ヨクバリスの王に俺はなる! (社畜のきなこ餅)
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むしろ最強を目指し始めるヨクバリス

思いついた以上は書かねばなるない、そう思い筆を執りました。
年始のリハビリ込みの一品です。

ふと、こっちのがおもしれーなと思うところあり設定変更。
ユウリ(主人公)とホップの旅立ち3年前ではなく、ダンデがチャンピオンになる前の時代に転生してきた事になりました。


 

 

 

 爽やかに吹き抜けていく風にたなびく小麦畑。

 空を舞う、丸く目付きの悪いように見えるけどもよく見ると円らな瞳が愛らしい小鳥。

 なんかすり寄ってくる、たまにイヌヌワンとか鳴く不思議なコーギーっぽい毛並みの犬。

 

 そんな感じの風景が、目覚めた俺の目の前に広がっていたのがこの世界における、俺の原風景だ。

 超スピード転生トラックとか神様転生とか、そんなもんじゃない。もっと恐ろしい何かを感じたぜ……!

 

 

『どないせっちゅうねん』

 

 

 俺は確か久しぶりに引っ張り出した、世界中の子供と大人に愛されているポケットなモンスターの南国編をやってて……確かそのまま寝落ちした筈なのに。

 目覚めてみればこの有様だ、ついでに口を突いて出た言葉は耳には鳴き声のような何かに聞こえるも、確かな言語として変換されて俺の脳へと届いている。

 

 思わず、ジっとわが手を見る。なんかフサフサだった、

 ついでに妙に高い茂みに周囲を囲われているのだが、かき分けて進んで漸く気付いたのだが視点が妙に低い。

 

 

「あっ、ホシガリスだ」

 

「何だか背中に妙に哀愁が漂ってるな」

 

 

 俺の姿を見たらしい、ゆるふわロングヘアな茶髪のロリと色黒肌のショタがそんな事を話している。

 誰が欲しがりさんじゃい、どこぞの地面に潜るヤツと違って角砂糖三つとか要求しない、どうせなら全部要求するわい。

 

 まぁそんな事はどうだっていい、なんだか妙に腹が空いてきた。

 いつもの俺ならがっつりとカツな丼とか素敵なステーキを食いたくなるぐらいの腹ペコ具合だが、何でか知らんがあんまり肉を食したいとは思わない。

 どうしたものかと短くなった腕を組み、視線を巡らせば茂みの向こうに色とりどりの木の実が成っている木を発見、即座にしゅばっと近付いて木へと登る。

 

 何だか妙に木登りがしやすい、というかもう明らかに人類的なホモォサピエンスボディではないなコレ! あ、この木の実すっぱあめぇ、うめえうめえ。

 とにかく一心不乱に木の実を貪る、そんでもって眼下を見下ろせばイヌヌワンとか鳴くコーギーっぽいのや、変わった尻尾の形をした狐が物欲しそうに見上げてきた。

 

 

『ちょっと、アタシ達にも分けてくれていいんじゃない?』

 

『ヌワン!』

 

 

 狐っぽいヤツの鳴き声が、意志となって俺の脳へと届く。

 コーギーっぽいのは相変わらず良くわからんが、自分も欲しいと言ってるようなので適当にもぎ取った木の実を眼下の二匹へと投げ渡す、前に。

 

 

『いいけど、ちょーっと色々教えてもらっていいか?』

 

『何よ?』

 

『ヌイワン?』

 

 

 木の実を手に持ってチラつかせつつ情報収集、この狐っぽいの尻尾がそわそわしてて中々に可愛いな。

 後コーギーっぽいの、舌を垂らして首を傾げてるのが絶妙にアホ犬っぽい。

 

 

『気が付いたらここに居たんだけど、ここってどこよ?』

 

『何言ってるかよくわかんないけどさ、人間達は一番道路って言ってるわよ』

 

『イヌヌヌヌワン!!』

 

 

 はぇー、なるほどなー。聞いたことのない街の名前だし、知らん地方のスタート地点辺りにいるらしい。

 手の中にあるのがオボンの実である事を加味しても、どうやらポケットなモンスターの世界にきてしまったようだ。

 

 

「全部違う鳴き声だけど、アレ意思疎通出来てるのか?」

 

「お婆様から聞いたんだけど、ポケモンって鳴き声が全く違う鳴き声を使う異種族同士でも意思疎通できるそうよ」

 

