灯火の星 (命 翼)
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始まり

pixivにも投稿している作品です。恐らく東方日常録の代わりにこれがメインになるかと思います。よろしくお願いします。


ここはどこだろう?水の流れる音が辺りから聞こえ、分かるのは身動きが出来ない上に体が沈んで行っている感覚があるという事。水の音が聞こえる割には息苦しくなく、ちゃんと物も見えてはいるが、声が出せず体も動かせない。今視界に映っている太陽と青空が徐々にながら遠くなっているのが分かるが、何度言うように身体は一向に動かせない。

 

もがいても、もがいても。ただ感じるのは体が沈んで行っている感覚だけ。訳も分からないまま周りに見える景色が真っ暗になって行き、見えていた太陽も暗闇に掻き消されていく。呼吸も出来ず、まばたきすら出来ないまま私の視界はいつの間にか完全に暗闇に包まれ、どこを見渡しても見えるのは辺り一面、黒、黒、そして黒。ここはどこ?私は一体どこに向かっているの?

 

不安のピークに達した体はいつの間にか私の意識を夢の世界から覚まさせていた。声にならない声を張り上げ、私は布団をまくり上げて座り込んでいた。カチ…カチ…と動く時計の針は午前6時を示しており、私が着込んでいたパジャマが汗のせいかびしょびしょになっている。私は悪夢でも見ていたのだろうか?額の汗を拭い、深く、深く深呼吸すると欠伸しながら私は一言呟く。

 

「今日…何があったっけ……んん…分かんないからとりあえず着替えよ…パジャマびしょびしょで気持ち悪い…」

 

ベッドから立ち上がり、ひとまず私はクローゼットから服を取り出しパジャマから着替えていく。びしょびしょになったパジャマはひとまず洗濯カゴへ。欠伸しながら頭を掻き、私は歯磨き等を済ませていく。悪夢を見たせいか食欲が湧いて来ず、朝食については後で食べる事に。服を室内干ししていると、寝室に置いていた携帯が鳴っているのに気づき、寝室に戻って携帯を手に取った。

 

「もしもし…」

 

「あ!出た出た!蓮子!今日はいわく付きの神社を一緒に調査しよって言っていたよね!?」

 

申し遅れたが私の名前は宇佐美蓮子。今電話で喋って来ているマエリベリー・ハーンの友人だ。ちなみに彼女は私の事を蓮子と呼んでおり、私は彼女の事をメリーと呼んでいる。私が部長を務める秘封倶楽部の唯一の部員でもある。私はメリーの言葉にあー…ごめんと苦笑いを呟いた後…

 

「5分したら支度出来るからマンション前で待っていてくれないかな…」

 

「分かった。なるべく早くしてね」

 

メリーとの通話を終えた後、私は一度頭を抑える。さっきの悪夢が脳裏を過ぎったのだ。不安による頭痛に堪えつつ、私は財布等を鞄の中に入れ自宅を出る。朝食は先程も言った通り、食欲がない為無しの方向。その証拠にお腹の音も鳴っていない。

 

——頭が異常に痛いが、不安による物だからすぐに治るだろう。マンションのエレベーターで一気に一階に降り、玄関付近で待っていたメリーの元に駆け寄る。

 

「メリー…ごめん。わざわざ来てもらって…」

 

「大丈夫だよ。それより蓮子は大丈夫?寝坊なんて滅多にないし…」

 

私が苦笑い気味にメリーに謝罪すると、彼女は首を振り私の表情を覗き込みながら心配そうな表情を浮かべている。確かに私は約束事についてはあまり遅刻しない方だが、メリーにも少しばかり思う所があったんだと思う。私は彼女に大丈夫と笑みを浮かべながら呟くと、メリーの肩をポンと軽く叩いた後に前を歩いていく。彼女も慌てて私に付いてくるがその表情からは全く持って不安の色が消えていない。

 

だがこれをどう説明したらいいか分からないし、説明しても笑われるだけかもしれない。そう考えると中々言い出せなかったが、近くのバス停にてバスを待っている時にメリーの方から私に尋ねてきた。

 

「悪い夢でも見た?そんな顔色悪い蓮子見た事ないし…」

 

「そんなに悪いかなぁ…?」

 

「悪いよ…近くで見れば完全に病人だもの」

 

何かがグサッと刺さったような感覚が襲って来た。メリーが言ったのはもちろん間違いではないのだが、何だろう…病人と言われて何かショックだったと思う。そりゃ暴言を言われるよりはマシだとは思うが、ストレートに「病人」と言われたら軽くでもショックは受ける。うん、これだけは誰にも反論させない。

 

そんなグサッと来たメリーの言葉に私は苦笑いを浮かべると、「今朝ちょっとね…」とはぶらかそうと考えたが今、彼女にそんな事言ったら「嘘だ」と言われかねないので正直に伝える事にした。

 

「身体が妙に沈んで行くというか…でも呼吸も身動きも取れなくて…」

 

「…それが怖かったんだ?」

 

「うん…あんなの見たら顔色も悪くなるよ。フードファイター並みの食欲が全く湧かないし」

 

「うん。その発言が出れば大丈夫だね」

 

メリーの表情に笑顔が戻る。私はよく食べる方ではあるが、フードファイター並みの食欲がある訳ではない。というか、そんなのはどうでもいいとして。そうして話している内にバスが到着したのを確認し、私達は乗り込んで行く。歩いては遠い神社ではあるが、バスに乗れば一駅ほど。一瞬眠りこけたらすぐに通り過ぎてしまう厄介な場所である。

 

バスから見える景色を眺めながら、眠りこける事数分。耐えきれなかった眠気をメリーにカバーして貰いつつ、私達は神隠しが起こったとされるいわく付きの神社に降り立つ。

 

「蓮子。一回思い切りしばいてあげようか」

 

「ううん…お願いしていい…?」

 

あまりに眠た過ぎる為に目覚ましの為に一回メリーにしばいてもらった。痛かったが、眠気がすっかり無くなり何だか気合いが満ち溢れてきた。

 

「よっしゃー!!やるぞ調査ー!!」

 

「元気出過ぎだって〜!!」

 

メリーをほぼ置いてきぼりにする形で私は神社の境内に繋がる階段を駆け上って行く。ちなみに急に走り出したせいか、足を痛めてしまったのはここだけの秘密という事にしてもらいたい。いや、やっぱり笑い話にしてしまおう。

という感じで階段を駆け上がると、神社の境内から漂って来る異臭に思わず私は鼻をつまんだ。

 

「くっさ!!やっぱ鼻にツーンって来るなぁ…」

 

「勢いよく上がるからだよ…全く…」

 

私達が大学生になった頃の事。一人の女性が空を飛ぶ女に連れさらわれたという話だ。ちなみにこれは嘘でも何でもなく、れっきとした事実。そしてまだその女性は発見されていない。さらに1年前、羽が生えた女に一人の男性が連れさらわれたという事件が発生。二人とも安否どころか生死すら分かっておらず、行方不明になっている。分かっているのは二人共この神社で失踪したという事だけだ。

 

「こんな所にどうして来るんだろうね…?」

 

「さあ…どうしてだろう…」

 

境内の屋根にはコケが生えており、その縁側は腐敗しておりボロボロ。先程も言った通り、異臭が漂って来る程だ。普通なら誰も寄り付かないに決まっている。私達二人はとりあえず鼻をつまみつつ、辺りを見渡す。だが見えるのは私達より大きくなった草むらだけであり、その中からはマムシの声が聞こえて来る。とても近付けない。

 

4回に渡って調査はしているが、全く持っての進展の無さに私達自身諦めようとしている始末。軽く口で息を吐いていると…脳裏に先程の悪夢が再びよぎり、そして何か声のような物が聞こえて来た。

 

「…っ!?どこかから声が…?」

 

「声?そんなの聞こえないよ?」

 

頭を若干抑える私にキョトンとした表情を浮かべながら近づいて来るメリー。気のせいか…と思い込んでいると、前方の草むらから何かの鳴き声が思い切り聞こえて来た。

 

「!?今の聞こえた!?」

 

「うん…聞こえた!!明らかに見知った動物の鳴き声じゃなかった!!」

 

あの声はこの鳴き声を示していたのだろうか。私とメリーは顔を合わせて同じタイミングで頷くと、声の聞こえた草むらに近づいていく。すると草むらが急に震え始め、そこから少し大きめの茶色の生き物がひょこりと私達の様子を伺うかのように姿を見せた。

 

「ぶい!ぶいぶい!」

 

見知らぬ鳴き声と共に唖然とする私達を置いてきぼりにする形で、草むらの中に入り込んで行く。先程聞こえた声とは多少違うが、あんな生物は見た事がない。私は息を呑むと…

 

「メリー!追うよ!!何かあるかも!!」

 

「ちょ、ちょっと蓮子!?」

 

茶色の生物を追って私達は思い切り草むらの中へただ突き進むのだった…




見て下さりありがとうございました。


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新しい世界へ

投稿します。期間が空いて申し訳ない。


謎の生き物は間違いなく、この草むらの中に入った。それは間違いのない事実だ。だが生き物はかなり小柄で、最悪踏みつけてしまう恐れがある。私とメリーは急ぎつつも慎重に、草むらをかぎ分けて前に進んでいく。草からの異臭、そして草が長いという事もあり、生き物探しが困難を極めたその時の事だった。

 

「ねぇ!!蓮子!!前が霧かがっているよ!何かあるんじゃない!?」

 

草むらをかぎ分けながら周りを見渡していると、近くにいたメリーが前方を指差す。すると普段は霧すらかかっていなく、ただ岩が置いてある場所から霧が発生していた。その霧は相当濃い物であり、幾ら目を凝らしてもその先が全く見えない。普段は行き止まりの筈の所…私はそう警戒していたが、メリーの真っ直ぐな目に背中を押された私は彼女と共に進んでいく。

 

霧かがっており、前は全く見えないが地面をしっかりと踏めているのは確か。分かっているのは今いる場所が行き止まりではないという事。ただ真っ直ぐに進んでいると、霧に加え急な突風が吹き始め帽子が何度も吹き飛ばされそうになる。だが懸命に帽子を抑えながらただ前へ。

 

「ねぇ…こんなにここ霧かがっていた…!?」

 

「かかってない…!!というかここに道すら無かった!!」

 

今戻ればもうこの現象は起きないかもしれない。横にメリーがいる事を確認しつつ、ただ、ただ前へ。頼りになるのは地面を踏み締めているという感覚だけ。互いに息を切らしながら、進んでいるとついに私達は草むらを抜けた。体には草血のような物が多く付いているが、そんな事は気にしていられない。先程の生物がいないか、辺りを見渡す。

 

「あの生き物…どこに行ったんだろう…?」

 

出たのは霧がかっている森。先程までの突風もなく、足元を頼りにしないといけないという事もないが、今分かるのは目の前にあの小さな生き物がいないという事だけ。だが、ここまで来て帰る訳にも行かない。不安そうに周りを見渡すメリーの隣で私は両頬を二回叩くと、勇気を出し前へと走り出す。

 

「れ、蓮子!?危ないよ!?」

 

そうは言いつつもきっちりと私の後ろを追いかけて来てくれるメリー。こんな現象だ、いつ元にいる場所に戻されてもおかしくない。どうせ戻されるのだったら、思い切り疲れて後悔したい。何て事を考えていると…

 

「ブイ!ブイブイ!!」

 

聞こえて来た先程の生物の鳴き声、姿はいないが間違いない。生き物はここにいる。メリーに迷惑をかける事を承知でさらに前へ走って行く。すると神社で見た生物の姿がようやく見え、隣にいたメリーの姿が見えなくなった。

 

「メリー…!?メリー!!」

 

先程まで無かった不安が急に出てくる。彼女が隣にいるだけでこんなに違うのかと実感させられたが、それよりも前から私を呼ぶかのように聞こえて来る生き物の鳴き声に、私は前に振り向く。すると生き物が私の方を見つめていた。私は息を呑み、生き物の方に歩み寄る。だが生き物は私に微笑むと、クルッと背を向け、そのまま先にへと走って行ってしまった。

 

「あ、待って!!」

 

メリーの事は気になるがまず追わないと。そんな感情が私をさらに前へと突き動かしていた。

 

私を見つめていた生物は間違いなく、どこかへ連れて行こうとしている。何にも分からないが、何故かそれだけは心の中で理解していた。そしてメリーの姿を気にする度に聞こえる生物の鳴き声。私の気はそれにより戻され、また前へと突き進む。一体メリーはどこに行ったのだろう。そして、私を呼ぶ生物は何者なのか?様々な疑問が頭を巡る中、私は霧がかかる前へと進んでいた。

 

「………」

 

疲れ切ったのか、私の呼吸は今まで以上に荒れそして目が虚ろになりかけていた。だがそれでも身体だけは止まる事なく、ただ前へと歩いていた。そんな時だった。前から急に光が差し込み、前が全く持って見えなくなった。だが分かるのは生物の声がさらに大きくなったという事だけ。私はその微かな事に希望を抱き、前に進んでいると…

 

「……子…!! 蓮…子.!!」

 

後方から聞こえて来た足音と声にまさかと思い、振り返るとそこには姿が見えなくなったメリーの姿が。これは疲れ過ぎた上で見えた幻覚か?と思ってしまったが見えるのは間違いなく、メリー。肩を揺らされ、目をしっかり開けた私にメリーはホッとしたような表情を見せ、深々とため息を吐いた。

 

「良かった蓮子…!!急に見えなくなったから…」

 

「メリー…?メリーだよね…?」

 

私の問いかけに対してメリーは即頷いた。彼女の頷きを見て私もかなり安心したが、メリーが見据えていたのは生物のいる前方で…

 

「追うんだよね。さっきの子。だったら行こうよ。見失うかもしれないよ」

 

「え、あ、うん…」

 

彼女に引っ張られる形で私はさらに前へ。光が差し込んでいる状態だった為、ほぼ前は何も見えない。だが懸命に前へと進んでいると、目を瞑らないと行けない程の光が消え、太陽のような光が私達に差し込む。私が息を呑む中、メリーは表情を一気に明るくさせて、私の方を見て語りかける。

 

「ねぇ蓮子!!太陽の光だよ!!きっとこの先に何かあるよ!!」

 

「あ、ちょ…メリー!!」

 

メリーは私の静止を無視し、そのまま前に向かって走り出す。私はメリーの行動に驚かされつつも、彼女を追って残る体力を使い果たす形で前へ。先程よりは走るスピードは遅くなっているが、立ち止まってはいられない。息を切らしながら走り切ると、太陽の光と共にとある森林のような景色が目に入った。

 

「森林…湖…」

 

太陽に森林。そして湖と先程までには全く持って見えなかった光景だ。私はこの景色に驚いていると、先にここに入り込んでいたメリーが私の方に振り返ると、猛スピードで駆け寄り、力強く手を握りしめ…

 

「蓮子!!図書館で見た写真の景色だよここ!!」

 

「写真…」

 

メリーに急に言われ、疑問しか出て来なかっ太陽が記憶を辿り図書館で見た幻想郷に関する資料にあった写真の事を思い出す。その瞬間、私も疲れなんて関係ないくらいに喜びがこみ上げ…

 

「ここは幻想郷…!!」

 

森林の景色と湖を見ながら私はそう呟くと、喜びを爆発させるかのようにメリーの方に振り向き、互いを抱き合った。服は汗で濡れていたが、そんな事今は良かった。分かるのは一つ。ここが幻想郷だと言う事実。その事がただ嬉しかったが、気になったのは…

 

「でもさ蓮子?幻想郷って妖精や妖怪が沢山いるって書いてあったよね?」

 

「あ…」

 

今目の前に見えるのは見た事のない生物達ばかり。妖精や妖怪の姿など全く持って見当たらない。これはどうしてだろうか。何という事を考えたが、そんな事よりもまず幻想郷が実在した。その事に不思議と嬉しい気持ちと安心したような感情があった。

 

「でも…ひとまず幻想郷に着けたんだしさ。その事をまず喜ぼうよ」

 

「そうだね!!本当に良かったよ〜」

 

メリーと共にまず幻想郷に辿り着けたと言う事を嬉しさとして分かち合う。そしてスッと真剣な表情に戻すと私達の話題は、突如として目の前に現れた一匹の生物の話しになっていた。

 

「ねぇ蓮子…」

 

「うん。分かってるよ。ひとまずその子を探そうよ」

 

私達の前に突如として現れたあの茶色の生物。私達はその一匹がどうして目の前に現れたかを気にしながら、ひとまず移動し始める。色々な所にいる生物達に驚き、興味を湧いていた私達。そんな中、私達は再び幻想郷に招いてくれたと言っても過言ではない茶色の生物を見つけ、慌てて追いかけたのだった…

 




小説書くのってこんなに大変でしたっけ…?


