Fate/Animation (Mr.tosi)
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序章:壊滅都市『冬木』
第一話『夢の始まり』


 

 

西暦2519年。人類による科学文明が発達した時代、人々の生活はより豊かになったその一方で衰退していたのが魔術文明だった。人類は魔術を空想の物だと仮定し、怪しげな宗教儀式の産物とされ、人々の中で魔術は夢物語として語り継がれていた。俺の通う『時計塔』はそんな衰退していく魔術や魔術士を管理し、育成する機関としてその文明を保っている。

 

 

そして俺『黒河剣城(くろかわつるぎ)』もその時計塔に通う魔術士・・・・なのだが、なんとも言えない立場にある。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「であるからして、魔術とは根底の概念にある事象を、変革させる技術と言っていい。」

 

 

 

 

俺のいるこの『エルメロイ教室』は時計塔の最下層、落ちこぼれの生徒が集まる教室だ。その中で俺は最下位の落ちこぼれどころか、魔法も使えないし魔術の知識も浅いし、それ以前に興味もない。ただ毎日授業中窓に映る外の景色を見ているだけだった。

 

 

何してるんだろ・・・・俺。

 

 

 

エルメロイ二世

「そんなに私の授業は退屈か。黒河剣城。」

 

 

 

この人はそのエルメロイ教室の教員である『ロードエルメロイ二世』だ。今は亡き前ロードの後を継いでいる四人のロードの一人だ。本人曰く代理だと言う話だ。

 

 

 

スヴィン

「全く、この教室の最下位だと言うのになんだその態度は。名前だけは大層立派なのに等の本人はまるで(さび)だな。」

 

 

 

 

で此奴は『スヴィン・グラシュエート』と。

 

 

 

 

フラット

「そうだ!今の君は只の錆び付いた鉄屑だ!!」

 

 

スヴィン

「それは言い過ぎだ。」

 

 

 

 

そして腹の立つ発言しかしない『フラット・エスカルドス』。この二人はエルメロイ先生のお気に入りで、性格は変わっているが魔術に関してはエリートと言えるだろう。

 

 

 

エルメロイ二世

「これが魔術の根源だ。君自身の本質は変わっていないが、第二者、第三者が別の存在と認識しているなら、君がどれだけ自身の本質を主張しようとそれは否定される。魔術の基本だ。よく覚えておけ。」

 

 

 

 

まるで呪いだな。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「さて、ここからは剣城でも興味を唆る話をしてやろう。」

 

 

 

なんだ?唐突に?

 

 

 

エルメロイ二世

「君達は・・・・『被造物(アニメーション)』と呼ばれる産物を知っているか。」

 

 

 

アニメーション?なんだそれ?

 

 

 

 

スヴィン

「何か魔術のようなものでしょうか?」

 

 

エルメロイ二世

「いや、魔術とは全く関係のない話だ。ここから少し歴史の講義を始める。」

 

 

 

歴史?なんでまた?

 

 

 

エルメロイ二世

「アニメーションとは今から約400年前、第三次世界大戦によって消失した技術であり、残っていた産物もその殆どが失われた。」

 

 

フラット

「センセー!それなんですかー?」

 

 

エルメロイ二世

「脳みそが空っぽなお前でもわかりやすく教えてやる。」

 

 

 

 

酷い言われようだな。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「あれはまさしく『生きた絵』だ。」

 

 

 

 

は?何を言っているんだ?

 

 

 

 

スヴィン

「先生、もっと詳しくお願いします。」

 

 

エルメロイ二世

「原理は未だ解明されていないが、まるで絵が生き物ように動き、更には意思疎通による会話が可能とも言われていた。」

 

 

スヴィン

「俄かに信じ難い話ですが、本当に実在したんですか。」

 

 

エルメロイ二世

「私も実物を見たことはないが、もし仮にこの被造物を魔術で召喚出来るとしたら、君達はどうする。」

 

 

 

 

魔術で召喚?どう言う事だ?

 

 

 

 

スヴィン

「可能何ですか?そんな事が。」

 

 

エルメロイ二世

「心当たりがあるとすれば、魔術士である君達なら知っているだろう。『冬木』の儀式を。」

 

 

スヴィン

「10年前、冬木の地で行われた魔術士の儀式『聖杯戦争』ですか。」

 

 

エルメロイ二世

「そうだ。七騎の英雄の魂と七人の魔術士同士が万能の願望機『聖杯』を巡って争い殺し合う儀式だ。その英雄の魂を召喚する術式を応用すれば有り得ない話ではない。」

 

 

 

いや・・・・そんな話誰が信じるんだよ。

 

 

 

エルメロイ二世

「黒河剣城。もし万が一、アニメーションの英雄が召喚されたら君は彼等をどう見る。」

 

 

 

 

どうって?

 

 

 

 

エルメロイ二世

「化物か、道具か、それともただの絵か。君ならどう受け入れる。」

 

 

 

 

そんな事聞かれてもな。意思疎通の出来る相手ならいつもと変わらないんじゃないか。

 

 

 

 

剣城

「多分人間と同じように普通に会話します。」

 

 

スヴィン

「なんだそれ?」

 

 

フラット

「真面目に答える気ないでしょー!!」

 

 

 

 

至って真面目だったけどな。だが先生の方を振り向くと彼は少し笑っていた。いつも眉間にシワを寄せているような人が笑うのは珍しい。そんなに面白かったのかな。

 

 

 

エルメロイ二世

「授業はここまで!解散とする。」

 

 

 

 

やっと今日の講義は終わって、俺は直ぐに教室を出て校舎から少し離れた教会へと向かった。その教会には天使がお祈りをしているような白い石像が置かれていて、天井と壁に貼られた鮮やかなステンドグラスに囲まれていて、丁度夕方辺りになると夕日の光がステンドグラスに照らされて神秘的な光景になる。その光を見ていると不思議と心が安らいでいく。俺にとってはオアシスみたいな場所さ。

 

 

 

綺礼

「祈りを捧げるでもなければ懺悔をする訳でもない。ここは休憩所ではないのだよ。」

 

 

剣城

「すいません。ここが一番落ち着けるので。」

 

 

 

 

この人が教会の神父をしている『言峯綺礼(ことみねきれい)』さんだ。俺と同じ日本人で魔術士だ。「神父様」と呼んでいる。無愛想だが、物知りなのかいろんな知識を身につけていてなんでも教えてくれる。正直エルメロイ先生よりこの人の授業の方がわかりやすい。

 

 

 

 

綺礼

「ここに安らぎを求めに来たにしては浮かない顔をしている。神の元で安らぎを得られないのなら無駄な時間だ。今日は大人しく帰りたまえ。」

 

 

 

 

不思議と俺は先生が話していた『アニメーション』を何故か神父様に聞いてみた。

 

 

 

 

剣城

「神父様はアニメーションをご存知でしょうか。」

 

 

綺礼

「第三次世界大戦で消失した産物だと聞いている。それがどうかしたのかね。」

 

 

剣城

「さっき先生の講義でその話をされたのですが、余りに現実離れしすぎてよく理解出来ませんでした。ただ仮にそのアニメーションの英雄を聖杯戦争で使われていた召喚システムを使って召喚出来たら、それをどう受け入れるか聞かれました。」

 

 

綺礼

「君は何と答えたのかな。」

 

 

剣城

「「人間と同じように普通に会話します。」と答えました。」

 

 

綺礼

「そうか。」

 

 

 

 

神父様は考え込む仕草をしていた。先生の表情といい神父様のこの仕草といい、今日の二人の行動がいつもよりおかしかった。

 

 

 

綺礼

「君は神の導きにより運命の分岐点に差し掛かったのだと私は思う。それに君が物事に疑問を持つ事など、厄災が降りかかるより遥かに珍しい感情だ。」

 

 

剣城

「神父様?何か知っていますよね。」

 

 

綺礼

「私から真実を語る事はない。君自身の運命だ。君が切り開くがいい。」

 

 

 

 

はぐらかされたような気がした。神父様には何かある。そんな予感がしてならなかった。

 

 

とりあえず俺は教会を出て先生の部屋に向かった。その途中、先生の姿を見つけて後を追いかけたが、そのまま自分の部屋に入った。俺はノックして先生を呼んだが返事がない。居留守でも使ってるのかな。失礼ではあるが勝手に部屋に入ろうした瞬間ドアが開いた。鍵を掛けいなかった所を見ると益々怪しい。だから勝手に入る事にした。

 

 

部屋に入ると本棚に置かれた書物、正面には先生の机、お客さんの応対に使うのか目の前に置かれたテーブルとソファー、そして入り口付近にはコーヒーポッドが置かれていたなんの変哲もない部屋だ。

 

 

だが一つおかしいのは、この部屋に入った筈の先生がいなかったという事だ。見間違いでも無ければ部屋を間違えた訳でもない、この部屋に入った事は確かだ。多分、先生は隠し部屋に入ったと見て間違い無いだろう。

 

 

 

 

剣城

「だとしたら、本棚だな。」

 

 

 

 

小説なんかだと隠し部屋と言うものは大体本棚に置かれている一冊の本を動かすと扉が開くと相場が決まっている。だとしたら本棚の中心に沿って左右どちらかの本を引き抜くと開く仕組みの筈だ。大体先生の身長をから位置を割り出すとこの辺りだな。

 

 

その辺りの一冊の本を引き抜こうとした辺りで「ガチャッ!」と音がした瞬間、本棚が自動ドアのように開き、中から鉄製のドアが出てきて、それも開いてしまった。

 

 

 

剣城

「先生、無用心過ぎ。」

 

 

 

 

中は下に降りる階段が続いていた。多分地下に何かあるんだろう。早速その階段を下りてみると、今度は長い一本の通路が伸びていた。そのまま通路を進むと、また自動ドアに差し掛かった。ここが地下施設と確信した俺はそのドアに設置されているボタンを押してみた多分開かないと思っていたけど簡単に開いた。

 

 

 

剣城

「なんだここは?」

 

 

 

どうやらその施設の通路に出て来たようだ。左右に道があるが俺は迷わず左に進んだ。どうやらあの隠し通路はこの施設の通路の壁際から出るらしく、どっちに進んだらいいかわからなかった。更にもう一つ問題が、数メートル歩いて突然アラームが鳴り始めた。

 

 

 

 

[緊急警告!現在『Earth(アース)』の施設内に侵入者を確認。各職員は至急確保せよ!繰り返す!]

 

 

 

更には放送まで始まった。

 

 

 

剣城

「やばい!早く隠れる場所を見つけないと!!」

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

ゆめ

「こっちです!」

 

 

 

女の子がいきなり俺の腕を掴んでそう叫んだ。正直不信感はあったけど彼女に付いて行った。そしてある部屋に辿り着き、そこに身を隠す事にした。

 

 

 

 

ゆめ

「この部屋は空室なので誰も来ない筈です。ここでやり過ごしましょう。」

 

 

剣城

「ありがとう。でもよかったの?俺一様侵入者って事になってるけど?」

 

 

ゆめ

「いいんです。多分興味本位でこの施設に立ち寄ったら迷子になった。違いますか?」

 

 

剣城

「当たってる。」

 

 

 

楽しげに会話をしていたが、彼女からある違和感を感じていた。彼女の姿がリアルじゃないと言うか、まるで絵がそのまま実体化しているような感じだった。だが不思議と嫌な感じはしなかった。

 

 

 

剣城

「変な事聞くかもしれないけど、君人間じゃないよね。」

 

 

ゆめ

「わかりますか。やっぱりこっちの世界の人からしたら気味が悪いですよね。」

 

 

剣城

「そんな事はない。ただ・・・・綺麗だなって思っただけ。」

 

 

ゆめ

「え・・・・。」

 

 

 

なんか・・・・お互いに照れ臭くなった。彼女も顔を赤くしてるし話題変えよ!

 

 

 

 

剣城

「そう言えばまだ名前聞いてなかったね。俺は黒河剣城。この時計塔で魔術士をしている者だ。」

 

 

ゆめ

「私は『虹野(にじの)ゆめ』。『裁定者(ルーラー)』のクラスで召喚された英霊(サーヴァント)です。」

 

 

剣城

「サーヴァント?」

 

 

ゆめ

英霊(えいれい)と言う意味です。剣城さんの言う通り、私は人間では無く半分は霊体です。」

 

 

剣城

「半分?じゃあもう半分は人間?」

 

 

ゆめ

「正確には実体化してると言っていいでしょう。」

 

 

 

 

実体のある幽霊って事だよな?聖杯戦争で使われていた召喚術式を改良して召喚されたのか?

 

 

 

 

剣城

「君がサーヴァントってのは解ったけど、やっぱり戦うの?」

 

 

ゆめ

「私のクラスは聖杯戦争の行く末を見守る裁定者の役割をしています。聖杯戦争中に影響を及ぼす事態にならない限り動きません。スポーツで言う所の審判のようなものです。」

 

 

 

 

彼女そんなにすごい英霊だったのか。ルーラーって言うくらいだから元の世界じゃ最強って言った所か?

 

 

 

剣城

「すごい英霊だったんだね。因みに元いた世界では何をやってたの?」

 

 

ゆめ

「アイドルをやっていました。」

 

 

 

え?

 

 

 

 

剣城

「アイドルって・・・・あの歌って踊ってお客さんを楽しませるあのアイドル?」

 

 

ゆめ

「そうですよ。」

 

 

剣城

「いやいや冗談でしょ!?それとも副業で戦闘の仕事か何かを!」

 

 

ゆめ

「いいえ!アイドル一本一筋!私の夢は「アイドルのいちばんぼし!」になる事ですから!」

 

 

剣城

「いやいやおかしいでしょ!?どうやって他のサーヴァント達と戦うの!?アイドルが戦争に参加する話なんて聞いた事無いし!!」

 

 

 

そう言うと、ゆめは頬を膨らませて怒っているような感じだった。もしかして失礼な事言ったかな?

 

 

 

ゆめ

「剣城さん?もしかして聖杯戦争のサーヴァントが戦争で名を挙げた人達しか参加出来ないとか勘違いしてません?」

 

 

剣城

「違うの?」

 

 

ゆめ

「大違い!私達サーヴァントのスキルは自分達の世界で起きた出来事や経験が召喚された時にそのまま力となって身につくのです!私だってその気になれば戦えますよ!」

 

 

剣城

「それってまだ一回も戦った事無いって事だよね?」

 

 

ゆめ

「まあ・・・・そうですけど。」

 

 

 

彼女は恥ずかしかったのか顔を赤くして俺から目線を逸らしていた。まあそんな彼女も可愛かったけど心配でもあった。もし戦いに駆り出されたら、戦闘が未経験の彼女に何が出来ただろうか。そう考えるとゾッとした。

 

 

その時だった。突然閉まっていたドアが外から開けられて、目の前に白衣を着た女性が現れたのだ。

 

 

 

紅莉栖

「やっぱりここにいたのね。」

 

 

 

だが彼女は明らかに人間じゃなかった。ゆめと同じ被造物の英霊、サーヴァントだった。ゆめと違って彼女は何処か神秘的と言うかミステリアスな感じの姿だった。アニメーションのサーヴァントってゆめみたいに皆んな一緒って訳じゃないんだな。

 

 

 

紅莉栖

「捜したわよ。しかもお客様と一緒にいたなんて。」

 

 

ゆめ

「クリスティーナさん!」

 

 

剣城

「誰?」

 

 

ゆめ

「彼女はクリスティーナさん。私と同じサーヴァントでこの施設の化学班に所属してます。」

 

 

紅莉栖

「人のあだ名で勝手に紹介しないの!」

 

 

 

あだ名だったんだ。

 

 

 

紅莉栖

「初めまして侵入者さん。私は『キャスター』の『牧瀬(まきせ)紅莉栖(くりす)』。特命機関『Earth(アース)』のラボで研究員をしているサーヴァントよ。よろしく。」

 

 

剣城

「アース?」

 

 

紅莉栖

「詳しい説明は後にして。ゆめ、直ぐに準備して。出動よ。」

 

 

ゆめ

「やっぱり現れたんですね。」

 

 

 

現れた?一体何が?

 

 

 

ゆめ

「剣城さん。お話できてよかったです。また後でお会いしましょう。」

 

 

 

 

そう言って彼女は笑顔で行ってしまったが何処か引きつっていた。この時の俺は嫌な予感しかしてなくて、急いで彼女の後を追いかけようとしたその時だった。

 

 

 

紅莉栖

「じゃあ私達も行きましょうか。」

 

 

 

行くって何処に!?

 

 

 

 

紅莉栖

「移動しながら色々説明するわ。」

 

 

 

 

俺は彼女に連れられて移動した。そこでこの組織の目的を説明された。

 

 

『異次元再生機関Earth(アース)』と呼ばれる組織が誕生した切っ掛けが、大昔にとっくに無くなった筈の聖杯戦争が10年前に行われていたらしく、異の発端もその戦いから始まった。当時のセイバー陣営が万能の願望機である聖杯の破壊を行った結果、聖杯は暴走し冬木市のある地域だけが壊滅したらしい。それ以降、聖杯の行方は不明だったが、半年後に聖杯の一部が冬木で見つかった事が判明した。アースは冬木で確認された以外にも聖杯の欠片が何処かにあるのでは無いかと推測し、冬木市の調査に赴いたが、聖杯は見つからなかったという。

 

 

 

 

紅莉栖

「そしたら異次元にある事がわかったの!場所は合ってるにも関わらず見当たらない!そりゃ異次元にあれば見つからない筈よ!」

 

 

 

 

なんか説明が愚痴っぽくなってるけど概ねわかった。そしていつの間にか、司令室っぽい自動ドアがある部屋に辿り着いた。入るとそこは複数のオペレーターがモニター越しに何かしているのは見えた。しかも奥の壁はガラス張りになっていて、上から覗くとその外には巨大な装置みたいなのがある。

 

 

 

 

紅莉栖

「そこで私が開発したこの異次元転送装置を使って、その次元空間にダイブするの。」

 

 

剣城

「造った!?貴女がこれを!?」

 

 

紅莉栖

「苦労したわ。タイムマシン理論を応用して何度か実験を繰り返してようやく完成したのよ。」

 

 

 

 

何者なのこの人!?タイムマシン造るとか普通は無理だから!!

 

 

と驚いていたが、それどころでは無くなって来た。その装置にゆめが近づいていたのが見えたからだ。つまり彼女は、聖杯を回収する為に自ら戦地に向かおうとしていたからだ。俺は急いで彼女の所に向かった。

 

 

 

 

紅莉栖

「ちょっと!」

 

 

 

その部屋には装置の所へ降りる階段があって、俺は急いで階段を降りてゆめを追いかけた。

 

 

 

剣城

「ゆめ!」

 

 

ゆめ

「剣城さん。」

 

 

 

 

ゆめは直ぐに止まって俺の方を振り返ってくれた。俺は息を切らしながら彼女の所に行った。

 

 

 

 

剣城

「今・・・・何処に行こうとしていたの。」

 

 

 

 

ゆめは俺から逸らすように目を閉じて黙り込んでしまった。それを見て一気に不安が高まって来た。

 

 

 

 

剣城

「ゆめ!」

 

 

紅莉栖

「そう言えば、まだ説明していない項目があったわね。」

 

 

 

後から紅莉栖さんも追いついて説明された。もう嫌な予感は的中していた。ゆめが聖杯の欠片を回収しに行かなければならない理由があるからだ。

 

 

 

紅莉栖

「聖杯によって破壊された異次元空間の崩壊を阻止しなければ、異次元空間で起きた事象が現実世界に反映される。つまり聖杯の欠片を回収しなければ冬木は壊滅、放っておけば世界中が崩壊する。」

 

 

 

 

それを聞いて段々と怒りが込み上げて来た。なんで彼女が戦わされなきゃならないんだ。

 

 

 

 

剣城

「だから彼女じゃなきゃダメなんですか。」

 

 

紅莉栖

「そうよ。だって私はゆめ程戦闘力はないし。それなら彼女が適任の筈でしょ。」

 

 

剣城

「ふざけるな!!ゆめはただのアイドルなんだぞ!!彼女は戦うべきじゃない!!」

 

 

紅莉栖

「ならこのまま自分の世界がどうなってもいいと言うの?ゆめを止めて自分の世界が壊れていく所を虚しく見ていくだけしか出来ないと思うわよ。」

 

 

剣城

「だからって彼女にその運命を背負わせるなんておかしいだろ!!俺達人間がその責任を負うべきじゃないのか!!」

 

 

紅莉栖

「私達はその()()に作られた被造物なんだけどね。」

 

 

 

 

彼女のこの一言に胸が突き刺さった。理不尽な運命を与えられた彼女達にとっては今更かと思うくらいの怒りがあってもおかしくないからだ。

 

 

 

紅莉栖

「貴方達人間を楽しませる為に私達を作って、理不尽な運命を与えてた挙句、いざ目の前に召喚されたら今度は自分達の世界の為に戦ってくれ?そして今度はその子は戦えないから戦わせるな?正直言って今の貴方の発言と行動は不愉快よ。」

 

 

 

 

俺はその場で黙り込んでしまった。彼女の心情を知らないまま、勝手な発言をしていたのは確かだし、でもそれは別の話だ!ゆめが戦うなんて間違っている!!

 

 

 

 

剣城

「昔の俺達の世界の人間が、貴方達にどんな運命を与えたか知らないけど、ゆめを送り出すのは間違っています!!」

 

 

 

その時だった。

 

 

 

ゆめ

「もういいです。剣城さん。」

 

 

 

ゆめが何故か俺を引き留めようとしていた。

 

 

 

 

ゆめ

「気持ちは有り難いけど、私にしか出来ない事ですから。」

 

 

剣城

「でも戦ったことがないんだろ!?」

 

 

ゆめ

「そうです。でも私は、自分の世界を守りたい、剣城さんの世界を助けたい、クリスティーナさんの世界を救いたい。私の輝きで誰かを守れるなら私は戦います。」

 

 

 

 

じゃあ・・・・君を守れるのは。

 

 

 

 

剣城

「俺は・・・・。」

 

 

 

俺の中で迷っていたその時だった。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「ならば何故君はここへ来た!!」

 

 

 

 

突然、先生が俺達の前に現れた。やっぱり先生はEarth(アース)の関係者で、ゆめ達を知っている人物だ。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「君は私にこう言ったな。「サーヴァントと普通に会話をする。」それは彼女達アニメーションのサーヴァントと対等の立場で接する。そう受け取っていいな。」

 

 

剣城

「はい。」

 

 

エルメロイ二世

「なら彼女達の話を聞いて、君の中で答えが出てるのではないか。」

 

 

 

 

そうだ。ゆめが決めた事なら行かせてあげればいい。でも一人では行かせられない。俺も戦えればいいけど、まともな魔法戦なんて出来ないし足手纏いにしかならない。どうしたらいい。

 

 

 

 

剣城

「聖杯戦争・・・・そうか!!」

 

 

 

 

俺はある事を思いついた。聖杯戦争のサーヴァント達は魔術師と契約してその本来の力を発揮出来ると聞いた事がある。もしかしたらゆめにも出来るのではないかと閃いたからだ。

 

 

 

 

剣城

「聖杯戦争のサーヴァント達は、魔術師と契約して本来の力を解放させる事が出来ますよね!」

 

 

エルメロイ二世

「そうだ。正確にはサーヴァントと契約する事で聖杯戦争の参加資格を得られる内容だが、それがどうかしたのか。」

 

 

剣城

「それって被造物の英霊でも可能ですよね!」

 

 

エルメロイ二世

「仮に可能だとして、君はそれをどうするつもりだ。」

 

 

 

 

俺の答えはもう決まっていた。

 

 

 

 

剣城

「俺がゆめのマスターになります!」

 

 

ゆめ

「え・・・・。」

 

 

 

 

俺がマスターになれば、ゆめを万全の状態で戦わせてあげる。彼女に任せるんじゃなくて、一緒に戦う選択は間違いじゃない。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「それが君の選択だな。」

 

 

剣城

「はい。」

 

 

 

そう返事をすると先生は授業の時と同じ時みたいに笑みを浮かべていた。まるで俺がそう答えるよう期待していたようだった。俺がアニメーションのサーヴァント達のマスターになる事が、先生の願いだったからかもしれない。ならその願いに応えよう。

 

 

 

エルメロイ二世

「ルーラーと手を合わせ、契約の詠唱を唱えるだけだ。それで君は彼女のマスターとして成立する。」

 

 

 

 

俺は軽く頷き、ゆめの所に向かい手を合わせるように彼女に(てのひら)を差し出した。すると彼女もそれに応えるように手を合わせて来た。これで契約の準備は出来た。後は詠唱を唱えるだけだ。

 

 

 

 

剣城

「ルーラー『虹野ゆめ』に告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に、聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら我に従え!"全ての星々を導く一番星"よ!この命運、汝がこの剣を預けよう!」

 

 

ゆめ

「ルーラーの名に懸けてその誓いを受け取ります。」

 

 

 

契約の呪文を唱えると、突然手を重ねていた所から青い光が照らし出し、俺の手の甲に赤い入れ墨みたいなの模様が浮かんできた。

 

 

 

エルメロイ二世

「それが『令呪』だ。サーヴァントとの絆の証とも言っていい。」

 

 

 

 

サーヴァントとの絆の証。

 

 

 

 

ゆめ

「嬉しかった。剣城さんが私を引き止めてくれた事、私と一緒に戦ってくれるって言ってくれた事、一人じゃ不安だったけど、貴方と一緒なら何処まででも行けそう。」

 

 

剣城

「ゆめ。」

 

 

ゆめ

「だから・・・・これからよろしくね!マスター!!」

 

 

剣城

「よろしく。ゆめ。」

 

 

 

彼女と合わせた掌はいつしか組み替えて握手に変わっていた。その後、クリスティーナさんから腕時計型の通信機を渡され、俺達は巨大な装置の前に行き、準備が出来るまで待っていた。

 

 

 

 

剣城

「そう言えば一つ気になってた事があったんだけど、アニメーションのサーヴァントって事は物語も存在していたんだよね?」

 

 

ゆめ

「よくわからないけど多分そうだと思う。」

 

 

剣城

「君の中で物語は完結したの。」

 

 

ゆめ

「私の物語。私のアイカツは、S4に憧れて四ツ星学園に入って楽しくレッスンやライブをして、悲しい事も苦しい事も乗り越えて、憧れの先輩やライバル達と競い合って、ようやく念願のS4になる事が出来た。その後は、世界を舞台に挑戦して、その頂点に辿り着いた。そこからは色んな人達との出会いかな!」

 

 

剣城

「じゃあここから君の新しい物語が始まるんだね。」

 

 

ゆめ

「違うよ、私達の物語だよ!マスター!」

 

 

 

そうか。ゆめに言われるまで気づかなかったけど、俺の物語もここから始まるんだ。止まっていた時間が動き出した。

 

 

 

 

オペレーター

「エネルギー充電完了。システムオールグリーン。これより次元転送による霊子転移(レイシフト)を開始します。」

 

 

 

装置が稼働し、俺とゆめは青い光に包まれた。この出会いが俺に新たな目標と人生を与えてくれるとは思ってなかった。

 

 

 

 




英霊紹介



真名:『虹野(にじの)ゆめ』

クラス:『裁定者(ルーラー)

作品名:『アイカツスターズ!』『劇場版 アイカツスターズ!』『アイカツオンパレード!』


宝具:『MUSIC OF DREAM』


プロフィール
四ツ星学園に通う中学二年生(最終話までの学歴参照)で、そのトップに位置する『S4』に所属するアイドルである。

彼女の礼装である地球の星のツバサ『レインボーエトワールコーデ』とその覚醒礼装『太陽のドレス』が宝具と思われがちだが、彼女の本来の宝具はその歌である。『MUSIC OF DREAM』は全てのサーヴァントのステータスを最大値まで上昇させる能力と、宝具の威力を上昇させる能力である。

聖杯が彼女を『裁定者(ルーラー)』のクラスで選出したのは『アイカツ!ランキング 決勝トーナメント』で『エルザ・フォルテ』との戦いで彼女に輝きを与え勝利した時点で、『虹野ゆめ』はその世界のトップアイドルとなった事が決め手となった。







真名:『牧瀬(まきせ)紅莉栖(くりす)

クラス:『魔術師(キャスター)

作品名:『シュタインズゲート』『劇場版シュタインズゲート 負荷領域のデジャブ』『シュタインズゲートゼロ』

宝具:『運命石の扉(シュタインズゲート)


プロフィール
アメリカの『ヴィクトル・コンドル大学』の脳科学研究所の研究員であり、タイムマシン理論を成立させた若き女性科学者である。

『シュタインズゲート』では死の運命を主人公によって免れ、『負荷領域のデジャブ』では、その消息不明となった主人公を彼女が救い、『ゼロ』では自身がいなくなってしまった世界と三つの世界線で存在しているが、『アース』にいる彼女はその三つの世界線の記憶が一つとなって存在している。


主人公が使っていた『運命石の扉(シュタインズゲート)』は『負荷領域のデジャブ』で彼女も使用している。その能力は事象が起こる前の時間まで戻す事が出来るが、それには『電話レンジ(仮)』と『IBM5100』が必要であるがその宝具は異次元空間の何処かにあるらしくそこから携帯で発動させる事が出来るらしい。


『アース』での彼女の所属は開発ラボの研究員で、『二次元空間転送装置』を開発するなどその技術を最大限に活かしていた。


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第二話『冬木の英霊(サーヴァント)

青い光りに飲み込まれ、そのまま落ちていくかのように光のトンネルのようなものを通っていた。やがて目の前に出口らしき光が見えて、俺とゆめはその光に突っ込んで行った。すると周辺に建物が密集している場所に出た。

 

 

 

 

剣城

「おっと!?」

 

 

ゆめ

「マスター!大丈夫!」

 

 

剣城

「大丈夫!ちょっと転けそうになっただけ。それよりも。」

 

 

 

 

辺りを見渡すと、建物が現実ではなくまるで絵のような風景だった。だがそれ以上に驚いたのはその惨状だった。建物は倒壊し、そこからは燃え盛る炎が上がっていた。

 

 

 

 

紅莉栖

[どう?霊子転移(レイシフト)を初めて体験した感想は。]

 

 

 

 

するとクリスティーナさんから貰った通信機から通信が入った。

 

 

 

 

剣城

霊子転移(レイシフト)?」

 

 

紅莉栖

[簡単に説明すると、私達がいるこの三次元空間の現実世界から二次元空間のあるアニメーション世界に行くには一度貴方の身体を霊子分解し、アニメーション世界の身体に再構築して二次元空間にダイブするの。つまり貴方は今『絵』になってるって言ったらいいかしら。]

 

 

剣城

「それって大丈夫なんですか!?」

 

 

 

この状況でそんな爆弾発言されても困るんだけど!?そしてさらに最悪の事態が発生した。俺達の前に複数の黒い影がモヤの様に漂い、そこに仮面を付けた気味の悪い化物が姿を現した。

 

 

 

剣城

「なんだこいつら!?」

 

 

ゆめ

「あれは『魔獣』だよ。」

 

 

 

 

『魔獣』とは、二次元世界に存在する生命体で色んな種類の個体があるが、その正体と出現場所は不明らしい。だが魔獣達は二次元世界を破壊する存在らしい。

 

 

 

 

(ホロウ)

「グォォォォ!!」

 

 

 

この魔獣達もその内の一種なのである。

 

 

 

紅莉栖

[怯えてる暇は無いわ。戦闘を開始して。]

 

 

 

そうだ!今はこの場を潜り抜ける為に戦わないと!だがその時だった。

 

 

 

 

(ホロウ)

「グォッ!」

 

 

 

魔獣達が先に攻撃を仕掛けて来た。彼等は一気にゆめの方に向かって来た。

 

 

 

ゆめ

「マスター下がって!!」

 

 

 

ゆめの周りに光り輝く粒子のような物が舞っていた。オーラみたいな物か?襲って来た魔獣にゆめはそのオーラをまるで(ムチ)の様に振り回し、魔獣を次から次へと倒して行った。

 

 

 

ゆめ

「ふんっ!」

 

 

 

それに対応できなから今度は盾として魔獣の攻撃を防いでいた。彼女は戦っていると言うより踊っている様に見えた。

 

 

 

ゆめ

「はぁぁぁぁ!!」

 

 

 

あっという間に最後の一体も倒して戦闘は終了した。俺は急いでゆめの所に駆け寄った。

 

 

 

剣城

「ゆめ!」

 

 

ゆめ

「マスター!怪我はなかった!」

 

 

剣城

「こっちのセリフだよ!でも魔獣達を倒すなんて凄いや!」

 

 

ゆめ

「初めてだったから緊張したけど、上手くいって良かった。」

 

 

 

 

俺は君が無事だったのが良かったけどね。

 

 

 

 

紅莉栖

[イチャついてるとこ悪いけど、そっちの現状を聞かせてくれないかしら?]

 

 

 

俺は慌ててクリスティーナさんに色々説明した。今の現状も魔獣の襲撃の事も話した。

 

 

 

紅莉栖

[んー・・・・色々探索してみないとわからないわね。とりあえず聖杯が観測された場所に向かってくれる。]

 

 

 

 

そう言われて俺達は指定されたポイントに向かって歩き出した。その場所が『柳洞寺(りゅうどうじ)』と呼ばれるお寺に聖杯はあるらしい。そこへ向かう途中、俺達は『冬木大橋』のある『海浜公園』を通っていた。そこから向こうの景色は火の海になっている。まるで戦争で空爆を受けた様な残酷な光景だった。

 

 

 

 

剣城

「あの魔獣達の仕業かな。」

 

 

ゆめ

「わからない。でもわかっている事は、聖杯を回収しないと救われないって事だよ!」

 

 

剣城

「そうだよね!聖杯を回収すれば解決するんだ。なら急ごう!」

 

 

 

 

だがその時だった。突然空から何か勢い良く降って来た。

 

 

 

 

剣城

「何だ!?」

 

 

ゆめ

「マスター!危ない!!」

 

 

 

何が何だかわからないまま、俺はゆめに突き飛ばされたその時だった。

 

 

 

 

立花響オルタ

「ウガァァァァ!!」

 

 

ゆめ

「くっ!!」

 

 

 

 

突然黒い影がゆめを襲って来たが、彼女は咄嗟に自分のオーラを盾に防いだが。

 

 

 

 

立花響オルタ

「ハァッ!!」

 

 

ゆめ

「きゃあッ!」

 

 

剣城

「ゆめ!」

 

 

 

黒い影の馬鹿力でゆめをぶっ飛ばされ、俺は急いで彼女の元に向かった。

 

 

 

剣城

「大丈夫!?」

 

 

ゆめ

「何とか・・・。」

 

 

 

ゆめの安否を確認した後、警戒を怠らず黒い影の方を振り向いた。よく見るとさっきの魔獣と違って人の形をしていて目が赤く光っていて牙を出していた。

 

 

 

剣城

「魔獣じゃ無いのか!?」

 

 

ゆめ

「あれはサーヴァント!!クラスは狂戦士(バーサーカー)!!」

 

 

剣城

「何だって!!」

 

 

 

 

何でサーヴァントがこんな所に!?

 

 

 

 

立花響オルタ

「ウガァッ!!」

 

 

 

バーサーカーは勢いよく飛び、そのまま空中で蹴り飛ばして猛スピードで俺達の方に向かって来た。

 

 

 

立花響オルタ

「ハァァァァァ!!」

 

 

剣城

「危ない!!」

 

 

 

バーサーカーのスピードが速すぎて逃げる所か避ける事も出来ない状況で、俺は自分の背を盾にゆめを抱きしめた。

 

 

 

立花響オルタ

「ハァァァァァ!!」

 

 

 

もうダメかと思ったその時だった。

 

 

 

政宗

PHANTOM DIVE(ファントムダイブ)!!」

 

 

 

何かがバーサーカーに突っ込みそのままぶっ飛ばしていた。見ると青い鎧を見に纏った戦国武将らしき人物が俺達に背を向けてたっていた。

 

 

 

政宗

「ようバーサーカー。しばらく見ない間にcrazy(クレイジー)にイメチェンしてるじゃねえか。」

 

 

 

 

この人もサーヴァントなのか?

 

 

 

 

立花響オルタ

「セイ・・・・バー。」

 

 

 

あの一撃でも立ち上がるバーサーカーだったが、何処か様子がおかしかった。まるで自分の力で苦しんでいる様な感じだった。

 

 

 

立花響オルタ

「タスケ・・・・テ。」

 

 

政宗

「OK。今楽にしてやる。」

 

 

 

 

その戦国武将は六本の刀を同時に抜いた。バーサーカーと戦う気だ。

 

 

 

政宗

Ready(レディー)・・・・GO(ごー)!!」

 

 

立花響オルタ

「ウガァァァァ!!」

 

 

 

二人のサーヴァントが激突し、そのまま激しい打ち合いが始まった。一撃一撃の衝撃波がこっちまで伝わって来た。これがサーヴァント同士の戦いか。

 

 

 

 

政宗

「オラオラどうしたバーサーカー!!そんな軽いbeat(ビート)で俺とshall we dance(シャルウィーダンス)しようなんざ百年早いぜ!!」

 

 

 

 

そのまま相手の攻撃を弾き返した。

 

 

 

 

政宗

CRAZY STORM(クレイジーストーム)!!」

 

 

立花響オルタ

「グハァッ!?」

 

 

 

そのままバーサーカーを空中に飛ばしかと思ったら、今度は持っていた五本の刀をバーサーカーの周りに飛ばし、バーサーカーを中心に竜の模様みたいな物が浮かび上がりその模様に縛られた。それはまるで魔法陣のようだった。

 

 

 

政宗

「テメーのそのイカレた楔を断ち切ってやる!!」

 

 

 

彼はそのままバーサーカーに向かって飛び出した。

 

 

 

政宗

JUMPING JACK BLAKER(ジャンピングジャックブレイカー)!!」

 

 

 

彼は蒼い閃光となってバーサーカーを貫らぬいた。バーサーカーはそのまま地面に落ちて倒れてしまった。やったんだよな。その時、バーサーカーを倒した男がこっちを振り向いた。

 

 

 

政宗

「ところでそこのお二人さん。こんな状況でよくイチャついてられるな?」

 

 

剣城

「え?」

 

 

 

 

よく見ると俺はゆめを抱きしめたままだった。彼女は顔を真っ赤にしてもう離してと言わんばかりにこっちを見ていた。

 

 

 

剣城

「うわぁ!!ごめん!!」

 

 

ゆめ

「いいえ!!こちらこそ!!」

 

 

 

慌ててゆめから離れて直ぐに立ち上がった。彼女は恥ずかしそうにしていて座り込んだままだった。するとさっきの彼が俺達の近くまで寄って来た。

 

 

 

 

政宗

「お宅らこのparty(パーリィー)の参加者じゃ無さそうだな。デートにしちゃイカレたスポットをselect(セレクト)してるみたいだし、何か訳有りみたいだな。」

 

 

 

あれ?三日月の兜に右眼の眼帯って、この人戦国武将『伊達政宗』だよな?

 

 

 

 

立花響オルタ

「モウ・・・・イヤダヨ。」

 

 

 

倒れていたバーサーカーが正気に戻ったのか、その黒い影も無くなり現れたのはただの女の子だったが、彼女の身体は黒く染まっていた。それに泣きながら何かを語り始めた。

 

 

 

 

立花響オルタ

「ワタシノコブシハ、ダレカトテヲツナグタメニアルノニ・・・・モウダレカヲキズツケルノハヤダヨ・・・・。」 

 

 

 

不思議と俺は彼女の所に近づいた。何だか放って置けなかったからだ。

 

 

 

ゆめ

「マスター!?」

 

 

政宗

「おい坊主!そいつに近づくと火傷じゃ済まされねーぞ!!」

 

 

 

 

二人はそう言ってるけど俺にはバーサーカーの狂化は解けているとわかっていた。だから彼女に近づいても問題ない。こんな風に手を繋ぐ事だって出来る。

 

 

 

 

剣城

「大丈夫だよ。その優しい心があれば、君は何度だって手を繋げる。こんな風にさ。」

 

 

 

 

安心したのか、バーサーカーの強張っていた表情が穏やかになり、徐々に笑顔になっていった。

 

 

 

立花響オルタ

「暖かい。未来(みく)以外に握られたのは初めてかも。」

 

 

剣城

「安心した?」

 

 

立花響オルタ

「うん。平気!ヘッチャラ!」

 

 

 

バーサーカーからオーブの様な光が舞い上がり、彼女の姿は段々薄れていってそのまま消えていった。やっぱり英霊だからか、幽霊が成仏するような感じだった。そんな末路を俺達は見送るしか出来なかったけど、彼女は死んだわけではない。自分の世界へと帰っていったのだから。

 

 

 

 

政宗

「あんたの連れはとんだギャンブラーだな。狂化が解けてなかったら間違いなくあの世行きだぜ。」

 

 

ゆめ

「多分マスターもわかってたと思いますよ。だからか近づけたと思います。」

 

 

政宗

「そうかい。で?あんた等一体何者なんだ。」

 

 

 

 

彼が質問するとゆめは直ぐ立ち上がって彼と向き合って紹介した。

 

 

 

 

ゆめ

「私はルーラー。聖杯戦争の裁定者です。」

 

 

政宗

「ルーラーだと?確か聖杯戦争を取り締まるサーヴァントだったか?そのお偉いさんがこんな所で何してんだ?」

 

 

ゆめ

「私達はこの冬木の聖杯を回収しに来ました。」

 

 

政宗

「聖杯だと?」

 

 

ゆめ

「残念ですが聖杯による願望機は正常に機能しません。なので貴方方の願いも叶える事が出来ません。」

 

 

 

 

俺は遠くからゆめ達の話を聞いていた。サーヴァント達には気の毒だけど聖杯が機能しないんなら仕方無いよな。

 

 

 

 

政宗

「そんな事だろうと思ったぜ。」

 

 

ゆめ

「気付いていたのですか。」

 

 

政宗

「最初っからイケすかねえparty(パーリィー)だったからな。正直俺自身も聖杯に賭ける望みなんざ持ち合わせちゃいねえ。」

 

 

 

 

え?そうなの?じゃあ何が目的なんだ。

 

 

 

 

政宗

「まあせっかくのparty(パーリィー)だ招待された以上楽しまなきゃな。」

 

 

 

俺は二人がそんな話をしている内に戻ってきた。なんか俺の知ってる伊達政宗とは違って、この人は喧嘩が好きみたいだ。

 

 

 

政宗

「そんでそこのcrazy boy(クレイジーボーイ)は何者なんだ。」

 

 

ゆめ

「彼は私のマスターです。」

 

 

剣城

「黒河剣城って言います。まあ一様魔術師です。」

 

 

政宗

「マスターだ!?なんだそりゃ!?」

 

 

 

この人マスターの存在を知らない!?俺とゆめは驚いてはいたが必死にこの人に説明した。だが彼の話も聞いていると、彼等は魔術師に召喚された訳ではなくて、聖杯に召喚されたらしい。

 

 

 

紅莉栖

[もしかすると、それが聖杯による暴走かもしれないわね。]

 

 

 

 

クリスティーナさんがいきなり通信で話題に入って来た。彼女の推測では、暴走した聖杯が七騎のサーヴァントをお構い無しに呼び出して戦わされていた事になる。そうなると彼等からしたら酷い話だ。

 

 

 

 

政宗

「要はあんた等暴走中の聖杯を黙らせてそれを回収する。そう言う事だな。」

 

 

ゆめ

「そうですけど?」

 

 

政宗

「OK!そのparty(パーリィー)俺も参戦する。」

 

 

ゆめ

「本当ですか!?」

 

 

政宗

「元々俺達のparty(パーリィー)だ。自分達のケツも拭けねえ程落ちぶれちゃいねえ。」

 

 

剣城

「ありがとう!」

 

 

 

この人が参戦すなら心強い。ルーラーであるゆめでも流石にここからの戦いはキツいし、凄く助かるよ。

 

 

 

政宗

sorry(ソーリー)。そういやまだ名乗ってなかったな。」

 

 

剣城

「名前って・・・・まさか真名も!?」

 

 

政宗

「もう聖杯戦争は終わりだろ?だったら隠す必要も無えしな。」

 

 

 

 

もう知ってるけどね。

 

 

 

 

政宗

剣士(セイバー)!奥州筆頭『伊達政宗(だてまさむね)』だ!よろしく頼むぜ!」

 

 

剣城、ゆめ

「よ・・・・よろしくお願いします。」

 

 

 

俺とゆめは気まずそうに返事をした。正直、俺とゆめも彼の正体に気付いていたからだ。

 

 

 

政宗

「おい、何だその最初から正体知ってましたみたいなリアクションは?」

 

 

 

政宗さん自身も自覚はあったんだね。

 

 

 

剣城

「右眼の眼帯に三日月兜と言ったら『伊達政宗』しかいないから。」

 

 

政宗

「OH!miss take(ミステイク)!!名を知られてるのは嬉しいが聖杯戦争じゃそれが命取りだ。」

 

 

剣城

「そうなの?別の世界同士のサーヴァントなら真名を知られても、お互いに存在を知らないから意味無いんじゃないかな?」

 

 

政宗

「だがあんたは俺の事を知っていた。それについてはどう説明する。」

 

 

剣城

「俺が貴方を知っていたのは、後世に名が知れ渡っていたから・・・・そうか!!」

 

 

政宗

「そう言う事だ。どうりでキャスターの野郎が俺の真名を知っていた訳だ。」

 

 

剣城

「キャスター?」

 

 

ゆめ

「セイバー以外にも生き残ってるサーヴァントがいるんですね!」

 

 

政宗

「まああと残ってるのは俺とキャスターだけだからな。」

 

 

 

 

そうか!ならキャスターにも協力を頼めば聖杯を止める事が出来る!!

 

 

 

 

政宗

「だが奴は損得で動くような男だ。この状況なら協力を受ける筈だが期待しない方がいい。」

 

 

剣城

「どんな人物なんですか?」

 

 

政宗

「『魔導王(まどうおう)』とか名乗ってたが、俺から見ればあれは魔王って言うより死神だな。」

 

 

剣城

「死神・・・・。」

 

 

 

話を聞いてるだけでそんな危険なサーヴァントを味方に付けていいのか不安になって来た。

 

 

 

ゆめ

「セイバー。案内をお願い出来ますか。」

 

 

政宗

「いいのか?地獄へ道案内する事になるぜ。」

 

 

ゆめ

「構いません。キャスターを味方に付けるためなら私は戦います。」

 

 

 

ゆめは話を聞いても動揺せずにキャスターと向かい合う事を決意していた。彼女のそんな姿を見て俺は情けなくなってきた。何考えてるんだ黒河剣城!!動揺すな!前を向け!怖気付くな!死ぬまで進め!彼女も覚悟を決めてるんだぞ!そう言い聞かせて俺も腹を括った。

 

 

 

政宗

「黒河剣城。あんたはどうする。」

 

 

剣城

「行きます!味方は一人でも多い方がいいから!」

 

 

政宗

「OK!二人共いい面構えになったじゃねえか!なら地獄の片道切符は三人分でいいな!」

 

 

 

 

俺達は政宗さんの案内でキャスターの所に向かった。その間ゆめは政宗さんから色々事情を聞いていた。

彼の話だと殆どのサーヴァントをキャスターが倒したらしく、政宗さんはランサーとさっきのバーサーカーを倒しただけだった。その間に起きた些細な出来事は無かったらしいが、キャスターなら何か知っているかも知れない。

そんな話をしている内に到着したが、ここって学校?

 

 

 

 

剣城

「『穂群原(ほむらばら)学園』?ここにキャスターが?」

 

 

政宗

「ここを拠点にしているからな。こっからは奴のkill(キル)ゾーンだ。慎重に行くぞ。」

 

 

剣城

「はい。」

 

 

ゆめ

「わかりました。」

 

 

 

 

校門を入り、校庭を通り過ぎて校舎の正面玄関前まで辿り着いたが、入り口から入ろうとした時、中から声が聞こえ来た。

 

 

 

 

アインズ

「勝手に人の家に土足で踏み込むとはいい度胸をしている。」

 

 

 

 

目の前に現れたのはローブを身に纏った大きな骸骨だった。彼がキャスターだと思うけど確かに政宗さんの言った通り、魔王と言うより死神だ。

 

 

 

ゆめ

「貴方がキャスターですね。私はルーラー。聖杯戦争の裁定者です。」

 

 

アインズ

「ルーラーだと?貴様の様な小娘が?」

 

 

 

 

ゆめはキャスターの前で堂々としているように見えていたが、身体全体で微動だにしていたのがわかった。内心ゆめも彼の威圧感に怯えていたのだ。俺なんて今でも逃げ出したいのに。

 

 

 

 

アインズ

「それでそのルーラーがこの私に何の用だ。セイバーと共闘して私に戦いを挑もうとする愚かな行為をしに来た訳では無い。話し合いに来たと言う所か。」

 

 

政宗

「まあそんな所だ。俺達はあんたをスカウトしに来ただけだ。」

 

 

アインズ

「なるほど。では話を聞かせて貰おう。」

 

 

 

ゆめと政宗さんはキャスターに俺達が来た目的と現状と俺の存在について説明し、そのまま聖杯回収の協力を要請する交渉に入った。そして全てを聞き終えた彼だが、直ぐに答えを出さなかった。

 

 

 

 

アインズ

「内容は理解した。それでルーラー。あれが君のマスターとやらか。」

 

 

ゆめ

「そうですが?」

 

 

アインズ

「彼と話をさせて欲しい。」

 

 

 

 

それを聞いてゆめと政宗さんは彼を睨んだ。どうやら彼が俺に対して何をするかわからないからだ。

 

 

 

アインズ

「安心しろ。彼と話をするだけだ。」

 

 

政宗

「よく言うぜ。奇妙な術で俺の心臓握り潰そうとしたり、更にはテメー以外の周りの時を止めてその隙に殺しに掛かったりと、イケスカねえ.気狂い(きちがい)マジックショーを披露しやがった奴をどう信じろって言うんだ。」

 

 

アインズ

「それを全て回避したのはお前が初めてだったがな。時間を止めたにも関わらず力尽くで自分の身体を動かすなど有り得ない話だ。」

 

 

 

もうめちゃくちゃだこの人達。

 

 

 

アインズ

「それに私が妙な動きをすればルーラーの特権であるクラススキルを使用すれば良いのではないか。」

 

 

ゆめ

「『神明裁決』ですね。その権限はありますが私はそれを使いたくありません。」

 

 

アインズ

「そうか。では約束しよう。君のマスターには手を出さない。それで彼との対話を許可して欲しい。」

 

 

ゆめ

「それはマスターに伺うのが礼儀ではありませんか。」

 

 

剣城

「俺はいいよ。キャスターとの対話を許可する。」

 

 

ゆめ

「だそうですよ。」

 

 

アインズ

「恩にきる。」

 

 

 

キャスターは玄関から出て俺に近づいて来た。やっぱり存在感が凄いな。

 

 

 

アインズ

「自己紹介が遅れてすまなかった。ルーラーのマスターよ。」

 

 

 

え?自己紹介?まさか真名を明かしてくれるの!?

 

 

 

 

アインズ

「我が真名は『アインズ・ウール・ゴウン』。『ナザリック地下大墳墓』の絶対的支配者である!!」

 

 

剣城

「俺は黒河剣城!機密組織アースの所属でルーラーのマスターです!」

 

 

 

 

なんか自己紹介で勢い負けしちゃった。存在感が凄すぎて押し潰されそうだ。

 

 

 

アインズ

「黒河剣城。君は魔術師にしては余りに非力だが、この私を前にして何故恐れない。君の中で恐怖は感じている筈だ。それとも生きる事を諦め開き直ったか。」

 

 

 

でもなんだろ?不思議と話し易い。存在感は圧倒的だし怖い筈なのに、その奥から彼なりの暖かさを感じる。

 

 

 

剣城

「貴方は悪い人ではないと思ったから。」

 

 

アインズ

「なんだと?」

 

 

剣城

「貴方は確かに無茶苦茶だけどそこにはちゃんとした道理があるからそうしている。そうではありませんか。」

 

 

アインズ

「ほう?死の支配者たる私を仏か神と勘違いしているのか。だとしたらとんだ愚か者だ。」

 

 

剣城

「そうかも知れない。でも貴方が与える死は善には安らかな死を、悪には苦痛な死をとそう言う拘りがある筈だ。さっきもゆめと政宗さんが警戒していたにも関わらず貴方は争う処か穏便に済ませようとした。本当に人間を下等種族として見てるなら真っ先に一番弱い俺を見せしめに殺しに掛かっていた筈。少なくとも貴方は善悪がハッキリしている人だと俺は思う。」

 

 

 

まあ彼を見て思った事を口にしたけど、よかったのかな?

 

 

 

アインズ

「中々・・・・面白い少年だ。実に興味深い。」

 

 

 

それって?

 

 

 

アインズ

「いいだろ。私もこのクエストに参加させて貰おう。」

 

 

剣城

「本当に!!」

 

 

アインズ

「この私を侮辱した聖杯を許す訳にはいかん。落とし前は付けさせてもらう。」

 

 

剣城

「ありがとう!」

 

 

 

なんか知らないけどキャスターの交渉に成功したぞ!!

 

 

 

剣城

「ゆめ!政宗さん!アインズさんOKだって!!」

 

 

 

けど二人はなんだかキョトンとした顔で驚いていた。

 

 

 

 

政宗

「あんたの相方一体何者なんだ?あのキャスターを口説き落とすとはとんでもねえ坊主だ。」

 

 

ゆめ

「私もこの冬木に来る前から知り合ったばかりですけど、不思議と彼は私達に当たり前のように接して来ます。例えどんな相手でも。」

 

 

政宗

「おまけに先見の目も持ってやがる。」

 

 

ゆめ

「どう言う事ですか。」

 

 

政宗

「さっきのバーサーカーもそうだが、奴の狂化が解けたのを見計らって近づいていたし、キャスターが坊主との対談を申し出た時、あんたは止めようとしたが奴はそのチャンスを見逃さなかった。並大抵で出来る芸当じゃねえ。」

 

 

ゆめ

「そうなんだ。」

 

 

 

 

何か話しているみたいだったけど、俺とアインズさんは二人と合流した。

 

 

 

剣城

「二人共どうかした?」

 

 

政宗

「なんでもねえ。」

 

 

ゆめ

「マスターは凄いなあって話してただけだよ。」

 

 

剣城

「俺が?そんな大した人間じゃないよ。」

 

 

アインズ

「いや、私も彼女達と同じ意見だ。」

 

 

剣城

「そうなの?」

 

 

ゆめ

「そうだよ!だから自身を持って!マスター!」

 

 

 

 

正直自覚は無かった。俺は彼等に慕われる程の人物じゃない事くらい知っていたからだ。多分皆んなの気の所為だと思う。

 

 

 

アインズ

「それはそうと、君達が目指している『柳洞寺』に聖杯はあるのだな。」

 

 

剣城

「そうですけど?」

 

 

アインズ

「歩いて行くのも面倒だ。私のスキルを使って一気に行くぞ。」

 

 

 

 

 

そんな事まで出来るの!?

 

 

 

 

政宗

「アンタにしちゃ気が効くじゃねえか。」

 

 

ゆめ

「ではキャスターお願いします。」

 

 

 

 

俺達はアインズさんの服に掴まった。

 

 

 

 

アインズ

「グレーター!テレポーテーション!!」

 

 

 

 

なんか一瞬テンションおかしかったけど大丈夫なの!?とツッコミを入れていたらいつの間にかお寺に着いていた。

 

 

 

剣城

「ここが柳洞寺。」

 

 

紅莉栖

[そう。そこに聖杯がある筈だけど。]

 

 

 

辺りを見渡したけどそれらしい物は何処にも無かった。するとゆめや政宗さん、アインズさんが空を見上げていた。するとまるで皆既日食なんかに良く出る光の円の中心に、金色の鎧を纏った黒髪の男が宙を浮いてその場に君臨していた。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「ようやく来たか。雑種共。」

 

 

 

今、冬木での戦いが終わりを迎えようとしていた。




英霊紹介



真名:『伊達(だて)政宗(まさむね)

クラス:『剣士(セイバー)

宝具:『JUMPING JACK BLAKER(ジャンピングジャックブレイカー)

作品名:『戦国BASARA』『戦国BASARA弐』『劇場版 戦国BASARA The Last Party』




プロフィール
奥州(現在の宮城県)を領地に持つ若き戦国武将。冷静で柔軟な思考を持ち合わせており、武略や智略にも長けている。暴走族風の甲冑や巧みな英語での会話など、史実とは掛け離れた風貌をしている。ライバルは戦国武将『真田幸村』であり、彼を前にすると持ち前の冷静さを抑えられなくなり、対決したがる程の野心を持っている。


『戦国BASARA Judge End』や『学園BASARA』にも同様の人物は登場しているが、今回聖杯が召喚した『伊達政宗』は上記の作品から召喚されたと思われる。












真名:『アインズ・ウール・ゴウン』

クラス:『魔術師(キャスター)

宝具:『失墜の天空(フォールンダウン)

作品名:『OVER LORD(オーバーロード)』『OVER LORD(オーバーロード)II』『OVER LORD(オーバーロード)Ⅲ』




プロフィール
『ナザリック地下大墳墓』のギルドマスターにして『魔導王』の異名を持つ大魔術師(マジックキャスター)のアンデッドである。だが『アインズ・ウール・ゴウン』は彼の真名ではなく、彼が所属していたギルドの名前であり、本来の真名は『モモンガ』と言う。更にこれが本来の彼の正体でも無く、ただの人間のサラリーマンであり、『モモンガ』は彼がゲーム内で作成したアバターである。


VRMMORPG『ユグドラシル』のサービス終了を一人待つモモンガであったが、終了時間と同時に彼はナザリックとそのNPC達と一緒に別世界に飛ばされてしまう。そこで彼は自分以外のユグドラシルプレイヤー、特にかつてのギルド仲間も来ている事を信じて、自身の存在を伝えようと行動に移す。幾多の戦いを潜り抜け、『エ・ランテル』と言う国を侵略し、魔導国を建国し『魔導王』として君臨した。










真名:『立花響オルタ』

クラス:『狂戦士(バーサーカー)

宝具:『???』

作品名:『戦姫絶唱シンフォギア』『戦姫絶唱シンフォギアG』




プロフィール
彼女の詳細は不明だが、自らの宝具により暴走を起こした事が何度もあった事があり、身勝手な聖杯の選定により、彼女はバーサーカーとして望まぬ戦地へと派遣された。







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第三話『七騎の大罪」

 

 

 

聖杯の場所がある柳洞寺(りゅうどうじ)に謎の男が現れた。

 

 

 

アインズ

「ルーラーよ。あれが聖杯の正体か。」

 

 

ゆめ

「いいえ。あれは紛れもなくサーヴァントです。ですが・・・・他のサーヴァントとは何か違う。」

 

 

 

 

あれがサーヴァント!?なら聖杯の回収に協力して貰おう!

 

 

 

 

剣城

「貴方はサーヴァントなのか!なら協力してくれ!そこにある聖杯を回収するには貴方の力も必要なんだ!」

 

 

 

 

だが彼は協力に応じる何処ろか俺を睨みつけた。何故だ!?

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「この俺が模様した聖杯戦争の最終戦を台無しにした挙句、俺の存在すら忘却し、更にはこの俺の所有物である聖杯を略奪するか!その罪状万死に値するぞ!黒河剣城!!」

 

 

剣城

「どうして俺の名前を!?」

 

 

 

 

会うのは初めてなのになんで俺の名前を知っているんだ!?

 

 

 

 

政宗

「あれはアンタの知り合いか?」

 

 

剣城

「いいえ。今日初めて会いました。」

 

 

 

 

この男なんで俺の名前を知っているんだ?

 

 

 

 

アインズ

「まあいい。貴様が聖杯戦争を仕組んだ主犯なら話が早い。ここで叩き潰す。」

 

 

政宗

「同感だな。散々見世物にしてきた見物料は支払ってもらわねえとな。」

 

 

ルシファードラゴン

「貴様等が?この俺を?」

 

 

 

宙に浮いていた男はクスクスと笑いながら降りて来た。俺は彼の笑い方に恐怖を感じていた。不気味な笑い声と言うより、相手を見下した強者の余裕にも見えたからだ。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「ハハハハハッ!!何とも愚かな冗談だ!高々犬の餌にしかならぬ白骨死体と痛痛しいコスプレ如きがこの俺を屠ると言うのか?何ともまた夢物語の様な戯言か!」

 

 

政宗

「夢物語かどうか・・・・確かめてみるか?二度と目覚めねえ悪夢にしてやるぜ!!」

 

 

 

 

堪忍袋の尾が切れた政宗さんが先にサーヴァントに突っ込んだ。

 

 

 

 

政宗

DEARTH BEAT(デスビート)!!」

 

 

 

だがサーヴァントは腕を組んだ状態のまま避けようとしなかった。いや避ける気がないのか?そして政宗さんの片手に持っていた三本の刀が、男の肩からにヒット瞬間、信じられない光景を目の当たりにした。だがサーヴァントは吹き飛ばされる何処ろか微動だにしていなかった。更に刀で斬り付けられてるにも関わらず切れるどころか男の肩に触れてるだけだった。

 

 

 

ルシファードラゴン

「つまらぬ曲芸は終わったか?コスプレ。」

 

 

政宗

impossible(インポッシブル)(ありえねえ)!」

 

 

ルシファードラゴン

「目障りだ。」

 

 

 

サーヴァントが軽く腕を振り払った途端政宗さんは吹き飛ばされてしまった。政宗さんは何とか着地出来たけど、この後どうすればいい。

 

 

 

アインズ

「セイバー!奴をこちらに誘導しろ!この私が灰も残らず消し去ってくれる!!」

 

 

政宗

「OK!ならアンタに任す!」

 

 

 

アインズさんは宝具を開放する気だ!それで彼を倒せるといいけど。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「その必要は無い。貴様の曲芸をあえて喰らってやる。有り難く思うがいい。」

 

 

 

なんだって!?しかもわざわざ自分からアインズさんに近づいた!?

 

 

 

アインズ

「貴様・・・・どう言うつもりだ。」

 

 

ルシファードラゴン

「言葉通りの意味だ。この俺が貴様の余興に付き合ってやると言うのだ。この俺の寛大さに敬意を表するがいい。」

 

 

アインズ

「そうか。なら遠慮はいらないようだ。貴様を骨の欠片も残さず抹消してやる!!」

 

 

 

するとアインズさんとサーヴァントの周辺に無数の魔法陣が一気に出現した。

 

 

 

政宗

「やべっ!!」

 

 

ゆめ

「マスター!!離れて!!」

 

 

 

 

俺達は急いでアインズさんから離れたその時だった。

 

 

 

アインズ

「超位魔法!!フォールンダウン!!」

 

 

 

周囲を覆っていた魔法陣が爆発するかの様にその空間を白い光で包まれた。しばらくすると光は段々と消えていき、現れたのは煙と巨大な窪みだった。やっと倒したんだと思っていた矢先、煙が晴れてくるとサーヴァントは何事も無かったようにその場に立っていた。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「だから言ったのだ。貴様は所詮「犬の餌にしかならぬ。」とな。」

 

 

アインズ

「く・・・・クソがぁぁぁぁ!!」

 

 

 

アインズさんがサーヴァントに殴りかかったが、彼はアインズさんの腕を軽々掴んだ。

 

 

 

ルシファードラゴン

「思った以上に短気な奴だ。カルシウム不足では無いのか。」

 

 

 

 

サーヴァントはアインズさんの腕を掴んだまま飛び上がり、政宗さんのいる方へ向かい、そのままアインズさんを政宗さん目掛けて投げ飛ばした。

 

 

 

アインズ

「己・・・・。」

 

 

政宗

「クソったれが・・・・。」

 

 

 

 

サーヴァントは再び地面に着地し、俺達の方を見て近づいて来た。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「さて、残るは貴様等だけになってしまったが、頼みのセイバーとキャスターは見ての通りだ。この俺の強さは最早把握済み、ならば潔く裁きを受けるがいい。」

 

 

 

 

確かに実力差は明確な筈なのに、このサーヴァントからは恐怖何処ろかなにも感じなかった。それにこの人の弱点見つけたかも!政宗さんとアインズさんは無理だったかもしれないけど、もしかしたらゆめなら勝てるかもしれない。

 

 

 

 

剣城

「ゆめ!もう君と俺が戦うしかない!行くよ!」

 

 

ゆめ

「無理だよ。」

 

 

 

 

ゆめ!?どうしたんだいきなり弱気になって!?

 

 

 

ゆめ

「マスターも見たでしょ?セイバーとキャスターだって歯が立たなかったんだよ。こんな私が・・・・アイドルの私が戦うなんて無理だよ。マスターだってそう言ってたでしょ!!アイドルである私が戦うなんておかしいって!!」

 

 

剣城

「確かにそう言った。でもそんな俺に君はこう言ってくれた。これはゆめじゃなきゃ出来ない事だからって。だから・・・・。」

 

 

 

 

俺はそのまま彼女を強く抱きしめた。

 

 

 

 

剣城

「俺は君のマスターになった。君の力になりたくて君と一緒にいる。」

 

 

ゆめ

「マスター。本当に私で勝てるの?」

 

 

 

俺はゆめを離して自信満々に言った。ゆめでなきゃあのサーヴァントは倒せない。

 

 

 

 

剣城

「ああ!俺はゆめを信じて戦う。だからゆめも俺を信じて戦って欲しい!」

 

 

ゆめ

「わかった。私、マスターを信じるよ!」

 

 

剣城

「よし!ならゆめ!あのサーヴァントに歌を歌ってくれ!」

 

 

ゆめ

「歌?それだけでいいの?」

 

 

 

 

俺はゆめに作戦の概要を説明した。と言っても宝具を発動させるだけなんだけどね。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「最後の遺言は終わったか。」

 

 

剣城

「いいや。終わるのはお前だサーヴァント。」

 

 

ルシファードラゴン

「なに?終わりだと?そこのルーラーの小娘か。言っておくが俺にクラススキルは通用しない。それでもなお勝算があると申すか。」

 

 

剣城

「ある!だから最後にお前の名前を聞いてやる!だから答えろ!!」

 

 

 

 

せめてクラスだけでもいい!この博打に勝てる情報を得られればいい!

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「いいだろ!冥土の土産に聞くがよい!我がクラスは『傲慢の剣士(プライドセイバー)』!『七騎の大罪』が一人にして傲慢の裁きを与えるサーヴァントぞ!!」

 

 

 

 

七騎の大罪?聞いた事ないな。でも傲慢・・・・やっぱりそうだったか!ならこの勝負俺達の勝ちだ!!

 

 

 

 

剣城

「プライドセイバー!この勝負俺達の勝ちだ!!」

 

 

ルシファードラゴン

「なに?」

 

 

剣城

「我が令呪を持って命ずる!!ルーラー虹野ゆめ!宝具『MUSIC OF DREAM』を発動!!更に覚醒礼装『太陽のドレス』を解放せよ!!」

 

 

ゆめ

「了解!!」

 

 

 

 

ゆめの衣装がドレスへと変化し、太陽のような暖かい光を放っていた。そして彼女の歌が始まった。

 

 

 

 

ゆめ

「ああ、大好きも大嫌いも、全部本当の私なんだ♪」

 

 

ルシファードラゴン

「何をする気かと思えば、この俺に歌を聞かせて何の意味が・・・・・!?」

 

 

 

 

ゆめが歌い始めた瞬間、プライドセイバーが突然苦しみ始めた。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「ええい小娘!!その忌々しい歌を止めろ!!」

 

 

 

 

だがゆめはやめずに歌い切ろうとしていた。そしてサビの部分に差し掛かった時だった。プライドセイバーが更に苦しみ出したのだ。

 

 

 

 

ゆめ

「まだ見ぬ私の事を、信じてくれる人、貴方に届けたい、音楽を奏でよう♪」

 

 

ルシファードラゴン

「止めろ!!カラダが・・・・体が熱い!!頭が割れる!!」

 

 

ゆめ

「差し出された掌に、雲一つない空に、直向(ひたむ)きな強さで輝きを渡そう、勇気よ星になれ♪」

 

 

ルシファードラゴン

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

するとプライドセイバーの額に令呪の様な模様が出て来て光り輝き、そのまま砕け散った。このまま行け!ゆめ!!

 

 

 

ゆめ

「ララララーララ♪鳴り響けMUSIC♪ララララーララ♪星のツバサで♪ラララーララ♪舞い上がれMUSIC♪ララララーララ♪」

 

 

 

 

ゆめは歌い終わり、曲も最後のパートが終わった頃には、プライドセイバーは廃人と化した様に立ち竦んでいた。

 

 

 

 

プライドセイバー

「バカ・・・・な。」

 

 

 

彼はそのまま倒れてしまった。勝った・・・・のか?

 

 

 

 

ゆめ

「やった!やったよマスター!!」

 

 

 

それを見たゆめが、大喜びしていきなり俺に抱きついて来た。よっぽど嬉しかったんだろうな。

 

 

 

ゆめ

「やっぱりマスターはすごいよ!!」

 

 

剣城

「そんな事ないよ。ゆめの昔話を聞いていなかったら勝てなかったし、一か八かの賭けだった。失敗したらどうなっていたか。」

 

 

政宗

「だがアンタはそのギャンブルに勝った。今は素直に喜べよ。」

 

 

 

 

瀕死の状態だった政宗さんとアインズさんが何事も無かった様に俺達と合流した。でも何でだ?さっきプライドセイバーにやられたはずじゃ?

 

 

 

 

剣城

「二人とも!?プライドセイバーにやられたはずなのにどうして!?」

 

 

アインズ

「恐らくルーラーが発動した宝具の影響だろう。彼女の宝具は味方のサーヴァントのステータスと宝具の威力を上昇させる能力があるようだ。」

 

 

政宗

「だから今テンションMAXって訳よ。」

 

 

ゆめ

「私の宝具が。」

 

 

 

ゆめの宝具ってそんなにすごい能力だったのか。プライドセイバーを倒すのに解放しただけだったけど、政宗さん達までパワーアップしていたのか。どうしよう、プライドセイバーは倒しちゃったし、二人の有り余った力をどこで解放しよう。

 

とか思ってた時、ゆめが倒れていたプライドセイバーの方を見て悲しい顔をしていた。何か思うところがあるのかな?

 

 

 

 

剣城

「ゆめ?」

 

 

ゆめ

「私の歌は、いろんな人達を幸せにしてあげる歌なのに・・・・彼は私の歌を聞いて苦しんでた。」

 

 

剣城

「それは違う!!現に政宗さんとアインズさんを元気付けたじゃないか!!君の宝具は誰かを傷つける為の歌じゃない!!」

 

 

ゆめ

「じゃあどうしてプライドセイバーは苦しみながら倒れたの!!彼にこんな苦しみを与えるなら私・・・・。」

 

 

ルシファードラゴン

「飛んだ思い違いだ。勘違い小娘。」

 

 

 

ゆめと言い合いになっていたその時、倒した筈のプライドセイバーが何事も無かった様に立っていた。

 

 

 

 

剣城

「そんな!?」

 

 

政宗

「テメーまだくたばってなかったのか!!」

 

 

ルシファードラゴン

「ええい喧しい!!貴様等雑種共と戯れ合う趣味などないわ!!」

 

 

 

勢い付いてたこっちが逆に一掃された!?

 

 

 

ルシファードラゴン

「俺は貴様に感謝している。貴様の凱歌のお陰で聖杯の呪縛から解き放たれた。今や戦闘の意思などない。」

 

 

ゆめ

「聖杯が貴方を縛っていた!?どうしてそんなことに!?」

 

 

ルシファードラゴン

「さあ、俺にもわからん。気付いた時には聖杯の代理者としてこの聖杯戦争を仕切っていた。」

 

 

 

 

じゃあ、あの時プライドセイバーに浮き出てた模様は聖杯と契約していた令呪みたいな物か?まさか彼も聖杯の被害者だったなんて。

 

 

 

ルシファードラゴン

「それにしても、よく俺の弱点がわかったな。」

 

 

剣城

「貴方は言っていた。「傲慢の裁きを下すサーヴァント」と。政宗さんもアインズさんも自分の力に奢っていから貴方に攻撃が効かなかった。けどゆめにはそれがなかった。つまり貴方は無実の罪が弱点と言う事になる。」

 

 

政宗

「なるほどな!確かにキャスターは傲慢の塊みてーな奴だからな。」

 

 

アインズ

「今ここで死にたいのか。」

 

 

 

なんかお互い煽り始めたけど暴れないかな。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「だがルーラーの小娘だけは慢心も奢りも無かった。ならば問おう!!貴様は自身の世界で何をしていた!!」

 

 

 

プライドセイバーに聞かれたゆめは真剣な表情で答えようとしていた。これ俺と初めて会った時と同じ質問だよな。

 

 

 

ゆめ

「アイドルをやっていました。」

 

 

 

すると彼女は俺と同じ笑ってそう答えたが、アインズさんとプライドセイバーは唖然としていたけど、政宗さんは首を傾げていた。多分アイドル自体が何なのかわかってないようだ。

 

 

 

政宗

「おい、アイドルって何だ?」

 

 

アインズ

「お前の時代で言う所の芸者さんだ。」

 

 

政宗

「ああOK!!踊り子だな!!通りで派手なperformance(パフォーマンス)だと思ったぜ!」

 

 

プライドセイバー

「なるほどな・・・・ルーラーのクラスに選定されたのならそれ相応の実力者とみよう。だが!貴様は自信を奢らず慢心もせず、更なる高みを目指し精進して来たと見ていいな!!」

 

 

ゆめ

「はい!!それが私のアイカツだから!!」

 

 

政宗

「で、アイカツって何だ?」

 

 

アインズ

「知らん!!本人に直接聞け!!」

 

 

剣城

「えーっと・・・・『アイドル活動』略して『アイカツ』です。」

 

 

アインズ

「それは何か?就活や婚活のようなものか?」

 

 

剣城

「そうだと思います。」

 

 

 

まあ、俺も良くわからないけど・・・・ん?てかアインズさん、ファンタジーの世界から来た住人の筈なのになんで就活や婚活の事を知っていたんだろう?

 

 

 

ルシファードラゴン

「そうか。ならば納得しよう。そして貴様にこれを贈呈しよう。」

 

 

 

彼は空間の入り口を作り出し、金の器のような物を取り出した・・・・まさか聖杯!?

 

 

 

ゆめ

「これって聖杯!」

 

 

ルシファードラゴン

「俺には過ぎた代物だ。貴様にくれてやる。」

 

 

 

話も収まったところだし、聖杯を彼について色々聞かないと!『七騎の大罪』についても聞きたい事が山ほどあるんだ!

 

 

 

 

剣城

「あの、七騎の大罪って何ですか!貴方達は何者何ですか!貴方の様に他のサーヴァントも聖杯によって支配されているんですか!答えてください!!」

 

 

 

色々問い詰めてみたけど、プライドセイバーは黙ったままだった。しばらくすると彼はようやく話す様になったけど気が乗らない様子だった。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

大賢者(グランドマスター)の質問には答えてやりたいがそれは叶わぬ様だ。」

 

 

 

 

プライドセイバーの身体からオーブの様な光が空に上がっていった。そう、バーサーカーの時と同じサーヴァントが消える現象が起きていたからだ。プライドセイバーとの契約が聖杯から断ち切れた今、もはや存在させる意味はなくなった。それは政宗さんとアインズさんも一緒だった。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「聞け!グランドマスター!!」

 

 

 

 

僅かな残り時間で俺に何かを伝えようとしていた。

 

 

 

 

ルシファードラゴン

「七騎の大罪を再び集結させ、来たるべき厄災に備えよ!!」

 

 

剣城

「ちょっと待って!!グランドマスターって何!?厄災って何が起こるの!?」

 

 

 

 

だが聞く暇もなくプライドセイバーはその姿を消した。

 

 

 

政宗

「よくわかんねー野郎だったが、もうparty(パーリィー)はお開きだな。」

 

 

 

 

気付いた時には政宗さん達も光になって消えようとしていた。

 

 

 

 

政宗

「短い間だったが、楽しかったぜ。黒河剣城。」

 

 

アインズ

「最後は君の役に立てなかったが、事が済んで何よりだ。」

 

 

剣城

「俺の方こそありがとうございました。」

 

 

政宗

「それとルーラー!あんたいい大将に巡り会えたな!」

 

 

アインズ

「プライドセイバーの話から察するに、君達の冒険は苦難の道のりだろう。今後とも、彼を支えてやれ。」

 

 

ゆめ

「はい!わかりました!」

 

 

政宗

「縁があったらまた会おうぜ!see you next time!」

 

 

アインズ

「さらばだ。」

 

 

 

 

二人共、そう言って消えていった。謎は残されたままだけど、ここから始まるんだ。世界を救済する為の戦いが。

 

 

 

剣城

「帰ろう。ゆめ。」

 

 

ゆめ

「うん!」

 

 

 

するとクリスティーナさんが気を遣ってくれたのか、帰りのゲートを開いてくれた。俺達はアースへと帰還した。 

 

 

 

 

 




英霊紹介



真名:『魔天竜王ルシファードラゴン』


クラス:『傲慢の剣士(プライドセイバー)


宝具:『無限聖剣(インフィニティソード)




プロフィール
『七騎の大罪』の一人で『魔天竜王』とも呼ばれている。短髪の黒髪と真紅の瞳に黄金の甲冑を着けた派手好きな男である。竜王である為、彼の正体はドラゴンなのだが普段は人間か竜人に変身する事が多い。

彼の詳細はここまで不明であるが『七騎の大罪』が再び集結する時、その真実が明かされる。






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エピローグ

 

 

 

 

俺とゆめはゲートを抜けてアースに帰還した。ゲートを出て着地すると、そこにはクリスティーナさんが俺達を出迎えてくれた。俺は、彼女を見て無事に帰って来られた安心感があった。

 

 

 

紅莉栖

「お帰り。」

 

 

ゆめ

「ただいま!クリスティーナさん!」

 

 

剣城

「ただいま帰りました。」

 

 

紅莉栖

「それで感想は。」

 

 

剣城

「まるで夢の世界にいるようでした。今でも自分があそこにいたなんて信じられません。でも・・・・やるべき事が見えてきました。」

 

 

紅莉栖

「そう。なら問題ないわね。」

 

 

 

 

俺達が話していると、そこにエルメロイ先生が数名の人達を連れて俺達のところに近づいて来た。

 

 

 

ロマニ

「いやーごめんごめん!本来なら僕が君等のオペレートを担当する筈だったのに、急用が入ったから少しばかり席を外していたんだが、まさかこんな事になってるなんて!」

 

 

クライド

「本当、無事で何よりだよ。」

 

 

レベッカ

「なになに!?新人さん!!」

 

 

 

 

何だか騒がしかった。そしてその中にはやっぱり神父も入っていた。彼は最初からアースの関係者だったようだ。

 

 

 

綺礼

「やはり君はこちら側の人間であったか。黒河剣城。」

 

 

剣城

「神父もアースの関係者だったんですね。先生と組んで俺を入れる為にワザと誘導した。そんな口振りでしたよ。」

 

 

綺礼

「人聞きが悪い。私はエルメロイ教授の後押しをしたまでに過ぎない。」

 

 

エルメロイ二世

「やはり貴方も黒河剣城に目を付けていましたか。言峯綺礼。」

 

 

綺礼

「彼には素質があった。それだけのこと。とは言え、選択したのは君だ。後悔はないのだろ。」

 

 

剣城

「はい!ですから・・・・ありがとうございました!!」

 

 

エルメロイ二世

「礼はいい。帰還したばかりで悪いが、彼等に自己紹介と冬木での報告を頼む。」

 

 

 

 

そう言えば先生と神父以外は初めて会うけどここの関係者かな?俺と同い年くらいの女の子もいるな。白衣を着た若いお兄さん。メガネを掛けたスーツ姿の頼りなさそうな男性もいる。

 

 

 

 

ロマ二

「僕は『ロマ二・アーキマン』。医術部門で班長をしている。今後は君達のオペレーターを担当する。因みに君やゆめのメディカルチェックも担当するから、今後ともよろしくね。」

 

 

クライド

「私は『クライド・エプソロッス』。このアースの所長を務めている。本業は時計塔で講師をしている。よろしく頼むよ。」

 

 

レベッカ

「私は『レベッカ・スカーレット・ティファニー』。君と同じ魔術師で、このアースの職員なの!因みに私もマスター候補だからよろしくね!」

 

 

 

 

クライドさんは時計塔の講師で、レベッカさんは俺と同じマスターと、驚く事もいっぱいあったけど、皆んないい人達で安心した。

 

 

 

 

剣城

「黒河剣城です!よろしくお願いします!」

 

 

 

 

俺はここで何とかやっていけそうだな。

 

 

 

 

 

ロマ二

「では、聞かせてくれるかな。君達の旅話を。」

 

 

 

 

俺達はロマ二さんに冬木で起きた事を説明した。冬木に出現した仮面の魔獣、政宗さんやアインズさんのようなサーヴァント、そして七騎の大罪プライドセイバーの存在を説明した。それを聞いたロマ二さんも先生も皆んな信じられない顔をしていた。

 

 

 

 

ロマニ

「『七騎の大罪』か。その内の一人『傲慢の剣士(プライドセイバー)』が、聖杯の所有権を主張して聖杯戦争を起こしていた。だがそれは聖杯の暴走により彼自身もその支配下に置かれていた。そう言う事だね。」

 

 

剣城

「聖杯の呪縛から彼を解放した後こんな事を伝えて来ました。「七騎の大罪を再び集結させ、来るべき厄災に備えよ。」と。」

 

 

ロマ二

「どうやら『次元崩壊現象』と何等かの関わりがある事は確かなようだ。それが七騎の大罪によるものか聖杯によるものかはわからないけどね。」

 

 

 

もし次元崩壊現象と関係しているなら、七騎の大罪のサーヴァント全てを倒せば現実世界の崩壊を免れるかもしれない。

 

 

 

ロマ二

「まあ何にしてもこれからよろしく頼むよ。」

 

 

 

 

これから世界に何が起こるかわからないけど、二次元と現実世界を救う為に俺達は戦う。この物語は、人々が夢を描いた物語である。

 

 

 

 

 

 



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第一章:頂上決戦『エベレスト』
第一話『黒の陣営』


 

 

 

 

 

あの冬木の事件から二日がたった。俺は相変わらず『エルメロイ教室』でいつもの日常を過ごしている。少しだけ違っていたのは先生の授業を真面目に受けているくらいかな。

 

 

 

スヴィン

「おい。剣城の奴最近どうしたんだ?」

 

 

フラット

「本当だよね。真面目に勉強しだすんだもん。ガールフレンドでも出来たのかな?」

 

 

スヴィン

「いや、それはないが。」

 

 

 

 

お〜いそこの二人今授業中だぞ〜。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「そんなに私の授業は退屈か。フラット・エスカルドス。スヴィン・グラシュエート。」

 

 

スヴィン

「いやッ!その!!」

 

 

フラット

「これは!!黒河剣城君のこの先生に対する授業態度の変化があまりに急激だった為、何か裏があるのではないかと思い彼を監視しつつ考察してた次第であります!!」

 

 

エルメロイ二世

「そんな下らぬ考察をしている暇があるなら、剣城の授業態度を見習わぬかぁ!!」

 

 

 

 

ああ・・・・怒られてる。まあ俺が真面目に勉強し出したのは、先の冬木の戦いでの力不足を感じていたからだ。これじゃあゆめの力になるなんて無理な話だったから、魔術を少しでも身につけようと日夜勉強に励んでいるのだ。

 

 

 

 

イヴェット

「ねえねえ剣城君!なんで真面目に勉強なんか始めたの?この前まで上の空だったのに!」

 

 

 

 

授業が終わると、生徒が一人話しかけて来た。ピンクの髪に眼帯をしている彼女は『イヴェット・L・レーマン』。魔眼を取り扱う魔術師で、このエルメロイ教室の生徒である。ただこいつ、状況に応じては平気で友達を裏切る事もある。

 

 

 

オルガマリー

「確かにそうよね。魔術に興味がない貴方が、人が変わったように勉強し始めた。何企んでるの。」

 

 

 

銀髪のロングストレートの彼女は『オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア』。天体魔術を得意とする『アニムスフィア家』の娘であり、彼の父は先生と同じロードの一人である。彼女自身も優秀な魔術師であるのだが、何故かこのエルメロイ教室の生徒なのだ。何でも『魔眼蒐集列車事件』を切っ掛けに先生に興味を持ったらしい。

 

 

 

 

グレイ

「でもいい事だと思いますよ。」

 

 

アット

「ナンカアヤシイナ!オマエヤバイジケンニデモクビツッコンデンジャネーダロウナ!!」

 

 

グレイ

「アット!!」

 

 

 

 

彼女は『グレイ』とその四角いギューブは使い魔の『アット』。先生の内弟子でいつもフードを被って素顔を隠している。謎が多い女性だ。

 

 

 

 

剣城

「なんか、今日は皆んな驚いてばっかだね。」

 

 

イヴェット

「そりゃ驚くよ。勉強もしない、成績悪い、やる気無しの剣城君が真面目になってるんだよ!?何かあったかと思っちゃうもん!」

 

 

オルガマリー

「厄災でも降ってくるんじゃないの。」

 

 

 

 

何かそれ神父も言ってた!?

 

 

 

 

グレイ

「あの・・・・剣城君。」

 

 

剣城

「何?」

 

 

グレイ

「本当に何も無いんだよね。」

 

 

 

グレイの質問に妙な違和感を感じた。まさか!?勘付かれてる!?

 

 

 

 

剣城

「どうしてそんな質問を?」

 

 

グレイ

「師匠もこの頃様子が変で、接といつも同行してたのに最近突き放す事が多くなっているから、剣城君の急に勉強し出した件と何か関係があるんじゃないかって。」

 

 

 

 

まずい、先生の行動に勘付いてきてる!!

 

 

 

 

イヴェット

「そんな事ある訳ないでしょ!変に考え過ぎだよ!」

 

 

オルガマリー

「そうよ。暇な剣城と無駄に忙しいロードじゃ話にならないんだから!」

 

 

 

 

何か腹立つけど我慢我慢!

 

 

 

 

フラット

「ああ!!ずるいぞ剣城君!!自分ばかりモテモテで!!さては女の子にモテたいから真面目に授業受けてたな!!」

 

 

 

 

バカのフラットが入ってきて女性陣は呆れていた。まあ彼の事は流す事にした。

その後の講義を終わらせて、俺は急いでアースに向かった。司令室でお茶をしながら、ゆめとドクターに今日の話をすると勿論笑われた。

 

 

 

ゆめ

「何それ面白い!!」

 

 

ロマ二

「そのフラット君も中々の曲者だね!」

 

 

 

二人共その話を聞いて大笑いしていた。でもその後ドクターは深刻な顔をし始めた。

 

 

 

 

ロマ二

「それにしてもそのグレイちゃんは少し問題かもね。そこまで勘付かれてるとなると、見つかるのも時間の問題だ。」

 

 

 

グレイの件も勿論話した。やっぱり無視は出来ないからだ。

 

 

 

ゆめ

「でもマスターは嫌じゃない?友達に隠し事するのって。」

 

 

剣城

「良くは無いさ。でもだからって正直に話したら今度はゆめとクリスティーナさんが大変な事に巻き込まれる。だから今は機を見て区切りが付いたら話そうと思う。」

 

 

ゆめ

「何かごめん。私達の為に気を遣ってくれて。」

 

 

剣城

「俺は良いよ。ゆめに悲しい思いをさせないよう勝手にやってるだけだから。」

 

 

ゆめ

「ありがとう!マスター!」

 

 

ロマ二

「とは言え、これはロードに報告するしかないな。」

 

 

エルメロイ二世

「私に何の報告だ?」

 

 

ロマ二

「貴方のお弟子さんが優秀過ぎてここがバレそうなんですよ!」

 

 

 

噂をすれば、丁度いい所に先生がやって来た。俺達はグレイの件について先生に説明した。けど何故か先生は喜んでいた。

 

 

 

エルメロイ二世

「流石は内弟子だ。まさかここまで成長していたとはな。」

 

 

ロマ二

「感心してる場合ですか?」

 

 

エルメロイ二世

「安心しろ。今回の最終段階が済めば、アースは正常に稼働する。私が不在の時でも対処が効くはずだ。そうなれば私が時計塔に在席している限り、グレイの疑いも少しずつ晴れていくだろう。」

 

 

 

でも最終段階ってなんだろ?

 

 

 

エルメロイ二世

「剣城、今すぐ『シミュレーションルーム』に来い。」

 

 

剣城

「はい!わかりました。」

 

 

 

俺達は先生に連れて行かれて広大な白い空間のような部屋に案内された。一体ここで何をさせる気だ?

 

 

 

エルメロイ二世

「今から君にサーヴァントを召喚してもらう。」

 

 

剣城

「サーヴァントをですか!?」

 

 

エルメロイ二世

「そうだ。これから先の戦いは冬木の様には甘くはない。ゆめがルーラーとはいえ手が足りん時がある。そこで新たに七騎のサーヴァントを召喚し、あらゆる戦況に対応できるようにしてもらう。」

 

 

ロマ二

「なるほど、確かにその方が彼女の負担も減りますね。」

 

 

エルメロイ二世

「では召喚に際しての説明をする。」

 

 

 

俺はサーヴァントの召喚の儀式の説明を受けた。とは言っても詠唱と魔法陣の準備だけだったけどね。

 

 

 

エルメロイ二世

「聖杯戦争での召喚の儀式はある条件が必要だが、被造物のサーヴァントにそれは無用だ。魔法陣と彼等の触媒、後は詠唱を唱えれば十分だ。」

 

 

 

既に準備は完了し、俺はサーヴァント召喚の詠唱を唱えた。

 

 

 

 

剣城

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。手を向けるは"黒"。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より()で、王国に(いた)三叉路(さんさろ)は循環せよ。閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ満たされる刻を破却する。」

 

 

 

 

その時、詠唱中に頭の中で先生に説明されていない項目が浮かび上がって来た。

 

 

 

 

剣城

「"その双剣は疾風(はやて)の如く切り裂き"。"その槍は蒼き閃光を放ち"。"その軍刀は矢の如く放たれ"。"その巨体は黒き咆哮に(とどろ)き"。"その二つの輝きは人々に幸福を与え"。"その短剣は小鬼を殺し"。"その力は全てを飲み込み我物とする"。」

 

 

 

 

その後は説明された時の詠唱に戻った。

 

 

 

 

剣城

「今ここに告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意この(ことわり)に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総(とこよすべ)ての善と成る者、我は常世総(とこよすべ)ての悪を()く者。汝三大(さんだい)言霊(ことだま)(まと)七天(しちてん)、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

 

 

 

詠唱中に起きていた事だが、魔法陣が青く光、そこから人の様なものが姿を現した。詠唱が終わると魔法陣から人影らしきものが現れた。

 

 

 

 

キリト

「セイバー。」

 

 

セルベリア

「ランサー。」

 

 

アルタイル

「アーチャー。」

 

 

コンゴウ

「ライダー。」

 

 

あいね、みお

「キャスター。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「アサシン。」

 

 

リムル

「バーサーカー。」

 

 

キリト、セルベリア、アルタイル、コンゴウ、あいね、みお、ゴブリンスレイヤー、リムル

「召喚の招きに従い参上した。我等"黒剣を掲し黒の英霊(サーヴァント)"。我等が運命はマスターと共にあり。盟約に従い、我等は貴方の剣となるとここに誓いましょう。」

 

 

 

彼等は全員俺に忠義を尽くすかの様に頭を下げ、契約完了の証を此処に示した。これで八人のサーヴァントが無事に召喚され・・・・八人!?

 

 

 

ゆめ

「あいねちゃん!みおちゃん!」

 

 

あいね、みお

「ゆめちゃん!」

 

 

 

 

するとゆめはキャスターと知り合いなのか、二人のサーヴァントは直ぐに立ち上がってゆめに駆け寄って来た。でもどうして八人なんだ?サーヴァントは七人の筈だけど?

 

 

 

みお

「驚いた、ゆめちゃんも召喚されたのね。」

 

 

あいね

「またゆめちゃんと一緒にアイカツ出来るんだ!」

 

 

 

でも彼女達を引き当てたのは正解だったな。ゆめと同じ世界から来たサーヴァントなら彼女自身の不安も少しは取り除ける。

 

 

 

セルベリア

「そこのキャスター共!!」

 

 

 

急に怒鳴り声を上げたのは銀髪の長い髪に赤い瞳をした女性だった。凄く凛々しいけど軍人かな?

