシス帝国の本拠地は異次元世界である『怪魔界』、別の空間からやってきているのだから。

 そんな異次元空間航行を可能にするクライシス要塞など『地球より明らかに高い技術力』をクライシス帝国は持っている。

 しかもクライシス帝国の目的はこの地球全土への移住である。そのため土地……地球環境に多大な影響を及ぼす大規模作戦はクライシス帝国は避けていた。そのうえで先住民である人類の存在はクライシス帝国には不要で、『地球上の全人類の抹殺の上での地球への移住』を目論んでいた。だからこそ『地球環境に影響を与えず、人類だけを執拗に抹殺する』というノイズの特性はクライシス帝国の目論見にはぴったり、あまりに合いすぎている。ノイズには生物的なものも多いし、ゲドリアン辺りの部下で怪魔異生獣か何かをその技術力で改造したものなんだとしたら納得できる話である。

 しかも、ノイズが時間で自壊するのもクライシス帝国の先兵だというなら説明がつく。『怪魔界』は汚れた空気と曇天に満ちた世界であり、その住人であるクライシス帝国の者にとって地球の空気と太陽光は死をもたらす猛毒だ。それを防ぐために、上級幹部や怪魔戦士には地球の環境に適応する『強化細胞』を移植し、それによって地球での生存を可能にしている。

 おそらくノイズは安価に大量生産したためこの『強化細胞』を移植していないのだろう。だから地球環境下で長時間の生存ができず、時間がたてば自壊して果てるのだ。そしてそんな自壊を前提とし、人類だけを確実に消滅させるために炭素化させるクライシス帝国の送り込んだ使い捨ての人類抹殺特攻兵器……それがノイズの正体なのだ!

 何ということだ、これならばすべての辻褄が完全に合うじゃないか!!

 

 

 

「おのれ、クライシス帝国めッッ!!」

 

 

 

 クライシス帝国の地球侵略は先の通り、人類の絶滅を目指している。そしてその中には当然両親、そして響や未来が含まれているのだ。そんなものが許せるはずがない。

 クライシス帝国が相手であろうが何であろうが、守るべき者のために俺は必ず勝利してみせる。

 この身はシャドームーンの力を、『単体でクライシス帝国と同等以上の脅威』と言わしめるシャドームーンの力を持っている。『仮面ライダーBLACK RX』と同等のキングストーンをその身に宿しているのだ、『仮面ライダーBLACK RX』がクライシス帝国に勝利出来て俺に出来ないという道理はない。

 しかも『コミックボンボン』の漫画では正義の心に目覚めたシャドームーンが自爆とはいえクライシス帝国をしっかり滅ぼしているのだ。『勝てない』ということはないだろう。

 

「例えこの身が砕けても、俺の守るべき者を好きにはさせんぞ、クライシスめ!」

 

 俺は決意を新たにし、来るだろうクライシスとの全面的な戦いに覚悟を決めてバトルホッパーのアクセルを吹かす。

 とはいえ今は未来との再会パーティの方が大切だ。

 守るべき者、そして帰るべき場所である響や未来の待つ街へと、俺は急ぐのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 未来もやってきて高校生活が始まって数日、今日はツヴァイウィングのシングルの発売日だ。個人的にもツヴァイウィングはよく知る先輩であり今や響は、ツヴァイウィングのCDは必ず初回特典付きで購入するどこに出しても恥ずかしくないツヴァイウィングの大ファンである。

 CDを購入するためにやってきた響だが、生憎今日は信人や未来は用事があり1人だ。

 

「CD! 特典!」

 

 そう鼻歌を歌いながら走る響は、ふと付近の様子がおかしなことに気付く。

 黒いものが舞っていた。ふと見れば、そこには人の形をした黒い塊が横たわっている。

 

「ノイズッ!?」

 

「いやぁぁぁ!!」

 

 そう響が気付いた瞬間、幼い悲鳴がその場に響いた。

 反射的に身体が動いた響の見たものは、今にも襲われそうになっている幼い少女の姿だ。

 

「ッ!!」

 

 全速力で少女を掻っ攫うように響が駆け抜け、間一髪でノイズの魔の手から少女を救いだす。

 

「お、お姉ちゃん?」

 

「逃げるよッ!!」

 

 そう言って響は少女を背負うと、迫りくるノイズを避けながら走りだした。その動きは鋭く、少女とはいえ人1人を抱えているとは思えない速度だ。

 

(師匠との特訓の成果、これなら逃げ切れる!)

 

 この1年、信人とともに弦十郎の特訓を受けてきた響。毎回のように信じられないハードな特訓と信人のキングストーンエネルギーによる超回復を受け続けてきた響の身体能力は、一般的な女子高生とは桁が違うところまで来ていた。もしも今の響がスポーツの世界に入ったのなら、世界記録があらかた書き換わってしまうだろう。

 ノイズを避け狭い路地を駆け抜ける響。

 だがその先は用水路が行く手を塞いでいた。急いで左右を見るもののそこには迫るノイズの姿がある。左右を、そして後ろからゆっくり近付いてくるノイズたち。

 

「お姉ちゃん!」

 

「大丈夫、お姉ちゃんが一緒にいるから!」

 

 恐怖で背負う少女が響の背に顔を埋めるが、響は諦めなど微塵もなくキッと正面の用水路を見た。

 

(幅は約6メートル。 必要歩数は大体600から700踏みくらい……なら!)

 

「問題ない、10メートルまでなら渡れる(・・・)!!」

 

 すると響はそのまま用水路に入ると……用水路の水面を立って渡り始めた(・・・・・・・・・・・・・・・)

 工程は簡単、足が水面下に沈む前に目にも止まらぬ速さで次の足を踏むだけ。弦十郎の特訓を受け続けた今の響なら可能な芸当だ。

 しかし完全には行かず、その身体が沈み始める。

 

「2人だと……さすがに沈むね」

 

 そう苦笑しながらも、響はそのまま用水路を走って渡り切った。

 

「はぁはぁはぁ……!!」

 

 対岸へと渡り切り、息を整えると再び走り始める響。しかし……。

 

「シェルターから離れちゃってる!」

 

 ノイズを避けながら走り続けたため、どんどんと響たちはシェルター方面から離れてしまっていた。方向修正しようにも、執拗に追ってくるノイズがそれを許さない。

 

「お姉ちゃん、私、死んじゃうの?」

 

「大丈夫、絶対に大丈夫だから!!」

 

 不安そうな背中からの少女の声に、確信をもって響は答える。

 他でもない響はノイズを打ち砕く『歌の戦士』を、そして何よりも『白銀のライダー』の存在を知っているのだ。

 

(ノブくんは、絶対に駆けつけて来てくれる!)

 

 その絶対の自信がある。だから、それまでの時間を稼げばいいのだ。

 そう思いながら沿岸のプラントまで逃げた響だが……ついに細い路地へと追い詰められてしまった。

 

「お姉ちゃん……」

 

 恐怖に泣きながら縋り付く少女を抱きしめ、響は周囲を見て方策を探る。

 

(左右の壁を交互に蹴って屋上(・・)まで登れば……ダメ、この子を連れながらじゃ10メートル登るのがせいぜい。屋上までは届かない!

 なら、もし飛行型が後ろにいたら避けられずに一巻の終わりだけど……一か八かでノイズの頭上を壁伝いに駆け抜ける(・・・・・・・・・・・・・・・・)!!)

 

 響一人なら逃げ切ることはいくらでもできるだろう。だが、響の中で少女を見捨てる選択肢は欠片も無い。

 覚悟を決めた響は背中の少女へと語りかける。

 

「大丈夫、お姉ちゃんがついてる。 だから、生きるのを諦めないで!!」

 

 そう呼吸を整えようと息を吸ったその時だった。

 

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron……」

 

 

 胸に歌が浮かび上がる。そして、その歌を自然と響は口ずさんでいた。

 

 パァァァァ……

 

 瞬間目のくらむような閃光が辺りを包む。

 

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 何かが自分の身体に浸透してくるような怖気と、強大な力に包まれる高揚感に響は閃光の中で叫んでいた。

 そして閃光が止むとそこには……。

 

「私が……シンフォギアを纏ってる?」

 

 自分の手や身体を見れば、それは明らかに奏や翼の纏っているのと同じもの……すなわち対ノイズプロテクター『シンフォギア』だ。

 何故? どうして『シンフォギア』を私が?

 様々な疑問が駆け巡るがそんな響のそばで少女の声がする。

 

「お姉ちゃん、カッコイイ!!」

 

 その言葉に今の状況を思い出した響は左手で少女を抱きかかえると、右の拳を握りしめた。

 

「何でシンフォギアを私が纏えてるのか、全然わかんないけど……今私がやるべきことははっきりと分かる!

 この子を全力で……守ることだぁぁ!!」

 

 あの日あのライブ会場で見たツヴァイウィングの2人の背中、そしていつでも自分を守ってくれていた白銀の背中を思いながら、響は眼前のノイズへと拳を打ち込んだ!

 




今回のあらすじ

ビッキー「未来ぅ~!」

393「リディアン受かって、やっと響たちと再会できた」

SHADOW「おかしい……この1年ゴルゴムのことを探っていたのに影も形もない。
    まさかこの世界……ゴルゴムいないんじゃ……?」

フィーネさん「そうよ! やっとわかってくれたのね!!
       そう、すべてはこのフィーネの……」

SHADOW「なるほど……これはクライシス帝国の仕業か!!」

【悲報】フィーネさんクライシス帝国認定される

フィーネさん「どうしてそうなるのよぉぉぉぉぉぉ!!」

SHADOW「ノイズの特性を考えれば考えるほど、これはクライシス帝国の仕業に違いない!
    おのれクライシス帝国め!!」

ビッキー「ノイズ……キサマは中国武術を嘗めたッッッ!」


原作のビッキー:用水路を『泳いで』渡る

本作のビッキー:用水路を『走って』渡る


奏「なんかウチの妹分が烈海王みたいになってんだけど……えっ、なんで?」

防人「挙句平然と10mくらいなら人を抱えてロックマンXみたいなキッククライムができるとか言ってるし……一年でここまでの差がでるのか……。
   OTONA塾は本当に怖いなぁ……」

ビッキー「作者がOTONA塾で私がレベルアップしたことを表そうとしたら、いつの間にかこんなギャグみたいな状況に……」

キネクリ「こんなのと戦う羽目になるの?
     割とマジでアタシ様が生き残る方法を誰か教えてくんない?」


一年のOTONA塾で超強化されてしまったビッキー。
このビッキーとシャドームーンを敵に廻してフィーネさんはこの先生きのこることができるのか。

来週用事があるので来週の投稿は休みます。

次回もよろしくお願いします。


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第11話

 バイタルチャージによって右拳に溜めたキングストーンエネルギー、それを眼前のノイズの集団に飛び掛かり叩きつける。

 

「シャドーパンチ!!」

 

 拳の一撃はノイズを砕き、余波が諸共に周辺のノイズを砕く。

 

弦十郎司令(おやっさん)、こっちは終わったぞ!」

 

『引き続き次のポイントに移動してノイズの掃討を頼む!』

 

「了解した!」

 

 言われて、俺は次にノイズの気配を感じる場所へとバトルホッパーを走らせる。

 今日もノイズの気配を感じて戦いを始めた俺こと仮面ライダーSHADOW。だが、運悪く奏と翼の2人は新曲PVの撮影のため留守にしており、結果俺だけで複数個所に現れたノイズの掃討に追われていた。

 

『装者2人、ヘリに乗り込みました! これより現場に向かいます!!』

 

 どうやら奏と翼はこちらに向かい始めたらしい。

 だがそんな俺の眼前、沿岸のプラント地帯方面で光の柱のようなものが天へと昇る。

 すると通信機の先、本部が騒がしくなった。

 

『これは……アウフヴァッヘン波形!?』

 

『ガングニールだとぉ!!』

 

 了子さんと弦十郎司令(おやっさん)の声が聞こえる。

 

「どういうことだ、奏はまだヘリで移動中なんだろ」

 

『分からん。 分からんが何かが起きている!』

 

「分かった、急ぐ!!」

 

 俺はバトルホッパーのアクセルを全開にして大ジャンプ、そのまま海へと出るとバトルホッパーで海上を走り始める。障害物の多い市街地を走るより遮蔽物のない海上を走った方が速いと判断したからだ。

 俺はバトルホッパーのアクセルを全開にする。バトルホッパーの無限動力源『モトクリスタル』、そして俺の体内のキングストーンが共鳴し合い、バトルホッパーはそのすべての能力を解放した速度で沿岸のプラント地帯へ急ぐ。

 何か重大な『予感』がする。そして往々にしてこういう俺の予感は当たるのだ。

 そして到着した沿岸のプラント地帯で待っていたのは……。

 

「響ッ!?」

 

 幼い少女を抱きしめながらシンフォギアを纏って戦う、響の姿だった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 胸から溢れる歌、それを口ずさむと湧き上がる力……それを拳に乗せてノイズに叩き込む。直撃を受けたノイズが吹き飛び、その衝撃が後続のノイズまでも吹き飛ばす。

 

「凄い……これがシンフォギアの力!?」

 

 奏や翼のことでシンフォギアのことは知っていたものの、ノイズを圧倒する凄まじい力に響が目を見開く。

 

「お姉ちゃん!!」

 

「シィッ!!」

 

 腕の中の少女の声に、少しだけ呆けていた響はすぐに心を取り戻し、後ろから飛びかかってきたノイズにカウンターで鋭い廻し蹴りをお見舞いする。その蹴りをモロに受けたノイズは、他のノイズを巻き込みながら吹き飛んだ。

 

「今のうちにノイズを突破する!」

 

 師匠にならった武術とシンフォギアの力で自分だけならいくらでも生き残れるだろうが、幼い少女を連れたままノイズと戦うのは危険だ。響はノイズを突破し狭い路地を抜け出ると、プラントの広場に出た。

 

「っ!?」

 

 しかしそこにいたのは視界を埋めるノイズの群れ。四方を囲まれ、逃げ場がない。

 

「お姉ちゃん……」

 

「大丈夫、絶対助ける!!」

 

 響は少女をおろすと、両手で構えを取った。不退転でこの少女を守り切るつもりだ。四方八方の気配を探り、その全てを迎撃するため深く深く息をついて腰を落とす。

 だが、ノイズが襲い掛かるより先に状況が動いた。

 

 

 ブロロロォォォ!!

 

 

 闇を切り裂くバイクの音、その音を響は誰よりよく知っている。

 

「響っ!!」

 

「ノブくん!!」

 

 バトルホッパーがノイズを薙ぎ倒し、空中でバトルホッパーから飛び上がった仮面ライダーSHADOWが響と少女の目の前に降り立った。

 

「仮面ライダーSHADOWだぁ!」

 

 『ノイズを倒して人を助ける謎のヒーロー』として都市伝説になっている仮面ライダーSHADOWの登場に歓声を上げる少女。

 それを視界の隅に見ながらSHADOWは響へと話しかけた。

 

「事情は後で聞く。 今は俺の背中、預けられるか?」

 

「……うん! 師匠から習った技とシンフォギアの力で!!」

 

 はじめはポカンとしていた響だが、言われた意味を呑み込むと喜色を満面にたたえた。

 バトルホッパーがノイズを威嚇するように少女の廻りを旋回し、少女を守る。SHADOWが構え、その背中を守るように響も構えた。

 一斉にノイズたちがSHADOWと響に飛びかかる。

 

「タァ!!」

 

 SHADOWのパンチが正面から迫ったノイズを砕き、返す刀の水平チョップがノイズを薙ぎ倒す。

 

「ハァ!!」

 

 SHADOWの後ろから迫ったノイズに響の鋭い蹴りが叩き込まれた。響に接近した人型ノイズがその刃のような腕で響を突き刺そうとするが、響はその腕を跳ね上げるとがら空きの胴に肘を叩き込む。中国拳法『八極拳』の技の一つ、『裡門頂肘』だ。

 

「すごーい、仮面ライダーとお姉ちゃん、躍ってるみたい!」

 

 少女の言うように互いの位置を変えながらその背を守り続ける2人は、クルクルと踊りを踊っているようにも見えた。同じ師から武術を習い、さらに人生の多くの時間を一緒に過ごした幼馴染だからこそ出来る、抜群の即興連携である。

 その2人の苛烈な舞踏に、残った観客(ノイズ)は大型人型ノイズだけだった。

 

「仕上げてくる! バイタルチャージ!!」

 

「やっちゃえ、ノブくん!!」

 

 緑色のキングストーンエネルギーを両足に溜めたSHADOWが空中に飛び上がった。

 

「シャドーキックッッ!!」

 

 必殺キックが大型ノイズに炸裂し、大型ノイズが爆散する。

 爆発の炎を背に、カチャカチャと足音を鳴らしながら歩いてくる仮面ライダーSHADOW。

 

「ノブくん!!」

 

 そんな仮面ライダーSHADOWに手を振りながら近付くと抱きつく響。

 

「仮面ライダーとお姉ちゃん、仲良しさんなんだ!」 

 

 バトルホッパーの傍らでそれを見ていた少女の楽しそうな声が、ノイズの消えたその場に響いた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 突然、響がシンフォギアの装者になった夜から一夜明けた。

 あの後、ノイズを倒し俺と響が連れだって二課に行くと全員が大混乱状態だった。シンフォギア、しかも奏と同じ『ガングニール』だ。奏など何度も自分のギアを確認していたくらいである。

 何が一体どうなってこうなったのか? 誰一人として、その理由が欠片も分からない。

 響はすぐに精密検査にかけられ、そしてその結果が今日、了子さんから発表されるのだ。

 

「結論から言うと……響ちゃんの身体、手術で摘出不能な心臓付近に奏ちゃんのガングニールの破片が突き刺さってたわ。

 これが反応してシンフォギアとして発現したというわけ。

 で、その破片の出所なんだけど……」

 

「あのライブの時の怪我……だね?」

 

「そうよ」

 

 あのライブで響を貫いたものは岩の破片ではなく、損傷した奏のガングニールの破片だったのだ。そしてその破片が響の身体に融合し、力が引き出されてシンフォギアとして発現したということだった。

 

「ごめんよ響……アタシがあの時もっと強ければこんなことには……」

 

 そうやってすまなそうに謝る奏に、微笑んで元気いっぱいに響は返す。

 

「へいき、へっちゃらです。前にも言ったけど奏さんは私の命を助けてくれました。

 それに今回のことだってガングニールの破片が私の中になかったら、昨日私もあの女の子もノイズから逃げ切れずに死んじゃってたかもしれないんです。

 だからまた、奏さんに助けられちゃいました。

 奏さん、ありがとうございます」

 

「……アンタって子は、本当にいい子だね!!」

 

 奏が響を抱き締める。その光景に皆が苦笑していた。

 そんな中その輪から少し離れていた俺に、隣にいた翼が俺にだけ聞こえる小声で言ってくる。

 

「月影、あなたには思うところはないの?」

 

「……そういうあんたら2人は?」

 

「私も、それに奏も立花のことはこの1年でまるで妹のように思っている。だから危険な戦場(いくさば)などに近付いてほしくない。

 私たちの帰りを待って応援してくれる日常であればいい……そう思ってる。

 だが同時にあの子の性格もよく知っている。

 立花は誰かを助けたい、守りたい、そう想い行動できる真っ直ぐで、同時に危険でいびつな子だ。

 あの子のそれは、もはや『前向きな自殺衝動』のようなものだぞ。

 そんな子がシンフォギアのような大きな力を持ったら……答えは一つ。誰かを救うために戦場(いくさば)だろうが危険を顧みず突っ込んでいくだろう」

 

「……さすが先輩、よく分かってらっしゃる」

 

 そう言って俺も小声で答えた。

 

「本音を言えば、俺も戦うような真似はやめてほしいしすぐにでも回れ右して日常に戻ってほしい。

 でもな……」

 

 そう言って思い出すのは昨日の夜、響と一緒に背中を預けて戦ったときのことだ。

 

「昨日の夜、響と一緒に戦ったときな……『楽しかった』んだ。

 守るべき者だとわかっているのに、日常にいた方がいいって思っているのに……戦場(いくさば)であっても響が隣にいてくれるっていうのが嬉しくて、今の俺ならどんなことでも出来ると思ったんだ。

 ……翼にはそう言うことはないか?」

 

「……私も奏と2人ならどこまでも行ける、何でもできるって思っている。

 だからその気持ちは分からなくもない。分からなくもないが……」

 

「響だって俺と一緒に弦十郎司令(おやっさん)の特訓を受けてきた。

 昨日の戦いも実戦が初めてとは思えない動きでノイズを倒してた。

 大型ノイズはまだしも、通常のノイズくらいなら敵じゃないはずだ」

 

「だが戦場(いくさば)に絶対はない。

 分かっているだろう?」

 

「……その時は、俺が命に変えて守る。

 だから今は響の思うようにさせてやりたい……」

 

「……わかった、私も奏もできる限りの手助けはしよう。何と言っても大切な妹分だからな」

 

「ありがとう」

 

 俺は翼に小声で礼を言う。

 実際に、何の運命のいたずらか響は俺と一緒に弦十郎(おやっさん)から武術を習い、シンフォギアという力を纏ってしまった。ノイズと戦えるだけの技も力もあるのだ。そしてノイズに対抗する手段である『シンフォギア』が貴重なことも知ってしまっている。だから響が、『自分もノイズと戦う』と言いだすのはもう間違いないのだ。

 そんな時だ。

 

「!? ノイズの気配!!」

 

「えっ!」

 

 それを感じた俺は即座に走りだす。それに真っ先について来たのは響だった。

 

「ノブくん、私も!!」

 

「いいのか、ここからは完全に戦場(いくさば)だぞ?」

 

「そんな場所を、ノブくんはずっと走って沢山守ってきたんでしょ?

 その銀色の背中で、守ってきたんでしょ?

 私にも力があるなら……背中を眺めるんじゃなくて隣にいたいよ」

 

「……」

 

 やがて、俺と響は地上へのエレベーターに到着し、エレベーターが急上昇を始める。

 その時、ちょうどノイズ発生を知らせる警報音が鳴り響いた。

 

「バトルホッパー!!」

 

 着いた場所は各種車両の置かれた格納庫だ。

 俺の声に答え現れたバトルホッパーが車の一台に取り付くと、バイクへと変形する。

 

「変身!!」

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron……」

 

 2人で光の中で変身を果たすと、俺はバトルホッパーに跨りながら響に言った。

 

「後ろに乗れ、響! しっかりつかまってろ!」

 

「うん!」

 

 響がバトルホッパーに跨り俺の腰をつかんだのを確認すると、俺はアクセルを吹かして車両格納庫を飛び出した。

 

『ノイズの座標確認、リディアンより距離200』

 

「ああ、もう見えてる!」

 

 二課からの通信があった時には、すでに俺も響もノイズの姿を確認していた。

 

「響っ!」

 

「ノブくん!」

 

 バトルホッパーで大ジャンプ、空中でバトルホッパーから飛び降りた。

 

「「たぁぁぁぁ!!」」

 

 そのまま空中でクルリと回転すると2人でノイズの集団へとダブルキックを放つと着地する。

 

「響、慣れないんだからあまり前に出過ぎるなよ」

 

「じゃあお手本見せてね、ノブくん」

 

「じゃあ、張り切ってやろうかな……バイタルチャージ!!」

 

 容赦なく、初手からバイタルチャージで一気にキングストーンエネルギーを高める。

 俺と響によってそこのノイズが殲滅されたのはそれから3分後のことだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 どことも知れない場所、暗い部屋の中。

 

「立花響……仮面ライダーSHADOWを制するための鎖が、まさか新たなシンフォギア適合者となるとは……」

 

 何の力もない一般人である立花響は仮面ライダーSHADOWの動きを封じ込めるために使おうと思っていたのだが、それがシンフォギアという力を持ってしまった……頭の痛い話である。

 

「しかし……研究材料としては大いに興味がある」

 

 立花響は人と聖遺物の融合症例第一号だ。

 人と聖遺物の融合という現象には大いに興味をそそられる。ともすれば自らの切り札にもなりえる話だ。

 

「『あの娘』を使って何とか攫えないものかしらね?」

 

 ただその時には仮面ライダーSHADOWには細心の注意を払わねばならないだろう。

 どのような作戦で行くべきか、策を巡らせる。

 

「いずれにせよ、誰が相手であろうと『計画』の邪魔はさせない……」

 

 そんな決意の籠った声が、闇に響いた……。

 




今回のあらすじ

SHADOW「なんか響が対魔忍スタイルで暴れまわってるんだけど!」

ビッキー「対魔忍いうな!
     あ、でもノブくんとの共闘すっごい楽しい!」

幼女パイセン「超仲良し。さっさと結婚汁」

奏「妹分の変身理由がアタシの不手際で落ち込む」

防人「あれ、戦場(いくさば)に出てもいいの?」

SHADOW「響が楽しそうで俺も鼻が高いよ。
    俺もダブルライダー状態で超楽しかったし、精一杯ケツ持ちするから好きなようにやらせてやってくれよ」

防人「まぁ、できる限り協力はするけど……」

フィーネさん「……ただの一般人だったはずが、何でシンフォギアなんか纏ってるのよ。
       これ計画が……いやでも科学者としては大いに興味あるし、キネクリ、ちょっとあいつ攫ってきて」

キネクリ「いきなりの無茶振り。
     まぁ、あたし様もレベルアップしてるみたいだからやるけどさ。でもSHADOWだけは勘弁な!」

今週は休みだと言ったな。あれは嘘だ。
何とか都合がついたので投稿です。できる限りこのまま週一投稿は継続させたい。

次回もよろしくお願いします。


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第12話

「行ったぞ、立花!」

 

「了解です! ここから先は、通さない!!」

 

 翼の声に答え、ノイズの前に立ちふさがる響。

 殺到するノイズに対してしっかりと腰を落とした構えで迎え撃つ。

 

「たぁ! はぁ!!」

 

 右の正拳から流れるように左の裏拳、鋭い右蹴りが次々にノイズに突き刺さる。

 そのすべてが完全にノイズの芯を捉えており、響の攻撃を受けたノイズは次々に砕け散っていく。

 

「とりゃぁぁぁ!!」

 