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一人の人物との出会い

投稿しますね。基本的に2週間に一度ペースだと思います。


再び私達の前に現れた茶色の生物。この幻想郷に導いてくれたあの生物は一体何だろうか。普通なら姿を見た瞬間に逃げ出すが、あの子だけは警戒心を感じず、こちらと遊んでいるようだった。底つきそうな体力を好奇心でカバーしつつ、私とメリーはいつの間にか先程の場所とは少し違う森林に差し掛かっていた。

 

「また見失ったよ…何だろうねあの子…」

 

森林にて一度立ち止まり、辺りを見渡した私達。然し先程まで前方を走っていた茶色の生物の姿はいつの間にか居なくなっていた。メリーは息を切らしながら膝に手をやり、疑問の一言を呟く。彼女の言葉に私は答える言葉が見当たらい事とがっかりしたと言う気持ちが先走り、少し黙り込んでいた。このまま迷子になってしまうのだろうか、という不安が頭を過ぎる中、聞こえてきたのは人の声と先程の生物の鳴き声。私はそれを耳にした瞬間にハッとし…

 

「ね、ねぇメリー!!今、何か人の声が聞こえた!!先程の生物の声も!!」

 

「え?私には全くだったけど…」

 

私の言葉に顔を上げずに首を振るメリー。然し私は汗を拭いながら辺りを見渡していると、左の方から何やら草むらをかぎ分けるような音が聞こえ、私はそちらに振り返る。すると私達の目の前に現れたのは、眼鏡を付けた水色の髪をした女性。彼女の両腕に包まれるかのように、私達が探しに探していた茶色の生物の姿がそこにはあり、私は思わず指を差して声を張り上げた。

 

「え?…あー!?ホントだ!!」

 

私の声に驚く形でメリーも顔を上げて声を上げる。そして私達の声に反応するかのように、茶色の生物も「ぶぃ!!」と声を上げた。女性は生物の頭を軽く撫でた後に笑みを浮かべながらこちらに近づいてきた。

 

「やあ。イーブィが少し面倒かけさせたみたいだね。君達、幻想郷に来るのは初めてだろ?」

 

「え?あ、はい!!」

 

女性はまるでこちらがどういう経緯でこの世界に入って来たのかを知っているかのように、微笑みながら語りかけて来る。私は驚いて思わず返事してしまったが、そんな私と少し疲れ切っているメリーを見て、女性はクスっと軽く笑った後に…

 

「コイツ。前も二人、違う世界から人を幻想郷に引き込んでしまったんだ。私もなるべく注意はしているんだが……ひとまず」

 

「うちに来なよ。君達大分疲れているからさ。そこでゆっくりと語り合おう。ついて来て」

 

女性は私達が疲れているのを察してくれたのか、自分の自宅に案内してくれると言ってくれた。私とメリーは女性について行く形で、ただついて行く。その中でメリーは私に近寄り、耳打ちでとある事を尋ねて来た。

 

「ねぇ蓮子。今あの人、イーブィって生物の事を呼んでいたよね?それが名前なのかな…?」

 

「さあ…自宅で話してくれると思うよ。実際あの人の名前を知らないし…」

 

そう。私達はまだ女性の名前を聞いていない。淡々と彼女の自宅に案内される手筈にはなったが、一体彼女が何者で誰なのか、全く聞いていないが為に何が何だか分からない状況にある。様々な疑問を抱きながら女性について行く事数分。女性がとある家の前に足を止め、イーブィと呼んでいた生物を地面に下ろす。

 

「ささ。入ってくれ。今紅茶とかを用意するよ」

 

眼前に広がるのはちょっと私達の幻想郷のイメージとは違う建物。これが彼女の自宅なのだろう。女性の言葉にただ頷いた私達はついて行く形で建物の中に入る。入り、彼女が電気を付けた瞬間に広がった光景に私達は驚かせられた。何かのデータを作成している装置と本棚にしまってある大量の本。私達が驚きのあまり黙り込んでいると、奥に歩きながら女性が語る。

 

「今、君達の足元にいるのはイーブィ。ポケットモンスターと呼ばれる生物の一種さ。コイツらが入って来てから、幻想郷もえらく変わってね…」

 

「イーブィ…」

 

女性の口からようやくこの生物の名前とその正体が明らかになった。名前はイーブィ。いわゆる幻想郷に入って来たという未知の生物らしい。私達を見上げながらイーブィは軽く鳴くと、そのまま女性の方に走って行く。私達もイーブィに連れられる形で奥に進んでいくと、何やらデータを見つめているイーブィとは違う二匹の黄色の生物の姿が。

 

「あ、あの…そこにいる二匹は?」

 

「ん?ああ。左側がワンパチ、私のパートナーで…右側がピカチュウ。コイツはイーブィと同じく弱り切っていた所を保護したんだよ」

 

黄色と黒色の右側にいるのがピカチュウ、イーブィと同じく保護されたらしい。そしてその隣の犬のような生物がワンパチ。どうやら女性のパートナーらしい。女性は机の上に紅茶を置くと軽く深呼吸した後に、私達の方を見て…

 

「で。私は河城にとり。元は山に住んでいたんだけど、今はこうしてこの不思議なポケモンと呼ばれる生物の研究をしている。一応河童さ」

 

「か、河童!?」

 

にとりと言う名前を聞く前に驚いたのは、彼女が河童だと言う事。よく見ると着ている白衣の後ろから若干、甲羅のような緑色の物が見える。私達は目を疑ったが、彼女が河童と語ってくれたおかげでようやくここが幻想郷だと言う事を実感出来た。私は息を呑み、メリーと共に彼女がいる机の近くに歩み寄る。

 

「ああ。初めてだろ?ここに来るのは初めてだし、そんな反応になるのは無理ないよ。さて…そこに座ってくれ。外の世界に出回っている幻想郷の本を読んだ事があるのだが…コイツらが入って来てからめっきり状況が変わってな…」

 

どうやらにとりさんも幻想郷に関する本は読んだ事があるらしい。ポケモンが入って来てからめっきり状況が変わったと話す彼女の言葉が気になり、私達はとりあえず指定された席に腰掛ける。彼女も私達とは反対側の席に腰掛け、一息吐くと…

 

「状況が変わったってどう言う…」

 

「コイツらはな。元は違う世界からやって来た生物なんだ。そして一匹、一匹が強力な力を持ってる。どうしても力では敵わなかった妖怪達に、ポケモンを使って対抗する人間があっという間に増えたんだ」

 

にとりさんはさらに話す。それが文化すらも変えてしまい、いつの間にか今まで見るのが当たり前だった妖精達が、ポケモンに変わってしまったと。そしてポケモンが好き勝手に幻想郷の結界を通り抜けるが為に、私達のような違う世界から幻想郷に入って来る人もかなり増えたと。

 

「元々、結界によって幻想入り者を防いでいたんだけど。どうもね、コイツらには効かないらしくてね。もうやりたい放題で、変な方向に幻想郷が発展して行ったって訳さ」

 

「そうだったんですね…」

 

話しているにとりさんはどこか寂しそうだった。然し、起こってしまった事は仕方ないと今は切り替えているらしい。彼女の話からようやく幻想郷にポケモンなどが妖精より目立っているかと言う事を理解出来たのだが、未だにメリーには気になると言う事があるらしく…

 

「あの…変な方向に発展したって…具体的にはどんな感じに?」

 

「ん? ああ。主に遊び方とかそんな感じかな。力を持つ者は弾幕ごっこという弾幕などを使って遊んでいたんだが、ポケモンが入って来てからはポケモン勝負になったのさ。それが発展し過ぎて今はスタジアムなんて場所があるくらいだよ」

 

幻想郷にポケモンが入ったせいで弾幕勝負や弾幕ごっこと呼ばれる遊びがまるきり無くなったという。彼女が出したスタジアムというワードは今、私達の世界で当たり前となっているワード。それに対して心の中で驚いた私ではあったが、さらにメリーはにとりさんに問いかけ…

 

「結局ポケモンはどこから…」

 

「それを調べているって言った方が近いかな。誰が入らせたかどうかなんて、分からないけど…もしかするとポケモン自体の仕業であるかもしれない。何かの異変ではある事は間違いないけど、犯人が分からない。今は少しもどかしい気持ちだよ」

 

淡々と話すにとりさんの言葉を聞き入る私達。何もかもが分からない状態と話す彼女の目はどこか悲しそうではあったが、その口元は真逆でどことなく楽しそうだった。そして今足元にいるイーブィとピカチュウを引き渡される事になるなんて、今の私達は知らない…




見てくださりありがとうございます。


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ポケモントレーナーとして

やっと2人がスタートラインに立ちます。


幻想郷で一体何が起こったのか、そして何故ポケモンがこの世界に溢れるようになったのかを聞いた私達。話しを聞いて行く中で、にとりさんから研究所内にある本を読んでもいいと言われ、私とメリーは本棚に直行していた。

本棚に置いてある本はみな、にとりさんを始めポケモンについて研究している人々が書き、世の中に出した一冊。幸いにも書いてある言葉は私達でも理解出来る物で、どんどんと読み進めていたが…

 

「最近はポケモンについて書く人がいるんだなぁ…」

 

読んでいた一冊を一言呟きながら読み終え、閉じた瞬間。足元から何やら鳴き声のような物が聞こえ、私はキョトンとした顔を浮かべながら足元に顔を向ける。するとそこにいたのは遊んで欲しそうとばかりにキラキラとした目で、ピョンピョンとその場を飛び跳ねているイーブィの姿。私は本棚に本を置いた後にしゃがみ込み、イーブィを撫でる。

 

「イブブブイ!!」

 

「ホント、人懐っこいねアンタ…」

 

嬉しそうに鳴き声を上げるイーブィを見て、つい苦笑いをしながら呟く私。犬でも猫でも、ほぼ見知らぬ相手にここまで近づいてくるという事は滅多にない事。撫でられている姿はほぼ、犬。そんな姿に私はほっこりしたような安心とした気持ちとなっていた。そしてよく見ると、メリーの方にはピカチュウが寄り添っている。

 

何か惹かれる所があるのだろうか…という事を考えていると、イーブィを撫でている私の元ににとりさんが若干嬉しそうに微笑みながら、私に声をかけて来た。

 

「そいつら、普段は対して反応を見せないんだよ」

 

私はにとりさんのその言葉に少し驚いた。最初から人懐っこい姿を見せていただけに、そんなギャップがあるとは思っていなかったからだ。逆に反応見せなかったら、来た当初のピカチュウのような反応になるのだろうか。だったら、何故素っ気ない対応を見せていたピカチュウがメリーの元に寄り添っているのだろうか? 私は少し気になった。

 

メリーとピカチュウの方を見て、息を呑んでいる私の横顔を見てにとりさんはニヤリと笑うと…

 

「中には犬みたいにベッタベタに甘えてくる奴もいれば、猫みたいに素っ気ない態度を取る奴もいる。そして人に対して恨みを抱いている奴もたまにいる。姿は違えど、ポケモンも一種の動物。決してエイリアンみたいな奴らじゃないんだよ」

 

にとりさんが話している間にも、私の肩に乗って来るイーブィ。彼女の言葉を息を呑んで聞いていた私に、にとりさんは表情を微笑んだまま変える事なく、一つ提案して来た。

 

「なあ。私の頼みを一つ聞いてくれないかい?勿論、アンタら2人に提案するつもりだったが…ひとまず、アンタ達の名前を知らないとね」

 

にとりさんの苦笑いでの一言に、私はハッとした。そうだ、彼女に名前を伝えていないと。提案を聞く前に私は少し遠い場所にいるメリーを近くに来るように呼び出し、簡潔ながら私とメリーの名前をにとりさんに伝えた。にとりさんは二回程頷くと、小さく「よし」と呟き…

 

「私からの提案は一つ。その二匹を預かってみないか?どうせしばらくは戻らないと思うし、悪くない提案だと思うが…」

 

にとりさんの提案に思わず、私とメリーは顔を見合わせる。確かにしばらくは幻想郷からは戻れないとは思う。然し、幾ら人懐っこいとはいえ、私達とは違う世界に生きている生物だ。帰る時は別れなければならない。提案を受けるのは簡単ではないだろう、一瞬肩に乗っているイーブィから私が顔を逸らしていると、メリーが。

 

「預かります!この子と共に今の幻想郷がどうなっているか、見てみたいですから!」

 

「ち、ちょっとメリー!?」

 

私が悩んでいる傍で、メリーの思いは真っ直ぐだった。どうせ帰れないなら、この幻想郷を見て回りたいという一心。にとりさんはメリーの一言に自分で提案していながらも驚いていたが、どちらかと言うと驚いたのはメリーの決断の速さだろう。そして同じく驚いていた私の方にメリーは振り向くと…

 

「どうせしばらくは帰れないんだよ?折角来たかった幻想郷なのに、回らないのは損じゃん!!」

 

「…そう…だね。そうだよね…メリーは正しいよ」

 

メリーの真っ直ぐ目とその言葉を聞いて、私は吹っ切れ、マイナスな事を考えるより先にまず、幻想郷を回ってみたいと言う思いが勝った。それにイーブィがくっついて来るだけだ、帰るまでの生き方にしては持って来いだと思う。私の中の意見を強引に言い包め、私はメリーと同じくにとりさんに告げる。

 

「私も預かります。幻想郷を回ってみたいのは本心ですから」

 

「分かった。承諾してくれて助かるよ。言った通り、今の幻想郷は恐らく2人が思い描いている場所とは違うと思う。でも、それでも回ってみたいと言う2人の心。しっかりと受け止めたよ」

 

にとりさんは納得したかのように頷くと、一度私達の元から離れ何やら奥の方から赤いボールのような物を持って、やってきた。

 

「にとりさん、それは…?」

 

「ポケモンを中に入れるモンスターボールという。これからピカチュウとイーブィは君達のパートナーになるんだ。そこに入れてやってくれ」

 

にとりさんから私達はモンスターボールを受け取る。満足気な表情を浮かべているにとりさんに対し、少しばかりポケモンの反応が気になったが、イーブィは何かを察したかのように私の肩から降り、尻尾を振りながら微笑む。メリーの側にいたピカチュウも、彼女の前へ。私とメリーは一度顔を見合わせ、頷くとその場にしゃがみ込み…

 

「これからよろしくね。イーブィ」

 

と私がイーブィにモンスターボールを向けると、イーブィは覚悟を決めたかのように目を瞑り、そのままモンスターボールの中へ。普通のポケモンは抵抗するらしいが、この時は抵抗はなし。3回揺れた後に、カチッと言う音が鳴り、私はイーブィが入ったモンスターボールを見つめる。

 

そして隣を見ると私と同じく、メリーもピカチュウの捕獲に成功したらしい。私達は再び顔を見合わせ、微笑みながら頷くと。メリーが急にハッとしたような表情を浮かべて、私に提案して来た。

 

「そうだ!!…本で見たんだけどさ。今の幻想郷ってポケモンを競わせるポケモンバトルというのが主流らしいよ!」

 

「確か、この研究所の周り、良く野生のポケモンが出るから。その時もバトルさせないと行けないね」

 

楽しそうに話すメリーと、冷静に淡々と語るにとりさん。私はその2人を見て、ポケモンって戦わせる物なのか、という疑惑を覚えたが。野生のポケモンが飛び出して来た時に、そのまま襲われるのも何か嫌な感じだ。そしてメリーは考えこもうとする私に対して、微笑みながら話を続ける。

 

