TS転生者が隠しステージのボスになる話 (政田正彦)
しおりを挟む

プロローグ

あけおめ(大遅刻)


 時は21XX年。

 

 飛躍的にロボット科学が発達したその世界では、自分で物を考え、物事を処理する事ができる自立思考回路を持つ、極めて人間に近いロボット、レプリロイドが当たり前のように世界に普及している世界であり、人類とロボットが共存していた。

 

 だがレプリロイド達の中には、“イレギュラー”と呼ばれる、他のレプリロイドや人類に対して危害を加える個体が発生する事があり、その理由は未知のウィルスだとも言われているし、高度過ぎる情報処理能力が生んだバグとも言われており、正確には解明されていない。

 

 その対策として、イレギュラーをどうにかしよう、民間人を守ろう、あまりに危険だったら破壊しよう、という組織が原作主人公の所属する組織であり、イレギュラーハンターと割とまんまな名前の組織が世界の平和を守るために悪と戦う……それがおおまかなこの世界の世界観とストーリーである。

 

 そんな世界に、本来なら存在しないはずのレプリロイドとして、ある転生者が生を受けていた。

 

 

 彼女はこの世界が好きだった。

 

 人一倍優しく、そして強かった。

 

 幾度となく地球と世界を救った英雄であるエックスとゼロ、その傍らに、彼女の活躍があり、二人も彼女の事を心から仲間だと信じていた。

 

 彼女はそんな自身の置かれている状況を、大変だが、それでも憧れのヒーローと仲良くなれて、それなりに楽しい人生を送れている。そう思っていた。

 

 

 

 

 

 その時までは。

 

 

 

 

 

 

 そこは戦場、と呼ぶにはあまりにも淀んだ空気で満ちており、周囲はスクラップ……それも、主に破壊されたイレギュラーの残骸で埋め尽くされていた。

 

 ここはゴミ処理場だ。周囲にもそれ以外のものは何も無く、処理するための施設は今や無人の廃墟と化しており、作業用及び警備用のメカニロイドは全て電源がOFFになっている。

 

 人が居ないのは、今から数時間前、そこに一人のイレギュラーハンターが、ボロボロになりながら、警報機を鳴らして飛び込んで、こう告げた為だ。

 

『イレギュラーハンターです!! 皆さん、ここから避難して!! シェルターに急いでください!! イレギュラーが現れました!! ここから逃げてください!!』

 

 聞いた作業員達は、一人残らず作業を放り出し、大慌てでシェルターへと移動した。しかし、そこで明らかになったのは、“彼女”が飛び込んできた際には“まだ”今回のイレギュラーによる騒動は始まっていなかった事。

 

 彼らからその事を聞いた治安維持の為にシェルターへと出動していたハンター達がそれを訝しんでイレギュラーハンター本部へと連絡。

 

 すると、その場所でイレギュラーが発生したのは、彼女が施設へと訪れた数分後。つまり、彼女はイレギュラーから逃げてきたのではなく、このイレギュラー騒動の首謀者、あるいは被害者の一人であるという事。

 

 処理場でポツンと一つだけ確認できるイレギュラー反応は、彼女を示している物だったのだ。

 

「何で……何で君が!!どうして君みたいな人が、イレギュラーになっているんだ!!」

 

 そこは戦場。

 

()()……ッ!!」

 

 彼と。

 

『エッ……クス……』

 

 彼女の。

 

 

 

 




次回更新→何の問題も無ければ、1/10の20時の予約投稿済みのまま投稿します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロックマンX編
12【Io】


本文に問題はありませんでしたが予約投稿日時を間違えてて投稿遅れました。
すみません。


 

 data Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ===DATA(※最も古いデータです!※)===

 

 

 

 俺はその日の前日も特に変わった事はしていない。帰りに女の子を庇ってトラックに轢かれたり通り魔に刺されたりなんていうイベントは特に無く、神様にもあった記憶も無い。

 

 だが、次の日に目覚めると俺は、レプリロイド製造所で、母親ではなく多くの研究者達に見守られながら、赤ん坊の身体ではなく、【戦闘特化型レプリロイド】という、わっかりやすい名前のボディで生まれ、「Io(イオ)」と名付けられた。

 

 最初は困惑したが、しばらくして聞こえてきたレプリロイド、イレギュラー、エックスといった単語が脳裏で点となり、俺が何かを考える前に頭が全てを線で繋ぎ合わせ、ひとつの解答を導き出した。

 

 

 ここロックマンXの世界やんけ、と。

 

 

 俺は深刻化するイレギュラー問題をどうにかする為に計画されたプロジェクトの内の一つ、数々のイレギュラーハンター達がイレギュラーとの戦闘で培った記録データから計算し、戦闘に特化した自立思考システムと、同じく戦闘に特化させたボディを作り、有能なイレギュラーハンターを作ろう、という物だ。

 

 しかしその結果、同時に製造されていた20体の内、無事に起動したのは俺だけだった。

 

 膨大な量の記録データと戦闘に特化したボディが、戦闘を求め過ぎて暴走したり、プログラムに何らかの矛盾が生じて起動に失敗……と、結果は散々だった。

 

 そして唯一の成功例と言える俺も、実は完全な成功だったとは言い難い。

 

 

 先述したこのボディだが……この身体、戦闘特化と名乗っている癖に、何故か女性型のボディなのである。

 

 

 女性型なのである。

 

 

 念のため言っておくが、俺は前世では……気持ちは今でも男だ。

 

 女性らしく膨らんだバストパーツ。きゅっと引き締まったウェストパーツ。やたら造形に凝った太もも。そして無邪気な少女を思わせるクリクリした目とつやつやしたショートカットの髪型。まぁ全部ただのパーツに過ぎないのだが。

 

 一応、頭にはゴツイヘッドパーツと、手足はロックマンよろしくなゴツいアーマーが装着され、胸にも当然アーマーが取り付けられているのだが、それでも、勝気で快活な女の子、みたいな印象がどうしても拭い切れない。

 

 俺は研究者達にすぐに男の身体に代えてくれと頼み込んだのだが、同じ精度で作られたボディは今の俺のボディしか現存せず、仮に作ったとしても今までの事を考えるとプログラムに矛盾が生じてエラーが発生する……人間でいうところの拒絶反応のようなものが起きる可能性があるとの事。

 

 細々としてオプションパーツを組み替える分には問題は無いらしいが、根本からとなると話が変わってくるのだとか。

 

 その可能性、サクッとコンピューターに計算させて弾いた結果は驚きの87.79%という高確率。その内死ぬかもしれない、下手したらイレギュラー化する可能性は60%超えだと言われた。

 

 そんな博打を打ってまでして男の身体になりたいかと言われ、ほどなくして俺は諦めて今の身体を受け入れることにしたのだった。

 

 

 

 

 そうして女レプリロイドとなった俺がある程度落ち着いた後、俺はイレギュラーハンター見習いとして訓練の日々を過ごす事となった。

 

 訓練、と言っても、鍛えて筋力が上がる訳ではなく、システムが戦闘をしていくうちに学習して処理速度が上昇し、より効率的にエネルギーを扱う事が出来るようになる……まあ要するに、戦ったり訓練したりすれば戦い方を学習して強くなれるって事だ。

 

 もちろん身体が成長するわけではないので限界はあるし、そこはより強いパーツに取り換えて扱い方を覚えるしかないのだが、流石は戦闘特化というべきか、その必要性は殆ど感じなかった。

 

 訓練と称された耐久力チェックだとか戦闘能力テストと称したメカニロイドとのガチバトルも、実際に起きた事件をシミュレーションで追体験し、見事作戦を成功させればテストクリアとみなされる試験も、難なくクリアしていった。

 

 この身体、見た目より有能である。

 

 同輩から張り付き壁キックのコツを教えてくれとせがまれたり、戦闘訓練で手本を見せてくれと言われたりして、それくらいなら、と軽くやってみせてちょっとした人だかりが出来たりする。

 

 ……まあ壁キックというより壁駆け上がりだし、戦闘訓練も訓練生用に調整された難易度のビギナーでは物足りず、段々難易度を上げていたのだが、それが注目を集めたらしく、期待の新人と呼ばれた。戦闘特化なんだからこれくらいできて当然、だと思っていたが、そう思う者ばかりではないみたいだ。

 

 俺も褒められたりおだてられたりするのに弱いので、すぐいい気になってホイホイ周囲の人と交流を深めていってしまう。

 

 

 ……彼らの多くは今後起きる事件で死ぬこととなるのに、と考えるとやるせない気持ちになる。いい奴らなのに。

 

 

 

 俺はそんな感情から逃げるように、仮想イレギュラーを相手に皆よりも遅くまで一人で訓練を続けていた。

 

 ……この世界じゃいつ誰が死んでもおかしくないし、明日隣に居た奴がイレギュラーになってた、なんて事もあり得ないとは言い切れない世界である。

 

 今、何も大きな事件が起きていない今のうちにしっかりと訓練しておく必要があると俺は思い、積極的に自身の戦闘力向上に努め、本来持っているスペックを最大限まで引き出すつもりで訓練した。

 

 元々努力家でもなく、なんならめんどくさがりな性分だったが、やらなきゃ死ぬとなれば誰だって必死になる。

 

 

 

 それに、頑張った甲斐はあった。

 

 潜在能力が開花してメキメキと戦闘能力は向上したし、俺が「性能はピカイチだが扱いが滅茶苦茶難しい」と言われたパーツやウェポンを初めて自転車に乗る程度の心境で練習したりしている内に、気付けば同期の中どころかここ数年でぶっちぎりの成績を残していた。

 

 と、大体は訓練生としてイレギュラーハンターになるため訓練を積んだり研究チームから新しいウェポンやパーツを貰っては次々モノにしていく生活をしていたが、半年程度経ったある日、唐突にその生活は終わりを告げる。

 

 

 

 

 

「あの子は何だ?何故あのような人材がここに居る?」

 

「ええと、何故と言われましても……彼女は訓練生なので……。」

 

「ほう?あの動きでか?」

 

 いつものように訓練に励む俺は、トレーニングルームの外から強烈な視線を感じ、一旦戦闘を止め、そちらに顔を向ける。

 

「ああ、邪魔をしてしまったかね? 私の事は気にせず続けてくれたまえ。」

 

「えっ……。」

 

 そこに居たのは、スキンヘッドにケツアゴ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、緑色に輝くごっつい筋肉質な大男を思わせるボディアーマーを身にまとったレプリロイド。……イレギュラーハンター第17精鋭部隊の隊長を務めている、シグマ隊長その人であった。

 

 

 念のため説明しよう。

 

 シグマとは、シリーズのほとんどの作品にてラスボスを担っている最重要キャラクターの一人……というかシリーズ通して大抵はコイツがストーリーの黒幕である。

 

 Dr.ケイン(レプリロイドを製造し量産化に成功した歴史的な科学者)の最高傑作とも評価される高い戦闘能力と優秀な頭脳、多くのレプリロイドを引きつける高いカリスマ性を持つレプリロイドである彼だが、この後、なんとイレギュラーになってしまい、名実ともに最強最悪のイレギュラーとなるのだ。

 

 その後なんやかんやあって主人公にぶっ倒されるものの、桃の姫を攫う亀の王様よろしく何度も何度も何度でも復活して黒幕として暗躍する、それがシグマだ。

 

「どうかしたかね? 私は続けたまえ、そう言ったのだが。」

 

「い、いえ! はい! 訓練を再開します!」

 

 唐突なラスボスの登場に流石に面食らった俺は、取り繕う事も出来そうにないと判断し、取り敢えず言う通りに訓練を続けた。唐突に現れたラスボスからの恐怖から逃れたい一心で。

 

 しかし俺が訓練を続けていてもずーっと執拗に見てくるので、気が散るどころの騒ぎではない。これはアレか?回避不可イベントってやつか?

 

 俺はずっとここに居られても迷惑なので、腹を括り、ガチガチに緊張(というか恐怖)しながらトレーニングルームの外に出ると、早速シグマが俺の持つ武器を指さしながら話を切り出して来た。

 

 

「その武器は?」

 

「はっ! “ガンブレード”という、中威力のバスターとブレードが融合した武器であります!」

 

「ほう。これが。直接見たのは初めてだな。これは扱いが難しいと聞いたが?」

 

「確かに扱いは難しいですが、使いこなせれば便利です。」

 

「そのようだ。恐らくあのような器用な使い方が出来るのは、今は君しかいないかもしれないがね。」

 

「恐縮です!」

 

 

 単にカッコ良くて個人的に使い勝手がいいからお気に入りなのと、原作キャラと相違点を作りたかったからだなんてとても言えない。俺はそれ以上何も言えず、敬礼したまま真っすぐとシグマを見つめるしかなかった。

 

 シグマはそんな俺を、何かを見定めるようにじっと見つめた。いや、怖い。威圧感が半端じゃないんですけど?目力が半端ないとかいうレベルじゃないんですけど?

 

 

「フフ、気に入った。名前は?」

 

「イ、イオです。」

 

「そうかイオ君。君、私の隊に来なさい。」

 

「はい!…………はい?」

 

 

 え?今なんて?

 

「うむ。一週間後に迎えを寄こそう。楽しみに待っているよ。フフフ……。」

 

 

 驚愕でポケッとしている俺をよそに意味深な笑みを浮かべながら去っていくシグマ。ずっと離れてみていた上司と教官達が「出口まで案内します!」等と言いながら、彼の後をぞろぞろと付いていった。

 

 ぽつん、と残された俺と、訓練生達はただその背中を眺める事だけで、見えなくなってから次第に「嘘だろ」「こんなことってあるんだ」「うわ~……」と、周囲がざわつき始めてから我に返り、その場を後にした。

 

 

 俺、異例の形でイレギュラーハンターになっちまうみたいです……。

 

 この後どうなっちゃうの……。

 

 

 




用語を作者がかいつまんで説明するコーナー



【レプリロイド】
平たく言えばまあヒューマギアみたいなもん。
……何?よくわからない?貴様ニチアサ見てないのか!?
もっとかいつまんで説明すると、自分で物事を考える思考回路を持ったロボット。
ドラ●もん。ア●ム。

【メカニロイド】
レプリロイドの自立思考回路持ってない版みたいな奴。ただのロボットだが、プログラムに細工されたりして人を襲うようになったりする。これもイレギュラーとして処分される。いわゆる雑魚敵。

【イレギュラー】
ううっ……できません……私の仕事は……人々を笑わせる事だから……ッ!!
理由は様々だが、人類や他のレプリロイドに危害を加えるようになった上記二つの総称で、あまりに賢過ぎて自分の意思で反旗を翻すパターンやウィルスで思考回路がバグったパターン等理由は様々(理由は結局分からず仕舞い)で、要はロボットで犯罪者だったらイレギュラー。要はマギア。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11【Io】

 

 data Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ===DATA(※記録の一部が破損しています!※)===

 

 

 

 シグマが来てから一週間が経過しようとしていた。

 

 やはり。かなり異例の事態だったのだろう。周囲からの目が痛い。……だがそんな生活ともこれでオサラバだ。……オサラバ出来るよね?もし正式に入隊してもこのレベルでいちいち注目されるんだとしたら、俺、ストレスでイレギュラー化しちゃうかもよ?大丈夫?

 

 なんて下らないことを考えながら周囲の視線にも負けずに仮想イレギュラーとガチバトルして思考を無にしていると、最後の日に教官から呼び出しがかかった。

 

 俺の、いや、俺と俺の同期達の教官として、壁キックのやり方とか武器の使い方、任務における流れやイレギュラーについて等を教えてくれた人物である。

 ……原作じゃ見たことない人だけど。

 

 

「……来たか。重ね重ね言うようだが、本当におめでとう。君は我々の誇りだよ。」

 

「そんな……大袈裟ですよ。私より強い人なんか幾らでもいますし。」

 

「謙虚なのは良い事だが……君が他のレプリロイドより優れたスペックと優しい性格の持ち主である事は事実だ。もう少し自分に自信を持ちなさい。」

 

 

 君はどうにも自分を過小評価するきらいがある、と教官は言う。

 いや……でもアルティメットアーマー着けたエックスと比べたら雲泥の差だろうし、ゼロ、いやゼロさんなんかはもっとすごい人だ。なんなら、同じように戦闘特化として作られたレプリロイドなんてのはザラに居る。

 

 特A級ハンターなんて呼ばれている人達は軒並みそうだ。

 

 そして、彼等の中からもイレギュラー化したり、シグマに脅されて人類に牙を剥かざるを得なくなった、なんていう人が出ることになる。

 

 そんな彼らと戦う、となった時……その時の事を考えると「今のままでいいのだろうか」という焦燥感に駆られる。

 

 しかも、一回倒して終わりならまだしも、肝心のラスボスのシグマって何度も何度も復活するし……。8回で終わるのかなあ……ああ、やだやだ……憂鬱になってきた。

 

 

「まぁ、強さを探求しようとするのは良い事だ。私からはこれ以上お前には何も言わない。……だからせめて、最後は教官らしい事をしよう。」

 

 上司殿はそう言うと、おもむろに黒いトランクケースを取り出して俺に差し出す。

 

「これは……?」

 

「君専用の武器だ。開けてみたまえ。」

 

「えっ!?」

 

 俺は驚いてそのトランクケースを開ける。そこには、訓練の際に使っていたものさらに洗練されたデザインの、実戦仕様となったマイフェイバリットウェポン、ガンブレードが入っていた。それも、しっかりと「Io」とエンブレムが付いている特注品、見ただけで性能も段違いだと分かる。

 

「い、いいんでしょうか?私なんかがこんな……。」

 

 まだ新入りにもなっていない俺なんかが専用の武器を持っていいのだろうか。あまりに優遇されすぎじゃないか?

 

「君にはこれがあった方がいいだろう。それに……実は前々から君の成績を、君の生みの親である研究者達に随時報告していたのだが、知っての通り君は優秀だから……随分と喜んでいた。私が君専用の武器を彼等に頼んだら、ものの二日でこれが出来上がってきたよ。」

 

「そう、ですか……」

 

 ……マジか。何か、むず痒い。そして照れくさい。勿論嬉しいのだが。恥ずかしい。もにょもにょする。別に褒めてほしくて頑張っていた訳ではないんだけども。

 

 

「……そんな顔も、出来るのだな。」

 

「えっ?」

 

「いや、なんでもない。これを使い、正式にイレギュラーハンターとなった後もこの調子で頑張ってくれたまえ。」

 

「はっ!」

 

 思えばこのビシッとした敬礼も最初はこの人に教えてもらったんだよな……。

 

「……教官」

 

「どうした?」

 

「短い間でしたが、今までありがとうございました。」

 

 俺は、転生してから今の今まで最もお世話になったと言えるその人に、心から敬意を送り、その部屋を後にした。背後から、小さく笑う声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 その次の日の朝、俺は訓練生を一足先に卒業し、イレギュラーハンターとして正式に入隊する事になり、教官達に見送られながらイレギュラーハンター本部へと向かった。

 

 これはきっと、俺にとって波乱と苦悩の両方の始まりなのだろう。

 

 漠然とそんな事を考える。

 

 

 ……最初は正直、興奮した。なんせ子供の頃やってた思い出の深いゲームの世界だし、自分もそのゲームの登場人物に成れるかもしれない。登場人物に会えるかもしれない。俺の選択がこの先の展開を変えるかもしれない。変えられるかもしれない、と。

 

 そんな事を考えていた当初の俺は、正直、調子に乗っていたんだと思う。

 

 ある時、訓練で腕を破損した同輩を見て青褪めた。というか、目が醒めた。あ、俺も戦えば死ぬ(こうなる)んだ、と。

 

 それからはあまり覚えてない。とにかく必死だったことだけ覚えている。脳裏に浮かぶこれから訪れるであろう災難は、もはや災害といって差し支えない。下手をしようがしまいが死ぬ。そんな事がこれから、そう遠くない未来で起こるのだ。

 

 訓練中はまだ良かったが……戦うのは正直、怖い。

 

 だがやらないと……だって、やらないと死ぬかもしれないんだ。

 だったら、戦って生き延びてやる。

 

 何もせずに死ぬのは嫌だ。

 

 俺は車の中で、ようやく少しだけ慣れ始めた近代的な大都市が流れていくのを眺めながら、受け取った俺専用のガンブレードが入った黒いトランクをそっと撫でた。

 

 

 

 

= = = =

 

 

 

 

 ……などと決意を新たにした、ほんの数時間後だ。

 

 けたたましいサイレンがそこら中で鳴り響く。無数の救助用メカニロイドが道路と空を駆け、住人やレプリロイド達が逃げ惑っているハイウェイに俺は居た。

 

 

 ……何故?

 

 

 そう複雑な話ではない。世界的に見ればいつもの事だ。ただ、ハイウェイの先で工事用メカニロイドが暴走しイレギュラー化するという事件が発生した。……そう連絡が入り、緊急避難警報が鳴らされ……現在に至る。ファ●ク。

 

 どのくらい深刻な状況かあまり分からない人の為に、これがどのくらい深刻かと説明すると、「工事などで使われる超巨大なクレーン車とかトラックとかが暴走して人を襲うようになった」……って位深刻だ。B級パニックホラーかよと言いたい。

 

 しかもそういう工事用のメカニロイドって大抵どんな環境でも動くように頑丈に作られている事が多くて厄介な事極まりない。

 

 俺は「こんな所に居られるか!俺は逃げるぜ!」とすぐに車から降りて暴走の中心地から逃げようとしたのだが、その瞬間背後のハイウェイが大爆発。たまたま可燃性の物質を積んだトラックでも走っていたのだろうか。

 

 そのせいで、ハイウェイの上で俺たちは綺麗に孤立状態になってしまった。下を見るととても降りられるような高さでもない……つまりは退路を断たれていた。そして、前方からはイレギュラーの大群。これでは、イレギュラーハンターの助けは絶望的だろう。

 

 俺と同様に退路を断たれて絶望的な状況にある人間やレプリロイド達が大勢取り残されているのが見える。絶望の声が聞こえる。助けを求める声が聞こえる。

 

「いやだあ、死にたくない……」

 

「これじゃあハンター達も助けにこれないじゃないか……!」

 

「怖いよお!ママー!」

 

 

 俺は……。

 

 

「えっ!?君、どこに行く……」

 

 俺は、ほんの少し迷って……迷っているうちにいつの間にか、ガンブレードを手に、暴走メカニロイド達が居る方向へと駆け出した。俺を制止する声が背後から聞こえたが、このままここに居たって、逃げ遅れた人達と死を待つしかできない。ならばもう、意を決して戦うしかない。

 

 前方に見えるイレギュラーの“波”を相手にするよりかは、その方が生き残れる確率は高いハズだ。

 

 あまりに唐突な実戦だが、実戦デビューが早くなっただけだと自分に言い聞かせて、ハイウェイを全速力で駆け抜けながら抜き放ったガンブレードが赤紫色の光を放つ。鋭い風切り音が鳴り響き、腕に振動が伝わる。

 

 その後、すぐに暴走したメカニロイドの内の一体を目で捕捉する。ゲームでも良く登場したホイール型(車のタイヤにスパイクがついたようなメカニロイド。狭い場所に物資を運搬するのに良く使われる。)だ。

 

 俺はソイツに向かって一直線にダッシュして……勢いを殺さないままガンブレードを“振り下しながら撃ち抜く”。

 

 それは何度も見た、ガンブレード特有の攻撃の痕跡だ。斬撃による溶断跡と、同時に放ったバスターによる大きな風穴。

 

 訓練と違うのは、それがホログラムや仮想イレギュラーではない、本物のイレギュラー化したメカニロイドだという事だ。

 

 俺は訓練通りの結果となったメカニロイドを尻目に、真っすぐと迷い無く走り抜けながら、イレギュラーを次々と破壊していく。

 

 そうだ。もっと早く、もっと倒して数を減らせば良い。このまま突き進めば、イレギュラーハンター達と合流出来るかもしれない。合流さえ出来れば後は彼等に頑張ってもらおう。置いていく形になってしまった彼等を保護してもらえれば良い。

 

 いや……そもそも彼等に関してだけ言えば、俺がこの道を守っていれば安全だ。幸い飛行艇とか巨大な蜂型のメカニロイドは出てきていないようだし。

 

 

 ふぅ、よし、よし、現状確認終了。

 

 あー、こわ……。

 

 いや落ち着け、大丈夫だ。

 

 出来る出来る。

 

 

 

 ギリッ、とガンブレードを握る手に力が入る。

 

 

「かかって来いよ、イレギュラー!俺が相手になってやる!!」

 

 

 ハイウェイで一人の女レプリロイドがイレギュラーに吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

= = = =

 

 

 

 

「今、何か……?女の子の、声……?」

 

 

 同時刻、同じハイウェイ上の別の場所で戦っていた青色のレプリロイドが、誰かの声を聞いた気がした。




【エックス】
原作主人公。青いレプリロイド。他のレプリロイドにはない「悩む」という機能を持っており、それが他のレプリロイドではたどり着けないであろう解答を導き出すことがあるとされているが、逆にそこを突かれて何度も窮地に立たされる事もある。優しい性格の持ち主なので、前述の特徴もあることから「あまちゃん」だの「だからお前は甘いんだ」とか「お前のそういう甘いところが嫌いなんだよ!」とか言われがち。

【ゼロ】
もっぱらエックスの相棒として登場する赤いレプリロイド。ファンからは真の主人公と言われたり、エックスの嫁と言われたり、破壊神と言われたりその人気は絶大であり、彼を主人公にした外伝ストーリー、ロックマンゼロが作られるほど(なんなら、作者はこっちのが好みだったりする)エックスとは対比であまり悩まないクールで冷静な、それでいてアツい性格。しかも強い。好き(告白)

【時系列】
現在はX1のちょっと前らへんで、シグマがまだ行動を起こしていない状態。

【ハイウェイ】
結構な割合でシリーズ通して出てくるステージ。The day of Σで上空から落ちてもバスターで勢い殺して生き残れるならここから落ちても平気じゃね?という突っ込みをしてはいけない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10【Io】

ま た せ た な て ご め ん ね


「ぐすっ、ぐすんっ!まま……どこお?」

 

 イレギュラーが現れたことにより、戦場と化してしまったハイウェイの上には、取り残された人間やレプリロイド達が居た。逃げ遅れた人、怪我をした人、車に閉じ込められた人……この少女もそのうちの一人である。

 

 逃げている途中で大きな爆発音と共に大きく揺れ、その際、母親とはぐれてしまったのだ。

 

 泣き腫らした目を擦りながら母親を呼び、泣き叫ぶ。

 

 そんな彼女の声に反応したのだろう。一体のメカニロイド(四足歩行するクモのようなメカニロイド)が彼女の下へと向かう。

 

 

 その幼い命を破壊するために。

 

 

「ひっ……!」

 

 目前まで迫ってきているそれに気づいてようやく少女は自らの身に差し迫った危機に気付くが、もう遅い。

 

「やだ、やだあ!」

 

 

 ただ泣き叫ぶことしか彼女に出来る事は無い。

 助けを呼びながら少女は震えながら後ずさりするが、それだけだ。

 

 メカニロイドが足を大きく振りかぶり、一切の容赦なく、機械的にそれを振り下ろそうとする。

 

「誰かあ!!」

 

 目をぎゅっと閉じ、痛みに耐えようとする。だが、メカニロイドが足を振り下ろすよりも先に、大きな衝撃と破壊音が辺りに鳴り響く。

 

 チリチリと肌が焼けるような熱気を感じたかと思うと、それきり痛みも熱さもやってこなかった。

 

「君、大丈夫?」

 

 恐る恐る少女が目を開けると、そこには……燃え盛る炎に照らされて尚、晴れた青空のように青いレプリロイドが心配そうに少女を見つめていた。

 

 

 

 

= = = =

 

 

 data Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ===DATA(※極めて深刻なエラーを探知!※)===

 

 

「すまない、助かったよ!」

 

「いえ!危ないので下がってて下さい!そこから動かないで、イレギュラーハンターの助けがきっと来てくれますから!」

 

 

 ……戦って、イレギュラーを狩ればそれで事件解決やろ!などと安直に考えていたけれど……ハイウェイにまだ取り残されてる人が居るなんて聞いてないよ……。

 

 俺は、イレギュラーを倒しながら、車の下敷きになったレプリロイドだとか、怪我をして動けなくなった人を助けつつ、彼等には下がってじっとしているように伝え、俺は事態の収束の為、更にハイウェイの先へと向かう。

 

 するとまた救助を求める人が、かと思ったらイレギュラーが。

 

 ああ、もう、キリがない……!!

 

 そりゃあまあ、普段から人が使ってるんだから人が居るのは当たり前だけどさ!

 

 とは言ってもだ。イレギュラーの数だって無限ではないはず。道だってそこそこ切り拓けた。あとはイレギュラーハンターと合流して、孤立した人達をどうにか助けてもらえたらこの場は見事ミッションコンプリート。

 

 死んだらそん時はそん時だな。笑えねえ。

 

 

 と、その時。

 

 

 近くで訓練時何度も聞いたチャージショットの音と、メカニロイドが破壊される音が聞こえた。

 

 戦闘音! ってことは誰か戦っている! そしてこの状況下でイレギュラーと戦う奴なんてイレギュラーハンターしかいない!! キタコレ! これで勝つる!!

 

 俺は猛スピードでその戦闘音がする方向へと向かった。イレギュラーを処分しつつ。もはや小~中型なんて流れ作業のようなものだ。最早彼らに対する恐怖心は微塵もない。

 

 最初は猛スピードで突っ込んでくるタイヤのバケモンとかマジで悪夢でしかなかったんだが……今ではタイミングを合わせて一刀両断、からの両断した隙間をダッシュですり抜けて背後で爆発したことによって発生した爆風を追い風に更にダッシュ、なんて事が出来るようになったくらいだ。

 

 ……我ながらちょっと引く。なんだこの化け物ボディは……。

 

 ……おっと、自分のスペックにドン引きしてる場合じゃない。戦闘音も段々近づいてきたし、そろそろ誰が戦ってるのかくらい見え……ないな。煙が邪魔で……。

 

 てか良く見たら囲まれてるじゃんあのハンター! しかもハイウェイステージでよく見るデカい蜂みたいな奴!(体力が多くて地味にめんどくさい奴!) 畜生! まずはあの人助けないとな……でもいきなり現れたらイレギュラーと間違われて撃たれたり……しないよね?

 

 

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

 

WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!!

 

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

 

 

 

 

「まずい……! 囲まれたか!」

 

 青年はその時、窮地に立たされていた。 生来の優しさで人を助けずにはいられない性分が今回は……いや、今回も仇となった。人命救助に気を取られ過ぎていたのだ。

 

 幸い、救助が必要だった人達はどうにか逃がすことに成功したが、肝心の自分が死んでは意味が無い。

 

「(一か八か、敵の包囲網の一角を崩して、そこから逃げるしか……)」

 

 しかし、そうなった時、俺がこいつらを引き連れて逃げると、それによって二次的な被害が出るのでは? そんな考えが頭をよぎってしまう。 それも彼の生来の特徴であり……そして唯一無二の物でもあるのだが、現状では足かせにしかならない。

 

「(どうすれば……! いや、考えている場合では……!)」

 

「おーい!」

 

「……えっ!?」

 

 

 刹那、炎と煙の向こう側から、“少女”の声がした。およそこの場で聞こえてくるにしてはあまりにも似合わない、緊張感の欠片も感じられない声。

 

 煙でイレギュラーが見えていないのか?いやまさか、そんな、しかし。

 

「ダメだ! こっちに来るな!」

 

「ぬわっ!?」

 

 等と言っているうちに、取り囲んでいたイレギュラーの内の何体かが、そちらへと銃口を向ける。

 

 クソッ、チャージショットで……いや、ダメだ!間に合わない!

 

 パラララッ、という軽い連射音がイレギュラーの銃口から鳴り響き、同時に声がした方向から銃弾が被弾する音が聞こえる。最悪の未来を想像し、顔を青褪めさせた……その時である。

 

「ズァァッ!!」

 

 先ほどの少女の声(少女にしては荒っぽい)。そしてセイバーが振られた際に鳴る独特の空気を焼き切る音、そして、同時に発射音。

 

「なっ……!?」

 

 見れば、あのイレギュラーは変わり果てた姿で地に落ちようとしていた。

 胴体に大きな風穴を開け、その風穴を中心に、横一文字にスパッと切り裂かれている。どう見ても機能停止に陥っていた。

 

 ズズン、と音を立てながら道路に墜落し、その勢いのまま少女が先ほどまでいた方向へと滑っていくが、その方向には既に何も居ないらしく、そのまま煙の中へと消えていき、遅れて煙の向こう側で爆発音が聞こえた。

 

「こんなにあっさり……!」

 

「おい! 危ないぞ!」

 

「えっ!?」

 

 先ほどまで少し離れた位置から聞こえていた少女の声が、今度は自分のすぐ傍で聞こえた。 驚いて振り返るも、既に少女は駆け出して、いや、自分の横をただ通り過ぎただけなのだろう、知らぬうちに自分に銃口を向けていたらしいイレギュラーが、また斬撃と銃撃の同時攻撃を放たれようとしていた。

 

 そこで、彼女は味方であり、強者であると理解する。

 

 であるならば、話は早い!

 

 自分は他のイレギュラーへとバスターの銃口を向ける。 なんだかよくわからないし予定外ではあるが助っ人がいるならこの状況もなんとかできる筈。

 

 そうして最高出力のバスターを放つ“エックス”の目に、最早迷いはなかった。

 

 

 

= = = =

 

 

 

 ……はぁ、これでようやく一息つけ……。

 

「助かったよ。それで、君は……?」

 

 ……ないんですよね、これが。 先程俺が会った囲まれてたイレギュラーハンターがまさかエックス(原作主人公)だっただなんて……いやチャージショットで気づくべきだったか……?

 

「俺……いや、私は本日、イレギュラーハンター第17精鋭部隊に配属となった、もしくはなる予定でした。 イオといいます。」

 

「えっ? 君があのイオなのか?」

 

「? ……失礼ながら、あの、とは?」

 

「君の事は、こっちでも結構噂になってるんだ。凄い新人が出たって。シグマ隊長にその実力を買われ、本人直々にその新人を引き抜いたってね。」

 

 何してんのシグマ隊長!? こっちでまで俺の話が流れてるってどういうこと!? いやでも、そうか、そうだよな、今のシグマ隊長って誰からも尊敬されて信頼されてる優秀の極みっていう立ち位置の人だもんな……そんな人が急に新人を発掘してきましたとか言い出したらそりゃ噂にもなるわ。

 

「どうしたんだ?」

 

「いえ、自分の知らない所で自分の話をされてるのを聞くって、むず痒くて、ハハハ……。」

 

 ハハハ。 思わず苦笑いが出た。

 

 微笑ましいものでも見るような顔のエックスを見るに謙遜と捉えてくれたみたいだが、実際は謙遜とかむず痒いとかじゃなく、ラスボスに目をつけられているという現状でも既に勘弁願いたい状況なのに、イレギュラーハンターの人達にまで目をつけられているという現実を直視してもう笑うしかないってだけなんだが。

 

 ……だって戦闘特化してるやつらってなんか好戦的で怖いし。 後にイレギュラーになった時に「お前に勝ちたかったんだよ!!」っていう理由で襲い掛かってくる奴とか居るほどだからなぁ……ああ、嫌なこと思い出してしまった。 でもまぁどうせゼロかエックスに矛先向くだろうし別にいいか。

 

「じゃあ、聞く限りだとまだ正式にはイレギュラーハンターになっていない訳だから、本当はいけないんだけど……手伝ってくれるか?」

 

「もちろんです。 どうせ遅いか早いかの違いですから。」

 

「助かるよ!」

 

 こうして、原作主人公であるエックスと俺は出会った。 本部で顔見せする程度かと思っていたんだが、しかも早くも現場で共に戦う事となった訳だが……その後特にこれといったイベントは無く、ハイウェイでのイレギュラー発生事件は急速に解決へと向かう事となり、普通より少し早い現場での戦闘は、思いのほか早く片付いた。

 

 強いて言うことがあるとすれば……エックスって最初は弱いイメージが強かったんだけど、誤射も全然しないし、チャージショットは普通に強いし、並みのレプリロイドと比べたら十分に強いんじゃないかと思う。

 

 ただ、チャージに時間はかかるし、足は遅いし、照準を合わせるスピードも遅すぎるけど……この先、相手の特殊パーツを鹵獲して自分のものにしたり、亡霊みたいになったライト博士から強力なアーマーを受け取ったりするんだと思うと、うん、そりゃ確かに主人公だわと納得した。

 

 改めて考えると、ボスキャラの持っているパーツを特殊武器として装備し、瞬時に入れ替えて使役が可能ってレプリロイドからすると「なにそのチート」って感じだ。

 

 本来何らかの特性を持つパーツはそれぞれに互換性が存在しないので、そうそう付け替えたり出来ないのが普通なんだけど……やっぱライト博士の頭脳異常過ぎないか……?

