ヤンデレ&パズル&ドラゴンズ(停止中) (TENSEI2)
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魔女(リーチェ)
「…もう朝か。」
気だるげにベッドから降りて、リビングに行く。
時計を見ると、昼の1時だった。
「さすがに寝過ぎたか…。」
キッチンに行き、米を炊き、握り飯を作って食べた。
何も感じない、氷のような味がした。
―――――――――――――――――――――――――
「ただいま~。 ごめんね? 遅くなっちゃった。」
炬燵に入り、何の気なしにテレビを見ていると、姉が帰ってきた。
「ううん。平気だよ。」
「そう? ならいいけれど…。」
姉の姿は、身内の僕からしても見目麗しいと思わずにはいられなかった。
美しい白髪。引き締まったスタイル。そしてどこかミステリアスな雰囲気。
そんな姉の名前は、リーチェ。
日本人ではないように聞こえるが、それは当たり前だ。
彼女は元は白人と日本人のハーフで、両親が早いうちに病死してしまったらしく、うちで引き取ることとなった。
彼女の両親は、魔女の血を引いているという根も葉もない噂話を立てられていたらしい。
俺の両親も、その噂話を鵜呑みにして最初は姉さんを引き取ろうとはしなかった。
だが、俺は姉さんを信じた。
そして、両親を説得し、うちに引き取ることになった。
―――――――――――――――――――――――――
「そういえばごめん! 朝ごはん作り忘れちゃって…
ご飯はどうしたの? 」
「自分で米を炊いて食べたよ。」
こうして他愛もない話をしていても、俺の心は擦りきれそうだった。
―――――――――――――――――――――――――
昔っから出来損ないの癖に、意地っ張りだった俺でも、小学校の時には10人位友達がいた。
だが、その友達も中学校に入ると急によそよそしくなった。理由を聞いても黙りだった。
中学校では、一回だけ彼女が出来た。
だが、その彼女もよそよそしくなった。
理由は明確。 既に寝取られていたのだ。
それきりと言うもの、人が信じられなくなった。
高校に行かず、バイトにも行かず、ただ姉さんに甘える怠惰な生活を送っている。
死んだ両親が見たら嘆き悲しむだろうなと思いながらも何かするために自ら動く事が出来なくなってしまった。
姉さんはどんどん頼ってくれと言っているが、彼女ももう23歳。結婚を考えていてもおかしくはない。
「なあ…姉さん。」
「ん? どうしたの? どこか悪い?」
「姉さんは……結婚とかしないの?」
「……」
「……」
二人の間を沈黙が支配する。
「うふふ♪」
沈黙を破ったのは姉さんの方だった。
「なんで笑ってるんだよ?」
「だって…あなたがおかしいことを言うものだから…うふふ♪」
「俺は姉さんのことを思って…。」
「だって、私が魔女っていう噂が広まっちゃってるんだもの♪ 仕事以外は相手にされないわよ♪」
「え……。」
嘘だと信じたかった。
今になっても、姉さんが魔女だという根も葉もない噂を信じているのが信じられなかった。
でも、俺は心の中で安堵していた。
(姉さんが俺の側を離れることは今はないか…良かった。)
そんな考えをした自分を殴りたかった。
でも、そんな邪な考えは止まらず、涙となって流れ始めた。
「あれ? どうして泣いているの?」
「…姉さんが離れなくて良かったって思っちゃったりしたの?」
「…ええ。私は絶対に貴方を離したりしない。」
「そう、絶対にね……♪」
―――――――――――――――――――――――――
「…おやすみ♪」
私の可愛い弟君が寝静まったのを確認して、部屋に戻る。そして、私の使い魔とも呼べるフロウを呼ぶ。
「フロウ? 私のドレスは何処かしら?」
「ええ、リーチェ様。 此方に。」
「ありがとう。」
ドレスに着替え、窓から空へ飛び立つ。
そして、魔法を唱える。
私の大好きで可愛いくて愛しくてたまらない弟君を皆が避けるようになる魔法を。
―――――――――――――――――――――――――
幼い頃から、祖父母や両親から魔法を教えられてきた私はある日、友達の男の子に見られてしまった。
「私が魔女」という噂はあっという間に広がり、友達やクラスメイトからいじめられるようになった。
そんな時に私の心を更に追い詰める事があった。
両親の死だった。
祖父母にももう、私を育てるだけのお金は残っておらず私は日本に送られた。
日本に送られても、私の家での扱いは変わらず、皆から距離を置かれた。
でも、今の弟君だけは違った。
魔法が使えることを怖がらずに、何度も私に話しかけてくれた。
孤独だった私は、それがとても嬉しかった。
忘れていた笑顔を取り戻すことができた。
いつの間にか、弟君に恋をしていた。
でも、それは弟君が中学校に入学してすぐの事だった。
いつまで経っても帰って来ない弟君を迎えに行った時の事だった。
「私と……付き合ってください!!」
何処からか、女子生徒の告白の声がした。
(もう少し声を小さく出来ないのかしら?)
そんなことを気にも留めずに弟君を探していた時だった。
「はい……僕でいいならよろこんで!!!」
弟君の声がした。
その時、何かドス黒い感情が私を襲った。
え? なんで? どうして?
なんで私じゃないの?どうしてあんな雌臭い女なの?
なんで誰にでも媚を売るような雌からの告白を承諾したの!?
なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?
ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ!!!!
ドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテ!!!!
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!
自分で自分が抑えられなかった。
勢いのままに、あの雌に魔法をかけた。
貞操を極限まで緩くさせる魔法だ。
誰かの子供を妊娠した時に全てを思い出させ、絶望するように仕掛けた。
その勢いのまま、学校の生徒、教師、用務員全てに弟君を避けさせる魔法を掛けた。
当然のように、次の日学校から帰って来た弟君はとても暗い顔をしていた。
その時の、今すぐにでも泣き出しそうな顔と、それを必死になって隠そうとしている声にゾクゾクした。
―――――――――――――――――――――――――
「……ふぅ。」
今となっては、もはや依存症状のように毎日毎日町に魔法を掛けている。
確かに、私は赦されざることをしただろう。
魔女どころか、人間の中でもここまで下衆なことをするのは私位だろう。
だが、それがどうした?
好きな物を手にいれるためには、それ相応の犠牲は付き物だ。それが、たまたま貴方達だっただけのことだ。
私は確かに「避けるようになる」魔法は掛けたが、「嫌うようになる」魔法は一回も掛けていない。
恨むのなら、恨めばいい。
憎むなら、憎めばいい。
蔑むなら、蔑めばいい。
最も、弟君の視界に入ることも、弟君を視界に入れることも、弟君を話題にすることも、弟君の話題になることも、全て赦さないがな。
―――――――――――――――――――――――――
氷の魔女は嗤う。
全てを蔑むように嗤う。
その目には光などはなく、多くの者を絶望に叩き落とすブラックアイスバーンに似た暗黒が広がっていた。
晴れ着リーチェ欲しいゾ~
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追い詰め合った二人(レイラン)
「はぁ……。」
ため息をつきながら、肩を落とす。
「今回も2位か……。」
テストがある度に、親から1位になれ、1位になれと言われ続けた。
当然頑張って勉強をした。二桁台だった順位も2位まで上げる事が出来た。
だが、1位のアイツにだけはいくら勉強しても勝てなかった。
―――――――――――――――――――――――――
「およ~? どうしたのそんな暗い顔して?」
「……レイランか…。」
俺に声を掛けてきたのはレイラン。スタイル抜群であり容姿端麗、頭脳明晰、勇壮活発、おまけに人当たりも良く、まさに完全無欠を体現したような奴だ。
俺の幼なじみでもある。
テストでいつも1位を取っているのもこいつである。
「…テストの成績が悪かっただけだ。」
無難に返す。変に返すと質問責めに会うためだ。
「ふ~ん……。」
予想通り、レイランはそれ以上聞いてこなかった。
「おーいレイラーン! 一緒に帰ろうよ~!」
「オッケーイ! もう少し待ってて~!」
何処からか、レイランを呼ぶ声が聞こえた。
前述の通り人当たりの良い奴なので、当然友達も多い。俺には友達と呼べる様な仲の良い奴は居ない。
「さて! そろそろ帰らなきゃ! バイバーイ!」
風のようにレイランは駆けていった。
「……」
「……帰るか。」
俺も荷物をまとめ、帰った。
―――――――――――――――――――――――――
「……んお?」
帰る途中で、レイランと何人かの女子生徒を目撃した。
(…まだ帰ってなかったのか。)
俺が帰る10分位前には学校を出たはず。
(…カフェか?)