「折角ポケモンも貰った訳だしさ!特訓を兼ねてポケモン勝負しようよ!」

 

「え、でも…」

 

「細かいところは気にしない!!私外で待ってるからね!!」

 

それは細かい所ではないような気がする。と言う私の考えを押し除けて、メリーは楽し気な様子で外に出て行く。これには私も苦笑いしか出てこないが、隣にいたにとりさんも同じようで…

 

「来た当初はあんな感じじゃなかったのにね。ひとまずさ、やって来なよ。ポケモンが傷ついても、すぐに傷を治せるしさ。幻想郷、結構、ポケモン勝負で盛り上がっているから、いい特訓になると思うよ」

 

にとりさんは同じく苦笑いを浮かべながら私に一言呟く。私はそんなにとりさんに向かって頷くと、外に出て行ったメリーを追いかけて研究所を出る。何故こんな元気のいい感じになったかは気になるが、ひとまずはにとりさんに言われた通り、まずはやってみると言う事に意識を集中する事にした…




ひとまず読んでくださった方、ありがとうございます。


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初めてのポケモン勝負

どうも。久しぶりに戦闘模写を書きました。良ければ見てくだされば幸いです。


「来たね…!!」

 

メリーは研究所から出た私を見てウキウキしている様子だった。どういう経緯で彼女が明るくなったかというのはさっぱり分からないが、その表情はどことなく自信に満ち溢れ、その姿は堂々としているようにも見えた。だが反対に少し緊張していた私には、メリーの堂々としているその面構えを見て少し羨ましくも感じていたが、彼女は私の心中を察する事なく話を続ける。

 

「私ね。今、すっごくワクワクしてる。だって未知の世界に踏み込んだって感じでさ。はち切れそうなくらいに、心が昂っているんだ…!!」

 

メリーは微笑みつつ、そう私に語りかける。彼女が少し力強く握りしめているモンスターボールに手汗が滲んでいるのが、分かるがメリー自身は緊張している様子は一切ない。そしてボールを持っていない手を胸に当て、深呼吸をするとグッとメリーは私に真剣な眼差しを見せ…

 

「覚悟は出来ているよね、蓮子!今の私は蓮子が止めても止まらないから!!」

 

「そうだね。気合いばかりが伝わって来るよ。私達自身が戦う訳じゃないのにさ」

 

メリーは私の返答を聞いた後に、満面の笑みを見せながら思い切り頷く。そして私から適度な距離を開け、再度深呼吸をするとモンスターボールを私に向け…

 

「行くよ蓮子!!ポケモン勝負!!」

 

「うん…!!」

 

高鳴る鼓動。緊張により早いペースで上がっていく心拍数。緊張しているのは間違いない。だがやると決めたんだ、だから全力でやる。私もポケットの中からモンスターボールを出した瞬間、メリーはニヤリと笑った後、真剣な表情となり、まるで野球ボールを投げるが如く深々と振りかぶり、思い切り「行っておいで!!」と声を張り上げてボールを地面に向かって投げた。

 

ボールから出て来たピカチュウが元気良く声を張り上げる中、私もモンスターボールを見て一回頷いた後に、メリーと同じ「行っておいで」の掛け声の元、地面にボールを投げつけ、イーブィを繰り出す。ピカチュウとは違い、一度周りをキョロキョロするイーブィではあったが、私の方を見た瞬間に状況を察知し、ピカチュウの方を見つめる。

 

イーブィは一度こちらをチラ見した。——私の指示を待っているのだろう。本当に始まるポケモン勝負、未だ実感が湧かないが深く考える訳には行かない、メリーは待ってくれない…!!

 

「行くよイーブィ…!!なきごえ!!」

 

「ブイ!!」

 

頭の中に出てきたワードを使って、イーブィに指示を出す。イーブィの声にピカチュウは少し怯んだようなそんな表情を見せるが、メリーはピカチュウに「大丈夫大丈夫!!」と語りかけた後に、思い切り声を張り上げる。

 

「ピカチュウ…でんきショック!!」

 

「ピカァ!!」

 

メリーの指示を聞いたピカチュウは全身に電気を溜めると、イーブィに向かって思い切り撃ち込む。イーブィがでんきショックを喰らい、少しの砂煙が私の方にまで舞う。結構な威力だっただけにイーブィが心配になり、その方を見るがイーブィは平気そうに身体を動かしていた。

 

——私はこれには驚いたが、逆にこうやって進んでいくんだという事も分かった。まだまだ知らない事だらけだが、頭の中に出てきたワード使って、イーブィに指示を出してみる。

 

「イーブィ…たいあたり!!」

 

「ブイ!!」

 

イーブィが思い切り駆け足でメリーのピカチュウの元に向かって行く中で、メリーも黙っている訳にも行かない。再びピカチュウに語りかける。

 

「ピカチュウ!!でんこうせっかでかわして!!」

 

ピカチュウはこの指示に従うと、物凄いスピードでイーブィがぶつかって来る前に攻撃を回避。少し地面を抉りながらイーブィの方に振り返ると、メリーは再び声を張り上げ、指示を出す。

 

「ピカチュウ、でんきショック!!」

 

「(溜め込む隙があるなら…!!)イーブィたいあたり!!」

 

ピカチュウはメリーの指示を聞き、再び電気を全身に溜め始める。溜め込む時間が少ない為か、すぐにイーブィに向かって電気を撃ち込む姿勢に入るが、逆に私が指示を出したイーブィがピカチュウの目の前へ。そのまま思い切り体当たりをし、ピカチュウの電気は空の方に逸れ…

 

「(少し怯んだ…!!)イーブィ、ほしがる!!」

 

「させない…!!ピカチュウ、体勢を立て直してでんこうせっか!!」

 

イーブィにピカチュウを追撃させるが、メリーの指示を聞いたピカチュウがすぐに体勢を立て直すと、地面を蹴り出して目にも留まらぬ速さで動き、イーブィにぶつかって通り過ぎる。幸い先程よりダメージは小さいみたいだが、あのスピードだ、必ず先制されるのは間違いないと思う。イーブィが少しふらつく間に、メリーはさらにピカチュウに指示を出す。

 

「ピカチュウ!! なきごえ!!」

 

ピカチュウのなきごえがふらつくイーブィの後方から響き渡る。イーブィは体全体を震わせ、青ざめた表情を浮かべたその瞬間。さらにメリーが追撃をかけるかのようにピカチュウに指示を出す。

 

「ピカチュウ…でんこうせっか!!」

 

でんきショックは強力だが、隙があると言うのをメリーが理解したのか。選んだ技はでんこうせっか。ピカチュウはその場の地面を蹴り出すと、表情が青ざめているイーブィの後方から、思い切りぶつかり、そのまま急ブレーキをかけ地面を抉りながら、イーブィの方に振り返る。 …私はこれを狙った。

 

「今だ…イーブィ、ほしがる!!」

 

技を出した後のすぐはピカチュウもあまり反応出来ない。そう読み切り、私は指示を出したがこれは一つの賭けでもあった。メリーがすぐに声を張り上げれば、そこまでの事だったが…

 

「ブイ!!」

 

「ピカッ!?」

 

イーブィの攻撃はあまり動けなくなっていたピカチュウに命中。少し吹き飛ばされると、メリーはそれを待っていたかのように微笑み「やったな!」と声を上げると、ピカチュウにさらなる指示を出す。

 

「ピカチュウ、しっぽをふる!!」

 

メリーの指示通り、ピカチュウはイーブィに背を向けしっぽを振る。イーブィは左右に揺れるピカチュウのしっぽをキョトンとした表情を浮かべながら追いかけるが、すぐにそれを見たメリーが指示を出す。

 

「今だ!!ピカチュウ、でんこうせっか!!」

 

「イーブィ!!かわして!!」

 

完全に油断しきったイーブィに私の指示は届かず、ピカチュウのでんこうせっかを再びまともに食らった。油断していたせいもあるのか、少し痛がるようなそんな表情を見せるイーブィ。そしてメリーが再びイーブィの方に振り返ったピカチュウに…

 

「今だ…でんきショック!!」

 

「イーブィ!! ほしがる!!」

 

今、でんきショックを食らえば間違いなくやられる。そう思った私は賭けに出てイーブィを攻勢に行かせた。でんきショックは強力だが、その分溜める時間が少しでも必要だからだ。ピカチュウは電気を全身に思い切り溜め込む間に、イーブィが必死にピカチュウの元へ。

 

「ブイ!!」

 

「ピカァ!!」

 

イーブィにピカチュウの電気が思い切り当たる中、ピカチュウにもイーブィの突進が直撃。当初はでんきショックにより巻き上がった砂煙のせいで、何も見えなかったが、後に二体がぶつかったのが目に見えた。空中に見える少しばかりの静電気を見て、私が息を呑んだ次の瞬間だった。 両者が思い切り地面に倒れ込んだのだ。

 

「イーブィ!!」

 

「ピカチュウ!!」

 

どうやら結果は相打ちだったようだ。両者、目がグルグルの状態で動く気配がない。慌てて私達がイーブィとピカチュウに近づき抱き抱えた瞬間、こうなる事を察していたかのようににとりさんが研究所の中からゆっくりと出てきた。

 

「にとりさん…」

 

「相打ちだったみたいだね。中から見てたよ。ひとまず二匹の傷を治すから一度、中においで」

 

怒られるかと思いきや、にとりさんの表情はよくやったと言わんばかりの笑みだった。私とメリーは言われるがままににとりさんについて行くのだった…

 

 




見て下さりありがとうございます。


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向き合うは野生のポケモン

久しぶりに更新させていただきます。


ポケモン勝負にて戦闘不能となったイーブィとピカチュウの治療の為、にとりさんに言われるがままに再度研究所に戻った私達。ポケモンに使うスプレー状の傷薬に興味が湧きつつも、それ以上にイーブィら二匹の傷がみるみると治って行くのを見て、驚きを隠せずにいた…

 

「ほい、治療完了。里に行けばポケモンセンターという無料で使える施設があるんだけど…こういう薬でも治せるから、渡しておくよ」

 

にとりさんはポケモンセンターという施設がある事を口にした上で、私達にイーブィらが入ったモンスターボールを再度渡してくれると、それと同時に棚に閉まってあったケースから、予備の傷薬やモンスターボールを数個渡してくれた。私達が今一度彼女にお礼を告げたその時、にとりさんの口がニヤリと笑い…

 

「保護していたポケモンとはいえ、ポケモンを託したんだ。それぐらいはするさね、そして…」

 

「そして?」

 

ニヤリと笑ったその口が気になりはしたが、その理由がすぐに分かった。にとりさんから「少し小話をしようか」と切り出されたのだ。何の話かは全く持って分からないが、私達が興味を惹かれる話題というのは察しが付く。さすがに結構です、何て言える筈もない。私達はその話に耳を傾ける事にした。

 

「近くにある神社にね、幻想郷で一番強いポケモントレーナーが帰ってきているんだよ。興味…ないかい?」

 

「幻想郷で一番強いポケモントレーナー…」

 

その話に私は思わず息を呑んだ。ポケモンの事についてなどは知っている事は殆どないが、少しかじった事なだけに興味はある。ニヤリと話すにとりさんを緊張気味に私は見つめていたのだが、隣にいたメリーが突如にとりさんに顔を近づけ…

 

「私…!!すっごく興味があります!!幻想郷の中で一番という事は、私のピカチュウより強いポケモンを持っているという事ですよね!!」

 

「あ、ああ…そういう事さ」

 

にとりさんはメリーの勢いに押されつつも、苦笑い気味ながらもメリーから少しだけ離れ息を整えて肯定する。にとりさんの言葉にメリーの表情はさらに輝きを増していき、次はその様子を見て驚いている私の方に視線を向ける。何かを期待してそうな表情だが、一体何を考えているのか…

 

蓮子!!というびっくりさせられるような声と共に、メリーは私の両肩を力強く掴み…

 

「折角だしその神社まで競争しようよ!!ポケモンいるし、絶対辿り着けるよ!!」

 

「え!?えぇ!?そんなの場所も知らないのに…」

 

一瞬、驚きつつも何を言っているのかが理解出来なかったが、理解した瞬間にあり得ないとも思った。冷静に振り返っても迷子になるのが見えているだけに、メリーにそれはやめようと私は促そうとしたが私達の前にいたにとりさんが突如として腹を抱えて笑い出し…

 

「違う世界で戸惑いを見せるどころか、生き生きしている奴は初めて見たよ…!!気に入った。場所を教えるよ、口で言うからよーく聞いておくんだよ?」

 

「はいっ!!」

 

メリーの無鉄砲気味な所を見て、少し嬉しそうな表情を浮かべつつその神社の事についてゆっくりと話し始める。その神社の名前は「博麗神社」その人物の名前は「博麗霊夢」と言うらしい。眩しいくらいに輝きを見せているメリーを見て、本当に大丈夫か…と思っていた私だが…

 

「この研究所を出て、すぐ右に曲がり真っ直ぐに進んでいくと鳥居のような物が見える筈さ。分からなかったらピカチュウとイーブィに頼るといいよ、二匹共行った事あるから」

 

「わっかりました!!そじゃ蓮子!!競争だからね!!」

 

にとりさんの説明が終わってすぐ、メリーは一呼吸置く事すらしないままに研究所を出る前ににとりさんに向かって頭を下げて、あっという間に出て行く。その瞬間的な出来事に私は呆れてはいたが、にとりさんはその様子に苦笑いを浮かべながら…

 

「賑やかな奴だね…ホント。アンタは行かなくて大丈夫なのかい?」

 

「いえ…行かないとメリーが怒りそうですし、行きますね」

 

私もにとりさんと同様、苦笑いを浮かべつつお世話になった礼として再び頭を下げる。若干嬉しそうな彼女を見て、私は軽く微笑んだ後に背を向けて研究所を出て行く。…と、ここまでは良かったのだが、研究所を出てすぐに私の足元に火が飛んできたのを見て、びっくりしていると…

 

「な、何…!?」

 

突然の事で辺りを見渡していると、飛んできた火の音を聞いていたのか。中にいたにとりさんがゆっくりと研究所から出てきた。軽く一息吐くと、びっくりしてキョロキョロしている私の肩を軽く叩き…

 

「見下げてごらん。犯人がすぐそこにいるから」

 

「え…?」

 

私は言われた当初はどう言う事かさっぱり分からなかったが、言われるがままに下を見てみるとそこにいたのは威嚇の声を上げている九尾のような尻尾をしている赤色の生物。恐らくポケモンなのだと思うが、どうやらイーブィやピカチュウ、ワンパチとは違う種類みたいだ。

 

「あれもポケモン…ですか?」

 

「ああ…あれはロコンだね。あんなに人を威嚇して攻撃してくる子を見るのは初めてだね…」

 

ロコンと呼ばれる生物は終始尻尾を逆立てて、私とにとりさんを威嚇している。にとりさん曰く、あんなに人を威嚇するタイプは初めて見たとの事だが、私にはただ威嚇しているだけに見えない気がした。

 

「あの子…もしかして何かを訴えようとしているのかもしれません…」

 

「どうしてそう思ったんだい?」

 

私の言葉を否定する事なく、尋ねてきたにとりさん。気にしなければ攻撃的とはいえ、人の前には現れない筈。だからってその逆立っている毛や尻尾から察するに、人に対して恐怖を抱いている訳じゃない。あれは恐らくだが、何か私達を試さんとしているかもしれない。 私は息を呑み、にとりさんに呟く。

 

「人嫌いなら…私達の前に現れないと思うんです。然も私達は見知らぬ人…あの目は…怯えている目じゃないです」

 

「……そうか。 なら向き合ってあげなよ。アンタなりの意思をロコンに伝えてあげな」

 

にとりさんは私の言葉を聞くと背中を押してくれた。私の推察は間違っているかもしれないが、このロコンからはそうとしか感じられない。私は一度モンスターボールからイーブィを出し、ロコンが何をしてくるのかの反応を見てみる。

 

「………」

 

ロコンはイーブィを見た瞬間に威嚇をやめ、尻尾を下ろす。少し匂いを嗅ぐようなそんな仕草を見せる。何か対応が変わった事に驚いていたにとりさんではあったが、この時自分でも信じられないくらいに私の頭の中は冷静だった。何があろうが対応出来るような、そんな自信があった。

 

ジッと見つめても先程までのようなロコンが威嚇する様子はない。だがその目からは何故か先程よりも遥かに敵意を感じられた。もしかしてこのロコンは元々好戦的で、こういうのを待っていたのかもしれない。…だったらそれに応えよう。私はイーブィに身構えるように指示を出してみる。

 

「イーブィ。身構えて、もしかしたら攻撃が来るかもしれない…」

 

イーブィに指示を出していたその時だった。ロコンは先程と標的を変えると今度はイーブィに火の粉を放って来たのだ。あらかじめ指示なしで身構えていたイーブィはこれを回避し、何かが待ち遠しいかのように私の方を見つめる。

 

「やる気満々って事ね…相手もこっちも…!!やるよイーブィ!!あのロコンに実力を見せつけようよ…!!」

 

「ブイ!!」

 

イーブィは私の言葉に返事して答えると、完全に戦闘態勢に入ったかのように身構える。ロコンは何か相手をしてくれたのを嬉しそうにすると、今度はイーブィを威嚇。メリーより先かどうかは分からないが、二度目のポケモンバトルを私は始めようとしていた…




見てくださりありがとうございます。


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試す側と試される側

投稿させていただきます。見てくださると幸いです。


「イーブィ!!たいあたり!!」

 

威嚇するロコンが仕掛けて来る前に私はイーブィにたいあたりの指示を出す。イーブィは私の指示にブイ!!と声を張り上げて反応すると、地面を思い切り蹴り出し目にも留まらぬ速さでロコンに体当たりを仕掛ける。だがロコンはこれをヒラリと風のようにかわし、イーブィの方を向くと目を一瞬ばかり眩い程に赤く光らせた。大したダメージはないみたいだが…?