 

 ロリがショタに色々と解説してる、科学の力ってすげーおじさんも、このロリを見習ってもっと有益な情報を教えてほしいものである。

 まぁなんであれだ、情報を貰った以上眼下の二匹に木の実を幾つか投げ落とすと、俺は天才的な閃きを脳に走らせると共に樹から飛び降りた。

 

 俺が何故ここにいるのか、なんでポケモンになっているのかは解らない。

 だがしかし、愛してやまない作品世界へとやって来たのならやる事はただ一つ、ソレは……。

 

 

『俺は、最強へと至って見せる……!!』

 

『何かアホな事言ってるわね』

 

『男は何時かかかる病気みたいなものだね!』

 

 

 お前喋れたんかーーーーい!!

 

 

 

 

 

 そんな、こんなで。

 

 

 

 

 

 

 俺が一番道路で決意してから早十数年近く、なんやかんやあった末に俺はワイルドエリアと人間達が称しているエリアにねぐらを構えていた。

 かつてに比べ俺の体は大きく成長しており、人間から呼ばれた名称の様子からホシガリスと言う種族から、ヨクバリスという種族へと進化したようだ。

 

 最強を貪欲に求める俺に相応しい名前だな!!

 

 

『ぱぱー、おなかすいたー』

 

『パパ―、抱っこ―』

 

『はいはい少し待ってろよ』

 

 

 なお現在ベビーシッター中である。

 たまーーーにだけど、卵を孵化させてそのまま適当な所に貧弱なポケモンを野に放つトレーナーがいるのだが、放っておけなくて見つけるたびに保護してたらこの有様である。

 命を預かると言うのは責任重大だが、十年前近くからやっており何匹も巣立ちさせてきたこの圧倒的ファーザー力を見せつけてくれよう。

 

 

『ほーら、きのみジュースだぞー。ヨーギラスはまた重たくなったなー』

 

 

 お腹減ったーと、地団駄踏んでたゴンべにきのみジュースを渡し、抱っこをせがむヨーギラスを軽々と持ち上げ。

 俺の自慢なふかふか尻尾でお手玉をするかのように、ぽんぽんとはねさせてあやしてやるのだ。

 

 種族は違えども子供は大事よ、トレーナーにも事情があるから悪質な連中以外は天誅を下したりはしてないけどな。

 そうやって子供をあやしていた俺なのだが……。

 

 

「きゃーーーーー!?たーすけてーーーーーーー!?」

 

『もうやだー!おうちかえるーーー!!』

 

 

 少し遠くから、哀れな子供の助けを呼ぶ声が聞こえてきたので、あやしてたヨーギラスを巣立ち後もよく顔を出してくれるドラパルトに任せ。

 ねぐらである木の天辺へ登り声のした方へ目を凝らせば、そこにはキテルグマの群れに追われるトレーナーとまだ経験の浅そうなメッソンの姿が見える。

 

 

『今往くぞ、とう!』

 

 

 中々に逼迫した状況に、この前キャタピーを助けたお礼にもらった糸をより合わせ加工し作った粗末な風呂敷を拡げながら、ムササビが如きスタイルで滑空。

 そのままの勢いで、今にもトレーナーを捕獲せんと腕を広げていた先頭のキテルグマの脳天にボディプレスをお見舞いし、双方の間にシュタっと着地。うーん今日も決まってる。

 

 

『ちょっとー、邪魔しないでよー』

 

『そうよそうよ!』

 

『引っ込んでなさいよこの不細工!』

 

 

 そして一斉に上がるキテルグマーsのブーイング、俺への効果は抜群だ!

 ぶ、ぶぶぶぶ、不細工ちゃうわ!ちょっと味のある顔に恰幅に溢れる俺のナイスバディに対して何てこと言いやがる!

 

 

『やかましい!お前らいつも性懲りもなくトレーナー追いかけ回しやがって、この前おっかないジムリーダーにまとめてしばかれてただろうが!』

 

『そんなのこっちの台詞よ!アンタだって人間に追っかけ回されてる癖に!』

 

『そーよそーよ!』

 

 

 キテルグマ―sに怒鳴り散らせば返ってくるのは売り言葉に買い言葉。

 お、俺がトレーナーに追い掛け回されるのは、なんか変に目立ってるらしいから物珍しさで追いかけ回されてるだけで害悪ではないので実質セーフ。

 いやうん、一時期木の実を欲しがるトレーナーを蹴散らしまくって、地獄の逃亡生活繰り広げた事あったりもするけどソレは心の棚に仕舞っておく。

 

 

『ほれお嬢ちゃん達、危ないからとっとと逃げな』

 

「あ、ありがとうヨクバリス!」

 

『ありがとうおじちゃん!』

 

 

 お、おじちゃ…………ま、まぁいい!!