どうやら、カフェで何かを頼んだようだ。
(…何の話をしているんだ?)
好奇心には勝てず、俺は盗み聞きを決行した。
「でさ~! ○○がさ~!」
「あー分かる! アイツキモいよね~♪」
「そうそう! キモいと言ったらさ~
レイランは何でアイツと一緒にいるの?」
(!)
いつも一緒にいるキモい奴。そのワードから連想されるのはまず俺だろう。
レイランは俺の事をどう思っている?
俺はただひたすらに彼女の言葉を待った。
「うーん……
正直キモいかな…。」
何かが割れる気がした。
ただそこから走って走って、家まで走った。
―――――――――――――――――――――――――
「はぁっ……はぁっ……」
家に着いた。不思議と涙は出なかった。
(…結局アイツもか。)
今の高校に入る前も、小学校、中学校でいじめられてきた俺をレイランは助けてくれた。
だが、いくら人が良いレイランでも俺に愛想が尽きたのだろう。
「今は6時か……」
今日は親の仕事が遅くなる。早くとも9時までは帰って来ないだろう。
(……)
もう何も考えていなかった。
風呂を沸かし、その間に自分の財布の中の金を全て取り出し、リビングの机の上に置いた。
遺書も書いて、机の上に置いた。
風呂が沸いたのを確認して、キッチンから包丁を取り出した。
(…じゃあな。親父…お袋…レイラン。)
風呂に行き、上着を脱ぐ。
細くて白い手首が露になる。
俺はそこに包丁を当て付け…
勢い良く引いた。
―――――――――――――――――――――――――
「え~次のニュースです。昨日の午後6時30分頃、都内のアパートに済む○○ ○○君が風呂場で亡くなっている事が分かりました。リビングには遺書と○○君の物と思われるお金があり、風呂場には包丁があった事から、警察は自殺と考えて捜査を続けています…。」
信じられなかった。
彼が自殺したなんて。
信じたくなかった。
彼が自殺したなんて。
ニュースを見てすぐに、彼の家へと向かった。
ニュースを見て集まったのだろう野次馬を、気絶させて、玄関を開けた。
血の匂いが伝わってくる。
不思議と嫌な匂いではなかった。
だが、血の匂いが却って私を不安にさせた。
彼が死んだという事実を否応なしに突きつけられた。
(イヤだ…イヤだ…!)
(イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダッッッッ!!!!!)
風呂場へと駆け、警察を気絶させた。
そこには、とても安らかに眠っている彼の姿があった。
(誰よ…誰よ…! 彼をここまで追い詰めたのは…!)
遺体を背負い、リビングの遺書を読んだ。
「親父、お袋、レイランへ。
この手紙を読んでいるということは、俺はもう死んだのでしょう。でも、許してください。
俺はもう、生きていくのが嫌になってしまいました。
親父とお袋には話していなかったけど、俺はいじめられていました。そんな時にレイランが助けてくれました。だが、そんなレイランも俺に愛想が尽きたみたいです。どんな豆腐メンタルだよと思うかも知れませんが、どうか許してください。俺には友達が無く、レイランには友達が沢山いました。そんなレイランに近づいては、レイランの評価も落ちてしまいます。ですから、俺がレイランに近づかないように、レイランが俺に近づけないように、死ぬこととしました。
俺のことは気にせず、楽しく人生を謳歌してください。それが俺からの言葉です。 ○○より」
言葉が出なかった。
信じたくなかった。
彼をここまで追い詰めたのは、私だ。
彼が死んだのも、私のせいだ。
ワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノセイダワタシノ……。
―――――――――――――――――――――――――
「……ねえ先生。 レイランは…。」
保健室の先生に、レイランの親友であるカリンが聞く。レイランだけではない。メイメイ、サクヤ、ハクもだ。
「…残念だけど……望み薄だわ。」
かぶりを振りながら、彼女は答えた。
「……そんな…。」
「…うぅ…レイランさん…!」
「レイラン……グスッ」
彼女達は、深き悲しみに叩き落とされた。
「ほら♪ ○○ご飯だよ♪ あーん♪」
「……」
「おいしい? ねえねえ♪」
「……」
「そっかー♪ お口にあって良かった~♪」
その光景はまさしく異常だった。
死んでから軽く3カ月は経っているのに全く腐敗していない男子生徒の遺体。
その遺体に一方的に語り掛ける朱雀の少女。
レイランは、自分が彼女を追い詰めたという事実に耐えきれず、意識を失った。
目覚めてからは、まるで彼が生きているかのように彼の身の回りの世話をしている。
恐らく、レイランには男子生徒の幻覚が見えているのだろう。
「えっ? 突然どうしたの?」
「……」
「…私の事が…好き…?」
「……」
「…えへへ…実は私も♪」
「……」
「えへへ…両思いだよっていちいちいわなくても♪」
「……」
「うん♪ 私も、貴方を宇宙で一番愛しています♥️」
―――――――――――――――――――――――――
彼女の目は、真っ暗だった。
それは、愛する彼の他に何も写していなかったように思えた。
(レイラン要素は)ないです。
感想待ってるゾ~。
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彼と彼女だけのヴァルハラ(ヴァルキリー)
彼女、ヴァルキリーは大富豪の令嬢であった。
茶道やヴァイオリンなどの芸能にも精通していた。
もちろん、魔法にも。
回りには多くの男がよってきたが、家の名前が欲しいだけと知っていたので関わらなかった。
彼女は孤独だった。
誰からも愛されなかった。
彼女は何も感じなかった。
ただ、まるで操り人形の様に、言われた事をするだけだった。
―――――――――――――――――――――――――
彼は、しがない手品師だった。
貧乏ではあったが、皆に愛されていた。
その事実が、彼を追い詰めた。
彼は、誰にも言わずに町を出た。
彼は、孤独を選んだ。
―――――――――――――――――――――――――
彼女は、彼と出会った。
何かが、彼女の心を満たした。
ただ、それが何かは彼女は分からなかった。
彼女は、生まれて初めて、心から笑った。
彼女は、彼に惹かれていった。
彼も、彼女に惹かれていった。
彼と彼女は、いつも一緒だった。
お互いに、初めて心から愛せた人だった。
結婚の約束もした。
だが、それは許されなかった。
―――――――――――――――――――――――――
約束の時間になっても彼が来ない。
その事実が、私を不安にさせた。
まあ、彼でも約束の時間に遅れることはあるだろう。
遅い、遅すぎる。
流石に遅すぎる。
心の中にポッカリと穴が空いてしまったようだ。
オソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイオソイ!
彼は何をしている?
私との約束をすっぽかしておいて。
心はもう真っ黒だ。
「あっ! ヴァルキリーじゃないか!」
そうして声を掛けてきたのは、名家の跡継ぎ。
だが、そんなことはどうでもいい。
「…何か様ですか? 生憎人を探しているのですが。」
「まあそう言わずに。 君が探しているのは
この男じゃないか?」
そうして渡してきたのは、彼の写真。
「…なぜ、あなたがこれを?」
「なぜって…僕と君が結婚するためさ。」
「…は?」
「だから!