 

私が少々ながら疑問めいた表情を浮かべていると、私の僅か後ろにいたにとりさんが静かに呟く。

 

「かなしばりだね。少しの間放った攻撃を封じ込める技さ。なるほど…あのロコン、戦い慣れてるね」

 

「攻撃を封じ込めると言う事は…」

 

今放ったたいあたりが封じられたと言う事になる。イーブィがロコンの目を見てキョトンとしている間に、ロコンが行動を起こす。息を吸い込み、吐くと同時にひのこを放って来たのだ。近めの距離だった影響もあり、ひのこはイーブィに命中。やけどこそ負わなかったが、イーブィは熱がり私の前まで逃げ帰って来た。

 

「何の!!イーブィ!!ここから巻き返すよっ!!」

 

「ブイ!!」

 

辛そうな表情を見せていたイーブィだったが、私の言葉を聞き頷くと表情を引き締めてロコンの方に向く。ロコンは再度イーブィを威嚇すると、息を吸い込みひのこを吐いてきた。私はイーブィにこれをかわさせると、ロコンの視界を惑わす為にジグザグに迫るように指示。左右にロコンの顔を向かせている間に、接近に成功。

 

さっきはここでかわされたが、今度は決める…!!

 

「イーブィ、ほしがる!!」

 

イーブィにほしがるの指示を出し、イーブィは思い切りロコンにぶつかりにいく。ジグザグに動いたのがしっかりと効果に出たのか、かわそうとするロコンの動きが少し鈍り、その間にイーブィの攻撃が命中し少し吹き飛ぶ。地面を少し抉りながらロコンは踏ん張ると、体を思い切り震わせた後に「コン!!」と声を上げ、前屈みの姿勢になる。

 

「イーブィ!!構えて!!」

 

この体勢には見覚えがあった。そう、メリーのピカチュウが見せたでんこうせっかだ。イーブィにあらかじめ構えるように指示を出すと、イーブィは身体に力を入れて身構える。ロコンは地面を一気に蹴り出すと、あっという間にイーブィに接近し、ぶつかった。ダメージは受けたが、今は近距離。逆にチャンスでもある。

 

「今だイーブィ!!なきごえ!!」

 

近くにいたロコンになきごえを浴びせ、動揺した表情を浮かべさせると私はさらに仕掛ける。

 

「そしてすなかけ!!」

 

さらにイーブィにすなかけを指示したのだ。イーブィは思い切り砂を蹴り上げ、砂をロコンにかけようとするが、そう簡単には行かずにロコンはでんこうせっかを使いその場から退避。イーブィから距離を取る。

 

「さすがに簡単にはさせてくれないって訳ね…!!」

 

ロコンは体を震わせると、声を上げ再びイーブィを威嚇する。戦い慣れているだけあり、簡単にこちらの思い通りにはなってくれない。私は苦笑いを浮かべた後に、深く深呼吸をするとロコンの方を見つつイーブィに指示を出す。

 

「行くよイーブィ…ほしがる!!」

 

イーブィに出したのはほしがるの指示。イーブィはこれに返事をした後に、地面を蹴り出してロコンに迫り行こうとするが、この時既に前屈みの姿勢となっていたロコンが一気にイーブィに迫り、でんこうせっかをぶつけイーブィの攻撃をかき消すと、さらに近距離からひのこを再度放って来てイーブィに命中させる。

 

「っ!!まだまだ!!イーブィ!!ほしがる!!」

 

折角近づいて来てくれたのだ。諦める訳には行かない。私はイーブィに再度ほしがるの指示を出すと、少し怯んでいたイーブィが痛みに堪えつつロコンに迫り行くと思い切りぶつかり、ロコンを再度吹き飛ばす。両者身体を震わせ、互いを睨みつけながら声を上げると身構えの姿勢に入る。

 

だがイーブィとロコン、二匹共少々ながらダメージが蓄積されている事もあり、弱っているかのようにフラついた仕草を節々に見せている。それを見ていたにとりさんが、静かに私に声をかける。

 

「蓮子。次で決着を付けないとまずいかもしれないよ」

 

「……はいっ!!」

 

イーブィの仕草、そしてにとりさんの言葉でそれを自覚。明らかにイーブィの方が攻撃を食らっている回数が多く、その分ダメージを蓄積されているかもしれない。すなかけなどの手を取っている時間などない、次に確実に決める…!!

 

私の思いを読み取ったかのようにロコンは少し前屈みの姿勢となると、そのまま地面を蹴り出し、一気にイーブィに迫り行く。ロコンがイーブィに迫って来たタイミング、私はそこを狙いイーブィに思い切り指示を出す。

 

「今だイーブィ!!ほしがる!!」

 

ロコンのでんこうせっかが炸裂し、イーブィが明らかに痛そうな反応を見せたその時。イーブィもまた私からの指示を耳にすると、表情を引き締め思い切り声を張り上げながらロコンに思い切りぶつかる。吹き飛ぶロコンと同じタイミングでイーブィは少し虚な目となり、その場に倒れ込んだ。

 

「イーブィ!!」

 

「蓮子。まだ近づいたらダメ…!!ロコンが起きるかもしれない…!!」

 

倒れたイーブィに近付こうとする私の肩を掴み、ロコンが起きるかもしれないと説得して来るにとりさん。どうしても近付き、抱き抱えたい気持ちは強いが彼女の言葉が正解だ。私は言葉にならない怒りを拳を握りしめる事で、グッと隠すと吹き飛んだロコンの方を見やる。

 

その場で待機する事、2分。ロコンは動く気配がない。ここでようやくにとりさんからokの合図が。これと同時に私はイーブィに駆け寄り、そのまま抱き抱える。

 

「イーブィ…大丈夫…?」

 

「ぶ、ブイ…」

 

何とか笑みを浮かべながら返事して来たイーブィ。良かった…何とか大丈夫そうだ。と言う安心した思いが私の中で強くなって行く中、にとりさんが私の肩を再び肩を掴むと「前を見な」と一言。私は言われるがままに前に向くと、倒れていたロコンがゆっくりとこちらに近づいて来る。

 

「………」

 

「イーブィをお願いします」

 

ロコンが近付いて来たのを見た私は、にとりさんにイーブィを預けるとロコンに近寄り、少ししゃがみ込む。ロコンはこちらを見上げながらジッと見つめて来るだけ、いや…私のポケットを見つめているようにも見える。

 

「もしかして…」

 

私の中の直感がモンスターボールを示しているように思えた。にとりさんから貰ったモンスターボールをロコンに見せると、ロコンは無言ながらもその場に座り込み目を瞑った。私がそれを見て息を呑んでいると、後方からにとりさんが声をかけて来た。

 

「どうやらアンタを主人として認めたようだね。モンスターボールに入れてやりな。ロコンはそれを待っているよ」

 

「主人…」

 

先程まであんなに威嚇して来たポケモンなだけに、もし本当にそうならば態度の変わりように驚くしかない。私はゆっくりと深呼吸をすると、ロコンに向かってモンスターボールを向け…

 

「いいんだね…ロコン」

 

ロコンは頷く。どうやらにとりさんが言った言葉は本当のようだ。信じがたいが目の前のロコンの態度が現実らしい。私はこれ以上ロコンに尋ねたり、疑ったりする事なくモンスターボールをロコンに投げる。ロコンはモンスターボールをかわしたり、跳ね返したりせずにその中へ。

 

一回、二回、三回と左右に揺れた後にその場に響いたカチッと言う音。イーブィはどちらかと言うと貰ったと言う感じに近いが、こうして捕まえたというのは初めて。ロコンが入ったモンスターボールを拾い、私は息を呑んだ。

 

「おめでとうだよ、蓮子。さて、そのままメリーを追いかけて…と言いたいが二匹共ボロボロだよね。再度研究所で治療してあげるよ。おいで」

 

「はいっ!!」

 

にとりさんに言われるがままに研究所へ。この時、私の中にはかなりの達成感があり、研究所にて治療して貰った後に私は博麗神社に向かって出発したのだった。

 




ここまで見て下さりありがとうございます。


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博麗神社へ

投稿させて貰います。よろしくお願いします。


イーブィ、そして新たなに仲間になってくれたロコンと共にようやくという形ではあるものの、博麗神社に向かって進み始めた私。後でにとりさんも追うとの話しだが、ひとまず彼女から言われたのは「デカイポケモンとは戦うな」という事。この先の道で何が待っているかは分からないが、私はその言葉をしっかりと心の中に刻んだ。

 

「デカイポケモンって…最初メリーと見たあの青いポケモンも入っているのかな…あの時は何も持って無かったけど…」

 

イーブィを追って幻想郷に入った際に見かけたラプラスというポケモン。危険そうには見えなかったが、考えてみればあれもにとりさんの言う「大きいポケモン」の一体に入る。危険なのだろうか、と言う不安よりいつか戦えるのだろうかと言う期待が私の中で膨らんでいた。

 

軽く顔がニヤける中で私の足はにとりさんに言われた通りの研究所から右方向に動いていた。そのまま真っ直ぐという事らしいが野生のポケモンが多いという事は研究所の前で現れたロコンで証明済み。いつポケモンが飛び出して来てもいいように、私はポケットに入れてあるモンスターボールに触れていたのだが…

 

「…あれ?もしかして私にビビってる?」

 

辺りを見渡しているとあちこちにいたポケモン達が、逃げまわっている姿が視界に映る。ある者は木陰に隠れ、ある者はその場から離れて行く。戦闘態勢に入るどころか、これじゃあここらにいる野生のポケモンが飛び出してくる気配もない。私の前に出てきたロコンが稀だったのかもしれない。

 

「まあいいか…この方が有り難いし…」

 

呆気に取られたような表情を私は浮かべた後、ポケットに手を入れるなどをした警戒を解き、普通に歩き始める。ただずっと歩いていると、何やら鳥居のような物が見えてきた。博麗神社というのは鳥居のような物がある所の近くという事で間違いないだろう。かなり歩かないと行けないな、という気はしていたが、あっさりと着いた物だ。

 

「随分とあっさり着いたな…さて、メリーはいるかな…」

 

あんだけ先に進んでいたのだ。先にこの場所に着いていないとおかしい。鳥居の前に立った私は、ひとまず辺りをキョロキョロと見渡すと一度深呼吸。よし…と小さく呟いた後に鳥居をくぐったのだが、何やら前方から足音が聞こえてくるような…

 

「蓮子!!遅いよ待ちくたびれたよっ!!」

 

ああ…やはりメリーだ。鳥居をくぐって来た私に彼女は思い切り息を切らしつつも、微笑みながら私の近くで足を止めると、肩を掴み思い切り揺らし始めた。笑顔のまま肩を揺らしてくるとは、メリーはサイコパスか何かだろうか。ただ肩を揺らされ続けていると、遠くから何やら笑い声が聞こえて来たのを機に、メリーの肩揺らしが止まった。

 

「急に来てはどこか行って…忙しい奴ね、アンタ」

 

「えへへ…」

 

メリーは私達の方に歩いて来た紅白の巫女服に身を包んだ女性の方を見つめる。軽めの笑みを浮かべていた女性は私の方に振り向くと…

 

「あら…アンタひょっとしてメリーの友人かしら?」

 

「え、は、はい…宇佐美蓮子と…」

 

私が少し慌て気味に名前を名乗ろうとすると彼女から返って来たのは、その名前はメリーから聞いたという返答だった。そして軽く微笑んだまま、女性は私をじっと見つめ、口を開いた。

 

「私、博麗霊夢というの。大まかな所はにとりから聞いているだろうし説明は要らないわね。まさかポケモンに導かれて幻想入りしてくる奴がいるなんてね…ポケモンの力には驚かせられるわ」

 

今、私とメリーの前にいる人物が博麗霊夢。にとりさんが言っていた幻想郷の中で一番強いトレーナーだ。あっさりと出てきた物だから緊張などが急に出てきたが、メリー自身はそこまで緊張して無さそうだ。私が来るまでにこの人と話していたのだろうか。

 

「にとりさんの事…知ってるんですか?」

 

「ん?ああ、そうね。ちょくちょくだけど私もお世話になっているからさ」

 

緊張して少々頭の中が真っ白な中で、口に出た言葉がにとりさんとの関係性。河童と人間はあまり関わりがないという事は、幻想郷の文書にて知ったのだが、どうやらにとりさんは普通の河童とは少し違うようだ。そして少しばかり私が黙り込んでいると、霊夢さんが少し首を傾げ…

 

「メリーから聞いたんだけど…ポケモンの大会について知りたいそうね?」

 

「え、あ、はい…!!」

 

この時、参加したいなどとは口にはしていない。だが霊夢さんは何かを察したかのようにジッと私達2人の方を見やると、彼女は少しばかりニヤリと笑い…

 

「アンタ達、ポケモンの素質ありそうよね。確かにとりからイーブィとピカチュウを貰ったんだっけ?」

 

「はい!!」

 

耳に響き渡る程のメリーの元気過ぎる返答。じゃあ…と彼女は切り出すと若干真剣な表情となり…

 

「その大会について今から説明すっから、こっち来てくれる?」

 

「(目つきが変わった…?)」

 

霊夢さんに言われるがままに私達が彼女について行くと案内されたのは、神社の縁側。霊夢さんはここを前にして「大事な話はここの方が喋りやすい」と語ると、縁側に腰掛けた。私達もそれについて行く形で縁側の廊下に腰掛ける。

にとりさんは簡単にポケモンの大会の事を切り出したが、本当は重要な事だったのだろうか…

 

「さてアンタ達が言っているのはジムチャレンジの事だよね。最近、結構流行している奴でさ。ポケモンジムつー場所、8つを巡って行くというのが大まかな流れになるのよね。ただ…」

 

「ただ…?」

 

霊夢さんの表情が本当に真剣な表情に変わる。何かまずい事を言った訳ではないが、その表情は少しばかり怒りに近い物にも見えなくはない。

 

「ダイマックスバンドという奴がないとこの大会には参加出来ないんだよね。結構推薦状はどうにかなるんだけどさ」

 

「ダイマックスバンド…?推薦状?」

 

見知らぬ言葉が二つ出てきた。推薦状は大体は分かるが、ダイマックスバンドとは何だ?私達2人が首を傾げていると、霊夢さんは少し息を吐きながら推薦状について語り始めた。

 

