仮面ライダーリューマ (クロバット一世)
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設定まとめ

小説に出てくる仮面ライダー、主人公、怪人の設定です。


変身ベルト

カグラドライバー

デザイン…巻物を咥えた恐竜

変身ツール…キョウリュウキー

設定…300年前異国から流れてきたスカルキーによって怪人達が人の世を恐怖に陥れていた時代、ある技術者が恐竜に秘められていた力を利用して作り出したベルトで、この力でその時代のスカルは倒され残ったスカルキーも封印されていた。最初に使った人にしか使えない。恐竜が咥えた巻物にある鍵穴にキョウリュウキーを差し込んで回すことで変身出来る。

 

デスカグラドライバー

デザイン…巻物を加えた恐竜の骨

変身ツール…メガロスカルキー

設定…ドラゴンスカルがリューマやガリューの戦闘データとスカルドライバーのデータ、さらに『とある技術のデータ』をもとに開発したドライバー。スカルキー同様、使用者の願望を増幅させる効果が付与されていてスカルキーの力を増幅させることが出来る。変身方法はカグラドライバーと同じ

 

仮面ライダー

仮面ライダーリューマ・ティラノ武装

学園…半蔵学院

変身者…竜司

武器…徒手空拳、ファングクナイ

設定…カグラドライバーで竜司が変身する仮面ライダー。善忍側に渡ったカグラドライバーで変身する。身体能力を強化されており肉弾戦を得意とする。

 

仮面ライダーリューマ・ステゴ武装

変身者…竜司

武器…ステゴスライサー

設定…竜司がカグラドライバーとステゴキーで変身する姿。右手の大型手裏剣ステゴスライサーであらゆる敵を切り裂く。

 

仮面ライダーリューマ・パキケファ武装

変身者…竜司

武器…パッキーナックル

説明…竜司がカグラドライバーとパキケファキーで変身する姿。両手のナックルによる強力なパンチ力とそれを支える脚力が強化されている。

パキケファ武装(不完全態)…拳のみが強化された形態。両手のパワーを支えることが出来ず力を引き出せていない

 

仮面ライダーリューマ・プレシオ武装

変身者…竜司

武器…プレシオスピア

説明…竜司がカグラドライバーとプレシオキーで変身する姿。槍型の武器プレシオスピアの槍術と水を操る力で闘う。

 

仮面ライダーリューマ・命駆モード

変身者…竜司

説明…竜司が仮面ライダーリューマの状態で命駆を行った姿。防御力がほとんどなくなるがパワーとスピードが底上げされている。竜司が臨海修行の時、命駆の修行を行ってる時に閃いた。

 

仮面ライダーリューマ・サイクロン

変身者…竜司

説明…竜司がカグラドライバーとサイクロンメガロキーで変身する姿。破壊竜と呼ばれたメガロサウルスの力である嵐の力を操ることが出来る。風を纏っての空中移動や拳に嵐を纏わせての打撃など多彩な技を持つ

 

仮面ライダーワイルドリューマ

変身者…竜司

説明…竜司がカグラドライバーとワイルドギアとティラノキーで変身する姿。ワイルドギアの力でティラノの能力が高められ戦闘力が上がってるが凶暴性も増しており理性を失ってしまう。

 

仮面ライダーリューマ超絶

変身者…竜司

武器…ワイルドブラスター(バスターモード)

説明…ワイルドリューマを完全に制御した姿。カグラドライバー、ワイルドギア、超絶ティラノキーを用いることで変身できる。ティラノの能力を高めるだけで無くそこに竜司自身の力もプラスさせることで更なる能力の向上にも成功した。

 

仮面ライダーリューマ絆モード

変身者…竜司

武器…絆を結んだ仲間の武器複数

説明…竜司が絆を結んだ仲間の力を背負った姿。仲間達の能力を十全に使うことができ、仲間の数だけ力が増していく。

 

仮面ライダーガリュー・スピノ武装

変身者…炎佐 

武器…スピノアクス

説明…リューマと対をなす仮面ライダー。悪忍側に渡ったカグラドライバーで変身する。一撃の破壊力が強化されている。

 

仮面ライダーガリュー・アンキロ武装

変身者…炎佐

武器…アンキロアイアン

説明…炎佐がカグラドライバーとアンキロキーで変身する姿。パワーと防御力に特化しており鉄球型の武器アンキロアイアンを使って戦う。

 

仮面ライダーガリュー.ブラキオ武装

変身者…炎佐

武器…武羅鬼王

説明…炎佐がカグラドライバーとブラキオキーで変身する姿。凄まじい巨大と大剣『武羅鬼王』で敵を圧砕する。ブラキオモードという恐竜形態になることもできる。

ブラキオモード…ブラキオ武装の恐竜形態。尻尾での攻撃、前足での踏みつけと言った攻撃ができリーチも増す。更に春花に作ってもらった特殊なアイテムを使った傀儡の術で自律攻撃も可能になりガリューとのコンビネーションで相手を追い詰めることも可能。

 

仮面ライダーガリュー超絶

変身者…炎佐

武器…ワイルドブラスター…(キャノンモード)、スピノアクス

説明…炎佐かカグラドライバー、ワイルドギア、超絶スピノキーを用いて変身する姿。スピノの能力と炎佐の能力が掛け合わされておりさらに強い炎の力を使うことができる。

 

 

仮面ライダーデスドラ

変身者…デスドラ

武器…キラーファング

説明…デスドラがデスカグラドライバーとメガロスカルキーで変身する姿。破壊竜メガロサウルスの力を使うことができその破壊のエネルギーであらゆるものを破壊する。  

 

仮面ライダーオルグ

変身者…満月

武器…転身剣トプスパーダ

説明…満月が転身剣トプスパーダとトリケラキーで変身する仮面ライダー。硬い装甲とパワーを活かした剣術を使う。転身剣トプスパーダを盾と剣の状態の片手剣モードと盾と剣を合体させた大剣モードの2種類を使い分ける。

片手剣モード…転身剣トプスパーダの剣と盾を分離させた姿、相手の攻撃を盾でガードして剣で斬り裂くスタイルを得意とする。

大剣モード…剣と盾を合体させた姿、長いリーチと破壊力で一気に勝負を決めるスタイルを得意とする。

 

仮面ライダーガルーダ

変身者…蒼良(そら)

武器…転身弓プテラアロー

説明…プテラノドンを模した弓矢転身弓プテラアローとプテラキーで変身する仮面ライダー。プテラノドンの飛行能力と高い視力を持つ。高い機動力と弓矢での狙撃はもちろん両端の刃で敵を斬ることも出来る。

 

 

シノビークル

仮面ライダー専用バイク。小さな巻物の形から変形してバイクの姿になる。さらに専用のカードキーを差し込むことによってさまざまな能力を発揮できる。

ハヤウマモード…巨大ブースターが装着され、凄まじいスピードとパワーを持つそのスピードで相手に突進して敵を倒すこともできる。

 

カイトモード…シノビークルが変形して背中に取り付けられたグライダーのような形になった形態。空を高速で移動することができる。

 

 

登場人物

竜司(りゅうじ)

誕生日…10月10日

年齢…16歳

血液型…O型

身長…172cm

秘伝動物…ティラノサウルス

好きな食べ物…太巻き

趣味…恐竜博巡り

設定…半蔵学院に通う善忍の少年、忍びとしてのスキルは高いがカッコつけてしょうもないミスをしてしまうことが多々ある。「世界一カッコイイ忍者になる」が目標である。善忍の名門一派の家系で幼い頃母が任務中に死亡、その後父が行方をくらました為、半蔵に引き取られ育てられる。飛鳥とは良きライバルであるがたまにラッキースケベをやらかしてしまうことも…

恐竜が好きで休日はよく恐竜の博物館へ行き一日中観ていたり化石やポスターなどを買ったりする。

 

神門(みかど)

誕生日…1月1日

年齢…16歳

血液型…A型

身長…154cm

スリーサイズ…83(C)/58/84

秘伝動物…鳩

好きな食べ物…桃のジュース

趣味…読書

設定…忍の最高幹部の1人。戦闘能力はあまりないが幻術やあらゆる事象を見通すとも言われる『未来視』の力と膨大な知識と見聞きした情報から適切な作戦を瞬時に立案する優れた指揮能力で若くして忍の最高幹部になった天才。スカルの犯罪が発生する様になってからはスカルに対抗するための手段としてカグラドライバーを修復することを計画した。キャラのイメージはブラックブレットの聖天子

 

名前…炎佐(えんざ)

誕生日…8月15日

年齢…18歳

血液型…A型

好きな食べ物…魚

趣味…釣り

身長…173cm

設定…蛇邪学園に通う悪忍の少年。同じ選抜組を率いるまとめ役。父が悪忍であり、幼い頃から悪忍としての技術を学んでいた。父亡き後は鈴音のもとで学び他の選抜組を勧誘した張本人であり仲間のことを大切にしている。本人曰く「いつ死ぬかわからないからこそ仲間は大切にする」とのこと。焔には勝手にライバル視されており適当にあしらっている。秘伝動物はスピノサウルス

 

名前…光(ひかり)

誕生日…10月21日

年齢…10歳

血液型…O型

好きな食べ物…ハンバーグ

趣味…悪戯

身長…139cm

設定…竜司が街で出会ったスリの子供。両親が亡くなって親戚からも厄介者にされた事により家を飛び出してスリとして生計を立てていた。自分の悪戯に簡単に引っかかる竜司を揶揄っていたがスカルに襲われた際に竜司に助けられて彼に好意を抱く。実は女の子。

 

名前…理吉

誕生日…3月3日

年齢…15歳

血液型…O型

好きな食べ物…チーズかまぼこ

趣味…特訓 

身長…165cm

設定…蛇邪学園に通う悪忍の少年。炎佐の舎弟をしており忍としては落ちこぼれの部類とされておりしょっちゅうドジを踏んでしまう(例…撒菱をばら撒いてしまう、手裏剣を誤った方向に投げて炎佐の頭に刺さる)。しかし熱意はあり一切諦めずに炎佐の訓練についてきたり訓練している選抜メンバーにドリンクやタオルを持ってきたりしていて信頼されており選抜メンバーからはマネージャーのように思われてる。

 

名前…風花(かざはな)

誕生日…3月5日

年齢…15歳

血液型…B型

好きな食べ物…焼き椎茸

趣味…水浴び

身長…162cm

スリーサイズ…88(E)/59/87

設定…忍の隠れ里、風神村に封印された破壊竜ことメガロサウルスの封印の鍵を守護する封印の巫女。髪と肌が白く竜司までもを魅了するほどの美貌を持つ。母親が先代の巫女だったが周囲の反対を押し切って外の忍と結婚し風花を出産した。しかし、5歳の時にスカルが襲撃して両親が死んだ後、後任の封印の巫女になる。それからは外部との接触を絶たれて暮らしていたが偶然竜司と遭遇し外の世界について聞かされ彼に興味を持つ。事件解決後は竜司に好意を抱くようになり彼に口づけをした。

 

名前…竜舌(りゅうぜつ)

誕生日…11月5日

年齢…40歳

血液型…O型

好きな食べ物…おでん

趣味…キャバクラ

身長…186cm

秘伝動物…鰐

設定…竜司の父親、10年前にとある任務に就くため竜司を半蔵の元へと預けており、任務の事もあって妻の命日に墓参りにも来れずにいた。その為竜司からは嫌われており本人も竜司の気持ちを理解している為、「自業自得」と割り切っているがやはり堪えている。其の三十六で竜司に渡したお土産は竜司が恐竜好きと言うのを調べて彼の好きなティラノサウルスの装飾のついた物を探し回って見つけたもの。実は最上忍。昔霧夜と『おでんと湯豆腐どっちが最強の鍋か』で喧嘩した事がある

 

満月(みつき)

誕生日…12月24日 

年齢…16歳

血液型…不明

好きな食べ物…ふきのとう

趣味…女の子とデート

身長…175cm

秘伝動物…トリケラトプス

設定…秘立月閃忍学館の2年生で現選抜メンバーと共に黒影に育てられていた。黒影のことを心から尊敬しており彼を侮辱される事を一番嫌う。仮面ライダーに選ばれる前は一般クラスでサボりの常習犯でありよく他の悪友たちと遊んだりエロ本なんかを読んだりしており雪泉も頭を悩ましていた。しかし、曲がったことが嫌いな性格でもあり困っている女の子を助けたりしているため学校ではファンクラブができるほど、また、人望も厚くいろんなタイプの親友がいる。

 

蒼良(そら)

誕生日…7月7日

年齢…21歳

血液型…AB型

好きな食べ物…酒全般

趣味…馬のレース

身長…178cm

秘伝動物…プテラノドン

設定…抜け忍になった炎佐たちの穴埋めに秘立蛇邪学園に入学することになった忍。元は月閃の卒業生だが実は中立組織『灰色』の構成員。雅緋とは幼い頃一緒に育った仲でありお互いよく知っていたが月閃時代、両姫と付き合っていたことを雅緋は知らなかった。両姫の死後は両備、両奈の2人の面倒を見ていて実の妹の様に可愛がっている。

 

鉄心(てっしん)

誕生日…10月2日

年齢…40歳

血液型…O型

好きな食べ物…いちごパフェ

趣味…犬の世話

身長…189cm

秘伝動物…シェパード

設定…忍の最高幹部の1人。竜舌、霧夜、弥勒は共に半蔵の弟子であった。悪忍や犯罪者の取り締まりや妖魔からの防衛などを任されており緊急時には部下を率いて前線で指揮を取るなどの行動力もある。半蔵の弟子時代は厄介ごとばかり起こす他の仲間(主に竜舌)に手を焼いていた。普段は厳しいが妻と娘と愛犬にはつい甘くしてしまう。

 

弥勒(みろく)

誕生日…3月6日 

年齢…40歳

血液型…不明

好きな食べ物…不明

趣味…不明

身長…181cm

設定…スカル達の指導者。竜舌、霧夜、鉄心と共に半蔵の弟子だった。現在はスカルを率いる指導者である。

 

 

 

怪人

スカル

スカルキーと呼ばれる鍵を人体に差し込むことによってその人間の『願望』を解き放ち異形に変える。鍵にはそれぞれ生物の力が宿っており元になった人間に応じて様々な生物の力が宿る。また、その姿は歴史の中で語られた妖怪がモチーフとなっている。

・バイソンスカル

変身者…スキンヘッドの男

願望…『気に入らない奴らをぶっ壊したい』

妖怪モチーフ…牛鬼

概要…バイソンの力を宿したスカル。強力なパワーと鋭い角を用いた突進、さらに優れた耐久力を武器にする。

 

・アントスカル

変身者…無し

願望…無し

妖怪モチーフ…餓鬼

概要…蟻の力を宿した量産型スカル。いわゆる戦闘員に該当する。通常のスカルと違って変身者を用いず知能は低い。

 

・カメレオンスカル

変身者…サラリーマンの男

願望…『刺激的なゲームを楽しみたい』

妖怪モチーフ…天井嘗

概要…カメレオンの力を宿したスカル。自身の姿を透明にする他、舌を高速で撃ちだし敵を攻撃する。

 

・マンティススカル

変身者…村雨

願望…『飛燕を取り戻したい』

妖怪モチーフ…鎌鼬

概要…蟷螂の力を宿したスカル。鋭い鎌による斬撃を得意とする。感情の昂りによって形態がどんどん変化する特徴がある。

フェーズ1…最初に変身したときの姿。両手の鎌も少し小さく戦闘力もそんなに高くない。

フェーズ2…リューマとの戦闘で変化した姿。両手の鎌が倍以上の大きさになり斬撃を飛ばすことが出来るようになる。

フェーズ3…最終的な姿。全身から鋭い鎌が生えてそこから無数の斬撃を放てるようになる。戦闘力もさらに高くなり斬撃の威力も上昇している。

 

・ライノセラススカル

変身者…格闘家の男

願望…『無敵の肉体が欲しい』

妖怪モチーフ…塗壁

概要…犀の力を宿したスカル。圧倒的なパワーと硬い鎧と盾を武器にする。中でも盾の硬度は凄まじく、さらに一度受けた攻撃を記憶してより強度を増す能力がある。倒すには盾を上回る威力の攻撃で倒すしかない。

 

・ウォートホッグスカル

変身者…美術館館長の男

願望…『未来ある若者の夢を壊したい』

妖怪モチーフ…朧車

概要…イボイノシシの力を宿したスカル。強力な突進攻撃を武器にする。両肩の車輪を回してエネルギーを増幅させ背中のブースターで突進の威力を上げることができる。

巨獣態…メドューサによって強化された姿。巨大になりパワーと耐久力を持つが理性はなくなり暴走状態になる。

 

・オクトパススカル

変身者…厚化粧のオネェ

願望…『美しいパーフェクトボディーになりたい』

妖怪モチーフ…磯女

概要…蛸の力を宿したスカル。柔らかい体でどんな隙間にも入り込むことが出来、さらに体の触手を自在に操り相手を捕らえる。口から吐く墨は空気に触れると爆発する。

巨獣態…メドューサの薬によって強化された姿。巨大な蛸の姿になり8本の足で相手を攻撃する。墨爆弾の威力も上昇し水中戦を得意とする。

 

・ジャガースカル

変身者…中年の警官

願望…『悪を根絶やしにする』

妖怪モチーフ…火車

概要…ジャガーの力を宿したスカル。鋭い鉤爪と身軽な体を持つ。口や手から強力な火球を放つだけでなく全身に炎を纏って強力な突進を放つ。

 

・ラットスカル

変身者…葉月先生

願望…『富持つ者への復讐』、『お腹いっぱい食べたい』、『子供達の幸せ』

妖怪モチーフ…ヒダル神

概要…鼠の力を宿したスカル。体から無数の口を出してなんでも食べることができる。さらに食べたものを己の一部として使うとこができる。

巨獣態…ラットスカルが力を蓄えたことで変身した姿。食べたものの栄養を使って忠実な子鼠を生み出すことができる。また、子鼠を生み出す力を使って強力な熱線を放てる。

子鼠…巨獣態が作り出した分身体、本体と違って色は灰色。捕食を続けることで同じ母鼠として子鼠を作り出せる。スカルの分身体なので忍びの術でも倒せる。

 

・アーミーアントスカル

変身者…無し

願望…無し

妖怪モチーフ…古戦場火

概要…軍隊アリの力を宿したスカル。アントスカルの強化版であり知能も少し高い。手に持った槍と高い連携能力で襲いかかってくる。

 

・スコーピオンスカル

変身者…朱音

願望…『美しい血(色)に染まりたい』

妖怪モチーフ…網切

概要…蠍の力を宿したスカル。両手の鋭い鋏を武器に相手を斬り裂く。頭部にある蠍の尾には猛毒がありその毒で相手もじわじわと殺すことができる。スカルの力で作られた毒なので同じ毒から作り出した解毒薬でなければ解毒剤は作れない。両手を刃にして手を交叉し巨大な鋏を作る大技を持つ。

 

・道元怪人態

変身者…道元

願望…『世界を支配したい』

妖怪モチーフ…ぬらりひょん

概要…妖魔の力を与えられた特殊なスカルキーで道元が変身した姿。高速移動、黒い球体状のエネルギー弾、剣による斬撃を使う。更に、倒された怨楼血に力を与えて復活させることもできる。

 

・ビートルスカル

変身者…不明

願望…『破壊を愉しみたい』

妖怪モチーフ…赤鬼

概要…カブトムシの力を宿したスカル。スタッグスカルと共に仮面ライダーデスドラの部下になり破壊竜メガロサウルス復活を企てた。巨大な剣を武器にし硬い装甲と怪力を持つ

 

・スタッグスカル

変身者…不明

願望…『破壊を愉しみたい』

妖怪モチーフ…青鬼

概要…クワガタの力を宿したスカル。ビートルスカルと共に仮面ライダーデスドラの部下になり破壊竜メガロサウルス復活を企てた。双剣を武器にし素早い動きで敵を翻弄する。

 

・コックローチスカル

変身者…宝石泥棒

願望…『遊ぶ金が欲しい』

妖怪モチーフ…油すまし

概要…ゴキブリの力を宿したスカル。素早い動きと両手の爪が武器。口から可燃性の油を放つが威力はそこまで高く無い。

 

・ラビットスカル

変身者…太った小柄な男

願望…『女を思い通りにしたい』

妖怪モチーフ…桂男

概要…ウサギの力を宿したスカル。生気を吸い取った女性を操る事ができる。操った女性を使った人海戦術や腕利きの女性を使っての攻撃を得意とする。

変身者の男の女にモテないことへと憎しみからこのような能力が目覚めた。

 

・ウルフスカル

変身者…飛鳥(憑依)

願望…無し

妖怪モチーフ…犬神

概要…狼の力を宿したスカル。ヨハネが研究中に偶然作り出したスカル。スカルキー自体に自我があり人間に寄生して変身する。最初は獣のように唸るだけだがより適した体に憑くと徐々に言葉を離していき最終的には人間と変わらない知能を得る。また、憑依した相手の技を覚えられる。

 

超越魔獣・鵺

変身者…無し

願望…無し

妖怪モチーフ…鵺 

概要…複数のスカルの力を宿した生命体。破壊されたスカルキーに他者に憑依する能力を持つ妖魔を憑かせて蠱毒によって殺し合わせそれをグリフォンスカルに取り憑かせることで生まれた存在。複数のスカルの能力を使えそれを複数掛け合わせた攻撃を使うことができる。

 

零座怪人態

変身者…零座

願望…無し

妖怪モチーフ…無し

概要…道元が生み出した妖魔衆の一体、他の妖魔衆と違いリューマとガリューの能力を掛け合わされている。素体となる妖魔の細胞には怨楼血の細胞が使われている。普段は道元に従順だが実際は道元を見下している。

 

魔神怨楼血

変身者…零座

願望…『神になる』

妖怪モチーフ…無し

概要…零座が神楽、奈楽、道元、真ナル怨楼血を取り込んだ姿。神楽が取り込んだ妖魔衆の能力も使うことができ、複数の能力を同時に使うことができる。また、神楽の能力も限定的に使うことも出来る。

 

スローススカル

変身者…引きこもりの男

願望…『引きこもりライフを満喫したい』

妖怪モチーフ…おとろし

概要…ナマケモノの力を宿したスカル。周囲と気配を同化し認識出来なくなる能力を持つ。戦闘能力はほぼ無く素の力は野良犬に負けるほど

 

ロードスカル

スカルたちの進化系。並のスカルを遥かに凌駕する力を宿しておりリューマの必殺忍法で倒されても鍵は壊れない。モチーフは神話で語られる幻獣になっている。

・メドューサスカル

変身者…華蛇(燕尾服の女性)

願望…『陛下の力になりたい』

幻獣モチーフ…メドューサ

干支モチーフ…巳

概要…幻獣メドューサの力を宿したロードスカル。蛇腹剣による剣術を得意としており長いリーチからの攻撃を仕掛ける。頭部の蛇から紫色の炎を放ちさらには石化の光線を目から放つ。結界を作ることも可能で小さな島を覆えるほどの規模。

巨獣態…メドューサが自身の体に強化の薬を注入して変身した姿。巨大な蛇の姿になり攻撃力が底上げされる。しかし攻撃は大雑把になり半ば暴走に近い状態。

 

・グリフォンスカル

変身者…名無し(神門の護衛者だった忍)

願望…『世界の頂点に立ちたい』

幻獣モチーフ…グリフォン

干支モチーフ…酉

概要…幻獣グリフォンの力を宿したロードスカル。風を操る能力があり銃を武器にする。

超獣態…蠱毒によって生まれ自身を取り込もうとした超越魔獣・鵺に打ち勝ったことで進化した姿。通常のロードスカル状態を遥かに超える力を手にして銃では無く両手の鉤爪で戦う。飛行能力と風を操る能力も強化している。

 

・ケルベロススカル

変身者…朱音

願望…『美しい血(色)に染まりたい』

幻獣モチーフ…ケルベロス

干支モチーフ…戌

概要…幻獣ケルベロスの力を宿したロードスカル。朱音がスコーピオンスカルから進化した。

 

・ヴァンパイアスカル

変身者…弥勒

願望…不明

幻獣モチーフ…ヴァンパイア

干支モチーフ…子

概要…幻獣ヴァンパイアの力を宿したロードスカル。スカル達のリーダー的存在で『陛下』と呼ばれている。スカルを人類の希望としていて人をスカルにしてその中から誕生するロードスカルを12体揃えようとしている。

 

・ドラゴンスカル

変身者…ヨハネ

願望…不明

幻獣モチーフ…ドラゴン

干支モチーフ…辰

概要…幻獣ドラゴンの力を宿したスカル。巨大な大剣と黒炎を武器にしている。更には高速移動を使って敵に一気に接近する事も出来る。

 




現在の設定を書いておきました。
随時更新していくのでよろしくお願いします。


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其の一 忍者で高校生!!の巻

息抜きに書いてみました。
作者は閃乱カグラはゲーム実況とアニメしか見てないので至らないところがあるかもですがよろしくお願いします。


 

深夜の夜…東京の都市に並ぶビルの上を颯爽と駆け抜ける1人の忍の姿があった。少年の手には巻物が握られており、後方からは追っ手と思われるくノ一の忍達が群れをなして迫ってくる。

 

「なかなかしつこいな…だかっ!!」

 

少年は追っ手の投げる手裏剣を巧みにかわすと自身も苦無を追っ手に向けて投げつけた。投げられた苦無は追っ手ではなくその手前に突き刺さる。追っ手がふと見ると苦無には小さな球体がついており瞬間______

 

ドカン!!

 

大きな音とともに球体から煙が立ち込めた。

 

「よっしゃっ計算通り!!」

 

少年は笑みを浮かべながら大きく跳び上がった。

 

「はっはっはー!!捕まえられるものなら捕まえてみなー!!」

 

少年は得意げに空中で連続3回転しながら笑い続けた。

 

「はっはっはっは…は…アレ?」

 

しかし少年は気付く、勢いよく跳びすぎたばかりに着地予定のビルを通り過ぎてしまったことに

 

「うわぁぁぁぁぁお助けぇぇぇぇぇぇ!!」

 

少年の悲鳴虚しく大きな衝撃音と共に少年は近くのゴミ捨て場に頭から突っ込んだ。

 

「あイタタタ…やっちまったな…巻物は?」

 

少年は慌てて周りを見渡すと足元に巻物が一つ転がっていた。

 

「ふぅ…これ無くしたら洒落にならないもんな」

 

ほっとした顔で巻物を懐にしまうと少年は立ち上がって埃を払った。

 

「ふむ…やっぱジャンプの後に3回転は危ないな…それに距離感もちゃんと掴まないと…ん?」

 

ふと前を見ると先ほど追いかけてきた追っ手が自分を取り囲んでいる。

 

「「……………………。」」

 

あたりに静寂が立ち込め…

 

「やっちまったぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

月夜の空に悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

1000人以上の生徒を抱えるマンモス校という表の顔を持ち、由緒正しい家系に生まれた少年少女達を優秀な善忍に育て上げる裏の面を持つ――国立半蔵学院。

 

その学院の旧校舎には忍部屋と呼ばれる半蔵学園の中でも優秀な人材である選抜メンバーだけが入ることを許可された場所があった。

そこでは選抜メンバーの少年少女達が武器を手入れしたり、忍の知識を学ぶ為に古い書物を読んだりと各々の忍の道を極める為に努力していた――

  

「はぁぁぁ…疲れた…」

 

そんな忍部屋の一角で先日追っ手に追われていた忍の少年、竜司(りゅうじ)はぐったりとしながらため息を吐いた。

 

「お疲れ様です。この間は大変だったみたいですね」

 

そんな竜司に声をかけた黒髪の少女は同じ半蔵学院の三年生、斑鳩である。

 

「斑鳩先輩…はい、本当にマジで危なかったですよ…」

 

「昇進試験でふざけたりするからですよ。真面目にやっていればあなたの実力なら問題ありませんでした」

 

ため息を吐きながら斑鳩は竜司を叱り始めた。

 

「ちょいと待ってくれ斑鳩先輩。俺はふざけてなんか無いですよ」

 

「真面目にやってたら空中で3回転なんてしませんよ」

 

「うぐっ!!」

 

斑鳩の言葉が竜司の胸にグサリと刺さった。

 

「なんだなんだ竜司、お前またなんかカッコつけてヘマしたのか〜?」

 

そこへ現れた金髪の少女は同じく半蔵学院の三年生、葛城である。

 

「ヘマじゃない!!ジャンプの加減を間違えただけだ!!」

 

「ったく本当竜司はカッコつけるのが好きだよな〜」

 

葛城は竜司の言葉ににししと笑った。

 

「良いですが二人とも…俺が目指すのは唯の忍者じゃないんだ…『世界一カッコイイ忍者』なんだ!!」

 

そういうと竜司はビシッとポーズを決めて叫んだ。

 

「まったく…意味がわからん」

 

「ぐはっ!!」

 

竜司は突然容赦ない一言を浴びせられそちらを向くと、眼帯をつけた少女がイカを食べながらこちらを見ていた。

彼女は柳生、半蔵学院の一年生であり竜司の後輩である。

 

「おい柳生!!お前先輩に対してそんなこと言って良いとおもってるのか!?」

 

「………(プイッ)」

 

「ちくしょー!!」

 

竜司は柳生の態度に文句を言ったが完全にスルーされたショックで地面に沈んだ。

 

「元気出して竜司くんっ♪雲雀もその夢応援するから!」

 

そんな竜司に慰めの言葉をかける桃色の髪の少女が一人。彼女は雲雀、柳生と同じ半蔵学院の一年生である。

 

「雲雀…ありがとな…やっぱお前は良いやつだ…(グスン)」

 

「……ふん」

 

竜司は涙ぐみながら雲雀に慰められ、柳生はそれを少し面白くなさそうに並んでいた。

 

「ていうか飛鳥って今日から戻ってくるんだろ?まだ来てないのか?」

 

ふと竜司は一人教室にいないのに気づいた。今日は自分とは別の昇格試験から戻ってくる日である。一度家に戻ってから学校へ向かうと言ってたのでそろそろ来る頃のはずだ。

 

「先程男子生徒を撒こうとしていたのを見ましたよ」

 

「またか、さては校門から堂々と入っていったな」

 

「そろそろ来る頃かと」

 

斑鳩の言葉に竜司はため息を吐きながら昔と変わらない幼なじみに呆れた。

 

ガラッ

 

「ふぅ〜、間に合った〜」

 

すると扉からポニーテールの可愛らしい少女が慌てて入ってきた。彼女は飛鳥、半蔵学院の二年生であり、竜司の幼なじみである。

 

「お帰り飛鳥」

 

「りゅーくんただいま!!」

 

竜司が飛鳥に挨拶すると飛鳥も嬉しそうに返事をした。

 

 

その時、

 

 

ボンっ!!

 

「うぉっ!?」

 

突然爆発が起きて煙幕の中から一人の男性が出てきた。

 

「全員揃っているな?」

 

彼の名は霧夜、竜司たちの忍の教師である。

 

「霧夜先生、おはようございます。」

 

全員が一礼する。

 

「飛鳥。」

 

「は、はい!」

 

「ご苦労だった。」

 

「いえ、それ程でも…」

 

「何赤くなってんだよ。」

 

照れてる飛鳥に竜司はやれやれとため息をついた。

 

「えっと〜?」

 

霧夜はそのまま飛鳥の成績表は拝見する。

 

「巻物を奪われ掛けて袿を使用。その際に忍装束を破損。市街地での煙玉の使用。残り時間ほぼ0………ほぉ?こりゃあ凄い!」

 

「え?」

 

霧夜の驚きに飛鳥はキョトンとした。

 

「最低合格ラインぴったりだ!狙って出来るもんじゃないぞこれ。」

 

「変な関心しないで下さい!!」

 

「お前ってなんかある意味すごいことをやる天才だよな」

 

「りゅーくんも変な褒め方しないでよ!!」

 

「そうだぞ竜司、お前も人のこと言えんしな」

 

「え?」

 

霧夜の言葉に竜司はポカンとした。

 

「さっきお前の成績表が届いたがこっちもこっちでなかなか見事なものだった」

 

そう言うと霧夜は今度は竜司の成績表を読み上げた。

 

「巻物を気づかれず罠も全てすり抜けて回収したのはいいが追っ手から逃げる際に市街地で苦無と煙玉の合わせ技なんてもんをわざわざ使用。その後空中3回転なんて馬鹿やった上に着地ミスしてゴミ箱に落下。危うく追っ手に捕まりそうになってこっちも時間ギリギリ…最初の加点と後半の減点のプラマイゼロでなんと平均点ピッタリだ!こっちも狙ってできるもんじゃないぞ」

 

「りゅーくんだって似たようなもんじゃん」

 

「俺はちゃんと平均点採れてますぅー!!」

 

飛鳥と竜司は互いに五十歩百歩な喧嘩を始めた。

 

「まったく…お前はスキルは高いんだから変なミスをしないようにしろよ?実戦で変な死に方したら一生笑いもんだぞ?」

 

「うぅ…ハイ…」

 

「まぁともあれ合格は合格だ。二人とも今後精進するように」

 

「「はいっ!!」」

 

「さて、今日の修行は模擬戦だ。全員着替えて体育館に集合するように」

 

ボン!!

 

 

霧夜先生が告げ終えるとまた煙が発生し

 

 

次に目を開けるともう霧夜先生の姿はなかった。

 

 

 

「霧夜先生…やっぱあのドロンの腕がまた上がってるな…やっぱああいうこだわりって大事だよな…」

 

男子更衣室で着替えながら竜司は霧夜先生に関心していた。

 

「ふむ…それにしてもやっぱ任務をこなしかつカッコ良くキメられるようにしないとな…かと言って任務に失敗したらカッコ悪いし…」

 

『世界一カッコ良い忍者』…それは竜司が目指す道、誰がなんと言おうと譲らない道なのである。

 

「おっとそろそろ急がないと」

 

竜司は時間が少し経っていることに気づき、着替え終えると蚊取り線香の入った豚の置物からレバーを引っ張ると隠し扉が現れ竜司はその穴に入って行った。着いた場所は体育館で霧夜先生が竹刀を持って待っていた

 

「揃ったようだな。では今回の修行は体術の訓練をする。それぞれ2人づつ組手をしてもらう」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

「まずは…竜司と飛鳥、お前たちだ」

 

「「はい!」」

 

竜司と飛鳥は互いに向かい合って構えをとった。

 

「どれくらい腕をあげたか見定めてやるよ」

 

「私だってりゅーくんには負けないよ」

 

お互い笑みを浮かべる。

 

「準備はいいな、では始め!!」

 

 

 

 

 

 

 

竜司SIDE

 

「ふう、疲れた疲れた。」

 

結局体術では俺の勝ちであった。

 

「りゅーくんやっぱり強いね、結局一勝もできなかったよ」

 

飛鳥は残念そうにため息をついていた。

俺と飛鳥は幼い頃から一緒にいる、いわゆる幼なじみというやつだ。俺は物心つく前に忍びの母は任務の最中に命を落とし、父は任務で家を開けるようになり母の師でもあった飛鳥の祖父のもと一緒に育ったのである。

 

「まぁ飛鳥も強いけど俺だってじいちゃんの教えを受けてんだぜ。悪いが飛鳥にだって負けてられないよ」

 

「うん、でも私だって負けないんだから」

 

飛鳥は俺の顔を見て微笑んだ。

 

「あたいの圧勝だったな〜」

 

「剣では負けませんわよ」

 

「にしし〜負け惜しみ〜」

 

「ち、違いますわ!」

 

「うぅ〜やっぱり柳生ちゃん強いな〜」

 

「大丈夫だ、雲雀も上達しているぞ」

 

そうしているうちに他のみんなも集まってきた。

 

「そういや今何時?」

 

俺がふと時計を見ると時間は12時になっていた。みんなでどこで食べようか話していると

 

「注目!出張のお土産で〜す!」

 

飛鳥が実家の太巻きをたくさん出してきた。

 

「おぉ〜太巻きじゃねぇか!!でかした飛鳥!!」

 

俺と飛鳥は互いに太巻きが好物である。特に寿司屋を営んだるじいちゃんの太巻きは絶品である。俺たちは飛鳥の持ってきた太巻きを平らげることにした。

その時、

 

ボンッ

 

煙玉とともに霧夜先生が現れた。

 

「お前たち、すまんが今日の午後は緊急任務だ。」

 

「緊急任務?」

 

俺たちは突然のことに少し驚きながらも真剣そうに話す霧夜先生の話を聞いた。

 

「あぁ、情報漏洩を防ぐためだとかでさっき急に伝えられてな。すまんがお前たち急いで向かってくれ」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「はいっ!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺はこの日の事を一生忘れない。一人の忍学生に過ぎなかった俺が、国の否、世界を守る闘いに巻き込まれることになったこの日の事を

 

 

 

 




すみません、仮面ライダーに変身するのは次回からになると思います…


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其の二 変身で仮面ライダー!!の巻

ようやく仮面ライダーに変身です



「そろったなお前たち、では今回の任務を説明する。」

 

俺たちが集まると霧夜先生が任務の説明を始めた。

 

「まず今回の任務には同行する方がいる。いいか、決して粗相があってはいかんぞ」

 

霧夜先生は冷や汗を流しながら俺たちに注意を促すと、扉から真っ白な衣装に、輝く銀髪が特徴の少女が大勢の護衛を連れて現れた。

 

「皆さま初めまして。私は神門(みかど)と申します。この度はよろしくお願いいたします。」

 

その言葉に俺たちは驚愕した。なぜなら彼女は忍び達を束ねる最高幹部の一人であるのだからだ。あらゆる事象を見通すとも言われる『未来視』の力と膨大な知識と見聞きした情報から適切な作戦を瞬時に立案する優れた指揮能力を持って現在の地位を得た天才である。

 

(おいおい、こんな大物が出てくるなんていったいどんな任務なんだ?)

 

あまりの大物の登場に俺は驚きを隠さずにいた。

 

「皆さま、本日は急な任務で誠に申し訳ありませんでした。情報漏洩を防ぐためにも直前まで伝えることが出来ませんでした。」

 

神門様は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「今回皆様に頼みたいのは私の護衛と警護、そして『ある力』の防衛です。」

 

神門様は改めて俺たちに任務を説明を始めた。

 

「まず最初に近年起こっている『スカル』による怪事件についてです。」

 

『スカル』……それは近年目撃されるようになった異形の怪物達である。其の正体は特殊な力を秘めた『鍵』を使った人間であるとされ、それぞれがさまざまな生物の力を宿していることがわかっている。そして、奴らは厄介なことに通常兵器の攻撃はほとんど効かず忍びの術も決定打にはならないところである。

 

「300年前…異国より現れた『スカル』によってこの国は大きな被害を受けました…。そして、近代になって再び『スカル』の脅威が現れ今なおあちこちで人々に恐怖を与えています。故に我々も奴らに対抗する力として、300年前、『スカル』による脅威からこの国を救った力を復活させることにしたのです。」

 

そう言うと神門様は俺たちに向き合い言葉を続けました。

 

「結果、その力を復活させることに成功したのですが本日その研究施設が襲撃されその力が破壊されてしまうと言う未来が見えました。私はその未来を変えなければならないのです。どうか、私に力を貸していただけないでしょうか?」

 

そう言うと神門様は頭を下げて俺たちに再び頼み込んだ。

 

「「「「「「りょ、了解しました!!」」」」」」

 

俺たちは一時呆然としたがすぐに返事をした。

 

 

 

 

「神門様…」

 

竜司達に気づかれない様に霧夜は神門に声をかけた。その理由は忍学生に過ぎない彼らにこの任務を任せるのは危険すぎる為である。

 

「霧夜殿…あなたの心配はもっともです…ですが…これは必要なことなのです…彼らの存在が…運命を変えるのに必要なことなのですから…」

 

「あいつらが…!?」

 

神門の言葉に霧夜は驚愕した。

 

「私の『未来視』は全てを見通せるわけではありません…ですがわかるのです…彼らによって運命が大きく動きだすのが…どうか私を信じてもらえますでしょうか…」

 

「わかりました…あなた様を信じます」

 

神門の言葉に霧夜は頭を下げた。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

「では頼んだぞ」

 

暗い倉庫で二つの影が対峙していた。一つは燕尾服を着た無表情の女性、しかしもう一つは人の影をしていなかった。その姿は辛うじて人の様であったが肥大化した両手、まるで鎧の様な筋肉、さらに頭には二本の角が生えておりまるでバイソンを彷彿させた。

 

 

「『アレ』の使い手がこれ以上増えれば我々の脅威となる。ようやくありかを突き止めたのだ。『適合者』が現れる前に必ず破壊しろ。」

 

 

「お任せください、必ずや例の『力』を破壊してみせますよ」

 

怪物は燕尾服の女性の言葉を聞き、余裕の表情で答えた。

 

「念のためだ、これを渡しておく」

 

そう言うと燕尾服の女性は骨の装飾があるおぞましい白色の鍵を渡した。

 

「へへへっ、忍びなんて雑魚どもにここまでするこたぁないと思うけど、まぁもらっておきますよ」

 

怪物は鍵を受け取るとそのまま歩き出した。

 

「全ては我らが『陛下』の野望の為に…」

 

それを見つめながら燕尾服の女性は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか地元にこんなところがあるなんてな……」

 

「私も全然気がつかなかったよ…」

 

俺と飛鳥は現在、『スカル』に対抗するための『力』が保管されていると言う研究施設の廊下を歩いていた。そこは一見小さな不動産屋の様に見えたがエレベーターを降りた地下には巨大な空間がありそこに研究施設があるのだった。現在斑鳩先輩、かつ姉、柳生、雲雀は周囲の警備についていた。

 

「ここの存在を知るのは忍び達の中でも幹部を含んだ一部の人間だけですからね。今まで誰にも知られずに研究を行い先日ようやく復元に成功したのですよ」

 

俺と飛鳥の何気ない呟きに神門様はクスリと微笑みながら答えた。

 

「神門様、そろそろ…」

 

そんな神門様に護衛の男の一人が声をかけた。

 

「すみません、では皆さん行きましょうか」

 

神門さまは俺たちを連れて目的の部屋へと向かった。

そこには白衣を着た人々が集まっており手にはアタッシュケースが握られていた。

 

「神門様、お待ちしておりました。此方が例のものでございます。」

 

そう言って白衣の人たちの代表と思われる男はアタッシュケースを神門様に渡した。

 

「よくここまでやってくれました。あとは…」

 

「はい、『適合者』を見つけるだけですね」

 

スーツケースを受け取ると神門様は感謝の言葉を述べた。

 

そのとき、

 

 

 

 

 

ドカァァァァン

 

 

 

 

 

「______っなんだ!?」

 

突然大きな爆発音がしてあたりが震えた。

 

「…来ましたか」

 

神門様は顔を強張らせながら呟いた。

 

「皆さん落ち着いてください、まずは『これ』を安全な場所へ…」

 

そう言うと神門様はアタッシュケースを手にして俺たちを連れて移動しようとした。

 

 

 

 

バァンッ

 

「みぃ〜つけたぁ〜」

 

 

 

しかしその時、スキンヘッドに大きな傷痕がある大男が凶暴な笑みを浮かべながら扉を突き破って現れた。それを見て神門様は体を強張らせた。

 

「…っ、もうここまで…」

 

「へへへっ随分護衛を集めた様だが全員今頃伸びてるぜ。忍なんて偉大なる『陛下』に『力』を与えられた俺様の敵じゃねえんだよ」

 

そう言うと男は懐から骨の装飾がある黒い鍵を取り出した。

 

『バイソン!!』

 

男が鍵を起動すると低い音で音声が鳴り響き男の胸元に鍵穴が現れた。

そのまま男はバイソンキーを鍵穴に差し込み回すと鍵穴からどす黒い泥の様なものが吹き出して男を包み込んだ。そのまま泥は男を包み込み肥大化した両手、まるで鎧の様な筋肉、さらに頭には二本の角が生えておりまるでバイソンを彷彿させる怪物、バイソンスカルへと変貌した。

 

「あれが…『スカル』…」

 

初めて見た『スカル』に俺は体が震えた。

 

「おのれぇ!!」

 

神門様の護衛の男は部下達と共に武器を手にバイソンスカルへと向かい合った。

 

「お前達は神門様を連れて安全な場所に…急げぇ!!」

 

護衛の男は俺と飛鳥に向かって叫んだ。

 

「は、はい!!」

 

「こっちです!!」

 

俺と飛鳥は慌てて神門様を連れて隠し通路へと向かった。

 

「ちっ…面倒くさいな。こいつを使うか」

 

バイソンスカルは少しイラつくと今度は白色の鍵を取り出し起動した。

 

『アント!!』

 

鍵が起動すると地面に鍵穴が現れバイソンスカルが白色の鍵を投げると鍵は鍵穴に吸い込まれ鍵穴に刺さると鍵が回り鍵穴からどす黒い泥が吹き出して蟻を彷彿させる怪物、アントスカルが複数出現した。

 

「行け」

 

バイソンスカルが命じるとアントスカル達は忍達へと襲いかかった。

 

 

 

 

 

「神門様!!こっちです!!」

 

俺と飛鳥は隠し通路を使って外へと向かっていた。一刻も早く神門様とアタッシュケースの中身を守る為に

 

「なんとしても…これだけは…」

 

神門様はアタッシュケースを大切そうに抱き抱えながら呟いた。

 

「っ!!危ない!!」

 

すると、何かに気づいた飛鳥が俺たちを突き飛ばした。

 

ドカァァァァン

 

すると突然目の前の地面が爆発した。

 

「飛鳥!!」

 

「う、うう…」

 

爆発に巻き込まれた飛鳥は傷だらけになって意識を失っていた。

 

「おっといたいた。見つけたぜ。」

 

土煙が晴れると複数のアントスカルと共にバイソンスカルが現れた。

バイソンスカルは天井を突き破って無理やり地上へと戻ってきたのだ。

 

「ほら、さっさとそいつを渡しな。痛い目に会いたくなければな」

 

バイソンスカルの言葉に神門様はケースをがっしりと抱き抱えバイソンスカルを睨みつけた。

 

「させるかぁぁぁぁ!!」

 

俺は怒りに身をまかせながら忍転身して殴りかかった。しかし、バイソンスカルの体はまるで鎧のように硬く手応えがまるでなかった。

 

「鬱陶しいなぁ…とっとと寝てろ!!!」

 

「ぐはぁ!!」

 

バイソンスカルの一撃が俺の腹に叩きつけられ俺はそのまま吹っ飛んで壁にぶつかった。

 

 

 

 

 

「ふんっ他愛ないな」

 

バイソンスカルは竜司を吹き飛ばすとそのまま神門の方へと歩き出した。神門は体を強張らせアタッシュケースを強く抱きしめた。いかに忍びの最高幹部の一人であっても神門には闘う力はあまりない。元々彼女は部隊の統率や作戦を練ると言った後方支援による功績で今の地位を得たからである。

 

「おい…どこ見てんだよ…てめぇの相手は俺だぞ…」

 

バイソンスカルがふと後ろを見ると先程吹き飛ばしたはずの竜司がふらつきながらもそこに立っていた。

 

 

 

 

 

「てめぇ…まだ死んでなかったのかよ…」

 

バイソンスカルは俺を見ながら鬱陶しそうに此方に近づいてきた。

 

「さっさとくたばれよ!!」

 

バイソンスカルの拳が俺に目掛けて繰り出されるが、俺はなんとかそれを躱してバイソンスカルの胴へと拳を再び放った。

 

「だから…効かねえって言ってんだろうが!!」

 

「ぐはっ」

 

しかし、ダメージを負った体で放った拳は弱くバイソンスカルには効かず再び殴り飛ばされた。

 

「はぁ…はぁ…まだまだぁ…」

 

俺は再びバイソンスカルから神門様と倒れている飛鳥を守る為に立ち上がった。

 

「てめぇ…何度やっても無駄なんだよ…いい加減諦めろ!!」

 

バイソンスカルは鬱陶しそうに此方を睨みつけ怒鳴った。

 

「うるせえよ…無駄とか関係無いんだよ…」

 

そうだ…そんなの関係ない…なぜなら…

 

「勝ち目がないからって諦めるなんてよ…そんなの…カッコよくねえだろ…」

 

「はぁ?」

 

「俺は…『世界一カッコイイ忍者』になるんだ…お前みたいなやつに…尻尾巻いて逃げるわけにはいかねえんだよ!!」

 

『世界一カッコイイ忍者』にどうやったらなれるのかはまだわからない…だが少なくともこんな奴に恐れて諦めるなんてのは…絶対にカッコ悪い、そんなの絶対に嫌だ!!

 

「だったらとっととくたばれよクソがぁ!」

 

バイソンスカルは俺に向かって拳を振り上げようとした。

その時、

 

「っ!?なんだこりゃぁ!?」

 

突然無数の鳩がバイソンスカルへと襲いかかった。

 

「竜司さん!!」

 

声の方を向くと神門様が此方へ近寄ってきた。

 

「あの鳩は…」

 

「私の幻術です…時間稼ぎ程度ですが…それよりもこれを…!!」

 

そう言うと神門様はアタッシュケースの蓋を開けた。その中には恐竜が巻物を咥えた様な形をしたバックルとオレンジ色の鍵が入っていた。

 

「これを使えばあのスカルに対抗できます。」

 

「で、でもこれ俺が使って…」

 

「今はこれしか方法がありません!!責任は私が取ります!!」

 

そう言って俺にバックルと鍵を渡した。

 

「てめぇら…なめやがってぇぇぇぇぇぇ!!」

 

すると、バイソンスカルが鳩の幻術を薙ぎ払って現れた。

 

「…やるしかないか」

 

俺は覚悟を決めてバックルを腰に当てた。

 

『カグラドライバー!!』

 

すると、バックルから帯がでて、それが俺に巻きつきベルト『カグラドライバー』になった。瞬間、俺の頭の中に使い方が入ってきた。

 

『ティラノ!!』

 

そして鍵を起動すると鍵から音声が鳴り響いた。そして俺はその鍵、ティラノキーをカグラドライバーの巻物の右側にある鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み込んだ。

 

すると、俺の姿はオレンジ色のティラノサウルスを思わせる装甲を纏った仮面の忍へと姿を変えていた。

 

「すげえ…」

 

自分でも体から力が漲ってくるのがわかった。

 

「くそっ…変身しやがった… まぁ良い…てめぇを倒しちまえば済む話だ」

 

バイソンスカルは苛立ちながら此方を睨みつけていた。

 

「この力なら…」

 

俺は改めてバイソンスカルへと向き合った。

 

「殺せぇ!!」

 

「ギギィッ!!」

 

バイソンスカルはアントスカルに指示するとアントスカルは俺へと襲いかかった。

しかし、

 

「せいやぁっ!!」

 

「ギギィッ!!」

 

俺が拳を振るうとアントスカルの一体が吹き飛ばされ爆散した。

 

「すげぇな…どんどんいくぜ!!」

 

俺はその勢いでアントスカル達を殴り、蹴り、次々と倒していった。

 

「クソが…だったら俺がやってやる!!」

 

バイソンスカルは怒りながら俺へと殴りかかってきた。しかし、先ほどと違ってその動きは容易く躱せる動きであった。

 

「ふんっ!!」

 

「ぐはぁ!!」

 

俺はその拳を躱すとお返しにバイソンスカルの胴に渾身のパンチを打ち込んだ。すると、バイソンスカルは吹き飛ばされ壁へと激突した。

 

「よっしゃ効いてる。どんどんいくぜ!!」

 

俺はバイソンスカルへと走ると飛び蹴りを喰らわし続け様に連続パンチを打ち込んだ。

 

「馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁ!!この俺が…こんなクソガキにぃ!!」

 

バイソンスカルは激昂すると、二本の角を俺へ向けて突進しだした。俺はその角を掴み、突進を止め、

 

「オリャァっ!!」

 

ボキンッ!!

 

力任せに角をへし折り蹴り飛ばした。

 

「グワァぁぁぁぁぁ!!お、俺の角がぁ!!」

 

角を折られたバイソンスカルは叫びながら吹き飛んだ。

その時、俺は思い出した。カグラドライバーを身につけたときに頭の中に入ってきたこの『力』の名前を、そして、昔じいちゃんに聞いた、その身を異形に変え悪と闘う仮面の戦士の名を…そして俺は名乗る

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

『恐竜』と『忍』、2つの力を纏う戦士の名を。

 

「ふざけやがって…ぶっ殺してヤルゥゥゥゥ!!」

 

ふらつきながらも立ち上がったバイソンスカルは怒りながら此方へと向かってくる。俺はすぐにカグラドライバーの恐竜を叩いた。

 

『必殺の術!!』

 

音声と共に足にエネルギーが込められていく。俺は飛び上がるとティラノサウルスのオーラを全身に纏い渾身のキックが繰り出された。

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

「グワァぁぁぁぁぁ!!」

 

俺の蹴りはバイソンスカルへと叩き込まれバイソンスカルは吹き飛ばされ爆発した。

 

 

 

「ぐ…うう…」

 

煙が晴れると男が気を失っており近くに粉々に砕けた鍵が落ちていた。

俺はカグラドライバーから鍵を抜くと変身は解け元の姿へと戻っていた。

 

 

 

「これが…人類の希望…」

 

それを見ながら神門は静かに呟いた。

 

 

 

 

 

そして竜司は知ることになる。これが…いずれ世界を救う闘いの始まりであることを

 

 

 

 




長くなりましたけどようやく変身させることが出来ました!!
不定期ですがこれからも応援よろしくお願いします!!


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其の三 襲撃で敵ライダー!!の巻

早速二号ライダー登場です


暗く長い廊下を一人の女性が歩いていた。その女性はバイソンスカルをカグラドライバー破壊に向かわせた燕尾服の女性である。彼女は顔を強張らせ唇を噛みしめながら廊下を歩いていた。

 

「お久しぶりですね『メデューサ』」

 

ふと声が聞こえて『メデューサ』と呼ばれた彼女が声のした方を向くと華びやかな服を身に纏った金髪の男が立っていた。  

 

「『ドラゴン』…なんの様だ…」

 

「随分な挨拶ですね。それにその顔、せっかくの美人が台無しですよ?」

 

鬱陶しそうにする『メデューサ』に『ドラゴン』はやれやれとため息を吐いた。

 

「『陛下』から聞きましたよ?『リューマの鎧』の使い手が現れたんですってね?」

 

「…………っ!!」

 

『ドラゴン』の言葉に『メデューサ』はさらなる怒りに歯軋りをした。

 

「まぁいいじゃないですか?『陛下』だって「気にするな」っておっしゃったのでしょ?」

 

「……『陛下』が許しても……私自身が許せないのだ……『陛下』の脅威になりかねない存在の誕生を許してしまったことがな……」

 

その言葉で『ドラゴン』はクスリと微笑んだ。『メデューサ』ほどに『陛下』を慕い、忠誠を誓っているものはそういないことを改めて実感したからである。

 

 

 

 

 

 

「これはこれは、我らの幹部が二人もいらっしゃるとは驚きですねぇ、んふふふふ」

 

突如下卑た笑い声が聞こえ、そちらを向いたがそこには誰の姿もない。ただしかし、飲みかけのブランデーのボトルが宙を浮いており、たしかに何者かが存在していた。

 

「お前か『カメレオン』」

 

「聞きましたヨォ、『バイソン』の馬鹿がヘマしたんですってねぇ。あんな力任せの脳筋なんかに任せるからですよぉ〜」

 

すると、何も無かった場所から毒々しい緑色をいたカメレオンの姿をしたスカル、カメレオンスカルが現れ『メデューサ』を明らかに見下しながら下卑た笑い声を響かせた。

 

「なんの様だ?さっさと言って失せろ」

 

「簡単な事ですよ。例のリューマとかいう奴、俺に始末させてくださいませんか?」  

 

「……なにが狙いだ?」

 

「俺はねぇ、早くあんた達みたいな『選ばれし十二体の獣』の一体になりたいんですよ。そのためにももっと経験値を集めてレベルアップしないと」

 

『選ばれし十二体の獣』……その言葉に『メデューサ』はため息を吐きながら呆れた。しかし、『ドラゴン』は面白そうに微笑んだ。

 

「良いでしょう、『陛下』には私の方から伝えておきます。期待していますよ。」

 

『ドラゴン』の言葉にカメレオンスカルは嬉しそうに笑い姿を消した。

 

「いいのか?あの馬鹿に勝手にやらせて」

 

「良いじゃないですか。せっかくあの男もやる気なんですから。それに、彼が我らと同じ『選ばれし十二体の獣』へと進化すれば『陛下』の計画も進展するでしょうし」

 

『ドラゴン』は静かに笑いながらカメレオンスカルのいた方を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「これが300年前にこの国をスカルから救った力…………」

 

今俺は神門様に与えられたカグラドライバーを見つめている。

俺が変身してバイソンスカルを倒してから数日後、他のみんなも大した怪我は無く無事退院した。あの時は勢いで変身してしまったが一つ問題があった。それは……

 

「まさか俺しか使えないなんてな……」

 

あの後神門様たちが試した結果、他の人間にカグラドライバーを使わせてもなんの反応も示さなくなってしまったらしい。どうやら最初に使った適合者の人間にしか使えなくなってしまうそうだ。当時は俺以外にも神門様や上層部が選んだ候補者が数名いたらしいが俺が使ってしまったが故にそれも意味をなさなくなってしまった。当時は上層部でも「たかが忍学生に代々守り続けていた力を継承させるとは何事か」「我らで選んだ優秀な忍に使わせるべきだった」などといった神門様を糾弾する声もあったらしいがあの場で使わなければその力も失われていた可能性もあった事と俺が実際にスカルを倒した事もあって特に責任問題には発展しなかった。

そのかわり、俺にある任務が与えられた。

 

『スカルの犯罪、発見があり次第その原因のスカルの討伐並びに事件の解決』

 

つまりスカルによる犯罪と思われる事件などが発生した場合俺が解決する様にといったものだった。

 

「今回の件は緊急事態だったからな、特にお咎めとかはない様だ。だがこいつを使えるのがお前しかいない以上スカルにはお前が対処するしかないそうだ。」

 

霧夜先生はため息を吐きながら俺にそう伝えた。霧夜先生も今回の件で俺が危険な任務を受けることになったことを心配してくれている様だ。

 

「大丈夫ですよ霧夜先生、この力を手にした以上全力でやってみせます!!」

 

「竜司……すまない、一忍学生にすぎないお前にこんな使命を任せてしまって……」

 

霧夜先生は再び俺に頭を下げたが俺は平気だ。それどころか俺は実のところワクワクしている。この使命が俺の目指す『世界一カッコイイ忍者』ヘの道に繋がる気がしてならないからだ。

 

「では他の5人は竜司のサポートをしてもらう。頼んだぞ」

 

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

霧夜先生の言葉に飛鳥たちも答えた。彼女たちが俺の力になってくれるならなお心強い

 

「では早速お前たちに任務を与える!!」

 

早速俺たちに任務が与えられた。面白い、どんなスカルが相手でも全力でこなしてやるぜ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか……商店街の不良退治って……」

 

覚悟を決めたら思った以上にしょぼい任務で俺はゲンナリしてしまった。

 

「商店街に不良が屯していて手を焼いてるんだって」

 

ゲンナリする俺に飛鳥が話しかけた。

 

「あ〜あ、この前の任務みたいにVIPを極秘裏に護衛とか大使館に潜入して機密情報の入手とか思ったのに。」

 

かつ姉は俺同様に不満らしく愚痴っていた。

 

「そう言う国家的任務は、学院を卒業し、立派な忍になられた諸先輩方の仕事ですわ。」

 

そんなかつ姉を斑鳩先輩はやれやれと叱る

 

「でも、逆に難しいよね。一般相手にあくまで忍として人知れず退治するなんて」

 

「だからこそ、修業なのです」

 

「あ~はいはい」

 

斑鳩先輩がもっともな事を言うとかつ姉がめんどくさそうな態度で言った

 

「あの~、それで不良さんはどこにいるの?」

 

雲雀がみんなに訪ねてきた

 

「…ただ闇雲に探しても時間の無駄ですね」

 

「じゃあここは手分けして探すことにするか」

 

「そうですね、ではそうしましょう」

 

みんなも俺の提案にのってみんなで手分けして探すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、どこにいるかな不良ども」

 

俺は路地を歩きながら不良を探していた。

 

「さっさと解決して商店街の治安を取り戻さないとな」

 

さっきは凹んだがこういった街の平和一つ守れない様じゃ『世界一カッコイイ忍者』になれるはずがない。

 

「……ん?」

 

今ふと誰かに見れた気がして振り返るがそこには誰もいなかった。

 

「気のせいか……」

 

俺は再び捜索を開始した。

 

 

 

 

 

 

「危ない危ない、なかなか勘のいいガキじゃないか」

 

再び歩き出す竜司を遠巻きに見つめながらカメレオンスカルは姿を現した。

 

「さて、今日はこの辺で良いかな。別に今やらなくたって良いわけだし。それに……」

 

カメレオンスカルは竜司の向かった方を睨みつけた。

 

「まさか『アイツ』が出てくるなんてな。流石に『アイツ』とリューマを二人まとめて相手するほど俺は馬鹿じゃねえ」

 

そういうとカメレオンスカルは再び姿を消して立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

「不良〜出てこーい!!」

 

俺は路地裏を一人歩いて不良を捜索していた。

 

「駄目だ、全然見つからない…一体どこにいるんだ?」

 

俺が再び歩き出したその時、

 

「っ!!あれは…!!」

 

遠くの空に『集』という文字が浮かび上がった。

 

「忍狼煙…あっちにいたのか!!」

 

忍狼煙…訓練された忍のみが探知出来る特殊な狼煙である。その効果は周囲1キロ程度にも及ぶ。

 

「おっしゃあ!!待ってろ不良め!!」

 

俺が忍狼煙の方向へと走り出そうとしたその時______突然空間が歪んだ。

 

「っ!?これは…忍結界!?」

 

忍結界とは、忍同士の戦闘に用いる時空を超えた特殊な戦闘空間である。これが現れたということは…

 

「敵の忍がいる…?」

 

「待て」

 

突然声が聞こえてそちらを向くと、紅いスピノサウルスの様な装甲を纏った仮面の忍が現れた。その腰には俺のものとは多少異なるデザインだがカグラドライバーが装着されていた。

 

(なんだこいつ…まさか…)

 

「お前も…仮面ライダーか?」

 

「仮面…ライダー?あぁ、お前この鎧のことをそんなふうに呼んでるんだな。くくく、仮面ライダーか…悪くない呼び方だな」

 

俺の質問に一瞬ポカンとしたが忍はすぐに理解して笑い出した。

 

「そうだな…じゃあ俺はお前風に名乗るなら…仮面ライダーガリュー…とでも名乗らせてもらおうか」

 

紅い仮面の忍______仮面ライダーガリューは名乗りを終えると左手に紅い片手斧を握り、

 

「とりあえず…お前の強さ、試させてもらうぞ!!」

 

俺に向かって斬りかかってきた。

 

「んなっ!?」

 

俺はとっさにその攻撃を躱すと慌ててカグラドライバーを取り出した。

 

「やるしかないか…」 

 

俺はそのまま覚悟を決めてカグラドライバーを腰にはめる。

 

『ティラノ!!』

 

そしてティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

俺は変身するとガリューへと殴りかかった。

しかし、ガリューはその攻撃を軽々と躱すと片手斧で斬りかかってきた。

 

「うおっ!?」

 

俺は慌ててそれを躱したがバランスを崩して転がってしまう。

そしてガリューはさらに攻撃を畳み掛けてきた。俺もすぐに起き上がって躱していくが徐々に追い詰められ片手斧の斬撃を受けてしまった。

 

「うわぁっ!!」

 

斬撃を喰らった俺は壁に吹き飛ばされたがリューマの装甲は硬くダメージはかなり抑えられていた様でなんとか立ち上がった。

 

「おいおい、こんなもんでやられないでくれよ?こっちは結構期待してたんだからよ」

 

ガリューは俺を見て静かに笑い片手斧をこちらに向けていた。

 

「くそっ…舐めやがって…だったら…」

 

俺はカグラドライバーの恐竜を叩いた。

 

『必殺の術!!』

 

音声と共に足にエネルギーが込められていく。俺は飛び上がるとティラノサウルスのオーラを全身に纏い渾身のキックが繰り出した。

 

「面白い…なら俺も」

 

するとガリューはカグラドライバーから鍵を抜き取ると手に握った片手斧についた鍵穴に鍵を差し込み回した。

 

『必殺の術!!』

 

すると、音声とともに片手斧にエネルギーが込められて巨大な紅い斬撃が放たれた。

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

「必殺忍法!!煉獄一閃!!」

 

オレンジ色のオーラを纏った俺のキックとガリューの巨大な紅い斬撃が衝突し辺りに爆発が生じた。

 

俺は爆発で吹き飛ばされるもなんとか起き上がった。

 

「これなら…あいつも」

 

「今のは…良い攻撃だった…」

 

煙が晴れるとそこにはピンピンしているガリューが立っていた。

 

「マジかよ…」

 

俺は再び身構えるがガリューは先ほど忍狼煙の見えた方を向くと

 

「そろそろ合流の時間か」

 

そう言って別方向へと歩き出した。

 

「次はもっとちゃんと闘おうな」

 

そう言うとガリューはそのまま立ち去っていった。

 

「はぁ…はぁ…なんだったんだあいつ…」

 

闘いが終わり俺は変身を解除した。

 

「急いであいつらのところに行かないと…」

 

俺は慌てて忍狼煙のあった方へと走った。

 

 

 

 

 

時間が過ぎて夕方になった。

斑鳩先輩たちと合流すると彼女たちは不良たちと遭遇したがその不良たちが人形であり突然襲いかかってきた様だ。明らかに狙いは彼女たちだった様である。

 

その時、

 

「わ~~!!」

 

雲雀が途中、道端に落ちてた缶で足を滑らせてしまった

 

「大丈夫?」

 

「あっはい」

 

倒れる雲雀をくるくる髪に頭に大きなリボンをつけた女の人が助けてくれた

 

「やっぱりかわいい♪」

 

「へっ?」

 

「うふっ、じゃあね!」

 

「綺麗な人~♪」

 

雲雀ちゃんは自分を助けてくれた女性に見惚れていた

 

なんかぼそりとつぶやいていたような気がする

 

 

「みんな~」

 

 

前から声が聞こえ振り向くと飛鳥がはしってきたた。

なぜかびしょ濡れで

 

「お前…なんつー格好してんだ」

 

「えっと。これにはちょっとした事情が…あれ、不良は?」

 

「呑気な奴だな…こっちは不良どころの話じゃなかったのに」

 

全く…相変わらずなんだから…こっちはもう一人の仮面ライダーと闘ってたのに

 

「とりあえず飛鳥は霧夜先生のお説教だな。坐禅で済めば良いけど」

 

「そんな~」

 

飛鳥の悲鳴が夕焼けの中に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

夕日が照りつけるビルの上に仮面ライダーガリューが現れカグラドライバーから鍵を抜き取る。すると、紅い髪の学ランを纏った少年があらわれた。

 

「随分と楽しんできたみたいね炎佐(えんざ)」

 

突然頭上から声が聞こえ、炎佐と呼ばれた少年がそちらを向くと先ほど雲雀とぶつかった女性がこちらをみていた。

 

「まぁな、途中スカルが一匹こっちを伺っていたが小物だったからな、スルーしてきた。そっちはどうだ春花?」

 

「ええ、なかなか楽しめたわ。どの子も私のお人形さんとして楽しめそうね」

 

春花と呼ばれた少女はご機嫌な様子で答えた。

 

「焔さんの方はたしか半蔵の孫と会ったのですわよね?そちらはどうでした?」

 

長い髪で白と黄緑を主体にしたドレスの少女、詠が褐色肌の少女、焔に尋ねる。

 

「相当な使い手だと期待したのだが…」

 

「ようするに半蔵学院恐れるに足らずってことやろ?」

 

緑のショートヘアで黄色に黒い渕が入った服を着て下はジーパンの女性、日影は少々期待はずれと言いたげな顔で聞いた。

 

「ふん、今はまだ泳がせておけばいいのよ。いずれ思い知るだろうし」

 

さらに別の声が聞こえ、声するほうをむけると傘をさした左目を眼帯で閉じてゴスロリのような服を着た少女、未来がいた。

 

「そうだな、いつかあいつらも思い知るだろうな」

 

炎佐はビルの上から街を眺めてつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真の忍とは俺たちのことを言うってな」

 




悪忍サイドの仮面ライダーも登場させました。
今後彼が竜司とどのように接するのか楽しみにしていてください


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其の四 召喚で弱点発覚!?の巻

少し遅くなりましたが最新話です。
しかしすみません、今日はバトル無しです。


「ふむ…」

 

任務から数日後、俺たちは朝の通学路を歩きながら考え事をしていた。

 

「どうしましたか?」

 

そんな自分に気づいたのか斑鳩先輩が話しかけてきた。

 

「いや…この前の襲撃のことを思い出していて…」

 

「例の傀儡と…仮面ライダーのことですか?」

 

「はい…」

 

俺は霧夜先生の言葉を思い出していた。

 

 

 

 

 

「「「「「「傀儡!?」」」」」」

 

不良退治から戻った俺たちは霧夜先生に襲撃者について聞かされた。傀儡とは、即ち操り人形である。「かいらい」とも言う。また、傀儡を自在に操作して相手を翻弄する忍術もそう呼ばれている。

 

「話を聞く限りだと、お前達を襲った相手は、相当な傀儡使いだな。」

 

「「「「「「傀儡使い!?」」」」」」

 

「あー…リアクションは誰か一人が代表する様に」

 

全く同時にリアクションする俺たちに霧夜先生はため息を吐いた。

 

「それと霧夜先生、俺が闘った仮面ライダーについても何か知ってますか?というか仮面ライダーって俺のほかにいるんですか?」

 

傀儡使いも忘れてはいけないがそれよりも俺が出会ったガリューと名乗る仮面ライダーのことが気になってしょうがなかった。

 

「…その前に一つ質問良いか竜司」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮面ライダーってもしかしてリューマの鎧のことか?」

 

霧夜先生は苦笑いを浮かべながら俺に聞いてきた。

 

「あ、はい。昔じいちゃんに聞いた人知れず悪と闘う仮面の戦士に似てるから…ダメですか?」  

 

なんか…ダメだったのかな…?結構かっこいい名前だと思うんだけど…

 

「いや、まぁダメじゃないが…まぁこの際それで統一するか…」

 

やれやれといった感じに霧夜先生は俺の質問に答えた。

 

「存在する」

 

「やっぱり…」

 

「300年前の文献にもリューマの鎧の対となる『ガリューの鎧』と言うものがあったとされる…お前があった仮面ライダーは…おそらくそれで間違い無いだろう」

 

「なんでガリューは俺に襲いかかってきたんですか?」

 

「………今はまだ、何も言えん」

 

霧夜先生は静かに何かを隠しながらも話を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

「なんか…嫌な予感がするな…」

 

大きな争いが起きるような…嫌な予感が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある渓流。忍転身した斑鳩が立っている。

 

「秘伝忍法!鳳火炎閃!」

 

炎の鳳凰が現れると家宝の刀「飛燕」を抜いて、周囲を火に包む。そして火を一太刀、二太刀と斬り裂く。

 

一方忍転身したかつ姉が、崖から大ジャンプした。

 

「こい!アタイのドラゴン!!!!」

 

風が蒼い龍を象る

 

「秘伝忍法!トルネード・シュピンデル!!!!!」

 

ブレイクダンスをするかのような動きで葛城が竜巻を呼び起こす

 

「秘伝忍法」

 

柳生が傘を開くと同時にイカを召喚する

 

「薙ぎ払う足」

 

するとイカが自身の十本の足を使い回転し凄まじい渦を作る

 

「よっしゃいくぜ!!」

 

そして俺も目の前の巨大な岩へと走り出す。

 

「秘伝忍法!!激烈拳!!」

 

俺が拳を振るうとオレンジ色のティラノサウルスのオーラが岩を砕いた。

 

 

現在俺たちは秘伝忍法の修行を行なっていた。

秘伝忍法、またの名を召喚忍法とよび心でイメージした生物を具現化させ自らの力とする忍の奥義である。

 

「斑鳩も葛城も見事な完成度だ。柳生は相変わらずのイカぶりだったぞ」

 

「相変わらず霧夜先生はとりあえず褒める達人ですね」

 

霧夜先生は何かを褒める際、このようになんかよくわかんない褒め方をするのである。

 

「あははは竜司、俺を褒めてもなにも出てこないぞ?」

 

褒めては無いんだが

 

「まぁ竜司、お前もなかなか腕をあげたな」

 

霧夜先生は俺にそう微笑んだ

 

「お、本当ですか」

 

「あぁ、今までで一番のティラノぶりだったぞ」

 

一番のティラノぶりってなんだ?

 

「さて、次は飛鳥、雲雀」

 

「「はっ、はい」」

 

飛鳥と雲雀は慌てた様子で返事した

 

「どうだ?今日こそ見せてもらえそうか?」

 

「が、頑張ります・・・」

 

「あのぉ〜、霧夜先生・・・」

 

雲雀が軽く手をあげる

 

「なんだ雲雀」

 

「召喚するのってどんな子でもいいんですよね?」

 

「あぁ。想像上、実在上の生き物でも問題はない。ただし召喚は生まれ持っての特性や相性にあったものが好ましいぞ」

 

霧夜が皆にわかりやすく説明した。

 

「ず~っと考えててひばり一番仲良くなれる子を決めました」

 

「ほ~では見せてもらおう」

 

「は~い!」

 

雲雀は距離をとり気合いを入れ始める。

 

「ひばりちゃんがいつになく真剣、いったい何を呼ぶんだろ?」

 

「エロイものだといいな~」

 

「意味がわかりません」

 

「でもなんかすごいやつが出てきそうな気がするなぁ〜」

 

雲雀はおっちょこちょいなところがあるが同時に頑張り屋なので俺もなにが出てくるか期待していた。

 

「…頑張れ雲雀」

 

雲雀を妹のように可愛がっている柳生も心配そうに見つめていた。

 

「お願い…来て」

 

雲雀が念じると

 

現れたのは超どでかいピンクのうさぎだった

 

「来た~!!」

 

「うさぎ?」

 

「しかもピンク?」

 

「雲雀らしくていいな」

 

考えてみたら雲雀ってうさぎらしいところがあるのでぴったりである。

 

「ぶ~ん。ぶ~ん♪」

 

雲雀を乗せうさぎはすごい勢いで山の中に入っていき木々を蹴散らしながら山道をかける

 

「すげ~」

 

「見掛けに拠らない破壊力ですわ」

 

 

 

「わ~いできた~!!」

 

雲雀がみんなの場所へ戻ってくるとウサギは消え、雲雀は召喚に成功したのが嬉しいのか大喜びした。

 

「雲雀、なかなかのうさぎっぷりだったぞ」

 

「ありがとうございます」

 

霧夜も雲雀を褒める

 

「やったなひばり」

 

「うんっ!!」

 

雲雀が褒められたことに柳生も嬉しそうだった

 

「バニーか。バニーといえばバニーガール。こりゃみんなでバニーガールにならねえとな」

 

そう言うとかつ姉が服の中からバニーガールのコスチュームを取り出す。

 

「いつの間にそんなものを?」

 

「装束は忍の基本だろ?」

 

「そんな格好で動いていたら逆に目立つわ」

 

バニーコスで敵に捕まるなんて末代まで馬鹿にされてしまう。

 

「さて、最後は飛鳥だな」

 

「えっ、はっはい。頑張ります…」

 

 

 

 

飛鳥は霧夜先生に言われ集中し生き物を召喚しようとした。しかし、その日は何も現れないまま授業は終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…」

 

授業が終わって俺はシャワー室で汗を流していた。

 

「飛鳥のやつ…落ち込んでなきゃ良いけど…」

 

小さい頃から一緒にいるから分かる。飛鳥は強い、まっすぐ自分の道を歩き続けている。そんな彼女がいたから俺は自分の道を見つけることが出来たのだ。だから俺はそんな飛鳥の力になりたい。

 

「そういえば前にじいちゃんに教えたもらったっけな。」

 

じいちゃんこと飛鳥の祖父にして俺の師匠、半蔵は、忍の世界では知らぬ者は居ない手練れであり、内閣特務諜報部・諜報一課内特殊機密諜報員、即ち忍部隊の創設者でもあった。その功績を称え、また目標とする意味で、この学院は、今や伝説と呼ばれる忍、半蔵の名を冠してるのだった。そのじいちゃん曰く秘伝動物は一族の家系に影響する場合が多く、特に代々忍びの一族であればあるほどその影響は強いとのことである。

 

「じいちゃんに聞いてみれば活路が開けるかもしれない。」

 

ただ一つその生物が飛鳥の嫌う「アレ」でなければの話だけど…

 

 

 

 

「で…なにこれ?」

 

目の前にはビニールプールがあり、かつ姉がと雲雀が水着姿で遊んでおり、飛鳥も水浸しになっていた。

 

「ねえねえ、飛鳥ちゃんも竜司くんも一緒に遊ぼ」

 

雲雀は俺と飛鳥を遊びに誘う。

 

「いや俺はさっきシャワー浴びたばかりで…」

 

「そんなこと言わずに〜そっりゃぁ!!」

 

「えっ、ちょっ」

 

「きゃあっ!?」

 

断ろうとするとかつ姉が俺を引っ張ってプールに落とした。

 

「たくっかつ姉…(むにゅん)」

 

「ひぁあ!?」

 

俺が起き上がろうとすると手に何か柔らかい感触がした。

 

「え…これってまさか…」

 

ふと下を見ると真っ赤な顔の飛鳥の胸を俺が鷲掴みしていた。

 

「あ…その…ごめん」

 

「ひゃああああああありゅーくんのエッチーーーー!!!」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺は飛鳥に平手打ちされ吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

すると、煙玉の爆発とともに再び霧夜先生が現れた。

 

「霧夜先生、今日の修行は終わったはずですが?」

 

「言い忘れたことがあってな」

 

「言い忘れたことですか?」

 

「あぁ、今後もしばらくの間、外部との接触は厳禁とする」

 

突然の霧夜先生からの外部との接触の禁止令

 

その理由に心当たりがあった俺はそれを霧夜先生に聞いた。

 

「例の仮面ライダーと傀儡使いですか?」

 

「そういうことだ」

 

「へっ、あんな奴らアタイが返り討ちにしてやるよ!!」

 

「おうともよ、その時はリューマになって俺も」

 

「ダメだ!!」

 

自信満々にいうかつ姉と俺に一括する霧夜先生

 

「これは命令だ。葛城」

 

「はっ、は~い」

 

「竜司もスカルの事件がある時以外は外部との接触は避けろ。いいな」

 

「あ、はい…」

 

 

 

 

「なんだよ霧夜先生ってばあんなのにビビっちゃってさ。なぁそう思うだろ?」

 

「まったくだ。このドライバーがあればスカルだろうとなんだろうと一捻りだぜ」

 

その日の帰り、俺たちは帰宅していたが俺とかつ姉は霧夜先生の愚痴を言っていた。

 

「二人とも、私達は忍び。耐え忍ぶのもまた修行の一つです。」

 

そんな俺たちを斑鳩先輩が諫める。

 

「しかし霧夜先生のご様子、私達が襲われた件に関して、何かご存知のような…そんな気がするのですが…」

 

たしかに、ガリューのことも知ってたし。あのあとなんかごまかされたけど何か隠してたよな…

 

「関係ない、オレたちは忍、与えられた任務をこなすだけだ」

 

俺たちが考える中、柳生は静かに呟いた。

 

「でもまたあんなのが出てきたらひばり怖いな~」

 

「安心しろ、ひばりはオレが守る」」

 

ひばりが心配そうにすると柳生は先ほどとは打って変わって優しく雲雀を安心させた。

 

「じゃあ飛鳥の胸はアタイが守る~」

 

かつ姉が胸を揉もうとしたけど

 

飛鳥ちゃんがそれを防ごうとして木に向かって倒れるとそこの葉っぱにへばりついていたカエル。おそらく雨蛙だろうが飛鳥の胸の谷間に入る

 

あ、やべぇ

 

「きっ、きゃあぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

瞬間、飛鳥は絶叫した。そして飛鳥は俺に飛びつきそのまま俺たちは倒れてしまった。

 

「ちょ、////。飛鳥離せって」

 

「かかかカエルが私の胸に〜!!」

 

そう、カエル。小さい頃から飛鳥はカエルが苦手なのである。本人曰く特に太ももや水かきがなんとも言えない恐怖を感じるらしい。

 

「りゅ、りゅーくん助けてぇ〜」

 

「無茶言うなって!!男がこんな市街地で女子高生の服脱がすってアウトだろ!!」

 

「だってぇ〜」

 

「あーもう誰かなんとかしてくれー!!」

 

そんな取っ組み合いの結果、かつ姉が取ってくれました。

 

 

 

 

 

 

その日の夜、俺は自室で愛読している恐竜図鑑を読んでいた。

 

「このベルトも恐竜の力を使って変身するって話だったし…改めて勉強しないとな」

 

俺は母が死に父が任務で何処かに行ってしまって間も無い頃、じいちゃんに連れられて近くで開催していた恐竜博に行った。その時、恐竜たちの迫力に目が離せなくなったのだ。こんな大きな生き物が大地を、海を、空を自由に生きていたのだと感動で体が震えた。俺が秘伝忍法を習得した時も、真っ先に浮かんだのが恐竜達の中で一番好きな恐竜、ティラノサウルスだった。そして見事それが的中して秘伝忍法習得に至ったのである。

 

「やっぱり恐竜は強いし…かっこいいよな…」

 

忍と恐竜、一見合わなそうな組み合わせ…でもどちらも俺の目指す目標の中で絶対に外せない組み合わせなのだろう。

 

「さて、明日も早いし寝るかな」

 

そして俺は本を閉じてベットに入り眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、一つの交番が突如爆発した。どこにでもある普通の交番である。しかし今は炎に包まれあたりは騒然としていた。幸い死者は出ていないが勤務していた警察官が大怪我を負っていた。

 

そんな光景を少し離れた建物からスーツ姿のサラリーマンがスマートフォンで撮影していた。

 

「くくく…いいぞ…良い絵が撮れた。」

 

「いつになればリューマを倒しに行く?」

 

ふと後ろから声が聞こえてサラリーマンの男が振り向くと燕尾服の女性、メドューサが立っていた。

 

「あれだけ大口を叩いておいて一向にリューマを倒しに行かない。なにを考えている?もしやらないと言うなら…」

 

メドューサは懐から髑髏を彷彿させるバックルを取り出し腰に当てると骨の様な帯が巻きつきベルト『スカルドライバー』になった。

 

『メドューサ!!』

 

メドューサが金色の骨の装飾があるスカルキーを起動し、スカルドライバーの口の中にある鍵穴に差し込み回した。すると鍵穴からどす黒い泥が体を包み込み全身が蛇の鱗の様な女性らしいラインの鎧に包まれ顔は蛇のような兜に覆われてたスカル。メドューサスカルへと変身した。

 

「私が代わりにやるぞ」

 

「んふふふふ、メドューサ様もせっかちですねぇ〜そう心配しなくてもプランは完璧にしてありますよ。今回のこれは予行演習って奴ですよ」

 

しかし、サラリーマンの男はまったく動じずに笑っていた。

 

「なんの計画も無しに行動するのは馬鹿のやることですよ。一流の人間は対象を観察してしっかりと計画的に行動するのですよ。」

 

男は懐から緑色の骨の装飾がある鍵を取り出し起動した。

 

『カメレオン!!』

 

すると男の舌に鍵穴が現れ男はそこに鍵を挿して回す。すると、どす黒い泥が体を包み込み紫色の長い舌を持つカメレオンの様なスカル、カメレオンスカルへと変身した。

 

「まぁ見ていてくださいよ、この俺があの小僧を殺して見事選ばれし十二体の獣…ロードスカルへと進化してみせますのでね。んふふふふ…」

 

そう言い残してカメレオンスカルは姿を消して何処かに行ってしまった。

 

「あんな奴が私たちと同じロードスカルになれるとは思えんが…お手並み拝見とさせてもらおうか…仮に奴が負けてもそれはそれで清々するしな」

 

メドューサスカルはそう言い残して静かにその場を去った。

 

 



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其の五 新アイテムで特別任務!!の巻


皆さん、pixivでイラストを投稿しているスペラティアさんがこの度仮面ライダーリューマのイラストを描いてくださいました!!


 

召喚忍法の修行の翌日、

 

「なんだこりゃ?」

 

忍クラスの教室に何故か寿司屋のカウンターが置いてあった。

 

「ねぇりゅーくんこれって…」

 

飛鳥に言われて俺も気づいた。このカウンターはまさか……

 

「ぬふふふふ~来たな~?」

 

「「この声!?」」

 

するとどこからか笑い声が聞こえ

 

カウンターの下から白い髭を生やした老人が現れた。

 

「じっちゃん!!」

 

「じいちゃん!!」

 

斑鳩たちは飛鳥の言ったじっちゃんと言ったことに驚く

 

彼こそこの世界の忍の中で伝説の忍と言われた飛鳥の祖父にして俺を引き取ってくれた人物、じいちゃんこと半蔵である。

 

飛鳥は半蔵に抱きつく

 

「これこれ飛鳥、よさぬか」

 

そういうが満更でもないじいちゃん

 

「竜司も聞いたぞ、まさかお前さんがリューマの鎧の資格者になるとは思わんかったぞい」

 

「俺だってビックリしたよ。ていうかなんでじいちゃんがここに?」

 

「みんなに昼飯をご馳走してやろうと思っての~」

 

じいちゃんはそう言いながら寿司を作るために準備を始める

 

「やった~お寿司だお寿司だ~」

 

「わざわざお店まで作ったの?」

 

「お前らをびっくりさせたくての」

 

「さすがに凝りすぎだって…」

 

相変わらずこういうお茶目なところは変わらないな。小さい頃、俺を引き取ってくれた頃から今までずっと忍として、家族として育ててくれた俺の恩人である。

 

「じゃが一人でここまでやるのはちと骨が折れたわい」

 

「言ってくれれば俺も手伝ったのに」

 

「それじゃあサプライズにならんじゃろうが」

 

じいちゃんはふははと笑った。

 

「しかし私たちにこのようなことをされてご実家の方は大丈夫なのですか?」

 

「じっちゃんは隠居みたいなものでお店はお父さんとお母さんがやってますから」

 

「…そうですか。ご両親が」

 

飛鳥の言った両親と言う言葉に斑鳩が俯く

 

「…どうしたんですか斑鳩先輩?」

 

斑鳩先輩の様子を見て俺は声をかけた。

 

 

「なんでもありませんわ。いいですね家族というものは」

 

「はいっ♪」

 

飛鳥は嬉しそうに頷くが俺はなおも俯く斑鳩先輩をちらっと見つめていた

 

「へいおまち、伝説の忍の特性太巻だぞ」

 

太巻きがだされ俺たちは嬉しそうにそれをほうばる

 

じいちゃんと飛鳥、俺は他の4人とは離れた場所で食べていた

 

「ところで飛鳥、召喚がうまくいかないようじゃの?」

 

「ごめんねじっちゃん」

 

「そうだじいちゃん、そのことで聞きたいことがあったんだ」

 

ちょうどじいちゃんに会えたし良い機会だろう

 

 

 

 

 

「ふむ…たしかに召喚獣には一族の家系が影響される。代々忍の家系であればさらにその傾向が強い」

 

「じゃあじいちゃんの家系はなにを召喚していたの」

 

それがわかれば飛鳥の秘伝忍法習得に活路が開けるはず…

 

「うむ…それがな…いやしかし…やはりこうなってしまったか…」

 

「…どうしたのじいちゃん?」

 

なにか言いづらそうだけど…

 

「忍としては古式ゆかしいものなのじゃが…」

 

忍としては古式ゆかしい…じいちゃんが言うのを躊躇う…「やはりこうなったか」…

 

「じいちゃん…それってまさか…」

 

「……ガマガエルじゃ」

 

「が、ガマガエル〜!?」

 

じいちゃんの言ったその一言に飛鳥は青ざめ震え上がる

 

「太ももが…水かきが…」

 

「あぁ…なんか嫌な予感はしてたんだよ…でもよりによってガマガエルか…」

 

アマガエルくらいならなんとかなったかもだけどよりによってガマガエルか…

 

「幼い内から飛鳥を馴染ませておけば良かったのかもしれん・・・まさかカエルが苦手な娘に育ってしまうとは思わなかった・・・これも忍の試練じゃ!」

 

「はぁ…飛鳥…頑張ります…」

 

「仕方ない…こうなりゃ俺も手伝うからなんとしてもカエルに慣れるぞ!!」

 

「うむ、その心意気じゃ」

 

「こうなったらカエルを百匹くらい捕まえてカエル風呂にしてそこにダイブだ!!」

 

「ちょっりゅーくん!?さすがにそれは」

 

「じゃかあしい!!意地でもカエルに慣れるんだ!!」

 

「慣れるどころかトラウマだよ!!」

 

飛鳥がなにか言っているが構うものか、なんとしてでも飛鳥にカエルを克服してもらわなくては…そう考えていると突然煙玉が爆発した。

 

「うわぁっ!!」

 

「お久しぶりです半蔵様」

 

「げほっげほっ、変わらんなお前も!?」

 

煙から霧夜先生が現れた。

 

「竜司、すまんがお前は特別任務だ」

 

「…っ!それって…」

 

このタイミングで特別任務、それはつまり…

 

「スカルのものと思われる事件が発生した。直ちに向かい事件を解決せよとのことだ。」

 

 

 

 

 

 

 

「では内容を説明する。」

 

霧夜先生は事件についての詳細を話した。

 

「昨日、東京都内の交番で火災が発生した。幸い犠牲者は出ていないが事件当時交番内で勤務していた警察官が2名重傷で病院に搬送されている。証言によると突然給湯室が突然爆発したとのことだ。それだけならガス漏れが原因の可能性もあるためスカルの事件である根拠は無い」

 

 

「では何故スカルの事件だと」

 

「証言した警察官曰く爆発が起きる直前にまるで鞭のしなる様な音がしたそうだ。」

 

「鞭のしなる様な音…」

 

たしかに気になる…それにもし本当にスカルの事件であれば俺が対処しなければ…

 

「わかりました!!竜司、至急現場に向かいます!!」

 

「頼んだぞ竜司、それとお前に渡すものがある。」

 

そう言うと霧夜先生はアタッシュケースを取り出した。

 

「神門様からお前へと渡された。技術班が新たに開発したリューマのサポートアイテム『オトモカラクリ』だ」

 

ケースを開くとそこにはオレンジ色のスマートフォンと小さな鍵が入っていた。

 

「スマホですか?」

 

「その鍵をスマホの鍵穴に挿して回してみろ」

 

竜司は言われた通りスマホにある鍵穴に鍵を挿して回してみた。

 

『ガマ!!』

 

すると起動音と共にスマホが変形してオレンジ色のガマガエル『カラクリガマ』に変形した。

 

「おぉ〜スゲー!!」

 

「必ずお前の力になってくれるはずだ。」

 

「よっしゃ、改めて竜司、任務遂行します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが現場か……」

 

現在俺は爆発したという交番のところへと来ていた。

現在は警察こそいないが立ち入り禁止になっている。中を見てみると火元は給湯室のガスとのことだったがたしかにひどい爆発だった様でよく被害者が出なかったと思った。

 

「…ん?」

 

ふと給湯室を見ていると一部がまるでなにかが打ち込まれた様な跡があった。

 

「もしかしてこれが鞭の様な音の正体…」

 

他にもなにか痕跡が無いかと探そうとすると

 

ヒュン

 

「______っ!!」

 

突然かすかに鞭のしなる様な音が聞こえ咄嗟にその場を離れると腕をなにか素早いものが掠めていった。

 

「出やがったか!!」

 

俺はすぐに交番から飛び出して周囲を見渡した。しかしそこには誰もいない。

 

「一体どこから…」

 

ヒュン

 

再び音が聞こえ俺の足元の地面が抉れた。

 

「くそっ…バカにしやがって」

 

ここにいたら間違いなく民間人に被害が出てしまう。俺はすぐに近くの路地へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふふふ、やはり路地へと入っていきましたねぇ。そうするとは思ってましたよ」

 

路地へと入っていく竜司を見ながらカメレオンスカルは笑みを浮かべていた。

 

「さてさて、楽しい楽しい狩り(ゲーム)といこうではありませんか」

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…くそっ…どんどん人気の無い場所へと狩り立てられている…」

 

見えない狙撃に追われながら俺は路地を走っていた。忍として常人以上の速さで移動できる俺でもたやすく追いかけられる、しかも明らかに俺を狙っている。間違いなくスカルの仕業だろう。さらにいえばこの狙撃、わざと俺が避けられるギリギリを狙って撃っている。

 

「そういえば前になんかの資料で読んだってな」

 

こう言った狙撃手というのは大きく分けて2種類が存在する。一つは一切存在を気取らせない完璧な仕事に歓びを見いだすタイプ。もう一つは実力を誇示して獲物が悶え苦しむさまに悦びを見いだすタイプ。

 

「おそらくこいつは後者…相手をいたぶって楽しむクソやろーってわけか」

 

変身しようにも姿が見えない以上無用心に変身しようとすればその瞬間を狙い撃ちされる倒すにもまずは敵を見つけなければいけない。

 

「くそっ…この前じゃキリがない…」

 

何か手を打たないと…

 

「そういえば…」

 

俺はふと霧夜先生からもらったオトモカラクリを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふふふ、良いですねぇ…良い感じに悩んでますねぇ…」

 

必死に逃げる竜司を見ながらカメレオンスカルは嗜虐な笑みを浮かべていた。

 

「一流の狩人は獲物に全力を出させない。相手のペースを奪い自由を奪いじっくり弱らせてから確実に仕留める…んふふふふ、これぞ完璧なプランってわけですよ」

 

(見たところ仲間に連絡を入れようとしたけどやめたみたいですね…賢明な判断ですよ。俺の位置を特定出来ない以上下手に仲間を呼べばそれだけ犠牲者が出ますしね…なにより、忍では決して私たちスカルを倒すことは出来ないですし)

 

 

 

カメレオンスカルは元々ゲームと称して適当な住居や施設に侵入し放火し映像を撮影するのが趣味であった。放火(ゲーム)を成功させた達成感、自分の犯した火災で人々が慌てふためく様を見てはそれを愉しんだ。そんなある日、

 

『どうせなら、もっと刺激的なことをしてみませんか?』

 

突然自分の元に現れた華びやかな服を身に纏った金髪の男、ドラゴンと名乗るその男は自分に緑色の骨の装飾のある鍵を渡してきた。言われた通りに使ってみると自分の望んだ以上の力が体から溢れてきた。そこからはさらに刺激的な日々が続き、ゲームもさらに楽しめる様になった。そしてドラゴン曰く、この力は使い続けていけば更なる進化の可能性があるらしいそうして進化すればさらに人生を楽しむことができるはず…そう確信した。

 

「んふふふふ…のし上がってやりますよ。どこまでもね…」

 

(しかしそろそろ仕留めないとメドューサあたりがうるさいですしね…そろそろ終わらせないと…)

 

カメレオンが竜司の方を見ると竜司は廃ビルの中へと入っていった。

 

「…なるほど、狭い建物の中に入って迎え撃つ気ですね」

 

(戦術としては理にかなってますが、私を相手では失策ですよ。)

 

どの道姿が見えないのですから待ち伏せもクソもない。むしろ狭い場所では逃げるのも困難、そうなればゲームクリア。カメレオンスカルはそう考え廃ビルへと入っていった。

 

「さてさてどちらに逃げたんですかネェ〜どこに逃げても一緒ですヨォ〜」

 

わざと大きな声でカメレオンスカルは叫んだ。相手の恐怖心を煽るために。ふと、地下から何かが崩れる音がした。

 

「…んふふ、地下に誘導したかったんだと思いますがざんねぇん…そんな手に引っかかるのは三下だけですヨォ〜」

 

カメレオンスカルは逆に静かな二階へと上がり出した。

 

「さてさて、どこですかぁ〜ここにいるのは分かってますよぉ〜」

 

二階へたどり着いたカメレオンスカルは再び大声で叫んだ。まだそう遠くには行ってないはず。さてどこにいるのかな。そう思いながらカメレオンスカルは周囲を探した。すると

 

『はぁ…はぁ…』

 

一つのロッカーからほんの微かに呼吸音が聞こえる。

 

「そこかぁぁぁ!!」

 

カメレオンスカルは舌を高速で撃ちだしロッカーを粉砕した。

 

「ひゃははははは!!これで俺の手柄は確実!!一気にレベルアアアアアップ!!!」

 

しかし、

 

「ん?手応えがおかしい?」

 

人間を貫いた様な感覚がしない。そんな気がしてカメレオンスカルはロッカーの方へと近づいた。

 

 

瞬間、なにかを踏みつけた様な音がした。

下を見ると、辺りに大量のガラス片が散らばっている。

 

「これは…まさか!?」

 

「見つけたぁぁぁぁぁ!!」

 

竜司が天井からカメレオンスカルの後頭部へと蹴りを放った。

 

「ぐはっ」

 

その衝撃でカメレオンスカルは壁に激突しはずみで透明化が解けて姿を現した。

 

「き、貴様…なんでそこに…ロッカーの呼吸音は…?」

 

「これのことか?」

 

竜司はロッカーに落ちていたオレンジ色のスマホを拾うとカメレオンスカルに見せた。

 

「まさか…録音した呼吸音だとでもいうのか!?ふざけるな!!俺がたかがスマホの音声と人の呼吸音を間違えるわけ」

 

「悪いけど、こいつはただのスマホじゃないみたいでね。」

 

そういうとスマホにガマキーを挿して回してカラクリガマにすると

 

『はぁ…はぁ…』

 

再び先程聞こえた呼吸音で鳴き出した。

 

「どうやらこいつ、録音した声を全くそっくりそのまま再現することが出来るみたいだ。機械だってわからないくらい正確にな」

 

自分でもここまですごいアイテムだとは思わなかった。たしかに大いに役立つ様である。

 

「さて、よくも散々遊んでくれたな…しっかり反撃させてもらうぜ」

 

そう言って俺はカグラドライバーを腰にはめる。

 

『ティラノ!!』

 

そしてティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

俺はそのままカメレオンスカルへと拳を突き出した。

 

「はっ!!思いあがるなよクソガキぃ!!」

 

しかし、カメレオンスカルは再び透明化を使い姿を消した。

 

「二度も同じ手にひっかからねぇ!!今度こそぶっ殺してやる!!」

 

そして、舌による狙撃が繰り出された。今度は確実に自分を狙って放っており俺はそれを回避した。

 

「どうだ!!どんな力を持ってても俺の姿を捉えられないんじゃ意味ねぇぞ!!」

 

カメレオンスカルは勝利を確信して渾身の一撃を竜司に撃ち込んだ。

 

「そっちこそ思いあがんなよ」

 

しかし竜司は舌の一撃を容易く躱しカメレオンの方へと迷わず蹴りを撃ち込んだ。

 

「ぐわぁぁぁぁ!?な、なんで俺の位置が…!?」

 

「悪いけど殺気がだだ漏れなんだよ」

 

リューマになると普段よりも身体能力だけでなく感覚も研ぎ澄まされる。いかに姿を消そうとそれ以上の殺気を出しているのならそれはもう見えてるのに等しい。

 

「そんじゃ、前にガリューと闘った後覚えたこいつでとどめを刺すぜ」

 

そういうと俺はティラノキーの力を一か所に集めるとそれはクナイの形になった。

 

ガリューは自分と違いあの時斧を武器にして闘っていた。だから同じことがリューマでも出来るはず。そう考えこの力で色々試した結果、恐竜の力を武器の形に出来ることがわかったのである。

 

(こ、こいつ…あのガリューとのわずかな戦闘でそんなことまで…!!)

 

カメレオンスカルは今になって気づいた。自分が完璧に調べたと思った目の前の少年の潜在能力を侮っていたことを…追い詰めてるつもりが逆に追い詰められていたことを

 

「くっ…クソォォォォォ!!」

 

カメレオンスカルはやけくそになりながら舌の一撃を放つ。しかし、そんな自暴自棄な攻撃が当たるわけもなく竜司は容易く躱して具現化したクナイ、『ファングクナイ』にティラノキーを挿して回した。

 

『必殺の術!!』

 

すると、音声とともにファングクナイにエネルギーが込められて巨大なオレンジの斬撃が放たれた。

 

「必殺忍法!!激竜忍斬り!!」

 

「ち…ちくしょぉぉぉぉ!!」

 

竜司の必殺忍法を喰らいカメレオンスカルは爆発した。

 

「ま…まだだ…俺のゲームは…こんなところで…」

 

カメレオンスカルだった男は倒れたまま鍵に手を伸ばすが鍵は粉々に砕けちり男はそのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

「まずは竜司、スカル討伐ご苦労だった」

 

カメレオンスカル討伐後、半蔵学院で俺は霧夜先生にスカル討伐完了の報告をしていた。のは良いが…

 

「霧夜先生…あれは…」

 

俺の目の前では大量のカエルが入った子供プールに飛鳥がいた

 

「飛鳥の特訓だそうだ。」

 

「まさか本当にカエル風呂をやるとは…」

 

あの時は半分ジョークだったんだけど…

 

「まぁ俺もこいつらを捕まえてきたのは無駄じゃなかったってわけか」

 

そう言って俺は袋から大量のガマガエルをプールに放流した。

 

「ひゃぁぁぁぁぁ!!りゅーくんなにそれぇぇぇ!!」

 

カメレオンスカルを倒した後、飛鳥の修行のために近くの池で獲ってきたのだ。

 

「よーし、このままカエルプールでとっくんだ!!」

 

「りゅーくんのばかぁぁぁ!!」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺は飛鳥に再び平手打ちされ吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

時は少し遡る。竜司がカメレオンスカルと闘う直前、霧夜先生と半蔵が話していた。

 

「蛇邪学園………それが」

 

「うむ、漸く判明した。奴らの悪忍養成機関じゃ」

 

「やはり、悪忍の仕業でしたか。」

 

光あらば影もある。国家の安定、平和の維持の為に尽す忍あらば、己が欲を満たす者達の道具として暗躍する忍も居る。忍の歴史はこの2つの勢力即ち、善忍と悪忍の暗闘の歴史でもあった。

 

「リューマの鎧が代々善忍に受け継がれてきたのに対しガリューの鎧は代々悪忍に受け継がれている。」

 

「奴らが我々より早くガリューの鎧の資格者を見つけたとは神門様より聞いていましたが、話を聞く限りでは相当な使い手であることは間違いありません」

 

「修行中の身とは言え、あの子らも忍。向こうが仕掛けて来た以上、命の駆け引きも覚悟せねばならん。彼奴らの目的は未だ計り知れんが、降り掛かる火の粉は払わねばならん。」

 

「はっ。」

 

 

 

 

 

「ふっ、まぁあの程度のスカルくらいは簡単に倒してもらわないと困る」

 

ビルの上で仮面ライダーガリューこと炎佐はひとり呟いた。

 

「俺の目的のためにも、どんどん強くなってくれよ。仮面ライダーリューマ…」

 

 

 

 

 

 

そして、物語はさらに進んでいく、次の闘いへと…

 

 





蛇女なのですが、本作品では共学設定なのでちょっと改名しています。
気になりましたらすみません


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其の六 もやしと兄妹!!の巻

もやしといえば彼女です


秘立蛇邪学園、悪忍たちを育成する忍育成学校である。

 

「接触してみての感触は?」

 

そこの一室では前回、竜司たちを襲撃した炎佐たちが鎧に身を包んだ人物と対峙していた。

 

「は、伝説の忍の血を引く飛鳥と言う娘。特にと思い、私が直接近付いてみましたが」

 

「他の子達も、私の可愛いお人形の相手で精一杯って言う感じで」

 

褐色の少女、焔は飛鳥について、頭に大きなリボンをつけた少女、春花は斑鳩たちと接触した感触を報告していた。

 

「恐るるに足らないと」

 

「御意」

 

しかしそんな中、炎佐は頭を下げたまま静かに考えていた。

 

「炎佐、貴方はリューマと接触しましたがそちらはどうでしたか?」

 

そんな炎佐に鎧の人物は竜司について聞いた。

 

「…はっきり言って今は俺よりも総合的に劣ります」

 

「『今は』…ですか?」

 

「はい、リューマに変身する竜司という少年…ああいうタイプはきっかけさえあれば急激に成長します。細心の注意を払うべきかと…おそらく飛鳥という娘もその類だと思います」

 

「む…」

 

炎佐の言葉に焔は不満そうな顔を密かにした。

 

「なるほど、よく分かりました」

 

炎佐の報告を聞き、鎧の人物は静かに頷いた。

 

「炎佐の言う通り、たかが1度の接触で甘くみてはならない。油断は即、死になる。これぞ忍の極意です。その娘達が何れあなた方の障害になるのは必然。だが焦る必要はありません。忍の矜恃を持って深く静かに、殲滅しなさい」

 

「御意」

 

鎧の人物の言葉に炎佐たちは深く頭を下げた。

 

 

 

 

「炎佐」

 

鎧の人物への報告が終わったあと、自室へ戻ろうとする炎佐に焔が話しかけた。

 

「焔か、どうした?」

 

「さっきのはどういう意味だ?」

 

その顔は険しく不満げな顔であった。おそらく先ほどの炎佐の報告が気に入らなかったのだろう。

 

「そのまんまの意味だ、ああいうタイプは舐めてかかると痛い目に合うからな。お前がそうならない様に警告の意味も込めて言ったまでだ」

 

「んなっ!?私があんな甘ちゃんの小娘に負けるだと〜!!」

 

焔は炎佐の言葉にカチンとして彼を睨みつけた。

 

「舐めてかかったらって意味だよ。お前の強さは俺がよく知ってる。」

 

「むむむ…まぁわかってるなら良いんだが…」

 

しかし炎佐はクスリと笑って言葉を返す炎佐に焔はそれ以上なにもいえなかった。

 

「さて、今頃詠のやつが奴らと接触するころだが…まあ今回はあくまで挨拶程度みたいだからな…流石にお前みたいに暴れたりしないだろ」

 

「お前はさっきから一言多いぞ!!」

 

炎佐の一言に焔はさらに怒った。

 

 

 

 

 

 

「じいちゃんの歓迎パーティーって…別にそこまでしなくても良いですのに…」

 

現在俺と斑鳩先輩は八百屋で買い物をしていた。

 

「そうはまいりません。半蔵様は伝説の忍と呼ばれるお方です。心をかけてのお持て成しをしなくては…」

 

「…伝説の忍かぁ…普段はそんな感じには見えないけどなぁ…」

 

俺にとっちゃ自分を引き取って親同然に育ててくれた恩人の面白いおじいちゃんくらいの感覚だが今の時代の忍にとってじいちゃんは憧れの存在らしい。

 

「俺も、もっと強くなってじいちゃんの名前に恥じない『世界一カッコいい忍』にならないとな」

 

俺は改めて自分の目標に向けて進む決意をした。

 

「もやしがお高いですわ」

 

ふと声が聞こえてそちらを向くと長い髪で白と黄緑を主体にしたドレスの少女がもやしを見ながら呟いていた。

 

「そう思いません事?」

 

少女はこちらを向き笑みを浮かべて話しかけてきた。

 

「え、ああ…たしかに若干値上がりしているかな…最近物価が高いみたいだし…」

 

「ええそうですわね。しかし…これはあまりに酷すぎませんこと?お金持ち御用達の高級な野菜が値上がりする分には、何の不平もございませんのよ?なのに低価格で庶民の味方のもやしまで値上がりするなんて、どう言う事ですの?」

 

俺が戸惑いながらも答えると少女はさらに言葉を続けてきた。

 

「ま、まあ落ち着けって…もやしは美味しいし便利だから気持ちはわかるけど…もやしを作ってる農家さんだって食っていかなきゃならないんだから…」

 

「…貴方はもやしのことをよくわかっているみたいですね…とても嬉しいですわ。ではもう一つ聞きたいのですが…」

 

「行きますよ竜司さん」

 

すると、斑鳩先輩は俺の手を引っ張って歩き出した。

 

「えっと…斑鳩先輩?」

 

「外部の者との接触は厳禁だと……」

 

すると後ろから矢が飛んで来た。矢は喫茶店の看板に突き刺さった。

 

「なっ!?」

 

「もやしなんて庶民の食べ物。あなたには興味もございませんものね。これだからお嬢様育ちは、嫌いなのですわ」

 

少女は突如殺気を出して手に装着されたボウガンをこちらに向けてきた。

 

「………竜司さん、行きますよ」

 

しかし、斑鳩先輩は顔色を変えずに俺の手を引っ張って去ろうとした。

 

「お、おい待てって斑鳩先輩…あの人ってもしかしたら…」

 

「外部の者との接触は禁止です」

 

「そうですの…あくまでも私を無視なさろうと言う気ですのね…忍結界!!」

 

すると忍結界が貼られた。

 

「忍結界…!!てことはこいつ…悪忍か!!」

 

しかも…さっきから話していて気づいた…こいつは俺よりも斑鳩先輩を狙っている…!!

 

「なんで斑鳩先輩を狙うんだ!?」

 

「あえて言うなら、そちらの方が財閥のお嬢様だからですわ」

 

「っ!?それは、どう言う意味ですの?」

 

「お父様やお母様の愛情を、いっぱいいただいて育ったんでしょうね?ぬくぬくとぬくぬくと、何不自由無く暖かく」

 

その言葉には斑鳩先輩へのたしかな敵意を感じた。

 

「竜司さんは下がっていてください。この方の狙いは私の様です」

 

「でも…」

 

「そうしてくださいませんこと?先ほどの会話でも分かりましたけどそちらの御仁はもやしのことをよくわかっておられる様子…あまり傷つけたくはありませんわ」

 

なんだか変な信頼を得てしまっている様だ。少女はボウガンを大剣に変えてかまえていた。

 

「降り掛かる火の粉は、払わねばなりません!舞い忍びます!」

 

斑鳩先輩は忍転身して愛刀・飛燕を構えた。

 

 

 

 

「ラベンダーの爛漫!」

 

大剣から紫色の衝撃波を放つ。斑鳩先輩が飛燕で防ぐが、戦闘服が破れ始めた。

 

「っ!!」

 

真上から詠が大剣を振り下ろす。しかし飛燕で防いだ。

 

「斑鳩先輩!!」

 

「なんという力………」 

 

「そんなお上品な攻撃で私に傷付ける事は出来ませんわ。ローズの旋律!!」

 

今度は大剣を超高速で斑鳩に向かって突進する。それを躱すと斑鳩先輩は真上から少女へと斬りかかった。

 

「お覚悟!!」

 

すると、少女は大剣を銃へと変形させた。

 

「秘伝忍法、ニブルヘルム!!」

 

銃から放たれたエネルギー弾が斑鳩先輩へと向かっていく。

 

「さっせるかぁぁぁ!!」

 

俺はとっさにリューマへと変身してファングクナイでエネルギー弾を切り裂いた。

 

「すいません斑鳩先輩!!こっからは手伝わさせて貰いますよ!!」

 

俺はファングクナイをかまえて少女の方を向いた。

 

「…ふふ、ご安心なさい。今日はあくまでご挨拶、今日はこの辺にしておきますわ」

 

そういうと少女は武装を解いた。

 

「では、今度会うときは貴方ともやしについて語らいたいものですわ」

 

少女は斑鳩先輩の時とは打って変わり優しい表情をして俺に頭を下げで後ろを向き歩き出した。

 

「…そちらのお嬢様も精々お高いものでも食べて束の間の休日をお楽しみくださいませ」

 

そして、斑鳩先輩へは冷たく高いを向けた声音で立ち去り忍結界は解けていった。

 

 

 

 

 

「半蔵様の歓迎会と言う事で奮発しましたけど、予算範囲内で収まって何よりでしたね」

 

悪忍の少女との戦闘の後、俺たちは買い物を済ませ帰路についていた。

 

「後は腕に寄りを掛けるだけですわ」

 

「あの悪忍の少女…なんで斑鳩先輩がお金持ちだってわかったんだろ…?」

 

俺はあの時の少女のことを思い出していた。あの様子から見ても斑鳩先輩のことを事前に知っていたのは間違いない。

 

「忍なら、その気になればすぐに調べられる事です」

 

「まぁ斑鳩先輩の家は日本でも有数の大財閥だもんな…」

 

斑鳩先輩は日本有数の財閥、鳳凰財閥の娘である。たしかにそれなら忍なら調べれば分かるかもしれない。

 

「……………っ」

 

すると、俺の言葉に斑鳩先輩はどこか辛そうな顔をした。

 

「斑鳩先輩?」

 

「急ぎましょう」

 

そういうと斑鳩先輩は足早に歩き出した。

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんでした!」

 

半蔵学院に戻った俺たちは霧夜先生に悪忍と遭遇したことを報告していた。

 

「言い付けを破り、外部の者と接触を……それどころか竜司さんまで巻き込んでしまって……罰は何なりと!」

 

「ちょっと待ってくれよ斑鳩先輩!!あれは向こうから仕掛けてきたんだからしょうがないって…」

 

「竜司の言う通りだ。あまり気にするな」

 

霧夜先生も今回のことは仕方ないことだと分かってくれているみたいで許してくださる様だ。

 

「いえ、禁を犯すのは忍にとってもっとも恥ずべき行為です!規律を破ったものに罰を与えないのは秩序の崩壊を生みます!!」

 

しかし、斑鳩先輩はそれでは納得がいかないらしい。

 

「話は聞いたぞい」

 

すると、じいちゃんが突然現れた。

 

「であればこのわしが其方に罰を与えよう」

 

 

 

 

 

 

「こうでしょうか?」

 

「もう少し強く… あ、あぁ〜そこそこ……」

 

現在斑鳩先輩がじいちゃんにマッサージをしていた。

 

「で……じいちゃんのマッサージをするのが罰って……ただのじいちゃんのスケベじゃねーか!!」

 

「もうっ!じっちゃんなにしてんの!?斑鳩先輩、私がやりますよ!!」

 

呆れた飛鳥が斑鳩先輩と場所を変わりマッサージを始める。

 

 

「相変わらずお前のマッサージは力任せでいかんのう………」

 

「文句言わないの!可愛い孫のマッサージなんだから!(ゴキッ)」

 

 

「あ痛たたた!!」

 

やっぱりじいちゃんは飛鳥には敵わないらしい

 

 

 

 

 

 

とある屋敷の一室、燕尾服の女性メドューサが窓から見える夜景を眺めていた。

 

「女の部屋に無断で忍び込むとは良い趣味だな」

 

すると、突如空間が歪み黒い穴が現れそこから華びやかな服を身に纏ったドラゴンと呼ばれる華びやかな服を身に纏った金髪の男が出てきた。

 

「失礼、以後気をつけますのでお許しを…簡単な報告があったので」

 

ドラゴンは笑みを浮かべて頭を下げた。

 

「早く言え」

 

「カメレオンがリューマに敗れたそうです」

 

ドラゴンの報告にメドューサは「やはり」と言わんばかりに鼻で笑い再び夜景を見出した。

 

「随分とご機嫌ですね?」

 

「目障りなカスが消えて清々したのでな。第一、あんな雑魚がロードスカルになれるはずないと分かってもいたしな」

 

「…しかしリューマが現れてそれほど時間が経ったないのにすでに同胞が二人もやられてますが…」

 

「心配ない、すでに面白そうなやつに鍵を渡しスカルにした」

 

その言葉にドラゴンは感心した。

 

「相変わらず仕事が早いですね」

 

「素質のあるものにスカルキーを渡し、その中から十二体存在するロードスカルに進化する者を見つける。それこそが我々の使命だ」

 

「現在ロードスカルは『キメラ』、『ドラゴン』、『メドューサ』、『グリフォン』…そして陛下を合わせて五体…あと七体のロードを見つける必要がありますね」

 

「今回新たに産まれたスカルが六体目になるか否か…果たしてどうなるか…」

 

 

 

 

 

 

「お兄様が行方不明?」

 

半蔵の歓迎会の後、斑鳩は霧夜先生と話していた。

 

「念の為心当たりは無いかと、お前の実家から連絡があってな」

 

「心当たりはと言われましても兄とは話したことすらありませんですから…」

 

同じ家にいながら兄のことを知らない自分を情けなく感じる斑鳩

 

「そうか、わかった。何かあったら連絡するように、俺はお前の実家に報告してくる」

 

「はい…」

 

 

 

 

 

 

「お兄様…なぜ家出など…」

 

霧夜先生に兄のことを聞かれた後、斑鳩は一人帰路についていた。

 

「そういえば…私は…お兄様と話なんかほとんどしていませんでしたね…」

 

「…誰がお前の様なやつと会話なんかするものか…」

 

「…っ!!」

 

突如声が聞こえて振り向くと虚な目で自身を睨みつける兄、村雨がそこにいた。

 

「お兄様…なぜここに!?」

 

「その呼び方は止めろ。俺には妹なんて居ない」

 

村雨は斑鳩の言葉に苛立ちながら否定の言葉を述べた。

 

「お兄さまどうして家出などを…お父様もお母様も心配なさってますよ!」

 

「呼ばれる筋合いはないと言ったはずだ!!!」

 

「っ!?」

 

怒りと憎しみに満ちた怒鳴り声をあげる村雨

 

「お前の様なやつが…血の繋がってない…赤の他人のお前が…盗人のお前が俺たちの家族のつもりか!!」

 

すると村雨は懐から枯葉色の骨の装飾のある鍵、スカルキーを取り出した。

 

「お兄様…それは…っ!!」

 

「あの方から頂いたこの力で…俺は間違いを正して…飛燕を取り戻すんだ!!」

 

『マンティス!!』

 

スカルキーを起動すると、村雨の右腕に鍵穴が現れ村雨はそこへ鍵を回した。どす黒い泥が体を包み込むと両手は鋭い鎌になり、枯葉色の体の蟷螂の様なスカル、マンティススカルへと変身した。

 

「飛燕を…返セェェェェェェ!!」

 

マンティススカルは両手の鎌を振りかざして斑鳩へと斬りかかってくる。

 

「おりゃぁ!!」

 

すると、竜司が現れマンティススカルへ飛び蹴りを繰り出した。

 

 

 

 

「あっぶね〜たまたま近道で帰ろうとして良かったぜ」

 

観たいテレビがあったので近道をしようとしたらスカルが斑鳩先輩に襲いかかっていたので慌てて駆けつけたが…間に合った様だ。

 

「さあて…もうすぐテレビも始まっちゃうし…ちゃっちやと済ませちゃいますか」

 

俺はカグラドライバーを取り出して腰に装着する。

 

『ティラノ!!』

 

そしてティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリュー…うわぁっ!?」

 

「邪魔すんなぁ!!」

 

名乗ろうとした瞬間、マンティススカルは俺に斬りかかってきた。

 

「てめぇ!!せめて名乗り終わるまで待てよ!!大事なことだぞもう!!」

 

「知ったことか!!」

 

問答無用にマンティススカルは攻撃を繰り出す。

 

「あったまきたこいつ!!もう許さねぇ!!」

 

俺は腹が立ってファングクナイを出してマンティススカルを斬りつける。

 

「ぐうぅ…舐めるなぁぁぁぁぁ!!」

 

マンティススカルは激昂して再び斬りかかるが俺はそれを躱して蹴りを繰り出す。

 

「ぐわぁっ!!」

 

マンティススカルはそのまま吹っ飛び壁に激突した。

 

 

 

 

「…こんなものか」

 

メドューサスカルは少し離れた場所にあるビルで呟いた。

 

「あの程度しか力を引き出せないのなら…とんだ期待外れだ…」

 

少し残念そうに立ち去ろうとしたその時…

 

「…ん?」

 

ふと何かに気づきそちらは目をやる。

 

「あれは…」

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ、このままとどめだ!!」

 

俺はカグラドライバーの恐竜を叩いた。

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

音声と共に足にエネルギーが込められていく。俺は飛び上がるとティラノサウルスのオーラを全身に纏い渾身のキックが繰り出した。

 

「くそがぁ…こんなところで…終わってたまるかぁぁぁぁぁ!!」

 

すると突然、マンティススカルの全身から膨大なエネルギーが溢れ出て俺を吹き飛ばした。

 

「な…なんだあれ…」

 

「うおおおおおおお!!」

 

すると、マンティススカルの両手の鎌が倍以上の大きさへとなったのである。

 

「なんだこれは…力が…溢れ出てくる!!」

 

マンティススカルは両手の鎌にエネルギーを集め出した。

 

「なんかアレ…絶対まずい!!」

 

慌てて俺はファングクナイにティラノキーを挿して回す。

 

『必殺の術!!』

 

音声とともにファングクナイにエネルギーが込められて巨大なオレンジの斬撃が放たれた。

 

「必殺忍法!!激竜忍斬り!!」

 

「舐めるなぁぁぁぁぁ!!」

 

すると、マンティススカルが両手を振り巨大な斬撃が放たれ俺の斬撃を斬り裂いた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

俺も斬撃をもろに喰らいそのまま吹き飛ばされ変身が解除された。

 

「な…なんだこの力…」

 

 

 

 

 

 

「あのスカル…感情の昂りで急激に成長した…」

 

メドューサはマンティススカルの力を見て驚愕と共に歓喜していた。

 

「もしかしたら…奴ならなれるかもしれない…六体目のロードに…ふ…ふふふ…ふははははは!!」

 

メドューサの笑い声が空に響き渡った。

 



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其の七 仲間と新恐竜!!の巻

新フォーム登場です!!


「くそ……あのスカル…いきなり強くなりやがった…!!」

 

変身が解除された俺はなんとか起き上がるがマンティススカルの攻撃をモロに受けてしまい足が覚束なかった。

 

「すげぇ…この俺に…こんな力があったなんて…!!」

 

マンティススカルもこれは想定していなかった様で自分の力に驚きを隠せずにいた。

 

「いける…今の俺なら…こんな奴らにも負けない…!!飛燕を…取り戻せる……」

 

「お兄様!!もうおやめください!!」

 

そこへ忍転身した斑鳩がマンティスの前に立ちはだかった。

 

「その力は危険な力です!!今すぐに使うのをおやめください!!」

 

「だまれっ!!これは俺の力だ!!お前から飛燕を取り戻すために手に入れた…俺だけの力ダァァァァ!!!」

 

斑鳩の説得も虚しくマンティススカルは両手の鎌で斑鳩に斬りかかった。

 

「くっ……」

 

斑鳩はとっさに飛燕でガードするもその力に押されていた。

 

「その刀を…よそ者のお前が使うんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

マンティススカルは鎌にエネルギーを溜め込み斬撃として放出した。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

マンティススカルの斬撃によって斑鳩は吹き飛ばされ、その衝撃で飛燕を手放してしまった。マンティススカルはその飛燕を拾い上げると

 

「やっと…やっと手に入れたぞ…これは…俺のものだ…」

 

嬉しそうに笑いながら握りしめていた。

 

「斑鳩先輩っ!!」

 

俺はフラフラになりながらも斑鳩先輩の元へいった。

 

「斑鳩先輩、このスカルは危険です!!一度撤退して体制を立て直しましょう!!」

 

(敵前逃亡がカッコ悪いなんて言ってる場合じゃない…ここは退かないと本当に全滅してしまう。)

 

そう考えて俺は斑鳩先輩を連れて逃げようとした。

 

「ダメです!!あの刀を…取り戻さなくては…!!」

 

しかし、斑鳩先輩は俺の手を払い除けて再びマンティススカルの方へと行ってしまった。

 

「お兄様!!お願いです…もうおやめください!!私が気に入らないと言うならそれでも構いません…だからその刀を…飛燕を返してください!!」

 

斑鳩は必死にマンティススカルとなった村雨を説得しようとしていた。しかし、

 

「だまれぇぇぇぇぇぇ!!この刀は俺のものダァァァァ!!」

 

マンティススカルは叫びながら斑鳩へと巨大な斬撃を放った。その斬撃が斑鳩へと向かっていき、

 

「斑鳩先輩ぃぃぃぃぃ!!」

 

瞬間、俺は力を振り絞って斑鳩先輩に覆いかぶさった。そのはずみでなんとか斬撃を躱すことができた俺はとっさに煙玉を使ってその場から離脱した。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…なんとか逃げ切れたか…」

 

俺は斑鳩先輩を連れて少し離れた路地にいた。

 

「竜司さん…すみません…しかし…飛燕が…」

 

「ごめんなさい、でも…あのままじゃちょっと勝ち目が無さそうだったから…痛っ…」

 

「竜司さん…?」

 

斑鳩がふと見ると竜司の肩に大きな傷が出来ておりそこから大量の血が流れていた。

 

「はは…ちょっと…躱しきれなかったか…」

 

竜司は力ない笑みを浮かべそのまま意識を失ってしまった。

 

「竜司さんっ…!!しっかり…しっかりしてください!!竜司さんっ!!」

 

斑鳩は慌てて救難信号を出し、駆けつけた葛城と飛鳥によって竜司は学院の医務室にに運び込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿野郎っ!!」

 

学院に戻った斑鳩を待っていたのは霧夜先生の怒声だった。

 

「感情に任せて敵の前に立ったばかりか…そのせいで竜司に重傷を負わせて…場合によっては竜司を死なせるところだったんだぞ!!」

 

「…はい、申し訳ございません」

 

斑鳩は力なく霧夜先生に謝罪した。

 

「いいか!!忍の世界において仲間を危険に合わせる奴は最低のクズだ!!自分の命を預け、共に歩む大切な存在なんだぞ!!覚えておけ!!」

 

「はい……」

 

斑鳩は顔をあげなかったが床は濡れており涙を流しているのがわかった。

 

「待ってください霧夜先生…俺は大丈夫ですから…」

 

「竜司……」

 

すると、肩を包帯でぐるぐる巻きにした竜司が少しフラフラしながら歩いてきた。

 

「……竜司はしばらくは傷の完治にあたるように…斑鳩、お前はしばらく謹慎だ…頭を冷やしておけ」

 

「あ…はい」

 

「わかりました…」

 

竜司を見て少し落ち着いたのか霧夜先生は静かな声で二人に指示を出してそのまま立ち去った。

 

 

 

 

「はぁ…」

 

霧夜先生は一人廊下を歩いていた。

 

「言い過ぎてしまったな…」

 

いくら危険だったとはいえあそこまで言う事は無かったかもしれない…しかし…

 

「もう二度と…教え子の死はごめんだからな…」

 

自分の軽はずみな行動で死んでしまった…初めての教え子のことを思い出しながら呟いた。

 

「それにしても…今回のスカル…かなり厄介な相手のようだな」

 

何より今のリューマでは相性が悪い…

 

「となれば…」

 

霧夜先生は電話を取り出してとある場所へと連絡を入れた。

 

 

 

 

 

「わかりました、ちょうどいいタイミングでしたね」

 

霧夜先生からの電話を受け取ったのは忍の最高幹部の一人、神門であった。

 

『いいタイミング?』

 

「はい、我々の所持している他のキョウリュウキーのひとつがちょうど復元し終わったところで…そちらに届ける手続きをしていたところだったのです…すぐにお送りしましょう。」

 

『ありがとうございます。ではよろしくお願いします。』

 

「ではまた」

 

神門は電話を切り、手元にある緑色のステゴサウルスが描かれたキョウリュウキーを手に取った。

 

「頼みましたよ…竜司さん…」

 

 

 

 

 

 

 

「痛っ…」

 

「あっ…すみません竜司さん…」

 

俺は再び医務室に戻ってベッドの上で斑鳩先輩に包帯を巻き直してもらっていた。傷は深いが致命傷というわけではなく、さらにじいちゃん秘伝の傷薬を塗っているのでしばらく安静にしていれば問題なく動くまで完治するようである。

 

「…すみません私のせいで…」

 

「大丈夫ですよ、あれは霧夜先生もちょっと言い過ぎだったし…」

 

「いえ…私のせいで…竜司さんは…」

 

再び寂しそうに斑鳩先輩は呟いた。

 

「…お兄さんと…仲悪いんですか?」

 

「…っ!!」

 

俺の突然の質問に斑鳩先輩は目を見開いてこっちを見た。

 

「すいません、前から斑鳩先輩…家族の話になると少し寂しそうだったから気になっていて…」

 

じいちゃんが来た時も、俺が斑鳩先輩のことを「大財閥の娘」と言った時も、少し暗くなっていたので前から気になっていたのだ。

 

「……実は」

 

「?」

 

さっきまで黙っていた斑鳩先輩が口を開きだした

 

「私はお兄さまの…いえ、お父様とお母様の本当の娘ではなく、養子として引き取られた女なのです」

 

「へっ?」

 

 

 

 

 

 

「くそっ…やっぱりダメか…」

 

港近くの廃工場、そこで村雨は飛燕を抜こうとするが抜ける様子はなく悔しそうに呟いた。

 

「よほどその刀に執着しているようだな」

 

「っ!?」

 

突然聞こえた声に村雨は驚きそちらを向くと燕尾服を着た無表情の女性メドューサが立っていた。

 

「あんたは…なぜここに!?」

 

「安心しろ、なかなか面白い成長をしているようだったからな見に来ただけだ。」

 

メドューサは無表情な顔を微笑ませながら村雨に近づいた。

 

「そんな貴様に良い話を聞かせてやる。このままいけば貴様はさらなる力を手に入れることができるぞ」

 

「なにっ!?」

 

メドューサの言葉に村雨は驚きを隠せずにいた。

 

「そんな…俺は…さらに強くなれるっていうのか!?」

 

「ふっ…「強くなる」…なんて軽い言葉で言わないで欲しいものだ…「進化」と言ってくれ」

 

「進化…?」

 

「そうだ、選ばれたもののみが辿り着ける境地…そこにいけば貴様はさらに巨大な力を手に入れ…自由になれる。その刀を使うことなど容易いくらいにはな…」

 

「…俺に…そんな力が…」

 

メドューサの言葉に村雨は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「私の家は表向きは大財閥ですが代々忍を輩出する一族です…そして、飛燕は一族に受け継がれてきた家宝なのです。」

 

斑鳩先輩は自分の過去を俺に語り出した。

 

「本来であれば…一族の跡取りであるお兄様が飛燕を受け継ぐはずでした…しかし…お兄様は飛燕を使うことができませんでした…」

 

「じゃあ斑鳩先輩は…」

 

「ええ、お父様は飛燕を使うことができる私を養子に迎えました。」

 

なるほど…じゃあ斑鳩先輩のお兄さんが斑鳩先輩を恨むのって…

 

「お兄様にとって私は…自分が受け継ぐはずだった家宝を奪った盗人同然なのです…」

 

「…………。」

 

「私が恨ませるのは当然です…許されることはないのも分かっています…家族を名乗るのだって……」

 

「…なんだよそれ…ふざけんな」

 

「え?」

 

「なんで血が繋がってないってだけであそこまで憎まれなきゃいけないんだ!!」

 

竜司の叫び声に斑鳩は驚いた。

 

「血が繋がってなきゃ家族になっちゃいけないのかよ!?血が繋がってないと家宝を受け継いじゃ駄目なのかよ!?血が繋がってなきゃ…恨まれなくちゃいけないのか!?」

 

「りゅ、竜司さん…」

 

「俺…母さんは任務で死んじゃって…親父は俺を置いてどこかへ行っちゃって…それからはずっとじいちゃんや飛鳥の両親が親同然に育ててくれたんですよ…俺は…じいちゃんも…飛鳥の両親も…大好きで…飛鳥だって大事な兄妹同然に育ったんですよ…血が繋がってなくたって…家族ってそういうもんじゃ無いんですか…?なんで斑鳩先輩が兄にそんなに恨まれなくちゃいけないんですか!?」

 

竜司はいつのまにか怒りながら涙を流していた。

 

「斑鳩先輩…俺、決めました…!!絶対にお兄さんを懲らしめる…ぶん殴ってでも目を覚まさせる!!そして…いつか斑鳩先輩に「ごめんなさい」って謝らせてやる!!」

 

涙を拭うと竜司は斑鳩にそう叫んだ。

 

 

 

 

「竜司さん…ありがとうございます…私の為に…そんなに怒ってくれて…」

 

俺が一通り叫ぶと斑鳩先輩は少し恥ずかしそうにお礼を言ってきた。

 

「いえ…こちらこそ…なんか勝手に言いたい放題言って…すみませんでした。」

 

自分でもなんか恥ずかしくなってしまった。

 

「とりあえず…今は傷を少しでも早く治して斑鳩先輩のお兄さんから飛燕を取り戻さないと…でもな…」

 

あの斬撃をどうにかしないとこのままでは勝てない…

 

「なんとかあの斬撃に勝つ為には…あれよりも強力な斬撃を放つか…もしくは斬撃を防ぐ何かがあれば良いんだけど…」

 

考えども考えどもなかなか良いアイデアが浮かばない。

 

「あまり、考えすぎるのも体に悪いですよ」

 

斑鳩先輩はそう言うと俺に湯飲みを渡していた。

 

「これは…?」

 

「薬湯です。痛み止めの効果がありますのでどうぞ」

 

「ありがとうございます、では」

 

お礼を言って俺は渡された薬湯を飲む

 

「うえっ…苦…」

 

「良薬は口に苦し…効いている証拠です」

 

「あはは…ありがとうございます…」

 

俺は文字通り苦笑いを浮かべてお礼を言った。

 

「でもな…あの斬撃はとても厄介だし…なにか…手…立てが…あれ…ば…良…いん…だ…けど…」

 

突然、俺に睡魔が襲いかかり…

 

 

 

 

 

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

斑鳩の目の前にはすやすやと眠る竜司がいた。

 

「よかった…効いたみたいですね」

 

先程竜司が飲んだ薬湯、その中に斑鳩は眠り薬を入れておいたのである。

 

「竜司さん…ありがとうございました…私の為に…でも、これは私の家の問題…やはりあなたを巻き込むわけには参りません…」

 

斑鳩は服を整えると普段飛燕をメンテナンスに出しているときに使っている予備の刀を持って一人歩いていく

 

「あとは私一人でなんとかします…たとえ…この命が尽きようと…」

 

 

 

 

 

 

 

港近くの廃工場…そこで斑鳩は一人歩いていた。

 

「よくここが分かったな…」

 

すると、虚な目をした村雨が立っていた。

 

「これでも私は忍…このくらいの捜索なら造作もありません」

 

斑鳩は忍転身し刀を抜いた。

 

「お兄様…刀を…飛燕を返してください」

 

「だまれっ!!これは俺の刀だ!!」

 

「いいえっ!!それは私がお父様から託された…大切な刀です!!」

 

斑鳩は刀を構えて叫んだ。

 

「ああそうさ!!俺は確かに飛燕を使うことが出来なかった!!だがこの刀は…俺の一族が代々受け継いできた…大切な家宝なんだ!!お前みたいな血の繋がっていないよそ者が手にしていいものじゃないんだ!!」

 

村雨はうらめしそうに斑鳩を睨みつけた。

 

「でもあの方は言ってくれた…俺には人間を超越した存在に進化する才能があると…そこに到れば…飛燕はきっと俺を認めるとな…その力で俺を見限った親父たちを…俺から飛燕を奪ったお前に復讐するんだ!!」

 

『マンティス!!』

 

村雨は懐から骨の装飾がある枯れ葉色の鍵を取り出して腕に現れた鍵穴に挿して回した。どす黒い泥が体を包み込むと両手は鋭い鎌になり、枯葉色の体の蟷螂の様なスカル、マンティススカルへと変身した。

 

「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

すると、マンティススカルは全身からエネルギーが吹き出し全身の至る所から鋭い鎌が生えてきた。

 

「見ろ…これが俺の力だ…俺は…人間を超えたんだぁぁぁぁぁ!!」

 

「お兄様…貴方を止めて…飛燕を返してもらいます!!」

 

斑鳩は刀を構えて斬りかかった。

 

 

 

 

 

「そうだ…良いぞマンティス…それで良い…」

 

ビルの上からメドューサは静かに微笑んだ。

 

「順調に進化している…この調子で行けば…ふふふ…ふははははは!!」

 

メドューサの笑い声が空に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

「むにゃ…何だ?」

 

『ゲコゲコ!!ゲコ!!』

 

「痛ぇ!!」

 

突然頭に痛みが走り目が覚めるとカラクリガマが体当たりをしていた。

 

「そうだ…俺、急に眠くなって…斑鳩先輩!?」

 

斑鳩先輩の気配がしないことに気づいて周囲を見渡すが、斑鳩先輩の姿は見えない

 

「まさか…くそぉ!!」

 

俺は慌てて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁっ!!」

 

斑鳩の剣撃がマンティススカルへと繰り出される。

 

「効かねぇんだよぉ!!」

 

しかし、マンティススカルは斑鳩の剣撃を軽々と防いでしまった。

 

「それなら…秘伝忍法!鳳火炎閃!」

 

斑鳩は炎の鳳凰とともに斬撃を繰り出した。しかし、

 

「無駄だって…言ってんだろうがぁ!!」

 

マンティススカルは全身の鎌から無数の斬撃を放って斑鳩の斬撃を弾き飛ばしてしまった。

 

「はぁ…はぁ…まだ…です…」

 

しかし、斑鳩はふらつきながらも刀を構えてマンティススカルへと立ちはだかった。

 

「ちくしょうがぁ…鬱陶しいんだよテメェ…良い加減くたばれっていってんだよぉ!!」

 

マンティススカルの全身から膨大なエネルギーがあふれて巨大な斬撃が放たれた。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

斑鳩は吹き飛ばされとうとう倒れてしまった。

 

「ふぅ…やっとくたばったか…ったく…しつこいんだよ…しかし…どんどん強い力を出せるようになっていく…俺に…こんな力があったんだなぁ…くくく…くはははは!!」

 

マンティススカルは自身の力に悦びを隠さずにいた。

 

「さてと…こいつにとどめを刺したら…家に行って親父たちを皆殺しにするか…くくく…」

 

「なっ…!!」

 

その言葉に斑鳩は戦慄した。

 

「そんな…どうしてお父様たちを…!!」

 

「あ?当たり前だろうが…俺から飛燕を奪ったお前も…俺を見限ってお前に飛燕を渡しやがった親父も同罪だ!!」

 

マンティススカルはそのまま斑鳩に鋭い鎌を振りかざした。

 

「あの世で仲良く家族ごっこでもしてやがれくそがぁ!!」

 

鋭い鎌が斑鳩へと振り落とされる。

 

(そんな…私が…やらなくてはいけないのに…私の…力で…)

 

斑鳩の目から涙が溢れる

 

「おりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

瞬間竜司の飛び蹴りがマンティススカルへと炸裂した。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…なんとか…間に合った…」

 

俺は街中を探し回ってどうにか斑鳩先輩を見つけることができた。

 

「竜司さん…どうして…」 

 

「斑鳩先輩…まさかあの薬湯に眠り薬を入れるなんて…そんなに俺が信用なかったとは思いませんでしたよ…」

 

挙句謹慎中なのに一人でスカルと戦おうとするなんて…

 

「これは…私の家の問題なんです…私は…貴方を巻き込みたくなかった!!だから薬を使ってまで貴方を遠ざけたのに…」

 

「だからそれがおかしいんだよ!!」

 

俺の叫びに斑鳩先輩はビクリと体を震わせた。

 

「なんで仲間を巻き込んじゃダメなんだよ!?俺たち仲間だろ!?同じ忍の道を志す…大切な仲間じゃないかよ!!」

 

「竜司さん…」

 

「だから巻き込めよ俺をよぉ!!なんでも一人でやらなくたって良いんだよ!!頼ったって良いんだよ!!」

 

誰にも頼らないのはかっこいい事じゃない…それよりも…自分にできないことを「できない」って言える方がよっぽど良い!!

 

「だからさ、少しくらい弱音吐いてくださいよ…じゃないと…寂しいですって」

 

すると、斑鳩先輩の目からポロポロと涙が溢れてきた。

 

「竜司…さん…」

 

それはまるで…ずっと抑えてきたものが一気に弾けたようだった。

 

「お願い………助けて…」

 

「その言葉が聞きたかった。必ず助ける」

 

俺は覚悟を決めた。自分に助けを求める先輩を助ける為に…そして、そんな先輩を見ようともしない目の前の敵を懲らしめる為に

 

『ティラノ!!』

 

そしてカグラドライバーを装着しティラノキーを起動すると鍵から音声が鳴り響いた。そして俺はティラノキーをカグラドライバーの巻物の右側にある鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み込んだ。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「うるせぇ!!テメェから殺してやる!!」

 

マンティススカルは俺に斬りかかってきた。

 

「おりゃあ!!」

 

俺はファングクナイを具現化し鎌を防ぐと腹へ膝蹴りを放った。

 

「ぐっ…」

 

俺の膝蹴りが少しは効いたのかマンティススカルは少しさがる。

 

「これで…どうだ!!」

 

その隙を逃さず俺はファングクナイで続け様に斬り裂いた。

 

「ぐぅぅぅ…なめるなぁ!!」

 

しかし、マンティススカルは負けじと全身から無数の斬撃を放ってきた。

 

「うわっと…これはまずい!!」

 

俺はファングクナイで斬撃をはらって回避した。

 

「ハハハハハ…良いぞ…力が溢れて止まらねぇ!!今ならなんでも斬り裂けるぜぇ!!」

 

「くっそ…このままじゃこの前の二の舞だ…なんとかしないと…」

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

すると、足元に聞き覚えのある鳴き声が聞こえ、そちらを向くとカラクリガマが現れ俺に緑色の鍵を渡すとスマホモードに変形した。よく見ると着信がある。

 

「もしもし…」

 

『竜司!!お前と言うやつは…勝手に抜け出すとは何事だ!!』

 

電話の相手は霧夜先生であった。

 

「すいません!!お叱りなら後でいくらでも受けますから…」

 

『まあ良い!!それよりその鍵をつかえ!!それは神門様からお前に送られたキョウリュウキーだ!!それをつかえば他の恐竜の力も使える!!』

 

よく見るとその鍵にはステゴサウルスが描かれている。

 

「ステゴサウルス…ありがとうございます!!まさに求めていた恐竜です!!」

 

俺は霧夜先生にお礼を言ってそのまま電話を切った。

 

「よっしゃ、早速使わせてもらうぜ!!」

 

『ステゴ!!』

 

俺はステゴキーを起動してカグラドライバーの鍵穴に挿しこんだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にステゴキーを回した。

 

『武装!!ステゴ!!』

 

ドライバーの音声と共にステゴの幻影が現れ俺を包み緑色の装甲を纏い背中に複数のプレート、右手にはステゴサウルスの尾のトゲを彷彿させる巨大手裏剣ステゴスライサーを手にした仮面ライダーリューマ・ステゴ武装へと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ・ステゴ武装!!いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

俺はそのままステゴスライサーでマンティススカルへと斬りかかった。

 

「うるせぇ!!そんなこけおどしが通じると思ったか!!」

 

マンティススカルは負けじと斬撃を放つ

 

「おりゃぁ!!」

 

しかし、俺はステゴスライサーでマンティススカルの斬撃を容易く斬り裂いた。

 

「なにぃ!?」

 

流石にこれは予想外だったようでマンティススカルは驚愕した。

 

「くそがぁ…だったらこれでどうだぁ!!」

 

今度は全身の鎌きら無数の斬撃を俺の全方向へと放った。

 

「それなら…こうだ!!」

 

しかし、俺は動じずステゴスライサーを投げ全ての斬撃を斬り裂いた。

 

「そ…そんな…ありえねぇ!!俺の斬撃が…そんなふざけた力にぃ!!」

 

「生憎だったなぁ…今の俺は…負けるわけにはいかねぇんだよ!!」

 

そう、俺は負けられない、自分に助けを求めた先輩のためにも!!

 

「今度こそとどめだ!!」

 

俺はカグラドライバーの恐竜を叩いた。

 

『必殺の術!!』

 

するとステゴスライサーは俺の頭上を舞い回転を続け巨大な手裏剣状のエネルギーを纏った。

 

「必殺忍法!!激竜斬撃乱舞!!」

 

俺が手を振りおろすとステゴスライサーは放たれ巨大な斬撃がマンティススカルへと炸裂した。

 

「そんな…この俺が…最強の力を手にした…この俺がぁぁぁぁぁ!!」

 

マンティススカルは叫び声とともに海へと吹き飛ばされ爆発した。

 

 

 

 

「竜司さん…」

 

ふらつきながらも斑鳩先輩が俺の方へと歩いていく。

 

「斑鳩先輩、今度からさ、なんか手伝って欲しいことがあったら遠慮なく言ってよ。出来ることなら手伝うからさ」

 

「…はい、ありがとうございます!」

 

斑鳩の笑顔に俺は少しドキリとしてしまった。

 

「って竜司さん!!お兄様が…」

 

「え…あぁ〜!!」

 

そうだ…斑鳩先輩のお兄さん…海に吹っ飛んでった…

 

「うわぁぁぁぁぁ早く探さないと…斑鳩先輩手伝って!!」

 

「は、はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ…まだだ…まだ…俺は…」

 

とある波止場…村雨がふらつきながらも海から這い出てきた。手を伸ばした先にはマンティスのスカルキーがひび割れた状態で落ちていた。

 

「この力があれば…俺は…」

 

「何も変わらんよ」

 

すると、どこからか焼き鳥の串が飛んできてスカルキーを破壊した。

 

「そ、そんな…誰だ!!」

 

村雨が顔を上げると半蔵が焼き鳥を頬張りながら立っていた。

 

「お前さんの所業は学院に来た時から見ておったぞ。話はお前さんの親父から聞いておる、今帰れば全てを不問にするとのことだ。」

 

「勝手なことを言うな!!俺は…やっと認めてもらったんだ…この力で…俺は…」

 

「それは違う」

 

「何…!?」

 

半蔵の言葉に村雨は顔を上げた。

 

「お前の親父は言っておったぞ。「息子を忍にすることは叶わなかった…だがあいつには商いの才がある…そしてその腕はすでに自分を超えている」とな…お前の親父はとっくにお前を認めておったのじゃ」

 

「…っ!!父さんが…」

 

父がそんなことを言っていたとは思ってもいなかったのか村雨は驚きを隠さずにいた。

 

「お前さんが忍の道に憧れておったのはよくわかった。じゃがな、忍になることだけが道ではない。人の数だけ、道はあるのじゃ」

 

優しくそう言うと半蔵は立ち去っていった。

 

「あ…貴方は!?」

 

「知らん方が身の為じゃ。ただの通りすがりのジジイ。そう思おてくれて構わん。はっはっはっは。」

 

立ち去る半蔵を静かに村雨は見ていた。

 

「…ちくしょう…なんだよ俺…めちゃくちゃかっこ悪いじゃねえか…」

 

村雨の一人寂しそうな声が夜の中に響いていた。

 

 

 

 

 

数日後

 

「秘伝忍法!二刀両断!!」

 

飛鳥は緑色の刃を放ち、前方にある無数の竹を斬り裂いた。停止して脇差を鞘に仕舞うと同時に竹が一気に倒れた。

 

「おお〜すげ〜!!」

 

斑鳩先輩の特訓もあって飛鳥はついに秘伝忍法を習得した。

 

「やったよりゅーくん!!」

 

飛鳥は嬉しそうに俺に駆け寄ってきた。

 

「よくやったな飛鳥、斑鳩先輩もありがとう」

 

「いえ、クラス委員として当然のことをしたまでです。」

 

「それでも助かりましたよ感謝します。」

 

「ふふ、どういたしまして。ところで竜司さん、お願いがあるんですが…少し手伝って欲しいことがあるんですが…良いですか?」

 

「お、いいですよ。何をすればいいですか?」

 

「まずですね…」

 

そんな俺たちを見て他のみんなはポカンとしていた。

 

「竜司お前…いつから斑鳩とそんなに仲良くなったんだ…?」

 

「え…そうかな?普通だと思うけど…」

 

「ふふ、そうですね。強いて言うなら…少しは誰かに頼ろうと思っただけです♪」

 

かつ姉の質問に斑鳩先輩は少し嬉しそうに答えた。

あの後、霧夜先生のお叱りをたっぷりと受け、二人仲良く坐禅の刑を受けることになった。なお、斑鳩先輩のお兄さんもあの後保護されて今は自宅で謹慎されているようだ。幸い今回の事件では特に犠牲者等は出ていないのでお咎めなしで済むようだ。

 

「竜司さん」

 

「ん?」

 

「私、竜司さんから大切なことを教わってしまいました。血の繋がりだけが家族じゃない…私、今度実家に帰ったらお兄様ともっと話をしてみようと思います!!いつの日か…しっかりと兄妹として向き合える日が来るように…!!」

 

「斑鳩先輩…」

 

「ただ…その…やっぱり最初から一人では心配なのでもしよかったら…竜司さんもついてきてもらえますか?」

 

「ん?それは良いですけど…」

 

「ありがとうございます!!約束ですよ!!」

 

別に付き添いくらいは構わないが…なぜか斑鳩先輩の頬が紅く染まっていた。

 

「なんだなんだ竜司ぃ〜お前も隅に置けないな〜」

 

突然かつ姉が膝で俺をつついてきた。

 

「うわっ!?ちょっとかつ姉何を…」

 

突然のことにびっくりして俺のバランスが崩れる。

 

「きゃあっ!?」

 

そのはずみで斑鳩先輩の方へと倒れてしまった。

 

「痛た…かつ姉何すんだよ…(むにゅん)…え?」

 

突然左手に感じる柔らかい感触…あれ?こんな展開前にも…

 

「あ…」

 

顔を上げると斑鳩先輩の豊満な胸を鷲掴みしていた。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!竜司さんの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

斑鳩先輩のビンタが俺の顔に炸裂し吹っ飛んだ。




つい勢いで長々と書いてしまった。反省はしていない!!


