お姉ちゃんがブラコン過ぎてやばい (naonakki)
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第1話 序章

ラブライブ!サンシャイン!!の作品を以前より書いてみたいな~と思ってたので、書いてみました。

文章力に拙い部分もありますが、ご容赦下さい、、、


ピピピ・・・

 

朝、設定しておいたアラームの音が鳴り響き、僕の意識を夢から現実へと誘う。それにしても眠い・・・。布団の中は温かく、抱き心地のよいふよふよしたクッションも布団から出ることを邪魔してくるわけで・・・ん? クッション? 寝るときにクッションを持ち込まない僕はそのことが気になり目をうっすら開ける。そこには、

 

「・・・すぅ。」

 

寝息が当たるか当たらないかといった超至近距離に気持ちよさそうに眠るお姉ちゃんの顔があった。しかも両手両足で僕にしがみつくように抱き着くような姿勢で眠っている。・・・あ~、いつ見ても整った顔してるな、顔は小さいし、まつげは長いし、肌も綺麗・・・って!?

 

「ちょっとお姉ちゃん!!何してるんだよっ!?」

 

状況をようやく理解できた僕は、お姉ちゃんの整った顔に自分の両の手のひらを思い切り押し付けて引きはがそうとする。

 

「うぅ~ん・・・。」

 

顔が歪むレベルで手を押し付けられても僕を離す気はないらしく、苦しそうに唸りながらも逆に抱き着いてきている腕に力を込めてくる、どれだけ諦めが悪いんだ!?

 

「・・・いい加減にしろぉっ!」

 

埒があかないと判断し、バチンッと、思い切りデコピンをお見舞いしてやった。

 

「痛いっ!?」

 

これには流石のお姉ちゃんもたまらず目をばちりと開いて、痛いよぉ~と涙目になり、おでこに手を当て、悶絶している。よし、今のうちに起きてしまおう。今のうちにと、布団から抜け出て、さっさと起きようとするが。

 

ガシッ

 

「・・・お姉ちゃん、もう朝だよ。だからいつまでも寝ぼけてないでその手を離せ~っ!」

 

布団から抜け出ようとする僕を見逃さなかったお姉ちゃんは、もうすぐで布団から脱出できるというところで再度抱き着いてきたのだ。当然いつまでもこんな馬鹿なことをしていては、学校に遅刻してしまうので、僕は全力でお姉ちゃんを振りほどこうとする。

 

「うぅ~、かいと~、おでこが痛いよ~、おはようのキスをしてくれないとお姉ちゃん絶対起きれないよ~。」

 

と、お姉ちゃんはわざとらしく、そんなことを言いながら決して抱き着く腕の力を緩めようとしない。・・・こうなったら、絶対譲らないのは今までの経験からわかる。・・・・・はぁ。

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

「おはよう、お母さん・・・。」

 

「おはよう、お母さん♪」

 

その後、無事お姉ちゃんは起きてくれて、リビングに行くことができた。リビングには既に朝食が用意されておりお母さんは既に朝食を摂っていた。

 

「おはよう、毎日思うんだけど、どうしてかいとは毎朝やけにぐったりしてるの? 逆に梨子は上機嫌だし。」

 

「お願いだから聞かないで・・・。」

 

僕は力なく答え、朝食の席につく。毎朝毎朝、起床後にこんなに疲れるのは僕くらいじゃないだろうか?

 

「ふふ、聞いてよお母さん。朝からかいとにおはようのキスをされちゃった♪」

 

「うぉおおいっ!? お姉ちゃんがキスしないと、起きれないとか言うからだよっ!! 僕から嬉々としてキスしたみたいな言い方はやめてよっ!」

 

朝の出来事を思いだしているのだろうか、恍惚とした表情のお姉ちゃんに、冗談じゃないと猛抗議するが、我が母上はというと。

 

「二人ともねぇ・・・仲がいいのはいいことだけど一線を超えたらだめよ? 特にかいと?」

 

「なんで僕なんだよっ!? 注意する人が完全に間違ってるよ!」

 

お母さんは全然事態を飲み込んでくれていなかった。これって僕がシスコンやろーと思われてるってこと??

 

「そうよかいと? お姉ちゃんがいくら綺麗でも私たちは姉弟なんだから。まあどうしてもっていうなら考えなくもないけれど//」

 

「いやいやいや、自分で綺麗とかいうなよ!? 後、何受け入れようとしてるんだよ、滅茶苦茶乗り気じゃないか!」

 

やばい、朝から僕の体力がごりごり削られていく・・・。相手にしていたら体力が持たないと判断し、そこからは無言で朝食をとり、静かに朝の支度を進めるのだった。

 

「・・・じゃあ行ってきます。」

 

「行ってきます!」

 

「いってらっしゃい。」

 

お母さんに見送られ、僕とお姉ちゃんはようやく学校に向かうことになった。ちなみにお姉ちゃんが通う学校は、女子高であり僕とは違う高校だ。これは正直大変ありがたい。学校にお姉ちゃんがいたらと思うと・・・。

 

「かいと、道は危ないから手を繋ぐわよ?」

 

だってこれだよ?

 

「・・・お姉ちゃん、僕もう高校一年生なんだけど?」

 

「ええ、勿論知ってるわよ? それがどうしたの?」

 

お姉ちゃんは、急にどうしたの的な表情でおどけたようにそう質問を返してくる。普通、高1の弟高2の姉が手を繋いで登校しないという常識がこのお姉ちゃんにはないのだ。

 

「とにかく絶対嫌だ。手を繋がなくても大丈夫だし、ていうか恥ずかしいし。」

 

僕が完全拒否の姿勢を見せると、

 

「・・・あんまりわがまま言うと腕を組むわよ?」

 

「・・・・・。」

 

――――――――――――――――――

 

 

「うわ~、あのカップル朝から手を繋いでるぜ~」「バカップルだ~」「ラブラブだ~」などと、小学生に思い切りからかわれ続けて5分、僕の精神は既にぼろぼろです。お姉ちゃんはお姉ちゃんで、「そんなカップルだなんて//」などと照れている始末である。僕がメンタルブレイクしていると後方から、

 

「遅刻だ遅刻~っ!!」

 

落ち着きのない慌ただしい声をあげながら走ってきたのは、隣の家に住んでいる千歌さんだ。お姉ちゃんと同じ高校の二年生であり、お隣さんということで引っ越した当初から仲良くしてもらっている。普段も一緒に登校しているのだが、このように遅刻癖があり、しばしば集合時間に遅れるのだ。今日も集合時間までに来なかったので先に出発したのだが、何とか追いついたようだ。

 

「はぁはぁ、何とか間に合った・・・。ぎりぎりセーフ。」

 

「もう千歌ちゃん! ちゃんと朝起きないとだめじゃない!」

 

いや、お姉ちゃんも全然起きないじゃないかっ!というのは、心の声にとどめておいた。一方千歌さんは、怒られてしまって「うぅ~だって~」と頭を抱えている。しかし、急にくわっとこちらに向き直ったかと思うと

 

「大体梨子ちゃんはずるいよっ!! 毎日かいと君に起こしてもらってるんでしょ!? 私もそんな弟がほしいっ!ほしいほしいっ!」

 

うわぁ・・・、子供みたいに駄々こねだしたよ。しかし千歌さんはひとつ勘違いをしている、僕がお姉ちゃんを起こしているのは、起こさないとこっちが起きれないからだ。決して起こしたくて起こしているわけではない。起こさなくてもいいなら、起こさずそのまま一人で登校するだろう。

 

「落ち着いて千歌ちゃん。確かに私は毎朝かいとにおはようのキス付きで起こしてもらっているわ。でも実は私はとっくに起きているのよ? 寝ぼけたふりをしてかいとに無茶苦茶しているだけなのよ。」

 

「・・・え、姉弟でキスしてるの?」

 

「誤解だ、いやキスしてるけど僕の意思じゃないから!お願いだからドン引きしないでください、ほっぺにキスしてるだけだから! ていうかお姉ちゃん軽く言ってたけど、いつも起きてるのかよっ!! ツッコミどころが多すぎるわっ!」

 

とんでもないことをさらりと言ったお姉ちゃんの言葉に千歌さんは僕たち二人から少し距離をとりやがった。頼むから話を聞いてくれ。後、お姉ちゃんにも狸寝入りしていた件については、後でたっぷりと問い詰めなければな・・・。

 

「う~ん、キスはあれだけど、とにかく私も起こしてくれる弟がほしいっ!お姉ちゃん達は全然起こしてくれないもんっ!」

 

「ふふ、千歌ちゃんがうちの弟を羨むのも仕方がないわ? じゃあ千歌ちゃんもかいとのお姉ちゃんになってみる?」

 

「え?」

 

「は?」

 

この訳の分からないお姉ちゃんの発言によって僕の生活は一変することになる。

 

つづく

 




というわけで第1話でした!
読んで頂きありがとうございます!

お姉ちゃんという存在に憧れすぎてこのような作品を書き始めました(笑)

また更新していきますので、次話も呼んで頂ければ幸いです、では!


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第2話 千歌さんの弟に

「じゃあ千歌ちゃんもかいとのお姉ちゃんになってみる?」

 

お姉ちゃんがあふれんばかりの笑顔で言ったセリフが僕の脳内で何度も何度もこだまのように反響する。・・・千歌さんが僕のお姉ちゃん?? 何言ってるんだ?

 

「え、え、どういうこと梨子ちゃん?? 私がお姉ちゃんに??」

 

千歌さんも僕同様にお姉ちゃんの言葉の意味がピンと来ていないようで、お姉ちゃんに何々と迫っている。千歌さんは元々好奇心旺盛な性格だがそれにしてもやけにお姉ちゃんに食いついている気がする。

 

「ふふ、落ち着いて千歌ちゃん? 私は常々思っていたのよ、かいとのように思わず抱きしめたくなっちゃうくらい可愛い弟を独り占めしてもいいのかしらと?」

 

「ほうほうほう!」

 

お姉ちゃんは弟の目の前で友達に何を言っているのだろうか? と言いたいところだが千歌さんもアホ毛をぴょんぴょんさせながら馬鹿みたいにお姉ちゃんの言葉に相槌を打っている。

でもこれはこっそり学校に行くチャンスでは? よしそうしよう、さらば!

 

「いいえ独り占めなんてだめよ! だからこう思ったのよ! 他の人にもかいとの素晴らしさを共有してもらえばいいと!」

 

「おぉっ!!」

 

いいと!じゃねえよっ!! 弟の人権を何だと思っているんだ!? 千歌さんも何でそんなノリノリなんだよっ! 

ちなみに逃げようとしたら一瞬でお姉ちゃんに見つかり僕を後ろから抱きしめるような形であっさり拘束されてしまった、まったく動けません。後周囲の目がきつい・・・。

 

「じゃあじゃあ! かいと君を千歌の弟としてくれるの??」

 

千歌さんは、目をキラキラさせてそう質問をするが、

 

「千歌ちゃん、勘違いしないでほしいのだけど、かいとをあげるわけないでしょう? あくまで共有するだけよ? 調子に乗らないで頂戴。」

 

「・・・すみません。」

 

般若のような表情と化したお姉ちゃんによって、一瞬で諌められていた。千歌さんは分かりやすく項垂れて、アホ毛もしゅんと垂れ下がっている。

お姉ちゃんは、昔から僕のこととなると、普段のおとなしい姿からこんな感じに豹変するときがあるのだ。本当にこの時のお姉ちゃんは怖いんだよ・・・。

 

しかし、何か違和感がある・・・。自分で言うのもなんだがお姉ちゃんはブラコンだ。ブラコンオブブラコンだ。要はお姉ちゃんは僕のことが大好きであり、さらに独占欲が強いのだ。どれくらい強いかというと、僕と離れるのが嫌だという理由で、学校を休んで僕の修学旅行について来ようとするくらいだ、親に止められてたけど。そんな独占欲が強いお姉ちゃんが、仲が良いとはいえ千歌さんと僕を共有することを提案することが考えにくいのだ。

そんな僕の疑問を感じ取ってかは分からないが、お姉ちゃんが

 

「かいと、お姉ちゃんと二人きりでイチャイチャできないのは、寂しいと思うけどこれは仕方がないことなのよ? ・・・私もう無理なの。」

 

と、心の底からごめんね?と言いたげに僕を抱きしめる腕に力を入れながら謝罪をしてきた。お姉ちゃん、イチャイチャできないのは全くのノープロブレムだよ? ていうか無理って何が無理なんだよ?と思っているとお姉ちゃんが続けて

 

「・・・最近かいとを見てると襲いそうになっちゃうの♡」

 

「「・・・・・。」」

 

・・・イマナンテ? オソウ? オソウッテナニ?

 

僕は、言葉の意味を理解できずに呆然とし、千歌さんは顔を引きつらせてマジかよと言わんばかりにドン引きしている。

 

「だから、かいとを千歌ちゃんに共有という形で貸しだせば私もかいとを襲わなくても済むし、千歌ちゃんにもかいとの素晴らしさを知ってもらえるし、理想的な弟がいる生活を体験できるでしょう?」

 

・・・どういうことだ、全然お姉ちゃんの言っていることが分からないっ!ていうか何??僕は毎日、実の姉に襲われそうになってたのかよ!?? ブラコンってレベルじゃねえ!!毎日布団に潜り込んできてるけど何もされてないだろうな?? 一気に自分の貞操が不安になる中、千歌さんが

 

「・・・ま、まあ梨子ちゃんの言いたいことは何となく分かったよ。後、梨子ちゃんがやばいってことも。」

 

「ふふ、分かってくれて嬉しいわ♪」

 

「・・・・・。」

 

もう考えるの面倒になってきたし、流れに身を任せよう、もう疲れた。色々と衝撃的な展開についていけず脳がキャパオーバーしてしまったので諦めて傍観に徹することにした。

 

「要するにお互いのメリットの為に、かいと君を千歌の弟として貸してくれるっていうことだよね?」

 

千歌さんはさっき怒られたことがまだ尾を引いているのか、恐る恐ると言った感じで、しかしややテンション高めにお姉ちゃんにそう確認をとる。ていうか千歌さんさっきからやけに乗り気だが、僕に弟になってほしいのか? 千歌さんみたいに可愛い人にそう思われてるとなると結構嬉しかったりするが、だからといってまじで弟になるかと言われればそれとこれとは別だ。

 

「ええ、そうよ。とはいっても私もずっと会えないと寂しくて死んじゃうからとりあえず、3日あたりでどうかしら?」

 

「うん! それでいいよ!! じゃあ早速今日からいいかな!!」

 

「ええ、ノープロブレムよ!」

 

「いやいやいや、普通にプロブレムだわっ! 何勝手に僕の3日間のスケジュールを埋めてるんだよっ! 大体弟を共有とか聞いたことないわっ!」

 

と、傍観に徹するつもりだったが我慢できずに抗議した、しかし二人の耳に届くはずもなく、どんどん二人の話は進んでいく、弟に人権はないらしい。

 

「いい千歌ちゃん? 弟として貸しはするけど、かいとに手を出すのは禁止よ?」

 

「わ、わかってるよ// いちいちそんなこと言わなくても大丈夫だよ。」

 

「本当にお願いよ、かいとの魅力に負けないでね? アクアのメンバーを信用しているからこその話だということを覚えててね?」

 

「うんっ、任せてっ!」

 

最早ツッコミはしまいが、この人たちは僕の目の前で何の会話をしているんだ? これ最早セクハラだよな?

しかし、お姉ちゃんはああ言っていたがやはり僕を共有する件については違和感が残る。あのお姉ちゃんが僕を他所に弟として貸すとは・・・何か裏があるのではないだろうか?

しかし結局考えても僕の中のモヤモヤは最後まで晴れなかった。

 

「じゃあそういうことだから、今日から早速千歌ちゃんの家に弟として行って頂戴ね?」

 

どういことかよく分からないが、本当に千歌さんの弟として派遣されてしまうらしい。当の千歌さんはというと「末っ子の千歌にも弟が・・・。」と、なにやら感激している様子。まあその気持ちはわからなくもない。僕も弟でいつもお姉ちゃんに振り回されているため自分にも弟や妹が欲しいと思ったことはあるからね。

 

「そ、そういうわけだから、よろしくね? かいと君//」

 

千歌さんが、少し恥ずかしいのか上目遣いでそう言ってくる。・・・可愛いすぎるだろ、ちくしょう。こんな風に言われてしまっては断れるわけもなく、

 

「・・・まあ、はい。」

 

と答えるしかなかった。

 

というわけで、よくわからないまま僕は三日間限定で千歌さんの弟になることになってしまった。正直何をすればいいのか分からないが、実の姉に襲われそうになっているこを知ってしまった今、避難するという意味ではありがたいことなのかもしれない・・・多分。

 

ちなみにこの日、僕を含めお姉ちゃん、千歌さんは長話をしていたせいで学校に遅刻した。遅刻の理由と聞かれて、姉に拘束されていましたって言っても信じてもらえなかった、僕が何をしたって言うんだよ・・・。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「・・・はあ、千歌さんの弟とか言われてもなぁ。」

 

放課後、お姉ちゃんに逆らえない僕は千歌さんの弟になるため、千歌さんの家に向かっていた。

・・・自分で言っておいてなんだが、意味が分からないな。

 

「お姉ちゃんの目的はよく分からないけど、適当にやればいいだろう。」

 

そして、僕は高海家のインターホンを押した。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

かいと、離れ離れになってとても寂しいけれど頑張って弟をしてきてね? 私自慢のかいとなら、きっとみんなのことを・・・。

 

つづく

 




2話読んで頂いてありがとうございます!

少々梨子ちゃんブラコン過ぎますかね(笑)
でもこんな感じのお姉ちゃんに憧れているわけで、はい(変態の自覚はあります)。

さて次回は千歌ちゃんを中心とした形のお話になります!

最後に早速お気に入り登録していただいた方々ありがとうございます!

では、また次話で会いましょう!



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第3話 千歌お姉ちゃんもブラコン

ぴん、ぽ~ん・・・。

 

インターホンを少し控えめに押した後、しばしの沈黙があたりを包む。この時間って意味もなく緊張するが僕だけだろうか? 

ほどなくして、「は~いっ!」と元気な返事がインターホンから帰ってきたと思ったら、ドドドッと明らかに走ってきているのが丸分かりな騒がしい音をまき散らしながら玄関まで来て、ガラッと引き戸タイプのドアが勢いよく開いた次の瞬間

 

「おっかえり~っ!!」

 

千歌さんが満面の笑みで飛び出してきて、思い切り抱き着いてきた。

 

「うおっ、ちょっと千歌さっ!わっぷっ!?」

 

一瞬のことであり回避ができるわけなく、千歌さんを受け止める形をとる。強い衝撃とともに、全身がむにゅりとした柔らかく暖かい感触と、さらにはお風呂に入ったのだろう、柑橘系のシャンプーの良い香りが僕を襲いかかってくる。。

ほぁあああ!? こ、これは、たまらない・・・。特に胸に当たるこの二つの特段柔らかい感触が僕の理性を破壊していいく。

しかも千歌さんのましゅまろのような頬で僕の頬にすりすりしてきたぞっ!?