 攻撃してきた人型ノイズの手を逆につかみ体勢を崩すと軽くしゃがみ、全身のバネを使って思い切り踏み出すと、背中で体当たりをする。中国拳法『八極拳』の技の一つ、『鉄山靠』だ。

 それを受けたノイズが、他のノイズを巻き込みながら吹き飛んで砕け散った。

 しかし、それでもノイズの数が多い。

 

「数が多い! このままじゃ市街地にまで……」

 

「無辜の民を守ることこそ防人の務め。 立花、全力で抑えるぞ!」

 

 その時だ。

 

『ここか、祭りの場所は?』

 

「奏!」

 

「奏さん!」

 

 別方面のノイズを掃討するために別行動だった奏からの通信が入る。

 

『こっちはかたがついた。 そっちに超音速で向かってるよ!!』

 

 ほぼ同時に、バイクの排気音が響き渡る。

 そして……。

 

「ダイナミックスマッシュ!!」

 

「ノブくん!!」

 

 その場所に乱入してきたのはバトルホッパーに乗ったSHADOWだ。その後ろには奏が乗っている。

 バトルホッパーの体当たりでノイズの集団を一つ蹴散らし、休む間もなくバトルホッパーのアクセルを吹かすSHADOW。そんなSHADOWの後ろで奏が叫んだ。

 

「行くよ! ハイヨー、シルバー!!」

 

「SHADOWだ! 銀色でも俺のことをシルバーとか呼ぶな!!」

 

 SHADOWのツッコミを無視して、奏が手にしたアームドギアである槍を振るうとそれが巨大になっていく。

 

「だりゃぁぁぁ!!」

 

 そして奏は身の丈を超えるほどに巨大になった槍をグルグルと振り回し、SHADOWはそのままバトルホッパーでノイズの集団に突っ込んだ。

 凶悪な巨大ミキサーと化したそれに高速で迫られてはノイズも堪らない。ノイズは近寄っただけで次々に粉々になり、そのまま大型ノイズの足を切り落とす。

 

「決める!!」

 

 バランスを崩し倒れた大型ノイズを前に、翼が空中へ飛び上がった。

 

 

『天ノ逆鱗』

 

 

 アームドギアである剣を巨大化させ、そのまま蹴り貫く。

 巨大化した剣は大型ノイズの中心をとらえ、そのまま大型ノイズは爆散した。

 

『周辺からノイズの反応は消えた。 状況終了だ』

 

「やったね、ノブくん!」

 

 弦十郎からの通信にSHADOWと装者たちに漂っていた張り詰めた緊張感が弛緩し、響がSHADOWに声をかける。

 響は順調にノイズとの戦いの経験を重ね、戦士として変わりつつあった。

 元々、響は信人と一緒に弦十郎による武術の特訓を1年以上も続けている。戦う力は十分にあったのだ。何よりノイズを倒し人を守れるという真っ当な正義感、憧れのツヴァイウィングの2人や信人の隣に立てることの喜びが高いモチベーションとなり、結果として響はツヴァイウィングの2人からは『守るべき妹分』から『戦場で背中を預けるに足る後輩』へと変化しつつある。

 こうして響が装者になってから約1ヶ月は過ぎていった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「最近、響の様子がおかしい?」

 

「うん……」

 

 その日、俺は未来から話があると言われて学校近くの喫茶店に来ていた。

 お互いに飲み物を注文し一息ついたところで言われたのが、この未来の言葉である。

 

「授業は上の空で考え事してることが多いしレポートの提出は忘れるし、放課後にみんなで遊びに行こうって言ってもすぐに断るし……理由を聞いても『ちょっとした用事』としか言わないの。第一あの響が、あの美味しい『ふらわー』のお好み焼き食べに行こうってみんなで誘ってるのに何度も断るなんておかしいと思わない?」

 

「ああ、まったくもって未来の言う通りだ」

 

 ごはん、食べ物関係を断る響は確かに偽物を疑うレベルでおかしいことは同意する。しかも、響と何度も行ったことがあるが『ふらわー』のお好み焼きは美味いのだ。確かにおかしいと言われても仕方ない。

 

「明らかに響は何かを隠してるのよ。

 一度突っ込んで聞いてみたんだけど『別にたいしたことじゃないよ』とか言ってごまかされちゃうし……信人は何か知らない?」

 

「……さぁ、俺も知らないな」

 

 俺はそう言って肩を竦めるとコーヒーを一口啜る。

 無論俺は理由を知っている。響はシンフォギア装者になり、ノイズ退治や訓練で忙しい日々を続けている。だがそれは二課の機密事項だ。

 シンフォギアの情報、特に装者の情報は特に気を付けなければならない。もし悪意ある何者かにばれたのなら、家族や友達まで悪意の被害にあってしまう可能性が高いのだ。無論、未来をそんな危険に巻き込めるはずもないので、どうやってもこのことは話せない。

 

「まぁ、響のことだ。 隠し事があったとしても何か悪いことしてるってことは絶対にないだろ?」

 

「それは……そうだけど……」

 

「誰だって隠し事の一つや二つはあるさ。そのくらい大目に見てやれよ」

 

「……そう言う信人も、何か隠し事してない?

 前とは少し……何か違う気がするの」

 

「『男子三日会わざれば刮目して見よ』、だ。 俺だって日々成長してるってことさ」

 

 そんな風におどけて未来に答える。

 ……未来は勘が鋭い、下手なことを言えば疑いをかけられるだろうから俺は内心ではドキドキである。

 しばらく俺を胡散臭げに見つめていた未来だが、ため息を一つつくと口を整えるためか一口紅茶を飲んでから話を再開する。

 

「私は……あの『事件』で自分だけ転校しちゃって響たちと離れ離れになってからもずっとあの時の約束を……『3人で支え合ってどんな苦境も乗り越える』って言葉を忘れてなかった」

 

「それは俺も響も同じだよ」

 

 あの『事件』の時の3人で交わした誓い……『3人で支え合ってどんな苦境も乗り越える』という誓いを俺も響も忘れたことはない。

 

「私は、私だけが逃げるように転校することになって誓いを守れなかったのを後悔してた。だから今度こそ、何があってもあの時の約束を守りたい……そう思ってリディアンに来たの。

 なのに響が何かを隠して様子がおかしいのに何もしてあげられなくて……それに前みたいに一緒の時間も取れなくって……なんて言ったらいいのか?」

 

 胸の気持ちを表すのにいい言葉をなかなか見つけられない未来に、俺は言った。

 

「つまり……『寂しい』ってことか?」

 

「……そう、だね。

 多分、信人の言う通り私は『寂しい』んだと思う」

 

 未来はそう、胸の内を明かした。

 一年……人によってはたった一年かもしれないが、その別離の期間は当人にとっては途方もなく長い。やっと再会できてさぁこれから以前のような日々を、と思った矢先に響の謎の隠し事だ。

 

「『何かあったのかも? 何か悪いことに巻き込まれてるんじゃ? 何で何も教えてくれないの? 私じゃ力になれないの?』……そんな風に思って、あの頃のように頼ってもらえないことが寂しくって……。

 ねぇ……私って、響や信人にとってはもうただの『過去』なのかな?」

 

 そんな弱気なセリフが未来から飛び出す。

 

「何をバカなこと言ってるんだ、お前は……。

 響も、それに俺だって未来との再会出来る時をずっと待ってたんだ。一緒に『今』を過ごせるのが嬉しいんだ。

 未来を『過去』になんてするものか」

 

「そう……。 信人にそう言ってもらえると嬉しいな。

 でも……」

 

 そんな未来の様子を見ながら俺は思う。

 

(こりゃ重傷だな……)

 

 俺はコーヒーをすすりながら心の中でため息をつく。だが、未来の気持ちも分からなくもない。

 

(何とか響と未来が一緒にいれる時間を作らないとな……)

 

 幸いにしておあつらえ向きなイベントはある。ちょうど流星雨が近く、流れ星を一緒に見ようと俺も響も未来から誘われているのだ。そのために響は溜まったレポート作成のため、最近は夜遅くまで俺が響の勉強を見たりしている。

 

(これで未来の不安も無くなってくれればいいんだが……)

 

 そんなことを思いながらしばらく未来と取り留めない話をして喫茶店を出ると、俺は二課へと向かう。今日は二課での定例ミーティングだ。

 今日の議題はここ一ヶ月あたりでのノイズの活動についてである。

 

「どう思う、響くん?」

 

「いっぱいですね」

 

 ノイズ発生地点を記したマップを前に身も蓋もないことを言う響。だが、響の言う通りこの件数はいっぱい、つまり『異常』だ。

 そのことを了子さんは『何らかの作為が働いていると考えるべき』と言う。

 ノイズはクライシス帝国の先兵なのだから、それについては全面的に肯定する。

 

「中心はリディアン音楽院高等科……つまり狙いはココかい?」

 

「サクリスト『L』……『レーヴァテイン』を狙って何からの意思が向けられていると考えられます」

 

「『レーヴァテイン』?」

 

 奏と翼の言葉に、ここで初めて聞く単語が出てきて俺は聞き返す。聞けば二課よりも下層で保管・研究されているほぼ破損のない『完全聖遺物』なのだそうだ。一応、バトルホッパーも『完全聖遺物』にカテゴライズされている。

 奏や翼、そして響のように聖遺物の欠片はその力を発揮するのに歌を歌いシンフォギアとして再構築しなくてはならないが、この完全聖遺物は一度起動したら誰でも使えるという。しかしその起動には相応のフォニックゲインが必要であり、起動は容易ではないらしい。

 

「『レーヴァテイン』は凄いわよぉ。 過去のそれらしい伝説を見ると、起動した状態で使われノイズたちを大量に倒したってことがあったみたいだからね」

 

「そりゃ凄いな。 それを起動させて、弦十郎(おやっさん)あたりに使ってもらったらノイズなんて楽勝なんじゃ……」

 

「ただ、使った人はもれなく狂戦士(バーサーカー)状態で理性を無くし、ノイズごと町一つ吹っ飛ばしたみたいだけど……弦十郎くんに使わせたい?」

 

 俺が全力でも暴走した弦十郎(おやっさん)なんて止めれるとは思わない。そんなことやったが最後、間違いなく世界が滅ぶぞ。

 

「完全に呪われた魔剣の類じゃないか。 そんな危ないモンさっさと捨てろよ」

 

「それでも『完全聖遺物』だし研究材料としては特一級なのよ」

 

 しかし『レーヴァテイン』とやらのことは二課に入ってからもう1年くらいたつが、初めて聞く話だ。特に俺や響には必要ない話なので聞くような機会もなかったのだろう。

 あるいは知る必要のない情報として弦十郎(おやっさん)がしないようにしていただけかもしれない。

 そのまま話はアメリカが『レーヴァテイン』の引き渡しを要求しているだの、本部が数万回単位でハッキングをかけられていて黒幕がアメリカの可能性があるなどアメリカ政府の陰謀論にまでなっているあたり、そういうものに俺や響が巻き込まれないように配慮してくれていたのかもしれない。

 

(クライシス帝国め……その『レーヴァテイン』とやらを奪って一体何をするつもりなんだ?)

 

 クライシス帝国がやろうとしていることならロクでもないことなのは確実、挙句それは呪われた魔剣の類だ、どこをみてもアウトだろう。

 

(しかしこれだけの動きだ。 作戦を主導するクライシス帝国の怪魔戦士や幹部が近くにいる可能性が高いな……)

 

 そう思いながらも、何でもない日は過ぎていく。

 そして……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 夕闇迫るリディアン音楽院、その職員室から響が出てきて待っていた未来が駆け寄る。

 

「先生、なんて?」

 

「壮絶に字が汚いって。まるでヒエロなんとかみたいだって言ってた」

 

「いや、そうじゃなくって。レポートは受け取ってもらえたの?」

 

 未来の問いに、響はすぐに笑顔になって答える。

 

「今回だけは特別だって。 イェーイ、これで今夜流れ星見られそう!」

 

「やったね、響。 教室からかばんとって来てあげる!」

 

 そう言って嬉しそうに教室へ走っていく未来の背中を響が見つめていた時、ポケットの携帯端末から呼び出し音が鳴った。

 

「……はい」

 

 硬い表情でそれに出る響。中身は響の思った通り、二課からのノイズ出現による出撃の話だった。

 

(よりにもよって、何で今日なの?)

 

 心の底からどす黒い何かが噴き出しそうになるのを必死で抑え、響が返事をしようとしたその時だった。

 

弦十郎(おやっさん)、それは待ってくれないか?』

 

 そんな信人の声が通信機から聞こえる。信人が二課との会話に割り込んできたのだ。

 

『信人くん、何か意見があるのか?』

 

『いちいち毎回馬鹿正直に全員でノイズ退治に行く必要はないだろ? こっちはもう何年もノイズと戦ってるベテランが3人もいるんだ。今回は響なしでもできる』

 

『それは響くんを今回のノイズへの対応から外せということか?』

 

『有り体に言えばそうだ。

 弦十郎(おやっさん)、ここ最近のノイズ発生は不自然だってこの間話をしていたばかりじゃないか。本部の『レーヴァテイン』とやらを狙っている何者かの仕業かも、って。

 今回のこれがその何者かの仕掛けた『陽動作戦』って可能性だってある。

 戦力は使い切らずにいた方がいいと俺は思うぞ』

 

『響くんを出撃させずにいて非常時戦力として温存しろということか……確かに一理ある。 だが……』

 

 当事者である響を置いてけぼりで話をする信人と弦十郎(師匠)。信人が響を出撃させるなといい、それについて弦十郎(師匠)が考え込んでいる。

 

(もしかしてノブくん、未来との流れ星の約束のために……)

 

 そんな風に響が成り行きを見守る中、了子から助け舟が入った。

 

『いいじゃない弦十郎君。 信人君の言う通り、二課に敵対する何者かがノイズを操ってるという可能性がある以上、ノイズに対抗できる戦力を残しておくのは正しい判断だと思うわ。

 正直対応人数が昔の倍、4人になっているんだから出撃のローテーションを組んでもいいと思うのよね』

 

『……分かった、信人くんの意見を採用しよう。

 響くんはいつでも呼び出しがかかってもいいようにそのまま待機を。他の3人は指示する現場に急行してくれ』

 

「わ、分かりました」

 

『了解。 響の分まで暴れて見せるよ』

 

 そう言って二課からの通信は切れる。

 と、直後に信人からの連絡が入ってきた。

 

「ノブくん……」

 

『響、悪いけど未来には今日の流星雨は俺は急なバイトで間に合わないかもしれないって伝えてくれ』

 

「やっぱりさっきのは未来との約束に私を行かせるために……ノブくん、みんなが命がけで戦ってるのに私だけが遊びになんていけないよ。

 今からでも私も出撃を……」

 

『響、確かに俺は未来のためにもお前は未来と一緒に行くべきだって思ったからあんなことを言ったのは確かだが、さっき俺が説得した内容は別に嘘でも何でもない、十分あり得る話なんだ。だから今回は響には出撃せずにいて欲しい』

 

「……わかった。 でも、必要な時には必ず連絡してね。仲間外れは嫌だよ」

 

『……ああ。 未来に上手く伝えてくれよ』

 

 そう言って信人からの通信も切れた。

 ちょうどそこに、自分と響のカバンを持った未来が戻ってくる。

 

「響~。 ……どうしたの、響?」

 

「あ、うん。 今ノブくんから連絡があって、ノブくん急なバイトで来れないかもって……」

 

「信人が……でも用事があるんじゃしょうがないか」

 

 信人の不在を聞いて残念そうにする未来。だが、すぐにそれを振り払うように笑顔をつくった。

 

「じゃあ、信人にも話せるように2人で見ておかないとね」

 

「うん……」

 

 響は若干浮かないながら、それでも未来との約束を果たせるのが嬉しいという微妙な顔のまま未来の手を握ったのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……」

 

 響との通信を終えた俺は通信機をポケットにしまうと、先ほどの響の言葉を思い出す。

 

「『仲間外れは嫌』、か……多分それは今の未来の思っている言葉だぞ」

 

 今回響を残した……未来との約束に行かせたのは、未来のためだ。この間の未来との話で、未来がかなり精神的に参っているのを知ったためである。

 

「……やっぱり俺は『正義の味方』にはなれないな」 

 

 どうしても身内を優先してしまう自分の気質に、改めて俺は『正義の味方』にはなれないと思う。

 

「さて……」

 

 そして、俺はゆっくりと振り返ると、そこには数えるのも馬鹿らしい大量のノイズの集団の姿があった。

 

「俺も響や未来と流れ星が見たかったんだ。 邪魔したからには覚悟しろよ!

 変ッ身!!」

 

 そしていつものようにSHADOWの姿に変身すると、俺はノイズの集団に躍りかかった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ノイズが発生した地域から離れた自然公園。

 ここは林に囲まれ人工の光が少なく、夜になると星が良く見える隠れスポットである。この日のために未来が探した穴場だ。

 情報通り、空の星が良く見える。雲はところどころにあるものの、月と星の光があたりを照らしていた。流れ星も問題なく見えるだろう。

 しかし、どうにも響の表情は明るくなり切れない。

 

「響ったら、心ここにあらずって感じね」

 

「えっ!? そんなことは……」

 

 そう未来に指摘され思わず反論しようとするが、言葉が続かない。

 そんな響に未来は笑顔で言う。

 

「信人のこと?」

 

「それもあるけど、他にもいっぱい……」

 

 そう言って、響は慎重に言葉を選びながら続ける。

 

「私ね、最近ノブくんとかと一緒に『ちょっとしたこと』をしてるの。

 さっき急な呼び出しがあったんだけど……ノブくんと先輩たちで何とかするから大丈夫だって。

 ノブくんたちに押し付けて私だけここにいるのは申し訳ないなぁって思っちゃって……」

 

「バイトは校則違反だよ、響」

 

「えへへっ、だからクラスのみんなにはナイショだよ、未来」

 

 どうやら未来は響の最近の隠し事というのが『隠れてバイトをしている』のだと思ったようだ。それに便乗して響はそういうことと話をする。

 

(信人のやつ……何が『響の隠し事なんて知らない』よ。 思いっきり知ってるじゃない、嘘つき)

 

 未来は前に信人に相談したときに平然と嘘をつかれたと、次に会ったらどうしてやろうかと心の中で考える。もっとも響が口止めを頼んだのだろうと思うと、そこまで信人を責められないとも未来は思った。

 

「わかった、ナイショにするけど……でも無理は駄目だよ、響。

 レポートとかもギリギリ、最近は授業にも支障がでてるじゃない」

 

「その辺は未来やノブくんに協力してもらって乗り切りたいなぁって思って。

 えへへっ♪」

 

「もうっ、調子いいんだから」

 

 そう言ってクスクスと2人で笑う。しばらくして響は真面目な顔をして続けた。

 

「でもね、本当にやりがいがあることなんだよ。

 今、私は『正しいことの白』の中にいる、って思えるんだ。

 だから……最後までやり抜きたい。

 それにノブくんの隣にいれるのも嬉しいしね」

 

 そう真面目に語り最後に少しだけ顔を赤くする響に、未来は微笑みを浮かべる。

 その時。

 

「あっ、始まったみたい!」 

 

「えっ!?」

 

 未来が指差す先の夜空へと響が視線を移す。そこには……。

 

「「わぁ……!!」」

 

 いくつもの流星が煌めいていた。

 流れ消えゆく儚い星たちの光景を、2人は無言で眺める。

 そして、2人は奇しくも同じことを願っていた。

 

((これからも私たちが3人で一緒にいられますように……))

 

「……次は信人とも一緒に見ようね」

 

「うん……」

 

 そうやって2人が頷きあったその時だった。

 

「……あれ?」

 

「何、あの光?」

 

 何か、緑色の光が放物線を描くようにこっちに向かって来ている。その光を目で追う2人。

 そしてその光が2人の前の地面に着弾する。

 すると……。

 

「ッ!!?」

 

「ノイズ!?」

 

 何とその光の中からノイズが現れたのだ。咄嗟に未来を後ろに庇う響。

 そして……。

 

「こんなところでのんびりお星見たぁ、いいご身分だな融合症例!」

 

 そのノイズたちをかき分けるようにして、白い鎧のようなものを纏った少女が現れたのだった……。

 




今回のあらすじ

ビッキー「とぉぉぉう!!」

防人「なんかたった一ヶ月で妹分が超やる気すぎて戦友状態になってる件」

奏「ここか、祭りの場所は?」

SHADOW「人を盾に出来る距離でその言葉はやめてくれませんかねぇ」

393「で、響ともどもなんか隠してない? 隠し事されて超寂しいんだけど」

デュランダル「『レーヴァテイン』? あれ、僕は?」

SHADOW「おめぇの出番ねぇから!
    しかし……こんな呪いの装備を狙って何を企んでいるんだクライシスの奴らは」

フィーネさん「だからクライシスってなによ!?」

ビッキー「よりにもよってノブくんや未来との流星デートの日に来るとかノイズは本当に空気が読めない」

SHADOW「ここは俺に任せてお前は行けぃ!多分行かないと393暴走しそうだからガス抜きしてきて!」

ビッキー「おK」

393「親友と流星を見てたら、痴女とエンカウントしました」

キネクリ「誰が痴女だよ、誰が!!」


デュランダルくんは死んだ、もういない!
この作品ではデュランダルくんはなかったことになり、EUから借金のかたにもらったのは『レーヴァテイン』くんとなりました。一応大きな意味のある改変です。
次回もよろしくお願いします。


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第13話

「ハァ! タァ!!」

 

 俺は地下鉄構内に沸いたノイズを片っ端からパンチやチョップを駆使して叩き潰していく。ノイズは容易く弾け飛ぶが、いかんせん数が多い。

 今日のノイズは地下鉄の路線に現れていた。

 ノイズを逃がさないために俺と奏と翼は別々の場所から路線に突入し、二課の指示でノイズを掃討しながら移動中だ。

 

「シャドーチョップ!」

 

 大岩をも両断する手刀の一撃でノイズは砕け、俺はまた別のノイズに跳びかかる。 

 地下鉄の路線内に多量に現れているため崩落の危険性があるから大技は使えない。そのため地道な駆除作業である。

 しかし、こうして入ってみると地下鉄の路線というのはまるでゲームのダンジョンのようだ。暗い洞窟で魔物に襲われるシチュエーションと似ていることに気付き、俺は苦笑する。

 

「未来は今頃、響と一緒に流星は見れているかな?」

 

 ノイズを処理しながらポツリと俺は呟いた。

 これで響の隠し事の一件で『寂しさ』を抱えていた未来も、少しは楽になってくれれば……そう俺が考えたその時だった。

 

「ッ!!?」

 

 ゾクリと何かの悪い予感が背筋を駆け抜ける。

 いわゆる『虫の知らせ』のようなものだがキングストーンのおかげなのかその精度は未来予知並み、俺がこれを感じるときにはほぼ確実に悪いことが起こると決まっていた。

 そして案の定、今回も悪いことが起こる。

 

『響ちゃんの周辺にノイズ反応!』

 

『なにっ!?』

 

『同時に未確認のエネルギー反応が!』

 

『響ちゃんのガングニールの反応から、ノイズと未確認物体(アンノウン)と交戦に入ったものと思われます!!』

 

「バトルホッパー!!」

 

 二課からの通信を聞いた瞬間、俺は反射的にバトルホッパーを呼び出していた。バトルホッパーに跨り、アクセルを全開にする。

 

『どこに行くつもりだ、信人くん!』

 

「決まってるだろう、弦十郎司令(おやっさん)! 響のところだ!!

 物言いだったら後でいくらでも聞く! だからここは任せた!!」

 

 俺はノイズを薙ぎ倒しながら出口を目指しバトルホッパーで疾走する。

 今日、この時間では響のいる場所には未来もいるはずだ。響と未来……どちらも決して失ってはならない幼馴染の危機である。

 

(待ってろ! 響! 未来!)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 突然のノイズ、そして白い鎧の少女の登場。ノイズに怯える未来を背に庇い、響は目の前の少女に声を張り上げる。

 

「あなたは誰! それにこのノイズたちはあなたが操ってるの!?」

 

「そんなこと今からあたしに攫われるお前に知る必要があるのかよ、『融合症例』」

 

 響の言葉に鎧の少女は鼻で笑って答えるが、響はその聞き捨てならない言葉を聞き逃さなかった。

 

「『融合症例』!? どうしてそのことを……!?」

 

 『融合症例』とは、聖遺物と人が融合した症例……つまり響のことを指す言葉だ。

 だがこの『融合症例』については、特に厳重に秘匿されているのである。理由は簡単、聖遺物と人が融合可能でしかもシンフォギアのような強い力を操れると分かったが最後、様々な国でどこからか連れてきた少女たちの身体に聖遺物を埋め込むような人体実験が巻き起こるだろうからだ。

 公的には響も『新たに発見された適合者』であり、『融合症例である』とはされていないはずなのである。だが、その『融合症例』のことをこの鎧の少女は知っていたのだ。

 

「おしゃべりはここまでだ。さっさと捕まりな!」

 

 だが響の問いに答えることはなく戦闘態勢に入る鎧の少女。

 

「何がどうなってるの、響?」

 

「未来……」

 

 何が起こっているのか分からない未来に響は叫ぶ。

 

「未来はここから逃げて!!」

 

「でもっ!」

 

「何が何だかわからないと思うけどお願い、未来! 私は……未来の通る道を切り開く!!」

 

 響にとって、信人と同じく未来は何物にも変えられない大切な幼馴染だ。

 無論、二課やシンフォギアを秘密にしなければならないということは重々承知している。だが、今やらなければ大切な幼馴染を失うかもしれないという『恐怖心』が、響に今ここでシンフォギアを纏う決断させた。

 響はシンフォギアを纏うために胸に浮かんだ歌を口ずさむ。

 

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron……」

 

 

 光が溢れシンフォギアを纏うと響は構えを取った。

 

「響、その姿っ!?」

 

「あたしとヤル気か、融合症例?」

 

 驚きの声を上げる未来と、響の姿を見てニィっと好戦的な笑みを浮かべる鎧の少女。

 

「はぁっ!!」

 

 響は踏み抜かんばかりの勢いで地面を蹴ると、そのまま拳をノイズへと叩きつける。シンフォギアによって強化されたその拳圧は、そのノイズを砕くだけでなく後ろに控えたノイズも吹き飛ばし、そこに一本の道ができる。

 

「未来、説明は全部後で! 今は走って!!」

 

「でも響を置いては……!」

 

「行って! お願い、未来ッ!!」

 

 響を置いていくことに躊躇していた未来だが、響の必死の叫びにギュッと唇を噛み締めると、響に言われた通りに走りだした。

 

「自分が囮になってお友達を逃がすたぁ、泣かせるじゃねぇか融合症例」

 

「未来に何かしようとしたら……絶対に許さない!」

 

 周囲に気配を配り未来にノイズが近付いていかないかを探りながら、響は低い声で言った。

 すると……。

 

「安心しな。 関係ないやつを巻き込むような真似はしねぇよ」

 

「えっ……?」

 

 返答は期待していなかった響だが、予想外の返答に思わず声が出てしまった。

 その言葉通り去っていく未来の近くにはノイズの気配はないし、周囲のノイズも未来を追うような真似はしない。

 ノイズを操って、しかも自分を誘拐しようとした相手だ。もっと見境のない危険人物かと思ったが、そうではないようだ。

 それを感じ取った響は目の前の鎧の少女に呼びかける。

 

「ねぇこんなことなんてやめて話し合おうよ。

 私たちノイズじゃなくて同じ人間なんだよ。

 あなたに何か事情があるなら話し合えればきっと……」

 

「はンッ! 戦場(いくさば)で何をバカなことを!!」

 

 だが響の呼び掛けを鼻で笑ってあしらうと、鎧の少女が仕掛けてきた。着ている鎧から伸びたピンク色のトゲトゲのムチのようなもの、それをしならせ、叩きつけるようにして響を狙う。

 

「シィッ!」

 

 紙一重でそのムチの一撃をかわすが追撃の2本目のムチが迫り、響は後ろへ大きく跳んで距離をとってそれをかわす。

 

「お前の相手はあたしだけじゃねぇぞ!」

 

 そんな響にノイズたちが殺到してくる。

 

「たぁ! はぁっ!」

 

 もはやただのノイズなど物の数ではない響は、拳、蹴り、肘と膝とコンビネーションで次々にノイズを砕いていく。

 そのまま再びノイズに拳を繰り出そうとした響だが、嫌な気配を感じて身体を一歩引かせた。

 

「っ!!」

 

 その目の前を、あのピンクのムチが通り過ぎた。そして時間差で襲い掛かるもう一本のムチも身体を低くして避ける。

 

(ノイズたちに紛れてのあのムチの攻撃、そう何度も避けられない!?)