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其の八 鉄壁と変身失敗!?の巻

「くそっ!!くそくそくそぉぉぉ!!」

 

暗い部屋の中でメドューサは激昂していた。周囲には彼女が当たり散らして無残な姿になった家具が散乱していた。

 

「随分と荒れていますね」

 

すると、背後から声が聞こえてメドューサがそちらを向くとドラゴンが静かに立っていた。

 

「失礼、ノックをしたのですが反応がなかったので」

 

睨み付けるメドューサに謝罪しながらドラゴンは部屋へと入っていった。

 

「マンティスの件は残念でしたね…私も見ていましたが素質があっただけあって痛い損失でした」

 

「奴は…マンティスにはたしかに進化の兆候があった…それなのに…!!」

 

メドューサは悔しそうに体を震わせ唇から血を流していた。

 

「やはり奴は厄介ですね。私の部下にリューマ抹殺を命じておきましょう」

 

「…信用できるのか?」

 

「ご安心を、ちょうど今のリューマにピッタリなスカルがおりますので…実力も確か、期待してくださって結構ですよ」

 

「…わかった。」

 

メドューサは静かに了承した。目の前の男は自身がロードスカルへと覚醒するより遥か前から陛下の側にいた。彼の采配は悔しいが認めるものがあると分かっている。

 

「では」

 

ドラゴンは静かに頭を下げると部屋から去り、静かに廊下を歩いていた。

 

「やれやれ、あのヒステリックさえ起こさなければタイプの女性なんですけどね」

 

メドューサを静かに見つめながら聞こえないほど小さな声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

「せいっはぁっ!!」

 

「ふんっ!!」

 

半蔵学院忍クラスの訓練所では、俺と斑鳩先輩が木刀を手に剣の手合わせをしていた。俺は一瞬の隙をついて上段から全力の一撃を振り下ろした。

 

「せいやぁっ!!」 

 

「うわぁっ!?」

 

しかし、それを読んでいた斑鳩先輩は俺の一撃を軽々と受け流して胴へとカウンターを放つ。俺は咄嗟にガードするもバランスを崩して倒れ、起き上がろうとするも目の前に斑鳩先輩の剣が突きつけられていた。

 

「はぁ…負けました」

 

俺は潔く負けを認めて俺たちの手合わせは終わった。

 

 

 

「お疲れ様です。竜司さんもやりますね」

 

「いやいや、斑鳩先輩には敵いませんよ。後半ほとんどいいようにやられてしまいましたし」

 

手合わせの後、斑鳩先輩はドリンクを片手に俺の側へと来た。

 

「いや〜でもやっぱり斑鳩先輩の剣捌きって凄いですね…」

 

「私は刀を武器にしているんですよ、まだまだ後輩には負けられません」

 

俺の言葉に斑鳩先輩は得意げに答えた。

 

「それになんていうか…刀を使ってるときの先輩って…なんか凛としていてカッコいいですね」

 

「なっ…りゅ、竜司さん!!あんまりからかわないでください!!」

 

俺の言葉に斑鳩先輩は顔を真っ赤にして後ろを向いてしまった。

 

「そ、そうですか…カッコいいですか…ふふ、ふふふふふ…」

 

なぜかどこか嬉しそうだったが…

 

 

 

 

 

 

「よっしゃじゃあ次はかつ姉どう?」

 

「お、いいぜ」

 

休憩が終わり次はかつ姉と体術で勝負をする事になった。

 

「いくぜ竜司!!」

 

「よっしゃあ!!」

 

俺は勢いよくかつ姉に向かっていった。かつ姉は俺の拳を躱すと勢い良く飛び上がり渾身の蹴りを放った。

 

「ぐっ…」

 

俺は両手を交差してガードするがその威力は凄まじく数歩下がってしまう。

 

「相変わらず…とんでもない威力の蹴りだな…」

 

俺はすぐさま体勢を立て直し連続の正拳突きを放った。かつ姉はそれを払うとお返しとばかりに素早い連続蹴りを繰り出してきた。

 

「くっ…それなら…!!」

 

俺はかつ姉の蹴りを受け止めると力任せに思いっきりぶん投げた。

 

「おりゃぁ!!」

 

「うわぁっ!?」

 

かつ姉はとっさに受け身をとって起き上がるが俺はすぐさまパンチを繰り出してかつ姉の鼻先で寸止めした。

 

「俺の勝ち」

 

「ははっアタイの負けか…」

 

かつ姉は少し悔しそうに笑いながら両手を上げて降参のポーズをとった。

 

 

 

「あーくそっ…勝てると思ったんだけどな〜」

 

「いや〜正直危なかったですよ。やっぱりかつ姉のキックはすごいパワーだな」

 

「へへへっまーそれほどでもないかな〜♪」

 

俺の褒め言葉が嬉しかったのかかつ姉はにししっと笑って喜んだ。

 

「まーでも…アタイはまだまだだ。もっと強くなんねーと…」

 

するとかつ姉は拳を握って少し真剣な顔で呟いた。

 

「竜司さん、葛城さんもお疲れ様です。」

 

すると、斑鳩先輩が俺たちにタオルと水を持ってきてくれた。

 

「おっ、ありがとうございます先輩。」

 

俺は斑鳩先輩にお礼を言ってタオルを首にかけて水を飲んだ。

 

「あとこれ、レモンの蜂蜜漬けです。疲れた体に良いですよ」

 

そういうと斑鳩先輩はタッパーを取り出してレモンの蜂蜜漬けを俺に渡した。

 

「おお〜美味そ〜!!ありがとう斑鳩先輩!!」

 

俺は斑鳩先輩にお礼を言って蜂蜜漬けを食べた。

 

「ん、美味い!!」

 

「本当ですか!?まだあるのでどうぞ♪」

 

俺の反応が嬉しかったのか斑鳩先輩は頬を紅く染めながら喜んだ

 

 

 

 

 

 

「竜司さん…」

 

斑鳩は美味しそうに蜂蜜漬けを食べる竜司を愛おしそうに見つめていた。

 

「へへへっ斑鳩〜随分嬉しそうだな〜まさに恋する乙女って感じだぞ〜」

 

「なっ!?葛城さん!?何を言ってるんですか!!」

 

葛城はそんな斑鳩を見てニヤニヤしながら斑鳩にしか聞こえないように斑鳩をからかった。

 

「ち、違います!!竜司さんには色々と恩ができたので恩返しというか…と、とにかくここここれは決してそんなんじゃないですから!!」

 

「いやいや〜好きなのバレバレだぞ〜はっきりさせなってい・か・る・が♪」

 

「違います!!いい加減に…」

 

「えーいうるさーい素直になれない奴のおっぱいはこうだ〜!!」

 

葛城は顔を真っ赤にして必死に否定する斑鳩の背後に回ると斑鳩の胸を鷲掴みにした。

 

「ひゃっ!?ちょ、葛城さん!!」

 

「へっへっへ〜恋する乙女のおっぱいはやはりよいぞよいぞ〜」

 

「ちょ…いい加減に…きゃあ!?」

 

「えっ…うわぁっ!?」

 

抵抗しようとする斑鳩はバランスを崩して竜司の方へと倒れてしまった。

 

 

 

 

(痛たた…一体何が…)

 

突然何かが覆いかぶさってきてきた。起き上がろうにもその何かが覆いかぶさっていて動きづらく声を出そうにも顔まで覆いかぶさっていて声が出せない。というか息ができない。

 

「む…むぐ…むぐむぐ…(むにゅん)「ひゃあっ!!」…むぐ?」

 

口を動かすと突然何か変な声が聞こえ覆いかぶさっている何かが起き上がる…そこには…

 

「りゅ…竜司さん…」

 

顔を真っ赤にした斑鳩先輩が胸を押さえてこちらを見ていた。

 

「えっ…も、もしかして…」

 

俺…やらかした…

 

「いやぁぁぁぁぁ!!りゅりゅりゅ竜司さんのエッチぃぃぃぃぃ!!」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

斑鳩先輩のハイキックが炸裂して俺は壁へと吹き飛んだ。

 

「あ…飛鳥…助けて…」

 

壁に激突した俺は近くにいた飛鳥に助けを求めるが

 

「…ふんっ…りゅーくんの馬鹿」

 

飛鳥はそっぽを向いて離れてしまった。

 

「な…なんで…」

 

俺はそのまま力尽きて倒れた。

 

 

 

 

 

 

「酷い目にあった…」

 

なんかリューマになってから仲間たちに理不尽なビンタや蹴りを喰らうようになったのは気のせいだろうか…

 

「まぁいいか…それよりもうすぐ新しいキョウリュウキーの復元が完成するんだったよな…」

 

現在、神門様の指揮のもとキョウリュウキーの復元が行われており新しいキーがまもなく送られてくるそうだ。

 

「どんな恐竜の力なのかな〜楽しみ楽しみ…ん?」

 

ふと何かの音が聞こえたのでそっちへと行ってみた。

そこはいつも使っている訓練所であり、今の時間は誰もいないはずなのだが…

 

「ふんっ、はっ、せいやぁ!!」

 

サンドバッグに向かって蹴りを繰り出しているかつ姉がそこにいた。

 

「かつ姉…」

 

そのとき、突然遠くの方で爆発音が聞こえた。

 

「な、なんだ!?」

 

慌てて窓を見ると商店街の方で黒い煙が立ち込めていた。

 

「スカルか…ちくしょおっ!!」

 

俺は慌てて現場へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

商店街はめちゃくちゃに荒らされておりあたりに黒い煙が立ち込めていた。

 

「酷い…なんでことを!!」 

 

「よぉっ、お前がリューマか?」

 

すると、煙から灰色の鎧に包まれ両腕に巨大な盾、額には鋭い二本の角を持つ犀のようなスカルが現れた。

 

「俺はライノセラス、我が主人の命に従い、貴様を倒しにきたってわけ!!」

 

「てめぇ…まさかそのために商店街で暴れたのか…許さねえ!!」

 

俺はライノセラススカルの身勝手な動機に怒りカグラドライバーを腰に装着した。

 

 

『ティラノ!!』

 

そしてティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「へへへっ噂の仮面ライダー…唆るねぇ!!」

 

「言ってろ!!」

 

俺はライノセラススカルへと渾身のパンチを繰り出す。パンチはライノセラススカルのボディーへと直撃した。

 

しかし

 

「…なんだそりゃ?」

 

「痛ってぇぇぇぇぇぇ!?か、硬ぇ…?」

 

しかし、ライノセラススカルは微動だにせず俺の拳にはまるで鉄の塊を殴ったような痛みが走った。

 

「どうしたどうした?そんな攻撃じゃ俺は倒せないぞ?」

 

「こんにゃろぉ!!これならどうだ!?」

 

今度は蹴りを繰り出すもびくともしない。

 

「くそ…全然効いてない…」

 

「ははっこんな奴にスカルが三体もやられたなんてな!!情けねぇ!!」

 

「舐めんな!!だったらこいつだ!!」

 

『ステゴ!!』

 

俺はステゴキーを起動してカグラドライバーの鍵穴に挿しこんだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にステゴキーを回した。

 

『武装!!ステゴ!!』

 

ドライバーの音声と共にステゴの幻影が現れ俺を包み緑色の装甲を纏った仮面ライダーリューマ・ステゴ武装へと変身した。

 

「おりゃぁ!!」

 

俺はステゴスライサーでライノセラススカルを斬り裂いた。

 

「ぐっ…」

 

今度は効いているらしくライノセラススカルは少し退がった。

 

「てめぇ…調子に乗んなぁ!!」

 

ライノセラススカルは叫びながら突進を繰り出してきた。俺は突進を躱してカグラドライバーの恐竜を叩いた。

 

『必殺の術!!』

 

するとステゴスライサーは俺の頭上を舞い回転を続け巨大な手裏剣状のエネルギーを纏った。

 

「必殺忍法!!激竜斬撃乱舞!!」

 

俺は手を振り下ろし巨大な斬撃を放った。

 

「このぉっ!!舐めんなぁ!!」

 

ライノセラススカルは両手の盾を前に出して斬撃を防いだ。

 

「ちっ…ふざけやがって…」

 

ライノセラススカルの盾には斬撃による傷痕が出来ていた。

 

「まぁいい…今回はここまでにしてやるぜ」

 

そう言うとライノセラススカルは鍵を空間に挿しこみ回すと空間に黒い穴が現れた。

 

「じゃあな、次はもっと楽しもうぜ」

 

そう言うとライノセラススカルは黒い穴の中に入り込み消えていった。

 

 

 

 

 

「なるほど、新たなスカルはそんな奴だったか…」

 

俺は今回のスカルについて霧夜先生に報告していた。

 

「はっきり言って凄い硬い奴でした。こっちの攻撃がほとんど効かなかったですし…」

 

あの全身の鎧、さらに両手の盾、とんでもない防御力だった。

 

「でもステゴでの攻撃は効いていました。今度こそ…」

 

「もちろんだ、だが油断はするな。忍びの世界において油断は即、死に至るからな」

 

「分かっています。霧夜先生」

 

ステゴ武装での必殺忍法も耐え切るような奴だ、油断できない。

 

「それと竜司、ほいコレ」

 

すると、霧夜先生は俺に灰色の鍵を渡してきた。

 

「おおっコレってまさか…」

 

「神門様からお前へとだ」

 

それはパキケファロサウルスが描かれたキョウリュウキーであった。

 

「パキケファロサウルス…すげぇ、これなら…」

 

こいつなら奴のあの硬い装甲を破れるかもしれない…

 

 

 

 

「へへへ…リューマか…」

 

夜のビルの屋上でライノセラススカルは変身を解いた。

その姿は傷痕だらけで筋骨隆々の若い男だった。

 

「いかがでしたか?リューマの実力は」

 

そこへドラゴンスカルが現れ自身の方へと近づいた。

 

「まぁ…たしかにそこそこやりますが…俺の敵じゃあないですよ」

 

ニヤニヤしながらライノセラススカルの男は得意げに答えた。

 

「それに、奴の攻撃はもう『覚えた』。次は余裕で倒してやるよ」

 

「期待しておりますよライノセラス。あなたのその野心の高さは評価に値しますので」

 

そう言うとドラゴンは静かに立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

「ふんっはっとりゃあ!!」

 

次の日、俺は巨大なサンドバッグへとパンチを打ち込んでいた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

ライノセラススカルへとリベンジのために特訓をしていた。現在カラクリガマを使って周囲を捜索しているためスカルが動いたらすぐに反応があるはずだ。

 

「精が出るな竜司」

 

そこへ霧夜先生がやってきた。

 

「ええ、今新しいキョウリュウキーを使うための特訓をしています。」

 

俺の推測がたしかならパキケファロサウルスの武装は『こいつ』がベストの形のはず。そう考えて再びサンドバッグに向かい合った。

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

すると、カラクリガマがやってきて俺の前で鳴き出した。

 

「この反応…霧夜先生!!」

 

「わかった。すぐに迎え竜司、他のみんなには俺の方から連絡を入れる!!」

 

俺は霧夜先生の指示のもと、駆け出した。

 

 

 

 

 

「見つけたぞ!!この犀野郎!!」

 

俺が駆けつけた場所ではトラックがひしゃげておりその目の前でライノセラススカルが立っていた。

 

「へへへっやっと来たぜ。そんじゃあ楽しもうか」

 

「舐めやがって…すぐに倒してやる!!」

 

『ステゴ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着しステゴキーを起動して鍵穴に挿しこみ回した。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にステゴキーを回した。

 

『武装!!ステゴ!!』

 

俺は仮面ライダーリューマ・ステゴ武装に変身して構えた。

前回効果が強かったステゴキーで一気に畳み掛ける作戦で挑むことにした。

 

「そいつか…悪いけどそいつじゃ俺には勝てないぞ」

 

「言ってろ!!」

 

俺はカグラドライバーの恐竜を叩く

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜斬撃乱舞!!」

 

「無駄だぁ!!」

 

俺は出し惜しみせずにいきなり必殺忍法を繰りだしライノセラススカルは両手の盾を前に出してガードした。すると、以前は大きな傷がついていたライノセラスの盾は傷一つ付いていなかった。

 

「…マジかよ」

 

「言ったろ?もう効かないって」

 

ライノセラスは得意げに笑みを浮かべた。

 

「俺の盾は一度喰らった攻撃を記憶してどんどん強化していく。一度耐えきっちまえば俺に防げない攻撃はねぇぜ」

 

「なるほど…やっぱり一筋縄じゃいかないってわけか…」

 

まぁここまでは想定内…だったら…

 

「こいつで行くぜ」

 

『パキケファ!!』

 

俺はステゴキーを抜いてパキケファキーを起動し鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

『武装!!パキケファ!!』

 

すると、両手にオーラが纏わり付き両手が巨大な拳に変化した。

 

「あれ…なんか思ってたのとは…違う?」

 

前のステゴ武装の時は全身が変化したのに今回は両手だけ?

 

「新しい能力か?唆るねぇ!!」

 

ライノセラススカルは両手の盾を打ち鳴らして突っ込んできた。

 

「うわっやべえ!!とにかくいくぜ!!」

 

俺はそのままライノセラススカルへと拳を振り下ろした。

 

「うおっとととっ!?うわあ!!」

 

しかし両手の重さにバランスを崩してうまく移動できずそのまま壁に拳をぶつけてしまい壁がその衝撃で粉々に砕けた。

 

「…何してんだ?」

 

これにはライノセラススカルもポカンとしてしまった。

 

「くそっなんでだ…全然うまくできない…」

 

パキケファロサウルスの頭突きの力をリューマの力にして引き出すにはやっぱりパンチ力だと思ったのに制御ができない。

 

「何が…足りないってんだ!!」

 

「竜司!!」

 

すると、かつ姉が応援に駆けつけてきた。

 

「新手の忍か…唆るねぇ!!」

 

ライノセラススカルは嬉しそうに拳をぶつけた。

 

「舐めんじゃねぇ!!」

 

かつ姉は勢いよく突っ込み蹴りをライノセラススカルの頭へと繰り出す。

 

「…舐めてんのかてめぇ?」

 

しかしライノセラススカルにはびくともしない。

 

「おりゃぁ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

ライノセラススカルに殴られてかつ姉は吹き飛ばされた。

 

「いくら忍だからってよぉ…お前、弱すぎだろ」

 

「なっ!?」

 

ライノセラススカルの言葉にかつ姉は体を硬らせてしまう。

 

「そんな…アタイが…弱い…」

 

「舐めんなぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は叫びながらカグラドライバーの恐竜を叩く

 

『必殺の術!!』

 

両手の拳にエネルギーを纏って俺は全力でライノセラススカルへと殴りつけた。

 

「おっと」

 

しかしライノセラススカルは両手の盾を前に出してそれを容易くガードする。

 

「新しい武装もこんなもんか。意外と大したことなかったな。」

 

ライノセラススカルはそのままこちらへと近づいてくる。

 

「くそっ!!」

 

俺は身構えてライノセラススカルを向かいうとうとした。

 

 

 

 

「撤退ですよライノセラス」

 

すると、華やかな衣装を纏った金髪の男が突然現れた。

 

「…あと少しでリューマを倒せるんですけど?」

 

「少し暴れすぎです。敵の応援がさらに駆けつけています。これ以上は色々と面倒です。ですのでまた今度にしましょう」

 

「…まぁあんたの命ですし、わかりました。」

 

ライノセラススカルは男の命に従い男の作った黒い穴へと歩き出した。

 

「では」

 

金髪の男も俺に頭を下げるとそのまま黒い穴へと入っていった。

 

「助かった…のか?」

 

事情はわからないが撤退してくれたならそれに越したことはない

 

「かつ姉…大丈夫?」

 

俺はかつ姉の元へと近づくと

 

「…ちくしょう…アタイは…アタイは…」

 

悔しそうに涙を流していた。

 

「かつ姉…」

 

今まで一度も泣いてるところを見せたことがないかつ姉に俺は何も言えずにいた。

 




リューマ…変身失敗!!
その理由は一体なぜ…


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其の九 尊敬と必殺パンチ!!の巻

「大丈夫だったか竜司?」

 

ライノセラススカルとの戦闘後、俺は霧夜先生へと報告をしていた。

ライノセラススカルとの戦闘中に現れた金髪の男、そしてパキケファキーで完全に変身できなかったことについてである。

 

「すみません、スカルを倒すことが出来なくて…」

 

「いや、今回は渡したキーがうまく作動しなかったんだ。お前が気に病むことではない。」

 

俺は謝るも霧夜先生は事情を把握しているらしく許してくれた。

 

「それより…お前の前に現れたって言う金髪の男についてだが…」

 

「はい…犀野郎も素直に従っていたところを見ると…奴より立場が上の存在だと思います。それに…」

 

奴が放っていたオーラは今までのやつより遥かにヤバいオーラだった。

 

「とりあえず例の男については上層部にも調べてもらうように伝えておく、お前はスカルとの戦闘に備えて今は休んでおけ」

 

「わかりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、何でうまく起動しなかったんだろう?」

 

霧夜先生に報告を終えた俺はカグラドライバーを見ながら首を傾げた。

霧夜先生曰くパキケファキーの復元はちゃんと出来ていたらしい、とすると

 

「俺の武装のイメージが足りなかったのか?」

 

パキケファロサウルスと言えば強力な頭突き、ならその頭突きをパンチ力として活かすために巨大な拳をイメージした。しかし、

 

「パンチ力だけじゃ足りないのかな…」

 

「竜司…ちょっといいか?」

 

すると、暗い顔のかつ姉がやってきた。

 

「どうしたのかつ姉?」

 

「すまねぇ竜司、アタイが弱いばっかりに…お前の足をひっぱっちまった…」

 

かつ姉は暗い顔で俺に謝ってきた。

 

「そんな…かつ姉は悪くないよ。俺がパキケファキーをちゃんと使いこなせなかったのが原因なんだし…」

 

「でも…アタイが弱いから…!!仲間の力になれなくて…何が忍だよ!!」

 

俺の言葉を遮ってかつ姉は叫んだ。

 

「ちょっとかつ姉…かつ姉は弱くなんか…」

 

「お前に何がわかるんだよ!!」

 

突然かつ姉が声を荒げた。

 

「凄い力に選ばれた奴が…周りから評価されてるお前が…気休めなんか言ってんじゃねぇ!!」

 

目に涙を浮かばせてかつ姉はこっちを睨みつけていた。

 

「かつ姉…」

 

「あ…その…違…アタイは…」

 

俺が動かずにいるとかつ姉は自分の発言に気付いて取り乱してそのまま走り去ってしまった。

 

「かつ姉!!」

 

俺は慌ててかつ姉を呼んだがそのままかつ姉は見えなくなってしまった。

 

「かつ姉…」

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

放課後の街を一人葛城は走り続けていた。

 

「なんだよちくしょう…アタイ…最低じゃねぇか…」

 

自分の発言を悔い彼女は涙を流す。

 

「お父さん…お母さん…」

 

 

 

 

 

とある廃車置き場

 

「調子は良さそうですね」

 

ドラゴンの目の前ではライノセラスがリューマとの戦闘に備えていた。近くにはいくつもの車がひしゃげており彼が暴れ回った後であるのがわかった。

 

「まあ次は確実にリューマを倒しますからね。ここから絶好調に持って行きますよ」

 

そんなドラゴンの言葉にライノセラスは得意げに言葉を返した。

 

「本当あんたには感謝してるよ。おかげで俺は人間の領域を超越した存在へと進化できたんだからな」

 

「ふふふ、どういたしまして」

 

「だがまだ足りない。俺は最強になりたいんだ、人知を超えた存在、あんたと同じロードスカルにな」

 

「あなたは順調に進化をしております。このままいけば十分なれる可能性がありますよ」

 

闇世の中に両者の笑い声が響き渡った。

 

 

   

 

 

 

「かつ姉ー!!」

 

俺は飛び出していってしまったかつ姉を探して一人林の中を走っていた。

 

「ガマ吉がこっちにいったのを教えてくれたんだけどな…」

 

俺は現在カラクリガマのガマ吉(命名・竜司)の案内で森に入りあちこちを探している。

 

「ん…あれは…」

 

ふと気配を感じそちらを向くとかつ姉が一人森の中に立っていた。

 

「かつ姉!!」

 

「あ…竜司…」

 

俺が声をかけるとかつそのが俺を怯えたような目で見た。

 

「竜司…その…」

 

「とりあえず…これ食べますか」

 

そう言って俺はお手製の太巻きを取り出した。

 

「美味えな…これってお前が作ったのか?」

 

「これでも寿司屋に育てられてるからね。料理の腕なら結構自信があるぜ。なにより、料理出来る男はかっこいいってなんかの本で読んだこともありますし」

 

そう言って俺は再び太巻きにかぶりついた。まだまだじいちゃんには敵わないが今回はかなりうまく作れた。

 

「その…悪い。急に怒鳴ったりして…」

 

「いえ、俺もなんか無神経だったみたいで…」

 

自分が無意識にかつ姉を傷つけてしまったことに俺は悔いた。

 

「ワンワンっワンっ」

 

すると、草むらから可愛らしい子犬が現れた。

 

「チョコ…久しぶりだな…」

 

かつ姉は愛おしそうにその犬を抱きしめる

 

「かつ姉、その犬は?」

 

「アタイの家族さ」

 

先ほどよりも和らいだ笑顔でチョコと呼ばれる犬を撫でながらかつ姉は答えた。

 

「竜司…ちょっとついてきてくれるか?」

 

「かつ姉?」

 

そう言うとかつ姉は太巻きを飲み込むとチョコと一緒に歩き出し俺はそれについていった。

 

 

 

 

 

「着いた、ここだ」

 

かつ姉に連れられてたどり着いた場所から小さな一軒家が見えた。

 

「…あの家は?」

 

「…アタイの家さ」

 

「…かつ姉の家?」

 

俺が尋ねるとかつ姉寂しそうに家を見つめていた。

 

 

「アタイの両親が…あそこに隠れ住んでいる。」

 

「…隠れ住んでる?」

 

「アタイの両親は…ここに隠れ住んでいるのさ。アタイを残して」

 

「えっ…?」

 

その言葉に俺は驚愕した。それって…

 

「お前の想像通りさ、アタイの両親は…抜け忍なのさ」

 

そして、かつ姉は自身の過去を話し始めた。

 

 

 

 

 

「アタイの両親は幹部クラスの忍で、上層部からの信頼も厚い優秀な忍びの夫婦だった。数々の任務を熟せる両親はアタイ自身も誇らしくってそんな二人の娘であることがなによりも自慢だった。」

 

「…そんな凄い忍だったんですか」

 

手に太巻きを持ちながらも俺はかつ姉の話を聞いた。

 

「でも…ある日、二人が任務に失敗した。」

 

かつ姉の口から出た声は暗かった。そしてその顔は、俺にはとても悲しげに見えた。

 

「忍は重要な任務を失敗するとその命で責任を取らされる。アタイの両親は、自害をしないで抜け忍になる道を選んだんだ」

 

そして、その責が自身にも及ばないために二人は葛城だけを残して消えたのである。

 

「そこからは…アタイはずっと孤独だった。両親が抜忍になって、二人のかつての仲間だった人や上層部たちからは罵声もされた」

 

「……かつ姉」

 

「だからアタイは決心したんだ。忍びになって現場で活躍して優秀な忍と認められればきっと…お父さんやお母さんのことも認めてもらえて…いつかまたみんなで暮らせるんだって…」

 

まさかかつ姉にそんな過去があったなんて思いもしなかった。  

 

「でも、あのスカルに返り討ちに遭って、手も足も出なくて…そんな自分が情けなくなっちまったんだ… こんなんじゃお父さんとお母さんに会わせる顔がねぇよ」

 

悔しさで拳を握るかつ姉

 

「だから竜司、アタイはお前が羨ましいんだよ」

 

「えっ?」

 

「伝説の忍の半蔵様の弟子で、リューマってすげー力を使えるようになって、そんでもって最高幹部からも信頼されてるお前が…アタイは羨ましくて堪らない… 要するにアタイは、嫉妬してるんだよ…ほかでもないお前にな」

 

「かつ姉……」

 

違う…違うよかつ姉…俺は…

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

突然ガマ吉が鳴き出した。これは…

 

「出てこいリューマぁぁぁぁぁ!!」

 

遠くの方で敵意が篭った怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「この声は…かつ姉、ここで待ってて」

 

「りゅ、竜司…」

 

俺は声のした方へと向かって走り出した。

 

 

 

「へへへ、来た来た」

 

俺が駆けつけた先には全身に傷痕のある筋骨隆々の男が立っていた。

 

「お前がライノセラスだな?」

 

「その通り、今度は誰の邪魔も入らねえ。確実に倒させて貰うぜ」

 

『ライノセラス!!』

 

男は灰色のスカルキーを起動させると手の甲に鍵穴が現れる。そこにスカルキーを挿しこみ回すとどす黒い泥が吹き出し全身を覆いライノセラススカルへと変身した。

 

「それはこっちのセリフだ!!」

 

『ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着してティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「いくぜおりゃぁ!!」

 

俺は勢いよくライノセラススカルへと走り出した。

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

葛城は一人竜司の向かった方へと走っていた。

 

「勝ち目がなくたって…アタイは…」

 

じっとしてなんかいられない。なぜなら…自分は忍だから…

 

「竜司!!」

 

葛城がたどり着くと…

 

「ぐ…この野郎…」

 

「おいおい、こんなんじゃ全然唆らないぞ」

 

ボロボロになったリューマがライノセラススカルにやられていた。

 

 

 

 

 

「おいおいしっかりしてくれよ。せっかく楽しみにしてたんだからさ」

 

「くそっ…舐めやがって!!」

 

俺は再び立ち上がってライノセラススカルへと殴りつけた。

しかし、その硬い鎧に阻まれ攻撃はほとんど効いていなかった。

 

「まぁ仕方ないな俺のこの鎧と盾を破れる奴なんている訳ないんだし」

 

ライノセラススカルは嬉しそうに笑い出した。

 

「俺は昔、とある地下格闘場のファイターでよぉ、あらゆる強者と戦い続けていた。だが強さを追い求めるうちに俺は『どんな攻撃も効かない無敵の肉体』を手に入れたいと思うようになった。そしたら叶ったんだよ。我が主人との出会いでな」

 

「この前の金髪野郎か…」

 

「その通り!!あの人たちは俺たちスカル達の中でもさらなる超越者!!あの人たちと同じ存在へと進化することこそ俺の目標!!お前達は所詮俺の踏み台でしかないって事だ!!」

 

目の前のライノセラススカルの発言から面白いことがわかった。

 

「つまり、そいつら全員倒せばお前たちの野望は潰えるってわけか」

 

「出来ねえよ!!俺にやられてるお前じゃなぁ!!」

 

俺の言葉に怒りライノセラススカルは突進を繰り出してきた。

 

「ぐっ…」  

 

俺は両手でガードするも防ぎきれず吹き飛ばされてしまった。

 

「忍なんて雑魚共と群れてるようなやつがあの方たちに敵うわけねえだろうが!!」

 

「…雑魚?」

 

ライノセラススカルの言葉に俺は怒りを感じた。

 

「そうだ雑魚だよ!!特にこの前の金髪なんて話にならなかったぜ!!あんな雑魚と群れなきゃいけないお前にはほんと同情するってもんだ!!」

 

 

 

 

「雑魚……」

 

葛城はライノセラススカルの言葉に再び辛い気持ちになった。

 

「悔しい…でも…」

 

否定できない…鍛えても鍛えても負けてばかりの自分が…不甲斐なくて堪らない…

 

 

「ふざけんな…」

 

 

突然竜司の怒りに震えた声が聞こえた。

 

「竜司?」

 

「かつ姉のどこが雑魚なんだ…」

 

 

 

 

「あ?何ぶつぶついってんだテメェ?」

 

「かつ姉の強さを知らない奴が…かつ姉のかっこよさを知らない奴が…かつ姉を侮辱すんな」

 

俺は知ってる。かつ姉が稽古の終わった後一人で特訓していることを…いつもふざけているように見えても稽古で一度も手を抜かないことを…

 

「全力で修行に取り組むかつ姉は…めちゃくちゃかっこいい…俺の尊敬する先輩だ」

 

そんなかつ姉を侮辱する奴は…絶対許さねえ!!

 

「竜司!!」

 

突然声が聞こえてそちらを向くとかつ姉が立っていた。

 

「竜司、この前の新しいキーを使え!!」

 

「えっ…でもアレは…」

 

まだキーを使えなかった理由がわかってないのに…

 

「馬鹿!!アレはお前のイメージが足りなかっただけだ!!お前はパンチ力ばっかに目をやりすぎて肝心の足腰が疎かになってたんだ!!どんな技だってな…足腰がちゃんとしてなきゃパワーなんて出ないんだよ!!」

 

「足腰…そうか!!」

 

たしかにパキケファロサウルスだってあのデカくて硬い頭を支える足腰があるから強力な頭突きを繰り出せるんだ。しっかりとした土台が無ければ強力な力は出せない!!

 

「サンキューかつ姉!!」

 

「へへっ、あんな褒められ方されたんだ…ここで折れたらアタイは立派な忍さになんてなれないからな!!」

 

かつ姉のその目は、いつも見ていた明るいかつ姉の顔そのものだった。

 

「よっしゃ、だったら使わせて貰うぜ!!」

 

『パキケファ!!』

 

俺はティラノキーを抜いてパキケファキーを起動し鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「今度は両手だけじゃない…体を支える土台をイメージ!!変身!!」

 

『武装!!パキケファ!!』

 

鍵を回すと、ドライバーの音声と共に灰色のパキケファロサウルスが現れ体を包み込み、巨大な灰色の拳と巨大な具足を装着した灰色のリューマ、仮面ライダーリューマ・パキケファ武装に変身した。

 

「仮面ライダーリューマ・パキケファ武装…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「ほざけ!!」

 

ライノセラススカルは叫びながら俺に殴りかかってきた。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

俺は渾身のパンチを繰り出すと自分でも信じられないほどの威力のパンチとなりライノセラススカルは吹き飛んだ。

 

「な、なんだこの威力は……」

 

「すげぇ…これならいけるぜ!!」

 

俺はその勢いでライノセラススカルへと連続で殴りつけた。

 

「くそがぁぁぁぁぁ!!こんな…こんなガキに…俺の無敵の肉体がやられるはずがねぇ!!」

 

ライノセラススカルは怒りながら俺に殴りかかってきた。

 

「無駄だぁぁぁぁぁ!!」

 

俺はライノセラススカルの攻撃をガードし、渾身のカウンターを放ちライノセラススカルの装甲にはいくつもヒビが入っていた。

 

「くそがぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ライノセラススカルは前方に両手の盾を展開して突進してきた。

 

「トドメだ!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺はカグラドライバーの恐竜を叩くと、地面を踏み込み拳を構えた。すると、拳にオーラが纏わり付き拳が輝く。

 

「必殺忍法!!激竜空烈拳!!」

 

俺は地面を蹴り一瞬でライノセラススカルへと近寄りその盾に渾身のパンチを繰り出し、盾を突き破ってライノセラススカルへと炸裂した。

 

「そんな…この俺の鉄壁の盾がぁぁぁぁぁ!!」

 

ライノセラススカルはそのまま吹き飛び爆発した。

 

「が…がはっ…」

 

男はそのまま意識を失い粉々に砕けたスカルキーが散らばった。

 

「ははっ…思い知ったかこんちきしょー」

 

 

 

 

 

「おりゃぁ!!」

 

「うわぁっ!?」

 

ライノセラススカルとの戦闘からしばらく経った後、俺とかつ姉は訓練所で組み手をしていた。かつ姉は吹っ切れたようで動きにキレがでて俺は負けてしまった。

 

「あーくそっ」

 

「へっへっへっアタイだってまだまだ負けられないぜ」

 

かつ姉はにししと笑って俺を起き上がらせた。

 

「竜司、ありがとな…お前のおかげでアタイは自分に自信を持てるようになった。」

 

「いえいえ、俺は事実を言ったまでだって」

 

「竜司、アタイはもっと強くなる。強くなって…いつの日かお父さんとお母さん、それからチョコとまたみんなで暮らせるようになってみせる!!」

 

「その調子です!!俺も応援しますよ!!」

 

「へへへっなんか照れるなぁ…」

 

かつ姉は俺の言葉に少し恥ずかしそうに照れた。

 

 

 

 

「ぐぐぐ…」

 

そんな二人を斑鳩は木刀を持ちながら羨ましそうに見ていた。

 

「い、斑鳩さん…?」

 

そんな斑鳩を見て飛鳥は恐る恐る声をかけた。

 

「いえ…竜司さんと葛城さんの様子を見ていたら…なんていうか…こう…殺意のようなものが…」

 

その手の木刀はミシリとへし折れていた。

 

「ひぃっ!!」

 

そんな斑鳩先輩を見て飛鳥は怯えて震えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮面ライダーですか…思いの外厄介ですね。」

 

暗い部屋の中でドラゴンが椅子に座って呟いた。

 

「ガリューといいリューマといい…やはり鎧の使い手は私の計画を阻む宿命にあるようですね…まぁしばらくは様子見としましょうか。ふふ、ふふふふふ…」

 

ドラゴンは邪悪な笑みを浮かべて静かにわらった。

 

 

 

 



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其の十 野球と告白!?の巻


野球といえばあの回です!!


「霧夜先生、俺は大変なことに気づいたよ」

 

ある日、俺は衝撃的な事実に気付いて霧夜先生に話しかけた。

 

「なんだ竜司、真剣な顔をして?」

 

そんな俺に霧夜先生はポカンとしていた。

 

「俺は仮面ライダーリューマとして…何度もスカルと闘ってきてたけど…仮面ライダーを名乗るには足りないものがあることに気づいたんだ…」

 

「ほう、足りないものとは?」

 

仮面ライダーを名乗るのに足りないもの…それは…

 

「専用のバイクが無いことです!!」

 

仮面「ライダー」なのにバイクを持ってないのはマズい!!これじゃあ身分訴訟も同然である!!今までこんな大変なことに気づかなかった自分が不甲斐なさすぎて恥ずかしい!!

 

「そういうわけで霧夜先生!!神門様に専用バイクを貰えるように掛け合ってください!!」

 

「すまん、真剣に聞いた俺が馬鹿だった。」

 

霧夜先生は呆れた顔でため息をつき俺に拳骨を繰り出した。

 

「痛たた…なんでですか霧夜先生!?」

 

「お前はなぁ…最近神門様のことを未来の道具を出すポケットを持った猫型ロボットかなんかと勘違いしてないか?そんなもん簡単にくれるわけ無いだろ?」

 

「そんなぁ……」

 

霧夜先生の言葉に俺はがっかりしてしまった。

 

 

 

 

「はぁ…専用のバイク…」

 

お昼休みになって、俺は今なおがっくりしていた。

 

「わたくしもさすがにそれは霧夜先生の言う通りだと思いますよ」

 

そんな俺にため息を吐きながら斑鳩先輩は呟く。

 

「ま、まぁ…場合によってはわたくしの方からお父様に掛け合ってみますが…竜司さんには色々と恩がありますし…お父様も協力してくださるかと…」

 

「本当ですか!?」

 

斑鳩先輩の言葉に俺は飛び起き斑鳩先輩の手を握った。

 

「ありがとうございます!!その時は是非!!」

 

「あ…は、はい!!お任せください!!」

 

すると斑鳩先輩は顔を真っ赤にしたと思ったら嬉しそうに微笑んだ。

 

「ところで…飛鳥はなんでああなってるんだ?」

 

俺が視線を向けると飛鳥がぼーとしていた。

 

「どうしたの?飛鳥ちゃん。お昼、食べないの?」

 

雲雀が飛鳥の顔を覗き込んでいる。

 

「なんかあったの?」

 

「いや、その……知らない男の子に告白されちゃって」

 

 

 

 

「「「「「え…えええええええ!!??」」」」」

 

 

 

 

 

その瞬間、忍部屋のみんなの驚愕の声が響き渡った。

 

「ちょ…飛鳥…告白ってマジか!?」

 

「アタイに詳しく話しな!!」

 

「ひ、ひばり、驚きです」

 

「……男……か」

 

「わたくしも興味があります」

 

「じ、実は……」

 

次々と聞いてくる俺たちに飛鳥はたじろぎながらも教えてくれた。

 

 

 

 

 

『ありますよ』

 

「あるんですか!?」

 

竜司たちが忍部屋で昼休みをしている頃、霧夜先生は神門様と電話をしていた。先程、竜司がバイクが無いかと相談してきた時は呆れて少し叱ったがまさかあるとは思わなかった。

 

『リューマの戦闘サポート用として現在ちょうど開発中のものがあります。完成次第そちらに送りましょう』

 

「いや…なんかすみません…あいつの変なこだわりに付き合わせてしまって…」

 

『いえいえ、もともと開発中のものですしむしろ気に入っていただけそうで何よりです。』

 

感謝の言葉を述べる霧夜先生に対し神門は笑いながら答えた。

 

『ただ…竜司さんに伝えて欲しいことがあります。新しい未来が見えました。』

 

「伝えて欲しいこと?」

 

神門の言葉に霧夜先生は顔色を変えた。

 

『近いうち、スカルとの大きな闘いが始まります。その闘いは一つ目の分岐点、忍とスカルの闘いの結末を握る鍵になります。気をつけてください』

 

「わかりました。あいつにも言っておきます。」

 

『では』

 

神門との会話が終わり霧夜先生は電話を切った。

 

「分岐点か…」

 

 

     

 

 

 

「話から察するに、そのお相手は他校の野球部の生徒……ということでしょうか」

 

斑鳩先輩は冷静な口調で言う

 

「野球部!いい!将来はメジャーリーガーかよ!飛鳥、こりゃいい物件を手に入れたな!」

 

かつ姉はハイテンションで騒ぐ

 

「いやいやかつ姉、メジャーリーガーになるほどの一流アスリートはたしか忍としても十分通用する身体能力を持ってるんですよ。そんな簡単にはなれないって」

 

「すごーい!野球選手は手裏剣を刀で打ち返すこともできるんだね!」

 

雲雀は雲雀で相変わらず微妙にズレてるようだ

 

「にしても返事はどうすんだ?」

 

「どうするって言われても…」

 

俺が聞くと飛鳥は考えた。

 

「……俺たちは忍だ。それを忘れるな」

 

突然柳生はボソリと呟いた。氷水のような一言に周囲は一気に静かになった。あれだけ騒いでいたかつ姉も頭をかいている。

 

「わ、わかってるって。それぐらい」

 

飛鳥も慌てて返答していた。

 

 

 

 

 

 

東京のとある美術館、ここには様々な時代の絵画やアンティーク、美術品が展示されている。休日には多くの人々が集まるこの場所は東京でも知る人ぞ知る名所である。

 

そんな美術館に隠された秘密の部屋では

 

「はぁ…やはり良いものですね…この部屋の空気は…」

 

この美術館の館長である。初老の男が安楽椅子に腰掛けくつろいでいた。

部屋の中には描いてる途中の絵画、陸上選手のシューズ、ボクシンググローブ、バイオリンなどが並べられていた。しかし、そのすべてが破れていたり焼け焦げていたり、変形したりしていた。

 

「相変わらずおかしな趣味をしているな、ウォートホッグ」

 

館長は突然聞こえた声に振り向くと燕尾服を着た女性、メドューサが立っていた。

 

「これはこれはメドューサ様、いったいどのようなご用件で?」

 

美術館館長、ウォートホッグと呼ばれた男は笑みを浮かべ頭を下げる。

 

「お前に始末して欲しい相手がいる。」

 

「……例のリューマのことですかな?」

 

「流石に情報が早いな」

 

メドューサの言葉にウォートホッグは関心した。

 

「知ってるなら話が早い。奴を討ち取り陛下の野望の妨げになる障害を破壊せよ」

 

「お任せくださいメドューサ様…ところで」

 

『ウォートホッグ!!』

 

ウォートホッグが藍色のスカルキーを起動すると右肩に鍵穴が現れる。そこへ鍵を挿しこみ回すとどす黒い泥が溢れ出て全身を覆い、両肩に車輪が付いたイボイノシシの怪物、ウォートホッグスカルへと変身した。

 

「倒し方は自分のやり方でも良いのでしょう?」

 

「…好きにしろ。そのかわり確実に倒せ」

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ」

 

休日の朝、俺は山道でトレーニングしていた。リューマに変身できるようになった以上、その力をさらに引き出せるようにトレーニングをしっかりと熟さなくてはいけない。俺の目標、夢でもある『世界一かっこいい忍者』になる為に、

 

その時、突然頭に何かがぶつかってきた。

 

「痛てぇ!!」

 

突然の激痛に驚きコブをさすりながら飛んできたものを見ると

 

「…野球ボール?」

 

「あっ。ご、ごめん!!怪我は無い!?」

 

突然草むらから現れたのは、頭は丸坊主、顔は真っ黒に日焼けしており身長は185センチほどの野球のユニフォームを着た少年が立っていた。

 

「ま、まぁタンコブが出来ただけだし…大したことはないよ」

 

「…やっぱりコブが…傷つけるつもりは無かったんだ…本当にごめん!!」

 

少年は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 

 

 

 

「俺、鈴木って言うんだ…君は?」

 

「俺は竜司、よろしく」

 

野球少年もとい鈴木と俺は草むらで座って話をした。

 

「鈴木はいつもここで練習してんのか?」

 

「うん、ここには自主トレで来ていて…今日も打撃練習をしてたんだ」

 

どうやらその時、打った球の一つが木にぶつかって飛んでいって俺の頭を直撃したらしい

 

「凄い沢山練習してんだな」

 

俺は周りに転がった野球ボールを見て俺は呟いた。

 

「人より多く練習したいんだ。俺にとって…野球は特別だから…」

 

鈴木はボールを手に真っ直ぐな目で呟いた。

 

「なぁ竜司、ちょっと良いかな?」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

「ほっ」

 

「ふんっ」

 

俺は現在、ボールを投げそれを鈴木が打っていた。所謂野球の練習である。

 

「凄いな竜司、コントロールバッチリだよ」

 

「へへっ、まあな」

 

霧夜先生からは外部との接触は控えるように言われているがこれくらいなら別に大丈夫だろう

 

「なんかえらい気合い入ってるけど…試合でもあんの?」

 

「うん、週末に試合があってね…この前好きな女の子を誘ったんだ」

 

「へぇ、どんな子?」

 

「いや…その…一目惚れした子でね…この近くにある半蔵学院の女の子なんだ…」

 

「へぇ〜半蔵学院…え?」

 

ちょっとまて…もしかして…

 

「こ、告白とか…したの?」

 

「したよ、一目惚れした瞬間に。その時はうっかり名前も聞かずに告白しちゃったけどね」

 

そう言うと鈴木は照れ臭そうに笑った。

 

(えーと…その女の子って…絶対飛鳥だよな…ヤベェ…めっちゃ気まずい)

 

まさかこんなところで飛鳥に告白した相手に遭遇するとは思いもよらなかった…

 

「だから…もし彼女が来た時に…良いところを見せたいんだ」

 

「そ、そうか…頑張れよ」

 

はて…どうしたものか…

 

 

その時、巨大な木がこちらへと倒れてきた。

 

「あぶねえ!!」

 

俺は慌てて鈴木を引っ張り避けると木は俺たちがさっきまでいた場所に倒れた。そのあとはまるで根っこから引っこ抜いたようだった。

 

(まさか…スカルか…こんなところに…!!)

 

「くそっ…こっちだ鈴木!!」

 

「あ、ああ!!」

 

俺は鈴木を連れて山道を駆け下りた。

 

 

 

 

「いったい…なんだったんだ今のは…」

 

麓まで駆け下りると鈴木は慌てた様子で呟いた。

 

「もしかしたら地盤沈下かもしれない。今日はもう帰ったほうがいいよ。」

 

「でもボールが…」

 

「また今度俺が取りに行くから、だから今日は帰れって。な?」

 

俺はうまくごまかしてどうにか鈴木を帰らせることに成功した。

 

 

 

 

「よし…あとは…」

 

俺は再び山の中に入ってスカルを迎え撃つことにした。

 

 

 

 

「おや、わざわざ自分から倒されに来てくださるとは」

 

すると、両肩に車輪が付いたイボイノシシのようなスカル、ウォートホッグスカルが現れこちらへと近づいて来た。

 

「ふふふ…貴方…夢で溢れていて…とても良いですね…その夢、壊させて貰いましょうか…」

 

「舐めんじゃねぇ!!」

 

『ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着してティラノキーを起動し鍵穴に挿しこんだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

「武装!!ティラノ!!」

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスのが現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

俺はそのままウォートホッグスカルを殴りつけるがタフな肉体を持つウォートホッグスカルはガードをしてカウンターを繰り出してきた。

 

「ぐっ…舐めんな!!」

 

俺はすぐにガードをしてカウンターを防ぐとお返しとばかりに連続でパンチを繰り出した。

 

「ぬぅっ!!なるほど、やりますね。では少し本気になりますか」

 

ウォートホッグスカルは距離を取るとりょうかたの車輪が回転し背中のブースターにエネルギーが集中しだした。

 

「くらいなさい!!」

 

すると、背中のブースターから炎が噴出し凄まじい突進が繰り出された。

 

「うわぁ!!」

 

俺はとっさに躱すと背後にあった木々が何本もへし折られていった。

 

「くそっ…なんつー威力だよ」

 

あんなのをまともに喰らったら本気でやばい…だったら

 

『パキケファ!!』

 

俺はパキケファキーを起動して回した

 

「変身」

 

『武装!!パキケファ!!』

 

すると、灰色のパキケファロサウルスが現れ俺を包み仮面ライダーリューマ・パキケファ武装へと変身した。

 

「おりゃぁ!!」

 

「ぐうぅ…」

 

俺はパッキーナックルでウォートホッグスカルへと渾身のパンチを繰り出すとウォートホッグスカルは効いたらしく吹き飛ばされた。

 

「トドメだ!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺はカグラドライバーの恐竜を叩くと、地面を踏み込み拳を構えた。すると、拳にオーラが纏わり付き拳が輝く。

 

「必殺忍法!!激竜空烈拳!!」

 

「おのれぇ!!」

 

俺の必殺忍法とウォートホッグスカルの突進が衝突しそのまま両者は吹き飛ばされた。

 

「くそっ…マジかよ…パキケファの必殺忍法と相討ちなんて…」

 

「くっ…やはり強いですね…今日はこの辺にしておきましょうか…」

 

ウォートホッグスカルはふらつきながらその場を立ち去っていった。

 

「くそっ…少し無茶しすぎたか…」

 

俺は変身を解除すると、木に寄りかかりガマ吉・スマホモードを使って仲間を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

「ん?これは…」

 

退散したウォートホッグスカルはその途中で何かを拾い上げた。それは、鈴木が落とした野球ボールであった。

 

「これは…素晴らしい夢の匂いがしますね…」

 

それを拾い上げてウォートホッグスカルは笑い出す。

 

「そういえば…野球選手の夢はまだ壊してませんでしたねぇ…ふふ、ふふふふふ…」

 

ボールを拾い上げてウォートホッグスカルは悪意に満ちた笑みを浮かべ笑った。

 



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其の十一 夢と最強バイク!!の巻

少し遅れてしまい申し訳ありません!!

最新話更新です!!


「竜司、なぜ俺が怒っているか…わかるな?」

 

「…はい」

 

ウォートホッグとの戦闘後、俺は霧夜先生に呼び出されていた。

理由は簡単、それは…

 

「外部の人間と関わったばかりが…スカルの襲撃に巻き込んでしまったことです…」

 

「そうだ」

 

霧夜先生は静かに、俺を見つめながら答えた。

 

「竜司、お前はたしかにリューマとして選ばれて…多くのスカルと闘ってきて…それを誇ることは決して悪いことではない…しかし…」

 

お前は忍だ。

 

その言葉に俺は自分の浅はかさを悔いた。

 

「お前は自分の勝手な解釈で外部と接触し、関係のない一般市民を危険に晒した…忍としてあるまじき行為だ。」

 

「う……」

 

霧夜先生の言葉に俺は何も言えなかった。

 

「襲撃したスカルを確実に倒せ…あくまで忍として…以上だ」

 

そういうと霧夜先生は静かにその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

俺はスカルの情報を探るために情報収集を行なっていた。その中でわかったことなのだが最近この辺りでスポーツ選手や画家、格闘家などの若者が何者かに襲撃される事件が多発しているらしい。そのほとんどが再起不能になっているらしく彼らが愛用していた道具が奪われているとのことだそうだ。

しかし、同時に俺は…

 

「何…やってんだろうな…俺」

 

改めて自分の行いを俺は悔いていた。今回の情報も入念に調査していればもっと早めに気づくことであった。仮面ライダーであることにこだわるばかりに忍であることを疎かにしてしまった…自分が本当に目指していた『世界一かっこいい忍者』の夢を見失っていた。

 

「竜司、無事だったんだな!!」

 

ふと声が聞こえて振り向くと、野球のユニフォームを着た鈴木がこちらへと駆け寄ってきた。

 

「鈴木…どうしてここに?」

 

「この前の場所が立ち入り禁止になっていたからさ、ここで練習してたんだ。」

 

「そっか…」

 

俺は言ってるそばから鈴木に気づかないばかりかつい喋ってしまったことに不甲斐なさを感じてしまった。

 

「どうしたんだ竜司?なんか元気ないけど?」

 

鈴木は俺の様子に気づいたのか心配そうに聞いてきた。

 

「え、ええと…ちょっと…いろいろ失敗しちゃって怒られちゃって…」

 

「そっか…」

 

鈴木は俺があまり聞かれたくないことを感じたのかそれ以上は聞いてこなかった。

 

「なぁ竜司、ちょっといいか?」

 

「ん?」

 

突然、鈴木が俺に話しかけた。

 

 

 

 

 

 

「ふふふ…楽しみですね…」

 

美術館の隠し部屋、ウォートホッグの男はそこで鈴木が落としたボールを見つめながら不敵な笑みを浮かべていた。

 

「何をしている?」

 

ふと声がした方を振り向くと、燕尾服を着た女性、メドューサが苛立った表情で睨み付けていた。

 

「いつになったらリューマを倒しに行く?あれからずっとそのボールを見つめているだけではないか」

 

「…これは失礼、久しぶりに素晴らしい夢の香りを見つけてしまったので…」

 

メドューサの怒りの顔にも動じずウォートホッグは笑みを浮かべて頭を下げた。

 

「これだけの夢が…誰かに壊されたとき、あの少年はどんな絶望の顔を浮かべてくれますかねぇ…」

 

「…相変わらず、悪趣味な男だな」

 

ウォートホッグの言葉にメドューサは嫌悪の表情を見せた。

 

「ん〜心外ですね…良い趣味と言って欲しいのですが…あの未来を信じてまっすぐな希望に満ち溢れた顔が絶望に変わる瞬間、その素晴らしさがわからないなんて…」

 

ウォートホッグは悪意に染まった笑みで嗤い歩き出した。

 

「まぁ見ていてください、頼まれた仕事はきちんと熟すのが私のポリシーなので」

 

 

 

 

 

「で……何で俺、ランニングしてんだろ?」

 

今俺は河原でランニングをしていた。

 

「悩んだ時とか行き詰まった時ってこうやってリフレッシュすると良いよ、俺もスランプの時とかこうやってスッキリしてるんだ」

 

「そ、そっか…」

 

外部の人間と極力関わるなとあれだけ言われておきながら関わってる自分がまた少し情けなくなってしまった。しかし、たしかに走っていると風を切る音や陽の光が気持ち良くて少し気が楽になっていた。

 

 

 

 

 

「ふう、少しは良い顔になったな」

 

「あ、あぁ。ありがとな鈴木」

 

少しスッキリした俺たちは河原の草むらに腰掛けていた。

 

「…なぁ鈴木、ひとつ聞いていいか?」

 

「どうした竜司?」

 

「もし…さ、自分の夢を追いかけているつもりが…いつのまにかその夢の本質を見失ってしまったらさ…どうしたらいいかな?」

 

『世界一かっこいい忍者』になる、その夢に向かってまっすぐ走ってたはずなのに…仮面ライダーの力にこだわりすぎて…忍としての本質を見失ってしまった…そんな自分が情けなくてつい相談してしまった。

 

 

 

「それなら簡単だよ、自分が何でその夢を目指したのかを思い出してみたらいい」

 

鈴木は、俺の質問に何の迷いもなく答えた。

 

「俺もさ、あるんだよ。今の竜司とおんなじことになった時がさ、試合に勝つことばかり考えて、何で野球をやってるのか分からなくなっちゃったことがあるんだ。それを監督に見抜かれてしばらく試合に出してもらえなくなってさ、試合ができなくなって気づいたんだ。何で野球をやってたのか」

 

「なんで?」

 

「野球が大好きだからだよ。俺は野球が大好きなんだ。多分世界で一番」

 

まっすぐと笑顔で鈴木は答えた。

 

「竜司、お前もなんでその夢を持っていたのか一度振り返ってみるといいよ。結構簡単なことだったりするしさ」

 

「鈴木…」

 

鈴木の言葉に俺は、少し考えた。

 

(なんで…俺が『世界一かっこいい忍者』を目指したのか…)

 

そして、それは本当にあっさりとわかってしまった。

 

 

 

   

 

 

 

 

 

「理由なんてない、ただなりたいから目指したんだ」

 

仮面ライダーになったのも…自分の目指す『世界一かっこいい忍者』になりたいから、その夢を叶えるために必要だったから…

 

「ありがとな鈴木、おかげでスッキリした。」

 

「お、もう大丈夫なのか?」

 

「おかげさまでな、サンキュー」

 

鈴木にお礼を言うと俺はそのままその場を離れた。

 

 

 

少し歩くと煙玉とともに霧夜先生が現れた。

 

「…まったく、外部の人間と接触したことを注意したそばから…」

 

「ごめんなさい!」

 

俺が頭を下げると霧夜先生は少しポカンとした顔になり、安心した顔をした。

 

「…どうやら、吹っ切れたようだな」

 

「はいっ!!」

 

「なら、引き継ぎスカルの捜索を進めろ!!お前の目指す、忍としてな」

 

そう言うと霧夜先生はそのまま立ち去っていった。

 

 

 

 

「やれやれ、あいつのことになると心配でほっとけなくなってしまうな」

 

霧夜先生は走り出した竜司を見ながら笑ってそう呟いた。

 

「なぁ凛、あいつを見てるとな…お前のことを思い出すよ。『スーパーニンジャ』を目指したお前のことをな…」

 

かつて自分が救えなかった教え子のことを再び思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

次の日、この日は鈴木の試合前日であった。鈴木はユニフォームを着てバットを背負って学校のグラウンドへと向かっている。本当は今日は体を万全にするために練習は無いのだが最後のアップをするためやりすぎないことを条件に一人練習をするためグラウンドを使うことを許してもらったのだ。

そんな彼を離れた場所から初老の男、ウォートホッグが見つめていた。ウォートホッグは邪悪な笑みを浮かべ懐から藍色のスカルキーを取り出し、起動させる

 

『ウォートホッグ!!』

 

すると、右肩に鍵穴が現れそこへ鍵を挿しこみ回すとどす黒い泥が溢れ出て全身を覆い、両肩に車輪が付いたイボイノシシの怪物、ウォートホッグスカルへと変身した。

 

ウォートホッグスカルはそのまま静かに、ゆっくりと鈴木へと近寄っていく。そのまま襲い掛かろうとしたその時、竜司が割り込んできた。

 

「なっ…」

 

竜司の登場にウォートホッグスカルは思わず立ち止まる。竜司がチラリと鈴木の方を見ると鈴木はウォートホッグスカルに気づくことなくその場を去っていった。竜司は安心する。気づかなくて幸運だ。これからはあいつにはまったく関係ない戦いが始まる。平和な世界で生きているあいつは、できれば関わって欲しくない。

 

 

 

 

「なぜ…私があの少年を襲うとわかったのですか?」

 

突然現れた俺にウォートホッグスカルは驚きを隠せずにいるようだ。

 

「最近この辺りで学生が襲われている事件が多発している…それも全員が何かの分野で注目されている…現場の破壊痕からお前だと分かった…そんな奴が、俺と一緒にいた野球少年の鈴木に狙いをつけないわけがないだろ?」

 

(万が一当てが外れた場合に備えて他のみんなにまだ襲われてない人たちの監視を任せたけど、どうやら当たりだったようだな)

 

「ふう…仕方がありませんね…あなたを倒さないとメドューサ様がうるさいですからね…あの少年はあなたを倒した後にゆっくりいたぶるとしましょう」

 

ウォートホッグスカルは身構えて臨戦態勢に入った。

 

「させねえよ…お前みたいなやつに…人の夢は壊させねえ!!」

 

『ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着してティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「いい気になるなよ小僧!!」

 

ウォートホッグスカルはそのまま突進を繰り出してきて、俺はそれを躱した。

 

「おりゃぁ!!」

 

「なっ…!?」

 

そのまま蹴りを繰り出すとウォートホッグスカルは吹き飛ばされ壁に激突した。

 

「ぐっ…このぉ!!」

 

ウォートホッグスカルは叫びながら俺に殴りかかるのでそれを躱して連続でパンチを繰り出す。

 

「ぐわぁぁぁぁ!?こ、このパワーは一体…!?」

 

俺のパンチにウォートホッグスカルはフラフラになりながらも立ち上がった。

 

「ぐぐ…少しはやりますね…ですが、これならどうです?」

 

すると、ウォートホッグスカルは両肩の車輪を回転させ背中のブースターにエネルギーが集中し、ブースターの噴出とともに強力な突進が繰り出された。

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

俺はカグラドライバーを叩くと音声と共に足にエネルギーが込められていく。俺は飛び上がるとティラノサウルスのオーラを全身に纏い渾身のキックが繰り出された。そして、その蹴りは相手の突進に打ち勝ちウォートホッグスカルを吹き飛ばした。

 

「ぐっ…ぐわぁぁぁぁ!?」

 

俺の必殺忍法によって吹き飛ばされたウォートホッグスカルはなんとか立ち上がる。しかし、もはや心は折れ、満身創痍になっていた。

 

「そ、そんな…あの時とは比べものにならないくらい強くなっている…この短い間に…一体何が…」

 

「俺は、もっと強くなる…忍としても、仮面ライダーとしても…俺の目指す夢のためにな…お前みたいな、人の夢を踏みにじるやつに負けてる暇はないんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

「ウォートホッグ……なんてザマだ」

 

その様子をメドューサは憤りながら見ていた。

自身が命じた部下、それが命令を遂行するどころか勝手な行動をした結果、リューマに返り討ちに遭う…失態も良いところである。

 

「こんなところでコレを使うことになるなんて…」

 

怒りながらメドューサは懐からあるものを取り出した。それはまるで毒蛇の牙を思わせるダガーであった。よく見ると中には血のように紅い液体が入っていた。

 

「貴様程度には過ぎた代物だか…せいぜい役に立て」

 

そしてメドューサはダガーをウォートホッグスカルへと投げつけた。

 

 

 

 

 

「さて、そろそろトドメといこうか」

 

「ひぃっ!!」

 

俺が近づくとウォートホッグスカルは悲鳴をあげ後ろに退がった。もはや戦意喪失しているのは明白だった。俺が再び必殺忍法を放とうとしたその時、

 

「ぐぁっ!?」

 

突然、ウォートホッグスカルの体に毒蛇の牙の様なダガーが刺さり中の液体が注入された。

 

「な、なんだ…!?」

 

「ぐぐぐ…ぐぁぁぁぁぁ!!」

 

すると、ウォートホッグスカルは苦しみ出したかと思えば突然軀が肥大し脚が二つの車輪になった巨大なイボイノシシの姿になった。

 

「ブヒィィィィィィン!!」

 

突如変貌したウォートホッグスカル・巨獣態は巨大な雄叫びとともに無茶苦茶に走り出した。

 

「あの暴れ方…暴走してる!?」

 

突然暴走し出したウォートホッグスカル・巨獣態の攻撃を躱して反撃すると先ほどよりも耐久力が上がっているのかすぐに立ち直って攻撃してきた。

 

「くっそ…厄介だな…」

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

突然声が聞こえてそちらを見るとカラクリガマのガマ吉がこちらへやってきた。そして俺にら咥えていたオレンジ色小さな巻物とカードキーを渡すとスマホモードになった。着信があったので出ると相手は霧夜先生だった。

 

『竜司!!神門様からお前に新しいアイテムだ!!』

 

「おおっ!!新アイテムですか!!」

 

「本当はもう少し時間がかかるそうだったが斑鳩の実家の協力のもとどうにか完成した。巻物のボタンを押せ!!」

 

よく見ると巻物の方に小さなボタンが付いている。俺がそれを押すと

 

『シノビークル!!』

 

突然巻物が巨大化、変形するとオレンジ色のバイク、シノビークル大地に変形した。

 

「おおっ!!専用のバイク!!ありがとうございます!!」

 

俺は早速シノビークル大地に乗ると発進させウォートホッグスカル巨獣態へと突進した。バイクはスピードはもちろんのこと自分の思った通りに自在に動き、まるで自分の体の様であった。

 

「すげぇ…これなら!!」

 

俺はシノビークル・大地で暴れるウォートホッグスカル巨獣態の攻撃を躱してファングクナイで斬りつけた。

 

「ブヒィィィィィィン!!」

 

ウォートホッグスカル巨獣態はがむしゃらに攻撃を繰り出すが俺にはかすりもしない。

 

『竜司、そうしたら一緒にあったカードキーをバイクに差し込め!!』

 

「カードキー…これか!!」

 

俺はカードキーをシノビークル大地の差し込み口に入れた。

 

『ハヤウマモード!!』 

 

すると突然シノビークル大地をオレンジ色のオーラが包み形を作り巨大なブースターが装着されシノビークル大地・ハヤウマモードに変わった。

 

「おりゃぁ!!」

 

すると、ブースターの推進力によって先程を遥かに上回るスピードが出てその突進によってウォートホッグスカル巨獣態は吹き飛ばされた。

 

「ブォォォォォォ!!」

 

ウォートホッグスカル巨獣態は起き上がると激昂してこちらへ突進してくる。

 

「トドメだ!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺がカグラドライバーを叩くと巨大なティラノサウルスの顔がバイクを包みティラノサウルスが口を開き凄まじい突進が繰り出された。

 

「必殺忍法!!激竜大顎!!」

 

巨大なティラノサウルスの牙がウォートホッグスカル巨獣態を飲み込み爆発した。

 

「ばっ…化物……悪…夢だ……」

 

煙が晴れると粉々に砕けたスカルキーとともに初老の男が倒れていた。

 

「人の夢を壊した報い…骨の髄まで思い知れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふんふーん♪新型バイク、新型バイク、新型バイク、らんらんるーん♪」

 

次の日、念願のバイクを手に入れた俺は嬉しさのあまり鼻歌を歌っていた。

 

「よかったですね竜司さん」

 

「あ、斑鳩先輩聞きましたよ。このバイク、鳳凰財閥の協力があったおかげで開発できたってありがとうございます」

 

「い、いえいえ!!竜司さんのお役に立てたならなによりです!!」

 

斑鳩先輩は顔を赤く染め嬉しそうに答えた。

 

「そういえば飛鳥さんは?」

 

「あ…あいつなら今頃…」

 

「りゅーくんおはよー!!」

 

すると、飛鳥がやってきた。あれ!?

 

「あ、飛鳥…どうしてここに!?今日って鈴木の試合があったんじゃ…」

 

「え?なんでりゅーくんがそれを?」

 

 

 

 

「行かないことにしたぁ!?なんで!?」

 

なんと飛鳥は鈴木の試合には行かないとのことだそうだ

 

「うーん、私、まだ恋愛は早いかなって。私には自分の夢のためにやらなきゃいけないことがたくさんあるから」

 

「そ…そっか…」

 

どうやら飛鳥も色々と考えた末にそう決めた様だ。しかし…

 

「鈴木…ガッカリしてなきゃ良いけどな…」

 

 

 

 

 

「…来て…ないか」

 

スタジアムの観客席に鈴木は目をやるが彼女は来ていなかった。どうやらふられてしまった様だ。

 

「…よしっ、気持ちを切り替えよう!!」

 

しかし、彼の目は後悔のない清々しい顔であった。たとえ失恋したとしても、自分があの時告白したことは間違っていない。あそこで思いを伝えず迷い続けるよりも思いを伝えてスッキリしたからこそ練習にも集中できた。だから自分は後悔はしない

 

「よしっ、いくか!!」

 

そして彼は気持ちを切り替えて仲間の元へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、竜司は新聞のスポーツ欄を見た。

そこには小さい記事だが鈴木の活躍が書いてあった。投手としては18奪三振で相手を完封し打者としても5打席3安打の2ホームランまさに昔じいちゃんから教わった忍びのあり方、チームの刀と盾であった、

 

「頑張れよ、鈴木」

 

道に迷った俺を助けてくれた恩人に俺は人知れず感謝の言葉を述べた。

 



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其の十二 喧嘩と再戦!!の巻

 

「どわぁぁぁぁぁ遅刻遅刻ぅぅぅぅぅ!!」

 

現在俺と飛鳥は必死になって教室へと走っている。理由は簡単、昨日二人で修行をした後そのまま寝てしまって二人仲良く寝坊してしまったのである。

 

「飛鳥〜お前が久しぶりに山で修行しようなんて言わなければ〜!!」

 

「りゅーくんだってノリノリだったじゃん!!」

 

「なにを〜いやっ、とにかく急ぐぞ飛鳥!!」

 

「う、うん!!」

 

いや、今は喧嘩してる時間も惜しい!!このままでは霧夜先生のお説教+坐禅の刑を受けてしまう…!!早く向かわねば…

 

 

 

 

「柳生ちゃんのバカ!!」

 

「雲雀の分からず屋!!」

 

「「……………………え?」」

 

何が起こったのかと思って教室をみると、雲雀と柳生が喧嘩をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…斑鳩先輩…もしかして…『また』?」

 

「ええ、最近は無かったのに…」

 

柳生と雲雀、この二人は普段はとても仲が良いのだが時々今回のように突然喧嘩をしたりするのだ。こうなるとお互いに仲直りするまで絶対に譲らない。俺たちでも止められない。喧嘩の内容はその時によって違うのだが…

 

 

 

 

「それで?今回の喧嘩内容はなんですか?」

 

「それは…」

 

 

 

 

 

「よいしょ、よいしょ」

 

遡ること数分前、雲雀は大量の荷物を抱えて運んでいた。資料室へと運んでほしいと霧夜先生に頼まれたのである。

 

「オレが運ぶぞ」

 

「あ……」

 

突然柳生が雲雀の荷物の一部をとり運び出した。

 

「むう…そんなことをしなくても大丈夫だよ…」

 

「遠慮するな、オレに任せておけ。」

 

そう言って柳生は荷物を運び出した。

しかし、どこか信頼されてないような感覚、さらに自分が頼まれた仕事を取られたことに雲雀は少しイラッとしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「もう!!そんなにしなくても雲雀大丈夫だもん!!」

 

「でもぶつかりそうになってたから…」

 

そしてとうとう堪忍袋の尾が切れた雲雀は柳生に怒り出した。

 

「なってないもん!!柳生ちゃんがお節介なだけだもん!!」

 

「んな!?なんでそこまで言われなきゃいけないんだ!?オレはただ雲雀が危なそうだったから…」

 

「ほらそうやって雲雀を馬鹿にする!!柳生ちゃんがいなくたって雲雀大丈夫だもん!!」

 

「なんだと!!オレがどんな思いで雲雀を…」

 

「それが余計なお世話だって言ってるんだよ!!」

 

柳生も雲雀の言葉にカチンときて怒鳴ってしまう。

 

「柳生ちゃんのバカ!!」

 

「雲雀の分からず屋!!」

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

 

 

 

 

 

「雲雀ちゃんも本気で怒ってる…」

 

「うーん、今回はかなり長引くやつだぞこれ…」

 

「だから今は様子を見るべきかと…」

 

「アタイもこれじゃあうかつに近づけねーよ…」

 

こうなったらもう止められない。前に俺たちが止めようとしてさらに拗らせてしまったことがあるからである。

 

「ふんだっ!!」

 

「…ふんっ」

 

二人は互いを見ようとせずそっぽ向いていた。

 

 

 

 

 

「あーお前ら…またか」

 

すると、煙玉と共に霧夜先生が現れた。俺たちの様子から大体のことは分かったらしい。

 

「とりあえず喧嘩はその辺にしておけ、お前達に任務だ。」

 

 

 

 

 

 

秘立蛇邪学園

 

「ん?炎佐のやつはどこに行った?」

 

蛇邪学園の選抜メンバーの一人、焔が仮面ライダーガリューもとい炎佐がいないことに気づいた。

 

「彼なら出かけていったわ。新しいキーを試してみたいんだって」

 

焔の問いに春花が笑いながら応えた。

 

「まったくあいつめ、私たちに何も言わずに勝手に行動するとは…」

 

 

 

 

「最近この街で何人も行方不明者が出ているってことだけど…」

 

現在俺たちは半蔵学院から少し離れた街に来ている。そこは複数の路線が乗り入れることから、数々の商業施設が構えられている。しかし、最近この街で行方不明者が多発していると言う報告が入ってきたのだ。行方不明になった人たちは若い女性だったりサラリーマンだったりと様々な人間であるそうですでに忍に調査を行わせたそうだが連絡がつかなくなってしまったらしい。そのことからスカルの事件の疑いも出てきたそうで俺たちに白羽の矢が立ったそうだ。

 

「とりあえず手分けして情報収集するのが良いと思うけど…」

 

「ふんだっ」

 

「……ふん」

 

「…しばらくこの二人は離した方がいいよな…」

 

街についても雲雀と柳生は喧嘩をやめず、今でもギスギスとした空気になっていた。

 

「それじゃあ俺と柳生、飛鳥と雲雀、斑鳩先輩とかつ姉の3チームに分かれて調査するのでどうかな?」 

 

「うん、それがいいと思う」

 

結論が出たので俺たちはチームに分かれて調査を開始した。

 

 

 

 

 

 

「…雲雀のやつ…俺の気も知らないで」

 

みんなと別れた後も柳生は悲しそうに呟いていた。

 

「まぁ落ち着けって、柳生が雲雀を大切にしてるってことは俺も知ってるしさ」

 

俺はなんとか柳生を宥めようとする。

 

「俺は…ただ雲雀が心配なだけなのに…」

 

「柳生…」

 

柳生の雲雀を大切に思う気持ち、時々それが暴走してしまうことがあるが今回それにより雲雀と喧嘩をしてしまった。さてどうしたものか…

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「「っ!!」」

 

突然路地の方から女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

「竜司!!」

 

「おうっ!!」

 

俺たちは切り替えて声の方へと走り出した。

 

「んーっんーっ!!」

 

声の方へとたどり着くとビルの隙間からタコ足のような触手が出てきており女性がひきずり込まれていた。

 

「この野郎…変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着して仮面ライダーリューマに変身するとファングクナイで触手を切り裂いた。触手はそのまま隙間へと引っ込むと逃げ出した。

 

「柳生!!忍狼煙で仲間に連絡を!!俺はこのタコをやっつける!!」

 

「わ、わかった!!」

 

俺は柳生に指示を出すと逃げ出した触手を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

狭いビル路地を進んで俺は先程の触手を追いかけていた。この狭い路地ではシノビークルだと動きが制限されてかえって走った方が速い。

 

「逃げんな!!」

 

「ぐきゃっ!!」

 

俺はタコ足に追いつくと真上から蹴りをお見舞いして触手は地面へと叩きつけられた。

 

「こいつぅ…アタシの顔を…蹴ってんじゃないわよぉ!!」

 

するとらタコ足は形を変えて人型になりタコの様な姿をしたスカル、オクトパススカルへと変化した。

 

「そんなこと言ったってさっきの姿じゃどこが頭だかわかんねえよ。」

 

「うるさいわね!!アタシの狩りを邪魔しやがった報いは受けてもらうわよ!!」

 

オクトパススカルは激昂しながら身体中にある触手を伸ばして攻撃してきた。 

 

「うわっこのぉ!!」

 

俺は慌ててタコ足を躱してファングクナイで触手を斬り裂くも斬られたそばから再生してくるのでキリがない。

 

「この…だったら…本体を攻撃する!!」

 

間合いを詰めれば厄介なタコ足も使えなくなる。そう考えた俺は間合いを詰めてファングクナイでオクトパススカルを何度も斬りつけた。

 

「ぐっこのぉ!!」

 

オクトパススカルは慌てて俺から離れると吸盤でビルの壁に張り付いた。

 

「だったら遠距離から攻撃してやるわヨォ!!」

 

すると、オクトパススカルは口から黒い炭を吐き出してきた。

何か危険だと感じた俺はその炭を躱すと炭は壁に当たって爆発した。

 

「あっぶね!!」

 

「どんどんいくわよぉぉぉぉ」

 

すると、オクトパススカルはさらに炭を連射し、俺は慌てて躱し続けた。

 

「舐めんなよ…遠距離攻撃ならこっちも出来るぜ!!」

 

『武装!!ステゴ!!』

 

ステゴキーを取り出して仮面ライダーリューマ・ステゴ武装へと変身した。

 

「おりゃぁ!!」

 

「ぐぎゃっ!!」

 

俺はステゴスライサーをオクトパススカルへと投げるとオクトパススカルは地面へと落ちる。

 

「この…これならぁ!!」

 

オクトパススカルは今度は身体中から触手を出して攻撃するがステゴスライサーでそれを斬り裂いた。どうやら予想通り、このスカルにはステゴ武装での攻撃が有効な様だ。

 

「よっしゃ、このままいくぜ!!」

 

「ぐっ…このぉ…」

 

ピンチを悟ったのかオクトパススカルは慌てて再び身構えだした。

 

 

 

 

 

 

「随分腕をあげたな、この前とはえらい違いだ」

 

すると、突然声が聞こえてそちらを向くと、紅い髪の学ランを纏った少年が歩いてきた。

 

「誰だお前?」

 

「俺の名前は炎佐、と言ったってわかんねえよな。でも、こっちなら覚えてるだろ?」

 

すると、炎佐と名乗った少年は懐から自身のものとは少しデザインの違うカグラドライバーを取り出した。

 

「そのドライバーはまさか!?」

 

『スピノ!!』

 

俺が驚くと同時に炎佐はカグラドライバーを腰に装着し、スピノサウルスが描かれた紅い鍵、スピノキーを起動させるとカグラドライバーに差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

『武装!!スピノ!!』

 

炎佐は掛け声と共に鍵を回し、ドライバーの音声と共にスピノサウルスの幻影が炎佐を包み、スピノサウルスのような装甲を纏った仮面ライダーガリューへと変身した。

 

「仮面ライダー…ガリュー…」

 

「へへっ、三つ巴ってわけだ!!」

 

炎佐は紅い片手斧スピノアクスを具現化し手に持つと俺たちに斬りかかってきた。

 

「うわっ!?」

 

俺は慌ててステゴスライサーでガードする。

 

「じょ、冗談じゃないわよ!!喧嘩ならあんた達2人でやって頂戴!!」

 

オクトパススカルはそう叫ぶと壁の隙間に身体を潜り込ませて逃げ出した。

 

「あのタコ…お前のせいで逃げちゃっただろ!!」

 

「悪いな、久しぶりにお前の実力を見てみたくなってよ」

 

「だったら見せてやる!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺がカグラドライバーの恐竜を叩くとステゴスライサーが空中で高速回転して手裏剣状のエネルギーを纏う。

 

「必殺忍法!!激竜斬撃乱舞!!」

 

そして俺はステゴスライサーをガリューへと投げつけた。

 

「ぐっ…この…!!」

 

ガリューはスピノアクスでステゴスライサーをガードするもその威力に押し負け壁に激突した。

 

「ははっ…やるじゃねえか。でもな、複数の恐竜の力を使えるのはお前だけじゃないぞ」

 

すると、ガリューはアンキロサウルスが描かれた茶色の鍵を取り出した。

 

『アンキロ!!』

 

ガリューはアンキロキーを起動するとカグラドライバーの鍵穴に差し込む。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

『武装!!アンキロ!!』

 

ガリューが鍵を回すとアンキロサウルスの幻影が現れガリューを包み込み茶色の装甲を纏い手にはアンキロサウルスの尻尾を模した鉄球、アンキロアイアンを持った仮面ライダーガリュー・アンキロ武装へと変身した。

 

「仮面ライダーガリュー・アンキロ武装…いざ、舞い殉じる!!」

 

ガリューはそのままアンキロアイアンを振り回して俺に攻撃してきた。アンキロアイアンの一撃は遠心力もあって凄まじい破壊力となりステゴ武装では防戦一方となってしまった。

 

「くそっ、だったら…パワーにはパワーだ!!」

 

『パキケファ!!』

 

俺はパキケファキーを起動してカグラドライバーの鍵穴に差し込む。

 

「変身!!」

 

『武装!!パキケファ!!』

 

鍵を回し、灰色の装甲を纏い両手に巨大ナックルと両足に具足を装着した仮面ライダーリューマ・パキケファ武装へと変身する。

 

「いくぜ!!」

 

俺はパッキーナックルでガリューへと殴りかかる。対するガリューもアンキロアイアンを叩きつけて応戦する。鉄球とナックルが互いに炸裂し両者互角の闘いを見せた。

 

「ふっ、やっぱりやるじゃねえか。だが、これならどうだ?」

 

『必殺の術!!』

 

ガリューはカグラドライバーの恐竜を叩きアンキロアイアンの鎖を振り回す。すると、アンキロアイアンの鉄球がどんどんエネルギーを纏って巨大化する。

 

「だったら…」

 

『必殺の術!!』

 

対する俺もカグラドライバーの恐竜を叩いて地面を踏み込み拳を構えた。すると、拳にエネルギーが纏わり付き拳が輝く。

 

「必殺忍法!!煉獄豪速球!!」

 

ガリューが高速回転するアンキロアイアンを俺に向かってなげつける。

 

「必殺忍法!!激竜空烈拳!!」

 

俺は地面を蹴りアンキロアイアンを全力で殴りつけ、その衝撃で両者は吹き飛んだ。

 

「ははは、やっぱりやるじゃねえか。この前戦った時よりさらに強くなってる。」

 

ガリューは嬉しそうに笑いながら起き上がった。

 

「やっぱりお前は面白い。闘うたびにワクワクが止まらなくなる。こいつを試させてもらおうか」

 

そう言うとガリューはプレシオサウルスが描かれた水色の鍵を取り出し起動しようとした。

 

その時、

 

「ん?」

 

突然何かの臭いと空気が漏れる様な音がすることに気づき、周りを見ると地面にガスボンベが転がっていた。

 

「オーホッホッホ!!アタシが逃げたと思った!?残念!!これを持ってきたのよ!!大人しく死んじゃいなさーい!!」

 

「しまっ…」

 

突然真上からオクトパススカルが現れ俺たちに向けて炭を撃ち込み、ガスに引火して大爆発した。

 

 

 

 

「オーホッホッホ!!リューマだけでなくガリューまで…手柄も手柄…大手柄よぉぉぉ!!!」

 

爆炎が立ち込める中、オクトパススカルの笑い声が響きわたっていた。





爆発に巻き込まれたリューマとガリュー…2人の運命はいかに!!


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其の十三 絆と仲直り!!の巻

 

「オーホッホッホ!!リューマだけでなくガリューまで…手柄も手柄…大手柄よぉぉぉ!!!」

 

爆炎が立ち込める中、オクトパススカルの笑い声が響き渡った。

 

「そんな…竜司…」

 

「りゅーくん…」

 

「竜司さん…」

 

「竜司…」

 

「竜司くん…」

 

そこへ、駆けつけた柳生たちが現場を見て驚愕していた。

 

「そんじゃ、邪魔者は倒したわけだし、トンズラさせてもらいますわ。オーホッホッホ!!」

 

すると、オクトパススカルは再び体を変形させて壁の隙間に潜り込んで逃げていった。

 

「み、みなさん!!急いで竜司さんを救助しないと…」

 

「う、うん!!」

 

斑鳩の指示に飛鳥も慌てて炎へと向かおうとした。

 

「お、おーい…生きてるよ…」

 

すると、炎の中から少し服が焦げた竜司が手を振りながら出てきた。

 

「竜司、お前…無事だったんだな」

 

柳生は少しホッとした表情になって安心した。

 

「なんとかな、とりあえず色々話すことはあるけど…」

 

そう言いながら俺は誰もいない炎の中を見つめながら呟いた。

 

 

 

 

 

「あーびっくりした…」

 

ビルの上で少し服が焦げた炎佐が苛立ちながら座っていた。

 

「あの蛸野郎…人の決闘に水を差しやがって…」

 

彼はリューマとの闘いをあんなふざけた方法で邪魔されたことが許せずにいたのだ。炎佐は苛立ちながら紅い携帯電話を取り出すと仲間に連絡を入れた。

 

「おい春花…最近この辺で起こっている行方不明事件の情報を俺に送れ」

 

『別に良いけど…どうしたのよ?リューマと闘うっていって出かけたと思ったら…』

 

「…いいから早く送れ。大至急だ」

 

『…はいはい』

 

春花はため息を吐きながら承諾し炎佐は電話を切った。

 

「…あのくそ蛸野郎…俺をコケにしたんだ。覚悟しやがれ」

 

 

 

 

 

 

「ではやっぱりスカルによる犯罪でしたか…」

 

あの後、俺はみんなに何があったのかを報告した。

 

「あいつは『狩り』って言ってたけど…何れにせよ何か目的があって人攫いなんかしてるのは間違いない。なんとか目的を突き止めないと…」

 

「でもガリューまで出てきたけど…」

 

「ガリューはあのスカルとは関係は無いみたいだった。どちらかというと狙いは俺みたいだったし…」

 

奴もオクトパススカルに関しては想定外だったようだったし関係は無いだろう。

 

「どちらにせよより警戒しないとダメだな。」

 

「うん!!ひばりも何か手がかりがあるか探してみるよ!!」

 

雲雀も自身を持って答えた。たしかに雲雀の諜報の腕は俺たちの中でも高い。俺も納得しようとしたその時、

 

「だめだ」

 

柳生がそれに反対した。

 

「スカルの事件とわかった以上、竜司でなければ勝ち目がない。俺たちは集団で行動するようにしてなるべく一人にならないようにしたほうがいい。」

 

柳生の言うことも確かにわかる。スカルに忍の攻撃は決定打にかかる。だからこそ上層部はリューマの力を復元されたのだから。

 

「でも…」

 

「だめだ、ひばりの力じゃ返り討ちに遭うだけだ。」

 

「おい柳生、ちょっと言い過ぎじゃ…」

 

「…やっぱり柳生ちゃん…ひばりのこと信じてないんだね」

 

柳生の言葉に雲雀は体を震わせながら呟いた。その目からは涙が溢れている。

 

「そうじゃない、一人で行動するのが危険って言ってるだけだ。」

 

「嘘だよ。だって他のみんなには言わないのにひばりだけにそういう言い方するもん」

 

「それはひばりが一人で危ない行動しようとするから…」

 

「ほらそうやってひばりのことを!!」

 

「2人とも落ち着けって!!」

 

ヒートアップする2人を見て俺は慌てて2人を叱った。しかし、雲雀の怒りは収まらず

 

「柳生ちゃんのバカ!!ひばりもう知らない!!」

 

雲雀は叫んでそのまま走り去っていってしまった。

 

「あ、おいひばり!!」

 

俺は慌てて雲雀に声をかけるが雲雀はそのまま走って行ってしまった。

 

「竜司さん、わたくし達が雲雀さんを追いかけます。竜司さんは柳生さんを…行きますよ皆さん」

 

「は、はい…」

 

斑鳩先輩たちはそのまま雲雀を追いかけていきその場には俺と柳生だけが残った。

 

「…オレは…ただ…」

 

柳生の方を見ると柳生は俯いて涙を流していた。

 

 

    

 

町外れにある研究施設の応接室

 

「お待ちしてましたわメドューサ様」

 

ソファーに座る燕尾服を纏う女性、メドューサの前には派手な衣装を着た筋肉質に厚化粧をした男が座っていた。

 

「わざわざ貴方様が来るなんていったいどうしたんですか?」

 

「…貴様、最近行動が目立ちすぎだ。リューマのやつがここに調査に来ただろう。ここのことも今に気づかれるぞ」

 

この研究施設、メドューサがこの男、オクトパスに任せている研究施設であり、街で起きている誘拐事件はオクトパスがモルモット集めに行っていたものだったのだ。

 

「それなら安心してくださいな、そいつならさっきガリュー共々…」

 

「生きてるぞ」

 

「え!?」

 

「あの程度の爆発で殺せると本気で思ったのか?だとしたらファッションだけでなく頭の中までおめでたいやつだな」

 

睨みつけながらリューマの生存を伝えるメドューサにオクトパスは顔を強張らせた。

 

「ほ、ほほほ…申し訳ありませんわメドューサ様…ご、ご安心を…この研究施設の秘密は絶対…」

 

「勘違いするなオクトパス…」

 

「え?」

 

弁解するオクトパスにメドューサは冷酷に言い捨てた。

 

「この施設はあくまでスカルキーの改造、強化実験を行う数ある研究施設の末端に過ぎない…この程度の施設、代わりはいくらでもある…貴様同様な」

 

表情に恐怖を浮かべながらオクトパスは顔を勢いよく上げる。分かっているのだ…言外に『次に失敗したら、施設もお前も処分する』と言っているのが。

 

「も、申し訳ありません!!す、すぐにリューマ抹殺を行います!!だから…」

 

「当たり前だ…ただでさえ最近は馬鹿共の尻拭いばかりなんだ。これ以上私を苛つかせるな。」

 

そういうとメドューサは懐から以前ウォートホッグに使ったダガーを一本取り出すとオクトパスに投げて渡した。

 

「万が一はこれを使え。ここまでお膳立てしてやったんだ。確実に仕留めろ…いいな」

 

「は、はいいい!!」

 

震えながらオクトパスは慌ててポケットから赤紫のスカルキーを取り出す。

 

『オクトパス!!』

 

オクトパスキーを起動させると左掌にある鍵穴へと挿しこみ回すと鍵穴から黒い泥が吹き出し全身を包み込むと全身から蛸の足を思わせる触手を生やしたスカル、オクトパススカルへと変身しリューマ抹殺に向けて動き出した。

 

「屑が…」

 

そんなオクトパススカルを睨みつけながらメドューサは怒気を含んだ声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

「ほい、柳生」

 

みんなが雲雀を追いかけて柳生と2人きりになった俺は近くの自販機で買ったお茶を柳生へと差し出した。

 

「…悪いな、竜司」

 

柳生はそれを受け取ると俯いたままお茶を飲んでいた。

 

「…柳生はさ、雲雀のこと本当に大切に思ってるんだな」

 

「え?」

 

「なんとなくわかるよ。雲雀のことが大切だから、つい世話を焼いちゃう。違う?」

 

「…あぁ、雲雀は…オレの大切な…妹同然だからな」

 

柳生は昔、大切な妹の望を交通事故で亡くしている。その悲しみがまだ癒えてなかった頃、そんな妹に瓜二つな雲雀と出会い、自分が表に出してなかった寂しさに気づいてくれた雲雀をそれ以来大切に思っているのだ。

 

「でもさ、なんだかんだで雲雀も少しずつだけど強くなってきてる。まぁたしかにちょっと危なっかしいところはかなりあるけど…」

 

「わかってる…でも…」

 

「俺さ、思うんだよ。雲雀と柳生、2人が力を合わせればどんなことだって出来るってさ」

 

2人の絆の力は本当に凄い。だからこそ俺は2人にはいつまでも仲良くいてほしいのだ。

 

「竜司…」

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

突然ガマ吉に着信が入った。どうやら飛鳥の様だ。

 

「もしもし?」

 

『りゅーくん!!雲雀ちゃんが拐われた!!』

 

「何!?」

 

突然の事態に俺は驚きを隠せずにいた。

 

 

 

「ごめんりゅーくん…私たちがいたのに…」

 

「飛鳥、いったい何があったんだ!?」  

 

飛鳥たちに合流すると3人は傷だらけになっていた。

 

「わたくしたち…雲雀さんと合流した後…突然スカルに襲われたんです。」

 

「アタイらも闘ったんだけど…雲雀を人質に取られて…それで…」

 

斑鳩先輩とかつ姉は悔しそうにことの顛末を話した。

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

突然ガマ吉に着信が入る。雲雀の番号だった。俺がそれに出ると

 

『はぁ〜い、リューマちゃんさっきぶりねぇ』

 

その声に覚えがある。以前闘ったオクトパススカルだ。

 

『この電話の主のお友達を返して欲しかったら今から指定する場所に17時までに来る様に、1秒でも遅れたら…分かるわよね?』

 

「てめぇ…俺の仲間に手を出して…ただで済むと思うなよ」

 

あんな言葉で喋るオクトパススカルに俺は怒りを露わにした。

 

『ひっ…う、うるさいわね!!とにかく17時までに街外れの廃工場に来なさいよ!!そこで改めて決着よ!!』

 

そう言うとオクトパススカルは一方的に電話を切った。

 

「みんな、ちょっと行ってくるよ」

 

そう言って俺は雲雀を助けに向かおうとした。

 

「オレも行く」

 

柳生も同行すると言い出した。

 

「オレもひばりを助けたい…「もう間に合わない」なんて嫌なんだ!!頼む…俺も一緒に…」

 

「柳生…分かった…飛鳥たちは霧夜先生に連絡を入れてくれ」

 

「りゅーくん…柳生ちゃん…気をつけて」

 

こうして俺と柳生は雲雀救出へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほほほ…だぁれが正々堂々闘うかっての」

 

港近くの建物、そこにはオクトパススカルが笑みを浮かべて座っていた。

 

「ねぇお嬢ちゃん、リューマが最期にどんな末路を辿るか教えてあげるわ」

 

「え?」

 

オクトパススカルの視線の先には檻のなかに閉じ込められた雲雀がいた。

 

「あいつに指示した廃工場にはね、大量の爆弾を仕掛けておいたのよ♪扉を開ければその瞬間ドカーン!!なす術ないままあの世行きよ」

 

「そ、そんな…」

 

衝撃の事実に雲雀は戦慄した。

 

「メドューサのやつに殺されるなんて冗談じゃないわよ…ましてやスカルを何体も倒してる様な奴に真っ向勝負なんて馬鹿のすることよ!!オーホッホッホ!!」

 

(どうしよう…なんとか…伝えないと…!!)

 

 

 

「柳生…もうすぐだ…気を引き締めろよ」

 

「あぁ、ひばり…待ってろよ」

 

俺と柳生は電話で指定された場所へ向かっていた。

 

その時、

 

『…じくん……竜司くん!!』

 

「えっ…雲雀?」

 

突然俺の頭の中に雲雀の声が聞こえた。

 

「これって…もしかして念話!?」

 

念話は忍びの術の中でも高等技術の類である。それをまさかあの雲雀が使えるなんて…

 

『竜司くん…お願い…気づいて…工場には…爆弾が…』

 

すると、念話は途切れ雲雀の声は聞こえなくなった。

 

「柳生…聞いたか?今のは…」

 

「あぁ…ひばり…あんなことが出来るまで成長してたんだな…」

 

柳生も雲雀の成長に驚きを隠せずにいる様だ。

 

「よし、そうと決まれば…ここにはもう用はないな」

 

「でもひばりはどこに…」

 

「あ…」

 

そうだ、工場が罠なら雲雀はどこに…

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

すると、ガマ吉が俺に向かって鳴きだした。

 

 

 

 

 

 

「…変ねぇ?そろそろ爆発音がしていい頃なんだけど?」

 

オクトパススカルはいつまでも爆発音がしないことに疑問を感じ始めた。

その時、

 

「そこまでだタコ野郎!!」

 

扉が破られリューマに変身した竜司と忍転身した柳生が現れた。

 

 

 

 

 

「んなぁぁぁ!?あ、あんた達…なんでここが…!?」

 

「雲雀のおかげさ」

 

そして俺はスマホモードになったガマ吉を取り出した。

 

「ガマ吉の特殊機能、こいつが雲雀の念話を受信して位置を特定したのさ!!」

 

(って言ってもついさっき知った機能なんだけどね)

 

「こ、このガキィィィィ!!」

 

オクトパススカルは激昂して雲雀へ攻撃しようとした。

 

「させるか!!」

 

「ぐはぁっ!!」

 

しかし、俺は瞬時にオクトパススカルへ接近して渾身の膝蹴りをお見舞いした。

 

「言ったよな?俺の仲間に手を出してただで済むと思うなって?」

 

そのまま俺はオクトパススカルへと連続でパンチを繰り出す。

 

「ぐ、ぐはっ!!あぎゃっ!!」

 

俺の連続攻撃にオクトパススカルはなす術なく吹き飛ばされる。そのままトドメを刺そうとしたその時、

 

「きゃあっ!?」

 

「雲雀!?」

 

「オーホッホッホ!!形勢逆転ねぇ!!」

 

オクトパススカルは俺に気づかれない様に触手を忍ばせて雲雀を縛りつけ、俺の前に出して盾にした。

 

「このガキの命が惜しけりゃベルトを捨てろ!!」

 

「くっ…」

 

油断した、このままでは雲雀が危ない…仕方なくベルトを外そうとすると

 

「心配するな竜司」

 

柳生が止めて俺の前に立った。

 

「オレが合図したらひばりを助けろ。いいな?」

 

柳生はオクトパススカルに聞こえない様に俺に囁いた。

 

「わ、分かった…」

 

柳生には何か策がある、俺はそれを信じることにした。

 

「何やってんだテメェら!!さっさとしろぉ!!」

 

いつまでもベルトを捨てない俺たちに痺れをきらしたオクトパススカルが激昂して叫び出した。

 

「ひばり、オレを…信じてくれるか?」

 

柳生は雲雀に優しく声をかける。

 

「うん!!」

 

そんな柳生に雲雀は力強く返事する。

 

「このぉぉぉぉぉぉ!!」

 

オクトパススカルは痺れをきらして雲雀に攻撃しようとする。

その瞬間、柳生は仕込み番傘の引き金を引き、雲雀からほんの僅かみえるオクトパススカルの体へと狙撃した。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!?」

 

「きゃあー!!!」

 

その衝撃で雲雀は吹き飛ぶ。

 

「今だ竜司!!」

 

「よっしゃ!!」

 

しかし、俺が柳生の合図とともに飛び出して雲雀を受け止めた。

 

「すげえな…2人とも…」

 

雲雀を傷つけずにオクトパススカルを狙撃する柳生の技量、そしてそれを信じ少しも体を動かさなかった雲雀、2人の信頼があったからこそ可能にした神業である。

 

「な、なによこれぇ!!めちゃくちゃよぉぉぉ!!!」

 

人質を失ったオクトパススカルは悲鳴を上げながら逃げ出した。

 

「あとは俺に任せな2人とも」

 

「あぁ、任せた」

 

「竜司くん、気をつけて!!」

 

2人の無事を確認した俺はそのままオクトパススカルを追いかけた。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…こうなったら…研究所にいるモルモットを連れてこさせて人質に…」

 

オクトパススカルは手持ちの端末を使って部下に指示を出そうとした。

 

「もしもし!?アタシよ!!今すぐ指示する場所に…」

 

『よぉタコ野郎…さっきぶりだなぁ』

 

しかし、繋がった相手は部下ではなくどこかで聞き覚えのある少年の声であった。

 

「あ、あんた…まさか…ガリュー…!?」

 

『お前の研究所…割と大通りにあったんだな警備も雑兵の蟻と研究員くらいで楽に制圧出来たよ。ついでに捕まってた奴らも解放済みだ』

 

「あ…あぁ…」

 

『俺の邪魔をしてなんの報復も無いと思ったか?』

 

その瞬間、オクトパススカルは理解した。この瞬間、自分の運命が決まったことに

 

「追い詰めたぞクソ野郎」

 

そこへ仮面ライダーリューマが現れた。

 

「く…くそぉぉぉぉ!!どうせ…どうせ終わりなら…テメェだけでも殺してやるぅぅぅぅぅ!!」

 

すると、オクトパススカルは赤い液体が入ったダガーを取り出し自分の体に突き刺した。

 

「あれは…まさか!!」

 

「ぐ…ぐぉぉぉぉぉ!!」

 

瞬間、オクトパススカルの体は巨大化し、オクトパススカル巨獣態へと変身した。

 

「うわぁっ!?」

 

オクトパススカルは手足の触手を振り回してめちゃくちゃに暴れ、手がつけられない

 

「くそっ面倒な…いてっ」

 

その時、頭に何かが当たった。

 

「これって…キョウリュウキー!?」

 

よく見ると、それは前にガリューが使おうとしたプレシオサウルスのキョウリュウキーであった。

 

「リューマ、そいつを使いな!!」

 

突然声が聞こえてその方向を見るとガリューがビルの上に立っていた。

 

「相手がタコならそいつがベストな筈だ!!」

 

「お前…どうして?」

 

「気まぐれって奴だ、せいぜい頑張んな」

 

そういうとガリューはその場を立ち去っていった。

 

「なんか知らんけど…使わせてもらうぜ!!」

 

『プレシオ!!』

 

俺はプレシオキーを起動してカグラドライバーの鍵穴に挿しこんだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にプレシオキーを回した。

 

『武装!!プレシオ!!』

 

ドライバーの音声とともに水色のプレシオサウルスの幻影が現れ俺を包み込む。すると、水色の装甲を身に纏い長槍プレシオスピアを手にした仮面ライダーリューマ・プレシオ武装へと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ・プレシオ武装…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「グォォォォォォ!!」

 

オクトパススカル巨獣態は本能で危険を感じたのか海中へと逃げ出す。

 

「逃すかよ!!」

 

俺は海中へと飛び込みオクトパススカルを追いかける。プレシオ武装は水中の流れを操り自由自在に泳ぐことが出来る。その力を使えばオクトパススカル巨獣態がどれだけ速く泳いでもすぐに追いつくほどのスピードで泳げる様だ。そしてプレシオスピアでオクトパススカル巨獣態の手足を斬り裂いていく。オクトパススカル巨獣態も口から墨爆弾を連射して俺に対抗するがプレシオスピアで全てなぎ払ったため傷一つつかなかった。

 

「そんじゃあとどめと行きますか」

 

『必殺の術!!』

 

俺がカグラドライバーを叩くと海が渦巻きオクトパススカル巨獣態を海面上へと吹き飛ばした。そして俺も勢いよく空中へと飛び出してプレシオスピアをオクトパススカル巨獣態へと狙いすます。

 

「必殺忍法!!激竜荒波一本突き!!」

 

そしてプレシオスピアを投げつけオクトパススカル巨獣態を貫き、オクトパススカル巨獣態は爆発し、砕けたスカルキーとともに厚化粧の男が気を失った状態で浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

「はい陛下、部下が無能で申し訳ありません。オクトパスの研究所は破棄します。証拠も全て…はい…では」

 

メドューサは電話を切ると勢いよく壁を殴りつける。それにより手から血が流れるがそれに構わず彼女は激昂していた。

 

「どいつもこいつも…私に恥をかかせやがってぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

「柳生ちゃん、はいあーん♪」

 

「あぁ、ありがとなひばり♪」

 

オクトパススカルを倒した翌日、雲雀と柳生は仲良くお弁当を食べていた。

 

「いや〜仲直りしてくれてよかったな」

 

「ほんとほんと、やっぱあの2人はこうでなくちゃ」

 

そんな2人を見ながらかつ姉が安心して俺はそれに同意した。

 

「竜司もありがとな…雲雀と仲直りできたのはお前のおかげだ」

 

すると、柳生が俺に感謝の言葉を言ってきた。

 

「いやいや、俺はそんな大したことはしてないって」

 

「それと…あの時のお前…少しだけ…かっこよかったぞ」

 

すると、少し顔を紅くして柳生がそう呟いた。

 

「うん!!竜司くんすっごいかっこよかったよ♪ひばりもドキドキしちゃった♪」

 

「そ、そうか?えへへ…なんか照れるなぁ…」

 

2人に褒められて俺はさらに嬉しくなった。

 

 

 

 

 

 

「あちゃー竜司の奴…今度はあの2人を落としたのか…」

 

そんな竜司を見た葛城は恐る恐る斑鳩の方を見た。

 

 

 

 

 

「ぐぐぐぐぐ……竜司さん……あなたって人は…あなたって人はぁぁぁ!!」

 

「い、斑鳩さん落ち着いて!!」

 

そこでは斑鳩が飛燕を手に竜司へ斬りかかろうとしているのを飛鳥が必死で止めていた。

 

 

 

 

 

 

「炎佐、プレシオキーをリューマに渡したそうですね」

 

秘立蛇邪学園、ここでは現在、仮面ライダーガリューの変身者、炎佐が鎧の人物に尋問を受けていた。

 

「ええ、別にあなたとしてはむしろ好ましいことでしょ?」

 

「なに?」

 

「知ってますよ?あなたが何故半蔵学院にちょっかいかける様に俺たちを仕向けたのか、ねぇ鈴音先生?」

 

炎佐は鎧の人物を鈴音先生と呼ぶと笑みを浮かべた

 

「貴様…余計な詮索をするな。お前は次の襲撃の準備をするんだ。良いな?」

 

「安心してください。焔たちには言いませんし…それに、俺は貴方の味方です。これから先ずっと」

 

炎佐は先ほどとは打って変わって真剣な眼差しで鈴音先生を見つめた。

 

「そうか…ありがとう炎佐」

 

そういうと鈴音先生は静かにその場を立ち去っていった。

 

「頼むぞリューマ…お前にはもっと強くなってもらいたいんだからな…」

 

一人残った炎佐の声が静かにその場に響いた。



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其の十四 臨海修行とスーパーニンジャ!!の巻

 

「やれやれ、末端とはいえ研究所が一つ潰されるとはね。」

 

メドューサの屋敷、華やかな服に身を包んだ金髪の男ドラゴンが一人廊下を歩いていた。

 

「新たなロードスカルを生み出すために作った研究所ですが…こういったことが起きないように分散しないで数を減らした方が良いかもしれませんね」

 

やれやれとため息をつくとドラゴンはメドューサがいつもいる部屋へとたどり着いた。

 

「メドューサ、入りますよ」

 

ドラゴンは部屋をノックするが反応がない。また暴れていて聞こえてないのか?というより部屋から彼女の気配が感じられない。

 

「メドューサ?」

 

ドラゴンが扉を開くとそこは以前よりも家具が破損しておりメドューサはどこにもいなかった。

 

「…まさか」

 

ドラゴンは気づいた。メドューサが何をしようとしているのかを…

 

 

 

 

 

 

 

 

海上にあるプレジャーボート

 

「さぁ!!かかってきな!!」

 

「ぐっ…」

 

「柳生ちゃん…」

 

葛城と柳生が真剣な眼差しで対峙している。顔を強張らせる柳生を雲雀が心配そうに見つめていた。

 

「っ!!右だ!!」

 

葛城のがわずかに視線を右に向けたのを見逃さなかった柳生は其の選択をする。しかし…

 

「イエーイ!そっちはババでした〜!」

 

 

そう、現在彼女たちはババ抜きをしていたのである。

 

「わぁ〜い勝った〜♪」

 

「お、てことは飛鳥&かつ姉チームの勝利か」

 

そのあとすぐ飛鳥がカードをそろえてあがりになった。現在飛鳥とかつ姉、雲雀と柳生のチーム戦をしており先にあがったほうの勝ちという2対2のルールでやってるのだ。ちなみに俺は数合わせのため見学している。

 

「うわぁぁん柳生ちゃんが負けちゃったぁぁぁ!!」

 

「にっしししし。では罰ゲームと行きますかね!あたいのデコピンは……痛いよ♪」

 

勝ったかつ姉は雲雀に罰ゲームのデコピンをしようとする。パワーファイターのかつ姉のデコピン…考えただけですごく痛そうだ。

 

「待て!負けたのは俺だ、俺にやれ!!」

 

慌てて柳生は雲雀を助けようとする。

 

「何言ってんだよ。チーム戦だから、負けたら全体責任だって決めただろ?」

 

「いやしかし……」

 

「しかしもこけしもないよ、行くよ〜」

 

かつ姉は涙目になってる雲雀の額にデコピンの構えをとった。その時のかつ姉はとても悪い顔をしていた。

 

「ふぇぇぇ…」

 

「雲雀…すまん…!」

 

そんな雲雀に柳生は悔しそうに謝る。瞬間、強力なデコピンが炸裂した。

 

「いったぁぁぁい!!」

 

「うわぁ…こりゃ痛そうだ。」

 

あまりの痛さに雲雀は悶絶した。そしてかつ姉が続けざまに柳生にも強力なデコピンをお見舞いした。

 

「痛い!痛いよ!酷いよかつ姉〜!」

 

「雲雀、勝負とは非情なんだよ」

 

痛がる雲雀にかつ姉は得意げにそう言い返した。

 

「貴様のせいで…こんなものが…こんなものがあるから…!」

 

柳生は恨めしそうに震えるとばを放り投げた。

 

「ちょっ……!!もったいないことするなって!!」

 

慌てて俺はババをキャッチした。

 

「おい柳生!!負けたからって卑怯だぞ!!」

 

ババを捨てようとした柳生にかつ姉が怒った。

 

「面白い。肉弾戦なら負けはしない。」

 

2人のあいだに何やら不安な空気が漂ってきた。

 

「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて…」

 

「貴方たち、静かにしなさい」

 

すると、ビーチチェアで本を読んでいた斑鳩先輩が2人に注意した。

 

 

 

 

「う〜ん、潮の香りっていいよね〜」

 

「そうだな、いかにも海にいるぜって感じになるよな」

 

最近はスカルの事件ばかりだったからこういう香りはどこか落ち着く。

 

「それじゃあ、あたいは若い娘の香りでも嗅ごうかね〜。」

 

すると、かつ姉が飛鳥の匂いを嗅ぎ出した。

 

「ちょっとかつ姉!?」

 

「はいはいかつ姉、セクハラはやめようね。さっき斑鳩先輩に怒られたばっかでしょ?」

 

見かねた俺はかつ姉を飛鳥きら引き離す。

 

「むむむ…だったら代わりに竜司の匂いをかごうかね〜」

 

「え!?ちょっ…かつ姉、なんでそうなる!?」

 

すると、今度は俺を標的にしてきた。

 

「ほほう、これはこれでなかなか… これならご飯は4杯行けるね〜」

 

「だったら雲雀も嗅ぐ〜!」

 

すると、何故か雲雀まで混ざってきた。

 

「ちょ、雲雀まで…あ、あはは…ちょ、やめっ…くすぐったいって…かつ姉も…あはははは!」

 

俺は全身を嗅がれることによるくすぐったさに思わず笑ってしまった。そのとき、ミシリという音とともに斑鳩先輩が怒り出した。

 

「貴方たち!!静かにしなさいって言ってるでしょ!!竜司さんも何嬉しそうにしてるんですか!!」

 

「いや、違うって…雲雀とかつ姉が…」

 

あまりに理不尽な怒られ方に俺はがっくりしてしまった。

 

「おっ、島が見えた」

 

すると、かつ姉の言う通り前方に小さな島が見えてきた。

 

「あれが…」

 

「あぁ、臨海修行先の忍島だ」

 

そう、俺たちは忍の修行のため古くからの忍の修行場所、忍島へと来ているのである。

 

「ん……?」

 

ふと見ると斑鳩先輩の本が落ちていた。そしてそれは……指の形の凹みがあった。

 

「えぇ……?」

 

 

 

 

 

「ここが合宿所………ですか?」

 

「ああ。文化財に匹敵する年代物だぞ。」

 

船から降り忍島に上陸すると俺たちは合宿所へと辿り着いた。

 

「と言うか………年季が入り過ぎてるって言うか………」

 

「古式床しいと表現すれば………」

 

「そ、そうそう!それそれ!」

 

「そうですよね!忍の修行なんですから。」

 

「す………」

 

「…竜司さん?」

 

「すっげぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺は合宿所に興奮していた。

 

「見ろよ飛鳥ここ!!この見栄えにこだわらず苔に覆われた歴史の経過を感じる古びた屋敷!!いかにも忍屋敷って感じがしてきてたまんねぇ!!」

 

「えっと…」

 

「いや〜いいな〜子供の頃よく空き家を改造して忍屋敷という名の秘密基地を作ったっけな〜」

 

「…お化け屋敷みたい」

 

………………………は?

 

「やめろ雲雀……みんなそこまでは……と遠慮してるんだぞ」

 

「そうなの?」

 

「雲雀……」

 

今……雲雀は……言ってはならんことを言ってしまった。

 

「この屋敷の素晴らしさが何故わからぁぁぁぁん!!」

 

俺は怒りながら雲雀のほっぺを引っ張った。

 

「いひゃい!いひゃいよ竜司くん!!」

 

「それどころか……お・ば・け・や・し・きだとぉぉぉぉ!?このロマンが分からんのか貴様はぁぁぁぁ!!」

 

「おい竜司!!雲雀になんてことを!!」

 

「りゅーくん落ち着いて〜!!」

 

「あー……お前ら少し落ち着け」

 

騒ぎ続ける俺たちに霧夜先生がため息を吐きながら喋り出した。

 

「まぁ竜司の言いたいことはわかる。俺も子供の頃は秘密基地をよく作った。」

 

(((((わかるんだ……)))))

 

「ここは江戸時代から多くの名のある忍達が修行を積み重ねて来た忍者屋敷だ。ここで修行出来る事を誇りに思わないでどうする?」

 

「そんな歴史ある建物とは……ますます嬉しいです!!」 

 

「そうかそうか……竜司は理解があってよろしい。それでは早速修行開始だ。」

 

「い、今からですか!?」

 

いきなりの修行開始の合図に飛鳥は驚いた。かつ姉も下心満載な訴えをしだした。

 

「早過ぎるよ先生!折角の海なんだし、まずは水着に着替えて!」

 

「そうはいかん!!何故なら最初の修行は……ここの掃除だ!!」

 

 

 

 

 

 

「おりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

現在俺は廊下を全力で雑巾掛けしていた。合宿所は長らく掃除をされてないこともあり少し雑巾掛けしただけですぐ雑巾が真っ黒になってしまう。

 

「こりゃ全部やり切るのには夕方までかかりそうだな」

 

「竜司、霧夜先生が呼んでるぞ」

 

突然柳生が俺に声をかけてきた。

 

「霧夜先生が?なんで?」

 

「今日の夕飯の調達だそうだ。」

 

どうやら食事は現地調達のようだ。

 

 

 

 

「お、来たなお前ら」

 

柳生に連れられて向かった先には釣りの準備を整え釣り人の服装に身を包んだ霧夜先生がいた。

 

「おぉ〜霧夜先生、やる気満々ですね」

 

「ふっ、この辺は大型の魚もいるからな。今日の食卓は俺たちの頑張りにかかってるからな、お前たちも頑張れよ」

 

「はいっ!!」

 

 

 

 

 

 

「霧夜先生……そっちはどうですか……」

 

「……さっきと変わらんな」

 

あれからずっと釣り糸を垂らしているが……一匹も掛からない……

 

「まずいぞ竜司……このままじゃ本当に夕飯抜きになるかもしれん……」

 

「ところで柳生は……ん?」

 

ふと海に視線を向けると突然海が渦巻きが舞い上がると沢山の魚が桶の中に入っていった。よく見ると柳生が忍術を活かして魚を獲っているようだ。他にもタコやアワビなどの高級食材を獲っている。

 

「なるほどあんな手が……そうだ!!」

 

『武装!!プレシオ!!』

 

柳生を見て閃いた俺はすぐに仮面ライダーリューマ・プレシオ武装に変身して海に飛び込んだ。

 

「行くぜ……おりゃぁぁぁぁ!!」

 

俺はプレシオスピアを振り回して海流を操り魚を獲り続けた。

 

「よっしゃぁ!!この調子でどんどんいくぜ!!」

 

俺はその勢いだどんどん魚を獲っていった。

 

(マズイ………このままでは………教師のプライドが………)

 

一方霧夜先生は一匹も釣れずじまいであった。

 

 

 

 

「おーい大量だったぞー」

 

俺たちは釣れた魚を合宿所へと持ってきた。なおせめてもの見栄なのか霧夜先生がいかにも自分が釣ってきたように持ってるがそこは触れないでおいておこう。

 

 

 

 

 

「いや〜柳生、オメェ見直したよ!!」

 

「竜司さんもお疲れ様です」

 

その日の晩、俺たちは釣った魚をで豪華な料理を堪能していた。

 

「いやでも結局柳生の方が沢山獲ってたし、すげーなお前」

 

「ふっ、当然だ。竜司もなかなかだったな」

 

俺が称賛すると柳生は少し嬉しそうにしていた。

 

「釣りはダメだったが、貝を獲ったのは俺だからな」

 

霧夜先生はなんとか見栄を張ろうとしていたが……なんかかわいそうで何も言えなかった。

 

「霧夜先生、スーパーニンジャってどんな忍なんですか?」

 

すると、雲雀の質問に一瞬霧夜先生の顔が強張った。

 

「スーパーニンジャ?なにそれ?」

 

「天井の柱に書いてあったの。多分昔ここに来た先輩が書いたんだと思うんだけど……」

 

「名前からして、全ての忍を超越するような究極の忍………みたいなもんじゃないかな?」

 

霧夜先生は少し顔を強張らせながらそう返答した。

 

「スーパーニンジャか……俺が思うにきっとすっごいカッコイイ忍者なんだと思うぜ!!」

 

「へぇ〜、そんな忍が居たら、悪忍なんて簡単にやっつけて、世界も平和になっちゃうかもですね!」

 

「もしかしたらスカルだって倒せちゃうかもな」

 

きっも俺の目指す「世界一カッコイイ忍者」みたいなものだと思う。もしそうなら一度その先輩に会ってみたいものだ。

 

 

 

 

 

「行くぜ!忍法、乱れ枕!」

 

「何の!忍法、枕返し!」

 

「くらえ忍法、激竜無双枕!」

 

その日の晩、俺たちはお泊まりの定番枕投げていた。

 

「雲雀だって……え〜い!!」

 

「無駄無駄無駄ぁ!!」 

 

雲雀の投げた枕を俺はキャッチする。

 

「トドメだ雲雀……かくごぉ!!」

 

俺は雲雀に狙いを澄まして投げるが柳生がそれをガードする。

 

「くそっ……雲雀には柳生という鉄壁の守りがあるんだった。」

 

柳生をどうにかしなければ雲雀は倒せない

 

「よし竜司、飛鳥、アタイらも共闘しようぜ」

 

「よっしゃいくぜ!!」

 

「うん!!」

 

こうして俺&飛鳥&かつ姉チームと雲雀&柳生チームの戦闘が始まった。しかしそんな中、布団の中で静かに読書をしていた斑鳩先輩の怒りが爆発した。

 

「おやめなさい!!今何時だと……」

 

「せいやぁ!!」

 

「ぐおっ!?」

 

そのとき、柳生の枕が俺にクリーンヒットしてその勢いで斑鳩先輩のところに倒れてしまった。

 

「うわぁ!?」

 

「きゃあ!!」

 

そのまま俺は斑鳩先輩へと倒れ込む。

 

「痛た……すみません斑鳩せ(むにゅん)」

 

「ひゃぁんっ!!」

 

瞬間、俺の両手に何やら柔らかい感触があった。

 

「ん?これって……(むにゅむにゅん)」

 

「ひゃっ…あっ…竜司さん……」

 

視線を向けるとそこには……斑鳩先輩の胸を直に鷲掴みしている俺の両手があった。

 

「あっ……これは……その……」

 

俺は自分がしでかしたことに気付くお顔がマグマのように熱くなり……

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!竜司さんのエッチィィィィィィィィ!!」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

斑鳩先輩渾身のビンタが炸裂して俺は吹き飛んだ。

 

「こらっ!!今何時だと……ぶへぇぇぇ!!」

 

その勢いで俺たちを注意しに来た霧夜先生が巻き添えを食らった。

 

 

 

 

 

「今度騒いだら、お前達全員朝飯抜きにするからな。」

 

「「「「「「……はい」」」」」」

 

俺たちは霧夜先生のお説教を受けてしまった。

 

 

 

 

「やれやれ、酷い目にあった……」

 

お説教の後、俺は布団に潜り寝る準備をした。そんな中、雲雀が教えてくれたことを思い出す。

 

「……スーパーニンジャか…………」

 

どんな先輩がその目標を掲げたのだろう、今何をしてるのだろう、もし会うことができるなら一度会ってみたい。会ってその人の話を聞いてみたい。

 

「きっと……すごい人なんだろうな……」

 

俺はそんなことを思いながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い場所だな……深さ、潮の流れ、海の透明度、どれをとっても釣りに最適な場所だ。釣れない方がおかしいくらいだぜ」

 

島から少し離れた場所、そこに浮かぶ小舟で紅髪の少年、炎佐が釣りをしていた。

 

「貴方、昼間っからずっとそればっかりね」

 

そんな炎佐に呆れながら春花が声をかける。

 

「それくらい釣りに最高の場所なんだよ。」

 

そういうと炎佐は釣竿をしまい始める。

 

「む?もう良いのか?」

 

その様子を見て焔が声をかける。

 

「これ以上は食いきれねぇ。それに俺も十分堪能した。」

 

「では沢山釣れましたし一部は干物にでもいたしましょう。学園に帰ってもしばらくは食べ物に困りませんわ。」

 

釣れた魚を見て詠は大喜びしていた。

 

「ははったしかにな。そう言うと思って調味料もいろんな種類を持ってきたぜ。」

 

「炎佐さん昼間からずっと満喫しとったもんなぁ。わし感情無いけど炎佐さんがご機嫌なのはよくわかるで」

 

俺の顔を見て日影が話しかける。

 

「ははったしかにな日影、お前の言う通りだ」

 

「ふふっいよいよ明日なのね。待ちきれないわ。」

 

未来は明日のことを考えにやりと笑う。

 

「あぁ、鈴音先生はすでに島内に向かってるそうだ。俺たちは明日行動を開始する。」

 

俺は視線の先にある島、仮面ライダーリューマとその仲間が修行をしている忍島を見つめる。

 

「さて…仮面ライダーリューマ…今回も楽しもうぜ!!」

 

 

 

 

そしてこの日より本格的に始まる…善忍と悪忍…二つの勢力の争いが…





アニメから臨海修行編を書いてみました!!




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其の十五 命駆とロード襲来!!の巻

臨海修行2日目、俺たちは修行のため制服姿で浜辺に来ていた。

 

「あーあ、海に来て制服なんてな…」

 

「修行にきているんですから当然です」

 

かつ姉はため息混じりに呟き斑鳩先輩がそれに返答した。

 

「まぁまぁ、この後自由時間があるんだから良いじゃんかつ姉」

 

すると、煙玉とともに霧夜先生が現れた。

 

「揃ったなお前たち、今日は命駆の修行を行う!!」

 

命駆、戦闘前に自発的に忍装束を脱いで自らを追い込み、素早さと攻撃力を上げる特殊な術である。しかし、この術を使っている間は防御力が極端に下がってしまう、まさに諸刃の剣である。

 

「始め!!」

 

霧夜先生の合図とともに俺は自身のエネルギー、チャクラを放出し制服姿から水着のみの姿へと変わる。対する斑鳩先輩も同様に命駆状態になる。

 

「命駆中は、敵の攻撃1発1発が致命傷になりゆる!当てても当てられるな!」

 

「「はい!!」」

 

その後、飛鳥達も命駆状態となり訓練を続けた。

 

 

 

 

 

 

「やっと待望の自由時間だぜ」

 

修行が終わり、いよいよ自由時間となったので俺は水着状態となる。と言ってもさっき命駆状態の時に着ていたのと同じ海水パンツなのであんまりさっきと変わらないのだが…そういえば、先程の修行の際にいいことを思いついた。これが使えるようになればリューマでの戦闘ももっと自由になれる。

 

「もっと強くなって…いつか『世界一カッコイイ忍者』になる…」

 

 

 

 

「うーん、気持ちいいな〜」

 

そして再び浜辺、そこではみんながそれぞれ思うように海を満喫していた。斑鳩先輩は水蜘蛛型のサーフィンを、柳生と雲雀はお互いにサンオイルを塗っており、かつ姉は飛鳥の水着を盗んで追い回されていた。俺は海に潜って自由に泳ぎ回っていた。

 

「ん?」

 

ふと海岸の方に目を向けると先ほどまでパラソルの下でくつろいでた霧夜先生が顔色を変え森の方へと向かっていた。

 

「どこいくんだろう…?」

 

 

 

 

「飛鳥さん、霧夜先生と竜司さんを見かけませんでしたか?」

 

自由時間が終わり、飛鳥が食事の為にかまどの薪に火をつけていると斑鳩が話しかけて来た。

 

「え?いいえ、私は……」

 

「霧夜先生に明日の予定を聞こうとしたんですが…竜司さんもさっきからどこにもいませんし……」

 

 

 

一方霧夜は、崖の上に立っていた。彼には1通の手紙があった。手紙には…

 

『あの崖で待ってます。あなたの大切な教え子』

 

と書かれてあった。

 

 

 

「ええと…たしかこっちに行ったと思うけど……」

 

霧夜先生を追って俺は制服に着替えて森の中を探し回っていた。

 

「霧夜先生…昨日の夕飯の時からなんか様子がおかしかった…一体どうしたんだろう…」

 

雲雀が『スーパーニンジャ』の事を話してからどこか寂しそうに考え事をしているところがあったので気になっていたのだ。

 

 

 

 

「どうした?考え事か?」

 

「っ!?」

 

突然声が聞こえ、そちらを振り向くと

 

「炎佐…なんでここに…」

 

これまで何度も闘った相手、仮面ライダー…仮面ライダーガリューの変身者、炎佐がそこにいた。

 

「今回は命令でな、お前達と遊んでこいって上からの命令だ」

 

そういうと炎佐はカグラドライバーを取り出して腰に装着した。

 

「…やるしかないか」

 

俺もカグラドライバーを腰に装着する。

 

『ティラノ!!』

 

『スピノ!!』

 

俺と炎佐は同時にティラノキーとスピノキーを起動してカグラドライバーの鍵穴に挿し込む。

 

『『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』』

 

両者のベルトから音楽が流れ出す。

 

「「変身!!」」

 

『武装!!ティラノ!!』 

 

『武装!!スピノ!!』

 

両者は掛け声とともに鍵を回しベルトからティラノサウルスとスピノサウルスのオーラが現れ俺たちを包み込み仮面ライダーリューマと仮面ライダーガリューへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「仮面ライダーガリュー…いざ、舞い殉じる!!」

 

俺はファングクナイを、ガリューはスピノアクスを手に相手へとぶつかり合った。両者の武器が衝突して火花が散る。

 

「ぐっ…!!」

 

「なかなかのパワー…また腕を上げたようだな!!」

 

「うるせぇ!!」

 

俺はなんとか押し切ろうとするがガリューの一撃は凄まじく、逆に押されてしまう。

 

「せいっ!!はぁっ!!」

 

俺は再びファングクナイで斬りかかるがガリューはそれを容易く躱してしまう。

 

「良い動きだが…俺にはまだ及ばない!!」

 

そのままガリューは俺に連続パンチを撃ち込んで俺は吹き飛ぶ。

 

「このぉ…だったら」

 

『必殺の術!!』

 

俺はカグラドライバーの恐竜を叩いた。

 

「いいぜ…そっちがその気なら…」

 

『必殺の術!!』

 

対するガリューもカグラドライバーの恐竜を叩く。

音声と共に両者の足にエネルギーが込められていく。音声と共に足にエネルギーが込められていく。両者が飛び上がり俺はティラノサウルスのオーラを、ガリューはスピノサウルスのオーラを全身に纏い渾身のキックが繰り出す。

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

「必殺忍法!!煉獄炎竜蹴り!!」

 

空中で両者の蹴りが炸裂して両者は吹き飛ぶ。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「ははっ…今のは…効いた…」

 

おれが立ち上がるとガリューは少しふらつきながらも立ち上がる。

 

「まだやろうってんなら相手になるぜ…」

 

俺は再びファングクナイを構えてガリューと対峙する。

 

「いいぜ…せっかく盛り上がったんだ、このまま…」

 

ガリューもスピノアクスを構える。しかし、

 

『シュルルルル!!シュルルルル!!』

 

突然、ガリューのもとへ紅い蛇型ロボットが現れて携帯電話へと変形する。ガリューかそれを手に取り耳に当てた。

 

「どうした……そうか、もう撤退か…」

 

ガリューは少し残念そうにして変身を解除する。

 

「悪いな、今日はここまでだ。」

 

そう言って炎佐は俺に背を向け木へと飛び移った。

 

「あばよ竜司、次に闘うまで死ぬんじゃねえぞ」

 

「あっ…ちょっと…!」

 

俺は慌てて追いかけようとしたが炎佐はそのまんま立ち去ってしまった。

 

「なんなんだあいつ…」

 

「竜司!!大丈夫か!?」

 

そこへ霧夜先生が走ってきた。

 

「霧夜先生…大変です!!またガリューが…」

 

「あぁ、すぐみんなのところに行くぞ!!」

 

 

 

 

その日の夜。飛鳥と斑鳩が皆の帰りを待っていた。

 

「皆遅いな〜・・・」

 

「全員帰って来ないなんて、何かあったんでしょうか?」

 

しかし、なかなか帰ってこないみんなに飛鳥たちは心配していた。

 

「飛鳥〜!斑鳩先輩〜!」

 

「あ、帰って来た!」

 

そこへ竜司たちが帰って来た。しかし、彼らは険しい顔をしていた。

 

「え!?」

 

 

 

 

 

 

「蛇邪学園……確かにそう言ったんだな?」

 

屋敷内で俺たちは集まり襲撃者たちについて話し合った。

 

「知ってるんですか霧夜先生?」

 

「先日半蔵様から聞いたばかりだ。秘立蛇邪学園、我が半蔵学院を対立して設立された悪忍養成機関らしい…この修行中に話そうと思っていたんだが…」

 

「悪忍養成機関…」

 

俺たちは判明した敵の正体に動揺した。

 

「じゃあ仮面ライダーガリューやこの前俺と斑鳩先輩を襲った奴、それから商店街で出たっていう傀儡使いも…」

 

「蛇邪とみて間違いないだろう」

 

「彼奴、ハナから真面に勝負する気は無かったみたいでさ………良いようにあしらわれちまった………ああああムカつく!!!」

 

「ガリューも仲間と連絡したと思ったら撤退しちゃって…今回は様子見程度だったってことかな?」

 

「とにかく!!次あったら逃さねえぞ!!」

 

かつ姉の言う通りだ。こんなにいいようにやられてはこっちも黙っていられない。

 

「兎に角、ここまでやって来るからには単なる挑発行為だと思えん。奴らの目的はまだ分からんが………決して、善忍が悪忍に屈する事は許されん。」

 

「「「「「「はいっ!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

その晩、俺たちは眠りについていた。悪忍の襲撃があった為、臨海修行は中断、明日朝一番に戻り神門様に報告をすることになった。

 

「駄目だ…全然眠れない…」

 

今日はいろんなことがありすぎて全然寝付けない。仕方がないので外に出て気晴らしをすることになった。

 

 

 

 

 

「いい月だな…」

 

森の中を歩いていても空の月がはっきりと見える。見事なまでの満月である。

 

「なんか最近いろんなことが起きすぎてて考えることが多かったけど…少しスッキリできてよかった。」

 

気分もスッキリしたので俺は屋敷へと戻ろうとしたその時、

 

「…っ!!誰かいる…」

 

ふと誰かの気配を感じた。飛鳥達とも違う知らない人の気配だ。

 

「まさか…また蛇邪の悪忍!!」

 

俺はカグラドライバーを腰にはめながら気配がした方へと走り出した。

 

 

 

 

「おい、鈴音先生はまだ来ないのか?」

 

島から少し離れた場所、そこに浮かぶ小舟に乗った炎佐が仲間に問いかけた。それに対して焔が答える。

 

「もう少しこの島を見ておきたいんだそうだ。すぐ戻るって言ってたしそろそろ来るだろ」

 

「…そうか、なら大丈夫か」

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、少し嫌な予感がしたんだが…気のせいか?」

 

「ちょっ!?何よあれ!?」

 

突然未来の声が聞こえてそちらを向くと…

 

「なっ…!?あれは…!!」

 

 

 

 

 

 

 

「たしかこの辺で気配がしたんだけど……」

   

俺がたどり着いた場所は海がよく見える崖の上であった。

 

「気のせい…?いや、確かに気配がしたんだが…っ!?誰だお前!!」

 

再び気配を感じて振り向くと口元を隠した紫色の髪をしたくノ一が立っていた。

 

「お前…ガリューの仲間か!?」

 

「…良い眼をしているな」

 

しかし、くノ一は戦意の無い目でこちらを見つめているだけである。

 

「もっと強くなれ、お前にはその資質がある。」

 

「何を言って…」

 

その時、

 

「っ!?なんだ!?」

 

突然島を黒い蛇のような鎖が覆いだした。

 

「これは…結界!?あいつらは…!?」

 

くノ一も動揺して海の方へと走り出す。

 

「あ、おい!!あんた一体……」

 

俺は追おうとしたが取り逃してしまう。

 

「一体何が…」

 

「ようやく結界を張れたか…伊達に忍の修行場では無いということか」

 

突然声が聞こえて振り向くと、殺意に満ちた眼をこちらに向ける燕尾服を着た女が現れた。

 

「誰だお前は!?」

 

「我が名はメドューサ…偉大なる陛下の忠臣だ」

 

「陛下…?何を言って…」

 

俺はメドューサを言葉に疑問を浮かべながらも戦闘態勢に入る。

 

「その気配…お前、スカルの仲間だな。だったら倒すまでだ!!」

 

『ティラノ!!』

 

腰にはめたカグラドライバーに起動したティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

そのまま俺はメドューサに殴りかかる。しかし、

 

「んなっ!?」

 

「舐めるなよ」

 

黒い蛇のようなオーラが彼女を包み込むように覆い俺のパンチをガードする。

 

「貴様が今まで倒してきたスカルは進化前の一般兵クラス…だが私は、偉大なる陛下に尽くすために進化した『選ばれし十二体の獣』…ロードスカルが一体…メドューサスカルだ!!」

 

メドューサは懐から髑髏を彷彿させるバックルを取り出し腰に当てると骨の様な帯が巻きつきベルト『スカルドライバー』になった。

 

『メドューサ!!』

 

メドューサが金色の骨の装飾があるスカルキーを起動し、スカルドライバーの口の中にある鍵穴に差し込み回した。すると鍵穴からどす黒い泥が体を包み込み全身が蛇の鱗の様な女性らしいラインの鎧に包まれ顔は蛇のような兜に覆われてたスカル。メドューサスカルへと変身した。

 

「私にこれだけ恥を掻かせたんだ…楽に死ねると思うな!!」

 

メドューサスカルは叫びながら紫色の長剣を手に斬りかかってきた。

 

「この…!!」

 

俺はファングクナイを手にその長剣をガードする。

 

「今度はこっちの番だ!!」 

 

そのままメドューサスカルの鎧をファングクナイで斬りつけるが…

 

「…その程度か?」

 

「なっ…うわぁ!?」

 

メドューサスカルはびくともせず再び斬りつけ俺は吹き飛ばされる。

 

「くそっ.…それなら!!」

 

『武装!!パキケファ!!』

 

俺はパキケファキーを起動してパキケファ武装になる。

 

「おりゃぁ!!」

 

俺は両手のパッキーナックルでメドューサスカルに連続パンチを繰り出すが手に持った長剣でガードされてしまう。

 

「くそっ…それなら!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺はカグラドライバーの恐竜を叩くと、地面を踏み込み拳を構えた。すると、拳にオーラが纏わり付き拳が輝く。

 

「必殺忍法!!激竜空烈拳!!」

 

俺は地面を蹴り一瞬でメドューサスカルへと近寄りその盾に渾身のパンチを繰り出す。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

「無駄だ。」

 

しかし、俺の渾身の一撃をメドューサスカルは片手で受け止めてしまった。

 

「うそ…だろ…」

 

俺の武装で1番のパワーを誇るパキケファ武装の必殺忍法を片手で受け止める…明らかに今までのスカルとは格が違っていた。

 

「この程度の奴が…今まで私…陛下の邪魔をしてきたというのか…まったくもって…」

 

すると、メドューサスカルの長剣が黒いオーラを放ち

 

「腹立たしい!!」

 

メドューサスカルはその長剣で斬りつけた。

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

メドューサスカルの一撃を喰らった俺はそのダメージで倒れてしまう。

 

「苦しいか?それは貴様がこれまで犯してきた罪だ」

 

メドューサスカルはそう言って俺に近づく。

 

「痛いか?それは貴様がうけるべき罰だ」

 

そう言うとメドューサスカルは俺の首を掴んで持ち上げる。

 

「たかが忍ごときが陛下の道を妨げると言うことは…それほどに重い罪なのだ!!その罪…地獄で詫び続けろぉぉぉ!!」

 

メドューサスカルは俺を崖から放り投げると頭の髪が蛇になり俺へと紫色の炎を放った。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

俺はそのダメージで変身を解除してしまいそのまま崖から落下してしまった。

 

 

 

 

「初めからこうすれば良かったんだ。使えない雑魚共に任せるのではなく私が直接倒していれば」

 

崖から落ちていく竜司を見たメドューサスカルは変身を解除する。

 

「あれで生きてるとは思えんが…ただ殺すだけでは気が済まん。首を切り落として陛下へと献上するとしよう。首以外は海に捨てて魚共の餌にでもするか」

 

そう言ってメドューサは竜司を探しに向かった。

 

 

 

 

 

 

「う…うぅ…」

 

海沿いの岩場、そこにボロボロの竜司が打ち上げられていた。身体中が傷だらけで意識も朦朧としている。

すると、そこに一つの影が現れる。

 

「…………。」

 

それは、先ほど竜司が遭遇したくノ一であった。

 

 

 

 




竜司敗北!!


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其の十六 リベンジと命駆モード!!の巻

俺が1歳の時、母さんが死んだ。

母さんのことはあまり覚えていない。じいちゃんに聞いた話では根っからの忍であり任務の鬼だったそうだ。どんな危険な任務も決して顔色を変えずに鋭い目で遂行していたそうだ。しかし、俺を抱きあげて子守唄を歌う時は、とても優しい表情を浮かべていたらしい。

ある任務で命を落とした時、母さんは泣きながら呟いたらしい

 

 

 

 

『もっとあの子といたかった。あの子を忍者として、なにより愛する息子としてずっと育てたかった。』

 

 

 

 

その後、親父は任務と称して俺を置いていき、結果俺は母さんの師でもあったじいちゃん、半蔵に引き取られた。

 

「あいつはのう、どこまでも真面目な奴じゃった。じゃがのう、それ以上にどこまでも優しい心の持ち主じゃった。」

 

母の命日になるとじいちゃんは仏壇の前で悲しそうにそう呟く。

 

「竜司という名はな、死ぬ前にあいつがお前が忍になったら絶対にこの名をつけてくれってワシに頼んだ名なんじゃ」

 

「母さんが?」

 

「うむ、『あの子に自分が母だという証を残したい』そう言ってな、お前が産まれるまえから忍としての名を必死になって考えておるあいつは微笑ましかった…」

 

そう言うとじいちゃんは俺の頭を撫でる。

 

「竜司、あいつは…叶(かなえ)は確かにお前の中で生きておる。胸を張って…なにより強く生きろ」

 

目に涙を滲ませながらじいちゃんはそう俺に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…うう…ここは…?」

 

目が覚めるとそこは暗い洞窟の中だった。

 

「俺は…一体…」

 

「目が覚めたか」

 

ふと声が聞こえてそちらに首を傾けるとそこには先ほど遭遇した口元を隠したくノ一が焚き火に目をやりながらそこにいた。

 

「あんた…さっきの悪に…痛っ…!?」

 

起き上がろうとすると体に痛みが走る、

 

「動くな、応急処置をしたが本来なら死んでてもおかしくないほどの怪我だったんだ。まだじっとしていろ」

 

よく見ると全身に包帯がグルグルと巻かれていた。

 

「あんたが…俺を助けてくれたのか?なんで?」

 

「今この状況では善忍だの悪忍言ってる場合じゃないしな。ロードスカルに対抗する力は1人でも多い方が良い。奴らはスカル達の中でも幹部クラス、ガリューでも倒すのは難しい相手だからな」

 

そう言うとくノ一は俺に自分が飲んでいた水筒を投げ渡す。

 

「今は体を休めろ。傷を治すことを最優先にするんだ。」

 

「わ…わかった…」

 

俺は水筒の水を飲むとそのまま体を休めた。

 

 

 

 

 

「ギギィッ!!」

 

メドューサが手を振ると目の前のアントスカルが破裂する。

 

「見つからないじゃあないだろ…さっさと見つけろ!!」

 

苛立ちながら叫ぶメドューサに残りのアントスカルたちは再び竜司の捜索を始めた。

 

「これだけ探しても見つからない…やはり生きてるのか?」

 

あれだけの攻撃を受けてなおリューマは生きている、そう考えるとメドューサはさらに怒りを露わにした。

 

「しぶとい奴め…それなら…」

 

メドューサは何かを思いつき歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「ん…寝てたのか俺…」

 

目が覚めると俺は起き上がった。どうやら知らない間に眠ってしまったようだ。体はまだ痛いが先ほどよりだいぶ楽になった。

 

「本当に無防備だな。まさか仮にも敵の前で堂々と眠れるとは…」

 

「あ…あはは…」

 

「ふっ、おかしな奴だ」

 

呆れた顔でこちらを見るくノ一は少し懐かしそうに笑った。

 

「それで…この後どうするんだ?」

 

「結界を解く」

 

俺の質問そう言うとくノ一はそう答えると地面に術式のようなものを書き始めた。

 

「この結界はスカルの能力によるものだがその根幹は忍の術によるものに近い。これなら時間はかかるが私ならなんとか解除できるかもしれない。結界が解ければ外のガリューがこの島に入れる。そうすればロードスカルに対抗できるだろう。」

 

「おおっ!!」

 

ガリューは強い、味方になってくれればこれほど頼りになることはない!!

 

「…休戦協定を提案した私が言うのもなんだが…さっきから私のことを信用し過ぎじゃないか?」

 

喜ぶ俺にくノ一は呆れた顔でそう聞く

 

「いや…まぁそうなんだけどさ、あんたって悪忍だけど、いい奴そうだからさ」

 

一緒にいれば少しはわかる、この人は確かに敵だが…悪い奴ではない、信用できる人だ

 

「…本当におかしな奴だ」

 

ため息を吐きながらくノ一は苦笑いをした。

 

 

 

 

「くそっ!!」

 

炎佐はガリューに変身してスピノアクスで結界を攻撃するが破壊できずにいた。

 

「この力…おそらくスカル…しかもロード級だ!!鈴音先生や今のリューマじゃ相手が悪い!!なんとかしないと…」

 

『シュルルルル!!シュルルルル!!』

 

突然、紅い蛇型のオトモカラクリ『カラクリヘビ』のヘビ丸が携帯電話のへと変形し炎佐の手に収まる。見てみると着信がある。

 

「もしもし?」

 

『やぁ炎佐』

 

「っ!!てめぇは…」

 

電話の相手は蛇邪学園に多額の資金援助を行なっている有力スポンサーの男であった。

 

「何のようだ…今忙しいから後にしてくれ」

 

「事情はわかってるよ、ロードスカルが出たのだろう?」

 

「っ!?テメェなんでそのことを…」

 

炎佐はなぜこの男がそれを知ってるのか驚愕した。

 

「単刀直入に言おう、お前達はそこで待機していたまえ」

 

「っ!?なんでだよ!!」

 

炎佐は男の言葉に怒り叫んだ。

 

「これは上からの命令って奴だよ。悪いが私に従ってもらうよ」

 

「ぐっ…」

 

男の笑い声に炎佐は悔しそうに歯軋りをした。

 

「…頼んだぞ…リューマ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし…このまま結界の解除に取り掛かる。」

 

「お、おぉ」

 

その頃、くノ一と俺は結界の解除の準備をしていた。俺も結界解除に必要なものや準備を手伝っている。

 

 

『仮面ライダーリューマ…』

 

「「!?」」

 

突然声が聞こえ俺たちが外に出ると空中に燕尾服を着た女、メドューサが映し出された。

 

『貴様が生きているのなら今から指定する場所へ1時間以内に来い…もし来ないようなら…こいつらの命はない』

 

「っ!?みんな!!」

 

そこに映し出されたのは石になってしまった飛鳥達の姿であった。

 

『これは脅しじゃ無い…必ず来いよ』

 

メドューサの言葉とともに映像は途切れた。

 

「くそぉっ!!」

 

俺は傷ついた体に鞭打ってメドューサに指定された場所へと向かおうとした。

 

「だめだ」

 

しかし、くノ一は俺の手をつかんで止めた。

 

「はなしてくれ!!早く行かないとみんなが!!」

 

「あからさまな罠だ、行けば殺されるぞ」

 

「だからって…みんなを見捨てられるわけねぇだろ!!」

 

「聞き分けろ!!」

 

突然くノ一は俺はと怒鳴りつけた。

 

「スカルに対抗できるのはガリューとお前だけなんだぞ!!お前が死ねばそれだけ人々がスカルの脅威に苛まれることになるのがなぜわからん!?リューマの力を手に入れて最強になったつもりか!?死んだら全て終わりなんだぞ!!違うか!?」

 

くノ一は体を震わせながら言葉を続けた。

 

「いいか…お前がどんな力を手に入れようとも…所詮お前は忍学生、未熟なことには変わりない…お前はこの先もっと多くの命を救う人間なんだ…ここで死んではいけない…」

 

その声は震えており手には血が滲み出していた。

 

「お前は生きなければならないんだ…目指すものがあるなら…その命を捨てるようなことはするな…」

 

「………。」

 

しかし、俺の意思は変わらない。

 

「悪い、俺行くよ…」

 

「なっ…!?」

 

俺の言葉にくノ一は驚愕した。

 

「俺さ…『世界一カッコイイ忍者』になりたいんだ。その夢を叶える為に一つ、絶対にこれだけは守るって誓いを立ててるんだよ」

 

『世界一カッコイイ忍者』、それは俺の目指す忍者。その為に、決めていること…

 

「仲間を絶対に見捨てない…それが俺の目指す夢の為にたてた俺の誓いなんだ」

 

この誓いがあるから俺は自分の夢を追い続けられる。前へ進み続けられる。

 

「だから俺はみんなを助けに行く…ここで仲間を見捨出るくらいなら…俺は忍を辞める…そうしてまで俺は忍なんて続けたくないから!!」

 

そう言うと俺は走り出す。大切な仲間を守るために

 

「……仲間…か」

 

それをくノ一は静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

「来たか」

 

俺がたどり着くとそこにはアントスカルを引き連れ鋭い目つきでこちらを見つめるメドューサが立っており後ろには石にされた仲間がいた。

 

「返してもらうぞ、俺の仲間を!!」

 

「それは無理だな。お前はここでこの私に殺されるのだからな」

 

『メドューサ!!』

 

メドューサは腰にスカルドライバーを装着して金色の骨の装飾があるメドューサキーを起動し、スカルドライバーの口の中にある鍵穴に差し込み回した。すると鍵穴からどす黒い泥が体を包み込み全身が蛇の鱗の様な女性らしいラインの鎧に包まれ顔は蛇のような兜に覆われてたスカル。メドューサスカルへと変身した。

 

「死なねえよ…俺はお前を倒してみんなを助けるんだ!!」

 

『ティラノ!!』

 

腰にはめたカグラドライバーに起動したティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

俺はファングクナイを手にメドューサへと斬りかかった。

 

「舐めるなぁ!!」

 

メドューサスカルも長剣を手に取り斬りかかる。

 

「ぐっ…」

 

「はぁぁぁっ!!」

 

鍔迫り合いになるもメドューサスカルの力に負けて俺は吹き飛ばされる。

 

「ぐっ…だったら!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺はファングクナイの鍵穴にティラノキーを挿して回し、音声とともにファングクナイにエネルギーが込められて巨大なオレンジの斬撃が放たれた。

 

「必殺忍法!!激竜忍斬り!!」

 

斬撃はメドューサスカルへと向かっていく。

 

「無駄だ」

 

すると、メドューサスカルの長剣の刃が分裂し蛇腹剣へと変形し、俺の斬撃を細切れにした。

 

「んなっ!?」

 

「死ね」

 

そのまま蛇腹剣の斬撃は俺へ襲いかかり俺の体を斬り裂いた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

蛇腹剣で斬り裂かれた俺はボロボロになって倒れ込む。

 

「ふん、他愛無い。」

 

メドューサスカルは俺にとどめを刺す為にゆっくりと近づいてきた。

 

 

「この…まだだぁ!!」

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

俺は立ち上がりカグラドライバーの恐竜を叩くと音声と共に足にエネルギーが込められていく。俺は飛び上がりティラノサウルスのオーラを全身に纏い渾身のキックが繰り出した。

 

「鬱陶しい!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

メドューサスカルは頭部の髪を蛇に変えそこから紫色の炎を放ち俺は吹き飛ばされる。

 

「う…くそっ…」

 

俺は再び立ち上がろうと力を入れる。

 

「本当にしつこい…ただの忍の分際で…私と陛下の道を妨げるなぁ!!」

 

メドューサは怒りながら蛇腹剣で俺を再び斬りつける。

 

「なぜ貴様は倒れない!?ただの忍のくせに!!『リューマの鎧』に選ばれただけの…ただの小僧のくせにぃ!!死ね!!消えろ!!私と陛下の邪魔をするなぁ!!」

 

メドューサスカルは激昂しながら俺に何度も何度も蛇腹剣を叩きつけてきた。

 

「…倒れるわけ…ねぇだろ…俺は…『世界一カッコイイ忍者』になる男だぞ?」

 

「何…!?」

 

俺はなんとか立ち上がり言葉を続ける。

 

「お前…さっきから忍を馬鹿にしてるけどなぁ…忍の凄さを…何にもわかってねえ…」

 

俺の憧れた忍は…忍の歴史はこんなやつに語れるほど柔なもんじゃ無い

 

「見せてやるよ…お前が見下した…忍の力って奴をなぁ!!」

 

ぶっつけ本番でこの技を使うことになるとは思わなかったけど…ここで使わなければみんな死ぬ…俺も…飛鳥たちも…失ってたまるか!!

 

「はぁぁぁっ!!」

 

俺は全身のエネルギーを放出する。すると、リューマの装甲が変化していき薄く、最小限の装甲になる。

 

「仮面ライダーリューマ・命駆モード…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

 

 

「あれは…まさか…!!」

 

リューマを見ながら口元を隠したくノ一、鈴音は驚愕した。

 

「まさか…リューマの状態で命駆を行なってるというのか!?」

 

確かに、『リューマの鎧』は元々忍がスカルに対抗出来る様に作られたもの、理論上忍の術を使うことも可能だろう…だが、リューマの状態で命駆を使うなんて初代リューマでも使用したという記録は無い…

 

「あの男…天才というやつか…」

 

鈴音は竜司の潜在能力の高さは驚愕した。

 

 

 

 

 

「なんだ…その姿は…いや、それ以上に…なんだその膨大なエネルギーは!?」

 

メドューサスカルはリューマから溢れ出てくるエネルギーに動揺した。

 

「貴様は…危険だ…ここで倒す!!いけぇ!!」

 

メドューサスカルの指揮によりアントスカルたちは一斉にリューマへと襲い掛かる。十数対のアントスカルがリューマを取り囲み攻撃を仕掛けるがリューマは一瞬で消える。

 

「なっ!?どこに…」

 

瞬間、アントスカルたちが吹き飛ばされ爆散すると再びリューマが現れた。

 

「貴様ぁ!!一体何をしたぁ!!」

 

メドューサスカルは蛇腹剣で斬りかかる。しかし、リューマは再び姿を消して少し離れたところへ現れる。

 

「これは…消えてるのでは無い…高速で動いているのか!?」

 

「そういうことになるな」

 

仮面ライダーリューマ・命駆モード…リューマの状態で命駆を使用した特殊フォームである。防御力がほとんどなくなるがその分攻撃力とスピードが上昇するのである。

 

「今までの分反撃させてもらうぜ!!」

 

俺は高速でメドューサスカルへ接近すると全力で殴りつける。

 

「舐めるなぁ!!」

 

黒い蛇のようなオーラがメドューサスカルを包み込むように覆い俺のパンチをガードする。しかし、

 

「オラァ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

俺のパンチはオーラを突き破りメドューサスカルは吹き飛ばされる。

 

「このぉ…舐めるなぁ!!」

 

メドューサスカルは激昂しながら蛇腹剣で斬りかかる。しかし、俺は再び高速で動いて斬撃を躱してメドューサスカルを蹴り飛ばす。

 

「くそぉぉぉぉ!!嘘だ嘘だ嘘だ!!この私が…ロードスカルの一角であるこの私が…こんな忍なんかにぃぃぃ!!」

 

「俺は絶対に負けない…お前が見下した忍の力…お前に見せてやるぜ!!」

 

負けるわけにはいかない…大切な仲間を守る為に…俺の目指す『世界一カッコイイ忍者』になるために!!

 

「ふざけるな…私は…陛下の忠臣…こんなところで…貴様なんかに…負けられないんだぁぁぁ!!」

 

突然メドューサスカルは叫びだし頭部の蛇たちがメドューサスカルの全身に噛みつき出した。

 

「なっ…何を…!?」

 

「ぐぅぅぅ…ぐぁぁぁぁ!!」

 

突然メドューサスカルの体が肥大化し巨大な大蛇、メドューサスカル巨獣態へと変わった。

 

「リューマぁぁぁ…貴様は殺す…この私がぁぁ…ゼッタイニコロシテヤルゥゥゥゥ!!」

 

メドューサスカル巨獣態は鋭い牙を震わせ俺に襲いかかる。

 

「やれるもんならやってみろ!!」

 

『シノビークル!!』

 

俺はメドューサスカル巨獣態の攻撃を躱すとオレンジ色の巻物、シノビークル大地を起動してバイクに跨りカードキーを挿し込む

 

『ハヤウマモード!!』

 

ハヤウマモードになったシノビークル大地は命駆の状態によりパワーとスピードも上昇しメドューサスカル巨獣態の攻撃を躱してメドューサスカル巨獣態へと突進を繰り出す。

 

「舐めるナァァァ!!」

 

メドューサスカル巨獣態は負けじと口から紫色の炎弾を撃ち出す。

 

「これが…ロードスカルの力ダ…クタバレリューマァァァ!!」

 

「ぐっ…」

 

次々と放たれる炎弾に道を阻まれ俺は空中へとジャンプして逃れる。

 

「馬鹿メ!!そのまま石にシテクレル!!」

 

するとメドューサスカル巨獣態が口を全開すると巨大な目玉がが現れそこから黒い光線が放たれる。

 

「舐めるな…忍の…俺の力を!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺はカグラドライバーを叩くと音声と共に足にエネルギーが込められていく。俺は飛び上がるとティラノサウルスのオーラを全身に纏い渾身のキックが繰り出された。

 

「必殺忍法!!激竜命駆キック!!」

 

メドューサスカル巨獣態の光線と俺の必殺忍法が衝突し競り合いになる。

 

「これが…俺たちの…リューマの…忍の力だぁぁぁ!!」

 

俺のキックは光線を撃ち破りメドューサスカル巨獣態の頭を貫いた。

 

「そんな…嘘だ…この私が…ウソダァァァァ!!」

 

メドューサスカル巨獣態は断末魔と共に爆発した。すると、メドューサスカルの力が解けたのか飛鳥たちが元に戻った。

 

「っ!!飛鳥、みんな!!」

 

「う…りゅーくん…私たち一体…」

 

どうやら無事なようだ

 

「よかった…ほんとによかった…」

 

俺はみんなの無事にほっとした。

 

「ぐっ…馬鹿な…この私が…負けるなんて…」

 

突然声が聞こえてそちらを向くと燕尾服を着た女性が倒れていた。手に持つスカルキーは無傷のようだ。しかし、もう満身創痍で戦える様子では無かった、

 

「お前には色々と聞かせてもらうぞ、スカルやお前のボスについてとかな」

 

俺は奴を拘束しようと近づく。

 

 

 

 

「ちょっと待ってくれるかな?」

 

突然声が聞こえて振り向くと突然空間が歪み黒い穴が現れ一体のスカルが現れる。

 

その姿は血のように紅い鎧と闇夜のように黒いマントに身を包んだヴァンパイアを彷彿させるスカル、ヴァンパイアスカルが現れた。

 

「へ…陛下…」

 

メドューサはふらつきながらヴァンパイアスカルを陛下と呼び近づく

 

「も…申し訳ありません…リューマを…倒せず…」

 

「気にすることは無い、こっちこそ君に仕事を押し付けすぎていた。すまない…華蛇(かだ)」

 

謝るメドューサ、華蛇にヴァンパイアスカルは優しくそう言い彼女を抱き抱える。

 

「今日のところは退かせてもらうよ。縁があったらまた会おう」

 

「待っ…」

 

俺は止めようとするがヴァンパイアスカルは黒い穴の中へと入っていき消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことが…」

 

学院に戻った俺は神門様に報告していた。

 

「はい、ロードスカル…そして陛下と呼ばれる敵のボス…恐ろしい相手でした。闘わなくてもわかるほどのオーラ…もし奴が闘うつもりだったらやられてました。」

 

「そういえば…悪忍に救われたと報告にありましたが…」

 

「あっ…それは…」

 

しまった…やっぱり不味かったか…

 

「状況が状況だったのです。咎めるつもりはありませんよ。ただその悪忍はその後どうなったのか聞きたかったので」

 

「あ…それが…あの後どこかに消えてしまって…それっきりです…」

 

敵だけど…お礼を言っておけば良かった…

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありません鈴音先生、救助に向かえず…」

 

「いや、上からの命令だったのだ。気にしなくてもいい。」

 

その頃、鈴音は炎佐と話していた。

 

「しかし…まさかリューマがロードスカルを倒すなんて…」

 

「はい、あなたの言う通り私たちの予想を超える速さで強くなっています。」

 

その言葉に炎佐も静かに笑みを浮かべる。

 

「俺も強くならないとな」

 

 

 

 

仮面ライダーリューマと仮面ライダーガリュー、この2人の因縁の決着はまた少し先の話…

 

 

 




ロードスカル撃破!!


少し長くなってしまいましたがなんとか書けました!!


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其の十七 スリとイタズラ!?の巻

 

「へへ、良いのが買えたな〜」

 

臨海修行から帰った俺は街へ買い物に来ていた。目当てのものも買えてご機嫌な気分である。

 

「ここんとこいろんなことがあったからな…」

 

ガリュー率いる蛇邪学園の悪忍集団、スカルたちの幹部ロードスカル、そのロードスカルを統べる陛下と呼ばれる男、

 

「新しい力を手にしたとはいえ…油断はできないしな、もっと強くなって皆を守れるようにならないっ…と」

 

考え事をしていたら誰かにぶつかってしまった。

 

「おっとごめんよ!!」

 

ふと見るとボロボロの服を着て帽子を深々とかぶった10歳くらいの少年が俺に謝りながら走り去っていった。

 

「いけないいけない、気をつけないと…あれ?」

 

ふとあることに気づく、胸ポケットの違和感に…

 

「まさか!?」

 

 

 

 

 

 

 

「ちぇっ、思ってたより入ってないな…」

 

路地裏で少年は先程竜司からすった財布の中身を見ていた。

 

「これじゃあ今日の飯代くらいにしかならないじゃん。しゃーねぇ、次のカモを見つけるか」

 

「誰がカモだって?」

 

ふと声が聞こえて少年が振り向くとニッコリと笑った竜司が立っていた。

 

「げっ…お、おまえは…」

 

「この……コソ泥がぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

   

 

 

 

「相手が悪かったな。俺から財布をスろうなんて百万年早い」

 

俺はスリの少年に説教をしていた。少年の頭にはさっき俺がくらわせた拳骨によって大きなコブができていた。

 

「これに懲りたらもうスリなんてやめろよ?相手が俺だったから拳骨で済んだけど悪いやつだったらもっと酷い目に遭わされてたかもしんないんだぞ?」

 

「うるせえな…財布は返したんだしもういいだろ?」

 

「反省の色がないな、やっぱ交番に行くか」

 

そう言って俺は少年を交番へ連れて行こうとする。

 

「待ってください兄貴ィィィィ!!俺、どうしても金を集めなきゃいけない理由があるんですぅぅぅぅぅ!!」

 

少年は涙目になりながら話し出した。

 

 

 

「俺…光(ひかり)って言うんだけど…お母さんが病気なんだ…」

 

「なっ!?」

 

「お母さん…体弱いのに俺を養うために無茶して…でもとうとう体を壊しちゃって今は寝込んでるんだ…」

 

その目に涙を浮かばせながら光は言葉を続ける。

 

「お母さんの為にもお金が必要なんだよ!!だから…ううっ」

 

とうとう泣き出してしまった光を見ながら俺は財布からお金を出す。

 

「ほら、これでお母さんに栄養のあるもんでも食わせてやれ」

 

「えっ…?」

 

「だからもうスリなんてやめろよな。お母さんを安心させてやれ」

 

そう言って俺は光にお金を握らせると立ち去ることにした。

 

「へへっ…ありがとう兄ちゃん!!」 

 

光は嬉しそうに笑い走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

「さてお前たち、今日は上から任務が来た。」

 

翌日、霧夜先生が俺たちに学院外での任務を伝えた。

 

「今回の任務は商店街で起きてる軽犯罪の取り締まりだそうだ。」

 

「軽犯罪?」

 

「あぁ、最近この近くの街でスリや強請り、迷惑行為が多いと依頼があってな。取り締まって欲しいそうだ。」

 

それを聴きながら俺はこの前会った光のことを思い出した。

 

(あいつ…もうスリなんてしてなきゃ良いんだけど…)

 

「中には子供のスリもいるみたいでな、ある時は母親が病気、別の場所では姉の学費を稼ぐ為とかあちこちでいろんな嘘をついて大人たちの同情をひいてやり過ごしていたりしてるらしい」

 

…………は?

 

「…霧夜先生、もう一回言ってください」

 

「ん?あぁ、スリで捕まって警察に連れて行こうとすると母親が病気で代わりに稼がなきゃいけないとか姉の夢の力になりたいとか言って逆にお金をもらったりするような子供が最近出ているみたいだって連絡が…竜司?」

 

ふ…ふふ…そうか…そうだったのか…あの涙は俺に同情させるための…

 

「あのガキィィィィィィィィ!!!」

 

俺を騙しやがってぇぇぇぇぇぇ!!!