「にとりからポケモンの大会はただでは参加出来ないという事は聞いたよね?このジムチャレンジには誰かからの推薦を貰った者しか参加出来ないんだよ。そこで必要となって来るのが推薦状。これに関しては後で色々と話すよ」

 

何だか大変な大会に参加しようとしているのではないか…?霊夢さんの話しを聞いて何だかそんな思いが頭の中を駆け巡る。あんだけ期待に満ちていたメリーもあっさりと黙り込んでいる。そんな中、彼女は次にダイマックスバンドについて語り始めた。

 

「これ…分かる?」

 

彼女が見せてきたのは腕に付けたリストバンドのような物。霊夢さんが言うにはこれがダイマックスバンドという物らしい。そもそもダイマックスとは何だろうか。疑問に思った私はこれについて尋ねてみる。

 

「あの…ダイマックスってなんですか?」

 

「単純に言うならポケモンが大きくなる現象の事よ。力とか体力とかも倍増するんだけど…3分しか持たない。使える場所が限られていると言った不思議な奴でね…」

 

ポケモンが大きくなるって例えば今、モンスターボールの中にいるイーブィが巨人並みに大きくなる事を指すのだろうか。だとしたらとんでもない感じだが…

 

「ダイマックスに必要な石がね、このダイマックスバンドには必要なんだけど…こればかりは運でね。推薦状を幾ら渡せても、こればかりは…」

 

霊夢さんの表情が少し申し訳ないようなそんな表情に一瞬変わったが、少し考え込んだ後に急に彼女は立ち上がり…

 

「あ、そうだ。アンタ達、大会には参加したいわよね?」

 

「はい!!」

 

何か企んだかのように微笑む霊夢さん。何も考えてないかのように返事するメリー。そして彼女がじゃあ…と一言だけ切り出すと。

 

「今からアンタ達、ポケモンバトルしなさい。そしたら石も来るかもだし、推薦状も上げるから!」

 

「分かりました!!」

「はああ!?」

 

何とも急すぎる展開に私は思わず声を張り上げる。だがこれは冗談ではなく、私はメリーとまたしても勝負する事になったのだった…




見てくださりありがとうございます。


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仲間としての初陣

投稿させていただきます。よろしくお願いします。


「2人とも気合い入れているわね!精一杯の力を見せて、空を動かしてみなさい!!」

 

言われるがまま、メリーと向かい合い距離を取ったのはいいものの、本当にこれがダイマックスバンドを手に入れる足がかりになるのだろうか?微かな疑問と共に不安が混じりつつ、私はため息を吐いていたが先程元気良く返事したメリーは冷静に一息吐いていた。グッと拳にモンスターボールを握りしめ、メリーは私の方を見つめ、一言呟く。

 

「蓮子!今度は勝ちに行くからね!!蓮子も全力で来てよ!!」

 

「う、うん…!!」

 

理由はどうであれ、その目には闘志が宿っている。…本気である事は見れば分かる。チャンピオンである霊夢さんが縁側から見守っているんだ、無様な戦いぶりを見せる事は出来ない。私も気を引き締め、モンスターボールを握りしめると軽く一息吐く。少しばかりの静寂がピリピリとした緊張感を物語り、メリーは若干ニヤリと笑いながら「行くよ!!」と声を張り上げた。

 

「行っておいで…ウールー!!」

 

メリーが出して来たのは私が見た事のない羊のようなポケモン。その愛くるしい見た目に一瞬目を奪われそうになったが、すぐに気を引き締め直すとこっちも…とばかりにロコンを繰り出す。ロコンを繰り出した私をメリーは若干嬉しそうに見つめ…

 

「新しいポケモンを捕まえたんだね?という事は少しは成長してる筈…!!」

 

「そちらこそ…!!一瞬驚いたけど…今度は勝つ!!行くよロコン!!」

 

ロコンにとってはこれがトレーナーに指示を受ける形での初陣となる。互いにポケモンを見せあった後に私はロコンの返事をする声を聞き、そのまま声を張り上げて指示を出す。

 

「ロコン!でんこうせっか!!」

 

「ウールー!!まるくなる!!」

 

ロコンは足元を砂煙を散らしながら強く蹴り出すと、あっという間にウールーの前に迫り行く。一方のウールーはメリーの指示により身を固めると、ロコンのでんこうせっかをまともに受ける。だが吹き飛ぶ様子などは全くなく、すぐに声を張り上げるとロコンが近くにいるのをいい事に…

 

「ウールー!!たいあたりっ!!」

 

メリーの指示を受けたウールーが自らの体を転がし、ロコンにたいあたりをかましてくる。私はロコンに回避の指示を出そうとしたが間に合わず、ウールーのたいあたりを直撃。そのまま私の前まで吹き飛んできたが、私がここでとある事を閃く。ロコンにはこの技がある…だったら今度は自分が使う…!!

 

「ロコン…かなしばりっ!!」

 

かなしばり。3分ではあるが相手の技を封じる技。ロコンの目が赤く光ると、ウールーは何かしらの違和感を覚える。かなしばりの技を見たことがなかったメリーは疑問の表情を浮かべるが、ウールーの違和感に気づき…

 

「まさか…技を…!?」

 

「その通りだよ…!!たいあたりを封じたって訳…!!さて行くよ!!ロコン、ひのこ!!」

 

ウールーの様子を見ればでんこうせっかが全く効いている様子には見えなかった。だったら方向転換。ウールーがたいあたりを使えないのを機に、物理技ではないひのこを指示に出す。ロコンの口から吐かれた火がウールーに向かって行き…

 

「ウールー!!まねっこ!!」

 

「まねっこ…!?」

 

ロコンのひのこが回避の指示を出さなかった事によりウールーに命中したが、その後にウールーは少し痛みを感じているそうなそんな仕草を見せながら、まねっこの技からなのか分からないが、ひのこを吐いてきた。驚いた私は何も指示を出さずにロコンはひのこを食らったが、効果いまいちの技、大して食らってない。

 

「(見たところ羊だけど…ひのこを…いや待て…メリーが今、まねっこって…)」

 

ウールーがひのこを吐いて来た事に驚きを隠せない私だったが、すぐに気を引き締め直すとまねっこの対象になるであろうひのこは避け、少し様子を見てみる事にした。

 

「ロコン…しっぽをふる!!」

 

「ウールー!なきごえ!!」

 

ロコンはしっぽを振り、ウールーは声を上げる。互いに少し震えているのが、見て分かるがこちらも攻撃力を下げられた分、相手の防御も下がったという事。つまりイーブンだ。たいあたりを封じられている分、ウールーは何も攻撃技を持っていない。だったらでんこうせっかで攻めていけば…

 

「ロコン!!でんこうせっか!!」

 

ロコンが再びウールーに迫り行き、その距離が間近に迫ったその時だった。メリーが微かながらもニヤリと笑い…

 

「ウールー!!まねっこ!!」

 

「嘘っ…!?」

 

ウールーに当然、ロコンのでんこうせっかは命中するが防御力を下げられても尚、ダメージが入っている風には見えない。問題はここからだ、メリーの指示を受けたウールーが今まで見せて来なかった俊敏な動きで、ロコンに迫るとそのまま思い切りぶつかって来る。こちらは防御力は下げられてはなかったが、それでもロコンは再び吹き飛ぶ。なんなんだこの技は…!?

 

「(どちらかが最近行った技をまねをするまねっこ…少し茶髪の子はその原理を掴めてなくて混乱しているみたいね…)」

 

縁側から見ている霊夢さんの視線が突き刺さるが、まねっこはどうであれロコンとウールー。どちらの反応を見ても押しているのはこちらの方。だったらこのまま押し切る…!!

 

「ロコン…ひのこ!!」

 

「ウールー、たいあたり!!」

 

もう3分も過ぎたか…!!ウールーが転がってくるのを見て、私は驚いたがロコンはそんな私をサポートするかのように指示通り、ウールーに向かってひのこを撃ち込む。ウールーにひのこは命中し、たいあたりが命中する事なくその動きがピタリと止まる。私が息を呑んだその時、ウールーの体が左の方にへと倒れていき、そのまま戦闘不能となった。

 

でんこうせっかは大して食らっているような仕草をウールーは見せていなかっただけに、ひのこを食らった時の過剰な反応は何だったのだろう。そんな事を疑問に思いながら、ロコンに気を抜かないように一言だけ告げると…

 

「理想は2人が同時に出す感じだったけど…!!行っておいで…ピカチュウ!!」

 

メリーが出して来たのは2体目のピカチュウ。ピカチュウを早々に出してきたという事は、これがラストという見立てをしても大丈夫そうだ。だがピカチュウはイーブィが苦しめられた程の難敵。気を引き締めて行かないと…

 

「ふう…間に合った…あれ?ポケモン勝負させてるんだ?」

 

私とメリーがポケモンバトルをしている頃、私達が集中している時間帯ににとりさんが到着。縁側に座っている霊夢さんの元に近づいていく。走っていたのか、息を切らしているにとりさんを見て霊夢さんはニヤリと笑みを浮かべながら呟く。

 

「にとり。見てなよ。二人共、ポケモン勝負の資質があると思うから」

 

「へぇ…霊夢が人を褒めるだなんて珍しい事もあるもんだねぇ?」

 

にとりさんが丁度霊夢さんの近くに腰掛けた時、そこから少しだけ時間を巻き戻し、視点を私達の方にへと戻す。私が思っていた通り、イーブィが苦しめられたピカチュウはやはり難敵で…

 

「ピカチュウ!!でんこうせっか!!」

 

「だったらこっちも…でんこうせっか!!」

 

ピカチュウの方が素早いのか、ロコンが動き出す前にピカチュウが近くに迫って来ると、そのままぶつかられ、ロコンは吹き飛ぶ。だがすぐに体勢を立て直すと、一気にピカチュウに迫り、かわしてくる前にでんこうせっかを喰らわせる。だがこちらはウールーのなきごえにより攻撃力が下げられている状態、あまり効いている筈もなく…

 

「効いてないよ…蓮子!!」

 

「っ!!」

 

余裕そうなピカチュウとメリーを見て、私は思わず息を呑んだ…




見て下さりありがとうございます。


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支援受けての二度目の対面

三人称のつもりで書いていたので、一人称の形が変かもしれません。その面はご了承頂ければと思います。


「ピカ!!」

 

「コン!!」

 

互いに声を張り上げながらでんこうせっかにて向かって行き、頭をぶつけ合うピカチュウとロコン。その闘志を宿らせた目を向けつつ、一度距離を取る。チャンピオンの霊夢からしてみれば、ただの初心者に近い者同士のポケモンバトルだが、彼女が笑みを浮かべていた理由は必ず負けたくないと言う二匹の意思。そんな中で私とメリーも息を呑みながら…

 

「ひのこっ!!」

 

「でんきショックっ!!」

 

私っメリーがロコンら二匹に指示を出し、二匹は指示に頷いた後にその場からロコンはひのこを、ピカチュウはでんきショックを放つ。ひのことでんきショックは一瞬にして相打ちとなり、霊夢とにとりの元にくる程までに広範囲の爆煙にへと様変わりする。霊夢達も見えない中で、見えない事に関して言えば私達も同じ事。そんな中、先に動いたのは…

 

「その場から動いていない筈…っ!!ピカチュウ!!でんきショックッ!!」

 

ロコンはまだその場から動いていない、そう読んだメリーがピカチュウに再度でんきショックの指示を出す。当然狙いなんて定まる筈がない為、外れた時は外れた時。ピカチュウもメリーと同じように思っていたのか、一切技を出すにあたり迷いなく、電気を溜め込み放出する。一方の私はロコンがどこにいるか分からない為、指示を出せず仕舞いでいたが…

 

彼女の視界に入って来たのは一筋の雷光…

 

「っ!?ロコン!!その場から…!!」

 

ロコンはその場から動いていない。その事は爆煙がかかる前から私が確認していた事。これはまずいと思った彼女がロコンに指示を出そうとするが、電撃は自らの前で光り輝き、爆煙を払い除ける。一瞬目を瞑った私が目を開けるとそこには、でんきショックを食らったと思われるロコンが痛そうな表情を浮かべていた。蓮子は声にならない声を出して悔しがると…

 

「命中したようだね…!!それもクリティカル…!!」

 

「(これ以上動かせる訳には行かない…っ!!) ロコン!!でんこうせっか!!」

 

メリーはピカチュウのでんきショックが命中した事により、少しばかり浮き足立っている。これ以上彼女に好き勝手させる訳には行かない。苦しそうなロコンを見て、自身も息を呑みながら私はでんこうせっかの指示を出す。メリーが気づいたのは、ロコンがその足元を蹴り出した後。彼女が指示を出そうとした瞬間、ロコンがピカチュウの目の前に。

 

何の指示を出す前にロコンのでんこうせっかがピカチュウに命中。ピカチュウは少々ながら吹き飛ぶが、さすがに先程のウールーとの戦いにて攻撃力を下げられているせいか、ピカチュウは余裕の表情を見せるが、私はさらに近くから一かバチかの賭けでもう一度指示を出す。

 

「ロコン!!かなしばり!!」

 

「ほう?」

 

この蓮子の指示に驚いたのは勝負を見ていた霊夢だった。ロコンが後一撃喰らえばやられるだろうと言う事を察した上の私の指示に、微かながらも霊夢はニヤリと微笑んでいた。ロコンの目が赤く光り、封じられたのは先程放ったでんきショック。メリーはしてやられたとばかりに歯を食いしばるが…

 

「何の…!!他にも技がある…!!ピカチュウ!!でんこうせっか!!」

 

ロコンはかなしばりを放ったばかりで連続して行動出来ない。メリーはそこを狙った。私の指示がロコンに飛んでくる前にピカチュウに指示を出し、ピカチュウはでんこうせっかの指示に従った形で、ロコンの前に行き思い切りぶつかった。

 

「ロコンッ!!」

 

ピカチュウにでんこうせっかでぶつかられたロコンは戦闘不能となり、蓮子の前まで吹き飛んだ。そんな倒れたロコンを私は抱き抱えると、お疲れ様と笑みを浮かべながら告げてモンスターボールの中に戻す。メリーも一体、自分も一体だがピカチュウはでんきショックを封じられている。いずれ使ってくるとは思うが、その分ハンデがある。私は気を楽にし…

 

もう一つのモンスターボールからイーブィを繰り出す。早くも2回目となった両者の対面。私、メリー共に軽く息を吐くと…

 

「ピカチュウ!!でんこうせっか!!」

 

「イーブィ…ほしがるッ!!」

 

両者声を張り出して、向かい合っているイーブィとピカチュウに指示を出す。先手を取ったのはピカチュウで、軽い足取りでイーブィに迫って行くと思い切りぶつかった。イーブィはそれにより少しだけ吹き飛ぶが、すぐに踏ん張り私に言われた通り、ほしがるの技を近づいて来ていたピカチュウにぶつける。でんこうせっかしか食らっていないとはいえ、既にピカチュウはダメージを負っている。多少堪えている様子だ。

 

「一気に行くよ…イーブィ、でんこうせっか!!」

 

「っ…!!なきごえっ!!」

 

メリーの前まで吹き飛んだピカチュウ。それに対して蓮子は追撃するとばかりにイーブィに指示を出す。イーブィは足場を土を蹴り上げながら、走り出すと一気にピカチュウの前へ。ピカチュウのなきごえにより、多少怯んだものの、イーブィの攻撃はピカチュウに命中。後退しながらもピカチュウは何とか踏ん張り、気を引き締めた表情を浮かべる。

 

「近くにいていいのかな…!!ピカチュウ、でんこうせっか!!」

 

「!! イーブィ!!すなかけ!!」

 

イーブィとピカチュウの距離はほぼ目の前。当然高速の動きで向かってくるピカチュウのでんこうせっかをかわせる筈がなく、そのまま命中するが、イーブィも黙って食う程呑気ではない。私の指示によりイーブィは少し体勢を立て直した後に、砂を思い切りピカチュウにかけた。ピカチュウは多少怯みはしたが、目に砂とかが入った訳ではないようだ。

 

「今度はこちらの番…!!イーブィ!!ほしがるっ!!」

 