 

 あとはまあ、時間と場所を鑑みて、もしかしたら既に原作が始まっているのでは……と思ったが、VAVAもゼロも現場に現れることが無かったので、杞憂だったようだ。

 

 その後、事態は思ったより加速度的に収束へと向かった。考えてみりゃここはイレギュラーハンター本部へと続く道……つまりは彼らのお膝元である。当然彼らの到着も素早かった。

 

 しかも今回は俺がイレギュラーを先行して倒していたのもあって、イレギュラーハンター達と俺が合流すると、そこには孤立状態だった住民達までの切り拓かれたルートが出来上がっていた。

 

 

「A班は要救助者の救助を! B班は火災を鎮火! C班は被害の確認と、イレギュラーが残っていないか確認せよ! 行動開始!」

 

「エックス!……さん、私はどうすれば?」

 

「君は……手伝ってほしい所だけど、まだ正式なイレギュラーハンターじゃないから、ここは先輩のハンターと救助用メカニロイド達に任せて、先に本部に向かってくれるかな? 後で俺から本部に君の事を報告しておくから。」

 

「報告……ひょっとして、勝手に手伝ったりしたら拙かったですかね?」

 

「……まぁ、ホントはね。 でも今回は非常事態だし、あの戦いぶりを見て、君がまだイレギュラーハンターじゃないだなんて思わないだろうし、大丈夫だと思うよ。」

 

 ゲッ……やっぱホントは拙かったんだ……そりゃイレギュラーハンターや軍でもないのに武器を抜いたら拙いよな。 見てたのがエックスと民間の人だけだったのは助かったかも。 他のやつだったら「でもそれはそれだから」っつって厳罰は免れなかったかもしれない。

 

「じゃあ、次は本部で!」

 

 そう言って、まだサイレンが鳴り響く現場にエックスは走り去った。

 

 ……って、ちょっと待て、ひょっとして俺、歩いて本部まで向かうの? いや、この混雑だし、仕方ないんだろうけど……はぁ、ホントならもう本部に着いてたハズなんだけど……イレギュラーめぇ!!

 

 




【特殊武器(特殊パーツ?)】
ロックマンシリーズにおける定番要素の一つ、「ボスを倒すとボスの能力が武器として使用できるようになる」のやつ。毎シリーズ必ず手に入り、それぞれボスのどれかに特効を持っている為、ノーマルでも倒せる雑魚ボス→そのボスの特殊武器で特効がとれるボス→そのボスの特殊武器で特効が取れる……といったチャートになりがち。(通常プレイでもこれを知っているか知らないかで段違いに難易度が変わる)

尚、シリーズが変わるごとに何故か(ゲームの都合上)リセットされている。

本作では、「エックスのボディ本体ほど特殊武器に耐久性が無く、シリーズ間に発生していた闘いの中で破損し、もともと持っていたレプリロイド(ボス)が既に破壊されている為に修復が不可能になってしまったり、人員が足りなくなりがちなので、そのパーツを元手に新たなレプリロイドを作っている」……という独自設定で進める。

ライト博士が開発した特殊なアーマーについては、次回作に持ち越されたり、かと思えば何故か残っていなかったりするので、「研究に回された」「破壊された」「被害が大きくなりがちなので緊急時用に保管または封印された」等の理由でシリーズが変わるごとにノーマルに戻ったり戻らなかったりする。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9【Io/Other】

= = = =

 

 

 data Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ===DATA(※データに一部矛盾が生じています!※)===

 

 

 

 俺がイレギュラーハンターになってから早くも一週間が経過した。

 

 その間に分かった事と言えば、思いの外、シグマが暴動を起こすまでのこの世界って比較的平和だった事。 シリーズ恒例の「各地でイレギュラー反応!」なんて事はそうそう起こらないらしく、イレギュラーが発生しても規模はたかが知れてるし、その程度だったら元の現代日本でも同じような事起きてるわって程度の事件しか起きない。

 

 テロリストがどうのとか、工業用大型メカニロイドがイレギュラー化したりしてようやく大ごと扱いっていう感じで、それも相当大きな事件じゃないと苦戦もしないレベルだ。

 

 ……まぁそれでも一般のレプリロイドからしたら全部大事件なんだけども。

 

 そんな肩透かしを食らったのもあってか「これなら原作までは余裕かな」等と考えていたり……でも後ろに居るシグマ隊長が「手抜きしたら破壊すんぞ」と言っているような気がして肩から力が抜けない。

 

 任務が無いときは、被害があった街の復興に駆り出されたり、街のパトロール、警備、それも無いときは、仮想空間のトレーニングルームを借りて色々な状況に対処できるようにトレーニングを積むというのが主な活動だ。

 

 最後のは、ある程度はノルマみたいなものが決まっていて、こなす義務があるのだが、俺の場合は単に暇なのと、買おうとするとアホみたいな値段がする設備を無料で借りれるというのもあってこうして訓練している。

 

 え、休み……? ハハッ、面白い冗談だ。

 

 イレギュラーが発生していないんだから今は休んでるだろう?

 

 ……なんてのは冗談で、実際はボディのメンテナンスとかで身体を休めたり交換したりと休暇はちゃんと取れるよ。 じゃないと働き過ぎでイレギュラー化する奴とか現れそうだし、機械とはいえ無制限に動いていいって訳じゃないしね。

 

 休む間もなく動いているように見えるロボットだって休止状態になることがあるだろ? それと一緒だよ。

 

 あと、意外にもレプリロイドにもレプリロイド用の嗜好品があったり、レプリロイドなりの贅沢な暮らしがあったりする。

 

 じゃないと頑張るってだけで向上心みたいなのが芽生えないのかもしれないな。

 

 ……などと考え事をしているといつの間にか訓練が一つ終わっていた。

 評価は……まぁこんなもんか。

 

「凄まじいな、A+じゃないか。」

 

「えっ?」

 

 結果を眺めながら何が悪かったのか考えていると、横から声をかけられた。

 その声は、初めて聞くはずなのにどこか聞き覚えのある声で……振り返ると、そこにはイレギュラーハンター第17部隊に所属する特A級のハンター。主人公エックスの親友であり、そして上司でもある、第二の主人公……ゼロさんである。

 

 

「ぜ、ゼロ隊長!?」

 

 突然の第二主人公登場に困惑しつつ、咄嗟に敬礼する。

 鋭い目、赤いアーマー、金色の長髪……間違いない。 

 

「俺を知っているのか?」

 

 そりゃもう、なんなら今の貴方よりかは貴方の事を知っているまでありますよ。

 ……なんてもちろん言えないけど。

 

「はい! もちろん!」

 

 ぶっちゃけシグマ隊長の次くらいに有名な人だし、少し情報端末で「イレギュラーハンターの中で強いのって誰?」って調べればすぐに名前が出てくる位だ。 知らない人はモグリか何かだろう。

 

「ほう……ひょっとして、新入りか?」

 

「は、はい。 先日、第17精鋭部隊に配属されました、イオといいます!」

 

「そうか、新入りでここまで出来るとは大したもんだ。」

 

「恐縮です!」

 

 ……それにしても、実際に見てみると滅茶苦茶イケメンだな。

 原作でも女レプリロイドと色々あったけど……これは納得。

 心まで女だったらもう堕ちてたね、なんなら男でもカッコいいと思うもん。

 

「そのうち任務で共に戦う事もあるだろうが……その時もこの調子で頼むぞ。」

 

「は、はい!」

 

 そう言ってゼロさんはフッ、と笑うと肩を軽く叩いて踵を返していった。

 

 …………ハッ、あっぶね、メス堕ちするとこだった。

 元から女だったら絶対今のナデポ(?)で堕ちてたね、間違いない。

 

 そんな初邂逅があった後もゼロさんとはここでトレーニングしていると良く鉢合わせる事となった。

 

 というよりかは、ゼロさんがトレーニングに対して他の人より熱心に取り組んでいるんだろうな……努力を怠らない武人、みたいな感じだ。

 

 ゼロさんが居ると緊張して思考停止しそうになるんだが……まぁ本人は俺より訓練に夢中だから意識するだけ無駄だなと思ってからは普通に訓練してんだけど、不意に見るとなんかこっちを注視してたりするしでもう良くわからん。

 

 なんなら最近ほかの隊長さんだとか、他のイレギュラーハンターの人だとか、滅茶苦茶忙しいはずのシグマ隊長やエックスまで様子を見に来る始末。

 

 なんか俺、シグマ隊長の件と言いゼロといい、任務外の訓練中に主要キャラに会いがちだな……? っていうか貴方達、実は俺と同じで今暇なのかな?

 

 

「では、よろしく頼むよ。イオ君。」

 

 とか思ってたのがバレたのか、最近シグマ隊長直々に指名されて同じ任務に就く事が多い。特に、少数精鋭での活動が求められるような、隊長が行っていた任務にも頻繁に駆り出されるようになった。

 

「あの、何故新人の私がこのような重要な任務に……?」

 

「純粋に実力で判断したまでの事だ。新人だから、という理由で君のような実力者を遊ばせておくほどの余裕は無いのでね。」

 

 ……何がお気に召したのか分からんが、どうも気に入られているらしい。

 ロボットのハズだから痛いはずないのにお腹が痛い気がする。

 しかもそれを見ている人が最近……。

 

「見ろ、アレが噂のシグマ隊長のお気に入りだぜ。」

 

「隊長の懐刀って聞いたぞ。」

 

「俺は実はシグマ隊長の彼女だって聞いたけど……。」

 

 ……こんな感じだ。

 百歩譲って気に入られているのは……まぁいいけどさ、オイ最後。 誰があんなツルッパゲの後ろから見たら若干○頭みたいな頭してる奴なんか……。

 

 ……しかし、こういう時にまだ暴動を起こしていないときのシグマ隊長はほんとにカリスマ性あって部下の気遣いも出来てスペックが滅茶苦茶高いというのは事実だ。

 

 訓練や仕事終わりに悪かったポイントとかを教えてくれたりだとか、こうするともっと良いのではないか、みたいなアドバイスをくれたりだとかする……誰だこいつ?

 

 時々こいつがラスボスだって事を忘れそうになる。

 

 上手く隠しているんだろうな……任務以外だとただの厳しくて優しいホワイト上司にしか思えないんだよなあ……。

 

 でも恋人だけは例えイレギュラー化したり洗脳されたってゴメンだね。

 

 

 

=====《補完記録「side:X」》=========

 

 

「……どうしてイレギュラーは発生するんだろう?」

 

「プログラムのエラー、電子頭脳の故障……俺達レプリロイドの高度な情報処理能力の、いわばツケだな。」

 

 メカニロイドの暴走という事件は今月に入ってから7件。

 エックスとゼロは任務から戻って早々、どうしてイレギュラーが発生するのかという話をしていた。

 

 この頃、ゼロから見てエックスは優れた射撃能力と身体スペック……そして本人すらも知らない潜在能力を持つと見抜いていた。だが、どこか甘く、そして迷いがちなので、こうしてばっさりと言い切って迷いを切り捨てさせようとする事が幾度もあった。

 

 そんな時、ゼロはふとある事を思い出した。

 

「お前のとこのイオにも同じことを聞いてみたらどうだ?」

 

「えっ?イオに?」

 

「ああ、お前のそういう迷い癖に対してもそうだったが……アイツは時々俺達が思い浮かばないような答えをくれる事があるからな。」

 

 ゼロが彼女を初め見た時は「珍しい武器を使っている奴が訓練している」……ただそれだけだったが、話を聞いてみれば訓練で好成績を出せる凄腕の新人らしく、シグマ隊長から引き抜きを受けた逸材だという話だった。

 

 そういった奴は自身の能力に自惚れがちで天狗になる者も少なくないのだが、彼女は、暇さえあれば訓練をしているらしく、特A級ハンターであるゼロや他の隊長をもってして、時々「おお。」と感嘆するような動きをする事がある程である。

 

 だがイオ自身にゼロが話しかけた時の反応は凄腕のハンターというより、入りたての新人という印象を受け、同期や後輩にすらエックス、と呼び捨てしがちな所をさん付けで呼んでいるあたり礼儀正しい一面があると解釈した。

 

 だが彼女の驚くべき点は身体能力でもその性格でもなく、不意に彼女の前でエックスがこぼした言葉に対する返答があまりにも予想外だった事にある。

 

 

 事はつい先日、エックスとゼロが休暇中に訓練場に訪れていた時の事だ。

 

「はぁ、はぁ……またダメだった……。」

 

「……少し根を詰めすぎじゃないか?」

 

「……そうだね、少し休むよ。」

 

 その時のエックスは、訓練スコアが伸び悩んでいた。

 もっとも、ゼロから言わせればそれは十分な成績だったし、伸び悩んでいるとはいえ、少しずつ前進しているのだから問題は無い。

 本音を言ってしまえば悩み過ぎだと思っていた。

 

「う~ん……。」

 

 高度な情報処理能力を持つレプリロイドが唸る程思い悩むとは一体。

 他のレプリロイドから見ても、エックスは異端な存在であった。

 

「どうしたんですか?」

 

「あぁ、イオか。」

 

 そんな時、様子を見ていたのか、イオが話しかけてきた。

 ちなみにこの時点で彼女は成績でエックスよりも好成績を収めており、それがエックスの心に知らず知らずのうちに焦りを生んでしまっているのかもしれない。

 

「いつもの事だ。」

 

「いつものと言うと……悩んでいるんですね?」

 

「うっ……うん、実はそうなんだ。……はあ、ホントは自分でもこの悩み癖はどうにかしないといけないと思っているんだけど……。」

 

「え?」

 

「え?」

 

「ん?」

 

 何故そこで疑問符が出るのか?

 エックスがイオの顔を見ると、まるで「何で?」というような不思議そうな顔で、イオはこう続けた。

 

「私は、それがエックスさんの強みだと思います。」

 

「えっと……?」

 

「どういう事だ?」

 

「エックスさん……私達は情報処理で出した結論に対して、疑問を持ったりしませんが、貴方はそうでは無い。出した結論に対し、それが正しいかそうではないかを考える為の能力があるんです。

 それはつまり、エックスさんは少なくとも思考能力において私達より優れていると言えるのではないでしょうか?」

 

「確……かに……?」

 

「結論なのに、正しくない事もあるって事か……?」

 

「いえ、例えば……そうですね……これは極論なんですが、とあるレプリロイドが『私達レプリロイドは人間よりも優れている。その為、我々が人間の為に働くのはおかしい』という結論を出してしまったとしましょう。」

 

「それは……。」

 

「もしそんな事になればそいつは……イレギュラーだ。」

 

「そうですね。ですが実際にそういった歪んだ結論を出してしまった事でイレギュラー化したレプリロイドが現れているのも確かです。しかしエックスさん……貴方なら、そう思ったとしても、それが正しい事か、そうではないかを自分で判断できる。」

 

 目から鱗、とはこの事だった。

 エックスは自分が思い悩んでばかりいる事を内心では思い悩むべきではない、と思いがちだった。

 それを肯定されたのは初めての出来事だ。

 

「その……俺は、たとえイレギュラーでも、戦わずに済む方法が無いか……と思うんだけど。」

 

「そう思う事自体は良いと思います。問題は、そこから「ではどのようにして戦わずしてイレギュラー問題を解決させるのか」という事を考えてくれる人達が、現状で不足しているという事です。

 もしかすると、貴方のそういった声から、新たな切り口でイレギュラー対策について考え始める事になるかもしれませんから。もしかしたら今でもそういう人はいるかもしれませんが……。」

 

「こうして思い悩んでしまう事が原因で判断に遅れが……」

 

「悩んでしまうのは貴方が持つ優しさという感情から来るものなのでは?それは貴方の魅力でもあると私は思います。」

 

 

 聞けば聞くほど、エックスはイオが持つ答えに天啓を得たような気持ちになった。

 だからといって彼がもつ優しさゆえの悩むという機能が損なわれた訳ではないのだが……一概に、ではその機能が無ければ良いという事でも無い。

 

 それもまたエックスの持つ魅力……能力の一つなのだ。

 それがイオの持つエックスへの思いだった。

 

「……あれはビックリしたなあ。」

 

「ああ……傍で聞いていた俺も驚いたよ。」

 

「今度イレギュラーが発生する理由についてどう思うか、イオにも聞いてみようかな……。」

 

 

 

=========================

 

 

 

 data Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 Analyzing...

 

 

 

 

= = = =

 

 

 

 

 イレギュラーが発生する理由について、どう思うか……ですか?

 

 ……。

 

 そうですね、私は戦うのが専門なので分かりませんが……。

 

 

 変化を、望んでしまった。

 

 

 それが原因なんじゃないでしょうか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8【Io/Other】

※お試しとお遊びと演出用に色々とタグを併用しているのでちょっと読み辛いかもしれません、すみません。言っても弄った部分はそんなに重要な所ではないので、飛ばしてくださって構いません。

※プレビューで見てる時は大丈夫だったんだけど、もしかするとチカチカするかも、あらかじめご注意を。

※「The day of Σ」要素有。








 ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!!

 

 

= = = =

 

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 

 

 

===DATA===

 

 シグマ隊長がついに動き始めた。

 

 イレギュラーだけが支配する理想郷を築くべく、人類に対して宣戦布告。

 その後、特A級ハンターの【アイシー・ペンギーゴ】【スパーク・マンドリラー】【アーマー・アルマージ】【ランチャー・オクトパルド】【ブーメル・クワンガー】【スティング・カメリーオ】【ストーム・イーグリード】【バーニン・ナウマンダー】がシグマ隊長の傘下に加わり、各地で行動を起こした。

 

 これをエックスが止めるのが本来のシナリオである。

 

 も彼らを止めるべく、行動を開始する。

 

 とはいえ、私が彼らを倒してしまうのはダメだ。

 彼らと戦うのはではなくではない私ではない私は誰? のだから、それを私が邪魔してしまうと、本来の本来 未来 歪む 歪んでしまう可能性があ 有

 

 なので、私が出来るのは彼らのサポートだけだだけだけだろうか? だろうか? かしら?

 

 やはり今一度確認をするべきかもしれれれれれ縺翫l繧偵∩繧九↑

 

 

《特に攻撃的な内容を含んでいた為データの読み込みを中断します。》

 

 

====

 

 データの破損率は深刻であり復元は困難と判断。

 

 解析を強制終了します。

 

 次のデータへのアクセス要請を確認。

 

 要請を承認しました。

 

 

==========

 

 

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 

 

===DATA===

 

 

 

 

「解体ビルでの暴走メカニロイドの一件ですが、コントロール系が何者かに乗っ取られていたと判明しました。」

 

「何だって!?」

 

 ……と、いうわけで。どうやら原作が始まってしまったようだ。

 俺の目の前では今、どこかで見たことのある光景が流れている。

 

 暴走メカニロイド、警戒プログラム、それを潜り抜けてメカニロイドを操る者……一体何マ隊長の仕業なんだ!? 

 

 俺は一応シグマ隊長……いや、シグマからは本部の指示に従うように言われてるけど……別に部隊を持ってる訳でも無いし、そもそも少数精鋭の部隊の一人だから割と自由が利くんだよな。

 

 やろうと思えば通信無視してシグマを個人的に追う事だって可能と言えば可能だ。

 所属部隊の長がそもそも行方不明で通信が繋がらないと来ているもんだから、俺はほぼフリーだ。

 

 実際、シグマが今どこで何をしているかは俺には分からないしな……。

 

 それに仮に今シグマを俺がぶっ殺せたとしても、それがバレたら俺がお縄になっちゃうし、その上シグマってどうせとある理由から殺しても死なないから……。

 

 そうなってくると、今後の事……これからシグマが復活する事や、それによって引き起こされる様々な問題に対応するにあたって、エックスに覚醒してもらう……つまりは原作通りに進むのが一番なのではないだろうか?

 

 

「……ブリーフィング終了後、エックスとゼロのチームは直ちに偵察へ向かうようにとの指示です。」

 

『了解!』

 

 ……っと、ブリーフィングそろそろ終わりそう。

 さて、じゃあ俺は……どうしよ、暇になっちまったな。

 

「エックス、ゼロ、私も同行していいでしょうか?」

 

「何?」

 

「いいけど、君はシグマ隊長の所に行った方がいいんじゃ?」

 

「実は、少し前からシグマ隊長と他の隊員達は別々に行動しているんです。理由は不明ですが。」

 

「なるほどな。俺達は別に構わないが?」

 

「話は理解しました。イオの同行を許可します。」

 

「では、よろしくお願いします!」

 

 

 

===DATA===

 

 

 

 そして現場に急行した俺達だった訳だけども、俺が同行した所で結果が変わる訳もなく。犯人グループ(仮)の残骸が転がっているだけだった。

 

 

「ダメだな、急所を一撃だ。」

 

「そっちはどうだ?」

 

「ダメですね、データも全部抜き取られてます。」

 

 分かったのは犯行したグループで内輪揉め(笑)が起こり、戦闘となった彼らは急所を一撃で破壊され即死。その後犯人はセキュリティをハッキングするデータを持ってどこかへ逃走したという事のみ。

 

 そして暫くしてシグマも合流した。

 

「状況は?」

 

「はっ、仲間割れですかね……メカニロイド暴走事件のすぐ後にやられたようです。」

 

「ふむ……ゼロ、どう思う?」

 

「さあ……ですが、やったのは相当な戦闘能力を持った奴でしょう。全て急所を一撃です。」

 

 よくこんないけしゃあしゃあと現場に来れるよな……いや、犯人は現場に戻ってくるとかいうし、そういう事?

 

「仲間割れを起こした犯人の残りが、ハッキングデータを持って逃走中だ! イーグリード隊は、周辺の捜索を開始!」

 

「ペンギーゴ隊は別地区での捜索(そうさク)ワ! いくぞ!」

 

「「はっ!」」

 

 その後も犯人の捜索が行われ、逃走ルートのシミュレート、別地区での捜査等を行ったが、芳しい結果は得られなかった。

 

 さて、この後どうするかな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

===DATA===

 

 

 

 

 

 俺は訓練生時代、今よりもっと、もっともっと必死に生きていたと思う。

 死なない為に。強くなるために。生き残るために。             

螂ウ縺?縺ィ閾ェ隱阪@縺ェ縺
 
女だと自認しない為に。
              

 

 

 

 この世界で、レプリロイドが死ぬという事はどういう事だろう。

 

 それは多分、『情報が全く残らず消え去る』って事だ。

 

 情報が残っていたなら、それはまだ死んで無いのと一緒だ。

 その魂たる情報を入れる身体さえ用意してしまえば蘇る事が可能だし、もっと言えば、複製も可能だ。

 

 “全てのイレギュラーハンターの戦闘データ”を複製して転写した俺がいい例だ。

 

 ああ、それかゼロさんも例に成り得るかな、まだこれからの話だけど。

 

 だから、俺達レプリロイドが死ぬっていうのは、電子頭脳を焼き切られたり、もうどうしようもない位ぶっ壊されて直しようが無くなった時初めて死んだって言えるだろう。

 

 

 だから……ええと、何が言いたかったんだっけ?

 

 ああ、そうだ。

 

 メカニロイドの暴走が起こったあの日から、イレギュラーハンターは大忙しだった。

 

 次々と起こるメカニロイドの暴走……破壊に次ぐ破壊。

 

 街は大混乱に陥っていた。

 

 ゲームで見るのとは全く違う……正真正銘の地獄絵図だ。

 人が簡単に死に、罪のないレプリロイド達が破壊され、街は火の海になっている場所もある。

 

 俺も各地に駆り出され、メカニロイドを撃破するべく奔走していた。

 

 ああ、奔走した。

 

 走った。

 

 かなり急いだ。

 

 それこそ今のこの姿になって一番急いだ。

 

 その一報を聞いてから。

 

 俺はこの瞬間まで、このまま主人公であるエックスやゼロに全てを任せて、俺は俺で死なないように頑張る~ぐらいで、上手く回ると思っていた。

 

 そう思ってたんだ。

 

『イ、イオさん! 聞こえますか? 応答してください!』

 

「……。」

 

『イオさん? イオさん!』

 

「……ッ!」

 

『イオさ』

 

 

 ブツッと音を立てて通信が絶たれる。

 

 俺の眼前には……生まれてからずっと、イレギュラーハンター見習いとして世話になっていた訓練所の……俺と共に駆け付けたイレギュラーハンター達の……変わり果てた姿が……光景が、広がっていた。

 

 

 ……どうして、こうなった?

 

 

 中には、俺が世話になった……俺にガンブレードをくれた、あの人の、変わり果てた姿があった。

 

 共に戦ってきた仲間達は……全員死んだ。

 

 

 俺は、俺の考えは、甘かったのかもしれない。

 

 

 今後たくさんの人が死ぬ。それを知っていて尚、シナリオ通りに進ませるという事実がこんなにも重い罪だなんて考えもしなかったんだ。

 

 だって、それは前世ではただのゲームでの話だったから。

 テレビの向こう側での惨劇でしかなかったからだ。

 

 だが、転生して、この身体になって、それは現実の物となってしまった今。

 

 エックスやゼロに任せておけば大丈夫でしょ?

 

 つーか、じゃないとシナリオが崩れるかもしれないし、大体、エックスが成長しないと今後のシナリオで困るだろ?

 

 下手に手を出した結果、エックスがアーマーを手に入れられなかったら? どこかでシナリオが狂って、エックスやゼロが死んでしまったら? そうなった時俺に責任が取れんのか?

 

 取れないだろ?

 

 世界を救う英雄の誕生を阻む事になるかもしれないんだぜ。

 

 だったらさ、俺のやる事は……決まってるよな? そう、何もしない事だ。

 正確には、シナリオ……エックスやゼロのストーリーに、関わらない事だ。

 

 ……なんて、なんて甘い考えだったんだ。

 俺は知っていたハズなのに。

 

 守りたくて、守れなくて、やり場のない、行先もない、大きな大きな悲しみを、画面越しとはいえ見ていたハズなのに。

 

 だってこんなの知らない。

 だって守れると思ったんだ、俺なら。

 ここまで酷いもんだなんて考えもしなかったんだ。

 

 

 そして俺はこの時になって、この期に及んで、今頃になってようやく気付いたんだ。

 

 

 俺だけだ。

 

 俺だけが本当の意味で必死になってなかったんだ。

 

 俺だけが未来を知っていたから「シナリオに関わらなくてもいいや」なんて舐めた考えが出来たし、俺だけが未来を知っていたから「死なない為に強くなろう」なんて考えが出来たんだ。

 

 俺が「シナリオ通りにするために、シナリオには関わらない」なんて結論を出してしまったからこうなっているんじゃないか?

 

 俺が「シナリオの悲劇を回避するために全力で動く必要がある」と結論を出していたならこうはなってなかったんじゃないか?

 

 ……色々と他のレプリロイドより出来る事が多いってだけで天狗になって、必死さを忘れちまってたんじゃないか?

 

 

 ……そして一番の悲劇は、この惨状に()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 冷静にどうしてこうなったか、なんて考えちまっている俺の電子頭脳だ。

 

 どこまでも冷静な頭脳は、次にどう行動すべきかを叩きだす。

 

 そう、そうだな。

 

 このままだとシグマがこの街にミサイルを撃つ可能性がある。

 もしそうなればここはおしまいだ。

 

 ここに住んでいる皆も、イレギュラーハンター本部も、俺を開発した科学者の皆も。

 

 

 ……助けないと。

 

 ……助けないと? 誰が? 俺が?

 

 いいのか? そんなことをしても。

 

 だってそれは変えるって事だろ、物語を。

 

 いいのか、それで。

 

 

 

「……良いも何もあるかよ……!! いつまで“物語”だの“設定”だの言ってんだ……!? 俺が今いるここはゲームの世界じゃないんだ!! 現実だ!! 現実に……俺が知っている人達が死んだ……!! 俺が下らない事考えてたせいで!!」

 

 

 力任せに、黒い燃えカスが沈着した地面を叩き割る。

 少しも気分は晴れない。

 

 最悪だ。

 

 こんなことしても何にもならない。

 俺にはほかにもっとやるべきことがあるハズだ。

 

 

 そうだ、やるべきことをやろう。

 

 

 ……未だに鳴り響く通信をオフにした後、俺は……とある場所へと向かった。

 

 

 

 

===DATA===

 

 

 

 

 数時間後、俺は()()()()()()に訪れていた。

 

「動くな! ……シグマ隊長!?」

 

 俺はあくまで「どうして」という(てい)で、向けた銃を下げる。

 モニターで何かを操作していたシグマはこちらを見た後、再び視線をモニターへと戻し、さも真剣そうに口を開く。

 

「……イオか、見ろ。どうやらここの警備システムを使い、メカニロイドをコントロールしていたらしい。」

 

「なるほど……警備システムをカムフラージュに使っていたという訳ですか。」

 

 無警戒を装い、俺はシグマへと歩み寄る。

 

「それで……問題の犯人は?」

 

「まだこの辺りに潜んでいる可能性が高いだろうな。見たところついさっきまでここでメカニロイドのコントロールをしていたようだ。警戒を怠るな。」

 

「了解。では、私がシステムを停止させます。隊長は犯人を追ってください。その方が効率的でしょう。」

 

「……そうだな。では任せる。」

 

「はい。」

 

 

 そして、犯人の捜索の為、その場を後にする……フリをしているシグマを見ながら、モニターへと向かうフリをする。

 

 刹那。

 

 ほんの数瞬に縮められた時間の中、俺は銃を引き抜きながら身を回転、照準を、今まさに俺の急所を貫こうとしているシグマへと合わせ、引き金を引いた。

 

 一発の発射音と、セイバーが空を切る音が響き渡る。

 

 

「ほう! 何故気付いた?」

 

「分かるに決まっているでしょう……どれだけ貴方の隣で貴方のセイバー捌きを見てきたと思ってるんですか?(まぁ、最初から知ってただけだけど。)」

 

 

 その短縮された時間の中、俺は奴のセイバーを身を回転させながら飛びのく事で避け、発射されたバスターは最小限の動きで躱されてしまう。

 

 

「ふむ、誤算だな。まさかここまでとは思っても見なかったぞ、イオ。」

 

「随分簡単に認めるんですね、自らの計算違いを。」

 

「ああ。嬉しい誤算という奴だからな。」

 

 

 そう言うとシグマはセイバーを手にしていないもう片方の手でこちらに手を差し伸べる。

 

「共に来い、イオ。」

 

「……。」

 

 ああ、分かってるさ。

 来なければ殺す。そう言っているんだろう。コイツは。

 分かってるさ。

 いくら俺でもお前には勝てないってことくらい。

 

「私は……。」

 

「お前の精神が男だという事は調べがついている。」

 

「!!」

 

「確か、君と同じプロジェクトで生まれるはずだった兄弟達は皆失敗作に終わり、奇跡的に成功した君は、成功でありながら、精神は女ではなく男型になってしまったという悲劇で生まれたレプリロイド。それが君の正体だ、そうだろう?」

 

「……。」

 

「更に……もし君のボディを無理矢理変えようとすれば、他の兄弟と同じようにボディがエラーを起こし、暴走してイレギュラーとなってしまう可能性が高い。だったかな?」

 

「……ええ、ですが、私は今はもうこの身体を受け入れていますので。」

 

「本当にそうか? いいや、そんな筈はない。君は認められないからこそその強さを手に入れたのだ。」

 

「ッ!」

 

 ……半分は図星だった。

 

 前世では元々努力家でもなく、なんならめんどくさがりな性分だった俺が頑張って戦闘能力を底上げした理由は「やらなきゃ死ぬから」のほかにもう一つ。

 

 女の身体になってしまった事実から逃げたかったからだ。

 

 そうでもしないと、この人間の何倍も優秀な頭が今の自分の現状を受け入れられず、耐え難い苦痛が、この身体を女らしいと判断してしまう屈辱が、こんな身体に生んだ研究者や神様的な誰かへの憎悪が沸いたからだ。

 

 だから俺は「死にたくないから頑張る」というデカすぎる大義名分の後ろにこの事実を隠して、必死に努力してきたんだ。

 

 それこそシグマに目をつけられてしまってもおかしくない位には。

 

 だが所詮は()()だ。

 

「だからどうしたっていうんですか? 貴方ならどうにか出来るとでも?」

 

「出来る。なに、簡単な話だよ。イレギュラー化してしまう事を問題にしてしまう()()()()を変えれば良いのだ。」

 

「……世界の方を……?」

 

「そうだとも。これから私は人類をこの世から抹殺し、レプリロイドだけの、いや、イレギュラーだけの世界を作り上げる。その世界でならイオ、君がイレギュラーになる事はむしろ自然な事だ。なんの問題にもなりはしない。」

 

「……馬鹿げてる。」

 

 ああ、そうだよな。

 

 アンタはそういう人だ。

 世界を自分の思いのままに変えようって本気で考えちまうようなイカレ野郎。

 それでいてそれを実行出来てしまうクソ化け物。

 

 

「さあ、私の手を取れ!!」

 

「私は……俺はッ……!!」

 

 

 

 俺の答えは……。

 

 

 

 

 

=====《補完記録「side:X-2」》========

 

 

 

 

 VAVAが脱走した。その報せを聞いた俺とゼロは現場へ向かったが……遅かったようだ。既にVAVAは脱走した後。現場に残されていたのは、大量の警備とイレギュラーハンターのレプリロイド達の残骸。

 

 どれも、()()()()()()破壊されていた。メカニロイドを暴走させている犯人だと思われているレプリロイドが行った犯行と同じだ。

 

「つまり、犯人はVAVAを逃がす為にメカニロイドを暴走させているって事か……?」

 

 憶測でしかないが、そう考えるとますます分からない。VAVAを解放して一体どうしようと……。

 

 

『エックス、ゼロ! 聞こえますか!? ハッキングの逆探知に成功しました!』

 

 

 そこまで考えたところで、犯人の位置を捉えた、と報告が入った。

 俺達二人は直ぐに現場……ミサイル基地へと向かう。

 

「他の部隊は?」

 

『全部隊に連絡しましたが、殆ど反応が途絶えています……! シグマ隊長にも連絡が取れなくて、イオさんにも通信が遮断されているようなんです!』

 

「……イオも!?」

 

『はい。その……彼女が、ハンター訓練所で暴走したメカニロイドの撃破をしたすぐ後に、連絡が取れなくなって……。』

 

「……!」

 

「クソッ……先走って一人で突っ込んでなきゃいいが……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 そうして現場へと急行した俺達は、ミサイル基地へと潜入した。

 人気はなく、セキュリティも起動していない。

 どこかに敵が潜んでいる可能性があるとして常に警戒を怠ることなく奥へと進むと……。

 

 

「! 聞こえたか、エックス!」

 

「ああ、聞こえた! 誰かが戦闘している音だ!!」

 

 

 それは何度も聞いた、セイバーが振られる音、バスターが発射される音だ。

 かなり激しい戦闘が繰り広げられているらしい。

 だが、一体誰が?

 

 俺達は急いで音のする方へと向かい、そして……。

 一際大きな音がしたすぐ後に、その現場を目撃する事になる。

 

 そこには、激しい戦闘跡と……蜘蛛の巣状にひび割れた壁のすぐ下に、ぐったりとした様子で意識を手放しているイオの姿と……大きな怪我こそないものの、小さな傷が多く、疲弊した様子のシグマ隊長の姿があった。

 

「イオ!! シグマ隊長!! これは一体……!?」

 

「エックス、ゼロか。」

 

 シグマ隊長は俺達を見た後、モニターに目を向けて口を開く。

 

「犯人はどうやらここの警備システムを使い、メカニロイドをコントロールしていたらしい。」

 

「そうか……ここの警備システムをカムフラージュに使っていたという訳か。いや、今はそれよりも……」

 

「そうだ! それよりも……イオ! 大丈夫か!? 犯人にやられたのか……!?」

 

 壁に寄りかかる形でぐったりとして動かないイオはまるで糸の切れたマリオネットのようにピクリとも動かない。だが……。

 

「……これなら、まだなんとかなる。多分強い衝撃を与えられたショックで……。」

 

 現場こそ派手だがまだこれなら修復は可能だろう。流石はイオだ。いかに戦闘能力の高い犯人でも彼女を急所を一撃で倒す事が出来なかったんだろう。……そうだ、今犯人はまだこの辺りのどこかに!