 

 

 

「へへっ、今日はどんなカモがいるかな〜」

 

今日も街中を光は歩く。

 

「昨日騙した奴はほんとチョロかったよな〜泣き真似したら見逃してくれるばかりか金までくれたんだから」

 

昨日騙した竜司のことを思い出すと再び笑いがこみあげてくる。

 

「おかげで昨日は食いもんにこまんなかったし、次も同じような馬鹿をまた騙してやろ」

 

「おいガキぃ!!」

 

突然声が聞こえると、そこには柄の悪そうなチンピラ集団がいた。

 

「やべ…」

 

 

 

 

 

 

 

「まさかりゅーくんが騙されてたなんて…」

 

現在俺たちは街中を歩いていた。

 

「竜司さん…忍が子供のスリに騙されるなんていかがなものかと…」

 

「うぅ…」

 

斑鳩先輩の言葉に俺はなにも言えなくなってしまった。

 

「とりあえず手分けして探すことにするか」

 

俺はみんなと別れるとこの前あの少年に出会った場所を探した。

 

「多分この辺にいると思うんだけど…」

 

「離せぇ!!」

 

突然声が聞こえた。

 

 

 

 

「てめえ…俺たちの縄張りで好き勝手しやがって…良い度胸してんじゃねえか」

 

光は路地裏でチンピラ達に捕まっていた。こいつらは最近街で好き勝手悪さしているチンピラ集団である。光がこの辺りでスリをしていることに因縁をふっかけてきたのだ。

 

「なんだよ!!なんでお前らの指図を受けなきゃなんないんだ!!」

 

光が抵抗するとチンピラのリーダー格は苛立つ。

 

「おい、こいつ生意気だからちょっとしばいてやろうぜ」

 

「へへっ、そうだな」

 

リーダー格の言葉に子分たちも賛同する。

 

 

「おい」

 

すると、突然声が聞こえる。

 

「あ?なんだテメェは」

 

「あ……」

 

そこには昨日自分が騙した少年がそこにいた。

 

 

 

 

 

「えっと…そいつ俺の知り合いなんだ。悪いけど離してやってくんない?」

 

俺はは男たちにそう言って光に視線を向けた。

 

「あ?何言ってんだ、痛い目に会いたくなきゃ黙って失せろよ」

 

チンピラのリーダーはナイフを俺に向けて近づく

 

「ぐへぇ!?」

 

瞬間、俺はそいつの顔面に全力の蹴りを繰り出した。

 

「んなっ!?」

 

「てめぇ…!!」

 

それに仲間たちは怒りながら武器を手にする。

 

「逃げるぞ!!来い坊主!!」

 

「え?うわぁ!?」

 

俺は光の手を引っ張り走り出す。

 

「あ、待てやコラァ!!」

 

チンピラたちは怒りながら追いかけるが忍の俺にとっちゃ撒くのはわけないことだ。

 

 

 

 

 

「よっしゃ、ここまで来れば大丈夫だろ」

 

俺は光を連れて安全な場所へと逃げ切った。

 

「だから言っただろ?ああいう目に遭うからもうスリなんてやめろって」

 

「う…お前には関係ないだろ…!」

 

光は俺の説教に不貞腐れながら目を背ける。

 

「関係あるね、お前にお金騙し取られたんだからな」

 

「う、うるせぇ!!あれだってあんたが簡単に騙されたのが悪いんだろ!!」

 

「うぐぅ…」

 

光の言葉に俺はなにも言い返せなかった。

 

「と、とにかく!危険な目に遭いたくなきゃもう二度と悪さすんな」

 

すると、光は俺の顔を見つめると

 

「…あげる」

 

そう言って俺に菓子パンを渡してきた。

 

「お、菓子パンくれんのか。気が効くじゃねえか」

 

俺はその菓子パンにかぶりつく。すると、

 

「うギャァぁぁぁぁ!!」

 

口の中にとてつもない辛さが広がった。

 

「へへっザマーミロ!!特製ワサビパンだ!!」

 

そういうと光は笑いながら走り去っていった。

 

「こ、このガキィィィィィィィィ!!に、にげんな…ぐぅぅぅ…ワサビを悪用しやがって…」

 

追いかけようとしたがワサビの辛さで思うように動けず逃げられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「竜司……お前……仮にも忍が子供に良いように遊ばれるのって……恥ずかしくないのか?」

 

「す…すみません……」

 

その日、俺は霧夜先生にみっちりお説教されたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ…あのガキ…どこ行きやがった…」

 

「俺たちの邪魔した奴も見つかりませんね」

 

夜の街を男たちが歩く。光に絡んできたチンピラたちだ。

 

「今度見つけたら二度と舐めた真似出来ないようにぶちのめしてやろうぜ」

 

「そうだな…ん?」

 

ふと前に何かがいることに気づく。そしてそれが姿を見せる。

 

「グルルルル…」

 

それはまるで全身が炎に包まれたジャガーのような姿をした怪物だった。

 

「な、なんだよこいつ…」

 

「ひ…ひぃっ!!」

 

慌てて逃げようとするチンピラたちにジャガースカルは掌を向ける

 

「え…なにを…ギャァぁぁぁぁぁ!!!」

 

「た…たすけ…うギャァぁぁぁぁぁ!!!」

 

突然放たれた炎と共にチンピラたちの断末魔が空に響いた。

 

 

 

 



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其の十八 事件と怒り!!の巻

「殺人事件!?」

 

光にワサビパンを食わされた数日後、霧夜先生に呼び出されると以前調査した街で殺人事件が起きたことを伝えられた。

 

「被害者は遺留品からなんとか分かったんだが…あの街で最近騒ぎを起こしている不良グループのメンバーだった。」

 

霧夜先生が俺たちに見せた写真に写ってたのは以前光に絡んでいたチンピラ達だった。

 

「遺体はほとんど炭化している。おそらくとてつもない火力の炎で焼かれたのだろう、つまり…」

 

「スカルの仕業…」

 

普通の任務と思ったらスカルが絡んでくるとは…

 

「こいつらの他にも同じような殺人事件があの街で起きているそうだ。神門様はこの事件をスカルによるものとみなしてお前に特別任務を任せるとのことだ」

 

特別任務…ということは

 

「竜司、再びあの街に赴きスカルの調査、そしてスカルを撃破しろ」

 

「はいっ!!」

 

   

 

 

 

 

 

「じゃあ例のスカルは貴様の部下ではないのだな?」

 

「ええ」

 

とある屋敷の一室で身体中に包帯を巻いたメドューサ、華蛇(かだ)が華やかな装飾の服に身を包んだ金髪の男、ドラゴンに街で現れたスカルについて問いかけていた。

 

「最近はリューマの成長が凄まじいので新しいスカルを生み出すのもやめてますし部下にもあまり好き勝手しないよう念押ししているので私ではありませんよ」

 

「そうか…とすれば…」

 

「ええ、『あいつ』でしょうね」

 

2人は今回の騒ぎを起こした首謀者を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

「ひっどいなこりゃ…」

 

俺はチンピラ達が殺された現場を見ていた。道路は熱で溶けており立ち入り禁止のテープが辺りに張り巡らされていた。

 

「今までのスカルも大概だったけど今回のやつはかなりやばい奴みたいだ…また次の犠牲者が出ないうちに解決しないと」

 

「ちょっと君、何してるのかな?」

 

ふと声が聞こえて振り返ると温和そうな中年の警察官が立っていた。

 

「あ…すみません、なんか事件があったって聞いたので興味が湧いて…」

 

「好奇心があるのは良いけどここは危ないから気をつけなさい。この街は今物騒なんだから」

 

「う、すみません」

 

「うん、わかればよろしい。では」

 

俺が謝ると警官はにっこりと笑って立ち去っていった。

 

「ふう、びっくりした…」

 

あんまり目立たないように調査をしなきゃいけないってのに…ん?

 

「あ…」

 

「げっ…」

 

ふと誰かの気配がしてそこを見るとボロボロの服と帽子をかぶった少年、光がこちらを見ていた。

 

「や、やっべ〜!!」

 

俺を見て慌てた光は逃げようとする。

 

「待ちなさい」  

 

俺は光の首根っこを掴む。

 

「うわぁ〜ごめんなさ〜い!!ちょっと調子に乗りすぎました〜!!」

 

「わかってるわかってる。それはあとでしっかりみっちり説教から落ち着けって」

 

「いやだ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

「美味しい〜♪」

 

「よく噛んで食べろよ」

 

現在光は俺が弁当として持ってきた太巻きにかぶりついていた。

 

「なんか悪いな兄ちゃん!!あんだけいたずらした俺にこんな美味いご馳走を食べさせてくれるなんて」

 

「弁当分けてやったんだから教えろよ?最近この辺でおかしなことがあったとか、何か変わったことが起きたとかさ」

 

俺も光に聞き込みをしてみた。地元に詳しそうなこいつなら何か詳しい情報とか持ってそうだ。

 

「んー知らない!!」

 

「おい」

 

「本当に知らないんだって…あいつらだって前から色々騒いでたし…ただ、殺人事件が起きたって聞いたけどそれだって最近になって突然起きたわけだし…」

 

「そっか…」

 

当てが外れた俺はため息を吐きながら太巻きを食べようとする

 

「ん?俺の太巻きは?」

 

あれだけあった太巻きが一本もない。ふと見ると光が最後の一本の太巻きを頬張っている。

 

「お前全部食ったの?」

 

「え?あれ全部俺にくれたんじゃないの?」 

 

「違えよ!!あれは俺の今日のお昼なんだよ!!全部食うやつがあるかぁ!!」

 

今回の太巻きは良い出来だったから楽しみにしてたのにぃ!!

 

「悪い悪いほら、この菓子パンあげるからさ」

 

「いるかぁ!!どうせまたワサビが入ってんだろ!?」

 

「ちっ…バレたか…」

 

「まったく…」

 

俺はため息を吐きながらペットボトルのお茶を一気に飲む

 

「ギャァぁぁぁぁぁ!!!!」

 

突然口の中に激しい辛みが走る。

 

「へっへっへ〜ま〜た騙された〜タバスコ入り茶すり替え成功〜♪」

 

「クソガキごらぁ!!」

 

光は笑いながら走り去っていく。どうやらペットボトルをすり替えやがったようだ。

 

「くそっ…あのガキ…これ以上舐められたら今度こそ霧夜先生の雷が落ちる…今度ばかりは懲らしめてやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

   

薄暗い路地を光はご機嫌な様子で歩いている。

 

「へへっ、あの兄ちゃん本当に面白いくらい騙されてくれるよな〜」

 

久しぶりにいい遊び相手が出来た。ちょっと悪戯をすると驚くくらい簡単に引っかかるし面白いくらい挑発に乗っかってくる。

 

最初にあったときはその日のお金をちょっとスろうくらいの気持ちだった。しかし、こっちがちょっと泣き真似をしただけで簡単に騙されて、悪戯をすれば簡単に引っかかる。

 

「楽しいな…こんな気持ち久しぶりだ…」

 

光の両親は実家の反対を押し切って半ば駆け落ち同然で結婚した。2人は本当に仲良しで自分にも愛情をたっぷり注いでくれていた。

 

しかし、ある日両親は交通事故で他界。実家の親戚が自分を引き取ったが厄介者扱いで家にも学校にも居場所がなくとうとう家を飛び出した。その後、たまたま知り合ったスリから技を教わりそこからは街でスリをすることでなんとか生活をしてきた。

 

そんな生活の中、あいつに出会った。あいつは何度も自分の悪戯に引っかかる。それでも懲りずに何度も自分に関わろうとする。

 

今度はどんな悪戯をしようかな。いい加減激辛料理は引っかからないだろうから今度は上からペンキでもかけてやろうか、それとも転ばしてやろうかな。

 

ワクワクしてきた。もうしばらくは遊んでもらいたい。その為には――。

 

「痛っ…」

 

突然誰かにぶつかった。

 

「痛いなぁ…一体誰…げっ」

 

顔を上げるとそこにいたのはこの街で何度も見かける中年の警官である。

光は慌てて笑ってやり過ごそうとする。

 

「あ…あはは…すいません…よそ見してたので…」

 

「うんうん、謝らなくていいよ」

 

警官はニコニコと笑っている。しかし、光はスリとして生きてるうちに身に付いた危機察知能力で気づいた。警官が放っている敵意、殺意を…

 

「謝ってもどのみち殺すもん。お前らみたいなゴミ屑」

 

『ジャガー!!』

 

警官は笑いながら懐から赤いスカルキーを取り出すと起動する。そして首筋に現れた鍵穴にジャガーキーを挿し込んで回すと黒い泥が鍵穴から吹き出し全身を包み込み、全身が炎に包まれたようなジャガーのようなスカル、ジャガースカルへと変わった。

 

「お前だろ?最近好き勝手スリやってるクソガキってのは?」

 

「あ…あぁ」

 

光はジャガースカルに怯えてしまい体が震えて動けなくなってしまう。

 

「俺たち警察が寝る間を惜しんで世のため人のため働いてるのにてめえら社会のゴミはいつになってもいなくならない…」

 

そんな光を見ながらジャガースカルは喋り始める。

 

「そんな時、ある人からこの鍵を貰って…「好きに使ってくれ」って言われた時、気づいたんだ。この力を使えば俺は正義を遂行できる…お前ら社会のゴミを根絶やしにして…正義を遂行できるってなぁ!!」

 

ジャガースカルは掌を光に向けてかざす…

 

「おりゃぁ!!」

 

瞬間、竜司が飛び出してジャガースカルを蹴り飛ばした。

 

 

 

 

「危なかったなお前」

 

「あ…に、兄ちゃん!?」

 

光を追いかけてたら何か嫌な気配を感じて来てみれば光がスカルに襲われかけていた。外傷も特に無いようだし無事でよかった。

 

「立てるか?」

 

「ご、ごめん…腰が抜けて…」

 

どうやら光だけ逃すのは難しそうだ。光がいる前で変身するわけにもいかないし…となれば…

 

「逃げるぞ!!」

 

「え?うわぁ!!」

 

俺は光を抱き抱えるとそのまま走り出した。

 

 

「さっき会った時、どうりで気に入らない面だと思った…あのガキィ…俺の正義の邪魔しやがって…まぁいい、正義の邪魔するなら奴も一緒に殺してやる。」

 

ジャガースカルは走り去っていく恨めしそうに竜司達を睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…ひとまずここまでくれば…」

 

なんとか撒いた俺は光をたまたま見つけた空き家の一室へと入れた。

 

「お前はここに隠れてろ。俺は奴を引きつける。」

 

「えっ!?」

 

「いいか?じっとしてるんだぞ」

 

俺はそういうと扉を閉めようとする。

 

「ま…まてよ!!」

 

「ん?どうした?」

 

突然光が俺を呼び止める

 

「なんで…なんで俺を助けるんだよ!?あんなに酷いこといっぱいした俺を…」

 

光は体を震わせながら聞いてくる。そんな光に俺は優しく頭を撫でてやった。

 

「え?」

 

「困ってる奴を助けるのに理由がいるか?」

 

あんなのはたかが子供の悪戯だ。それで酷い目に遭わされたからって殺されそうになったこの子を見殺しにするような真似は死んでもするもんか

 

「いいか、じっとしてろよな」

 

俺はそういうと扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

「どこだぁ!!出てこぉい!!」

 

薄暗い路地をジャガースカルは竜司達を探しながら叫んでいた。

 

「ここだよ」

 

ふと声が聞こえ振り向くとそこにはカグラドライバーを手にした竜司が立っていた。

 

「あのガキはどこだ?」

 

「教えると思う?てかあんな子供くらい見逃してやれよ」

 

「ふざけるな」

 

するとジャガースカルは俺の言葉を怒りの形相で拒んだ。

 

「あのガキはこの世界の秩序を狂わせるゴミ共だ。だからこそこの俺様が正義の炎で焼却してやる」

 

「正義ねぇ…お前の言う正義って無抵抗の相手を一方的に痛めつけて焼き殺すようなことを言うんだな」

 

まだ更生できたかもしれない相手を自分の采配で焼き殺すようなものが正義であって良いはずがない。

 

「決めた…お前は許さない…ここで倒す!!」

 

俺はカグラドライバーを腰に装着した。

 

『ティラノ!!』

 

そしてティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「面白え…手前にも正義を執行してやるぜ!!」

 

ジャガースカルは手から火の玉を生み出しこちらへと放ってきた。

 

「はっ!!」

 

俺はファングクナイを使って火の玉を斬り裂きそのままジャガースカルへと斬撃を繰り出した。

 

「ちっ!!舐めるなぁ!!」

 

すると、ジャガースカルは手からって鋭い鉤爪を出してガードしもう片方の鉤爪で斬りつけようとした。

 

「ふっ!!」

 

しかし、俺も鉤爪を躱して今度は蹴りをジャガースカルのボディへと繰り出した。

 

「ぐっ…この!!」

 

ジャガースカルも負けじと口から火球を出して応戦するが俺は火球を見切りジャガースカルへと拳の連打を繰り出した。

 

「おのれぇ…ならばぁ!!」

 

すると、ジャガースカルは周囲のビルの壁を足場にしてあちこちを走り回り俺を取り囲んだ。

 

「ぐっ…」

 

四方八方からの攻撃に俺も身動きが取れずにダメージを負ってしまう。

 

「どうだ!!ここは俺のフィールド、てめえに勝ち目なんて最初からなかったんだよ!!」

 

攻撃を当てられたことに喜びながらジャガーはなおも鉤爪で攻撃を繰り出してくる。

 

「あのガキもクズだがてめえも頭の足りねえカスだ!!俺は死んで当然の連中に裁きを下してやった正義だってんのに悪者を見るような目で俺を見やがってよぉ!!」

 

「………。」

 

「あいつらは根っこから腐った生ゴミなんだよ!!ゴミはしっかり焼却しないと臭いがキツくてたまんないだろうがぁ!!」

 

 

 

 

 

 

「うるさい」

 

ジャガーの言葉に俺は激しい憤りを感じた。

 

「俺から言わせれば…小さい子供を…悪さをしたってだけで焼き殺そうとするお前が…人を生ゴミなんて言えるような奴の方が…よっぽど性根の腐って見えるよ」

 

殺された連中だって…悪さをしていたとしても…焼き殺されるなんて無惨な死に方をしなくても良かったはずだ。仮に裁きを受けるとしても…きちんと法の裁きを受けてれば…彼らだってやり直すことは出来たはずだ。その機会を…こいつは奪ったんだ。

 

「お前は正義でもなんでもない、ただの殺人鬼だ」

 

「……てめぇ……この俺を殺人鬼だと……ふざけんじゃねえぞ!!」

 

俺の言葉にジャガースカルは激しく憤り巨大な火球を俺へと放った。

 

「俺は正義だ!!悪を裁く正義なんだよぉ!!殺す!!お前は俺の正義の炎で焼き殺してやるぅ!!」

 

「上等だ、てめぇはここで絶対に倒してやる!!はぁぁぁ!!」

 

俺は負けじと全身からエネルギーを放出し仮面ライダーリューマ・命駆モードへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ・命駆モード…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

俺はファングクナイで火球を斬り裂くと一瞬でジャガースカルへと詰め寄りファングクナイで斬り裂く

 

「ぐわぁぁぁぁ!?い、いつの間に…」

 

「まだまだぁ!!」

 

俺は高速で移動しながらジャガースカルを連続で斬り続ける。ジャガースカルは俺のスピードに対処しきれずなすすべなくやられていく。

 

「くそぉ…ありえない…正義は必ず勝つんだよぉ!!」

 

ジャガースカルはやけくそになりながら全身を炎で包み込み俺へと突進を繰り出す。対する俺もファングクナイの鍵穴にティラノキーを挿して回す。

 

『必殺の術!!』

 

すると、命駆モードの影響により通常よりも巨大な刃へと変わったファングクナイを逆手に持ちジャガースカルを迎え撃つ。

 

「必殺忍法!!激竜命駆スラッシュ!!」

 

俺が放った斬撃は巨大な火球へと変わったジャガースカルを斬り裂く。

 

「そんな…俺が…正義がぁぁぁ!!」

 

ジャガースカルは断末魔とともに爆発し、煙が晴れるとボロボロになって倒れた警官と砕けたスカルキーが見えた。

 

「お前を裁くのは俺じゃない、法だ。お前は正義でもなんでもないただの殺人鬼として法の裁きを受けろ。」

 

俺は神門様に連絡をしてこいつを引き渡すために縛ろうとした。

その時、

 

「なっ!?」

 

突然銃声とともにジャガースカルだった警官の頭から鮮血が吹き出した。警官も何が起こったかわからないような顔でそのまま息を引き取った。

 

「くそっ!!一体誰が…っ!!」

 

狙撃手を探すために周囲を見渡すが誰もいない…

 

「くそっ…」

 

俺はただ悔しさのあまりにつぶやくことしかできなかった。

 

   

 

 

 

「口封じかんりょーっと♪」

 

竜司から遠く離れたビルの屋上で緑色の羽毛で覆われ、腰にはスカルドライバーを巻いたグリフォンのようなスカル、グリフォンスカルが手に握っていた銃をしまった。

 

「やはり貴様の生み出したスカルだったか」

 

グリフォンスカルが声のした方へと振り向くとそこにはメドューサスカルへと変身した華蛇が立っていた。

 

「よっ、久しぶり♪聞いたよ、リューマに負けたんだって?」

 

「死ね」

 

グリフォンスカルの嫌味にメドューサスカルは殺意を込めた目で睨み付ける。

 

「ははっ、そう怒んなって冗談だよ冗談」

 

「なぜジャガーを殺した?」

 

ヘラヘラと笑うグリフォンスカルにメドューサスカルは問い詰める。

 

「あーあいつにはちょっと改造したスカルキーを渡したんだけどな…毒素が強すぎたみたいでほとんど暴走状態だっしさ。スカルキーも壊されちゃったしあいつもどのみちもう少ししたら毒素で死んでたから口封じって事でメンゴ♪」

 

「ふん、まぁいい…どのみち貴様の話ではあれはロードスカルにはなりそうもないし今回は不問としよう。来い、陛下のもとへ向かうぞ」

 

「はいはいかりこまりー」

 

そして、メドューサスカルが黒い穴を生み出すと2人はその中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜司兄ちゃん、助けてくれてありがとう」

 

ジャガースカルを倒した俺は光の元へと戻ると安全な場所に辿り着いた。現場に今いる警官も忍の世界に精通しているもの達なので信用できる人たちだ。ちなみに光にはあの怪物はなんとか上手く撒いたら諦めてどっかに行ったと上手く誤魔化しておいた。

 

「もうわかったろ?これに懲りたらもうスリなんてやめろ。事情があんなら信用できるところに依頼してやるから」

 

「うん、わかった。」

 

「…なんか、さっきと違って随分素直になったな…」

 

さっきはすぐ俺に色々とワサビだタバスコだと悪戯してきたのに…

 

「俺…嬉しかったんだ。あの時、俺のことを庇ってくれたのが…こんな悪さばかりしてくる俺を見捨てないでくれたのが…」

 

その目は真っ直ぐと俺を見つめており嘘偽りがないことはすぐわかった。

 

「ねぇ竜司兄ちゃん、ちょっとしゃがんでくれる?」

 

「ん?こうか?」

 

俺はなにかと思いながらも言われた通りにしゃがんでみる。

 

すると、光は俺に向かってジャンプし、

 

 

「ありがとう兄ちゃん♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャンプの弾みで帽子が外れて長い髪があらわになると少女は俺の口へとキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…?光…お前…女の子…ってか…え?」

 

俺はあまりの衝撃に訳が分からなくなってしまった。

 

「俺、これからは真っ当に生きて立派な人間になる!!だからさ、おっきくなったら竜司兄ちゃんのお嫁さんにしてくれよな!!」

 

そのまま光は頬を赤く染めたまま警官に連れて行かれた。

 

「えっと…つまり…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜司さん………」

 

突然背後に殺気を感じて振り向くとそこには凄まじい負のオーラを纏った斑鳩先輩がいた。

 

「い、斑鳩先輩…なんでここに……?」

 

「霧夜先生から連絡を受けて応援に駆けつけました……他の皆さんも来ていますよ」

 

「あ……そうなんだ……」

 

よう見ると飛鳥たちもこちらへと向かってきているようだ

 

「それで竜司さん、いま…女の子にキスされてませんでした?」

 

「あ…その……」

 

「されたんですね?」

 

「え、えと……」

 

「答えてください」

 

「あ、はい…されたっぽいのですがっぽい…」

 

ダメだ…上手く言葉が出ない…てかなんで斑鳩先輩こんなに怒ってんの!?斑鳩先輩が怒る要素どこにあんの!?

 

「ふ……ふふ………ふふふふふ」

 

え…斑鳩先輩、笑って……

 

「竜司さんのバカァぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「なんでぇぇぇぇぇぇ!?」

 

瞬間、斑鳩先輩渾身のビンタが炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜司兄ちゃん…」

 

パトカーの中で光はつぶやく

 

「本気だからね…」

 

少女が胸に抱いた想いを

 




更新しました。

設定まとめも更新しますので良ければどうぞ


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其の十九 計画と記念パーティー!!の巻

久しぶりに彼女のターンです
おかしいな、なんか最近彼女を贔屓してしまってる気が……


「ぎぁぁぁぁ!!」

 

とある建物で悲鳴が響く、周りには複数の人間が倒れており気を失っている。

 

「く、くそ…来るな化け物…ぐわぁ!!」

 

唯一意識のある男は抵抗するが黒い影が男を殴り飛ばし男は意識を失う。そして、黒い影は金庫からありったけの金を取り出して闇夜に消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

深夜、自身の部屋で斑鳩はため息をついていた。

 

「このままではダメです…」

 

彼女が悩んでいるのは自身の想い人である竜司のことである。今まででさえも彼の幼馴染みの飛鳥、自身の同期である葛城、後輩の柳生と雲雀とも距離が近くなり危機感を覚えていたのに挙句他にも彼に想いを寄せる人(幼女)があらわれたのだ。

 

「受け身のままではダメです…わたくしの方から攻めなくては…」

 

斑鳩は決意を固めると行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「むむむ…また出たのか…」

 

授業の終わった教室で俺は新聞をじっくりと見ていた。そんな俺を見て飛鳥が近づく。

 

「りゅーくんどうしたの?」

 

「ん?あぁまた『現代の鼠小僧』が出たって話」

 

『現代の鼠小僧』…最近巷を騒がせる泥棒だ。なんでも富裕層や悪どいことをしている連中から金品を盗んで貧しい人々や児童養護施設にばらまいてるらしい

 

「警察の追っ手を軽々と撒いてるそうだしどんなやつだろうなって思ってさ…」

 

「私たちも忍として捕縛任務が来るかもしれないね」

 

「はは、そうだな」

 

「竜司さん、少し良いですか?」

 

すると突然、斑鳩先輩が俺に話しかけてきた。

 

「斑鳩先輩、どうしました?」

 

「あの…実は竜司さんにお願いがございまして…」

 

斑鳩先輩は頬を紅潮させると、言葉を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜司さん、わたくしの家に来てくださいませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだねグリフォン」

 

とある場所の大広間、その玉座に座るヴァンパイアスカルが目の前にいるグリフォンスカルへと話しかけた。

 

「ここに来たってことは君が前から言ってた研究がうまく言ったってことかな?」

 

「いや、そっちは慎重に時間をかけてやるつもりなのでまだですね。なんかこっちで楽しそうなことやってたんでちょっと顔出してみたんすよ」

 

ヴァンパイアスカルの言葉にグリフォンスカルはヘラヘラと笑って返答する。

 

「ジャガーのやつは失敗でしたけど…他にもロードスカル候補はいますし、最近その候補の1人が結構面白い成長してるんですよね」

 

「…そうか、君が作るスカルはどれも強力なものばかりだからね、成果を楽しみにしているよ」

 

「ふふ…どうぞ期待していてくださいな」

 

ヴァンパイアの言葉にグリフォンは笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜司様、もうすぐでたどり着きます」

 

「あ、その…どうも…」

 

俺は大きなリムジンを運転する執事のお爺さんにお礼を言った。

 

「うわぁ…でかいお屋敷だなぁ…」

 

窓から見えるお屋敷は凄まじい大きさの建物が見えた。

車から降りると俺はお爺さんの案内の元建物の中へと入っていった。

 

「…なんか緊張してきた」

 

 

 

 

「鳳凰財閥の設立記念パーティー?」

 

「はい、今度の土曜日に開かれまして…それで是非竜司さんに来ていただきたくて…お父様も竜司さんに是非会いたいとおっしゃっておりますし」

 

いきなり家に来て欲しいと言われた時はびっくりしたがどうやら以前のマンティススカルの時のお礼がしたいそうだ。

 

「わかりました、せっかくなのでご招待にあずかります。」

 

「は、はい!!ではお父様にも伝えておきます!!」

 

せっかくの先輩の招待だ。そう思って承諾すると斑鳩先輩は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

「竜司さん、よくいらしてくださいました」

 

すると、私服姿の斑鳩先輩がこちらへと駆け寄ってきた。

 

「斑鳩先輩、今日はありがとうございます」

 

「いえ、竜司さんこそ急な招待なのに来てくださりありがとうございます。」

 

俺がお礼をすると斑鳩先輩は丁寧に頭を下げてお礼を返した。

 

「そういえば…こういうパーティーってドレスコードとかあるって聞いたけど…本当に何も用意しなくてよかったんですか?」

 

「大丈夫ですよ。竜司さんの服はすでにこちらで用意してあります。」

 

「え?でもサイズとかは…」

 

「竜司さんにぴったりのものを用意してありますよ」

 

「あ、そうなんだ。それならよかった」

 

さすが斑鳩先輩、抜かりないな

 

「竜司様、さっそくですが着替えの準備を…」

 

「あ、わかりました。では斑鳩先輩、また後で」

 

「はい、わたくしも着替えが済んだらすぐ向かいます。」

 

こうして俺は使用人のお爺さんに連れられて着替えに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「おお、すごいな…サイズもピッタリだ…」

 

良い素材を使ってるんだろう通気性も良いし動きやすい。

 

「この日のためにオーダーメイドで用意させてもらいました。気に入っていただけたなら幸いです」

 

使用人のお爺さんはニッコリと笑いながら答えた。

 

「…竜司様、これからもお嬢様のことをよろしくお願いしますね」

 

「え?」

 

突然お爺さんは優しい声で話しかけてきた。

 

「最近のお嬢様は以前よりも笑うようになりました。何より、以前はなにかとご自身の力でなんとかしようとしていたのが我々の力を頼ってくださるようになったのです」

 

「…そうですか」

 

「すべては竜司様のおかげです。本当にありがとうございます」

 

「はは…なんか照れますね…」

 

お爺さんの言葉に俺は少し恥ずかしくなってしまった。

 

「おっとそろそろ時間ですね、では参りましょう」

 

俺はお爺さんの案内の元パーティー会場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ…すごい」

 

美しいシャンデリア、高価な衣服を纏った紳士淑女、美しい音色の音楽、まるで別世界のようであった。

 

「竜司さん、お待たせいたしました」

 

ふと、斑鳩先輩の声が聞こえた。どうやら先輩も準備ができたようだ。

 

「斑鳩せんぱ…っ!!」

 

その姿に俺は息を呑んだ。

美しいドレスを身に纏い優雅な足運びでこちらへと近づくその美しさはなんとも言えないほどであったからだ。

 

「えと…どうでしょうか…似合っていますか?」

 

斑鳩先輩は俺にそう尋ねてくる。

 

「あ…その…すごく似合ってます…あんまり美しいもんだから…思わず見惚れちゃいました…」

 

「え…………」

 

俺の言葉に斑鳩先輩は顔を真っ赤に染めた。

 

「そ…そうですか…ふふふ…美しいですか…ふふふふふ…」

 

どうやら俺の言葉が嬉しかったようだ。

 

「それじゃあ先輩、参りましょうか」

 

そう言って斑鳩先輩へと手を伸ばす。こういうのは男子がエスコートするもんだからな

 

「あ…はい、お願いします竜司さん」

 

斑鳩は嬉しそうに俺の手をとり一緒に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「おお、斑鳩様だ」

 

「やはりお美しい…」

 

会場の人々が皆斑鳩先輩に目を奪われる。美しいドレスに綺麗な装飾品を身につけて優雅に歩くその姿は本当に美しい。

 

「なんか俺なんかがエスコートすると悪い気がするな…」

 

俺なんかじゃ斑鳩先輩に釣り合う気がしない。

 

「そんなことはありません、竜司さんはとても素晴らしい方ですよ」

 

「あはは…なんか照れるな…」

 

俺の腕を取る斑鳩先輩の褒め言葉に俺は少し恥ずかしくなった。

 

『皆さん、この度は我が鳳凰財閥設立記念パーティーに来ていただき誠にありがとうございます』

 

突然ステージから声が聞こえるとそこにはは凛とした顔の男性が挨拶をしていた。

 

「先輩、あの人って…」

 

「はい、わたくしのお父様です」

 

斑鳩先輩のお父さんは凄まじいオーラを放っており只者ではないのが目で分かるほどであった。

 

『本日は大いに楽しんでください』

 

斑鳩先輩のお父さんの挨拶を終わるとパーティーが開催された。

 

 

 

 

「ほんと…すごい世界だな…」

 

目に映る全てが美しく思わず萎縮してしまう。

とりあえず出されている料理を食べていると

 

「君が竜司くんかね」

 

突然声が聞こえて振り返るとそこには先ほどみんなに挨拶をしていた斑鳩先輩のお父さんが立っておりその隣に斑鳩先輩がいた。

 

「すみません竜司さん、お父様が是非竜司さんに挨拶したいとおっしゃって…」

 

「あ、いえ!お気になさらず…お、俺は竜司と言います!!いつも先輩には大変お世話になっていて…」

 

「あぁいや、そう固くならなくて構わんよ。あくまで斑鳩の父親として君にお礼をしたいだけだからね」

 

慌てる俺に斑鳩先輩のお父さんは優しく笑みを浮かべながらそう答えた。

 

「…村雨の時は君たちを危険な目に遭わしてしまってすまなかった。すべてはあいつとしっかりと向き合わなかった私が招いたことだ。」

 

斑鳩先輩のお父さんは俺に頭を下げて謝ってきた。

 

「頭を上げてください、もう済んだことですし…」

 

俺は慌てて斑鳩先輩のお父さんを止めようとした。

 

「そうか…ありがとう。君の様な人間が娘の友人になってくれて本当に嬉しいよ。これからも娘と仲良くしてくれ」

 

そう言って斑鳩先輩のお父さんはそう言ってその場を離れていった。

 

「優しいお父さんですね」

 

「はい、だからこそわたくしもお父様のために立派な忍になれる様に努力していこうと思います」

 

斑鳩先輩は他の人たちと話をする父親に尊敬の眼差しを向けながらそう答えた。

 

「…自分の目標のために頑張らないとな」

 

自分の目指す『世界一カッコイイ忍者』になれるように

 

「これはこれは斑鳩様、お久しぶりにございます」

 

すると、突然声が聞こえて振り向くと派手なスーツに身を包んだ二枚目な男がボディーガードを連れてこちらに近づいてきた。

 

「おいあれ…」

 

「浦賀(うらが)グループの御曹司じゃないか…」

 

周りの人たちはその男を避けるように離れる。どうやら有名人のようだ。

 

「兼光(かねみつ)さん…」

 

「相変わらず美しい方だ…まるで女神が舞い降りたような可憐さですな。貴女に比べればどんな女性も見劣りしてしまう」

 

「あ…あの、その…」

 

兼光と言われた男は斑鳩先輩の前に来るとペラペラと口説き文句を言いながら彼女の手を取る。そんな彼に斑鳩先輩も困ってしまっている。

 

「ところで…この間持ちかけた交際の話、考えていただけましたか?」

 

「ええと…だからそれは…」

 

「我が浦賀グループと鳳凰財閥の力があればこの国はさらなる発展を遂げるでしょう」

 

…流石にこれ以上は見過ごせないな

 

「すみません、先輩が困ってるのでその辺にしてもらえませんかね?」

 

俺は兼光の手を引っ張って斑鳩先輩から引き離した。

 

「竜司さん…」

 

「な、なんだ貴様は!!僕を誰だと思って…」

 

「あんたが誰かとかはよくわかんねえけど…この人は俺の大切な人(クラスメイト)だ。この人を困らせるなら俺が黙っちゃねえぞ」

 

「りゅ…竜司さん…大切な人(恋人)って…」

 

俺の言葉に斑鳩先輩は顔を赤く染めた。うん、先輩はやっぱ笑顔でなくちゃ

 

「き、貴様ぁ…僕の前で未来の妻を口説くなんて…」

 

「はっきり言わせてもらう…お前みたいなやつに先輩はやらん」

 

さっきから見てたが嫌がる先輩の手を引くやつに先輩は渡さない。大体先輩はこいつの妻じゃないだろ

 

「おいお前!!このクソガキをさっさとぶちのめせ!!」

 

「は、はい!!」

 

兼光の言葉にボディーガードは少し躊躇ったが命令に従い俺へと殴りかかった。  

 

「はぁっ!!」

 

俺はそのパンチを躱して足払いしながら腕を掴み一本背負いをするとボディーガードはそのまま気を失った。

 

「な!?こ、このぉ!!」

 

ボディーガードを倒された兼光は大ぶりなパンチをしてくるが俺はその腕を押さえて関節を決めた。

 

「いでででで!!は、はなせこのぉ!!」

 

「これに懲りたらもう先輩に絡んでくんじゃねえよ。わかったか七光ヤロー」

 

「ひぃっ!!」

 

俺の威圧にビビったのか兼光はそのまま尻尾を巻いて逃げてった。

 

『おお〜』

 

すると、周りにいた人たちが俺へと拍手をしてきた。

 

「大丈夫先輩?」

 

「は、はい!!大丈夫です…」

 

なぜか先輩は声が裏返って顔も真っ赤になっていた。

 

「なんか騒がしくなっちゃったし一旦この場を離れますか」

 

「わ、わかりました…」

 

先輩は真っ赤な顔のまま頷くと俺と一緒に歩き出した。

 

 

 

 

 

「あの少年……」

 

会場を出ようとする竜司と斑鳩を見ながら斑鳩の父親は関心していた。色々と悪い噂が絶えない浦賀グループの御曹司が娘に絡んでいたのを竜司が止めたのを見て様子を伺っていたが屈強なボディーガードを制圧する実力、忍の最高幹部である神門様からも信頼されておりその証として『リューマの鎧』を与えられている。そして何より理不尽を許さず困っている人を救う勇敢さと優しさ、どれをとっても文句ない

 

「彼なら娘を任せられそうだな」

 

竜司の知らないところで計画が推し進められていた。

 

 

 

 

 

 

「すいません…なんか大変なことになっちゃって…」

 

俺は会場外のバルコニーで斑鳩先輩と休んでいた。

 

「いえ…竜司さんこそ助けていただきありがとうございました」

 

謝る俺に先輩は嬉しそうに微笑みながら答えた。

 

「それに…嬉しかったです…守ってくださったこと…」

 

「先輩…」

 

その言葉に俺は少し嬉しくなってしまった。

 

「の…飲み物とってきますね」

 

「あ…それならわたくしも…」

 

照れ隠しをしながらジュースでも取りに行こうとする俺に斑鳩先輩は慌てて近づく

 

「きゃ!?」

 

「あぶなっ!!」

 

しかし、斑鳩先輩はバランスを崩し倒れそうになる。俺は慌てて先輩を受け止める。すると、抱きしめるような形となってしまい1センチも満たない距離に先輩の顔があった。

 

「あっ…」

 

「す、すいません!!すぐ離すので…」

 

慌てて俺が離れようとすると先輩は俺の背中に手を回す。

 

「せ、先輩?」

 

「すこし…このままでいさせてください」

 

「え?」

 

心臓の音がはっきりと聞こえてくる。それが自分の心音なのか先輩の心音なのかわからない。

 

「竜司さん…貴女のおかげで…わたくしは変われた気がします…家の使用人とも…家族とも…向き合えるようになれました…」

 

「先輩…?」

 

「あの…その…わ、わたくし…竜司さんのことが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

『きゃぁぁぁぁぁ!!』

 

突然何かが割れる音とともに悲鳴が聞こえる。

 

「な…!?先輩!!」

 

「あ…はい!!」

 

俺はすぐに切り替えて悲鳴が聞こえた方へと走り出した。

 

 

 

 

 

「な!?あれは…」

 

そこには割れたシャンデリア、散らばるグラスや料理、そしてネズミのようなスカル、ラットスカルが暴れていた。

 

「ひっひぃ!!なんだよこいつはぁぁ!?」

 

ラットスカルの近くには腰を抜かした兼光がべそをかいていた。

 

「富持つものに…制裁を!!」

 

ラットスカルは鋭い爪を光らせて兼光に斬りかかる。

 

「させるかぁ!!」

 

俺はラットスカルへ飛び蹴りをしてそれを阻止する。ラットスカルは俺をひと睨みするとガラスを破って外へと逃げた。

 

「先輩は会場のみんなの避難を!!俺はあのスカルを追う!!」

 

「は、はい!!」

 

俺は破れたガラスからラットスカルを追いかけた。

 

 

 

 

 

「追いついたぞこの野郎!!」

 

俺はなんとかラットスカルに追いつくと奴は鋭い目つきでこちらをにらみつけた。

 

「貴様も富持つものに肩入れするのか…ならば同罪だ!!」

 

「ってことは…お前が最近騒ぎになってる『現代の鼠小僧』か…まさかスカルだったとはな…」

 

俺はカグラドライバーを腰にはめてティラノキーを回す。

 

「変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ティラノサウルスのオーラを纏い俺は仮面ライダーリューマへと変身する。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

俺はラットスカルへと接近してパンチを繰り出す。すると、ラットスカルは俺のパンチをガードし鋭い爪と徒手格闘で反撃する。

 

「ふっ!!はぁ!!」

 

俺もラットスカルの攻撃を躱しながらファングクナイを生み出してラットスカルへと斬りつける。

 

「ぐっ…このぉ…」

 

ファングクナイの斬撃にダメージを負いラットスカルはふらつく

 

「どんどんいくぜ!!」

 

俺はファングクナイで再び斬撃を繰り出した。

 

「このぉ…舐めるなぁ!!」

 

すると、ラットスカルの手に鋭い歯の生えた口が現れファングクナイに噛み付き、そのまま刃を噛み砕いた。

 

「は?えぇ!?」

 

ファングクナイを噛み砕くという離れ技に俺は驚きを隠せずにいると

 

「はぁぁぁ…」

 

ラットスカルの口からどす黒い色のファングクナイが現れラットスカルはそれを手に俺へと斬りつけてきた。

 

「俺のファングクナイ…まさかこいつ、食らった武器の自分の武器として使えるのか!?」

 

俺はラットスカルの想定外の能力に驚きを隠せずにいた。

 

「なるほど…これがリューマとやらの力か、確かに今まで食らったどの武器よりも強力だ…この力なら!!」

 

ラットスカルは黒いファングクナイで俺へと斬りかかり、俺も迎え撃つが武器を奪われた状況では防戦一方になってしまっていた。かと言って他の武装にしても武器を食われてさらにパワーアップしてしまう。

 

「それなら…はぁぁぁ!!」

 

俺は全身からエネルギーを放出し仮面ライダーリューマ・命駆モードへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ・命駆モード…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

命駆モードは余計な武装や防御を捨てた攻撃特化の能力、これなら奴に力を奪われる心配は無い。

 

「ぐっ…きさまぁ!!」

 

ラットスカルは負けじと応戦するが命駆モードのスピードについていけず追い詰められていく。

 

「トドメだ!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺はカグラドライバーを叩くと音声と共に足にエネルギーが込められていく。俺は飛び上がるとティラノサウルスのオーラを全身に纏い渾身のキックが繰り出された。

 

「必殺忍法!!激竜命駆キック!!」

 

俺の必殺忍法がラットスカルへと向かっていく。しかし、突然風が吹きラットスカルを覆いバリアになると俺は思わず吹き飛んでしまう。

 

「く、くそ…一体何が…」

 

「悪いねぇ…こいつはまだ成長途中なんでね。まだ倒されるわけにはいかないんだよ」

 

突然声が聞こえるとラットスカルの前に緑色の羽毛を纏い腰にスカルドライバーをはめたグリフォンスカルが姿を現した。

 

「ま、マスターグリフォン!!すみません!!貴方様のお手を煩わせてしまい…」

 

「あーいいからいいから、今日は一旦引きな」

 

グリフォンの言葉にラットスカルは頭を下げると立ち去ろうとする。

 

「竜司さん!!」

 

すると、そこへ斑鳩先輩も駆けつけてきた。来賓の避難を終えたようだ。

 

「貴様、鳳凰財閥の令嬢か…」

 

「え?」

 

するとラットスカルが斑鳩先輩へ目を向ける。

 

「飢えに苦しむものがいる中食べる料理は美味いか?」

 

「っ!!」

 

『お父様やお母様の愛情を、いっぱいいただいて育ったんでしょうね?ぬくぬくとぬくぬくと、何不自由無く暖かく』

 

ラットスカルの言葉を聞いて、斑鳩先輩は以前悪忍に言われた言葉を思い出し固まってしまった。

 

「そんじゃまったね〜」

 

「あ、まて!!」

 

そうこうしてる間にグリフォンスカルは黒い穴を生み出してラットスカルと共に消え去ってしまった。

 

「くそっ!!」

 

俺は変身を解除して悔し紛れに近くの瓦礫を蹴りつける。

 

「そんな……わたくしは……」

 

そんな中、斑鳩先輩は暗い表情で呟いた

 



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其の二十 飢えと戦う理由!!の巻

お待たせしました!!更新です!!


「うーん…手がかり無しか…」

 

ラットスカルの襲撃後、俺と斑鳩先輩は事の顛末を霧夜先生に報告した。

その後、神門様の命によりスカルの討伐が俺と斑鳩先輩に命じられた。

 

「とりあえず『現代の鼠小僧』がスカルだってのは間違いなさそうだな…」

 

調べてみると『現代の鼠小僧』は義賊と言えば聞こえは良いが実際には富裕層の人間を襲っては金を奪うだけではなく一方的にリンチをしているらしい。これまでも何人も病院送りになっているらしい。

 

「これ以上被害が出ないようにするためにも俺たちがなんとかしないと…ね、斑鳩先輩」

 

「……………。」

 

しかし、斑鳩先輩は俺の問いかけに答えずだんまりとしていた。

 

「……先輩?」

 

「え?あ、はい、すみません!!ぼーっとしてました…」

 

「大丈夫ですか?少し休んだほうが…」

 

「い、いえ!!心配いりませんよ!!」

 

あれから斑鳩先輩は何かぼーっとしている。ラットスカルが立ち去る直前に斑鳩先輩になにか言ってたけど…

 

「じゃ…じゃあ今から『現代の鼠小僧』が出たっていう事件現場に行ってみますか」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

「ギ……ギギィ……」

 

とある屋敷の薄暗い一室、そこの中央でラットスカルがいた。その周りに銃火器や剣、さらにはアントスカルの残骸までもが転がっていた。ラットスカルはそれらを手当たり次第に掴み身体中に現れた口に放り込んだ。

 

「おぉ〜食ってるねぇ〜いいよいいよ〜」

 

するとそこへ、グリフォンスカルが拍手をしながら近づいてきた。

 

「マスターグリフォン…」

 

「お前には期待してるんだ、その力を進化させて俺たちと同じロードスカルに目覚めてくれよ」

 

「お任せください。貴方様から頂いたこの力のおかげで私は忌々しい富持つ者たちに制裁を下すことが出来る様になりました。必ずや貴方様の期待に応えられるようにしてみせます。」

 

「やる気があるようで良かった良かった。ま、頑張れよ♪」

 

そういうとグリフォンスカルは笑いながら部屋から出ていった。

 

 

 

「大したことなかったな」

 

突然グリフォンに華蛇が声をかけてきた。

 

「あれだけ持ち上げていたもんだからどんなものかと思えばああも無様な醜態を晒すとはな、確かに珍しい能力を持っているようだがあの程度の雑魚ではロードスカルになることもないだろう」

 

華蛇は呆れた様子でそう呟くとグリフォンスカルはニヤリと笑った。

 

「まぁ見てなって前にも言ったようにあいつはまだ成長段階、完全に成長すればものすごい力を手に入れるからさ」

 

「ものすごい力…それはどれくらいのものなんだ?」

 

「そうだなぁ…」

 

グリフォンスカルは少し考えると

 

 

 

 

 

「世界を滅ぼすくらい出来るかな」

 

 

 

 

 

 

「うーん…手がかり無しか…」

 

俺も斑鳩先輩は改めて『現代の鼠小僧』が盗みに入ったという現場を調べていた。そこは、この辺りじゃ悪い噂が絶えない所謂暴力団関連というところである。しかし、建物の中は荒らされていること以外は手がかりは掴めそうもなかった。

 

「それにしてもすごい荒らされてますね…」

 

たしかに、壁にはヒビが入っておりさらには病院送りにされた被害者のものと思われる返り血が所々にあった。

 

「ん?」

 

ふと、何かの匂いがしたような…

 

「気のせいか……?」

 

 

 

 

「結局手がかり無しか…」

 

現場を見ても結局何もなく俺たちは一度学院に戻るため街中を歩いていた。

 

「にしてもあの現場、ただお金目当てっていうより金持ちの人に相当の恨みがあるってことだよな…」

 

「……はい……そうですね……」

 

また斑鳩先輩は俯いてしまう

 

「…斑鳩先輩、何かあのスカルに言われたんですか?」

 

「え?」

 

「なんかこの前から元気ないし…何かあったのかな…って」

 

なんだか元気ないし少し心配になってしまう

 

「……実は……」

 

「ぐすっ…えんちょーせんせー…どこぉ…」

 

突然どこからか子供のすすり泣く声が聞こえてきた。

 

「竜司さん、あれ…」

 

斑鳩先輩の指差す方向には小学生低学年くらいの女の子が1人とぼとぼ歩いていた。

 

「ひょっとして…迷子か?」

 

俺はその子の方へと歩き出した。

 

「君、どうしたの?」

 

「…えんちょーせんせーと…はぐれちゃったの…」

 

俺が声をかけると女の子はぐずりながらも答えた。

 

「そっか…それはこまったね。それじゃあ一緒に探そうか」

 

「竜司さん、外部のものとの接触は控えろと…」

 

そういう俺に斑鳩先輩は慌てる

 

「そうだけどさ、この子をほっとくなんて俺には出来ないよ」

 

泣いてる子供を見てみぬふりなんて…そんなカッコ悪いこと俺には出来ない。

 

「竜司さん…ふふ、竜司さんらしいですね」

 

そんな俺に微笑み一緒に女の子の手を取って歩き出した、

 

 

 

「唯ちゃん!!」

 

「あ、えんちょーせんせー!!」

 

しばらく一緒に探していると初老のおばあさんが女の子を見つけると慌ててこちらへと向かってきた。どうやらあの人が女の子こと唯ちゃんの探していた園長先生らしい。

 

「よかったわ…先生何かあったんじゃないかって…」

 

「ごめんなさいえんちょーせんせー」

 

唯ちゃんは園長先生に抱きつくと謝った。

 

「貴方たちもありがとう、ほんとなんてお礼を言ったら…良ければうちで何かお礼を…」

 

「いえいえ、どうぞお気になさらず…」

 

「それではわたくし達はこれで…」

 

そう言って俺たちは立ち去ろうとすると

 

「おにーちゃんたち帰っちゃうの?えんちょーせんせーのいれるお茶おいしーんだよ?」

 

俺の服を摘んで唯ちゃんは寂しそうに聞いてくる。

 

「…それじゃあお言葉に甘えますか」

 

「そうですね」

 

俺たちは結局お邪魔させてもらうことになった。

 

 

 

 

 

『児童養護施設みどりの園』

 

そう書かれた看板のある児童養護施設にお邪魔することになった俺たちは園長先生の淹れるハーブティーをご馳走になることになった。

 

「この度は本当にありがとうございます」

 

「い、いえ、こちらこそお茶をご馳走になってすみません」

 

俺たちは園長先生のお礼にそう返答するとハーブティーを口にする。

 

「っ!!すげー美味い…」

 

「本当です…とても良い香りがしますし…」

 

「ねっ!?えんちょーせんせーのお茶おいしーでしょ!!」

 

俺たちの反応が嬉しかったのか唯ちゃんは嬉しそうに俺たちに聞いてくる。

 

「ありがとうございます。」

 

「このハーブティーのハーブは…」

 

「はい、うちの園の庭で植えてあるんですよ。昔からガーデニングが趣味だったので…」

 

俺たちの質問に園長先生は微笑みながらそう返した。

 

「ん…?この香り…」

 

ふと、俺は何か違和感を感じた。

 

 

「なにそのひとー」

 

「おきゃくさま〜?」

 

「えんちょーせんせーその人だれー?」

 

すると、部屋から他の子供達が出てきた。

 

 

 

 

 

「りゅうじおにーちゃんこっちこっちー!!」

 

「お、そっちだな…待て待てー!!」

 

「わぁーい!!」

 

俺たちは結局園の子供達と鬼ごっこやかくれんぼで遊ぶことになった。

 

「竜司さん…相変わらず子供の世話が得意なんですね」

 

「ん?まぁ得意っちゃ得意かな?」

 

この前もなんだかんだで光に懐かれてたし。

 

「そういえばおにーちゃんとおねーちゃんってどんなかんけー?」

 

「え?」

 

突然子供達が俺にそんなことを聞いてきた。

 

「えっと…斑鳩先輩は…」

 

「わかったーカップルだー!!」

 

「ちがうよ夫婦っていうんだよー」

 

「ラブラブだー!!」

 

「「んなっ!!/////」」

 

突然の子供達の言葉に俺たちは思わず顔を真っ赤にしてしまった。

 

「い、いえ!!りゅ、竜司さんはその…」

 

「何言ってんだよみんな、俺と斑鳩先輩がそんな関係なわけないだろ」

 

「うそだー」

 

「だって仲良しだもーん」

 

俺が否定すると子供達はブーブー言い出す

 

「だから違うって、斑鳩先輩は俺の頼れる先輩であってだな…ね、斑鳩先輩?」

 

「……………………。」

 

ふと斑鳩先輩をみると目のハイライトが消えてる

 

「あ、あれ?斑鳩先輩?」

 

「…竜司さんの……」

 

「え?」

 

「竜司さんの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

斑鳩先輩のビンタが俺に炸裂し俺は吹っ飛んだ。

 

「りゅうじにーちゃんが吹っ飛んだー」

 

「あたし知ってるーこれってとーへんぼくっていうんでしょー」

 

それをみて子供達が何か言ってた。

 

「ただいま〜」

 

すると、扉が開いてエプロンをつけた20代の若い女性が入ってきた。

 

「あ、はづきせんせー」

 

その女性をみると子供達は嬉しそうにそちらへと走っていく。

 

「はづきせんせーお帰りなさーい」

 

「ただいま皆〜元気にしていた?」

 

葉月先生と呼ばれた女性は子供達に笑顔を浮かべて頭を撫でた。

 

「お帰りなさい葉月先生」

 

「ただいま園長先生、そちらの方達は?」

 

葉月先生は俺たちに気づくと園長先生に聞く。

 

「こちらの方達は竜司さんと斑鳩さん、唯ちゃんが迷子になったのを助けてくれたのよ」

 

「こんにちは」

 

俺たちは葉月先生に挨拶をした。

 

「……そうですか、この度は本当にありがとうございます。では」

 

葉月先生はこちらを見つめると静かにお礼を言うと部屋から出てってしまった。

 

「あの子ったら…ごめんなさい、あの子昔から人見知りで…」

 

園長先生は俺たちに申し訳なさそうに謝った。

 

「昔からってことは…あの人って…」

 

「はい、あの子も昔はここで育った子なのよ…その後恩返しがしたいってここに就職してくれたのよ」

 

「…優しい人なんですね」

 

「え?」

 

俺の言葉に園長先生はキョトンとする。

 

「さっきの子供達に向ける笑顔、本当に子供達が大切なんだってこっちから見てもよくわかるほどの笑顔でしたから」

 

ちょっと人見知りだけど子供達の幸せを心から願ってるそんな人なのだろう。今も庭で子供達と楽しそうに遊んでいるのが見える。

 

「…えぇ、その通りです。」

 

俺の言葉に園長先生は嬉しそうに微笑んだ。

 

「…………………………。」

 

俺はじっと葉月先生の去った方へと視線を向けた。

 

 

 

「今日はありがとう、これつまらないものですが」

 

時間も時間になったので帰ることになった。すると、園長先生が瓶に入れたハーブティーをお土産にくれた。

 

「ありがとうございます。こんなにすてきなお土産まで……」

 

「いえいえ、子供達もあんなに楽しそうにして……こちらこそありがとね。もし良ければまた遊びにきてちょうだい」

 

「それはもちろん。ね、斑鳩先輩」

 

「はい、是非」

 

俺たちはそういうと『みどりの園』を去ることにした。

 

「……斑鳩先輩、ちょっと寄りたいところあるんだけど……いい?」

 

「え?別に構いませんが……」

 

 

 

 

俺たちは再び『現代の鼠小僧』の出た現場に戻ってきた。

 

「ちょっと気になることがあってさ……」

 

俺は現場に入るとあることに気づく

 

「やっぱり……」

 

「竜司さん?」

 

俺の予想は当たった。できることなら当たってほしくなかった悲しい予想が…

そして、もう一つわかったことも

 

「斑鳩先輩、これみてよ」

 

「っ!!これって……」

 

 

 

 

 

暗い夜道、美しい夜景がよく見える山に聳え立つ豪華な建物、そこは浦賀グループの御曹司兼光が所有する別荘地であった。現在兼光はここで休暇を過ごしているという情報が入っている。全身黒ずくめの影は手に持った黒いスカルキーを手に屋敷に入ろうとした。

 

「悪いけど、ここにはあの七光ヤローはもういないぜ『現代の鼠小僧』さん」

 

「っ!?」

 

突然聞こえた声に振り向くとそこには竜司と斑鳩が立っていた。

 

「くっ!!」

 

慌てて『現代の鼠小僧』は逃げようとするが竜司はすぐに追いつき顔を覆ってた黒い布を取る。

 

「逃げても無駄だぞ、あんたの正体は分かってんだ……葉月先生」

 

黒い布を外したそこには全身を黒い服にした『みどりの園』の葉月先生がいた。

 

「……やっぱりあんただったんだな」

 

「……どうして私だって分かったんですか?証拠になりそうなものは皆処分してたはずなのに……」

 

顔を強張らせて葉月先生は俺に問いかけた。

 

「……匂いだよ」

 

「匂い?」

 

「あんたが襲った現場に変わった匂いがしたんだ。そして園長先生のハーブティーを飲んで気付いたんだ……同じハーブ匂いだって。あの後俺たちは『みどりの園』を監視していた。そしたらあんたが出てきてここに来たって訳」

 

出来ることなら信じたくなかった。子供達にあれだけ慕われてる彼女がこんなことをしてるって

 

「……ハーブって正直ですね……まさか大好きな園長先生のハーブで犯行がバレるなんて……」

 

「最近あんたが襲ってた暴力団関係や悪い噂が多い会社を調べてみたらどこも浦賀グループと繋がっていた。そして、最近浦賀グループが計画している新しい工場開発の場所に『みどりの園』がある場所が選ばれていた。動機は……差し詰め自分達の居場所を奪おうとする金持ちの悪党へと復讐ってところか?」

 

そして、その奪った金を他の貧しい人たちや児童養護施設にばら撒いてたってわけか……

 

「ええそうよ!!私は小さい頃両親に捨てられた!!そんな私を救ってくれた園長先生は……貧しいながらも私や他の子供達を大切に育ててくれた!!なのに!!そんな優しい園長先生を……貧しい中必死に生きてる人たちをお金をたくさん持ってる奴らが喰い物にしている!!私はそんな世界が許せない!!」

 

瞬間、葉月先生は怒りの形相で叫び出した。

 

「そんな時…マスターグリフォンが私に力をくれた!!この力で私は……ひもじい思いをしている人達を救える……富持つ連中に制裁を下さるんだ!!」

 

『ラット!!』

 

葉月先生がスカルキーを起動すると彼女の左肩に鍵穴が現れる彼女はスカルキーを鍵穴に挿しこみ回すと鍵穴から黒い泥が溢れ出て彼女を包み込み鋭い爪を持つ巨大な鼠のようなスカルラットスカルへと変身した。

 

「私のぉ……邪魔をするなぁぁぁぁ!!」

 

ラットスカルは鋭い爪を武器に襲いかかる。

 

「……まぁやっぱりこうなるよな」

 

俺はカグラドライバーを腰にはめてティラノキーを回す。

 

「変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ティラノサウルスのオーラを纏い俺は仮面ライダーリューマへと変身する。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「だまれぇ!!」

 

ラットスカルは全身から口を生み出すとそのから2本の剣を生み出しそれを手に斬りかかってくる。

 

「はぁっ!!」

 

俺はファングクナイで剣を弾いて蹴りをラットスカルへと繰り出す。

 

「ぐぅぅ……貴様ぁぁぁ!!」

 

ラットスカルはさらに口を生み出しそこからライフルを生み出すと俺に向けて弾丸を撃ちだす。

 

「させません!!」

 

しかし、斑鳩先輩が飛燕で銃弾を弾くと銃身を斬り裂き破壊した。

 

「おのれぇぇぇぇ!!」

 

ラットスカルは激昂すると身体中の口から様々な武器を生み出し俺たちへと突撃してきた。

 

 

 

 

 

「ラットの奴、押されてるぞ。どうするんだ?」

 

リューマ達とラットスカルの闘いを少し離れたビルから華蛇とグリフォンスカルは見ていた。

 

「まぁ見てなって、面白いのはここからだからさ」

 

劣勢のラットスカルに動じることなくグリフォンスカルは笑みを浮かべる。

 

「お?来た来た♪」

 

「何?」

 

グリフォンスカルが何かに気づき、それを華蛇は見ると……

 

 

 

 

「よし、トドメといくか!!」

 

俺はラットスカルを追い詰め必殺忍法を繰り出そうとした。

 

「まだだ……私は……こんなところで終わらない……子供達のためにィィィィ!!」

 

突然、ラットスカルの体が膨れ上がり10メートルはある巨体を持つラットスカル巨獣態へと変貌し巨大な腕で俺を潰そうとしてきた。

 

「ここで巨大化かよ!!」

 

俺は慌てて回避しファングクナイで斬りつける。すると、

 

「無駄だァァァ!!」

 

 

突然ラットスカル巨獣態の体が膨れたと思うと背中から無数のラットスカルが生み出されて俺へと襲いかかる。

 

「うそぉぉぉぉ!?」

 

 

 

 

 

「私の薬無しで巨獣態に!?いや、それよりなんだあの能力は!?」

 

ラットスカルの変化に華蛇は驚きを隠せずにいた。

 

「どうだ?あれこそがラットの真の能力、忠実な子鼠を無限に生み出す母鼠こそがラットの真骨頂なのさ」

 

驚く華蛇にグリフォンスカルは得意げに話す。

 

「子鼠の生産に必要なエネルギーさえ補充できれば奴は同じ性能の子鼠を際限なく生み出せる。何よりすごいのは子鼠自身も食事を続けることにより新たな母鼠へと変身して更なる子鼠を生み出すことが出来るのさ」

 

「なるほど……まさに鼠算式に増え続けるということか……たしかにそれなら下手をすれば世界を滅ぼせる程の力だ……しかし、一体どうやってあんな力に……」

 

ラットスカルの恐るべき力に華蛇は疑問を抱いた。

 

「……スカルってのは基本その人間の『願望』を解放することによって力を手にする。『力で気に入らない奴をぶっ潰したい』というバイソン然り、『誰にも捕まらずに犯罪をしたい』というカメレオン然りってね。ラットの願望は少し特殊でね、願望が3つ存在したんだ。」

 

「3つ?」

 

「1つ目は『富を持つもの達への復讐』、2つ目は『ひもじい思いをしたくない』、そして3つ目は……『子供達の幸せ』。その異なる願望が混ざり合うことでラットに強大な力を与えたのさ」

 

グリフォンスカルは暴れ回るラットスカル巨獣態を見つめながら笑みを浮かべる。

 

「さぁラット、その力で全てを喰いつくしな。そして、新たなロードへと進化して俺たちの力となれ」

 

「……狂人が」

 

そんなグリフォンを見つめ華蛇は恐れを抱きそう呟いた。

 

 

 

「貴様も……キサマも私の邪魔をするなら……富持つ者達と同罪だ……その忌々しい小娘諸共食い殺してヤルゥゥゥゥ!!」

 

ラットスカル巨獣態は鋭い牙を使って俺たちへと襲いかかる。

 

「うわぁ!!」

 

「きゃあ!!」

 

俺たちはとっさに回避するが周囲からラットスカル(子鼠)が剣や銃を手に襲いかかる。

 

「くそっ……こうしてる間にもどんどん子鼠が増えてくる……キリがないぞ」

 

圧倒的数の暴力に俺たちはどんどん劣勢になってきた。

 

「これは……怨みだ……キサマらがその金で豪華な生活をしている中ひもじい思いをしてきた私の……ワタシタチノウラミダァァァァ!!」

 

ラットスカル巨獣態は怒りの形相を浮かべて斑鳩先輩へと叫んだ。

 

「一切れのパンで1日を凌いだことがあるか!?真冬の夜に暖房を使えない日があるか!?私たちは…貴様が…貴様らが何不自由無い生活をしている中で…そうやって苦しんできたんだ!!私たちの憎しみを…おもいしれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「わ、わたくしは…」

 

ラットスカル巨獣態の言葉に斑鳩先輩は体を強張らせ…何も言い返せずにいた…しかし、

 

 

 

 

 

 

「ふざけんな」

 

俺は違う、俺はこいつに一言言ってやらないと気が済まない。

 

「竜司さん?」

 

「あんたが苦しい思いをしてきたことはよぉーく分かった。けどなぁ…だからなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分が苦しんできたことはなぁ……誰かを苦しめて良い理由なんかにはならねえんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

「竜司さん…」

 

「何ィィィィ!!」

 

ラットスカル巨獣態は俺を睨みつけた。

 

「俺はあんたがどんな生き方をしてきたか知らねえし分かってやれねぇ!!でも…お前は間違ってる!!それくらいなら俺にもわかる!!だからお前を倒す!!そしてあんたを止める…」

 

そして、俺は覚悟を言葉にする。

 

「あんたを救うために!!」

 

 

 

 

 

「ぐぅぅぅ…だったらここで死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ラットスカル巨獣態は無数の子鼠たちを竜司へと向かわせてくる。その数の暴力に竜司は防戦一方になってしまう。

 

「くそっ…せめて本体を叩くことができれば…」

 

その時、

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

斑鳩の斬撃が子鼠たちを斬り裂く。

 

 

 

 

「竜司さん、子鼠はわたくしに任せてください!!」

 

斑鳩先輩は飛燕を構えて子鼠たちに立ち向かう。

 

「斑鳩先輩!!」

 

「竜司さん…ありがとうございます。お陰で吹っ切れました…わたくしも戦います。これ以上葉月さんに誰かを苦しませないようにするために!!」

 

斑鳩先輩の迷いない顔を見て俺は安心する。

 

「それじゃあ頼みます!!」

 

『ハヤウマモード!!』

 

俺は子鼠を斑鳩先輩に任せシノビークル・大地を起動してハヤウマモードにするとラットスカル巨獣態へと体当たりした。

 

「ぐぅぅぅぅ!!舐めるなぁ!!」

 

ラットスカル巨獣態は怒り背中から銃火器を生み出し弾丸を撃ちだす。しかし俺は弾丸を躱すとファングクナイですれ違い様にラットスカル巨獣態を切りつけた。

 

「しねぇ!!ワタシの邪魔をするなァァァ!!」

 

ラットスカル巨獣態は激昂しながら体全身から様々な武器を撃ち出して攻撃する。しかし、頭に血が上って狙いが定まらず高速で動く俺には当たらず、俺はすかさず体当たりをくらわせる。

 

「くそぉぉぉぉ!!私は……こんなところで終わるかぁァァァ!!」

 

すると、ラットスカル巨獣態は巨大な口を開くと口から青白い光が輝いた。

 

「最後の攻撃ってわけか」

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜大顎!!」

 

俺がカグラドライバーを叩くと巨大なティラノサウルスの顔がバイクを包みティラノサウルスが口を開き凄まじい突進が繰り出された。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

瞬間、ラットスカル巨獣態の口から青白い熱線が繰り出され俺の必殺忍法と衝突する。

 

「俺を…舐めるなぁ!!」

 

俺の必殺忍法はラットスカル巨獣態の熱線を撃ち破りラットスカル巨獣態を吹き飛ばす。

 

「トドメだ!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺は再びカグラドライバーを叩き空中へと飛び上がりラットスカル巨獣態へと渾身のキックを繰り出した。

 

『必殺忍法!!激竜無双キック!!』

 

俺のキックが炸裂しラットスカル巨獣態の体を貫きその巨体は爆発した。

 

「よしっ斑鳩先輩は…」

 

 

「秘伝忍法!鳳火炎閃!!」

 

斑鳩先輩の方を見ると彼女は飛燕の斬撃で子鼠達を全て倒したところであった。

 

「斑鳩先輩!!無事だったんですね!!」

 

「はい、なんとか倒せました。」

 

所々に傷があったが斑鳩先輩は大した怪我は無いようだ。

 

 

 

「ぐぅ…くそぉ…」

 

煙から晴れると葉月先生が倒れておりその近くに粉々に砕けたスカルキーが落ちていた。

 

「……。」

 

「斑鳩先輩?」

 

すると、斑鳩先輩はゆっくりと葉月先生へと近づいていく。

 

「……あなたがわたくしの事が憎いのでしたらそれは構いません。ですから…お願いです。どうか子供達のためにこれ以上手を汚さないでください。」

 

膝と手を地につけ彼女へと深々と頭を下げた。斑鳩先輩の行動は心無い金持ちなら絶対にするはずもない行動だった。

 

「…なによ…なんなのよあんた…富持つ者のくせにぃ…」

 

そんな斑鳩先輩を見て葉月先生は涙を流して泣き叫んだ。

 

 

 

「んだよ…せっかく良いところまで行ってたのに…」

 

そんな様子を見ていたグリフォンスカルは苛立ちながらそう呟く。

 

「仮面ライダーリューマ…やはり奴は侮れん…いずれ陛下の妨げになる。必ず倒さなければならん」

 

華蛇はそう呟くとグリフォンスカルとともに静かにその場を立ち去った。

 

 

その後、浦賀グループは俺たちの手に入れた様々な不正や闇取引の証拠がきっかけとなり警察の捜査が入ることになった。もう悪さは出来ないだろう。

 

 

 

 

 

「ぶぁーはっはっは!!私はゴッドゾンビぃぃ!!神の前にひれ伏せぇぇぇぇぇぇ!!」

 

とある貧民街、白いゾンビのような格好をした竜司がステージの上で叫ぶ。

 

「待ちなさい!!」

 

すると、ノリのいい和風BGMが流れ始め、仮面をつけた斑鳩が現れる。

 

「黒髪なびかせ今日も舞う!人呼んでKP仮面、参上!!」

 

「KP仮面だとぉ…この神である私の前に立つとは…神の力を見せてやるぅぅぅ!!」

 

そこからぎこちない素人らしいながらも素晴らしい演技をみせ、それに子供達は目を輝かせる。そして、

 

 

「くそぉ…私の夢は…不滅ダァァァァ!!」

 

ゴッドゾンビは断末魔を叫びそのままステージから消えていった。そして、斑鳩は集まった子供達にお菓子を配っていく。

 

「みんな。最後まで見てくださってありがとう♪また必ず来るからね!それまでいい子にしてるのよ!」

 

 

 

 

 

「ありがとうございます竜司さん、わたくしの頼みを引き受けてくれて。」

 

ステージを終えた俺に斑鳩先輩がお礼を言う。

 

「いや〜斑鳩先輩がいきなりヒーローショーをやるって言った時は何かと思ったけど結構良いもんですね」

 

ラットスカルとの戦闘後、俺と斑鳩先輩は貧民街でヒーローショーを行い同時に少ないながらも寄付をするという活動をすることにしたのだ。

 

「これからは…わたくしに出来る範囲で何かやっていこうと思ったんです。それが偽善でも…子供達のためにできることなら…」

 

「だったら俺も協力するよ。子供達のためにね」

 

俺がニカッと笑うと斑鳩先輩は顔を赤く染める。

 

「竜司さん…今のはずるいです…」

 

斑鳩先輩は真っ赤な顔を隠すように後ろを向いた。

 

 

 

 

 

 

「竜司さん…」

 

わたくしはずっと誰かに与えられているだけの人生でした。ですがこれは違う。わたくしが自分の意思で手にした感情。わたくしの誰にも譲れない恋心。

 

「貴方のことが…大好きです。」

 

愛しい彼に聞こえないようにそっと静かに呟いた。




最後の方ちょっと遊びましたw

それと、設定更新しましたのでどうぞ


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其の二十一 デートと出会い!?の巻

ハッピーニューイヤー!!今年は良い年になることを祈ります!!


「あーちくしょー…」

 

とあるビルの屋上でグリフォンスカルが寝っ転がりながらそう呟いた。

理由はもちろんラットスカルのロード進化が失敗したからである。

 

「だから言ったのだ。リューマを侮るなと、奴のせいで私がどれだけ辛酸を舐めさせられたか…」

 

そんなグリフォンスカルに華蛇はため息を吐きながらそう呟く。

 

「確かにな…さてどうしたものか…下手にスカルを向かわせても返り討ちにあうだけだし…」

 

 

 

「おや、2人ともこんなところにいたのですか?」

 

すると、そこへ金髪に派手な服を着た青年ドラゴンがやってきた。

 

「なんだあんたか…いやちょっと次にリューマ打倒に向かわせる奴を考えててさ…」

 

「あぁなるほど、しかし…すみませんが今は待ってもらえませんか?」

 

「なんでだ?」

 

ドラゴンの言葉に華蛇は問いただした。

 

「実は部下の1人が私の忠告を無視して好き勝手やってまして…少し面倒な奴なので探すのを手伝って欲しいのですが…」

 

「んだよ要するにお前のヘマの尻拭いじゃねーか、そんなのお前1人でやれよ」

 

「同感だな、なぜ私たちがそんなことをしなくてはいけないのだ?」

 

ドラゴンの頼みに2人は顔を顰めて拒否した。

 

「いや…そうなのですが…今陛下が街に出てまして…」

 

「は?」

 

「なんだと…!?」

 

ドラゴンの言葉に2人は顔色を変えた。

 

「万が一にも奴が陛下の手を煩わせてしまったらと思うと…」

 

ドラゴンも申し訳なさそうに2人を見つめる。

 

「…はぁ、わかった」

 

「因みに誰よ、その部下って?」

 

2人はドラゴンの頼みを引き受けて標的を聞く

 

「…スコーピオンです」

 

「げっ…」

 

「よりによってあの殺人鬼か…」

 

2人はスコーピオンという名前に再び顔を顰めた。

 

 

 

 

「ふっ!!せいっ!!はぁぁぁ!!」

 

今日は休日、鍛錬場にて斑鳩が木刀を振るう、そこまでは良いのだが…

 

「せぇぇぇいっ!!きぇぇぇぇいっ!!やぁぁぁぁぁあっ!!」

 

「い、斑鳩…?あの…その辺で休んだ方が…」

 

その形相は般若のようで葛城がその隣で怯えている。

すると、煙玉と共に霧夜先生が現れた。

 

「き、霧夜先生?ど、どうしたんですか?」

 

「お、おう…竜司に伝えたいことがあったんだが…2人はどこに?」

 

この鍛錬場に斑鳩と葛城しかいない。雲雀と柳生は2人で買い物にいった。しかし、竜司と飛鳥は…

 

 

 

 

「2人は…デートに行きました…わたくしというものがいながら…竜司さんは…竜司さんはぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「おおお落ち着け斑鳩ぁ!!別に2人は付き合ってるわけじゃないから…てかお前も竜司と付き合ってるわけじゃないだろ!?」

 

再び怒り出した斑鳩を怯えながらも葛城が止めようとしていた。

 

「竜司のやつ…いつか斑鳩に殺されないか心配だな…」

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉ!!見ろよ飛鳥〜ステゴサウルスだぞ!!おおっ!?あっちにはプレシオサウルスじゃねーか!!」

 

「うわぁ〜すごいねりゅーくんっ」

 

ところ変わってここは東京都内の博物館、本日ここでは恐竜博が開かれている。竜司と飛鳥は小さい頃からよく恐竜博に行っておりそれ以来毎年この博物館で開かれる恐竜博に2人で行くのがお約束になってるのだった。

 

「うほぉぉぉぉぉ!!きたきたー!!ティラノサウルスだぁぁぁ!!」

 

竜司は今年の恐竜博の目玉展示のティラノサウルスの全身骨格に目を輝かせていた。

 

 

 

 

 

「いや〜やっぱり恐竜はいいな〜何回見ても飽きないよ」

 

「りゅーくんいつも以上にはしゃいでたもんね」

 

一通り見た俺たちは休憩スペースでお茶を飲んでいた。

 

「悪いな飛鳥、なんか俺一人で盛り上がっちゃって」

 

「ううん、私も楽しんでるし大丈夫だよ」

 

飛鳥も楽しかったらしく笑顔でそう返した。

 

「あれ?りゅーくん上着は?」

 

「えっ?あれ?無い!?」

 

いつのまにか上着が無くなってる…そういえばさっきティラノサウルスの全身骨格を見てた時に暑くて脱いだような…

 

「すまん飛鳥!!俺ちょっと探してくる!!」

 

俺は慌ててティラノサウルスのフロアへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「えーと…多分この辺で脱いだと思うんだけど…」

 

俺はティラノサウルスのフロアにたどり着くと上着を探す

 

「あ、あった!!」

 

上着はすぐに見つかり安心して上着を羽織る。ふとティラノサウルスを見つめるとそのかっこよさを改めて認識してしまう。

 

「素晴らしい生き物だよね、恐竜ってさ」

 

「え?」

 

突然声をかけられて振り向くとそこには漆黒の髪に黒いスーツをきた青年がティラノサウルスの全身骨格を見つめていた。

 

「えっと…どちら様で…」

 

「ああすまない、すごい集中して恐竜を見ていたから気になってね」

 

青年はクスリと笑って再びティラノサウルスへと目をやる。

 

「本当に彼らはすごいよ、この星を億年もの間支配していたんだからね」

 

「そうですね…人類の誕生が700万年前かそこらと考えると凄まじい年月ですよ」

 

俺は青年の言葉に答えた。何故かはわからない。ただこの青年の言葉は優しく響いており、どこか不思議な感覚がした。

 

「人の歴史はまだ短い、だというのに彼らの進化は止まってしまっている。恐竜たちの歴史に比べればほんの1ページにも満たないというのに」

 

青年は悲しそうな顔をしながらそう呟く。

 

「人類は進化しなければならないんだよ。この星でこれから先も生きていくためには…」

 

「進化…ですか?」

 

青年は頷くと出口へと向かっていく。

 

「近いうちにまた会おう、その時は君が良き理解者となってくれることを願ってるよ」

 

そういうと青年は立ち去っていった。

 

「りゅーくーん」

 

ふと飛鳥の声が聞こえて飛鳥がこちらへと走ってきた。

 

「飛鳥…」

 

「どうしたの?なかなか戻ってこないから心配したよ?」

 

「ごめんごめん」

 

どうやら心配させてしまったらしい。

 

「…なんだったんだろう?」

 

 

 

 

 

「変な人?」

 

「うん…人類は進化がどうのこうのって…」

 

博物館の帰り道、俺と飛鳥は帰路についていた。

 

「でも…なんだろう?俺、あの人と会ったことある気がするんだよな…」

 

なんでかわからないのに…どこか懐かしい感じがした。

 

「あの…困ります…!」

 

「良いから来いって!!」

 

突然何やら不穏な声が聞こえた。ふとそちらを見ると同年代くらいの女の子が柄の悪い男に絡まれていた。

 

「飛鳥、ちょっとごめん」

 

「あ、りゅーくん」

 

俺はすぐさまその少女の方へと駆け寄った。

 

「おい!!」

 

「あ?なんだお前?」

 

俺が声をかけると男はこちらを睨みつけてくる。しかし、スカルや悪忍と闘う俺にとっちゃこれくらいの威圧わけない。

 

「その子嫌がってるじゃん、離してやってよ。」

 

「うるせぇ!!関係ないやつは黙ってろ!!」

 

男は俺へと殴りかかるが身をかわして一本背負いをお見舞いする。

 

「ぐあっ!!」

 

男は地面に叩きつけられると気を失った。

 

「大丈夫?」

 

「あ、はい…大丈夫です」

 

女の子は顔を赤く染めながらこちらを見つめながら答えた。

 

「あ、あの…ありがとうございます!!」

 

女の子はお礼を言うとそのまま走り去ってしまった。

 

「…まぁ大丈夫ならよかった。」

 

 

 

 

「竜司さぁぁぁん!!貴方って人はぁぁぁ!!」

 

「うわぁ斑鳩先輩ぃぃ!?突然怒ってどうしたんですか!?落ち着いて〜!!」

 

「斑鳩さんりゅーくんを殺さないで〜!!」

 

寮に戻ると斑鳩先輩は般若の形相で俺に斬りかかって来て危うく殺されるかと思った。

 

 

 

 

その日の夜、竜司が助けた少女が人気のない路地を歩いている。

 

「待てよ」

 

ふと声が聞こえて振り向くと先程自分に絡んできた男だった。少女はその場を離れようとすると彼女を取り囲むようにガラの悪い男たちが物陰から出てきた。

 

「この俺に恥をかかせた落とし前をつけさせてもらおうか」

 

「なーに安心しな、天国に連れてってやるからよ」

 

「へへへへへ」

 

男たちは下卑た顔で笑いながら彼女に近づいてくる。

 

「…馬鹿ね貴方達」

 

「あ?」

 

突然呟いた少女に男がポカンとする。

 

「大した色じゃなさそうだったから見逃してあげようと思ってたのに…」

 

その時、男は気づいた。少女の顔が恐ろしい笑みを浮かべていることに。まるで獲物を見つけた捕食者のような顔をしていることに

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

「でももう我慢できない❤︎」

 

『スコーピオン!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

「はぁ…やっぱりだめね…こいつらの色じゃ大して綺麗な『色』にならない」

 

それはわずか数分のことだった。あたり一面は先程のコンクリートの色とは打って変わって真っ赤な鮮血に染まりあちこちに男達の手足や頭部が転がっておりその表情は恐怖と断末魔に染まっていた。

 

「あの人…」

 

少女はふと彼のことを思い出す。こいつら(ゴミ)に絡まれた時に助けてくれた彼のことを

 

「素敵…素敵よ…こんなにときめいたのは生まれて初めて…あの人なら…最高の…最高の血(色)で染まってくれる!!あああああああ愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したい愛したい壊したい殺したいあははははははははははははははははは!!」

 

深夜の中、少女の狂気に満ちた笑い声が響き渡った。




久しぶりに投稿しました。
戦闘描写がないですがごめんなさい


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其の二十二 恐怖と殺人鬼!!の巻

「殺人鬼ねぇ…」

 

飛鳥と恐竜博に行った次の日、俺達は学校へと向かっていた。

 

「まさか俺たちがいない間にそんなことが起きてたなんて…」

 

昨日、霧夜先生が神門様から近隣の町で同一犯のものと思われる事件が相次いでるので警戒するようにと言われたので俺に報告しようとした矢先に怒ったようである。

 

「これ以上被害者が出なければいいけど…」

 

「りゅーくん…顔大丈夫?」

 

飛鳥が心配する竜司の顔には今まで無いような手のひらの跡がくっきりと残っていた。

 

「ごめん、実はまだ超痛い」

 

「竜司さん…ほんとにごめんなさい…」

 

俺の言葉にこの怪我をつけた犯人の斑鳩先輩は恥ずかしそうに謝った。

 

「ま、まぁそれよりその殺人鬼がスカルの可能性もあるらしいから油断しないようにしないとな」

 

「うん、私たちも気をつけないと」

 

「でもその殺人鬼が襲ってきたら雲雀怖いな〜」

 

雲雀は少し心配そうにそう呟く。

 

「安心しろ、雲雀は俺が守る」

 

そんな雲雀を安心させようと柳生は雲雀に微笑んだ。

 

「それじゃあ飛鳥の胸はアタイが守るかね〜」

 

かつ姉は毎度お馴染みと言わんばかりに飛鳥の胸を揉み出したようだ。

 

「ひぁあっ!?ちょっとかつ姉〜」

 

「こらこらかつ姉やめなって」

 

俺が呆れながらそちらを振り向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、女子高生くらいの少女が手に持った出刃包丁でかつ姉の首を斬り裂こうしてきた。

 

「かつ姉ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺はとっさにかつ姉と近くにいた飛鳥を自分側に引き寄せて包丁を避けた。

 

「なっ…!?」

 

「嘘……」

 

「皆さん!!」

 

斑鳩先輩の声で俺たちは臨戦態勢に入る。

 

「あーあ、周りのやつから殺そうと思ったのに、貴方が気づいたせいで殺せなかったじゃない」

 

少女はガッカリとした様子で俺に話しかけてくるがそんなのは耳に入らなかった。

 

(……嘘だろ、誰も気づかなかった)

 

仮にも俺たちは忍学生だ。僅かな気配も微かな音も見逃さずに敵を見つけることが出来る。そんな俺たちが視界に入るまで全く気づかなかった。もし俺が振り向かなかったらかつ姉は今頃殺されていただろう…

 

「りゅーくんあの人…」

 

飛鳥が何かに気づきよく見ると彼女に見覚えがあった。

 

「あんた…昨日不良に絡まれてた…」

 

「うふふ…覚えてくれていた…私のこと…やっぱりいいなぁ…周りの女の子達も良い血(色)を見せてくれそうだけど…やっぱり貴方は別格❤︎…その顔が血に…苦痛に染まったら…貴方はどこまで素敵になってくれるの?どこまで素敵になってくれるの?お願い…❤︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方を貴方の大切な人たちを私の手で私だけの力で美しい血で色で断末魔で染め上げさせてぇ!!大切な仲間を殺され嬲られ壊されて貴方はどんなふうに絶望してくれるの?どんなふうに壊れてくれるの?どんなふうに怒ってくれるの?教えて教えて教えて教えて!!そんな貴方を殺して貴方の肉も血も臓物も全て総てすべて私が私だけが美しくしてあげる!!最初は手からが良い?足?顔?それともお腹から?出来るだけ丁寧に痛みが長続きする様に綺麗に少しずつ斬り裂いてあげるからだからお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い…私に貴方を殺させてぇ!!」

 

「…………………。」

 

何も言えなかった。そこにあるのは恐怖、今まで闘ってきたスカル達ですら可愛く見えてしまうほどに目の前の殺人鬼は常軌を逸していた。

 

「りゅーくん!!気を抜かないで!!」

 

飛鳥の声で俺は正気に戻る。

 

「ふふふ…さあ愛しましょう…殺し合いましょう❤︎」

 

『スコーピオン!!』

 

少女は狂気に満ちた笑みを浮かべて紅いスカルキーを取り出して起動する。すると彼女は首筋に現れた鍵穴にスカルキーを挿しこみ回すと黒い泥が彼女を包み込み全身血のように紅い蠍の様なスカル、スコーピオンスカルへと変身した。

 

「いくぞっ!!」

 

『ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを腰にはめ、そしてティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「貴方…仮面ライダーだったの?ふふふ…素敵…どんどん好きになっちゃうぅぅぅぅぅぅ!!」

 

スコーピオンスカルは両手の鋭い鋏を武器に俺へと斬りかかってくる。

 

「ぐっ…」

 

俺はファングクナイで咄嗟にガードするもその一撃は重くて体が退がってしまう。

 

「りゅーくん!!」

 

「竜司さん!!」

 

「にゃろぉぉぉ!!」

 

「行くぞ雲雀!!」

 

「うん!!」

 

そこへ飛鳥達も加勢しに駆け寄る。

 

「鬱陶しいなぁ…私は彼と楽しんでるの。邪魔しないで」

 

『アーミーアント!!』

 

スコーピオンスカルは鬱陶しそうに紅いスカルキーを取り出すと鍵を起動する。すると、地面に鍵穴が現れそこへ鍵を投げると鍵は鍵穴に吸い込まれ鍵穴に刺さると鍵が回り鍵穴からどす黒い泥が吹き出してアントスカルが複数出現した。しかし、アントスカル達はこれまで見た者たちと違い全身がスコーピオンスカルと同じように真っ赤に染まっておりその手に槍を握っていた。

 

「貴方達はそいつらと遊んでてよ」

 

「ギギャア!!」

 

アーミーアントスカル達は鳴き声と共に飛鳥達へと襲いかかる。

 

「ぐっ…」

 

「こいつら強い…」

 

アーミーアントスカル達は連携の取れた攻撃で攻撃を繰り出し飛鳥達は防戦一方となってしまう。

 

「みんなぁ!!」

 

「ちょっとぉ…こっちに集中してよぉぉぉ!!!」

 

スコーピオンスカルは両手の鋭い鋏俺へと斬りつけてくる。

 

「あはっあはははははははははははは!!凄い!!やっぱり貴方さいっこぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!これだけ斬ってるのにまだ倒せない!!まだ殺せない!!凄い凄い凄い凄い凄い!!あははははははははははははははははははははは!!!」

 

「うるせぇ!!さっさと倒されろ殺人鬼!!」

 

みんながアーミーアントスカルに襲われるのを見て俺は助けに行きたいが目の前のスコーピオンスカルがそれを許さない。

 

「殺人鬼なんて下品な言い方しないで❤︎私には紅音(あかね)って名前があるんだからぁぁぁ!!」

 

スコーピオンスカルは再び鋏で俺を連続で斬りつけてくる。

 

「こっ…のぉ!!だったら…はぁぁぁっ!!」

 

俺は負けじと全身からエネルギーを放出し仮面ライダーリューマ・命駆モードへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ・命駆モード…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

俺は高速で移動するとスコーピオンスカルをファングクナイで斬り裂いた。

 

「あはっ…凄い!!さっきより速くなった…さっきより強くなった!!貴方はどこまで素敵になれば気が済むの!?うふふ…あははははははははははははははは!!」

 

俺の攻撃をものともせずにスコーピオンスカルは反撃してくる。その攻撃は防御をほとんどせずに傷つくことを辞さない…否、傷つくたびに笑いながら攻撃を仕掛けてくる!!

 

「ぐぅ…このおっ!!」

 

俺は高速で周囲を移動してスコーピオンスカルを翻弄しようとする。

 

『必殺の術!!』

 

俺はカグラドライバーを叩いて必殺忍法を繰り出した。

 

「必殺忍法!!激竜命駆キック!!」

 

「あははは!!最高…最っ高ぉぉぉぉ!!」

 

しかし、スコーピオンスカルの両手が鋭い刃になったかと思うと両手を交叉して巨大な鋏にすると俺のキックをガードして逆に斬り裂いてしまった。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は吹き飛ばされてそのまま変身を解除してしまった。

 

「ぐっ…くそっ」

 

命駆モードは攻撃力とスピードを底上げするがその反面防御力がほぼ無くなってしまう。先程の攻撃で体はもうボロボロになってしまったのだ。

 

「ふふふ…大丈夫よ…じっくり、じぃーっくり斬り刻んであげるから❤︎」

 

スコーピオンスカルは鋭い鋏を研ぎながらゆっくりとこちらへ近づいてくる。

 

「あ…あああ…」

 

闘わなければいけないのに…逃げてはいけないはずなのに…体が動かない…怖い…

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

すると、飛鳥が現れてスコーピオンスカルに斬りつけた。どうやらアーミーアントスカルの群れを切り抜けて俺の元へと来たようだ。

 

「りゅーくん大丈夫!?」

 

「飛鳥…」

 

飛鳥は俺の無事を確認するとほっとする。

 

 

 

 

 

 

「邪魔しないでよ」

 

 

 

 

「…え?」

 

嫌な音がしたかと思うと飛鳥の首筋にスコーピオンスカルの頭部から伸びた蠍の尾の針が刺さっていた。

 

 

 

「あ…りゅー…くん」

 

首筋の針が抜けると飛鳥は力なく倒れた。

 

「もー、せっかく楽しんでたのにこの女が空気読めないことするから白けちゃったじゃない。」

 

スコーピオンスカルはガッカリとした様子で変身を解いた。

 

「今度会ったらうーんと楽しみましょ!じゃあまた♪」

 

スコーピオンスカルだった少女はアーミーアントスカル達を引っ込めるとそのまま街へと立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛鳥!!」

 

スコーピオンスカルが立ち去った跡、俺は飛鳥の元へと駆け寄る。

 

「飛鳥!!しっかりしろ!!おい!!」

 

必死に声をかけるが飛鳥は苦しそうに呼吸をし、首筋の傷は毒々しい紫色に変色していた。

 

「くそ…なんだよ…」

 

手も足も出なかった。だがそれ以上に…俺は奴を恐れてしまった…そのせいで…飛鳥は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

俺の叫び声が空に響き渡った。

 

 




ごめんなさい…決着は次回で!!

設定まとめ更新します。



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其の二十三 勇気と無謀!!の巻

決着です!!


「まさか…向こうから襲ってくるとはな…」

 

スコーピオンスカルとの戦闘後、霧夜先生が駆けつけてきてくれた。現在俺たちは戦いの傷を治療してもらい、経緯を報告していた。

 

「申し訳ありません霧夜先生…」

 

「いや、気にするな。まさかそれだけの実力者が向こうから攻めてくるとはな…それより…問題は飛鳥だ」

 

謝る斑鳩先輩に霧夜先生は優しく声をかけて集中治療室を見る。現在そこでは飛鳥が治療を受けているが未だ予断を許さない状態である。

 

「飛鳥に打ち込まれた毒はスカルの能力によって作られたものだ。既存のどの毒とも違うから下手に解毒薬を打てば悪化する可能性がある。今はなんとか命を繋ぎ止めることに集中するしかない…」

 

「なら…奴を見つけて何の毒かを分析するしか無いってことですよね」

 

俺の言葉に霧夜先生は頷く。それならやることは一つだ。

 

「準備してきます。早く奴を見つけて今度こそ…」

 

「待てよ、ならアタイ達も…」

 

「いいよ…スカルを倒せるのは俺しかいないから…」

 

そう言って俺はその場を離れた。そんな俺を霧夜先生はただ見つめていた。

 

 

 

 

「ふふふ…あははは…さぁ〜てどうやって彼を殺そうかなぁ…うふふふふ…」

 

街の中をスコーピオンスカルこと紅音は鼻歌混じりに歩いていた。今の彼女はどうやって竜司を殺すのか、それしか考えてなかった。

 

「やっと見つけたぞスコーピオン」

 

ふと声が聞こえて紅音がそちらを向くとそこには華蛇が立っていた。

 

「…なんだメドューサ様じゃん、なに?今いい気分なんだから邪魔しないでよ」

 

紅音は嫌そうな顔をしてメドューサを睨みつける。

 

「いい加減にしろ、迂闊にリューマと闘うなとドラゴンに言われているのだろう」

 

「うるさいなぁ、なんで私のやりたいようにやっちゃいけないの?何をしようが私の勝手でしょ」

 

華蛇の言葉に耳を貸さずに紅音はその場を離れようとする。

 

「…そうか」

 

『メドューサ!!』

 

華蛇は腰にスカルドライバーを装着して金色の骨の装飾があるメドューサキーを起動し、スカルドライバーの口の中にある鍵穴に挿しこみ回しメドューサスカルへと変身する。

 

「…ほんと鬱陶しい」

 

『スコーピオン!!』

 

紅音も頭にきたのかスコーピオンキーを起動して首筋の鍵穴に挿しこみ回してスコーピオンスカルへと変身する。

 

「ふっ!!」

 

「はぁぁぁっ!!」

 

メドューサスカルの蛇腹剣とスコーピオンスカルの鋏がぶつかり合う。スコーピオンスカルは両手の鋭い鋏による連続斬りを繰り出しメドューサスカルも負けじと蛇腹剣による変幻自在な斬撃を放つ。両者一歩も譲らない闘いだった。

 

(…ほんとに厄介な奴だ)

 

闘いながらメドューサは苛立つ。目の前のスコーピオンはスカルの中でも優秀な部類だ。現時点でもロードスカルである自分とここまで張り合う。しかしそれ以上に厄介なのは、彼女には恐怖心が存在しない。故に傷つくことを恐れずなんの躊躇いもなく格上相手にも襲いかかってくるのだ。

 

「死ねぇ!!」

 

メドューサスカルは頭部の蛇から紫炎を放つ。しかしスコーピオンスカルは恐れることなく炎へと突っ込んでいく。

 

「はいストーップ」

 

瞬間、二人の間に突然銃弾が撃ち込まれる。二人がそちらを向くとグリフォンスカルが銃をこちらに向けていた。

 

「なんの真似だグリフォン」

 

「邪魔するの?ならアンタも殺すよ」

 

勝負を邪魔された二人はグリフォンスカルを睨みつける。

 

「あースコーピオン?こっちはお前に関与しないから好きな暴れな」

 

「な!?」

 

グリフォンスカルの言葉にメドューサスカルは驚く。

 

「ふざけるな!!そいつが好き勝手すれば…」

 

「状況が変わったんですよ」

 

そこへドラゴンも現れる。

 

「先程陛下からお達しがありました。『スコーピオンの好きにやらせろ』と」

 

「なっ!?陛下が…」

 

「どうやら陛下には筒抜けだったようですね。」

 

ドラゴンのため息混じりの話を聞くとメドューサスカルは変身を解いた。

 

「そう言うことだ。好きにしろ」

 

「…はぁい」

 

スコーピオンスカルも変身を解くと街中へと消えていった。

 

「……ふん」

 

華蛇は苛立ちながら紅音が立ち去った先を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…ちくしょう…」

 

俺は学院の校舎裏に座り込んでいた。

 

「くそ…なんだよ…なんで動けないんだよ…」

 

一刻も早くスコーピオンスカルを見つけ出して飛鳥を助けなければならない…だと言うのに体が震えてしまう、足が動かない、もし奴に負けたらと思うと…

 

「俺は…俺は忍なのに…スカルと闘うことができる.仮面ライダーなのに…どうして…」

 

「やっぱりここだったか」

 

声が聞こえて振り向くと、そこには霧夜先生がいた。

 

「霧夜先生…すみません」

 

「何がすみませんなんだ?」

 

霧夜先生の問いに俺は俯く。

 

「俺…怖いんです。あの殺人鬼が…あいつに手も足も出なくて…それでも闘わないといけないと思うと…体が動かないんです!!俺…怖い…負けるのが…死ぬのが怖い…!!」

 

自分で言って情けなくなった。みっともなく震えて…死ぬことを恐れるなんて…忍失格だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それの何が悪い?」

 

「え?」

 

霧夜先生の言葉は俺の予想外のものだった。

 

「竜司、勇気ってなんだと思う?」

 

霧夜先生は俺の目を見てそう聞いてきた。

 

「えっと…強いやつ相手にも恐れず立ち向かうこと?」

 

「違う」

 

俺の答えに霧夜先生は即否定した。

 

「恐怖を知りながらもその恐怖と向き合うことだ。」

 

「恐怖と向き合うこと?」

 

「恐怖を知らないのはただの無謀だ。敵を知ろうとせず、無知のまま死にに行くだけの愚行だ。そんな奴は忍の世界では生きていけない。だが、恐怖を知り、それでもその恐怖と向き合い前に進もうとするのは勇気だ。勇気を持つ奴はどこまでも強くなれる。」

 

そういうと霧夜先生は俺の頭を撫でる。

 

「お前が恐怖を抱いていると言うなら、お前は忍として生きてく上で大切なものを既に持っていると言うことだ。」

 

「先生…」

 

「それに、お前は一人じゃない。そうだろお前ら」

 

そう言って霧夜先生が振り向くと斑鳩先輩達が現れる。

 

「みんな…」

 

「竜司さん、貴方がわたくしに教えてくれたこと覚えてますか?『なんでも一人でやらなくていい。』わたくし達も巻き込んでください」

 

「アタイだって力になるぜ!!」

 

「俺たちだって忍だ。こんなところで終われるか」

 

「うん!飛鳥ちゃんを助けに行こう!!」

 

みんなは俺に手を差し伸ばす。

 

「あ…」

 

その時気づいた。さっきまで動かなかったのにいつのまにか震えが止まり、体を動かせることに

 

「みんな…力を貸してくれ」

 

俺の頼みにみんなは迷いなく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

  

町外れの廃工場、俺たちはそこで紅音を待ち構えていた。

奴はどういうわけか俺を殺すことに執着している。ならば、下手に探さずに見晴らしのいいところで待ち構えれば自ずと現れるだろうと考えたのだ。そして、その見立ては正しかった。

 

「うふふ、まさかこんな探しやすいところで待ち構えてくれるなんて」

 

すると、紅い蠍のようなスカル、スコーピオンスカルが嬉しそうに笑いながら現れた。

 

「やっときたな。今度こそお前を倒す!!」

 

「ふふふ、良いわいいわぁ!なんでか知らないけどこの前よりいい顔してる!!もっと良い血(色)を見せてくれそう!!」

 

『アーミーアント!!』

 

スコーピオンスカルは紅いスカルキーを取り出し、地面に現れた鍵穴に鍵を投げてアーミーアントスカルを数体生み出した。

 

「行くぞみんな!!」

 

俺たちはスコーピオンスカルとアーミーアントスカルへと駆け出した。

 

「スコーピオンスカルは俺が対処する!!みんなは紅い蟻達を!!」

 

「はいっ!!」

 

「任せな!!」 

 

「了解した」

 

「うん!!」

 

俺の指示にみんなも返答する。俺はスコーピオンスカルにファングクナイで斬りつける。

 

「ふふふ、動きが前と違うわね…その顔が恐怖で歪んだら…この前より良い顔になってくれそう!!」

 

スコーピオンスカルは嬉しそうに笑いながら鋭い鋏で攻撃を繰り出してくる。

 

「みんなは…」

 

みんなの方を見るとアーミーアントスカルの攻撃に対して連携をとって対処している。

 

「よそ見…しないでよぉ!!」

 

するとスコーピオンスカルは鋏を繰り出してくる。俺はそれをファングクナイでガードしながら拳を撃ち込んだ。

 

「ぐはっ!?」

 

スコーピオンスカルは吹き飛ばされ地面に転がる。

 

「ふふふ…いいわ…最高よ…じゃあ、これならどう!?」

 

スコーピオンスカルは頭部の蠍の尾を伸ばしてアーミーアントスカル達と闘ってる斑鳩先輩へと毒針を突き刺そうとしてきた。

 

「無駄だぁ!!」

 

俺はすぐさま斑鳩先輩を庇うように前に立ち毒針を手で掴む。

 

「な!?」

 

「おりゃぁ!!」

 

「ぐあああ!?」

 

そのまま俺はファングクナイで毒針を斬りつける。毒針は斬り裂かれスコーピオンスカルは苦痛に悲鳴をあげる。その隙を逃さず俺は渾身の蹴りを繰り出してスコーピオンスカルを吹き飛ばす。

 

「雲雀っ!!」

 

俺はそれを雲雀へ投げつけて雲雀はそれをキャッチする。

 

「それを霧夜先生のところへ!!」

 

「うん、まかせて!!」

 

雲雀は頷くと学院へと走っていった。

 

「そんな…なんの躊躇もなく毒針の前に立つなんて…自分に刺さったらって考えなかったの…恐怖しなかったの!?」

 

不意の蹴りは効いたらしくスコーピオンスカルはフラフラと立ち上がりながら叫ぶ

 

「怖いさ」

 

スコーピオンスカルの問いに俺は迷わず答える。

 

「けと、それ以上に怖いのは…大切な仲間を失うことだ!!だから俺は前に進む。そして恐怖と向き合っていく!!恐怖の欠落しているだけのお前なんかに…負けるわけにはいかないんだ!!」

 

「その通りです!!」

 

「ギギャァ!?」

 

すると、アーミーアントスカル達が吹き飛ばされ斑鳩先輩達が現れる。

 

「それに…貴方達の敵は…仮面ライダーだけではないと思い知りなさい!!」

 

そういう斑鳩先輩を見て俺は笑みを浮かべる。

 

(そうだ、俺にはみんながいる…だから俺は負けない。恐怖にだって向き合える!!)

 

「トドメだ」

 

『必殺の術!!』

 

俺はカグラドライバーを叩き空中へと飛び上がりスコーピオンスカルとアーミーアントスカルへと渾身のキックを繰り出した。

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

「凄い…どんどん輝いていく…あははは…素敵…素敵素敵素敵ィィィィ!!」

 

スコーピオンスカルは両手を巨大な刃にして手を交叉し巨大な鋏にして俺のキックを挟み込む。このままでは押し負けてしまうだろう…

 

「それがどうしたぁ!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺は再びカグラドライバーを叩く。するとエネルギーがさらに膨れ上がり巨大なティラノサウルスの幻影が現れる。

 

「必殺忍法!!激竜無双大大大大大キィッッッック!!」

 

俺の渾身の一撃は巨大な鋏を粉々に砕きスコーピオンスカルをアーミーアントスカル達と共に吹き飛ばし爆発した。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…やったぜ」

 

煙が晴れるとスコーピオンスカルだった少女、紅音が倒れている。もう立ち上がることは無理だろう。

 

「竜司さん!!」

 

すると、斑鳩先輩達が近づいてくる。

 

「先程霧夜先生から連絡がありました!!雲雀さんの持ってきた毒針で毒の成分がわかったそうです。それを使った解毒剤で飛鳥さんも峠を越えたそうですよ!!」

 

「飛鳥…よかった…」

 

斑鳩先輩の言葉に俺は心の底から安心した。

 

「よーしっ、それじゃああいつをとっ捕まえて…」

 

かつ姉がロープを手に紅音のところへ向かおうとした

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ…ははははははははは…」

 

すると、先ほどまで倒れていた紅音が起き上がり笑い出した。

 

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

瞬間、彼女の中から先程とは桁違いのオーラが放出された。

 

「な…何が…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「進化だよ」

 

突然俺の真横に影が現れる。

 

「あんたは…」

 

その顔に見覚えがあった。それは、恐竜博で出会った黒髪の青年だった。

 

「彼女は壁を破り遂に進化するんだよ。あぁ…今日は素晴らしい日だよ。久しぶりに新しいロードスカルの誕生に立ち会えるのだから…」

 

そういうと青年は手に髑髏をモチーフしたドライバーを手にしている。 

 

「それって…!?」

 

そう、それはメドューサやグリフォンが使っていたスカルの幹部が使うドライバーだ。青年は紅音の前に立つとそれを彼女の腰に取り付ける。

 

「ガァァァァァア!!」

 

すると、彼女のスカルキーがひび割れたかと思うとそこから金色のスカルキーが現れスカルドライバーへと自ら挿し込まれ回る。そしてスカルドライバーから黒い泥が吹き出し彼女を包み込むと灰色の体毛、炎のような紅く鋭い牙と爪、そして両肩に恐ろしい形相の犬の頭部があるケルベロスのようなロードスカル、ケルベロススカルへと変わった。

 

「凄い…力が…力が溢れてくる!!」

 

ケルベロススカルは己の姿と力に歓喜する。

 

「歓迎しよう、新たなる同胞ケルベロスよ」

 

青年はケルベロススカルに微笑みながら黒い穴を目の前に生み出して連れて行こうとする。

 

「まてっ!!お前は一体…」

 

俺は慌てて青年に問い詰める。

 

「僕の名前は弥勒(みろく)…いや、君にはこっちの方がわかりやすいかな?」

 

そういうと弥勒はスカルドライバーを取り出して腰にはまる。

 

『ヴァンパイア!!』

 

そして金色のスカルキーを起動するとそれを宙へと放る。すると、ヴァンパイアキーは自らスカルドライバーへと挿し込まれて回り黒い泥に包まれる。すると、血のように紅い鎧と闇夜のように黒いマントに身を包んだヴァンパイアを彷彿させるスカル、ヴァンパイアスカルが現れた。

 

「あんたが…『陛下』だったのか…」

 

まさかの事実に俺は驚愕する。だがそれ以上に知りたいことがある。

 

「なんで…なんでスカルキーなんて広めてんだ!?」

 

「この前言った通りだよ。人類の進化のためさ」

 

俺の質問にヴァンパイアスカルは答える。

 

「スカルは確かに危険な力だ。でもね、同時に人類の希望でもあるんだよ」

 

「多くの人々を苦しめて何が希望だ!!」

 

スカルを世に生み出すことを何も悪びれないこいつに俺は怒りを抑えられなかった。

 

「…今に君もわかるさ。僕の願いがどんなものか…そして願わくば僕と共に歩いてくれることを願うよ」

 

ヴァンパイアスカルはそれだけ言うと黒い穴の中へと入っていった。

 

「…またね竜司くん今度は心ゆくまで殺し合いましょう❤︎」

 

すると、ケルベロススカルも穴の中へと入っていく再戦を望む言葉を残して。

 

「……止めてやる。何度でも…」

 

 

 

 

 

 

 

「飛鳥!!」

 

学院に戻った俺は急いで飛鳥の病室へと入った。

 

「あ、りゅーくん」

 

すると、元気そうな様子の飛鳥がベットにいた。

 

「飛鳥ぁぁぁよかったぁぁぁ!!」

 

「ひゃっ!?りゅ、りゅーくん/////」

 

俺が抱きしめると飛鳥は顔を真っ赤にした。

 

「どこも違和感ないか!?本当に大丈夫なんだな!?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

その言葉に俺は安心した。

 

「飛鳥…ありがとな」

 

「え?」

 

「いや、なんだかんだいって俺って色んなやつに守られたんだなって思ってさ。だからありがと」

 

「りゅーくん…///」

 

 

 

 

 

「な、なんですか…あのちょっと良い感じの雰囲気は…!?」

 

そんな二人を見て斑鳩は震える。

 

「あ〜なるほど…」

 

そして葛城はあることに気づく。

 

「あいつらって小さい頃からずっと一緒にいるから自覚ないだけでそれなりに互いを想いあってるってことなんだな…まぁそりゃ当然か…」

 

「なるほどな…」

 

「二人とも仲良しなんだね〜」

 

「うぎぎぎぎぎ…仕方ないですが…仕方ないですがぁぁぁ…」

 

斑鳩は嫉妬の炎をさらに燃やすのでした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「炎佐、みんな準備は終わったぞ」

 

秘立蛇邪学園、その一室へと褐色の少女が入ってくる。

 

「はぁ…はぁ…そうか…わかった。」

 

そこには全身傷だらけになった紅髪の少年、炎佐がいた。

 

「その様子だとそいつの制御は成功したみたいだな?」

 

「あぁ、流石に手こずったがこの通りだ。」

 

炎佐の手には漆黒のブラキオサウルスが描かれたキョウリュウキーが握られてた。

 

「さて、仕上げと行こうか」

 

善忍と悪忍、両者の闘いが間もなく始まる………




スコーピオン戦終了です。再び設定まとめ更新しますのでよければどうぞ


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其の二十四 連動忍結界と巨大恐竜!!の巻

 

「おりゃぁ!!」

 

「えぇいっ!!」

 

朱音との戦闘から数日後、俺たちは次の闘いに備えて修行に明け暮れていた。

 

「よしっ今のはいいぞ竜司、その調子でたたみかけろ!!」

 

「はいっ!!」

 

俺は修行しながらも陛下…弥勒のことを思い出していた。

 

『スカルは確かに危険な力だ。でもね、同時に人類の希望でもあるんだよ』

 

『今に君もわかるさ。僕の願いがどんなものか…そして願わくば僕と共に歩いてくれることを願うよ』

 

「…ふざけんな、なにが希望だ」

 

リューマになって闘ってきたからわかる。スカルがどれほど多くの人々を苦しめてるのかが…あんなものが希望であるわけがない!!

 

「…絶対阻止してみせる」

 

だからこそもっと強くならなきゃいけない。一緒に闘ってくれる仲間と共に

 

 

 

 

 

 

「何もかも持ち、幸せな日々をただ無駄に塗りつぶし、それが当たり前とでも言わんばかりに振舞う…本当、不愉快極まりませんわね」

 

「うふふ。みんなお人形にしたらさぞ面白いかも知れないわね~…任務じゃなければ今すぐにでもそうしてたところねぇ」

 

ちょうどその頃、蛇邪の悪忍である詠と春花が様子を伺っていた。

 

「炎佐さんたちは奴らの隠れ家をうまく見つけたのでしょうか?」

 

「彼なら問題ないでしょ、焔ちゃんもいるわけだし」

 

「…そうですわね、炎佐さんと焔さんの2人がいれば間違い無いですわね。」  

 

春花の言葉に詠も納得した。それは彼女たちが彼らのことを信頼している証であった。

 

 

 

 

 

 

ちょうどその頃

 

「早く見つけ出さないとな、奴らの隠れ家を」

 

焔、炎佐の2人が歩いていた。

 

「しかし木を隠すには森の中というが普通の進学校の中に忍の養成学校を作るとは…余程の暇人なんだな、善忍ってやつは」

 

「ふっ、違いない」

 

炎佐の言葉に焔はくすりと笑った。

 

「そういえば炎佐、今回の鍵は屈服させるのに随分手間取ったな。前に屈服させたアンキロやプレシオはそれほど時間をかけずに屈服出来てたが…」

 

焔はふと炎佐の腰にあるブラキオサウルスの描かれた黒い鍵を目にやって聞いてきた。

 

「まあな、だがその分こいつは強力だ。リューマは俺の予想を遥かに超える成長を見せてる。これくらいしなきゃ俺も危ないからな。お前も気をつけろよ?格下と侮ってあの半蔵の孫とやらに返り討ちに遭うなよ?」

 

「あんなやつに私が負けるか!!」

 

炎佐の言葉に焔は顔を真っ赤にして怒った。

 

『シュルルルル!シュルルルル!』

 

突然炎佐のカラクリヘビのヘビ丸が鳴り出して携帯電話へと変形した。相手は未来と行動している日影だった。

 

「日影か、どうした」

 

『怪しいところ見つけたで』

 

「そうか、詠と春花には俺の方から連絡を入れとく。お前らはそこで待っててくれ」

 

炎佐はそういうと電話を切り詠と春花に連絡を入れる。

 

「行くぞ焔」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

「なるほど、旧校舎ねぇ」

 

炎佐たちがたどり着いた場所には木造の古ぼけた校舎があった。

 

「今は使われてないけど特定文化遺産として保管されとるみたいやで」

 

「たしかに怪しいな、よくやった日影」

 

「ちょっと!!先に目をつけたのはあたしなんだけど!?」

 

「はいはい偉い偉い、あとでご褒美にお菓子買ってあげるから落ち着け」

 

「子供扱いすんなー!!」

 

子供扱いする炎佐に未来は顔を真っ赤にして怒る。

 

「まぁ冗談はさておき、ここに連中がいるなら間違いなく何かしらの守りが施されてるはずだ。簡単には侵入できないだろ」

 

「それなら私の出番ね、うふふ」

 

 

 

 

 

 

その頃、竜司たちは鍛錬を終え座学に勤しんでいた、

 

「そもそも忍術とは心の技である。肉体はあくまでその補助に過ぎん。だが強い肉体があってこそさらに強力な忍術を扱うこともできる。この二つは切っても切り離せない重要なものなのだ。即ち、両の足で地上に立つと言う実感によって地球の核の硬さを己の力とし………こら飛鳥寝るな!!」

 

「ふえっ!?す、すみません!!」

 

ふと俺が飛鳥の方を見るとどうやらうたた寝寸前だったらしく霧夜先生に叱られてた。

 

「zzzz……」

 

しかし悲しいかな、1人睡魔に負けて夢の世界へと旅立った者がいる。そう、かつ姉だ。

 

「葛城…聞いてるか?」

 

「zzzz……」

 

お構いなしに眠ってる。

 

「かつ姉、起きなって」

 

「zzzz……」

 

お構いなしに眠ってる。

 

「葛城!寝るな!!」

 

「zzzz……」

 

恒例のお構いなし

 

「ご飯ですよー!!」

 

「はっ、飯の時間!?」

 

俺の声に起きたかつ姉は周囲を見渡すと…目の前に鬼の形相の霧夜先生が…

 

「あ…あははは…」

 

「バッカモーン!!廊下に立ってろー!!」

 

 

 

 

「まったく…あいつときたら…」

 

霧夜先生は溜息を吐きながら授業を続けた。

 

「そういえば霧夜先生、一ついいですか?」

 

俺はふと前から気になってたことを聞くことにした。

 

「どうした竜司?」

 

「リューマって基本的にどういう仕組みで変身するの?」

 

今まで当たり前みたいに使ってたけど考えてみたら俺ってこいつのことをあまり詳しくなかったっけ…

 

「ふむ…俺も専門家ではないから詳しくはないが…知ってる範囲でいいなら教えよう」

 

霧夜先生は少し考えて話し出した。

 

「そもそもキョウリュウキーは300年前にある技術者が発見した恐竜たちの秘めた力を鍵の形にしたものとされている。それをカグラドライバーを用いて使用者とキョウリュウキーをシンクロさせることで忍が恐竜の力を使えるようにしているということだそうだ。」

 

「なるほど…あと気になったんですが、カグラドライバーって今まで複製とかってされなかったんですか?」

 

俺はもう一つ聞きたかったことを聞いた。カグラドライバーが複数あればスカルとの戦闘もかなり楽になると思ったんだが…

 

「……………あぁ、技術班も解析したが…複製は無理だったそうだ。」

 

霧夜先生は少し顔を硬らせるとそれ以上は何も言わなかった。

 

「……ん?」

 

突然警報が鳴り響く、どうやら普通学科の生徒が入り込んだようだ。

 

「ふむ。普通科の学生か…特に問題はなかろう…俺が戻るまでその場で待機。戻り次第授業を再開する…」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

霧夜先生はやれやれと溜息を吐きかつ姉を教室に戻すと自身は教室を出て行った。

 

「先生…どうしたんだろ?」

 

あの時の先生、何か悲しそうな顔をしてた。

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

霧夜はため息を吐きながら警報のあった方へと歩いてく。

 

「竜司がカグラドライバーに選ばれたのを知ったら…叶さん、貴方はなんで言ったんだろうな…」

 

ある日『任務中の事故』で死んだ彼の母親のことを思い出す。

 

『カグラドライバーって今まで複製とかされなかったんですか?』

 

あの時、竜司には言わなかったことがある。だがそれは言えない。それを知れば、あいつが忍の世界に絶望しかねないのだから…今はまだ、知らなくていい…

 

「ふう、気持ちを切り替えんとな…」

 

すると、視線の先に男子高校生が2人屯していた。

 

「お前たち、ここは立ち入り禁止だぞ。」

 

しかし、2人は答えない

 

「おい、どうした?」

 

すると、突然霧夜に殴りかかってきた。

 

「ふんっ!!」

 

しかし、霧夜はそれを躱して2人にカウンターを決める。

 

「…っ!!こいつは…!!」

 

霧夜がよく見るとその2人は傀儡であった。

 

「しまった!!」

 

瞬間、学院が結界に包まれた。

 

 

 

 

 

「これって…」

 

「忍結界!?」

 

「ばかな!?」

 

俺たちは突然発生した忍結界に驚き廊下に出る。

 

「旧校舎…いや、学院全体が忍結界に包まれてる!?」

 

「馬鹿言ってんじゃねぇよ。こんな馬鹿でかい結界つくるなんて…」

 

俺の言葉にかつ姉が否定する。たしかに半蔵学院は凄まじく広い。学院全体を覆うほどの忍結界なんて一個人には不可能だ…しかし…これはそうとしか…

 

「1人では無理でも、複数の忍が同時結界を貼り、それを束ねれば、不可能ではありませんわ」

 

斑鳩先輩が俺に教えてくれる。

 

「でもそれってすごい難しいんじゃ…」

 

「それだけ息のあった連中ということです」

 

「…っ!!上だぁ!!」

 

ふと気配に気づき上を向くと無数の傀儡が襲いかかってきた。

 

「このぉ!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを身につけて仮面ライダーリューマへと変身して傀儡を蹴散らした。

 

「私たちも!!」

 

「はい!!」

 

「おう!!」

 

「あぁ!!」

 

「う、うん!!」

 

飛鳥たちも忍転身して傀儡たちを蹴散らす。

しかし、

 

「っ!?みんなどこに…」

 

いつのまにか別の空間の中にいてみんなとはぐれていた。

 

「やれやれ、まんまと引っかかったな」

 

唐突に聞き覚えのある声が聞こえる。そこにいたのは…

 

「炎佐…てめえ…」

 

「よっ久しぶり」

 

俺が気づくと炎佐を笑みを浮かべて手を振る。

 

「久しぶりだな、この前はうちの先生が世話になったな」

 

「…やっぱりあの人お前の関係者だったのか。あの人には世話になった。」

 

「ははっ変なやつ、一応俺たちは敵同士だぜ?」

 

俺の言葉に炎佐は一瞬ポカンとすると笑った。

 

「…それでも命を救ってくれたから。お礼は言っとく。でもそれとこれは別の問題だ」

 

俺はファングクナイを構えてそう言った。

 

「やっぱりお前おもしれーな、そんじゃやるか…変身!!」

 

『武装!!スピノ!!』

 

炎佐はカグラドライバーを身につけてスピノキーを挿しこみ仮面ライダーガリューに変身する。

 

「仮面ライダーガリュー…いざ、舞い殉じる!!」

 

炎佐はスピノアクスを構えると俺に斬りつけてきた。

 

「舐めんな!!」

 

俺もファングクナイでスピノアクスをガードして蹴りを繰り出す

 

「ぐっ…やるなぁ!!」

 

ガリューは蹴りをガードすると嬉しそうに笑いながらスピノアクスで連撃を繰り出す。

 

「くそっ…なら!!」

 

『武装!!プレシオ!!』

 

俺はプレシオ武装になると水を生み出して大渦を作るとガリューを捉える。

 

「なっ…これは…」

 

「おりゃぁ!!」

 

俺はプレシオスピアを振り下ろしてガリューを地面に叩きつける。

 

「ちぃっ…今のは効いた…それなら…」

 

『武装!!アンキロ!!』

 

炎佐はアンキロ武装へと変身しアンキロアイアンを振り回してプレシオ武装の大渦を吹き飛ばした。

 

「せいやぁ!!」

 

「おりゃぁ!!」

 

俺の大渦とガリューの鉄球が衝突する。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

激しいぶつかり合いをしながらも両者の力は拮抗しておりなかなか勝負が着かない。

 

「…ははっやっぱりお前おもしれーわ」

 

ガリューは嬉しそうに笑ってアンキロアイアンを振り回す。

 

「悪いけど…俺はお前の遊びに付き合ってるかはねーぞ!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

「はぁぁぁ!!」

 

俺は再びティラノ武装になるとそのまま命駆モードへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ・命駆モード…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

俺は高速で一気に間合いを詰めるとガリューへと渾身の一撃を繰り出した。

 

「ぐはっ!!」

 

ガリューはその衝撃で吹き飛び壁に激突した。

 

「このまま一気に行かせてもらうぞ!!」

 

「…くくくっいいな、やっぱそうじゃなくっちゃな!!」

 

すると、ガリューは黒いブラキオサウルスの描かれたキョウリュウキーを取り出した。

 

『ブラキオ!!』

 

 

ガリューはブラキオキーを起動するとカグラドライバーの鍵穴に挿し込む。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。すると、ガリューの背後に巨大なブラキオサウルスが現れた。

 

「変身!!」

 

『武装!!ブラキオ!!』

 

ガリューは鍵を回して背後のブラキオサウルスへと飛び込むとブラキオサウルスは変形して巨大な鎧武者の様な姿になった。

 

「仮面ライダーガリュー・ブラキオ武装…いざ、舞い殉じる!!」

 

ブラキオ武装へと変身したガリューは巨大な剣を構えると俺へと振り下ろした。

 

「ちっ!!」

 

俺は高速移動でその攻撃を回避するとガラ空きになったどうへと連続でパンチを繰り出した。

 

(パワーは凄いけと動作が大きい!!それなら…)

 

「甘いな」

 

「な!?」

 

しかし、自身の攻撃はガリューの装甲にはヒビ一つついていなかった。

 

「ならこれはどうだ!!」

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜命駆キィッッッック!!」

 

「なっ…うぉぉぉぉ!?」

 

俺はカグラドライバーを叩いて必殺忍法を繰り出し、ガリューのその巨体を吹き飛ばした。

 

「よし、これなら…」

 

 

 

 

 

 

 

「やるなリューマ…まさかこいつの装甲に傷をつけるとは思わなかったぞ。こいつを手懐けて無かったら危なかった」

 

しかし、ガリューはすぐに起き上がってきた。その装甲も傷こそあるがピンピンしていた。

 

「今度はこっちの番だ!!」

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!煉獄破山!!」

 

瞬間、ガリューの手にある大剣がさらに巨大化して俺へと振り下ろされた。

 

「くそっ!!」

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜命駆スラッシュ!!」

 

俺もファングクナイにティラノキーを挿して巨大な斬撃を放つ。しかしガリューの巨大な剣の一撃は俺の斬撃を叩き潰した。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は直撃こそしなかったが衝撃波で吹き飛んでしまった。

 

「いてて…まだまだぁ…」

 

俺は再び起き上がりガリューへと身構える。

 

「ははっそうこなくっちゃ」

 

ガリューはその巨体で俺に近づいてくる。その時、

 

「なに?結界が…」

 

あたりの結界が歪み出した。

 

『シュルルルル!!シュルルルル!!』

 

突然紅い蛇のオトモカラクリが鳴り出す。ガリューはそれを携帯電話へと帰ると耳に当てる、

 

「どうした春花?」

 

『撤退よ炎佐、未来が負けたみたい』

 

瞬間、ガリューはやれやれと溜息を吐く。

 

「あの馬鹿、せっかくご褒美にお菓子買ってやろうと思ったがやめだ。」

 

そのままガリューは変身を解除すると俺へと背を向けて立ち去っていく。

 

「悪いな、決着は次の機会だ」

 

そしてガリューが立ち去ると同時に結界も消えた。

 

「くそっ!!次こそは…」

 

「りゅーくん!!」

 

するとそこへ傷だらけの飛鳥が駆け寄ってくる。

 

「飛鳥、どうしたんだ?」

 

「大変なの!!柳生ちゃんが…」

 

「なっ…くそっ!!」

 

俺は飛鳥とともに柳生の元へと向かった。

 

 

 

 

 

「あーしんど…」

 

その頃、炎佐は少し離れたビルの上で寝っ転がっていた。

 

「やっぱりブラキオは強いけど負担がやばいな。長時間の使用はまだ無理だなこりゃ」

 

ブラキオキーを見ながら炎佐は嬉しそうに笑う。

 

「リューマ…もっと強くなれよ…そうすりゃ俺の悲願が叶う…ははっ…はははははは!!」

 

夕日の中、炎佐の笑い声が響いていた。





炎佐の新武装です!!最近の仮面ライダーでよくある巨大フォームですが気に入っていただけたでしょうか?


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其の二十五 特訓と最強先輩!!の巻

アニメ寄りのオリジナルです!!


「柳生ちゃん大丈夫そうでよかったね」

 

「明日には退院出来るみたいだし安心したよ」

 

蛇邪の襲撃の翌日、俺たちは襲撃で負傷した柳生の見舞い行った。

柳生は自身が遭遇した悪忍を撃破するも雲雀の援護に向かってやられてしまったそうだ。

 

「柳生ちゃん…」

 

雲雀はあれからずっと落ち込んでしまってる。柳生が負傷したことで自分を責めているようだ。

 

「元気出せって雲雀、柳生も無事だったんだし」

 

「そうだぜ、雲雀が元気じゃねーと柳生も心配だろうしよ」

 

「…うん」

 

俺やかつ姉が励ますも雲雀は落ち込んだままであった。

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

半蔵学院の一室で霧夜は始末書を書いていた。学院内への悪忍の侵入を許したことへと責任としてである。

 

「師よ、我総見するに、先日の一件、学院の詳細を熟知した者の手引きあり。」

 

霧夜の側へと現れた黒猫が突然喋りだす。

 

「…うちに裏切り者がいるというのか?ありえん」

 

霧夜は動じた様子もなく返答した。

 

「師も薄々気づいていよう、あの人ならば」

 

「………。」

 

「師よ、一つ頼みが…」

 

「なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

秘立蛇邪学園

 

「…この修行、私好きではありませんわ」

 

「そうか?他の修行に比べたらかなり楽なやつだぞ」

 

炎佐たちは現在滝行をしていた。

 

「だって、2時間掛けてセットした髪が台無しですもの!」

 

「知るか」

 

詠の愚痴に焔がため息を吐きながらそう返す。

 

「あ、そういえばご存知ですか?」

 

「知らん」

 

「まだ何も言ってませんの!」

 

あまりの即答に詠はつっこんだ。

 

「お前のことだからどうせもやしがどうのこうのって話だろ?」

 

「それも是非お話したいのですが!!」

 

「やっぱり話したいんか…」

 

「やだよ!!俺この前深夜にお前のもやしトークに付き合わされて次の日寝不足になったんだから!!」

 

もやしのことを話そうとする詠を炎佐と日影が阻止しようとした。

 

「そんなに嫌がらなくてもいいですのに…」

 

「ほら他に言いたいことがあんだろ?そっちなら聞いてやるから」

 

「あ、そうでしたわ」

 

「…(ほっ)」

 

炎佐はなんとか話題を逸らしてもやしトークを回避しようとした。

 

「鈴音先生って元は善忍だったらしいのですわ」

 

「……っ!?」

 

詠の言葉に焔は驚いた。

 

「あんなんただの噂やろ」

 

日影は信じてないらしくやれやれといった感じでそう返した。

 

「まぁありえない話じゃないだろ、善忍の世界が合わない奴が悪忍になるってそれなりにあるしな」

 

「炎佐、それはどういうことだ?」

 

炎佐の言葉に焔は怒りを含んだ声で問い詰める

 

「うちにもそういう連中がいるってことよ。焔だって元々善忍の家系なんでしょ?それに私も…」

 

「黙れ!!」

 

未来の言葉に焔はさらに苛立ち叫んだ。

 

「焔、落ち着けって…未来も焔を煽るな、因みにこの前お前がヘマしたせいでリューマとの戦闘中断されたの忘れてねえからな」

 

「わかったわよ…」

 

炎佐に咎められて未来はしゅんとなった。

 

「焔も悪かったな。流石に今のは無神経だった。」

 

「…あぁ」

 

焔は俯いたまま黙り込んだ。

 

「…やれやれ」

 

「…ふふっ」

 

ため息を吐く炎佐を見つめながら春花はふと鈴音先生との会話を思い出す。

 

 

 

 

 

『仕掛け?』

 

『先生に無断で仕掛けるのは心が痛みましたが、オーナー直々のご命令、断れませんでした。』

 

『やはり、完全な真意を得てはいないと言う事か。だが何故この件を私に?あの男との密約だろ?』

 

あの男こと蛇邪学園の出資者のことを思い出しながら鈴音は春花を問い詰める。

 

『だって私、先生の生徒ですもの。それに、お人形増やす事…私は嫌じゃないですし。』

 

『相変わらず分からん娘だ。』

 

『そんな事ありませんわ。私は単純です。楽しければ良い。それだけです。』

 

『礼は言っておく。』

 

いつもの調子でそう答える春花に彼女はため息を吐きながらそう呟く。

 

『そう言えば、私が教わった連動結界、あれは先生が学生時代に作ったと聞きました。あんな凄い術、半蔵学院に渡らなくて幸いでしたわ。』

 

『っ!!』

 

春花の言葉に鈴音は強張る。

 

『では、失礼します。』

 

春花はそうすると、その場を立ち去り鈴音だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

『連動結界かぁ!難度が高過ぎるのが難点だが、学生が新忍法を開発するとは前代未聞だなぁ!』

 

『スーパー忍者を目指してるんだもん!このくらい当然だよ!』

 

『お前は俺の誇りだ。良くやったな。凛。』

 

それはかつての話、まだ自分が学生だった頃、新忍法を編み出した自分を師が褒めてくれた。

 

「…忘れろ、凛はもう死んだのだ……しかし……」

 

『俺さ…『世界一カッコイイ忍者』になりたいんだ。』

 

思い出すのは忍島で出会ったリューマの少年

 

「似ている、かつての私に…」

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今日も一日頑張るかな!!」

 

俺は今日の修行に向けて気合を入れていた。すると、

 

「うぬが竜司か」

 

突然声が聞こえ、振り向くとそこには学ランに身を包んだ筋骨隆々の女性が立っていた。

 

「えっと…あなたは?」

 

突然現れた女性に俺は驚きを隠さずにいた。

 

「我は大道寺!!うぬを鍛えに来た!!」

 

「大道寺って…もしかしてあの大道寺先輩!?」

 

俺はその名前に覚えがあった。半蔵学院の忍学生で既に卒業試験に合格していながら自らの意思で留年し続けているという伝説の先輩である。

 

「そんな人が…なぜ俺のところに…?」

 

「問答無用!!」

 

大道寺先輩は俺の首根っこを掴むと勢いよく飛び跳ねて走りだした。

 

「えぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!?」

 

 

 

 

「で…なんでこんなところに…」

 

大道寺先輩に連れられてたどり着いたのは巨大な山にある樹海であった。

 

「我がうぬをここで鍛える!!異論は認めんから覚悟しろ!!」

 

「お、押忍!!」

 

 

大道寺先輩の言葉に俺は強ばりながらも大きく返事をした。

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 

どれくらい経ったのだろうか…大道寺先輩との修行…と言えば聞こえはいいが…実際はほとんどシゴキである。ドライバーは没収され問答無用で組み手をされて…もう何度ボコボコにされたかわからない…

 

「ぬるい!!」

 

大道寺先輩は吹き飛んだ俺を見ながら叫ぶ。

 

「この程度でガリューやスカルに勝利出来ると思っているのか馬鹿者!!」

 

「す…すみません…」

 

返す言葉もない…現に俺はこれまでガリュー相手に一度も勝ててない、このままで良いはずがない

 

「ふん、今日はここまでだ。明日に備えて休んでおけ」

 

「お…押忍…」

 

 

 

 

「痛…絶対これ顔腫れてる…」

 

休んでおけって言われてるがシゴキのダメージで体がほとんど動かない…今はとにかく休まないと…

 

「食え」

 

突然木の実が飛んできてキャッチする。飛んできた方向を見ると大道寺先輩が立っていた。

 

「明日はより徹底的にしごく。少しでも体力を取り戻せ」

 

「お、押忍!!ありがとうございます!!」

 

俺はお礼を言って木の実を齧る。

 

「…忍とは、いつ死ぬか分からぬ運命(さだめ)…故に、常に任務に命を懸けその中で散ることこそ忍の誇りとされる…」

 

俺をじっと見ながら突然大道寺先輩は喋り出す。

 

「だがうぬはまだ死ぬわけにはいかぬ。うぬの死によってこの国がスカルの脅威に苛まれる事になるのだからな…だからこそうぬは強くならねばならぬ」

 

「押忍!!」

 

俺は大道寺先輩の言葉に頷いた。そうだ、自分はここでは終わらない。人々をスカルから守る為に…自分の目指す「世界一カッコイイ忍者」になる為に…

 

「そういえば大道寺先輩って…なんでずっと留年してるんですか?」

 

どうしてこれほどの強さを持つ人がいまだに卒業しないのか、俺はどうしても知りたい。

 

「…そうだな、うぬになら話しても良いかもしれん」

 

大道寺先輩は俺をじっと見つめると話し出した。

 

「…我にも先輩がいた。あの人は天才だった。我の目指す目標でもあり…憧れだった…」

 

どこか懐かしそうに大道寺先輩は話し続ける。

 

「我は強者を求む…故に我はあの人と闘い…勝利したかった。だが…あの人はある日の任務で…殉職した…とされている。」

 

「されている?」

 

「我は信じているのだ、あの人は生きている。そして、我はあの人と闘い勝利する…それまでは学院を去るわけにはいかぬ」

 

「…きっと、生きてますよ。俺もなんとなくそう思います」

 

見てみたい、それほどの人とこの人が闘うところを…

 

「…少し話しすぎたな、もう寝ろ」

 

「押忍、師匠!!」

 

思わず師匠と呼んでしまった。でも、なんかそう呼びたいそれほどにこの人は…かっこいい

 

「…おかしな奴だ」

 

師匠はクスリと笑うと立ち去っていく

 

「…あの人の生存を、信じてくれて感謝する」

 

そう俺にお礼を言って…

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

「ふんっ!!」

 

翌日、俺は命駆状態になって師匠と組み手をしていた。俺の渾身の蹴りを師匠は素手で難なくガードし足を掴むと俺を地面に叩きつけた。

 

「攻撃を繰り出したらそこで止まるな!!少しでも止まれば隙になり相手のカウンターを喰らうぞ!!」

 

「押忍、師匠!!」

 

俺は起き上がり拳を繰り出す。

 

「甘い!!」

 

「ぐへぇっ!!」

 

しかし難なく躱されて渾身の一撃を食らって吹き飛んでしまった。

 

「いいか、命駆とは覚悟の力!!己の身を削ってでも必ず勝利するという誓いの証だ!!」

 

「押忍!!」

 

「そして、うぬの場合は生き抜く為に魂を燃やせ!!生きて多くの人々をスカルの脅威から守る為に!!闘い抜くのだ!!」

 

「押忍っ!!」

 

全身がダメージで痛い、しかし闘っていくうちにだんだん体が師匠の動きについてこれるようになっていく。  

 

(俺は…もっと強くなる!!忍として、大切な人たちを守る為に…何より、自分の目指す…「世界一カッコイイ忍者」になる為に!!)

 

「魂を……燃やせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺は全パワーを以って師匠へと渾身の蹴りを繰り出した!!

 

「ぐっ!!」

 

師匠はガードするが蹴りの勢いで体が退がった。

 

「はぁ…はぁ…やった…」

 

ようやくまともな攻撃を放てた…そう思うと力が抜けてその場に倒れてしまった。

 

「…ふっ、今のは良い一撃であったぞ」

 

師匠は笑みを浮かべると俺をおぶった。

 

「修行はこれで終わりだ。よくここまで頑張ったな…」

 

「押忍…師匠……」

 

師匠に褒められたのが嬉しかった。師匠との修行は無駄ではなかった、気づくと目からは涙が出てくる。そして俺の意識は徐々に途切れていった…

 

 

 

 

「眠ったか…」

 

随分と体を酷使していたからな、無理もない

 

「今は休め、それが今のうぬのやるべきことだ」

 

我は彼をおぶりながら半蔵学院へと歩く

 

「しかし師匠か…あなたを思い出させる夢を持つものが我の弟子になるとはな…凛さん」

 

 

 

 

 

「ってことがあったんだ!!」

 

師匠との修行から帰還した俺は飛鳥達に修行の時の話をした。

 

「そんなことがあったんだ…」

 

「大道寺先輩…我が校の伝説の先輩がそのようなことを…」

 

「そうなんだよ!!でもなぁ…あの人、マジかっこよかったな〜」

 

強いしかっこいいし、厳しいけど俺を強くしてくれたし…

 

「憧れちゃうな〜///」

 

心の底から尊敬しちゃうそんな偉大な先輩であった。

 

 

 

 

 

 

「りゅーくんって…年上が好きなのかな…」

 

ここんとこずっと大道寺先輩の話ばかりの竜司を飛鳥達は見つめてそう考える。

 

「大丈夫…わたくしも年上…しかし…相手は強敵…ぐぐぐ…」

 

中でも斑鳩はどこか焦った様子でぶつぶつと呟いていた。

 

 

 

 

 

蛇邪学園

 

「ご苦労だったな炎佐くん、君が送ってくれたブラキオキーのデータはとても研究に役立ってるそうだよ」

 

炎佐は目の前の椅子に座ってる片目の男、道元に呼ばれていた。

 

「はい、それとこちらは新しく纏めたガリューの戦闘データです。では、失礼します。」

 

炎佐はそう言って資料を渡し立ち去ろうとした。

 

「あぁそうそう、そういえば最近個人で動いているそうだね」

 

「っ!!」

 

道元に呼び止められ炎佐は立ち止まる。

 

「あまり余計なことはしないことだ。この世界で長生きしたいのならね」

 

「…わかっております。では、」

 

炎佐はそういうと扉を開けて部屋を出た。

 

「…せいぜい威張ってろよ。テメェの首は俺が獲る…必ず…必ずだ…!!」

 

誰もいない廊下を炎佐は1人呟きながら歩いて行った。

 

 

 



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其の二十六 内通者と超秘伝忍法書!!の巻

大道寺先輩の修行から数日後、俺たちは霧夜先生の下、特訓の日々に明け暮れていた。

 

「はぁぁぁ!!」

 

斑鳩先輩が霧夜先生の投げるクナイを飛燕で弾き返す。しかし、そのうちの一本が斑鳩先輩の後ろの壁に刺さった。

 

「全て弾き返せなくてどうする!!」

 

「くっ……」

 

 

 

次にかつ姉、近づいてくる高速回転する刃のついた柱を回転蹴りで破壊する。

 

「間合いが遠い!!」

 

「おっす!!」

 

 

 

飛鳥は飛んで来る手裏剣を避ける修行だ…次々と飛んで来る手裏剣を避け続けるが

 

「うわああああ!!」

 

着地地点に手裏剣が待ち構えていた。飛鳥は驚いて後ろに倒れてしまった。

 

「動きが単調だから先を見されるんだ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

「せいっ!!はっ!!どりゃあっ!!」

 

俺は次々と向かってくる丸太を徒手空拳で薙ぎ倒していく。なかなか数が多いが師匠の連撃に比べればゆっくりなくらいだ

 

「これで…さいごぉっ!!」

 

俺は残り一つの丸太を破壊して…

 

 

 

 

 

「ふっ!!」

 

その影に隠れてたクナイを指でとった。

 

「いいぞ竜司!!良く気がついた!!」

   

「押忍!!」

 

やっぱり師匠との特訓の成果だ、確実に以前よりレベルアップしている!!

 

 

 

 

 

「すごいねりゅーくん」

 

俺が給水をとってると飛鳥達が近づいて来た。

 

「以前より明らかに成長しています。」

 

「霧夜先生いつにも増して厳しいのによくついてこれるよな〜」

 

「へへっ、全て師匠のシゴキのおかげだな」

 

師匠には感謝しかない、この調子でどんどんレベルアップしていかないとな

 

 

 

 

「きゃあああ〜!!」

 

すると、雲雀の悲鳴が聞こえてそちらを向くと雲雀を守るように柳生が立っており彼女の持つ番傘には無数のクナイが刺さってた。

 

「こら柳生っ!!」

 

霧夜先生は柳生に怒鳴りつける。

 

「悪いのは雲雀です!!柳生ちゃんは…」

 

「やめろ雲雀…」

 

「でも…」

 

「柳生!!それが雲雀の為だと思ったら大間違いだぞ!!」

 

「……………。」

 

霧夜先生の叱咤に柳生は俯いた。

 

「む、そろそろ時間か… よし、今日はここまで。柳生と雲雀、お前らは残って補修行だ。」

 

「えぇぇ〜!?」

 

2人に補修行を指示すると霧夜先生は煙と共に姿を消した。

 

「雲雀…大丈夫かなぁ…」

 

「雲雀さんも忍。何時までも柳生さんに庇ってもらうと言う訳にもいきません。」

 

俺が呟くと斑鳩先輩は雲雀を見ながらそう返した。

 

 

 

 

 

 

「なかなか気合の入った良き修行よ」

 

霧夜が自室に戻ると大道寺がそこにいた。

 

「お前が竜司の修行をしたいと言い出した時は何事かと思ったが…わずかな時の中で大したもんだあそこまで鍛え上げちまうんだからな」

 

「我の見立てではあの者の存在がこの先の闘いで必要になる。ここで失うわけにはいかぬ…そして…他の5人も各々特質は違えど、鍛錬次第では相当の逸材だが中でも奴は金の卵だ…それに…」

 

「思い出すだろ?凛のやつを、あいつがうちに入学して来た時、開口一番に「俺は世界一カッコイイ忍者になります!!」って言った時には本当に懐かしくなった」

 

「うむ」

 

霧夜の問いに大道寺は懐かしそうに呟いた。

 

 

 

 

 

蛇邪学園

 

「くくく、すべては私の思うように進んでいる」

 

蛇邪学園の出資者道元は自室の豪華な椅子に座ってワインを飲み愉悦に浸っていた。

 

「なぜ勝手に動いた?」

 

突然声が聞こえてそちらを向くと華蛇が睨みつけていた。

 

「おやメドューサ殿か、どうかな?君も一杯」

 

道元は新しいグラスを出すとワインを注ぎ華蛇に差し出す

 

「ふざけるな、何故悪戯にリューマ達を煽ったのかと聞いてるんだ。貴様如きが陛下の手を煩わせてタダで済むと思っているのか?」

 

華蛇はワインを受け取らずに道元に怒りを含んだ顔で睨みつけた

 

「貴様如き…か、君は何か勘違いしてないかな?いつ私が君たちの部下になったのかな?」

 

「何?」

 

「私が君たちの研究施設にいくら投資してやってると思ってる?君たちロードスカルの必須アイテムである、そのスカルドライバー開発に多額の金を提供してやったのはどこの誰だったのかな?」

 

「ぐっ…」

 

道元の言葉に華蛇は悔しそうにした。悔しいがこいつの持つ莫大な金によって自身達は今の規模へとなった。あまり下手な態度は取れない…

 

「まぁそう怒らないでくれたまえ。これは君たちの今後にも必要になることだよ。今回の計画が成功すれば君たちは今以上の力を手に入れられる。だから気長に待っていてくれたまえ」

 

「…我らの邪魔だけはするな」

 

華蛇はそれだけいうと黒い穴を開きその場を去っていった。

 

「ふっ」

 

その様子を見ながら道元は笑みを浮かべて再びワインを飲み出した。

 

 

 

 

 

 

「うわあっ!!やっちゃった!!」

 

学園の忍具保管庫、1人の忍学生が足を滑られ辺りに手裏剣やまきびしをぶちまける。

 

「やばいやばい…炎佐さんに見られたら何言われるか…」

 

「なんて言われるって?」

 

「そりゃもう悪鬼の如く…え?」

 

声が聞こえてそちらを向くと…

 

「え、炎佐さん…」

 

「まったくお前は…」

 

「あ、炎佐さんそこまきびしが…」

 

「え?」

 

少年が慌てて炎佐を止めようとするが炎佐の足にまきびしが…

 

「痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「すいませぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

 

 

 

 

 

 

「理吉(りきち)テメェ…何度も言ってんだろ!!毎回毎回忍具ぶち撒けやがって!!」

 

「すいません炎佐さん…足大丈夫ですか?」

 

あの後炎佐に拳骨を喰らわされた理吉と呼ばれた忍学生は涙目で謝った。

 

「まったく…ほんと気をつけろ」

 

「あ、そういえば任務お疲れ様です!!聞きましたよ、なんでも半蔵学院のリューマって強いやつをやっつけたとか!!」

 

そう言っては目を輝かせる理吉

 

「まあな」

 

「やっぱり炎佐さんはすごいです!!善忍なんか敵じゃないですね!!」

 

「はぁ…そう言うとこだぞ。あんまり相手をみくびるな」

 

得意げに言う理吉に炎佐はため息を吐いた。

 

「忍の世界じゃ油断は即、死に繋がるんだ。常に油断せず万が一に備えろ」

 

「あ…はい!!」

 

そういうと炎佐はそこから去ろうとしたがふと何かに気づいた。

 

「…そういえば春花を見なかったか?」

 

「ええと…春花さんでしたら出かけていきましたよ?「お人形さんを見にいく」って言ってました。」

 

「…あぁなるほどわかった」

 

炎佐は何かを察すると納得して今度こそ立ち去った。

 

「まったくあいつは…」

 

 

 

 

 

竜司の自室

 

「ん…なんだ、変な時間に起きちゃったな…」

 

その日の夜、俺は何故か深夜に目が覚めてしまった。布団をかぶるがなかなか寝付けない

 

「…水でも飲んでくるか」

 

俺は仕方なく部屋を出て給水場に行く。

 

「ん?あれは…」

 

その途中、人影が見えた。それは…

 

「雲雀?」

 

しかし雲雀は俺に気付かないのか此方に視線を向けずに立ち去っていった。

 

「なんだったんだ?」

 

 

 

 

 

 

「超秘伝忍法書が盗まれたぁ!?」

 

次の日、教室に来た俺たちに衝撃的な事実が伝えられた。

 

超秘伝忍法書、それは選ばれた者しか使うことが出来ないとされる伝説の秘伝忍法書である。強力すぎる力故に陰の書と陽の書の2つに分けられており善忍達によってこの半蔵学院で陽の書を厳重に管理していたのだ。

 

「あぁ。先の奇襲以来警備を厳重にしていた。しかしそれを掻い潜り尚且つ保管庫までも開けることができるのは…俺を含めここにいるもの達だけだ」

 

「霧夜先生…それって…」

 

霧夜先生の言いたいことがわかってしまった。つまり先生は俺たちの中に裏切り者がいるのではないかと考えているのだ。

 

「そんな!私たちの誰かがそんなことするはずありません!」

 

飛鳥がこれに意義を唱えた。それは俺も同感だ。俺たちの中にそんなことをする人がいるなんて考えられない…

 

「まさか…な」

 

俺は昨日の雲雀を思い出したがすぐに否定した。まさか雲雀に限ってそんなことはないと

 

「わかっている。だが、奪われたことに変わりはない。とにかく俺は本部に連絡する。今日はお前たちは自室で待機だ」

 

 

 

 

 

霧夜先生の命で自室待機を言い渡されそれぞれ部屋にこもっている中…

 

 

「お部屋で待機って何すればいいんだろ?…」

 

部屋で待機するといわれてどうすればいいかわからず雲雀は退屈な時間を過ごしていた

 

「ん?なんだろこれ?」

 

ベットの下に何かあったのでとってみるとそれは超秘伝忍法書だった

 

「これどういうこと?どうしてここに?」

 

騒ぎの原因が今自分の手元にあることに驚きを隠せない雲雀だったが

 

 

 

 

 

「ご苦労様。素敵な働きだったわ」

 

「えっ!?」

 

突然声が聞こえて現れた鞭が絡みつき奪い取ってしまった。そこには蛇邪学園の春花がいた。

 

「約束どおり、ちゃ~んとお友達になってくれたわね」

 

「っ!?まさか…」

 

雲雀は鏡のところに置いた柳生の命を救うよう願いでた時、彼女からもらったピアスをみた、あれに細工が施されていて自分を操っていたようだ。

 

「これであなたは半蔵学院の子達だけじゃなく、全ての善忍を裏切ったのよ」

 

「そ、そんな…」

 

たしかに春花の言う通りだ。善忍達の中で厳重に守られている超秘伝忍法書を盗んでしまったのだ

 

「良いじゃない。どうせ落ちこぼれ扱いされてるんだし。でも、私は違うわ。あなたの秀でた力を認めてた。」

 

「え?」

 

春花の言葉に雲雀は驚く

 

「最初にあなたを見た時から気付いてたわ。臆病故の慎重さと勘の鋭さ。諜報として申し分ない能力よ。ただ強いだけが忍じゃない。その力、私達なら高く評価してあげられるのだけど。どう?蛇邪に来ない?」

 

「て、転校しろってこと!?」

 

突然の勧誘に雲雀は驚愕した。

 

「その気があれば歓迎するわ」

 

そういうと一枚の紙を渡すと立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

「まさか…な…」

 

俺は自室で昨日のことを考えていた。そうだ、あれは気のせいだ。雲雀が俺たちを裏切るなんて信じられない…

 

「りゅーくん大変!!雲雀ちゃんが…」

 

「え?」

 

 

 

 

 

「借りていた本を返しに行ったら雲雀ちゃんがいなくって…」

 

飛鳥が持っていた手紙を俺たちに見せる。そこには自分が悪忍に操られていたこと、超秘伝忍法書を盗んでしまったこと、そのことへのみんなへの謝罪が書かれていた。

 

「まさか雲雀さんが犯人だったなんて…」

 

「斑鳩先輩、犯人ってのはちょっと違いますよ」

 

「そうだぜ!!操られてたって書いてあるじゃねえか!!」

 

斑鳩先輩の言葉に俺とかつ姉が否定した。

 

「でもどうやって雲雀を…」

 

俺はどうやって雲雀を操ったのか気になった。

 

「おそらくこいつだ」

 

すると霧夜先生が現れて俺たちに一つの割れた髪留めを見せる。そこには小さな巻物が入っていた。

 

「こいつは念話発信機って言ってな。こいつを相手につけてその人間を遠くから意のままに操る者だ。主に傀儡使いなんかが使う者だ。」

 

傀儡使い…と言うことはやっぱり蛇邪の犯行とみて間違い無いだろう…しかしまさか俺たちの仲間を操られるなんて…

 

「雲雀!!」

 

雲雀の手紙を読んだ柳生は雲雀を助けまいと忍転身して窓から飛び出していってしまった

 

「柳生、待つんだ!!」

 

「俺が追いかけます!」

 

「私たちも!!」

 

俺たちは慌てて柳生を追いかける。

 

 

 

 

「柳生…どこ行ったんだ…」

 

俺は街を歩きながら柳生を探す。

 

「あ、いた…」

 

柳生を見つけた俺は柳生の前に立つ。

 

「どこ行くんだ柳生?」

 

「…決まってる、雲雀を助けに行くんだ」

 

「落ち着けって…雲雀がどこにいるかもわからないんだぞ」

 

「分からなくても絶対に探し出す!!そこをどけ!!」

 

柳生はやけくそ気味に番傘を突き出してくる。俺はそれを躱して柳生を止める。

 

「こんなやけくその攻撃が当たるわけないだろ?いつもの冷静な柳生はどこ行ったんだ?」

 

「ぐ…」

 

「冷静になれって、俺だって雲雀が心配なんだ」

 

すると、柳生は大人しくなって顔を俯く

 

「俺の…責任なんだ…」

 

柳生が俯きながら話す。

 

「昨日、雲雀がいなかったのを俺は知ってたんだ… 侵入者の話を聞いた時、その事を思い出した。でも、雲雀を疑うなんて俺には出来なかった…」

 

「…それは俺も同じだよ。俺も昨日雲雀が夜の廊下を歩いてるのをみてたのに何にも疑わなかった。誰だって気付かないって」

 

柳生の言葉に俺は共感する。

 

「でも.俺がもっと雲雀のことを気にかけてたら…こんなことには…」

 

柳生の目には涙があふれていた。

 

「それは違うって」

 

しかし俺はそれを否定する。

 

「柳生が悪いってのは絶対ない。あえて言うなら気がつかなかった俺たち全員のミスだ」

 

「そうだよ柳生ちゃん」

 

俺の言葉を肯定するように飛鳥達がやってくる。

 

「悪いのはお前じゃねえ。気がつかなかったアタイらとのミスと…雲雀を操ってこんな事をさせた蛇邪の奴らだ。」

 

「柳生さん、わたくし達は仲間ですよ?わたくしたちも雲雀さんを助けたいんです」

 

「だからみんなで助けよう、雲雀ちゃんを!!」

 

かつ姉、斑鳩先輩、飛鳥の言葉に柳生は顔を赤く染める

 

「みんな…すまん」

 

 

 

 

「よしっ!!そうと決まれば学院に戻って作戦会議だ!!任務は俺たちの大切な仲間、雲雀の救出…ついでに超秘伝忍法書の奪還だ!!」

 

俺の言葉にみんなが頷く

 

「待ってろよ蛇邪学園…雲雀は必ず返してもらうからな!!」

 

俺は改めて覚悟を決めた…大切な仲間を救う覚悟を

 

 

 

 

 



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其の二十七 突撃で蛇邪学園!!の巻


pixivでスペラティア先生が本作に登場予定の月閃と新蛇邪の仮面ライダーと変身者を描いてくださいました。もし良ければぜひ見てください!!