「ピカチュウ!!でんこうせっかでかわして!!」

 

その距離未だ目の前。今度はこちらが、とばかりにイーブィに指示を出した私だが、さすがにメリーも危機感を感じていたのか、ピカチュウにでんこうせっかでかわすように指示した。これによりイーブィの一撃がピカチュウにかわされ、さらに後方に回り込まれる形となったが…

 

「かわされた!?でも…」

 

「ピカチュウ!!もう一発でんこうせっか!!」

 

「かわしたらそう来るのは想定内っ!!イーブィ!!でんこうせっか!!」

 

私が驚きの表情を見せたが、すぐにニヤリとした笑みを浮かべる。後ろから向かって来るピカチュウのでんこうせっかをまともに食らったイーブィだったが、イーブィは蓮子の指示通りに技を行うために振り返ると、ピカチュウに思い切りぶつかった。これによってピカチュウは吹き飛び…戦闘不能となった。

 

「ピカチュウ!!」

 

イーブィのでんこうせっかを喰らい、戦闘不能となったピカチュウの元に駆け寄り、急いで抱き抱えるメリー。一方の私は最初はピカチュウが倒れた事を理解出来ていなかったが、メリーが駆け寄ったのを見てようやくホッとしたかのような表情を浮かべた。心なしかイーブィも嬉しそうにジャンプしている。2人のバトルを見て、霊夢は微笑みながら拍手をすると…

 

「2人共見事な勝負だったわ。見ている側からしても楽しかったわ」

 

「霊夢さん……あれ…?」

 

勝負に夢中になっていたせいか、その場に駆けつけていたにとりさんに気づいたのが勝負を終えた後だった。いつの間に?と言う気持ちが強かったがそれ以上に、見てくれていたんだという事にホッとしていると、にとりさんは軽く息を吐きながら…

 

「お疲れ様。2人共ちょっと強くなったんじゃないかな?」

 

「ちょっとじゃないですよ!!かなり!!ですっ!!」

 

にとりさんの言葉を聞いてドヤ顔をするメリーに対して、思わず苦笑いをする私。そんな中、上空が光ったのを確認した私がキョトンとした表情を浮かべていた…




見てくださりありがとうございます。


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通じた願い

久しぶりに書きます。よろしくお願いします。


「………」

 

メリーが霊夢さんやにとりさんに向かって自慢気に語っている間、私は一瞬とはいえ視界に入った光を探すかのように空を見上げていた。時間帯は今は夕方。丁度夕陽が差し掛かって来た時間帯ではあるが、まだ流れ星が流れるには時間が速いような気がすると感じていたからだ。 流れ星や星が見える時は大体夜、だが今は夜ではない。気のせいとは思いたくないと奇跡を信じながら、空を見上げていたが…

 

メリーが語る隣で私が空を見上げていたのが目に入ったのか。にとりさんが私に声をかけてくる。

 

「蓮子。どうかした?何か空にある?」

 

にとりさんのその一言により、3人の視点が一気に私に集まる。必死に空を見つめるものだから何かあるのだろうかと思ったにとりさんが縁側から立ち上がると、ゆっくりと私の方に近づき同じ方角を見やる。

先程まであの一瞬しか見えなかった光が、自分はここにいるとばかりに再度輝きを放つ。それを見てにとりさんやメリーは驚き…

 

そしてにとりさんはただ1人縁側にてゆっくりと座り込んでいた霊夢さんの方を見ると声を張り上げ…

 

「霊夢!!今何か感じなかった!?」

 

「えぇ。感じたわ。この反応は願い星ね…蓮子、メリー。2人共そこから動かないで。願い星は2人の場所を探しているわ」

 

疑問が嬉しさに変わった瞬間だった。メリーは霊夢さんの言葉を聞いて、喜びを静かに露わにしていたが、その後の彼女の言葉を聞いてその場にきっちりと足を止める。私も嬉しかったが、霊夢さんの言葉を聞いてメリーと同じように徹底的にその場から動かないように足を止める。逆にこれで動いてしまったらバトルした意味がなくなってしまう。

 

緊張の瞬間だった。上空の光は光る度に輝きを増していき、少し眩いと思うほどだ。霊夢さんは小さな声ながらも願い星がどれ程近づいて来ているのかを呟いている。メリーには聞こえてなかったようだが、私の耳には確かに聞こえていた。

 

「2人はそのままでね…!!案外願い星って威力あるからデタラメに触ろうとしたらダメだよ!!」

 

一体どんなのが落ちてくるとでも言うのだろうか。にとりさんが願い星が近づいて来たのを確認して、私達にそう告げながら離れて行くのを見て私は大きく息を呑む。だが隣のメリーは非常に満足したかのような表情を浮かべており、あれ?ひょっとしてこんなに緊張しているのって私だけ!?と思いつつ、一瞬目を瞑る。

 

すると空から落ちて来た願い星が地面を抉りながら着地。丁度私達に土がかけられた状態となり、顔の土を払い除け、口の中に入った土を吐き出す。隣にいるメリーの声を聞き、ちゃんと来たんだという事を実感。私はゆっくりと目を開ける。

 

「外の世界ではあまり威力は高くないらしいんだけど、幻想郷に落ちて来る願い星は中々に威力が高くてね…」

 

着地…というよりは墜落して来た願い星二つをあっさりと持ち上げる霊夢さん。目を瞑っていたせいか彼女が移動した瞬間を見れなかったが、そんな事はどうでもいい。外の世界でもこんなのが降っているとの事らしい。こんな威力は高くないらしいが、逆にこんな隕石のような物が毎回幻想郷に降り注いでいるという事を考えれば、はた迷惑な話だ。

 

「あ、熱くないんですか!?だって隕石のように…」

 

「ああ…これそこら辺の石ころと温度は変わらないんだよ。だから安心しな」

 

「にとり」

 

霊夢さんに名前を呼ばれたにとりさんは二つの願い星を受け取ると、私達にこれでダイマックスバンドを作って来るとだけ告げて一度博麗神社から去って行く。熱くなさそうに持っているにとりさんを見て、改めてそんなに熱くないんだというのを感じた後、霊夢さんがさて…という一言をきっかけに私達に話しかけて行く。

 

「アンタ達。改めて意思を問うわ。ジムチャレンジに参加したいかしら?」

 

「参加したいです!!変わったとはいえ、幻想郷の事知りたいですし!!」

 

メリーの言う通りだ。私達が思っていた幻想郷とは今の幻想郷は遥かに違う。ポケモンの影響もあり、外の世界から様々な人が幻想入りして来た。私達も同じというのは事実。だが私達が昔から思い描いていた幻想郷の姿は今はない。どこに行ってもイメージしていた景色は見えないだろう。だが…

 

「蓮子…アンタはどうする?」

 

「参加したいです…!!変わったとはいえ、こうして幻想郷に入れた訳ですし…一度でもいいから回ってみたい…!!」

 

いつかは私達のいた世界に帰る事になるだろう。だったら今のうちに思い切りのわがままを貫き通したい。私とメリーが憧れに憧れていた幻想郷を回ってみたい。それが本心だった。私とメリーの真剣な目つきを見た霊夢さんは、一息吐き、そう…とだけ呟くと私達に一度背を向け…

 

「そこで待っていて。今推薦状を書いて来るわ」

 

「は、はいっ!!」

 

願ってもない瞬間だった。バトルをして願い星が降って来た事により、揺れていた霊夢さんの心を完全に突き動かしたのだ。一度神社内に戻って行く霊夢さんを見て、メリーは安心したかのように大きく一息吐くと…

 

「やったね蓮子…!!でもこれからだよ…!!幻想郷を回れるとはいえ、レースみたいなのに参加する訳だからさ」

 

「…そうだね」

 

まるで夢のようだった。憧れていた幻想郷に入れ、さらに幻想郷の行事に参加出来るというおまけ付き。誰かがどこかで仕組んでいるのではないかと感じる程に。だが痛みを感じる事から察するにこれは現実。寝ていないのだから当たり前の事だが、どうしても現実とは思えない事が多々続いていた。

 

私はメリーの言葉に返事した後に静かに覚悟を決めたかのように拳を握りしめる。参加するという決断を下した以上、逃げる訳には行かない。気が付けば私の額から冷や汗が流れていた。

 

「あれ蓮子…冷や汗が…」

 

「うん…分かってるよ。今更だけどさ…本当に夢のような出来事が続いているような気がしてさ。正直…足がずっと浮いているような感覚なんだ…」

 

隠す事はない。私はメリーに正直に思っている事を語る。メリーは私の一言に対して、意外そうな表情を浮かべる。そら、そんな風に意外そうな表情を浮かべるのは仕方ない事だと思う。だがどうしても今になっての恐怖感を誰かに伝えたかった。

 

私が浮かべていた苦笑いに対して、メリーは一息吐くと…

 

「蓮子が心配症なのは知ってるよ。でも…今回は大丈夫だよ、私もいるし、イーブィもロコンもいるから!」

 

ただ呟いているようにも見えたが、私には充分心強く見えた。私を理解してくれているメリーと側にいてくれているロコンとイーブィ。私の中の緊張が少しだけ和らいだ気がした。

 

「お待たせ。あら、お邪魔だったかしら?」

 

「い、いえ…そんな事はありません!!」

 

推薦状を持って来た霊夢さんが私とメリーが向き合っている姿を見て、ニヤリとした笑みを浮かべる。メリーは即否定した後に霊夢さんはクスクスと笑みを浮かべると、両手を広げ私とメリーに一つの封筒を差し出してくれた。私達がそれを見て息を呑んで黙り込んでいると…

 

「これ、推薦状。ここから人里にあるスタジアムの受付に提示すると正式に参加が認められるわ」

 

「は、はい…!!」

 

霊夢さんから正式に説明を受け、私とメリーは一度顔を見合わせた後に推薦状を受け取る。ただの紙とその封筒なのに、緊張しているせいか物凄く重いように感じた。何せ霊夢さんは幻想郷における、一番強いポケモントレーナーだ。そんな彼女から推薦状を受け取るという事は中々、プレッシャーにもなる。

 

「今日はもう遅いから泊まって行きなさい。そして明日、にとりがダイマックスバンドを届けてくれるから、そこから人里に向かいなさい」

 

そう言えばにとりさん、ちゃんと帰れたのだろうか。もう夜になった事を考えれば、心配も出て来るが…とりあえず私達は霊夢さんのいる博麗神社に一泊する事となったのだった…




見てくださりありがとうございます。


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人里への道のり

お久しぶりです。投稿しますね。


 早朝の時間帯。私とメリーは泊めさせて頂いた博麗神社にて目を覚ます。願い星をダイマックスバンドにする為に一度研究所に戻ったにとりさんが、再び博麗神社に来るまでの間、私達は朝食と着物への着替えを済ませる。着物は中々に動きにくい服装だが、裸で動くよりは断然マシと言うものだ。

 

 一足先に人里に向かった霊夢の背中を見送りつつ、待つ事数分。2人で雑談しながら今着ている服におかしな所などないかを確認していると、私達の視界に息を切らしながら駆け寄って来たにとりさんの姿が入って来た。

 

「ごめん…待ったかい!?」

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

 汗だくで然も息を切らしている。こんな状態のにとりさんに追い討ちをかけるかのように「待った」なんて、残酷な言葉を言える筈もなく、私は苦笑いを浮かべながら「大丈夫」と一言だけ呟く。にとりさんはそれを聞いて安心したかのように「良かった…」と呟くと一息吐いた後に私達の方を見つめる。

 

 そしてそのままゆっくりながら近づいてくると、ポケットの中から二つ。リストバンドのような物を私達に渡して来た。メリーはそれを見て表情を明るくさせ…

 

「に、にとりさん…これが…!!」

 

「ああ…ダイマックスバンドだよ。ひとまず完成して良かったよ。人里への道のりはかなり過酷だから、きずぐすりとか使うのを忘れないでね」

 

 霊夢さんも言っていたのだが、博麗神社から人里へは迷えば一日は掛かってしまう程の道のりらしい。そして更に今の状態では決して敵わないポケモンもウジャウジャいるとの事だ。にとりさんの言葉に改めて息を呑み、少しばかり拳を握りしめる。

 

 そんな緊張したような表情を見せる私を見て、にとりさんは軽く微笑むと…

 

「何を緊張しているんだ蓮子。大丈夫だ。自分を信じればきっとたどり着けるさ」

 

「そうだよ蓮子!私達なら大丈夫だって!!」

 

 にとりさんの言葉に同情するかのように声をかけてくれたメリー。私はただそれが嬉しく、かなりホッとさせられた。2人の方を交互に見つつ、一息吐くと私はゆっくりと頷く。私達が最初にたどり着いた場所が人里に通ずる道だった事を考えると、ゾッとするが不安を幾ら述べても意味がない。

 

 そして2人の言葉に頷いた私を見てにとりさんが…

 

「いいかい2人共。ジムチャレンジ参加の受付時間は今日が終わるまでだ。普通に行けば正午にたどり着く道のりだから、慌てずにな」

 

「はい!!分かりました!!」

 

 私達からの返事を聞き、にとりさんは安心したかのように微笑むと「それじゃ行ってこい!」と声を張り上げて送り出してくれた。期待と不安が交互に入れ混じる中、ゆっくりと歩き出した私に対し「お先に!!」と言って走り出したメリー。よく着物で走れるな…と思いつつ、私はその背中を追いかける。

 

 博麗神社から徐々にながら離れて行くと、見えてきたのは最初イーブィを追って幻想郷に入ったと言う事を喜んだ場所。どこかしらから聞こえてくるポケモンの鳴き声に、バッグのポケットに入れてあるモンスターボールが微かに揺れる。

 

「不安なんだ…」

 

 イーブィとロコンの不安を感じつつ、私は息を吐きながら前へと進んでいく。周りを少しでも見渡せば、見えるのは人間より遥かに巨大なポケモンや小さいポケモン達。 正直言って巨大なポケモンには恐怖という感情が湧いてくる。

 

「行くしかないよね…!!」

 

 息を呑み、深呼吸を重ねつつただ前へ、前へと歩いて行く。すると耳に聞こえて来たのは草むらが揺れる音。巨大なポケモンなら既に見てきただけに、揺れの大きさだけでそこにいるポケモンが小さいのか、巨大なのかが区別が付く。草全体が揺れていない感じを見ると、恐らく小さなポケモンだろう。

 

 だが幾らサイズの区別が付いたとしても、強さまでは分からない。私はバッグからモンスターボールを取り出し、イーブィを出す。イーブィは身体を震わせ、私の方を見つめてくるが、私の少し警戒したような表情を見て、前を見つめる。

 

「………」

 

 全神経を前に集中していると、キョトンとしていたイーブィが鳴き声を上げると一直線に草むらの方にへと進んでいく。私はかなり慌てつつ、イーブィを追いかけようとしたが、イーブィはすぐに草むらから戻って来る。 何だったのだろうか?と思い込む前に、イーブィは私の方を見ながら鳴いて訴えかけて来た。

 

 キョトンとしていたイーブィが鳴き声を上げたと言う事は何かあったと言う証拠なのだろう。私は再度、息を呑むと草むらの方にへと歩みを進めて行く。すると聞こえて来たのは少しばかり弱ったポケモンの鳴き声で…

 

「ポケモン…だよね…この鳴き声…」

 

 聞こえて来たポケモンの鳴き声を耳にした私は、草むらをかぎ分けて見る。すると視界に入って来たのは傷だらけでその場に座り込む青いポケモン。当然野生、近くに仲間がいるかもしれないが弱っている感じを見るとそうには見えなく…

 

「…君、仲間は…?」

 

 言葉なんて通じる筈もないのに、気がつけばそう呟いていた。青いポケモンは無言ながらも瞑っていた目を開けて、こちらを見つめるとまるでこちらの言葉を理解しているかのように首を横に振った。私はそのポケモンの行動にかなり驚いたが…

 

 それよりもまさかずっとここにいるんじゃないか…?と言う事が頭を過ぎった。イーブィは依然として私の隣で鳴き続けている。少しばかり迷った私であったが、ゆっくりとそのポケモンに近づきしゃがみ込むと…