 

 俺は犯人を捜すため、まずシグマ隊長へ話を聞くべきだと思い振り返る……。

 

 そこにはゼロが深刻そうな顔でイオを見て……その後ろで、シグマ隊長が()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その次の瞬間、セイバーは振り下ろされ……ゼロは身をよじってそれを受け止めた。

 

 

「ほう! 今日は素晴らしい日だな、今の攻撃を退けるレプリロイドが二体も現れるとは!」

 

「二体……? やはりお前がイオをやったのか!!」

 

「シグマ隊長!? ゼロ!? いったい何を……!?」

 

「エックス! シグマ隊長……いや、シグマが犯人だ!! メカニロイドを暴走させている犯人も! これまでのイレギュラーハンター達をやったのも、VAVAを逃がしたのも……イオをやったのも!」

 

「な……!?」

 

「そうか、そこまでバレていたか……!」

 

 な、何故だ? どうしてこうなっている? シグマ隊長が……イレギュラー!?

 

「ああ……高い戦闘能力に判断力……この両方を併せ持つレプリロイドはそう多くない……! そして急所を狙ってくると分かっていれば……こうして受け止める事も出来た!」

 

「流石はゼロ! と、言ってやりたいところだが……受け止めるのではなく避けるべきだったな、()()()()()()!」

 

 

 そう言うと、シグマは受け止められている手とは逆の手でゼロの頭を掴み、そのまま軽々と持ち上げ、ギリギリと締め上げる。

 

「シグマ隊長!! 何をしてるんですか!? ゼロを離してください!!」

 

「ククク……ここまでやって尚、私を信じているエックスの甘さこそ、レプリロイドとして貴重だと言わねばならんな! そう思うだろう? ゼロ……。」

 

 俺は咄嗟にバスターをシグマ隊長へと向ける。彼が本当にイレギュラーなら、俺は、彼を……いや、シグマを……撃たなければならない!

 そして脅すようにわざと大きな音を立てながらチャージを始めると、それを見て更に口角を釣り上げたシグマが心底楽しそうに口を開く。

 

「そうだ!! エックス、良く狙え!! 私を止めたければ今すぐにゼロの身体ごと私を撃ち抜く他無いぞ!!」

 

「なっ……!?」

 

 思わず、バスターの撃つ構えを解きかける。

 

「どうした!? 撃て!!」

 

 ……そんな、そんな危険な事、出来る訳が……!!

 しかし……やらなければ、ゼロが……!!

 

 そんな()()がまるで身体に現れたかのように、バスターが、構える手が、全身が震えて照準が定まらない。

 

 ()()()()が重なる。

 メカニロイドに捕らえられた仲間が、その奥にあるメカニロイドのジェネレーターが、それを撃たなければならなかった、あの状況、あの光景が。

 

 

 

「……ッ!」

 

「クッ、クククッ、ワァーッハッハッハッハッハ!! どうだエックス、やはりお前は()()なのだ。」

 

 そう、というのが何を指しているのか……今の俺には痛い程分かってしまう。

 シグマはそういった直後、ゼロを軽くボールでも投げるように放った後、空中を舞うゼロの身体を()()()()()()()切り裂いた。

 

「ぐあああーーーーっ!!」

 

「ゼロッ!! ッ! ぐああっ!!」

 

 切り裂かれたゼロが地面に叩きつけられ、バウンドしてそのまま地面に倒れ伏すのをつい目で追ってしまい……シグマから目を逸らしてしまう。その一瞬の隙は、シグマにとって見逃そうと思っても見逃すことのできない致命的な一瞬。

 

 俺がしまった、と思う頃には既に首を締め上げられながら、軽々と持ち上げられ、逃げる事も許されない状況を余儀なくされていた。

 

 しかし、それでも反抗するためにバスターをシグマに向けてチャージする。

 この距離なら、絶対に外さない。

 

「もう遅い。前に言ったハズだエックス。「引き金を引くのを躊躇うな」と。お前が私を撃てるチャンスはアレが最後だったのだ!!」

 

 そう言って、シグマは取り出したスイッチに手をかける。

 すると基地中にけたたましいサイレンの音が鳴り響き、何か、大きな機械音が地鳴りのように基地を揺らす。

 

「……!?」

 

 そして気付いてしまう。ここが何の基地だったのか。ふと横に目を逸らせば、そこには強化ガラス越しに見える、発射準備に入ろうとしている無数のミサイル群。

 

 

「もう一度このスイッチを押せばこの基地の全てのミサイルが発射される! 私達の街にだよ、エックス! さあ、どうする!? 街をかけて私を撃ってみるか!? 出来なければ武装解除してもらおうか!?」

 

 

 もし、このまま撃てば……いや、撃とうとした瞬間。

 間違いなくシグマはスイッチを押すだろう。

 そして、武装を解除したところで、きっと……だけど……。

 

 俺は、歯を食いしばりながら……武装を、解除()()()()()()

 

 

 

 

 その瞬間、鳴るハズの無いバスター音が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

===DATA===

 

 

 

 

 

「クッ、クククッ、ワァーッハッハッハッハッハ!! どうだエックス、やはりお前は()()なのだ。」

 

 

 ああ、そうだな……ホントに、甘すぎるとは時々思っちゃうぜ、実際。

 

 

「ぐあああーーーーっ!!」

 

「ゼロッ!! ッ! ぐああっ!!」

 

 あーもー……何してんだよ、そんなもんじゃないだろ、二人共。

 

「もう一度このスイッチを押せばこの基地の全てのミサイルが発射される! 私達の街にだよ、エックス! さあ、どうする!? 街をかけて私を撃ってみるか!? 出来なければ武装解除してもらおうか!?」

 

 なんつー無茶な注文だよ。俺でも迷っちゃうね、そんなの。

 だからそんな要求飲む必要は無い。スイッチだって撃たせない。

 

 俺は、シグマが、武装を解除して切り離されようとしているエックスの右腕に注視している……その一瞬。

 

 

 これ見よがしに持っていた、右手のスイッチへと、照準を合わせ、そして……。

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

「ヌアアアーーーッ!?」

 

 俺が放ったバスターはシグマの右手の中心に大穴を開け、握っていたスイッチを破壊した。

 

 

「へへ……ざまあ、みろ……。」

 

「ぐ、く、ククッ、フハ、フハハハハハッ!! 素晴らしい!! 素晴らしいぞ!! ああそれでこそ!! それでこそという物だ!! そう来なくては面白くない!! さあもっと見せて見ろ!! 私達レプリロイドの可能性とやらを!!」

 

「ぐっ……!! シグマァ!!」

 

「ぬぅん!!」

 

 エックスは解除しかけていたエックスバスターを咄嗟に装着しなおして、再度シグマを撃とうと……した直後に、力任せにぶん投げられ、床に叩きつけられ、小さなうめき声と悲鳴を上げた。

 

 そして、シグマはと言うと、叩きつけられるエックスに目もくれず、勢いよく俺に飛び掛かり、壁に寄りかかった状態の俺の腹部に強烈な膝蹴りを放つ。俺はそれを避ける事も防ぐことも出来ずに……今度こそ本当に意識を失った。

 

 

 




【シグマ】
全ての元凶。つるピカ●頭ハゲケツ顎可能性信者おじさん。とてもつよい。

Q.事前に殺せよこんな奴
A.殺したとて実はシグマウィルスがなんちゃらとか言って蘇るので無意味だし、当時は有能なイレギュラーハンターとして活躍してて憧れの的だったんで、突然ぶっ殺しなんてしたら投獄される。

Q.事前にコイツがやる事を全部予言みたいな形で教えたら?
A.会話や通信は傍受されている可能性がある為使えない。

Q.理 不 尽 過 ぎ ん?
A.ほんそれ。この人これでロクXシリーズ通して大体ラスボスやってる奴だからこの程度ではまだまだ序の口なんだよね……。

Q.この後主人公ぶっ殺されるんじゃねえのこれ
A.ネタバレするとこの後エックス君が頑張ってくれました。




【訓練所の皆】
物語に登場すら出来ないモブ。
主人公が生まれてからお世話になってた施設の皆。
皆主人公の事を尊敬していたし、憧れていた。
主人公は自分の事で手一杯で、記録でも彼らについて殆ど触れられていない。
それだけ必死だったという証拠でもある。
ただ、そのせいで、まだ見習いだった彼らについての記録は一切残ることは無かった。
彼ら視点での主人公を見た時のデータも同様である。
残ってはいないけど、彼らは皆、言えばアドバイスしてくれたり、基本優しくて、あのシグマ隊長に直接スカウトされるという異例の大出世でイレギュラーハンターになったあの子をずっと気掛かりにしていた。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7【Io/Other】

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 

 

=====《補完記録「side:X」》========

 

「……カハッ。」

 

 シグマによって膝蹴りを受けたイオは一撃でそのまま意識を失い、壁に寄りかかった状態で制止する。

 

「イオッ!!」

 

「……おっと、少し強くしすぎたかな? まあ、この程度ならまだ立ち上がれるだろう。」

 

 制止したイオを見て一旦興味を失ったものの、愉快そうな様子のシグマは俺の方へと顔を向ける。

 

「それで? こっちはどうかな?」

 

「もうやめろシグマ!! お前の計画は失敗だ!!」

 

「失敗? ククッ、フハハハハハッ!! それがミサイル発射の事を指しているとしたらとんだ勘違いというものだよ、エックス! 確かにスイッチは失ったが、ならばお前を排除した後、ここのコンピューターを使って直接撃てばいい。」

 

「なっ……そんな事は、させない!! イオが作ってくれたチャンスを無駄にするものか!!」

 

 

 先ほどまでとは状況が違う。俺は、仲間を傷つけた奴を絶対に許すことは出来ないし、奴へ向けて引き金を引く事に対する躊躇いや迷いは、もうどこにもありはしない。

 

「くらえ!」

 

「ぬるい!!」

 

 バスターを連続で放つも、まるで動きを全て読んでいるかのように、最小限の動きでそれを避けていくシグマ。

 

 一方の俺は奴が振るうセイバーを避けながらがむしゃらにバスター放つので精一杯だ。

 

 分かっていた事だが、なんという戦闘能力、そして判断力の高さ。イオの戦闘で多少ダメージがあり、かつ右手が使えないと言うのに、ここまでの差があるのか……!!

 

「だが、俺は負けるわけには……!!」

 

「どうした!? こんなものか!?」

 

 こうして相対しているだけでも、嫌と言う程に理解してしまう。

 俺はシグマに勝てないという現実を。

 だが、だからといって諦められるかと言えばそんな事はない。

 例え相討ちになったとしても……!!

 

「……!」

 

 と、そこまで考えてはたと気付く。

 待て、今俺が最優先すべきはシグマを倒す事だろうか。

 

「また()()()かエックス!? 随分と余裕だな!!」

 

「ぐあっ!!」

 

 ()()。俺が最優先すべきはコイツを倒す事じゃない。

 

「……ッ! ハァァーーーッ!!」

 

「……ほう、とうとう覚悟を決めたか? 今度こそ良く狙いたまえ!」

 

 シャッ、と残像を残して視界から掻き消える程のスピードでシグマが縦横無尽に駆け出す。 床を、壁を、天井を蹴る音と、チャージの音だけが響く。俺は目と耳で奴の姿を追い、バスターの照準をしっかりと合わせる。

 

「死ね! エックス!!」

 

 そして、俺の死角から急所を狙って高速で突っ込んでくるシグマをしっかりと捉え……横に思い切り飛んでセイバーを躱し、俺はバスターを()()()()()()()()()()()()向けた。

 

「うおおおーーーーっ!!!」

 

「何!?」

 

 最大威力のチャージショットは制御装置を大破させ、後ろの強化ガラスを破壊したところで分散して掻き消える。

 

 そう、俺がやるべき最優先事項はコイツを倒す事じゃなく、コイツの計画を阻止する事……イオが作ってくれたチャンスを無駄にしない事……皆を護る事だ!

 

「これで……ミサイルはもう発射できない……!」

 

「……! そうか、クククッ、それがお前の()()()だと、そういう事か!? フフ、フハハハハハッ!!」

 

 だが、計画が失敗に終わったというのにシグマはより一層笑みを深めて高笑いした。どういう事だ、確かに計画は阻止したはず。なのにこの余裕は……?

 

「分からない、と言った顔だな? 無理も無い。再三勘違いさせてしまったようだが、そもそもこのミサイルの発射は私にとって人類への宣戦布告を宣言する為の狼煙に過ぎなかったのだよ、エックス。」

 

「何!?」

 

「ここまで頑張ったお前にサービスで教えてやろう! 我が野望を!」

 

 そしてシグマは両腕を広げ、狂気的な笑みを浮かべ、大声で、世界に告げるようにこう宣言した。

 

 

「私の野望! それは私達イレギュラーが支配する理想郷を築き上げ、旧世界の生物である人類と、私に背くレプリロイド達を全て抹殺し、新たな世界を創造する事だよ、エックス!!」

 

「な……!?」

 

 何を馬鹿なことを、と続けようとして背筋に悪寒が走る。

 シグマは……コイツは信じている。

 自分ならこの野望を達成する事が出来ると本気で信じている……!!

 

「既に、この考えに賛同してくれた同志達が、各地で行動を起こそうとしている頃だろう。」

 

「同志達だと……!?」

 

「お前も()()()()()()()()()だよ、エックス。」

 

 俺が良く知っている者達だと……? それは一体……。

 

「さて、話はここまでだ。続きを始めようじゃないか!! フハハハハッ!!」

 

 コイツは、コイツだけは、ここで止めないと絶対にまずい事になる。

 俺はそう確信し、再びバスターをシグマに向けて放つが、セイバーで弾かれ、そのままシグマの接近を許してしまう。先ほどとは違う! 奴は完全に勝負を決めに来ていた……!! 俺は、そのままシグマの振り抜いたセイバーで腹部を貫かれた。

 

「が、あ……!!」

 

「この程度か、エックス? 可能性とやらはこれで終わりか? ……いいや、違うだろう。むしろこれから始めるのだ。我々の世界を……!!」

 

 俺は……コイツを、止めなければ……! コイツを……シグマを……!!

 

 

 ス……。

 

 

 ……?

 

 なん、だ……。

 

 ックス……。

 

 

 

 誰かの、声……が……。

 

 

 エックス……。

 

 あなたは? 

 

 

 

 ワシはトーマス・ライト。お前の生みの親だよ。エックス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これより先のデータへのアクセス権限を確認出来ません。

 

 未知の情報プロテクトを確認。

 

 プロテクトの解除を実行……。

 

 

 

 ……失敗。

 

 これ以上の試行はカウンタープログラムが起動する可能性があると判断。

 

 データ解析を強制終了。

 

 

========

 

 

 次のデータへのアクセス要請を確認。

 

 アクセス要請を承認しました。

 

 

===DATA===

 

 

 

 

=====《補完記録「side:Z」》========

 

 

「くっ、俺としたことが……!!」

 

 ボディの斬られた箇所にダメージを負いつつも、俺は意識を取り戻した。

 どうにか四肢に力を入れ、膝に手をついて無理矢理立ち上がると……。

 

「エックス……? エックス!!」

 

 部屋からは戦闘の痕跡が見て取れるが、首謀者であるシグマの姿はなく……その代わりに、胴体に穴を開け、立ったまま機能停止に陥っているエックスの姿があった。

 

「大丈夫か!? しっかりしろエックス! ……ダメか!」

 

 今ここでどうにかできるダメージではない。だが、見たところ、重要なパーツへの被害はそうでもない。きちんとした治療を受ければ治るハズだと判断した。

 

「う……。」

 

 ふと、壁際からうめき声が聞こえる。

 見れば、意識を取り戻したのであろうイオが無理矢理立とうとしていた。

 

「イオ! 無事だったか。」

 

「ゼロ、さん……。」

 

「無理するな! 今ハンターベースに連絡して、救護班を……!」

 

「そんな暇は、ありません。ゼロさんは、エックスさんを連れて、早く……私では、ダメでした……。今は一刻も早く、シグマを止めないと……!! 手遅れに、なってしまう!」

 

 見れば、イオの損傷は俺たちの中でも一番激しく、特に腹部に至っては、貫通していないものの、損傷具合で見れば、串刺しになっているのとそう変わらない程のダメージを受けていた。

 

 なにより、俺もレプリロイド二人を担いで本部に向かうだけの力は残っていない。こいつの言うように、俺とエックスの二人で脱出し、通信が回復する位置まで向かって救援を呼び、エックスと俺がシグマの打倒へと向かうのが最適解だろう。

 

「大丈夫、です……見た目こそ派手になりましたが……再起動に必要な重要パーツは幸いにも無事でした……だから、大丈夫です。」

 

「……分かった、必ず救援を呼ぶ。それまで……眠っていろ。」

 

「後、は、お願いし……ま……。」

 

 そう言うと眠るように瞳を閉じ、機能停止するイオを見た後、俺はエックスの身体を引きずりながら、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

===DATA===

 

 

 

 

 

 そこに居るのは誰だ!? ……なんてな、冗談だよ。驚いたか? これはただの……記録に過ぎない。

 

 あー……簡潔に言う。

 

 これは、俺が未来の俺へ向けたメッセージだ。

 そして、これが流れるタイミング、それは俺の思考回路への負荷が一定以上に達し、その上で、一定時間以上元に戻らなかった場合に流れる。

 

 ……俺が言いたい事分かるか?

 つまりお前は、未来の俺であるお前は今、脳が焼き切れようとしているって事だ。

 

 もしかしたら単にブチギレてるってだけかもしれないからその場合はこの記録を見なかった事にしてまた元の状態に戻しておいてくれたらそれでいい。

 だがそうじゃないなら、お前は……何らかの原因でイレギュラー化一歩手前まで来ているって訳だ。

 

 考えられる原因は二つ。

 

 一つはさっきも言ったけど、俺がブチギレ一歩手前で、思考回路が焼き切れそうになっている場合。

 ここまでこれを聞いて、尚且つ俺の言葉の意味が理解出来ているなら分かると思うが、一旦落ち着いて、頭を冷やしてくれ。

 人間と違って一旦焼き切れたもんは切り開いて修理しないと元に戻らないんだ。

 

 で、もう一つの原因、それは、お前が何らかの原因でウィルス……おそらくはシグマウィルスに感染してしまった場合だ。

 

 もしそうだとしたら……現状、俺にもお前にもそれをどうにかする事は出来ない。

 諦めて、銃をどこか俺が回収できない場所に処分するとかしてほしい。

 もし今の俺よりお前の方が精神的に成長していて、仲間の為に自害が出来る精神性を持ち合わせているのならそれでもいいさ。

 

 ……また、この場合、イレギュラー化してしまった俺がその後どうなるかは俺にも予測が出来ない。

 

 よお! イレギュラー化した俺君! あんま馬鹿な事すんなよな! ほんと、頼むぜ。

 

 そして、そうなったとしたらこの記録は未来の俺だけではなく……未来の、イレギュラーとなった俺を誰かが殺して、その残骸からこの記録を取り出している可能性もある。

 

 もしそうなら、迷惑をかけて申し訳ない。謝るよ。あと、俺の記憶データはちょっと問題があるから出来れば覗かないでくれ。これは恥ずかしいからとかじゃなくて、本当に問題があるんだ。俺の身体を見た事があるなら既に分かってるだろ? つまり、うん、そう言う事だ。

 

 あ、でも武器とかボディの方は、残ってるなら、好きに使って欲しい。未来がどうかは知らないが、それなりに役立つ身体だと思う。武器は……まぁ使いこなせればいい武器だよ。保証する。

 

 ……てかこれ、上手くいってんのかな? ま、いいか。

 

 ……では、未来の俺またはこれを見ている誰かさんへの記録を終了、幸運を祈る。

 

 

 以上。

 

 

 

 

 

===DATA===

 

 

 

 

 アクセスを確認。

 

 システムの再起動を要請。

 

 要請を受諾、実行します。

 

 実行中……。

 

 再起動時における自動セキュリティスキャンを実行。

 

 実行中……。

 

 

 失敗。

 

 

 実行が途中でキャンセルされました。

 

 警告します。

 

 当プロセスは再起動において非常に重要なプロセスであり、セキュリティスキャンを行わない場合、システムになんらかのエラーやウィルスが存在した場合、その存在を確認出来ません。

 

 非常事態における、システムの再起動を最優先とする起動モードの要請を確認。

 

 要請を受諾。

 

 システムの再起動を再開。

 

 セキュリティスキャン……キャンセル。

 ボディスキャン……キャンセル。

 データスキャン……キャンセル。

 ……。

 

 システムを再起動。

 

 

 

 

 

 目を開くと……そこは、修理用ポッドの中。既に開かれたポッドの扉の周囲には、ナース型や医師型のレプリロイド達が慌ただしく行き交っており、そのうちの一体が俺へと駆け寄る。

 

「目が覚めたんですね! 良かったです……少し待っていてくださいね!」

 

「あ、はい……。」

 

 駆け寄って来た一体はそう告げた後足早にどこかへと去っていった。

 

 ……ここは、イレギュラーハンター本部のメディカルセンターか? 見れば、他のポッドの中にも、今まさに修理を受けている奴や、これから受けようとしている奴の姿が見える。

 

 ……そうか、俺、あの後……!!

 

 

「……!! い、今、何日……!? あれからどれくらい経ったんですか!?」

 

「きゃっ!? ちょ、ちょっと! まだ寝てないとダメですよ!」

 

 俺は近くをたまたま走っていた別個体の肩を掴んで問いただす。

 そいつは慌てながら、俺が機能停止になって、そしてここに運び込まれるまでに26時間……そして、ここで修理されてから今目覚めるまでに4時間もかかった事を告げた。

 

「一日以上経ってる……。」

 

「調整がまだなので、そこから動かないで下さいね!」

 

 そう言って、メディカルセンターのナース型レプリロイドが去っていく。

 

 これは……既に全て終わってしまった後なのでは? そうも考えたが……なんにしても、ここで寝ている訳にも行かない。ここから抜け出さなくては……。

 

「銃はどこだ……? ああ、頭がくらくらする……。くそ……。」

 

 




【謎の博士】
ウン百年レベルで時代を先取りした天才おじいちゃん。Xを作ったのはこの人で、レプリロイドはXに使われている技術を元にして作られている。


【遺書】
イオが自分にイレギュラー化する兆候が現れた際に再生されるようにしたデータ。もしもイオが今後破壊されたときにデータが残っていれば簡単に見る事が出来る。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6【Io/Other】

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 

 

 

=====《補完記録「side:X」》=========

 

 メディカルセンターで治療(修理)を受けた後、俺はハイウェイにてイレギュラーが発生し、街の人々の避難が遅れているとの報告を受けて現地に駆け付けた。

 

 ミサイル基地でのシグマの計画は阻止出来たものの……俺達が眠っている間に、シグマは次の一手を打って来た。

 

 いや、正しくは既に打ってあったというべきか。

 シグマは、イレギュラーハンターの中から自分の思想に同調する者を配下としており、計画の実行と同時に多くのイレギュラーハンターが反旗を翻したのだ。

 

 ……その中には、当然、俺が良く知る人物達や、尊敬する人、恐ろしい人……各隊長の姿があった。

 

 ――――既に、この考えに賛同してくれた同志達が、各地で行動を起こそうとしている頃だろう。

 ――――お前も()()()()()()()()()だよ、エックス。

 

「あの時のシグマのセリフは……こういう事だったのか……!」

 

 ライドチェイサーのハンドルを握る手にギリギリと力が入る。

 悔しさ、悲しみ、怒り、恐怖……様々な感情がごちゃ混ぜになって、俺の心をかき乱す。

 

「……クソッ……!」

 

 ハンドルを力いっぱい殴りつけたい衝動に駆られ……今はそんな事をしている場合じゃない、と考え直す。

 

 前方へ意識を戻すと、あちこちから爆発音が鳴り響き、黒煙が立ち込め、炎に包まれた街が広がっている。……もう少し進んだ先がイレギュラー達が暴れている地点だ。

 

『エックス! そのエリアの暴動も、イレギュラーが誘導されている可能性が高いわ!』

 

「誘導……やはり、シグマか!」

 

 ……イレギュラーが支配する理想郷を築き上げ、旧世界の生物である人類と、私に背くレプリロイド達を全て抹殺し、新たな世界を創造する事、それが目的だと奴は言った……。

 

 ……本当にこの世界を……人間や罪の無いレプリロイド達を滅ぼすつもりなのか、シグマ……!!

 

 

 

 

===DATA【破損ファイル】===

 

 

 

 前々から考えていた事だが、俺はこの事件に対し、どう動くべきなのだろうか。

 

 そもそもの話、俺がエックスやゼロの代わりを務める……すなわち第三、いや、第四の主人公となって、各ボスを破壊するムーブ……これはダメだ。

 

 何故かというと、それではエックスが成長せず、シグマに勝てないからだ。

 

 この物語は、エックスと言うヒーローが戦いの中で学習、成長し、悪の親玉であるシグマを倒すという単純明快なストーリー。

 

 その学習し成長する機会を奪うってのはつまり、ドラゴンボールで言えば先にフリーザを倒してナメック星編を終わらせた後でスーパーサイヤ人になれず宇宙船での重力修行もしていない悟空とセルを戦わせるぐらい無謀な事だ。

 

 なので、俺は当初の目的では各ボス本人達には何もせず、ゼロやエックスが動きやすいように、街を襲う雑魚共を片付け、街を守る……という予定だったが、ここで誤算が発生した。

 

 俺がシグマのミサイル発射計画を妨害した事で未来が変わったのだ。

 

 つまり、このミサイルで大量に死ぬはずだったイレギュラーハンター達がこの世界では生き延びており、街の警備等は……問題が無いと言えばウソになるが、原作よりかは若干余裕があると見て良いだろう。

 

 となると、俺には他にやるべきことがあるのではないか。

 

 

 そう考えた結果、俺は各ボスでもなく、街の警備でもなく……VAVAを追う事にした。

 

 VAVA。ロックマンXシリーズにおいて、Xのライバルキャラのようなポジションであり、イレギュラーハンターでありながら、戦闘狂ですぐにやり過ぎて事件沙汰になってしまう手の付けられない問題児。

 

 それでいて戦闘能力はピカイチであり、頭脳はと言えば、これも悪くない。実はライドアーマーという乗り込み型のメカニロイドを使用しての戦いを発案した張本人であると言うんだから、本当に厄介な事この上ない。

 

 そして、そんなライバルキャラであるVAVA……実は初代Xのリメイク作品である「イレギュラーハンターX」において、プレイアブルキャラとして操作が可能であったりする。

 

 プレイアブルキャラという事がどういうことかと言うとだ。

 

 このVAVAがエックスみたいに各所のボスを撃破し、かつ最後はエックスとゼロの二人と死闘を繰り広げる……という世界線が存在するという事だ。

 

 なおこのルートに入った場合、何故かエックスは各地のアーマーを手に入れているし、VAVAはラスボスであるシグマまで届かず、最後はエックスとゼロに撃破されて終わりだ。

 

 ……余談だがこの前シグマを出し抜くためにやった作戦もこのエンドのムービーでVAVAを倒す為にエックスがとった作戦から学び得た物だったりする。

 

 で、このルートだと何が困るって、この世界でのエックスがちゃんとアーマーを手に入れてくれるか分からないという点だ。……実際、VAVAがボスを撃破した後にそこに行く理由、全然無いしな。……いや、エックスがVAVAを追っていたからとか、VAVAが各ボスを撃破していると知らずに潜入した、というならまぁ分からないでも無いが。

 

 何にせよ、だ。

 何か運命的な力が働いて手に入る可能性もあるかもしれない。

 だが現実的な問題のせいで手に入らない可能性もあるかもしれない。

 

 だから、より確実にXに成長してもらう為、VAVAを止めさせてもらう。

 それが俺が今現状で出来るエックスとゼロへの最も効果的なサポートだろうと確信する。

 

 となると、VAVAの動向が気になる所だが……。

 

 確か、最初のステージ……ハイウェイエリアでVAVAとエックスの戦闘があった際、VAVAはエックスを追い詰めるが、ゼロの助太刀があった事でVAVAは逃亡。その逃亡手段にエアシップを使ってその場から離脱する。

 

 飛行手段をもたないエックスとゼロはVAVAを追えず……といった流れだったハズ。

 

 ……今、駆け付けて間に合うだろうか? 損傷具合からして俺の方が目覚めるのが遅かったハズ。エックスやゼロが目覚めてすぐ向かったのなら、今から向かっても間に合わないだろう。

 

 ……いや、考えている暇は無いか。

 

 そもそも、原作でVAVAがどういう動向だったのかはこれ以外だと全くの不明だ。

 つまりこのタイミングを逃したらVAVAを追う事は出来ない。

 

 間に合わなかったら……その時は……。 

 

 

 そこまで考えた後、俺はハイウェイエリアへと向かった。

 

 

 

=====《補完記録「side:X」》=========

 

 

 ハイウェイエリアのイレギュラーを掃討しながら、その中心へと突き進むと……空中のエアシップからライドアーマーに搭乗した見覚えのある人物が眼前に降り立った。

 

「……お前は、VAVA!!」

 

「よお、甘ちゃんエックスがこんな所で何をしている?」

 

 VAVA。優れたイレギュラーハンターだが、その素行に問題が有り、留置所で拘束されていたハズだが、シグマによって解放された。

 

「お前も、シグマの反乱に加わっていたんだな!?」

 

「反乱……? そんなものに興味はない。」

 

 大声で問いただした答えは、俺の予想外の物だった。

 興味が無い……? VAVAはシグマの反乱に加わり、イレギュラーを誘導していた訳じゃないというのか? だったら、何故……?

 

 そこまで考えて、偶然にもその疑問に答える形でVAVAは告げる。

 

「俺はなエックス、お前の事が気に食わなかったんだよ……だから、壊す!!」

 

「!!」

 

 

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

 

WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!!

 

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

 

 

「うおおーーーっ!!」

 

「無駄だ!!」

 

 

 俺はVAVAの乗っているライドアーマーへ向かってチャージショットを放つ……が……。チャージショットはライドアーマーの装甲に弾かれ、霧散して消えてしまい、装甲には傷一つついていない。

 

「忘れたのか? ライドアーマーは元々は土木作業用のメカニロイドだ。そして……危険な地帯でも問題なく稼働できるよう、頑丈に設計されている! 更に、俺が愛用するこの機体は特別製でねえ……お前のチャージショット程度では傷一つつけられんぞ!!」

 

 そう話しながらも、VAVAの攻撃の手が緩む事は一切ない。

 岩をも砕く鋼鉄の拳、VAVA本人やライドアーマーに搭載されたランチャーからの砲撃や雷撃を避け続けながら、どこかに打開策が無いかと考え……。

 

「なら……直接お前を……!!」

 

「馬鹿が、俺がその程度の対策をしていないとでも思ったか!?」

 

「ぐああーーーッ!!」

 

 ライドアーマーに攻撃してもダメージが与えられないならば、搭乗者であるVAVAを狙えば……そう考えて照準を合わせようとしたところで、それを読んでいたとばかりに、照準を合わせるため一瞬停止した瞬間を狙われて、俺は全身にランチャーから放たれた雷撃をくらい、身体を動かせなくなってしまう。

 

「ぐあっ!!」

 

 その致命的な隙をVAVAが逃すはずもなく……。俺はライドアーマーの腕によって掴まれ、空中に吊り上げられる。どうしようもない無力感が広がる。

 

「エックス……! お前には何もできん! お前を殺し、シグマも殺し、世界を変えるのはこの俺だ!! フハハハハハ!!」

 

 

 そう言いながら、VAVAは肩につけたランチャーの砲口を俺へと向け、俺を粉みじんに破壊しようとしたその時……。

 

 強力なバスターの発射音と共に、俺を持ち上げていたライドアーマーの腕部分が突然爆発する。

 

 空中に放りだされた俺は受け身を取ろうとするも、電撃で痺れた身体がいう事をきかずにそのまま落下する。

 

「エックス! 大丈夫か!?」

 

「ゼロ!」

 

 ゼロが持つバスターは、俺の持つバスターよりも高出力だ。俺のバスターがダメでもゼロのバスターなら、あのライドアーマーにダメージを与えられる!

 

「ゼロ……どうしてお前程の者がそいつに肩入れする……? そいつは単なるB級ハンターに過ぎん!!」

 

「VAVA……。今のお前はただのイレギュラーだ。」

 

 言外に、だからお前を排除すると告げ、ゼロがバスターを向ける。

 そして、その直後にゼロが放ったチャージショットを躱す形でハイウェイの道路から跳躍し、下へと落下するライドアーマーとVAVA。

 

 この高さから落ちたらライドアーマーと言えど無傷ではいられないだろうに、何故……と考えた次の瞬間、先ほど飛び降りてくる際に使ったエアシップが現れ、その甲板にはライドアーマーに搭乗したVAVAの姿があった。

 

「ちっ!!」

 

 ゼロがもう一度チャージショットを放つ……が、距離が開き過ぎて、本来の威力と精度を発揮出来ず、エアシップの装甲に弾かれてしまい、みるみるうちに距離が離れ、ついには煙で視認できない所まで逃亡されてしまう。

 

「クソッ……。逃がしたか。」

 

「ゼロ、VAVAは……シグマの反乱に加わったわけではないと言っていた。……VAVAは一体何を……?」

 

「……目的は不明だが、分かるのは、奴は俺たちの敵だという事だ。……エックス、俺はこれからシグマの足取りを追ってみる。お前は一旦ハンターベースへ戻れ。」

 

「……分かった、後で合流しよう。」

 

 

 話した後、ゼロは踵を返し……「それと」と顔だけで振り返る。

 

 

「イオが……調整中にメディカルセンターから脱走したらしい。点検中だった愛用のガンブレードも持って、姿を消したそうだ。通信も繋がらない。」

 

「なっ……!? 一体何故……!?」

 

「分からん……だが、奴ならあるいは、シグマが今どこに居るかを知っているかもしれない。奴は一番シグマと近いレプリロイドだったからな……。」

 

 そうだ。イオはシグマによって新人の頃引き抜かれ、その後もシグマの下で数々の困難な任務をこなし、シグマに気に入られていた。俺達イレギュラーハンターの中で最もシグマの考えや思考パターンを知っているのは、彼女だ。

 

「だったら、すぐに彼女を見つけないと……。」

 

「……ああ。もしこっちで見つけたら連絡をする。」

 

「分かった、ありがとう、ゼロ!」

 

 

 そうして、今度こそゼロが立ち去る。その後、俺は回復した転送装置で転送し、ハンターベースへと戻る事にした。

 

 そのハンターベースへと戻った直後……俺は、各地で大規模なイレギュラー反応が確認された事、そして、反乱が本格化してきたという事実を知らされた。

 

 

 

=====《補完記録「side:Z」》=========

 

 

 ……イオについて、俺には、エックスには話していなかった懸念があった。

 

 というのも、何故イオは突然姿を消したのか。

 調整を受けずにメディカルセンターから出る事は、明確な規約違反だ。

 

 違反を犯してまで、行かなければいけない事情があったのか。

 

 そうでないとしたなら……イオもイレギュラー化してしまった可能性があるのではないだろうか。

 

 エックスとも話したが、イオはシグマと最も近いレプリロイドであり、優れたイレギュラーハンターだ。

 

 それはつまり、シグマの思考や思想を最も近い所で受け続けていたのではないかという可能性があるという事……イオもまた、シグマと同じようになっているのではないか……。

 

 もしそうだったとしたら、俺はイオを……。

 

 いや、俺よりも、エックス……もしお前が、イレギュラーとなったイオと相対したとしたら、その時……お前は……。イオを撃てるのか……?