 

「この辺りのはず…」

 

学院を離れた雲雀は春花に渡されたメモに書かれた場所にたどり着いていた。そこには巨大な城とそれに連なる城下町があった。

 

「ここが…秘立蛇邪学園…」

 

 

 

 

 

「はぁ…しょっちゅう撒き菱ばら撒いちゃうし、手裏剣投げたら変な方向飛んで炎佐さんの頭に刺さっちゃうし…やっぱり炎佐さんみたいにはいかないな…」

 

炎佐の舎弟の理吉はため息を吐きながら学園周囲の警備をしていた。

 

「ん?」

 

すると、崖の上に学園を伺うピンク色の髪の少女を見つける。

 

「あれは…」

 

 

 

 

 

「どちら様ですか?」

 

「ふえ?」

 

突然声が聞こえて雲雀が振り返ると黒髪の一部に紅いメッシュの入った同学年の少年が立っていた。

 

「あ、あの…ひ、雲雀は怪しいものじゃなくって…」

 

「よくみたらその制服うちのじゃない…ってことはもしかして…」

 

「ひっ…」

 

少年は雲雀を見つめ、雲雀は固まってしまう

 

 

 

 

「お客様ですか!!」

 

「ふえ?」

 

まったく見当違いの言葉に雲雀はキョトンとした。

 

「そ!そうなの!!春花さんにどうしても会いたくて…」

 

「春花さんに?わかりました案内しますよ」

 

こうして少年に連れられて雲雀は蛇邪学園へと入っていった。

 

 

 

 

 

「いや〜ここまで来るの大変でしたでしょう?侵入者対策に険しくしてるから…」

 

「う、うん…」

 

「あ、そうだ春花さんに連絡入れないと…」

 

「何やってんだお前?」

 

すると、突然聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと…

 

「あ、炎佐さん!!」

 

「貴方は…」

 

雲雀の前にいたのは仮面ライダーガリュー、炎佐であった。

 

「お客様が春花さんに会いたいそうだったので案内してたんですよ」

 

「お客様?」

 

少年の答えに炎佐はこっちを向く

 

「「……………………。」」

 

炎佐と雲雀が見つめ合う。

 

「おい理吉」

 

「はい?」

 

「お客様ってこいつか?」

 

「はい、春花さんの知り合いみたいで…」

 

「ふんっ!!」

 

「いってぇぇぇぇぇぇ!!」

 

瞬間、理吉の頭部に渾身の拳骨が炸裂した。

 

「な、何するんですか炎佐さん!?」

 

「お前馬鹿か!?前から思ってたがやっぱり馬鹿なのか!?こいつは半蔵学院の忍だぞ!!」

 

「えぇぇぇぇぇぇ!?この人お客様じゃないんですか〜!!」

 

「違うわ!!てか何も疑いもせず学園に入れやがって…何のための警備だ!!」

 

「ごめんなさぁぁぁい!!」

 

炎佐は怒りながら理吉に何度も拳骨をお見舞いした。

 

 

 

 

 

「まったく…春花には俺が連絡入れるからお前は持ち場に戻ってろ…」

 

「うぅぅぅ…す、すいません…」

 

理吉は殴られた頭を押さえながら持ち場へと戻っていった。

 

「さて…」

 

炎佐は春花に連絡を入れる。

 

 

 

「春花…お前に用があるって例のやつが」

 

『そ、意外と早かったわね』

 

「お前の部屋に連れてくれば良いんだな?」

 

『ええ、お願いね』

 

 

 

「こっちだ」

 

炎佐は電話を切ると春花を連れて歩き出した。

 

 

 

 

 

「春花、入るぞ」

 

『ええ、どうぞ』

 

扉の向こうから声が聞こえて炎佐は中へと入る。

 

「うおぉぉぉぉぉっ!?」

 

炎佐が慌てて目を手で隠す。なぜなら…

 

「あら、失礼しちゃう」

 

春花はタオルを巻いただけの姿だったのだから

 

「服を着ろー!!」

 

「しょうがないでしょ?こっちはお風呂に入ってたんだから」

 

「だったら最初からそう言えっ!!ったく…」

 

炎佐はそのまま部屋を出ていった。

 

「ふふっ相変わらず面白いリアクションね♪」

 

「あ、あの…」

 

「ふふ、彼ってからかいがいがあるからつい苛めたくなるのよ」

 

春花は面白そうに笑いながら雲雀を見る。

 

「それで、ここに来たってことは…私の誘いに乗ってくれるってことで良いのかしら?」

 

「うん、雲雀は春花さん達の仲間になる…雲雀はもう、半蔵学院には戻れないから…」 

 

「そう、わかってくれて嬉しいわ」

 

春花はそういうと雲雀を抱きしめる。

 

「大丈夫、悪いようにはしないわ。貴方は安心して私に身を委ねなさい」

 

「は…はい」

 

(あの男の命令なんてどうでもよかった…私はこの子さえ手に入ればそれでよかったのよ…)

 

(待っててみんな…必ず雲雀が忍法書を取り返すから!!)

 

 

 

 

「春花の野郎…ふざけやがって」

 

訓練所では炎佐が春花にからかわれたことにイライラしていた。

 

「ふん、春花様の胸なんかに取り乱すなんてまだまだなんだから」

 

そんな炎佐を未来は馬鹿にする。

 

「安心しろ、少なくともお前だったら毛ほども動じないから」

 

「毛ほどもってどういうことよ馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

炎佐の返答に未来は傷つき号泣する。

 

「み、未来さん落ち着いて…」

 

「うっさいわよ理吉ぃ!!下っ端のくせにあたしを哀れむんじゃないわよぉぉぉ!!!」

 

警備を交代して訓練に戻った理吉に慰められるもの未来は号泣し続けた。

 

「なんだ、また炎佐が未来を虐めてるのか?」

 

すると、焔達が炎佐のところへとやってきた。

 

「虐めてねーよ」

 

「うえぇぇぇぇん詠お姉ちゃぁぁぁん!!炎佐が…炎佐があたしの胸じゃ毛ほども動じないってぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「あっ、てめぇ!!」

 

「まぁ!!」

 

「炎佐さんそんな酷いこといったん?」

 

「炎佐……お前……」

 

未来の言葉に詠、日影、焔が炎佐を白い目で見つめる

 

「いや、だから俺が言いたいのは…」

 

「あ、春花さん」

 

炎佐が慌てて弁明知ろうとすると理吉がこちらへ向かってくる春花と雲雀を見つけた。

 

「あら、みんなお揃いね」

 

「あ、その…」

 

「あら、その娘ってたしか半蔵学院の忍ではないでしたっけ?」

 

すると、詠が春花の後ろにいる雲雀に気づく

 

「理吉さん、貴方たしか今日は警備担当ではありませんでしたっけ?」

 

「侵入者許しとったら懲罰もんやで」

 

「あ…いや、その…」

 

「ふふふ、安心なさいこの娘は今日から私たち蛇邪のメンバーよ」

 

「なに?」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

春花の言ったその言葉に春花を除く選抜メンバーと理吉は驚く

 

すると焔が雲雀に近づく

 

「本気なのか?」

 

「はっ、はい…もう半蔵には戻れませんから」

 

少々怯えた表情で焔の問いに雲雀は答えた

 

「そうか、ではお前は今日から私たちの仲間だな」

 

「え?」

 

えらくあっさりと認めたことに雲雀は驚く

 

「簡単に信じるのが信じられないって顔だな」

 

そんな雲雀に炎佐が話しかける

 

「う、うん…」

 

「悪忍の世界は『来るものは拒まず』って言ってな。善忍の世界より寛大なんだ。だから歓迎する、ようこそ蛇邪学園へ」

 

そう言って炎佐は雲雀に手を差し出す

 

「よ、よろしくお願いします」

 

雲雀も炎佐の手を握った。

 

「春花、お前が連れてきたんだから教育係はお前に任せて良いな?」

 

「ええ、むしろそうして欲しいわ」

 

「じゃあ任せた」

 

「ええ。さ、ついてきて」

 

「う、うん…」

 

 

 

 

 

 

 

その後、炎佐達と別れた雲雀と春花はとある部屋に招かれた

 

「お待たせ雲雀、鈴音先生よ。私たちの教官様」

 

「半蔵学院から寝返ったというのはお前か?」

 

「はっ、はい…」

 

「…にわかには信じ難いな」

 

鈴音のその言葉に雲雀は胸を痛める

 

「全例がないわけではありませんでしょ?寝返ったことでより優秀な忍となる可能性だってありますわ…ねぇ鈴音先生?」

 

「…確かに、ではその者の件はお前に任せる」

 

「御意のままに」

 

春花とつられて雲雀も頭をさげる。すると、鈴音は部屋を出ていった。

 

「雲雀、あの鈴音先生はね元善忍なのよ」

 

「えっ?」

 

「あなたのようにそう言う人もいるってことよ。でも他言はしないでね、これトップシークレットだから」

 

「…あの人も雲雀と同じ」

 

春花から聴かされたそのことを深く考える雲雀だった

 

 

 

 

 

「部屋に待機って言われたけど…落ち着かないな…」

 

俺は屋根の上に登って月を眺めていた。

 

「っ!?」

 

何者かの気配を察した佐介はその方へ目を向けるすると屋根の上から自分を見下ろす女性らしき人影が、それは…

 

「あんたは…あの時の…」

 

忍島でメドゥーサにやられた俺を助けてくれた悪忍の女性が立っていた。

 

「なんでここに?」

 

「仮面ライダーリューマ、手合わせ願おう」

 

そういうと女性は両手の巨大手裏剣で攻撃してきた。

 

「おもしれぇ!!変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

俺はリューマに変身してファングクナイで手裏剣をガードする。

 

「…あの頃よりさらに強くなってるようだな」

 

「師匠がいいからな!!」

 

俺はファングクナイで連撃を繰り出す。すると、彼女もその攻撃を軽々と防いでしまう。

 

「やっぱり強いな…」

 

再び身構えるが彼女はそれ以上攻撃してこない

 

「なんだよ?もう来ないのか?」

 

「続きがしたいならここへ来い」

 

そういうと彼女はクナイを投げる。それを受け止めると一枚の紙がついていてそこに何かが書いてある。

 

「これって…」

 

「凛!!」

 

そこへやってきたのは動揺した顔の霧夜先生だった。

 

「…やっぱりお前だったんだな」

 

「…お久しぶりです、霧夜先生」

 

「答えろ!!なぜお前が悪忍に…」

 

「それが知りたいのならそこに来てください…では」

 

竜司に渡した紙に視線を送り凛さんは立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでダメなんですか!!」

 

半蔵学院に戻った俺は霧夜先生に食ってかかっていた…そのわけは…

 

「だから待てと言ってるだろう。今回の話はそんな簡単じゃないんだ。このままでは善忍と悪忍の全面抗争にも発展しかねん。」

 

凛さんの渡した紙に書いてあったのは蛇邪学園の地図だった。場所がわかったのでいざ向かおうとしたら霧夜先生に止められたのだ。

 

もし下手に攻め入ればそれを善忍側からの宣戦布告とみなされさらなる争いに発展してしまう。霧夜先生の言うこともわからなくはない。しかし、

 

「でもこうしてる間にも雲雀は敵地に一人でいるんですよ!?霧夜先生いつも言ってるじゃないですか!!仲間を守れって!!俺は仲間を見捨てる気はない!!」

 

「それは俺だって同じだ。俺も雲雀を助けたい…だが俺たちが下手に動けば忍の世界の秩序を乱したとして本部が黙ってない。下手すればお前らが粛正されて…」

 

 

 

 

 

「なら、上からの指示が有れば良いのですね?」

 

突然声が聞こえてそちらを向くと

 

「神門様!?」

 

神門様が護衛を連れてやってきた。

 

「竜司さん、貴方に緊急の任務があります」

 

「緊急の任務?」

 

「実をいうと、我々はある1人の男について調査していました。」

 

神門様はそういうと一枚の写真を見せる。そこには片目に傷のある悪人面の男がいた。

 

「この男は道元、表向きは実業家ですが…実際は悪忍側の人間で秘立蛇邪学園の出資者であります。しかし…この男、それだけに飽き足らずスカル達とも通じて奴らの研究施設に多額の出資をしていると調査によって判明しました。」

 

「スカルと!?」

 

「はい、スカルは全ての忍にとっての敵、故に私たちはこの男を見過ごすわけにはいきません…そこで」

 

神門様は俺の方を見る。

 

「竜司さん、並びに半蔵学院忍学生に緊急任務、道元の潜伏先である秘立蛇邪学園に潜入しスカルとの関与の証拠を発見次第これを即討伐せよ!!その際、蛇邪学園生徒との戦闘もやむなしとする!!」

 

「神門様…はいっ!!」

 

俺は神門様に感じしながら全力で返事した。

 

「これで良いですね?霧夜殿?」

 

「神門様…感謝します」

 

霧夜先生も嬉しそうに神門様にお礼を言った。

 

「仲間を救えずして何のための忍かって奴ですよ、そうですよね?半蔵様」

 

「うむ」

 

するとそこへ半蔵も現れる。

 

「じいちゃん!?」

 

「じっちゃん!!」

 

「今回の件、全ての責任はこの半蔵と神門様がとる、誰にも文句を言わせん」

 

 

「伝説の忍と善忍の最高幹部のお墨付き…全力で暴れてやるぜ!!」

 

「はぁ…貴方はどうしてそう楽観的なんですか…」

 

「良いじゃないですか、それがかつ姉なんだから」

 

「じゃあ行こう!!蛇邪学園に!!」

 

「もちろんだ…そして雲雀を必ず助ける」

 

俺たちは覚悟を決めて出撃の準備をする。

 

「あ、竜司さん。忘れてました…これを」

 

そういうと神門様は一枚のカードキーを渡す。

 

「新しいシノビークル用のアイテムです。きっとお役に立つと思います。」

 

「へへっ…ありがとうございます!!」

 

俺はお礼を言って準備に向かった。

 

 

 

 

 

「いいか、任務は蛇邪学園の調査!!並びに超秘伝忍法書の奪還!!そして雲雀の救出だ!!」

 

霧夜先生は準備を終えた俺たちに命じる

 

「ただし、一番の任務は…必ず雲雀を連れて帰り、生きて帰って来い」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「よし、全員出撃!!」

 

「変身!!」

 

「武装!!ティラノ!!」

 

その合図とともに全員が忍転身して俺は仮面ライダーリューマに変身、一人ずつ順に抜け穴に入っていく、それと同時に滝の中から出撃のためのゲートができ、最新機器を搭載した専用のカイトに乗り込み空へと飛び立つ。そして俺は

 

『シノビークル!!』

 

シノビークル・大地を展開して神門様からもらったカードキーを挿し込む

 

『カイトモード!!』

 

すると、シノビークル・大地が変形してカイトのような姿になって俺と合体する。

 

「おぉ〜かっこいい〜!!」

 

俺はハイテンションで空へと飛び出した。

 

「よっしゃ行くぜ!!蛇邪学園!!」

 

善忍と悪忍、半蔵学院と蛇邪学園、両者の信念の闘いが今始まる!!

 







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其の二十八 潜入で決戦!!の巻

「鈴音先生が裏切った?」

 

蛇邪学園最上階、道元に呼び出された炎佐達選抜メンバーは衝撃の事実を告げられていた。

 

「不覚だった。鈴音が半蔵学院出身であった事を忘れてはいなかったが…… ここを知った半蔵も、恐らく奇襲を掛けて来るだろう。お前達の手でこれを迎撃し、1人残らず殲滅せしめるのだ。」

 

道元は深刻そうな顔でそう命じる

 

(白々しい…功を焦って独断で超秘伝忍法書を奪うよう命じたのはテメェだろ…)

 

そんな道元を炎佐は憎らしく睨みつけた。

 

「どうした炎佐、返事が無いが?」

 

「…御意」

 

睨みつける道元に炎佐は目を閉じて頷いた。

 

「ふん、まあ良い… これは我が学園だけでなく、悪忍存亡の戦いと心得よ。敗北は許さん!仮にもお前達が敗北した時は…即、軛の術を発動させる!」

 

軛の術とは、術者の意のままに、術を掛けられし者の生死を操る外法の術である。

 

「誇りある我が秘立蛇邪学園を代表する忍衆よ。よもや不安もあるまいな?」

 

「背水の陣ってやつね」

 

「ふん、お戯れを。我らが負ける事などあり得ません!」

 

「せやな。」

 

「寧ろ、多少の張り合いがあると言うものですわ。」

 

「所詮、私達は軛の術からは逃れられないんだし♪」

 

「…問題ありません」

 

焔達に続いて炎佐も承諾した。

 

「炎佐、貴様はリューマの小僧を倒しドライバーを回収しろ、あれほどの力…我らが使うに相応しい」

 

「…承知しました。」

 

炎佐は静かに頷くと部屋を立ち去った。

 

 

 

 

「…大変、みんなに伝えないと!!」

 

それを隠れて聞いていた雲雀は竜司達にそれを伝えるべく動き出した。

 

 

 

 

 

「炎佐さん!!鈴音先生が裏切ったって…本当ですか!?」

 

戻ってきた炎佐に理吉は慌てて問い詰める。

 

「あぁ、それで半蔵学院の奴らがもうじきここに攻めてくるそうだ。」

 

「そんな…鈴音先生ほどの人が…どうして…」

 

鈴音先生の裏切りを知った理吉はショックで落ち込む

 

「理吉、とりあえずここに書いてある配置で今動ける忍学生を動かせ。『炎佐からの命令だ』とでも言っとけば動く筈だ。」

 

炎佐はそう言って理吉に印をつけた学園の地図を渡す

 

「は、はい!!」

 

「よし、頼んだぞ」

 

炎佐は理吉の頭を撫でるとそのまま歩き出していった。

 

「…多少予定は狂ったが…問題ねえ、あとは…」

 

炎佐はヘビ丸を携帯電話モードにして春花に連絡を入れる。

 

「春花、頼んでたやつもう出来てるだろ?すぐ持ってきてくれ」

 

『出来てるわよ、こっちはちょっと手が離せないから自分で取りに来てくれない?私の部屋に置いてあるから』

 

「…なんかトラブルか?」

 

『ええ、あの子、最初から超秘伝忍法書が狙いだったみたい』

 

春花の言葉に炎佐は立ち止まった。どうやら雲雀は最初から自分達の仲間になる気はなかったようだ

 

「…そうか、残念だな。わかった、そっちは任せたぞ」

 

『まかせて♪』

 

炎佐はそのまま電話を切ろうとした。

 

『待って』

 

しかし、春花が突然それを止めようとする。いつもと違う真剣な口調で

 

『…とうとうやるのね』

 

「やっぱ気付いてたか、俺の企みに…」

 

春花は現選抜メンバーの中でも一番炎佐と付き合いが長い、同じ師である鈴音先生の元で鍛えられてた時からの付き合いだ。やっぱりこいつは騙せないかと炎佐はため息を吐く

 

『安心なさい、誰にも言わないから。ただ…やるからには確実にやりなさい。』

 

「わかった…ありがとな春花」

 

そう言うと炎佐は電話を切り春花の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「不味いな…思ったより警備が厳しくなってる」

 

「的確に要所要所に配置している…相手側の指揮官が優秀な証拠だな」

 

蛇邪学園近くに着地した俺達は双眼鏡で学園を見てみる。

 

「下手に潜入してもすぐに応援を呼ばれて全滅するのがオチです。」

 

「じゃあどうしたら…」

 

「ねえねえみんな、良いこと思いついたんだけど…」

 

俺は思いついた作戦をみんなに話し出した。

 

 

 

 

「しかし善忍の奴ら本当に来るのかねぇ…」

 

「さあな、でも炎佐さんが言うんだから間違いないと思うぜ」

 

警備を任された蛇邪学園の忍学生が持ち場で話している。

 

「やっぱりあの人はすごいよ、リューマってやつが出てくるより前からガリューとしてスカルを倒していたんだから」

 

「ガリューになる前の武勇伝もたくさんあるし、本当、俺達悪忍の誇りだよ」

 

「まあでもあの人のこと良く思ってない連中もいるんだよなぁ…何度もあの人の寝首掻こうとしてるみたいだし」

 

「まあでもそういう奴らはみんな炎佐さんに返り討ちにされてるけどな」

 

「あ、でもそういえば聞いたか?『あいつら』…謹慎解けたみたいだぞ」

 

「げっ…マジかよ…このタイミングで…?空気読めって…ん?」

 

すると、橋の向こうから誰かが近づいてくる。

 

「誰だお前!?」

 

警備が武器を突きつけると、

 

「秘伝忍法!!激烈拳!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

竜司は秘伝忍法で警備もろとも門を吹き飛ばした。

 

「殴り込みじゃぁぁぁぁぁ!!」

 

竜司の叫び声が学園に響き渡った。

 

 

 

『こちら正門警護班!!半蔵学院の忍学生が単身乗り込んできました!!特徴からリューマの変身者と思われます!!至急応援を!!繰り返す_____』

 

「まさか…こんな作戦で来ようとは…」

 

春花の部屋から『あるもの』を取りに行った帰り道、突如聞こえた報告に炎佐は驚愕する。竜司の考えた作戦は至ってシンプル。自分が単身正門から直接派手に乗り込んで敵の注意を引きその隙に他のメンバーが別の場所から侵入するものだ、だが考えても実行するなんてありえない。そんな作戦を実行するなんてよっぽどの馬鹿しか…

 

「いや、馬鹿だからこそか…」

 

しかし、炎佐は怒りに震えながらも笑い出す

 

「上等だ仮面ライダーリューマ…その作戦、敢えて乗ってやるよ…その上でテメェを完膚なきまでに叩きのめす…そして、俺の目的の踏み石になりな…」

 

 

 

 

「行こうみんな!!」

 

その頃、竜司を除く飛鳥達は別の場所から蛇邪学園に潜入した。

 

「竜司さん…大丈夫でしょうか…」

 

「なぁーに言ってんだよ斑鳩!!」

 

心配する斑鳩に葛城は笑って返答する

 

「あいつは簡単にやられたやつじゃねえ…それはお前も良く知ってんだろ?」

 

「葛城さん…」

 

「惚れた男のことくらい信じてやれよ」

 

「なっ…/////」

 

葛城の言葉に斑鳩は顔を真っ赤にする。

 

「…そうですね、竜司さんなら大丈夫ですね。ありがとうございます葛城さん」

 

「へへっ、どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

「くそっ!!まさかこんな真っ正面から攻めてくるなんて…」

 

「それも一人で…俺達蛇邪学園を舐めてんじゃねえぞ!!」

 

一方その頃俺は、警備の忍学生に取り囲まれていた。全員刀やクナイ、鎖鎌などを構えている。もうかなり倒したのだが中々数が減らない

 

「こっちも友達攫われてムカムカしてんだ…全員相手してやるからかかって来い!!」

 

俺も拳を構えて迎え撃とうとする。

 

「おいっ!!炎佐さんを呼んで来い!!こいつが本当にリューマだったらこれだけの人数がいても危険だ!!」

 

 

 

 

「それには及ばねぇぜ!!」

 

「っ!?」

 

突然気配を感じて躱すと俺のいた場所に銃弾が撃ち込まれていた。

 

「キキキッ、炎佐の奴…俺らを顎で使ってどんな策かと思えば…こんな間抜け面にまんまと破られるなんて情けねえな」

 

声がした方を向くと、左耳に安全ピンをつけた小柄な男、右目下にハートマークのペイントをした男、ベレー帽とメガネをつけた長身の男、顔じゅうに傷跡のあるスキンヘッドの男、長髪にサングラスをつけた大柄の男が立っていた。

 

「げえっ!?あいつらは…」

 

「MK5!!」

 

 

 

 

 

秘立蛇邪学園男子生徒達には現在大きく分けて二つの派閥がある。

一つは選抜メンバー筆頭である炎佐を尊敬するメンバーによる炎佐組、最もこの炎佐組は彼らが炎佐を尊敬して勝手にそう名乗っているだけなのだがそれでも彼を慕う連中によって絶大な規模を持っている。

 

もう一つは炎佐のことを快く思わない連中による反炎佐連合、現在の選抜メンバーは全員元々炎佐がスカウトした連中によって形成されており、それが気に食わない者達によって成り立っている。彼らは事あるごとに炎佐の寝首を掻こうとして返り討ちに遭っている。

 

そしてこいつらは、その反炎佐連合に属しているのだが…

 

あまりの残虐さにこの蛇邪学園でも近寄る者はいない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というか誰も近づきたくない奴らなのである。

いつも空気を読まずに炎佐に喧嘩を売り、頼んでもないのに炎佐の受けた任務に首を突っ込み、もうほんと空気読めない連中である。

 

もうほんと、マ(M)ジで・空(K)気読めない・5(5)人組である

 

そんなわけだから

 

「ふざけんなー!!」

 

「お前らなんかお呼びじゃねえんだよー!!」

 

「いつも炎佐さんの邪魔しやがってー!!」

 

「ひっこめー!!」

 

「空気読めー!!」

 

大ブーイングである。

 

 

 

 

「キキキッ、選抜メンバーだけが蛇邪じゃねえんだぜ」

 

そんな大ブーイングもお構いなしにMK5は竜司に近づく

 

「お前を倒せばそのドライバーは俺達の物」

 

「そして炎佐を蹴落として俺達が選抜メンバーになるのさ」

 

「ガリューに選ばれたってだけで偉そうにしてるあの目障りやろーも、あいつの子分も全て潰し」

 

「始まるのさ」

 

「俺達の伝説が」

 

 

 

   

 

 

 

 

「いや長い!!」

 

痺れを切らした竜司のパンチが炸裂した。

 

MK5嶋村(しまむら)、瞬殺

 

「お前ら誰だかわかんないし!!」

 

MK5中田(なかた)、瞬殺

 

「派閥とか俺知らないし!!」

 

MK5茶藤(ちゃとう)、瞬殺

 

「あとキャラ濃すぎるし!!」

 

MK5武宇(ブー)、瞬殺

 

「これ以上イライラしたくないんだよ…」

 

「ば、馬鹿な…」

 

 

 

 

 

「空気読めやぁぁぁ!!!」

 

MK5碇(いかり)、瞬殺

 

 

 

「え、MK5が瞬殺!?」

 

「強すぎる…」

 

「でもなんかスカッとした!!」

 

なんか鬱陶しい咬ませ犬っぽい連中返り討ちにすると周りが騒めく。

 

「お、俺達だって炎佐さんの元で鍛えてきたんだ、狼狽えるな!!」

 

「そうだ!!数ではこっちが勝ってる。確実に傷を与えて消耗を誘うぞ!!」

 

しかしすぐに持ち直して再び武器を構えてにじり寄ってきた。

 

「やるしかないか…」

 

俺は再び身構えた。

 

 

 

 

「待たせたなお前ら」

 

突然声が聞こえると、空から炎佐が飛び降りてきた。

 

「おおっ、炎佐さん!!」

 

「もうこっちのもんだ!!」

 

「俺らも加勢します!!」

 

炎佐の登場に他の忍学生達も士気が高まっていく

 

(まずいな…炎佐にこの人数が相手じゃ流石にきついぞ…)

 

「いや、お前らは他の場所へ向かえ」

 

しかし炎佐は彼らにそう指示を出す。

 

「え、炎佐さん!?それはどうして…」

 

「この数でいけば確実に…」

 

彼らも炎佐の指示に動揺する。

 

「こいつは陽動だ。おそらく他の奴らは手薄になったとこからもう学園内に入っている。お前らはそっちに回れ」

 

「炎佐さん…わかりました!!」

 

「ご武運を!!」

 

すると、彼らは炎佐の指示通りに各地へと向かった。

 

「さて、これで俺達を邪魔する奴はいない。心置きなくやれるぜ」

 

炎佐はそう言ってカグラドライバーを腰に装着する。

 

「あと、陽動作戦は悪くなかったが詰めが甘いな。一般生徒を引きつけたとしてもまだ焔達がいる。あいつらは俺があちこちから見つけてきた精鋭だ。他の奴らに倒せるかな?」

 

「勝てるさ」

 

炎佐の言葉に俺は迷わず答える。

 

「俺の仲間を舐めるなよ。みんな、俺の信用する最高の仲間だ!!」

 

俺はカグラドライバーを装着して叫んだ。

 

『ティラノ!!』『スピノ!!』

 

俺はティラノキーを、炎佐はスピノキーを起動してカグラドライバーの鍵穴に挿し込む

 

『『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』』

 

ベルトから音楽が流れ出す

 

「「変身!!」」

 

『武装!!ティラノ!!』『武装!!スピノ!!』

 

鍵を回すとティラノサウルスの幻影とスピノサウルスの幻影が現れ互いにぶつかり合いながらそれぞれの全身を覆い、俺は仮面ライダーリューマに、炎佐は仮面ライダーガリューへと変身する。

 

「いくぞガリュー…今日こそ決着をつける!!」

 

「かかってきなリューマ…叩き潰してやるからよぉ!!」

 

2匹の竜の闘いが今始まる




すいません、ちょっと遊びましたw

反省はしていないw


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其の二十九 闘いと譲れないもの!!の巻

「やはり来たか…」

 

道元は自室で竜司達の侵入の報告を聞き舌打ちした。

 

「超秘伝忍法書を手にしてその力を使って『最強の力』を手にする私の完璧な計画がまさかこんな形で水を差されるとは…これで万が一にも失敗なんかしたら…」

 

悪忍達から手を切られるくらいならまだいい。だがスカルの奴らからも見限られたら自分はお終いだ。

 

「まあいい、超秘伝忍法書は2つとも私の手にある。これさえあれば計画は成功する。そうなれば…炎佐ももう用済みだな」

 

今まではデータ集めにもなるしスカルとの繋がりを上層部にバレないようにする為の隠れ蓑として使えたから野放しにしていたが、計画さえ成功すればもう奴には用はない。

 

「なんの心配もない、最後に笑うのはこの私だ」

 

道元は陰の書と陽の書、2つの超秘伝忍法書を睨みつけ呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

飛鳥達は裏口を使ってなんとか学園内へと入ると隠し廊下を走っていた。

 

「りゅーくんが時間を稼いでいる間になんとか雲雀ちゃんと超秘伝忍法書を取り戻さないと」

 

「待ってろ雲雀…」

 

すると突然爆弾が自分達の方へと放たれた。

 

「な…これは」

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、半蔵学院の皆様方」

 

すると、前方から声が聞こえて詠が大剣を手に現れた。

 

「万が一に備えて屋敷内を見張れという炎佐さんの指示が当たったようですわね♪」

 

「待ち伏せ!?」

 

すると、さらに増援の忍学生が現れる。

 

「侵入者だ、本当にいたぞ!!」

 

「炎佐さんの読み通りだ!!」

 

「加勢します詠さん!!」

 

彼らは武器を手に飛鳥達を取り囲む。

 

「くそっ!!こんな時に…」

 

敵の増援に葛城は舌打ちした。そんな中、斑鳩が前に出る。

 

「わたくし達は仲間達と、超秘伝忍法書を取り戻しに参りました。邪魔するのなら…容赦はしません!!」

 

飛燕を構える斑鳩に続いて飛鳥達も戦闘態勢に入る。

 

「他人の家に土足で踏み込んでその横暴な物言い、流石お金持ちの娘ですわ。次は札びらで頬でも叩きます?お行きなさい!!」

 

「はっ!!」

 

詠が命じると蛇邪の忍達が一斉に襲い掛かった。

 

「なっ…!」

 

そんな中、斑鳩が飛び出して詠へと斬りかかる

 

「皆さん、この方はわたくしにお任せください!!」

 

「斑鳩さん…!!」

 

「させるか…」

 

それを阻止しようと忍学生が数名、斑鳩へと向かう

 

「おりゃぁ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

しかし、それを葛城が蹴り飛ばして阻止する。

 

「斑鳩ぁ!!任せたぞ!!」

 

「はい!!忍結界!!」

 

葛城に頷くと斑鳩は忍結界を展開して詠を引き込んだ、

 

「かつ姉…」

 

「心配すんな、アタイはアイツの強さを信じてる。それに…自分の惚れた男が頑張ってんだ。負けるわけねえよ」

 

「その所為で最近斑鳩さん怖いけどね」

 

「余裕こいてんじゃねー!!」

 

すると忍学生の1人が斬りかかってくる。

 

「うわぁっ!?」

 

しかし、柳生の仕込み番傘の狙撃によって吹き飛ばされる。

 

「俺達はまずこいつらを片付けるぞ」

 

飛鳥達は残った雑兵達に身構えた。

 

 

 

「あなたのお友達、無事に潜り込んだようね。」

 

牢屋に閉じ込められた雲雀に春花が話しかける。

 

「これも先生の思惑通り?」

 

春花は向かいの牢屋にいる鈴音に話しかけるが彼女は何も喋らなかった。

 

「まぁいいわ、その方が面白そうだし」

 

「だ、ダメだよ!!闘って負けたら春花さん達死んじゃうんだよ!?」

 

雲雀は慌てて春花を止めようとした。

 

「大丈夫よ、私たちが負けることはないもの」

 

「果たしてどうかな?」

 

すると、先ほどまで黙っていた鈴音が口を開いた。

 

「半蔵学院を、霧夜を甘く見ない方がいい」

 

「あら先生、それはどうして?」

 

「あの人は生徒が負ける度に敗因を精査し、弱点を補う。持てる長所を伸ばす修行をしてるはず。それも確実に。」

 

鈴音の言葉に春花は何かに気づいた。

 

「なるほど、つまりあなたがこれまでに私達にやらせた半蔵学院の奇襲は全てあの子達を鍛える為だったってこと?」

 

「あなた達は私の最高の忍生徒よ。相手も、それを見合う相手になってもらわなくてはな。ロードスカルが忍島を襲撃したのは想定外だったが、結果としてリューマの少年を鍛え上げる結果となった。」

 

「…まぁいいわ、何を企んでいようとあなたと炎佐は私を地獄から救ってくれた恩人、ここでのことは聞かなかったことにするわ」

 

 

 

「この学園、でかいくせに中はまるで迷路だな」

 

「簡単には入らないってわけだな」

 

詠を斑鳩に任せた飛鳥達は学園の中間辺りまで来た。

すると、

 

「うわぁ!?」

 

突然、床が開いて葛城と柳生が落ちてしまう。

 

「かつ姉!!柳生ちゃん!!」

 

飛鳥は慌てて2人を助けようとするが

 

「来るな飛鳥!!」

 

「お前は先に行け!!」

 

2人は飛鳥に先を急ぐように言う。

 

「でも…」

 

「アタイ達はお前を信じる、だから飛鳥もアタイ達を信じろ」

 

「心配するな、すぐに合流する」

 

「……わかった!!」

 

飛鳥は2人を信じて先を急いだ。

 

 

 

 

 

「あーあ、1人逃しちゃったわね」

 

「仕掛けが間に合わなかったな〜。あの子、足速いわ」

 

罠に落ちた葛城と柳生の前に日影と未来が現れる。

 

「ま、いいんじゃない?あの先には焔が待ち構えてるし、それにまだこっちには炎佐もいる。リューマなんてすぐに倒して追いつくでしょ?」

 

「せやな、炎佐さんが負けるわけないしな」

 

「あの2人を舐めてくれるじゃねえか…」

 

「悪いが…通させてもらうぞ!!」

 

葛城と柳生は日影と未来を相手に構えた。

 

 

 

 

 

「最後に残ったのはお前か…」

 

「っ!?」

 

屋上目前まで辿り着いた飛鳥を待ち構えていたのは褐色の少女、焔だった。

 

「焔ちゃん…」

 

焔は立ち上がると両手に三本ずつ刀を握る。

 

「ここを通りたければ私を倒すことだな」

 

鋭い眼でこちらを睨み構える焔に飛鳥も武器を構える。

 

「私は負けない…雲雀ちゃんを助けて…超秘伝忍法書を取り返すんだから!!」

 

飛鳥と焔、2人の因縁の戦いが今始まる。

 

 

 

 

「お願い春花さん、ここを開けて!!」

 

その後、鈴音先生が牢屋を抜け出した際、看守が落とした鍵を取ろうとした雲雀は春花に見つかってしまった。

 

「ここを出てどうするの?」

 

「みんなに術のことを伝えないと…だってこんなの忍の使命と関係ないよ!!」

 

雲雀はなんとか春花を説得しようとする。

 

「ふふふ、そうね。でもそんなのどうでもいいの」

 

「私はただ自分の居場所を守りたいだけ」

 

「自分の…居場所?」

 

春花はどこか懐かしそうに話し出した

 

「私の父は大病院の院長だったのだけど…金に物を合わせて自分のミスを揉み消すような最低の人間だった…」

 

家にもたまにしか帰って来ず他所に愛人を作り自分なんて見向きもしなかった。その鬱憤を晴らすかのように母は自分に歪んだ愛情をむけた。

 

「愛情…違うわね、私は母の着せ替え人形同然だったわ。中学までは耐えてたけど、いつしか私は壊れてたのね…」

 

 

 

 

 

 

『全部…全部燃やせば…私は…』

 

ガソリンを撒き家を焼こうとした。そうすれば、その火で自分もろとも全て燃やしてしまえば解放されると信じて

 

 

 

 

 

『こんなことしても熱いだけだぞ』

 

私の手に持っていたライターを奪ったのは自分と同年代の少年だった。

 

『どうせ焼くなら炭火で魚を焼け』

 

『さ、魚って…』

 

そう言う問題じゃないだろう…そう思ったが、その言葉を聞いたらなんだかさっきまで絶望していた自分が馬鹿らしくなってきた。

 

『鈴音先生が言うにはお前には傀儡の術の才があるってよ』

 

『くぐつ…?』

 

突然そう言う彼にキョトンとする。

 

『とりあえずこっち来い』

 

『え…きゃっ!?』

 

『心配すんな、悪いようにはしない』

 

彼は私を担ぐと屋根を駆け抜けていった。

 

 

 

 

 

『それでろくに説明もしないで連れてきたのか』

 

『す…すいません鈴音先生…』

 

私を連れてアジトへ辿り着いた彼は鈴音先生と呼ばれた女性にゲンコツされてた。

 

『まったく…やはり私が連れてくるんだった…』

 

『え…ええと…』

 

私が戸惑ってると鈴音先生は私に近づき 

 

『自分の今を変えたいのなら私がその力をお前に教えてやる』

 

 

 

その後、私は鈴音先生に教えてもらった傀儡の術で父を操り、自身の罪を自白させそのまま鈴音先生の元で忍になることとなった。

 

 

 

 

「どうせ焼くなら魚を焼けって…彼ってそう言うとこがあるのよね〜でも、何故か彼のそんな言葉が私を救ったのよね」

 

懐かしそうに話を終えた春花は牢屋の鍵を開く

 

「鍵を…どうして?」

 

「あなた達が本当に勝てるか私が試してあげるわ」

 

「春花さん…」

 

「さぁ、遠慮しないでかかってらっしゃい」

 

雲雀を春花が煽る

 

だが雲雀の覚悟は決まっていた

 

「忍、転身!…いくよ春花さん!」

 

「いつでもどうぞ」

 

春花を連れ、忍結界に転移する雲雀だった

 

 

 

 

 

「はあぁぁぁぁっ!!」

 

「せぇぇぇぇいっ!!」

 

その頃、詠と斑鳩の闘いは激しさを増していた。詠の大剣を斑鳩が飛燕で防ぎ、今度は斑鳩の斬撃を詠が躱す。

 

「あなたはいちいち不愉快ですわね!ずっとずっとそうでしたわ!」

 

「ずっと?」

 

詠の言葉に斑鳩は引っかかる。思えば彼女は事あるごとに自分に敵意を向けてきた。まるで自分自身に恨みがあるかのように…

 

「何故そこまでわたくしが憎いのですか?一体どこで…」

 

「私の住んでいた場所は…食べるものも満足に無い地獄のような場所でしたわ」

 

詠は怨みを含んだ目で話し出す。

 

「両親が私を置いて消えた後は…1人で飢えと寒さと闘いながら生きてきた。そんな中、テレビにあなた達が映っていた。」

 

そこでは鳳凰財閥の総帥である男性が貧困に苦しむ国へと多額の寄付金を出したことが挙げられていた。人々は彼をなんと立派な人間なのかと称賛した。しかし、私が抱いたのは違う感情だった。

 

「自分達の国の身近に!!飢えで苦しむ私達がいるのに!!よその国に寄付をして称賛されている貴方の父親が許せなかった!!」

 

 

 

そんな中、1人の少年が私の前に現れた。

 

『お前の両親から頼まれてな、うちで面倒見ることになった。』

 

私の両親は自分の命を削って私の為にお金を稼いでいたのだ。当時蛇邪学園で人材発掘を任されてた彼はたまたま知り合った私の両親から私を助けて欲しいと頼まれていたのだ

 

『最期までお前の幸せを願ってたよ』

 

その言葉を聞いた私は、涙を拭いながら彼と共に蛇邪学園へと向かった。

 

 

 

「捨てるほどある金をばら撒いているだけのくせに笑わせないでください!!善忍の善は偽善の善!!あなたとあなたの家族は、その代表ですわ!!」

 

詠は己の怒りを燃やしながら、自分の過去の苦しみをぶつけながら大剣を斑鳩へと叩きつけた。

 

「貴方の過去はよく分かりました…」

 

すると、斑鳩は静かに話し始める。

 

「貴方にとって…私やお父様達がどれだけ許せないかも…」

 

しかし、その目は真っ直ぐと詠を見つめる。

 

「ですが…だからといって…」

 

 

 

 

 

「わたくしの大切な仲間を傷つけさせていい理由にはなりません!!」

 

 

 

 

 

「なっ…!?」

 

その迷いなき眼に詠は動じてしまう。

 

「貴方に譲れないものがあるように、わたくしにも譲れないものがあります」

 

斑鳩は飛燕を構えて命駆を発動する。

 

「だから…ここは絶対に負けられません!!」

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

葛城と日影の戦闘は苛烈を増していた。

 

「しつこいなぁ…もう何回も斬っとんのに…」

 

日影の攻撃を喰らってもなお立ち上がりその眼は力強くこちらを睨みつけている。

 

「負けるわけにはいかねえんだよ…」

 

 

「後輩に…かっこいいって…尊敬するって言われちまったからなぁ!!」

 

 

 

 

(この眼や…)

 

葛城の眼を見て日影は心の中で呟く

 

(暑苦しい…感情溢れるムカつく眼や…)

 

 

日影は幼い頃施設にいた。そこは孤児に戦闘技術を叩き込み兵士として育て上げる犯罪組織であった。そこでは『感情』は不要とされ、ただ敵を殺す為の戦闘マシンとして扱われ、いつしか自分から感情が無くなった。

 

しかし、いつしかそこでの生活に見切りをつけある日施設を脱走した。

そんな日影をある山賊が拾い上げた。

 

日向というその山賊は彼女に愛情を注いでくれた。いつしか、日影はそんな彼女に憧れるようになった。

 

しかし、日向はある日敵の罠にかかり命を落としてしまう。それから日影は1人、再び芽生えた感情も殺して孤独の中、山賊活動を続けた。

 

 

『はぁ…はぁ…すごいな…』

 

その少年はある日突然現れた。1人で山に入ってきたからカモだと思って襲ったら思いの外強く激しい戦いの結果敗れてしまう。

 

『最近この辺にめちゃくちゃ強い山賊が出るっていうから来てみたが…想像以上だ。』

 

傷だらけになりながらも立つその少年はニヤリと笑うとこちらへ近づいてくる。

 

『殺したきゃ殺せや、ワシは命乞いなんかせんで』

 

『やだよ、もったない』

 

『は?』

 

もったない?どういうことか分からずにいると

 

『お前さ、うち来いよ』

 

突然自分を勧誘してきた。

 

『お前ならうちの選抜メンバーも夢じゃないぜ』

 

『本気かいな?さっきまで自分の命を狙ってたワシを勧誘するとか』

 

『いいんだよ、これだけの強さ…ここで失う方が馬鹿だ』

 

そう言って自分を勧誘する彼の眼…真っ直ぐと見つめる信念に満ちた眼 

 

『ええで、アンタについてく』

 

 

 

 

「気に入らん…気に入らんわ…アイツと同じ眼を持つ奴が…平和ボケした善忍どもにもいるなんて…」

 

葛城の眼に苛立つ日影

 

「気に入らん?…はは…ワシにそんな感情があったんか…」

 

日影は笑みを浮かべ葛城に向き合う

 

「ワシは負けんで…アンタなんかには…」

 

「アタイもな!!」

 

 

 

 

 

「でやああああああああ!!!」

 

傘に仕込んだマシンガンを連射する未来。枯れた大木がマシンガンの弾丸を受け続けて倒れた。

 

「凄い気迫だな…それに、以前より遥かに強くなってる。」

 

柳生は未来の急激な成長に驚きを隠さずにいた。

 

「守りたいものが。あたしに無いとでも思ってんの!?」

 

未来は真っ直ぐと柳生を見て叫んだ。

 

「あたしにだって…あるんだからぁ!!」

 

 

 

 

未来は幼少期、苛烈なイジメにあっていた。どこにいても自分に居場所は無く、周りからの悪意ある視線と笑みが彼女を傷つけていった。

そんなある日、彼女は町外れの森でいつものように同じ忍学校のいじめっ子達からイジメられていたところ、とある悪忍に遭遇してしまう。

 

 

 

『やれやれ、こっちに敵意はないっていうのに…仲間を置いて逃げるか普通……』

 

悪忍の男はため息を吐きながら囮同然に置いていかれたあたしを見つめる。

 

『いや、そもそも仲間じゃないのか…』

 

男はゆっくりとこっちに近づいてくる。

あたしはアイツらが落としていったクナイをこっそりと掴む。

 

『うわぁぁぁぁぁ!!』

 

『なっ!?』

 

あたしがヤケクソにクナイを振り回すと男は咄嗟に避けきれず手を怪我する。

 

『来るなら来なさいよ!!どうせ殺されるなら…アンタも道連れにしてやる!!』

 

 

 

 

『ぷっ…あっはっはっはっは!!』

 

突然男は笑い出した。

 

『な、なによアンタ。急に笑い出して…』

 

『いや…いいなお前…お前を置いて逃げてったアイツらよりずっと良い…気に入ったよ』

 

男は笑みを浮かべるよ武器の片手斧をしまい近づいてきた。

 

『仲間にならないか?』

 

『はぁ!?』

 

突然の提案にあたしは驚いた。

 

『どうせアイツらのとこに戻っても居場所がないんだろ?』

 

『あ…』

 

その言葉に自分は確かにと心の中で思った。

 

『それだったら今持ってるもん全部捨てて、こっちに来いよ』

 

男はニコリと笑って手を差し伸べる。

 

『…そっちに行ったら…あたし、強くなれる?』

 

『多分な』

 

『アイツら見返せる?』

 

『お前次第でいくらでもな』

 

その言葉を聞いて、あたしは彼の手を取った。

 

 

 

 

 

 

「アイツが…炎佐があたしに居場所をくれた…だから…負けられないのよ!!」

 

未来の言葉に柳生は静かに呟く

 

「お前が何を守りたいのかは分からん。知るつもりも無い。だがその為に、お前が戦っているのなら…」

 

そして柳生は身構える。

 

「俺もお前と向き合おう」

 

「そうこなくっちゃ!!」

 

自分を無視しない、立ち向かってくる柳生に未来は喜んだ

 

 

 

 

 

「まさか…ここまで強く…」

 

「焔ちゃんこそ…」

 

飛鳥と焔の闘いはほぼ互角であった。

 

「だが…私は負けない…お前なんかに!!」

 

 

 

焔の家系は善忍の名家であった。元々高い素質のあった彼女は両親からも将来を期待されて育っていた。

 

しかしある日、自分の信頼していた教師に命を狙われた。男は自分の一族の抹殺を命じられた悪忍であり自分に優しくしたのも彼女の警戒を解くための演技であったのだ。

我が身を守る為教師を半殺しにした焔、しかし相手側の方が上手であり自身の正体を裏付ける証拠を一切残していなかった。

 

結果、恩師に暴力行為を働いたとして焔は善忍としての資格を剥奪され両親からも勘当されてしまった。

 

行くあてもなく生きる希望もなく町を彷徨っていた時、彼に出会った。

 

 

 

『もったいないな…お前くらいの逸材をみすみす手放すなんて、ほんと善忍の奴らは馬鹿ばっかりだよ』

 

私の前に立つ少年はそう言うと私に一枚の紙を渡す。

 

『なんだこれは?』

 

『蛇邪学園の入学手続きの紙、もしよかったらうち来いよ。どうせ善忍の世界じゃ忍になれないんだしさ。』

 

『正気か?私は善忍の家系だぞ?』

 

『ああ、元・な』

 

『貴様…』

 

馬鹿にするように笑みを浮かべるそいつに私は苛立つ

 

『悪は善より寛大なんだ。『来るものは拒まず』ってな。』

 

『………面白い』

 

そう呟き、私は紙を受け取った。

 

 

 

 

 

「名のある柄に生まれ、人を疑う事を知らずに育ったお前に………この私が負けるはずがない!!!」

 

焔は凄まじい勢いで刀を振るい飛鳥を攻撃する。しかし、飛鳥もそれを躱して反撃する。

 

「ぐっ…」

 

「私だって…負けられないから…」

 

じっちゃんの名に恥じない忍になる為に、半蔵学院で出会った仲間の為に、幼い頃からずっと一緒に修行をしてきた幼馴染の為に!!

 

「私は……諦めない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

譲れない想いを胸に闘う善忍と悪忍

 

この闘いを制するのは果たしてどちらか

 

そして、仮面ライダー同士の闘いの結末は如何に!!




ごめんなさい
夢中になって描いてたらめっちゃ長くなってしまいましたw


もし良ければ感想よろしくお願いします。


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其の三十 2匹の竜で大決戦!!の巻

お待たせしました!!
最新話更新です!!


「もう城内で争いが起こってる…」

 

学園内を走り回っているのは炎佐の舎弟の理吉である。生徒たちへの指示を終えた彼は侵入者へ対処するために仲間達と合流しようとしていた。

 

「炎佐さんに頼まれたんだ…俺だってやれば出来るってところを見せるんだ!!」

 

いつもうっかりミスで周りに迷惑ばかり、そんなんだから『落ちこぼれ』と馬鹿にされてた俺を炎佐さんは叱りはすれど決して見捨てたりしなかった。誰よりも強く周りから慕われるそんな彼に一歩でも近づきたい、そして…願うなら…

 

「…っ!?なんだ…?」

 

突然正門近くで凄まじい揺れが起きた、そちらへ振り向くと…

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

2匹の恐竜が争っている幻影が見えた。

 

 

 

 

「おりゃぁ!!」

 

「ちぃっ!!」

 

俺のファングクナイの攻撃をガリューはスピノアクスで防ぐ。すぐさま回避するとさっきまで俺のいた場所にガリューの強力な蹴りが放たれる。

 

「これでもくらいなぁ!!」

 

ガリューはさらにスピノアクスで連撃を繰り出してきた。

 

「ぐっ…このぉっ!!」

 

俺はファングクナイで全て払い除ける。

 

「ふっ!!」

 

そして不意に放たれた右ストレートをもう片方の手で防いだ。

 

「…よく防いだな」

 

「教える人が上手いからな」

 

以前の霧夜先生による特訓が役に立って良かった。師匠との特訓もしっかり活きている。

 

「だから…俺の全力を見せてやる、はぁぁぁっ!!」

 

そして俺は全身から力を放って命駆モードへと変身した。

 

「命駆モードか…そっちがその気なら…!!」

 

『ブラキオ!!』

 

ガリューはブラキオキーを起動するとカグラドライバーの鍵穴に挿し込む。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。すると、ガリューの背後に巨大なブラキオサウルスが現れた。

 

「変身!!」

 

『武装!!ブラキオ!!』

 

ガリューは鍵を回して背後のブラキオサウルスへと飛び込むとブラキオサウルスは変形して仮面ライダーガリュー・ブラキオ武装になった。

 

「さぁ…思う存分楽しもうか!!」

 

「こっちは楽しみに来たんじゃなくて仲間助けに来たんだってば!!」

 

俺は命駆モードの超高速移動でガリューの巨大へと渾身のパンチを放つ、しかし、装甲が硬く少し後ろへ退がっただけであった。

 

「おりゃぁ!!」

 

「うわぁっ!!」

 

すると、ガリューは大剣を振り回して俺へと斬りつけてくる。俺はなんとか身を躱すがその斬撃は以前闘った時より遥かに速くなってる。どうやら成長しているのは俺だけではないようだ…

 

「けど…俺だって負けてねぇよ!!」

 

俺は再び高速移動をして先程と同じところへと連続攻撃を繰り出した。

 

「ちっ…このぉっ!!」

 

ガリューは俺へと攻撃してくるが俺はそれを躱して再び同じ場所へと攻撃した。

 

「お前…まさか…」

 

ガリューも気づいたようだ。どんなに硬い装甲でも同じ場所へと何度も攻撃していけばいずれ蓄積したダメージで破壊できる。

 

「この…!」

 

ガリューは咄嗟にその場所をガードする。しかしそれは悪手だ。

 

「無駄だ!!」

 

「ぐうっ…!」

 

俺はすかさず無防備になったボディに一撃を撃ち込む。

ガードを集中させれば当然他の場所はガードが甘くなる。

 

「このままいかせてもらうぜ!!」

 

俺はすかさず畳み掛ける。

 

「これで…どうだぁ!!」

 

「ぐうぅぅぅっ!!」

 

俺の渾身の一撃によりガリューの装甲にヒビが入った。

 

「へへっ…どうだ」

 

ガリューは再び立ち上がるが装甲のヒビは大きかった。

 

「やっぱりやるな…だがなあ…俺だって負けられねぇんだよ!!」

 

ガリューはブラキオ武装の中で再びブラキオキーを回す。

 

『ブラキオモード!!』

 

すると、鎧武者の姿が変わっていき巨大なブラキオサウルスの姿になった。

 

「………まじで?」

 

「強くなってるのはなぁ…お前だけじゃねえんだよ!!」

 

そう叫ぶとガリューは巨大な前足で俺に攻撃を繰り出す。

 

「このぉっ!!」

 

俺は躱すと無防備な背中へと攻撃を繰り出そうとした。

 

「甘えよ」

 

すると背中に砲身が現れてそこから光弾が放たれた。

 

「嘘ぉっ!?」

 

俺は咄嗟に躱してなんとか難を逃れた。

 

「おらよ!!」

 

「うわぁっ!?」

 

するとそこへ巨大な尻尾の一撃が俺へと迫ってきた。咄嗟にファングクナイで防ぐが吹き飛ばされてしまった。

 

「痛てて…リーチがさっきより長くなってる…てか背中に大砲ってそんなのアリか?」

 

「こいつはキョウリュウキーの中でも最強クラスのやつでな、ただ武装として使うだけじゃない…こう言う使い方も出来るんだよ。」

 

ガリューは得意げに言うと再び突進を繰り出してきた。

 

「上等だ…そっちがその気なら!!」

 

『ステゴ!!』

 

俺は命駆モードのままステゴキーを起動した。

 

「無駄だ、並の恐竜じゃブラキオに傷はつけられねえぞ。それに、その命駆モードってやつ…ティラノの形態じゃなきゃできないんだろ?」

 

ガリューの言う通りである。竜司は修行で他の武装でも命駆モードになれるか試してみたがなれなかった。どうやら自分と最もシンクロ率の高いティラノキーだからこそ出来た形態であるようだ。

 

「まぁな…でも、こういう使い方なら出来る!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺はファングクナイにステゴキーを挿しこみ回す。

 

「必殺忍法!!激竜手裏剣斬り!!」

 

ファングクナイを振ると巨大な手裏剣の斬撃が放たれる。

 

「なにっ…!?」

 

予想外の攻撃にガリューは驚くも躱しきれずくらってしまう。

 

「ステゴだけじゃないぜ!!」

 

『パキケファ!!』

 

今度はパキケファキーを起動してファングクナイに挿しこみ回す。

 

『必殺の術!!』

 

『必殺忍法!!激竜頭突きナックル!!』

 

ファングクナイを逆手に持ってパンチを放つと強力なパキケファロサウルスの頭突きが炸裂した。

その一撃は命駆モードの状態での一撃であるため極めて強力でブラキオの装甲にたしかにダメージを与えている。

 

「驚いたな…まさかそんな使い方があるなんてな…」

 

ガリューはつくづくリューマのセンスに驚いた。自分が思いつきもしない発想で次々と新しい技を編み出していく。

 

「だけどなぁ…俺だってなぁ…」

 

ガリューは背中の砲身を竜司へと向けて叫ぶ

 

「背負ってるもんがあるんだよぉ!!」

 

『必殺の術!!』

 

ガリューがドライバーを叩くとブラキオの口が開き背中の砲身と口が光だす。

 

「必殺忍法!!破山巨竜砲!!」

 

瞬間、背中の砲身と口から凄まじい光線が放たれた。

 

「…っ!!避けきれない……!!」

 

光線の範囲が広すぎて回避出来ない…それなら…

 

『必殺の術!!』

 

『必殺の術!!』

 

俺はすぐさまファングクナイにティラノキーを挿しこんで回しドライバーを叩く。

 

「こんなのやったことないけど…やるしかない!!」

 

おそらく奴の技は今までのどの技よりも強力なやつだ。半端な攻撃では凌げない。だからこそ自分の思いつく限りで最強の技を放つ!!

 

「必殺忍法!!激竜超命駆スラァァァッシュ!!」

 

ファングクナイから放たれた巨大な斬撃とブラキオから放たれた巨大光線がぶつかり合った。

 

「ぐぐぐ……」

 

「この………」

 

両者の技がぶつかり合い拮抗している。少しでも気を抜けば押し負けるだろう

 

「負け………るかぁっ!!」

 

俺は力の限りファングクナイを振るいなんとか光線を斬り裂くことに成功した。

 

「はぁ…はぁ…本当に…強いやつだ……」

 

まだ気は抜けない、まだガリューを倒せていない。俺は再び臨戦体制になって目の前にいるブラキオの巨大に身構えた。ブラキオはまだ稼働しておりこちらを睨みつけている。

 

「さあ来いよガリュー…俺はまだ動けるぜ…決着をつけようか!!」

 

 

 

 

 

 

 

「いいや、これで終わりだよ」

 

突然ガリューの声と共に背中に激痛が走った。

 

「がっ……」

 

突然の不意打ちに俺は対処しきれず倒れてしまった。

 

「そ…そんな…どうやって」

 

奴が入っていたブラキオはまだ目の前にいるのに…

 

「何も難しくねえよ。お前に最近散々うちの仲間が見せた術だよ」

 

そう言ってガリューが見せたのは右手についた腕輪であった。そしてガリューが指を動かすと微かに糸のようなものが見える。

 

「それってまさか…傀儡…?」

 

俺の言葉にガリューは頷く

 

「俺は春花程じゃないが傀儡の術を覚えててな、加えて春花に調整してもらったこの忍具で恐竜の力を傀儡で操れるようにしたんだよ。最後の必殺忍法を放つ際…俺だけブラキオから抜け出してお前に隙が出来るのを待ってたのさ」

 

ガリューはそう言いながら俺のカグラドライバーを取り上げると自分のカグラドライバーに近づける。

 

「さぁガリュー…お待ち兼ねの時間だ、リューマの力を残さず喰らいな」

 

ガリューはそういうと自分のカグラドライバーに俺のドライバーをかざす。すると俺のドライバーからオレンジ色の光が溢れ出しガリューのドライバーへと流れ込んでいった。

 

「な、なにを…」

 

「悪いなリューマ、お前の力…俺がいただくぞ」

 

すると、俺のカグラドライバーは石のような鈍色になって地面に落下してしまった。

 

「今このドライバーに宿っていたリューマの鎧の力…その全てをガリューの鎧へと取り込ませた。それはもう力の欠片もない…ただの絞りカスだ」

 

「そんな……!!」

 

衝撃の事実に俺は動揺した。

 

「鈴音先生はお前たちを成長させることで俺たちと互角に戦えるようにするつもりだった…それは俺にとっちゃ都合が良かったんだよ。お前が強くなればなるほど…その力を奪った時、俺はさらに強くなれるからな。」

 

「なんで…俺の力を…」

 

「どうしても必要だったんだよ……道元を殺すためにな」

 

「なっ……!?」

 

ガリューの言葉に俺は驚きを隠せなかった。

 

「どういうことだ!?道元はお前たちの仲間じゃないのか!?」

 

「……お前が知る必要はない。どのみちお前には力がないんだからな」

 

そう言ってガリューはそのまま立ち去ろうとした。

 

 

 

 

 

『炎佐、俺たちは悪だ…悪として生まれたものは絶対に善になれない…闇の世界に生きるものは、決して光の世界では生きられない』

 

思い出すのは、俺に忍の技を教えてくれた父のことだ。

 

『だがそれでいい、悪だからこそ出来ることがある。闇の世界に生きるからこそ救える命がある』

 

父は常に俺にそう教えてきた。自分たち悪忍のあり方を…存在の意義を…

 

『誇れ炎佐、悪であることを…闇に生きるものたちを、守れる力があることを…』

 

『はい、父上』

 

俺が返事をすると父は優しく微笑んだ

 

『お前は俺の誇りだ炎佐』

 

誰よりも誇り高く強い父は俺の憧れだった。

 

 

 

 

 

父が命を落とした。

俺は信じられなかった。誰よりも強い父が、誇り高い悪忍であった父が死んだことが…

父の死後、俺は独自に父の死の真実を調べた。真実を知るために…

 

父の死を調べて少し経ったある日…俺は父がある男について調査していたことがわかった。その男は道元、悪忍の世界では名の知れた資産家で悪忍育成機関に多額の出資をしている男だ、しかしこの男は金のためなら手段を選ばず裏で人道に反することなどもしているらしい。そして、奴が裏である存在と通じている可能性があることを突き止めたそうだ。

スカル…かつて日本を滅ぼそうとした異形の怪物たち、手練れの忍をも倒す存在。 

 

力がいる…そいつらを倒す力が…奴を…道元を殺す力が…

 

 

 

蛇邪の忍教師を新たな師として弟子入りし、蛇邪学園で当時の選抜メンバー筆頭を倒して新たな選抜メンバーになった。そして腕の立つ奴らを同じ選抜メンバーとして迎えそしてとうとうガリューの力を手に入れた。奴らに対抗する力を…だがそれだけじゃ足りない、奴らを倒すには…もっと力が…

 

善忍たちにはリューマの鎧というガリューと同じ力がある。その力を手にすれば…奴らを倒せるなら…手段を選ばない…

 

 

 

   

「これがリューマの力…こりゃすげーな」

 

ガリューは体に宿ったリューマの力に歓喜する。

 

「感謝するぜリューマ、お前の力で俺は強くなれた。」

 

そしてガリューは歩き出す、道元を殺しに。春花にバレたのは想定外だったが長い付き合いが功を奏して見逃してもらえたのはよかった。

 

「見てろよ…必ず奴を殺して…」

 

 

 

 

 

「まてよ」

 

突然声が聞こえた…いや、誰かはわかる

 

「お前がなんでそんなことをするのかわかんないけど…」

 

そこには奴がいた真っ直ぐな目でこちらを見つめるアイツが

 

「そこから先に行かせちゃいけないのはわかる!!」

 

 

 

「そうだよな…力を奪われたくらいで…諦める奴じゃねえよな…」

 

ほんとにムカつく奴だ…闇の世界も碌に知らない奴のくせに…まっすぐと俺を見つめるこいつが…世界一カッコイイ忍者なんてもんを目指すこのバカが……でも

 

「だったらどうする?」

 

 

 

 

 

「お前を止める!!」

 

そんなこいつが嫌いじゃない自分がいる

 



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其の三十一 意地と決着!!の巻

「これが目的だったのね炎佐…」

 

蛇邪学園の天守閣の屋根の上、鈴音は炎佐と竜司の闘いを見つめながら呟いた。

 

「リューマを倒し、その力を取り込むことでさらなる強さを手にする…そのために私の計画に手を貸したのね」

 

炎佐はリューマのカグラドライバーから力を取り込んでいた。

 

「良いわ、その力を手にした貴方が超秘伝忍法書に選ばれたとしたらきっと…」

 

「これがお前の望んだことか?」

 

ふと声がした方を向くと、そこにはかつての自身の恩師である霧夜が立っていた。

 

「自分の生徒が心配みたいね」

 

「いや、お前に会いに来たんだ凛」

 

霧夜の言葉を聞くと鈴音は再び炎佐の方へと目をやる。

 

「これは、証明よ。任務に失敗し、死に掛けた時、本当の強さは悪にこそある。私はそう悟った。それを証明したかったの。あなたの育てた生徒に勝つ事でね。そしてその悲願が炎佐によってまもなく成就しようとしてる。リューマの力を取り込んだ炎佐…ガリューなら、道元を倒して私の目指すスーパーニンジャに…」

 

道元の独断専行は想定外だったが今の炎佐なら奴を倒すことができる。そんな確信が鈴音にはあった。

 

「やはり今回の一件、道元の企みだったか」

 

「ええ、奴は陰と陽の超秘伝忍法書を一つにしてその力を自分のものにしようとしている。」

 

「バカな!陰と陽を1つにするのは、忍最大の禁忌だ!」

 

「問題ないわ、今の炎佐は誰よりも強い。あの子ならきっと…」

 

「否、竜司もいる」

 

ふと声がするとそこには大道寺がいた。

 

「この闘い、あやつの力が必要になる」

 

「彼は力を失ったわ…もう闘うことなんて」

 

「こんなことではあやつは折れん、力を失った程度では諦めんよ。なんたって…我の弟子なのだからな…」

 

 

 

 

 

「俺を止める…か、だったらやってみろよ!!」

 

ガリューは俺へと体を向けるとニヤリと笑いながらこちらにスピノアクスを向ける。

 

「いくぞ!!」

 

俺は拳を握りしめてガリューへと殴りかかった。ガリューはスピノアクスでガードしようと身構える。

 

「ぐっ!?」

 

しかし、ガリューはその力の強さに思わず半歩退がった。

 

「この力…どうなってる?」

 

リューマの力は完全に奪った筈だ。なのに竜司から溢れている力は間違いなく恐竜の力である。

 

「お前…いったい何をした?」

 

「ドライバーだけが仮面ライダーの力じゃねえんだよ」

 

竜司の手をよく見るとティラノキーが握りしめられていた。

 

「驚いた…まさか鍵から直接恐竜の力を引き出しているのか」

 

確かにキョウリュウキーには恐竜たちの凄まじい力が込められている。だがそもそもカグラドライバーはその力を人間が使用できるようにするためのもの、つまり鍵があっても人間に恐竜の力は使えない

 

「大したもんだよ、やっぱりお前はただもんじゃねーな」

 

「お褒めの言葉どーも!!」

 

『ティラノ!!』

 

俺はティラノキーを起動して炎佐に殴りかかった。

 

「ちぃぃぃっ!!」

 

「おりゃぁ!!」

 

俺の連撃を炎佐はガードしながら後退する。

 

「舐めるな!!」

 

「ふっ!!」

 

炎佐は反撃とばかりにスピノアクスを振り回してくるがそれを回避する。

俺は再びティラノキーを握りしめた右手でガリューを殴りつけた。

 

「ぐぉっ!?」

 

ボディに俺の一撃を喰らったガリューは吹き飛ばされる。

 

「いくぞティラノ!!」

 

俺はティラノキーの力を限界まで引き出して拳に力を蓄えた。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」

 

渾身の力を込めた拳をガリューに叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い一撃だったぞ」

 

しかし、ガリューはその拳の一撃を難なくガードした。

 

「マジ…かよ」

 

「残念だったな、土壇場でここまで力を発揮したのは見事なもんだが、こんな急拵えの技で倒せるほど今のガリューは甘くないぜ」

 

するとガリューは体から赤とオレンジ色のオーラを一気に放出した。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

その衝撃は凄まじく俺は勢いよく吹き飛び壁に激突した。

 

「感謝するぜ竜司、お前のおかげで俺は最強の忍になれた。もうお前に用はない」

 

そういうとガリューは俺に背を向けて立ち去ろうとした、

 

 

 

 

「ほんとにすごい力だ、制御には時間がかかりそうだが…道元を倒すには十分だ」

 

ガリューは自分から溢れる力に驚きを隠せずにいた。

 

「父上…あんたの無念は俺が晴らす。だからもう少し待ってくれ」

 

 

 

 

瞬間、誰かが足を掴んだ。

 

「待て…よ」

 

竜司だ、彼はボロボロになりながら足を掴んでいる。

 

「お前にもう用はない。そう言ったろ?」

 

ガリューはそう言って歩き出し竜司の手を振り解く、しかし竜司はそれでもなおガリューの足を掴んだ。

 

「待てって…いって…るだろ…」

 

「いい加減にしろ!!」

 

ガリューは叫びながら竜司を蹴り飛ばす

 

「往生際が悪いんだよ!!もう勝負はついたんだ!!もうテメェは仮面ライダーじゃねえんだよ!!諦めろよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「関係…ねえんだよ…」

 

ガリューが叫ぶと竜司はそう言いながらふらふらと立ち上がる

 

「力があるとかないとか…そんなの…関係ねえんだよ」

 

ボロボロになりながらもその目は真っ直ぐとガリューを睨みつけていた。

 

「俺は…『世界一カッコイイ忍者』になることが目標なんだ…ただ強いだけじゃない…変身する力があるからじゃない…自分の信じるもののために…目標のためにまっすぐ歩いて闘い続ける、そして守りたいものを絶対に守る!!それが俺の目指す『世界一カッコイイ忍者』なんだ!!こんなところで寝てなんかいられないんだよ!!」

 

 

 

 

「……ああそうかよ、それならもう容赦しねえぞ」

 

『必殺の術!!』

 

ガリューがドライバーを叩くと全身から赤とオレンジ色のオーラが出てガリューを包み込む

 

「必殺忍法!!煉獄炎竜蹴り!!」

 

ガリューは飛び上がり強力な蹴りを俺に向けて放った。

 

「負けるかぁぁぁ!!」

 

『ティラノ!!』

 

俺は再びティラノキーを起動して拳に力を纏って放った。

 

「ぐぅぅぅぅ…!!」

 

しかし、ガリューの一撃は凄まじく徐々に押されていく

 

「これで終わりだ…諦めろ!!」

 

勝利を確信したガリューは竜司にそう叫ぶ

 

「諦めるわけ……ねえだろうがぁぁぁ!!」

 

だけど竜司は諦めない、今も闘ってる仲間のために…そして、自分の目指す『世界一カッコイイ忍者』になるために!!

 

 

 

 

    

その時、竜司の前に何かが竜司を守るように現れた。

 

「これは…カグラドライバー!?」

 

それは先程ガリューに力を奪われたリューマのカグラドライバーだった。

 

「どうなっている…なんでそれが…」

 

動揺するガリューを無視してカグラドライバーは吸い込まれるように俺の腰に装着される。

 

「え…?」

 

瞬間、目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

「ここは…?」

 

ふと気づくと、俺は森の中にいた。そこは美しい緑が生い茂りどこからか鳥の声が聞こえた。

 

「あれ?」

 

よく見ると目の前に誰かがいる、何故か顔は見えないが自分ほどの背丈の男性であることだけは分かった。

 

「あなたは一体…」

 

『お前が望むなら…力を貸そう』

 

男はそう告げ俺に向かって手を伸ばす。

 

「…あぁ、力を貸してくれ!!」

 

この人が誰なのか…何故かそれはすぐにわかった。そして俺は差し出されたその手を見て迷わず握りしめた。何故なら、その人からとても優しく温かい気配を感じたから

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉ!?」

 

突然竜司の前に現れたカグラドライバーから放出されたエネルギーにガリューは思わず吹き飛ばされる。

 

「なんでだ…?カグラドライバーの力は奪った筈なのに…なっ!?」

 

煙が晴れた先から現れたのは腰に力を奪われて鈍色になったカグラドライバーを装着した竜司が立っていた。

 

「一緒に戦ってくれ…相棒!!」

 

『グォォォォォ!!』

 

竜司の言葉に答えるようにカグラドライバーから雄叫びが聞こえ元のオレンジ色へと輝きを取り戻した。

 

「馬鹿な!?リューマの力は完全に奪った筈だ!!いったい何をした!?」

 

「…俺にもわかんね」

 

取り乱すガリューに竜司は笑みを浮かべて答える。

 

「でも、これでまた戦える!!」

 

『ティラノ!!』

 

俺はティラノキーを起動してカグラドライバーに挿し込む

 

『ドンドロロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ堂々復活!!いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

 

 

「…まぁいい、だったらお前をもう一度倒して…今度こそ完全にその力をいただくまでだ!!」

 

ガリューはそう叫ぶとスピノアクスを振り上げて俺に斬りかかってきた。

 

「ふっ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

しかし、俺はそれよりも早くガリューを殴り飛ばした。

 

「このっ…それなら!!」

 

『ブラキオ!!』

 

ガリューがブラキオキーを起動すると巨大なブラキオサウルスが現れた。

 

「いけぇっ!!」

 

『グォォォォォ!!』

 

ガリューが右手を前に出して命じるとブラキオサウルスは唸り声を上げながら俺へとのしかかってきた。

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

しかし、俺はブラキオの前足を殴ってのしかかりを弾き返した。

 

「なにっ!?」

 

「せいやぁっ!!」

 

驚いたガリューへと俺は連続攻撃を繰り出し流石のガリューもそれに耐えきれず壁に激突する。

 

 

 

 

 

「そんな…馬鹿な…あいつのどこにそんな力が…」

 

ガリューはフラつきながらリューマの力に驚愕した。例え力を取り戻したとしても今の自分にはリューマから奪った力もある。だというのに今のリューマの力は以前とは比べ物にならない強さである。

 

「いや…まさ…か…」

 

その時、ガリューはある一つの答えに辿り着いた。

 

(奴は今までそのずば抜けたセンスでリューマの力を使ってきた。そのセンスで俺が思い付かないような戦い方を思いついてきた…)

 

だが…もし奴が今までそのセンスのみでリューマの鎧を使っていたとしたら?もし先程の戦いで、完全にドライバーを使いこなしたとしたら?

 

(これが奴の…仮面ライダーリューマの…本当の実力…!!)

 

侮っていた訳ではなかった…だが、リューマの才能は自分が予想したより遥かに凄まじいものだったのだ

 

「俺は…こんなところで…」

 

その時、ガリューの脳裏に浮かんだのは自身に忍の技とあり方を教えてくれた父のこと、そしてこんな自分を信頼して今日までついてきてくれた仲間たちの顔だった。

 

「負けられないんだぁぁぁぁぁ!!」

 

『必殺の術!!』

 

ガリューはカグラドライバーを叩くとブラキオサウルスが背後に立ちそこへガリューが飛び上がりキックの構えをする。

 

「必殺忍法!!煉獄破竜蹴りィィィィ!!」

 

ブラキオサウルスの口から光線が放たれそれによって推進力の増したガリューのキックが放たれた。

 

「お前にも譲れないもんがあるんだな」

 

『必殺の術!!』

 

俺は命駆モードになるとカグラドライバーを叩き全身にオレンジ色のエネルギーを纏う

 

「でも、それは俺も同じ!!」

 

俺は飛び上がりガリューへと渾身のキックを放つ

 

「必殺忍法!!激竜命駆キック!!」

 

ガリューとリューマ、2人のキックがぶつかり合いその衝撃で木や岩が崩壊する。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ぐぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

両者のキックが拮抗する

 

『________________!!』

 

「っ!!」

 

瞬間、俺の頭に声が聞こえてその内容に驚愕する。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そして俺は更に力を放ち徐々にガリューを押していく

 

「せいやぁぁぁぁぁっ!!」

 

そしてとうとうガリューへとキックが炸裂した。

 

「ば……馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺の一撃はそのままガリューと共に天守閣近くの壁へとぶつかった。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

城の中へと入った俺は変身を解除する

 

「さて、炎佐の奴は…」

 

「どういう…ことだ?」

 

声がしたそこには変身を解除した炎佐がいた。

 

「何故途中で手を抜いた?さっきの必殺忍法…情けをかけたつもりか?」

 

あの時、俺は放出した力は必殺忍法の力を上げるためでなく推進力に変えて壁にぶつけるためにしたものだ。炎佐もそれに気づいたみたいだ。

 

「あのままやっていれば問題なく俺を倒せていた…なのに何故…」

 

「だってお前達……負けたら死んじゃうんだろ?」

 

 

 

 

『みんな戦っちゃダメ!!蛇邪の人たちは戦いに負けると命を失っちゃう術がかけられてるの!!』

 

あの時、俺の頭に雲雀の念話が聞こえてきた。それを聞いて俺は炎佐へとダメージを最小限にするように調整したのだ。

 

「俺たちはあくまで雲雀を助けにきたんであってお前らを倒しにきたんじゃないんだよ」

 

「本気で言ってるのか?俺たちは敵だぞ」

 

「それでもだよ」

 

炎佐の問いに俺は迷わず答える。

 

「敵だから死んでも良いなんてそんなの俺の目指す忍じゃない。だから…これで良いんだ」

 

「お前、馬鹿だな」

 

「かもね」

 

呆れる炎佐に俺は笑ってそう答えた。

 

 

 

 

 

 

「なかなか楽しい見せ物だったよ炎佐」

 

ふと、声が聞こえてそちらを向くとスーツ姿ので隻眼の男が笑みを浮かべながら立っていた。

 

「あいつは確か…道元」 

 

そう、奴こそ神門様が言っていた道元、今回の事件の黒幕であった。

 

「道元…テメェ…」

 

炎佐は道元を見ると怒りを露わにして睨みつける。

 

「お前たちの戦いに共鳴し二つの超秘伝忍法書に力は限界まで引き出された!!感謝するぞ!!」

 

瞬間空中に二つの超秘伝忍法書が浮かび上がり光り輝く

 

「さぁいよいよ始まるぞ!!私の完璧な計画がなぁ!!」

 

「一体…何が始まるって言うんだ…!!」




遂に動き出した道元の野望!!
道元の「完璧な計画」とは!?
竜司達の運命やいかに!?


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其の三十二 2人の仮面ライダー!!の巻

 

「仮面ライダーリューマ…お前たちには感謝しているぞ、お前たちの闘いで超秘伝忍法書が覚醒しわたしの完璧な計画が現実のものとなる!!」

 

道元は宙に浮いた二つの超秘伝忍法書を見ながらそう俺へと告げる。

 

「完璧な計画だと?」

 

「そうだ!!この計画が成功すれば…私は最強の力を手に入れこの国はおろか世界すらも手にすることができるのだ!!」

 

「ふざけるな…そんなこと…俺がさせると思ってるのかよ…」

 

ふと声が聞こえると炎佐が立ち上がりながらそう言った。

 

「炎佐か…今となってはもう貴様を生かす理由もない。父親と同じ場所へと連れて行ってやろう。」

 

道元は炎佐を見て笑みを浮かべる。

 

「やっぱり…お前が父上を…」

 

「ああそうさ、私がお前の父を殺した。奴は私のことをずっと探っていてね、私の計画の邪魔になるようだったから始末させてもらったよ」

 

道元は得意げに炎佐へと話し始めた。

 

「馬鹿な男だったよ。悪忍のくせに『人々を守るために闘う』なんて、挙句勝ち目がなくなっても一歩も引かず犬死して行ったよ…はははははは!!」

 

「てめぇぇぇぇぇぇ!!」

 

『武装!!スピノ!!』

 

父の死を嘲笑う道元に炎佐は怒りながらガリューへと変身しスピノアクスで斬りつけようとした。

 

しかし

 

「なに……!?」

 

スピノアクスの一撃は道元の手に持つ禍々しい装飾のスカルキーから生み出された障壁によって防がれてしまった。

 

「なぜ今行動を起こしたと思っている?貴様ら全員を相手取っても勝つことができるからなのだよ」

 

そういうと道元は超秘伝忍法書に力を注ぎ始める。

 

「さあ準備は整った!!今こそ私の完璧な計画が始まる…目覚めよ!!この地に眠りし巨大妖魔…怨楼血(おろち)よ!!」

 

すると、超秘伝忍法書から禍々しい光が放たれる。その時、

 

「…っ!?なんだ…?」

 

突然地鳴りのような轟音が響き天守閣が崩れ出していく。

 

「しまった…足場が…」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

突然足場が崩れたことで俺たちはそのまま落ちて行ってしまった。

 

 

 

 

「痛た…一体何が…」

 

瓦礫に巻き込まれた俺はなんとか瓦礫から抜け出すと周りを見渡した。

 

「なっ…あれは…!!」

 

 

 

 

そこには巨大な怪物がいた。まるで瓦礫を繋ぎ止めたような醜悪な竜に似たおぞましい姿の巨大な怪物が

 

 

 

 

「あれは…妖魔だと!?しかもあれほどの大型妖魔は見たことがないぞ!!」

 

少し離れた場所で様子を見ていた霧夜は現れた怨楼血に驚愕した。

 

妖魔…それは忍同士の戦いから生まれた膿のような存在。忍結界内で忍が流した「血」を糧に現世に誕生するとされる存在である。古来より忍はこれを討伐しているがその危険性から忍学園を卒業して一人前の忍と認めれたものが対処する存在とされている。

 

「道元め…まさかあれを復活させるとは…」

 

「凛!!もうこれはあいつらにどうこうできる範囲の問題じゃない!!俺たちも…」

 

「待つのじゃ霧夜」

 

慌てて竜司達の元へと向かおうとする霧夜を半蔵が止めた

 

「これはあやつらの闘い、儂らの出る幕じゃない」

 

「半蔵様!?しかし…」

 

「なーに心配はいらんよ、あやつらを信じるんじゃ」

 

半蔵は確信を持ってそう霧夜に言った。

 

 

「あれだけの力を注いでも完全な復活とはいかなかったか…」

 

怨楼血を見ながら道元は少し残念そうにそう呟く

 

「まあいい…時間が経てば完全復活も可能…厄介だったリューマとガリューに対抗する武器もここにある…私の計画は揺るがないさ…くくく…くはははは!!」

 

 

 

 

『弱いな…こんなのが今の蛇邪の選抜メンバー筆頭かよ。』

 

選抜メンバーになるために俺は当時の選抜メンバーの筆頭を倒した。そいつは元を辿れば道元の子飼いでありその地位と腕っ節をいいことに学園内で好き勝手している奴だった。腕があると言っても俺には遥かに劣る奴だったので叩き潰してやった。ついでに他のメンバーも奴の取り巻きに過ぎなかったので全員選抜メンバーから外してやった。

 

『今日からは俺が選抜メンバー筆頭だ』

 

 

 

 

 

『弟子にしてください!!』

 

『……またかよ』

 

あれからしばらくしたらこんなのが何人も俺も前に現れる…

 

『炎佐さんの強さに惚れました!!』

 

『俺も炎佐さんみたいになりたいです!!』

 

『どうか弟子に!!』

  

『…はぁ、勝手にしろ』

 

『『『よっしゃあぁぁぁ!!!』』』』

 

あまりに鬱陶しいので稽古くらいはつけてやることにした。

 

 

 

 

 

 

 

『炎佐さん!!お疲れ様です!!』×たくさん

 

なんかめっちゃふえた…

 

あれから2年…最初は片手で数えられるほどしかいなかった舎弟は学園の男子生徒の過半数にまで増えた。他の教師たちからも『面倒見てやってくれ』って丸投げされちゃったし…焔達からは面白がられるし…どうしてこうなった…

 

『はぁ…まあとりあえず訓練やるぞ』

 

『はいっ!!』

 

 

 

『炎佐さんがガリューの鎧の資格者に選ばれたぞ!!』

 

『炎佐さんならなれると信じてました!!』

 

『流石です!!』

 

念願だったガリューの力を手に入れた。この力があれば道元と結託しているスカル達にも対抗できる。これで俺の復讐も…

 

『炎佐組の伝説はここから始まるんだー!!』

 

『おお〜!!』

 

『おいちょっと待て!!なんだ炎佐組って!?恥ずかしいから絶対やめろ!!』

 

『えぇ〜良いじゃないですか炎佐組』

 

『やっぱ炎佐さんの名前を後世に残さないと…』

 

『お前らなあ…』

 

まったく…こいつらは…

 

 

 

 

 

 

しょうがねえなぁ

 

 

 

 

 

「ここは…」

 

目が覚めると天井の裂け目から空が見えていた

 

「俺は…一体…」

 

「あ、目が覚めた」

 

ふと声が聞こえてそちらを向くと竜司が包帯を手にして俺の横にいた。

 

「お前…なにやってんだ?」

 

「なにって…治療だよ治療、あの後倒れているお前を拾ってさ、そしたらこいつが医療キット持ってきてくれたからそれを使ったんだよ」

 

「こいつ?」

 

ふと竜司の指差す方向の先を見ると見知った顔がいた

 

「…理吉」

 

 

 

 

『えっと…どうしよう』

 

倒れていた炎佐を担いだ俺はなんとか医務室を見つけようとあちこち歩き回っていたが迷路のように入り組んだ道に迷ってしまい最初の場所に辿り着いてしまっていた。

 

『あっ!!』

 

『え?』

 

ふと声が聞こえると自分より年下の黒髪に赤いメッシュのある少年がこちらを見ていた。

 

『お、おまえ!!炎佐さんをどうするつもりだ!?』

 

俺に担がれてる炎佐を見た少年こと理吉は慌てて身構える。

 

『あ、ちょうどよかった。ねえ、医務室ってどこ?』

 

『はい?』

 

俺が医務室を聞くと理吉はポカンとする

 

『こいつを治療したいんだけどここ迷路みたいで…』

 

『な…なんで?』

 

『なんでって…こいつを助けるために決まってるだろ?』

 

『あんた善忍だろ!?どうして…』

 

『助けたいから』

 

『…………。』

 

そういうと、理吉は驚きながらも意を決したように頷く

 

『…医務室はここからかなり離れてる。ちょっと待って』

 

すると、理吉は制服のポケットから何やら小瓶を取り出した。

 

『…なにこれ?』

 

『これは蛇邪生徒が訓練の疲労で動けなくなった時に飲ませてさらに扱くために春花様によって作られた栄養ドリンク、その名も【幻鬼怒輪虎(げんきどりんこ)】です』

 

『ドクロマーク書いてあるけど大丈夫なの?』

 

理吉が取り出した小瓶に書かれたドクロマークに俺は警戒せざるをえなかった。

 

『これを飲めばあら不思議』

 

理吉はそういうとそれを炎佐へ飲ませる。

 

『あばばばばばばばばばば』

 

炎佐は変な声を出し始めた。

 

『おいなんか顔がすごい青くなってるぞ!!』

 

『大丈夫です』

 

『あばばばばばばばばばば』

 

『おい今度は顔が黄緑色になったぞ!!』

 

『薬が効いてる証拠です』

 

『あばばっあばっあばばば』

 

『顔がピンク色になって痙攣しだしたぞ!!』

 

『うわぁぁぁぁぁ!!これよく見たら水で割るタイプだった!!』

 

『あほー!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とまあなんだかんだでお前は助かったってわけ」

 

「あぁ…【幻鬼怒輪虎】原液で飲まされたのか…よく生きてたな俺…ってこんなことやってる場合じゃねぇ!!」

 

炎佐は起き上がり崩れた壁の隙間から外を見る。そこには禍々しい姿の怨楼血が雄叫びをあげていた。

 

「道元の野郎…本当に妖魔を復活させやがった…」

 

「なぁ炎佐、道元は何をやろうとしてるんだ?」

 

炎佐が何か知ってるようなので俺は聞いてみる。

 

「道元は…2つの超秘伝忍法書の力を使ってあの妖魔…怨楼血を復活させてその力と奴に引き寄せられた妖魔、そしてスカルキーを兵器として各国の軍や組織に売り捌くつもりだ」

 

「はぁっ!?」

 

俺は炎佐から聞いた道元の目的に驚愕した。

 

「そんなことになったらたくさんの被害が世界中で起きるじゃないか!!そんなことが…」

 

「そうだ、そんなことになったら世界の秩序が崩壊する。絶対に阻止しなくちゃなんねぇ…だから」

 

「炎佐さん!!」

 

すると、突然理吉が炎佐へと話しかける

 

「俺…今何が起こっているとかさっぱりわかりません…炎佐さんが何をしようとしてるのか…なぜその善忍が炎佐さんを助けるのかも…でも、これだけはわかります」

 

そういうと理吉は自分の髪の赤いメッシュを指差す

 

「俺が蛇邪学園に入ったのは…炎佐さんに憧れたからだってことです!!」

 

「理吉……」

 

「だから…炎佐さんは炎佐さんのやりたいようにしてください!!俺はそれを…全力で応援しますから!!」

 

まっすぐと自分を見つめそう叫ぶ理吉に炎佐はふっと笑みを浮かべる。

 

「まったく…しょうがねえなぁ」

 

そういうと炎佐は怨楼血の方へと歩き出した。俺はそれについていく

 

「…どうやら俺たちの敵は共通してるみたいだな」

 

「そうだな」

 

「俺たちは今まで結構戦ってきたけど…もし俺たちが手を組んだらどうなるんだろうな」

 

「きっと…凄いことになるぜ」

 

「違いねえ!!」

 

そういうと俺たちは走り出した。守るべきものを守るために

 

 

 

 

「道元!!」

 

天守閣へ戻るとそこには巨大な怨楼血を引き連れた道元がいた。

 

「ふっ、自ら死にに来るとはご苦労なことだな」

 

俺たちに気づいた道元は呆れたように俺たちを笑った。

 

「死にに来たんじゃない」

 

「俺たちは」

 

 

 

「「お前を倒しに来たんだ!!」」

 

『ティラノ!!』

 

『スピノ!!』

 

俺たちはカグラドライバーを腰に巻きキョウリュウキーを挿し込む

 

『『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』』

 

「「変身!!」」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

『武装!!スピノ!!』

 

鍵を回すとドライバーから現れた2匹の恐竜が俺たちを包み込み2人の仮面ライダー、仮面ライダーリューマと仮面ライダーガリューへと変身した。

 

「この世界を…お前なんかの好きにはさせない!!」

 

「あいつらの生きるこの世界は…俺たちが守る!!」

 

 

 

 

 

善の世界の仮面ライダーと悪の世界の仮面ライダー

 

本来敵であるこの2人

 

しかし道は違えど貫くものは同じ

 

 

 

 

さぁさぁいざ御覧じろ!!仮面ライダーの真の力を!!

 

 

 

 



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其の三十三 怨楼血と道元の野望!!の巻

「行くぞガリュー!!」

 

「足引っ張んなよリューマ!!」

 

俺とガリューはファングクナイとスピノアクスを構えて怨楼血へと向かっていき斬りつけた。

 

「小癪な…やれ怨楼血!!愚かな忍どもにお前の力に見せてやれ!!」

 

道元が命じると怨楼血は瓦礫の腕を振りかざして攻撃した。

 

「うおっ!?」

 

「ちぃっ!!」

 

俺たちはその攻撃を咄嗟に躱すと俺たちのいた場所は粉々になっていた。

リューマはその破壊力に驚愕した。

 

 

「こいつ…見た目に反して早い…」

 

「リューマ!!」

 

ガリューの声に気づくと怨楼血が触手から黒い光線を撃ってきた。

 

「くそっ!!」

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜忍斬り!!」

 

俺はファングクナイにティラノキーを挿しこみ回して必殺忍法を放ち光線を相殺した。

 

「油断するな馬鹿!!こいつは妖魔の中でも特に強い力を持つ大型妖魔だ!!一筋縄では倒せないぞ!!」

 

「わりぃ!!ちょっと油断してた!!」

 

炎佐の言う通りである。デカイ図体の割に動きも速く一撃一撃が極めて強力である。油断していたらやられる。

 

そう考えていたその時、

 

『我ハ…怨楼血』

 

「なっ!?」

 

「はぁ!?」

 

突然怨楼血が喋った。

 

「こいつ喋んのかよ!!」

 

『こ……コ、この城に……う、渦巻く無数の、お、お、怨、怨念。そ……ソ、そ、それが我……わ、我は……全てを、は、破、破壊する。全ての命に、し、し、死、シ、死を。全ての魂を、ム、む、ム、無、無に…わ、ワ、我は……全てを、ハ、破壊する。ただ、それだけの……そ、ソ、存在。』

 

「ふざけんな!!そんなこと俺たちが許すと思ってんのか!?」

 

「当然だ、テメェみたいなデクの棒に俺の学園を好きにさせるかよ」

 

俺たちはそう叫びながら怨楼血に立ちはだかった。

 

 

 

 

 

「ククク…素晴らしい…不完全な状態でこれだけの力を宿しているとはな!!この力があれば私に敵うものはいない!!」

 

そんな怨楼血を見て道元は喜び笑いだす。

 

「もはやスカル共もこの私の敵ではない…奴らに代わりこの私が世界の頂点に立ってくれる!!ククク…ハハハハハハ!!」

 

 

 

 

 

「道元め…やはり我々を裏切ったのか…」

 

蛇邪学園から離れた場所で様子を見ていたのは燕尾服を着た女性…メドューサスカルこと華蛇だった。最近道元が不穏な動きをしていたので動向を探りに来たらまさかこんな企みをしていたとは…

 

「何が我々の今後のためになることだ…我々に…陛下の計画にこれまでずっと貢献していたから多少の勝手は許していたが…もう我慢ならん!!私が粛清して…」

 

「その必要はないよ」

 

声が聞こえた方を振り向くと黒いスーツを纏った青年、弥勒が立っていた。

 

「へ、陛下!?しかし、これは明らかな謀反です!!それを許すなど…」

 

「僕らが出なくてもあの2人に任せておけば良いじゃないか」

 

なんと弥勒は手を出さずリューマとガリューに任せようと言うのだ。

 

「…あの2人に奴を倒せるのですか?道元の力…ロードスカルと同等の力を宿しています。さらにあの怨楼血という巨大妖魔…あの2人では荷が重いと思いますが…」

 

「さあね?」

 

華蛇の問いに弥勒は静かに答えた。

 

「まあ、あんな奴に倒される程度なら僕の期待外れだったってだけのことさ」

 

 

 

 

 

「リューマ、まだいけるな?」

 

「当たり前だろ」

 

たしかに怨楼血は強い…だが戦ってみて分かった。

 

「強いけど…これなら全く勝てないってほどじゃない!!」

 

「2人の連携で奴を倒すぞ、いいな?」

 

「元よりそのつもり!!」

 

そして俺たちは怨楼血へと駆け出した。

 

『全てヲ…破壊すル』

 

怨楼血はそう言って全身の触手と口から黒い光線を放ってくる。

 

「はぁっ!!」

 

しかし、俺たちはそれを躱して無防備になった頭部へと左右から攻撃を繰り出した。

 

『全てノ命ヲ…否定スる』

 

しかし、怨楼血は効かない様子で瓦礫の腕を振り上げて俺たちへと振り下ろした。

 

「なっ…めんなぁ!!」

 

するとガリューはスピノアクスで怨楼血の一撃を受け止めて持ち堪えた。

 

「どりゃァァァ!!」

 

俺はその隙を逃さず跳び上がって怨楼血の顎へと渾身のパンチを繰り出す。

 

『お…オぉォォォ…』

 

怨楼血はその威力で後ろへと倒れそうになる。

 

「いまだガリュー!!」

 

「任せろ!!」

 

俺の声に答えてガリューはスピノアクスで怨楼血の胴を斬り裂く

 

『我二…糧を』

 

しかし、怨楼血はしぶとく持ち堪え俺たちへと再び黒い光線を放とうとする。

 

「させるか!!」

 

『ブラキオ!!』

 

ガリューはブラキオサウルスを呼び出して怨楼血に体当たりさせ光線を阻止した。

 

『オオォォォォォォォォォォ…』

 

ブラキオサウルスの体当たりを喰らった怨楼血の瓦礫の体は崩れていく

 

「いくぞリューマ、ここで決めるぞ!!」

 

「おうっ!!」

 

『『必殺の術!!』』

 

俺とガリューはファングクナイとスピノアクスにそれぞれの鍵を挿して回した。

 

「必殺忍法!!激竜忍斬り!!」

 

「必殺忍法!!煉獄一閃!!」

 

2人の必殺忍法が怨楼血に炸裂しその胴は十字に斬り裂かれた。

 

『ぐ…グォォぉォォォ…』

 

怨楼血は断末魔を上げながら地面に倒れ伏した。

 

「はぁ…はぁ…なんとか倒せた…妖魔ってこんなに手強かったんだ…」

 

「普通は学園を卒業した一流の忍が対処する存在だからな。」

 

だがそれでも倒すことができた。あとは…

 

「さぁ道元!!あとはお前だけだ!!」

 

「もうお前の好きにはさせない…観念しろ!!」

 

残るは道元ただ1人、こいつを倒せば全て終わりのはず…しかし

 

「……ククク、大したものだ。」

 

怨楼血が倒されたというのに道元は全く動じていない様子だ

 

「まさか怨楼血をたった2人で倒すとは…さすがは『リューマの鎧』と『ガリューの鎧』に選ばれただけのことはある」

 

そういうと、道元は懐からスカルドライバーを取り出した

 

「だが!!この程度で私の完璧な計画は止められないのだよ!!」

 

道元はスカルドライバーを腰にはめながら甲高い笑い声をあげた。

 

「私は世界の支配者になる存在…全ての存在を超越した最強の力を手に入れたのだよ!!そしていずれ…全ての存在が私にひれ伏すのだ!!」

 

道元は声高々に叫ぶと禍々しい装飾のスカルキーを取り出した。

 

「愚かな貴様らにこの私の最強の力を見せてやろう…変身!!」

 

『ギャァァァァァァ!!』

 

道元がスカルキーを起動させると断末魔のような声が聞こえると道元はスカルドライバーにスカルキーを挿して回す。そうするとスカルドライバーの口からどす黒い泥が吹き出して道元を包み込んだ。

 

「ククク…クハハハハ!!力が満ち満ちるぞぉぉぉぉ!!」

 

すると、泥の中から禍々しい黒い身体に冠のような巨大な頭をしたスカルの姿になった道元がいた。

 

「なんだこの禍々しい気配は…まるでさっきの怨楼血みたいじゃないか…」

 

「まさか…スカルキーに妖魔の力を宿したっていうのか!?」

 

「その通り!!妖魔とスカル、二つの力を手にしたこの私の力に貴様ら如きが敵うものか!!」

 

そういうと道元は凄まじい速さで俺たちの前に移動してガリューを殴り飛ばした。

 

「があっ!!」

 

「ガリュー!!」

 

「余所見してる場合か?」

 

「うわぁっ!!」

 

道元はさらに俺へと蹴りを放ち俺は吹き飛ばされる。

 

「リューマ、無事か?」

 

「な、なんとか…」

 

俺たちはすぐに起き上がり道元へと身構える

 

「こいつ…思った以上に強い、2人がかりでいくぞリューマ!!」

 

「おうっ!!」

 

俺たちは道元へと駆け出し攻撃を繰り出す。しかし道元は俺たちの攻撃を次々と躱して逆に殴りつける。

 

「ぐあっ!!」

 

「このやろ…うおっ!?」

 

俺たちも反撃するが道元は俺たちの攻撃を軽々と防いでしまった。

 

「お返しと行こうか…はぁっ!!」

 

道元が手を掲げると頭上に無数の黒い球体状のエネルギー弾が現れて俺たちへと放たれる

 

「くそっ!!」

 

「うわぁぁっ!!」

 

俺たちはそれを躱そうとするが弾数が多くて叶わず直撃して吹き飛ばされてしまう。

 

「ククク…素晴らしい、まさかこれほどの力を手にすることが出来るとは…世界の支配者になるこの私に相応しい力じゃないか!!」

 

自身の力に道元は歓喜しながらそう叫んだ。

 

「ふざけんな……お前なんかが世界の支配者になれるわけねえだろ!!」

   

そんな道元にガリューは叫んだ。

 

「俺は許さねえ…テメェみたいなやつが…力を使って力のない奴を食い物にするなんて絶対にさせるかよ!!」

 

「ガリューの言う通りだ。そんなこと…俺たちがさせるもんか!!」

 

俺も同じ考えだ…こんなやつの好きになんて…絶対にさせない!!

 

「ふっ…これだけ力の差を見せてもまだそんなことが言えるとはな…ならばこうしようか」

 

すると、道元は倒れている怨楼血へと手をかざすと黒いエネルギーが手から放射され怨楼血を包み込んだ。すると、

 

『オォォォォォォォォォォ…』

 

怨楼血の肉体が修復されていき再び立ち上がった。

 

「そんな…嘘だろ!?」

 

「おいおい勘弁してくれよ…」

 

復活した怨楼血を前に俺たちは戦慄した。道元だけでも厄介なのにさらに怨楼血まで相手をしなくてはいけないのかと…

 

「ふははははは!!期待通りの反応で私も嬉しいぞ!!さぁ貴様らがあれだけ苦労してやっと倒したと思った怨楼血はまだまだ元気だぞ!!この私とこいつを前にお前たちはどう立ち向かうのか見させてもらおうか!!」

 

 

 

 

「な…なんなのあれ…」

 

校舎の天守閣近くの瓦礫の隙間から飛鳥は怨楼血、道元と戦うリューマとガリューを目撃した。

 

「このままじゃりゅーくん達が…早く行かないと…」

 

「炎佐!!」

 

そこへ先ほどまで自分と戦っていた焔が怨楼血に気付いて駆け寄ってきた。

 

「焔ちゃん、あれって…」

 

「…どうやら私たちの知らないところでとんでもないことになっていたみたいだな…炎佐が探っていたのはこれだったのか…」

 

「私たちも2人のところに行こう!!このままじゃ2人が危ないよ!!」

 

飛鳥がそういうと焔は少し考えながらも頷いた。

 

「…勘違いするなよ。私はお前の仲間になったわけじゃないからな。道元を倒したら改めて決着をつける…そのことを忘れるな」

 

「わかってるよ、焔ちゃんとの決着は必ずつけるって約束する」

 

「…約束だぞ」

 

飛鳥の言葉に焔は頷くと共にリューマの元へと駆け出した。

 

 




道元の怪人態のモチーフはゴーカイジャーのアクドス・ギルです。


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其の三十四 忍の道と仮面ライダー!!の巻

ようやく決着です。


「ここに来て怨楼血まで復活するなんて…」

 

「ちょっとこれはヤバいな…」

 

妖魔とスカルの力を手にした道元相手に苦戦していたのにさらに倒したと思っていた怨楼血までもが道元によって復活したことで俺達はピンチに追い込まれてしまっていた。

 

「クハハハハ!!貴様らがどれだけ足掻こうと私の野望は止められない!!無駄な抵抗をやめて潔くその命を散らせるがいい!!」

 

傷だらけの俺達を見た道元は高笑いしながらそう叫んだ。

 

「ふざけんな!!誰がお前なんかに倒されるか!!」

 

「同感だ、テメェなんかに俺達は絶対負けない!!」

 

俺達はそう叫ぶと立ち上がり再び道元と怨楼血へと身構える。

 

「愚かな…ならば貴様らは絶望と共に葬ってくれる…やれ!!」

 

『オオォォォォォォォォォォ!!』

 

道元の指示と共に怨楼血は雄叫びを上げながら突進を仕掛けてきた。

 

「いくぞ!!」

 

「はぁっ!!」

 

俺達は向かってくる怨楼血の攻撃を躱して道元に攻撃を繰り出す。しかし、道元はそれを容易く防ぐと俺をガリューの方へと投げ飛ばした。

 

「うわぁ!!」

 

「がっ…」

 

俺達は吹き飛ばされて壁へと叩きつけられる。

 

「グォォォォォ!!」

 

そこへ怨楼血が現れ俺達へと腕を振り下ろした。

 

「この…」

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜忍斬り!!」

 

俺は咄嗟にファングクナイにティラノキーを挿し込んで回し必殺忍法で怨楼血の一撃を防いだ。

 

「甘い!!」

 

「うわぁっ!!」

 

しかしそこへ道元が現れ俺を殴り飛ばした。

 

「リューマ!?このぉ!!」

 

ガリューはすぐさま道元をスピノアクスで斬りつけるが道元はそれを片手で防いでしまう。

 

「炎佐…そういえば君には私の子飼いを潰されていたんだっけなぁ…」

 

道元はガリューを見ながらそう言うと右手に黒い剣を生み出してガリューを斬りつけた。

 

「ぐあっ!!」

 

「せっかく使い勝手のいい駒だったのによくもやってくれたな、思えばあの頃から君は目障りでしょうがなかった…ガリューの鎧に選ばれていなければさっさと始末できたんだがねぇ…」

 

「はっ…!あんなザコが蛇邪の選抜メンバーなんてあまりにも情けなくてな…あんなのしか仲間に引き込めないなんてお前の底が知れるぜ」

 

道元の言葉にガリューは笑みを浮かべながらそう返す。

 

「ふっ……」

 

道元は青筋を立てながら笑うと剣でガリューを斬りつけた。

 

「ぐわぁっ!!」

 

「身の程知らずめ…私はこの世界の支配者になる男だぞ、口には気をつけることだ」

 

「ガリュー!!このぉっ!!」

 

ガリューが斬られたのを見た俺はファングクナイを手に道元へと攻撃を繰り出した。

 

「無駄だ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

しかし道元は俺が攻撃するよりも早く光弾を放ち俺は吹き飛ばされてしまった。

 

「お前達に見せてやろう…世界の支配者となる、私の最強の力をなぁ!!」

 

道元は怨楼血の上に乗り、道元の手と怨楼血の口から黒い光が集まり禍々しい光線が放たれた。

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

強力な一撃に俺達は為す術もなく吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

 

 

「う…うう…」

 

「くそ………」

 

吹き飛ばされた俺達は変身が解けて満身創痍となって倒れてしまった。

 

「ふははははは!!素晴らしい…素晴らしいぞ!!まさにこの世界の支配者に相応しい力じゃないか!!」

 

倒れた俺達を見て道元は嬉しそうに高笑いした。

 

「さて…それじゃあ最後の大掃除と行こうか」

 

そういって道元が指を鳴らすと辺りからどす黒い泥が現れそこから無数のアントスカルやアーミーアントスカルが湧き出てきた。

 

「もうこの学園にも要はない。全て喰らい尽くしてこい!!」

 

『ギギィッ!!』

 

道元の命令を聞きアントスカル達は学園内へと向かって行った。

 

 

 

 

「う、うわぁぁぁぁぁ!!」

 

「なんだこいつは…」

 

「助けてくれぇぇぇ!!」

 

突然現れたアントスカル達に蛇邪の忍学生達はパニックを起こしていた。

 

「はぁぁぁ!!」

 

そこへ焔を除く選抜メンバーが現れてアントスカルやアーミーアントスカルを倒していく。

 

「みんな落ち着きなさい!!動ける者達は負傷者を安全な場所へ連れて行きなさい!!」

 

「す、すみません詠さん」

 

「おい、こっち手伝ってくれ!!」

 

詠達の指示を聞いて落ち着いた忍学生達は冷静さを取り戻して負傷者達の救護を始めた。

 

「一体…何が起こってますの…」

 

「炎佐さんに何かあったかもしれんな」

 

「春花様、皆さん!!報告したいことが……」

 

すると、彼女達の元へと理吉が駆け寄ってきた。

 

 

 

 

「そんな…道元が…」

 

「わしらはまんまと手のひらに踊らされてたってわけか」

 

理吉から事の経緯を聞いた春花達はその事実に驚愕した。

 

「じゃあ不味いじゃない!!早く炎佐を助けに…」

 

「駄目よ!!」

 

慌てて炎佐の元へ向かおうとする未来を春花は止めた。

 

「今私達がここを離れたらあの蟻達にここの生徒達がやられるわ」

 

選抜メンバーの自分達とは違い彼らは戦闘経験の少ない一般生徒だ。この大量のアントスカル達を相手に彼らだけでは危険すぎる。そう春花は判断した。

 

「でもそれじゃあ炎佐は…」

 

「彼なら大丈夫、焔ちゃんもいるしそれに…」

 

思い出すのは初めて出会ったあの日、絶望の中にいた私を地獄から引っ張り出してくれた彼の顔

 

「私の憧れの人だもの」

 

「春花様…」

 

その時、物陰からアントスカルが飛び出して詠へと飛びかかってきた。

 

「詠お姉ちゃん!!」

 

「しまっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふはははは!!どうだお前達!!圧倒的力の前に大切な仲間達が倒されていく気分は絶望的ではないかな!?」

 

アントスカル達を放った道元は俺達に勝ち誇った顔で高笑いした。

 

「もはや仮面ライダーなと私の敵ではない、この力で世界の全てを手に入れる!!誰も私を止めることはできないのだぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

「いいやいる!!」

 

「私達が!!」

 

声が聞こえて道元は振り返る。するとそこには竜司と炎佐を守るように立ちはだかる飛鳥と焔がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼に会ったのは10年前、じっちゃんがうちに突然連れてきたのが始まりだった。

 

『今日からうちで面倒を見ることになった竜司じゃ、仲良くしてやってくれ』

 

『あの…よろしくお願いします…』

 

初めて会った時の彼は悲しい顔をして俯きながらそう言った。

それから彼との生活が始まったが彼はいつも俯いていた。

 

『お母さん…』

 

彼はいつも悲しい声でそう呟いていた。聞けば彼は物心がつく前に母親が亡くなっており父親はある重要な任務の為、家を空けなければならず、両親の知り合いでもあるじっちゃんが彼を引き取ることになったそうだ。

 

『今のあの子に必要なのは自分を支えてくれる仲間なんじゃ。飛鳥…あの子を…竜司を支えてやってくれ。』

 

『うん!!』

 

それから私は彼と接して行き、時間を重ねて彼と話していくうちにいつしか彼に笑顔が見えてきた。

そして共にじっちゃんのもと修行を重ねて行き、いつしか私と彼は共に忍びの道を歩む家族であり、友であり、ライバルとなった。

 

 

 

 

 

『はい、俺の勝ち』

 

『く…くそ…』

 

あいつに誘われて蛇邪学園に編入した私はすぐにその実力を認められ選抜メンバーに認められた。だが、あの男…炎佐には何度挑んでも敵わない

 

『お前さ…少し熱くなりすぎ。春花から聞いてるぞ、いつも1人で修行ばかりしていてメンバーから孤立してるって』

 

『…仲間なんていらない、忍にとって必要なのはただ強くなることだ』

 

『……ほぉ〜そう思ってんだ』

 

私の答えが気に入らなかったのか炎佐はため息を吐きながらそう呟く

 

『そんな考えじゃ一生俺には勝てねえよ』

 

炎佐は自分の武器の片手斧を背負って立ち去っていった。

 

『炎佐さん、お疲れ様です!!』

 

『飲み物をお待ちしました!!』

 

『おう、ありがとなお前ら』

 

炎佐の元へと彼を慕う後輩達が駆け寄ってくる。あいつはいつもあのように後輩達から慕われ巨大な派閥となっている。

 

『く…くそぉ…』

 

 

 

 

『何故だ!!何故私はお前に勝てない!?』

 

再び炎佐に挑んだ私は再び返り討ちに遭った。

 

『お前が仲間を信じようとしないからだ』

 

炎佐は叫ぶ私にそう告げる

 

『仲間…だと…悪忍にとって仲間などいないようなものじゃないか!!私たちの使命はただ与えられた任務をこなすだけ…仲良しごっこなんて…』

 

『それは違うよ』

 

炎佐は私の言葉を否定する。

 

『俺達はいつ死ぬか分からない… だからこそ今ここで出会った縁を大切にするんだ。それに…人間ってのは仲間がいる方が強いんだぜ』

 

彼の言葉を私は否定できなかった。現に彼は私を遥かに超える強さを持っているのだから、何より…

 

『まぁこれは俺の親父の受け売りなんだけどな』

 

そんな彼の真っ直ぐな生き方がとても眩しく見えたから…

 

『私はこんなところでは終わらない…今の私よりも強くなって…必ずお前を超えてやる!!』

 

『おう、その意気だ』

 

それからだ、彼が私の目標に、ライバルに、憧れになったのは

 

 

 

 

 

「ふん、他の連中に比べれば中々だが所詮はただの忍、スカルと妖魔の力を手に入れたこの私の敵ではない」

 

道元に立ち向かった飛鳥と焔だが、道元と怨楼血の強力な猛攻の前に傷だらけになっていた。

 

「はぁ…はぁ…まだまだ」

 

「私達は……まだやれる!!」

 

2人は武器を構えると再び道元達へと攻撃を仕掛けた。

 

『オォォォォォォォォォォ!!』

 

「きゃあ!?」

 

「ぐわぁ!!」

 

しかしそこへ怨楼血が黒い光線を放ちそれにより吹き飛ばされてしまい、さらに道元は高速移動で2人に近づき拳と蹴りで2人は壁に激突してしまった。

 

「まだだ…こんなことでは…私は倒れない!!」

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

しかし、2人はすぐに起き上がり秘伝忍法を使い反撃を試みる。

 

「秘伝忍法!二刀両断!!」

 

「秘伝忍法!魁!!」

 

「無駄だと言っているだろ!!」

 

しかし道元は2人の武器を軽々と掴んで地面へ叩きつけた。

 

「まったく…弱いくせに本当に世話が焼ける…いい加減諦めたらどうだ?」

 

道元は倒れる2人を見下ろしながら笑みを浮かべてそう言った。

 

「私達は……絶対に……諦めない……」

 

「そうだ…こんなところで……終わってたまるか……」

 

しかし2人は諦めない…ふらふらになりながらも再び立ち上がり武器を構えた。

 

「りゅーくんなら…こんなところで諦めない!!」

 

「ここで折れたら…私はこの先一生炎佐の奴に追いつけないからな!!」

 

その時、突如眩い光が辺りを包み込んだ

 

「な…何だこれは……まさか!!」

 

その光の発生源は驚くべきものだった。

 

「あれって……」

 

「超秘伝忍法書……」

 

怨楼血復活に力を使われた二つの超秘伝忍法書が眩くも暖かい輝きを放っていた。

 

「馬鹿な!?怨楼血復活に力を使い果たしていたはず…一体何故!!」

 

あまりのことに動揺する道元を無視して2つの超秘伝忍法書は光り輝いたまま飛鳥と焔の体内へと入っていった。

 

「これって……」

 

「超秘伝忍法書が…私達の中に……」

 

飛鳥と焔は自分達に宿った新たな力に驚きを隠さずにいた。

 

 

 

 

 

 

「え…?」

 

アントスカルの急襲に反応できずやられると思った詠は自分を助けた相手に驚いた。

 

「大丈夫ですか、お怪我は…?」

 

それはこれまで自分と何度も争った憎き鳳凰財閥の令嬢である斑鳩とその仲間達だった。

 

「あなたは…どうしてわたくしを…」

 

「助けたいと思ったからです…」

 

「何故…!!あなたを散々怨んでいたわたくしを…何を企んでいるんですか!?」

 

「詠ちゃん…」

 

「詠お姉ちゃん…」

 

斑鳩に食ってかかる詠を春花達は見つめる…

 

「…例え目指す道の異なる敵同士であろうと…目の前で苦しむ人を見捨てて良いことにはならない…少なくとも竜司さんなら…わたくしの好きなあの方ならそうするからです!!」

 

「あなた…」

 

真っ直ぐとそう告げる斑鳩に詠は動揺した。

 

「…どうやら今は善忍だ悪忍だっていがみ合ってる場合じゃないようね」

 

そんな彼女達を見て春花は決意した。

 

「蛇邪忍学生に連絡!!善忍達とは一時休戦、目の前の蟻どもを協力して倒すわよ!!」

 

「は…はいっ!!」

 

春花の指示に戸惑いながらも他の忍学生達は武器を構えてアントスカルを迎え撃った。

 

「へっへっへっ、まさかアンタと共闘するとはな」

 

「背に腹は変えられん、後ろは任せたで」

 

「俺達も行くぞ」

 

「言われなくても分かってるわよ!!」

 

「ありがとう、春花さん!!」

 

「ふふふ、よろしくね雲雀ちゃん」

 

他のみんなが共闘する中、詠は斑鳩を見つめる

 

「詠さん…」

 

「貴方は…わたくしが今まで見てきたどのお金持ちとも違うようですわ…だから…力を貸してください!!」

 

「…はいっ!!」

 

詠の真っ直ぐな言葉に斑鳩は笑みを浮かべてそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その力…馬鹿な!!選ばれたと言うのか…超秘伝忍法書に!?」

 

超秘伝忍法書の力を手にした飛鳥と焔に道元は慌てふためく。

 

「見たかよ炎佐…あいつらを」

 

「ああ、あんなの見せられちゃ…こんなところで寝てなんかいられないな…」

 

すると、倒れていた竜司と炎佐が起き上がってきた。

 

「くたばりぞこない共め!!今のキサマらに何ができると言うんだ!!」

 

「決まってるだろ……お前を倒すんだよ」

 

「お前みたいな奴に…この世界を好きにはさせない!!」

 

俺達は異なる世界で生きるもの達…しかし

 

「「忍の道を…極める為に!!」」

 

『ティラノ!!』

 

『スピノ!!』

 

俺達はカグラドライバーを腰に巻きキョウリュウキーを挿し込む

 

『『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』』

 

「「変身!!」」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

『武装!!スピノ!!』

 

鍵を回すとドライバーから現れた2匹の恐竜が俺達を包み込み2人の仮面ライダー、仮面ライダーリューマと仮面ライダーガリューへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「仮面ライダーガリュー…いざ、舞い殉じる!!」

 

 

 

 

 

「りゅーくん!!」

 

「炎佐!!」

 

超秘伝忍法書の力で覚醒した飛鳥と焔がリューマとガリューへと駆け寄る。

 

「飛鳥、ありがとな」

 

「悪い、少し遅くなった。」

 

「よかった…りゅーくん達が無事で」

 

「まったく遅れたからにはしっかり働けよ」

 

俺達の様子を見て2人は安心した様子でそう言う

 

「飛鳥、それと焔さん…だっけ?2人には怨楼血を任せていいかな?」

 

「道元は俺達が何とかする。」

 

 

 

俺達はリューマとガリューに変身し道元に立ち向かった。

 

「決着をつける時だ道元!!」

 

「もうお前の好きにはさせない…ここで終わらせる!!」

 

「おのれ…おのれぇぇぇぇ!!」

 

激昂した道元は黒い球体状のエネルギー弾を放つ。しかし俺達はそれを躱して道元に攻撃を繰り出していった。

 

「ぐっ…このぉっ!!」

 

道元は反撃と言わんばかりに剣を使って斬りつけるが俺がそれをガードしてその隙にガリューがスピノアクスで斬りつけた。

 

「くそぉ…ならばっ!!」

 

今度は頭部の触手で俺達の動きを止め様とする。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

しかし、俺は命懸モードになって触手を回避、渾身の蹴りで道元を吹き飛ばす。

 

『武装!!ブラキオ!!』

 

すぐさまガリューもブラキオ武装になって吹き飛ばされた道元を大剣で叩き落とした。

 

「な…何だこれは…!!さっきと動きが全然違う…一体何をしたぁぁぁ!!」

 

「伝わってくるのさ…仲間が俺を信じてくれるのが!!」

 

今もみんなが戦っている…そして、俺達のことを信じている。先程飛鳥や焔が俺達の復活を信じて戦ってくれたように

 

「仲間を信じる力が俺達を強くしてくれるんだ!!」

 

「誰かを踏み台にすることしかできないお前には一生分かんないだろうがな!!」

 

「黙れ…黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺達の言葉に道元は怒り叫ぶ。

 

 

 

 

 

「いくよ焔ちゃん!!」

 

「勿論だ飛鳥!!」

 

飛鳥達も超秘伝忍法の力で怨楼血をどんどん追い詰めていく

 

「死ヲ…撒キ散らセェェェェ!!」

 

怨楼血は最後の足掻きと言わんばかりに攻撃を放っていく、しかし飛鳥達は動じない、側に共に闘う仲間がいるのだから!!

 

「超秘伝忍法・半蔵流乱れ咲!!!」

 

「超秘伝忍法・紅!!!」

 

2人の超秘伝忍法は怨楼血を見事切り裂いた

 

 

 

 

「こんなところで…私の完璧な計画が終わってたまるかぁぁぁ!!」

 

道元は手を上に掲げてそこへエネルギーを集める黒い光はどんどん巨大な光球へと変わっていく

 

「最後の攻撃ってわけか…行くぞガリュー!!」

 

「見せてやるぞリューマ…俺達の力を!!」

 

『必殺の術!!』

 

『必殺の術!!』

 

2人はティラノ武装とスピノ武装に戻り同時にカグラドライバーを叩くとオレンジと赤のエネルギーが2人を包み込む

 

「「はぁぁぁっ!!」」

 

瞬間、2人は天高く飛び上がり同時に道元へとキックを繰り出した。

 

「「合体必殺忍法!!双竜マキシマムフィニッシュ!!」」

 

2人と共に巨大なティラノサウルスとスピノサウルスのオーラが光り輝き道元の放った黒い光線を打ち破りながら道元へ炸裂した。

 

「おのれぇ……仮面……ライダァァァァァァァァ!!!」

 

道元は断末魔と共に吹き飛び飛鳥達に斬り裂かれた怨楼血に直撃し大爆発した。

 

「りゅーくん!!」

 

「炎佐!!」

 

すると、飛鳥と焔が駆けつけさらに斑鳩先輩達も来た。

 

「ついに道元を討ち倒したんですね」

 

「あぁ、何とか倒せたよ」

 

「竜司…」

 

すると、炎佐が俺に話しかけてきた。

 

「お前のおかげで父上の仇を取れた…感謝する。」

 

「へへ、気にするなって」

 

「…リューマに選ばれたのが…お前で良かった」

 

炎佐の言葉に俺は少し恥ずかしくなった。

 

 

 

その時、轟音と共に校舎が揺れだした。

 

「な、なんだ…!?」

 

「これはまさか…自爆装置か!?」

 

どうやら道元は万が一秘密がバレた時全てを消し去る為の自爆装置を仕掛けていたようだ。それが先の闘いで道元が敗れた際に作動したのである。

 

「まずい…このままじゃこの学園の生徒が!!」

 

まだこの学園には生徒が何人もいる中には怪我で動けない人もいるはずだ…

 

「お前ら…さっさとここを離れろ」

 

すると、炎佐が俺や飛鳥達を見てそう言った。

 

「な…炎佐達は!?」

 

「俺達は逃げ遅れた生徒達を助けにいく」

 

「だったら俺達も」

 

「無理よ」

 

俺が協力しようとすると春花がそれを止める

 

「この学園は迷路のように入り組んでるの、他所の生徒の貴方達じゃ足手纏いになるだけよ」

 

「でも…」

 

「ここから先は我ら悪忍の領分だ、お前達はさっさと行け」

 

「……………。」

 

焔の言葉に俺達は何も言えなくなってしまった。

 

「心配すんな、俺はこんなとこじゃ死なん。必ず生きてお前にリベンジしにいく」

 

炎佐は笑みを浮かべてそう言い俺達に背を向ける。

 

「じゃあな」

 

その言葉と共に彼らは火の中へと飛び込んで行った。

 

「仮面ライダーリューマ…いや、竜司…」

 

ふと声が聞こえてそちらを振り向くと鈴音が俺の前にいた。

 

「貴方は貴方の道を目指しなさい、それは…きっと素晴らしい目標なのだから」

 

それだけ言いたかった、そう言い残して鈴音は俺の頭を撫でると炎佐の消えた方へと駆け出していった。

 

「りゅーくん…」

 

「行こう皆」

 

俺は炎佐達が消えた炎に背を向けて学園を立ち去ることにした。これより先は彼らの領分だ、俺達に出来ることは何もない。それに…

 

「あいつらは死なない、必ずまた会える」

 

そう遠くない未来に彼と再会することを確信していた。

 

「さあ帰ろう、俺達の半蔵学院へ」

 

こうして俺達は自分達の帰る場所へと帰還した。いつの日か、彼らと再会することを信じて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司達が立ち去った後、蛇邪学園では避難を終えた生徒達が消火作業を続けていた。

 

「逃げ遅れた奴はいないかー!!」

 

「MK5がまだ中に!!」

 

「あいつらなら大丈夫だ多分!!」

 

「あぁ多分!!」

 

そして、炎佐の舎弟の理吉は

 

「こっち包帯持ってきてー!!」

 

「はいただいまー!!」

 

「こっちは【幻鬼怒輪虎】頼むー!!」

 

「それはやめといてくださーい!!」

 

怪我をした生徒達の介抱をしていた。

 

「炎佐さん……」

 

彼は辺りを見渡すが自分の尊敬する炎佐の姿は先程から見当たらない

 

「俺、信じてますから」

 

しかし彼は確信していた。炎佐は、仮面ライダーガリューはこんなことでは絶対死なないということを

 

 

 

 

 

 

「蛇邪学園が…燃えている……」

 

黒いジャケットを着た空色の髪の青年が燃える蛇邪学園を見ていた

 

「僕が留守にしていた間にどうやらとんでもないことになってるようだな」

 

青年の手には紫色のプテラノドンが描かれたキョウリュウキーが握られていた。

 

蒼良(そら)…戻ってきてたのか…!!」

 

すると、白髪の女性が現れて彼の姿を見て驚愕した。

 

「久しぶりですね、雅緋」

 

 

 

 

 

満月(みつき)!!どこにいるんですか!!」

 

とある場所学園では銀色の髪をした女性が誰かを探していた。

 

「まったく…ちょっと目を離すとすぐこれなんですから…」

 

その頃、学園の屋上では

 

「うーん♪いい月だな〜」

 

銀髪を肩まで伸ばした少年が屋根の上で寝っ転がってた。

 

「なんだかもうすぐ面白いことが起きそうな気がするぜ」

 

そう言う彼の手には銀色のトリケラトプスが描かれたキョウリュウキーが握られていた

 

 

 

 

 

竜司達はまだ知らない…キョウリュウキーを手に持つ2人の男、彼らの存在がのちに始まる大きな闘いの幕開けとなることを

 




この後、オリジナルストーリーを少し入れてそれから新章スタート致します!!


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劇場短編 封印の巫女と破壊竜
前編


劇場公開してませんが劇場短編スタートですw


むかしむかし、このくににすべてをこわしてしまうはかいのりゅうがおりました。

 

はかいのりゅうがあばれたあとにはくさきもはえず、あらゆるいのちがしにたえてしまいました。

 

それをみかねたひとりのみこさまは、じぶんのいのちとひきかえにはかいのりゅうをふういんしました。

 

はかいのりゅうがふういんされたおかげでくににへいわがおとずれました。

 

いきのこったひとびとは、にどとはかいのりゅうがふっかつしないようにふういんのかぎをひとしれずまもっていきましたとさ

 

めでたしめでたし

 

 

 

 

『これで、破壊竜伝説の話は終わりじゃ』

 

ある日、俺と飛鳥にじいちゃんが昔話を聞かせてくれた。

 

『じっちゃん、その破壊竜って本当にこの国にいたの?』

 

飛鳥は怖かったのか涙目になりながらじいちゃんにそう聞いた。

 

『安心せい飛鳥、もしおったとしてもワシがお前達を守ってやるでな』

 

そう言ってじいちゃんは俺たちの頭を撫でてくれた。

 

『…俺、この話嫌い』

 

しかし、俺はこの話があまり好きではなかった

 

『どうしてじゃ竜司?』

 

『だって…_________________。』

 

俺が言葉を続けるとじいちゃんは少し驚いた顔をすると優しく微笑み

 

『竜司は優しいのう』

 

そう言って再び頭を撫でてくれた。

 

 

 

 

 

 

「風神村?」

 

「そこが任務の場所なのですか?」

 

道元の野望を阻止してから少し経ったある日、俺達は神門様より任務を依頼された。

 

「はい、そこは古くから存在する忍の村なのですが…破壊竜の封印を守っている一族の村でもあります。」

 

「破壊竜…忍に伝わる昔話に出てくるあの…」

 

「恐ろしい竜が世界を滅ぼそうとするってあれか」

 

『破壊竜伝説』は忍の中では知らない人はいないと言っても過言ではない昔話だ…正直言って俺はあまりあの話は好きじゃないのだが

 

「皆さん、今は神門様が話しているのですよ」

 

『破壊竜伝説』の話をする俺達を斑鳩先輩が叱る。

 

「…話を戻します。今回、その風神村で破壊竜の封印が解かれてしまう未来が見えました。」

 

「「「「「「え!?」」」」」」

 

衝撃の事実に俺達は驚愕する。

 

「破壊竜って実在したんですか!?」

 

「てっきり御伽噺なのかと…」

 

「これは忍の世界でも限られたものにしか伝えられていない事実です。その力を悪用されない為に…」

 

まさか破壊竜が実在していたとは思ってもいなかった。だがもし破壊竜が伝説通りの存在なら…

 

「破壊竜が復活してしまったらこの国は大変なことになってしまいます。竜司さん並びに半蔵学院忍学生の皆さん、破壊竜復活を阻止してください!!」

 

「「「「「「はいっ!!」」」」」」

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…いつまで登ってんだアタイら…」

 

「葛城さん、文句を言わずに歩きなさい」

 

神門様の任務を引き受けた俺達は今、草木が生い茂る急勾配の山道を歩いていた。

 

「地図によればこの近くのはず…お、見えてきたぞあそこだ」

 

霧夜先生の指差す方を見ると辺りを堀で囲まれた大きな村が見えていた。門の前には武器を持った門番が身構えている。彼は俺達に気付くと警戒して武器を強く握りしめてきた。

 

「神門様の使いの者です、村長へ連絡をお願いします」

 

霧夜先生が彼に近づきそう言うと懐から紋章のような物を取り出して門番へとみせる。そうすると門番は頷いてうち1人がどこかへと連絡を入れた。

 

「よくぞ来て頂きました、どうぞこちらへ」

 

門番は連絡を入れ終えると俺達を村の奥へと案内した。

 

「霧夜先生…今のって…」

 

「ん?あぁ、あれは神門様から与えられたこの村への立ち入りを認められた者だけに与えられた許可証のような物だ。特殊な物で偽造も出来ないようにされている。」

 

「そう考えると本当に厳重な警備がされてるんですね…」

 

「それだけ危険な力がこの村に封じ込められてるってことだ」

 

霧夜先生の言葉に俺達は気を引き締めた。

しばらく歩くととてつもなく巨大な社へと到着した。鳥居の前では険しい顔の老人が護衛を連れて待ち構えている

 

「よくぞお越しくださいました。私がこの風神村の村長でございます」

 

村長は俺達を見ると丁寧に挨拶をしてきた。

 

「破壊竜の復活は即ち、この国の滅亡と同義と言っても過言ではないでしょう。それを阻止する為にも是非とも協力していただきたい。」

 

「お任せください、必ず任務を遂行してみせます。」

 

村長の言葉に霧夜先生はお辞儀をしながらそう答えた。

 

 

 

 

 

「はははっ、こりゃ良いや」

 

その頃、とある屋敷では一つの黒い影が立っていた。その周りには無数のアントスカルやアーミーアントスカルの死骸が転がっていた。

 

「貴様…何のつもりだ」

 

そこへ華蛇が現れ影に向かって問い詰める。その目は怒りに燃えていたが影はまったく動じず鼻で笑った。

 

「欲しかった力はもう手に入れた。封印の鍵のありかもわかっている。もうここにいる意味も無いってことだ」

 

「貴様…陛下に力を与えられておきながら我々を裏切ろうと言うのか……」

 

『メドゥーサ!!』

 

華蛇は怒りに震えながらメドゥーサスカルキーを起動してスカルドライバーに挿入して回し、メドゥーサスカルへと変身して影へと斬りかかろうとした。

 

「させねえよ!!」

 

「ヒャッハァっ!!」

 

しかしそこへ、カブトムシを思わせる姿をした赤色の姿をしたスカル、ビートルスカルとクワガタを思わせる姿をした青いスカル、スタッグスカルが現れてメドゥーサスカルの剣をそれぞれの大剣と双剣でガードする。

 

「何っ!?」

 

「悪いな、こいつらはもう俺の仲間なんだよ」

 

ビートルスカルとスタッグスカルは影の元へ集まると跪いて深々と頭を下げる。

 

「じゃあな、後は俺の好きにやらせてもらうぜ」

 

「へへっそういう訳だ」

 

「あばよメドゥーサ様、ひゃはは」

 

影はビートルスカルとスタッグスカルを連れてその場を立ち去る。

 

「道元といい奴といい…何故こんな奴ばかり集まるのだ……!!」

 

立ち去る影を見ながらメドゥーサスカルは震えた声で呟く。

 

「仕方ないよ。あいつは破壊のみを好む戦闘狂だからね…遅かれ早かれこうなってたさ」

 

そこへ弥勒が現れてため息混じりにそう呟いた。

 

スカル達を裏切った謎の影、おそらく竜司達がその姿を見れば驚愕するだろう。なぜならその影は…

 

 

 

 

 

 

 

全身に恐竜の骨を思わせる鎧と恐竜の骨を思わせるカグラドライバーを纏った仮面ライダーそのものだったのだから

 

 

 

 

「皆様には破壊竜を封じた封印の鍵を守る巫女の護衛を頼みたい」

 

社に招待された俺達に村長は依頼内容を話した。

 

「巫女って確か破壊竜を封印したっていう…」

 

「左様、今から300年前…初代巫女が破壊竜を封印した際に用いた封印の鍵…それを代々その身に宿して守り続けている者こそが封印の巫女なのです。」

 

破壊竜だけじゃなくて封印の巫女まで実在していたのか…まぁ確かに破壊竜が現に封印されてるのだから当然なのだろう。

 

「そういえば300年前って事は仮面ライダーリューマの時代と同じなんですね」

 

300年前と言えば仮面ライダーリューマがスカル達と闘っていた時代と丁度同じだ。

 

「…そうですね、まずはそこから話しましょう」

 

瞬間、村長は顔を更に険しくすると話し出した。

 

「破壊竜の正体は今尚存在する恐竜の力そのものなのです」

 

「んなっ!?」

 

衝撃の事実に俺は思わず声を上げた。

 

「破壊竜の正体が恐竜!?」

 

「はい…その名もメガロサウルスと呼ばれており…」

 

「メガロサウルスキターーーーーーーー!!!」

 

俺は破壊竜の正体に感激した

 

「体長7〜10メートル!!ジュラ紀中期の恐竜でイグアノドン同様恐竜研究史最初期に発見された肉食恐竜!!日本語で『巨大な竜』という意味で漢字では斑竜と書く!!日本でも福岡県で歯の化石が発見されているが発見当時は恐竜研究がまだ未発達だった為に肉食恐竜の化石を殆どメガロサウルスとして扱ってしまってたが故に現在でもその生態は解明されておらずメガロサウルスの化石と断定できる化石は何と全身の10%…」

 

「落ち着け!!」

 

俺がメガロサウルスの説明をしていると霧夜先生が俺の頭に拳骨を繰り出す。これから良いところだったのに…

 

「すみません、こいつは恐竜のことになると時々こんな感じで暴走して…」

 

「い…いえ…どうぞお気になさらず…」

 

俺に驚いたのか村長は苦笑いを浮かべていた。

 

「と…とりあえず封印の巫女はどちらに…」

 

「巫女はあちらの本殿におります。しかしお会いする事はなりません」

 

村長はそう言って一際大きな本殿を見せるが会うことを許そうとしなかった。

 

「申し訳ありません…巫女は我々の中でもごく限られた者しか会う事は許されないのです。」

 

「しかし護衛をするからには…」

 

「なりません!!」

 

霧夜先生が説得しようとすると突然村長は俺達に叫び出した。

 

「如何なる理由があろうと許されません!!この掟を破った先代巫女が10年前にどうなったかお忘れか!?」

 

「…すみません、言う通りに致します…」

 

村長の怒鳴り声に霧夜先生は頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

「霧夜先生、10年前に何かあったんですか?」

 

社の一室を宛てがわれた俺達が護衛の支度をしていると飛鳥が霧夜先生にそう聞いて来た。

 

「ん?あぁ…この村はな、10年前スカルの襲撃に見舞われているんだ」

 

「スカルに!?」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ、先代巫女は外から来た忍と恋に落ちてな…当時は村の者達からの反対が多かったんだがそれを押し切って結婚して子供にも恵まれたんだ…だが10年前、スカルがこの場所を嗅ぎつけて破壊竜の力を狙って来たんだ。危うく破壊竜が復活しそうになるんだが先代巫女が命と引き換えに何とかそれを阻止したんだが…掟を破ったが為に危うく破壊竜が復活しそうになった。村はそう考えたらしい…結界を更に厳重にした今でも掟のことに関しては神門様の様な最高幹部でも謁見を許されなくなってしまった。」

 

「そんなことが…まさか神門様でも謁見出来ないなんて…わたくしたちでは出来ないのも頷けます」

 

「まぁ…そういうことだ。お前達も不便を感じるかも知れんがどうか堪えてくれ」

 

霧夜先生は申し訳なさそうにそう俺達に頭を下げた。

 

「あれ!?ガマ吉がいない…」

 

ふと気付くと俺のポケットに入れてたカラクリガマのガマ吉がいなくなっていた。

 

「すいません先生!!俺ちょっとガマ吉探して来ます!!」

 

「お、おい本殿には近付くなよ!?」

 

霧夜先生が後ろでそう言うのを聞きながら俺はガマ吉を探し出した。

 

 

 

 

 

 

「ガマ吉〜何処だ〜!!」

 

門の近く、村の周りを探し回ったが見当たらない

 

「あと探してないのは本殿だけだけど…」

 

霧夜先生からは近付くなって言われてるんだよな…

 

「まぁ巫女を見なければ大丈夫か」

 

俺はこっそり本殿へと足を踏み入れた。

 

「真っ暗だな…本当にこんなところに巫女なんているのか?」

 

廊下には蝋燭の光しかなく窓も閉められており真っ暗でとても人がいるようには見えない

 

「ゲコッ!!」

 

しばらく歩いていると目の前の廊下をガマ吉が飛び跳ねていた。

 

「あっ!!探したぞガマ吉!!」

 

「ゲコゲコッ!!」

 

「あっ!!こら待て!!」

 

しかしガマ吉は俺を無視して近くの一室へと入っていく

 

「待てってこのやろ…おりゃぁ!!」

 

「ゲコッ!?」

 

俺は部屋の中での鬼ごっこの末、漸くガマ吉を捉えることに成功した。

 

「全く…どうしたお前…今までこんなに俺の言うこと聞かないことなんて無かったのに…ていうか此処って…」

 

 

 

 

 

 

 

「………誰?」

 

ふと声が聞こえてそちらを向くと、白い髪を腰まで伸ばして後毛にも髪留めをした巫女装束の少女が座っていた。

 

「えっと…どちら様?」

 

 

 

 

 

「なんだ!!誰がいるのか!?」

 

突然大きな声が響き渡る。あの村長の声だ

 

「ヤベッ!!」

 

此処にいることがバレたら霧夜先生や飛鳥達に迷惑がかかる…

 

「こっち来て」

 

すると少女は俺の手を取り俺を押し入れの中に閉じ込めた。その瞬間、部屋の扉が開く

 

「風花様、此処に怪しい者が来ていませんか?声が聞こえたのですが…」

 

村長は少女にそう聞いていた。

 

「いいえ、見ておりません」

 

「…そうですか、ではおそらく気の所為でしょう」

 

少女の言葉に村長も納得して部屋を去った。

 

「…もう大丈夫よ」

 

「ありがとう…お陰で助かったよ風花さん」

 

彼女が助けてくれなかったらどうなってたか…そう思いながら俺は彼女…風花さんにお礼を言う

 

「別に良いわ、面倒事を避けたかっただけだから…」

 

「それでも助かった…俺は竜司、よろしく」

 

「…ここから出て廊下をまっすぐ行けばすぐに出口よ、村長がまた来るかも知れないし早く行きなさい」

 

風花さんは俺のお礼を無視してそう言うと別の扉を開いて俺を出口へと案内する。その時、陽の光が差し込んで彼女の顔がはっきりと見えた。

 

「あ……/////」

 

肌も髪も真っ白な彼女はとても美しく俺は言葉を失ってしまった。

 

「あ…ありがとう…ございます」

 

「早く行きなさい」

 

彼女にそう言われて立ち去る。

 

「風花さん…か」

 

しかし、俺は彼女の顔が頭から離れなくなっていた

 

「こんな事…初めてだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、いつまでも帰ってこなかった事で霧夜先生にこっぴどく怒られたのは言うまでも無い




オリジナルストーリースタート!!
ですがすいません、今回はバトルなしです…次回はあるのでご安心ください


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中編

風神村での封印の巫女護衛任務が始まった翌日、竜司達は現在与えられた部屋に待機している。彼等に与えられた主な任務内容は緊急時以外は他の警備担当と同様に封印の巫女の警備を行う様に命じられていた。現在は他の警備か封印の巫女の警備を行なっているので彼等は部屋でそれぞれの時間を過ごしているのだ……しかし、

 

「はぁ…………………」

 

竜司は先程から溜息を吐きながら物思いに耽っていた。

 

「りゅーくん…昨日からずっとあんな感じだよね…」

 

「なんか変なキノコでも拾い食いしたのか?」

 

そんな竜司を飛鳥と柳生は心配そうに見ながらヒソヒソと話している。

昨日霧夜先生に叱られてた時もずっと心ここに在らずと言った感じで溜息を吐いていた。

 

「竜司くん大丈夫?」

 

「……うん」

 

雲雀が話しかけるが竜司は気の抜けた返事をするだけで窓から外を眺めているだけだった。

 

「…………………………………………。」

 

「い…斑鳩?」

 

一方斑鳩は顔を顰めながら竜司を睨みつけておりそれを見て葛城は冷や汗をかいていた。

 

「なんででしょう…?竜司さんのあの姿を見たら何故か殺意が湧いてくるんです…斬っていいですか?斬首しちゃっても良いですか?ぶち殺しちゃって良いですか?良いですよね?斬って良いですよね?斬りますよ?」

 

「早まるな斑鳩!!気をしっかり持て!!」

 

飛燕を抜きそうになりながらそう呟く斑鳩を葛城は必死になって止めていた。

 

「風花さん…………」

 

そんな彼女達を無視して竜司は聞こえない様なか細い声で呟いていた。

 

 

 

 

「ふう………」

 

警備を引き継いだ俺達は風花さんがいる本殿の前で警備をやっていた。しかし昨日から風花さんの顔を思い浮かべてしまい中々集中出来ない。

 

「あいて…!」

 

「気を抜きすぎだ」

 

突然後頭部に痛みが走り振り返ると霧夜先生が溜息を吐いていた。どうやら先生に頭を叩かれてたらしい

 

「昨日から全然集中出来てないぞ、ここは俺が見てるから近くに川があったから少しそこで顔を洗ってこい」

 

「う…すいません」

 

霧夜先生に注意された俺は川の方へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

「はぁ…やっちまった」

 

川で顔を洗った俺は反省していた。

昨日から風花さんの顔が頭の中に浮かんで離れない。飛鳥達といる時はこんな事今まで無かったというのにだ

 

「ん…?」

 

ふと音が聞こえてそちらへ行ってみるとそこは川の水が下の方へと落ちていってる。どうやらここは滝の上だった様だ。

 

「へぇ〜良い見晴らしだな」

 

辺りは森で覆われており空は綺麗な青空がハッキリと見えた。

 

「よし、戻るとするか」

 

気持ちを切り替えることができた俺が持ち場へと戻ろうと振り向いたその瞬間

 

「え?」

 

突然足元が崩れて俺は滝壺へと落ちてしまう

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

滝壺に落ちると巨大な水柱と共に綺麗な虹が出来た。

 

「痛ててて…気を引き締めた瞬間にこれかよ…」

 

びしょ濡れになった俺は溜息を吐きながら水面にあがろうとした

 

 

 

 

「え……………?」

 

「ん?」

 

ふと声が聞こえてそちらを向くと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一糸纏わぬ姿でこちらを見つめる風花さんが立っていた。

 

「か…風花さん…なんで………?」

 

水に濡れた白い髪と白い肌、そして二つの形の良い膨らみをはっきりと見てしまった。

 

「私、この時間はここで水浴びをするのが日課なの」

 

思わぬ再会と彼女の姿に俺は顔が熱くなり頭が混乱しそうになってしまう

 

「す、すみませんでした!!覗きとかそんなんじゃ無くて…滝の上から誤って落ちちゃったというか…事故っていうか…」

 

「ねぇ…」

 

「ほ、本当にごめんなさい!!助けてもらった恩人に…俺に出来る償いならなんでも…」

 

「ちょっと…きいてる?」

 

「はい?」

 

俺が謝っていると彼女は少し強めに俺に声をかける

 

「そこ退いてくれる?服着たいんだけど…」

 

彼女に言われて隣を見ると巫女装束が畳まれた状態で置かれていた。

 

「あ…ごめんなさい」

 

 

 

 

 

「もう大丈夫よ」

 

後ろを向いて待っていると彼女が声をかけて来たので俺が振り向くと昨日と同じ巫女装束を纏った風花さんがいた。

 

「あの…本当にごめん」

 

「もう良いわ。悪気がなかったのは分かったから」

 

俺が謝ると彼女は気にしてない感じでそう返して近くの流木に座る

 

「貴方も座ったら?」

 

すると、彼女はそう言って自分の隣を軽く手で叩く

 

「えっと…じゃあお言葉に甘えて…」

 

俺は少し恥ずかしくなりながらも隣に座る。

 

「………………。」

 

ふと隣に座る彼女を見る。白い髪はまるで絹の様に美しく時折風によってふわりと動く、肌は水浴びをしていた為、まだ僅かに濡れており雫が肌を流れ落ち…

 

「さっきから私を見てるけど何?」

 

俺の視線に気づいたのか彼女はこちらを見つめて来た。

 

「ご、ごめん!!」

 

「だから謝らなくて良いのに」

 

慌てて謝る俺に彼女は呆れながらそう言った。

 

「そ、そういえば風花さんっていつもはどんな風に過ごしてるの!?」

 

慌てて俺は話題を変えようと彼女にそう聞いてみる。

 

「…別に、普段は貴方と会ったあの部屋で過ごしてるわ。部屋を出るのは水浴びの時や湯浴みの時くらいね。食事はいつも部屋に運ばれてくるし」

 

「…あの部屋にずっと?」

 

「貴方はもう分かってると思うけど私は封印の巫女だから。封印の巫女は極力人との関わりを絶たないといけないの。破壊竜の力が外に漏れない為に…」

 

「いつから?」

 

「死んだ母さんの代わりに巫女に選ばれてからだから…10年ね」

 

その言葉に俺は思わず絶句した。

あの窓も閉められて蝋燭の灯りくらいしか光が無い真っ暗な部屋で10年も過ごして来たのか?

 

「そんな生活…辛く無いの?」

 

「別に苦では無いわ、ちゃんと食事も3食運ばれるし…生活には困らないわ。人に極力合わない様にするだけだから…まぁ貴方に会っちゃったけど、まぁ兎に角それが私に、封印の巫女に選ばれた者に与えられた使命なのよ」

 

少し溜息を吐いて彼女はそう答える。

 

「…納得いかない」

 

「え?」

 

「納得いかねえよそんなの!!」

 

俺は思わず叫んでしまった。

 

「あんな暗い場所で10年も閉じ込められて!!それで辛く無いなんておかしいだろ!!なんでアンタがそんな目に遭わないといけないんだよ!!そんなの…間違ってるだろ!!」

 

「暗い場所って…一応照明はあるんだけど…」

 

「そういう問題じゃない!!」

 

俺は彼女の両肩を掴んで言葉を続ける。

 

「風花さん…世界ってのは…アンタが思ってる以上に広いんだよ!!アンタが思ってる以上に楽しいことや驚くことが沢山あるんだよ!!こんな狭い世界で満足しちゃ駄目だ!!」

 

叫ばずにはいられなかった。こんな孤独な世界に縛られてるのに何も感じられずに10年も過ごしている彼女に世界の広さを伝えられずにはいられなかった。このまま彼女があんな暗い場所で生き続けなくてはいけないのが堪えられなかった。

 

「……本当に変な人、会って間もない私の事でそんなに感情的になるなんて…」

 

風花さんはそんな俺を見て少し驚いた顔で俺の目を見た。

 

「う…///////」

 

真っ直ぐと俺を見つめる風花さんに俺は顔が熱くなる。

 

「と、とにかく!!俺に出来る事ならなんでもやる!!だからアンタも言いたい事…やりたい事があったら言ってくれ!!」

 

そういうと風花さんはくすっと微笑む。

 

「じゃあ………教えてくれる?貴方が外の世界で見たものってやつを」

 

 

 

 

そんな竜司と風花を少し離れた木の陰から霧夜が見ていた

 

「まったく………あいつときたら」

 

昨日からどうも様子がおかしいと思って様子を見に来たら、まさか封印の巫女と関わっていたとは…村の者に知られたら不味いかもしれない。

 

「ま、護衛としては寧ろ確実だからな…ここはあいつに任せるとするか…しかし」

 

竜司が封印の巫女の事情を知ればそれに納得しないのはなんとなく分かっていた。しかし封印の巫女を守る事はこの国を守る事と同義と言っても過言ではない、いくら納得がいかなくても自分達は忍だ、感情に任せてこの国を危険に晒してはいけない

 

「でも…なんだろうな」

 

あいつなら…竜司なら彼女の運命を変えられる様な気がしてならない

 

「さて、村の人達をなんとか誤魔化しておくか」

 

もう少しだけ竜司に時間をやろう、そう思いながら霧夜は立ち去った。

 

 

 

 

それから俺は風花さんに色んなことを話した

 

「そしたらとうとう斑鳩先輩が怒ってかつ姉を追い回してさ…」

 

「そのかつ姉って人には気をつけたほうが良さそうね…」

 

ある時は学校での何気ない日常を

 

 

 

「世界で一番歯の多いハドロサウルスって恐竜は歯が2000本近くもあるんだぜ」

 

「ふふっ、歯磨きが大変そうね」

 

恐竜の話なんかも話した。

 

彼女は俺の話す事をとても面白そうに聞きながら楽しそうに笑った。

それは時間だけ見ればとても短い時間だろう…しかし、俺たちにはとても長く、楽しい時間だった。

 

 

 

 

「そろそろ戻らないと… ありがとう竜司、貴方の聞かせてくれたお話…どれも楽しかったわ」

 

いつの間にか風花さんが社に戻る時間になった様だ。彼女は木の幹から立ち上がり社の方へと歩き出した。

 

「風花さん!!」

 

俺はそんな彼女を呼び止める

 

「また面白い話、聞かせるよ…だから…またな!!」

 

そう言って俺は彼女に手を振った。

 

「ありがとう…楽しみにしてる」

 

彼女はそういうと俺に微笑んで社へと帰っていった。

 

 

 

 

次の日、俺は再び警備の任務につきながら風花さんについて考えていた。

 

「やっぱり風花さんをほっとけない…なんとか出来ないかな…」

 

簡単な事じゃないのは分かってる。自分達は忍だ、封印の巫女の存在がこの国に必要なのは霧夜先生や神門様の話を聞いているからわかってる…でも

 

「あのままになんて…俺には出来ない」

 

彼女の現状を知ってしまってほっとくなんて出来ない、なんとかして彼女を救いたい。何か俺に出来ることがあるかも知れない…もし出来るなら…

 

 

 

 

 

 

その時、ガラスが割れた様な大きな音が突然鳴り響いた。

 

「な、なんだ!?」

 

俺は突然の事に動揺する。一体何が…

 

「馬鹿な…結界が破壊された。」

 

村の警備が事態に気付いて震えた声でそう呟いた。

俺は飛鳥達と合流して急いで音がした方へと走り出す。

 

「ギギギ…」

 

「ギィッ」

 

すると大量のアントスカルやアーミーアントスカルの群れが村の中へと入り込んできていた。

 

「とうとうスカルが…この村に…」

 

村の警備達は現れたスカルの群れに動揺を隠しきれない様子だった。

 

「俺たちも行くぞ!!」

 

「うん!!」

 

『ティラノ!!』

 

「変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

俺の呼びかけに飛鳥達は忍転身して俺も仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「ギギャアッ!!」

 

アントスカルの群れが突撃して俺達もそれを迎え撃つ。他の忍達も武器を手に闘い出した。

俺は、ファングクナイを手にアントスカルを何体か倒した時、ある事に気づいた。

 

「蟻達しかいない?」

 

アントスカルやアーミーアントスカルは言わば雑兵達だ、こいつらがいる時は決まってそれを指揮する通常のスカルやロードスカルがあるはずなのに…

 

「誰か来てくれぇ!!」

 

突然、社の方から本殿の警備をしていた忍が傷だらけの様子でこっちに走って来た。

 

「スカルが本殿に攻めて来たんだ!!警備はほとんどやられて巫女様が追われている!!」

 

「しまった!!」

 

その言葉に俺は気づいた、こいつらは陽動だったのだ。俺達がこいつらの相手をしてる隙に潜入したスカルが風花さんを捕らえる…

 

「霧夜先生!!俺が行きます!!」

 

『シノビークル!!』

 

「頼んだぞ竜司!!」

 

俺はすぐにシノビークル・大地に跨り本殿の方へと向かった。

 

「風花さん……無事でいてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

森の中を風花は走り続ける。自分を追ってくるスカルから逃げる為に

 

「捕まるわけには…」

 

自分が捕まれば、破壊竜が復活してしまう…そんな事になれば、この国が大変な事になってしまう…それだけは何としても阻止しなくてはならなかった。それが、封印の巫女を受け継いだ自分の使命なのだから

 

「きゃあっ!?」

 

突然衝撃波が自分を襲い吹き飛ばされて木にぶつかってしまう

 

「やぁーっと追いついたぜ…み・こ・さ・ま♪」

 

「へへっ、手間取らせてんじゃねえよ」

 

後ろを振り向くと嗜虐の笑みを浮かべたビートルスカルとスタッグスカルが武器を突き付けながらこちらへと近づいてくる

 

「あ…あぁ…」

 

2匹のスカルに体が震えて声がうまく出ない…溢れ出る恐怖に彼女は動けなくなってしまった

 

「だ…誰か…」

 

 

 

 

 

 

 

「でりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

すると、シノビークル・大地に跨ったリューマが後輪をビートルスカルとスタッグスカルにぶつけて吹き飛ばした。

 

「風花さん、大丈夫!?」

 

「りゅ、竜司……」

 

最初はリューマが誰かわからなかった彼女も竜司の声を聞いて安心する。

 

「無事で良かった…あとは俺が…」

 

 

 

「痛ってえなぁ…」

 

「テメェよくもやりやがったな…」

 

するとビートルスカルとスタッグスカルが怒りに震えながら大剣と双剣を手ににじり寄ってくる。

 

「必ず助ける!!」

 

しかし、俺もファングクナイを構えるとスカル達を迎え撃った。

ビートルスカルがファングクナイをガードするとスタッグスカルが双剣を振りかざして俺へと斬りかかる

 

「はぁっ!!」

 

しかし俺はそれを飛び上がって躱すと空中でスタッグスカルを蹴り飛ばす。そして着地と同時にビートルスカルをファングクナイで斬りつけ蹴りを放つ

 

「ぐあっ!?」

 

「てめえっ!!」

 

ビートルスカルは持ち前の耐久力で堪えて再び大剣で俺を斬りつけるが俺はそれを白刃取りの要領で受け止めると

 

「はあっ!!」

 

「何ぃっ!?」

 

大剣を上に弾き渾身のパンチをビートルスカルの胸部へと放って吹き飛ばした。

 

「死ねぇっ!!」

 

スタッグスカルは飛び上がって空中から俺を斬りつけるが俺はそれを躱して回し蹴りを放ちビートルスカルの方へと飛ばした。

 

「ちぃっ…」

 

「やるじゃねえか…」

 

ビートルスカルとスタッグスカルは思わぬ反撃に動じながらもそれぞれの武器を構える。

 

 

 

 

 

 

「まだ倒せてねえのかよお前ら」

 

その時、茂みから金髪に鋭い目をした、ボロい外套を着込んだ男が現れた。

 

「デ、デスドラ様…」

 

「すいません、こいつ思ったより手強くて…」

 

男の姿を見た途端、ビートルスカルとスタッグスカルは慌てて男に謝る

 

「まぁしょうがねえか、こいつはロードスカルや道元を倒した男だからな…」

 

お前らは手を出すなよ、そう言いながら男は鋭い笑みを浮かべて俺に近づいてくる。

 

「お前がこいつらのボスか?」

 

現れた男から目を離さずに俺は身構える。一眼見て分かった、こいつは他の2人より遥かに強いと

 

「その通り…俺の名はデスドラ、この世界の全てを壊す男の名だ」

 

そういうと男は懐から驚くものを取り出した

 

「それは…カグラドライバー!?」

 

何とそれは恐竜の骨を思わせる装飾のカグラドライバーだったのだ

信じられないものを見て俺が驚いてるとデスドラはそれを腰に装着する

 

『デスカグラドライバー!!』

 

その瞬間禍々しい音声が響く。

 

『メガロサウルス!!』

 

すると今度は恐竜の骨のようなスカルキーを起動してそれを挿し込む

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから禍々しい音声が鳴り響く

 

「変身」

 

『死装!!メガロ!!』

 

メガロスカルキーを回した瞬間、地面からどす黒い恐竜の骨が現れ、デスドラに噛み付くと恐竜の骨を思わせる鎧を纏った仮面ライダーへと変身した。

 

「仮面ライダーデスドラ…さぁ、破壊の限りを尽くそうかぁっ!!」

 

デスドラはそう叫ぶと手に牙のような刃を持った鋸の様な剣、キラーファングを右手に持つと俺に斬りかかってきた。

 

「風花さん退がって!!」

 

危険を察知した俺はファングクナイでデスドラのキラーファングの一撃をガードする。

 

「ぐ…うわぁっ!!」

 

しかし、その一撃は凄まじく俺は吹き飛ばされて後ろの木に激突してしまう。

 

「ははっ!!やるじゃねえか…そのクナイごと真っ二つにするつもりだったんだがなぁっ!!」

 

デスドラは嬉しそうにキラーファングを振り回して何度も俺を斬りつける。

あまりの斬撃の数にファングクナイで斬撃を凌ぐのがやっとだった。

 

「ほらこっちだよぉっ!!」

 

瞬間、デスドラはキラーファングを右手から左手へ持ち替えてガラ空きだった脇腹へ斬りつける。

 

「ぐっ…このぉっ!!」

 

俺は斬撃を咄嗟に避けるが間に合わず脇腹を掠める。その痛みに堪えながらも俺はファングクナイで斬りつけデスドラと鍔迫り合いの状態になる

 

「すげえだろこの力!!こいつは10年前ドラゴンの奴がこの村を襲撃した時に手に入れた破壊竜の力の一部だ!!そいつとドライバーの力が俺にこの最強の力を与えたのさ!!」

 

「破壊竜の力…これが…!」

 

俺はデスドラの暴力的なまでの力に驚きを隠せずにいた。力の一部だけでこれだけの破壊力…もし完全に復活したら大変な事になる。

 

「そんな事は…絶対にさせない!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺はファングクナイにティラノキーを挿しこみ回す

 

「面白え…ならこっちも」

 

『絶殺の術!!』

 

デスドラもキラーファングにメガロスカルキーを挿しこみ回すと刀身に禍々しいオーラを纏いだす

 

「必殺忍法!!激竜忍斬り!!」

 

俺の必殺忍法がデスドラに向けて放たれる

 

「絶殺忍法!!キリングバイツ!!」

 

しかし、デスドラの放った絶殺忍法はメガロサウルスの頭の骨の様な形になると俺の必殺忍法を破壊しながら俺に炸裂した。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

俺はその威力に吹き飛ばされて変身を解除してしまう。

 

「竜司!!」

 

 

 

風花が慌てて倒れる竜司の元へと駆け寄ろうとする

 

「おっとさせねえよ」

 

「うっ…」

 

しかし目の前に現れたデスドラにお腹を殴られ意識を失ってしまう。

 

「ようやく封印の巫女を手に入れたぞ…この力で破壊竜を復活すれば…ははっははははは!!」

 

デスドラはビートルスカルとスタッグスカルを連れて笑いながら風花を担いでその場を去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

「風花さん…くそぉ…」

 

俺は立ち去るデスドラ達に手を伸ばすがそのまま意識を失ってしまった。

 

 




デスドラの変身エフェクトは仮面ライダールシファーの骸骨が恐竜になった感じです。


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後編

劇場短編クライマックスです!!
それと章タイトル少し変えました


辺りを見渡すと、そこは地獄だった。

草木は枯れ、大地は砕け、巨大な無数の竜巻が全てを破壊していた。

 

『ギャオォォォォォォォォォォ!!』

 

そこにいるのは巨大な恐竜、紺色の体に鋭い牙を持つ破壊竜は巨大な雄叫びを天に轟かせていた。

 

 

『メガロサウルス……もう終わらせましょう…』

 

そこへ1人の白髪の巫女が現れる。巫女は破壊竜…メガロサウルスの前に立つと懐から一つの鍵を取り出す。

 

『ごめんなさい…』

 

巫女はただそう一言言うと鍵に力を注ぎ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「り……く……りゅ…くん…りゅーくん!!」

 

突然俺を呼ぶ声が聞こえて目を覚ますと目の前に飛鳥な顔が見えた。

 

「飛鳥……?」

 

「良かった〜!!りゅーくんが目を覚ましてくれて…」

 

俺が目を覚ました事に飛鳥はホッとした顔で俺に微笑んだ。

 

「俺は一体…うぐっ!!」

 

起きあがろうとすると体に激痛が走る。

周りを見ると臨時の治療部屋らしく周りには怪我をした他の忍達が治療を受けていた。

 

「無理しちゃダメだよりゅーくん、まだ傷が癒えてないんだから…」

 

飛鳥の言葉で思い出した。そうだ…俺はあのデスドラって言う仮面ライダーに負けて…

 

「飛鳥!!風花さんは!?」

 

「っ…それは……」

 

俺は飛鳥に風花さんのことを聞くと気まずそうに目を逸らす

 

「攫われた…スカル達にな」

 

飛鳥の代わりに答えたのは霧夜先生だった。

 

「そんな……っ!!どこですか!?風花さんはどこに連れて行かれたんですか!?」

 

「落ち着け竜司、順を追って説明する」

 

問い詰める俺を宥めながら霧夜先生は話し出す。

 

「封印の巫女である風花様を手に入れたなら奴らが次に向かうところはもう分かってる…破壊竜が封印された封印の石碑がある禁足地だ」

 

 

 

 

 

 

風神村に存在する樹海の奥地にある禁足地…ここには伝説の破壊竜が封印されている。風神村の民は封印の巫女と封印の祠、この2つを300年もの間守り続けていた。現在その場所では…

 

「う……ああ……」

 

鎖に繋がれた風花にデスドラが手を翳しており彼女の胸元から紺色の光が輝いている。その光が輝くほどに彼女は苦痛の声をあげていた。

 

「くくく…ようやくだ…ようやく破壊竜の力がこの俺の手に…!!」

 

そして輝きが最高潮に達したその時、

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

彼女の悲鳴とともに体の中から鍵が出てきた。鍵を抜き取られた風花は力無く倒れ込む

 

「おぉ…これが封印の鍵…」

 

「こいつで破壊竜が復活するんだな!!」

 

デスドラの手にした鍵を見てビートルスカルとスタッグスカルは歓喜しながら鍵を凝視する。

 

「そうだこの鍵の力を持ってすれば…破壊竜を縛り続けていた封印は解ける!!さあ目覚めろ!!最強最悪の破壊竜……メガロサウルスよ!!」

 

デスドラが叫びながら石碑に鍵を挿し込み回すと石碑が揺れだし紋様が光り輝く…そして、

 

 

 

「ギャオォォォォォォォォォォ!!」

 

 

 

凄まじい雄叫びと共に石碑が爆ぜて地中から紺色の巨大な恐竜が現れた。

瞬間、天は黒い雲が覆い風が渦巻いて巨大な竜巻が幾つも現れた。竜巻は周りのもの全てを飲み込み破壊しながらどんどん大きくなっていく

 

「はは、すげえぞこれ…これが破壊竜と呼ばれた恐竜の力か…この力があれば俺は全てを破壊出来る…この国も!!そして世界も!!全てを破壊尽くせるぜ!!」

 

「な、なぁデスドラ様…これ制御出来んのかよ…」

 

「いくら力があっても巻き添えにやられちまったら…」

 

メガロサウルスの凄まじい力にビートルスカルとスタッグスカルは動揺してデスドラを問い詰める。

 

「安心しろ、その為にコイツがいるんだ」

 

するとデスドラは風花と封印の鍵を掴むとメガロサウルスの方へと投げる。その瞬間、風花はメガロサウルスに吸い込まれてメガロサウルスの全身を鎖が覆い暴れるメガロサウルスを抑え込んだ。

 

「破壊竜の力を長年封じてきた封印の巫女と鍵の力はこんなふうにも使えるんだよ。こいつがいれば破壊竜は俺達の言いなりってわけだ」

 

そう言うとデスドラはメガロサウルスの背中に乗って鎖を手綱の様に掴んだ。

 

「さあ始まるぞ!!破壊と殺戮による地獄がな!!」

 

「ギャオォォォォォォォォォォ!!」

 

メガロサウルスの雄叫びがまるで終焉の鐘の様に空に響き渡った。

 

 

 

 

 

「な…なんだ!?」

 

「これは…まさか!!」

 

突然の轟音に辺りはざわめく…俺達が外に出ると空が暗く染まり巨大な竜巻が幾つも発生していた。

 

「遂に復活してしまった…破壊竜が…!!」

 

村長は事態に気付き絶望的な表情で崩れ落ちる。

 

「儂等一族が300年間守り続けた封印が解けてしまった……破壊竜が復活しまってはもう儂等だけではどうにも出来ん…」

 

周りから暗い空気が立ち込める。ここにいる人々が破壊竜の復活に心が折れかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ1人を除いて

 

「まだ終わっていない」

 

竜司は起き上がると服を着ながらそう呟く

 

「竜司…」

 

「俺は風花さんと約束したんだ…また面白い話を聞かせるって…その約束は絶対に果たす!!」

 

あんな奴に…あんな残虐非道な奴の欲望を満たす為なんかに…風花さんを好きにはさせない!!自分が…彼女の為に何をするべきか…やっとその答えが出た

 

「この国も…風花さんも…両方救う!!」

 

国と風花さん…どちらか1つを選ぼうとするのがそもそも間違いだった。両方守りたいなら…どちらとも選ばなくてどうする?それが出来なくて…どうやって世界一カッコイイ忍者になれるんだ!!