僕と君が結婚するためにこの男を殺したんだよ!」
え?
なんて?
お前が? 彼を 殺した?
なんで?
「おーい? どうしたんだい?」
グサッ
「…え? …カハッ!?」
グサッ
「返せ……!」
グサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッ
「あの人を返せ…!」
グサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッ
「私の愛したあの人を返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せぇぇぇぇ!!!」
グサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッグサッ…
―――――――――――――――――――――――――
「……」
彼は、死んだ。
私が必要としていたのは、彼だけだ。
私が愛せたのは、彼だけだ。
私を愛してくれたのは、彼だけだ。
彼がいない世界は必要だろうか?
いや、
必要ない。
―――――――――――――――――――――――――
「…いかがなさいます?」
「うむ……まさかここまでとは…。」
「なら……。」
「…仕方あるまい。 彼と彼女だけのヴァルハラへ送って上げよう。」
―――――――――――――――――――――――――
「…あれ?」
ここは? 僕は確か、貴族の男に殺されたはず。
ヴァルキリーは大丈夫だろうか?
「……見つけました…!」
「…ヴァルキリー? なんでここに?」
「あなたを追いかけてきたんです! あなたが死んでしまったと聞いて…!」
「…ありがとう。 …ヴァルキリー。もし君さえ良ければだけど、僕と結婚してくれますか?」
「…はい!」
「あなたとなら喜んで!」
―――――――――――――――――――――――――
ここは、彼と彼女だけの世界。
孤独を選んだ者と、孤独だった者だけの世界。
愛を拒んだ者と、愛を求めた者だけの世界。
そこは、後に『ヴァルハラ』と呼ばれた。
コメント欄で書いて欲しいモンスター書いてくれたら優先的に書く可能性が微レ存…?
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いつも貴方を…(メイメイ)
「…あれ? ないな…。」
おかしい、昨日洗濯してしまっておいたパンツがない。俺の住んでいるアパートでは物が無くなるという事件(?)が頻発している。
これが一週間に一回程度なら良いのだが、生憎の所、ここ3ヶ月は毎日起こっている。
無くなる物も日によって違う。一昨日はワイシャツが無くなったし、昨日はフォークとスプーンが無くなった。
しかも、俺の部屋でしか起こらない。
これは、明らかに誰かの仕業だ。
早いとこ、とっちめてやらねば…。
そういえば最近、誰かに見られてるような…。
―――――――――――――――――――――――――
「やっぱりない……はぁ。」
いくら探してもない。やっぱり誰かに取られたか?
「…って! やっべぇ!遅刻遅刻!!」
時計を見るとすでに7時50分を回っていた。
取り敢えず急いで学校に行くことにした。
「…あっ♪ おはようございます~♪」
「あっ! おはようございます!」
そういって声を掛けてくれたのは、このアパートの管理人のメイメイさん。
明らかに俺より年下に見えるが、本人曰くもう成人しているが彼氏募集中らしい。
「学校間に合いますか?」
「いやーちょっとダメかもッス…。」
「…なら、私が送りましょうか?」
「…えっ!? いいんですか!?」
まさに渡りに船、地獄で仏に会ったよう。
お言葉に甘えて、学校まで送ってもらう事にした。
車に乗っている間は、あの視線も感じなかった。
―――――――――――――――――――――――――
「はい♪ つきましたよ~♪」
「いや~ありがとうございます! では!」
「……はい♪ 行ってらっしゃい♪」ノシ
ふぅ~。メイメイさんがいなかったら確実に遅刻だったな…今度お礼しよう。
キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…
「ふぅ~。 今日の数学きつかったな~。」
「おつかれさん! またな!」
「おう! おつかれさん♪」
学校から下校していると……。
「…またか。」
またあの舐め回すような視線を感じる。
「…誰だ!?」
視線を感じる方に振り向くと……
「シャー…。」
「…蛇?」
なんと、蛇だった。それも、真っ白な。
(……確か白い蛇って幸運を運ぶとか…。)
お守り代わりにでもと思い、写真を撮った。
「もう誰かを執拗に監視したりするなよ~♪」
「シャー……。」
そういって、その場から離れた。
―――――――――――――――――――――――――
「ただいまーっと♪」
玄関を開ける。すると、
「あ♪おっかえりーっ♪」
彼女が迎えてくれた。
小学校の時に苛められていたのを助けたのが始まりだった。
その頃の俺はどうしていいか分からなかったので、近くの神社に何回もお詣りにいった。
その神社は玄武を奉っているとの事で、彼女が傷つかないようにしてくれと何度も願った。
そうなると、俺にも力が湧いてくるかのように感じて、彼女を苛めていたいじめっこを払うことができるようになった。
その頃がきっかけで、お互いに好意を持つようになり、中学の時に彼女から告白され、付き合うことになった。
「今日は中華にしてみたぞ~♪」
「おおー♪ うまそうだなー✨ では…。」
『いただきます!』
その時には、あの視線も既に感じなくなっていた。
―――――――――――――――――――――――――
彼を初めて見たのは、彼が小学生の時だった。
とても必死に、何回もお願いをする姿はとても可愛らしかった。
少しだけ、力をあげた。すると、今まで泣き顔だった彼が笑顔で参拝をしにきた。
「力をくれてありがとうございます!」といってくれた。
その時の彼に、惹かれた。
彼がいつまで経っても来ないので、会いにいった。
すると、あの時の彼女と一緒に歩いていた。
なんで?
なんでお前がそこにいるの?
私が力をあげてやったのに!
憎い…! 憎い…! あの女が憎い…!
ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ!!!
―――――――――――――――――――――――――
「うっ…うーん…あれ?」
目を覚ますと、真っ黒だった。
「…っ!?」
体が、動かない。
金縛りにでもあったか。
「あら! 起きましたか?」
声がする方向を見ると、メイメイさんがいた。
「メイメイさん……?」
「彼女さんは、もう帰りましたよ~♪」
「ああ、そうなんすか…。」
時計を見ると、もう9時を回っていた。
「やべっ! もう遅刻確定じゃねーか!?」
布団から這い出ようとすると…。
「いえ♪ もう行く必要はありませんよ♪」
メイメイさんが笑っていた。
「…え? なんて?」
「ふふふ……♪」
メイメイさんの言っている言葉の意味が分からない。
「学校に行く必要がない? どういうことですか?」
「学校だけではありませんよ~?
彼女さんの家も図書館もスポーツジムもゲームセンターも行きつけの喫茶店も行かなくていいんですよ~♪」
「…は?」
「ここで未来永劫、私と一緒に暮らすんです♪
素敵でしょう?」
「ッ!?」ゾクゾク
何かがおかしい。
メイメイさんはこんな人ではなかった筈だ。
「……目を覚ましてください! メイメイさん!」
「…強情ですねぇ~…。 まあそこが好きなんですけど♪」
そういうと彼女は、ナイフのような刃物を取り出した。
「…! 待って! 待ってください!」
「えーい♪」
グサッ!
頭を刺された。不思議と痛くはなかった。
だが……。
「っ!? なんだ…!? 頭が…!?」
「今、貴方に本当の情報を流しているんです~♪
じっとしててくださーい♪」
頭がいたい。
アタマガイマイ。
あたまがいたい。
あのこはぶじだろうか。
あれ…
あのこってだれだっけ?
―――――――――――――――――――――――――
とあるアパートの一室。
そこには、青年と神が住んでいた。
神の目には光が無く
青年の方は、「同居している者が恋人で世界で一番愛している」意外の知識が欠落していたという。
最後無理やりスギィ!
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コワレタ博愛(イデアル)
やっぱヴェロアとかイナ多いんすかね~?