 

 

 

セルベリア

「マスターの許可なしに勝手な行動をした挙句挨拶もないとは無礼だぞ!!」

 

 

あいね

「ごめんなさい!!」

 

 

 

 

それに驚いた彼女は頭を下げていた。やっぱりこの人軍人だな。すると騒ぎを聞きつけて他のサーヴァント達も集まって来た。

 

 

 

キリト

「まあまあ落ち着いてくれよランサー。」

 

 

セルベリア

「規律を守れぬサーヴァントなど言語道断だ!」

 

 

アルタイル

「それを守れる奴がいたらの話ではあるがな。」

 

 

リムル

「てか召喚されたばっかなんだから規律も何も無いけどな。」

 

 

 

 

何か・・・・強そうだけどこの仲違い、先行き不安だな。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「これから君が指揮していく『黒の陣営』のサーヴァント達だ。手は焼くかもしれんがそれも役目だ。」

 

 

 

彼等を集めたチームが何故『黒の陣営』かと言うと、先生から説明を受けた後に衝撃の情報をくれたからだ。何と先月に『第五次聖杯戦争』が実際の冬木の地で終戦したらしい。

 

だが驚くのはこの後だった。どうやらルーマニアの『トゥリファス』と言う地でも大規模な聖杯戦争が行われていると言う事がわかった。それが『聖杯大戦』。計14騎の英霊が激突する聖杯戦争だ。だがこれは非公式であるため魔術協会は『裏聖杯戦争』と命名した。しかもまだ戦いは続いていると言う事だった。その召喚システムを利用させて貰ったのだ。しかも被造物のサーヴァント達は通常のサーヴァントと違って魔力の消費がかなり少ない。彼等は思ったよりも低燃費なのだ。

 

 

 

 

剣城

「じゃあ!お互い自己紹介しようか!勿論味方同士だから真名も明かしても大丈夫だよ。」

 

 

 

 

先ずは俺とゆめからだ。

 

 

 

剣城

「俺は黒河剣城。今日から君達のマスターになる魔術師だ。よろしく。」

 

 

ゆめ

「私は虹野ゆめ。クラスはルーラーなので皆さんのお世話をさせていただきます。わからない事があったら何でも聞いてください。」

 

 

 

 

ゆめの紹介も終わった所で先ずはセイバーから紹介して貰おうと思ったけど。

 

 

 

 

あいね

「マスター初めまして!私は『結城(ゆうき)あいね』!『スターハーモニー学園』アイドル科の高校二年生!みおと一緒に『ピュアパレット』って言うフレンズを組んでアイドル活動してるの!これからよろしくね!」

 

 

剣城

「よ・・・・よろしく?」

 

 

 

さっきゆめと話してたピンク色の髪の女の子が俺の手を握って挨拶して来た。いきなりだったので、セイバー自身も出るタイミングを見逃していた。

 

 

 

みお

「あいね!強引過ぎ!マスターが困っているでしょ!」

 

 

 

今度は水色髪みの女の子があいねに注意しながら彼女の隣に現れた。

 

 

 

 

みお

「初めましてマスター。私は『(みなと)みお』。クラスは『キャスター』よ。あいねと同じスターハーモニー学園の高校二年生。あいねとフレンズを組んでアイドル活動しているアイドルなの。これからよろしくね。」

 

 

あいね

「私もキャスターなんだよ!」

 

 

剣城

「そうなんだ・・・・でもなんでキャスターが二人も?」

 

 

 

召喚の儀式で何か問題があったのかな?

 

 

 

ゆめ

「ああ、やっぱりそうだ。」

 

 

剣城

「何かわかったの?」

 

 

ゆめ

「私のクラススキルの中に『真名看破(しんめいかんぱ)』って言う、他のサーヴァントの真名を見る事が出来るスキルがあるんだけど、二人の真名が全く別の名前で召喚されてるみたい。もし、あいねちゃんかみおちゃんのどちらかの名前で召喚されるなら二人のどちらかしか召喚出来ない筈。」

 

 

剣城

「その真名ってさっきあいねが言ってた。」

 

 

ゆめ

「ピュアパレット。それが二人の真名なんだよね?」

 

 

剣城

「コンビ名が真名になってるの!?」

 

 

 

 

やっぱり間違っていた!?

 

 

 

 

ロマニ

「剣城君の詠唱自体は一語一句間違えず唱えていたから問題は無い。もしかしたら彼女達ピュアパレットがイレギュラーかもしれないね。」

 

 

エルメロイ二世

「一騎のサーヴァントが複数単位で召喚されるのは過去の聖杯戦争に於いても現在行われているのもまるで事例がない。」

 

 

ロマニ

「つまり、人類史上初の二人で一騎のサーヴァントと言う事になる。」

 

 

 

 

それって凄い事なんじゃ!?

 

 

 

 

あいね

「よくわからないけど、凄いんだね!私達ピュアパレットが召喚されるなんて滅多に無い事なんだ!」

 

 

みお

「そんな私達を召喚したマスターも凄いけどね!」

 

 

セルベリア

「お前達が凄いかはさて置いて、使えぬ戦力なら即刻契約を破棄してもらうぞ。」

 

 

 

このランサー、やたらとキャスター達に突っかかるな。やっぱりあいねの態度が気に入らなかったのかな。

 

 

 

剣城

「貴女は?」

 

 

セルベリア

「私は東ヨーロッパ帝国連合軍ガリア方面侵攻部隊所属『セルベリア・ブレス』大佐であります。クラスは『ランサー』。本日よりこの部隊に配属する事になりました。以後お見知り置きを。」

 

 

剣城

「こちらこそよろしく。」

 

 

 

やっぱり軍人だったか。銀髪だからロシア兵かな?

 

 

 

 

 

キリト

「たく、キャスターとランサーに先起こされて出るタイミング見逃しちまったな。」

 

 

 

そう言えば、セイバーから紹介する筈だったのにあいね達のゴタゴタで出遅れていたからな。

 

 

 

キリト

「俺は『キリト』。ただのゲーム好きな中学生だ。これからよろしくな。」

 

 

剣城

「こちらこそよろしく。」

 

 

 

 

セイバーは至って普通だったのか何か安心した。そして今度は金髪でドレスを来た女性がはなしかけてきたか。

 

 

 

 

コンゴウ

「貴様がマスター(アドミラリティコード)か。」

 

 

剣城

「あど?いやなに?」

 

 

コンゴウ

「私は『霧の艦隊』第1巡航艦隊旗艦『大戦艦コンゴウ』だ。機関からの命令受託を待っているのだが、そのまま待機で承認していいか。」

 

 

剣城

「じゃあ質問。貴女の言う『アドミラリティコード』って何?」

 

 

コンゴウ

「何?貴様はアドミラリティコードでは無いのか?」

 

 

剣城

「だからそのアドミラリティコードってなんなの!?」

 

 

アルタイル

「彼女の世界で言う所の提督ようなものだ。」

 

 

 

 

コンゴウの専門用語らしき単語に着いて行けず、あたふたしていた時にアーチャーが教えてくれた。

 

 

 

 

アルタイル

「コンゴウ殿は人間では無く、簡略的に言えば高性能なAIを搭載した戦艦だ。人の姿をしているのは人間の感情をより理解するためにあるもの。その命令を出したアドミラリティコードは彼女達の指令プログラムのようなものだよ。」

 

 

コンゴウ

「アーチャー、何故私の事だけでなく、霧の艦隊の機密事項である情報を貴様が保有している。」

 

 

アルタイル

「君だけではない。ここにいる全てのサーヴァントの事を私は知っている。」

 

 

 

 

全てのサーヴァントを知っているってどう言う事だ。

 

 

 

 

剣城

「それで、アーチャー。君は何者なの?」

 

 

アルタイル

「これは失礼した。我がマスターよ。私は『アルタイル』。クラスは『アーチャー』。作品名は『Re:CREATORS(レクリエイターズ)』だ。さて何故私が他のサーヴァントについて知っているか、その質問に答えてあげよう。」

 

 

 

 

この後、アルタイルから驚きの力を聞かされた。彼女の宝具?と言ったらいいか。『森羅万象(ホロプシコン)』と呼ばれる能力があるのだが、その力は二次創作の力を自分の物にする能力だ。勿論その力を使って他の世界の介入も可能だが、それはあくまでRe:CREATORS内に登場する作品に限られた話であって、サーヴァントとして召喚されてからは、不安定だったアルタイルの能力が完全なものとなっていた。つまり、自身の世界にある作品だけでなく、他のサーヴァントの作品にも鑑賞、又は介入が自由に可能と言う事になる。

 

 

 

 

ロマニ

「ちょっと待ってくれ!!それだと君の力はアーチャーではなくルーラーと言った特殊クラスの域に達しているぞ!!」

 

 

 

 

当然そんなデタラメな能力を聞かされたドクターは驚くのは当たり前だ。

 

 

 

 

アルタイル

「そう言われてもな。私はルーラーとしての素質が無かったのだろう。だからアーチャーに弾き飛ばされたのだ。」

 

 

 

 

だからかな?彼女はこの現状にすごく手慣れている。もしかすると。

 

 

 

 

剣城

「アルタイル。君は自分の世界でもサーヴァントと似たような形で召喚された事があったの。」

 

 

アルタイル

「流石はマスターだ。察しがいい。英霊では無かったが、私は自身の能力で被造物を実体化させて召喚した事がある。とは言えある人物を殺す為に召喚したのだがな。」

 

 

剣城

「だからルーラーとして召喚されない心当たりがあったのか。」

 

 

アルタイル

「そう言う事だ。だがその悩みももう解決済みだ。今はこうしてマスターのサーヴァントととして共に歩むつもりだ。被造物のサーヴァントに関してわからない事があれば気兼ねなく聞いてくれ。」

 

 

剣城

「ありがとう。これからよろしく。」

 

 

 

 

まさかこんなサーヴァントが来るとは思わなかった。何か彼女の力が凄すぎてこの後は驚けないな。

 

 

 

 

リムル

「さて、とんでもチートスキルを持ったアーチャーの自己紹介も終わった所だし、次は俺の番だな!」

 

 

 

 

タイミングを、見計らってか、今度はバーサーカーが名乗り出てきた。

 

 

 

 

アルタイル

「これは否ことを言う。貴公の能力は他者を吸収するだけでは無く、それを自身の力として扱う能力では無かったか?」

 

 

リムル

「いきなりネタバレしてんじゃねーよ!!あとお前の方がよっぽど質が悪いだろうが!!」

 

 

 

アルタイルに文句を言うバーサーカーだが、まさか彼もアルタイルと同じ能力を持っているのか?

 

 

 

 

リムル

「俺はバーサーカーの『リムル・テンペスト』だ。見た目は人間に見えるけど実はスライムなんだ。」

 

 

 

人の姿をしていたリムルが、段々液状になって小さくなり、ぷにぷにした丸い球体になった。本当にスライムなんだ。

 

 

 

 

あいね

「かわいい!!」

 

 

 

あいねはリムルを持って抱き抱えた。まるで子猫みたいな扱いだな。

 

 

 

 

アルタイル

「あいね殿。言っておくがバーサーカーは見た目は愛くるしいスライムだが、中身は37歳独身の中年男性だ。破廉恥な事を考えてるかもしれん。即刻手放した方がいい。」

 

 

あいね

「そうなの?」

 

 

リムル

「そんなわけないだろ。アルタイルの言う事を鵜呑みにするな。」

 

 

 

まあ当の本人にその気は無いみたいだし、問題ないだろう。でも女の子に抱き抱えられるなんてちょっと羨ましい。

 

 

 

 

ゆめ

「マスタ〜?」

 

 

剣城

「何!?」

 

 

ゆめ

「今いやらしい事考えてなかった?」

 

 

剣城

「無い無い!!絶対無い!!」

 

 

ゆめ

「ならいいけど?」

 

 

 

 

びっくりした!ゆめったらいきなり俺の顔を覗き込んで疑り始めるんだもん。これから気をつけよう。

 

 

 

ゴブリンスレイヤー

「おいマスター。」

 

 

 

俺の後ろから突然アサシンが話しかけて来た。やっぱりアサシンだからかさっきから何も喋って来なかったな。

 

 

 

 

剣城

「そう言えばアサシンだったよね。皆んなに挨拶したら?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「『ゴブリンスレイヤー』。ギルドの連中はそう呼んでいた。」

 

 

 

 

呼んでいた?それって二つ名か何かか?それにゴブリンスレイヤーって事は、ゴブリン駆除の専門か何かのサーヴァントかな?

 

 

 

 

ゴブリンスレイヤー

「そんな事はどうでもいい。それよりマスター。ゴブリンは何処だ。」

 

 

剣城

「ゴブリン?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「俺を召喚したと言う事はゴブリンが現れたのだろ。ゴブリンは何処だ。数は?場所は?敵の規模は?」

 

 

剣城

「ストップ!ストップ!ゴブリンはいないから!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「そうか。」

 

 

 

なんてゴブリンに対する執着心なんだ。まあとりあえずこれで全員みたいだな。セイバーのキリトに関しては何もわからなかったけど、それは後々聞いていくか。

 

 

 

あいね

「これで皆んな友達だね!マスター!」

 

 

剣城

「友達なの?」

 

 

エルメロイ二世

「正確にはサーヴァントは魔術師の『使い魔』なのだがな。主従関係と言ったらいい。」

 

 

 

 

だそうだ。それにサーヴァントって召喚の最中に聖杯戦争に関してやこの時代の事が記憶される筈だけど、あいねにはそれが無いのかな?

 

 

 

 

コンゴウ

「ではアドミラリティコード。今後は出撃があるまで待機でいいか。」

 

 

剣城

「それは構わないけど?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「なら俺もそうしよう。ゴブリンが出たなら教えてくれ。」

 

 

 

 

何かこの二人、あまり人との交流を持たないのか、それだけ言ってシミュレーションルームから出ようとしていた。コンゴウは人との関わりに抵抗があるのはわかるけど、ゴブリンスレイヤーは全く無関心だもんな。

 

 

 

 

あいね

「待ってください!!」

 

 

 

 

だがあいねは放って置けないのか、二人に声を掛けた。立ち去ろうとした二人は足を止めてあいねの方を振り向いていた。

 

 

 

 

あいね

「皆んなこうして集まったんですしもっとお話ししません?私、コンゴウさんとゴブリンスレイヤーさんの事もっと知りたいですし、友達にもなりたい!」

 

 

コンゴウ

「キャスター。人間である貴様がこの私から情報を得てどうするつもりだ。何を企んでいる。」

 

 

あいね

「何も企んでいません!私ただコンゴウさんとお友達になりたいだけです!」

 

 

コンゴウ

「単刀直入に言うが、私は貴様に対しての信頼と言うものがまるで無い。同盟を組んでいるとは言え、これ以上貴様等と馴れ合うつもりは無いからだ。」

 

 

あいね

「でもこれから一緒に過ごす仲間ですし、やっぱりお互いの事をわかってた方が助け合いにもなるんじゃないですか!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「そこまでだキャスター。」

 

 

あいね

「ゴブリンスレイヤーさん?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「自分から他人に声を掛けて近づいて来る人間は、略奪を目的で行動する。言わばお前の言葉は詐欺師の声にしか聞こえない。ライダーが警戒するのも無理はないだろう。俺もお前を信用出来ない。」

 

 

 

 

あいねは、ただ純粋に二人と仲良くしたかっただけなのに、二人からすればあいねの行動は不信感を抱くだけだ。

 

 

 

 

みお

「あの!それって失礼じゃ無いですか!?あいねはお二人と友達になりたいだけです!悪い事を考えるような子じゃありません!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「口ではなんとでも言える。先ずは行動で示せ。出なければ話にならん。」

 

 

 

 

止めた方がいいな。

 

 

 

 

剣城

「ピュアパレット!そこまでだ!」

 

 

みお

「マスター!?」

 

 

剣城

「コンゴウとゴブリンスレイヤーは、出撃があるまでアースで待機!それでいいよね。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「わかった。なら施設を探索してくる。ゴブリンがいるかもしれない。」

 

 

コンゴウ

「別名あるまで待機する。それまでここの食堂で紅茶でも飲んでるとしよう。」

 

 

ロマニ

「なら僕が案内するよ!この施設で迷子になられたら大変だからね。」

 

 

コンゴウ

「必要ない。この施設の見取り図は先程システムにハッキングして入手した。後は一人で動ける。」

 

 

ロマニ

「いやそれやられると困るんだけど?」

 

 

コンゴウ

「安心しろ。アドミラリティコードの指令がない限り、干渉はしない。」

 

 

 

つまり俺の命令があったらやると言う事か!?いやしないけど!?

 

 

 

ゴブリンスレイヤー

「俺は行くぞ。」

 

 

コンゴウ

「後は頼む。」

 

 

 

二人はそのままシミュレーションルームを出た。コンゴウとゴブリンスレイヤーとは少しずつ打ち解けていけばいいか。ピュアパレットは納得してないみたいだけど?

 

 

 

みお

「マスター。なんで止めたの?あいねは何も悪い事するような子じゃないのよ。」

 

 

剣城

「俺もあいねがそんな奴とは思っていないよ。ただコンゴウとゴブリンスレイヤーはもう少し時間を掛けて打ち解けた方がいい。コンゴウはともかく、ゴブリンスレイヤーは気難し過ぎて何を考えてるのかわからないから、ちょっとずつ接して行こう。」

 

 

みお

「いろいろ考えてくれてるのね。」

 

 

剣城

「頼りないけど君達のマスターだからね。少し不満かい?」

 

 

みお

「ううん。最高のマスターよ。」

 

 

 

みおは納得してくれたみたいだけど、あいねはどうかな。

 

 

 

あいね

「決めた!私コンゴウさんとゴブリンスレイヤーさんと友達になる!!」

 

 

 

 

どうやら問題ないみたいだな。

 

 

 

 

リムル

「頑張れよ!俺も応援する!」

 

 

キリト

「そうだな、その時は力になる。」

 

 

 

 

キリトもリムルも協力してくれるみたいだしな。ただあいねの言葉があの二人に届くといいけど。

 

 

 

 

ゆめ

「あいねちゃんなら大丈夫だよマスター!」

 

 

剣城

「どう言う事?」

 

 

アルタイル

「あいね殿には『トモダチカラ』と言うコミュニケーションスキルが備わっている。そう時間は掛からずに彼等と打ち解けられるだろう。」

 

 

剣城

「そんな力があったんだ!」

 

 

ゆめ

「そう!だから大丈夫!」

 

 

 

凄いな、サーヴァントって。自分達の世界での知識と経験が、そのま力となって活かされていくのか。

 

 

 

 

紅莉栖

[お取り込み中の所いいかしら。]

 

 

 

 

すると放送でクリスティーナさんがアナウンスを呼びかけていた。どうやら俺達に用があったらしい。

 

 

 

 

紅莉栖

[新たな次元で聖杯が観測されたわ。至急『オペレーションルーム』に来てちょうだい。]

 

 

 

 

オペレーションルームは、俺がクリスティーナさんに最初に案内されたあのモニターが多かった部屋だ。俺達は急いでオペレーションルームに向かった。着いた時にはクリスティーナさんが不機嫌な表情で待っていたからだ。でもなんで機嫌が悪いんだ?

 

 

 

 

紅莉栖

「遅い!職員ならもっとテキパキ動きなさい!!」

 

 

ロマニ

「無茶言うな!!シミュレーションルームからここまで結構距離あるんだぞ!!」

 

 

 

 

確かに距離はあったけど、そんなに俺達遅かったのか?まあドクターがツッコミを入れるくらいだからその筈は無いけど、何が原因なんだ?

 

 

 

 

剣城

「あの?クリスティーナさん今日不機嫌なんですけど?」

 

 

エルメロイ二世

「君がサーヴァント召喚に立ち会えなかったから拗ねているのだろう。彼女に日時は伝えていたが、その時間帯に次元空間に歪みが生じてその対応に追われてしまって、結果今に至ると言う訳だ。」

 

 

 

 

何かお気の毒様だな。

 

 

 

 

紅莉栖

「それじゃあ説明するわ。」

 

 

 

こうしてクリスティーナさんから今回の次元場所とその詳細について説明された。ドクターも彼女が集めた情報を見ながら整理していた。

 

 

 

 

紅莉栖

「場所はネパールのヒマラヤ山脈にある最高峰の山『エベレスト』よ。」

 

 

剣城

「いきなり過酷な場所ですね。」

 

 

ゆめ

「極寒の寒さに吹雪に雪崩(なだれ)、こんな場所で戦ったら危ないのに。」

 

 

ロマニ

「残念だけど戦闘はもう始まっているみたいだ。けど妙なんだ。」

 

 

 

 

ドクターが情報を整理した所、現在エベレスト付近でサーヴァント同士が戦闘中なのだが、その動きが極めて奇妙だった。普通、サーヴァントは全員が敵であるのだが、エベレストで行われているのは四騎の英霊が一騎と交戦中だそうだ。正に四対一の一方的な戦いになっていると言う事だ。だが気になっている事もある。

 

 

 

 

ロマニ

「単騎のサーヴァントは逃げるどころか同盟を組んでいるサーヴァントに攻撃を仕掛けている。」

 

 

セルベリア

「つまりこの突入しているサーヴァントが敵であると言う事か。」

 

 

ロマニ

「その可能性はある。」

 

 

 

 

四騎の英霊が束になって掛かっても苦戦するほどの英霊なのか!?今回のサーヴァントもかなり強敵だな。

 

 

 

 

セルベリア

「マスター。無礼を承知でお聞きしたい事があります。今回の部隊編成は如何なされるおつもりですか。」

 

 

剣城

「ゆめと、それからセルベリア、貴女にも来て欲しい。雪山となると雪原の戦いなら貴女が慣れていそうだと思ったからだ。」

 

 

セルベリア

「お察しの通り、私は雪山の戦闘訓練はすでに完了しています。問題はありません。それと提案があります。」

 

 

剣城

「なに?」

 

 

セルベリア

「キャスターも今回の部隊に配備してもらえないでしょうか。」

 

 

剣城

「ピュアパレットを?」

 

 

あいね

「私達も!?」

 

 

セルベリア

「先ほども言った筈だ。「使えぬ戦力なら即刻契約を破棄してもらう。」と。お前達の実力を今回の出撃で私が見極めさせてもらう。それでよろしいですかマスター。」

 

 

剣城

「いいよ!しっかり判定してね。」

 

 

セルベリア

「はっ!」

 

 

 

 

セルベリアも口調は厳しいけど、優しい所はあるんだよな。なら彼女に任せても大丈夫だろう。俺にできる事は戦況に応じて活躍の場を造らないといけないな。

 

 

 

 

みお

「あいね!頑張りましょう!私達ピュアパレットなら乗り越えられる!」

 

 

あいね

「うん!セルベリアさんからのオーディション!絶対に合格しよう!」

 

 

 

 

オーディションって戦闘なのに?

 

 

 

 

ロマニ

「それとヒマラヤ山脈の登山口付近には集落があるが、こちらの世界にはそんなものは存在しない。」

 

 

剣城

「パラレルワールドですか。」

 

 

ロマニ

「そうだ。そこに聖杯も観測した。そして恐らく。」

 

 

剣城

「七騎の大罪の一人がいる。」

 

 

ロマニ

「そうだ。冬木の様にはいかないかもしれないから、ここからは僕等が全力でサポートする。だから無茶だけはしないで欲しい。」

 

 

 

そうだ。冬木の時はクリスティーナさんやゆめがいたから乗り越えられたけど、ここからはそうはいかない。プライドセイバーの様に油断しているサーヴァントだけじゃない筈だ。気を引き締めて行かないと!

 

 

 

剣城

「よし!今回出撃するサーヴァントはルーラー、ランサー、キャスター!以上!」

 

 

ゆめ

「うん!」

 

 

セルベリア

「了解。」

 

 

あいね、みお

「わかりました!」

 

 

 

俺達は転送装置まで行きゲートの前に揃った。

 

 

 

オペレーター

「エネルギー充電完了。座標軸固定。システムオールグリーン。これより次元転送による霊子転移(レイシフト)を開始します。」

 

 

 

 

俺達はエベレストのあるヒマラヤ山脈に向かった。そこで待っていたのは、戦闘狂のアーチャーとゆめの同郷で鋼の心を持ったキャスターだった。『ツンドラの歌姫』と呼ばれた彼女の心は、鋼の様に硬かった。

 

 

 

 




英霊紹介


黒の陣営
黒河剣城によって召喚された七騎のサーヴァント。現在『トゥリファス』で行われている聖杯大戦にて『ユグドミレニアム』の陣営からその名を取っている。




真名:『キリト』


クラス:『剣士(セイバー)


宝具:『スターバースト・ストリーム』


作品名:『ソードアート・オンライン』『ソードアート・オンラインII』『劇場版ソードアート・オンライン オーディナルスケール』『ソードアート・オンライン アリシゼーション』『ソードアート・オンライン アリシゼーションWar of Underworld』


プロフィール
VRMMORPGのSAOのテストプレイヤーにしてデスゲームと化したSAOを生き延びた少年である。SAO事件の後も様々な仮想空間での悪質な難事件を解決してきた。その為彼の宝具はさまざまな仮想空間にある為定まらず、サーヴァントとして召喚されてからは、最も親しい二刀流である『エリュシデータ』『ダークリパルサー』『聖剣エクスキャリバー』『ブラークヴェルト』『夜空の剣』『青薔薇の剣』に換装できる。因みにリアルの本名は『桐ヶ谷(きりがや)和人(かずと)』と言う。






真名:『セルベリア・ブレス』


クラス:『槍兵(ランサー)


宝具:『ヴァルキュリア』


作品名:『戦場のヴァルキュリア』『OVA 戦場のヴァルキュリア3 誰が為の銃瘡』


プロフィール
中部ガリア侵攻部隊指揮官の大佐で、マクシミリアン直属の『ドライ・シュテルン』のメンバーの一人。銀髪の長い髪と紅い瞳と言った特徴から、彼女は古代戦闘民族『ヴァルキュリア人』の末裔である。幼い頃、その研究機関の実験体にされ、逃げ出した所をマクシミリアンに拾われ、彼に忠誠を誓った。だが最後はマクシミリアンにヴァルキュリアの力で自爆を命じられ、結果敵の捕虜になる前に突撃してきたガリア軍を巻き込んで自爆した。
凛々しくも軍人らしさを持つ厳しい女性であるが、趣味が料理と言った一面もある。






真名:『アルタイル』


クラス:『弓兵(アーチャー)


宝具:『森羅万象(ホロプシコン)


作品名:『Re:CREATORS(レクリエイターズ)


プロフィール
彼女の製作者シマザキ・セツナこと『島崎(しまざき)由那(ゆな)』が描いた被造物。『軍服の姫君』と言う異名を持つ。セツナを間接的に殺した水篠(みずしの)颯太(そうた)に復讐する為、各作品から被造物を限界した張本人。激しい戦いの末、再びセツナと再開し、彼女と共に新しい物語を描く為の旅に出た。


プロフィール2
サーヴァントとして召喚されてからは、彼女の不完全だった宝具『森羅万象(ホロプシコン)』が完全な物となった為、他の作品の世界に介入する事が出来る様になった。





真名:『大戦艦コンゴウ』


クラス:『騎兵(ライダー)


宝具:『超重力砲(ちょうじゅうりょくほう)


作品名:『蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-』『劇場版 蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-DC』『劇場版 蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-Cadenza』


プロフィール
『霧の艦隊』東洋方面第1巡航艦隊旗艦の大戦艦。本体は船体そのものだが、普段は人間の姿をした『メンタルモデル』として活動している。以前は人間の思考を理解できなかったが、重巡洋艦『マヤ』や『イ-401』と接触する事によって少しずつその意味を理解しようとした。だが『超戦艦ムサシ』直轄の潜水艦に騙され暴走してしまう。イ-401のお陰で正気に戻り、友達と言う物を理解した。その後は友を助ける為、ムサシ直轄の艦隊『霧の生徒会』との戦いに参戦し、終戦後は妹の『大戦艦ヒエイ』と共に世界の海を航海している。







真名:『ピュアパレット』


クラス:『魔術師(キャスター)


宝具:『ありがとう⇄大丈夫』


作品名:『アイカツフレンズ!』『アイカツフレンズ!かがやきのジュエル!』『アイカツオンパレード!』


プロフィール
ピュアパレットと言う真名は『結城(ゆうき)あいね』と『(みなと)みお』の二人組のアイドルで結成されたフレンズ(ユニットのこと)である。仲良しコンビと言うより、ライバル的な関係でありながらお互い競い合う事が多いが、それが信頼関係に繋がっている。憧れであり強敵だった『ラブミーティア』を撃ち破り、さらに『ソルベッド王国』の猛吹雪を止ませるなど、かなり高い実績を残している。








真名:『ゴブリンスレイヤー』


クラス:『暗殺者(アサシン)


宝具:『小鬼殺し(ゴブリンスレイ)


作品名:『ゴブリンスレイヤー』




プロフィール
銀等級の冒険者ではあるが、ゴブリン専門の退治屋である。幼い頃にゴブリンの一団に村を襲撃され、姉を失った事から彼のゴブリンに対する復讐が始まった。優れた観察力と洞察力と何事も動じる事がない精神力を持っている。ギルドでゴブリンの討伐クエストをやり続けた結果、周りの冒険者達からゴブリンスレイヤーと呼ばれる様になる。さらにエルフからは『オルグボルグ』、ドワーフからは『髪切丸(かみきりまる)』、リザードマンからは『小鬼殺(こおにごろ)し』など、ゴブリンスレイヤーの意味で様々な呼び方をされている。
ゴブリンに対する執着心は凄まじく、オーガや魔族を倒す程の実力を持っているが、彼曰く、ゴブリンの方が手強いらしい。






真名:『リムル・テンペスト』


クラス:『狂戦士(バーサーカー)


宝具:『暴食者(グラトニー)


作品名:『転生したらスライムだった件』


プロフィール
見た目はただのスライムだが、『ジュラ・テンペスト連邦国』の魔王である。その正体は人間界で通魔に刺された37歳のサラリーマンが転生した姿だ。その後は『捕食者(クラウモノ)』と『大賢者』のスキルを使い、あらゆるモンスターを吸収し、そのスキルを自分の物にしていくうちに、急激な進化を遂げて強くなり、更にはサラリーマン時代の経験も活かし国を立ち上げる成果を見せた。
彼が人間に変身する事があるが、ある英霊を喰らってその姿を得たと聞くが詳細は不明である。


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第二話『攻防戦エベレスト』

 

 

 

 

ゲートを通過して出口に出た場所は真っ白な雪景色で幸い天候は快晴だった。セルベリアは早速辺りを見渡し警戒態勢を取っていた。

 

 

 

あいね

「わあ!凄く綺麗!!」

 

 

 

あいねはこの状況でかなり浮かれていた。やれやれマイペースだな。

 

 

 

ロマニ

[気をつけてくれ!今君達が転移した場所はサーヴァント達が交戦している場所の目と鼻の先だ!]

 

 

 

目と鼻の先って・・・・!?上空で誰か戦ってる!?

 

 

 

セルベリア

「マスター。サーヴァントを確認しました。地上に数3、上空に2、交戦中と思われます。」

 

 

 

 

俺達はセルベリアの方に向かった。そこは急な下り坂で、その先にサーヴァント達を発見した。

 

 

 

 

剣城

「地上のサーヴァントの動きは!」

 

 

セルベリア

「上空を見上げて待機中。恐らく飛んでいるどちらかが、彼等が敵対しているサーヴァントです。」

 

 

あいね

「ねえ!もう一人の子落ちていくよ!」

 

 

 

空を見上げると一人落ちて行くのが見えた。その瞬間、女の子の叫ぶ声が聞こえた。

 

 

 

リリィ

「ライダー!!」

 

 

 

その声に何故かゆめが反応していた。

 

 

 

ゆめ

「この声・・・リリィ先輩!!」

 

 

剣城

「知り合いなの!」

 

 

ゆめ

「間違いない!リリィ先輩だよ!」

 

 

みお

「リリィちゃんまで召喚されてたなんて!」

 

 

あいね

「マスター!助けに行こう!!」

 

 

セルベリア

「ご決断を、もう時間がありません。」

 

 

 

俺の決断はもう決まっていた。ゆめの知り合いなら、味方をするサーヴァントあの四騎だ。

 

 

 

剣城

「セルベリアは敵サーヴァントの権勢!ピュアパレットはゆめと一緒に負傷したサーヴァントの救出!これより撤退戦を開始する!!」

 

 

ゆめ、あいね、みお、セルベリア

「了解!!」

 

 

 

俺達は急な坂を一気に下り、彼等の下に向かった。だがその前に上空でライダーを撃ち落としたサーヴァントが地面に降りて彼等に近づいていた。

 

 

 

 

ターニャ

「所詮ライダーもその程度か。やはりお前達は甘ったれの集団だ。」

 

 

杉元

「どの口が言いやがるこのクソガキがぁ!!」

 

 

「アーチャー!お前もこの聖杯戦争に疑問を持ってるんじゃねえのか!!俺達を殺して何の得がある!!」

 

 

ターニャ

「決まっている。貴様等の命をこの聖杯を捧げるだけだ。」

 

 

 

俺は衝撃を受けた。あの女の子の手に持っていたのは聖杯だったからだ。まさか彼女が七騎の大罪!?

 

 

 

 

リリィ

「ライダー・・・・しっかりしてください!!こんな所で死なないで!!」

 

 

イゼッタ

「ご・・・めんね。キャスター。」

 

 

 

間に合ってくれ!!

 

 

 

ターニャ

「安心しろキャスター。そこの死に損ないのライダーと共にその命を差し出すがいい。」

 

 

 

聖杯を何処かにしまい、サーヴァントがライフルを彼等に向けたその時だった。

 

 

 

ターニャ

「何!?」

 

 

 

 

セルベリアもライフルを取り出して応戦し、サーヴァントは再び空を飛び上空に逃げた。俺達は彼等とギリギリ合流する事が出来た。

 

 

 

 

杉元

「何だ!?」

 

 

「よくわからんが今が引き時だ!」

 

 

 

 

二人は俺達の介入を直ぐ理解したのか、すぐ様動き出した。ゆめ達はリリィと言う女の子に近づいた。

 

 

 

 

ゆめ

「リリィ先輩!」

 

 

リリィ

「ゆめさん!?それにあいねさんにみおさんまで!!」

 

 

みお

「話は後!その子を連れて撤退するよ!」

 

 

あいね

「急いで!」

 

 

 

 

よし、ゆめ達は上手く負傷したサーヴァントを担いで撤退したか。後はそこの2人に護衛を頼もう。

 

 

 

 

剣城

「お二人は負傷者の護衛を!!」

 

 

「わかった!!」

 

 

杉元

「けどアーチャーは!!」

 

 

セルベリア

「いいから行け!!こいつを足止めするだけでも難しい!!」

 

 

 

 

セルベリアがあんな小さい女の子に苦戦するなんて、やっぱり彼女は七騎の大罪なのか!?

 

 

 

 

セルベリア

「マスター!貴方もお下がり下さい!」

 

 

剣城

「セルベリアは!?」

 

 

セルベリア

「こいつを振り払ったら直ぐに追いかけます!ですが今は味方ごと巻き込みたくはない!!」

 

 

剣城

「わかった!ただし!無事に合流してくれよ!」

 

 

セルベリア

「はっ!」

 

 

 

 

セルベリアには何か考えがあると思い、俺は皆んなを連れてその場を離れたが、俺がセルベリアの方を見たその時だった。

 

 

 

 

セルベリア

「まさかこうも早くこれを使う事になるとはな。」

 

 

 

彼女の体が蒼くオーラの様に光だし、紅い瞳も不気味に紅く光だしていた。すると今度はライフルを仕まい軍刀を取り出し、大振りで振るう様に構えた。

 

 

 

 

セルベリア

「はぁっ!!」

 

 

 

 

セルベリアが勢いよく軍刀を振るうと、蒼い炎の斬撃が広範囲に広がって放たれた。だが何故か空にいるサーヴァントではなく、何も無い雪が積もった場所を狙って放っていた。

 

 

 

 

ターニャ

「何処を狙っている?」

 

 

 

 

斬撃が積雪に当たった瞬間、破裂したかの様に巨大な爆発を引き起こし、真っ白い巨大な雪の津波が出来た。そしてそれはあのサーヴァントを飲み込もうとしていた。いくら彼女が空を飛んでいようと、津波より低いところを飛んでいては巻き込まれる。彼女は油断して完全に逃げ場をなくしていた。

 

 

 

 

ターニャ

「しまっ!!」

 

 

 

 

彼女はあっさりと津波に飲み込まれ、その光景を驚きながら見ていた。すると、粉雪に舞った中からセルベリアの姿が現れた。彼女も無事でよかった。

 

 

 

 

セルベリア

「全員無事か!」

 

 

剣城

「俺達は大丈夫!セルベリアは!」

 

 

セルベリア

「問題ありません。」

 

 

剣城

「よかった。さっきのサーヴァントは?」

 

 

セルベリア

「そのまま雪崩で転がり落ちたのでしょう。ちょうど彼女の飛んでいた下は更に斜面になっていましたから、津波に巻き込まれた後雪崩となって下っていった筈です。脱出にはしばらく時間がかかるかと。」

 

 

剣城

「そうか。」

 

 

あいね

「あの!さっきの女の子大丈夫なんですか!?まだ小さかったですよ!?雪崩に巻き込まれたなら助けた方がいいんじゃ!」

 

 

セルベリア

「普通ならな。だが奴は違っていた。あれぐらいでは死なないだろう。態勢を整えられたらまたこちらを襲ってくるぞ。」

 

 

 

 

セルベリアが少し怯えてる様に見えた。それ程までに危険なサーヴァントだったのか?俺はわからないまま皆んなを連れてその場を離れた。アーチャーがいつ動き出してもおかしく無い状況から少しでも離れようとしていた。

しばらく歩いていると洞窟を見つけ、そこでライダーの治療をしようとしたが、彼女はもう永くは無かった。この洞窟に到着するまで大分歩いたけど、それでも生きているのが不思議なくらいだったが、彼女はかなり弱り切っていた。

 

 

 

 

リリィ

「ライダー!今治療します!もう少し頑張って!」

 

 

イゼッタ

「ねえ・・・キャスター。最後に貴女の真名を教えて。」

 

 

リリィ

「最後なんて言わないで下さい!まだ助かります!ですから諦めないで!」

 

 

杉元

「もういいキャスター!」

 

 

リリィ

「貴方まで何を言っているのですか!!」

 

 

杉元

「ライダーはもう自分の死期が近いのを分かってるんだ。だからせめて彼女の願いだけでも聞いてやろう。それが生き残った俺達の彼女への手向だと思う。」

 

 

 

 

バーサーカーに説得され、キャスターはライダーに呼びかけるのをやめてしまった。彼女もライダーを見送る事を決意した。

 

 

 

 

リリィ

「『白銀(しろがね)リリィ』と言います。」

 

 

 

 

キャスターは泣きながら笑顔で自分の真名を明かした。

 

 

 

 

イゼッタ

「私は『イゼッタ』。」

 

 

 

 

ライダーも自分の真名を明かし、そのままリリィに手を伸ばし、彼女もそれに応える様にライダーの手を握った。

 

 

 

イゼッタ

「リリィ。貴女といられて楽しかったよ。」

 

 

リリィ

「私もですイゼッタ。貴女と過ごした日々は決して忘れません。」

 

 

 

もう・・・・最後の言葉を交わす様な感じだった。俺が冬木で出会ったバーサーカーは、自由にして見送ったけど、こうした別れはやっぱり辛いな。

 

 

 

 

イゼッタ

「バーサーカーとセイバーは。」

 

 

杉元

「俺は『杉元(すぎもと)佐一(さいち)』って言うんだ。あの世に行っても、俺達のこと覚えていてくれよ。」

 

 

イゼッタ

「うん。絶対に忘れないよ。佐一。」

 

 

「『(しょう) 不患(ふかん)』だ。後は俺達に任せてお前さんはゆっくり眠りな。」

 

 

イゼッタ

「うん。ありがとう。殤。」

 

 

 

 

セイバーとバーサーカーが真名を明かした後、イゼッタの体が光り始めた。冬木の時と同じバーサーカーが消える現象だった。

 

 

 

 

イゼッタ

「リリィ、佐一、殤。ランサーとアサシンに会ったら、まだ三人とも無事だって伝えるね。」

 

 

リリィ

「お願いします。」

 

 

イゼッタ

「それとそこの君。」

 

 

剣城

「俺?」

 

 

 

イゼッタは何故か俺を指名してきた。多分何かを伝えるつもりだと思う。勿論、俺もそれに答えるつもりだったからだ。

 

 

 

イゼッタ

「何処の誰かわからないけど、助けてくれてありがとう。お願いがあるの。これからも三人に力を貸してあげて。」

 

 

剣城

「約束する。必ず三人を無事に生還させるよ。だから安心して休んで。」

 

 

イゼッタ

「うん。ありがとう。」

 

 

 

 

それだけを言い残して、イゼッタは消えていった。そして皆んなの内にあった悲しみが一気に込み上げて溢れ出ていた。

 

 

 

 

あいね

「どうして・・・・助けたのに!!間に合ったのに!!どうしてこんな・・・・。」

 

 

みお

「こんなの・・・・酷いよ。」

 

 

 

あいねは口に出して大泣し、みおはあいねに寄り添っていたが声が震えていた。ゆめも二人に寄り添って泣いていた。リリィも震える体を両手で押さえて悲しみを抑えているように見えたが、それでも涙は溢れるばかりだった。セルベリア、杉元、殤さんに至ってはただ黙っていたが、三人とも表情が納得していないのか内心悔しがってるのが直ぐにわかった。そして俺はと言うと不思議と寂しいとか悔しい気持ちが湧いて来なかった。おかしいのかな。

 

 

 

 

ゆめ

「マスター。」

 

 

剣城

「皆んなをお願い。ちょっとアースに報告して来る。」

 

 

ゆめ

「わかった。」

 

 

 

洞窟の外に出てアースに通信を繋げた。出たのはドクターだった。

 

 

 

 

ロマニ

[ご苦労だった。進捗を聞かせてくれ。]

 

 

 

 

レイシフト完了後に、アーチャーから彼等を救い聖杯を持っていた事も、そしてイゼッタが消えていった事も全て話した。

 

 

 

ロマニ

[そうか。ライダーが脱落したか。だがアーチャーが聖杯を手にしてた事が気になる。こちらが観測したのは、紛れも無く普通の英霊だったからね。]

 

 

剣城

「ではアーチャー自身が七騎の大罪から強奪したと言うのは?」

 

 

ロマニ

[それは君自身が一番よく知っている筈だ。他のサーヴァントでは七騎の大罪に太刀打ち出来ないって事くらいは。」

 

 

剣城

「そうでした。」

 

 

ロマニ

[強い魔力反応を観測したらまた連絡するよ。]

 

 

剣城

「わかりました。それでドクター、聞きたいことがあります。同じサーヴァントの再召喚は可能なんでしょうか。」

 

 

ロマニ

[すまない。専門じゃ無いから僕にはなんとも言い難いよ。]

 

 

 

 

ドクターでもわからない事があるのか。仕方ないと思ったその時だった。

 

 

 

 

エルメロイ二世

[可能だ。]

 

 

 

 

先生がいきなり割り込んでそう伝えて来た。

 

 

 

 

エルメロイ二世

[サーヴァントは英霊、即ち英雄の魂のみが彼等の時代から現代に召喚され、実体化する。つまり彼等は死んでいるのと同じ状態だと言う事だ。サーヴァントが聖杯戦争で死ぬ事はあっても、彼等の魂は自分達の時代に帰るだけだ。]

 

 

剣城

「被造物の場合はどうなりますか。」

 

 

エルメロイ二世

[彼等の場合は、自分達の物語に帰ると言うのが正しいな。それに、サーヴァントは召喚となる媒介があれば何度でも召喚できる。]

 

 

剣城

「それは被造物でも可能でしょうか。」

 

 

エルメロイ二世

[関係無しに可能だろうな。例証を挙げるなら、第四次、第五次聖杯戦争と参加したサーヴァントがいた。クラスはセイバーだ。]

 

 

剣城

「じゃあ被造物のサーヴァントも再召喚出来るんですね!ありがとうございます!!」

 

 

 

 

俺は通信を切って洞窟に戻った。その後、ドクターと先生で何か話してたらしい。

 

 

 

 

ロマニ

「随分とサーヴァントや聖杯戦争にお詳しいんですね。まさかとは思いますが、10年前の第四次聖杯戦争の参加者だったと言う事ですか。」

 

 

エルメロイ二世

「あれは私にとって人生の汚点のようなものだ。それ以下はあってもそれ以上はない。特にセイバー『アーサー王』は愚かな騎士王だったよ。」

 

 

 

 

そのような事を先生は言っていたらしい。聖杯戦争の参加者と言う事実を知らぬまま、俺は洞窟に戻り、皆んなにサーヴァントの再召喚が出来る事を伝えた。

 

 

 

 

杉元

「じゃあイゼッタさんは!」

 

 

剣城

「ただ自分の世界に帰っただけで、死んではいません。」

 

 

あいね

「よかった!!じゃあまたイゼッタちゃんに会えるんだね!!」

 

 

「だが召喚にはその触媒ってのが必要なんだろ?生憎と彼女の遺品は持ち合わせていねえぞ。」

 

 

剣城

「今すぐ再召喚は無理かもしれない。でも彼女は俺達に後を託した。だからこんな所で立ち止まっちゃいけない。そう思います。」

 

 

 

 

イゼッタの思いも乗せて、俺達は洞窟を出て下山を始めた。山の(ふもと)に行けば村があるとドクターから聞いたから、そこに行けば皆んなを休ませる事が出来る。だが洞窟を出る時に、俺はゆめとリリィが話している所を偶々聞いてしまった。

 

 

 

 

リリィ

「ゆめさん。本当に彼は信用出来る方なのでしょうか。」

 

 

ゆめ

「どうしてですか?」

 

 

リリィ

「私達を生んだ神様の世界から来た方なら、私達を人間として見てくれてないのだと、そう感じました。」

 

 

ゆめ

「どう言う事です?」

 

 

リリィ

「イゼッタが消えた時、彼は涙を流す所か洞窟の外で仕事をしていました。その様な事をする時ではないと言うのに。人の死を理解できない方を信用する訳にはいきません。」

 

 

 

 

いつの間にか俺達は振り向いて彼女の話を聞いていた。わかっていた事だけど、直に言われると流石に応える。彼女は黙ったまま歩き始め、俺の方を素通りどころか目線すら合わせて貰えなかった。

 

 

 

 

あいね

「待ってリリィちゃん!マスターは!!」

 

 

剣城

「いいんだ。あいね。」

 

 

あいね

「良くないよ!!仲直りして欲しいもん!!」

 

 

剣城

「これは俺の問題だから。あいねは心配しないで自分の事に専念して。」

 

 

 

とは言ったけど、リリィって子かなり根がしっかりしてる。同じ年代とは思えないな。さてどうするかな。

 

 

 

剣城

「行くか。」

 

 

 

 

複雑な気持ちで歩き出した俺達の中で沈黙が続いていた。

 

 

 

 




英霊紹介





真名:『白銀(しろがね)リリィ』


クラス:『魔術師(キャスター)


宝具:『Dreaming bird』


作品名:『アイカツスターズ!』『劇場版アイカツスターズ!』『アイカツオンパレード!』


プロフィール
ゆめの先輩で『四つ星学園』に通うアイドルであるが、病弱の為休養で学校を休む事が多かった。だが彼女の実力は半年のブランクがあるとは思えぬ歌唱力があり『ツンドラの歌姫』と言う異名を持つ。彼女のオーラは周りに冷気を放ち、その気温差は夏場でも真冬にしてしまうくらいである。

プロフィール2
自身の身体が病弱なのを知っている為か、その意志の強さはサーヴァントになってからも発揮されており、防御系のスキルを使うがその高さは盾兵(シールダー)に匹敵する防御力を誇る。









真名:『(しょう) 不患(ふかん)


クラス:『剣士(セイバー)


宝具:『拙劍無式(せっけんむしき)鬼神辟易(きしんへきえき)


作品名『Thunder bolt Fantasy 東離劍遊紀』


プロフィール
厭世的な皮肉屋で憎まれ口を叩くが、内実は義に篤い人情家な中年の剣客である。『西幽(せいゆう)』出身であるが、自国に反逆者として追われている。西幽(せいゆう)から『鬼歿之地(きぼつのち)』を渡り『東離(とうり)』に逃げ落ちたはいいが、そこで鬼鳥(きちょう)と名乗る男『(りん) 雪鴉(せつあ)』と出会い、他人の騒動に巻き込まれてしまう。その事件で彼は『刃無法(じんむほう)』と呼ばれる様になった。








真名:『杉元(すぎもと) 佐一(さいち)


クラス:『狂戦士(バーサーカー)


宝具:『不死身の杉元』


作品名:『ゴールデンカムイ』



プロフィール
元大日本帝国陸軍一等卒で元第一師団特別支援隊、通称『白襷隊(しらだすきたい)』所属だった元軍人である。鬼神の如き戦闘力と強運と生への凄まじい執着、更には致命傷を負っても翌日には戦線に復帰出来るまでの回復力から『不死身の杉元』と言う異名が付いた。
退役後は、砂金を探しに北海道を訪れていたが、偶々居合わせていた元囚人がアイヌが隠した金塊の話を耳にし、さらにそこで出会ったアイヌの少女から、自分の父親がそのアイヌの金塊に関わっていた事を聞かされ、共に金塊と彼女の父親を探す旅に出る。だがその先には、日露戦争の英雄と呼ばれる部隊、陸軍第七師団と箱館戦争で死んだ筈の土方歳三を交えて、金塊を巡る争奪戦へと巻き込まれていった。






真名:『イゼッタ』


クラス:『騎兵(ライダー)


宝具:『レイライン』


作品名:『終末のイゼッタ』


プロフィール
魔女の一族の末裔として悲惨な人生を歩んで来た少女。ライフルに乗って空を飛ぶ姿は正に『白き魔女の再来』と言われた。幼い頃に『エイルシュタット公国』の公女に助けられた事があり、その後は友人となった。その数年後、敵対するゲルマニアの兵士に捕縛された公女と輸送機の中で再開し、今度はイゼッタが彼女を助け、彼女の国の為に戦うと決意した。最後はゲルマニアの魔女と共に、全てのレイラインを吸収して放ち、戦争は終わった。終戦後は、足に後遺症を負ったのか車椅子に乗る彼女の姿が映し出されていた。


プロフィール2
サーヴァントとして召喚されてからは、エベレストでアーチャー『ターニャ・フォン・デグレチャフ』と交戦したが、自身の宝具どころか実力を発揮出来ぬまま彼女に敗れ聖杯戦争から敗退した。







真名:『ターニャ・フォン・デグレチャフ』


クラス:『弓兵(アーチャー)


宝具:『神の力』


作品名:『幼女戦記』


プロフィール
帝国軍の航空魔導師士官。第二〇三航空魔導大隊の大隊長の少佐であるが、年齢は9歳の少女と言う最年少軍人である。
見た目は愛くるしい少女に見えるが、その正体は元30歳男性のサラリーマンだ。駅のホームから突き落とされ、電車に跳ねられる直前に神を名乗る者に信仰心を持てと告げられるがそれを拒否した途端死亡し、転生して少女になってしまったと言う。彼女?は自分にこんな運命を与えた神を『存在X』と呼称し、深い恨みを募らせた。






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第三話『星空の契約』

 

 

 

 

 

 

あれからしばらく斜面を下って下山している最中、あいねが空を見上げて妙な物を見つけた。

 

 

 

 

あいね

「ねえ、あれ花かな?」

 

 

みお

「雲か何かの間違いじゃないの?」

 

 

あいね

「ううん。あれ花だよ。」

 

 

 

 

あいねが指差す方を見てみると、確かに蕾のままとなった花らしき物が三つ空に浮かんでいた。だがその時だった。

 

 

 

 

ロマニ

[気をつけろ!!そいつら魔獣だ!!]

 

 

 

 

ドクターの叫び声と共に、蕾となっていた花は開花し、中から無数の人らしき姿が出てきた。だけど姿がまるで仏像の様だった。

 

 

 

 

剣城

「仏様?」

 

 

「なんだ、もう迎えが来ちまったのか。」

 

 

杉元

「上等だ。俺は不死身だ。」

 

 

 

すると仏達は一斉に矢を構えてこちらに撃ってきた。無数の矢が一斉に飛び交う。

 

 

 

剣城

「ドクター!!あの仏様みたいな魔獣は何なの!?冬木で見たのと全然違うんだけど!!」

 

 

ドクター

[あれは『月人(つきじん)』と呼ばれる魔獣で生きた宝石を狙う狩人の様な連中だ!!]

 

 

剣城

「でも生きた宝石なんて何処にもいないのに!」

 

 

 

 

すると気付いた時には月人の攻撃は俺とセルベリア、殤さん、杉元さんのところに攻撃して来なくなった。

 

 

 

 

剣城

「一体どうして・・・・・ッ!?」

 

 

 

 

気になってゆめ達の方を見たら、彼女達の所に月人の攻撃は集中していた。皆んな自分達のオーラを集中させて守りに入ってる。でもなんで・・・・まさか!?

 

 

 

 

剣城

「彼女達の礼装か!!」

 

 

「リリィ達が着ているあの派手な衣装か?」

 

 

剣城

「あの礼装には装飾品になる宝石が付けられている!!月人達の狙いはその宝石だ!!」

 

 

 

セルベリア

「なら急いで対処しましょう。ルーラー達が危険です。」

 

 

杉元

「けど空の敵にどう立ち向かうんだ!俺達の銃じゃ届かねえぞ!!」

 

 

セルベリア

「こうする!!」

 

 

杉元

「え?」

 

 

 

セルベリアはいきなり杉元さんの胸ぐらを掴んだ。

 

 

 

 

 

セルベリア

「行ってこい!!」

 

 

杉元

「あぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

そしてそのまま月人のいる空目掛けて思いっきり投げ飛ばし、杉元さんは絶叫しながら飛んでいった。

 

 

 

セルベリア

「直接奴等の移動兵器に乗り込む!」

 

 

「その方が手っ取り早い!」

 

 

セルベリア

「そっちは頼むぞ!!」

 

 

「任せな!」

 

 

セルベリア

「マスターはこちらで待機をお願いします!」

 

 

剣城

「わかった!二人共気をつけて!」

 

 

 

 

杉元さんを花の方に投げ飛ばした後も、二人もそれに続いて勢いよくそれぞれの花の方に向かって飛んだ。俺はもう一度ゆめ達の様子を見た。良かった、皆んな頑張って防いでくれてる。その時偶々リリィがこっちを見て睨み付けている様に見えた。まだ俺の事を信用してないのかそう感じ取れた。

 

 

 

 

杉元

「いたッ!!」

 

 

 

 

その頃杉元さんは敵陣のど真中まで飛ばされて尻餅を着いて着地した。それを見た月人達は一斉に矢を構え始めた。

 

 

 

 

杉元

「殺れるものなら殺ってみろ。俺は『不死身の杉元』だぁ!!」

 

 

 

 

杉元さんは立ち上がって叫びながら敵陣に突っ込んでいったが、月人の放つ無数の矢が彼に襲い掛かる。だが杉元さんは怯まず果敢に立ち向かって行った。後から飛び乗ったセルベリアと殤さんも戦闘を開始した。

 

 

 

 

セルベリア

「かかって来い!!狩人共!!」

 

 

「悪いが仏だろうと慈悲をくれてやるつもりはねえ!あの世で念仏でも唱えてな!」

 

 

 

 

三人共魔獣を次から次へと倒していき、倒し終わった後は三つの花は砂の様に砕け散っていった。俺は急いでゆめ達の所に向かった。

 

 

 

 

剣城

「皆んな無事!」

 

 

 

 

だがその時だった。

 

 

 

 

バシッ!

 

 

 

 

いきなりリリィが俺にビンタをした。あの時睨んでいたのは全く違う理由だったみたいだ。

 

 

 

 

リリィ

「最低な人ですね!貴方は!」

 

 

ゆめ

「リリィ先輩!?いきなり何を!?」

 

 

リリィ

「最初から私達を囮に利用したのですね!彼等の狙いが私達だと言う事を知ってて!!」

 

 

 

 

俺は黙ったままで何も言い返そうとしなかった。彼女の心がそこまで傷ついていた事に気付いたからだ。そして原因は恐らくあのアーチャーだ。

 

 

 

 

リリィ

「三人共、直ぐに彼と契約を切って下さい!彼は信用できません!」

 

 

あいね

「いい加減にしてよリリィちゃん!!マスターはそんな人じゃないよ!!」

 

 

リリィ

「あいねさんはここに来る前彼と会ったばかりと話していたではありませんか!!根拠も無いのにどうやって彼を信じられると!!」

 

 

剣城

「そこまでだ二人共!!」

 

 

あいね

「なんでマスター!!」

 

 

剣城

「言った筈だ!これは俺自身で解決する問題だから口出しは要らないって!!」

 

 

あいね

「イヤだ!!マスターの言う事でも聞かないよ!!友達が困ってるのに見ているだけなんて出来ないよ!!」

 

 

剣城

「いい加減にしないと令呪を使って強制的にアースに帰還させるよ!それが嫌なら大人しくする事!!」

 

 

あいね

「・・・・わかった。」

 

 

 

 

あいねは不貞腐れながらも渋々返事はしたが治りはした。あいねの親切さには申し訳ないが、俺は真っ正面からリリィと向き合いたい。そうしなきゃ解決出来ないと思ったからだ。

 

 

 

 

剣城

「君がそう思ったのならそれでいい。これは戦争だ。全員が生き延びる為に最善の策を取った。だから俺は君に謝るつもりも無いし、許して貰おうとも思ってない。」

 

 

リリィ

「そうですか。なら三人との契約を切って下さい。貴方の身勝手にこれ以上彼女達を巻き込まないで!!」

 

 

剣城

「それは出来ない!俺は彼女達を・・・・・!?」

 

 

 

 

俺はリリィの正面と向き合う様な位置にいたからわかった。リリィを後ろから狙おうと生き残っていた月人が矢を構えていた。

 

 

 

剣城

「危ない!!」

 

 

 

月人から矢が放たれた瞬間、彼女を庇い俺の右肩にその矢が突き刺さった。衝撃が走る痛みに耐えながら俺は右肩を抑えていた。

 

 

 

 

ゆめ

「マスター!!」

 

 

みお

「マスターしっかりして!!」

 

 

あいね

「どうしよう!!マスターが!!」

 

 

ロマニ

[今剣城君の生体反応に異常を確認したけど何かあったの!!]

 

 

ゆめ

「マスターの体に矢が刺さって!!」

 

 

ロマニ

[負傷したのか!?直ぐに応急処置を!!」

 

 

 

 

ドクターもアースから通信で俺の状態を聞き出そうと必死だった。そして騒ぎを聞きつけてセルベリア達もこちらの異変に気付いた。

 

 

 

杉元

「くそ!まだいやがったのか!!」

 

 

「お前は奴の始末を頼む!坊主は任せろ!!」

 

 

杉元

「わかった!!」

 

 

セルベリア

「マスター!!」

 

 

 

 

杉元さんはすぐに月人を倒しに行き、セルベリアと殤さんは俺達の所に来てくれた。

 

 

 

 

セルベリア

「一体何があった!!」

 

 

みお

「マスターがリリィちゃんを庇って怪我を!!」

 

 

セルベリア

「急いで応急処置だ!」

 

 

 

 

セルベリアは俺の体に刺さっている矢を抜いた。俺の体から血がどんどん溢れ出ていて、彼女が止血しようと俺の服を脱がそうとしていた。

 

 

 

 

「待て待て!!こんな所で服なんか脱すな!!凍傷になるぞ!!」

 

 

 

 

後から来た殤さんが、俺の傷の具合を見ようと近寄って、背中の傷口の方に手を当てた。

 

 

 

 

「ふんっ!!」

 

 

 

 

殤さんの手から魔力の衝撃波のようなものを感じた。すると痛みはみるみる治まっていった。

 

 

 

「これで一安心だ。」

 

 

あいね

「マスターは大丈夫なの!!」

 

 

「致命傷では無いがこいつは重症だ。一様出血だけでも止めといた。」

 

 

 

 

そうあいねに説明しながら、殤さんは布を取り出して、傷口に巻いて応急処置をしてくれた。

 

 

 

 

ゆめ

「ありがとうございます。マスターを助けてくれて。」

 

 

「気にするな。あんた等にとっちゃ大切な人なんだろ?ここで死んじまったら後味悪いからな。」

 

 

ロマニ

[それでも助かったよ。君達の助力に感謝する。]

 

 

「それはお互い様だ。家のキャスターも助けられたしな。」

 

 

 

 

俺の処置が終わった後に、さっきの月人を倒しに行った杉元さんが戻ってきた。

 

 

 

 

杉元

「黒河は無事か!!」

 

 

「安心しろ。お前さんが仏の化け物を仕留めてくれたお陰で処置が捗ったぞ。」

 

 

 

 

殤さんのおかげで大分楽になった。これならもう一人で歩け・・・・!?

 

 

 

 

「おっと!だからまだ無茶するな!」

 

 

剣城

「すみません。」

 

 

佐一

「おぶってやるから乗れって。」

 

 

剣城

「ありがとうございます。」

 

 

 

遠慮無く杉元さんの背中に乗せてもらい、俺達は再び歩き出そうとしていた。リリィは黙ったまま何も言わなかった。俺の行動に衝撃を受けたんだと思う。

 

 

 

 

リリィ

「どうして・・・・。」

 

 

「お前さんがどう思おうが勝手だが、坊主には礼を言っとけよ。少なくとも体張ってお前さんを守ったんだ。それが出来ねえあんたじゃねえだろ。」

 

 

リリィ

「わかりません。何も・・・・わからない。」

 

 

 

 

彼女は自分の心に迷ながらも歩き出した。ゆめやあいね達とも喋らなくなり、再び沈黙が続いた。

辺りは暗くなり始め、野宿できる所がないか探していた。すると煉瓦(レンガ)の家の様な山小屋を見つけた。セルベリアが先導して中に入ってみたが、人が住んでいる様子もなければ、ここ最近使った形跡も無かった。

 

 

 

 

セルベリア

「今夜はここに泊まろう。」

 

 

杉元

「そうだな。黒河も治療しなきゃいけないし外も暗いしな。」

 

 

セルベリア

「マスターの治療は私が引き受ける。二人は薪を集めて火を起こしてくれ。幸いにもここには暖炉がある。」

 

 

杉元

「わかった。」

 

 

あいね

「じゃあ、私達は木の実取ってくる!」

 

 

「お前さんそれ本気で言ってるのか?」

 

 

あいね

「え?」

 

 

みお

「森や林どころか木一本も無いのにどうやって木の実を見つけるの?」

 

 

あいね

「そうだった。」

 

 

 

 

皆んな何かしようと一生懸命だった。あいね達は食料探しを断念して小屋の掃除を始めて、殤さんと杉元さんは薪を割って火を起こしてくれた。俺はセルベリアの治療のお陰で肩の痛みが大分引いてきた。

 

 

 

剣城

「ありがとうセルベリア。大分痛みが引いたよ。」

 

 

セルベリア

「怪我は大事には至りませんでしたが、重症なのは変わりありません。あまり無理をしないよう。」

 

 

 

セルベリアの忠告は有り難いけど、まだアーチャーの件も解決していないし、それに七騎の大罪も動きを見せぬまま未だ健在だ。多分、また無茶すると思う。

 

 

 

 

杉元

「やっと腰を落ち着かせられるよ。」

 

 

 

 

すると火を起こしてくれた杉元さんと殤さんが、辺りを巡回して帰ってきた。

 

 

 

 

ゆめ

「殤さん。リリィ先輩は?」

 

 

「リリィなら少し夜風に当たってくるだとよ。」

 

 

ゆめ

「そう・・・・ですか。」

 

 

 

 

リリィに思う所があったのか、ゆめの表情は険しくなっていた。それはピュアパレットも一緒で、何か納得していない感じだった。

 

 

 

 

ゆめ

「リリィ先輩。どうしちゃったんだろ。前はあんな風じゃなかったのに。」

 

 

「やっぱりそう思うか。」

 

 

 

 

ゆめが思わず心に思ってた事を口にした時、殤さんが全てを語ろうとしていた。

 

 

 

 

ゆめ

「やっぱり?」

 

 

セルベリア

「どう言う事だ?」

 

 

「ルーラーが思ってる通り、リリィは最初はあそこまで人を疑う奴じゃ無かったんだ。あんな風になっちまったのはアーチャーが原因だろうな。」

 

 

 

 

殤さんの話では、最初はリリィはアーチャーと同盟を組んでいて、それまでは仲のよさそうにしていたイゼッタと敵対していたらしい。更にそこに殤さんと杉元さんも参戦して苦戦を強いられていたリリィとアーチャーにランサーとアサシンが助っ人で参戦した。

それから聖杯戦争は同盟同士で膠着状態が続いたころ、リリィとアーチャーが仲違いをしている事を耳にした殤さん達は、襲撃を結構したが既にランサーとアサシンはアーチャーの手によって敗退した。それを見たリリィはアーチャーに激怒し対立した。そして今のような状態になっていると言う。

 

 

 

 

みお

「そんな事があったなんて。」

 

 

あいね

「でも悪いのはアーチャーなんでしょ!リリィちゃんや他のサーヴァントを騙して聖杯を奪い取ったんだから!そんな事許しちゃダメだよ!」

 

 

「おっと!嬢ちゃん何か勘違いしているみたいだが、これは聖杯戦争だ。参加している全クラスのサーヴァントは敵同士なんだぜ。裏切りや詐欺も立派な戦略の一つだ。」

 

 

あいね

「でも卑怯な事して勝手、それで願いを叶えても嬉しくないと思う!」

 

 

「まあ後味は悪いが、参加している英霊達は皆自分の願いを叶えるのになりふり構わずだ。俺も佐一もリリィも皆んな覚悟の上で参加したんだ。何をされても悔いはない。」

 

 

みお

「じゃあ殤さん達はどうして同盟なんか組んでいるんですか?」

 

 

「そりゃアーチャーを倒す為だ。」

 

 

みお

「アーチャーを倒すのにそんなに人数が入りますか?それじゃあまるでいじめじゃないですか!」

 

 

セルベリア

「それは違うぞ。」

 

 

みお

「え?」

 

 

セルベリア

「複数のサーヴァントで無ければ勝てぬ相手だからだ。私も最初は複数で囲まれているアーチャーに何故余裕があったのか疑問に思っていたが、彼女と戦ってようやくわかった。あれは並大抵で勝てるような相手ではない。」

 

 

「やはりあんたも勘付いていたか。あれがただの子供じゃなくて化物だってくらいは。」

 

 

セルベリア

「奴の中にある狂気みたいな物を感じた。まるで『幼女の皮を被った悪魔』と言った所だろうな。」

 

 

杉元

「そんな生優しいもんならいいが。」

 

 

セルベリア

「何?」

 

 

杉元

「アイツは俺に似ている。」

 

 

「似ている?」

 

 

杉元

「戦場で絶対生き残る為の術を知っている。歯向かって来る奴には容赦なく徹底的に殺す事を覚えている。あれはそう言う戦い方が出来る軍人だ。本気で殺す気で行かないとこっちが殺られる。」

 

 

 

 

殤さんの言う通り、皆んな自分の願いがあるから聖杯戦争に参加しているんだ。甘い事を言っている場合じゃないんだ。それに杉元さんがそこまで言うならアーチャーはただ者じゃ無いって事はわかった。

 

 

 

杉元

「なあ黒河。お前俺達を生み出した世界から来た人間?要は神様の世界から来たんだよな?」

 

 

剣城

「神様の世界は大袈裟過ぎますけど?まあそんな感じです。」

 

 

杉元

「ルーラーから全部話は聞いた。マスターの事もそのマスターがお前だって事も、聖杯を回収しに来た事も、この聖杯戦争を仕切っている七騎の大罪の事もな。」

 

 

 

 

何故リリィや殤さん、杉元さんが俺達の事情に詳しいかと言うと、俺が洞窟の外でドクターに報告している間に、ゆめが三人に俺の存在やアースの事に関して全て説明してくれていた。だからさっきから皆んな知っているような雰囲気なのだ。

でもなんで杉元さんそんな話を俺に聞いてきたんだろ?

 

 

 

 

杉元

「なあ教えてくれ・・・・なんでのっぺら坊の正体がアシリパさんの父親なんだ!!なんで金塊なんか隠したんだ!!あんなもんが無けりゃアシリパさんが狙われる事なんて無かったんだぞ!!」

 

 

 

 

杉元さんは俺の胸ぐらを掴みながら必死に訴えてきた。自分達の努力と苦労と不幸を散々見せ物にされて来た事実を知れば、誰だって怒るに決まってる。その気持ちを考えると、俺は反抗すら出来なかった。

 

 

 

 

杉元

「お前等そうやって俺達が痛い目会っている所を鼻で笑って観てたんだろ!!殤さんとリリィさん、そんでお前を慕ってくれてる奴等を嘲笑(あざわら)って観てたんだろ!!」

 

 

 

 

杉元さん?狂化してるのか段々主張がエスカレートしてないか?流石に傷ついてきたけど。

 

 

 

杉元

「答えろクソガキぃ!!」

 

 

「もうよせ!佐一!」

 

 

杉元

「ハッ!?」

 

 

 

 

殤さんが杉元さんの肩を掴んで止めてくれた。杉元さんは我に帰った様に辺りを見渡して自分の手元を見た。

 

 

 

「忘れたか!?坊主の時代には俺達を生み出した人間はとっくの昔に死んでるって!」

 

 

杉元

「悪い。自分の居た世界の事を思い出してたらつい。」

 

 

 

 

杉元さんはゆっくりと手を離して落ち着きを取り戻したかの様に大人しくなった。ゆめにピュアパレットにセルベリアも、ホッとした様子で警戒を解いた。その時、殤さんも煮えたぎらない気持ちで語り出した。

 

 

 

 

「だが正直俺も納得が行かねえ。神様にとっちゃ面白ければ、他人の世界が滅びようがそれでいいって言う考え方しか出来ねえ連中なんだろ?でなきゃ魔剣なんて物騒な代物作らねえし、それを狙う刺客なんて者がいるんだ。狂ってるにも程がある。」

 

 

 

 

皆んな、ゆめの話を聞いていろいろ納得いかないんだろうな。多分リリィも、そしてあのアーチャーも、俺達の身勝手で不幸な人生を歩んできてるんだ。そんな彼等に俺が出来る事はわからないけど、悩んでいても仕方ない。ただ今やるべき事はリリィと和解する事だけだ。

 

 

 

 

剣城

「ちょっと外に出てくる。」

 

 

セルベリア

「マスター、お身体に触ります。もうお休みになられては。」

 

 

剣城

「大丈夫。セルベリアの治療のお陰で少し動けそうだよ。それに、いい加減リリィと仲直りしないと、あいねがまたグズっちゃうからね。」

 

 

あいね

「私!赤ちゃんじゃないよ!!」

 

 

 

 

俺の冗談でさっきまで重たかった空気が一気に明るくなった。安心した俺は直ぐに外に出てリリィを探した。夜空を見上げると無数の星々の明かりがいつにも増して輝いていた。リリィを探すどころか星を見るのに夢中になっていた。こんな空ロンドンじゃ見れないだろうな。辺りを見渡すとリリィは直ぐに見つかった。俺と同じで星空を眺めていたけど、表情は何か思い詰めてたみたいだった。だがそんなの関係無く俺は彼女に近づいた。

 

 

 

 

剣城

「綺麗だね。」

 

 

 

 

星空を見ながら彼女に話しかけてみた。彼女はしばらく黙ったままだったが、整理がついたのかやっと俺に話しかけてくれた。

 

 

 

 

リリィ

「何故・・・・助けてくれたのですか?私は貴方に酷い事ばかりしていたのに。」

 

 

剣城

「君が俺に警戒心を抱いていたのは直ぐにわかったし、多分アーチャーの事があったから君の中でいろいろ混乱していたんだと思う。だから気にして無い。」

 

 

リリィ

「お優しい方なのですね。」

 

 

 

リリィは初めて俺に笑顔を見せてくれた。そして彼女は自分の心情を素直に俺に話してくれた。やっぱり一人で不安だったんだね。

 

 

 

 

リリィ

「私はアーチャーが怖かったのかもしれません。初めて会った時から、まだ小学生の年頃とは思えない恐怖感を感じました。それをわかっていながら彼女の暴挙を止める事が出来なかった。ランサーとアサシンを守れなかった自分が悔しかった。そんな時、ゆめさんやあいねさん、みおさんと再会して貴方の話を聞いて、貴方に不信感を抱いてしまった。」

 

 

剣城

「それで複雑な感情を抱いたままイライラして俺に八つ当たりしたと?」

 

 

リリィ

「はい。最低な事をしてしまったと思っています。今更貴方に許して貰うつもりはありません。」

 

 

剣城

「反省はしてるんだね。」

 

 

リリィ

「そのつもりです。」

 

 

剣城

「そうか。なら許す!」

 

 

リリィ

「え・・・・。」

 

 

 

 

リリィはキョトンとした顔で俺を見ていた。多分俺から返ってきた答えが予想と違っていたから驚いていると思う。

 

 

 

 

リリィ

「何故ですか。私は貴方に酷い事ばかり言って、更に叩いてしまったのですよ?愛想を尽かされたと思ってました。」

 

 

剣城

「ゆめやピュアパレットの二人もそうだったけど、君がおかしいのは俺にも直ぐにわかった。だってゆめから話を聞いた君は、もっと心が強いアイドルだって聞いたから。」

 

 

 

 

あの冬木の事件の後、ゆめから自分の世界の事を俺に聞かせてくれた。その話の中に、彼女の事も聞かされていたのだ。だから俺はリリィを信じる事が出来た。それを彼女に説明したら、納得した顔で笑っていた。

 

 

 

 

リリィ

「そうでしたか。だから無下にされても動じなかったのですね。それにゆめさんが貴方をお慕いする理由がわかりました。」

 

 

 

 

するとリリィからいきなりこんな事を言われた。

 

 

 

 

リリィ

「黒河剣城さん。差し支えなければ、私と契約して頂けないでしょうか。」

 

 

 

 

リリィが俺との契約を頼んで来たのだ。勿論仲間が増えるのは嬉しいけど、それをあっさり許してしまっていいのだろうか。俺達の戦いはこの先更なる危険を伴うだろう。そう簡単に決められる物じゃ無い。そう彼女に説明するとこんな答えが返ってきた。

 

 

 

 

リリィ

「プエルトリコの哲学者『E・マリア・ダ・オストス』はこう言いました。「生きるということは、アンデス山をよじ登るようなものである。つまり、登れば登るほど、断崖絶壁は一層険しくなるのである。」と。ですが人は一人では生きていけません。登るなら、仲間は多い方がいいのでは無いですか。私はそう思います。」

 

 

 

 

大昔の偉人の名言を例題にして返してきた。彼女のが言いたい事は、俺達と一緒に来ると言う事だ。

 

 

 

 

剣城

「俺の手を重ねて。」

 

 

 

 

俺もそれを理解した上で手を差し出した。それに答えた彼女も手を重ねてきた。

 

 

 

 

剣城

「キャスター『白銀リリィ』に告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に、聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら我に従え!"ツンドラの歌姫"よ!この命運、汝がこの剣を預けよう!」

 

 

リリィ

「汝の盟約に従い、我が身を"黒の陣営"に捧げましょう。キャスター白銀リリィ。この一時(ひととき)に魂を込めて。」

 

 

 

 

 

俺とリリィの星空の下で行われた契約だった。そして、この後、俺達を待ち受けていたのは全ての元凶であるアーチャーが立ちはだかろうとしていた。

 

 

 

 

ターニャ

「予想外の増援で危うく凍え死ぬとこだったが、あの()()よりかはマシであろう。」

 

 

 

 

だが彼女は俺達が思ってた以上に理解力が早いサーヴァントだった。

 

 

 

 

ターニャ

「そう言えば敵の増援の中に妙な奴が紛れていたな。何者かは知らぬが奴がサーヴァントで無いのは間違い無い。捕まえて尋問してみるか。」

 

 

 

彼女は俺達のすぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 



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第四話『白き青年』

 

 

 

 

 

杉元

「ねえ?あの二人一晩で何があったの?」

 

 

「さあな。坊主が口説き落としたんじゃないか。」

 

 

 

 

夜が明けたので、俺達は山小屋を出て再び出発して下山を始めた。先頭でセルベリアが警戒しながら進み、その後で俺はゆめとリリィに体を抱えて貰いながら歩き、その後ろにはピュアパレット、更に後ろには殤さんと杉元さんが左右後ろを担当した陣形で進んでいる。

 

 

 

 

ゆめ

「マスター大丈夫?まだ小屋で休んで方が良かったんじゃ。」

 

 

剣城

「そうもいかないよ。ゆっくりしてたらアーチャーに見つかるかもしれないし、少しでも移動して時間を稼がないと。」

 

 

 

 

ゆめは心配してたけど、リリィは前より俺の言う事に納得してくれた。

 

 

 

 

リリィ

「私もマスターの意見に賛成です。あのままいるより何処かに移動した方がアーチャーに見つかり難いのは確かです。なるべく彼女に情報を与えてはなりません。」

 

 

ゆめ

「そうなんですか?」

 

 

リリィ

「彼女をただの小学生と侮ってはなりません。いつ何処から狙って来るかわかりませんから。」

 

 

 

 

もう小学生のやる事じゃないけどね。

 

 

 

 

ロマニ

[そのアーチャーの事なんだけど、リムルが心当たりがあるらしいと言うんだ。]

 

 

 

リムルに心当たり?それを聞いて彼女はリムルと同じ世界の住人かと思っていたが、思い掛けない答えが返ってきた。

 

 

 

 

リムル

[リリィの話を聞いてもしかしたらと思ったんだが、そいつ『異世界転生』してるんじゃないか?]

 

 

剣城

「異世界転生?」

 

 

リムル

[まあざっくり説明すると、現実世界で死んだ人間の魂が異世界で転生して召喚される事だ!]

 

 

剣城

「ごめん、現実離れしすぎてよくわからない!」

 

 

アルタイル

[では私が詳しく教えてやる。]

 

 

 

 

突如出て来たアルタイルが詳しく説明してくれた。どうやら大昔の2013年から2015年以降に、現実世界からの異世界召喚又は異世界転生物のファンタジー小説がブームだった時期があったらしく、数多くの作品が生み出されたらしい。ゴブリンスレイヤーもリムル・テンペストもその時期に生まれたらしが、アーチャーはその前から存在していたらしく、しかも異色の作品だったと言う話だ。

 

 

 

 

アルタイル

[因みに白銀リリィ殿。アーチャーは幼い少女の姿で軍服を着ていなかったか。]

 

 

リリィ

「確かにその様な風貌でした。私はてっきりコスプレなのかと思いましたが。」

 

 

アルタイル

[さらに髪は金色で瞳は青ではなかったか。]

 

 

リリィ

「はい。確かにそうです。ですが、何故貴方がアーチャーの特徴をそこまで知っているのですか?」

 

 

 

 

リリィの質問にアルタイルは黙って考えこんでいたそしてアルタイルの口から彼女の真名が明かされた。

 

 

 

 

アルタイル

[彼女の真名は『ターニャ・フォン・デグレチャフ』。30歳男性サラリーマンが幼女の姿で転生した人物だ。]

 

 

剣城

「え?彼女・・・・男なの!?」

 

 

アルタイル

[いや、体は女性体だが魂は生前の男性記憶を保有している。つまりリムル殿とはまた違ったタイプの()()と言う訳だ。]

 

 

リムル

()()()だぁ!!お前は俺達を何だと思ってるんだ!!]

 

 

 

 

ここからリムルとアルタイルのケンカが始まった。

 

 

 

 

アルタイル

[何を言う。そんないかにも女性が近付きそうな姿をした三十代のオッサンの考える事など覗き見、痴漢、セクハラ目的でしか有り得ぬ話だ。]

 

 

リムル

[誰がお前みたいな()()()娘をセクハラしなきゃならんのだ?それこそ有り得ぬ話だ。]

 

 

アルタイル

[貴様ぁぁぁ!!私の世界でもそれに触れる愚か者はいなかったぞ!!言ってはならぬ事を口走ったなぁ!!]

 

 

リムル

[悔しかったらその胸をデカくしてから出直して来い!!まあその様子じゃ()()()()()()()()()よりぺったんこぽいけどな!]

 

 

ロマニ

[頼むからモニター越しで喧嘩しないでくれ!!]

 

 

 

 

それにしても賑やかになったな。ドクターが一番苦労してる様な気がする。

 

 

 

 

ゆめ

「ねえ()()()()()()。なんで胸の話で私やピュアパレットの二人が出て来るのかな?」

 

 

リムル

[えっ!?いや・・・それは・・・。]

 

 

 

リムルの顔が段々と青ざめてっていった。今スライムモードだから分かりにくいけど、雰囲気で何となくわかる。

 

 

 

 

アルタイル

[どうやらスライム殿はアイカツ組は中学生にしてはその胸の大きさは如何な物かと言いたいらしい。]

 

 

リムル

[火に油をぶっかけるなぁ!!]

 

 

 

 

正にその通り、アルタイルの爆弾発言でゆめの堪忍袋の尾が切れた。

 

 

 

 

ゆめ

「二人共帰ったらお説教だからね!!」

 

 

アルタイル

[何故私まで!?]

 

 

ゆめ

「アルタイルさんが先にちょっかい出したからでしょ!!とにかく二人共覚悟しといてね!」

 

 

リリィ

「ではその時は私もご一緒させて貰います。」

 

 

リムル

[いや待て!!昨日契約したばかりのお前は関係無いだろ!!]

 

 

リリィ

「失礼しました。私ゆめさんとは同居で先輩後輩と言う関係の()()()()()なので、これからもよろしくお願いします。そして・・・・其方に伺いましたらお二人共覚悟して下さい。」

 

 

 

 

リリィはリムル達を睨みながら勝手に通信を切ってしまった。何だろう、この後嫌な予感がする。

 

 

 

 

ゆめ

「ねえマスター。マスターは女の子を胸の大きさで判断する様な人じゃないよね。」

 

 

 

 

やっぱりゆめは笑顔で俺に振ってくると思った。俺も男だから胸は大きい方がいいんだけど。

 

 

 

 

みお

「大丈夫よ。マスターは女の子をそんな目で見る人じゃないわ。そうよねマスター。」

 

 

 

 

みお!?後からいきなり肩掴まれてびっくりしたけど、まさか今のやり取り全部聴いてたの!?しかも彼女も笑顔で逃げ道塞いできた!!

 

 

 

 

リリィ

「二人共マスターを疑い過ぎですよ。彼はとても紳士ですから、そんな破廉恥な事で女性を選んだりはしません。」

 

 

 

 

リリィ。君は俺の事をそこまで信じていたなんて。だけどごめん!!俺はやっぱり巨乳が好きなんだ!!

 

 

 

 

リリィ

「もしこれで胸が大きい女性が好きと言う答えが返って来たら、今頃この場で正座させて丸一日お説教をしているはずですから。」

 

 

 

 

笑顔でとんでもない事言って来た!!それ言ったら選択肢が一択しかないけど!?

 

 

 

 

ゆめ

「マスター。」

 

 

みお

「マスター。」

 

 

リリィ

「マスター。」

 

 

 

 

三人の顔が凄く近い。もう仕方ない。

 

 

 

 

剣城

「何言ってるんだ。そんなんで女性を決めるのは男として最低だ。それに今そんな余裕無いしね。」

 

 

ゆめ

「さすがマスター!やっぱりそうだよね!」

 

 

 

 

俺に・・・・・女性を選ぶ権利は無いのか。

 

 

 

 

杉元

「何!?あの修羅場!?なんか怖い!!」

 

 

「マスターってのは大変そうだな。ん?」

 

 

 

 

後ろで殤さん達は俺達のやり取りを見ていたが、殤さんがアイネが元気がない事に気が付いた。

 

 

 

 

「どうした嬢ちゃん。朝から元気無いが、何かあったのか?」

 

 

あいね

「ううん。何でもない。」

 

 

 

 

そう彼女は答えたが、やっぱり元気が無いのは俺も気付いていた。後で聞いてみるかな。

 

 

 

 

セルベリア

「マスター、居住地らしき物を見つけました。」

 

 

 

 

セルベリアが集落らしき物を見つけたらしい。早速俺達はその村に行ってみたが、建物に人が住んでいる気配や形跡も無い。どうやら廃村だった様だ。

 

 

 

 

杉元

「やっぱり誰もいないか。こりゃつい最近出て行った様子じゃ無さそうだな。このまま下山して集落を探した方がいいんじゃないか?」

 

 

 

 

確かにここにいたらアーチャーの格好のいい的になりかねない。なら移動した方がいいかもしれないな。この先は森林になってるし、アーチャーの目から逃れるにはいいかもしれない。

 

 

 

 

あいね

「そんなのダメだよ!!」

 

 

 

 

するとあいねが猛反発して来たが、それはあいねだけでは無かった。

 

 

 

 

杉元

「気持ちはわかるけど、アーチャーに見つかったらそれこそ終わりだ。今俺達が不利な状況なのは変わらないし、ここは動くべきだ。」

 

 

あいね

「マスターだって大怪我してるんだよ!!これ以上歩かせたら体に良く無いよ!!」

 

 

杉元

「けどよ。」

 

 

セルベリア

「杉元、マスターは我々と違って生身の人間だ。これ以上はマスターの体に負担を掛けられない。」

 

 

杉元

「かと言って食いもんも無いこんな所にいてもアーチャーに狙われるかもしれないし、黒河にはもう少し頑張って貰うしか無い。」

 

 

セルベリア

「無茶だ!マスターは昨日の夜から何も口にして無いんだぞ。これ以上体力が奪われるのは危険だ。」

 

 

 

 

皆んな俺の体の心配をしてるんだ。俺も杉元さんと同じで移動した方がいいと考えてる。なら俺が答えを出さないとな。

 

 

 

 

剣城

「わかった。次の村に行こう。」

 

 

ゆめ

「ダメだよ!マスター!!」

 

 

リリィ

「いけません!これ以上は貴方の体に触ります!!」

 

 

剣城

「でもここにいても。」

 

 

ゆめ、あいね、みお、リリィ

「絶対ダメ!!」

 

 

剣城

「わ・・・・かりました。無茶しません。」

 

 

 

 

四人に推されて自分の意見を伝える事が出来ませんでした。

 

 

 

 

「ならこうしよう!坊主と嬢ちゃん達はここに残れ。俺と佐一で登山口まで食糧を取りに行く。それならお互い文句も。」

 

 

杉元

「待て!!」

 

 

あいね

「なに杉元さん!!まだ納得いかない事があるの!!」

 

 

杉元

「大声で怒鳴るな!!全員静かにしろ!!」

 

 

 

 

杉元さんが急に皆んなを黙らせて、一人で焦っていた。何がどうしたんだ?

 

 

 

 

杉元

「何か聞こえないか。」

 

 

 

 

皆んな耳を済ますと、何かの足音が俺達の方に段々近づいてくるのが聞こえた。だがすぐ近くまで来た瞬間音が急に止んだ。

 

 

 

 

セルベリア

「何だったんだ今の足音は?」

 

 

杉元

「さあ?どっか行ったのか?」

 

 

 

 

気のせいだったのかな?

 

 

 

 

「油断するな!!上から来るぞ!!」

 

 

 

 

その瞬間、上から白い物体が落下して来た。その衝撃で舞い上がった雪は次第に落ちて行き、その白い物体が正体を現した。

 

 

 

 

ポチ

「ウォォォォン!!!」

 

 

 

 

銀色のような毛並みをした巨大な狼が現れて俺達に威嚇して来たのだ。

 

 

 

 

ポチ

「グゥルルル・・・・。」

 

 

 

 

 

だがその巨体は俺達の想像を遥かに上回っていた。

 

 

 

 

剣城

「狼!?」

 

 

杉元

「なんてデカさじゃねえ!!」

 

 

 

 

その狼は、俺達の身長を上回る巨体で推定3mはあった。

 

 

 

 

「嬢ちゃん達は坊主を頼む!!」

 

 

ゆめ

「わかりました!!」

 

 

 

殤さんと杉元さん、セルベリアが前に、ゆめ、リリィ、ピュアパレットが俺を囲むようにして配置した。全員が警戒態勢を取っていた。

 

 

 

 

白玄

「ダイナミ〜ック♪エントリー!!」

 

 

ポチ

「キャワン!?」

 

 

 

え?

 

 

 

 

白玄

「よっと!」

 

 

 

 

いきなりチャイナ服を着た白髪の男性が、右から狼の頬に飛び蹴りした。巨体である狼が軽々飛ばされた。

 

 

 

 

白玄

「いや〜ごめんね。知り合いのワンちゃん何だけど警戒心が強くてブヘェッ!?」

 

 

カムイ

「ポチをいじめちゃダメぇ!!」

 

 

 

 

すると今度は民族衣装を着た小さな女の子が右から男性の頬に飛び蹴りした。男性は狼が横たわってる方にぶつかって止まった。

 

 

 

カムイ

「もう!世話が焼けるんだから!!」

 

 

「いや、その狼に襲われそうになった所をそいつが助けてくれたんだが?」

 

 

 

 

 

でも彼女の服装は何処かで見たことある。

 

 

 

 

 

杉元

「その民族衣装・・・まさか『アイヌ』か。」

 

 

 

アイヌ?確か大昔北海道に住んでいた古代民族のあのアイヌか!?

 

 

 

カムイ

「おじちゃんアイヌの事知ってるの!!」

 

 

杉元

「まあな。」

 

 

 

それにしても何者なんだろ?杉元さんはアイヌの事を知ってるみたいだけど、この子とは初めて会うみたいだ。それにこんな廃村になった場所で何をしていたんだ。

 

 

 

 

カムイ

「私『カムイ』って言うの!それであっちで寝ているのは蝦夷狼(エゾオオカミ)のポチ!」

 

 

剣城

「俺は黒河剣城。」

 

 

あいね

「私結城あいね!よろしくね!カムイちゃんはずっとここに住んでるの?」

 

 

カムイ

「うん!でも住み始めたのはつい最近だけどね。」

 

 

あいね

「じゃああっちの人はカムイちゃんのお兄さん?」

 

 

カムイ

「ううん、ただの居候。」

 

 

白玄

「失礼な!旅人と呼びたまえ!!」

 

 

 

 

カムイに蹴り飛ばされて伸びていた白いチャイナ服の男性が突然飛び上がった。

 

 

 

 

剣城

「助け頂いてありがとうございました。貴方は?」

 

 

白玄

「僕は『白玄(ハクゲン)』。ただの旅人さ。いや〜間一髪だったよ。ポチは戦闘モードに入ったら容赦なく君達を食い殺してたからね。」

 

 

 

 

本当に命拾いした。

 

 

 

 

白玄

「それはそうと、君達は何者なんだい?」

 

 

剣城

「俺は黒河剣城っていいます。」

 

 

ゆめ

「私はルーラーです。助けていただいてありがとうございました。」

 

 

白玄

「どう致しまして。()()()()()。」

 

 

 

 

俺とゆめは白玄を見て驚いた顔をしていただろう。なぜならゆめは「ルーラー」としか名乗ってないのに、彼は躊躇(ためら)いも無くゆめの真名を言い当てたのだ。

 

 

 

 

白玄

「おや?どうかしたのかな。」

 

 

ゆめ

「どうして私の名前を?」

 

 

白玄

「だって君は四ツ星学園の歌組S4にして、アイカツ世界ランキングのトップアイドルだろ?そんな有名人を知らない訳がない。あの時のライブは感動したよ。」

 

 

 

 

ゆめの事を知っているって事は、もしかして同居の世界から来た人!?

 

 

 

 

白玄

「ゆめ君だけじゃない。そこにいる白銀リリィ君の事も知っている。ゆめ君と同じ歌組でしかもS4補佐の幹部、更にはS4にしか与えられない独自のブランドの所有権を獲得。『エルザ・フォルテ』の次に星のツバサのドレスを解放した経歴を持つ。体は弱くとも、心は強いアイドルだ。君の復帰ライブにも行ったけど、半年のブランクがあるとは思えない歌だったよ。」

 

 

リリィ

「そんな事まで。」

 

 

白玄

「勿論、君達だけじゃないよ。あそこでカムイちゃんと話しているのは、ピュアパレットの結城あいね君と湊みお君だね。神城カレンと明日香みらいのフレンズ『ラブミーティア』を打ち負かし、更には『ソルベッド王国』の天候を覆す程のライブを披露したアイドル達だ。流石に天候を変えてしまうのは驚いたけどね。」

 

 

 

 

それを聞いたのか、カムイとあいねとみおがこっちに来た。やっぱり白玄さんの事が気になるんだ。

 

 

 

 

あいね

「皆んなで何の話?」

 

 

ゆめ

「白玄さん、私達のライブまで見に来てくれたみたいなの!」

 

 

あいね

「え?そうなんですか?」

 

 

 

 

あれ?あいね喜ぶと思ったけど何か浮かない顔をしている。

 

 

 

 

みお

「どうしたの?」

 

 

あいね

「私、ファンの人達の顔は覚えている筈だから知らない筈無いんだけどな。」

 

 

白玄

「覚えてないのも無理は無い。こうして君と会うのは初めてだからね。ライブを見終わった後、急用があって直ぐに帰ってしまったから。」

 

 

 

 

そう言う理由か。なら仕方がないか。

 

 

 

 

あいね

「じゃあ改めてよろしくね!」

 

 

白玄

「こちらこそ。」

 

 

 

 

二人で握手をしていた所に、セルベリアや殤さん、杉元さんも集まって来た。

 

 

 

 

セルベリア

「マスター。彼は大丈夫だったのでしょうか。」

 

 

剣城

「大丈夫だよセルベリア。こちら白玄さん。ゆめ達と同じ世界から来た人らしいんだ。」

 

 

セルベリア

「私はセルベリア・ブレスだ。危ない所を助けて頂き感謝する。」

 

 

白玄

「白玄だ。それにしても驚いた。マクシミリアン配下のドライシュテルンの一人、ヴァルキュリア人のセルベリア・ブレスとこんな所で会うとはね。」

 

 

 

 

驚いたのは俺達の方だった。彼はセルベリア事も知っていたからだ。てっきりゆめ達の同居の人かと思っていたから衝撃を受けている。だがそれで終わりではなかった。

 

 

 

 

白玄

「それにあそこにいる二人は、西幽の剣客『刃無鋒』の殤不患に、日露戦争で第一師団に所属していた『不死身』の異名を持つ杉元佐一ではありませんか。いや〜今日は運がいい。こんな所で有名人達に出会えるとは、僕はなんて幸せなんだ。」

 

 

 

 

さらに殤さんや杉元さんの事も知っているみたいだった。彼は一体何者なんだ?