 

「必ず助ける!!」

 

俺はシノビークル・大地に跨ると全速力で竜巻が発生してる方へと走り出した。

 

 

 

 

「奴が来るな」

 

メガロサウルスの上でデスドラは気配を感じてその方向を見る。おそらく先程倒した仮面ライダーだろう。まだ動けたとは思ってなかった。

 

「おい、邪魔しにこっちに来る奴を返り討ちにしてこい」

 

デスドラはビートルスカルとスタッグスカルの2人に命じた。

 

 

 

「見えた…あれが…」

 

走り続けてると遠くに紺色の巨大な恐竜が見えてきた。遠くからでもわかる凄まじい力、周囲に渦巻く竜巻がその正体を確信させる。

 

「あれが…破壊竜…」

 

その時、そちらから大量のアントスカルやアーミーアントスカルの群れを連れてビートルスカルとスタッグスカルが待ち構えていた。

 

「こっから先には行かせねえよ」

 

「今度こそテメェを仕留めてやるぜ」

 

「ギギィッ!!」

 

2人が命じるとアントスカルの群れが俺へと一斉に押しかけてくる。

俺がカグラドライバーを手に迎え打とうとしたその時、

 

「はあっ!!」

 

「やぁぁぁっ!!」

 

飛鳥達が現れてアントスカル達を斬り裂く

 

「りゅーくんは先に行って!!」

 

「こいつらはわたくし達が相手します!!」

 

「皆…ありがとう!!」

 

俺は皆に礼をするとアントスカルの群れを通り抜けてメガロサウルスの元へと走り出した。

 

 

 

「ったくあの馬鹿ども…足止めもろくに出来ないのかよ。まぁまたお前と遊べるし良いけどさ」

 

破壊竜の元へ辿り着いた俺の目の前には仮面ライダーデスドラがキラーファングを手に持ちながらそう呟いていた。

 

「あれが…メガロサウルス…」

 

『ギャオォォォォォォォォォォ!!』

 

目の前には鎖を身に纏った紺色の恐竜が叫んでいた。

 

「あいつ……」

 

その時、俺はメガロサウルスの声に一瞬何か違和感を感じた。

 

「風花さんを返してもらうぞ!!」

 

俺はカグラドライバーを腰にはめてデスドラへとそう叫ぶ。

 

「そう言うわけには行かねえな…あの女にはこれからもこいつの制御装置として働いてもらうんだからよ」

 

その言葉に…風花さんのことを装置なんて言ったデスドラに俺は怒りで震える。

 

「お前なんかに…風花さんをこれ以上弄ばれてたまるか!!」

 

『ティラノ!!』

 

俺はティラノキーを起動してカグラドライバーの鍵穴に挿し込む

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音声が響き渡る

 

「変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

俺はティラノキーを回すと、全身をティラノサウルスのオーラが包み込み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「ははっ良いねぇ!!今度は手加減なしにぶっ殺してやるよ…やれぇっメガロサウルス!!」

 

「ギャオォォォォォォォォォォ!!」

 

デスドラが手綱を引っ張って命じるとメガロサウルスは雄叫びと共に俺に襲いかかってきた。

 

「いくぞ!!はあっ!!」

 

俺はファングクナイを手にするとメガロサウルスの噛みつき攻撃を躱しながらデスドラに斬りつける

 

「甘えよ!!」

 

しかしデスドラはキラーファングてガードしてそのまま押し返した。

 

「ぐ…」

 

しかし俺はすぐに体制を立て直してデスドラに飛び蹴りを繰り出す。

 

「グォォォォォ!!」

 

「なっ!?」

 

瞬間、メガロサウルスが巨大な尻尾で俺を叩き落とそうとしてきた。俺はすぐにその尻尾を躱すがその瞬間デスドラが俺に斬りかかってきた。

 

「くそっなめんな!!」

 

ファングクナイで弾き返すがデスドラから繰り出される連続斬りに徐々に体を斬られていった

 

「く…くそ」

 

「ははっしぶといなお前…今の間に5回は殺せたと思ったのにまだ生きてんだからよ」 

 

デスドラは俺を見ながら面白そうに笑いながらそう言う

 

「やっぱり理解出来ねえな…それだけ強くて何故俺みたいに闘いを楽しめねえんだ?」

 

「なんだと?」

 

突然デスドラが俺にそう聞いてきた。

 

「思う存分闘いを楽しめよ!!お前だって本当は強い奴を叩き潰したくてしょうがねえんだろ!?そんだけ強い力を手に入れたんだから楽しまなきゃ損じゃねえか!!」

 

「ふざけんな!!俺はお前みたいにはならねえ!!」

 

デスドラの言葉に俺は怒りが込み上げてくる。

 

「俺が力を使うのは…誰かを守る為だ!!」

 

『ステゴ!!』

 

俺はステゴキーをカグラドライバーに挿しこんで回す。

 

「変身」

 

『武装!!ステゴ!!』

 

「はぁぁぁ!!」

 

「ぐ……これは……!!」

 

仮面ライダーリューマ・ステゴ武装に変身した俺はステゴスライサーを投げつけデスドラに再度攻撃を繰り出す。デスドラも変幻自在な手裏剣の攻撃に困惑する。

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜斬撃乱舞!!」

 

俺の放ったステゴスライサーはさらに巨大化してデスドラを連続で斬りつける。

 

「ちぃっ…舐めやがって…」

 

『武装!!パキケファ!!』

 

さらに俺は仮面ライダーリューマ・パキケファ武装に変身するとパッキーナックルで動きが止まったところに渾身のパンチを炸裂させる。

 

「なにぃっ!?」

 

「おらおらおらぁっ!!」

 

更に連続でパンチを繰り出しデスドラは負けじとキラーファングでガードするがパキケファのパワーに押される

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜空烈拳!!」

 

「くそがぁ!!」

 

俺が必殺忍法を放つとデスドラもキラーファングに力を込めて相殺する。

 

「まだまだぁっ!!」

 

『武装!!プレシオ!!』

 

更にプレシオ武装に変身して操った水でデスドラを拘束する。

 

「おりゃぁ!!」

 

「ちぃっ…」

 

そのまま地面へ全力で叩きつけるがデスドラも受け身をとって持ち堪える

 

「必殺忍法!!激竜荒波一本突き!!」

 

しかし俺は更に必殺忍法をデスドラへ放つ

 

「小賢しいわぁ!!」

 

デスドラはキラーファングでガードをして勢いを殺しながら回避する。

 

「があっ!?」

 

しかし、俺はすぐに命駆モードになるとデスドラへと追撃をした。

 

「俺はお前なんかに負けない…守るための力って奴を…お前に叩き込んでやる!!」

 

 

 

 

「くそっ…この俺を…なめんなぁ!!」

 

その時、突然デスドラの力が急激に上昇して俺を吹き飛ばした。

 

「ぐ…これは…」

 

「どうだ…これが復活した破壊竜メガロサウルスの真の力だ!!」

 

デスドラの言葉を聞きよく見るとメガロサウルスの力がどんどんデスドラへと流れ込んでいる。

 

「こいつはまだ俺にもうまく使いこなせてないからな…ここでも使うつもりはなかったが仕方ねえ…テメェはここでぶち殺させてもらうぞ!!」

 

デスドラはそう叫んで俺へと飛びかかった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「このままでは……」

 

その頃、スカル達の足止めをしていた飛鳥達だったがビートルスカルとスタッグスカル、そして無数のアントスカルの群れに苦戦を強いられていた。

 

「ははっ…ただの忍が俺達スカルに勝てるわけねえのに」

 

「よくまぁ無駄な足掻きを続けるもんだ」

 

そんな飛鳥達をビートルスカルとスタッグスカルは面白そうに嘲笑った。

 

「私達を…馬鹿にしないで!!」

 

「たとえ倒すことが出来なくても…竜司さんが破壊竜を止めるまでの間…時間を稼ぐことは出来ます!!」

 

「アタイら忍の意志を舐めんじゃねえ!!」

 

「あいつが…竜司が諦めない限り…」

 

「雲雀達も…諦めない!!」

 

しかし、飛鳥達は決して折れない…竜司が、仮面ライダーリューマが今もなお戦っているのだから!!

 

「へっ…だったら…」

 

「とっととくたばれクソガキ共がぁっ!!」

 

痺れを切らしたビートルスカルとスタッグスカルはそれぞれの武器で飛鳥達に斬りかかる。

 

 

 

 

「やれやれしょうがねえなあ」

 

瞬間、何かがビートルスカルの腕に絡みついて拘束する

 

「な、なんだこりゃ…釣り糸!?」

 

「誰だテメェ!!」

 

釣り糸の先を見ると紅髪の少年が釣り竿を手にこちらへと歩いてきた。

 

「あれって…」

 

「炎佐さん!?」

 

突然現れた炎佐に飛鳥達は驚く

 

「あいつらの今日の晩御飯を手に入れる為に川へ魚釣りをしに来たら…いきなり空が黒い雲で覆われるんだもんな…いざ来てみたら…なかなかやばいことになってるじゃねえか」

 

炎佐はそう呟きながらカグラドライバーを腰に装着する。

 

『スピノ!!』

 

炎佐はスピノキーを起動してカグラドライバーに挿しこむ

 

「ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!」

 

ベルトから音声が響き渡る

 

「変身」

 

「武装!!スピノ!!」

 

炎佐がスピノキーを回すとスピノサウルスのオーラが彼を包み込み仮面ライダーガリューへと変身した。

 

「お前らには借りがあるからな…ここで返しといてやる」

 

炎佐はそれだけ言ってビートルスカルとスタッグスカルへと斬りつける

 

「くそっ!!ガリューまで来るなんて聞いてねえぞ!!」

 

ビートルスカルがガリューのスピノアクスを大剣で防ぐとスタッグスカルが双剣を手にガリューへ襲いかかる。

 

「ふっ!!」

 

「なあっ!?」

 

しかし、ガリューは双剣の内の一振りを片手で受け止めると片足でスタッグスカルを蹴り飛ばす。

 

「テメェ!!」

 

ビートルスカルは怒りながら大剣に力を入れるがガリューはスピノアクスを両手で握り逆に押し返す。

 

「おりゃぁ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

そして一瞬の隙をついて一気に力を込めビートルスカルを斬りつけた。

 

「死ねやぁっ!!」

 

激昂しながらスタッグスカルが双剣を手にガリューへ飛び掛かる

 

「無駄だ」

 

「げふっ!!」

 

しかしガリューはスピノアクスを置くとそれを足場に飛び上がりスタッグスカルをビートルスカルの方へと蹴り飛ばす

 

『必殺の術!!』

 

そしてスピノアクスの鍵穴にスピノキーを挿しこんで回すとスピノアクスが紅く光り輝く

 

「必殺忍法!!煉獄一閃!!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ちくしょぉぉぉぉ!!」

 

ガリューの必殺忍法が炸裂した2人は爆発した。

 

「凄い……」

 

「以前より更に強くなってる…」

 

飛鳥達はガリューの強さに驚きを隠せずにいた。

 

「逃げたか、まぁいい…それよりもあっちだな」

 

ガリューはつまらなそうに呟くとメガロサウルスが暴れている方角を見つめる

 

 

 

 

 

 

「く…くそ…」

 

「ははっ…なかなか粘るじゃねえか…」

 

メガロサウルスの力を手にしたデスドラは満身創痍の俺を見ながら楽しそうに笑った。

 

「なぁリューマ…お前、俺の仲間になれよ」

 

「はあっ!?」

 

突然の勧誘に俺は驚いた。

 

「俺と一緒に世界を破壊するんだよ!!世界中を引っ掻き回して思う存分戦いを…殺しを愉しむんだ!!お前も守る為とかいい子ちゃんしてねえで自分を解放してみろよ!!」

 

「断る!!」

 

「あ?」

 

俺はデスドラの勧誘を断るとデスドラは不満そうな声を出す

 

「何度も言わせるな…俺は誰かを守る為にこの力を使う…お前の仲間になんか死んでもなるか!!」

 

「…そうかよ、じゃあもういい」

 

デスドラはそう言って手を挙げるとメガロサウルスが俺へと近づく

 

「テメェはここで潰れて死にやがれ!!」

 

「グォォォォォ!!」

 

メガロサウルスは雄叫びと共に足を振り上げてリューマを踏み潰そうとした。

 

「く…こんなところで…!!」

 

俺は回避する為になんとか足に力を入れようとする。

 

 

 

 

 

しかし、あと少しで踏みつけようとした時、突然メガロサウルスの動きが止まった。

 

「え……?」

 

突然メガロサウルスが止まったことに俺は動揺する。

  

「おいどうしたメガロサウルス?さっさとそいつを踏み潰せ!!」

 

デスドラにも想定外の事だったらしくメガロサウルスに怒鳴りつける

 

「一体何が…」

 

『竜司…』

 

「風花さん!?」

 

突然メガロサウルスから風花さんの声が聞こえてきた。

 

『大丈夫…私に任せて』

 

突然メガロサウルスの全身の鎖が突然メガロサウルスの体を縛りつけた。

 

「な…なんだ!?」

 

これにはデスドラも想定外だったらしく動揺していた。

 

「まさかあの女…自分ごと破壊竜を封印するつもりなのか!?」

 

「なにぃっ!?」

 

そんなことをすれば彼女は…

 

「ふざけるな!!そんな事させると思っているのか!!」

 

デスドラは叫びながらメガロサウルスの方へと走り出す。

 

「それはこっちの台詞だ!!」

 

俺はデスドラを蹴りとばしメガロサウルスの口の中へと飛び込んだ。

 

「絶対に……させるかぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

竜司…私ね、本当は辛かったの…

 

私に愛情を注いでくれた父さんと母さんが死んで、巫女になって…暗いところで閉じ込められて…ずっと辛かった

 

そんな時に私を支えてくれたのは…両親との楽しい思い出だった

 

辛い時、寂しい時…そうやって気を紛らわせていた

 

そんな時、竜司…貴方に出会った

 

貴方の話してくれた話はどれも面白くて…ドキドキした。世界って広いんだって心の底から思えた。

 

だから、貴方の話してくれた話のおかげで…これからの長く辛い生活を生きていける

 

だから、私が守る

 

貴方が生きる世界を、驚きや楽しいことがあるこの世界を…私が守る

 

それが私の…封印の巫女である私の使命だから

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に…させるかぁぁぁぁぁ!!」

 

突然、風花の耳に声が聞こえる。ふと顔を見上げると変身を解いた竜司が私の方へと飛び込んできた。

 

「竜司…!!」

 

突然現れたリューマに風花は驚愕する

 

 

 

「な…何やってるの!!ここにいたら貴方も…!!」

 

「決まってるだろ…風花さんを助けに来た」

 

俺はまっすぐと風花さんを見ながらそう言う

 

「これが…これが私の使命なの!!封印の巫女として…破壊竜からこの国を守る!!私は…竜司が教えてくれたこの世界が!!竜司が死んじゃうのが嫌なの!!だから…」

 

「だから自分が死んで世界を守るってか?ふざけんな!!」

 

風花さんの言葉に俺は叫んだ。

 

「俺さぁ…昔から『破壊竜伝説』が嫌いだった…なんでかわかるか!?」

 

 

『俺……この話嫌い』

 

『どうしてじゃ竜司?』

 

『だって……』

 

 

「なんで巫女が死んじゃったのに…『めでたしめでたし』なんて言うんだよ!?」

 

あの巫女だって…本当は死にたくなかった筈だ…生きて…幸せになりたかったはずだなのに…彼女が死んで『めでたしめでたし』なんて間違ってる!!

 

「俺は絶対に風花さんを死なせない!!この世界も救う!!だから風花さんも自分の命を粗末にするな!!風花さんが…本当にやりたい事を言ってみろ!!」

 

俺がそう叫ぶと風花さんの目から涙が溢れる

 

「私は…もっと世界のことを知りたい」

 

一度口にしたらもう止まらない

 

「もっと色んなものを見てみたい…体験したい…」

 

そして

 

「もっと生きたい…死にたくない…助けてぇ!!」

 

「任せろ!!必ず助ける!!」

 

俺は風花に微笑みながら頭を撫でる

そしてもう1人、助けないといけない奴がいる

 

「もちろんお前もな、メガロサウルス!!」

 

俺は破壊竜…いや、メガロサウルスへとそう叫ぶ

 

「お前の中に飛び込んだ時、お前の心の声が聞こえた…『助けて』、『こんなことしたくない』…お前は、本当は何も壊したくないんだな。ただ、自分の力をうまく使えないだけなんだ」

 

俺はメガロサウルスへと手を伸ばす

 

「大丈夫!!俺がお前を受け止めてみせる!!」

 

 

 

 

メガロサウルスはかつての記憶を思い出す

 

『ごめんなさいメガロサウルス…貴方を封じることしかできない私を…』

 

それは自分を封じた巫女の悲しい顔

 

『でも、いつの日か…貴方を受け止めることができる人が必ず現れる…この世界で…一人ぼっちなんて事は絶対無いんだから…!!』

 

彼女は託したんだ、いつの日か…自分を受け止めてくれる人が、共に戦える仲間が現れる未来に…!!

メガロサウルスの目から涙が流れて風花の持つ封印の鍵に流れ落ちた時、奇跡が起こった。

 

 

 

「え…?」

 

「これって…」

 

封印の鍵は光り輝くと風車を模した紺色のキョウリュウキーへと変わった

 

「竜司…これって…!」

 

「あぁ…使えって事だ!!」

 

風花は俺に鍵を渡し、俺は頷いた。

 

「一緒に戦おう…メガロサウルス!!」

 

『メガロ!!サイクロン!!』

 

俺はサイクロンメガロキーを起動するとカグラドライバーに挿し込む

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

『サイクロン武装!!メガロ!!』

 

鍵を回した瞬間、メガロサウルスが俺の中へと入ってくる…そして、両肩に風車型の装甲と首にマフラーをした紺色の装甲、仮面ライダーリューマ・サイクロンへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ・サイクロン…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

 

 

「なんだその姿は…まさか、破壊竜の力を手に入れたと言うのか!?」

 

風花を抱き抱えながら現れた仮面ライダーリューマ・サイクロンの姿を見てデスドラは驚愕する。

 

「違うよ…この力は、破壊の為のものじゃない」

 

「ほざけぇ!!」

 

デスドラは叫びながら俺へと飛びかかってくる。

 

「風花さん、退がってて」

 

「う、うん」

 

俺は風花さんを下ろすと後ろに退がらせる。

 

「ふっ」

 

「な…馬鹿なぁっ!?」

 

俺はデスドラが放った一撃を片手で掴んだ。

 

「はあっ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

そしてデスドラのボディーへパンチを放ちデスドラを吹き飛ばす。

 

「小癪なぁぁぁぁぁ!!」

 

激昂したデスドラは再度俺へと斬りつけるが俺は腕に風を纏ってその一撃を防ぎ、連続パンチの後、アッパーで空中へと飛ばす。

 

「ぐっ…」

 

「おりゃぁ!!」

 

そして足に竜巻を纏って空中へ飛ぶと踵落としでデスドラを地面に叩きつけた。

 

「くそっ…何故だ!!同じ破壊竜の力なのに…何故俺が負けてるんだ!?」

 

「同じじゃない」

 

デスドラの言葉を俺は否定する

 

「お前が手にしたのはメガロサウルスの破壊の力だけだ…でも俺は違う、俺は…メガロサウルスの全てを受け止めた!!メガロサウルスの一面しか見ていないお前なんかに負けるわけがねえんだよ!!」

 

「黙れぇ!!」

 

『絶殺の術!!』

 

デスドラがデスカグラドライバーを叩きキラーファングを上に掲げるとその先に凄まじいエネルギーを内包した球体が出来た。

 

「絶殺忍法!!ジェノサイドデストロイ!!」

 

デスドラがキラーファングを振り下ろすと球体が俺達へと放たれる。

 

「これで終わりだ」

 

『必殺の術!!サイクロン!!』

 

俺はカグラドライバーを叩いて全身に竜巻を纏って空中へ飛んだ

 

「必殺忍法!!激竜マキシマムサイクロン!!」

 

俺の放ったキックはデスドラの絶殺忍法を突き破りながらデスドラへと炸裂した。

 

「そんな…こんなところで…俺がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

デスカグラドライバーが壊れ、デスドラは吹き飛ばれて空中で爆発した。

 

 

 

 

「りゅーくん…勝ったんだね」

 

「竜司さん…流石です」

 

デスドラに勝利した竜司を飛鳥達がほっとした顔で遠くから見ていた。

 

「…どうやら俺は要らなかったみたいだな、まぁ当然か」

 

変身を解いたガリューは嬉しそうに笑いながら人知れずその場を立ち去った

 

 

 

 

 

「本当に貰っていいの?」

 

デスドラとの戦いが終わった後、風花さんは俺にサイクロンメガロキーを渡した。

 

「うん、村長からも許しが出た。もうその力は…破壊竜じゃ無いからって」

 

風花さんが微笑みながらそう言うと俺も嬉しくなって微笑み返した。

 

「これからどうするの?」

 

「とりあえず村の復興を手伝うわ、なんだかんだ言って…ここは私の故郷だから…」

 

それは一族の使命だからじゃ無い、たしかに風花さん自身で決めた事だった。

 

「それが終わったら…色んなところを見て回ろうと思う。貴方が教えてくれた事、その他のこと…やりたい事が沢山あるから」

 

「そっか、いっぱい見てくるといいよ!!本当に沢山あるから!!」

 

俺がそう言うと、風花さんは少し顔を赤く染めて

 

「それとね…もう1つ」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

瞬間、風花さんが俺の唇に自分の唇を重ねた。

 

「…………………え?」

 

「これはお礼、ありがとう竜司」

 

風花さんは照れ臭そうに微笑む

 

「じゃ、あっちで復興の手伝いしなくちゃいけないから…じゃあね!」

 

それだけ言って風花さんはそのまま走って行ってしまった

 

「……………………………………。」

 

唇に、まだ彼女の唇の感触が残ってる

顔も熱い。心臓がバクバクなってる

 

「りゅ〜う〜じ〜さ〜ん」

 

瞬間、背後に突然斑鳩先輩が現れた。

 

「見てましたよ!!竜司さんが!!あの人に!!何を!!されてたのかを!!」

 

怒り狂うその顔はまるで般若のようだった。

 

「え…えと…あれは…その…」

 

思い出すと恥ずかしさで上手く喋れない

 

「竜司さんの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

突然斑鳩先輩が飛燕を抜いて斬りかかってくる

 

「せ、せせせ先輩待って!!そんなので斬られたら死んじゃうから!!」

 

「竜司さんを殺してわたくしも死ぬぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「助けてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「落ち着け斑鳩ぁぁぁぁぁ!!」

 

逃げる俺、襲いかかる斑鳩先輩、それを追いかけるかつ姉を見ながら霧夜先生は呟く

 

「よく生きてるなあいつ」

 

 

 

 

 

「いや〜沢山釣れたな。あいつら喜ぶぞ〜」

 

その頃、川では炎佐がクーラーボックスいっぱいの魚を釣って上機嫌で帰路についていた。

 

「次会うときは、俺が勝つからな」

 

自分のライバル、竜司との再戦を待ち焦がれながら

 

 

 

 

「竜司…」

 

空を見上げる風花は自分を救った仮面の忍を思い出す

 

「ありがとう」

 

頬を赤く染め、胸に両手を当てながら

 

 

 

その後この村では『破壊竜伝説』の続きが語られることになる

 

 

はかいのりゅうがふういんされてすうひゃくねんご、じゃあくなそんざいがはかいのりゅうのちからをもとめてやってきました

 

そのじだいのみこは、はかいのりゅうからくにをまもるためにいのちをかけてはかいのりゅうをふういんしようとします

 

しかし、そこへりゅうとともにたたかうかめんのゆうしゃがあらわれてみこをたすけました

 

ゆうしゃははかいのりゅうまでもをすくいじゃあくなそんざいからみんなをまもりました

 

はかいのりゅうとよばれたそんざいはこころやさしいりゅうになりゆうしゃのなかまになりました

 

そしてさだめからかいほうされたみこはそのごしあわせにくらしましたとさ

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでこそめでたしめでたし」

 

俺は満足しながら本を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっデスドラの野郎負けやがって!!」

 

暗い路地をビートルスカルとスタッグスカルが走る

 

「デスドラの奴について行けば思う存分破壊を愉しめると思ったのに!!」

 

「どうすんだよ!!このままじゃメドューサの奴が黙ってねえぞ!!」

 

弥勒を裏切った時点でもう自分達は粛清対象…デスドラがいない今、いつ奴が処刑に来てもおかしくない

 

「手負いのリューマをなんとか仕留めて弥勒へと手土産にするしかねぇ!!やらなきゃ俺達が殺される!!」

 

 

 

 

「面白い事話してるな」

 

その時、目の前に誰かが現れる。その姿は銀色のトリケラトプスの様な姿に剣と盾を持った姿をしていた。

 

「て、テメェは…」

 

「俺か?そうだなぁ…仮面ライダー…オルグだ」

 

オルグの言葉を待たずにビートルスカルとスタッグスカルは斬りつけるが、オルグは盾で2人の攻撃をガードすると剣で斬り裂いた。

 

「「ぐわぁぁぁぁ!?」」

 

あまりの一撃に2人はなす術もなく吹き飛ばされる

 

『必殺の術!!』

 

オルグが剣を盾に納めながら剣の柄のボタンを押す

 

「必殺忍法!!クリスタルブレイク!!」

 

そして剣を抜きながらビートルスカルを斬り裂くとビートルスカルは爆発した。

 

「く…くそぉぉぉぉ!!」

 

スタッグスカルはオルグに怯えながら逃げようとする

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

突然光の矢が飛んできてスタッグスカルを倒した。

 

「なんだぁ?」

 

オルグが矢が飛んできた方を向くと、紫色のプテラノドンの様な装甲を纏った仮面ライダーが弓を構えていた

 

「ふうん、面白くなってきたじゃん」

 

 

 

 

 

新たに現れた仮面ライダー

 

彼らは敵か、味方か

 

新たな戦いが今、幕を開けようとしていた

 




劇場短編完結です!!

少し長くなってしまいましたがどうにか書けました!!

そして次回から新章スタート

乞うご期待!!


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学炎祭編
其の三十五 突然の再会!?の巻


新章スタートです


深夜の市街地

 

「はぁ…はぁ…!!」

 

1人の青年が手にバックを持ったまま路地裏を全速力で走り続ける。

半開きのバックからは大量の宝石が溢れていた。

 

「そこまでだ」

 

すると、青年の目の前に1人の少年が現れる。短く切った茶髪の少年、竜司である。

 

「もう逃げ場は無いぞ、宝石泥棒め」

 

「くっ…」

 

竜司の言葉に青年は歯軋りした。そう、この男は宝石泥棒である。この近くにある宝石店に忍び込み宝石を盗み出していたのだ。

 

「こんなところで…捕まってたまるかぁっ!」

 

『コックローチ!!』

 

すると、青年が懐から黒いスカルキーを取り出すと額に鍵穴があらわれる。そこへスカルキーを挿しこみ回すと鍵穴から黒い泥が噴き出して青年の全身を包むとゴキブリの力を宿したスカル、コックローチスカルへと変身した。

 

「まさかスカルが宝石泥棒とはな…まぁ倒すことに変わり無いんだけどな」

 

『ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着しティラノキーを起動して鍵穴に挿し込む

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ティラノキーを回すとドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「くそがぁ…俺はこの力でもっと金を集めて好き放題遊ぶんだ。邪魔すんなぁっ!!」

 

コックローチスカルは叫びながら鋭い爪で斬りかかってきた

俺はそれをファングクナイでガードする。

 

「随分身勝手な動機だな。葉月先生の想いに比べたら同情の余地もない!!」

 

俺はコックローチスカルの身勝手な動機に怒りを覚えながら反撃を始める。

ファングクナイを使いコックローチを連続で斬りつける

 

「ぐっ…このぉっ!!」

 

コックローチスカルは爪を使って抵抗するが俺はそれを躱してボディにパンチをお見舞いするとコックローチスカルは吹き飛ぶ

 

「ちくしょぉぉぉぉ!!こんな奴にィィィィ!!」

 

するとコックローチスカルが口から火球を放ってきた。俺がそれを躱すと火球は近くの壁に炸裂して壁を焦がす

 

「火…いや、可燃性の油を放ってるのか」

 

驚きはしたけど大した威力じゃない、このタイミングで使ったってことはおそらく奥の手だろうが問題なさそうだ。

 

『必殺の術!!』

 

俺はカグラドライバーを叩いて跳び上がる。

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

「ち…チクショォォォォォォォォォォ!!」 

 

俺の必殺忍法が炸裂してコックローチスカルは爆散する。爆発の跡地には宝石泥棒の青年と粉々に砕けたスカルキーが落ちていた。

 

「よし、帰るか」

 

俺は宝石泥棒を合流した神門様の部下に引き渡して半蔵学院へと帰った。

 

 

 

 

 

 

「これが回収したスカルキーの破片です」

 

コックローチスカルとの戦闘の翌日、俺は定期報告の為に神門様のいる本部へと足を運んでいた。

 

「ご苦労様。これで対スカルの研究はさらに進むよ」

 

初めてリューマに変身した時に俺と一緒に神門様の護衛をした忍の隊長が俺にお礼を言いながら砕けたスカルキーを受け取る。

 

「竜司くん、君のおかげでスカルの犯罪を幾つも検挙出来ている。それに君の送ってくれるリューマのデータのおかげで新たな対スカル武器、その名も『ライダーシステム』を開発する事も出来た。」

 

「本当ですか!?」

 

隊長の言葉に俺は驚いた。もしそれが本当なら今より更にスカル達から人々を守ることが出来る。

 

「全て君のおかげだ、ありがとう」

 

隊長のお礼に俺は少し恥ずかしくなった。

 

「そういえば神門様は?」

 

神門様の姿が見えない事に気づいて俺はそう聞いてみる。

 

「ん?あぁ、神門様なら今幹部達の定例会議に参加している。」

 

「幹部達ってまさか…」

 

「そうだ、この国の善忍達を束ねる最高幹部達による会議だ」

 

 

 

 

 

善忍最高幹部

 

それはその名の通り国に属し国家や国民の為に働く善忍達を纏める最高幹部達である。

彼らは単純な実力ではなくその功績や忍達を束ねる指揮能力等から選ばれ、善忍達を指揮している。

彼らは国を守る為に善忍達をまとめ上げ国を守る重鎮達なのである。

 

「こうして私達が集まるのは久しぶりですね」

 

その1人である神門が出されたお茶を飲みながらそう呟く

 

「犯罪者の対策、悪忍との戦闘、妖魔からの防衛、スカルだけがこの国の危機ではないからな。もっとも、スカルの対策はどこぞの誰かが独占してしまっておるがな」

 

神門に陰口を含みながらそう答えるのは立派な口髭と顎髭を生やしたがっしりとした体格の強面の男性、鉄心(てっしん)である。犯罪者検挙や悪忍達の取り締まり、妖魔の討伐と言った主に国防を任されている最高幹部である。

 

「それは…どういう事でしょうか?」

 

「最近貴方は勝手が過ぎるという事ですよ神門殿?」

 

鉄心の言葉に反応した神門にそう返すのは落ち着いた色の着物を着た初老の女性、朧(おぼろ)。この国の地脈や妖魔対策用の結界の管理を任されている最高幹部だ。

 

「『リューマの鎧』の資格者を勝手に決めただけならまだしも悪忍養成機関、秘立蛇邪学園への潜入を独断で許可、更には風神村で管理されていた最大機密の一つ…破壊竜の力を一個人に渡す、よくまぁここまで勝手が出来ましたね」

 

「それだけではない」

 

朧に続くように白髪に鋭い目をした老人、富嶽(ふがく)が呟いた。

彼は最高幹部の中では一番の古株であり、最も大きな勢力の派閥を束ねる重鎮であった。

 

「貴様、新たに開発された対スカル武器『ライダーシステム』の資格者を既に決めたそうじゃないか」

 

「そうだ!!それに関しては俺も一言言わせてもらうぞ!!」

 

富嶽が持ちかけた議題に鉄心も反応して神門を問い詰める。

 

「元々『リューマの鎧』は我々善忍がスカルに立ち向かう為に代々守り続けていた切り札…例の竜司とか言う忍学生がやむを得ない状況だったとはいえその力を受け継いでしまった以上!!新たに開発された力こそ、我々最高幹部が選考した優秀な忍に使わせるべきだろう!?それを無視して勝手に資格者を決めるとは何事だ!!」

 

「…スカル関連の問題は私に一任されているはずでは?」

 

「それ自体が問題だと言ってるんだ!!手柄を自分のものにするつもりか!?」

 

国から国防を任されている立場だからこそ、鉄心にとってスカル関連の問題を神門に一任されているのは面白くないのだろう。鉄心は神門に声を荒げて怒鳴った。

 

「鉄心殿の言う通りじゃ、少し勝手が過ぎるのではないか?」

 

富嶽は鉄心の言葉に頷きながら神門を睨みつける。

 

「……確かに、事前に報告するべきでしたね。それに関しては謝罪します」

 

神門はそう呟いて頭を下げた。

 

「ですが、私は決して手柄を得る為などと言った浅ましい目的で資格者を決めたのではありません。彼以上の適任はいない、そう判断した上で選んだということを理解してください」

 

「…まぁ良い、だがもしこれ以上秩序を乱すようなら…わかっておるな?」

 

富嶽の言葉に神門は体が強張る。目の前の重鎮に萎縮しそうになる。

 

「心得ております」

 

「…ふん」

 

しかし、動じた素振りを見せず神門は頷いた。そんな神門を鉄心は面白くなさそうに睨みながら茶を飲んだ。

 

「では早速今回の議題に移っても良いかしら?たしか…スカルの活性化についてでしたっけ?」

 

「それについては俺から話そう」

 

鉄心はそう言うと部下に指示を出して資料を他の3人に渡す。

 

「ここ数年になってスカルの力が増してきている。能力も多彩なものになりより強力になっている。」

 

「…地脈の流れもかなり不安定になってますね。スカルが何かしらの影響を与えている可能性があります。その影響で妖魔の動きも活発化しているようです。」

 

鉄心の出した資料を読みながら朧も自分達が得た情報を開示する。

 

「それについて私からも」

 

すると、神門が突然喋り出す。

 

「…未来視か」

 

「はい」

 

鉄心の問いに神門は頷く。神門の未来視はこれまであらゆる事件を解決に導いた。故に他の最高幹部も彼女に視線を向ける。

 

「燃える学園、無数の妖魔、黒い巨鳥、4人の忍…以上の四つが見えました」

 

「燃える学園に無数の妖魔か…忍学園同士の抗争か?」

 

「黒い巨鳥というのも気になるのぉ」

 

神門の未来視の内容に最高幹部達はどのような事が起こるかを考察していく

 

「その件に関しては俺も調べてみよう、妖魔が関わってるなら俺達が動かないわけにはいかん」

 

「私も地脈の流れや結界の歪みがないか調べてみましょう」

 

「儂も同様に」

 

「…ありがとうございます」

 

彼らの言葉に神門はお礼を言った。

 

「では次の議題に移ろうか」

 

こうして会議は進む

 

 

 

 

「ライダーシステムか……」

 

報告が終わった俺は霧夜先生の迎えの車で半蔵学院に向かっていた。

 

「その力があれば…もっと多くの人をスカルから守れる」

 

俺1人の力だけでは守れる数に限りがある。だがスカルと戦える人がもっと増えればさらに多くの人が守れるのだ

 

「ん?」

 

すると、俺のガマ吉(スマホモード)が鳴り出した。よく見るとメールが来ている。

 

「え!?」

 

「どうした竜司?」

 

メールの差出人の名前に驚いた俺に霧夜先生が心配する。

 

「霧夜先生!!はやく半蔵学院へ!!」

 

 

 

 

 

 

「りゅーくん遅いね」

 

所変わって半蔵学院では飛鳥達が教室で自習をしていた。

 

「もうそろそろ帰ってくると思いますよ」

 

「しっかしあいつもすげーよな本部から直々によびだられるし、何より神門様からも信頼されてる。間違いなくアタイらの中じゃ一番出世してるよな〜」

 

「いや〜そう言ってもらえると俺も鼻が高いな」

 

「いやいや、アタイも本当のことを……え?」

 

いつの間にか会話に入ってきた声に気付き皆んなでその方向を向くと、整った顔に茶髪を肩まで伸ばした40代の男が立っていた。

 

「だ…だれだ?」

 

「ふっ…」

 

「いや「ふっ…」じゃなくて」

 

しかし男は葛城の問いを無視して彼女の手を握る

 

「君可愛いね…もしよかったらこの後食事でもどうだ?この近くに知り合いがやってる美味い寿司屋があるんだ」

 

「ちょっと!?わたくし達の話を」

 

「お、君も行きたいのかい?良いとも良いともなんだったら君達全員連れてってあげるよ。可愛い女の子達と食事出来てお兄さん幸せだ」

 

男はこちらの問いかけを無視して白い歯を見せながら笑顔でそう言ってくる。

 

『『『『『何、このチャラ男?』』』』』

 

その瞬間、5人の思いが一致した。

 

「まぁ冗談はさておいて、君達に聞きたいことがあるんだった」

 

男の言葉に飛鳥達は身構える。すると、男は真剣な顔で口を開く

 

「君達のスリーサイズを是非教えてくれ!!あと出来ればブラのサイズも!!」

 

「「「「「……………………」」」」」

 

決めポーズをしながらのアホらしい質問に飛鳥達はドン引きした。 

 

「嘘嘘冗談冗談!!やめてガチでドン引きするのは!!」

 

飛鳥達の反応が傷ついたのか男は慌てて撤回する。

 

「えーこほん、竜司って奴がここに通ってると思うんだけど…君達心当たりない?」

 

「りゅ、りゅーくん?りゅーくんに何の用?」

 

「いや用って程じゃ無いんだけど……あれ?」

 

すると男は、飛鳥の顔を見た途端何かに気付く

 

「君ひょっとして飛鳥ちゃん?」

 

「え?あ、はい」

 

「やっぱり!!いや〜すごい美人になったね〜驚いちゃったよ!!」

 

「え?あ、あの?え?」

 

突然の事に飛鳥は戸惑うがお構いなしに男は親しげに話す。

 

「あー…覚えてないか、まぁまだあの頃は飛鳥ちゃん小さかったし無理ねえか、俺は…」

 

 

 

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぶへぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

瞬間、竜司が現れて男に飛び蹴りを繰り出した。竜司の蹴りを腰にモロに喰らって男は近くの壁に激突する。

 

「りゅーくん!?」

 

「飛鳥大丈夫!?みんな無事!?どこも純潔!?こいつに何かされてない!?」

 

竜司は明らかに取り乱した状態で男の吹き飛んだ方向を睨みつけながら飛鳥達の心配をしていた。

 

「う、うん…私達は大丈夫だけど…りゅーくんこの人って…」

 

「あ、ああ…こいつは…認めたくは無いんだけど…」

 

「りゅ…竜司…いきなり蹴り入れることはねえだろ…しかも腰って…俺もう40過ぎなんだぞ」

 

すると、腰に手を当てながらふらふらと男が立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせえ何しに来たんだよ親父!!」

 

「息子に会いに来ただけなんだけど!!」

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ゑ?」」」」」

 

衝撃の一言に飛鳥達は驚愕する。

 

「りゅりゅりゅ竜司……お前……今なんて……」

 

「お、親父って……まさかその人……」

 

「いや、だけど…まさかそんな…」

 

「でも言われてみれば似てる気が……」

 

「……まぁみんなが思ってる通りだよ。正直認めたく無いんだけど」

 

竜司は溜息を吐きながら答える。その後ろでは霧夜が頭を抱えながら溜息をついていた。

 

 

 

 

 

「こいつは、俺の実の父親だよ」

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」

 

教室の飛鳥達の驚きの声が響き渡った。




新章スタートです!!


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其の三十六 父と息子!!の巻

「………っ!!」

 

「陛下?どうされましたか?」

 

突如顔を顰め胸元を押さえつけた弥勒に華蛇は慌てて駆け寄る。

 

「大丈夫……気にしなくて良いよ、昔の傷が疼いただけだから」

 

弥勒の乱れたシャツをよく見ると大きな傷痕が隙間から見えた。

 

「この傷を見るために思い出すよ、君のことを…」

 

弥勒は思い出す。10年前袂を分かつ事になった親友の事を、その親友と全力で殺し合ったあの日の事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて、竜司の父親の竜舌(りゅうぜつ)でーす♪」

 

突如現れた整った顔をした茶髪の残念なイケメンはなんと竜司の父親だった。目の前でピースサインをする竜舌に飛鳥達は驚きから目を離せなかった。

 

「りゅ…りゅーくんのお父…さん?」

 

「か、顔は似てますが…」

 

「キャラが全然違うぞ」

 

「性格もなんていうか…」

 

「…チャラそう」

 

「ぐはっ!!」

 

雲雀の直球発言に竜舌は吐血して倒れた。

 

「は…はは、可愛い顔して中々強力な攻撃を仕掛けるじゃねえか…」

 

「いやお前が勝手に倒れただけだろ」

 

そんな竜舌に霧夜が溜息を吐きながらツッコむ。

 

「なんだよ霧夜…お前昔に比べて随分冷たくなったじゃねえか」

 

そんな霧夜の様子が気に入らなかったのか竜舌は絡んできた。

 

「竜舌さんは霧夜先生と知り合いなんですか?」

 

「知り合いも何もこいつは俺が学生時代の時の同級生だよ」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

衝撃の事実に飛鳥達は驚愕する

 

「思い出すなぁ〜あの日のお前は俺の事を『竜舌の兄貴』って呼んでくれて俺が頼んだらジュースやお菓子、なんでも5秒で買ってきてくれて…」

 

「そんな風に呼んでないしそれただのパシリだろ!?過去を捏造するな!!」

 

過去を捏造する竜舌に霧夜は慌てて否定する。

 

「なんだよ冷たいな〜親の敷いたレールの上を走る事しか出来なかったお前に秘密基地の作り方教えてやったのだって俺なんだぞ」

 

「はぁ…それとこれとは話が違う」

 

溜息を吐きながら反論する霧夜だったがその顔は少し懐かしそうな笑っていた。それを見て飛鳥達も思わず笑ってしまう

 

「………………………………。」

 

しかしそんな中で竜司だけが不機嫌そうな顔をしていた。

 

「ん?なんだよ竜司、久しぶりに俺が会いに来たってのにリアクション薄いぞ〜」

 

「……別に」

 

竜舌が話しかけても竜司は仏頂面で目を逸らしている。

 

「しっかしお前どんどん俺に似てきたな〜」

 

「……似てないし」

 

「学校では上手くやってるか?」

 

「…普通だけど」

 

「彼女とか出来たか?」

 

「…いないし」

 

「あの中のどの娘と良い感じなんだ?飛鳥ちゃん?それともあの黒髪ロングの…」

 

「あーもうしつこいな!!アンタには関係ないだろ!?」

 

竜舌はどんどん話しかけるがその度に竜司はどんどん不機嫌になっていきとうとう我慢の限界がきて叫んだ。

 

「そんな〜良いだろ別に〜親子なんだから学校で何があったかとかの会話くらいしようぜ〜」

 

「何が親子だよ!!ずっといなかったくせに…母さんの命日に墓参りにも来ない奴が今更父親ヅラするなよ!!」

 

竜司は突然大声で立ち上がりながら怒鳴った。

 

「竜司……………」

 

すると竜舌は先程までの陽気な顔から哀しそうな顔になり竜司を見つめた。

 

「竜司さん!!いくらなんでも言って良い事と悪い事が……!!」

 

「ああ良いから良いから、本当の事なんだ……悪かった、すまん」

 

斑鳩は竜司の発言に慌てて怒るが竜舌はそれを止めて竜司に謝った。

 

「……霧夜先生、今日は確か授業無かったですよね?」

 

「あ、ああ…」

 

「俺、もう帰ります」

 

「…わかった、気をつけてな」

 

竜司はそれだけ言うと竜舌から目を背けて教室を出ていった。

 

「やれやれ、やっぱり嫌われてるな俺……」

 

立ち去っていく竜司を見ながら竜舌は哀しそうに呟いた。

 

 

 

 

 

「おっちゃんおかわり、あと…大根と餅巾着も」

 

「はいよ」

 

その日の晩、とあるおでん屋の屋台で竜舌は1人呑んでいた。その顔は昼間とは打って変わって笑顔のない寂しそうな顔をしていた。

 

「やっぱりここで呑んでたか」

 

するとそこへ霧夜が暖簾を開けて顔を出す。

 

「霧夜……よくわかったな」

 

「お前、普段は派手なところで大勢と飲むくせに…本当に落ち込んでる時は一人で呑む…わかるよ、それくらい」

 

霧夜はそう言うと竜舌の隣に座り自分も注文する。

 

「…まぁ自業自得なんだけどさ、やっぱり堪えるわ。ああもはっきり言われると」

 

竜舌はそう呟きながら酒を一気に呑み干す。霧夜はその後、何も言わずに空いたお猪口に酒を注いだ。

 

「ありがとな」

 

「…言わないのか?お前の任務のこと?」

 

その言葉に竜舌はピクリと反応する。

 

「お前の事情は知っている。それを話せば竜司もきっと…」

 

「言ってどうする?だから許せって言うのか?あいつを10年もほったらかしにしてたくせに?」

 

霧夜の言葉に竜舌は鋭く言う

 

「良いんだよ、今の俺は嫌われ者くらいが丁度いい」

 

「竜舌…」

 

「頼む、カッコつけさせてくれ」

 

そう言って竜舌は再び酒を勢いよく呑み干した

 

 

 

 

 

「竜舌…この前君の息子に会ったよ。君に似て真っ直ぐな男だったよ…熱いところは、叶に似たのかな」

 

弥勒は椅子に座りながら懐かしそうにグラスに注がれたワインを見つめる。

 

「君には悪いけど…彼には是非こっちに来てほしいな。僕の目指す、夢の為に……」

 

「陛下、ちょっと良いか?」

 

すると、そこへグリフォンスカルが少し深刻そうな様子でやって来た。

 

「ケルベロスの奴がどっか行っちまった」

 

「…やれやれ、最近大人しかったから油断してたよ」

 

ケルベロス…最近仲間になったロードスカル。元々は相手の血を『色』と呼んで快楽に浸る狂人だったこともあり時々こうやって勝手に抜け出して暴れているのだ。

 

「仕方ない…グリフォン、見つけ次第連れて帰ってくれ」

 

「りょーかい」

 

グリフォンはそう返事するとそのまま部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

あの後霧夜と別れた竜舌は夜の路地裏を一人歩いている。

その足取りは重く一人寂しそうに俯いていた。

 

「さっきからなんだ?殺気がダダ漏れだぞ」

 

竜舌がそう言うと建物の後ろから高校生くらいの少女、朱音が手に包丁を持って現れた。

 

「あれぇ?竜司くんかと思ったら違う…もしかして…竜司くんのお父さん?」

 

「…まぁ戸籍上はそうなるかな?」

 

「………あはっ❤︎」

 

『ケルベロス!!』

 

竜舌の答えを聞いた途端、朱音は狂気の笑みを浮かべてスカルドライバーを腰にはめるとケルベロススカルキーを起動して鍵穴に挿しこみ回した。すると、スカルドライバーから黒い泥が噴き出し全身を包み込むと灰色の体毛と血のように鋭い爪を持つケルベロスのようなロードスカル、ケルベロススカルへと変身した。

 

「竜司くんの…竜司くんのお父さん!!じゃあ貴方を殺せば…貴方を斬り刻めば竜司くんは傷つく…きっと壊れてくれる!!そしたらきっともっと良い血の色を見せてくれるわ!!ふふ…あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

狂気の笑みで笑い続けるケルベロススカルに竜舌は険しい顔をする。

 

「お前の好きには……させねえよ!!」

 

その手にいつの間にかクナイを握りしめながら竜舌はケルベロススカルへと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「………ふん」

 

ベットの上で俺は物思いに耽っていた。思い出すのは久しぶりに顔を出してきた親父のことである

 

「今更何しにきたんだよ…」

 

子供の頃の俺をじいちゃんに押し付けて今まで連絡一つ寄越さなかったくせに…今更父親ヅラで来られたって…飲み込めるわけがない。それなのに…

 

『悪かった、すまん』

 

「あんな顔しやがって…これじゃあ俺が悪いみたいじゃん」

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

突然ガマ吉が鳴き出して俺に体当たりを繰り出してくる。

 

「ちょ…何すんだよガマ吉…」

 

『ゲコゲコ!!ゲコ!!』

 

すると、ガマ吉は突然窓から外へと飛び出していった。

 

「ちょ…おいガマ吉!!」

 

慌てて俺はガマ吉を追いかけ夜の街へと駆け出した。

 

 

 

「あはっ❤︎貴方凄い!!ただの忍なのにこんなに強いなんて!!」

 

「忍舐めんなよ小娘!!」

 

人の居ない路地裏でケルベロススカルの鋭い爪と竜舌のクナイの打ち合いが続く。互いの一撃一撃が必殺となる強力なものだが未だどちらも傷一つ負っていなかった。

 

「凄い凄い!!やっぱり竜司くんのお父さんなだけある!!そんな貴方の肉を血を臓物を!!ズタズタに斬り裂いてみたい!!貴方の色をもっと見たい!!あはっ❤︎あはははははは!!」

 

「レディのお誘いは嬉しいけど…アンタのはノーサンキューだ!!」

 

狂気の笑みで笑うケルベロススカルの間合いに入った竜舌はクナイを手に斬りつけようとした

 

 

   

 

 

 

「うわぁっ!?な、何!?」

 

その時、突然声が聞こえる。そちらを見ると塾帰りと思われる高校生くらいの少年がこちらを見ていた。

 

「なっ!?」

 

「…あはっ❤︎」

 

竜舌が動揺した一瞬をついてケルベロススカルの鋭い爪が襲い鮮血が舞う

 

 

 

 

 

 

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

「待てってガマ吉!!おーい!!」

 

俺の呼び掛けを無視してガマ吉はピョコピョコ夜の街を跳ね続ける。まるで俺を何処かに連れて行こうとするみたいに時々俺を振り返りながら

 

「ん?この音……」

 

すると何処からかまるで金属同士がぶつかり合うような音が聞こえてきた。

 

「…まさか!!」

 

俺は何か嫌な予感がして音の方へと走り出した。

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

不意をつかれた竜舌の腕はケルベロススカルの鋭い爪で深く斬り裂かれてそこから血が流れていた。その後ろには先程の少年がショックで気を失った状態で倒れていた。

 

「あはっ❤︎素敵な色…やっぱり私の睨んだ通りだわ♪」

 

爪についた竜舌の血を眺めながらケルベロススカルは満足そうに笑う

 

「次は何処を斬り裂こうかな?顔?喉?お腹?それとも…」

 

ケルベロススカルは笑いながら爪を振り上げ

 

「やっぱり全部にしてあげる!!」

 

凄まじい速さで襲い掛かってきた。

 

「ヤッベ…こりゃ死んだな俺…」

 

竜舌は死を覚悟して目を瞑る。そしてケルベロススカルの無慈悲か鉤爪の一撃が彼の命を捉えようと振り下ろされ

 

 

 

「おりゃぁ!!」

 

その時、竜司が現れケルベロススカルを蹴り飛ばした。

 

 

 

「お前…朱音か…!!わかってたけどまた会うなんて……」

 

「あはっ❤︎竜司くん…!!会いたかったわ!!もう一度会って…貴方を引き裂きたかった!!あはっ❤︎あはははははは!!」

 

俺の顔を見たケルベロススカルは嬉しそうに笑いながら鋭い爪を光らせる。

 

「竜司…」

 

「アンタも何やってんだよ!!さっき応援を呼んだからその人を連れて早くいけ!!」

 

俺はケルベロススカルを見つめながら親父にそう言う

 

「……まさか、お前に助けてもらえるとはな。てっきり嫌われてるのかと…」

 

「…嫌いに決まってるだろ」

 

当たり前だ、今までずっと俺をほったらかしにしていた癖に父親ヅラされたって割り切れない。でも…

 

「それでもアンタは、俺を産んでくれた父親だからな」

 

こんな奴でも、死なれたら夢見が悪い。

 

「何より、嫌いだから死んでも良いなんて……そんなダサいことしたくねえんだよ!!」

 

そんなことができる奴が…『世界一カッコイイ忍者』になれるわけがない!!

 

「…そっか、ありがとな竜司」

 

俺の言葉に親父は嬉しそうに笑うと気を失った学生を連れて立ち去った。

 

「あはっ❤︎あははは…ねえもう良い?もう殺して良いよねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

すると待ちきれなくなったのかケルベロススカルが鋭い爪を振りかざして飛び掛かってきた。

 

「誰が殺されるか!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着すると仮面ライダーリューマへと変身してケルベロススカルの爪をファングクナイでガードする。しかしその力は凄まじく俺は後ろに下がりそうになる。

 

「あはっ❤︎凄い凄い!!今のを止めるなんて…やっぱり貴方って最高!!そんな貴方を…もっと私の愛する血の色で染め上げたい!!もっと壊してあげたい!!」

 

するとケルベロススカルは嬉しそうに笑いながら更に爪で俺を連続で斬り裂こうと仕掛けてくる。

 

「く…っ!!」

 

俺はファングクナイでなんとか凌ぐがケルベロススカルの爪は徐々に身体に当たっていく。

 

「この…それなら!!」

 

俺はすぐさま命駆モードへと変身してケルベロススカルの攻撃を躱す。

 

「凄い凄い!!貴方の力…もっと見せてえ!!」

 

すると、ケルベロススカルの爪が怪しく光り輝き、振り下ろされると巨大な斬撃となり周囲を斬り刻んだ。

 

「うわあっ!!」

 

周囲を巻き込むその技を躱しきれず、俺は吹き飛ばされてしまった。

 

「さぁ楽しみましょう!!もっと斬り刻んであげるから…貴方ももっと力を見せて…ふふっあはははははは!!」

 

「斬り刻まれて…たまるかよ!!」

 

『メガロ!!サイクロン!!』

 

俺はサイクロンメガロキーを起動するとカグラドライバーに挿し込む

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

『サイクロン武装!!メガロ!!』

 

鍵を回すと俺の全身を竜巻が包み込み装甲を形成すると仮面ライダーリューマ・サイクロンへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ・サイクロン…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「あはっ❤︎新しい力…良い!!凄く良いわ!!」

 

ケルベロススカルは嬉しそうに笑うと凄まじい速さで俺に飛び掛かってきた。しかし俺は竜巻を足に纏って空中へ飛び躱す。

 

「あはっ❤︎!!」

 

ケルベロススカルもそれを追いかけ跳び上がるが俺は風を纏った蹴りを空中で繰り出してケルベロススカルを吹き飛ばす。

 

「ぐっ…このおっ!!」

 

ケルベロススカルも負けじと爪による斬撃を飛ばしてくるが俺は風をバリアのように前に生み出してガードする。

 

「そんな力も手に入れてるなんて…素敵❤︎素敵素敵素敵ィィィィ!!」

 

ケルベロススカルは邪悪な笑い声と共に両手の爪に力を溜め込むと巨大な斬撃を繰り出した。

 

『必殺の術!!サイクロン!!』

 

俺はカグラドライバーを叩いて全身に竜巻を纏って空中へ飛んだ

 

「必殺忍法!!激竜マキシマムサイクロン!!」

 

俺の放った必殺忍法が斬撃と衝突し斬撃を打ち破るとケルベロススカルを吹き飛ばした。

 

「あはっ❤︎こんなに強くなるなんて…素敵…もっと…もっとぉ!!」

 

ケルベロススカルは嬉しそうに俺へ飛び掛かろうとするが突然風が彼女を拘束するとグリフォンスカルが現れた。

 

「やっと見つけた…あんまり俺達を困らせるんじゃねえよ」

 

「この…はなせぇっ!!折角楽しくなったんだ…邪魔すんなぁっ!!」

 

ケルベロススカルは暴れるが風の拘束は解けずグリフォンスカルは黒いゲートを作るとその中へ入ろうとする。

 

「待ちやがれ!!」

 

俺は風の弾丸を放つがグリフォンスカルは自分も風を放って相殺した。

 

「安心しろ、お前らとの決着はつけてやるからよ」

 

そう言うとグリフォンスカルはケルベロススカルと共にゲートの中へと消えていった。

 

 

 

 

 

「いや〜助かったよ竜司、今回マジで危なかった」

 

「あっそ」

 

戦いが終わり、応援の忍が事後処理の為に来たのを見ながら俺と親父は会話をする。

 

「あの学生も気を失ってるだけだって」

 

「そっか、なら良かった」

 

学生の無事に親父は安心してホッと息を吐く。

 

「ところで、本当に何しに俺のとこに来たんだよ」

 

正直なところ、俺はそれが分からない。今になって一体何の用で…

 

「だから言ってるだろ?お前に会いに来ただけだよ」

 

親父はそう言って俺の頭を撫でる。

 

「大きくなったな」

 

その言葉は心の底から俺を想っての言葉だと、親父の目を見てすぐにわかった。

 

「まぁこれから時間が出来たらちょくちょく会いにくるから、また今度な」

 

「あ、おい!!」

 

親父はそれだけ言って俺に背を向けて立ち去っていった。

 

「まったくなんだって…ん?」

 

俺はふと、ポケットに何か入ってるのに気付く

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう飛鳥」

 

「おはようりゅーくん」

 

次の日、俺は飛鳥と一緒に学校へと向かう

 

「そういえばりゅーくん、お父さんの事だけど…」

 

「あぁ、悪かった。親父が迷惑かけて…」

 

「ううん、私は別に…あれ?」

 

飛鳥が俺を見てあることに気付いた。

 

「りゅーくんそのネックレス…」

 

「…買った」

 

「でも昨日までそんなの…まさか!!」

 

「買ったんだって」

 

「竜司さん、おはようございます」

 

そこへ斑鳩先輩達もやって来た。

 

「あれ?竜司さんそんなネックレスつけてましたっけ?」

 

「実はそれりゅーくんのお父さんが…」

 

「あーもう!!だから買ったんだってば!!」

 

 

 

 

 

必死に否定する竜司のポケットには、

 

『お土産』

 

と書かれたメモが入っていた。



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其の三十七 引き篭もりと遭遇!?の巻

「よくも!!よくもよくもよくもぉっ!!」

 

「あーもう鬱陶しいなあ!!」

 

スカル達のアジトではケルベロススカルとグリフォンスカルが争っていた。ケルベロススカルが鋭い爪で斬りつけグリフォンスカルはそれを躱しながら銃で反撃する。

 

「せっかく竜司くんを殺せると思ったのに…竜司くんを綺麗な血の色で染められると思ったのに…お前のせいでぇ!!」

 

自分の時間を邪魔されケルベロススカルは激しく怒りながら爪を振りかざす。

 

 

 

 

 

「そこまでだよケルベロス」

 

瞬間、部屋に声が響き華蛇を連れて弥勒が現れる。

 

「陛下……」

 

弥勒の存在に気づいたグリフォンスカルはすぐさま武器をしまい弥勒に跪く。

 

「弥勒!!私は言ったわよねぇ!?私の邪魔はするなって!!それなのによくも!!せっかくあと少しで…」

 

「ケルベロス…僕は確かに約束したよ。君は強い、だから多少の勝手も許した…だけど限度というものがある。あれ以上は許さない」

 

「黙れ!!私の邪魔をするならお前でも…」

 

弥勒の言葉に納得できないケルベロススカルは叫びながら弥勒に食って掛かる。グリフォンスカルはこのまま弥勒に牙を剥きそうなケルベロスに銃を向けようとした。

 

その時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしろよ」

 

瞬間、空気が震え上がった。十文字にも満たないその言葉に彼の怒りと殺意が溢れている。それにグリフォンスカルは恐れ、体が強張る。弥勒の横では華蛇もその威圧に冷や汗をかいていた。

 

「ケルベロス、君の勝手で僕の目的を邪魔するなら容赦しない。勘違いしてるようだから教えてあげるよ…僕の目的に必要なのはあくまでロードスカル…の、鍵の方だ。それさえ無事なら計画は進められる…この意味、分かるよな?」

 

その言葉にケルベロスは身構える。分かったのだ…『もしこれ以上自分を怒らせるならお前を殺す』そう言っているのだと

 

「まぁそんな訳だから、これからは節度を守って行動してくれるかな?」

 

瞬間、テレビのチャンネルが変わるかの如く表情が変わり優しくケルベロススカルへと話しかけた。

 

「ぐ……くそっ!!」

 

ケルベロススカルは変身を解き朱音の姿に戻ると歯軋りしながら立ち去った。

 

「ははっ…相変わらずとんでもねーな」

 

グリフォンスカルは顔を引き攣らせながら笑う。

何故スカル達が、その中でも超越者であるロードスカル達が弥勒に仕えるのか?答えは簡単、強いからだ。他者を圧倒する絶対的な力、人を魅了し導くカリスマ性、だからスカル達は皆弥勒に傅く。尤も、道元やデスドラの様に歯向かう連中もいるが…

 

「グリフォン」

 

「…っ!!な、なんすか?」

 

突然声をかけられたグリフォンスカルはビクッとしながらも応える。

 

「急で悪いんだけど、一つ頼まれごとをしてくれないかな?」

 

「頼まれごと?」

 

「是非君にスカルにしてほしい人がいるんだ」

 

そう言うと弥勒はグリフォンスカルに一枚の写真を投げ渡す。

 

「彼女の力を引き出した上でスカルにしてほしい、うまくいけば新たなロードにすることが出来る」

 

「この女が?」

 

「君が一時期探していたあの力の持ち主だよ」

 

「っ!!マジかよ…」

 

弥勒の言葉にグリフォンスカルは嬉しそうに笑う

 

「わかりました、丁度いい奴もいるし直ぐに取り掛かりますよ」

 

グリフォンスカルはそう言うと離れていった。彼の手には紫色髪をした暗い顔の少女が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「買っちゃった〜♪買っちゃった〜♪1/10ティラノサウルス全身骨格プラモデル〜♪」

 

親父と再会してから数日後、俺はデパートでずっと欲しかったプラモデルを買った。今日はこのデパートでイベントをやっており幾つもの目玉商品が出ていたのだ。

 

「ふふっ、2万以上しちゃったけどクオリティも良いしこの迫力!!買った甲斐あった〜♪よーし、休日は1日丸ごと使って組み立てるぞ〜!!」

 

「あれっ!?竜司さんじゃないですか」

 

「え?」

 

ふと声が聞こえてそちらを向くと黒髪に赤いメッシュのある蛇邪学園の悪忍、理吉がいた。

 

「こんなところで会うなんて奇遇ですね」

 

「理吉…久しぶりだな、元気にしてた?」

 

「はい。竜司さんもお久しぶりです」

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜まさかこんなところで会うなんて思ってもみなかったですよ」

 

「確かに、俺は前から欲しかったプラモデルを買いに来てたんだけどそっちは何してたの?」

 

「俺は今日休日なので遊びに…」

 

再会した俺達はデパートのフードコートでジュースを飲みながら会話をした。

 

「あ!そうだ竜司さん、この前は炎佐さんを助けていただきありがとうございました」

 

「いやいや良いって、ところで炎佐はあれからどうしてるの?」

 

俺はなんとなく炎佐のことが気になり聞いてみる。

 

「炎佐さんは…あの後蛇邪学園を去りました。」

 

「え!?」

 

俺は理吉の答えに思わず叫んでしまった。

 

「なんで炎佐の奴が…まさか他の選抜メンバーも…」

 

「はい、選抜メンバー全員去りました」

 

詳しく聞いてみるとあの後、炎佐達は学園から姿をくらましその後、悪忍の上層部が炎佐を『上官を手に掛けた謀反人』として指名手配したらしい。なんでも上層部の中には道元のもたらす利益を重宝していた連中が何人かおりそいつらの怒りを買ったそうだ。

 

「まったく、道元の野望を止めた炎佐さん達をそんな目に合わせるなんて許せませんよ…」

 

理吉は少し怒った様子でそうぼやく   

 

「まぁでも炎佐さんなら大丈夫ですね!!いつの日か炎佐さんは必ず汚名を雪いで戻ってきますよ!!我ら炎佐組はその時を待ち、日々の鍛錬を続けるだけです!!」

 

しかし理吉は問題ないと言った感じで誇らしげにそう答えた。

 

「ただ…そのせいで今蛇邪は選抜メンバーを決める戦いで大変なんですよ…」

 

「マジで?」

 

「今まで蛇邪を纏めていた炎佐さんが抜けたせいで『なら次は俺だ』って言った感じで次々名乗りをあげていて…準選抜メンバーは勿論のこと反炎佐連合からは『敵刺すチェーンソー』の真田兄弟、『キラーマシーン』の阿部、グッドナイト下川……あとまぁMK5とかも…」

 

「お宅の学校そんな変な二つ名連中ばっかなの?」

 

百歩譲ってチェーンソーやキラーマシーンは良いとして…グッドナイトって…意味わからん

 

「あ、あとなんか最近善忍の学校からうちに編入してきた姉妹と休学していた先輩が強いって聞きますね」

 

「休学?」

 

「なんか怪我でずっと学校に来てなかったらしいんだけど…元選抜メンバーだったとか…」

 

元選抜メンバー…もしそれが本当なら敵対したらかなり厄介だな…うん、と言うか

 

「その情報…善忍の俺に言って大丈夫?」

 

「あ……しまったぁぁぁぁぁ!!」

 

理吉は自分の喋ってしまったことの重大さに気づいて頭を抱えて叫ぶ

 

「す、すいません竜司さん!!いいいい今言った事は聞かなかった事に…!!」

 

「はいはい、言わない言わないだから安心しなって」

 

涙目で俺に頼み込む理吉に免じて優しくそう言ってやった。

 

 

 

「ぐす…どうしよう…べべたん…」

 

その時、近くでふと誰かの泣き声が聞こえる

 

「理吉、今声が……」

 

「竜司さん、あれ…」

 

理吉が指差す方を見ると紫色の髪をして黒いリボンをつけた同年代くらいの少女が泣いていた。俺達はほっとけなくて彼女の方へと歩き出す。

 

「あの…どうしました」

 

「えっ…」

 

理吉が恐る恐る声をかけると少女は怯えた様子で顔を上げて目から涙を溢れさせた。

 

「ああすいません!!怖がらせるつもりはなくて、ただ貴方が泣いていて心配だったから…」

 

「いや理吉、お前も落ち着け」

 

彼女の涙を見て理吉は慌てるので俺は宥める

 

「脅かしてごめんなさい、なにか困ってることがあるなら俺達が手伝いますよ」

 

「………くんくん」

 

俺が優しくそう言うと彼女はすこし戸惑いながら俺達を見て突然匂いを嗅ぐ

 

「え…えっと…なにか?」

 

「ご……ごめんなさい。ずっと暗い部屋にいたから……つい目よりも鼻を頼っちゃって……そ、それに匂いで……だいたいわかっちゃうです……その人がどんな人なのか」

 

「へぇ、そんな特技があるのか」

 

彼女はすこし恥ずかしそうに俺達にそう言う。俺も彼女のそんな特技に関心した。

 

「2人とも……まっすぐで優しくて……それでいてとても強い心を持っている……信用できる人……」

 

どうやら俺達の事を信じてくれた様だ。俺達はさりげなく彼女に再度聞いてみる。

 

「それで…どうして泣いていたんですか?」

 

「べべたんを……無くしちゃったの……」

 

「べべたん?」

 

「わたしの……大事な……子供の頃から……ずっと一緒にいた友達……」

 

「もしかして……ぬいぐるみか何かですか?」

 

「……うん」

 

話を聞くと彼女はずっと部屋に篭っていたのだが、このデパートで昔姉と行ったイベントがやっているのを知り外に出たのだがその時一緒に持ってきたべべたんと言うぬいぐるみを無くしてしまったらしい

 

「それは大変ですね、じゃあ俺も一緒に探しますよ」

 

「え……?ほ、本当に?」

 

「はい、勿論です」

 

「俺も一緒に探すよ、2人より3人で探した方が早く見つかるよ」

 

理吉の言葉に俺も同意する。こんな悲しい顔をする彼女を放っておけない

 

「あ……ありがとう……」

 

彼女は恥ずかしそうに俺達にお礼を言う

 

「あ、そうだ。そう言えば名前なんて言うの?」

 

俺は彼女にさりげなく聞いてみた。

 

「む……紫です……」

 

「俺は竜司、よろしく」

 

「理吉です。皆んなでべべたん見つけましょう」

 

「……うん」

 

こうして俺達のべべたん探しが始まった。

 

 

 

 

「ちっ…なんでよりによってリューマのガキまでいんだよ…」

 

竜司達をグリフォンスカルが遠目に見ていた。

 

「やっぱりこいつを連れてきてよかった」

 

「ふふふっ、お任せくださいマスターグリフォン」

 

グリフォンスカルの真横にはウサギの様な姿をしたスカル、ラビットスカルが得意げに笑っていた。

 

「お前の力はリューマみたいな奴にはうってつけだ。期待してるぞ」

 

「期待に応えられる様頑張らせていただきます。」

 

ラビットスカルはそう言うと彼らの後ろに無数の人影が現れる。それは、うつろな目をした大勢の女性だった。

 

 

 

 

 

「そっちあった?」

 

「だめだ見つからない紫さんは?」 

 

「……見つからない」

 

あれからあちこちを見て回ったがべべたんはなかなか見つからない。聞いたところかなり大きく特徴的なぬいぐるみらしいから直ぐ見つかると思ったんだが……

 

「ぐすっ……べべたん……」

 

「大丈夫ですよ、必ず見つけますから」

 

涙を流す紫を理吉が優しく慰める。

 

「紫さんは、べべたんのことが本当に大切なんですね」

 

「うん……小さい頃からずっと一緒にいた……悲しい時も……辛い時も一緒にいた……わたしの友達」

 

「なら絶対見つけましょう、べべたんもきっと紫さんを待ってますよ」

 

「……うん」

 

理吉の言葉に紫は涙を拭いながら頷いた。

 

「理吉……お前良い奴だな」

 

俺はそんな理吉に関心しながら呟いた。

 

「ん?ちょっとあれ!?」

 

俺はふとあるものを見つける。それは機械で出来たカラスの様なものが何かを足で掴んでいたのだ。それはまるで青色をした熊本県の某ゆるキャラみたいなぬいぐるみだった。

 

「あっ……べべたん!!」

 

どうやらあれこそが探していたべべたんらしい

 

「俺らに任せろ!!」

 

俺はべべたんを取り返すべくロボカラス(仮)に駆け出した。

 

『カァッカァッ!!カァッカァッ!!』

 

しかしロボカラスはべべたんを掴むとそのまま空へと飛び立ってしまう

 

「くそっ理吉!!」

 

「追いかけましょう!!」

 

俺と理吉はべべたんを取り返すべくロボカラスを追いかけた。

 

「まてこらロボカラス!!焼き鳥にして食っちまうぞ!!」

 

「そのぬいぐるみを返しなさーい!!」

 

『カァッカァッ!!カァッカァッ!!』

 

追いかける俺達を無視してロボカラスはべべたんを掴んだまま逃げる。

ロボカラスは思いの外速く、人の波を巧みに避けながら飛び続ける。

 

「こうなったら…はあっ!!」

 

俺は忍の力をフルに発揮してロボカラスを追いかけた。

 

『カァッ!!』

 

しかしロボカラスの羽にロケットブースターが現れるとものすごいスピードでさらに飛んでいく

 

「本当になんだお前!!なんでべべたんを連れてくんだ!!」

 

俺は負けじと追いかけてあと少しでロボカラスに手が届きそうになる。

 

『カァーーー!!』

 

突然ロボカラスはこちらを向いて口からミサイルを放ってきた。ミサイルが着弾すると催涙ガスが噴き出して俺の顔を覆う

 

「うわっ!?目が沁みる……ぶへぇっ!!」

 

視界を封じられた俺は壁に激突して落下してしまう

 

『カァッカァッ!!カァッカァッ!!』

 

「ロケットブースターにミサイルって本当に何もんだよこのカラス……」

 

俺は催涙ガスにふらつきながらも立ち上がった。ロボカラスはそのまま上空高く屋上へと飛び立ってしまう

 

「この……まてって」

 

屋上へ出るとそこは小さな動物園になっていて色んな動物達がいる。

 

『カァッカァッ!!』

 

カラスは空高く飛ぶとべべたんを掴んだまま逃げようとする。

 

「竜司さん!!」

 

声のした方を見ると理吉がレシーブの構えでこちらを向いている。

 

「よし、任せろ!!」

 

俺は狙いに気づき理吉の方へと駆け出した。

 

「おりゃぁ!!」

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

俺が理吉の手に足をかけると理吉は思いっきり両手を振り上げて俺を空高く飛ばした。

 

『カァッ!?』

 

ロボカラスはいきなり目の前に来た俺に驚き動きが止まる。その隙に俺はべべたんを取り返した。しかし、落下先には大きなプールがあった。

 

「っ!!まずい、このままじゃ!!」

 

「竜司さんこっちに!!」

 

「任せた!!」

 

理吉の声が聞こえて俺はべべたんをそちらへ投げる。すると、理吉は投げられたべべたんをしっかりと掴んだ

 

 

 

 

 

「べべたん!!」

 

理吉がべべたんを回収してすぐ紫が駆け寄ってきた。

 

「紫さん、べべたんはほら、無事ですよ」

 

理吉は優しく微笑みながらべべたんを紫に渡す

 

「べべたん……良かった……良かったぁ……」

 

べべたんを抱き締めると紫は涙を流しながら喜んだ

 

「理吉くん……ありがとう……本当に……ありがとう……!!」

 

「俺だけじゃありません、竜司さんのお陰で……」

 

「助けてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

突然竜司の悲鳴が聞こえてそちらを見る。するとそこには鰐に襲われる竜司が食らいつこうとする鰐の口を両手で凌いできた。

 

「このプール鰐の展示場だったんだぁぁぁ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ竜司さん今行きます!!」

 

激しい戦闘から1時間後、竜司は命辛々鰐から脱出した

 

 

 

 

「あー死ぬかと思った」

 

鰐から逃げ切った俺はデパートの中を理吉と紫と一緒に歩いていた。

 

「大丈夫ですか?腕とか食われてないですか?」

 

「怖いこと言うな!!心配になるから!!」

 

「あ、あの……」

 

すると紫が俺達に話しかける

 

「ありがとう……2人のおかげで……べべたんと再会できた……」

 

「気にしなくて良いですよ」

 

「そうそう、俺達は当たり前のことをしただけだし」

 

会って間もない頃より優しい顔になった紫を見て俺達は笑顔でそう言った。

 

「さて、そしたらこれからどうする?」

 

「そうですね……このまま帰るのも味気ないし……ん?」

 

すると、理吉は何かに気づく

 

「どうした理吉?」

 

「人が……いない」

 

理吉の言葉を聞き俺も辺りを見渡すと先程までたくさんいた人が姿を消していた。

 

「これは一体……」

 

「っ!!危ない理吉!!」

 

俺は気配を感じて理吉を引っ張ると理吉がいた場所に風の弾丸が放たれる。

 

「相変わらず勘のいいやつだな……簡単にはいかねえか」

 

すると物陰から銃を構えたグリフォンスカルが現れた。

 

「な……なんなのあれ……」

 

紫は突然現れたグリフォンスカルに怯える。

 

「お前は……グリフォン!!」

 

「その女をこっちに渡してもらおうか」

 

グリフォンスカルは紫を指差しながらこちらへ近付いてくる。

 

「ふざけるな!!誰がそんなこと……」

 

「貴方に拒否権はありませんよ」

 

すると背後からウサギの様なスカル、ラビットスカルが現れて紫へと手を伸ばす。

 

「させるかよ!!」

 

俺はラビットスカルを蹴りつけ紫から引き離す。

 

「2人ともこっち!!」

 

俺は2人の手をとって逃げようとする。

 

「おっとそうはいきませんよ」

 

すると、周りにうつろな目をした女性達が現れる。

 

「そいつらを捕まえなさい」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

女性達は恐ろしい声をあげながら俺達に襲いかかってきた。

 

「くっ……こいつら操られてるのか!?」

 

「ふふっ……マスターグリフォンから聞きましたよ、貴方の様なタイプは蟻よりもこいつらの方が有効だと……しかしまさか生身の一般人にここまで手が出せないとはね!!」

 

慌てる俺にラビットスカルは高笑いしながら嘲笑う

 

「くそっ!!」

 

なんとか女性達を引き離すが周りを取り囲まれてしまう

 

「こうなったら仕方ない……紫さん!!」

 

「え?」

 

突然俺に声をかけられ紫は驚く

 

「ごめん、内緒にしといて」

 

『メガロ!!サイクロン!!』

 

俺はカグラドライバーを装着してサイクロンメガロキーを起動する。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

『サイクロン武装!!メガロ!!』

 

俺はサイクロンメガロキーを回して仮面ライダーリューマ・サイクロンへと変身した。

 

「そういやリューマ……お前とちゃんと戦うのってこれが初めてか……いくぞ!!」

 

「私も手伝いますよ!!」

 

グリフォンスカルは両手の銃を俺に向けて放ちラビットスカルは二股の槍を振るって俺に斬りかかる。俺は風を纏った拳で槍を弾いて飛び上がりラビットスカルへと殴りかかる。

 

「ふっ!!」

 

ラビットスカルは槍でガードして後ろへ跳び衝撃を弱めると槍で俺を突き刺そうとする。

 

「ほらほらぁ!!」

 

さらにグリフォンスカルが2丁拳銃を放って遠距離から攻撃を仕掛けてくる。

 

「ふっ!!」

 

俺は後ろの2人に当たらない様に拳で弾丸を撃ち落とすとラビットスカルを蹴り飛ばす。

 

「ぐうっ!!」

 

ラビットスカルは蹴りに吹き飛ばされると呻き声を上げながらグリフォンスカルの隣へと退がる。

 

「やりますねぇ……でも、後ろの彼らは大丈夫ですか?」

 

「っ!!しまった!!」

 

後ろを見ると操られた女性達が2人を取り囲んでいた。

 

「このおっ!!紫さんに手を出すな!!」

 

理吉は女性達を近づけさせない様にバックを振り回すが数に圧倒され地面に押さえつけられる。

 

「まずい!!このままじゃ紫さんが……」

 

「させねえよ」

 

慌てて2人に駆け寄ろうとするがグリフォンスカルとラビットスカルに邪魔されて身動きが取れない

 

「くそっ……こんなことしてる場合じゃないのに……」

 

 

 

 

「いや……来ないで……」

 

ジリジリとにじり寄ってくる女性達に紫は怯える。

 

「っ?……なんだあれは……」

 

すると、彼女から禍々しいオーラが溢れてくる

 

「いや……いや……来ないでぇぇぇぇぇぇ!!」

 

瞬間、紫から溢れたオーラは一気に爆発してあたりを吹き飛ばした。その余波で操られた女性達は吹き飛び気を失う。

 

「な、なんだあの力は……」

 

俺は紫の力の前に呆然とした。

 

 

 

 

 

 

「ははっ……すげえ力だ……」

 

その光景をに見てグリフォンスカルは歓喜する。

 

「あれが噂に聞いていた『禍根の力』……あいつをスカルにすりゃあ間違いなく新しいロードになれるぜ……くくっ…ははは……堪んねえぜ!!」

 

グリフォンスカルの笑い声が崩れたデパートに響き渡った。




『禍根の力』を持つ少女、紫…それを狙うスカルの魔の手……果たして竜司達の運命は!?


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其の三十八 禍根の少女と熱き炎!!の巻

『禍根の力ですか?』

 

ある日、理吉は炎佐からその名前を聞いていた。

 

『そうだ、悪忍の中のとある一族に伝わるとされる特殊な力だ。怒りなどの負の感情を爆発させることで身体能力が数十倍になるって力らしい』

 

『数十倍!?』

 

禍根の力の凄さに理吉は驚愕する。下手をすれば格上の相手をも倒しうる力…そして、その力による最悪の事態に気付いてしまった

 

『ちょ、ちょっと待ってください。もし、もしもですよ?もしそんな力の持ち主がスカルになったりしたら…』

 

願望と負の感情を引き金に人間を異形の怪物へと姿を変えるスカルの力、もし禍根の力の持ち主がそれを使ったりなんかしたら…

 

『とんでもなくやべー事になるな』

 

理吉の問いに炎佐は静かに呟いた。

 

 

 

 

 

 

「あれが…禍根の力…!!」

 

理吉は紫の変貌に驚愕する。目の前の紫は髪を逆立て体中から禍々しいオーラを放っていた。

 

「あ……ああ……」

 

力が収まると紫は崩れ落ちて気を失う

 

「紫さん!!」

 

理吉は慌てて彼女に駆け寄ると体を支えた。外傷はなく気を失ってるだけのようだ。

 

「ははっ、なるほど確かにありゃ見事な力だ。あいつをロードスカルにすれば間違いなく陛下の良い駒になるってもんだ!!」

 

それを見たグリフォンスカルは嬉しそうに笑いながら2人の方へと銃を向けて風の弾丸を放った。

 

「させるかよ!!」

 

しかしそれに気づいたリューマが立ちはだかり弾丸を撃ち落とした。

 

「退くぞ理吉!!」

 

リューマは理吉達の元へ駆け寄ると煙玉を取り出す。

 

「くらえ!!霧夜先生直伝煙玉メガロバージョン!!」

 

煙玉を叩きつけると勢いよく煙が噴き出し風によって凄まじい速さで辺りを包み込んだ。

 

「うおっ!?こ、これは…」

 

「なんてくだらない小細工を!!」

 

「今だ!!」

 

煙玉に動揺してグリフォンスカルとラビットスカルの動きが止まった隙をついてリューマは2人を抱えてその場を離れた。

 

「逃げられましたね」

 

「くそっ…まぁ良い、すぐに追うぞ」

 

「はっ」

 

グリフォンスカルは苛立ちながらもリューマ達を追い始めた。

 

 

 

 

 

「ふう…なんとか逃げきれたみたいだな」

 

グリフォンスカルとラビットスカルの2体から逃げのびた俺達は街の人々への被害を避けるために路地裏に逃げ込んだ。

 

「これからどうしたものか…」

 

「奴は紫さんを狙っているのは明らかです。なんとか彼女を安全な場所へ…」

 

理吉の視線の先には気を失った紫が壁に寄りかかっていた。

 

「一体なんなんだ?紫のあの力は…」

 

ラビットスカルの操る女性達を余波だけで吹き飛ばすあの規格外の力。間違いなくただの女性どころか並みの忍が出せる力じゃない。

 

「あれはおそらく……禍根の力だと思います」

 

「禍根の力?そういえばあのグリフォンスカルもそんな事言ってたような…」

 

理吉が口にした初めて聞くワードに俺は首を傾げた。

理吉は静かに頷くと俺に話し始めた。

 

「悪忍のとある一族に伝わるとされる力です。怒りといった負の感情をトリガーに身体能力を数十倍にする事ができるとされています。」

 

「悪忍の一族の力!?ってことは紫は…」

 

「はい、その一族で間違い無いでしょう。そういった力はその血統でなければ目覚めないそうなので…」

 

まさか紫が悪忍の一族だったとは思わなかった。

 

「てかその情報俺に話して大丈夫なのか?」

 

「本当は不味いですけど緊急事態です。だから竜司さんもどうかこの事は…」

 

 

「う……うう……」

 

俺らが話していると紫が目を覚ました。

 

「大丈夫ですか紫さん?」

 

「どこか怪我とかしてない?」

 

「竜司くん……理吉くん……あ…わ、わたし……ああ……」

 

紫は辺りを見渡した後、先程のことを思い出したのか震え出した。

 

「落ち着いて紫さん、貴方は何も悪くありません」

 

「そうだ、全部スカル共が悪い」

 

俺達は震える紫に優しくそう言い聞かせた。

 

 

そんな竜司達の近くで風が渦巻いた。

 

 

 

 

 

「見つけた。とっとと奴らを仕留めてあの女にスカルキーを使うぞラビット」

 

「仰せのままに」

 

ビルの屋上からグリフォンスカルは竜司達を見つめながらニヤリと笑った。

 

「風を操っての索敵…相変わらずすごい能力ですね」

 

「は、よく言うよ。お前の能力が一番エグい癖によ」

 

「……ふふふ、褒め言葉として受け取りますよ」

 

グリフォンスカルの言葉にラビットスカルは自身が操る女性達を見つめながらニヤリと笑った

 

 

 

 

 

「わたしのお父さんは……悪人の中でも五本指の入るほどの人だったの…」

 

紫が言うには彼女の家は代々続く悪忍の家系であるとの事だそうだ。そのため、必然的に紫と彼女の姉は幼い頃から厳しい修行を強いられていた。

 

「でも……真面目な性格で厳しい修行についていけるお姉ちゃんと違ってわたしは忍に向いていなかった。」

 

どんなにそれを両親に訴えても『お前には忍の才能がある』って聞き入れてもらえなかったそうだ

 

「『才能』…もしかしてそれが…」

 

「うん……わたしの禍根の力……」

 

 

 

あれは……紫が小学生の頃、修行をサボって土蔵でべべたんとおままごとをしていた時、それを父に見つかって訓練所に連れていかれた。それを見た紫の姉は彼女からべべたんを取り上げた。

 

『そんなんで立派な忍になれるか!!こんなものがあるからいつまでも甘えが抜けないんだ!!』

 

自分が必死に修行をしている中、いつまでもやる気を見せない彼女が気に入らなかったのだろう…彼女はべべたんの首を掴むと引きちぎろうとしたらしい

 

「そのときだったの……わたしの頭の中ぎ爆発したように熱くなって……意識を失ったのは」

 

我に返った紫が見たのは……目を見開いて驚愕する父と、傷だらけで倒れた姉だったそうだ。紫の父はそんな紫を見て歓喜した。まさか紫にそんな才能があったとはと…その後、父は成長した紫を秘立蛇邪学園へと入学させた。

 

 

 

「わたしは……大好きなお姉ちゃんを傷つけた!!それ以来お姉ちゃんは……わたしから距離を置くようになっちゃった!!こんな……こんな力があったせいで……!!」

 

目にいっぱいの涙を溢れさせ紫は泣き出した。

 

「紫……」

 

「紫さん……」

 

彼女の抱えた過去を知り俺達は胸が苦しくなった。

望まない力に目覚めてしまったばかりに大切な人を傷つけてしまった…その罪悪感が紫の心に突き刺さっているのだ。

その時、理吉が意を決したように口を開いた。

 

「紫さん、紫さんが今どれだけ苦しんでいるのか…その気持ちを完璧に理解する事は出来ない。でも、それでも言える事がある」

 

「え?」

 

理吉の言葉に紫は顔をあげキョトンとする。

 

「紫さん、あなたは……」

 

 

 

 

 

「あぶねえ理吉!!」

 

その時、俺は気配に気付き理吉の首根っこを引っ張る。すると、首があった場所に風の弾丸が撃ち込まれていた。

 

「くそっ…もう追いついてきたのか…!!」

 

「竜司さん、紫さん、こっちです!!」

 

理吉の案内で俺達はさらに路地の奥へと逃げ込む。

 

「なんでバレたんだ…?後はつけられてなかったのに…」

 

「今はそんなこと言ってる場合じゃない!!とにかく安全な場所へ…」

 

「させねーよ」

 

背後から声が聞こえて振り向くとラビットスカルが操る女性達を引き連れたグリフォンスカルが立ち塞がっていた。

 

「あんまり手をかけさせないでくださいよ」

 

いつの間にか前方にもラビットスカルが別の女性達を引き連れ取り囲んでいた。

 

「さぁ、いきなさい!!」

 

「アァァァァァァ!!」

 

ラビットスカルが命じると一斉に女性達が襲ってきた。

 

「理吉は紫と一緒に離れてろ!!」

 

俺は理吉にそう指示をすると襲ってくる女性達を迎え撃った。

 

(相手は操られてるだけの一般人……なるべく傷つけずに制圧する!!)

 

俺はそう決心すると女性達の首の後ろを手刀で叩いて意識を奪っていく。

 

「なるほど…忍としての技量は中々ですね…でも、こいつらはどうでしょう?」

 

「なっ!?」

 

突然ガタイのいい1人の女性が凄まじい拳の連撃を繰り出してきた。

俺は咄嗟にガードするが一撃一撃が速く強力で腕が痺れる。それを見ながらラビットスカルが楽しそうに喋り出す。

 

「そいつはプロの女子ボクサーでな強力なジャブが自慢なんですよ」

 

すると、今度は別の女性が俺に向けてダーツを飛ばしてくる。

 

「そいつはダーツの元世界大会チャンピオンで投擲に関しちゃ下手な忍よりも遥かに上手い」

 

さらに日本刀を構えた女性が現れて俺に斬りかかってくる。

 

「そしてそいつは長い歴史を持つ剣術道場の免許皆伝、私のとっておきなんです」

 

「この人達に…何をしたんだ」

 

「なに、私のコレクションになってもらったんですよ」

 

俺の質問にラビットスカルは得意げに話し出す。

 

「私が生気を吸い取った女性はみんな従順な僕になってくれるんですよ。この力があればどんな女も思いまま、素晴らしい能力でしょ?」

 

「ふざけんじゃねぇ!!」

 

女性を操って挙げ句の果てにコレクションなんていうラビットスカルに俺は激しい怒りを覚えた。

 

「お前だけは……俺が必ず倒してやる!!」

 

「そういうのは私に辿り着いてから言ってくれませんかねぇ…いけえっ!!」

 

ラビットスカルが女性達に命じると彼女達が再び襲いかかってくる

 

「くっ……」

 

奴を倒すと言ったがどうしたものか…操られてる女性達の意識を奪っていっても数が多くてキリがない。なんとかラビットスカルの元に行ければいいのだが…

 

「そうだ…あの方法なら…」

 

その時、俺は一つの作戦を思いついた。もしそれが出来るなら女性達を傷つけることなくラビットスカルを倒せる。

 

「俺のこと忘れてねーか!!」

 

「うわっ!?」

 

そこへグリフォンスカルの弾丸が俺の体に当たりそうになった。ラビットスカルの数の暴力に集中しすぎて油断していた。

 

「ほらほらほらぁ!!避けねーとやられちゃうぞ!!」

 

グリフォンスカルはさらに追い討ちをかけるように2丁拳銃で俺へと撃ち続ける。変身したくてもこうも攻撃され続けるとその隙もない。

 

「隙ありぃ!!」

 

「がっ…!!」

 

そしてとうとう弾丸が俺の脇腹を掠めて倒れてしまう。

 

「竜司さん!!」

 

「竜司くん!!」

 

「よそ見していていいんですか?」

 

理吉と紫は慌てて駆け寄るがラビットの操る女性達に取り押さえられてしまう。

 

「くそぉっ!!紫さんを放せぇ!!」

 

「黙っててください」

 

「がっ!?」

 

理吉はなんとか紫を助けようともがくがラビットスカルに殴られて気を失ってしまう。

 

「さて、後は貴方の禍根の力を引き出すだけですが…」

 

「ラビット、そのぬいぐるみを奪え。さっきからその女…それだけは絶対離さないようにしてた。」

 

グリフォンスカルの指示に従いラビットスカルは紫からべべたんをひったくる。

 

「やめて!!べべたんに触らないで!!」

 

べべたんを奪われた紫は必死な顔でべべたんに手を伸ばそうとする。

 

「おいラビット、それこっち投げろ」

 

「はいどうぞ」

 

ラビットスカルはグリフォンスカルの方へとべべたんを投げた。

 

「はいバキューン」

 

瞬間、グリフォンスカルの弾丸がべべたんの腕を撃ち抜いた。

 

「テメェ……なに汚ねぇ攻撃してんだぁ!!」

 

俺は怒りのままにグリフォンスカルを殴ろうとするがグリフォンスカルはそれを躱す。

 

「まぁ見てなって面白いもんがみれるからよ」

 

 

 

「あ……うそ……べへたん……!!」

 

紫は絶望の顔で腕が千切れてしまったべべたんを抱き上げる

 

「さーて、これでどうなるかな〜♪」

 

グリフォンスカルはそれを面白そうにしながら見つめていた。

 

 

 

「………くも……よくも……べべたんを……」

 

瞬間、紫から禍々しいオーラが溢れてくる。

 

「よくも…よくもよくもよくもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

彼女の禍根の力が解き放たれ辺りを破壊した。

 

「ははっ、こりゃすげえや。後はこいつを…ほいっと!!」

 

グリフォンスカルは禍根の力の凄まじさに歓喜すると一つのスカルキーを紫へと投げつけた。すると、スカルキーは紫に突き刺さって凄まじい力を放ち始める。

 

「さあこれで計画は成功だ!!あの女の禍根の力とスカルキーの力が共鳴して互いの力を増強する!!そうすればあの女はロードスカルへと進化する。そうなったら奴を操って俺達の忠実な手駒にするのさ!!ははっ……はははははは!!」

 

 

 

 

 

「まずい…このままじゃ紫が……」

 

禍根の力を暴走させる紫を見て俺はふらつきながら立ち上がった。

 

「竜司さん…あれって…」

 

意識を取り戻した理吉が紫の様子を見て驚愕する。

 

「あのままじゃ紫が……なんとかあのスカルキーを紫から引き離さないと…」

 

だが、それをやろうとすれば間違いなくスカルの妨害を受ける…一体どうすれば……

 

「竜司さん…紫さんは俺に任せてください。竜司さんはスカルをお願いします」

 

「えっ!?」

 

理吉の提案に俺は思わず叫んでしまう

 

「理吉…何を…」

 

「俺も忍なんです!!」

 

理吉は拳を握りしめながら大声で叫ぶ。

 

「俺はスカルと戦う力がありません…忍としての能力も平均以下です…でも、俺だって忍なんです!!あんな奴らに…誰かが苦しめられているのを黙って見てなんていられません!!少なくとも…俺の憧れる…炎佐さんならそう言う!!」

 

「理吉……」

 

俺は一瞬、理吉の目に炎佐と同じものが見えた。

 

「理吉、これ」

 

「え?」

 

俺は理吉の手にティラノキーを渡す。

 

「お前に貸す。大事なもんだから後で返せよ。」

 

「竜司さん……」

 

「任せた」

 

「はい!!」

 

理吉は俺からティラノキーを受け取ると力強く頷いた。

 

「何こそこそ話してんだお前らぁ!!」

 

俺らに気づいたグリフォンスカルが2丁拳銃で俺達に風の弾丸を放ってきた。

 

「させるか!!」

 

『サイクロン武装!!メガロ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着して仮面ライダーリューマ・サイクロンへと変身した。

 

「またその形態か、そいつは俺には通じない。それに、こいつらをお前は倒せるかな?」

 

グリフォンスカルが手を振り上げるとラビットスカルが自身が操る女性達を引き連れて俺を取り囲む。

 

「倒す必要はない。こうすればな!!」

 

俺は襲ってくる女性達を操った風で拘束した。

 

「何ぃ!?」

 

ラビットスカルは女性達を封じ込められて驚愕した。

これは、以前グリフォンスカルがケルベロススカルを拘束したときに使っていた技である。風を操るグリフォンスカルの技ならリューマ・サイクロンで再現できるのではと思ったがその予想が当たってよかった。

 

「これでもう思う存分お前らを殴れるってわけだ…罪もない女性達を盾に使いやがって…お前らは絶対に許さねえ!!」

 

 

 

 

 

「よし、俺だって…」

 

竜司に紫の救出を任された理吉は今なお暴走している紫を見つめた。

 

「あぁぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

紫の胸元にはスカルキーが刺さっており禍根の力と共鳴して禍々しいオーラを放っていた。さらに表面が所々剥がれておりそこから金色の光が怪しく輝いていた。このまま放っておけば彼女がロードスカルになってしまう

 

「そんなこと…絶対させない…」

 

理吉は意を決すると紫の元へと歩き出した。

 

「アァァァァァァ!!」

 

すると、紫は長い髪を操り巻きついた巨大手裏剣で理吉へと斬りかかってきた。

 

「ぐ…っ」

 

手裏剣は理吉の体を掠めそこから血が滲むが、理吉は歩みを止めず一歩一歩彼女に近づいていく。

 

「紫さん、今助けます!!」

 

理吉はそう叫ぶと紫へと駆け出した。

 

「アァァァァァァァァァ!!」

 

紫の髪がまるで生き物のように理吉へと襲いかかる。

 

「ぐっ…くそっ…」

 

理吉の体は徐々に傷ついていき血が地面に流れていく。しかし理吉は諦めない。目の前で苦しむ1人の少女を救うために

 

「あき…らめるかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

理吉は叫びながら紫へと手を伸ばした。

 

「アァァァァァァァァァ!!」

 

理吉が紫の目の前にたどり着いた瞬間、紫の刃が理吉の体を貫いた。

 

「ぐっ……」

 

理吉は口から血を吐くが構わず紫の顔に優しく触れる。

 

「紫さん…さっき俺が言おうとしたこと何ですが…どうか……俺の話を…聞いて…ください」

 

理吉はふらつきながらも紫に語り出した。

 

 

 

 

「紫さん、貴方は……とても優しい人です。」

 

瞬間、紫の動きが止まる。

 

「お姉さんを傷つけてしまったことを今までずっと悔やみ続けるのも…べべたんを傷つけられて禍根の力が暴走するのも…貴方が『誰かのために傷つく事が出来る人』だからです。」

 

理吉は優しく紫に話しかける。それに反応するように彼女から溢れる禍根の力は徐々に弱まっていった。

 

「だから紫さん、あんな奴らに貴方を好きにはさせない。貴方は…僕が守ります!!」

 

「り…きち…くん」

 

瞬間、紫の目に光が戻り禍根の力が鎮まった。

 

「紫さん…よかったぁ…」

 

正気を取り戻した紫に理吉は安心して笑顔を見せる。

 

「理吉くん……わたし……あぁっ!!」

 

その時、紫の胸元のスカルキーの光が更に禍々しく輝く。

 

「理吉くん……このままじゃ……逃げて……!!」

 

「大丈夫です…必ず貴方を助けます」

 

『ティラノ!!』

 

理吉は優しい笑顔で微笑むとティラノキーを手に握りしめ起動しティラノキーを握りしめた拳でスカルキーを殴りつけた。その瞬間、辺りが衝撃で震える。

 

「これ以上……紫さんを……弄ぶなァァァァァァ!!」

 

理吉の叫びとともにスカルキーにヒビが入り遂に粉々に砕け散った。

理吉の一撃は紫を傷つける事なくスカルキーのみを破壊した。

 

「理吉くん……ありがとう……」

 

紫は理吉にお礼を言って意識を失った。

 

「はぁ…はぁ…やった…俺でも…戦うことが…誰かを守ることが出来るんだ…」

 

理吉は安心したように膝をつく。その体は傷だらけで立つのも困難なのが目に見えた。

 

「このガキ余計なことをしやがってぇぇぇぇぇぇ!!テメェのせいで全部台無しじゃねえかァァァ!!」

 

それを見たグリフォンスカルが激昂して理吉へと弾丸を放つ。

しかし、それを俺は拳で撃ち落とした。

 

「理吉…お前カッコイイじゃねーか。後は任せろ!!」

 

「竜司さん…へへ、後は頼みます」

 

理吉は俺を見ると安心したように壁に寄りかかった。

 

「いくぞラビット!!こいつら全員皆殺しだ!!」

 

「は、はい!!」

 

怒り狂うグリフォンスカルにビビりながらもラビットスカルは二股の槍を振りかざして俺達に斬りかかる。

それを迎え撃つように俺は2人に突撃する。

 

「だからテメェの風は俺には効かねえって…」

 

「それはどうかな!?」

 

俺の拳に合わせてグリフォンスカルは手を前に出して風を相殺しようとする。

 

しかし、

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

風は相殺出来ずグリフォンスカルは後ろへと吹き飛ばされる。

 

「な…なんでだ…!?相殺できねぇぇぇ!!」

 

「俺の手をよく見てみな」

 

グリフォンスカルが俺の手を見ると目に見えない程の速さで風が回転している。

 

これが俺が考えたグリフォンスカルの攻略法、相殺出来ない程速く回転する風で殴る。シンプルだがその効果は絶大、奴が風で防ごうとしてもそれを上回る威力であれば防ぐことは出来ない。そもそもメガロサウルスの力はかつてこの国を滅ぼすとまで言われた力…このように工夫すればそれを防ぐのは難しいだろう。

 

「このガキぃ…俺を舐めやがってぇぇぇぇぇぇ!!」

 

頭に血が上ったグリフォンスカルの銃弾とラビットスカルの槍を躱して蹴りを、拳を、手刀を次々と彼らに喰らわせる事で戦況は完全に俺が支配していた。

 

「これでトドメだ!!」

 

『必殺の術!!サイクロン!!』

 

俺はカグラドライバーを叩いて全身に竜巻を纏って空中へ飛ぶとグリフォンスカルとラビットスカルに目掛けて高速回転しながらの蹴りを繰り出す。

 

「必殺忍法!!激竜マキシマムサイクロン・スパイラル!!」

 

グリフォンスカルは咄嗟に風の盾を展開するが俺の一撃はそれを突き破り2人へと炸裂した。

 

「そんな…こんなところで…この僕がぁぁぁぁぁ!!」

 

ラビットスカルは断末魔と共に爆発すると粉々に砕けたスカルキーと太った小柄の男が気を失って倒れていた。

 

「ぐ……これで勝ったと思うなよ…次こそは、絶対テメェらをぶち殺してやるからな…!!」

 

辛うじて無事だったグリフォンスカルは俺にそう捨て台詞を吐くと黒いゲートを出して撤退した。

 

 

 

 

 

「これでよしっと」

 

グリフォンスカル達を退けた後、操られていた女性達の安否を確認した後、ティラノキーを俺に返した理吉がべべたんの千切れた腕を直していた。

 

「べべたん……良かったぁ……」

 

「お前凄いな、まさか裁縫がこんなに上手いなんて」

 

「よく炎佐さんや選抜メンバーの衣類とか直してましたからね。これぐらいならお茶の子さいさいって奴ですよ」

 

そう言うと理吉は紫にべべたんを渡した。

 

「紫さんは僕が送っていきます。ここからは同じ悪忍の俺が紫さんを連れてったほうがいいと思うので」

 

「それもそうだな」

 

仲良くなったとはいえ俺達は敵同士なんだ。ただでさえ今蛇邪が大変な状態なのにこのまま俺といたら理吉達にも迷惑がかかる。

 

「あばよ理吉、今日は楽しかった」

 

「竜司さんもお元気で」

 

「竜司くん……ありがとう」

 

2人はお礼を言うと街中へと消えていった。

 

「さて…今日のこと霧夜先生になんて言おう……」

 

 

 

 

 

その後、悪忍と深く関わった事で霧夜先生にこっぴどく叱られたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

理吉は紫を家に送るために街を歩いていた。

 

「さて…紫さんの家ってどこにあるんですか?」

 

「えっと……この先を曲がって……」

 

「ここにいたのか紫」

 

すると、鋭い目をした眼鏡の女性が2人の目の前に立ち塞がった。

 

「えっと…貴方は?」

 

「お、お姉ちゃん……」

 

「お姉ちゃん?じゃあこの人が……」

 

紫の言葉に理吉は驚いた。まさかこんなところで紫の姉に遭遇するとは思ってなかったからだ。

 

「お前にやってもらう事があって来た。まさかお前が外に出るなんて思ってなかったからな…探すのに苦労した」

 

「ちょっと待ってください…紫さんは今…」

 

「まぁ待て忌夢、2人の様子を見た感じ何かあったようだ」

 

するとそこへ白髪の凛とした女性が現れる。

 

「えっと…貴方は?」

 

「はじめまして…私は雅緋、新たに選抜メンバーに選ばれたものだ」

 

 

 

 

 

 

 

「…綺麗な夕日だな」

 

とあるビルの上、空色の髪の青年が空を見上げていた。

 

『カァッカァッ!!カァッカァッ!!』

 

すると、べべたんを攫ったロボカラスが青年の元へと近づいた。

 

「ん?カゲバネ、また何か変なものでも集めに行ってたのか?」

 

青年がそう言うとロボカラスことカラクリカラスのカゲバネはトランシーバーへと変形して青年の手に収まる。

 

「収集癖も大概にしろよ、もうすぐ戦いが始まるんだから」

 

青年はそう言うと再び夕陽を見つめる。

 

 

 

 

「そして、僕達の復讐もな」

 

 

その目は鋭く、強い憎しみを宿していた。




設定更新しましたのでそちらもどうぞ。
ラビットスカルの項目を追加しました。


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其の三十九 危険な辻斬り!?の巻

「くそったれが…」

 

グリフォンスカルが屋根の上に座りながら呟く、身体中はリューマとの戦闘の傷がいくつも残っていた。

 

「随分酷くやられたみたいだねグリフォン」

 

するとそこへ弥勒が現れて声をかける。

 

「陛下…すいません、『禍根の力』の女を取り逃して……」

 

「彼女の事は残念だったね。まぁ縁がなかったと思って諦めるとするよ」

 

グリフォンスカルが謝るが弥勒は気にしない様子で笑みを浮かべる。

 

「まぁ、君には期待してたんだけどね。それについても残念だよ」

 

「…………………っ!!」

 

しかし次の瞬間、幻滅したように呟く。グリフォンは恐怖で体が強張った。

今まで好き勝手することができたのはロードスカル候補を何人も輩出してきた実績があったからだ。しかし、自分の手駒はリューマに何人もやられ弥勒に任された仕事も失敗した。もう後がない状況となってしまったのだ。

 

「くそっ…いい加減計画を進めないとな」

 

自分の潜伏先で密かに進めていた計画、いい加減動かなければ自分は今度こそ弥勒に消されてしまう。

 

「お久しぶりですね陛下」

 

すると、華やかな服を纏った金髪の青年、ドラゴンが現れた。

 

「久しぶりだねドラゴン、最近見かけなかったけどどうしたんだい?」

 

「いえ、最近面白いスカルキーが出来まして…それを町に放ってみたんですよ」

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…くそっ…なんだよあれ…!!」

 

暗い路地を1人の忍が走る。その体は全身傷だらけで血が流れている。

任務中、突如現れたそれは瞬く間に自分の仲間を殺してしまった。残っているのは自分1人

 

「グルル…」

 

「ひっ!!」

 

すると、目の前に奴が現れた。自分は手負い、もう逃げられない

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

忍は一か八か手に持った忍刀で立ち向かい

 

 

 

 

「が……………」

 

斬り刻まれた。

 

「ウォォォォォン!!」

 

夜の空に獣の雄叫びが響いた。

 

 

 

 

 

「また辻斬りの仕業か…」

 

現場を見ながら俺はそう呟く。ここ最近、この町では辻斬りが出現している。被害者に共通点は無いが皆等しく全員鋭い刃で斬り刻まれている。俺達は神門様の命で現在この事件を調査していた。

 

「りゅーくん、もしかしてこれってケルベロスの仕業じゃ…」

 

現場を見ながら飛鳥が俺にそう聞いてくる。ケルベロスもとい朱音…たしかに相手を斬り刻むという点では共通している。でも

 

「いや、これはあいつ仕業じゃないよ」

 

俺はそう断言した。

 

「竜司さん、違うとはどういう事ですか?」

 

斑鳩先輩も俺に聞いてくる。

 

「ケルベロスは殺す事より相手の血を見る事を重要視している。だから必然的に相手を細切れにすることが多い」

 

俺は渡されていた遺体の写真を見ながら言葉を続ける。

 

「でもこの遺体は斬り刻まれてはいるけど全身バラバラになってるわけじゃない。言うなればただ殺しただけって感じがしてあいつのやり方とは違う気がするんだ。殺しのベクトルが違う。」

 

 

 

 

 

 

 

「あはっ❤︎さすが竜司くん…私の事ちゃんとわかってくれてる❤︎あは、あははは…斬りたいなぁ…殺したいなぁ…!!」

 

「いい加減にしろ、ここで騒ぎを起こすようなら連れて帰るぞ」

 

現場を調べている竜司を遠くから朱音と華蛇が見つめていた。

 

「でもあの飛鳥って娘、失礼しちゃうなぁ。私のアートをあんなのと一緒にするなんて…あの時毒なんか使わずに斬り刻んでおけばよかった。」

 

「私からすればお前のとそれほど違いがあるとは思えん」

 

「違うわよ、あんな殺し方じゃ血が綺麗に出ないじゃん」

 

「2人とも、こんなところにいましたか」

 

そこへドラゴンが現れ2人に声をかける。

 

「奴がまた動き出しました。準備をお願いします」

 

「ふん、なぜ私がお前の仕事の手伝いをしなくてはならないんだ…」

 

華蛇はやれやれとため息を吐きながらそうぼやく

 

「まあまあ、そう仰らないでください。リューマに受けた傷のリハビリがてら協力してくださいよ。」

 

「私は良いわよ、竜司くんを殺せるなら♪」

 

逆に朱音は嬉しそうに笑いながらケルベロススカルキーを手で回していた。

 

 

 

 

 

 

「うーん、結局手がかりは見つからなかったな…」

 

真夜中になってもこれと言った手がかりは見つからず俺は夜の街を歩いていた。別の場所を調べている飛鳥達に連絡してみるが空振りだったようである。

 

「仕方ないか、今日はもう帰って……」

 

その時、竜司は誰かがこちらを見ている気配に気付いた。

 

「誰だ、出てこい!!」

 

俺が叫ぶと銃弾が俺へと放たれるので俺は咄嗟に回避する。

 

「噂をすれば影とやらか…」

 

まさかここで辻斬りが出てくるとは思わなかったが丁度いい、俺はカグラドライバーを手に持ち気配のする方を向いて身構える。

 

 

 

 

「キキッ、よく気づいたな…だが、観念しなリューマ…ここがお前の墓場になるんだからな!!」

 

すると、屋根の上に何かが飛び移る。

 

「「「「「MK5、推参!!」」」」」

 

 

 

 

 

「…は?」

 

辻斬りかと思ったら以前蛇邪学園で俺が瞬殺したえむけー何ちゃらが某特戦隊のポーズをしていた。

 

「キキッ、観念するんだなぁ…あの時は油断してやられてしまったがもう同じ失敗はくり返さねぇ!!俺達5人の連携攻撃で…」

 

「あのさぁ…俺今結構やばい事件追ってるんだけど、あんた達の相手してる暇ないんだけど」

 

いつ辻斬りが出現するか分からないって時になんて間の悪い奴等なんだ

 

「いくぞ!!俺達の必殺フォーメーションをとくと見よぉぉぉ!!」

 

MK5はリーダー格と思われる碇(だったっけ?)の合図と共に一斉に飛びかかる…うん、やっぱりこいつら……

 

 

 

 

「空気読めやぁぁぁぁぁ!!」

 

「「「「「ダメだこりゃぁぁぁぁ!!」」」」」

 

マジで空気読めない5人組だ

 

 

 

 

 

 

 

MK5瞬殺!!

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、なんか思いっきり無駄な時間を過ごした」

 

えむけー何ちゃらを瞬殺した俺は再び捜査を開始した。

 

「……ん?」

 

すると、再び誰かの気配を感じる

 

「あーもう!!ほんと空気読めない奴らだ…え?」

 

えむけー何ちゃらかと思ったが違う。ボロボロの着物を着て虚な目をした男が物陰から現れた。

 

「もしかして…お前が辻斬りか?」

 

「……殺す…殺す…殺す」

 

男は俺の質問に耳を貸さずブツブツと何かを呟いている。

 

「何でもいい…ダレでも良イ……殺させろヨォォォォォォォォォォ!!」

 

『ウルフ!!』

 

男は焦げ茶色のスカルキーを取り出すと起動して胸元に出来た鍵穴に挿し込んで回す。すると、どす黒い泥が鍵穴から溢れて全身を包み込むと焦げ茶色の毛の狼の様な姿をしたスカル、ウルフスカルへと変身した。

 

「やっぱりスカルの仕業だったのか」

 

「グルルルル…殺す…ころすコロすコロス…コロシテヤルゥゥゥゥゥゥ!!」

 

ウルフスカルは血走った眼をして鋭い爪を振り上げながら俺に斬りかかってくる。

 

「悪いけど…殺されるつもりはないし殺させるつもりもないぜ」

 

『ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着してティラノキーを起動して鍵穴に挿し込む。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ティラノキーを回すとティラノサウルスのオーラが全身を包み込み仮面ライダーリューマ・ティラノ武装へと変身する。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「グルァァァァァ!!」

 

ウルフスカルは唸り声をあげながら真っ赤な口を開けて飛び掛かってきた。

 

「ふっ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

しかし、俺はそれを躱すと手刀を繰り出して反撃する。ウルフスカルはその衝撃で壁に激突した。

 

「グルルルル…グルァァァァァ!!」

 

ウルフスカルは獣のような声をあげながら再度俺に飛び掛かってくる。しかし、その動きは単純で容易に躱せる。俺は躱しながら次々と攻撃をウルフスカルへと繰り出した。

 

「……何だこいつ……?」

 

なんだか今までのスカルと様子が違う。どちらかと言うと巨獣態になって暴走したウォートホッグやオクトパスに近い様子である。

 

「まぁとにかく倒すんだけど!!」

 

こいつを放っておいたら今以上に犠牲者が出てしまう。そうなる前にこいつを倒さないと!!

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

俺はカグラドライバーを叩いて必殺忍法を放つ

 

 

 

 

「あはははははは!!みーつけた❤︎」

 

しかし、そこへケルベロススカルが飛び掛かってきて妨害されてしまう。

 

「ケルベロス!!このっ…!!」

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜忍斬り!!」

 

なんとかケルベロススカルを振り解いた俺はファングクナイにティラノキーを挿しこんで斬撃を放つ

 

「ふっ!!」

 

しかし、今度はメデューサスカルが現れて蛇腹剣で斬撃を斬ってしまう。

 

「悪いがこいつを今倒されるわけにはいかないんでな」

 

「グルルルル…」

 

「あ、待て!!」

 

ウルフスカルはフラフラになりながらも立ち上がりそのまま闇夜に消えていってしまった。

 

「いくぞ」

 

「またね竜司くん❤︎」

 

ウルフスカルが立ち去るのを見届けたメデューサスカルとケルベロススカルはそのままその場を離れてしまった。

 

「くそっ…逃げられた」

 

 

 

 

 

「辻斬りが出た!?」

 

竜司からの連絡を聞いて別の場所を操作していた飛鳥は驚く

 

『うん、まだ近くにいるかもしれない…見かけたらすぐ俺に連絡して!!』

 

「うん、わかった!!りゅーくんも気をつけて!!」

 

飛鳥は竜司から近いところにいるので警戒をさらに強める。現在ではスカルキーはリューマやガリューと言った仮面ライダーでしか倒せない。だからこそ目撃しても深追いせずに竜司の応援を待つべきである。

 

「…よしっ!!」

 

竜司から送られたスカルの変身者の顔写真を確認すると飛鳥は周囲を警戒した。敵はかなり凶暴ですぐに襲ってくる危険があるそうだからだ。

 

「私だって…頑張らないと!!」

 

気づけば随分と差がついてしまった。自分も絶えず修行をしてきたが竜司はその更に先へと進んでいる。同期として、幼馴染として、家族として負けられない!!

 

「グルルルル……」

 

「っ!!」

 

すると、近くからこちらに向けられる殺意に飛鳥は気づく。

 

「グルァァァァァ!!」

 

その瞬間、ウルフスカルが血走った眼で飛鳥へと飛びかかってきた。

 

「そんな単純な攻撃、当たらないよ!!」

 

飛鳥はその攻撃を軽々と躱して両手の小太刀でウルフスカルに斬りつけた。

 

「ギャアッ!!」

 

その一撃を躱せなかったウルフスカルは地面に倒れ込む。

リューマとの戦闘の傷が癒えてなかったのかウルフスカルは中々立ち上がれない。

 

「よし、あとはりゅーくんが来れば……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミ ツ ケ タ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

瞬間、飛鳥の視界が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

「飛鳥?おーい、飛鳥ー!!」

 

飛鳥と連絡がつかなくなって俺は周囲を探していた。

 

「この辺りにあるはずなんだけど…」

 

「う…うう…」

 

すると、どこからか誰かのうめき声が聞こえる。

 

「飛鳥!?」

 

飛鳥と思った俺は慌てて声のする方へと駆け出した。

 

「っ!?こいつは…」

 

たどり着いた俺が見たのは先程俺に襲いかかってきたウルフスカルの変身者だった。

 

「なんでこいつが…飛鳥は一体どこに?」

 

 

 

 

 

「良くやってくれましたメデューサ、ケルベロス」

 

ビルの屋上に戻り変身を解いた華蛇と朱音をドラゴンが迎える。

 

「なんなんだあれは?あんなスカルキーは見たことない」

 

「すっごい面白そうだった!!」

 

『現場』を目撃した2人はドラゴンに問い詰める。

 

「ふふふ、私の研究中に偶然生まれた子でしてね。なかなか面白いでしょ?」

 

楽しそうに笑いながらドラゴンは視線を街に向けた。

 

 

 

 

 

 

「確保した男は数年前から指名手配されてた抜け忍だった。現在は意識が戻らず治療を受けている」

 

翌日、俺は霧夜先生から判明した情報を聞いていた。あの後スカルによる辻斬りは確認されていないので奴が辻斬りの犯人で間違いないだろう

 

「現場の状況とお前の報告から原因はスカルキーの毒素による副作用ではないかと思われている。しかし問題は…」

 

「…飛鳥の事ですよね」

 

そう、結局飛鳥はあれから帰ってきていない。合流した他のみんなと手分けして探してみたが手がかりゼロだ。

 

「そっちについても現在調査している。竜司も何かわかったらすぐ報告してくれ」

 

「…はい」

 

 

 

 

 

「飛鳥の奴…どこにいるんだよ…」

 

俺は街を探し回ったが全然見当たらない。じいちゃんのいる実家の寿司屋や商店街、飛鳥がいそうな場所は手当たり次第探したが手がかりのての字もない。

 

「じいちゃんもここ最近帰ってこないし…一体何が起こってるんだ…」

 

「グルルルル…」

 

「え…?」

 

瞬間、以前聞いたことのある唸り声が聞こえた。

 

「グルァァァァァ!!」

 

すると、焦げ茶色の体毛を持つ狼の様なスカル、ウルフスカルが俺の目の前に現れた。しかし、以前と違って両手に禍々しい双剣を持っていた。

 

「そんな馬鹿な…だって変身者の男は今…」

 

何故勾留されているはずのこいつがここにいるのか俺には訳がわからない

 

「悩んでる暇はないか…変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着して仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「とにかく霧夜先生に連絡を…」

 

 

 

 

 

 

「なに!?昨日のスカルが襲ってきただと!?」

 

竜司の連絡を聞き霧夜は驚愕した。

 

「そんなはずはない、変身者の男は今病室にいるんだぞ!!」

 

『でもこの姿…間違いなく昨日襲撃してきたスカルと同じ奴です!!とにかく今はこいつを…』

 

「…わかった!!すぐに斑鳩達を向かわせる。とにかくスカルを討伐するんだ!!」

 

『了解!!』

 

霧夜が指示をすると竜司はそれに従い通信が切れた。

 

「どうなってるんだいったい…」

 

「霧夜殿!!」

 

そこへ神門の護衛の忍の1人が慌てた様子で入ってくる。

 

「どうした?」

 

「それが、例の男が意識を取り戻したのですが…とにかく来てください!!」

 

 

 

 

 

 

「違う…俺じゃない!!俺じゃないんだぁぁぁぁぁ!!」

 

「こらっ!!落ち着けと言ってるだろ!!」

 

霧夜が病室に入るとウルフスカルの変身者の男が錯乱していた。

 

「お…俺は違う…もう俺じゃない!!次はあいつが…あの娘が奴になるんだぁぁぁ!!」

 

「……まさか!!」

 

 

 

 

 

 

「くそっ!!こいつこの前より強くなってる!!」

 

ウルフスカルは以前戦った時より更に速くなっており両手の双剣で凄まじい連撃を放ってくる。

 

「それなら…」

 

『サイクロン武装!!メガロ!!』

 

サイクロンメガロキーを起動して鍵穴に挿しこみ仮面ライダーリューマ・サイクロンへと変身した。

 

「はぁぁぁ!!」

 

「ぐあっ!!」

 

風を纏った連撃をくらいウルフスカルは吹き飛ぶがすぐに立ち上がり攻撃を仕掛けてくる。

 

「くそっ!!」

 

しかし俺はすぐに腕に風を纏ってガードしカウンターを繰り出すがウルフスカルはそれを回避する。

 

「タフさも速さも以前と桁違いだな…」

 

俺はウルフスカルの力の上昇度に驚愕した。

 

「グルルルル…グルァァァァァ!!」

 

すると、ウルフスカルが突然構えて空中へ飛び上がり独楽のようにスピンしながら双剣による斬撃を放った

 

「なっ…!!それは…」

 

俺はその技に取り乱して直撃してしまい吹き飛んでしまった。

 

「ウォォォォォン!!」

 

ウルフスカルは勝ち誇ったかの様に雄叫びを上げる

 

「なんで…なんでその技をお前が使うんだ!!」

 

俺はウルフスカルに問い詰める。だってその技は…

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは……飛鳥の秘伝忍法だぞ!!」

 

間違いない、あれは飛鳥の半蔵流・乱れ斬り…何故それをスカルが使えるのか…意味がわからない

 

「グルルルル…グルァッ!?」

 

すると、突然ウルフスカルが苦しみ出す。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!!」

 

突然ウルフスカルが叫ぶと泥が剥がれ落ちるように変身が解除される。そこには…

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「あす……か?」

 

苦しそうな顔で立っている飛鳥がそこにいた。

 

「どうなってるんだ?なんで飛鳥がスカルに…」

 

「りゅーくん…鍵が…うっ!!」

 

すると、飛鳥が再び苦しみ出す。

 

「はやく鍵を…うわぁぁぁぁぁ!!」

 

瞬間、飛鳥の胸元に鍵穴が現れどす黒い泥が溢れてウルフスカルへと変貌した。

 

「オマエ…ネムレ…コノカラダ…オレノ…」

 

「まさか…スカルが…飛鳥を乗っ取って…」

 

 

 

 

 

 

「恐ろしい鍵だな…使用者の肉体を乗っ取り、成長するスカルキーとは…」

 

「どうやら気に入った依代を見つけた様ですね」

 

離れた場所から華蛇達がウルフスカルを見ている。

 

「あの娘の肉体を完全に支配すれば力は安定してロードスカルへと進化する。それまで成長を助けるとしましょう」

 

ドラゴンはウルフスカルの成長を嬉しそうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牙を剥くスカル!!

 

スカルに乗っ取られた飛鳥!!

 

果たして竜司、飛鳥を救えるのか!!

 



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其の四十 約束と救出!!の巻

今日は3月3日!!ひな祭りです!!
こち亀の両さんの誕生日!!あと興味無いと思いますがうちのキャラクターの理吉君の誕生日です。


「飛鳥の体に…スカルが…!?」

 

ウルフスカルの正体に俺は驚きを隠せずにいた。

 

「コノカラダ…キニイッタ…コレカラハ…オレガツカウ…」

 

「んな事……俺が許すか!!」

 

俺は両手に竜巻を纏ってウルフスカルへと連続パンチを繰り出す。

 

「グゥゥ…!!あぁぁぁぁ!!」

 

すると、ウルフスカルから飛鳥の苦しむような悲鳴が聞こえて来る。まるで俺の攻撃が飛鳥に伝わっているかのようだ。

 

「やめといた方が良いですよ」

 

すると、華びやかな服を纏った金髪の男ドラゴンが目の前に現れた。

 

「このスカルを倒せば……貴方のお友達は死にます」

 

「なっ!?」

 

俺はドラゴンから告げられた衝撃の言葉に驚愕した。

 

「今ウルフスカルキーは彼女の魂に憑依しております。その状態で鍵を壊したりしたら…彼女の魂は永遠に失われるでしょうね。尤も…もうここまできたら彼女が死なない限りは鍵は取り除けませんけどね…まぁこのまま放っといても彼女の自我を喰らってウルフが体を完全に支配するだけですが」

 

「そんな……」

 

スカルキーを破壊すれば飛鳥は死ぬ…でも放っといてもウルフスカルキーに飛鳥が支配される…どうしてそんな事に…

 

「それにしても……一気にここまで成長するなんて、なかなか良い依代を見つけられて良かったですよ」

 

「なに…?」

 

俺はドラゴンの言葉に反応した。

 

「出来ればこのまま放っといてもらいたいですね。偶然できた実験台ですが…なかなか愛着があるので」

 

「そんな事…させるかぁぁぁ!!」

 

俺は怒りに身を任せながらドラゴンへと殴りかかる。

 

「やれやれ…争いごとは苦手なんですが…」

 

『ドラゴン!!』

 

ドラゴンは腰にスカルドライバーを腰にはめドラゴンスカルキーを起動して腰にはめる。すると、スカルドライバーの髑髏の口からどす黒い泥が噴き出しドラゴンの体を包み込むと金色の西洋竜のような鎧を纏ったスカル、ドラゴンスカルへと変身した。

 

「陛下の為にも…貴方にはここで消えてもらいましょうか!!」

 

ドラゴンスカルは金色の大剣を両手で持つと刀身に黒い炎を纏わせて俺に斬りかかってきた。

 

「はあっ!!」

 

「ふっ!!」

 

俺の拳とドラゴンスカルの剣が衝突する。その衝撃で辺りの木々が揺れガラスが割れる。

 

「なるほど…このパワー…デスドラを倒しただけのことはある…ですがそんな頭に血が昇ってる状態では簡単に攻撃を読めますよ!!」

 

「うわぁっ!!」

 

俺は一瞬の隙をつかれて黒炎の斬撃を食らって吹き飛ばされてしまう。

 

「このぉっ!!邪魔をするなぁぁぁ!!」

 

俺は叫びながら竜巻を纏った高速移動でウルフスカルの方へといこうとする。

 

「だから読みやすいって言ってますって」

 

「がはっ!?」

 

しかしドラゴンスカルは高速で動いて俺の目の前に立ち黒炎を纏った掌打によって壁に叩きつけられて変身を解除してしまった。

 

「貴方は面倒ですからね…ここで始末させてもらいましょうか」

 

ドラゴンスカルは大剣の先端を俺に向けながらゆっくりと近づいてくる。

 

 

 

 

 

 

「ドラゴン、彼を殺すのはやめてくれるかい?」

 

すると、いつの間にかドラゴンスカルの背後に弥勒が立ってドラゴンスカルの肩を掴んでいた。

 

「陛下…」

 

「彼には出来れば僕の仲間になってほしいんだ。だからここでは彼を殺さないでほしいな」

 

「…どうでしょうか?彼が我らに協力するとは思えません。ここで始末した方が良いと思いますよ?」

 

ドラゴンスカルはそう言いながら剣を再び俺へと向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はやめろと言ったぞヨハネ」

 

瞬間、弥勒から凄まじい殺気が溢れ出てきた。ふと見ると彼に掴まれた肩の鎧にヒビが入っていた。

 

「…………っ!!」

 

その殺気にドラゴンスカルは思わず体を硬らせる。

 

「ヨハネ…頼むよ」

 

「わ、わかりました…」

 

ドラゴンスカルは変身を解除してヨハネと呼ばれる金髪の男の姿へと戻った。

 

「それじゃあウルフを回収してくれるかい?あとは調整していけば力は安定してくると思うんだ。」

 

「わかりました。」

 

ヨハネは弥勒の命令に頷くと黒いゲートを生み出してそこへウルフスカルを連れて行く。

 

「それじゃあね竜司くん」

 

弥勒は倒れる俺にそう言うとゲートの中へと消えていった。

 

「あす……か……」

 

俺はそのゲートに手を伸ばし…意識を失った。

 

 

 

 

「竜司!!飛鳥!!どこにいる!?」

 

ヨハネと弥勒が立ち去ってから暫くすると、霧夜が慌てながらやって来た。

 

「なっ…これは…」

 

そこには傷だらけの状態で竜司が倒れており辺りはあちこち壊れていて戦いの壮絶さを語っていた。

 

「竜司!!しっかりしろ!!竜司!!」

 

霧夜は竜司に駆け寄り必死で彼を揺さぶったが微かに呼吸をしているだけで満身創痍だった。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

弥勒達のアジトで両手を鎖に繋がれた飛鳥の悲鳴が響いた。そこではヨハネが彼女の中にあるスカルキーを調整しておりその周りに華蛇と朱音、その奥に弥勒がおり成り行きを見ていた。

 

「これでスカルキーは完全に彼女に定着しました。時間と共に彼女の自我を食らって進化するでしょう」

 

「そうか、それは楽しみだ。2人も手伝ってくれてありがとう」

 

「もったいなきお言葉です」

 

「うふふ」

 

弥勒の言葉に華蛇は頭を下げ、朱音は嬉しそうに笑った。

 

「暫くしたらまた外に放ってくれ」

 

「リューマの妨害があると思いますが?」

 

「その時は君達に任せるよ。尤も…彼らにはもう何も出来ないと思うけど…」

 

そう言うと弥勒は後ろを向いてその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「う…うう…」

 

「竜司、気づいたか!?」

 

俺が目を覚ますと霧夜先生がそれに気づいて駆け寄ってきた。

 

「竜司…一体何があったんだ?飛鳥は…」

 

「今……伝えます…みんなを呼んでください」

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…飛鳥さんが…」

 

「マジかよ…」

 

俺から何が起こったのかを聞いたみんなはその衝撃の事実に言葉を失った。

 

「あいつ言ってたんだ…スカルキーは飛鳥の魂に憑依していて、取り除こうとすれば飛鳥は死ぬって…」

 

「でもこのままでは飛鳥さんの自我は失われてしまう…」

 

「くそっ、何か手はねえのかよ」

 

「どうすれば…」

 

「飛鳥ちゃん…」

 

 

 

 

 

『なるほど…そのようなことが…』

 

「はい…」

 

霧夜は神門へと連絡を入れた。彼女は辛そうに目を瞑ると意を決したように目を開く。

 

『霧夜殿、竜司さんに指示を…直ちにスカルを発見しこれを討伐するようにと』

 

「…やはりそうですか」

 

神門の決定を察していた霧夜は辛そうにそう呟く

 

『このまま放っておいたらスカルはロードスカルに進化して奴らの戦力を増やす事になってしまいます。そうなる前に鍵を破壊してそれを阻止しなくてはなりません…辛いと思いますが、これは命令です』

 

その言葉は1人の少女としてでは無い善忍最高幹部の1人としての冷たい一言だった。

 

「わかりました」

 

霧夜は彼女の決定に頷くと1人その場を離れていった。

 

 

 

 

「はぁ……」

 

霧夜が立ち去ったあと、神門は椅子の背もたれに寄りかかりため息を吐きながら隣に立つ護衛に声をかける

 

「私は…酷い人でしょうね」

 

「いいえ、こればかりは仕方ありません。我々は忍、いついかなる時も死を覚悟しなくてはならないのですから…」

 

「ですが…」

 

その目は先ほどとは打って変わって後悔と悲しみが溢れ噛み締めた唇からは血が流れていた。

 

「…誰かの死を悲しめるだけ、貴方は優しいですよ」

 

そんな彼女を見て護衛の男は聞こえないように呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「飛鳥を…!!」

 

「そんな!!」

 

俺達は霧夜先生から告げられた神門様の決定に驚愕した。

 

「それじゃあ飛鳥さんはどうなるんですか!?」

 

「アイツがどうなっても構わねえって言うのかよ!!」

 

納得のいかない決定に斑鳩先輩とかつ姉が食ってかかる。

 

「これは決定事項だ!!もう……決まったことなんだ」

 

しかし、霧夜先生はそんな俺達にピシャリといった。その顔はとても辛そうでまさに断腸の思いであることが俺達にもわかった。

 

「先生……」

 

そんな霧夜先生の顔を見て俺達はそれ以上何も言えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はスカルを探す為に街を歩き回っていた。

他のみんなもあちこちに散らばり手分けして探している。

 

「スカルを倒したら飛鳥は死ぬ…でも、このままじゃ飛鳥はスカルに殺されてしまう…」

 

どっちに転んでも飛鳥は永遠に失われてしまう。まさに八方塞がりだ

 

「どうすれば良いんだ……」

 

prrrrrrr…prrrrrrr…

 

するとスマホモードになっているガマ吉が鳴り出した。誰からの電話なのか確認する為に俺はガマ吉を取り出して画面を見た。

 

《飛鳥》

 

「え…?」

 

そこに出ていた名前を見て俺は驚き慌てて通話モードにする。

 

「飛鳥…!!大丈夫か!?今どこに…!!」

 

『…りゅーくん?』 

 

聞こえてくる飛鳥の声はか細く弱々しかった。

 

「飛鳥…!!今どこにいるか教えてくれ…!!今助けに…」

 

『りゅーくん…お願い…私を倒して』

 

「なっ!?」

 

飛鳥からの頼みに俺は声を失う。

 

「何言ってるんだよお前…そんなこと…」

 

『わかってるの…私の中に入ってるスカルが…どんどん私を支配してくるのが…このままじゃ…私は私じゃなくなっちゃう…』

 

その声は震えていて涙を堪えているのがわかった。

 

『私…スカルになんかなりたくない…!!りゅーくん達を傷つけたくない…だから!!』

 

「何弱気なこと言ってるんだよ!!」

 

俺は明るい声で大きく飛鳥にそう叫ぶ。

 

「そんなのさ……俺の知ってる飛鳥じゃねえぞ!!いつものお前なら、こんなことじゃ諦めねぇ!なにくそって最後まで足掻き続けるだろ!!」

 

『りゅーくん…』

 

「お前はぜってースカルになんかならねえ、俺が必ず助ける!!約束だからさ…諦めんなよ」

 

その言葉を聞いて飛鳥は涙を拭い声が明るくなる。

 

『そうだね…ここで諦めてたら、じっちゃんに怒られちゃうよ!!』

 

「そうそうその調子、それでこそ俺の知ってる飛鳥だぜ!!」

 

少し明るい口調になった飛鳥の声を聞いて俺は安心して言葉を続ける。

 

「飛鳥、それじゃあ今お前がいる場所を教えてくれ。必ず助けに行く」

 

『うん、ここは…』

 

「ありがとう、必ず助けに行くから待ってろよ」

 

そうして飛鳥から場所を聞いた俺は電話を切った。

 

「…………よし!!」

 

さっきから溢れていた涙を拭って俺は動き出す。

 

 

 

 

「りゅーくん……ありがとう」

 

廃工場に蹲っていた飛鳥は電話を切った。竜司の励ましの言葉は折れていた彼女の心を掬い上げていた。

 

「そうだね…諦めたら私らしく無いよ。こんなところで…うっ!!」

 

突然の痛みに飛鳥は胸を抑える。自分の中にいるスカルが徐々に体を蝕んでくる。

 

「絶対に…負けるもんか……私は……あぁぁぁぁぁ!!」

 

必死に抑え込もうとするが胸元に現れた鍵穴からどす黒い泥が溢れて飛鳥を包み込みウルフスカルへと変貌した。

 

「ちっ……往生際の悪い奴だ。さっさと俺に体をよこせってんだ」

 

「だいぶ成長しましたねウルフ」

 

すると、拍手が聞こえてヨハネが暗闇から現れた。

 

「あぁ、あんたか。お陰様で体はだいぶ馴染んできたぜ」

 

「まだ抵抗しているようですが…それも時間の問題でしょう」

 

「最初の依代だったあのゴロツキは話にならなかったが…まさかそのあとすぐにこんな良い依代に巡り合えるとは思わなかったぜ」

 

ウルフスカルは手を動かしながらニヤリと笑った。

 

「そういえば先ほどリューマの小僧を呼び出してたようですが?」  

 

「ん、あぁ…この女がな。こいつまだあの野郎を信じているみたいだな…まったく馬鹿な女だぜ」

 

「…ちょうどいい、その女のフリをして奴を始末しなさい。人の姿にもなれるでしょう?」

 

「まあな、こんな感じか?」

 

そう言うとウルフスカルは変身を解除する。そうすると、飛鳥の姿に変わる。しかしその目は紅く肉食獣のような獰猛な顔をしていた。

 

「けど良いのか?あの陛下って奴には殺すなって言われてんだろ?」

 

「奴は始末する必要があります。貴方がロードになれば陛下も納得するでしょう」

 

ヨハネはニヤリと笑いながらウルフスカルにそう言った。

 

 

 

 

 

「とはいえ……まだ方法は見つかって無いんだよな……」

 

飛鳥と約束した俺は飛鳥に言われた場所へと向かっていた。しかし、約束したとはいえまだ飛鳥を救う方法は見つかっていない

 

「どうすれば…」

 

このままじゃ飛鳥の自我はスカルに乗っ取られる。かと言って鍵を取り除こうとすれば飛鳥が死んでしまう

 

『今ウルフスカルキーは彼女の魂に憑依しております。その状態で鍵を壊したりしたら…彼女の魂は永遠に失われるでしょうね。尤も…もうここまできたら彼女が死なない限りは鍵は取り除けませんけどね…まぁこのまま放っといても彼女の自我を喰らってウルフが体を完全に支配するだけですが』

 

「………?」

 

ヨハネの言葉を思い出してた時、俺は何かに引っかかる…何か大事な事を見落としてる

 

『彼女が死なない限りは鍵は取り除けませんけどね』  

 

「あっ…!!」

 

閃いた。これだ、これなら飛鳥を救えるかもしれない…!!