・・・だめだ、これはだめだ。

 

「ん~、これが梨子ちゃんが言ってたおかえりのぎゅ~か~、これは確かにいいかも~。って、かいと君!? どうしたの、白目になってるよ!?」

 

千歌さんは、ひとしきり満足したのか僕から離れると、僕の異常に気付いたのか慌てた様子でそんなことを言ってくる。

どうやら理性を押さえつける為に全精力を注ぎこみすぎて白目になっていたらしい、想像したら凄く気持ち悪いな、それ・・・。

というより、いきなり抱き着いてきたのはお姉ちゃんの入り知恵か・・・。確かにお姉ちゃんは僕が帰ってくるたびに抱き着いてくるが・・・。

 

「千歌さん、もしかしてお姉ちゃんから僕のことを色々聞いてる?」

 

恐る恐るそう確認するが、千歌さんはむ~と不満げに頬を膨らませると

 

「違うでしょ??」

 

と、一言

 

「何が違うの??」

 

意味がよく分からなかったので、そう聞き返す。

それにしても頬を膨らましてる千歌さんまじで可愛いすぎるんだが、怒り慣れていない感じが何ともぐっとくる・・・。

僕の言葉に千歌さんは、さらに可愛く頬を膨らませると大きく口を開け、

 

「千歌お姉ちゃんでしょ?」

 

「・・・・・え?」

 

ちか、お姉ちゃん?? どういうこと??

・・・まさかそれで呼べと??

 

「いやいやいやいや、無理無理無理!」

 

手と首がもげんばかりにぶんぶん振って否定する。

いくら弟として貸し出されたはいえ、お姉ちゃんの友達にお姉ちゃん呼びとか恥ずかしすぎるだろっ!? どんなプレイだ!?

しかし、まったく納得した様子のない千歌さんは

 

「だめ! そう呼ぶまで家に入れないよっ!」

 

腰に手を当て、なぜか説教モードで怒られてるんだが?? お姉ちゃん呼びがそんなに重要か??

 

「・・・勘弁してくれないですか?」

 

「だめ。」

 

懇願するも、秒で却下されてしまった。

 

ちなみに、本当の自分の家には帰れない。お姉ちゃんから今日から3日は千歌ちゃんの家で弟をすること、と言われ家を締め出されているのだ。家に帰っていいのは放課後の1時間程度だ。ずっと千歌さんの家だと僕成分が足りずに死ぬからとのお姉ちゃんの命令だ、意味が分からないが。まあ何が言いたいのかというと、千歌さんをお姉ちゃん呼びしないと、今日の僕の寝床がないということだ。

 

「・・・どうしてもだめですか?」

 

「だめ。」

 

再度懇願するも回答は同じ。どうやら覚悟を決めなければいけないらしい。

 

「千歌・・・おねえ・・・ちゃん//」

 

うおお// は、恥ずか死ぬっ!! 本当の姉以外にお姉ちゃん呼びするのがこんなにも恥ずかしいとは//

しかし千歌さんは分かりやすくにぱーと笑顔になっていき、そして

 

「きゃ~// か、可愛すぎるよ~! ね、ね!!もう一回、もう一回言って!!」

 

と、大変興奮した様子できゃっきゃ言いながら、僕の肩を掴んでぐいぐい揺らし来るわ、揺らし来るわ・・・。

 

「嫌だわっ!? ちゃんと言ったんだから早く家に入れてくれよ!!」

 

当然アンコールに応えるわけもなく千歌さんの腕を振り払い、そう捲し立てる。

しかし千歌さんはそんな僕の言葉なんて全く気にしていないかのように、

 

「お願いお願いっ!!もう一回!もう一回だけだから!!」

 

と、顔を僕の顔にぐいっと近づけてきて再度懇願される。いきなり顔を近づけられて、慌てたこともあり、つい。

 

「・・・後、もう一回だけだからな?」

 

と、言ってしまった。千歌さんみたいな可愛い顔をいきなり近づけられたらこうなるって、普通・・・。

 

「うんうんうんうん!!」

 

千歌さんは、わくわくしたように何度も首をぶんぶん振り、そう言ってくる。

 

・・・はぁ、しょうがない。ここは心を殺して乗り切ろう。

そう、僕は千歌お姉ちゃんと言うだけのロボットなんだ、そう思い込むんだ・・・。

 

――――――――――――――

―――――

 

(10分後)

 

「はぁ~、すっごく幸せだよぉ~♪♪」

 

「・・・そりゃよかった。」

 

今にも宙に浮きそうなほど舞い上がっている千歌さんとは対照的に僕の精神はけちょんけちょんにやられ、もうズダボロだ・・・。

結局、もう一回もう一回と要求されまくり50回くらい千歌お姉ちゃんと言わされた。最後の方はもはや何かの呪文じゃないのかと錯覚したレベルだ。

 

「じゃあ、約束通り家に入れてあげるね! 今からもう楽しみで楽しみでしょうがないよ!!」

 

全然約束通りじゃないけどな・・・。もう一回だけと、幾度となく嘘をつき続けた千歌お姉ちゃ・・・千歌さんに心の中で文句を垂れながら玄関にとぼとぼと重い足取りで向かう。

何はともあれ、これでようやく寝床を確保できたらしい。

 

「ほら、早く家に入らないともう一回お姉ちゃんって言わせるよ!」

 

「すぐ行くよっ、千歌お姉ちゃん!!」

 

千歌お姉ちゃんの言葉を聞き、弾丸の如きダッシュで高海家にお邪魔した。

ていうか、まだ家にすら入っていない状況で既に疲労困憊ってやばいのでは・・・。

 

―――――――――――――

―――――――

 

「はい、じゃあお姉ちゃんの前に座って?」

 

「・・・・・。」

 

予想は大的中。先ほどまでのはまだまだ序の口だったらしい。

リビングに迎え入れられた僕は、そこでテレビでも見ようと言われた。ちなみに夕食とお風呂は既に自分の家で済ませてきた。流石に食事を出してもらうのは悪いとの配慮だ。

話を戻すが、テレビを見る、その提案自体はよかったのだが、そこからが問題だった。

千歌さんが足をまっすぐ、かつ少し左右に開く形で床に座り、先ほどの言葉だ。

 

「・・・どういうこと?」

 

「ん? だから千歌お姉ちゃんの前に座ってって。」

 

そう言いながら千歌お姉ちゃんが足を開いて座ることによってできた左右の足の間の空間を指差してくる。

 

「・・・どうしてそこに座るの?」

 

・・・本当は分かってる、毎日お姉ちゃんにされているのだから。しかしその現実を受け入れたくなくて、そう質問を投げかける。

 

「それで私がかいと君を抱きしめながらテレビを見る。これが最高だって梨子ちゃんが言ってたよ? ちょっと恥ずかしいけど・・・私もしたい!!したいったらしたい!!」

 

OH~、お姉ちゃん・・・どれだけ僕たちの日常を周りに喋ってるんだよ。僕がシスコンだって思われるじゃないか、もう思われてるけど・・・。

ていうか、恥ずかしいならやめたらいいじゃないか、顔ちょっと赤いし・・・。

駄々っ子の様に手足をばたばたさせている千歌お姉ちゃんを見て、少し可愛いなと思いながらそう考えていると、

 

「もう、はやくっ!」

 

中々座ろうとしない僕にしびれをきらしたのか、がばっと立ち上がり僕に足払いの要領で無理やり座らせに来たんだがっ!?

そして

 

「えへへ、えいっ!!」

 

ぎゅっ

 

後ろから力強く本日二度目の抱きを体験する。

やばいやばいやばいっ! お姉ちゃんから毎日されている(無理やりだぞ?)ことだが、千歌さんから伝わる体温、そしてやはり感じる二つのふよりとした超絶柔らかい感触が嫌というほど存在感を主張してくる。さらに先ほど手足をばたつかせていたせいか、ほんのりとした汗の匂いとシャンプーの混じった麻薬のような香りが、僕の理性をごりごりと削っていく。

 

・・・素数だ、こういう時は素数を数えるんだ、1、3、5・・・あ、これ奇数か。

緊張のあまり思考がまとまらない、いやっ、僕ならいけるっ!!

これは、まじのお姉ちゃんだ、そう思い込むんだ!

 

これはお姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん。

 

・・・よし、何とか落ち着いてきた。やばい奴みたいだが、これなら何とかなりそうだ。

 

「ふわぁ~、これ凄くいいかも・・・。」

 

千歌お姉ちゃんも満足してくれたみたいだ。よし乗り越えた・・・。

僕が、試練に打ち勝ち達成感に浸っていると

 

「ただいま~、おっ、本当にかいと君がいる。」

 

「あらあら、いらっしゃい♪ かいと君♪」

 

声がした方向を見ると、怪しい笑顔を浮かべた美渡さんと志満さんの姿が。

 

・・・持ってくれよ、僕の理性。

 

つづく

 




あ~お姉ちゃん欲しい・・・。

はい、というわけで第3話でした(笑)

色々妄想をぶつけているだけのお話ですが読み続けていただければ嬉しいです(笑)

では、また次話で会いましょう!


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第4話 高海家

「かいと君、いつうちに来てたの?」

 

「・・・ちょっと前です。」

 

「かいと君、お菓子とか色々買ってきたけど食べる?」

 

「晩御飯食べてきたんで・・・。」

 

美渡さんと志満さんに両サイドを固められて逃げられない僕は二人のおもちゃと化していた。

引っ越した当初から変に高海家の3姉妹に気に入られ、今までも会うたびにからかわれてきた。しかしそれはあくまで会うたび・・・、今回はこれが三日間ずっと・・・。

お姉ちゃん、なぜこんな仕打ちを・・・。

僕がこの先に待ち構える三日間を憂い、打ちひしがれていると、

 

「もうっ!二人ともっ、かいとくんは千歌の弟なんだよっ!!邪魔しないでよっ!」

 

と、千歌さんが憤慨しながら美渡さんと志満さんに食いついている。。

ちなみに千歌さん、もとい千歌お姉ちゃんは美渡さんと志満さんの二人によって、あえなく隅に追いやられていた。

きょうだい間では一番下が一番権力がないことはどこも共通なのかもしれない。

だが僕と違って千歌さんがその程度で諦めるはずもなく僕達が座っているソファの後ろに回り込み、僕の頭を抱きかかえる形で抱き着いてきて、「二人はどこかに行ってよ!」と、強引に割り込んできた。

 

「いいじゃん。千歌の弟なら私たちの弟でもあるわけじゃん?」

 

「ふふ、そうよね♪」

 

二人はそうわざとらしく言って、僕の左右のそれぞれの腕に抱き着いてきた、千歌さんに見せつけるように。

いやいや、千歌さんをからかうのはいいけどそのために僕に抱き着くのはやめてくれっ!?

後ろからに加えて左右から抱き着かれた僕は、まさに天にも昇るような気持ち・・・になるわけもなく頭が真っ白になる。

・・・特に志満さんのどことは言わないがボリュームが凄い、これが大人のぼでぃなのか・・・。

千歌さんも出るとこは出てるが志満さんとは比較にならない。

・・・美渡さんについてはノーコンメントでお願いします。

いや、ほんと女性って不平等だよ・・・。

 

自分の抗議が一蹴されたうえにからかわれた千歌さんは「うぐぐ」と、悔しそうにしているがそれ以上何か言ってくることはなかった。だがその悔しさをぶつけるように抱き着いて来る腕に力を込めてきた。

・・・ちょっと痛いんだが。

 

「そういえば、かいと君は誰と寝るのかしら?」

 

ここまでで既にいっぱいいっぱいだった僕の頭を思い切り殴りつけるような発言が志満さんから飛び出した。

というか待て・・・。

・・・どうして誰かと寝ることが確定しているんだ? 僕を小学生かなにかと勘違いしていないか?

 

「千歌、絶対千歌が一緒に寝るっ!! これだけは譲れない!」

 

ちょっ!? 首が絞まってるよ千歌お姉ちゃん!!

今日一番の声でそう主張する千歌さんは、僕を自分のものだと示すように僕を絞殺する勢いで腕に力を込めてくる。

ていうか一緒に寝るという点について突っ込んでくれよ!?

 

「・・・じゃあ、ここはじゃんけんだな。」

 

・・・美渡さん、あんたもか。

ここに高校一年生の男子と一緒に寝ることをおかしいと思う人間はいないらしい。高海家はみんな痴女なのか??

 

「絶対負けないっ!!」

 

千歌さんは何の意味があるのか手首をプラプラと準備運動させながらぎらぎらした目でやる気だ。志満さんも美渡さんも同様に獲物を狩る目つきでじゃんけんに臨もうとしている。

 

「じゃあいくわよ♪ じゃんけん・・・」

 

―――――――――――――――――――――――――

――――――――――――

 

「よろしくね♪ かいと君♪」

 

「あちゃあ・・・負けたか。」

 

「う~、梨子ちゃんにかいと君を貸してもらったは千歌なのに・・・。」

 

じゃんけんの結果は志満さんに軍配が上がった。美渡さんは、しょうがないと言った感じだが、千歌さんは、なにがそんな悔しいのか分からないがうっすら涙目になりながら、恨めしそうに志満さんを見ている。

 

「じゃあ今日はよろしくね、かいと君♪」

 

「・・・あの、僕健康的な高校一年生の男子ですよ?」

 

「それがどうしたの??」

 

「・・・いや、その、僕もね? 性欲とかその、あれがね? やっぱりね?」

 

恥ずかしかったので、途切れ途切れにそして言葉を曖昧にしながら、一緒に寝ることに否定的な態度を見せるが、その態度がこのドS姉妹には良くなかったらしい。

 

「んぅ~? もっと具体的に言ってくれいないとお姉さんたち分からないわよ~?」

 

「そうだよかいと君、もっとはっきり言ってくれないと?」

 

「・・・せ、性欲//」

 

志満さんと美渡さんは、にやにやしながら僕にもっとはっきり言えと問い詰めてくる。

くそっ、この二人完全に遊んでる!!

唯一千歌さんはこの手の話が苦手なのか顔を赤くしてもじもじしている。

千歌さん、お願いだから上の二人みたいにならずにそのまま純情であり続けてください。

やっぱり恥じらう女の子が一番可愛いと僕は思う。

 

「・・・やっぱりいいです。」

 

一緒に寝ることの何がだめなのか、恥ずかしくて言える訳もなく結局僕が折れてしまった。

 

「ふふ、じゃあ今日は一緒に寝ましょうね♡ 私も一度弟と一緒に寝てみたかったの!」

 

「・・・お手柔らかにお願いします。」

 

・・・果たして僕はちゃんと寝られるだろうか?

だが、待てよ。志満さんは千歌さんをからかうために、こう言っているだけかもしれない。

・・・そうだよ、本当に恋人同士でもない男女が一緒に寝る訳ないじゃないか。

それに最悪一緒に寝ると言っても実は、同じ部屋で別々の布団で寝るとかかもしれない。

きっと、そうに違いない。

きっと・・・。

 

―――――――――――――――――

―――――――

 

そして、その日の晩。

 

僕の淡い希望は何一つ叶うことはなかった。

同じ部屋で、一緒の布団で、抱き着かれたままで寝るという三連コンボが見事にきまった。完全にスリーアウトだ。

 

当然僕は・・・

 

ね、寝れないぃぃぃ!!??

 

豊満なスタイルを持つ志満さんに抱き着かれたまま寝れるわけもなく、目はギンギン状態だ。

もうね・・・色々柔らかい、圧倒的に!

加えて千歌さんもそうだったが、凄くいい匂いがするんですよ・・・。

後、時々志満さんから発せられる「うぅん」という声も僕の精神上大変よろしくない。

聴覚に嗅覚、感触が刺激されている状況で寝るとか、健全な男子高校生には無理な話だ。これで寝れたらその人は完全に男じゃないに違いない、それかホモだ。

 

・・・だめだっ、間違いなく寝不足になる!?

どう考えても寝れるビジョンが見えてこない僕は、何とか抱き着かれている腕を振りほどいて、外の空気に当たることにした。

・・・一度体を冷やして落ち着こう。爆音を奏でている胸に手を当て、そう決心し、音を立てないように静かに志満さんの部屋を後にした。

美渡さんも千歌さんの部屋もそれぞれ別だが、部屋の電気が消えていることからもう寝ているだろう。なるべく足音がでないよう抜き足差し足で廊下を進み、庭へと歩を進める。

 

「・・・ふぅ~、夜風が気持ちいい。」

 

特にトラブルもなく庭へと来た僕は心地よい夜風を感じながら庭に置いてあったベンチに腰をかける。

・・・流石旅館だな、こんな庭があるって。

ただの個人宅ではまずない立派な庭を見ながらしばらくそこで夜風に当たっていたが、その時後ろから物音がした。

 

「・・・っ!?」

 

静かな空間にいきなり物音がしたので、びっくりして後ろを振り返ると、

 

「・・・え、かいと君?」

 

「・・・千歌さん?」

 

そこには、寝間着に身を包み、驚いた表情を浮かべる千歌さんがいた。

 

「何してるのかいと君?」

 

まず千歌さんが不思議そうに僕にそう問いかけてくる。

 

「いや、ちょっと寝れなくて・・・。千歌さんは?」

 

「・・・まあ、私も似たような感じ、かな。」

 

僕も同じ質問をするが、その問いに答える千歌さんは少し元気がないように見えた。

 

「どうしたんですか? 何か悩みですか?」

 

気になったので続けてそう質問を重ねるが、その回答は少し意外だった。

 

「・・・私って末っ子じゃない? だからかいと君が弟として来てくれるってなった時凄く嬉しかったんだ。でもさ・・・」

 

と、真剣な表情で静かにそう語っていく千歌さん。

 

あ、これは長いやつだ。

 

本当、高海家は僕に退屈な時間を与えてくれないぜ・・・。

 

つづく

 




第4話読んで頂きありがとうございます!

今回は高海家の3姉妹が登場しました。
志満(巨乳)、美渡(貧乳)で勝手に設定しました。
間違ってたらすみません(笑)

最後にお気に入り登録してくれた方、誤字報告して頂いた方ありがとうございました!
では、次話でまた会いましょう!


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第5話 千歌お姉ちゃんの本心

「私ってさ、昔から何のとりえもない普通だったんだよ・・・。」

 

千歌さんがわざわざ僕の座っている横に当たるか当たらないかの微妙な位置に腰を下ろし、ぽつぽつと想いを語っていった。

いつも元気な千歌さんだが、月明かりに照らされて見える今の千歌さんはどこか思いつめたような表情を浮かべていた。

この状況でこんなことを思うのは失礼なことなのかもしれないが、髪を下した千歌さんはいつもより少し大人びて見える。加えて、いつもの元気マックステンション状態ではなく、静かに語る千歌さんだ。

・・・何が言いたいかというと、普段の姿とのギャップも相まって凄く大人びて見えるのだ。

ちなみに僕の好み的に大人びた人が大好きだ、つまり、

・・・ってしっかりしろ、僕っ! 相手は千歌さんだ、何をドキドキしてるんだ!? 