 

 そう判断し、響はノイズの囲いを一気に突破して鎧の少女を目指す。ムチの間合いの内側に入り込むためだ。

 だが……。

 

「読めてるんだよ、バーカ!」

 

 いつの間にか鎧の少女の両脇に見たことのないタイプのノイズがいた。フラミンゴのような鳥に短い足がついたかのようなフォルムのノイズだ。

 そのノイズのくちばしのようなところから白い液体のようなものが響目掛けて噴射される。

 

「っ!?」

 

 嫌な予感がした響はそれを横に跳んでよけた。

 ネバネバしたその液体が地面に広がる。観察すると「とりもち」のような特性のものだったと分かる。もし当たっていたら動けなくなってしまったかもしれない。

 そんな響に再びノイズたちが襲い掛かり、響はそれに応戦し始めた。

 

「聞いてるぞ。 お前、武術をやっててかなり強いんだってな。

 戦ってわかる。 お前、なかなか強いよ。

 でもな……お前、ノイズの相手は出来ても人間相手の、狡すっからい人間相手の戦いなんてやったことないだろ?」

 

「っ!? またっ!!」

 

 ノイズの攻撃に隠れるように襲い掛かるムチをかわす響。

 

(次! もう一本のムチは!!)

 

 そう警戒する響だが、もう片方のムチの攻撃の気配がない。

 チラリとノイズの隙間から鎧の少女の姿が見える。その片方のムチは……。

 

(まさか!? しまった!?)

 

 その瞬間、響の足に『地面から飛び出した』ピンクのムチが絡みついていた。響の視線の先では、鎧の少女のムチの一本が、『地面に突き刺さっている』。

 

(一回目と同じムチの連続攻撃だと錯覚させて、一本のムチを『地中を進ませて』私の足元に絡み付かせた!?)

 

「そら、よっ!」 

 

 足を取られ空中に大きく振り上げられた響は、そのまま地面に叩きつけられてしまう。

 

「くっ!?」

 

 何とか受け身を取ることでダメージを最小限にした響はそのまま立ち上がろうとしたが、受け身をとった手が地面から離れないことに気付いた。

 

「ここ、さっきの!?」

 

 そこはさっきのフラミンゴのようなノイズが発射したネバネバした液体の広がった地面だったのだ。

 今までのすべての攻撃は響を捉えるこの罠への巧妙な布石だったのである。

 

「取れないし……うご、けない……!?」

 

 脱出しようと力を込める響だが、この「とりもち」の強度は予想以上で動けない。

 

「ごきぶりホイホイならぬ『融合症例ホイホイ』ってか」

 

 響の様子を鎧の少女はあざ笑うと、再びフラミンゴのようなノイズからネバネバした液体が発射される。

 避ける術のない響はそれに直撃し、指一本動かないほどに固められてしまった。

 

「一丁あがり。楽勝だな!」

 

「くっ!?」

 

「それにしても、なんだってこんなやつが必要だって言うんだよ。

 あたし1人でやれるっていうのに……」

 

(……この子、仲間がいるんだ。 多分、私を誘拐しろって言ったのはその仲間でこの子の意思じゃない!)

 

 ブツクサと独り言を言う鎧の少女の言葉で、響は思考を巡らす。

 

「じゃあさっさと行くぞ、融合症例。空の旅にご招待だ」

 

 鎧の少女が杖のような何かをかかげると、あの緑の光が放たれノイズが姿を現す。そのノイズは飛行タイプのものだ。それで動けない響を運ぼうというのだろう。

 近付く飛行型ノイズに、もはや動けない響に為す術はない。

 だが……。

 

「だめぇぇぇぇ!!」

 

「ッ!? 未来!!」

 

「バッ!?」

 

 突然、逃げたはずの未来が手を広げ響の盾になるかのように立ち塞がった。

 響は驚きの声を上げ、鎧の少女は咄嗟にムチを振るい響を運ぼうと未来に接近していたノイズを打ちすえて砕く。

 

「未来、私はいいから逃げてッ!!」

 

「せっかく逃げたのに生身でノイズの前に出てくるとか、バッカじゃねーのかお前! バカの友達はバカの総大将なのか!!

 さっさと安全なところに逃げてろよ!!」

 

 響と、どういうわけか鎧の少女までさっさと逃げろと言うが、未来はそれを首を振って拒否した。

 

「私たちは誓った。『3人で支え合ってどんな苦境も乗り越える』、って。

 それなのにあの時は私だけが安全な場所に逃げた。

 今度もあの時みたいに、響を置いて自分だけが安全な場所にいるなんて、絶対に、絶対に出来ない!

 そんなことしたら、わたしは響や信人の幼馴染と名乗れない!!」

 

 そして一歩も退かないと、鎧の少女を睨み付ける未来。

 

「……チッ、予定変更だ」

 

 鎧の少女は舌打ちすると、だらりと垂らしたムチを振るう。すると、そのムチがバチバチと紫電を纏った。

 

「少しばかしビリッとするけど自業自得だ! しばらくおねんねしてな!!」

 

 そう言ってそのムチが未来に絡み付こうと迫る。

 

「未来っっ!!」

 

 叫ぶことしかできない響。

 その時だ。

 

 

 ブロロロォォォォォ!!!

 

 

 バイクのエンジン音が響き渡る。

 そして……。

 

「未来ッッ!!」

 

 白銀の風が未来に伸びていたムチを断ち切る。

 そしてそこに立っていたのは……。

 

「ノブくん!!」

 

 誰よりも頼れる、白銀の背中だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 未来に伸びていたムチのようなものをシャドーチョップで断ち切ると、俺は辺りを見渡す。

 未来は無事だ、傷一つない。響はシンフォギアを纏い、何やらノイズの放ったとりもちのようなものにがんじがらめで捕らえられていた。

 

(ノイズを操っている!? ついにクライシス帝国の手先が現れたか!!)

 

 即座にそう判断し、まずは響と未来の救出に専念する。

 

「シャドーフラッシュッッ!!」

 

 俺の腰の黒いベルト『シャドーチャージャー』から、緑色のキングストーンエネルギーが放射された。その光によって響を捕らえていたとりもちのようなものとそれを操るノイズが光に溶けるように消えていく。

 

「ありがとう、ノブくん」

 

 周辺のノイズを消し去り響に手を差し出すと、その手をとって立ち上がりながら響が礼を言ってくる。

 

「『ノブくん』って……まさか信人なの?」

 

 その言葉を聞いていた未来が信じられないという風に呟いた。

 響は自分の失言に『マズい』という顔をするが、響が未来にシンフォギアの秘密を見せた以上、俺も未来に隠し立てする気はなかった。

 

「……すまない、未来。詳しい話は後だ。

 今は……」

 

 そう言って俺はゆっくりと、白い鎧の少女……クライシス帝国の手先の方を向いた。

 恰好や性別からしてクライシス帝国の怪魔妖族大隊所属だろう。

 

「アンタが仮面ライダーSHADOWかい?

 あのムチもネフシュタンの一部だってのにああも容易く断ち切るなんて……聞いてた以上にイカれてるヤツみたいだな!」

 

「どんな話を誰から聞いてるかは知らないが、響や未来を傷つけようとした以上ただではすまさんぞ!!」

 

 俺は拳を握り、構えを取る。

 しかし、その拳が振るわれることはなかった。隣から響が身体で押さえつけるようにして俺の拳を制したからだ。

 

「ダメだよノブくん、相手は人間、しかも私たちと同じくらいの女の子なんだよ!

 それに……さっきだって関係ない未来は巻き込まないようにしようとしてたし、未来がノイズに触れそうになったらノイズを倒してくれた!

 きっと、何か事情があるんだよ!」

 

「同じ人間……?」

 

 言われて、俺は落ち着いて透視分析能力である『マイティアイ』で目の前の鎧の少女を分析することにした。

 その結果だが、マリバロンのようなクライシス人だと思ったがそうではなく彼女は間違いなく『地球人』だ。だがそれ以上に気になる結果が出ている。

 

「お前は……その鎧がどんなものか分かっているのか?」

 

「何だ、お前このネフシュタンの鎧について知ってんのか?

 そうだよ。こいつは無限の再生能力を持つかわりに再生のたびに着たやつを取り込んで、最後には喰い殺す呪われた鎧さ!」

 

 彼女の語った通り、あの鎧は最後には着た者を喰い殺すような代物だ。

 その話を聞いていた響と未来は驚きの後に、痛ましそうな顔をする。

 

「そこまで分かって何故それを着ている?

 そうダメージを受けなくても徐々に鎧に身体を喰われているはずだ。その痛みもおぞましさもあるだろうに……」

 

 俺もその凄惨さに眉を顰めるように問うと、鎧の少女はそれがどうしたとばかりに俺たちを笑い飛ばす。

 

「はんっ! 『痛いか?』だって?

 もちろん痛ぇよ。でもな!

 『痛みだけが人の心を繋いで絆と結ぶ、世界の真実』! あいつはあたしにそう教えてくれた!

 この痛みがあいつとあたしを結ぶ絆だって言うんなら、この痛みすら愛おしい!!」

 

「……そうか、だいたいわかった」

 

 鎧の少女が咆えるのを聞いて、俺は頷く。

 

(なるほど、彼女の裏には何者かが……クライシス帝国の者がいるんだな。

 響の言う通り彼女自身は悪というわけではないかもしれないが、鎧を渡したというクライシス帝国の者に命を救われるような恩義か何かがあるのだろう。だからこそ、その命令を聞いて響に襲い掛かったというわけか……)

 

「……お前は(クライシスに)騙されているぞ」

 

「あたしが(フィーネに)騙されてるって?」

 

「そんな命を蝕むようなものを平気で着せるような者が語る『絆』が、信用できるわけがない」

 

「チッ! テメェもそこの融合症例と同じで甘っちょろいことばっか言って気に入らねぇ!

 でもな、お前が出て来たらすぐに退けって言われてんだ。ここは退いてやるよ!」

 

 そう言って鎧の少女が手にした杖のようなものから緑の光が放たれ、大量のノイズが現れる。

 

「逃がすと思うか?」

 

「ああ、お前や融合症例は甘っちょろいからな!」

 

 俺が身構えると、再びノイズが現れる。それは見たことのないタイプだ。

 まるで巨大なブドウのように球体が身体に大量に着いている。その1つが本体から分離すると、バウンドしながらそれが迫ってきた。

 

「これは!?」

 

 『マイティアイ』でその正体を悟った俺は響や未来の前に出て腕をクロスしてガードの態勢をつくる。

 すると俺の身体にぶつかったその球体が爆発した。あの球体の正体は爆弾だ。

 

「気付いたみたいだな。

 このままあたしを追ってもいいけど、それだとそのノイズが爆弾を一斉発射したらお前らは無事でもそっちの生身の奴は無事じゃすまないな」

 

「くっ!?」

 

 そう言ってその鎧の少女が宙に浮く。どうやらあの鎧には飛行機能も付いているらしい。

 

「じゃあな融合症例に銀ピカ野郎!!」

 

 そう言って鎧の少女は飛び去って行った。後に残ったのは俺たちとノイズだ。

 

「響、未来を連れてすぐに下がってくれ!!」

 

「わかった!」

 

 すぐに響が未来を抱きしめて大きく跳躍する。同時に俺は叫んだ。

 

「バイタルチャージ!!」

 

 キングストーンエネルギーを両足に収束し、跳び上がる。

 

「シャドーキックッッ!!」

 

 シャドーキックがノイズたちの中心に突き刺さり、溢れたエネルギーがノイズたちをまとめて吹き飛ばす。

 ノイズたちを殲滅し終えた俺は、ポツリと呟いた。

 

「しかし……結局あのブドウノイズの爆弾、最後まで爆発させなかったな」

 

 あれが一斉爆発したときの威力はかなりのもので、もしそうなっていたら俺と響が全力で守っても未来が無事だという保証はなかったのでかなり危なかったが、結局あのブドウノイズはほぼ棒立ちで俺に倒された。響の言うように関係のない者は巻き込まないという意識があるらしい。

 

「敵とはいえ話は通じそうだな」

 

 そんなことを考える。だが、今一番考えるべきはそんなことではなかった。

 

「さて……未来に説明をしないとな……」

 

 これからのことを考えて、俺は少し肩を落としながら夜の自然公園を後にするのだった……。

 




今回のあらすじ

393「野生の痴女が現れたと思ったら親友も痴女だった。
    何を言っているのかわからねーと思うが(以下略」

ビッキー「痴女言うな! ここは私に任せて行って!」

393「あ、それ負けフラグ」

キネクリ「楽勝だな!」

ビッキー「超パワーアップした私が負けとか、うせやろ?」

フィーネさん「うーん、この二年アメリカ軍人からの軍事訓練をみっちりうけさせてたけど……普通に強くなってるわね。
       『ちょっとノイズと連携を取る』っていうだけでここまで変わるとは……原作キネクリに足りないのはINTだった?」

キネクリ「これでSHADOWが来る前に撤収を……」

393「ダメェ!」

キネクリ「バッ、お前こんなところで時間喰ってたらあいつが……」

SHADOW「ハァイ、ジョージィ(邪神スマイル」

キネクリ「Oh, Shoot!」

SHADOW「出たなクライシスの怪魔戦士。
    怪魔妖族大隊所属の爆ニュウ鬼!」

キネクリ「おいコラ、今なんつった!」

SHADOW「俺の『マイティアイ』は『透視』分析能力だ。
    この意味が……分かるな?
    あと何の数字か言わんが上から90・57・85だ」

ビッキー「はぁいノブくん、今からそのお目々潰しましょうね♪(ビキビキッ」

SHADOW「MA☆TTE!!
    ストップ! ストップだ響!?」

キネクリ「ここであたしの生存戦略発動!
     名付けて『実はいい人じゃね?ムーヴをして響の気を引き、SHADOWを止めてもらう』作戦だ!!」

ビッキー「実はいい子だと思うから攻撃ダメ!」

SHADOW「くっ、響にそう言われちゃ攻撃できん。
    だがお前、そんなんでいいのか?」

キネクリ「生存、重点!」

SHADOW「あとその鎧、メチャクチャキチってる仕様だぞ。気付いてる?」

????「痛みすら愛おしい!」

ビッキー「あの、これシンフォギアなんでほむらちゃんはまどマギに帰ってもらっていいかな?」

????「ほむぅ……」

キネクリ「というわけで生き残った! あたし生き残った!」

防人「あれ? 私の絶唱顔は? 私の見せ場は?」

奏「それ、『響が絶唱を知らない』をネタにするために無くなったぞ」

フィーネさん「おめでとう。 それじゃ次もよろしく」

キネクリ「(´・ω・`)ショボーン」


ビッキーVSキネクリ第一ラウンドはキネクリさん作戦勝ちでした。
戦いは知性だとキン肉マンスーパー・フェニックスも申しておりますのでキネクリさんはINTを上げてきた次第。

次回は大きな分岐点になる『レーヴァテイン移送作戦』。
次回もよろしくお願いします。


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第14話

 あの後……響と流星を見て、突然現れたノイズとそれを操る鎧の少女と、突然変身した響が戦い出し、挙句に巷で噂される謎のヒーロー『仮面ライダーSHADOW』が乱入し、しかもそれが信人が変身したものだと知らされて。

 そして未来は響や信人と一緒にここ、母校であるリディアン音楽院の地下にあった二課の本部に来ていた。そこで響や信人、そして二課の司令であるという風鳴弦十郎という人物から今までのいきさつを聞いたのである。

 はっきり言って未来の理解力は完全にオーバーフローを起こしていた。そこで少し休憩となり未来は1人、二課の自販機スペースでベンチに座っている。

 未来は自販機で買った紅茶で喉を潤すが、気持ちはまったく落ち着かない。どこから話を整理をすればいいのか分からない。

 憧れのツヴァイウイングは実はノイズを倒す変身ヒロイン、母校の地下には秘密基地、おまけに大切な幼馴染2人も変身してはノイズと戦っているという。

 

「まるでアニメじゃない……」

 

 響と未来の共通の友人の口癖が思わず出てしまうが、アニメだってここまで設定盛り込み過ぎなものも今日日あるまい。

 そんな未来に声が掛けられた。

 

「ここいいかい?」

 

「霞野くん……?」

 

 それは信人の学校の友人として紹介された、霞野丈太郎だった。丈太郎は未来の許可も待たずにコーラを購入するとベンチの隣に腰かける。

 

「ここにいるってことはあなたも……」

 

「ああ、俺は忍者。 信人付きの連絡員ってとこだ」

 

「忍者……」

 

 今度は忍者と来たか。幼馴染2人の変身ヒーロー・ヒロイン設定だけでお腹いっぱいである未来は再び頭を抱える。

 

「何か用なんですか?」

 

「未来ちゃんのことは、前々から信人も響ちゃんもずっと気にしてたからな。

 今はあいつら2人もどんな顔して話すればいいのか分からないみたいだし、秘密がバレてどんな様子かと思ってかわりに様子見に来た」

 

 そう言ってコーラを煽る丈太郎。

 

「……少しはオブラートに包んで隠したらどうです?」

 

「ああ、俺必要なこと以外は忍ばない忍者なんで」

 

 あまりにあけすけな話に呆れる未来に、あっけらかんと丈太郎は答える。その態度にため息をつくと未来はポツリと言った。

 

「……実は私、そんなに怒ってないんです。

 事情を知った今なら、秘密にしなきゃならないことだって分かります。それでも今日響は、『詳しくは言わないけど隠し事してる』ってことを私に告白してくれました。

 どうしても秘密にしなきゃならない中で、響は私に精一杯を伝えてくれたって分かるんです。

 だから、怒ってなんかいません。

 ……まぁ、信人のやつは一度とっちめてやりますが」

 

「あはは……」

 

 『ご愁傷さま』と丈太郎は心の中で信人に合掌する。

 

「私は……今度こそ『3人で支え合ってどんな苦境も乗り越える』、その誓いを守ろうと思ってこの街に来たのに。

 でも2人の抱える秘密は大きくて……何も力になってあげられない自分の無力さが悔しいんですよ」

 

「そうかな? 未来ちゃんは十分すぎるほどに2人の力になってると思うけどな」

 

 そう言って丈太郎は飲み終えたコーラの缶をゴミ箱に投げる。綺麗な放物線を描いて缶はゴミ箱に収まった。

 

「うちは忍者の家系でね。布団で平和に死ねた人間の方が少ないんだ。

 そんな家系だから、『帰る場所』の大切さっていうのは身に染みて分かるつもりだよ」

 

 少し遠い目をする丈太郎。恐らく『布団で平和に死ねなかった人』を思い出しているのだろうと感じた未来は、何も言わずに次の言葉を待った。

 

「あの2人が迷わず戦えるのは未来ちゃんがいる日常を守り、未来ちゃんのいる日常に帰りたいと思うからだよ。

 だから未来ちゃんはそこにいるだけで2人に力を与えているんだ。

 ほら、無力じゃない」

 

「そういうものかな?」

 

「そういうもんさ。

 ほら、あいつらが来たぞ」

 

 言われて見ると、響と信人がこちらにやってきている。

 何をどう話したらいいのか迷っているのだろう、何やらシュンとした様子が叱られた犬みたいだと内心で未来は思う。

 

(そっか……響も信人も私と同じ、『不安』なんだ)

 

 未来は2人が遠くに行ってしまい自分が2人の助けになれないことを『不安』に思い、2人は大きな秘密に巻き込んでしまい未来が離れていかないか『不安』に思っている……それが分かるとスッと胸のつかえが取れたような気分になる。

 

「ありがとう、霞野くん」

 

「なんのなんの」

 

 未来は丈太郎に礼を言うと、そのまま響と信人に合流し続きの話をするために会議室へと歩く。

 丈太郎との話で確かに未来も納得できるところがあった。

 だが……胸の奥底にある想いもまた真実、未来は否定できないでいる。

 

(私は……やっぱりどんなところであろうと2人と一緒に歩みたい。

 私はあの生存者バッシングという『地獄』に2人を置き去りにした。今度こそ、そこが『地獄』の奥底だろうと2人と一緒に……)

 

 

 ドクンッ……

 

 

 その胸に秘めた想いは誰にも聞こえず、しかし、未来の奥底には確実に届いていることを今は誰も知らない……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 どことも知れない湖畔の屋敷、そこに少女の悲鳴が響く。

 少女……響を攫おうと襲い掛かった鎧の少女はまるで磔刑に処される救世主のように十字の拘束具に括り付けられていた。

 周囲には何かが焦げるような嫌な臭いがする。少女には今、その身体に高圧の電流が流されているのだ。

 そして、その電流のスイッチを操っているのは金の髪をした女。

 この拷問じみた行いは『ネフシュタンの鎧』を纏った代償だ。『ネフシュタンの鎧』は驚異的な防御力と再生能力を纏った者に与えるが、じょじょに宿主を浸食しいつか喰い殺すという呪われた鎧だ。その鎧の因子を電流を流すことで休眠状態にし体内から除去する作業なのである。

 電流が止まり大きく息をつく少女に、金の髪の女が話しかける。

 

「まったく……私はあの融合症例を攫って来いと言ったはずよ。

 それが何で手ぶらで帰ってくるのかしら?」

 

「フィーネ……」

 

 少女の呟きを無視するかのように再び電流が流され、少女の悲鳴が再開される。

 その激痛の中で少女は考えた。

 

(あたしは……相手を舐めてかかったりはしなかった。 『融合症例』には驕りも無く、無駄なく勝ったはずだ。

 計画通り、どう急いだってSHADOWが到着する前に『融合症例』のやつを攫えたはずだ。なのに、あたしは失敗した……。

 どこだ? あたしはどこに無駄な時間を使ってSHADOWの到着を許した?)

 

 すると、その原因はすぐに思い至る。

 

(あいつだ、あの『融合症例』の友達だって言う一般人だ。

 あいつの相手をしていた時間のせいで、SHADOWの到着を許しあたしは失敗した……)

 

 安全な場所に逃げるチャンスを捨て、友達のために生身で自分やノイズの前に立ったあの一般人の少女。

 その姿は、鎧の少女にも『友情』という感情を強く意識させるものだった。

 

(『友情』、か……あたしには縁の無い言葉だ)

 

 鎧の少女は、特殊な環境にいたせいで『友情』などという言葉とは無縁の生活を送っていた。

 そんな自分を拾い、行動を共にしている金の髪の女……フィーネは『痛みだけが人の心を繋いで絆と結ぶ、世界の真実』だと教えてくれ、そして鎧の少女はその言葉を信じてフィーネから与えられる痛みを、フィーネとの『絆』と信じて縋ってきた。

 だがそんな特殊な境遇の少女でもあの『何の力もない者が危険に身を晒しながらも友を助けるために命を賭ける』という光景には、『友情』という確かな『絆』を感じたのだ。

 

「まぁ、猪突猛進でまともに言うことも聞けない子だったあなたが、私の命令通りSHADOWが出て来たらそのまま退いたのは大きな成長よね」

 

「……なあ、フィーネ」

 

「……何かしら?」

 

「『痛みだけが人の心を繋いで絆と結ぶ』……そうなんだよな?