 

 

 

 

「飛鳥、来たぞ!!」

 

飛鳥に言われた場所に来た俺は飛鳥に呼びかける。

 

「りゅーくん!!」

 

すると飛鳥が笑顔で駆け寄ってきた。

 

「飛鳥、スカルは…?」

 

「うん、今はなんとか抑え込んでる。りゅーくんが私を励ましてくれたおかげ」

 

「そっか、それはよかった。とりあえず一度霧夜先生のところへ行こう。きっと何か対策をしてくれるよ」

 

「うん!!」

 

俺はそういうと飛鳥に背を向けた。

 

 

 

 

 

 

(ヒャハッ…引っかかりやがって…)

 

ウルフは自分に背を向けている竜司を見て笑みを浮かべる。今なら確実に奴を殺せる。そう思いながら手に持った小太刀を握りしめる。この体はお気に入りだが自我が強いのが難点だ。前の依代の時は楽しめた殺しがこの体になってからは全然出来てない。もう我慢の限界だ。ウルフは小太刀を振り翳し竜司に斬りかかろうとした。

 

「はあっ!!」

 

「なっ!?」

 

しかし竜司は瞬時に振り向きウルフの手に握られた小太刀を蹴り飛ばした。

 

「テメェ…!!どうしてわかった!?」

 

「甘いんだよお前、いくらうまく演じたつもりでも殺気がダダ漏れじゃ嫌でもわかる」

 

竜司は鋭い眼でウルフを睨みつけながらそう言った。

 

「はっ!!でもわかってんだろうな…この体はもはや俺のもの!!手前がどう足掻こうと無駄なんだよ!!」

 

「無駄かどうかは…俺が決める!!」

 

『メガロ!!サイクロン!!』

 

俺はカグラドライバーを装着してサイクロンメガロキーを起動する。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身」

 

『サイクロン武装!!メガロ!!』

 

俺が鍵を挿しこみ回すと竜巻が全身を包み仮面ライダーリューマ・サイクロンへと変身した。

 

「は、ガキが偉そうに…」

 

『ウルフ!!』

 

ウルフはスカルキーを起動すると胸元にできた鍵穴に挿しこみウルフスカルへと変身した。

 

 

 

 

 

「竜司さんがスカルと…!!」

 

霧夜先生から報告を受けた斑鳩達は急いで竜司達の元へと向かっていた。

 

「竜司くん…本当に飛鳥ちゃんを倒すのかな?」

 

「んなわけねーだろ、竜司が…そんなこと…」

 

心配する雲雀に葛城はそう言うがその表情は暗かった。

 

「いずれにせよ急いで行きましょう。」

 

斑鳩はそんな2人に言うとさらに速度を上げて走り出した。

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

「オラァッ!!」

 

暗い工場跡地でリューマ・サイクロンとウルフスカルの戦いが続いていた。

 

「わかってるぜ!!お前、俺との戦闘の中でなんとかこいつから俺を分離出来ねえか考えてるんだろ!?」

 

ウルフスカルは双剣で斬りつけながら俺に話しかけてくる。

 

「無駄だ!!俺は今こいつの魂と完全に同化している!!そんな状態で鍵を取り除こうとすればその瞬間、こいつの心臓は止まる!!どう転んでもこいつは助からねえんだよ!!」

 

「お前の話なんか…聞いてねえよ!!」

 

俺は両手に纏った風で双剣を防ぎつつ攻撃を繰り出していく。

 

「さっさと…くたばれや!!」

 

ウルフスカルは双剣を手に構えると空中へ飛び上がり独楽のようにスピンしながら双剣による斬撃を放った。

 

「手前なんかが…飛鳥の秘伝忍法使ってんじゃねえ!!」

 

俺は風を左足に集めると強靭な蹴りでウルフスカルの技にぶつける。

その衝撃で辺りにヒビが入った。

 

「ぐ…がぁぁっ!?」

 

俺の方が上回りウルフスカルは吹き飛ばされ地面に転がる。

 

「もらったぁっ!!」

 

俺はさらに左手に風を集めてストレートの一撃を叩きつけようとした。

 

 

 

 

 

 

「りゅー…くん…」

 

瞬間、気配が変わり飛鳥の弱々しい声が聞こえる。

 

「………っ!!」

 

これに反応してしまった俺の拳はウルフスカルの鼻先で止まった。

 

「ヒャハッ、そうだよなぁ…殺せねえよなぁ!!」

 

その瞬間を逃さずウルフスカルは俺の手を掴んだ。ウルフスカルは俺の動きを止める為に一瞬だけ飛鳥の体の主導権を戻したのだ。

 

「ありがとよぉリューマ…テメェを殺して俺は完全な存在になってやるぜ!!」

 

ウルフスカルの残った手に握られた剣が俺へと振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

そして剣は俺の首筋で止まった。

 

「な…なに…!なんで…動けない…!」

 

ウルフスカルも想定できなかったのか動揺する。

 

「一瞬だけ体の主導権を飛鳥に戻した?その一瞬をあいつが見逃すと思ってるのか?」

 

飛鳥は体の主導権を取り戻した瞬間を逃さずウルフスカルを抑え込んだのだ。ウルフスカルももがくがなかなか抜け出せずにいた。

 

「くそっ…大人しくしろこのあまぁ!!依代は依代らしく黙って俺の糧になれよ!!」

 

ウルフスカルは叫びながらなんとか体を動かそうとするがまったく動かさずにいた。俺はウルフスカルの腕を振り解いて腕に竜巻を纏わせる。

 

「ま、まて!!やめろぉ!!俺を倒したら…この女も死ぬんだぞ!!良いのか!?」

 

ウルフスカルはなんとか俺を止めようと必死で俺にそう言う。しかし俺の耳には届かない

 

「飛鳥…悪い」

 

俺は飛鳥目掛けて拳を振り上げる

 

「く…くそぉぉぉぉぉぉ!!」

 

俺の拳は飛鳥の胸元に炸裂しその衝撃でウルフスカルの体は泥のように吹き飛ばされて中から飛鳥が出てきた。

 

 

 

 

 

 

「竜司さん!!」

 

程なくして斑鳩達が竜司達のいる廃工場にたどり着いた。

 

「な………っ!!」

 

その現場を見て斑鳩は固まってしまう。そこには地面に落ちたスカルキー、心臓の止まった飛鳥と彼女を抱き抱えるリューマ・サイクロンの姿のままの竜司がいた。

 

「お、おい竜司…なんで飛鳥が起きないんだよ…?」

 

震えながら葛城は竜司に近づく。しかし竜司は黙って飛鳥を見ていた。

 

「おいっ!!なんとか言えよ!!」

 

「葛城さん!!」

 

竜司の胸ぐらを掴む葛城に斑鳩が叫ぶ

 

「竜司さんが…一番辛いんですよ…」

 

斑鳩は涙を堪えながらそう呟き、それを見て雲雀は涙を流しそれを柳生が慰めていた。

 

 

 

 

 

その時、竜司が動いた。

竜司は飛鳥を寝かせると彼女の胸元に手を当てる。

 

「ふっ!!」

 

すると、そこを思いっきり叩いた。それは何度も繰り返され、みんなはそれを見届けた。すると、

 

「げほっ!!はぁ…はぁ…」

 

飛鳥が息を吹き返して呼吸をしだした。

 

「あ…飛鳥さん…?」

 

「嘘だろ?」

 

信じられない光景にみんなは驚愕する。

 

 

 

 

「ど、どういう事だよ竜司!?一体どうして…」

 

「裏技だよ」

 

問い詰めるかつ姉に俺は説明した。

 

「ドラゴンスカルが言ってた言葉を思い出したんだ『彼女が死なない限りは鍵は取り除けない』これって言い方を変えれば『飛鳥が死ねば鍵が取り除ける』って事なんじゃないかって」

 

それなら簡単だ、一度飛鳥を死なせれば良い。最初の一撃で飛鳥の心臓だけに衝撃を与えて仮死状態にする。その後、鍵が飛鳥から離れたら即座に心臓マッサージをして蘇生すれば良いって

 

「えへへ…ちょっと痛かったけど…」

 

「悪いな飛鳥、でも他に方法が思いつかなくて」

 

俺は飛鳥の頭を撫でる。

 

「約束しただろ?お前を必ず助けるって」

 

「……うん/////」

 

飛鳥は少し顔を赤く染めて俺に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ…このガキ…俺を舐めやがって…」

 

すると、地面に落ちていたスカルキーが浮かび上がりどす黒い泥を噴き出すと形を作りウルフスカルへと姿を変えた。

 

「返せ…その体は俺のものだ…返せぇぇぇぇぇぇ!!」

 

怒りの形相で叫びながらウルフスカルは双剣を手に吼えた

 

「みんな…飛鳥を任せて良いか?」

 

「はい!!」

 

俺が頼むとみんなは俺に頷いた。

 

「それと飛鳥、これ借りるぞ」

 

俺はそう言うと地面に落ちてる飛鳥の二振りの小太刀、『柳緑花紅』を手に取った。

 

「返せぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ウルフスカルは叫びながら俺へと突進した。

嗚呼…もう我慢の限界だ。

 

「黙ってきいてりゃあ…お前の体じゃねぇだろォォォォォォォォォォ!!」

 

俺は振り向きざまにメガロサウルスの風を纏わせた小太刀でウルフスカルを斬り裂いた。

 

「もう躊躇う必要はねえ!!今までの分100倍にして返してやるから覚悟しな!!」

 

 

 

 

「くそっ…まさかこんな事に…」

 

ウルフスカルの様子を見に来ていたヨハネは歯軋りしながら呟いた。リューマにウルフスカルは殺さない。そうたかを括っていたらこのザマだ。まさかあんな無茶な方法で依代の女を助けるなんて思ってもみなかった。ウルフスカルも依代をなくして不安定になっている。このままでは崩壊するだろう

 

「まだ終わりじゃない…加勢してリューマを倒してまたあの依代にウルフを戻せば…」

 

「させると思ってるのか?」

 

突然空間が歪みヨハネを閉じ込めた。

 

「これは…忍結界!?」

 

「やっと姿を見せたな」

 

声のする方向を見ると竜司の父、竜舌と霧夜が立っていた。

 

「ほらな霧夜、俺が言った通りだったろ?竜司に任せときゃ絶対大丈夫だって」

 

「あぁ、その通りだったな。お陰で俺達は安心してこいつに集中出来るわけだ」

 

霧夜は怒りを含んだ眼でヨハネを睨みつけながら手に忍刀を握っていた。

 

「くっ…貴様ら2人がいたところで…」

 

「2人で済むと思っておるのか?」

 

瞬間、鋭い殺気がヨハネに向けられた。そちらへ向くと鋭い眼光でヨハネを睨みつけてる半蔵が立っていた。

 

「よくも儂の可愛い孫をいたぶってくれたのぉ…これだけの事をして、儂が黙っていると思ったのか?」

 

瞬間、怒りの形相となった半蔵が両手に小太刀を持って斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

「おりゃぁ!!」

 

「がぁぁぁぁ!?」

 

斬りかかるウルフスカルの斬撃を右手の小太刀で防ぐと左の小太刀でウルフスカルの体を斬り裂く。そのダメージでウルフスカルの動きが止まるとすかさず右の小太刀で斬りつけてさらに連続斬りを繰り出しその衝撃でウルフスカルは吹き飛ぶ。

 

「このぉ!!邪魔をするなァァァ!!」

 

ウルフスカルは双剣にエネルギーを纏わせて頭上から剣を振り下ろす。しかし、風を纏った俺の小太刀が再びそれをガードした。俺は風を纏っての高速移動でウルフスカルを四方八方から斬り裂く。

 

「何故だ…何故俺の攻撃が当たらない!?」

 

「当たるかよ」

 

確かにこいつの動きは飛鳥の技と同じ…いや、スカルの自力の分パワーと速さを上だろう。しかし、

 

「俺はいつも修行を欠かさず、自分の夢のために進み続ける飛鳥の動きを見てきたんだ。そんな魂の篭ってないモノマネなんて掠りもしないんだよ!!」

 

「ほざけぇ!!」

 

ウルフスカルは叫びながら空中へ飛び上がり独楽のようにスピンしながら双剣による斬撃を放った。

 

「これで終わりだ」

 

『必殺の術!!サイクロン!!』

 

「必殺忍法!!激竜風刃乱れ斬り!!」

 

俺は全身に竜巻を纏い空中へ飛び上がると独楽のようにスピンしながら斬撃を放った。2つの斬撃は激しく空中でぶつかるが俺の方が上回りウルフスカルを斬り刻んだ。

 

「クソがァァァァァァァァ!!」

 

ウルフスカルは断末魔をあげながら爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……」

 

一方竜舌達とヨハネの戦闘は竜舌達が僅かに優勢だった。

 

「まさか…ただの忍にここまでやられるとは…」

 

一対一なら訳ないがこうも連携されては…そう思いながら大剣を握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

『撤退しろヨハネ』

 

「っ!?」

 

その時、頭に弥勒の声が響いた。その口調から彼の怒りがよく分かった。

 

「へ…陛下…」

 

『俺は言ったよな?殺すなって、それを無視してここまでの勝手な行動…少し君を甘やかし過ぎたようだ』

 

彼の怒りの篭った声に体が強張る。

 

『もう一度言うよ。さっさと戻れ』

 

「…分かりました」

 

ドラゴンスカルは頷くと黒いゲートを開いた。

 

「今回は退かせてもらいますよ。この借りは必ず…」

 

「待ちやがれ!!」

 

竜舌は止めようとするが一歩遅くドラゴンスカルはゲートの中へと消えていった。

 

「ちっ…逃げやがった。」

 

「逃げたもんは仕方ない、今は飛鳥の無事を喜ぶとしよう」

 

竜舌にそう言う半蔵は先程と打って変わって安心した顔をしていた。それを見ながら霧夜はほっとする。

 

 

 

 

 

「飛鳥!!」

 

翌日、飛鳥の見舞いに来た俺は病室のベットにいる元気な飛鳥を見てホッとした。

 

「良かった〜悪かったな無茶な方法で…」

 

「ううん、私は平気だよ。りゅーくんの事信じてたから」

 

「へへっ、まあな」

 

俺はそう言うと飛鳥を抱きしめる。

 

「本当に良かった」

 

「りゅ、りゅーくん!?」

 

それに飛鳥は驚き顔を赤くする。

 

「りゅ、りゅーくん!!ちょっと…苦しい/////」

 

「あ、悪い」

 

俺は慌てて飛鳥を離すが何故か飛鳥の顔は茹で蛸の様になってた。

 

「どうした、風邪か?」

 

「な、なんでもない!!」

 

飛鳥は叫ぶと布団の中に潜ってしまった。

 

「なんなんだ一体…」

 

 

 

 

 

「な、なぁ…あれって」

 

「間違い無いな」

 

「飛鳥ちゃん顔真っ赤だったね。なんでだろう」

 

2人の様子を見ていた葛城達はヒソヒソと語る。雲雀はよく分かってないようだが…そして、

 

「うわぁぁぁぁぁ!!遂に…遂に恐れていた事がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

斑鳩が両手で頭を押さえ天に向かって叫んでいた。

 

 

 

 

「うう〜/////」

 

一方飛鳥は、布団の中で悶絶していた。

 

どうして?いつもなら平気なのに、今までも何も変わってないはずなのに…りゅーくんに助けられてから、あの時りゅーくんに頭を撫でられてから…りゅーくんの顔を見る事が出来ない

 

「こんな事…初めてだよぉ…」

 

飛鳥は自分に宿った初めての気持ちに戸惑いを隠せずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘後の廃工場、

地面には砕け散ったウルフスカルキーが落ちていた。

 

「回収完了っと」

 

すると、グリフォンスカルが現れそれを拾い上げる。

 

「ドラゴンの奴、俺に黙ってこんなもん隠してたとはな」

 

グリフォンスカルは手に取ったそれを見ながら笑う。

 

「こいつがあれば『アレ』はより完全な存在になる…最後に笑うのはこの俺だ」

 

グリフォンスカルはニヤリと笑いながらその場を離れていった。

 

 



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其の四十一 宣戦布告と学炎祭!!の巻

「やれやれ、本当にリューマ…竜司くんの潜在能力の高さには驚くばかりだよ」

 

豪華な部屋の椅子に座りながら弥勒は嬉しそうに呟く

 

「君が作ったウルフは極めて面白く、そして強力なスカルだった。あのまま行けば確かにロードスカルになれてたかもしれない。」

 

そう言うと弥勒はテーブルに置いてあったワインをグラスに注いで口に含んだ。

 

「けど、僕の好みじゃないね」

 

瞬間、弥勒は目を鋭くした。

 

「あのスカルには願望が無いんだよ。あるのはただ獲物を食うという本能に過ぎない。願望があってこそスカルなんだよ。願望も持たないただの獣と、強い信念で何かを成し遂げようとする竜司くん。どっちを僕が支持するか…わかるでしょ?」

 

そう言うと弥勒は視線を一ヶ所に向ける。

 

「ねぇ、ヨハネ?」

 

「も…申し訳…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

視線の先にはドラゴンスカルことヨハネが鎖に縛られていた。鎖からは電気が流れておりヨハネの体を襲い苦しんでいた。

 

「確かに、面白い能力だったしロードスカルが増えるに越したことはないから君の好きにさせたよ?だけどさ、僕が『殺すな』って言った彼を殺そうとしてまでは望んで無いんだよ。なんでそれを無視するのかな?」

 

「し、しかしあの男はいずれ陛下の道を妨げます…ここで始末した方が…」

 

「それを決めるのはお前じゃねえよ」

 

「がぁぁぁぁぁぁ!!」

 

瞬間、鎖に再び電流が流れヨハネは断末魔をあげる。その時の弥勒の顔は怒りを通り越して殺意に満ちていた。

 

「しばらくそこで反省してなよ。」

 

弥勒はそう言うと弥勒に背を向け部屋を後にした。

 

「少し…勝手に動き過ぎましたか…今はまだ…彼に従っていないと…ぐぅぅぅぅぅ!!」

 

弥勒が立ち去った方を見ながらヨハネは呻き声を上げた。

 

 

 

 

 

「陛下」

 

部屋を出た弥勒に華蛇が声をかける

 

「なんだい華蛇?」

 

弥勒は先ほどとは異なりいつも見せる優しい笑顔で華蛇の方を向く

 

「ヨハネを擁護する訳では無いのですが…何故陛下はリューマにそこまで固執するのですか?」

 

「……そうだねぇ、君になら教えてあげてもいいかな?」

 

華蛇の質問に弥勒は少し考えると頷いた。

 

 

 

「彼は知らないだけだからだよ。自分がどんな連中に騙されているのかを」

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう飛鳥」

 

ウルフスカルの事件から数日後、復帰した飛鳥に俺は声をかける。

 

「あ………お、おはよう!!////」

 

すると、飛鳥は何故か顔を真っ赤にして慌てながら挨拶を返した。

 

「どうした飛鳥?もしかして熱でもあるの?」  

 

俺は心配になって昔みたいに飛鳥のおでこに手を当ててみる。

 

「ひゃ…り、りゅーくん…」

 

「うーん、やっぱり熱いな。まだ休んだほうが…」

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

すると、何故か飛鳥のビンタが俺の頬を直撃した。

 

「なんでもないの!!りゅーくんの馬鹿!!」

 

飛鳥は顔を真っ赤にしたまま俺に怒鳴るとそのままどこかに行ってしまった。

 

「な…なんで…?」

 

 

 

「…………………。」

 

そして、そんな2人を遠くから見つめている影が一つあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛鳥に避けられてる?」  

 

「はい…」

 

飛鳥の様子がおかしいので俺は霧夜先生に相談した。

 

「風邪かと思って熱を測ろうとしたらビンタされて…明らかにいつもと様子が違うんです…まだ身体の調子が戻ってないのかも…」

 

「うん……そうか……なるほど……」

 

霧夜先生は何故か頭を抱えながら項垂れた。

 

「霧夜先生!!ひょっとして何か分かったんですか!?」

 

「いや…すまん、ちょっと分からんな……」

 

霧夜先生はあからさまに顔を逸らした。

 

「先生何故目を逸らすんですか!?答えてください!!飛鳥に何が…」

 

「えーいうるさーい!!」

 

問い詰めようとすると霧夜先生は立ち上がった。

 

「知らんと言ったら知らん!!俺には関係ない!!」

 

そう叫ぶと霧夜先生は顔に大量の冷や汗をかきながらその場を去っていった。

 

「なんだってんだよ…」

 

 

 

 

「…竜司、すまん」

 

霧夜は静かに呟きながら廊下を歩く

 

「頼むから俺を巻き込まないでくれ」

 

心の底からそう懇願しながら

 

 

 

 

 

「うぅ〜〜〜!!」

 

竜司から離れた後、飛鳥は飛鳥は顔を真っ赤にしながら机に顔を埋めながら悶えていた。

理由はわからない。だが、今まで普通に話せていたはずなのに、あのスカルに体を乗っ取られて、彼に助けられたからだ。それ以来彼の顔を見ることすら出来ない。声を聞くだけで心臓が高鳴ってしまう。

 

「私…どうしちゃったの…?」

 

わからない…こんなこと初めてだった。どうしたらいいのか…分からない

 

 

 

「飛鳥さん…ここにいましたか」

 

すると、そんな自分に声をかける人物がいた。

 

「斑鳩さん…」

 

「少し…話しませんか?」

 

 

 

 

 

「こ…これ…ヤバくないか?」

 

「かもな」

 

「だ、大丈夫かな2人とも…」

 

飛鳥と向かい合って座る斑鳩を葛城、柳生、雲雀が心配そうに遠くから様子を伺っていた。

 

「良いかお前ら…斑鳩から目を離すなよ。少しでも暴走したなら全員で止めるぞ」

 

「分かった」

  

「ひ、雲雀も頑張る」

 

 

 

 

 

 

「え、ええと…斑鳩さん?」

 

突然自分と向かい合って座る斑鳩に飛鳥は困惑していた。

 

「ふふ、そう怯えないでください。ただ少し聞きたいことがあるだけですから」

 

斑鳩はいつも通りの優しい声でそう微笑む。

 

「単刀直入に聞きます」

 

「う、うん…」

 

 

 

 

 

 

「竜司さんの事で悩んでますね?」

 

「ふぇっ!?」

 

その瞬間、飛鳥は顔を更に紅く染めた。

 

「竜司さんの事が頭から離れない」

 

「ひゃ!!////」

 

「顔を見ることができない」

 

「ふぇぇぇ!!////」

 

「近くにいると心臓がバクバクする」

 

「きゅぅぅぅぅ!!////」

 

斑鳩の言葉に図星の飛鳥はどんどん顔が紅くなり湯気が沸いてくる。

 

「その様子ですと当たりですね」

 

「う…うん。これってひょっとして…」

 

「確実に竜司さんの事が好きって事ですね」

 

「うう〜〜/////」

 

飛鳥はその言葉に胸を押さえながらうずくまった。

 

「…初めてなの」

 

飛鳥は顔を真っ赤にしながら話し始める。

 

「今までもりゅーくんと一緒だったのに…変わったことなんて無いと思ったのに…りゅーくんに助けられて…抱きしめられた時…すごく恥ずかしくて…でも嬉しくて…それで…」

 

その顔はいつもの元気な飛鳥と違う。初恋に、自分が初めて抱いた気持ちに動揺している1人の少女がいた。

 

「うん……好き、私はりゅーくんの事が大好き」

 

その言葉に、同じく竜司に恋している斑鳩は…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、やっぱりそうでしたか」

 

どこか安心した様に微笑んだ。

 

「お…怒ってないの?」

 

「何故ですか?」

 

恐る恐る聞く飛鳥に斑鳩は首をかしげる。

 

「わたくしと飛鳥さん、2人が同じ人を好きになった。ただそれだけではありませんか?」

 

「斑鳩さん…」

 

「それに、わたくしもライバルとは正々堂々戦いたいですし」

 

斑鳩はそう言うと得意げに微笑んだ。

 

「そう言う訳ですので、お互い真っ向勝負としましょう」

 

「うん!!私も負けないよ!!」

 

そう言うと飛鳥と斑鳩は強く互いの手を握り合った。

 

「ふふふふふ……」

 

「むぅ〜〜〜!!」

 

本当に、本当に強く 

 

 

 

 

「こ、これは…丸く収まった…のか?」

 

「更なる闘いが始まっただけだろ」

 

「ふ、2人の後ろに何か見えるよ〜」

 

雲雀の言う通り飛鳥の背後には巨大な蝦蟇、斑鳩の後ろには炎を纏う鳳凰が見えていた。

 

「竜司……自分でなんとかしろよ」

 

いつのまにか一緒に様子を見ていた霧夜先生はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

「斑鳩先輩、かつ姉、修行お疲れ様」

 

飛鳥と斑鳩が互いに宣戦布告をしたその日の夜、斑鳩と葛城は卒業に向けた最終試験に向けた修行に励んでおり俺達は差し入れの太巻きを作って持ってきた。

 

「お、こりゃ美味そうな太巻きだな〜」

 

「それではみんなで食べるとしますか」

 

斑鳩先輩の提案に乗り俺達も一緒に食べる事になった。

 

 

 

 

「えっと…これってどゆこと?」

 

差し入れの太巻きを食べる為にみんなで席についた。それは良いのだが…

 

「い、斑鳩さんくっつきすぎだよ」

 

「飛鳥さんが近すぎるんです」

 

飛鳥と斑鳩先輩が俺の両サイドに座っており体が密着していた。

 

「ふ、2人ともどうしたの?」

 

「ほら飛鳥さん、竜司さんが困ってますよ」

 

「それは斑鳩さんでしょ」

 

俺を挟んで争う2人だが先程から俺の両腕に2人の豊満な胸が押しつけられて心臓がバクバクする。

 

「うわぁー!みんなきてきてーー!!」

 

その時、雲雀が俺達を呼び出した。

 

「どうした雲雀?」

 

「見て見て窓の外、窓の外!雪だよ雪!!」

 

「雪?そんな馬鹿な…」

 

今はまだ9月下旬、雪にはまだ早すぎる。そう思いながら窓を見ると

 

「うわぁ…本当だ」

 

窓の外には白い雪がちらちらと舞っていた。

 

「でもなんで今の季節に…」

 

「細かい事は良いじゃねえかよせっかくの雪なんだからさ」

 

首をかしげる俺にかつ姉は笑いながらそう言った。

 

しかしその時

 

「「「「「「っ…!?」」」」」」

 

突然大きな力を感じた

 

「これって忍結界!?」

 

「発生元は校庭です」

 

「行ってみよう!!」

 

突如発生した忍結界に俺達は急いで校庭へと向かった。

 

 

 

 

校庭につくとそこには5人の人影がいた。1人は雪を思わせる白い肌をした少女、1人は般若の面をつけた少女、1人は頭に桜の花かざりをつけた短髪の少女、1人はギャルっぽさを感じる少女、1人はツインテールの幼さを感じさせる少女がいた。

 

「雪は全てを包み隠す。怒りも哀しみも、喜びも楽しみも…」

 

雪の様な少女は静かにそう呟く、

 

「お前達は一体…」

 

「私の名前は雪泉、死塾月閃忍学館の忍学生です。」

 

「死塾月閃忍学館?」

 

初めて聞いた名前に俺は首をかしげた。

 

「はい、そして私のそばにいる彼女たちは私の仲間たちです」

 

雪泉が自己紹介をすると他のメンバーの紹介も始める

 

「こちらが四季」

 

「ちーっす♪」

 

「次にこちらが夜桜」

 

「夜桜じゃ」

 

「それからこちらが美野里」

 

「みんな、よろしくね♪」

 

「そしてこちらが叢」

 

「…」

 

最後に呼ばれた叢は何故か斑鳩を強く睨みつけていた。

 

「そして最後にこちらが……」

 

そして雪泉は最後に誰かを紹介しようとしたのだがそこには誰もいなかった。

 

「えっと……誰もいないけど……」

 

「…………………。」

 

俺が恐る恐る聞くと雪泉はプルプルと体を震わせていた。

 

「叢さん…彼を見張っていたのでは?」

 

「見ていた…だが書かないといけない事が出来たので夜桜に引き継いだ」

 

「夜桜さん…」

 

「わ、わしもちゃんと見ていたぞ。じゃがお婆さんが徘徊してるのを見たから交番に預ける為に四季に引き継いで…」

 

「四季さん…」

 

「う、ウチもちゃんと見張ってたし!!けどアンナから電話来ちゃって手が離せなかったから美野里ちんに引き継いで…」

 

「美野里さん…」

 

「ちゃ、ちゃんと見てたもん!!美野里、シュークリームなんて貰ってないもん!!」

 

「まったくあの人は……!!」

 

雪泉は怒りに震えながら頭を抱えた。

 

「はぁ…仕方ありません、出来れば全員の自己紹介をしたかったですが…」

 

雪泉は溜息を吐くとあらためてこちらを向いた。

 

「私達死塾月閃忍学館は今ここに…学炎祭の開催を宣言します!!」

 

「学炎祭?なんだそれ?」

 

俺は初めて聞く言葉に首をかしげた。

 

「詳細は教師にでも聞くと良いでしょう。7日後、私達は再びこちらに訪れます。それが祭の始まりです……では」

 

雪泉はそう言うと他の仲間と共に姿を消した。気づくと先程まで降っていた雪はもう止んでいた。

 

「なんだったんだいったい…ん?」

 

よく見ると叢と呼ばれた少女は立ち去らずにそこにいた。

 

「貴方は行かないのですか?」

 

「…斑鳩だな?」

 

斑鳩が声をかけると叢は鋭い目で斑鳩を睨みつける。

 

「斑鳩……鳳凰財閥の娘……!!」

 

「なっ!?」

 

突然叢は斑鳩に斬りかかってきた。

 

「斑鳩先輩!!」

 

俺は咄嗟に前に出て叢の攻撃を防いだ。

 

「竜司さん!!」

 

「貴様……邪魔をするなら容赦しない!!」

 

叢は俺を睨むと槍と巨大包丁を構えて俺に飛びかかった。

 

「先輩に手を出すならこっちも容赦しないぞ!!変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

俺はカグラドライバーを装着して仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

「はあっ!!」

 

叢の連撃を俺はファングクナイで防ぎながら回避する。

 

「おのれ…ならば!!小太郎!!影郎!!」

 

すると叢は白と黒の狼が現れ高速移動で俺に攻撃してきた。

 

「スピード勝負は得意なんだよ!!」

 

俺は命駆モードになるとスピードを上げて狼の攻撃を回避する。

 

「せいやぁっ!!」

 

「しまっ…!!」

 

俺の攻撃を慌てて回避するが躱しきれず般若の面が外れてしまった。

 

「あ、あの人は……」

 

斑鳩はその素顔に見覚えがあったようで彼女について思い出したようだ。

 

「え…えと…大丈夫?」

 

俺はなにかまずい事をしてしまった気がして恐る恐る謝りながら彼女に近づいた。

 

「き…きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

その時、叢は先程とは打って変わって可愛らしい悲鳴と共に顔を隠した。

 

「み、見ないでください!恥ずかしい顔でごめんなさい!ごめんなさいったらごめんなさい!」

 

「お、落ち着いて?ね?こ…こっちも仮面取っちゃってごめん…」

 

必死で謝る叢に申し訳なくなった俺は思わず謝った。

 

「い、いえそんな謝らなくて構いません!!だから顔を見ないでください!!醜い我の顔を見たってなんも特にはなりません!!なりませんったらなりません!!」

 

「いやいや醜くなんてないから寧ろすごい可愛いと思うけど…」

 

「ふぇ?」

 

先程とはうってかわって可愛らしい喋り方の彼女に俺はついそう言ってしまった。

 

「わ…我が可愛い…ふ…ふ…ふにゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

叢は落ちていた仮面を掴むと全力疾走で立ち去っていった。

 

「な…なんだったんだアレ?」

 

 

 

 

 

 

「竜司さん………」

 

「りゅーくん……」

 

すると、背後にいた斑鳩先輩と飛鳥がなぜか凄いオーラを放っていた。

 

「え?な、何?どうしたの2人とも?」

 

2人から放たれる殺気に俺はたじろいでしまう。

 

「またですか!?またなんですかぁ!?」

 

「りゅーくん!!本当にりゅーくんはりゅーくんなんだからぁぁぁ!!」

 

「え?ちょ、待っ…ギャァァァァァァァァ!!」

 

真夜中の校庭に断末魔が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?遅かったねむらっち」

 

「う…うむ…すまなかった」

 

帰ってきた叢に四季が声をかけるが様子のおかしい彼女に首をかしげる。

 

「か、可愛い…わ、我の顔が…いやそんな訳…」

 

 

 

満月(みつき)!!やっと見つけましたよ!!」

 

すると、雪泉の怒る声が聞こえた。その先には鋭い目の雪泉の視線の先に長い銀髪の少年がいた。

 

「なんで勝手にどっか行っちゃうんですか!?」

 

「だって今日はただの宣戦布告だろ?何も全員で行かなくても…」

 

「そう言う問題ではありません!!本当に貴方はいつもいつも…」

 

怒る雪泉に臆さず満月はニコリと笑う

 

「心配すんなよ雪泉、学炎祭はちゃんとやるからさ」

 

「まったく…相手はあのリューマなんですよ。いくら貴方が『それ』を与えられたからって…」

 

「だから大丈夫だって」

 

『トリケラ!!』

 

満月はトリケラトプスが描かれた銀色のキョウリュウキーを起動するとトリケラトプスの様な盾に挿し込む。すると、盾から三味線の音色が響く。

 

「変身」

 

『竜装!!トリケラ!!』

 

そしてそこにはトリケラトプスの様な鎧を纏った仮面ライダー、仮面ライダーオルグがそこにいた。

 

「リューマが来ようがガリューが来ようが、なんなら両方来たって俺は負けねえよ」




学炎祭の時期なんですが、今後のイベントのことを考えて早い時期にしました。

それと今作では月閃も共学設定なので名前を少し変えています。


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其の四十二 学炎祭と新たな仮面ライダー!!の巻

「霧夜先生、学炎祭ってなんですか?」

 

死塾月閃忍学館の宣戦布告を受けた俺達は霧夜先生に学炎祭について聞いていた。

 

「学炎祭とは忍学校に伝わる、学校対抗の決闘のことだ。学炎祭に参加するのは忍学校の代表数名、学炎祭を申し込まれた学校は自分の陣地に忍結界を張って申し込んだ側を迎え撃つ。最終的に全ての忍結界を破られれば、半蔵学院の校舎には火が放たれ半蔵学院は廃校に追い込まれることになる。そして、学校を燃やされた忍学生は永久に忍の資格習得か不可能になる。」

 

「廃校!?しかも忍になれなくなるってこと!?」

 

俺は衝撃の事実に思わず叫んでしまった。

 

「でも、学炎祭なんて初めて聞きました。」

 

斑鳩先輩の言葉に俺は頷いた。そんな決戦があるなんてことは授業でも、師匠はじいちゃんにも聞いたことがない。

 

「前回学炎祭が行われたのは50年前だからな、お前達が知らないのも無理はない。」

 

「そもそもどうしてそんな決戦があるんですか?」

 

学園が失われたらそこに通う忍学生は路頭に迷うことになる。どうしてそんな学校同士で潰し合う決戦が行われているのかが分からなかった。

 

「竜司、忍のランクの最高位を知ってるな?」

 

「えっと…たしかカグラでしたよね?」

 

昔じいちゃんから聞いたことがある。忍のランクは下から下忍、中忍、上忍、隠密、特上忍、最上忍、天上忍、極上忍…それからあまり知られていないランクとして餓忍、絶忍、轟忍、虚忍、影忍、殲忍、卍忍、朧忍、秘忍が存在しており、それらの中の最上位のランクをカグラという。

「そうだ、よく覚えていたな。そして学炎祭はカグラを養成する為に考案されたと言われている。」

 

なるほど、カグラは謂わば最強の称号。その地位を得る為には全てを失う覚悟を伴う。そのために学園を失うリスクを設けたわけか…でも

 

「月閃の人達はカグラになることが目的ってわけじゃなさそうだったけど…」

 

飛鳥の言うとおり、彼女達はカグラになることよりももっと優先していることがある。そんな気がしていた。

 

「そうだな、そもそも月閃は善忍を養成する学校だ。おなじ善忍を養成する半蔵学院に学炎祭を仕掛けてくる理由がない。」

 

そう、善忍同士でそんなことをすれば善忍の戦力を大幅に失うことになる。相手が悪忍の学校ならわかるが今回の場合は寧ろリスクしかない。俺はそこに何か裏があるようにしか思えなかった。

 

「それでも、挑まれたからには俺達も戦うしかないですね。」

 

そうしなければ半蔵学院が廃校になってしまう。そんなの阻止しなきゃダメだ。

 

「そう言うわけだお前ら、今は月閃を迎え撃ってくれ」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

霧夜先生の言葉に俺達は頷いた。負けたら俺は自分の夢である『世界一カッコイイ忍』になることが出来なくなる。みんなも同じ考えだった。

 

「それはそうと竜司…」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前顔大丈夫か?」

 

霧夜先生の視線の先には飛鳥と斑鳩先輩に殴られてパンパンに腫れ包帯がグルグルに巻かれた俺の顔があった。

 

「遅いですよ心配するのが!!」

 

「う…うん、すまなかった…」

 

「霧夜先生が相談に乗ってくれないから!!相談に乗ってくれれば何か対処できたかもしれないのに!!」

 

「い、いや…たとえ言っても無理だったかも…寧ろさらにややこしくなるような…」

 

文句を言い続ける俺から目を背けながら霧夜先生は小さな声で謝っていた。

 

「わ、わたくしたちは悪くありません…」

 

「りゅーくんが悪いんだもん」

 

そんな竜司と霧夜を見て斑鳩と飛鳥は気まずそうに目を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛た…まだ腫れてるよ」

 

授業が終わり帰路に着いた俺は顔をさすりながら歩いていた。先程よりも腫れは引いたがまだ痛みが残っている。

 

「しかし、なんだか今日は凄いことが立て続けに起こったな」

 

死塾月閃忍学館、学炎祭、カグラ…情報が多すぎて何が何だかわからなくなってきた。

 

「とにかくなんとか学炎祭を制さないと」

 

もし負けたら半蔵学院が廃校になるどころか一生忍になれなくなってしまう。それだけは絶対に阻止しなくては

 

 

 

 

「テメェ!!調子乗んのも大概にしろよ!!」

 

「ん?」

 

ふと怒鳴り声が聞こえて振り向くとそこに強面の不良数人が長い銀髪の少年を取り囲んでいた。

 

「だからさ、あの子に付き纏うのはやめてくれって頼んでるだけじゃん。あの子、あんたのせいで最近通学するのも怖いって言ってんの」

 

「うるせえ!!テメェにはカンケーねえだろ!!」

 

銀髪の少年の言葉に不良のリーダー格の男はどんどん苛立っておりとうとう少年の胸ぐらを掴んだ。

 

「それ以上舐めた口叩くとぶっ殺すぞ!!」

 

「こっちだって退かねえよ。これ以上あの子に悲しい顔なんて絶対させねえ」

 

怒りの形相で睨みつける不良に一歩も引かず銀髪の少年も睨み返した。

 

「おいお前ら!!こいつをフクロにしてやれ!!」

 

「「「「おらぁぁぁ!!」」」」

 

リーダー格の男の命令で周りの不良は一斉に銀髪の少年に殴りかかった。

 

「せいやぁ!!」

 

「ぶへぇ!?」

 

しかしそこへ竜司が飛び蹴りを喰らわし不良の1人を吹っ飛ばした。

 

「なんだお前?」

 

「とりあえずあんたの味方をした方が良さそうだな」

 

突然の事にキョトンとする少年に俺は笑ってこう答えた。

 

「テメェもこいつの肩を持つのか…!!だったら2人まとめてしばいてやる!!」

 

頭に血が上った不良達は武器を手に俺達へと飛び掛かってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶへぇ…」

 

それから間も無くして不良達は俺達によって返り討ちにあった。

 

「今回はこれくらいにしといてやる。でももしまたあの子に付き纏ってきたら……わかるよな?」

 

銀髪の少年はリーダー格の男に近寄ると胸ぐらを掴んで鋭い目で睨みつけた。

 

「ほら、さっさと失せろ」

 

「ひ…ひぃぃぃぃ!!」

 

不良達はその鋭い目に怯えると慌てて逃げ出していった。

 

「おーい!!もう大丈夫だよ〜」

 

銀髪の少年がそう叫ぶと物陰から可愛らしい少女が涙目で現れた。

 

「ありがとう満月くん……怖くて誰にも相談できなかったの……」

 

「いいよ気にしなくて、またあいつらが来たら俺がまたしばいてやるから安心しな」

 

泣きながらお礼を言う彼女に満月と呼ばれた少年は優しく笑った。

 

「早く元気になれよ、またお店のパン食べにくるからさ」

 

「うん…!!」

 

少女は涙目で頷くとそのまま帰っていった。

 

「あの子、この近くのパン屋の娘なんだけどさっきの不良のリーダーにずっと『俺の女になれ』って言われててさ、このままだとお店に嫌がらせされそうだって泣きながら俺に相談してきたんだ。協力してくれてありがとな」

 

立ち去る少女を見た満月は俺の方を向くと笑いながら俺に礼を言った。

 

「良いよ気にしなくて、俺も当たり前のことをしただけだし」

 

「ははっ、そりゃどーも」

 

俺の言葉に満月は嬉しそうに笑った。

 

「ん?そういやお前その制服…もしかして半蔵学院?」

 

「あれ?そう言うお前もその制服…」

 

俺はふと満月の制服を見た。それは男性の制服ではあったが間違いなくこの間宣戦布告に来た雪泉達と同じ月閃の制服だった。

 

「もしかして…お前半蔵の忍学生?」

 

「そういうお前も…もしかして月閃の最後の1人ってお前?」

 

まさかこんなところで月閃の最後のメンバーに遭遇するとは思いもしなかった。

 

「そうかそうか、ってことはお前が仮面ライダーリューマか〜」

 

俺の正体を知った満月は笑顔を浮かべながら俺に近づいてきた。

 

「え、ええと…お前は…」

 

 

 

 

 

 

「俺は満月、お前と同じ仮面ライダーだ」

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこんな事になるとは…」

 

本部にある一室では神門とその側近の男が話していた。

 

「善忍同士での学炎祭など前代未聞です。ましてやリューマと例のライダーシステム資格者が戦うなど…神門様、大丈夫でしょうか?」

 

「…心配いりません、今はこのまま様子を見ましょう」

 

心配する側近に神門は紅茶を飲みながらそう答えた。

 

「神門様、報告したい事が…」

 

すると、部下の忍が現れ神門に報告をした。

 

 

 

 

 

 

「んで……なんでこんな事に?」

 

気づいたら俺は喫茶店で満月と一緒にケーキを食べていた。彼の席の周囲には複数の女の子が座っている。

 

あの後、「話をしよう」と言われた俺は満月についていった。すると、途中で彼と出会った女の子達が次々集まっていき、仕舞いにはこのような事に…

 

「はい、満月君アーン♡」

 

「ちょっと!!あなたさっき一口あげたでしょ!?次は私よ!!」

 

「ねえ満月くん♪こっちのケーキも美味しいよ♡」

 

「お♪本当に美味そうだな、ありがと」

 

女の子達は次々とフォークに刺したケーキを彼の口元に運んでいた。

 

「ん?お前も食えよ。ここのケーキすごく美味いぞ」

 

「う、うん」

 

俺は勧められるままに出されたケーキを口にした。

 

「っ!!美味いなこれ!!」

 

その美味しさに俺は驚きどんどんフォークが進んだ。

 

 

 

「えっと…それで話って?」

 

ケーキを食べ終えた俺は満月に聞いてみた。

 

「そんな大した事じゃねえよ、助けてもらったお礼をしただけだって」

 

食後の紅茶を飲みながら満月は笑いながらそう答える。

 

『クモクモ!!クモクモ!!』

 

「ん?げっ……雪泉かよ……」

 

突然満月のタブレットが鳴り出す。満月が相手の名前を見ると顔を顰めた。

 

「わりぃ竜司、ちょっと出てくる」

 

そう言うと満月はタブレットを手に席をたった。

 

「えっと…満月ってすごい人気なんだな」

 

俺は女の子達に満月の事を聞いてみた。

 

「そりゃもちろんですよ〜」

 

「強くて優しいし」

 

「何よりかっこいい!!」

 

女の子達は頬に手を当てながら嬉しそうにそう答えた。すると、ウェイトレスの女の子も混ざってきた。

 

「ここにいる皆…いじめや親の虐待、ストーカーとかから満月君に助けられた子なんです。満月君、学校も違うのに『辛そうだったから』、それだけの理由で助けてくれて…かくいう私も前に酷い地上げ屋に実家のこの店を明け渡すように言われた時、満月君が助けてくれたんですよ。父もそれ以来すっかり満月君に恩を感じちゃって…本当、彼は私達の恩人です」

 

「へぇ…」

 

満月の事を知った俺は彼の人柄に感心した。

 

 

 

 

 

 

「すっかり暗くなっちゃったな、悪いすっかり付き合わせちゃって」

 

「良いよ気にしなくて、俺も楽しかった。」

 

喫茶店を出た俺達は2人で路地を歩いていた。

 

「なぁ満月、どうしてうちに学炎祭なんて申し込んだんだ?」

 

俺は気になっていた質問を満月に聞いてみた。

 

「…そうだな、いきなり宣戦布告されて訳わかんねえよな」

 

満月は少し申し訳なさそうにする。

 

「理由は…そうだな…」

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!満月!!」

 

「…あぁ」

 

その時、突然周囲から殺気が溢れてきた。

 

「そこにいるやつ!!出てこいよ!!」

 

するとあたりから忍装束を来た集団が俺達を取り囲んで現れた。

 

「ふっ、まさかリューマの鎧の資格者まで現れるとは…我々も運が良い」

 

集団は手に様々な武器を手にしあきらかに戦闘態勢だった。

 

「おいおい随分殺気立ってるじゃねえか。話があるなら聞くけど」

 

「黙れぇ!!我々は有力な情報を得たのだ!!」

 

忍のリーダー格は満月に怒声を浴びせる。

 

「満月!!貴様があの大罪人…黒影の弟子だったとはな!!」

 

「…………っ!!」

 

「黒影?」

 

リーダー格の忍の言葉に満月は体を硬らせた。

 

「あのような善忍の面汚しの弟子がライダーシステムの資格者など許されてたまるか!!」

 

「我々は貴様らを倒し、独自に新たなライダーシステムの資格者を選考する!!」

 

「……………………………。」

 

忍達は武器を手にじわりじわりと詰め寄ってくる。

そうか………こいつらは俺や満月が仮面ライダーになったことが面白くない奴らだったのか…それで俺達を倒して自分達に都合の良い人間にドライバーを渡すつもりなのか!!

 

「ふざけんな!!こんな強盗紛いなことが…善忍のやることかよ!!」

 

「黙れ!!全ては貴様らのような邪道を一掃する為だ!!」

 

あまりにも一方的な物言いに俺はカグラドライバーを手にした。

 

「満月、敵はベテランの忍だ!!2人がかりで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜司、お前は手を出すな」

 

そのとき、満月は先程とは打って変わって静かに、怒りに震えながら前に出た。

 

「満月……?」

 

「馬鹿にしようがさ…悪口言おうがさ…俺の事なら良いよ…」

 

けどなぁ、と満月は忍達を鋭く睨みつける

 

「何も知らないくせに…先生の事を、親父のことを侮辱してんじゃねえよゴラァ!!」

 

『転身剣トプスパーダ!!』

 

怒りに震えた満月の手にトリケラトプスを彷彿させる盾が現れる。

 

『トリケラ!!』

 

満月はトリケラトプスが描かれたキョウリュウキーを取り出すとそれを起動してトプスパーダの鍵穴へと挿し込む。

 

「♪〜♪〜〜♪〜〜」

 

すると、トプスパーダから三味線の音色が響き渡る。

 

「変身」

 

『竜装!!トリケラ!!』

 

そして剣を抜くと、鍵が回り満月の周囲をトリケラトプスの様な装甲が取り囲み満月の体に装着され、トリケラトプスの様な仮面ライダー、仮面ライダーオルグへと変身した。

 

「仮面ライダーオルグ…月の正義を舞い称える!!」

 

 

 

 

 

「へ、変身した…」

 

「くそっ…厄介だな」

 

仮面ライダーオルグへと変身した満月に忍達は動揺する。    

 

「狼狽えるな!!いくら変身しても所詮は忍学生…全員で取り囲んで倒すぞ!!」

 

動揺する仲間にリーダー格の忍は武器を手に指示を出し、それに仲間達は一斉に仮面ライダーオルグへと飛びかかった。

 

「はぁ!!」

 

「死ねぇ!!」

 

忍達は武器を振り上げて仮面ライダーオルグを斬りつけた。

 

「なっ!?」

 

しかし、その攻撃はオルグの装甲を傷つけることはなく弾かれてしまっていた。

 

「甘えよ」

 

オルグはトプスパーダの剣を振るい自分を斬りつけた忍を吹き飛ばした。

 

「ぐっ…舐めるなぁ!!」

 

すると残った忍達は一斉にオルグへと攻撃を仕掛けた。しかしオルグは剣で襲ってくる忍達を次々と倒していく。

すると、忍達は手にした鎖でオルグを縛り付け動きを止めた。

 

「満月!!」

 

俺は拘束されたオルグを見て思わず叫んでしまう。

 

「心配ねえよ」

 

『必殺の術!!』

 

しかしオルグはそのパワーで難なく鎖を引きちぎると剣を盾に納めながら剣の柄のボタンを押す。

 

「必殺忍法!!クリスタルブレイク!!」

 

そして剣を抜くと銀色のオーラを纏った斬撃を放ち忍達を吹き飛ばした。

 

「…すげえ」

 

戦いが終わった後には襲撃してきた忍が全員気を失って倒れていた。

 

「こ…こんな…ことが…」

 

すると、リーダー格の忍は意識が残っておりふらつきながら地面を這っていた。

 

「なんだよまだ残っていたのか」

 

「ひ、ひぃ!!」

 

オルグはそれを見つけるとゆっくりとリーダー格の忍へと近づいていく

 

「た…助け…」

 

「逃げんじゃねえよ」

 

「がぁ!!」

 

オルグは命乞いをする忍の首を掴んだ。

 

「あんたら俺らを殺す気だったんだろ?ってことは俺らに殺される覚悟があるってことだよな?」

 

「が…あ…」

 

首を掴むオルグの力は徐々に強くなっていく。

 

 

  

 

 

 

 

「やめろぉ!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

俺は仮面ライダーリューマに変身してオルグへと攻撃する。オルグがそれを防ぐとその弾みで忍の首を掴んでいた手が離れる。

 

「もうやめろよ!!いくらなんでもやりすぎだ!!」

 

「何言ったんだよ?こいつらは俺達を殺そうとしたんだぞ」

 

「だからってここまですることないだろ!?もうこいつらは抵抗出来ないんだぞ!!」

 

「……はぁ」

 

俺の言葉に満月はため息を吐きながら剣を納め鍵を抜き変身を解除した。

 

「仲良くなれると思ってたけど…やっぱりお前は所詮半蔵の弟子だな」

 

その目は俺に失望した様な悲しそうな目だった。

 

「いいぜ、だったらこの学炎祭で証明してやるよ。俺達の先生が……黒影が目指した理想こそが正しいってことをな」

 

そう言うと満月は1人立ち去っていった。

 

「黒影……一体どんな人なんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ、襲撃した忍を返り討ちにしたか」

 

とある一室で善忍最高幹部の1人、鉄心が部下から報告を受けていた。

 

「しかも同時に調べた戦闘データを分析したところ…全てにおいて仮面ライダーリューマの数値を上回っておりました。」

 

「だろうな、我々の予測は正しかったか」

 

そして鉄心は手元にある恐竜の牙の様な装飾のある小さな機械を手に取る。

 

「やはり、予定通りリューマにはこいつを使ってもらうとしよう。我々が完成させた最強の力………『ワイルドギア』を」



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其の四十三 因縁と学炎祭開幕!!の巻

「6人目の月閃メンバーですか…」

 

「しかも新しい仮面ライダーなんて…」

 

学院に戻った俺は他のみんなに6人目の月閃メンバーにして仮面ライダーオルグこと満月のことを話した。

 

「すごい強いやつだった…襲撃してきた手練れの忍が全く歯が立たなかった…」

 

もし戦うことになったら、おそらく俺でないと敵わない。

 

「ですが相手がどんな実力者だろうとわたくしたちは必ず勝利しなければなりません」

 

「うん!!絶対に勝とうよ」

 

「よっしゃ!!そうと決まれば特訓だぜ!!」

 

「同感だ」

 

「うん!!雲雀も頑張るよ!!」

 

斑鳩先輩の言葉に飛鳥、かつ姉、柳生、雲雀も頷いた。

 

(あとは…あの言葉だよな…)

 

俺はふと満月の言葉を思い出す。

 

『やっぱりお前は所詮半蔵の弟子だな』

 

『いいぜ、だったらこの学炎祭で証明してやるよ。俺達の先生が……黒影が目指した理想こそが正しいってことをな』

 

満月達の師匠だと言う黒影という忍、じいちゃんと因縁があるようだったが一体何があったのか…

 

 

 

 

 

 

 

特訓を終えた俺は学炎祭に備えて体を休めるために寮に帰るために街を歩いていた。

 

「ん?おお、竜司じゃないか」

 

ふと声が聞こえてそちらを向くとじいちゃんが目の前に現れた。

 

「じいちゃん…」

 

「聞いたぞ竜司、学炎祭をすることになったそうじゃが…お前さん達ならきっと大丈夫じゃ、がんばれ」

 

「……………。」

 

俺は応援するじいちゃんから目が離せない。そして聞かずにはいられなかった、

 

「じいちゃん…黒影って知ってる?」

 

 

 

 

 

 

「ほれ、竜司も食べなさい」

 

俺の質問を聞いたじいちゃんに連れられて俺は飛鳥の実家の寿司屋のカウンターに座っていた。今日は定休日なので店には俺とじいちゃんしかいない。

 

「じいちゃん、それでさっきのことなんだけど…」

 

俺はじいちゃんが作った太巻きを食べながら黒影について改めてじいちゃんに聞いた。

 

「…そうじゃのう、お前には全てを話すとするか」

 

そう言うとじいちゃんは静かに話し始めた

 

 

「かつてわしにも親友と言える忍がいた。優秀で純粋で誰よりも平和を愛した善忍がいた。しかし平和を愛するが故にあやつは徐々に偏った道へと歩み始めていった」

 

「偏った道?」

 

「竜司、光と影があるからこそ世界は成り立っている。わしはそう考えておる。」

 

じいちゃんの言葉に俺は頷く。その通りだ、俺達善忍だけが忍じゃない。炎佐達の様な悪忍も忍の世界を作っている。それを彼らとの戦いで俺は学んだ。

 

「ところがあやつは世の中から一切の影を駆逐しようとした。影も悪も存在すべきではないと、偏った袋小路に迷い込んでいったのじゃ」

 

「そんな!!」

 

思わず俺は叫んでしまった。そんなものは極論だ。僅かな悪さえも否定してしまったらその先は悲惨なことになってしまう

 

「わしにはそんなあやつが時折、悪にさえおもうことがあった。過ぎたるは及ばざるがごとし、いき過ぎた正義は時として悪にもなる。笑えぬ話よ」

 

「…その人とじいちゃんは、その後どうなったの?」

 

俺が聞くとじいちゃんは寂しそうに上を見上げた。

 

 

 

 

 

『半蔵!!貴様は、俺が悪だと言うのか!!親を殺され、仲間を殺され、それで黙っているのが正しいと言うのか!!』

 

『人間なんて言うのは多かれ少なかれ悪の部分を持っている!!それを全て否定しても始まらんって事を言っているんだ!!!』

 

『だったら………俺は悪など無い、善だけの世界を作ってみせる!!』

 

『そんなものは作れない!!賭けてもいい!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「…袂を分かつ他なかった。」

 

その目には涙が溢れていた。

 

「竜司…お前はどう思う?」

 

「俺は……じいちゃんの言う通りだと思う」

 

俺はじいちゃんの問いに少し考えて自分の答えを伝えた。

 

「炎佐達は悪忍…悪の世界の存在だった。でもあいつはすごい仲間思いで、良い奴だった。悪だからって一括りにして全部滅ぼしちゃえば良いなんて間違ってる」

 

「竜司…」

 

「けど俺は同じくらいに知りたい、どうして黒影さんが…満月達がその道を選んだのかを…何も知らずに戦うなんて俺は嫌だ。どうせ戦うなら、きちんと知りたい」

 

「……竜司らしい答えじゃのう」

 

その答えにじいちゃんは嬉しそうに笑い俺の頭を撫でた。

 

 

 

 

 

翌日、いよいよ学炎祭の開幕の日となった。

俺は腰にカグラドライバーを装着して月閃メンバーが来るのを待ち構えている。

 

「負けられない、半蔵学院を守って…あいつらともちゃんと腹を割って話をするんだ…」

 

半蔵学院を燃やされるわけにはいかない…かと言ってただ歪み合うのも間違ってる。言葉で語り合い、拳でぶつかり合い、黒影さんのことを…満月のことを知りたい。そうすれば何か良い答えを見つけられるかもしれない

 

「お、やっぱりここにいたか。会いたかったぜ竜司」

 

すると、転身剣トプスパーダを手に持った満月が俺の目の前に現れた。

 

「満月……」

 

「ん?どうした竜司?何難しい顔して…」

 

「俺は…じいちゃんと黒影さんって人の因縁を聞いた」

 

その言葉に満月は顔をこわばらせて俺を睨みつける

 

「……………」

 

「善だけの世界…その世界がどんなものかはわからない。でも、どんな人間だって悪は存在する、その全てを否定したら生きていけない!!その世界は…お前達がこんなことをしてまで作らなくちゃいけないのか!?」

 

「…………黙れよ」

 

瞬間、怒りの形相を浮かべた満月が言葉を発した。

 

「黙って聞いてりゃごちゃごちゃ煩いんだよ。俺たちのことが気に入らないんなら迷わず挑んでこいよ」

 

「それでも…俺達は戦う相手のことをちゃんと知りたいんだ。」

 

満月の逆鱗に触れてしまったがこれは紛うことなき俺の本心だ。

 

「本当に手ぬるいな、やっぱり半蔵の弟子ってだけあって甘さの塊だ。半蔵みたいなのが善忍の象徴みたいに扱われるからあいつらの様な悲劇が起きるんだよ」

 

「あいつら?」

 

「御託はいい、来ないならこっちから行くぞ」

 

すると満月は転身剣トプスパーダを手に臨戦態勢に入った。

 

「戦うしか…ないんだな」

 

「そう言ってんだろ」

 

臨戦態勢の満月に俺は覚悟を決めた。

 

『ティラノ!!』

 

『トリケラ!!』

 

俺と満月はティラノキーとトリケラキーを起動する。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

『♪〜♪〜〜♪〜〜!!♪〜♪〜〜♪〜〜!!』

 

カグラドライバーから音楽が、転身剣トプスパーダから三味線の音色が流れ出す。

 

「「変身!!」」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

『竜装!!トリケラ!!』

 

そして俺は仮面ライダーリューマに、満月は仮面ライダーオルグへと変身し互いに身構える。

 

「はぁぁぁ!!」

 

「うぉぉぉ!!」

 

俺はファングクナイを、オルグは転身剣トプスパーダを手に互いに斬りかかった。オルグの一撃は凄まじく真正面から受けては力負けする。なので俺は転身剣トプスパーダの攻撃をファングクナイで受け流しつつカウンターを狙う戦法を使った。オルグもそれに気づいておりファングクナイのカウンターを盾で防ぎつつ剣で追撃を繰り出した。両者共に譲らず接戦が続く。

 

「やるじゃねえか、伊達に俺より長く仮面ライダーやってるわけじゃないってわけか」

 

「くっ…」

 

しかしオルグの装甲が硬く、ダメージに関しては俺の方が大きかった。

 

(このまま持久戦になるのはまずい…一気に決めないと)

 

『メガロ!!サイクロン!!』

 

俺は現状で最も高い能力を持つサイクロンメガロキーを起動した。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

『サイクロン武装!!メガロ!!』

 

鍵を回し、周囲を竜巻が包みこみ、仮面ライダーリューマ・サイクロンへと変身した。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は竜巻を纏った拳でオルグの装甲を連続で殴る。しかしそれでも装甲は硬く決定打にはならない。

 

「悪いな、性能が違うんだよ!!」

 

「ぐあぁぁっ!!」

 

俺の攻撃が止んだのを見計らったオルグは転身剣トプスパーダの剣で俺を斬りつける。その攻撃に思わず俺は吹き飛ばされてしまう。

 

「こいつはお前のカグラドライバーのデータをもとに、それを超える様設計された最新型だ。お前と違って使える恐竜の力はトリケラだけだけど、その分出力は桁違いだ。」

 

『大剣モード!!』

 

そう言いながらオルグは転身剣トプスパーダの剣の柄を盾と合体させた。すると盾部分から長い柄が伸び、刀身か更に長くなった大剣モードへと変わった。

 

「終わりだリューマ」

 

『必殺の術!!』

 

オルグは大剣になった転身剣トプスパーダの柄部分にあるボタンを押すと長くなった刀身から銀色のオーラが溢れて刃の形に変わる。

 

「必殺忍法!!セイクリッドインパクト!!」

 

オルグが転身剣トプスパーダ(大剣モード)を振り下ろすと銀色の光が更に眩い光を放って俺に向かってくる。

 

「くそっ!!」

 

『必殺の術!!サイクロン!!』

 

俺もカグラドライバーを叩いて必殺忍法を放つ

 

『必殺忍法!!激竜マキシマムサイクロン!!』

 

竜巻を纏った俺のキックが銀色に輝くオルグの斬撃とぶつかる。

銀色の光と紺色の竜巻は激しくぶつかり合うが徐々に光の方が竜巻を押していく。

 

「これで…とどめだぁぁぁ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

ついに俺は押し負けてオルグの必殺忍法が炸裂し変身を解除してしまった。

 

「ぐ……うう」

 

「勝負あったな」

 

オルグは刃を俺に向けながらゆっくりと近づいてくる。

 

「これが俺達の…黒影先生が目指した忍の力だ。俺達はこの力で先生が目指した善だけの世界を作ってみせる。」

 

「その世界で…生きられない奴らはどうなるんだ…」

 

ふらつきながら俺はオルグを問い詰める。

 

「滅びるだろうな。だが、それがあるべき形だ」

 

「………っ!!」

 

その言葉に俺は震える。

 

「ふざけんな…!!」

 

炎佐も、理吉も、蛇邪のみんなも…悪忍だけどみんな自分の信念を持った良い奴らだ。道は違うし争うこともある。だけど、

 

 

「だからといって滅びていいなんてことはない!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

「はぁぁぁ!!」

 

俺は再びティラノ武装になり命駆モードへと変身した。

 

(俺のありったけの力を全部、奴にぶち込む!!)

 

『必殺の術!!必殺の術!!』

 

覚悟を決めた俺はドライバーを連続で叩いて飛び上がる

 

「必殺忍法!!激竜無双大大大大大キィッッッック!!」

 

俺の全パワーを込めた渾身の必殺忍法をオルグへと放つ

 

「まだそんな力を…!!」

 

『必殺の術!!』

 

オルグは慌てて刀身に銀色の光を纏わせる。

 

「必殺忍法!!セイクリッドインパクト!!」

 

銀色の光とオレンジ色の光が衝突して辺りを巻き込んで大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

瓦礫の中で竜司はふらふらになりながら変身を解除する。自分の文字通りの全力を放ちもはや変身を維持することも出来なかった。そしてそのまま糸が切れたかの様に倒れ込んでしまった。

 

「……………。」

 

倒れる竜司の目の前には仮面ライダーオルグが立っていた。しかし、

 

「ぐっ…がはっ!!」

 

瞬間、オルグの装甲に巨大なヒビが入りその場に座り込んだ。

 

「マジかよ…最後の最後であんな一撃を放つなんて…」

 

先程の技のぶつかり合い、最終的にリューマの一撃は自身の必殺忍法を破り装甲にこれだけのダメージを与えた。結果的には満月の勝ちだろうが技のぶつかり合いではリューマの勝ちであった。

 

(最後の一撃…メガロの時よりも遥かに強かった。適合率の違いか?)

 

ティラノの凄まじい一撃にオルグは驚きを隠さずにいた。

 

「今回はここまでにしてやる。じゃあな」

 

そして変身を解除すると満月は少しふらつきながら立ち去っていった。

 

 

 

 

 

「やはりリューマではオルグには勝てなかったか」

 

忍最高幹部の1人である鉄心は学炎祭を監視させていた部下からの報告を聞いていた。

 

「車を用意しろ、リューマのところへ向かう」

 

「はっ!!」

 

鉄心は部下に指示を出すと立ち上がり歩き出した。

 

「我らの研究の集大成を見せてもらうぞ、仮面ライダーリューマ」

 

そう言って鉄心は己の手にある恐竜の牙を思わせる装置、ワイルドギアを見つめた

 



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其の四十四 凶暴でワイルド!!の巻

昨日『仮面ライダーリバイス』が最終回を迎えてしまいました…とても寂しい。家族の大切さを教えてくれた本作のことは忘れません!!
さて、次回から始まる『仮面ライダーギーツ』がどんな作品になるのか気になります!!生き残りをかけたゲームと言う龍騎を思わせる設定に期待が高まります!!


『はぁ…はぁ…』

 

俺は走り続けていた、瓦礫の山と化した半蔵学院を…

 

『俺達の校舎は…』

 

あたりに立ち込める煙と炎に嫌な予感を感じながら俺は忍学科のある旧校舎へと向かった。

 

『なっ…!!』

 

たどり着いた俺が見たのは、燃え盛る旧校舎。

 

崩れていく。

 

俺達の半蔵学院が…忍の術を学んできた大切な場所がなくなっていく

 

『え?』

 

何かが足に当たって振り向くと、そこには

 

 

 

 

 

 

 

『みんな!!』

 

飛鳥が、斑鳩先輩が、かつ姉が、柳生が、雲雀が血溜まりの中で倒れていた。

 

『みんな!!しっかりしろ!!おい!!』

 

『無駄だ』

 

ふと声が聞こえ振り向くと燃え盛る炎の中から仮面ライダーオルグが現れた

 

『お前らは負けたんだ』

 

『あ…あぁ…』

 

『弱いから負けたんだ』

 

『そんな…』

 

『お前らはもうおしまいだ』

 

仮面ライダーオルグは俺へと剣を振り翳し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

目が覚めるとそこは半蔵学院の医務室だった。

 

「ゆ…夢か…」

 

「竜司、目が覚めたか…」

 

すると俺に気づいた霧夜先生が駆け寄ってきた。

 

「霧夜先生…」

 

「まだじっとしていろ、お前の傷もかなり酷いんだ」

 

周りを見ると他のベットで斑鳩先輩、かつ姉、柳生、雲雀が眠っていた。しかしそこに飛鳥の姿がない

 

「っ!!霧夜先生!!飛鳥はどこに…?」

 

「………。」

 

「答えてください!!」

 

「飛鳥は…月閃へ向かった。」

 

俺が叫ぶと霧夜先生は観念した様に話した。

 

「そんな…どうして!!」

 

「半蔵学院が攻撃を凌いだから…次はこちらが攻め手となり月閃へ向かう。それが学炎祭のルールだからだ。」

 

「そんな…」

 

いくら飛鳥が強くても敵の数は6人その全員が実力者。中でも満月、あいつの強さは他の5人よりずば抜けている。このままじゃ飛鳥はやられてしまう。

 

「俺も行きます」

 

「お、おい竜司!!」

 

起き上がった俺を慌てて霧夜先生は止めようとする。

 

「お前が一番ひどい怪我なんだぞ!!無茶をするな!!」

 

「飛鳥だって無茶してるでしょ!!」

 

俺は霧夜先生の手を振り払って叫んだ。

 

「みんながこんな目に遭ってるのに…飛鳥が敵地に1人で向かったのに…じっとなんてしてられるかよ!!」

 

「竜司…」

 

「怒鳴ってすいません…でも、向かわずにはいられないんです。」

 

俺は霧夜先生に頭を下げて走り出した

 

「……まったく、あいつは」

 

霧夜先生は頭を抱えて小さく呟いた。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

俺は月閃に向かって走る。早く行かないと、飛鳥が…

 

「痛っ……!!」

 

体に激痛が走る。足も思うように動かない

 

「それでも…向かわないと…」

 

飛鳥が戦ってるんだ。俺もじっとなんてしてられない…でも

 

「勝てるのか…今の俺で…?」

 

あの時、オルグ相手に何も出来なかった。仮面ライダーとしてだけじゃない。素の実力でもやつの方が上回ってる。そんな奴に手負いの俺で果たして…

 

「何弱気になってるんだよ…!!」

 

後ろ向きになってる自分が腹立たしい…何より、悔しくてたまらない

 

すると、目の前に黒塗りの大きな高級車が停まって中から黒服の男が現れる。

 

「半蔵学院の竜司だな、車に乗れ。」

 

「…誰ですか貴方は」

 

俺は突然のとこに身構える

 

「善忍最高幹部の鉄心様が車内でお待ちだ。」

 

「最高幹部が俺に…!!」

 

衝撃の人物に俺は驚きを隠せなかった。何故このタイミングで最高幹部が俺に会いにくるのか…

 

「…わかりました。」

 

俺が頷くと男は車のドアを開ける。中はとても広く人が向かい合って座れるようになっていた。

 

俺が指示された席に座ると目の前には立派な口髭と顎髭を生やしたがっしりとした体格の強面の男性が座ってこちらを睨みつけていた。

 

「貴方が…鉄心様?」

 

「そうだ、貴様に用があってきた」

 

鉄心様の言葉は静かながらも力強く、俺の体を貫くように響いた。

 

「俺は…今学炎祭の最中なんです。今から月閃へ向かわないと…」

 

「勝てるのか?今の貴様に」

 

その言葉に俺は何も言い返せなかった。先ほどまでの弱気な自分を思い出してしまう。

 

「そういえば…この間、抜け忍を検挙した時にお前の学院の金髪の娘が乗り込んできたぞ」

 

「なっ!?」

 

金髪の娘といえばかつ姉しかいない…まさか

 

「抜け忍って…かつ姉の両親!?どうして!!」

 

「奴らは抜け忍。理由なんてそれで十分だろ?」

 

「それは…」

 

その通りだ。理由はどうあれ抜け忍を本部が見逃すはずがなかった…だけど…だからって…

 

「あの娘はその際我々と取引をした。もし学炎祭で半蔵学院が勝利すれば両親を放免してやると。」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

俺はその言葉に顔を上げる。

 

「だがもし敗れれば忍の掟に従い両親は処刑する。」

 

「そんな…」

 

その言葉に俺は肩を落とした。今のままじゃとても勝てない…どうすれば…

 

「…勝ちたいか?」

 

「え?」

 

鉄心の言葉に俺はどう言うことかわからなかった。

 

「聞き方を変えるか。守りたいか?自分の仲間を」

 

「当たり前だ!!」

 

決まってるだろ!!飛鳥も、斑鳩先輩も、柳生も、雲雀も、かつ姉もかつ姉の両親も!!守りたいに決まってる!!失ってたまるか!!

 

「良い判断だ」

 

鉄心はそう言うとニヤリと笑って俺の前に恐竜の牙の様な装飾のある小さな機械を置いた。

 

「これは?」

 

「こいつはワイルドギア、我々が開発したリューマ専用の強化アイテムだ。こいつとキョウリュウキーを併用すれば、恐竜の持つ潜在能力を全て引き出すことができる。」

 

「なんでこれを俺に…」

 

「貴様が知る必要はない。だが、これを使えば仮面ライダーオルグに対抗することができるぞ?」

 

「……………。」

 

今の俺ではオルグには勝てない。でも負けたら俺達の半蔵学院がなくなるだけじゃない、みんなの忍の夢も、かつ姉の両親もみんな失ってしまう。それだけは防がないと

 

「…わかった」

 

俺は覚悟を決めてワイルドギアを手に取った。

 

「あぁでも、くれぐれも扱いには気をつけろ?そいつはさっきも言ったが恐竜の潜在能力を引き出す。使い方を誤ればその身を滅ぼすぞ」

 

「…はい!!」

 

鉄心の忠告を聞いた俺は車を降りる。するとそこは、死塾月閃忍学館のすぐ近くだった。

 

「待ってろよ…飛鳥!!」

 

俺は覚悟を決めて走り出した。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

死塾月閃忍学館では満身創痍の飛鳥が仮面ライダーオルグと向かい合っていた。

 

「なかなかしぶといな、正直ここまでとは思わなかったが…これで終わりだ」

 

「私を…舐めないで!!」

 

月閃の四季と言う少女を倒したのは良いがそのあとにりゅーくんを倒した仮面ライダーが現れたことで形勢は一変してしまった。自身の攻撃はまるで通じず攻撃を凌ぐので精一杯だ。

 

「そろそろとどめとするか」

 

『必殺の術!!』

 

オルグは剣を盾に収めて柄のボタンを押し必殺忍法『クリスタルブレイク』を発動した。

 

「これで1人脱落だな」

 

放たれたオルグの必殺忍法が飛鳥へと迫った。

 

「ごめん…みんな…りゅーくん…!!」

 

飛鳥は諦めて目を瞑ってしまう

 

 

 

 

「え?」

 

しかし何も起こらない。何故かと目を開くと

 

「間に合った…!!」

 

「りゅーくん…」

 

自分を抱き抱えてオルグの必殺忍法を躱した竜司がいた。

 

「竜司…あれだけのダメージを受けてまだ動けたとはな。でも、今のお前で『俺達』から逃げられるかな?」

 

周りを見渡すと叢、夜桜、美野里、雪泉が取り囲んでいた。

 

「りゅーくん…」

 

「大丈夫だ飛鳥…お前は、俺が守る!!」

 

俺はそう言うとカグラドライバーを装着し、鉄心から受け取ったワイルドギアを手に取った。

 

『くれぐれも扱いには気をつけろ?そいつはさっきも言ったが恐竜の潜在能力を引き出す。使い方を誤ればその身を滅ぼすぞ』

 

鉄心の言葉を思い出す。もし失敗すれば俺は死ぬかもしれない…でも、

 

「みんなのためにも…俺は負けない!!」

 

『ワイルドオン!!』

 

俺はワイルドギアのスイッチを押してカグラドライバーの鍵穴部分に装着した。

 

『ティラノ!!』

 

そしてティラノキーを起動して鍵穴に挿し込んだ時、それは起こった。

 

「ぐっ…!?あ…あああ…!!」

 

頭の中に、いや、全身に凄まじい力が流れ込んでくる。その力は俺を飲み込んでいき、そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「りゅー…くん?」

 

突然の竜司の異変に飛鳥は動揺を隠せなかった。オルグ達月閃の忍達も竜司の様子に動かずにいた。

 

『ガルルルルルグオーン!!ガルルルルルグオーン!!ガルルルルルグオーン!!ガルルルルルグオーン!!』

 

突然ベルトから恐竜の様な唸り声が聞こえ竜司の背後に鎖で全身を拘束されたティラノサウルスが現れる。

 

「へん……しん……!!」

 

すると、竜司が顔を上げまるで肉食獣の様な目を光らせてティラノキーを回した。

 

『武装!!ワイルド!!Break the Chain!!WILD DINOSAUR!!』

 

瞬間、ティラノサウルスの鎖が千切れ巨大なティラノサウルスの大顎が竜司を飲み込む、するとティラノサウルスの体が弾け中から鱗のような鎧に覆われて鋭い爪を持つ姿のリューマ、仮面ライダーワイルドリューマへと変身した。

 

「グルルルルル…グルァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

そして、つんざく様な雄叫びが辺りに響き渡った。

 

 

 

 

「な…なんですかあれ…」

 

霧夜先生に事情を聞き月閃へと駆けつけた斑鳩達は目の前のリューマを見て驚愕した。

 

「どうしたんだよアイツ…」

 

「あんなリューマ見たことがない…」

 

「な、なんか怖いよ…」

 

ワイルドリューマから放たれる禍々しい気配にみんなは恐怖を隠さずにいた。しかし、

 

「ば、馬鹿な……」

 

「霧夜先生…?」

 

一緒についてきた霧夜だけは恐怖ではなく驚きを見せていた。

 

「何故…竜司があの力を…!!」

 

 

 

 

 

「なんだその姿…?いや、お前は何者だ?」

 

「グルルルルル…」

 

ワイルドリューマへと変身した竜司を見ながらオルグは問い詰める。しかしワイルドリューマは唸り声をあげるだけで質問に答えない。

 

「…お前ら、手を出すな。こいつは俺がやる」

 

満月はそう言うとトプスパーダを構えてワイルドリューマの目の前に立つ。

 

「ガァァァァァァァ!!!」

 

瞬間、ワイルドリューマは鋭い爪を振り上げて飛び掛かってくる。オルグは咄嗟にトプスパーダの盾を構えてガードした。

 

「なに!?」

 

しかしその衝撃は凄まじくオルグは後ろに退がってしまう。あまりのパワーにオルグは驚愕した。

 

「さっきと全然違う…どうやったか知らねえけど、なめんなよ!!」

 

『大剣モード!!』

 

オルグはトプスパーダを大剣モードに変えると勢いよく跳び上がりワイルドリューマのボディに突きを放つ。しかしワイルドリューマはそれを軽々と躱すと両手の爪でオルグの装甲を斬り裂いた。

 

「ぐっ……!!」

 

直撃したがオルグの装甲は堅くなんとか持ち堪える。が、ワイルドリューマは絶えず爪による斬撃を繰り出しオルグは防戦一方となる。

 

「舐めてんじゃ…ねぇ!!」

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!セイクリッドインパクト!!」

 

オルグはトプスパーダの柄部分のボタンを押して必殺忍法を放つ

 

『必殺の術!!ワイルド!!』

 

迎え撃つかの様にワイルドリューマもカグラドライバーを叩く

 

「グルルルルル…ギャオォォォォォォォォォォ!!」

 

全身から禍々しいオーラを纏ったワイルドリューマは飛び上がると両足で蹴りを放つ。ワイルドリューマとオルグの必殺忍法が衝突し大爆発を起こした。

 

「ぐっ…!!」

 

その衝撃でオルグは吹き飛ばされ壁に激突し変身が解除される。

 

「なんなんだよ…あの力は…」

 

「ギャオォォォォォォォォォォ!!」

 

視線の先には雄叫びをあげるワイルドリューマがいた。



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其の四十五 危険な力と新たな敵!!の巻

設定まとめに仮面ライダーオルグと満月の項目を追加しましたのでよければどうぞ


「ギャオォォォォォォォォォォ!!」

 

ワイルドリューマとなった竜司は鋭い爪を掲げながら雄叫びを上げる。

 

「りゅーくん…いったいどうしちゃったの?」

 

飛鳥は竜司の突然の変貌に驚きを隠せずにいた。

 

「グルルルルル…!!」

 

「あ、やべぇ」

 

するとワイルドリューマは壁に寄りかかる満月を見つけて唸り声を上げながらジリジリと近づいていった。

 

「グルァァァァァァァァァ!!」

 

次の瞬間、ワイルドリューマは雄叫びを上げながら鋭い爪を振り翳して満月へと飛びかかった。

 

「満月!!」

 

瞬間、雪泉は慌てて満月を守る様にワイルドリューマの前に立つと氷の盾でワイルドリューマの攻撃を防いだ。

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

ワイルドリューマは突如現れた氷の盾に怒りながら鋭い爪による連撃を繰り出す。

 

「ぐっ…これは…」

 

その攻撃は凄まじく徐々に氷にヒビが入っていく。そして、ワイルドリューマから巨大なティラノサウルスの尾が現れる。

 

「ガルルルルル…ギャオォォォォォォォォォォン!!」

 

ワイルドリューマはその尾を思いっきり叩きつけて氷の盾は粉々に砕け散った。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「「雪泉!!」」

 

「雪泉ちん!!」

 

「雪泉ちゃん!!」

 

その衝撃で雪泉は思わず吹き飛んでしまい、それを見た他の月閃メンバーが慌てて二人の元へと駆け寄った。

 

「ギャァァァァァ!!」

 

『必殺の術!!ワイルド!!』

 

その時を見計らったかの様にワイルドリューマは雄叫びを上げながらカグラドライバーを叩き、両手にエネルギーを纏って巨大な爪を具現化する。

 

「ギャオォォォォォォォォォォン!!」

 

ワイルドリューマが両腕を振り上げて下ろすと巨大な斬撃となって月閃メンバーへと放たれた。

 

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

 

ワイルドリューマの必殺忍法で彼女たちは吹き飛び壁に激突した。致命傷では無いにせよ彼女たちの傷は大きかった。

 

「りゅー…くん…」

 

自分達があれだけ苦戦した月閃の忍をたった一人で蹴散らす。ありえないほどの力を発揮したワイルドリューマに飛鳥は驚きと動揺を隠さずにいた。しかし、彼女が感じたのはそれだけじゃなかった、

 

「りゅーくん…なの…?」

 

目の前にあるワイルドリューマは今までの竜司とは違う、そもそも戦い方が忍としての、仮面ライダーとしての彼とも違う…まるで猛獣…否、恐竜の様に思えた。

 

「グルルルルル…」

 

「あっ…!!」

 

ふと気づくとワイルドリューマは未だ起き上がれずにいる雪泉へゆっくりと近づいていた。

 

「まってりゅーくん!!それ以上はダメ!!」

 

彼が何をしようとしているのか気づいた飛鳥は慌ててワイルドリューマにしがみつき止めようとした。  

 

「グルァァァァァ!!」

 

「きゃあ!?」

 

しかしワイルドリューマは唸り声を上げながら飛鳥を振り解きその勢いで飛鳥は倒れてしまう。

 

「ガルルルルル…グルァァァァァ!!」

 

ワイルドリューマは自分を邪魔した飛鳥を標的にし鋭い爪を飛鳥へと振り下ろした。迫ってくる恐怖に飛鳥は目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁっ!!」

 

瞬間、満月が飛鳥の前に立ちワイルドリューマの攻撃を転身剣トプスパーダ・大剣モードで防いだ。

 

 

「グルゥ!?」

 

「え…?」

 

突然の事に二人は驚愕する。

 

「なるほどなぁ…そういう仕様かよ……」

 

ワイルドリューマを見て何かに気づいた満月は彼を睨みつける。

 

「おいテメェ…俺が倒したいのは『半蔵の弟子』なんだよ」

 

「ギャオォォォォォォォォォォ!!」

 

ワイルドリューマは爪を振り翳して満月へと振り下ろした。

 

「邪魔すんじゃねぇ!!!」

 

しかし満月はそれを上回る速さで転身剣トプスパーダを振りワイルドリューマの胴を斬り裂いた。

 

「ガ……ッッ!!」

 

思わぬ反撃に遭いワイルドリューマはゆっくり倒れながら変身が解け、カグラドライバーからティラノキーとワイルドギアが落ちる。

 

「りゅーくん!!」

 

飛鳥は慌てて倒れた竜司の元へと駆け寄り彼を抱き抱えた。

 

「竜司さん!!」

 

「竜司!!」

 

すると、斑鳩達も現れて竜司へと駆け寄った。竜司は意識を失っているが呼吸はしっかりとあるので飛鳥達はホッとする。

 

「早く竜司さんを医務室に…」

 

斑鳩の指示で飛鳥は竜司を抱えるとみんなで撤退を始めた。

 

「雪泉…どうする?」

 

そんな彼らを見て満月は雪泉に声をかける。

 

「…向こうが撤退してくれるならそうさせましょう…今の傷で彼女達と戦うのはリスクがありすぎます。」

 

雪泉の言葉に満月や他の月閃メンバーも頷いた。

 

 

 

 

 

 

「やっぱり…これはワイルドギア…」

 

霧夜は地面に落ちていたワイルドギアを拾うと顔をこわばらせる。

 

「あの頃よりさらに性能が上がってる…これを開発している奴らがいるってことか…!!」

 

視線の先には意識を失った竜司が飛鳥に運ばれてる。

 

「誰があいつにこれを与えたんだ…!!」

 

その目には確かに怒りがこもっていた。

 

 

 

そして、そんな霧夜を物陰からネズミが見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…まぁ初めての使用としてはまずまずと言ったところか」

 

鉄心は部下がネズミの視界を通して見たワイルドリューマの映像を確認しながら呟いた。

 

「後はあの力を完璧に使いこなせる様にするだけだ。そっちの方は…お前に任せるぞ」

 

「あぁ、任せろ」

 

鉄心が後ろに声をかけると暗闇の中から真剣な顔をした竜舌が現れた。

 

「ワイルドギアがこれからの戦いに必要になるのは間違いない。全てはお前にかかってる。頼んだぞ、竜舌」

 

「覚悟は出来てるさ、それに…俺はあいつを信じている」

 

竜舌は映像の中の竜司を静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ん……ここは……」

 

俺がふと目を覚ますとそこは医務室のベットの上だった。

 

「あ…りゅーくん!!」

 

「竜司さぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

俺が目を覚ましたことに気づいた飛鳥と斑鳩先輩がものすごい勢いで俺に抱きついてきた。

 

「よかった〜りゅーくんが元のりゅーくんにもどって〜」

 

「竜司さんが…!!竜司さんがいなくなっちゃったらって思ったらわたくし…!!わたくしぃ…!!」

 

2人が俺を抱きしめると体に2人のたわわな胸が目一杯押しつけられる

 

「ふ…2人とも…////お願いだから…離れて…」

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」」

 

2人が俺を離してくれたのはそれから1時間後の事だった。

 

 

 

 

 

「お…落ち着いた?」

 

「ゔん……」

 

「す…すみません」

 

時間が経ちようやく落ち着いた2人を俺はなんとか慰めた。

 

「それよりりゅーくん…あの力ってなに?」

 

「そうです、あんなリューマ…わたくしも初めて見ました…!!一体あれは…?」

 

「あの力?あっ…!!」

 

思い出した、俺はワイルドギアを使って、そうしたら意識が無くなって…

 

「あれはワイルドギア、22年前に開発された禁断のシステムだ」

 

すると険しい顔をした霧夜先生が俺たちの前に現れた。その手にはティラノキーとワイルドギアが握られていた。

 

(霧夜先生…怒ってる?)

 

その鋭い目に俺は思わずたじろいてしまう。

 

「竜司、こいつは誰から貰った?知ってることを全て話せ」

 

   

 

 

 

 

 

 

「まさか…神門様と同じ最高幹部の1人が…」

 

「そんな…」

 

「…………っ」

 

俺が鉄心様からワイルドギアを受け取ったことを話すとみんなは驚き霧夜先生は顔をこわばらせた。

 

「最高幹部…!!」

 

「霧夜先生、ワイルドギアって一体…」

 

俺が質問すると霧夜先生は口を開いた。

 

「22年前、カグラドライバーとは別のドライバー開発が行われていた。」

 

「そうなんですか!?」

 

衝撃の事実に俺は驚きを隠せずにいた。

 

「だが、当時の技術ではカグラドライバーの仕組みを完璧に解析することは出来ず、ようやく完成したドライバーも満足のいく性能は出なかった。そんな欠点を補うために開発されたのがワイルドギアだ」

 

霧夜先生は目を閉じて静かに語り出した。

 

「ワイルドギアは恐竜の力を無理やり目覚めさせリミッターを解除することにより通常を遥かに凌ぐ力を宿す。それを当時開発していたドライバーに組み込むことで強力な仮面ライダーを生み出そうとしたんだ」

 

「でもそれは結局行われなかった…それはなぜですか…?」

 

こんな力があるならリューマの鎧が復元される前にスカルに対抗する力になれたはずなのに…斑鳩先輩が質問すると霧夜先生は静かに口を開いた。

 

「あまりに危険なリスクがあったからだ」

 

「危険なリスク?」

 

「恐竜の力は人間のそれを遥かに凌駕する。そんな力を無理やり体に取り込めば体が耐えきれなくなりいずれ崩壊する。何より…使用者は恐竜の獰猛性までもが宿り自我を失ってしまうからだ。竜司…お前がそうなった様に」

 

「あっ……」

 

俺は月閃でのことを思い出す。

 

(そうだ、俺はあの時満月だけじゃない…下手をすれば飛鳥まで手にかけるところだったんだ…)

 

俺は自分がやろうとしたことを思い出し胸が痛くなった。

 

「とにかくこいつは俺が預かる。竜司、もうこんな力は絶対に使うな」

 

そういうと霧夜先生は俺にティラノキーだけを返すとワイルドギアを懐にしまって部屋を出ていった。

 

「…………………」

 

しかし、俺は霧夜先生から、正確にはその懐にしまわれたワイルドギアから目が離せなかった。

 

 

 

 

 

 

「最高幹部が…一体何を企んでるんだ…」

 

霧夜はワイルドギアを見つめながら神門にワイルドギアについて報告した時のことを思い出した。

 

『なるほど…ワイルドギアですか』

 

『はい』

 

霧夜の報告に神門は紅茶を一口含んだ。

 

『わかりました、この件は私が預かりましょう。霧夜殿はこのまま学炎祭に集中してください』

 

『え?』

 

あまりにあっさりとした回答に霧夜は呆気にとられる。

 

『そ、それだけですか!?他には…』

 

『この話はこれで終わりです』

 

結局それ以上彼女は何も話してくれなかった。

 

「善忍同士の学炎祭にワイルドギア、一体何が起こっているんだ…」

 

 

 

 

 

 

「りゅーくんも数日後には傷が完治できそうでよかったよ」

 

「あ…うん」

 

一通りの治療が終わった帰り道、俺は頭のモヤモヤが取れずにいた。

 

「このままで…月閃に勝てるのか…?」

 

ワイルドギア…あれが危険な力であることに変わりはないのだろう…でもあの力のおかげで仮面ライダーオルグに対抗できたのは紛れもない事実だ。それを失った今の俺で…果たしてオルグに勝てるのだろうか…

 

「竜司さん、霧夜先生の判断は間違ってなかったと思います」

 

すると、俺の様子を見て察したのか斑鳩先輩が俺に声をかけてきた。

 

「確かにあの力は月閃の仮面ライダーにも勝てるほどの力があるんでしょう、でもあの力が竜司さんにとって危険な力だと言うなら…わたくしは使ってほしくないです」

 

「斑鳩先輩…」

 

「そうだよりゅーくん」

 

飛鳥も心配そうに頷いた。

 

「あの時のりゅーくん、とても苦しそうだった。もうあんなりゅーくんを見たくないよ」

 

「………………。」

 

2人の言葉に俺は何も言えなかった。そうだ…俺が無茶をしたせいでみんながこんなにも心配したんだ…でもこのままじゃみんなを守れない…仲間のために力を求めるか否か…どうしたら良いんだ…

 

「まぁ、あまり1人で考えるな。そのために俺たちがいるんだ」

 

「え…?」

 

柳生の言葉に俺はポカンとした。まさか柳生がそんなことを言うとは…

 

「なんだ、文句があるのか?」

 

「あ…いや〜ちょっと意外で…」

 

「…ふん」

 

俺の反応に少し恥ずかしかったのか柳生はプイッと顔をそらした。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そんな空気はすぐに変わった。

 

「なっ…!!これは忍結界!!」

 

突然ここら一帯に忍結界が張られた。まさか月閃か…と一瞬思ったが

 

「この結界…月閃の忍結界じゃない…」

 

学炎祭で張られた忍結界とは根本から違う。初めて見る忍結界が5…いや6、と言うことは

 

「新しい敵の襲撃…!!」

 

月閃との学炎祭が終わってないのにまだ別の敵が現れるとは…俺は周囲に警戒しながらカグラドライバーを手に握り締めた。

 

 

 

 

 

「貴様らが半蔵の生徒か……こんな連中にあいつらは負けたと思うと、私がいない間に蛇邪もずいぶんと貧弱になったものだ」

 

ふと声が聞こえそちらを見た、そこには白い短髪の女性、眼鏡をかけた鋭い目つきの女性、緑と青のオッドアイの茶髪の少女、彼女と目の色が左右逆の金髪の少女、空色の髪に黒いジャケットにネクタイをつけた青年、そして…

 

「紫…!!」

 

「竜司…くん…」

 

忘れもしない、以前理吉と一緒に出会って仲良くなった少女、紫がそこにいた。

 

「なんだ紫、知り合いか?」

 

俺たちの様子を見て白い短髪の女性は紫に声をかける

 

「う、うん雅緋さん…この間話した…理吉くんと同じ私の恩人…」

 

その言葉に眼鏡の女性と雅緋も呼ばれた女性はため息を吐く

 

「紫、悪いがこいつは敵だ。始末させてもらうぞ」

 

「え………そんな………」

 

「紫!!」

 

「う……お姉ちゃん……」

 

雅緋の決定に紫は何かを言おうとするが眼鏡をかけた女性はピシャリとそれを止める。

 

「お前たち…蛇邪の新しい選抜メンバーか!!」

 

さっきの会話からこいつらが蛇邪の関係者であるのは間違いない、それに…この前理吉が言ってた。

 

『最近善忍の学校からうちに編入してきた姉妹と休学していた先輩が強いって聞きますね』

 

おそらく左右逆のオッドアイをしているあの2人が善忍の学校から編入してきた姉妹、そして少し年上と思われる雅緋と眼鏡をかけた女性と空色の髪をした青年が休学していた先輩って奴だ!!

 

「ほお、少しは頭の回る奴もいるみたいだね。いかにも、僕たちが新しい蛇邪の選抜メンバーだ」

 

すると空色の髪をした青年が感心した様に笑う

 

「蒼良(そら)、余計なことは話さなくて良い。さっさと話を進めるぞ」

 

「おっと、すまない雅緋」

 

雅緋に鎖と笑いながら謝ると蒼良と呼ばれた青年は一歩退がった。

 

「奪われた誇りを取り戻すために、私たちは半蔵に……学炎祭を申し込む!!」

 

「はぁっ!?」

 

俺はあまりのことに驚き声を出してしまった。月閃と戦ってるこの状況にさらに蛇邪まで入ってくるのか…!!

 

「月閃だけじゃなくて…蛇邪まで半蔵に攻めてくるの…?」

 

雲雀も怯えたようすで確かめる

 

「あぁそうだ、元々学炎祭はバトルロイヤルみたいなものだ。こう言うこともあるんだよ」

 

雲雀の言葉に雅緋は余裕を見せて答える。

 

「そうかいそうかい、こうなったら一校でも二校でもおなじだ!!」

 

「いくらでも相手になってやろう」

 

そんな雅緋に葛城と柳生は覚悟を決めて身構える。

すると、蒼良が俺たちの前に立った。

 

「そっちもやる気みたいだし…そうだ、7日間の猶予なんて言わずにここで余興として僕1人で相手をしてあげるよ、良いよね雅緋?」

 

「ああ、我々の力を見せつける良い機会だ」

 

蒼良の言葉に雅緋は頷くと蒼良はクスリと笑って臨戦態勢をとる。

 

「わたくしたち全員を1人で?」

 

「馬鹿にしやがって…!!」

 

「馬鹿になんてしてないさ、言ったろ?余興だって」

 

怒りを見せる斑鳩と葛城に微笑むと

 

「ただ僕は、この中だと一番強いよ」

 

『転身弓プテラアロー!!』

 

紫色のプテラノドンの様な弓矢を出して左手に握りしめた。

 

『プテラ!!』

 

そして右手にプテラノドンが描かれたキョウリュウキーを持ち起動する。

 

「まさか…!!」

 

俺が気づくよりも早く蒼良は転身弓プテラアローにプテラキーを挿し込む

 

『♪〜〜♪♪〜♪〜♪♪♪〜!!』

 

すると、転身弓プテラアローからエレキギターのような音色が響き渡る。

 

「変身」

 

『竜装!!プテラ!!』

 

そして転身弓プテラアローの引き金を引くと鍵が回り蒼良の周囲をプテラノドンのような装甲が取り囲み蒼良の体に装着されプテラノドンのような仮面ライダー、仮面ライダーガルーダへと変身した。

 

「仮面ライダーガルーダ、悪の誇りを…舞い掲げよう」

 

 

 

 

「そんな…まさか…」

 

「4人目の仮面ライダー…」

 

目の前で変身した仮面ライダーガルーダに俺たちは驚きを隠せなかった。まさか悪忍側も新たなライダーシステムを開発してたなんて…

 

「やるしか…ねぇ!!」

 

『メガロ!!サイクロン!!』

 

「変身!!」

 

「サイクロン武装!!メガロ!!」

 

俺はカグラドライバーを装着しサイクロンメガロキーで仮面ライダーリューマサイクロンへと変身した。

 

「さ、かかってくるといい」

 

「うおおおおおっ!!」

 

俺は竜巻を纏った拳で仮面ライダーガルーダへと殴りかかる。しかし仮面ライダーガルーダはその拳をいとも簡単に見切っていく。

 

「りゅーくん!!」

 

「わたくしたちも!!」

 

飛鳥たちも忍転身してガルーダへと攻撃を仕掛ける。しかしガルーダはそれさえも容易く見切る。

 

「そろそろ反撃させてもらうよ」

 

するとガルーダは転身弓プテラアローの弦を弾き、光の矢を生み出した。

 

「はあっ!!」

 

ガルーダが射ると光の矢は正確に雲雀へと炸裂する。

 

「きゃあぁぁぁっ!?」

 

「雲雀!!貴様ぁぁ!!」

 

雲雀を攻撃され柳生は怒りながらガルーダへと突っ込む。

 

「攻撃が単調だね」

 

「ぐぅっ!!」

 

ガルーダは柳生の番傘を転身弓プテラアローでガードすると回し蹴りを繰り出し柳生を吹き飛ばす。

 

「この…!!」

 

「なめんじゃねぇ!!」

 

左右から斑鳩先輩とかつ姉が居合と飛び蹴りを繰り出す。

 

「なかなかいい連携…だけど甘い!!」

 

ガルーダは空高く飛び上がり2人の攻撃を躱すと光の矢を2本生み出しそれぞれに同時に放つ

 

「きゃあっ!!」

 

「うわぁっ!!」

 

光の矢は2人に炸裂し2人は吹き飛ばされてしまう

 

「そんな…!!」

 

「みんなぁ!!」

 

「余所見はダメだよ」

 

先輩たちに気を取られた一瞬をついてガルーダは飛鳥の懐に入り込む。

 

「しまっ…!!」

 

反応した頃にはもう遅くガルーダの転身弓プテラアローの弦の刃による斬撃が飛鳥に炸裂した。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「飛鳥ぁ!!」

 

斬撃をモロに喰らった飛鳥はそのまま壁に激突して倒れてしまった。

わずかな時間に俺以外の全員がやられてしまった。まだ傷が癒えていないことを踏まえても目の前のガルーダの戦闘力の高さはかなりのものだった。

 

「くそぉぉぉ!!」

 

俺は全身に竜巻を纏ってガルーダに突撃するがガルーダは軽々と俺の攻撃を躱していく。

 

「そんな単調な攻撃じゃ掠りもしないよ」

 

ガルーダは躱しながら光の矢を連射して俺に当てていく

 

「だったら…!」

 

『必殺の術!!サイクロン!!』

 

「必殺忍法!!激竜マキシマムサイクロン!!」

 

俺はカグラドライバーを叩いて必殺忍法を放つ

 

「そっちがその気なら…」

 

『必殺の術!!』

 

ガルーダは転身弓プテラアローの引き金を引き弓を引く。すると先ほどとは比べもののならないほどのエネルギーを秘めた矢が現れた。

 

「必殺忍法!!竜射法・超新星!!」

 

放たれた巨大な矢は俺の必殺忍法と衝突する。すると矢は大爆発を起こしその勢いで俺は吹き飛んでしまった。

 

「ぐ…あ…っ!!」

 

その勢いでサイクロンメガロキーは外れて俺は変身を解除してしまった。

 

「悪いけど、怪我してるからって加減するほど僕たちは甘くないんだ」

 

ガルーダはゆっくりと倒れる俺たちに近づいてくる。

 

「余興という名の前夜祭で終わるのは癪だけど、まぁ観念してもらおうか」

 

そう言ってガルーダは弓を構えてトドメを刺そうとしてくる。

 

 

 

「させない…絶対に…!!」

 

このままじゃ、みんなやられてしまう…俺が傷だらけだったばっかりに…俺が、弱いばっかりに…

 

「みんなは…俺が…」

 

力がいる…!!みんなを守れる力が…こいつを倒す力が!!

 

「守るんだァァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

「ぐっ…!?これは…!!」

 

突然懐にしまっていたワイルドギアが熱くなり霧夜の元を離れどこかに飛び去っていく

 

「まさか!!」

 

霧夜は慌ててワイルドギアが飛んでいった方向へと駆け出した。

 

 

 

 

 

「ワイルドギア…!!」

 

『ワイルドオン!!』

 

どこからかワイルドギアが飛んできて自然に起動するとカグラドライバーへと装着された。

 

「あ……っ!!ダメだよりゅーくん!!それを使ったら今度こそ…!!」

 

意識を取り戻した飛鳥がワイルドギアに気づいて慌てて止めようとする。

 

「飛鳥…ごめん」

 

でも俺の覚悟はもう決まっていた。このままじゃみんなやられてしまう、そうならないためにも、こいつに勝つためにも、この力が必要なんだ

 

『ティラノ!!』

 

俺はティラノキーを起動して鍵穴に挿し込む

 

『ガルルルルルグオーン!!ガルルルルルグオーン!!ガルルルルルグオーン!!ガルルルルルグオーン!!』

 

ベルトから恐竜の様な唸り声が聞こえ竜司の背後に鎖で全身を拘束されたティラノサウルスが現れる。そして竜司の目は再び恐竜の様な鋭い目に変わる

 

「へん……しん……!!」

 

『武装!!ワイルド!!Break the Chain!!WILD DINOSAUR!!』

 

「ギャオォォォォォォォォォォ!!」

 

竜司がティラノキーを回すとティラノサウルスの鎖が千切れ巨大なティラノサウルスの大顎が竜司を飲み込む、するとティラノサウルスの体が弾け中から鱗のような鎧に覆われて鋭い爪を持つ姿のリューマ、仮面ライダーワイルドリューマへと変身し雄叫びを上げた。

 

「その力…まさかワイルドギア…!」

 

仮面ライダーガルーダはワイルドリューマの姿に驚き身構える。

 

「どうやら、さっきみたいには行かないらしいね」

 

「グルァァァァァ!!」

 

ガルーダが矢を構えるとワイルドリューマは彼を睨みつけ鋭い爪を振るいながら飛びかかった。

 

「速い…!!」

 

想像以上の速さにガルーダは驚きながらそれでも見切り矢を放った。しかしワイルドリューマはその矢を軽々と掴むと握りつぶした。

 

「ちっ…だったら…!!」

 

ガルーダは舌打ちすると光の矢を複数本生み出す

 

「竜射法・流星群!!」

 

ガルーダの放った複数の矢はさらに分裂してワイルドリューマに襲いかかった。

 

「グルァ!?」

 

無数の矢を躱しきれず矢はワイルドリューマに炸裂して爆発した。

 

「……やったか?」

 

ガルーダは爆煙を見ながら呟く

 

「グルァァァァァ!!」

 

「なっ…!!ぐわぁぁぁぁ!?」

 

瞬間、爆煙の中からワイルドリューマが現れガルーダを殴り飛ばした。

 

「馬鹿な!?あれだけの矢をどうやって…!!」

 

ガルーダがワイルドリューマを見ると手足には無数の矢が突き刺さっていた。ワイルドリューマは自身に矢が刺さるのをお構いなしに自身へと突っ込んできたのだ。

 

「なるほど…これがワイルドギアの本来の力、確かに狂っているな」

 

『必殺の術!!』

 

ガルーダは立ち上がると転身弓プテラアローの引き金を引き弓を引く

 

『必殺忍法!!竜射法・超新星!!』

 

「ガァァァァァァァ!!」

 

『必殺の術!!ワイルド!!』

 

ワイルドリューマもカグラドライバーを叩いて両手の爪から巨大な斬撃を放ち2つの必殺忍法はぶつかり巨大な爆発が起きた。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…これでどうだ…」

 

煙が晴れると全身傷だらけのガルーダが立っていた。押さえている腕からは血が流れており傷は小さくなかった。

 

「グルルルルル…ガゥゥゥゥゥ…!!」

 

さらにワイルドリューマは装甲にヒビが入り全身からも血が流れてる。それでもその目はガルーダを睨みつけてなお戦闘態勢をとっていた。

 

「なるほど…君はもはや忍とは呼べない、ただの獣だ」

 

ガルーダはそう言って再び弓を構えた。

 

 

 

 

 

「りゅーくん!!」

 

「竜司さん!!」

 

「竜司!!」

 

「竜司!!」

 

「竜司くん!!」

 

「なっ……!!」

 

その時、飛鳥たちがワイルドリューマにしがみついた。

 

 

 

 

 

 

「ぐ…あぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ワイルドリューマになった俺を嵐のような力が飲み込み体が言うことを聞かない。ワイルドギアの力によって強化されたティラノの力がどんどん俺を侵食していく。

 

(このまま…俺は…喰われるのか…?)

 

ダメだ そんなの ああ でも いしき が の   ま    れ    

 

 

 

 

 

 

 

 

『りゅーくん!!』

 

『竜司さん!!』

 

『竜司!!』

 

『竜司!!』

 

『竜司くん!!』

 

「え………?」

 

どこからか声が聞こえる、誰の声?いや、俺はこの声を知ってる

 

『りゅーくん!!目を覚まして!!力に飲まれちゃダメ!!』

 

『負けないで…わたくしたちの前からいなくならないで!!』

 

『しっかりしろ竜司!!そんな力に負けるようなタマじゃないだろお前は!!』

 

『諦めるな!!気をしっかり持て!!』

 

『竜司くん!!負けちゃダメ!!しっかりして!!』

 

そうだ、みんなだ、みんなが俺のことを…

 

「こんなところで…諦めちゃダメだ…」

 

 

 

 

 

 

「グルァァァァァ!!」

 

ワイルドリューマの鋭い爪が飛鳥たちに振り下ろされようとしてる。迫り来る死を前にしても彼女たちは竜司から離れない

 

「グルゥ!?」

 

ワイルドリューマの爪はあと少しのところで止まった。

 

「や…めろ…!!」

 

「りゅーくん!!」

 

ワイルドリューマの手がワイルドギアをつかむ

 

「俺の…仲間に…」

 

その手は何かに抗うようにワイルドギアを握りしめ

 

「手を出すなぁぁぁぁぁ!!」

 

力いっぱいワイルドギアを引き剥がした。

 

「はぁ…はぁ…」

 

ワイルドギアを外した竜司の変身が解けそのまま崩れ落ちた。

 

「りゅーくん!!」

 

飛鳥たちは倒れる竜司を抱き抱える。息はしており彼女たちはほっとした。

 

「ワイルドギア。予想以上に厄介な力だな…」

 

一部始終を見ていたガルーダは転身弓プテラアローを構える

 

「やるなら…今だ…!!」

 

ガルーダの放った矢が竜司へと向かっていく

 

 

 

 

 

 

 

「させねえよ」

 

しかし放たれた矢は竜司の目の前で弾かれた。

 

「誰だ!!」

 

突然の事にガルーダは驚きながら周囲を見渡す。すると、

 

「まさかあんたが蛇邪の選抜メンバーになるとはな…」

 

すると、暗がりから1人の男が現れた。

 

「お前は…!!」

 

それは、道元との戦いの後行方をくらました男。あの日互いの信念のもと竜司とぶつかり合い、共闘した悪忍

 

「炎佐!!」

 

仮面ライダーガリュー、炎佐であった。

 

 

 

 




炎佐再び登場!!

少し長くなってしまいましたが後悔はしてません!!


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其の四十六 再会と強化修行!!の巻

お待たせしました!!


 

「炎佐!!」

 

仮面ライダーガルーダから竜司を守った仮面ライダーガリューこと炎佐は具現化したスピノアクスをガルーダに向けながらガルーダを睨みつける。

 

「焔、こいつらを安全な場所へ」

 

「わかった」

 

焔達が現れ炎佐の指示に従う

 

「ほ、焔ちゃん…」

 

「しっかりしろ馬鹿、こんな奴らにやられるんじゃない」

 

焔はふらつく飛鳥を抱き抱えて介抱する

 

「これは……ずいぶん懐かしい顔だね炎佐。まさか君が善忍を庇うなんて、悪忍の誇りはどうしたんだい?」

 

「捨ててねえよ。ただこいつは俺の獲物だ、たとえお前だろうと譲る気はねえぞ」

 

ガルーダは炎佐を見ると懐かしそうに笑い炎佐を問い詰めるが彼は笑って反論する。

 

「ふうん、それじゃあどうするの?」

 

「決まってんだろ」

 

炎佐はニヤリと笑いガルーダの問いに答える

 

「俺達炎佐紅蓮隊は、秘立蛇邪学園に学炎祭を申し込む!!」

 

「…なに?」

 

「へえ…」

 

炎佐の宣言に雅緋とガルーダは少し驚く

 

「俺達は確かに抜け忍だ…だけど悪忍としての誇りを捨てたわけじゃねえ。それを証明してやる」

 

「…いいよ、相手にしてあげる。でも、勝てるのかい?今まで一度も勝てたことのない僕に?」

 

「え!?」

 

飛鳥はガルーダの言葉に驚く、あの炎佐が…仮面ライダーガリューにしてりゅーくんを…仮面ライダーリューマを何度も追い詰めた彼が一度も勝てたことがない…?

 

「勝つさ、以前の俺じゃないんでね」

 

「…たしかに、以前と目が違うね」

 

ガルーダはニヤリと笑い変身を解除する。

 

「今回は君に免じて退くとしよう。行くよ雅緋」

 

「…わかった。みんなも行くぞ」

 

「はーい」

 

「両奈ちゃんもわかったの〜♡」

 

雅緋の言葉に他の蛇邪メンバーは頷き従う。

 

「竜司くん……」

 

「紫!!」

 

「う…お姉ちゃん…」

 

気を失っている竜司を心配する紫に忌夢は声をかけて紫はそれに従い、蛇邪メンバーはその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……………」

 

俺が目を覚ますとそこは半蔵学院の医務室だった。

 

「俺は…いったい…」

 

「りゅーくん!!」

 

「竜司さん!!」

 

声が聞こえてそちらを振り向くと目に涙を浮かべた飛鳥と斑鳩先輩が駆け寄ってきた。

 

「ばかばかばか!!あれだけ危険な力だから使っちゃダメだって霧夜先生に言われてたのに!!」

 

「そうですよ!!こんなにボロボロになって…何考えてるんですか!!言ったじゃないですか!!竜司さんが死んじゃったら…わたくし…わたくしぃ…!!」

 

「2人とも……」

 

涙を流す2人を見ながら反省した。自分が無茶したことで2人をこんなに傷つけてしまっていたのだと

 

「お、目が覚めたか」

 

するとドアが開いて学ランじゃなくTシャツにライダージャケットを羽織った炎佐が入ってきた。

 

「炎佐…お前なんで…!?」

 

「なんでとはひどい言われようだな。気を失ってたお前をここまで運んだのは俺だぞ」

 

炎佐は苦笑いをしながら俺の近くの椅子に座る。

 

「しっかしお前も罪な男だよな。今のお前のシュチュエーション、全世界の男が憧れるヤツだぞ」

 

「怪我してんのがなんで憧れなんだよ」

 

「は?気づいてないとかラノベかよ。だからコイツらは…」

 

突然変なことを言い出した炎佐に俺は反論すると炎佐はため息を吐いた。

 

「まぁ良い、それよりお前の持っていたこの力なんだが…なんだこれ?」

 

炎佐は懐からワイルドギアを取り出すと俺の前に置いた。

 

「これは……」

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、まさか炎佐達と学炎祭をすることになるなんてね」

 

秘立蛇邪学園では現蛇邪選抜メンバー筆頭の蒼良がどこか嬉しそうに笑っていた。

 

「あ………」

 

「ん?」

 

ふと声が聞こえてそちらを向くと黒髪に赤いメッシュがある少年、理吉が立っていた。

 

「あぁ君か理吉くん」

 

「ど、どうもお疲れ様です!!」

 

蒼良に気づいた理吉は慌てて彼に頭を下げる。

 

「ちょうどよかった、君って蛇邪にいた頃の炎佐を知ってるんだよね。彼って学園じゃどんな感じだったの?」

 

「炎佐さんですか?」

 

蒼良の質問に少し驚いたが理吉はすぐに答えた。

 

「俺達の憧れです。誰よりも強くて、自分の信念を真っ直ぐと貫く。俺達悪忍の鏡のような人です!!」

 

「ふうん」

 

「誰がなんで言おうと…これだけは…絶対に…!!」

 

目の前にいる現選抜メンバー筆頭の蒼良にも一歩も譲らずにそう言う彼に蒼良は少し感心する。

 

「なんほどね、教えてくれてありがとう」

 

蒼良は理吉にお礼を言うとその場を去っていった。

 

「あの頃とは…違うみたいだね。面白くなりそうだ。」

 

 

 

 

 

「あ〜怖かった〜あの人オーラがすごいんだよなぁ…」

 

「理吉くん……」

 

蒼良が去った後、ホッとする理吉に紫が声をかける。

 

「紫さん…」

 

「私は……蛇邪の選抜メンバーだから……理吉くんの尊敬する人達と……戦わないと……いけなくて……その……」

 

「大丈夫ですよ紫さん」

 

震える紫に理吉は優しく声をかけ手をとる。

 

「俺達の尊敬する炎佐さんはこんな事じゃ終わりません、きっと上手く乗り切っちゃいますよ」

 

「ほ、本当に………」

 

「はい、だから紫さんも気にしないでください。寧ろ手を抜かれると炎佐さんすごい怒りますから」

 

「う、うん……」

 

理吉に手を取られ紫は顔を少し染めながら頷いた。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、つまりお前のあの暴走していた姿は恐竜の力に取り込まれていたからってことか」

 

「まぁな…」

 

俺は炎佐にワイルドギアについて話すと炎佐はどこか納得したかのように頷いた。

 

「恐竜は人間なんかと比べ物にならない程の力を宿している。そいつを解放すりゃ確かに力に振り回されてああなるわな」

 

 

 

 

 

「その通りだ」

 

すると、険しい顔をした霧夜先生が入ってきた。

 

「霧夜先生……」

 

「竜司…俺は言ったよな?もうこの力を絶対使うなって…死ぬところだったんだぞ」

 

「それは……」

 

「前にも教えたはずだ、『勇気と無謀は違う』って」

 

「でも………」

 

霧夜先生の言う通りだ。教えてもらったそのことを忘れたわけじゃない。だけど俺は…

 

 

  

 

 

 

「どうやらお前よりもそこの坊主の方がよっぽど今の現状をわかっているようだな」

 

すると黒服の男達を連れて最高幹部の1人、鉄心が現れた。

 

「あなたは…」

 

「竜司から聞いた時はまさかと思ったが…鉄心、本当にあんたがワイルドギアの開発に関わってたとはな。何しにきた?」

 

霧夜先生は怒りを含んだ目で鉄心を睨みつける

 

「貴様、鉄心様に向かって…」

 

「良い、俺とこいつの仲だ」

 

霧夜先生に詰め寄る黒服を鉄心は手で静止する。

 

「だが悪いな、今回はそいつに用がある…竜司」

 

「あ…はい!!」

 

「お前にその力の使い方を教えてやる。俺達について来い」

 

「なっ……!!」

 

鉄心の言葉に霧夜先生は驚愕する

 

「ふざけるな!!そんなこと俺が許すと思ってるのか!?」

 

「お前には聞いてない。俺は竜司に聞いてるんだ」

 

叫ぶ霧夜先生を無視して鉄心は俺に話しかける

 

「お前も気づいているはずだ。今のままじゃオルグには勝てない。ワイルドギアの力をコントロールするしか学院のみんなを守ることができんぞ」

 

鉄心は俺の目をながら俺にそう告げる。その目は鋭くも真っ直ぐと俺を貫いた。

 

「俺達はワイルドギアの制御方法を知っている。仲間を守りたいなら俺達と来い」

 

「…………………。」

 

鉄心の言葉に俺は少し考えるが、すでに答えは決まっていた。

 

「わかりました。貴方達についていきます。」

 

「竜司!!」

 

俺の答えに霧夜は慌てた様子で声をかける。

 

「すいません、霧夜先生…でも、俺はこのままじゃ終われません。この力が危険な力だってのはわかっています。でも逃げてばかりじゃいられない!!」

 

ワイルドギアの力で俺は何度も危険な目にあって飛鳥達まで傷つけそうになった。霧夜先生の言う通り使わずに済むならそれに越したことはないのだろう。でも、オルグ、ガルーダといった新しい仮面ライダー、さらにこれから先、更に厄介な能力のスカルが出てくるかもしれない。そいつらと戦うためにもこの力は必要なんだ

 

「竜司……」

 

「ふん、よく言った。それなら…」

 

「俺も連れてけ」

 

「炎佐!?」

 

すると炎佐も鉄心の前に立ちそう言った。

 

「ほぉ、貴様は…」

 

「俺は今は悪忍側からの抜け忍だ。それに蛇邪とは学炎祭をすることになってる。力を得る分には問題ないし、あんた達としてもデータは多い方がいいだろ?」

 

「…面白い、良いだろう。お前もついて来い。」

 

鉄心の言葉に俺達は頷き彼らについていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ、ここだ」

 

目隠しされて連れてかれた場所は辺りを森に囲まれたシェルターのような場所だった。建物の中に入ると中は分厚いコンクリートに囲まれておりまるで要塞のようであった。

 

「ずいぶん不用心だな、竜司はともかく元悪忍の俺まであっさりこんな場所に連れてきて…てっきり拘束くらいは覚悟してたんだけどな」

 

少し不思議だと言わんばかりに炎佐はつぶやいた。すると、

 

「なっ!?」

 

凄まじい速さで忍の1人が炎佐の背後を取り苦無を突きつけてた。

 

「簡単だ、ここにいる俺の部下は全員が特上忍以上、それも荒事に長けた精鋭達だ。貴様の瞬き一つすら見落とさない自信がある。だから貴様も馬鹿な真似はしない事だな」

 

「…だと思ったよ」

 

炎佐が両手を挙げると忍は苦無をおろして炎佐から離れた。

 

「大丈夫炎佐?」

 

「問題ねえ、けど…迂闊な真似は出来ねえな」

 

俺達は鉄心達にそのままおとなしく着いていくことにした。

 

 

 

 

 

「連れてきたぞ」

 

たどり着いたそこは一際広くあたりは堅牢な壁で取り囲まれていた目的地に着くと鉄心が誰かに声をかける。その人物を見ると

 

「親父!?」

 

「来たか竜司…」

 

なんと俺の父、竜舌だった。

 

「親父って…こいつがお前の父親ってことか?」

 

「う、うん。そうだけど…なんで親父がここに…」

 

「こいつがお前達にワイルドギアの制御方法を教えるからだ。」

 

鉄心の言葉に俺は驚愕して親父を見つめた。親父がワイルドギアの制御方法を…?一体どうやって…

 

「竜司…炎佐…お前達に最後の確認だ。」

 

いつものふざけた様子を一切見せず真剣な顔で親父は俺達に話しかける。

 

「本気でこの力を自分のものにする覚悟はあるか?」

 

「ある!!」

 

親父の質問に俺は迷いなく答える。この力が危険な力だとしても、いや、危険な力だからこそ自分のものにしなければならない!!

 

「俺も同じだ」

 

それは炎佐も同じ考えだったようだ。

 

「…よしわかった」

 

そういうと親父は印を結んで力を込める。

 

「竜宮結界!!」

 

すると親父を中心に結界が展開される。

 

「親父…これって…」

 

「これは竜宮結界、俺がワイルドギアのコントロールの為に忍結界を元に開発した結界だ。」

 

すると、俺と炎佐のティラノキーとスピノキーが光りはじめる。

 

「なっ…!!」

 

「これは…!!」

 

光だした2つのキーはどんどん形を成していき

 

『グォォォォォォォ!!』

 

『ギャオォォォォン!!』

 

オレンジ色のティラノサウルスと紅色のスピノサウルスへと姿を変えた。

 

「きょ、恐竜!?」

 

「マジかよ…!!」

 

2匹の恐竜は鋭い目で俺達を睨みつけている

 

「ワイルドギアの制御方法は一つだけだ。お前達、その2匹の恐竜をそれぞれ屈服させてみろ」

 

『『ガルルルルル…グォォォォォォォン!!』』

 

ティラノサウルスとスピノサウルスの雄叫びが周囲に響き渡った。





年が明けてようやく最新話更新できました!!
遅れて申し訳ありません!!



そしてあけましておめでとう!!


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其の四十七 恐竜と大バトル!!の巻

「ティラノサウルスが…なんで?」

 

「俺のスピノサウルスが…!!」

 

『グォォォォォォォ!!』

 

『ギャオォォォォン!!』

 

親父の竜宮結界によって顕現し目の前で雄叫びを上げるティラノサウルスとスピノサウルスに俺と炎佐は驚愕し親父に問いかける

 

「お、親父!!なんでこいつらが実体化してんだ!?」

 

「竜宮結界…この結界内ではキョウリュウキーに宿る恐竜の魂を引き出し実体化させることができる。この力でお前らと最も相性の良いティラノとスピノを実体化したんだ。」

 

「なっ…!!」

 

「マジかよ…独自の術の開発なんてベテランの忍でもできる奴は少ない高等技術だぞ…!!」

 

まさか忍結界からこんな術を独自に開発するなんて…今まで知らなかった父の凄さに俺は驚きを隠せなかった。

 

「お前らが今からすることは一つだ。こいつらを自らの力だけで屈服させてみろ」

 

「屈服って…こいつらを?」

 

目の前に立ちはだかる2匹の恐竜はそこにいるだけでも圧倒的な力を放っていた。それこそ、かつて俺達が全力で戦ってやっと倒した道元や怨楼血をも凌駕していた。

 

「もちろんこれも使用禁止だからな」

 

竜舌はいつの間に奪ったのか両手に俺達のカグラドライバーを持っていた。

 

「やるしかないな」

 

「あぁ…」

 

俺達は覚悟を決めて忍転身して2匹の恐竜へと身構えた。

 

「いくぞ!!」

 

「応!!」

 

「ガルルルルル…」

 

「ギャォォォォン!!」

 

俺達が駆け出すとティラノとスピノは雄叫びをあげて俺達へと突進した。ティラノの噛みつきを躱した俺はその頭を全力で殴りつける。一瞬ティラノが怯んだので更に連続で拳を叩きつけた。

 

「おらぁぁぁぁぁ!!」

 

(反撃の隙を与えない!!一気に畳みかける!!)

 

俺は命躯となり拳に力を込める。

 

「秘伝忍法!!激烈拳!!」

 

この一撃で決める…そう思いを込めて俺はティラノへと秘伝忍法を叩きつけた。

 

「グルァァァァァ!!」

 

「がはっ!?」

 

瞬間、ティラノの巨大な尾の一撃が俺へと炸裂し壁に激突した。その力は凄まじく全身に激痛が走り意識が途絶えそうになる。

 

「そ…そんな…」

 

目の前に立ちはだかるティラノは傷ひとつなくこちらを睨みつけていた。

 

「あれだけやって…無傷かよ…」

 

明らかに生物としての格が違う…!!恐竜の想像以上の力に俺は驚きを隠せずにいた。

 

「これが…太古の地球を支配した最強生物の力…!!」

 

その力の差を痛感しながら俺は意識を失った。

 

 

 

 

「陛下ー、陛下ー?どちらにいるのでしょう?」

 

屋敷では華蛇が弥勒を探していた。

 

「おかしいですね…いつも出かける時は私に一言言うのに…」

 

いつもと違う様子に華蛇は心配する。

 

 

 

 

「やれやれ、まさかまた同じ過ちを繰り返すとはね」

 

弥勒は人知れず目的地へと歩いていた。自分の目的を果たすために。

 

「やはり彼には伝えないといけないね。『真実』って奴を」

 

 

 

 

 

「う……俺は……一体……」

 

「よぉ……目ぇ覚めたか…さっきお前の親父さんが術を解いたよ。今日はここまでだって」

 

目を覚ますと全身ボロボロになった炎佐が寝そべってた。

 

「炎佐……お前も酷くやられたな……」

 

「あぁ…格が…全然違った…」

 

どうやら炎佐もスピノサウルスに返り討ちにあったらしい。よく見ると服や髪の毛の一部が焦げていた。

 

「こっちの攻撃が全然効かない上に信じらんねぇ威力の炎を吐いてくるし…なんだよアレ…どっやったら勝てるんだ…?」

 

炎佐はため息を吐きながら身体を少しでも楽な体勢にしようと横になった。

 

「今は少しでも身体を休めるぞ、次の訓練までに体力を取り戻さないと」

 

「そうだな…同意見…」

 

瞬間、疲労が限界まで達し俺はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「おりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

次の日、俺と炎佐は再びティラノ、スピノの対峙していた。しかし

 

「グォォォォォォォン!!」

 

「ギャオォォォォォン!!」

 

2匹の恐竜の力は凄まじくこちらの攻撃はびくともしない。そして

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

ティラノの体当たりが、スピノの火球が俺達を飲み込みその日も見事なまでにやられてしまった。

 

 

 

 

「だ…大丈夫か炎佐?」

 

「なんとかな…痛て…」

 

休憩時間、ボロボロになった身体を休めるため俺達は地面に寝っ転がっていた。あれからティラノとスピノに傷一つつけられない。このままでは彼らを屈服させワイルドギアを使いこなすのは夢のまた夢だ…でも

 

「なぁ炎佐、このままで良いのかな?」

 

「そうだな、今のままじゃ勝つことなんて…」

 

「いやそうじゃなくて…」

 

「…?」

 

「親父は『屈服させろ』って言ってたけど…なんかしっくりこないんだよなぁ…」

 

鉄心様にワイルドギアのコントロール方法を教えてもらうために来たのだけど…なんだか妙にしっくりこない…なんだか妙なモヤモヤが頭から離れない

 

「そういやあの人お前の親父なんだってな。どうりで似てると思ったよ」

 

「…ごめん、そう言われてもあんまり喜べないや」

 

「仲悪いのか?親父さんと…」

 

炎佐の質問に俺は少し黙ったが喋り始めた。

 

「あの人さ、俺が6歳の時に俺をじいちゃんに預けてからずっと会ってなかったんだよ。この前帰ってくるまでずっと」

 

「…まじか?」

 

「学校の参観日も、誕生日も、公園でキャッチボールをするなんてありきたりな思い出も碌にないんだ」

 

わかってる。あの人は俺の父親だ…あの人と母さんがいたから俺が産まれた。それは紛うことない事実なのだ…だけど、だからといって…

 

「父親だって…胸を張って言えないんだよ…」

 

「竜司…」

 

「わりぃ、ちょっと顔洗ってくるわ」

 

そう言うと竜司は立ち上がりその場を去っていった

 

「やれやれ、竜舌の奴はずいぶん息子に嫌われてるようだな」

 

するとそこへ鉄心が水のペットボトルを2つもってやってきた。

 

「ああ…あんたか、ありがとよ」

 

「ふん」

 

炎佐はペットボトルを受け取ると鉄心は隣の壁に寄りかかる。

 

「…かつて、半蔵様には4人の弟子がいた。」

 

「は?弟子?」

 

突然鉄心が喋り出す。

 

「俺と竜舌、それとあのボウズの教師の霧夜、それともう1人…その4人は半蔵様の教えの元、忍として活動していた。」

 

「あいつの親父…半蔵の弟子だったのかよ…!!なるほどどおりで…ってかあんた達って同期なのかよ!?」

 

衝撃の事実に炎佐は思わず驚いた。

 

「しかし10年前、弟子の1人が裏切りスカルキーの封印を解いた。それによりスカルの犯罪が起こり出したんだ。スカルキーに対抗できるのはカグラドライバーしかない。しかし、肝心のカグラドライバーは300年前の戦いにより力を失っていた。」

 

「…それは知ってる。俺のカグラドライバーもそうだったからな」

 

「知っての通りカグラドライバーは我々にとってトップシークレット、ましてスカル達にその復元の情報なんて知られてはならない。その復元を任されたものは政府管轄の元、表立って行動出来ん」

 

「…まさか!!」

 

鉄心の話に炎佐は真実に気づいた。

 

「そうだ、その復元を任されたのが竜舌だ。奴はカグラドライバー修復のために当時からオーバーテクノロジーだったカグラドライバー解析にあたったよ…ドライバー復元の為に全ての時間を費やし全国を駆け回り当時の資料を集め、技術班と協力をしてドライバーの復元を果たした…息子との時間を切り捨ててまでな…」

 

「なんだよそれ…でもドライバーが復元できたんだろ?だったらもう真実を伝えても…」

 

「俺もそう言ったよ…だがな、あいつはこう言った」

 

『今更真実言ったってあいつを10年もほったらかしにしてた事実は変わんねえよ…あいつの怒りを受け止めんのが俺にできる唯一の罪滅ぼしなんだよ』

 

「まったく…あいつは本当に不器用な男だよ。忍としても、父親としてもな」

 

鉄心はため息を吐きながらどこか寂しそうに呟いた。

 

「…やっぱり親子だな、仮に竜司が同じ立場だったら絶対にそうするよ」

 

「ふっ…違いない」

 

 

 

 

 

 

 

「あ…」

 

「ん?どうした?」

 

俺が歩いていると親父が水を飲んで休憩していた。

 

「…ちょうどよかった。あんたに聞きたいことがあったんだ」

 

俺は親父の隣に座って話しかける。

 

「『恐竜を屈服させろ』なんて言ってたけど本当にそれで良いのか?」

 

「ほぉ?」

 

「なんだか…恐竜を無理やり従わせるのって…なんかどうもしっくりこなくて…」

 

「…くくっ」

 

「な、なんだよ急に笑い出して…」

 

俺の話を聞いてると親父は突然笑い出す。

 

「いや、別に気にすんな。なるほど、しっくりこないか…」

 

すると親父は俺の頭を撫でる。

 

「お前が納得のいく形でやればいい」

 

「え?」

 

「『屈服させろ』なんてのはあくまで一番手っ取り早い方法ってだけだ、お前がそれで納得いかないならお前のやりたいようにやればいい」

 

「親父…」

 

「心配すんな、お前ならきっとできる。なんだってお前は母さんに似てるからな」

 

そう言うと親父は立ち上がって去っていった。

 

「…『母さんに似てる』か」

 

その言葉に少し引っかかりながらも俺は親父の背を見つめ続けた。

 

 

 

 

「いよいよ明日…炎佐達と戦うのか…」

 

秘立蛇邪学園では、仮面ライダーガルーダこと蒼良が窓から月を見ていた。

 

「正直想定外だけど…問題ない」

 

「…義兄さん」  

 

「お兄ちゃん…」

 

「ん?」

 

ふと声が聞こえて振り返ると同じく新蛇邪選抜メンバーの両備と両奈が立っていた。

 

「両備…両奈…」

 

「大丈夫なの?あのガリューって奴、噂じゃ相当強い奴って聞いたけど…」

 

心配そうにする両備と両奈に蒼良は優しく微笑んで2人の頭を撫でた。

 

「大丈夫だよ、2人は気にしないで学炎祭に集中していればいい」

 

「…わかった。けど無理はしないでよ」

 

「わかったよ」

 

蒼良は頷くとそのまま立ち去る。そして2人が見えなくなると目を鋭くする。

 

「待っててくれ」

 

『蒼良、もし私に何かあったらあの子達を守ってあげて』

 

そして思い出す。2人が尊敬し、自分が愛した彼女のことを

 

「必ず君の無念は果たして見せるよ…両姫。」

 

 

 

 

 

「さて、いよいよ3日目…月閃の奴らが傷を治して万全の体制になって攻めてくるのを考えれば今日中には成果が欲しいところだが…モヤモヤは晴れたか?」

 

3日目、炎佐と俺は結界内で恐竜達を待ち構える

 

「…正直わかんねえ。けど、俺は俺の納得のいくやり方でやろうと思う。」

 

「ふっ、じゃあ俺もそうするかな」

 

「ギャオォォォォォン!!」

 

「グルァァァァァァァ!!」

 

そして俺たちの目の前にティラノサウルスとスピノサウルスが現れ雄叫びをあげる。

 

「よし、いくぞ!!」

 

「おう!!」

 

 

 

「雰囲気が変わったな…これならいけるかもしれん」

 

モニターから2人の様子を見ていた鉄心はニヤリと笑いながら呟く

 

「頼んだぞリューマ、ガリュー…お前達は我ら忍の希望なのだからな…」

 

やはり彼らを信じてよかった、あの2人ならきっとワイルドギアをものにすることが出来る。我々の長年の成果が身を結ぶ。

 

その時、建物のどこかから轟音が響き渡る

 

「どうした!!何があった!?」

 

「鉄心様!!」

 

すると突然部下の1人が慌てた様子で駆けつけてきた。

 

「大変です!!スカルの連中にここの情報が漏れました!!現在連中の襲撃にあってます!!」

 

「なんだとぉ!?」

 

部下の言葉に鉄心は驚愕する。この施設は忍の中でも一部のものしか知られていない。仮に知られても周囲に張られた結界により厳重に守られているのだ。

 

「とにかくすぐに迎え撃つんだ!!なんとしても竜司達がワイルドギア制御を果たすまで持ち堪えろ!!」

 

「はっ!!」

 

鉄心の指示に部下は即座に行動を開始した。

 

「…まさか、あいつか?だとしたらマズイ!!」

 

 

 

「止まれ!!ここは貴様らが来ていい場所ではない!!」

 

武器を構える忍達の視線の先にはアントスカルやアーミーアントスカルを引き連れた黒髪の青年、弥勒が歩いていた。

 

「悪いけど…君たちに用はない」

 

そういうと弥勒はスカルドライバーを取り出して腰にはまる。

 

『ヴァンパイア!!』

 

そして金色のスカルキーを起動するとそれを宙へと放る。すると、ヴァンパイアキーは自らスカルドライバーへと挿し込まれて回り黒い泥に包まれ、血のように紅い鎧と闇夜のように黒いマントに身を包んだヴァンパイアを彷彿させるスカル、ヴァンパイアスカルへと変身した。

 

「くっ…かかれぇ!!」

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

忍達は目の前の怪物を前に覚悟を決めて一斉にかかる。

 

「悪いけど…向かってくるなら容赦しないよ」

 

 

   

 

 

それから一瞬だった。一人一人が歴戦の忍である精鋭部隊、彼らはほとんど何もできないままたった1人のスカルに返り討ちにあい地面に倒れ込んでいた。かろうじて息はあるがもはや戦闘不能である。

 

「さて、彼を迎えにいくか」

 

こうして、スカルの頂点である陛下こと弥勒は建物内へとゆっくり入って行った。



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其の四十八 吸血鬼と語られる真実!!の巻

 

彼は人類に絶望した

 

ある時は親友の妻を死に追いやった者たちに

 

またある時は特別な力を持つ少女を『化け物』と呼び迫害する者たちに

 

そして進化が停滞し数千年間同じような争いを繰り返す愚かな人類そのものに

 

しかしだからと言って人類を滅ぼそうとは思えなかった

 

なぜなら彼は知っていたからだ

 

彼らの中に存在する光の尊さを

 

故に彼は決断した

 

「人類を進化させよう」と

 

 

 

 

 

警備の忍達が倒れ炎が立ち込める研究所内を弥勒は悠々と歩く。

 

「ん?」

 

すると前方から新たな忍たちが現れ立ちはだかった。

 

「まさかこんなにも堂々と攻めてくるとは思わなかったぞ弥勒」

 

最前線に立つ忍最高幹部の鉄心がこちらを睨みつけながらそう呟く

 

「やあ、久しぶりだね鉄心。昔に比べてだいぶ老けたかな?」

 

「そういうお前は全く変わらんな。あの日のままだ」

 

自身を取り囲む忍に動じる様子もなく弥勒は懐かしそうに微笑みながら鉄心に話しかけ鉄心はそんな彼に皮肉を言った。鉄心の言う通り弥勒の姿は若々しく一切の老いを感じない

 

「もはや人を捨てたのだろう?」

 

「捨ててはないさ、ただ君たちより先に進んだだけだよ」

 

「ふざけるな!!」

 

弥勒の返答に鉄心は怒りを込めて叫ぶ

 

「やはりあの日…お前が俺たちを…半蔵様を裏切ったあの時に倒せていればこんなことにはならなかった…!!」

 

「そうだね、先生は勿論、君も霧夜も…そして竜舌も僕の誘いを拒んだ。だから敵対することになったんだ」

 

弥勒は寂しそうに上を見上げると再び鉄心を見つめる。

 

「どいてくれないか?僕は彼を迎えに来たんだ」

 

「狙いは竜司か…」

 

弥勒の狙いに気づいた鉄心はさらに顔を硬らせる。

 

「当たり前じゃん、君たち忍はあれから何も学んでない。まさか君たち自身がワイルドギアに手を出すなんて思いもしなかったよ。それに関しては…『見損なった』としか言えねえよ」

 

瞬間、弥勒は怒りに満ちた形相を浮かべ鉄心を睨みつける。

 

「ふん…貴様にそれを言う資格があると思うのか?お前がスカルの力を目覚めさせなければこんなことにはならなかった。」

 

「なるほど、そう言う考え方も出来るね。だけど竜司くんは連れて行かせてもらう。彼のような人間こそ新たな人類史を築く同胞に相応しい」

 

「…させると思うか?」

 

鉄心が指を鳴らすと突如として空間が揺らぎ辺りの景色が変わった。

 

「これは…忍結界か?それにしてはかなり大規模なものだ…」

 

辺りを見渡すと自身の周りにいたアントスカル達が見当たらない

 

「連動忍結界、複数の忍が同時に忍結界を張りそれを束ねることで大規模な忍結界を展開させる高等技術だ。かつて霧夜の教え子が開発した」

 

「すごい技だな…しかし霧夜の教え子か…教師に向いてると思ってたけどここまですごい術を編み出す教え子を育ててたなんて…」

 

ふと見ると自分を取り囲むように手だれの忍が大勢武器を構えていた。

 

「でも僕を倒せるのかい?忍の力でスカルである僕を」

 

「倒せるさ、そのための10年さ」

 

「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 

鉄心の合図とともに忍達は弥勒へと武器を構えて飛びかかった。

 

「…面白い」

 

『ヴァンパイア!!』

 

弥勒は再びヴァンパイアスカルへと変身して忍たちを迎え撃つ

 

『ラプトル!!』

 

『ラプトル!!』

 

「なっ…!!」

 

すると、忍達が手にした鍵穴の付いたブレードに起動したキョウリュウキーを挿し込み斬りかかってきた。さらにその武器を銃へと変形させると怯んだヴァンパイアスカルへと放つ。なんとか回避するが肩は銃弾で撃ち抜かれ腕には斬り傷があった。

 

「まさか…キョウリュウキーの量産に成功してたのか…!?」

 

「そうだ、我々はお前がスカルとなったあの日からずっと力を築いてきたのだ!!全てはお前を倒し、この国を守るためにな!!」

 

鉄心の力強い言葉とともに精鋭の忍たちがヴァンパイアスカルを取り囲んだ

 

「これで我々忍も戦える…いかに貴様でもこれだけの精鋭を相手に出来るかな!?」

 

「そう言えば…昔もチームを組む時は君がいつも指揮をとっていた…なるほど、少し君たちを侮っていたみたいだ…」

 

想定外の事にヴァンパイアスカルはクスリと嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「その余裕も今日までだ!!かかれぇ!!」

 

「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

鉄心の指揮とともに専用武器を手にした忍たちはヴァンパイアスカルへと攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

「でもまだ足りないね」

 

瞬間、地中から突如として血の様に紅い槍が突き出し忍たちへと襲いかかった。

 

「なっ…!!」

 

突然のことに鉄心も驚きを隠せずにいた。

 

「見事な采配だったよ。戦力の配置、敵を罠に嵌るまでの流れ…その後の攻撃での連携…どれをとっても完璧だった。並のスカルは愚かロードスカルでも危うかっただろうね」

 

そう言ってヴァンパイアスカルは右手に紅い血を集結させ鋭い爪を顕現させる

 

「けとそれじゃあ僕は倒せない」

 

 

 

 

 

 

 

それから僅かな間に鉄心が集めた精鋭は弥勒の前に敗れ去った

 

「ば…莫迦な…」

 

あまりのことに鉄心はただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。この10年の間で自身の想定を遥かに超える力を得た弥勒に何も出来なかったのだ

 

「さて、それじゃあ僕はもう行かせてもらうよ」

 

変身を解いた弥勒はそう言うと鉄心の横を通り過ぎようとする。

 

「っ!!そうはさせん!!」

 

我を取り戻した鉄心はすかさず銃を抜いて弥勒へと放つ

 

「遅いよ」

 

「がっ…」

 

しかしそれよりも早く地中からの槍が鉄心の腹を貫いた

 

「最後まで折れないところも変わらなかったね鉄心…」

 

地面に倒れた鉄心を見つめながら弥勒は寂しそうにそう呟き静かに去っていった。

 

「み……ろ……く……」

 

倒れた鉄心は薄れていく意識の中、脳裏に浮かんだのはかつて仲間たちと理想を語り合った懐かしき日々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、竜宮結界内では

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

「おりゃぁぁぁ!!」

 

竜司と炎佐がティラノサウルスとスピノサウルスと戦っていた。

2人の攻撃は何度も恐竜たちに炸裂しているがびくともしない。

 

「グォォォォォォォン!!」

 

「ギャォォォォォォン!!」

 

そして反撃と言わんばかりにティラノサウルスは噛みつき攻撃を、スピノサウルスは紅蓮の炎を纏った爪を繰り出していく

 

「「うわぁぁぁぁぁ!!」」

 

その攻撃に俺たちは吹き飛ばされ壁に激突した。その体は両者とも満身創痍ですでに何度もやられたのが分かった。だが…

 

「まだまだぁ!!」

 

「舐めんなぁ!!」

 

竜司も炎佐も諦めずに何度も立ち上がり恐竜たちへと立ち向かう。

 

「グルルルルル…」

 

何度力の差を見せつけても折れずに立ち上がる2人を2匹の恐竜はじっくりと見つめていた。

 

「炎佐!!やっぱりこいつら…」

 

「あぁ!!間違いない…俺たちを見定めてる!!」

 

ティラノもスピノも試しているんだ、俺たちが自分の全力を受け止めるに足るかどうかを…人間の俺たちに…恐竜の力を使いこなせるのか…ならば、俺たちのやることはただ一つ

 

「全力でぶつかって…」

 

「こいつらの期待に応える!!」

 

そして俺たちは再びティラノとスピノに飛び掛かる。しかし、殴っても蹴っても恐竜の体にはびくともしない。そもそも生物としての格が違うのだ。しかし、

 

「あき…らめるかぁぁぁあ!!」

 

俺はティラノの背中に力を振り絞ってがっしりとしがみつく

 

「グルァァァァァ!!」

 

ティラノは俺を振り解こうと目一杯体を振り回した。

 

「ぐ…くそぉぉ!!」

 

俺は振り落とされまいと必死に力を込める。すると

 

「…え?」

 

不思議なくらいに力を感じずティラノにしがみついていた。先ほどまでの辛さが嘘の様に、まるでティラノと一体化したかの様な気がした。

 

「グルァァァァァ!!」

 

「うわぁ!?」

 

気の抜けた一瞬、ティラノに振り落とされ俺は地面に落下する

 

「竜司!!お前今…」

 

炎佐も俺の様子に気づいて慌てた様子で近づく

 

「掴んだ…!!」

 

今確かに俺はティラノの全力に耐えていた。いや違う、乗りこなしていた。

 

「炎佐!!わかったぞ!!力に抗うんじゃない…抗っちゃダメだったんだ!!」

 

そう言って俺は再びティラノの背中に跨る。

 

「グルゥ!?」

 

ティラノはそんな俺に驚きオレンジ色のオーラを纏って再び俺を振り落とそうとする。しかし

 

「はあっ!!」

 

俺は振り落とされないことに神経を注いで息を整え耐える

 

「どうした!?俺はまだ余裕だぞ!!」

 

「グォォォォォォォ!!」

 

ティラノは雄叫びをあげながら暴れるが先ほどよりも安定して掴まっていられる。

 

「ははっ…やっぱりそうだった」

 

俺たちは今までずっと恐竜たちとぶつかることしかしなかった。ワイルドギアをものにするために…恐竜を屈服させなきゃいけないって…でも、それじゃあダメだったんだ!!

 

「力は飲み込まれるものても…押さえつけるものでもない…力は、合わせるものだったんだ!!」

 

あの時感じたティラノと一体になる…ティラノと呼吸と力を合わせる感覚…それを再び掴めれば今度こそいける!!

 

 

 

 

「…ははっ!!なるほどそう言うことか…!!」

 

竜司の様子を見た炎佐はニヤリと笑ってスピノを見つめる。

 

「スピノ…俺たちもやってみるか!!」

 

「グルァァァァァ!!」

 

スピノは全身に炎を纏って炎佐へと突進する。

 

「ほらよ!!」

 

炎佐はそれをひらりと躱すと竜司の様にスピノの首と背鰭の間に跨る。

 

「見せてやるよ、俺の全力って奴を…だからお前も本気でこい!!」

 

「ギャオォォォォォン!!」

 

スピノは雄叫びをあげると全身の炎を更に燃え上がらせ全力で駆け出す。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「グォォォォォォ!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ギャォォォォン!!」

 

竜司はティラノに、炎佐はスピノに跨る。2匹の恐竜は凄まじいパワーで走り暴れ回る。しかし気づけば2人は振り落とされることなく乗りこなしていた。暴れ馬を乗りこなす騎手の様に2人は恐竜を乗りこなしていたのだ。

 

「よっしゃぁ!!見せてみろティラノ!!お前の力を!!」

 

「スピノ!!お前の本気をあいつらに見せつけてやれ!!」

 

「グォォォォォォォ!!」

 

「ギャォォォォォン!!」

 

2人の指示と共にティラノとスピノは互いへと体当たりを繰り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

「…ここか」

 

竜宮結界の前にたどり着いた弥勒は結界に入ろうとゆっくりと近づいた。

 

「待てよ弥勒」

 

すると、苦無を手にした竜舌が弥勒の前に立ち塞がった。

 

「…術を維持したまま結界の外に出る。そんな高等技術を習得してたなんて自称『落ちこぼれ』が聞いて呆れるよ」

 

「落ちこぼれさ、だから人より多く練習した。俺がそう言う奴だってのはお前が一番よく知ってるだろ?」

 

竜舌は弥勒にそう返すと苦無を構える。

 

「こっから先には行かせねえぜ」

 

「邪魔しないでくれよ。君では僕には勝てないのは知ってるだろ?あの日、僕を殺せなかった様に」

 

その言葉に竜舌は目を瞑り思い出す。地面に倒れた自分を見下ろす様に見つめる血だらけの弥勒を

 

「だからって…退くわけねえだろ」

 

しかし竜舌は笑みを浮かべて立ちはだかる。

 

「俺はあいつの父親だからな」

 

後ろにいる息子を守るために

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…すごいなお前…こんな力があったのか…」

 

「ははっ…さすがは地球最強の生物、恐竜だよ…」

 

「グルルルル♪」

 

「ギャウッ♪」

 

俺たちを乗せた恐竜たちは嬉しそうに鳴き声をあげた。あの後俺たちは恐竜の力を乗りこなしておりいつのまにか炎佐とスピノとぶつかり合い互いの力を引き出し合ってお互いが疲れるまで戦っていた。

 

「なぁ…これでわかったろ?俺たちはお前らの全力を受け止められる」

 

「だからさ、俺たちと一緒に戦ってくれ」

 

寝っ転がりながらティラノとスピノに俺たちは手を伸ばす

 

「グルルルルル…」

 

そんな俺たちを2匹の恐竜はじっと見つめていた。

 

その時

 

「な、なんだ!?」

 

突如空間が揺らぎ始めた。

 

「これって…忍結界が解ける時の…!!」

 

そう言えばさっきから親父の気配がない…

 

「まさか…外で何が合ったのか!?」

 

「竜司、気をつけろ!!何か来るぞ!!」

 

するとガラスが割れる様な音と共に竜宮結界が解けてしまった。そして俺たちの目の前にある男がいた。それは…

 

「弥勒…!!」

 

「こいつは…スカルの親玉!?」

 

そう…スカルたちを統べる親玉、弥勒であった。

 

「やあ、久しぶりだね竜司。」

 

「お前…なんでここに!?親父たちはどうした!?」

 

「ああ、彼らかい?ほら、あそこ」

 

弥勒が指差した先には親父が傷だらけのまま壁に寄りかかっていた。

 

「親父!?」

 

「はぁ…はぁ…竜司…逃げろ…!!」

 

俺たちに気づいた親父はふらつきながらも再び立ち上がる。

 

「んなこと…出来るわけねえだろ!!」

 

俺たちは親父を背に弥勒に立ちはだかった。

 

「…竜司くん、君はなぜそうまでして戦うんだい?」

 

突然弥勒は俺に宗聞いてくる。

 

「そんなの…『世界一カッコイイ忍者』になるために決まってんだろ」

 

『世界一カッコイイ忍』…今も昔も変わらない俺の夢、その夢を目指して俺はここまで頑張ってきた。いきなり何を聞いてくるんだ…

 

「竜司くん…君は騙されてるんだ。忍の世界は君が思っている様なものじゃない。それどころか…君の母親だって…」

 

それを聞いた途端、弥勒は俺を憐れむ様に見つめ突然話し始める。

 

「何を…」

 

「竜司!!聞くな!!」

 

突然親父は慌てる様に俺へと叫ぶ。しかし弥勒は構うことなく喋り続ける。

 

「ワイルドギア…恐竜の潜在能力を引き出し高い力を発揮できる様になる。だが恐竜の力に体は耐えられなくなり自我を呑まれていく…おかしいと思わないかい?なぜそんなことがわかるのかって」

 

「えっ…?」

 

言われてみれば確かにそうだ…なぜそんなことがわかる?それこそ実際に試さないとわからないのに…

 

「試したんだよ。昔、忍にワイルドシステムを搭載したドライバーを装着させ新たな軍事力とする計画があったんだ」

 

「なっ…!!」

 

そんな計画がこの国にあったのか…!!でもそれと母さんの死になんの関係が…

 

「その計画を実行したのが善忍の中にある暗部の一つだった。彼らは自分たちの部隊の忍にワイルドギアを搭載したドライバーを使わせた。だが当時のワイルドギアの副作用は今のものよりも大きく被験者は次々と死んでいったよ…その中で唯一適合したのが君の母親の叶だったんだ」

 

「母さんが元暗部…!?」

 

衝撃の事実に俺は驚きを隠せない

 

「だがそんな彼女も副作用により体はどんどんボロボロになっていった。それでも上層部は構わず彼女にドライバーを使わせてデータを集めさせたんだよ。その結果彼女は君を産んでたった1年で命を落とした…つまり君の母親を殺したのは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「善忍そのものなんだ」

 



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其の四十九 超絶にワイルド!!の巻

 

「う〜」

 

「なんだまだ悩んでるのか?」

 

「…うん」

 

竜舌が声をかけると長い黒髪を靡かせた女性は手に持ってた『赤ちゃんの名前』と書かれた本をテーブルに置く。彼女のお腹は大きく膨らんでおりそこに新しい命が宿っているのがわかった。

 

「この子には素敵な名前をつけてあげたいの。名前はその人を彩る大切なものだから…貴方が私に付けてくれた『叶』のように」

 

黒髪の女性、叶は頬を紅く染め竜舌の手を握る。

 

「ははっ、よせよ照れるぜ」

 

「ううん言わせて、貴方が付けてくれたこの名前がただ人を殺すだけの兵器だった私を人間にしてくれたの。だから今度は私がこの子に素敵な名前をつけてあげたい」

 

「…そうか」

 

「…っ!!ゲホッゲホッ」

 

「叶!?」

 

突然叶が咳き込み竜舌は慌てる。

 

「大丈夫か!?」

 

「だ、大丈夫…ちょっと咳き込んだだけ…」

 

心配する竜舌を宥めると叶はペットボトルの水を飲んで落ち着く。

 

「やっぱり結構体ボロボロになってるなぁ…」

 

「大丈夫だ、医者の話じゃこのまま無理しないで安静にしていれば徐々に治っていく。それまでの辛抱だ」

 

「…そうだね。ちゃんと生きないと、この子のお母さんになるんだから」

 

「ああ、俺たちでこの子を幸せにしような」

 

 

 

 

 

 

「ふふっ可愛い」

 

「ははっそうだな」

 

それからしばらくして叶は自身が産み落とした赤ん坊を抱き上げていた。その横では竜舌が優しく赤ん坊を見つめている。

 

「そういやこの子の名前は決まったのか?」

 

「うん、この子の名前は竜司!!」

 

竜舌の問いに叶は得意げに答えた。

 

「どんな意味があるんだ?」

 

「えっとね…_________」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1年後、叶は息を引き取った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の母親を殺したのは…善忍そのものなんだ」

 

弥勒の語った衝撃の事実にあたりは凍りつく

 

「まさ…か…善忍の世界にそんな闇があったなんて…」

 

悪忍である炎佐もその闇の深さに信じられずにいた。

 

「竜司くんの母親だけじゃない。それ以前にも数え切れないほどの忍にドライバーを使わせてその命を奪ってきた。それだけの犠牲を作っておきながら今の善忍どもは再びワイルドギアに手を出して叶の息子である君に使わせた…わかるかい?君は実験台にされてるんだよ」

 

「…………………。」

 

弥勒の言葉を聞きながら竜司はずっと俯きながら黙っていた。

 

「忍の世界は君が思ってるようなものじゃない。ううん、そもそも今の人間そのものが間違ってるんだ。それを今見せてあげよう」

 

「ま、待て弥勒…!!」

 

竜舌が止まる間も無く次の瞬間、弥勒から禍々しい光が放たれ周囲を包み込んだ。

 

 

 

 

 

「ここは…」

 

気がつくとそこは漆黒の闇の中だった。辺りを見渡すと何も見えず上も下も区別がつかないにも関わらず何故か竜司、炎佐、竜舌、弥勒の姿だけがはっきり見えた。

 

「ここは僕の心象世界、まぁ忍結界の応用だよ。ここでは僕の思い描いた映像を見せることができる。ほら、始まるよ」

 

すると、闇の中から何かの景色が見えてきた。

 

 

 

 

 

『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

『がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

人が争っていた。手に持った石斧や槍を手に殺し合っていた。辺りに血が流れ次々と人が死んでいく

 

「次だ」

 

その光景が消えてまた別の光景が見える。

 

『殺せぇぇぇぇぇぇ!!』

 

『奴らを1人も生かすな!!』

 

『皆殺しにしろぉぉ!!』

 

そこでも殺し合いが行われていた。時代が変わり武器が鉄になり集落から国に変わっても同じ争いが行われていた。

 

「次だ」

 

次の光景も

  

「次だ」

 

次も

 

「次」

 

何度も争いは繰り返されていた。

 

「人間は力ではなく知能を進化させることで文明を気付き上げた。それが悪いと言うわけではない。でもその結果、その知識を受け止める器たる肉体は脆くなってしまった。彼らは知識を身につけるその前に自身も強く進化しなければいけなかったんだ。だからこそ人はわずか数百万年で進化が滞りこの星を唯貪るだけの存在に堕ちてしまった。」

 

弥勒はそのままずっと俯く竜司へと歩き出した。

 

「竜司くん、僕は何も人類を滅ぼしたいんじゃない。ただ今の人類は無意味に星に巣食うだけの獣だ。人類は今こそ進化しなくてはいけないんだよ。より高位の生命体とならない限り人類は滅びるだけだ。」

 

「聞くな竜司!!」

 

そこへ慌てながら炎佐は竜司へと叫ぶ

 

「奴の言葉に惑わされるな!!奴はこれまでもスカルを増やしてその結果罪もない人々を食い物にしてるんだぞ!!」

 

「今の人類が悪戯に死なせてきた数に比べればほんの一握りさ。寧ろ大義もなく唯殺す分なお悪い。」

 

「ふざけんな!!テメェは…」

 

「竜司!!」

 

そこへ竜舌がふらつきながら竜司へと叫ぶ

 

「頼む!!お前だけは堕ちないでくれ!!お前の…竜司って名前は…」

 

 

 

 

 

 

 

『えっとね…まず竜舌と同じ「竜」は絶対付けたかったの。竜は唯強いんじゃなくてこの国を護る聖なる生き物…つまり、「竜の力を司り、みんなを笑顔にする優しい子になってくれますように」って言う私の願いをこめたの』

 

 

 

 

「叶は…お前にそう願いを込めて『竜司』って名前を付けたんだ!!力で誰かを傷つけるんじゃない!!護れるようにとその名前をお前に付けたんだ!!俺もそうだ!!10年もほったらかしにして『どの口が言うんだ』って思うけど…お前を愛している!!これは紛うことなき本心だ!!だから…!!」

 

 

 

 

「うるさい!!」

 

 

 

 

瞬間、ずっと黙っていた竜司が叫んだ。その言葉を聞いた弥勒はクスリと笑う。

 

「そう、その通りだ。今まで君を置き去りにし、あろうことか母親を殺した力を君に使わせといてよく言えたものだよ」

 

そう言うと竜司へと手を伸ばす

 

「さあ、共に行こう。そして人類を正しく導いていこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさい」

 

瞬間、竜司は弥勒の手を払った。

 

「…え?」

 

「なるわけないだろ、お前の仲間になんて」

 

「な…!!」

 

竜司の否定を予期してなかったのか弥勒は激しく動揺していた。

 

「親父も親父だ。『堕ちないでくれ』じゃねーよ!!本気で俺が人間見限ると思ったのかよ……んなわけあるかぁ!!」

 

「竜司…」

 

 

 

 

 

 

「まったく、みんなして俺を疑って…」

 

俺はやれやれとため息を吐きながら弥勒を見つめる。

 

「馬鹿な…君も見ただろう!?人間の醜さを…そして知っただろう!?君の母親の死の原因を!?何故…何故それでもなお忍を信じられる!?何故今の愚かな人間を変えようと思わないんだ!!」

 

弥勒は激しく取り乱し俺へと詰め寄る

 

「俺だってわかってるよ。人間が綺麗なだけじゃないって…でも」

 

瞬間、辺りの景色がどんどん変わっていく

 

「これは…まさか!!僕の心象世界を自身の心象世界に上書きしているのか!?」

 

新しく写った映像は部屋の本棚に寄りかかり一冊の本に一生懸命読んでる1人の少年がいた。

 

「あれは…竜司?」

 

『すげ〜カッコイイ〜!!』

 

幼い俺が読んでいるのはヒーローのような忍装束を着た忍者が描かれた子供向きの絵本だった。悪い奴からみんなを助け笑顔を守るカッコイイ忍者…それを俺は目を輝かせながら嬉しそうに見て憧れていた。

 

「よし決めた!!俺、『世界一カッコイイ忍者』になる!!」

 

それは俺が、『この夢を絶対に貫き通す』と決意した瞬間だった。

 

「忍の闇も、人間の醜さも関係ない…俺は俺の中の『世界一カッコイイ忍者』を目指す!!それが俺の、誰にも譲れない思いだ!!進化だなんだと理由をつけて…人を平気で傷付けるあんたと手を組むなんて…そんなダサい真似ができるかよ!!」

 

「ははっ…あははは…!!」

 

俺の言葉を聞いた炎佐が嬉しそうに笑い出す。

 

「そうだよな…お前はそう言う奴だったっけ…!!そんな奴に惑わされるわけねえよな」

 

そう言いながら炎佐は落ちていたカグラドライバーを拾い上げ腰に付けた。

 

「よし、それじゃあ行こうか」

 

俺は炎佐に続くようにカグラドライバーを拾い上げ装着する。

 

「グォォォォォォォ!!」

 

「ギャオォォォォォ!!」

 

その瞬間、恐竜達の雄叫びが響き凄まじいエネルギーが俺達から溢れ出るとそれぞれの手に集まり鍵へと形を変えた。

 

「これって…」

 

「あぁ…一緒に戦ってくれるってことだ!!」

 

『ガウッ♪』

 

『ギャウギャウ♪』

 

鍵からはティラノとスピノが『その通りだ』と言わんばかりに嬉しそうに鳴く声が聞こえてくる。

 

「よっしゃいくぜ炎佐!!俺達の変身だ!!」

 

「ああっ!!」

 

『『ワイルドオン!!』』

 

俺達はワイルドギアをドライバーに装着する。

 

『超絶ティラノ!!』

 

『超絶スピノ!!』

 

そして新たなキー『超絶キー』を起動して鍵穴に挿し込んだ。

 

『『ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!』』

 

ベルトから音声が流れ鎖から解き放たれたティラノとスピノが俺達の隣に並び雄叫びを上げる。

 

「「変身!!」」

 

『『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』』

 

『超絶キー』を回すとティラノとスピノが俺達に飛び込み身体を覆い尽くすと全身を忍甲冑の様な装甲へと変貌し仮面ライダーリューマ超絶と仮面ライダーガリュー超絶へ変身した。

 

 

 

 

 

「あ…あれが…」

 

竜舌はリューマ超絶とガリュー超絶の凄まじい姿に驚きを隠せずにいた。そしてそれは弥勒も同じであった。

 

「なんだ…その姿は…!?まさか…本当に使いこなしたのか!?ワイルドギアの力を!?」

 

「試してみるか?」

 

「俺達は構わねえぞ」

 

「くっ…あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『ヴァンパイア!!』

 

俺達の返答に弥勒は苛立つように叫びながらヴァンパイアスカルキーを起動してスカルドライバーに挿しこみ回してヴァンパイアスカルへと変身する。

 

「君達は…倒さなくてはいけない…倒さずにはいられない!!こんなに頭の中がグチャグチャなったのは初めてだ!!」

 

今まで見せたことがないような怒りを露わにしてヴァンパイアスカルは俺達に襲いかかった。

 

「ふんっ!!」

 

しかしその攻撃を俺は片手で受け止める。

 

「なっ…!?」

 

「オリャァ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

そして動きの止まったヴァンパイアスカルにガリュー超絶がパンチを叩きつけ吹き飛ばした。

 

「くっ…」

 

ヴァンパイアスカルは2人に地面から無数の紅い槍を放つ

 

「ふっ!!」

 

「無駄だ!!」

 

しかし俺達はそれを超スピードで躱してヴァンパイアスカルへと反撃の連打を繰り出した。

 

「このパワー…このスピード…!!間違いなく恐竜の力…いや、それだけじゃない…どう言うことだ!?!!」

 

「簡単なことだ。俺達は恐竜達と…相棒と一緒に戦ってるんだ!!」

 

恐竜の力に流されるでもなく無理やり従えるでもない。力を合わせ、共に戦うことで更なる力を引き出す。それが超絶の力である!!