しかも千歌さんは、何か悩み事があるんだ、今は千歌さんの言葉に耳を傾けなければ!

僕がそんな葛藤をしているとはつゆ知らず千歌さんの言葉はどんどん紡がれていく。

 

「でも志満姉や美渡姉は、勉強ができたり運動が得意でいつも千歌は二人とも比べられていたんだ・・・。

別に虐められてるとかじゃないんだけど、いつも馬鹿にされたりで凄く悔しかったんだ・・・。」

 

「・・・・・。」

 

先ほどまでどきまぎしていた僕だったが、千歌さんのこの言葉に一気に自分が冷静になっていくのを感じた。

理由は明確、自分にも覚えがあったからだ。

僕は意識せず、気付けば千歌さんの言葉に耳を傾けていた、そこに余計な感情はなかった。

 

「千歌も色々頑張ろうはしたんだけどね、結局どれも長続きしなくてね・・・。

でもそんな時に私の前に凄く輝ている女の子と出会ったんだ。

その子は凄く綺麗でね、ピアノが上手で、勉強もできて、そして何より、毎日が充実していることがびりびり感じるくらいその子は輝いていたんだ。」

 

ちらりと横目で千歌さんの目を見ると、千歌さんはここにはない遠くの何かを見ているようだった。その目は羨望の眼差しそのものだった。

そして、その何かを僕は知っていた。僕もその女の子に覚えがあったからだ。

 

「そう、それはかいと君のお姉ちゃんの梨子ちゃんなんだ。」

 

「・・・うん。」

 

そう、お姉ちゃんだ。千歌さんの言う通りお姉ちゃんは完璧だ。

千歌さんだけじゃない、毎日いっしょにいる僕にだってお姉ちゃんはいつも輝いているんだ、劣等感を覚える程度にはね・・・。

 

「・・・でね、どうして梨子ちゃんがこんなに素敵なのかなって考えたんだ。そしたら、それはかいと君じゃないのかなって思ったんだ!」

 

ここで千歌さんは、初めて僕の方を向いて力強くそう言い切った。

その目は、確信に満ちていた。

僕が何か言う前に千歌さんはさらに続けて

 

「ていうのもね、梨子ちゃんは毎日心の底から楽しそうにかいと君のお話ばっかりするんだ。転校してまだ日は浅いけど全校生徒が梨子ちゃんとかいと君がとっても仲良しだって知っている程度にはいっぱい話してくれるんだ。」

 

「うん、気になる点はあるけどとりあえず最後まで話は聞くね?」

 

・・・全校生徒ってどういうこと?? どういう発信をすればそうなるんだ??

少々動揺していると、千歌さんは僕の言う通り喋りを続けていった。

 

「だから思ったんだ、梨子ちゃんが輝いている理由の一つにかいと君が強く影響しているんじゃないかなって!!

だから今回かいと君をレンタルだけど弟にできるって聞いて凄く嬉しかったんだ!

もしかしたら、梨子ちゃんの様に輝けるには何が必要なのかわかるかもって!」

 

そう言う千歌さんの目は希望に満ちていた。

・・・そういうことか、やたら僕の姉になることに固執していたのはそういう意味か。

最初から違和感はあったんだよな・・・。

 

「でもね・・・、結局今日も志満姉と美渡にかいと君をとられたし、二人と関わってる時の方がかいと君楽しそうだったから、やっぱり私はダメなのかなって・・・。」

 

先ほどまでの勢いとは逆に落ち込みながらそう語る千歌さん。その顔は項垂れてしまっていた。

どう見たら志満さんと美渡さんと関わっている時の僕が楽しそうに見えたのかは謎だが、千歌さんが追い詰められていたのはこれが理由か。

・・・全く、笑わせてくれるよ千歌さん。

・・・これは最終兵器を使うときが来たようだ。

嫌だがしょうがない・・・。

 

「・・・千歌さん、いや、千歌お姉ちゃん。」

 

「・・・ん?」

 

僕の呼びかけに、顔を上げ僕の方を見る。

その目尻には、うっすらと輝く雫があった。

そんな千歌さんに僕は、

 

抱き着いた

 

思い切りだ。

 

「っ!!??」

 

当然、いきなりのことで千歌さんは驚いている。

抱き着いているので顔は分からないが、体越しに伝わる鼓動がそれを僕に伝えてくれる。

 

「ちょちょちょ// な、なな何してるの!?」

 

「今日は散々抱き着かれたのでそのお返しです。」

 

「あ、あううう、で、でもいきなりこんなことされたら//」

 

千歌さんは、上ずった声で分かりやすく動揺していた。

これでいきなり抱き着かれる人の気持ちが分かってくれたら嬉しいものだ。

と、そんなことはどうでもよくて、千歌さんに間違いを気付かせてあげなくては。

 

「千歌お姉ちゃん・・・。」

 

僕は、耳元で囁くようにそう千歌さんにそう呼びかける。

 

「っ!? は、はいぃ!」

 

千歌さんは全身をびくぅっとさせ、硬直状態になった。

耳が真っ赤になっていることから今千歌さんの顔は真っ赤になっているのだろう。

だが、これでいい。余計なことを考えない状況下で僕の言葉を届けられた方が効率的だから。

 

「まず、一つ間違いを訂正すると千歌お姉ちゃんは、全然普通じゃありませんし、志満さんや美渡さんに劣ってもいません。」

 

僕が囁くたびに千歌さんは、びくびくと反応したが、特に抵抗はしてこなかった。

その代わりに、

 

「・・・で、でも千歌は二人より「最後まで聞いて」」は、はいぃ///」

 

まだ、抵抗する気力があったとは思わなかったが、これで千歌さんは最後まで話を聞いてくれるだろう。

その証拠に、向こうもこちらを抱き返してきた。

この状況はこちらの精神上にもよくないため、短期決着をする必要がある。

急がないと・・・、こっちの心臓がもたない。

 

「千歌お姉ちゃんは、僕から見てもとても可愛いし、魅力的だよ。今日だって何度ドキドキさせられたか・・・。

もう一度言うけど、千歌お姉ちゃんは可愛いし、普通なんかじゃない、間違いなく。分かった?」

 

「う、う、うん・・・///」

 

その言葉を確認し、僕はゆっくりと千歌さんから離れた。

千歌さんは「あ」と物寂しそうな声をあげていたが、無視だ。これ以上はこっちが持たない。

千歌さんの顔は真っ赤になり、トロンとしたどこか夢心地にあるような表情になっていた。

僕は、ベンチから立ち上がり、千歌さんに背を向ける形に向き直り、

 

「・・・じゃあ、そういう事だから。自分にもっと自信をもってね、千歌お姉ちゃん。」

 

と、言った。

 

「・・・は、はい///」

 

恥ずかしそうに、しかし僕の言葉に肯定の回答を再度確認したこところで

 

「じゃあ、今日はもう寝よう、おやすみ。」

 

と、言って早足でその場を去った。

「うん・・・おやすみ」と聞こえた気がしたが、お構いなしだ。

向かった先は家の中ではなく、海の方向だ。

月明かりが照らす砂浜に着き、周りに誰もいないことを確認した僕は・・・

 

「う、うわわわわあああ/// やっちまった~///」

 

悶えた、それはもう悶えた。

何故かって? 恥ずかしいからに決まっているじゃないか。

 

「でも、あんな思いつめた顔されたらしょうがないじゃないか~///」

 

実は、先ほどまでの僕の気持ち悪い言動は、昔同じことをお姉ちゃんにもしたことがあるのだ。

昔、ピアノで行き詰まり、自信を無くしたお姉ちゃんに何とかして元気を与えたくて何か方法がないかと思って調べた結果、あったのだ。とある少女漫画で同じように自信を無くしたヒロインにさきほどやったような方法でヒロインを元気づける主人公の姿を見つけたのだ。

その頃は無我夢中でお姉ちゃんに同じことをした。

結果は、成功だった。

お姉ちゃんは、自信を取り戻してくれて、その後のコンクールでも入賞を果たしたのだ。

元々実力はあったから後は精神的な問題だけだったのだと思う。

今回の千歌さんもその時のお姉ちゃんと姿が重なったので同じ方法をとったというわけだ。

まだ、分からないがこれで千歌さんも多少は自信を取り戻してくれたらと思う。

しかしこれには欠点がある。

そう、恥ずかしいのだ、死ぬほど。

 

だから僕は走る。

 

何故か走る。

 

走ることによって、羞恥心を忘れることができると信じてるかのように。

 

羞恥心を原動力とした僕は夜通し海辺の砂浜を走り続け、次の日、早朝ランニングをしていた果南さんに倒れてるところを発見された。

 

―――――――――――――――――――――

―――――――――

 

・・・そう言えばお姉ちゃんがぐいぐい来るようになったのって僕がお姉ちゃんにそれをしてからだっけ?

僕は倒れる寸前の朦朧とした意識下でそんなことを思った。

 

つづく

 




ここまで読んで頂きありがとうございます!

最初は続くかな~と思ってましたが、案外ネタが出てきて書いてて面白いです(笑)

最後に誤字報告とお気に入り登録ありがとうございます!

どんどん更新していきますので次話でまた会いましょう!



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第6話 果南さんは硬い

・・・ここはどこだ?

ぼんやり意識が戻ってきたが、疲労感のあまり思考がまとまらない。

でも・・・、頭に柔らかく暖かい感触を感じる。

昔お姉ちゃんにされたことがあるからわかる、これは膝枕だ。

随分久しぶりな気がするけど、やっぱり安心感がある・・・。

こんなに気持ちがいいのにどうして最近は膝枕をしてもらってなかったんだろうか?

久しぶりついでだ、もっと甘えよう・・・。

寝返りを打ち、お姉ちゃんのお腹に顔をうずめてみる。

はあぁ~、この柔らかさがいいんだよな・・・って、ん?

やわらかく・・・ない?

なんだこれ? ごりごりしてる・・・。

ここにきて、意識もはっきり戻ってきて、視界が戻ってくる。

目の前には、少し汗ばんだ布地のもが・・・Tシャツだろうか?が見えた。

視線を上に向けてみる、そこには・・・

果南さんが、いた。

 

「おはよう、やっと目覚めたね、かいと!」

 

果南さんは、爽やかな笑顔でそう僕に言ってくる。

 

・・・・・え? どういう状況?

辺りを見渡してみると、どうやらここは浜辺らしい。

そこで、僕は果南さんに膝枕をされている・・・?

・・・って、

 

「うわああっ// すみません! すぐどきますっ!」

 

今自分が置かれている状況を理解してすぐ果南さんの膝から頭をどけるべく素早く立ち上がろうとするが、

・・・あれっ? 足に力が入らない?? なぜだ??

 

「ほら、だめだよっ! かいとはここで倒れてたんだから安静にしておかないとっ!」

 

足に力が入らない上に果南さんにぐいっと膝に押し付けられてしまい、結局膝枕の形で落ち着く形になってしまう。

凄く恥ずかしいんだが・・・。

 

「で、どうしてこんなところで倒れてたの?」

 

果南さんが上から僕の顔を覗き込みながらそう質問を投げかけてくる。

・・・しかし、下から見ると果南さんのあれのサイズが大きいことがよくわかるな。

と、いけない、こんなことを考えているのがばれたら何をされるか分かったもんじゃない。

でも確かになぜ僕はこんなところで倒れてたんだ??

・・・・・。

そうだ・・・、昨日千歌さんに禁断の技を使ったんだ。

寝起き後の朦朧とした状態から完全に抜け出し、昨日の思い出したくもない記憶が鮮明に脳によみがえる。

うおぉぉ、そうだった・・・あれのせいで恥ずかしさのあまり、意味もなく走り続けたんだった。それで力尽きて倒れてのか・・・どうりで足が動かないわけだ。

 

「・・・まあ、色々あって倒れるまでランニングをしてました。」

 

嘘ではない・・・よな?

 

「はぁ~なにそれ? どういうこと??」

 

しかし、当然そんなことを言われても納得してくれる果南さんではなかった。

でも本当のことを言うとか絶対無理っ!

僕が、それ以上特に話すつもりはないとの姿勢を見せていると果南さんは

 

「ふ~ん、まあ話したくないならいいけどさ。あんまり無理しちゃだめだからね?」

 

と、なぜか頭を撫でながらそんな風に優しい物言いでそう注意をしてくれる。こういうところは、流石高校三年生って思う。

でも、頭を撫でるのは、凄く恥ずかしいので今すぐやめてほしい。

と、若干の羞恥芯を感じつつも、油断していると突然果南さんの口から爆弾発言が

 

「・・・でも、かいともお姉ちゃんっこだね。さっきも「・・・お姉ちゃん」って言いながら私のお腹に抱き着いてきたもんね~。」

 

なん・・・だ・・・と?

僕が「・・・お姉ちゃん」って言いながら果南さんのお腹に抱き着いた??

 

「・・・・・まじですか??」

 

僕がワナワナと震えながら果南さんにそう確認をとる。

頼むから冗談だと言ってくれ・・・。

 

「うん、まじだよ。いや~梨子ちゃんに嫉妬しちゃうな~、私もちょっときゅんと来ちゃったな~。」

 

と、果南さんは手をほっぺに当てて、体をくねくねしながらもう一度やってよ、なんて言ってくる。

終わった・・・。

果南さんに抱き着いたのもそうだが、お姉ちゃんと言いながら抱き着いていたことを見られたのが一番キツイ。

昨日からこんなのばっかりじゃないか。

しかも今は足が動かないから逃げられないし・・・。

・・・あぁ~、死にたい。

僕が昨日から続く羞恥のあまり、メンタルブレイクしていると

 

「まあここにいてもあれだから家に送っていくよ。自分の足では、無理そうだよね?」

 

と、果南さんが僕にそう確認してくる。

頑張って足に力をいれようとするが、まったく思うように力が伝わらなかった。

どれだけ走ったんだ、昨日の僕は・・・。

 

「・・・すみません、無理そうです。」

 

なんだろう、今の僕は世界で一番情けないんじゃないだろうか・・・。

 

「了解! じゃあおぶってくよ!」

 

果南さんの汚れのない笑顔が眩しい・・・。

本当、踏んだり蹴ったりだ・・・。

とうわけで、高校一年生にもなって、高校三年生の女性におぶられて家に送られるという人生の中で消し去りたい出来事ランキング上位に間違いなく食い込む経験を朝一からすることになった。

 

「よしっ、着いたよ!」

 

不幸中の幸いか、僕が倒れていた場所は、家からすぐのところだったのですぐに家に着くことができた。

でも、おぶられているときに思ったけど果南さんも凄くいい匂いしたな・・・。

女性の匂いというのは反則だと思う、あれは男を惑わす魔法か何かに間違いない。

 

「あ、そうだ、一つ気になったんだけどさ!」

 

僕がくだらないことを考えていると果南さんが思い出したように元気よく僕に口を開き、こんなことを聞いてきた。

 

「私に膝枕をされてどうだった?」

 

にししと笑いながらそう聞いてくる果南さんに対し、僕は正直に思ったことを口にした。

 

「腹筋硬いですね、岩石かと思いました。」

 

―――――――――――――――――

――――――――

 

「かいと! どうしたの!!」

 

インターホンで呼び出しをすると、家の中からお姉ちゃんが血相を変えて出てきた。

僕の姿を見るなり、凄い勢いで抱き着いてきて

 

「はぁ~、一日ぶりのかいと・・・っは! そうじゃないわ! どうしたのかいと、そんなにぐったりして! それにその大きなたんこぶ! 何があったの!?」

 

お姉ちゃんは、一瞬我を忘れているように見えたがすぐに僕の異変に気付くと僕に矢継ぎ早に質問をしてくる。

 

「まあ色々あって・・・後、たんこぶに関しては気にしないで。完全に僕が悪いから。」

 

「・・・そうなの?? まあ無事そうならいいけれど。」

 

「梨子ちゃん、おはよう。かいとなら多分大丈夫だと思うけど、ひどく体力を消耗してるみたいだから休息は必要だと思うよ。後、デリカシーについての教育もね。」

 

果南さんは、最後に僕をジーと見ながらそう付け加えた。

・・・知らなかったんだ、女性が腹筋硬いって言われてあんなに怒るなんて。

腹筋硬いのは、体引き締まってるってことだから誉め言葉なんじゃと思ってたんだよ・・・。

それにしても、グーで頭を殴られるとは思わなかったけど、痛い、本当に・・・。

 

「果南さん、おはようございます。弟を連れてきてくれてありがとうございます。・・・、よく分からないけれど、かいとが無事そうでよかったわ・・・。」

 

お姉ちゃんは、僕と果南さんの様子から何かあったことを察したようだがこの場では特に追及することなく、その場はそれでお開きとなった。

果南さんは再度ランニングに向かったらしく、僕は歩けない為、お姉ちゃんに肩を借りながら自室へと向かった。

 

「もう・・・、浜辺で倒れてたなんて何してたか分からないけどあまりお姉ちゃんを心配させたらだめじゃないっ! 聞いたとき、心臓がとまるかと思ったじゃない!」

 

と、割と真剣な説教を受けてしまった。

こんなに怒られたのは久しぶりだった、心配かけたのは本当に申し訳なく思う。

羞恥が極限に達したら走る癖を直さないといけないな・・・。

お姉ちゃんはひとしきり怒った後、最後に抱き着いてきて

 

「まあ、結果的に無事だったから今回はこれくらいにするけど、もう二度とたおれるような真似しないでね?」

 

と、言い僕の部屋から出ていった。

学校に休みの連絡を入れるのと、千歌さんにも弟になる件は中止にする旨を伝えてくれるらしい。

こうして僕の怒涛の一日は終わった。

 

つづく

 




第6話読んで頂きありがとうございます!

今回は果南ちゃんが出てきました。
腹筋が硬い・・・ということにしてしまいましたが、僕はありだと思います、まじで!

・・・はい、というわけで相変わらずこんな感じで続ていきます(笑)

では、次話でまた会いましょう!


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第7話 花丸と僕

・・・まずい。

 

最初は、学校をさぼれてラッキーなんて思い、のんびりとベッドで寝ていたのだが、今、僕は緊急事態に陥っていた。

 

・・・トイレに、行きたい!

 

そう、僕は少し前から猛烈な尿意に襲われていた。

しかし足が棒のような状態になっており、自力で歩くことが出来ない為、トイレに行くことができないのだ・・・。

親は仕事でお姉ちゃんは部活に出かけている、つまり僕をトイレに連れて行ってくれる人はいないわけだ。

 

・・・大ピンチだ。

 

くっ、そろそろお姉ちゃんが部活から帰ってくると思うけど、もう我慢の限界だ・・・。

この年になってお漏らしするのか・・・?

嫌だっ、絶対に嫌だっ!?

お漏らしをしてしまった自分の未来を想像し、冗談じゃないとそんな想像を捨て去る。

 

どうする、どうする・・・あ、あれは!?