 

 

 

ゆめ

「あの、白玄さんは私達と同じ世界から来た人じゃ無いんですか?」

 

 

白玄

「僕は一言も君達と同じ世界から来た住人とは言っていないよ。」

 

 

ゆめ

「それじゃあ貴方は一体何者なんですか?」

 

 

白玄

「さっきも言った通り唯の旅人さ。僕はいろんな世界を渡って旅をしている異次元の放浪者なんだよ。」

 

 

 

 

異次元の放浪者!?彼は被造物の英霊なのか!?だとしても二次元世界を行き来できるサーヴァントなんているのか?彼から詳しく聞かないと・・・・っ!?

 

 

 

 

ゆめ

「マスター大丈夫。顔色悪いけどやっぱり肩の怪我がまだ痛むの。」

 

 

 

 

ここに来てから?いや、あの小屋を出てからずっと激しい激痛に襲われていた。正直我慢の限界が来ていたのかも。もう立ってるだけでやっとだ。

 

 

 

 

白玄

「なるほど。寒い雪山でその汗の量はおかしい。顔も引きつってるし、体も少しフラついている。重症と見て間違い無いね。」

 

 

剣城

「はい。」

 

 

 

この人にはお見通しだったんだ。

 

 

 

 

 

白玄

「さて!酷くならない内に運んでしまおう。カムイちゃん。君の住まいを借りさせて貰うよ。」

 

 

カムイ

「うん!いいよ!」

 

 

 

 

俺は白玄さんの背中に乗せられて、カムイの家に向かう事にした。どうやら空き家を使わせて貰ってるらしい。しかもちゃんと綺麗にしてあったから少し安心して休める様だった。暖かい部屋の中で、俺達は腰を落ち着かせた。セルベリアとピュアパレット、さらにゆめとリリィはそのままキッチンの方に行ってしまったが、それは俺が上半身裸でいさせられたから気を遣って移動したからだと思うけど、これから治療するから仕方がないか。白玄さんに包帯を解いて貰った。

 

 

 

 

白玄

「これは酷い。傷口から炎症を起こしている。応急処置では一時的なものでしか無いだろう。よくこんな痛みに耐えたね。」

 

 

剣城

「白玄さんは医療に詳しいんですか?」

 

 

白玄

「残念だが僕は医者じゃない。唯の物知りお兄さんなだけだ。だから裏技を使わせて貰う。」

 

 

 

 

そう言うと白玄さんにうつ伏せに寝てくれと言われて俺はその通りにした。何をされるのか不安だったけど、言う通りにするしかなかった。

 

 

 

 

白玄

双天帰盾(そうてんきしゅん)。私は拒絶する。」

 

 

 

 

オレンジ色の楕円形の透明な光が俺の体を包み込んだ。

 

 

 

 

杉元

「なんだこりゃ!?」

 

 

「結界か何かか!?」

 

 

 

 

二人は驚いていたが、さらに驚いたのは酷かった傷口があっという間に元に戻っていた。まるで傷なんて負ってたのが無かったくらい綺麗に消され、痛みなんてなかったように一気に引いた。

 

 

 

 

剣城

「あれ?何ともない!体が軽くなったみたいだ!!」

 

 

白玄

「元気になって何よりだ。」

 

 

「それにしてもあんた術師なのか?あんな簡単に傷を治すなんざ並大抵の術師じゃ無さそうだが。」

 

 

白玄

「言った筈だ。僕は唯の物知りお兄さんで旅人だよ。」

 

 

 

 

いや物知りで旅人が、こんな術使えるのかな?

 

 

 

ゆめ

「皆んな!ご飯できたよ!」

 

 

 

 

するとゆめ達がお盆を手に何かを運んできた。さっきからいい匂いがしてたから、何か作っていたのだろう。器からしてスープだと思う。

 

 

 

 

ゆめ

「皆んなでクリームシチューを作ったんだよ!」

 

 

 

 

寒い雪山にはナイスな一品だ。有り難いよ。

 

 

 

 

あいね

「驚いちゃった!セルベリアさん料理も出来るんだよ!」

 

 

セルベリア

「お前は私を何だと思ってたんだ?」

 

 

 

 

女軍曹な風格を見せてるセルベリアにも意外な趣味があったんだな。

 

 

 

 

カムイ

「早く食べよう!お腹すいちゃった!」

 

 

リリィ

「そうですね。マスターもこれを食べて体力を付けて下さい。」

 

 

剣城

「ありがとう、リリィ。」

 

 

 

 

長方形のテーブルにちょうど人数分座れるスペースだったから皆んなそこに座った。右端から向かい合うようにして、俺とカムイ、白玄さんとセルベリア、ゆめとあいね、リリィとみお、そして殤さんと杉元さんの順で座っていた。

 

 

 

 

杉元

「シチウか。寒い雪山にはありがたい煮込み料理だ。」

 

 

「なあ、これ本当に食い物なのか?何か真っ白だぞ?」

 

 

杉元

「大丈夫だよ。食べてもお腹壊さないから。」

 

 

 

 

殤さんはクリームシチューを初めて見るのかかなり抵抗していた。

 

 

 

 

セルベリア

「私のシチューが食べれないとでも言いたいのか?」

 

 

「いや正直抵抗があるって言うか。」

 

 

カムイ

「ダベモノヲソマヅニズルワルイゴハギザマガァァァァ!!」

 

 

 

突然カムイが強烈な殺気を放ち、目を赤く光らせ殤さんを睨みつけた。

 

 

 

「わかった・・・・食う。食うから怒りを抑えてくれ。」

 

 

カムイ

「じゃあ食べよう!」

 

 

 

 

えー・・・・。元に戻ったけど何だったの今の緊迫感。

 

 

 

 

 

白玄

「では!この世の食材に感謝を込めて!」

 

 

剣城、ゆめ、あいね、みお、白玄、セルベリア、リリィ、白玄、佐一、殤

「いただきます!」

 

 

 

 

セルベリア達が作ったシチューをスプーンで掬って最初の一口を食べた。

 

 

 

 

「おっ!こいつはいけるな!見た目と違って全然乳牛の味がねえ!」

 

 

杉元

「うん!こりゃ美味い!濃厚なスープにじゃがいもとにんじんの程よい食感がまたいい。」

 

 

 

 

杉元さんも最初は抵抗があった殤さんも大絶賛だった。

 

 

 

剣城

「本当に美味しい!」

 

 

白玄

「うん!中々の美味だ。」

 

 

セルベリア

「お口に合って何よりです。マスター、怪我の方は?」

 

 

剣城

「白玄さんのお陰で、傷も完全に塞がったよ!さっきまでの痛みが嘘みたいに無い!」

 

 

セルベリア

「そうでしたか。マスターを助けていただき感謝する。」

 

 

ゆめ

「ありがとうございます!白玄さん!」

 

 

あいね

「ありがとう!白玄さん!」

 

 

 

ゆめもあいねも嬉しそうだったけど、白玄さんは笑みを浮かべているが何だか聞きたいことがありそうな雰囲気だった。すると食べるのをやめてしまってスプーンを皿の中に置いた。その後、白玄さんはこんな事をゆめ達アイカツ組に聞いてきた。

 

 

 

白玄

「なら治療費として僕からもアイカツをしているアイドルのサーヴァント達に聞きたい事がある。」

 

 

 

白玄さん・・・・サーヴァントの事も知っているのか!?でもゆめ達に聞きたい事って何だろう。

 

 

 

白玄

「君達は同じアイカツをしているがお互い別世界の住人だ。だがある時あるアイカツパスを使った事で、アイカツシステムが思わぬ異常を起こしてある事が起こった。お互いの世界が一つの世界として結ばれた。だがそれも長く続かず、世界は再び元の状態に戻り、更には君達の記憶からもお互いの存在を忘れていた。ここまでは正解だね?」

 

 

ゆめ

「はい、確かにそうです。」

 

 

 

 

え?ちょっと待って!?それってどう言う事!?ゆめ達の世界って元はバラバラだったの!?

 

 

 

 

セルベリア

「あいね達が召喚された後真っ先にルーラーの下に駆け寄り再会を喜び合っていたが、その時に、お互いの記憶が戻ったと言う事か?」

 

 

みお

「ゆめちゃんはわかりませんが私とあいねはそうでした。あの頃に今まで忘れていた事が一気に蘇ってきたんです。」

 

 

剣城

「ゆめはどうだったの?」

 

 

ゆめ

「私も召喚された時に、忘れていた記憶が一気に蘇ってきた。それは嬉しい事なんだけど・・・・。」

 

 

リリィ

「何故あんなにも楽しかった思い出を簡単に忘れてしまったのか。それが不思議でなりません。」

 

 

 

 

楽しかった食事の風景は一気に静まり返った。でもゆめ達の事も気になる。

 

 

 

 

白玄

「そんな困っている君達に白玄お兄さんが教えてあげよう。異世界同士を一つにするなんて理論上不可能だ!」

 

 

あいね

「そんな筈ない!私達はゆめちゃん達やいちごちゃん達とアイカツした!それは絶対覚えてるもん!!」

 

 

白玄

「じゃあ、あいね君に聞くけど、日本の島とアメリカの大陸を一つにできると思う?」

 

 

あいね

「やろうと思えば出来ます!!」

 

 

みお

「あいね、普通に無理だから。」

 

 

白玄

「そう!それが答えだ。」

 

 

あいね、みお

「え?」

 

 

 

確かに日本とアメリカの大陸を一つにする事は不可能だけど・・・・そうか!!異世界もそう言う原理なら何らかの影響があってもおかしくない!

 

 

 

白玄

「みお君が言う様に大陸と島を一つにするなんて現実では不可能だ。そしてあいね君の答えこそが今の君達の現状だよ。」

 

 

あいね

「じゃあ私達のやった事って間違いだったの?」

 

 

白玄

「いや、無謀だったんだよ。本来交わる筈のない世界を無理矢理くっつけようとしたんだ。何かしらの影響で記憶を失っても無理もない。」

 

 

 

 

 

まさか無理に異世界同士を一つにした所為で反発して、その反動で皆んなとの出会いの記憶が消えたのかな。でもそれだと一つ疑問が残る。

 

 

 

 

剣城

「白玄さんの話だと、彼女達がサーヴァントとして召喚されても記憶は戻らない筈です。彼女達の物語がそこで終わってるならそこまでの記憶しかない筈だから。でも今は皆んなにその記憶が残っている。」

 

 

白玄

「そう!だから僕は彼女達に確認したかったんだ。そしてここからは僕の仮説だが、君達が別れた後確かにその時を過ごした記憶は忘却されていた。あるアイドルを除いては。」

 

 

 

 

あるアイドル?

 

 

 

 

白玄

「覚えているかい。君達が育み、絆を深めてきた幸運の少女の存在を。」

 

 

ゆめ

「それってもしかして!」

 

 

あいね

「らきちゃんだ!!」

 

 

剣城

「らき?」

 

 

白玄

「『姫石(きせき)らき』。彼女達が夢の共演を果たした世界でその中心にいたアイドルだ。彼女がサーヴァントとして召喚されたなら、スキルでその時の記憶を呼び起こしたんじゃないかな。」

 

 

あいね

「じゃあらきちゃんが何処かの世界にいるって事!?」

 

 

白玄

「そう言う事になる。」

 

 

 

 

そんな重要なサーヴァントがいるなんて思わなかった。姫石らき。彼女も何処かの異次元で聖杯によって召喚されてるなら、彼女の捜索もしないとな。なら話は纏まった。

 

 

 

 

剣城

「すいません。ちょっと席を外します。」

 

 

 

 

白玄さんの事も含めてアースに報告しなければならない。それには彼に知らないよう行わなければ行けなかったからだ。サーヴァントの事も知ってるとなると今は信用しない方がいい。だが席を立ったその時、腕を掴まれた感触があった。

 

 

 

 

白玄

「何処に行くのかな?」

 

 

 

 

白玄さんが俺の腕を掴んでいたのだ。てかなんで!?

 

 

 

 

白玄

「まさかとは思うけど、僕等に内緒で何処かに連絡するつもりだったんじゃないかな?」

 

 

剣城

「いいえ、そんな事は。」

 

 

白玄

「まさかとは思うけど、僕の事色々言い触らすつもりだったんじゃないの?」

 

 

剣城

「いいえ、そんな事は。」

 

 

白玄

「まさかとは思うけど、僕ってそんなに信用無いのかな。」

 

 

剣城

「いいえ、そんな事は。」

 

 

白玄

「剣城君。僕に嘘や誤魔化しは無駄だよ。潔く諦めて全部ゲロッちゃいなヨッ♪」

 

 

剣城

「はい・・・・。」

 

 

 

 

白玄さんに隠し事は通じなさそうなので、そのままアースに繋げてドクター達に報告した。画面にはドクターとクリスティーナさん、そしてアルタイルが代表して話を聞く事にした。

 

 

 

 

ロマニ

[興味深い話をありがとう。僕はロマニ・アーキマンだ。剣城君の危ない所を助けていただき感謝する。]

 

 

白玄

「白玄と申します。礼には及びませんよ。それとそちらの二人はサーヴァントのようだね。なら自己紹介は省いてもいいよね。牧瀬紅莉栖。そして『軍服の姫君』アルタイル。」

 

 

アルタイル

[やはり私の事も知っていたか。]

 

 

白玄

「まあサーヴァントとは言え、君の世界ではこの状況は近しい物ではないのかね。」

 

 

アルタイル

[それは否定しない。そこまで知っているのであれば森羅万象(ホロプシコン)の事も知っているな。]

 

 

白玄

「もちろん!そんな物語の設定を自由自在に変える反則的な能力は忘れようが無い。」

 

 

アルタイル

[だが解せぬ事がある。先程マスターを治した力、あれは『井上(いのうえ)織姫(おりひめ)』殿の宝具だ。何故貴様が扱える。]

 

 

白玄

「解せぬのはこちらの方だよ。君の被造物の作品の知識は君の世界の被造物しかない物だ。何故他所の世界の事を知っているのかな。」

 

 

 

 

やっぱりアルタイルの事まで知っていたのか。てか俺の力を治した宝具って他のサーヴァントの宝具なのか。それを扱えるって何者なんだ!?

 

 

 

 

白玄

「それともう一つ気になるのが牧瀬紅莉栖君だ。僕の仮説が正しければ、君をサーヴァントとして召喚するのは難しい。何故なら、君には決定的な宝具が無いからだ。」

 

 

紅莉栖

[確かに貴方の言う通りよ。でも現実はサーヴァントとして存在している。つまり私にはその宝具となる物があるから。]

 

 

白玄

「なるほど、やはり彼の宝具を使っているわけか。確かに『負荷領域のデジャブ』で君は彼を助ける為にあの宝具を一時的に使用していた。『電話レンジ(仮)』と『IBM5100』を。」

 

 

紅莉栖

[タイムマシンの事までお見通しってわけね。]

 

 

 

 

何かよくわからないけど、クリスティーナさんの事まで知っているみたいだ。何者なんだ。

 

 

 

 

ロマニ

[隠し事をしても無駄だと思うから全て話すが、君には全く関係の無い話だ。それでも聞くと言うのかい。]

 

 

白玄

「それは話を聞いた後で決めさせて貰うよ。」

 

 

ロマニ

[わかった。なら説明させて貰う。]

 

 

 

俺達は白玄さんに、自分達の目的と現在の状況だけを説明した。聖杯の回収と七騎の大罪、そしてターニャ・フォン・デグレチャフの事も全て話して、彼に答えを聞かせて貰うようにした。

 

 

 

 

白玄

「聖杯か。それでターニャ・フォン・デグレチャフに追われていたと言う事か。」

 

 

 

白玄さんは話を聞いて大体の事は納得してくれた。でも、白玄さんに役立つ情報なんてあるのかな?

 

 

 

白玄

「七騎の大罪は知らないが、そのアーチャーで召喚されたサーヴァント『ターニャ・フォン・デグレチャフ』についてなら何とか話せそうだ。」

 

 

 

 

白玄さんからアーチャーについて補足と言う形で説明された。

 

 

 

 

白玄

「アルタイルの言う様に、彼女は異世界転生者だ。だが生前から根っからの合理主義者でね、おまけに人には無関心だから他人を思いやる気持ちが無い。その割にはやたらと執着心が強い。これ程めんどくさい幼女はいないよ。」

 

 

ロマニ

[出来れば詳しく聞かせて欲しい。アーチャーに対抗出来る手掛かりが有るかも知れない。]

 

 

白玄

「それは難しい話だ。彼女は頭も切れるから生半可な対策は取れないだろう。まあ気をつけなければならないのは、剣城君の方にある。」

 

 

剣城

「俺?」

 

 

白玄

「間違っても彼女に君自身の存在は明かしてはダメだよ。」

 

 

剣城

「どうしてですか。」

 

 

白玄

「デグレチャフ少佐を転生したのは、彼女の前世の世界の神様『存在X』の仕業だ。彼女に信仰心を持たせる為にやった事だが、それが災いして彼女に復讐心を持たせてしまった。しかも本人もその神様の正体を知らない。」

 

 

剣城

「それと俺に何の関係が?」

 

 

白玄

「もし彼女の前で「自分は君の物語を生み出した世界から来た。」なんて言えば、剣城君の事を存在Xと勘違いして、殺しに掛かる危険性があると言う事だ。」

 

 

 

 

 

そんな危ないサーヴァントだったの!?それにアーチャーがそれだけ手強いとなると、後に控えてる七騎の大罪も相手にしなきゃ行けなくなる。

 

 

 

 

ロマニ

[弱ったなあ。敵は七騎の大罪だけじゃ無いって事か。だが気になるのはどうやってアーチャーが七騎の大罪から聖杯を奪ったかだ。」

 

 

 

 

そうだ。七騎の大罪は少しでも罪があるならその攻撃は一切通用しない。頭のいいアーチャーならそれくらいわかる筈。ならどうやって聖杯を手に入れたんだ。

 

 

 

 

カムイ

「あのー・・・・私それ知ってるかも。」

 

 

 

 

さっきまで元気だったカムイが気まずそうに手を上げて何か言いたそうだった。

 

 

 

 

剣城

「知ってるって?」

 

 

カムイ

「実は私が目を離してる隙に聖杯がなくなってたの。だから多分その子が盗んだんじゃ無いかなーって?」

 

 

 

 

彼女の話を聞いて、皆んな驚いた顔をしていた。アーチャーは七騎の大罪の隙を見て聖杯を奪った所はわかった。問題はその聖杯を所持していた正体だが・・・・まさかカムイが!?

 

 

 

 

剣城

「カムイ・・・・君はまさか七騎の大罪なの!」

 

 

カムイ

「あれ?言ってなかったっけ?」

 

 

剣城

「聞いてないよ!」

 

 

ポチ

「他のサーヴァントから身を隠す為に伏せていた事だ。無暗やたらと正体を明かす愚か者はいない。」

 

 

 

 

すると誰かに話しかけられた様な気がして辺りを見渡したけどそれらしき人物がいない。

 

 

 

 

ポチ

「後ろだ!後ろ!」

 

 

 

 

 

後ろを振り向くと、窓の外からポチが中を覗き込んでいた。何か語りかけてるようだけど、まさかポチが喋っているのか!?

俺達は慌てて外に出て確認した。そこでカムイの正体を知る事になった。

 

 

 

 

剣城

「まさか、ポチなのか。」

 

 

ポチ

「ようやく気付いたか。我等がグランドマスターよ。」

 

 

剣城

「君達は一体。」

 

 

カムイ

「私達は七騎の大罪が一人。『暴食の騎兵(グラトニーライダー)』。真名はカムイ!」

 

 

ポチ

「我は彼女の宝具にして大自然の化身、狩人の神『ホロケウカムイ』である!」

 

 

杉元

「犬が喋ったぁぁぁぁ!!」

 

 

ポチ

「犬ではないわ!!」

 

 

 

 

彼女の正体は七騎の大罪『暴食の騎兵(グラトニーライダー)』だった。

白玄さんにカムイ、新たな人達とその謎との出会いが俺達を困惑した。

 

 

 

 

ターニャ

「ようやく見つけたぞ。」

 

 

 

 

アーチャー『ターニャ・フォン・デグレチャフ』が直ぐそこまで来ていた。彼女との最終決戦が今幕を上げようとしていた。

 

 

 

 




英霊紹介




真名:『カムイ』


クラス:『暴食の騎兵(グラトニーライダー)


宝具:『狩人の神(ホロケウカムイ)


第二宝具:『羆の神(キムンカムイ)


プロフィール
七騎の大罪が一人にしてアイヌの神様ではあるが、まだ幼い子供の姿をしている事から『コロポックル』とも言われている。明るく元気な女の子だが時々抜けている所が多く、すぐに失敗してしまう事もある。ただ食べ物を粗末にしたり、間食なんかをすると噛み殺す勢いで怒り出す。
彼女の宝具は動物でそれぞれ名前が付いていて、狼の姿をした神ホロケウカムイは『ポチ』。羆の姿をした神は『タマ』と名付けている。






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第五話『最終決戦エベレスト』

カムイの正体が七騎の大罪であるグラトニーライダーと知った俺達は彼女の仮住まいで話し合いをした。カムイをこの後、どうするか決めるからだ。結果、カムイと友好する派と敵対する派の二つに分かれた。友好派は俺とゆめ、ピュアパレットにセルベリア、リリィだ。そして残った敵対派に殤さんと杉元さん、そして白玄さんが着いていた。二人は、カムイが聖杯戦争の主犯でもあるからやっぱり許せない所があるのはわかっていたからだ。

 

 

 

 

杉元

「やっぱりこうなっちまうよな。」

 

 

「まあ仕方ないっちゃ仕方ないがリリィは何でそっちなんだ?お前さんだって、その嬢ちゃんに利用されて戦わされてたってのに、お人好しにも程があるんじゃないのか。」

 

 

リリィ

「だからと言って命まで奪う必要はありません!以前、マスターとゆめさんは無傷で七騎の大罪の一人を倒したと言っていました。それにアーチャーに聖杯を奪われた時点で彼女はもう自由です。」

 

 

 

 

そんな感じで言い合いが続いていた。だがそんな俺達を嘲笑うかのように、東の遠くの丘から俺達のいるこの家をターニャがライフルで狙っていた。

 

 

 

 

ターニャ

「キャスターめ、セイバーとバーサーカーで内輪揉めとは、呑気にも程がある。「どうぞ殺して下さい。」と言っているようなものだ。」

 

 

 

 

ターニャは魔力を限界にまで溜めて発射態勢に入っていた。だが俺達はそれに気付かず口論を続けていた。

 

 

 

 

ターニャ

「では諸君!さようなら。」

 

 

 

 

魔法陣を張ったライフルから弾丸が飛び出して命中し、俺達がいた家は跡形も無く吹っ飛んでいった。

 

 

 

 

ターニャ

「実に!実にいい!後はあの少年の遺体を見つけ出して終わりだ。」

 

 

 

 

そう言ってターニャは吹き飛ばした家に向かって瓦礫を漁り始めた。どうやら俺の体を探しているようだが、何が目的なんだ。

 

 

 

 

ターニャ

「おかしい。遺体が見当たら無い?バラバラになっていたとしても肉片の一部でも見つかってもいいはず。それすら無いとはどう言う事だ。」

 

 

 

 

だが彼女が気を取られていた時だった。一発の銃声が響き渡り、ターニャが顔を上げた瞬間、弾丸が彼女の顔をスレスレで横切って行った。

 

 

 

 

ターニャ

「誰だ!!」

 

 

 

 

さらにターニャが振り向いた瞬間だった。

 

 

 

 

拙劍無式(せっけんむしき)!!」

 

 

 

 

殤さんの声と共に床下から爆発したかのように破片が飛び散り、それに紛れて木刀が突き出て彼女を捉えた。

 

 

 

 

鬼神辟易(きしんへきえき)!!」

 

 

 

 

だが彼女はライフルで殤さんの突きを飛ばされながらも防いで態勢を整えた。

 

 

 

 

「たくっ!佐一の奴、本当に外してんじゃねえよ!」

 

 

ターニャ

「まさか民家の床下に潜んでいたとはな!」

 

 

「残念だが床下じゃ無え。ただの地下通路だ。」

 

 

 

 

ターニャが狙撃する数時間前、俺達は地下通路に避難していた。でもこの地下通路、元々あったものでも無ければ、カムイが作った物でも無い。作ったのはこの人だった。

 

 

 

 

カムイ

「私に内緒でこんなの作ったの!!」

 

 

白玄

「いや〜世の中何があるか分からないからね。何かの役に立つんじゃ無いかと思って念の為に作っといて良かったよ。」

 

 

 

 

それにしては都合良すぎの様な気もするような。ターニャの魔力を感知して、俺達に声を掛けたと思ったら、忍術で俺達の影武者まで用意して、地下に逃してくれるんだもん。明らかにターニャが来る事読んでたよね?

 

 

 

 

ゆめ

「マスター。カムイちゃんの事なんだけど。」

 

 

剣城

「わかってる。」

 

 

 

 

そしてカムイの件だが、既に俺達の中で決着が着いていた。

 

 

 

 

剣城

「カムイ。アーチャーを倒すまでは協力してもらうけど、その後で君には死んでもらう。それでいいね。」

 

 

カムイ

「うん。ありがとう。」

 

 

 

 

カムイには死んでもらう事にした。何故そんな残酷な結末に至ったのか。それはカムイ達アイヌの文化と七騎の大罪の契約が深く関わっていたからだ。

 

 

 

 

あいね

「ねえ・・・・他に方法ないの。」

 

 

みお

「これじゃあカムイちゃんが可哀想過ぎる。」

 

 

杉元

「誰だってこんな結末望んじゃいねえよ。でもカムイ達を『悪の神(ウェンカムイ)』にさせないよう、彼女の命をここで断つしかない。」

 

 

ポチ

「気を使わせてすまない。我等は一度人を殺め、ウェンカムイになり掛けた時に、暴食の大罪として七騎の大罪と言う役目を負う代わりにウェンカムイの呪縛を断ち切ってくれた。だがこのまま放置すれば七騎の大罪の資格を失い、我等は再びウェンカムイとなるであろう。我等を真っ当な神として逝かせてほしい。」

 

 

 

 

聖杯の所有権を奪われ、契約者無しのカムイは非常に危険な状態だった。七騎の大罪の契約下に置かれているカムイは、聖杯の役目を終えたら本来あるべき場所に戻らなければならないのだが、ターニャに聖杯を奪われた事によりその所有権を失い、彼女はその場所にすら帰れない状況である。このまま彼女を放置すれば『悪の神(ウェンカムイ)』と言う邪神になるからだ。彼女を救うにはサーヴァントの心臓となる霊核(れいかく)を破壊するしかないのだ。

 

 

 

 

白玄

「話は終わったかな。」

 

 

剣城

「はい。」

 

 

白玄

「ではこれより作戦を説明する。」

 

 

 

 

白玄さんの作戦はこうだ。俺達がいた民家の離れた場所の別の民家に杉元さんが待ち構える。ちょうどその家はターニャが狙撃してくる真正面に位置する。ターニャは高火力の狙撃を行う筈だから民家を吹き飛ばすつもりだろう。その後、彼女は遺体を確認するため瓦礫を漁りに来るはず。そこを杉元さんが狙撃する事になっているが、それが作戦開始の合図だ。そこから地下通路の入り口を使って殤さんが奇襲を仕掛ける。そして今、その作戦の第一段階が開始されている所だった。

 

 

 

 

ターニャ

「たった二騎で何が出来ようか。他にもいるのだろ!隠れて無いで出てきたらどうだ!!」

 

 

セルベリア

「ではそうさせてもらう!!」

 

 

 

茂みからセルベリアの声と共に蒼い炎の閃光が放たれた。瞬時に気付いたターニャは空に逃げて回避した。

 

 

 

 

ターニャ

「ただのサーヴァントでは無いと思っていたがこれはもう化け物だな。幸いなのは奴等に飛行スキルを持つ者がいないと言う事くらいか。」

 

 

???

「はあぁぁぁ!!」

 

 

ターニャ

「グハァッ!?」

 

 

 

 

彼女の背後から誰かが不意打ちでライフルの様な物で殴り付け、ターニャはそのままさっきいた場所に落ち、地面に叩きつけられた。

 

 

 

 

ターニャ

「バカな・・・・一体何処から!?」

 

 

 

ターニャを叩き落としたのは犬の耳と尻尾が生えていて、両足に空を飛ぶ為の機械を装着した女性だった。その足の先端にはプロペラらしき物も回っていて、今はターニャの所にゆっくり降りてきて浮遊している状態だった。

 

 

 

 

ターニャ

「何者だ!!」

 

 

バルクホルン

「私は、カールスラント空軍第52戦闘航空団第2飛行隊並びに第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』所属『ゲルトルート・バルクホルン』大尉である。帝国軍第二○三魔道大隊大隊長『ターニャ・フォン・デグレチャフ』少佐殿とお見受けする。」

 

 

ターニャ

「カールスラントと言う国は聞いた事がないが、貴様が別世界の英霊までは理解した。だが私の真名だけで無く所属まで知っているとはどう言う事だ。」

 

 

バルクホルン

「それだけ貴女の噂は私の世界にまで響き渡っていると言う事ですよ。『ライン戦線』であれだけの功績を挙げれば、前線の作戦には引っ張り凧でしょ。安全地帯の後方支援より、危険地帯の前線の方が貴女にはお似合いだ。」

 

 

ターニャ

「そこまでの個人情報を公開した覚えは無いが貴公は人を怒らせるのが得意なようだ。」

 

 

バルクホルン

「お褒めに預かり光栄です。では本題に移らせて貰いましょう。ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐殿。貴女は聖杯戦争に基づく工程で軍規違反を犯した。これにより聖杯戦争は貴女への討伐戦へと移行となる。既に貴女以外の全クラスのサーヴァントは同盟を組んだ。大人しく投降して貰いましょう。」

 

 

ターニャ

「なに?」

 

 

 

 

茂みからセルベリアとピュアパレットとゆめ。民家の影から杉元さん。ターニャの正面には殤さん。そして空と背後には、ゲルトルート・バルクホルン。これが白玄さんの作戦だった。

 

 

 

 

白玄

「はい!殤さんが出て来た所で茂みからセルベリアとゆめちゃん、あいねちゃん、みおちゃんの『アイドル楽隊サンメガミ』が出て来て!」

 

 

みお

「知ってたんですね。サンメガミ。」

 

 

白玄

「更に民家から先制攻撃を外した杉元くんも出て来て!」

 

 

杉元

「何で外す前提なの!?」

 

 

白玄

「リリィちゃんとカムイちゃんには、剣城くんの護衛に着いて、彼女の背後には僕が行く。これで『デグレチャフ包囲網』の完成だ。」

 

 

 

 

これが白玄さんの作戦だった。ターニャを完全に包囲して降伏して貰い、聖杯を渡すよう交渉に申し出る事だ。だが一つ問題がある。

 

 

 

 

セルベリア

「奴は飛行スキルを持っている。空に逃げられては意味が無いが。」

 

 

白玄

「それも対策済みさ。」

 

 

 

そう言うと白玄さんは忍者の様なポーズを取り始めた。

 

 

 

 

白玄

「変化!」

 

 

 

 

白玄さんの体が一気に煙で覆われ、晴れた頃には別の人間になっていた。しかも女性の姿でだ。

 

 

 

 

 

バルクホルン

「私は第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』所属ゲルトルート・バルクホルン大尉である。この姿の時はバルクホルンと呼んでくれ。」

 

 

 

 

だがその女性、上は軍服を着ているが何故か下は下着姿が見えた様な気がした。

 

 

 

 

ゆめ、あいね、みお

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

だがゆめ達の叫び声と共に目の前が突然真っ暗になって確認する事が出来なかった。

 

 

 

 

バルクホルン

「ん?何だどうしたんだ?」

 

 

セルベリア

「どうしたんだじゃない!!何だその格好は!!」

 

 

バルクホルン

「私の格好に何か問題でもあるのか?」

 

 

あいね

「問題大有りです!!」

 

 

みお

「何でそんなに平然としてるんですか!!下履いて下さい!!」

 

 

バルクホルン

「何を言う?下ならちゃんと履いているだろ?」

 

 

セルベリア

「下着姿で履いている内に入るか!!ズボンを履けと言っている!!」

 

 

バルクホルン

「言っておくがこれがズボン何だが?」

 

 

 

 

そうかズボンがなら仕方ないか。いやいや!!そんな下着見たいなズボンがあってたまるか!!

 

 

 

 

セルベリア

「下着をズボンと言い張るバカはお前くらいだ!!」

 

 

バルクホルン

「何!?それは偏見では無いのか!!」

 

 

ゆめ

「いいから何か履いて下さい!!」

 

 

 

 

でもズボン何だよね!?なら見ても問題無いんじゃ!!

 

 

 

 

ゆめ

「マスター?」

 

 

剣城

「いや何でもない!!」

 

 

杉元

「ねえ?何で目隠ししてるの?何かあった?」

 

 

リリィ

「何もありません!!そのまま大人しくしていて下さい!!」

 

 

「おい嬢ちゃん達、あんまり強く抑え込まないでくれるか?目ん玉潰れそう何だが?」

 

 

あいね

「ごめんなさい!でももう少し我慢してて!!」

 

 

 

 

何か殤さんも杉元さんも目隠しされてるみたいだな。でも早く着替えてくれないかな。そう思っていたら目の前の視界が晴れた。目を向けるとバルクホルンがズボンを履いていた。

 

 

 

 

バルクホルン

「やれやれ、面倒な事を。」

 

 

 

 

いや、その面倒事引き起こしてたのは貴方では?

 

 

 

 

バルクホルン

「まあいい。さっきの続きだが、デグレチャフ少佐を我々で包囲する。その目的は彼女に降伏して貰う事だ。」

 

 

杉元

「そのまま嬲り殺しにするんじゃ無いのか?」

 

 

バルクホルン

「彼女が聖杯を持っている限り迂闊に攻撃は出来ない。ならば最低限の戦闘は避けるべきだ。」

 

 

「まさか聖杯を受け渡すよう交渉する気か?そう簡単にあの小娘が受け入れるとは思えないが。」

 

 

バルクホルン

「仕方あるまい。出来る限り彼女の不利な状況を作るしか策が無い。その為にもブレス大佐にはお願いしたい事がある。わかってはいるが貴方の宝具を発動して欲しい。」

 

 

 

 

セルベリアの宝具を?何でまた?

 

 

 

 

セルベリア

「無論、もはや手加減はしない。」

 

 

剣城

「セルベリアの宝具って?」

 

 

バルクホルン

「何だ?自分の部下の能力すら把握してないのか?指揮官がそんなんでは戦場で生き残る事など出来ないぞ。」

 

 

剣城

「すみません。それでセルベリアの宝具って?」

 

 

バルクホルン

「彼女は戦闘民族ヴァルキュリア人だ。本来の武器は、ヴァルキュリアが持つ力とその力を増大させる槍と盾だ。一度その蒼き炎を放てば、戦車中隊を壊滅させる事もできる。」

 

 

 

 

そんな凄い宝具だったんだ。彼女達を召喚して直ぐにエベレストに来たからステータスを把握する暇が無かったけど、それが仇になっていた。我ながら今後悔している。

 

 

 

 

バルクホルン

「では各自所定の位置に着いて待機。現時刻をもって作戦開始とする。」

 

 

 

 

因みに白玄さんが作った地下通路には出入り口が複数存在し、色んな場所に出られる。それを巧みに利用して、ターニャを包囲する事が出来たのだ。

 

 

 

 

剣城

「凄い。本当に包囲出来た。」

 

 

 

 

そして皆んなと別れた後、俺とリリィ、カムイにポチは林の影から皆んなの戦いを見ていた。

 

 

 

 

リリィ

「彼女をこうも簡単に包囲してしまうとは、これでは降伏せざるを得ません。」

 

 

ロマニ

[とは言え油断しない方がいい。まだ彼女は負けを認めてはいないはずだ。]

 

 

 

 

そう。まだ戦いは終わっていない。その予測は当たっていた。

 

 

 

 

ターニャ

「この私に降伏しろと?ただ囲って脅しただけで包囲網とは言わぬぞ!!」

 

 

 

 

するとターニャは手に何かを持って地面に投げ飛ばした。その瞬間、眩い光が放たれた。

 

 

 

 

バルクホルン

「しまっ!!」

 

 

あいね

「眩しい!!」

 

 

「目眩しか!!」

 

 

杉元

「クソッ!前が見えねえ!!」

 

 

 

皆んな目をつぶってしまい、その隙にターニャに上空に逃げられた。だが彼女はその場で止まり辺りを見渡して何か探しているようだった。そしてターニャは俺達のいる方を見て不気味な笑みを浮かべた。それを見た俺は危機感を感じた。

 

 

 

 

剣城

「リリィ!!宝具『Dreaming bird』を発動!!」

 

 

リリィ

「はい!」

 

 

 

 

とっさにリリィの宝具『Dreaming bird』を発動させた。それはターニャも宝具を発動してくると見たからだ。

 

 

 

 

ターニャ

「主よ。愚かな罪人に裁きの鉄槌を。」

 

 

 

 

ターニャが魔法陣を展開した瞬間、放たれた弾丸が一気に弾け飛び俺達のいる茂みを吹き飛ばした。しばらく煙が舞っていたが段々晴れてくると巨大な鳥籠のような物が俺達を守るようにして覆っていた。リリィの宝具『Dreaming bird』が発動したからだ。だけどその鳥籠もボロボロでそのまま一気に崩れていった。リリィ自身も息を切らして魔力を消耗し切っていた。それを見ていたターニャが嘲笑うかの様に俺達の目の前に降りて来た。

 

 

 

 

ターニャ

「やはり貴様かキャスター。そんな所で潜んで見物とは舐めたマネをしてくれる。」

 

 

リリィ

「貴女の好きにはさせません!アーチャー!ターニャ・フォン・デグレチャフ!!」

 

 

ターニャ

「やはり私の真名を知っていたか。まあいい。用があるのは貴様では無くそこの少年だからな。」

 

 

 

 

俺?なんでまた?

 

 

 

 

ターニャ

「君は我々と違ってサーヴァントでは無いのは既にわかっている。それに僅かながらそこのキャスターを含め格サーヴァントに魔力供給がされているのを感知している。」

 

 

剣城

「何が言いたい。」

 

 

ターニャ

「この私と手を組まないか。聖杯を手にした暁には望む謝礼はいくらでもしよう。」

 

 

 

 

正直言って俺はターニャの提案に乗るつもりは無かった。彼女の態度もそうだけど、リリィ達を裏切る事なんて出来なかったからだ。だから俺はターニャを挑発する様に断った。

 

 

 

 

剣城

「お前が聖杯に願う望みは、君を貶めた神様を殺す事だろ。でもそれって自業自得じゃないか。自分が楽をする為に誰かを貶めて傷つけて来た結果だろ。そんな奴と協力なんて出来ない。」

 

 

ターニャ

「!?」

 

 

剣城

「お前みたいな奴に俺達は負けない!ここで終わらせてやる!!ターニャ・フォン・デグレチャフ!!」

 

 

 

 

だがこの言動が誤りだった。彼女の体が怒りで震え始め、歯を食い縛って物凄い目付きで俺を睨んだ。

 

 

 

 

ターニャ

「そうか・・・・そう言う事か。さっきから変だと思ったが、その事を知っているのは貴様と私だけだからな。」

 

 

剣城

「何を言っている。」

 

 

ターニャ

「ようやく会えたな・・・・存在X!!」

 

 

 

 

どうやら彼女は俺を存在Xと勘違いしてしまった様だ。白玄さんに忠告されていたにも関わらず、違った形で誤解されてしまった。

 

 

 

 

ターニャ

「死ねぇぇぇ!!」

 

 

 

 

激怒したターニャが持っていた銃で俺に向けて撃ってきた。とっさに目をつぶった俺は、半ば諦めかけていた。

 

 

 

 

剣城

「あれ?」

 

 

 

銃声は聞こえたのに当たった感じや身体の何処にも痛みを感じなかった。外したのか?

 

 

 

 

リリィ

「カムイさん!!」

 

 

 

 

リリィの叫び声で目を開けると、俺の目の前にカムイが立っていた。

 

 

 

剣城

「カムイ!!」

 

 

 

この時俺は一瞬で理解した。俺を庇って撃たれたのだと。俺は後ろから倒れていくカムイを抱き抱えた。

 

 

 

 

ターニャ

「終わるのは貴様だ!!存在X!!」

 

 

「そうはさせません。」

 

 

 

 

その時、仮面を着け、動きやすい和風の衣装を着たアサシンらしき人物が俺達の前に現れた。

 

 

 

 

秘術(ひじゅつ)魔鏡(まきょう)氷晶(ひょうしょう)!!」

 

 

 

 

その人は氷の結界でターニャを覆い尽くして閉じ込めてしまった。

 

 

 

 

カカシ

「ふー、間一髪。」

 

 

 

 

今度はもう一人、マスクをした男の人が現れた。片目を額当てで隠して、片手には『イチャイチャパラダイス』と言う題名で書かれた大昔の書物を持っていた。まさかとは思うけど白玄さん?

 

 

 

 

剣城

「白玄さん?」

 

 

カカシ

「驚いた。よく気が付いたね。」

 

 

剣城

「まあ・・・・そんな怪しい姿だったら誰だって気付きます。」

 

 

カカシ

「君、場合によっては傷付くよ。」

 

 

剣城

「そんな事はどうでもいいです!!貴方の力でカムイを治してください!!」

 

 

 

 

だけど白玄さんは、カムイを助けようとしなかった。何で・・・・どうして!!

 

 

 

カカシ

「残念だけど、もう手遅れだよ。」

 

 

剣城

「そんな事ありません!!俺を治した時みたいに出来るはずです!!貴方の力なら!!」

 

 

カカシ

「俺は医者でも無ければ神様でもない。ただの物知りお兄さんなだけだ。だからわかる、彼女はもうここまでだ。」

 

 

剣城

「そんな・・・・。」

 

 

カムイ

「もういいよ。グランドマスター。」

 

 

 

 

カムイが声を震わせながら俺に向かって呼びかけた。見ると彼女は光となって消えかかっていた。それを見て俺は涙が溢れ出てきた。

 

 

 

 

カムイ

「これで良かったんだよ。グランドマスター達に嫌々殺されるよりかは、最後は命と引き換えに役に立って死んでいった方が悔いが無く逝けるから。」

 

 

剣城

「でも早すぎるよ。」

 

 

カムイ

「大丈夫だよ、また会えるから。だから早く残りの仲間を集めて。そしたら今度は皆んなで会いに行くから。約束だよ。」

 

 

 

 

正直納得出来なかったし、約束もしたく無かった。

 

 

 

 

剣城

「わかった・・・・必ず他の七騎の大罪達を集める。約束だ。」

 

 

カムイ

「ありがとう。バイバイ!」

 

 

 

そう言って彼女は消えて逝った。

 

 

 

ポチ

「必ず勝って生き残れ、グランドマスター。」

 

 

 

 

宝具であるポチも後からそう言って消えて逝った。

 

 

 

 

ゆめ

「マスター!!」

 

 

 

ゆめ達が来た頃には、カムイはもう光となって消えた後だった。

 

 

 

あいね

「カムイちゃんは?」

 

 

 

真っ先にカムイがいない事に気付いたあいねが聞いてきたが、俺達は悲しみにくれて黙ったままだった。

 

 

 

 

カカシ

「もう逝ってしまったよ。剣城君達にお別れを言ってね。」

 

 

あいね

「そんな。」

 

 

みお

「カムイちゃん。」

 

 

 

 

けど、悲しみに暮れてる時間は無かった。

 

 

 

 

「カカシさん!そう長くは持ちません!!撤退するなら今です!!」

 

 

カカシ

「と言う訳だ。全員地下通路に退却するぞ。」

 

 

杉元

「けどアーチャーを閉じ込めてるならチャンスじゃ無いのか?」

 

 

「それがそうもいかないんです。彼女を解放すれば剣城君が真っ先に狙われます。」

 

 

杉元

「ちょっと待て?どう言う事?」

 

 

 

後から来た皆んなは、最初は状況がわかってなかったけど、直ぐに話が見えてきたようだ。

 

 

 

 

「まさかとは思うが、自分の正体明かしたな。」

 

 

杉元

「嘘でしょ!?」

 

 

ゆめ

「どうして!?」

 

 

カカシ

「こりゃ、後で事情を聞くしかないね。今は撤退だ。」

 

 

 

 

俺は黙ったまま白玄さん達の後に付いて行き撤退した。地下通路を辿り出た先は、カムイが住んでいたのとは別の民家だった。白玄さんはターニャが地下通路に侵入して追って来られないよう妙な術を使って破壊した。

 

 

 

 

カカシ

「さて聞かせて貰おうじゃない。一体何があったの。」

 

 

 

 

俺は皆んなにさっきの出来事を全て話した。中には頭を抱えて呆れていた人もいた。

 

 

 

 

「そんな安い挑発に乗っちまうとはな。」

 

 

カカシ

「相手のプロフィールを暴露するとはね。彼女しか知らない情報を目の前で言われればそりゃ不審がるし確信も付くよ。こりゃ予想外だった。」

 

 

剣城

「すいません。折角の忠告を無視して。」

 

 

カカシ

「いや。俺の注意が足りなかったのもある。やってしまった事は仕方ない。今はこの危機的状況をどうするか考えよう。」

 

 

剣城

「でも・・・・俺の所為でカムイは。」

 

 

カカシ

「多分、カムイ自身は君達に殺されるよりかは命を掛けて護りたかったんじゃないかな。それが彼女の願いだったのかもよ。」

 

 

 

 

そうかもしれない。でも・・・・俺の中では後悔と在圧感が残っていた。ならやるしかない。ターニャが俺を標的にしてるなら倒せる絶好のチャンスだ。だがその時だった。

 

 

 

 

セルベリア

「マスター。お願いがあります。」

 

 

 

 

セルベリアが俺にお願い事を聞いてきたのだ。

 

 

 

 

セルベリア

「ターニャ・フォン・デグレチャフの強さは私達の予想を遥かに上回っています。勝てる相手ではありません。そこで私の宝具の使用許可を下さい。」

 

 

剣城

「白玄さんが言っていた『ヴァルキュリア』の力?」

 

 

セルベリア

「はい。私の中にあるヴァルキュリアの力を全解放させ、ターニャ・フォン・デグレチャフを跡形も無く消滅させます。」

 

 

 

 

ヴァルキュリアの力の話が本当ならもうこれしか手が無い。ならセルベリアに賭けるしか無いか。

 

 

 

 

剣城

「わかった。ならお願い。」

 

 

カカシ

「いやいや許しちゃダメでしょ。彼女自爆する気だよ?」

 

 

 

 

え・・・・自爆!?どう言う事!?

 

 

 

 

カカシ

「ヴァルキュリア人は自身の力を限界以上にリミッターを外すと大爆発を起こす事がある。その威力は町を一つ吹き飛ばす程だ。そして彼女は昔自分の世界でそれを実行した。馬鹿な主人の為にね。」

 

 

セルベリア

「貴様ぁぁぁ!!」

 

 

 

 

急にセルベリアが激怒して俺達は驚いた。白玄さんに自分の大切な人を侮辱されたのか、こんな彼女を見るのは初めてだった。

 

 

 

 

セルベリア

「訂正しろ!!マクシミリアン様はそのような方では無い!!」

 

 

カカシ

「断る!こっちはあの年に『ポンコツルルーシュ』みたいな奴を二人も観る羽目になったんだ。まあもう一人は本当にポンコツだったけど、マクシミリアンはとんでもないクズ野郎だったよ。ああ言う馬鹿はルルーシュだけで充分だ。」

 

 

セルベリア

「貴様に何がわかる!!マクシミリアン様の何がわかる!!私を地獄の様な施設から解放し、帝国の為に日夜戦い続けていたあの方の何がわかる!!」

 

 

カカシ

「わかるよ。真実は出世の為に君も含めて何もかも利用して、挙げ句の果てにガリア攻略が長引いた所為で焦り出して最終手段に捨て駒戦法を使って完全敗北した結果、破滅した愚かな指揮官だったよ。」

 

 

セルベリア

「負けた?マクシミリアン様が・・・・ガリアに・・・・。」

 

 

 

 

それを聞いたのか、セルベリアは崩れ落ちる様に座ってしまい今でも泣きそうな顔をしていた。

 

 

 

 

ゆめ

「セルベリアさんの過去にそんな事があったんですね。」

 

 

カカシ

「あれ?君は俺の話を信じるの?」

 

 

ゆめ

「白玄さんが嘘をついているとも思えないし、セルベリアさんのこの状態を見ると本当にあった事なんだなって事はわかりました。」

 

 

カカシ

「そう。ありがとう。」

 

 

 

 

だがしばらくして、セルベリアは顔を上げて白玄さんを睨み付けた。

 

 

 

 

セルベリア

「嘘だ・・・・マクシミリアン様が・・・・帝国が・・・・負けるはずなどない!!デタラメを言うな!!」

 

 

カカシ

「そんな事言われてもね。事実だし、嘘言っても仕方ないでしょ。」

 

 

セルベリア

「黙れ!!貴様のようなペテン師の言葉など信じるか!!」

 

 

カカシ

「ッ!?」

 

 

「ヅラじゃない(かつら)だぁぁぁぁ!!」

 

 

ゆめ、あいね、みお、リリィ、杉元

「えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 

えぇぇぇぇぇぇ!!誰この人!?いきなり出て来てセルベリアにアッパーかましたんだけど!?しかもそんな事一言も言ってないし!!

 

 

 

 

セルベリア

「なんだ?一体?」

 

 

「良いか!真のリーダーとはメンバーがドラマやバラエティで活躍している中、一人DA○H島で農作業や土木作業員を率先して行い、グループの看板番組を守る者の事だ。どこぞのテレビ局に媚び売っている(あ○し)やS○APとは訳が違う!!」

 

 

 

 

セルベリアも急な展開に混乱してるし、なんかよくわからないけど、色々ディスってるよね!?

 

 

 

 

「要はマクシミリアンはアイドルグループ一つ纏められない無能なリーダーだったと言う事だ!!」

 

 

カカシ

「リーダーの素質も無ければ威厳も人望も無いお前に言われたくないね。」

 

 

 

 

白玄さんはこの人を知っている?まさか・・・・。

 

 

 

 

「出来ればツッコミたくなかったが、お前もう一人の白玄なんだろ?何らかの術で分身体を作って他所様に化けてんだろ?それに何の意味がある?」

 

 

「白玄じゃない!桂だ!貴様の言う通り、俺はこのマスク忍者『はたけカカシ』に化けた白玄の分身体に『桂小太郎』と言う男に化けただけだ!!特に意味は無い!!」

 

 

カカシ

「意味無いなら帰ってくれ。つる太郎。」

 

 

「つる太郎じゃない!!桂だ!!」

 

 

カカシ

「てかお前何しに出て来たの?話ややこしくなるから帰ってくれない?」

 

 

「ふざけるな!!幾多の作品の中でようやく俺参上したと言うのに帰れだと!?俺の出番これだけと言うのはおかしな話だぞ!!俺の旅はこれからだ!!」

 

 

カカシ

「いや終わっていいよ。もう充分だから。てか帰れ。後二度と出てくるな。」

 

 

 

何がしたいんだろ白玄さん。でもお陰でセルベリアを思い止ませる事も出来た。それに俺自身覚悟も出来た。ならやる事はわかっている。

 

 

 

 

剣城

「セルベリア!令呪を持って命ずる!ヴァルキュリアの力で自爆する事をここに禁ずる!」

 

 

 

俺は令呪をセルベリアに向けた。彼女が自爆しないよう、令呪でそれを抑えようとした。どんな結果になったとしても自爆だけは絶対にさせない。

 

 

 

 

セルベリア

「何故ですかマスター!!」

 

 

カカシ

「セルベリア。」

 

 

 

 

俺に問い掛けたセルベリアに白玄さんが何か教えを与えようとしていた。それは白玄の経験では無く、彼が変化している『はたけカカシ』と言う人の物語だった。

 

 

 

 

カカシ

「俺もガキの頃は君と同じ考え方をしていた。里を守る為に命を投げ出しても与えられた任務を優先にする。そう言う考え方しか出来なかった。そんなある日、仲間の一人が敵に捕まってしまってね、俺はそいつを見捨て任務を優先しようとしていたら同じチームだった仲間にこんな事を言われた。「忍びの世界で、ルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。だが仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ。」そう言ってそいつは仲間を助けに行ったよ。気付いた時には俺一人になっていた。君は剣城君をそんなクズにしてしまっていいのかい?使い魔とはいえ仲間を平気で切り捨てるようなクズにしてしまっていいのか。」

 

 

セルベリア

「私は・・・・。」

 

 

カカシ

「剣城君が令呪を使ったのは、君に思い止まって欲しかったからだよ。」

 

 

 

 

そうだ。俺はセルベリアにそんな事して欲しくないから令呪を使ったんだ。こんな所でお別れなんて絶対にさせない。

 

 

 

 

剣城

「貴女の過去に何があったか知らないけど、少なくとも俺は貴女に死んで欲しくない!」

 

 

セルベリア

「マスター。」

 

 

剣城

「それに、ピュアパレットをどうするか決めないまま、故郷の世界に帰るつもりですか。」

 

 

 

 

そんな話をしたからか、あいねとみおもセルベリアを説得し始めた。

 

 

 

 

あいね

「そうだよ!!私達まだセルベリアさんのオーディションの結果まだ聞いてない!!」

 

 

みお

「審査員がオーディション中にいなくなるなんてそんなの絶対ダメです!!」

 

 

 

 

セルベリアが溜息をついてどうするか考える様な顔をしていた。まるで付き纏う二人を振り払う口実を考えていた。するとあいねこんな事を言いだした。

 

 

 

 

あいね

「それに私、セルベリアさんとちゃんと友達になりたい!!」

 

 

セルベリア

「お前・・・・。」

 

 

 

セルベリアはあいね達に押されて説得されてしまったのか、彼女は大人しくなってしまった。

 

 

 

セルベリア

「わかった!自爆しない!マスターの令呪で禁じられてるからしない!だからそんな顔をするな!」

 

 

 

 

セルベリアが懲りたようだ。やっぱり俺よりあいねとみおの方が効果的面だったようだ。

 

 

 

 

セルベリア

「だがターニャ・フォン・デグレチャフはどうする。奴の尋常ならぬ戦闘狂をどうやって止めるのだ?」

 

 

剣城

「それなら俺に考えがある。ただ少し無茶するけど。」

 

 

 

 

俺は皆んなに自分の作戦を提案を話した。作戦は至って簡単だ。ターニャが俺の注意を向いている今、俺自身がお取りになって彼女を引き寄せ、そこをセルベリアの宝具で一気に仕留める事だった。

 

 

 

リリィ

「そんな危険な事させられません!!」

 

 

みお

「そうよ!彼女はマスターを狙ってるのにそれをわざわざ差し出しに行くようなものよ!!」

 

 

 

 

その内容にみおやリリィは反対していた。

 

 

 

 

ロマニ

[そうだ危険すぎる!!]

 

 

紅莉栖

[いくらなんでも無茶過ぎるわ。やめておきなさい。]

 

 

 

 

もちろん聞いていたドクター達も猛反対だった。やっぱり無茶だったかな。でも俺も自分の信念を曲げなかった。

 

 

 

 

剣城

「今がチャンスだと思うんだ。ターニャが俺に殺意を向けてる今、彼女は持ち前の冷静さを失っている筈だ。俺が現れた瞬間に一直線で向かって来る。そこを叩く!」

 

 

カカシ

「なるほど。確かに彼女は異世界人を存在Xと勘違いして激昂した場面は何度かあったから、それを利用すれば倒せるかもしれない。けど危険な作戦だ。博打みたいなものだよ。」

 

 

「いや!良いではないか!なら彼を柱に括り付けて狙いやすくし、さらに餌でも吊るして置くか?リカちゃん人形とか?」

 

 

セルベリア

「今この場で死にたいのか!」

 

 

「正直俺も乗り気はしないな。確かに確実に仕留められるが、一歩間違えればお前も無事じゃ済まされねえぞ。それでもやるって言うのか。」

 

 

剣城

「やります。決着をつけるなら、今しか無い!」

 

 

「そうかい・・・・なら覚悟決めろよ。」

 

 

剣城

「はい!」

 

 

 

 

殤さんは納得してくれたが、セルベリアは気乗りしなかったようだ。リリィとみおも承諾はしてくれたが、内心やはりやめて欲しそうに見えていた。ドクターとクリスティーナさんもそう言う顔をしていた。ゆめと杉元さんは黙ったままだったのが気になったけど、賛成してくれた。全員が納得しそうになったその時だった。

 

 

 

 

あいね

「そんなのダメに決まってるでしょ!!」

 

 

 

 

唯一あいねだけが猛反対していた。

 

 

 

 

剣城

「あいね・・・・。」

 

 

あいね

「皆んながOKしても絶対にそんな危ない事させないから!!」

 

 

 

 

あいねはもう完全に怒っていた。話を聞いてもらえるか・・・・いやここに来てから彼女が素直に言う事聞いてくれた試しがない。令呪を持ち出して脅なきゃいけないくらいの問題児だ。最悪、令呪を使って言う事聞かせよう。

 

 

 

あいね

「令呪を使って私達に無理矢理言うこと聞かせてもいいけど、したらもうマスターの言う事も聞かないし口も聞かないからね!!」

 

 

 

 

何言い出すのこの子は!?サーヴァントってこんな反抗的なの!?

 

 

 

 

剣城

「あいねいい加減にしろ!!今そんなわがままを聞いてやれる時間はないんだ!!」

 

 

あいね

「やだよ!!そんな危ない事絶対させないから!!」

 

 

剣城

「ここに来てから反抗的だぞ!!君は俺のサーヴァントで使い魔だ!!そこの立場はわかってるのか!!」

 

 

あいね

「わかってる!!でもそれ以上に、私は()()()の友達だもん!!」

 

 

 

 

友達。あいねにとって魔術師の立場など関係ない。ただ一人の友達としてしか彼女は思っていなかったからだ。そんなあいねを見ると涙目になっているのが直ぐにわかった。そこまで俺の事を心配してくれるのかってくらい今にも泣き出しそうだった。すると殤さんからこんな話を聞かされた。

 

 

 

「やっぱりか。嬢ちゃんな、リリィと坊主がケンカしたあたりからずっと心配しながらお前さんを見てたんだよ。」

 

 

剣城

「あいねが?」

 

 

「坊主が酷い扱いを受けてるのに平気な面してるから、嬢ちゃんそんなお前さんを見てずっと辛かったようだ。友達(だち)の助けになれなかったのが悔しかったみたいだな。」

 

 

 

 

なんだかあいねに悪い事をしたようだ。自分だけで解決できそうな問題だったから、頼らなかったけど、それがあいねに余計な心配をかけていたようだ。

 

 

 

 

剣城

「ごめん、そこまで思い詰めてたなんて。」

 

 

あいね

「私・・・剣城君の力になりたかった。役に立ちたかった。でもリリィちゃんの勘違いで剣城君が嫌われ者になっても誰にも相談しないし!」

 

 

剣城

「それは、リリィ本人が一番苦しそうだったから。だからそんな彼女と本気で向かい合いたかった。俺にしか出来ない事だと思ってたから。」

 

 

あいね

「じゃあ大怪我してたのに無理して動こうとしたのは?」

 

 

剣城

「俺自身が一番キツかったから早く安静に休める場所を見つけたかったからかな。でもカムイのお陰で助かったけどね。」

 

 

あいね

「バカだよ・・・本当にバカだよ剣城君!」

 

 

 

剣城

「あいね。」

 

 

 

 

俺はそっとあいねを慰めるように彼女の頭を撫でた。

 

 

 

 

剣城

「俺は君達のマスターだ。君達を守る責任がある。その妨げになる事態なら俺はいくらでも我慢するよ。」

 

 

あいね

「でもそれじゃあマスターが!」

 

 

剣城

「そう!俺は凄く困っている!だからあいね!今こそ力を貸してくれ!ターニャ・フォン・デグレチャフを倒すには、あいねの力が必要だ!」

 

 

あいね

「マスター・・・わかった!ドーンとこいだよ!」

 

 

 

 

あいねにようやく理解してもらえた。と言いたいところだが、今回は俺が少し無茶してたところもから、あいねには余計な心配を掛けてしまった。申し訳ない事をしたな。

 

 

 

 

みお

「そう言えばゆめちゃんはどうしてマスターを止めなかったの?」

 

 

ゆめ

「この前の戦いで、私はマスターを信じる事が出来た。だから今回も変わらない。私はマスターを信じるよ!」

 

 

 

 

ありがとう、ゆめ。最後まで信じてくれて。

 

 

 

セルベリア

「で、ルーラーはともかくバーサーカーの貴様は何故止めなかったんだ?」

 

 

杉元

「え?いや止める必要無かったから?」

 

 

セルベリア

「何だと?」

 

 

杉元

「こいつは死ぬつもりは無いってわかってたからな。だから心配いらなねえよ!」

 

 

「まあ『不死身』の異名を持つお前が言うんだ。心配は無いな。」

 

 

 

杉元さん、俺の事を信じてくれたんだ。ありがとう。

 

 

 

 

カカシ

「腹は決まったかい。」

 

 

 

 

白玄さんを待たせてしまったけど、今の皆んなならきっと勝てるはずだ。

 

 

 

 

カカシ

「なら俺も少し本気を出すかな。向こうが外道で来るなら、こっちは邪道と行きますか。」

 

 

 

 

すると白玄さんはまた別の人物に変身した。だが今度のはかなり性格がイカれていた。

 

 

 

クレマンティーヌ

「安心して、あのおチビちゃんの断末魔を聴きながらたっぷり痛ぶってあげる。でも楽しすぎて殺しちゃったらごめんなさいね!!」

 

 

杉元

「大丈夫かこいつで!?」

 

 

 

髪が短い金髪の女性はゲラゲラ笑っていた。さっきまでの優しい表情が狂気に満ちた暗殺者に見えていた。さらにこの後、この空気をぶち壊す話をして来た。

 

 

 

 

クレマンティーヌ

「てかクソガキ。遅すぎなんだよ。いつまで待たせんだ殺すぞ。」

 

 

剣城

「すみません!皆んなを説得するのに時間がかかりました!!」

 

 

クレマンティーヌ

「あっそう。なら最悪なニュースと絶体絶命なニュースどっち聞きたい?」

 

 

杉元

「何だその二択!?もしかして俺達結構ピンチなの!?」

 

 

クレマンティーヌ

「笑えるくらいピンチじゃないの〜?」

 

 

剣城

「じゃあ最悪のニュースから。」

 

 

 

 

思い切って最悪のニュースを選択したけど、これ以上悪い状況になってるの。

 

 

 

 

クレマンティーヌ

「アンタを助けた仮面の男がいたでしょ。」

 

 

剣城

「はい。今ターニャを氷で閉じ込めている人ですよね。それが何か?」

 

 

クレマンティーヌ

「そいつがチビに殺られた。」

 

 

杉元

「何でそんな事がわかるんだ?」

 

 

クレマンティーヌ

「影分身ってのは消えた後、分身体が得た情報がそのまま本体にも共有出来るの。だからアイツが見た光景は、私のところにも映るわけ。」

 

 

ゆめ

「じゃあ今は私達を探し周ってるって事?」

 

 

クレマンティーヌ

「普通ならそう考えるけど、こっからが絶体絶命のニュース。もう既に居場所がバレて向こうは宝具で建物ごと吹き飛ばす気か発射態勢に入っているわ。ねえ笑える話でしょ!!」

 

 

 

 

えっ!?

 

 

 

 

杉元

「笑えねえし!!つーかどうするんだ!!」

 

 

「もう詰みじゃねえか。」

 

 

セルベリア

「何故もっと早く言わなかった!!」

 

 

クレマンティーヌ

「作戦立てる余裕はあったけどね?」

 

 

 

 

そんな時間あるならもっと早くやってるはずだけど!?

 

 

 

 

クレマンティーヌ

「そこのセルベリア(デカ乳)あいね(ガキんちょ)が駄々捏ねなきゃこんな事にはならなかったわよ。」

 

 

あいね

「どうしよう!!私達の所為で大変な事になっちゃったぁ!!」

 

 

セルベリア

「貴様最初からわかっていながら何故何も言わなかった!!」

 

 

クレマンティーヌ

「は?何言ってんのオバさん。アンタ等の都合で巻き込まれたのこっちなんだけど?まああのチビのヘナチョコビームじゃ私は死なないけど、アンタ等は丸こげになって死ぬような面白い芸当しか出来ないもんね!!私には関係の無い話だからどうでもいいけど!」

 

 

 

 

言われてみれば白玄さんってただ俺達の戦いに巻き込まれただけなんだよな。本人からしたらとんだとばっちりだ。

てかもう時間ないじゃん!!こっちも早く動くか!!

 

 

 

 

剣城

「もう時間がない。リリィ、もう一度Dreaming birdを発動。その後は俺の護衛に着いてくれ。」

 

 

リリィ

「わかりました。」

 

 

剣城

「皆んなは手筈通りに動いてくれ!作戦開始!」

 

 

 

 

俺達が動き出す頃に、ターニャも俺達を仕留めようと撃とうとしていた。

 

 

 

 

ターニャ

「この私に忌まわしい貴様の力を与えたのが誤算だったようだ。自身の力によって滅びるがいいぃぃぃ!!」

 

 

 

 

そう言って彼女が引き金を引いた瞬間、巨大な爆発と共に建物が吹き飛ばされた。それと同時に爆煙が立ち込め、視界は悪くなった。今がチャンスだ!!

 

 

 

 

杉元

「うおぉぉぉ!!」

 

 

ターニャ

「バーサーカー!?」

 

 

 

杉元さんがターニャに強襲を仕掛けた。だがターニャの方が一枚上手だったようだ。彼女は杉元さんの胸元に手榴弾を仕掛けたのだ。

 

 

 

杉元

「手榴弾!?」

 

 

ターニャ

「私からのささやかなプレゼントだ。いい加減散って逝け。」

 

 

 

その瞬間、杉元さんの胸元から激しく爆散し、そのまま倒れてしまった。

 

 

 

 

剣城

「杉元さん!!」

 

 

「構うな!坊主!!」

 

 

 

すかさず殤さんの剣撃がターニャに襲い掛かるが、彼女は最も簡単に受け切り回避した。

 

 

 

クレマンティーヌ

「いただき♡」

 

 

ターニャ

「舐めるな!!」

 

 

 

 

背後に白玄さんが回ったが、直ぐに振り払われてしまう。どうやら感づかれていたようだ。

 

 

 

ターニャ

「殺気がだだ漏れだぞ。バカが。」

 

 

クレマンティーヌ

「チッ!面倒臭いチビ。」

 

 

 

 

するとターニャは上空へ飛びライフルを向けたが、何も無いところだった。何をするつもりだ?

 

 

 

 

ターニャ

「まとめて消えてくれる!!」

 

 

 

 

ライフルから放たれた弾丸が弾け飛んで雨のように降り注いだ。

 

 

 

 

「しまった!!」

 

 

クレマンティーヌ

「拡散弾!?」

 

 

 

 

無数の雨のように降り注いだ火の玉を避けられず二人とも浴びてしまった。

 

 

 

 

剣城

「殤さん!!白玄さん!!」

 

 

 

辺りに煙が立ち込めてしまい、二人は返事が無いしターニャも見当たらない。視界の悪いこの状況で必死に周りを見渡して探していた時に、悪魔は俺の背後に囁いた。

 

 

 

 

ターニャ

「捕まえた。」

 

 

 

ターニャは俺の背後に回り込んで足を使って俺の胴体をがっしり掴んで、両腕で俺の首を絞めた。

 

 

 

 

リリィ

「マスター!!」

 

 

ターニャ

「やめておけキャスター。貴様の足では間に合わん。こいつが死ぬのを黙って見てるがいい。」

 

 

 

 

リリィは悔しながら、ただ俺の方を黙って見ていた。俺を助けるのを諦めていた。流石アイドルだ。ドラマで役者を()()()()()だけの事はある。

 

 

 

 

ターニャ

「何がおかしい。」

 

 

剣城

「君じゃ俺は殺せないよ。」

 

 

ターニャ

「なんだと?」

 

 

剣城

「何故なら俺は・・・・()()()()()()だから。」

 

 

ターニャ

「何を言い出すかと思えばバーサーカーの猿真似か?気でも狂ったか潔いのかわからぬが、まあ答えは貴様の首をへし折ってみればわかる事だがな!!」

 

 

 

ターニャが腕に力を入れようとした瞬間だった。

 

 

 

 

杉元

「うおぉぉぉ!!俺は不死身だぁぁぁぁ!!」

 

 

ターニャ

「バーサーカー!?」

 

 

 

 

俺達の背後、雪の中から杉元さんが現れて、ターニャの首を思いっきり絞めた。あの後、ターニャに手榴弾でやられたフリをして、雪の中に潜って俺の背後近くで待機してもらっていたのだ。

ターニャは自分を守る事に必死なのか俺の体から離れて必死に抵抗していた。俺はその場で膝をついたが、リリィが側に来て俺の体を支えてくれた。

 

 

 

 

ターニャ

「バカな!?あの至近距離で手榴弾を真面に受けてまだ立っていられるのか!?」

 

 

杉元

「あれぐらいじゃ死なねえよ!!俺は不死身だからな!!」

 

 

ターニャ

「なら徹底的に殺す!!跡形も無くな!!」

 

 

杉元

「殺ってみろ!!俺は不死身の杉元だぁぁぁぁ!!」

 

 

ターニャ

「ホザけぇぇぇぇ!!」

 

 

 

ターニャは奇声を上げて杉元さんを足で腹蹴りして、腕が緩んでしまったのか、彼女は見事に脱出し、空に飛んだ。だがこれが彼女の最後だった。

 

 

 

 

杉元

「セルベリアぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

杉元さんの叫び声でターニャ辺りを見渡し、セルベリアを見つけると、そこには既に宝具を放とうとしていたセルベリアと、彼女の宝具をスキルと宝具で強化していたゆめとピュアパレットの姿があった。

 

 

 

 

みお

「セルベリアさん!どうですか!!」

 

 

あいね

「私達の歌は!!」

 

 

セルベリア

「見事・・・・合格だ!!」

 

 

 

ターニャは回避行動を取ろうとしたがもう遅かった。

 

 

 

ターニャ

「しまった!!」

 

 

セルベリア

「受けるがいいターニャ・フォン・デグレチャフ!!これが!アイドルの輝きとヴァルキュリアの力だ!!消し飛べぇぇぇぇ!!」

 

 

 

セルベリアの槍から蒼い炎の閃光が放たれ、そのままターニャを飲み込んだ。

 

 

 

ターニャ

「クソッたれがぁぁぁぁ!!」

 

 

 

蒼い炎の中で彼女は光となって消えていった。そして炎の閃光が消えていったと同時に、空から金の何かが降ってきた。よく見ると、ターニャが持っていた聖杯が落ちて来たのだ。俺はそれを受け取った。これで全て終わったんだ。

 

 

 

 

剣城

「やったんだな。俺達。」

 

 

リリィ

「はい。そして勝ちましたよ。私達の勝利です!!」

 

 

 

 

正直実感なかったのか、今までの出来事が長く感じた。長い時間戦っていたような気がした。

 

 

 

 

「ふー、一次はどうなるかと思ったぜ。」

 

 

白玄

「間一髪だったね。」

 

 

 

 

 

拡散弾を受けた筈の殤さんと白玄さんが無事に戻って来た。

 

 

 

 

ゆめ

「マスター!」

 

 

 

ゆめにあいね、みお、そしてセルベリアも合流して来た。

 

 

 

 

杉元

「たくターニャの奴思いっきり足蹴りかましやがって。」

 

 

 

 

お腹を抱えて杉元さんも合流して来た。皆んな無事だったようだ。

 

 

 

 

あいね

「杉元さん酷い怪我!!」

 

 

みお

「早く手当てしないと!!」

 

 

 

 

でもなかったようだ。杉元さんはさっきの手榴弾の爆発で胸辺りが血塗れになっていたのだ。でもその必要も無いようだ。

 

 

 

 

杉元

「気持ちだけ受け取っとくよ。もう帰らなきゃいけないみたいだ。」

 

 

 

 

杉元さんと殤さんの体が突然光出した。聖杯が機能しなくなった事で聖杯戦争は終幕し、二人共は元の世界へ帰ろうとしていた。

 

 

 

 

「名残惜しいがここでお別れだ。これからも頑張れよ坊主。」

 

 

剣城

「ありがとう。殤さん。」

 

 

杉元

「じゃあな剣城!それに皆んな!縁が合ったらまた会おうぜ!」

 

 

剣城

「こっちこそありがとう!杉元さん!!」

 

 

 

そう言って二人は消えていった。殤さんと杉元さんには助けられてばかりだった。特に杉元さんの不死身は俺に勇気を貰った。「生きろ!」と言われたような気がした。多分気のせいだと思うけど。

 

 

 

 

ロマニ

[剣城君。レイシフトの準備が完了した。全員その場で待機してくれ。]

 

 

 

 

ドクターから転送の連絡が入った。このエベレスト共お別れだ。それと白玄さん共だ。

 

 

 

 

白玄

「行くんだね。」

 

 

剣城

「はい。いろいろありがとうございました。」

 

 

白玄

「礼を言わなければならないのはこちらの方だ。虹野ゆめ、白銀リリィ、ピュアパレット、セルベリア・ブレス。もう二度とお目にかかれなかった人物達にこんな形で出会う事が出来た。君には感謝している。」

 

 

剣城

「じゃあ白玄さんにとっては夢が叶ったって事?」

 

 

白玄

「いいや、あいねちゃん風に言うなら「アニメーションのサーヴァント達と友達100万人!!」かな。彼等と絆を結ぶ事が、僕の夢だからね。」

 

 

あいね

「じゃあ私達もう友達だね!」

 

 

白玄

「そうだね!」

 

 

 

 

白玄さんの夢、無謀に見えるけど凄い事かもしれない。俺とは大違いだ。

 

 

剣城

「叶うといいですね!白玄さんの夢!」

 

 

白玄

「ありがとう。そしてお別れのようだ。」

 

 

 

 

俺達の周りに光が差し込んだ。アースに帰還するためのレイシフトが始まったからだ。

 

 

 

 

剣城

「本当にありがとうございました。これからどうするんですか。」

 

 

白玄

「しばらくはここに残るよ。少し調べたい事もあるし。」

 

 

剣城

「また会えますか。」

 

 

白玄

「君がアニメを好きでいてくれれば、僕等は何度でも出会う事が出来る。そう!アニメが好きな人間に悪い奴はいない!その心を忘れないで欲しい。」

 

 

剣城

「はい!さようなら!また会うその時を!!」

 

 

 

 

俺達はレイシフトでアースに帰還した。

 

 

 

 

ゆめ

「白玄さんにまた会えるといいね!」

 

 

剣城

「うん。いつかきっと会えるような気がする。」

 

 

セルベリア

「私はもう勘弁です。」

 

 

あいね

「え?セルベリアさん白玄さんの事嫌いなの?」

 

 

セルベリア

「と言うより苦手だな。彼といるとどうも調子が狂う。」

 

 

 

 

確かに、セルべリアの性格からしたら疲れるだろうね。

 

 

リリィ

「それにしても白玄さんが変化していたあの髪の長い人は気の毒でしたね。」

 

 

剣城

「リリィのDreaming birdの中に入れずにそのまま消し飛んだけど、白玄さんは大丈夫だって言ってたし問題ないと思うよ。」

 

 

セルベリア

「まあ、奴の分身体なら問題もありません。」

 

 

剣城

「そんな人だけど、俺はまた白玄さんに会いたい。あの人の持つアニメの事をもっと教えてもらいたいんだ。」

 

 

ゆめ

「でも私達の事を知っているならアルタイルさんも同じの筈じゃ?」

 

 

剣城

「アルタイルは知識はあるけど実際にサーヴァント達と会うのは初めてな筈だ。けど白玄さんは皆んなの事を細かく知っていた。ううん。皆んなの物語を観ていたんだと思う。」

 

 

みお

「どう言う事?」

 

 

剣城

「白玄さんはゆめやリリィ、ピュアパレットのライブを観たと言っていたけど、さらにそれ以上の情報まで知っていた。旅人である彼がそこまで皆んなの細かい情報まで知っているのはおかしいと思う。」

 

 

セルベリア

「言われてみれば確かに。なら彼は何者なのでしょう?」

 

 

剣城

「わからない。だからこそ、白玄さんと会わなくちゃいけないと思うんだ。」

 

 

 

 

ただの物知りお兄さんにしては、白玄さんはゆめ達の事を知り尽くしすぎている。ゆめ達やセルベリアの世界を行き来してたにしては、いささか疑問に思う話だ。だから彼とは今後とも会わなきゃいけない気がする。そう思ったからだ。

そして今も、俺達の知らない所で白玄さんは動いていた。

 

 

 

 

白玄

「黒河剣城君か。中々面白い少年だった。僕が仕掛けた罠に食い付いて来たのだとしたら、彼を巻き込んでしまったようだ。」

 

 

 

 

俺達がエベレストを去った後、別の空間から何者かが何かに乗って現れたのだ。その乗り物は白玄さんの方に向かって行き、彼の前で着地した。するとそこから元気な女の子が白玄さんに駆け寄って行った。

 

 

 

 

らき

「白玄さーん!!」

 

 

 

 

白玄さんが話していた、ゆめ達アイドルの記憶を蘇らせた『姫石らき』だった。白玄さんは抱きついて来たらきを受け止めて再会を喜び合っていた。

 

 

 

 

白玄

「らきじゃないか!!久しぶりだね、元気にしてたかい。」

 

 

らき

「はい!白玄さんとこんな所で会うなんてラッキー!!」

 

 

 

 

何と白玄さんはらきと既に知り合っていた。しかも俺達にはその事を内緒にしてだ。

 

 

 

 

白玄

「僕も凄くラッキーだよ!!今日の素敵な出来事は君が近くにいたからか!」

 

 

アンジュ

「やめときなさいらき。その変態に近づくとどこ触ってくるかわからないわよ。」

 

 

 

 

今度は女性が降りて来た。この人も、らきと知り合いみたいだけど何者なんだ。

 

 

 

 

白玄

「アンジュも久しぶりだね。なんだい?まだ胸を鷲掴みにされたのを根に持ってるのかい。もう十年前の話だよ。」

 

 

アンジュ

「あの後数千回も私の胸を揉んだでしょ!!いい加減にしないと本当に殺すわよ!!」

 

 

杉元

「俺は不死身だぁぁぁ!!」

 

 

アンジュ

「うるさいッ!!」

 

 

 

何か杉元さんに変身してるし、何をしてるんだ白玄さん。

 

 

 

アンジュ

「まあちょうど良かった。貴方に伝えたい事があるの。」

 

 

剣城

「こちらもちょうど良かった。君達に報告したい事がある。」

 

 

 

 

白玄さんはこのエベレストで起きた事、そして俺達の事を語り出した。何が目的かわからなかったけど、ただ事では無いように感じた。

 

 

 

らき

「あいねちゃん達に会ったんですか!?」

 

 

白玄

「うん。でもさっき帰っちゃったんだ。すれ違いだったね。」

 

 

らき

「そんな〜。アンラッキ〜。」

 

 

アンジュ

「それにしても、そのアースって連中を放っといて大丈夫なの?貴方が仕掛けた聖杯を回収されたら『災害の魔獣(ディザスタービースト)』を誘き出す事だって難しくなるのよ?」

 

 

白玄

「それだが、少しおかしな事が起きている。ついさっきまで災害の魔獣(ディザスタービースト)の痕跡があったが、いつの間にかこの世界を離れたようだ。まるで何かに怯えるように逃げていった。」

 

 

アンジュ

「何かって何に?」

 

 

白玄

「わからない。僕の知らない間に奴等の中で恐怖する存在を感じた筈だ。」

 

 

アンジュ

災害の魔獣(ディザスタービースト)が怯える何か。何にしても厄介な事になったわね。」

 

 

 

 

白玄さん達は災害の魔獣(ディザスタービースト)と呼ばれる存在を追っていたようだ。俺達がそれを知るのは、まだ先の話だけど、奴等が怯える存在は、そのさらに先の話で、俺は彼を知らずに友達になっていたとは誰も思っていなかっただろう。

 

 

 

 

白玄

「さて、君達の報告も聞かせて貰うよ。」

 

 

アンジュ

「『ソルベット王国』で行われていた聖杯戦争が終戦したわ。勝者は地の利があった『アリシア・シャーロット』よ。」

 

 

白玄

「ほう?彼女か。確かに有利ではあるがまさか勝者になるとはね。」

 

 

アンジュ

「問題はここから。彼女聖杯を使って七騎の大罪『憤怒の狂戦士(ラースバーサーカー)』を自分の城に封印してしまったの。」

 

 

白玄

「何故そんな事に?」

 

 

アンジュ

「さあ?更には新たに七騎の英霊を呼び出して、そいつらに城を守らせてるわ。」

 

 

らき

「それからアリシアさんは城に引きこもってしまいました。」

 

 

白玄

「そうか。なら君達二人にはソルベットの監視を任せるよ。」

 

 

アンジュ

「監視って、アリシアはどうするの?」

 

 

白玄

「彼女はしばらく籠城する構えだろう。それにこの件に関しては、僕ではなくアースがやるだろうしね。彼等に委ねるしかない。」

 

 

アンジュ

「本当に信じて良いの?今さっき知り合った見ず知らずの組織の人間に任せたら、ロクな事にならないわよ。」

 

 

白玄

「心配無いさ。彼は僕と同じマスターで、僕と同じアニメ好きだからね。信用してもいいよ。」

 

 

アンジュ

「まあ、信用しなくも利用は出来るからまだいいけど、こっちが凍死しない程度にお願いね。」

 

 

白玄

「なるべく早い段階で彼等を誘導するよ。だから頼んだよ。ライダー『アンジュリーゼ』、キャスター『姫石らき』。僕の頼れるサーヴァント達よ。」

 

 

アンジュ

「了解。」

 

 

らき

「姫石らき!行ってきまーす!!」

 

 

 

 

後にアースはこのソルベット王国の事件をこう名付けた。『凍結城塞ソルベット』。この次元世界が俺達の最後の旅となった。

 

 

 

 

 




英霊紹介





真名:『姫石(きせき)らき』


クラス:『魔術師(キャスター)


宝具:???


作品名:『アイカツオンパレード!』




プロフィール
スターハーモニー学園の中学2年生の新人デザイナー兼、アイドルである。前向きで努力家の彼女は幸運値が非常に高く、そのクラスはA++に達する。彼女の姉『姫石(きせき)さあや』の実験に巻き込まれ、本来交わる筈のないアイカツ!、アイカツスターズ!、アイカツフレンズ!の三つの世界のアイドル達と夢の共演を果たす事になる。だがそれも長く続かず、世界は再び分断され、互いの記憶から忘れ去られてしまった。だが彼女は最後の最後に、その世界で作ったプレミアムレアドレスを見て思い出したと言う。










真名:『アンジュリーゼ・斑鳩(いかるが)・ミスルギ』


クラス:『騎兵(ライダー)


第一宝具:『ヴィルキス』


第二宝具:『超重力砲(ちょうじゅうりょくほう)


作品名:『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(ロンド)



プロフィール
ミスルギ皇国の第一皇女だったが、兄ジュリオに『ノーマ』の烙印を押され、彼女達が住む『アルゼナル』に追放される。そこでの苦しい生活を強いられたが、ある失態を犯した事で心を入れ替え、仲間と共に歩み始める。だが次第に自分の世界に不信感を抱き、この偽りの世界を作ったエンブリヲを打倒する。その後は本来の世界で国を作り、王となった。







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エピローグ

 

 

 

レイシフトが終了し、アースに帰還した俺達を出迎えてくれたのは、ドクターとゴブリンスレイヤーだった。ただ彼は何故か瓶詰めにしたリムルを抱えて、さらには縄で縛られていたアルタイルを連れていた。

 

 

 

 

剣城

「これは・・・・どう言う状況なの?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「ルーラーに頼まれて二人を拘束するよう命じられた。」

 

 

剣城

「いつのまに?」

 

 

ゆめ

「ドクターがレイシフトの準備をしてくれてる間に念話でお願いしといたの。」

 

 

 

 

用意がいいな。

 

 

 

 

リムル

「助けてくれマスター!!こんなの横暴すぎる!!」

 

 

アルタイル

「己ゴブリンスレイヤー!!この私を嵌めたな!!」

 

 

剣城

「あれ?『殿』は付けないの?」

 

 

アルタイル

「この卑怯者に敬意を表す道理は無い!!この私を騙してコンゴウ殿にナノマテリアルでロープを生成して私を縛り付けたのだぞ!!」

 

 

剣城

「ナノマテリアルって?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「銀砂だ。コンゴウ(ライダー)を含めた艦艇達はこの銀砂を使って自分達の体を構成してるらしい。メンタルモデルもそれで造られている。」

 

 

剣城

「じゃあ今のコンゴウの体って銀の砂で出来てるって事?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「そうだ。」

 

 

剣城

「じゃあそのロープも?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「そうだ。アルタイル(アーチャー)相手に普通の道具は通用しないと考え、より頑丈なのを用意した。」

 

 

剣城

「え?でもアルタイルの宝具やスキルならそのロープも無力化出来るんじゃないの?」

 

 

アルタイル

「登場人物や物語の設定が決まっているなら出来るが、製作途中の物語に介入する事は出来ない。特にサーヴァントになってからは、物語という物が存在しないから、その設定を変える事自体は難しい。コンゴウ殿のナノマテリアルをコントロールする設定を変更すれば可能ではあるが、生成した後ではまるで意味が無い。」

 

 

剣城

「そうなんだ。」

 

 

アルタイル

「それを教えてやったのにこの恩知らずは!!」

 

 

 

 

アルタイルはかなりご立腹のようだ。よっぽど理不尽だったようだな。

 

 

 

 

ゆめ

「ありがとうゴブリンスレイヤーさん。二人を捕まえるの大変だったでしょ?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「いいや。ゴブリンの方が手強い。」

 

 

リムル

「俺ゴブリン以下!?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「当たり前だ。お前はスライムだろ。」

 

 

アルタイル

「何故私もゴブリン以下?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「ゴブリンより動きが単純で捕まえやすかった。」

 

 

アルタイル

「それはそれで腹が立つ。」

 

 

 

 

やっぱりサーヴァントを相手にするよりゴブリンの方が手強いんだ。

 

 

 

 

ゆめ

「じゃあ早速行こうか。」

 

 

 

 

ゆめは瓶詰めにされたリムルを受け取って取調室に連行しようとしていた。

 

 

 

 

ゆめ

「二人共まとめて『おしおきタイム』だからね♡」

 

 

 

 

ゆめメチャクチャ怒ってるよね!?

 

 

 

 

リムル

「お仕置き!?お説教じゃ無くて!?」

 

 

ゆめ

「何言ってるの?ドクターの業務執行妨害に身体的ないじめ。これでお説教なんて流石に優しすぎだよ?」

 

 

リムル

「ウソぉぉぉぉ!?」

 

 

 

 

で、リリィもゴブリンスレイヤーからロープを受け取ってアルタイルを連行しようとしたが、彼女は涙目になってリリィを説得しようとしていた。

 

 

 

 

アルタイル

「リリィ殿!どうか落ち着かれよ!!」

 

 

リリィ

「安心して下さい。私はゆめさんと違ってただのお説教ですから。ですがちょっと体に寒気を感じるだけなので。」

 

 

アルタイル

「いやだぁぁぁ!!貴殿の固有スキルで凍死させられてたまるかぁぁぁ!!」

 

 

リリィ

「ではゆめさん!」

 

 

ゆめ

「うん!」

 

 

ゆめ、リリィ

「二人まとめておしおきターイム♡」

 

 

リムル、アルタイル

「やめてぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

二人共、どうか無事に帰ってきてくれ。

 

 

 

 

ロマニ

「さて、あっちはゆめに任せて、剣城君は僕と一緒にラボへ来てくれるかな。君に見せたい物がある。」

 

 

剣城

「報告は?」

 

 

ロマニ

「ゆめがあんな調子だし、後でいいよ。何れ報告書で提出して貰うから。」

 

 

剣城

「わかりました。じゃあセルべリア、ゆめの代わりに同行してもらえる。」

 

 

セルべリア

「わかりました。」

 

 

ロマニ

「じゃあ行こうか。」

 

 

剣城

「あいねとみおは食堂で待機してて!後で皆んなの部屋割りをするから!」

 

 

みお

「わかった!」

 

 

 

 

二人にそう言って俺とセルべリアはラボに向かった。その後の話だけど、あいねがゴブリンスレイヤーに何か相談していたらしい。

 

 

 

 

ゴブリンスレイヤー

「どうした。」

 

 

あいね

「剣城君の事がよくわからないんです。なんであそこまで無茶するのか。友達になった気でいたけど、まだまだ剣城君の事いろいろ知らない事ばかりだし、どうしたらいいのかなって。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「洞窟に入る前に、物陰に隠れて奴等の行動を伺う。見張りの交代、遠征部隊の帰還。どの時間でどのタイミングで行うのか、じっくり見る事だ。」

 

 

あいね

「はい?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「ゴブリンの話だ。」

 

 

あいね

「あの?私ゴブリンについて聞きたいわけじゃ?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「わかっている。お前の欠点は観察力が欠けている事だ。マスターの行動をさり気なく観察しろ。それから少しずつ接近すればいい。マスターとコミュニケーションを取りたいのなら先ずはそこからだ。」

 

 

 

 

無愛想かと思ったけど、実は面倒見がいいんだな。ちゃんとアドバイスしていたようだ。

 

 

 

 

あいね

「わかった!私頑張ってみます!!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「そうか。」

 

 

あいね

「それとゴブリンスレイヤーさん!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「何だ。」

 

 

あいね

「私と友達になって下さい!!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「そうか。」

 

 

みお

「これからよろしくお願いします!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「よろしく頼む。」

 

 

 

最初は色々あったけど、何だかんだで打ち解けたようだな。そんな事実を知らぬまま、ドクターに連れられてラボに着いた。そこにはクリスティーナさんの姿もあった。

 

 

 

 

紅莉栖

「あら?何でゆめじゃ無くてランサーの貴女が同行してるの?」

 

 

セルべリア

「ルーラーなら先に済ませたい用件があると言って、バーサーカーを連れて何処かに連行したが?」

 

 

紅莉栖

「何やってるのよあの子は。これじゃあ説明するの二度手間になるじゃない。」

 

 

ドクター

「まあまあ。ゆめは次回にするとして今は剣城君に『召喚台』を使わせよう。」

 

 

 

 

そう言えば、クリスティーナさんの後ろに巨大な盾が置かれた装置みたいなのがあるけどあれかな?

 

 

 

 

紅莉栖

「じゃあ剣城君。これを渡しとくわ。」

 

 

 

 

クリスティーナさんから渡されたのは、七色の石のような物だった。ざっと見て150個くらいはあった。

 

 

 

 

紅莉栖

「これは『聖晶石(せいしょうせき)』って言って、魔力を凝縮した石よ。」

 

 

剣城

「魔力を凝縮した石?これを使って何をするんですか。」

 

 

ドクター

「聖晶石と召喚台を使って、新たにサーヴァントを召喚して貰う。」

 

 

 

 

サーヴァントを・・・・召喚!?じゃあ儀式で行った召喚っていらなかったんじゃ!?