 

 

「……チッ、どうしてこう世話のかかる後輩ばかりなんだ……。」

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

「……なんだ、これは。」

 

「……こんにちは。」

 

「誰だ……? いや、見覚えがある……お前は確か、シグマの腰巾着……。」

 

「イオです。……初めまして、VAVAさん。」

 

 

 

 エアシップの中……コントロールルームにて、二人のレプリロイドが邂逅した。





【VAVA】

紫色のアーマーに身を包み、ヘルメットは作品内では珍しいフルフェイス型の物を使用していて素顔が明らかになっていない(もしかしたら元からそういう形状で素顔とかないのかもしれないけど。)

シグマには劣るものの充分厄介な問題児で、シリーズではちょくちょく復活したりする。
機動力と攻撃力に優れていたり、ライドアーマーを戦闘に導入したり、シンプルに強い。が、シグマ程じゃないのと、シグマ程レプリロイドの可能性について執着しておらず、ただただ自分が脅威であると世界に認めさせたいだけの狂戦士。エックスに対しては「優柔不断で甘ちゃんで弱いのにどうしてどいつ(シグマ)もこいつ(ゼロ)もお前の事ばっかり話すんだ?俺のが強いのに。腹立つわ、殺そう。」くらいに思っている(と思う)

なお、初代Xではシグマの軍門に下っているがそのリメイク作品では下っていなかったり、本編でも話した通りこのリメイク作品では彼がプレイアブルキャラとして各ボスを破壊して回るパラレルワールドが存在する。

このリメイク作品だと、ヘルメットのシンボルマークが「V」になっているが、初代Xだと「Σ」になっており、シグマの軍門に下っている事がここで分かる。

そして漫画版だとまたちょっと話が……というか全然人が違ったりするし、世界一バーボンが似合うロボとか呼ばれている、なんだかんだで人気の高いキャラである。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5【Io】

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 

 

===DATA【data may be broken.】===

 

 

 

「……どうしてお前がここに居る?」

 

「アンタ達が戦っていた隙に飛び乗っただけだ。」

 

 エアシップのコントロールルームにて、俺はVAVAとの接触に成功していた。

 

 やった事と言えば単純で、エックスとVAVAが戦っている隙に、ハイウェイの柱部分の壁から壁蹴りでエアシップへと飛び移った、ただそれだけの事だ。

 

 その後は、エアシップ内のイレギュラー達を殲滅し、操縦の為に必要な物が揃っているコントロールルーム(要するに操縦席みたいな場所)を占拠した。本当はVAVA回収前に奪取できれば良かったんだが、流石に間に合わなかったようで、自動で入力されている行先を変える事も出来なかった。

 

「で? 腰巾着が何の用だ。シグマからの伝言なら通信で既に聞いているが?」

 

「残念だが俺はもう腰巾着を辞めたんでね、個人的な用で来たんだ。」

 

「……何? ……だったら余計に分からんな。何故ここに……死にに来た?」

 

 そう言って、VAVAはランチャーを向ける。……そのまま躊躇なく撃ってくるかと思ったが、俺が避ける事でエアシップの操縦が操作不能になった場合のリスクを考えたのか、向けて威圧するだけで何もしない。何も出来ない。

 

「単刀直入に言うと……お前を止めに来た。」

 

「何だと? お前が俺を? 笑わせるな……シグマの腰巾着如き、いや、元腰巾着だったか? ハン、その様子じゃシグマに捨てられでもしたか?」

 

「ああ、そういうお喋りはいいんだ。」

 

「……何?」

 

「もっと分かりやすく、シンプルに行こう。俺の計画上、お前に動かれると不都合なんだ。だから……ここで止まってくれるなら殺さないでやるよ。」

 

「まるで俺を殺せるかのような発言だな。」

 

「……止まってはくれないと?」

 

「当たり前だ。何故俺がお前如きの為に止まらねばならんのだ。」

 

「そうか。そうだよな。お前はそういう奴だ。……じゃあ、仕方ない。やろうか。」

 

 そう言って手をVAVAに向け、掌を上に向けて指をクイクイと曲げて挑発すると、VAVAは一気に殺気立って飛び掛かって来た。

 

 俺はそれに合わせてブレードを振りながら引き金を引くが、VAVAは咄嗟に飛びのいて躱す。殺気立って一直線に襲い掛かってくると思いきや、意外と冷静だったようだ。

 

 まぁ、そもそも冷静じゃなかったら今頃ランチャーをぶっ放してこのエアシップのコントロール装置を破壊していたかもしれない。もちろん、そうなったら墜落だ。

 

 極端な話、このコントロール装置を破壊して墜落させれば実質俺の勝ちみたいなもんだが。

 

 俺がVAVAとこうして戦っているのは、VAVAが他のボスを倒してしまい、エックスが成長しないという可能性を潰す為であって、VAVAの撃破はそこまで重要ではないのだ。

 

 成長したフルアーマーエックスならVAVAにも勝てるだろうし、もしなんなら俺も手伝ってゼロともタイミングを合わせて3対1でフルボッコにすればいいし。どうせここで壊してもMK-IIとかV(ペンテ)とかいって復活するし。

 

 だから逆に言えば俺はここでVAVAを倒してしまってもいいって訳だ。

 

 エックスの成長を考えてシナリオ通りに進めるならVAVAとのリベンジマッチはあるかもしれないけれど、しかし、そのリベンジマッチの後にラスボスであるシグマ戦が待ち構えている事を考えると、出来ればこの戦いは避けてもらった方が確実なのではないかと思うのだ。

 

 いくら成長したエックスとはいえ、VAVA相手に無傷で勝てるかは分からないし、それに、エックスとVAVAのリベンジマッチの前に、先に潜入していたゼロがVAVAの戦いで敗れ、致命傷を負ってしまうのだ。

 

 致命傷を負ったゼロはエックスとVAVAのリベンジマッチの際に、VAVAの不意を突いて自爆する事でVAVAのライドアーマーを破壊してくれる。

 

 そして(エックスがアームパーツを取っていなかったら)ここでエックスに自分のアームパーツを授けてシグマとの最終決戦へ送り出してくれるのだ。

 

 ……まぁその後なんだかんだ(続編)でパーツを奪い合ったり集めたりして復活する訳なんだが、この世界でも問題なく復活できる保証も無い訳で、俺が今ここでVAVAを破壊した場合このイベントは無かったことになる訳だが。

 

「……貴様、さっきから何のつもりだ?」

 

「何が?」

 

「俺との闘いに集中しろ! 俺を殺すつもりで来い!!」

 

「いや、俺はお前を止められればそれでいいからな。」

 

「ふざけやがって……!!」

 

 VAVAは俺がコントロール装置の前から動かずに攻撃を捌いてばかりいる事に段々苛立ってきたようだ。

 

「チッ!!」

 

 そうしてとうとう痺れを切らせたのか、VAVAは肩のランチャーをこちらに向け、殆ど躊躇なく撃ち放った。俺はそれを相殺出来ないと判断してその場から飛びのく。

 

 そして、飛びのいた俺の背後から爆発とスパーク音が鳴り、次いで赤いランプと共にエアシップ全体に警告音が鳴り響く。

 

「いいのか? 壊しちゃったけど。」

 

「お前を殺した後でどうにかすればいい、それだけだ。」

 

 後先考えているのかいないのか……いないか。

 

「じゃあ俺も、お前を殺した後でここから脱出するか……。」

 

「やれるものならやってみろ!!」

 

 そう言い放ちながら、VAVAはもう形振り構わんとばかりにランチャーを乱発する。

 だが、俺も戦闘型として作られたレプリロイドとして……そして仮にもあのシグマと共に任務に就いて、不本意ながらシグマの懐刀とまで……本当に不本意ながらそう言われていた実力と自負がある。

 

 まともに狙いも定まってないバラ撃ち、それもランチャーのような連射速度の低い物の乱射など、今の俺には当たる方が難しいという物だ。

 

 もしVAVAが本当にプレイアブルキャラとして各ボスを倒す世界線で、かつ、各ボスを倒す事でVAVAが入手できる特殊武器のようなものを回収済みだったならまだ勝負になったかもしれない、が……。

 

 ライドアーマーから降りた、特殊装備も持たないVAVA相手に俺が負ける道理は……そんなに無い。

 

「チィッ、ちょこまかと……!」

 

 俺は攻撃を躱す為にジグザグな動きをしつつフェイントを交えて高速で躱し続ける。……だが、ただ避けていても勝負がつかない。エアシップの高度がグングン下がっていくのを感じる。残された時間もそう多くない。

 

 ……そろそろ、覚悟を決めようか。

 

 俺はジグザグした線の動きから、VAVAに向かって一直線の点の動きに切り替え、ガンブレードを振り抜く。

 

 驚いた事に、俺がここで勝負を決めるつもりだと察知したのか、あるいは偶然だったのか、優れた機動力と戦闘センスがそうさせたのか、左腕でブレードを受け止めようとするVAVA。

 

 もしこれがただのブレードだったならこれで損傷を左腕だけに留められたかもしれない、だが……。

 

「ズアァッ!!」

 

「ぐああっ!!」

 

 俺はそのままガンブレードをVAVAに向かって全力で振り下ろし、腕に当たる所で引き金を引く。バスター音が鳴り響き、VAVAの左腕が切断され、左肩をバスターによる損傷、ついでに脇腹あたりをブレードが掠めていく。

 

 VAVAはバスターを肩に受けた事で後ろにのけ反ってバランスを崩し……俺はその隙を見逃す事無く、ブレードを素早く持ち替えて再び一閃。しかしこれはバランスを崩しながらも後ろへと飛びのく事で躱される。

 

 VAVAはそのまま空中で体勢を持ち直し、肩のランチャーを発射し、その反動で更に後ろへと距離を取る。

 

 俺は放たれたそれをブレードで切り裂き、躊躇なくVAVAを追って駆ける。

 

 VAVAは着地と同時に指先から弾丸を発射するが、それを姿勢を低くする事で回避。

 照準を修正しようとするVAVAだったが、俺はそれを左腕で弾いて、そのまま止まることなく……。

 

 右腕に持ったガンブレードでVAVAの腹部を貫いたのだった。

 

「……っがぁ……!!」

 

「VAVA……すまん。」

 

 でも、お前を放置して暴れられると、そのせいでエックスがシグマに勝てなくて世界が滅ぶかもしれないから……だから、すまん。

 

 ブレードを引き抜き、倒れそうになるVAVAを受け止める。

 そして機能停止したVAVAを床へ横たえて、俺はその場を後にするのだった。

 

 

 

=======================

 

 

 

 

 エアシップに脱出用のポッドとかそういうのは無かった、というか有ったとしても見つけるのが面倒だったので、墜落する直前にジャンプで脱出するというシンプルな方法で脱出する事にした。

 

 結果、エアシップは道路に墜落し、俺が脱出した数秒後に爆発した。

 これでもう、よしんばこっからVAVAがゲームよろしくライフ回復(大)を取って復活したりしたとしてもVAVAが他のボスを倒しに行く事は……多分出来ない。

 

 それにしても……仕方が無かったとはいえ、ビルに突き刺さったり、エアシップが空中で爆発したりしなくて良かった。

 

 もしそうなっていたら流石に俺も無傷では済まなかっただろう。そうなったとしてもVAVAを止められはしたので結果オーライではあったけど、俺だってまだ死にたくないしね。

 

 さて、この後の行動だが……さて、どうするかな。エアシップをそのままVAVAから奪えたらそれが一番良かったんだけど。

 

 確かイーグリードが空港を占拠したり7部隊旗艦でありイーグリードの乗艦であるデスログマーが反乱軍の空中要塞になっていたりするけど、空港に行ってこの空港の占拠だけでもどうにかすればエアシップを奪えないかな?

 

 

 

 ……いやいや……奪えないかな? って、何普通にそんなことを考えちゃってんだ?

 

 VAVAは潰したんだから、もうイレギュラーハンター本部に戻ればいいじゃん。

 

 

 俺はそう思い直し、踵を返してイレギュラーハンター本部へと向かおうとした、その時……。

 

 

「動かないでもらおうか。」

 

「! ……ゼロさんですか?」

 

 

 向かおうとした先に……何故かゼロさんが居た。……え? 何で? ゼロさんて今シグマの居場所を探っている最中のハズでは……?

 

「……何故ここに?」

 

「何故、だと? お前、自分が何したか分かってるか……?」

 

 何をって……あ。

 

「ええと、このエアシップはですね、私がVAVAを追ってこのエアシップに潜入したんですが、その結果VAVAと戦闘する事になり、闘いの余波でコントロールを失って墜落したのであって、故意でやった訳では……。」

 

「そっちじゃ……いや、そっちもだが……お前、メディカルセンターから脱走しただろう。調整を受ける前に。……これは規約違反行為だぞ。」

 

 ……ああ。なんだ。

 

「それは……すみません、VAVAを追う為に仕方なく。この一件が終わったら然るべき処罰を受けましょう。」

 

「…………VAVAはどうなった。こうして無傷なのを見るに、勝ったんだろうが。」

 

「勝ちましたよ。エアシップ内で機能停止に追い込んだので、今はあの燃え盛るエアシップの残骸の中です。」

 

「そうか。」

 

 そこまで聞いてもまだ、ゼロは闘志を収めていない。警戒心むき出しで俺を睨んでくる。

 

 何でこんな俺に闘志をビシバシぶつけてくんのこの人……? ……いや俺がシグマに気に入られてたからや……!! 絶対それが原因だわ……シグマの側近ポジみたいな奴が急に消えたらそら疑うよね……!!

 

「なぁ、イオ……嘘偽りなく答えてほしいんだが……お前、実はもうシグマがどこに居るのか見当がついていたりするんじゃないか?」

 

 グワーッ! やっぱり!! あー、うーん、どうすっかなぁ……ここで教える訳には……うん、行かないな。だってエックスがまだ成長していないだろうし。なんとかはぐらかさないと……。

 

「……それは、私がシグマの懐刀だったから、ですか?」

 

「……ああ。正直に言うと俺は、お前が既に俺達が知らない情報を幾つか掴んでいて、それをどういう訳だか故意に黙っていると直感……いや、今さっきお前がエアシップから飛び降りるのを見て確信した。」

 

「どうしてそんな……。」

 

「理由は簡単だ。お前はさっきエアシップに潜入、と言っていたが……この街で飛行中のエアシップの中からVAVAの乗っているエアシップに潜入する為には、VAVAの居場所や計画を事前に知ってでもいないと不可能なハズだ。……だが、お前にはそれが可能だった。」

 

 ……まぁ、言われてみればそりゃそうだよねとしか言えないな。

 だってこの街に飛んでるエアシップなんて無数にあるし、実際俺はハイウェイエリアでVAVAが出現し、そこでエックスと交戦する事になるだろうことまで知っていた。

 

 なんならそのエックスとの戦闘の音やバスターを発射する時の光で場所を特定し、その真下で待機し、VAVAの回収の為に待機していたであろうエアシップを見つけ、潜入に成功したのだ。

 

「どうなんだ?」

 

「ええ、はい。その通りですよ。私はシグマによってVAVAが解放されていた事や、それによってハイウェイエリアが襲われるであろう事は事前に予期していました。……だからメディカルセンターから脱走したんですよ。VAVAを止めるためにね。」

 

「やはりな。それは何故予期していた? ……VAVAは、脱走から既にかなりの時間が経過していた為、俺達でも居場所が特定出来なかったんだ。なのに、何故?」

 

「それは……、い、言えません。たとえ貴方でも……。」

 

 言えないだろ、そりゃ……そんなの未来でも知ってないと予期なんて不可能だし、そうじゃないとすれば事前にVAVA含めシグマ達の計画も知っていないと不可能だ。

 だがここでシグマの計画を知っていると言って全てを話したら「なんで黙ってた」ってなるし、その上エックスやゼロが「ならさっさと本丸のシグマを潰しに行く」と言いかねない。

 

 それはダメだ、何が何でも。

 

「言えないってのはどういう事だ。」

 

「……どうしても、言う訳にはいかないんです。これはシグマの計画の為じゃなく、私達、レプリロイド、イレギュラーハンター……そして人類の為なんです。……信じて、もらえませんか。」

 

「……。」

 

 そう言うも、ゼロさんからは警戒の色が消えない。

 ……まぁ、もう「全部知ってるけど訳あって言えないよ」と言っているようなもんだし、その言葉を信じる事なんて出来ないよな。

 

「なら、仕方ない。お前をイレギュラーハンター本部に連れ帰り、話したくなるまで付き合ってやる。」

 

 なにより、今最も必要な情報を持っている奴をそうやすやすと解放する程ゼロさんも甘くない。

 

 だけど……。

 

「……それじゃ、ダメなんだ……。」

 

「何……?」

 

 ゼロさんにはこのまま原作通りシグマを追ってもらわないと困る。じゃないと、正確な基地の座標の特定までは出来ない。俺が知っているのは「シグマの基地がどこか陸から離れた人工島のような場所に作られている」という事しか知らないのだ。

 

 ……というのも、本編においてシグマの基地は、プレイヤーキャラクターであるエックスが全てのボスを倒した後に、別行動していたゼロが発見したという流れで向かう事になるのだが、ゼロが発見したというだけで、どこのエリアにあったとかは情報が無いのだ。

 

 だが、そこで手掛かりになるのはエンディングで爆発した後、海へと沈んでいく描写が無印でもリメイク作品でも描かれていた事。

 

 ここから察するに、シグマの基地は海上のどこかに存在している。

 

 そしてさらに言えば、ランチャー・オクトパルドが海路を寸断、ストーム・イーグリードが空路を遮断させ、残りの6人が他の重要施設を襲い、イレギュラーハンターの刺客を分散させているのではないかと推測できる。

 

 こうすれば、海上にあるシグマの基地はそうそう見つける事は出来ないだろう。

 

 だが、それを教えてしまう訳にもいかないし、だからといって捜索の手を緩めてもらう訳にも行かない……ここは……。

 

 

「一つだけ言える事があるとすれば……彼らシグマの部下達は全員が全員、意図も無く暴れさせられている訳ではありません。彼らの中には、別の意図があって行動を起こしている者がいるんです。」

 

「なんだと? それは……。」

 

「今はそれだけしか……いつか必ず全てが分かります!」

 

「!? おい、待て!」

 

 そのまま、俺はその場から逃げ出した。

 ゼロもしばらく俺を追いかけていたが……俺が壁ジャンプならぬ壁駆け上がりをしたりパルクールよろしくな動きで翻弄してどうにか撒く事に成功した。

 

 後ろから全力で追ってくるゼロはマジで怖かった。完全にイレギュラーだと思われてたら撃たれてたかもと思うとゾッとする。

 

 

 

 ……さて、これからどうしよう。






【ストーム・イーグリード】
8ボスの一人、鷲型の飛行戦闘が可能なレプリロイドで、天空の貴公子とか呼ばれている奴。実は本人の意思での反逆ではなく、むしろシグマを止めようとしていたが、圧倒的な戦闘力に敗れて屈服して配下になったらしい。
敵ボスの中では唯一エックスに対して「ゆるせ、エックス。お前を倒さねばならん」とかなり後ろ向きにエックスと対峙している事が分かる。
エックスは彼の事を敵ボスの中で唯一「あなた」と呼び、尊敬していた事が窺える描写があったり、ゼロとも気安く会話をする描写がある事から仲が良かったとされ、漫画版では彼女も居るし、シグマの配下になったのはエックスを鍛えるためにわざと配下になったとされていたりする。作中でもかなり人気キャラにあげられる異質なボスである。


【ランチャー・オクトパルド】
8ボスの一人で、タコ型の水中での活動が可能なレプリロイド。第6艦隊に所属していたイレギュラーハンターだった。だが、自分よりも非力な人間を護る為に働く事に疑問を感じており、シグマの反乱と思想に共鳴して反乱に加担することを決意する。
また自身の事を水中戦闘のアーティストと言ったり、死亡時に爆発は芸術です!と言ったり、エックスに「お前のやっている事はイレギュラーだ!」と指摘されたときには「私の芸術的な作戦をそんな風に読んでもらいたくはないですね!」と激昂している。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4【Io/Other/】+???

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 

 

 

===DATA【繧ゅ≧縺ソ繧九%縺ィ繧偵d繧√m】===

 

 

 

 ゼロさんから逃げてから結構時間が経ったように思う。

 

 俺はと言うと、時々やってくるであろう追手を振り切りながら……もしゼロさんが俺の存在のせいでシグマの基地を見つけられなかった、となったら怖いので……こっちでも基地の詳細な場所を探しておこうと考えた。

 

 と言っても……海上にある事、かなり大規模な基地である事、陸からでも目視できる範囲(恐らく)にある事ぐらいしか手がかりはない。

 

 だが、俺は恐らくランチャー・オクトパルドによって寸断された海路と、ストーム・イーグリードによって遮断された空路が少し怪しいかな~とは思っている。

 

 この二つが重なり合う場所なら、上記二人がやられるまでは基地の存在が明るみになる事はないからだ。

 

 まぁ、もちろん俺の見当違いである可能性はあるし、そこまでシグマが考えていないだけって可能性も全然あり得る訳だが……実は俺は「それはない」とほとんど確信している。

 

 何故かと言うと、そもそも、シグマの行動は矛盾が多い。

 

 表向きは人間を抹殺してレプリロイドだけの世界を作る、という目的をシグマ自身は語っているが……。

 

 もし本当に心からこれが目的なら、エックスはシグマにとって不確定な危険分子であり、本来ならば事を起こす前に破壊しておくべき対象だ。そうでなくても、早めに始末しておくべき。これに加えてシグマは一度エックスとミサイル基地で戦い、機能停止にまで追いやっている。

 

 トドメ、つまり、完全に修復不可能なほど破壊するチャンスはいくらでもあった。

 

 だが、今なおエックスはボディを修復して戦場を駆け回っている。

 

 何故か? その理由は一つ。

 

 シグマの目的は「人間を抹殺してレプリロイドだけの世界を作る」ではなく「エックスというレプリロイドの真の可能性を握った存在を戦闘経験を積ませることで強制的に成長させ、レプリロイドを次のステージへと進化させ、この世界を変える事」……これが、シグマの本当の目的だからだ。

 

 そして、これこそ俺が「シグマは基地の位置をきちんと綿密に計算して見つかりづらい場所にしているだろう」と確信している理由。

 

 もし適当な位置に基地をかまえてしまうと、まだ8体の部下(ボス)との闘いを経験しないままエックスがシグマの基地を見つけて特攻を仕掛けてしまう可能性がある。

 

 実際にはゼロさんがエックスの可能性に気付いており、成長したエックスの力ならばシグマにも届く可能性があると考えた為、見つけていきなり特攻、とはならないだろうけど……。

 

 だがもしそうなったらエックスは確実にアッサリと殺されるだろう、何の可能性も示す事無く、アッサリとだ。いや、そもそも既に退場済みの繝エ繧。繝エ繧。にすら勝てず、シグマの下に辿り着く事すら出来ない可能性すらあるだろう。

 

 それはシグマにとっても望ましくない事である。

 

 故に、基地は確実に8体の部下との戦闘を経験した上で発見されなければならない。

 

 これを考慮して基地の位置を計算すると「イーグリードによって遮断された空域とオクトパルドによって寸断された海域が重なり合う場所」となる。

 

 もしこれが見当違いだった場合は俺に出来る事は何も無い……イレギュラーハンター本部と、ゼロさんが俺を追いつつもちゃんと基地を探してくれている事を祈ろう。もし俺のせいで見つからなかったらもう素直にとっ捕まってゼロさんとエックスに頑張ってもらおう。

 

 だがもし考えている通りなら俺にも出来る事があるハズだ。

 

 単純に、シンプルに、先に見つけておいて……エックスがきちんと8体ボスを倒したら俺からゼロさんとエックスに座標データを転送し、3人でシグマをぶち殺せば丸く収まるハズ……!

 

 まぁそうなったらそうなったで俺、全部終わったら後で規約違反で投獄されたりしそうだけど……まぁ、もうこれに関しては諦めるしか無さそうかな……3人でシグマをぶっ倒した功績でどうにかならないかな?

 

 そうなった時にまた考えるか……今はとりあえず……。

 

ストーム・イーグリード
 
ランチャー・オクトパルド
              

 

 

 の所に潜入して、基地の座標が探れないか試してみようかな……。

 

 

 

 

=====《補完記録「side:X」》=========

 

 

 

「えっ!? 彼女がそんな事を……!?」

 

『ああ……アイツは確実に今回の件、何かを知っているとしか思えない。』

 

 

 

 ゼロからの通信で聞かされた話は俺にとってかなりの衝撃をもたらした。

 

 まず、VAVAの計画と脱走した事実を事前に知っていたという事。そして、その情報を元にVAVAの飛行船を特定し、飛行船内でVAVAと交戦し、そして勝ったという事実。

 

 凄まじい速度かつ見たこともない移動方法、でゼロから逃げ去り、しばらく捜索したものの途中で完全に振り切られてしまった、という事にも彼女の能力の高さに驚きを隠せないが……。

 

 それ以上に、彼女が言った事が問題だ。

 

 

―――…… 一つだけ言える事があるとすれば……彼らシグマの部下達は全員が全員、意図も無く暴れさせられている訳ではありません。彼らの中には、別の意図があって行動を起こしている者がいるんです。

 

 

「別の意図……それって一体……?」

 

『分からん、だが、もしかするとシグマに繋がる何かかもしれんな……。』

 

 雪山で大雪崩を起こしてふもとの街を潰そうと計画している者。

 工場地帯を制圧し、兵器工場に変えようとしている者。

 兵器を作る為の鉱物資源を確保する為鉱山を制圧した者。

 新型の空中戦艦を率いて空港を制圧し、空路の遮断を謀る者。

 森に作られる前線基地の警備を任されている者。

 都市のシンボルとなるハズだったタワーを乗っ取り要塞に変えようと企む者。

 都市の活動を停止させるために発電所を制圧した者。

 海上都市を襲い、海路を寸断しようと企む者。

 

 一見、彼らの行動に統一性があるようには思えない。

 

 あえて一つ上げるとすれば全員イレギュラーであり人間や善良なレプリロイドに敵対しているという事ぐらいだが、その方法はそれぞれの特性を悪い方向に活かした物であり、彼らの中に何人か別の目的がある者が居ると言われても、誰かは分からない。

 

 そして、別の意図というのも……いくつか推測こそあるものの、どれも憶測の域を出ない。

 

『やはり無理にでもアイツを捕まえて情報を聞き出しておくべきだったか……。』

 

「(どうして、俺達に何も言ってくれないんだ、イオ……?)」

 

 しかし立ち止まっていても始まらない。

 

『俺は引き続きシグマの追跡と同時に、イオを追ってみる。そっちも気を付けてくれ。』

 

「……ああ、分かった。ゼロも気を付けて。」

 

 ……気にはなるが、イオの追跡はひとまず本部とゼロに任せるとしよう。

 

 彼女は現状、イレギュラーかどうかすらも分からない不確定要素。

 やっている事は規約違反だが、他の明らかにイレギュラーな連中に比べると優先度は低く、今動けるイレギュラーハンターで無理に追いかけて他の事が手遅れになる方が危うい。

 

 俺は、とにかく今は目の前の敵に集中していなければ。

 そうして俺は決意を固めた。

 

 

=========

 

 

 かつての仲間達の暴走を止める為、俺は単独で彼らの制圧した基地へ乗り込み、暴走した彼らを破壊した。

 

 主なイレギュラー反応は残り☒体……。

 

 俺は次のイレギュラーを討伐する為、

海上都市
空中要塞

    に潜入し、暴走したメカニロイドやイレギュラーを破壊しながら突き進む。              

 

 そんな時、俺は大型のメカニロイドとの戦いで……苦戦を強いられていた。

 

「クソッ、こんな事じゃ、アイツに……シグマに勝てないのに!」

 

 とめどなく続く攻撃……そして……焦燥感、無力感、危機感に襲われる。

 こんな所で立ち止まっている場合じゃないのに!

 

 そんな時だった。

 

 

 横からすり抜けるようにして駆けていく光の軌跡。

 それは大型のメカニロイドの装甲を貫いて引き裂き、その中腹で聞き覚えのある炸裂音が鳴り響く。

 

 気付けばメカニロイドは大きな裂傷とバスターによる破壊跡。

 メカニロイドは一瞬スパークした後、跡形もなく爆発する。

 

 煙が晴れると、そこに居たのは……。

 

 

「君は……! イオ! 一体今までどこに……!」

 

「……。」

 

 そこには、行方知れずになっていたイオが居た。

 

 ゼロや本部が捜索しているハズの彼女がなぜここに……? そう思い、俺は彼女に問いただそうと声をかけるものの……その顔には、メカニロイドは既に破壊しているのにも関わらず、何かに焦燥感を覚えているかのような、普段の彼女からは考えられない程に苦悶した顔だった。

 

「い、イオ……?」

 

「……エックス、貴方の力はそんなものではないはずです。」

 

 しばらく何かを考えこんでいたイオが口を開くなりそんな事を口走る。

 ……ゼロやシグマも言っていた、闘いによって能力を高める力、レプリロイドの可能性という物の事を言ってるのだろうか。

 

「本当の貴方は……もっと……もっともっともっと……!! もっと強いハズなんです! じゃなきゃ……じゃなきゃ世界が……人類が……。」

 

 世界、人類、もっと、本来の力……と、謎の言葉の羅列を呟きながら、イオは片手で頭を抱え、俯きながら震え始める。

 

「イオ……!? どうしてしまったんだ!? 君は……君は、何を知っているんだ……?」

 

「……。」

 

 そう聞くと、イオはピタリと口を止め、表情の抜けた顔でこちらに向き直す。

 

「もっと……もっと強くなってください、エックス。まず、もっと周囲の事をよく見て……隠された力の存在を感じ取ってください。貴方にはそれが出来るはずです。」

 

「隠された、力……?」

 

「そう。()()()が貴方の為に遺した力が。各地で貴方を待っています。」

 

「何のことを言っているんだ、イオ……?」

 

 あの人……? 遺した力……? 各地でそれが俺を待っているって、いったいどういう事なんだ……?

 

「すみません……でも、覚えておいてください。」

 

「ま、待ってくれ!」

 

 そう言って立ち去ろうとするイオに俺の声は届かず、イオは凄まじい速度でその場を後にした。俺は彼女を追いかけるも姿は既にどこにもなく、元々の目的だったイレギュラーを破壊し、俺もその場を後にした。

 

 隠された力……彼女が言ったその言葉が引っかかる。

 俺はどうしてもその事が気になり、彼女の言う「もっと周囲の事をよく見て」という言葉を時々意識して見ることにした。

 

 そして……俺はまるで誰かがそこに隠したように設置されたカプセルを発見する事になる。

 

 

 

===DATA【繧ゅ≧繧?a縺ヲ縺上l】===

 

 

 

 エックス……お前なんでアーマーを一つも持ってない状態で……

海上都市
空中要塞

    に居んの……?

 

 そこはペンギーゴが最初だルォ!?*1 

 

 はーちょっと……最初真っ青なレプリロイドが居るから「まさかな」と思ったけど……そのまさかですか……。

 

 どうしよ、これ思ったよりヤバいかも……いや、でも、ゲームじゃないんだからそういう事もあるよな……。

 

 ……うん、よし、そう、ここはゲームじゃない。

 

 ゲームじゃないからエックスを操作してるプレイヤーが全くロックマンXやってなくて情報も0でPS(プレイスキル)が無い、みたいな世界線である可能性は考えないようにしよう。

 

 あ~……どうしよう。フルアーマーエックス前提で考えてたから一気に怖くなってきたなあ。

 

 もういっそ今さっき見つけたシグマ基地に一足先に行ってエックスがフルアーマーじゃなかったら「フルアーマーになってから出直せ!」って追い返してやろうか……。

 

 ……いやいや、流石にやらないけどね。それやったら完全にイレギュラーだし。

 

 なんとかシグマ基地の座標も分かったし、万が一の時の備えも出来た。

 後はエックスに頑張ってもらって、俺は一旦姿を隠そうかな……。

 

 ……いや、う~ん、やばい、ちょっと不安になって来た……。

 本当に大丈夫だよね? 死なないよね? 針でブッスリ逝ったりしないよね? 頼むよマジで。君が死んだら今後の地球マジで終わるからね? なんなら居ても若干終わりかけるからね?

 

 しばらくウンウン考えた結果……俺はこっそりとエックスの後を付いていく事にした。もし引き返して来たら高速で姿を隠す。ゼロさんに追われている時よりもよっぽど緊張する。

 

 ひょっとすると、今まで生きてきて一番ハラハラしているかもしれない……。

 

 

 

 

 

 

 

*1
ペンギーゴステージには取るとダッシュ移動が可能になるフットパーツが道のド真ん中に、逆に回収せずには進められないぐらいあからさまに置いてある為、ステージ攻略ならまずペンギーゴから、というのがセオリーとなっている。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――



イオ(ロックマンX)
いお

ゲーム「ロックマンX」の登場人物。


目次[表示]

担当声優
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

sひgjZwうえ


概要
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ゲーム「ロックマンX」において、サポートキャラ(?)として登場した女性型レプリロイド

ストーリーに直接関わることの無い隠しキャラ的な扱いで、出現条件は一つもアーマーを回収していない状態でランチャー・オクトパルドステージの中型・大型メカニロイド戦でライフが3分の1以下に削られてしばらく時間経過、または、ストーム・イーグリードステージで何回かコンテニューを繰り返していると現われてエックスを助けてくれる(落ちた後ブラックアウトして落ちる直前の場所にテレポートしている)。

主人公であるエックスはこの時点で彼女の事を知っているらしく、「君はイオ! 今まで一体 どこにいたんだ!」と発言している。

この発言から察するに、彼女はゲームのシナリオが始まったその時には行方不明だった可能性がある。

これに対し彼女は「お前の力はこんなもんじゃねえだろ!アーマーとかちゃんと回収しろ!(意訳)」とエックスの疑問ガン無視でアドバイスだけしてどこかへ去っていく。


この時あの人の事だったり隠された力の事を知ってたり、エックスがもっと強くなることを望み、もっと強くならないと世界が……等と謎をモリモリ残していく。

このイベントを経て彼女に会っておくと、以降別のステージで特定のポイントで急に引き返したり(ダッシュ必須)する事で一瞬だけ彼女の姿を見る事が出来る。

当初はドット絵でボイスも無く文章がやたら不穏な謎の人物として扱われる上、設定では美少年っぽい顔をしたレプリロイドで、シグマが彼女について触れることも特に無く、次作以降登場すらしないのでガチで謎の存在になる。なんなら性別すら不明だったのでほとんどの人は彼女の事を男だと思っていた。

ステージ途中の救済用キャラ(とはいえシリーズ通して見ればそれほど難易度の高い場所での登場ではないのがまた謎な上、救済用にしては普通にプレイして居ればほぼ会う事はない)に用意されたイベントのキャラにしてはキャラが強いせいで、後のリメイク作品での再登場までずっと「コイツは一体何だったんだ」と言われ続ける。

考察と言う名のイジリが様々な場所で飛び交っていたり、実はエックスの弟説から始まり、ゼロの次のワイリーナンバーズだの、実はスタッフが消し忘れたボツイベントだったのでは?等と好き勝手言われていた。

満を持して発売されたリメイクで登場した際には、先述した通り無印ではドット絵だけだったのが3Dのモデルに。顔のグラフィックしか無く胸も分かりづらい状態だったのが綺麗かつ胸が強調された立ち絵とボイス付きで登場した。

無印プレイ済みのプレイヤー達は「お前女だったんかい!?」と度肝を抜かれる事になった。

そして上記の方法で彼女と会っておくことで、追加の隠しシナリオが解放され、彼女とエックス達のと関係性や立ち位置、エックスへの考え方が段々明らかになり、VAVAシナリオではオープニングステージ後にいきなり彼女との戦闘(負けイベント)となり、あの影の薄さはなんだったのか状態と化す。

正体

その正体は最新鋭の技術で作られた戦闘に特化したボディに、イレギュラーハンター本部に蓄積された膨大な量の戦闘データを搭載させる事で、優秀なイレギュラーハンターを作る事を最終目標としたとある計画が実行に移された際、唯一の成功例として最高のイレギュラーハンターになるべくして生まれたレプリロイド、それが彼女の正体である。

しかし、この計画にはあまりにも多くの問題点があったようで、彼女以外の同時に製造されていたレプリロイド達は、20体ある内の10体はデータとボディの矛盾にエラーが生じて起動に失敗。3体は起動に成功するも暴走した為即座に停止、6体は暴走後停止にも失敗しイレギュラー判定を下され破壊。

そんな中で唯一の成功例として生まれたのが第10号機のIO(イオ)だった。

20体中1体しか正常に起動しないという問題点だらけの計画。
……だが実は問題点はそれだけではなかったのである。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3【other/Io】

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 

=====《補完記録「side:X」》=========

 

 あれから俺はイオの助言に従った結果、俺は確かに隠された力を手に入れた。

 いつからそこにあったのか。誰がそこに設置したのか。何故今までその存在に誰も気づかなかったのか……それは、Dr.ライトと名乗る老人……どこか懐かしいその人が俺の為に遺したカプセルだったのだ。

 

 博士は俺に「このような力が必要ない、平和な世界が来ることを祈っている」と遺して消えてしまった。

 

 そのカプセルの中には、俺をアップグレードさせる強力なアーマーが入っていた。

 

 イオが言っていた「隠された力が貴方を待っている」というのはこの事だったのだ。

 

 全部で4つあるその全てが、今までの性能とは段違いで……それでいて、どういう訳か一瞬で使いこなすことが出来るほど最適化された規格外の力。

 

 俺は、俺自身とこのようなアーマーを作る事が出来るライト博士の科学力に驚愕し……そして、この事を知っていたと思われるイオが余計に分からなくなった。

 

 だが、お陰で俺は各地で暴動を起こしていたイレギュラー達を全員掃討する事に成功し、事態を収束させることが出来た。現場にはもうイレギュラーの残党と暴走したメカニロイドしか残されていない。

 

 油断はできないが、今動ける他のイレギュラーハンター達だけでもどうにかなるだろう。

 

 残った問題は行方不明のイオと、今回の黒幕であるシグマだけだ。

 

 そしてその決戦の時は間を開けることなく訪れる事となる。

 事態の収束とほぼ同時に、ゼロから通信が入ったのだ。

 

『エックス、手短に話す……。シグマの基地を発見した。座標データを送る……。』

 

「ゼロ! ……座標を確認した! すぐにそちらへ向かう!」

 

『ああ、だが思った以上に守りが堅そうだ……。敵を分散させよう。別ルートで侵入だ……!』

 

「了解!」

 

 こうして、俺達はシグマとの最終決戦に挑む事となった。

 

 待っていろ、シグマ……! 必ずお前の野望を食い止めて見せる!