 『痛み』と一緒にある『絆』をあたしは……信じていいんだよな?」

 

「……」

 

 その少女の問いに答えはない。

 かわりのように、『これが答えだ』と言わんばかりにフィーネが再び電流のスイッチを入れる。

 

「あああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 再びの痛みに響く少女の悲鳴。それはしばらく止むことはなかった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 あの鎧の少女との戦いの後、俺と響、そして未来はすぐに二課へとやってきた。色々な秘密を知ることになってしまった未来への事情説明のためだ。

 色々秘密にしていたことが未来にバレて未来がどういう反応をするか俺も響も戦々恐々としていたのだが未来は特に変わらず、俺や響の心配をしてくれる。

 秘密のせいで俺たち幼馴染の間に亀裂が入ることだけは俺も響も絶対にいやだった。もしかしたら今回のことで距離が離れてしまうのではと危惧していたので、本当に助かった。ただ、俺のことは「ゆ゛る゛さ゛ん゛っっ!」らしく、随分高い焼肉を奢らされたが。

 ああ見えてかなり健啖な未来とどういうわけなのかちゃっかり一緒にやってきた響とが遠慮なく飲み食いしたせいで、最近やっと免許を取り新車で買ったバイクと合わせて今月は高校一年生とは思えない出費をすることになってしまった。まさに『オデノサイフハボドボドダ!』という状態なのだが、まぁ俺たち幼馴染の友情のためと思えば安いものである。こうして未来は秘密を知る『民間協力者』となることになった。

 それからしばらくはノイズも現れず世界は平穏だが、二課にとっては考えなければならないことはいくらでもあった。

 

 まずはあの鎧の少女。

 あの鎧は『ネフシュタンの鎧』といい、何とあの忘れもしない2年前のライブの時に盗まれたものだったらしい。あのライブが実は『ネフシュタンの鎧』を起動させるための実験だったという裏を初めて知り、俺も響も複雑な心境である。とにかく、その時に何者か……恐らくクライシス帝国の者に奪われたのだろう。そしてそのクライシス帝国の者に恩義のあるあの少女が『ネフシュタンの鎧』を纏い、何かしらの目的で響の身を狙ったのだ。

 そしてその鎧の少女が発した響を指す『融合症例』という言葉……これは聖遺物と人が融合出来るということが周りに知られてしまえば、様々な国で人体実験が起こりそうだということで堅く隠されていた言葉だ。

 とにかく『ネフシュタンの鎧』の存在と、『融合症例』という言葉を知っていること……このことから、二課の中に敵に通じる『内通者』がいるのではないかという結論に至り、二課内部には緊迫感が漂っていた。

 そんな中、緊急事態が起こる。二課を裏から支えてくれていた広木防衛相が暗殺されたのだ。

 

 これらの動きから敵の狙いは二課に保管されているサクリストL……完全聖遺物『レーヴァテイン』の強奪であると政府は結論付け、その移送が行われることになりその護衛には奏・翼・響の3人のシンフォギア装者と俺がつくことになったのだ。

 

「防衛大臣殺害犯を検挙する名目で、検問を配備。移送先である記憶の遺跡まで、一気に駆け抜ける。

 護衛車四台の内二台に奏と翼が一人ずつ、そして響くんは了子くんの車に乗ってもらう。

 『レーヴァテイン』を積んだ了子くんの車を中央に、前方に翼が乗った車を、後方に奏が乗った車を、そして護衛車の後を信人くんがバイクで追従する。

 俺はヘリで上空から警戒に当たる」

 

「名付けて、天下の往来独り占め作戦!」

 

 それから割り振られた配置通り、俺は最近納車されたばかりのバイクに乗り込む。

 どこぞの(SAKIMORI)が大量に持ち込んだバイク雑誌の中で気に入った、タフな旅に耐えるための条件を総合的に満たしたアドベンチャーツアラーと呼ばれるタイプのバイクだ。時間ができたらツーリングで遠出をしたいと思って選んだバイクである。

 やがて車列が動き出し、俺もそれを追う。

 車列は進み、都市部とを繋ぐ橋に差し掛かった所で俺は嫌な予感がした。

 途端、それが即現実となって車列前方のアスファルトにヒビが入り地面が割れて、橋の一部が崩落する。その穴を避けきれず、翼の乗った先頭車両が穴から落ちていった。

 

「翼ッ!」

 

 思わず俺は叫ぶが、落下する車両に亀裂が走ったかと思うと、シンフォギアを纏った翼が一緒に乗っていた搭乗員を抱えて跳ぶ。

 翼の無事にホッと息をついたところで俺も叫んだ。

 

「変身ッ! バトルホッパー!!」

 

 俺がSHADOWに変身すると同時に、呼び出したバトルホッパーがバイクに取り着いて変形する。そのままバトルホッパーをジャンプさせて穴を回避、俺は前の車両を追った。

 その俺の目の前で今度は奏の乗っていた車が宙を舞っていた。翼と同じようにシンフォギアを纏って搭乗員を連れて脱出する奏。

 

『ノイズだ! ノイズは下水道を使って攻撃を仕掛けてきている!!

 奏と翼はそのままノイズの迎撃に当たれ!!

 そして……』

 

 弦十郎司令(おやっさん)からの指示は輸送の続行、敵が『レーヴァテイン』を確保したいというのならそれを逆手に取り敢えて危険な薬品工場に逃げ込むことで、攻め手を封じるという作戦だ。弦十郎司令(おやっさん)らしい、思い切りのいい作戦である。

 だが、その予想とは裏腹に薬品工場にはノイズが、そしてあのネフシュタンの鎧の少女が待ち構えていた。

 

「融合症例!!」

 

 ノイズによって横転させられた了子の車の後部がネフシュタンの鎧から伸びるムチによって切り裂かれる。

 そのままムチが『レーヴァテイン』の入ったケースを掴み取りそれを一気に引き寄せようとするが、そこにバトルホッパーから飛び降りた俺が降り立った。

 

「シャドーチョップ!!」

 

 空中で繰り出したシャドーチョップによってネフシュタンの鎧からのムチが切り裂かれ、『レーヴァテイン』の入ったケースが大きく吹き飛ぶ。

 

「ちぃ!」

 

 ネフシュタンの鎧の少女が即座にケースの確保に向かい、俺もそちらに向かおうとするが……。

 

「私が行く! ノブくんは了子さんを守って!!」

 

 横転した車から這い出た響がシンフォギアを纏うと、そのまま俺の返事を待たずに一足飛びにノイズの群れを飛び越えて行った。後には大量のノイズが、横転した車を囲んでいる。こうなれば俺がここで守らなければ、了子さんはノイズの餌食になるだろう。

 響と同じく横転した車から這い出してきた了子さんを背に守り、俺はノイズへと構えをとったのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「とぁぁ!!」

 

 飛び出した響は、『レーヴァテイン』の入ったケースの確保に向かったネフシュタンの鎧の少女へと空中から突き刺すようなキックを放つ。

 響の纏うガングニールの腰辺りにあるブースターが点火、爆発的な推進力を持ってネフシュタンの鎧の少女に迫る。

 

「ちょっせいっ!」

 

 ネフシュタンの鎧の少女は身を翻して距離をとり、同時にムチを響へと振るう。

 空中で響のキックとネフシュタンの鎧のムチとがぶつかった。その衝撃をそのままに地面を削るように着地すると、響はネフシュタンの鎧の少女と相対した。

 

「こんなことやめて! 話をしようよ!!」

 

「またそれかよ、融合症例!

 でもな、今日のあたしは『レーヴァテイン』を持ってこいって言われてるんだ。

 お前の相手なんざ二の次だ!!」

 

 そして戦闘の態勢に入るネフシュタンの鎧の少女に、響も迎撃の態勢に入る。

 その時だ。

 

「こ、これは!!」

 

「なんだ!!」

 

 ケースが突如として吹き飛び、その中に収められていた『レーヴァテイン』が飛び出して空中で静止した。

 刃渡り120cmほどの両手剣(ツーハンデッドソード)だ。柄の辺りに小さな紅い宝玉のようなものがあるのが目を引く特徴である。

 その剣からは、禍々しさを感じさせる紅い光がにじみ出ていた。

 

「こいつが『レーヴァテイン』か!」

 

 『レーヴァテイン』を確保しようと跳び上がるネフシュタンの鎧の少女。

 

「渡すものかっ!!」

 

「ぐっ!!」

 

 だがコンクリートの地面を踏み抜く勢いで跳躍した響がそのままネフシュタンの鎧の少女に体当たり、その隙に響が『レーヴァテイン』の柄を掴む。

 その瞬間だった。

 

 

―――チガウ

 

 

(えっ? 何これ?)

 

 戸惑う響をよそに、頭の中に何かの声が響く。

 

 

―――チガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウ!!

 

 

―――ニタニオイ!デモチガウ!!

 

 

―――オマエジャナイ!!

 

 

 そして、響の意識は濁流のごとく押し寄せた黒い何かに塗りつぶされた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ゾクリッ!!

 

「ッッ!!?」

 

 まるでつららを背中に突きこまれるような悪寒が走った。

 同時に、周囲のノイズたちがすべて俺にわき目も振らず一斉に矢のように飛んでいく。

 その先には、紅い光の柱のようなものが立っていた。

 

「まさか……『レーヴァテイン』が起動した!?」

 

 了子さんの言葉に、俺は全速でその場所へと走った。

 そしてそこで待っていたのは……。

 

「アアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 『レーヴァテイン』と思われる剣を振り上げ、獣のような雄たけびを上げる響の姿だった。

 天高く禍々しい紅い光の刃が立ち上っている。響の目は紅く輝き、理性がないことは明白だった。

 

「響ッッ!!」

 

「アアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 俺の呼び掛けにも、答えるのは響から飛び出したとは到底思えない獣の咆哮だ。

 

「そんな力を……見せびらかすなぁぁぁ!!」

 

 ネフシュタンの鎧の少女が、周辺のノイズたちをまるで弾丸のように突撃させるが、ノイズたちは一体たりとも響に届くことなく紅い光によって崩れ去る。

 その攻撃に、暴走した響の視線がネフシュタンの鎧の少女に向いた。

  

「ひッ!」

 

 響から放たれる圧倒的かつ絶対的な殺気。それを本能的に感じただろうネフシュタンの鎧の少女からわずかに悲鳴が漏れた。

 ネフシュタンの鎧の少女に狙いを定めた響が、『レーヴァテイン』を振り下ろそうとするのを見て、俺はネフシュタンの鎧の少女の前に躍り出る。

 

「銀ピカ野郎、何のマネだ!?」

 

「響を人殺しに出来るか! さっさと逃げろ!!」

 

 俺のその言葉に、ネフシュタンの鎧の少女が弾かれたように飛び去って逃げていく。

 だがこのまま何もしなければ、『レーヴァテイン』の紅い光の刃はネフシュタンの鎧の少女へと届くだろう。

 

「エルボートリガー、フルパワー!!

 バイタル、フルチャージ!!」

 

 俺は叫びエルボートリガーを全力で起動、キングストーンエネルギーすべてを防御へと廻すと、腕をクロスしてガードを固める。

 そんな俺が感じていたのは、紛れもない『恐怖』だった。

 

(……怖い。 怖くてたまらない!?)

 

 確信を持って言える。あの一撃は俺を、『シャドームーンを明確に殺せる』一撃だ!?

 

「アアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「響ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 そして、響が『レーヴァテイン』を振り下ろした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……あれっ?」

 

 響が目を覚ます。頭がボーッとして、すべてが霞がかったようだ。

 シンフォギアもすでに纏っておらず、元のリディアン音楽院の制服姿である。

 

(何かが……頭の中が何かに塗りつぶされるようになって、全部吹き飛ばせと思って……)

 

「……響……大丈夫か?」

 

「ノブくんッ!!」

 

 すぐ近くから聞こえた幼馴染の声に、響は飛び起きる。

 SHADOWは響の目の前に立っていた。だが、どこか様子がおかしい。

 SHADOWの両腕は力なくダランと垂れ下がり、そして顔はうつむき加減で猫背気味の前傾姿勢で立っている。

 そして……。

 

「えっ……?」

 

 SHADOWに『線』が入っていた。その『線』はSHADOWの右肩から腰の中央……黒いベルトの中央の緑の輝きにかけて斜めに『線』が入っている。

 いや、これは『線』ではない。

 これは……『傷』だ!

 

「う、おおぉぉぉぉぉ……!?」

 

 響が『傷』を認識した瞬間、耐えられぬとばかりにSHADOWの『傷』から小さな爆発のように火花が散る。

 そして……腰の黒いベルトからひと際大きな爆発が起きるとSHADOWはガクリと片膝をついた。

 ベルト中央の緑の輝きが悲鳴を上げるように弱々しく点滅を繰り返す。

 

「ぐ、うぅ……」

 

「ノブくんッッ!?」

 

 そしてSHADOWの姿から信人の姿へと戻るとそのまま倒れ込みそうになり、慌てて響がそれを支える。その響の手にヌルリと、生温かい感触が触れた。

 

「えっ……?」

 

 呆然と響が自分の右手を見ると、そこはべったりと赤く濡れている。

 それが信人の血だと気づいた響は絶叫した。

 

「いや……いや……いや……!

 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 ノブくん! ノブくんっっ!!」

 

 信人の名を泣き叫びながらその身体を抱きしめる響。だが信人からの返事はない。

 

「誰か! 誰かぁ!!

 ノブくんを、ノブくんを助けて!!

 誰かぁぁぁ!!!」

 

 戦いの終わったその場所に響の慟哭がこだまする。

 

「……フフッ」

 

 その様子を了子だけが、どこか恍惚とした表情で見つめていた……。

 




今回のあらすじ

ジョー「怒ってるん?」

393「響は隠し事してること自体は教えてくれたし許す。信人はゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

SHADOW「やっぱ響は流星見に行かせて正解だったな。代わりに俺が死にそうだが」

キネクリ「あたしはバカには勝った。だが393に負けたのだ!」

ビッキー「こういう、『一見なんの効果もないと思っていたキャラの精一杯が、廻り廻って強敵を倒す一手になっていた』っていいよね」

奏「ちなみに作者的にそういうシーンで最高に好きなのは、からくりサーカスの『アルレッキーノ』と『パンタローネ様』らしいぞ」

防人「うむ、特に『パンタローネ様』の辺りは神。基本的にアニメ版にブチ切れていた作者も、暇乞いからのニッコリーネ様まではよくぞ映像化してくれたと大絶賛だ」

キネクリ「作者的には今回のあたしの負けは、空の境界の『荒耶宗蓮』の敗北をイメージしたらしいぞ」

SHADOW「オデノサイフハボドボドダ!
    やっとバイク買ってバトルホッパーをバイクから変形させられる!」

防人「ちなみに月影のバイクは『スズキ Vストローム250』のつもりらしい。これの新車にトップケース・サイドケースのオプション全部乗せ……明らかに高校一年生がする出費ではないな」

SHADOW「BLACK基本だから、スズキ車からは離れられなかったよ。これで旅にでも出たら乾巧っぽいな」

キネクリ「レーヴァテインをこっちにYOKOSE!」

ビッキー「私もーらい!」

レーヴァテイン「お前違う! 暴走しる!!」

ビッキー「アンギャァァァァ!!」

SHADOW「闇落ちのプロ、響さんの暴走コンボだぁぁ!
    このままだと響がキネクリ殺しちゃうし盾になるぞ。
    まぁ、シャドームーンボディだし大丈夫大丈夫……」

ビッキー「ズンバラリン!」

SHADOW「アイエェェェ!? ナンデ、死にかけの大ダメージナンデ!?
    あれヤベェ! マジでヤベェ!?」

奏「おいおい、シンフォギア名物の病院送りが誰も来ないと思ったら……」

防人「まさかその第一号が月影だとは……」

フィーネさん「やたーーーっ!
       なにこの超強い完全聖遺物。レーヴァテインくんサイッコーーー!
       これ手に入れたらもうSHADOWなんて楽勝、私の勝ち確じゃないの!
       あはははは! 勝ったな、風呂入ってくる!!」

キネクリ「……なんか嫌な予感しかしてこねぇんだけど」

防人「……奇遇だな、私もだ」

キネクリ「デュランダルを無かったことにしてまで投入した呪われた『魔剣』……。
     説明する中の色んな所で出てくる『紅い』ってワード……。
     で、『シャドームーンを明確に殺せる』ような力……。
     なぁ、レーヴァテインの正体ってもしかしてサ……」

防人「それ以上は言うな! フィーネがショック死するぞ!!
   夢を見続けることがファンタジーだ、勝利の希望の夢を見させてやれ」

奏「まぁ、真実知った瞬間が死ぬ瞬間だと思うけどな」

キネクリ「(`;ω;´)ゞ 」


393のほうは流星デートのおかげで精神的に安定しました。
覚醒したレーヴァテインで信人が大ダメージを。
凄いですねー、何なんでしょうねー、レーヴァテインって(棒

次回もよろしくお願いします。


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第15話

 その日は夕方あたりから冷たい雨が降り出していた。

 

「嫌な雨……」

 

 寮の自室でお茶を飲みながら何となくそれを眺めていた未来がポツリと呟く。その時、来客を告げるインターフォンが鳴った。

 

「こんな時間に誰?」

 

 訝しみながら未来はドアスコープを覗き込む。

 すると……。

 

「響!」

 

 ドアスコープ越しにいたのは響だった。

 即座に未来がドアを開けると、その姿に未来は目を見張る。響は雨に打たれずぶ濡れだったのだ。

 

「どうしたの響!」

 

 ただ事ではないことを感じ取った未来は問う。そんな未来に、響はうつむきながらポツリと言った。

 

「……未来、入っていいかな?」

 

「わかった。 とにかく入って、響」

 

 未来は響を自室に招き入れるとすぐにタオルを持ってきて響の身体を拭くが、響は為すがままで動こうとしなかった。

 

「一体何があったの、響?」

 

 本格的に様子がおかしい響に、未来が再度問う。

 響は答えない。しかし未来は辛抱強く響の言葉を待つ。

 そしてどれだけか時間がたったころ、ようやく響は絞り出すような小さな声で答えた。

 

「ノブくんが……大怪我を……」

 

「信人が!?」

 

 響から告げられたその衝撃的な言葉に、未来も顔を青くする。

 

「ノイズ!? それともこの間の鎧の女の子にやられたの!?」

 

 未来は信人が巷で噂の『仮面ライダーSHADOW』の正体だと知っている。だから信人の怪我の原因になりそうなものを咄嗟に上げた。

 しかしその時、うつむいていた響からボロボロと涙がこぼれる。そして続けて響から発せられたのは衝撃的な言葉だった。

 

「違う……違うの未来……!

 私が……私がノブくんに大怪我をさせたの!!」

 

「響が……信人を!?」

 

 そんなバカな、響が信人を傷つけるなんてそんなことあり得るはずがない……未来は咄嗟にそう思うが、響の様子は決して冗談や間違いのようなものではなかった。

 

「うっ……ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そして響は跪いて、未来に縋り付くようにして泣き始める。

 未来は何がどうなっているのかひどく混乱しながらも、震える響の肩を優しく抱きしめた……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 どことも知れない湖畔、その桟橋で少女は1人湖を眺めていた。

 彼女はあのネフシュタンの鎧の少女だ。今はネフシュタンの鎧ではなく、女の子らしいごく普通の服を身につけている。

 その彼女が考えるのは、この間の『融合症例』のことだ。

 

(『完全聖遺物』の起動には相応のフォニックゲインが必要だとフィーネは言っていた。

 あたしは『完全聖遺物』の『ソロモンの杖』を起動させるのに半年かかずらった。でもあいつはそれを目の前であっという間に成し遂げた。

 それだけじゃない、『レーヴァテイン』の力を無理矢理でもブッ放して見せた……)

 

 『レーヴァテイン』から放たれるあの圧倒的な力を持つ紅い光を思い出し、身震いする。あれは完全に『ネフシュタンの鎧』の力を超えていた。

 

「化け物め……!」

 

 思わずそんな言葉が口に出る。

 

「このあたしに捕獲を命じるほど、フィーネはあいつにご執心ってわけだ」

 

 目を瞑り、思い出すのは忘れることのできない幼い頃の思い出。

 紛争地帯で両親を目の前で殺され、奴隷として売られて過ごした日々。それを抜け、やっと縋り付く相手が見つかったというのに……。

 

「そして、またあたしは一人になるってわけだ……」

 

 あの『融合症例』がここにやってきたら、自分はフィーネにとってもういらなくなる……そんな不安が胸を締め付ける。

 そんな彼女の背後に、人影が現れた。金の髪の女……フィーネだ。

 フィーネを前に、彼女は生来の強気さで不安を振り払うように宣言した。

 

「わかってる、自分のやるべきことぐらいは。あいつを叩き潰してここに引きずってくる。

 あいつよりもあたしの方が優秀だってことを見せてやるよ!

 そして……あたし以外に力を持つ奴は全部この手でぶちのめしてやる!!

 あの『融合症例』も、他の装者も、それにあの『仮面ライダーSHADOW』もな!!」

 

 少女は手にしたノイズを操る杖のようなものをフィーネに投げよこすと、ネフシュタンの鎧を展開し飛び去った。

 そんな少女の後姿を見ながら、フィーネはポツリと呟く。

 

「……そろそろ潮時かしらね」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 目が覚めると、見たことのない真っ白な天井が広がっていた。

 自室とも学校とも二課とも違うその天井にここはどこだと顔を巡らすと、俺にいくつものコードが繋がっておりベッドの横の機械に繋がっている。

 

「ああ、これドラマでよく見る、死んだらピーって鳴るアレだ……」

 

 心電図モニターを見て、俺はここが病院なのだと理解する。子供のころからキングストーンのおかげで病院に縁がなかったため、これが病院初体験だ。

 そんなことを考えていると、俺が目が覚めたことを気付いたのか医者や看護師たちが慌ただしく部屋に入ってきて機器をチェックしたり様子を聞いてくる。俺はその問いに静かに答えながら時間が過ぎ、医者や看護師がいなくなった辺りで弦十郎司令(おやっさん)が病室にやってきた。

 

「無事か、信人くん!!」

 

「ああ、人生初の病院を楽しんでるよ」

 

「……そんな冗談が言えるなら大丈夫そうだな」

 

 俺の答えに苦笑すると、弦十郎司令(おやっさん)はベッド横の椅子に座る。

 

「君は何が起きて自分がここにいるか、覚えているか?」

 

「ああ、大丈夫。全部覚えてるよ」

 

 俺はあの『レーヴァテイン』輸送の時、『レーヴァテイン』を手にして伝承通り狂戦士(バーサーカー)状態となった響の一撃を受けて倒れたのだ。

 

「『レーヴァテイン』はあの後……」

 

「起動したことで輸送計画は中止。 回収されて二課本部に戻された」

 

「そうか……それで弦十郎司令(おやっさん)、俺はどのくらい寝てたんだ?」

 

「丸2日だ。 本来なら1週間は生死の境を彷徨うような大けがのはずなのに驚異的な回復力だと医者が驚いていたぞ」

 

(2日か……随分遅いな)

 

 俺は弦十郎司令(おやっさん)の言葉を聞きながら心の中で呟く。

 今まで長く戦ってきたが、回復までこんなにかかったことはない。

 いや、今も回復などしていない。胸から腰にかけた傷は未だに激痛を発し、包帯にも真新しい血が滲む。

 だがそれも仕方がないだろう。何故なら……今俺は力の源であるキングストーンそのものが損傷しているのだから。

 

 響の『レーヴァテイン』の一撃は、俺の力の源であるキングストーンを大きく傷つけていた。

 今キングストーンはその傷を治すべく、その力のほとんどすべてを自己修復にあてている。そのために俺の身体の傷を治すために力を振り分けられずに、未だ俺は病院のベッドに寝ているというわけだ。

 感覚的に自己を分析すると、SHADOWへの変身は可能だろうことがわかる。だが万全の状態の、4分の1も力が出るかどうか怪しいところだ。

 キングストーンの自己修復が完了するまではこの状態が続くだろう。

 

 『レーヴァテイン』は、思い出すだけで寒気のする力だった。

 あの時俺はエルボートリガーをフルパワーで起動させ、さらにバイタルフルチャージですべてのキングストーンエネルギーを防御に振り切った全力の防御を行った。だというのに『レーヴァテイン』の紅い光の刃はSHADOWの強固な装甲『シルバーガード』を突き破り俺に大ダメージを負わせ、キングストーンまで大きな傷を負わせたのだ。

 

(なるほど、クライシス帝国の連中が狙うわけだ。

 あれをもし制御して使えるようになったら、シンフォギアじゃ防御すらできない。俺も今度こそやられるだろう……)

 

 『レーヴァテイン』の脅威に改めてクライシス帝国に渡すわけにはいかないと決意を固める。同時に俺は『レーヴァテイン』の力に、何かを感じていた。

 

(だが『レーヴァテイン』のあの力……俺は何か大切なことを忘れているような気がするんだが……これは何だ?)

 

 しかし俺はそんな思考を端において、一番重要なことを聞いた。

 

「それで弦十郎司令(おやっさん)……響は?