「うぅ…いたた…。」
傷ついた体に鞭打って歩く。
学校は、学問を学ぶ所である。
だが、それ以上に社会の理不尽さを学ぶ所でもある。
ガス抜きせずにずっと真面目に生きることができる人などいない。
いくら外道な事をしても、周りが認めればそれは承認されたということになる。
いくら良いことをしても、周りが隠蔽すればそれは外に広がって行かない。
そんな理不尽さを学ぶ所であるのだ。
―――――――――――――――――――――――――
「ただいま…。」
「あっ♪お帰りなさい♪」
そういって僕を迎えてくれたのは、イデアル。
彼女は僕と違い、運動も勉強も出来、明るく友達も多い学園内でのカースト最上位にあたる人物だ。
そんな彼女が、何故僕の家にいるのかというと…
「どうしたのですかマスター? 体調が悪いようですが…?」
「いや、大丈夫だよ。それより、この世界には慣れたかい?」
「はい! 学校では皆優しくしてくれますし、勉強も楽しいです!」
「…そうか。」
僕はかつて、魔法や黒魔術などに傾倒していた事柄あった。
そんな僕が、魔法の中でも特に使いたかったのが召還術。
試しにやってみるとその時は失敗かと思ったが次の日になると、このイデアルが僕の家に居たのだ。
―――――――――――――――――――――――――
「おーい○○君♪ お金貸してよ!」
「ちょっと俺たち金欠でねー!」
「俺たち友達だろ?」
次の日学校に行くと、いじめっこから金をせびられた。こんなことは今まで何回もあったので無視する。
「…おい! 金寄越せっていってんだよ!」
「早い出せよ!」
「てめえ調子乗ってんじゃねぇよ!」
そうすると、殴られる。
最初の頃は金を渡していたが、どんどん金額が増えていったので、殴られる方にした。
もう、痛みにもなれている。
「!? 何やっているんですか貴方達!?」
「やっべ! イデアルに見つかった!」
―――――――――――――――――――――――――
「…マスター、学校とはどのような所なのですか?」
「学校? そりゃあ皆で協力して…」
「違うんです。 …私、マスターが他の方に殴られているのを見てしまいました。」
「…!」
しまった。まさか見られてしまうとは。
イデアルに失望されるか? それが不安だった。
「…教えてください。学校とは、何なのかを。」
「…わかったよ。」
その後、僕が今までされてきたことを話した。
「…っと、こんなところかな。」
「…何でですか。」
「…え?」
「何でマスターは抵抗しないのですか? 抵抗すれば、そのいじめがおさまるはず! 貴方には、魔力があるのだから!」
「…それは出来ない。この世界は、必ず誰かが損をするようになっているんだ。それがたまたま僕だっただけさ。 …さ、早い内にご飯を食べよう。」
「…! わかりました。」
イデアルは、もう何も聞いて来なかった。
―――――――――――――――――――――――――
「………」
あの日から、ずっと考えていた。
私が呼ばれた理由を。
今日、それがやっとわかった。
「マスター……貴方のためなら。」
私は、幾らでも穢れる事ができます。
―――――――――――――――――――――――――
「いってきます…。」
陰鬱な気分に成りながら、通学路を歩く。
今日もまた、苛められるのが解っているからだ。
「…あれ?」
学校につくと、人だかりが出来ていた。
皆、うつむいている。
「…あの。」
「ん? どうしたん?」
そこにいた人に話しかける事にした。
「何かあったんですか?」
「ああ、実は……
人が殺されたんだよ。」
「え?」
「それも一クラス丸ごと!」
「あの、そのクラスって…1Bですか?」
1Bは、僕のクラスの名前だ。
「いんや? 1Aだったらしいぞ?」
「…そうですか。」
…申し訳ないが、良かった。
僕のクラスだったら、恐らくイデアルの仕業だったからだ。
―――――――――――――――――――――――――
「…お帰りなさい♪ 早かったですね?」
「…まあね。」
マスターが、帰って来た。
あの夜、私はマスターの学校の生徒を殺した。
私のクラスの全員と
マスターを苛めていた屑どもを。
私自身のクラスである1Aを私が殺す訳がないとマスターは思ってくれているらしい。
ふふふ♪これで……
マスターを拒む者は居ません♪
―――――――――――――――――――――――――
彼は知らない。
彼女が、彼を思うあまりに人を殺めたことを。
彼は、知らない。
彼女は、彼に恋慕を通り越して、崇拝の念を持っていることを。
彼は、知らない。
彼女の目が、光を失ったことを。
イデアルムッチムチすぎてすこ。
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私の光(アマテラス)
「…なぜお前はこんなに役立たずなのだ。」
父様?
「私たちの顔に泥を塗る気ですか? 姉さん。」
ツクヨミ? 今なんて…?
「なんでこんな愚図が太陽神になれたんだ…。」
スサノオ? なんでそんな事言うの?
「フシュルルル…!!」
…! カグツチやめて! なんで私を噛むの!?
「正直に言うわ…
あなたは、落ちこぼれよ。」
母様……。
―――――――――――――――――――――――――
「ふぅ…今日もくたびれた…
でも、明日から休みだしのびのびするか。」
「…」
「あれ…? 女の子かな?」
「…」
「…捨てられたのかな?」
これが、始まりだった。
―――――――――――――――――――――――――
「う…うぅん…?」
目を覚ますと、見慣れた汚い天井…ではなく、白い綺麗な天井だった。
「あっ! やっと起きた!」
不意に声を掛けられたので、その方向を見ると優しそうなおじさんがいた。
「あの…ここはどこですか?」
「ああごめん、ここは僕の家だよ。君が道端で倒れてたからとりあえず僕の家にいれたんだ。」
私は、どうやら倒れていたらしい。
その証拠に、体の節々が痛く力が入らない。
そして、お腹も空いた。
おじさんは笑って、
「お腹が空くのは健康な証拠だよ♪ ほら、これをお食べ。」
と言って、ご飯を作ってくれた。
とっても美味しかった。
―――――――――――――――――――――――――
私がおじさんに拾われてから、何年かたった。
おじさんはいつもとても優しくて、大好きだ。
私を捨てた人達のことは、もう忘れてしまった。
「ふふふーん♪ あっ♪今日もいい天気♪」
最近は、よく晴れる。
晴れる日が、私は大好きだ。
心が晴々とするから。
「お父様♪ 朝ごはんが出来ましたよ♪」
「おおそうか♪ アマテラスのご飯はとても美味しいからな。ありがとうな。」
「もう、お父様ったら♪」
―――――――――――――――――――――――――
おかしい。
いくらなんでも、おかしすぎる。
天界に、光が昇らないのだ。
作物も実らず、神がバタバタと死んでいった。
「父上…このままでは…」
「あなた…」
スサノオとイザナミも、生活するのがやっとの状態だ。私も、もう何年も食べていない。
こうなったのはいつからだったか?
もう何年も前だ…覚えていない。
「だったら、アマテラス様を連れ帰ればいいのです。」
神の誰かが、言った。
その時には、私達はもう狂ってたのだろう。
―――――――――――――――――――――――――
ピンポーン
家のチャイムが鳴った。
「はいはい、今行きます。」
今日届く荷物なんてなかった気がするけれど、とにかく玄関に向かった。
「アマテラスを返せ。」
「は?」
何を言われたのか分からなかった。
何故アマテラスの名前を知っている?