 

もうリミットもないことから、何とかできないか辺りを見渡すが、そこであるものが目に入る。

 

・・・ペットボトル。

 

それは、僕が動けないことを心配したお姉ちゃんが僕用に買ってくれたスポーツドリンクだ。中身は既に飲みつくしており、ペットボトルの中身は空になっている。

・・・・・。

数瞬の迷いの後、空になったペットボトルを手に取る。

 

・・・こんなこと、不本意だが。

これに用をたすかないっ!!

 

そう心の中で呟き、僕はズボンに手をかけた。

 

その瞬間だった。

部屋の扉がガチャリと開き

 

「お見舞いに来たずらよ~」

 

部活帰りなのか、上下のジャージに身を包んだ花丸が僕の部屋にやってきていた。

 

「「・・・・・。」」

 

寝た態勢でズボンに手をかけ、今まさにそれを脱ごうとしてた僕は花丸の姿を確認し、固まる。

同じくそんな僕の姿を見て固まる花丸。

なぜここにいるのか、ノックして入って来いよ、なんて思考が僕の脳内をぐるぐると回るが、結局この状況に対してどうしていいのか分からず固まり続けてしまう。

 

二人の間に流れる気まず~い沈黙。

 

「・・・何してるずら?」

 

静けさを破ったのは、花丸の冷たく凍てつくようなセリフだった。

ごみを見るような目は是非やめて頂きたい。ぞくりとするじゃないか、漏れたらどうする気だ。

 

「・・・違うんだよ、これには深い理由があるんだよ。」

 

「何ずら、理由って。」

 

「トイレに行けないから、止むを得ずね? 本当に仕方がなく、ここで用を足そうと・・・。」

 

「・・・・・。」

 

「その目はやめいっ!!」

 

ごみを見るような目から、性犯罪者を見るような目つきに変わった為、必死に弁解をしようと試みるが

 

「・・・まさか、ここまで変態だとは思わなかったずら。」

 

と、取り付く島もない状態。

 

「足が動かないんだよ! トイレに行きたくてもいけないのっ! ていうか元々ちょっと変態だったみたいな言い方もやめいっ!」

 

変態のレッテルを貼られてるわけにもいかないので引き続き食い下がるが、花丸は急にけろりと変態を見るような目つきから普通の表情に戻したかと思うと

 

「冗談ずら、足が動かないのは梨子ちゃんから聞いてたずら。」

 

と、ふざけたことを述べながら部屋にずかずかと入り込んできた。

さっきまでの態度は演技だったらしい。本当に勘弁してほしい、心臓に悪い。

 

「というか、本当にやばいっ! 花丸、早く部屋から出ていってくれ! 今からするからっ!」

 

そう、今、花丸はどうでもいい。

それより今は僕の尿事情が重要なのだ。

僕が花丸にそう叫び、再びズボンに手をかけようとすると

 

「ちょ// 何してるずら! 馬鹿ずらかっ!」

 

花丸は僕の行動に、顔を赤くしそう言い放ってくる。

 

「だから、もう尿意の限界なんだよ! 早く出ていってくれよ!」

 

僕はそう言い、ズボンをおろそうとするが

 

「やめるずら! ちゃんとトイレに行ってするずら!」

 

花丸が、そんな僕を取り押さえ、トイレに行けと主張してくる。

危ない、取り押さえられた衝撃で漏れるかと思った・・・。

 

「だから、何度も言ってるけど歩けないんだよ!!」

 

「まるがおぶっていくずら!」

 

花丸が・・・僕を、おぶる??

花丸は小柄だ、力だってあまりないはずだ。

そんな花丸が大柄ではないとはいえ、同い年の男の僕を背負う??

いやいや無理だろw と思い、花丸を見るがその目は真剣であり冗談を言っているわけでないことが分かる。

・・・嘘だろ?

 

―――――――――――――――――――

―――――――――

 

「・・・くっ、ふっ・・・うぅ」

 

花丸が歩を進めるたびに、苦しそうにうめき声をあげる。

結局、花丸が僕を背負っていくと譲らなかったため、こうして今、花丸に背おられているわけだが・・・

 

まずいまずいまずいまずい、花丸が歩くたびにその衝撃が僕の全身に襲い掛かり、漏れそうになる。

 

・・・持ってくれ、僕の膀胱!

同級生に背負われながら漏らすとか、自殺ものだっ!?

 

しかし、こんな超緊急事態時だというのに実は今、尿意の他に悩まされていることが一つある。

 

それは、

 

花丸の胸が、もとい、おっぱいが思い切り僕の腕に当たってるっ、というか最早食い込んでるっ!!

 

おんぶをされるため、僕の腕で花丸にしがみつく必要があるのだが、いかんせん花丸は相当無理をしているようで、態勢が安定せずフラフラしているのだ、気を抜けば落ちるほどに。

ちなみに今、落ちればその衝撃で100%漏らす、間違いない。

というわけで、僕も必死にしがみつくわけだが、その際、謝って腕に花丸の胸があたる箇所にしがみついてしまったのだ。

しがみつく場所を変えたくても、この不安定な状態でそんなことしたら落ちる確率が非常に高い。

 

だから仕方ない、仕方ないのだ・・・。

 

僕が、この態勢のままでトイレに運ばれることを甘んじて受け入れなければいけないのだ。

決して、この柔らかく、尊いこの夢のような感触を楽しんではいけないのだ、それは必死に僕をトイレに送り届けようとする花丸に失礼だ!

幸いにも、必死すぎて花丸もこの事態には気付いていないようだし・・・。

懸念点は、この感触の心地で気が緩んで漏らさないかだが、そこは僕の不屈の精神力で乗り切るしかない、大丈夫、毎日お姉ちゃんと過ごしている僕になら可能だ。

 

しかし、この一歩進むのに5秒かかっている状況では、シンプルに僕が時間切れで漏らす可能性もある。ここは話でもして気を紛らわそう。

 

「そういえば、花丸。今日はどうして一人でうちに来たの? お姉ちゃんは?」

 

僕が、普通に気になっていたことを花丸に質問するが

 

「い、今・・・話しかけるな・・・ずら。気を抜いたらこけるずら。」

 

「失礼しました、集中して歩いてください。」

 

転ばれたら、たまってものではないので、言う通りに口を閉じる僕。でもいいぞ、トイレまでもう少しだ、かなりきついがこのままいけば何とか間に合いそうだ!

花丸もそれが分かっているのか、

 

「あ、あとちょっとずら・・・。」

 

と、汗を滴らせながらも着実に歩を進めていく。

 

全ては順調だった、うまくいくと思った。

 

しかし、ここで事件が起こった。

 

カサカサカサカサ

 

「ふ・・・くっ・・・ん?」

 

突如、花丸の動きがピタリと止まり、静止してしまった。

この緊急時にどうしたの言うのだろう?

このまま漏らせば、お互いとんでもないことになるというのに。

 

「なあ、花丸どうしt「いやあああぁぁ、ゴキブリずらぁああ!!??」」

 

花丸の聞いたこともないような大絶叫と共に、後ろに飛ぶように仰け反った花丸の動きに合わせ、僕は後ろにぴょ~んと放り出されてしまう。

 

嘘・・・だろ? ゴキブリって・・・。

 

そんな僕の虚しい心の中のツッコミをしたところで全身に強い衝撃が襲い掛かる。床にたたきつけられたのだ。そしてその衝撃と共に、僕の中で何かがポキリと折れた。

 

「あ・・・あぁ。」

 

床に叩きつけられた鈍い痛みとともに、それに匹敵する快感が襲ってきた。

 

桜内かいと 15歳。

 

同級生の前で漏らした瞬間だった。

 

つづく

 




第7話読んで頂きありがとうございます!

今回は花丸ちゃん登場でした!
今回はお姉ちゃん要素はなしで、ただトイレに行くだけのお話でしたw
(行けなかったけど・・・)

花丸ちゃん回は、次話がメインですので今回はその前座ということで!

では次話でまた会いましょう!


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第8話 同い年のお姉ちゃん

僕と花丸の間に尿の匂いが立ち込める中、僕は絶望を通り越して、無の境地にたどり着いていた。

カサカサというゴキブリが元気よく動いている音にも、もはやアウトオブ眼中である。

 

・・・終わった。

 

・・・もう、どうでもいいんだ。

というより、どうにかしたくても、この足の状態では仰向けの状態から一切の行動をとることができない。

つまり僕は、下半身に感じるこの生暖かい感触から自力で逃れることはできないのだ。

そしてもう少しで帰ってくるであろうお姉ちゃんに見つかって、とても優しい表情を浮かべながら、丁寧に処理をして介護的扱いを受けるのだろう・・・。

そして僕は、周りからリアル小便小僧とでも言われ、馬鹿にされ続けるのだろう。

 

・・・ふっ、いいじゃないか、そんな人生でも。

やはり、人生普通じゃ面白くないよね・・・。

僕がほとんど精神を崩壊させながらそんな末期的な思考を巡らせていると

 

「いたた・・・あの、かいと君・・・大丈夫ずら?」

 

花丸はよろよろと立ち上がり、僕を覗き込むようにそう確認をしてくる。

 

「・・・ああ、怪我はないよ。精神的な怪我は負ったけどね、ははは。」

 

「あの・・・まるは、気にしないよ? 絶対に周りには話さないし、そもそもまるが悪いし。」

 

「・・・いいんだよ、気にしないでくれ。後もうちょっとでお姉ちゃんが帰ってくるだろうから、それまで僕はここで待ってるよ。だから花丸はもう帰っていいよ。小便臭いだろう?」

 

僕が、努めて笑顔でそう花丸に言って、帰らそうとする。

花丸だって、このどうしようもない状況では対応に困るだろう。

僕は、お姉ちゃんが帰ってくるまでの辛抱だ、お姉ちゃんにこんな姿を見られるとか、花丸に見られる以上に屈辱だろうが背に腹は代えられない。

・・・贅沢を言えば、小便が冷たくなるまでには帰ってきてほしいものだ。

 

「そんなの悪いずら、まるがちゃんと片付けるずらよ?」

 

「・・・花丸、流石に同級生の女の子に漏らした処理をしてもらうのは、恥ずかしい、いや、そんな生ぬるいものじゃない、男の尊厳に関わるんだよ、分かってくれ?」

 

漏らしたくせに、尊厳もくそもない気がするが、ここは花丸を帰らす為にそう言い切る。

・・・頼むから帰ってくれぇ。

 

しかし、花丸はその場で動こうとせず、手を顎にあて、何かを考え始めた。

・・・どうしたのだろう、まさか漏らした僕を鑑賞して辱めようとでもしているのだろうか?

恐ろしい想像に全身を震わせていると、花丸が考えるのをやめたのか、顎から手を離し、再び僕を覗き込むような姿勢をとったかと思うと、こんなことを聞いてきた。

 

「かいと君はこの惨状をお姉ちゃんである梨子ちゃんに処理してもらおうとしてるんだよね?」

 

「・・・そうだけど、それがどうしたんだよ? ていうか花丸が惨状って言うな!」

 

「つまり、かいと君のお姉ちゃんであれば、よいと?」

 

「・・・そういうことになるのか? ていうかそれがどうしたんだよ?」

 

・・・何の質問なんだ? 滅茶苦茶嫌な予感がするんだが。

 

「千歌ちゃんと梨子ちゃんに聞いたんだけど、今なら、限定的にかいと君のお姉ちゃんになれるって言ってたんだよね・・・。」

 

「・・・・・は?」

 

・・・ちょっと待て、どういうことだ? 

そりゃ無理やり千歌さんの弟にされたりしたが、あれはあの時の限定的なことである。

何を考えているんだ、花丸!!

 

「だから、まるがかいと君のお姉ちゃんになれば、全部解決ってことだよね?」

 

「いやいやいやいや、おかしい、絶対おかしい!」

 

「どうしてずら? まるがかいと君のお姉ちゃんになれば、何も問題ないんだよね?」

 

「馬鹿じゃないのか?? そんなわけないじゃないか! ていうか花丸は僕と同い年だろ! お姉ちゃんとかないから!」

 

「かいと君は誕生日いつずら?」

 

「・・・3月8日だけど。」

 

「まるは、3月4日ずら、つまりまるのほうがお姉ちゃんずら。何も問題ないずら。」

 

「たった4日じゃないか! そんなことで弟になってたまるか! 大体千歌さんの時もお姉ちゃんが無理やりさせてきただけなんだよ!」

 

「でも梨子ちゃん、アクアの人なら誰でもかいと君を弟にしていいって言ってたずらよ?」

 

「・・・嘘だろ。」

 

お姉ちゃん、いったい何を考えいるんだよ・・・。

僕を精神的に追い詰めるプロジェクトが知らぬ間に実行されているのだろうか?

 

「というわけで、今からまるはかいと君・・・いや、かいとのお姉ちゃんずら♪」

 

「なっ//」

 

満面の笑みで、そう言う花丸の言葉に思わずドキッとしてしまった。

・・・いきなり呼び捨ては反則だろう。

しかし、これはよくない! すぐさま辞めさせるべきだ!

同級生がお姉ちゃんとか絶対おかしい!

 

「だからっ! 花丸は「だめずら!」」

 

僕がこんなのはおかしいと猛抗議する姿勢を見せ、ようとしたが、花丸が大きな声でそれを遮ってきた。

そして花丸はまるで小さな子を諭すように俺に向かって、

 

「花丸じゃなくて、まるお姉ちゃんでしょ?」

 

「・・・・・。」

 

むりーーー!!

いや~、絶対にむりー!!

同級生をお姉ちゃん呼びとか絶対にむり!!

しかもまるおねえちゃんとか、ちょっと名前をアレンジしてる感じが余計にむりーー!

 

僕が絶対的な拒否的な姿勢を目で訴える。

すると花丸は、ゆっくりとした動作でポケットからスマホを取り出したかと思うと

 

「もし、言う事聞かなかったらこの光景を写真に収めるずら。」

 

な・・・ん・・・だって・・・。

 

とんでもなく畜生なセリフに目の前が真っ暗になってしまう。

そんなのって・・・あんまりだ。

その写真をどうするかなんて想像もしたくないが、決していい方向に動かないことは確実だ。

 

・・・かいと、こころを決めるんだ。

千歌さんの時も乗り越えたじゃないか・・・いや、乗り越えなかったから今足が動かないんだっけ・・・。

・・・いや、だからこそっ! 今回こそ乗り越えて見せる!

 

「・・・く、ま、まる・・・お姉ちゃん。」

 

お姉ちゃん・・・、まさか仰向けで小便漏らした状態で同級生の女の子にお姉ちゃん呼びする日が来るとは思わなかったよ。

何かは知らないが、何かに目覚めそうだよ。

しかし、花丸もといまるお姉ちゃんは、僕のその言葉に満足したのか、顔をパアアと輝かせ、

 

「えへへ、よく言えました♪ かいとはえらいね~♪」

 

と、僕の頭をよしよしと優しくなでてくるのだった。

・・・もう殺してくれ。

当然、こうなってしまうと僕の男としての尊厳なんて欠片も残っていなかった。

 

「じゃあ、雑巾とかないか探してくるずら! ここで大人しく待つずらよ!」

 

そういって、速足でこの場から去っていく花丸。

・・・できればそのまま永遠に戻ってこないことを祈るしかないな。

 

しかし、その祈りも虚しく、ゴム手袋をつけ、さらには雑巾とバケツを持ってすぐに戻ってきてしまった。

まるおねえちゃんは、仕事ができるなぁ・・・。

 

「よし、じゃあ早速綺麗にしていくずら!」

 

「・・・・・。」

 

ここまで来ると抵抗する気もない僕は、せっせと片づけを進める花丸を見つめていた。

というより、手袋をしてるとはいえ、僕の小便を手につくことに抵抗はないのだろうか?

僕が、そんなことを考えていると、あらかた片づけが終了したようで、「ふ~」と達成感をにじませるように言ったかと思うと、その目線は僕に移った。

正確には、僕の股間に・・・・。

まさか・・・いや、そんなまさかな?

僕が、起こりうる最悪のケースを想像し、冷や汗をだらだらかいていると、まるお姉ちゃんは、

 

「じゃあ、次はその濡れたズボンとパンツを脱ぐずら!」

 

はい、最悪のケース頂きました!

 

「流石にそれは絶対だめ!! 一億歩譲って限定的にお姉ちゃんになるのは認めても、それだけはだめ!!」

 

ズボンとパンツを脱ぐということは、この場で僕に下半身丸出しにしろと言っているのだ。

正気じゃない!

ていうか、流石にそこまでいくと、完全な変態じゃないか!

 

「ほら、我がまま言ってないで、早く脱ぐずら!」

 

と、花丸は僕のズボンに手をかけ、無理やり脱がそうとしてくる。

さっきは、部屋でズボンを脱ごうとしてた僕を変態扱いしたくせに、どいうことなんだよ!

手だけは自由に動く僕は、当然花丸の奇行を必死にとめるべく、脱がそうとしてくるズボンを脱がされまいと力を込めて対抗する。

 

「ちょっと!! 花丸!! 流石にこれはまずい! 僕を下半身丸出しにするつもりか!!」

 

「そのままだと風邪ひくずら!! いいから大人しく脱ぐずら!! 後、まるお姉ちゃんって呼べずら!! 写真撮るずらよ!!」

 

「ああ、もう!! まるお姉ちゃん!! 頼むから!! もう分かったから自分で脱ぐから! せめて自分で脱ぐから、バスタオルだけ頂戴!! 聞いてる!? 脱がそうとするな!!」

 

僕と花丸が熱烈な取っ組み合いをしていると、

 

ドサッ!

 

と、何かが落ちる音が聞こえた。

 

「「??」」

 

僕と花丸がその音をした方向に振り向くと、そこには・・・

 

 

 

お姉ちゃんがいた。

 

千歌さんも、だ。

 

 

 

「あ、ああ、まさか・・・私の可愛いかいとがこんな、ハードプレイを趣味としているなんて・・・。」

 

「・・・・・っ」

 

驚きを隠せず、ワナワナと震えるリアルお姉ちゃんとドン引きしている千歌さんの姿が。

 

・・・もう嫌だ。

 

つづく

 




というわけで、第8話を見ていただきありがとうございます!!

え~、完全な余談ですが、現在、主人公が足が動かなくなる状態にしてしまった罰が当たったのか分からないですが、作者、足が肉離れを起こして、自力で歩けなくなってしまいました・・・。
それで分かったのですが、マジでトイレに行くのがつらいです。
・・・・・。

はい! 完全な余談でした!忘れてくださいw

次話、早く更新できるように頑張ります!
また、お会いしましょう!