 『レーヴァテイン』のせいであんな状態になったんだ。何か異常があったりはしないのか?」

 

「あの後、すぐにメディカルチェックを受けさせたが異常はなかった」

 

「そうか……よかった」

 

 俺はホッとして胸をなで下ろす。

 だがそんな俺に弦十郎司令(おやっさん)は苦い顔で首を振る。

 

「響くんは確かに異常ない。だがそれはあくまで身体面での話、心の方は別だ。

 あのあと信人くんと響くんを見つけた時、彼女は泣き叫び半狂乱の状態だった。

 駆け付けた奏と翼の声も届かず、結局は鎮静剤を打って無理矢理に眠らせるしかない状態だった……。

 君を……大切な幼馴染を危うく自分の手で殺しかけたんだ。 響くんの受けたショックはどれほどのものか……」

 

 すると弦十郎司令(おやっさん)は椅子を立つと俺に深々と頭を下げた。

 

「すべては君や装者のような、本来我々大人が守らなければならない若者を戦場に出さなくてはならないという俺たち大人の不甲斐なさが原因だ。本当にすまなかった」

 

「おいおい、弦十郎司令(おやっさん)……頭を上げてくれよ」

 

 俺は弦十郎司令(おやっさん)の姿に、少し困りながら頬を掻く。

 

「今回のことは、俺が好きでやったことなんだ。

 それで、ただ単純に自分の力を過信してしっぺ返しを喰らっただけだ」

 

 あの時、暴走した響は完全にあのネフシュタンの鎧の少女を殺そうとしていた。そして『レーヴァテイン』の攻撃はそのままなら、ネフシュタンの鎧の少女を殺してしまっていた。だから俺は響を人殺しにしないために盾となって『レーヴァテイン』を防いだのだ。

 あの、まるで大輪の向日葵のような響の笑顔、それが曇ることなど俺は決して許せない。もう一度同じ状況になったとしても、俺は迷いなく同じ行動をとるだろう。

 『レーヴァテイン』の攻撃を防ぎきれなかったのはひとえに俺の未熟さ故、響や弦十郎司令(おやっさん)、それにあのネフシュタンの鎧の少女すらも責める気など毛頭ない。

 だが……。

 

「響に、会いたいな……」

 

 ただ、無性に響の顔が見たかった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「「……」」

 

 響と未来は互いに一言も話さず、歩いていた。

 未来はチラリと響の顔を見るも、うつむき加減の響が今どんな表情なのか窺い知ることはできない。

 

 

 あの後……未来の部屋にやってきて泣き叫ぶ響が落ち着くまで待って、未来は詳しい話を聞いた。

 聞けば任務で『呪いの魔剣』のようなものを運んでいる最中あの鎧の少女が襲ってきて応戦、そこで盗れまいとその『呪いの魔剣』を掴んだ瞬間その呪いのようなものに意識を乗っ取られて暴れまわり、止めに入った信人をその剣で思いっきり斬りつけてしまったそうだ。

 話を聞いた未来としては、悪いのはその『呪いの魔剣』であって響に非はないと思うが、実際にそれを体験した響にはそんな言葉はなんの慰めにもならなかった。

 

「ノブくんがこのまま死んじゃったら私……私!」

 

 頭から離れない信人の血の感触と匂い……そしてそれを為したのが他ならぬ自分だという事実が響を責め苛む。

 

「大丈夫、あの信人がこんなに響を泣かせてそのままになんてするはずない。信人はきっと大丈夫だから」

 

「未来ぅ……」

 

 その日はそのまま響が泣き疲れて眠るまで傍にいた。

 翌日も響の様子は変わらず、部屋の隅で座り、俯くだけで何もしない。そしてたまに思い出したように啜り泣く。こんな状態の響を1人にしておけるわけもなく、響と未来はそのまま学校を休んだ。

 そんな状況が動いたのはついさっき、信人が目を覚ましたという連絡が入ったのである。

 そして2人は信人のいる病院へと向かっていたのだった。

 

 

 ついに響と未来は信人のいる病室の前までやってきた。

 響がそのドアに震える手を伸ばそうとするが、しばらくしてその手が力なく垂れ下がる。

 

「……やっぱり私、ノブくんに合わせる顔がない!」

 

 そう言って去ろうとする響の手を、未来が掴んだ。

 

「ダメ……絶対に行っちゃダメ。

 何となく感じるの。 ここで響が信人に会わないと、響は幸せになれないって」

 

 未来は胸の奥底から湧き上がってくるような『直感』が、ここで響を行かせてはならないと警鐘を鳴らしている。

 今この瞬間こそが響・未来・信人の幼馴染3人の関係の『分水嶺』、そう強く感じた未来は響を抱きしめた。

 

「大丈夫、きっと大丈夫だから。

 さぁ、一緒に信人に会おうよ」

 

「……うん」

 

 そして2人は意を決して、病室のドアを開けた。

 そこには……。

 

「よっ、2人とも」

 

 病室のベッドの上にはいつもと変わらない、2人のよく知る信人の姿があった。

 

「ノブ……くん……!」

 

 その姿を見た瞬間、響は泣きながら信人に抱きついた。

 

「よかった、よかったよぉ!

 ごめんなさい、ごめんなさいノブくん!」

 

「響……」

 

 そう言って涙を流す響の頭を、信人が優しくなでる。

 その光景に、未来は自分の選択が正しかったことを悟ったのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 俺の病室に、響と未来がやってきた。

 響には目を合わせた途端に抱きつかれて泣かれ、未来も涙を浮かべよかったと言ってくる。どうやら随分と心配をかけたらしい。

 だが、響の場合はそれだけじゃないだろう。

 俺と話をしているときも、響はどこかぎこちない感じがしている。響のあの大輪の向日葵のような輝く笑顔に影が差しているのが分かった。多分、俺を殺しかかったとか自己嫌悪に襲われているのだろう。

 あれは呪われた魔剣『レーヴァテイン』と俺が未熟だったことが原因だ。響を責める気は毛頭ない。

 そのことを少し落ち着いて話をしたいところなのだが……俺がそう思った時だった。

 

「さて……私はちょっとトイレに。 あと飲み物とか買ってくるね」 

 

「えっ、未来……!」

 

 突然部屋を出ようとする未来に響が戸惑いの声を上げるが、未来はそのまま部屋を出て行ってしまう。

 去り際、俺に向かって未来は目配せをしてきた。どうやら俺が響と2人で話したいというのを察したようだ。

 よくできた幼馴染に内心で感謝しながら、俺は響の方を見る。

 すると響はうつむき加減のまま、少しずつだが話し始めた。

 

「その……ノブくん、ごめんなさい……。

 私……あの時はもう少しで取り返しのつかないことをするところだった……」

 

「あれは『レーヴァテイン』のせいだし、怪我も自分の責任だ。

 響が気に病むことじゃないよ」

 

「ううん、それでもノブくんに大怪我させたのは紛れもなく私だよ。

 それでね……私、考えたんだけど……」

 

 そこで一度言葉を切り、響は意を決するように言った。

 

「シンフォギアの装者を……やめようかと思ってるの」

 

 そんな響の言葉が、病室に響いた……。

 




今回のあらすじ

ビッキー「未来、入ってもいいかな?」

????「ほむぅ!!」

ビッキー「いや、だからこれシンフォギアなんでほむらちゃんはまどマギに帰ってね。まぁ、このシーンのイメージは完全にまどマギの最終回直前のほむほむの家に行くまどかのシーンだけど」

393「どうしたの響?」

ビッキー「私、ノブくんに大怪我させちゃったぁぁ!!」

393「落ち着いて響(ああ、響の涙ペロペロッ!響の涙うめぇ!)」

奏「シリアスシーンでクソレズはNGな」

キネクリ「やばー、このままだとあたしお払い箱だわ。今度こそ勝たないと」

防人「後が無くなった状態でヒーローを襲撃した悪役が勝ったことなんて見たことないんだが……」

SHADOW「人生最初の入院生活はっじまるよー! つーか、戦闘力が4分の1になってるとか……バッタ怪人にも負けないか、それ?
    それにしてもレーヴァテインって何か変な感じがするんだよなぁ。どこかで知ってるような……」

OTONA「レーヴァテインの移送は中止。本部で預かることになったぞ」

SHADOW「ああ……無性に響の顔が見たい」

ビッキー「ちょっとショックが大きすぎて、私普通の女の子に戻ろうと思いまぁす!」

奏「……普通? ああ、『腐痛』ね。腐って痛いって意味で。
  なに、腐女子になるの?」

防人「用水路走って渡り、ビルの壁をキッククライムできるような、ゴリラゴリラみたいな能力の持ち主が『普通』とか激しくワロスwww」

ビッキー「よしそこになおれ先輩ども。呵責なく加減なく温情なく全力でぶちのめすから……キネクリちゃんが」

キネクリ「ファッ!?」


次回はシリアスから一転、カオス度当社比200%のキネクリ最終戦の開始です。

次回もよろしくお願いします。


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第16話

 病室にやって来た響から飛び出したのは、衝撃的な、そしてある意味では真っ当な話だった。俺はその言葉を飲み込むようにひとつ頷くと、響に尋ねる。

 

「……何でシンフォギアの装者をやめようと思ったのか、聞いていいか?」

 

響は俯きながら、ゆっくりと答えた。

 

「ノブくんを大怪我させたとき、私は『全部壊れちゃえ!』って思って剣を振り下ろしてた。

 ノブくんがいなかったら私、あのネフシュタンの鎧の女の子を殺してたかもしれない。

 『怖い』んだ……シンフォギアの力でまたノブくんを、それに他の誰かを傷つけちゃうんじゃないかって……」

 

「なるほどな……」

 

 俺は納得できる話に、大きく頷いた。

 至極もっともな話だ。そもそも、大きな力を持ったからと言って『はい戦います』と昨日まで普通の日常を過ごしていた人間が、いきなり戦場に出れるという今までの響がある意味では『異常』だったのだ。その異常性と危なっかしさは、以前翼に指摘された通りである。

 しかし……。

 

「でもさ……響は目の前でノイズが現れて、ノイズを倒す力を持っていながら人助けを止められるのか?」

 

「それ……は……」

 

 俺の言葉に響は口ごもる。

 響は『趣味が人助け』と言ってしまえるくらい善良な人間だ。仮にシンフォギア装者を辞めたとしても、その気質は変わらないだろう。そこからただ単純に『力』だけ無くしたとしたら、『ただの無鉄砲』が完成するだけだ。

 それに現実問題としてあのネフシュタンの鎧の少女の件もある。

 彼女、そしてその背後にあるであろうクライシス帝国は響の身柄を欲していた。そんな状態で響が戦う力を失うのは危険すぎる。

 

 ……いや、本音を言おう。俺は、『シンフォギアを纏って戦う響』が嫌いではないのだ。

 だから、俺は思ったままのことを口にする。

 

「……なぁ、響は初めてシンフォギアを纏った時のことは覚えてるか?」

 

 頷く響。たった一ヶ月少々前の話だ、もちろん忘れてなどいないだろう。

 

「その時の響は、誰かを傷つけようなんて思ってなかった。ただ純粋に『守りたい』と思って戦ったのを俺は知ってる」

 

 迫るノイズの恐怖に泣く幼い少女を抱きかかえ、その命を守り抜くために拳を握りしめていた響。

 その姿は、俺にも鮮明に焼き付いている。

 

「シンフォギアは、響の歌は誰かを傷つけるためのものじゃない。響の手は誰かを傷つけるためじゃない、誰かの手をとり救うためのものだって俺は知ってる。

 今までの戦いでお前の手は、もうたくさんの命をノイズから救ってきたんだ。誰かの生きる明日を、お前はその手で守り抜いてきたんだ。

 守ることと戦うこと、この相反する2つのことのジレンマは恐らくきっと終わることはないだろうけど……守るために伸ばした響の手は間違っていない。

 だから……力を怖がらないでくれ」

 

 言っていて、自分が卑怯なことを自覚する。

 響は平和に安全にいて欲しいと願いながら、『戦場でも響が隣にいてくれることの喜び』、そして『誰かを守るために頑なに戦う響の美しさ』を知っている俺はそれを求めてしまっている。この矛盾する想いを俺は自覚していた。

 すると、響は神妙な顔で頷く。

 

「……わかった。もう少し、しっかり考えてみる。

 私がやれること、やりたいことを……」

 

「急がなくてもいい、ゆっくり考えてみろよ」

 

「ねぇ、ノブくんはもう戦いたくないって思ったことはない?」

 

「ないな」

 

 響からの問いに、俺は即答する。

 夜中でウザイと思ったこともあったし、遊びに行こうとしたらノイズが出てムカついたこともいくらでもある。

 自由が制限されて眉をしかめることはいくらでもあった。だが不思議と『もうやめよう』と思ったことはなかった。

 そして……こうして生きる死ぬの大怪我をしても『もう戦いはいやだ』とは思えないのだ。

 

「強いね、ノブくんは……」

 

「俺が強いなんてとんでもない。俺は臆病なだけだ。

 俺も響と同じで『怖い』んだ。『怖い』から戦ってるんだ」

 

「『怖い』? ノブくんが?」

 

 響が驚きだという表情で言ってくる。

 

「例えば……地雷を除去できる知識と能力がある人がいるとする。そしてその人が家族と住む街にはそこらじゅうに地雷が埋まってるとする。

 その人はきっと、自分の知識と能力で地雷撤去を始めるだろう。

 そこには被害者を減らしたいという正義感もあるだろう。でも一番の理由はおそらく、自分が何もしなければ家族が地雷を踏んで怪我をするかもしれないっていう『恐怖心』や『危機感』だと思う。

 俺は、まさしくそれだ。

 ノイズって地雷が俺の大切なものを傷つけるかもしれなくて『怖い』から戦ってるんだ。

 俺は……『正義の味方』なんかじゃないんだよ」

 

 まさしくその通り、俺は俺の知る仮面ライダーのような誰でもすべてを守れる『正義の味方』ではない。

 人が誰かを救えるのはその手が届く距離くらいとはいうが、俺は少しばかり広げる手が大きいだけのただの人間でしかないのだ。

 

「そんな『正義の味方』じゃない俺でも、絶対に無くしたくないものはある。

 だからそれを守るために俺は『怖さ』を『力』に変えて戦ってるんだ」

 

「『怖さ』を……『力』に……」

 

「だから、俺はこれからもずっと戦うよ。

 守りたいものを守るために」

 

「……ノブくんの『守りたいもの』は幸せだね。

 ノブくんに絶対に守ってもらえるんだから」

 

 そう言ってちょっと羨ましそうに、寂しそうに笑う。その顔は、自分こそがその『守りたいもの』の筆頭だと気付いている様子はない。

 ……ああ、ダメだ。響のこの顔を見たら抑えが利かなくなった。

 

 響のどこか低い自己評価を改めさせたい。響がどれほど俺の中で大きな存在なのか知らしめたい……その想いが勝手に勢いよく口を動かす。

 ……後々冷静に考えてみると、俺も怪我の影響と響の笑顔に影が差している状態を見て少し不安になっていたのかもしれない。

 

「響、一度しか言わないからよく聞けよ。

 俺がこの世で一番に守りたいのは響だ。あの1年前、一緒に家出したときに誓った言葉に嘘偽りはない。

 だからその……なんだ」

 

 ここまで勢いに任せて言ってしまったというのに、肝心なここにきて突如廻らなくなる自分の口が恨めしい。

 響を見ると、少し顔を赤くしながら次の言葉を待っている。その表情に『期待』が混じっていると思ったのは俺の気のせいではないと思いたい。

 もう後には退けない……俺は自分の顔が赤くなっているのを自覚しながらも何とか次の言葉を絞り出す。

 

「その……響?」

 

「は、はい!!」

 

「俺は響のことが……好きだ!」

 

 ……言った。言ってしまった!

 賽は投げられた。さぁ、響の反応は……。

 

「な、何で泣くんだよ!?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(ノブくんが私を『好き』って言ってくれた。

 私と同じ気持ちでいてくれた……ああ、なんて、なんて素敵なんだろう!)

 

 長年の気持ちが通じたことの喜びに、気がつけば響の目からは涙が流れていた。

 

「な、何で泣くんだよ!?」

 

 しかし突然泣き出した響に信人はうろたえた声を上げる。

 

(いけない!

 早く、早く私も好きだって、大好きだって答えないと!)

 

 すぐにでも気持ちを返そうと思うのに、涙のせいで上手く言葉が出ない。

 

(なんで!? なんでなの!?

 早く、早く答えないといけないのに!!)

 

 しかし響がそう焦っても上手く口が動いてくれない。

 

(だったら何か行動で! 何でもいいから行動で私の気持ちをノブくんに伝えないと!!)

 

 そして完全にテンパった響は、その気持ちと持ち前の思い切りの良さが妙なテンションでミックスされたことにより動き出す。

 

「ひび……」

 

 信人の戸惑いの声より早く響が飛びつく。そして……。

 

「んっ……」

 

 2人の影が重なる。

 そして……この瞬間に2人は彼氏彼女になった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……」

 

 あのあと、未来が帰ってきてしばらく話した後に2人は帰っていった。

 残された俺はきっと今、鏡を見たら最高に気持ち悪い顔をしていることだろう。頬が緩みっぱなしで止まらない。

 勢いに任せてだが長年意識していた響に告白し、そして響からの返事は……。

 

 

 バンバンバンッ!!

 

 

 思い出し、気恥ずかしさに思わず枕を叩く。

 

「キングストーン、俺を治してくれ。

 はやく治してくれないと俺はこのまま響の姿を思い出して尊死するかもしれん」

 

 キングストーンから、「知らんがな」という呆れた声が聞こえたような気がした……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「~♪ ~~♪♪」

 

 病院からの帰り道、響の様子は行きとは真逆、喜色に溢れていた。

 行きはうつむき加減で表情は暗くまるで処刑場へと歩く罪人のような状態だったのに対し、今響の右頬を叩いたら笑顔で左頬を差し出すだろうぐらいの機嫌の良さである。

 その様子を横目で見て、どこか呆れるように未来はため息をついた。

 

「機嫌、一気に良くなったね響」

 

「ウェヒヒ、そうかな♪」

 

 そう言ってニヤけが抑えられないといった顔を向けてくる響。響の様子が元に戻ってくれたことは嬉しいが、その顔に未来は少しだけイラッとするものの「仕方ないか」とため息をつく。

 

「その顔はどうかと思うよ響。 まぁ、やっと信人と付き合えるようになって嬉しいのはわかるけどね」

 

「えぅっ! も、もしかして未来見てたの!?」

 

「あのね……私2人の幼馴染だよ。2人の気持ちくらい何となく知ってるよ。

 そんな響が行きは今にも死にそうな顔してたのに帰りはルンルン、しかも目には泣いた跡まであれば何となく分かるよ。

 あとはカマをかけてみただけ。それでその反応で確信に変わったよ」

 

 未来の鋭さに驚くものの、響は決定的なキスシーンは見られてないらしいことにホッと息をついた。

 そして、隠し立てするようなことでもなく、響は一番の親友に報告する。

 

「うん。 私、ノブくんと彼氏彼女になったよ」

 

「……おめでとう、響」

 

 照れながらそれでも綺麗な笑顔で言う響に、未来は心からのおめでとうを贈る。

 響に友情を超える友愛を持つ未来だが、信人は未来にとっても幼馴染である。信人も響も幸せなので文句はない。

 というよりも響を幸せにできるような男性は信人しかいないとも未来は常々思っていた。あの地獄のような生存者バッシングの中で、たった1人で響を守り続けた信人以上の男などいるわけがない……そう考えるほどの全幅の信頼を未来は信人に持っているのだ。

 もっとも……。

 

(まぁ、響にとっての男性側の一番の座は信人に譲ってあげるけど、響にとっての女性側の一番の座は私が座るし)

 

 そんな風に前向きに信人との響の共有化を目指している未来である。

 男性側から信人が響を捕まえ、女性側から未来が響を捕まえる。つまりハサミ撃ちの形になって響は2人から逃げられないわけである。

 これが3人の幼馴染の形、未来も納得する3人の関係だった。

 

 とにかく未来にとってもこの話は喜ばしい話、響のお祝い変わりにどこかこのまま遊びに行こうかと口を開きかけた時だった。

 

「? 響?」

 

 響が未来の前を手で塞いだ。そしてその響の視線の先には……。

 

「!? あなた……!!」

 

「これで三度目だな、融合症例……」

 

 道路脇の林の辺りからゆっくりと、あのネフシュタンの鎧の少女が現れた。

 彼女は声を上げた未来には目もくれず響へと声をかける。

 

「……私を攫いに来たの?」

 

「そうだよ。 今日こそはお前を叩き潰し、引きずってでも連れて行く!」

 

 響と彼女の視線が交錯する。

 そして、響が胸に浮かんだ聖詠を口ずさむ。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron……」

 

 光の中で響がガングニールを纏った。

 

「……いいよ、それなら誰もいないところで2人だけで『話』をしようよ」

 

「面白ぇ……ついて来な!」

 

 言うとネフシュタンの鎧の少女が、林の奥へ向かうように飛び上がる。

 

「響!」

 

「大丈夫だよ、未来……」

 

 未来の呼び掛けに、響は顔だけ振り向きながら答える。

 

「ノブくんは言ってくれた。シンフォギアは、私の歌は誰かを傷つけるためのものじゃない。私の手は誰かの手をとり救うためのものだって……。

 私は、私を攫うって言いながら本当は人の好さそうなあの子としっかり話したい。

 この想いを伝えたい。だから……思いっきりぶつかってみる!!」

 

 その響らしい答えに、信人を傷つけ落ち込んでいた響は、完全に立ち直ったと未来は悟る。

 ならば、そんな親友にすべきことを未来は知っていた。

 

「いってらっしゃい、響!!」

 

「うん!!」

 

 未来(親友)の声に押されるように、響はガングニールの脚部のジャッキを展開、大ジャンプでネフシュタンの鎧の少女を追う。

 林の奥まった場所でネフシュタンの鎧の少女は響を待っていた。ここならば誰にも邪魔されないだろうし暴れまわっても周りに被害はないだろう。

 

「今日はノイズは出さないの?」

 

「お前なんてあたしだけで十分、あんなの無しでやってやるさ!!」

 

 途端にネフシュタンの鎧から垂れた2本のムチがしなり、響に襲い掛かった。

 響はその動きを見切り、懐に入り込もうとする。

 

「バーカ、読めてんだよ!!」

 

 響の背後から急に方向転換したムチが襲い掛かってくる。それをギリギリのところでかわした響、だがその眼前にネフシュタンの鎧の少女の膝が迫っていた。

 

「ッ!?」

 

 咄嗟のガードが間に合い直撃は避けるものの、その衝撃で大きく吹き飛ばされる響は空中でクルリと体勢を整えると着地する。

 

「どんくさそうなくせに中々いい反応するじゃねぇか、融合症例!」

 

 そう挑発するものの、彼女の中では驚きが広がる。

 

(こいつ……前からわかっちゃいたが勘の良さも反射神経も並じゃねぇ。

 おまけにこいつ、勝負所を嗅ぎ分けるセンスがズバ抜けてる。

 一瞬でも気を抜いたらお陀仏だ……)

 

 彼女もフィーネが連れてきた軍人によってここ2年ほど軍事訓練を受け続けていた。彼女のセンスと努力もあり、今の彼女は特殊部隊員だろうがスパイだろうがやっていけるだけの実力を持っている。

 そんな彼女をして、響は戦いを知らない格闘技のできるだけの素人ではなく『強敵』だと認識していた。

 だがそんな戦闘用の思考に切り替えた彼女の耳に、響の声が響く。

 

「私は『融合症例』なんて名前じゃない!!」

 

 そして響は両手を広げると大きな声で言った。

 

「私は立花響、15歳! 誕生日は9月13日で血液型はO型!

 身長はこの間の測定では157cm、体重は……もう少し仲良くなったら教えてあげる!

 趣味は人助けで好きなものはごはん&ごはん!

 あと……

 

 

 彼氏いない歴は今日でゼロになりました!

 

 彼氏いない歴は今日でゼロになりました!!

 

 

「何をトチ狂ったことを!

 あと最後、何ででっけぇ声で2回も言った! 惚気てんのかテメェ!!」

 

「私的に今一番大事なことだから2回言ったの!!

 とにかく、私たちはノイズと違って言葉が通じるんだからちゃんと話し合いたい!!

 だって、言葉が通じていれば人間は……」 

 

「うるさいッッ!!」

 

 響の呼び掛けを、彼女はさらなる叫びによって打ち消す。

 

「分かり合えるものかよ、人間が! そんな風に出来ているものか!!

 気に入らねぇ! 気に入らねぇ!! 気に入らねぇッ!!!

 分かっちゃいねぇことをペラペラと口にするお前がァァァ!!」

 

 響の言葉が、彼女の逆鱗(さかさうろこ)に触れたらしい。激昂して叫び、彼女は肩で息をしながら怒りで血走った目で続けた。

 

「お前を引きずって来いと言われたがもうそんなことはどうでもいい……。

 お前をこの手で叩き潰す!!」

 

 宣言した彼女がネフシュタンの鎧のムチを振り上げると、そこにエネルギーが収束、エネルギー弾が形成された。

 

 

『NIRVANA GEDON』

 

 

「吹っ飛べぇぇ!!」

 

「くっ!」

 

 放たれたエネルギー弾をとっさに腕を突き出し防ぐ響。エネルギー弾の破壊力とガングニールの防御が拮抗する。

 

「持ってけダブルだ!!」

 

 そこに追撃の二発目のエネルギー弾が放たれた。それは響へのトドメになる一撃。

 だが……。

 

「そう来ると思った!!」

 

 叫ぶ響が、渾身の力でエネルギー弾を押し返した。

 それはそのまま、二発目のエネルギー弾とぶつかり辺りに爆発が巻き起こる。

 

「なぁ!?」

 

 その閃光と爆発によって舞い上がった土埃が、彼女の視界を一瞬塞いだ。

 だが、その一瞬があれば響には十分だった。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 地面を踏み抜く勢いで蹴った響が一気に迫る。

 

 

ズドンッ!!

 

 

 足元にクレーターが出来るほどの『震脚』。そして握りしめた拳を突き出す。

 

(最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に!!

 込める想いは一つ! この子と話をして、分かり合いたい!手を取りたい!!

 ならそれを全部乗せる! 二つはない、たった一つのこの想いを!!

 だからこれは! この一撃は!!)