 このすっとこ着ぐるみ熊ども、かかってこいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーーん……」

 

「どうしたユウリ? そんなに唸って」

 

「あ、ホップ? うん、ちょっとワイルドエリアでキテルグマに追いかけられちゃって……」

 

「それは災難だったぞ、メッソンが妙に怯えてるのもそのせいだな!」

 

「うん、でもね。何だか凄い強そうなヨクバリスに助けてもらったんだけど、ホップ何か知ってる?」

 

「おう知ってるぞ、ワイルドエリアの主だな! 兄貴がチャンピオンになる前から生きてる猛者らしいぞ!」

 

「へぇ…………うん、あの子、欲しいな」

 

「? 何か言ったか?」

 

「んーん、なーにもー」

 

 




なんでもこのヨクバリス、まだ幼いポケや孵化直後に逃がされたポケモンを養育したり、面倒みたりしてるらしいよ。
そんでもって、巣立ちしたけど時々返ってくるドラパルトはドラパルト(♀)ちゃんらしいよ。


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リスの屑作戦

メインで書いてる方が難産したので、ノリと勢いで書けるヨクバリスを更新します。
今更だけど、過去に捏造設定ありです。


 

 

 ワイルドエリアの木の実を成らせる木が幾つも立ち並ぶエリア。

 別名というか俺命名、ヨクバリスの楽園であり俺が居を構えている巣の近くで、今日もまた俺は褐色肌で紫色の髪をした短パンショタに絡まれていた。

 

 

「見つけたぞヨクバリス!今度こそ捕まえてやるからな!」

 

『腕は良し、だが俺を捕えるには君はまだ、未熟!』

 

 

 紫ショタが繰り出してきたリザードが、唸り声を上げながら俺を睨みつけてくる。

 コヤツにとって俺は、主人であるダンデに幾度も苦渋を味合わせた上に自身を何度も痛めつけた存在だからな、そりゃ不倶戴天の怨敵にもなるって話だ。

 

 

「いけリザード!『きりさく』だ!」

 

『なるほど思い切りが良い、だが目の良さが命取りだ!』

 

 

 我が急所を的確に捉えんとするリザードの攻撃を、敢えて前に出る事で当たり所を調整しながら受け止める。

 どこを狙うのか、その目が如実に語っていたぞルーキー!

 

 くっそ痛いのは確かだが、中々にタフなこのボディ。早々当たり負けはせん! だけどカイリキーの『かわらわり』は勘弁な!

 

 

『お返しだ!』

 

『ぐわぁぁぁぁぁ?!』

 

「くっ、さすが新たなワイルドエリアの主だな!」

 

 

 ほぼ密着状態となった俺とリザード、そこから短い脚を踏み込みながら相手の脇腹めがけ、猛烈な『カウンター』を叩きつける。

 結果、リザードはくの字に折れ曲がりながら吹き飛び、戦闘不能寸前にまで痛めつけられている。

 

 

『お前に俺は倒せん、何故なら俺は……義によって立っているからな!』

 

『な、何を……?!』

 

 

 太々しく短い腕を組み、ニヤリと笑ってリザードへ語り掛ける。義とかそんなんは特になくノリと勢いによる発言であった。

 だがリザードの視線は俺の背後へと向けられている、あ、そういえば最近拾ってきた。双子のドラメシヤを逃がすのが間に合ってなかったか。

 

 その結果リザードは戦意喪失したのか、膝をついて項垂れた。なんかゴメン。

 

 

「無理させてごめんな、相棒……だけどヨクバリス!俺は何度だってお前に挑戦してみせるぜ!」

 

 

 何故なら俺は、チャンピオンになる男だからな!とカッコイイポーズを決めた紫ショタは、リザードをモンスターボールに戻すと自転車に跨り颯爽と駆け抜けていった。

 いやぁ、熱血青春してるなぁ少年。頑張れよ応援してるぞ。俺は手伝う気ないけど。

 