 

「…信用できないなら、攻撃してもいいから…」

 

 言葉なんて通じる筈もないと思っていた。だがこのポケモンには私の言葉を理解してくれるだろうと言う期待が心の中にあった。バッグからきずぐすりを取り出し、ポケモンにつけて行く。ポケモンは痛がる反応を見せたが、攻撃はしてこない。ただ身を任せてくれている。

 

 私がポケモンを治療し始めたのを見て、隣で喧しい程に鳴いていたイーブィが一切鳴かなくなり、その様子をジッと見つめる。今日が終わるまでには人里に辿りつかないと行けないのは分かっているが、これだけ傷付いている子を見ればほっとける筈もない。

 

 ポケモンを治療し始めてから30分。薬を一本使い終わったその時にはポケモンの傷は一切なくなっていた。

 

「ふう…」

 

「………」

 

 一息吐いた私の方を青いポケモンはジッと見つめていた。私はそのポケモンに軽く微笑みかけると、その場から立ち上がり去ろうとする。傷を治療したとはいえ、この子は野生。連れて行く権利もない。そう思っていたが、振り向いたその時に、服の袖を掴まれる感覚が…

 

服を掴まれる感覚に違和感を感じ、私が後ろに振り返ると先程の青いポケモンが相変わらず無言ながらもこちらをジッと見つめている。離さないでと言わんばかりに服の袖を力強く握りしめており、私は横目でこのポケモンを見つめながら一言だけ呟いた。

 

「もしかして…ついて来たいの?」

 

 さすがにそんな好都合な事がある筈がない。と思いつつも私の口から溢れた言葉、青いポケモンは少し間を空けながらも私の方を見ながら思い切り頷いた。そのポケモンの反応に誰よりも驚いたのは私だった。 この後、何度も野生には戻れないという事を問いかけたが、意思は変わる気配がまるでないのか聞く耳も持たない。

 

 このポケモンの反応を見て、私は覚悟を決めて一度しっかりとポケモンの方を見つめる為にその手を振り解くと、青いポケモンの方を見つめ…

 

「本気なんだね…分かった。だったら…行くよ…!!」

 

 ポケモンはモンスターボールを向けた私に向かって力強く頷く。 そんなポケモンに向かって私はモンスターボールをコツンと当てて、その中に入れて行く。地面に落ちたモンスターボールは1、2、3と3回揺れてカチッと言う音を鳴らす。ポケモンの名前はリオル。私はそのポケモンが仲間になったのを見て、イーブィと共に喜んでいた…




ひとまずこんな感じでしょうか。


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イーブィの新しい技

更新して行きますね。


 人里に通ずる道にて新たなにリオルを仲間にした私。だがイーブィ達より明らかに強いであろう野生のポケモンが辺りにウロウロしている。私達の方を全く見ていないからいいものの、一度でもこちらを向けばと考えるとゾッとする。今時間は何時くらいだろうか、まだ朝の時間帯というのは確かだが…

 

「コン!!」

 

「どうしたのロコン?少し疲れた?」

 

 長距離歩くだけに私はモンスターボールの中にずっと居させるのは酷だと思い、しばらくは外の空気を吸わせる為に3匹と一緒に歩いていた私。だが突然聞こえたポケモンの鳴き声を聞き、ロコンやリオルがかなり警戒をしている。イーブィはマイペースなおかげからか、なんとも無いという表情をしているが…

 

 やはり危険地帯。常にポケモン達の様子にも気を使わないと行けないかもしれない。

 

「少し…モンスターボールに戻ってる?」

 

「コン!!」

 

 警戒しているロコンとリオルにそう問いかけると、2匹は声を上げながら私の方を見て頷く。イーブィは警戒どころかビビるという動作もないまま、欠伸をしている。私でも緊張しているというのにかなり肝が据わっているというものだ。2匹をモンスターボールに戻すと一応…

 

「イーブィも戻る?」

 

「ブイブイ!!」

 

 私の言葉にまるで嫌だと言わんばかりに首を思い切り横に振るイーブィ。こんだけ緊張や警戒をしていないのだ、そりゃあ嫌に決まっている。イーブィの動作に苦笑いを浮かべると、また一歩ずつ周りを見渡しながら前にへと進んでいく。緊張する私の隣で楽しそうにしているイーブィが羨ましく感じてしまう。

 

「ブイブイ!!」

 

「あっちょっと!!そんなに前に言ったら危ないって!!」

 

 楽しそうに声を上げながら前に向かって走っていくイーブィを慌てて追いかける私。着物のせいか、あまり全力では走れないがそれでも十分イーブィに追いつくくらいのスピードは出せる。少しイーブィを追いかけながら走っていると、突如イーブィがその足を止める。私はその行動に疑問を抱き、同じく足を止め前を向くと…

 

 私の視界に入って来たのは何やらぬいぐるみのような目とピンク色の素肌をした熊のような生物。あれもポケモンなんだろうが、何かの練習をしているのか木を思い切り殴っている。

 

「…!!」

 

 私が驚いたのはそのパンチの力強さ。一発で大木を半壊にまで持ち込む程の威力で、私はそれを見て「このポケモンと今は戦っては行けない」という事を確信。キョトンとしながらその場から動かないイーブィを抱き抱えて、そのポケモンに気づかれないように慎重にその場から歩き去って行く。

 

 ポケモンは木に夢中でこちらには気づいていないように見えたのだが…

 

「…クマ?」

 

「あ…」

 

 ふとした拍子にそのポケモンと目が合うと、私は顔を一気に青ざめポケモンが疑問めいた表情を浮かべている内に一気にその場から離れていく。後方から聞こえてくるのはポケモンの「グー!!」という鳴き声。私の腕の中にいるイーブィはかなりキョトンとしているが、抵抗していない分私の気持ちを察してくれているのだろうか…

 

「ブイ!ブイ!」

 

「何?どうし…」

 

イーブィが後ろを見て一度上げた鳴き声。私はそれを疑問に思い、後方を見ると先程のポケモンがニタァとした笑みを浮かべながら、こちらに走って来ている姿が視界に入る。そのスピードは予想以上に速く、このままだと追いつかれてしまう。

 

 諦めてくれ…と思いながら私は思い切り走っていたがポケモンの足音は近くなって行くばかり。

 

「ブイ!!」

 

 何を思ったのか。イーブィは私の腕の中で思い切り暴れて、地面に降り立つとそのまま向かって来るポケモンの方にへと身構える。勝てる筈がない…ポケモンの能力は分からない私でもそれだけは分かるだけに、慌ててイーブィを連れ戻そうとするがイーブィは私から離れて行き…

 

「ブイ!!」

 

 私の方に向かって来るポケモンの前で足を止め、思い切り声を上げる。するとイーブィの前から電気が発生し、ポケモンに命中。レベル差があり過ぎるせいかポケモンは吹き飛びも、痛そうな反応すらも見せなかったが身体が痺れたようで身動きが鈍くなっている。

 

 イーブィはポケモンの動きが鈍くなったのを確認すると、一目散に逃走し私の元に戻って来る。今の技は何だろう…と感じつつ、私は再度戻って来たイーブィを抱き抱えるとポケモンの動きが鈍くなっている内に距離を離していく。

 

「びっくりしたぁ…心配するこちらの身にもなってよ…」

 

「ブイ!!」

 

 私の言葉に対して思い切り微笑むイーブィ。ホントマイペースだなぁ…と思いつつも走っていると、気がつけばポケモンは追跡して来なくなっており、どうにか撒いたようだ。私は後方を見てそれを確認すると、本当にホッとしたかのようにため息を吐く。

 

 念のため早歩きしながら前にへと進んでいると、見えてきたのは何かの門。門前には門番の方以外にも誰かいるようにも見えるが…

 

「(誰だろう…)」

 

 気にはなるがとりあえず門が見えたという事は人里前にたどり着いたのは確か。実感はあまりないが、とりあえず一安心。歩くスピードをゆっくりにし門に近づくと、門前にいた人が私の方に振り返る。そこにいたのは何と霊夢さん。何やらキョトンとした表情を浮かべているが…

 

「ああ蓮子。キテルグマの声が聞こえたんだけど…アンタ襲われた?」

 

 霊夢さんはどうやら先程のポケモンの件でこの場にやって来たようだ。名前を知らなかったが、恐らくキテルグマという名前なのだろう。私は霊夢さんの言葉に首を振ると正直にキテルグマに出会した事を告げる。すると霊夢さんは「やはりか」と言わんばかりに、何回も頷くが…

 

 それ以外にも何か感じたようで…

 

「そのイーブィ。もしかして特別な技覚えてる?電気技を覚えているように感じるのだけど」

 

「え?あ…そうですね。電気技を使ってました。私も分からなかったんですけど…」

 

 霊夢さんはその場にいなかったのだが、どうしてその事が分かるのだろう?という疑問を抱きつつも、私はイーブィが電気技を使ったという事を正直に話す。すると霊夢さんはイーブィの顔をジーッと見た後に、少し息を吐くと…

 

「やっぱりね…びりびりエレキを覚えてるわ。メリーと戦った時は覚えてなかった事を考えるとピカチュウを倒した後に、覚えた感じね。特別な技でね、普通に育てても覚えないのよ」

 

「はあ…」

 

ひとまず霊夢さんが言う限りはイーブィは普通に育てても覚えないと言う技を覚えているらしい。私には何が何だか分からない事だらけだが、肝が据わっている訳がマイペースだけではないと言うのが分かったような気がする。

 

「人里には色々ポケモンの図鑑があるんだけど、その常識には当てはまらない子だというのは記憶しておいて」

 

「分かりました…」

 

 霊夢さんは私にそう告げると一足先に人里の中にへと入って行く。メリーはもう人里にたどり着いたのだろうか…というのを色々考えながら私も人里の門前にいる門番さんに声をかける。無断では入れないのだろうかと考えていた私ではあるが…

 

「怪しい物は持っていないか?」

 

「モンスターボールとかポケモンに関する物だけです」

 

「一応検査させてくれ」

 

 幻想郷の中心にあると言う事もあり、かなり警備という面でも厳重なようだ。門番さんの言う言葉に頷き、私は鞄の中身を見せる。数分程だろうか、ジッと鞄の中身を見た後に門番さんは頷くと…

 

「よし通ってよし」

 

「ありがとうございます」

 

 門番さんが門を開けてくれた事に私は礼を告げると、人里の中へ。人里の中に入って行くと見えたのは商店街と何やら巨大な施設だった…




ここまで見てくださりありがとうございます。


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多くの人が集まる場所

夜遅くなりました。投稿させていただきますね。


眼前に広がるは歩く人々の姿と門番をしているポケモンの姿。その奥には巨大なスタジアムのような場所が見える。私がびっくりしたのは人の多さ。やはり近くの安全地帯という事もあるのだろうか、今まで通って来た博麗神社やにとりさんの研究所より遥かに人が多いような気がする。

 

 唖然とした感じで辺りを見渡しながら歩いていると何やら私の名前を呼ぶ声が聞こえて来た。後ろからでも隣からでもない、前方からだ。私は声に導かれるかのようにただ歩いていくと…

 

「蓮子ー!!こっちこっちー!!」

 

 声を張り上げてこちらに思い切り手を振るのはメリー。やはり先に走り出したという事もあり、たどり着くのも早かったようだ。そんなメリーの姿を見つけた私は少し駆け足気味に彼女の元に向かって行くと、何やら赤い屋根の建物の前に立っていたという事に気づく。

 

「ねぇメリー…この建物は…?」

 

「ん?ポケモンセンターというんだって。ポケモンとかを回復させてくれたり、買い物も出来るんだけど…寄ってく?」

 

 どうやら入りたくて立っていた訳では無かったらしい。メリーの言葉に私は首を横に振ると、彼女は意外そうな表情で「そっか」と呟いた後、奥にある建物の方を指差す。メリーも私同様、霊夢さんと遭遇したらしいが、あの巨大なスタジアムにて開会式と参加の受付を行うらしい。

 

 ポケモンの状態も気になるが、まずは参加受付が優先だろう。メリーに「参加受付しようよ」と言われたそのままに彼女と共に参加の受付を行っているというスタジアムに向かう。そこにて霊夢さんから貰った推薦状を出すみたいだ。

 

「それにしても私達が想像していた幻想郷とはまるでイメージが違うね。スタジアムにセンター。ポケモンが変えたというのはホントなんだね」

 

「信じてなかった訳じゃないけど、ここまでは想像してなかったな…」

 

 実際私達のいた世界にもありそうな光景が眼前に広がっている事に対して、本当に驚きを隠せずにいた。辺りを見渡しても今風なファッションをしている人、幻想郷のイメージ通りの着物を着ている人など様々だが、それでも変わっているんだな…とにとりさん達の話しがホントだったんだなと実感させられる。

 

 若干苦笑いを見せつつもただ前に進んでいると、私達はスタジアム前にたどり着く。改めて見渡しても大きな建物だ…近くで見れば見るほどにそう思ってしまう。

 

「これって自動ドアなのか…うわっ!?開いた!!」

 

 私達がいた世界でも自動ドアというのは幾つも見てきたが、幻想郷のを改めて見ると何だか新鮮の気分になる。何故か緊張感も出てきた中で、一歩ずつスタジアム内にへと足を踏み入れる。すると視界に入って来たのは、既に受付を済ませたであろう参加者達。

 

 何やら白いユニフォームを着ているようだが…

 

「サッカーみたいだね。私達も着る事になるのかな?」

 

「さあ…どうだろう…」

 

 隣で参加者を見て苦笑いを浮かべるメリーに対して、少し顔を引きつる私。嫌という訳ではないが、私が想像していた幻想郷のイメージが破壊されているようで、びっくりはしていないが頭が少し真っ白になっていた。受付に向かって歩いていると、前では誰かが受付をしているようだが…

 

「先にやってる人がいるみたいだね。ちょっと待とう…」

 

 と私がメリーに告げたのだが、メリーは何やら引いたような表情を浮かべている。私がそれを見て気になり、受付している人物を見つめると髪がアフロ気味という事以外は特に何も感じないが…

 

「どうしたの?何か気に入らないという感じがある…?」

 

「髪がアフロ気味だから…」

 

 まさかの私の思った通りの事だった。少し拍子抜けのような感じがしたが、初めて見るだけの人物にはあまり興味を持たないメリーなだけに、意外とも感じたがまさか髪に嫌悪感を覚えているとは…こればかりはどうしようもないとしか言いようがないとは思う…

 

 少し流すような感じで返事していると、その人物が受付から離れて行く。メリーは最後まで嫌がったような表情を見せていたが、まぁそれは人それぞれだ。私は気にしないようにしておこう。

 

「こんにちは。ジムチャレンジ参加なら推薦状をお願い致します」

 

「ほら、メリー」

 

「え?あ、うん!」

 

 受付に近づくと推薦状を出してくれと言われ、私達は受付に推薦状を見せる。何も言わずに受け取ろうとした受付の男性ではあったが、私達を推薦したのが誰かというのを見た瞬間に驚きの表情を見せる。

 

「ち、チャンピオン!?チャンピオンからの推薦状って…アナタ達は一体…」

 

「少しばかり縁が出来まして…推薦してもらえる事になりました!」

 

「(それでいいのか…)」

 

 メリーの言葉に疑問を抱いている間に、受付は驚きながらも彼女の勢いに押されるような感じで納得。そして数秒黙り込んだ後に息を整えると、受付の男性の口から出てきた言葉はやはり、参加者達が着ているユニフォームについての事で…

 

「開会式及び試合では白のユニフォームを着用します。背番号と服の大きさを選んでください」

 

「背番号…何でもいいんですか?」

 

「1番以外でしたら何でも」

 

 恐らく一番は霊夢さんが付けているからだろう。まぁそれはさておき、少し塾考した結果、私は背番号82に。メリーは45番に決めた。服の大きさについては一応私も女の子である為黙っておく。一般的な感じと受け取って貰えたら有り難い。

 

 少し時間を使って、私達の背ネームと背番号が記載されたユニフォームが完成。そのまま手渡され、私達は一度鞄の中に仕舞い込む。受付の方によると開会式は明日らしい。

 