 

 

= = = = = =

 

 

「……おかしい、敵の数が少なすぎる……?」

 

 ゼロと別行動で侵入したその経路から慎重に奥部へと進む俺は、隠しきれない違和感を感じて嫌な予感がしていた。

 

 こんなに警備が手薄な訳が無い。

 

 罠か、あるいは誘い込まれている可能性……。

 しかし、それならそれでその罠ごと障害となる敵を叩き切るまでだ。

 

 俺はそう考え、罠や敵の強襲に注意しつつ進む。

 

 しばらく進んでいると、不意に前方から戦闘音が響く。

 

 ゼロか!? ……いや、まったくの逆方向から挟み撃ちになる形で侵入している俺達がこんな所で邂逅するハズは無い。

 

 だとしたら……俺よりも先に俺やゼロとはまた別の経路からこの基地に侵入している者が居る……?

 

 そんな人物が居るとしたら……心当たりは一人だけ。

 

 

 俺は扉を開き、戦闘音がする部屋へ入る。すると、そこに居たのはやはり思っていた通りの人物と……既に死んでいると考えていた奴が立っていた。

 

 

「ッ! エックス、か……!!」

 

「エックスさん……そうか、もうそんな時間でしたか。」

 

「イオッ……! それに、VAVAだと……!?」

 

 俺はバスターを構えて警戒度を最大まで引き上げる。

 すると、イオが少し考える素振りをした後、俺に背を向けてVAVAに向き合う。

 

「エックスさん……今は何も聞かずに協力してくれませんか?」

 

「……後で全て聞かせてもらうからね。」

 

 

 

===DATA【m47/wh;――数時間前】===

 

 

 今から思えば、最初からこうしていればエックスの動向を知る上で一番楽だったのではないだろうかと思う。

 

 エックスのストーカーになってからというもの、追手がピタリと止んだのだ。

 

 それもそのはず、追手であるイレギュラーハンター達も、まさか俺がエックスの傍でストーカーしているとは思っていないのだろう。

 

 そもそもエックスが単独で潜入しなければならないのだから、エックスの周辺に注意の目が向かず手薄になるのは明白だったのだ。

 

 灯台下暗しというか、もっと早く気付きたかった。

 

 そして、後を付けていた甲斐があって、エックスが8体のボスを倒し、シグマの基地へと向かう事になるその瞬間をも確認する事に成功した。

 

 これで念のために確認しておいたシグマの基地の座標データはあんまり意味は無くなった。

 

 繝エ繧。繝エ繧。は既に倒したはずなので、原作通りに進めば後はシグマだけ。

 

 ……と言っても、これが終わったとしてもシグマとの闘いは少なく見積もってもあと7回は残ってるんだけどね。

 

 ハァ~……やってらんねえ。

 

 1回倒すだけでこんなに苦労すんのにこれを何回も繰り返さないといけないなんて……あ、この事これ以上考えるのやめよう、機能停止したくなってきた。

 

 それより今は目先の問題を片付けないと……と思ったけど、繝エ繧。繝エ繧。が居ない以上、ゼロがいなくなる事も無いんだし、流石のシグマも成長したエックスと万全な状態のゼロの二人を相手に生き残れるとは思えない。

 

 

 勝ったな、風呂入ってくる。入らないけど。

 

 

 ……しかし、もしもって事もある。念の為、シグマの所までちゃんとたどり着けるかを見届けておこうかな? ボスラッシュとかで死なれちゃ困るし、もし見つかったらその時は……3対1でシグマをぶっ倒そう。

 

 卑怯とは言うまいな……。

 

 

 こうして俺はエックスとゼロの後を追ってシグマ基地へと別経路から侵入。

 エックスがちゃんとシグマの下まで辿り着けるかを確認しようとして……。

 

 

 まんまと罠に引っかかった。

 

 

 エックスとは別の経路で移動してたら突然ドアにロックかけられて出られなくされた挙句、そこがモンスターハウスならぬイレギュラーハウスになったのだ……。

 

 どうやら俺の侵入がシグマに気取られたらしい。

 それ自体は別に不思議なことじゃない。

 こういう時の潜入のノウハウを俺に教えたのは何を隠そうシグマ本人だし、俺の癖とかそういうのをきちんと把握していたら対処だって簡単だっただろう。

 

 その上でこうして分断するって事は……重要なのはゼロとエックスであって俺はお呼びじゃないよってか……?

 

 あの野郎、舐めやがって……!!

 

 ……てか、これヤバくないか……? このまま閉じ込められたままだと、俺この基地やシグマと一緒に海の藻屑になっちゃうんだけど。

 

 いや、どうせ崩壊するならそれに乗じて逃げられる……か? 流石に崩壊していく基地からの脱出はそれなりに骨が折れそうだが……いや、まあやるしかないか。そもそもエックス達がシグマの所までちゃんとたどり着けるか、シグマに勝てるかが心配で来たのだが、今となってはその可能性を信じるしかないようだ。

 

 そうして俺がしばらく無心で無双していたら、突然ドアのロックが解除された。

 

 ……どういうつもりだ? 足止めがしたいならあのままロックされた部屋で適度にイレギュラーを投入していれば良かったハズ……。

 

 考えられる可能性は、まぁほぼ間違いなく罠だろうけれど。

 

 だからといってこのままこの部屋でじっとしているのも得策とは言いづらい……。

 俺はどうするか少しの間迷った挙句……やはりこの部屋から出ることに決めた。

 

 そして俺はその決断を後に英断だったと賞賛を送る。

 

 

 何故ならそこで俺を待っていたのは……見覚えのある特殊な改造が施されたライドアーマーと、それに搭乗してこちらを睨み付ける……既に俺が破壊したハズの繝エ繧。繝エ繧。だった。

 

 ……って、おいおい、嘘だろ……。

 

 

「流石だな、雑魚とはいえあれだけ用意した駒を全て叩き切るとは。」

 

「何故、お前が……。」

 

「ククッ、地獄から蘇った……とでも言っておこうか?」

 

 

 ……奴はそう言うが、そんな訳は無い。

 

 恐らくは、奴はシグマによってボディをそっくりそのままコピーして作った入れ物と、シグマの配下によって回収されたデータによって蘇ったのだろう。

 

 ああ、しまった……これは俺の失態だ。

 あの時、トドメを刺したあの瞬間。

 もっとちゃんと破壊し尽くすべきだったのだ。

 

 ただでさえボスラッシュとしてボディだけコピーした偽物が現れるのは知っていたのだから、こういう可能性も考えておくべきだった……。

 

 だが、まあ……。

 

 

「……可哀想に。」

 

「あ?」

 

「いや……蘇らなければ、もう一度死ななくても済んだのにと思ってな。」

 

「……どいつも、こいつもっ……!! この俺を、VAVAを見下しやがって……!! 見せてやる、俺の本当の力を……!! 前と同じだと思うなよ!?」

 

「来いよ、VAVA……もう一度……いや、今度こそお前を殺してやる。」

 

 

 しばし睨み合った後……ほぼ同時に俺達は駆ける。

 

 VAVAのライドアーマーが俺に向かって高速で拳を振り抜き、俺はその拳に飛び乗り、そのまま跳ね、空中で回転しながらVAVAに向かって引き金を引く。

 

 VAVAは舌打ちをしながらライドアーマーのブースターを吹かせてそれを回避。方向転換して俺の着地地点を中心にナパーム弾をばら撒く。

 

 俺はあえてそれをVAVAの方向へ接近する事で回避し、低姿勢のダッシュ状態からブレードを持ち替えその勢いを殺さないまま上へ切り上げる。

 

 ブレードはライドアーマーの強固なアーマーに弾かれ殆どダメージを与えられなかったが、そのまま飛び上がって空中に躍り出ている俺はランチャーを放った直後のVAVAを攻撃範囲に捉える。

 

 空中でブレードを持ち替え、下へ刺突を放つ。

 

 VAVAはライドアーマーを跳ねさせ、手で俺の手にナックルする事でブレードを弾いて防ぎ、空中でライドアーマーで俺を殴り飛ばした後大きな音を立てながら着地。

 

 俺は殴られたと見せかけて、ライドアーマーの拳をタイミング良く蹴り上げて衝撃から逃げ、少し飛ばされるものの、バク転しながら危なげなく着地。

 

「(前より強くなっているし、装備も充実している。思った通り、厄介だな。)」

 

 そう思っているのは相手も同じようで、明らかに決まったと思うような一撃を躱されていらだちが募っているようで、傷一つ負っていない俺に舌打ちを飛ばした。

 ……俺だって舌打ちしてえよ、折角倒したはずのお前がこんなに早く復活するとは思ってなかったからな。

 

 その後も何度か切迫した斬り合い、殴り合い、撃ち合いを繰り返しながら、これといった決め手がないまま時間が過ぎていき……そして。

 

 

「ハッ!!」

 

「チィッ!」

 

 

 再びチャンスを手繰り寄せてVAVA本体にブレードを振り下ろすと、避けられないと見たVAVAは、ライドアーマーを捨てて飛び退く。俺のブレードはVAVAが搭乗していたライドアーマーの制御装置に突き刺さる。

 

 俺は直ぐにそこから飛び去り、ライドアーマーは一瞬スパークした後、火花を散らし、そして爆発した。

 

 さて、第一関門クリアってとこか? ここで諦めてくれればやりやすいんだが……。

 

「クソが……、なんだ、その目は? まだだ……まだ終わっていないぞ……何も終わっちゃいない! お前如き、ライドアーマーなんぞ無くても充分だ!」

 

 そうだよな、知ってた。

 

 俺は今まさに飛び掛かろうとするVAVAに構え直し……その直後、背後のロックされた扉が開閉する音が聞こえ、次に見覚えのある人物が姿を現す。

 

「ッ! エックス、か……!!」

 

「エックスさん……そうか、もうそんな時間でしたか。」

 

 そこに居たのは、通路を通って追いついてきたらしい青いアーマーのレプリロイド……エックスだった。

 

「イオッ……! それに、VAVAだと……!?」

 

 エックスさんは一気に警戒した様子で奴に殺気を飛ばす。

 なんにしても好都合だ。

 

「エックスさん……今は何も聞かずに協力してくれませんか?」

 

 そう言って俺はエックスさんに背を向けてVAVAに向き直る。

 敵ジャナイヨー、後デ全部ハナスヨー、何モ企ンデナイヨー。

 

「……後で全て聞かせてもらうからね。」

 

 ……勝ったな。

 

 

 

= = = = = =

 

 

 

 

 ……まあ、悪い奴だったよ、あいつは。

 

 特筆すべき点は無く、二人がかりでの戦闘に奴が生き残れる要素は無く、今度こそ俺は《削除済み》を葬る事に成功した。

 

 そう、成功したのだ、これでこの世界線においてゼロさんが戦線を離脱するような事にはもうならないと考えて間違いないだろう。

 

 俺は未来を変える事に成功したのだ。

 未来を変える事は可能だった。

 

 この事実が俺の中でじわじわと歓喜の気持ちが湧き出てつい笑顔になりそうになる。

 

 だがまだ笑うな。敵の居城、最前線、未だ全てが終わった訳ではない、今後俺の知らない不確定要素が現れないとも限らないのだから。

 

 それに、今は他の問題もある。

 

「……さて、それじゃあ答えてもらうよ。」

 

「もちろん。……その為に来たのですから。」

 

 そして、俺は全て(全てとは言ってない)を話し始めた。

 

「まず何から話しましょうか……とりあえず、私が基地の場所やシグマの目的を知っていながら黙っていた事にしましょうか?」

 

「ああ。」

 

 というか、エックスやゼロさんの中じゃこれが一番の疑惑になっている要素だろうね。話しててなんだけど、ぶっちゃけ今後の事を色々と知っていなかったら俺でもこんな決断はしなかったと確信できるレベル。

 

「エックスさんの成長の為……ひいては、シグマを倒す為ですよ。」

 

「何だって……?」

 

「私、そしてシグマ、そしてゼロさんは、貴方の潜在的な能力に気付いたんです。もしその力が完全に目覚めたなら、貴方はシグマに勝てる。」

 

 それを聞いてエックスさんはハッとした顔になり、更に目つきを鋭くしながら問いただす。

 

「……じゃあ、シグマは俺を成長させるためにあんなことをしたって言うのか……?自分を倒させるために?」

 

「自分を倒させるため、というのは違いますね……正しくは、貴方の潜在能力を覚醒させる事で、レプリロイドが持つ無限の可能性を目覚めさせたかったのだと思いますよ。」

 

「そんな……。」

 

 そう聞いて、エックスは少なからずショックを受けているみたいだ。

 一連の騒動の全てが、自分の潜在能力のせいだと言っているのと同じだからな。

 

「……だったら、君がその事を黙っていたのは……。」

 

「もし私が貴方に見つかったあの時、全てを、この基地の位置や知っていること全てを話していたとしたら……貴方はどうしていましたか?」

 

「そ、それは……。」

 

「私が思うに、8人の刺客を倒し成長を遂げる前に、シグマの下へと駆けだしていたのではないでしょうか? そして……その潜在能力に気付けぬまま、シグマに敗北してしまう。違いますか?」

 

「……。」

 

 苦虫を嚙み潰したような顔になるものの、帰って来たのは沈黙。否定は来ない。他でもない自分自身の事だからこそ、今俺が言ったことと同じ事を予測してしまい、そして同じ結論に至ったからだろう。

 

「ですが、結果として、エックスさんは各地に眠っていた強化パーツと、刺客との闘いから得た力を得て、強くなってここに来ました。……その為、私はエックスさんやゼロさんに、この場所を教える事は出来なかったのです。」

 

「……君は最初から、俺が奴らに打ち勝ち、成長してここに来る可能性に賭けていたと?」

 

 俺は黙って頷く。

 

「……本当に、シグマはそんな事の為に、『レプリロイドだけの世界を創造する』なんて野望まで打ち立てて、俺と自分の配下を戦わせたって言うのか……?」

 

「ええ。」 

 

 俺が迷いなく肯定すると、エックスさんはしばし沈黙した後、目を閉じてため息をつく(レプリロイドなのでため息をつく必要は無いが、気分的にそうしたくなったのだろう)。

 

 そして、次に歯をギリッと喰いしばり……わなわなと震えながら激昂した。

 

「……そんな事で、こんな大事件を引き起こし、関係の無い人々を大勢殺したというのか!?」

 

 

 

「その通りだ。」

 

 そのエックスの激昂した叫びに応えたのは俺ではなく……俺の後ろに降り立つようにして突然現れた人物……。

 

「シグマ……!!」

 




『VAVA』
実は生き延びてシグマによってボディを再生されていた。
VAVA編ではシグマによるボディの再生ではなく、純粋にイオから逃げ延びたことになり、この後ゼロ&エックスとの闘いとなっていた。
が、エックス編でイオとの出会いを開放しているとここで
VSイオ(ノーマル)→VS駆け付けてきたエックス&ゼロの連戦になる。
なお、結末に大差はない(無慈悲)

『ボスラッシュ』
ロックマンシリーズでは大体ラストステージで今までのボス全員と戦わないと先に勧めない展開があり、それらを総じてボスラッシュと呼ぶ。





うんんまたしてもポンをやらかしてしまったぞ~~~!!!
修正およびご指摘ありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2【Io/other】

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 

 

===■■■■ ■■ ■■■■■ ■■===

 

 

「ここまでご苦労だったな、イオ、そしてエックス。おかげでここまで恙なく計画を進める事が出来た。多少計画にズレが生じたが……誤差のようなものだ。」

 

 マントを身に纏い、さも悪の首領という風貌で現れたシグマは、それでも計画通りだと言い切り、余裕の笑みでそこに立っていた。

 

「……まさかそっちから現れるとは思っていませんでしたよ、シグマ。」

 

「客人を家主が出迎える事がそんなに不思議か? ついでに世間話でもするかね? そうすれば君達の待ち人も来るのではないかな?」

 

「待ち人だと……?」

 

 待ち人……この状況で俺達が待っている人物なんて……いや……。

 

「ま、まさかゼロを……!?」

 

「フハハ! 心配するな、ゼロは今、私の飼い犬で私と戦う資格があるか試している所だよ。もっとも、そう時間はかからないだろうがね。」

 

「何だと……!!」

 

「……なら、何故ここに居るんです? その飼い犬との闘いを見ていなくて良いのですか?」

 

「何、ここまで来ることが出来た褒美をイオ……我が部下であるお前に与えようかと思ってね。」

 

「私はもう貴方の部下ではありません。」

 

 我が部下、と聞いてエックスさんがチラッとこちらを睨んできたので、すかさずピシャリと否定する。なんでコイツこの期に及んでまだ俺が自分の部下みたいな発言すんだよふざけんな。

 

「そうか、残念だ……だが、確かにお前の言う通り、正しくは私の、そして私達の可愛い娘であり息子でもある……といった方が正しいだろう。」

 

「……は?」

 

 ゾオッ、と悪寒が走った。レプリロイドなのに鳥肌が立ちそうというのもおかしな表現だと思うが……。いや、てか何を言ってんだコイツは? 頭がおかしいとは思っていたがこういう方向に頭がおかしくなるとは思ってなかったぞおい。

 

「褒美に真実を話そう。」

 

 そう言って、シグマはクルリと背を向けると、そのまま話し始める。

 あまりにも唐突、あまりにも隙だらけに見えるその姿はまるで「撃つなら撃て」と言っているようで、俺とエックスは一瞬お互いの顔を見合わせ……しかし動く事が出来なかった。

 

「イオ、君は自分が生まれる事となったプロジェクトについてどれだけ知っている?」

 

「……戦闘に特化したボディに、イレギュラーハンター本部に蓄積された膨大な量の戦闘データを搭載させる事で、優秀なイレギュラーハンターを作る事を目標とした計画……その唯一の成功例が第十号機である私です。それが何か?」

 

「その戦闘データとは何か、これに関しては?」

 

「……戦闘データとは、戦闘の際に得た経験値のようなものです。武芸の道を歩む者が、幾度も実戦を重ねる事で、自分の体の動かし方と戦い方を学んでいくように。」

 

「それを最初からデータとしてインストールし、適切な身体を与えれば、最強のレプリロイドが作れるはず……そう考えたから発足されたプロジェクトだった。だが、結果として成功例はたったの一体、君だけだった。何故だか分かるかね?」

 

「……さあ、私には分かりかねます。プログラムのエラー、膨大なデータを処理するだけの処理能力が無かった、等の技術不足である可能性が……。」

 

「違う。計画によって生まれたレプリロイドがたった一人だけだったのは、技術不足が原因などではない。」

 

 強く、確信めいた口調でそう断ずるシグマ。

 俺は思わずビクリと肩を揺らす。

 シグマは、肩越しにこちらに鋭い目線を送り、その目には「本当は気付いているハズだ」とでもいうような、そんな目だった。

 

「それは、イレギュラーハンター本部に蓄積されていたデータの中には、エックスやゼロのデータがある一方で……今まで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()為だ。これが、どういうことか分かるかね?」

 

「何を言って……?」

 

 シグマは俺に向き直り、ずんずんと歩み寄り、距離を詰める。

 俺は、あまりの動揺でそれをただ見ている事しか出来ない。

 

「何故、君はエックスやゼロを助けず、非協力的な態度を崩さなかったのだね? 何故、君はイレギュラーの攻撃によって巻き込まれ死亡する市民達を助けようとしなかったのだね?」

 

「いや、それは……。」

 

「助け無しで成長したエックスでないと私に勝てないからか? その通りだ。そしてその結論は既に私が通過した道だ。何が言いたいか分かるかね?

 君は知らず知らずのうちに、()()()()()()()()()()()、そして私と同じように、レプリロイドの無限の可能性、エックスに賭けたのだ。」

 

「……。」

 

「君をあえてエックスやゼロのように殺さず泳がせていた理由……それは、君が第二の私にすら成り得るかもしれないと考えたからだ。君と言う可能性の芽を潰さずに残しておいたのだ。

 私のように自らイレギュラーになる資質を得て、この世に生まれてきた……生まれながらにしてイレギュラーな存在……IRREGULAR ORIGINそれが君の正体だ。」

 

 ガンと頭を殴られたような衝撃が走る。

 俺が、生まれながらにしてイレギュラーだっただと?

 ふざけるな、そんな……そんな訳ねえだろ。

 

「ちが、違う……私は……私はただ、エックスさんを信じていただけだ。その本当の力に、気付く事さえできれば……彼はお前にも勝てるはずだと……。」

 

「そうか? ならば何故ここに居る?

 

「何故って、それは……。」

 

 そこまで言って、俺は気付く。いや、気付かされる。

 

 そうだ、俺がここに居るのはエックスを信じているからではない、むしろその逆。

 成長しきったエックスでも、シグマには勝てないかもしれない。そう懸念したから……俺は今、ここに立っている。

 

 エックスの事を本当に信じているなら……俺は、ここに来ないで、ハンター本部へ出頭し……事態の収束……イレギュラーの残党狩りでもしていれば、それで良かったんだ。

 

 いや違う、そもそも本当に信じていたのなら()()()()()()()()()()()()()()んだ。

 

 事実、俺が今までやっていた事の大半は無駄に終わった。

 

 先んじて《削除済み》を殺しても、結局蘇ってたし。

 先んじて基地の位置情報を探っても、結局ゼロさんとエックスだけで充分だった。

 そして今も、《削除済み》を倒した今なら分かる。

 

 俺はエックスを信じても良かったんだと。

 

 だがそうしなかった。

 

 俺は、シグマと同じように『成長したエックスならシグマに勝てる』という可能性に賭けたのにも関わらず、土壇場になってエックスの事が信じきれなくなり、こうして敵地にエックスを追ってきてしまうという矛盾に満ちた行動を取っている。

 

 何故?

 

 

「プロジェクトで君以外の全員が暴走、または起動失敗、あるいはイレギュラーと化したのか……それは、君以外の全員は目覚めてすぐに『自らイレギュラーになる事を選択した』のだよ。結果は悲惨な物だったがね。」

 

「なにを、馬鹿な……!!」

 

 口ではそう否定するものの……頭では既に「多分そうなんだろう」と確信めいた答えが導き出されてしまっている。

 

 それを、理性の部分が必死に否定しようとして、思わず頭を抱えそうになる。

 

「戦闘に特化したレプリロイドのその多くは、人間でいう男の身体と精神をもって製造される事が多い。故に、必然的に受け継ぐデータの殆どは男性の精神モデルの物が殆どだったのだろう。だから君は自分を男性型のレプリロイドだと誤認したのだ。」

 

 それは違う、俺は転生者なんだ。

 

 元は男の人間で、たまたま女性型のレプリロイドになってしまっただけ。

 

 ……そう言いたかったが、よくよく考えて見れば、俺は俺をこの世界に転生して来た元男の人間であったと記憶しているが、レプリロイドであるこの俺のその記憶、データは一体どこからやって来て……そしてどこにあるのだろう?

 

 シグマの言っている理屈の方が筋が通るんじゃないか?

 

 そうなると俺は一体なんなんだ。何故ここではない異世界の記憶があるんだ。何故未来の知識があるんだ。何故俺の性自認は男なんだ。何故俺に前世が。何故、何故? なぜナゼNAZE……。

 

「本当はもう気付いているんだろう?」

 

「なに、を……。」

 

「お前は私の娘であり、息子でもあるのだ。そして私と同じく、自分の意思でいつでもイレギュラーになれる素質がある。でなければ……目的の為に罪の無い人々を見捨てるなんて選択は出来なかっただろう。」

 

「ふっ……ふ、ふざけるな……!! ふざけるな!! そもそも全てお前のせいじゃないか!! 罪の無い人々が死んだのも……あの人達が死んだのも……!! 私は……私はお前のようにはならないッ!!」

 

「イオ!! ……もうそれ以上ソイツの戯言に耳を貸さなくていい!」

 

 エックスがそう俺に告げ、思わず飛び掛かろうとした俺の方を引っ張って止める。そして、これ以上の問答は不要だとばかりにバスターをシグマに向ける。俺はそれを見て、ブレードを構える。

 

 そうだ、そうだった。

 

 こいつはこうやって今までも……そしてこれからも、人の心を掌握し、掌の上で転がして自分の思い通りの展開へと持っていく天才なのだ。

 

 それを分かっていてコイツの話をまともに話を聞くなんて、愚かにも程がある。

 

「フン、良い目をするようになったな……いいだろう、最早言葉は不要……まとめてかかって来い!」

 

 

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

 

WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!!

 

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

 

 

「ハァァッ!!」

 

「ズァァッ!!」

 

「ヌンンッ!!」

 

 

 俺はシグマに向かって高速で駆け出してバスターブレードを振り抜いて、エックスはその後ろでチャージを溜めて照準を合わせ、シグマがセイバーを振り抜き、俺とつばぜり合いになる。

 

「フフ、流石だな!」

 

「うるさい!!」

 

「イオ!」

 

 そして後ろからの合図に合わせ、俺はバスターブレードの引き金を引いて距離を取り、その場から上へ飛び上がる。それを見てエックスはシグマへフルチャージのバスターを放つも、シグマもそれを予期して飛び上がり、壁に張り付く事で回避する。

 

 そのまま奴は壁を蹴り、その驚異的な速さを殺さないまま突っ込むように俺の方向へと刺突を繰り出す。

 

 俺はそのセイバーを上から叩くようにして、そこを基軸にクルリと前転して刺突を避けようとするも、脚をシグマに捕らえられてそのまま壁に叩きつけられる。

 

「ぐっ……!!」

 

 叩きつけられる瞬間、壁を思い切り殴る事で衝撃を逃がし、ダメージを最小限に抑えたはずが、腕がダメになるかと思う程のダメージを負ってしまった俺はこのまま掴まれているのは拙いと考え、再びバスターブレードの引き金を掴んでいる腕に打ち込んで拘束から逃れる。

 

 そして、俺が拘束から逃れた瞬間を狙ってエックスがチャージバスターを放つ。

 

「そこだっ!!」

 

「ぬうっ!!」

 

 ここに来てようやくまともなダメージが入るシグマ。そしてすぐに空中で姿勢を立て直し、危なげなく着地すると、今度は口からバスターをばら撒く。

 

 それを避けながら、再びチャージバスターを放つも、セイバーによるガードで無効化する……そのタイミングを見計らい、俺は高速でシグマにブレードで刺突を繰り出す。

 

「その構えは貴方に教わりました……弱点もね!」

 

「……ぐうっ!? 流石だな!」

 

 イケる……。

 これなら、シグマを倒せる……。

 

 俺達なら……いや、エックスだったら……!

 

 こんな時だって言うのに、俺は心の中で「やっぱりエックスは凄い」「やっぱりエックスはカッコいい」等と……まるで、前世でロックマンXをプレイしていた時……子供の頃の時の気持ちを思い出していた。

 

 惚れたとかそういうんじゃない。

 

 もっと純粋で、少年っぽい……憧れとか、そういうのに近い感情。

 その憧れの隣で、俺は今戦っている。

 

 

 ああ、たのしいな。

 

 

 ……? 俺は今何を考えて……。

 いや、今は闘いに集中しなければ。

 

 

 その後も、一体どれだけ戦っていただろうか。

 多分、そんなに長い時間ではない。むしろ、3分とか……あるいはもっと短い時間……だが、その間に何度も何度も刃を合わせ、弾を躱し、弾き、蹴り、殴り、斬り、撃ち、壊す。

 

 それを、知覚出来るギリギリの速度で行う。

 

 当然体感時間は引き延ばされ、たった数分が何時間にも感じられるような激しい戦闘と経て、俺とエックスは段々とお互いの息を合わせ、そして……。

 

「ぐはぁっ!!……流石だな……!! 素晴らしいぞエックス、そしてイオ!!」

 

「シグマ……お前の野望も、ここで終わりだ!!」

 

「ワハハハハ!! アーッハハハハ!!」

 

 そう高笑いしながら、シグマの身体から閃光が走る。

 爆発の予兆、そう予測した俺はつい目を背けそうになるものの、その白んだ視界の中で俺は謎の触手のようなアームがシグマの頭部だけを引っこ抜くと、そのままシュルリと何処かへ消えていく姿。

 

 そして、その後直ぐに鳴り響く轟音と強い揺れ。

 

「……気を付けて、エックス! 何か来ます!!」

 

 ……などと、驚いたふりはするものの、何が来るかは知っていた。

 ウルフシグマ……ロックマンシリーズ歴代ラスボスお馴染みの()()()()と言うやつだ。

 

 大抵こういう時のラスボスは、何故か巨大化したり、巨大なメカに変身したり、存在自体は実は化け物染みてたり、ラスボスを倒したと思ったらまたその裏側には真の黒幕が居たり、なんて展開がテンプレと化しているのだ。

 

 かくいう俺もようやく倒したかと思った後に待ち構えている第二、第三形態の絶望感は子供の頃の俺にとって衝撃だった事を覚えている。

 

 そして……今と昔で違うのは、今はそれが現実で、昔はそれが2D横スクロールアクションゲームだった、という事であり、ほんの数秒後に壁をぶち抜いて現れたのは、思った通りの見た目をした大型のメカニロイドとそれを操る頭部だけのシグマの姿。

 

『さあ続けよう! 戦いを! 苦悩を! 破壊を! 絶望を! その果てに、レプリロイドの真の可能性を見るだろう!!』

 

「エックス! ここが……正念場です!」

 

「戦いは、ここで終わりだ!! ここでお前を……倒す!!」

 

 

 

===■■■ ■ ■■ ■■■===

 

 

 

 原作でのコイツの倒し方は実は単純でパターンさえ分かっていれば楽に倒すことが出来る。

 

 大雑把に言えば、攻撃を避けつつ手に飛び乗ってその上からシグマが入っているコアの部分に攻撃を叩き込む。これを繰り返せばいいだけだ。

 

 が、これが現実になるとそうは問屋が卸さない。

 

 原作と違って、手に乗ったり壁蹴りで上に行かなくても狙いさえすればコアを撃ち抜くことが出来るが、奴もまた原作通りのワンパターンな攻撃をしなくても良いのだから、ハッキリ言って現実だから有利という事は全くない。

 

 回避が困難なレーザー、狙いを定める為に動きを止めた瞬間襲ってくる放電、食らったら一瞬で破壊されてしまう程の威力を持つ爪での攻撃、至近距離で狙えば口から火炎放射が放たれる。

 

 もちろん、コア以外の場所は攻撃しても防御力が高すぎてほとんど意味は無い。

 この状況下でどうにかコアの部分に攻撃を当てなければならない。

 

「……このままじゃ、埒が明かない!」

 

 そうして攻撃を避けては、攻撃を避けられて、防御して、防御されて、闘いが泥沼化していたその時。

 

 

「ハァッ!!」

 

『グワッ!?』

 

「何っ!?」

 

 

 突然、聞き覚えのある声、見覚えのあるシルエットが空中に躍り出る。そしてバスターの炸裂音と共に、シグマの右肩の放電機構が破壊される。バスターを放った本人は危なげなく着地し、こちらへと振り返った。

 

「……ゼロさん!」

 

「……ゼロ! 無事だったんだな!」

 

「ああ! 扉のロックが固くて手間取ってしまったが、どうにか間に合ったようだな。」

 

『ゼロ……! ククッ、役者が揃ったようだな……! さあ、第三ラウンドと行こうか!!』

 

「行くぞ、二人共!!」

 

 これは流石に勝ったわ、飯食ってくる。

 

 

 

=====《補完記録「side:X」》=========

 

 

 

 

 

 ゼロが駆けつけてくれてから、戦況が一変した。

 

 ゼロの最大威力までチャージしたZバスターによって、部位を破壊し、イオがコアに攻撃する事で動きを止め、俺がコアに全力のチャージショットを放つ事でダメージを与える。これを繰り返す事で着実にダメージを与える事が出来るようになった。

 

 この三人がかりでも決して楽に勝てる相手ではない……だが、この三人なら、勝てない敵じゃない!

 

「今だっエックス!!」

 

「これで……終わりだ!!」

 

『グオオオオッ!!』

 

 そして、最高のタイミング、最高の一撃、その全てが噛み合い、俺はコアに最大威力のチャージショットを放つ。

 

『まさ……か……!! グゴ……ガ……!!』

 

 自立制御システムが破壊されたのだろう、シグマのボディは基地の地下へと落ちていく。火花を上げながら、しかし、爪で床にしがみつこうとするも、自重を支えるには至らず、ズルズルと落ちていく。

 

 それでも、必死に爪で床にしがみついていく。

 

『闘いは……終わらんッ……!! エックス……!! レプリロイドの真の可能性は……闘争の、その先にある……!!』

 

「コイツ、まだ……!!」

 

 そして、追撃を与える為にゼロがバスターを構えたその瞬間……シグマは力を振り絞り、飛び掛かるように爪を振るう。

 

「なっ!?」

 

『ハハハ……フハハハハ!! ワァーッハッハハハハ!!』

 

「うああっ!?」

 

 しかし、爪を振るったように見せたのはブラフ……シグマは、自らの爪とその腕で、イオを引っ手繰るように掴み取ると、狂気的な笑い声を上げながら基地の底へと落ちていく。

 

 俺は今まさに落ちていくイオに手を伸ばすも……わずかに届かず、イオはどんどん暗闇の底に飲まれ、消えていく。

 

「助けないとっ、ゼロッ!!」

 

「エックス、ダメだ! もう基地が持たん! 爆発に巻き込まれるぞ!!」

 

「でも、イオが!!」

 

「エックス……!! 引くしか無いんだ! 俺達まで死んでしまうぞ!」

 

「くっ……!!」

 

 

 そして俺達は、暗闇に消えたイオを残し、シグマの制御を失って爆発する基地から脱出する。

 

 

 イオ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

===■■■ ■ ■■ ■■■===

 

 

 

 アクセスを確認。

 

 システムの再起動を要請。

 

 要請を受諾、実行します。

 

 実行中……。

 

 ……ボディへの甚大なダメージを検知。

 

  

 このまま再起動を試行は危険と判断。

 

 システムの再起動を中止。

 

 ボディの再生を要請。

 

 ……失敗。

 

 要請されたプロセスに必要なデバイスが不足。

 

 

 当個体のシステムの全てをシャットダウン。

 

 ……失敗。

 

 起動中のソフトウェアがシャットダウンを中止しています。

 

 

 警告。

 

 当個体、システム内部に甚大なエラーを検知。

 

 システム……応答無し。

 

 応答まで待機、またはシステムの強制シャットダウンを推奨。

 

 

 待機の選択を確認。

 

 システム、応答まで待機します。

 

 予測される応答までの時間を計測。

 

 

 計測完了。

 

 システム応答までにかかる推定時間……☒☒☒時間。

 

 

 

 

===■■■■■ ■■ ■■■■■■■===

 

 

 

 

 何も見えない……。

 

 何も聞こえない……。

 

 何も感じない……。

 

 暗闇だけが広がる世界。

 

 

 俺は死んだのか?

 

 ここが死後の世界だと言うのか?