 

 

 

 

紅莉栖

「ようやく完成したところかしら。剣城君が実際に召喚するところを見せてくれたお陰で無事に完成したわ。」

 

 

 

 

意味はあったんだね。

 

 

 

 

ロマニ

「じゃあ、早速使ってみようか。」

 

 

 

 

召喚台の上に30個の聖晶石が置かれ、装置が動き出した。光の円が回りだし、突然光ったかと思ったら、中から巨大な石板?いやカードみたいな物が現れた。これは『クラスカード』と言って、サーヴァントを呼び出す時にまずどのクラスが呼ばれるのかが選定される。そして選ばれたクラスからサーヴァントがランダムで召喚されるのだ。この時出現したのは、バーサーカーのクラスカードと、セイバーのクラスカードが2枚だった。そして、バーサーカーのクラスカードから人が現れた。それは、俺が知っている人物だった。

 

 

 

 

杉元

「バーサーカー。杉元佐一だ。これからよろしくな。」

 

 

剣城

「杉元さん!!」

 

 

 

 

エベレストで別れた筈の杉元さんが来てくれたのだ。

 

 

 

ロマニ

「剣城君。わかってるとは思うけど、聖杯戦争に参加したサーヴァントにはその時の記憶が無い。君の事は残念ながら覚えていない筈だ。」

 

 

剣城

「そうでした。」

 

 

 

そうだ。聖杯戦争に参加したサーヴァントと再会しても、彼等はその時の記憶を失っている。あのシチューの味すらも、忘れ去れているのだ。

 

 

 

 

杉元

「あー・・・・やっぱりそうなんだ。だよな。あの後北海道戻ったらエベレストでの出来事が頭から消えていて、また召喚されたと思ったらまた思い出して、そんで今度は剣城が目の前にいるんだけど?」

 

 

 

 

杉元さん!?もしかして憶えているのか!?

 

 

 

剣城

「覚えているんですか!?」

 

 

杉元

「みたいだな。けどまさかお前のサーヴァントになるなんて思ってもみなかったな。」

 

 

剣城

「俺も!でもようこそ!アースへ!」

 

 

杉元

「こっちこそよろしくな!マスター!」

 

 

セルべリア

「歓迎するぞ。不死身の杉元。」

 

 

杉元

「こっちもだ。」

 

 

 

 

杉元さんとの再会を喜んでいた時に、今度はセイバーのクラスカードから杉元さん同様にサーヴァントが出現した。

 

 

 

 

「セイバー。殤 不患。召喚に応じ参上した。何かと扱いづらいオッサンだが、これからよろしくな!」

 

 

剣城

「殤さん!!」

 

 

「よお!坊主・・・・は流石に無礼だったな。これからよろしくな!マスター!」

 

 

剣城

「うん!よろしく!」

 

 

 

殤さんとの再会を喜び合ってる途中、もう一枚のセイバーのクラスカードからサーヴァントが出現した。もう一人はなんとあの人だった。

 

 

 

 

政宗

「ほう。こりゃ随分と賑やかな場所だな。」

 

 

剣城

「貴方は!!」

 

 

政宗

「ハッ!セイバー!奥州筆頭 伊達政宗!押して参る!!He aer we go!!let's party!!」

 

 

 

 

冬木で俺達に力を貸してくれた政宗さんが来てくれたからだ!

 

 

 

剣城

「政宗さん!!」

 

 

政宗

「よう坊主・・・・じゃ無かった。契約上今はアンタのサーヴァントだから大将って呼べばいいか?これから世話になるぜ。」

 

 

剣城

「こっちこそよろしく!」

 

 

 

杉元さん、殤さん、そして政宗さんとの再会で喜んでいた俺は、彼女の存在に気がつかなかった。

 

 

 

レベッカ

(なっ・・・・なっ!?何か増えてるぅ!?)

 

 

 

レベッカ・スカーレット・ティファニー。マスター候補の魔術師である彼女に焦りが見えて来た。そしてその翌日、彼女はとんでも無い事をしでかした。

 

 

 

ゴブリンスレイヤー

「何故お前達まで着いてくる。」

 

 

杉元

「いやだって出撃以外やる事なくて暇なんだよ。」

 

 

政宗

「今の所聖杯も現れねえみたいだし、しばらくはエンジョイさせて貰うぜ。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「好きにしろ。」

 

 

 

 

そんな静かな時間は、嵐のように訪れた。

 

 

 

 

オペレーター

「アース施設内に巨大な魔力反応を7つ確認!サーヴァントです!!」

 

 

ロマニ

「場所は!!」

 

 

オペレーター

「第三倉庫です!!」

 

 

 

 

第三倉庫に向かった俺に待ち受けたのは、レベッカが召喚した赤い七騎のサーヴァント達だった。

 

 

 

 

 



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第二章:炎の都『京都』
第一話『赤の陣営』


今回は黒河剣城では無くマスター候補のレベッカ・スカーレット・ティファニーが主役です。


 

皆さん改めまして、『レベッカ・スカーレット・ティファニー』と申します。名字呼び難いですよね。私、聖王協会の保護施設育ち何ですけど、その時担当者に適当に付けられた名前なので、近々改名しようと思います。

 

 

え?なんで剣城君じゃ無くて、ポッと出の脇役が語りなんかやってるんだって?色々失礼だな。まあ言っちゃうと今回は私が主役だからです。なんでかって?そりゃ私の魔術師人生最大の危機だからです!!先日、剣城君がサーヴァントを召喚した件もあるのですが、当然マスター候補で上がっていた私の話も出てくるわけで、その件で奴等は私抜きでとんでも無い話をしていたのよ!!

 

 

 

 

剣城

「そう言えばレベッカもマスター候補なんですよね?ならレベッカの陣営も含めてサーヴァントが更に増えるって事ですか。」

 

 

エルメロイ二世

「何を言っている。レベッカは用済みだ。」

 

 

剣城

「え!?」

 

 

ゆめ

「どうしてですか!?」

 

 

エルメロイ二世

「アースの戦力はお前の黒の陣営だけで事足りている。マスターである魔術師が決まった以上彼女がアースにいる理由がない。それにだ。レベッカはサーヴァントの召喚はおろか、ゆめとの契約にも失敗している。」

 

 

剣城

「じゃあレベッカはどうなるんですか!?」

 

 

クライド

「その事でここしばらく聖王協会に行ってきたよ。レベッカ君に良い役職を与えて引き取ってくれないかと。」

 

 

エルメロイ二世

「それで結果は?」

 

 

クライド

「残念だが断られたよ。」

 

 

エルメロイ二世

「やはりそうだったか。聖王協会は初めから彼女を捨てるつもりでアースに預けたのだろう。戦死しようが英雄になろうが彼等にとってはどうでもいい話だ。厄介者を追い出せばそれでいいのだからな。」

 

 

ゆめ

「そんなの酷すぎます!!」

 

 

剣城

「時計塔は!時計塔で彼女を預かってはくれないんですか!?」

 

 

クライド

「それこそ無理な話だよ。時計塔は、長い事聖王協会と対立し、それは現在進行形で今も続いている。目立った争いはないが、もしレベッカ君を受け入れてしまったら、聖王協会に戦争をする好実を与えてしまうし、こちらが不利になる事は明らかだ。」

 

 

エルメロイ二世

「今はこのアースを管理しているイギリス政府の特権で守られているが、もしその保護下を離れれば、彼女は生きる術を失うと言ってもいいくらい最悪の状況だ。」

 

 

剣城

「そんな!?」

 

 

ゆめ

「何とかならないんですか!?」

 

 

クライド

「残念だけど、僕等がしてやれる事はこれが限界なんだ。」

 

 

ゆめ

「そんなのレベッカさんが可哀想過ぎます!!同じアースの仲間なんですよ!!」

 

 

剣城

「そうですよ!!まだ他に手がある筈です!!」

 

 

エルメロイ二世

「くどい!!諦めろ!!彼女を救う事など不可能だ!!「最後まで諦めなければ救われる!!」と言うセリフは、大昔の人間が考え出した下らぬ妄想だ!!それに意識を囚われれば、この世界の真実すら見えなくなる!!」

 

 

ゆめ

「それでも私は!!」

 

 

エルメロイ二世

「お前の世界がどうであろうとここは我々の世界だ!この世界のルールには従って貰う。」

 

 

 

 

まあ、そんな話を私は扉の前で聞いてた訳ですが要は話を纏めると、私の人生ホームレスか死かの二択しか残されていないんです!!(※彼女は勘違いしていますが、実際はホームレスも無理な状況です。)

 

 

は?ふざけるなよ?こんな所で死んでたまるか。意地でも生きてやる!私は不死身のレベッカだぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

杉元

「ヘックションッ!!」

 

 

 

 

と言う訳で私はアースの地下一階にある第三倉庫に来ていた。ここには、サーヴァントの召喚に必要な触媒が保管してある倉庫だからだ。まあ大半は大昔の映像が記録されてる大小様々なディスクが置いてあるのと、後は保存状態が良い代物ばかりだ。

 

 

 

 

レベッカ

「状態の良いディスクはこの5枚だけか。後二つ触媒があれば・・・・ん?」

 

 

 

 

辺りを見渡すと、二枚のガラスに挟まれた3枚のカードが二つ立て掛けられて展示していた。そのカードには洋服の絵が書いてあって保存状態も良かったから直ぐわかった。

 

 

 

 

レベッカ

「これでいいか。」

 

 

 

 

私はそのガラスを二つ外して計6枚のカードを入手した。嫌な予感するけど何をしようとしてるかだって?決まってるでしょ!サーヴァントを召喚するの!サーヴァントを召喚してアースに私が必要な戦力だって事を認めて貰わないと!まあ一度失敗してるけど、それでも()()()()()()()()()だけにはなりたくない!!

 

 

 

 

レベッカ

「これで良しっと!さっきのカード多分パズルの様に衣装を組み合わせる物だけどこれでよかったよね?」

 

 

 

 

召喚に必要な触媒と儀式の準備は良し、後は詠唱を唱えるだけっと!ん?なんで英霊の儀式召喚をこんなホイホイ出来るかって?まあ一度は召喚を試した事があったし!次は上手くいく筈!多分・・・・。

 

 

 

 

レベッカ

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。手を向けるは"赤"。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より()で、王国に(いた)三叉路(さんさろ)は循環せよ。閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ満たされる刻を破却する。」

 

 

 

 

詠唱を唱えたまでは良かったけど、なんか知らない項目まで出始めたんだけど何これ?

 

 

 

 

レベッカ

「"その左腕の剣は歌と共に斬り裂き"。"その二本の槍に炎を灯し"。"その銃は未来の弾丸を放ち"。"太陽の女神を乗せた船は輝きの航路を行き"。"その輝きは音と共に弾み"。"その赤き殺意は忍者を殺し"。"炎の竜はその息吹で大地を焼き払わん"。」

 

 

 

 

何か勝手に喋ってたけど怖っ!?私怖っ!?そこからは再び元の詠唱に戻った。

 

 

 

 

レベッカ

「今ここに告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意この(ことわり)に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総(とこよすべ)ての善と成る者、我は常世総(とこよすべ)ての悪を()く者。汝三大(さんだい)言霊(ことだま)(まと)七天(しちてん)、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

 

 

 

すると格魔法陣から人影が出て来た?

 

 

 

 

レベッカ

「何!?何が起きて・・・きゃあッ!」

 

 

 

 

召喚の魔力放出に耐えきれず私は転んでしまった。てか・・・・え?えッ!?絵ぇぇぇぇ!!

 

 

 

 

 

マリア

「セイバー。」

 

 

幸村

「ランサー。」

 

 

右衛門左衛門

「アーチャー。」

 

 

エルザ

「ライダー。」

 

 

セイラ

「キャスター。」

 

 

ニンジャスレイヤー

「アサシン。」

 

 

ナツ

「バーサーカー!!」

 

 

マリア、幸村、右衛門左衛門、エルザ、セイラ、ニンジャスレイヤー、ナツ

「召喚の招きに従い参上した。我等"紅蓮を纏し赤の英霊(サーヴァント)"。我等が運命はマスターと共にあり。盟約に従い、貴女に仇なす者は全て燃やし尽くすとここに誓いましょう。」

 

 

 

 

絵が動いてる!?喋ってる!?生きてる!?ってそれはゆめとクリスティーナさんで一度見たけどこれはヤバイ!!迫力あり過ぎるし!圧凄いし!てか暑苦しいし!私それに押し負けちゃってるし!涙目になりながら腰抜かして尻餅着いてます!!本当情けねえな私。皆んなジロジロみてるし、やめて恥ずかしいから!!

 

 

 

 

ナツ

「大丈夫かこいつ?」

 

 

セイラ

「何か怯えてるみたいだけど?」

 

 

幸村

「この者が我等を召喚した魔術師でござろうか?」

 

 

右衛門左衛門

「言わず。それは彼女を見ればわかる。」

 

 

エルザ

「それにしても随分腑抜けたマスターね。でもこの私を呼び出すのに相応しい輝きを持っているわ。」

 

 

ナツ

「何だ?ライダーのクセに随分偉そうだな。」

 

 

エルザ

「あら?少なくとも無能な貴方よりは優秀よ。バーサーカー。」

 

 

ナツ

「あぁ?お前今何て言ったぁ!?」

 

 

 

 

あれ?もしかしてライダーとバーサーカー、ケンカ始めちゃってる?

 

 

 

 

エルザ

「貴方はこの場に相応しくないわ。大人しくマスターとの契約を切って故郷の世界に帰りなさい。」

 

 

ナツ

「言ってくれるじゃねえか!何なら今ここで勝負するか!実力の差をわからせてやる!!」

 

 

エルザ

「あら?既に決着がわかっているのに、この私が貴方の勝負に乗るとでも?ここまで愚かなバーサーカーは初めて見たわ。」

 

 

ナツ

「何だ?ビビってるのか?何ならさっきのセリフそのままお前に返すぜ。」

 

 

 

 

 

え?何?今からお前等バトルおっぱじめるの?やめろぉぉぉぉ!!ここ貴重な重要文化財が納められた倉庫だぞ!!クビにされた挙句多額の借金まで背負わせる気か!!(※その貴重な重要文化財を無断で使用した時点で借金確定です。)

 

 

 

 

ナツ

「根性無しの腰抜け野郎はこのギルドに入らねえ!!帰るのはテメーの方だライダー!!」

 

 

 

エルザ

「言ってくれるじゃ無い。私の輝きに耐えられるかしら!!」

 

 

ナツ

「かかって来い!!俺はフェアリーテイルの魔道士だぁ!」

 

 

 

 

ライダーは何か光始めたし!?バーサーカーは何か燃え出したし!?どうでもいいからお前等やめろぉぉぉぉ!!

 

 

 

 

マリア

「そこまで!!」

 

 

 

 

二人の暴走を止めに入ってくれたのはセイバーだった。彼女の一声でライダーもバーサーカーも自分達が放出していた魔力が大人しくなるくらい収まっていた。セイバーは二人の仲裁に入りに行った。

 

 

 

 

ナツ

「何だセイバー!!お前も何か文句あるのか!!」

 

 

エルザ

「これは私達の問題よ!邪魔をしないで!!」

 

 

マリア

「いい加減にしなさい!!マスターの許可無しに勝手に決闘なんて言語道断よ!!」

 

 

ナツ

「先にケンカ売ってきたのこいつ!!」

 

 

マリア

「こっちにはこっちの世界のルールがある!!身分も権力も関係無い!!皆んな平等なの!!」

 

 

 

おー、さすがセイバー。二人を見ながらちゃんと説教してるわー。何かお姉さん?いやお母さんかな?

 

 

 

セイバー

「決定権はそこで腰を抜かしているマスターにあるのよ!!」

 

 

レベッカ

「一言余計だぁ!!」

 

 

セイラ

「あっ!喋った!?」

 

 

右衛門左衛門

「やっとこの状況に慣れてきたと言うべきか。」

 

 

 

 

まあ慣れましたよ。未だ立てずにいますが。するといつの間にかセイバーが私に手を差し出してきた。

 

 

 

マリア

「ほら、貴女もいつまでそうしてるの。私達のマスター何だからもっと堂々としなさい。」

 

 

レベッカ

「ありがとう。」

 

 

 

 

あれ?皆んなの圧力に気を取られて気付かなかったけど、私・・・・召喚に成功した!?やばい!感情が抑えられない!!何度も試して全然ダメだったのに、ここに来てやっと召喚できた!こんなに嬉しい事は無い!!

 

 

 

 

レベッカ

「ヤッタァァァァ!!」

 

 

マリア

「え!?ちょっと何!?」

 

 

レベッカ

「やったぁ!!私はやったぞぉぉぉぉ!!」

 

 

右衛門左衛門

「立ち上がったと思ったら急に元気になった。」

 

 

ナツ

「てかぶっ壊れてないか?」

 

 

幸村

「それまで我等に助けを求めていたでござろうか?」

 

 

 

 

嬉しさのあまり歓喜に溢れ、私の感情は暴走していた。

 

 

 

 

レベッカ

「ありがとう!ありがとう!」

 

 

マリア

「何!?どうしたの!?」

 

 

レベッカ

「私の人生ジ・エンドどころかホームレス確定フラグから解放されたぁぁぁぁ!!私は勝ったんだぁぁぁぁ!!」

 

 

マリア

「一回落ち着きなさいッ!!」

 

 

レベッカ

「あ?すいません。」

 

 

 

 

セイバーに両肩をがっつり掴まれて一気に冷静になった。お見苦しい所をお見せしました。

 

 

 

 

マリア

「それで、貴女お名前は?」

 

 

レベッカ

「レベッカ・スカーレット・ティファニーですが?」

 

 

マリア

「いきなり失礼な質問するけど名字が適当過ぎない?それ本名?」

 

 

レベッカ

「そうだよ。私の名前適当に付けたみたいだったから昔から呼び難いの。近々改名するからそれまで我慢して。」

 

 

マリア

「わかったわ。」

 

 

レベッカ

「じゃあ皆んなの名前を教えて!私だけじゃアンフェアでしょ!」

 

 

マリア

「名前って・・・・私達の真名を?」

 

 

レベッカ

「そうだけど?」

 

 

 

え?何かセイバー戸惑ってるけど不味かった?

 

 

 

右衛門左衛門

「お言葉ですが我等は聖杯戦争で召喚されたサーヴァント。真名を明かすと言う事は我等が不利になる事もあります。」

 

 

レベッカ

「でも皆んな私と契約してるサーヴァントだし、それに真名を明かしても結局お互いの事知らないし大丈夫じゃない?」

 

 

 

 

ゆめも自分の世界じゃ有名なアイドルらしいけどクリスティーナさんは知らなかったし。大丈夫だろ?多分。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「断らず。貴女様がそう仰せになるなら名乗るのが筋と言うもの。」

 

 

マリア

「それならセイバーの私から行かせてもらうわ。」

 

 

 

 

それではいきましょう!let's自己紹介ターイム!!

 

 

 

 

マリア

「私は『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』。セイバーとして顕現した『シンフォギア奏者』よ。これからよろしくね。」

 

 

レベッカ

「シンフォギア奏者?」

 

 

マリア

「簡単に言うなら、歌で戦う戦士って言ったらいいかしら。」

 

 

セイラ

「じゃあ、貴女もアイドルなの!」

 

 

マリア

「こう見えてデビューして僅か二ヶ月で米国チャートの頂点にまでいったんだから!」

 

 

エルザ

「いった?その後の活動は?」

 

 

マリア

「ごめんなさい。そこは聞かないで。」

 

 

 

 

いや〜何か色々あるけど私が注目したのはマリア姐さんのレオタードなんだよな。上から鎧みたいなので覆い隠してるけど、よく見るとエロいし、おっぱいデケェ・・・。

 

 

 

 

マリア

「マスター?どうかしたの?」

 

 

レベッカ

「いや〜マリア姐さんって歌も得意で戦闘も出来て、おまけそんなエロスーツ着て男をあっさりイチコロにしちゃうし、ホント夜の大人だよ。」

 

 

マリア

「ちょっと待って!?途中から卑猥な発言が聞こえたんだけど貴女私を何だと思ってるわけ!?」

 

 

レベッカ

「AV女優か?風俗嬢?」

 

 

マリア

「何で!?どこで私の経歴からそう解釈したの!?キャスターなんてアイドルって聞いてたくらいよ!?」

 

 

レベッカ

「一回自分の格好鏡で見て下さい。マジでそう捉えられても仕方ないっすよ。」

 

 

マリア

「ギアってこう言う格好なのよ!!動きやすい仕様になってるの!!言っとくけどこれ暖房機能だって付いてるからね!!」

 

 

レベッカ

「嘘つけぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

露出度全開のレオタードにそんな便利機能付いてたまるかぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

マリア

「皆んなもそう思うわよね!?私みたいな格好している人いるわよね!?」

 

 

 

とうとう他のサーヴァントにまで聞き出したよこの人は。まあ皆んなも私と同じ意見だと思うけど。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「否定せず。確かにいたにはいたが暖房機能と言う道具は流石に無い。」

 

 

幸村

「それがしの知り合いにもいるでござるが、暖房機能が付いていたかは疑わしいでござる?」

 

 

 

 

あっ!マリア姐さんみたいな格好してる人いたんだ。でも暖房機能は付いてないみたい。

 

 

 

 

エルザ

「ところでマリア・カデンツァヴナ・イヴ。貴女私達よりかなり歳上みたいだけど、そんな格好で恥ずかしくないの?」

 

 

セイラ

「レベッカの言う通り、破廉恥に見られてもおかしくないと思うぞ?」

 

 

マリア

「ド派手な衣装を着てる貴女達に言われたくないわよ!!」

 

 

 

ライダーとキャスターは全否定だった。まあそれが当然の反応だけどね。

 

 

 

 

エルザ、セイラ

「あとレオタードに暖房機能は付いてないから。おかしな事言わないで。」

 

 

 

 

そこは声を揃えて全否定かい!!

 

 

 

 

ニンジャスレイヤー

「・・・・・。」

 

 

 

 

何か喋れやそこのアサシン!!さっきから鋭い眼光で睨みつけてノーコメントか!!

 

 

 

ナツ

「気にするなって!家の()()()も似たような格好してるから大丈夫だ!!」

 

 

 

バーサーカーは励ましてるのかバカにしてるのかわからないな。

 

 

 

 

マリア

「こいつ等嫌い。」

 

 

 

座り込んで拗ね出したよこの人は。

 

 

 

マリア

「特にライダーとキャスター。」

 

 

セイラ

「いや、私達当たり前の事言ってただけだよ!?」

 

 

 

 

そりゃ二人が正論だわ。ん?キャスターがさっきからバーサーカーを睨んでる?なんで?

 

 

 

 

エルザ

「バーサーカー。私はこの場に召喚されてから一度も自分の真名を口にしていないわ。」

 

 

ナツ

「いやだってまだマリアしか名乗ってないから当たり前だろ?」

 

 

エルザ

「そう。なら・・・・何故貴方はさっき私の真名を口に出したのかしら?その名前を知っているのはキャスター以外有り得ないはずよ。」

 

 

ナツ

「は?いや俺お前の真名知らねえし?何言ってんだ?」

 

 

エルザ

「惚けるのもいい加減にしなさい!!」

 

 

 

 

え?何?ライダーの真名をバーサーカーが?何がどうなってるの!?

 

 

 

 

エルザ

「マリア・カデンツァヴナ・イヴの格好の事で貴方が指摘した時に私の真名を言ったでしょ!!それに私はあんな卑猥な格好しないわよ!!」

 

 

ナツ

「だからお前の名前なんて知らね・・・・・はっ!?」

 

 

 

 

あれ?途中からバーサーカーが反論しなくなった?もしかして何かわかったのかな?そう言えばバーサーカー、あの時マリア姐さんに指摘した時に知り合いの名前出してたっけ?確か『エルザ』って言ってたような・・・・・はっ!?

 

 

 

ナツ

「お前・・・・『エルザ』って名前なのかぁぁぁぁ!?」

 

 

エルザ

「え?何?どう言う事?」

 

 

右衛門左衛門

「どうやら君の思い違いだったようだなライダー。バーサーカーの知り合いに君の真名と同名者がいたようだ。」

 

 

エルザ

「つまりそれって・・・・。」

 

 

右衛門左衛門

「勘違いするのも無理はないが単なる事故だったと言う事だ。」

 

 

エルザ

「・・・・・。」

 

 

 

 

ライダーが固まっちゃった。早めに自己紹介させとくか。

 

 

 

 

レベッカ

「じゃあバーサーカーに真名を暴露されたライダーさん。改めて自己紹介お願いします。」

 

 

エルザ

「フンッ!仕方ないわね!」

 

 

 

あれ?もしかして拗ねてる?以外とかわいいな。

 

 

 

エルザ

「私は『エルザ・フォルテ』。アイドル学校『ネオヴィーナスアーク』のオーナー兼アイドルよ。」

 

 

レベッカ

「何かさらりととんでもない経歴聞いちゃったような。つまり最年少の学園長でさらにアイドルだよね?凄くね?」

 

 

エルザ

「ええ、そうよ。だから安心しなさいマスター。貴女をパーフェクトにしてみせるわ!!」

 

 

ナツ

「あんな勘違いしといて良く偉そうな口が叩けたな。」

 

 

エルザ

「貴方が紛らわしい事したからでしょうが!!」

 

 

レベッカ

「そうだよバーサーカー。知らなかったとは言え()()()()()の真名を軽々しく口にしたんだからちゃんと謝りなさい!」

 

 

エルザ

「エルちゃんって・・・・随分と馴れ馴れしいのね。」

 

 

ナツ

「わかった!悪かったよ!」

 

 

 

わかればよろしい!!

 

 

 

 

ナツ

「じゃあエルザの真名バラしたのもあるし、次は俺から行くぞ。」

 

 

レベッカ

「ちょっと待ったぁ!!」

 

 

ナツ

「何だよ!?今の流れで俺の番だろ!?」

 

 

レベッカ

「そうなんだけど今片付けたいサーヴァントがいるから後!!」

 

 

 

 

さっきのエルちゃんの発言で気になった事がある。エルちゃんの真名を完璧に知っているサーヴァントがもう一人いる。それにはまず!エルちゃんに確認を取らねば。

 

 

 

 

レベッカ

「エルちゃんさあ。さっきキャスター以外はエルちゃんの真名知らないって言ってたよね。」

 

 

エルザ

「確かにそう言ったわね。」

 

 

レベッカ

「つまりキャスターは最初からエルちゃんの真名を知っていた。そうだね。」

 

 

エルザ

「そう言うことになるかしら。」

 

 

幸村

「ではキャスター殿とエルザ殿は!」

 

 

右衛門左衛門

「同郷と言う事になる。」

 

 

レベッカ

「じゃあ!そんな謎めいたキャスターに真名を暴露して貰いましょうか!!」

 

 

セイラ

「謎めいてはいないけどな。」

 

 

 

確かにどっからどう見てもロックンロールガールだが怪しいのは確かでしょ!さあ名乗るがいいキャスター!!

 

 

 

セイラ

「私は『音城セイラ』。アイドル学校『ドリームアカデミー』でアイドルをしているサーヴァントだ。これからよろしく!」

 

 

レベッカ

「なるほどこっちもアイドルか。」

 

 

セイラ

「ああ!だからこれだけは宣言しておく!」

 

 

 

 

え!?何!?

 

 

 

 

セイラ

「貴方達が『ド』なら私は『レ』!貴方達が『レ』なら私は『ミ』!私は上を行くよ!」

 

 

 

 

おお!クールなクセにやる事大胆だな。勝利宣言ってヤツじゃん!

 

 

 

 

エルザ

「因みに彼女は『絶対音感』の持ち主よ。」

 

 

右衛門左衛門

「ほう。まるで音の申し子と言うわけか。」

 

 

 

 

うわぁ、アーチャーめちゃくちゃ笑ってる。仮面被ってても表情丸わかり。

 

 

 

 

レベッカ

「でもよかったね!二人共同郷で召喚出来たなら、また一緒にいられるじゃん!」

 

 

セイラ

「実はそうじゃないんだ。」

 

 

レベッカ

「え?」

 

 

セイラ

「私とエルザは元々は別世界でアイカツをしていたんだ。」

 

 

エルザ

「けれどある時、アイカツシステムの影響で三つの世界は一つの世界となり、それぞれの世界のアイドルは一緒にアイカツをするようになった。」

 

 

セイラ

「そして世界はまた元に戻り、その時の思い出が私と、多分エルザの記憶からも失われていた。」

 

 

右衛門左衛門

「有り得ず。本来交わらない筈の世界が一つになるなど聞いた事がない。」

 

 

幸村

「想像も付かぬ話でござる。」

 

 

 

 

てか何その世にも奇妙な話は!?

 

 

 

 

セイラ

「だからレベッカには感謝しているんだ。私とエルザを再び会わせてくれたこと、あの日のことを思い出させてくれたこと、本当にありがとう!」

 

 

エルザ

「私からもお礼を言わせて貰うわ。ありがとう。レベッカ・スカーレット・ティファニー。」

 

 

レベッカ

「レベッカでいいよ。フルネームだと呼び難いし。」

 

 

 

でも何か感動するな。離れ離れだった友達とこうして再会出来たんだ。何か私、凄いことしたような気がする。

 

 

 

ナツ

「よかったじゃねえか!お前等また再会できて!」

 

 

 

 

暴力的だけど、結構優しいとこあるじゃんバーサーカー。

 

 

 

ナツ

「そんじゃあお前等の話は一旦終わりにして!」

 

 

レベッカ、セイラ、エルザ

「ちょっと待てぇ!!」

 

 

ナツ

「なんだ?」

 

 

レベッカ

「「なんだ?」じゃない!!よくこの空気ぶち壊せたな!流石バーサーカーだよ!!」

 

 

エルザ

「大体何で貴方が仕切ってるの!?」

 

 

ナツ

「一旦切らねえと俺等の自己紹介進まねえだろ?」

 

 

セイラ

「だからってタイミングを考えろよ!!」

 

 

ナツ

「いやお前等の話何か長くなりそうだから終わりにしろよ!!」

 

 

 

 

なんもかんも台無しだよぉ!!

 

 

 

 

右衛門左衛門

「反対せず。私もバーサーカーの提案には賛成です。」

 

 

レベッカ

「何で?」

 

 

右衛門左衛門

「ライダーとキャスターの件は不明な点が多すぎます。ここは一旦保留にしてもよろしいかと。」

 

 

 

 

言われてみれば確かに、そもそもなんで記憶が戻ったかもわからないし、二人の件に関しては後回しにするしかないか。

 

 

 

 

レベッカ

「わかった。この話は後で二人から詳しい事情を聞いてからにする。それでいいよね。」

 

 

右衛門左衛門

「御心遣い感謝します。」

 

 

レベッカ

「二人もそれでいいよね。」

 

 

エルザ

「構わないわ。アーチャーの言う通り、私達自身も記憶が戻った原因に心当たりが無いの。」

 

 

セイラ

「それなら後回しの方がいいな。レベッカ達を混乱させるだけだし、後で話をした方がいいかもしれないな。」

 

 

レベッカ

「ありがとう二人共。それじゃあ気を取り直してバーサーカー!ランサー!アーチャー!それからずっと無言で睨みつけている・・・・・アサシン。派手にいっちゃえ!!」

 

 

 

 

色々あったけど再開!let's自己紹介ターイム!!

 

 

 

 

ナツ

「俺はナツ!『ナツ・ドラグニル』!!魔道士ギルド!FAIRY TAIL(フェアリーテイル)の『火竜(サラマンダー)』の異名を持つ滅竜魔法(ドラゴンスレイヤー)の魔道士だ!!相手が誰だろうと俺は負けねえ!!全員まとめてかかって来なっ!!」

 

 

 

 

おお!何かカッコイイ!!

 

 

 

 

ナツ

「因みに俺が言ってたエルザってのは『エルザ・スカーレット』。家のギルドじゃメチャクチャ強い魔道士だ!」

 

 

 

 

エルザって名前の人最強何ですかね?じゃあ次は・・・・。

 

 

 

 

幸村

「うおぉぉぉぉ!!ナツ殿熱き魂の叫び!!某にも響申したぁ!!」

 

 

 

 

うおっ!?ならランサー行ってみよう!!

 

 

 

 

幸村

「某、此度ランサーのクラスを預かり申した武田軍武将!!天!覇!絶倉!!『真田(さなだ) 幸村(ゆきむら)』見参!!」

 

 

レベッカ

「あっ!知ってる!!戦国武将でしょ!!」

 

 

幸村

「なんと!?」

 

 

セイラ

「私も知ってるな!」

 

 

エルザ

「私も。」

 

 

ナツ

「いや、知らねえ。」

 

 

右衛門左衛門

「別世界だから知らぬのも無理もない。」

 

 

ナツ

「じゃあお前は?」

 

 

右衛門左衛門

「勿論知っている。」

 

 

幸村

「うむ!些か某の正体は明るみに出ない方が良かったでござるが、これほどまでの知名度はやはり喜ぶべきでござろうか?」

 

 

 

いいんじゃない。じゃあ次はアーチャー行ってみよう!!

 

 

 

 

右衛門左衛門

「此度アーチャーのクラスを授かった尾張幕府直轄内部監察所総監督補佐『左右田(そうだ) 右衛門左衛門(えもんざえもん)』と申します。以後お見知り置きを。」

 

 

レベッカ

「さっぱりわからないけど凄い役職に付いてたのはわかる。」

 

 

右衛門左衛門

「ほう。では我等がマスターである姫様に、私の『相生忍法(あいおいにんぽう)』を披露して差し上げましょう。」

 

 

 

 

するとさっきまでいた右衛門左衛門が私の前から消えていた。

 

 

 

 

セイラ

「なんだ!?」

 

 

右衛門左衛門

「相生忍法『背弄拳(はいろうけん)』。」

 

 

 

 

セイラ振り返ったと同時に消えた筈の右衛門左衛門が現れた。てかやってる事アーチャーってよりアサシンだよね!?

 

 

 

セイラ

「いきなりなんだよ!?」

 

 

右衛門左衛門

「これは失礼。だが驚きを禁じ得ず。私の背弄拳ですら、君は僅かな足音でも感づくのか。」

 

 

セイラ

「まあな!貴方が飛ぶ瞬間の音も聞き逃さなかったよ!」

 

 

右衛門左衛門

「そうか。しかし負けず。私の相生忍法が上と言う事をこの場で証明してみせよう。」

 

 

セイラ

「OK!けど私は貴方の上をいくよ!」

 

 

 

 

皆んな負けず嫌いだな。後はアサシンだけだけど・・・・さっきからずっと睨みつけてるけど自己紹介する気あるのかな。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「さて、最後は君の番だが・・・・君はなんと言って死ぬのかな。」

 

 

 

 

右衛門左衛門の一言で皆んなの笑顔が突然険しくなった。なんで?

 

 

 

 

マリア

「そろそろ聞かせて貰おうかしら。アサシン!」

 

 

 

 

さっきまで拗ねていたマリア姐さんも立ち上がり、皆んなアサシンを警戒するように振り返った。

 

 

 

 

レベッカ

「何!?どうしたの!?皆んな!!」

 

 

マリア

「気を付けてレベッカ!!彼貴女に殺意を向けてるの!!」

 

 

 

 

なんで!?私アサシンに何かした!?まさか自己紹介最後にしたの怒ってる!?

 

 

 

 

ナツ

「おい!俺達ならともかく、レベッカは関係ねえだろ!!」

 

 

右衛門左衛門

「答えろアサシン。何故契約者である姫様に殺意を向ける。」

 

 

 

 

ナツと右衛門左衛門の問いかけに答える気もないまま、アサシンがゆっくり私の所に歩き出した。殺意を向けたまま歩み寄ろうとしている。殺されるかもしれない。でも私は逃げないよ!

 

 

 

 

レベッカ

「皆んなは手を出さないで!」

 

 

幸村

「しかし姫様!?」

 

 

レベッカ

「私を信じて!!」

 

 

 

 

そしてアサシンは警戒する皆んなの前を通って、私の前に立ち止まった。さあ勝負だアサシン!!

 

 

 

 

 

ニンジャスレイヤー

「ドーモ、レベッカ=サン!ニンジャスレイヤーです!!」

 

 

レベッカ

「へ?」

 

 

 

 

殺意剥き出しにして来たかと思ったら、手を合わせて礼儀正しい挨拶!?

 

 

 

 

レベッカ

「はっ!初めましてニンジャスレイヤーさん!レベッカです!!」

 

 

ニンジャスレイヤー

「単刀直入に尋ねる!貴様、ニンジャか!」

 

 

レベッカ

「いいえ、魔術師ですが?」

 

 

ニンジャスレイヤー

「それは失礼した。」

 

 

 

 

え?まさか?私が忍者と勘違いしてた?

 

 

 

 

右衛門左衛門

「まさか姫様が忍者だと誤解していたのか?有り得ず。どう見ても無理があるぞ。」

 

 

ニンジャスレイヤー

「人違いのようだ。」

 

 

マリア

「貴方といい、エルザといい、思い違いで暴れるのはやめて!」

 

 

 

 

まあ誤解が解けて良かったよ。

 

 

 

 

レベッカ

「それでニンジャスレイヤーの目的って?」

 

 

ニンジャスレイヤー

「ニンジャを殺す!当然お主も殺す!ソウカイヤのニンジャは全て殺す!ニンジャを殺す!」

 

 

 

 

なんか今マスクに書かれた『忍』と『殺』の文字がドアップで映ったような!?なんたる狂人の戯言かぁ!!ってツッコミ入れてみたけどニンジャスレイヤーにも色々有りそうだな。ん?今「お主も殺す」って・・・・。

 

 

 

 

ニンジャスレイヤー

「イヤアアアアアアアアアアーーー!!」

 

 

レベッカ

「え・・・・。」

 

 

 

上を見上げた時、ニンジャスレイヤーの拳が私に襲い掛かろうとしていた。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「なに!?」

 

 

マリア

「逃げて!レベッカぁ!!」

 

 

 

 

その瞬間、胸に刺さる硬いものと、同時に漂う鉄の匂いと一緒に体が勝手に後ろに引っ張られた。止まったかと思ったら、今度は私の首に刃物が突き付けられた。

 

 

 

 

レベッカ

「何・・・・。」

 

 

 

 

後ろを振り返ると、全身鎧を着た男が私を押さえていたからだ。てかこいつ・・・・。

 

 

 

 

レベッカ

「お化けぇぇぇぇ!?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「当たっているが違う。俺はサーヴァントだ。」

 

 

 

 

私は何が何だかわからなかった。この人が助けてくれたの?でも剣を突き付ける意味無くない?

 

 

 

 

ニンジャスレイヤー

「おっとり刀で潜んでいたか!腐れネズミめ!!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「当たり前だ。背後から存在を消して標的に近づくのは基本中の基本だ。だが完璧に気配を消したつもりだったが、俺もまだまだのようだ。」

 

 

ニンジャスレイヤー

「貴様!ソウカイヤのニンジャか!!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「いや。俺はただの冒険者だ。」

 

 

 

 

逆?ニンジャスレイヤーが私を助けてくれたの?

 

 

 

 

右衛門左衛門

「答えて貰おうかニンジャスレイヤー。奴はいつから姫様の背後にいた。」

 

 

ニンジャスレイヤー

「恐らく私達が召喚され時か、その前と考えていいだろう!」

 

 

マリア

「じゃあ貴方がレベッカに殺意を向けていたのは!?」

 

 

ニンジャスレイヤー

「マリア=サン達の注意を私に向けさせるためだ!」

 

 

右衛門左衛門

「なるほど。ニンジャスレイヤー以外の誰かが奴に少しでも注意が向けば、この状況になるのは明確。いや最悪殺されていた事になる。」

 

 

ニンジャスレイヤー

「私の番が周って来た時にレベッカ=サンに近づき、不意をついて奴を仕留めるつもりだったが後一歩及ばず!!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「あれは俺も油断した。あんな間抜けな演技に気を取られて一瞬でも警戒を解いた所を狙ってくるとは思わなかったからな。」

 

 

ニンジャスレイヤー

「ならレベッカ=サンを盾にしながらどうやって躱した!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「間抜けな奴め。モーションが派手すぎる。呼吸を殺せ、存在を殺せ、そして相手を確実に殺せ。それがアサシンと言うものだろ。」

 

 

 

 

何こいつ。アサシンって言う特性を理解している!?

 

 

 

 

ナツ

「御託はどうでもいい!!レベッカを放しやがれ!鎧野郎!!」

 

 

ニンジャスレイヤー

「待て!ナツ=サン!!」

 

 

ナツ

「何で止めるんだ!!レベッカを助けるんだろ!!」

 

 

マリア

「レベッカが人質に取られてる以上私達が不利なのは変わらないのよ!下手に動けば彼女にも危険が及ぶわ!!」

 

 

ナツ

「じゃあどおすんだよ!!」

 

 

 

 

姐さんとナツが言い争っていた中、更に状況を悪化させる事態にまで発展した。

 

 

 

杉元

「全員そこを動くな!」

 

 

 

青い軍服を着た男の人が皆んなにライフルを向けた。まさかこのサーヴァントの仲間!?

 

 

 

ゴブリンスレイヤー

「遅かったな。」

 

 

杉元

「いきなり走り出すから俺も政宗さんもあっちこっち捜し回ったんだぞ。」

 

 

政宗

「ほう。こいつは豪華なpartyになりそうだ。オマケにメインディッシュまで用意してるとは気前がいい。」

 

 

 

 

更に青い鎧を着た男まで現れた。その時幸村がその男を見てかなり驚いていた。

 

 

 

 

幸村

「貴殿は・・・・伊達政宗殿!!」

 

 

政宗

「まさかこうも早くアンタと会うとは思わなかったぜ。真田幸村。」

 

 

 

 

え!?まさか知り合い!?

 

 

 

 

幸村

「政宗殿!直ぐに姫様を解放するようその者に申し付けられよ!」

 

 

政宗

「だとよ小鬼殺し。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「断る。」

 

 

政宗

「だそうだ。残念だったな真田幸村。」

 

 

 

 

諦めるなぁぁぁぁ!!交渉続けろ三日月頭!!

 

 

 

 

政宗

「そこでだ。俺と勝負してアンタが勝ったらこいつは返してやる。」

 

 

幸村

「政宗殿!?某は今それどころでは!?」

 

 

政宗

「俺との勝負よりそこの小娘を選ぶか?アンタも地に落ちた見てえだな。」

 

 

 

 

三日月頭が何言ってんだぁぁぁぁ!!お前等の真剣勝負に私を掛けるなぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

政宗

「武田のおっさんに忠誠深いアンタがサーヴァントの契約だけで主人を変える。そんな安い漢じゃなかった筈だぜ。」

 

 

幸村

「政宗殿。」

 

 

政宗

「この南蛮の小娘にはおっさん程の力も気迫も天と地の差でしかねえ。そんなアンタが何故こんな小娘に仕える。甲斐の虎以上かはたまた同等なのかそこの子猫は?どうなんだ。」

 

 

 

 

知らなかった。幸村に信頼できる上司がいたなんて。私、なんか酷い事したのかな。

 

 

 

 

政宗

final(ファイナル) answer(アンサー)!!答えろ真田幸村!!」

 

 

幸村

「姫様には・・・・親方様の様に身体もデカくも無ければ、立派な髭も生やしてござらん。」

 

 

政宗

「いやそうじゃねよ?」

 

 

 

()()()!!

 

 

 

 

幸村

「しかしながら!姫様には親方様には負けぬ熱き魂を持った方である!!非力でありながらサーヴァントに果敢と立ち向かうその度胸もあり申す!!それに親方様ならこう申される筈!「幸村よ!儂亡き後、もし心から仕えると思える主人を見つけたならば、その者に忠誠を就くせい!!」と!!姫様は、某が忠義に値するお方でござる!!」

 

 

 

 

え?無理してない?私そんな器が大きい人間じゃないんだけど!?

 

 

 

 

政宗

「そうかい!なら力付くで取り返しな!」

 

 

ナツ

「上等だ!!テメーは俺がぶっ飛ばす!!」

 

 

幸村

「待たれよ!!ナツ殿!!」

 

 

ナツ

「またかよ!!」

 

 

幸村

「これは某と政宗殿の勝負!助太刀は無用でござる!!」

 

 

ナツ

「そうか!なら絶対勝ってこい!!」

 

 

 

 

うん!何かよくわからないけど頑張れ!

 

 

 

 

杉元

「ねえ?あの二人止めた方が良くない?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「この部屋には貴重な品があると聞いたのだが?」

 

 

 

 

 

そうだったぁぁぁぁ!!頑張れなんて言ってる場合じゃなかったぁぁぁぁ!!二人共やめろぉぉぉぉ!!

 

 

 

 

政宗

「真田幸村ぁぁぁぁ!!」

 

 

幸村

「伊達政宗ぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

二人の刃が激突し、あたり一面煙が舞った。そして終わった。借金地獄確定だ。

 

 

 

 

「喧嘩は祭りの花って言うが、場所を考えろよな。」

 

 

 

 

煙が晴れた瞬間、見知らぬ男が二人の刀と槍を受け止めていた。三日月頭の刀は普通に刀で受け止め、幸村の槍は片足で踏ん付けられていた。

 

 

 

 

幸村

「なに奴!?」

 

 

政宗

「おいおっさん!!アンタどう言うつもりだ!!」

 

 

「そりゃこっちのセリフだ。お前等ここにある骨董品全部破壊する気か?悪いがそれだけはやめてくれよ。」

 

 

幸村

「しかしながら!某は姫様を助けねばなりません!!」

 

 

「いいから落ち着けって!もうすぐ俺達のマスターが到着するから、どうするかはそん時決める!」

 

 

剣城

「これ一体どうなってるの!?」

 

 

「おっ!噂をすれば良い頃合いで来たな。」

 

 

 

 

剣城くーん!!ゆめ!!お願い!この鎧何とかしてぇぇぇぇ!!

 

 

 

ゆめ

「エルザさん!?それにセイラちゃんも!?」

 

 

セイラ

「虹野!?」

 

 

エルザ

「ユメ・ニジノ!?」

 

 

 

 

え!?エルちゃん達とゆめって知り合いだったの!?

 

 

 

剣城

「ゴブリンスレイヤー!レベッカに何をしてるの!!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「こいつがサーヴァントを召喚した所を目撃した。こいつ等が暴れ出さないよう人質に取っている。」

 

 

剣城

「だったらもういい!放してあげて!!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「いいのか。」

 

 

ゆめ

「放してあげて、レベッカさんは味方だから大丈夫。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「わかった。」

 

 

 

ようやく鎧男から解放された私はフラつきながら倒れそうになっていた。直ぐにマリア姐さんが支えてくれた。

 

 

 

 

マリア

「レベッカ?」

 

 

レベッカ

「終わるかと思った・・・・。」

 

 

マリア

「もう大丈夫よ。一区切り着いたわ。」

 

 

レベッカ

「借金地獄にならずに済んだ。」

 

 

マリア

「そっちの心配!?」

 

 

 

はぁ・・・・なんだろ。メチャクチャ疲れた。皆んな落ち着いたところで一息つかせて。

 

 

 

剣城

「とりあえず立ち話もなんだし、全員司令室に移動しようか。」

 

 

「そうだな。そっちの方が丸く収まりそうだ。と言う訳だ。お前等暴れるなよ。」

 

 

 

何か古事記みたいなおっさんに助けられた。後でお礼言っとかなきゃな。

こうして騒動が収まった私達は司令室に向かった。着いた先で苦笑いしているドクターに、知らん顔してるクリスティーナさん、眉間にシワを寄せて明らかにご立腹のロード、そして剣城君のサーヴァント達黒の陣営が待っていた。

 

 

 

 

あいね

「エルザさんにセイラちゃん!久しぶりだね!」

 

 

セイラ

「結城に湊に白銀もか!?」

 

 

エルザ

「これは驚いたわ。私達以外にもアイドルで召喚されたサーヴァントがいるなんて。」

 

 

 

 

なんか・・・・エルちゃん達の同郷?多くない?まあそれは後ででいいか。

 

 

 

 

アルタイル

「ほう?これはこれは。シンフォギア奏者のマリア・カデンツァヴナ・イヴ殿に、甲斐の武田の家臣真田幸村殿に、『否定姫』の懐刀左右田右衛門左衛門殿に、パーフェクトアイドルのエルザ・フォルテ殿に、ドリームアカデミーの初代エース音城セイラ殿に、ラオモトのソウカイ・シンジケートを壊滅させたニンジャスレイヤー殿、そしてフェアリーテイルの魔道士ナツ・ドラグニル殿。またパワフルで暑苦しいサーヴァントが召喚されたものだ。」

 

 

マリア、幸村、右衛門左衛門、エルザ、セイラ、ニンジャスレイヤー、ナツ

「っ!?」

 

 

 

何!?この暑苦しいコートを着た軍服の女の子!?いきなり皆んなの真名暴露してきたけど・・・・てか何で知ってるのっ!?

 

 

 

 

右衛門左衛門

「有り得ず。何故我等の真名を知っている!」

 

 

キリト

「悪い!こいつそう言うスキル持ってるから許してやってくれ!」

 

 

 

 

いや、サーヴァントの真名暴露しといてそれで済むと思うか!!てかお前誰だよ!!

 

 

 

 

エルメロイ二世

「さて・・・・どう言う事か話を聞かせてもらおうか。」

 

 

 

 

ツッコミ入れる暇もないまま、ロードに追求され色々説明しました。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「この馬鹿者がぁ!!第三倉庫の骨董品を触媒にしてサーヴァントを召喚するなどふざけているにも程がある!!」

 

 

レベッカ

「すいません!!」

 

 

 

 

まあ当然怒られる訳でして、私も無断でサーヴァントを召喚した事に反省してます。

 

 

 

 

レベッカ

「それで私の処分は。」

 

 

エルメロイ二世

「剣城がマスターに決まった以上、君の役目は終わった事になる。忘却魔法でアースに関する記憶を全て消去して退去してもらう。悪いがその後こちらから資金や援助、また君の保護には一切関与しない。」

 

 

ロマニ

「ちょっと待ってくださいロード!!さっきと話が違いませんか!?」

 

 

エルメロイ二世

「こうでも言わなければ、お前達は納得しなかっただろ!」

 

 

ゆめ

「だからってそんなの酷すぎる!!」

 

 

 

 

それを聞いて私は涙目になった。やっぱり私は用済みだったんだ。だよね、聖王教会もそうだけど私なんていてもいなくてもどっちでもいいんだよね。結局アースも私を見てくれていなかったんだ。まあ・・・・わかっていたけど。

 

 

 

 

マリア

「やっと話が繋がったわ。レベッカが訳のわからない事言い出すから何かと思えばそう言う話だったのね。」

 

 

エルメロイ二世

「君等は言わばレベッカに利用されたに過ぎない。だから彼女との契約を破棄しても構わん。あるべき場所に帰りたまえ。」

 

 

 

 

そんな・・・皆んなとお別れしろって事?セイラとエルちゃんだって再会出来たのに、幸村もこんな私を慕ってくれてるのに、その思いを破り捨てろって言ってるの。そんな残酷な事ってないよ。

 

 

 

 

マリア

「だったらお断りよ!」

 

 

 

 

え・・・・・マリア姐さん。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「彼女の悪用に利用されてるとわかった上で発言しているのか。」

 

 

マリア

「ええそうよ!レベッカがどんな理由で私達を召喚したとしてもそんなのはただの切っ掛けに過ぎない!けど、私達をどうするかは貴方が決める事じゃない、マスターであるレベッカに決定権があるわ!」

 

 

エルメロイ二世

「使い魔風情が魔術師に意見するか。では私が無理やりにでもレベッカに強制を強いれたとしたらどうする。」

 

 

マリア

「その答えが返ってきた時点で、既にわかりきってるわ。そうよねナツ!!」

 

 

ナツ

「おう!レベッカは俺達の仲間だ!!傷つける奴は誰だろうとぶっ飛ばす!!」

 

 

 

 

マリア姐さんもナツも、私を庇ってくれていた。それは二人だけじゃなかった。

 

 

 

 

幸村

「我等が主人は姫様のみ!貴殿に指図される言われはないでござる!!」

 

 

右衛門左衛門

「同感だ。」

 

 

セイラ

「レベッカには手出しさせないよ!」

 

 

エルザ

「もし彼女に何かあればそこのバーサーカーとランサーが黙ってないわよ。」

 

 

ナツ

「お前人任せかよ!?」

 

 

幸村

「なんたる理不尽。」

 

 

ニンジャスレイヤー

「我々の処分を決めるのはレベッカ=サン!用済みであるなら潔くハイクを詠んで役目を全うするのみ!!」

 

 

ナツ

「いやお前はもうちょい粘れよ!!」

 

 

右衛門左衛門

「何故俳句を詠んで散らねばならんのだ。」

 

 

 

 

さらにそれだけじゃなかった。

 

 

 

 

リムル

「俺もこいつ等を返すのは気が引けるな。勝手に呼び出しておいて「はい解散!」ってのは納得いかないだろうし。」

 

 

あいね

「そうだよ!せっかくセイラちゃんやエルザさんと再会出来て、他のサーヴァントの皆んなとも友達になれるのにお別れなんてやだよ!!」

 

 

リムル

「お前はどうなんだ?ゴブリンスレイヤー。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「興味は無い。だが不愉快な話だ。元々俺達のマスターがイレギュラーなだけであって、本来ならこいつが請け負う役目だったのだろ。なら当初の予定通りマスターとして活動を続けても構わないのではないか。」

 

 

ナツ

「なんだ?レベッカ人質に取ってた割にはいい奴だな。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「非常事態とは言え、彼女がアースの関係者と知らず人質を取ったのは俺が把握しきれてなかった部分もある。お前達の動きを封じるとは言え流石にやり過ぎた。すまなかった。」

 

 

 

 

そう説明して黒のアサシンは頭を下げて私に謝った。なんだ、割と自分でも反省してたんだ。いい奴じゃん!

 

 

 

 

レベッカ

「いいよ。許す!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「感謝する。」

 

 

 

 

まさか黒のアサシンとこんな形で仲良くなるとは思わなかった。でも悪くない!

 

 

 

 

エルメロイ二世

「ではレベッカ。君の答えを聞かせてもらおうか。」

 

 

 

 

ロードは私に問いかけた。これから皆んなをどうするのか、どう接するのか。その答えは私の中で決まっていた。

 

 

 

 

レベッカ

「失った記憶を取り戻してお互い再会出来たライダーとキャスター、こんな頼りない私を主人として慕ってくれるランサーとアーチャー、仲間を敵に回してでも私を守ろうとしてくれたアサシン、私の為に動いてくれるセイバー、私を『仲間』って言ってくれたバーサーカー、そんな彼等の決意も、志も、思いも、切り捨てる事なんて私には出来ません!!」

 

 

エルメロイ二世

「我々アースが君を切り捨てようともか。」

 

 

レベッカ

「皆んな私の我儘に付き合ってくれた!だったら私にはその責任を果たす義務があります!ここを追い出されても彼等と共に行きます!!」

 

 

エルメロイ二世

「それが君の願いか。」

 

 

レベッカ

「はい。」

 

 

 

 

最初は『生きたい』と言う私の我儘で召喚したけど、皆んなと接してみてわかった。確かに見た目はただの絵だけど、喋る事も出来るし、動く事も出来る。怒ったり、笑ったり、喜んだり、感情も豊かだった。そう、私達と変わらない同じ『人間』だもの。だったら私のやる事は変わらない。

 

 

 

 

エルメロイ二世

「そうか。ならば後は君がクライド氏に伝えるがいい。私からはこれ以上何も無い。」

 

 

レベッカ

「え?」

 

 

 

私だけでなく、この場にいる全員がロードとあと何故かクリスティーナさん以外はキョトンとしていた。それもそのはず、ロードは時計塔の中でも最高権力に位置する地位を持っている。なのに何故か処罰を下さない?

 

 

 

 

レベッカ

「あのー、私の処罰は?」

 

 

エルメロイ二世

「何を言っている。私に君の処遇についての権限など持ち合わせて無い。」

 

 

レベッカ

「え?」

 

 

エルメロイ二世

「何を勘違いしてるのかは知らんが、私はアドバイザーとしてここにいるだけだ。君をどうこうするかは所長であるクライド氏に決定権がある。」

 

 

レベッカ

「はぁっ!?」

 

 

マリア

「じゃあ今までの偉そうな発言は!?」

 

 

紅莉栖

「このおじさんが好き勝手言ってただけよ。そもそも、アースの職員じゃない彼がどうこう出来る訳ないでしょ。」

 

 

レベッカ

「でもロードって地位があるし!!」

 

 

紅莉栖

「そんなの家で通用する訳ないでしょ。それにこのおじさん、ロードって凄い地位に居座ってるだけのヘッポコよ。中身はド三流以下の魔術師なんだから。」

 

 

エルメロイ二世

「発言が過ぎるぞ!牧瀬紅莉栖!!」

 

 

紅莉栖

「事実を言ったまでよ。」

 

 

 

なんだよ!!ただの苔脅しかい!!

 

 

 

ナツ

「じゃあレベッカは大丈夫だって事か?」

 

 

右衛門左衛門

「油断せず。そのクライド殿の正式な御許可が無ければ状況は変わらない。」

 

 

 

 

まあ、結局クライドさんに許可貰わないといけない訳か。一見優しそうに見えて頑固な所があるからな。

 

 

 

 

クライド

「おや?皆さんお揃いでどうかしましたか?」

 

 

 

 

噂をすればクライドさんともう一人金髪の女性がやって来た。彼女は『ヴィリアント・チャールズ』って言って会計課に所属している。真面目な性格で厳しい所もある。でも何で会計課の彼女まで?

 

 

 

 

紅莉栖

「見ての通りレベッカがサーヴァントの召喚に成功したわ。その事で彼女の処遇について議論していた所よ。」

 

 

クライド

「それなら心配ないよ。彼女はこのままアースに留まる事になった。悪い意味で。」

 

 

 

 

え?何?どう言う事?

 

 

 

 

クライド

「ヴィリアント君、詳細な説明を。」

 

 

ヴィリアント

「はい。先程第三倉庫の紛失物を調べた所、状態の良いディスク5枚とガラスケースに厳重に保管していた計6枚のカードだけでした。それ等を含め合計を出すと被害総額はこのようになります。」

 

 

レベッカ

「うわーい。ゼロがいっぱいだー。軽く億は行ってるよね。因みにこの紛失物って?」

 

 

 

 

私は顔を青ざめながら恐る恐る聞いてみた。まさかとは思うけど嘘だよね?嘘って言ってぇぇぇぇ!!

 

 

 

 

ヴィリアント

「貴女がサーヴァントの召喚に無断で使用した触媒です。勿論、弁償して貰います。」

 

 

 

 

イヤアアアアアアアアアアーーー!!

 

 

 

 

レベッカ

「ドウジヨウ!!ワタジ借金シヂャッダ!!」

 

 

マリア

「落ち着いてレベッカ!!」

 

 

 

 

泣き愚じゃりながら現実を受け入れない私がいた。借金確定だ。

 

 

 

 

ヴィリアント

「因みにこの被害総額の約9割はそのガラスケースにあった6枚のカードです。」

 

 

レベッカ

「じゃあそれがなかったらもっと安い額で済んでたって事!?」

 

 

クライド

「レベッカ君。借金背負ったまま路頭に迷いたいかい?」

 

 

レベッカ

「それだけは!!」

 

 

クライド

「なら発言を慎みなさい。」

 

 

 

 

やばっ!クライドさんマジで私を追い出す気だった!!でもまさか適当に選んだガラスケースのカードがそんな高額な物だったなんて。流石エースとパーフェクトって言うだけはあるわ。てか喜んでいいのかがっかりしていいのかわからなくなって来た。

 

 

 

 

クライド

「レベッカ君。これからは剣城君の黒の陣営と共に共闘して戦って行きなさい。そう・・・・"赤の陣営"として。」

 

 

レベッカ

「赤の陣営。」

 

 

 

クライドさんのその表情は凄く安心し切っていた。私がここにいるべき理由が見つかったからだ。赤の陣営・・・・何かいいかも!

 

 

 

 

クライド

「まあ・・・・借金返済の為に頑張ってね。」

 

 

 

 

やっぱりそうなるよね。借金と聞いてため息付きたくなる程落ち込んでいた。

 

 

 

 

マリア

「レベッカ。私達も協力するわ。貴女が大金を掛けて召喚してくれたんだもの。恩返しはさせて貰うわ。」

 

 

エルザ

「そうね。特に9割増しのサーヴァントには一番働いてもらわないとね。」

 

 

セイラ

「だな!責任持ってしっかり働いて貰わないと!」

 

 

 

いやエルちゃんとセイラはそんな大見え切っていいのかな?その触媒にして召喚したサーヴァント二人なんだけど?

 

 

 

クライド

「因みにそのカードを触媒にしたサーヴァントと言うのは?」

 

 

 

レベッカ

「こちらの二人です。」

 

 

クライド

「やっぱりそうか。衣装を見たときまさかと思ったけど彼女達二人がそうか。」

 

 

レベッカ

「そんなに貴重な代物何ですか?」

 

 

ヴィリアント

「そうですね。大昔からここまで綺麗に現存している物はその6枚だけですから、後は世界中探しても見つからないでしょう。」

 

 

 

 

ヴィリアントさんが言うには、そのカードの印刷に使われていたインクの成分を調べた所、とても安価な物が使われていたらしく、紫外線や湿気で直ぐに滲んでしまい、保存状態が悪ければカードに描かれた衣装の絵は簡単に消えてしまう物だった。この事から当時は同じカードが大量生産されていたと言う事になると言う話だ。

 

 

 

 

エルザ

「ふざけないで!!私達のドレスはそんな安っぽい代物ではないわ!!」

 

 

セイラ。

「そうだ!これは私やエルザが日々の努力で勝ち取ったドレスなんだ!並のアイドルじゃ扱えない筈だよ!!」

 

 

 

 

当然、二人が怒るのも無理は無かった。自分達が努力して手に入る物が、他の人には一瞬にして手にできる。しかも世界に一つだけ、自分だけの物がコピーされて配られているんだ。だから二人の事は共感出来た。

 

 

 

 

セイラ

「私達をバカに・・・・っ!?」

 

 

 

 

あれ?セイラが反論しなくなった。あっ!これ気づいたな!

 

 

 

 

エルザ

「セイラ・オトシロ?」

 

 

セイラ

「クライドさん。そのガラスケースに入ってたカードって・・・・まさかッ!?」

 

 

クライド

「今頃気づいたのかい!?レベッカ君が君達二人を召喚した触媒だよ!?」

 

 

エルザ

「なっ!?」

 

 

 

 

言っちゃった。これ笑ったらダメな奴だよね?マリア姐さんとナツは必死に笑い堪えてるし、右衛門左衛門とニンジャスレイヤーと幸村はそっぽ向いてるし、当の本人達は顔を赤くして下向いてるし、どうしようこれ?

 

 

 

 

マリア

「ねえレベッカ。私達も協力するわ。貴女が大金を掛けて召喚してくれたんだもの。恩返しはさせて貰うわ。」

 

 

レベッカ

「姐さんそれさっきも聞いたんだけど?」

 

 

マリア

「特に()()()()()()()()()が。」

 

 

 

 

それが言いたかった為に言い直したの!?

 

 

 

 

右衛門左衛門

「ご安心下さい姫様。()()()()()()()()()は必ず残り9割増しの借金を自分達で返済するでしょう。」

 

 

幸村

「さよう!()()()殿と()()()殿なら必ずや借金を返済しますとも!」

 

 

ニンジャスレイヤー

「自分達の不始末は自分達でつける物、なれば後は任せても構わん!!」

 

 

ナツ

「てな訳で頑張れよ!9割増しの()()()()()()!」

 

 

 

 

皆んなエルちゃんとセイラを弄りにかかったぁ!!もうネタにされてるけど!?ん?てか何で二人とも反抗しないの?

 

 

 

 

エルザ

「ねえセイラ・オトシロ。私達今同盟を組んでいる話だったわよね。」

 

 

セイラ

「だよな。ならこの問題を解決するのもチームの大事な仕事だもんな。」

 

 

 

 

え?何?この二人・・・・なんか怖い!!

 

 

 

 

エルザ

「と言う訳で仲間の不祥事は皆んなで解決しましょう!!」

 

 

セイラ

「私達全員で一緒にこの借金を返していこう!!」

 

 

マリア、ナツ

「ふざけるなぁぁぁぁ!!」

 

 

右衛門左衛門

「有り得ず。」

 

 

ニンジャスレイヤー

「スゴク、シツレイ!!」

 

 

幸村

「お断り申す!!」

 

 

 

 

連帯責任で押し切るつもりだこの二人!?

 

 

 

 

マリア

「何で貴女達の借金を私達まで背負わなきゃいけないの!?おかしいでしょ!!」

 

 

セイラ

「だって私達チームで動く訳だし、一丸となる為にはやっぱり助け合っていかないと!」

 

 

マリア

「それを理由にしてこっちに押し付けようとしてるだけでしょ!そんなのお断りよ!」

 

 

エルザ

「あら?随分と懐の小さいセイバーね。やはりその格好は水商売でしか役に立たないのかしら?」

 

 

マリア

「今なんて言ったエルザぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

げっ!マリア姐さんがブチ切れた!?

 

 

 

 

マリア

「ナツ!この二人少しお仕置きするわよ!」

 

 

ナツ

「もう頭に来たぞ!!このお騒がせ我儘ライダーぁぁぁぁ!!」

 

 

エルザ

「誰が我儘よ!!単細胞の人間火炎放射器バーサーカー!!」

 

 

ナツ

「誰が人間火炎放射器だぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

うわぁ・・・・。なんか見苦しいケンカ始まりそう。止めに入らないとこっちが醜態晒されそう。

 

 

 

 

レベッカ

「はいはい!そこまで!」

 

 

ナツ

「何で止めるんだレベッカ!!」

 

 

エルザ

「これは私達の問題よ!邪魔しないで!!」

 

 

レベッカ

「お前等の幼稚なケンカにこれ以上付き合ってられるかぁぁぁぁ!!」

 

 

マリア、セイラ、ナツ、エルザ

「はいっ!!すいませんでした!!」

 

 

 

 

四人を仲裁して落ち着かせた。

 

 

 

 

レベッカ

「それと何か勘違いしてるみたいだけど、これは私が作った借金な訳で皆んなの借金じゃないの。つまり赤の陣営の借金って事になるの。」

 

 

マリア

「それって結局セイラとエルザの借金を私達も持つって事と一緒になるわよ?」

 

 

レベッカ

「捉え方の違い!確かに同じかもしれないけど、これは私の借金でもあるの。だから皆んなは気にしなくていい。その代わり私の指示に従って貰います。いいですね!」

 

 

マリア

「貴女がそこまで言うならわかったわ。」

 

 

幸村

「お引き受け申した!!」

 

 

右衛門左衛門

「御意。」

 

 

エルザ

「結構な事ね。」

 

 

セイラ

「ああ!わかった!」

 

 

ニンジャスレイヤー

「承知した。」

 

 

ナツ

「おう!」

 

 

 

 

これで赤の陣営の問題が解決したかと思いきや、また次の問題が発生した。

 

 

 

 

紅莉栖

「で?レベッカが次の次元世界に派遣するの?本来なら、今回は絶対剣城君に行かせるつもりだったけど?」

 

 

 

 

そう。次の次元世界には剣城君が派遣される予定だったが、何で絶対に行かせるつもり?

 

 

 

 

ロマニ

「今回の次元先は日本の都『京都』だ。そこに聖杯も確認されてる。だから出身国である剣城が適任であると思うんだ。」

 

 

 

 

なるほどそれで剣城君か。確かに適任ではある。誰もがそう思ったが、本人は違っていたようだ。

 

 

 

 

剣城

「俺はレベッカ達赤の陣営に行かせるべきだと思います。」

 

 

ゆめ

「レベッカさん達に?」

 

 

紅莉栖

「いきなりレベッカ達を?」

 

 

剣城

「俺もエベレストは初めてだったけど、殤さんや杉元さん、そしてリリィの協力で乗り越える事が出来た。だからレベッカにも京都で戦っているサーヴァント達と触れ合って欲しいんだ。」

 

 

 

 

そう言う事か。流石は経験者、なんか説得力ある。まあ現地のサーヴァントを仲間にした方がいいかもしれないな。

 

 

 

 

剣城

「それに、今回は俺とゆめもドクターと一緒にサポートに入る。だから安心していいよ。」

 

 

 

 

それは助かる!!

 

 

 

 

ロマニ

「わかった。剣城君がそこまで言うならこちらも了承しよう。レベッカもそれでいいね。」

 

 

レベッカ

「はい!頑張ります!」

 

 

ナツ

「なら行くとするか!京都に!!」

 

 

ロマニ

「ちょっと待った!!」

 

 

 

 

ナツが走り出した時にドクターに止められたけど、なんかさっきからこんなんばっかだなナツは?

 

 

 

 

ナツ

「何でさっきから俺のやる事に皆んな止めに入るんだよ!?」

 

 

 

 

自分でも自覚してたんだ。

 

 

 

 

マリア

「もう少し周りを見てから動きなさい!」

 

 

ロマニ

「今回レイシフトで出撃する英霊は三騎まで。調整しても最大四騎までが限界だ。」

 

 

 

 

そう言えばサーヴァントを送り過ぎると次元崩壊を起こす危険性があるんだっけ?なら全員は無理か。

 

 

 

 

紅莉栖

「さあレベッカ。今回同行するサーヴァントを三騎選んで。」

 

 

 

 

いきなり三騎選べって言われてもな。誰が適任かわからないし・・・・ん?そう言えば日本って木造建築の建物が多いんだっけ?だったらもう決まったかな!

 

 

 

レベッカ

「今回出撃するサーヴァントは、セイバー、ライダー、キャスターの三騎です!」

 

 

マリア

「私達が?」

 

 

レベッカ

「都って事は街中の戦いになるから、被害を最小限に抑える為にもこの人選で行くしかない。」

 

 

ナツ

「俺じゃねーのかよ!!」

 

 

レベッカ

「うん。特に今回ナツは無理だ。」

 

 

ナツ

「いや何で!?」

 

 

レベッカ

「日本の建物って木造建築になってるから。そんな所で火なんか使ったら火事になるでしょ!」

 

 

ナツ

「あーっ!なるほど!ってんな訳あるかぁ!!要は火さえ使わなきゃいいだけだろ!!」

 

 

レベッカ

「全身火炎放射器が無理に決まってるだろ!!」

 

 

ナツ

「誰が全身火炎放射器だぁぁぁぁ!!」

 

 

エルザ

「貴方以外誰がいるの。」

 

 

 

 

はぁ・・・・ナツは凄く出たがってるけど、流石に木造建築だらけの街中じゃ火事確定だ。

 

 

 

レベッカ

「それと右衛門左衛門とニンジャスレイヤーには頼みたい事があるの。」

 

 

右衛門左衛門

「何でしょうか。」

 

 

レベッカ

「二人でドクターや剣城君達と一緒に京都全体を監視して欲しいの。直ぐ私達に知らせるし、何かあったらどちらか出撃出来るよう待機してて欲しい。」

 

 

右衛門左衛門

「わかりました。その任お引き受けしましょう。」

 

 

ニンジャスレイヤー

「承知した。」

 

 

レベッカ

「ありがとう。二人共。」

 

 

ナツ

「なあ!俺達は!」

 

 

レベッカ

「ナツと幸村は大人しく留守番してなさい。」

 

 

ナツ

「え!?」

 

 

政宗

「ならちょうどいい。真田幸村、partyの続きと行こうじゃねえか!」

 

 

幸村

「うむ!政宗殿の果たし合いお引き受け申した!!」

 

 

政宗

「ようやくアンタらしくなって来たじゃねえか!と言う訳だ『赤の大将』!真田幸村を借りてくぜ!」

 

 

 

 

 

『赤の大将』って私の事!?

 

 

 

 

幸村

「それでは姫様!某は政宗殿の再会のを祝って一戦交えて来ます!!」

 

 

レベッカ

「いいけど程々にね!」

 

 

「安心しろ。この二人がやり過ぎないようこっちで見張っとく。」

 

 

 

 

それから幸村達はシミュレーションルームに行ってしまったが大丈夫かな?まああのセイバーのおじさんぽい人が見てくれてるからいいか。

 

 

 

 

 

 

リベット

「ドクターロマン。次元転送装置の準備が完了しました。いつでも霊子転移(レイシフト)可能です。」

 

 

ロマニ

「わかった。ありがとうリベット。」

 

 

 

彼女は『リベット・スカンビアナ』。私達と同じ16歳のブルースカイのロングヘアーがトレードマークの女性だ。普段はオペレーターを担当しているが、次元転送装置の操作も任されている。剣城君が転送された時も「エネルギー充電完了。座標軸固定。システムオールグリーン。これより次元転送による霊子転移(レイシフト)を開始します。」のアナウンスを彼女が放送しているのだ。

 

 

 

 

クライド

「ではこれより指令を伝えます。赤の陣営は京都に向かい、聖杯の回収と七騎の大罪を討伐し、次元世界を修復しなさい!」

 

 

レベッカ

「はい!それじゃあ行くよ三人とも!」

 

 

マリア、エルザ、セイラ

「おー!!」

 

 

剣城

「レベッカ!ちょっと待って!」

 

 

 

 

私達が転送装置に向かおうとした時だった。剣城君が私達の所に駆け寄って来た。何か伝え忘れたのかな?

 

 

 

 

剣城

「会えるかどうかわからないけど、白玄さんって人がいたら頼るといいよ!彼は被造物のサーヴァントの事に詳しいから、きっと力になってくれる筈だよ!」

 

 

 

 

 

剣城君がエベレストで会った人か。なら尋ねてみよう!

 

 

 

 

リベット

「レベッカ!急いで準備して!もう装置が起動してるから!」

 

 

レベッカ

「ごめん!今行く!」

 

 

 

 

転送装置の前まで来た時、私は少しばかり緊張していた。初めてだったってのもあるし、これから連れて行くサーヴァント達にちゃんと指示できるか、不安であった。

 

 

 

 

リベット

「エネルギー充電完了。座標軸固定。システムオールグリーン。これより次元転送による霊子転移(レイシフト)を開始します。」

 

 

 

 

転送装置が作動して私達は光に飲み込まれた。

 

 

京都で待っていたのは、聖杯戦争に参加しているサーヴァント達、都の脅威を調べる謎の無手組のサーヴァントとそのマスター、まるで炎そもの様な熱い剣士、そんな私達の敵は、かつてこの京都を復讐の炎で飲み込んだ明治政府が生んだ最恐の人斬抜刀斎だ。今、京都で動乱の炎の嵐が吹き荒れようとしていた。

 

 

 

 

 

 




英霊紹介



赤の陣営
レベッカ・スカーレット・ティファニーによって召喚された英霊達の事である。黒の陣営と同じく、『トゥリファス』で行われている『聖杯大戦』の陣営から名前を取っている。






真名:『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』


クラス:『剣士(セイバー)


宝具:『アガートラーム』


作品名:『戦記絶唱シンフォギアG』『戦記絶唱シンフォギアGX』『戦記絶唱シンフォギアAXZ』『戦記絶唱シンフォギアXV』


プロフィール
S.O.N.G.所属のウクライナ出身のシンフォギア奏者。ミステリアスながらも力強い歌声を持ち、デビューからわずか2か月で米国チャートの頂点まで昇りつめた新進気鋭の歌姫だったが、フロンティア事変を引き起こし一時行方をくらませ、それ以降は今の対策組織に入り『風鳴翼』のゲスト出演と言う形でステージに上がっている。面倒見が良く優しい一面もあるが、何処か後ろめた気持ちを抱えたまま戦っている所がある。妹がいたが実験中の事故で死亡している。








真名:『真田(さなだ) 幸村(ゆきむら)


クラス:『槍兵(ランサー)


宝具:『紅蓮脚(ぐれんきゃく)


作品名:『戦国BASARA』『戦国BASARA弍』『劇場版 戦国BASARA-The Last Party-』



プロフィール
武田信玄に仕える勇猛果敢な17歳の若武者。何事にも真っ直ぐ向かい合う心を持つ熱血漢。主君である武田信玄を人生の師として深く敬愛しており、信玄の天下取りのためにその力を奮う。伊達政宗とは宿命で結ばれた「蒼紅」と称されるライバル関係にあり、互いに誰よりも意識し認め合い決着を望んでいる。主従関係にある佐助とは互いに信頼し合っている。









真名:『左右田(そうだ)右衛門左衛門(えもんざえもん)


クラス:『弓兵(アーチャー)


宝具:『炎刀 銃』


作品名:『刀語』


プロフィール
尾張幕府直轄内部監察所総監督補佐にして否定姫の腹心の元忍者。更にかつて真庭忍軍に里を滅ぼされた『相生忍軍(あいおいにんぐん)』の最後の一人でもある。「不及(およばず)」「不答(こたえず)」「不得禁(きんじえず)」「不外(はずれず)」など、会話の際には、相手の言動に対して「不」の付く否定形の言葉を放つ。刀集めに七花に協力していたが、最後はとがめを殺し、彼女の死に枷を外した鑢七花と交戦し殺された。








真名:『エルザ・フォルテ』


クラス:『騎兵(ライダー)


宝具:『ネオヴィーナスアーク』


作品名:『アイカツスターズ!』『アイカツオンパレード!』


プロフィール
モナコ出身の王位継承権を持つプリンセスで、『パーフェクトアイドル』兼ネオヴィーナスアークの学園長でもある。『太陽のドレス』を手に入れる為に日本を訪れる。そこで全ての星のツバサのドレスが揃い、太陽のドレスを手にする事が出来たが、そこから自分について来た仲間たちに申し訳なさを感じ、素気ない態度で引き離そうとした。そして『アイカツ!ランキング決勝トーナメント』でゆめに敗れはしたものの、母親に抱きしめられ自分の過ちに気づいた。そして自分の責任を果たし、ネオヴィーナスアークとして新たな船出へと出た。







真名:『音城(おとしろ)セイラ』


クラス:『魔術師(キャスター)


宝具:『アイドル活動!Ver.ROCK』


作品名:『アイカツ!』『劇場版 アイカツ!』『アイカツオンパレード』


プロフィール
ドリームアカデミーのアイドル。その前は友人とロックバンドをやっており、その前はクラシックもやっていた絶対音感の持ち主。『星宮いちご』のライバルでもあり、ユニットで『2wingS』を結成している。リズミカルで強気な一面もあるが面倒見が良く、クールで優しい性格の持ち主である。好きな動物は猫。







真名:『ニンジャスレイヤー』


クラス:『暗殺者(アサシン)


宝具:『ナラク・ニンジャ』


作品名:『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』


プロフィール
本名は『藤木戸(フジキド)健二(ケンジ)』と言う。平凡な中流サラリマンだったが、クリスマスの夜にニンジャの抗争に巻き込まれて妻子を殺害され、自身も重傷を負ってしまう。しかし、正体不明のニンジャソウル「ナラク・ニンジャ」に憑依されたことでニンジャとして蘇った。自身の復讐心と行動への疑問、家族を失った悲しみなどの複雑な感情に苦しみながら戦い続けている。






真名:『ナツ・ドラグニル』


クラス:『狂戦士(バーサーカー)


宝具:『ドラゴンフォース』


作品名:『FAIRY TAIL(フェアリーテイル)


プロフィール
魔道士ギルド『FAIRY TAIL』に所属する魔道士で一番の問題児。滅流魔法を使う『炎の滅流魔道士(ドラゴンスレイヤー)』で『サラマンダー』の異名を持つ。横暴でメチャクチャな所はあるが、仲間思いで優しい一面も持っている。戦闘に関しても類い稀な才能を持っており、バーサーカーとは思えぬ程器用な戦い方をする。クエストも完遂するが、街壊滅や古代遺産など戦闘の被害が甚大では無い。


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第二話『京都の炎柱』

 

 

 

 

レイシフトが完了し、無事に京都に到着した私達は都の外れにある丘に飛ばされたようだ。そこから京都の街並みが広がり、あまりに大きな街ので私は声が出なかった。

 

 

 

 

マリア

「ここが京都ね。」

 

 

セイラ

「初めて来たけど広い所だな!」

 

 

エルザ

「観光では無いのよ。早く仕事を終わらせましょう。」

 

 

レベッカ

「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

京都に行く前にこの三人の服装だ。特にマリア姐さんは人前で出歩くにはレオタードはまずい!!

 

 

 

 

レベッカ

「まさかとは思うけど三人共そんな派手な格好して京都の街中歩くつもり?何処かで服を買って着替えないってあれぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 

後ろを振り向いたら三人共さっきまで着ていた服装が変わっていた。マリア姐さんはレンジャーみたいな格好で、セイラとエルちゃんはブレザーを着用していた。てかいつ着替えたの!?

 

 

 

 

 

マリア

「何よ、騒々しい。」

 

 

レベッカ

「姐さん!!さっきまでのエロスーツは!?」

 

 

マリア

「まだ言うかこの魔術師は!!」

 

 

セイラ

「私達ただ『霊衣変換』しただけだよ。」

 

 

レベッカ

「霊衣変換?」

 

 

エルザ

「自分達の世界で着ていた衣装を魔力で変質させたのよ。因みに私とセイラ・オトシロは学生服よ。」

 

 

 

 

でもまだ目立つな。

 

 

 

 

マリア

「ほら!皆んな行くわよ!」

 

 

レベッカ

「え!?ちょっとマリア姉さん!!」

 

 

セイラ

「置いてくなよ!!」

 

 

エルザ

「騒がしい人達ね。」

 

 

 

 

マリア姐さんの後を追いかけ、辿り着いた場所は街の入り口であろう巨大な門の前に来ていた。

 

 

 

 

剣城

羅生門(らしょうもん)だ!]

 

 

 

 

いきなり剣城君が通信で叫び出した。てかラショウモン?

 

 

 

 

剣城

[『芥川龍之介』の小説にも出てくる京都で有名な正門だよ!まさか本物を拝める日が来るなんて!!]

 

 

レベッカ

「剣城君興奮しすぎじゃない?大丈夫?」

 

 

紅莉栖

[羅生門自体は大昔に取り壊されて現物すら拝めないのよ。剣城君がはしゃぐのも無理ないわ。]

 

 

ロマニ

[そして今君達がいる場所は京都の都心『平安京(へいあんきょう)』だ。]

 

 

レベッカ

「平安京か。」

 

 

 

私達は羅生門を通って、平安京の街に足を踏み入れた。門を抜けるとそこの大通りには大勢の人が行き交っていた。しかも敷地は塀で入り組んでいてまるで迷路のようになっている。

 

 

 

 

レベッカ

「人がいっぱい。」

 

 

セイラ

「本当だな。迷子になりそうだよ。」

 

 

レベッカ

「それにしても何か時代劇に来た感じだね。皆んな和服だから私達凄く浮いてるよ。」

 

 

マリア

「それは私も気になっていたわ。だからまさかとは思うけど私達過去にタイムスリップしたんじゃないかって?」

 

 

 

 

あれ?私達レイシフトした筈なのに?まさかのタイムスリップ!?

 

 

 

 

ロマニ

[それは大丈夫だよ。僕達の世界と違って次元世界の方では文明の発展があまり進んでないんだ。観測されたのが2年くらい前の話だから、次元世界が出来たのもつい最近と言っていいだろう。]

 

 

エルザ

「なら問題ないわね。」

 

 

 

 

じゃあ任務に支障はないんだね!と思っていたその時だった。

 

 

 

 

女性A

「きゃあああああ!鬼よ!鬼が出たわぁ!!」

 

 

男性A

「娘っ子二人追いかけられてるぞ!?」

 

 

 

 

正面から少女らしき二人は鬼らしき者達に追いかけられていた。

 

 

 

 

キリエ

「ムリムリムリっ!!あんなの『隼』無しで倒すとかムリだから!!ひびき倒してきて!!」

 

 

ひびき

「無茶言うな!!流石に私でもあの数は無理だ!!ん?」

 

 

 

 

あれ?こっちに気づいた?てか向かって来てる!?

 

 

 

 

ひびき

「おーい!!セイラ!!エルザ!!」

 

 

セイラ

「ひびきさん!?」

 

 

エルザ

「ヒビキ・テンショウ!?何故貴女がここに!?」

 

 

 

 

いや二人の同郷多くない!?

 

 

 

 

ひびき

「ちょうどよかった!あの化け物を倒すのを手伝って欲しい!」

 

 

セイラ

「わかった!任せといて!」

 

 

キリエ

「ホントお願い!私達じゃアイツら倒すのムリ!!」

 

 

 

そうは言うけど二人を追って来た魔物?何か確認しないと。

 

 

 

 

ロマニ

[データに該当無し?気をつけるんだ!!そいつら新種かもしれない!!]

 

 

レベッカ

「ウソ!?」

 

 

 

妖怪のような落武者のような魔獣はそれぞれ刀を持ち、空飛ぶ骨の妖怪は小刀を持って私達の前に立ち尽くした。アースでも不明の魔獣をどう倒すか。いきなりの難関だ。

 

 

 

 

マリア

「ここは私が引き受けるわ。」

 

 

レベッカ

「マリア姐さん!?一人で全部倒すの!?」

 

 

マリア

「アイツ等がただの雑魚ならこの数私一人でも対処は効くはずよ。」

 

 

 

 

魔獣の数は10体。槍を持った奴が3、小刀の魔物が3、普通の刀を持った落武者が4。これだけの数本当に倒せるの?

 

 

 

 

マリア

「エルザとセイラとそこのサーヴァント二騎はレベッカの護衛をお願い!」

 

 

 

 

するとマリア姐さんは、首から下げていた赤い宝石みたいな物を取り出し、呪文?いや歌を唱え始めた。

 

 

 

 

マリア

「Seilien coffin airget-lamh tron.」

 

 

 

 

するとマリア姐さんが突然光に包まれたかと思ったら、光が晴れた瞬間いつものエロスーツを着用していた。

 

 

 

 

マリア

「手の届く!場所だけを!守ればいい♪それしかわたしには出来ない♪」

 

 

 

 

って何か歌い出しながら敵に突っ込んでんだけど!?

 

 

 

 

打刀

「ウガァァァァ!!」

 

 

短刀

「キシャァァァ!!」

 

 

 

 

向こうも全員でかかって来たぁぁぁぁ!!マリア姐さん本当に大丈夫なの!?

 

 

 

 

マリア

「チクショウ!と吠える空が私にはある限り♪どんなに敵に踏み躙られ例え腕が折れても♪」

 

 

打刀

「グガァッ!?」

 

 

「グゴッ!?」

 

 

 

 

ところがマリア姐さんは歌いながらも次から次へと敵を斬っていき、チリのように消し去っていく。まるで戦場がライブステージみたいだった。

 

 

 

 

マリア

「敵に負けたっていい♪自分には負けぬ事がわたしの炎なんだッ♪」

 

 

 

 

歌い終わった後には全ての魔獣が消えていた。正直驚いた。姐さん強いし、綺麗だし、凄いわ。すると姐さんの戦いを見ていたのか、いつの間にか大勢の人が集まっていた。

 

 

 

 

男性A

「いいぞ!南蛮の姉ちゃん!!」

 

 

女性B

「凄く綺麗だったわよ!!」

 

 

 

周囲から拍手喝采が湧き上がっていた。こりゃかなりの好評だったわ。ん?いいこと思いついた。

 

 

 

 

マリア

「何かいつの間にか人集りになってたわね。」

 

 

セイラ

「どうやら私達が芸をしていたと勘違いしているみたい。」

 

 

マリア

「犠牲者が出なかったからよかったけどね。」

 

 

ひびき

「だけど最高のパフォーマンスだった!エクセレント!!」

 

 

マリア

「私、ただ戦ってただけよ?」

 

 

エルザ

「けど貴女は戦場すらステージに変えてしまった。中々出来ることではないわ。」

 

 

マリア

「あら?ならさっき「水商売」って言った事は取り消して貰えるのかしら。」

 

 

エルザ

「ええ、取り消すわ。ただ気になる事もある。何故貴女がアイドルを辞めたのかを。」

 

 

 

 

エルちゃんの問いかけた時の姐さんの表情は何処か悲しそうだった。

 

 

 

 

マリア

「そうね・・・・悪い事をした自分への罰・・・・かしら。」

 

 

 

 

 

まるで何か我慢してるような、割り切れないけどそうしなきゃいけない理由があったからだと思う。それに気づいていたのは、やっぱり芸能界に携わっていたエルちゃんとセイラ、そんな二人の知り合いのひびきって人だった。

 

 

 

 

レベッカ

「皆さん如何でしたでしょうか!我等『ティファニー一座』の華麗なる武芸を!さあ皆さん彼女の舞に歓喜溢れた人はこの布に賽銭をどうぞ!!」

 

 

 

 

当然私はそれを知る事も無く、この状況を大いに有効活用して資金稼ぎをしていた。ポケットから取り出した袋を差し出したら次から次へと小銭の入る音が聞こえた。何だろう、私達の世界じゃ電子マネーだから、硬貨?を見るのは初めてだったけど、なんか・・・・いい。

 

 

 

 

マリア

「レベッカ、何してるの。」

 

 

 

後ろを振り向いた時、マリア姐さんとエルちゃんとセイラが私の方を睨みつけながら見ていた。あれ?なんか不味かった?

 

 

 

 

レベッカ

「今後の活動資金の調達を・・・・。」

 

 

マリア、セイラ、エルザ

「何やってるのッ!!」

 

 

 

 

そしてこの後私は三人に叱られながら通りを歩いていた。さっき私達に助けを求めて来たサーヴァントも連れて。

 

 

 

 

マリア

「ホント信じらんない!戦闘終了後に資金稼ぎなんて!先ずは民間人の安否を確認しないと!!」

 

 

レベッカ

「でも今後の動くのにやっぱりお金は必要だよ!」

 

 

マリア

「それはエルザとセイラが路上ライブすれば済む話よ!」

 

 

セイラ

「ってマリアさんは!?あんなに素敵なライブ披露出来るのに!!」

 

 

マリア

「私までそっち入ったら誰が情報収集するのよ!」

 

 

エルザ

「それもそうね。」

 

 

 

 

あれ?姐さんいろいろ考えてくれてる?

 

 

 

 

セイラ

「それに私達お金儲けするつもりなんて無かったのに、これじゃあ騙しとってるような感じだよ。」

 

 

レベッカ

「でもお金もいっぱい貰っちゃったし、もう済んだ事は忘れよう。」

 

 

エルザ

「黙りなさい。人として最低な事をしたのだから、しばらく反省してなさい。」

 

 

 

 

グサァッ!!エルちゃん・・・・さっきのは流石に効いた。

 

 

 

 

キリエ

「別にいいじゃない?お金だって今後の為にも必要だし、結果オーライだって!」

 

 

 

 

おっ!いい事言うじゃん!てか誰?

 

 

 

 

ひびき

「ダメだ!こんな事でお金儲けをしたらバチが当たるよ!!」

 

 

 

 

いや〜流石エルちゃんとセイラの知り合い。なんかめんどくさい。

 

 

 

 

ひびき

「と言う事でどうだろう!私と契約しないか!」

 

 

レベッカ

「え?何でそんな話に?」

 

 

ひびき

「さっき二人に聞いたんだ!サーヴァントが魔術師と契約を結ぶ事で本来の力を発揮出来るって!それに君達は聖杯を回収しに来たと聞いた!なら問題ない!!」

 

 

レベッカ

「いや問題大有りだよ?いいの、聖杯を回収するって事は聖杯に掛けた願いも叶えられないって事だよ?」

 

 

ひびき

「構わないさ!私の願いは君と一緒にいれば叶えられるかもしれないし、no(ノー) problem(プロブレム)!!」

 

 

レベッカ

「よくわからんが貴女が納得したならわかった。じゃあ始めるよ。」

 

 

 

 

私は彼女と手を合わせ、契約の呪文を唱えた。

 

 

 

レベッカ

「キャスターに告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に、聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら我に従え!"鳳凰の少女"よ!この命運、汝がこの剣を預けよう!」

 

 

ひびき

「汝の盟約に従い、我が身を"赤の陣営"に捧げよう。キャスター天翔(てんしょう)ひびき!イッツ!ショータイム!!」

 

 

 

 

何か熱いサーヴァントが仲間に加わったな。

 

 

 

 

キリエ

「あー!ひびきばっかズルい!!私も契約して!」

 

 

レベッカ

「我儘か!?」

 

 

キリエ

「まあね!でも私と契約したら絶対後悔させないよッ!」

 

 

レベッカ

「言ったな!どうなっても知らないよ!!」

 

 

 

 

そんで何処の誰か知らないサーヴァントまでも契約する事になった。

 

 

 

 

レベッカ

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に、聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら我に従え!"疾風迅雷"よ!この命運、汝がこの剣を預けよう!」

 

 

キリエ

「汝の盟約に従い、我が身を"赤の陣営"に捧げる!ライダーキリエ!いっきまーす!!」

 

 

 

こっちは元気いっぱいの女の子だった。

 

 

 

ひびき

「私は『天翔ひびき』。エルザやセイラと同じアイカツをしているアイドルだ!これからよろしく!」

 

 

レベッカ

「レベッカ・スカーレット・ティファニーだよ。よろしく!で?そっちのライダーは?」

 

 

キリエ

「ライダーじゃないよ!『キリエ』だよ!」

 

 

レベッカ

「わかった!よろしくね、キリエ!」

 

 

 

 

何か騒々しいサーヴァントが二人も仲間になった。

 

 

 

グゥ〜。

 

 

 

 

腹・・・・減った。

 

 

 

 

マリア

「一気に二騎も契約したから、魔力が減ったのね。何処かで何か食べましょう。」

 

 

レベッカ

「賛成!!私うどん食べたい!!」

 

 

セイラ

「いきなり元気になった!?」

 

 

エルザ

「さっきの事反省している?」

 

 

マリア

「何でうどん?」

 

 

レベッカ

「いやちょうどその先にうどん屋があるから。」

 

 

 

 

私達のちょっと行った先にうどん屋が見えていたからだ。時代劇に出てきそうな古風あるお店で、名前は『さつき屋』と言ううどん屋さんだった。早速お店に向かい中に入ってテーブルに座った。何故か私はキリエと同席になってしまった。するとこの子は、注文をしていた時にまたとんでもない我儘を言い始めた。

 

 

 

 

キリエ

「え!?パンケーキ無いの!?なんで!?」

 

 

レベッカ

「あるわけねぇぇぇぇだろ!!ここうどん屋だぞ!!カフェ行け!カフェ!!」

 

 

エルザ

「お店で騒がない!!」

 

 

レベッカ、キリエ

「すいません。」

 

 

煉獄

「うむ!女子が食事中に騒ぎ立てるなどはしたない!反省したまえ!!」

 

 

レベッカ、キリエ

「え?はい、すいませんでした。」

 

 

 

 

何故かツッコミ入れた私までエルちゃんに怒られ、さらに隣にいたお客さんにまで怒られる事に、なんたる理不尽!!