 

「竜司!!炎佐!!」

 

すると親父が俺達へとアタッシュケースを投げ渡す。

 

「そいつはワイルドの力をモノにした時に渡すはずだったお前達の専用武器だ!!使え!!」

 

「親父…ありがとな!!」

 

俺は親父に礼を言ってケースを開く。するとそこには巨大な剣のような武器『ワイルドブラスター』が入っていた。

 

「やっぱりいい親父じゃねえか」

 

「…かもな!!」

 

俺は『ワイルドブラスター』を剣の状態の『バスターモード』に、炎佐は銃の状態の『キャノンモード』へと変えて構えた。

 

「うん…しっくりくるな」

 

「ああ、これならいけるぜ!!」

 

俺の繰り出す斬撃が装甲を斬り裂き、ガリュー超絶の放つ砲撃が炸裂しどんどんヴァンパイアスカルを追い詰めていった。

 

「ぐぅぅぅ!!このこのこのぉ!!」

 

ヴァンパイアスカルは反撃と言わんばかりに紅い斬撃を放つが標準が定まらず俺達には届かない。頭に血が登って力の半分も引き出せていないのだろう

 

「君達を倒さなければ…倒せなければ…この苛立ちが消えることはない!!消えろォォォォォォォォォォ!!」

 

ヴァンパイアスカルの巨大な爪による斬撃が俺達へと襲いかかる。

 

「俺達は負けない」

 

「俺達は倒れない」

 

 

 

 

「「忍の道を…極めるまでは!!」」

 

『『必殺の術!!超絶!!』』

 

俺達はそれぞれ『ワイルドブラスター』に『超絶キー』を挿しこみ回すと刀身と銃口が光り輝きエネルギーが溜まっていく。

 

「超絶必殺忍法!!激竜ダイナソーバスター!!」

 

「超絶必殺忍法!!煉獄ダイナソーキャノン!!」

 

『『ガォォォォォン!!』』

 

俺たちが放った斬撃と砲撃はティラノサウルスとスピノサウルスの形に変わりヴァンパイアスカルへと炸裂し爆発した。

 

「ぐ…ぐわぁぁぁぁ!!」

 

ヴァンパイアスカルは防ごうとするが防ぎきれずそのまま吹き飛ばされて変身が解けた。

 

「くそ…認めない…こんなの…絶対に…!!」

 

「陛下!!」

 

ふらふらと立ち上がり再び変身しようとした弥勒の元へ華蛇が現れて彼を押さえ込んだ。

 

「陛下!!もう潮時です!!ここはもう退きましょう!!」

 

「まだだ!!まぁ僕はやれる!!こんなところで…」

 

「陛下!!」

 

反論する弥勒の頬に華蛇は平手打ちをする

 

「あなたの使命を忘れてはなりません!!今ここで倒されたらあなたの夢はどうなってしまうのですか!?」

 

「華蛇…」

 

「お願いです…どうか撤退を…」

 

華蛇の説得に落ち着きを取り戻したのか弥勒は大人しくなりヴァンパイアスカルキーを懐にしまった。

 

「そうだったね…ごめん、少し熱くなりすぎた。帰ろう」

 

「はい」

 

落ち着きを取り戻した弥勒にホッとして華蛇は黒い穴を生み出す。

 

「…竜司くん、君が仲間になってくれなくて残念だよ。」

 

最後に悲しそうな顔で俺を見つめると弥勒はゆっくりと去っていった。

 

「なんとか勝てたな」

 

変身を解除すると炎佐も変身を解除しながら俺に話しかけてきた。

 

「そうだな、でもあいつもまだ全力じゃなかった」

 

もし奴が冷静さを欠かずに最初から俺達を殺す気でいたら危なかっただろう

 

「竜司…」

 

すると親父がゆっくりと俺の元へとやってくる

 

「親父…」

 

瞬間、親父は俺を力一杯抱きしめた。

 

「よかった…本当に…本当によかった…」

 

その目には涙が溢れており抱きしめられた体は少し痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

「離れろうっとーしぃ!!」

 

「あだぁ!?」

 

鬱陶しかったので思いっきりデコピンしてやった。

 

「しっかりしろ!!あんた修行前の威厳はどこいった!?」

 

「す、すまん…」

 

「まったく…」

 

『ゲコゲコ!!ゲコゲコ!!』

 

すると慌てた様子でガマ吉が飛び跳ねてきて俺の手の中にスマホモードとなって収まる。

 

「なんだ?」

 

『りゅーくん大丈夫!?なんだかそっちが大変なことになったって聞いたけど…!!』

 

慌てた様子で飛鳥が電話をかけてきていた。

 

「心配ないよ。今そっちにいくから」

 

『え?大丈夫なの?』

 

「あぁ、バッチリだ!!」

 

今の俺なら…いや、俺達ならもう大丈夫!!必ず仲間を守ってみせる。

 

「あ…でもここの人達の手当とかとしないと…」

 

「心配すんな、こっちは俺がなんとかする。だから…行ってこい!!」

 

心配する俺に親父がそう告げる。

 

「親父…あとは頼んだ!!いくぞ炎佐!!」

 

「おう!!」

 

俺達は意を決して出口へと向かう

 

「あ、ちょっと待て炎佐」

 

「ん?」

 

すると、親父が炎佐に俺と色違いのシノビークルを渡した。

 

「俺達からの餞別だ」

 

「お、サンキュー」

 

「早くいくぞ炎佐」

 

『『シノビークル!!』』

 

俺達がシノビークルのボタンを起動して放り投げると小さな巻物は大きくなりバイクへと変わり『シノビークル大地』と『シノビークル烈火』に変わった。

 

「よっしゃ!!」

 

「いくぜ!!」

 

俺達はシノビークルに跨りそれぞれの目的地へと向かった。

大切な仲間を守るために

 

 

 

 

 

 

 

「見てるか叶…俺達の息子、竜司の奴あんなに立派になったぞ」

 

遠くへ去っていく竜司を見つめながら竜舌は静かに呟いた。

 

「…大したもんだなお前の息子は」

 

そこへ、腹を押さえながら鉄心がやってきた。

 

「…生きてたのか」

 

「ああ、こいつがあったおかげで急所を避けてた様だ。」

 

そう言って懐から出したのは盾と刀が一緒になった様な鉄製のお守りだった。そう、かつて彼らが半蔵の弟子だった頃、忍の最終試験に合格した記念に半蔵がくれたものだった。

 

「…あの頃は、こんなことになるなんて思わなかったな…」

 

鉄心はヴァンパイアスカルの攻撃でひしゃげてしまったお守りも見つめてそう呟いた。

 

「…あいつらを信じよう、今を築くあいつら若い芽を…」

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん、それでは行きましょう」

 

死塾月閃忍学館では傷の癒えた選抜メンバー達が戦いの準備を終えて集まっていた。

 

「満月…リューマはあなたに任せます」

 

「ああ、任せろ」

 

満月は覚悟を決めた顔でトプスパーダを見つめていた。

 

「待ってろよリューマ、今度こそお前を倒してやる」

 

 

 

 

 

「蒼良、準備は良いか?」

 

秘立蛇邪学園では部屋で身支度をする蒼良に雅緋が声をかける。

 

「あぁ、大丈夫だ。今行くよ」

 

雅緋にそう返した蒼良はプテラアローを手に部屋を出る。

 

「…さて、始めるか」

 

 

 

 

 

 

 

国立半蔵学院、炎佐紅蓮隊、死塾月閃忍学館、秘立蛇邪学園、それぞれの仮面ライダー達による信念を賭けた戦い…学炎祭はいよいよ終わりを迎えようとしていた。



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其の五十 最終決戦と師への想い!!の巻

 

「ははっ、まさか陛下が返り討ちに遭うなんてな」

 

とある一室でグリフォンスカルが笑みを浮かべる。

 

「最強生物たる恐竜の力を手懐けるとは流石リューマとガリューというわけか…ははっ良いねぇ良いねぇそうこなくっちゃ」

 

グリフォンスカルはそう言って笑うと目の前にある禍々しく光黒い卵のようなものを見つめる。

 

「こいつももうじき完全に仕上がる。そうなれば俺はもう陛下…いや弥勒に従うこともない、奴を倒して俺が頂点に上り詰めてやる」

 

そうニヤリと笑いながら呟いているとグリフォンスカルの持つ通信端末に通信が入る。

 

「ん……?呼び出しか」

 

誰からの通信か確認したグリフォンスカルは端末をしまうと変身を解除して部屋を後にする。

 

「こことももうじきお別れだな」

 

 

 

 

 

今日はいよいよ学炎祭の最終日、俺と炎佐、それから飛鳥達と炎佐紅蓮隊こと焔達は霧夜先生の前に集まっていた。俺と炎佐が鉄心様の元修行している間、飛鳥達も炎佐紅蓮隊のみんなと修行してたらしい。

 

「お前達が忍として生きていくなら、負けることは決して許されない。敗北すなわち、忍としての死、と言うことだ…竜司、飛鳥、斑鳩、葛城、柳生、雲雀。決して死ぬことなく生きて帰ってこい」

 

「「「「「「はいっ!!」」」」」」

 

霧夜先生の言葉に俺達は力強く返事をした。

 

「炎佐紅蓮隊、今回は協力感謝する。」

 

「礼などいらん、蛇邪との学炎祭に向けて良い練習になった。」

 

「俺に至ってはむしろ修行してもらった側だしな、寧ろ感謝したいくらいだ」

 

炎佐はそう言うとワイルドギアとシノビークルを見せながらニヤリと笑った。

 

「…やはり優れた忍だな」

 

「ん?」

 

「いや、良い師に鍛えられたのだなと思ってな」

 

「…あぁ、ほんとに師には恵まれたよ」

 

炎佐達はどこか嬉しそうに笑いながら霧夜にそう返した。

 

「竜司、敵は強いみたいだが負けんじゃねえぞ。お前を倒すのはこの俺なんだからな」

 

「そっちこそ、聞いた話じゃお前あのガルーダって奴に一度も勝ててないそうだけど」

 

「あの頃の俺じゃない。絶対負けねえよ」

 

「…そっか」

 

その目には確固たる自信があった。それを見た俺は安心した。

 

「それじゃ、お互い勝とうな」

 

「当たり前だ」

 

炎佐はそう俺と言葉を交わすと焔達と共に蛇邪学園へと向かっていった。

 

「よし、それじゃあ俺たちも行こう!!」

 

俺達も死塾月閃忍学館へと向かった。月閃との決着をつけるために、そして…忍としてこれからも生き続けるために、

 

 

 

 

 

美しい欠けていない月が夜を照らす中、死塾月閃忍学館にたどり着いた俺は満月(みつき)を探していた。仮面ライダーオルグに対抗できるのは同じ仮面ライダーの俺だけだ。それに、そうでなくてもこれは前回のリベンジだ。何があろうと絶対に譲れない。

 

「ん?」

 

『♪〜♪♪〜〜♪〜』

 

どこからか綺麗なハーモニカの音色が聞こえてくる。俺は引き寄せられるように音色のする方へと歩き出した。そこには満月がどこか懐かしそうにハーモニカを吹いていた。

 

「お、やっと来たか」

 

「満月…」

 

俺に気づくと満月はハーモニカを懐にしまって俺の前に立った。

 

「…なんか雰囲気変わったな、以前より強い眼になった。」

 

「そいつはどーも」

 

俺の眼を見た満月はどこか嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「なんか嬉しそうだな」

 

「まあな、以前程度のお前じゃ倒し甲斐が無かったからな。あのワイルドとか言う力に取り込まれているお前を倒したって意味無いし」

 

満月の言葉に俺は改めて満月達の目的を認識した。

 

「お前は…じいちゃんより黒影さんが優れている事を証明したいのか?半蔵学院の生徒である俺達を倒すことで…」

 

「ああそうだよ、お前達を倒せれば…半蔵の意志を継ぐお前達より先生の…黒影の意志を継ぐ俺達のほうが強いことを証明する事ができれば…先生の目指した理想…『善だけの世界』を俺達が叶えることができる!!」

 

満月は転身剣トプスパーダを手に持ちその目は鋭く強い覚悟を感じた。

 

「…悪いけど。俺も負けるわけにはいかない」

 

俺はカグラドライバーを腰に装着する。

 

「『世界一カッコイイ忍者』になるって…決めてるんだからな!!」

 

「…そうかよ」

 

『ティラノ!!』

 

『トリケラ!!』

 

俺はティラノキーを、満月はトリケラキーを起動してそれぞれカグラドライバーと転身剣トプスパーダに挿し込む

 

「「変身!!」」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

『竜装!!トリケラ!!』

 

それぞれが鍵を回すとティラノサウルスの幻影とトリケラトプスの幻影が現れ互いにぶつかり合いながらそれぞれの全身を覆い、仮面ライダーリューマと仮面ライダーオルグへと変身した。

 

「こっからは言葉じゃねえ…力で証明しようぜ、どちらが正しいのかを」

 

「俺は負けない…みんなと一緒に…忍として生きる為に!!」

 

俺はファングクナイで、オルグは転身剣トプスパーダの剣でぶつかり合いそのまま鍔迫り合いになる。

 

「この力…!!前回よりも強くなってるな!!」

 

「お陰様でな!!」

 

俺はなんとかオルグを押し切り更にファングクナイを斬りつける。しかしオルグも負けじと盾でファングクナイを防ぎ剣で反撃をする。

 

「はっ!!」

 

「ぐっ…」

 

俺もすかさずそれを躱して今度は跳び蹴りを喰らわせオルグはその衝撃で後退する。

 

「力だけじゃない…スピードも技術も桁違いになってるじゃねえか」

 

「ちょっと相棒とぶつかり合ってきたんだよ」

 

ティラノとぶつかり合い…わかり合ったことで気づくことができた。歪み合うだけじゃダメだと言うことをぶつかり合い互いを理解することでわかり合い更なる力にすることが出来るのだと

 

「力で無理やり従えようとしたって…敵対されて更なる争いを生むだけだ!!どうしてそれがわからないんだ!?」

 

「敵が出来るなら…そいつらも全員倒すだけだ!!」

 

俺の言葉を聞き入れずオルグはそう吐き捨てる。

 

「そもそも人間ってのは善と悪…生まれながらに両方備わっているもんなんだ!!どれだけ白く染めようとしたって必ずどこかに黒いシミが出来ちまう!!それをすべて否定しても始まらないだろ!!」

 

 

 

 

 

「知った口を聞くなぁ!!」

 

俺の言葉にオルグは突如激昂し剣を振る。

 

「悪忍に親を殺され…仲間を殺された苦しみが分かるか!?悪のせいで人生を…幸せを失ったこともない奴に…黒影先生の思いが分かるわけねえだろ!!」

 

「どうして…そこまで…」

 

オルグの叫びに俺はどうしてそこまで『善だけの世界』を目指すのか…なぜ黒影の為にそこまでするのかわからなかった…すると、オルグは苦しそうに静かに話し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長く…ねぇんだよ、黒影先生は…もう」

 

「………え?」

 

「病気が悪化してな…年もあって医者からはもう手の施しようがないって言われたよ…今じゃすっかり寝たきりの状態だ…」

 

オルグの剣を握る手は悔しさで震えていた。

 

「親を失って……行く宛のなかった俺達を親同然に育ててくれた先生が…自分の夢を叶えられないまま死ぬなんて俺達は納得できない…!!だから!!俺達が代わりに叶えて先生に見せるんだ!!先生の夢見た…憧れた世界を…『善だけの世界』を!!それが…それだけが…!!俺達があの人に出来る恩返しだ!!」

 

オルグの叫びを唯黙って聞いていた俺は、静かに口を開く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃねえよ」

 

もう我慢の限界だった

 

「なに?」

 

「何が…何が恩返しだよ…勘違いも甚だしいぜ…」

 

「なっ!!」

 

俺の言葉にオルグは反応する。

 

「お前!!それはどう言う…」

 

「『自分の代わりにお前らが俺の夢を叶えろ』って…本気で黒影さんがお前らにそんなこと託すと思ってんのか!?家族同然に愛情込めて育てたお前らに…自分と同じ道を辿れって…そんなこと言うと思ってんのかよ!!」

 

「ぐっ…」

 

俺の言葉にオルグはたじろぐ、図星のようだ

 

「親が…子供に…どんな願いを子供に託すのか…それは俺でもわかる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ん?』

 

ワイルドギアの修行の中、親父との話を済ませた後、ガマ吉が俺の前に現れた。

 

『どうしたガマ吉』

 

『ゲコゲコ!!』

 

すると、ガマ吉は口を開くと何か音声が流れる。

 

『……え?』

 

 

 

 

 

そこには炎佐と鉄心の会話が聞こえてきた。そこにはカグラドライバー復元の真実。そして親父がなぜ俺を置いていったのかが語られていた。俺にどれだけ恨まれても親父は唯それを受け入れ背負っていたことを…

 

『ガマ吉……ありがとう、俺に聞かせてくれて』

 

俺は多くに人に支えられて、託されていた。それを知って俺は…嬉しかった。

そして…

 

『10年もほったらかしにして『どの口が言うんだ』って思うけど…お前を愛している!!これは紛うことなき本心だ!!』

 

あの言葉を聞いた時…嬉しかった。初めて、親父の本音を聞けて…親父の想いを知ることができて…

 

 

 

 

 

 

「親が子供に……自分と同じ苦しみを味わって欲しいわけねえだろうが!!それよりも…幸せになってほしいに決まってるだろうが!!」

 

「そんなこと……わかってんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

『雪泉、叢、夜桜、四季、美野里、満月、お前達に伝えたいことがある。』

 

黒影先生の病が発覚してしばらく経った頃、先生はすっかり寝たきりになり痩せかけてしまっていた。そんな日々が続いたある日、先生は俺達を集めて静かに語り出した。

 

『俺は…愚かな男だ、自分の願いに拘るばかりに…本当に守らなければならない仲間を…家族を失い…挙句病に倒れ野垂れ死ぬ愚か者だ』

 

『先生……!!』

 

『だから…お前達は俺のような愚か者にはなるな。お前達は自由に、幸せに生きてくれ…それが俺の願いだ…もっと早くそれに気づければな……』

 

悲しそうに笑いながらそう俺達に話す先生の目には涙が滲んでいた。

 

(違う…違うよ先生…!!)

 

あなたの理想は間違っていない…『善だけの世界』はきっとある。俺達が見つけて見せる…貴方が生きている間に…!!

 

 

 

 

 

「それでも…俺達は…!!」

 

突如オルグの全身から禍々しい気が溢れてくる

 

「負けられないんだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

瞬間、禍々しい気は一気に放出し、オルグの眼は真っ赤に輝いた。

 

「なんだお前…その気は…!?」

 

忍のそれとはまた違う、寧ろ……

 

「こんなところで終わらせない……先生の…『善だけの世界』を……俺達の手で……叶えて見せる!!」

 

「なっ…!!」

 

迫ってくるオルグの動きは先ほどとは比べ物にならなかった。気づけば目の前まで迫り鋭い斬撃が繰り出される。俺は咄嗟にガードするが力も先ほどを遥かに超える力で押し込まれてしまう。

 

「ガァァァァァァァ!!」

 

「うわぁ!!」

 

オルグのその圧倒的なパワーに俺はとうとう力負けしてしまい吹き飛ばされてしまう。

 

「こいつ……さっきより強い、それにこの戦い方…」

 

力だけじゃない、その戦い方は獰猛そのものでまるで俺のワイルドギアで自我を失っていた時に近く、気は禍々しく恐怖を感じる…恐竜のものとも違う…

 

「負けられないんだ…先生の願いを…俺達が…俺が…オレガァァァァァァ!!」

 

この禍々しい気は…忍のものとも、恐竜のものとも違う…どちらかと言うと…

 

「怨楼血の気に近い…?」

 

なぜ忍のオルグから妖魔と同じ気を感じるのかわからない、でも今の彼はその気によって半ば暴走している

 

「色々聞きたいことがあるけど…今はそんなことより…」

 

俺は懐からワイルドギアを取り出し覚悟の言葉を叫ぶ

 

「お前をそこから連れ戻す!!」

 

『ワイルドオン!!』

 

『超絶ティラノ!!』

 

そしてワイルドギアをドライバーに装着し超絶ティラノキーを起動して鍵穴に挿し込む。

 

『ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!』

 

ベルトから音声が流れ鎖から解き放たれたティラノが俺の隣に並び雄叫びを上げる。

 

「変身!!」

 

『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』

 

『超絶キー』を回すとティラノが俺に飛び込み身体を覆い尽くし仮面ライダーリューマ超絶へと変身し手には専用武器『ワイルドブラスター』を握っていた。

 

「なんだ…その姿は…!!」

 

謎の力に取り込まれながらも残った意識で俺を見つめるオルグは明らかに動揺していた

 

「これは、仲間を守る為に…俺達が手に入れた力だ!!」

 

「ぐっ…」

 

俺はそう叫ぶとバスターモードにしたワイルドブラスターでオルグへと斬りつける。それに対してオルグも盾でガードするがその威力に思わず体が退がる。

 

「舐めるなよ…この俺を!!」

 

『大剣モード!!』

 

オルグはトプスパーダの剣と盾を合体させ大剣モードにすると刀身に禍々しい気を纏って巨大な斬撃を放つ。

 

「おりゃぁ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

しかし俺はその斬撃をティラノの尾の様なオーラを纏った斬撃で叩き潰しオルグを吹き飛ばす。さっきより攻撃の威力は高いが力任せで繊細さがない。今の俺達なら問題なく戦える!!

 

「この…!!なんでだ!?なんでお前に勝てないんだ!?」

 

自分の力が通じずオルグは困惑していた。

 

「教えてやるよ…俺は、ティラノと全力でぶつかり合って分かり合えた…互いを理解して…一緒に戦ってるんだ!!俺は1人で戦ってるんじゃない!!相棒と、2人で一緒に戦ってるんだ!!」

 

周りを見ようとしないで…自分の価値観を押し付けようとしてるだけのこいつらに…俺は負けない!!

 

「わかり合って手に入れた…仲間の力を見せてやる!!そして!!俺はお前達ともわかり合ってみせる!!」

 

『必殺の術!!超絶!!』

 

俺はカグラドライバーを叩き片足に力を込めて跳び上がる。

 

「俺だって…負けられねえんだよ!!」

 

オルグも負けじと刀身に先ほどよりも禍々しいオーラを纏い超巨大な斬撃を放つ

 

「超絶必殺忍法!!激竜ダイナソー無双キック!!」

 

ティラノサウルスのオーラと一体になり放たれたキックはオルグの巨大な斬撃を蹴り砕きながらオルグへと炸裂した。

 

「がっ…は……」

 

その一撃により吹き飛ばされたオルグはそのまま壁にぶつかり意識を失っていた。

 

「りゅーくん!!」

 

俺が変身を解除すると飛鳥達が俺の元へと走ってきた。近くには他の月閃のメンバーがおり戦いの後であることがわかった。

 

「よかった、そっちも勝ったんだな」

 

「うん、りゅーくんもお疲れ!!」

 

「竜司さんのこと…信じていました」

 

「さすが竜司だな」

 

「まあなんにせよ、俺達の勝ちだ」

 

「ひばり達も頑張ったよ!!」

 

みんなの無事な様子を見て俺は安心して笑った。

 

「満月さんまで負けるなんて…まさかみなさんがここまで強くなるなんて思ってませんでした…私達の完敗です…」

 

雪泉達他の月閃メンバーは俺たちの方を見て静かにそう喋り出した。その表情はとても暗い、負けたことで学園を燃やされることを悔やんでいるのだ。

 

「あ、そうそう言い忘れてたけどお前らの学園、燃やすつもりはねえよ?」

 

「え?」

 

俺の言葉に雪泉達は驚愕した。

 

「だって負けた相手の学園燃やすなんてかっこ悪いじゃん?な、飛鳥」

 

「うん!それに学炎祭で勝った方が相手の学園を燃やさない分にはルール上なんの問題無いって霧夜先生に確認してあるし!!」

 

このことは決戦前にみんなで決めていたんだ、たとえ俺たちが勝っても月閃を燃やさないと

 

「それで納得できないならさ、校庭でみんなとキャンプファイヤーでもしようよ。きっと楽しいよ!!」

 

「飛鳥さん…竜司さん…貴方達と言う人は……」

 

そんな俺達に雪泉は呆れた様に笑いそれに釣られて俺達も、他の月閃メンバーも笑っていた

 

 

 

 

 

 

「まだだ…まだ学炎祭は終わってない……」

 

ふと声が聞こえてそちらを向くと意識を取り戻した満月がふらつきながらトプスパーダの剣を片手に握りしめていた。

 

「満月!!もう終わったんです!!学炎祭で私達の学園も燃やされません!!だからこれ以上は…!!」

 

雪泉は慌てながら満月を止めようと近づく

 

「そう言う問題じゃねえだろ!!」

 

「きゃっ!!」

 

満月は自分を止めようとする雪泉を振り解きそのはずみで雪泉は倒れてしまう

 

「俺が…叶えるんだ…先生の願いを!!」

 

満月は叫びながら力任せにトプスパーダの剣先を突き出した。

 

「なっ…!!」

 

俺はその突きを見切り満月の剣を持つ手首を掴む

 

「もうやめろよ…満月、お前の負けだ。悪を全部否定して…敵をどんどん作っていって…その先に何が残るんだよ?」

 

このままじゃ満月は戻れなくなってしまう…そしてどんどん自分を苦しめていってしまうのが目に見えてしまう…

 

「もうやめようぜ…まだ間に合うからさ」

 

「甘い事…言ってんじゃねえぞ!!」

 

満月は叫びながら力任せに剣を振り下ろそうとし俺はそれを受け止めようとする。

 

「やめろ満月!!」

 

その時、俺と満月の間に頬に傷跡のある老人が割り込み満月の斬撃を受け止めた。

 

「なっ…!!」

 

「おじい様!!」

 

現れた老人に満月と雪泉が驚く。どうやらこの人が黒影のようだ。俺にはわかった、きっと寝たきりの体に鞭打ってでも満月達に自分の想いを伝えにきたのだと

 

「黒影様!?」

 

「おじいちゃん!?」

 

現れた黒影に他の月閃メンバーも驚く

 

「先生…なんで…?」

 

「剣を下ろせ満月、もう終わったんだ…」

 

「ダメだ先生…俺達の手で…先生の夢を…」

 

「それには及ばない、俺の夢は…もう叶っているのだから」

 

「えっ…?」

 

黒影の言葉に満月はキョトンとした。

 

「叶ったって…」

 

「俺は…善だけの世界を作りたかったんじゃない…ただ大切な仲間が…愛する家族が幸せになってくれればそれで良かったんだ…なのに俺は復讐に拘るばかりに、一番大切なものを忘れていた…それを、お前達が思い出させてくれたんだ…」

 

黒影はそう言うと優しく、それでいて力強く満月を抱きしめた

 

「ありがとうお前達、だから…もういいんだ」

 

「せ…せんせぇ…」

 

気づけば満月の目には溢れんばかりの涙が出ていた。そして雪泉達月閃メンバーも黒影に抱きついて泣いていた。

 

「どうやら間に合った様じゃの」

 

「じいちゃん!!」

 

すると優しく微笑みながらじいちゃんが現れた

 

「半蔵……」

 

「黒影よ、かつてお前とした賭けを覚えているか?」

 

 

 

『だったら………俺は悪など無い、善だけの世界を作ってみせる!!』

 

『そんなものは作れない!!賭けてもいい!!』

 

「あれはお前の勝ちじゃ……善だけの世界は確かにあった。お前の腕の中に…」

 

そう言って満月達を指差した

 

「ああ…そうだな…」

 

その言葉に黒影は嬉しそうに微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

「半蔵学院が勝利しましたか…」

 

善忍本部の一室で神門が静かに呟き端末でどこかに連絡する、

 

「みなさん準備を急いでください、作戦を決行します」

 

俺達の知らないところで別の何かか動いていた。



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其の五十一 悪の誇りと蛇邪頂上決戦!!の巻

 

『蒼良、もし私に何かあったらあの子達を守ってあげて』

 

ある日、僕の恋人が突然昼寝をしている2人の妹を見ながらそんなことを言い出した。

 

『どうしたんですか急に…物騒なことを言わないでください』

 

『もし私に何かあったらもう頼れるのは貴方くらいだから…だからそんなことがあったらあの子達をあなたに守って欲しいの…あの子達が立派に成長するその時まで…』

 

『何言ってるんですか、死ぬなんて馬鹿なこと言わないでください。』

 

そう言って愛する彼女の肩を引き寄せ抱きしめる。

 

『貴方が死んだら2人が悲しみます。何より僕も悲しいですよ…そんなこと言わないでください』

 

『蒼良…ごめん、ちょっと不安になってた。大丈夫、私は死なないから』

 

僕の言葉に彼女は…両姫は頬を染めながら僕にもたれかかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その僅か数日後、両姫は亡骸になって帰ってきた

 

『かわいそうに…』

 

『なんでも禁術に手を出して暴走した悪忍に殺されたらしいぞ…』

 

『本当か?やはり悪忍か…なんと卑劣な…』

 

『優秀な忍だったのに…』

 

『妹が2人いるんでしょ?気の毒ね…』

 

後ろから何か声が聞こえるが何も聞こえない、ただ僕の前で目を覚さない両姫の亡骸しか目に入らなかった。

 

「う…あぁ…!!」

 

「お姉ちゃん…!!」

 

ふと気づくと、僕のそばで両備と両奈が泣きじゃくっていた。

 

『蒼良、もし私に何かあったらあの子達を守ってあげて』

 

その時、両姫のあの日の言葉が頭をよぎり、僕は2人を抱きしめた

 

『両備、両奈…これからは……僕が2人を守るから…!!』

 

 

 

 

「あの日から…僕の復讐が始まったんだ」

 

僕は両備と両奈を抱きしめる両姫の写真を見ながら呟いた。

 

「両姫…今の僕を見て、君はどう思うのかな?でも、僕はもう止められない、動かずにはいられないんだ…」

 

何やら下が騒がしいが構わない。僕は転身弓プテラアローとプテラキーを手に覚悟を決めた。

 

「さあ、復讐の始まりだ」

 

 

 

 

 

 

「またここに戻ってくるとはな…」

 

目の前に見える蛇邪学園を見て炎佐は呟いた。

 

「お前ら、準備は出来てるよな?」

 

「当たり前だ!!お前こそ修行は上手く行ったんだろうな?」

 

「勝手に行動したからにはちゃんと頑張ってもらいますわよ」

 

「せやで、ガルーダの相手は炎佐さんに任せたで」

 

「負けたら承知しないわよ!!」

 

「ふふ、責任重大ね」

 

「…心配すんな、おかげでバッチリだからな」

 

次々と言いたい放題言ってくる仲間に炎佐は笑みを浮かべて答えた。

 

「良い顔ね炎佐」

 

そんな炎佐の顔を見て春花はどこか嬉しそうに微笑んだ

 

「そうか?」

 

「ええ、道元への復讐を考えてた頃に比べたら今の顔の方がずっと良いわ」

 

「…そうだな」

 

炎佐はふと思い出す、父の命を奪った道元のことを知り奴を討つ力を手にするべく蛇邪の門を叩いた。だが学園で過ごし、仲間が出来て…いつしか憎しみは薄れていった…そしていつしか戦う理由が復讐ではなく自分を慕ってくれる仲間達の為になっていた。

 

「いくぞ!!」

 

俺達は蛇邪学園へと入っていった。

 

「待ってたぜ炎佐」

 

学園に入った途端、俺達の目の前に大勢の蛇邪生徒が武器を手に集まっていた。その顔には見覚えがある

 

「お前ら…反炎佐連合の…」

 

「こっから先は通行止めだ」

 

「学炎祭の前に俺達の相手をしてもらおうか」

 

辺りを見渡すと武器を手に臨戦態勢の反炎佐連合が殺気だっていた。

 

「お前ら選抜メンバーじゃないだろ?学炎祭のルールはどうなったんだ?」

 

「学炎祭は関係ねえよ、これは俺達の面子の問題だ」

 

「前からテメェが気に入らなかったんだよ、選抜メンバー筆頭ってだけで蛇邪の顔みたいに偉そうにしてよ」

 

反炎佐連合にとって炎佐と炎佐によってスカウトされ選抜メンバーは目の上のたんこぶだった。抜け忍になった今でも彼らを慕うものもおり今なお炎佐組の勢いは止まっていない

 

「お前らを始末すれば目障りな炎佐組の奴らも大人しくなるだろ」

 

そうしてる間にも反炎佐連合は武器を手にゆっくりと炎佐達を取り囲んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「まてぇ!!」

 

その時学園に響くような声が聞こえた。その声がする方を振り向くと知ってる顔が見えた。

 

「面子だのなんだの言ってるくせにこんな大勢で闇討ちなんて…悪忍の風上にも置けないです!!炎佐さんに用があるなら…俺たち炎佐組を相手にしてもらいましょう!!」

 

そこには理吉を中心とした炎佐組のみんなが武器を手に反炎佐連合に向かい合っていた。

 

「お前ら…」

 

「炎佐さん!!ここは俺たちに任せて炎佐さんは学炎祭に集中してください!!ここは俺たちが引き受けます!!」

 

「まかせてください!!」

 

理吉たちの言葉とまっすぐな瞳を見て炎佐はニヤリと笑う

 

「……ここはお前ら炎佐組に任せだぞ!!それだけ啖呵切ったんだからしっかりやれよ!!」

 

「炎佐さん……!!」

 

「お任せください!!」

 

自分たちに任せてくれたことに歓喜し炎佐組は全力で返事をし反炎佐連合へと身構えた。

 

「炎佐の金魚のフンどもが舐めやがって…」

 

「まずはお前らからだ!!」

 

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

 

それに対して反炎佐連合も標的を炎佐組へと切り替えて彼らに襲いかかった。炎佐組もそれを迎え撃ち両者がぶつかり合う

 

「あいつらは炎佐組に任せて俺たちは行くぞ」

 

炎佐は焔たちにそう言って歩き出した。

 

「嬉しそうね炎佐」

 

その炎佐の顔を見て春花がくすりと笑う

 

「…ふっ」

 

それを炎佐は隠さなかった。彼自身本当に嬉しかったのだ。自分が鍛えてきた炎佐組がここまで立派に成長していたことに

 

「………さっさといくぞ!!」

 

「はいはい」

 

炎佐達は炎佐組を信じて学園内へと入っていった。

 

 

 

 

「よう、久しぶりだな蒼良」

 

炎佐は屋上で静かに立ってる蒼良を見つけた。

 

「やあ炎佐、久しぶりだね、こうして会うのは2年前かな?」

 

「そうだな、あの頃の俺とは違うってことを見せてやる」

 

炎佐に気づいた蒼良はこちらを向いた。

 

「それにしても…思いもしなかったぜ、まさか『灰色』の忍が悪忍側の仮面ライダーになってたなんて…」

 

『灰色』…それは善忍にも悪忍にも属さない忍組織である。彼らは善忍、悪忍どちらにも潜んでおり時に善忍の情報を悪忍側に流し時には逆に悪忍側の情報を善忍側に流すことで両者の勢力バランスを調停する役割を持つ特殊組織である。

 

「…君には関係のない話だよ」

 

「そうかよ。まあ良いや、始めようぜ」

 

炎佐の言葉を皮切りに両者はカグラドライバーと転身弓プテラアローを手に取った。

 

『スピノ!!』

 

『プテラ!!』

 

炎佐はスピノキーをカグラドライバーの鍵穴に、蒼良はプテラキーを転身弓プテラアローの鍵穴に装着した

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

『♪〜〜♪♪〜♪〜♪♪♪〜!!』

 

「「変身!!」」

 

『武装!!スピノ!!』

 

『竜装!!プテラ!!』

 

互いが鍵を回すとスピノサウルスとプテラノドンのオーラが両者を纏い仮面ライダーガリューと仮面ライダーガルーダへと変身した。

 

「仮面ライダーガリュー…いざ、舞い殉じる!!」

 

「仮面ライダーガルーダ、悪の誇りを…舞い掲よう」

 

ガリューはスピノアクスをガルーダは転身弓プテラアローを武器に互いにぶつかり合った。

 

「はぁ!!」

 

「ふっ!!」

 

スピノアクスの一撃をガルーダはプテラアローで受け流しそのままガリューへ斬りつける。しかしガリューもその一撃を躱してすかさずガルーダへと反撃の一撃を繰り出した。

 

「甘い!!」

 

しかし、ガルーダは身軽な動きで飛び上がると空中から矢をガリューへと連射した。

 

ガリューは咄嗟にスピノアクスで矢を弾くが一本は肩を掠めてしまう

 

「舐めんな!!」

 

「ぐっ…!!」

 

しかしガリューは動きを止めずガルーダに接近して斬りつける。その衝撃にガルーダは一瞬たじろぐがすぐさま矢を放つ。炎佐はすぐさま矢を弾きガルーダへと斬りかかりガルーダもプテラアローで反撃し鍔迫り合いとなった。

 

「やるね、確かに以前とは段違いだ」

 

「お陰様でな」

 

「だけど…それじゃあ僕には勝てない!!」

 

瞬間、ガルーダの背中から紫色の翼が生えて飛翔した。

 

「なっ…!!」

 

「それじゃあ…反撃させてもらうよ!!」

 

ガルーダは空中から矢を連射する。その矢は先程と違い直線ではなくカーブを描いて変幻自在にガリューへと襲いかかった。

 

「ちっ…!!」

 

ガリューは矢を躱しながら走り出すが矢はガリューが向かう方向を迷わず襲ってくる。その軌道はまるでガリューがどう動くのか分かっているようだった。

 

「なるほど…良い眼だな」

 

「やっぱり君なら分かるか、プテラの能力に」

 

キョウリキーに宿る恐竜にはそれぞれ異なる能力が備わっている。

圧倒的パワーを宿したティラノ、炎と一撃の破壊力を宿したスピノ、竜巻を操るメガロ、巨体による怪力のブラキオなどその能力は千差万別…そしてプテラの能力は…

 

「『飛行能力』と『超視力』ってところか」

 

翼竜故の飛行能力に加え空中から海中の魚を見つけられるプテラノドンの高い視力によってガルーダはガリューは空中からガリューの僅かな動きを見極めどのように動くのかを予測して矢を放っているのだ。

 

「…よくわかったね、だけどわかったところで君に勝ち目は無いよ」

 

「それはどうかな」

 

『ワイルドオン!!』

 

ガリューはワイルドギアを取り出してカグラドライバーに装着する。

 

『ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!』

 

「変身!!」

『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー!!忍者!!ワイルド!!』

 

ガリューは超絶スピノキーとワイルドギアで仮面ライダーガリュー超絶へと変身してワイルドブラスター・キャノンモードを手にする。

 

「その力…まさか君もワイルドギアを手に入れていたのか…!!」

 

ガリュー超絶の姿にガルーダは驚愕するがすぐにプテラアローをガリューへと向けて矢を放つ

 

「はぁっ!!」

 

しかしガリューもワイルドブラスターで矢を全て撃ち落とし反撃する。ガルーダはその飛行能力で向かってくる砲弾を躱しながら矢を撃ち続ける。

 

「自我を失っていない…まさかその力を完全に使いこなすなんてね…!!」

 

「言ったろ?以前の俺と違うってな!!」

 

ガリューの凄まじい砲撃がガルーダを追い詰めるがガルーダも巧みな動きで砲撃を躱しながらガリューへと正確に矢を放ち続け膠着状態が続いた。

 

「やっぱりお前もやるな…ワイルドギアを使ってもこうも互角とはな」

 

「君も、正直ここまで強くなってるとは思わなかったよ」

 

 

 

その時、ガルーダが何かに気づく

 

「これは…他のみんなは随分苦戦しているようだな?」

 

「うちの奴らを甘く見たな」

 

ガルーダの様子にガリューは得意げになる。しかしガルーダの反応は予想したものとは違った。

 

「いや、むしろ好都合だ」

 

ガルーダは嬉しそうに言うと突如飛び立ってしまう。

 

「おい!!どこ行くんだ!?」

 

制止する俺を無視してガルーダはそのままどこかに行ってしまった

 

「…なんだか嫌な予感がする」

 

 

 

「…なかなかやるな、正直ここまでだとは思わなかった」

 

焔と雅緋の戦いは両者ほぼ互角の状態だった。

 

「貴様もな…だが私は負けない…ここで負けるようではあいつに…炎佐に一生勝てないからな…」

 

両者一歩も譲らず互いに武器を構える。

 

「手を焼いてるようだね雅緋」

 

その時、雅緋の背後に仮面ライダーガルーダが現れた。

 

「蒼良か…ここにいると言うことはガリューを倒したのか?」

 

「あいつを馬鹿にするな!!大方逃げてきたのだろう」

 

雅緋の言葉に焔は噛み付く

 

「それも合わせて教えてあげるけど…その前に大事な話があるんだ」

 

「蒼良?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「簡単に背中を見せてくれてありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、ガルーダは仕込み弓で雅緋へと矢を撃ち込む

 

「なっ……!!」

 

信じられない光景に焔は目を見開いて立ち尽くしてしまう

 

「そ……蒼良……?な……んで……?」

 

倒れながら雅緋さ信じられないと言った顔でガルーダを見つめる。そんな雅緋にガルーダは静かに、そして冷たく一言だけ言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「両姫の…………仇だ雅緋」



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其の五十二 復讐と悪の矜持!!の巻

『蒼良、私は大きくなったら一流の悪忍になってみせる!!』

 

自信を込めてそう宣言する雅緋を幼い僕は見つめていた。身寄りのなかった僕は雅緋の父に拾われて彼のもとで引取先が見つかるまで育てられた。

 

『凄いね雅緋、僕は…そんな夢無いから…』

 

『蒼良…?』

 

『僕…見つけられるかな?自分の夢を…』

 

『きっと見つけられるよ!!だって蒼良だもん!!』

 

『雅緋……ありがとう……!!』

 

必死に励ます雅緋に僕は嬉しくなって笑った。

 

 

 

それからしばらくして、僕は『灰色』の忍へと引きとられ『灰色』の忍となり善忍側への潜入が決まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『禁術…?』

 

『ああ、深淵血塊と言う禁術だ、調べたところこの女だそうだ。どうやら蛇邪の悪忍らしい…』

 

僕の『灰色』としての上官から両姫の死因を聞いた僕は上官から悪忍の写真をもらう

 

『雅緋…』

 

間違いない、成長しており髪も白くなってたが間違えるはずがない、僕の幼馴染の雅緋だ…

 

『そうか…そう言うことだったのか…』

 

全て理解した、何故両姫が死んだのか…何故あの2人が悲しむことになったのか…

 

『全て…■■の所為だったのか…』

 

ならば…僕のするべきことが決まった

 

『僕の手で…復讐を遂げる』

 

それから僕は『灰色』を抜け蛇邪の門を叩いた

 

 

 

 

 

「なっ……!!」

 

目の前で起こった衝撃の光景に焔は驚きを隠さずにいた。仮面ライダーガルーダが突如現れたかと思ったら仲間であるはずの雅緋へと矢を放ったのだ。矢を撃ち込まれた雅緋は崩れ落ちてしまった。

 

「そ……蒼良……?な……んで……?」

 

「両姫の…………仇だ雅緋」

 

雅緋は立ちあがろうとするが矢に痺れ薬が塗られているのか立ち上がることが出来ずに這いつくばっていた。

 

「………かた…き…?」

 

「両姫……その名前を知ってるだろ?」

 

「っ!!」

 

その名前に雅緋は驚く

 

「何故…蒼良が彼女の名前を…」

 

「知っているさ、僕の……愛した人なんだから」

 

「なっ!?」

 

衝撃の事実に雅緋は驚いた。まさか、彼女が蒼良の恋人だったなんて

 

「そう、君に殺された両姫の復讐、僕はそのためだけに蛇邪にやってきたんだ」

 

そう言ってガルーダは雅緋を睨んで転身弓プテラアローを雅緋へと向けた。

 

「君が殺した両姫は…2人の妹をずっと1人で世話していたんだ…亡くなった両親のような一流の忍になって…妹達を守れるようにって…けど、その夢も叶えられなくなってしまった…そう………殺されてしまったことによってね…!!」

 

その目は鋭く雅緋を睨みつけ隠しきれない怒りが溢れていた。

 

「僕は許さない!!彼女を殺した存在を…!!だからこの手で復讐すると誓ったんだ!!」

 

「そ…蒼良…」

 

「命乞いを聞く気はない、彼女の命を奪い…両備と両奈を悲しませた罪を悔いながら…消えろ」

 

ガルーダは冷たくそう言うと雅緋に向かって矢を放った。

 

「させるか!!」

 

しかしその矢を焔が刀で払う

 

「君は…なんの真似だい?」

 

予想外の行動に蒼良は少し驚いた様子で訊ねる。

 

「……お前達の間に一体どんな因縁があるかは知らないが…気に入らない」

 

蒼良を睨みつける焔の目には怒りが宿っていた。

 

「くだらない?」

 

「私も以前は仲間なんてどうでも良いと思っていた…だけど、あのバカと一緒にいるうちに…どうやら影響されていたみたいだな、仲間を背後から撃つ貴様にこれほど怒っているとは自分でも思わなかったぞ!!」

 

「焔……!!」

 

自分を庇ってガルーダに立ちはだかる焔を見て雅緋は驚きを隠さずにいた。

 

「そうか…邪魔をするなら…まずは君からだ!!」

 

そう言ってガルーダは転身弓プテラアローを手に焔へと斬りかかった。

 

「ふっ…!!」

 

「へぇ…」

 

刀で攻撃を防いだ焔にガルーダは関心を示す。

 

「舐めるなよ!!私はずっとあいつの…炎佐の背中を追ってきたんだ、この程度で倒せると思うな!!」

 

 

 

 

「あっちこっちで闘いがもう始まってる…一体どっちが優勢なんだろう…」

 

あちこちで起こる乱闘の中、他の仲間とはぐれてしまった理吉は学園の周囲から聞こえる戦闘音や煙を見て闘いの激しさを痛感した。

 

「炎佐さんは大丈夫として…ここに1人でいたら他の反炎佐連合の奴らにやられちゃうからな…なんとか他のみんなと合流できれば良いんだけど…」

 

「ん?」

 

「え?」

 

ふと声が聞こえてそちらを向くと月閃から編入してきた新たな選抜メンバーの2人、両備と両奈がこちらを見ていた。

 

「あんた確か…炎佐組の…」

 

「あ、えと…」

 

思わぬ遭遇に理吉は固まりながらもなんとか声を出そうとした時、

 

「はぅぅ~ん!わんわんわん♪わぉ〜ん♪」

 

なにやらこの場にそぐわぬ嬌声が聞こえてそちらを見るとなぜか亀甲縛りにされて悶えている両奈がいた

 

「…………………………(え?なにこれ?なんてコメントすれば良いの?ってかいつ縛られたの!?ってかなんで嬉しそうなの!?)」

 

「ちょっと両奈!!あんた何馬鹿な事やってんのよ!!」

 

「はぅぅ〜ん♪だってだって〜我慢できなかったんだも〜ん♪」

 

「気持ち悪い声出すな!!」

 

「きゃんきゃんきゃ〜ん♪」

 

両備が両奈を何度も蹴りつけるが蹴られている両奈はなぜか嬉しそうにしていた。

 

「……………………(あ…ダメだこりゃ、絶対関わったらダメなやつだ…)」

 

「あ、なんか取り込み中の様ですね!!じゃあ俺はこれで…」

 

この場を離れるべきと認識した理吉はすぐさまその場を離れようとする。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

「ぐびゃ!?」

 

しかし両備に足払いされてその場へ倒れ込んでしまう

 

「な…なんですか?」

 

「私達、兄さん探してるのよ。でもこの辺入り組んでて最近来た私達じゃ道わかんないのよね。だからあんたも探すの手伝いなさいよ」

 

「ねえねえお願〜い♪教えてくれたら両奈ちゃんのこと、いっぱいお仕置きして良いから〜♪絶対約束するから手伝って〜♪」

 

「あんたは黙ってなさい馬鹿犬!!そのまま口閉じて息とめて窒息してなさい!!」

 

「はぅぅ〜ん♪」

 

自分への罵倒に嬉しそうに悶える両奈を無視しながら両備は理吉をぐりぐりと踏みにじる。

 

「いいから手伝いなさい、嫌だって言うなら「手伝います」って言うまでこうしてやろうかしら?」

 

「痛でででで!!ちょっ…ちょっと待ってください!!許して…」

 

痛がる理吉を見て両備はさらにニヤリと笑う

 

「良い顔するわねあんた、もうちょっと強めにやっても良いかも♪」

 

理吉が痛がれば痛がるほど両備は嬉しそうにする。両奈がドMならこっちはドSの様だ。どんどん楽しそうに踏んでくる両備に理吉は恐怖を抱く

 

「ひぃぃぃぃ!!誰か助けてぇぇぇ!!」

 

そしてついに恐怖で理吉は全力で叫んだ。

 

「理吉くん!!」

 

その時、先端に大きな手裏剣をつけた髪の毛が両備と両奈へと向かっていった。

 

「っ!!これは…」

 

「わんわ〜ん♪」

 

2人は咄嗟に躱しそちらを向くと、理吉を庇う様に立つ紫がいた。

 

「紫さん…」

 

「理吉くん…大丈夫?」

 

心配そうにこちらを見つめる紫を見て理吉は安心した。

 

「ありがとう紫さん、おかげで助かりました」

 

「うん…だって…理吉くんは私の…友達だから…」

 

理吉の無事を確認してホッとした紫は頬を少し赤くしながら目の前の両備と両奈の方を向いた。

 

「あんたなんの真似?私はそいつに用があるんだけど、渡してくれない?」

 

「だめ…理吉くんは私の友達だから…貴方達には渡さない」

 

理吉に近づく両備の前に立ちながら紫は臨戦態勢になる。

 

「ふうん…あんたそんな顔するのね?少し意外だったわ」

 

「貴方達は…初めて会った時から何か企んでる様な匂いがした。いったい何をしようとしてるの?」   

 

「…っ!?匂い…?」

 

紫の問いに両備は少し驚いた様な反応をする。

 

「…悪いけど、あんたには少し痛い目にあって大人しくしてもらったほうが良さそうね…両奈!!」

 

「はいはーい!!」

 

忍転身する両備に言われて両奈も忍転身をして武器を構える。

 

「…理吉くん、さがってて」

 

紫も覚悟を決めて忍転身し2人に身構えた。

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!!」

 

「…へぇ」

 

その頃、焔とガルーダの戦いは激しさを増していた。焔の六本の刀による斬撃をガルーダが転身弓プテラアローで防ぎガルーダが放った数本の矢を焔がすかさず打ち払う両者一歩も譲らぬ戦いが続いた。

 

「やるね、単純な忍としての力なら炎佐に次ぐ強さだよ」

 

「当然だ…だが私は絶対にそれでは終わらない…いつか炎佐を超えてみせる!!」

 

そう言うと焔は長刀『炎月花』を抜くと全身が紅蓮の炎に包まれ、髪と瞳が真っ紅に染まる『紅蓮の焔』という形態へと姿を変えた。

 

「全力か…面白い」

 

『必殺の術!!』

 

ガルーダはプテラアローの引き金を引く。すると、プテラアローの刃にエネルギーが集まり光り輝く

 

「必殺忍法!!竜弦術・箒星!!」

 

ガルーダの放った巨大な斬撃は隔てるもの全てを斬り裂きながら焔へと迫る

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

対する焔も炎月花に炎を纏わせて迫ってくる斬撃を切り裂いた。

 

「なっ…!?くそっ!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

そのまま迫ってくる焔にガルーダは驚愕し慌ててプテラアローを盾の様に構える。ぶつかった瞬間、衝撃で凄まじい火柱がたった。

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!あの方角は…」

 

「どしたん?」

 

日影と戦闘中だった忌夢は火柱が立った方角を見た。先ほどまで雅緋がいた場所だ。

 

「くそっ…雅緋!!」

 

「ちょっ…」

 

妙な胸騒ぎがして慌てて火柱が立った方へといってしまった忌夢を日影は慌てて追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

煙が晴れると焔が息を切らしながら炎月花を振り下ろしていた。

 

「惜しかったね、まさかここまでやるとは思ってなかったけど…爪が甘い」

 

その目の前にいるガルーダは傷だらけだが焔よりは軽くピンピンしていた。

 

「雅緋に気を遣わなきゃ危なかったけど…思ったより甘いんだね」

 

焔は動けずにいる雅緋を巻き込まない様に力を抑えて技を放ったのだ。そのためガルーダに対して決定打にはならなかった。

 

「いや、これで良いんだ…私たちは…いつ死ぬかわからない、だからこそ今いる仲間を決して見捨てない…そうだろ炎佐?」

 

 

 

 

 

「ああ、よく持ち堪えてくれたな」

 

「なっ!?」

 

いつのまにか現れた炎佐にガルーダは驚く

 

「まさか君は…炎佐が来るまでの囮だったのか!?」

 

「炎佐、後は任せたぞ。あの仲間を傷つける不届きものに思い知らせてやれ」

 

「ああ、任された」

 

『超絶スピノ!!』

 

焔と雅緋の前に立ち炎佐はカグラドライバーを装着してワイルドギアと超絶スピノキーを起動してカグラドライバーに取り付ける。

 

『ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!』

 

「変身!!」

 

『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』

 

超絶スピノキーを回すとスピノが炎佐に飛び込み仮面ライダーガリュー超絶へと変身した。

 

「無駄だ、君の能力はさっき完全に把握した。僕の勝利はゆるがない。君を倒したら今度こそ雅緋だ!!」

 

ガルーダはすぐに戦闘に切り替えプテラアローでガリュー超絶へと矢を放った。しかしガリュー超絶は素早い動きで矢を見切りスピノアクスを右手に持ってガルーダを斬り裂いた。

 

「なっ…このっ!!」

 

ガルーダは想定外の攻撃に驚きながらも背中に翼を出して空中に舞い矢を連射する。

 

「無駄だ!!」

 

しかしガリュー超絶は今度はもう片方の手にワイルドブラスター・カノンモードを呼び出して全ての矢を撃ち落とした。

 

「思ったとおりだ…同じスピノの力だから出来ると思ったぜ」

 

右手に握りしめたスピノアクスを見つめながらガリュー超絶は確かな手応えを感じていた。

 

「余所見なんて…僕を舐めるな!!」

 

ガルーダは凄まじいスピードで一気に間合いを詰めプテラアローの弓についた刃で斬りかかる。

 

「無駄だ」

 

「ぐはっ!?」

 

しかしガリューはワイルドブラスターをしまうとその刃を素手で掴み完全に抑え込みスピノアクスで斬り払った。

 

「なぜだ…さっきと動きが全然違う…!?いったいどうして…」

 

「お前が何やったかは焔から通信で聞いたよ。今俺…結構キレてるんだよな」

 

ガリュー超絶の口調からは静かな怒りが感じ取れた。

 

「復讐だかなんだか知らんけどさ…お前を信じて背中を預けた仲間を…お前は後ろから撃った…」

 

ゆっくり…ゆっくりとガリュー超絶はガルーダへと迫る

 

「テメェみたいな奴は…俺が絶対に許さねえ!!」 

 

『必殺の術!!超絶!!』

 

ガリュー超絶は超絶スピノキーをスピノアクスへと挿しこみ回すとスピノアクスは凄まじいエネルギーを炎の様に纏わせる。

 

「くっ…」

 

『必殺の術!!』

 

ガルーダも慌ててプテラアローの引き金を引き弓に膨大なエネルギーが矢のようになる

 

「必殺忍法!!竜射法・超新星!!」

 

ガルーダの放った巨大な矢がガリュー超絶へと迫る。しかしガリュー超絶は引き下がらない。

 

自分の信じる悪忍の矜持を貫くために

 

「超絶必殺忍法!!超絶一閃!!」

 

スピノアクスから放たれた斬撃はガルーダの放った矢を両断してそのままガルーダへと炸裂した。

 

「は…ははは………これほどとは……」

 

ガリュー超絶の一撃をモロに喰らったガルーダはそのまま変身が解けてそのまま仰向けになって倒れた。

 

「ふ…流石だな炎佐」

 

ガリュー超絶の強さを見て焔はどこか誇らしそうに呟いた。

 

「蒼良!!雅緋!!」

 

すると慌てた様子で忌夢が駆けつけてきた。

 

「これは…どう言うことなんだ!?いったいここで何が…!?」

 

倒れている2人を見て忌夢は戸惑いを隠せずにいた。変身を解いた炎佐はそんな忌夢と倒れている雅緋をチラリを見た後、今なお倒れている蒼良へと近いた。

 

「お前ってさ…嘘つくの下手だな。ほんとはあの女を殺すつもりなんてなかったんだろ?」

 

「え!?」

 

衝撃の事実に焔は驚きの声をあげる。

 

「こいつの攻撃には殺意の類が感じられなかった。第一その女に復讐したいなら痺れ薬なんて回りくどいことしないでそのまま殺せば良いことだ」

 

だが蒼良はそれをしなかった。それどころか先ほどから戦ってる時もどこか手を抜いてる様に見えた。でも彼の復讐というのは嘘ではないのだろう…つまり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の言う復讐の対象ってのは…お前自身なんだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうだ」

 

炎佐の言葉に蒼良は倒れながら静かに語った。

 

「雅緋がなぜ禁術に手を出したのかはすぐに知った。雅緋は任務の最中両姫と遭遇した。当時何度もぶつかり合っていた…いわばライバルであった彼女と戦っている最中に、妖魔と遭遇して…両姫は死んだ。」

 

両姫を殺した妖魔は殺した相手の体を乗っ取りその力を自分のものにする能力を持っていた。両姫の亡骸を乗っ取った妖魔はその体を使って人々を殺そうとしていた。

 

「雅緋はそんな彼女を妖魔から解放するために介錯したに過ぎない…本当に罪深いのは…両姫を救えなかった…汚れ役を雅緋に背負わせた…僕自身だ」

 

あの日、僕が現場に駆けつけていれば両姫が死ぬことはなかった…雅緋に禁術を使わせることもなかった…両備と両奈を悲しませることも、2人が悪忍の道に入ることもなかった…雅緋を昏睡状態にし、忌夢1人に彼女を押し付けることもなかったし、戦いが不向きな性格の紫を選抜メンバーにしなくても済んだ…

 

「みんなの人生を巻き込んだのは僕だ、だからこそ…罪を償わなくちゃならない」

 

「だから自分1人が死ぬつもりか?仲間殺しの裏切り者の罪を背負って」

 

「鈴音先生にはすでに話をつけている。僕1人の犠牲で両備と両奈は蛇邪で保護してもらえるように…」

 

2人が復讐のためについてきたのは誤算だった…でも鈴音先生が話のわかる人で助かった。おかげで2人に責任が及ぶことはない

 

「さぁ、とどめをさしてくれ。どのみち僕は仲間を手にかけようとした裏切り者だ。君の様な悪忍の鏡に殺されるなら悔いはない」

 

蒼良は覚悟を決めた様に体の力を抜く。

 

「…わかったよ、そんなに死にたきゃ死なせてやるよ」

 

炎佐はスピノキーを起動してスピノアクスを手に持つとそれを蒼良へと振り下ろした。

 

 

 

 

 

「「駄目ぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

瞬間、炎佐のスピノアクスを止める様に両備と両奈が立ちはだかった。

 

「お前らは…」

 

「死なせない…この人は…義兄さんは絶対に殺させない!!」

 

「だめ………お兄ちゃんに手を出さないで!!!!」

 

両備と両奈は傷だらけの体で炎佐へ身構える

 

「両備…両奈…!!」

 

「バカな真似してんじゃないわよ!!私たちがそんな形で助けられて感謝すると思ってんの!?」

 

両備は蒼良の前に立ちながら彼に想いの全てをぶつける。

 

「あんたはいつもそう…!!私たちの事ばかり優先して…自分のことは後回しにして…挙句私たちの罪まで被るつもり?馬鹿にしないで!!月閃を辞めたのも…姉さんの仇を討つことを決めたのも…全部私たちが自分の意思で決めたのよ!!あんたの…義兄さんの所為なわけないでしょ!?」

 

両備は想いのままに叫び…それに続く様に両奈も涙を流す

 

「そうだよぉ…お姉ちゃんが死んじゃって…今度はお兄ちゃんまで死んじゃうなんて…そんなのやだよぉ…!!」

 

号泣する両奈を優しく抱きしめながら両備は静かに語る

 

「義兄さん…姉さんが死んだあの日…私たちに言ったこと、忘れたの?」

 

『両備、両奈…これからは……僕が2人を守るから…!!』

 

涙を流しながら抱きしめてくる蒼良を、2人は片時も忘れたことはなかった。

 

「私たちを守るって約束したならさ…こんな形じゃなくて…生きてずっと側にいてよ…お願いだから…!!」

 

「両備…両奈…!!」

 

2人の想いを聞き蒼良は泣きながら2人を抱きしめる。

 

「ごめん両備!!両奈!!僕は…僕は…!!君たちに…幸せに生きてほしくて…!!」

 

「なんだよ、ちゃんと言えるじゃないか、素直な気持ちをよ」

 

炎佐はため息を吐きながらスピノアクスをしまう

 

「気分も乗らないし、俺たちの勝ちは決まった様なもんだしもう帰らせてもらうよ」

 

「え?」

 

確かに、この状況を見れば炎佐紅蓮隊の勝ちと見て良いだろう、だが学園も燃やさずに立ち去ろうとする炎佐に驚きを隠せなかった。

 

「俺たちはお前らに俺たちが悪忍の矜持を失ってないって証明するだけで良かったんだよ。だからこれで良いんだ」

 

「う…う…!!さすがです…!!さすが炎佐さんです…!!」

 

いつのまにか紫と一緒に来ていた理吉が感激のあまり号泣していた。

 

「…ははっ完敗だな、仮面ライダーとしても…忍としても…」

 

集まってきた他の炎佐紅蓮隊メンバーと学園を去ろうとする炎佐を見て蒼良はどこか清々しい気持ちになった。

 

「炎佐!!」

 

すると、どこからか鈴音先生が駆けつけてきた。

 

「なんだよ鈴音…じゃなかった、凛先生どうしたんだ?」

 

「緊急の連絡だ」

 

炎佐は鈴音先生を凛さんと呼び直すと鈴音先生が見せてくる端末を見て驚いた表情をした。

 

「…どうやらとんでもないことになってる様だな」

 

炎佐は鋭い目をして静かに呟いた。



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其の五十三 暗躍するものと4人のライダー!!の巻

後書きにて予告があります!!


 

「さて…あとはこいつに火をつけていよいよ学炎祭の締めくくりだな」

 

満月達、月閃との決着を終えた俺達はキャンプファイヤーの準備をしていた。

 

「そういえば焔ちゃん達の方はどうなってるのかな?」

 

「大丈夫だよ、アイツらなら上手くやってるさ」

 

飛鳥は少し心配そうにいうが俺は確信していた。炎佐や炎佐紅蓮隊のみんななら必ず勝利する。それに紫たちにも悪い様にはしないだろうと

 

「せっかくだしアイツらも誘うか、蛇邪の新メンバーや理吉を一緒に」

 

「お前…仮にもアイツら敵同士だぞ…」

 

そんな俺に満月が呆れた様子でため息を吐く

 

「良いじゃん別に、よく言うだろ?『昨日の敵は京都燃やす』って」

 

「それを言うなら『昨日の敵は今日の友』ですよ竜司さん」

 

俺の例えが間違っていたのか斑鳩先輩が訂正する。

 

「立場が敵だからってさ…歪み合わなきゃダメだって訳じゃないと思うんだ、ぶつかり合うこともあるけど…アイツらの中にだって気の良い奴らもいるし」

 

炎佐、理吉、紫、焔たちも今では俺たちの信じられる奴らだ。善忍だから、悪忍だからって争うだけが答えじゃない。俺は彼らとの出会いでそれに気づけたんだ。

 

「…そういえば、俺の口上の『月の正義』も…そういう意味だったっけ」

 

すると満月が懐かしそうに上を見上げて呟いた。

 

「『太陽とは違い、どんな奴にも見つめることが出来る優しい光』…先生を手本に目指した俺の忍の道…すっかり忘れてた」

 

「満月…」

 

「ありがとう竜司、お前のおかげで一番大事なことを思い出せた。」

 

「お前たち、すまないがキャンプファイヤーは少し待ってくれ」

 

するとそこへ霧夜先生が駆けつけてきた。

 

「どうしたんですか?まさかマシュマロ買い忘れたとか…」

 

「ちがう、緊急事態だ。竜司、満月、すぐに善忍本部へ向かってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

事の始まりは少し前に遡る。善忍本部にて神門の護衛部隊隊長が呼び出しを受けて指示された場所へと歩いてきた。

 

「失礼します!!神門様、どうされました?」

 

呼び出された場所は忍が訓練にも使う広い空間で周囲は頑丈なシェルターの様になっていた。しかしそこには神門の姿はない

 

「なんだ?一体どこに…」

 

次の瞬間、周囲に忍結界が広がり彼を結界内へと閉じ込めた。

 

「なっ…これは…!!」

 

「貴方を閉じ込める結界ですよ」

 

そこへ他の護衛部隊を引き連れた神門と身体に包帯を巻きつけた鉄心とその部下達が現れた。

 

「どういう事ですか神門様!?なぜ私を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減演技はやめたらどうですか?全てわかっているんですよ?グリフォンスカル」

 

その言葉に隊長は一瞬固まると観念したかの様に頭を下げ目つきの鋭い目で睨みつけた。

 

「マジかよ…いつ気づいた?」

 

「以前からですよ、最初にリューマの鎧の研究施設が襲われた時、あそこは情報漏洩を避けるために一部のものにしか場所を明らかにしていない。なのにああも簡単に突き止められたということは…内通者がいたという事。」

 

だから神門は怪しい人物を割り出し自身の推理と徹底的な捜査で犯人のその正体を特定したのだ。

 

「あんたの頭脳を少し侮ってたぜ。未来予知だけじゃなかったんだな」

 

「一芸だけでなれるほど、最高幹部の地位は安くありません。とにかく…貴方はこれで終わりです」

 

神門は手を振り合図をすると他の忍たちがグリフォンスカルを取り囲む

 

「舐められたもんだな、ただの忍が、対スカル武器もろくにない状況でロードスカルの1人である俺に勝てると思ってるのか?」

 

「いいえ、でも勝つ必要はありません。それは信頼できる者たちに託します」

 

神門の言葉にグリフォンスカルは彼女たちの狙いに気づく

 

「舐めるな忍風情がぁぁ!!」

 

『グリフォン!!』

 

 

 

 

 

「まさか…グリフォンスカルが内部に潜んでいたなんて…」

 

霧夜先生から語られた衝撃の事実に俺たちは驚愕した。

 

「神門様は現在、鉄心と共にグリフォンスカルを結界内に閉じ込め足止めしている。グリフォンスカルは自身の隠し研究室で何かを作りその力でよからぬ事を企んでいる。奴を討伐するためにすぐに向かってくれ」

 

「はい!!」

 

「勿論だ」

 

俺と満月は霧夜先生の言葉に強く頷いた。

 

「そして奴を倒すために万全を期すために特別措置てして応援を呼ぶことにした。そろそろ来る頃だ。」

 

するとバイクのエンジン音が響きそちらを向くとシノビークル烈火に乗った炎佐と紫色のシノビークルに乗った蒼良がやってきた。

 

「炎佐、それに蒼良も…」

 

「話は全部聞いている。俺たちも加勢するぜ」

 

「僕も協力させて欲しい」

 

思わぬ加勢に俺は驚きを隠せなかった

 

「まさかお前達まで協力してくれるのか…すごい心強いぜ!!」

 

「お前らにワイルドギアを貰った借りを返せる機会がすぐに来て良かったぜ」

 

炎佐はシノビークル烈火から降りるとニヤリと笑ってそう返す。

 

「それに蒼良まで…あんたも手伝ってくれるのか…!!」

 

「彼には恩がある。僕たちは立場こそ敵同士だけど…今回はそれを抜きにして是非とも協力させてもらうよ」

 

蒼良とは一度戦っただけだが彼の強さはかなりのものだ。味方になってくれるならこれほど心強いことはない。

 

「もちろんこの戦いが終わったら僕たちは改めて敵同士だ。そこはわかってくれるね」

 

「もちろんだ、次はリベンジしてやる」

 

この前はなすすべなくやられちゃったけど今の俺はあの時とは違う。必ず勝ってやる。

 

「なるほど、次は同じ様には行かなそうだ」

 

「お前らそろそろ準備しろ」

 

炎佐に促され俺たちはシノビークルの準備をする。

 

「そうだ満月、お前はシノビークルって」

 

「大丈夫、神門様にトプスパーダを受け取った時に一緒にもらった。」

 

『シノビークル!!』

 

満月は銀色の小さな巻物を起動して放り投げると巻物は銀色のバイク、シノビークル月牙へと変形した。

 

「りゅーくん、私たちも一緒に…」

 

「いや、飛鳥たちはまだ学炎祭のダメージが残ってるだろ?スカルを倒せるのは俺たち仮面ライダーだけだし…今は体を休ませて」

 

「竜司の言うとおりだ、お前たちの体は万全じゃない。下手に大勢で行かない方がいい」

 

「りゅーくん…」

 

「大丈夫、必ず戻るから」

 

飛鳥たちが加勢してくれれば確かに心強いがグリフォンスカルの企みがまだどんなものかわかってない以上、万全じゃないみんなを連れて行くのは危険だ。今は少数精鋭で様子を見るのが得策だと霧夜先生と話し合って決めていた。

 

「よしみんな…行くぞ!!」

 

「「「応!!」」」

 

俺に続く様に炎佐、満月、蒼良はシノビークルに跨り善忍本部に向けて走り出した。

 

 

 

 

 

「もう少しで彼らが来ます!!」

 

「頑張れ!!なんとか踏みとどまるんだ!!」

 

善忍本部ではグリフォンスカルを神門と鉄心達忍部隊が抑え込んでいた。

神門と鉄心の的確な指示でグリフォンスカルを逃さず結界内に留めていたが、ロードスカルの強大な力と先の弥勒の襲撃によって対スカル武器がかなり失われており徐々に押されていってしまっていた。

 

「鬱陶しいんだよ…いい加減くたばれお前らぁぁぁ!!」

 

グリフォンスカルの怒りの叫びと共に巨大な竜巻が発生し忍たちは思わず吹き飛ばされてしまう。

 

「ちっ…雑魚のくせに抵抗しやがって…これで終わりだ」

 

グリフォンスカルは手に持った銃の銃口を神門と鉄心に向けながらゆっくり近づく

 

「いいえ、ここからが私たちのターンです」

 

『カァー!!』

 

「なっ!?」

 

神門の言葉と共に蒼良のオトモカラクリ、カラクリカラスのカゲバネが現れてグリフォンスカルに小型ミサイルを放った。

 

「ゲホッゲホッ…誰だ!?」

 

ダメージこそ無いが思わぬ不意打ちにグリフォンスカルは咳き込む。煙が晴れると神門たちを守る様に4人の影が立っていた。

 

「蒼良…あのロボカラス、お前のオトモカラクリだったの?あいつ以前に紫の大事なべべたん攫った奴なんだけど」

 

「あ〜その〜アイツ収集癖あって、たまに変な物持ってくるとかあったけど…今度謝っとこ…」

 

「はっ、自分の相棒躾けられないんじゃまだまだだな」

 

「俺のオトモカラクリも結構すごいんだぜ、今度見せてやるよ」

 

それは、スカルから人々を守るために恐竜の力を纏う4人の忍…竜司、蒼良、炎佐、満月だった。

 

「お待ちしていました皆さん、あとは託してよろしいでしょうか?」

 

「任せてください!!」

 

神門様に自信を持ってそう告げると、俺たちはグリフォンスカルへと立ちはだかる。

 

「はっ、善忍と悪忍が手を結ぶなんてとんだお笑い種だな」

 

「何もおかしくねえよ」

 

嘲笑うグリフォンスカルに俺たちは強く告げる

 

「善と悪…たとえ進む道は違っても…」

 

「俺たちはお前の様な奴を許さねえ!!」

 

「俺たちに託してくれた恩人に報いるためにも…」

 

「必ずお前を倒してみせる!!」

 

『ティラノ!!』

 

『スピノ!!』

 

『トリケラ!!』

 

『プテラ!!』

 

俺たちはそれぞれのキーを起動して俺と炎佐は腰のカグラドライバーに、満月と蒼良はトプスパーダとプテラアローの鍵穴に挿し込む

 

『『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』』

 

ベルトから音楽が流れ、トプスパーダとプテラアローから三味線とエレキギターの音色が流れてくる。

 

「「「「変身!!」」」」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

『武装!!スピノ!!』

 

『竜装!!トリケラ!!』

 

『竜装!!プテラ!!』

 

俺と炎佐は鍵穴を回し、満月はトプスパーダの剣を抜き、蒼良はプテラアローの引き金を引く。そして俺たちは仮面ライダーリューマ、仮面ライダーガリュー、仮面ライダーオルグ、仮面ライダーガルーダへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「仮面ライダーガリュー…いざ、舞い殉じる!!」

 

「仮面ライダーオルグ…月の正義を舞い称える!!」

 

「仮面ライダーガルーダ…悪の誇りを、舞い掲よう!!」

 

己の信じる忍の道のために、今ここに4人の仮面ライダーが団結した瞬間であった。

 

「舐めやがって…ここでお前らを皆殺しにしてやる!!」

 

するとグリフォンスカルは空間から黒い卵のような球体を取り出す。その球体から黒い泥が溢れるとそこからバイソンスカル、カメレオンスカル、マンティススカル、ライノセラススカル、ウォートホッグスカル、オクトパススカル、ジャガースカル、ラットスカル、ビートルスカル、スタッグスカル、コックローチスカル、ラビットスカルへと形を変えた。

 

「あのスカル…全部倒した奴らだ!!」

 

「どんな仕組みか知らねえが…上等だ!!」

 

俺たちはそれぞれの武器を構えると復活スカル軍団に身構える

 

「かかれぇ!!」

 

「「「「「グォォォォォ!!」」」」」

 

グリフォンスカルの叫びと共に復活スカル軍団は俺たちに襲いかかった。

 

「いくぞっ!!」

 

「「「よっしゃあ!!」」」

 

俺たちも復活スカル軍団を迎え撃つ

 

最初に仕掛けてきたのはバイソンスカル、肥大化した巨腕を振りかぶって殴りかかってきた。しかしそれを俺は受け止めカウンターを繰り出した。

 

「ぐぉっ!?」

 

「ギギィッ!!」

 

俺のカウンターで吹き飛んだバイソンスカルにジャガースカルが巻き込まれ吹き飛ぶ。今度はマンティススカルが両手の大鎌で斬りかかってくるがオルグの盾でガードされた。そこへライノセラススカルが襲いかかってくるが、オルグは盾を突き出してマンティススカルを押し返すとトプスパーダを大剣モードにして2匹まとめて斬り裂き撃破する

 

「はぁぁぁっ!!」

 

一方ガルーダはプテラアローの矢でコックローチスカル、ラビットスカルへと矢を放ち優勢であった。しかし突如背後から何者かに攻撃を受ける

 

「これは…」

 

「シュルルルル…」

 

姿を消したカメレオンスカルが周囲を動き回りながらガルーダへと舌による攻撃を繰り出して行く。それに合わせるようにコックローチスカルは鋭い爪で、ラビットスカルは手に持った槍で攻撃を仕掛けた。

 

「はあっ!!」

 

しかし、ガルーダは背中に翼を生やすと空中へと飛び立ち視力を強化してカメレオンの位置を特定した。

 

「なんかごめんね、僕と能力の相性最悪だったね」

 

皮肉を言うとガルーダは矢を3体のスカルへと連射し撃破した

 

「グルゥッ!!」

 

「ガァッ!!」

 

ビートルスカルとスタッグスカルは自身の大剣と双剣を使って斬りかかってくる。2匹は巧みなコンビネーションで襲い掛かりそれを俺とガリューが迎え撃つ。

 

「炎佐!!」

 

『武装!!ステゴ!!』

 

「応!!」

 

俺の声にガリューが狙いに気付く。俺はすかさずガリューの肩を踏み台にして勢いよく飛び上がるとステゴ武装になりステゴスライサーを投げてビートルスカルとスタッグスカルを斬り裂く

 

「竜司!!次は俺だ!!」

 

「武装!!アンキロ!!」

 

ガリューはアンキロ武装に変身してアンキロアイアンを振り回す、ビートルスカルとスタッグスカルは慌ててそれを回避する。

 

「無駄だ!!」

 

しかし俺はアンキロアイアンの鉄球を2匹のスカルの方へとサッカーボールのように蹴り飛ばして吹き飛ばし2匹は爆発した。

 

「コンビネーションなら俺たちは負けねえぞ!!」

 

「ブヒィィィィィィン!!」

 

「グォォォォォォォ!!」

 

「ギャァァァァァ!!」

 

すると俺たちの方へウォートホッグスカルとオクトパススカル、ラットスカルの巨獣態が襲いかかる

 

「デカくなっても…」

 

「俺たちは負けねえ!!」

 

『サイクロン武装!!メガロ!!』

 

『武装!!ブラキオ!!』

 

俺はリューマサイクロンに、ガリューはブラキオ武装に変身した。俺は背中に生えた機関銃を撃ってくるラットスカル巨獣態をサイクロンの機動力で躱してカウンターを放ちガリューはブラキオのパワーで突進するウォートホッグスカル巨獣態を殴り飛ばしオクトパススカル巨獣態の墨爆弾をガルーダの矢が撃ち落としてオルグが斬りつけた。

 

「「「「いくぞ!!」」」」

 

『『『必殺の術!!』』』

 

『必殺の術!!サイクロン!!』

 

俺たちはそれぞれの必殺忍法を放ち巨獣態のスカルへと繰り出し巨獣態スカルたちはそれぞれにぶつかり爆発した。

 

「くそがぁっ!!」

 

そこへグリフォンスカルが両手の銃を撃ちながら迫ってきた。俺たちは咄嗟に風の弾丸を躱した。

 

「舐めんじゃねえぞガキども!!俺はスカルの中でも12体しかいないロードスカルだぞ!!お前らガキとは格が違うんだよ!!」

 

「それはこっちのセリフだ…」

 

『ワイルドオン!!』

 

俺と炎佐はワイルドギアを起動してドライバーに取り付けた。

 

「お前みたいなクズとは」

 

「背負ってるもんが違うんだよ!!」

 

『超絶ティラノ!!』

 

『超絶スピノ!!』

 

『超絶キー』を起動して鍵穴に挿し込む。

 

『『ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!』』

 

ベルトから音声が流れ鎖から解き放たれたティラノとスピノが俺達の隣に並び雄叫びを上げる。

 

「「変身!!」」

 

『『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』』

 

俺たちはリューマ超絶とガリュー超絶に変身する。

 

「いくぞ満月、蒼良!!」

 

「忍の力を…見せる時だ!!」

 

「ああ!!」

 

「僕たちの力を…アイツに見せてやろう!!」

 

「くそがぁぁ!!」

 

激昂するグリフォンスカルの弾丸を躱してワイルドブラスター・バスターモードを持った俺とトプスパーダ大剣モードを持ったオルグがグリフォンスカルへと切り込む。グリフォンスカルは空中に逃げようとするが後方からワイルドブラスター・キャノンモードを持ったガリュー超絶とプテラアローで矢を放つガルーダがそれを許さない。息のあったチームプレイにグリフォンはどんどん追い込まれる。

 

「何故だ…なぜ敵同士のはずなのに…これほどの連携が…!!」

 

「俺たち忍は確かに普段はぶつかり合う…だけど信念が重なり、同じ敵を討つ時…俺たちの想いは一つになるんだ!!」

 

声を張り上げる俺たちにグリフォンスカルは完全に追い込まれた。

 

「クソが…やっぱり勝てねえか…だったら腹を括るしかねえか!!」

 

瞬間、グリフォンスカルは黒い球体を取り出して飲み込んだ

 

「なっ…!?」

 

「ぐぅぅぅ…!!ぎゃあぁぁぁぁ!!」

 

瞬間グリフォンスカルを禍々しい泥が飲み込みどんどん変形していった。

 

「いったい…何が起こるんだ…!!」

 

すると、泥はついに形を成し悍ましい怪物の姿へと変わる

 

 

 

 

リューマたちとグリフォンスカルとの戦いはいよいよ佳境へと向かっていった。

 

 




劇場版予告

仮面ライダーリューマに

新たな危機

「京都キターーーーー!!」

修学旅行で京都に来た竜司たちは謎の少女たちと出会う

「わたしはかぐら!!よろしくね!!」

謎の少女 かぐら

「自分の使命はただ一つ、かぐら様を守る事だ」

かぐらを護る少女 奈楽

「なんだこいつら!?ただの妖魔じゃない!?」

かぐらを狙う者 妖魔衆

古の都を舞台に竜司に試練が訪れる








「半蔵学院忍学生に緊急指令!!逃亡者竜司を捕縛せよ!!」



「りゅーくん!!私たちと戦うことになるんだよ!?」

竜司vs半蔵学院

「お前は…忍の使命をなんだと思ってるんだ!!」

使命か

「そんなのは俺の目指す忍じゃない!!」

信念か

「俺は絶対にかぐらを死なせない!!自分が目指す…道のために!!」




劇場版仮面ライダーリューマ 京都大決戦〜絆のサッカーボール〜








入場者に⦅ボールを蹴る!!サッカーライダー⦆プレゼント!!




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其の五十四 大決戦と大団円!!の巻!!

 

「なんなんだこいつはいったい…!!」

 

グリフォンスカルを取り込んだ禍々しい泥は形を変えて邪悪な姿の怪人へと変わった。その姿はまるで今まで倒したスカルを組み込んだような悍ましい姿をしていた。

 

「気をつけろリューマ…こいつ、明らかにやばい…!!今までのスカルと違うぞ」

 

「あぁ、見ているだけでやばさが伝わってくる…」

 

「まさか…こんなラスボスが待っているとはね」

 

俺たちは想定外の敵に驚きながらも覚悟を決め戦闘態勢に入った。

 

「いくぞ!!」

 

「「「おうっ!!」」」

 

俺の合図と共にガリュー、オルグ、ガルーダを叫び謎の怪人へと向かっていった。謎の怪人は体からビートルスカルの大剣を生み出すと勢いよく俺たちに振り下ろしてきた。

 

「なっ…!!」

 

「くそっ!!」

 

俺たちは咄嗟に回避すると大剣を叩きつけた地面が凄まじい音と共に粉砕した。その破壊力はビートルスカルの力を遥かに凌駕していた。

 

「…………」

 

謎の怪人は大剣を消すと今度は右腕をマンティススカルの大鎌へと変化させ、ウォートホッグスカルのような車輪とブースターを背中に生み出すとカメレオンスカルのように姿を消し凄まじいスピードで突進し右手の鎌で斬りつけてくる。

 

「うおっ!?」

 

俺たちはわずかに感じた気配を頼りになんとか回避する。

 

「あっぶね〜なんだこいつ」

 

「あらゆるスカルの能力が使えるのか!!」

 

思わぬ能力に俺たちは驚愕した。

 

「我は…鵺…超越魔獣・鵺…全ての…スカルを…超越し…全ての頂点に立つ者…脆弱な忍よ…我に平伏せ」

 

突然喋り出した超越魔獣・鵺は高らかにそう告げる

 

「冗談じゃねえ…テメェが何物だろうが俺たちは絶対に屈しない!!」

 

「忍の力、お前に見せてやるぜ!!」

 

「愚かな…死ねぇ!!」

 

超越魔獣・鵺は左手をオクトパススカルの触手に変えて俺たちの動きを止めようとする。しかし俺たちはすぐにそれを回避し懐へと入った。

 

「無駄だ!!」

 

しかし超越魔獣・鵺は左手をライノセラススカルの盾へと即座に変えて攻撃を防いだ、そしてマンティススカルの鎌にジャガースカルの炎を纏わせて俺たちを斬り裂いた。ただスカルの能力を使えるだけじゃないオリジナルのそれを上回る強さを有している。

 

「ぐっ…やっぱり強いな!!」

 

「ただの怪人とは訳が違う…でも!!」

 

「だからって負けるわけには…」

 

「いかないね!!」

 

俺たちにだって負けられない理由がある。人々をスカルの脅威から守るために…『世界一カッコイイ忍』になるために、そして

 

「みんなと…キャンプファイヤーをするためにな!!」

 

そのためにはまだ終われない…こんなところで終わってなるものか!!

 

俺たちは互いを見て頷き合った。言葉を交わさなくても互いの考えは手に取るようにわかる。4人とも考えは同じだ。

 

「いくぞお前ら」

 

「足引っ張るんじゃねえぞ」

 

「こっちのセリフだ」

 

「しっかりついてきてよ」

 

そして俺たちは超越魔獣・鵺へと向かっていく。

 

「何度やっても同じことだ…人間では…決して…我に勝つことは…できない」

 

超越魔獣・鵺はオクトパススカルの触手を伸ばして俺たちを捕まえようとする。

 

「勝てるかどうか…確かめてみろぉ!!」

 

俺たちは触手を躱して超越魔獣・鵺へと斬りかかる。しかし超越魔獣・鵺もスタッグスカルの双剣を生み出してその攻撃を凌ぎ再び俺たちへと襲いかかる。

 

「ふっ!!」

 

「はぁっ!!」

 

「なにっ!?」

 

しかし俺とオルグが双剣を難なく受け止めてそれぞれの剣で押さえ込む

 

「くらえ!!」

 

「はっ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

動きを封じられた超越魔獣・鵺へとガリューの砲撃とガルーダの矢が炸裂した。その連続攻撃に超越魔獣・鵺は吹き飛ばされ地面を転がる。

 

「な…なぜだ…!?我は全てのスカルを超越した存在のはず…それが…なぜ…?」

 

「お前の力…確かに最初は驚いたけど、拍子抜けなんだよ」

 

最初は複数のスカルの力をオリジナル以上の力で使え、それを組み合わせることができるこいつに驚き攻撃を喰らってしまった。だが、戦ってるうちに気づいてしまった。こいつは複数のスカルの力をオリジナルより使える…ただそれだけに過ぎないのだと

 

「言ってしまえばさっき戦ったスカル軍団となんら変わらないんだよ!!その程度の力で俺たちを倒せると思うな!!」

 

「戯言を…語るなァァァァ!!」

 

先ほどと打って変わって激昂する超越魔獣・鵺は口からラットスカル巨獣態の熱線を吐き俺たちを焼き尽くそうとする。

 

『『必殺の術!!超絶!!』』

 

『『必殺の術!!』』

 

俺たちはそれぞれの武器に力を溜める。目の前の敵を討つために

 

『『『『合体必殺忍法!!超絶ダイナソーフィニッシュ!!』』』』

 

放たれた俺たち4人の斬撃が一つの巨大な斬撃となり超越魔獣・鵺を熱線諸共斬り裂いた

 

「馬鹿な…我が…こんな忍どもに…」

 

ダメージが大きく超越魔獣・鵺の体に大きな傷ができ動きも朦朧としていた。

 

「よし!!次でとどめだ!!」

 

「一気に決めるぞ!!」

 

「これで終わりだ」

 

ガリュー、オルグ、ガルーダは超越魔獣・鵺へとトドメを刺す準備をした。

 

(なんだ…?これで終わりで良いはずなのに…嫌な予感が消えない)

 

しかし、俺は何やら妙な不安が過っていた。

 

「おのれ…貴様らなど…ぐっ!?」

 

ふらつきながらも俺たちを睨みつけていた超越魔獣・鵺が突然苦しみ出す。

 

「っ!?なんだ?」

 

「ば…馬鹿な…お前は…我の贄となって…がっ!?」

 

苦しむ超越魔獣・鵺が体を抑えると体内で何かが暴れているかのように全身が蠢き出す。

 

「あがっが…嘘…嫌だ、我が…最強の存在なのに嫌やめて助けお願い苦しい辛い痛いイタイイヤダヤメテヤメタスケナクナルキエルキエチャウクルシイキエルキエルキエルキエルキエルキエルキエルキエルキエルキエルキエル」

 

壊れた機械ように苦しみ出す超越魔獣・鵺の体はどんどん膨れあがっていき

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

断末魔と共に爆発した。

 

「な、なんだ…!?」

 

突然のことにオルグが震える。すると爆発の中心に禍々しい気配を感じた。

 

「っ!?気をつけろ!!何がいるぞ!!」

 

俺たちは咄嗟に身構える。

 

「俺はスカルキーの開発実験用のモルモットだった」

 

突如グリフォンスカルの声が聞こえてくる

 

「ある日改造スカルキーに取り込まれかけそこで俺の人生は終えるはずだった。だが俺は生への執念によって生き延びロードスカルへと進化した」

 

煙が晴れその姿が露わになっていく

 

「その後俺はスカルキーの研究を続けその末に気づいた。死の淵から這い上がった時、さらなる次元へと進化することができるのなら…同様の状態になればロードスカルからもさらなる領域へと至れるのだと…その賭けは、成功したようだな」

 

その姿は先ほどよりも禍々しくも神々しい金色に輝き、以前の倍以上もある巨大な翼と両腕に鋭い爪を持つ姿、グリフォンスカル超獣態となっていた。

 

「なんだあれ…」

 

「以前と比べ物にならない…これって」

 

「あぁ、さっきまで感じていた禍々しい気配は鵺のものじゃなかったんだ。こいつが発していたものだったのか」

 

「だとしたら…ここからが本番という訳だ」

 

俺たちは気持ちを切り替えグリフォンスカル超獣態へと身構える

 

「ふっ」

 

グリフォンスカル超獣態はニヤリと笑うと俺たちの目の前から消える

 

「なっ…消え」

 

瞬間、俺たちに強い衝撃が走り吹き飛ばされてしまった。後ろを向くと翼を羽ばたかせるグリフォンスカル超獣態がいた。俺たちは目にも止まらぬ速さで吹き飛ばされたのだ。

 

「うん、強くなった。この万能感!!やっぱり俺の予想は正しかったぜ!!今俺は誰よりも強い!!」

 

俺たちを吹き飛ばしたグリフォンスカル超獣態は高らかに笑う

 

「俺は陛下ですら辿り付かなかった次元へと進化した!!もうやつに従う必要もない!!俺が!!俺こそが世界の頂点に立ってやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって月閃忍学館

 

「…よしっ」

 

飛鳥は1人身支度をしていた。

 

「やっぱり行くつもりなんですね飛鳥さん」

 

するとそこへ斑鳩がやってきた。

 

「斑鳩さん…うん、やっぱりりゅーくんを放っておけない」

 

飛鳥の言葉に斑鳩をクスリと微笑んだ

 

「でしたらわたくしも行きます」

 

「斑鳩さん?」

 

「わたくしの愛する人が…仲間が戦っているんです。休んでなんかいられません」

 

「だったらあたいらも行くぜ」

 

そこへ葛城たちも集まる。

 

「かつ姉!!みんなも!!」

 

飛鳥は嬉しそうに笑う。みんなも考えが同じだったことが嬉しかった。

 

「それと飛鳥さん、抜け駆けはダメですからね」

 

「ふぇっ!?そ、そんなつもりは…」

 

斑鳩の言葉に飛鳥はドキリとした。図星だったようだ

 

「ふふっ、冗談ですよ」

 

慌てる飛鳥に斑鳩は再び微笑んだ。

 

「ん?」

 

するとそこへ誰かがやってきた

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、新たな俺のお披露目だ。お前ら、すぐ壊れるなよ」

 

グリフォンスカル超獣態は笑いながら俺たちを煽ってきた。

 

「舐めやがって!!」

 

俺たちは一斉にグリフォンスカル超獣態へと飛びかかる。しかしグリフォンスカルは斬りかかる俺とオルグを軽々と躱して両手の爪で斬り裂き後方から放たれるガリューとガルーダの砲撃と矢を跳ね返してしまう。

 

「この…うぉぉぉぉ!!」

 

「無駄だ」

 

「うわぁぁぁ!!」

 

今度は全員で囲んで一斉に攻撃を仕掛けるが巨大な竜巻を生み出してそれに巻き込まれて俺たちは空高く巻き上げられ地面に激突してしまった。

 

「こいつ…強すぎる」

 

先ほどとは比べ物にならない。一体どうして急にここまでの力を得たのかわからなかった。

 

「そうか…わかったぞ。これは蠱毒だ!!」

 

突然、蒼良がその理由に気付いたようだ

 

「蠱毒?なんだそれ」

 

「無数の毒蟲を壺に閉じ込めて殺し合わせることで最後に生き残った1匹に強力な呪力を宿す禁術だよ。おそらく奴が最初に持ってた黒い球体は破壊された無数のスカルキーの破片を混ぜ込んでそこに宿っていた力を怨念として殺し合わせていたんだ」

 

「そうか…その中に自分も加わって怨念たちを討ちまかして最後の1匹となることで呪力を取り込んで進化したのか…」

 

蒼良の言葉に俺たちも納得した。だが一歩間違えれば自分自身が食われてしまう。まさかグリフォンスカルがそんな命懸けな賭けをするなんて夢にも思わなかった。

 

「正解…と、言いたいところだがその答えじゃ半分だな」

 

俺らの話を聞いてたのかグリフォンスカル超獣態が笑いながら話した。

 

「破壊された複数のスカルキーを混ぜ合わせてその怨念を生み出したってのは間違ってねえ…だがそれだけじゃ大した力にならねえよ。だからドラゴンのやつが作ったウルフスカルの憑依学習能力と俺が作った他者に憑依することでその力を使えるようになる妖魔を複数体掛け合わせることでスカルキーに受肉させて力を倍増させたんだよ。忍の世界に潜伏してたおかげで妖魔についても研究できたからな」

 

「なっ…!!」

 

その言葉にガルーダが驚愕した。

 

「他人に…憑依する妖魔だと…!!それって…!!」

 

かつて…両姫を殺しその亡骸を乗っ取った妖魔と同じ…まさか…!!

 

「その…妖魔はいつ頃から出来たんだ?」

 

「あ?そうだなぁ…四年前だったかな?確か試験的に1匹外に放った奴が忍学生をちょうど良く乗っ取ってくれたっけな。あれは良いデータが録れた」

 

間違いない、四年前両姫を殺したのは…!!両備と両奈から大切な姉を奪ったのは…!!

 

「お前…だったのか!!」

 

真実を知りガルーダは激しく憤りを感じた。それはグリフォンスカル超獣態への復讐心故ではない。

 

「こんなことを知らずに…雅緋を撃つなんて…こんな奴の…手のひらで踊らされてたなんて」

 

「蒼良」

 

後悔するガルーダにガリューが声をかける

 

「今更過ぎたことを悔やむな。大事なのはその後どうするかだろ」

 

「炎佐…うん、君の言う通りだ」

 

ガリューに諭されガルーダは落ちたが取り戻した。

 

「これ以上…こんな奴に苦しめられる人たちを作るわけにはいかない!!」

 

「俺たちで、こいつを倒す!!そうだろお前ら!!」

 

「もちろん!!」

 

「俺も絶対に許さない!!」

 

ガリューの問いかけに俺たちも同意する。こんな自分の為に、罪もない人を平気で食い物にするような奴を…俺たちは絶対に許さない!!

 

「盛り上がってるところ悪いがよ…テメェらには勝機なんてもうねえんだよ」

 

すふとグリフォンスカル超獣態が指先から血のような液体を地面に垂らすとそこから無数の妖魔が生み出された。

 

「なっ…こいつ、こんな能力までもってたのか!?」

 

「進化した俺にとっちゃこんなことわけねえんだよ。どんな気持ちだ?気合い入れた途端に更なる絶望が現れた感想は?」

 

絶望的な状況にグリフォンスカル超獣態はニヤリと笑いながら俺たちを見つめた。しかし、俺たちは揺るがない

 

「はっ、俺は『世界一カッコイイ忍』になるんだ。こんなところで絶望してられるか」

 

「そうだ…諦めてなんかいられねえ!!」

 

「ぶつかり続けてれば…必ず勝機は訪れる!!」

 

「その時まで…俺たちは何度だって立ち上がるんだ!!」

 

再び立ち上がる俺たちにグリフォンスカル超獣態は苛立つ

 

「…だったらここで終わらせてやるよ!!やれぇっ!!」

 

グリフォンスカル超獣態の合図とともに無数の妖魔軍団が一斉に襲いかかってきた。

 

 

 

しかしその瞬間、妖魔たちの前に四つの影が立ち倒される。

 

「な、なんだ!?」

 

グリフォンスカル超獣態が驚くと煙が晴れて飛鳥、焔、雪泉、雅緋が俺たちの前に立っていた。

 

「みんな…どうしてここに?」

 

「決まってるでしょ?りゅーくんたちを助けにきたの」

 

驚く俺に飛鳥が自信を持って応える。

 

「私たちだって忍だもん!!りゅーくん達だけに戦わせない!!」

 

「その通りです。私たちは決してこのような輩に臆しません!!」

 

「私たちの力を」

 

「こいつに見せてやる!!」

 

「その通りです!」

 

すると斑鳩先輩をはじめとする他のみんなも揃っていた。

 

「みんなも…」

 

俺は集まったみんなを見て嬉しかった。

 

「妖魔はわたくし達が引き受けます!!飛鳥さん達は竜司さん達の援護を!!」

 

「うん!!」

 

斑鳩の声に飛鳥たちは頷き俺たちの側に並び立った。

 

「りゅーくん、私も一緒に戦うよ!!」

 

「飛鳥…」

 

俺に向かって自信を込めてそう告げる飛鳥が、幼い頃から共に学び、共に歩んだ幼馴染が俺はとても心強かった。

 

「ありがとう!!」

 

「りゅーくん…!!任せて!!」

 

 

 

「私も手を貸すぞ!!嫌とは言わないな」

 

焔の言葉にガリューはニヤリと笑う

 

「な、なんだ?急に笑い出して…」

 

「いや、気づかないうちに強くなったんだなって」

 

入学して間もない頃は『仲間などいらない』なんて言ってたのにいつのまにか仲間との戦いが板についてきたなって感じていた。

 

「お前…私を馬鹿にしていないか?」

 

「まさか」

 

ガリューは嬉しく笑うとスピノアクスを手に取る

 

「背中を任せるぞ!!」

 

「もちろんだ!!」

 

 

 

「満月、私たちも行きましょう」

 

「ああ」

 

雪泉に頷きながらオルグは竜司たちを見た。

 

「あいつらってすごいな、どんな壁が立ちはだかっても自分の信念のために全力でぶつかって、そんな姿が他の奴らをも奮い立たせる」

 

「ええ、そうですね」

 

いつのまにかそんなリューマたちに染まっていることを自覚ながらオルグは改めて雪泉の方を見た。

 

「いこうぜ、あいつらと一緒にこの世界を守ろう!!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

「そうか…両姫が死んだのは奴の仕業だったのか…」

 

雅緋はガルーダから両姫の死の原因を聞いていた。

 

「すまなかった…君は両姫の誇りを、尊厳を守ってくれていたというのに…君を後ろから撃つなんて真似を…」

 

「気にするな、もう過ぎたことだ。それよりも…」

 

謝るガルーダに首を振ると雅緋はグリフォンスカル超獣態の方をみる。

 

「敵ではあったが両姫は誰よりも強く誰よりもまっすぐな善忍だった。私はそんなあいつとライバルだったことを誇りに思っている…だからこそ、そんなあいつにあのような最期を負わせたあの外道は許さない!!」

 

自身のグリフォンスカルへの怒りを叫ぶ雅緋に、両姫への想いを叫ぶ雅緋に、蒼良は嬉しそうに微笑んだ。

 

「力を貸してくれるか雅緋?」

 

「もちろんだ!!」

 

 

 

 

こうして、リューマ達は己の信念のもと、信じられる仲間と共に目の前の強敵に立ち向かった。

 

「勝手に盛り上がってんじゃねえ…お前らは、最強の存在に進化した俺に殺される宿命なんだよぉ!!」

 

俺たちに怒りながら、グリフォンスカル超獣態は翼を羽ばたかせ竜巻を纏わせた両手の鉤爪で襲いかかってきた。

 

「みんな…!!」

 

「いくぞぉ!!」

 

俺と飛鳥の叫びと共に皆がそれぞれの最強形態となりグリフォンスカル超獣態を迎え撃つ。俺と飛鳥の剣戟がグリフォンスカル超獣態の鉤爪を弾き、ガリューと焔の炎を纏った斬撃が竜巻を吹き飛ばす。

 

「ぐっ…このっ…!!」

 

オルグの一撃が翼に叩きつけられ雪泉の氷が凍りつかせる。その凍った翼を雅緋の黒炎を纏った七支刀の斬撃が斬り裂き、動きが鈍ったところをガルーダの矢がグリフォンスカル超獣態の体に撃ち込まれた。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!?」

 

俺たちの攻撃が炸裂しグリフォンスカル超獣態の翼が切り裂かれ吹き飛ばされる

 

「お前は確かに強い…けど、俺たちには勝てない」

 

「俺たちは仲間と共に戦い、その力を高め合うことでどこまでも強くなれる!!」

 

「自分1人の力しか信じない奴に」

 

「僕たちが負けることは絶対にない!!」

 

俺たちの言葉にグリフォンスカル超獣態は怒りをあらわにする。

 

「知った方を聞くなあぁぁ!!俺は底辺からここまで登り詰めたんだ…!!俺はいずれこの世界の頂点に立つ…!!もう誰にも、俺を見下させねぇんだよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

グリフォンスカル超獣態は全身に黒い竜巻を纏って俺たちに突っ込んでくる。その凄まじい覇気からおそらく奴の最後の一撃であることが伺えた。

 

「みんな!!」

 

俺の合図と共にみんなが頷く。

 

『『必殺の術!!超絶!!』』

 

『『必殺の術!!』』

 

俺たちはそれぞれの必殺忍法を、飛鳥達もそれぞれ力を高める。そして、俺は飛鳥と、ガリューは焔と、オルグは雪泉と、ガルーダは雅緋と互いに息を合わせる。

 

「「合体必殺忍法!!半蔵流・激竜乱れ斬り!!」」

 

「「合体必殺忍法!!煉獄紅蓮斬!!」」

 

「「合体必殺忍法!!氷王ムーンブレイク!!」」

 

「「合体必殺忍法!!深淵射法・Stargazer!!」」

 

俺と飛鳥の連続斬撃が、ガリューと焔の炎を纏った巨大な一撃が、オルグと雪泉の氷の巨大な剣戟が、ガルーダの雅緋の黒炎を纏った矢がグリフォンすスカル超獣態へと炸裂する。巨大な竜巻とぶつかり合い互いに拮抗する。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「グゥゥゥゥゥ!!」

 

両者の力が衝突しその衝撃で辺りが吹き飛ぶ。しかし徐々にグリフォンスカル超獣態が俺たちを押し始める。

 

「ひゃははははっ!!これで終わりだ!!くたばれ忍どもぉぉぉぉ!!」

 

高笑いするグリフォンスカル超獣態だが、俺たちの目にはまっすぐと揺るがない。

 

「俺たちは負けない」

 

「私たちは負けない」

 

「忍の道を」

 

「極めるまでは!!」

 

俺たちの叫びと共に再び竜巻を押し始め、ついに竜巻を消し飛ばし、俺たちの一撃がグリフォンスカル超獣態に炸裂した。

 

「くそ…なんだよ…なんなんだよお前らはぁ!?」

 

グリフォンスカル超獣態は悔しそうに俺たちに叫ぶ。その言葉に俺たちはまっすぐとグリフォンスカル超獣態を見つめ叫んだ。

 

「俺たちは」

 

「忍だぁ!!」

 

その言葉にグリフォンスカル超獣態は絶望の顔を浮かべる。

 

「くそ…くそぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

グリフォンスカル超獣態は断末魔と共に爆発した。その叫びは夢半ばで敗れた哀れだ怪物の悲痛な叫びに聞こえた。

 

「りゅーくん…」

 

「あぁ、終わったな」

 

俺はグリフォンスカルがいた場所を見つめてどこか悲しい気持ちになった

 

「お前の気持ち、なんとなくわかるよ。」

 

「炎佐…」

 

変身を解除した炎佐に俺は頷いた。奴は外道だったが自分の目指す夢に向かって死をも乗り越えた。しかしそれでも夢半ばで敗れた。それがまるで自分のあり得る未来の姿に見えて仕方がなかった。

 

「胸を晴れ、お前はこの国を救ったんだ」

 

炎佐の言葉に気持ちを切り替えてみんなに笑顔を見せる。

 

「帰ろうか」

 

「ああ」

 

俺の言葉にみんなは頷いた。

 

 

 

 

 

「グリフォンスカルを倒したか」

 

「はい、これで学炎祭は終わりですね」

 

全てが終わり鉄心と神門が向かい合って話していた。

 

「ありがとうございます」

 

「…なんの真似だ?」

 

「ワイルドギアを改良してくれたこと、竜司さんを鍛えてくれたこと、ヴァンパイアスカルを退けてくれたこと、これら全てのことがあったからこそこの国を守れました。」

 

「…ふん」

 

鉄心は少し恥ずかしそうに茶を飲んだ。

 

「それと、葛城さんのご両親を釈放してくださったとか?」

 

「…勘違いするな、奴らの選択は間違ってなかった。それだけだ。」

 

鉄心は顔を逸らしながら答える。

 

「もし奴らが黒影を殺していたら弟子であった満月たちは我々を怨み敵対勢力と化していただろう。結果として争いを止めた功労者を裁くわけにはいかん」

 

照れ隠しする鉄心に神門は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃー!!踊れー!!歌えー!!」

 

半蔵学院では俺たちによるキャンプファイヤーが開かれていた。本当は月閃でやるはずだったが時間も迫っておりみんな集まってたこともあり近くの半蔵学院で急遽やることになった。そこには俺たちの他にも何故か理吉や他の蛇邪のみんなもいた。

 

「まったくまさか反炎佐連合の奴らまでついてくるなんて…」

 

「キキッそういうのは言いっこなしだぜ」

 

「空気読めよ炎佐」

 

「テメェらには言われたくねー!!」

 

「「「「「だめだこりゃぁぁぁ!!」」」」」

 

空気読めよと言われて炎佐はMK5を蹴り飛ばした

 

 

 

 

「信じられないな…善忍と悪忍が仲良くキャンプファイヤーをしてるなんて」

 

「まったくじゃ、儂もはじめは信じられなかったじゃが飛鳥や竜司たちがそれを成し遂げた。これはとても凄いことだと儂は思っておる」

 

みんなで楽しそうに騒ぐ竜司達を見て黒影と半蔵は嬉しそうに笑った。

 

「時代は確実にあやつらに引き継がれておる。」

 

「ああ、あいつらなら、きっと俺たちが出来なかったことでさえもやってのける…」

 

「ああ、儂もそう思うぞ」

 

半蔵と黒影は互いを見て笑い合った。長く道を違えていた2人が再びかつての仲に戻った瞬間だった。

 

 

 

 

 

「そういえば神門、一つ気になったことがある。」

 

「ん?」

 

「『巨大な鳥』と『無数の妖魔』はグリフォンスカル、『4人の忍』は竜司たち、それはいい、だがもう一つの未来視にあった『燃える学園』はどうなった?」

 

「あっ…そういえば」

 

 

 

「お!?カラオケセットあるの?」

 

俺はMK5が用意したカラオケセットに気づいた。

 

「よっしゃー1番竜司!!歌いまーす!!」

 

「お!!いいぞ竜司いけいけー!!」

 

「次俺が歌うー!!」

 

俺がマイクを取るとみんなも盛り上がる。しかし

 

「えっ!?りゅーくんが歌うの!?」

 

俺に気づいた飛鳥が顔を青ざめた。いったいなんだ?まあいいか

 

「では俺の十八番!!『風都タワー』!!」

 

「りゅーくんだめー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」

 

瞬間、学園中に断末魔が響いた。

 

「な、なんだこの歌は!?」

 

「まるで黒板を錆びた釘で引っ掻いたような…」

 

「首を絞められた鶏の断末魔…!!」

 

あたりからみんなの歓声が聞こえる…!!やっぱり歌ってよかった!!この歌を生み出してくれたジミー中田…!!ありがとう!!

 

「た…たすけ…!!」

 

1人の悪忍がふらつき倒れる。その瞬間、手に持ってた打ち上げ花火が転がりキャンプファイヤーの中へと転がっていった。そして花火は勢いよく炎を纏って飛んでいく

 

「あ」

 

飛んで行った花火は半蔵学院の屋根にあたり、木造の校舎に引火した。燃えていく。半蔵学院が燃えていく

 

「…………………」

 

あたりを静寂が包み込む。みんなが俺を見ている。

 

「…………てへ♪」

 

「「「「急いで鎮火ァァァァァァァァ!!」」」」

 

幸い大した騒ぎにはならなかったけどあとでめっちゃ叱られました

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、黒影さんは息を引き取った。最期は眠るように安らかだったそうだ。俺たちも葬儀に行くと満月たちが迎えてくれた。

 

「ありがとな竜司、お前のおかげで先生は幸せそうに逝ったよ。」

 

「満月…」

 

目を赤く腫れさせながら満月は笑顔でそういった。

 

「俺たちはこれからも自分たちの忍の道を目指すよ。先生が安心できるように、俺たちの自由に」

 

「うん」

 

「だから、次こそは俺が勝つ」

 

「…うん!!」

 

拳を突き出す満月に俺もまっすぐと拳を突き出しぶつけ合った。最初はぶつかり合っていた満月たちと分かり合えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

   

 

「グリフォンのキーを回収しました」

 

「うん、ありがとう」

 

グリフォンスカルキーを手にメドゥーサスカルが弥勒の前に立つ

 

「グリフォンは最期に素晴らしい成果を上げてくれたよ。」

 

受け取ったグリフォンスカルキーを手に弥勒は嬉しそうに笑う

 

「超獣態…まさかロードスカルに更なる高みがあったとは…この力は間違いなく僕の計画に必要になる」

 

「陛下…」

 

弥勒は嬉しそうに笑い、メドゥーサスカルはそれを心配そうに見る

 

「これから現存のロードは超獣態になれるよう精進してくれ」

 

「はっ!!」

 

弥勒の命にメドゥーサスカルは従う

 

『僕は…◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎』

 

その時弥勒はふと思い出した。かつて師や仲間達と理想を語り合った日のことを

 

「…ここまで来たんだ。絶対に諦めない」

 

しかし弥勒は首を振りすぐに忘れる。その目には迷いはなかった。

 

 

 

 

 

「ふむ…まさかワイルドギアを鉄心のやつが改良していたとは…儂らから奪った技術をよもや奴らが研究し直していたとは…」

 

とある一室で最高幹部の富嶽が部下から報告を聞いていた。

 

「それと…独断で動いた傘下の忍どもは始末しておきました。」

 

「まったく…まあ良い、今更ワイルドギアなどどうでもいい」

 

そう言いながら富嶽はパソコンに映るドライバーの設計図を見つめる。

 

「この国を導くライダーシステムはもう直ぐ完成する、最後に笑うのは我々だ」

 

その目には抑えきれないほどの野心が滲み出ていた。

 

 

 

 

 

竜司達の知らないところで不穏な影が動いていた。




劇場版仮面ライダーリューマ 京都大決戦〜絆のサッカーボール〜15秒cm

「必ず…助ける!!」

友との約束のサッカーボールが奇跡を起こす!!

「絆の力…お前に見せてやる!!」

劇場版仮面ライダーリューマ 京都大決戦〜絆のサッカーボール〜





次回から劇場版仮面ライダーリューマ上映開始です!!




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劇場版仮面ライダーリューマ 京都大決戦〜絆のサッカーボール〜
其の一


劇場版スタートです!!


神楽とは、遥かなる山頂

神楽とは、深淵なる海溝

絶頂まで高く、極限まで深い。

 

神楽とは、戦神の化身

神楽とは、平和の使者

震えるほど強く、

慈愛のかけらもない。

 

神楽とは……。

神楽とは……。

対妖魔に特化した

究極の強者

 

全ての忍は

神楽に憧れる

それは高き山脈であるから、

それは広き海原であるから、

 

神楽とは……

神楽とは……

短い命の華が、

妖魔を滅して咲き乱れる。

 

神楽とは……

神楽とは……

戦いの中で閃く一瞬の光、

閃乱カグラが咲き誇る。

 

神楽とは……

神楽とは……

 

これから始まるのは、

儚くも美しい、

神楽と忍の絆の物語である。

 

 

 

 

夜の竹林を少女か走る。少女の腕には幼い白い服を着た少女が抱き抱えられていた。そんな2人の少女を崖の上から11体の異形が見下ろしていた。

 

「ちっ、どうしてこんなところに妖魔衆が……」

 

走る少女な頭から血が流れている。

 

「大丈夫、奈楽ちゃん?」

 

「ええ、心配ありません」

 

心配する幼女に少女は優しく微笑む

 

そのとき、突然鋭い刃が迫る。妖魔衆と呼ばれる者たちが少女に襲いかかる。

 

「変身」

 

その中の黒いフードを纏った影が呟くと禍々しいオーラが身体を包み込み黒い異形となる。その両手には禍々しい片手斧と牙を思わせる剣の様に巨大な苦無を手に持っていた。その姿はリューマとガリューを混ぜ合わせたような禍々しい怪人の姿だった。

 

「守ります、この命に変えても」

 

ゆっくり近づいてくる異形に少女は覚悟を決めて呟く。

 

「そのためだけに自分は生まれてきたのですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『竜司、これってなに?』

 

目の前の少女は幼い俺が渡したボールを持って聞いてくる。

 

『それはサッカーボールだよ。サッカーをするためのボール!!』

 

『サッカー?』

 

『サッカーはね、1人じゃできないの!!友達といっしょにいるから、絆があるからできるの!!』

 

『絆…!!』

 

俺がサッカーについて教えると少女は眼を輝かせる。

 

『このボールあずけるね!!つぎは俺の友達もつれて、⚫︎⚫︎と⚫︎⚫︎とみんなでサッカーしよ!!』

 

『うん!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ん、り……くん、りゅーくん!!」

 

突然声が聞こえて俺が眼を覚ます。どうやら気付かぬうちに眠っていたようだ。あたりを見ると俺の左右に飛鳥と斑鳩先輩が座っており心配そうにみていた。

 

「あ…ごめん寝てた。」

 

「ふふ、竜司さんの寝顔可愛かったですよ」

 

「あ…はは、それでどうしたの」

 

「あ、そうそう。もうすぐ着くよ」

 

「あ、ほんとだ」

 

俺が窓を見てみると目的地の景色が、京都が見えていた。

 

 

 

 

 

 

劇場版仮面ライダーリューマ 京都大決戦〜絆のサッカーボール〜

 

 

 

 

 

「京都キター!!」

 

京都駅に着いた俺は声高らかに叫んだ。

 

「いやー晴れてよかったな。修学旅行に良い日和たよ!!」

 

「ほんとだね。でもびっくりだよ忍学校にも修学旅行があるなんてね」

 

「忍学生も学生だからな。修行する時は修行する。楽しむ時は楽しむ。何事もメリハリだ。」

 

嬉しそうに話す俺たちに霧夜先生が優しく話した。京都、1000年の歴史を持つ古の都が俺たちを感動させていた。

 

「うわぁ!!」

 

「ど、どこ蹴ってんだよー!!」

 

すると、道でサッカーをしていた少年少女の声が聞こえた。そっちを向くと誤ったほうへと蹴ったボールがこっちへと飛んでくる。

 

「あっ…」

 

そのボールを見た時、先ほどの夢を思い出す。

 

「ほっ」

 

俺は飛んできたボールを額で受け止めるとボールを足の方へと移動させてリフティングを披露する。ボールは俺の足で自在に動き回りまるで舞っている様だった。

 

「あらよっと!!」

 

最後に俺が蹴り上げるとボールは少年の手の中へと吸い込まれる。

 

「おお〜!!」

 

俺のリフティングを見てあたりの人々が拍手を贈る。

 

「にいちゃんスゲ〜!!」

 

「もっかい見せて〜!!」

 

ボールの持ち主の少年少女も眼を輝かせて拍手していた。

 

「ははっ、え〜と…またの機会で!!」

 

俺たちは照れながらも子供達に手を振りながらその場を離れた。

 

 

 

 

「まったく…仮にも忍を目指すものがあんなふうに目立つなんて…」

 

「すいません霧夜先生…」

 

人のいないところまで離れた俺は霧夜先生に軽く叱られてしまった。サッカーボールを見たらつい体が反応してしまった。

 

「でもすげ〜な竜司、さっきのボール捌き」

 

「確かに…あんな特技があったなんて知りませんでした。」

 

「すごかったよ〜」

 

「昔やってたのか?」

 

かつ姉や斑鳩先輩たちも関心して聞いてくる。

 

「うん、昔得意でよく修行の合間に練習してたんだ」

 

「そういえばりゅーくん、中学の時助っ人で出たサッカーの大会で優勝してプロのクラブチームからスカウトされたんだよね」

 

そういえばそんなこともあった。その頃には将来は忍になるって決めてたから断ったけど

 

「まあいい、それじゃあ早速京都旅行を始まるとするか!!」

 

すると霧夜先生が張り切ってそう叫ぶ。よくみると先生の手には付箋がびっしり貼られたガイドブックがしっかりと握られてた。どうやら先生も相当楽しみにしてきた様だ。

 

「よーし、京都観光…レッツゴー!!」

 

「「「「「「おお〜っ!!」」」」」」

 

 

 

 

その頃東京駅のホーム

 

「お前ら、忘れ物はないな?」

 

炎佐率いる抜け忍集団、炎佐紅蓮隊が揃っていた。

 

「うん。大丈夫だよ!ちゃんとおやつも300円以内で済ませたし♪」

 

「東京駅なんて久しぶりやな」

 

「まさか抜忍の身で京都観光が出来るなんてね」

 

そう、何を隠そう今回炎佐紅蓮隊メンバーで京都旅行に行くことになったのだ。

 

「ふっ、おまえら、福引を手に入れた俺に感謝しろよ」

 

喜ぶみんなに炎佐はドヤ顔をした。

 

「炎佐さんのおかげじゃないやろ、1等の京都旅行を当てたのは詠やんか」

 

「うぐっ!!」

 

「炎佐が引いたくじ全部ポケットティッシュだっただろ」

 

「がはっ!!」

 

図星を突かれて炎佐はその場に倒れ込んでしまう。

 

「て、テメェはリーダーの俺に向かって…ん?」

 

「ガクガクガク…ブルブルブル…」

 

ふと炎佐がみると今回大手柄の詠が何やら震えていた

 

「だ、大丈夫?詠お姉ちゃん?」

 

「なんや震えとるな?トイレなら向こうにあったで」

 

震えている詠を見て未来と日影も心配する。

 

「違います!!トイレじゃありません!!ただ…」

 

「ただ?」

 

「聞くところによれば…新幹線は200キロを超えるスピードが出るとか…」

 

「出るに決まってるだろ?新幹線なんだから」

 

「し、信じられませんわ!いくらなんでも危険です!スピード違反ですわ!!」

 

「…くくっ」

 

明らかに怯えている詠に炎佐はいたずら心が出た。

 

「…昔、父上に連れられて新幹線に乗ったことがあったんだが…」

 

「ん?」

 

「なぜか線路の上に全長1メートルバナナの皮が落ちてた時があってな」

 

「ば、バナナの皮!?しかも全長1メートル!?そんなのがあったら滑ってしまいますわ!!」

 

「ああ…現に俺の乗ってた新幹線もすってんころりんして…そのまま空の彼方に…」

 

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「炎佐!!あんまり詠をからかわないの!!」

 

詠をからかう炎佐に春花が叱りつけた。

 

 

 

「もう!!嘘をつくのも良い加減にしてください!!」

 

嘘だと気づいた詠は炎佐に怒る

 

「悪い悪い、まさか…本当に信じるなんて…くくっ!!」

 

動揺する詠を思い出して炎佐は思わず再び笑い出す。

 

「でもまさかお前が新幹線乗ったことがなかったなんてな…」

  

「ええ、皆さんと普通の電車に乗ったくらいですわ。あれくらいゆっくりなら良いのですが200キロなんて…」

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

すると突然焔が叫んだ

 

「今度はなんだ」

 

「し、新幹線の切符が無い!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?なんで!?切符確かお前に全員分預けたよな!?」

 

「わ、わからない…アジトに置き忘れたのか途中で落としたのか…兎に角ないんだ!!」

 

「ふざけんなー!!あれがなきゃ新幹線に乗れねえだろ!!」

 

「うふふふ、仕方ないですね♪切符がないんじゃ京都旅行はあきらめましょう」

 

パニクる俺たちとは別に詠はどこか嬉しそうにそういった

 

「嫌じゃー!!俺が今日の旅行をどんだけ楽しみにしてきたと思ってんだ!!もう旅のしおりだって作ってんだぞ!!」

 

「そうよ!!八ツ橋は!?映画村は!?あぶらとり紙は!?」

 

「そうだ!!金閣寺は!?舞妓さんは!?清水寺は!?舞妓さんは!?伏見稲荷は!?舞妓さんは!?」

 

「炎佐さんほぼ舞妓さんで頭いっぱいやで」

 

 

 

 

「わたしは切符を持ってるわよ。こんなこともあろうかと自分で管理してたから」

 

そう言って春花は自分のチケットを取り出した。

 

「ず、ずるいわよ春花様!!」

 

「仕方ないから、わたしだけで京都を満喫してくるわ」

 

「いいやだめだ!!」

 

しかしそこで炎佐が叫ぶ

 

「俺たち炎佐紅蓮隊は一蓮托生!!舞妓さん…京都に行くなら6人一緒にだ!!」

 

「そうは言っても切符が無いんじゃ…」

 

「うぐぐ…」

 

その時、焔が閃いた。

 

「まて!!私に良い考えがある!!」

 

 

 

 

 

 

 

「で、その良い考えってのがこれか?」

 

発車する新幹線の屋根の上で炎佐は震えながら焔に聞いた

 

「切符が無いなら…座席に座れないなら…新幹線の屋根にいればいい!!何より新幹線の屋根など修行場所としても最適!!一石二鳥とはこのことだ!!」

 

得意げに話す焔に全員が呆れた。ちなみに春花は「わたしは自分の席にいるから勝手にやってて」といって自分の席に座っている。

 

「ほ、焔さん!!こんなところにいて…新幹線が爆発したらどうするんですか!?」

 

「新幹線は爆発などしない!!もっと新幹線のことを信じろ!!」

 

 

 

 

 

「ふ…ふふふ…本当なら、座席から景色を眺めながらのんびりと京都に行くはずだったのに…それなのにお前が切符を無くしたりするから…」

 

堪忍袋の尾が切れたのか、炎佐は怒りに震えスピノアクスを手に持つ。

 

「そういや、お前とは最近戦って無かったっけな…お望み通り修行に付き合ってやるよ…」

 

「おお!!やる気十分だな炎佐!!」

 

臨戦態勢の炎佐に焔は嬉しそうに忍転身した。

 

「いくぞ炎佐ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ふざけんな焔ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

炎佐紅蓮隊最高戦力の2人が今ぶつかった。

 

 

 

 

 

「みんな、様子を見にきたわよ。どう?新幹線の屋根は?」

 

春花が様子を見に来るとそこは地獄絵図だった。

 

「あは、あはは。あたしは、お姫様…忍の国の、お姫様なの…」

 

「ほほほほほほ…わたくしもお姫様、もやしの国のお姫様ですわ…」

 

「…なんなのこれ?2人ともどうしちゃったの?」

 

虚ろな目で呟いている未来と詠を見て春花はドン引きしていた。

 

「あれや、あの2人の巻き添えになった」

 

日影が指差す方を見ると焔と炎佐がまだ争っていた。

 

「だいたいお前はいつもいつもガサツなんだよ!!もっと片付けをちゃんとしろ!!ゴミはちゃんと分別しろ!!脱いだ服はちゃんと洗濯カゴに入れろ!!理吉だってそれくらいできるぞ!!」

 

「お前は私のお母さんか!!抜け忍になってから急に余計なことにまで口出しして!!」

 

「俺はリーダーとして部隊をまとめる必要があるんだ!!それなのにお前らは…!!人を勝手にリーダーに担ぎ上げといて全然俺を敬わないし…つかそのダサい服なんとかしろ!!なんだ『自給自足』って!!」

 

「なんだとー!!」

 

「なんだよー!!」

 

 

 

 

 

「まったく貴方たちは…いい加減にしなさい」

 

ほとんど喧嘩になってた2人を諌めて春花はため息をついた。

 

「いや…だって炎佐が…」

 

「全部焔が…」

 

「ああん!?」

 

「おおっ!?」

 

「はいストップ」

 

再び始まろうとした喧嘩を再び春花は諌めた。

 

「もうお互い気は済んだでしょ?そろそろ席に座りましょ」

 

「だ、だが切符が…」

 

「自由席の方、見てみたら結構空いてたのよ。だから指定席のチケットが無くても座れるわ」

 

「おおっ!!」

 

「よくやった春花ー!!法律的に大丈夫か不安だがよくやった!!」

 

春花の情報に炎佐紅蓮隊のみんなが歓喜する。

 

 

 

 

 

 

 

しかし現実は非情である。

 

「いや春花さん、それは無理や。この新幹線もう京都駅まで停車せえへん。ドアが開かんからもう席には座れんってことや」

 

「え?」

 

日影の口から出た情報に春花も固まる。

 

「そ、それじゃあわたしも?」

 

「屋根の上やな、京都に着くまで」

 

「そ、そんなぁ〜」

 

春花はがくりとくずれ落ちた。

 

「まぁ良いじゃないか。炎佐も言ってただろ?炎佐紅蓮隊は一蓮托生。一緒に京都まで屋根の上で過ごそうじゃないか」

 

「それに、ある意味新鮮な京都旅行じゃないか。こんな旅行もありじゃないか?」

 

「…ふっ」

 

「…ははっ」

 

ぶつかり合ったことでお互い幾らかスッキリした2人は互いをフォローしお互いに笑い合った。

 

「よしお前ら!!色々あったが炎佐紅蓮隊京都旅行!!存分に楽しむぞ!!」

 

「「「「「おぉ〜!!」」」」」

 

新幹線の上で6人の声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司たちも、炎佐たちも、この時は知らなかった。

この後に起こる大きな戦いを




登場人物にて仮面ライダーガルーダと蒼良のデータを更新しましたので良ければ確認してください!!


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其の二

「おお〜!!これが清水の舞台か〜!!」

 

「すげえな〜京都が一望できるぜ」

 

「うわぁ〜すごい高いね柳生ちゃん」

 

「そうだな雲雀」

 

修学旅行で京都に来た俺たちはいくつもの観光名所を廻っており、現在清水寺に来ていた。清水の舞台からの景色は美しく京都を一望できた。

 

「清水の舞台から飛び降りれば願いが叶うって言うけど…流石に迷惑になっちゃうからな…」

 

「お前ならやりかねないからな」

 

真下を見下ろしながら呟くと霧夜先生がジト目で見張っていた。

 

「あはは…流石にそこまで常識は欠けてませんよ…」

 

俺は苦笑いを浮かべながら霧夜先生にそう返した。

 

「ん?飛鳥と斑鳩先輩がいない?」

 

ふと周囲を見渡すと飛鳥と斑鳩先輩の2人の姿が見えなかった。

 

「霧夜先生、2人を見かけませんでしたか?」

 

「いや…見ていない…まぁどこにいるかはだいたい見当がつくが…」

 

なぜか霧夜先生は冷や汗をかいていた。

 

 

 

地主神社

清水寺の境内にある神社である。

『因幡の白兎』で知られる大国主を祀る由緒ある神社なのだがそのほかにも日本最古の縁結びの神社として知られている

 

そこで飛鳥は1人真剣な顔で手を合わせていた。目的はただ一つ。自身の想い人への誰にも譲れない願い

 

「りゅーくんが…私の想いに気づいてくれます様に…/////」

 

 

    

 

 

 

 

 

 

「あ〜す〜か〜さ〜ん」

 

突然真後ろに斑鳩が立っていた。

 

「ひゃ!?い、斑鳩さん…!!」

 

「飛鳥さん?ぬ・け・が・け・で・す・か・?」

 

ニコニコと笑いながらも全身から凄まじい怒気が炎の如く溢れて後ろには鳳凰が見えた。

 

一瞬たじろぐが飛鳥は見逃さなかった。

 

「斑鳩さんだって…そのお守りはどうしたんですか?」

 

「うっ!!」

 

飛鳥の言う通り、斑鳩の手には『えんむすび』と書かれた赤いお守りが握られていた。

 

「考えていることは同じですね」

 

「そうだね斑鳩さん」

 

目の前にいる恋敵(ライバル)に両者一歩も譲らず真っ向から向かい合っていた

 

 

 

 

 

「こんなところにいたの2人とも。向こうでみんな待ってるよ」

 

しかしそこへ何も知らない竜司がやってきた。

 

「竜司さん!?」

 

「りゅーくん!?」

 

突然の竜司に2人は顔を赤く染めて驚いた。

 

「ここの神社に参拝しに来たの?」

 

「あ…うん…その…////」

 

「これは……えっと…////」

 

目の前の想い人に2人ともうまく喋れない

 

「ん?そういえばこの神社ってなんのご利益があったんだっけ?」

 

「あっ!!////」

 

「待っ…////」

 

竜司はふと神社の方を見る。

 

「「だめぇぇぇぇぇぇぇ!!///////」」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

飛鳥と斑鳩は顔を真っ赤にして咄嗟に竜司を殴り飛ばし竜司は空の彼方へと吹っ飛んでいった。

 

「あ!!竜司さぁぁぁん!!」

 

「りゅーくぅぅぅぅぅん!!」

 

飛鳥と斑鳩は慌てて竜司の飛んでった方向へと走り出した

 

 

 

 

 

 

 

「痛た…2人ともなんで急に…」

 

飛鳥と斑鳩先輩に吹き飛ばされた俺は起き上がると清水寺を目指して歩き出した。遠くからでも清水寺が見えるため迷う心配は無い。そう思いながら歩いていると

 

「ん?」

 

ふとどこからか声が聞こえる。その声から妙な胸騒ぎがした俺は声のした方へと走り出した。しばらく走っていると視線の先に二つの人影が見えた。

 

「っ!!あれは…」

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「もうダメ…走れないよ」

 

視線の先にはオレンジのフードを被った少女と白い服の幼女がいた。

 

「君たち大丈夫!?」

 

「っ!!」

 

俺が慌てて声をかけると2人は俺に気づいてこっちを見た。フードの少女はところどころから血が出ておりしんどそうだった。

 

「酷い傷…待ってろ、すぐ手当を…」

 

「いい、自分には必要…っ!!」

 

少女は俺の手を振り払おうとしたが俺の顔を見て突然驚いた様に俺を見つめた。

 

「お前は…まさか…」

 

「どうしたの?」

 

「っ!!いや…なんでもない…ぐっ!!」

 

少女が俺から顔を晒した途端、傷の痛みに顔を顰めた。

 

「やっぱり痛いんじゃないか!!ほら、ちょっと見せて!!」

 

「お、おい!!だから自分に構うなと…」

 

「奈楽ちゃん、診てもらおう?だって奈楽ちゃん辛そうだもん」

 

なおも拒もうとする少女、奈楽に幼女が心配そうにそう言った。

 

「かぐら様…わかりました」

 

かぐらの言葉に従うと奈楽は大人しく俺の応急処置を受けた。

 

 

 

「これでよしっと…」

 

俺は普段持っている簡易医療キットを用いて奈楽の応急処置を終え最後に傷口に包帯を巻いた。

 

「うっ…!!」

 

「少し染みるけど我慢して?じいちゃん秘伝の塗り薬を塗ってるからすぐ良くなるよ。けど、あくまで応急処置だから病院でちゃんと治療を…」

 

「いや…すぐにここを離れる。さあかぐら様…」

 

「う、うん…」

 

「ちょっ…何言ってんだよ!?そんな傷じゃ…」

 

その時、突如空間が揺らいだ

 

「これって…忍結界!?」

 

「ちっ…もうここまで…」

 

そう、これは忍結界発動によるものだ。だけど忍の気配はない…一体どういう…

 

「っ!?な、なんだこれ…!?何か来る!!」

 

その時、突然ドス黒い邪悪な気配が迫ってくる。俺はとっさに身構える。するとそこへ黒いローブを纏った虚な眼をした赤黒い肌の男と10体の人形の妖魔が現れた。

 

「なんだお前らは…」

 

「その2人をこっちに渡せ」

 

するとローブを纏った男が奈楽とかぐらを指さして俺に向かってそう言った

 

「な…っ!!狙いはこの2人なのか!?なんで…」

 

「貴様が知る必要は無い」

 

なぜ2人を狙うのか聞こうとするがローブの男はそれを無視してゆっくりと近づいてくる。

 

「な、奈楽ちゃん…」

 

怯えるかぐらを見て俺はローブの男の前に立った。

 

「貴様…何の真似だ?」

 

「悪いけど…この2人には指一本触れさせない」

 

「…愚かな。壱座、参座、五座、七座、九座お前達がいけ」

 

ローブの男が命じる5体の妖魔が俺の前に立った。

 

「たった1人で我々を倒せると思っているのか?」

 

「グルルルル…」

 

「シャァァァァァ!!」

 

妖魔たちは唸り声をあげて俺に敵意を向けていた。

 

「なぜ自分たちを助けようとする…お前には関係ないだろ」

 

「もう関わってるんだ。関係なくない」

 

俺を止めようとする奈楽ならそう言ってカグラドライバーを装着した。

 

「必ず助ける!!」

 

『ティラノ!!』

 

ティラノキーを起動してカグラドライバーに挿し込む

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ティラノキーを回して俺は仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「仮面ライダーリューマ…京都でも舞い忍ぶぜ!!」

 

 

 

「なるほど、お前がオリジナルだったのか」

 

リューマになった俺を見てローブの男は何かに気づきつぶやいた。

 

「面白い…やれ」

 

ローブの男の合図とともに妖魔達は一斉に俺に襲いかかってきた。俺も後ろにいる奈楽とかぐらを守る様に妖魔たちを迎え撃った。

 

「くっ…!!」

 

壱座による攻撃をファングクナイで受け止めると参座が手に持つ長刀で斬りかかってくる。

 

「くそっ!!」

 

俺がとっさに躱すと五座の素早い足技が繰り出され俺は避けきれないので腕をクロスさせてガードした。何とか防ぐがその衝撃に吹き飛ばされると番傘を使う七座と黒い兎を操る九座が飛びかかってきた。

 

「なんだこいつら!?ただの妖魔じゃない!?」

 

怨楼血の様な今までの妖魔とは違う戦い方に俺は違和感を感じた。何よりこいつらの攻撃にどこか見覚えがあったのだ

 

「でも、だからって…負けるわけにはいかない!!」

 

後ろにいる2人を守るために!!

 

『ワイルドオン!!』

 

『超絶ティラノ!!』

 

俺はワイルドギアをドライバーに装着し超絶ティラノキーを起動して鍵穴に挿し込む。

 

『ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!』

 

ベルトから音声が流れ鎖から解き放たれたティラノが俺の隣に並び雄叫びを上げる。

 

「変身!!」

 

『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』

 

『超絶キー』を回すとティラノが俺に飛び込み身体を覆い尽くし仮面ライダーリューマ超絶へと変身した。

 

「…姿が変わった?」  

 

ローブの男はリューマ超絶を見て驚きの表情を浮かべた。

 

「想定外の姿だが…構わん、いけ」

 

しかしローブの男はすぐさま他の妖魔に指示を出す。

 

「させるか!!」

 

しかし俺はそれよりも早く動き壱座を蹴り飛ばす。

 

「なに!?」

 

咄嗟に隣にいた参座が斬りかかるが俺はワイルドブラスターを取り出してその攻撃を防いで力で押し切る。吹き飛ばされた妖魔は後ろにいた五座を巻き込んだ。

今度は七座と九座が飛びかかってくるが俺はワイルドブラスターの刀身に力を込めて巨大な斬撃をお見舞いした。2体の妖魔は咄嗟に回避するが完全には躱しきれずに傷を負った。

 

「むっ!!」

 

今度は壱座が再びが襲いかかってきて俺と鍔迫り合いになる。しかしティラノと一緒に力をのせた俺のパワーが勝り吹き飛ばして5体の妖魔を一箇所にまとめた。

 

「トドメだ!!」

 

『必殺の術!!超絶!!』

 

俺は『ワイルドブラスター』に『超絶キー』を挿しこみ回すと刀身と銃口が光り輝きエネルギーが溜まっていく。

 

「超絶必殺忍法!!激竜ダイナソーバスター!!」

 

『ガォォォォォン!!』

 

俺の放った斬撃はティラノサウルスの姿になり妖魔たちへと向かっていき爆発した。

 

「やったか!?」

 

しかし!煙が晴れるとローブの男が他の妖魔を守る様に立っていた。

 

「なかなか強いな。だがこいつらを今倒されるのは困る。ここからはこの零座が相手をしよう。」

 

瞬間、ローブの男、零座からの凄まじい敵意が俺を包み込んだ。

 

「変身」

 

零座が呟くと禍々しいオーラが身体を包み込み黒い異形となる。その両手には禍々しい片手斧と牙を思わせる剣の様に巨大な苦無を手に持っていた。その姿はリューマとガリューを混ぜ合わせたような禍々しい怪人の姿だった。

 

「な、なんだその姿は…お前らはいったい何者なんだ!?」

 

「我らは妖魔衆…覚えなくていい。貴様はここで我に倒されるのだからな」

 

零座はそう言うと凄まじいスピードで両手の片手斧で俺に斬りかかってきた。その速さに不意を突かれたが俺は咄嗟にワイルドブラスターを盾にして攻撃を防いだ。

 

「ぐっ!?」

 

しかしそのパワーは凄まじく先ほどの壱座を上回っておりさらに黒い炎を纏わせてくる。

 

「このままじゃ…押し負ける…!!」

 

俺は何とか零座の攻撃を受け流し真横から斬りかかるが今度はもう片方の手にある巨大苦無に禍々しいオーラを纏って振り上げる。

 

「はぁぁぁ!!」

 

俺も負けじとワイルドブラスターにオーラを纏って叩きつけた。そのまま俺と零座の斬り合いになり両者譲らない戦いとなった。

 

「なるほど…想定よりも強いな。オリジナルの力もここまで強くなってるとは思わなかったぞ」

 

「オリジナル…やっぱりこいつら…!!」

 

さっきの5体の妖魔衆の技…そしてこいつの姿…やっぱりこいつら…

 

「俺たちの能力を使えるのか!?」

 

壱座は飛鳥、参座は斑鳩先輩、五座はかつ姉、七座は柳生、九座は雲雀、そしてこの零座は俺とガリューの能力が使える…思わぬ強敵に驚きを隠せなかった。

 

「だけど…」

 

俺が後ろを振り向くとまだ動けずにいる奈楽とかぐらがいた。

 

「引き下がるわけにはいかない!!」

 

「あくまで退かないか…良いだろう」

 

俺の覚悟に気づいた零座は両手の武器を構える。

 

 

 

 

 

 

「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

その時、飛鳥と斑鳩先輩が零座へと斬りかかった。

 

「なっ!!」

 

突然の攻撃に零座も驚き慌てて回避した。

 

「りゅーくん大丈夫!?」

 

「わたくしたちも加勢します!!」

 

そして2人に続く様に他のみんなも集まってきた。

 

「…今日はここまでか、良いだろう。撤退する」

 

変身を解除した零座が命じると他の妖魔衆も彼に従い撤退を始める

 

「待て!!何でこの2人を狙うんだ!?」

 

「貴様が知る必要は無い」

 

追いかけようとする俺を無視して零座は姿を消した。あたりには飛鳥たちや奈楽とかぐらしかいなかった。

 

 

 

 

「忍結界と殺気に気づいてここまで来たが…一体ここで何があったんだ?」

 

妖魔衆が去った後、霧夜が俺にそう聞いてくる。

 

「あ、はい…この2人がさっきの奴らに狙われてて…」

 

俺が奈楽たちの方を向くと2人は立ち去ろうとしていた。

 

「ちょっと!!まだ応急処置しかしてないんだから安静に…」

 

「もう十分だ、これ以上自分たちに関わるな」

 

慌てて止めようとする俺に奈楽は俺を鋭く睨みつけた。

 

「もう奈楽ちゃん!!助けてもらったんだからちゃんとお礼言わないとダメダメだよ!!」

 

「はい、申し訳ありません」

 

奈楽の態度をかぐらが叱ると奈楽はかぐらに頭を下げて再び俺を見た

 

「…ありがとう」

 

俺に一言感謝の言葉を述べると奈楽はかぐらを抱き上げて去っていった。

 

「…大丈夫かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「りゅーくん?」

 

「竜司さん?」

 

ふと後ろを見るとなぜか飛鳥と斑鳩先輩から恐ろしいオーラが溢れていた。

 

「またなのりゅーくん?」

 

「またなのですか?」

 

「えっ…何?どうしたの2人とも?」

 

あまりの怒気に俺は思わずたじろいてしまう。2人の顔はとうとう般若のごとき恐ろしい形相へと化した

 

「りゅーくぅぅぅぅん!!」

 

「竜司さぁぁぁぁぁん!!」

 

「助けてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんでした。オリジナルの乱入は想定外でして…」

 

森の中で零座は何者かに跪いていた。

 

「いや、構わない。これからはお前はリューマへの対処をメインに動け、かぐらの方は他の妖魔衆に任せろ」

 

「はい、我が主人よ」

 

零座の前に立つ影がそう命じると零座は静かに頷いて戻っていった。

 

「くくく…リューマたちが来たのは想定外だが、問題ない。私の計画は決して揺るがない」

 

影はニヤリと笑いながら空を見上げる

 

「今度こそ私の野望を果たして見せる。見ているがいい…くくく、くははははは!!」

 

 

 

 

 

 

「よく来てくれた霧夜、京都からわざわざすまんな」

 

京都から突如呼び出された霧夜の前には神門、鉄心、朧、富嶽…善忍最高幹部の4人が揃っていた。

 

「は!!」

 

霧夜も鉄心の親友としてではない、最高幹部としての言葉に頭を下げた。

 

「早速だが要件を言わせてもらう。現在日本各地で妖魔が出現している。これは緊急事態だ」

 

「はい、私たちも京都ですでに遭遇しました」

 

「…やはりか」

 

霧夜の言葉に鉄心はため息を吐きながらつぶやいた。

 

「もはや一刻の猶予もありません、そこで竜司さんたちに忍務を与えます。半蔵学院忍学生の皆さんで京都の妖魔を殲滅してください」

 

「なっ!?」

 

神門から下された命に霧夜は息を飲んだ。本来妖魔討伐は最高ランクの忍たちが請け負う案件だ。それを忍学生に任せるなど前代未聞である。

 

「すでにほとんどの最上忍以上の忍が全国に向かっており京都に回す人手が足りん。」

 

富嶽の言葉に霧夜は驚いた。忍学生まで動かさなければいけないとは思わなかった。しかし霧夜は忍である。そもそも命令であれば逆らうわけにはいかない

 

忍務に殉じる…それこそが忍の使命なのだ

 

その時、鉄心がさらに忍務を追加した。

 

 

「それともう一つ、大事な忍務がある。」

 

「忍務?」

 

 

 

 

 

 

 

「わたくしたちの能力を持つ妖魔に…それに襲われる少女2人ですか…」

 

霧夜先生が本部に呼び出された後、俺たちは待機の為に宿泊している旅館で待機していた。そこで俺が遭遇した奴らについてみんなに改めて話した。

 

「修学旅行に来ていたはずがなんだかヤバそうな事件に巻き込まれちゃったみたいだな」

 

かつ姉も腕を組みながらそう呟く

 

「俺が戦ったのはみんなの能力が使える5体と零座だったけど…零座は俺の能力だけじゃなくてガリューの能力も使ってた。多分残りの5体は炎佐紅蓮隊のみんなの能力を持ってると考えた方がいいと思う」

 

「焔ちゃんたちの能力まで…」

 

「みんなの能力を持ってた5体も強かったけど…零座、あいつの強さは別格だった。」

 

リューマ超絶の俺と互角に戦ってた時もまだ全力と言うわけではなかった。もし奴が本気になったとしたらかなりヤバイ状況になる。

 

「また戦うことになるかもしれない。気を引き締めないと」

 

俺はみんなに向かってまっすぐと言った。

 

 

 

 

 

 

 

顔に2つの手形をつけて

 

「ほんと締まらないな竜司」

 

「「……………」」

 

俺の顔を見て柳生が呆れて飛鳥と斑鳩先輩は目を逸らした。

 

「お前たち、揃っているな」

 

すると東京に戻っていた霧夜先生が帰ってきた。

 

「霧夜先生」

 

「すまんがお前たちに緊急の忍務がある。」

 

霧夜先生の言葉に俺たちは気持ちを切り替え身構えた。

 

「現在ここ京都に多くの妖魔が現れている。お前たちでその妖魔を殲滅せよとのことだ。」

 

「妖魔たちを…わたくしたちがですか?」

 

「危険なのは承知の上だが…上層部からの命令だ。やってくれるな」

 

「はい!!」

 

少し驚いたがこの京都の人々を守る為だ。みんなと力を合わせて必ず遂行して見せる!!

 

「それともう一つ…竜司、お前が出会ったかぐらという少女を捕獲…いや、処分しろ」

 

「えっ!?」

 

予期せぬ命令に俺は驚いた。捕獲ではなく処分?

 

「霧夜先生、処分って…」

 

「ああ、殺せということだ」

 

霧夜先生の言葉に俺は信じられなかった。なぜ?あんな子供を?