 

 

「我流、无二打(にのうちいらず)!!!」

 

 

 響の想い全部乗せの一撃がネフシュタンの鎧の少女の真芯を捉えたのだった……。

 

 




今回のあらすじ

ビッキー「誰かを守りたいのに傷付けるのが怖いんでシンフォギア装者やめようと思って……」

SHADOW「諦めんなよ! 諦めんなよ、お前!!
    正直、身柄狙われてて戦えなくなるのはヤバいし、一生懸命な響とのダブルライダー状態が最高なんで説得するぞ。頑張れって」

ビッキー「Justiφ'sは名曲だね」

SHADOW「ヤバッ、響が超可愛すぎてもう辛抱たまらん!
    勢いで告白することにした! これぞザ・青春!
    さて、響の答えは……?」

ビッキー「ズキュウウウン!!」

奏「や、やった!?」

防人「さすが立花、私たちにはできないことを平然とやってのける!!」

キネクリ「……393の反応が怖いんだが?」

SHADOW「393ッ! 君の意見を聞こうッ!」

393「男側から信人が響を押さえる。女側から私が響を押さえる……つまりハサミ討ちの形になるな」

ビッキー「何が何だかわからない……彼氏とレズ友のよく分からないクロスボンバーで夜も眠れなくなりそう」

SHADOW「あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~。彼女が可愛すぎて尊死する」

月の石「ウワァァン、キモイヨー!」

ビッキー「ウェヒヒヒヒ!」

393「うん、こっちもキモイ」

キネクリ「今日こそ勝ちに来たぞ!」

ビッキー「私の彼氏いない歴は今日でゼロになりました!
     私の彼氏いない歴は今日でゼロになりました!!(ドヤァ)」

キネクリ「そのドヤ顔マジで殴りたくなるからやめろ!
     つーか今回、完全にこれが言いたかっただけだろ!!」

ビッキー「无二打(にのうちいらず)! 七孔噴血、巻き死ねぃ!!」

奏「もうまるで言い訳できない『必ず殺す技』なんだが……」

SHADOW「一応、『響の持てる技も想いもすべてを込める』って意味もあって『二つはない』ってことで『无二打』らしい。李書文先生がかっこよすぎで作者が大好きなせいもあるがネタの領域だな」

防人「これ、キネクリ死なない?」

キネクリ「大丈夫、ガッツで耐える」

色々カオス度マシマシなキネクリ最終戦の前半でした。
次回はさらに色んな意味で大暴走の後半戦です。

次回もよろしくお願いします。


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第17話

今回は真面目なビッキーVSキネクリ最終決戦……だと思っているのかぁ?
そのような真面目な文章を書くことはできぬぅ!!
残念ながら恐らく過去最大級のカオス回です。


 響の想いを乗せた拳が、ネフシュタンの鎧の少女の真芯を捉える。

 

「がはっ!?」

 

 そのあまりの威力と衝撃にそのまま吹き飛んだ彼女は、周囲にクレーターができる勢いで地面にめり込んでいた。

 『完全聖遺物』であるはずのネフシュタンの鎧がボロボロになり、自身もボロボロだ。頭はふらつき視界は歪み、臓腑を掻き回されるような吐き気がする。

 

「なんつぅ威力だ……。 まるで『絶唱(ぜっしょう)』じゃねぇか……」

 

 驚愕し呟いた言葉。だが、それに響が首を傾げながら答える。

 

「えっ、今の『絶招(ぜっしょう)』だけど……」

 

「何ぃ!!?」

 

 響の言っているのは中国拳法における自分に合わせて昇華した技のことで、いわゆる『奥義』という意味での『絶招(ぜっしょう)』だ。シンフォギアの決戦機能である『絶唱(ぜっしょう)』のことではない。

 そもそも、響はシンフォギアの決戦機能である『絶唱(ぜっしょう)』のことを知らなかった。

 まだシンフォギアを纏って1ヶ月たらずの響には危険で、奏や翼も大事にしている妹分に危険な自爆技を喜んで教えるわけがなかった。それに響は幸か不幸か、『誰かが絶唱(ぜっしょう)を使う現場に居合わせる』ということもなかったため、『絶唱(ぜっしょう)』を知る機会がなかったのである。

 しかし『絶唱(ぜっしょう)』と『絶招(ぜっしょう)』、読みが同じことと自身が受けた大ダメージがここで大きな勘違いを発生させる。

 

(こいつ……『絶唱(ぜっしょう)』を歌わずにぶっ放しやがったのか!?

 しかもバックファイアも出ている様子もない……一体どんな化け物なんだよ!!)

 

 彼女はシンフォギアについてはよく知っている。だからこそその決戦機能である『絶唱(ぜっしょう)』の特性はよく分かっていた。

 『絶唱(ぜっしょう)』はそのための特別な歌を必要とする。さらに攻撃とともに余剰エネルギーが使用者すら傷つける。以前あのライブ会場で『絶唱(ぜっしょう)』の使用を決断した天羽奏が死を覚悟したように、それだけのダメージを受けるのが普通なのだ。

 だが専用の歌すら歌わずバックファイアもなく『絶唱(ぜっしょう)』を操る響は完全な『規格外』として彼女の目には映ったのだ。そしてその『規格外』と比較され、劣った自分が捨てられるという未来(みらい)を幻視する。

 人のぬくもりもなく、誰からの助けもなく彷徨う……そんな過去の『恐怖』に押され彼女は立ち上がる。

 フラフラと今にも倒れそうなおぼつかない足元。今追撃を受けたら彼女には対処する術はないだろう。だが響はその間何もせず構えすら解いて待っていた。

 その姿を『見下されている』と認識した彼女は激昂し叫ぶ。

 

「お前、バカにしてんのか! このあたしを、雪音クリスを!!」

 

「そっか……クリスちゃんって言うんだ。

 ねぇクリスちゃん、もうこんなことやめようよ」

 

 だがそんな彼女……クリスの激昂を響は受け流すと手を差し伸べる。

 そんな響に一瞬唖然とするクリスだが、身近なところからのビキビキッという不吉な音と内臓をまさぐられる様な不快感に現実に引き戻された。

 

(マズい、あいつの『絶唱(ぜっしょう)』で受けたネフシュタンの鎧のダメージがでかすぎる。

 このままだと鎧に喰い破られる!?)

 

 大きく破損したネフシュタンの鎧が、修復のためにクリスの身体を蝕み始めたのだ。

 無傷で『絶唱(ぜっしょう)』を使いこなす『規格外』……それを倒すためクリスは自身の本当の『切り札(ジョーカー)』をきる決断する。

 

「吹っ飛べや、アーマーパージだ!!」

 

「ッ!!?」

 

 次の瞬間、ネフシュタンの鎧が粉々に砕け散り、まるで散弾のように響へと襲い掛かる。腕をクロスさせガードする響。

 そこに、『歌』が響いた。

 

 

「Killter Ichaival tron……」

 

 

「この『歌』……まさか!?」

 

「……見せてやる、イチイバルの力だ!」

 

 そして舞い上がった土埃が吹き飛ばされると、そこには先ほどまでとは違う姿で立つクリスがいた。ネフシュタンの鎧とは違う、赤い装甲を纏ったクリス……それは間違いなく響の纏うものと同じ『シンフォギア』だ。

 

「歌わせたな……教えてやる、あたしは歌が大ッ嫌いだ!

 あたしを歌わせた以上、ここからはテメェは全力で叩き潰すッッ!!」

 

「私だって簡単にやられるわけには!!」

 

 そして響とクリスの第二ラウンドが開始される。

 響の繰り出した正拳をクリスは空中に身を躍らせてかわすと、そのまま両手を響へと突き出す。すると左右の腕装甲が形状を変化させ、2丁のボウガンのような形になってクリスの手に収まった。

 ボウガンから連続して放たれる光の矢を響は身を捻りかわし、距離をとる。

 

「はぁぁ!!」

 

 そこへ追撃の光の矢が殺到するが、それを響は腕の装甲で弾いて叩き落とす。

 しかしその動きが止まった瞬間をクリスは見逃さない。

 3砲身2連装のガトリング砲、それが両手に1基ずつで2基。ボウガンが変形したそれが周囲の空間を切り裂くかのような重低音のヘビィサウンドをかき鳴らし、鋼鉄をも粉々にする鉛玉の暴風を発生させる。

 だがその暴風を前に響は一歩も退かずに構えを取ると、手を円の動きで動かす。ガンガンガンという音とともに、響の周辺にガトリング砲の弾が弾かれていき、響へのダメージはない。

 ボウガンの矢どころかガトリング砲の弾丸すら防ぎきるその見事な防御に、クリスも舌を巻いた。

 

「マ・ワ・シ・ウ・ケ……ちぃ、見事なもんだな!」

 

「矢でも鉄砲でも火炎放射器でもどんと来いだよ!」

 

「ああそうかい! だったらお言葉に甘えて持ってけや!!」

 

 クリスの腰の装甲が左右に展開したかと思うと、そこから大量の小型ミサイルが飛び出した。

 

「ちょっ!?

 矢でも鉄砲でも火炎放射器でもとは言ったけど、ミサイルまで来いとは言ってないよ!!」

 

「知るかよぉ!!」

 

 自身に追い縋る小型ミサイル群にたまらず響は回避にうつる。だがクリスが恐るべき精度でコントロールするミサイルたちは、まるで訓練された軍用犬のごとく響を様々な方向から追い立てる。クリスの見事なオールレンジ攻撃に、ついに響が一発のミサイルに当たる。

 

「くぅ!?」

 

 腕をクロスしてガードしたものの、その衝撃で空中へ投げ出される響。そこに再びミサイルが迫った。

 

(しまった、空中じゃかわせない!?)

 

 空中で2発目のミサイルが爆発し、叩きつけられるように地面に落下する響。そして響が体勢を崩したところに、残ったすべてのミサイルが殺到した。

 爆発が立て続けに起こり、土埃が舞って視界を遮る。

 

「はぁはぁはぁ……」

 

 息を整えながら、それでも油断なく目を凝らすクリス。すると、その視界の先に金属質な輝きが見えた。

 

「盾ッ?」

 

 

「彼氏だッ!!」

 

 

「テメェもかよ!!

  戦場(いくさば)で盛大に惚気てんじゃねぇよ、仮面ライダーSHADOW!!!」

 

 

 クリスの視界の先には、響の盾となり腕をクロスさせてミサイルを防ぎ切っただろう、仮面ライダーSHADOWの姿があったのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 あの後……2人が帰って病室で気持ち悪い顔を晒していた俺のところに、未来からの連絡が入った。その内容は響の前にあのネフシュタンの鎧の少女が現れ、一対一の勝負を始めたという内容だ。

 それを知った俺は、俺に繋がった機器をむしり取るように外すと窓からダイブ、空中でSHADOWへと変身するとそのままバトルホッパーで2人の戦う場所にやってきた。するとちょうど響にミサイルが殺到しているところだったので、慌てて防御を全開にして響を守ったのである。

 ……まぁ、ちょっと勢いに任せたらおかしなことを口走ってしまったわけだが、そこはご愛敬というやつだ。

 

「バカなのか!? 2人揃ってバカなのかよ!?

 このバカップルどもっ!!」

 

 しかし俺の勢いに任せた言葉がどうやらかなり癇に障ったようで、目の前で地団太を踏んでいる響と戦う赤いシンフォギアの少女。

 そんな彼女を尻目に、俺は響に声をかける。

 

「大丈夫か、響?」

 

「ノブくんこそ大丈夫なの!? まだ怪我が治ってないのに……」

 

「なに、響のためならこのくらい……」

 

「ノブくん……!」

 

「だ・か・ら!! いい加減にここが戦場(いくさば)だってことを思い出せよバカップルども!!」

 

 そんな俺たちの様子が気に入らなかったらしく、再び赤いシンフォギアの少女の怒鳴り声が響く。

 

「あはは。 ごめんね、クリスちゃん」

 

「クリス? あのネフシュタンの鎧を着てたやつか?」

 

「うん、あの子の名前。 雪音クリスって言うんだって」

 

 言われて俺は改めて赤いシンフォギアの少女……雪音クリスの方を見る。

 そのとき、力が抜けて俺は片膝をついた。

 

「ぐっ!?」

 

「ノブくん!?」

 

 やはり未だキングストーンが修復されていない状態での戦いは辛いものがある。俺はぶり返す激痛に呻き、そんな俺を響が慌てて支える。

 

「死に体でおねんねしてるところで、女にいいとこ見せようと無理すっからだ!

 この際2人まとめておねんねさせてやるよ!」

 

「ノブくんはやらせないよ!!」

 

 ガドリング砲を構えるクリスの前に割って入る響。だがそんなクリスに俺は不敵に笑いながら答える。

 

「2人まとめて? おいおい、数を数え間違えてるぞ」

 

 その時、クリス目掛けて何から空中から降ってくる。

 

「何っ!?」

 

 クリスが大きく跳びのくとそこに空から降ってきたものが突き刺さった。それは槍と剣だ。

 

「よぉ……会いたかったぜ、ネフシュタンの鎧のやつ!」

 

「2号聖遺物『イチイバル』まで所持しているとは……聞きたいことが増えたな!」

 

 そしてそこに現れたのはその槍と剣の持ち主である奏と翼だ。

 俺はここに来る前に二課にも連絡を入れていた。そして知らせを聞いた奏と翼の2人が駆けつけてくれたというわけだ。

 

 2人にとって忘れもしない2年前のライブで奪われた『ネフシュタンの鎧』を持っているクリスは看過できない相手だ。

 そしてノイズを操るあの杖のような代物……これは奏にとっては、家族の仇の一味かもしれない相手というわけである。そのため、2人はずっとクリスとの対峙を待ち続けていたのだ。

 

「まぁとりあえず話は……」

 

「ベッドでゆっくり聞かせてもらおう!!」

 

「ハッ! のぼせ上がんな人気者ども!!

 全員揃って返り討ちにしてやんよ!!」

 

 奏と翼が構え、それに応えるようにクリスも咆えてガドリング砲を構える。

 一触即発の空気、だがそれを遮るように響が前に出た。

 

「奏さんも翼さんも待ってください!

 クリスちゃんはきっと何か事情があります。ちゃんと想いをぶつけて、分かり合わないといけないんです!

 だからここは私に!」

 

「響……でもねぇ……」

 

「立花がそう言うなら刃を交える敵ではないと信じたい。だがな……」

 

 響の言葉に難色を示す奏と翼。

 

「頼む、響のやりたいようにやらせてやってくれ。

 響は戦うことに迷い、それでも今、前を向いたところなんだ。

 だからここは好きなように最後までやらせてやってくれ」

 

 そんな2人に俺は痛みで片膝をつきながら頭を下げる。

 響は病室に来た時に戦うことに迷っていた。そんな響が迷いを払って、『想いを伝えて手を取りたい』と戦っているのだ。俺としては響の決意をくんで欲しかったのだ。

 

「……後輩2人にそこまで言われて無視できるほどアタシは物分かりが悪いわけじゃないよ」

 

(ともがら)の願い、私はそれを踏みにじるような防人ではない」

 

「ありがとう、2人とも……」

 

 言いたいことはありそうだったが、結局2人は俺と響の意思を尊重し、構えていたアームドギアを下げる。

 その視線は対峙する響とクリスに向けられていた。

 

「で、最初の相手はお前かよ。

 いいのか、そいつらの力を借りなくて?」

 

「うん。 これは私たちが始めたことだから……最後までやろう!」

 

「面白ぇ! そいつらの前の景気づけですぐに沈めてやるよ!!」

 

 響が拳を構え、クリスがガドリング砲の砲口を向ける。

 高まっていく緊張感。だがそれはまったく別のところから破られた。

 

「なっ!?」

 

 突如として上空から、大量の飛行型のノイズが降り注いだ。

 奏、翼がアームドギアを振るいノイズを払いのける。俺もシャドーチョップで迫るノイズを振り払った。

 すわ、クリスの呼んだ伏兵かと思ったが、どうやら違う。

 クリスの構えていたガドリング砲、それが両方ともノイズによって破壊されていたからだ。

 

(仲間割れ? もしくは……口封じで消すつもりか!?)

 

 そのままノイズたちがクリスへと襲い掛かろうとするのを見て、俺は咄嗟に駆け寄ろうとするが、それより早く響が動いていた。

 

「たぁぁぁ!!」

 

 一足飛びでクリスに迫るノイズたちを打ち払う。だが、それでもノイズの数が多い。

 そして響はそのまま自分の身体を盾にしてクリスを守ったのだ。

 

「響っ!?」

 

「お、おい!?」

 

 ダメージで倒れる響をクリスが支え、俺はその傍に駆け寄った。奏と翼は周囲の警戒し、鋭い視線を四方に向ける。

 

「お前何やってんだ、あたしは敵だぞ!?」

 

「それでもクリスちゃんが危ないと思ったら身体が動いてて……」

 

「……余計なことしやがって」

 

 そんな響の言葉に、クリスは言いようのない表情をすると絞り出すように言った。

 そこに、新たな人物の声が響く。

 

「まったく……命じたこともできないなんて。あなたはどこまで私を失望させる気かしら?」

 

 その声の方に視線を向けると、そこには大量のノイズを従えた金の髪の女の姿があった。

 

「フィーネ!」

 

 その女……フィーネの登場にクリスは明らかにうろたえる。そしてダメージを受けた響を俺に押し付けるように渡すとクリスがフィーネに言った。

 

「こんなやつがいなくたって、戦争の火種くらいあたし1人で消してやる!

 そうすればあんたのいうように人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」

 

 その言葉を聞きながら俺が思うのは、響の考えは間違ってはいなかったということだ。

 『戦争の火種を消す』……これがクリスの真の願いなんだろう。クリスはそれを利用されたのだ。

 だがそのクリスの言葉を聞いたフィーネは憂鬱そうにため息をついて言った。

 

「もうあなたに用はないわ」

 

「な、なんだよそれ!?」

 

 フィーネの突然の用済み宣言に、クリスの目に涙が浮かんでいる。

 それほどあのフィーネという女を信用していたのだろう、痛ましい限りだ。

 しかし、同時に新たにクリスから飛び出したキーワードに俺に疑問が生まれる。

 

(『バラバラになった世界』? 一体何のことだ?)

 

 クライシス帝国のせいで『世界がバラバラ』などということはなかったはずなのだが……。

 そこで俺の脳裏にきらめくイナズマが走る!

 

(まさか……まさか、まさか!!?)

 

 そうだ、それなら『世界がバラバラ』というキーワードも説明がつく。

 

 

 

 

(これは……大ショッカーの仕業か!!!)

 

 

 

 

 そうだ、クライシス帝国は仮面ライダーBLACK RXだけに登場したわけではない。その後も登場する機会はあった。

 そのうち、クライシス帝国が『ショッカー』や『大ショッカー』に組み込まれた作品もあったはず。こいつらがその『大ショッカー所属のクライシス帝国』だとしたら?

 そして1つの世界がバラバラというのは……『ショッカーや大ショッカーが世界支配を完了し悪によって世界が1つになった状態が、仮面ライダーによって崩されたこと』と捉えるのならどうだ?

 

 悪による世界征服が完了した世界は確か映画作品でいくつかあったはずだ。だがそれはすべて仮面ライダーたちのおかげで崩され正しい歴史の流れに戻された。

 だが、歴史と世界は1つではない。世界は数多くの可能性を内包し、『リ・イマジネーションの世界』という形で分岐することを俺は仮面ライダーの知識でよく知っている。

 『ショッカーや大ショッカーが世界支配を完了し悪によって世界が1つになった状態が、仮面ライダーによって崩されたこと』によって多くの可能性を内包した『リ・イマジネーションの世界』に分かれたとしたら……この世界はそうして生まれた『仮面ライダーのいない世界』の一つなのかもしれない。

 

 そして『バラバラになった世界を元に戻す』というのは……『大ショッカー残党が再び複数の並行世界に干渉し、世界を一つに征服しようとしている』ということなのだとしたら!?

 

 俺は大ショッカーの幹部と思われる女……フィーネに向かって言った。

 

「フィーネ……(大ショッカー残党という)過去の亡霊が、今に蘇って何を企んでいる?」

 

「何っ!?

 この私が(先史超文明期の巫女という)過去の亡霊だと?

 貴様、一体どこでそれを知った!?」

 

 俺の言葉に、フィーネは明らかに驚愕の表情を見せる。やはり俺の考えは正しかったらしい。

 しかしそうなると、大ショッカーの残党だと指摘しただけでのこの驚き様と、怨敵である『仮面ライダー』を名乗る俺に襲い掛かるなりで今まで接触がなかったのが少し気になるのだが……?

 いや、それ以前に『大ショッカー』の大首領格である『シャドームーン』の姿を見て、俺に対してアクションがないのがおかしいか。

 

 とはいえシャドームーンの大首領への就任は、シャドームーンが本性を隠し続け土壇場で仮面ライダーディケイドを追い落としてのいわゆるクーデターのようなものだし、その直後に仮面ライダー軍団によって大ショッカーは壊滅させられたわけで、シャドームーンの存在は大ショッカー内ではそれほど認知されていなかったのかもしれない。特に『フィーネ』なんて名前は聞いたことがないから末端レベルだろう。それなら新大首領であるシャドームーンの姿を知らないのも頷ける。だから『仮面ライダーの名を騙る偽物』と思われ捨て置かれたのだろう。

 

「すべてはこの力(仮面ライダーの知識)が教えてくれているだけだ。

 だが一つ確かなことは……(大ショッカーの支配による世界統一という)貴様のたくらみは必ず阻止してみせるということだけだ!」

 

「ほぅ……(統一言語を取り戻し、人と人、神と人が相互理解出来ていた時代に戻す)私のたくらみを阻止すると?

 そう言うか、仮面ライダーSHADOW!!」

 

 そう言って手にした杖が光を放ち、さらに大量のノイズを呼び出す。

 

「……ふん、貴様への興味は尽きないが今は優先すべきことが違う」

 

 するとフィーネに向かって小さな青い光たちが集まって行った。

 その正体を『マイティアイ』を起動させた俺は悟る。

 

「それは……『ネフシュタンの鎧』か!」

 

 その粒子はクリスの破棄した『ネフシュタンの鎧』だ。

 

「計画はすでに最終段階に入った。 何者にも邪魔はさせない!

 当然仮面ライダーSHADOW、貴様にもだ!」

 

 そう言ってその大量のノイズを俺たちに向けてけしかけてくる。

 

「待てっ!!」

 

 迫るノイズをシャドーチョップで薙ぎ払うが、もうすでにそこにフィーネの姿はない。すでに逃げた後のようだ。

 すぐにでも後を追いたいところだが、これだけのノイズが住宅地にでも雪崩れ込んだら大変なことになる。今はノイズが先だと、俺も響も、奏も翼も構える。

 だがあまり状況はよく無い。俺は戦闘能力が4分の1ほどにまで下がっているし、響はクリスとの戦いとクリスを庇ったときのダメージでフラフラだ。実質万全なのは奏と翼だけという状態である。

 これでは殲滅に時間がかかり一般市民への被害も考えられる……そう思った瞬間、俺たちの後ろから攻撃的な歌声が響く。同時に無数のミサイルとガドリング砲の弾丸が大量のノイズを一気に吹き飛ばした。

 クリスの攻撃だ。その攻撃でもうもうと立ち上る土煙で視界が遮られた中で声が響く。

 

「融合症例……いや、立花響(バカ1号)

 これでさっきの貸し借りはナシだ!」

 

 どうやら先ほど響に庇われた借りを返したらしい。ほぼ同時にクリスの気配が遠ざかって行くのでどうやら撤退したようだ。

 残ったのは、先ほどよりはかなり数を減らしたノイズたち。

 

「このぐらいならアタシ達だけで十分だ!」

 

「2人はここで休んでいてくれ。

 防人の剣は、この程度の数に後れをとることはない!!」

 

 

『LAST∞METEOR』

 

『千ノ落涙』

 

 

 奏の槍の穂先が回転して生み出された竜巻がノイズたちを消し飛ばし、翼の生み出した大量の剣が空からノイズを串刺しにする。その猛攻を前に一気にノイズの数が減った。

 そして残ったノイズに果敢に飛びかかる奏と翼。

 10分ほどで最後のノイズも砕け散り、静寂が戻ってきた。

 

「一応、終わったね……」

 

「ああ……」

 

 ホッと息をついての俺に寄りかかっていた響の言葉に、俺は頷く。

 

「クリスちゃんは……次に会う時にはどうなっているのかな?」

 

「さぁな。 ただ……響の伸ばした手は絶対に無駄じゃない。それだけは断言する」

 

 あの戦闘でクリスの雰囲気は確かに変わっていた。

 『戦争の火種をなくす』という想いや、最後に響に借りを返すと手を貸してくれたりと、俺ももうクリスのことは『敵』とは思えないでいた。

 だからこそ、フィーネに『用済み』とされてしまった彼女の行方は心配である。そんな俺たちのところに奏と翼がやって来た。

 

「大丈夫かい?」

 

「おかげさんで俺も響も無事さ」

 

 奏と翼に差し出された手を握り、俺と響は立ち上がる。

 

「信人……今さっきのフィーネとか言うやつとの会話はなんだい?」

 

「……詳しいことは俺にも分からない、言ったようにこの力(仮面ライダーの知識)がそう教えてくれているだけだ。

 俺の力とあのフィーネという女には、何か関係があるんだろうさ」

 

 さすがに『前世』という話はできないので、この力のせいだとお茶を濁す。奏も少し不満そうながら納得したように頷いてくれた。

 

「『ネフシュタンの鎧』に『イチイバル』、そして大きな企て……より一層の調査をする必要があるわね」

 

 翼の言葉に全員が同意するように頷く。

 実際、これが『大ショッカー』の多数の並行世界を支配するため作戦なのだとしたら、俺が当初思っていた以上の大事件だ。本来ならば複数の仮面ライダーが力を合わせて戦うような案件である。

 だが、この世界に『仮面ライダー』を名乗るものは俺しかいない。その俺も今はその戦闘能力が激減している。

 だからといって他の並行世界から『仮面ライダー』が救援にくる……そう考えるのはいくらなんでも楽天的すぎた。

 俺が、いや俺と二課のみんなだけで戦って勝つしかないのだ。

 思わず隣にいた響を抱き寄せる。少し驚いた顔をした響だが、すぐに力を抜いて俺に身を預けてくれた。

 

(だがどんな状況だろうと負けてたまるか。 響や、俺の大切な者を守るために!!)