 

 

 

 

マリア

「ひびき、聞かせてもらえないかしら。今の聖杯戦争の状況を。」

 

 

ひびき

「わかった。全て話すよ。」

 

 

 

 

現在、聖杯戦争で生き残っているサーヴァントは、私が契約したひびきとキリエ、仮面を付けたセイバー、そしてアーチャー、ランサー、アサシンを葬って来たバーサーカーである。問題はこのバーサーカーにあるようだ。

 

 

 

 

キリエ

「そうそう!そのバーサーカー「首置いてけ!!」って言ってた!」

 

 

煉獄

「うまいッ!!」

 

 

セイラ

「え!?おっかないな!!そんなサーヴァントと戦ってたのか!?」

 

 

煉獄

「うまいッ!!」

 

 

ひびき

「ああ。実際に3騎のサーヴァントを倒してるのもそのバーサーカーなんだ。セイバーにバーサーカーを倒すため、一緒に戦おうと協力を頼んだんだが、聞き入れてもらえなかった。」

 

 

煉獄

「うまいッ!!」

 

 

レベッカ

「セイバーも協力に応じずか。私達で何とかするしか無いね。」

 

 

煉獄

「うまぁぁぁいッ!!」

 

 

レベッカ、キリエ

「うるさぁぁぁぁい!!」

 

 

 

 

私とキリエは立ち上がって隣に座っていた客に怒鳴り込みに行った。さっき私達に注意しといて自分は騒ぐんかい!!

 

 

 

 

煉獄

「むッ!また君達か!食事中に騒ぎ立てるとは感心しないぞ!」

 

 

レベッカ、キリエ

「それお前ぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

言ってる事メチャクチャ何だけどこいつ!?

 

 

 

 

キリエ

「私達に騒ぐなって言っといて自分は何!?凄くうるさいんだけど!!」

 

 

レベッカ

「てかさっきから「うまい!!」しか言ってないし!食レポ下手かッ!!」

 

 

煉獄

「うむ!よくわからんがその辺にしておけ!他のお客様にもご迷惑だ!」

 

 

エルザ

「少しいいかしら。」

 

 

 

 

私達の後ろからエルちゃんが声を掛けて来たけど・・・・これ絶対怒ってるよね!?

 

 

 

 

エルザ

「食事中に騒ぐのはマナー違反ではなくて。」

 

 

 

 

エルちゃんがこの変な眉毛男を睨みつけて威嚇しているような感じだった。よっぽど許せなかったんだろうメチャクチャ怒ってます。でもこいつはそんなエルちゃんの威嚇に全く動じてない。彼女を見て何を思ったのか、突然箸を置いて私達を見渡した。

 

 

 

 

煉獄

「うむ!なるほど!如何やら迷惑を掛けたのは俺の方だったようだ。すまなかった!!」

 

 

 

 

何か突然謝って来た!?何を悟った!?

 

 

 

 

煉獄

「よもやよもやだ。『柱』として不甲斐無し。人様に迷惑を掛けるなど笑止千万。穴があったら!入りたい!!」

 

 

レベッカ

「じゃあ最初から騒ぐなよ。」

 

 

煉獄

「すまなかった!ここのうどんが余りにも美味しくて、感情を抑えられなかった。特にこのさつまいもの天ぷらは中々絶品である!」

 

 

 

お皿に残っていた最後のさつまいもの天ぷらを一口頬張った。するとめっちゃ口元が緩んで笑みを浮かべた。

 

 

 

煉獄

「ワッショイ!」

 

 

 

よっぽど好きなんだな。さつまいも。その後彼は食事を終えて店員に支払いをしていた。そんな時にも、無粋な奴らは再び現れる。

 

 

 

 

女性A

「きゃぁぁぁぁ!!鬼よ!!」

 

 

 

 

あの魔獣達が今度はお店の前に現れたのだ。私は直ぐ皆んなに戦闘準備をするよう指示した。

 

 

 

 

レベッカ

「全員戦闘準備!姐さんまだやれる!?」

 

 

マリア

「いけるけどさっきより数が多いわね。ざっと20くらいかしら。」

 

 

レベッカ

「エルちゃん!セイラ!姐さんのサポートを!!」

 

 

エルザ

「ええ!」

 

 

セイラ

「わかった!!」

 

 

 

 

とは言えこれだけの数をマリア姐さんで相手にできるか。

 

 

 

 

煉獄

「やけに外が騒がしいが、客人でも無ければ賊でもない。なるほど!貴様等が京都に潜む鬼か!!」

 

 

 

 

さっき店員に支払いをした彼が突然店を出て来た。しかも私達の前に出て・・・・いや前出過ぎ!!

 

 

 

 

マリア

「危ないわ!!下がって!!」

 

 

煉獄

「下がるのは君達だ!!俺の間合いに入れば巻き込み兼ねない!」

 

 

レベッカ

「何言ってるの!!そいつ等人間じゃない!!化け物なんだよ!!」

 

 

煉獄

「ならば尚の事!!俺の専売特許だ!!」

 

 

 

するとそいつの体から炎が吹き出した様に熱くなった!?何こいつ!?

 

 

 

煉獄

「この煉獄の赫き炎刀が!お前等を骨まで焼き尽くす!!」

 

 

 

 

すると彼は腰に刺していた刀らしき物を手に取り、抜く構えを見せた。その瞬間だった。

 

 

 

 

煉獄

「炎ノ呼吸、壱ノ型!不知火(しらぬい)!!」

 

 

 

 

本当に一瞬の出来事だった。刀を抜いた瞬間、魔獣達がまるで炎に包まれる様に次々斬られ、あっと言う間に全ての魔獣達が火に焼かれた様に灰となって消滅した。何が起こったのかわからなかった。

 

 

 

 

レベッカ

「姐さん・・・・今何が起こったの?」

 

 

マリア

「わからない。一瞬の出来事だった。彼から炎が吹き出したと思ったらいつの間にか魔獣が消えていたとしか言えないわ。」

 

 

 

 

ですよね。本当に一瞬でしたよね。するとそんな噂の彼がこっちに戻ってきた。

 

 

 

 

煉獄

「皆無事か!!」

 

 

レベッカ

「私の目と頭は大丈夫じゃありません。」

 

 

煉獄

「何!?あの鬼共の『血鬼術(けっきじゅつ)』にやられたのか!?」

 

 

マリア

「いいえ。貴方の技を見てこの子の思考が驚いてるだけだから気にしないで。」

 

 

煉獄

「つまり大丈夫と言う事かッ!?」

 

 

レベッカ

「全然大丈夫じゃねぇぇぇぇ!!何者だアンタぁ!!」

 

 

 

 

私が勢いで問い詰めた所、彼は急に黙り込んでしまった。何か自分の正体を話したくない様子だった。

 

 

 

 

煉獄

「うむ。すまないが、君に俺の正体を明かすどころか、名を明かす事も今は出来ないのだ。」

 

 

レベッカ

「え?なにそれ?」

 

 

エルザ

「当然よ。彼()()()()()()だもの。」

 

 

 

 

え!?この人サーヴァントなの!?

 

 

 

 

煉獄

「やはり気づかれてしまったか。君には悟られぬ様注意したのだが、さっきの戦闘で見破られてしまったようだ。」

 

 

エルザ

「貴方のあの熱いオーラは私の知る限り見たことがないわ。それにあの常人離れした技は普通の人間では出来ないもの。」

 

 

煉獄

「なるほど。俺が思った通り、やはり君はサーヴァントだったか!」

 

 

 

え!?いつからエルちゃんがサーヴァントって気づいていたの!?

 

 

 

 

煉獄

「君だけじゃ無い。そこの赤髪をしたうるさい少女以外は、君と同じサーヴァントなのだろ。」

 

 

レベッカ

「「うるさい」は余計だ。」

 

 

 

 

てかエルちゃんだけじゃ無くて他のみんなもサーヴァントだって気づいていたの!?

 

 

 

 

マリア

「いつから私達がサーヴァントだって気づいたの。」

 

 

煉獄

「君達が店に入って来た時だ。特にそこの三人はただならぬ覇気を感じた。」

 

 

 

まさかエルちゃんとセイラとひびきの事?確かにオーラは凄いけどな。

 

 

 

煉獄

「これ以上はお互いの詮索はここまでだ。そちらにも何やら事情がある様だから、今回はお互い引く事にしよう。」

 

 

エルザ

「ええ。こちらとしても助かるわ。これ以上、貴方に関わる時間は無いから。」

 

 

煉獄

「ならば良し!」

 

 

高倉

「炎柱殿!炎柱殿!!」

 

 

 

すると向こうから男性の武士らしき人が彼を呼んでいた。彼の知り合いみたいだけど、まさかあの人もサーヴァントって事はないよね?

 

 

 

煉獄

「高倉殿!」

 

 

高倉

「こちらにおいででしたか、炎柱殿。帝より至急宮殿にお越し頂くよう命が出ております。」

 

 

煉獄

「うむ。では参るか。」

 

 

 

 

彼は立ち去ろうとした時、何かを思い出したかのようにいきなり立ち止まった。

 

 

 

 

煉獄

「俺の事は『炎柱(えんばしら)』と呼んでくれ!」

 

 

レベッカ

「炎柱?」

 

 

煉獄

「縁があったらまた会おう!さらばだ!!」

 

 

 

 

そう言って彼は去ってしまった。初めての出会い、そんな彼と再び再開したのはこの聖杯戦争で召喚され、生き残っているサーヴァント達が相対する時だった。『煉獄(れんごく) 杏寿郎(きょうじゅろう)』。大昔、私達の現実世界に名を轟かせた英雄(レジェンド)の称号を持つサーヴァントだった。それを聞かされたのは、この後私達が会う白き青年からだった。

 

 

 

 

 




英霊紹介






真名:『天翔(てんしょう)ひびき』


クラス:『魔術師(キャスター)


宝具:『Be star』


作品名:『アイカツフレンズ!〜かがやきのジュエル〜』『アイカツオンパレード!』




プロフィール
ピュアパレットの前に舞い降りた『スペースアイドル』。ラブミーティアの『明日香(あすか) ミライ』とはライバルであり、再開するたびに激突する。『ソルベット王国』に閉じこもってしまった『アリシア・シャーロット』を解放するため、ピュアパレットと共に彼女を説得し、再びフレンズとして再結成した。






真名:『キリエ』


クラス:『ライダー』


宝具:『(はやぶさ)


作品名:『荒野のコトブキ飛行隊』



プロフィール
コトブキ飛行隊のメンバーの一人。操縦技術と空間把握能力の高さを誇り、機体の性能を引き出す才能に溢れている一方、短気なところもあり、「本能のみで飛んでいる」「技能だけが優秀で技術が無い」と指摘されている。だが金では動かない心情も持っており、仲間からは信頼されている。『疾風迅雷のキリエ』の異名を持つ。好きな食べ物はパンケーキで、ぞんざいに扱えば殴りかかる程の大好物である。それまでは『サブジー』と言う老人の影響を受けて空を飛んでいたが、『イケスカの動乱』で自分が空を飛ぶ事が好きなのだと言う答えを見つけた。その後は英雄の一人として有名になり後輩達からも慕われている。ただ本人は目立つのが好きで無いのか、偉く嫌っている。


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第三話『白き青年再び』

 

 

さつき屋を出た私達は、行く宛の無いまま京の街を歩き回りながら探索していた。

 

 

 

 

マリア

「レベッカ?どうかしたの。」

 

 

レベッカ

「いや、さっきの光景が頭から離れられなくて。」

 

 

 

 

あの炎柱って奴の戦闘が、未だ頭から離れられない。あんな化け物共を一瞬で倒すなんて、マリア姐さんも強いけどアイツはもっと強かった。

 

 

 

 

セイラ

「そういえばあの人「俺の専売特許だ!!」とか言ってたけど、前にも魔獣と戦った事あるのかな?」

 

 

マリア

「恐らくね。見た所かなり手慣れてたし、彼のいた世界でもあんな魔獣がいたのかもしれないわね。」

 

 

エルザ

「それだけではないわ。」

 

 

セイラ

「如何言う事?」

 

 

エルザ

「彼も私と同じパーフェクト。即ち天才だからよ。」

 

 

 

 

え!?そんな風に見えないけど!?エルちゃんといい、あの炎柱といい天才ってのは変わり者ばかりなのか?

 

 

 

 

キリエ

「ねえ、話してる所悪いけどまた出たよ。」

 

 

レベッカ

「え?また?」

 

 

キリエ

「うん。あの鬼とか呼ばれている魔獣共が。」

 

 

 

 

正面を見るとこっちに大勢の人が走って来てる。多分魔獣から逃げてるんだと思う・・・・てか。

 

 

 

 

レベッカ

「ここに来てから魔獣多すぎだろぉぉぉぉ!!」

 

 

マリア

「文句なら後!!ほら行くわよ!!」

 

 

 

 

私達は逃げていく人混みを掻き分けて現場に向かっていたが、その途中で妙な会話が聞こえた。

 

 

 

 

男性A

「おいあの兄ちゃん素手で鬼と戦ってたぞ!?」

 

 

男性B

「アホか!?そんなん直ぐに殺られるぞ!?」

 

 

 

 

どうやら誰か戦ってるみたい。てか・・・・素手!?

 

 

 

 

レベッカ

「姐さん!もしかして!?」

 

 

マリア

「何処のバカよ!素手で魔獣と戦うなんて!!」

 

 

 

 

辿り着いた私達は驚愕の光景を目の当たりにした。魔獣の数が尋常じゃない程多かったからだ。

 

 

 

 

七花

「虚刀流奥義!鏡花水月!!」

 

 

 

 

そんで本当に素手で戦ってた。しかも囲まれている。

 

 

 

 

マリア

「流石にあの数を一人じゃ無理だわ!!」

 

 

レベッカ

「姐さん!お願い!!キリエも戦って!!」

 

 

キリエ

「わかった!今用意するね!!」

 

 

レベッカ

「おい待て!!どこ行く!?」

 

 

 

 

キリエは用意するとか言って私達が来た道を反対方向で走って行ってしまった。姐さんはさっきと同じで変身しながらも飛びながら彼が戦っているポイントまで一気に向かって合流した。

 

 

 

 

マリア

「加勢するわ!!」

 

 

七花

「悪い、一人じゃ流石に捌ききれなかったところだ!」

 

 

マリア

「無茶よ!!この多さ尋常じゃないわ!!ざっと50以上はいるわよ!?」

 

 

七花

「違う、軽く100は超えているな。」

 

 

 

 

姐さんが加勢しても数が多過ぎて対処出来ない。そんな時、私達の上空を何かが通り過ぎた。よく見ると、飛行機?てか何あの形の飛行機は!?

 

 

 

 

キリエ

「二人共掴まって!!」

 

 

 

 

なんとあの飛行機にキリエが乗っていた。翼の下からタイヤの様な物が出てきて、姐さんと男の人はキリエの言われた通りに二人共そのタイヤに掴まった。

 

 

 

 

マリア

「キリエ!?貴女が乗ってるの!?」

 

 

七花

「スゲーな!空飛んでるぞ!」

 

 

キリエ

「しっかり掴まってて!!」

 

 

 

 

すると飛行機は旋回して魔獣達が群がってる方に向かって突っ込んだ。

 

 

 

 

キリエ

「これでも喰らえ!!」

 

 

 

 

すると飛行機からマシンガンの様に弾が出てきて、それを魔獣達が大量に浴びて次々に消滅していく。それを魔獣の群れを、往復しながら続けていくうちに100近くいた魔獣達は、一気に半分以上に減っていた。てかキリエスゲーな。

 

 

 

 

キリエ

「流石に数減りすぎると当てるの難しいな。」

 

 

マリア

「キリエ!後は私達で応戦するわ!」

 

 

七花

「残りはこっちで引き受ける!!」

 

 

キリエ

「わかった!じゃあ投下コースに入るよ!」

 

 

 

 

飛行機は姐さんと素手で戦う男性を下ろすため高度を下げた。そして着地点に来た時、二人は飛び降りて戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

マリア

「さて!残りを一掃するわよ!」

 

 

七花

「おう!」

 

 

 

姐さんと男性は残りの魔獣の討伐にかかった。そして一仕事を終えたキリエは飛行機を私達のいる所の近くに着陸させていた。でもキリエの乗ってる飛行機どっかで見たことあるような?

 

 

 

 

ひびき

「キリエ!お疲れ、凄かったよ!!」

 

 

キリエ

「まあね!ただこんな人の多い街中だと中々出せないんだよね。」

 

 

ひびき

「なるほど!だから宝具を隠したがってのか。」

 

 

キリエ

「そう言う事!」

 

 

 

 

キリエが飛行機から降りた途端、急に消えていった。サーヴァントが霊体化する様な感じだった。宝具もああやって霊体化するんだ。

 

 

 

 

マリア

「終わったわよ。」

 

 

キリエ

「はや!?」

 

 

 

 

魔獣の残党を討伐し終えた姐さんと長身の男が戻ってきた。

 

 

 

 

七花

「加勢助かったよ。アンタがこいつ等のマスターか。」

 

 

 

 

彼は私の方を見ていきなり訪ねて、私をマスターだと言い当ててしまった。てか何でわかった!?

 

 

 

 

マリア

「よくレベッカがマスターだってわかったわね。」

 

 

七花

「何となくな。家のマスターと同じ匂いがしたから多分そうじゃ無いかって。」

 

 

 

 

それを聞いた私達は警戒した。彼にマスターがいるって事は別の陣営のサーヴァントって事になる。敵か味方かわからない以上、下手に関わらない方がいいからだ。私達は彼に警戒しながら会話をする事にした。

 

 

 

 

七花

「そういや挨拶がまだだったな。」

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

七花

「俺は『白の陣営』のセイバー。虚刀流七代目当主、(やすり)七花(しちか)だ。よろしくな。」

 

 

 

 

えぇぇぇぇぇぇぇッ!?自分から名乗り出た!?何でぇぇぇぇ!?

 

 

 

 

七花

「ん?どうかしたか?」

 

 

レベッカ

「いや何で自分の正体明かしてるのぉ!?」

 

 

七花

「別に問題無いだろ?俺もお前等を知らないし、お前等も俺の事知らないだろ?」

 

 

レベッカ

「いやそうだけど!!」

 

 

七花

「それにアンタ等悪巧みしてる様にも見えないしな。差し詰め何かの調査で来たのはいいけど、手掛かりが無くてアテもなく彷徨っていたってところか?」

 

 

 

 

当たってるー!!

 

 

 

 

マリア

「貴方の言う通りよ。そっちに敵意がないなら、こちらとしても安心だわ。」

 

 

七花

「何なら俺達の所に来るか?」

 

 

 

 

はぁッ!?何を言い出す!?と思いきやある人物の名前が上がって来た。

 

 

 

 

七花

()()ならお前等が知りたい事もわかるだろうし、会ってみたら如何だ。」

 

 

 

 

白玄。剣城君が出発前に言っていた人だ。エベレストで剣城君がお世話になった人なら信用出来るはず。

 

 

 

 

レベッカ

「わかった!案内して!」

 

 

エルザ

「待ちなさいレベッカ!!」

 

 

 

エルちゃんに掴まれた手の感触が私の腕に感じた。

 

 

 

 

 

エルザ

「いくらなんでも怪しすぎるわ。やめときなさい。」

 

 

 

 

ごめん、エルちゃん。

 

 

 

 

レベッカ

「今の現状、私達は何の情報も得られてないまま彷徨い続けている。これはチャンスなんだよ!」

 

 

エルザ

「けど怪しすぎるわ。」

 

 

レベッカ

「エルちゃん!もう決めた事なの!私達はこれから白の陣営に接触します!これは命令です!!」

 

 

 

 

 

エルちゃんは納得してなかった顔してたけどもう決めた事なの。だから心配してくれてありがとう、エルちゃん。

 

 

 

 

マリア

「エルザ。貴女の気持ちはわかるけど、レベッカが決めた事なら仕方ないわ。何かあった時は私達でサポートしましょう。」

 

 

エルザ

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ。貴女は何故そんなに割り切れるの。」

 

 

マリア

「余裕がないからよ。」

 

 

 

 

マリア姐さんがエルちゃんを説得してるみたいだけど、何か不穏な雰囲気だった。大丈夫かな。

 

 

 

 

七花

「じゃあ行くとするか!」

 

 

 

 

私達は、彼の案内でついて行く事にした。しばらく歩くと、さっきまで華やかだった街並みから一変、ボロボロの小屋のような家が立ち並んでいて、住んでいる人もさっきと違ってみんな服がボロボロだった。中には路上で生活してる人もいた。まるで違う街に来た様な感じだった。

 

 

 

 

 

マリア

「まるでスラム街ね。」

 

 

レベッカ

「スラム街?」

 

 

マリア

「貧困層の住む街よ。ここにはお金が無い人達が多く暮らしているわ。」

 

 

 

 

そんな場所があるんだ。私の知ってる日本はそんな場所無いって聞かされてたけどこんな所があるんだ。

 

 

 

 

七花

「着いたぜ。ここだ。」

 

 

 

 

ボロボロの家が立ち並ぶ中、七花が止まったのは他のと比べてかなり小さい家だった。

 

 

 

 

「あっ!七花お兄ちゃんだ!!」

 

 

虎次郎

「本当だ!!七花兄帰ってきた!!」

 

 

竜二

「おい二人共、そんなに走ると危ないぞ。」

 

 

 

 

その家から小学生くらいの子供二人が七花の所に走って来て、お兄ちゃんなのかその子達を追いかける様に走って来た。この子達は何?

 

 

 

七花

「なあ、白玄はいるか?」

 

 

「いるよ!白玄いるよ!」

 

 

竜二

鏡歌(きょうか)と一緒に夕食の支度をしています。」

 

 

 

 

そのままその子達に着いて行き中を覗き込むと、倉庫くらいの広さしかなかった。そして私の目の前に、座りながら今日の夕御飯の準備をしている子供と、白い白髪のチャイナ服を着た男性がそこにいた。すると男性は気づいたのか私の方を振り向いた。

 

 

 

 

白玄

「おや?お客さんかい。」

 

 

七花

「そうだ。話を聞いてやってくれないかな。」

 

 

白玄

「わかった。鏡歌、悪いけど下拵えは外でやってもらえるかな。」

 

 

鏡歌

「はい!わかりました!」

 

 

白玄

「七花、すまないが子供達を外に連れ出してくれるかい。」

 

 

七花

「わかった。話が終わったら教えてくれ。こいつ等の事見てるから。」

 

 

白玄

「助かるよ。」

 

 

 

 

七花とその子供達は気を遣ってくれたのか家の外に出て行った。

 

 

 

 

白玄

「さて、僕は白玄。君のお名前は。」

 

 

レベッカ

「レベッカ・スカーレット・ティファニーです。」

 

 

白玄

「レベッカか、よろしく。それで僕に話とは?」

 

 

マリア

「いろいろと教えてもらうわ。魔物の事も、この地で行われている聖杯戦争のサーヴァントの事も!」

 

 

 

 

外にいたマリア姐さん達も入って来た。

 

 

 

 

白玄

「なるほど、これがレベッカのサーヴァント達か。初めまして。僕は白玄、異次元の放浪者だ。よろしく。」

 

 

マリア

「私は。」

 

 

白玄

「おっと!君達は名乗らなくても大丈夫だよ。アガートラームのシンフォギア奏者、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。」

 

 

マリア

「ッ!?」

 

 

 

 

嘘・・・・姐さんの真名を一発で言い当てた!?

 

 

 

 

白玄

「『パーフェクトアイドル』又は『アイドル海賊』の異名を持つエルザ・フォルテ。」

 

 

エルザ

「なっ!?」

 

 

白玄

「ドリームアカデミーのエース、音城セイラ。」

 

 

セイラ

「ッ!?」

 

 

白玄

「『I(アイ) believe(ビリーブ)』の天翔ひびき。』

 

 

ひびき

「真名だけじゃ無くてフレンズ名まで知っているのか!?」

 

 

白玄

「そして『コトブキ飛行隊』所属で、疾風迅雷の異名を持つ、パンケーキが大好きな大食い少女キリエ。」

 

 

キリエ

「大食いは余計だっての!!」

 

 

 

 

エルちゃんにセイラにひびきにキリエの真名まで言い当てるなんて何のこの人!?

 

 

 

 

ロマニ

[気をつけるんだレベッカ!!]

 

 

 

 

ドクターが慌てて通信して来た。まるで彼を警戒する様に。

 

 

 

 

ロマニ

[その男はサーヴァントの事を知っている変態だ!!]

 

 

 

 

 

変態!?

 

 

 

 

白玄

「ククク・・・・君達は僕の事を甘く見過ぎだよ。何故なら。」

 

 

 

 

さっきの優しそうで爽やかフレッシュ全開の雰囲気が、化けの皮が剥がれた様に不気味な本性を現した。

 

 

 

 

白玄

「24時間365日年中無休!自室、更衣室、トイレ、お風呂のお着替えまで全集中監視中!あらゆるラッキーチャンスも逃さない!恐怖のKING・of・ストーカー・・・・。」

 

 

美作

美作(みまさか)(すばる)とは俺の事だぁ!!」

 

 

 

いきなり白い美形男子から巨体な漢に化けたぁ!?てかキングオブストーカーって犯罪者じゃねえかぁ!!

 

 

 

 

美作

「「微に入り細を穿つ」が俺の心情だ。どんな些細な情報も逃さない。なんならお前等のスリーサイズ、下着の種類に色、身体の敏感な所まで暴露してやろうか。」

 

 

 

 

 

変態だぁぁぁぁぁぁ!!まごう事なき変態だぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

マリア

「そう、貴方がどう言う人か十分にわかったわ。」

 

 

美作

「は?」

 

 

マリア

「貴方がどうしようもないゲス野郎って事がね!!」

 

 

 

 

流石の姐さん達もさっきの発言で爆発したのか、皆んな怖い顔をしていた。まああんな発言すれば誰でも怒るけどね。

 

 

 

 

エルザ

「そう言えば、ツバサ・キサラギが規則を破った下級生にこんな事を言っていたわね。「おしおきタイム。」って。」

 

 

セイラ

「じゃあそれでいいな。」

 

 

ひびき

「よし、それで行こう。」

 

 

キリエ

「賛成。」

 

 

マリア

「全員一致って事で。」

 

 

 

おしおきタイム?じゃすまねえよな?

 

 

 

 

善逸

「あれ?もしかしてこれから僕とムフフな絡み合いでもするの♡」

 

 

マリア

「そんなわけないでしょ!!」

 

 

エルザ、セイラ、ひびき

「おしおきターイム!!」

 

 

キリエ

「半殺しだぁぁぁ!!」

 

 

善逸

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

白玄は図体デカイ男から金髪の少年に変身して、姐さん達の集団リンチを受けていた。私は呆れて外に出て、ドクター達に報告した。

 

 

 

 

レベッカ

「違う。」

 

 

ロマニ

[何がだい?]

 

 

レベッカ

「剣城君の聞いてた話と何か違う!!」

 

 

剣城

[だと思うよ。俺もあんな白玄さん見るの初めてだから。]

 

 

白玄

「やっほー!剣城君、元気してたかい!」

 

 

レベッカ

「イヤアアアアアアアアアアーーー!!」

 

 

 

 

いきなり白玄が横から近づいて来て、私は反射的に後退りした。

 

 

 

 

白玄

「おいおい、何もそこまで避けなくても!?」

 

 

レベッカ

「いやだってキングオブストーカーだし!!そんな変態近づいて来たら世の女性は普通逃るでしょうがッ!!」

 

 

白玄

「君は冗談と言う言葉を知らないのかい!?彼女達を覗こうにも二次元だから無理あるし!特にセイラ、エルザ、ひびきの三人はそう言うのは厳しいから無理なんだよ!」

 

 

レベッカ

「本当に?」

 

 

白玄

「本当さあ!さっきはああは言ったけど、僕は彼女達のスリーサイズも下着の事も知らない!逆に答えろと言われたら無理なんだ!!」

 

 

レベッカ

「わかった。じゃあ信用する。」

 

 

白玄

(マリアのシャワーシーンとスリーサイズは言わない方がいいかな?また話がややこしくなるし。)

 

 

レベッカ

「じゃあなんでマリア姐さん達にあんな事言ったの!?」

 

 

白玄

「マスターである君とゆっくり話がしたかったからかな。人払いをしたかったけど、彼女達がそうすんなりと受け入れてくれるわけないしね。特にマリアとエルザはプライド高くて頑固だから一歩も引かないだろうし。」

 

 

 

 

言われてみれば確かに。ん?

 

 

 

 

レベッカ

「今私の目の前にいるのが本人だとして、マリア姐さん達から制裁を受けているのは誰?」

 

 

白玄

「ああ!あれは僕の分身体だよ!こう言う時に役に立つよ!」

 

 

 

 

分身できるの!?さっきも別人に変身してたし!?何者なのこの人!?

 

 

 

 

白玄

「今頃は分身体にからかわられている頃かな。」

 

 

 

 

その頃姐さん達はと言うと。

 

 

 

 

 

ケテル

「キ・・・・キモヂィィィィィィィィィィ!!」

 

 

マリア

「何のこいつ。」

 

 

キリエ

「気持ち悪ッ!!」

 

 

ケテル

「ああ・・・・何たる高揚感でしょう。まるでルシファーさんが三人もいる様なこの感覚、私は今歓喜に包まれています!!」

 

 

 

 

白玄の言った通り、家のサーヴァント達はからかわられていた。

 

 

 

 

白玄

「やあ!久しぶりだね。剣城君、そしてゆめ。」

 

 

剣城

[お久しぶりです、白玄さん!エベレストではお世話になりました!まさかサーヴァントと契約しているマスターとは驚きました。]

 

 

白玄

「あの時は、共闘しているとは言え敵対する立場にあったから言い出さなかったが、君が自身の欲望で敵対する人間では無いとわかったから安心しているよ。」

 

 

ゆめ

[でもどうして京都に?]

 

 

白玄

「実はこの京都の異変について調べてるんだ。」

 

 

剣城

[京都を?]

 

 

白玄

「京都と言うより日本かな。この国の事を調べている。」

 

 

 

 

日本を?確かに言われてみれば、時代も私達が知ってるのと違うような気はするけど?

 

 

 

 

白玄

「さて!君達は僕に何か聞きに来たんじゃないのかい?」

 

 

 

 

そうだった!!ここでの謎があるんだ。先ずは京都に出現した魔獣について質問した。

 

 

 

 

白玄

「なるほど、落武者の様な妖怪がいろんな長さの刀を持っていた。」

 

 

レベッカ

「そう!白玄なら何かわかる?」

 

 

白玄

「レベッカ達が遭遇した魔獣は『歴史修正主義者(れきししゅうせいしゅぎしゃ)』だね。」

 

 

レベッカ

「レキシ?シュウセイ?」

 

 

 

 

歴史修正主義者とは、過去の出来事に介入し未来を改変する者達、つまりタイムパラドックスを意図的に起こそうとする者達だ。その組織の名を『時間遡行軍(じかんそこうぐん)』と言うらしい。ん?待てよ?

 

 

 

 

レベッカ

「ここ現代だから関係無くない?」

 

 

白玄

「そう、本来なら彼等は歴史を変える為に過去を改変する為現代には現れない筈だ。それがこの京都に現れるのはおかしすぎる。だから僕等はここの調査をしてるのさ。」

 

 

 

 

なるほどね。あっ!ついでにうどん屋で会った炎柱って奴の事も聞いておこう。

 

 

 

 

レベッカ

「ねえ白玄。炎柱ってサーヴァント聞いた事ない?さっきさつき屋ってうどん屋で知り合ったんだけど。」

 

 

白玄

「そうか、彼がサーヴァントに。」

 

 

 

炎柱の名前を聞いた時、彼は微笑んでいた。すると彼からこんな事を教えてもらった。

 

 

 

 

白玄

「サーヴァントの中には、自分達の世界では無く僕等の住む三次元世界、現実世界にも多大な影響を与えた者もいる。そんなサーヴァントを僕は『伝説の英霊(レジェンドサーヴァント)』と呼んでいる。」

 

 

レベッカ

「レジェンドサーヴァント?その炎柱もレジェンドなの?」

 

 

白玄

「彼の真名は『煉獄(れんごく) 杏寿郎(きょうじゅろう)』。『鬼殺隊』の中で最強の九人に選ばれた柱の一人、鬼殺隊炎柱の煉獄杏寿郎だ。」

 

 

 

 

そんな凄い奴だったんだ。そう言えば真名は明かせないから炎柱って呼んでくれって言ってた。あれあいつの異名だったんだ。ん?でもアニメーションって動く絵だよね?どうやって現実世界に多大な影響を与えたんだろ?

 

 

 

 

レベッカ

「その煉獄杏寿郎って奴、現実世界で何したの?」

 

 

白玄

「映画の興行収入を300億稼いだ男かな。」

 

 

レベッカ

「は?映画?300億!?あいつが!?」

 

 

白玄

「信じられないだろ。だが彼は世界の希望でもあったんだ。」

 

 

レベッカ

「世界の希望?」

 

 

白玄

「当時の現実世界では『新型コロナウィルス』が世界中に蔓延してた時代、彼は人々に勇気を与えた存在でもあったんだ。」

 

 

 

 

今から499年前、中国の武漢市から新型のコロナウィルスが発症し、感染は全世界に広がり、経済にも悪影響を及ぼす程の被害にまで発展した。

人々が絶望する中で立ち上がったのが、アニメーションのサーヴァント達だった。その先導に立っていたのが『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』に登場する英霊達で、その話の後半で煉獄杏寿郎は『上弦の鬼』と呼ばれる上位種の魔物と戦うのだが、彼はその鬼を撃退して命を落としたのだ。それが好評だった為、300億の男と呼ばれる様になったと言う。

 

 

 

 

レベッカ

「そうか、あいつ物語の中でもう死んでたんだ。しかも敵を倒せないまま。後悔してたんだろうな。」

 

 

白玄

「悔しかったとは思う。だが後悔はしてないよ。次の世代を守り切って託して逝ったんだ。心配は無いよ。」

 

 

レベッカ

「そっか!でも何で召喚されたんだろ?聖杯戦争で参加しているサーヴァントならキリエとひびきが知っている筈だけど知らないって言ってたし。」

 

 

白玄

「そうなのかい?これはまたまた謎が増えたよ。」

 

 

レベッカ

「そうだ!今京都で行われている聖杯戦争のサーヴァント達の事も教えてくれない!」

 

 

 

 

私はキリエとひびきから聞いたサーヴァントの事を話した。仮面を付けた女性のセイバー、「首置いてけー!!」とか言っている武者の格好したバーサーカー。についても聞いた。ただこれだけだと流石の白玄でも答えるのは難しかったようだ。

 

 

 

 

白玄

「ん〜・・・・セイバーか。仮面を付けた女性は心当たりが多過ぎてわからないな。」

 

 

レベッカ

「何だそれ?」

 

 

白玄

「そんな冷たい目で見ないでくれない?ただバーサーカーはわかったよ。もう彼しかいないからね。」

 

 

レベッカ

「そんなにやばい奴なの?」

 

 

白玄

「かなり。しかも聖杯戦争は彼にとっては喜ばしい舞台となる。」

 

 

レベッカ

「うそ!?聖杯戦争自体がバーサーカーに有利に働くってこと!?」

 

 

白玄

「彼は戦の達人だからね。三騎のサーヴァントを倒したのも頷ける。キリエもひびきもよくそんな相手に生き残ってたものだよ。」

 

 

レベッカ

「どんな奴なの!?」

 

 

白玄

「織田信長は知ってるかな?」

 

 

レベッカ

「日本で有名な偉人だよね。戦を終わらせる為なら女・子供も容赦しない『第六天魔王』の異名を持つ戦国武将。その人がどうかしたの?」

 

 

白玄

「そんな魔王ですら恐れた大名家が九州の薩摩、今の鹿児島県に領地を置いていた。それが『島津家』だ。」

 

 

レベッカ

「シマヅ?」

 

 

白玄

「島津家は戦においてはかなりの名手で『鬼島津』の異名を誇る家系だ。そしてこの聖杯戦争にその島津の武将『島津(しまづ)豊久(とよひさ)』こそ、バーサーカーの真名で間違い無い。」

 

 

 

 

そいつがバーサーカーか。話聞いてるだけで相当ヤバイサーヴァントじゃん!てかマリア姐さんでも勝てるかな?難しそうだな。

 

 

 

 

キリエ

「ああッ!!いたぁ!!」

 

 

 

さっきまで白玄の分身体に振り回されていたキリエ達が外に出てきて私達の所に慌ててやって来た。

 

 

 

 

キリエ

「助けて!!あいつ殴れば殴るほど喜んでるの!!」

 

 

マリア

「てか?え?白玄!?何で貴方がここに!?」

 

 

 

 

あ〜マリア姐さん達完全に白玄に遊ばれてるな。

 

 

 

 

セイラ

「うわぁ!!あいつ等来たよ!!」

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

岩息

「少女達よ!!もっと殴って来て欲しい!!」

 

 

ダグネス

「さあ!お前達の怒りを拳に変えてぶつけて来い!!私が全て受け止めてやる!!容赦なく、出来れば過激に!!」

 

 

あやめ

「刺激が足りないわよメス豚ども!!こんなんで私を満足させられるとでも思ってるの!!銀さんならもっと過激なプレイしてたわよ!!」

 

 

 

 

とんでもねえ変態じゃねえかぁ!!

 

 

 

 

白玄

「おやおや、少しやり過ぎたかな。ならここでお開きにしようか。はい!散ッ!」

 

 

岩息、ダグネス、あやめ

「ドロンッ!」

 

 

 

 

その変態三人は白玄の合図と共に煙になって消えていった。何だったんだあれ?

 

 

 

 

白玄

「さてレベッカ、他に聞きたい事はあるかい。」

 

 

マリア

「何で貴方がここにいてレベッカと一緒にいるの!!」

 

 

白玄

「君が返事するの?何もそこまで警戒しなくても。てかその説明もう一度しないとダメ?」

 

 

 

 

まあ白玄が言うのもわかる。マリア姐さんは武器を構えて警戒してそれ以外はボディーガードの様に私を囲っていたからだ。

 

 

 

 

マリア

「得体の知れない貴方だからこうするの!!レベッカに変な事してないわよね!!」

 

 

白玄

「やれやれ、その疑り深い性格は相変わらずの様だ。」

 

 

マリア

「知った様な事言わないで!!」

 

 

レベッカ

「はいはい!みんなそこまで!!」

 

 

セイラ

「何で止めるんだレベッカ!!」

 

 

レベッカ

「皆んな白玄に遊ばれてたの。それも終わりだから全員武装解除して。」

 

 

ひびき

「大丈夫なのか?」

 

 

レベッカ

「大丈夫だよ。」

 

 

 

 

ちゃんと聞いてくれたのか皆んな礼装を解いてさっきまでの私服に戻っていった。

 

 

 

 

白玄

「さてレベッカ。他に質問は。」

 

 

レベッカ

「今は無いよ。また何かあったら教えて!」

 

 

白玄

「わかった。なら僕からもいいかな。」

 

 

エルザ

「待ちなさい。その前に、私達に謝罪は無いのかしら。女性に嫌がる様な事をして恥ずかしくないの。」

 

 

白玄

「やれやれ、君もそのお嬢様ぶりは相変わらずか。年上は敬うものだよ。」

 

 

エルザ

「そう、それは失礼したわ。ただ貴方を敬うつもりは無いけど。」

 

 

白玄

「そうか。ならばこちらもケジメを付けなければならないな。」

 

 

 

 

謝るんだね。まあ当然か。あれは流石にやり過ぎだと思う。

 

 

 

 

白玄

「同じ大地を歩いてすいませんでしたぁ!!」

 

 

 

 

いや、そう言う事で謝れじゃなくて!!てかこっちもやり過ぎ!!

 

 

 

 

マリア

「そこまで責めてないから頭上げて。もう許すわ。」

 

 

白玄

「そうかい!じゃあ話を進めさせてもらうよ!」

 

 

 

 

反省してねえなお前!!そんなに家のサーヴァントと話したいのか!!

 

 

 

 

白玄

「レベッカから話は聞いた。ひびきとキリエは今彼女と契約していると。」

 

 

ひびき

「そうだが?」

 

 

キリエ

「話って私達?」

 

 

白玄

「うん。君達二人には大事な話がある。まあ立ち話も何だし、一旦家に入ろうか。」

 

 

 

 

彼に案内されるまま私達はさっきの家に入りその場に座った。やはり貧しいのか、お茶も出なければ座布団もない。硬い床に座るしかなかった。

 

 

 

 

白玄

「さて、まずはキリエから行こうか。いろいろ説明しなければならないしね。」

 

 

 

 

白玄はキリエの世界について本人に確認する様に話した。

 

キリエが住む世界『イジツ』は、昔「地の底が抜け、様々な物が降ってきた」と言うという出来事があり、抜けた穴が閉じられるまでの間に善悪美醜問わず降ってきたものによって、荒廃の進むイジツに変化が起きたと言う。特に産業革命では『ユーハング』と呼ばれる者達が提供したレシプロ戦闘機によりイジツは航空産業として発展した。

 

だけど、話を聞いていくうちにイジツの生活環境はかなり酷いものだった。医療技術は発展せず治安も悪く、空賊やマフィアの抗争に巻き込まれた一般人の死亡率は高い。キリエ達イジツの人達はそんな過酷な環境で生活しているのだ。

 

 

 

 

キリエ

「日本軍。イサオが言っていたユーハングの本当の名前だよね?」

 

 

白玄

「そうさ。正確には、日本と言う国を守る為の軍隊だ。」

 

 

キリエ

「クニ?グンタイ?」

 

 

白玄

「国は周りの都市や街を纏めた更なる領地。軍隊は自警団を更に大規模にした組織だ。」

 

 

キリエ

「よくわからないけど、今更何でそんな話を?」

 

 

 

 

キリエにとっては既にわかり切ってる話なのに、何で今更するのかな。

 

 

 

 

 

白玄

「日本軍は大昔、戦争をしていたんだ。」

 

 

キリエ

「戦争?それってイケスカの動乱より更に酷い戦いだったって事?」

 

 

白玄

「そう。そしてキリエが使っている戦闘機を含め、ユーハングが提供した飛行機は全てその戦争で使われていた物、人を殺す兵器なんだ。」

 

 

 

 

何でそんな酷い話をキリエにするのか分からなかった。ただ白玄の顔は、さっきまで姐さん達をからかっていた時と違って、真剣な顔をしていた。

 

 

 

 

白玄

「君がこれからレベッカと一緒についていくなら覚悟して欲しい。サーヴァントの中には、その戦争に参加していた英霊達が介入してくる筈だ。それでも君は信念を通してでも空を飛ぶかい。」

 

 

 

 

 

どんな残酷な運命でも覚悟しろって言ってるのかな。

 

 

 

 

 

キリエ

「正直よくわからない。でもいつもと変わらないよ。私は私のやり方で空を飛ぶ。例え、どんな人殺しが相手でもね。」

 

 

白玄

「それを聞いて安心した。それでこそ『荒野のコトブキ飛行隊」だよ。」

 

 

 

 

白玄の真剣な顔が穏やかに戻った。キリエの事心配してくれてたんだ。

 

 

 

 

白玄

「キリエの話はここまでにして、次はひびきだ。ただこれは、レベッカとアースの皆んなにも聞いて欲しい話だ。」

 

 

レベッカ

「だそうですけどドクター。」

 

 

ロマニ

[何故彼女の話に僕等まで?]

 

 

 

 

そうだよね?関係無いよね?

 

 

 

 

白玄

「ひびき。落ち着いて聞いてくれ。アリシア・シャーロットが再びソルベットに閉じこもってしまった。」

 

 

ひびき

「何だって!?何故アリシアが!?」

 

 

 

 

アリシアって人の事情を聞いてひびきは動揺していた。白玄の話だと、アリシア・シャーロットはひびきの相方で一緒に仕事をしていたアイドルだ。ただ彼女が家の事情でアイドルを辞めてしまい、ひびきは彼女を連れ戻そうと説得して、再びフレンズを再結成する事が出来たらしい。それが何故かまた故郷に引きこもってしまったらしいのだ。

 

 

 

 

白玄

「実はソルベット王国でも聖杯戦争が開催してね。勝者はアリシア・シャーロットだったんだ。」

 

 

レベッカ

「でも聖杯戦争で勝ったんなら引きこもる必要なく無い?」

 

 

白玄

「どうやら彼女は聖杯を使って七騎の大罪の一人憤怒の狂戦士(ラースバーサーカー)を封印してしまったらしい。」

 

 

剣城

[七騎の大罪!?]

 

 

ゆめ

[でもどうしてアリシアさんが!?]

 

 

白玄

「理由はわからない。だがこれは君達に伝えた方が良いと判断した。」

 

 

 

 

 

そうか。そんな事になってたんだ。なら早く迎えに行かないと・・・・ん?てかソルベットって何処!?

 

 

 

ひびき

「理由はどうあれアリシアを放って置けない!!京都の一件が終わったら直ぐにソルベットに行こう!!」

 

 

白玄

「待ちなさい。ソルベットが何処にあるか知ってるのかい。」

 

 

ひびき

「わかるさ!ソルベットは何回も行ったことがある!案内はできるはずだ!!」

 

 

白玄

「残念だが、君が案内したところでソルベット王国はない。」

 

 

 

 

ソルベットが無い!?どう言う事!?

 

 

 

 

白玄

「失礼だがドクターアーキマン。君達はどうやって次元地点の座標を示して彼女達を転送したのかな。」

 

 

ロマニ

[主に二次元世界と、僕等の住む三次元世界の世界地図のデータを照合して座標を特定している。ただ僅かな誤差が生じる為正確に転送する事は出来ない。]

 

 

白玄

「そうか。ひびき。アース本部にソルベットの場所を教えてあげてくれ。」

 

 

ひびき

「わかった。」

 

 

 

 

ひびきはドクターにソルベットの座標の位置を正確に教えた。ただドクターから期待を裏切る答えが帰ってきた。

 

 

 

 

ドクター

[その地点は雪原地帯になっている。そもそもソルベット王国なんて国、僕等の世界には存在しない。]

 

 

ひびき

「そんな筈は無い!!ソルベットはある!!私の友人の故郷なんだ!!」

 

 

白玄

「落ち着いて。ソルベット王国は君の世界にしか実在しない国だ。本来ならこの次元世界には無い筈。」

 

 

レベッカ

「でもそこで聖杯戦争が行われているなら、ソルベット王国は存在するって事!?」

 

 

白玄

「恐らく、僕等の知らない全く違うソルベット王国がこの世界に実在している事になる。」

 

 

ひびき

「私の知らないソルベット王国。そこにアリシアがいる。」

 

 

 

 

でもソルベットがあるってわかっただけでもよしとするか。ん?でも白玄は何でそこで聖杯戦争の存在を知ってるんだ?思い切って白玄に聞いたが、彼には驚かされてばかりだった。

 

 

 

 

白玄

「君と同じように、契約しているサーヴァントがセイバーだけとは限らないと言う事さ!」

 

 

レベッカ

「他にもいるの!?」

 

 

白玄

「ライダーからの情報なんだが、彼女も明確な場所を把握していないんだ。この世界はまだまだ謎が多いからね。僕等でも把握しきれてないんだ。」

 

 

 

何かよくわかんなくなって来たぞ?考えれば考える程、私のお腹は鳴る一方だった。腹・・・・減った。

 

 

 

白玄

「さて、この話はここまでだ。ご飯にしよう!」

 

 

 

 

私に気を遣ってくれたのか、話を打ち切って夕飯の時間にしてくれた。外を見れば日は沈んでいて真っ暗になっていた。そのタイミングで七花と子供達が帰ってきた。

 

 

 

 

七花

「話、もう済んだか?」

 

 

白玄

「ちょうど今終わった所だ。」

 

 

「お話終わったの!!」

 

 

虎次郎

「オイラ腹減ったぁ〜!!」

 

 

竜二

「二人共、お客さんの前で行儀悪いぞ!!」

 

 

「ねえ!お姉ちゃん達泊まって行くの!!」

 

 

白玄

「うん、しばらくね。」

 

 

「やったー!!」

 

 

レベッカ

「いいの?ここにいても。」

 

 

白玄

「行く宛がないならここにいればいいさ。」

 

 

七花

「それにそこの五人はサーヴァントだから、眠る必要もないし、夜は見張りな。」

 

 

 

 

それは有難い!甘えさせて貰おう!

 

 

 

 

鏡歌

「白玄が作ったつ肉団子も持ってきました!」

 

 

白玄

「今日はつみれ汁だ!早速食べよう!!」

 

 

 

 

皆んなで鍋を囲って座り、出来上がったつみれ汁を頬張って食べていた。その最中に、私は皆んなに白玄から聞いた話をサーヴァント達に伝えた。

 

 

 

 

マリア

「彼やっぱりサーヴァントだったのね。しかもレジェンドクラスのサーヴァントだったとは。」

 

 

エルザ

「あのカリスマ的オーラはレジェンドの証。侮れない男ね。」

 

 

キリエ

「うどん屋にいた時はそんな風に見えなかったけど?ただうるさいだけの暑苦しい人だったよ。」

 

 

 

 

皆んなが話している中で私はある事に気がついた。白玄と七花が異世界の放浪者として、一緒にご飯を食べているこの子達はどうしたのかなって。嫌な感じはしたけど、それを白玄に聞いてみたが、この子達の壮絶な歩みを知る事になる。

 

 

 

 

白玄

「この子達は孤児なんだよ。」

 

 

レベッカ

「孤児・・・・。」

 

 

 

 

予感は的中した。皆んな親を無くしてこの京都に住む子供達だった。

 

 

 

 

白玄

「竜二は盗賊に、鏡歌は病気で両親や兄弟を亡くし、雀にいたっては家族が魔物に襲われたと聞いている。虎次郎は広島から京都まで歩いてきたそうだ。」

 

 

レベッカ

「広島?」

 

 

マリア

「何でそんな遠くから?」

 

 

 

 

するとさっきまで美味しそうにがっついていた虎次郎の箸が突然止まった。そして彼から語り出したのは、衝撃の過去だった。

 

 

 

 

虎次郎

「いきなり空が光って皆んな吹き飛ばされた。目が覚めたら、身体中熱くて痛くて泣きそうになって、目の前を見たら、街が無くなってた。道端には人が積み重なって寝ているし、お化けみたいな人が街を徘徊して、それを見て俺怖くなって、急いで家に帰ったんだ。そしたら家も壊されて、そこに父ちゃんと母ちゃんが骨になってたんだ。」

 

 

 

 

虎次郎の話を聞いて驚いていた。大昔の古代戦争で日本が大打撃を受けた新型爆弾の事だからだ。

 

 

 

 

マリア

「それって・・・・まさか!?」

 

 

白玄

「そこまでだマリア。虎次郎にとっては良くない。」

 

 

マリア

「ごめんなさい。でもここは平安時代の筈よ?太平洋戦争の産物がどうしてこの時代に?」

 

 

白玄

「それが、この日本を探索していると驚かされる。試しに東京に行ってみたが、そこは大正時代にまで文明が発展していたよ。」

 

 

レベッカ

「何かおかしくない?まるで地域によって時代の進歩が全然違うんだけど!?」

 

 

白玄

「僕がこの日本を調べていたのはそう言う事さ。何分ここは時代の流れが謎すぎる。」

 

 

 

 

確かに話を聞いてると時代の流れがおかしすぎる。二次元世界は私達の想像以上に複雑かつ不安定な世界かもしれない。ドクター達にも相談してみよう。

 

 

 

 

 

白玄

「それと煉獄杏寿郎だが、しばらくは彼を泳がせておこう。」

 

 

レベッカ

「放っとくって事?」

 

 

白玄

「彼が何の目的で動いているかわからない以上、下手に手出しは出来ないからね。動き出してからでもいいだろう。」

 

 

レベッカ

「邪魔しないようにだね。」

 

 

白玄

「それと真名も明かさない方がいいだろう。しばらくは彼の言う通り『炎柱(えんばしら)』で通す事にしよう。」

 

 

 

 

さっきの煉獄杏寿郎の件も含めて、これからの事を話し合った結果、今の現状を維持しつつ、ここを拠点に聖杯と七騎の大罪を探す事にした。剣城君の言った通り、白玄は色んなサーヴァントの事を知っていた。変わった人だけど優しいから悪い人ではないと思ったけど、彼の優しさからは何か危うさみたいなのを感じていたのは、私だけなのかもしれない。そんな不安な気持ちで私達の京都でのミッションがスタートした。

 

 

 

 




英霊紹介






真名:『(やすり)七花(しちか)


クラス:『剣士(セイバー)


宝具:『虚刀(きょとう) (やすり)


作品名:『刀語』



プロフィール
24歳。身長六尺八寸(約206㎝)。体重二十貫(約75kg)。虚刀流七代目当主。島育ちのため世間知らずで、考えることが苦手な面倒くさがりだが、常識に囚われない発想が敵を倒す糸口を発見することもある。かなりの長身で、鋼のように鍛えられた肉体を持つ。動きやすいということで上半身裸でいることが多いが、豪寒的な寒さには弱い。決め台詞は「ただしその頃には、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな。」。
完了形変体刀でもある虚刀『鑢』は完成形変体刀の最後の刀であり、七代目である七花でほぼ完成していたが、『とがめ』を失ったことによりその真の力が解放され、サーヴァントとなってからも真名を解放すれば『虚刀 鑢』が解放される。
物語が終わった後は地図を作りながら全国を巡り、その後の消息は不明とされている。


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第四話『心を燃やせ!炎の(ビート)!!』

私達が京都に着いて三日が経とうとしていた。その間は情報収集をしていたが、聖杯戦争に参加しているセイバーとバーサーカーの遭遇もなければ、遡行軍ともあれからの接触はない。皆んな交代で子供達と一緒にご飯を作ったり、食材を取りに行ったりしていた。そんな平和な日々が続いていた。けどその時アースではある異変が起きていた。

 

 

 

 

剣城

「おはようございます。」

 

 

 

 

剣城君がオペレーションルームに入ったら、そこにはドクターとゆめにクリスティーナさん。監視をしているニンジャスレイヤーと右衛門左衛門に剣城君の所のゴブリンスレイヤーがいたからである。だが何かソワソワしている様な感じだった。

 

 

 

 

剣城

「皆んな深刻そうにしてどうかしたの。」

 

 

ゆめ

「おはようマスター。実はニンジャスレイヤーさんと右衛門左衛門さんが気になる事があってドクターやクリスティーナさんに調べてもらってたの。」

 

 

剣城

「何かあったの?」

 

 

ゆめ

「京都から妙な違和感を感じるって言ってるんだけど何の問題もないし、私も特に何も感じないから同じアサシンのゴブリンスレイヤーさんにも協力してもらってるところ。」

 

 

剣城

「でも何も無いなら大丈夫じゃないの。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「そうとは言い切れない。」

 

 

ゆめ

「何か感じたの!」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「ああ。アサシンとアーチャーの言う通り、京都全体から強力な殺気が放たれている。どうやらアサシンクラスの感知スキルでなければ気付くのは難しいだろう。」

 

 

剣城

「じゃあ現地にいるレベッカ達も!?」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「恐らく気付いていないだろう。アーチャーがこれから出発するところだ。」

 

 

剣城

「アーチャーって右衛門左衛門さんだよね?何でアサシン並みのスキルを持ってるの?」

 

 

右衛門左衛門

「元忍ゆえの縁かアサシンクラスのスキルも高いようだ。」

 

 

 

 

まあ私達の知らぬ間にそんな事になってたらしい。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「他所の陣営にこんな事を頼むのは妙だが、私の穴埋めを黒河殿にお申し付けたい。引き受けて貰えるか。」

 

 

剣城

「わかった。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「いや、アーチャーの方は俺で引き受けよう。マスターはルーラーと共に赤のマスターをサポートしてくれ。」

 

 

剣城

「いいの。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

「構わん。その方が効率がいい。」

 

 

剣城

「じゃあお願いするね。」

 

 

右衛門左衛門

「黒の陣営のご好意に感謝する。」

 

 

 

 

本当に剣城君達の陣営には感謝しか無いよ。

 

 

 

 

リベット

「アーチャー転送します!」

 

 

 

 

そして右衛門左衛門も私達のいる京都に向かった。それを知らず、私と白玄、マリア姐さん、エルちゃん、キリエ、ひびき、七花で相変わらず京都を探索していた。だが私は白玄の姿が気になって集中できなかった。

 

 

 

 

レベッカ

「ねえ白玄。変態に変身するならまだしも女性は流石にドン引きなんだけど。」

 

 

マリア

「ホント。最低ね。」

 

 

 

 

何故か女性の姿に変身していたのだ。

 

 

 

 

とがめ

「何を言う!この方がお主らも気楽に話せるであろう!何を躊躇(ちゅうちょ)する理由があるか!」

 

 

 

 

 

あんたが漢だからだ。

 

 

 

 

マリア

「そんな便利な能力持ってるから、使い方次第じゃいやらしい事もしてたんでしょ!」

 

 

とがめ

「ああ、そうだった。マリア・カデンツァヴナ・イヴ。貴様に言わねばならぬ事があった。」

 

 

 

 

え?姐さんに?何?

 

 

 

 

小鞠

「実にいいお肉でしたぁ!!特に胸とお尻と太ももが!!」

 

 

 

 

なっ!?今度は男に戻ってしかも姐さんに爆弾発言かましやがった!!てか既に姐さんで実行済みか!?

 

 

 

 

マリア

「Seilien coffin airget-lamh tron。」

 

 

 

 

ちょっと姐さん!?気持ちはわかるけどいきなり戦闘態勢!?てかヤバいメチャクチャ怒ってるよ!?

 

 

 

 

マリア

「死に去らせ!このゲス野郎がぁぁぁぁぁ!!」

 

 

小鞠

「アパパパパ!!」

 

 

 

 

白玄は猛ダッシュで逃げて姐さんは獣の様に殺す気で追いかけて行った。そして私達はそれを唖然として見ていた。

 

 

 

 

エルザ

「本当に最低ね。」

 

 

七花

「平常運転で何よりだけどな。」

 

 

キリエ

「あれで!?あんた良くあんな変人と契約したよね!?どうかしてるよ!!」

 

 

七花

「あんなのまだ序の口だぞ?酷い時は容赦なく女の体に触るからな。」

 

 

エルザ

「愚かな男ね。」

 

 

御堂筋

「プププ・・・ホンマ我慢の出来ん男やな小鞠君。」

 

 

キリエ、ひびき

「って誰!?」

 

 

 

 

キリエとひびきの背後に長身の細身の男性が立っていた。まあ白玄だと思うけど。

 

 

 

 

エルザ

「白玄。正直、貴方からは何のオーラも感じないわ。平凡そのもの。そんな貴方がどうしてそんな曲芸を使えるのかしら。」

 

 

 

 

唐突にエルちゃんは白玄にそんな質問を投げ掛けた。どうしてそんな質問をしたのかわからないけど、白玄がいろんなアニメーションの力を使えるのはおかしいと思う。けど白玄が帰ってきた答えはエルちゃんの評価に対してかなり厳しいものだった。

 

 

 

 

御堂筋

「君はホンマに優しいなあ。ボクにそんな評価してくれるなんて。キモッ!!ボクはそれ以下の存在や。今は色んな能力持っとるから平凡に見えるだけやけど、それが無かったら何にも出来ひん男や。」

 

 

エルザ

「なんですって?」

 

 

御堂筋

「ボクは平凡以下。つまりダメ人間という事や。いや・・・・それ以下かもしれん。」

 

 

エルザ

「どう言う事かしら?」

 

 

御堂筋

「白玄と言う男は、他人が見たら吐き気がするくらい目障りな存在。「生きる価値が無い」と言う生優しい言葉ではない「生きる権利すら無い」存在。「存在してはいけない」では無く「存在すら許されない」男。完膚なきまで絶望を与え、徹底的に叩き潰し、心をクッキーの様に粉々に砕き、溶かしバターとよく混ぜ合わせて型に流してチーズケーキの土台にする。」

 

 

エルザ

「ごめんなさい。なんで途中からお菓子作りの話になってるの?」

 

 

御堂筋

「つまり白玄ちゅう男は君が思ってる程眼中に無いちゅう事や。気にするだけ時間の無駄やで。」

 

 

エルザ

「そう。なら、今の貴方は何者なの?」

 

 

御堂筋

「君がパーフェクトアイドルならボクはチーズケーキが食べたい男!じゃなかった()()()()()()()御堂筋(みどうすじ)(あきら)くんやぁ!!」

 

 

 

 

 

話をはぐらかされた様に聞こえたけどかなり自分に対してかなり卑下していた。

 

 

 

 

エルザ

「そう。ならおしおきタイム。」

 

 

キリエ、ひびき

「ラジャー!!」

 

 

御堂筋

「え?」

 

 

 

 

エルちゃんの合図でキリエとひびきが白玄を拘束しその場でうつ伏せにした。

 

 

 

 

マリア

「白玄!!よくも分身使って私を騙したわね!!お陰で無駄に全力疾走したじゃ無いの!!」

 

 

 

 

姐さんが戻ってきた頃に悲惨な光景になっていた。

 

 

 

 

御堂筋

「キモぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

キリエはキャメルクラッチ、ひびきは四の字固で白玄を締め上げていたからだ。

 

 

 

 

マリア

「何なのこれ?」

 

 

エルザ

「今おしおきタイム中よ。何なら貴女も如何かしら。」

 

 

マリア

「喜んで!」

 

 

 

姐さんは笑顔で、キリエとひびきの二人と交代して白玄に四の字固めをかましていた。

 

 

 

銀さん

「イタタタタタ!!」

 

 

 

って今度は銀髪の死んだ魚の目をしたオッサン!?

 

 

 

 

銀さん

「例え足を折られようが、心を折られようが構いはしねえ。だが・・・・俺のお股に付いているバベルの塔だけはへし折らないで下さい!!」

 

 

 

 

何ちゅう爆弾発言してんだぁ!!女性がいる事も考えろぉ!!

 

 

 

 

マリア

「安心しなさい。その股に付いているバベルの塔は私が引き千切る!!」

 

 

銀さん

「女がそんな下ネタ発言していいのか!?テメーに恥じらいってもんはねえのかぁ!!」

 

 

マリア

「貴方の童貞卒業に私の全てを奪われたわよ!!失うものなんて何も無いわ!!さぞかし気持ちよかったんでしょうね!!特に何処が良かった!!」

 

 

銀さん

「えーっと舌で舐め回してだんだけど・・・・チ。」

 

 

マリア

「今ここで死ねぇぇぇぇぇ!!外道がぁぁぁぁ!!」

 

 

銀さん

「アぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

姐さんと白玄の一方的なバトルは続き、私達はそれを白い眼で見ているしかなかった。

話は変わるがここに一騎サーヴァントがいないのはお気づきだろうか。そう、セイラが同行していないのである。彼女は残って鏡歌ちゃんと雀ちゃんと一緒にいるのだ。

 

 

 

 

鏡歌

「セイラさん、髪を整えるの上手ですね。」

 

 

セイラ

「女の子は身だしなみが大事だからな。これくらい朝飯前だよ。」

 

 

 

 

何処かへ出かけるのか、セイラは雀の髪を櫛ですいていた。

 

 

 

 

セイラ

「これでよしっと!」

 

 

「ありがとう!お姉ちゃん!」

 

 

 

 

おめかしを終えた雀は駆け足で外に出て行った。

 

 

 

 

鏡歌

「私達も行きましょう。」

 

 

セイラ

「ああ。」

 

 

 

 

セイラと鏡歌が立ち上がろうとした時、雀が大慌てでこっちに来たのだ。

 

 

 

 

「タイヘンタイヘンタイヘン!!」

 

 

鏡歌

「そんなに慌ててどうしたの!」

 

 

「お家の前にわかめのお化けが倒れてるの!!」

 

 

セイラ

「わかめのお化け?」

 

 

「早く早く!」

 

 

 

 

二人が外に出てみると、確かに外にわかめか何か倒れてた。ただそれはお化けでは無く男の人だった。雀がわかめのお化けって言っていたのは、天パだからかかなり髪の毛に(くせ)があるためかワカメに見えなくも無い。濃い緑色の着物に芥子色(やわらかい黄色)の袴を着ていた。荷物は風呂敷と細長い布の様な物だった。中身は想像出来ない。見る限り貴族では無い様だ。

 

 

 

 

「わかめのお化け!!」

 

 

鏡歌

「雀!!それお化けじゃなくて人だから!!」

 

 

セイラ

「あの!大丈夫ですか!!」

 

 

 

 

セイラが男性の体を揺すって呼び掛けてみた。すると彼はまだ息があったのか返事をした。

 

 

 

 

手嶋

「腹・・・・減った。」

 

 

 

 

どうやら空腹で倒れていた様だ。それがわかった二人は直ぐに倒れている彼を担いで家の中に入れた。鏡歌は台所で雑炊を作り、男に差し出した。

 

 

 

 

鏡歌

「こんなのしかありませんがどうぞ。」

 

 

 

 

彼は黙って受け取り、スプーンで雑炊を一口食べた。すると男は勢いのまま雑炊をガツガツ食べ始めた。まるで水を得た魚の様な?そんな感じだった。

 

 

 

 

手嶋

「ぷっはー!生き返った!」

 

 

 

 

一息ついて器を置いた彼は満足そうにしていた。

 

 

 

 

手嶋

「いや、助かったよ。嬢ちゃん達は命の恩人だ。ありがとう。」

 

 

 

 

彼は深々と頭を下げてお礼を言った。余程空腹が限界に来ていたのだろう。

 

 

 

 

鏡歌

「頭を上げてください!」

 

 

セイラ

「でもどうして空腹で倒れたんですか?」

 

 

手嶋

「京都に着く前に路銀が尽きちまってな、三日間飲まず食わずで京都に着いて、嬢ちゃん達の家の前で力尽きたってわけだ。」

 

 

鏡歌

「何方からいらしたんですか。」

 

 

手嶋

「帝都からだ。」

 

 

 

 

どこ?それ?

 

 

 

 

鏡歌

「帝都の人だったんですか!?」

 

 

手嶋

「なんだ。帝都に興味あるのか?」

 

 

鏡歌

「はい!浅草、渋谷、銀座!一度は行ってみたい所なんです!」

 

 

 

 

ああ、東京の事か。それにしても鏡歌ちゃん目がキラキラだ。そんなに行きたいんだ。

 

 

 

 

セイラ

「でも生活が豊かな帝都じゃなくてどうして京都に来たんだ。」

 

 

手嶋

「まあ・・・・いろいろあってな。それに帝都は観光するにはいいが、住むとなると人が多すぎて窮屈だし落ち着かない。だから京都に移住しに来たんだ。」

 

 

 

 

なるほど、都会はやっぱり住みづらいのか。だから田舎の京都に来たんだね。

 

 

 

 

鏡歌

「そう言えば挨拶がまだでした!私鏡歌って言います。」

 

 

「雀だよ!」

 

 

セイラ

「音城セイラです。」

 

 

手嶋

手嶋(てしま)純一郎(じゅんいちろう)だ。この京都で学舎の講師を勤める事になる。わからない事があったら俺の元に尋ねるといい。」

 

 

 

 

手嶋さんはどうやら学舎で先生をするそうだ。歳も20〜30くらいに見えるし、そんなものか。

 

 

 

 

セイラ

「そうだ!鏡歌そろそろ出ないと。」

 

 

鏡歌

「そうですね!」

 

 

手嶋

「こいつはすまないな。足止めしたみたいだ。」

 

 

鏡歌

「気にしないで下さい。野草を売りに行くだけですから。」

 

 

 

 

鏡歌達は生活費を稼ぐ為に、狩りをしたり野草を取りに行って売ったりしていた。特に鏡歌は薬学には詳しい為、薬草を薬屋に売って生計を立てている。当然、私達は居候してる身なのでその手伝いをしているのだ。

 

 

 

 

手嶋

「貧民層の集落があるとは聞いていたがここまでとはな。」

 

 

 

 

手嶋さんは何を思ったのか考え込んでしまった。何かを思いついた顔をしていた。

 

 

 

 

鏡歌

「そうだ手嶋さん!京の街を案内しますよ!」

 

 

手嶋

「そうかい!助かるよ!」

 

 

 

 

セイラ達は手嶋さんを連れて外を出て東の大通りの方に向かった。

 

 

 

 

手嶋

「こりゃすげえ賑わいだな。こっちの方が落ち着く。」

 

 

鏡歌

「都会はこっちより凄い賑わいじゃ無いんですか。」

 

 

手嶋

「あっちはただうるさいだけだからな。こっちの方が生き生きしてていい。」

 

 

 

 

そんなに違うのかな。帝都ってあまりいい印象がないのかな?

 

 

 

 

「お姉ちゃんあっち!あっち!」

 

 

鏡歌

「雀!待ちなさい!」

 

 

 

 

雀と鏡歌が薬屋で薬草をお金に換金して貰ってる間、セイラと手嶋さんは外で待っていた。そしたら手嶋さんがセイラに驚きの場所を聞き出そうとしていた。

 

 

 

 

手嶋

「セイラ、皇居の場所を知らないか。」

 

 

セイラ

「皇居ですか。私も来たばかりだから場所がわかりません。」

 

 

手嶋

「なんだ。お前さんも京は初めてなのか。見たところ顔立ちは日本人だが格好は南蛮人。何処か異国に住んでたのか。」

 

 

セイラ

「エッ!まあそんなとこッ!」

 

 

 

 

手嶋さんの質問にセイラはかなり困っていた様だった。誤魔化すのにも限界があったが、セイラは話をすり替えようと別の話題を出した。

 

 

 

 

 

セイラ

「ところで手嶋さんはどうして皇居なんかに?まさか天皇様と知り合いじゃ?」

 

 

手嶋

「ハハハッ!面白い嬢ちゃんだな!もしそうならあんな所で行き倒れてねえよ!昔の知り合いに会いに行くんだ。」

 

 

セイラ

「友達ですか?」

 

 

手嶋

「まあな。会うのは10年ぶりだが果たして覚えてるかどうか。」

 

 

 

 

どうやら皇居に昔の知り合いが働いているらしい。手嶋さんが京都選んだのもそれが理由のようだ。

 

 

 

 

鏡歌

「お待たせしました。」

 

 

「いっぱいお金貰ったよ!」

 

 

 

 

鏡歌と雀が薬屋から出て来て、セイラ達と合流して、そのまま京の街を歩いていた。手嶋さんはさっきセイラに質問した皇居の場所を鏡歌にも聞いていた。

 

 

 

 

鏡歌

「やはり私達の様な身分の低い者は皇居に入る事は出来ません。ですが、この近くには守護柱の屋敷があります。そこにいる"青龍"様をお尋ねになってみてはどうでしょう。」

 

 

セイラ

「守護柱?」

 

 

手嶋

「聞いた事があるな。天皇直属の配下で、東西南北を守護する四人の四聖獣の異名を持つ連中『守護柱』だったか。」

 

 

 

 

京都のお偉いさんにそんな凄い階級の人達がいるんだ。てかそいつらに聖杯戦争の存在がバレたら大変な事になるじゃん!!しかも青龍って言うくらいだから絶対感の鋭い奴じゃん!!

 

 

 

 

手嶋

「青龍か・・・・。いやまさかな。」

 

 

 

 

手嶋さんがなんかボソッと言ったけど、まさか青龍が手嶋さんの知り合いの人!?てか皇居で働いている知り合いがいる手嶋さんって何者なの!?

 

 

 

 

女性

「きゃぁぁぁ!!鬼よ!!」

 

 

男性

「こんな所にまで出やがった!!」

 

 

 

 

すると、正面から大勢の人達の悲鳴が聞こえて来たと思ったら、その人達が雪崩れ込むようにセイラ達の方に逃げて通り過ぎた。その最後尾を追いかけていたのは紛れもない、遡行軍の魔獣達だった。

 

 

 

 

セイラ

「手嶋さん。鏡歌と雀を連れて逃げて下さい。」

 

 

手嶋

「お前はどうするつもりだ。」

 

 

セイラ

「アイツ等を倒せるのは私しかいません。ここに残って戦います。」

 

 

 

 

今この場で遡行軍戦えるのはセイラだけ。だが彼女は向こうの世界では戦闘員ではない。それどころか、京都に来てからセイラには姐さんのサポートしかやらせてなかったから、一人で戦闘するのはこれが初めてである。それは彼女自身が一番わかっていた。内心恐怖で怯えていた。

 

 

 

 

「お姉ちゃん。」

 

 

 

 

雀の悲しそうな顔を見てセイラは少し動揺したが、同時に決心もした。

 

 

 

 

セイラ

「大丈夫!お姉ちゃんこう見えて強いから!」

 

 

 

 

雀に強がって見せたものの体は正直だった。セイラの手が僅かながら恐怖で震えていたからだ。手嶋さんはそんな僅かな動きさえ見逃さなかった。

 

 

 

 

手嶋

「セイラ!無理だと思ったら直ぐに逃げろ!戦は生き残った物が勝者だ!!」

 

 

 

 

手嶋さんは二人を両手で抱えて走り去ったけど、そのスピードは並大抵の人間が出せる足の速さじゃなかった。車くらいのスピードは出てたと思う。やっぱ何者!?

 

 

 

 

セイラ

(ありがとう。手嶋さん。)

 

 

 

 

鏡歌達を見送った後、セイラは振り返り遡行軍と対峙した。

 

 

 

 

セイラ

「さあ!鳴らすよ!私のロックで!!」

 

 

 

 

そんな事になってるとは知らず私達は京の街を彷徨っていた。

 

 

 

 

とがめ

「イテテ・・・・。本気で人の足をへし折りおって。もう治ったからいいけど。」

 

 

マリア

「そう、こっちはサーヴァントだから疲れを感じ無いはずなのにどっと疲れた感じするんだけど。」

 

 

エルザ

「お疲れ。」

 

 

マリア

「ありがとう。」

 

 

キリエ

「ねえ、マリアって・・・・痴女?」

 

 

マリア

「そんなわけ無いでしょ!!貴女まで何言い出すの!!」

 

 

七花

「悪いがお喋りはそこまでだ。あの先に遡行軍の気配を感じる。」

 

 

 

七花が感じ取った遡行軍の気配は、今セイラが戦っている遡行軍だった。だがその先から誰か猛スピードで走ってくるのが見えた。鏡歌と雀を抱えて走る手嶋さんだった。

 

 

 

 

鏡歌

「手嶋さん!止まって下さい!!」

 

 

手嶋

「よっと!」

 

 

 

 

彼は私達の前で止まって、直ぐに鏡歌と雀を下ろした。

 

 

 

 

レベッカ

「鏡歌ちゃん!?雀ちゃんも!?まさか遡行軍に襲われたの!?」

 

 

鏡歌

「私と雀は大丈夫です!それより早くセイラさんの所に行ってください!!一人で戦っています!!」

 

 

レベッカ

「一人で!?」

 

 

マリア

「レベッカ!セイラ一人じゃどこまで保つかわからないわ!直ぐに行きましょう!!」

 

 

レベッカ

「うん!」

 

 

手嶋

「俺は一足先にセイラの所に加勢しに行く!」

 

 

 

 

そういや手嶋さんに初めて会ったのもこの時からだっけ?

 

 

 

 

レベッカ

「あの!貴方は!?」

 

 

手嶋

「俺は手嶋純一郎!通りすがりの()()だ!」

 

 

 

 

そう言って手嶋さんは猛スピードでセイラの所に向かった。てか私達も行かないと!!

 

 

 

 

レベッカ

「エルちゃん達は鏡歌達をお願い!!」

 

 

エルザ

「わかったわ!」

 

 

ひびき

「任せてくれ!」

 

 

レベッカ

「姐さんは私と一緒に!」

 

 

マリア

「セイラの救出ね!」

 

 

レベッカ

「うん!白玄!私達も・・・・?」

 

 

 

 

そのままの勢いで白玄にも声を掛けたが、彼は鳩に豆鉄砲を食らった様な顔をして反応しなかった。

 

 

 

 

七花

「おい!白玄!」

 

 

とがめ

(今の男・・・・『弱虫ペダル』の手嶋(てしま)純太(じゅんた)か!?いや!本人より老けてはいるがさほど変わらぬ。何故彼奴がここに!?)

 

 

七花

「白玄!!」

 

 

とがめ

「え?ああ!!すまない。直ぐにセイラの所に行くぞ!!」

 

 

 

 

七花が声をかけて正気に戻ったけど何を考えていたんだろ。それを気にしながら私はセイラの所に向かった。

その頃セイラは遡行軍と激しい戦いを繰り広げていた。

 

 

 

 

セイラ

「ラララ♪」

 

 

打刀

「グオッ!?」

 

 

脇差

「キシャッ!?」

 

 

 

 

セイラの戦い方は、ギターを引く事で音の波の様な渦を出して敵を倒していた。なんだセイラもまともに戦えるじゃん!

 

 

 

 

セイラ

「これで終わり!」

 

 

小刀

「クギャッ!?」

 

 

 

 

セイラ一人で遡行軍を全滅させた。なんか心配いらなかったようだ。

 

 

 

 

セイラ

「やった。私にも出来た。そうだ!サーヴァントはマリアさんだけじゃないんだ!!」

 

 

 

 

セイラが喜んでるのも束の間だった。彼女の目の前に巨大な物体が落下して来たのだ。

 

 

 

 

セイラ

「なんだ。」

 

 

 

 

見上げるとそこにはさっきの奴等とは違いかなり大きな巨体と大きくて長い刀を持っていた。

 

 

 

 

セイラ

「新手か!?今までの奴と違う!!」

 

 

大太刀

「ウオぉぉぉぉ!!」

 

 

セイラ

「でも負けないよ!!ラララ♪」

 

 

 

 

でもセイラの攻撃は全く効いてなかった。今までの奴等よりかなり強い。

 

 

 

 

セイラ

「効いてない!?」

 

 

大太刀

「グォォォォ!!」

 

 

セイラ

「きゃあッ!!」

 

 

 

 

巨大な魔獣は大きな刀を振り回してセイラを吹き飛ばした。幸いセイラは自分のオーラで何とか防ぎ切ったが倒れてしまった。

 

 

 

 

セイラ

「なんてパワーなんだ。」

 

 

 

 

セイラが起きあがろうとした時だった。魔獣がセイラの前に迫って刀を振りかざそうとしていた。てかその巨体でそのスピード反則だろ!!

 

 

 

 

セイラ

「え・・・・。」

 

 

 

 

セイラが見上げた瞬間、魔獣の恐怖と実力の差を感じて戦意を損失してしまった。魔獣が刀を振り下ろし、彼女が諦めかけたその時だった。

 

 

 

 

煉獄

「ふんッ!!」

 

 

 

 

セイラの瞳に映ったのは、白に炎の模様が描かれたマントにまるで炎の様な髪をした男が、魔獣の刀を往なして防いでくれた。

 

 

 

 

煉獄

「もう大丈夫、柱である俺が来た!!」

 

 

 

 

さつき屋で出会った炎柱、煉獄が来てくれたのだ。セイラも驚いていた。まさかこんな所で彼と再会するとは思わなかったからだ。

 

 

 

 

セイラ

「炎柱!?」

 

 

煉獄

「君はあのうどん屋にいたサーヴァントか!!」

 

 

セイラ

「どうしてここに!」

 

 

煉獄

「たまたまこの近くにいた所、鬼が暴れていると情報が入ってな。駆けつけてみれば君が戦っていたと言うわけだ。それより立てるか!」

 

 

セイラ

「それは・・・・。」

 

 

 

 

セイラはすっかり戦意をなくしていた為、戦える自信がなかった。煉獄もそれを見てセイラがまともに戦える状態じゃないとわかったのか、彼はセイラに気遣い戦う事を勧めなかった。

 

 

 

 

煉獄

「無理ならそれでいい。だが忘れるな。何故自分がサーヴァントとして召喚されたのかを。そして見つけ出せ!自分の役目を!」

 

 

セイラ

「貴方は。」

 

 

煉獄

「俺は!俺の責務を全うする!!」

 

 

 

 

彼は勢いよく魔獣に斬りかかった。多分セイラから魔獣を遠ざける為だと思うけど、相手に反撃する隙を与えない様攻撃し続けてる様にも見えた。

 

 

 

 

セイラ

「私の役目。」

 

 

 

 

セイラが考えてる隙に、煉獄が魔獣の攻撃を受け、ふらついてしまった。

 

 

 

 

煉獄

「しまっ!?」

 

 

セイラ

「炎柱!!」

 

 

 

 

でもその時だった。

 

 

 

 

手嶋

「うおぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

手嶋さんも駆けつけて魔獣の右足を斬りつけてバランスを崩させて攻撃を反らせた。

 

 

 

 

手嶋

「無事かセイラ!!」

 

 

セイラ

「手嶋さん!?鏡歌と雀は!?」

 

 

手嶋

「お前さんの知り合いと合流してな!そいつらに預けて来た!」

 

 

セイラ

「レベッカ達が。」

 

 

 

二人が無事な事に安堵してもう一度自分を見つめ直した。彼女が自分の世界で何をしていたのか、それを思い返していた。

 

 

 

 

煉獄

「助太刀感謝する!!」

 

 

手嶋

「礼はいらねえよ!正直俺もいっぱいいっぱいだ。」

 

 

煉獄

「見たところ貴方も呼吸が使える様だが!?」

 

 

手嶋

「全集中常中が使えるぐらいだけだけどな!無駄口叩いてねえで集中しろ!!」

 

 

煉獄

「承知!!」

 

 

 

二人は果敢に魔獣に立ち向かっていった。二人の姿を見てセイラは自分の答えに辿り着いていた。

 

 

 

 

セイラ

「やっぱり私にはこれしか無いよな。こんな非常時にどうかと思うけど、私には歌とアイカツ!しかない!!」

 

 

 

 

セイラが立ち上がった時に、煉獄と手嶋さんは敵に吹っ飛ばされていた。

 

 

 

 

煉獄

「くっ!厄介な相手だ。」

 

 

手嶋

「あの長物を何とかしないとな!」

 

 

セイラ

「炎柱!!」

 

 

煉獄

「君か!!」

 

 

セイラ

「こんな時にこんな事言うのも何だけど聞いてくれ!!」

 

 

煉獄

「何でもいい!!話してくれ!!」

 

 

セイラ

「私の歌を聞けぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

セイラが大声で言うと、あたりは静まり返った。煉獄も手嶋さんもキョトンとした顔をしていた。

 

 

 

 

煉獄

「こ・・・・この非常時に何を言い出すんだ君はぁぁぁぁ!!」

 

 

セイラ

「いやアンタが何でもいいって言ったからだろ!?」

 

 

煉獄

「だとしても限度って物がある!!」

 

 

 

 

この非常時に何でグダグダなの!?

 

 

 

 

手嶋

「お前さんが言ったんだぞ?「何でもいいから話せ。」ってな。」

 

 

煉獄

「む!?」

 

 

手嶋

「何でもいいって事はそう言う事だ。」

 

 

煉獄

「むむ!?」

 

 

 

 

興行収入300億の男が押されている。何だこれ?

 

 

 

 

煉獄

「わかった。歌でも何でも歌ってくれ!!」

 

 

手嶋

「開き直りやがった。」

 

 

セイラ

「いいんだな!」

 

 

煉獄

「構わん!!なる様になれだ!!」

 

 

 

 

ヤケ糞だなこの人。そんな彼にお構い無しにセイラはギターを響かせて歌い始めた。

 

 

 

 

セイラ

「さあ♪行こう光♪未来へほら♪夢を連れてえ♪」

 

 

煉獄

(なんだ!?魂が湧き上がってる!?)

 

 

 

セイラが最初のフレーズを歌い始めた時に、彼は何かを感じていた。そしてそのまま敵に突っ込んで行った。

 

 

 

セイラ

「ポケットに一つ勇気握りしめ走り始めたあの道♪白いシャツ♪風なびき♪飛べるよどこまでも♪」

 

 

煉獄

「炎の呼吸!肆ノ型!盛炎(せいえん)のうねり!!」

 

 

 

 

すると煉獄杏寿郎はセイラのリズムに合わせて魔獣に連続で攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

セイラ

「たまには泣き虫の雲♪太陽が笑い飛ばす♪仲間だって時には♪ライバル!真剣勝負よ♪」

 

 

煉獄

「壱ノ型!不知火!」

 

 

セイラ

「アイドル♪カツドウ♪GoGo let's go♪ゴールに向かって♪」

 

 

煉獄

(呼吸が。魂が。彼女の歌声に合わせて弾む!そして何より熱い!ならばこのまま心を燃やせ!!)

 

 

セイラ

「走り続ける♪」

 

 

煉獄

「真名解放!!炎の呼吸!玖ノ型!奥義!!」

 

 

セイラ

「君が見える♪ファイトくれる♪」

 

 

煉獄

煉獄(れんごく)!!」

 

 

大太刀

「ウガァァァァ!!」

 

 

 

 

彼の炎の一撃が魔獣に直撃し、そのまま炎のに包まれて倒れた。

 

 

 

 

セイラ

「やった・・・倒したぁ!!」

 

 

煉獄

「見事だったぞ君!!」

 

 

セイラ

「うわぁ!!」

 

 

 

 

煉獄が勢い良くセイラに迫って来た。なんか余程興奮していた。

 

 

 

 

煉獄

「まさか歌を聴いただけでいつもの倍の動きが良くなった!!魂が弾み、心が燃え上がった!!君は素晴らしいサーヴァントだ!!」

 

 

セイラ

「貴方のおかげだよ。やっぱり私には歌しかなかったけど、それが役に立つってわかったから!だからありがとう!!」

 

 

煉獄

「そうか!」

 

 

 

 

セイラと煉獄、そして手嶋さんの三人でようやく倒せたけどね。

 

 

 

 

セイラ

「そう言えば自己紹介がまだだった。私はキャスター、音城セイラです。」

 

 

煉獄

「何!?俺に真名を明かしてくれるのか!?」

 

 

セイラ

「うん!貴方は信頼できる人だってわかったから、名前を明かしても大丈夫だと思った。」

 

 

煉獄

「そうか。だがこちらとしてはまだ真名を明かす事は出来ず、引き続きの無礼をお詫びしたい。」

 

 

セイラ

「気にしなくていいよ。何か事情がある事はわかってるから。話したい時に話して。」

 

 

煉獄

「うむ!では近い内に真名を明かそう!約束だ!!」

 

 

セイラ

「ああ!」

 

 

 

だが勝利の余韻に浸るのはまだ早すぎた。

 

 

 

 

大太刀

「ウオぉぉぉぉ!!」

 

 

 

全身に炎を纏わせ、光になって消え掛かっても、魔獣は最後の力を振り絞り三人に襲いかかって来た。

 

 

 

 

セイラ

「嘘だろ!?」

 

 

手嶋

「まだ立ち上がるか!!」

 

 

煉獄

(いかん!俺もセイラも魔力を使い切った!癖毛の彼は体力の限界!!よもやよもやだ!!奥義を放ってもまだ立ち上がるかこの怪物は!?)

 

 

 

 

絶体絶命の事態に、塀の上を伝って走ってくる音が聞こえた。するとセイラ達の後ろから人影が飛び出し、魔獣に向かっていった。

 

 

 

 

今泉

「雨の呼吸、壱ノ型。車軸の雨。」

 

 

 

鋭い突きが魔獣の喉を貫いた。魔獣はそのまま倒れて光の粒子になって消えていった。その魔獣を斬ったのは貴族の人だった。黒い烏帽子に竜の模様が施された青い羽織を着ていて、右手に刀を持っていた長身の男性だった。何事もなかったようにセイラ達を振り向いたが、その目は鋭く真っ直ぐ前を見る様な感じだった。

 

 

 

 

煉獄

「青龍殿!!」

 

 

 

煉獄はどうやら彼を知っているみたいだった。

 

 

 

今泉

「炎柱か。」

 

 

煉獄

「助太刀感謝する!!」

 

 

今泉

「俺は俺の仕事をしたまでだ。だが剣士が油断をするのは愚の骨頂。士道不覚悟でこの場で死罪になっていたぞ。」

 

 

煉獄

「そ・・・それは失礼したぁ!!」

 

 

手嶋

「ハハハッ!!ならその場にいた俺も士道不覚悟で切腹か!久しぶりに聞いたなそのセリフ。」

 

 

今泉

「!?」

 

 

手嶋

「よう!元気にやってるようだな。今泉。」

 

 

今泉

「手嶋さん!?」

 

 

 

 

手嶋さんの知り合い?てかこの青龍って人何者なの?手嶋さんは今泉って呼んでたけど?

 

 

 

 

レベッカ

「セイラ!!無事!!」

 

 

セイラ

「レベッカ!マリアさん!それに白玄に七花も!!」

 

 

 

 

そのタイミングで私達も合流したのだ。もちろん、その時は何が何だかわからなかった。

 

 

 

 

マリア

「大丈夫だったの?」

 

 

セイラ

「うん!炎柱や手嶋さんが助けてくれたから!」

 

 

レベッカ

「ああぁぁぁぁ!!うどん屋の時の!!」

 

 

煉獄

「うむ!あのうどん屋にいた西洋人の娘か!!」

 

 

 

 

煉獄ともこの時再会した。

 

 

 

 

レベッカ

「貴方が家のキャスターを助けてくれたの!」

 

 

煉獄

「うむ!だが来た時には既に彼女が大半の敵を倒していたし、加勢した俺も危なかったが、彼女の歌のおかげで助けられた。」

 

 

マリア

「セイラが遡行軍を!?」

 

 

 

 

大手柄じゃん!

 

 

 

 

煉獄

「セイラは素晴らしいサーヴァントだ!この俺の魂を熱く燃え上がらせる歌は最高だったぞ!」

 

 

レベッカ

「そうかそうか・・・・・ん?何で家のキャスターの真名をアンタが知ってるの!?」

 

 

セイラ

「私が教えたんだ。信用できる人だと思ったから!」

 

 

 

 

いやだからって不用心過ぎでしょ。そんな時、手嶋さんはさっきの男性と話していた。

 

 

 

 

手嶋

「まさかお前が天皇直轄の東方の守護柱の青龍とはな。元()()()副長の地位なら天皇の護衛役も務まるか。」

 

 

今泉

「いつから京に。」

 

 

手嶋

「今朝着いたばかりだ。目処が立ってからお前に会うつもりだったが、こうも早いとは思わなかったよ。」

 

 

今泉

「そうでしたか。それで住む所は決まってますか。」

 

 

手嶋

「今は一文無しだ。住む場所を借りる金もない。」

 

 

今泉

「でしたら今日は俺の屋敷に泊まってください。積もる話もあるようなので。」

 

 

手嶋

「ならお言葉に甘えさせて貰おう。」

 

 

今泉

「それはそうとあの白髪の娘は知り合いですか。」

 

 

手嶋

「いや、セイラの知り合いだが・・・・何か凄え顔でこっち見てるな。」

 

 

 

 

白玄は二人を見るなり、顔を引き攣らせて驚いている様だった。てか彼の顔を見た私達の方が驚いている。

 

 

 

 

七花

「またか白玄。」

 

 

マリア

「ちょっとさっきから様子がおかしいわよ?」

 

 

レベッカ

「なんかあの癖毛の強い人見てからずっとこの調子なんだけど?」

 

 

セイラ

「手嶋さん達と知り合いか?」

 

 

とがめ

(今度は今泉(いまいずみ)俊輔(しゅんすけ)か!?何か今日は弱虫ペダルの人物を見るが気のせいか?)