追伸
体を動かす時は、事前にストレッチすることをお勧めします・・・。






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第9話 千歌お姉ちゃん→千歌さん

「違うんだよ、お姉ちゃん、千歌さん。」

 

驚き、うろたえる姉とドン引きしている千歌さんに弁解をするべく真っ先に僕は口を開く。

落ち着くんだ・・・一から状況を説明すれば分かってくれるはずだ。

そう自分に言い聞かせ、冷静に振舞うことに努める。

 

しかし僕が弁明する前にお姉ちゃんは、驚きの表情から慈愛に満ちた表情へと変化させ、ゆっくりと口を開き、

 

「・・・かいと、安心して頂戴? 私は、どんなかいとでも受け入れるわ?」

 

「待って、お姉ちゃん。頼むから僕に説明させて?」

 

「いいのよ、無理しなくても? かいとの為ならお漏らしプレイでも、廊下で下半身丸出しプレイでもなんでも付き合うわよ//」

 

「本当に待って、お姉ちゃん。僕にそんな趣味はないっ!」

 

大体、廊下で下半身丸出しプレイってなんだよ!?

そんなこと姉弟でしてたら確実に親が泣いちゃうよ。

・・・後、お姉ちゃんが少し興奮しているように見えるのは気のせいだと信じたい。

 

「うぅ、千歌はちょっと無理だよぅ。気持ち悪すぎるよ・・・。」

 

「・・・千歌さん、気持ち悪すぎるは本当に心に来るのでやめてください。ていうか何度も言ってますが、誤解ですからっ!!」

 

どうして、女子の気持ち悪いっていう言葉ってこんなに攻撃力があるんだろうね?

 

「ほら、花丸からも言ってやってくれよ!」

 

このやり取り中も諦め悪く僕のズボンを脱がそうとしていた花丸に声をかけると、こちらにジロリと視線を向けてきて

 

「まるお姉ちゃんって呼べって何回言ったら分かるずら? 次呼ばなかったら本当に写真を撮るずらよ?」

 

「ちょっとは空気を読んでくれよ!? この状況でもその設定貫くのかよ!?」

 

「ふふふ、安心して花丸ちゃん! かいとの写真ならもう撮ったわよ♪ かいとの15歳でお漏らし記念日ね♪」

 

「うおおおぃぃ!!?? 何撮ってるんだよ!? そんなふざけた記念日あってたまるか!!」

 

とんでもないことを口走る姉に全力で心の底から叫ぶが・・・

 

「え〜 私は可愛いと思うけれど?」

 

「今更かもしれないけど、どんな感性しているんだよ!?」

 

きょとんとして、そう言い張る姉にツッコミを繰り返すが、まったくピンと来ていない様子。

・・・だれか助けてくれ。

 

「さて、じゃあ早速、パソコンにバックデータとして今の写真を保存しないとね!」

 

お姉ちゃんはそんなことを言って、自分の部屋に向かっていく。

 

え、ちょっと待って、この状況で放置する気・・・?

写真の件は保留にするとしても、まずはこの惨状をどうにかしてほしいんだが!?

ズボンの濡れた感触もだんだん冷たくなってきたし!

 

「ちょっとおねえt「あ、梨子ちゃん、一応まるもその写真もらってもいいずら? いつか使えるかもしれないし。」

 

僕がお姉ちゃんに声をかけようとするが、花丸が僕の声をかき消すようにそんなことを言っている。

・・・本当にその写真をどうするつもりなんだ?

 

「あら♪ 勿論いいわよ! なんなら私のかいとコレクションも見ていくといいわよ! 色々あるわよ? 初めてエッチな本を買おうとしたけど学生ってことがばれて結局買えなくて、店員の前で羞恥に満ちたかいとの写真とか!」

 

「楽しみずら♪」

 

「ちょっと待てええ!! 聞き捨てならなさすぎるわぁ!!」

 

そんなツッコミを喉がかき切れんばかりに叫ぶが、二人はそんな僕を無視してお姉ちゃんの部屋に消えてしまった。

 

嘘だろ・・・?

もう状況がカオスすぎて訳が分からないが、すべてが僕に悪いように回っているのは確実に分かる!?

・・・ていうか僕が初めてエロ本買おうとした時、見られてたのかよ!?

死ぬほど恥ずかしいんだが!?

後、かいとコレクションってなんだよ!?

しかし、心の中でいくらツッコミを重ねても状況が改善するわけもなく、再度静寂が廊下を満たし始めた。

 

廊下に残されたのは、仰向けの姿勢でお漏らししをした状態の僕と千歌さん

 

「・・・あ~、千歌ちょっと用事思い出したから家に帰るね?」

 

「ちょっと!? お願いだから帰らないで!!」

 

気まずそうにして、そそくさと帰ろうとする千歌さんを全力で止めにかかる僕。

こうなったら千歌さんに助けを請うしかない。

 

「あの・・・果南ちゃんを助っ人として呼ぶから、ね?」

 

「いやいやいや、もうこれ以上この惨状の目撃者を増やさないでくださいよ?」

 

恐ろしいことを言ってくる千歌さんに、やめろと止めにかかる。

既に精神状態がボロボロなんだ、これ以上されたら完全に心が死ぬ。

 

「う~ん、でもなぁ・・・はぁ、昨日はきゅんときたのになぁ//」

 

「・・・え? 最後の方なんて言いました?」

 

セリフの後半のほうがとても小さいぼそぼそ声だったので、そう聞き返すが、答えてくれる気配はなかった。

顔が赤いように見えるが、熱でもあるのだろうか?

 

 

 

「はぁ・・・しょうがないなあ、千歌はどうすればいい?」

 

僕のしつこいお願いにより、なんやかんや優しい千歌さんは、最後にはそう言ってこの状況を何とかしてくれることに協力してくれることになった。

ちなみに、花丸とお姉ちゃんだが、部屋の方からキャッキャと騒ぐ声が聞こえてきており、大変楽しんでいるご様子であり、まだまだ出てくるまでには、時間がかかりそうだ。

何でそんなに盛り上がっているかは、想像もしたくないが・・・。

 

「じゃあ、まずはバスタオルをとってきてもらってもいいですか? まずはこの濡れたズボンを脱ぎたいので・・・。」

 

「ん、分かった。ちょっと待ってね。」

 

そう言って、千歌さんはバスタオルを取りに行ってくれた。

・・・そのまま帰ったりしないよね?

 

しかしそんな不安も杞憂に終わり、千歌さんはしっかりバスタオルを持って戻ってきてくれた。

ついでに、濡れたズボンを入れるようだと言って大きめの袋も持ってきてくれた。

・・・意外と気が利くんだな千歌さんって。

 

「ありがとうございます、千歌さん。助かります。」

 

「いいよ、別に。それより早く脱がないと風邪ひいちゃうよ?」

 

「そうですね。」

 

僕は、バスタオルで局部が見えないように腰に巻いて濡れたズボン及びパンツを脱ぎ、ようやく冷たく濡れた不快感から解放された。

・・・本当に千歌さんがいてよかった。

 

「・・・お風呂入るよね?」

 

ここで千歌さんがそんなことを言ってきた。

・・・確かにこのままだと汚いな。

小便臭いまま居るのは避けたい。

 

「入りたいですね・・・。でもお風呂場まで行けない。」

 

「ここまでは、どうやって来たの?」

 

「花丸におんぶしてもらいました。」

 

「え? 花丸ちゃんに? ふ~ん、でも私今のかいと君をおんぶなんてしたくないよ? 汚いし。」

 

「汚いって・・・、否定できないですが・・・。 じゃあ、このままの姿勢でいいので僕の足を引っ張て引きずってお風呂場まで連れて行ってくれませんか?」

 

「それなら・・・まあ。」

 

 

 

というわけで――

 

「・・・じゃあ、いくよ?」

 

「・・・はい。」

 

「それー!!」

 

千歌さんの掛け声とともに、勢いよくお風呂場めがけてズザザと引きずられる僕。

 

「あ、ちょっと待って!! 巻いたバスタオルが捲れる!! 凄い捲れる!! ちょっ!!」

 

床との摩擦で凄い勢いでバスタオルが捲れてしまう、しかし全力で引っ張ている千歌さんには僕の声が届いている様子はない。

ちょっと! やばい、捲れすぎて普通に見えてるんだが!?

僕がそれでも何とか手で必死にバスタオルを押さえて局部を隠そうとしていたが、いかんせん、勢いが強くどんどん捲れていくバスタオル。

 

そして

 

「ふう・・・、やっと着いたよ、って、かいと君何してるの?」

 

「・・・いえ、なんでも。」

 

最初、腰に巻いていたバスタオルは、ロングスカートのようになっていたが、最終的に捲れすぎてブーメラン水着のようになっていた。

何とか局部が露出されている状況だけは阻止した僕を誰か褒めてくれないだろうか?

ちなみにバスタオルを押さえることだけに集中しすぎて、曲がり角を進むとき、頭を壁にごんごんぶつけまくったが、安い犠牲だろう。

 

何はともあれ、お風呂場まできた僕は足が動かない為、這いずる形で浴室に入り、何とかシャワーを浴びることに成功した。

 

「・・・ふ~、やっぱりシャワーは気持ちがいいな~。」

 

僕がシャワーを浴びていると、突然入り口の外から

 

「ねえねえ、かいと君。」

 

と、千歌さんの声が聞こえた。

顔を入り口にの方に向けてみると半透明なガラスに千歌さんと思われるシルエットが浮かび上がっていた。

 

「どうしたんですか?」

 

「あの・・・昨日はありがとうね?」

 

「うっ・・・//」

 

昨日とは、勿論あれのことだろう・・・。

僕が千歌さんに抱き着きながら思い切り褒めまくったあれだろう・・・。

・・・だめだ、思い出したらまた恥ずかしさで死にそうになってきた。

 

「私ね、本当に嬉しかったんだ。今日のはかなり引いたけど・・・。」

 

「今日のことは忘れてください、一生。」

 

「でね? 昨日は、かいと君のお姉ちゃんはもういいかなって思ったんだ。」

 

僕の言葉が無視されるのは慣れてきたからもういいとしても、「お姉ちゃんはもういい」とは、どういうことだろうか?

いや、僕としては全然ノープロブレムでむしろ歓迎したいのだが、あれだけ、弟が欲しい言っていたのにどういう心変わりだろうか?

 

「その・・・姉弟だと・・・だめだもんね?」

 

「・・・え、なにが??」

 

「・・・ふふ♪ 内緒♪」

 

ドア越しではあるが、千歌さんは実に楽しそな表情をしているのだと分かった。

一体、何のことだか分からないが、まあ、いいか。

 

「でもさ、どうして足が動かなくなったの?」

 

「・・・それは聞かないで。」

 

 

 

その後、僕は体を綺麗にして、帰りは千歌さんにおんぶをしてもらって部屋に帰って行った。

今度はゴキブリが出ることもなく、無事部屋に戻ることができたよ・・・。

 

今日はこれで終わりだと思った。

 

というより、終わってほしかった。

 

しかし

 

「じゃあ、今から本格的にまるがお姉ちゃんになるずら♪」

 

既に僕の部屋にいた花丸のその一言によって、その祈りは粉々に打ち砕かれるのであった。

 

つづく

 

 

 




第9話読んで頂きありがとうございました!

というわけで、次話より花丸回になります!

では、またお会いしましょう!


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第10話 花丸の本音?

部屋に戻ってきた僕を待っていたのは、にんまりと笑みを浮かべ、部屋の中央に仁王立ちで立つ花丸だった。

その隣には、にこにこ笑顔のお姉ちゃんもいる。

 

「・・・どうして僕の部屋にいるの?」

 

お風呂に入る前までは、お姉ちゃんの部屋で色々良からぬことをしていたようだが、いつの間に僕の部屋に来たのだろうか?

 

「か、かいと君・・・。それより、もう降ろしていい? 千歌の腰が砕けそうなのだ・・・。」

 

「あっ、すいません。すぐ降りますっ!」

 

僕をおんぶしていた千歌さんが苦しそうにそう呻き声をあげているのが聞こえ、そう言えばおんぶをされていたことを思い出す。

元気が取りえの千歌さんとはいえ、高校一年生の僕をおんぶするのはかなり負担だったようで、ぷるぷると震えていることに今更気付く。

慌てて、傍にあったデスクチェアに降ろしてもらった。

 

「・・・ふー、重かった~。」

 

「助かりました、千歌さん。・・・本当に。」

 

漏らした状態の写真だけ撮って、そそくさと自分の部屋に行ったお姉ちゃんを若干睨みつつ、「う~ん」と伸びを行う千歌さんに感謝を伝える。

本当、千歌さんがいなかったと思うと・・・。

 

「かいと~、放ったらかしにして、ごめんね? でも大丈夫よ? かいとの可愛い写真は、バッチリ保存しておいたからね!」

 

「抱き着いて来るなっ! ていうか何が大丈夫なんだよ!?」

 

僕に睨まれたことで人目があるにも関わらず、思い切り抱き着いてきたお姉ちゃんを全力で押し戻しながら僕は叫ぶ。

しかし今回の写真が保存されてしまった件もそうだが、先ほど聞いたかいとコレクションというものも気になる。

いったい、何がコレクションされているのか・・・。

想像するのも嫌だ。

・・・いつか、お姉ちゃんのパソコンを破壊する必要があるかもしれない。

 

「・・・じゃあ、かいと君の元気そうな姿も見れたし帰ろうかな。」

 

ここで、千歌さんがそう言い、かばんを背負って帰る準備をし始めた。

この状況で一番まともそうな、千歌さんに帰られるのは、勘弁願いたいが、色々してもらった手前、引き止めるのもはばかられる。

それに、昨日の件もあり、千歌さんを見ていると恥ずかしい感情が湧き上がってくるのも事実。

ここは、独力で花丸とお姉ちゃんに対抗するしかないか・・・。

僕が、そんな覚悟を決めていると、

 

帰る準備を整えた千歌さんが、ゆっくりと僕に顔を近づけてきたぞ??

 

なんだなんだ?? と思っていると、千歌さんは吐息がかかるレベルで僕の耳元に自信の口を近づけ

 

「じゃあね、かいと君。今度また遊ぼうね・・・二人きりで♪」

 

と、ボソッと言ってきたぞ!?

当然、お姉ちゃん以外の女性に免疫がない僕がそんなことを言われてしまうと

 

「ちょ// な、い、いきないなんなんだよ//」

 

と、焦りまくりである。

・・・やばい、心臓がバクンバクン言って、凄いうるさい。

何のつもりだよ千歌さん、僕をからかっているのか??

 

「じゃあ、千歌は帰りま~す♪ じゃねー!」

 

しかし、当の本人はそんなことは、何事もなかったように、明るい声でそう言うと、帰ってしまった。

・・・いったい、なんだったんだ??

 

「あらあらあら?? 千歌ちゃんと何かあったの??」

 

当然、先ほどの千歌さんの行動をお姉ちゃんが見逃すはずもなく、にやにやと、格好の獲物を見つけた狩人の目で僕に詰め寄ってきた。

あー、もうっ、千歌さんも面倒なことしてくれたよ!?

しかし意外なことに、お姉ちゃんにもっと、根掘りはぼり聞かれるかと思いきや、すぐにその身を僕から引いて、

 

「まあ、いいわ。それより、かいと! 今からは花丸ちゃんがお姉ちゃんだからね?

 ちゃんと言う事聞くのよ?? それじゃあね。」

 

なんてことを言ってきた。

まるで、千歌さんの行動は想像通りだから聞くまでもないと言わんばかりに。

・・・いったい、何を考えているんだ、お姉ちゃんは?

最近のお姉ちゃんの行動は謎が多すぎる。

お姉ちゃんの表情を伺っても、にこにことしているだけで、そこから真相を読み取ることはできない。

 

・・・って!?

 

「そう、それだよ! 花丸がお姉ちゃんとか認めないからな!!」

 

そうだよ、今は、千歌さんの件よりもそっちのほうが重要だ。

先ほどは、やむなく花丸をお姉ちゃんと認めたが、今は別だ。

花丸をお姉ちゃんとする意味がない。

同い年だし。

しかし、こういう時に僕の話をまったく聞かないことに定評があるお姉ちゃんは、今回も同様に僕の言葉を無視して部屋から出ていってしまった。

・・・本当にお姉ちゃんは僕のことが好きなのか??

 

お姉ちゃんが去った後を呆然と見つめていたが、いつまでもそうしているわけにもいかないので、仕方がなく、花丸がいるであろう方に向き直る。

そこには、当然だが、花丸がいた。

なぜか滅茶苦茶不機嫌になっている花丸が。

頬を膨らませ、こちらを睨んでいるのだ。

・・・何でだ。

 

「どうした? 花丸?」

 

「・・・千歌ちゃんと仲がいいんだね?」

 

「え、千歌さんと? ・・・まあ仲はいいだろうけど、それがどうしたんだよ?」

 

「・・・別に何もないずら。」

 

そう言うと、ベッドに腰かけ、カバンから本を取り出し読み始めてしまった。

この話は終わりと言わんばかりに。

しかし、どう見ても花丸の不機嫌は解消されていない。

その顔の眉間には、皺が寄っており明らかにいらついている様子だ。

・・・僕、何かしたか?

 

「お~い、まるお姉ちゃん? どうして怒ってるんだよ?」

 

流石に、このままでは居心地が悪いので、冗談ぽくそう聞いてみるが、

 

「うるさい。後、普段通り呼べずら。お姉ちゃんはもういいずら。さっきまでお姉ちゃん呼びさせてたのは、ただの嫌がらせずら。」

 

とのことだ。

なぜか先ほどより、余計に怒ってしまった感じさえする。

というより、あれ嫌がらせだったのかよ。

まあ、お姉ちゃん扱いしなくてもいいというのは、喜ばしいことだが・・・。

しかし、じゃあなんでここにいるの? という疑問も出てくる。

・・・嫌なら帰ればいいのに。

しかし、これ以上つついても花丸の機嫌がよくなることはなさそうだったので、いったん花丸の存在はおいておいて勉強でもすることにした。

・・・足のせいで、しばらく学校に行けなさそうだからちょっとは、勉強をしなくちゃだしね。

 

 

 

あれ? もう7時?

勉強をしていると、うまい具合に集中できたらしくあっという間に2時間ほどがたっていたようだ。

あんまり勉強していてもあれだし、今日はこれくらいにするか・・・。

僕が、勉強道具を仕舞い、ベッドの方を見ると、そこにはまだ本を読む花丸がいた。

・・・いつまでいるつもりなんだ??

流石に、このままというのもあれなので、声をかけてみることにした。

 

「花丸。もう結構時間も遅いよ?」

 

「・・・うん。」

 

しかし、花丸は本を読むことに集中しているのか上の空に返事を返してくるのみ。

夜も遅いし、早く帰らないと家の人も心配するよな?

そう、判断し花丸に帰るよう促すべく声をかける

 

「お~い、花丸。本なら家で読めばいいだろ?」

 

「・・・だめずら、かいと君のいるところで読みたいずら。」

 

 

 

・・・・・ん?

今、花丸は何と言った??

僕のいるところで読みたい??

・・・どういうことだ?