 

 響の体温をシルバーガードの装甲越しに感じながら、俺は決意を新たにした……。

 

 

 ……ちなみに、俺と響が付き合い始めたことは一発で奏にバレ、しばらくの間からかわれ続けることになったのだった。

 




今回のあらすじ

キネクリ「ブレイクゲージシステム採用してなかったら即死だった……。
     つーかマジで『絶唱』みたいなことをしよる」

ビッキー「え、今の『絶招』だよ?」

キネクリ「なにぃ!?(バックファイアなしで『絶唱』ブッパとかどんだけ化け物だよ。これ連れてったらあたしお払い箱確定だわ)」

ビッキー「? (このOTONA塾に1年以上鍛えられた私が『絶招』にまで至ってないだろうとかナメてんのかな?)」

奏「なんというバカなすれ違い……つーか、アタシも翼も『絶唱』やらなかったのはこんなバカなネタのためかい……」

防人「こうやってお互いに勝手に勘違いしてそのまま話進めるから、人類同士の争いって無くならないんだろうなぁ……」

キネクリ「イチイバル解放!
     お払い箱の恐怖が完全に現実化したんで、ちょっとマジでブッ潰すわ!!」

ビッキー「マ・ワ・シ・ウ・ケ……矢でも鉄砲でも火炎放射器でも持ってこいやァ!!」

奏「で、また妹分が人間やめちゃった件について。
  いやマジでどうしてこうなった?アタシのことを慕って後ろからチョコチョコついてくる可愛い妹分はどこ行った?」

防人「そんなの初めから奏の脳内にしかいないから。いたのは最初からゴリラゴリラの化身だけだったから。
   でも『烈海王+李書文先生+愚地独歩』とか一体どんな悪魔合体事故を起こしたら出来上がるのよ。悪魔将軍か何かなの、あの娘……つーかガドリング砲を廻し受けって……」

OTONA「飯食って映画見て寝るッ! これだけで案外簡単に出来るぞ」

奏・防人「「できねぇよ!!」」

キネクリ「お言葉に甘えてミサイル全弾発射!」

ビッキー「これには流石に功夫が足りない……」

奏「足りれば何とかなると申したか……(困惑)」

キネクリ「盾?」

SHADOW「彼氏だ!!」

防人「で、また私の見せ場が減ったぞ。
   剣だ× 彼氏だ○ とか……完全に今回の『これが言わせたかっただけだろ』だな」

SHADOW「響のためだったら怪我とかそんなの完全無視ダゾ♡」

ビッキー「ノブくん♡」

キネクリ「……このバカップルを思いっきりぶん殴ってやりたいんですけど構いませんね!!」

奏・防人「「海軍は陸軍の提案に賛成である!」」

奏「でもその前にアタシらも到着したんでお前ちょっと囲んで棒で叩くわ」

キネクリ「コワイ!」

ビッキー「あ、まだお話(高町式)の最中なんで私に譲って下さいね」

防人「アッハイ」

フィーネさん「ここで満を持して私参上よ!」

SHADOW「ぬぅ……何だかクライシス帝国じゃないっぽいぞ。これは一体……?」

フィーネさん「そうよ! やっと分かってくれたのね!
       そう、すべてはこのフィーネの……」

SHADOW「なるほど。 これは……大ショッカーの仕業か!!」


【悲報】フィーネさん大ショッカー認定される


フィーネさん「どうしてそうなるのよぉぉぉぉぉぉ!!」

奏「えーと、今までを纏めると……」


ゴルゴムの幹部『フィーネ』

クライシス帝国怪魔妖族大隊所属の『フィーネ』

大ショッカー残党の『フィーネ』←今ココ


奏「……なんだこの出世魚みたいなのは? たまげたなぁ」

防人「スーパーアポロガイスト並に色んな組織を渡り歩いてるな。
   すごいなーあこがれちゃうなー(棒)」

SHADOW「(大ショッカー残党という)過去の亡霊め……」

フィーネさん「私が(先史超文明期の巫女という)過去の亡霊だと知っている、だと……!?」

奏「で、奇跡的なことに致命的な勘違いがまた広がっているんだが……」

防人「……人類から争いが無くならない理由がよく分かった」

キネクリ「お前らを助けるんじゃなくて借りを返すだけだからな!」

ビッキー「ツンデレ頂きました。
     やっぱり人は分かり合える(主に拳で)!!」

奏「……ここは修羅の国か何かかい?」

SHADOW「ついに黒幕の大ショッカーが現れたか……。
    本当なら仮面ライダー集結して当たるような、並行世界をまたぐような大事件だったことにちょっと俺もびっくりだ」

フィーネさん「むしろ私の方がびっくりしてるんだけど? その何でも仮面ライダーの敵の仕業にする重篤なライダー脳患者はなんとかならないの?」

SHADOW「仮面ライダーがライダー脳以外で動けるとでも?
    393とか友達や家族いるし、響がいるからどんな敵でも負けないぜ、マイハニー♡」

ビッキー「やーん、ダーリンステキ♡」

奏・防人・キネクリ・フィーネさん
((((……このバカップルいつか助走つけて全力でブン殴ろう……))))

統一言語が無くてもみんなの心が一つになった瞬間であった……。



人はこうして勘違いを繰り返し、要らぬ争いを繰り返すんだろうなぁ……(達観)。

次回もよろしくお願いします。


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第18話

 どことも知れない湖畔の屋敷、この屋敷の主であるフィーネはどこかと電話で会話していた。

 そこに吹き飛ばすような勢いでドアが開け放たれる。そこにいたのはクリスだった。

 

「あたしが用済みってなんだよ!? もう要らないってことかよ!?

 あんたもあたしを物のように扱うのかよ!!」

 

 「違う」と言ってほしい、「何かの間違い」だと言ってほしい。そんな想いを込めたクリスの叫び。

 しかしフィーネはそんなクリスを鬱陶しそうに一瞥すると、電話を切って椅子から立ち上がる。

 

「……どうして誰も私の思い通りに動いてくれないのかしら」

 

 言うと同時に、フィーネの手にした杖から緑の光が発射される。それが床に着弾すると、それがノイズとなりクリスの前に現れた。

 それはどうしようもなく決定的なフィーネからの意思……クリスは自分が捨てられたのだと悟った。

 

「あなたのやり方じゃ、争いを無くすことなんてできやしないわ。

 せいぜい1つ潰して新たな火種を2つ3つばら撒くことぐらいかしら?」

 

「あんたが言ったんじゃないか! 痛みもギアも、あんたがあたしにくれたものだけが……!!」

 

「私が与えたシンフォギアを纏いながらも毛ほども役に立たないなんて……そろそろ幕を引きましょう」

 

 クリスの言葉を遮るように、フィーネへと青い光が集まって行く。そしてそれが徐々に形になっていった。

 

「!? 『ネフシュタンの鎧』!!」

 

 フィーネの纏ったものは、クリスの身につけていた完全聖遺物の『ネフシュタンの鎧』だ。

 しかしクリスが白銀だったのに対し、フィーネのそれは黄金に輝いている。

 

「『カ・ディンギル』は完成しているも同然……もうあなたは必要ないわ」

 

「『カ・ディンギル』……?」

 

 クリスが謎の言葉に疑問を浮かべる中、フィーネが杖を向けた。

 

「あなたは知り過ぎてしまったわね……」

 

「ッ!?」

 

 自分目掛けて飛んできたノイズをかわし、クリスは屋敷のバルコニーへと転がり出る。

 そして振り向いたクリスが見たのは、まるで邪魔な虫けらでも潰すかのような嗜虐的な笑みを浮かべるフィーネだ。

 

「ちくしょぉ! ちくしょぉぉぉ!!」

 

 今まで信じてきたフィーネに裏切られたクリスの、涙をはらんだ叫びが湖畔に木霊する……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 あの戦い……響とクリスの激突、そして事件の黒幕と思われる大ショッカーのフィーネとの遭遇のあと、二課は判明した情報を俺たちに教えてくれた。そして、その中の情報には『雪音クリス』のものもあった。

 世界的ヴァイオリニストの父、雪音雅律と声楽家の母ソネット・M・ユキネの間に生まれた音楽界のサラブレッドでありシンフォギア装者候補として注目されていたクリス。しかしNGO活動で訪れた南米の『バルベルデ共和国』で内戦に巻き込まれ両親を失ってゲリラに捕まり捕虜になり、悲惨な幼少期を過ごしたようだ。そんな彼女は2年前に発見され日本に帰国するものの、その帰国直後に行方不明となっているらしい。恐らくその時にあの大ショッカーのフィーネがその身柄を確保したのだろう。

 あの戦いの時クリスがフィーネに言っていた『戦争の火種を無くす』という思いは、そんな過去から生まれた純粋な想いだというのがわかる。そして恐らくそれを誘導し捻じ曲げて利用し、フィーネが自らの手駒としたのだ。

 

(彼女の純粋な想いを利用する……なるほど、大ショッカーのやりそうなことだ)

 

 俺はそう、大ショッカーのやり口の汚さに眉をしかめる。

 一緒に話を聞いていた響は悲しそうに目を伏せ、しばらくするとしっかりとした表情で顔を上げたのが印象的だった。恐らく、クリスのことを救おうと響は心に決めただろうことが声にしなくてもわかる。そして俺も響には賛成だ、その時には力になることを俺は心の中で誓う。

 しかし……まさかその誓いをこんなすぐに果たすことになるとは俺も思ってはいなかった。

 

 

 今日は朝から雨、俺は学校への道を響と一緒に歩いていた。

 ちなみに、あの戦いの後、俺はすぐに病院を退院した。医者や弦十郎司令(おやっさん)はまだ入院していろと言っていたが、黒幕であろう大ショッカーのフィーネが出てきた以上ゆっくり入院などしていられない。最後には脅しにも近いことを言って無理矢理に退院することにした。

 心から俺を心配してくれていたのは分かっているし、申し訳ないとは思う。しかし黒幕が顔を見せてきた以上、何か大きな作戦が発動間近だと推測できる状況だ。こればかりは譲るわけにはいかなかった。

 

「くっ……」

 

「大丈夫、ノブくん」

 

「大丈夫だ。心配ないよ」

 

 不意に襲ってくる痛みに顔をしかめると響が俺を心配そうに覗き込んでくる。そんな響に即座に心配させないように答えながら、俺は自分の状態を分析する。

 

(キングストーンの修復は進んではいるがまだまだ……今は万全の時の3割いくかどうかってところか……。

 おまけに戦闘能力だけじゃなく、ノイズに対する感知能力も下がってるな……)

 

 大ショッカーを相手にするには心細いどころの騒ぎではないが、無いものねだりはできない。今は少しでも回復が進むことを祈りながら、学校へと急ぐ。

 だが、そんな俺のところに電話がかかってきた。相手は未来、こんな朝から珍しいこともあるものだと思いながら俺はその電話に出る。

 

「もしもし」

 

『信人、響もそっちにいる?』

 

「ああ、響なら俺の隣にいるよ」

 

『そう……なら、ちょっと助けが欲しいの。 2人とも今すぐ来て!』

 

 今から学校という時間に来いという未来、普通ではない様子に俺はすぐに今日の学校はサボって未来のところに向かうことを決める。

 

「わかった、すぐ行く!」

 

『あっ、でも誰にも知らせずに目立たないようにね。 場所は……』

 

「わかった!」

 

 またまたおかしなことを言う未来に、これは何かあると確信しながら俺は電話を切った。

 

「未来が今すぐ来てくれってさ」

 

「ノブくん、未来が『学校サボって来てくれ』なんて言うなんてただ事じゃないよ!」

 

「分かってる。 急ぐぞ、響!」

 

「うん!」

 

 俺と響は未来に指定された場所へと急いだ。

 

「あっ、2人とも!」

 

 そこで未来が手を振って俺たちを招く。

 

「どうしたんだ、未来。 何があった?」

 

 未来の様子に変わりが無いことに、俺も響もホッと胸をなで下ろすと未来に詳しい話を聞こうと詰め寄る。

 

「そこ……」

 

「これは!?」

 

 未来の指さす先……裏路地には1人の少女が壁にもたれかかるようにして目を閉じていた。

 

「クリスちゃん!?」

 

 それは響の言うようにあの雪音クリスだ。

 

「今朝登校しようとしたら見つけたの。でもこの子、確かあの鎧の子だって分かったから。

 私1人じゃどうしようもないし、何か事情があるだろうし響が気にかけてたから、2人に相談しようと思って……」

 

 言われて俺と響はクリスに駆け寄ると、その様子を観察する。だがそれと同時に、俺の視界の隅に黒い塊が入ってくる。ノイズの残骸、砕けた炭素の塊だ。

 恐らく、あの大ショッカーのフィーネに用済みとされたクリスはここまでノイズたちと戦いながら逃げてきて、ここで体力の限界に達して倒れたのだろう。

 クリスの服は薄汚れてくたびれていた。今は未来の傘で雨を防いでいるがそれまでの間にかなり雨に打たれたのだろう、服はびしょびしょだ。その濡れた服がクリスの体温と体力を容赦なく奪う。

 額を触るとかなり熱い。熱が出ているようだ。

 

「……急いでここを離れよう」

 

 そう言って俺はクリスを背負う。

 

「でも、どこに行こう?」

 

「響や信人の家はどう?」

 

「いや、俺や響の家は二課の借りてる家だからな。 確実に二課にバレる。

 クリスを二課に引き渡すつもりならそれもいいかもしれないが……」

 

 何となくだが『二課への引き渡し』はやめた方がいいと『直感』が囁いている気がする。

 そんな俺に響も賛成だったらしく頷いた。

 

「まずはちゃんと話を聞いてみたい。 きっと色んな事情があるだろうから」

 

「そうなると差し当たって休める場所を探さないと……」

 

「それなら私にいい考えがあるよ」

 

 そんな未来に誘導され、俺たちは急いでその場を離れるのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 クリスはいつも嫌な夢を見る。その内容はまちまち、両親が死ぬ夢だったりあのバルベルデでの奴隷時代のことだったり様々だ。いい夢なんて見た覚えはない。

 そしてその夢に新しいバリエーションが加わった。フィーネに捨てられる夢だ。

 自分を拾い教養を与えてくれた。自分の想いを理解し、そしてそれを実現できるような強い力を与えてくれた。心から信じていたフィーネ。

 だがフィーネにとって自分は、何かの企みのための駒でしかなかった。

 捨てられたくなくて手を伸ばして、結局今までの大人たちと同じく絶望の闇に突き落とされる……そんな夢からクリスは目を覚ます。

 

「はっ!?」

 

 目を覚ましたクリスはすぐに周りを見渡す。和室に敷かれた布団にクリスは寝ていた。着ていたはずの服はなく、変わりに体操着が着せられている。

 そしてそんなクリスの傍らには……。

 

「クリスちゃん、よかったぁ!」

 

「目が覚めたのね。 服はびしょ濡れだったから着替えさせてもらったわ」

 

「お前ら……!?」

 

 それはクリスにとって予想外の人物、『融合症例』の立花響と、その親友で最初の響の誘拐を失敗させる原因になった『一般人』の未来だ。

 それに気がついた瞬間、クリスは飛び起きようとするが響に捕まれてしまいそれができない。

 

「ダメだよ、まだ寝てないと!」

 

「くっ!?」

 

 単純な力ではクリスは響に敵わない。おまけにギアのペンダントもなく、現状ではどうしようもないクリスは力を抜いてされるがまま布団に戻る。

 するとそこに洗濯籠を持った女性が現れる。

 

「2人ともどう? お友達の具合は?」

 

「ちょうど今、目が覚めたところだよ」

 

「ありがとう、おばちゃん。布団まで貸してもらっちゃって」

 

「気にしなくていいんだよ。 あ、お洋服洗濯しておいたから」

 

 その洗濯籠に入っていたのはクリスの着ていた服だった。

 その時、香ばしい食欲をそそる匂いがクリスの鼻孔をくすぐる。

 

「いい匂い」

 

「これって……」

 

「ああ、昼も近いだろ。 あの子が昼食を作ってるんだよ」

 

 そしてしばらくして現れたのは……。

 

「ようやく起きたか。大事ないみたいでよかった」

 

「月影信人……」

 

 割烹着姿でお盆を抱えた仮面ライダーSHADOWこと月影信人だった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 こちらを鋭い目で睨み付けるクリスに、俺は肩を竦める。

 

「おいおい、そう睨むなよ」

 

 そう言って手にしていたお盆をちゃぶ台へと置く。

 

「いい匂いね」

 

「ノブくん、このお好み焼き……」

 

「ああ、おばちゃんから材料貰って俺が作ったんだ。もう昼だからな。

 お前の分もある。言いたいことも聞きたいこともあるだろうがまずは食事だ。

 その分だとまともに食事もしてなくて、かなり体力が落ちてるだろ?」

 

「……」

 

 そう言って誘うが、クリスは警戒心を隠そうともせず睨み付けるばかりだ。

 俺はそんなクリスに肩を竦める。

 

「おばあちゃんが言っていた。『病は飯から。食べるという字は人が良くなると書く』ってな。

 喰わなきゃ体力が戻らないぞ」

 

「えっ、ノブくんのおばあちゃんそんなこと言ってたの?」

 

「いや、言わないぞ」

 

「じゃあ今の言葉はなんなのよ……」

 

 俺たち幼馴染3人のやり取りを聞いていたクリスが大きく息をつく。

 

「お前ら見てたら、毒でも入れられてるんじゃないかって警戒してるあたしがバカみたいだ。

 わかった食べる。このままじゃお前らの幼馴染漫才をいつまでも見せられそうだからな」

 

 そう言ってもぞもぞと布団から出てきて、俺たちと同じくちゃぶ台についたクリスだが、お好み焼きを見た途端に半眼になって俺を睨んだ。

 

「これ、ツッコミ待ちか?

 なんだよこのマヨネーズで『わがまおう』って……」

 

「これが『ウォズお好み焼き』の正しい食べ方だ。

 祝え、新たなお好み焼きの焼き上がりを」

 

「なんだよそれ……全っ然意味分かんねぇぞ」

 

「大丈夫だよクリスちゃん、私たちにも分からないから」

 

 そんなことを言いながらも俺たちは食事を始める。

 食事を始めてから分かったことだが、クリスの食事の食べ方は汚い。戦闘訓練はかなりしている風だが、どうもその辺りの訓練はなかったようだ。

 

「クリス、口にソースついてるよ」

 

「あ、ありがと……」

 

 未来がそう言ってクリスの口元を拭くと、クリスは照れながら礼を言った。なんとも微笑ましい光景だ。

 もしこうしてクリスと対面しているのが敵対していた俺と響だけだったら、多分クリスの反応はもっと攻撃的だっただろう。未来がいてくれてよかったと心底思う。

 そんなこんなで食事も終わったところで、クリスは口を開いた。

 

「ここはどこだ?」

 

「俺たち行き付けのお好み焼き屋『ふらわー』の2階だ。

 おばちゃんに頼み込んでお前の体調が戻るまで布団を貸してもらったんだよ」

 

 あの時未来が提案したのが、俺たちの行き付けのお好み焼き屋『ふらわー』だった。

 俺や響はもう1年以上の行き付けだし、おばちゃんはいい人だ。友達が倒れて休ませてやって欲しいと響や未来が頼んだら快く布団を貸してもらえたのである。

 ちなみにクリスの体調はそれなりに回復しているはずだ。何故なら俺がキングストーンの修復を一端後回しにして、キングストーンエネルギーを放射して体調を回復させたからである。

 

「で、この後はお前ら二課にご招待ってわけか」

 

「そのつもりなら最初っからここには来ずに、お前を抱えて二課の本部に駆けこんでるよ」

 

「じゃあ、どういうつもりなんだよ?」

 

「この前の続き……私はクリスちゃんと話がしたいんだ」

 

 そんな響に何か言い返そうとしたクリスだが、それを呑み込むようにすると口を開く。

 

「……わかった。 今日助けられて飯を喰わせてもらった借りを返すってことで少しだけ立花響(バカ1号)の話を聞いてやる」

 

 そう言われて響が喜色を浮かべる。

 

「クリスちゃん、私たちが争う理由なんてもうないんだよ。

 だから一緒に……」

 

「……確かに、もうあたしとお前らが争う理由なんてないのかもな。

 だからって、争わない理由もあるものか。

 ついこの間までやり合ってたんだぞ、そう簡単に人が分かり合えるものかよ。

 お前ら……どうせあたしの過去は知ってるんだろ?」

 

「「……」」

 

 言われて、クリスの大まかな経歴を聞かされていた俺と響は顔を見合わせた。

 

「地球の裏側……バルベルデ共和国でパパとママを殺されたあたしはずっと一人で生きてきた。

 大人はどいつもこいつもクズぞろいだ。

 痛いと言っても聞いてくれなかった、やめてと言っても聞いてくれなかった。

 あたしの話なんて、これっぽちも聞いてくれなかった!

 たった1人理解してくれると思ったフィーネも、あたしを道具のように扱って要らなくなったら捨てた!

 誰も……誰もまともに相手してくれなかった!

 そんな人が、あたしが誰かと分かり合えるものかよ!!」

 

 途中から涙を浮かべて、クリスが感情を吐露する。

 クリスは一体どれだけの人の闇を見て、それに傷つけられ翻弄されてきたのだろう?

 それは響がいて未来がいて両親がいて、満たされていた俺には到底想像もできない。 

 だが、そんなクリスの心の闇を垣間見ても響は止まらなかった。

 

「できるよ、誰とだって仲良くなれる」

 

 すると響と、そして微笑みを浮かべた未来が動いた。

 

「私の名前は立花響」

 

「私の名前は小日向未来」

 

 そう言って響はクリスの右手を、未来はクリスの左手をとった。

 

「私はクリスちゃんの友達になりたい!」

 

「私も、クリスがいいのならクリスの友達になりたい」

 

 そう言われたクリスは最初は何が起こったのか分からないという顔をしていたが、すぐにその手を振りほどこうとする。

 だが、響と未来はその手を離さない。

 

「やめろよ……あたしは、お前たちにひどいことをしたんだぞ! 敵だったんだぞ!

 あの流星のときだって……!」

 

「過去はそうかもしれないし変えられないけど……でも今と未来(みらい)は変えられるよ」

 

「だから変えようよ、分かり合えないって思ってる今を」

 

 響と未来に言われ、クリスは何も言えずにうつむく。

 その時だった。

 

 

ウーーーーーーー!

 

 

「この警報は!?」

 

「ノイズ!?」

 

 ノイズ警報が周辺に響き渡る。

 

(ちぃ! 探知能力も衰えているのは分かってたが、まさかここまでとは……)

 

 警報が出る段階までノイズを感知できなかったということは、予想以上に俺の能力が下がっているということだ。その事実に俺は歯噛みする。

 そんな中、クリスはいの一番に外へと飛び出していった。慌てて俺たちもそれを追う。

 目の前に広がっていたのは、我先にとシェルターへ急ぐ人々。誰もがノイズという恐怖に顔を青ざめさせ、中には泣き出す子供もいる。

 その光景を見て、クリスはギリッと歯を軋ませた。

 

「おい、あたしのイチイバルをよこせ!」

 

「でもクリスちゃんは病み上がりで……」

 

「そんなことを言っている場合かよ!

 目の前の光景……これは全部あたしのせいだ! あたしを消すためにフィーネが放った追手のノイズのせいだ!

 あたしがしたかったことはこんなことじゃない! こんなことじゃないのにぃ!!」

 

 響の心配する言葉に、涙を流しながら崩れ落ちるクリス。

 自分が無関係な誰かを巻き込んでしまったと激しい後悔をしているのだろう。

 だがクリスはそれでも涙を拭って立ち上がる。

 

「……懺悔も後悔も後回しだ。

 『今と未来(みらい)は変えられる』んだろ? なら……今は戦ってノイズどもをぶっ潰す!

 だから早くあたしのイチイバルをよこしやがれ!!」

 

「……わかった。 なら私たちもクリスちゃんと一緒に戦う!」

 

 そう言って、響はポケットからイチイバルのペンダントを取り出し、それを渡しながら言った。

 

「お前ら……」

 

「だってクリスちゃんは友達なんだもの。友達が泣いてるのに、見て見ぬふりなんてできない。

 一緒に……戦う!」

 

「まぁそう言うことだ。 ノイズが相手ならこっちも見て見ぬふりはできないからな」

 

 そう言う俺たちにクリスはうつむきながら顔を背けた。

 

「そういうことなら……惚気て遅れんじゃねぇぞ、バカップルども!!」

 

 

「Killter Ichaival tron……」

 

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron……」

 

 

「変身ッ!!」

 

 

 そして響とクリスがギアを纏い、俺もSHADOWへと変身を果たす。

 

「未来はおばちゃんと一緒にシェルターへ!」

 

「うん、いってらっしゃい!

 帰りを待ってるからね響、クリス、信人!」

 

 未来の声に押されるように俺たち3人は同時に跳躍した。

 

「シャドービーム!!」

 

 俺はまずは機動力のある飛行タイプのノイズを薙ぎ払おうとシャドービームを放つ。稲妻状に放出されたキングストーンエネルギーが枝分かれし、ノイズたちを砕いた。

 だがそれは俺の当初想定していた数の半分にも満たない。

 

「ちぃ! ここにもパワーダウンの影響が!」

 

 舌打ちして第二射を放とうとするが、それよりも先にクリスのガトリング砲が空中のノイズたちを次々に薙ぎ払う。

 

「空中の奴はこっちに任せろ!

 お前(バカ2号)立花響(バカ1号)は地上の敵を!!」

 

「その呼び方には色々言いたいことがあるがそれは後だ!

 いくぞ、響!」

 

「オッケー、ノブくん!!」

 

 俺と響は地上のノイズへと躍りかかる。

 

「シャドーパンチ!」

 

 シャドーパンチの直撃したノイズが周囲のノイズを巻き込んで吹き飛ぶ。だが、いかんせん万全の状態ほどの殲滅力はない。

 

「とりゃぁぁぁ!!」

 

 その間を縫うように響が空中からキックを繰り出し、残ったノイズを蹴散らす。

 万全には程遠いコンディション、どんどん集まってくるノイズ……だが不安は何もない。背中を任せられる仲間がいるというのは本当に良いことだと思う。

 ノイズ殲滅は苦も無く進み、最後はクリスのガトリング砲と小型ミサイルの一斉射撃が完全にノイズを消しつくした。

 

「……終わったな」

 

 ノイズの殲滅を確認すると、クリスは大きく跳躍した。

 

「クリスちゃん!?」

 

「……あたしはお前らや未来はまだしも、他の連中はまだ信用してない。

 だから今は二課の連中に捕まる気はないからな、ここで退散させてもらう」

 

 電柱の上に降り立ったクリスが、俺たちを見ながら言った。

 

「あたしは……フィーネを倒す!