 

 

 

 

するとさっき二人で話していた手嶋さんと青龍が私達の所に来た。どうやら白玄のリアクションが気になっていたようだ。

 

 

 

 

手嶋

「よう嬢ちゃん。俺達に何か用か。」

 

 

とがめ

「うむ。お主等が私の知る人物達に似ておったが他人の空似だったようだ。」

 

 

 

 

白玄の知ってる人のそっくりさん?まあよくわからないけど、家のセイラがお世話になったみたいだしお礼は言っとかないとね。

 

 

 

 

レベッカ

「あの!家のセイラがお世話になりました!」

 

 

手嶋

「何、大した事はしていない。」

 

 

 

 

手嶋さんはそう言ってくれたが、青龍の方は私の事を何も言わずに見ていた。

 

 

 

 

レベッカ

「えーっと・・・私の顔に何か?」

 

 

今泉

「西洋の娘よ。この京に何をもたらす。」

 

 

レベッカ

「はい?」

 

 

今泉

「災いをもたらす者か、災いを祓う者か。何にせよ我等で見極めさせてもらう。この京の都で平和に勤めを果たしたければ、不穏な行動は慎め。虎に咬み殺されたくなければな。」

 

 

 

 

何を言ってるのかさっぱりわからなかった。ただ忠告みたいにも聞こえた。要は敵になりたくなかったら怪しい行動はするなと言う事だ。何で京都が西洋人をそこまで目の敵にしているのか理由はわからないけど何かあったに違いない。

 

 

 

 

手嶋

「じゃあ俺はここで。鏡歌と雀にもよろしく伝えといてくれ。」

 

 

セイラ

「よかったですね。お知り合いと再会出来て。」

 

 

手嶋

「まあな。こっちも世話になった。生活が落ち着いたらそっちにも顔を出す。」

 

 

セイラ

「わかった。」

 

 

 

手嶋さん達とはここで別れた。あの青龍って人と関わらない方がいいと予見していたが、まさか西洋人との拗れが、私の波瀾万丈の前触れとは誰もその時は思わなかっただろう。

 

 

 

 

煉獄

「では俺も皇居に戻るとしよう。」

 

 

レベッカ

「もう行くの。」

 

 

煉獄

「高倉殿を待たせている。そろそろ戻ろないと、俺が怒られてしまうのでな。」

 

 

レベッカ

「わかった。いろいろありがとう。」

 

 

セイラ

「またね!炎柱!」

 

 

煉獄

「うむ!ではまた会おう!!」

 

 

 

 

そして煉獄も行ってしまった。セイラを助けてくれた事は本当に感謝している。「ありがとう」と心の中でお礼を言っていた。彼の背中を見送った後、白玄がそのあたりをしゃがんでいた。ちょうどさっきの魔獣が倒れたあたりだった。彼はさっきのふざけた感じと違って真剣に何かを見ていた。

 

 

 

 

レベッカ

「白玄?」

 

 

 

思わず白玄に声を掛けてしまった。だけど彼はそれに応える様に振り向いたが、何故かセイラに質問を問いかけたのだ。

 

 

 

 

とがめ

「セイラよ。この魔獣と戦った時の事を詳細に述べよ。」

 

 

 

 

何故白玄がそんな事を聞くのかわからなかったけど、セイラは彼に魔獣と戦った時の事を詳しく教えた。それを聞いた白玄から出た答えは予想外と言っていいものだった。

 

 

 

 

とがめ

「やはりセイラも煉獄も宝具を発動していたか。」

 

 

セイラ

「それがどうかしたの?」

 

 

とがめ

「この魔獣、大太刀は攻撃範囲が広く、その威力も高い。言わばパワータイプの魔獣だ。厄介と言えば厄介だが、二人共宝具を使う必要は無かった。それどころかセイラ一人でも倒せる相手だったんだ。」

 

 

 

 

そうなの!?なら何で二人は苦戦したの!?意味わからない!!

 

 

 

セイラ

「でも魔獣は私の攻撃なんか効いてもいなかったぞ!」

 

 

とがめ

「だからおかしいと言っておるのだ。本来ならセイラ一人で倒せた大太刀は、あろう事かセイラが宝具を発動して煉獄を強化し、その煉獄ですら宝具を発動させ大太刀を斬ったが倒れなかった。つまり大太刀も何者かによって強化されていたと言う事になる。」

 

 

 

 

誰かがサポートにいたって事!?でも誰が何の為にそんな事を!?私は訳がわからなくなっていた。

 

 

 

 

とがめ

「大太刀の倒れた痕跡を調べたが、私の読みは当たっていたようだ。何者かによって強化された形跡があった。それがサーヴァントなのかはまだわからぬがな。」

 

 

 

 

もしサーヴァントだとしたら、聖杯戦争に参加しているサーヴァントの可能性もあるか。何にしても魔獣を使役してるなら厄介かも。

 

 

 

 

とがめ

「それとレベッカ。お主見たところ戦闘に関しては日が浅い様だが。」

 

 

レベッカ

「実は今回の京都が初任務で、サーヴァントを使用した戦いも今回が初めてなんだけど。」

 

 

とがめ

「通りでな。いい機会だから覚えておくが良い。戦いが終わってそれで終了とは限らぬ。実際に戦闘をしたサーヴァントからの報告から情報を聞き取り、その現場を良く調べる事だ。」

 

 

レベッカ

「魔獣相手にそこまでする必要あるの。」

 

 

とがめ

「出来なければ三流以下だ。それとお主はサーヴァントに頼り過ぎている。彼女等は道具では無いぞ。」

 

 

 

 

白玄の言葉に私は少し頭に来た。それに何でお説教されてるのかわからなかったからだ。

 

 

 

 

レベッカ

「そんな事無いよ!皆んな仲間だと思ってるし、ちゃんと指示だって出してる!!」

 

 

とがめ

「では問おう。お主この京都に来てから何をした。」

 

 

 

 

突然にそんな事を聞かれた。確か最初の遡行軍の戦いの後資金稼ぎをして・・・・。

 

 

 

 

とがめ

「聞けばお主、戦闘終了後に都民から資金を調達したそうだな。安否の確認もせずにか。」

 

 

 

 

ギクッ!それは姐さん達に叱られました。

 

 

 

 

とがめ

「まあそれは私も大目に見るとしよう。だが気になったのはその後のお主の行動だ。」

 

 

レベッカ

「私の?」

 

 

とがめ

「この三日間、皆情報収集に専念しておった。だがお主はなんだ?所々土産屋に立ち寄ったり、芸者の武芸を見たり、腹が減ったら茶屋に立ち寄ったりとその繰り返し。それであろう事か何の情報も得られませんでした?お主は観光にでも来ておるのか。」

 

 

レベッカ

「そんな事無い!!私は私なりに頑張ってる!!」

 

 

とがめ

「口では何とでも言える。先ずは行動で示せ。出なければ話にもならん。」

 

 

 

 

わからない・・・・・わからないよ!!お店や芸者に立ち寄ってたのはバーサーカーやセイバーに関する情報を聞いて回ってたから。それがダメってなに!?意味わかんないよ!!

 

 

 

とがめ

「次ふざけたマネをしたら容赦はしない。肝に銘じておけ。」

 

 

 

 

そこから私と白玄に蟠りが出来てしまった。彼から見たら、私の頑張りなんてただふざけている様にしか見えないようだ。でも私は、私なりに頑張ろうと心に誓った。口では言わなかったが、姐さんやセイラも私に「がんばれ!」って応援してくれるように二人は微笑んでくれた。だから私は明日も頑張る!!

 

 

その頃、京都である者たちが動きを見せていた。皇居の天皇を守る東西南北の守護柱が天皇の間に集まっていたのだ。そこに最後の一人、さっきセイラ達の危機に助けてくれた青龍が部屋に入室した。

 

 

 

 

不死川

「遅えぞ。何してやがった。」

 

 

今泉

「白虎か。お前が早く着いているとは珍しいな。」

 

 

不死川

「悪いか。こっちはテメーのツラを見るだけでも気分が悪い。」

 

 

今泉

「お前の悪質な人相ヅラよりかはマシだ。」

 

 

不死川

「何だとテメー!!」

 

 

 

白髪で顔に無数の傷がある男は何故か青龍に突っかかって来た。よっぽど仲が悪いのか、二人は睨み合いどころか火花が散っている様に見えた。

 

 

 

「ほらほら二人共!もう直ぐ帝がお見えになるわよ。戯れ合いはそこまでにして。」

 

 

不死川、今泉

「誰がこんな奴と!!」

 

 

「息ピッタリじゃない。」

 

 

 

紅髪で炎のような柄をした着物を着た女性が二人のケンカを止めた。

 

 

 

鏡夜

「ハハハ。相変わらず賑やかだね。」

 

 

 

金髪で紫色の着物を着た男性は笑いながら二人のやり取りを見ていた。そんな和む空気に一気に緊張感が走った。

 

 

 

 

御付き役

「帝のおなーりー。」

 

 

 

天皇のご登場に、さっきまで騒いでいた守護柱達が一斉に頭を下げて平伏した。姿を表した天皇は色白の肌に黒の衣装を見に纏い、まるで神様のような神々しさを持っていた。入って来た天皇は皆んなの前に座ったが、四人は頭を上げなかった。

 

 

 

耀輝

「青龍、今泉(いまいずみ)竜星(りゅうせい)。朱雀、櫻田(さくらだ)(あかり)。白虎、不死川(しなずがわ)虎之助(とらのすけ)。玄武、九条(くじょう)鏡夜(きょうや)。皆、面を上げて楽にしなさい。」

 

 

今泉、灯、不死川、鏡夜

「無礼をお詫びします。」

 

 

 

 

そう言われると四人は一斉に頭を上げた。その光景を見た天皇の顔は微笑ましかった。

 

 

 

 

 

耀輝

「皆、息災で何よりだ。」

 

 

不死川

「陛下も変わらぬ無病息災、喜ばしい限りでございます。」

 

 

耀輝

「うむ。では報告を聞かせてもらおうか。これまでの京はどんな様子だったかな。」

 

 

 

 

彼等は京の出来事を話ていたが、やはり話題に上がったのが彼等が鬼と呼ぶ時間遡行軍の事だった。もちろんその中には私達の事も含まれていた。

 

 

 

耀輝

「鬼を狩る西洋人達か。実に面白い。」

 

 

鏡夜

「都では『ティファニー一座』と呼ばれる者達が舞を披露しながら鬼を退治したとかと言う噂があります。少なくとも敵対関係にはあると考えても宜しいでしょう。」

 

 

耀輝

「なるほど。舞を披露しながら鬼を倒すか。中々面白い。だがこちらの味方とは限らないとも言い切れないか。」

 

 

 

 

その時、青龍が今日は私達に会ったことを話し始めた。

 

 

 

 

今泉

「その件で思い当たる節がございます。今日その娘らしき西洋人に会いました。」

 

 

耀輝

「ほう?それはまた吉報な。してその娘はどのような者であった。」

 

 

今泉

「西洋人でありながら日本語は巧みであれど、経験や知識の不足か策士を企てる頭は持ち合わせていない様子。なので忠告のみで幕を引きました。」

 

 

耀輝

「つまり害はないと見るべきだな。青龍。」

 

 

今泉

「ハッ。」

 

 

 

まあいろいろ言い分はあるようだが、青龍は私の事をちゃんと見てくれていたようだ。そして、先程の派手な着物の女性、朱雀がお淑やかに手を上げていた。

 

 

 

 

「失礼ながらその娘は活気があふれてなかったかしら。」

 

 

今泉

「確かにその様な感じでもあったが、お前も会ったのか。」

 

 

「ええ。私の舞を見に来てくれたわ。ただ終わった後に人を探していると尋ねられました。」

 

 

耀輝

「人を?」

 

 

「はい。何でも仮面を付けた西洋の女性を探していると。とても元気でかわいい娘でしたよ。」

 

 

耀輝

「なるほど。害はなかれど奇妙な娘であるな。」

 

 

 

 

そう。私は今日、朱雀さんに会っていたのだ。さっき白玄に舞を見て楽しんでたとは言われたけど、少しでもセイバーの情報を得る為に動いていたのだ。朱雀さんは優しくて親切で私は好きだったな。

 

 

 

 

不死川

「つまりお前等は鬼畜米兵を見逃したと言う事か。」

 

 

耀輝

「不死川。」

 

 

不死川

「御言葉ですが陛下!鬼畜米兵は生きて帰してはなりませぬ!今直ぐにでも討伐のご許可を!!」

 

 

耀輝

「落ち着きなさい。」

 

 

不死川

「お忘れですか!!奴等が日本にどれだけの仕打ちをしたか!我等がどれだけの屈辱を受けたか!それをお認めになると言うのですか!!」

 

 

 

 

この白虎はやたらとアメリカ人を嫌っていた。虎次郎の言ってた太平洋戦争の話と何か関係があるのかな。

 

 

 

 

耀輝

「玄武。其方はどう思う。」

 

 

鏡夜

「白虎と同意見ですが理由が異なります。その娘がこの都で何を企んでるか検討も尽きません。ここは青龍、朱雀と白虎の両者の意見も取り入れ、監視と言う形で動きを探っては如何でしょうか。」

 

 

不死川

「いいや討伐だ!!鬼畜米兵は一人残さず殲滅する!!」

 

 

鏡夜

「もしその娘を殺せばアメリカに大義名分を与えてしまい、植民地化の条件を再び日本に叩きつけて来る。5年前に鬼舞辻大統領がそれを阻止した苦労を忘れた訳ではあるまい。」

 

 

不死川

「だが勝手に戦争を始めたのは帝都の連中だ!!他国の藩主に断りなく、あろう事か帝の許可も無い何処ろか、名を勝手に語り大盤振る舞い!それで帝は責を負う事態にまで発展したんだぞ!!」

 

 

鏡夜

「だがそれを治めになったのも鬼舞辻大統領だ。それに私は昔話をこれ以上掘り返すつもりは無い。お前は自分の身勝手な都合でこの国の民を危険に晒したいのか。もしそうなれば、今度は太平洋戦争の時より過酷なものとなる。アメリカが日本人を奴隷として扱う残酷な生活を強いられる事もある。帝の顔に泥を塗るだけじゃ済まされないぞ。」

 

 

 

 

なんか、戦後の日本もこんな感じだったのかな。戦争が終わって5年経った今でも両国の関係がここまで酷いとは思わなかった。

 

 

 

 

耀輝

「うん。皆の意見を聞いて、良い案が思い浮かんだよ。四人とも納得する名案だ。」

 

 

今泉

「それはどの様な。」

 

 

耀輝

「その西洋人の娘を監視し、大義名分となる証拠を押さえて連行しなさい。取り調べを行い是が非かを私が裁定する。それで皆納得してくれるかな。」

 

 

 

 

優しそうな見た目でとんでもない事を考えるなこの人は。そして誰もが賛成するかの様に頭を下げた。

 

 

 

 

鏡夜

「三人の意見を取り入れた素晴らしき案だと思います。」

 

 

「私も。それで事態が丸く収まるなら賛成します。」

 

 

耀輝

「白虎はどうだい。」

 

 

不死川

「異論はございません!!この白虎!必ずや鬼畜米兵の悪行を暴いてご覧に入れましょう!!」

 

 

耀輝

「元気があって何よりだ。」

 

 

 

 

だが青龍だけは天皇の案にもう一つ付け加えたい事があった。

 

 

 

耀輝

「青龍はどうだ。」

 

 

今泉

「恐れ入りますが、その妙案に一つ入れていただきたい項目があります。」

 

 

耀輝

「なんだい。」

 

 

今泉

「客将で迎え入れている炎柱も加えていただきたい。」

 

 

 

 

それを聞いた守護柱達は一斉に驚いて青龍の方を振り向いた。どうやら煉獄は皇居で客将として迎え入れてるみたいで、その信頼も厚いらしい。そんな彼が私と関わりを持ってると知ったら皆んな驚くのは当然なのだ。

 

 

 

 

耀輝

「どう言う事かな青龍。皆に説明しなさい。」

 

 

今泉

「その西洋の娘と会った際、炎柱も同席していました。ですが彼女と深い関わりは無い様に見えましたが、奴も警戒した方が良さそうでしょう。」

 

 

耀輝

「そうか。皆はどう思う。」

 

 

「正直、炎柱さんは無関係の様な気もします。本名を隠して二つ名だけ名乗っているのは気になりますが、それ以外は隠し事が出来ない人に見えますが?」

 

 

不死川

「朱雀の言う通り奴は策士が出来るような頭はしていない。はっきり言って真っ直ぐ過ぎる馬鹿だな。」

 

 

鏡夜

「確かに彼は根っからの武人だ。ですが何か目的があって動いてるはず。青龍の言う通り、炎柱も警戒対象に加えるべきだと思います。」

 

 

耀輝

「では炎柱は引き続き高倉に監視を任せ、皆は西洋人の娘の動きを見張りなさい。ただし彼女に気付かれぬ様。」

 

 

 

 

そして後に、私は白虎にボコボコにされて捕まったのだった。最初は京の人達まで聖杯戦争に巻き込んでしまったかと思ったが、事態は思わぬ方向で変化したのを私達も彼等も知らないまま、そして気付かないまま動き出していた。

会議が終わり、青龍はそのまま自分の屋敷に戻り手嶋さんと飲み交わしながら会議の内容を伝えた。

 

 

 

 

手嶋

「なるほどな。セイラの知り合いの西洋人がそんな事に。てかいいのか!?そんな大事な話し俺にして!」

 

 

今泉

「構いません。それに今あの娘を守れるのは手嶋さんだけです。この事を彼女に伝えて下さい。」

 

 

手嶋

「えらく信用してるな。今日会ったばかりの小娘に。」

 

 

今泉

「素性が不明な以上下手に動くわけにも行かないので。」

 

 

手嶋

「そうか。わかった。次会った時に伝えよう。住まいが今日中に見つかってよかったぜ。」

 

 

 

 

その翌日、私は手嶋さんから皇居での話を聞かされた。二人共私に危険が及ばない様動いてくれていたからだ。

 

 

 

手嶋

「今泉。お前に渡すものがある。伝えなきゃいけない事も。」

 

 

 

 

手嶋さんは青龍に4通の封筒を手渡した。内2通は『死亡通知書』と後の2通は手紙だった。だが青龍はその2通の通知書にそれぞれ書かれていた名前に動揺していた。

 

 

 

 

今泉

「手嶋さん・・・・これ。」

 

 

手嶋

「帝都を出る前に渡された。二人共親が空襲で亡くなっていたから行き宛もなく俺の所に来たんだろう。」

 

 

今泉

「そうじゃない!!なんで()()()()()が戦死者扱いになっている!!まさか戦争に駆り出されたのか!!」

 

 

 

 

さっきまで冷静だった青龍が混乱しているのか声を荒げていた。

 

 

 

 

手嶋

「戦争が始まって2年後だったか、二人の所に赤紙が届いたらしい。そしたら二人揃って俺の所に来てよ、あの二人なんて言ったと思う。「この鳴子(なるこ)章司(しょうじ)の嵐の様な剣捌き、アメリカの連中に目にもの見せたるわい!!」だ、「支える主人は変わったけど、また新撰組としてお国を守ることが出来て僕は嬉しいです!」だの、別れ際にそんな事言ってたんだぜ。止めたかったけど出来なかった。覚悟してたんだよ。新撰組最後の大戦(おおいくさ)で死ぬってな。」

 

 

今泉

「何が大戦だ。俺が京都で天皇陛下に守護柱として迎えられ、呑気に暮らしている間こいつら必死で戦ってたってのに・・・・俺はぁ!!」

 

 

手嶋

「小野田が最後に書いた手紙だ。なんかおかしな事が書いてあったんだ。」

 

 

今泉

「おかしな事。」

 

 

手嶋

「アイツ、仮眠を取ってる間に夢を見たらしい。そしたら、今帝都で流行っている自転車。あれで俺達新撰組が競争するらしい。」

 

 

今泉

「何ですかそれ。」

 

 

 

 

この小野田って人の話私も聞いたけどよくわからなかった。その夜、手嶋さんが部屋に戻った後、青龍は縁側で亡くなった友人の手紙を見ていた。

 

 

 

 

今泉

「俺達新撰組が上総国で自転車か。これから死ぬって時になんて夢見てんだ。アイツは。」

 

 

 

 

その背中には今日会った頃とはまるで違い、気迫も感じられない寂しそうな背中だった。今宵の夜は私も青龍も沈んだ気持ちで一日を過ごした。そして私達アースはこの天皇の事件に巻き込まれていくのであった。

 

 

 

 

 

 



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第五話『終戦!聖杯戦争!!』

数日後、手嶋さんから生活が安定したと手紙が届き、私とセイラ、そして何故か白玄までも一緒に彼の住まいに向かった。私達のよりか立派な家だった。

 

 

 

手嶋

「おっ!よく来たなセイラ!」

 

 

セイラ

「お招き頂きありがとうございます。無事に住まいが見つかったんですね!」

 

 

手嶋

「まあな。雇先はともかく、こんな立派な寝床まで用意してくれて、今泉には感謝してるよ。」

 

 

セイラ

「今泉?」

 

 

手嶋

「青龍を名乗ってた守護柱だ。あいつの本名だよ。」

 

 

 

 

ああ、そう言えば手嶋さんそんな名前で青龍を呼んでたっけ?

 

 

 

 

手嶋

「そういやそこのお嬢ちゃん方の名前を聞いてなかったな。」

 

 

レベッカ

「初めまして、レベッカ・スカーレット・ティファニーです。」

 

 

とがめ

「とがめと申す。以後お見知り置きを。」

 

 

 

 

手嶋

「レベッカととがめか。まあ上がれよ。ゆっくりお茶でも楽しもうぜ。」

 

 

 

 

部屋に上がり、茶の間に案内された私達は座布団に座り、手嶋さんがお茶を持って来てくれた。

 

 

 

 

手嶋

「さて、雑談しに来た訳でもないだろ。何を聞きたい。」

 

 

レベッカ

「どうしてわかるの。」

 

 

手嶋

「そこの白髪の嬢ちゃんが何か聞きたそうだからな。直ぐにわかる。」

 

 

とがめ

「話が早くて助かる。」

 

 

 

 

やっぱり白玄か。でも何を聞きだす気だろ?

 

 

 

 

とがめ

「手嶋殿。信じられぬかも知れぬが、我等はこの世界の住人では無く別の世界から来た人間なのだ。だからこの国に何が起こってるのかわからない有り様でな。現状や出来事について講義をお願いしたい。」

 

 

手嶋

「なるほどな。俄には信じられない話だが、確かにその様子じゃ何も知らなさそうだ。なら教えよう。レベッカに警告する為にも必要だしな。」

 

 

 

 

手嶋さんはなんの疑いも無く了承してくれた。そして何故私に警告が必要なのかよくわからないまま手嶋さんの講義が始まった。

 

 

今から5年前、この日本ではアメリカと戦争をしていた。それが私達の世界に起きた古代戦争『第二次世界大戦』に起きた日本とアメリカの戦争『太平洋戦争』と同じ事が起きていたのだ。当然日本は敗れ、更には核兵器を使って、広島と長崎に原爆を投下させた事まで起きていた。虎二郎は恐らくその原爆被災者の一人なのだと確信した。その後の戦後復興の立役者となったのが、今の鬼舞辻(きぶつじ)無惨(むざん)()()()だ。戦後は内閣を解体して大統領制を新たに立ち上げ、それからこの5年間は彼の功績で『高度経済成長』にまで発展した。そして今の天皇陛下が産屋敷(うぶやしき)耀照(かがてる)天皇である。

 

 

 

 

 

手嶋

「おいとがめ。大丈夫か?」

 

 

 

 

 

彼の話を聞いてから、何故か白玄はまるで頭痛がしたかのように頭を抱え混んでいた。

 

 

 

 

とがめ

(マイケルジャクソンモドキが日本を侵略してしもうただとぉ!?なんで!?いやいや鬼の長に何やらせてんの!?てか親方様天皇やってるんだったら無惨を排除しろ!!何故見逃しているのだ!!だから彼奴は作中でも「私は天から許されているのだ。」とか酔ったセリフ吐いてんだよぉ!!悪党に日本の政治やらせちゃ一番ダメな奴だから!!)

 

 

レベッカ

「ちょっと白玄!手嶋さんの話聞いてから異常じゃ無い動きしてるけど!?」

 

 

とがめ

「すまぬ聞かないでくれ。」

 

 

 

 

訳分からんから放っておこう。

 

 

 

 

手嶋

「で、ここから嬢ちゃんに忠告だ。5年経った今でも、アメリカ人をよく思わない奴はいるどころか目の敵にしてる奴もいる。もちろん皇居にもだ。」

 

 

レベッカ

「それが忠告?」

 

 

手嶋

「そうだ。天皇はお前に不審な動きがあれば即拘束する構えでいる。場合によっては命を落とす危険もある。今泉がお前に言ったことはそう言う事だ。」

 

 

レベッカ

「そう言えば「虎に咬み殺されたくなければな。」とか言ってたけど・・・・まさか守護柱!?」

 

 

手嶋

「察しがいいな。白虎は大層アメリカ人を嫌っている。手加減はしないだろう。下手に京を動き回るより大人しくしていた方がいい。これは今泉からの頼みでもあるんだ。」

 

 

レベッカ

「青龍が?でもどうして私なんかに?」

 

 

 

 

青龍とはこの前初めて会ったばかりだし、どうしてそこまでしてくれるのかわからなかった。けどその理由は手嶋さんと青龍の前職に関係していた。

 

 

 

 

手嶋

「確たる証拠も無しにお前を罪人にする訳にはいかない。俺達の誇りと、今泉の法度がそれを許さないからだ。」

 

 

レベッカ

「それってどう言う事?」

 

 

手嶋

「俺と今泉は、かつてこの京都守護職に就いていた元『新撰組』の隊士だったからだ。」

 

 

 

 

私達は驚いた。手嶋さんと青龍があの有名な新撰組のメンバーだったのだ。でも私達の知る新撰組は、土方歳三や近藤勇、沖田総司が有名であるが、手嶋純一郎や今泉と言う人物は聞いた事がない。それは白玄も同じだった。

 

 

 

 

とがめ

「因みに当時の新撰組の局長の名は?」

 

 

手嶋

金城(きんじょう)(まこと)だ。それと今青龍の守護柱に付いている今泉が副長だった。」

 

 

 

 

 

土方歳三の地位はあの青龍が付いていた。ん?でも待てよ?今二人がそれぞれの役職に就いてるって事は当然新撰組は解散している。でも戦争が始まったのはそれから70年後の話になるけど?なんで二人はまだ若いんだ?

 

 

 

 

 

とがめ

「手嶋殿。新撰組が解散していつ頃に世界大戦が始まった。」

 

 

手嶋

「そんなもん、幕府と新政府軍が戦ってる最中だよ。」

 

 

とがめ

「なんだと!?では国内で内部抗争をやってる最中に日本は戦争に参加していたのか!?」

 

 

手嶋

「ああ。しかも同盟国と組んでいたイタリアとドイツには内密でだ。もちろん他の地方の藩主も知らない。」

 

 

 

 

そんなとんでも無い事を当時の明治政府はやっていたのだ。

 

 

 

 

手嶋

「こりゃ本当に何も知らないらしいな。因みに年号は昭和だ。」

 

 

とがめ

「はあ!?大正ではないのかぁ!?」

 

 

手嶋

「確かに大正も候補に入っていたが、昭和に決まったぞ?」

 

 

 

 

まさか大正飛ばして昭和とは、この国の歴史はめちゃくちゃだ。おまけに威信戦争の最中に第二次世界大戦とは、時代の急な変化に驚いている。

 

 

 

 

手嶋

「だから不用意に外国人がウロチョロしない方がいい。死にたくなかったらな。」

 

 

 

 

改めて手嶋さんからも忠告された。私達は話を終えて手嶋さんの家を出た。けどこの国の現状がまだ理解できなかった。

 

 

 

 

レベッカ

「正直まだ信じられないよ。」

 

 

とがめ

「無理も無い。あんなデタラメな政治をやっていたんだ。それを納めた鬼舞辻無惨が凄すぎるわ!」

 

 

 

 

さっきから白玄の様子を見るに、大統領と天皇をやってる人達が気に食わなそうだけどよっぽど知ってる人に似てるんだな。

 

 

 

 

とがめ

「首相制から大統領制に変わったのも驚きだが、これ以上は流石にツッコミきれん。今得た情報だけでも良しとしよう。」

 

 

 

 

流石白玄、切り替えと諦めの速さに感心だわ。

 

 

 

 

とがめ

「で?レベッカよ。お主はどうするのだ。」

 

 

レベッカ

「どうするって?」

 

 

とがめ

「手嶋殿達の警告通り大人しくしているか?」

 

 

 

 

その事か。そうだな。大人しくしているとしましょうか。

 

 

 

 

レベッカ

「うん!手嶋さん達の言う通り大人しくする。大人しく・・・・情報収集させて貰いますよ。私なりに。」

 

 

とがめ

「うむ!それでいい!」

 

 

セイラ

「だったらサーヴァントも付けた方が良く無いか?」

 

 

レベッカ

「それはかえって目立つし、霊体化しても怪しまれるだけ。だから一人で動きたいの。」

 

 

セイラ

「わかった。でも何かあった時は令呪を使って。その命はもうレベッカのものだけじゃ無いから。」

 

 

レベッカ

「ありがとう。セイラ。」

 

 

 

 

そう私達はいつもと変わらず、任務に戻った。手嶋さん達に私達の動きが見抜かれていたとしても、此処での任務は疎かにする訳にはいかないから。

 

 

 

 

手嶋

「そう素直に聞く娘でも無いそうだぞ。今泉。」

 

 

 

 

手嶋さんが今の所から私達を見ていると、その部屋から青龍が入って来た。どうやらさっきの話を全て聞いていたようだ。

 

 

 

 

今泉

「こうなる事は予想してました。」

 

 

手嶋

「ならあの小娘はお前が見張るんだな。」

 

 

今泉

「ええ、手筈通りに。手嶋さんはいつも通りでお願いします。」

 

 

手嶋

「わかった。あの娘を頼むぞ。」

 

 

今泉

「そのつもりです。」

 

 

 

 

その後、青龍は私のあとを付けて来たのだ。悪く言うとストーカーだよね!?その事を知らず、私は再び情報収集を続けたのであった。

 

 

一方、エルちゃんもバーサーカーとセイバーのを探していた。

 

 

 

 

エルザ

「ここも空振り。」

 

 

 

 

けどエルちゃんの方も進展は無し。かなり苦戦していたようだ。別の場所に移動しようとしたその時だった。

 

 

 

 

 

香奈

「お母さーん!!どこー!!」

 

 

 

 

 

目の前に小さな女の子が泣いていた。どうやらお母さんと逸れてしまったようだ。エルちゃんは何を思ったのか、その女の子に近づいて声を掛けた。

 

 

 

 

エルザ

「お母さんと逸れたの。」

 

 

香奈

「うん。」

 

 

エルザ

「私も一緒に探すわ。だから泣かないで。」

 

 

香奈

「うん。ありがとうお姉ちゃん。」

 

 

 

 

エルちゃんはその子の手を取って街の中を歩き始めた。しばらく行くと二人は大通りの方に出始めた。二人とも逸れないようしっかり手を握って行き交う通行人を避けながらお母さんを探した。

 

 

 

 

「香奈!!」

 

 

 

 

この女の子の名前を呼ぶ声が聞こえた。多分この子の母親だと思う。

 

 

 

 

香奈

「お母さん!!」

 

 

 

 

やっぱりそうだった。母親は娘を抱いて安心していた。だがその母親に同行していた者もいたが、またしてもあの男が現れた。

 

 

 

 

煉獄

「誰かと思えば!うどん屋で俺に説教をしたサーヴァントか!」

 

 

エルザ

「炎柱。」

 

 

煉獄

「ありがとう!!」

 

 

エルザ

「えっ!?」

 

 

 

 

急に煉獄はエルちゃんの両肩を掴みお礼を言った。エルちゃんもいきなりの事で動揺してた。

 

 

 

 

煉獄

「君がこの子を保護してくれたお陰で大事に至らずに済んだ!!こうして母親とも再会出来た!!ありがとう!!」

 

 

エルザ

「とっ・・・・・当然の事をしたまでよ。」

 

 

 

 

煉獄が褒め尽くすもんだからエルちゃんはツンケンしながら顔を赤くしていた。

 

 

 

 

香奈

「お姉ちゃん!ありがとう!」

 

 

エルザ

「ええ。」

 

 

 

 

小さな女の子の笑顔に、エルちゃんは優しく微笑み返した。それはまるで太陽のようだった。親子二人はお礼とお別れを言って去って行った。二人は安心したかのように見送った。

 

 

 

 

煉獄

「うむ!やはり子供には母親が必要不可欠だ!」

 

 

エルザ

「そうね。母親の側にいる方が子供も安心するわ。」

 

 

 

 

さっきまでの太陽のような微笑みを返していた表情とはまるで違い悲しい顔をしていた。そんなエルちゃんを見た煉獄は何かを知っていたのかおかしな事を言った。

 

 

 

 

煉獄

「やはり、君は弟と似ているな。」

 

 

エルザ

「貴方の弟に?なら、さぞ私みたいに優秀な弟さんだったのね。」

 

 

煉獄

「ハハハ!才能に関しては多分君とはかけ離れている!」

 

 

エルザ

「は?」

 

 

煉獄

「俺が似ていると言ったのは、弟と同じ目をしていたからだ。」

 

 

エルザ

「目?」

 

 

煉獄

「うむ!まるで母を求めるような、そんな悲しい目をしていた。」

 

 

エルザ

「!?」

 

 

 

 

煉獄に言われて図星だったのか、エルちゃんは動揺していた。

 

 

 

 

エルザ

「だとしたら私は、人としては貴方の弟より劣ってるわね。」

 

 

 

 

二人は大通りを歩き始め、エルちゃんはかつて自分が犯した過ちを煉獄に話した。それはお母さんに振り向いて貰いたい彼女の我儘から始まった事なのだ。

 

 

エルちゃんの第二宝具でもある『太陽のドレス』だが、それを顕現させるためには『星のツバサ』を持つドレスを持ったアイドルを揃えなければならなかった。

 

 

彼女は、太陽のドレスを手に入れる為に『ヴィーナスアーク』と言うアイドル学校を設立して船で大海原に出て世界中の素質あるアイドルを集めて周った。

 

 

もちろん、日本にも訪れて『白鳥(しらとり)ひめ』と言うアイドルをスカウトしようとしてたらしい。けど白鳥ひめはエルちゃんの申し出を断った。そこで彼女は、白鳥ひめを誘き出す為にあるアイドルのスカウトも考えていた。それがゆめだったのだ。だが日本でエルちゃんの人生は大きく変わったのだ。

 

 

進展が無かった星のツバサを日本で多くのアイドルが顕現した。そして全てのドレスが揃った時、エルちゃんは太陽のドレスを発現させた。後はアイカツランキングと言う大舞台で世界一のアイドルになるだけだった。だけどエルちゃんはこの時から様子がおかしかった。

 

 

先ずはヴィーナスアークの解散を生徒達に告げたのだ。理由は太陽のドレスが手に入った時点で彼女達は用済みになるからだ。それも説明した事で、一部の人達以外は皆んなエルちゃんを信用できなくなってしまい、彼女の言われた通りヴィーナスアークを辞めるつもりでいた。そんな彼女達を引き止めたのが、エルちゃんの側近をしていたアイドルだった。

 

 

だが彼女の願いも虚しく、エルちゃんは芸能界を去るつもりでいた。事態を重く見たゆめはエルちゃんを止める為に全力でぶつかり僅差の判定でゆめは勝ったのだ。そしてエルちゃんがステージを去ろうとした時、彼女の母親が駆けつけ、エルちゃんを抱きしめた。こうして二人は親子の絆を取り戻したのだ。

 

 

エルちゃんの話が終わった頃には、二人は神社らしき所に来て座っていた。そして彼女の話を聞き終えた煉獄の答えは意外なものであった。

 

 

 

 

煉獄

「俺は君が羨ましい!」

 

 

エルザ

「貴方人の話聞いてないでしょ!私の我儘でどれだけ周りに迷惑を掛けたか!!」

 

 

煉獄

「確かにやり方は間違ってたかもしれない。だが君は自身の間違いを知った上で責任を果たそうとした。君の仲間はその事情を知った上で止めにも入ってくれた。それは君が信頼たる人物だと言う事だ。それに母親に愛されたいのは子供の特権だ。十分恵まれていると俺は思うぞ。」

 

 

エルザ

「それは貴方も同じでしょ?母親がいたなら貴方達兄弟だって出来たはずよ。」

 

 

煉獄

「俺にはそれが叶わなかったし、弟は母親の顔すら覚えて無いのだ。」

 

 

エルザ

「えっ・・・・。」

 

 

 

 

今度は煉獄の話が始まった。元々彼の家、煉獄家は鬼殺隊創設者の産屋敷家を支える家系で、先祖代々『炎柱』の名を受け継いで来たのだ。

 

 

そんな彼の母親は病気で寝込んでいたらしく、弟もまだ赤ん坊だったらしい。死期が近いと悟ったのか、まだ小さかった煉獄に「強く生まれた者の責務」を彼に教え、その後亡くなった。弟さんはまだ赤ん坊だったから母親の顔を知らず、父親に至っては気力を無くし、酒浸りの日々であったと言う。唯一煉獄家を支えられるのは彼だけだった。

 

 

 

 

エルザ

「それにしてもどうしようも無い父親ね!本来子供達を育てる立場だと言うのに!」

 

 

 

 

エルちゃんは煉獄の父親に不満があったみたいだが、彼は笑いながらエルちゃんを宥めるように説明した。

 

 

 

 

煉獄

「まあそう言うな。父上とて最初からそんな人間では無かったのだ。何か心に深い傷を負ってそうなったのは俺が理解している。」

 

 

エルザ

「貴方も大変だったのね。」

 

 

煉獄

「そうだな。泣き言を言う暇も、甘える事も、泣く暇もなかった。家の事も守らねばならなかったし、鬼殺隊の後輩達も導いてやらねばならなかった。上に立つ者の責務と言うのはそう言うものだ。」

 

 

エルザ

「私もそうだったわ。でも・・・私はその責務を放り出した。」

 

 

煉獄

「それは俺も同じだ。俺は親不孝者だ。弟と父上を残して死んでしまったのだからな。」

 

 

エルザ

「貴女死んでいたの!?」

 

 

煉獄

「うむ!だが次の世代に託す事は出来た。後悔はない。」

 

 

 

 

エルちゃんは悲しそうな顔をしていた。彼の話を聞いたら、確かに自分のした事なんて大した事ない、そんな感情が湧き上がっていたからだ。

 

 

 

 

レベッカ

「なるほどね。二人にそんな過去があったとは。」

 

 

エルザ

「レベッカ!?」

 

 

煉獄

「全く気配を感じなかったぞ!?いつの間に!?」

 

 

 

 

フフフ。二人の背後からの神出鬼没な私に、エルちゃんも煉獄も驚いているようでありますな。ナイスリアクション!

 

 

 

 

エルザ

「いつからいたの!」

 

 

レベッカ

「エルちゃんの黒歴史を語り始めたあたりかな。あっ!アースに帰ったらお説教だからね。」

 

 

エルザ

「後を付けてきたのね。それに何で私が貴女にお説教さられなきゃならないの。」

 

 

レベッカ

「パーフェクトアイドルの異名を持つエルザ・フォルテがなに能天気ルーラー虹野ゆめに敗北してんだ?赤の陣営に敗北者は許すまじ!!」

 

 

エルザ

「貴女ゆめの事舐めすぎよ!」

 

 

煉獄

「ハハハ!二人は仲が良いのだな!」

 

 

 

 

二人の話を聞いたけど、私にはわからない事がある。それは、二人にとっての母親と言う存在だった。

 

 

 

 

レベッカ

「ねえ、二人にとって母親ってそんなに大事な人なの?」

 

 

エルザ

「貴女はまた何を言い出すの。」

 

 

煉獄

「君にも家族がいるなら母親くらいはいるだろ?」

 

 

レベッカ

「母親どころか父親の顔すら見た事ないの。」

 

 

 

 

そう。私は物心ついた時から聖王教会にいて、そこで魔術を中心とした教育を受けていたが、成績はよろしくなかった。懸命に努力したけど結果は出せず、その生徒は犬や猫同様に殺処分となるのだ。アースに移動になった時は助かったけど、結果聖王教会から追い出される形となってしまった。だからアースを離れたら、私は時計塔や聖王教会からも命を狙われるだろう。生きる為なら何だってしてやる。そんな気持ちしかなかったから、自分の親を気にする事なんてなかった。

 

 

 

 

レベッカ

「だから正直親がいるって感覚が私にはないの。ずっと一人で生きてきた。必死に生き抜く事しか頭になかったから。」

 

 

 

 

何故か私は二人にその話をしていた。何でだろ?

 

 

 

 

男性

「鬼だ!!鬼が出たぞ!!」

 

 

 

 

そんな時でも遡行軍は現れる。どうやらさっき私達がいた通りに現れたようだ。

 

 

 

 

レベッカ

「行くよ二人共!」

 

 

 

 

私は二人から離れるように駆けて行った。二人から見た私の背中は、寂しそうと言うより逞しく見えたと言う。

 

 

 

 

煉獄

「君は知っていたのか。彼女の事を。」

 

 

エルザ

「知るわけないでしょ。この前会ったばかりなんだから。」

 

 

煉獄

「そうか。ならば行くとしよう!!」

 

 

エルザ

「結構な事ね!」

 

 

 

 

二人は何も語らず、何も聞かず、そのまま私に着いて来てくれた。早速現場に向かったけど、遡行軍の数は僅か6体しかいなかった。これならすぐ終わると思いきや、さっき迷子になった女の子とその母親が襲われていた。

 

 

 

 

香奈

「お母さん!!」

 

 

「逃げなさい香奈!!」

 

 

 

 

母親は転んで起き上がれない状態、そこに遡行軍の一体が母親に刀を振り下ろそうとしていた。

 

 

 

 

香奈

「やめてぇぇぇ!!」

 

 

打刀

「グォォォ!!」

 

 

煉獄

「やらせるか!!」

 

 

 

 

母親に刀が振り下ろされそうになった時、煉獄が間一髪で斬り掛かり魔獣は消滅した。

 

 

 

 

煉獄

「二人は親子二人を頼む。」

 

 

レベッカ

「わかった!」

 

 

エルザ

「だけどその前に!」

 

 

 

 

エルちゃんは自分のスキルを使って煉獄を強化した。

 

 

 

 

煉獄

「有り難く受け取ろう!!」

 

 

エルザ

「さっさと片付けなさい!」

 

 

 

 

煉獄は直ぐ遡行軍を斬りに掛かり、あっという間に残り一体となった。だがその相手は、この前セイラと二人がかりで倒せなかったデカイ魔獣、大太刀だった。

 

 

 

 

煉獄

「まさか最後に貴様が相手とはな。だが!もう遅れは取らん!!炎の呼吸!伍の型!炎虎(えんこ)!!」

 

 

 

 

虎のような形をした炎が大太刀に直撃し倒れたのだが、この前の奴と違ってあっさり倒れたのだ。やっぱりあの大太刀は誰かに強化されていたのだと改めて知らされた。

 

 

早速、この前白玄の言われた通り私は現場の確認をしたが、今回は強化された形跡が全くなかった。

 

 

 

 

レベッカ

「数も少なかったし何が目的だったんだろう?もしかして偵察?」

 

 

 

 

私がそんな事をしていると、あの親子がエルちゃんと煉獄にお礼を言っていた。

 

 

 

 

「二度も助けていただき、ありがとうございました!」

 

 

煉獄

「いいえ。それより無事で何よりでした。」

 

 

香奈

「ありがとう!太陽のお姉ちゃん!」

 

 

エルザ

「太陽。」

 

 

 

 

親子は二人に手を振って行ってしまった。エルちゃんは、あの子に言われたことが少し照れ臭そうにしてたけど、少し嬉しそうに見えた。それを見た私は二人に合流したが、煉獄とここでお別れした。

 

 

 

 

煉獄

「では俺も行くとしよう!」

 

 

レベッカ

「もう行くの?」

 

 

煉獄

「俺も大事な用があるのだ。そろそろ行かねばなるまい。」

 

 

 

 

そっか。なら名前だけでも名乗っときますか。

 

 

 

 

レベッカ

「レベッカ。」

 

 

煉獄

「ん?」

 

 

レベッカ

「レベッカ・スカーレット・ティファニー。私の名前だよ。」

 

 

煉獄

「いいのか!?」

 

 

レベッカ

「いいよ。セイラやエルちゃんが信用してるなら教えても問題ない。」

 

 

エルザ

「それなら私も。」

 

 

 

エルちゃんも、煉獄に真名を明かすことにしたらしい。

 

 

 

エルザ

「ライダー。エルザ・フォルテよ。」

 

 

煉獄

「君もか!?二人共何故俺に真名を明かす!?無用心にも程があるぞ!?」

 

 

エルザ

「貴方が・・・パーフェクトだからよ!」

 

 

 

 

そうエルちゃんは言い切った。それは彼が信用できるサーヴァントだと確信したからだ。だからセイラと同じでエルちゃんも真名を彼に預ける事が出来たのだ。

 

 

 

 

煉獄

「そうか。なれば近いうち!俺の真名を教えると約束しよう!!」

 

 

レベッカ

「じゃあ気長に待ってる!」

 

 

煉獄

「うむ!ではさらばだ!!」

 

 

 

 

私達に手を振りながら煉獄は去って行った。それを見送った私とエルちゃんは、あの後別々に行動した。

そしてその日の夜。私達は家に集まり、収集した情報を共有していた。

 

 

 

 

マリア

「紫の着物を着た男性から「北の虎には気をつけろ。」そう忠告されたわ。」

 

 

ひびき

「こっちもだ。この間レベッカが訪れた一座に行ってみたが、そこの座長さんから「北には人相の悪い虎が、貴女のお友達を食い殺そうと必死になって探していたわよ。」と言われた。」

 

 

キリエ

「私はその虎を見たけど・・・・「己どこに隠れてる鬼畜米兵!!」って本当にレベッカを食い殺す勢いで探してた。」

 

 

レベッカ

「私何かしたぁ!?」

 

 

 

 

SNSもないこの時代になんでこんなに噂広まるの早いの!?

 

 

 

 

とがめ

「思ったより守護柱達に気づかれるのが早かったか。手嶋殿から話を聞いて正解だったな。」

 

 

レベッカ

「これじゃあ迂闊に外も出歩けないじゃん。」

 

 

とがめ

「だからだレベッカ。貴様はしばらく外出自粛規制だ。」

 

 

 

 

相手人間の筈なのに何で猛獣並みに警戒しないといけないの。

 

 

 

 

とがめ

「それで、レベッカはあの後どうだったのだ。それなりに収穫はあったのであろう。」

 

 

レベッカ

「バーサーカーらしき情報だけどね。」

 

 

 

 

そう。私は、京から西に離れた場所に刀鍛冶が住む村があると言う話を聞いて、早速その村を訪れて聞き込みを開始した。するとひょっとこの面を着けた鍛冶師から、さらに南に行った先に廃村があるらしく、そこから「首よこせぇぇぇ!!」と男の叫び声が聞こえたらしい。多分バーサーカーの島津豊久だと思う。

 

 

 

 

とがめ

「うむ!良くやった!でかしたぞ!」

 

 

 

 

白玄に褒められたよ。なんか嬉しい!

 

 

 

 

とがめ

「とはいえ廃村か。確かに人目につかず聖杯戦争をするには打って付けの場所だ。もしやとは思うが、我等が参ればセイバーが食い付くかもしれん。」

 

 

レベッカ

「セイバーが?そう簡単に行くものなの?」

 

 

とがめ

「それは行ってみればわかる。」

 

 

 

 

白玄はそう言っていたけど、こんなあからさまな方法で引っかかるかな?

 

 

 

 

マリア

「それなら動くなら今しかないわ。昼間は守護柱の目が光っている以上、レベッカが動けるのは夜しかない。」

 

 

 

 

姐さんの言う通り、私がまともに動けるとしたら真夜中しかない。早速私達は廃村に向かったが、キリエは嫌そうに渋々着いて来た。よっぽどバーサーカーが苦手と見る。七花は子供達を見てもらうため残って貰った。流石に子供だけにしておくのは危ないからね。

 

 

そして南西にある廃村に着いた私達を待っていたのは、いかにも幽霊が出そうな不気味なところだった。だがその時、白玄が一軒の家で足を止めた。

 

 

 

 

とがめ

「どうやら当たりだったようだ。」

 

 

レベッカ

「じゃあここに?」

 

 

とがめ

「ああ、バーサーカーがいる。」

 

 

 

 

白玄はノックして「失礼する。」と一言声を掛けてから戸を開けた。中は床に穴も空いていて、とても人が住めるような所では無かったが、そこに誰か壁に寄り掛かっていた。赤い鎧を着ていて私達をその鋭い眼光で睨みつけていた。なんか他の皆んなと違って怖いんだけど!?

 

 

 

 

豊久

「誰じゃ、おんしゃらは。」

 

 

 

 

私達は中に入り、先に入った白玄が正座してバーサーカーと対面した。

 

 

 

 

とがめ

「バーサーカー。島津豊久殿とお見受けする。」

 

 

豊久

「なして(おい)の名ば知っとる。お(まん)は何処の誰ぞ!」

 

 

とがめ

「尾張幕府総監督奉る所、奇策士とがめと申す。以後お見知り起きを。さてお主の真名を何故知ってるかは置いといて、此度お主の下を訪ねたのは勧誘に参ったからである。」

 

 

豊久

「勧誘だと?」

 

 

 

 

白玄は、今の聖杯戦争が無駄だと言う事、聖杯が機能してない事、七騎の大罪が聖杯戦争の主導権を握ってる事、それを知ったキリエとひびきが私と契約した事、それを全て説明した。だがそう簡単には納得しなかった。

 

 

 

 

豊久

「お(まん)等の話は・・・・ようわからん!!」

 

 

とがめ

「お主の頭に合うようわかりやすく説明したのだが?」

 

 

豊久

「だが断る!!」

 

 

 

 

しかも内容理解してないのに断って来た。

 

 

 

 

とがめ

「理由は?」

 

 

豊久

「お(まん)等が女子だからじゃ!!」

 

 

とがめ

「やっぱり・・・・それが理由か。」

 

 

 

 

白玄はバーサーカーの返事にアホらしさを感じていたのか頭を抱えていた。確かに女性に変身してる白玄以外は皆んな女性だから、彼はそれが気に入らなかったらしい。けどその後バーサーカーは女性に関していろいろ文句ばかり言っていた。

 

 

 

 

豊久

「そもそも女子が戦場に出る意味がわからん!!家に帰って紅でも付けておればよか!!」

 

 

マリア

「あら?意外と優しいのね。でも心配無用よ。私達こう見えて強いから。」

 

 

豊久

「南蛮人はうつけか阿呆しかおらんのかぁ!!」

 

 

マリア

「なんかバカにされたんだけど!?」

 

 

信長

「すまんのう。こいつ九州のど田舎に住んどるから世間知らずなのよ。」

 

 

 

 

白玄は急にオッサンに変身するし、なにやってんだろ?

 

 

 

 

豊久

「何で白髪娘が信長に変わっとる!?妖怪かお(まん)は!?」

 

 

信長

「オメーに言われたくねえよ!!」

 

 

 

 

まあそれは二人共何だけど?それはそうとどうして女だからダメなのか?白玄に聞いたら、どうやらその時代の人達の慣習にあると言う。

 

 

 

 

信長

「まあ女は主に政略結婚に利用されていたからな。他国の和睦や同盟に、人質や嫁を送るのは俺達の時代じゃそれが当たり前よ。」

 

 

レベッカ

「なるほどね。」

 

 

信長

「けどよ豊!俺達の時代だって女子も戦に参加してたぞ!」

 

 

豊久

「はっ!?そんなわけあるかぁ!!」

 

 

信長

「俺の叔母さん。旦那無くしてその土地の領主を務めたんだ。まあ落とされたがな。」

 

 

豊久

「当然じゃ!女子が城を守れるか!討ち死にでもなったんじゃろ。」

 

 

信長

「いいんや。敵方の武将が叔母さんに惚れ込んでそのまま結婚して落城。」

 

 

豊久

「そげな阿呆な話あってたまるかぁ!!」

 

 

信長

「あったんだよ!!ボケナス!!」

 

 

 

 

戦国時代って戦争みたいな荒々しいイメージだったけど、そんなエピソードまであったんだ。

 

 

 

 

マリア

「あらやだロマンチックじゃない。」

 

 

ひびき

「正に戦場に咲く恋の花だ!」

 

 

 

 

女性陣には好評だった。

 

 

 

 

信長

「それと、お前が関ヶ原で討ち取った赤備えの大将がおっただろ?」

 

 

豊久

「そいつがどぎゃあしたか?」

 

 

信長

「そいつの前の城主も女だったぞ。」

 

 

豊久

「ホンマか?段々話が胡散臭くなっとるきいのう?」

 

 

信長

「それにだ!!お前『巴御前』て言う立派な女武者がいただろ!!」

 

 

豊久

「知らん!!そげな武将聞いた事ないわ!!」

 

 

マリア

「いや!流石に巴御前くらい知ってるでしょ!!有名な人物よ!?」

 

 

豊久

(おい)は知らん!!そげな女子聞いたこともなか!!」

 

 

マリア

「ウソ・・・信じられない。」

 

 

信長

「そういや忘れてたが、こいつ安倍晴明も知らなかったんだ。」

 

 

マリア

「どんだけ世間知らずなのよ彼!?」

 

 

豊久

「なんじゃおんしら!!揃いも揃って(おい)を馬鹿にしに来よったかぁ!!」

 

 

信長

「馬鹿にしてんだよ!!この戦馬鹿!!」

 

 

 

 

なんか話が全然戻らないからもう私がやる!!私は白玄を無理矢理どかして彼の前に堂々と座り込んだ。

 

 

 

 

レベッカ

「とにかく!私達は貴方に力を貸して欲しいの!!七騎の大罪とまともに戦えるのは貴方のようなサーヴァントなの!!」

 

 

豊久

「なして(おい)が小娘の頼みば聞かんといかんのだ!!」

 

 

レベッカ

「いいじゃん!!協力してくれたってバチは当たらないよ!!だからお願い!!」

 

 

豊久

「ええ加減にせえ小娘!!お(まん)の遊びに付き合ってられるかぁ!!女子は女子らしく帰って紅ばつけておれ!!」

 

 

 

 

「カッチーンッ!」と私の中で何か音がして、そこから何を言ったか覚えていない。ただ頭にきていたのだけは確かだった。

 

 

 

 

レベッカ

「さっきから黙って聞いてれば女は弱いから帰れだのギャアギャア言いやがって!女馬鹿にするのも大概にしろよ!!妖怪みたいな絵面しやがって!!」

 

 

信長

「おい、レベッカの奴どうしたんだ?」

 

 

マリア

「多分、堪忍袋の尾が切れた。」

 

 

 

 

ええ、マリア姐さんの言う通りです。我を忘れるくらい頭にきてました。私もうめちゃくちゃ言ってるかも。

 

 

 

 

レベッカ

「あと日本人ならちゃんと日本語話せ!!さっきから言ってる事訳わかんねえよ!!日本語で話せここ日本だぞ!!」

 

 

信長

「レベッカ!?それ方言だから!ちゃんとした日本語だから!!」

 

 

レベッカ

「後、お前は男失格だぁ!!失格!!」

 

 

信長

「ちょっと!?誰かこの娘止めて!!」

 

 

豊久

「おい。この娘、叩っ斬ってええか。」

 

 

信長

「待って!!それはやめて!すぐ止めるから!!」

 

 

 

 

けど私は止まらなかった。こいつに殺されようがどうでもいい。そんな覚悟と言うか、気持ちで押し通して言いたい事言いたかっただけだった。

 

 

 

 

レベッカ

「国や故郷を守る武将が弱い人を守れないで偉そうに言ってんじゃねえ!!その紅を付ける女子を守るのがお前の仕事じゃないのか!!女の子一人守れない奴が、戦争語ってんじゃねえよ!!自己満足で戦ってるならお前は戦国武将として、男として、人として最低だ!!そんなに死にたきゃ誰か守ってから死ねぇ!!」

 

 

 

 

いつの間にか、私は息を切らしながら正気に戻っていた。気持ちはスッキリしていたけど、私はバーサーカーに何を言ったか全然覚えてなかった。でもバーサーカーは黙ったまま私の事を見ていた。そしてゆっくりと立ち上がって私の肩に手を置いた。

 

 

 

 

豊久

「話は終わりぞ。」

 

 

レベッカ

「え?」

 

 

豊久

「敵じゃ。目の前に敵がおる。」

 

 

 

 

敵の気配を感じていたのだ。つまり、私の話なんて聞いてもいなかったのた。まあ自分でも何言ってたのかさっぱり覚えてないからいいけど。

 

 

 

 

信長

「グフッ・・・グフッ!グフフふふふ・・・・。早速獲物が食いついたわい。」

 

 

マリア

「何よ気持ち悪い笑い方して。」

 

 

信長

「外にセイバーがおる。キリエとひびきを豊に会わせた事で、奴も動かぬはずが無いと思っていたが・・・・こうもあっさり引っかかるとはな。」

 

 

 

 

なるほどね。だからここに来る前嫌がるキリエを引っ張って来たわけね。

 

 

 

 

豊久

「小娘。名はなんだ。」

 

 

レベッカ

「レベッカ。レベッカ・スカーレット・ティファニー。」

 

 

 

何故かバーサーカーが私の名前を聞いて来た。そしたら今度はキリエとひびきに声を掛けた。

 

 

 

豊久

「それとライダー!キャスター!お(まん)等レベッカと契約したと言ったな!」

 

 

ひびき

「そうだが?」

 

 

キリエ

「それがどうかしたの?」

 

 

豊久

「お(まん)等二人、レベッカの家臣も当然じゃ!ええ大将に仕えたの!」

 

 

 

 

さっきの表情に比べて、バーサーカーは笑顔で二人を褒めた。あそこまで女性を否定していた彼が、初めて二人を認めたのだ。

 

 

 

 

豊久

「そんじゃあ、出陣じゃ!!」

 

 

 

 

バーサーカーは戸を開けて外に出て行った。私達も後に続いて外に出ると、バーサーカーが空を見上げていた。向かいの家の屋根に人影らしき姿があった。月をバックに光が当たり、その正体を現した。仮面を付けた女性らしき人物だった。

 

 

 

 

豊久

「出て来おったかセイバー。大方、ライダーとキャスターの動きが気になったか!」

 

 

シズ

「そうね。まさか貴方と接触するとは思わなかったけど。」

 

 

 

 

私はこの時のセイバーからとてつもない魔力を感じた。彼女の力なのか、あるいは彼女の体内に何かいるようにも感じた。

 

 

 

 

とがめ

「なるほど。仮面を付けた女性のセイバーと言うのはお主の事であったか。井沢(いざわ)静江(しずえ)殿。いや、シズ殿。」

 

 

シズ

「ッ!?」

 

 

 

 

白玄は出てくるなり、信長からまた元のとがめに戻っていた。てか早々にセイバーの真名を暴露した。

 

 

 

 

豊久

「うをぉ!?また信から白髪娘に戻ったかぁ!?」

 

 

とがめ

「やはりこっちの方がしっくりくる。」

 

 

 

 

するとセイバーのシズが屋根から降りて来た。やはり真名を暴露されたのが気になったようだ。

 

 

 

 

シズ

「驚いたわ。私の真名を知ってる人がいたなんて。」

 

 

とがめ

「まあな。それはそうとお主も何の意味も無い聖杯戦争なんかやめて、私達と協力しないか。大方外で話は聞いてたのだろ。」

 

 

 

 

白玄、最初からバーサーカーだけじゃなくてセイバーも仲間にするつもりだったんだ。侮れん!しかも中での話全部聞かれてるし。じゃあ私がバーサーカーにいろいろ言ってた事も聞かれてた!?ヤバっ!恥ずかしいんだけど!!

 

 

 

 

シズ

「お断りするわ。」

 

 

とがめ

「断る理由が思い当たらないのだが。お主なら聖杯戦争の異変に気付いていない訳ではあるまい。」

 

 

シズ

「確証が無いの。それに貴女達の話が真実とも限らないから。」

 

 

 

 

セイバーとの交渉は決裂した。彼女との戦いは避けられなかった。私が気になったのは、大勢のサーヴァントを前にそこまでの自信があったのかだ。

 

 

 

 

豊久

「はなっからセイバーは戦のつもりぞ。女子首は大将首にならん。命だけ置いてけ!!」

 

 

シズ

「出来るものならね!!」

 

 

 

セイバーは容赦なくバーサーカーを斬りに掛かったが、彼は最も簡単に防いでしまった。二人の攻防が続く中、セイバーがこんな事を呟き始めた。

 

 

 

 

シズ

「ところで赤髪の彼女、サーヴァントじゃ無いわね。」

 

 

豊久

「なんじゃあ!斬り合いの最中に戯言抜かすか!」

 

 

シズ

「皆んな私に注意が向いてるけど、彼女の首は頂いてもいいかしら。」

 

 

豊久

「ッ!!」

 

 

 

 

バーサーカーは彼女の言葉に気付いたのか、大声で私達に伝えた。

 

 

 

 

豊久

「レベッカば守れぇぇぇぇ!!アサシンがおるぞぉ!!」

 

 

 

 

だがバーサーカーが気づいた頃にはもう遅かった。私の背後に空を切る様にアサシンは現れた。黒髪の着物を着た羽根の生えた女の子だった。

 

 

 

ゼフォン

「遅い。平和ボケしてると言わざるおえませんね。」

 

 

 

 

彼女の両足には、刃物の付いたローラースケートの様なものを履いていて、その右足から刃物が展開して私の首元を狙っていた。

 

 

 

 

レベッカ

「そう。なら貴女は私より平和ボケしていたのかな。」

 

 

 

 

けど私は笑顔でアサシンにそう囁いた。殺されそうになっているのに内心、恐怖や危機感がまるでなかった。何故なら、姐さん、セイラ、エルちゃん以外の赤の陣営のサーヴァントが近くにいたからだ。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「相生忍法。背弄拳。」

 

 

ゼフォン

「ッ!?」

 

 

 

彼女の背後に『不忍』の仮面を付けた男が斬り掛かった。彼女は振り上げた右足を瞬時に曲げて防いだが吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「報告できる状況に有らずと言ったところか。」

 

 

マリア

「右衛門左衛門!?」

 

 

セイラ

「なんで!?いつの間に京都に!?」

 

 

右衛門左衛門

「語らず。今はゆっくり説明している暇はない様だ。」

 

 

 

 

アースにいるはずの右衛門左衛門が、何故か京都に来ているのだ。私が気付いたのはこの廃村に入った時からだったが、私達の前に姿を見せず隠れて様子を伺ってたから、放って置いたけどナイスタイミングだったよ!

 

 

 

 

右衛門左衛門

「姫様。先ずは勝手に行動してしまった事をお許し下さい。」

 

 

レベッカ

「言い訳は後で聞いてあげる。それよりアサシンをお願い出来る。」

 

 

右衛門左衛門

「御意。」

 

 

 

 

とりあえず、アサシンの方は右衛門左衛門に任せて今はセイバーだな。

 

 

 

 

ひびき

「あのサーヴァントにも驚いたがアサシンがまだいたなんて!?」

 

 

キリエ

「ちょっとバーサーカー!!アサシン倒したんじゃなかったの!!」

 

 

豊久

(おい)はそんな事、一言も言うとらん!斬ったには斬ったが、浅かったんじゃ!じゃっどんお(まん)が匿っとったんじゃな!!」

 

 

シズ

「ええ。アサシンとは同盟を組んだわ。」

 

 

 

 

セイバーはバーサーカーが、アサシンは右衛門左衛門が抑えてくれると有難いけど拉致が開かない。対策を考えてる時、白玄が私を睨んでいた。なんで!?

 

 

 

 

とがめ

「まさかアサシンがモンスターストライクの堕天使ゼフォンだったとは驚いた。」

 

 

レベッカ

「ねえ白玄?私何かやらかした?」

 

 

とがめ

「ああ、とてつもなくとんでも無い事をやらかしたぞ。まさかお主が否定姫の懐刀、左右田右衛門左衛門と契約していたとはな。」

 

 

レベッカ

「右衛門左衛門に何か問題が?」

 

 

とがめ

「問題大有りだ。帰ったら七花と面倒くさい事になるぞ。」

 

 

 

 

何で右衛門左衛門と七花が?何?二人に何かあるの!?そんな考える暇も無いまま、両者の戦いは徐々に激化した。

 

 

 

 

豊久

「もうよか。お(まん)はここで死ね!」

 

 

シズ

「そうさせて貰うわ。死ぬのは貴方の方かもしれないけど。」

 

 

 

セイバーの剣から炎が吹き出し、バーサーカーを追い詰めようとする。

 

 

 

 

ゼフォン

「これ以上は時間の無駄です。一気に終わらせましょう。」

 

 

 

 

アサシンも決着を付ける気か宝具を発動させようとしていた。戦闘が激化していたその時だった。

 

 

 

 

煉獄

「そこまで!!」

 

 

 

 

謎の声と共に、さっきまで廃村だった風景が一気に炎に包まれた。皆んな驚いて辺りを見渡した。さっきまで戦っていたサーヴァント達も思わず振り向いてしまった。

 

 

 

 

レベッカ

「何!?なんで炎が吹き荒れてるの!?」

 

 

マリア

「とにかく急いで逃げないと!!」

 

 

とがめ

「狼狽えるで無い!!」

 

 

 

 

白玄の一声で皆んな冷静さを取り戻したけど一体何!?

 

 

 

 

ゼフォン

「シズ!これは一体!」

 

 

シズ

「わからない。突然火に包まれたわ。」

 

 

豊久

「火の手が上がるのは早すぎる!お(まん)の仕業かセイバー!!」

 

 

シズ

「いくら私でもこんなの無理だわ。」

 

 

キリエ

「じゃあ誰の仕業なの!!」

 

 

レベッカ

「白玄!何か知っている!!」

 

 

 

 

周りの火の手に慌てふためく私達に、白玄は冷静に答えた。

 

 

 

 

とがめ

「足元を見てみよ。」

 

 

 

 

そう言われて見てみるとその光景に目を疑った。さっきまで自然と出来た地面が、明らかに人間の手で加えられたレンガが敷き詰められた地面になっていたのだ。

 

 

 

 

とがめ

「どうやら私達は『固有結界(こゆうけっかい)』によって閉じ込められてしまったようだ。」

 

 

レベッカ

「固有結界?」

 

 

とがめ

「術者が自ら描く心象風景を実物の様に創り出す空間の事だ。それは魔術師だけでなく、サーヴァントも展開ができる。そしてこの空間は紛れもなく、煉獄杏寿郎の心象風景だ。」

 

 

 

 

そして彼は私達の前に姿を見せた。

 

 

 

 

 

煉獄

「この聖杯戦争に参加している全てのサーヴァントに伝える!!聖杯戦争は中止だ!繰り返す!聖杯戦争は中止だ!!」

 

 

豊久

「一体誰じゃ。お(まん)は何処の誰ぞ!!」

 

 

 

 

バーサーカーの向いている方を見ると、私達の遠く離れた所に、その男は刀を突き立てて立っていた。

 

 

 

 

煉獄

「俺が誰か。サーヴァント。剣士(セイバー)。鬼殺隊の炎柱、煉獄杏寿郎。裁定者(ルーラー)山本(やまもと)元柳斎(げんりゅうさい)重國(しげくに)殿によって召喚された使いのサーヴァントだ!!彼から言伝を預かっている!聖杯戦争に参加している全てのサーヴァントは戦いを止めて、復讐者(アベンジャー)の脅威に備えよ!!もしこの命令を聞けぬ者は・・・・。」

 

 

 

 

そう言って彼は刀を私達に向けた。

 

 

 

 

煉獄

「この煉獄の赫き炎刀が!お前等を骨まで焼き尽くす!!」

 

 

 

 

煉獄杏寿郎。彼はこんな固有結界を創り出してしまうほど、その炎は熱く燃え上がっていた。そしてこの日を境に、私の京都での物語はいよいよ後半戦に入ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ!因みに私が白玄と仲が悪かったのはたったの三日で解消しました。ご心配をおかけして申し訳ありません。

 

 

 

 

 

 

 




英霊紹介





真名:『島津(しまづ)豊久(とよひさ)


クラス:『狂戦士(バーサーカー)


宝具:『鬼島津』


作品名:『DRIFTERS(ドリフターズ)





プロフィール
島津家の武将で『戦国最強のサムライ』の異名を持つ。年齢は30歳で薩摩弁を喋る。関ヶ原の戦いで負傷し、森を歩いていた所を『紫』と名乗る男に異空間に連れてこられ、そのまま異世界に飛ばされる。そこで彼は織田信長、那須与一や他の漂流者(ドリフターズ)と出会い、『国王』引き入る廃棄物(エンズ)の軍勢と戦う事になる。









真名:『井沢(いざわ)静江(しずえ)


クラス:『剣士(セイバー)


宝具:『インフェルノフレイム』


作品名:『転生したらスライムだった件』





プロフィール
元日本人の異世界人の魔人で、『爆炎の支配者』の異名を持つ英雄である。愛称は『シズ』。外見は火傷の痕がある16、17歳前後の黒髪の儚げな美少女だが、実年齢は70歳前後。転生したリムルが初めて出会った異世界人であり、彼の運命を変える重要な人物でもある。上位精霊『イフリート』を宿しているが、不完全な状態で憑依していた為、彼女が最後に訪れたリムルの村(今のテンペスト)で暴走する。リムルがイフリートを捕食者のスキルを使い、何とか自体は収まったが、イフリートを失ったシズの寿命は底をつき、最後はリムルに捕食者のスキルによって喰われて葬送された。












真名:『ゼフォン』


クラス:『暗殺者(アサシン)


宝具:『飛燕(ひえん)刃閃脚(じんせんきゃく)


作品名:『モンスターストライク THE ANIMATION』





プロフィール
天聖ダアトの弟子であり『堕天の王 ルシファー』の側近の堕天使。幼少期に迫害された上、母親も彼女の目の前で殺された事で逆上して母を殺害した者を皆殺しにし、天涯孤独の身になるもダアトに救われ彼に師事、それ以来多大な信頼を寄せている。その後は、ルシファーと共に行動する。







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第六話『更なる波乱』

更新が遅れて申し訳ありませんでした。


 

 

 

 

突如、私達の前に現れたセイバー煉獄杏寿郎が告げたのは聖杯戦争の中止だった。いきなりの事でバーサーカーやセイバーとアサシン、そしてキリエもひびきもそして私達も混乱していた。

 

 

 

 

豊久

「聖杯戦争が中止とはどう言う事じゃ!何が起きとる!」

 

 

煉獄

「うむ!それをこれから説明する!」

 

 

 

 

彼は私達の所に来てその真相を語った。何でも、私達が来る数日前の出来事らしく、不安定な状態で聖杯がアベンジャーを誤って召喚し、さらにアベンジャーはその聖杯を持ち出して逃走したらしい。それを重く見たルーラーはアベンジャーの対策に乗り出したが、彼自身も現界出来るだけの魔力は残っておらず、最後の魔力を使い煉獄杏寿郎を召喚し、彼にアベンジャー討伐を命じたと言う訳だ。勿論、聖杯戦争で召喚されたサーヴァント達と協力する様にと言われたらしい。当然聖杯戦争は中止せざる終えなかったと言う。それが彼に与えられた使命と言う訳だ。

 

 

 

 

豊久

(おい)ははなっから聖杯ちゅうもんに興味はなか。じゃがアベンジャーは気に入らん!!」

 

 

ひびき

「全くだ!!私達が求めた聖杯を横取りするなんて最低だ!!」

 

 

キリエ

「ふざけてるよね!!いっぺんそいつぶん殴りたいんだけど!!」

 

 

ゼフォン

「奇遇ですねライダー。私も同じ事を考えていました。やられっぱなしは趣味ではないので。」

 

 

 

 

こいつ等短気か。まあ気持ちはわかる。けど、セイバーだけは冷静に状況を判断していた。

 

 

 

 

シズ

「事情は理解したわ。私達も協力しましょう。」

 

 

煉獄

「そうか!!感謝する!!」

 

 

シズ

「でもあの子達はどうするの。聖杯を回収しに来た彼女達も私達の敵なんじゃないの。」

 

 

 

 

そうか、そうだよな。聖杯戦争に参加者から見たら聖杯を回収しに来た私達も敵になるって話だよな。警戒されてもおかしくないよな。

 

 

 

 

豊久

(おい)はレベッカ達の女衆を受け入れてもよか。こいつは大将の器じゃ!」

 

 

 

 

豊さん!!私の事信じてくれるんだ!!ありがとう!!

 

 

 

 

ゼフォン

「シズ。既にライダーとキャスターは彼女と契約しています。如何なる理由にせよ、目的は一緒のはずです。」

 

 

 

 

あれ!?なんか知らんが私の首狙って来たアサシンまで肩持ってくれるの!私の首狙って来たけど!!

 

 

 

 

シズ

「それは彼が決める事よ。」

 

 

 

 

けどセイバーは煉獄に答えを聞こうとしていた。だが彼に迷いはなかった。

 

 

 

 

煉獄

「その心配は無い!彼女達は信用できる!その証として、俺は魔術師レベッカ・スカーレット・ティファニーとそのサーヴァント二騎の真名を授かっている!だから問題ない!!」

 

 

 

 

そのサーヴァントはセイラとエルちゃんの事だった。二人には本当に感謝だよ。

 

 

 

 

シズ

「わかった、貴方がそこまで言うならそれで構わないわ。いいわねレベッカさん。」

 

 

レベッカ

「うん!これからよろしく!」

 

 

 

 

セイバーは何とか納得してくれた。

 

 

 

 

とがめ

「ふふふ・・・・見たかレベッカよ!これが私の奇策よ!」

 

 

レベッカ

「まさか炎柱も来るとわかって見学してた?」

 

 

とがめ

「うむ!予想通りでお主等の戦いを堪能させて貰ったぞ。」 

 

 

 

 

そうですか。じゃあこちらも煉獄杏寿郎に謝りますか。

 

 

 

 

レベッカ

「あのー、煉獄杏寿郎さん。」

 

 

煉獄

「ん?何だそんなに畏まって?」

 

 

レベッカ

「実は貴方に謝らなきゃいけない事があって。」

 

 

煉獄

「うむ。話してみろ。」

 

 

レベッカ

「私達うどん屋で貴方と別れた後、貴方の真名を白玄から聞かされてたの。」

 

 

煉獄

「ん!?つまり・・・・セイラとエルザ最初から俺の真名を知っていたのか!?」

 

 

セイラ

「まあ、私達が真名を明かしたのもそれが理由何だけどね。」

 

 

エルザ

「でも、私達は貴方がパーフェクトだったから真名を明かしたのよ。それは誇りに持ちなさい。」

 

 

煉獄

「そうか!それで君達に俺の真名を明かした白玄と言う御仁はどこにいる!!」

 

 

レベッカ

「こちらのとがめと言う方が白玄です。」

 

 

とがめ

「イェーイ!!」

 

 

煉獄

「君だったのか!?何者なんだ君は!!」

 

 

とがめ

「まあそれは置いといて、まさか鬼殺隊の炎柱がよもや死神の犬に成り下がろうとはな。元柳斎殿もお主を大層見込んだ様だ。」

 

 

煉獄

「山本殿を知っておられるのか!!」

 

 

とがめ

「護廷十三隊一番隊隊長兼十三隊総隊長の死神だ。そんな偉大な方からの要請であれば、我等も裏切る事は出来ない。」

 

 

煉獄

「タダならぬ御老人ではあったが、そんな凄い方であったか!ならばいっそ励めばなるまい!!」

 

 

 

 

何か白玄上手いことはぐらかしたな。でもルーラーのサーヴァントがまさか仙人みたいな人だったのか。しかも死神に目を付けられるなんて、アベンジャーも気の毒だな。

 

 

 

 

とがめ

「煉獄殿。アベンジャーの真名は既に知っておられるのか。」

 

 

煉獄

「うむ!アベンジャーの真名は『志々雄(ししお)真実(まこと)』と言う、全身に包帯を巻いた男だそうだ。山本殿の話では彼のいた世界の幕末ではかなりの極悪人だったそうだ!!」

 

 

とがめ

「志々雄真実だと!?」

 

 

 

 

アベンジャーの真名を聞いて、白玄の顔が一気に青ざめた。って!?そんなにやばい奴なの!?

 

 

 

 

レベッカ

「ねえ白玄。アベンジャーってそんなにやばい奴なの。」

 

 

 

 

だが白玄は答えなかった。

 

 

 

 

とがめ

「その話は帰ってからだ。先ずは、私とレベッカの問題を解決せねばな。」

 

 

レベッカ

「え?何かあった?」

 

 

とがめ

「もう忘れたのか。そこでずっと私の事を睨みつけている不忍の仮面付けた元相生忍者!!つまりお主のサーヴァントの事だ!!」

 

 

右衛門左衛門

「否定せず。白玄よ、私は貴様を信用しかねる。」

 

 

 

 

そうか。右衛門左衛門だった。なんで京都に来たのかも聞いてないからな。

 

 

 

 

とがめ

「ほう。この姿でまだ私を白玄と呼ぶか。左右田右衛門左衛門殿。」

 

 

右衛門左衛門

「有り得ず。そう言う貴様は正体が割れてもなお奇策士を演じるか。」

 

 

 

 

何か話長くなりそうだから帰ってからにするか。二人を止めよう。

 

 

 

 

レベッカ

「二人ともそこまで!!」

 

 

右衛門左衛門

「ですが姫様。」

 

 

レベッカ

「その話、多分七花にもしなきゃいけない話でしょ。」

 

 

右衛門左衛門

「既にご存知でしたか。」

 

 

レベッカ

「感づいてはいた。でもそう言う大事な話は当人達で解決する事!」

 

 

右衛門左衛門

「承知しました。」

 

 

 

 

とりあえず右衛門左衛門は大人しくさせたし、帰るとしますか。そろそろこの固有結界も解いて欲しいものだ。熱し。

 

 

 

 

レベッカ

「それじゃあ煉獄さん。この固有結界そろそろ解いてもらえる。」

 

 

煉獄

「ん?なんの話だ?これは君達が出したものではないのか?」

 

 

レベッカ

「え?」

 

 

 

 

ん?何か話と違う?だってこの固有結界は煉獄が発動させたんじゃ?でも白玄は煉獄の心象風景だって言ってたし・・・・。

 

 

 

 

レベッカ、マリア、セイラ、エルザ、ひびき、キリエ、ゼフォン

「白玄!!」

 

 

シズ

「聞いてた話と全然違うんだけど?」

 

 

銀さん

「いや合ってるから!!杏寿郎君が自覚ないだけだから!!」

 

 

煉獄

「すまん!話が見えないのだが!?」

 

 

銀さん

「つまりあれ。心を燃やしすぎていつの間にか周りに引火しちゃったようなそんな感じ。」

 

 

煉獄

「言ってる事がよくわからん!!」

 

 

銀さん

「だからお前が心沈めてくれたらここから出られるの!!」

 

 

豊久

「今度は銀髪頭の男になっとるぞ!?お(まん)何もんぞ!?」

 

 

 

 

と言う訳で煉獄の固有結界の解除に乗り出した。

 

 

 

 

銀さん

「とりあえず一旦落ち着こうか。」

 

 

煉獄

「うむ!!わかった!!」

 

 

ゼフォン

「あのすいません。余計火の手が上がっていますが?」

 

 

 

 

でも思ったより彼の性格上これが中々難しい。

 

 

 

 

豊久

「おい。火がさっきより強くなっとるぞ。」

 

 

レベッカ

「子守唄はどうかな?」

 

 

銀さん

「子守唄か。それなら銀さんに任せなさい。」

 

 

 

 

色々試してみたはいいものの。

 

 

 

 

銀さん

「うっせえ!うっせえ!うっせえわ!!貴方が思うより健康です!!」

 

 

レベッカ、セイラ、キリエ

「それのどこが子守唄だ!!」

 

 

銀さん

「ブヘッ!!」

 

 

 

 

なかなか上手くいかず。

 

 

 

 

煉獄

「うむ!何故うまくいかない!!」

 

 

銀さん

「そんな威風堂々としてら静まるものも静まらないよ!!」

 

 

信長

「おいマリア!お前ちょっとオッパイ触らせてやれ!!」

 

 

マリア

「いい加減張っ倒すわよ!!てかなんで私!?他にもいるでしょ!!」

 

 

信長

「だってレベッカとゼフォンとシズとキリエは微妙だし、セイラ、エルザ、ひびきは論外だし、気持ちよく鷲掴み出来るオッパイってお前しかいないのよ。」

 

 

マリア

「こいつ殺してもいいかしら?」

 

 

 

 

時間だけが過ぎて行くが。

 

 

 

 

煉獄

「ええい!!静まれ俺!!静まるんだ!!」

 

 

レベッカ

「いや余計火が強くなってるから!!」

 

 

銀さん

「やっぱ逆に貧乳を掴ませた方がいいんじゃねえか?」

 

 

信長

「おい!セイラにエルザにひびき!お前等煉獄にペチャパイ触らせてやれ!」

 

 

銀さん

「あとシズさんもかな?見た目はあれでも実年齢は70のお婆ちゃんだし。」

 

 

信長

「シズ!!お前もシワシワオッパイ触らせてやれ!!」

 

 

 

 

状況は何も変わらなかった。

 

 

 

 

銀さん

「テメー等アフロ軍曹通り越して焼死体になるところだったぞ!!なにしやがるんだ!!」

 

 

シズ

「あらごめんなさい。まだ生焼けだったかしら?」

 

 

エルザ

「それなら消し炭にでもしましょうか。」

 

 

ひびき

「灰にしよう。」

 

 

ゼフォン

「賛成です。」

 

 

銀さん

「やめろって言ってんだよこの非常時に!!てかセイラとキリエはどっからそのフライパン出したぁ!!」

 

 

セイラ、キリエ

「殴りたいと思ったら出てきた。」

 

 

銀さん

「嘘つけぇ!!」

 

 

煉獄

「うおぉぉぉぉ!!心を燃やせぇぇぇ!!」

 

 

レベッカ

「だからやめろって言ってるだろ!!」

 

 

煉獄

「いたぁ!?」

 

 

新八

「だからどっから出したそのフライパン!!」

 

 

 

 

そんで最終的に何とか固有結界は解除され元の廃村のいた場所に戻った。まあ最後は白玄が煉獄と同じ鬼殺隊の柱の人に変身して何とかなったんだけどね。

 

 

 

 

しのぶ

「煉獄さーん。大丈夫ですか。」

 

 

煉獄

「胡蝶・・・・もう少しまともな方法は無かったのか。毒は流石にやり過ぎでは。」

 

 

しのぶ

「だって煉獄さん中々静かにしてくれませんし、長引きそうだったのでこの方が手っ取り早いかと思いました。」

 

 

煉獄

「限度がある!!」

 

 

レベッカ

「本当だよ!!これ大丈夫なの!?」

 

 

しのぶ

「身体が痺れるくらいの分量しか入れてません。しばらくしたら動ける様になります。」

 

 

 

 

なら・・・・良いんだけど?流石に毒はやり過ぎでは?

 

 

 

 

しのぶ

「それに煉獄さんより彼方のお嬢さん方が大変そうですし。」

 

 

 

 

既に疲れ切ってぶっ倒れてたマリア姐さん達の姿があった。

 

 

 

しのぶ

「皆さん煉獄さんの所為で疲れ果てているんですよ。少しは反省して下さい。」

 

 

レベッカ、マリア、エルザ、セイラ、ひびき、キリエ、ゼフォン

「お前の所為だろぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

白玄が女性陣を揶揄うから疲れてんだよ!!

 

 

 

 

右衛門左衛門

「なんだこの茶番劇は。」

 

 

 

 

右衛門左衛門の仮面してても困った顔をしていたのが直ぐにわかった。

 

 

 

 

しのぶ

「では帰りましょうか。お二人の件もありますし。」

 

 

レベッカ

「そうだね。帰って寝よう。疲れた。」

 

 

 

 

廃村で新たに仲間になったバーサーカー、セイバー、アサシン、そして煉獄杏寿郎を連れて私達は京の街に戻った。まだ気づかなかった来客を残したまま。

 

 

 

 

今泉

「聖杯戦争。まさか京都でその様な戦が行われていたとは。そしてレベッカと炎柱はその戦を終わらせに来た。奴等は一体何者だ。」

 

 

 

 

民家の何処かに潜んでいたのか、青龍が私達の話を聞いていた様だ。どうやら私達は彼等を甘くみていた様だった。

 

 

それはそうとすっかり忘れてたけど右衛門左衛門と七花の問題があった。家に帰ると二人は早速顔を合わすなり睨み合うかのような気不味いオーラを放っていた。

 

 

 

 

とがめ

「七花。今帰ったぞ。それとお前に客人だ。」

 

 

七花

「ああ。そうみたいだな。」

 

 

 

 

白玄は道中でとがめの姿に戻っていた。家に入るとそこには七花しかおらず、子供達はいつもの出稼ぎに出ていた様だ。

 

 

 

 

七花

「まさかあんたも召喚されてたとはな、左右田右衛門左衛門。」

 

 

右衛門左衛門

「この様な形で再会するとはな。虚刀流。」

 

 

 

 

とりあえず私達は中に入って七花達の話を聞く事にした。

 

 

 

 

レベッカ

「それで、二人はどう言う関係なの?」

 

 

右衛門左衛門

「そこの白玄が化けている奇策士とがめ。彼女は虚刀流の相方でも有り、愛人でも有る。そんな彼女を虚刀流の目の前で私が殺しました。」

 

 

 

 

その言葉に驚いたが詳しく話を聞くと、二人は不遇の運命にあった。その元凶は、刀鍛冶の四季崎(しきざき) 記紀(きき)が作った12本の『完成形変態刀』にあった。

 

 

実は四季崎は占星術も使えたらしく、それで未来を占ったらしい。それが事の発端だった。「日本が海外の侵略戦争で滅びる」と出たのだ。それはこれからの日本に訪れる太平洋戦争の事だった。だが一族は将軍家を無くすために改変を試みたが上手くはいかなかった。結果私達が知っている徳川の江戸幕府では無く、家鳴の尾張幕府になっているのも、その過去改変が原因とされている。

 

 

四季崎はそれに対抗する為、占星術を使って未来予知を行い、先の時代の兵器を元に刀を作った。それが12本の完成形変態刀である。

 

 

そんな刀を巡っての七花達の旅は終わりを迎えたに見えたが、二人の前に右衛門左衛門現れ、お役御免との事でとがめを殺した。

 

 

それが二人の因縁に結びつく話だった。

 

 

 

 

マリア

「それが貴方達の因縁なのはわかった。けど何故彼女を殺さなければならなかったの?貴方が個人的な理由で人を殺める様には見えないけど。」

 

 

 

 

確かに姐さんの言う通り、主人に忠実な右衛門左衛門が自分の我儘でそんな大胆な事が出来るわけが無い。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「それは・・・。」

 

 

 

右衛門左衛門が語ろうとした時だった。

 

 

 

 

否定姫

「誰が喋って良いって言ったの。」

 

 

 

 

突然金髪の女性が私達の前に現れた。てか一体何処から湧いて出た!?

 

 

 

 

右衛門左衛門

「不愉快。」

 

 

否定姫

「何?」

 

 

右衛門左衛門

「不愉快極まり無い。かつて仕えていた主人に化けて何のつもりだ!白玄!」

 

 

 

 

 

あっ!白玄か。そんな事だろうと思ったよ。でもなんで?

 

 

 

 

否定姫

「何のつもりって?貴方どうせ否定姫の事については話さないつもりでしょ。だったら貴方達の事情を知っている私から話した方が都合が良いじゃない。」

 

 

 

 

右衛門左衛門は黙ってしまった。どうやら何かを隠すつもりで説明しようとしていたのだ。そして白玄からその真実が語られた。

 

 

 

 

否定姫

「この否定姫が右衛門左衛門に命じたからよ。「目的は果たしたから奇策士を殺せ。」って。尾張幕府を崩壊させるのに、奇策士の存在は邪魔だった。家鳴将軍家を落とさなければ異国との戦争は避けられない。でも何もかもが遅過ぎた。」

 

 

七花

「それは俺達も覚悟はしていた。そんで俺と姫さんが出した答えが、もし戦争が起きたら「そん時の時代の人間に任せる。」って事で納得した。」

 

 

右衛門左衛門

「なるほどな。貴様と姫様らしい。」

 

 

七花

「それにとがめの仇はもう討ったからな。」

 

 

レベッカ

「それってつまり・・・。」

 

 

右衛門左衛門

「黙らず。私は虚刀流との死闘の末命を落としました。」

 

 

 

 

まさか右衛門左衛門が物語の最後で七花に殺されていたなんて。ん?じゃあこれでお愛子になるから。

 

 

 

 

七花

「だからこいつと戦う理由がないって事だ。」

 

 

右衛門左衛門

「だが私は信用しかねる。虚刀流よ。白玄は貴様が信用足りるマスターか。貴様は私達の敵か。」

 

 

七花

「白玄は無闇に争う気はないし、それに目的は一緒だから多分違う。」

 

 

右衛門左衛門

「そうか。ならば拒否せず。この様な形で共闘するとは夢にまで思わなかった。」

 

 

七花

「それはお互い様だろ。」

 

 

 

 

二人は仲直りの握手だろうか、微笑みながら同盟を結んだ。

 

 

 

 

エルザ

「ところでエモンザエモン・ソウダ。」

 

 

右衛門左衛門

「その呼び方はいささか不快だライダー。右衛門左衛門で構わない。」

 

 

エルザ

「なら右衛門左衛門。貴方私達に連絡もよこさず京都に来たのはそれ程の事態が起きていると言う事でいいのかしら。」

 

 

 

 

そういや右衛門左衛門が来た理由を聞いてなかった。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「その前に確認したい事がある。セイバー、ライダー、キャスターはこの京都に着いて妙な気配を感じなかったか。」

 

 

 

 

何故か姐さん、エルちゃん、セイラにそんな質問をした。何?私達の近くに何かいるの!?

 

 

 

 

マリア

「いいえ?何も感じないわよ。」

 

 

右衛門左衛門

「では聖杯戦争の参加者は。」

 

 

ゼフォン

「これと言って何も。」

 

 

豊久

「敵が潜んどる気配もなか。」

 

 

右衛門左衛門

「では虚刀流と炎柱は。」

 

 

七花

「何も感じないぜ?」

 

 

煉獄

「うむ!一体何があると言うのだ。」

 

 

右衛門左衛門

「では白玄は。」

 

 

とがめ

「今確認してみる。」

 

 

 

 

白玄はそのまま座禅を組み目を瞑った。多分集中してると思うけど、目元に隈のようなアザが浮かび上がった。何かの感知魔法?だと思う。

 

 

 

 

右衛門左衛門

「姫様。失礼してアースとの通信を所望致す。」

 

 

レベッカ

「わかった?」

 

 

 

 

何が起きてるのかわからなかったが、とりあえずアースに通信してみた。向こうなら何かわかってるかもしれない。

 

 

 

 

ロマニ

[やっと繋がった!!]

 

 

 

 

ドクターが慌てた様子で出てきたんだけど?え?今まで通信出来なかったの!?

 

 

 

ロマニ

[あれから君からの連絡がないから、こちらから近況を聞こうとしても通信が繋がらないし!皆んな心配していたんだよ!!]

 

 

レベッカ

「なんかすいません。あれから色々有りまして。でもそれなりに収穫はあったよ!」

 

 

 

 

ドクターにこれまでの事を説明した。その中で本部で驚いたのがアベンジャーの存在だった。

 

 

 

 

ロマニ

[アベンジャーか。まさかエクストラクラスのサーヴァントまで出現とはまずい事になった。]

 

 

剣城

[通信障害や京都全体から放たれてる殺気はアベンジャーの仕業なのかな?]

 

 

ロマニ

[その可能性はあるかもね。白玄の反応からして、そのアベンジャーはかなり危険な存在かもしれない。]

 

 

 

 

ん?何か剣城君からヤバそうな一言が聞こえて来たんだけど?

 

 

 

 

レベッカ

「右衛門左衛門!説明プリーズ!!」

 

 

右衛門左衛門

「姫様達が出立されて数日の事でした。京都の地全体から殺気が放たれていたのです。アースに向けて。」

 

 

マリア

「京都全体からですって!?」

 

 

右衛門左衛門

「今現在、ニンジャスレイヤーと黒の陣営のアサシンが見張っております。」

 

 

 

 

との事で私は二人に確認を取ってみた。

 

 

 

 

ニンジャスレイヤー

[未だに京都の殺気は消えていない。エモンザエモン=サン。そちらで何か感じるか!]