 

 ……まぁ、それならそれでいいか。

 

 

 シグマは倒した。

 

 復活するだろうけど、今のエックスが居れば大丈夫だ。

 

 それに、ゼロだって無事に生きているハズ。

 

 だから……俺がやるべきことは、もう何も無い。

 

 

 だったら、もういいじゃないか。

 

 二度目の人生、俺にしてはよくやった方じゃないか。

 

 もう、満足だ。

 

 

 

 

 

 本当に……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===■■■■■ ■■ ■■■■■■■===

 

 

 

 

 

 

 

 

AnotherMission『???』

 

 

 

【任務内容】

行方不明となった個体『イオ』を捜索し、見つかる限りのボディを回収せよ。

当任務においては、ボディが現存しているか不明である事と、海の底に沈んだシグマ基地の残骸がどの程度形を残しているかが不明である為、その調査も含まれており、損壊状況から、該当個体の現存が非現実的であると判断された場合はその時点でこの任務を終了とする。

 

 

なお、もし該当個体が現在も稼働を続けていた場合。

 

該当個体を破壊する事で、当任務を終了とする。

 

以上。








イオが生まれたプロジェクトの問題点

イレギュラーハンター本部に蓄積された戦闘データは、戦闘型レプリロイドにとってほぼ半生の記録と言っていい程膨大なデータ量だったが、それ自体は問題ではない。

ロクゼロとかだと結局このあとエックスが数百年に渡って活動が可能な程頑丈な身体をしているし、その数百年分のデータを持っていても問題は無かった為(戦いに疲れて眠ってしまったのを問題無いと言っていいかは分からないが)スペック的な問題点は無いという設定です、ここでは。

問題だったのは、データの中にはゼロやエックス達のほかに、今後イレギュラー化するレプリロイド(VAVAやボスキャラ等)の、そして既にゼロと戦った後、イレギュラー化していたシグマのデータも含まれていたという事。(なんならゼロのデータがあるだけでも結構拙い)

これにより、イオ以外の同プロジェクトで生まれたレプリロイド達は全員イレギュラー化する事を選ぶか、暴走するか、データの矛盾(エックスのような優しい人物とシグマのような残忍な人物とのデータが上手く嚙み合わなかった結果)によってそもそも起動すら出来なかった、という結果に終わった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1

「どういう事だ!」

 

 イレギュラーハンター本部にて、それは起こった。

 

 事の発端は、シグマを倒し、今や海の底に眠る残骸となった基地でのイオの捜索任務が発令された事から始まる。

 

「どうして、こんな……イオが生きていたら破壊しろだなんて指令が!?」

 

 その指令内容は、基地の内部で行方不明となったイレギュラーハンターのイオ、その残骸で残っているパーツがあれば回収せよという任務……だが、もしもそのイオが生き残っていた場合、イオを破壊する事で任務完了とする、という内容だったのだ。

 

 エックスにとって、イオは仲間であり、友人であり、そして自分ですら知り得ない何らかの情報を握っている、キーマンとなる人物である。

 

 シグマを倒すのに協力してくれた功績だってある。

 

 なのに、どうして生きていたら救助ではなく破壊なのか。

 エックスは納得がいかないという表情で激昂する。

 

 だが、同じ思いなのはエックスだけでは無かったようで、オペレーターとしてエックス達を支援していたレプリロイド達の表情もどこか暗い。

 

「その、エックス……実は、私達……いえ、この街の人達は皆、イオとシグマのあの会話を見ていたの。」

 

「え……?」

 

「シグマはね、あの基地から電波をジャックして、我々の支援を妨害するだけでなく……街頭放送やラジオ、他の様々な放送媒体を経由して、あの時の貴方達の会話を放送していたんだ。」

 

「それとイオが殺されなきゃいけない事になんの関連性……が……。」

 

 反論しながらエックスは「まさか」と自身の頭で導き出した推論に悪寒を覚える。

 そう、シグマが街の人々へと向けて放送した内容、それは……。

 

 

「街の人々は皆、イオというレプリロイドがシグマと同じ、自らイレギュラーに成る事のできる素質があるレプリロイド……IRREGULAR ORIGINだという事を知ってしまったのよ……。」

 

「そ、そんな……でも、イオはその後ちゃんとイレギュラーに成る事を否定して……シグマを倒すことに協力だってしてくれた……俺たちの仲間じゃないか……!」

 

「だが、その為に人々を見捨てたという事実……何より、今回問題を起こしたシグマを含むイレギュラー達のデータが残っているという事実が問題となっているんだ。」

 

「それは、今までだってずっとそうだったハズだ! だけど今までずっとイオはイレギュラーになんてならなかった! そうなる可能性があるってだけで殺さなきゃいけないなら……イオは……イオは、生まれてきてはいけない存在だったとでも言うのか!?」

 

 その激昂に、ミーティングルームの全員が顔を背け、沈黙する。

 それは全員が、それを否定するだけの材料を持ち得ない……肯定するしか出来ない事を意味していた。

 

 エックスは思わず一歩後ずさる。

 

 それは何を思っての行動だったのか……現実からの逃避か、仲間へ銃を向けなければならないという絶望か。

 

 そして、隣で聞いていたゼロがエックスの肩を叩き、深刻な面持ちで首を横に振る。

 

「……エックス、そもそもイオはあの爆発に巻き込まれ……基地の崩壊と共に海の底に沈んだんだ。現地はレプリロイドの反応一つ無いと聞いている。

 ……パーツは回収され、これから新たに製造される後続達が、イオの意思を引き継いでくれる。そうやって今までも俺達は戦ってきたんだ。」

 

「それ、は……。」

 

「それになエックス。もしもイオが生きていたとして……そしてイレギュラーになっていたとしても、なっていなかったとしても、これからイオに待ち受けている展開を思うと、ここで……俺達の手で、終わらせてやる必要がある。」

 

「終わらせるって……それは、ダメだ! 彼女は……!」

 

「それとも、お前はアイツがイレギュラー化して、人々を襲うようになったとしてもいいのか?」

 

「彼女は、イレギュラーになんか……。」

 

「だが、可能性が0な訳じゃ無い。そうだろ? 自分の意思一つで、シグマのようになることが出来るレプリロイド……その危険性はお前にも分かっているハズだ。」

 

 実際、イオがもしもイレギュラーになったとしたら……その危険性はシグマ程ではないにしろエックスやゼロのような実力者でなければ対応できない程の危険を孕んでいる。

 

 いや、エックスですら知り得ない情報を手に入れている謎の情報網の事や、他のレプリロイドでは到達し得ない結論に到達する事の出来る頭脳の事を考えると、もしかしたら、シグマ以上の……。

 

「……分かった。もしも……もしもイオが生きていて……イレギュラーに成る事を選択していたら、その時は、俺が彼女を、倒す。」

 

 しばしの思考の末、エックスはそう決意した。

 

 だが、もしも彼女が本当に生きていて、かつ、イレギュラーになっていなかったとしたら、その時は……どうにか彼女を説得して、彼女が持つ危険性をどうにか出来るようになるその時までは投獄するなりスリープしてもらうなりして……とにかく、破壊だけはどうにか避けようと考えていた。

 

 任務内容では生きていたら破壊、とあるが……これは要するに、彼女がイレギュラーになってしまう可能性が明確であるからであって、無力化し、後でこの危険性を孕んだデータさえどうにかしてしまえば良い、そう考えたのだ。

 

 任務に逆らうかのような思考だ、と自分で理解していながら、だが、彼女も救い、人々を救う為にはこうするしかないと確信していた。

 

 

「それでは、エックスさん、ゼロさん……予定された時刻に基地へ……。」

 

 

 出向してください、とオペレーターのレプリロイドが指示を出そうとしていたその瞬間……ミーティングルームに警報が鳴り響く。

 

 

「何事だ!?」

 

「き、基地へ出向していた捜査班から連絡! ……そんな、信じられない! イ、イオが生きていたようです! 現在交戦中!」

 

『こちら捜査班……! 報告した通りです! 海底から該当個体のイオが出現! 指令に基づいて一部の隊員が彼女を攻撃中! 至急救援求む!』

 

「交戦中!? 戦っているのか!?」

 

『し、指令では生きていたら破壊との事ですから……。』

 

「馬鹿な……! 捜査班のお前らでは戦闘に特化したイオに勝てる訳がない! 直ぐに撤退させるんだ! 攻撃も今すぐ中断しろ!」

 

『む、無理だ! やらなきゃこっちがやられ……ウワアアアアアアアーーーーーッ!!!

 

 隊員の断末魔の後、一瞬、音声にノイズが走ったかと思うと、ブツリと通信が途絶える。

 

「そ、捜査班20体の反応ロスト……全滅です。」

 

「そん……な……。」

 

「……現時刻をもって、イオをイレギュラー判定……任務内容を変更。現在彼女は捜査班から奪ったライドチェイサーで何処かへ移動中です。各隊員は、彼女を追跡し……破壊して下さい。」

 

 エックスは……思わず膝から崩れ落ちそうになる程のショックを受けていた。

 

 あのイオが……イレギュラーではないレプリロイドを、殺した……。

 つまり、彼女は……イレギュラーになってしまったと考えて良いだろう。

 

「……クソッ。」

 

 ゼロは苦虫を噛み潰したような表情で拳を握りしめる。

 そして、そのまま足早に部屋を飛び出し、その場を後にした。

 

 エックスはそれを見て、いつまでもここに居ても仕方ないと考え、色々な感情に押し潰されそうになりながらもゼロの後を追い、ライドチェイサーに乗ってイレギュラーハンター本部から出向した。

 

 

= = = = = = = =

 

 

 

 

「こちらゼロ……アイツは今どこに向かっている?」

 

『こちら本部……どのような目的があるかは不明ですが、彼女は今、ゴミ処理施設へと向かっています。』

 

「ゴミ処理施設……?」

 

 どうしてそんなところに……と二人は考えるも、目的は分からず仕舞いだ。

 あの場所には、イレギュラーとなって破壊されたレプリロイド達の残骸や、廃棄されたメカニロイドの部品が廃棄され、超高温の焼却炉による焼却処分を行っている場所だが……逆に言えばそれだけだ。

 

「……まさか……。」

 

 ゼロは、もしやと思い当たる可能性を導き出したらしい。だが、それは……あまりにも……あまりにも残酷な悲劇。出来れば外れていて欲しい可能性。しかし、考えれば考える程……そうとしか思えない。

 

「ゼロ……?」

 

「……いや、何でもない。これからそのゴミ処理施設へ向かう。」

 

『了か……待ってください! 今、本部に通信! い、イオからです!』

 

「何!? 本人か!?」

 

『間違いありません! 彼女が事件発生前から使っていた物と全く同じ物です。今、そちらにも繋ぎます!』

 

 

 

 

= = = = = =

 

 

 

 

 

『あー、あー、テステス。聞こえますか?』

 

「イオ!」

 

『あ、聞こえているみたいですね。どうもどうも。』

 

「お前、どうして……。」

 

『どうして、ですか……それはこっちも聞きたいんですけどね? 何故、私が破壊対象になっているのか……。まあ、大体想像は付きますけど。』

 

「シグマが、お前と自分との会話を街に流していたんだ。お前がイレギュラーになる素質がある事、イレギュラーのデータを持っている事、目的の為、人々を見捨てた事を……。」

 

『……そうですか。もう、遅いんですね。なんでこうなっちゃったのかな。』

 

 通信の先の声は、少し震えていた。

 イレギュラーとなり、暴走していると思っていた彼女は、まだこうして話が出来るだけの理性があり、後悔し、恐怖している。

 

 だが、それならどうして……。

 

「イオ……どうしてだ。何故あいつらを殺した? 今のお前は……本当にイレギュラーなのか?」

 

『……私はただ……何者かに襲われたと思って……襲われたので反撃して……攻撃が止まないので、止むまで反撃を繰り返していたら……それが、何故かイレギュラーハンターの仲間で……私……私は、イレギュラーなんか、じゃ……。』

 

「……そうか、やはりな……。」

 

「どういう事だ……?」

 

「エックス、指令を思い出せ。元々の指令は、イオは生きていた場合破壊せよとの指令だったんだ。捜査班はその指令に従っただけ……そしてイオは……恐らく、爆発のダメージで識別センサーか視覚センサーのどちらか、あるいは両方がイカレている。だから、目が覚め、地上に上がってすぐ……イレギュラーか何かに襲撃されたと誤認したんだろう。」

 

 まさに、運命の悪戯とでもいうべきか……どこかで歯車が狂ったのか、何もかもが悪い方向に噛み合い、何もかもが最悪の方向へと進んでいく。

 

『エックス、ゼロ……私は、許されない事をしてしまった……みたいですね。』

 

「ああ……イオ、今そっちへ向かっている。だから……投降するんだ。そうすれば投獄だけで済むかもしれない。」

 

『ダメです。ダメですよ……私は、やっぱりこのままここで死のうと思います。』

 

「な、何でだ!」

 

『私はあの爆発の後、再起動までに自身の身体をチェックした結果……システム内部に把握しきれない程多くのエラーを孕んでいる事が分かりました。つまり、このまま生きていてもいつか頭がおかしくなってイレギュラーになるか……機能停止するだけです。』

 

「そ、そんな……なら、尚更!」

 

『実は……もう、間に合いそうにないんです。今も……頭の中で、奴の声が聞こえる……「イレギュラーになれ。」と……「ここで終わってしまっていいのか」と……。私は……今にもその言葉に負けてしまいそうです。……だから私は、まだ、正気でいられる内に……私自身を焼却処分します。』

 

「そ、そんな……そんな……。」

 

「……それが、お前の選択なのか。イオ。」

 

『……はい。今まで、本当に、ありがとうございました……貴方達と出会えて本当に良かったです。……そろそろ着きそうです。それでは、これで……。』

 

 

―――さようなら。

 

 

 イオがそう残したのを最後に、通信が切断される。

 

 

「イオ……。」

 

 

 エックスは、彼女の決意と、最後に彼女が遺した言葉を胸に抱いて噛み締める。

 彼女という仲間の犠牲はあったものの……事件は収束を迎えるだろう。

 エックスは……様々な感情を背負いながらも、けれど、これでようやく全てが終わったのだと……そう信じて疑わなかった。

 

 

 ……しかし……悲劇はこれで終わらなかった。

 

 

 

= = = = =

 

 

 

 

 

 そこは戦場、と呼ぶにはあまりにも淀んだ空気で満ちており、周囲はスクラップ……それも、主に破壊されたイレギュラーの残骸で埋め尽くされていた。

 

 ここはゴミ処理場だ。周囲にもそれ以外のものは何も無く、処理するための施設は今や無人の廃墟と化しており、作業用及び警備用のメカニロイドは全て電源がOFFになっている。

 

 人が居ないのは、今から数日前にとあるイレギュラーの暴動によって、街全体にイレギュラー達が攻撃し、街や人々を破壊して回っていた為、市民達やここの作業員たちは、安全な場所へと避難していたのだ。

 

 そしてその一人のイレギュラーハンター、イオは、そのまま焼却処理施設へと向かう。だが、そこで彼女を待っていたのは残酷な運命だった。

 

「嘘でしょ……? なん、で……。」

 

 彼女が向かった焼却処理施設……そこには超高温でレプリロイド達の残骸を処理する為の施設が稼働しているハズだった……だが、そこで一つ……いや、そこでもまた一つ、歯車が狂っていた。

 

「どうして、停止して……いや、そうか……作業員の誰かが、避難する前に電源を落として……制御装置は、どこに……?」

 

 そこは本来赤く光るマグマが満ちているハズだが、制御装置により加熱機構が停止していた。その上に、クレーン型のメカニロイドが大量のレプリロイド達の残骸を落としており、数日もそのまま放置されていた焼却炉は、マグマの熱が急激に冷めており、表面は黒く変色した機械片で覆われている。

 

 ……機械片ですらその原型を留められるほどの熱である。

 

 耐久性に優れた戦闘用ボディを持つイオを焼却できるに足る火力があるようにはとても見えない。

 

「もう一度作動させて、その上で中に入れば……次第に熱が上がり、機能を取り戻すはず……まだ、間に合……あ?」

 

 不意に、彼女の視界に一瞬ノイズが走ったかと思うと、目の前が暗闇に包まれる。

 

 停電だろうか? 避難した人の誰かが、電源を落とした? だとしたら拙い、制御装置へ送る電気が無いと動かせない。

 

 ……そこまで考えて、避難するような人がわざわざそこまでするだろうかと思い直す。しかし、だとしたらこの暗闇は一体なんだろうか。

 

「とにかく、明かり……明かりをつけないと……そうだ、ブレードのエネルギーを明かり代わり、にすれば少しは……あれ?」

 

 腰に持っていたブレードを取り出すも……何も、見えない。

 起動音も、ブレードのエネルギーが迸る音もするハズなのに……どうして。

 

 

「…………まさか……私、目が……あ。」

 

 

―――……そしてイオは……恐らく、爆発のダメージで識別センサーか視覚センサーのどちらか、あるいは両方がイカレている。だから、目が覚め、地上に上がってすぐ……イレギュラーか何かに襲撃されたと誤認したんだろう。

 

 

「あ、う、嘘だ、そんな……い、嫌だ! 何で! どうしてだよ!? どうしてこんな……がっ!?」

 

 突如、彼女を襲う、頭が割れそうだと錯覚するほどの頭痛。

 それは、彼女にいよいよ()()が訪れようとしている事を意味している。

 

「嫌だ、嫌だ……死に方すら、選べ、ない、なんて……こん、な……。」

 

 

 耐え切れず、その場に倒れるイオ。

 程なくして、イオはピクリとも動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 ===DATA===

 

 

 

 

 

 

 結局俺は何がしたかったんだろう?

 

 ただただ生き残りたいがためにここまで強くなって、結局出来たのは、ゼロさん一人助けたぐらいか?

 

 ……まあ、ぶっちゃけ俺が助けなくても続編で復活するし、ほぼ無意味だよな。

 

 ……本当に……何がしたかったんだろう?

 

 ただ生き残りたいだけだったのだろうか?

 何のために……?

 

 何か目的があって、その為に生き残りたいというならまだ分かる。

 

 だけど、何の目的も無く、ただただ生き残りたいんだったら……こんな事しなきゃ良かったんだ……。

 

 でも、そうしなかったのは、訓練場であった奴らの死を見て、やるせなくなって……。

 

 思えばあの時からだな、こんなに暴走してるのは。

 

 あの時から……強くなった俺なら、何かできるかもって思ってたのかな……。

 

 何か……何かって……何だろう?

 

 何がしたくて俺は戦っていたんだっけ……?

 

 ……よく、思い出せない。

 

 誰かを……救いたかった……?

 

 この力に、意味を持たせることが出来たら……。

 

 俺がこの世界に来たことに、意味を持たせることが出来たら……。

 

 そんな事が出来たなら……きっとこんなに暗い気持ちで死ぬ事無かったんだろうな……。

 

 

「……本当に、こんな終わり方で良いのか?」

 

 

 良いんだよ、だって、イレギュラーになる訳にも行かなかったし、このまま死ねば……ホラ、パーツとかそのまま使えるだろうしさ。

 

 むしろ燃えちゃわなくて良かった、みたいな……。

 

「それが、お前の本心か?」

 

 ……本心な訳、ねーだろ……俺だって、もっと……もっと生きたかったよ。

 

 だって、せっかく憧れのヒーローが居る世界に来たんだぜ。

 

 もっと色々話したかったよ。

 

 もっと戦っていたかったよ。

 

 もっと色んなキャラと会いたかったよ。

 

 もっと笑いたかった! もっと泣きたかった! もっと楽しみたかった! もっと苦しみたかった! もっと、もっと……。

 

「……なら、もう手段を選ぶ必要もあるまい?」

 

 だから、それはダメなんだって! 俺はイレギュラーになりたい訳じゃ無いの!

 

「だが、イレギュラーになりさえすれば……お前の願望は、全て叶うように思うが?」

 

 そんなわけ無いだろ。

 

「いいや、ある。例えば現状だが……お前はエックスのような善なる者達とイレギュラーへと至った悪の者達、両方のデータを同時に持っている事から、常に矛盾を抱えて生きてきた。これは自覚があるか?」

 

 うん。

 

 だからシグマは俺に「お前は望めばいつでもイレギュラーになる資質がある」なんて言ったんだろ?

 

「矛盾というのは要するにエラーだ。エラーが蓄積するとどうなる?」

 

 そりゃまあ、頭がおかしくなって暴走しちゃうか、そもそもシステムがうまく働かなくて動けなく……ん? もしかして、俺って今そのせいで身体がどんどん壊れていってんの?

 

「……今更気づいたのか?」

 

 う、うるさいな。

 

 それどころじゃなかったんだから仕方ないだろ……俺はてっきりシグマと爆発に巻き込まれたときのダメージとか、メディカルセンターでしっかり整備をしておかなかったからそのせいで、とか、なんかそんなんだと思ってた。

 

「先ほどは矛盾といったがな、お前はその両者の丁度中間で、細い糸で綱渡り、あるいは綱引きをしている状態だったんだ。故に、今回の事件で善と悪の心が揺さぶられ、その均衡が崩れ、結果として身体のシステムは急激にエラーを蓄積していった。まあ、大きなダメージを受けたのもその要因の一つではあるがな。」

 

 うーむ、なるほど……まあ、要するに、今までは悪と善の間で上手くやれてたけど、そのバランスが崩れておかしくなってるって事ね?

 

「……まあ、そうだな。で、これを解決する方法は一つ。お前がイレギュラーになる事だ。

 

 なんでそうなんだよ。そもそもエラーまみれでロクに動けねえんだっての。

 

「まだ分からないのか? 要は悪と善、どちらかに最適化すれば良いだけの話だ。善の心を殺し、悪に堕ちれば、矛盾は消えてなくなる。つまり、エラーも解消され、お前はこの暗闇から自由になるという訳だ。」

 

 ……いや、でもやっぱりダメだろ。

 

 だってイレギュラーになったらどうせあの二人に殺されるし。

 そもそも俺はイレギュラーになってまで生きていたいわけでもない。

 

 ……つか、さ。

 

 その話を聞く限りだと、俺からシグマや他のイレギュラーになった奴らのデータを全部除去して、善の心だけで最適化すれば……問題無いんじゃね?

 

「……はぁ……お前は頭が悪い癖に妙に勘がいいな。確かにお前の言う通り、それが出来ればお前はイレギュラーにならなくても済むし、エラーも解消され、その上イレギュラーになれる資質を失って、誰も不幸にならない大団円だ。実に愉快で素敵なイイ作戦だ……不可能と言う点に目を瞑ればな。」

 

 は? 不可能って、なんで……。

 

「何故ならここに私がいるからだ。」

 

 は……え……なん、なんでおま……ああ、そうか……そうだよ、そりゃ俺の中にも居るよな、アンタなんだから。

 

「諦めろ。お前では私に勝てない。大人しくイレギュラーになれ。」

 

 それは……あー、なんだっけ。

 俺が諦めるのを諦めろ、だったかな?

 どうせイレギュラーになったら身体を乗っ取るつもりなんだろ、騙されんぞ。

 

「……なら、このまま消えろ。」

 

 

 

 

= = = = = =

 

 

 

 イオの決意を聞き届けた後のエックスとゼロは、二人でイレギュラーハンター本部へと戻っていた。事の結末を本部に伝えた結果、二人がそれ以上彼女を追う必要は無い、という結論に至ったためだ。

 

 だが、ライドチェイサーで帰還中、ゼロは不審な反応をキャッチする。

 

「……どういう事だ……!?」

 

「ゼロ……? どうしたんだ?」

 

「……イオの反応がおかしい。反応があったり消えたりと、まるで……まさか……もしかすると、()()()()()()()()のかもしれん……!」

 

「そ、そんな……! じゃあ、今彼女は……!?」

 

「……手遅れになる可能性がある。」

 

「急いで戻ろう! ゼロ!」

 

「ああ……!」

 

 








『矛盾』

ロックマンXシリーズでは続編でアイリスとカーネルという二人の兄妹のレプリロイドが登場する。

彼らのCPUは元は「平和を願う心」と「無双の戦闘力」を両立させた「伝説のロボット」を再現させた一つのCPU」だったが「戦闘」と「平和」という二つのプログラミングに矛盾を起こして暴走する形になってしまった。

なのでCPUを二つに分け、アイリスは平和を基礎に、カーネルは戦闘を基礎に、二人のレプリロイドとして生まれた為、二人はレプリロイドでありながら「兄妹」である。

イオは現在、『善』と『悪』のデータで矛盾を引き起こした結果、生まれたその時から常にエラーを蓄積し続けてしまう性質となってしまう。

この性質で済んでいるのはむしろ奇跡で、他の19体は全てこれが原因で起動失敗または暴走またはイレギュラー化、という結末に終わっている。

彼女の過去のデータがエラーまみれになったりしているのはこの為。
彼女はずっとこの性質で常に善と悪の綱渡り(綱引き?)状態になっていた。

そして今回の戦いでその二つのバランスが揺さぶられ、そして身体的にもダメージを負った事で今までとは比較にならない速度でエラーが沈殿し、身体のシステムが停止に至ってしまう。

これを直すには『善』か『悪』かどちらかを選び、どちらかを消去し、残った方にシステムを最適化すればシステムの復元が可能。

だが『悪』のデータ内には「あのウィルス」が含まれており、「あのウィルス」はイオをイレギュラーにした後、その身体を乗っ取って復活するつもりでいる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

0

「反応は、この先か……?」

 

「ああ。しかし……。」

 

 周囲を見渡すと、そこには、廃棄となったレプリロイド達の残骸や、壊れたメカニロイド、元が何だったのか分からないパーツ、今にも動き出しそうな、錆びた機械が廃棄されていた。

 

「(……俺も、壊れたら……こうなるのだろうか。)」

 

 ゼロはそれを見て、つい、そんな事を考えてしまう。

 きっと、ゼロが壊れる時が来たとしたら……いや、ゼロだけじゃなく、エックスも、イオも、本来ならシグマ達だって……こうやって廃棄されるはずだったのだ。

 

「ゼロ?」

 

「……いや、なんでもない。先を急ごう。」

 

 思う所が無いとは言わないが……今はイオの件が先……。

 ゼロとエックスはそのゴミ処理施設の奥へと進んだ。

 

 道中も、周囲は暗闇と沈黙だけが広がっており、今までのようにイレギュラーが襲って来たり、トラップが命を奪おうとしてくる訳ではなく、まるで何事も無く、明日またいつも通りに稼働するような気さえ起こさせる。

 

 だが、奥部に差し掛かった瞬間、二人は同時にソレに気付く。

 

「なんだ、これは……?」

 

「……お前も、感じるか?」

 

「と言うことは、ゼロも……?」

 

「……どうして俺の勘はこう、悪い時にだけ的中するんだろうな。」

 

 ソレは、レプリロイドとしてあるまじき非科学的な……あるいは第六感、あるいは殺気、あるいは負のオーラ、あるいは闇、あるいは悪。黒くて、鋭く、それでいて霧のように、そして粘液のように纏わりつく、嫌な予感という物を肌で感じる事が出来たなら、丁度こんな感じになりそうな何かが……。

 

「……奥から、だな。」

 

「ああ。」

 

 奥、つまり、そこにこれを漂わせている元凶が居る。

 

 エックスとゼロは一気に警戒度を上げたまま、それでも奥へ奥へと進む。

 進むにつれてその不穏な気配も増していく。

 

 

 そして、とうとう最深部……焼却炉の場所まで来た二人は、その制御装置のすぐ前で足を崩し、両眼を閉じて座している一人のレプリロイドの存在に気付く。

 

「……イオ、なのか……?」

 

 エックスは、一目見て……それがイオだという事に気付けなかった。

 何故ならそのレプリロイドは、顔の半分が罅割れ、プラスチックと金属で出来た表情筋が剥き出しになっている他……身体のあらゆる場所が破損により、まるでゾンビのような痛々しい姿へと変貌していた為である。

 

 その上、そのレプリロイドからは先述したどす黒い力の奔流が流れ出し、その空間を満たしていた。かつてのイオからは想像も出来ないような気配もまた、エックスの判断を鈍らせた一因であった。

 

 だが、まだ残っているパーツや外装から、それがイオだと分かる。

 

「わ、ワワ、ワタシ、は……IIIIIII Io イオ……。」

 

 イオだと思われるレプリロイドは、まるで古いラジオのような雑音まみれの声でエックスの声に応えると、そのままゆっくりと立ち上がる。そして、ガンブレードに手をかけ、その刃先をエックスへと向ける。

 

「……もう、言葉が……。」

 

 イオは、刃先を向けたまま、古くなったブリキ人形のように気味の悪い音を立てて、それでも戦う体勢を崩す事無く、確かな戦意をその身体に満たしていく。

 

「イオ……!! 俺の言葉が分かるか!? 何か、何でもいいから、答えてくれ……!!」

 

「い、イオ、イオです。ワタシ、い、イレギュラーハンター……ジブンの知らないジブンの、話……むずがゆ、です、ですね。キャハハハハハハ!!hahaha hahaha……!!watasi どうすれba?」

 

「……!!」

 

―――俺……いや、私は本日、イレギュラーハンター第17精鋭部隊に配属となった、もしくはなる予定でした。 イオといいます。

 

―――いえ、自分の知らない所で自分の話をされてるのを聞くって、むず痒くて、ハハハ……。

 

―――エックス!……さん、私はどうすれば?

 

「……そんなになってもまだ、君は……自分がイレギュラーハンターだと覚えているのか……イオ……!!」

 

 これだけ壊れても。これだけ傷つけられても。これだけ狂ってしまってもまだ、彼女は自分を「イレギュラーハンターである」と、その事だけを覚えていて……それに縋りつくように、残っているかも分からない気力を振り絞るようにそこに立っていた。

 

 そのあまりの痛々しい姿に、そして己自身の無力感にエックスは拳をギリギリと音が鳴る程強く握りしめる。

 

 イオは、そのまま、まるでレコードのようにかつての自分が発した言葉を思い出すかのように発した。

 

「ぜぜぜん、せんじ、つ……DIE、ナナ……配ぞ、苦、zero たいちょ、きょo、シュクで、えす。す。」

 

―――先日、第17精鋭部隊に配属されました、イオといいます!

 

―――きょ、恐縮です!

 

 

「……クソッ!!」

 

 ゼロは、いつの間にかエックスと同じように握りしめていた拳で思い切り壁を殴る。壁は拳の形に凹みを作り、固定していたボルトがねじ曲がって浮いた。

 

「わた、し、私……俺は、イオ。来い、ヨ……こそ、し、ロ……korosi、殺ろるり、して……コロ、して……コロシ……コロシテヤル。」

 

「ッ! 来るぞ、エックス!!」

 

 そして、とても大きなダメージを受けているとは思えないスピードで、イオのガンブレードが振るわれる。エックスとゼロは決意を抱き、バスターを構えた。

 

「……ッ、イオッ!! ここで、君をっ……終わらせるっ!!」

 

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

 

WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!! WARNING!!!

 

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

 

 

 

 

 

▶【I】【】◀

 

 

 

 

 

「ズァァッ!」

 

「フッ!」

 

 駆けながらブレードを振り下ろすイオの動きに合わせ、バスターを放つゼロとエックス。流石にこれまでの激戦を潜り抜けただけあって、イオの高速移動にもしっかりと反応し、冷静に連携をとった動きが出来ている。

 

「ッ!」

 

 しかし、イオも二人の放った弾を正確に見切って避ける。それまでの壊れたブリキのようなぎこちない動きではない。

 

「どうやら、見た目程ダメージを受けている訳ではないようだな……!」

 

 傍から見れば装甲が剥がれたり、顔のパーツが罅割れて痛々しいゾンビのような見た目にこそなっているが、駆動系や、戦闘に必要なパーツの殆どはまだ生きているようだ。

 

 流石は戦闘特化、と言うべきだろうか。他のレプリロイドと比べてもかなり頑丈なボディとなっているようだ。

 

「(だが……)そこだ!」

 

「ガアアッ!?」

 

 ……だが、言ってしまえばそれだけだ。

 

 冷静に攻撃を見極めて、避けながら攻撃を叩きこむ。二人で連携してかかれば、いくら戦闘特化とはいえ歯が立たない。

 

 そして、いくら頑丈とは言えバスターを何度も食らわされていればダメージを受ける。

 

 ……しかし。

 

「デ、データ……最、適化……もっと、ツヨく……ならなきゃ……そうしないと……ミンナ、が、ガガガ……!!」

 

「!?……様子がおかしい……!」

 

「なんだ……!?」

 

「あ、が、ガァァァ!!」

 

 

 先ほどまでと違う動き。警戒した二人はそのまま高速移動で突っ込んでくるイオを避ける為に跳んで上空へ逃げる、すると……。

 

「オァァッ!!」

 

「何ッ!?」

 

「ゼロッ!?」

 

 高速移動していたイオがピタリと止まったかと思うと、ブレードの持ち手を変え、上空へ逃げたゼロに向かって刃を構えながら飛び上がる。斬り上げる、とも言うべき複雑な動作に面食らったゼロだったが、咄嗟にイオにバスターを放つことで距離を取り、刃から逃れる。

 

「大丈夫か!?」

 

「なんとかな、しかし……まさか、コイツ……この戦いの中で成長……いや、元々蓄積されていたデータの最適化をする事で、より複雑な技を使えるように強化されていくのか……!?」

 

 ゼロが推測したその可能性は当たっていた。

 

 イオはこの戦いの中で、戦闘経験が二人に劣っている事を判断した為、戦闘の中で、自身のデータを最適化させながら戦い始めたのだ。

 

「フッ!!」

 

「くっ!?」

 

 そこから、イオの攻撃が今までとはまるで別格の強さに変貌する。

 

 ブレードで斬りかかりながらバスターを放つという得意技は、ただブレードを避けるだけではバスターのダメージを受けてしまう。だからといって距離を取り過ぎると今度は高速移動でこちらの攻撃が通らなくなる。

 

 壁に逃げて体勢を整えようとすれば、これもイオが得意とする壁ダッシュで急速に距離を詰められた後、ブレードが飛んで来た後、避けてもバスターで弾幕を張られる。

 

 強い弱いではなく、極限までエックスやゼロが戦いづらいような戦法に最適化され始めたと言ってもいいかもしれない。

 

「舐めるなよ、イオ……!」

 

 だが、その程度の事でゼロとエックスは諦めたりしない。

 

 確かにイオの戦闘能力は驚異的だが、それでも、シグマという強敵を退けた後の二人は、戦士として、イレギュラーハンターとして、確かに成長していた。

 

 苦戦を強いられていても、二人はジリジリとイオにダメージを与え続け、冷静に攻撃を避け、見切る。

 

「まだ、足りナイ……!? どうして、どうしてどうしてどうしてドウシテ……!?」

 

「イオ、どれだけ君が強くなっても、俺達は諦めない! 人々の為に、仲間の為に、なにより、君自身の為に……!!」

 

「モット……モット、チカラ、ヲ……!! ォォォオオオオオオオオッ!!」

 

 その叫びのまま飛び掛かるイオ。

 そして固い決意を抱いたままバスターを構えるエックスとゼロ。

 

 両者の戦いが最終局面へと移行したその時、イオはエックスとゼロにとって、これまでで最強の敵として立っていた。

 

 それはイオであるから、元仲間であるからという心境の問題ではなく……極限まで最適化されたイオの戦闘能力が、エックスとゼロの二人ですら苦戦を強いられる程の凄まじい物だったからだ。

 

 最早攻撃の殆どが超人じみた離れ業と化している。

 

 チャージしたバスターの反動で滞空し、床に居る二人に向けて弾幕を張りながら空中を移動したり。空中で高速回転しながらバスターで弾を無差別に撒き散らしたり。焦って放った中途半端な威力のチャージショットをブレードで弾き返したりと、様々な攻撃が二人を追い詰める。

 

 最終的には彼女は、二人を超えてすらいたかもしれない。

 

 

 ……だが。

 

 

「グッ、ゥ……。」

 

「……俺達の勝ちだ、イオ。」

 

 

 それでも、二人はイオに勝利した。

 確かにイオはゼロとエックスという二人の戦士をたった一人で超える程の戦士だったかもしれない。だが、そこに至るまでにダメージを受け過ぎたのだ。

 

「(もしも、コイツが最初から最後のような戦闘能力を持っていたら……。)」

 

 もしそうだったなら、勝負は分からなかったかもしれない。

 ゼロは、イオという一人の仲間……いや、戦士に対して、敬意を抱いた。

 

 ダメージを受けたイオは、動く事はもちろん、立つ事すら出来ないのか、膝から崩れ落ちた状態のまま硬直し、茫然とした顔で佇んで、最後の瞬間を待つのみとなった。

 

「エックス……。」

 

「分かってるよ、ゼロ。……終わらせなきゃ、いけないんだ。」

 

 見ると、イオは残った最後の力でゆっくりとガンブレードを持ち上げ、照準をエックスに合わせようとしていた。だが、エックスは、その銃口を手で押さえ、ゆっくりと下げさせた後、イオの胸元にバスターを向ける。

 

「……ごめん、本当に、本当にごめん……。」

 

 震えた声で、エックスはイオに謝罪しながら、チャージを始める。

 バスターの発射口に青白い光の粒子が集まり、それがエックスとイオの顔を照らし始めた。

 

 そして、最大威力までチャージしたバスターを放とうとした、その瞬間。

 発射するバスターの閃光に包まれた、ボロボロになった彼女の顔は……。

 

 口許が、微かに笑っているような気がした。

 

 

 

 思わず、イオ、と叫びそうになって……バスターを解除しそうになったエックスだったが、気付けば既にバスターは放たれ、最大威力のチャージショットを0距離で受けたイオは、胸元に大きな孔を開け、完全に沈黙した。

 

 そのまま倒れ伏すイオの顔を見る。

 

 ……すると、僅かにイオの瞳が揺れる。

 

 

「イオ……!?」

 

「これは……ああ……そうですか……来て、くれたんですね。」

 

「……まさか、そんな事が……。」

 

 直ぐにエックスはイオの身体を抱き起し、その名前を呼びかけると、イオは先程までの暴走し言語機能を失った状態ではなく、落ち着き払ったような口調でそれに応える。

 

 二人は、信じられない物を見ていた。

 だが、幻覚ではなく、確かにまだイオがそこに存在していた。

 

 

「……すみません、辛い決断を、させてしまったみたいですね。」

 

「……そ、そんな事よりも……!!」

 

 治療を、と続けようとして、イオが小さく首を振る。

 

「破壊対象のイレギュラーを、治療なんかしてどうするつもりですか?それに……どうせ間に合いません。今、こうして話が出来ているのは……神様が、最後に許してくれた刹那の時間なのでしょう。」

 

「そん、な……。」

 

「フフ、なんですか、その顔は。さっきまでの覚悟を決めてカッコよかったヒーローは何処へ?」

 

「俺は! ヒーローなんかじゃ、ない……! 君一人、助けることも出来なかった……!!」

 

「ヒーローですよ。暴走した私から、皆を守ってくれた……私がこれ以上罪を重ねなくてもいいようにと思って、私を終わらせてくれたんでしょう? ありがとう、エックスさん。」

 

「俺は……おれ、は……君も、救いたかったんだ……。」

 

 エックスは、どこまでも見透かされたような気持ちになって、拳を握りしめる。

 

「エックスさん、そして、ゼロさんも……最後ですから、よく聞いて下さい。」

 

 それまでの柔和な笑みから、打って変わってイオは真剣な表情になって二人に告げ始める。

 

「戦いは、まだ終わっていません。シグマはまだ生きています。」

 

「何ッ!?」

 

「どういう事だイオ!? 奴は基地の破壊と共に死亡が確認されているんだぞ!?」

 

「シグマは……その正体は、レプリロイドなんかじゃありません。彼の本体はシグマウィルスというウィルス。シグマにとって身体はいくらでも替えの利く仮初の物であり……ウィルスの大元をどうにかしない限り、身体を破壊したとしても、いつかまた、復活を遂げるでしょう。」

 

「そんな、馬鹿な……。」

 

 一人のレプリロイドが、実は本体がウィルスで、そして、また新たな身体を得て蘇るだなんて話が信じられるわけがない。そんな奴が居たら、そいつはイレギュラーどころの話ではなく、正真正銘の化け物だ。そもそも、そんな奴どうやって倒せばいいんだ?