 それがあたしがやらかしたことへの償いの第一歩だ。

 だから、もしそれが終わった時には……」

 

 何か言おうとして首を振り、クリスはそのまま背を向けていくつものビルの屋上を跳躍して去って行った。

 だが、クリスが言い淀んだ言葉を俺も響も理解していた。

 

「クリスちゃんを一人にはさせない。その戦いの時には……」

 

「ああ、俺たちもフィーネとの戦いに協力する!」

 

 償いのために1人でフィーネと戦おうと考えているだろうクリスを決して一人では行かせないと響は言い、俺も同意する。

 戦いを通じて分かり合えたクリスの去って行った方を、俺と響はいつまでも見つめていた……。

 




今回のあらすじ

フィーネさん「とりあえずキネクリは処すことにしたわ」

キネクリ「あのさぁ、そういう現場責任者に責任押し付けてしっかりと失敗原因を組織全体のこととして捉えられない『悪の秘密結社症候群』は普通にダメだと思うぞ、組織運営的に」

ビッキー「おかしい、クリスちゃんがINT高いこと言ってる……」

キネクリ「お前あとでボコるわ」

393「捨てキネクリ拾いました」

SHADOW「わかった、まずは俺のマイティアイで異常がないか検査を……ぎゃぁぁぁぁ!!」

ビッキー「……彼女の隣で堂々と何してるの? 潰すよ、色々と」

SHADOW「……それは目潰しの前に言ってほしかった。ちなみにこのまま二課に連れてくと死亡フラグだとキングストーンさんが教えてくれてるので『ふらわー』に行くぞ」

フィーネさん「キングストーンさんを便利な攻略本にするのはやめなさいよ。まぁ連れて来たら私が殺してるけど」

月の石「大丈夫。ファミ通の攻略本だよ」

SHADOW「……いつか致命的なことになりそうだ。とりあえず基本は餌付けだろう。ほら、おばあちゃんも言っていたわけだし」

393「なんでせっかく『ふらわー』来ておいて、おばちゃんじゃなくて信人がお好み焼き焼くのよ……?」

SHADOW「祝え、新たな仲間の誕生を!」

キネクリ「そんな飯にあたしさまが釣られ……クマァァァ!」

ビッキー・393「「キネクリまじチョロイン!」」

SHADOW「まぁ、基本的に原作でもキネクリは人の優しさに飢えた、他者への依存傾向の高いキャラだからな。響と未来の2人がかりで攻めれば、そりゃ一発で絆レベルMAXになるわ。
    二次創作じゃないが、普通にヤンデレとかありえそうで困る」

キネクリ「よし、あたしは改心したってことで死亡フラグとはおさらばだ!」

フィーネさん「いいわね……私は立場上、最後までやらんといかんし……」

キネクリ「というわけでフィーネとの決着をつける。あたしさまはクールに去るぜ」

SHADOW「まぁ、そこは俺たちも介入する気満々だがな」


捨てクリスの保護イベントでした。
次回もよろしくお願いします。


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第19話

「来るぞ、響!」

 

「うん!」

 

 眼前に迫るノイズたちに向かって俺と響は構えをとった。

 奏と翼はいない。というか、俺たちが出動を断った。

 何故なら……。

 

「今日は奏さんと翼さんの、ツヴァイウイングの大事なコンサートの日なんだ!

 その邪魔をさせるものかぁ!!」

 

 響が叫びながらノイズに拳を叩き込む。

 そう、今日は大切なツヴァイウイングのコンサートの日だ。なんでもツヴァイウイングは今後、海外に進出し世界を舞台に歌うというのだ。今日はそれを発表する大切な晴れの日、それを汚すようなノイズを俺も響も許しはしない。

 だがフィーネもこちらの事情を把握しているのかノイズの編成がいやらしい。

 まるでパリの凱旋門のような形状で砲台を突き出した城塞型大型ノイズ2体を中心に、いつぞやクリスが響を捕らえようとしたときに使ったトリモチノイズ、機動力の高い飛行型ノイズが多量にいてこちらをかく乱する。それらを始末しようと意識を向けると、近接型の大量の人型ノイズが迫ってくるといった状態だ。

 フィーネは中々に集団戦闘というのを心得ていると見える。まぁ、大ショッカーの幹部なら戦闘員の指揮はお手の者だろうし、それがノイズに変わっただけか。

 

「ちぃ! 中々数が減らないな!」

 

 シャドーチョップでノイズを薙ぎ払いながら俺はぼやく。

 俺もシャドービームを撃ったりはしているが、威力が下がっているため決定打にはなりえない。かといってバイタルチャージからのシャドーキックなどの決め技で薙ぎ払うとしても、こちらも万全な状態ほどの殲滅力も持久力もないため、大型用に温存しておきたいところだ。

 

「でもやらないと!」

 

「それは分かってるが……って響っ!!」

 

「っ!?」

 

 響目掛けて飛んできたトリモチを、俺はシャドービームで近くのノイズを捕まえると響の方に投げつけて響の盾にする。トリモチは防げたものの、その間に飛行型ノイズがドリルのような突撃形態になって響へと迫る。

 シャドービームは今しがた放って『溜め』になってしまっていて連射できない。

 だが、響を狙う飛行型ノイズがガトリング砲の弾丸で粉々に砕け散った。

 この攻撃は……。

 

「クリスちゃん!」

 

 舞い降りたのはシンフォギアを纏ったクリスだ。

 

「よそ見してんなバカップル!

 雑魚どもはあたしが薙ぎ払ってやるから大物を狙いやがれ!!」

 

 クリスが咆え、腰アーマーが左右に展開する。

 

 

『MEGA DETH PARTY』

 

 

 ガトリング砲が重低音を奏でる中、小型ミサイルが一斉発射された。小型ミサイルはもっとも効果的に敵を薙ぎ払う位置に着弾、ガトリング砲の弾丸が押し潰すように空中のノイズを消し去る。

 その様を見て顔を見合わせた俺と響が頷く。

 

「バイタルチャージ!」

 

「この一撃に、すべてをのせて!」

 

 俺は空中に飛び上がり、響が中国拳法の高速移動『活歩』で瞬時に間合いを詰める。

 

 

「シャドーキックッッ!!」

 

「我流、无二打(にのうちいらず)!!!」

 

 

 俺と響の決め技が同時に2体の大型ノイズに叩き込まれた。シャドーキックによって発生した余剰エネルギーが溢れ、響の拳圧による衝撃が周囲を穿つ。

 その一撃が決め手となり、ノイズはすべて消え去った。

 

「やったね、ノブくん!」

 

「ああ!」

 

 俺に響が抱きついてきて喜ぶ。そんな中視線を巡らせると、そこにはすでにクリスの姿はなかった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……あたし、雪音クリスはあたしを消そうとしてるフィーネからはもちろん、二課からも身を隠している最中、つまり『潜伏中』ってわけだ」

 

 クリスの独白は続く。

 

「当然、そんなあたしの隠れ家ってのは重要で、誰にも知られちゃならない。

 だってのによ……」

 

「あはは、やだー響ったら!」

 

「あはは、だよねぇ!」

 

「なんでそんな潜伏中のあたしの隠れ家を、お前らはダベり場に使ってんだよ!!」

 

 ピクピクと頬を引きつらせたクリスは、もはや耐えられぬと吠えた。

 ここはクリスが独白したようにクリスの隠れ家、郊外にある無人のマンションの一室だ。

 ノイズの被害に晒されるこの世界においては、家族全員がノイズの被害にあったことで空き家になってしまった家やノイズ被害地のすぐ近くということで人がいなくなってしまったマンションなどが数多く存在しており、ここもそんな住民がいなくなり放置されているマンションの一つである。

 そんなクリスの秘密の隠れ家は現在、響と未来と信人の3人によって放課後のダベリ場へと変貌していた。

 

「なんだ、ただ友達の家に遊びに来ただけなのにそんなにカッカしてどうしたクリス? 菓子が足りないのか?」

 

「あ、そうなんだ。 はい、クリスちゃん新作ポテチの辛味噌味だよ」

 

「ほら、クリスは銃使いなんだしこれ食べて『この距離ならバリアは張れないな!』とゼロ距離射撃をだな……」

 

「いやまったく全然意味が分からねぇ。その微妙な味のポテチとそのセリフに何の因果関係があるんだよ。

 ……って違ぇよ! そうじゃねぇ!!」

 

 信人と響の様子が気に入らなかったのか地団駄を踏むクリス。

 

「ここは喫茶店でもなけりゃ○ックでもねぇ! ダベリたいんなら他行けよ!

 つーか、それ以前にどうやってあたしの潜伏場所探したんだよ!!」

 

「あっ、それなら俺のマイティアイとセンシティブイヤーとシャドーセンサーとキングストーンの導きで探し出した」

 

「よく分かんねぇけど、軽々しく全開でスーパーパワーを使うんじゃねぇよ月影信人(バカ2号)

 ……とにかく、ダベるんだったらどっかの店でやってくれ。下手に騒いで潜伏場所(ここ)がフィーネや二課にばれたら目も当てられない」

 

「だってお店でこんなに騒いだら迷惑になっちゃうじゃない。 それにお金かかるし……」

 

「それにこういうのなんか子供のころの『秘密基地』みたいでわくわくするしな!」

 

「そうだよね、いいよね『秘密基地』!」

 

「お前ら……いい加減にしねぇとマジでぶん殴るぞバカップルども……!」

 

 信人と響に本気で額に青筋をたて始めるクリス。それを未来が諫める。

 

「まぁまぁクリス、これでも食べて落ち着いて」

 

「あんぱん……まぁ、貰うけど……。

 こいつらふざけ過ぎだ、未来も何か言えよ」

 

 モグモグと未来に餌付けされながらクリスが言うと、未来は少し呆れながら信人に言った。

 

「信人もいい加減にふざけてないで正直に理由を話したら?」

 

「まぁ、『遊びに来た』って言うのも本当のところだ。

 お前、毎回ノイズ倒したらいつの間にかドロンするだろ? だから響や未来が心配してたんだよ」

 

「……そうかよ。

 でも、その口ぶりじゃそれだけじゃないんだろ?」

 

 心配されていたのが嬉しいのか照れくさいのかクリスは少しそっぽを向くが、すぐに信人に顔を向ける。

 

「もう一つの用事はお前の『監視』だよ」

 

「……何だ、ついにあたしを二課に売る気になったのか?」

 

「そうじゃない、お前……体力が回復したら1人でフィーネのところに突撃かけるつもりだろ?」

 

「……」

 

 信人の言葉に無言になるクリス。それが真実を雄弁に語っていた。

 クリスが自分のしていたことに罪の意識を持っているのは知っている。自分を消すために放たれたノイズたちによって罪のない人々の日常が脅かされる様を見て、それを止めようとがむしゃらに戦っていた。響や信人が一番心配したのはそんなクリスがすべて1人で背負い込んで、単身でフィーネのところに突っ込んでいくことだ。

 

「今回の一連の事件の黒幕『フィーネ』……どんな隠し玉を持ってるか分からない相手だ。

 それを相手に1人は無謀すぎる。

 1人より3人の方ができることが多いのはお前も分かってるだろ?」

 

「でも、これはあたしのせいだ。

 誰かに迷惑をかける気は……」

 

「違うよクリスちゃん。 迷惑なんかじゃない」

 

 そんなクリスの手を未来と響が取る。

 

「私には何の力もないし無事を祈ることしか出来ないけれど……クリスの出来るだけ力になりたいの」

 

「友達だもの。友達が困ってるのに手を差し伸べられないなんて私は嫌だ。

 それに……ノイズを使って何かを企んでるなら、それは絶対に止めなきゃならない。それをクリスちゃんだけに押し付けるなんて間違ってる」

 

 言われてクリスは嬉しかったのか少し目を潤ませ、それに気付いたのか顔を赤くしてそっぽを向く。

 

「……そこまで言ったんだ、今さらなかったことになんかならねぇぞ」

 

「うん!」

 

「まぁ、俺らは最初から覚悟の上だ」

 

「私は帰りを待ってることしか出来ないけどね」

 

「……そういうことなら景気づけだ。 今日は付き合えよ、おまえら!」

 

 そう言って菓子に手を伸ばすクリスに笑顔の3人。

 そして……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……あそこか?」

 

「ああ、あれがフィーネの隠れ家だ」

 

 俺と響、そしてクリスの3人が林の木々に身を隠しながら目の前の邸宅を眺める。俺と響は、クリスの案内でフィーネの隠れ家へとやってきていた。

 

「物凄い豪邸だね。 まるでテレビでやってるお金持ちの家みたい」

 

「実際はそんな平和なもんじゃない。 中はあたしでも訳わかんねぇ研究施設や実験施設やらが満載だ。

 金ってのは悪いことをすればするほど集まるんだろうよ」

 

 響の言葉に肩を竦めるクリスが言い捨てる中、俺は黙ってSHADOWへと変身する。いきなりの変身に面食らう2人を尻目に、俺はマイティアイで周囲を分析した。

 すると……。

 

「おい、クリス。 何だか様子がおかしいぞ」

 

「どういうこった、月影信人(バカ2号)?」

 

「いや、屋敷の周辺には侵入者向けだと思うトラップが幾重にもあるんだが、それが全部無力化されてる」

 

「何っ?」

 

 ここは大ショッカーの一員であるフィーネの基地だ。だとすれば罠の1つや2つは普通にあるだろうと思いマイティアイで探っていたのだが、罠はあるもののすでに無力化された後という結果がでているのである。

 

「……なぁ、二課以外にフィーネと敵対しているような相手はいるのか?」

 

「あたしが知る限りいないはずだけど……」

 

 クリスは俺の質問に自信なさそうに答える。フィーネの計画について何も知らず、クリスも自分が客観的に『手駒』としてしか見られていなかったことを悟りそんな相手に重要な情報を渡すはずがないと理解しているのでクリス自身、自分の持つ情報に信憑性がないことが分かっているからだ。

 俺はそんな様子のクリスから視線を外し、少し考える。

 

(大ショッカーの敵と言えば、言わずと知れた『仮面ライダー』だが……ものによっては同種の『悪の組織』と抗争してたりもするからな。

 ショッカーとノバショッカーみたいなことも考えられるんだが……)

 

 しかしそう考えればおかしな点に気付く。

 屋敷があまりに静かだ。これはまだ戦闘が終わったというのなら説明がつくが、屋敷や周辺があまりに『綺麗過ぎる』。派手な戦闘の痕跡が見当たらないのだ。

 俺は首を捻りながらも、考えても仕方ないと気持ちを切り替えた。

 

「とにかく、何かおかしい。

 ここから先は生身は危険だ、2人ともシンフォギアを纏って突入しよう」

 

 俺の言葉に響もクリスも頷くとシンフォギア纏った。

 一気に屋敷に突入し、クリスを先頭に走り抜ける。そしてドアを蹴破る勢いで大広間に飛び込むとそこには……。

 

「なっ!?」

 

「響、見るな!」

 

 そこに転がっていたのはいくつもの死体だ。それに気付き驚きの声をクリスが上げ、俺は咄嗟に響の視界を塞ぐ。

 血だまりには屈強な男たちが物言わぬ骸となって転がっている。生体反応はない、全員がすでに事切れていた。

 

「これって……?」

 

「……恐らくフィーネの仕業だろうな」

 

 正直、響にはこんなものは見せたくないのだが本人が「大丈夫」といって俺の陰から出て俺やクリスと一緒に様子を調べている。響の声は少し震えていた。

 全員が身体を何かで刺し貫かれて死んでいる。

 

「そもそも、この人たちって一体誰なの……?」

 

「こいつらはアメリカの軍人だ……」

 

 響のそんな疑問にクリスが答える。

 

「白人と黒人が一緒の部隊で戦ってて、今日本にこれだけの規模の部隊が送れるのはアメリカくらいだ。

 それに見覚えがある顔がいる。あたしの戦闘訓練を担当してた教官だ。

 フィーネはあたしに『アメリカ軍人だ』って紹介してたよ」

 

「アメリカか……」

 

 以前、二課に対する数々の妨害工作などの黒幕がアメリカだという『アメリカ陰謀論』の話は聞いたことがあったが、これはそれに現実味が帯びてきた。

 しかし、この状況はどう考えたものか。

 クリスの教育のためにアメリカ軍人を派遣させることができるなどを考えると、フィーネはアメリカと手を組んでいたのだろう。しかしそれをフィーネが裏切り、戦いになった……恐らくはそんなところか。

 その時、俺のセンシティブイヤーがいくつもの足音を感知する。

 

「誰か来る!」

 

「フィーネのやつか!」

 

「いや……この足音は……」

 

 そして現れたのは……。

 

「お前たち、独断専行が過ぎるぞ」

 

弦十郎司令(おやっさん)!」

 

「師匠!」

 

 現れたのは弦十郎司令(おやっさん)だ。その後ろには拳銃を構えた黒服のエージェントたちの姿がある。

 それを見て俺と響は咄嗟にクリスを庇うように前に出た。

 

弦十郎司令(おやっさん)、話を聞いてくれ!」

 

「そうです師匠、私たちもクリスちゃんも何にもしてません!」

 

 だがそんな俺たちの声を素通りし、黒服のエージェントたちは遺体を調べ、周辺を警戒して散開した。

 

「誰もお前たちがやったなど疑ってはいないよ。

 俺たち大人も遊んでいるわけじゃない。お前たちが遭遇した一連の事件の黒幕である『フィーネ』について探り、ここまでたどり着いたというわけだ」

 

 弦十郎司令(おやっさん)はそのまま警戒心を剥き出しのままのクリスに近付く。

 

「雪音クリス……ヴァイオリン奏者雪音雅律とその妻、声楽家のソネット・M・ユキネが難民救済のNGO活動中に戦火に巻き込まれて死亡したのが8年前。残った1人娘も行方不明となった。

 その後国連軍のバルベルデ介入によって事態は急転、現地の組織に囚われていた君は発見され保護、日本に移送されることになった」

 

「へっ、そういう詮索反吐が出る」

 

「当時の俺たちは適合者を探すため音楽界のサラブレッドに注目していてね。天涯孤独になった君の身元引受人に手を挙げたのさ」

 

「こっちでも女衒(ぜげん)かよ……」

 

 心底うんざりしたようにクリスが言うと、隣で聞いていた響が小声で俺に聞いてきた。

 

(ノブくん、『女衒(ぜげん)』って何?)

 

(若い女性専門の人買いのことだ。 江戸時代とかにいたらしいぞ)

 

(へぇ、そうなんだ。 ノブくん物知り)

 

(ま、まあな……)

 

 ……まさかエロ漫画で知った知識とは思うまい。まぁ、正しい知識は出所が何であろうと等しく尊いものだし俺とて健康的な男子高校一年生、そういうこともある。

 そんな中弦十郎司令(おやっさん)とクリスの話は続く。

 

「ところが君は帰国直後に突如として消息不明。相当数の捜査員がその調査に駆り出されたが、その多くが死亡あるいは行方不明という最悪の結末で幕を引くことになった……」

 

「何がしたいんだ、おっさん?」

 

「俺がしたいのは君を救いだすことだ。

 俺は当時その件に関わった最後の生き残り、一度受けた仕事をやり遂げるのは『大人の務め』だからな」

 

 そんな弦十郎司令(おやっさん)の言葉は、『大人』を嫌うクリスの怒りに触れたらしい。クリスが声を荒げた。

 

「はっ! 『大人の務め』と来たか!

 余計なこと以外は何もしてくれない大人が偉そうに!!

 あたしは大人が嫌いだ! 死んだパパとママも大嫌いだ!

 戦地で難民救済? 歌で世界を救う? いい大人が夢なんか見てるんじゃねぇよ!!」

 

 それは辛い幼少期を過ごすことになったクリスの、心からの叫びだった。

 さすがに死んだ両親を貶すような言葉に思うところはあるものの、何か言えるわけもなく俺と響はその展開を見守るだけだ。

 だが、そんなクリスに弦十郎司令(おやっさん)は軽く首を振って返す。

 

「そうじゃない。大人だから夢を見るんだ。

 大人になれば背も伸びるし力も強くなる。財布の中の小遣いだってちったぁ増える。

 子供のころはただ見るだけだった夢も、大人になったらかなえるチャンスが大きくなる。夢を見る意味が大きくなる。

 お前の親はただ夢を見に戦場に行ったのか? 違うな。

 歌で世界を平和にするっていう夢をかなえるため自ら望んでこの世の地獄に踏み込んだんだ。

 きっとお前に見せたかったんだろう。 夢はかなうという『現実』をな。

 お前は嫌いと吐き捨てた両親は、お前のことを本当に大切に想ってたんだろうな」

 

 きっと弦十郎司令(おやっさん)の言うそれは真実だろう。それを感じたのかクリスも涙ぐむ。

 その時。

 

「風鳴司令、これは……」

 

 黒服のエージェントの一人が、死体に添えられていた手紙のようなものに手を伸ばす。

 ゾクッ、とする感覚が背を駆け抜けた。このキングストーンが教えてくれる直感は……!!

 

 

ドゥン! ドゥン!! ドゥン!!!

 

 

 手紙を手に取るとピアノ線で仕掛けられていたトラップが作動、仕掛けられた爆弾が連続して爆発を起こした。

 爆発によって支えを失った天井が瓦礫となり、俺たちを押し潰そうと迫る。

 

「シャドービーム!!」

 

 俺は咄嗟にシャドービームを放った。種類は捕縛のための念動光線、それで落ちてきた天井の瓦礫を支える。

 

弦十郎司令(おやっさん)!!」

 

「総員退避だ!!」

 

 俺の言葉に弦十郎司令(おやっさん)が黒服のエージェントたちに指示をとばす。

 その指示に従って全員がその場から退避すると、俺もシャドービームの効果を切って外へと飛び出した。

 背後から瓦礫の崩れる音が響く。

 あの爆発は証拠隠滅も兼ねていたのだろう。振り返ってみると見事に屋敷の大部分が崩壊していた。

 

「信人くん、感謝する」

 

弦十郎司令(おやっさん)なら、俺がいなくともどうとでもなっただろ?」

 

「いや、君がいなかったら彼らは運び出せなかった」

 

 そう言って背後を指すと、そこにはアメリカ軍人の死体がいくつか転がっていた。

 

「さすがに全員は無理だったがな。まぁ、アメリカがこの件に絡んでいるという証拠の一つであると同時に、調べれば色々なことも分かるだろう。

 それに……彼らも国の命令を忠実に聞き国に尽した者だ。できることなら綺麗なまま故郷に還してやりたいという気持ちがある」

 

 後半の方は何とも弦十郎司令(おやっさん)らしい言葉だ。

 

「じゃあ、今回は俺と響はお咎めなしってことでひとつ」

 

「それはない」

 

「デスヨネー」

 

 どうやら弦十郎司令(おやっさん)からのお叱りが俺と響には待っているらしい。

 

「さて、俺たちはこのまま戻るがお前も一緒に来るか?」

 

 弦十郎司令(おやっさん)はそう言ってクリスを誘うが、クリスは少し考えた後首を振る。

 

「やっぱりあたしは……」

 

「まだ俺たちを信用できない、か……だろうな。

 だが、2人のことは信じてるんだろ?」

 

 そう言って弦十郎司令(おやっさん)が俺と響を指すと、クリスは頷く。

 

「お前はお前が思っているほどひとりぼっちじゃない。

 いずれすぐにお前の道は俺たちの道と交わる。その時にお前に信用してもらえるようにせいぜい頑張るさ、大人として、な」

 

 そう言って弦十郎司令(おやっさん)はクリスに通信機を投げ渡す。

 

「それがあれば限度額なら公共機関にも乗れるし買い物もできる。便利だぞ」

 

 そして弦十郎司令(おやっさん)が車に乗ろうとしたところに、クリスが声をかけた。

 

「『カ・ディンギル』!」

 

「ん?」

 

「フィーネが言ってた。『カ・ディンギル』って……。

 それが何なのか分からないけど、そいつはもう完成しているみたいなことを……」

 

「そうか……情報感謝する。では、また会おう。

 そこの2人、説教は今回のことが終わるまでお預けだ。早めに戻れよ」

 

 それだけ言うと、弦十郎司令(おやっさん)は車列を率いて去って行った。

 

「さて……俺たちも戻るか」

 

「そうだね……あ、そうだ! クリスちゃん今日からウチに泊まりなよ」

 

「はぁ!? 何言ってんだよ立花響(バカ1号)?」

 

「だってどうせ師匠にはバレちゃってるんだし、秘密基地(あそこ)よりは過ごし易いよ」

 

「そうだな。どうせバレてるならもう俺たちのところで問題ないだろ?」

 

月影信人(バカ2号)まで……」

 

 俺たちの言葉にしばし考えていたクリスだが、やがて少し顔を赤くしながら頷く。

 

「じゃあ、世話になる……」

 

「うん! これからお泊り会だね!

 あっ、未来も呼ぼうよ!」

 

「ほどほどにしとけよ、響」

 

 そう言って俺たち3人も揃って街へ向けて移動を始める。

 

 

「……ありがとな」

 

 

 クリスの小さな声が耳を打つ。俺と響は顔を見合わせ微笑むと、そのまま3人で未来の待つ街へ移動を始めたのだった……。

 




今回のあらすじ

SHADOW「ツヴァイウイングのライブを守る男、地獄からの使者『仮面ライダーSHADOW』!!」

キネクリ「お、お前らを助けに来たわけじゃないんだからな!」

ビッキー「ナイスツンデレ。 本当にクリスちゃんはチョロインだなぁ」

SHADOW「というわけでお宅訪問の時間だコラァ!!」

ビッキー「ちなみにこの辺りのシーンはクロマティ高校の前田家のイメージまんまらしいよ」

キネクリ「お前らいい加減にしねぇとマジで殴るぞ……」

SHADOW「いや、そうでもしないと一人で突撃かましてバッドエンドとか十分ありえるし」

ビッキー「ほら、クリスちゃん無鉄砲そうだし」

キネクリ「無鉄砲の王様に言われてマジでショックなんだが……」

SHADOW「とにかく、大ショッカーの基地に行くんだ。俺たちもいくぞ!」

フィーネさん「だから大ショッカーって何なのよ!!」

OTONA「俺のHAKKEIの見せ場が削られたんだが……」

ビッキー「もう師匠には全部バレてるし、家に連れ帰っていいよね。野良クリス拾ったので虐待してみることにした」

キネクリ「風呂場に連れ込みお湯攻めからだな(ワクワク」

SHADOW「完全に調教されてて、もうチョロ過ぎて笑いしか出てこない」


今回は半分日常回のような普通(当社比)の回でした。
次回からは無印編最終決戦に向けた話となります。

次回もよろしくお願いします。


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