花丸は相変わらず、本に集中しており、今の発言もほぼ無意識に出したセリフのようだ。

・・・もう少し聞いてみるか。

 

「どいうこと? 僕のいるところでっていうのは?」

 

僕がそう質問を投げかけると、花丸は本から視線を外さず、淡々と、抑揚のない喋りで

 

「好きな人のそばにできるだけ長くいたいのは自然なことずら。」

 

 

 

・・・・・は?

好き?? 誰が?? 花丸が?? 僕を??

・・・・・え?

流石に・・・冗談・・・だよね??

 

「・・・あ、あの、花丸// からかうにしても、あまりそういうこと言うのはよくないぞ??」

 

「冗談じゃないずら。今日も梨子ちゃんにお姉ちゃんになるなら家においでって言ってくれたから来ただけずら。正直お姉ちゃんなんてどうでもよかったずら。かいと君と一緒にいれるなら理由はなんでもよかったずら。」

 

「・・・あ、そ、そう/// で、でもあれでしょ? 友達として好きってことだよね?」

 

「異性として好きに決まってるずら。」

 

「あ・・・あ・・・そ、そう///」

 

「だから、もうまるの前で他の女といちゃつくなずら。嫉妬するずら。」

 

なんだなんだなんだ!!??

何が起きているんだ??

花丸が僕のことを好き?

今、僕は告白されているのか??? なんだこの斬新な告白は!?

ていうか、千歌さんと妙な空気になっていたから不機嫌になっていたのか??

だとしたら、可愛いすぎるんだが!?

で、でも花丸は本を読んでいて、ほぼ無意識に言っているから、本当か分からないじゃないか・・・。

 

―無意識だからこそ、本音ではないのか?―

 

そんな、僕の想いを必死に振り払う。

どっちにしても、今の花丸からこれ以上聞き出すのはよそう。

何かの間違いかもしれないしね・・・。

で、でも、はぁ、今日は心臓に悪いことが多すぎる。

気付けば、僕の鼓動は早鐘をつくようにやかましく鳴っていた。

 

・・・し、しかし、仮にもし、花丸が僕のことを本当に好きなら僕はどうするだろうか?

 

花丸は可愛い、そんなことはとっくに知っている。

ふんわり柔らかそうな、軽くカールがかかった茶髪も、思わず守りたくなるほど小柄な体形も、少し毒舌なところも全て花丸の魅力だ。

 

あれ? なんだか意識したら急に花丸が可愛いく見えてきたんだが・・・

ポーと花丸を見ていると、花丸はパタンと本を閉じ、

 

「・・・ふー、面白かったずら~。って、ん? なんずら、気持ち悪い目で見てきて?」

 

いつもの僕が知っている毒舌をはく花丸がいた。

空を飛んでいたら、叩き落された気分だよ・・・。

先ほど、花丸がとても可愛いく見えたが、どうかしていたらしい。

 

「・・・ちなみに、さっき言っていたことって覚えてる?」

 

「さっき・・・? なんのことずら?」

 

やはり、花丸も無意識状態だったらしい。

よし、このことは、いったん忘れよう、何かの間違いかもしれないしね。

 

・・・忘れられるだろうか。

 

その後、かなり時間がたっていることに気付いた花丸は、急いで帰り支度をし、帰って行った。

 

つづく

 




というわけで10話でした!
勢いで初めた作品でしたがまさか10話もいくとはw

今回は花丸ちゃん回でした!
花丸ちゃんの可愛さが少しでも届いたならば嬉しいです!

えー、話は変わりまして、今後の展開についてですが、誰と絡んでいくかアンケートを実施しようと思います。(一度したかったんです・・・)
アンケート結果の上位2枠のメンバーと絡ませていく方向で動いてきます。
※気が向けば全員と絡ませますが。
よければ、アンケートにご協力いただければと思います!

後、初めてなのでアンケートを作成するのに時間がかかるかもしれません。

では、次話でもお会いしましょう!


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第11話 壁クイ

花丸とのイザコザが起こってから、早くも一週間が経とうとしていた。

僕の足もかなり回復してきて、自力で歩けるようになってきた。

・・・もうトイレに行けず漏らすなんて失態を晒す心配もないわけだ。

 

しかし気がかりなことがひとつ

 

この一週間、意外なことにお姉ちゃんは、必要以上に僕にあまり関わってこなかったのだ。

僕の部屋に食事を届けてくれたり、トイレに行くのを手伝ってくれたりと、足が動かない僕を助けはしてくれたものの、それだけだ。

てっきり足が動かないのをいいことに、色々とよからぬことをされるかもと思っていたが・・・、例えばお風呂に一緒に入ってきたり、一日中抱き枕にされたりとかね。

お姉ちゃんも、ようやく常識を学んできたのかもしれない。

お姉ちゃんの僕に対する距離感は、一般的な姉弟の距離間と比べてもかなりぶっ飛んでいたからね。

いや~、本当に喜ばしいことだよ。

 

そう、思っていた。

 

 

 

「ねえ、かいと『壁クイ』し・て♡」

 

 

 

僕の考えが、いかに甘いかを思い知ったよ。

お姉ちゃんと一緒に朝食を摂っている時に、僕の足が回復してきたことを知ったお姉ちゃんが、満面の笑みで僕にそう切り出してきたのだ。

ちなみに、壁クイとは、壁ドンと顎クイを組み合わせた頭の悪い技のことだ。

お姉ちゃんに嫌というほど教えられたから、覚えちゃったんだよね・・・。

 

「嫌」

 

当然答えはノーだ。

理由なんて答えるまでもない。

壁クイしあう姉弟とか、どんな姉弟なんだ。

 

「だめ。もうお姉ちゃん、我慢の限界。」

 

お姉ちゃんはそう言うと自分の席から立ち上がり、僕の元へ、ゆっくりと歩いてきたぞ・・・?

なぜか顔を赤くし、息遣いも荒くなっているんだが・・・っ!?

直感が告げている、これは危険だ!?

逃げなくては!

しかし、足が動くようになってきたと言っても、まだ素早い動きを取ることができない。

結局、近づいてくるお姉ちゃんから逃げることが叶わず、目の前までの接近を許してしまう。

どう見ても普通でないお姉ちゃんを目の前にして、ふと、お姉ちゃんが以前、言っていた言葉が僕の脳裏に蘇る。

 

『最近かいとを見ていると襲いそうになっちゃうの♡』

 

・・・え? 僕、襲われるの??

実の姉に・・・?

全身から血の気がサーっと引いていくの感じる。

・・・い、いや、きっと何かの勘違いだ、そうに違いない。

そうだよ、いくらお姉ちゃんがブラコンだからって、まさか、そんな・・・。

・・・ありえるな。

はっ! いやいや、諦めるな僕! とりあえず喋ってお姉ちゃんの気を逸らすんだ。

・・・落ち着けー。

 

「・・・ど、どど、どういうこと?」

 

・・・噛み噛みだよ。

しょうがないじゃん、発情した実の姉が目の前にいたら誰だってこうなるよ。

 

「この一週間ね、かいとの足に負担にならないように、あまり近づかないようにしていたのよ・・・。」

 

「そ、そうなんだ、へー。それは、ありがとう。でも顔を近づけてくるのは、やめてくれない??」

 

なるほど、この一週間、お姉ちゃんが大人しかったのは、僕の身を案じてのことだったらしい。

それは普通に嬉しいのだが、僕の顔に両手を添えて、目線を合わし、徐々にその赤らめた顔を近づけてくるのは、やめてもらえないだろうか!?

このままキスをされかねない勢いなんだが!?

 

「・・・だからね? お姉ちゃんにとっては、かいとが近くにいるのに触れ合えない生殺しの状態だったわけ。」

 

「うんうんうんうん、分かったからいったん離れようか!?」

 

尚も近づいてくるお姉ちゃんとの距離は、もはや10センチとない。

もう、視界いっぱいにお姉ちゃんの顔が映っている状況だ。

お姉ちゃんから、むんむんとした熱気さえ伝わってくる。

ここは弟として思い切りビンタとかしてでも、姉を正気に戻すべきだろうか?

 

「・・・だからね、『壁クイ』して??」

 

僕との距離5センチまでに迫ったお姉ちゃんから、再び同じ言葉が繰り返される。

お姉ちゃんの荒い吐息が僕の顔を撫でる中、それでも僕はこう答える。

 

「嫌だ」

 

そして、僕は敢えて自分からお姉ちゃんとの距離を一気に0センチに縮めた。

 

ただし、おでこで、だ。

つまりは、頭突きだ。

 

ゴチンッ!

 

「「~~~っ!!??」」

 

痛いっ、痛い痛い!!??

あまりの危機感に勢いよく頭突きをしすぎたらしい。

すごい音がしたもんね・・・それにしても痛いっ!! 

頭が割れるような激痛に襲われる中、ちらっとお姉ちゃんの方を見ると、その場にうずくまり、両手でおでこを押さえ、声にならない叫び声をあげ、ぷるぷると震えていた。

相当痛いらしい。

・・・でも、これでお姉ちゃんも正気に戻ってくれただろう。

・・・戻ってくれたよね?

 

しかし

 

「あ~んっ!! 痛いよ~!! やだやだやだ!! 『壁クイ』してくれないとやだ~っ!!??」

 

急に立ち上がり、なんだと思う間もなく、勢いよく抱き着いてきて、駄々っ子の様に喚きだしたんだが・・・。

もう色々とやばいな、お姉ちゃん。

弟と一週間触れ合えないだけで、こうなるなんて、どんな禁断症状なんだ。

 

「だから、嫌だって言ってるだろ!」

 

抱き着かれたままではあるが、当然、僕は拒否する。

それにしても力が強いんだが・・・。

抱き着かれた状態から何とか逃れようとするが、がっしりと抱き着かれているため、それが叶わない。

それでも、諦めず、何とか逃れようとしていると、お姉ちゃんが急にピタリと静かになった。

 

・・・どうしたんだ? 急に静かになられると怖いのだが。

 

突然の沈黙により、謎の恐怖に襲われいてると、お姉ちゃんが僕の耳元で、いつもよりも低く、冗談気を交えない本気のトーンでボソリとこう言ってきた。

これが、最後の忠告と言わんばかりに。

 

「・・・『壁クイ』してくれないと、お婿さんにいけなくするわよ?」

 

「喜んで、『壁クイ』させて頂きます。」

 

 

 

・・・本当に怖かった。

あれは、本気だった・・・。

この短期間に二度目のお漏らしをするかと思ったよ・・・。

もし、あそこで僕がさらに拒否の姿勢を崩さなかったらどうなっていただろうか?

・・・想像するだけで恐ろしい。

 

 

 

「それじゃあ、壁クイよろしくね♪」

 

「・・・はいはい。」

 

朝食後、お姉ちゃんの部屋にやってきたわけだが、早速と言わんばかりに、そう切り出してくるお姉ちゃん。

既に壁際に背を向けて立っており、セットポジションは万全だ。

テンションマックスのお姉ちゃんに対し、テンション激萎えの僕は、ゲッソリしながらそう返事を返す。

・・・どうしてこうなってしまったんだ。

 

「一応説明しておくと、壁ドンからの顎クイ、そして耳元でこうつぶやいてね?『梨子、お前は一生俺のものだ』きゃー// 想像しただけで、鼻血が出ちゃいそう//」

 

・・・僕はゲロが出そうだよ。

セリフまで付けるとは聞いていないが、今のお姉ちゃんに下手に反抗すると何をされるか分かったものではない。

ここは、腹をくくろう。

そうだよ、一瞬じゃないか。

そうと決まれば、すぐに決行だ、嫌なことはすぐに終わらせる。

 

わくわくと、期待に満ちたお姉ちゃんのもとにゆっくりと歩み寄り、そしてお姉ちゃんの目の前に立つ。

 

そして

 

ドンッ!

 

勢いよく、自信の右手をお姉ちゃんの顔のすぐ横の壁に突き刺す。

その音と勢いに、お姉ちゃんは、ビクリと一瞬怯えたような反応を見せるが、すぐに続きの行動を待ちわびるように、潤んだ目で僕を見つめてくる。

 

・・・折れるな、僕。

 

自身に激励をとばし、僕は左手で、ゆっくりと、お姉ちゃんの顎を文字通り「くいっ」と持ち上げ、僕のほうに無理やり目線を合わす。

「はうぅぅ//」と顔を真っ赤にし、恍惚とした表情で僕を見つめてくるお姉ちゃんに僕の精神が破壊されそうになるが、あと少しということもあり、ぎりぎり持ちこたえる。

 

そして、僕は自らの口をお姉ちゃんの耳元まで運び、ポソリとつぶやいた。

 

「・・・梨子、お前は一生俺のものだ。」

 

やった

終わったんだ

よくやったよ僕

なのに、なんだろう・・・この取り返しのつかないことをしてしまったような虚無感は。

 

ちなみにお姉ちゃんはというと、

 

「あ・・・// あ・・・あぁぁ・・・//」

 

顔を茹蛸のように真っ赤にし、目も焦点が合っておらず、まるでクスリでもキメテいる人みたいになっているよ・・・。

ちなみに、本当に鼻血をポタポタと滴らせているよ。

 

よし、これで僕のミッションはコンプリートだろう。

お姉ちゃんが何だかやばそうな状態になっているが、お姉ちゃんだし大丈夫だろう。

それより、僕は自室に戻って現実逃避でもしよう・・・。

そう思って、部屋の入口に向き直った、すると

 

「・・・か、かいと、あんた何やってるの??」

 

部屋の入口に立ち、顔面蒼白となった母上の姿があった。

様子を見るに、どうやら一部始終を見られていたらしい。

・・・最近、こういうの多くないだろうか?

 

その晩、家族会議が行われた

 

つづく

 




というわけで11話でした!

はい、壁クイですね(笑)
このネタは、絶対に入れようと思っていました。

話は変わりますが、アンケートの件、既に多くの人に投票していただいております!
投票していただいた方、ありがとうございます!
期間は2/29までとさせて頂きますので、まだ投票していない方いましたら、是非投票をお願いいたします!(詳細は第10話のあとがきを確認お願いします)
結果は、活動報告でしようかなと思っています。

では、また次話でお会いしましょう!



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第12話 思わぬ展開

リビング

 

そこは普段、家族団欒の場である。

桜内家でもそれは例外ではなく、お父さん、お母さん、そしてお姉ちゃんと適度に談笑したり、ふざけ合ったりと、日常の何気ない、しかし温かく優しい思い出がたくさん詰まった場所である。

 

しかし

 

今、そのリビングは、いつもの雰囲気とは一転し、息が詰まるような重圧、肌がピリつくような空気に支配されている。

そして、その雰囲気を作り出しているのが、一人用のチェアに腰をどっしりと下ろし、腕を組み、僕を睨む桜内家の大黒柱であるお父さんだ。

整えられた髭と丸眼鏡が特徴的であり、いつもの温厚な父からは想像もできない気迫がひしひしと伝わってくる。

悲痛な表情を浮かべるお母さんは、その父さんに控える様に立っている。

鼻にティッシュを詰めたお姉ちゃんは、僕とお父さんのちょうど間に立ち、不安そうな表情を浮かべ僕とお父さんを交互に見比べている。

 

ちなみに僕は、お父さんの前で正座である。

 

「・・・かいと」

 

長い沈黙を破ったのは、やはりお父さんであり、リビング内の緊張が最高潮に達する。

横に立つお母さん、そしてお姉ちゃんは、ごくりと息をのむ。

俯いていた僕もゆっくりと、お父さんに視線を向ける。

 

それを確認したお父さんは、再び口を開き

 

「・・・近親相姦はだめだろう」

 

「ち・が・うぅぅっ!!」

 

この重苦しい空気をすべて消し飛べとばかりに、腹から声をだし、思い切り叫ぶ。

僕が正座をさせられている理由が一ミリも理解できない!?

ていうか足、痛いしっ!

 

「でも、かいと!! あんた、お姉ちゃんに壁ドンをして、顎クイまで決めて、お姉ちゃんを落としていたじゃない!!」

 

お母さんが間に割り込んできて、そう叫び、僕の異議を否定してくる。

 

「だから!! 何度も言ってるけど、あれは僕の意思でしたんじゃないって!!」

 

だが僕だって、実の姉に『壁クイ』をする変態やろうと思われるわけにはいかない。

徹底抗戦だ。

 

「そうよ! お父さん、お母さん! あれは、かいとが悪いんじゃないの!!」

 

と、意外にもここでお姉ちゃんが僕の援護射撃をするように、お父さんとお母さんに食って掛かってくれる。

・・・ごめんよ、お姉ちゃん。

てっきり変なことを言って邪魔をしてくるもんだと思ってたよ。

いや・・・今までの経験則的にね?

 

僕の想いを受け取ったかのように、さらにお姉ちゃんは前に乗り出し、勢いをつける!

あまりの勢いに、鼻に詰めたティッシュもポンッと飛んでいく・・・っ。

さあお姉ちゃん、僕にかけられた冤罪を解いてくれ!

 

「私のことが大好き過ぎるかいとの暴走を止めることをできなかった私が悪いのよ!」

 

「お姉ちゃん。もういいから黙ってくれない?」

 

・・・ああ、分かっていたよ。

どうせ変なこと言ってくるって。

ちょっとでも期待した僕が悪かったよ。

 

「かいと!! 何も誤解じゃないじゃないか!!」

 

「・・・かいと、うぅ。」

 

「だから、お姉ちゃんじゃなくて僕の意見を聞いてくれ!!」

 

鬼のような表情と化したお父さんと、とうとう泣いてしまったお母さんにそう言うが

 

「やめて!! ・・・私はいいの、もう身も心もかいとに捧げる覚悟はできてます・・・。」

 

悲しそうに目を伏せ、口に片手を添え、フルフルと震えながら、まるで何度も迷い苦しみ抜いた先に辿り着いた結論であるかのように、そう呟くお姉ちゃん。

 

・・・お父さん側からは見えないんだろうけど、こっちから見ると、ニヤリと笑っているのが丸見えなんだよね!!??

確信犯じゃないか!!

 

しかし、そのことが分からないお父さんは、顔を怒りで真っ赤にし、お母さんはどれだけ歪むんだよって位さらに顔を悲痛の表情で歪める。

 

「かいと!! お姉ちゃんに何をしたんだ!?」

 

「かいと・・・せめて正直に話して??」

 

・・・・・。

 

もう打つ手なしだ

 

話は聞いてくれない

 

お姉ちゃんは敵

 

八方ふさがりだ

 

 

 

だから

 

「うわああああ!!!???」

 

 

 

叫ぶくらいしかできなかったんだよ

 

僕が突然、絶叫にも近い、心からの叫び声をあげたことで、三人とも驚愕し、目を見開き僕を見つめてくる。

全員、一種のフリーズ状態である。

 

これはチャンスだ!