 

「霧夜先生!!捕獲って…あの子は人間なんですよ!?どうして…」

 

「…悪いが今は説明している暇はない。とにかく一刻も早く遂行しろとのことだ」

 

霧夜先生は俺の問いに答えてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鉄心様!!被害予測の結果が出ました!!」

 

最高幹部が集まる一室に鉄心の部下が資料を持って入ってきた。

 

「…想定はしてたがこれほどか」

 

「やはり儂の睨んだ通りじゃ、もはや捕獲では生ぬるい。」

 

「そうですね、神門殿…もはや異論はありませんね」

 

「…はい」

 

朧の問いに神門は渋々応じた。

 

「かぐらは見つけ次第処分とする。これを、善忍最高幹部による第一級厳令とする。かぐらが完全覚醒する前になんとしても遂行するように!!」

 

 

 

 

 

この日俺は、善忍としての現実を知ることとなる。

そして俺は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「半蔵学院忍学生に緊急指令!!逃亡者竜司を捕縛せよ!!」

 

その命令に背くことになる

 



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其の三

「あの子達…見つからないね」

 

「………………。」

 

俺たちは霧夜先生から命じられた忍務の為、かぐらと奈楽を探していた。そう、彼女を殺すために

 

「あの傷じゃそう遠くには行けないはずです。みんなで手分けして探しましょう」

 

「………………。」

 

「りゅーくん?」

 

「みんなはさ…本当にかぐらを殺さなきゃダメだと思う?」

 

俺はこの忍務を前にとても胸が苦しくなった。

 

 

 

 

 

 

「霧夜先生、納得いきません!!どうしてかぐらを殺さなきゃ行けないんですか!?納得のいく理由を教えてください!!」

 

俺は忍務に納得できず霧夜先生を問い詰めた。彼女たちが何者なのかも知らないのに…いきなり殺せだなんて納得いかない

 

「竜司、これは最高幹部からの第一級厳令だ。上層部の命令は絶対だ。善忍として生きたければあの2人を殺せ。それ以外に道はない…」

 

「う……わかりました……」

 

しかし霧夜先生は俺を戒める様に静かに俺にそう言った。それに俺はそれ以上聞くことができなかった。

 

 

 

 

「竜司さん、忍の世界において上層部からの命令に背くことは御法度です。例えどんな嫌な命令であろうとそれを遂行しなくてはいけません。それが忍の…善忍の使命なのです」

 

「でも………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、遠くから禍々しい妖魔の気配を感じた。

 

「これって…」

 

「みんな行こう!!」

 

俺たちはみんなで気配の方へと走り出した。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

奈楽とかぐらは壁を背に無数の妖魔に追い詰められていた。こいつらは妖魔衆ではなくこの京都には発生した妖魔たちである。異形の妖魔たちに追い詰められ戦いの中で応急処置した傷が開き追い詰められていた。

 

「負けるわけにはいかない…かぐら様を守ることが…自分の使命だから…」

 

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

俺はすぐさま飛び出してリューマに変身して奈楽とかぐらに襲いかかる妖魔を倒した。  

 

「大丈夫2人とも!?」

 

俺が後ろを見て奈楽とかぐらを見ると2人は無事だったので俺はほっとした。

 

「お前は…っ!!後ろだ!!」

 

奈楽の声で後ろを振り向くと新たな妖魔が俺へと襲いかかる。俺は咄嗟に躱してファングクナイでその妖魔を斬り裂いた。

 

『必殺の術!!』

 

「必殺忍法!!激竜忍斬り!!」

 

俺はファングクナイにティラノキーを挿し込み回して必殺忍法で妖魔たちを一掃した。

 

「大丈夫?怪我は…」

 

「近寄るな!!」

 

2人に近づこうとすると奈楽が叫んで俺を制する。

 

「おおかた自分たちを始末する命が降ったのだろうがそうはいかない…かぐら様には、指一本近づけさせない」

 

臨戦態勢をとる奈楽に飛鳥たちは身構える。

 

「りゅーくん…」

 

「竜司さん…やるしかありません」

 

「……わかった」

 

飛鳥と斑鳩先輩に促され俺もファングクナイを手に2人へとゆっくり近づく。そんな俺を見て奈楽は身構えかぐらは心配そうに見ていた。

 

俺たちは善忍、上層部の命令は絶対

たとえどんな命令であっても遂行しなければならない

だからこの選択は間違っていない

 

 

 

なのに

 

 

 

 

どうして

 

 

 

モヤモヤが…晴れない

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、『世界一カッコイイ忍』になるんだ!!」

 

 

 

 

 

「……あっ」

 

 

 

瞬間

 

 

 

 

 

俺の中の何かが吹っ切れた

 

   

 

 

 

「りゅーくん?」

 

突然止まった俺を飛鳥が心配そうに見つめる。

 

「飛鳥…みんな…ごめん」

 

ああもう無理だ

 

色々悩んだけど

 

間違ってるのはわかってるけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ無理だ」

 

瞬間、俺は煙玉を取り出して地面に思いっきり叩きつけた

 

「えっ!?ちょ、りゅーくん!?」

 

「いったい何を…」

 

「おい竜司!?」

 

「お前…まさか!!」

 

「竜司くん待って!!」

 

突然の俺の行動にみんなは慌てる。そんなみんなを無視して俺は奈楽とかぐらを両脇に抱えた。

 

「おい、何を…」

 

「舌噛むから喋らずじっとしてて!!」

 

俺はそのまま思いっきりジャンプして屋根伝いに走り出した。

 

 

 

「りゅーくん…そんな」

 

突然の行動に飛鳥は呆然としてしまった。

 

「おい!!いったい何があった!?」

 

騒ぎを聞きつけ霧夜先生が慌てて駆け寄ってきた。

 

「霧夜先生…!!その、りゅーくんが…!!」

 

 

 

 

 

 

「なんだとぉ!?竜司がにげたぁ!?」

 

会議室では霧夜からの報告に驚愕する鉄心の声が響き渡っていた。

 

「竜司殿が…まさかかぐらを連れて逃亡するなんて…!!」

 

話を聞いた神門も驚きのあまりに口を押さえて青ざめていた。

 

「まさかリューマの小僧が討伐対象を殺すどころか守って逃げるなど…前代未聞のことじゃな」

 

「もしこれでかぐらの覚醒が止められなければ…とてつもない被害が京都を襲います。そうなれば善忍の歴史上最悪の不祥事にもなりかねません」

 

富嶽は呆れたようにため息を吐き朧は頭を抱えて顔を顰めた。

 

「こうなればたとえスカル討伐の功労者だとしても容赦できませんね、そうでしょうお二方?」

 

「う、うむ…」

 

「はい……」

 

朧の問い詰めに鉄心と神門は頷く他なかった。

 

「ではやることは決まったの」

 

富嶽は周囲を見渡し立ち上がり宣言した。

 

「半蔵学院忍学生に緊急指令!!かぐら討伐と同時進行で、逃亡者竜司を捕縛せよ!!抵抗するならかぐら諸共討伐もやむなしとする!!」

 

 

 

 

 

 

「…そんな、りゅーくんを捕えるなんて…」

 

最高幹部からの新たな忍務を聞いた飛鳥たちは戦慄した。

 

「竜司の行動は明らかな命令違反…いや、反逆行為と言っても過言ではない…抵抗するなら…お前たちの手で倒せとのことだ…」

 

「ですが…」

 

「霧夜先生!!本当に竜司くんも…あのかぐらって子のことも倒さなきゃダメなんですか!?そもそも理由もわからないのに倒せって言われても…せめて理由を教えてください!!」

 

雲雀は霧夜になんとかかぐらを倒さなければならない理由を聞こうとした。だが…

 

「理由を聞けばやりやすくなるのか?甘えるな!!忍の忍務をなんだと思っている!!」

 

霧夜は厳しい顔で雲雀に怒鳴った。

 

「忍の忍務は心に重荷を背負うもの。影の仕事という点では善忍も悪忍も変わらない…綺麗事ではやっていけない。自らの手を汚すこともある。お前たちが目指す忍とは…そういう世界なんだ」

 

霧夜の叱責に飛鳥たちは重い表情を浮かべる。そんな彼女たちを見ながら霧夜は窓から空を見上げた

 

 

「竜司…何をやってるんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、逃亡者竜司は

 

「ふぅ…ここまで来れば…」

 

山の中の樹海に身を潜めていた。気配を探るが周囲にそれらしい気配は見当たらない、どうやらうまく巻いたようだ

 

「おい…お前…」

 

すると、抱えていた奈楽が怒気を含んだ声を上げる

 

「あ、ごめんね…緊急だったから…」

 

「そうか…じゃあさっきから自分の胸を鷲掴みしてるのも緊急だからか?」

 

「え?」

 

下をを見てみると俺に胸を鷲掴みにされている奈楽が震えながら顔を真っ赤にしていた。

 

「あっ…!!」

 

俺は慌てて2人を下ろすが奈楽は胸を押さえながらこっちを睨みつけてる

 

「えっと…ごめん」

 

瞬間、パァンと甲高い音が響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんっっっとすいません」

 

「ふんっ」

 

「もう奈楽ちゃん!!助けてもらったのにそんなことしちゃダメだよ!!」

 

頬に真っ赤な手形をつけた俺は奈楽に土下座していた。しかし奈楽はそんな俺からそっぽ向いておりそれにかぐらはおこった。

 

「ごめんね、奈楽ちゃんが酷いことしちゃって…」

 

「ううん、悪いのは俺だから」

 

謝るかぐらに俺は優しくそう言った。

 

「私はかぐら、よろしくね!!こっちが奈楽ちゃん!!私を守ってくれてるの!!」

 

「俺は竜司、よろしく」

 

改めて俺とかぐらは互いに自己紹介をした。

 

 

 

 

 

「いったいなんのつもりだ?善忍の癖に忍務を放棄して自分たちを助けるなど…いったい何が狙いだ?」

 

少し落ち着いたのか奈楽は俺を睨みながら問い詰める

 

「狙いって?」

 

「上層部を裏切ったお前はもはや善忍として生きることはできない。いったいそんなリスクを冒してまでお前にどんなメリットがあるんだ?」

 

奈楽の問いに俺は空を仰ぐ

 

「誰かが言った」

 

「ん?」

 

「『やらずに後悔するなら、やって後悔しろ』と」   

 

「………何を言ってる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は頭を抱えて絶叫した

 

「そうだよ俺善忍裏切っちゃったよ命令無視しちゃったよやらかしちゃったよどうしよぉぉぉぉぉ!!」

 

「おまっ、まさか考え無しに自分とかぐら様を助けたのか!?」

 

奈楽はこれには流石に驚愕して俺を問い詰める

 

「だってあのままじゃお前ら殺されてたんだよ!!そんなの俺納得いかないし!!気付いたら体が勝手に動いてたんだよ!!」

 

俺の答えに奈楽は唖然とした。

 

「わかってるんだよ。善忍として上層部の命令は絶対…忍としてやってくならどんな忍務でもやり通していかなきゃダメだってことくらい…でもこんなことしたら俺のなりたい忍に一生なれなくなっちゃう気がして…」

 

「なりたい忍?」

 

「うん、『世界一カッコイイ忍』。誰にも譲れない俺の夢」

 

「お前…忍にカッコイイも悪いもあると思ってるのか?」

 

「ははっ、よく言われる」

 

俺の夢を聞き呆れる奈楽に俺は笑って返した。

 

「お前たちがなんで狙われてるのか知らないけど…あそこでお前たちを殺したら俺は一生『世界一カッコイイ忍』を目指せなくなっちゃう…そう思ったら動いてたんだよ」

 

「お前……」

 

奈楽は俺の話を静かに聞いてくれた。

 

「あっ、そうだ…かぐら様これを」

 

ふと、奈楽は何かを思い出し懐から赤い珠を取り出しかぐらに差し出した

 

「あ!!奈楽ちゃん赤珠取ってきてくれたの?」

 

「赤珠?何それ」

 

「あーん。もぐもぐ」

 

するとかぐらは赤珠を口に入れるとそれを食べ出した。

 

「ちょっ!!そんな変なの食べちゃダメ!!ぺっ!!ちゃんとぺっしなさい!!」

 

「黙って見ていろ…これで覚醒の儀がはじまる」

 

「うん、はじまりだーー!!」

 

止めようとする俺を制し奈楽はかぐらを見つめる。すると、突如かぐらに変化が起きた。背が急に成長し、髪も伸びていく。気づけば俺たちと変わらないほどの年齢の少女になっていた。

 

「ええええええっ!?なに?どうして!?」

 

驚愕の変化に俺は驚愕した。

 

「奈楽、ありがとう。無事に覚醒できたのは貴方のおかげです。」

 

「とんでもないです。自分は務めを全うしただけのこと」

 

先ほどとは異なる落ち着いた口調で礼を言うかぐらに奈楽は頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で…なんでこんなことに?かぐらって何者なの?」

 

落ち着いた俺は改めて奈楽と成長したかぐらに聞いてみた。

 

「私は妖魔を滅するもの…例え全てを犠牲にしても全ての妖魔を滅する。そのために私は生まれました。」

 

「全ての妖魔を滅する?」

 

「はい」

 

頷くかぐらを改めて見てみる。確かに最初の幼女だった頃より成長しているが…はっきり言って戦えるようにはお世辞にも見えない

 

「かぐら様はまだ完全な覚醒ではない。妖魔から赤珠を取り込んでいけばいずれ完全覚醒して全ての妖魔を滅する力を手にすることができる。」

 

「なっ…」

 

奈楽の言葉に俺は驚いた。忍でも精鋭たちでなきゃ倒せない妖魔を滅するほどの存在…今まで出会ったことのない存在に俺は声が出なかった。

 

「私は、戦乱を鎮める神の使い。己の宿命に従って戦います。神楽の名の下に…」

 

その言葉は先ほどの天真爛漫な様子ではなくどこか人形のように静かな口調だった。

 

「うっ…」

 

「ちょ…大丈夫?」

 

その時、神楽がよろめき俺が慌てて支える

 

「大丈夫だ、覚醒直後で体力を消耗しただけだ」

 

「すみません奈楽…少し休みます」

 

「はい、自分がそばにおりますので安心してお休みください」

 

 

 

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

ぐっすりと眠っているかぐらを見て俺はほっとした。こうしてみると普通の女の子にしか見えない。

 

「ねえ、かぐらもそうだけど…奈楽って何者なの?どうしてかぐらのことを守ってるの?」

 

俺は奈楽にさりげなく聞いてみた。

でも奈楽は俺に結構厳しいから教えてくれないかも…

 

 

 

 

 

 

 

「護神の民……それが自分の一族だ」

 

しかし奈楽は意外にも教えてくれた。

 

「自分は護神の民としての掟に従いかぐら様を守っている…かぐら様が完全に覚醒するまで」

 

「完全に覚醒?」

 

俺が首を傾げると奈楽は静かに話を続ける

 

「転生の珠から生まれたかぐら様はまだ弱い。だが妖魔の中から取れる赤珠、それを取り込むことで覚醒へと進んでいく」

 

「あれか…」

 

先ほどかぐらが食べてた珠を俺も思い出す。

 

「自分にら与えられた命は3つ…1つ目はかぐら様が生まれるまで転生の珠を守ること、2つ目は転生してきたかぐら様を覚醒まで導くこと、3つ目は…全てが終わった時、転生の珠を回収すること…」

 

「転生の珠に戻る?」

 

「かぐら様は100年周期で転生の珠から復活する。そして完全覚醒し一定数の妖魔を滅することで再び転生の珠に戻るんだ。」

 

「そんなことが…」

 

そんな不死鳥みたいな存在が…俺は想像を遥かに超える真実に驚きを隠せなかった。

 

「転生の珠に戻ったかぐら様はまた100年の眠りにつく…自分はその転生の珠を速やかに回収して次の覚醒の儀を受け持つ護り人に託す…それが自分に与えられた使命だ…」

 

奈楽の話に俺はすこしモヤモヤした。

 

「その話の通りだとかぐらは…妖魔を倒すために復活して…倒すたびに100年も眠らなきゃいけないの?」

 

ただ妖魔を倒すためだけに生まれて…役目を終えたらまた眠らなきゃいけない…それがどうしても気に入らなかった

 

「それがかぐら様の使命であり…それを導くことが自分に与えられた使命だ…」

 

「でも…!!」

 

俺が言葉を続けようとするが奈楽の一瞬見せた辛そうな顔に何も言えなかった。

 

「話はこれで終わりだ。自分はこのまま敵がいないか見張っている。お前はどこへなりとも行け」

 

そう言って奈楽は俺から離れて歩き出してしまった。

 

「俺は…どうしよう…」

 

眠っているかぐらを見守りながら俺はこれからのことを考えた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

周囲を見渡しながら奈楽はため息を吐く。本当なら関わるつもりはなかった。少し話をしたらとっとと追い払うはずだったのに、余計なことまでペラペラしゃべってしまう。だがもうあいつもどこかへ消えるだろう。もう関わることはない

 

「自分の使命はただ一つ、かぐら様を守る事だ」

 

明日からは使命に忠実になろう。何も問題はない、本来の自分の役目に戻るだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「超絶必殺忍法!!煉獄ダイナソーキャノン!!」

 

『ガォォォォォン!!』

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

夜の京都の街中でガリュー超絶の砲撃が妖魔を一掃していた。 

 

「くそっ!!いったいどうなってるんだこれは、もうこれで13体目だぞ!?」

 

「あちこちに妖魔がいてキリがないな」

 

「間違いなく何かよからぬことが起こっていますわ」

 

「せやな、どう考えてもこれはおかしいで」

 

「もう!!これじゃ京都観光どころじゃないじゃない!!」

 

「まさか京都まで来て妖魔退治するなんてね」

 

ガリューが愚痴ると焔たちも同様に頷く。

 

「そう言えば昼間飛鳥たちの気配もあったな、あいつらも来ているのか?」

 

「だとしたら竜司たちも妖魔の相手をしている頃だろうな…」

 

ガリューは屋根に登り眉間に皺を寄せながら京都の街並みを見つめる。

 

「なんだか妙な胸騒ぎがするな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、まだここにいたのか?」

 

「決めたよ、俺のこれからについて」

 

奈楽見張りから戻ってくるとかぐらの側にいる俺を見て少し驚いた顔をする。そんな奈楽に俺は自分の決断を言う 

 

「しばらく奈楽たちと一緒にいるよ。どのみち京都を妖魔から守らないといけないし、それに…一緒に過ごしていけば何か問題を解決する答えが見つかるかもしれないし」

 

そうすればかぐらの討伐もやめさせることが出来るかもしれない。

 

「はぁ…勝手にしろ。ただし、一緒にいる以上妖魔退治を手伝ってもらうからな。自分が怪我で戦いが儘ならない以上こき使わせてもらうから覚悟しておけ」

 

「わかった!!よろしく奈楽!!」

 

俺の返事を聞くと奈楽は呆れたようにため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう」

 

「え?」

 

「…今のは忘れろ」

 

突然の礼に俺が驚くと奈楽は恥ずかしそうに顔を背けた。

 

「…必ず見つけて見せる、2人を守る方法を」

 

俺は空を見上げて決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな竜司たちを黒いカエルが見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「かぐらが覚醒段階に入りました。」

 

「くくく、いよいよか」

 

零座の報告を聞き影は笑みを浮かべる

 

「お前たち妖魔衆はかぐらが妖魔退治に来たところを再び狙え、邪魔な忍学生共が来たらそいつらも倒すのだ」

 

「はっ!!」

 

影は零座にそう指示をし零座が立ち去ると邪悪な笑みを浮かべる。

 

「くくく…もうすぐだ…もうすぐ神楽の力が我が手に…そうすれば私は完璧な存在になるのだ。くくく…くはははは!!」

 

邪悪な陰謀が再び迫ろうとしていた。

 



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其の四

護神の民の村は人里離れた山間にある。

 

ちょうど「護神の年」に生まれた私はかぐら様の覚醒から消失までの間を仕える神官に晴れて選ばれた。

 

転生の珠は野球ボール程の大きさで、村の神社に納められていた。

 

私は食事などの決められた時間以外は、ずっと転生の珠の前で正座をして過ごした。

 

転生の珠は人間の気配を近くに感じていないと覚醒した時に力が下がってしまうらしい。

 

だから一年365日、まったく休むことなく私は転生の珠を覗き込んだ

 

神官の仕事がそんな感じな場だったので、私は今の年齢になるまで村を一歩も出たことがなかった。

 

当然、学校に通ったこともなく、年の近い友達など1人も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、1人だけいた。

 

1日だけ…神社を離れ、一緒に過ごした。

 

名前も顔も覚えていない…でも、あの子と過ごした…楽しい思い出の時間は今でも忘れない

 

あの子との思い出が、約束があったから…

 

私は自分の使命をまっとう出来た。

 

 

 

 

 

 

 

「ん……もう朝か」

 

ふと奈楽は目を覚ました。どうやらすっかり眠ってしまったようだ。

 

「……なんだ?」

 

ふと体が動かないことに気づく。何かが体を締め付けてる…というか抱きしめてるような…

 

「なっ!?/////」

 

抱きしめていたのは昨日から行動を共にしている少年、竜司だった。

 

「えへへへ、ティラノサウルスの化石ゲット〜♡」

 

夢を見ているのか幸せそうな笑顔で眠りながら自分を抱きしめていた。

 

「ちょ…おま…離せ…!!」

 

「ん〜♡この大きさ、肌触り、最高の宝だ〜♡」

 

抵抗するが竜司さらにがっしりと抱きしめて頬ずりしてくる。

 

「この素敵な出会いに…チュ〜♡」

 

「ふぇ!?//////」

 

竜司の唇がゆっくりと奈楽の唇へと近づいてくる。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!離せぇぇぇぇぇぇ!!//////」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

奈楽は火事場の馬鹿力を発動して竜司を投げ飛ばした。

 

「ど、どうしたんですか奈楽!?」

 

隣で寝ていたかぐらが騒ぎに驚き起き上がる。

 

「な、何すんだよ奈楽!!人がせっかく良い夢見てたのに!!」

 

「それはこっちのセリフだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!//////」

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん…なさい」

 

「お前は…わざとやってるのか…!?いやそうに違いない…!!」

 

奈楽にボコボコに殴られ顔が膨れ上がった俺は事情を聞き全力の土下座をした。目の前では奈楽が顔を真っ赤にして涙目でこちらを睨みつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ俺たちは京都中にいる妖魔を倒していけば良いの?」

 

「そうだ、そいつらが持ってる赤珠をかぐら様に取り込んでもらい覚醒へと向かってもらう。自分が怪我で思うように動けない以上お前が主力となってもらうつもりだからな、しっかり働いてもらうぞ」

 

「もちろん、最初からそのつもりだ」

 

一通り謝罪とお仕置きを終えた俺たちは昨日のうちに採っておいた木の実を朝食代わりに食べながら今後の予定を話し合っていた。

 

「すみません、私たちのためにここまで…」

 

「かぐらが謝ることじゃないよ、俺が好きでやってるわけだし」

 

謝るかぐらにそう言って俺は最後の一個の木の実をとろうとする。しかしその手を奈楽が掴む

 

「これは自分のだ」

 

「奈楽は手にもう一個持ってるじゃん」

 

「これはかぐら様の分だ、お前はもう終わりだ」

 

「けち」

 

「スケベ」

 

「「……………………。」」

 

2人の睨み合いが続く

 

「奈楽、喧嘩はダメです」

 

「すみません…おい、半分だけだぞ」

 

「ありがとう、こっちもごめん」

 

かぐらに叱られ俺たちは半分ずつ木の実を食べる。なぜか知らないが奈楽相手になるとついムキになってしまう

 

「さっきの予定に一つ条件を追加させて」

 

半分に割った木の実を齧りながら俺は話を切り出した。

 

「なんだ?」

 

「人を巻き込むようなことはやめてくれ、そんなことは絶対させない」

 

奈楽とかぐらを守りたくてみんなを裏切った。だからこそ、俺には彼女たちを、そして周りのみんなを守る責任がある。もし2人が危険なことをしたり、人々に危害を加えそうになったらそれを全力で止める。それが俺なりのけじめの付け方だ

 

「…わかりました極力関係のない人々を巻き込まないようにすると約束します。いいですか奈楽」

 

「…はい、かぐら様の望む通りに」

 

「ありがとう2人とも」

 

承諾してくれた2人に俺はお礼を言った。

 

「そのかわり2人のことは俺が守るよ。必ずかぐらが殺されなくて良い方法を見つけてみせる」

 

それまでは絶対に見捨てない、必ず守ってみせる

 

「…そろそろ行くぞ」

 

奈楽は少し恥ずかしそうに振り向きながら歩き出しそれに俺とかぐらもついていった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、肝心の妖魔を見つけるにはどうしたらいいか…」

 

京都の市街地を歩きながら俺は考えた。2人の手伝いをすると言ったけど肝心の妖魔がいないんじゃどうしようもない

 

「心配しなくていい、わざわざ探さなくてもこの京都にいれば必ず見つかる。何より妖魔衆の奴らもくるはずだ」

 

確かに、あの妖魔衆の奴らは明らかに2人のことを狙っていた。でもなぜあいつらが2人を狙うのか…そもそもどうして奴らが俺たちの能力を持ってるのか…

 

「もしかして、裏で誰かが糸を引いてる?」

 

もしそうなら何か大きな陰謀が動いているかもしれない。そう思うとさらに不安がよぎった。

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

「ガァァァァァァァ!!」

 

「お出ましか」

 

京の街を散策してしばらくすると妖魔が現れた1匹1匹はそこまで強くなさそうだがかなりの数がいる。

 

「竜司、自分も戦うがこの数だ、支援は期待するなよ」

 

「わかってる。それよりかぐらを守ってやって」

 

それの言葉に奈楽が頷くのを確認したら俺はカグラドライバーを装着する。

 

「変身!!」

 

「武装!!ティラノ!!」

 

「キシャァァァァァァァァ」

 

俺はティラノキーを挿し込み回して仮面ライダーリューマへと変身する。すると、唸り声を上げながら妖魔が襲いかかってきた。

俺はファングクナイで最初に襲いかかってきた妖魔を斬り裂くと他の妖魔が俺を取り囲んで一斉に襲いかかってくる。

その攻撃を躱し続けるが数の多さに壁に追い込まれてしまった。

 

「それなら…はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は全身のエネルギーを放出し仮面ライダーリューマ命駆モードへと姿を変えた。

 

「ふっ!!」

 

「ギギィッ!?」

 

俺は高速移動で妖魔の包囲網を一瞬ですり抜け背後から妖魔に奇襲をかける。すると妖魔たちは俺の高速移動に追いつけず一蹴された。

 

「よしっ!!」

 

周囲の妖魔を倒した俺はガッツポーズをする。奈楽たちの方を見るとポケットに手を入れながら両足の鉄球を駆使して次々と妖魔を倒していく。その実力に俺は強く感心した。

 

 

 

 

 

 

「よしっ赤珠は回収した。大きくはないがまあ仕方ない」

 

妖魔を倒し終えた俺が変身を解除すると奈楽は倒した妖魔から赤珠を回収した。小型の妖魔だったこともあってか数はあるがそこまで大きくもなかった。

 

「仕方ない…竜司、次の場所へ…」

 

 

 

 

 

 

「りゅーくん!!」

 

すると、背後から聞きなれた声が聞こえる。振り返るとそこには飛鳥たちが辛そうな顔でこちらに近づいていた。

 

「みんな…」

 

考えてみたら少し迂闊だった。みんなもここで妖魔討伐や俺の捜索をしてたんだ。騒ぎを聞きつければすぐに見つかるのは当然だ

 

「加勢にきてくれた…ってわけじゃないよね」

 

飛鳥たちはそのままゆっくりと俺たちに近づいてくる。俺と奈楽はかぐらを守るように前に立ちはだかった。

 

「りゅーくん…最高幹部からりゅーくんをかぐら討伐と同時進行で捕縛しろって命令がきたの…」

 

「そっか…やっぱり」

 

飛鳥の話を聞いて俺はため息を吐いた。

覚悟してたけどやっぱり上層部は黙ってなかったか、どうやら俺は名実共にお尋ね者になってしまったらしい

 

「りゅーくんお願い、大人しく投降して!!このままじゃりゅーくん処刑されるかもしれないんだよ!?今ならまだそれは止められるかもしれない!!だから…」

 

飛鳥は必死に俺を説得しようとする。 

飛鳥の言う通りだ、今ここで飛鳥たちのところに戻れば罰は免れないが処刑までは免れるかもしれない。そもそも間違ってるのは俺の方だ

 

 

    

 

 

でも

 

 

 

   

 

 

「それは出来ない」

 

「そんな……」

 

それでも俺には奈楽とかぐらを見捨てることなんてできない、

たとえこれから先善忍として生きていけなくなったとしても、

裏切り者として追われることになったとしても、

 

「俺は…2人を見捨てるわけにはいかないんだ」

 

「竜司さん!!この命令に納得していないのはわたくしたちも一緒です!!ですが…忍である以上、上層部の命令は絶対!!たとえどんなに辛い任務でも…やらなくてはいけないんです!!」

 

「斑鳩先輩…わかってるよそれくらい、正しいのはみんなの方だ。でも、ここでそうだと割り切っちゃったら俺は自分のなりたい忍になれなくなっちゃうんだよ」

 

そうなったらどっちみち俺は忍として生きることなんて出来ない。みんなには悪いけど…今回ばかりは譲れない

 

「俺は2人を見捨てない、必ず守る」

 

「りゅーくん!!私たちと戦うことになるんだよ!?」

 

飛鳥の悲痛な叫びがあたりに響く。俺も出来れば飛鳥たちとは戦いたくない…だけど、これだけは俺も譲れない

 

「ごめんみんな、ここは退いてくれ」

 

「りゅーくん…」

 

「竜司さん…」

 

俺はカグラドライバーを腰に装着する。そんな俺に飛鳥と斑鳩先輩は辛そうな顔をする。

 

「飛鳥、斑鳩、覚悟を決めるぞ」

 

その時、かつ姉が前に出てきた。

その目は鋭くまっすぐな目をしていた。

 

「こいつが説得したところで動くような奴じゃないって知ってるだろ?一度決めたらテコでも動かないんだよ。この頑固者は」

 

「かつ姉…」

 

「だけどお前がこのままお尋ね者になるなんてアタイは見過ごせねえ、だから力ずくでも連れ戻すぜ」

 

「俺もだ」

 

「雲雀も!!」

 

かつ姉に続くように柳生と雲雀もやってくる。

それをみて飛鳥と斑鳩先輩も覚悟を決めたように前に出てきた。

 

「わかったよ…だけど、こっちも譲らない!!」

 

『ティラノ!!』

 

俺はティラノキーを鍵穴に差し込んだ。

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

ベルトから音楽が流れ出す。

 

「変身!!」

 

俺は掛け声と共にティラノキーを回した。

 

『武装!!ティラノ!!』

 

ドライバーの音声と共にティラノサウルスの幻影が現れ俺を包み仮面ライダーリューマへと変身した。

 

「私たちも譲れない…」

 

「必ず竜司さんを連れ戻します!!」

 

飛鳥たちも負けじと忍転身して身構えた。

 

「奈楽はかぐらを守って!!」

 

「わ…わかった!!」

 

俺の言葉に奈楽はかぐらを抱き抱えて離れる。その瞬間、飛鳥たちが俺へと向かってきた。

 

「ふっ!!」

 

俺はファングクナイで飛鳥の刀をガードする。出来ればみんなを傷つけずに退けたいが飛鳥たちも覚悟を決めており一歩も譲らない。

 

そこへ斑鳩先輩が飛燕を抜いて斬りかかる。俺は咄嗟に空中へと回避するがそこへ宙へと跳んだかつ姉の跳び蹴りが繰り出された。

 

「うわあっ!?」

 

俺はガードをして威力を和らげるがかつ姉の蹴りは凄まじく地面に叩きつけられる。

 

「ふっ!!」

 

「えーい!!」

 

そこへ畳み掛けるように柳生と雲雀の連携攻撃が襲いかかってきた。

 

「くそっ」

 

俺はなんとかそれを回避するが明らかに劣勢だった。

 

「考えてみたら…そうだよな」

 

俺たちはずっとみんなで修行をしてきた。俺がどんな攻撃が得意なのかも、逆にどんな攻撃が苦手なのかも知り尽くしている。その上連携が取れる以上向こうが圧倒的に有利なのだ。

 

「これでわかったでしょりゅーくん!!ここからは絶対に逃がさない!」

 

「だからお願いです!!大人しく投降してください!!」

 

飛鳥と斑鳩先輩は再び俺を説得しようとする。確かにこの状態では俺が明らかに不利。このままでは俺に勝機はない。

 

でもだからって

 

「ここで捕まるわけには…いかない!!」

 

『メガロ!!サイクロン!!』

 

俺はサイクロンメガロキーを起動するとカグラドライバーに挿し込む

 

『ドンドロロンロンドロンドロン!!ドンドロロンロンドロンドロン!!』

 

「変身!!」

 

『サイクロン武装!!メガロ!!』

 

鍵を回すと俺の全身を竜巻が包み込み装甲を形成すると仮面ライダーリューマサイクロンへと変身した。

 

「でた…メガロサウルスの力!!」

 

「竜司さん…それが答えなのですね…」

 

「譲る気はねえってか…!!」

 

「仕方ないな」

 

「竜司くん…!!」

 

仮面ライダーリューマサイクロンに変身した俺に飛鳥たちは警戒する。

 

「いくぞみんな!!」

 

俺は全身に竜巻を纏ってみんなに突撃する。

まず俺は柳生と雲雀へと仕掛ける。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「雲雀!?うわぁっ!!」

 

雲雀が風に飛ばされそうになることで柳生が慌てる。その隙を逃さず俺は柳生に蹴りを繰り出す。

雲雀を制圧すれば柳生を抑えることが出来る。その読みは当たったようだ、俺は竜巻を操って柳生と雲雀を拘束する。

 

「このぉ!!」

 

そこへかつ姉が飛びかかってくる。俺が竜巻を放つがかつ姉は自身も風を生み出して俺の竜巻を相殺する。やはり同じ風使いであるかつ姉は簡単にはいかないか

 

「やるねかつ姉!!」

 

「おかげさまでな!!」

 

そして俺の竜巻とかつ姉の蹴りがぶつかり合う

 

「だけど、手数は俺のが上だ!!」

 

「なっ!?」

 

しかし俺も竜巻をさらに生み出してかつ姉を取り囲み全方位から襲いかかりかつ姉を拘束した。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

そこへ斑鳩先輩が斬りかかってくる。素早い動きで間合いを詰め凄まじい連続斬りで俺に迫ってくる。その手数の多さでどんどん竜巻を斬り裂いてくる。

 

「さすがですね斑鳩先輩!!だけど…」

 

「させません!!」

 

俺が何かをすると察したのか斑鳩先輩は一気に畳み掛けてくる。そしてとうとう飛燕の一撃が竜巻を掻き分け俺へと炸裂した。

 

「残像です!!」

 

「なっ!?」

 

俺は油断し納刀した一瞬の隙をついて斑鳩先輩の目の前に迫り飛燕を弾き獲物を失った斑鳩先輩を竜巻で捉えた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

雲雀、柳生、かつ姉、斑鳩先輩を拘束した俺は疲労で息を切らす。向こうが俺の苦手な手を知ってるように俺もみんなの弱点をわかってる。だからこそ一瞬の隙をついてみんなを拘束できた。

だけど流石にみんな強く捉えるのに体力を思ったより消耗してしまった。

 

「残りは飛鳥、お前だけだ」

 

「りゅーくん…」

 

唯一残った飛鳥は自身の愛刀、『柳緑花紅』を構える。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺の竜巻と飛鳥の剣撃がぶつかり合う。素早い動きと二刀による連続斬りを繰り出す飛鳥とメガロサウルスの竜巻を操る俺による衝撃があたりを震わせる。

 

「りゅーくん…どうしても戻ってきてくれないの!?」

 

「戻らない…戻るわけにはいかないんだ!!」

 

たとてそれが忍として間違っていても…今ここでかぐらと奈楽を見捨てたら…俺はもう二度と忍として胸を張ることが出来なくなってしまう!!

 

「俺は絶対にかぐらを死なせない!!自分が目指す…道のために!!」

 

「…わかったよ。りゅーくんが自分の信念を貫こうとしてるって…だけど!!」

 

飛鳥から凄まじい気が溢れてくる。向こうも本気のようだ

 

「私だって…りゅーくんを諦めない!!」

 

「飛鳥…」

 

「りゅーくん…」

 

互いに譲れない以上…全力でぶつかるしかない

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺と飛鳥の全力が迫り合う。ぶつかるのは時間の問題だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、俺たちの間に二つの影が割り込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら、いったい何やってんだ?」

 

「こんな時に仲間割れか?」

 

俺の目の前にはスピノアクスで俺の一撃を防いだガリュー超絶と両手の六刀で飛鳥の一撃を防いだ焔が立っていた。



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其の五

「また妖魔の気配だ!!もう何体目だよ!?」

 

次々と現れる妖魔の気配に炎佐は嫌気がさしていた。

しかしだからと言って放っておく訳にはいかない。妖魔を一体でも取り逃したら罪もない人に多大な被害が生じる。

 

『そんなことになったら…父上や理吉に合わせる顔がねえだろ…』

 

自分に忍としてのあり方を教えてくれた父上に…自分を慕ってくれる後輩の期待に応えるために炎佐は焔たちと共に妖魔の気配がする方向へと走っていった。

 

「ん?この気配は竜司か…」

 

すると妖魔の近くに竜司の気配を感じる。どうやら竜司も妖魔を討つために動いているようだ。しかしその近くには覚えのない気配が二つある。

 

「しかも1人は…人間の気配か?」

 

「炎佐、飛鳥たちも近くにいるぞ」

 

焔に言われて探ってみると竜司の方向へと飛鳥たちの気配が向かっている。

しかし、様子がおかしい

 

「お前ら、急ぐぞ!!」

 

妙な胸騒ぎがして竜司たちの元へと急いだ。

 

 

 

 

 

「お前ら、いったい何やってんだ?」

 

「こんな時に仲間割れか?」

 

「お前ら……」

 

俺と飛鳥の戦いに割り込んできたガリュー超絶と焔に俺たちは驚きのあまり動けずにいた。少し遅れて他の炎佐紅蓮隊のメンバーも集まっていた。

 

「リューマ、なんでこいつらと戦ってんだ?お前ら仲間じゃないのかよ?」

 

「飛鳥…今この京都がどんな状況か分かってるのか?」

 

「ガリュー……これは……っ!!」

 

俺が問い詰めてくるガリュー超絶に事情を説明しようとした時、禍々しい気配が迫ってきた。

 

「ガリュー!!気をつけろ!!」

 

「え?」

 

その時、妖魔衆が現れ俺たちを取り囲む。

 

「かぐらを追ってきてみたら我がオリジナルの2人が揃うとは…面白くなってきたな」

 

零座も現れ俺たちを見渡すと薄らと笑みを浮かべる。

 

「リューマ、なんだこいつらは…妖魔なのは間違いなさそうだが…」

 

ガリュー超絶は突如現れた妖魔衆に警戒する。ガリュー超絶も本能で奴らのヤバさに気付いたのだろう

 

「気をつけろ炎佐、こいつらは妖魔衆…理由はわからないんだけど俺たちの能力が使える!!」

 

「俺たちの能力?」

 

「やれ!!」

 

零座の合図と共に妖魔衆たちが俺たちへと襲いかかってくる。

 

「なっ…これは…!!」

 

やはり前回戦った壱座、参座、五座、七座、九座は飛鳥たちの…弐座、四座、六座、八座、十座は炎佐紅蓮隊のみんなの能力を使えるようだ。

 

「お前が言ってたのはこれか…!!」

 

「ああ、気をつけろ!!妖魔自体もものすごく強いんだ!!」

 

妖魔衆たちは俺たちを取り囲んでおりかぐらたちを連れて逃げるのは難しそうだ。

 

「ガリュー、詳しい説明は後だ!!今はこいつらを倒してあの2人を守るのを手伝ってくれ」

 

「あの2人?」

 

ガリュー超絶は俺の後ろにいる奈楽とかぐらに気づいた。

 

「さっきの気配の奴らか…分かった!!」

 

ガリュー超絶はワイルドブラスターキャノンモードを手に奈楽とかぐらを守るように身構えた。

 

「あくまで我らの邪魔をするのか…面白い、変身」

 

そして零座も変身して苦無と片手斧に黒い炎を纏わせて襲いかかってくる。

 

「こいつの能力…まさか!!」

 

「ああ、俺とガリュー…2人分の能力が使えるみたいなんだ」

 

「マジかよ…厄介だな」

 

零座の能力にガリュー超絶も驚愕する。妖魔衆の連携攻撃に零座の強力な一撃が次々と俺たちに襲いかかってきた。

 

「くそっ…半端な攻撃は通じないか…竜司!!事情はさっぱり飲み込めねえがこいつらがやばいってことはわかる!!2人でこいつらを倒すぞ!!」

 

「ガリュー…分かった!!」

 

俺は意を決してガリュー超絶の隣に立つ。

 

「我々妖魔衆の力…貴様たちに見せてくれよう。行け!!我が妹たちよ!!」

 

妖魔衆たちは標的を俺たちに切り替えて次々と襲いかかってくる。俺は竜巻を操り妖魔衆たちの攻撃を弾き、ガリュー超絶がワイルドブラスターキャノンモードで離れた場所にいる妖魔衆を撃ち接近してくる奴らを俺の竜巻を纏った拳とスピノアクスで迎え撃つ。

 

「どういうことだ?戦力はこちらが上のはずなのにどうしてここまで拮抗している?以前5体を1人で相手にした時は相当苦戦していたはずなのに?」

 

「あの時と一緒にするなよ」

 

疑問を抱く零座に俺は答える。

 

「俺たち忍は仲間と力を合わせることで更なる力を手にすることができるんだ!!忍の力をみくびるんじゃない!!」

 

俺たちの連携によって妖魔衆たちは一箇所に纏まる。

 

「トドメだ!!」

 

『必殺の術!!サイクロン!!』

 

『必殺の術!!超絶!!』

 

俺はカグラドライバーを叩きガリュー超絶がワイルドブラスターキャノンモードに超絶キーを挿しこみ回す。ガリュー超絶の強大な炎が俺が生み出す竜巻の力によってさらに火力を増す。

 

「「合体超絶忍法!!双竜バーニングサイクロン!!」」

 

『ガォォォォォン!!』

 

「くっ!!」

 

ワイルドブラスターキャノンモードの引き金を引くと風の力で威力の上がった炎の弾丸が妖魔衆へと向かっていく。零座は慌てて苦無と片手斧による炎の斬撃で相殺しようとし両者の間で巨大な爆発が起きた。

 

「…驚いたぞ、まさかこれほどの力があろうとは」

 

煙が晴れると傷だらけの姿で立つ零座と妖魔衆がいた。あれだけの爆発でも倒せなかったとは思わなかった。

 

「退くぞ、一時撤退だ」

 

零座がそういうと他の妖魔衆は次々と撤退を始める。そして零座自身も撤退して俺たちしかいなくなった。

 

「竜司、いつ追手が来るかわからない。今すぐここを離れるぞ」

 

「ああ分かった」

 

「え?」

 

奈楽とかぐらと共にこの場を離れようとする俺に変身を解いた炎佐が驚く

 

「りゅーくん待って!!」

 

飛鳥は慌てて止めようとするが戰いのダメージが大きくその場から動けない

 

「飛鳥…ごめん」

 

俺は飛鳥に謝ると奈楽たちと一緒にその場を立ち去った。

 

 

 

 

「な…なんで竜司が逃げるんだ?」

 

立ち去っていく竜司を見ながら炎佐は唖然とした。

理由はわからないが竜司は先ほどの2人と一緒に飛鳥たちから追われているようだ。

 

「焔、ここは任せた。俺は竜司を追いかける。」

 

「わ、わかった」

 

炎佐はそういうと竜司たちを追いかけた。

 

「なぁ飛鳥、これは一体どういうことだ?」

 

焔たちは残った飛鳥たちに事情を聞く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、なんとか逃げ切れたな」

 

俺は奈楽たちとなんとか路地裏へと逃げ延びていた。

 

「くそっ…あれだけやってこれだけか…」

 

奈楽は回収した赤珠を見ながら悔しがる。あれだけの妖魔と遭遇したのに得られたのは最初に倒した小型妖魔の群れから回収した赤珠だけだった。

 

「仕方ありません奈楽、これだけでも手に入ったのですから」

 

「かぐら様…すみません」

 

励ますかぐらに奈楽は赤珠を差し出してかぐらはそれを取り込んだ。これでかぐらはまた一歩覚醒へと近づいたのだ。

 

「竜司も、私たちの手助けをしてくれてありがとうございます。」

 

「気にしなくて良いって」

 

 

 

 

 

 

「いや良くねえだろ」

 

すると炎佐が俺たちの前に現れた。どうやらもう追いついたようだ

 

「マジかよ…どうして」

 

「そういやお前には見せてなかったな。こいつのおかげだよ」

 

「シュルルルル!!」

 

炎佐が取り出したのは携帯電話から変形したカラクリヘビのヘビ丸だった。

 

「こいつは一度覚えた匂いから相手の居場所を探すことができるんだ。他にも熱源感知や振動感知まで索敵ならなんでもござれだ」

 

「へぇ〜俺のガマ吉に負けないくらい高性能だな」

 

「まあな、でもかっこよさは俺のが上だな」

 

「いやガマ吉の方がかっこいいだろ」

 

「いやいや俺のヘビ丸が」  

 

「いやいや俺のガマ吉が」

 

 

 

 

「…………ってこんなこと言い合ってる場合か!!何があったのか全部話せ!!」

 

炎佐のツッコミが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、お前があいつらから逃げてるのはそういうことか…」

 

俺が事情を説明すると炎佐は腕を組みながら眉間に皺を寄せた。

 

「妙だな」

 

「妙って?」

 

「お前の話の通りなら妖魔を倒すことができるかぐらは寧ろ忍にとって頼もしい存在のはずだ。なのにどうしてそれを殺そうとするんだ?」

 

その通りだ。妖魔は忍にとって全力で倒さなければならない危険な存在だ。戦力になるなら寧ろ協力しようとするはずなのに…

 

「お前はその辺あいつらから何か聞いてるか?」

 

「いや…そこまでは教えてもらえなくて…」

 

俺が視線を向けると奈楽とかぐらは口を閉ざしている。

 

「まあ良い、そっちについては俺の方でも調べてみる。」

 

「悪いな炎佐、じゃあそっちはお前に…」

 

 

 

 

 

 

「ここにいたか竜司」 

 

「「っ!?」」

 

突如聞こえた声に振り向くと屋根の上に険しい顔でこちらを睨んでいる霧夜先生が立っていた。

 

「霧夜…先生…」

 

突如現れた霧夜先生に俺は青ざめてしまう。表情を見るだけでもいつもとは全く違う…明らかに怒っていた。

 

「くっ…俺も…」

 

「お前はそこから動くな」

 

「っ!!」

 

炎佐が動こうとした瞬間、霧夜先生に睨みつけられて動けなくなってしまう

 

「さて…竜司、お前は一体何やってるんだ?なぜ討伐対象の2人を守ってここにいる?」

 

霧夜先生は険しい顔でゆっくりと近づきながら問い詰めてくる。

 

「…この2人を殺すなんてできません」

 

俺の言葉に霧夜先生の顔はさらに険しくなる。

 

「竜司、2人を倒せ。いまなら不問にできる」

 

「できません!!」

 

「最高幹部の第一級厳令だぞ」

 

「従えません!!!!」

 

「……そうか」

 

俺の言葉に霧夜先生は武器を構える。

 

「なら俺はお前を生徒と思わない。お前をかぐらと同様に討伐対象とする。」

 

「っ!!霧夜先生…」

 

武器を構えて近づいてくる霧夜先生に俺は身構えた。  

 

「奈楽…かぐら…2人はここから離れて」

 

「しかし…」

 

「いいからい行って!!俺が時間を稼ぐから!!はやく!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「させると思うか?」

 

しかし霧夜先生は奈楽とかぐらの目の前に一気に迫り斬りかかる。

 

「させるか!!」

 

俺は霧夜先生の前に割り込み霧夜先生の攻撃を防ぐ

 

「竜司!!」

 

「霧夜先生…本気だ…!!」

 

今霧夜先生は躊躇いなく殺しにかかっていた。躊躇っていたらダメだ。かといってこの様子じゃ2人が逃げられない…なんとか2人の逃げる隙を作らないと…

 

「やるしかない!!」

 

俺は霧夜先生を迎え撃つためにカグラドライバーを装着

 

「がっ!?」

 

する前に霧夜先生の蹴りが炸裂する。

 

「わざわざ変身するまで待ってくれると思ったか?」

 

霧夜先生は鋭い目でゆっくりと近づきながら迫ってくる。

 

「くそっ…だったら…」

 

俺は一度距離を置こうと後ろに退がろうとする  

 

「動きでバレバレだぞ」

 

しかしそれよりも早く霧夜先生が間合いを詰めてくる。

 

「えっ!?あ…やば…」

 

「反応が遅い!!」

 

霧夜先生の怒鳴り声と共に俺の顔面に拳が炸裂する。

 

「ゲホッゲホッ…これが…」

 

飛鳥たちよりも遥かに俺の動きを完全に把握している。さらに動きも速いだけでなく気配が絶たれていて全く動きが読めない。同じじいちゃんの弟子だった弥勒と戦った時は頭に血が昇っていて力の半分も出せていなかったから勝つことができた。

 

「これが…霧夜先生の本当の実力…!!」

 

 

 

   

 

 

 

 

そこから先は一方的なものになった。俺はリューマに変身することも出来ず動きも完全に読まれて殴られ蹴られた。

 

「う…くそ…」

 

「…………。」

 

満身創痍で倒れる俺を霧夜先生は見下ろしていた。

 

「さて……次は……」

 

「っ!!かぐら様…!!」

 

霧夜先生はこんどはかぐらと奈楽の方へゆっくりと近づいていく。それを見て奈楽はかぐらを守るように前に立つ

 

 

 

 

 

「させ…る…か…!!」

 

しかし俺は霧夜先生の足を掴んで止めようとする。それを見て霧夜先生は歯軋りをした。

 

「『出来ない』『従えない』そんな言葉が忍の世界で通用すると思っているのか?」

 

「………………。」

 

「甘ったれるな!!お前は…忍の使命をなんだと思ってるんだ!!」

 

霧夜先生の怒鳴り声が響き渡る

 

「忍の世界において上層部の命令は絶対!!たとえどんな汚れ仕事だろうとこなしていかなければならない。綺麗事が通じる世界じゃないんだぞ!!」

 

分かってる

 

そんなことがわからないほど俺だって馬鹿じゃない

 

間違ってるのは俺の方で

 

正しいのはみんなの方だ

 

でも

 

 

 

 

 

「そんなのは俺の目指す忍じゃない!!」

 

俺はやっぱり2人を見捨てられない

 

「っ!!分からず屋が…!!」

 

ここで2人を見捨てたら…俺は一生忍に誇りを持てなくなる…それに…

 

「言われたことを忠実にこなすだけなのが忍なら…そんなの傀儡と同じじゃないか!!」

 

「っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『お前さ…忍ってより傀儡みたいだな』

 

それは半蔵様に弟子入りして少し経った頃、同じ弟子だったあいつが俺を見て言った一言だった。

 

「っ!!今だ!!」

 

『超絶ティラノ!!』

 

「グルルルル!!」

 

わずかに気が逸れた一瞬に気づいた俺は超絶ティラノキーを起動して拳にティラノのエネルギーを纏わせる。

 

「しまっ…」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

気づいた霧夜先生は慌てるがそれよりも速く俺の拳が霧夜先生の顔面に炸裂し殴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

俺は殴り飛ばされ壁に寄りかかる霧夜先生を見ながら身構えていた。霧夜先生が今の一撃で倒せるとは思っていない。だからこそ警戒を解くことが出来なかった。

 

「竜司…」

 

案の定霧夜先生はゆっくりと立ち上がるので俺は今度こそカグラドライバーを装着した。

しかし霧夜先生からは先ほどと異なり戦闘の気配が消えていた。

 

   

 

 

 

 

 

「その2人を守ることが…この京都を滅ぼすことになるとしてもお前は2人を守るというのか?」

 

「え?」

 

「……っ!!」

 

突然霧夜先生が告げた言葉に俺は驚き、奈楽は目を逸らした。

 

「かぐらは完全覚醒した状態で一定数の妖魔を倒すとその体が砕け散り再び転生の珠に戻る…問題なのはその転生の珠に戻る際、桁外れのエネルギーを放出して、あたり一面を消失させてしまう」

 

「なっ…!!」

 

「上層部の予測では…京都全域が吹き飛ぶほどの威力だそうだ」

 

霧夜先生から語られた事実に俺は驚きを隠せなかった。

 

「竜司、今の話を聞いてもかぐらを殺さないと…守るといえるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

「守ります」

 

それでも俺の答えは変わらない

 

「かぐらが京都を滅ぼさなくても良い方法を見つけてみせます」

 

「そんな方法があると本気で思ってるのか?」

 

「わかりません、でも見つけます。」

 

霧夜先生が問い詰めるが俺に迷いはない

 

「もしそれでも見つからなければ…俺の手でけじめをつけます。でも、今はその時じゃない。俺は最後までかぐらを見捨てません」

 

「…そうか」

 

俺の言葉に霧夜先生は静かに目を閉じた。

 

「分かった、ここは退こう。だがその時が来たら…覚悟を決めろよ」

 

「はい!!」

 

俺の返事を聞き霧夜先生は背を向け去っていった。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、なんだかとんでもない話になってきたな」

 

去っていく霧夜先生を見ながら炎佐はため息を吐く。

 

「さて…と」

 

ふと遠くに感じた気配のした方を見ながら炎佐は呟く

 

「久しぶりに会いにいくか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛ててて!!も、もう少し優しく…」

 

「うるさい、じっとしてろ」

 

霧夜先生が去った後、俺は奈楽に治療をしてもらっていた。奈楽は慣れないながらも一生懸命俺に薬を塗ったり包帯を巻いてくれた。

 

「ありがとう奈楽」

 

「礼を言われる立場じゃない」

 

奈楽は俯きながら包帯を巻き直してる。

 

「…怒らないのか?」

 

「何が?」

 

「お前にあんな重大なことを言わなかったんだぞ!?言ってしまえば…お前を騙していたんだ!!恨み言の一つもないのか…!?」

 

かぐらが京都を滅ぼす危険があるという話のことだろう。辛そうに叫ぶ奈楽を見ていたら胸が苦しくなった。

 

「そっちにも事情があるからでしょ?びっくりしたけど怒ってないよ」

 

「…………っ!!」

 

「寧ろ理由がわかっただけでも良かった。そこからかぐらを助ける方法を見つければ良い」

 

「……うるさい」

 

「要するに京都を守った上でかぐらを助けられれば良いんだろ?どうしたものか…」

 

「うるさいうるさいうるさい!!」

 

「え?ちょ、どうしたの?」

 

突然の奈楽の叫びに俺は驚く

 

「おまえはなんなんだ!?どうしてこの期に及んで!!そんなボロボロになって!!かぐら様を…自分たちを守るなんて言えるんだ!?どうして…」

 

 

 

 

 

 

「『私』を…こんなにも惑わせるんだ…!!」

 

奈楽は俺の胸元に額をつけて絞り出すような声を出す。

 

「奈楽……」

 

「すまない…忘れてくれ」

 

奈楽は俺から離れるとトボトボと去っていった。

 

「なんか…怒らせちゃったみたいだな…あとで謝らないと」

 

「竜司…」

 

「かぐら、どうしたの?」

 

するとそこへかぐらが話しかけてきた。

 

「すみません、奈楽が失礼なことを…」

 

「ううん、気にしなくて良いよ。俺もちょっと無神経だったかもしれないし…」

 

俺がそう返すとかぐらが少し辛そうにした。

 

「なぁかぐら、ひとつ聞いても良い?」

 

「なんですか?」

 

「かぐらはさ、完全覚醒したいの?」

 

「え?」

 

俺の問いにかぐらは驚く

 

「なんとなく気になったんだ。かぐら自身がどうしたいのかなって」

 

「それは…私の使命だから…」

 

「使命とじゃなくて、『かぐら』の本心を教えて」

 

「私の…本心…」

 

俺の問いにかぐらは少し考えた。そして、静かに話し出した。

 

「完全覚醒すれば…私は『妖魔を滅する』。その意思だけが残り…今の人格も無くなります。そして妖魔を一定数倒して役目を終えれば再び転生の珠に戻ります…それが私の使命、そう思っていました…」

 

「かぐら…」

 

「でも、今になって…思うのです。私自身が…本当にそれを望んでいるのか…使命を全うするべきなのか、それとも…」

 

かぐらは自身の胸の内を俺に打ち明けた。

その言葉を聞き、俺は目を閉じて少し考える。

 

 

「よしっ!!良いこと思いついた!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに…やってるんだ…私は…!!」

 

木に寄りかかり奈楽はため息を吐く。

 

「あいつを見ていると…『あの子』を思い出す…!!」

 

 

 

 

 

あの子に会ったのは私がいつも通り神社の中でかぐら様の…転生の珠を覗き込んでいたある日のことだった。

 

「ねえ、何してるの?」

 

「え?えと…その…」

 

「あ、ごめん…驚かせるつもりはなかったんだ」

 

私が何をしているのか気になったのか興味津々で近づいてくるその子に私は緊張して上手く喋れなかった。 

そんな私の様子に気づいてその子は慌てて謝った。

 

 

 

 

「それでね、ばあちゃんに連れられてきたんだけどばあちゃん忙しいみたいで暇なんだ。それで探検してたらここにたどりついたんだ!!」

 

「そ、そうなんだ…」

 

ひとまず落ち着いた私はその子を部屋に案内する。私はその間も務めとして転生の珠を覗き込んだ。

 

「ねえねえ?奈楽はさっきからずっとその珠覗いてるけど退屈しないの?」

 

私のしていることが気になったのだろう。その子は不思議そうに聞いてくる

 

「これが…私の使命だから…」

 

「…むう」

 

私の答えが面白くなかったようでその子は不機嫌になり、突然こう言ってきた。

 

「奈楽!!一緒に遊びに行こう!!」

 

突然のその子の提案に私は驚いた。

 

「だ、だめだよ!!私はかぐら様を見守らないといけないから…」

 

「じゃあかぐらも一緒に行けば良いんだよ!!」

 

「え?」

 

「かぐらも一緒」、その言葉に私はポカンとした。

 

「う、うん…わかった」

 

 

 

 

 

 

そこからの時間は本当に楽しかった。一緒にいろんな景色を見たり、木登りや追いかけっこ、いろんなことをその子と、かぐら様と一緒にした。

 

でも、一番楽しかったのは

 

「よっしゃ、じゃあ次はこれをしよ!!」

 

その子と…彼としたサッカーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ以来…彼は私に会いに来なくなった…」

 

あのあと彼とした約束を忘れてしまったのか、それとも何かやむを得ない事情があったのかわからない…でも

 

「もう一度、会いたいな…」

 

彼が私に預けてくれた子供用のサッカーボールを見つめながら私は呟いた。

 

「奈楽!!」

 

「っ!!竜司…」

 

竜司が声をかけてきたので私は慌ててサッカーボールをしまう。

 

「どうした竜司…まだ安静に…」

 

 

 

 

 

 

 

「遊びに行こう!!かぐらと俺と3人で!!」

 

「え?」

 

彼の提案に私はポカンとした。



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其の六

「まさかあんたがこっちに来ていたとは思わなかったよ」

 

京都の街から離れた林に炎佐が黒い影に話しかける。

竜司と霧夜の戦いの最中、気配に気づいた炎佐は話をするために2人きりになれる場所へと向かったのだ。

 

「それで、いったい何の用だよ?凛さん」

 

姿を見せたのは炎佐紅蓮隊の元教師にして霧夜の元教え子、鈴音先生こと凛であった。

 

「お前たちに用があってきた。それにしても…まさか竜司が抜忍になるとはな…」

 

「それに関しては俺も驚いたよ…そうだ、もしあいつが行く宛なくて困ってたら蛇邪で受け入れてやってくれよ。あいつなら蛇邪でも上手くやるだろ。理吉とも仲良いみたいだし」

 

「…そうたな、考えておこう。個人的にあいつを育ててみたいと思っていたしな」

 

炎佐の提案を聞き、凛は少し満更でもない様子で微笑んだ。

 

「ってそんな話をするために来たんじゃない、緊急事態だ!!奴が生きていた!!」

 

「奴…まさか!!」

 

用事を思い出した凛は慌てて話し出し、事情を察した炎佐は驚愕した。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、東映太秦映画村では

 

 

「遅いな…2人ともどうしたんだろ?」

 

着替え室の前で侍の格好をした俺は2人を待っていた。

 

「おーい、2人とも〜準備できた〜?」

 

「ごめんなさい竜司。ほら奈楽、早く行きましょう」

 

「お、お待ちくださいかぐら様…!!やっぱり自分にはこんな格好は…!!」

 

扉の向こうでは恥ずかしそうに出ようとしない奈楽をかぐらが連れて行こうとしていた。

 

「や、やっぱりこれ脱いで…」

 

「似合ってますよお客様、さあほら」

 

「奈楽、行きますよ」

 

「え…えと、ああもう!!わかりました!!出ます!!自分で出ますからぁ!!///」

 

店員にも促され2人が出てくる。そこにはお姫様の格好をしたかぐらと奈楽がいた。

 

「どうですか竜司?」

 

「うぅ〜!!/////」

 

照れながら感想を聞いてくるかぐらと顔を真っ赤にしている奈楽の格好はとても似合っていた

 

「すごい似合ってる!!2人とも可愛いよ!!」 

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

「か、可愛っ/////」

 

俺が素直な感想を言うとかぐらは嬉しそうに笑い奈楽はさらに顔を赤くした。どうやら奈楽は褒められるのに慣れてないようだ。それをみると何だかさらに意地悪したくなる。

 

「すごい似合ってるよ奈楽」

 

「わ、わかったから…」

 

「可愛いよ奈楽」

 

「や、やめ…」

 

「綺麗だよ奈楽」

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「痛ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

瞬間、顔を真っ赤にした奈楽の渾身のビンタが俺に炸裂して吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんごめん…反応が面白くてつい…」

 

「ほ、褒められるのは慣れてないんだ…///たのむからやめてくれ…!!それにこの服動きにくいし…」

 

「ふふ、でも似合ってますよ奈楽」

 

侍とお姫様の格好をした俺たちはオープンセットのエリアで仲良く歩いていた。あたりは時代劇などで観る街並みが広がりまるでその時代にタイムスリップした気分になった。

 

「ここは…」

 

すると、かぐらが少し懐かしそうな表情を浮かべた。

 

「すみません、すこし懐かしい気持ちになって…」

 

そう言えばかぐらは100年ごとに復活すると言っていた。当然いろんな時代を体験してきたのだろう。記憶は消えてしまうと言っていたがそれでも残っているものもあるのかもしれない。

 

「行きましょう2人とも」

 

「うん!!」

 

かぐら嬉しそうに笑い、歩き出す。

その後も体験コーナーや展示エリアなどを回り俺たちも一緒に楽しんだ。

 

 

「はい、チーズ」

 

カメラマンの合図とともに俺たちはポーズをするとシャッター音とともに写真が撮られる。写真には俺たちの笑顔の写真が写っていた。

 

「お、結構上手く撮れてるな。はい2人も」

 

「これは…」

 

「ありがとう竜司…」

 

俺は撮ってもらった写真を3枚現像してもらい2人にも渡す。

受け取った2人は嬉しそうにその写真を見つめた。

 

 

 

 

 

「ちょっとちょっと彼女たち、何してんの?」

 

するとそこへチャラチャラした2人の不良が近づいてくる。

 

「やっべ2人ともマジ可愛いじゃん!!」

 

「こんな冴えない男なんかほっといて俺らと遊ぼうぜ」  

 

そう言って不良たちは奈楽たちへと近づこうとする。

 

「ちょっと、2人にかまわないでくれる?」

 

俺は2人を守ろうと不良の前に立つ

 

「あ?カッコつけてんじゃねえよ」

 

「お前はもうどっか行けよ」

 

「やだね、2人には指一本触れさせない」

 

俺の言葉に不良たちはイライラしていく

 

「調子乗ってんじゃねえ!!」

 

不良の1人が腕を振りかぶって俺に殴りかかる。

俺はその腕を躱すとすかさず不良の足を払って転ばす。

 

「てめえ!!」

 

それにもう1人が掴み掛かろうとしたのでその腕を掴んで投げ飛ばした。

 

「え?うわぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぐへぇ!!」

 

投げられた不良は投げた先に倒れていた仲間と激突して目を回す。

 

「いいぞ〜!!」

 

「お侍様が2人のお姫様を守っだぞ!!

 

「かっこいい〜!!」

 

「オ〜、ジャパニーズジュードー!!」

 

それをいつのまにか見ていたギャラリーたちは俺にめがけて拍手を送る。それに俺は少し恥ずかしくなってしまう

 

「何をしてる!!早く逃げるぞ!!」

 

「あ、そうだった!!失礼しました〜!!」

 

慌てた奈楽の声を聞いて俺は奈楽とかぐらの手を握って走り出した。

拍手に見送られながら俺たちはその場を離れることになった。

 

 

 

 

「まったく、あんなはっきりと目立って…自分たちが追われてる立場だとわかってるのか?」

 

「ごめん…つい…」

 

何とか逃げ延び衣装を返して映画村を後にした俺たちは、京都の喫茶店に入っていた。この喫茶店はかき氷が美味しいことで有名らしく周りにもそれ目当てのお客さんがいた。

 

「お待たせしました、いちご、いちごミルク、桃のかき氷です。」

 

「お、きたきた」

 

すると、そこへ俺たちの注文したかき氷がやってきた。

そこには雪のようにきめ細やかなかき氷に特製のフルーツソースがかかった美しいかき氷があった。

 

「あれ?奈楽はいちごミルクにしなかったの?」

 

俺は奈楽が頼んだいちごのかき氷を見て気付いた。俺はいちごミルクを頼んだが奈楽はシンプルないちごソースだった。

 

「もともと甘いいちごにわざわざミルクをかける意味がわからない」

 

「結構美味しいよ、ほら」

 

俺はスプーンにとったいちごミルクを奈楽の口元に近づける。

 

「む…あむ」

 

奈楽は少し悩んだがスプーンの中のいちごミルクを口に含む。

 

「美味しい…!!」

 

「でしょ?」

 

笑顔で見る俺に奈楽は少しむっとなる。

 

「だ、だがシンプルないちごソースも美味いぞ!!ほら!!」

 

奈楽は悔しかったのか俺に自分のかき氷をスプーンで差し出す。俺は差し出されたかき氷を口に含んだ。俺のいちごミルクとは異なりいちごの甘酸っぱさか広がりよりいちごの美味しさが伝わる。

 

「なるほど、確かに美味い」

 

「ふ、当然だ」

 

俺の感想が気に入ったのか奈楽は得意げになった。

 

 

しかし、お互いふと気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間接キスだと

 

「「……………………////////」」

 

自分たちの行為が恥ずかしくなりお互いに顔が真っ赤になった。

 

「…ぷっ!!ふふふふふ…!!」

 

そんな俺たちを見てかぐらは思わず笑い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………。」

 

「……………………。」

 

店を出た後も俺と奈楽は恥ずかしくてお互い顔を見れずにいた。

 

『ヤバイ…なんか気まずい…!!』

 

いざ思い出してみると奈楽に対して結構恥ずかしいことをしていた。

かぐらはなぜか俺たち2人を見ておもしろそうにしてるけどこっちとしてはこの空気はたまったもんじゃない、なんとか切り替えないと…

 

「あっ!!サッカーのお兄ちゃんだー!!」

 

するとそこへサッカーボールを持った子どもたちがやってくる。京都駅で出会ったサッカー少年たちだ。

 

「お、君たちか。どうしたの?」

 

「今から河川敷でサッカーしにいくんだ〜!!お兄ちゃんも一緒にいこうよ!!」

 

「ねえねえ!!またあのリフティング見せて見せて!!もっかいみせて〜!!」

 

子供達は目を輝かせて俺の服を引っ張ってくる。

俺のリフティングをそんなに気に入ってくれたのかと思うと嬉しくなった。

 

「えっと…2人はいい?」

 

「あ…ああ、いいぞ」

 

「私もかまいません」

 

俺が2人に聞くと承諾してくれた。

 

「うん…それじゃあ行こうかな」

 

「やったー!!」

 

「こっちこっち!!早く行こ!!」

 

俺が頷くと子供達は大喜びして俺の手を引っ張った。

 

 

 

 

 

 

 

京都のとある河川敷

 

「よーしいっくぞー!!」

 

「わーい!!」

 

「いけいけ〜!!」

 

俺が勢いよくボールを蹴ると子どもたちが笑顔でボールを追いかける。

河川敷では俺を連れてきた子どもたちの他にもたくさんの子どもたちがサッカーをしていた。

 

 

「みんな…楽しそうに笑ってますね…」

 

「はい、その通りですね。かぐら様…」

 

それを見ながらかぐらは子供達を慈しむように見つめていた。

そしてかぐらはふと子どもたちの1人に話しかける。

 

「サッカーが好きなんですか?」

 

「うん!!大好き!!だってみんなと出来るもん!!」

 

かぐらの言葉に少年は元気よく答える。

それを聞いて俺も賛同した。

 

 

 

 

「そうそう、なんたってサッカーは…友達といっしょにいるから、絆があるからできるスポーツだもんな!!」

 

「………っ!!」

 

竜司の言葉に奈楽は目を見開いた。

なぜならそれは…

 

 

 

 

 

 

 

『サッカーはね、1人じゃできないの!!友達といっしょにいるから、絆があるからできるの!!』

 

あの日出会った彼が言っていた言葉だったのだから

 

 

 

  

 

「ふっ!!」

 

「え?」

 

突如、奈楽が走り出して俺のボールを足で奪う。

あまりにも軽やかな動きに反応できなかった。

 

「どうした竜司、その程度か?」

 

「…まさか」

 

得意げに笑う奈楽に俺はスイッチが入る。

 

「そっちがその気なら!!」

 

そこからは俺と奈楽の一騎打ちだった。奈楽は思った以上に上手く、気を抜けばすぐに負けてしまう。一瞬の隙間ない激闘が続いた。

子供達も繰り広げられる俺たちの激闘に目を輝かせていた。

 

 

だけどそれ以上に

 

 

俺たちは

 

 

「…ふふっ!!」

 

「ははっ!!」

 

心が高鳴り気づけば子供のような笑顔でサッカーに熱中していた。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…やるな…」

 

「そっち…こそ…」

 

激闘虚しく勝負はつかずお互い地面に仰向けになった。

 

奈楽が思いの外上手くて手強かった。

本人の戦闘スタイルもあるのだがそれを踏まえてもとても上手い。

それに…なんだろう、

 

なぜかとても懐かしい

 

 

 

 

 

『ほらほら奈楽!!はやくはやく!!』

 

『ま、まってよ〜!!』

 

 

 

 

 

「え…?」

 

今のは、俺の幼少期…新幹線の中で見た夢で見た少女といた。

そしてその少女は

 

 

 

奈楽と瓜二つだった。

 

 

 

「そうだ…」

 

思い出した、なんで今まで忘れていたんだろう

 

あの日交わした約束を

 

 

 

 

 

「ねえ奈楽…俺たちって…昔会ったことが…」

 

「………………っ!!」

 

俺の問いに奈楽が目を大きく開く。そして嬉しそうな笑顔を俺に見せ

 

「やっと…思い出したのか…!!竜司…!!」

 

目から涙を滲ませ嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 

 

「そのボール…ずっと持ってたんだ…」

 

「当たり前だ。竜司との約束の証だからな」

 

河川敷に腰掛けた俺は隣に座る奈楽と話をした。

彼女の手には昔俺が預けた子供用のサッカーボールを持っていた。

 

「ごめん奈楽…俺…お前との約束を…」

 

「まったくだ、自分が…どれだけ竜司のことを待ったか分かってるのか?」

 

「うっ…!!」

 

奈楽に図星を突かれて胸が痛くなる。

なのになんで今まで忘れていたのかわからない…あの約束の後何があったのか…

 

「ふっ…まあいい、なにか深い事情があるんだろう?それに…」

 

奈楽は俺のすぐ側に寄り俺の方に寄りかかる。

 

「またこうして会えた。それで…充分だ」

 

「奈楽……」

 

奈楽があの後、どんな日々を送ったのか…久しぶりに会ったあの時の使命に没頭する姿から見ても、とても過酷なものだったのだろう…そう思うと今日この時まで忘れてしまっていた自分が情けなくなった。

 

「竜司…」

 

するとそこへかぐらが俺たちに声を掛ける。

 

「かぐら…お前もだ。あの日俺は奈楽だけじゃない…かぐらとも約束したんだ…」

 

本当はかぐらに選択肢を与えるだけのつもりだったが…記憶が戻ってしまったら自分の気持ちを抑えずにはいられない

 

「かぐら…やっぱりお前には死んでほしくない。完全覚醒しないでくれ!!」

 

あの時俺は奈楽だけじゃない…かぐらとも一緒の時を過ごした。

俺はそんなかぐらが…友達が死ぬなんて耐えられない!!

 

「私は…」

 

そんな俺の訴えを聞きかぐらは静かに目を閉じる。

 

「この京都でいろんなものを見ました…ここにいる人々…いろんな文化…私が完全覚醒してしまったら、それらを破壊してしまう…そんなのは嫌です」

 

「かぐら…」

 

「私もこの京都を滅ぼしたくない、もっとみんなと…奈楽や竜司といろんなものを見たい…!!もっと生きたい…一緒に遊びたい!!」

 

「うん…!!うん!!」

 

かぐらはまっすぐと俺にそう言う。

ただ使命を全うすることしか知らなかった少女に俺の想いが通じた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「困るなぁそれは、実に困るよ」

 

その時、悪意に満ちた声が聞こえる。

その声がする方を向くと零座と共に黒いローブを纏った男が現れる。

 

「まさかかぐらが覚醒を拒むなんて想定外だ。やはり君は極めつけのイレギュラーだよ竜司くん」

 

「誰だお前は…」

 

突如現れた謎の存在に俺は警戒する。

何者かわからないが明らかにヤバイやつだと言うことはわかる。

 

「このままかぐらが完全覚醒してくれるならと思ったが仕方ない。ここからは私の力でやるとしよう。零座」

 

「はっ」

 

影の命令に従い零座が合図をすると妖魔衆たちが一体に取り囲む

 

「妖魔衆!?まさか…こいつが妖魔衆を操ってたのか!!」

 

「くくく…竜司、貴様を倒してかぐらは我がものとする!!そして…私は完璧な存在へと進化するのだぁ!!」

 

男は邪悪な笑い声をあげてローブを脱ぎ捨てた。

するとその男の正体はスーツに身を包んだ隻眼の男、かつて蛇邪学園の出資者でスカルたちと結託していた男、道元だった。

 

「道元…!!生きていたのか!!」

 

まさか俺とガリューによって倒したと思っていた道元が生きていたとは思わなかった。しかもこいつが今度はかぐらのことを狙っていたなんて…

 

「くくく…こいつら妖魔衆はお前たちの血から私が作り出した忠実な手駒たち…貴様1人で勝てる相手ではない!!」

 

「お前が妖魔衆を…!!」

 

まさか妖魔衆を道元が作っていたなんて…でもたしかにあの日、蛇邪で俺たちと戦った道元なら俺たちの血を回収することが出来ても不思議じゃない

 

「さあやれ妖魔衆!!かぐらを私の元へ連れて来い!!」

 

「はっ!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「キェァァァァァ!!」

 

道元の命令と同時に零座と他の妖魔衆が襲いかかる。

 

「くそ!!変身!!」

 

『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』

 

俺はカグラドライバーを装着して仮面ライダーリューマ超絶へと変身した。

 

「奈楽はかぐらを守って!!」

 

「わ、分かった!!」

 

俺の指示とに奈楽は頷きかぐらを守るように退がる。

そこへ零座が俺へと斬りかかり俺はとっさにワイルドブラスターバスターモードでガードした。そこへ壱座、弐座、参座、四座が襲いかかってくる

 

「ぐっ…こいつら…強い!!」

 

零座はもちろんだが他の4体も強く少しも気が抜けない

 

「くくく…その5体は妖魔衆の中でも特に秀でた力を有している。さらに零座に至っては最高傑作だ。高い知性とリューマとガリュー、両者の能力を手に入れることに成功した私の才能の集大成…貴様に勝機は無い!!」

 

得意げに話す道元に俺は憤りを覚えた。蛇邪で戦った時もそうだったがこいつほどムカつく奴はそういない。こんな奴にかぐらを…俺の友達を奪われてたまるか!!

 

「舐めるなよ道元…お前の好きには…絶対にさせない!!」

 

俺はワイルドギアの力でティラノの力を更に引き出しワイルドブラスターバスターモードの刀身に纏わせ巨大な斬撃を繰り出し妖魔衆を退けようとする。俺の斬撃の衝撃によって壱座、弐座、参座、四座は吹き飛び零座もガードしたが後ろに退がった。

 

「よしっこのまま…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念時間切れだ」

 

「ぐっ!?これは…」

 

俺が更に追撃しようとした瞬間、突如体に痺れが走り動けなくなってしまう。周囲を見渡すと先ほどから見えなかった五座から十座の妖魔衆が俺を取り囲むように結界を張っていた。

 

「貴様の厄介さは知っているからな、こいつらに対リューマ、ガリューように改良した特殊な結界術を教えておいたのだよ」

 

「そ、そんな…!!」

 

想定外の事態に俺は必死で動こうとするが指先一つ動けない

 

 

 

「竜司!!」

 

「そんな…!!」

 

結界に囚われた俺に奈楽とかぐらが叫ぶ。

 

「俺のことはいいから…2人は逃げ…!!」

 

「おっとそうだった」

 

道元はニヤリと笑うとゆっくりとかぐらと奈楽に近づく。

2人は慌てて離れようとするがいつの間にか背後に近づいてた妖魔衆が奈楽を突き飛ばしかぐらを拘束する。

 

「奈楽!!」

 

かぐらは突き飛ばされて倒れる奈楽に近づこうとするが妖魔衆に捕らえられ動けない。そして拘束している妖魔衆により意識を奪われる

 

「か…かぐら…今助けに…!!」

 

俺は結界からなんとか脱出しようと力を振り絞る

 

「さて、邪魔な貴様らにはここで消えてもらおう」

 

道元は妖魔衆に合図をすると全ての妖魔衆が一斉に俺と奈楽にそれぞれの秘伝忍法を放ち大きな爆発が起きた。

 

  

 

 

「くくく…ついにかぐらを手に入れたぞ!!この力を我が身に取り込み…私こそが完璧な存在になるのだァ!!」

 

気を失っているかぐらを見ながら道元は甲高い笑い声をあげ、それを傅きながら零座が見つめていた、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい…!!おい竜司!!しっかりしろ!!おい!!」

 

道元が立ち去ったあと、俺たちの倒れている場所へ炎佐がやってきて俺の体を揺さぶった。

 

「炎佐…なんでここに…っ!!炎佐、道元は!?あいつがやってきてかぐらが…!!」

 

「落ち着け!!事情はわかってる!!」

 

 

 

 

 

 

 

「まさか道元が生きてたなんて…」

 

「俺も凛さんから聞いた時はまさかと思ったが…厄介なことになったな…」

 

俺は奈楽に介抱されながら炎佐に詳しい話を聞いた。

 

「それにしても竜司、お前もよくあの爆発で生きてたな」

 

「うん…一か八かだったけど…」

 

あの時、俺は力を振り絞ってなんとかカグラドライバーを連続で叩きティラノのフルパワーで妖魔衆の攻撃から奈楽の身を守ったのだ。

 

「とにかく、道元はかぐらの力を取り込んで恐ろしい野望を企ててることは確かだ」

 

「そんなこと許さねえ!!かぐらは絶対に助ける!!」

 

あんな奴にかぐらを…俺の友達を好きにはさせない!!必ず助ける!!

 

「ふっ、考えは決まってるみたいだな」

 

「自分も…いや、私も行かせてくれ」

 

するとそこへ奈楽も名乗り出る。

 

「奈楽…」

 

「私もかぐら様を助けたい!!竜司、連れてってくれ!!」

 

まっすぐと俺を見てそう叫ぶ奈楽を見て、彼女の覚悟を察した俺は奈楽に頷く

 

「助けよう!!俺たちの友達を!!」

 

「竜司…ああ!!」

 

道元の好きにはさせない…かぐらは必ず助ける…そしてその上でこの京都も守ってみせる!!

たとえ善忍としていられなくなったとしても…俺は俺の信念を貫く!!

 

 

 

 

 

「待ってろよ…かぐら!!必ず助ける!!」

 

こうして俺たちは動き出す。

 

かぐらを…俺たちの大切な友達を助けるために




今年最後の投稿出来ましたー!!
来年も「仮面ライダーリューマ」をよろしくお願いします!!


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其の七

「くくく…ついにかぐらを手に入れたぞ!!あとはこいつを覚醒させれば…私は完璧な存在となる…くくく…くはははは!!」

 

かぐらを手に入れた動画はアジトの中で嬉しそうに笑いながら零座に捉えられてるかぐらを見つめていた。

 

「リューマを始末した今、ガリューも他の仮面ライダーどもも恐れることはない!!さらには…貴様を動けない今、誰も私を止めることはできない。なぁ、半蔵よ」

 

「くっ…!!」

 

道元が振り向くとそこには全身を鎖で拘束された半蔵が睨みつけていた。

 

「くくく…老いたな半蔵、いかに貴様とてこうなってしまえばもう何もできん…ここで私の野望が果たされるのを待っているんだな!!ははははは!!」

 

道元は高笑いしながら立ち去ろうとするがその前に零座へと小さな声で話しかける

 

「半蔵の近くにに妖魔を数体見張り用に放っておけ、いざとなったら奴を人質に使える」

  

「はっ、全ては道元様のおっしゃる通りに」

 

零座は道元の命に静かに頷きそれをみながら道元は静かに去っていった。

 

「そして…必ず、完璧な存在に」

 

その後ろ姿を零座はじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

「やれやれ、油断してしまったのう…」

 

鎖に拘束された半蔵は静かにため息を吐いた。

 

自ら先陣を切って敵の親玉を倒し『これぞ刀と盾じゃ』と言ってモテモテになろうと計画していたが…まさかこんな連中まで用意してあったとは…

 

「じゃが心配ない、儂がいなくても…まだこの京都には竜司たちがおる」

 

竜司、飛鳥、そして半蔵学院の生徒たちがいれば道元の野望を止められるはずだ

 

「しかし…まさか竜司がのう…」

 

霧夜から話を聞いた時はまさかと思ったが…かぐらを連れて逃げて追われるとはな

 

「…懐かしいのう」

 

儂の初めての弟子たちも学生の時は4人で事あるごとに面倒ごとに首を突っ込み上層部からも睨まれていた。

 

「血は争えんというわけか…」

 

4人の中でも1番の問題児だった竜舌のことを思い出しながら半蔵は静かに笑う

 

「あとは…頼んだぞ」

 

   

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

霧夜は1人廊下を歩きながら物思いに耽っていた。

 

「どうしたものか…」

 

日本各地の妖魔は最上忍たちの活躍で沈静化されつつある。

だが上層部は京都にいるかぐらをいつ倒すのかと催促している。その上生徒たちにはその理由は話すことを禁じている。

理由を聞いて命令に躊躇し失敗することを恐れているのだ。

現に竜司は命令無視しかぐらを連れて逃亡した。

だけどアイツは自分の間違いを理解しながらも現状を良しとせずに行動している。

 

「ん?」

 

すると、ふと自分の携帯から電話の着信が入る。

霧夜がそれに出ると

 

『俺だ、霧夜』

 

「鉄心…」

 

最高幹部である親友からの着信に驚く

おそらくかぐら討伐の進行についてだろうと霧夜は考える。

 

「生徒たちはかぐら追跡をしっかりやってる。竜司についても…」

 

『覚えてるか?半蔵様のもとで修行をしていた頃を』

 

鉄心の言葉に霧夜は思い出す。

かつて仲間たちとしたあらゆる無茶の数々を

 

『あの頃に比べて、お互い頭が硬くなったもんだ』

 

「…そうだな」

 

『ここから俺が言うのはただの独り言だ』

 

「あぁ」

 

霧夜が頷くと鉄心は静かに独り言をはじめる

 

『最高幹部なんてもんになってからいろんな権限を得たが…あの頃ほど自由なことはなかった。無茶なことだばかりだったが…あの時の方がクリアに物事を考えることができた。』

 

「鉄心…」

 

『古い掟よりも…これからの時代を作る若い忍にすべてを賭けたい』

 

鉄心の言葉に霧夜は嬉しくなり笑顔になる。

 

「ありがとう鉄心、おかげで答えが決まった」

 

『だから独り言だと言ったろ』

 

鉄心はそう言って電話を切った。

 

「ふっ、アイツらしいな。さて…」

 

霧夜は静かに笑いながら歩き出した。新時代を作る教え子たちに真実を伝えるために

 

 

 

 

 

「これでいいな」

 

「おう、ありがとな」

 

鉄心の部屋では椅子に座る鉄心に竜舌が笑顔で礼を言う

 

「相変わらずヘラヘラしおって…お前の息子が反逆者となってるんだぞ」

 

「心配ねえよ。アイツなら必ずかぐらを、そして京都も救ってみせる。なんたって…」

 

ポケットから刀と盾が一つになったお守りを手に取り見つめながら

 

「俺の息子だ」

 

嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、それじゃあいくぞ」

 

俺は炎佐と奈楽と一緒にかぐら救出の準備をしていた。

 

「道元の狙いは、かぐらに赤珠を取り込ませて完全覚醒し、その力を自分のものにすることだ。完全覚醒したら…いずれ転生の珠に戻って京都が火の海になんてしまう」

 

「そんなことは絶対させない!!」

 

俺が叫ぶと2人も強く頷いた。

 

「どうやらお前らはやる気十分みたいだな」

 

突如声が聞こえて振り向くと満月と蒼良が並んで立っていた。

 

「お前ら…なんでここに…!!」

 

「蛇邪と月閃の方にも妖魔が出てきてそっちの対処で忙しかったんだけど…ようやく落ち着いてきたから僕だけ鈴音先生と一緒にこっちに来たんだ」

 

「俺も鉄心様の命令で京都に1人たどり着いたんだけどこいつとさっき合流してさ、お前らを探してたんだよ」

 

「そうだったのか…とにかく2人が力になってくれるなら心強いよ」

 

オルグとガルーダが仲間になってくれるのは嬉しい、飛鳥たちとも敵対していて戦力が足りない今、彼らの協力は嬉しい

 

「よし、とにかく急ごう」

 

「急ぐって…かぐらの場所はわかるの?」

 

「ああ、それなら…ん?」

 

炎佐がふと気配に気づき視線を変えるとそちらから大量のアントスカルがこちらへ近づいてきていた。

 

「どうやら、道元が俺たちを始末するために用意したみたいだな」

 

「ここは僕たちに任せて先に行ってくれ」

 

大量のアントスカルを見ながら満月と蒼良が俺たちの前に立った。

 

「そんな!!いくらなんでもあの数を2人でなんて…」

 

「竜司、お前のおかげで、俺たちは自分の過ちを止めることができた…借りは返させてもらうぜ」

 

「それに、竜司くんとそこの女の子には友達を助けるって大事な役目があるだろ?炎佐、2人を頼んだよ」

 

「まかせろ、行くぞお前ら」

 

「炎佐…」

 

心配そうに見つめる俺に炎佐は笑う

 

「心配すんな、アイツらの強さは知ってるだろ」

 

「…そうだな。2人とも、あとは任せた!!」

 

炎佐の言葉で俺も2人を信じることにし、シノビークルの後ろに奈楽を乗せて走り出した。

 

 

 

「まったく、相変わらずのお人よしだな」

 

「あはは、ほんとだね」

 

シノビークルに乗って走り去っていく2人を見ながら満月と蒼良は互いに笑う

 

「そんじゃいくか」

 

「しっかりついてきてくれよ」

 

『トリケラ!!』

 

『プテラ!!』

 

2人は自身のキョウリュウキーを起動して転身剣トプスパーダと転身弓プテラアローの鍵穴へと挿し込む、すると転身剣トプスパーダからは三味線の音色が、転身弓プテラアローからはエレキギターの音色が聞こえる。

 

「「変身!!」」

 

『竜装!!トリケラ!!』

 

『竜装!!プテラ!!』

 

2人の体を鎧が包み満月は仮面ライダーオルグ、蒼良は仮面ライダーガルーダへと変身した。

 

「仮面ライダーオルグ…月の正義を、舞い称える!!」

 

「仮面ライダーガルーダ…悪の誇りを、舞い掲よう…」

 

「ギギィッ!!」

 

2人の変身に反応してアントスカルたちは鋭い牙を見せながら襲いかかってきた。

 

「いくぞ!!」

 

「おおっ!!」

 

迫り来るアントスカル達に2人はそれぞれ武器を構えて突撃した。

 

 

 

 

 

京都にあるとある城の天守

 

「くくく…ついにかぐらが我が手に…!!この力で私は遂に完璧な存在となるのだ!!」

 

「その通りでございます道元様」

 

鎖に繋がれたかぐらを見ながら高笑いする道元に零座は跪きながら頷いた。

 

「零座、あとはお前達妖魔衆が『使命』を果たすだけだ。しっかり頼むぞ」

 

「お任せください。必ずや、使命を遂行してみせます」

 

 

  

 

 

「う…奈楽…竜司…」

 

「ん?あぁ、意識が戻ったのか」

 

意識の戻ったかぐらを道元がニヤリと笑いながら見つめる。

 

「今お前を完全覚醒させる準備が全て整った。これで貴様は全ての妖魔を滅する最強の存在となる」

 

「い…いや…!!私は…完全覚醒なんてしたくない…!!」

 

邪悪な笑みを浮かべる道元にかぐらは恐怖に怯えた。

 

「やれやれ…本来の役目を放棄して人間のようになるとは…あの小僧は本当にいらんことをしてくれたな。」

 

そんなかぐらを見て道元は舌打ちしながらゆっくり近づく

 

「まぁ良い、お前に拒否権はない。お前は完全覚醒しその力を我が身に取り込み私は完璧な存在となるのだ!!くくく…くはははは!!」

 

「いや…だれか…助けて…!!」

 

手を伸ばしてくる道元にかぐらは大声で叫ぶ

 

「誰が助けてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

「かぐらぁぁぁぁぁぁ!!」

 

突然あたりに響く叫びにかぐらは顔を上げた。そこには炎佐のカラクリヘビ(携帯モード)を手に持ってバイクを走らせる竜司とその後ろにしがみつく奈楽、隣を走る炎佐がいた。 

 

炎佐のカラクリヘビは索敵能力を持っている。それでかぐらの気配を探り見つけ出したのだ!!

 

「奈楽…竜司…!!」

 

「ちっ…!!やはり生きていたか…!!しぶといやつめ…!!」

 

竜司たちの姿を見て道元は舌打ちをする。

 

「妖魔衆!!今すぐあの目障りな邪魔者共を始末しろ!!」

 

「はっ!!」

 

道元の命令を受け零座を始めとした妖魔衆は一斉に竜司たちへと襲いかかってきた。

 

「炎佐!!」

 

「おう!!」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

『武装!!スピノ!!』

 

襲いかかってくる妖魔衆を迎え撃つために俺たちはカグラドライバーを装着して仮面ライダーリューマと仮面ライダーガリューへと変身した。

 

「かぐらを…返しやがれ!!」

 

俺はファングクナイで妖魔衆に斬りかかるが壱座がそれをガードしすかさず参座が俺に襲いかかる。

 

「リューマ!!」

 

リューマに気を取られたガリューに弐座の六刀流が迫り来る。ガリューはファングクナイで凌ぎながら反撃する。しかしそこへ四座と六座が迫り来る。

 

数の多い妖魔衆に俺たちは攻めきれずにいた。

 

「くそっ…かぐらまであと少しなのに…!!」

 

何よりあの結界まで使われたらまた動きを封じられてしまう。

こうなったらますますかぐら救出に間に合わなくなる。

 

「もっと味方がいれば…!!」

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

その時、何者かが妖魔衆へと斬りかかった。

 

「え…?」

 

 

 

「りゅーくん!!助けに来たよ!!」

 

「わたくしたちも加勢します!!」

 

「待たせたな!!」

 

「妖魔衆は…」

 

「ひばりたちに任せて!!」

 

そこには飛鳥たち半蔵学院のメンバーだった。

 

 

 

「みんな…どうしてここに…?」

 

俺は加勢に来たみんなに驚きを隠せずにいた。

 

「霧夜先生から全部聞いたの…かぐらちゃんがなんで命を狙われるのか…そしてりゅーくんの信念も…」

 

「霧夜先生が…!!」

 

まさか霧夜先生がそんなことを…

 

「だからわたくしたちも考えました。傀儡ではない…忍として…」

 

飛鳥たちはまっすぐとこちらを見ながら俺に本心を伝える。

 

「私たちもかぐらちゃんを助けたい!!りゅーくんと同じように…最後まで諦めたくない!!」

 

「わたくしたちは…忍として使命を全うすることばかり気にかけて…自分たちのあり方を見失ってました」

 

「それに比べたら、お前の方がアタイたちよりよっぽどすごいぜ」

 

「俺たちもまだまだ未熟だな」

 

「うん!!」

 

「みんな…!!」

 

みんなが力を貸してくれる。それが俺は嬉しかった。

間違ってるのは俺なのに…

 

「みんなは妖魔衆を止めてくれ。俺たちでかぐらを助けに行く。」

 

「任せて!!」

 

俺の言葉に飛鳥たちは強く頷いた。

 

 

 

 

 

「なんだ来たのか、見直したぞ飛鳥」

 

するとそこへ新たな集団が現れた。

焔たち炎佐紅蓮隊のメンバーだ

 

「お、やっと来たか。待ちわびたぞ」

 

焔たちを見てガリューは笑みを浮かべる。

 

「妖魔衆はお前らに任せて良いか?道元は俺がぶっ飛ばす」

 

「ああ、その代わり道元の奴に私たちの分の怒りもぶち込んでやれ!!」

 

「私たち蛇邪を欺いた無法者に思い知らせてやってください!!」

 

「儂ら忍の力を…」

 

「道元の奴に…」

 

「思い知らせてやりましょう!!」

 

焔たちの言葉にガリューは頷く。

 

半蔵学院と炎佐紅蓮隊、善忍と悪忍、相反する2つの存在が道元の野望を阻止するために想いを一つにした瞬間であった。

 

「竜司、奈楽、お前らは周りを気にせずかぐらを助けに行ってこい。道元のやつが邪魔するなら俺が食い止める。」

 

「妖魔衆も私たちと焔ちゃんたちで食い止めるから!!」

 

「助けましょう!!かぐらを!!」

 

「…あぁ!!行こうみんな!!」

 

俺たちは一斉にかぐらへと向かって走り出す。

妖魔衆たちは俺たちへと襲いかかるがそれを飛鳥たちが阻止する。

 

「行ってりゅーくん!!」

 

飛鳥の言葉に頷き俺と奈楽はかぐらめがけてシノビークルで突き進む。

 

「ぐっ…させるか…!!」

 

「それはこっちのセリフだ」

 

道元が俺たちを止めようとするがその前にガリューが立ちはだかった。

 

「道元…もうこれ以上お前の好きにはさせねえ…お前の野望は俺たちが止める!!」

 

「ほざけ!!貴様らにやられる私ではない!!貴様1人私の力で倒してくれる!!変身!!」

 

『ギャァァァァァァ!!』

 

道元がスカルキーを起動させると断末魔のような声が聞こえ、道元はスカルドライバーにスカルキーを挿して回す。そうするとスカルドライバーの口からどす黒い泥が吹き出して道元を包み道元怪人態へと変身した。

 

「くくく…あの時はリューマと2人がかりでようやく私に勝ったというのに…身の程をわきまえろ炎佐ぁぁぁ!!」

 

「あの時とは…違うんだよ!!今更お前なんかに負ける俺じゃねえ!!」

 

「その減らず口…これを見ても言えるかな!?はぁぁぁ!!」

 

瞬間、道元怪人態の肉体が肥大化しより巨大な姿となった。

 

「どうだ!!傀儡の術はこんな使い方も出来るんだ!!自分自身に傀儡の術をかけることで肉体の限界を解放することができる!!こうなった私はもう止められないぞ!!」

 

「負けないさ、俺だってあの頃とは違うんだからな」

 

『超絶スピノ!!』

 

ガリューはカグラドライバーを装着してワイルドギアと超絶スピノキーを起動してカグラドライバーに取り付ける。

 

『ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!』

 

「変身!!」

 

『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』

 

超絶スピノキーを回すとスピノがガリューに飛び込み仮面ライダーガリュー超絶へと変身した。

 

「みせてやると道元、お前に…忍の力ってやつをな!!」

 

「ほざけぇぇぇぇぇぇ!!」

 

自身に襲いかかる道元怪人態にガリュー超絶はワイルドブラスターキャノンモードを手に身構えた。

 

 

 

 

 

 

「もうすぐだ…待ってろかぐら…!!」

 

鎖に繋がれたかぐらが見えてきて俺はシノビークルのスピードを更に上げて全速力で走る。

 

「そうはさせん」

 

しかしそれを嘲笑うかのように零座が俺たちの前に立ちはだかる。

 

「かぐらは我らの物。貴様らには絶対に渡さん」

 

「ふざけるな!!かぐらは物なんかじゃねえ!!俺たちの大切な友達だ!!」

 

『超絶ティラノ!!』

 

俺はワイルドギアをドライバーに装着し超絶ティラノキーを起動して鍵穴に挿し込む。

 

『ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!』

 

ベルトから音声が流れ鎖から解き放たれたティラノが俺の隣に並び雄叫びを上げる。

 

「変身!!」

 

『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』

 

「俺の友達は…絶対に守る!!」

 

「生意気な…変身」

 

俺がリューマ超絶に変身すると零座は自身も怪人態へと変身して両手の苦無と片手斧で斬りかかる。

 

「奈楽!!ここは俺に任せてかぐらを助け出すんだ!!」

 

「分かった!!」

 

俺の言葉に奈楽は頷きかぐらの方へと走り出した。

 

「させるか!!」

 

「そうはさせない!!」

 

奈楽を追いかけようとする零座を俺は即座に止める。

 

「面倒な…!!まずは貴様からだオリジナル!!」

 

零座の苦無と片手斧の斬撃が次々と繰り出され俺に迫り来る。対して俺はワイルドブラスターバスターモードでそれを受け続ける。両者一歩も退かぬ攻防戦となった。

 

「なぜ貴様はかぐらをそこまで守ろうとする!?死と復活を繰り返し…ただ妖魔を滅するだけの、ましてや人ですらない怪物をなぜ友などと呼ぶ!?」

 

「お前には分からねえだろうがな…友達ってのは…絆ってのはそんな余計な壁なんか関係ねえんだよ!!」

 

「ぐわぁっ!!」

 

俺の一撃がついに零座へと炸裂した。

 

「俺の友達を怪物呼ばわりしやがって…絶対許さねえ!!」

 

 

 

 

 

「ぐ…うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

道元怪人態のがむしゃらな連撃をガリュー超絶はあっさりと防ぎきり反撃にワイルドブラスターキャノンモードの砲撃を連続でお見舞いする。それに吹き飛ばされた道元は悶えながら地面へと転がり込む

 

「な…なぜだ…なぜ肉体の限界を解放した私が…こんなあっさりと…!!」

 

「あのなぁ道元、はっきり言わせて貰うけど…お前のやってる肉体の限界の解放なんてな、わざわざ傀儡の術なんか使わなくても一流の忍はみんなやってる『出来て当たり前』のことなんだよ」

 

「なっ!?」

 

ガリュー超絶の言葉に道元は驚愕する

 

「要するにお前がやってるのは自転車に補助輪つけてるような取るに足らない技術ってことだ!!」

 

「ぐぅぅぅぅ!!」

 

道元は怒りに震えながら叫ぶ

 

「まだだ!!まだ終わりではない!!半蔵の見張りに使ってる妖魔どももこっちに呼び寄せれば…!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ギ…ギギィ…」

 

その頃、半蔵の目の前には血のように紅い槍で貫かれた複数の妖魔がいた。

 

「やれやれ、道元のやつに遅れをとるなんて…腕が鈍りすぎですよ先生」

 

そう言いながら近づいてきたのは目の前の妖魔を一蹴したヴァンパイアスカルであった。

 

「お主…なぜ儂を助けた…!!」

 

そう問いかける半蔵をチラリを見るとヴァンパイアスカルは目の前に黒いゲートを作り出す。

 

「貴方は仮にも僕の師匠でしたからね、そんな貴方が道元なんかの良いようにされるのが嫌だっただけですよ」

 

それだけ言うとヴァンパイアスカルはそのままゲートを使って去っていった。

 

 

 

 

「なぜだ!!なぜ一向に来ない!!奴らもやられたと言うのか!?」

 

「これでお前は終わりだ!!」

 

『必殺の術!!超絶!!』

 

ガリュー超絶はワイルドブラスターに超絶キーを挿しこみ回すと砲身を道元へと向ける。

 

「超絶必殺忍法!!煉獄ダイナソーキャノン!!」

 

『ガォォォォォン!!』

 

ガリュー超絶の必殺忍法が道元怪人態へと炸裂した。

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

道元怪人態はその痛みに悶えながら壁へと吹き飛ばされる。まだ動けるようだ。

 

「ったく…しぶといやつだな」

 

ガリュー超絶が道元に近づきながらふと辺りを見ると妖魔衆たちが倒されている。どうやら向こうも決着がついたようだ。

 

 

 

 

「かぐら様!!もう大丈夫です!!」

 

「奈楽…」

 

鎖を取り外されたかぐらはほっとした顔で奈楽を見つめる。それを見て俺も安心した。

 

「ぐっ…」

 

ふと音がする方を見ると、零座がふらつきながら立ち上がった。

 

「もうお前の仲間もみんなが倒した!!お前たちの野望もここまでだ!!」

 

「終わり?いいや、ここからだ!!」

 

そういうと突如零座が印を結び出す

 

 

 

 

 

 

 

「な、なに!?」

 

飛鳥たちが異変に気付きそちらを見ると倒した妖魔衆から赤珠が抜け出して飛び出していく。辺りを見ると他の妖魔衆からも赤珠が抜け出して一箇所に集まり出した。

 

「まさか…かぐら逃げろぉ!!」

 

「え…うっ!?」

 

俺は嫌な予感がしてかぐらに叫ぶが赤珠はそれよりも早くかぐらの中へと吸い込まれていく

 

 

 

 

 

 

「くはははは!!零座の奴が上手くやってくれたようだ!!」

 

その様子を見て道元怪人態は倒れながらも高笑いする。

 

「テメェ!!いったい何をしたんだ!?」

 

ガリュー超絶は道元怪人態の胸ぐらを掴みながら問い詰める。

 

「妖魔衆はかぐら完全覚醒のための生贄だったのだよ!!忍の力を与えた妖魔衆は通常の妖魔より強力な赤珠ができる!!それを一気に与えることでかぐらは完全覚醒するのだよ!!」

 

「くそっ!!この戦闘は完全覚醒に繋がるための囮だったのか!!」

 

「さあ今こそ完全覚醒の時だ!!全ての妖魔を滅する最強の存在…神楽よ!!」

 

「あ…あああああ!!」

 

かぐらは叫びと共に紅い光に包み込まれていく。

そして光が収まるとそこには黒い髪を長く伸ばし紅いマントを羽織り黒い服の胸部に鎧を纏った妖艶な女性がそこにいた。

 

「私は…神楽…全ての妖魔を滅するもの…」

 

対峙するだけでもわかるその圧倒的な覇気に俺たちは動けずにいた




お待たせしました!!今年初めての投稿です!!


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其の八


いよいよクライマックスです!!


「私は…神楽…全ての妖魔を滅するもの…」

 

神楽から溢れ出てくるオーラは力強くも神々しい光に包まれており俺たちはその力に動けずにいた。

 

「神楽はついに完全覚醒し、私の役目も終わった。道元様、あとはあなたの望むままに」

 

零座はそういうと自身の体を赤珠へと変えて神楽の中へと吸い込まれていった

 

「くくく、これであとは神楽に妖魔を倒させて転生の珠に戻してしまえば私の思いのまま、私は完璧な存在になることができる!!いでよ!!血塊の盟約に従い、我の元に来たれ!!」

 

神楽に気を取られていたガリューから逃げ出し道元が叫ぶと禍々しい無数の陣が光りそこから巨大妖魔が次々と出てきた。

 

「さあ神楽よ!!お前の敵はここにいるぞ!!1匹残らず滅ぼしてみるが良い!!」

 

「…全ての妖魔を、滅する」

 

巨大妖魔を見つめると神楽はゆっくりと近づいていく。

 

「ダメだ神楽!!そんなことをしたらお前は…」

 

「邪魔だ」

 

「うわぁっ!?」

 

俺が慌てて叫ぶと神楽は軽く手を振る。すると紅い斬撃が放たれて俺は吹き飛んで変身が解けてしまう。

 

「我は全ての妖魔を滅する。それが、それだけが我のなすべき事、それだけが我の存在理由」

 

「神楽…違う!!そんなの間違ってる!!」

 

俺はそれでも神楽の前に立つ

 

「お前は神楽だ!!妖魔を滅する道具でも兵器でもなんでもない!!俺の…大切な友達、神楽なんだ!!」

 

「邪魔をするなら…容赦しない」

 

神楽の紅い光の斬撃が次々と襲いかかり俺は必死で防ぎながらも一歩、また一歩と神楽に近づこうとする。

 

「無駄だ、イザナミ」

 

しかし、神楽が斬り裂いた空間から放たれる紅い光の無数の刃が俺の体を斬り裂いて俺は吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐっ…この…」

 

俺はなんとか立ちあがろうとする。

 

 

 

『その時が来たら…覚悟を決めろよ』

 

霧夜先生の言葉が頭をよぎる。覚悟を決めていた。もしその時が来たら、俺の手で終わらせると、決着をつけると、だけど…本当にもうなにも出来ないのか?

 

 

 

「え?」

 

ふと神楽を見てあることに気づいた。

 

神楽の手が俺へと振り下ろさせる。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

振り下ろされる神楽の斬撃から奈楽が俺を助け出す。

 

「竜司!!神楽様の眼を見たか!?」

 

「ああっ!!俺も見えた!!」

 

奈楽も気づいたようだ。そう思いながらもう一度神楽を見る

 

 

 

 

 

 

神楽の眼からは、一筋の涙が流れていた。

 

「残ってるんだ…神楽の心が、俺たちとの思い出か!!」

 

「間に合う…まだ助けられる!!」

 

それが分かれば充分だ、助けるんだ。かぐらを、俺たちの親友を

 

 

 

 

 

「そんなことさせるかぁぁぁ!!」

 

しかしそこへ道元が巨大妖魔をけしかけてくる。

 

「くそっこんな時に…」

 

「はぁぁぁ!!」

 

そこへ飛鳥たちが現れて巨大妖魔を迎え撃つ

 

「りゅーくん!!こっちは任せて!!2人はかぐらちゃんを!!」

 

「取り戻してこい!!お前らの友達を!!」

 

「飛鳥…炎佐…ありがとう!!」

 

「ぐっ…だがこいつらだけで私が召喚した巨大妖魔達を止められるわけ…」

 

「こいつらだけだと」

 

「思わないことだ」

 

その時凄まじい拳の一撃と大型手裏剣の斬撃が巨大妖魔に炸裂する。そちらを向くと炎佐達の恩師の鈴音先生と俺の尊敬する師匠、大道寺先輩が立っていた。

 

「うぉぉぉぉぉ!!ししょおォォォォォォォォォ!!」

 

思わぬ師匠の登場に俺は感激のあまり目を輝かせる

 

「竜司!!貴様はそっちに集中しろ!!己の信念を持ってなすべき事をしろ!!」

 

「はい師匠ぉ!!!」

 

「……竜司はああいう女性が好みなのか」

 

「え?」

 

「なんでもない、いくぞ竜司!!」

 

俺は師匠達に感謝を述べ神楽の方を向く。しかしなぜか一瞬奈楽がむすっとしていた。

 

「あくまで邪魔をするのか…ならば消えろ!!」

 

神楽は再び俺たちへと斬りかかる。俺は再びリューマに変身すると奈楽と共に攻撃を回避していく。見ていたわかったが神楽の攻撃は威力はあるが攻撃が大振りなことが多く隙がある。

 

「そこを突けば…近づける!!」

 

攻撃する必要はない!!今するべきなのは…俺たちの声を…俺たちの想いをかぐらに届けることだ!!

 

「なめるなぁぁぁぁ!!イザナギ!!」

 

神楽が手を挙げると周囲に紅い亀裂が生じてそこから紅い斬撃が降り注ぐ。しかし俺たちはそれを躱して神楽のすぐそばまで辿り着いた。

 

「ぐっ…このぉぉ!!」

 

神楽は負けじと力任せに手を振り下ろそうとしたがそれを俺が受け止めて神楽の腕を掴む

 

「奈楽!!いけぇっ!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

動きの止まった神楽へと奈楽は駆け出し

 

 

 

 

目一杯抱きしめた

 

 

 

 

 

 

 

 

竜司と別れた後、私は再び神楽様を見守る1日に戻った。

だけど、その生活は辛くなかった。竜司との思い出が、彼の笑顔が、絆が私の考えを大きく変えた。

それからというもの、もし神楽様…いや、神楽が目覚めたらと思うと楽しみで仕方なくなった。

どんな声なのだろう、どんな風に笑うんだろう、早く会いたい、そして、もし叶うのなら…竜司のような…

 

 

 

 

 

友達になりたい

 

 

 

 

 

 

 

 

転生の珠だった時のことは覚えていない、その時は暗い闇の中でただ眠り続けていた。来るその時に備え、使命を全うするために…

しかし、覚えていることがあった。暗い闇の中でそのことだけははっきりと見えていた。そこには…

 

 

 

 

笑顔でこちらをみる2人の笑顔があった

 

 

 

 

 

 

 

 

「神楽!!神楽、神楽!!私の友達……ずっと待ってた……私の友達。神楽、お前にいなくなってほしくないんだ!!お前ともっと一緒にいたい、お前と…竜司と…みんなでサッカーがしたいんだ!!」

 

そこには神楽を守護する者としてではない、幼い頃から焦がれていた想いを願う1人の少女がいた。

 

「聞いたか神楽、お前は兵器じゃない。お前の事をこれだけ想ってくれる友達がここにいるんだ、だから消えちゃダメだ!!」

 

負けじと俺も想いを叫ぶ。すると、神楽から再び涙が溢れ、目に盛りが宿った。

 

「奈楽……やっと普通に名前を呼んでくれたな」

 

「神楽…!!」

 

「竜司も……ようやくちゃんと出会えたな」

 

「ああ!!」

 

優しく微笑む神楽に俺と奈楽も思わず涙が流れてしまう

 

「奈楽…竜司…改めて、私と友達になってくれないか?」

 

「何言ってんだよ、もともと友達だろ?なぁ奈楽」

 

「ああ、まったくだ」

 

俺たちの返事に神楽は嬉しそうに笑い手を伸ばす。

そして俺たちもその手を掴もうとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、神楽の体を黒い触手が貫いた。

 

「え……?」

 

突然のことに俺は何が起こったのかわからなかった。

 

「がっ…こ、これは…私の中の…」

 

『この時を待っていたぞ』

 

神楽の中から零座の声がすると触手が次々と神楽の中を突き破り神楽を飲み込んでいく

 

「神楽ぁ!!」

 

「だ、ダメだ奈楽!!逃げ…!!」

 

慌てて奈楽が手を伸ばすと触手は奈楽を巻き込んで神楽を飲み込み徐々に人の形を作り零座の姿へと変わった。

 

「くくく…ついに手に入れたぞ!!これで神楽の力は…私のものだ!!」

 

先ほどとは違い邪悪な笑みを浮かべながら零座は高笑いをした。

 

「お前…神楽と奈楽に何をしやがった!?」

 

「取り込んだのさ、神楽を我が身にな…奈楽の方はついでだ」

 

問い詰める俺に零座は得意げに喋り出す。

 

「神楽が食らった赤珠は私の妹達…妖魔衆のものだ。故にその赤珠に干渉することで神楽を内側から支配したのだよ。最も、お前らによって心に隙が出来なければ無理だったが…感謝するぞ、お陰で我が野望は果たせた」

 

「お…おお!!よくやったぞ零座!!まさかお前がこんな事を考えていたとは!!」

 

するとそこへ嬉しそうに道元が駆け寄る

 

「まさかこんな方法があったとはな…素晴らしい!!あとはお前が手にした力を私に取り込ませれば…私は完璧な存在になれる!!」

 

「……………。」

 

「この力があればもう何者も敵ではない!!全てが私の思うままになる!!その力で私は全てを支配し…この世の頂点になるのだ!!ふは、ふははは!!」

 

「……………。」

 

「さぁ何をしてる零座!!早くそれを私に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五月蝿い」

 

零座の苦無が道元を貫いた

 

「が…れ、零座…何…を…」

 

「私は…あなたに造られ…命令をこなしていく内に…ふと想ったのですよ…なんで私がお前のような下等生物に従わなくてはいけないんだ?って」

 

見下した目で道元を見ながら零座は煩わしそうに聞く

 

「この力だってお前のようなカスよりも、私が使ったほうがよっぽど有効に使えると思わないか?」

 

「れ、零座…」

 

「まぁ今まで世話にはなったからな、お前の力も私が使ってやろう」

 

「零座ぁぁぁぁぁぁ!!貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

零座が触手を伸ばし包み込むと道元は怒りの叫びと共に飲み込まれていった。

 

「ふぅ、たいした力ではないが…腹の足しにはなったな」

 

道元を取り込んだ零座はニヤリと笑うと再び印を結ぶ。

 

「神楽の力を手に入れた今、今度こそ完全な存在で奴を召び出す事が出来る!!私の第三のオリジナルをな!!」

 

「第三のオリジナル…?」

 

零座はリューマとガリューの二つの能力を持った存在だ。だから奴がオリジナルと呼ぶのは1人は俺、もう1人はガリューだ。だが奴の元になった存在がもう一体…

 

 

その時、俺は一つの恐ろしい仮説に辿り着いた。もし道元が奴を生み出す際、俺たちの血だけでなく素体である妖魔の細胞にまでこだわりを持っていたとしたら、

 

「いでよ!!血塊の盟約に従い、我の元に来たれ!!」

 

俺たちの血を採取したであろう蛇邪学園の天守にて、俺たちを追い込んだあの妖魔の細胞を使っていたとしたら

 

「怨楼血!!」

 

零座の呼びかけと共に背後の2つの円環は仏像のようなレリーフが刻まれ、顔も能面のようになっている左右に半分の顔が2つずつあり、真ん中にもう一つ顔がある無数の手をもつ異形の巨人、真ナル怨楼血が現れた。

 

「あれが…怨楼血の完全体…!!」

 

蛇邪学園で対峙した時の不完全な状態とは比べ物にならない、禍々しいオーラに俺は体が震えた。

 

零座は真ナル怨楼血をみるとゆっくりと近づく

 

「真ナル怨楼血よ!!今こそ私と一つになるのだ!!完璧な存在となり、この世界を無にするのだ!!」

 

真ナル怨楼血は零座のその言葉を聞くと

 

「全てヲ…無ニ…良いダロウ」

 

真ナル怨楼血の了承を得ると零座は体の触手で真ナル怨楼血を包み込み体に取り込んだ。すると、体はどんどん変化していき、髑髏の様な頭に禍々しい黒炎を纏った様な体、手の甲に壱から十の数字がそれぞれ刻まれた五対の手、額にある巨大な目に零と刻まれた異形の怪人、魔神怨楼血へと変貌した。

 

「くくく…成功だ!!ついに私は忍も…妖魔をも超越した完璧な存在となったのだ!!」

 

「マジかよ…まさか怨楼血を取り込んでさらにパワーアップするなんて…」

 

「せっかくだ…お前達の力も私が食らってやろう。はぁぁぁ!!」

 

すると魔神怨楼血は手から漆黒の光線を俺へと次々と放ってくる。俺は咄嗟に回避するが今度は妖魔衆参座が持っていた長刀を生み出し間合いを詰めて斬りかかってくる。

 

「まさか…他の妖魔衆の能力が使えるのか!!」

 

「その通り!!神楽と共に取り込んだ我が妹達の能力も私の思うがまま!!つまり!!」

 

今度は十座の傀儡と七座の番傘、四座の大剣を生み出して俺に無数の連撃を繰り出す。

 

「貴様に勝機など初めからないという事だ!!」

 

「うわぁっ!!」

 

次々と繰り出される攻撃に俺は思わず吹き飛ばされてしまう

 

「くそっ…!!こんな力があるなんて…」

 

「これだけだと思うなぁ!!」

 

すると今度は腕を振るい切り裂かれた空間から紅い光を無数に放つ。

 

「それは…神楽の能力!!」

 

「今はまだ限定的な力しか使えないが、まもなく神楽の魂は完全に私に同化する!!その時こそ!!私が完璧な存在…神となるときなのだぁぁ!!」

 

「お前みたいな奴が…神なわけねえだろぉ!!」

 

『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』

 

俺はワイルドギアを起動してリューマ超絶へと変身してバスターモードのワイルドブラスターで魔神怨楼血へと斬りかかる。魔神怨楼血はすぐさま壱座の双刀を生み出してその一撃をガードする。

 

「リューマ!!貴様ら忍はこの国の脆弱な影だ!!踏み潰されるだけの羽虫だ!!貴様如きが、神である私の前に立つなど…身の程を弁えろ!!」

 

「その羽虫の羽ばたきが、いつか巨大な嵐になって…お前の野望を吹き飛ばす力になる!!お前みたいな奴が…この国を思い通りにできると思うな!!」

 

「だまれ!!すでに神楽は私が取り込んだ!!貴様に勝機など万に一つもない!!」

 

そんなことはさせない…俺にはわかる。まだ神楽と奈楽の気配が消えてない、2人はまだ生きている、ならやるべきことは一つだ!!

 

「2人を…必ず助ける!!」

 

俺は意を決して魔神怨楼血へと駆け出す。魔神怨楼血は近づく俺を止めようと漆黒の光線を連射する。その数が多く防ぎきれない。防げなかった光線が俺を貫き血が滲んでくる。全身に激痛が走る。

 

でも立ち止まらない

 

諦めない

 

必ず神楽を、奈楽を助けてみせる。

 

「負けるかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は伸ばした手を魔神怨楼血の体に突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奈楽…生きてるか?」

 

「ああ、大丈夫だ神楽」

 

零座、魔神怨楼血に取り込まれた2人は闇の中で黒い触手に縛られていた。

徐々に体の感覚がなくなっていく。まもなく体の全てを飲み込まれて2人は存在諸共消えてしまうだろう

 

「すまなかった奈楽…お前まで巻き込んでしまって…」

 

「いや、いい…お前と…神楽を見捨てるなんて…出来なかった」

 

2人は互いを見るとニコラと笑う。

 

「大丈夫だ、竜司なら…私たちの友達ならきっと奴にも勝つことが出来る。」

 

「そうだな…あいつを信じよう」

 

神楽が縛られた手をなんとか奈楽へと伸ばしその手を奈楽が強く握りしめた。

 

「奈楽…」

 

「神楽…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奈楽ぅぅぅぅぅ!!神楽ぁぁぁぁぁ!!」

 

「「え?」」

 

突如聞こえた声に振り向くと竜司が目一杯こちらへ手を伸ばしていた。

 

 

俺は2人の手を掴み引っ張り出そうとする。

 

 

 

 

「ぐっ…!!貴様…私から神楽達を引っ張り出すつもりか!?」

 

俺の狙いに気づいた魔神怨楼血は体から触手を出して俺を縛り付ける

 

「小癪な!!逆に貴様を取り込んでくれる!!」

 

「ぐっ…この!!」

 

触手は俺をどんどん魔神怨楼血の体内へと飲み込んでいくこのままでは俺も魔神怨楼血に肉体諸共奴の力に変えられてしまうだろう

 

 

 

 

 

 

 

「竜司!!もうやめろ!!このままじゃ…お前も奴の餌食になってしまう!!」

 

魔神怨楼血の体内で徐々に触手に飲まれていく俺に2人は必死で叫ぶ

 

「もういいやめてくれ!!お前にまで死んでほしくない!!はやく手を…」

 

「いやだ!!離さない!!絶対に…2人を諦めない!!」

 

 

 

 

 

2人の手を掴んだ時、思い出した。

あの日、何があったのか

なぜ俺が2人との思い出を忘れてしまっていたのか

 

 

  

 

『へへっ、明日はなにしてあそぼうかな』

 

奈楽と別れた俺はその日の思い出を振り返ってご機嫌だった。

 

『おい!!そこで何をしてる!!』

 

その時、護神の民の護衛が俺を見つけて叫んだ  

 

『え?うわぁ!?』

 

奈楽との思い出で上の空だったことと突然の声に驚いたこともあって、俺は足を踏み外して崖から落ちてしまった

 

 

 

 

 

 

『まさか…神楽の社に行ってたなんて…』

 

俺をここに連れてきたばあちゃん、小百合は頭に包帯を巻いて眠る俺の枕元で心配そうに見つめていた。

 

『神楽様に何かあってはそれこそ一大事…いかに子供のしたこととはいえ見過ごすわけにはいきません』

 

『その子のここでの記憶は消させてもらいます』

 

護神の民の人たちはばあちゃんに険しい目でそう言った。

 

『う…な…らく…かぐら…』

 

『…すまないねぇ…竜司』

 

ばあちゃんは申し訳なさそうに俺の頭を優しく撫でた。

 

 

 

「もう失わない!!奈楽も…神楽も…絶対に友達を失ってなるもんかぁ!!」

 

「竜司…!!」

 

 

 

 

 

 

「あいつ…まだ諦めてねえんだな、本気で神楽達を助けようとしてやがる」

 

「りゅーくんらしいね」

 

巨大妖魔達との戦いを終えたガリュー達はリューマの元に駆けつけると魔神怨楼血と戦うリューマを見ながら頷いた。

 

「俺たちも一緒に手伝うぞ!!みんなで…あいつの友達を助けるんだ!!」

 

「うん!!」

 

ガリューの言葉に飛鳥達は力強く頷いた。

 

「リューマぁ!!俺たちの力…うけとれぇぇぇぇ!!」

 

ガリュー達が手を伸ばすと彼らの力が美しい光となってリューマへと吸い込まれていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

すると、2人の手を俺以外の手が掴む。その顔を見ると

 

「炎佐…飛鳥…みんな…」

 

俺の頼れる、心から信じられる俺の仲間達が優しく笑っていた。そしてみんなは光になると俺のカグラドライバーへと吸い込まれていくそして俺に信じられないほどの力が溢れてきた、

 

「これは…」

 

「みんなが…俺たちに…力を…!!」

 

この力ならいける…!!俺はそう確信して腕に力を込める

 

「いっけぇぇぇぇぇ!!」

 

俺の力は魔神怨楼血の触手を振り解き2人を引っ張り出した

 

 

 

 

 

 

 

「ぐわぁぁぁぁ!?なんだ…今何が起きた!?」

 

巨大な力に吹き飛ばされた魔神怨楼血は何が起こったか分からず取り乱していた。光は眩いばかりに輝き俺を包み込んでいく。

そして輝く光は七色の装甲になり背中には『絆』と刻まれたマントを纏った姿へと変わっていた。

 

「仮面ライダーリューマ絆モード!!いざ、舞い忍ぶぜ!!」

 

「この…ふざけるなァァァァ!!」

 

魔神怨楼血は怒りに叫びながら黒いティラノサウルスの形をした火球を放つが、俺はそれをワイルドブラスターで真っ二つに斬る。

 

「俺の友達…返してもらったぞ!!」

 

魔神怨楼血は再び壱座の双刀を出して斬りかかるが、対する俺は斑鳩先輩の飛燕を呼び出して素早い抜刀術で弾き飛ばす。

 

「なにぃ!?」

 

「はぁっ!!」

 

瞬間、奈楽の巨大な鉄球が現れ、俺は鉄球を蹴り飛ばして魔神怨楼血へと叩きつける。

 

「ぐぅっ!!この…」

 

「まだまだぁ!!」

 

片手斧で斬りかかる魔神怨楼血だが、今度はそれよりも速く飛鳥の柳緑花紅を握り二刀流による連撃を繰り出しガリューのスピノアクスを目一杯叩きつけた。

 

「忍と仮面ライダーの能力を身につけただと…!!私と同じ力を!!」

 

「お前なんかに…俺たちは絶対に負けないんだ!!」

 

そして俺が手を振るうと魔神怨楼血の周囲を紅い空間の亀裂が囲み、そこから紅い光が一斉に魔神怨楼血へと襲いかかった。

 

「ぐぅぅぅ!!かくなる上は…この京都諸共貴様らを消し去ってくれる!!」

 

すると、魔神怨楼血の背後に骨でできた巨大な牙が現れその骨組みを格子状のエネルギーで覆った一見ゴールポストの様な結界が生み出され、そこに凄まじいエネルギーで出来た球体が作られていった。奴の中に残った神楽の膨大なエネルギーを一気に解放するつもりのようだ。

 

だけど俺は負けない、大切な友達との絆がここにある限り!!

 

「絆の力…お前に見せてやる!!」

 

『必殺の術!!』

 

俺がカグラドライバーを叩くとドライバーから虹色のエネルギーが溢れて頭上で輝く球体へと形を変える。

 

「はぁっ!!」

 

俺は力いっぱい飛び上がり、その球体を思いっきり蹴り飛ばす

 

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

魔神怨楼血は俺に向かって禍々しい球体を放つと俺の蹴りつけた球体とぶつかり合う

 

「これで終わりだリューマ!!神にひれ伏せぇ!!」

 

「お前こそ…俺達を舐めるなぁ!!」

 

すると、俺の放った球体は魔神怨楼血の放った球体のエネルギーを取り込んでいき、さらに巨大になって魔神怨楼血へと向かっていった。

 

「なっ…くそおっ!!」

 

魔神怨楼血は怒りながら手を前に出すと妖魔衆達が現れて球体を止めようと向かっていく。しかし、それでも止められず魔神怨楼血は十本の腕で光球を力ずくで止めようとする。

 

「私は神だぞ!!貴様の様な忍に…私が負けるはずがないんだ!!」

 

「いいや、お前の負けだ!!」

 

そこへ俺の渾身のキックの追撃により光球が魔神怨楼血に炸裂し結界を突き破り空高く打ち上がり大気圏を突き抜けた。

 

「おのれぇ……仮面……ライダァァァァァァァァ!!!」

 

天高く打ち上げられた魔神怨楼血は断末魔をあげ、巨大な花火の如く爆発した。

 

俺が変身を解くと光り輝き奈楽と神楽が側に立っていた。どうやら無事に戻れたようだ。

 

「神楽…奈楽…よかったぁっ!!」

 

俺は思わず2人を思いっきり抱きしめた。

 

「ひゃあっ!?りゅ、竜司…/////」

 

奈楽はなぜか顔が真っ赤になっていた。

 

「りゅーくーん!!」

 

そこへ飛鳥達も駆けつけてきた。どうやらみんなも無事だったようだ

 

「飛鳥…みんな!!無事だったんだな」

 

しかしなんでだろう、俺の顔を見た途端飛鳥と斑鳩先輩の顔が般若の如き形相となっていた。

 

「え…?2人とも?」

 

「りゅーくぅぅぅん!!」

 

「竜司さぁぁぁぁん!!」

 

「ひぃぃぃぃ!!」

 

2人の迫力に俺は思わず腰を抜かしてしまった。

 

 

 

 

 

「どうやら終わったようだな」

 

するとそこへ霧夜先生と部下を連れて鉄心様と神門様が歩いてきた。

 

「あ…やべ…」

 

そうだった、俺はまだ追われてる身なんだ…このままじゃ俺だけじゃない…神楽まで…そんなことさせない!!

 

俺は覚悟を決めて鉄心様達の前に立ちはだかる。

 

「ふん、落ち着け…お前達を捉えるつもりはない」

 

「え?」

 

俺がポカンとすると部下の忍達が神楽の周りを囲んで何かを調べ出した。

 

「鉄心様!!やはり肉体と魂に変化が起きてます。」

 

「思ったとおりか」

 

「ええ…」

 

部下の言葉を聞いて2人は頷いた

 

「ど、どういうことですか?」

 

俺が聞くと神門様が俺に話しだす。

 

「竜司さんが神楽を取り戻してあの形態になったあたりから…神楽の気に変化が生じ始めたんです。それに気づいて今詳しく調べたら…彼女の肉体はより人間に近いものへと変化していたんです。」

 

「おそらくあの形態になったことで人間としての情報が肉体に上書きされてお前達に近いものへと変化したんだろう。転生の珠の気配も完全に消えている」

 

「えっ?それじゃあ…」

 

転生の珠の気配がないってことは…えっと…つまり…

 

「転生の珠に戻ることもなくなり、京都が消滅する危険はなくなったということだ」

 

鉄心様はやれやれとため息を吐きながらそういう

 

「京都の危機も去ったことで神楽討伐の必要もなくなった。よって竜司、今回の任務の功績との相殺で貴様もお咎めなしだ」

 

「本当ですか!?」

 

「りゅーくん、よかったぁ!!」

 

俺がお咎めなしと知り斑鳩先輩と飛鳥が嬉しそうに笑う、他のみんなも安心したように微笑んだ

 

「だがっ!!」

 

しかしそこに鉄心様の怒声が響く

 

「今回は結果的にうまくいったというだけだ!!本来なら命令無視した時点で処刑されててもおかしくなかったんだ!!」

 

「うっ…」

 

「お前だけじゃない!!お前の勝手な行動で仲間達にどれだけ迷惑をかけたのかよく考えろ!!」

 

鉄心様に叱られて、思わず俯いてしまう。全くその通りだ、俺は自分のわがままでみんなに迷惑をかけた。

 

「…俺達だってお前らを守りたいんだ、あまり1人で突っ走るな…以上」

 

最後に鉄心様は優しく俺の頭を叩きながらそう言い部下を連れて去っていった

 

「全く素直じゃないのう」

 

「ほんと頑固な奴だよあいつは」

 

するとそこへじいちゃんと親父が笑いながら歩いてきた

 

「じいちゃん、親父!?」

 

「よっ、竜司。今回は派手にやったな〜」

 

親父はヘラヘラ笑いながら俺の頭をくしゃくしゃと撫でる

 

「お前はお前の気の済むようにやれ、仲間達と一緒にな」

 

 

 

 

そんな様子を弥勒は遠くから見ていた。

 

「やっぱり竜司くんは君の子供だね、竜舌」

 

そして彼は静かに思い出す。かつて仲間達と過ごした日々、あの刺激的な毎日を

 

「僕も僕の気の済むようにやるよ」

 

ただ一言そう言って弥勒は人知れず去っていった

 

 

 

「さて…そうしたらこれからどうしようか」

 

こんなでかい事件が起きて忘れてたけど俺たちは修学旅行の最中だった。せっかく解決したのだからみんなで何かしたいが…

 

「みんなで京都の街を散策でもするか?」

 

「あ、良いねそれ!!どうかな2人とも、私たちとみんなで行こう!!」

 

飛鳥の誘いに奈楽と神楽は少し考えるが

 

「それも良いが…」

 

「最初にやりたいことがある」

 

「あ、そうだ!!それがあった」

 

俺も思い出す

 

あの日交わした約束を

 

『このボールあずけるね!!つぎは俺の友達もつれて、奈楽と神楽とみんなで』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「サッカーしよう!!」」」

 

 

 

 

 

 

劇場版仮面ライダーリューマ 京都大決戦〜絆のサッカーボール〜 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ…一足遅かったか』

 

「はい、神楽も討伐対象から外れてしまい…」

 

戦いの後を見ながら何者かが最高幹部の1人、富嶽と通信していた

 

『まあ良い、次の機会はすぐに来るお前の…我らが仮面ライダーのお披露目はな』

 

「はっ!!」

 

その姿は東洋龍の様な姿の機械の鎧を纏った仮面ライダーであった

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜いい湯だな〜」

 

サッカーを終えた俺たちはみんなで温泉に入っていた。激闘に激闘を重ね酷使された俺の体は確実に癒やされていく

 

「ここ数日野宿だった体にこれは効くぜ〜」

 

「俺だって妖魔討伐で忙しくてゆっくり浸かる暇なんて…」

 

『ちょっとかつ姉〜!!』

 

『ひひひっ良いではないか良いではないか〜』

 

「「…………」」

 

垣根の向こうから聞こえる艶かしい会話に俺たちは静かになる

 

「よしっいくか」

 

「どこにだよ!?」

 

垣根に登ろうとする炎佐を俺は慌てて止めた

 

「離せ!!今の会話を聞いて覗かない方が失礼だろ!!」

 

「ダメに決まってんだろやめろ!!」

 

「くそっ!!邪魔するなら…」

 

「バカ落ち着け!!こんな暴れたら…うわぁ!!」

 

垣根の頂上付近で取っ組み合いをしていた俺たちは滑って落っこちてしまう

 

「痛た…あの馬鹿暴れやがって…」

 

「りゅ…竜司////」

 

ふと下に奈楽の声が聞こえる。ふとそちらをみると

 

 

 

 

 

 

 

全裸の奈楽に全裸で覆い被さっていた

 

「な…奈楽…」

 

自分の今の状況に顔が熱くなっていく

 

「………ん」

 

奈楽は顔を逸らして体の力を抜いた

 

「ちょっと奈楽ちゃん!?」

 

「なんですかその反応は!!なんですかその『受け入れます』みたいな反応は!!」

 

そこへ飛鳥の斑鳩先輩が詰め寄ろうとする。しかし2人は濡れた床に滑ってしまう

 

「え?」

 

「きゃあっ!!」

 

「うわっ!!」

 

滑った2人がこちらに倒れ込む…そして今度は俺が仰向けになり右側に奈楽、左側に斑鳩先輩、真上に飛鳥が覆い被さっていた。全裸で

 

 

 

 

 

 

 

 

「………きゅう」

 

あまりの刺激的なシュチュエーションに俺は限界が来て気を失ってしまった。

 

「え?りゅーくん!!しっかりして〜!!」

 

「竜司さん!!大丈夫ですか!?」

 

「竜司!!おい、竜司!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃炎佐は

 

 

 

 

 

「お、同じ仮面ライダーなのに…この差はなんだよ……」

 

石の床に頭を打って1人倒れていた

 




劇場版はこれにてクライマックスです!!

次回は同時上映『京都大捜索〜絆の舞妓さぁん!!〜』を一話完結でお送りします!!


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同時上映 京都大捜索〜絆の舞妓さぁん!!〜

後日談もとい完全おふざけです
軽い気持ちで呼んでください


舞妓とは、京都のお座敷において琴や三味線、舞いを奏で宴を盛り上げる人たちのことである。

 

彼女達の舞いは見るもの全ての人を魅了する。

 

彼女達の奏でる音色は全ての人の心に響く。

 

彼女達は

 

彼女達は

 

京都の伝統文化の継承者である。

 

 

 

 

 

 

きっかけは、幼い頃テレビで見た旅番組だった

 

その日は父上が忍務でおらず、仕事が休みだった母上と家で過ごしていた。

 

その時、テレビの旅番組で京都の特集がやってた

 

その時、彼女達が写った

 

その姿を観て俺は

 

「綺麗……」

 

心の中からそう思った。

 

 

 

 

「どこだ…どこなんだ…」

 

夜の京都を炎佐が彷徨う

 

その頭には先の温泉で石の床にぶつけた頭にたんこぶが出来ていた

 

「どこに…いるんだ…!!」

 

彼は探している。幼い頃からの憧れに

 

「どこにいるんだ舞妓さぁん!!」   

 

 

 

 

劇場版仮面ライダーリューマ

 

同時上映 京都大捜索〜絆の舞妓さぁん!!〜

 

 

 

「はぁ…全然見つからねぇ…」

 

道元ならびに零座による野望を食い止めた俺は京都に来た目的、舞妓さんを探していた。

 

だが、妖魔達による騒動後故か、どこを探してもなかなか見当たらない

 

「くそっ…竜司の奴にも手伝ってもらえば見つけられると思ったのに…」

 

肝心の竜司は先の温泉での羨ま…不憫な事故で…

 

 

 

 

 

「う、うーん…」

 

「竜司…高さは大丈夫か?とにかくゆっくり休め…」

 

「奈楽ちゃん!!いつまで膝枕してるの!?」

 

「抜け駆けにも限度があります!!」

 

「ち、違う…!!私は友達として竜司の介抱を…」

 

「も〜奈楽ちゃんも素直に自分が世話したいからって言えば良いのに」

 

「だ、だから違います神楽!!私は…////」

 

 

 

 

 

美女達の介抱を受けていた…マジで爆発すれば良いのに。あと神楽がなぜが子供の姿になってた

 

「ん?あれは…」

 

ふと前方で誰かが座り込んでいるのを見つけた。あれは…

 

「葛城?」

 

かつて蛇邪学園にて日影と戦った半蔵学院の忍学生である葛城であった。なぜが絶望しきった顔で座り込んでいる。

 

「ダメだ…見つからねえ…おっぱ…舞妓さんが…」

 

「……っ!!」

 

理由はわからんが間違いない、こいつも…俺と同じ舞妓を探す同志なのだと

 

「おい」

 

「ん?…っ!!」

 

俺に気づいた葛城も気づいたようだ、互いの目指すものは同じだと

 

静かに見つめあった俺たちは…

 

「「………っ!!(ベストマァ〜ッチ!!)」」

 

互いの手を強く握りしめた。その時、どこからか謎の音声が聞こえた、

 

 

 

 

 

「くくく…ついに見つけたぞ仮面ライダー…」

 

そんな炎佐を建物の屋根の上からナマケモノのような姿のスカル、スローススカルがこっそり見ていた。

 

「あいつを倒せば俺の組織での地位はうなきのぼり…贅沢三昧楽々引きこもりライフが送れるぜ!!」

 

このスローススカル、元は無職、引きこもりの穀潰しで両親に追い出されたろくでなしである。

路頭に迷ってたところをドラゴンによって拾われスカルになったのだが戦闘能力もろくになく他のスカルからも見下されていた。

そんな時、京都での出来事を知り、『手負いの仮面ライダーなら倒せる』と考えて独断で仮面ライダー討伐に赴いたのだ

 

「くくく…見てろよ…ロードスカル共、お前らがのんびりしてる間に俺の無敵の能力で…うわぁ!?」

 

得意げにしているとスローススカルは足を滑らせて屋根から落下した

 

「痛た…全く油断してしまっ…ん?」

 

「グルルルル…」

 

何かを踏んづけたような感触がすると真横から唸り声が聞こえる。

そこをみると尻尾を踏まれた野良犬が怒りの形相で唸っていた。

 

「あ…ははは…お手…なんつって…」

 

「ガウ!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

野良犬に差し出した手を噛まれてスローススカルは悲鳴をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、お前は昼間中ずっと探してたと」

 

スローススカルがそんなことになってるとは思いもしない炎佐は葛城と情報交換していた。

 

「ああ、何人か見つけたと思ったのによく聞いてみたらその人達も観光客だったし…」

 

「当たり前だ、本物の舞妓さんは昼間には出歩かない」

 

実を言うと昼間にいる舞妓さんは舞妓さんじゃない

舞妓さんは昼間は基本稽古に明け暮れ夜、お座敷に向かうために歩いているのだ。昼間に歩いているのはおもに観光客の舞妓体験などだ

 

「とにかく本物の舞妓さん会える可能性があるとしたら今の時間だ。2人で一緒に見つけ出すぞ!!」

 

「ああ!!アタイとお前なら必ず舞妓さんを見つけられる!!」

 

「ふ、絆の力…見せてやろうぜ!!」

 

俺と葛城は再び硬く手を握る

 

「ん?あれは…」

 

葛城が誰かに気づきそちらを見ると銀髪の少年が多くの女性を侍らせて歩いていた。

 

「へぇ〜君吹奏楽やってるんだ。楽器は何吹いてるの?」

 

「は、ハイ////フルートを…」

 

「やっぱり!!なんか君にすごい似合いそうな気がしてたんだ」

 

「そ、そうですか!!えへへ…///」

 

銀髪の少年の言葉にナンパされてる少女は嬉しそうにしていた。

 

「ん?あいつって…」

 

「満月!?」

 

「ん?」

 

それは道元が引き連れたアントスカル達を迎え撃ってくれた仮面ライダーオルグこと満月だった。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…追いついたぞ」

 

野良犬に襲われたスローススカルはふらつきながら炎佐達を見つけた。

 

「しかも仮面ライダーオルグまでいやがる。運が俺に向いてきたぜ」

 

2人を始末すればますます手柄が増える。スローススカルは嬉しそうに笑う

 

「見せてやる!!この俺の無敵の能力を!!はぁぁぁ!!」

 

スローススカルは力を解放すると自身の体が周囲の景色と同化していく

 

「くくく…俺は周囲の気配と同化して誰にも気づかれなくなることができるんだ!!」

 

この無敵すぎる能力に特化しすぎているため、他の能力は弱いがこれならどんなやつでも闇討ちできる…これで仮面ライダーもおしまいだ!!

 

 

 

 

「舞妓さん?それなら俺見たぜ」

 

「本当か!?」

 

「どこで見たんだ!?」

 

想定外の目撃情報に俺たちは慌てて満月を問い詰める。

 

 

「油断しやがって…これでお前はおしまいだ…」

 

スローススカルはサバイバルナイフを片手にゆっくり、ゆっくりと炎佐と満月に近づく

 

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

勢いよく走り出し道路の真ん中にきた瞬間、走ってきたトラックに轢かれた

 

「ぐわあぁぁぁぁぁ!!」

 

轢かれた衝撃でスローススカルは吹き飛んでった。

 

「あ…あれ?今何かにぶつかったような…?」

 

トラックの運転手は周囲を見渡しながら首を傾げていた。

 

 

 

 

「えっと…祇園の方に向かって歩いてるところを見かけたくらいだけど…この時間にあの格好してたから多分間違いないと思うぜ」

 

「情報サンキュー!!いくぞ葛城!!」

 

「おう!!」

 

俺たちは満月に礼を言うと全力疾走で祇園へと走っていった。

 

「なんだったんだ?」

 

「ね〜満月くん!!早くカラオケ行こっ!!」

 

「もっと満月くんのことしりた〜い」

 

「ん?ああ悪い悪いじゃあ行こうか」

 

満月はすぐに切り替えて女の子達と歩いていった。

 

 

 

 

 

祇園

 

京都市東山区にある繁華街である。舞妓さんがいるのもこの辺りとされている。この場所で

 

「よっしゃ!!舞妓さんはもう目の前だ!!」

 

「必ず見つけて見せる!!」

 

俺と葛城は舞妓さんを探していた。

 

「満月の奴が舞妓さんを見かけたのはこの辺りと言ってたけど…」

 

「まだそう遠くにはいってないはずだ!!」

 

俺たちは忍としての能力をフル活用して周囲を散策する。

 

すると、

 

「んあ?そこにいんのって炎佐?なんれ君がいんの?」

 

酔っ払った声がしてそこを見てみると

 

「蒼良?」

 

「ひっく…よく見たら葛城ちゃんも…珍ひい組み合わせだね」

 

いつものキリッとした表情とは違う明らかに酔っ払った状態で寿司折り片手に歩いている仮面ライダーガルーダこと蒼良だった。

 

 

   

 

 

「まいごさん?迷子なら交番に行かないと…」

 

「迷子じゃねえ!!舞妓さんだ!!」

 

「ああそっち!!アメリカ育ちのマイクさんね!!あはははは!!」

 

「ああもうめんどくせーな!!」

 

酔っ払った蒼良はケラケラ笑っていてまともに会話が成立しない。

諦めて他をあたろうとした時、

 

「うーん、舞妓さんだったらさっきそこの路地に入ってくのを見たけど…」

 

「は?」

 

衝撃発言をした

 

「「それを先に言えよ!!」」

 

「ん?ああ舞妓さんを探してたの?それならそう言ってくれれば良いのに…」

 

「散々言ったわ酔っぱらい!!」

 

「なんだとぉ!!僕は酔っ払ってなんかないぞぉ!!」

 

酔っ払ってないと言ってる奴ほど酔っ払ってると聞くが本当だったようだ

 

「おい炎佐!!そんなことより早くいくぞ!!舞妓さんはもう目の前だ!!」

 

「ああ、そうだな葛城…!!ついに舞妓さんに会えるぞ!!」

 

「おお〜誰探してるのか知らんけど頑張れ〜!!あははははは!!」

 

酔っぱらいを放っておき俺と葛城は路地へと走り出した。

 

「く…くそ…ガリューはどこに…ん?」

 

トラックに轢かれてふらつきながらスローススカルは炎佐を探してるとほろ酔い気分で歩いている蒼良を見つける

 

「ガルーダ!?しかも酔っ払ってやがるこれはチャンスだ!!」

 

スローススカルは気配を同化すると近くに落ちてた鉄パイプを手に蒼良へと飛びかかる

 

「くたばれぇぇぇぇ!!」

 

「あははははは!!気分いいから祝砲だー!!」

 

蒼良はプテラアローを取り出すと頭上に向かって矢を連射した

 

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

矢の連射をモロに喰らったスローススカルはまたまた吹き飛んでった。 

 

 

   

 

 

「どこだ…舞妓さん…」

 

「どこにいるんだ…」

 

路地に入った俺と葛城は舞妓さんを探していく。だが探せど探せど見当たらない

 

「もしかして…ガセネタだったのか?」

 

「あいつも酔っ払ってたからな…」

 

今思ってみたらあんまり信ぴょう性無かったかもしれない…

 

「ま、でも探すんだろ?」

 

「ふ、当たり前だ」

 

必ず見つけて見せる。絆の力があればきっと…

 

「ん?」

 

すると視線の先に美しい着物を着た女性が歩いてるのを見つけた

 

「葛城!!もしかしてあの人…」

 

「ああ!!舞妓さんだ!!」

 

俺たちは着物の女性が消えていった路地へと走り出した

 

    

 

 

 

「くそっ…このままで終わると思うなよ…!!こうなったら切り札を使ってやる…!!」

 

スローススカルは満身創痍ながらまだ諦めて無かった。

スローススカルはそういうと懐から拳銃を取り出した。

 

「ここにくる途中、ヤクザっぽいオッサンから盗んだこいつでおしまいだ!!くくく…くはははは!!」

 

 

 

「見つけた!!舞妓さん!!」

 

俺たちはとうとう着物を着てる女性を見つけた。素顔は見えないが間違いない…

 

「ま、舞妓さん…俺たちは…あなたに…」

 

「く…くくく…」

 

「ん?」

 

突然、着物の女性が笑い出す。

 

「引っかかったな炎佐ぁぁぁぁ!!」

 

着物の女性が着物を脱ぎ捨てるとそこには…

 

「「「「「MK5推参!!」」」」」

 

MK5の碇であり、いつのまにか周囲に他の4人も集まってポーズをとっていた。

 

「お前達仮面ライダーが京都に集まってると聞いて急いでやってきたんだ!!」

 

「……………。」

 

「しかも激闘で満身創痍だそうだってな」

 

「……………。」

 

「キキッ、舞妓になりすましてお前達を油断させる作戦だったのに他の奴らはなかなか引っかからねえ…だけどお前だけでも倒せりゃ俺たちの地位はうなぎのぼりだぜ!!」

 

「……………。」

 

「さあ観念しろ炎佐!!お前を倒して俺たちは…」

 

「……テメェら」

 

瞬間、炎佐と葛城から怒気が込み上げてくる

 

「キキッ!?こ、この殺気は…」

 

MK5も2人の怒気に気づき思わずたじろぐ

 

「アタイらの心を弄びやがって…!!」

 

「ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ…!!」

 

『武装!!スピノ!!』

 

葛城は忍転身し、俺は仮面ライダーガリューへと変身する。

 

「「空気読めやぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

『必殺の術!!』

 

俺の炎と葛城の竜巻が混ざり巨大な炎の竜巻になる

 

「「合体必殺忍法!!バーニングトルネードォォォォォォォォォォ!!」」

 

「「「「「ダメだこりゃァァァァァァァァ!!」」」」」

 

俺たちの必殺忍法がMK5を瞬殺した。

 

 

 

 

 

「見つけた!!これで終わりだガリューぅぅぅぅ!!」

 

炎佐を見つけたスローススカルは満身創痍で拳銃を突きつけた

 

瞬間、炎の竜巻がスローススカルへと向かってくる。

 

「え?ぐわぁぁぁぁ!?」

 

スローススカルはなす術なく吹き飛ばされていった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…結局見つからなかったな…」

 

「そうだな…」

 

俺と葛城はガッカリしながら座り込んでしまった。

 

「会ってみたかったな…」

 

幼い頃から憧れてた、舞妓さんに

 

 

 

 

 

 

「あらあら、そないなトコでどうしたんどすか?」

 

すると、そんな俺たちに誰かが話しかける

 

「え?」

 

「まさか…!!」

 

俺たちがそちらを向くと美しい着物を着た女性がいる

 

直接見て確信した

 

間違いない

 

この人は本物の

 

「舞妓さん…ですか?」

 

「アタイら…舞妓さんに会いにきて…!!」

 

「まあ、そらわざわざおおきに」

 

舞妓さんはにっこりと笑い手を取ってくれた。

 

震えが止まらない、心が震える

 

「ではお元気で」

 

舞妓さんは優しく微笑みながら去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く…くそ…ガリューめ…次こそは…!!」

 

スローススカルはふらつきながら次の作戦を考える

まだ諦めてないようだ

 

「ん?」

 

「あ?」

 

ふと気配がしてそっちをみると仮面ライダーリューマこと竜司がこっちを見てた。ここは竜司達が泊まっていた宿、しかも竜司の泊まっている部屋の真ん前だったのだ

 

「あっ…」

 

それを見てスローススカルが気づく、度重なる事故で気配を同化する能力が解けていた事に

 

「変身」

 

『武装!!ティラノ!!』

 

『必殺の術!!』

 

竜司はリューマに変身してカグラドライバーを叩く

 

「必殺忍法!!激竜無双キック!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

必殺忍法が炸裂してスローススカルが吹き飛び、変身が解けてスカルキーは破壊された

 

「ううう…もうやだ、こんなやばい世界…母ちゃん…俺ちゃんと働くよ…」

 

スローススカルの男はベソを描きながらそう言って気を失った。

 

 

 

「まさか京都にまでスカルがいるなんて…」

 

騒がしくて外を見てみたら、まさかスカルと戦う事になるなんて…めちゃくちゃ弱かった上に何故かボロボロだったけど…

 

「はぁ…寝よ」

 

「竜司、どうした?何か騒がしかったが…」

 

騒ぎを聞いて奈楽がやってくる

 

「ん?大丈夫だよ、もう片付いた」

 

「そっか…あまり無理をするな、まだ全快じゃないんだから…必要なら私がまた介抱を…」

 

「奈楽ちゃん!?」

 

「ぬ・け・が・け!!」

 

「うっ…!!」

 

「ふふっ奈楽ちゃん乙女みたいだよ」

 

何故か奈楽に飛鳥と斑鳩先輩が怒って、それを見て神楽も楽しそうに笑う

 

「はぁ…もう寝よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出会えたな、舞妓さん」

 

「ああ、やったな」

 

朝日が昇るのを見ながら俺と葛城は笑い合う

 

「それもこれもお前のおかげだありがとな」

 

「へへ、よせよ照れるぜ」

 

「それにあの必殺忍法…なかなかイカしてたな」

 

リューマの時といいこいつといい、善忍と悪忍、相反する二つの力が合わさる事であれほどの力が出せるとはな

 

「また会おう、魂の友よ」

 

「ああ、また会おうぜ」

 

こうして俺たちは固く手を握り合った。同じ想いを抱いた魂の友と

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜なんだかとんでもない京都旅行になったな」

 

新幹線に乗りながら炎佐紅蓮隊はお菓子を広げて話していた。

バッグには京都土産がぎっしり詰まっていて激闘の後でも盛り上がっていたのがわかった

 

「そういや炎佐さん、昨日の夜どっか行ってたみたいやけどどうしたんや?」

 

「ん?なんでもねえよ」

 

窓の外を見ながら炎佐は笑う

 

 

 

 

 

「そういやかつ姉、昨日いなかったけどどうしたの?」

 

修学旅行も終わり、帰りの支度をしていると竜司が葛城にそう聞く。ちなみに奈楽と神楽は今回の一件を報告するためにひと足先に護神の民の里に帰っていった。

 

「ん?なんでもねえよ」

 

窓の外を見ながら葛城は笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

「「魂の友に出会っただけだ」」

 

 

 

 

同時上映 京都大捜索〜絆の舞妓さぁん!!〜 完

 



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若獅子編
其の五十五 束の間の休日!!の巻


新章スタートです


 

「ふむ…やはり彼になりますか」

 

「実績を見ればもう決まったようなものでしょう」

 

「彼なら充分見合うと思いますよ」

 

善忍本部、そこでは神門や鉄心、朧、富嶽の最高幹部とその下にいる幹部が集まり会議をしていた。テーブルの上には複数の若い忍の写真がありその一番上に竜司の写真がありその写真を見ながら幹部集団は話し、それを見ながら神門と鉄心が頷く

 

「いや!!もう一度審議し直すべきだ!!」

 

しかし、幹部の1人がそれに反対しテーブルを叩いた。

 

「この忍学生は独断行動や命令違反ばかりをしている!!先の神楽の事件だってこいつが命令違反をしたせいであわや京都が壊滅する危険だってあったのだぞ!!」

 

「ですがそれは問題解決と京都での元凶討伐で不問に…」

 

「命令違反しているということ自体が問題なんだ!!忍として問題のある者にこの称号は相応しくない!!」

 

神門の言葉を遮るように幹部の男はピシャリと言う。

その言葉に一部の幹部は頷き賛同する。

 

 

 

 

 

 

 

「儂は良いと思うぞ」

 

その時、富嶽の一言にあたりが騒然とした。それは神門と鉄心も同様だった。まさかこの男が賛同するとは思っていなかったからだ。

 

「し、しかしこの男は何度も命令違反を…」

 

「それくらい勢いのある若者だという証拠だ、そういう若者こそこれからの忍の世を築くものとしてこの称号を与えるべきではないのかね?」

 

富嶽の言葉に先ほどまで反対していた者たちは黙り込んでしまった。

 

「あ、貴方様がそうおっしゃるのでしたら…」

 

反対を切り出した幹部もそう言って大人しく席に着いた。

 

「ふむ、では依存なしで良いな?」

 

周囲を見渡しそう聞いた富嶽は宣言した。

 

 

 

 

 

 

その宣言が、竜司のこれからに大きく影響を与えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、竜司はというと

 

「ふっ!!はっ!!」

 

半蔵学院の仲間たちと修行に明け暮れていた。

 

現在は飛鳥と組み手をしている。

 

「隙あり!!」

 

一瞬の隙をついて飛鳥が俺へと仕掛ける

 

「甘い!!」

 

「きゃあ!!」

 

しかしそれを見越して俺は回避し飛鳥の手を掴んで背負い投げをした。

 

「負けちゃった…やっぱりりゅーくん強いね」

 

「へへ、伊達に仮面ライダーやってないからね」

 

起きあがろうとする飛鳥の手を取ると彼女は少し恥ずかしそうに微笑む

 

「あ…ありがとうりゅーくん…//////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぐぐ…飛鳥さん…どさくさに紛れて…!!」

 

「斑鳩…だから落ち着けって…」

 

それを見ながら斑鳩は怒りの形相で2人を睨みつけてそれを葛城が宥めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、今日の訓練はここまで!!明日から土日で休みだか羽目を外すなよ」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

訓練が終わった俺が帰りの身支度を整えていると

 

「りゅーくん」

 

「竜司さん、少しよろしいでしょうか?」

 

飛鳥と斑鳩先輩が話しかけてきた。

 

「2人ともどうしたの?」

 

「明日の休日ってりゅーくん予定ある?」

 

「?ないけど…」

 

「でしたら明日3人でここに行ってみませんか?」

 

そう言って斑鳩先輩は俺に一枚のチラシを渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日

 

「…そろそろ2人が来る頃だな」

 

俺は2人を駅で待っていた。

   

 

 

 

 

 

 

「遊園地?」

 

昨日、俺は斑鳩先輩に渡されたチラシを見るとそれは新しく開園する遊園地のチラシだった。

 

「はい、今度新しく始まったのですがもしよかったら3人で行きませんか?」

 

「3人で?せっかくだからかつ姉たちも…」

 

「あー悪い竜司!!アタイはその日はお父さんとお母さんと食事に…」

 

「俺と雲雀は一緒に買い物に行くから無理だ」

 

「だから竜司くんたち3人で楽しんできて!!」

 

どうやらかつ姉たちは都合が合わない様だ。

ただなぜか3人とも額から冷や汗をかいていた。

 

「じゃ、じゃあそういうことなら…」

 

「はい!!決まりですね!!」

 

それの答えに2人は嬉しそうに喜んだ

 

 

 

 

「あの2人の邪魔なんてできねーよ…」

 

遠巻きに飛鳥たちを見ながら葛城は呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

「りゅーくんお待たせ〜」

 

「すみません、遅くなりました」

 

すると2人の声が聞こえそちらを向くと私服姿の2人がこちらに歩いてきていた。

 

「ごめんねりゅーくん、待ったでしょ?」

 

「ううん、俺も今来たところだから」

 

私服姿の2人はとても似合っており思わず見惚れてしまう

 

「りゅーくん?」

 

「どうしたんですか?」

 

「ああごめん!それじゃあ行こうか」

 

それは不思議そうに顔を覗き込む2人にそう言って一緒に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「始まったね斑鳩さん、じゃあ手筈通りに」

 

「竜司さんに全力で楽しんでもらいましょう」

 

歩いている竜司の背後で飛鳥と斑鳩は互いを見ながら頷いた。

 

 

 

 

 

それは前日に遡る

 

「りゅーくんを労う?」

 

「はい、良い案だと思うのですがどうでしょうか?」

 

斑鳩は飛鳥にそう話を持ちかけてきた。

 

「ここ最近、竜司さんはスカルの討伐や様々な事件で疲れてると思うんです。だからわたくし達で竜司さんを元気に出来れば良いと思ったのですが…」

 

「うん!!すごく良いと思うよ!!」

 

斑鳩の提案に飛鳥も賛同した。彼女も愛しい彼の体を気にかけていたので斑鳩の提案は共感できたのだ

 

「ふふ、わかってると思いますが…」

 

「抜け駆け禁止でしょ?」

 

「はい、ふふふ」

 

「えへへ」

 

手を取り合う2人の背後には巨大な蝦蟇と鳳凰が睨み合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ〜すごい混んでるな」

 

俺と飛鳥と斑鳩先輩は辿り着いたテーマパークの賑わいに驚いた。

 

チキューオージャランド

 

コーカサスオオカブトを思わせる城を中心に六つの王国をモチーフにしたエリアがある大型テーマパークである。開園から間もないが個性豊かなエリアと多彩なアトラクションが多くのファンを魅了し瞬く間に人気スポットとと化していた。

 

「ねえねえ、あの女の子たち可愛くない?」

 

「芸能人かなぁ…?」

 

ふを気づくと周りの人たちが飛鳥と斑鳩先輩に見惚れていた。たしかに2人は可愛いしスタイルも良いため見惚れるのは当然だろう

 

「あいつの連れかよ…!!」

 

「くそっ…なんであんな冴えないやつと…!!」

 

俺には怒りと嫉妬の眼差しが突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

「「……(ギロッ)!!」」

 

「ひいっ!?」

 

「な、なんだ…?急に寒気が…!!」

 

愛しの竜司を馬鹿にされた飛鳥と斑鳩はその男たちに殺気を放っていた。

 

 

 

 

 

「あいつら…大丈夫かなぁ」

 

そんな竜司たちを葛城たちが心配そうに見つめていた。

 

「お前ら、飛鳥と斑鳩がやばい空気になったら全力で止めるぞ」

 

「わかった」

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうして見てみるといろんなエリアがあるんですね」

 

そう言って斑鳩先輩が開いたマップを見てみると、未来都市の様なンコソパエリア、美しい四季折々の花が咲き誇るイシャバーナエリア、昔の日本を思わせる景色で様々なフードコーナーがあるトウフエリア、一面雪や氷に覆われたゴッカンエリア、地帝国を思わせるバクナラクエリア、そして中心に巨大な城が聳え立つシュゴッタムエリアがある。

 

「そうだなぁ…色々あるけどまずはどこから…」

 

「よぉ竜司」

 

すると、このテーマパークのマスコットと思われるモコモコの雪男が風船片手に声をかけてきていた。

 

「え?誰?」

 

「俺だよ俺」

 

雪男の口から顔を覗かせたのは炎佐だった。

 

「炎佐…お前何やってんだ?」

 

「バイトだバイト、抜忍は万年金欠なんだよ」

 

そう言う雪男炎佐の後ろを見ると遠くに他の炎佐紅蓮隊メンバーもバイトをしてるのが見えた。

しかし、炎佐の姿を見ると…

 

「炎佐がもふもふに…もふっもふふ、ふふふ……」

 

「うるせぇ笑うな!!わかってんだよ!!自分の姿がいかに滑稽なくらい!!だって着た時の焔たちの爆笑っぷり半端なかったんだからよ!!」

 

炎佐が着ている雪男は目が小さく頭頂部にはアホ毛が生えた可愛らしいフォルムをしておりいつもの炎佐を知っている俺は笑いを堪えるのに必死だった

 

「おいどうした炎佐、いったい何を…ぷっくくく…騒いで…ぷっ…あはははは!!やっぱりダメだ!!笑いが抑えきれない!!」

 

「だぁぁぁぁ!!だから笑うな焔ぁぁ!!」

 

騒ぎを聞いて炎佐紅蓮隊のみんなが集まってきたが炎佐の姿を見て焔は笑いを堪えようとしていた。

 

「じゃ…じゃあ…ぷくく…邪魔しちゃ悪いし…くく…俺たちはこれで失礼するよ」

 

「あ、待てお前ら!!」

 

取り込み中の炎佐を置いて俺たちは改めてその場を離れる。

 

「それじゃあ改めて」

 

「はい!!行きましょう!!」

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たち3人はそれから遊園地を全力で楽しんだ。

ンコソパエリアの最新の科学技術を駆使したアトラクション、イシャバーナエリアの美しい花や景色とアトラクションの調和、ゴッカンエリアではマスコットの雪男もっふんによる可愛らしい癒しを満喫し、トウフエリアでは新鮮な食材を使った絶品の料理をみんなで味わった。

バグナラクエリアでは見た目は怖いが優しいマスコットたちによるショーがとても面白かった。

 

 

 

 

 

「いや〜来てよかったな、すごい楽しいところだよここは」

 

「ご飯も美味しかったね!!」

 

「わたくしはあのもっふんがとても可愛らしくて好きでした」

 

色々なアトラクションを周った俺たちはベンチに座ってクレープを食べていた。様々なアトラクションに俺たちもつい興奮してしまいワクワクが止まらない

 

「それに…」

 

俺はふとあたりを見渡す。ここにいる人たちはみんな幸せそうな顔をしてる。笑顔に溢れて争いとは無縁な平和で幸せな日々を過ごしている。

 

「なんだか…嬉しいな」

 

この平穏を守るために戦える。みんなの笑顔を俺たちが守っている。そう思うと嬉しくて思わず笑顔になってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……!?」

 

その時、俺はある気配に気付いた…最近はなかったので忘れていたが間違いない…!!

 

「飛鳥、斑鳩先輩、ちょっとここを離れます」

 

そう言うと俺はすぐさま歩き出した。

 

 

 

 

 

 

みんな楽しそう

 

あたりにいる人たちみんなが笑顔に包まれてる

 

幸せそうな顔してる

 

この笑顔を壊したいな

 

恐怖に染めたいな

 

そんなみんなを斬り刻みたいな

 

美しい血(色)に染めたいな

 

 

 

「あは、あはは」

 

ケルベロススカルこと朱音は邪悪な笑みを浮かべながら一つの人だかりに目をつける。そしてスカルドライバーを腰に装着してケルベロスキーを起動しようとした。

 

「あれ?」

 

しかしその瞬間、あたりが歪み先ほどまでいた人だかりがどこにもいなくなってる。

 

「人は?あれ?ここって…」

 

「忍結界だよ」

 

朱音が気づくと険しい顔の竜司が目の前に立ちはだかっていた。

 

「ここには俺たち以外誰もいない、女性も、子供もお年寄りも、アンタが傷つける様な人は誰もいない」

 

「あはっ❤︎竜司くん、来てくれたんだ♪」

 

『ケルベロス!!』

 

『アーミーアント!!』

 

朱音はスカルドライバーを装着してケルベロスキーを起動、鍵穴に挿しこみ回してケルベロススカルへと変身しアーミーアントスカルを召喚した。

 

「あはは❤︎楽しそうにしてる奴らを斬り刻みにきただけなのに竜司くんが出てきてくれるなんて…私ってなんて幸せなの!?あなたをうんと刻みたい!!血(色)で染めたい!!殺したい!!あは❤︎あはははははははっ!!」

 

「させねえよ」

 

体が震える

 

でもこれは初めてこいつと戦った時の恐怖じゃない

 

怒りだ

 

あの笑顔を

 

平和な日常を

 

壊そうとするこいつへの怒りだ

 

「お前なんかに壊させない」

 

そんなこと

 

「絶対にさせない!!」

 

 

 

「りゅーくん!!」

 

「竜司さん!!」

 

そこへ飛鳥と斑鳩先輩が駆けつけてきた。

 

「2人とも…」

 

「私たちも手伝うよ!!」

 

「わたくしたちも…ここの人たちを守ります!!」

 

2人のまっすぐな目に俺は嬉しくなった。

 

「アタイらもいるぜ!!」

 

さらに突然かつ姉たちも現れてアーミーアントスカルに立ちはだかる

 

「飛鳥!!斑鳩!!竜司のサポートは任せたぞ!!」

 

「こいつらは俺たちに任せろ」

 

「だから竜司くんたちはスカルを倒して!!」

 

 

 

そうだ

 

俺は1人じゃ無い

 

俺には…

 

「俺には…信じられる仲間がいる!!」

 

『超絶ティラノ!!』

 

俺はワイルドギアをドライバーに装着し超絶ティラノキーを起動して鍵穴に挿し込む。

 

『ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!ガルルルルルグオーン!!ライドオン!!』

 

「変身!!」

 

『武装!!ワイルド!!一心一体最強バディ!!超絶!!超絶!!超絶にスゲー!!ダ・イ・ナ・ソー忍・者!!ワイルド!!』

 

超絶キーを回して仮面ライダーリューマ超絶へと変身した。

 

「飛鳥…斑鳩先輩、力を貸してくれ!!」

 

「うん!!」

 

「任せてください!!」

 

俺の言葉に2人は嬉しそうに笑い武器を構えた

 

「なにそれ?私は竜司くんを切り刻みたいの、あんたたちみたいな雑魚が…邪魔すんなァァァ!!」

 

ケルベロススカルは苛立ちながら両手の鋭い爪で俺たちに襲いかかる。しかしその爪を飛鳥と斑鳩先輩が容易くガードする。

 

「なっ!?」

 

「はぁっ!!」

 

驚いて動きの止まったケルベロススカルへ俺はワイルドブラスター・バスターモードで斬りつける。

 

「くそっ!!このぉっ!!」

 

ケルベロススカルは痛みに耐えながら今度はスピードで撹乱しようとする。

 

「遅いです!!」

 

しかし斑鳩先輩が素早い動きでケルベロススカルに追いつきその動きを止める。そこへすかさず俺と飛鳥が斬りつけて畳み掛ける

 

俺たちの連携攻撃はケルベロススカルに確実にダメージを与えていった。

 

「なんで!?どうして!?竜司くんはまだしも…こんな忍なんかに私が…!!」

 

「私たちはずっと修行を続けてきたの!!りゅーくんに守られるんじゃない…りゅーくんの力になれる様に!!」

 

「わたくしたちは常に前へと進み続けてるんです!!」

 

「貴方みたいに人を傷つける事にしか力を使わない奴なんかに…」

 

「わたくしたちは…」

 

「「絶対に負けない!!」」

 

 

 

 

 

 

「体が軽い…」

 

2人のサポートのおかげで思う様に動ける。

ケルベロススカルの攻撃を2人が防いで俺が動きやすく的確なサポートをしてくれる。

 

「これが信頼できる仲間との…絆が可能にする力だ!!」

 

『必殺の術!!超絶!!』

 

「斑鳩さん!!」

 

「はい!!」

 

俺がカグラドライバーを叩くと2人も秘伝動物を呼び出す。俺の巨大なティラノサウルスと飛鳥の蝦蟇、斑鳩先輩の鳳凰が現れて俺たちの力が一つになる。

 

「「「合体超絶必殺忍法!!激烈忍巴斬り!!」」」

 

「このぉ!!ふざけんなぁ!!」

 

ケルベロススカルは激昂しながら両手の爪から斬撃を放つ。俺たちの巨大な斬撃とケルベロススカルの斬撃がぶつかり合うが俺たちの斬撃が勝りケルベロススカルへと炸裂しケルベロススカルは吹き飛んで変身を解除した。

 

「ぐっ…ふざけんなぁ!!こんな…こんなの私が望んだ戦いじゃない!!こんなのちっとも楽しくない!!こんな…こんなのぉ!!」

 

感情を爆発させて叫ぶ朱音だがそこへ黒い蛇が現れ朱音を縛りつける。

そこへメドゥーサスカルがため息を吐きながら現れた。

 

「まったく、最近おとなしくなったと思ったらこれだ…あまり調子に乗るな」

 

「はなせぇ!!殺す!!あいつら殺す!!許さない許さない許さない!!」

 

朱音は怒り狂いながら抵抗するが拘束を振り解けずにいた。

 

「…いずれ貴様らとは決着をつける。」

 

メドゥーサスカルはこちらを一瞥すると黒いゲートを生み出して暴れる朱音を連れて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

ケルベロススカルを撃退した俺たちは忍結界を解き遊園地で遊ぶ人々を俺たちは見ていた。

 

「あいつら…いなくなったな」

 

「うん」

 

「俺、守れたんだな…ここの人たちを」

 

「守れましたよ、竜司さん」

 

俺の言葉に頷く2人の言葉に俺は

 

「…よかった」

 

心の底からそう呟いた。

 

この当たり前の日常を

 

平和な日々を送る人々を

 

俺たちで守ることができた

 

それがとてもうれしい

 

「やったな竜司」

 

そこへかつ姉たちもやってきた。

しかし…

 

「そういやかつ姉たちもこっちに来てたんだ」

 

「あ、ははは…まぁな」

 

かつ姉は冷や汗かいて目を逸らしながら誤魔化す様にそう言った。

 

「竜司!!さっきの忍結界って…」

 

そこへもっふんの着ぐるみを着た炎佐が焦った様子で駆けつけた。

 

「ぷっ…あはははははは!!ダメだ!!やっぱり面白すぎる!!」

 

「だぁぁぁぁ笑うなぁぁぁぁぁ!!」

 

「「「「…………っ!!」」」」

 

炎佐の姿を見て飛鳥たちも笑いを堪える。

しかしかつ姉はそんな炎佐に優しく微笑む

 

「安心しろ炎佐、たとえどんな格好をしてても、お前はアタイの魂の友だ」

 

「葛城…!!」

 

「炎佐…!!」

 

『エレメントマシマシ!!キズナカタメ!!』

 

もっふん姿の炎佐と葛城は固く手を握りしめた

どこからか謎の声が聞こえた

 

 

「あの2人いつの間に仲良くなったんだ」

 

そんな2人に俺はポカンとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜楽しかった、今度はみんなで行こうよ」

 

「良いですね、きっと楽しいですよ」

 

「うんうん!!」

 

遊園地を全力で楽しんだ俺たちはお土産を手に帰路に着いていた。

そこへ煙玉が立ち込め霧夜先生が現れる

 

「竜司!!大変な事になった!!」

 

「どうしたんですか先生!!」

 

慌てた様子の霧夜先生に俺たちに緊張が走る

 

 

 

 

 

 

 

「竜司、お前に『若獅子』の称号が授与される事になった!!」

 

「俺が…『若獅子』…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってなんですか?」

 

その言葉に霧夜先生はズッコケた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時俺はわかっていなかった

 

 

 

 

 

 

 

その称号を得ることの意味を

 

 

 

 

 

 

 

善忍の世界に存在する争いを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新章『若獅子編』開幕




お待たせしました!!
新章スタートです!!

ほとんど完全オリジナルなのでこれから更新がさらに遅れるかもですがお許しを…


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