「早く返せッ!!」
凄まじい気迫で、大男は怒鳴った。
彼らと彼女の関連性は分からないが、ここで渡したら二度と彼女に会えない気がした。
「そうか……なら…。」
グサッ
「勝手にアマテラスを貰っていくぞ。」
―――――――――――――――――――――――――
「お父様? どうしましたか…ッ!? お父様!? お父様!?」
心が凍りついたような感覚がした。
お父様が、大男に日本刀で刺されていたのだ。
「やっと来てくれたかアマテラス! さあ早く高天原へ帰ろう! 皆が待ってるぞ!」
大男が何を言ったか分からなかった。
ただ、猛烈な殺意と敵意が沸いた。
全てが、光と熱に包まれてく感じがして―
きづいたら、なにもなくなっていた。
―――――――――――――――――――――――――
「ねえ、何読んでるの?」
「あぁ、アマテラスっていう神様のお話さ。」
「アマテラス?」
「うん、この世界っていうのは一回アマテラスによって焼き尽くされたんだって。」
「!」
「世界を焼き尽くした理由は、色々言われているけど、一説によれば、父に殺されてしまったある人の所へ行くために、世界ごと自分の自殺に巻き込んだんだって!」
「…アマテラスと、その人はどうなったのかな…。」
「さあ? でも…
もしかしたら、どこか違う世界で仲良く暮らしているのかもね?」
―――――――――――――――――――――――――
シヴィニアちゃんのお腹スリスリしたい(変態)
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鏡よ鏡(ネレ)
これからも頑張るゾ~。
あと感想ください。(人間の屑)
人には皆、誰にも言えない秘密があると思う。
例えば自分の黒歴史だったり、自分の性癖だったり。
そんな僕の秘密はというと…
「…うう、気味が悪い……。」
…今日もだ。どこからか視線を感じる。
このような視線を感じ始めたのは、おおよそ二年程前。
同時はあまり気にしていなかったが、一年たったくらいからいくら何でもおかしいと思い始めた。
幸い、物は何も取られていないが、気味が悪くてあまり寝られない。
気のせいかも知れないが、二年前よりも、じっくりねっとりと、熱い視線を向けられている気がする。
「…はぁ、いっそ犯人が名乗り出てくれないかなぁ…。」
そんな叶わぬことを思いながら、僕は今日も眠りに就いた。
―――――――――――――――――――――――――
「ふふふ……かわいいなあ…♥️ ○○君♥️ このままずっと見ていたい…♥️」
どこかの洋風な大きい屋敷の部屋の中。その部屋は、まさしく異質だった。
その部屋の壁には、余すところなく、ある男子の写真が飾られていた。
ツーショットの写真は一枚だけ。他はほとんど盗撮されたものだ。
第三者が移った写真もあるが、それらは、例外なく第三者の体がズタズタにカッターで切り裂かれていた。
そして、最も異質なのは、巨大な鏡の前に佇んでいる少女。
鏡を見つめては、頬を赤らめ、惚けた顔をしている。
彼女の名はネレ。鏡と鏡の空間を繋げたり、別の鏡を通して、景色をみることが出来る。所謂魔法使い、魔女という存在。
彼女が鏡を通して見ているのは、写真にも写っていた男子。
なぜ彼女が彼を見つめているのか? それは、二年程前にさかのぼる。
―――――――――――――――――――――――――
ネレの日記
4月 6日
今日から高校へ入学することになった。
学校で覚えたことを忘れないように、日記を書くことにした。
どんな思い出が出来るのか、とても楽しみだ。
4月 7日
授業が始まった。
中学校の復習が主だったこともあって、あまり難しくなかった。
…でも、クラスの女のに変な目で見られた。
6月 14日
クラスの女子が怒っていた。
ネクラ女だとか、ハートマークの痣が気味悪いだとか。
とても悲しかった。
8月 10日
町外れの海岸に呼び出された。
何かと思ったら、女子と男子がたくさんいた。
私を犯すだとか、やるとか言ってた。
逃げたかったけど、女子に腕を捕まれた。
ダメだと思った瞬間、女子と男子が倒れていた。
そこには、違うクラスの子がいた。
私に向かって、「大丈夫?」って声をかけてくれた。
とても嬉しかった。
8月 11日
私をいじめてた子達は転校したらしい。
それよりも、帰る時に、男子…○○君に会った。
お礼を言ったら、当たり前だって言われた。
とてもかっこよかった。
8月 13日
おかしい。胸のドキドキが止まらない。
いつも、○○君の事が浮かんでは消える。
私はどうしたのだろう。
8月 15日
友達に相談したら、それは恋だっていわれた。
恋したことなんて初めてだ。
これを書いていてもドキドキが止まらない。
8月 19日
怖い。寒くはないのに体の震えが止まらない。
○○君の事を考えると、震えが落ち着く。
私は本当にどうしたのだろう。
9月 31日
やっとわかった。
この震えを止めるにはどうすればいいのか。
○○君をずっと見ていればいいんだ。
10月 1日
さっそく、計画を始めた。
○○君の家に忍び込んで、鏡に魔法をかけた。
これで、私の好きな時間に好きなだけ○○君を見ることができる。
なんて幸せなんだろう。
(ここから長い間、日記が止まっている。)
10月 6日
今日の○○君も一段と素敵だった。
昨日はいつもより寝る時間が1時間16分も短かったせいかとても眠たそうだったけどそんな○○君も素敵。
まばたきも、普段は6秒に一回だったのに今日は4秒に一回だった。
それよりも、○○君は何かに怯えている様子だった。
○○君を悩ませる奴は、みんな私が消してあげたいけど、魔女の力を使っている所を○○君に見られたくないしどうしよう。
―――――――――――――――――――――――――
この物語が終わる日が来るのか、それは誰にもわからない。
でも、ただ一つだけ言えることがある。
彼女は、彼に覆われた自分だけの鏡の世界で何を思うのか。
少なくとも、彼女にとってはハッピーエンドだろうね。
ネレちゃんのおっぱいやわらかそう(ノンケ特有の発言)
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大樹の牢獄(アルジェ)
「やることなすこと全てが遅いわね。こんな子を弟子にするんじゃなかったわ。」
「あら? そこにいたのね。 まったく気づかなかったわ。 さっさと紅茶を淹れて頂戴。」
「私は少し町に出掛けるわ。帰って来るまでに私の部屋を綺麗にして。ほら早く。」
「…駄目ね、全然駄目。まだこんなに埃が残っているわ。 あなた、魔法だけじゃなく片付けすらも出来ないのね。」
「…ふう、疲れちゃった。あなた、私の代わりにランプと窓を磨いといてね。 汚れてたりしたら許さないから。」
「…何? ドラゴンが襲いかかってきた? そんなの別に難しくないでしょ。 一人でドラゴン一匹すら倒せないなんて、あなた本当に無能ね。」
―――――――――――――――――――――――――
「……はぁ。今日もきつーく言われちゃったなぁ……」
僕は、まだまだひよっこの魔法使い見習い。
他の友達よりも、才能も頭も足りない。その点は、今まで努力でカバーしてきたつもりだ。
この国では、一人前の魔法使いになるために、見習いの魔法使いを、一人前の魔法使いの元へと派遣する。
そうして、一人前の魔法使いから認められれば、晴れて名実共に魔法使いとなれるのだ。
僕も、その例に沿って、魔法使いの元へと派遣された。
僕が派遣されたのは、かの有名な大魔女、アルジェ様の元だ。
大魔女であるアルジェ様に魔法を教われると、僕はとても舞い上がっていた。
数日たって、僕はアルジェ様の元に派遣された。
アルジェ様は、僕を見るなり
「駄目ね。あなたには才能が無いわ。」
と、おっしゃった。
僕は、その評価を何としても覆したくて、毎日必死で訓練をした。
でも、いつまで経ってもアルジェ様は認めてくれなかった。
「…あなたは本当に頭が足りないみたいね。どんなに努力しても、あなたには無理よ。」
「前々から思ってたんだけど、もう紅茶を淹れないでくれないかしら。 あなたより、私の方がうまく淹れられるから。」
「もういいわ。いつまで経っても成長しないんだもの。家に帰っていいわよ。」
そのうち、アルジェ様に仕えることが苦しくなっていった。
アルジェ様は、生まれ持っての才能と頭脳がある。
でも、その二つとも、僕には無い。
だから、いつか認めてもらえるようにと、訓練は惜しまなかった。
でも、その努力すらも認めてくれなかった。
「はい。買い物のメモ。 あなたは本当に愚図で無能なんだからこれくらいはやりなさい。」
「遅いわよ。もう日が暮れかけているわ。 え? ちゃんと買ってきた? そんなのもういいわよ。 もうご飯食べちゃったし。」
「今日はファスカとネレが泊まりにくるの。 あなたは屋根裏にいって。 ほら早く。」
……もう、魔法使いなんて成れなくていいや。
早くこの地獄から抜け出したい。その一心で、アルジェ様が留守の間に、アルジェ様の分の食事を作り、机の上に自分の気持ちをまとめた手紙を書き、僕は後先考えずにアルジェ様の屋敷を飛び出した。
―――――――――――――――――――――――――
魔女の集会がやっと終わった。
今回も、特に変わりなく駄弁ってただけだ。
「~♪ ~~~♪」
彼が待っている家に帰ると考えると、自然と心が弾む。
彼はまだまだひよっこだから、私がしっかりと教えてあげなきゃいけない。
……でも、やっぱり今迄のは言い過ぎたよね。
彼を成長されることばかり考えて、彼のことを考えていなかった。
(帰ったら謝らなきゃなぁ……許してくれるかな。)
そんなことを考えている内に、家と着いた。
窓ガラスや植えてある花も、全て彼が整えたものだ。
こんな優秀な弟子を持っていたのだと、改めて思う。
「…ただいま。」
…?