 願わくば俺の勧誘諦めて素直に、安定した方向で戦力拡充してくれ。

 なんて思ってたら、また翌日も来やがったよ畜生。

 

 

「行け!リザード! 『こわいかお』だ!」

 

『なるほど、機動力を封じる目算か……だが元々俺は鈍足!故に効果はないと思え!』

 

 

 思った以上に怖い顔をしてきたリザードの眼光と顔面にびびり、若干膝をガクガク言わせつつ空へと飛びあがり。

 リザードの頭上から『のしかかり』を炸裂させる、炸裂する瞬間リザードがそんなのありかよって顔してたのが若干申し訳ない。

 

 

「すまんリザード!俺の勉強不足だった!」

 

『最近ここらは物騒だから、気を付けて帰れよー』

 

 

 目をぐるぐる回しダウンしたリザードをモンスターボールに戻し、ポケモンに謝罪しながら自転車をこいでく紫ショタを手を振って見送る。

 はてさて、子供達の為に木の実集めてこねーとなー。

 

 なんかこう、チラホラと変な恰好した戦闘員じみた連中がうろついてるんだよな、目的はさっぱりわからんし理解する気もないが気味が悪くてしょうがない。

 

 

「居たぞ!ヨクバリスだ!」

 

「捕まえれば俺達も出世間違いなしだぜ!」

 

 

 言ってる側からこのざまだよ!

 何おまえら、ロケット団リスペクトなのその恰好?!

 

 

『だらっしゃぁぁぁぁ!』

 

『『ぬわーーーー!?』』

 

 

 襲い掛かって来た戦闘員チックな連中が同時に繰り出してきた、マッスグマとレパルダスを『ばかぢから』でまとめて跳ね飛ばす。

 コレ使った後は力が抜ける感覚がしてあまり好きじゃないが、この手の連中相手にはこの手に限るからしょうがない。

 

 まぁ、本来はコレ単体相手に使うべきなのを無理やり複数に北の大地の紅いサイクロンよろしく、ぐるぐる回ってラリアット気味に尻尾叩きつけてるから威力減衰してるんだけどな!

 

 

「くっ、やはり一筋縄ではいかんか!」

 

「撤退するぞ!」

 

 

 なんでお前らポケモン一匹だけなんだよ、もっと用意してから来いよ。いや来られると困るの俺だけど。

 まったく、木の実を集めないといかんというのに……。

 

 

「いたぞ!あのヨクバリスだ!」

 

「捕まえたらジムチャレンジも楽になるぞー!」

 

 

 あーーーーもう!お前らバラバラに来るんじゃないよ!いっそまとめて列になってこい!転がって轢き潰してやるから!!

 

 

 

 

 

 

 

『むにゃ、いかん、寝てたか』

 

 

 寝返りを打った勢いで木から落ち、ぼよよんと地面ではねたところで目が覚めた。

 もうアレから十年かそこらは経ったか、いやぁ時が過ぎるのは早いもんだ。

 

 

『お父様、いい加減細い木の枝の上で寝るのはおやめください』

 

『大丈夫大丈夫、ほれこの通り無傷だからな』

 

 

 まったくもう、と溜息を吐くのは巣立った後も度々様子を見に来るドラパルトの女の子である。

 そう言えばこの娘の兄にあたる子は、色々あった末に紫ショタについていくことを選んだんだよな。

 

 

『お前の兄さんは元気にしてると良いんだけどなぁ』

 

『この前様子を見に行ったら元気にしてましたよ、お父様に会いたがってましたわ』

 

『そうかそうか、なんなら今度俺が会いに行くのも良いかもなぁ、アイツが驚く顔が見れそうだ』

 

 

 あの後も宣言通り紫ショタ……現在のチャンピオンは何度も俺に挑んでは負け、再起し戦略を練り鍛え直しては挑むと言うのを繰り返してきた。

 ただ、ある日……アイツが挑んでくる前に、その中で悪質なトレーナーが隠れようとしてたこの娘の兄の、当時ドラメシヤだった子を人質ならぬポケ質にして俺を従えようとしてきた事件があったのだが。

 