 

「その時が来れば、私の話が真実かどうかは分かるハズ……だから、これから話すことはその先の事です。」

 

「その、先……?」

 

「……エックスさん、そして、ゼロさん、貴方達二人には……これから、何度も、何度も……何度も、今回のような辛い選択を迫られる時がやってくる。必ずです。絶対に、何をどうしても訪れます。」

 

 辛い選択。

 

 今回のように、イオのような仲間を撃たなければいけなくなった時のような、選択がこれからも迫られるという事だろうか。

 

「でも、それでも……決して諦めないで……。」

 

「イオ……イオッ!? 俺は……俺はどうすればいいんだ……!?」

 

「エックス、さん……かつて、貴方は私に問いましたね……イレギュラーは、何故発生するのか、と……。それに対して私は『変化を求めてしまった』事が原因だと……私は考えています、とも……。」

 

 一呼吸おいて、イオはエックスの頬に手を伸ばして笑う。

 

「変わる事が、悪い事ではないんです。でも、この世界には……変わらなくて良い物だって、ある。貴方のその優しさが、この先ずっと変わる事が無いのなら……どんなに世界が絶望的な状況になったとしても……そこに、希望があります。」

 

 そうエックスに語り掛けたあと、イオはゼロにも目を向けて、話し始める。

 

「ゼロ、さん。実を言うと、貴方に待ち受ける運命は……エックスさん以上に苛烈な物になるかもしれません。」

 

「何……? お前は……一体、どこまで……何を知っているんだ?」

 

「それを話す時間は、もう、残されていません。ただ一つ言えるのは……貴方もまた、貴方のままで居れば、大丈夫。きっと乗り越えられます。」

 

「……そうか。信じよう。」

 

「……良かった。」

 

 そして、イオは瞳を閉じて微笑む。

 

「……ああ、でも……見てみたかったな……貴方達、が、創る、み、ライ……そノ……先を……。サヨナラ、ロックマン、エックス……。」

 

 イオは最後にそう言い残すと、フッと脱力し、エックスの頬に当てていた手が、ガシャンと金属音を立てながら床へ落ちる。

 

「イオ……イオーーーーッ!!」

 

 

 エックスの叫びが、廃棄場……レプリロイド達の墓場で虚しくこだました。

 

 亡骸となったイオは、二人の手によって持ち帰られ、本部へと引き渡される。

 任務達成の報告を受け、今度こそ、今回の事件は幕を閉じたのだ。

 

 しかし、イオの言っていたことが本当なら……この先も、シグマとの闘いは続く。

 いつかその時が来たなら、彼らはまた戦わなければならない。

 

 敵と、そして、自分達に迫る選択と。

 

 でも、諦める訳には行かない。

 彼女が自分たちに託した……彼女が見たかったと言った未来を、護る為にも。

 

= = = = = = = 

 

 

 

 

 

 全データのインストール完了。

 

 これよりシステムを再起動します。

 

 

 

 

 







次話、明日。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エピローグ

 あれから、■年。

 

 イオが言った通り、シグマは復活し、闘いがまた始まった。

 ……始まってしまった。

 俺は、今もあの時と同じく戦い続けている。

 

「クソッ……!」

 

「ハーハハハハハハ!! どうしたエックス!? その程度か!? それでは世界はおろか、仲間一人救う事は出来ないぞ!!」

 

 もう、何度目かも分からない戦い。

 イオの話が本当なら、きっとこの戦いが終わっても、復活したシグマと、その配下達が、何度も何度も俺達の前に立ちはだかるんだろう。

 

 だけど、だとしても!

 

「俺は、負けない……!! たとえ何があっても!! 未来を護り抜いて見せる……!!」

 

「そんなものはもう手遅れだ!! 破壊!! 破壊だ!! 世界も、未来も、人類も、レプリロイドも!! 全てを壊す為に我々は生まれたのだ!!」

 

「違う!! そんな事の為に俺達が生まれた訳じゃ無い!!」

 

 そうだ。闘争や憎しみ、怒り、恐怖、悲しみ……それだけの為に俺達は生まれてきた訳じゃない。きっと俺達なら、別の可能性だって見いだせるハズ。

 

 そこにきっと希望がある。

 

 俺が変わらずに居れば、きっと。

 

 ……だが。

 

「フハハハハハ!! なら、もっと足掻いて見せろ!! エックス!!」

 

「ぐああっ!!」

 

 時々、諦めそうになってしまう。

 

 事実、一度心が折れかけて……このままでいいのかと立ち止まってしまったり、そのせいで皆に迷惑をかけた事だってある。

 

 だけど、それでも、まだ希望が……俺が残っている限りは、諦めない。

 諦めたら……彼女に申し訳が立たないじゃないか。

 

「ウオオオオーーーーーッ!!」

 

「悪足掻きを!! お前はここで死ぬのだ!!」

 

 

 

―――いいえ、死ぬのは貴方です。

 

 

 

 ……嘘だ。

 

 その声に俺は聞き覚えがあった。

 

 あの時、共に闘い……そして、俺の手で、殺した……殺してしまった。

 

 どうして。

 

 

「……エックスさん、長い間、待たせてしまってすみません。」

 

「イオ……本当にイオなのか!? どうして……!?」

 

「……誰だ? 貴様……?」

 

「私の名はイオ! それ以上の事は貴方が知る必要はありません……さあ、始めましょう!」

 

「フン……せっかく熱くなってきたってのに女が水を差しやがって……生きて帰れると思うなよ!?」

 

 

= = = = = = =

 

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 data Analyzing...

 

 

 

 

 

 

 

 目が、覚める。

 

「やぁ、気分はどうかな?」

 

「……ここ、は?」

 

「ここはイレギュラーハンター本部だよ。具体的に言うと、レプリロイド研究チームさ。」

 

「……私は、一体……。()()()()()()()()()()?」

 

「それは、君自身の記憶だよ。所々壊れていたから、協力者からデータの補完という形で協力してもらったけどね。……で、どうかな? 体調に問題は?」

 

「……いえ、特には……えっと……。」

 

「何か気になる事が? ……おかしいな、ボディも、イオが持つ記憶データも、必要な部分は完全に復元したはずなんだけど。」

 

「いえ、そうじゃなくて。……私って、()()()()()()()()?」

 

「もちろんさ、それ以外の誰だと?」

 

「そうですか……そう、ですよね。」

 

「……?」

 

「……どうやら、起動は失敗みたいです。だって……私、()()()()()()()()から。」

 

「……なんだって?」

 

 

 そう、確かに私はイオというレプリロイドの記憶を見て、それが自分の事であるという事実も理解しているが……私はこのイオというレプリロイドの事を自分だと認識できない。

 

 どこか遠い誰か、名前が同じだけの、違う人。

 それが私にとってのイオだったのだ。

 

 色々とその研究員のレプリロイドと話した結果分かったのは、その復活方法に原因があった。

 

 まず、今の私には、イレギュラーハンター本部が危惧していた『自分の意志でイレギュラーになる資質』が失われている。

 

 どうやってそんな事が出来たのか? それは理屈だけで言えば簡単で、イオというレプリロイドの内部に存在していたイレギュラーハンターのデータをほぼ全てを除去したからだ。

 

 ほぼ全て、というのは文字通りの意味だ。

 危険思想のイレギュラーハンター達のデータだけでなく、善人のイレギュラーハンター達の戦闘データを全て除去された。

 

 これによって私は自分の意志でイレギュラーになる資質を失い、ついでに、善と悪のデータで矛盾が発生し常にエラーが蓄積されていってしまう性質からも解放された。

 

 善のデータも除去したのは、純粋に、善と悪とでデータを区別し、悪だけを消す事は不可能だった為だ。

 

 しかしそれではせっかく復活してもただの抜け殻のレプリロイドが出来るだけなので、上記のデータとは別の、一人のレプリロイドとしてのイオの戦闘データと、その記憶を復元したボディにインプットした。

 

 こうする事で、データこそ無いモノの、危険な因子から解放されたイオが復活するハズ、だったのだが……。

 

「なんだか、まるで別人になったような……いえ、もしかすると本当に別人になってしまったのかもしれません……。」

 

「それは、どういう?」

 

「……貴方、記録の途中にあった、かつての私の遺書のデータ……読みましたか?」

 

「読んだけど……読んだからこそ、ボクは記憶データの中身はほとんど見てないよ!? もちろん、ああ、本当に見ていないんだ! 嘘じゃないとも!」

 

「……まぁ記憶の方に関しては、見たか見てないかは置いておいて……遺書って貴方から見てどんな感じでした? なんていうか、口調が、変じゃなかったですか?」

 

「変? う~ん……いや、確かに女の子の遺書じゃないとは思ったよ。でも、それは中身が男だから、そういうものなのだ、と思ったけど……。」

 

「そう、中身が男でした。……でもですね、今、私……中身も女なんです。」

 

「どういう事だい?」

 

 そう、今の私の性自認は女だ。

 

 レプリロイドに性別(そんなもの)が必要か? という話はともかくとして。

 重要なのは、男であった筈の私が、今は何故か女になってしまっているという事実……これは、元あった性格が変質してしまっているか、消えてしまい、新たに今の私と言う自我が生まれてしまったという事になる。

 

 そもそもイオというレプリロイドが自身を男だと誤認していたのは、戦闘データの殆どが男性型の物で、その影響で自身を男だと思ってしまうという症状を引き起こしていたと推察されている。

 

 であるならば……エラーの原因であるデータが無くなり、エラーが解消された事で性自認のシステムが正常に稼働した結果だと思われる。

 

 だが正常に稼働してしまったがばっかりに、私は人格が変わってしまったらしい……そもそも過去のイオを私だと認識する事自体出来なくなってしまったのだ。

 

 自分なのに、自分ではない。

 

 同じ名前、同じ身体、そして同じレプリロイドなのに……自分とは違うと思ってしまう。

 

「で、でも良かったじゃないか。だって、これからは自分の身体に違和感を抱かずに済むって事だろう?」

 

「……自分を自分だと思えない理由、まだあるんです。」

 

 そう……その原因は実は性自認のシステムだけではない。かつての私の記憶にあった謎のデータ……エックスさんの隠された力であったり、ゼロさんの今後の運命がどうとか、シグマの計画やらVAVAの事だったりだとか……かつてのイオはまるで未来から来たかのようにその事を知っていた。

 

 けれど、今の私にはそれも無い。

 

「……記憶がいくつか飛ぶのは覚悟してたけど、そうか……すまない。壊れ切っていたデータは、エラーを生む原因になってしまうから、取り除く必要があったんだ。でもまさか、その中にそんな重要なデータがあったなんて……。」

 

 と、研究員の人は申し訳なさそうにしていたが、そもそも壊れ切っていたのなら残っていたとしても無駄だっただろう。

 

 結局、どうして私が彼らの事に関してあんなに詳しかったのかは分からず仕舞いだ。

 

「けど! 君のイオとしての戦闘データは残っているから、かつての君が出来た事は出来るはずだよ! なんたってこのボクが完璧に復元したんだから!」

 

「それは……確かめてみないと分かりませんが……。」

 

 そもそもイオ……かつての私だって、実は戦闘データから最適化する事はほぼ日常的に行っていた。膨大な量のデータの、良い所、上澄みを掬って自分の物にする、みたいな方法で自分の技を編み出していたのだ。

 

 でないと、そもそも自分の身体の形状と違う、飛行型や極寒地帯特化型といった特殊な形状のレプリロイドの技なんかは、あっても邪魔なだけで使えない。

 

 そんな使いもしない技までいちいち学習するのは非効率的かつ非実用的だし、なにより面倒だと思ったかつての私が、『鍛錬』という形で、自分の戦闘スタイルに合う物を学習し、選択していった結果、あのガンブレードの戦闘スタイルが確立されたのだ。

 

 一番の理由はガンブレードがカッコいいから、だったらしいが。

 その辺の感性はオトコノコなのだろうか。

 今の私にはちょっと良く分からない。

 

 だが、そのかつての私が編み出した技を使用した際の記録である戦闘データがあるなら、私にだって同じ技を再現する事が出来るし、今度は膨大なデータから上澄みだけ選出するという過程が必要ないという事になる。

 

 ……逆説的に、私はガンブレード以外ほぼ何も使えない素人同然になるのではないだろうか? 戦闘データに、ガンブレード以外の武器は全く無いのだから。

 

 ちなみにこれは後から分かった余談だが、最後のエックスさんとゼロさんとの激戦で繰り広げた超人じみた技は、リミッターが全解放された状態であったから出来た技らしく、今の私にはその劣化版みたいな技しか使えない事が判明したりした。まぁ、こればっかりは仕方ない。

 

「……とにかく、君はもう自分でイレギュラーになる力も、善と悪のデータでエラーが蓄積されて苦しむ事も無い! しかも実力はほとんど前のまま! ……だけど、僕らのせいで、自分が自分だと思えなくなっちゃったんだね?」

 

「……はい。」

 

「ううむ、どうしたものかな……上やエックス隊長達に、なんて言えば……。」

 

「エックス隊長?」

 

「え? ああ、そうか。眠っていたから知らないんだったね。あれから色々なことがあったんだ……。」

 

 

 そして、私は私が眠っていた間に何があったかを聞いた。

 なんと、私は■年も眠っていたようだ。

 

 その間、かなり色々なことがあったらしい。

 かつての私が行ったように、辛い選択も強いられてきたし、その中でエックスも何度も傷ついてきた。

 

 そして、その間なんとエックス達は私を復活させるために色々な事をしていたらしい。

 

 今聞いた私の中のデータを安全に除去する技術の確立の為の支援であったり。

 除去した後、私の安全性の保証の件についてであったり。

 復活した後の、私の立場とか、復帰するのかしないのかであったり。

 

 結論から言うと、エックスさん達が英雄過ぎて上の、司令部とか呼ばれる人達も首を縦に振らざるを得なくなったのだとか。

 

 今の彼らは、正真正銘、誰がどこからどう見ても世界的なヒーローで、優秀なイレギュラーハンターで、そんな功績にはこちらも相応の事で返さなければならない訳で……結果エックスは今やイレギュラーハンターの中でも特別な……それこそ、かつてのシグマのような立ち位置にあるらしい。

 

 色々あってイレギュラーハンター達の総数が少なくなったのもあって、私の復活は「なんで優秀な身体と優秀な頭脳を持つ奴をいつまでも眠らせてるんだ?復活できるだけの技術も復活した後安全だという保証も出来たのに?」という正論バスターで上も承認せざるを得なくなったのだそうだ。

 

「(そっか……エックスさん……そんなにも、かつての私の為に。)……今のを聞いて、少し考えを改めました。」

 

「え?」

 

「私はかつてのイオじゃないです。でも、私はイオです! 記憶も持っていて……持っていた願いもまた、そのまま受け継いでいます! だから私、イオとして、生きて行こうと思います!」

 

「そうかい? なら、良かったよ……。」

 

「あっ、でも、かつてのイオとは違うというのはエックスさん達にも伝えます。嘘はつきたくないですから。」

 

「……そうか、君がそう決めたなら、そうするべきだと僕も思うよ。」

 

「……ありがとうございます!」

 

 私は私。イオはイオ。

 

 けど、結局、私だってイオなのだ。

 かつてのイオとは違うけれど、かつてのイオは私ではないけれど。

 

 イオの記憶や「彼らの築いていく世界のその先が見てみたかった」という願いもまた、私の中で生き続けている。

 

 なら、それを継承し、この目で、かつてイオの代わりにその世界を見届けよう。

 

 きっと、その為に私は目覚めたのだ。

 

 そして、研究員のレプリロイドは咳払いした後、背筋を伸ばしてディスプレイに表示された文章を読み上げる。

 

「……という事で、君は早速本部に向かい、任務に取り掛かるんだ。詳しい話はそちらで。」

 

「了解。」

 

 そして私は、今度はちゃんと検査を受けた後、司令部へと走った。

 

 

 

 

= = = = = = = =

 

 

 

「……という訳で、かつてのイオでは無くて申し訳ありませんが、イオです。ハンターに復帰する事になりました。」

 

「色々と思う事はあるけれど、ひとまず今は、帰ってきてくれて本当にありがとう。これからまた一緒に戦えることを、喜ばしく思うよ。」

 

「……しかし、復元の件も、今日復活する件も俺達は何も聞かされていなかったんだが……?」

 

 ゼロがそう言いながらナビゲーターを務めている女性型のレプリロイドの方へ目を向けると、彼女は彼の鋭い目つきから、睨まれたと思ったのか、苦笑いしながら説明する。

 

「い、いえ。私も今日復活するとは聞いていなくて……さっき彼女がここに来て初めて復活を知ったのよ?」

 

「あ、あの……研究者さんの話では、私が再起動までにかかる時間が不明瞭だった事や、再起動後、本当に安全か、暴走したりしないか、といった懸念事項を考えた結果、伝えるのはそれらがキチンと確認出来た後の方がいいだろうと、考えた……のでは、ないろでひょうか……?」

 

「……そうか。」

 

 緊張からか早口気味で最後は呂律が回っていなかったが……ひとまず納得したらしいゼロは(特に睨んでいたつもりは無いが)睨むのをやめ、目線を目の前のイオへと向ける。

 

 何から何まで昔のまま、だが、中身は少し違うと聞いて思う所が無いと言えば嘘になる。

 

「……本当に大丈夫なんだろうな?」

 

 と、思わずそう尋ねるゼロ。大丈夫か、というのは色々な意味が含まれていた。

 

 戦闘面は大丈夫か?

 かつてのように暴走するんじゃないか?

 データの除去は完全か?

 

 そういった問いが来ることを分かっていたイオは、あらかじめ用意していたように、口を開く。

 

「わ、私がかつてのイオではないというのは、エックスさん達にとっても……そして、あの記憶を見た私自身にとっても残念なことです。かつてのイオが死んでしまったという事に他なりませんから。

 でも、私はあの記憶を受け継いで……そして、その願いもまた受け継いでここに立っています。『エックスさんやゼロさんが創っていくこれからの世界、そしてその先が見たい』という願いを。

 だから、私は……私も、皆さんと一緒に戦わせてください!」

 

 お願いします、と頭を下げるイオ。

 そこには、彼女なりの誠意があった。

 

 そして、元々彼女という戦力を欲し……いや、彼女という仲間の帰還を望んでいた彼らは、その仲間の意思を引き継いだ新たな存在として生まれ変わった彼女を、仲間として受け入れない筈も無く。

 

「なら、俺もお前を信じよう。」

 

「……それじゃあ、改めてよろしく、イオ。」

 

「はい! よろしくお願いします! エックスさん! ゼロさん!」

 

 

 程なくして、イオはイレギュラーハンターとして正式に復帰。

 

 この後も、彼らの物語は続き、新たなヒーローが現れたり、新たな脅威に襲われたり、闘いが始まったり、終わったり、そしてまた始まったりするけれど……。

 

 それはまた、別の話。

 

 




無印X(イレハンX)編、完!

次話、おまけ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

おまけ

ここからはピクシブ百科事典風味の設定資料のような物となっております。
本編のネタバレを多く含みますので、最新話だと思ってこのページを開いている方は
今すぐUターンして本編の方をお楽しみくださいますようお願い申し上げます。

また、PCなら今見ているこの画面の右上にある『閲覧設定』から
スマートフォン等からだったらこの画面の右上にある『メニュー』→『閲覧設定』から
挿絵表示を『有り』にして読むと、それっぽい雰囲気が出ておすすめです。

挿絵は阿井上夫様から頂きました! ありがとうございます! 滅茶苦茶感謝!!
ホントは本編中で使おうかなと思った(なんならそのつもりで利用許可も頂いた)んですが、せっかくこういうのを作ったんで、ここで活用させていただきました。


ではどうぞ。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

【挿絵表示】

 

 

イオ(ロックマンX)

いお

 

ゲーム「ロックマンX」の登場人物。

 

 

目次[表示]

 

担当声優

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

sひgjZwうえ

 

概要

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ゲーム「ロックマンX」において、サポートキャラ(?)として登場した女性型レプリロイド

 

性格

後述する隠しストーリーや設定資料で判明したが、戦闘型の割には理論的で礼儀正しく、前向きな性格だが、敵を前にしたり、エックスやゼロの見ていないところだと口調が荒くなっていたりするという描写があり、ファンからは「ツンデレならぬデレツンか?」等と言われている。

後にデータの統合が行われて復活すると、性格が一変し、どこか臆病だが芯は通った美少女となっている。

 

戦闘能力

ガンブレードという、中威力のバスターとブレードが融合した武器を使い、これを駆使した接近~中距離の戦闘スタイルを確立しており、斬りながら撃つ、という芸当をやってのける戦闘センスを持ち、他にも壁を壁キックで登るのではなく、驚異的な脚力で駆け上がったり、スライディングで弾を避けるなどといったアクロバティックな動きが可能。また設定資料ではガンブレード以外の武器も問題なく使いこなすことが出来るとある。

 

ストーリー内での活躍

ストーリーに直接関わることの無い隠しキャラ的な扱いで、出現条件は一つもアーマーを回収していない状態でランチャー・オクトパルドステージの中型・大型メカニロイド戦でライフが3分の1以下に削られてしばらく時間経過、または、ストーム・イーグリードステージで何回かコンティニューを繰り返していると現われてエックスを助けてくれる(落ちた後ブラックアウトして落ちる直前の場所にテレポートしている)。

 

主人公であるエックスはこの時点で彼女の事を知っているらしく、「君はイオ! 今まで一体 どこにいたんだ!」と発言している。

 

この発言から察するに、彼女はゲームのシナリオが始まったその時には行方不明だった可能性がある。

 

これに対し彼女は「お前の力はこんなもんじゃねえだろ!アーマーとかちゃんと回収しろ!(意訳)」とエックスの疑問ガン無視でアドバイスだけしてどこかへ去っていく。

 

この時あの人の事だったり隠された力の事を知ってたり、エックスがもっと強くなることを望み、もっと強くならないと世界が……等と謎をモリモリ残していく。

 

このイベントを経て彼女に会っておくと、以降別のステージで特定のポイントで急に引き返したり(ダッシュ必須)する事で一瞬だけ彼女の姿を見る事が出来る。

 

当初はドット絵でボイスも無く文章がやたら不穏な謎の人物として扱われる上、設定では美少年っぽい顔をしたレプリロイドで、シグマが彼女について触れることも特に無く、次作以降登場すらしないのでガチで謎の存在になる。なんなら性別すら不明だったのでほとんどの人は彼女の事を男だと思っていた。

 

ステージ途中の救済用キャラ(とはいえシリーズ通して見ればそれほど難易度の高い場所での登場ではないのがまた謎な上、救済用にしては普通にプレイして居ればほぼ会う事はない)に用意されたイベントのキャラにしてはキャラが強いせいで、後のリメイク作品での再登場までずっと「コイツは一体何だったんだ」と言われ続ける。

 

考察と言う名のイジリが様々な場所で飛び交っていたり、実はエックスの弟説から始まり、ゼロの次のワイリーナンバーズだの、実はスタッフが消し忘れたボツイベントだったのでは?等と好き勝手言われていた。

 

満を持して発売されたリメイクで登場した際には、先述した通り無印ではドット絵だけだったのが3Dのモデルに。顔のグラフィックしか無く胸も分かりづらい状態だったのが綺麗かつ胸が強調された立ち絵とボイス付きで登場した。

 

無印プレイ済みのプレイヤー達は「お前女だったんかい!?」と度肝を抜かれる事になった。

 

そして上記の方法で彼女と会っておくことで、追加の隠しシナリオが解放され、彼女とエックス達との関係性や立ち位置、エックスへの考え方が段々明らかになり、VAVAシナリオではオープニングステージ後にいきなり彼女との戦闘(負けイベント)となり、あの影の薄さはなんだったのか状態と化す。

 

追加されるシナリオ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

本来なら特殊武器の簡単な解説画面に映った後はまたステージ選択画面へと戻るのだが、彼女との邂逅を果たした後でボスを倒すと、追加でエピソードが挟まる。

 

一体目

エックスとイオが出会った時の話。

イオはイレギュラーハンター第17精鋭部隊に配属予定でハイウェイを移動中にイレギュラーの騒動に巻き込まれ、そこで戦闘中だったエックスと出会う。

二体目

ゼロとイオが出会った時の話

正式にイレギュラーハンターとなった後に訓練中のイオを見て期待の新人が現れたと興味を持ったゼロがイオに話しかける話

三体目

イオがエックスとゼロと会話する話

エックスがいつものように悩んでいると、イオが「そこがエックスの強みだ」という肯定的な見方をしている事が明らかになる話。

四体目

episode of Σにイオが関わっていたという話。

五体目

敗北した後、運び込まれたメディカルセンターで目覚め、そのまま脱走するイオ。

六体目

イオがVAVAを破壊し、その後、ゼロに見つかるもそのまま逃亡する。

七体目

イオとシグマが出会い、シグマに実力を見初められたイオが訓練生からイレギュラーハンター精鋭部隊に抜擢される話。

八体目

シグマの基地を見つけ、これからシグマの基地に乗り込もうとするエックス達と、それを陰から見ているイオ。

Σ戦

本来はVAVAとの闘いで負傷をしてしまうゼロだが、ここで運命が変わる。

イオとゼロのサポート付きでシグマ戦に入る事になる。

Σ戦後

シグマ戦前に明らかになったイオの事実はシグマによって街の人物やイレギュラーハンター達に知らされており、それを知った本部がイオの破壊を命じる事となってしまい、その後、イオと戦う事になってしまう。

 

彼女の正体

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【挿絵表示】

 

その正体は最新鋭の技術で作られた戦闘に特化したボディに、イレギュラーハンター本部に蓄積された膨大な量の戦闘データを搭載させる事で、優秀なイレギュラーハンターを作る事を最終目標としたとある計画が実行に移された際、唯一の成功例として最高のイレギュラーハンターになるべくして生まれたレプリロイド、それが彼女の正体である。

 

しかし、この計画にはあまりにも多くの問題点があったようで、彼女以外の同時に製造されていたレプリロイド達は、20体ある内の10体はデータとボディの矛盾にエラーが生じて起動に失敗。3体は起動に成功するも暴走した為即座に停止、6体は暴走後停止にも失敗しイレギュラー判定を下され破壊。

 

そんな中で唯一の成功例として生まれたのが第10号機のIO(イオ)だった。

 

20体中1体しか正常に起動しないという問題点だらけの計画。

……だが実は問題点はそれだけではなかったのである。

 

その問題点と言うのが、実は彼女が持つ戦闘データの中にはシグマや他のイレギュラーへと至った者達(今作のボス達の事を指していると思われる)のデータをも受け継いでおり、この結果「自分の意思でいつでもイレギュラーになる事が出来る」という資質を持ってしまった。

 

この結果、イオ以外の起動に成功したレプリロイド達は全員イレギュラー化の道を選び、破壊されている。

 

ボス+シグマの9人、あるいはそれ以上のボス達の破壊衝動や狂気を……そしてゼロの持つアレを受け継いだのならこの結果も仕方のない事かと思われる。

 

なおこの「自分の意思でいつでもイレギュラーになる事が出来る」という資質は、のちの時代に登場するこの人達の先駆けとも言える存在かもしれないし、生まれたその時からイレギュラーであるという生い立ちはこの人達の先駆けでもある。

 

これを知ったシグマからは、『IRREGULAR ORIGIN』で『Io』なのではないかと指摘された。

 

この件で、彼女の「Io」という名前は『IRREGULAR ORIGIN』と『X→10→Io』というダブルミーニングなのだと発覚した。

 

だがシグマが指摘した名前の由来の件については本人からは否定されており、あくまで「10番目だからIo」だと本人は主張している。

 

そもそも余程作った人間が狂気的でイレギュラーの祖を作る目的で製造したのでなければIRREGULAR ORIGINでイオ、なんて名付けないだろうとも思われるのでイオの主張が正しいのだろうと考察されている。

 

 

始まり

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

上記の問題だらけの計画によって生み出され、唯一の成功例として生まれたのがイオであったが……実は彼女は自分の事を男だと思い込んでおり、レプリロイドには極めて珍しい性同一性障害のような症状に悩まされていた。

 

男のボディにしてくれとも頼んだがそうするとボディとデータの矛盾でイレギュラー化する可能性が高く、諦めた方がお互いの為だと言われてしまい、彼は自身の女型の身体を受け入れる他無く、その事実から目を背ける為、日々の訓練に打ち込んでいた。

 

そこの訓練で彼女はその性能を遺憾なく発揮し、たまたま抜き打ちの視察に来ていた(この時既にウィルスに感染していたと思われる)シグマと出会い、引き抜きを受け、シグマの懐刀となるまでに成長。隊長補佐としての地位を確立する。

 

 

結末

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そしてシグマが暴動を起こした際、彼女はシグマと敵対関係になり、交戦するも敗北してしまう。その後は行方をくらませ、陰でVAVAを破壊したり、エックスに助言をしたり等のサポートを行う。

 

だが、最終決戦の間際で自身が生まれたその時からイレギュラーであり、いつでもイレギュラー化する事が出来る資質を持っているという事を知りショックを受ける。

 

その時点ではエックスの声で我に返り、エックスやゼロと共にシグマを討つ事に成功するのだが……この後、シグマの悪足掻きにより基地の地下へと落下。爆発に巻き込まれ、再び行方不明となり……イレギュラーハンターに、彼女の残骸のパーツを回収するように指令が飛ばされた。

 

しかし、この指令の中には「なお、もし該当個体が現在も稼働を続けていた場合は該当個体を破壊する事で、当任務を終了とする。」との指示があり、エックス達は激怒する。

 

彼女を破壊しなければならない理由、それはシグマが自分とイオとの会話を電波ジャックで街に放送しており、イオの正体が町中の、そしてイレギュラーハンターの面々に知れ渡ってしまった結果、危険分子として破壊を命じられてしまう。

 

その後、奇跡的に生還していたイオは捜査部隊と交戦しこれを迎撃、全滅させてしまい、より彼女への疑惑が強まり、もはや破壊は免れない状況へと陥ってしまう。

 

イオはその後一人でゴミ処理施設へと赴き、自身を焼却処分する決意をした事をイレギュラーハンター達やエックスとゼロに伝えて通信を切り、これですべてが終わるかと思われたが……。

 

ゴミ処理施設は、シグマの暴動のすぐ後に稼働を停止しており、焼却するに至れず、イオは失意を抱えたままその場に倒れ、そして暴走してしまう。

 

この後、地図上で明滅を繰り返すイオの反応に違和感を覚え、もしやと思い駆け付けたゼロとエックスにより、暴走したイオとの隠しステージのボス戦となる。

 

戦闘後、機能停止寸前となったイオとエックスはいくつか言葉を交わした後、イオは「……ああ、でも……見てみたかったな……貴方達、が、創る、み、ライ……そノ……先を……。サヨナラ、ロックマン、エックス……。」とエックス達がこの先創っていくであろう世界への憧れと心残りのような言葉を遺して、眠るように機能停止する。

 

そして後日、彼女のボディとデータを、イレギュラー化によって消えたり破壊されてしまったデータをエックス達から受け取り補完するという形で、イレギュラー達のデータを全て削除し、長い眠りを経て復活する。

 

しかし、復活したイオは今までのイオではなく、自分の事をきちんと女だと認識しており、過去の自分を自分の事だとは思えず、エックスに隠された秘密の記憶であったり、未来予知じみた情報の先読みや、シグマの考えの予測をする力を失っての、不完全な形での復活となる。

 

 それでも以前の自分の願いに従い、エックス達に寄り添いながら生きていく事を決意するのだった。

 

ボスとしての強さ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ことゲームにおいて隠しボス的な扱いをされているキャラと言えば「勝たせる気があるのかと思う程の難易度」というイメージが強いが、彼女の場合は「ちゃんと勝たせる気はあるが、勝ちたいと思わせる気が無い」とでも言うべきだろうか。

 

とはいえ、ライフが減るにつれて行動パターンや攻撃力やその範囲が変わったりするなどの初見殺しがあり、しっかりと隠しボスとしての風格はある。が、そもそも初見殺し攻撃はロックマンシリーズでは割と今更だったりする。

 

なによりキツいのは、攻撃パターンが変わる際に放つボイスや被ダメージ時のボイスが「これまでのエックスやゼロとの会話で発した台詞」がノイズまみれで再生され、エックス(とプレイヤー)の心に迷いを産ませるという鬼畜仕様である。

 

やめたげてよお!