 

意図せぬことだったが

今なら三人とも僕の言葉に耳を傾けるだろう

この機会を逃せば、この家に僕の居場所がなくなる

 

ここは、勢いをさらにつけるため、立ち上がり、そして改めて説得を試みる

―そんなことを考えて僕は足に力を込め、立ち上がった

 

だが

 

足がまだ完治していないこと、さらに長時間正座していたこともあり、

 

立ち上がった瞬間

バランスを崩した

 

「あ」

 

そんな、情けない声を上げ、僕は倒れてしまう

 

 

 

お姉ちゃんの方へ・・・

 

 

 

「・・・え?」

 

お姉ちゃんは僕が叫び声をあげたことにより、呆然としていた。

当然、急に倒れてくる僕に反応できるわけなく、僕はお姉ちゃんを巻き込んで、倒れてしまう。

 

 

 

ドドシーンッ!!

 

 

 

リビングに二人が倒れる凄まじい音が、響き渡る。

 

足がまだ完治していないのを忘れていた。

急なことで、思わず目を瞑ってしまった。

 

・・・しかし、これはいけない。

右手首に鈍い痛みを感じる。

とっさのことで、右手を床につける形で転んでしまったらしい。

しかし同じように手を着いたはずの左手は、なぜか無事だ。

しかもフニョンとした心地の良い感触さえあるぞ?

・・・この感触、覚えがある。

・・・嫌だ、確かめたくない!?

この感触の正体を確かめたくない!!

だが、もしかしたら僕が想像しているものではないかもしれない・・・。

そんな、淡い希望を信じてゆっくり閉じていた目を開けていく。

 

まず目に入ったのは、僕の下敷きになる形になってしまったお姉ちゃんの姿だ。

ここまでは、いい。

問題はそこから先だ。

 

左手の感触は、よりにもよってお姉ちゃんの胸を思い切り掴んでいたものだった・・・やっぱりか。

悪い予想は見事に的中だ、いや、もう分かっていたけど。

そして右手は予想通り、床に手をついていた・・・お姉ちゃんの顔の真横の床に。

 

・・・あー

これは客観的に見たら、お姉ちゃんに馬乗りになり、胸をもみながら床ドンをしているヤバイ構図に見えなくもないこともないかもしれないなー、ハハハ。

 

僕が遠い目をしながら、現実逃避的な思考をしていると

 

顔を真っ赤にし、再び鼻血をだしているお姉ちゃんは、恥ずかしそうに目を伏せ

 

「そ、そんな・・・// 親の前でこんな大胆なことをするようになったのね// いいわよ? お姉ちゃんは、いつでもウェルカムよ//?」

 

と、何か言ってる。

だがお姉ちゃんが言っている事なんてもう、どうでもよかった。

 

僕は、冷や汗をダラダラとかきながら、お父さんとお母さんがいる方へ、ゆっくりと向き直る。

 

そこには、顔面を蒼白とさせたお父さんとお母さんが・・・

だが、それも一瞬

すぐに、怒りボルテージMAXになったお父さんが、勢いよく立ち上がり

 

「かいとぉおおお!!!」

 

生まれて初めて、こんなに叫ぶお父さんを見た。

ある意味貴重な経験をしたとも言えるね。

 

 

 

「何か言い残すことはあるか?」

 

再び正座となった僕にお父さんが、明確な怒りを言葉に乗せ、僕にそう確認をとってくる。

 

「ございません。」

 

顔を項垂れさせたまま、力なくそう答える。

最早、弁明する気も起らない、余計に事態が悪化するだけの気がするからだ。

・・・一体僕はどうなるのだろうか?

実の姉に手を出した息子にどのような処分を下すのか、気になるのはそこだけだった。

ちなみにお姉ちゃんは、再度鼻にティッシュを詰め込み、嬉しそうににこにことしている。

お母さんは頭が痛くなったと言って、自室に戻ってしまった。

 

「かいと・・・、お前をお姉ちゃんと一緒にしておくのは危険と判断した。だから、来週の長期休暇中、お前にはお姉ちゃんとの接触の一切を禁じる!!」

 

・・・ん?

来週は、ゴールデンウイークだから、確かに学校は休みだが・・・。

お姉ちゃんとの接触を禁止?

・・・んん?

僕は、お父さんに続きを、と、促すように顔を上げ父さんを見る。

父さんはそんな僕の目をしっかりとらえ、こう、続けた。

 

「お前に5万円をやる。それで来週は家から出ていくんだ! その間、お姉ちゃんとの接触を禁じる、電話もラインも含めてな!! これで、自分のした罪の重さを自覚するんだ!!」

 

・・・・・え

5万円をもらって、お姉ちゃんとの接触禁止だって・・・?

 

 

 

・・・凄くいいんじゃないか!?

 

 

 

え? え?

お姉ちゃんと一週間会えないくらい何の問題もないんだが??

何なら、楽しい旅行ができるだけじゃないのか??

突然訪れた幸運に実感が湧かないものの、ようやく僕に運が回ってきたんじゃないか??

 

お父さんの意図としては、大好きなお姉ちゃんと離れることで、反省しろということなんだろうが・・・僕には効果ゼロだ。

・・・勿論、お姉ちゃんは好きだ。

だが、それは家族として。

一週間くらい会えないことなんて何の苦でもない!

・・・まあ、僕はよくてもお姉ちゃんには効果大ありだろうけど。

そう思い、お父さんからお姉ちゃんに視線を移すと

 

「・・・え、え、え? 一週間、かいとと会えない・・・? え?」

 

と、目と口をあんぐりと開き、絶望の表情を浮かべていた。

あまりに耐えがたい苦痛なのか、細かく震えており、現実を受け入れたくないといった状態だ。

ちょうどさっきの僕みたいに・・・。

だが、これはお姉ちゃんにとってもいい薬になるかもしれない。

元々、身から出た錆だしね。

 

「ちょちょちょちょ、お父さん! 何もそこまでしなくてもいいんじゃない!?」

 

お姉ちゃんは、お父さんの服を掴んでまでそう説得するが

 

「だめだ! これは決定だ!」

 

お父さんのこの一声ですべてが決した。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

そんなわけで、待ちに待ったゴールデンウイークが来たわけだ

 

出かける直前、お姉ちゃんが最後まで抵抗しようとしていたが、父さんによって部屋に閉じ込められていた為、最後にお姉ちゃんを見ることは叶わなかった。

まあ、問題ないけど。

 

僕は、着替えや、生活用品の諸々を詰め込んだキャリーケースを転がし、家から出た。

 

・・・いい天気だ。

青い空、白い雲、心地よい潮風。

そのすべてが僕の休日を歓迎してくれているようだ。

 

これで、楽しい旅行の始まりだ

 

・・・そのはずだったんだ。

 

まさか

 

まったく宿が取れないなんて・・・

 

そう、当然一週間も家を空けるわけだから、どこかに寝泊まりをする必要があるわけだが、その宿がまったく予約できなかったのだ。

この旅行が決まった時には、ゴールデンウイーク直前だということもあり、宿が大変混雑していたのだ。

空いているところもあったが、どこも高級なホテルやら旅館であり、そんなところに泊まっては、予算オーバーだ。

安い民宿などはすべて埋まっていたというわけだ。

 

・・・どどど、どうしよう!?

まさかの一週間、ネットカフェ・・・?

嫌だ!! そんなの絶対に嫌だ!!

 

とりあえず、じっとしているのもあれだったので、最寄りの駅まで来たもののそこで行き詰ってしまった。

僕は、お姉ちゃんの連絡先が抹消されたスマホを必死に操作し、何か手はないか考える。

 

そんな時だった

 

「あれ?? かいと君じゃ~ん!!」

 

「・・・曜さん?」

 

僕に救世主が現れたのだった

 

つづく

 




第12話読んで頂いてありがとうございます!

アンケート回答いただいた方ありがとうございました!
結果は、果南ちゃんと曜ちゃんに決まりました!

というわけで、次話では早速、曜ちゃん回となります!

引き続き読んで頂ければ嬉しいです!
では、また次話でお会いしましょう!


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第13話 ヨーソロー!

灰色がかり、クリッとした癖っ気のある肩まで伸びた髪

パッチリとした目、長い睫毛

引き締まった細い腕と足

シミ一つない真っ白なパーカー、太もも丸見えデザインの青色を基調としたホットパンツを着用した曜さんがいた。

その手には、僕と同様に大きなキャリーケースを持っている。

 

曜さんは、にっこりと、天真爛漫といった表現がぴったりの笑顔を浮かべながら

右手を真っすぐ伸ばし、肘を曲げ、ピンと伸びた指先を頭に添え、敬礼のポーズを取り

 

「かいと君、ヨーソロー!!」

 

曜さん独特の挨拶をしてきた

 

「・・・よ、よ~そろ~。」

 

曜さんの元気な勢いに押され、同じく敬礼でかえ・・・そうとしたが、途中で恥ずかしくなり、中途半端に腕を上げながら、しかし、尻すぼみながらも何とか同じ挨拶を返す。

・・・いつも思うが、この挨拶は何なのだろうか?

意味はよく分からないが、曜さんのその活発な雰囲気と非常にマッチし、何とも様になっているから不思議だ。

一方の曜さんは、そんな僕の挨拶に満足したのか、真っ白な歯を見せながら

 

「偶然だね!! かいと君もどこかに遠出をするの??」

 

駅前でキャリーケース持っていることから、僕が旅行でもするのかと思っての質問だろう。

しかし、『かいと君も』ということは、曜さんもどこかに遠出をするのだろうか?

曜さんは一人であり、周りに人影はない。

何だろう? 一人旅か何かだろうか? それともここで誰かと待ち合わせでもするのだろうか?

 

「まあ、そんなところですね。絶賛大ピンチですけど・・・。」

 

宿が取れず、一週間ネットカフェ生活が現実味を帯びてきた僕が、自虐を込めてそんな風に呟きを漏らす。

 

「えぇ!? 大ピンチってどうしたの??」

 

ここは、人一倍思いやりがあり、優しい曜さん。

僕のどうでもいい悩みに心配そうな表情を浮かべ、「力になれることなら言ってね?」と、ばかりにぐいぐいくる曜さん。

ここまで、心配されると逆に申し訳ない・・・、本当にしょうもない悩みなだけに。

 

「いや、まあ、大したことはないですよ?」

 

宿が取れずに困ってます、家には帰れません、なんて言っても曜さんを困らせるだけだろう。

僕が逆の立場なら100%困る。

ここは、うまく煙に巻いておこう。

 

しかし

 

「だ~め! 困ったこと時はお互い様だよ? さあ、言った言った!」

 

と、僕が本当は困っていることを何となく察しているのか、遠慮は無用だと伝えてくるように僕の肩をバンバンと叩きながら底抜けるような明るい声でそう言ってくる。

・・・イケメンだなぁ

お姉ちゃんから聞いたが、曜さんは誰に対しても距離感なく接し、その優しさ故に同性に非常に人気があるのだとか。

・・・今それを実感したよ。

 

このまま黙っていても曜さんは決して見逃してくれないだろう。

今こうして考えている間も「ほれほれ~、お姉さんに言ってみ??」と、人差し指で僕の体をぐりぐりしながら詰められている状況だ。

というより、なぜに周りの女性はこうも距離感が近いのだろうか?

曜さんは美人だ、いや・・・可愛いの方が・・・うん、まあどっちでもいい。

とにかく、そんな女性がこれ以上接近してくると心臓に悪いことこの上ないに違いない。

ましてや、最近はお姉ちゃんのせいで女性と接触する機会が多かったのだ、これ以上心臓に負担をかける訳にはいかない。

・・・観念しよう。

 

「実は―――」

 

お姉ちゃんが生粋の変態であることを上手く隠しつつ、家に帰れず一週間外で寝泊まりしなくてはいけないが、宿が取れず困っている旨を曜さんに伝えた。

こんな悩みには流石の曜さんも困るだろう、そう思って改めて曜さんを見る。

 

しかし

 

そこには、困り顔の曜さんはいなかった

 

代わりに

 

今日一の、にんまりとした笑顔を浮かべていた曜さんがいた

 

まるで

 

ちょうど、いい解決法を知っているぞと言いたげに

 

そんな予想外の曜さんの反応に逆にこっちが面食らってしまい、戸惑っていると

 

「いや~、かいと君、ちょうどよかったよ!!」

 

曜さんは元々高いテンションをさらに上乗せして、僕の肩に手を置き、僕の目を真っすぐに見つめ、こう続けた

 

「実は、私は今から合宿に行くんだけど、よかったら一緒に来ない??」

 

・・・・・・え? 合宿??

・・・・・・何の??

 

曜さんは、お姉ちゃんも所属しているアクアというグループでスクールアイドル活動をしている。

しかし、お姉ちゃんからは、アクアで合宿に行くなんて、情報は聞いていない。

となると他の目的で合宿ということになる・・・

お姉ちゃんが仲間外れにされているという可能性もあるが、まさか・・・ね

 

「あの、合宿って何のですか??」

 

曜さんは、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに元々近づけていた顔をさらにグイッと近づけてきて

 

「ふふふ~、実は飛び込みの練習をするための合宿なんだ~、最近はアクアの活動で中々練習できなかったからね~。」

 

近いっ!?

だけど、最近このパターンで顔をグイッと近づけられるパターンが多かったせいか、思っていたより、平気だぞ・・・?

心臓は少しその脈打つペースを早めたものの、その程度だ。

・・・なんだか嫌な耐性がついて来たな。

 

しかし、なるほど・・・そいういことか、とりあえずお姉ちゃんが仲間外れにされていないことは分かった。

そう言えば、曜さんは飛込でもかなりの実力があるって、千歌さんが言ってたっけ?

しかし、普段もスクールアイドル活動でへとへとになるまで練習をしているであろうのに、休日まで体を動かすとは、頭が上がらないね。

しかし、合宿と言うからには、部活動だか、スクールに通っている人かは分からないがその人たちと行くのだろう。

僕が一緒に行ってもいいものなのだろうか?

 

「あの、その合宿に僕も一緒に行っていいものなんですか?」

 

「うん♪ もちろん!! 一人増えても全然大丈夫だろうし、ご飯は美味しいし、何より一泊1000円でいいよ! 勿論食事付きでね♪ まあ飛び込みの練習している間は、暇かもしれないけど、あはは。」

 

「えっ、安い!!本当にいいんですか??」

 

「うんうん♪ もちろんだよ!」

 

笑顔でそう答える曜さんの顔は冗談を言っているようには聞こえない。

本当にその条件で泊まれる宿があるのだろうか?

もしかしたら、長い付き合いがあり、特別価格で泊まれるとか、そんな理由なのかもしれない。

 

それにしても1000円だって・・・?

一週間泊ったとしても7000円、43000円が僕のもの・・・。

確かに、練習中は暇かもしれないが、それを補っても余りあるメリットがある。

任天堂スイッチが買えるじゃないか、それもソフト付きで・・・

乗らない手はないだろう。

 

「じゃあ、ご一緒させて頂きます!」

 

僕は頭を軽くペコリと下げ、安堵を感じつつ曜さんにそう改めてお願いを申し出る。

曜さんも嬉しそうにそれを確認し、

 

「よ~しっ!! 決まりだね!!」

 

方針は決まったことを示すように右手の握った拳を天に掲げ、そう声をあげる。

 

・・・よかった、これでネットカフェ生活にならなくて済んだ。

まさに曜さんは救世主だよ

 

僕が、ほっと息を着いた時だった

 

「よしっ、それじゃあ早速行こうか! ちょうど電車のくる時間だし!」

 

・・・・・ん?

 

違和感を覚える

 

というのも、今この場には、曜さんと僕の二人しかいないのだ。

合宿に行くというからには、他にも何人か一緒に合宿に行く人がいると思ったが、いないのだろうか?

途中の駅とかで合流するのだろうか?

現地集合という可能性もあるが・・・

 

「あの、曜さん。その合宿って何人くらい参加するんですか?」

 

気になった僕は曜さんにそう尋ねる。

でもやっぱり、みんな女性なのだろうか・・・

だとしたら、少し気まずいし、人数はできれば少なめの方がいいな。

そんなことを思いつつ曜さんの顔に視線を向けると

 

そこには

 

きょとんとした、表情を浮かべる曜さん

 

そして、衝撃的な事実を知る

 

「他に参加する人はいないよ? 元々私一人で行く予定だったしね~。だからよかったよ、一緒に行ってくれる人が見つかって!」

 

・・・・・ぽぇ??

 

 

なに?

 

ていうことは・・・・

 

この合宿

 

 

 

曜さんと二人きり!!??

 

 

 

つづく

 




第13話読んで頂いてありがとうございます!

・・・全然進まなかった

ですがっ、次話より曜ちゃんとの二人きりの合宿が始まります!!

良ければ次話も読んでください!!


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第14話 二人きりの合宿

なんかタイトルがエロい気が・・・いや、気のせいですね。


曜さんとの二人きりの合宿だって?

 

・・・

 

・・・ゴクリ

 

曜さんが放った言葉によって、思わず曜さんと二人で過ごす合宿を行う光景を想像し、唾をゆっくりと飲み込む

 

・・・な、なんか凄そうだ//

 

何が凄いのか具体的にまったく想像もできないが、『二人きりの合宿』という何とも魅力的な響きが、未知なる期待と興奮を僕にもたらし、そう思わず心の中で呟いてしまう

 

 

 

って、いやいやいや!?

 

ピンク色の妄想に脳が支配されかけていたが、なんとか我に返る

危ない

 

日常的に変なことをしてくるお姉ちゃんが相手なら常に警戒しているのだが、曜さんみたいに、まともで爽やかな人に対しては特に警戒をしていないことが仇となった。

もう少しで流されるところだった・・・。

 

「曜さんっ!! 参加者が他には、いないってどういうことですか!?」

 

合宿が具体的にどんなものかは分からないが、少なくとも恋人でもない男女が二人きりで行くのは間違っている。

そう判断し、曜さんに食い掛るが

 

「はいはい、用件は後で聞くからとにかく早く行くよ! 2分後には電車来ちゃうよ!」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

曜さんは小さく肌触りの良い手で、僕の手を握り、駆け足で駅に入っていく。

曜さんの細い腕からは考えられないくらいの力強さでグイッと引かれ、抵抗虚しく、曜さんについていく形で駅へと入っていくのだった。

 

 

 

 

―こうして、僕と曜さんの二人きりの合宿が始まってしまった―

 

 

 

ガタン、ゴトン・・・

 

朝陽が窓から差し込む車内には、田舎というのと時間帯が早いこともあり、他に乗客は、おらず、小刻みに心地よく揺れる電車の音だけが静かに鳴り響き、幻想的な雰囲気を作り出していた。

 

しかし、その空間を楽しむ余裕はなく、僕は険しい表情を浮かべ曜さんに問い詰めていた。

 

「ちょっと、曜さん!! 合宿に他の参加者がいないってどういうことですか!?」

 

本日二度目となる質問を、曜さんにぶつける。

 

「まあまあ、かいと君! どうせ宿がとれてないんでしょ?? じゃあいいじゃん!」

 

しかし、曜さんは、別に問題ないでしょ!と言わんばかりに笑顔を浮かべながらそう答えてくるのみ。

確かにそう言われてしまうと、ぐぅの音も出ない。

まあ、もういいや、考えるのも面倒になってきたし、どうにかなるだろう。

曜さんから逃げられる気もしないし。

 

ヤケクソ気味にそう結論付ける僕は、今、別の問題に悩まされていた。

 

というのも他に客がいないのだから当然席も空いているのだが、曜さんは僕にほぼ密着するような形で隣に座ってきている。

要するに、だ

距離感が非常に近いのだ。

質が悪いのは、曜さんが無自覚だということだ。

わざとくっついてきて、僕の反応を楽しもうとするお姉ちゃんと違い、曜さんはごく自然に距離感を詰めてくるのだ。

無邪気な分、なんだかそこに愛嬌とでもいうのか、を感じてしまい非常によくない。

 

・・・しかも、そのホットパンツ、短すぎるだろ!?