 

 

右衛門左衛門

「京都に着いた途端何も感じなくなった。」

 

 

ゴブリンスレイヤー

[それはおかしい。こっちは強力な殺気を受けている。そっちで何も感じないはずはない。]

 

 

 

 

いや、でも戦の達人の豊さんや七花ですら気付いてないのに?

 

 

 

 

レベッカ

「何かの間違いじゃないの?」

 

 

とがめ

「いや。アースの情報は間違いなく正しい。」

 

 

 

 

さっきまで感知していた白玄がようやく口を開いた。目元にあった隈は消えていた所を見ると終わったと言っていい。

 

 

 

 

とがめ

「仙人モードで自然のエネルギーを感知してみたが、そこに混じってより濃度の濃いマイナスエネルギーを察知した。かなりヤバい奴が京都に潜んでいるな。」

 

 

レベッカ

「それってアベンジャーなの。」

 

 

とがめ

「いくらアベンジャーでもここまでの殺気は放てまい。それよりかなりヤバい奴だ。怨霊の類かもしれない。」

 

 

レベッカ

「え!?それってヤバくない!?都の人達何もなかったけど大丈夫なの!?」

 

 

とがめ

「今のところ誰かに危害を加える気配は無い。ただ話を聞く限り恐らく狙いはアースだろう。」

 

 

 

 

正体不明の殺気はアースに向けて放たれている事になる。それがアベンジャーか、はたまた七騎の大罪なのか、いずれにしても放って置けない事態には違いなかった。

 

 

 

 

とがめ

「さて。わからぬものをいつまで考えてもしょうがない。早速ではあるが本題に移ろう。アベンジャー、志々雄真実について全てを語ろう。」

 

 

 

 

白玄から志々雄真実について彼の物語が語られた。

 

 

時は明治時代。彼は明治政府打倒と日本征服を目論んでいた。『弱肉強食』を信念にしており、弱者を踏み殺し強者が生き残る世界を思考にしている。自らを悪人と自覚しているが、それが日本を強国にする正義と信じている。そんないかれた性格をした剣士だった。

 

 

全身に大火傷を負ったのは、幕末に明治政府の維新志士の仲間に斬られ、動けなくなった所を燃やされたのだと言う。だが彼は生還した。全身に大火傷を負い、発汗機能はほぼ死滅し、普通の人間以上の高温を常時保っていると言う。普通なら熱中症で死んでもおかしく無いのだが、体内に内熱機関の様なものがあって高温になるほど、身体能力を向上させる能力を持っている。けどその持続時間は僅か15分だと言う。

 

 

正直、私には理解できない事ばかりだった。彼の思想も野望も、その身体能力も全てがデタラメである。それは私だけじゃなかった。

 

 

 

 

煉獄

「うむ!とてつもなく危険人物と言う事は理解した!」

 

 

エルザ

「弱肉強食。確かにアイドルの世界では良くある話よ。でも命を奪われる筋合いは無いわ!」

 

 

ひびき

「全くだ!そんなの弱いものいじめと変わらないじゃ無いか!!」

 

 

右衛門左衛門

「理解できず。もはやイカれてるとしか言いようがない。」

 

 

 

 

けど豊さんだけは彼を称賛していた。それは戦国武将の豊さんにしかわからない意見だった。

 

 

 

 

豊久

「志々雄真実は勿体のう男じゃ。戦の世に生まれていれば、奴は名を上げた立派な武者になれたもの。」

 

 

マリア

「だからこそ彼は平和の世に出るべきではなかった。」

 

 

 

 

皆んなは『志々雄真実』と言う男の存在が悪である事はハッキリしていた。私もそうだったが、でも数日後、私は彼を目の当たりにした時に後悔する。もはや「悪」とは一言では片付けられないそんな信念を持った英霊だと言う事を身をもって体験する事になるのだから。

 

 

更にこの後、白玄から残酷な現実を突きつけられた。

 

 

 

 

とがめ

「この際だからはっきり言わせてもらう。この場にいる者では志々雄真実を倒せる者は誰一人としていない。この私も含めてだ。」

 

 

 

 

要は志々雄真実の攻略は不可能と叩きつけられた。

 

 

 

 

レベッカ

「じゃあどうやって倒すんだよ!!」

 

 

煉獄

「落ち着けレベッカ!何も誰か一人が挑むわけでは無い。ここにいる俺達全員で、志々雄真実を討つぞ!」

 

 

 

 

わかってるけど!!白玄でも難しい相手でしょ!?

 

 

 

 

とがめ

「そう騒ぐなレベッカ。今は混乱してても仕方ない。」

 

 

レベッカ

「いやそうだけど。そんなヤバい奴にどうやって勝つの。」

 

 

とがめ

「その為の情報収集だ。これだけの人員が揃ったんだ。お主抜きでも手掛かりが掴めるだろう。」

 

 

レベッカ

「え?私抜きで?何で?」

 

 

とがめ

「もう忘れたのか。お主今守護柱から狙われておるのだぞ。」

 

 

 

 

そうだったぁぁぁ!!すっかり忘れてたぁぁぁ!!

 

 

 

 

ゼフォン

「彼女何かやらかしたのですか?」

 

 

マリア

「私達の存在がここのお役人に目をつけられて何故かレベッカを狙ってるみたいなの。」

 

 

ロマニ

[レベッカ。ど言う事か説明を。]

 

 

レベッカ

「はい。」

 

 

 

 

ドクターは怒りを抑えながら問いただして、私は怯える様に説明した。

 

 

 

 

ロマニ

[出来れば現地の一般人を巻き込むのはやめて欲しかったが、まさかお偉いさん方のお役人に目を付けられるなんて。]

 

 

とがめ

「いや、こればかりは仕方ない。なんせ向こうもかなりの手練れでな、これ以上は隠しきれんかもしれん。」

 

 

ロマニ

[そうか。ならその時はそちらで対処を頼む。]

 

 

 

 

厄介な問題は、守護柱達と志々雄真実に京都全体から放たれている謎の殺気だ。どちらかは必ず何か起こっても不思議じゃ無い。そう思っていた。

 

 

 

 

シズ

「だとしたら早くアベンジャーを何とかしないと都の人達が危ない。」

 

 

 

 

すると彼女が話し出した時だった。

 

 

 

 

リムル

[シズさん・・・・。その声シズさんだよな!?]

 

 

 

 

アースの向こう側から誰かが彼女に呼び掛けた。シズも聞き覚えのある声だったのか、さっきまで冷静だった彼女が取り乱していた。

 

 

 

 

シズ

「え!嘘!もしかして・・・スライム君!?」

 

 

 

 

彼女は咄嗟に仮面を外したが・・・あらやだスゲー美人!!

 

 

 

 

とがめ

「剣城くん。お主の陣営にはリムル・テンペストがおるのか?」

 

 

剣城

[そうですけど・・・セイバーと知り合いですか?]

 

 

とがめ

「当たり前だ!何故リムルがいる事を教えてくれなかった!!」

 

 

 

 

リムルってゴブリンスレイヤーが抱えてたあのスライムか?てかこの二人どう言う関係?

 

 

 

 

とがめ

「リムルよ!通信が繋がってる内に伝えたい事を全て伝えよ!この機会を逃したら次は無い!」

 

 

リムル

[ありがとう!シズさん!!俺、シズさんに話さなきゃいけない事がいっぱいあるけど、先にこっちから話しておくよ!!]

 

 

 

 

リムルの話だと、シズには教え子がいたらしく、訳あってその子達と別れて旅をしていたらしい。ただその子供達は不完全に異世界に召喚されたらしく、寿命も長くなかったと言うのだ。その事をシズは気にしていたらしいのだが、彼女と出会ったリムルがその事実を知り、シズの亡き後彼女の代わりにその子達を指導しつつ、精霊を宿す事で短命の問題も解決したのだと言う。

 

 

その話を聞いたシズの目から涙が零れ落ちていた。

 

 

 

 

シズ

「よかった・・・本当によかった・・・。」

 

 

リムル

[それとユウキとヒナタにも¥€$2€€5¥¥→・・・・プツンッ。]

 

 

 

 

電波が悪いのか通信は再び遮断された。せっかく再会出来たのにタイミング悪すぎる。そう思っていたけど彼女はそんな感じではなかった。

 

 

 

 

シズ

「ありがとう・・・ありがとう!レベッカ!」

 

 

 

 

彼女は泣きながら私にお礼を言っていた。シズの事は本当によかったと私も含め、誰もがそう思った。

 

 

その後で報告と会議は終わり、皆んな早速行動に移った。煉獄は怪しまれぬよう御所に戻っていき、私と白玄だけが残った。彼も残ったのは私を護衛してくれるサーヴァントがいなかったから代わりに入ってるだけだった。私は一夜人通しで歩き回っていたから、体はクタクタだし眠いしお休みなさいと行きたいところだったが。

 

 

 

 

今泉

「失礼する。」

 

 

「お久しぶりね!」

 

 

鏡夜

「なるほど。ここなら見つからないわけだ。」

 

 

 

 

 

守護柱の青龍と、あろう事か私が聞き込みで訪れた一座の座長さん、そして姐さんが会った紫の着物を着た男の人がこんな辺境の場所にやって来たのだ。

 

 

 

 

レベッカ

「あの私夜勤明けなんで寝かせてもらえます。」

 

 

今泉

「奇遇だな。俺も夜勤明けだ。」

 

 

 

 

そう言うと三人は入り込んで座り始めた。話勝手に進んでるし!てか眠い!!

 

 

 

 

 

「これで会うのは二度目になるかしら。西洋のお嬢さん。」

 

 

レベッカ

「はい。」

 

 

「それじゃあ改めまして、京都の西を守護している朱雀の守護柱で、京都一座の座長もしている櫻田灯よ。よろしくね。」

 

 

レベッカ

「あれ?でも芸者さんじゃ?」

 

 

「そうね。普段は一座を開きながら京都の街を回ってるわ。」

 

 

レベッカ

「そうだったんだ。」

 

 

 

 

なんか勝手に自己紹介始まったけど?

 

 

 

 

鏡夜

「南を守護する玄武の守護柱、陰陽師の九条鏡夜だ。」

 

 

レベッカ

「オンミョウジ?」

 

 

鏡夜

「西洋で言う所のエクソシストの様なものだ。病魔や妖を祓う術者だよ。」

 

 

レベッカ

「なるほど。」

 

 

 

 

エクソシストにも詳しいんだこの人。てか帰ってくれないかな。

 

 

 

 

今泉

「手嶋さんからも聞いているが改めて名乗らせてもらう。東を守護する青龍の守護柱、今泉竜星だ。」

 

 

レベッカ

「レベッカ・スカーレット・ティファニーです。」

 

 

今泉

「話を始めたいところだがその前に聞きたい事がある。」

 

 

レベッカ

「ああ・・・。白玄ね。私も気になってる。」

 

 

 

 

白玄がまた変なリアクションで彼等を見ていたからだ。目玉が飛び出ていたがやめてくれ恥ずかしい!!

 

 

 

 

とがめ

(弱虫ペダルの今泉俊介だけじゃなくて『城下町のダンディライオン』の櫻田(さくらだ)(あかね)に、『ガンダムビルドダイバーズ』のクジョウ・キョウヤだと!?何この組み合わせ!?此奴等が京都の守護柱だと言うのか!?)

 

 

レベッカ

「あの白玄。皆んな貴方の顔に気が散ってまともに話せる状況じゃないんだけど?」

 

 

とがめ

「すまぬ。こちらの事だ。始めてくれ。」

 

 

 

 

やっと話に打ち出せたが、私達は驚愕の内容を聞かされた。

 

 

 

 

今泉

「お前達の目的は理解した。まさか京都で聖杯戦争と言う戦が行われていたとはな。」

 

 

レベッカ

「ッ!?」

 

 

 

 

 

え・・・・なんで青龍が聖杯戦争の事を知っているの?そう言えば私と同じ夜勤明けって言ってたけど・・・・まさか廃村まで付けられてた!?

 

 

 

 

今泉

「廃村での密会は聞かせて貰った。お前達が聖杯戦争を止めるべく動いていた事も、客将で迎えている炎柱と共に動いていた事もな。」

 

 

レベッカ

「じゃあ志々雄真実の事も?」

 

 

今泉

「聞いていた。真実を話してもらおうか。」

 

 

 

 

それを聞いた時、私は今までの事、サーヴァントや聖杯戦争の事を全て話した。白玄は何も言わなかったが、恐らく止める気も無く、話すつもりでいたのだろう。それを聞いた彼等の表情すらも変わる事は無かった。

 

 

 

 

鏡夜

「炎柱を含めた者達はサーヴァントとと言う最強の使い魔で、君達二人はその主人である魔術師なんだね。」

 

 

今泉

「そして聖杯戦争は言わば聖杯を掛けた戦争ではあるが、真相は願望を叶える為の儀式だった。」

 

 

「レベッカちゃん達と炎柱はその聖杯戦争を止める為に動いて阻止は出来たものの、今度は志々雄真実って言う殺人鬼が動いた。こんな感じでいいかしら?」

 

 

レベッカ

「そんな感じです。」

 

 

 

 

 

京都の人達が巻き込まれるのはわかり切っていた。わかった上で、私は正直に彼等に伝えた。

 

 

 

 

レベッカ

「早急にお引き取り下さい。私達は志々雄真実の件が済み次第、京都を離れます。貴方方にこれ以上迷惑を掛けるつもりはありません。だから、今回の事は見なかった事にして忘れて下さい。」

 

 

今泉

「甘えるな小娘。そんな理由でこちらも引くつもりはない。ましてやそんな悪人が彷徨いているなら尚更だ。それを見過ごす事など職務怠慢、率直に言えばお前達の存在こそこちらは迷惑している。余所者が立場を弁えろ。ここは我等の京都だ。」

 

 

 

 

厳しい口調でそう突き返された。彼等は私達の戦いに介入するつもりでいたんだと思う。

 

 

 

 

今泉

「俺達は帝からお前に不穏な動きが有れば拘束するよう命を受けている。先程話した事も報告させてもらう。」

 

 

 

 

やっぱり向こうは私を何とかしたい考えのようだ。でも捕まるわけにもいかなかったその時だった。

 

 

 

 

今泉

「今回は見逃してやるが、誤解を招く行動は控えろ。」

 

 

レベッカ

「え?捕まえに来たんじゃ無いの?」

 

 

今泉

「前にも言った筈だ。「災いをもたらす者か、災いを祓う者か、こちらで見極めさせてもらう。」とな。」

 

 

レベッカ

「それじゃあ。」

 

 

今泉

「少なくともお前達は京都の悪鬼を祓う為に動いている。そんな者達を罪人にする訳にはいかない。」

 

 

「ただ聖杯戦争や志々雄真実の事は帝に報告させて貰うわ。」

 

 

レベッカ

「わかりました。ありがとうございます。」

 

 

 

 

私達を見逃してくれるようだった。何とか助かったみたいだが、まだ安心は出来ない。

 

 

 

 

鏡夜

「我々三人は見逃すが、白虎は西洋人を良くは思っていない。彼には近づかない事だ。」

 

 

 

 

 

玄武からその様に念押しされた。やっぱり数年前に起きた世界大戦が原因だと思う。

 

 

 

 

今泉

「俺達はこれで失礼する。何かあれば手嶋さんに相談してくれ。」

 

 

レベッカ

「手嶋さん?」

 

 

今泉

「少なくともあの人はお前達の味方だ。」

 

 

 

 

そう言って彼等は立ち去って行き、私も糸が切れた様にそのまま寝てしまった。起きた時には辺りは暗くなっていて、サーヴァントも子供達も帰って来ていた。皆んな白玄から昼間の話をしていたらしい。その事で私は煉獄杏寿郎から今後どうするか相談した。

 

 

 

 

煉獄

「あの後、帝や守護柱の会合に立ち会ったが、引き続き監視が続行される事になった。」

 

 

レベッカ

「貴方は?」

 

 

煉獄

「追い出されずに済んだ。レベッカ達との連絡や報告役として置いとくそうだ。」

 

 

レベッカ

「そっか。」

 

 

煉獄

「だが、白虎殿は些か納得していない御様子だった。余程レベッカ達西洋人を良く思っていない様だ。出歩く時は護衛を付けた方がいい。」

 

 

 

 

それなら出歩けるか。ずっと部屋の中にいたら腐りそうだし、やっと解放されるわ。危険なのは変わらないけどね。

 

 

 

 

煉獄

「俺は君達をそうは思わない。レベッカもエルザも、心の中に熱い物を感じた。それに君達には感謝している。」

 

 

 

レベッカ

「どうして?」

 

 

煉獄

「正直な所、聖杯戦争に参加しているサーヴァント達を説得するなど一人でやり遂げる自身が無かったからだ。あれ程の猛者を相手に俺の話を聞いてもらえるか、恥ずかしながら心の中で迷っていた。だが、セイラからは可能性を、エルザからは優しさを、そして君からは、何事にも真っ直ぐに立ち向かう勇気を見せてくれた。だから俺も進む事が出来た!!」

 

 

 

 

 

そうか。威風堂々してても、心の中で彼は迷う事もあったんだ。私は心底彼の事が気に入ってしまった。

 

 

 

 

レベッカ

「まあこれから忙しくなるけど、よろしくね!()()!」

 

 

 

 

だから私は親しみを込めて兄貴って呼ぶ事にした。

 

 

 

 

煉獄

「わっしょい!!」

 

 

 

 

そう呼ばれて余程嬉しかったのか、兄貴は興奮しながら「わっしょい!!」と叫んでいた。波乱の京都はいよいよ後半戦に突入した。

 

 

 

 

 



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第七話『未来からの来訪者』

 

 

 

 

京都の聖杯戦争のサーヴァント達に会う為、私達は廃村を訪れた。

 

 

そこでバーサーカーの島津豊久と出会い交渉を試みたが、女だからって理由で私達との協力を拒否していた。そんな理由で頭にきた私はバーサーカーに文句を言いたい放題言ったが、それが功を奏したのか協力する気になった。

 

 

だが喜んだのも束の間、私達の行動を目にしたセイバーの井沢静江とアサシンのゼフォンが襲いかかって来た。二人は話を聞く気も無く、そのまま戦闘に入ってしまった。ゼフォンが私の首を取ろうとした時、右衛門左衛門が駆けつけて来た。

 

 

そんな時、聖杯戦争の中止を高らかに宣言する声が聞こえた。私達と戦ってくれた煉獄杏寿郎の兄貴だった。彼はアベンジャーの志々雄真実の出現に危機を伝える為、聖杯戦争の中止宣言と協力要請を皆んなに訴えた。

 

 

快く承諾した私達は家に戻り、右衛門左衛門と七花の因縁。志々雄真実の脅威。そして京都守護柱との密会とさまざまな出来事が起こった後、私達は志々雄真実の行方を探る為、皆んな情報収集に動いてくれていた。私はと言うと、京都の守護柱の存在もある為、行動が制限されていた。

 

 

 

 

 

レベッカ

「でも流石に買い物ぐらいは大丈夫だろ。」

 

 

シズ

「油断しちゃダメよ。白虎にも狙われているんだからね。」

 

 

 

 

私はシズさんを護衛に付けて買い物に出掛けていた。警戒心の強かった彼女とはすっかり打ち解けて、今では楽しくお喋りしている。最初は怖かったけど、いざ話してみると明るいし優しくて、同い年くらいの見た目とは思えないほど大人びてるし、なんだかお姉ちゃんって感じがした。おまけに美人だし、言う事なしかな。

 

 

 

 

シズ

「どうかしたの?」

 

 

レベッカ

「ううん。何でもない!」

 

 

 

 

まるで静かな平穏が、訪れた様に見えた。

 

 

その頃セイラ、マリア、エルザの三人は手嶋さんの元を訪ねていた。やはり青龍から私達の事を聞いていると言う話なので確認しに訪れていたのだ。

 

 

 

 

手嶋

「事情は理解した。けど幽霊にしては随分可愛げがあるな。」

 

 

セイラ

「そう言われるとなんだか照れちゃうよ。」

 

 

マリア

「セイラ。男って可愛い娘には問答無用で口説いてくるから気をつけなさい。」

 

 

手嶋

「ひでぇ言われ様だな!外人さんにはウケが悪いか!?」

 

 

 

 

けどいざこざが起こる訳でもなく、お互いいつも通りに接していた。それを聞いた時は安心した。

 

 

だが問題は、キリエとゼフォンとひびきの方だった。

 

 

 

 

チンピラA

「おいジジイ!てめぇいつまでここに居座るつもりだ!!」

 

 

チンピラB

「汚ねぇから集落に行けえ!!」

 

 

 

 

それは、若い男の通行人が一人の老人に殴る蹴る暴行を見かけた時だった。

 

 

 

 

ひびき

「やめろ!!」

 

 

 

 

当然、ひびきは許せなかったのか彼等に注意を呼び掛けに迫った。キリエもゼフォンも、チンピラに頭来たのか、賛同して着いて行った。

 

 

 

 

ひびき

「寄ってたかってお爺さんを痛ぶるのはやめろ!!」

 

 

チンピラA

「なんだガキ共引っ込んでろ!!」

 

 

チンピラB

「数日前からこの爺さんここに居座ってるんだ!!だから親切に注意してやってんだよ!!」

 

 

ゼフォン

「注意?老人相手に暴行を加えるのがですか?頭いかれてますね?今この場で死にますか?」

 

 

キリエ

「こらこら何でも殺しちゃいかんよ。殺るなら両腕両足へし折って顔面めちゃくちゃにした後にして!」

 

 

チンピラA

「言ってくれるじゃねえか!」

 

 

チンピラB

「テメー等も痛い目合わせて・・・・ッ!?」

 

 

 

するとさっき痛ぶられていたお爺ちゃんが、チンピラの片腕を掴んでいた。ひびき達に殴りかかろうとしていた所を掴んでいた。ただ、その老人に掴まれたチンピラの腕はピクリとも動かず・・・いや動かす事が出来なかった。

 

 

 

???

「若者よ。目の前の弱っている敵に止めを刺さず、余所見をするのは己の破滅を招く要因。敵の救援を阻止し、速やかに息の根を止める事こそ戦いの鉄則よ。」

 

 

チンピラB

「腕が動かね!なんて力だ!?」

 

 

???

「ただ・・・・命をもて遊ぶのであるなら愚の骨頂。災いは唐突にやって来る。」

 

 

チンピラB

「何言ってやがる。」

 

 

???

「このまま汝の腕を折っても構わぬと申している。内なる心に暗雲が立ち込めたのなら、潔く退くのもまた一興。汝の選択が今後の事象を引き起こす。娘等に嬲り殺されるか、ワシに腕を折られるか、小動物の様に逃げ回るか、このまま沈黙を続けるか。この選択は汝の特権なり。」

 

 

 

 

そして彼等がとった選択がこちら。

 

 

 

 

チンピラB

「・・・・うわぁぁぁぁ!!すいませんでしたぁぁぁぁ!!」

 

 

チンピラA

「待ってくれ!置いてくなぁ!!」

 

 

 

無様に逃げていく事だった。てか浮浪者のお爺ちゃん強!!ひびき達は直ぐにお爺ちゃんの所に駆け寄ったけど、平気な様子で土埃を払っていた。

 

 

 

ひびき

「大丈夫ですか!!」

 

 

???

「何、可愛い子供等が戯れて来たに過ぎぬ。」

 

 

キリエ

「いや、もうボカすか殴られてたけど?」

 

 

 

うん。メッチャ殴られてたけど?

 

 

 

???

「ホホホ。お主達が手を差し伸べたのも解、若僧共が善意で行ったのもまた解。」

 

 

キリエ

「いやいや、どう見てもあいつ等が悪いでしょ?」

 

 

ゼフォン

「善意と言うより悪意の塊です。不審な行為をしている貴方に鬱憤を晴らしに来たとしか言いようが無い。」

 

 

 

 

うん!キリエとゼフォンの言う通りだ。

 

 

 

 

???

「成ればそれも正当な解と言える。」

 

 

ゼフォン

「は?」

 

 

キリエ

「え?」

 

 

 

 

だがこのお爺ちゃんはそれすらも許そうとしていた。相当な変人だな。

 

 

 

 

ゼフォン

「では何が誤りなのですか?お答え下さい。」

 

 

 

 

ゼフォンが問いかけると何か言い難い答えが返って来た。

 

 

 

 

???

「何かを成さず、何も考えず、何も感じず、己の心に従わず。理由無き行い程残酷なものは無い。」

 

 

 

 

さっぱりわからん!!

 

 

 

 

???

「どの様な行にも必ず理由が存在する。『欲望』『野望』『正義』『復讐』『嫉妬』『独占』『遊戯』『快楽』『否定』『差別』『軽蔑』『運命』。他者を傷つけ命を奪う事もそこに理由が存在してこそ正当化される。」

 

 

ひびき

「そんなの間違ってる!!それは私達が一番やっちゃ行けない事だ!!」

 

 

ゼフォン

「それに貴方の話は訳がわかりません。さっきから聞いていれば、まるで理由があれば何でもかんでも許される。それでは矛盾だらけになってしまいます。」

 

 

 

 

もう私には何が何だかさっぱりわからんけど、ひびきに賛成!!

 

 

 

 

???

「その矛盾こそ対立する解を導く最も最良の方法。即ち『勝負』『戦い』『決闘』『戦争』である。」

 

 

 

 

もうやめてお爺ちゃん。私の頭がパンクしそう。

 

 

 

 

キリエ

「お爺ちゃんさ。イカれてるって言われない?」

 

 

 

 

いや言われてもおかしくないよね。私でもドン引きだもん!

 

 

 

 

???

「ホホホ。イカれているか。狂戦士にとっては名誉な褒め言葉よ。」

 

 

キリエ

「いや褒めてないけど?」

 

 

 

全くだ!!

 

 

 

 

ひびき

「お爺さん。ケンカが嫌だから、戦争が嫌だからしたく無いし止めるんだ。それを正しいって言うのは間違っている。」

 

 

 

 

この後、ひびきが気持ちをお爺さんに伝えた時だった。彼はひびき達にとんでもない情報を伝えた。

 

 

 

 

???

「うむ。やはり()()()()()()()()を止められるのはお主しかおらぬようだな。」

 

 

 

『ソルベットの皇女』つまりアリシアの事だった。

 

 

 

ひびき

「アリシアを知っているのか!!」

 

 

???

「うむ。お主を待っておった。『天翔ひびき』。お主等の旅路にはソルベットの英霊達が立ちはだかるであろう。」

 

 

キリエ

「ソルベットの英霊?」

 

 

ゼフォン

「アリシア・シャーロットが召喚した七騎の英霊だと思います。」

 

 

 

 

うそ!?てっきり城を守る衛兵かと思ったけど、刺客として送るんかい!!

 

 

 

 

???

「既にアサシンが動き出している。その者の実態を語ろう。」

 

 

 

 

アサシンか。確かに先鋒で差し向けるとしたらベストだ。でもどんなサーヴァントなんだろ?もしかしてジャパニーズニンジャ!?

 

 

 

???

「その英霊「人であって人にあらず。」その耳と尾は馬にあり。目元に刻まれたアイシャドーは継承の証。青き衣を纏い、芝を駆けるその姿はまさに『女帝』と名乗る風格にあり。」

 

 

キリエ

「わかった?」

 

 

ひびき

「さっぱりだ!!」

 

 

ゼフォン

「おそらく獣人でしょうね。それも馬の。何故クラスがアサシンなのでしょう?」

 

 

 

てかお爺ちゃんの説明が難しすぎるんですけど!?

 

 

 

???

「その者の真名は『エアグルーヴ』。既に『アトランティス』に向かっておる。」

 

 

 

するとお爺さんの身体が光り始めた。まるで英霊が元の世界に帰る時のような感じだった。

 

 

 

???

「時が来てしまったようだ。やはり封印されていてはこれが限界か。」

 

 

ひびき

「聞いてもいいですか。」

 

 

???

「構わぬ。話すが良い。」

 

 

ひびき

「私にしかアリシアを説得出来ない。それはわかりました。ですが貴方が私に頼む理由があるのではないですか。貴方は本当は助けて欲しいんじゃ無いんですか!憤怒の狂戦士(ラースバーサーカー)!!」

 

 

キリエ

「え!?」

 

 

ゼフォン

「やはりそうでしたか。」

 

 

キリエ

「えぇぇぇ!?」

 

 

 

 

えぇぇぇ!!まさかの七騎の大罪!?てか何でソルベットにいるはずの憤怒の狂戦士(ラースバーサーカー)が京都にいるの!?

 

 

 

 

???

「語る時無し。全ての聖杯を手にしソルベットに来れり。そこに答えはある。」

 

 

 

 

そう言って彼は消えていったと言う。私達がその話を聞かされたのは、夜の出来事だった。報告がてら皆んなで集まったが、たまたまその日はアースと通信が繋がっていた。

 

 

 

 

レベッカ

「疲れたぁ!!」

 

 

マリア

「話の間にあれだけツッコミ入れたら疲れるわよ。」

 

 

 

 

私はひびき達の話の合間にツッコミを入れて疲れていた。

 

 

 

 

エルザ

「白玄。その女帝を名乗っているエアグルーヴは何者なの。」

 

 

 

 

アリシアに召喚されたアサシンのサーヴァント、エアグルーヴについて語られた。

 

 

 

 

とがめ

「彼女の前に、先ずは三次元世界のある時代について語ろう。」

 

 

 

 

なじぇ?と思いながらも話を聞いた。終戦後の昭和後期から平成の初期に渡って、日本のスポーツ界は有力な選手が生まれた時代があった。

 

 

そして競馬界にも、数多くの名馬が誕生した。エアグルーヴはその平成初期に活躍していた世代で、かなり上位の成績を取っていたらしい。

 

 

 

 

レベッカ

「ん?ちょっと待って!エアグルーヴってアニメーションのサーヴァントじゃないの!?」

 

 

とがめ

「勿論、憤怒の狂戦士(ラースバーサーカー)が言っていたエアグルーヴはアニメーションのサーヴァントだ。私が話したのは、彼女のモデルとなった競走馬の方だ。」

 

 

レベッカ

「馬の獣人って言ってたっけ?だとしたら聖杯の影響でそうなったのかな?」

 

 

ゼフォン

「そうなりますね。」

 

 

 

だが私達が真剣に考えてるのにこの変態は隣でクスクスと笑っていたのだ。

 

 

 

レベッカ

「こら!真面目な話をしてるのに何笑ってんだ!!」

 

 

とがめ

「すまん。だがそれは聖杯の影響では無く元からそうなのだよ。」

 

 

レベッカ

「え?でもエアグルーヴって馬なんだよね?」

 

 

とがめ

「うむ。馬であるぞ。」

 

 

 

 

訳わからない!?三次元世界の馬が何をどうしたらアニメーションの人間の姿になるの!?

 

 

 

 

とがめ

「レベッカよ。『擬人化(ぎじんか)』は知っておるか。」

 

 

レベッカ

「知らないけど?」

 

 

とがめ

「例えば豊さんの『刀』、右衛門左衛門の『銃』、キリエの『戦闘機』、エルザ達アイドルの衣装に付いている『宝石』。それ以外にも『車』に『機関車』に『新幹線』。そう言った道具や乗り物に関わらず、『動物』に『昆虫』に『植物』と言った生き物。更にはアニメーションから生まれたロボットや怪獣。それ等の人成らざる者を人に変えてしまうアニメーションの技法の一つだ。」

 

 

 

 

可愛いネコちゃんを可愛い女の子にするって事か?アニメーションって何でもありか?

 

 

 

 

豊久

「つまりあれか?(おい)の刀が妖術で人の姿に化けるっちゅうことか!?」

 

 

とがめ

「しかも驚くでないぞ豊久殿。500年後の未来人はそれ等を妖術など使わず、職人の技で変えてしまうのだ!」

 

 

豊久

「そげばほんとか!?」

 

 

 

 

うわぁ・・・何も知らない豊さんからかい出したよ。

 

 

 

 

とがめ

「そのエアグルーヴもまた、三次元世界の競走馬から競走ウマ娘として擬人化を果たしたサーヴァントなのだ。彼女達の世界に馬と呼ばれる動物がいない代わりに、『ウマ娘』と言う種族が人間と共に繁栄を築いてきた。そしてエアグルーヴは平成の黄金時代に活躍し、女帝を受賞した名誉ある名を継いだウマ娘なのだ。」

 

 

 

 

何か聞いてると凄い武勇伝のような。ん?でも内容からしてそれって『競馬』だよな?

 

 

 

 

レベッカ

「そのエアグルーヴってスポーツ選手?」

 

 

とがめ

「うむ。アイカツ!のアイドル達同様戦闘向きのサーヴァントではない。だが、彼女はアサシンとして召喚された。どの様な戦いをするのかは皆目検討もつかん。」

 

 

 

 

確かセイラとエルちゃんは、自分達が発するオーラを操って攻撃してたけど、スポーツ選手はどんな技を繰り出すんだろ?

 

 

 

 

とがめ

「レベッカ、剣城君。二人は擬人化サーヴァントと契約した方がいいだろう。」

 

 

剣城

[どうしてですか?]

 

 

とがめ

「さっきも説明したが、擬人化サーヴァントは刀剣や軍艦、馬が人の形を成して生まれてくる。そのモデルは、私達三次元世界の聖遺物から来ている。」

 

 

レベッカ

「そうなんだ。アニメーションって自分達が想像した物だけじゃ無くて私達の住んでる世界を舞台に物語が形成されて行くんだ。昔の人のイマジネーションは凄いな。」

 

 

とがめ

「それが、お前達の世界では有難い物になっている筈だ。」

 

 

 

 

いや・・・・考えてもわからんのだが?

 

 

 

 

クライド

[そうか!!擬人化サーヴァントは言わば『歴史の資料』と言う事になる!!]

 

 

 

 

クライドさんが突然叫び出したかと思ったら、何と擬人化サーヴァントが私達の世界で失われた歴史の重要な資料の役割も果たしているのだ。500年前に起きた第三次世界大戦で消失したのはアニメーションだけで無く、歴史の資料や文化財も失い、その知識は大まかな物から断片的な物しか無かったのだ。

 

 

 

 

レベッカ

「凄く重要じゃん!!」

 

 

とがめ

「うむ。アースにとっても重要な存在になるやも知れぬ。かつての偉人達が残した物が、教訓として活かされぬのは残酷であるからな。」

 

 

 

 

そうかもしれない。もしまた世界大戦なんて起きたら大変だ。昔の歩く資料が擬人化サーヴァントなら是非とも遭ってみたい。

 

 

 

 

とがめ

「ラースバーサーカーは持てる力を振り絞って、ひびき達の所に現れ、情報を伝えてくれた。今後の為に有効活用させて貰おう。」

 

 

 

 

そう言って今回はお開きとなった。アリシアの計画が動き出そうとしていた事にも驚きだったが、まさか被造物のサーヴァントの中に私達の世界の歴史を再現した物までいたとはね。アニメーション凄すぎる。

 

 

それから数日の時が流れ、あの残酷な出来事が来てしまった。

 

 

 

レベッカ

「あれから何も起きないし、志々雄真実も出て来ない。やっぱりガセネタだったのかな?」

 

 

シズ

「だといいけど、もしかしたらって事もあるわ。油断しないで。」

 

 

 

 

今、私とシズさんは今日の街を周っていた。こうも何もないと不気味に感じ、私達は手分けして情報を探していた。

 

 

 

 

男性A

「おい聞いたか。伏見温泉の話。」

 

 

男性B

「急に店を休業したって話だろ?あれから三日は経つがな。」

 

 

男性A

「何かあったんだろうな。」

 

 

 

 

年老いた男性二人が『伏見温泉』の話をしていたが、どうも数日前から休んでいるらしい。怪しいな。

 

 

レベッカ

「行こう!シズさん!」

 

 

シズ

「待って。私達だけで行くのは危険だわ。せめて皆んなに報告してからにしない?」

 

 

レベッカ

「その為にも、先ずはそこで情報収集しないとだよ。正確に情報を伝える為にも調べる必要がある。」

 

 

シズ

「わかったわ。ただし、危険と感じたら直ぐに退くわよ。」

 

 

レベッカ

「うん!」

 

 

 

私とシズさんは、その人達から伏見温泉の場所を聞いて訪れてみた。そこは、西の一番端側にある温泉宿だった。周辺には人気が無く、その宿も不気味に鎮まり変えていた。私達は慎重に宿に入ろうと、玄関を開けた時だった。

 

 

 

 

レベッカ

「何・・・・これ。」

 

 

 

 

店に入ると男女問わず、複数の死体が転がっていた。

 

 

 

 

シズ

「刀傷ね。多分誰かに斬られたんだと思う。」

 

 

レベッカ

「志々雄真実の仕業?」

 

 

シズ

「わからないけどこの空気、かなり危険よ。」

 

 

 

 

その時だった。床をギシギシと歩く音がこっちに近づいていた。それと同時に今まで感じた事のない恐怖を感じていて身動きが取れなかった。

 

 

 

 

志々雄

「何だ?もう他のサーヴァントに気付かれたのか。」

 

 

 

 

暗闇から現れたのは、包帯グルグル巻きのミイラみたいな男だった。まさか・・・・こいつが志々雄真実!?

 

 

 

シズ

「旅館の人達を殺したのは貴方なの!」

 

 

志士雄

「だったらどうした。」

 

 

シズ

「何故一般人まで巻き込んだの!?聖杯があるから魔力の消費切れも無い!彼らの生命力を吸う必要はないはず!!殺す必要は無かったはずよ!!」

 

 

 

シズさんも内心恐いはずなのに、怯えながら志士雄に質問した。そしたら彼から常識外れの答えが返ってきた。

 

 

 

 

志士雄

「ここの温泉は火傷を癒すのに最適なんでな。コイツらは邪魔だから全員殺した。それだけだ。」

 

 

 

 

は?じゃあ温泉に入りたいから殺したって事?意味わからない!!

 

 

 

シズ

「レベッカ!!逃げて!!」

 

 

 

 

シズは声を荒げながらも、剣を構えて志士雄に仕掛けた。

 

 

 

 

シズ

「宝具解放!!インフェルノフレイム!!」

 

 

 

 

彼女の剣から炎が吹き出し、瞬く間に志士雄を飲み込んだ。だがその一瞬だった。

 

 

 

 

レベッカ

「えっ。」

 

 

 

 

いつの間にか、シズの背中から刀が突き出ていた。

 

 

 

 

志士雄

「奇遇だな。俺も火を使うんだ。まあテメェみたいな雑魚に使う必要はないがな。」

 

 

 

 

あっという間の出来事だった。炎を振り払って志士雄がシズさんの胸元に刀を突き刺していた。しかも霊核ごと貫通している。

 

 

 

 

レベッカ

「シズさァァァァァァァァん!!」

 

 

 

 

志士雄はシズさんを蹴り飛ばし、彼女はそのまま私の所に転がって来た。

 

 

 

レベッカ

「シズさん!!」

 

 

シズ

「レベッカ逃げて。生き延びて・・・・。」

 

 

レベッカ

「嫌だよ!嫌だよ!!シズさん!!」

 

 

 

 

シズさんはもう、光となって消え掛かっていた。こんな別れ方なんて嫌だよ。

 

 

 

 

シズ

「無事に帰ったら・・・・スライム君の事お願いね。」

 

 

 

 

シズさんはそう言い残して、消えてしまった。その時、私に怒りが込み上げてきた。自分の判断の甘さにシズさんは止めてくれた。なのにそれを無視して貫いてしまった。なんで・・・・。

 

 

 

 

レベッカ

「何で今出てくるんだよ。何で旅館の人達やお客さんまで殺すんだよ。何でそんなくだらない理由でシズさんまで殺すんだよぉ!!」

 

 

 

 

その怒りを志士雄にぶつけた。

 

 

 

 

志士雄

「所詮この世は弱肉強食。強い者が生き弱い者が死ぬ。それがこの世の理だ。」

 

 

 

 

志士雄は座り込んでいる私に刀を振りかざした。

 

 

 

 

志士雄

「テメェも同じだ。ただ喚くだけの腰抜けは死んでいくのがお似合いだ。精々地獄で泣き喚いていろ。」

 

 

 

 

志士雄の刀が振り下ろされたその瞬間だった。

 

 

 

 

ルドルフ

「雷の呼吸。一ノ型!霹靂一閃!!」

 

 

志士雄

「ッ!?」

 

 

 

電光石火の如く、私の目の前に、緑の軍服に馬の耳と尻尾が生えた女性が立っていた。しかも魔力からしてサーヴァントだったのだ。

 

 

 

志士雄

「誰だ。」

 

 

ルドルフ

「悪党に名乗る名など無い。だがレベッカには指一本触れさせない。」

 

 

志士雄

「いきなり出て来て随分な物言いだ。」

 

 

ルドルフ

「いきなり出て来てすまないが、これで退散させてもらう。」

 

 

 

彼女は刀を構え始めた。まさか、あの化け物から逃げるつもり?

 

 

 

ルドルフ

「大空の呼吸。五ノ型。乱気流!!」

 

 

 

辺り一面が物凄い風に煽られ、志士雄も思わず目を隠した。その一瞬、彼女は私を抱き抱えて物凄い速さで駆けて行き、その場から立ち去る事が出来た。

 

 

 

ルドルフ

「すまない。少々荒っぽいが我慢してくれ。」

 

 

 

彼女はそう言って、もうスピードで人気の無い道から人通りの道を駆けて行き、向かっていた先は私達の家だった。その途中で私は気絶していたみたいだが、ルドルフは物の数分で辿り着いた。

 

 

 

ルドルフ

「ごめんください!!」

 

 

 

と礼儀正しく挨拶して入ったら、鏡歌と雀が家にいて二人はルドルフの登場に驚いていた。

 

 

 

 

鏡歌

「あのーどちら様で?」

 

 

ルドルフ

「失礼をした!!レベッカの看病をしたい!!直ぐに寝具と水で濡らした布を用意してはもらえないだろうか!!」

 

 

鏡歌

「わかりました!!」

 

 

 

鏡歌はルドルフに言われた通りに用意をしたけど、雀は誰かいない事に気が付いていた。

 

 

 

「ねえお姉ちゃん。シズお姉ちゃんは?レベッカお姉ちゃんとお出掛けしていたはずだよ?」

 

 

ルドルフ

「すまない。駆けつけた頃にはいなかった。」

 

 

 

 

ルドルフは気を遣って雀を悲しませないようにしていたが、内心彼女が納得していない様子だった。

 

 

 

 

ルドルフ

(話に聞いた通り、シズさんがいなくなった後に私が駆けつけたのだな。すれ違うように入れ替わるとは何とも烏滸がましい。)

 

 

 

 

鏡歌が布団を敷いて私をそのまま置いて毛布を掛けてくれた。その時、誰かがこちらに走ってくる足音が聞こえて来たのだ。

 

 

 

 

煉獄

「レベッカを物凄い速さで連れ去ったのはお前かァァァァ!!」

 

 

 

 

兄貴だった。どうやらルドルフが私を抱えて通り過ぎる所を見掛けて追いかけて来たようだ。

 

 

 

 

煉獄

「君は誰だ!!何故レベッカを連れ去った!!シズはどうした!!」

 

 

ルドルフ

「その話は全員揃ってからでも良いと思うのだが。それでも構わないかい。」

 

 

煉獄

「うむ!!了解した!!」

 

 

 

 

だが思った以上に、皆んな早く集まった。次にゼフォンが戻ってきて。

 

 

 

 

ゼフォン

「煉獄!!」

 

 

煉獄

「ゼフォン!今戻ったか!」

 

 

ゼフォン

「貴方が猛スピードで走るのが見えたので、何事かと追いかけた所です。彼女は?」

 

 

煉獄

「分からん!!だが全員揃って話をするそうだ!!」

 

 

ゼフォン

「でも彼女ウマ娘ですよね?」

 

 

煉獄

「うむ!!言われてみれば特徴が一致しているぞ!!」

 

 

ルドルフ

「驚いたな。ウマ娘の事を知っているとは。」

 

 

ゼフォン

「つい先日、貴女の同胞の話を聞かされましたから。」

 

 

 

 

その後に姐さん達も戻って来て、その次は豊さんだった。

 

 

 

 

マリア

「レベッカの魔力が急に不安定になったけど何かあったの!!」

 

 

エルザ

「シズは何をしていたの。」

 

 

セイラ

「あれシズさんは?」

 

 

ひびき

「そう言えば見当たらないな?」

 

 

キリエ

「何か知らない人混ざってるし?」

 

 

豊久

「何じゃ何じゃ!この騒々しさは!?」

 

 

 

それで最後は白玄達だった。

 

 

 

七花

「おい!レベッカは無事か!!」

 

 

ひびき

「七花達も戻って来たのか!?」

 

 

右衛門左衛門

「薄気味悪い魔力反応を感知したかと思いきや、井沢静江の反応が突然消えた矢先に新たな魔力反応と姫様の魔力が乱れたのを確認した。」

 

 

とがめ

「一体何がどうなっておる!!」

 

 

 

白玄が家に入ると、彼はルドルフを見て驚いていた。どうやら彼女の事も知っているらしい。

 

 

 

とがめ

「シンボリルドルフ!?」

 

 

マリア

「知ってるの!」

 

 

とがめ

「ウマ娘の中で最強と名高い成績を残しているウマ娘だ。」

 

 

 

 

競馬見た事ないからわからないけどかなり強いサーヴァントだったらしい!!

 

 

 

 

セイラ

「そんなに凄いのか?」

 

 

とがめ

「セイラ達の世界で言うなら、『神崎美月』のような存在だ。」

 

 

セイラ

「美月さんの様な人。じゃあ彼女はレースのトップって事?」

 

 

とがめ

「七冠の戦績を残している。そのトップ戦績を残しているのは彼女だけだ。それが皇帝シンボリルドルフだ。」

 

 

ルドルフ

「お褒めに頂き感謝するよ。」

 

 

 

 

皆んなが合流して来た時に、私は目を覚ました。その時には、皆んな私の事を心配して駆けつけて来たのか全員揃ってて、初対面のルドルフもそこにいた。

 

 

 

 

ルドルフ

「起きたかレベッカ。心神喪失と言ったところかな。」

 

 

レベッカ

「シズさん・・・・私の所為でシズさんが!!」

 

 

ルドルフ

「落ち着くんだレベッカ。何があったかゆっくり話してくれ。」

 

 

 

彼女の声を聞いていると、自然と心が落ち着く。何だろう。すごく温かい。彼女の温もりで落ち着いた私は、伏見温泉で何かあったのかを話そうとしたその時だった。

 

 

 

紅莉栖

[レベッカ!応答しなさい!レベッカ!!]

 

 

 

クリスティーナさんの声が聞こえたから、アースから通信が入ったのを確認した。けどなんだかここにいる皆んな以上に慌しい雰囲気だった。

 

 

 

紅莉栖

[レベッカ!貴女いつの間にもう一騎のセイバーと契約したの!?]

 

 

レベッカ

「契約?どう言う事?マリア姐さん以外のセイバーと契約した覚えないけど?」

 

 

紅莉栖

[じゃあ目の前にいるサーヴァントは誰なの!?ルーラーのゆめですら、貴女と彼女のパスが繋がっているの確認しているのよ!?]

 

 

ゆめ

[彼女の真名はシンボリルドルフ。間違い無くレベッカさんが契約しているサーヴァントです!!]

 

 

剣城

[本当に知らないの?]

 

 

 

 

は!?いやいや!彼女とは会ったばかりだし・・・・そう言えば私まだ名前教えて無いのに何で知っているの!?

 

 

 

レベッカ

「助けてくれてありがとう。でも何で私の名前を知っているの?貴女は何者なの。」

 

 

ルドルフ

「それより先に、皆に報告する事があるのでは無いか。私の話はそれからでも出来る。」

 

 

 

 

そうだった。伏見温泉であった事、志々雄真実が現れた事を伝えないと!!私は伏見温泉で志々雄真実と交戦した事、その戦いでシズさんが脱落した事も全て話した。

 

 

 

ゼフォン

「そんな・・・・。」

 

 

マリア

「シズが宝具使っても瞬殺されたって!?」

 

 

豊久

「こりゃ・・・・とんでもんバケモンか志々雄真実。」

 

 

とがめ

「しかもシズは人間では無く魔人だ。それが瞬殺か。思った以上の強敵だ。」

 

 

紅莉栖

[エキストラクラスのサーヴァントにしても反則でしょ!?スキルも使わず元のステータスで瞬殺するサーヴァントがいる!?]

 

 

とがめ

「無理も無い。実を言うと、志々雄真実もレジェンドサーヴァントだからな。」

 

 

 

 

はあ!?志々雄真実がレジェンドサーヴァント!?

 

 

 

とがめ

「奴が出演している作品『るろうに剣心』には多くの強敵達が登場するが、志々雄真実はその中でも一番狂気に満ちていて、当時の読者や視聴者に強烈な印象を与えた。レジェンドサーヴァントとして召喚されてもおかしくない。」

 

 

マリア

「そんな大事な事なんで早く言わないのよ!!」

 

 

とがめ

「言ったところで対処できるのか。私は、志々雄真実は危険だと話した時に忠告もした筈だぞ。それにシズを秒殺してる時点で対処も何も無い。ルドルフの様に足が速いサーヴァントで離脱するしか無いのだからな。お主がいてくれて助かったわ。」

 

 

ルドルフ

「いや。それは優れた先見之明と知恵才覚を持つ()()である貴方の人選対応です。だから私は直ぐに動く事が出来た。」

 

 

 

 

いや、誰が所長だって!?

 

 

 

 

とがめ

「ごめーん()()ちゃん!私所長の役職に就いたことなんて一度も就いた事無いんだけど!」

 

 

ルドルフ

「ッ!?失礼だが・・・・私は()()では無く()()()()()()()()何だが?」

 

 

とがめ

「惚けても無駄だぞトレセン学園生徒会長!!お主の幼名が『ルナ』だったのを知らぬとでも思ったか!!」

 

 

ルドルフ

「くっ!!流石はしょ・・・・白玄だ!!やはり過去でも私の事は知られていたか!!」

 

 

 

 

いやそんな茶番劇いらないから!!てかこの人さっきから訳わかんないよー!!

 

 

 

 

とがめ

「さて、気になるワードもお主から吐き出せた訳だし、そろそろ教えてもらおうか。シンボリルドルフ。」

 

 

ルドルフ

「わかりました。できる範囲で話しましょう。」

 

 

 

 

彼女から語り出したその実態は、信じられないものだった。

 

 

 

 

ルドルフ

「私はサーヴァント。セイバー。シンボリルドルフ。赤の陣営所属のレベッカ・スカーレット・ティファニーと契約しているサーヴァントだ。」

 

 

レベッカ

「うん。契約した覚え無いけど?」

 

 

ルドルフ

「無理も無い。君が私と契約するのはまだ先の話だからね。」

 

 

 

ん?ど言う事!?

 

 

 

 

ルドルフ

「私が京都に来た目的は、この時代に出現している時間差遡行群から歴史を守る事と、レベッカ・スカーレット・ティファニーを守るためだ。つまり未来のアースからやって来たサーヴァントと言ったら良いだろうか。」

 

 

 

 

はへ!?未来のアース!?時間差遡行群を!?でも何で!?だって時間差遡行群はこっちの時代の魔獣でしょ!?

 

 

 

 

紅莉栖

[つまり貴女は未来からタイムスリップして来たって事!?それをアースが!?]

 

 

ルドルフ

「その通りだ。牧瀬紅莉栖が開発した次元転送装置をアースに召喚された人理の英霊『レオナルド・ダヴィンチ』が改良してタイムマシンにしたらしい。それでこの時代にレイシフトすることが出来た。」

 

 

紅莉栖

[どんな理由にせよそんなの向こうの私が許す訳ないでしょ!!]

 

 

剣城

[クリスティーナさん?]

 

 

紅莉栖

[そんな事をしたら世界線にどんな影響があるかわからないのよ!!]

 

 

ルドルフ

「ですがアースもレベッカ達マスターも、それを承知で今回の任務を実行したのです。今世界線に影響を与えようとしようとする時間差遡行群と、それを裏で操る組織の存在が動き出している事も。私はそれを阻止する為にここへ来ました。」

 

 

 

 

何か未来でとんでも無いことになってるけど。

 

 

 

 

とがめ

「なるほどな。お主が未来から来たのであれば詳しく話せぬ事情はわかったよ。」

 

 

ルドルフ

「こちらの現状を理解していただき感謝する。」

 

 

とがめ

「だが納得できん。お主のやっている事は本来なら『刀剣男士』の仕事のはず。非戦闘員である『ウマ娘』がどうやって戦う。」

 

 

 

そう言われてなのか彼女は考え込んでしまった。何で?ただ答えれば良いだけなのに?

 

 

 

ルドルフ

「うん。これは話しても大丈夫だろう。」

 

 

 

大丈夫?何が?

 

 

 

 

ルドルフ

「今の貴方にとっては信じられない話だが、サーヴァントの中には稀に前世の記憶を受け継いだまま召喚されるケースがあるのだ。この世界のこの時代からね。貴方も何人か見知った顔を見て来ているはずだ。」

 

 

とがめ

「四聖獣の守護柱達と、手嶋純一郎か。そしてお主もそうだと言うのか。この世界のこの時代に生まれた人間として生活していたと。」

 

 

ルドルフ

「ああ。前世であるこの世界での私は日系人でな。アメリカに住んでいた。この時代なら、今頃夫と結婚している頃だろうな。」

 

 

 

 

今さらっと自慢話になってた様な!?てか現在進行形で結婚してるの!?

 

 

 

 

ルドルフ

「それと当時の私はある流派の家系でね、それなりに剣には自信がある。」

 

 

レベッカ

「そう言えばあの時、雷の呼吸とか大空の呼吸とか言ってたような。」

 

 

煉獄

「ッ!?」

 

 

 

 

突然、兄貴がそのワードを聞いて反応した。何か思い当たる事でもあるのかな?

 

 

 

 

煉獄

「なるほどな。彼女の話はどうやら嘘偽りが無いと受けた。」

 

 

とがめ

「何故そう確信できる。」

 

 

煉獄

「青龍殿から聞いたのだが、俺達の使う呼吸の流派は、此方の世界と基本は同じだが異なるところがあるが、こちらの方が技が極められていた。全集中の呼吸と同時に「覇気(はき)』と呼ばれる気を身体から刀身にまで流し、身体能力を更に飛躍的に高めると言っていた。覇気には『動の気』と『静の気』の2種類があり、此方の世界では動の気の派生系の一つ『死ぬ気の炎』と呼ばれる気を流しながら全集中の呼吸を使いその剣技を振うそうだ。ここまで聞いて何か分かる事は無いか。白玄殿。」

 

 

とがめ

「『ONE PIECE(ワンピース)』『史上最強の弟子ケンイチ』『家庭教師(かてきょー)ヒットマンREBORN(リボーン)』にその様な用語が使われていた。リボーンの設定にワンピースとケンイチが追加された様な内容だ。それを使って『鬼滅の刃』の呼吸が強化された様にも見える。」

 

 

 

 

すまん!訳がわからないよ!!

 

 

 

 

煉獄

「更に『大空の呼吸』にも俺達の世界と同じ『日の呼吸』の派生系となる呼吸が存在する。因みに青龍殿は『水の呼吸』に『雨の炎』を流し込んで使う『雨の呼吸』を使う。」

 

 

とがめ

「雨の呼吸なら大方どんな技か見えてくる。『時雨蒼燕流(しぐれそうえんりゅう)』の類似技だろうな。」

 

 

 

 

なるほどな。ん?確かルドルフは大空の呼吸が使えるよね?派生系の原点になった技って事はかなり強いって事!?

 

 

 

 

煉獄

「して、君の流派は。」

 

 

ルドルフ

「雷の呼吸の壱ノ型から漆ノ型と大空の呼吸の終ノ型まで習得している。」

 

 

煉獄

「二つも呼吸を習得しているのか!?」

 

 

とがめ

「それだけではあるまい?『大空の呼吸』は大空の炎を流して使える呼吸。すなわち日の呼吸であるヒノカミ神楽の型も取得しておるな。」

 

 

ルドルフ

「流石だ。だが最後の型だけは習得出来なかったがな。」

 

 

とがめ

「拾参ノ型か?あれは、円舞から炎舞までの型を繋げて行えば良い。」

 

 

ルドルフ

「なるほど。では機会があれば試してみるとしよう。」

 

 

 

 

まあルドルフはわかった。けど本来素行群の討伐はその刀剣男士って言うサーヴァントだよね?何でウマ娘であるルドルフが選ばれたのか聞いてみよう!!

 

 

 

 

ルドルフ

「確かに遡行群は本来私の役目では無い。だが私が来た理由は、私の大空の呼吸にある終ノ型と玖ノ型が志々雄真実に対抗できる唯一の技と未来の貴方から聞かされた。」

 

 

とがめ

「その技とは・・・。」

 

 

ルドルフ

「大空の呼吸玖ノ型『九頭龍閃』と終ノ型『天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)』だ。」

 

 

 

白玄はやはりと言うくらい驚いていた。まさか志士雄に対抗出来る技なの!?

 

 

 

 

とがめ

「やはり『飛天御剣流』か。」

 

 

レベッカ

「飛天御剣流?」

 

 

とがめ

「人を殺さずに敵を倒す活次拳の流派だ。九頭龍閃と天翔龍閃はその奥義とも言える。そして唯一、志々雄真実に対抗出来る奥義とも言える。」

 

 

 

なるほど!!つまりルドルフがいれば志々雄真実を倒せるって事だ!!何か光が見えて来たよ!!

 

 

 

 

とがめ

「だがその奥義の使い手である『緋村剣心(ひむらけんしん)』ですら倒せなかった相手だ。結局奴は火傷の後遺症で燃え尽きただけだったからな。」

 

 

 

 

え!?

 

 

 

 

ルドルフ

「どちらにしても、私は君達の任務に関与する事は難しいだろう。何故かはわかるな。」

 

 

レベッカ

「未来が変わるから?」

 

 

ルドルフ

「そうだ。だから私は最低限のサポートしか役に立てない。非常時ですまないが、理解して欲しい。」

 

 

とがめ

「重々理解した。タイムパラドックスはお主の存在すら消されかねぬ。」

 

 

 

志々雄真実。その存在は歩く人殺しだ。彼に出会った瞬間、私は何も出来ずにシズさんを失った。もしルドルフが来てくれなかったらと思うとゾッとした。私って本当に・・・・。

 

 

 

レベッカ

「無力だ。」

 

 

 

そんな悔しさを噛み締め、新たに登場したシンボリルドルフを仲間にして、今日はお開きにした。だがこの事件をきっかけに私達は守護柱と対立す事になってしまった。

 

 

 

 

不死川

「胸糞悪い。」

 

 

 

私達が立ち去った後の話か、都の守護柱やお役人達も伏見温泉に集まって来ていた。青龍が遺体や現場の状況など確認してくれたけど、かなり険しい表情をしていた。

 

 

 

 

今泉

「紛れもなく無差別だな。」

 

 

「レベッカちゃんが言っていた志々雄真実の仕業かしら?」

 

 

鏡夜

「そう断定するのは早すぎるが。」

 

 

 

もう少し捜査してから決めるべきと、話し合っていた三人だったが、白虎は思わぬ事を決めつけていた。

 

 

 

不死川

「おいおい何寝ぼけてんだ。断定も何も、こんな酷い事出来るのはあの鬼畜米兵共だけだろ!!」

 

 

 

白虎は私達がやったと思っているみたいだった。

 

 

 

 

鏡夜

「それを決めつけるのは早すぎるぞ!!証拠を揃えてからでも遅くは無い!!」

 

 

不死川

「通行人の証言によれば伏見温泉をかなりの速さで出て行った西洋人を目撃している連中がわんさかいた。それだけで奴等を一網打尽に出来る。」

 

 

鏡夜

「待て白虎!勝手な事は許さん!」

 

 

不死川

「お前等がそうやって甘い顔してるからこんな事になったんだろうが!!鬼畜米兵は完膚なきまでに駆逐する!!お前等の甘ちゃんに付き合うのもこれまでだ!!」

 

 

「待ちなさい!!白虎!!」

 

 

 

 

白虎は話も聞かずその場を立ち去った。私達を問答無用で探す気らしい。

 

 

 

 

鏡夜

「まずい事になった。」

 

 

今泉

「幸い、不死川には居場所は伝えていない。がそれも時間の問題だ。」

 

 

鏡夜

「不死川がレベッカを見つけ出す前に。」

 

 

「こっちが下手人を捕らえる。とは言え手掛かりが無いから不利には変わりないけど。」

 

 

今泉

「それでも手当たり次第探さなければならない。でなければ、レベッカは無実の罪で処されるぞ。」

 

 

 

 

状況は最悪な物になっていた。そうとは知らずに私達は夕暮れの時間帯を暗く過ごしていた。シズさんの脱落と志々雄真実の圧倒的な実力の前に打ちひしがれながら、ただ落ち込む事しか出来なかった。って、そんな私が一番凹んでいたけどね。心ここに在らずと言うか、無気力と言うか、ショックで立ち直れなかった。ルドルフはこんな私に声を掛けるべきか迷った挙句、兄貴に相談しに外に出ていた。

 

 

 

 

ルドルフ

「杏寿郎さん。少しよろしいでしょうか。」

 

 

煉獄

「構わない。と言いたいところだが、君に礼を言わなければならない。」

 

 

 

 

お礼?なんの?

 

 

 

 

煉獄

「レベッカの窮地を救ってくれて感謝する。」

 

 

ルドルフ

「私は自分の役目を全うしたまでです。それに間一髪でした。」

 

 

煉獄

「それでも助かった。ありがとう!!」

 

 

 

 

そう言えば殺されそうになった所を助けてくれたっけ。落ち着いたら私もお礼言わなきゃ。

 

 

 

 

煉獄

「それで話とは何だ。」

 

 

ルドルフ

「レベッカの件です。何と声をかけたらいいか暗雲低迷(あんうんていめい)しています。彼女の力になると意気昂然(いきこうぜん)となった矢先に為体です。」

 

 

煉獄

「なら君から見た今のレベッカはどんな感じだ。」

 

 

ルドルフ

「私の知っているレベッカとは違う印象を受けました。彼女はもっと心が強い子ですから。」

 

 

煉獄

「なら君がこの時代のレベッカに深く干渉しない事だ。君の知っている彼女はこの京都で成長し、未来で生まれたのだと思う。今はレベッカを見守りつつ、守ってやればいい。」

 

 

ルドルフ

「なるほど。それも、私の役目と言う事か。」

 

 

煉獄

「その通りだ。無理に彼女を励ます必要はない。それは、マリア達の役目だ。」

 

 

ルドルフ

「それなら私は自らの役目に専念出来る。やはり貴方に相談して正解でした。」

 

 

煉獄

「何!隊員の相談役も柱の務めだ!遠慮なく言ってくれ!!」

 

 

 

兄貴はやはり頼りになる。未来から来たルドルフにの悩み事にも瞬時に解決とは恐れ入りました。ん?でも等の本人は悩みなんてあるのかな。

 

 

 

 

煉獄

「俺からも一つ聞いていいか。」

 

 

 

おや?どうやら兄貴にも悩み事があったそうです。

 

 

 

煉獄

「未来のレベッカの下に『竈門炭治郎(かまどたんじろう)』と言う鬼殺隊の少年はいるか。」

 

 

ルドルフ

「います。私も彼と共に戦いましたが、誠実で正義感の強い少年です。今は彼を中心に『緑谷出久(みどりやいずく)』『虎杖悠仁(いたどりゆうじ)』そして私の後輩である『トウカイテイオー』とチームを組んでレベッカの力になっています。」

 

 

煉獄

「そうか。彼女の未来は明るいものになっているのだな。だからこそ、今のレベッカにとって鬼殺隊で契約するサーヴァントは、俺より先に竈門少年の方だ。彼はレベッカとって大きな力になる。」

 

 

ルドルフ

「私もそう思います。私より炭治郎の方が頼りになる。そう思います。」

 

 

 

 

私が兄貴とルドルフと契約するのはまだ先の話。魔術師である私がこんな凄い英霊達と共に戦うのは力不足だ。志々雄真実の言う通り、あの時の私はシズさんの失った悲しみで泣き叫ぶ事しか出来なかった弱い人間だ。ルドルフが来ていなかったら間違いなく死んでいた。そう打ちのめされる出来事だった。けど追い討ちをかける様に事件は起きるのであった。

 

 

 

 

 



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第八話『守護柱動く』

お知らせ
皆さま。Fate/Animationを読んで下さってありがとうございます。セリフばっかのつまらない作品かと存じますが、今後ともよろしくお願いします。さて今回ですが、第二章の一話の英霊紹介が全部消されていた事に気付きました。てかなんで消えてた!?それに伴い、新規に赤の陣営の英霊紹介を再投稿と言う形で掲載させていただきます。此度は大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。

〜レベッカ・スカーレット・ティファニーより〜


あの事件が明けた頃、急に京都で遡行軍が大量発生した。サーヴァント達はバラバラになって対応に当たったが、数が多すぎて対処するのに苦戦していた。

 

 

 

ルドルフ

「キリエ!ゼフォン!ここを頼む!!」

 

 

キリエ

「え!?ちょっとルドルフ!?」

 

 

 

新しく私達の陣営に加わってくれたシンボリルドルフ。彼女は未来のアースから、私達の歴史を守る為に顕現したサーヴァントだ。遡行軍の大量発生が、彼女の事件と関係しているのだとしたら、黒幕は必ず何処かにいる。そう確信した彼女の向かった先は、京都から出た小さな山だった。気配を手繰りながら山道を探り、遂に遡行群とその黒幕らしき人物を見つけた。

 

 

 

 

稀咲

「三番隊と二番隊は西側の増援に向かえ。四番隊は手筈通り『レベッカ・スカーレット・ティファニー』を始末しろ。奴は今一人の筈だ。早急に消せ。」

 

 

 

黒幕は褐色の肌に金髪にメガネが指揮をしている。物陰に隠れてたルドルフが、私の暗殺を聞いて立ち上がり、彼の前に出向いた。

 

 

 

 

ルドルフ

「やはりレベッカが目的か!」

 

 

 

 

黒幕達はルドルフの登場に剣を構えた。

 

 

 

 

稀咲

「なんでだ・・・・何でアースのサーヴァントがこの時代に来てやがる!!」

 

 

ルドルフ

「我々がタイムスリップを出来ないとでも思ったか。君が何者なのかは知らないが、レベッカに手を出す輩がいる以上、私達赤の陣営は何処へでも駆けつける。あまりアースを無礼(なめる)なよ。」

 

 

 

 

穏やかでなルドルフが、その黒幕に対して物凄い腱膜で睨みつけた。動揺したのか黒幕は遡行群に指示を出した。

 

 

 

 

稀咲

「全部隊奴を殺せ!!」

 

 

 

 

けどルドルフは遡行群の突撃に怯む事なく、真っ向から勝負するつもりでいた。

 

 

 

 

宇髄

「音の呼吸・・・・一ノ型。轟!!」

 

 

 

遡行群の真上から大柄な男が、二本の包丁らしき武器を振り下ろし、遡行群の部隊に大打撃を与えた。突然の不意打ちに止まる遡行群に、今度は白い化け物が追撃を掛けた。

 

 

 

 

乙骨

「やれ!リカ!!」

 

 

 

白い化け物を操っていたのは、一見一眼見て地味そうな男であった。二人は直ぐにルドルフに合流した。

 

 

 

 

宇髄

「よお!間に合ったみたいだな!」

 

 

乙骨

「よかった!会長無事だったんだね!」

 

 

ルドルフ

「私はこの世界線に来られるのは一騎だけと聞いていたんだが?天元。優太。」

 

 

 

 

どうやらルドルフの知り合いだったようだ。と言う事は仲間か〜。

 

 

 

 

ルドルフ

「何故白の陣営である二人がここに?」

 

 

宇髄

「な〜に。そこはダヴィンチと仙空、それとアースの優秀な技術部の連中が過労死寸前まで調整に調整を重ねて、後二騎分枠を開けられてな。今頃スタッフ一同派手にぶっ倒れてるだろうよ。」

 

 

乙骨

「それで白玄の指示で、僕と宇髄さんが派遣されました。会長をサポートする様にと。」

 

 

ルドルフ

「それは頼もしいな。」

 

 

宇髄

「俺はお前を工面して生徒会関連でエアグルーヴとナリタブライアンを派手に推薦したんだがな。」

 

 

乙骨

「僕はライスシャワーさんと五条先生がいいって言ったんですけどね。」

 

 

宇髄

「ライスはともかく五条はダメだろ。あいつの術は派手過ぎて京都を壊滅させちまう。」

 

 

ルドルフ

「所長はなんて?」

 

 

乙骨

「志々雄真実だそうです。彼に対応出来るよう僕達を選んだそうです。」

 

 

宇髄

「鬼殺隊は俺じゃなくて悲鳴嶼さんの方が良かったんじゃないか?」

 

 

ルドルフ

「なるほど理解した。お喋りはここまでにして、目の前の敵に集中しようか。」

 

 

乙骨

「はい!」

 

 

宇髄

「そんじゃあ派手に名乗り口上といくか!!」

 

 

 

三人は遡行群を相手に名乗り出る余裕まであった。ん?それって真名暴露するって事?大丈夫なのそれ?

 

 

 

宇髄

「白の陣営所属!サーヴァント。アサシン。鬼殺隊 音柱。宇髄(うずい)天元(てんげん)!!」

 

 

乙骨

「同じく白の陣営所属。サーヴァント。セイバー。東京都立呪術高等専門学校二年。特級呪術師。乙骨(おっこつ)優太(ゆうた)。」

 

 

ルドルフ

「赤の陣営所属。サーヴァント。セイバー。日本ウマ娘トレーニングセンター学園三年。生徒会長。皇帝シンボリルドルフ。」

 

 

乙骨

(あっ!それでトレセンなんだ。正式名称初めて聞いたかも。)

 

 

宇髄

「ド派手に!!」

 

 

ルドルフ、乙骨

「押して参る!!」

 

 

 

三人は遡行群の残りの部隊と交戦に入った。だが黒幕はこれを好機に捉えていた。

 

 

 

稀咲

「チッ!せっかく集めた戦力が!!幸い、四番隊は俺のスキルで強化されてるから、足止めにはなる。この隙に!!」

 

 

 

黒幕は逃げるチャンスだと思ったのだ。けど、そう簡単には行かなかった。

 

 

 

ナルト

「螺旋丸!!」

 

 

稀咲

「何!?」

 

 

 

突然襲ってきた男性に黒幕はかろうじてかわした。現れたその男性はマントのような物を羽織っていて、背中には『七代目』の文字が書いてあった。

 

 

 

稀咲

「次から次へと・・・・なんなんだテメーは!!」

 

 

ナルト

「木の葉隠れ七代目火影。うずまきナルトだ。」

 

 

 

急に現れた増援にルドルフ達も驚いていたが、宇髄だけはなんともなかった。

 

 

 

 

宇髄

「心配するな。この時代の白玄だ。それにしても相変わらず腹が立つくらい感が鋭いぜ。」

 

 

 

 

どうやら白玄らしい。どうやら騒ぎを聞きつけて来てくれたみたいだ。それにしては感鋭くない?いや・・・・白玄はルドルフの話を聞いて黒幕の正体に心当たりがあったと思う。

 

 

 

ナルト

「ルドルフから話を聞いておおよそ予想はしてたがやっぱりお前だったか。稀咲(きさき) 鉄太(てった)。」

 

 

 

 

白玄は彼の事を知っていたみたいだ。でも何者なんだろ?

 

 

 

 

ナルト

「お前・・・・まだこんな事続けるつもりか。いい加減諦めろ!!お前は負けたんだ!!東卍に!花垣武道に!!」

 

 

稀咲

「テメーに何がわかる!!アイツの所為で俺の計画は狂いっぱなしだ!!ことごとく邪魔しやがって!!」

 

 

ナルト

「当たり前だ。アイツは体も心もボロボロになりながら、大切な恋人を、仲間を守る為に何度もタイムリープを繰り返した。お前に奪われた未来を変える為にな!!」

 

 

 

白玄は説得してるのか、それとも戦術的挑発なのかはわからなかった。でもいつもの白玄と違って感情的になっている事はわかった。

 

 

 

稀咲

「お前は俺達の世界にはいなかった。そんなやつが知ったような口を叩くな!!」

 

 

ナルト

「知っている!!お前達の運命をこの目で観て来たからな!!」

 

 

 

 

白玄は黒幕に向かって突っ込んでいった。やっぱりいつもと何かおかしい。

 

 

 

 

ナルト

「観念しろ!!稀咲ィィィィィ!!」

 

 

稀咲

斑毒痰(ふどくたん)!!」

 

 

ナルト

「ッ!?」

 

 

 

けど白玄に捕まりそうになった黒幕は、口から毒のような物を吐き出し、白玄は咄嗟に交わした。すると黒幕はその隙を突いて、丸い球を地面に投げつけた。すると煙が上がって周りを覆い尽くした。しばらくして煙が晴れると、そこに黒幕の姿はなかった。

 

 

 

 

ナルト

「俺とした事が、逃げられちまった。」

 

 

 

いつもと違う白玄の行動に、遡行群を倒し終わったルドルフ達は彼を心配そうにしていた。

 

 

 

 

宇髄

「らしくねーな。お前が感情的になるなんて。どうかしたか。」

 

 

ナルト

「相手が相手だったからな。思わず焦っちまったってばよ。」

 

 

 

二人の再会に間が開いた後、白玄の切り替わりが早かった。

 

 

 

ナルト

「てか宇髄!!何でお前京都にいるってばよ!!ロンドンに行ってくれって頼んだ筈だぞ!!」

 

 

宇髄

「ん?」

 

 

ナルト

「それと優太!!ミッドウェー島はどうした!?飛行場姫は倒したのか!!」

 

 

乙骨

「あのすいません。前から疑問に思ってたんですけど、何で深海凄艦を呪術師が討伐しなきゃならないんですか?それ艦娘の仕事ですよね?」

 

 

ナルト

「仕方ねーだろ!!翔鶴も瑞鶴も手が離せねえし!!吹雪もアズレンの綾波と一緒に別の任務に向かってるし!!近くにいたのがお前しかいなかったってばよ!!」

 

 

乙骨

「僕じゃなかったら専門外の人が行かされてたのね。」

 

 

ナルト

「まさか仕事サボってこっちに来たんじゃねぇだろうな!?()()()()()()()()!!」

 

 

乙骨

()()()()です!!本人に聞かれたら怒られますよ!!それに白玄と違ってちゃんと仕事してます!!」

 

 

 

 

白玄は宇髄と乙骨がこの時代の人間?いやサーヴァントか。肝心な時だけ鋭いのにこう言う時だけ鈍いんだな。

 

 

 

 

宇髄

「あっ!そういやこん時俺ロンドンでアイツ等の面倒を見てたんだっけ!?」

 

 

ルドルフ

「アイツ等?」

 

 

宇髄

「お前の所の『ゴールドシップ』『オグリキャップ』『タマモクロス』。乙骨の所の『禅院(ぜんいん)真希(まき)』『パンダ』『狗巻(いぬまき)(とげ)』。東卍の『場時(ばじ)圭介(けいすけ)』。あと『シエスタ』と『岩永(いわなが)琴子(ことこ)』だったな。確かこの頃から『第一次未来観測事変』が終わるまでの長期任務だった。」

 

 

ルドルフ

「なるほど・・・・だから私と初めて会った時にあんなクレームを叩きつけて来た訳と?」

 

 

宇髄

「当たり前だろ!!オグリは食費掛かるわ!タマは五月蝿えわ!ゴルシは訳わからねえわ!お前の所どう言う教育してんだ!!お陰でこっちはド派手に疲れたわ!!」

 

 

 

いや・・・・そんな不満ぶちまけられても?

 

 

 

ナルト

「おい・・・・その面子、シエスタと岩永にしか教えてねえってばよ?」

 

 

宇髄

「そうだよ!!とんでもねえ連中押し付けやがって!!てかいい加減気付けよ!!何でこう言う時だけ鈍感なんだテメーはよ!?」

 

 

ナルト

「え?」

 

 

ルドルフ

「そう言う事だ。」

 

 

ナルト

「宇髄と乙骨もか・・・・・。」

 

 

 

頭抱えながらやっと気づいたようだ。

 

 

 

宇髄

「で?あのガキンチョは?お前知ってるだろ?」

 

 

ナルト

「稀咲鉄太。東京卍會を乗っ取った奴だ。」

 

 

ルドルフ

「マイキーの組織をだと!?」

 

 

宇髄

「ほう?ガキンチョのケンカにしちゃ派手にやるじゃねえか。あのケンカの強え万次郎の目を欺いて乗っ取るとはな。」

 

 

ナルト

「その様子じゃマイキーは未来にいるみたいだな。」

 

 

乙骨

「でも中学生のケンカですよね。そんな白玄が取り乱すなんてらしく無いですよ。」

 

 

ナルト

「ただの中学生のケンカだったらよかったんだけどな。」

 

 

 

 

確かに中学生のケンカ屋だった少年にそんなに向きになるかな?ルドルフならともかく、宇髄と乙骨は紛れもなく戦闘のプロ。そんな彼等ですら、お世辞では無く白玄に一目置いているのだ。

 

 

 

 

ナルト

「稀咲はタイムリーパーを相手に、未来を変えた男だ。」

 

 

 

 

最初は、何を言ってるのかわからなかったが、話が進むにつれてその詳細が徐々にわかって来た。『東京リベンジャーズ』と言う物語となって。それを聞いたルドルフ達の表情も険しくなっていった。そして私達がそれを知るのは、遥か未来の話である。

 

 

 

 

ルドルフ

「マイキーとドラケンが稀咲の名前を聞いて嫌悪感を抱くのも、武道の名前を聞いて感謝の意を表すのも、全て辻褄が合ったよ。」

 

 

宇髄

「特に『血のハロウィン』ってのは派手にやばすぎだろ。一虎騙して仲間だった場時を刺し殺すまで追い込むなんてよ。」

 

 

乙骨

「中学生のする事じゃないですよね。」

 

 

 

 

どうやら相当やばい話らしい。

 

 

 

 

ナルト

「なあルドルフ。いい加減話してくれないか。俺はそこんとこは慎重になるし、他言無用にするし、タイムパラドックスも引き起こさない。だから話してくれ。一体未来で何が起こってる。」

 

 

 

 

だがそれを聞いた宇髄が首を傾げてルドルフの方を振り向いた。

 

 

 

 

宇髄

「お前話してなかったのか!?」

 

 

ルドルフ

「話せる訳ないだろ!そんな事をすれば私達の時代だってどんな影響があるか!」

 

 

宇髄

「大丈夫だって!白玄はそこん所の守秘義務は守る男だ。お前も見ただろ。稀咲に対してのこいつの異様な焦り具合。」

 

 

ルドルフ

「まあそうだが?」

 

 

宇髄

「お前は真面目過ぎんだよ!」

 

 

乙骨

(宇髄さんはもう少し真面目になって欲しいな。)

 

 

宇髄

「まあ何から説明したらいいか。少なくとも俺達が関係している事は変わりない。」

 

 

 

ルドルフ達から、未来の事件について聞かされたが、私達から聞かされる事は無かった。話を聞いていた白玄だけがその事実を知り、知った上で全て黙認するつもりでいた。

 

 

 

ナルト

「『未来観測事変』か。」

 

 

宇髄

「何だ?リアクション薄いな。」

 

 

ナルト

「『東京リベンジャーズ』が絡んでる事件なら不思議はねえってばよ。」

 

 

宇髄

「なるほどな。なら。」

 

 

ナルト

「時の向くまま、気の向くまま。干渉せずにしておくよ。」

 

 

ルドルフ

「ありがとうございます。貴方に話して正解でした。」

 

 

ナルト

「いいってばよ。」

 

 

 

 

と言う事で白玄の中にしまっとくのだった。

 

 

 

 

ナルト

(けど稀咲の奴が兄蜘の血鬼術を使ってたのは何故だ?召喚の影響か、聖杯の影響か。未来の話だからまだ気にする必要も無えけど調べてみるか。問題はそんな奴と戦える宇髄達だ。少なくともこの時代じゃ他の白の陣営のサーヴァントにそんな訓練はさせてない。かと言って下手に動くとタイムパラドックス現象が起きるとも限らない。はてさてどうしたらいいのやら。)

 

 

宇髄

「そういや、こっち来る時白玄が任務ついでにこの時代の白玄に修行を付けてもらえとか言ってたな。」

 

 

ルドルフ

「所長が?」

 

 

乙骨

「はい。何故かはわかりませんが。」

 

 

ナルト

(なるほどな。未来の俺なら知っててもおかしくないか。これで心置きなく、動けるってばよ。)

 

 

宇髄

「ん?おい!何だその笑みは!?」

 

 

秋雨

「いや〜。天海さん風に言うなら「面白くなって来たじゃな〜い。」と思ってね。早速帰ってこの岬越寺(こうえつじ)秋雨(あきさめ)直伝の生死を賭けた地獄の特訓メニューを考案しなければ。」

 

 

宇髄

「おいッ!!何か目光らせてるけど!?お前俺達に何させる気だ!!」

 

 

秋雨

「君の想像以上だよ宇髄君!!楽しみにしていたまえ!!」

 

 

宇髄

「恐怖でしか無えわ!!」

 

 

ルドルフ

「頼むから安全だけは保証してくれ!!」

 

 

秋雨

「安心したまえ!!生かして殺さずの精神で身も心もボロボロになるまで追い込むから!!覚悟しておきたまえ!!」

 

 

乙骨

「僕お家帰りたい!!」

 

 

 

 

え・・・・白玄の修行ってどんなの?と私は天皇御所のいざこざが終わった後、何も知らずに白玄に特訓を頼み込んだのだが、まだ半殺しの方がマシだと思う地獄を味わう事になろうとは思ってなかった。そしてルドルフ達は震えながら山を降りていった。

 

 

話は変わるが、ルドルフが黒幕のところに行く前、私は一人お家でお留守番していた。そこに思わぬ来客が迷い込んで来た。

 

 

レベッカ

「また来たの。()()君。」

 

 

輝之

「すまない。お忍びで視察に来たら鬼が現れたとの事で此方に避難してきた。お邪魔では無かったか。」

 

 

 

 

彼は『産屋敷(うぶやしき)輝之(てるゆき)』君。時々この家に遊びに来ている子で、チビ達の友達だ。質素な服装をしているが、この子はあの産屋敷天皇の息子さんなのだ。街の視察を口実に屋敷を抜け出しては遊びに来ている。どうやら私達が来る前かららしく、白玄や他の英霊達も彼の存在は知らない。彼の立場上もあって、チビ達は内緒にする事にした。

 

 

 

 

鏡歌

「気にしないで。雀も虎次郎も喜んでいるから。」

 

 

 

こうして雀と虎次郎とも遊んであげているのだ。

 

 

 

 

竜二

「それにしても良かったのか。お屋敷抜け出してこんな所で遊んでて。」

 

 

輝之

「いや。これも立派な務めだと外に出て初めてわかった。でなければこんな場所があった事も知らなかったし、今後の京の為にも参考になるよ。」

 

 

 

 

輝之君は真面目でいい子だな。どっかの誰かさんにも見習って貰いたいものだ。

 

 

 

 

五条

「マイケルじゃクソいッ!!」

 

 

宇髄

「なんだそのくしゃみ!?」

 

 

乙骨

「マイケル・ジャクソンでくしゃみするのベタですよ?」

 

 

ルドルフ

「風邪でも引いたか?」

 

 

宇髄

「いや誰か噂してんだろ?白の陣営結構文句言う奴多いからな。」

 

 

秋雨

「この感じは・・・・レベッカだ。」

 

 

宇髄

「え?何?くしゃみで誰か特定できるの?」

 

 

ルドルフ

「ある意味すごい芸当だな。」

 

 

 

 

背筋に悪寒のような物を感じた。白玄に何されるか想像しただけで悍ましい。

 

 

 

 

鏡歌

「レベッカさん?どうかしましたか?」

 

 

レベッカ

「いや今悪寒が。」

 

 

 

だがその悪寒は白玄のものでは無かった。まるで獣に睨まれた殺気を感じたからだ。そして入り口の前まで来て、こちらを覗き込んでいた。

 

 

 

 

輝之

「白虎!?何故其方がここに!?」

 

 

不死川

「これは若様。このような所においででしたか。」

 

 

 

 

ヤバッ!!白虎!?何で!?ここ青龍が担当してる地区でしょ!?何で白虎が!?

 

 

 

 

 

輝之

「待ってくれ!!視察の最中に鬼が出たと言う噂を聞き、こちらに逃げて来た!!」

 

 

不死川

「作用でしたか。なればここは我々が若様を安全に送り届けましょう。」

 

 

 

 

ん?輝之君を迎えに来ただけ?何だ良かった〜。家臣の人達が輝之君を連れて家を出て行った。雀と虎二郎は悲しそうな表情をしていた。でも引き止める素振りは見せなかった。わかっていたんだ。輝之君の事情が如何に大事なのか。この年でちゃんとしてるなんてえらいな。

 

 

 

 

不死川

「おっとそうだ。鬼畜米兵を忘れる所だった。」

 

 

レベッカ

「えっ・・・・・。」

 

 

 

 

ほんの一瞬の出来事だった。白虎に胸ぐらを掴まれそのまま投げ飛ばされ、壁を突き破って外にお掘り出された。一瞬の事で何故こんな事になってるのかわからなかったが、いきなり白虎が私に迫った事、壁と地面に叩きつけられて背中を中心に色んなところから痛みがある事、そしてとどめを刺すかの様に、白虎が私の所に迫って来た所だった。

 

 

 

 

鏡歌

「やめて下さい白虎様!!レベッカさんは悪い人じゃ無いんです!!」

 

 

 

 

鏡歌の声も届かないまま、白虎は再び私の胸ぐらをを掴み持ち上げた。

 

 

輝之

「やめるんだ白虎!!その者は無害だ!!直ぐに手を放せ!!」

 

 

不死川

「いくら若様と言えどその命は聞けません!!此奴は西洋人!!異国の人間ですぞ!!」

 

 

 

 

それどころか、天皇の息子の言う事すら聞かなかったのだ。此奴は完全に私の事を殺す気だ。

 

 

 

 

不死川

「とは言え若様の命令だ。とりあえずは放してやろう。」

 

 

 

 

何故かは知らぬが助かったのか?はぁ〜・・・・輝之君に感謝だな。

 

 

 

 

不死川

「貴様の制裁は!!」

 

 

 

 

いきなり強烈な右フックが炸裂した!!芯まで響く痛みと鈍い音・・・・ヤバッ!?骨折れた。

 

 

 

不死川

「変わらないがな!!鬼畜米兵!!」

 

 

 

左も!?もう顎が動かない。完全に折れたわ。

 

 

 

不死川

雷光拳(らいこうけん)!!」

 

 

レベッカ

「ぐはぁッ!!」

 

 

 

 

最後に強烈な腹パンが襲い掛かった。私は地面に蹲りながら血反吐を吐いていた。肋骨二、三本逝った。腹が苦しくて息ができない。

 

 

 

 

不死川

「此奴を連行しろ!」

 

 

 

 

家臣達に縄で縛り付けられ、引き摺られながら連れて行かれた。子供達は泣きながら私が連れて行かれるのを引き止めようとしてたし、輝之君も泣きながら白虎を説得しようとしていた。けれど子供達の訴えも虚しく終わり、私達はその場から立ち去った。

 

 

そして私達が着いた先は天皇御所で、そこは広間とは違って外の砂利が敷き詰められた庭のような場所に連れて行かれた。私はそのまま白虎に顔を押さえつけられ、当の本人もそのまま座り込んだ。そこには輝之君のお父さん、産屋敷耀輝天皇も縁側に座っていた。そしてしばらくして遡行軍の討伐に向かっていた守護柱が帰還し、天皇御所に呼び出されていた。

 

 

 

 

鏡夜

「どう言う事か説明してもらおうか。」

 

 

不死川

「見ての通り下手人である鬼畜米兵を捕らえただけだが。」

 

 

「そうじゃ無いでしょ!!都がこんな時に何していたのよ!!」

 

 

不死川

「ちゃんと鬼も倒して来た。それはそうと青龍の領地に鬼が入り込んでやがったぞ。他人を心配する前に自分の心配くらいしたらどうだ。」

 

 

今泉

「ああ・・・礼を言う。」

 

 

「ちょっと青龍!!」

 

 

今泉

「残念だが今は不死川に有利な状況だ。ここは引くしか無い。」

 

 

 

 

青龍達も無念の思いを秘めて、天皇にひざまづいた。そして今後の私の処遇についての話が行われた。

 

 

 

 

耀輝

「皆顔をおあげなさい。」

 

 

 

 

天皇の言葉に皆んな頭を上げた。私は頭押さえつけられて上げられなかったけどね!!

 

 

 

 

耀輝

「さて、ではその西洋の娘をどうするか。皆の意見を聞きたい。」

 

 

不死川

「聞くまでもありません!!この鬼畜米兵は旅館の住人や客を皆殺しにしたのですぞ!!明らかな罪人!!今この場で斬首すべきです!!」

 

 

耀輝

「落ち着きなさい。白虎。」

 

 

 

 

思った以上に白虎はアメリカ人に対する憎しみが強い。あの戦争でよっぽど辛いことがあったんだな。

 

 

 

 

耀輝

「他の皆んなはどうしたい?」

 

 

鏡夜

「彼女を罪人と決めつけるには早いでしょう。もう少し調べてからでは決めようがありません。」

 

 

不死川

「まだそんな戯言を吐かすか。あんな殺し方が出来るのは鬼畜米兵のみ!それをあれだけの通行人が見ていたんだ!!今更何を調べる!!」

 

 

今泉

「使われていた凶器、旅館の中、事件が起こる前の旅館の様子。調べる事は山程ある。それをこれから俺が調べる。だからお前は大人しくしていろ。」

 

 

不死川

「そんなチンタラやって罪人を逃す気か!!そもそもそんな残忍な事を出来るのは鬼畜米兵以外考えられんだろ!!」

 

 

鏡夜

「いい加減にしろ白虎!!もう戦争は終わった!!日本は負けた!!皆んなその事実を受け入れて歩もうとしている!!アメリカを許そうと努力している!!そうやって子供みたいに駄々を捏ねてるのはお前だけだぞ!!」

 

 

不死川

「本土にいた貴様に何がわかる!!ついこの間まで笑ってたダチが目の前で殺される所を!!終戦の知らせを聞いて帰って来たら故郷は更地で自分の家は無くなって!!その瓦礫を退かしたら、親父と御袋と弟が骨になっていたんだぞ!!敗北して戻った挙句大事な家族すら守れかったこの屈辱がお前にわかるかぁ!!」

 

 

 

 

白虎にそんな過去があったなんて。しかも戦地で戦っていたなんて。そりゃよっぽど悔しいわけだ。アメリカ人を恨む気持ちもわかる・・・・なんて同情すると思ったかァァァァァァ!!

 

 

 

レベッカ

「さっきから黙って聞いていれば赤ちゃんみたいに駄々こねやがって。」

 

 

 

白虎に押さえつけられているが力づくで立ち上がって払い退けた。

 

 

 

 

レベッカ

「中にはアンタみたいな境遇の中でも、文句も言えず精一杯生きようとしている子供だっているんだぞ!!そんな気持ちアンタにわかる!!」

 

 

不死川

「なんだと?」

 

 

レベッカ

「あとさっきから鬼畜米兵鬼畜米兵って!私は英国紳士!!まごう事なきイギリス人だァァァァァァっ痛ッ!?」

 

 

 

 

私は思いっきり頭突きしたけど、何故か私が頭から血を流し伸びてしまった。そして受けた本人は平気な顔をしていた。何でだ!?

 

 

 

 

「いやァァァァァァ!!レベッカちゃん!!」

 

 

 

 

朱雀さんはそんな私を見て慌てふためいていました。まあおでこから血を流した状態で目を回したまま伸びてたら驚くのも無理ないか。それから私は家臣に連れられて、朱雀の屋敷へと運ばれ退場した。

 

 

 

 

耀輝

「本人はいなくなってしまったが、私から皆に良い提案をしよう。レベッカの家臣の"英霊"なる者達と一戦交えようと思う。」

 

 

 

 

それを聞いた守護柱達は驚いていた。まさかこともあろうか赤の陣営+鑢七花と戦うと言い出したのだ。

 

 

 

 

鏡夜

「いやはや無理難題をお申しつけられる。陛下は我々に死霊相手に戦えとおっしゃるのですか。」

 

 

耀輝

「勘違いしてはいけないよ玄武。相手はただの死霊では無い。実態のある幽霊だ。我々と同等か、あるいはそれ以上か。そして彼等に人の慈悲はあるのか。それを、お前達で見定めて来なさい。」

 

 

 

あのすいません?私の許可は?てかそんな話聞いてないけど!?終わるタイミングで言うパターンだなこれ!?