 なんとそこでアイツが颯爽とトレーナーに勝負を挑み、見事に叩きのめした上にドラメシヤを救出してくれたのだ。

 いやぁ、アイツは間違いなく強くなるなうん、なんて当時は訳知り顔で頷いたものだが本当にチャンピオンになったって聞いた時はたまげたわ。

 

 

『お父様、その前にお客様ですわ』

 

『んー? おー、アイツから来たか、チャンピオンってのにフットワーク軽いなアイツも』

 

 

 かつての紫ショタ、そして現チャンピオンが力強い足取りで、俺の巣に近付いてくるのをドラパルトの言葉で気付く。

 その顔にはチャンピオンとしてというより、ぎらついた挑戦者じみた獰猛な笑みを浮かべていた。

 

 そう言えば、アイツと最後に戦ったのはいつだっけか?

 

 

『ああそうだ、ナントカ団を一緒に叩き潰した後、やつらのアジトの前で決着を着けたっきりだったな』

 

『あの時はお父様も闘いの後気を失ったのですから、生きた心地がしませんでしたわ』

 

 

 無理しないで下さいましね?などと念押ししてくる娘分に手をヒラヒラ振って善処すると伝え。

 俺もまた、のっしのっしと短い脚で大地を踏みしめながらチャンピオン……ダンデの前へと躍り出る。

 

 ナントカ団を潰すべく共闘した理由?

 なんか思い出すのもアホらしい理由で、俺が保護してた子供達を攫ったから怒りの鉄槌を下しただけさ。

 

 

「久しぶりだなヨクバリス、ちょっとばかり手合わせ願うぜ」

 

『今度こそ、勝つ!』

 

『主従揃って良いツラしてんなぁ、お前ら』

 

 

 スタイリッシュにダンデがボールを投げ、中から現れたのは彼奴の相棒であるリザードン。

 その目には闘志がぎらついており、尻尾の炎もまた決意を示しているのか激しく燃え上がっている。

 

 まぁ、俺自身もこいつらとのバトルはそこらへんのトレーナーやポケモン相手にするのと違って、心が激しく燃え上がるから嫌いじゃないしな。

 いいぜ…………かかってこいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 




ダンデさんって、絶対前作主人公的な立ち位置で何か悪さした団を叩き潰してると思うんだ。


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思春期が勝手に死んだリスの翼

木の実を取る為に揺らしてたら落ちてくるヨクバリス並みの勢いでネタが降って来たので更新です。
ちょっと暗いネタと、死展開注意です。


 

 

 唐突だが野生のポケモンの食生活について語りたいと思う。

 当たり前だが彼らは生き物で、一部の有機生命体とは思えない種族を除けば総じて生きる為に糧を必要としている。

 そしてその食性は千差万別で、当然中には肉食という食性から他のポケモンを捕食するポケモンも存在する。

 

 カッコつけてあいつらの父親代わりを気取っている俺だが、守れなかった子供もいるし巣立った子が別のポケモンの糧となっていた事もザラだ。

 それはとても悲しい事だし辛い事だ、しかし糧として狩った彼らもまた生きる為に必要な行為なのだ。

 

 だから俺は、悲しみ涙を流しはすれども子供を狩ったポケモンを憎む事はない。

 だが同時に、糧となり命を落とした子供達を忘れる気もない。

 

 それが、俺が子供達に出来る唯一の手向けなのだから。

 

 

『よっと……全くお前は骨になっても相変わらず大きいなぁ』

 

 

 日課の見回りついでに見つけてしまった、数年前に巣立った子供の一人であるウインディの骨。

 傍にはその亡骸よりも少し小さなウインディの骨と、ガーディのものと思われる骨も転がっていた。

 

 

『なんで骨になったのに分かったかって? ははは、育てた子供の臭いは骨になってたとしても忘れるモノかよ』

 

 

 風呂敷にウインディと嫁さん、そして二匹の子供の骨を風呂敷へと大切に包み。

 よっこいせ、などと掛け声をかけながら大きく膨らんだ風呂敷を背中に背負う。

 

 

『よく頑張ったな、牙まで砕けるほどに戦って。お前は最後まで家族を守ろうとしたんだな』

 

 

 視界を滲ませながら、背中に背負う子供とその家族へ語り掛けて我が家へ向けて歩を進める。

 コレが初めてではない、何度も繰り返し経験してきた事だ。

 だけども、何時まで経っても慣れないから……困るな。

 

 