返事が無い。
私が帰って着たことに気づいていないのか?
それとも、もう寝てしまっているとか?
(…まあ、仕方ないわよね。 今まであんな扱いしちゃったんだもの。疲れてるわよね……。)
廊下を進み、リビングへと着いた。
机の上には、彼が作ったのであろう、美味しそうな料理が並んでいた。
その隣に、見慣れない紙が置いてあった。
「…手紙かしら?」
どうやら手紙で、差出人は私の様だ。
手紙を開けて、読むことにした。
「アルジェ様へ。
今まで、本当にありがとうございました。
最後の最後まで、アルジェ様の手を煩わせてしまい申し訳ありません。
私は、魔法使いになることを諦め、故郷へ帰ることとしました。
私の様な無能を教えるよりも、才能ある若者を育てた方が良いと思います。
最後にわがままを言わせてください。
どうか、私のことを忘れて、健やかに過ごしてください。
それでは、お元気で。 ○○より」
「…え? 嘘、でしょう……?」
特徴的な丸みを帯びた文字は、私に現実を突きつけた。
お前のせいで、彼の将来を閉ざしてしまった。
お前がもっと早く謝っていれば間に合った。
お前がもっと丁寧に教えればよかった。
(嫌…! 彼が…ここを出ていったなんて!)
私は料理に目も暮れず、夜の空へ、彼を探す為に飛び出した。
―――――――――――――――――――――――――
久しぶりに、友達に会えた。
彼はちゃんと認められて、一人前の魔法使いになれたらしい。
祝福すると、頬を赤くしていた。こういう所は変わってなかった。
他にも、久しぶりに家族にも会えたし、先生は涙して抱擁してくれた。
僕もいつの間にか泣いていた。
久しぶりにここまで感情を露にしたこともあり、とても疲れた。
泊まる場所のことを考えていなかったが、まあホテルくらいすぐに見つかるだろうと思い、ぶらぶらと夜道を歩いていた。
突然、後頭部に強い痛みが走った。
なにが起こったのか全く分からず、そのまま意識を失った。
意識を失う直前、「ごめんなさい…」と弱々しい声が聞こえた気がした。
―――――――――――――――――――――――――
僕が目を覚ましたのは、見慣れた部屋の天井だった。
なぜ僕がここにいるのか? なぜ物が失くなっていないのか? と、気になることは山ほどあったが、その前に、部屋のドアが開いた。
「…あっ。」
「…アルジェ…様」
そこには、僕のかつての主がいた。
目には、深い悲しみが浮かんでいるように見えたが、そんなことはないと思った。なぜなら。
「…あなたは本当にバカなの? 道端で倒れるなんて。
こんなのが弟子だったなんて、私の人生の最大の汚点だわ。」
いつも言われていた言葉。それが今は、なぜかとても頭に来た。
「…いい加減にしてくださいよ!! 無能だなんて分かったら、とっとと捨てるか魔法の実験台にするなりすればよかったじゃないですか!!」
「…」
「…はっ!」
しまった。いくらなんでも言い過ぎた。
アルジェ様は下を向いて、なにかぶつぶつと呟いている。
「も、申し訳ありません! アルジェさ……
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい酷いこといってごめんなさい無能だなんていってごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい酷いことしてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
僕の本能が告げた。このままではいけない。
アルジェ様に駆け寄って、だきしめた。
「アルジェ様! 僕はもう大丈夫です! もう謝る必要はありません! 落ち着いてください!」
「……ごめん…なさい……っ! 今まで……ぐすっ 酷いこと…いっぱいしてきて……ごめんなさぁい……!」
「僕はもう大丈夫です。それよりも、また魔法を教えてください。」
「……あり……がとう……! 許して……くれて………!」
なんとか落ち着いた様だ。
アルジェ様が元に戻ってくれて、本当によかった。
―――――――――――――――――――――――――
あれ以来、アルジェ様が僕に小言をいうことは失くなって、ちゃんと僕を認めてくれるようになった。
ただ、その代償として……
「…! すみません、ちょっとトイレに……。」
「…! 嫌! やめて! 私から離れないで! あなたがいないと私……なんにも出来ない……」
「え、でも…」
「なら、あなたが終わるまで、トイレの前で待っているわ!」
…と、僕に依存してしまったらしい。
どうやら、帰ってきた日に、僕がまたここを離れる夢を見たらしく、それからというもの、食事や寝るときもずっと僕のそばにいる。
僕がいないと、魔女同士での集会もいけないらしく、何回か魔女の人が家に来たが、アルジェ様が僕のそばを離れないため、仕方なく、アルジェ様は大魔女の座を降りることになった。
僕は、彼女という名の大樹の牢獄に囚われている。
今日も、そしてこれからも。
(本家のアルジェちゃんはこんな性格では)ないです。
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きれいになったお兄ちゃん(ファスカ)
申し訳ありませんでしたぁぁぁ!(土下座)
FGO始めてはまってましたぁぁぁ!(焼き土下座)
俺がまだ幼い頃に、母親は男を作って蒸発した。
それからしばらくしたあと、父は再婚した。
再婚した相手には娘がいた。
「ほら、今日からあなたのお兄さんになる○○君よ。あいさつしなさい」
「…ファスカです……よろしく」
「○○だよ、よろしくね」
これが、ファスカとの出会いだった。
ファスカはいつも本を読んでいた。
何の本かは分からなかったが、大きくて重そうな本だった。
最初の頃は、一緒に遊ぼうと誘ったこともあったが、ファスカがそれに応える様子も無かったのでいつの日からか誘うのをやめた。
そんなある日に事件が起きた。
―――――――――――――――――――――――――
両親は共働きだったため、その日は、俺とファスカの二人で留守番をしていた。
いつも通り、ファスカは本を読んでいて、僕はトイレに向かっていた。
「動くな! 動いたら命はねえぞ!」
窓を割って、二人の男が入ってきた。
二人ともナイフを持っていて、言ってることに嘘偽りが無いことがわかった。
廊下にいた僕は狙われ無かったけど、部屋の中にいたファスカは二人の男に睨まれていた。
「…あ? なに睨んでんだこのクソガキ!」
男の怒声と共に何かが割れる音がした。
花瓶か何かが割れたのだろう。
「アニキ! こいつ良くみたらなかなかの上玉じゃないすか?」
「…確かにそうだな。売り払う前に一発ヤっとくか!」
部屋から男二人の下品な声が聞こえた。
上玉? 売り払う? ヤっとく?