曜さんが下に身に付けている、必要箇所のみを隠しているといっても過言ではないデニム生地からできたボックスパンツのような形状のものを、見て驚愕する。

 

視線をちらりと右下に向けると、白く柔らかそうな太ももが丸見え・・・。

 

・・・だめだ、あまり見ると危険だ。

お姉ちゃんじゃないが、鼻血が出そうな気がする。

 

「ほいっ、かいと君! ポッキーあげるよ!」

 

僕が努めて視線を上に向けながら、自分の中の欲望と戦っていると、曜さんはいつの間にかその手にポッキーの箱を持っており、そのうちの一本を僕に差し出してくれていた。

 

「・・・ありがとうございます。」

 

甘いものが好きな僕は、合宿のことはひとまず置いておいて、ありがたくもらうことにした。

ぱくっ・・・うん、やはり美味しい。

ちなみに僕は、チョコレートが大好きだ、世界で一番好きと言っても過言ではない。

以前にそれをお姉ちゃんに言ったら、バレンタインデーにお姉ちゃんが等身大の自分の姿をモチーフにしたチョコを作ってきたという嫌な思い出もあるが、それを踏まえてもチョコレートは好きだ。

ちなみに勿体なかったので、そのチョコはちゃんと食べた、顔や体をしっかり砕いてからね。

 

「あはは、かいと君チョコ好きなんだね、凄く美味しそうにたべるね?」

 

僕がよほど美味しそうに食べていたのか、おかしそうに笑いながらそう言ってくる。

 

「まあ、チョコは好きなんで・・・」

 

美味しそうに食べる姿を見られて、少し恥ずかしさを感じながらも、素直にそう答える。

・・・なんだろう、曜さん相手なら自分のことを素直に話しても決して馬鹿にされないということが分かるため、案外素直になれてしまう自分がいる。

・・・これが無自覚イケメン曜さんの力か。

 

「そっかそっか! じゃあもっといる?」

 

「じゃあ、もらってもいいですか?」

 

曜さんは僕の返事を確認すると、箱から一本のポッキーを取り出すと、それを僕にくれ・・・ずに、なぜか自分の口にポッキーの先端を持っていき、そのままパクッと咥えた。

 

・・・なんだ? まさか、あげるふりをして、くれないパターンだろうか。

 

チョコをくれなかったことに対し、ゴゴゴと怒りに燃えていると

 

曜さんは、フフフと僕に挑戦的な笑みを浮かべ、

 

「ん!」

 

と、ポッキーを咥えた口を僕の方へ突き出してきた。

 

・・・ん?

なにをしているのだろうか?

ポッキーに掌底を叩き込めばいいのだろうか?

 

怒れる僕はそんなことを考えるが、どうも違うらしい。

曜さんの、手をあれこれ動かすジェスチャーを解読すると、ポッキーの逆の先端の部分を僕も口に咥え、お互いがそのままの状態でポッキーを食べると・・・

 

・・・って、ポッキーゲームじゃないか!?

 

あの、下手をしたらキスしてしまうという・・・

そこまで考えたところで意識せず、視線を曜さんが咥えているポッキーから桜色の唇へと移してしまう。

 

や、やわらかそう・・・。

 

・・・って、だからだめだ!// 

曜さんに対しても警戒態勢が必要だ!

またもやイケない想像をしてしまい、そう決心する。

僕は、そっぽ向いて拒否の姿勢を見せる。

当たり前だ、そういうことは、もっとこう恋人同士とかがするものだ。

 

それを確認したのか「む~」と不満げに声をあげ、ポリポリとそのままポッキーを食べた曜さんが、

 

「も~う、かいと君。ノリが悪いな~。それとも私とポッキーゲームするのは恥ずかしかったのかな?? んん?」

 

曜さんが、意地悪な笑みを浮かべて僕に頬っぺたをつんつくしてくる。

腹が立ったので、ポッキーの箱から何本かを抜き取って、そのまま口に放り込んでやった。

うん、やはり美味しい。

ぼりぼりとポッキーを食べる僕を見て、「あー!私のポッキー!」と喚く曜さんを見て少し溜飲が下がる。

 

その後も、なんやかんや、雑談やからかわれたりを繰り返して、目的地へと向かっていった。

 

 

 

そして

 

電車に揺られること1時間

遂に電車が目的地へとついたようで、僕と曜さんは地上へと降り立った。

 

少し高くなった太陽が僕たちを照らし、まぶし気に辺りを見ると、そこは、

 

田舎だった

 

辺り一面を見渡しても広がるのは、田んぼ、田んぼ、田んぼ・・・

 

いや、途中からなんか凄い田舎になってきたなーとは思ってたけどまさかこんな辺鄙なところにあるとは・・・。

 

「あの、曜さん?」

 

「ん? どうしたの?」

 

「ここなんですか?」

 

「そうだよ!」

 

「こんなところにプールがあるんですか? ていうか民家すら見えませんが・・・。」

 

僕がそう心配そうに質問する気持ちも察してほしい。

本当に何もないのだ・・・。

建物はおろか、人影すら見えない。

虫や鳥が鳴く声が聞こえるのみで、それ以外はなにもない。

春の暖かな風が吹き、自然を感じることができて、気持ちがいいといえばいいのだが、それでも不安の方が大きくなってしまう。

電車の時刻表を見たら、4時間に一本になってるし・・・。

まさか、内浦より田舎なところがあるなんて・・・。

 

「う~ん、この辺にはないかな~、ここから2時間位歩いたところにあるんだ~。」

 

ピシリッ

 

曜さんのとんでも発言に僕の心に亀裂が入るのが感じる。

キャリーケースを引いて2時間とか・・・死ぬんじゃないか?

これならまだ、ネットカフェの方が・・・

 

僕が、あまりの絶望にそんなことを思っていると

 

「ごめんごめん、冗談だよ? ちゃんとバスがあるからね。え~と次のバスが来るまで、30分か・・・早いほうだね、うん、ラッキーラッキー!」

 

僕が予想以上に凹んでいるのを見て慌てたようにそう言ってくれる曜さん。

バスがあるのは、よかったが、それって早いのか?

 

というわけで、自宅から合計で3時間弱ほどかかってようやく僕たちが泊まる宿にやってきたわけだ。

先ほどの駅ほどではないが、周りを見てもぽつぽつと民家がある程度で何かあるようには見えない、確実にド田舎だ。

そして、目の前

 

「・・・ここですか?」

 

「うん、ここだよ!」

 

どう見てもただの民家だった。

瓦屋根で二階建ての年期が入った、ザ・日本の家って感じだ。

てっきり、合宿と言うからに、ビジネスホテルみたいなところを想像していたんだが・・・。

これ、普通の家だよね? 民宿って感じでもないし・・・。

その疑問を曜さんにぶつけ、答えてくれた曜さんの内容をまとめると、こうらしい。

 

どうも目の前に立つ民家は祖父の家のようだ。

目的のプールはここから歩いて20分ほどのところにあるらしい。

そこら一帯には様々なスポーツ施設があるらしく、よく各地からスポーツをしている人が集まるのだとか。

当然、その周囲に宿の施設はあるが、料金が高くあまり学生の身には優しくない。

そこで、たまたまプールからそう遠くない位置に祖父の家があるので、毎年そこで泊まって合宿を行っていたらしい。

―合宿といっても、半日練習で半日遊びといった感じらしいが―

例年なら、他の飛び込みをしている3,4人の友達と来るらしく、その人たちから食費の1000円のみをもらって、一緒に祖父の家に泊まり、合宿をしていたと。

しかし今年は、周りの友達が予定があり、自分ひとりだけになっていて、寂しいな~と思っていたところに、宿が取れず困っている僕が現れた、というわけらしい。

 

つまり、いつの間にか僕は、曜さんの祖父の家に泊まることになっていたらしい。

 

つづく

 




第14話読んで頂いてありがとうございます!

というわけで、二人きりの合宿スタートでございます。

曜ちゃんとどう接していくか考えた結果、元気溌剌な曜ちゃんとは自然多い地で触れ合っていくことで、彼女の魅力を引き出せるのでは・・・と考えこのような展開にしてみました。

どうなっていくかは、温かい目で見守っていただければ・・・と。

では、次回もお会いしましょう!




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第15話 合宿地

「こんにちは~!!」

 

「・・・お邪魔しまーす。」

 

扉を開け放ち、元気な声をあげながら家に入っていく曜さんに隠れるように後ろから控えめに挨拶を述べながら続く。

他所の家の祖父母の家となると、言いようもない緊張が襲ってくるので許してほしい。

ちなみに、引き戸式の玄関の扉には、鍵はかかっていなかった。

曜さん曰く、田舎では普通らしい。

凄いところだ・・・。

 

「おうっ、曜ちゃん来たかい!」

 

奥から姿を現したのは、まだまだ春だというのに日焼けした肌が目立つ、恰幅の良い男の人だ。

 

この人が、曜さんのおじいちゃんなのだろうか?

祖父というには、かなり若く見える、ていうかなんで、そんな筋肉隆々なんだよ・・・。

タンクトップに半ズボンという、今時小学生でも見かけないようなスタイルだが、その筋肉で盛り上がった肉体には、非常に似合っている。

・・・まあ、曜さんのおじいちゃんと聞けばなんとなく納得してしまえるね。

 

「いらっしゃい、曜ちゃん♪」

 

おじいちゃんの後ろから、柔和な笑顔を浮かべながらそう挨拶を述べてきたのは、曜さんのおばあちゃんだろう。

背筋がぴんと伸びており、その凛とした佇まいから育ちの良さを感じる。

 

「おじいちゃん、おばあちゃん! 今年もよろしくね!」

 

「あぁ、ゆっくりしていってくれな! ・・・ところで後ろにいる子が曜ちゃんが言っていた子かい?」

 

・・・見つかってしまった、いや別に隠れていたわけじゃないけど。

何となく、このパワフルなやり取りの流れにアウェー感にさらされ気まずかったから、空気に徹していたが、しっかり認識されていたようだ。

 

「はい、桜内かいとと言います。・・・あの、よろしくお願いします。」

 

「おう! よろしくな! それにしても曜ちゃん、このかいと君は彼氏さんかい?」

 

「ぶっ!?」

 

な、何を言い出すんだ、この人は。

・・・いや、よく考えれば男女二人きりで泊りがけで来ているこの状況を見れば普通そう思うか。

違いますよ、と答えようとした時、

 

「ふふふ~♪ どうでしょうか??♪」

 

「ちょっと//!!??」

 

と、いきなり僕の腕に抱き着いてきて、にしし、と屈託なく笑いながらそんなことを言う曜さん。

むにゅり、と柔らかい感触に顔がカーッと熱を持つのを感じながら、引きはがそうともがくが、曜さんの力には敵わない。

 

「あはは♪ かいと君顔真っ赤っかだ~!」

 

・・・当たり前だ、曜さんにこんなことされたら、大抵の男はこうなるだろう。

せめてもの抵抗に無邪気に笑いながらからかってくる曜さんをジト目で睨む。

本人はちょっとした、ちょっかいのつもりのつもりなのだろうが・・・。

 

おじいちゃんもおじいちゃんでニヤニヤしながら見ないでほしいものだ。

同じくおばあちゃんも、微笑ましいものを見ているかと思いきや、ほっとしたようにこんなことを言ってきた。

 

「あらあら、二人とも仲がとってもいいのね♪ じゃあ問題ないわね♪」

 

「「・・・問題??」」

 

曜さんも同じ疑問を抱いたのだろう、ハモル形でおばあちゃんに聞きなおす。

そこで僕と曜さんは衝撃的事実を知ることになった。

 

 

 

 

 

「あ、あはは~、まさか部屋が一つしかないなんてね~//」

 

「いや、笑い事じゃないですよ!?」

 

流石の曜さんも、少し恥ずかしいのか、その表情はいつもに比べてぎこちないように見える。

 

というのも、今年は泊まるのが曜さん一人の予定だったため、他の空部屋は、物置として利用することにしたらしいのだ。

これが意味することは、僕と曜さんが同じ部屋で寝泊まりするというわけで・・・。

 

おばあちゃんに案内された部屋を見渡す。

ちなみにおばあちゃんは、「じゃあしばらくは若いお二人さんでゆっくりしなさいね、オホホ」なんて言って、どこかへ行ってしまったよ・・・余計なお世話とはこのことだろう。

中央に丸い木の机があるだけの畳式のその部屋は、古さを感じるが、掃除が行き届き、清潔さを感じる。

なるほど、これなら二人で泊まるには広さ面では十分だろう。

そう、広さ面ではね・・・。

 

「他に部屋はないんですかね?」

 

「う~ん、ないと思うよ? 私もさっき他の部屋見たけど、荷物がいっぱいでとても寝泊まりできる状態じゃなかったよ。」

 

「・・・なら、しょうがないですね。僕は廊下に寝ましょうかね。」

 

当然だが、曜さんと同じ部屋で寝る選択肢はない、論外だ。

千歌さんの家でのトラウマもあるしね・・・。

まあ、最近はだいぶ暖かくなってきたし、廊下でも寝ても何とかなるだろう。

 

ところが、それを聞いた曜さんは、一瞬驚いたような表情を浮かべた後、すぐに怒ったように

 

「何言ってるの! だめだよっ!」

 

・・・っ、びっくりしたぁ、予想以上に大きい声を出してきた曜さんに、思わずビクリとなってしまった。

 

「でも・・・流石に同じ部屋で寝泊まりするのもまずいでしょう?」

 

「・・・梨子ちゃんとは毎日一緒に寝てるのに??」

 

本当にお姉ちゃんは、いつも僕を背中から刺してくるね・・・

ていうかなんで曜さんはそんなことを知っているんだよ、いや、どうせお姉ちゃんが嬉々として言いふらしているのだろう。

しかし、こうなったら・・・

 

「確かに、お姉ちゃんとは一緒に寝てますけど姉弟だからいいんですよ! でも僕と曜さんは、姉弟じゃないですよ!」

 

開き直るしかあるまい。

高1の弟と高2の姉が一緒に寝ている方がよほど異常だと思うが、曜さんを説得させるためには仕方がない。

でも今の言い方だと、僕が重度のシスコンみたいに聞こえないだろうか?

いや、気のせいだろう、きっと。

 

「・・・予想以上に、かいと君ってシスコンなんだね。」

 

あの爽やかイケメンの曜さんが少し引いていた。

普通に傷ついたよ。

 

僕が心にダメージを負う中、曜さんは「でも・・・」と続け

 

「梨子ちゃんが言ってたけど、アクアのメンバーは誰でもかいと君のお姉ちゃんになっていいって言ってたよ?」

 

・・・そう言えば、そうだった。

花丸からも同じようなことを聞いたんだったんだ。

なぜ、いつも、その場にいないお姉ちゃんにとどめをうけるのだろうか?

お姉ちゃんは僕にとって呪いかなにかなのだろうか・・・。

 

「というわけで一緒の部屋でも問題ないよね?」

 

項垂れている僕に、勝ち誇ったようにそう言ってくる曜さんを見上げる。

まだだ・・・まだ、諦めるな!

このまま、二人きりになってしまう状況を許してしまうとロクでもないことが起きるに違いない!

千歌さんの時は、足が動かなくなり、花丸の時は、お漏らしをした。

今度は何が起きるのか・・・想像するのも怖い。

 

「だめですよ! 若い男女が一緒の部屋でなんて、間違いが起きたらどうするんですか!!」

 

この期に及んで抵抗されるとは思っていなかったのだろう、曜さんは、面食らったように少し怯む、が

 

「間違いって何さ!!」

 

と、まさかの反撃。

 

「な・・・なにって・・・その・・・あれですよ、あれ//」

 

当然、僕に答えられるわけもない。

 

「ん~、あれって何かな~??」

 

そんな僕に対して、曜さんはニヤニヤしながら馬鹿にしたようにそう言い放ってくる。

くっ! 絶対分かっているくせに・・・っ

ていうか、曜さんもちょっと顔が赤くなってるないか。

多分、本人も僕と一緒の部屋で寝泊まりするのは、恥ずかしいのだろう。

しかし、だからといって僕を廊下で寝させるのは、優しい曜さんは許せない、と。

 

 

 

「はぁ・・・もう、分かりました。この部屋で寝泊まりしますよ。」

 

結局、言い負かされてしまった僕は、一緒の部屋で寝ることを了承。

僕が廊下で寝ると言いつづけたら、曜さんが、じゃあ私も廊下で寝る、と言われたのが決定だとなった。

そう言われたら僕に言い返す余地はもうなかった。

 

・・・はぁ、今から何が起きるのだろうか。

 

 

 

しかし

 

 

 

その後、ここに来るまで長旅だったこともあり、その日は家でゆっくりすることになった僕たちは、適当にゴロゴロして、食事をとり、お風呂に入り、おじいちゃんとおばあちゃんを含めて雑談をして、何事もなく一日が終わりに向かっていく。

 

 

 

・・・おかしい。

 

普通だ

 

何も起こらない

 

最近の流れでいくと、何かが起きるはずだが・・・杞憂だったのか?

 

いや・・・そんなはずはない。

 

油断するな! 何かが起きるはずだ。

 

 

 

「じゃあ、おやすみ。かいと君。」

 

「おやすみなさい。」

 

ここだ、曜さんが寝ぼけて布団に潜り込んでくるとかそんな展開じゃないのか?

僕に隙はないぞ!

 

そんな風に警戒していたが、徐々にまぶたが重くなっていき、やがて夢の世界へ・・・。

 

 

 

「おはよう、かいと君! もう朝だぞ!!」

 

気付けば、日が変わり、朝が着ていた。

目の前には、相変わらず元気な曜さんが、僕の顔を覗き込むように起こしにきていた。

 

 

 

・・・嘘だろう??

 

何も起きなかった??

 

まさか、この合宿・・・

 

凄く平和なのでは??

 

そうだよ・・・こんなに何もストレスがない目覚めの良い朝は久しぶりだ。

 

よかった・・・

 

もう何も怖くない!

 

つづく

 




ここまで読んで頂いてありがとうございます!

すいません、びっくりするくらい進行が遅いですね・・・。

ですが! 次話より曜ちゃんとのイチャイチャを本格的に書いていくつもりなので、ご容赦を・・・。

では、また次話でもお会いしましょう!



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