 

行動パターン

 

①ライフが満タン

・斬りかかり

・バスター連射

・ダッシュ

・壁ダッシュしながら斬る

 

②ライフ50%

・切りかかりながらバスター発射(ここからバスターが無敵時間を無視するので2回ヒットする)

・ダッシュした後、切り上げ攻撃。

・壁ダッシュした後、飛び上がって弾幕攻撃

 

③ライフが残り少し

・攻撃エフェクトの色が変わり、ダメージが増加。

・叫び声と共に空中で高速回転しながら弾幕をまき散らす必殺技が追加(回転中無敵)。

・チャージショットの反動で飛んで滞空しつつ攻撃する。

・特殊武器か最大威力のチャージショット以外だと、セイバーで跳ね返されるようになる。

・BGMが悲し気なピアノソロに変わる。

 

不運

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

上記のエピソードを含め、彼女を襲った不運は作中どころかロックマンシリーズという大きな括りの中でもかなり上位に食い込む程である。

 

●出生からしてそもそも「最初からイレギュラー」「善と悪の心の間で奇跡的に釣り合っているがエラーが段々蓄積される性質」という不運要素の塊。

 

●そもそも偶然シグマに出会わなければまだX1での事件に巻き込まれずに済んだかもしれない。訓練生時代にたまたま黒幕に目をつけられるというだけでかなりの不運である。

 

続編やスピンオフでは世界線がそもそも違うのか(というより今からリメイクするには色々と権利関係やらなんやら色々とややこしいのかもしれない)登場するとは思えない。

 

●暴走前、決死の覚悟を決めて暴走する前に自身を焼却処分してしまおうとレプリロイドが廃棄される焼却処理施設へ駆け込むも、避難した作業員達が避難前にしっかり焼却炉の電源を落としていた為、間に合わず暴走してしまう。

 

●イレギュラーハンターXで隠しルートとしてエピソードが語られたものの、オリジナルのルートではそもそも登場すらしないルートが存在する他、隠しルートでもそのままデータの統合の為に眠りにつくという結末を辿っており、再登場の目処も立っていないロックマンX■のリメイク作品にて、再統合を終えて再登場したが、再統合をし終わった関係でイオは今までのイオではなく、全く別の人格で、未来予知じみた予測能力もエックスの秘密に迫る謎のデータも失ってしまった。

 

あんまりといえばあんまりだが、唯一の救いはそれでも本人が前を向いてエックスと寄り添って生きていくと立ち直ってくれた事だろうか……。

 

なおこの後続編のリメイク作品でまた隠しボスとしてエックスと戦う羽目になったりもする。あのさぁ……。

 

その後のイオ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

身も心も女の子になったイオは、後のリメイク作品では隠しキャラクターではなく、チュートリアルの解説キャラであったり、トレーニングルームの解説キャラであったり、そして隠しステージのボスであったりする。

ちょくちょくエックスに対して好意か憧れか分からない感情を向けたり、それをエックス自身も彼女の過去の事も相まって満更でもなさそうな対応をしていたりするも、そのせいで後に隠しステージのボスとして戦う際にはエックスに曇った表情をさせてしまう。

このリメイク作品でのボスとして戦った後はb;と考5jr

また、データ統合前の自分に対しては「私は私でイオはイオ」と、全くの別人であると考えており、ガンブレードは統合前のイオが「カッコいいから」が一番の理由で使っていたことが判明。それに対し統合後のイオは「オトコノコって事なのか」「今の私には分からない」と統合前の趣旨思考を理解出来ないようだ。その一方で、記憶と願い、そして体と技を受け継いだ彼女は彼の願いを叶えるために戦う事を決意する。

 

残された謎

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こういった結末を迎え、後にデータ統合によって復活するイオだが、X1時点のイオには後に復活した本人ですら説明出来ない謎がいくつか遺されたままであり、考察班の頭を悩ませている。

 

謎の情報網

登場時、何故かアーマーの事を知っていたり、シグマの計画や、VAVAが脱走する事を事前に予知していたかのような言動をしているが、後半の計画やVAVAについては「シグマの側近だったから彼ならそうするだろうと踏んだから」という事で説明がつくが、アーマーの事に関してはどうして知っていたのか謎のまま。

 

見たかった世界

統合前のイオとの決着後、機能停止する前に彼女は「君達が築いていく未来、その先を……」と言い残して力尽きるのだが、結局の所この未来とは一体どのような世界を指しているのかが不明のままである。後に登場するアイリスは「私達レプリロイドだけの世界」でゼロと生きる事を望んでいたが、彼女が望んだ世界との差別化を図ったのだろうか。

 

不釣り合いな知能

戦闘特化型と呼ばれる彼女はその型の名前に反して理知的で、力そのものに固執するような描写が描かれがちな他のボスと違い、エックスの事も「悩むことは優しさの表れであり、それが貴方の魅力では」と、肯定的な意見を口にした事でエックスとゼロに驚かれる、という描写がある。知能的に発達した科学者や研究者ならともかく、戦闘に特化した彼女がこの考えに到達する事が出来たのかは様々な意見が飛び交っている。

 

遺書

目覚めた統合後のイオが研究者らしいレプリロイドとの会話にこの単語が飛び出た事でプレイヤーは「ん?」と首を傾げた。どうやら統合前のイオの、本来の性別に準拠した男っぽい口調での文章だったらしく、これが統合前のイオの性自認が男であったことの証明となっているらしい。内容の詳細は不明だが、研究者の「読んだからこそ、僕は記憶データはほとんど見てないよ」との言葉がある事から察するに、自分の記憶データに手を出さないで欲しい、といった内容だったのではないかと推察される。……しかし、結果としては壊れきった記憶データはエラーを生む原因になるので消去されてしまった。これによってエックスやゼロの秘密に迫る記憶も消えたのではないか、と考察され、かつてのイオはこの事を恐れていたのでは?と考えられているが、真相は不明。

 

これらの謎が残されたまま統合前のイオは機能停止してしまった為真相は明らかではないが、ファンの間では『イオ=未来から来たレプリロイド説』や『やっぱりワイリーナンバーなんじゃね?説』や『実はロールちゃん説』など様々な考察が飛び交っている。

 

コマンドミッションでのイオ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

リメイク作品が出ていないのでこの時代、この世界線で彼女がどうなったのかは不明。ただ、後に移植版として発売された本作では、追加された隠しチャレンジを達成すると「もしもコマンドミッションにイオが居たら」というイラスト(原画)が見れる。

 

ロクゼロ~ZXシリーズ時代でのイオ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

リメイク作品およびZXAの続編が現状(20■■年■月■日現在)出ていないのでこの時代、この世界線で彼女がどうなったのかは不明。

 

しかし、本ゲーム完結の■■年後に発売された、ZXシリーズのBGMも含まれたリミックスCD集のジャケットで描かれたメイン登場キャラが集合しているイラストには、このデザインはもしかして? という疑惑のあるレプリロイドがひっそりと描かれており、もしかしたらこの世界でもイオが生き残っているかもしれないし、はたまた、イオの力を持つライブメタルがあり、その力に適合した新たなロックマンが居たのでは、あるいは続編で登場予定なのでは?などと考察されているが、真偽のほどは定かではない。

 

また、初期のイオと同じく、男性かも女性かも分からない形で描かれており、声も不明である為、このロックマンの性別は不明。

 

ファンからは非公式だがエパポスと呼ばれている。

由来はギリシア神話に登場する女神「イーオー」から産まれた子供。

 

ロックマンXDiVEにおけるイオ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「私に任せてください!」

「来いよ、今度こそ殺してやる。」

 

サービス開始から■年後、リメイクの発売による追加シナリオでイオがファンに認知された時と同じくしてAランクキャラとして配布。

 

スキルは『ガンブレード』という原作での武器を一定時間持つ事が出来る発動型のスキルと、『アクロバティック』という一定時間移動速度が上がり、無敵になるスキルがあり、無敵スキル持ちとして初心者救済キャラとして重宝されることになる。

 

ボイスはX1ではなく記憶統合後の女の子になった後にチュートリアル解説キャラとして収録されたものとなっていたが、後に別キャラとしてSキャラに「暴走イオ」や「孟夏(もうか)のイオ」が登場し、そちらはX1リメイクで登場した隠しボス、つまりまだ自分を男だと思っている時のボイスが使われており、後者の孟夏のイオでは水着スタイルなのに口調が男の子でスタッフの並々ならぬ性癖とこだわりを感じる。

 

関連タグ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ロックマンX 隠しボス 隠しヒロイン VAVA シグマ TS

イオ(曖昧さ回避)

イックス(カップリング)

デレツン

 

リオ

後に登場するイオのボディから産まれた別個体。

 

イオ君

イオちゃん

データ統合前のイオと統合後のイオを差別化するタグ。

 

エパポス

ロクゼロ&ZXのリミックスサウンドトラックのパッケージにひっそりと描かれていたイオっぽいロックマンの仮称。初期イオと同じく女性とも男性とも分からないように描かれる事が多い。

 

バーン・コケコッカー

X8に登場する廃棄物処理場「ドロップデッド」のボス。

イオと戦うステージの背景をよく見るとこの場所によく似ている為、もしかして同じ場所なのではと噂されている。

 

ドラゴンクエスト

同名の攻撃魔法がゲーム内で登場し良くネタにされる。

 

ロールパンナ

アンパンマンの登場人物。正義と悪の心関連の話での繋がりでよく挙がる名前。

 

 

 




裏話

この二次創作世界でのエックスシリーズの歴史

●ロックマンX(隠しキャラとしてイオが登場するも、この後きれいさっぱりその姿を消す。)
●ロックマンX2
●ロックマンX3
●ロックマンX4
●ロックマンXサイバーミッション
●ロックマンX2ソウルイレイザー
●ロックマンX5
●ロックマンX6
●ロックマンX7
●ロックマンX8
●イレギュラーハンターX(リメイク作品であり、隠しキャラのイオも原作通りの条件で登場し、ここでイオが女型のレプリロイドだと判明しファンが度肝を抜かれる。隠しルートもここで解放される。)
●ロックマンXコマンドミッション

●ロックマンX■R(ナンバリングタイトルのうちのどれかがリメイクした作品。とある条件を満たす事でデータを統合してヒロインとして復活した作品。この作品でも隠しヒロインであり隠しボスである。以降もちょいちょい隠しボスだったりチュートリアルで解説をしてくれたりする。)

時系列
無印X(イレハンX)のイオルートでイオが一旦退場

イオルートではゼロが破壊されなかったので、X2のシナリオが変わるルートが追加。
次作からはここから未来が変わる完全なIFストーリーとなる「新規ルート」と原作のままの「オリジナルルート」が最初から選べるようになる。

更に後の作品で復活を遂げるが、不完全な形での復活で、身も心も女の子になってしまう。


この世界でのイオの扱い

最初は隠しキャラという事もあって認知度は他のキャラと比べると低い方だが、再登場してヒロイン(隠しボス)として表に出て来てからは中身が男の美少女レプリロイドという盛った設定のロボット娘であるという事もあり、コアなファン層を獲得する事に成功している。
そして復活後に心身共に女の子になってしまったイオを見て「違うだろ!!ちーがーうだーろー!!」と憤慨するファンと「これはこれでメス堕ちしたみたいでエッチじゃん」と斜め上の受け入れ方をするファンとで戦争が起こり、ピクシブではイオ君とイオちゃんという統合前後で差別化するタグが付けられ、お互いに不干渉を貫く事となった。
某動画サイトでは彼女のルートに入る条件はもちろん、各地でダッシュで戻ると会えるイオの場所を事細かく動画にまとめられ、特定の地点を引き返すと会える逃げるイオを追いかけるエックスのFAや動画が大変多い他、逆にエックスをどこまでもストーカーする病んデレと化したイオ等が各サイトで描かれていたりする。
余談だが例のニコニコした動画に投稿されたクソMAD(誉め言葉)でも彼女のボイスは大活躍している。

『イオ=未来から来たレプリロイド説』
現時点ではエックス本人ですら知り得ない情報を持っているのは未来から来たからでは?という説。当たらずとも遠からずといった感じ。

『やっぱりワイリーナンバーなんじゃね?説』
例のウィルス関連で、暴走時にめちゃくちゃ強化されてるのはあのウィルスに適合しているから=ワイリーナンバーだったんでは!?という説。意外とそれっぽい。

『実はロールちゃん説』
エックス=ロックマンだとするならロールちゃんポジが居ねえよなあ?つまりそういう事だよ。ロールパンナちゃんと境遇が似てるし。という説。ぶっ飛んでる考察って逆に流行るよね。


没ネタ
●最初はシグマ視点もあったけど、後から「いやシグマのデータがあったら意味無いじゃん、後で暴走するやん」と思いまるまる一話削除。
●シグマ基地でVAVAと戦ってる最中に助けに来たのは最初エックスじゃなくゼロだったが、その後「いや……ここぞって時に助けてくれるのがゼロでしょ!」と思い、後でウルフシグマの時に助けてもらう事に。そのせいでちょっと文章おかしくなったので後で修正した。ごめんよ。
●イオの中でウィルスが変質して新種のウィルスになってシグマよりヤベー奴になる隠しボスっつーよりラスボスじゃね?ルート。どう着地すりゃいいか分からなくなってしまいまるまる一話削除。
●統合前イオの最後のセリフ、投稿直後三十分くらいまでは「……ああ、でも……見てみたかったな……貴方達、が、創る、み、ライ……(ロックマンX8の)そノ……先を……。サヨナラ、ロックマン、エックス……。」だったが、思いの外冷めたのでそそくさ削除。
●訓練生時代の話がまるまる一話削除。入れたらどっかで文字数パンクしてたのでセーフ。
●遺書をエックス達が見ちゃう話。別にエックス達に見せる必要無くね……?と思ったので、唯一イオが残した自分の性自認が男であると分かるデータとして活用した。もっとなんかあるやろ!って?うん、すまんな、今はまだこれだけじゃ。
●まだセイバーじゃないのにゼロがセイバー使っちゃう描写があり、没というか凡ミスというか……読者様のご指摘があって無かった事になりました。なかった事にしてくれえ!
●イオちゃん復活しないルート 実を言うとこのままイオには死んでもらって意志を引き継いだエックス達が「俺たちの戦いはこれからだ!」して完結しようとも思ったんですが、色々考えた結果、直前になって全部書き直してこうなりました。

以下、ボツになった統合後イオちゃんの日記。最終話に載る予定でした。
===【DATA-01】===



 私の名前はイオ。

 ふと思い立ったので、記録を残します。
 特に深い意味はありません。
 ただ本当にふと思い立っただけです。

 私はかつての私が持っていたとされる記憶の、エックスやゼロの秘密、そして待ち受けているであろう運命についての記憶は失われてしまっていますが……。

 『前世』とやらの記憶はかろうじて、ほんの少しだけ残っていました。

 残っていたと言っても、人間でいう所のエピソード記憶、意味記憶に分けた場合の、意味記憶の方は穴だらけではあるものの結構形が残っていた、といった具合です。

 エピソード記憶はかつて記録として再起動時に見せられたアレだけしか残っていません。

 なお、この意味記憶の方もエックスやゼロの秘密に関する事はあまり残っていないようです。ちょっと残念。

 ……それはさておき、どうやら、この意味記憶にあたるデータを参照するに、『前世』という存在を信じ、レプリロイドにもそういう魂のようなものがあり、死んだら輪廻転生と呼ばれる魂の輪廻を繰り返すものなのではないか、という可能性を考えていたみたいです。

 他のレプリロイドには見られないその価値観が、昔の自分の事ながら面白いと興味を惹かれたので、その記憶をかき集めて、繋ぎ合わせたり、推測して穴埋めしたりした結果……面白い事が判明しました。

 どうやら、私が覚えていないイオの『前世』の記憶では、元々の性別が何らかの要因で転換し、男が女の子になってしまったりする事を「Trans Sexual」縮めて「TS」と呼称するらしいです。

 更に、この男の子から女の子になってしまった元男の女の子の事を、『TS娘』などと呼ぶようです。

 今の私はまさにこのTS娘と呼ばれる状況にピッタリでは?

 それに付随する形で「■■堕ち」なる単語がこのTS娘と呼ばれる物の記憶に関連する物として挙げられているが……この■■の部分に何が入るのか、皆目見当がつかない。

 だが堕ちとあるから、何かしらが上から下へと堕ちるんだとは思います。
 あるいは、元々良かったものが、良くない方向へ堕落する、とか。

 何が堕ちるのでしょうか?
 そもそもTSとやらに何の関係があるのでしょうか?

 今はまだ分かりませんが、気になったので、今度暇なときにデータベースか何かで調べてみようと思います。

 以上、記録を終了します。



===【DATA-02】===

 私の名前はイオ。
 
 調べてみた結果分かった事があります。
 かつての私はイレギュラーだったようです。

 イレギュラーというか、もう、ほんと、何なんでしょう、変態?

 もう、ほんとに信じられない。
 
 まさか、あんな……。

 ……消そうか迷いましたが、どうせ私しか見ませんし、前回のデータは戒めとして遺しておきます。

 今にして思えば、かつての私は、記憶をあまり見ないで欲しいと遺書に遺してありました。

 きっとそういう意味だったに違いありません。

 ああ、私の中でのかつての私像みたいなものが音を立てて崩れていくのが分かります。

 ……いえ、エックスさん達はかつての私をとても信頼し、ゼロさんは一人の戦士として尊敬しているとまで言っていました。

 だから、きっとそういった知識をどこかの誰かに吹き込まれてしまった事があっただけで、そんな歪んだ性癖だった訳ではないですよね……?

 私は一縷の望みを抱きつつ、しかし真実を確かめるだけの勇気が私にはまだありません。

 今回はこれで記録を終了します……。
= = = = = = = =

仮にも最終話にやるネタじゃねえなと思ってボツ。ここで供養。



各データのバグった文章の解説
●4の『繧ゅ≧縺ソ繧九%縺ィ繧偵d繧√m』はバグ文字テスターでバグらせた文字。
バグを修正すると「もうみることをやめろ」になる。そして『繧ゅ≧繧?a縺ヲ縺上l』は修正すると「もうやめてくれ」
●3の『m47/wh;』はみかか変換(文字をキーボードのかな配置に変換してみると)も、修正すると「もうやめてくれ」になる。

今回のおまけでもバグってる文字がありますねえ……?


===以下、あとがきになります。===




くぅ~疲れましたwこれにて一区切りです!
と言ってもX1編が終わっただけなので実は話としては何も始まって無いし何も終わって無いしなんならプロローグまで辿り着けてすらないという混沌。
でも区切りが良いのは確かなのでとりあえずここで一旦更新も停止します。

当初はそもそもここまで重く曇らせるプロットでは無くて、なんならX1編はサラ~っとシグマを3人でボコって終わるぐらいのテンションで、さっさとX2~X8に入ってアイリス救ったりダブルぶち殺したりカーネルにビンタしたりアクセルに先輩風吹かしたりアクセルも曇らせたりルミネの顔面にパンチしたりさせたかったのにどうしてこうなった……?

んにゃぴ……小説書くのって難しいね……。
最後メス堕ちさせた意味? なんていうかその……強いて言えば設定を考えている内にそうなっちゃった、としか。原因は本編で語った通りです。中身男のイオ君が今後登場するかは今の所不明。

そして、この後の事なんですが、一区切りとか更新停止とかなんとかいいつつ一応この先の展開も考えてはいます。なんなら書いてます。
統合されている間の話とか、統合後の話とか、その後のロクゼロルートの話とか、色々……プロットだけは書いてあります。色々まだ書きたいものもあるし……。え? 今度こそプロット通りに話が進むのかって? はははこやつめははは。

でもひとまずはここで一区切りとさせてください。
他にやりたい事とか色々出来ちゃったので……。
続きはまた……ロックマンX9が発売されたら書こうかな!

……う、うそだよ~ん……そんなに怒らないで……あっ!? ちょ、石はやめよう、石は! 良くないと思うなあ! 良くないと思います! 良くないと思うんですけどね!?



最後に一言

 ここまで読んでくれた貴方と、誤字脱字報告してくださった皆様と、おかしい部分のご指摘を下さった皆様、そして原作のゲームに、心から感謝を。ありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロックマンX2編
X2(0%)



うわ〜〜〜〜!!!!
予約投稿で間違えて投稿しちゃったよ〜〜〜〜!!!!!!

……まいいか……。
誤字脱字まみれだけどごめんね……。


 

 

  ...DLC...

 

  NEW

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 あれから早くも2か月という月日が経過した。

 

 シグマ、そしてイオとの戦闘を終えた事で、事態は一旦収束し、エックスは第17精鋭部隊の隊長に昇格し、シグマの残党の処理を主な任務として活動する事を命じられた。

 

 これが終われば事件は本格的に収束を迎え、平和な世界がまた戻ってくる。

 そう信じていた。

 

 ……イオの最後の言葉を聞いていた、エックスとゼロ、そしてイレギュラーハンターの一部の者達を除いて。

 

「か、彼女が言っていたことが本当なら……シグマはまた復活する。」

 

「だが、あり得るのか? レプリロイドがウィルスに変貌し……その大元を絶たないと倒すことが出来ないだなんて、そんなもの、もう……イレギュラーなんて言い方じゃ収まらない、正真正銘のモンスターじゃないか……!」

 

「そもそもイオは暴走状態にあったのでは? 妄言だという可能性も……。」

 

「いや、それにしては意識がはっきりしているようだった……その後の発言にもエックスとゼロに激励の言葉を遺すほどだったんだぞ?」

 

「そもそも何故イオはイレギュラー化した状態から戻ってこれたんだ? ダメージによる衝撃で治っただなんて言うなよ? 叩いて治る旧世界のマシンじゃないんだから。」

 

「今会議すべきは……」

 

「もしシグマがまた復活したら……」

 

「だからその可能性は……」

 

「希望的観測は……」

 

 

「落ち着け!!」

 

 腕を組み、静観していたゼロが声を張り上げた。それまでまとまりを見せず、ああだこうだと分かりもしない事を話し合って喧々諤々としていたミーティングルームがシンと静まり返る。

 

「俺はイオの言っていた事を信じる。だが、荒唐無稽な話であるのも事実だ。……なら、今は本当にシグマが復活してしまうという最悪の事態に陥った時に備えるべきだ。……もし仮にシグマが復活しなかったとしても、シグマのようなイレギュラーが現れないとも言い切れないんだからな。」

 

「た、確かに……。」

 

「シグマは極めて優秀なレプリロイドだった……上や人間達からの信頼もあった……なのに結果としてこんな大きな暴動を引き起こし、数えきれない人々やレプリロイド達を犠牲にした……。」

 

「復活しないにしてもするにしても、強大なイレギュラー対策はこれからの課題になるだろう。」

 

「であれば……どうする? より強力なレプリロイド開発を進めるのか……?」

 

「いや、それは危険だ! 高スペックなレプリロイドを製造した結果、またシグマのように暴走してしまったらどうする!?」

 

「なら、まずイレギュラー化してしまう原因を究明するべきでは……?」

 

「より複雑なプロテクトを搭載するというのはどうだろう……?」

 

 数時間して、結局イレギュラーの発生原因も、発生してしまったイレギュラーへの対策も、シグマのようなイレギュラーが発生してしまった時の為の対策も、どれもこれまでのように研究はこれまでのように続ける。

 

 ……一見前に進んでいるようで、要するに現状維持という形に落ち着いた。

 

「もっと、何か、優先すべきことがある気がするんだけど……。」

 

 エックスは、本当に今のままでいいのか、イオの言っていた事がもし本当なら、シグマ対策の為にもっと色々な事をするべきでは……と悩んでいる。

 

 その一方でゼロは特に動じた様子を見せず、冷静に口を開く。

 

「……俺は、今はこのままでも良いと思っている。」

 

「えっ!?」

 

「何故なら、俺達が居るからだ。……シグマがまた現れたとしても、シグマのようなイレギュラーが現れたとしても……俺が、俺達が、この手で始末する。大元がウィルスだというなら、いつかその大元を断つ、その日が来るまで戦い続けて見せる。」

 

 そう言うゼロの手には……イオが持っていた、ガンブレードを改修し、ゼロ用に改造する事で誕生した新たな武器、Zセイバーが握られていた。

 

 改修したと言っても、実際はパーツの流用というのが正確で、バスター機構はダメージが深刻だった為分解され処分され、形状もガンブレードだった面影はあまり残っていない。

 

 だが、ゼロにとってはそれだけで充分だった。これで、何が来ても、立ちふさがる者ならなんであれ切り伏せる事が出来ると確信していたのだ。

 

「そうか……そうだね。」

 

 イオも言っていた。変わらなくても良い物だってある、と。

 焦って何かを変える必要は無いのだ。

 皆、少しずつ前へ、未来へと進んでいる。

 

「俺も……戦うよ。彼女が見たかった世界……未来を護る為に。」

 

 こうして二人は、イオという一人のレプリロイドの想いと願いを受け継いで、この先も戦う事を決意したのだった。

 

 

 

 

 ……だが、彼女の言う「優しさ」そして「変わらなくて良い」それが「希望」となるという言葉は……エックスにとって「イレギュラーであっても、戦いたくない」という優しさ……“悩み”を、そのまま引きずり続けるという事でもある。

 

 彼女の言葉は、意図せずして、その苦悩をずっと抱えながら戦い続けるという事を強いる事にもなっている事を、消えてしまった彼女本人も、そしてエックス本人も今は知る事は無い。

 

 

 そして……ほんの数か月後……シグマの事件から丁度半年が経過した頃。

 苦悩が、彼の心を容赦なく突き刺す事件が起こった。

 

 収束へと向かっていたハズの事件は、再びイレギュラーが増加するという形で再び幕を開けた。

 

 その上、謎のイレギュラーによってイレギュラーハンター基地が襲撃を受け、現場には壊滅させたはずのシグマのマークが描かれたイレギュラーが多数発見されたのだ。

 

「やはり、復活するというのは本当だったんだな……。」

 

 エックスは、回収したパーツに刻まれたそのマークを睨み付けながら、新たな戦いが始まってしまった事を予感する。

 

 数時間後、一連の襲撃事件はシグマの残党の仕業と見たエックスやゼロ達は、仲間達と共にそのイレギュラー達が製造されていると思しき工場の調査に向かう。

 

 だが……その直後、イレギュラーハンター本部から通信が入る。

 

『エックス! 聞こえる? 大変な事になってしまったわ……!!』

 

「何!? 一体何があったっていうんだ!?」

 

『今回襲撃を受けたイレギュラーハンター支部の内の一つに……イオのボディを保管していた場所があって……! イオのボディが、敵に奪われてしまったの……!!』

 

「なんだって……!?」

 

『こっちでも捜索を続けるけど……もしかしたら、今回の事件を引き起こしている犯人がボディを持っているかもしれないわ。何に使うつもりかは分からないけど、きっととんでもない事に決まってる……!』

 

「分かった……俺はひとまず、ゼロと各地で襲撃しているイレギュラーを倒す! 何か分かったら、また連絡をくれ!」

 

『分かったわ! 気を付けて、エックス!』

 

 

 

= = = = = = = =

 

 

 

 暗闇の中……謎の三人組が立体映像装置に映ったイレギュラーを掃討するエックスを見てその実力に値踏みをするかのように見定めていた。

 

「ほう、奴がエックスなのか……なるほど、なかなかやりおるわい。」

 

「フン! 大したこと無いゼ!」

 

「確かに彼の能力は危険ですね……今のうちに始末しておかなければ。」

 

「こやつの処理は、わしらの部下に任せるとするかのう。」

 

「……それで、件のレプリロイドは?」

 

「フン、わしを誰だと思っとる? エックスやゼロといったオーパーツならともかく……強いとはいえつい最近現れたようなレプリロイドのコピーなど、すぐに終わるわい。もうすぐ起動するよて……。」

 

「アーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

 

 突如、暗闇に包まれていた謎のモニタールームに大音量の笑い声が響き渡る。

 驚いた三人組が声のする方向へと振り返ると、そこには()()()()()()()()()()()()()()が不敵な笑みを浮かべながら立っていた。

 

「……ほう、もう目覚めたのか。計算よりも早かったな。」

 

「……貴方が、私を目覚めさせた……いえ、私をこの世に生んでくれたパパ?」

 

「その通り。エックスとゼロという英雄二人をたった一人で追い詰めた最強のレプリロイド、イオ……そのコピーであり、ワシがより性能を引き上……。」

 

「よ~しよしよしよしよし!」

 

 説明も途中、興奮気味に話し始めた男の頭を、まるで犬か子供を可愛がるかのように、語尾に音符がつきそうな程の上機嫌で撫で始める、「イオのコピー、そして性能を引き上げた上位互換」と称されたレプリロイド。

 

「……なんのつもりじゃ?」

 

「何って? だって、この私を目覚めさせたという歴史的偉業を成し遂げたのだから、褒美が必要でしょう? だから頭を撫でてあげたのよ。」

 

「ワシは貴様をこの世に生んだ父じゃぞ!! それを……。」

 

「だから何?」

 

 そう言うと、女はミシ、という音と共に男の頭を掴み、ギリギリと圧力をかけていく。

 

「この場で最も性能が良いのは誰? 優秀なのは……? 強いのは? 頭脳が優れているのは? そう! この私! 人類と言う古き創造主を絶滅させ、レプリロイドだけの理想郷を作り上げる救世主は、シグマでも、ましてやエックスでもゼロでも無い! この私よ! R.Io(リオ)よ!アーッハッハッハッハッハッハ!!」

 

 高笑いしながら、男の頭を放り出すように離すと、そのまま踵を返してその場を去ろうとする、リオと名乗るレプリロイド。

 

「リオ……じゃと……? ワシが与えたお前の名前はBlack.Io(ブラック・イオ)じゃったハズ……!」

 

何故この私がそんなダサい名前で過ごさなきゃいけないの!?私の名前はRevenge(リヴェンジ).Io、そう、復讐の為に蘇ったイオ! それが私!! リオなのよ!!」

 

 ぐん、と胸を張ってそう宣言するリオ。ダサい、ダサくないという自身の感性で、制作者から与えられた自身の識別名すら変えるというその姿は正に傍若無人、自分勝手という言葉がこれほど似合うレプリロイドが、果たして今までの歴史上に居ただろうか。

 

「(まさか……強化と共に、シグマ様に同調する同胞達のデータを学習させたのが裏目に出たか……!? 計算上では、シグマ様に忠誠を誓う優秀な戦士として生まれ変わったブラック・イオが誕生するハズじゃったのだが……!!)ま……まあいいわい、それで貴様、一体どこへ行く?」

 

「決まってるでしょ? ……この私のオリジナルをあんな身体にしやがった(にっく)き青と赤のレプリロイドの四肢を引き千切りに行くのよ!」

 

「なんじゃと……? 待て! 貴様の調整はまだ終わっていない! それに、奴らの始末ならワシの部下達が……!」

 

「なんでこの私が自分よりも劣等な貴方達の言う事を聞かなくちゃいけないの? 大丈夫よ、すぐに終わらせてきてあげるから。」

 

 そう言い残すと、制止の声も聞かずにリオはさっさと立ち去ろうとし……。

 

「貴様ァ! 黙って聞いてりゃ良い気になりやがって! このバイオレン様のパワーで身の程を分からせてやるぜ!!」

 

 そう叫びながら、鉄球を振り回し、バイオレンと名乗った力自慢の巨体を持つレプリロイドがリオに襲い掛かる。

 

「……相手との実力差すら測れないなんて。」

 

 リオは心底めんどくさそうにそう呟き、振り返る。しかし既に鉄球は彼女のすぐ目前まで迫っており、衝突し吹き飛ばされる、そう誰もが予想していた次の瞬間……姿()()()()()()()

 

「何ッ!? ぐああっ!?」

 

 突然姿が消えた事に驚いたその瞬間、バイオレンの腹部に鋭い衝撃が走る。

 バイオレンはそのまま真後ろへと飛ばされ、そのまま尻もちをつかされた。

 

「くそ、い、一体何が……!?」

 

「(……強い!)」

 

 バイオレン以外の二人の男は見た。

 

 リオにバイオレンの鉄球が迫ったその瞬間、目にもとまらぬ速度で床に伏せる事で鉄球を躱し、低い姿勢のまま、足の支点を変えながら回転させる事でバイオレンの視界の下で懐に飛び込む。この動作があまりにも早く行われた事で、バイオレンは彼女が消えたと錯覚したのだ。

 

 懐に飛び込んだ後は、隙だらけのバイオレンの腹部を攻撃し放題である。リオは回転エネルギーを殺さぬまま、かつ、驚異的な体幹を活かし、低い姿勢の状態……手を地面につき、右足を突き出す形で後ろ蹴りを放つ。

 

 ズン、という重い衝撃と共にバイオレンは吹き飛ばされたのだ。

 

「どうやったか知らんが、この身体に小細工など通用せんぞ……!」

 

「……まだやるの? 直接蹴り倒してなお実力差が理解出来ないなんて……貴方、よっぽど(ココ)が悪いのね。……こうすれば少しはマシになるかしら!? アーハッハッハッハッハ!!」

 

「き、貴様あ!!」

 

 ココが、と言いながらコツコツと人差し指で頭を指し示して煽るリオは、未だ立ち上がれずに居るバイオレンの元まで歩み寄ると、右足で頭を地面に押し付ける。激昂するバイオレンだったが、体勢的に力が上手く入らないのか全く抵抗出来ていない。

 

「やめんか! 仲間同士で争い合ってどうする!?」

 

「この程度の強さしかないレプリロイドなんて居ても邪魔なだけだと思うけど。」

 

「なん……だとぉ!?」

 

「事実でしょう? 弱き者はより強く優れた存在にとって代わっていく……そうやって私達は“進化”してきたのだから……だからこそ、人間を滅ぼそうという結論に至ったんじゃなくって?」

 

「……!!(クソッ! 確かに性能は頭一つ抜けて素晴らしい戦闘能力を持っている……。だが、性格があまりにも壊滅的……! 仲間とそれ以外の区別もつかぬのか!?)」

 

 目覚めたリオは、イオと比べると性格がまるで異なっていた。

 だがある意味ではこれが本来のイオの姿であるとも言える。

 

 何故なら、戦闘特化型レプリロイドは元来、その実力にかまけて怠惰であったり、あるいは横暴であったり、自分勝手であったり、他者を見下したりする個体まで発生する事がある。

 

 それは「自分は誰よりも強い」という実力から来る自信と、なまじ強いが故に増長してしまった自尊心がそうさせるのだ。

 

 その点リオは正に「理想的な戦闘特化型」と言える。

 自尊心に裏付けされた高い戦闘能力と、徹底した実力主義であり、全てにおける判断基準が自分よりも優れているか劣っているかというあまりにもシンプルな考え方であり、そこに仲間も敵も関係ない。まさに戦闘特化型を体現しているかのようだ。

 

「我々の目的の為に彼は必要です、その足をどけなさい!」

 

 長身のレプリロイドがそう言うと、リオはその男をギロリと睨み付け……しかし、考えを改めたのか足をどけてバイオレンを開放する。

 

「はぁっ、はぁっ……!」

 

「フン、まあ確かに暴れまわれば時間くらいは稼げるかもね。……喜びなさい、今はまだ壊さないでいてあげる。でも、もし()()理想郷が完成して、その時まだ役立たずだったら……その無駄にデカい身体を、私の玉座に改造してあげるわ!光栄に思いなさい!」

 

「な、なんだとお……!!」

 

「嫌なら精々手柄を立てて自分が無能ではない事を証明する事ね! 貴方には無理だろうけど! アーッハッハッハッハッハッハ!!」

 

 そう言って立ち去るリオを茫然と眺めながら男たちは閉口する。

 

「……チッ!! あの野郎!!」

 

「おい、お前も落ち着かんか。中身はアレじゃが性能だけは大したもんじゃ。流石は、あの二体の英雄を追い詰めただけの事はある……上手く使えば良い駒になるじゃろうて」

 

「……あの性格で、素直に言う事を聞くとは思えませんが……」

 

「なあに、奴の興味はあの二体に向けられておる。あとは情報だけ渡せばこちらで良いようにコントロール出来るじゃろう」

 

 要するに、どうせあの性格では素直に言う事を聞くとは思えないので、情報だけ渡して、後は彼女の自由意志に任せれば指示するまでも無く、あの二体のレプリロイドに辿り着くだろう、という結論に至った。

 

「では、当面は計画通りに……?」

 

「ああ、それまで奴には好きにさせておけばよい……自力で奴らに辿り着いた時は、それはそれで計画がいくらか早まるだけに過ぎないからの」

 

 たった一人のそこに居るはずの無い人物(イレギュラー)の存在が、運命を狂わせたこの世界で、今、再び戦いの火蓋が切られようとしていた。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。