『最近は見に行ってなかったけどな、お前が嫁さんにプロポーズした姿はこっそり見てたし、子供と遊んでる姿も見守ってたんだぜ?』

 

 

 返ってくる事のない独り言を続けながら、張り裂けそうな痛みを訴えてくる胸を押し殺して歩みを進める。

 こいつは、そう。ボール遊びがとにかく大好きで木で寝てる俺を叩き起こしては、早朝からボール遊びをせがむやんちゃ坊主だった。

 野生のウインディに一目惚れし、独り立ちして所帯を持ちたいと懇願してきたから、コイツの為にストーンサークルのある場所まで炎の石を拾いに行ったのも、今となっては良い思い出だ。

 

 

『今はただ、ゆっくりと家族団欒しながら休みな。俺もその内そっちに行くからよ』

 

 

 話している間に我が家に到着してしまう。

 俺は我が家から少し離れた広い空き地に風呂敷を下ろすと、あちこちに盛り上がった土から木の芽が出ている地の、土が盛り上がっていない場所の土を掘る。

 ああくそ、涙が止まらねぇ。こんなんじゃアイツもその家族もゆっくり休めねぇってのに。

 

 俺は短い手で目元を擦り涙を拭うと、一心不乱に子供達一家が入れるほどの穴を掘り終え、その中に風呂敷から取り出した骨を手で一本ずつ入れていく。

 そして、日が暮れるころには子供達一家の骨の埋葬を終え、俺は土をかけ直し土の小山を作ると……アイツが好きだった木の実をその小山へ植える。

 

 

『またいずれ、そっちで会おうな。その時はお前が嫌だって言っても徹底的にボール遊びしてやるからよ』

 

 

 眠りについたアイツが心配がらないよう、今しばらくの別れの言葉を告げる。

 そして、空き地から立ち去ろうとした時、ふと背後から懐かしい声が聞こえた。

 

 思わず振り向いて見れば、そこには威風堂々とした佇まいのアイツに……寄り添うように傍に立つアイツの嫁さんと、足元でお座りしているアイツの子供がいた。

 ああ、全くお前もかよ……全く俺の子供達ときたらどいつもこいつも、そんな心配そうにしなくても俺は大丈夫だからよ。

 

 そう、口に出す事なくいつもの笑みを浮かべてやると、満足したように一声アイツは鳴くと。

 家族達と共に光の粒となって消え、天へと還っていった。

 

 

『さて、時間が結構過ぎちまったな。子供達が腹を空かしてるだろうから準備してやらねぇと』

 

 

 足早に我が家である木の下へ急ぐ。

 そして、そこには信じられない光景が広がっていた。

 

 

「やぁやぁヨクバリスくん、お邪魔しているよ?」

 

「全くこのヨクバリスときたら、委員長を待たせるなんて言語道断ですよ」

 

 

 この地方の顔役とも言える小太り気味の髭のおっさんことローズと、その秘書というより付き人なオリーヴがいた。

 清々しいまでのレジャースタイルで、大鍋でカレーを作りながら。

 

 いや何やってんだよアンタ。

 

 

「ちょっと野暮用があって近くまで来たからね、そしたらポケモン達がお腹減らしてたからカレーを作らせてもらったよ」

 

「ああ食材なら御安心を、こちらで用意しましたからそちらの備蓄には手を付けていませんよ」

 

 

 違うそうじゃない。

 若かりしダンデとナントカ団をぶちのめした時に、影に日向にフォローしてくれた恩人でもあるからこう無理やり追い返すのにも難儀する。

 だけどもこう、このおっさん達何かやらかしそうなんだよなぁ、いや俺の勝手な予測だけど。

 

 それにこのおっさん達、隙あらば自分達に俺の事勧誘してくるから若干苦手なんだよな、いや嫌いじゃないし悪い人間でもないんだけどもさ!