意味は分からなかったが、何か良くない事が起きそうなことだけはわかった。
廊下から、男二人の位置を確認すると、ドアの前に二人とも立っていた。
和室にはいつもファスカが読んでいた本が二冊置いてあった。
その中でも重い方を持ってリビングに突入した。
「ファスカを離せーーッッッ!!!」
全力で本の角を男の脳天に振り下ろした。
男は気を失って、後ろに立っていた痩せていた男も巻き添えに倒れた。
巻き添えにされた男も、気を失ったようだ。
ファスカを方をちらりと見ると、泣いていた。
いつも無表情だったファスカの泣き顔を見るのは初めてだった。
「ごわかっだ…! 怖かったよお兄ちゃん…! ありがとう…! ありがとうお兄ちゃん…!」
泣きながら抱きついて来たファスカを、俺は抱き止めた。
それからと言うもの、ファスカは俺に甘えてくるようになった。
今までほとんど会話が無かったことに比べれば確かな進化だと思う。
「お兄ちゃん♪ 一緒に遊ぼう! 今日こそは負けないよー!」
「お兄ちゃん…一緒にお風呂入ろう?」
「お兄ちゃん…寂しいからさ…一緒に寝てくれる…?」
「お兄ちゃんって彼女さんいるの…? …あっ い、いるんだ! そっかー! あはは…」
―――――――――――――――――――――――――
「ねえお兄ちゃん……もし良かったら、私と付き合う…?」
事件から数ヶ月経ったある日、妹から告白を受けた。
ファスカほどの美少女なら直ぐにでも返事をしたいが、そうは問屋がおろさない。
何しろファスカは妹だ。妹と付き合うとかシスコン以外の何者でもない。そもそも俺は、高校に入ってすぐに恋人が出来ていた。
その事をファスカに伝えたら、
「嫌…嫌嫌嫌!!! お兄ちゃんと一緒じゃないと嫌!! お兄ちゃん以外の男の人はみんな嫌い! みんなあの泥棒みたいに汚いの!! それにお兄ちゃんが付き合ってるって言ってた雌豚も汚い汚い汚い!!!
あんな汚い匂いがお兄ちゃんに移っちゃうのは耐えられないの!! だからお願い!! あの雌豚とは縁を切って、私と付き合ってよ!」
と、支離滅裂な事を言い出した。
流石に言い過ぎだと思い、ファスカを初めて叱った。
「え……なんで……なんで拒絶するの……? 私は思った事を言っただけなのに……? ………ああ、そっかぁ…あの雌豚に絆されちゃったんだぁ……ごめんねお兄ちゃん。ちょっと痛いかもしれないけど、許してね……。」
その言葉を最後に、意識が暗転した。
―――――――――――――――――――――――――
私を泥棒から救ってくれたお兄ちゃん。
私を優しく抱き止めてくれたお兄ちゃん。
私と一緒にお風呂に入ってくれたお兄ちゃん。
私と一緒にベッドで寝てくれたお兄ちゃん。
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き
あれ以来ずっとお兄ちゃんの事が脳裏から離れない。
でも、脳内がお兄ちゃんの事で埋まっていくことに、私はこの上ない幸福を感じていた。
でも、もうお兄ちゃんには彼女がいた。
なんで?
なんで?
なんで私じゃないの?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い!!!!!!
……ああ、そっか。
お兄ちゃんはきっとあいつに絆されちゃったんだぁ。
だったら、今度は私が救ってあげる。
待っててね、お兄ちゃん♪
―――――――――――――――――――――――――
目が覚めると、白いベッドで寝ていた。
不思議な事に、今までの記憶がさっぱりない。
僕は記憶喪失になってしまったのだろうか。
ニュースでは、ある女子高生が惨殺死体として発見されたらしい。
その女子高生に見覚えがあった気がしたが、すぐに忘れようとベッドの中に潜り込もうとした。
ノックが鳴って、ある少女が入ってきた。
健康的に少し焼けた肌。
美しい金髪に、見る者を虜にしそうな蒼い目。
その美少女に僕は見覚えがあった。
その美少女に僕は尋ねた。
僕の事を何か知っていませんか。と。
美少女は答えた。
「私の名前はファスカ。あなたの妹であり、恋人であり、婚約者です。」と。
ファスカちゃん目隠しオナとかレベル高すぎない?
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遺された呪い(神器龍の女性キャラ全般)
(男キャラも出て来ますがヤンデレじゃ)ないです。
この世界は五つの国に別れている。
火山が多く、爆発的噴火が度々起こる「火の国」。
この世界の水や氷のほとんどを有する「水の国」。
樹木が生い茂り、エルフ達が住まう「木の国」。
神々しく輝き、楽園とも称される「光の国」。
ほの暗いが、光の国との交流が深く、人々からも愛されている「闇の国」。
この五つの国は、足りない物を補い合い、困難な事も協力して発展していった。
だが、そんな平穏は一瞬で崩れ去った。
突如、闇の国の地下深くから、邪悪な魔龍と共に醜悪なる魔族が侵略を始めてきた。
魔龍は己を「ディグロスト」と名乗り、この世界の旧き支配者をすべて滅ぼし、己が新たにこの世界に君臨すると布告した。
この布告を耳に挟んだ五つの国は、それぞれの国から勇者を選出し、ディグロスト討伐の命を下した。
勇者に選出されるには、「神器龍」という、特別な龍に選ばれる必要があった。
奇しくも、俺は神器龍に選ばれ、勇者として選出された。
故郷である水の国から、幼なじみのディーナと一緒に、ディグロスト討伐の旅に出た。
道中では、心強い仲間が出来た。
向こう見ずで一辺倒だけど、そのひたむきな明るさで皆を照らしてきたダイヤ。
いつも喧嘩ばかりしていたけど、戦闘では抜群の連携を見せたドゥバルとランペイド。
見た目からおじさんだと思っていたが、意外にもかわいいものが好きだったグリゴリーとエレメイ。
皆からは姫騎士と呼ばれ、その度に顔を赤くしながら走り回っていたリータ。
戦闘がうまくいかない時に、皆の仲を取り持ってくれたアリナとポロネ。
皆の心を料理で掴み、皆から「おかあさん」と呼ばれるようになったパヌマス。
踊りという、皆の数少ない娯楽を提供してくれた、エルシャ。
最初は孤立していたけど、最終的には、皆に馴染めて、笑顔を見せてくれたシヴィニア。
静と動を自在に操り、美しい剣技を披露してくれたトウヤ。
回復のポーションや、爆発するフラスコで、戦闘のサポートをしてくれたリシェイラ。
皆、素晴らしい仲間だった。
だけど―
―――――――――――――――――――――――――
ディグロストの討伐も目前と言ったところで、ある道化師が俺らの止まっている宿を訪ねてきた。
彼は自らを「チェニ」と名乗り、龍と騎士との戦いを題材とした喜劇を見せてくれた。
彼の喜劇は、まるで呪術でもかけられたかの様に見入ってしまった。
その翌日から、悲劇が開演した。
―――――――――――――――――――――――――
その日俺は、いくつかのグループに別れて、ディグロストが住まう洞窟を探していた。
俺とアリナ、ディーナ、ポロネで東の道を進んでいった。
時だった。
突如として、世界から強烈な衝撃が飛んできた。
「うあっ!?」
俺は情けない声をあげながら、倒れ混んでしまった。
何があったのか、顔をあげてみると
そこには、めらめらと憎悪を目に滾らせた、アリナ、ディーナ、ポロネがいた。
「ど、どうしたんだ皆?」
と俺が問いかけると、
「どうした、ですって? そんなの決まってるじゃない! 今そこに寝転がってる愚図を殺すのよ!」
自分の耳が信じられなかった。
今そこに寝転がってる愚図? それは俺じゃないか。
ディーナは俺を殺すと言っているのか?