 

 

 

耀輝

「それから炎柱には戦が終わるまで天皇御所と守護柱の屋敷の立ち入りは禁ずるものとする。どうかな守護柱達。」

 

 

今泉

「わかりました。陛下の命であるなら依存はありません。」

 

 

鏡夜

「私も問題はありません。陛下の命であるならお受け致しましょう。」

 

 

「ではレベッカちゃんは私の屋敷でお預かりしましょう。」

 

 

耀輝

「彼女の治療を頼むよ。朱雀。」

 

 

「はい。」

 

 

耀輝

「白虎もそれでいいね。もうワガママを言ってはダメだよ。」

 

 

不死川

「はっ!」

 

 

 

 

白虎は何を思っていたのか、何処かで心が揺らいだような感じにも見えた何か思うところがあるのかな。そんな思いを馳せつつ、彼等は準備に取り掛かった。私は治療の為、急遽朱雀の屋敷に泊まることになった。つまるとこの入院だ。

 

 

そうとは知らず、サーヴァント達が帰って来たのは日が暮れる夕方だった。兄貴とセイラとエルちゃんが戻ってきて、何やら手紙らしき物を見ていたが、それは私が誘拐されてから天皇御所で起きた事までの内容だった。

 

 

 

キリエ

「ただいま〜。ルドルフ戻ってない?急にどっか行っちゃうからさ。」

 

 

 

ちょうどキリエとゼフォンが戻って来たが、その不穏な光景に静けさを感じていた。

 

 

 

 

セイラ

「二人とも大変だ!!レベッカが連れ去られた!!」

 

 

キリエ

「え!?レベッカが!?」

 

 

ゼフォン

「まさか白虎ですか!?」

 

 

煉獄

「そのまさかだ。詳細は皆が集まってから発表する。それまでは待機!!」

 

 

マリア

「今戻ったわよ。」

 

 

右衛門左衛門

「おや?姫様の姿が見当たらぬが?」

 

 

ひびき

「一体何処に行ったんだ?」

 

 

豊久

「厠にでも行っとるんじゃろ?」

 

 

七花

「てか何で毎回戻る度に全員集まるんだ?」

 

 

 

 

と指示を出したタイミングで全員帰ってきた。

 

 

 

 

煉獄

「よし!では発表するぞ!!」

 

 

鏡歌

「ごめんなさい!!」

 

 

煉獄

「なぬ!?」

 

 

鏡歌

「私達・・・・何も出来ませんでした!!」

 

 

竜二

「輝之も白虎様を止めようとしましたが、聞き入れてもらえずそのままレベッカさん連れていかれました。」

 

 

煉獄

「だそうだ!!そこで天皇御所から手紙を授かっている!!内容は「レベッカを返して欲しければ力づくで天皇御所に殴り込みに来い!!」だそうだ!!」

 

 

 

 

いや兄貴!?流石に飛躍し過ぎじゃない!?

 

 

 

 

キリエ

「本当だ。そのまま書いてある。」

 

 

 

 

天皇適当かよ!!

 

 

 

 

煉獄

「うむ!?続きが書いてある!!どうやらレベッカは朱雀殿の屋敷で治療中だそうだ!!」

 

 

マリア

「あの子怪我してるの!?」

 

 

ゼフォン

「だとしたら早いところ連れ戻さないと行けませんね。」

 

 

とがめ

「なるほど。レベッカがそのような事になっていたか。」

 

 

マリア

「白玄!!」

 

 

 

 

ちょうどいいタイミングで白玄達も戻って来た。

 

 

 

 

とがめ

「で?どうなんだ?未来でレベッカは白虎に連れ去られたのか?」

 

 

 

 

それを聞いてか、ルドルフ達の顔は青ざめていた。

 

 

 

 

宇髄

「ちょっと待てェェェ!!レベッカが不死川にボコられて拉致られたのって今日か!?」

 

 

乙骨

「だとしたら不味いですよ!!禰豆子ちゃんを串刺しにするくらい危ない人でしょ!?」

 

 

宇髄

「てかルドルフ!!お前何で黒幕の所行っちまったんだよ!!アホだろ!!バカだろ!!お前グハッ!!」

 

 

乙骨

「え?ヘブッ!?」

 

 

 

 

宇髄があまりにもうるさいので、ルドルフは一回回転し上層をつけた回し蹴りをお見舞いし、宇髄は乙骨と一緒に蹴り飛ばされた。それに巻き込まれた乙骨優太はドンマイである。

 

 

 

 

ルドルフ

「お前達がこちらに来るとわかっていたら残っていた。」

 

 

 

 

宇髄のさっきの一言でルドルフは一気に機嫌を悪くした。

 

 

 

 

煉獄

「ん?今宇髄の姿が見えたが?」

 

 

ルドルフ

「気のせいです。いたのは"バカ柱"と"ポンコツゆ○うた"ですから。」

 

 

 

 

これもう完全に怒ってるな。

 

 

 

 

ゼフォン

(彼女の様子では何処へ行ったか追求出来そうにありませんね。機嫌が良くなったら聞きに行きますか。)

 

 

キリエ

「ちょっと!!今まで何処行ってた!!アンタがどっか行っちゃうからゼフォンと私で大変だったんだよ!!」

 

 

ゼフォン

(このライダーはバカですか?)

 

 

 

 

ちょっとキリエ。不機嫌なルドルフにそんな事言ったら。

 

 

 

 

ルドルフ

「そうか。それはすまない事をした。黒幕らしき気配を感じたからそちらを叩き潰した方が君達の戦闘もいくらか楽だったが、お節介だったようだな。」

 

 

キリエ

「痛い痛い!!ごめんなさいごめんなさい!!ありがとうございます!!私が悪うございました!!だから離して!!痛い!!」

 

 

 

 

ルドルフはキリエの頭を掴みそのまま握り潰そうとしていた。言わんこっちゃない。ゼフォンも呆れた顔で見るのも無理ない。

 

 

 

ルドルフ

「すまなかったなゼフォン。君にも迷惑をかけた。」

 

 

ゼフォン

「いいえ。貴女の事ですから、首謀者を見つけたのだと思いました。お陰で戦闘が長引かずに済みました。感謝します。」

 

 

右衛門左衛門

「それはそうと皇帝。貴様最初から姫様が連れていかれるのがわかってて何故私達に黙っていた!!」

 

 

ルドルフ

「未来の()()からの忠告でしたが何か文句でも!?」

 

 

右衛門左衛門

「反論せず。そう言う事情なら仕方あるまい。」

 

 

 

 

強気に出た右衛門左衛門もルドルフに押されていた。

 

 

 

 

とがめ

「まあどちらにせよ、レベッカは死なせもしないし、死なせる気もない。天皇陛下からの挑戦状に乗ってやるとでもするか。何でかって?だって私・・・・。」

 

 

五条

「最強だから。」

 

 

 

 

何でアイマスクみたいなお兄さんになってるの?

 

 

 

 

宇髄

「イテテ・・・ルドルフの奴本気で蹴りやがって。」

 

 

乙骨

「僕まで何で・・・」

 

 

煉獄

「やはり宇髄だったか!!」

 

 

宇髄

「よお!煉獄!派手に助っ人に来てやったぜ!!」

 

 

七花

「あれ?宇髄と乙骨って海外にいるはずじゃ?」

 

 

五条

「気にしなくていいよ。こいつらレプリカだから。」

 

 

乙骨

「本物です!!」

 

 

宇髄

「人を偽物呼ばわりしてんじゃねぇ!!」

 

 

五条

「その話は完全無視して、早速作戦会議と行こうか。」

 

 

 

と言う訳でレベッカちゃん救出作戦会議が始まった。

 

 

 

 

五条

「僕の予想じゃ天皇御所の周りは守護柱が警備に当たっている。西は白虎、南は青龍、東北は玄武だろうね。そんで朱雀は自分の屋敷だろう。レベッカ守るために置いているだろうね。おそらく布陣はこんな感じだね。」

 

 

豊久

「青龍は煉獄とルドルフがよかど。剣の使い手であるなら、同じ侍でなきゃいかん。白虎は(おい)とマリアに七花。んでそこの今入ってきた阿呆の()()に。」

 

 

宇髄

「テメー脳髄って俺か?俺の事言ってるのかぁ!!」

 

 

豊久

「そんで玄武はゼフォンとキリエそんで()()ぞ。」

 

 

乙骨

()()です!!」

 

 

豊久

「そんで最後に朱雀だが、こっちはセイラとエルザとひびきがよかばい。この布陣ならば、守護柱の大将武者狩取れる。」

 

 

 

流石戦の達人の豊さん。あっという間に人選を思いつくなんてやっぱすごい。

 

 

 

ルドルフ

「すまない豊さん。その人選に一つ訂正してほしい所がある。」

 

 

豊久

「なんぞ?」

 

 

ルドルフ

「青龍は・・・・私一人で相手をする。」

 

 

 

ルドルフが青龍と一対一で戦うと言い出した。何故!?

 

 

 

ルドルフ

「頼む!彼とは立ち合わなければならない理由がある!確かめたい事もある!だからお願いしたい!!」

 

 

豊久

「おう。ええぞ。」

 

 

ルドルフ

「本当か!!」

 

 

豊久

(おい)達がこの戦ば起こす目的は、レベッカの救出じゃ。それさえ忘れんとかばったら、構わんぜよ。」

 

 

ルドルフ

「ありがとう!!」

 

 

豊久

「なら煉獄ば白虎所に行ってもらう。」

 

 

煉獄

「俺は構わんが、ルドルフ一人で大丈夫か。」

 

 

豊久

「こいつは、女でありながら剣の腕は立派なもんじゃ。青龍ば互角にやりあえる。」

 

 

 

けどルドルフが何で青龍と戦いたいのかわからない。彼と何か因果関係でも?

 

 

 

五条

「じゃあ作戦も決まった事で!」

 

 

マイキー

「こん中にレベッカ拉致られてひよってる奴いる?いねえよな!!天皇潰すぞォォォォ!!」

 

 

マリア

「レベッカを助けに行くんでしょうがぁ!!」

 

 

乙骨

「天皇様潰したら大問題です!!」

 

 

 

 

私の知らぬ間に危ない発言をしていた白玄。そして天皇御所と、赤と白と未来の同盟陣営が激突する日は、明日の夜となった。



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第九話『ルドルフと今泉』

 

 

 

 

決戦当日の昼間、天皇御所は慌ただしく準備が行われていた。その中で、天皇の部屋に兄貴の伝達役として動いていた高倉さんがいた。

 

 

 

高倉

「よろしかったのでしょうか。炎柱殿を彼方に行かせて。」

 

 

耀輝

「不満かい。」

 

 

高倉

「不満ではなく疑問です。元々炎柱殿は客将としてこちらが招いたに過ぎませぬ。それを身勝手に追い返すような真似を、彼に失礼ではありませんか。」

 

 

耀輝

「確かにそうだ。けどね高倉。炎柱もまたサーヴァントだ。元々はあの西洋の娘等と共に歩むべき道だった。それを無理矢理我等に付かせて戦わせるのは彼の望みではない。彼の自由を奪う行いこそ無礼に値する。だから私は彼を追い出し、他のサーヴァントと共に戦う選択を残したかった。それが私の答えだが不服かい?」

 

 

高倉

「滅相もございません。私の方こそ、無礼あるまじき問いに答えていただき感謝します。」

 

 

 

 

高倉さんは深々と天皇に頭を下げてお礼を言った。この人も冷静沈着だけどちゃんと人の心も持ってるし、何より私達や兄貴をずっと見てきた。こんな意味のない戦いに何があるのか、彼自身不安だった。

 

 

 

 

耀輝

「さてと。お前は高倉より不満を抱いてるようだね。輝之。」

 

 

 

 

天皇の隣には輝之君がいた。彼は今回の騒動に納得がいってなかった。自分の力で何とかお父さんを説得しよう。そう考えていた。

 

 

 

輝之

「父上。このような戦を今すぐに取り下げて下さい。元はと言えば私が起こした失態です。レベッカは関係ありません。どうかお願いします。」

 

 

耀輝

「なら尚更取り下げる事は出来ないよ。何故ならこれはお前へのお仕置きでもあるのだから。」

 

 

輝之

「ですがレベッカは関係ありません!!私達のお家事情に彼女等を巻き込まないで頂きたい!!」

 

 

耀輝

「だがその要因を作ったのも、紛れも無いお前だ。」

 

 

輝之

「確かにそうかもしれません。ですが外に出なければあの様な貧しい集落がある事にも気付きませんでした。なのに父上は!金のないもの達にでさえ税を搾取する。活気付いている都より多く徴収している事も!!」

 

 

耀輝

「あの集落は都にとって重要な役割になっている。だから私は貧しいものには何も与えぬし与える必要も無い。」

 

 

輝之

「なら多額の税収は許すと申しますか!?」

 

 

耀輝

「何を勘違いしているかは知らぬが、お前が気にするにはまだまだ幼い。」

 

 

 

 

輝之君は納得していない様子だった。天皇のする事など権力を奮って民主を苦しめる乱暴者と一緒だと見ていたからだ。

 

 

 

 

耀輝

「さあ、部屋へお戻り。今お前がすべきは学ぶ事だ。心境に変化があれば追って伝える。」

 

 

 

 

輝之君はお父さんに言われるがままにその場を去って行った。その後、高倉さんから思わぬ台詞が飛んできた。

 

 

 

高倉

「もし若様の証言が事実であれば大問題ですぞ。」

 

 

耀輝

「確か、青龍の地区の政を任せていたのは"利根川(トネガワ)"だったね。」

 

 

高倉

「それと家臣の"大槻(オオツキ)"と"一条(イチジョウ)"です。」

 

 

耀輝

「一条はまだ若いからやり直しは効くが、利根川と大槻は私の父の代からの言わば"老害"だ。そろそろ潮時かもしれないね。」

 

 

高倉

「では今回の騒動が終わり次第、青龍殿に調べさせましょう。」

 

 

耀輝

「お願いするよ。」

 

 

 

 

まさかこの騒動に、ルドルフとセイラとエルちゃんが関わってくるとは思いもしなかった。まあそれは別の話になるんだけどね。

 

 

そうして作戦決行日の夜、英霊達は作戦通りにそれぞれの守護柱の所に向かった。けど白玄は皆んなに内緒で分身を使って、こっそり皆んなの戦いを観察することにした。多分やばくなったら白玄が助っ人に入る感じかな?

 

 

 

 

五条

「さてと気になる所は多々あるけど、目玉は"トレセンの生徒会長"と"総北のエース"かな。なんせ僕の知ってる二人の共通点と言えばレースだからね。それが王道バトルをするとなるとは面白くなってきたじゃない。」

 

 

 

そして彼等は動き出した。最初に動き出したのは、玄武の所に向かったゼフォン、キリエ、そして()()だった。

 

 

 

乙骨

()()です!!」

 

 

キリエ

「どうした〜?急に何も無いところでツッコんで?」

 

 

乙骨

「いや今誰かが僕の名前でいじってきた様な気がして?」

 

 

キリエ

「だってアンタの名前覚えにくいんだもん。()()だっけ?」

 

 

乙骨

「ワザとやってるでしょ?」

 

 

ゼフォン

「お二人共、お喋りはそこまでです。目の前に玄武がいますよ。」

 

 

 

 

三人の前にいたのは、余裕の表情で待っていた玄武だった。ただ彼の余裕さが、三人にとっては不気味なものに感じた。

 

 

 

鏡夜

「やはり君達が来たか。堕天使ゼフォン。キリエ。乙骨優太。」

 

 

ゼフォン

「何故私達の真名を!!」

 

 

鏡夜

「私の手に掛かれば、君達の名前くらい占星術と降霊術ですぐにわかる。」

 

 

乙骨

(クジョウ・キョウヤさん。今の彼はガンプラバトルの世界チャンピオンだって聞いてたけど、前世は日本最強の陰陽師!?)

 

 

鏡夜

「さて、呪術しか知らない君は、私とどう戦う。」

 

 

乙骨

「勿論、貴方を倒してレベッカさんを助けます。」

 

 

鏡夜

「そうか。ならこちらから先手を打たせて貰うとしよう。」

 

 

 

先に仕掛けたのは玄武だった。彼の影が急に円状に動き出し、彼を中心に周りへと広がっていった。それを見ても乙骨は全然反応を示さなかった。まるで、彼の技をどこかで見た様な気がしていたからだ。

 

 

 

乙骨

「伏黒君と同じ十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)か。なら攻略しやすい。」

 

 

鏡夜

「なるほど。でも私の術式は君の知ってるのとちょっと違うかな。」

 

 

 

 

玄武がそう言うと乙骨の影から、黒い犬?いやオオカミが飛び出してきて彼に襲い掛かる。乙骨は避けて距離を取ったが、キリエとゼフォンを見た時に驚愕した。

 

 

 

 

キリエ

「何これ!?」

 

 

ゼフォン

「体が動かない!?何なんですかこの蛇!?」

 

 

 

 

キリエとゼフォンに無数の黒い蛇が絡みついていたのだ。けどその蛇はゼフォン達でさえも引きちぎるどころか振り払う事すら出来なかったのだ。

 

 

 

鏡夜

「彼女達を縛っているのが蛇影(じゃえい)で、君の目の前にいる狼は狼影(ろうえい)だ。」

 

 

乙骨

「やっぱり術式か。」

 

 

鏡夜

「そうだ。全ての影からあらゆるものを生み出し、あらゆるものを呼び出す。正に妖の門。それが私の術式『陰漏(かげろう)』だ。」

 

 

乙骨

「陰漏・・・・聞いた事がない。」

 

 

鏡夜

「そうだとも。何故ならこれは私が作った術式だからね。」

 

 

乙骨

「でも、伏黒君の式神と変わらない!!来い!リカ!!」

 

 

 

 

乙骨は自分の背後から白い化け物"リカ"を呼び出して反撃を開始した。

 

 

 

 

リカ

「ユウタヲイジメルナァァァァ!!」

 

 

 

 

リカは狼影を叩き潰した。それを見ていた玄武の表情が曇った。

 

 

 

 

鏡夜

「君・・・・過去に怨霊に取り憑かれた事があるね。」

 

 

乙骨

「よく分かりましたね。」

 

 

鏡夜

「一眼見ればわかるよ。その姿の怨霊は取り憑かれた人間にしかわからない。さらに使いこなしていると見るに、その怨霊を使役していたね。」

 

 

乙骨

「全て・・・・お見通しと言うわけですか。」

 

 

鏡夜

「どうやら君は素晴らしい人材のようだ。呪術だけの知識しか無いのが勿体無いくらいだ。」

 

 

 

 

乙骨の過去に何があったか知らないけど、玄武は彼を見て過大評価していた。けどそれが地獄の始まりだった。

 

 

 

 

鏡夜

「なら私も少し本気を出さないとね。」

 

 

 

 

今度は玄武の影から無数の蝶らしき虫が舞い、乙骨の所に飛んでいった。でも狙いは乙骨じゃなくて白い化け物のリカだった。

 

 

 

 

リカ

「ユウタァァァァ!!タスケテェェェェェェ!!コイツラキライ!!」

 

 

乙骨

「リカ!!」

 

 

 

白い化け物に黒い蝶が群がっていた。振り払おうとしても寄ってくる。しかもリカはすごく嫌がっていた。

 

 

 

 

鏡夜

「それは黒死蝶(こくしちょう)と言う式神でね。その蝶に取り憑かれると相手の霊力を吸い尽くす習性があるんだ。」

 

 

 

 

怖いわ!!つまりその蝶は花の蜜の代わりに人間の生き血みたいなのを吸ってるって事!?

 

 

 

 

乙骨

「待ってろリカ!今助けるから!!」

 

 

鏡夜

「他人の心配より自分の心配をした方がいいよ。」

 

 

乙骨

「えっ・・・・ッ!?(何だ。いきなり肩が重くなった!?しかも強力な呪力!?)」

 

 

あやめ

「ホホホ・・・・。」

 

 

 

乙骨が振り向くとそこには目と口が真っ黒で首の長いの日本人形が彼の右肩に乗っていた。いやこれも怖い!!私なんて振り向いた瞬間失神する!!

 

 

 

鏡夜

「それは特級呪具"禍人形(かにんぎょう)"又は"渦人形(うずにんぎょう)"とも呼ぶ。一見薄気味悪い人形だけど、人の精神を狂わせる呪法を持ってるから取り扱いには注意だよ。」

 

 

あやめ

「ッ!?ホホホ・・・・!!」

 

 

鏡夜

「ハハハごめんよ。あやめ。お前は可愛いから大丈夫だよ。」

 

 

 

どこが可愛い!?どこが大丈夫!?

 

 

 

リカ

「ユウ・・・タ。」

 

 

乙骨

「そんな・・・リカ。」

 

 

 

リカは黒死蝶に魔力を吸い取られて消えてしまった。

 

 

 

鏡夜

「さて、君の切り札は消えた。そろそろ終わりにさせて貰うよ。」

 

 

 

玄武は乙骨にとどめを刺す気でいた。

 

 

 

鏡夜

「領域展開『開かずの間"コトリバコ"』。」

 

 

 

その瞬間黒い影がドームみたいに乙骨を包み閉じ込めてしまった。

 

 

 

乙骨

「何だここは。和式の部屋?」

 

 

 

日本の古い家にありそうなお座敷みたいな所にいた。そこには大量のお札が貼られた襖がその不気味さを醸し出していた。そしてその襖が開かれた時、乙骨憂太は・・・・。

 

 

地獄を見た。

 

 

 

 

乙骨

「あァァァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

黒いドームから乙骨の悲鳴が響いた。

 

 

 

 

キリエ

「優太!?」

 

 

ゼフォン

「彼に何をした!!」

 

 

鏡夜

「私の()()達と少し遊んで・・・ッ!?」

 

 

 

 

突然玄武が展開していたドームを解いてしまった。すると乙骨の姿は何処にもなかった。何処に消えた?

 

 

 

 

鏡夜

「いない?領域から脱出した?だがどうやって。」

 

 

五条

「そりゃ()()したんじゃなくて()()したからだよ。」

 

 

 

 

そこにはマスク姿の男性が乙骨を抱えていた。多分白玄だと思う。

 

 

 

 

鏡夜

「私の出した予知では君は複数人に分身し、各守護柱の所で英霊達の補佐に入る。私の領域に危機感を感じて動き出したと言う事か。」

 

 

五条

「そりゃそうでしょ。お宅なんちゅう化け物飼ってるの。あれ、下手すりゃ家の優太が丸焦げになってたよ。」

 

 

鏡夜

「なるほど。流石にやり過ぎたか。それでどうする。まだ続けるかい。」

 

 

五条

「いや遠慮しとくよ。明らかに僕達が負けみたいだしね。」

 

 

鏡夜

「おや?君はかかってこないのかい?」

 

 

五条

「冗談は吉田くんの島根自慢だけにしてよ。あんな気味の悪いだけの観光名所も無いしょぼい土地なんて行きたがる奴の気がしれない。」

 

 

鏡夜

「神の聖地を冒涜するとはなんと罰当たりな!そんな態度ではいつか天罰が降るぞ!!」

 

 

五条

「上等♪僕神様に嫌われてるから、本気で消しにくるなら望むところだよ。」

 

 

鏡夜

「恐れ知らずな奴だ。」

 

 

 

 

昔、神様に何されたの?

 

 

 

 

鏡夜

「それに君は何故戦わない。」

 

 

五条

「そっちが先に売ってきたケンカに簡単に乗ると思った?僕は戦いに来たんじゃなくて止めにきたのよ。それにお宅等も乗り気じゃ無いみたいだしね。」

 

 

鏡夜

「そう言う事か。」

 

 

五条

「じゃあさ。この三人君の屋敷に入れてくれない?」

 

 

鏡夜

「君はどうするんだ。」

 

 

五条

「僕は他の所に行くよ。朱雀の方も動き出してる頃だしね。だから三人は任せたよ。」

 

 

 

 

そう言って白玄の分身体は姿を消した。玄武は彼の行動に疑問を抱いていた。でもすぐに彼の気持ちに気づいたと言う。

 

 

 

 

鏡夜

「最初から、戦うつもりはなかったか。おかしな男だ。」

 

 

 

 

その後、ゼフォンとキリエ、それと気絶してしまった乙骨は玄武の屋敷に案内された。圧倒的に玄武が有利になった戦いは、白玄の介入でこちらが白旗を上げて終わった。でもまだ戦いは終わってない。朱雀の方でも戦闘が始まっていた。

 

 

そっちはセイラとエルちゃんとひびきが向かっていた。先に仕掛けたのは三人だと言う。

 

 

 

 

セイラ、エルザ、ひびき

「アイドル♪カツドウ♪GoGo let's go♪ゴールに向かって♪走り続ける♪君が見える♪ファイトくれる♪」

 

 

 

 

セイラの宝具に同調してエルちゃんとひびきが歌を歌っていた。何故?

 

 

 

 

「うんうん!いいわ!!貴女達すごく才能がある!!」

 

 

 

 

歌い終わった後、朱雀から拍手を頂き好評だった。勧誘しそうな勢いでね。

 

 

 

 

「でも勿体無い!!凄く勿体無い!!それだけの才能があって何で『幻影結界(げんえいけっかい)』に辿り着けないの!!」

 

 

セイラ

「げんえいけっかい?」

 

 

エルザ

「聞いた事無いわね。」

 

 

「嘘でしょ!?芸者なら誰もが憧れる領域よ!?」

 

 

 

いやそう言われてもわからないけど?

 

 

 

「なら見ていきなさい。今回は貴女達にだけ特別公演!これが幻影結果よ!!」

 

 

 

 

朱雀の舞が始まった途端、辺りが眩しく光、紅葉が広がり舞い散る空間へと変わっていったのだ。それを見たエルちゃん達は、彼女の輝きに呆気に取られていた。

 

 

 

 

セイラ

「きれい・・・・。」

 

 

ひびき

「夜だったのが一気に明るくなった!?」

 

 

エルザ

「これがプロの領域・・・・。」

 

 

 

 

朱雀の舞が終わった時、エルちゃん達は唖然とするしかなかった。あまりの美しさに彼女達ですら見惚れるくらいだった。

 

 

 

 

「どうだったかしら。」

 

 

ひびき

「エクセレント!!素晴らしい踊りだった!!」

 

 

セイラ

「ラララ♪って光が音のように弾んでた!!」

 

 

エルザ

「正にパーフェクトだったわ。私達が如何に自分達が狭い世界でアイカツをしてきたか、それを思い知らされるくらいにね。」

 

 

セイラ

「もっと頑張らないとな。」

 

 

「あら?貴女達の実力なら幻影結界出来るはずよ?」

 

 

セイラ、エルザ、ひびき

「え!?」

 

 

 

 

朱雀がとんでもない事言いだした。なんとセイラ達にも幻影結界が使えるのだと言う。話ではどうやらセイラ達が扱うアイドルのオーラはこっちの人達で言うところの"静の覇気"と全く同じらしい。それに朱雀の見立てでは、三人共既に幻影結界が使えなくてもおかしく無いと言っている。それに私達は動の覇気の一つ死ぬ気の炎しか知らないのだ。

 

 

 

 

「もしかして貴女達、二つの覇気について全く知らないの?」

 

 

エルザ

「死ぬ気の炎くらいしか知らないわ。」

 

 

「なるほどね。つまり根本的な基本は知らないか。なら教えてあげるわ。」

 

 

 

 

朱雀から"覇気"について詳しく語られた。

 

 

 

 

「動の覇気は「己の"力"を示すもの。」。静の覇気は「己の"存在"を示すもの。」。この二つに部類されるわ。」

 

 

 

 

動の覇気?()()()じゃなくて?まあそれはいいとして動の覇気の"力"とは人間の能力や武術と言った気の力の事である。死ぬ気の炎がそれである。それで静の気もとい静の覇気の"存在"は自分をアピールする力で、セイラ達アイドルのオーラの事である。それ等を発現する事によって習得できると言う。それが覇気の基本的な使い方である。でも朱雀がわからない事は、セイラ達がその幻影結界を使える領域まで来ているのに、その発動する兆しが見えないのだと言う。

 

 

 

 

「本来なら貴女達の実力で幻影結界を習得してもおかしく無いのにそれが見られないの。それってやっぱり貴女達がサーヴァントだから?」

 

 

セイラ

「それを私達に言われてもな。やっぱりわからないよ。」

 

 

 

 

そんで全員で考えていた時に、白玄は姿を現す。

 

 

 

 

五条

「ふーん。面白い話をしているね!」

 

 

セイラ

「白玄!?」

 

 

エルザ

「貴方何処から出て来たの!?」

 

 

五条

「知らないのかい?悩める可愛子ちゃんあるところ五条先生あり。」

 

 

ひびき

「何か今無性に寒気がした。」

 

 

セイラ

「やばい。何されるかわからない。」

 

 

 

 

茶化しに来たなら帰れ!!変態!!

 

 

 

 

五条

「あと幻影結界だっけ?それセイラ達使えるよ。ほんの一瞬だけど。」

 

 

セイラ、エルザ、ひびき

「はぁ!?」

 

 

 

 

え!?いやいや!当の本人達使えないって言ってるけど!?

 

 

 

 

五条

「忘れてない?会場のボルテージが一気に上昇した時に発動できるアピールアクション。」

 

 

セイラ

「それってもしかして・・・・スペシャルアピール!?」

 

 

エルザ

「でもあれはアイカツシステムが無いと出来ないわよ!?」

 

 

五条

「君達の世界だとね。でも知らずに発動していたんだよ。でなきゃあれほど美しい輝きは見せられない。それに今の君達はサーヴァントだ。そんな物なくても輝けるよ。」

 

 

ひびき

「本当なのか。」

 

 

五条

「本当さぁ!五条先生を信じなさい!!五条先生を信じたものだけに救いはアリマース!!」

 

 

 

 

メッチャ信用できないし、お前は宗教信者か何かか!!

 

 

 

 

五条

「じゃあレベッカの方はよろしくね!もう会長の方始まってるから。」

 

 

セイラ

「会長?」

 

 

五条

「ルドルフの事だよ。正直あっちがやばそうだからね。直ぐに止めに入らないと。」

 

 

ひびき

「なら私達も!」

 

 

五条

「三人はレベッカを頼むよ。あっちはあっちで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

 

 

意味深なセリフを残して白玄は去ってしまった。私はその時治療中だったから三人が来ていることを知らなかった。ただ私の願いは、一刻も早くこの戦いを終わりにしてほしい。それだけだった。

 

 

そしてルドルフは青龍と既に交戦していた。

 

 

 

 

今泉

(こいつの動きに隙が無い。それに異様な威圧感。まさか大空の呼吸の使い手の生き残りがいたとはな。それがサーヴァントだと。)

 

 

ルドルフ

「荒々しく見えて的確な太刀筋。その上容赦のない斬り込み。流石は()()()()()()()()()()()だな。」

 

 

今泉

「ッ!?」

 

 

ルドルフ

「そう驚くこともないだろ。剣を交えてわかっている筈だ。覇気を流した状態の呼吸を使う剣技はこの世界のこの国しか実在しない。つまり前世の私はこちらの世界の元住人であると。」

 

 

今泉

「そんな事はいい。俺が気にしたのは何故お前が俺の本名を知っているのかと言う事だ。少なくとも俺がお前に会うのは今日が初めてだ。それともこの先の未来で俺達は出会うのか。」

 

 

ルドルフ

「私達が出会うとしたらサーヴァントになってからかな。だが私は前世の頃から君を知っている。でも当時は日系人だった為アメリカにいたから、日本には行った事がない。そんな私が何故君の事を知っているか。あの大戦中に私も戦地にいたからだ。『陸軍日系部隊』として、"硫黄島"の戦闘の最中で元新撰組の二人に出会い戦った。」

 

 

今泉

「何が言いたい。」

 

 

 

 

段々二人の雲行きが怪しくなり、青龍から怒りの表情が伺えた。白玄は、二人の衝撃の事実を知る事になる。

 

 

 

 

ルドルフ

「私の前世の旧名は幸平(ゆきひら)蒼華(そうか)。鳴子章司と小野田(おのだ)山道(やまみち)を斬ったのは紛れもないこの私だ。今頃なら二人の死亡通知が君の所に届いている筈だが。」

 

 

 

 

それを聞いた瞬間、青龍は一気にルドルフの間合いに入り、斬り殺しに掛かった。でもルドルフはわかっていたのか、それを弾いてしまった。

 

 

 

 

今泉

「何故、不死川が割り切れない気持ちでいたか、今ならわかる気がする。お前の話を聞いて、戦う理由が出来た。今この場で二人の敵討ちが出来るのだからな。覚悟しろ幸平蒼華。お前を士道不覚悟で斬首する!!」

 

 

ルドルフ

「いいだろう。貴様の様な小者に私の首を打ち取れるならな。」

 

 

 

 

二人の殺意が嫌な空気を包んでいた。まるでこれから殺し合う様なそんな空気になっていた。

 

 

 

 

今泉

「雨の呼吸。十二ノ型。」

 

 

ルドルフ

「大空の呼吸。終ノ型。」

 

 

 

 

二人は互いの全力を掛けて必殺技を放とうとしていた。

 

 

 

 

今泉

時雨濁龍牙(しぐれだくりゅうが)ぁ!!」

 

 

ルドルフ

天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)!!」

 

 

 

 

二人の剣が激突する、その一歩手前だった。

 

 

 

 

鳴子

「なに・・・・なにやっとんねんスカシ!!」

 

 

今泉

「鳴子!?」

 

 

 

 

白玄が二人の間に入って奥義を止めていたのだ。でもさっきのマスク男じゃなくて赤い髪の男と、色は違うがルドルフと似たような格好をした女の子が二人の衝突を止めに入った。

 

 

 

テイオー

「もうやめて会長!!」

 

 

ルドルフ

「テイオー!?いや違う・・・白玄!?」

 

 

 

ルドルフは直ぐにそれが白玄だと言う事に気付いた。でも何で二人の知人なんかに化けてるんだろう?

 

 

 

 

テイオー

「こんなの会長じゃない!!僕の知ってる会長は強くて優しくて、時々寒い親父ギャグも言ったりする七冠の最強のウマ娘なんだ!!僕が憧れたウマ娘なんだ!!だから戻って来てよ!!僕が知っている会長に!!」

 

 

ルドルフ

「・・・・。」

 

 

 

ルドルフは剣を収めた。もう戦う気力を失っていた。

 

 

 

鳴子

「正直、お前の過去なんか知らん。ワイの知っとる今泉は、いつもスカしてばっかで悪態付く気に食わん奴や!!けどな!!御堂筋にボコボコにされようが、仲間の為にダルマのように起き上がって全力で走り出す熱い男やって事を知っとる!!そんなお前が未練タラタラのまま来世に来てみろ!!ワイは絶対許さへんからな!!」

 

 

今泉

「鳴子。」

 

 

 

青龍は立膝を着いて剣を置いた。その瞬間、二人を説得した白玄の分身体が消え、マスク男の姿で白玄が登場した。

 

 

 

五条

「気は澄んだかい。」

 

 

ルドルフ

「ずるいぞ。」

 

 

五条

「え?」

 

 

ルドルフ

「ずるいぞ。偽物とは言えテイオーを使うなんて!」

 

 

五条

「偽物じゃなくても、本人も同じ事を言ってたと思うよ。それだけ二人の戦いは見るに耐えなかった。」

 

 

 

 

私は知らなかったが相当酷かったらしい。

 

 

 

 

今泉

「幸平蒼華。聞いてもいいか。」

 

 

 

 

すると青龍がルドルフにいくつか質問をして来た。ただその中で衝撃の事実を知る事になる。

 

 

 

 

今泉

「なんで・・・・アメリカは日本に爆弾を落とした。何故関係の無い民間人を殺した。何故日本を焼け野原にする必要があった。」

 

 

ルドルフ

「私も夫も、その話を聞いた時は驚いたよ。だが更に驚く事があった。大統領やホワイトハウスはおろか、最高指揮官もそんな残虐な指示を出した者はいなかった。」

 

 

今泉

「何だと!?」

 

 

ルドルフ

「日本との終戦後にアメリカは航空隊及び各航空母艦の艦長を軍法会議で追及されるくらいの騒ぎになった。だがそれでも、やった者は出なかった。」

 

 

今泉

「嘘だろ。」

 

 

ルドルフ

「それと新型爆弾についてもアメリカは投下していない。あまりに危険性が高い為、開発が中止となったからだ。」

 

 

 

 

何か私の知らないところでやばい話が進んでる?

 

 

 

 

今泉

「最後に聞かせてくれ。鳴子と小野田を見逃す選択肢は無かったのか。」

 

 

ルドルフ

「互いに守るべき者があった。二人にも私にも。それは避けられなかった。」

 

 

今泉

「そうか。」

 

 

 

青龍は下を向いたまま涙を流していた。でもルドルフの話にはまだ続きがあったそうだ。

 

 

 

ルドルフ

「鳴子彰司は確かに殺した。小野田山道には・・・・返り討ちにあってしまった。」

 

 

今泉

「なに!?」

 

 

ルドルフ

「やはり強かったよ彼は。まるっきり歯が立たなかった。」

 

 

今泉

「ちょっと待て!!じゃあ小野田は生きているのか!!」

 

 

ルドルフ

「ああ。ただ・・・もう日本には帰ってこない。確かに彼は勝ったが、自ら捕虜になる事を条件に、硫黄島の戦闘を終わりにしてほしいと言う要望で幕を閉じた。彼を犠牲に生き残った日本人兵士を撤退させた彼の勇気ある行動に、私達アメリカ軍は感銘を受けたよ。」

 

 

今泉

「お人好しにも程があるだろう。」

 

 

五条

「でも嫌いじゃない。」

 

 

ルドルフ

「私はしばらく監視役として彼の側にいた。でも私は彼が釈放されるなら日本に帰還出来るよう手配するつもりだった。でも彼はその選択を選ばなかった。「大切な人が出来た。」そう言って私のくすり指に指輪をはめてくれたよ。私も彼の事を好いてしまったからお互い同意して釈放と同日に結婚した。」

 

 

今泉

「そうか。」

 

 

五条

「結婚か〜。」

 

 

今泉

「は?」

 

 

五条

「え?」

 

 

今泉、五条

「誰と誰が結婚したってぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 

ルドルフの話に二人は驚きを隠せなかった。まあルドルフが結婚した事実ではなく、そのお相手が問題だったらしい。

 

 

 

 

ルドルフ

「だから私と山道だ。多分この時代なら子供もいて今2歳くらいか。」

 

 

今泉

「待て待て何の冗談だ!!あの小野田がお前と結婚して子供!?嘘だろ!!」

 

 

ルドルフ

「事実だ。真面目な話をしているのにふざける訳ないだろ。」

 

 

今泉

「結婚とは無縁の小野田だぞ!?ふざけてる以外何がある!!」

 

 

ルドルフ

「夫の昔の同僚とは言え私の目の前で彼を侮辱するとはどう言う了見だ!!」

 

 

五条

「ごめん。話がぶっ飛び過ぎてふざけてるようにしか聞こえないのよ。」

 

 

ルドルフ

「君までそんな事を言うか!!」

 

 

五条

「だって僕からしたら、弱虫ペダルの小野田坂道とウマ娘プリティーダービーのシンボリルドルフが結婚だよ!?著作権的にもマズイし、何よりファンがうるさいからさ!!しかも別作品同士の結婚なんて前代未聞だよ!?炎上!垢BAN!起訴も有り得るレベルだから!!コメント欄荒らし放題だから!!」

 

 

ルドルフ

「何を勘違いしてるかは知らないが、それは来世の私達であって今話しているのは前世の事だ!それを周りからとやかく言われる筋合いはないぞ!!」

 

 

五条

「因みに子供の名前は?」

 

 

ルドルフ

創真(そうま)だ。好奇心旺盛で元気な息子だぞ。」

 

 

五条

「へー・・・・そうなんだ(しかも息子は食戟のソーマの幸平創真ってどうなのよ!?)。」

 

 

 

 

もう驚きの余り苦笑いしかしなくなった。ルドルフの爆弾発言で二人は動揺しかなくなっていた。そのせいか青龍は横たわって落ち込んでいた。

 

 

 

 

五条

「あ〜今泉君?これ君の負けにする?完全に戦意喪失してるよね?」

 

 

今泉

「勝手にしろ・・・・。もうどうにでもなれだ・・・・。」

 

 

五条

「そう言う事だから会長。彼の事お願いしていい?」

 

 

ルドルフ

「やれやれ。世話が焼ける。」

 

 

 

 

ルドルフ達の所は何とか無事に終わったようだ。何か話がおかしな方向に行ってしまったが、白玄が解決してくれるから別にいいか!!

 

 

 

 

五条

「何かレベッカが僕に押し付けて来た感じがするが。」

 

 

 

 

そして最後は白虎の方だったが、こっちはこっちで苦戦していた。

 

 

 

 

宇髄

「マジかよ。」

 

 

煉獄

「刃が通らないだと!?」

 

 

 

 

兄貴と宇髄が左右から斬り込みに掛かったが白虎は両腕でガードした。けど刃受けてる筈なのに血が出てないのだ。

 

 

 

豊久

「チェストォォォォ!!」

 

 

 

すかさず豊さんが背後から斬りに掛かった。でも首を狙った筈なのに全然刃が通ってない。

 

 

 

不死川

「首を刎ねるんじゃねえのか。落武者がよ。」

 

 

豊久

「お(まん)・・・・・妖か何かか?」

 

 

不死川

「存在と人相が妖みてえな奴に言われたく無いわ!!」

 

 

宇髄

「犯罪者ツラしたテメェ言うか!!」

 

 

不死川

「アホみたいな格好しているテメェよりかはマシだ!!」

 

 

宇髄

「こっちのセリフだ!!」

 

 

 

お前等余裕だな。

 

 

 

 

不死川

「剣士ってのはただ棒切れ振り回してるだけのチャンバラごっこか。大層お気楽な職業だな。」

 

 

宇髄

「刃物だから普通に振り回しても切れるんだよ!!なんだその体!?何で傷ひとつつかねえんだ!?バカじゃねえの!?」

 

 

不死川

「お前等が軟弱過ぎんだよ!!こんにゃくかテメェ等は!?」

 

 

宇髄

「タイム!!」

 

 

 

宇髄が待ったを掛けて作戦立てる為に一回全員を集めた。

 

 

 

宇髄

「なあ。あいつ鬼殺隊の頃より強くないか?」

 

 

煉獄

「格段に強くなっている。性格は変わってないがな!」

 

 

マリア

「でも彼の体おかしいわよ。何で刃物で傷がついていないわけ?」

 

 

七花

「いや刃物だけじゃないぞ。内向にもダメージが効いて無いみたいだ。」

 

 

豊久

「だから(おい)は言ったんじゃ。アイツ妖やぞ?」

 

 

不死川

「テメェ等の作戦会議全部丸聞こえだぞ。」

 

 

 

 

馬鹿なの?

 

 

 

 

不死川

「もうやめだ。一人ずつかかってこい。どっちにしろお前等は鬼畜米兵の小娘に加担した罪人共だ。あの小娘諸共あの世に送ってやる。さあ出てこい!最初に死にたい奴は前へ出ろ!!」

 

 

謙一

「はい!梁山泊一番弟子!白浜(しらはま)謙一(ケンイチ)!!参ります!!」

 

 

宇髄

「何でお前が名乗り出てんだァァァ!?」

 

 

マリア

「こいつ馬鹿なの!?」

 

 

 

 

緊張感が漂う中、それをぶち壊す様に白玄が登場した。

 

 

 

 

不死川

「いいだろう。何処の小僧か知らねえが早死にしたいなら望み通りにしてやる!!」

 

 

謙一

「お願いします!!」

 

 

 

白虎はこんな子供にも容赦なく拳を上げた。

 

 

 

不死川

「雷撃拳!!」

 

 

 

白虎から無数の拳を白玄に放ったが、彼は白虎の全ての攻撃をいなしながら戦っていた。その内白虎は手を止めてしまった。

 

 

 

不死川

「何だこいつ!?雷撃拳を全ていなしただと!?」

 

 

謙一

「無駄です。流水制空圏はあらゆる拳も受け流す。それに今の貴方は心が乱れている。迷いがある。そんな武術家に勝機はありません!!」

 

 

 

 

今度は白玄が反撃に出た。

 

 

 

 

謙一

「貴方の迷いも恨みも!!この拳で打ち砕く!!魚人空手奥義!!武頼貫(ブライカン)!!」

 

 

 

水を纏った拳が白虎を直撃し、物凄い衝撃波で吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

 

不死川

「テメェ・・・・覇気を使えるのか。」

 

 

謙一

「それもあります。ですが貴方の心の乱れが無ければ勝てませんでした。その原因は貴方の戦争時代にありますよね。それについて気になる情報を入手しました。後日青龍の屋敷に来て下さい。」

 

 

 

 

白玄はそう言っていたそうだ。これで全ての戦いは終わった。大半は白玄が解決しちゃったけど、被害が出なかった事が幸いだ。そしてその報告は天皇にも伝わっていた。

 

 

 

 

高倉

「ご報告します。先程朱雀殿の方が終わり、レベッカの側近の者達も屋敷に上げたそうです。」

 

 

耀輝

「玄武は圧勝と聞いているが流石は陰陽師だ。驚いたのは青龍と白虎だね。」

 

 

高倉

「まさか武人であるあの二人が惨敗とは未だに信じられません。それと玄武殿の話では白玄と言う男が関わっている話だそうです。」

 

 

耀輝

「何者なんだい?」

 

 

高倉

「詳細は分かりませぬが、何でもサーヴァント達の戦いに介入したとか。」

 

 

耀輝

「なるほど。その男が関わっているなら、どうやら私達の狙いがズレてしまったと言う事か。明日、レベッカ以外の者達を私の所に連れて来なさい。そこで全て決着をつける。」

 

 

高倉

「わかりました。」

 

 

 

 

天皇達の会議が終わった後、予想だにしない出来事があった。

 

 

 

 

耀輝

「それと今回は特別に許すから勝手に人のお家に入るのはしちゃダメだよ。竜二、鏡歌、雀、虎次郎。」

 

 

 

 

何とちびっ子達まで来てしまっていたのだ。どうやら輝之くんを心配して来てくれたと言う。

 

 

 

鏡歌

「天皇様!レベッカさんは返してくれるのでしょうか!?」

 

 

耀輝

「そうしたいのは山々だが、今は安静にする為にこちらでしばらく預かる事にした。納得してもらえるかい。」

 

 

竜二

「わかりました。レベッカさんをお願いします。」

 

 

耀輝

「いい子達だ。今日はもう遅い。ここで泊まっていきなさい。」

 

 

鏡歌

「ありがとうございます。」

 

 

 

後日、()()含めて皆んなを集めて今後について話が行われたが、それはまた次のお話にしましょう。では皆様次回をお楽しみに!!

 

 

 

 

〜see you next time〜

 

 

 

 

 



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第十話『停戦協定』

 

 

 

 

 

守護柱の戦いが終わった頃、女性サーヴァントだけ朱雀の屋敷に私の様子を見に来ていた。朱雀の屋敷は男子禁制なので男どもは玄武の屋敷で気絶した憂太を見に行っていた。

 

 

 

 

マリア

「それでレベッカの様子は。」

 

 

エルザ

「治療は終わったわ。でも全治六ヶ月だそうよ。」

 

 

ルドルフ

「そんなに重症だったのか!?」

 

 

 

 

全身骨折ですからね。私の治療中にいつの間にか、姐さん達もエルちゃん達に合流していた。

 

 

 

 

巫女A

「皆様、お待たせしました。レベッカ様の下に案内します。」

 

 

 

 

使いの人が来て、皆んなを私がいる部屋に案内した。でも部屋の前に来て扉を開けると、そこには朱雀と思わぬ人物がいた。

 

 

 

 

しのぶ

「皆さん、お疲れ様でした。」

 

 

マリア

「白玄!?どうしてここに!?」

 

 

しのぶ

「レベッカさんの様子を見に来ました。今は意識を取り戻しましたが、顎を骨折していてまともに話せる状態ではありません。ですが少しの会話でしたら問題ないでしょう。」

 

 

 

 

男子禁制のはずの屋敷に白玄が女性に化けて入って来ていたからだ。私の状態を聞いて近くに座り始めた。

 

 

 

 

マリア

「ごめんなさいレベッカ。私達が付いていながら貴女を守れなかった。」

 

 

ルドルフ

「いや。謝らなきゃいけないのは私の方だ。偉そうに言って君を守ると言ってこの為体だ。本当にすまない。」

 

 

レベッカ

「イ゛イ゛ヨ。ギニジナイデ。」

 

 

 

 

申し訳ないのは私の方だ。二人が謝る必要はない。私が弱いから、油断していたからこんな事になったんだ。謝るのは私の方だよ。

 

 

 

 

レベッカ

「ゴメンネ゛。ヨワ゛グデ。」

 

 

しのぶ

「あらあら、伊之助くんみたいな事を言って、しょうがない子ですね。心の傷は無理でも、体の傷だけは治しておきましょう。」

 

 

 

 

すると白玄は私の周りに結界のようなものを展開させた。

 

 

 

 

しのぶ

「双天帰盾。私は拒絶する。」

 

 

 

 

そしたらほんの数秒で結界が解けた。

 

 

 

 

しのぶ

「もう包帯を取ってもいいですよ。」

 

 

「ちょっと待って!彼女まだ包帯を取れる状態じゃないのよ!!」

 

 

しのぶ

「心配ありません。もう治りましたから。」

 

 

「はぁ!?」

 

 

 

 

とりあえず私は顔の包帯だけを取った。腕も動かせるし足も動く。体の痛みもないし、本当に治ったんだな。凄いな白玄は。

 

 

 

しのぶ

「レベッカさん。あーんして下さい。」

 

 

レベッカ

「あーん。」

 

 

しのぶ

「次にあいうえおと言ってみてください。」

 

 

レベッカ

「あいうえお。」

 

 

しのぶ

「もう大丈夫そうですね。」

 

 

 

 

それから私は顔を下げたまま誰とも顔を合わせられなかった。申し訳なさがいっぱい出ていた。

 

 

 

 

マリア

「レベッカ、大丈夫?」

 

 

レベッカ

「ごめん。今皆んなと話す事が出来ない。」

 

 

 

 

沈黙の中、ただ重たい空気だけが流れていた。

 

 

 

 

しのぶ、キリエ

(き・・・・・気まずい!!)

 

 

「そっ・・・そうだレベッカちゃん!お風呂入らない!?この屋敷露天風呂だから体も心も清めてスッキリしましょう!!」

 

 

 

 

朱雀さんに言われて、私は黙って使いの人の案内で部屋を出た。それからの事だった。

 

 

 

 

セイラ

「レベッカどうしたんだろう。」

 

 

ゼフォン

「こうなってしまった事に責任を感じてるのでしょうか。」

 

 

キリエ

「気にする必要ないのに。悪いのは白虎だし、レベッカを置いて離れた私達も悪いし。」

 

 

 

 

そんな事を感じていたのか、白玄がこんな事を話してくれた。

 

 

 

 

しのぶ

「今は弱い自分と対話しているのでしょう。そんな彼女に私達が出来ることも、声を掛けることもありません。もししてあげられるとしたら、元気になった彼女を笑顔で迎え入れましょう。」

 

 

 

 

そんな事を言っていたそうだ。

 

 

 

 

マリア

「わかったわ。今はレベッカが戻ってくる事を信じて待ちましょう。」

 

 

セイラ

「そうだな!」

 

 

マリア

「それとルドルフ!」

 

 

ルドルフ

「なんだ?」

 

 

マリア

「あんた自分だけレベッカを守ろうとしてるけど、同じ赤の陣営の仲間なんだから私達にも頼りなさい。こっちに来る時、未来の私にも同じような事を言われなかった。」

 

 

ルドルフ

「確かにそうだったな。これからは、そうさせてもらう。」

 

 

 

 

姐さんもそんな事を話していた。そして朱雀さんも。

 

 

 

 

「この度は、このような事態になる事を分かっていながら、レベッカちゃんを守る事が出来なかった私達守護柱の責任もあります。今回の白虎の卑劣な振る舞いと、それをわかっていながら阻止できなかった私達の無能も含めてここにお詫びします。大変申し訳ありませんでした。」

 

 

しのぶ

「こちらこそ、京での勝手な行いをした私達にも非はあります。ですがあなた方はレベッカちゃんを守ろうとしてくれた。それだけでもこちらは喜ばしい限りです。そのご厚意に感謝の意を表します。ありがとうございました。」

 

 

 

 

 

私が去った後、そんな事があったようだ。

 

 

そんな私は屋敷の露天風呂でお湯に浸かりながら星空を眺めていた。急にいろんな事がありすぎて頭が追いついていないけど、少なくともあの時の私は無力で何も出来なかった。ただ大怪我して温泉に浸かってるだけの無能な魔術師だ。

 

 

そんな風に考えてた時だった。

 

 

 

 

とがめ

「隣りいいか。」

 

 

 

 

白玄も入りに来て、私の隣に座った。

 

 

 

 

とがめ

「んーいい湯だ!朱雀殿の言う通り、これはなかなか気持ちいいな!」

 

 

レベッカ

「私、ダメダメだね。」

 

 

とがめ

「何故そう思うのだ。」

 

 

レベッカ

「あれだけ忠告されてたのに、結局は捕まって大怪我して皆んなに迷惑掛けて最低だ。私、マスターとしても魔術師としても失格だよ。」

 

 

 

 

なんで白玄にこんな話をしたのかはわからないけど、いろんな気持ちが溢れ出そうで泣き出しそうで、感情が爆発しそうな感じがした。

 

 

 

 

とがめ

「"どれだけ打ちひしがれようと、どれだけ打ちのめされようと"、"立って歩け、前へ進め。お主には立派な足が付いてるではないか"。"逃げれば一つ、進めば二つ手に入るのだから"。だから今は"泣いたっていいんだ。乗り越えろ"。レベッカ。」

 

 

レベッカ

「白玄・・・・。」

 

 

 

 

私は白玄の胸を借りて溢れ出しそうな感情をいっぱいに出しまくって泣き続けた。気が済むまで。

 

 

 

 

 

マリア

「あら?白玄は?」

 

 

ひびき

「お風呂に行ったよ。私達にはああ行ったけど、やっぱり白玄も心配だったんじゃないかな。」

 

 

マリア

「なんだ白玄が一番心配してたんじゃない。」

 

 

セイラ

「まあ白玄なら、レベッカを慰めてくれるだろうし、一件落着だな。」

 

 

ゼフォン

「本気でそう思ってます?」

 

 

マリア

「どうしたの三人とも顔色悪いわよ?」

 

 

エルザ

「貴女達は・・・・・。()がずっと女性の姿でいたから忘れてると思うけど。」

 

 

マリア

「何よ?白玄がどうしたの?」

 

 

ルドルフ

「彼、性別"男"だぞ。」

 

 

マリア、セイラ、ひびき

「・・・・・・。あっ。」

 

 

 

 

長い事お風呂で泣いていた私は、ようやく落ち着きを取り戻した。それと同時に、ある決意を固めた。

 

 

 

 

レベッカ

「お願い白玄!私もっと強くなりたい!だから教えて!アニメーションの事も!魔術の事も全て!!」

 

 

とがめ

「いいのか?私の修行は厳しいぞ。」

 

 

レベッカ

「構わない!強くなって皆んなと一緒に戦いたい!!」

 

 

とがめ

「それがお主の願いか。なればそれに応えぬわけにはいかないな。」

 

 

 

 

強くなるんだ。姐さんやアニキ達と一緒に戦える魔術師になる為に!!

 

 

・・・・・・ん?

 

 

そんな私にある一つの疑問が浮かんだ。いろいろあって落ち着いたらとんでもない事態に気づいた。

 

 

 

 

レベッカ

「ねえ。白玄ってさ。今とがめって女性に化けてるんだよね?」

 

 

とがめ

「そうだが。」

 

 

レベッカ

「本当の性別は男なんだよね?」

 

 

とがめ

「そうだな。」

 

 

レベッカ

「じゃあ聞いていい?」

 

 

とがめ

「なんだ。」

 

 

レベッカ

「なんで平然と至極当たり前に女性の私と一緒に女湯に入っているの。」

 

 

とがめ

「お主のような勘のいいガキは嫌いだよ。」

 

 

 

 

 

確信犯だったァァァァァァ!!

 

 

 

 

 

とがめ

「お主もアホよの。そのまま黙っていたら何もせずにいたものを。」

 

 

レベッカ

「あの白玄さん!?手つきがいやらしいんだけど!?」

 

 

とがめ

「それにしてもお主オッパイ大きいのう。さては着痩せするタイプだったか。」

 

 

 

 

ヤバイヤバイ!!白玄に侵される!!

 

 

 

 

とがめ

「さあ!大人しく私のダッ○ワイフになるがいい!!」

 

 

 

 

 

いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!誰か助けてェェェ!!

 

 

 

 

マリア、ルドルフ

「やめんかァァァァァァ!!」

 

 

とがめ

「ブフェ!?」

 

 

 

 

浴室の扉をぶち破り、そのまま白玄に飛び蹴りをかましたマリア姐さんとルドルフが来てくれた!!

 

 

 

 

マリア

「レベッカ無事!?」

 

 

レベッカ

「姐さん!!ルドルフ!!」

 

 

ルドルフ

「一触即発。間一髪だったようだな。」

 

 

とがめ

「ちぃ!もう気付かれたか!!」

 

 

 

 

そんで顔面に飛び蹴りがヒットした白玄が起き上がってきた。なんてタフな奴だ!!

 

 

 

 

マリア

「レベッカを傷物にした罪は重いわよ白玄。」

 

 

ルドルフ

「さて覚悟は出来ているか。」

 

 

オールマイト

「ストップ!ストップ!ルドルフ君!今私を消したら未来に悪影響が出るんじゃないかい!?」

 

 

ルドルフ

「一向に構わん。今はレベッカが最優先だ。」

 

 

オールマイト

「hey!girl's!私のいい分を受け流す事水の如し!」

 

 

 

 

すると後からひびき達も来てくれた。

 

 

 

 

ひびき

「レベッカ無事か!!」

 

 

セイラ

「てか何しようとしていた!!」

 

 

エルザ

「何をしようと貴方のお仕置き変わらないけどね。ゲス野郎。」

 

 

ゼフォン

「死ぬ前に何か言う事はありますか。」

 

 

オールマイト

「トップヒーローは学生時から逸話を残している。彼等の多くが話をこう結ぶ!!"考えるより先に体が動いていた。"と。」

 

 

レベッカ、マリア、セイラ、エルザ、ひびき、キリエ、ゼフォン、ルドルフ

「は?」

 

 

オールマイト

「Puls ultraってやつさ!漢は理性より性欲が先に動いちまうんだよ!!だから皆んな揃っているから一緒に風呂に入って裸の付き合いをして落ち着こうじゃないか!!」

 

 

マリア、セイラ、エルザ、ひびき、ゼフォン、ルドルフ

「誰が入るかこの外道がァァァァァァ!!」

 

 

キリエ

「半殺しだボケェェェェェェェェェ!!」

 

 

 

 

そんで皆んな一斉に白玄に飛び掛かって集団リンチが始まった。

 

 

ホント、白玄といい皆んなといい・・・・ありがとう。何かウジウジしてるのがバカらしくなってきたよ。だから私も前に進むよ!!

 

 

 

 

レベッカ

「皆んな聞いて!私弱いから皆んなの足引っ張るかもしれないけど、強くなるから!だからこれからも力を貸して!!」

 

 

 

 

そんな私の思いに皆んなは。

 

 

 

 

マリア

「当たり前じゃないの!」

 

 

セイラ

「もちろんだ!」

 

 

エルザ

「結構なことね。」

 

 

ひびき

「エクセレント!」

 

 

ゼフォン

「最初からそのつもりです。」

 

 

 

 

そう応えてくれた。

 

 

 

 

ルドルフ

(そうかレベッカ。これが君のオリジンなんだな。この京都から始まって私の知るレベッカがいる。ならば私はこの時間を守らねばならないな。)

 

 

キリエ

「あー、それはいいんだけどちょっといい?」

 

 

レベッカ

「どうかした?」

 

 

キリエ

「あいつどこに消えた?」

 

 

マリア

「って!?いつのまに逃げた!?」

 

 

 

 

その白玄は、お風呂場を出て浴室の方で着替えていた。

 

 

 

 

とがめ

「レベッカが足止めしている今のうちに。」

 

 

「あら白玄さん。もうお上がり。」

 

 

 

 

すると朱雀さんが浴室に入ってきた。何しに?

 

 

 

 

とがめ

「朱雀殿の方こそ如何なされた?」

 

 

「私、貴方に聞きたいことがあって来たの。」

 

 

とがめ

「な・・・・何ようでしょ。」

 

 

 

 

朱雀さんから不穏な空気が流れていたが何となくわかった。

 

 

 

 

「貴方・・・・男なんですってね。」

 

 

 

 

おそらくセイラ達から聞いたのだろう。朱雀の屋敷は男子禁制だから朱雀さんが怒るのも無理も無い。

 

 

 

 

「何神聖な屋敷に男が紛れ込んどんのじゃァァァァァァ!!」

 

 

 

 

白玄は朱雀さんに蹴り飛ばされお風呂場にリリース。

 

 

 

 

とがめ

「いたた。まさか朱雀殿の耳にまで入っていようとは。」

 

 

マリア

「私達から逃げようなんていい度胸してるじゃない。」

 

 

 

 

そして姐さん達にみつかり第二ラウンドが始まった。

 

 

その後は白玄をボロボロにして玄武の屋敷まで連れて行き、怒鳴り込んで庭で七花、宇髄、乙骨もまとめて一緒に正座させられていた。

 

 

 

 

谷垣

「俺はただ、レベッカと一緒に風呂に入ってただけだ。それの何がいけない。」

 

 

乙骨

「それ自体がいけないのでは?」

 

 

ルドルフ

「何故こうなるとわかって止めなかった!」

 

 

乙骨

「コンビニ行く感覚で「ちょっとレベッカ治しに行ってくる。」とか言っていたのであえて止めませんでした。」

 

 

ルドルフ

「私達が殺す気で止めに入る事態になってたのにか?」

 

 

乙骨

「すいません。僕等も止めるべきでした。」

 

 

 

 

ルドルフの圧力に負けて土下座する乙骨の姿があった。てかアンタらそんな軽いノリで白玄送り出したんか!!

 

 

 

 

宇髄

「何でレベッカと普通に風呂入って派手な馬鹿騒ぎになるんだよ。」

 

 

煉獄

「それは普通ではない!男女が一緒に風呂などお前とその妻だけだぞ!?」

 

 

 

 

妻ってこいつ結婚してたの!?

 

 

 

 

 

宇髄

「いいや、冨岡も誘って一緒に風呂入った事あるぞ?」

 

 

煉獄

「冨岡も!?」

 

 

宇髄

「お前が死んだ後、鬼舞辻無惨との決戦で勝利した祝いに温泉に誘ったんだ。なのに冨岡の奴、そっぽ向いて入ってたんだよ。何でだ?」

 

 

マリア

「そいつは気を遣ってたの!!そんでコイツはお構い無しにレベッカに襲い掛かろうとしてたの!!」

 

 

宇髄

「はぁ!?お前それはないだろ!!」

 

 

谷垣

「何を言ってるんだ。目の前に綺麗な女の裸体があるんだぞ。そんなものを見せられて勃起しない方がおかしいだろ!!」

 

 

宇髄

「悪るいお前等、俺が間違っていた。」

 

 

マリア

「わかってくれればいいわ。」

 

 

谷垣

「それに、宇髄の嫁さん達と一緒に入っていたら、俺はお前を押し通してでもやるつもりだ!!」

 

 

宇髄

「悪いお前等、俺がド派手に間違っていた。こいつ今から叩き潰す。」

 

 

 

 

奥さんの事となると真面になるんかい!!

 

 

はぁ・・・・まあいいや。それから朝が明けて、私達は天皇御所に足を運んだ。そこには私達を含め、産屋敷天皇と側近の高倉さん、守護柱が控えていた。

 

 

 

 

耀輝

「さて、本題に入る前に私からいくつか尋ねたいことがある。先ずはレベッカだが、重症と聞いていたが元気そうで何よりだ。」

 

 

レベッカ

「もう治りました。」

 

 

 

って言ったはいいものの、流石に一晩で治るのおかしくないって驚くとこだけど?

 

 

 

 

耀輝

「では次に白虎。あまり元気がない様だね。大丈夫かい。」

 

 

不死川

「問題ありません。お気になさらず。」

 

 

耀輝

「そうか。では次に青龍。白虎より酷く落ち込んでいるが大丈夫かい。」

 

 

今泉

「問題ありません・・・・・お気になさらず。」

 

 

不死川

「どこがだ。明らかに沈んでるじゃねえか。」

 

 

 

 

私が寝てる間にルドルフと姐さん達二人に何したの!?

 

 

 

 

耀輝

「次に玄武。そこの少年が酷く君に怯えているが、一体何をしたのかな。」

 

 

鏡夜

「あまりに優秀な術師でしたので、少し呪術を教えていました。」

 

 

耀輝

「教育は結構だが、度が過ぎればそれはただの暴力でしかない。次からは控えめにしなさい。」

 

 

鏡夜

「はっ!肝に銘じておきます。」

 

 

 

 

だからポンコツの奴玄武を見てから天元の後ろに隠れてるんだ。

 

 

 

 

宇髄

「おい!さっきから鬱陶しいぞ!いつまで隠れてやがる!」

 

 

乙骨

「むむむむむむむむむむむむ無理です宇髄さん!ボボボボボボボボボボボボ僕!ここここここここの人!にににににににに苦手です!」

 

 

宇髄

「小動物並みに派手に震えてるじゃねえか!!おいアンタ!家の乙骨に何しやがったんだ!!」

 

 

鏡夜

「彼があまりにも優秀だったから、調子に乗って領域展開を使ってしまってね。それですっかり怯えてしまっている。」

 

 

宇髄

「白玄から聞いた話じゃ派手に黒焦げまで逝きそうだったじゃねえか!!」

 

 

鏡夜

「反省しているよ。天皇様にも釘を刺された。だから乙骨憂太。呪術の事で聞きたい事があったらいつでも私のところに来なさい。歓迎するよ。」

 

 

乙骨

「かかかかかかかか考えておきます!!」

 

 

宇髄

「お前もいい加減立ち直れよ!!鬱陶しくてしょうがねえ!!」

 

 

 

 

慣れるまで時間かかりそうだな。

 

 

 

 

耀輝

「次に朱雀だが、さっきから白髪の()()を睨みつけてどうかしたのかい。」

 

 

「天皇様騙されてはいけません。コイツは()です。」

 

 

耀輝

「そう言えば白玄は姿形を変える妖のような男と聞いていたが、今は女性に化けてるのか。」

 

 

「この男を斬首する許可を下さい。」

 

 

耀輝

「落ち着きなさい。白虎みたいな事を言ってはいけないよ。」

 

 

 

 

昨晩の件ですね。

 

 

 

 

耀輝

「それで、その白玄は家の高倉を見て驚いているが。」

 

 

 

 

ん?本当だ!?目ん玉飛び出しながら見てる!!

 

 

 

 

とがめ

(話に出てきた高倉ってゴールデンカムイの月島だったんかい!!天皇にも驚いたがこっちの方が衝撃だわ!!)

 

 

 

 

まさか高倉さんも見知った顔なのかな?てか高倉さんこんだけ見られても動じて無い所がすごい。

 

 

 

山田フミエ

「何見てんだいアンタ。アタシに惚れたのかい。」

 

 

高倉

「いいえ。」

 

 

山田フミエ

「アタシと寝たらエコ贔屓するとでも思ったのかい!」

 

 

高倉

「いいえ。」

 

 

山田フミエ

「アタシに枕は効かないよ!」

 

 

高倉

「はい。」

 

 

 

 

白玄のちょっかい全部受け流したスゴっ!?

 

 

 

 

高倉

「陛下。そろそろ本題へ。」

 

 

耀輝

「そうだね。先ずは、昨晩の無礼とレベッカを連行した事、それから守護柱達も無理を聞いて動いてくれた事、本当にすまなかった。」

 

 

 

 

天皇は皆んなに謝罪するように深々と頭を下げた。それだけでも大問題である。

 

 

 

 

不死川

「天皇様!!頭をお上げください!!謝罪と土下座などもってのほかです!!」

 

 

今泉

「御身自ら下々に頭を下げるなど前代未聞です!!頭を上げて下さい!!」

 

 

 

 

さっきまで落ち込んでいた青龍と白虎ですらこの有様である。

 

 

 

 

耀輝

「私は天皇である以前にお前達と同じ人間だ。感謝と謝罪の心は持っている。人としての道徳心を持たぬ者は人ではなくただの鬼。そのような者に天皇など務まらない。常に民の声に耳を傾け手助けをする。それが、人を導く者の使命だよ。よく覚えておきなさい。」

 

 

 

 

なんだろ。すごく深い。ちゃんとしてるな〜。

 

 

 

 

耀輝

「君達の話は聞いている。京に現れた鬼から人々を守ってくれた事感謝している。」

 

 

伊之助

「その鬼連れて来たの馬鹿娘とアホ柱とポンコツだけどな。」

 

 

 

 

ゴツンッ!!

 

 

 

 

ルドルフ、宇髄

「お前は黙ってろ。」

 

 

乙骨

「すいません。白玄捨てて来ます。」

 

 

 

 

そんで白玄は外に放り出して話を進めた。

 

 

 

 

耀輝

「お詫びとお礼と言ってはなんだが、一ヶ月後に行われる『秋大祭(しゅうたいさい)』に参加してもらいたい。」

 

 

レベッカ

「シュウタイサイ?」

 

 

高倉

「毎年、紅葉の時期に行われる都の行事です。土地神への感謝の意を込めた舞を披露したり、死者の魂を天へ送り届ける為のお経を唱えたり、土地に流れた悪しき龍脈を祓うための瓦割りや、厄祓いの為の流鏑馬も執り行われます。」

 

 

ルドルフ

(流鏑馬!!)

 

 

 

 

おっと、なんか流鏑馬って聞いてウマ娘のルドルフが反応するかと思ったけど・・・・予想以上だったァァァ!!冷静な姿勢だけど耳と尻尾を思いっきり振り回してる!!てか犬か!!尻尾が隣にいる姐さんに当たってる!!

 

 

 

 

マリア

「ちょっとルドルフ。さっきから尻尾がムチのように当たってるんだけど。」

 

 

ルドルフ

「おっとすまなかった!」

 

 

マリア

「貴女流鏑馬って聞いて興奮してるでしょ?」

 

 

ルドルフ

「こんな公共の場でそんなはしたない事が出来るか!」

 

 

マリア

「耳と尻尾が犬みたいな行動してよく誤魔化せると思ったわね!!言っとくけど流鏑馬って馬に乗って矢を的に撃つのが一般的なの!!ウマ娘は自分で撃つかもしれないけどそれ出来ないから諦めなさい!!」

 

 

ルドルフ

「はい・・・・。」

 

 

 

 

いや本当にする気だったのか?

 

 

 

 

今泉

「まあどちらにしてもお前にやらせるつもりはない。」

 

 

ルドルフ

「なんだと。」

 

 

今泉

「秋大祭で行われる流鏑馬は、他の地方で行われている流鏑馬と違ってやり方が違う。だがそこは問題じゃない。立場上青龍の役職に就いている者、つまりこの俺しか出来ないと言っている。」

 

 

ルドルフ

「つまり私では事足りぬと?」

 

 

今泉

「当たり前だ。どんだけ図々しいんだ。あと睨みつけてくるな。」

 

 

 

 

それでもルドルフは睨みつけた。だから私が寝てる間に二人に何があったの!?

 

 

 

 

ルドルフ

(山道はよくこんな男と一緒にいられたな。)

 

 

今泉

(山道の奴、よくこんな面倒な奥さんと結婚出来たものだ。)

 

 

 

 

 

見つめ合うならまだしも睨み合ってるけどマジで何があった?

 

 

 

 

耀輝

「どうかなレベッカ。」

 

 

レベッカ

「ではお言葉に甘えて。」

 

 

耀輝

「それとこんな事を君達に頼むのは申し訳ないが、秋大祭の一ヶ月の間この都を守ってほしい。」

 

 

レベッカ

「わかりました。お引き受けします。」

 

 

耀輝

「ありがとう。感謝する。」

 

 

 

 

これでひと段落して話は終わった。いろいろあったけど、天皇とは何とか縁を結ぶ事が出来たかな。これはこれで結果オーライだ。

 

 

 

 

レベッカ

「さてと。どっかの誰かさん達が追い出したから、今頃白玄拗ねてるよ。」

 

 

ルドルフ

「余計な問題を起こされるよりかはマシだ。」

 

 

 

 

どんだけ信用ないんだよ。まあ自業自得だけど。

 

 

そうして障子を開けた時、ルドルフの言う事は本当だった。

 

 

 

 

エドワード

「おいガキ共。覚悟は出来てるんだろうなぁ!!」

 

 

 

 

何だこの巨人のオッサンはぁ!?

 

 

 

 

エルザ

「あそこにいるの竜二達!?」

 

 

豊久

「なしておチビ共がここにおる?」

 

 

 

 

こっちが聞きたいわ!!何で竜二達が白玄に怒られてるの!?

 

 

 

 

エドワード

「お前等手出すんじゃねえぞ!!」

 

 

宇髄

「止めるわぁ!!ガキ相手に何やってんだぁ!!」

 

 

 

 

本当だよ!!竜二達今にも泣きそうなんだけど!?

 

 

 

 

竜二

「ごめんなさい白玄さん!!」

 

 

鏡歌

「もう危ない事はしません!!」

 

 

「お願いだから怒らないでー!!」

 

 

虎次郎

「いいこにするからー!!」

 

 

 

 

もう皆んな泣き喚いていた。その時だった。

 

 

 

 

輝之

「待ってくれ!!」

 

 

 

 

輝之君が急いでやってきて、竜二達を庇う様に入って来た。

 

 

 

 

輝之

「悪いのは私なんだ!!私が皆んなを巻き込んだのだ!!責めるなら私を責めてくれ!!」

 

 

 

 

体を震わせて怯えてるのがわかる。でも輝之君は自分が悪いと訴えて皆んなを庇ってる。必死に謝ってる皆んなに対してこのクズ野郎はとんでもないセリフを吐き捨てた。

 

 

 

 

エドワード

「何勘違いしてやがる。お前等が謝る義理も道理もねえんだよ!!」

 

 

 

 

「鬼か悪魔か!!」と誰もが思ったその時だった。

 

 

 

 

エドワード

「謝んなきゃならねえのは俺達の方だ。」

 

 

 

 

その大きな腕で子供達を、優しく抱きしめた。

 

 

 

 

エドワード

「悪かったな。馬鹿な大人共のくだらねえケンカに巻き込んじまって。お前等は最初からなにも悪いことはしてねえ。だからもう謝るな。そんで馬鹿な大人共を許してやってくれ。」

 

 

 

 

そう言うと子供達は皆んな泣き出した。そい言えば私達、子供達をほったらかしてた所もあったっけ。後で謝らないとな。

 

 

こうして一夜にかけて守護柱との戦いは、停戦協定と言う形で和解した。惨めな思いもしたけど、そこから新たな決意も固まった形で解散した。けど白玄とルドルフは、御所に残る事になった。何でも大事な話があるらしい。何だろ?

 

 

 

 

不死川

「おいおい、そんなハッタリ誰が信じるってんだ小娘!」

 

 

ルドルフ

「まあ無理もないでしょう。」

 

 

不死川

「当たり前だ!!鬼畜米に加担した日本人の話など信じられるかぁ!!」

 

 

ホークス

「あの白虎さん。ルドルフだってこうなる事になるなんて思ってもみなかったんですよ?元々和平条約の為に送り込まれた開拓団だったのに、日本が真珠湾攻撃を始めたせいですぐ決裂しちゃったんだから。彼女からしたらいい迷惑ですよ。」

 

 

「やたら詳しいのね?」

 

 

ホークス

「彼女に聞きましたから。」

 

 

不死川

「てか何で関係ないお前等まで入ってくるんだ!朱雀!玄武!」

 

 

鏡夜

「中々興味深い話だからね。聞いておいても損はないだろう。」

 

 

ホークス

「別に構いませんが、信じがたい話になるかもしれませんよ?」

 

 

 

 

何故か関係ない朱雀さんと玄武さんまで入ってくる事になり、そんな一行が向かった先は、手嶋さんの屋敷だった。密会するならここがいいと判断したからだ。

 

 

 

「手嶋さんこんにちは!」

 

 

鏡夜

「本日は密会の席を提供していただき感謝します。」

 

 

手嶋

「よくぞおいでになった。掛けてくれ。」

 

 

 

 

その縁側に、青龍と手嶋さんともう一人がたいの大きい男の人も座っていた。玄武さんと朱雀さんはその男の隣に座り、白虎は青龍の隣に座った。

 

 

 

 

不死川

「よお。」

 

 

今泉

「どうだった。」

 

 

不死川

「信じがたい話ばかりだった。」

 

 

 

 

ルドルフと白玄はたったままで皆んなの方を向いていた。

 

 

 

 

ルドルフ

「ではお話ししましょう。私が戦時中で戦っていた当時のアメリカ軍の状況を。」

 

 

 

 

ルドルフは今泉に話した内容と新たに付け加えて語り始めた。彼女の話では、アメリカ軍は空襲と核爆弾投下はしていないと言っていた。その理由は民間人を巻き込んでしまう危険性があったからだ。

 

 

ところがある日突然、日本がアメリカの航空機から空襲を受けたと言う報告が入った。内容を聞く限り、基地施設では無く、日本全土の民間施設の密集地帯を中心に空爆があったらしい。それを聞いたアメリカ軍司令部は混乱していた。そんな非人道的な攻撃を指示した覚えはないとのこと。更には広島と長崎に原子力爆弾が投下されたとも聞いた。

 

 

アメリカ軍はなす術が無いまま、結果訳のわからないまま日本に勝ってしまったと言うおかしな事になったのだ。

 

 

 

ルドルフ

「これが私が見てきた大戦中のアメリカの様子でした。」

 

 

鏡夜

「不死川の言う通り信じがたい話だ。この受け入れがたい事実をどう納得しろと。彼が怒り立つのも納得がいく。」

 

 

不死川

「確かにふざけた話だが有り得ねえ話じゃねえ。」

 

 

今泉

「どう言う事だ。」

 

 

不死川

「日本もアメリカと同じ現象が起きていたって事だ。」

 

 

ルドルフ

「なに!?」

 

 

不死川

「ことの発端は真珠湾攻撃だったが、海軍は真珠湾を攻撃する予定はなかった。だが知らぬ間に実行されていた。」

 

 

ルドルフ

「それに激怒したアメリカ政府は日本が統治していた各列島諸島占拠。滞在していた日本開拓団の人達を人質した。」

 

 

不死川

「確かアメリカ共が開拓団を解放する代わりに、各諸島の明け渡しを要求してきたな。」

 

 

ルドルフ

「そして日本はその要求を一度は受け入れた。だが決行当日に保護していた日本開拓団もろともアメリカ兵を空襲で虐殺したと聞いているが。」

 

 

不死川

「俺達陸軍はその開拓団救出部隊を編成して各島々を周り一般人を回収する任務に就いた。俺はその部隊の隊長として指揮を取っていた。」

 

 

ルドルフ

「は?」

 

 

不死川

「おかしな話だろ。最初から不意打ち狙いなら救出部隊はいらねえんだよ。だから腹が立った俺達を含め陸軍司令長官と一緒にふざけた大本営に殴り込みに行ったんだよ。」

 

 

今泉

「いや話し合いだろ。先ずは。」

 

 

不死川

「だが蓋を開けてみれば不意打ちによる空襲は指示してないとハッキリ言いやがった。」

 

 

ルドルフ

「よく貴方が納得しましたね?」

 

 

不死川

「俺達が来る前に政府のお偉いさん方が来て説教してたからな。大本営の連中も必死に説明していた。流石におかしいと感じて、その場にいた連中で事実確認をして解散した。」

 

 

ルドルフ

「そんな事になっていたとは。」

 

 

不死川

「救出部隊は再び無事な開拓団の回収に回った。その後だ。本土に空爆と原爆があったのは。そんで日本は敗北して終戦。表向きは、アメリカが日本を植民地化しようとしたところを、鬼舞辻大統領が説得して止めてくれたことになっているが、実際は双方訳のわからん指揮系統で動いていた為、これ以上戦闘行為は危険と判断し、日米和平条約を結ぶ事になった。」

 

 

「何でそんなに詳しいのよ?」

 

 

鏡夜

「政府の機密情報まで知ってるとは。」

 

 

不死川

「あの会談の時鬼舞辻大統領の護衛役に務めていたからな。俺あの人に気に入られていたし、軍が解体された後も、天皇の守護柱の役職をくれたのも大統領だったからな。」

 

 

 

 

正直、私話が追いついて来れないんだけど?ようはお互いしたくもないのに一部の人達で勝手にやってたって事だよね?それが世界規模だと益々わけわからない。

 

 

 

 

ホークス

「ここまでの話でわかる事はありますか。角松さん。」

 

 

 

 

さっきから黙っていた男性がようやく腰を上げて話し出した。

 

 

 

 

角松

「少なくともその戦争が何者かの手によって仕組まれているのは間違いないだろう。そしてその者達の目的は、アメリカを利用して日本を壊滅させる狙いがあった事だ。」

 

 

ルドルフ

「一体なぜ。」

 

 

角松

「わからないが、奴等のした事は絶対に許されない事だ。然るべき場所で罪を償って貰う。」

 

 

 

 

それが白玄の答えであった。

 

 

 

 

角松

(それにこの事件の背景にはあの二人の面影がはっきり写っている。だがどうも妙だ。こんな大胆で強引な手段を取るとは奴らしくない。上層部か大統領と交渉をするはず。その当てが外れたと言う事は、下から掌握したと言うことか。特に上層部に不満を抱く、目立たない部隊を洗脳してか。)

 

 

 

 

 

私がその話を知る事になるのはまだ先の話。今は彼等中でしまっておく事にした。

 

 

 

 

角松

「強硬手段に出るしかなかったのか。草加、そして海江田。」

 

 

 

 

今の私がこの事件に関与するのは、あまりに壁が大きかった。だから白玄もルドルフも黙ってたんだと思う。

 

 

 

 

手嶋

「まあ、あれこれ考えても仕方ねえし、今は重大な真実が聞けただけでもよしとしよう。」

 

 

今泉

「だそうだ不死川。これでお前の標的が変わったと見て間違いないか。」

 

 

不死川

「ああ。首謀者を見つけ出して八つ裂きにしてくれる。」

 

 

手嶋

「さて!じゃあ本題に入りますか!!」

 

 

鏡夜、灯

「え?」

 

 

ルドルフ、不死川

「は?」

 

 

 

 

あれ?さっき話してたのは?

 

 

 

 

ホークス

「あのー、さっきのが本題じゃなくて?」

 

 

手嶋

「それもあるが、こっからは重大な話だ。俺達新撰組にとっても、彼女にとってもな。」

 

 

 

 

ルドルフか?でも二人に何の接点が?彼女英霊だよ?あっ・・・・白玄帰ろうとしてる。

 

 

 

 

角松

「ホークス。悪いが後を頼んでいいか。」

 

 

ホークス

「角松さん。絶対この後面倒臭い事になるのわかってて帰るつもりでしょ!」

 

 

角松

「生憎、その手の話は苦手でな。それに、あまり帰りが遅いと子供達がまた心配する。」

 

 

ホークス

「わかりました。こっちは引き受けます。」

 

 

 

 

そう言って白玄は帰って、もう一人の白玄はその場に残ったらしい。

 

 

 

 

手嶋

「シンボリルドルフ。いやこっちの世界じゃ幸平蒼華か。今泉から話は聞いた。硫黄島で新撰組の二人に会ったそうだな。」

 

 

ルドルフ

「はい。お会いしました。」

 

 

手嶋

「鳴子を斬ったのはお前か。」

 

 

ルドルフ

「斬りました。斬らざるおえませんでした。でなければ私が死んでいた。彼はそれ程までに強かった。」

 

 

手嶋

「最後に一つ。小野田とはどう言う関係だ。」

 

 

ルドルフ

「知れた事を。どこにでもいるアツアツでラブラブな夫婦だがそれがどうした!」

 

 

手嶋

「そう・・・・か。」

 

 

(よくもまあ恥ずかしいセリフを自慢げに吐けるもんだわ。)

 

 

鏡夜

(手嶋さん沈んでないか?)

 

 

不死川

(あいつ結婚してやがったのか。)

 

 

今泉

(聞きたくなかった。)

 

 

 

 

これは私もびっくりした。まさかこっちの世界でルドルフは結婚していたのです。しかもお相手は青龍と手嶋さんの知り合いだった。

 

 

 

 

手嶋

「なあ今泉。俺はこの事実をどう受け止めたらいい。」

 

 

今泉

「それ・・・・俺が聞きたいです。」

 

 

不死川

「いや普通喜ぶだろ?身内が生きてて結婚までしてんだぞ?」

 

 

 

 

手嶋さんまで酷く落ち込んだらしい。

 

 

 

 

ルドルフ

「何だ二人共その反応は?まるで私と山道が似合わないと言いたいのか?」

 

 

手嶋

「そうじゃねえ。そうじゃねえよ。そうじゃねえさ・・・・。」

 

 

「顔笑ってないし、「そうじゃない。」しか言ってないですよ?」

 

 

 

 

メッチャ動揺してるじゃん!!

 

 

 

 

手嶋

(幸平蒼華と手合わせしてどうだったんだ。)

 

 

今泉

(全力で斬りかかりましたが、奴は隙を見せるどころか俺の剣を弾き返してきました。しかも余裕、本気出しても勝てるかどうかわかりません。なんせあの鳴子が負けるくらいですから。)

 

 

手嶋

(大空の呼吸の使い手だからな。だとしたら小野田もギリギリ勝ったと言ったところだろう。)

 

 

今泉

(どうしましょう手嶋さん。新撰組時代、酒の席で盛り上がった「小野田結婚できない。」談義が耳に入ったら間違いなく殺されますよ。)

 

 

手嶋

(そこまでだ今泉。幸いこの事を知っているのは俺とお前だけ。このまま黙っとけ。)

 

 

 

 

なんかルドルフに聞かれたくない話なのか二人共頭下げて落ち込んでいる風に見せかけてナイショの話をしていた。

 

 

 

 

ルドルフ

「ああ。言い忘れていた。私は別の世界で"ウマ娘"と言う人種に転生してな、人間だった頃より耳が良く聞こえるようになった。」

 

 

今泉、手嶋

「は?」

 

 

ルドルフ

「その()()()()()()()()()()()、詳しく聞かせてもらおうか。」

 

 

手嶋

「どんだけ都合のいい耳してんだお前は!!」

 

 

 

 

まさか二人で起爆スイッチを押すとは思わなかった。

 

 

 

 

ルドルフ

「安心しろ。一撃だけ斬れれば私は問題ない。生き残れるかは君達の生命力次第だが。」

 

 

今泉

「殺す気満々じゃねえか!!」

 

 

 

話がバカらしくなってきたのか朱雀さん達守護柱達も帰ろうとしていた。

 

 

 

 

今泉

「おい待て!何帰ろうとしてるんだ!」

 

 

「いや私達いても邪魔かなと思って?」

 

 

鏡夜

「何やら新撰組時代の同僚の奥さんと話があるようだし、昔を思い出しながら語るといい。」

 

 

今泉

「いや、まともに会話できる状態じゃないんだが!」

 

 

不死川

「テメーで汚したケツだ。それくらいテメーで拭け。」

 

 

 

 

三人共青龍を見捨てて行ってしまった。

 

 

 

 

ルドルフ

「さて聞かせてもらおうか。酒の席で家の旦那にどれだけの罵声を浴びせたか。」

 

 

 

とりあえずルドルフの旦那さんをバカにしないようにした。てか知らないし!!

 

 

 

 

今泉

「鳴子の奴「小野田君なら結婚はできひんわな!!」とか言ってませんでしたっけ?」

 

 

手嶋

(こいつ!もう死んでる奴の事を言いやがった!?)

 

 

ルドルフ

「私は彼を斬った事に後悔していた。山道と一緒にいた頃もずっとそればかりが気になっていた。だがさっきの話を聞いて斬って良かったと安心したよ。」

 

 

今泉、手嶋

(鬼かお前は!!)

 

 

ルドルフ

「それで他には?」

 

 

手嶋

「金城さんは「まあ気にするな。」だったし、巻島さんは「お前等言い過ぎっしょ!」とかしか言ってなかったもんな。」

 

 

今泉

「一番酷かったのはやっぱり鏑木でしたかね?「小野田さんは天涯孤独で独身の方がかっこいいっす!!」とか言ってましたし。」

 

 

手嶋

「段竹は止めに入ってたけどな。田所さんは「まあ気にするな小野田!結婚できなくても剣さえあれば生きられる!!」って励ましてたし。」

 

 

今泉

「杉元は女性の扱いには慣れてたから、小野田に助言していたな。」

 

 

手嶋

「古賀は度が過ぎる程の真面目だったからな。特に何も言わなかった。他の連中も大した事言ってなかったし・・・・まあ!そこまで大げさな話じゃなかったってことだ!!」

 

 

今泉

「そうですね!一番酷かったの鳴子と鏑木だけでしたし、問題ないかと・・・・。」

 

 

ルドルフ

「君達からは何と言ったか聞いていないが?まさか自分達は語らずそのまま終わりにする気ではないな。」

 

 

 

 

だんだんルドルフが面倒臭い人になってきたな。

 

 

 

 

今泉

「手嶋さん。小野田に独身について講義してませんでしたっけ?「無理に結婚する必要はない。」とか「独り身の方が自由気ままだぞ。」とか。」

 

 

手嶋

「俺そんな事言ったか?酒飲み過ぎて覚えてないな〜?てか!そう言う今泉こそ、小野田は結婚できないとか断言してただろ!!」

 

 

今泉

「してませんよ!!」

 

 

手嶋

「嘘つけ!!鳴子と一緒になって掛けてたじゃねえか!!」

 

 

今泉

「やめて下さい!!真実知った時鳴子と掛けしたのを思い出して負けたとわかった瞬間結構凹んだんですから!!」

 

 

 

 

あのーお二人さん!!それ以上言うとルドルフブチギレ!!

 

 

 

 

ルドルフ

「つまり二人共彼が結婚出来ないと言ってるんだな。士道不覚悟で叩斬っていいか?」

 

 

 

 

ルドルフが刀振り上げてるのを見て速攻土下座した。

 

 

 

 

今泉

「すまなかった幸平蒼華!!俺達が小野田にいろいろ悪いこと言った!!だがあれから新撰組はハメを外し過ぎたとわかって全員禁酒にした!!」

 

 

手嶋

「小野田は剣の実力は本物だった!!お前がそこまで言うならそれは理解できる!!あいつの全てを否定しているわけじゃないんだ!!剣ではあいつは日本最強とも言っていい!!それは近くにいた俺達もよく知っている!!だから誤解しないでくれ!!」

 

 

 

 

とうとう土下座までしちゃったけどでも認めてたのは事実だった。

 

 

 

 

ルドルフ

「顔を上げてくれ。私も大人気なかった。それに私は、彼の人柄に惹かれただけだ。監視役として山道の側にいてずっと恨まれてるのでは無いかと思っていた。それを彼に打ち明けた時にこう答えてくれた。「ありがとう。鳴子君を新撰組として斬ってくれて。」とそう答えてくれました。」

 

 

手嶋

「小野田が。」

 

 

ルドルフ

「それと鳴子章司ですが、あの硫黄島で彼と立ち会った時、最後に私にこう言いました。「新撰組特攻隊長鳴子章司!!嵐のような剣捌き!受けてみいや!!」と。最後まで彼は新撰組として戦っていました。」

 

 

手嶋

「そうか。鳴子もか。」

 

 

 

 

二人は立ち上がった。ようやく立ち直ったと言うべきか。手嶋さんは袖から一通の封筒を渡した。それは、青龍に渡した小野田って人の遺言書だった。

 

 

 

 

手嶋

「小野田の遺言書だ。見てみるといい。」

 

 

 

 

ルドルフは手紙の内容を見てなんか納得した感じだった。

 

 

 

 

ルドルフ

「やはりそうか。」

 

 

今泉

「ならお前も死に際に妙な夢を。」

 

 

ルドルフ

「死の直前に来世の夢を見た。それが今あるべき私の姿だ。」

 

 

今泉

「そうか。」

 

 

手嶋

「俺達が歪み合う理由もなくなったわけだ。幸平蒼華、新撰組を代表して俺から言わせてほしい。鳴子を新撰組として斬ってくれたこと、小野田の側にいてくれたこと、本当に感謝する。」

 

 

ルドルフ

「私の方こそ、ありがとうございました。これからも共に歩みましょう。」

 

 

 

双方の長い戦いはこうして幕を閉じた。正直驚いたけど、こうして仲直りできて本当に良かった。

 

 

そんな平安京との蟠りは完全に終えたと言っていい。そして私は次回から、白玄に命を狙われる修行へと入っていくのだった。

 

 

 

 



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