 

 

「ほら、君の分も用意したよ。特盛を超えた特盛だ……悲しい時は美味しいモノを食べるに限るよ?」

 

「ローズ委員長手ずから配膳されるなんて、うらやま……けしからんヨクバリスですね、貴方は」

 

 

 次々と周囲で目を輝かせて待ってるポケモン達にローズ達はカレーを振る舞い、俺にも山としか思えないぐらい大盛にされたカレー皿を差し出してくる。

 ああくそいい匂いがするなぁ、そして美味いなぁ、アイツにも食わせてやりたかったなぁ。

 くそ、ちくしょう、だけどスパイスきき過ぎて目にしみるぞちくしょう、気のせいかしょっぱいしやっぱスパイス入れすぎだろコレ。

 

 もんくを言おうにも、つらい時はつらいっていいなよとかいみしんなこと言いやがって、へんに気をきかせてはなれてんじゃねぇよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「委員長、スケジュールが詰まっているのにお戯れが過ぎます」

 

「まぁそう言わなくてもいいじゃない、彼には今しばらくこのワイルドエリアの秩序を守ってもらわないといけないからね」

 

「それは理解できますが……しかし、あのヨクバリスは本当に不思議なポケモンです、まるで人間のように振る舞っています」

 

「んーー、どうだろう、私はむしろ人間がポケモンのフリをしているように感じたけどね」

 

「それは、どのような意味でしょうか?」

 

「まぁ大した事じゃないさ、それよりも次の目的地へ行こうか……やるべきことはすぐしないといけないからね」

 

 




ちなみにローズさん的には、このヨクバリスは愛国者ならぬ。愛ガラル者認定されてる模様。
まぁ頼んでもないのにワイルドエリアで救助活動したり、ポケモン保護してたり……若ダンデと一緒に悪の組織に殴りこんでたらそう見られるよね。


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嵐の中じゃ輝けない

お久しぶりです、創作意欲が壊滅したりしてたのですが……何となく意欲が戻って来たのでヨクバリスを書きました。
なお作者は、未だにDLCを買っておりませぬ。

ちょっと今回ヨクバリスさんチート臭いかもしれない。


 

 

 今日も今日とて平和だったり平和じゃなかったり、よく見ると平和かもしれないけどやっぱり平和じゃないワイルドエリア。

 そんな愛すべき我がテリトリーにて、俺は新顔のウールーに特訓をつけていた。

 

 

『また注意が逸れているぞ! 相手の攻撃の打点を見極めてダメージを散らす事を忘れるな!』

 

『は、はい!!』

 

 

 俺と相対しているのはまだ年若いウールー、それも訳ありな事情で俺に弟子入りみたいな事をしているポケモンだ。

 経緯を説明すると長くなるのだが……まぁ簡潔に言うなれば。

 

 ワイルドエリアの隅っこで、ダンデによく似たショタがウールーを抱き抱えて二人そろってメソメソ泣いてたのを見つけたのが切っ掛けだったりする。

 そんな事をしている理由を聞きだすのにもまた難儀をしたものだが、なんでも大事な兄を侮辱してきた相手に手も足も出なかった事がショックだったらしい。

 

 正直このショタ、兄貴の事大好きすぎるだろうと内心引いたのは内緒であるが、それでも放っておけないのもまた事実。

 同時期にジムチャレンジに挑んでいる幼馴染にも負けが込んでる事から、思いつめてる様子も見えたのでちょっと手を貸す事にしたのである。

 

 でも正直あのショタ、多少難儀する事あれど俺と意思疎通できてたから……トレーナーより、研究者とかそっちの畑の方が向いてる気がしないでもない。

 

 

 閑話休題

 

 

 そんなこんなで俺とウールーのスパーリングじみた特訓が一段落すれば、もふもふの体毛が気持ち萎んだ感じになったウールーが地面へとへたり込んでいる。

 俺? 駆け出しポケモンのスパーリングパートナー程度で疲れるような、軟な鍛え方はしていないのだ。

 だがこれで特訓は終わりではない、身体を酷使したら次はお勉強の時間だ。

 

 

『はぁ、はぁ……』

 

『よーしお疲れさん、今日はこのぐらいにして座学と行こうか……ゴンべ、ヨーギラスちょっと手伝ってくれ』

 

 

 尻尾からオレンの実を3個ほど取り出してウールーの目の前に置くと、養育しているポケモンに手伝ってもらいつつ座学の準備を始める。

 コレは数年前から始めたモノなのだが、まぁ簡単に言えば……。

 

 

『早速だが始めるぞ、昨日は自分の力を高める技について説明したな? 復習だが【まるくなる】の効果は覚えているか?』

 

『はい! 自身の防御力を高める事で相手の攻撃を耐えやすくなります!』

 

 

 そんなに難しいモノを教えているワケじゃなく、俺の経験則も踏まえた内容を教えているだけだったりする。

 