「お、おいおい何の冗談だ? そんなの嘘だよなアリナ?」
今度はアリナに問いかけた。すると
ぐさりという音と共に、アリナの杖が喉に突き刺さった。
「んがっ!? あがぁぁぁぁぁぁあぁぁあ!? がぁぁぁ!!」
「…黙ってください。あなたの声は耳障りです。」
アリナがあんなことをいうなんて信じられなかった。
恐る恐るポロネの方に目を向けると、
「ごめん、なさい」
その一言と共に、巨大なハンマーが俺の右足に落ちてきた。
―――――――――――――――――――――――――
それからは、ひどい目にあった。
ある時はエルシャの短刀で右目をくりぬかれた。
ある時はリシェイラのポーションの影響で、左足の骨が溶けてしまい、やむなく義足を装備することにした。
ある時はリータの剣の練習に付き合い、一日中体に剣を振るわれた。
ある時はシヴィニアに暗殺されかけ、致死量ギリギリの毒を飲まされた。
そんな俺をおかしく思ったのか、ダイヤ達が相談に乗ってくれた。
ダイヤ達に、「呪われているのでは?」と、しつこく言われたので調べてみる事にした。
結論から言うと、俺は呪われていた。
異性からの好感度が逆転している状態らしい。
その事を皆に知らせたら
「俺に出来ることがあったら何でもするよ! みんなで助け合おう!」
「どーせこれもディグロストのせいなんだ。 さっさと倒して、体休めようぜ!」
「お前の戦いっぷりは見てて惚れ惚れするからな! 手伝ってやるから早いとこ体治せ!」
「お主はあの者達を信じられるのだな…あいわかった!我々で、お主を補助しよう!」
「戦いが終わったらエルフの森に行こう。ゆっくりと体を休めてくれ。」
「お主にはこれまで助けられてきたからのう。これはそのほんのお返しじゃよ♪」
「拙者はお主達に仲間の尊さを教わった…ならば、拙者はお主の友として、力を貸したい!」
みんなが、俺のことを心配してくれていた。
その事に、涙が止まらなかった。
早速明日、ディグロストの洞窟に向かうことにして、その日は寝室に帰った。
いつも通り、寝室は荒らされていた。
でも、ここにはもう用は無い。
ごめんね、みんな。
俺は、窓から外に飛び出した。
―――――――――――――――――――――――――
深夜ということを抜きにしても洞窟は驚くほど静かだ。
魔物に一匹も会わずに、最奥までたどり着いた。
ここで全てが終わる。そう覚悟して、俺は声を張り上げた。
「さあ、戦おうじゃないか―
―ディグロストッ!!」
その刹那、魔龍と勇者が吠えた。
―――――――――――――――――――――――――
早朝、宿の広間で、アリナは本を読んでいた。
彼女は読書が好きで、暇なときは魔術書を良く読んでいた。
暇潰しというのもあるが、彼女にとって、読書をしている間だけは、あの忌々しい男の事を忘れる事が出来た。
「…ふぅ。なかなかこの本も面白かったですね…♪ さて、次は…」
突如、彼女の脳裏にある影が走る。
それは、彼の喉に杖を突き刺した記憶だった。
「…ぁぁ…ぁぁ……違う、違うんです! あんなことを私はしていない!」
否定してどうなる? 彼にしたことは事実だろう?
「違うっ! 私はそんなことしてないっ!」
他の奴があいつを痛め付けた時も、お前は笑ってたよなぁ。
「ッ!! 違う! そんなことを私は…!!」
おいおい、いい加減認めろよ。
忌々しい男が消えて精々したって。
「あ…あぁ……」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
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ディグロストがかけた呪術は解けた。
これで、ようやく彼は体を休めることが出来るだろう。
だが、彼女達の記憶は消えなかった。
そして、彼女達は正気を失った。
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結論から言うと、ディグロストは倒せた。
まあ右足と左腕は失くなって、いろいろな所の骨は折れているが、倒せたことに変わりはない。
やっぱりだが、ディグロストはチェニだった。
恐らく、俺たちを内側から崩壊させ、その隙に世界を征服する予定だったのだろう。
でも、もうそんなことも考えられない。
あぁ……い、しき、が…とお…く―
―――――――――――――――――――――――――
「…ろ! ……き………るだろ!」
「たの……め………さ………くれ…」
何かの声が聞こえる。
心が安らぐ声だ。
あぁ……そろそろ起きなきゃいけないのか―
「…! おい! 起きたぞ! おい!!」
「本当かランペイド!? ……! 良かった……本当に良かった……!!」
「…えーと…その…
…ただいま?」
『遅すぎるんだよ! お帰り!!』
―――――――――――――――――――――――――
魔龍ディグロストが倒され、世界は平和となった。
だが、俺には、もうひとつ重要な任務が残っていた。
それは―
「ねぇねぇお兄ちゃん♪ アリナといっしょにあそんでよぉ~♪」
「だめだよー! ディーナとあそぶんだからー! アリナちゃんはひとりであそんでなさい!」
「いやー! リータとあそぶのーー!!」
「お、落ち着いて! なら四人で一緒に遊ぼうか!」
「「「はーい!」」」
(ふぅ…なんとかなったか)
俺は胸を撫で下ろす。
ディグロストを倒し、呪術から解放されたまではよかったのだが、実はアリナ達には記憶が残っており、その残酷な記憶に耐えきれずに、正気を失ってしまったらしい。
アリナとディーナ、リータは幼児退行してしまい、遊んであげないとなにをするかわからない。
ポロネとリシェイラは…
「…はぁ…」
「ご、ごめんなさい○○さん! ため息をつかせるなんてポロネは悪い子です! 今すぐこの醜い命を絶ってきます!」
「あああごめんなさい○○君! 君の足を奪った私など生きている価値なんて無いよね! ごめんね! 今すぐ消えるから!」
「お、落ち着いて! 俺はもう怒ってないから! 本当だよ!」
「「で、でも!」」
「な、なら命令だ! 命を捨てないで、お菓子を持ってきなさい!」
「「は、はい!」」
(…重症すぎて笑えないぞ、これ…)
ポロネとリシェイラは、俺を傷つけた事に対して、過剰なまでの罪悪感を感じており、何かの拍子に自害しようとなるようになってしまった。
エルシャとシヴィニアは……
「ご、ごめん。ちょっとトイレに…」
「え………い、いっちゃうの……?」
「…いやだ………いやいやいやいやいや! 絶対に私たちの側を離れないで!!」
「え、ええ…」
エルシャとシヴィニアは、俺と離れることに強い拒絶を示し、俺に依存するようになってしまった。
無理に離れると、発作を起こしてしまうため、トイレにもおちおち行けない。
「ねぇねぇお兄ちゃん! アリナね! 大きくなったらお兄ちゃんと結婚する!」
「あ! だめー! ディーナが結婚するのー!」
「ねぇねぇ? リータと結婚しよう? お兄ちゃん?」
「お、お待たせしてしまい申し訳ありません! ○○さんを待たせるなんて言語道断! 今すぐ死んできます!」
「ご、ごめんね! 私なんか見たく無いよね! 今すぐ死んでくるよ!」
「…ぁ ○○さん、行かないで…!」
「私は……あなたがいないとだめなの……!」
(…はぁ……全く、何の因果でこうなったのやら。)
そうぼやきながら、俺は憎いくらいに照りつける太陽を眺めていた。
もはや途中で何を書いているのかわけわからなくなったゾ…。
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