 

『よろしい、【まるくなる】事で耐久力がある部分で受ける姿勢を取り。時に相手からの衝撃で転がる事でダメージを逃がす事も出来るからな』

 

『はい!』

 

 

 そしてその中で、俺なりに噛み砕いた技術を口頭で伝授もしている。

 いくらタフなポケモンでも、一点集中で攻撃を食らい続けたら只では済まないのは生き物だから当然なのだが。

 ダメージを意図して逃がす、見切りながら必要最低限の損傷で済ませるという技術が生き残る事に最も大事になってくるのである。

 

 ざっくり体の範囲を頭部、胴体中央に両側面、背面中央に両側面、両腕と両脚に分けて考えた場合。

 ポケモンによってこの体の部位に応じた耐久力が、露骨に変化してくる……まぁ当然と言えば当然だが。

 

 その中で自身の特性を理解し、どこで受けるかどこに逸らすか、どこへのダメージだけは絶対に避けるかというのを知識として叩き込むのだ。

 そして同時に、この知識と考え方は相手の急所に効率的に打撃を与える事にもつながるが……まぁ今はいいか。

 

 目の前で必死に受講しているウールーは、今までの俺の経験からすると恵まれた耐久力と決して遅くない足回りを駆使した立ち回りが重要な種族だからな。

 その手の狙いすまして急所を狙うという所業は、どちらかというとドラパルトやニャースのような連中の領分なのである。

 

 

『お父様、そろそろ日も落ちて来ましたわ』

 

『ん? そうか、じゃあここまでだな。さぁ飯の準備するぞー』

 

『あ、あの師匠! 食事の後に訓練をつけて頂いても……!』

 

『ダメだ、めいっぱい運動してひたすら勉強し、腹いっぱい飯を食べてぐっすり眠るのが俺流だからな』

 

 

 一刻も早く強くなりパートナーであるダンデ酷似ショタの力になりたいと願うウールーは、必死に訴えかけてくるが俺は容赦なく却下。

 しかし熱心なウールーは、じゃあせめてこれだけは教えてほしいと食い下がってくる。

 

 

『一体何が聞きたいんだ?』

 

『は、はい。師匠って時々やってくるトレーナーを撃退するとき色んな技使ってますけど、明らかに5個以上技使ってるのが不思議で……』

 

『あーー……そう言えば説明してなかったな』

 

 

 ウールーの質問に俺が世話しているポケモン達も興味深そうな視線を向けてくる、というかドラパルトまでそんな目を剥けてくる。

 そう言えば説明してなかったわ。

 

 しかしコレ、ある意味裏技というかなんというかなんだよな……。

 

 

『まず最初に説明しておくと、俺も一回の戦闘に使える技は4種類が限度だ。仮に使い方を知っていても5個目の技使おうとすると上手くいかん』

 

『え? でもお父様って、私が見てる中でも【はらだいこ】に【ばかぢから】、【たくわえる】と【はきだす】。【ジャイロボール】に【ころがる】に……【のしかかる】や【サイコファング】は使ってますわよね』

 

『よく覚えてるなお前……』

 

 

 ちょっとこのドラパルトちゃんが怖いよお父さん、娘に応援してもらってる身としては誇らしくもあるが。

 あ、ウールーが絶句してる。

 

 

『簡単な話さ、複数の技パターンを頭の中に構築しておいて。特定の行動を呼び水にその技パターンに切り替えてるんだよ』

 

『そんな事、出来るもんなんですか?師匠……』

 

『出来ると楽だなーって思いながら5年間ぐらい鍛錬したら、出来たわ』

 

『何も参考にならない!!』

 

 

 ウールー白目を剥いて絶叫、ついでに世話をしているポケモンやドラパルト達まで変な生き物を見る視線で俺を見る始末である。解せぬ。

 一回出来てしまえば後は……戦闘前に足を勢いよく踏み鳴らしたり、拳を打ち合わせたりと言ったアクションで切り替えれるから便利なんだけどなぁ、コレ。

 

 

 




ホップのウール―が暫くの間手持ちから外れてたのは、特訓してたからなんだよ!!理論。

ちなみにヨクバリスの技のパターン切り替えは戦闘中には不可能なので、切り替える余裕を与えない勢いで連戦を挑めば削り殺せます。


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