「登録完了です。チャレンジャーの方は旅館に泊まって貰う事になります。このスタジアムの近くにあります。妖という旅館です。旅館まで案内の人を付けますので、その人について行って下さいね」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 自力で探してこいという感じではないようだ。ひとまずその面に対しては一安心だ。私とメリーは受付の方に頭を下げると、そのままスタジアムを後にしてひとまず外へ。外に向かうと受付の方が言った通り、1人の男性が私達の前にやって来た。

 

「チャレンジャーの方ですね。こちらへどうぞ案内します」

 

「ありがとうございます!」

 

 隣のメリーからの声を上げての返事に男性だけではなく、私まで驚かせられる。男性に言われるがまま付いて行った私達ではあったが…

 

「ん?何かざわついているね…?」

 

 旅館のような場所に近づいて行く度に聞こえてくる騒めき。何だろうと思いながら前方を見つめていると聞こえて来たのは、何やらラッパのような音。耳障りに聞こえつつもひとまず案内してくれた男性に礼を述べると…

 

「外だよね、明らか」

 

「うん。何だろう…?」

 

 疑問に思いながら旅館「妖」に近づいて行くと見えてきたのは迷惑がっている人々の前にいる不良のような集団。誰かいるからだろうか、旅館の前に陣取っているというのは迷惑極まりない感じだ。

 

「ヒャッハー!!退いてほしかったらポケモン勝負するこった!!」

 

「だってさ。どうする蓮子…?」

 

「勝負しないと退いて貰えないし…やるしかないよ」

 

 迷いはなかった。とりあえずは旅館に入りたいという気持ちが強い。かなり調子に乗ってラッパを鳴らしている不良のような集団の前に、メリーと2人で立つと…

 

「あん?何だてめぇら?」

 

「ポケモン勝負すれば良いんだよね?しようよ勝負。私達その先に行きたいからさ」

 

 メリーは珍しく緊張している様子だったが、私はなぜかこの時だけは冷静だった。男が私達の前に立つとモンスターボールを構えたのだった…




ここまで見てくださりありがとうございます。


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1人の少女との出会い

ちょっと変えてみたところがあります。暇な方は探してみてください。


「俺たちにポケモン勝負挑んだ事、後悔しやがれ!!」

 

「ポケモン勝負しろって言ったのはアンタ達でしょうが!!」

 

 男は高々と声を張り上げた後、エレズンというポケモンを繰り出して来た。紫色をした見た事のない姿をしたがあれもポケモンらしい。一方こちらの先手は人里への道にて仲間になったリオル。私がどんな実力かを見てみたかった理由もあり、一番手として出てもらった。

 

 人里の人が大分集まって来ている中、メリーの方はもうバトルを開始したようだ。こちらもバトルを始めて旅館前の道を退いてもらうようにしよう。

 

「行くよリオル!メタルクロー!!」

 

 赤ちゃんかのような姿しているエレズンに攻撃するのは少し気持ち的に違和感があるが、今はそんな事言ってられない。私の指示を聞きリオルは身構えると、足元を強く蹴り出して一気にエレズンの間合いへ。そのまま爪を立てて引っ掻き付ける。

 

 エレズンはダメージを食らったようだが、イマイチだったようで首を傾げる始末。それを見た男が高笑いした後に…

 

「馬鹿め!エレズンはでんきタイプだ!はがねタイプの技が効くか!!

エレズン!!ようかいえき!!」

 

男の言葉で初めて相性を知り、私は少々驚いた表情を見せる。そんな中エレズンが吐いてきた毒がリオルに命中。痛がる素振りを見せたが、体はよろけてなく大ダメージを食らった訳では無さそうだ。エレズンにはメタルクローが効かない、だったら他で攻めるしかない。

 

 横目で見てきたリオルを見て私は一回頷くと、声を少し張り上げて指示を出す。

 

「リオル!!かみつく!!」

 

 リオルは私の指示に頷くと口を少し広げた状態で、もう一度足場を蹴り出して再度距離を詰めていく。エレズンが若干リオルのスピードについて行けてない間に、思い切りその肩にかみつく。エレズンは痛がっているがすぐに踏ん張ったような表情を見せる。

 

 そしてそれを見た男が予想が当てはまったのか、ニヤリとした笑みを見せた後に…

 

「かかったな!!エレズン!ほっぺすりすりだ!!」

 

 エレズンは男の指示を聞くとそのままほっぺをすりすりさせてくる。大したダメージは受けてないように見えるが、リオルは何か驚いたような表情でエレズンから離れて私の前で膝を付く。息を切らしてない感じを見ると、しんどそうには見えない。だが体がかなり震えている。

 

「今の技は…!?」

 

「ほっぺすりすり!!確定で状態異常のマヒにする技だ!!

近づいてくれて助かったぜ!」

 

 なるほど男が笑った意図にはこういう訳があったのか。してやられた。私は悔しさ混じりの笑みを見せた後に軽く深呼吸。そうしている間に「さあ反撃だ」と呟いた男の口から次なる指示がエレズンに告げられる。

 

「まずは牽制から行くぜ!エレズン!なみだめ!!」

 

エレズンが男の指示により見せた涙目にリオルは少し動揺した様子を見せる。麻痺の状態はかなり深いようで、動こうにも中々動けないような状態みたいだ。それでもこのエレズンを倒さないと先には進めない。私はリオルに「少し頑張って…!!」と声をかけると…

 

「リオル!!かみつく!!」

 

 麻痺に苦しみながらもリオルは必死に体を動かし、息を吐くとそのままぎこちない動きながら一気にエレズンに近づいていく。男の指示によりエレズンのようかいえきがリオルに少しながら命中する中で、リオルはエレズンに接近。そのまま再度かみつく。

 

リオルの必死ともいえる噛みつきにエレズンも中々のダメージを受けたみたいだ。エレズンはリオルに噛みつかれた後に少し抵抗していたが、すぐに力尽きたかのように少し白目気味になって倒れる。これに驚いたのはエレズンに指示を出していた男。どうやら少しダメージが大きかったのが幸いしたようだ。

 

 エレズンに駆け寄る男。それと同時に隣のメリーも余裕で片方の男に勝利したようだ。メリーも何か新しいポケモンをゲットしたらしく、鳥のようなポケモンが彼女の前で笑みを見せている。私はそれを見てホッとした後に、麻痺により体がぎこちなく動いているリオルの元に駆け寄る。

 

「リオル!お疲れ様…うん…重傷じゃないみたいだね。良かった」

 

「蓮子!その子旅館より先にポケモンセンターに…」

 

 リオルが少し苦しそうにしているのを見てポケモンセンターを推奨してくれたメリー。彼女の言う通りだ。旅館の事はメリーにひとまず任せる事にして、まず私はポケモンセンターに向かう事にした。このバトルではロコンとイーブィは傷や状態異常にはなっていないので、リオルだけ見てもらう事に。

 

 走って行くうちにポケモンセンターに着いたのだが、心配なのは有料なのか無料なのかという面。有料ならこの世界の通貨を持っていない私では見てもらえないが…

 

「…すいません…!!」

 

 ひとまずポケモンセンターに入り、中央にいるナース姿の女性の方に声をかける。有料か無料かを確認する前に、抱き抱えながら連れてきたリオルの状態を説明。そしてその次に有料かなどを聞いた。女性は突然の事に驚いていた様子だったが、私の慌てように少しだけ微笑むと…

 

「大丈夫ですよ。ポケモンセンターはショップ以外は無料です。その子、預からせて頂きますね。モンスターボールに入れてもらえますか?」

 

「は、はい…!!」

 

 良かった…!ただその一心だった。私はリオルに「お疲れ様」とだけ告げてモンスターボールの中に入れると、そのモンスターボールを女性に渡す。少しお待ち下さいと言った女性はそのまま奥にある装置にモンスターボールをはめ込む。少し待てばいいようだ。

 

 私が一息吐いていると二個のモンスターボールが急に震え始め、中からイーブィとロコンが耐えかねたかのように体を震わしながら出てきた。

 

「い、イーブィ!!ロコン!ダメだよ勝手に出てきちゃあ…!!」

 

 驚く私をさておき微笑むのはイーブィとロコン。何故か嬉しそうに鳴き声を上げるとそのまま近くのソファーにへと足を運んで行くが、その道中で足が止まる。どこかを一直線に見つめている。2匹を抱き抱え、私もその方向を見つめると…

 

「アンタね。クリーム色の髪のお姉ちゃんが言っていたのって」

 

「アナタは…?」

 

 そこに立っていたのは黒髪のショートヘアをした少女。目つきが鋭く若干怒っているようにも見えるが、少女が見せた最初の行動は謝罪かのような頭下げ。どういう事だろう?と思った私が慌てながら理由を聞くと…

 

「私、魔美。ジムリーダーの義娘なんだけど…あの男達はジムリーダーの部下達で…」

 

「そうなんだ…」

 

義理の娘…この子の事情も複雑のようだ。ポケモンセンターの待ち時間で彼女の話しを聞いてみると、どうやら彼女もジムチャレンジャーらしい。目つきは若干悪く見えるが、根はいい子に思える。イーブィとロコンが魔美が連れている黄色と黒色をしたポケモンを気にしているようだが…

 

「魔美。その子…ポケモン?」

 

「え?あ、うん。モルペコって言うんだ。私のパートナーなんだ」

 

 深く話を聞いてみると生態は少し特殊なようで、普通の技のタイプがフォルムによって変化するらしい。何とまあ聞けば聞く程に興味がある話しが続くが…私が少し意外そうな表情を浮かべていると、魔美が思い出したかのように…

 

「そう言えば、お姉ちゃん…メリーさんから話し聞いたんだけど、名前は知らなくて…」

 

「そう言えば、言ってなかったね…私、宇佐見蓮子。ジムチャレンジャー同士頑張ろう!」

 

 私がそう笑みを浮かべながら呟くと魔美は笑顔で頷く。どうか自信に満ちたような笑みに押されそうになった、気合いを入れ直さないと…

そうしている内にリオルの名前が呼ばれ、魔美と別れ女性の元に急行。リオルのモンスターボールを受け取った後に、再度旅館に向かったのだった…




見てくださりありがとうございます。


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開会式

ちょっと変な所があるかもしれません。


 魔美との出会いを経て旅館にいるメリーと合流した私。どうやら魔美が話しを通していたらしく、男達から謝罪の意味合いを兼ねた現金を受け取ったのだが、何と開会式に参加するジムチャレンジャーの宿泊費は運営が全額負担するという。有り難い事ではあるが、さすがに怖くなってくる。

 

 そういう事もあり旅館には現金などを支払う事なく、一夜を過ごし翌日を迎えた。開会式に参加する為に朝食や着替えなどの準備を済ませ、旅館を出ようとしたのだが…

 

「…ん?」

 

「どしたのメリー?」

 

その入り口にて周りを見渡しながら立ち止まっている1人の少女を見て、メリーがその場に立ち止まったのだ。メリーが見ている同じ方角を見つめるとそこにいたのは、昨日会った魔美の姿。一体入り口前で何をしているのだろうか…

 

「ちょっと話しかけてみる?」

 

「奇遇だね。同じ事考えていたんだ」

 

 誰かを待っているにしか見えない魔美の姿だが、いくら何でも気になる。メリーの提案を私は承諾し、2人で魔美に近づくと同時に声をかけてみる。

 

「魔美。ここで何してるの?」

 

「蓮子!そしてメリー!えっとね義母を待っていて…ジムリーダーだから早く行かないといけないのに…」

 

 やはり人を待っていたようだ。お相手は魔美の母であるジムリーダーの人物。何者か分からないが、この先当たるとなると気になる存在ではあるが…

 

「義母さん、プライベート…特に寝起きはすっごく機嫌が悪くて…あまり今見るのはオススメ出来ないかな…」

 

「だってさ蓮子。ここは素直に魔美の言う事聞いた方がいいよ」

 

 寝起きの機嫌の悪さは父親で経験しているだけに一瞬湧いた感情はあっという間に消え、メリーの言葉に頷いていた。私は一息吐きながら「そっかぁ…」とため息混じりに呟くと…

 

「じゃあ私達先に行くから、開会式に遅れないようにね」

 

「うん、分かった」

 

 ジムリーダーの人物を見てみたい気持ちがあったが、機嫌が悪い状態で出てくるなら仕方ない。一瞬湧いた感情を入れ替え、私達はひとまず魔美より先に開会式の会場となる人里スタジアムへ赴く。

 

 やはり幻想郷随一のイベントという事もあり、スタジアムに向かう道中はかなりの人集りが目に入る。向かっていない人からもジムチャレンジに関する話題が呟かれているようで…

 

「凄い人集りだね…これみんなチャレンジャーかな…!?」

 

「昨日行った時もかなりの人数だったからね…」

 

 さすがに全員がジムチャレンジャーという訳ではないと思うが、それにしても道が塞がれてしまいがちになるぐらいの人の多さには驚かせらる要素しかない。辺りを見渡しながらも少し唖然としつつ、スタジアム内にへと入って行く。

 

 ここに向かって来たジムチャレンジャー達は皆、更衣室に向かっているようだ。

 

「蓮子。82番のユニフォームは持ってるよね?」

 

「メリーこそ、45番のユニフォーム。しっかりと持ってるよね」

 

 更衣室に入る前に私達は一度ユニフォームを見せ合い、互いを高めるかのように笑みを浮かべる。ひとまずある程度人が空くのを待ってから更衣室の中へ。さすがに男女別にしきりが作られているようで、ひとまずはホッとした。

 

 着物からサッとユニフォームに着替えて更衣室を出る。改めてユニフォームを身に纏うと急に緊張し、さらには心の中が自然と燃え上がって来る。いよいよ始まるんだ…という気持ちが私の中を満たして行く。

 

「………」

 

 着替えて更衣室から出ると、先に出ていたメリーが笑みを浮かべながら待っていた。何故笑みを浮かべているのか、気になった私がメリーに問いかけようとしたその時。私が言葉を発する前にその答えが返って来た。

 

「似合っているよ蓮子」

 

「め、メリーもだよ…!!」

 

 急にメリーから褒められた物だからびっくりして声がひっくり返ってしまった。私の言葉にメリーはクスクスと笑うと一言「ありがとう」と呟く。随分余裕がありそうに感じてしまうが、気のせいだろうか。メリーに向かって苦笑いを浮かべていると…

 

「ご、ごめん!!遅くなった!!」

 

「あ、魔美…」

 

 その場に急いでやって来たのは魔美の姿。ジムリーダーは別の場所にいるせいか、傍にはいない。私達が声をかける前に「ひとまず着替えて来る!!」と声を張り上げると、息を切らしながら更衣室へ。あまりに慌てた様子を見て何故か、慌てていた心が少しだけ落ち着いた気がする。

 

 アナウンスが流れ、スタジアムコートに通ずる扉がゆっくりと開いて行く。開会式が始まるまで後10分。扉内に入って行くチャレンジャー達を見て、魔美は大丈夫かと言う感情が出てくるが…

 

「着替え終わった…!!」

 

「急いで魔美!!ひとまずコートに!!」

 

 息を切らしながら私達の元に戻って来た魔美と共にスタジアムコートに通ずる扉を潜って行く。コートに近づいて行く度に歓声が大きくなって行き、少し走っていたその足が徐々にながら震え出す。歩くなどには支障はないが、まるでスポーツ選手にでもなった気分だ。

 

 コートの芝を踏みながら辺りを見渡しても辺り一面観客の姿、そして歓声。近くにはこのジムチャレンジに参加したチャレンジャー達がいる。全員ライバルになる訳だ、規模がデカすぎてびっくりしてしまう。

 

「お集まりいただいた皆様!誠にありがとうございます!!」

 

 周囲に少し圧倒されていると、どこかしら声が聞こえてくる。姿は見えないが一声だけで女性という事は分かる。魔美がこっそりと教えてくれたのだが、今喋っているのが主催者である八雲紫という人物だそうだ。祝辞を述べた後にその紫という人物がこの大会の説明を始めた。

 

「ジムチャレンジとは!!8つのジムを回り、最後の地、守矢スタジアムに向かうレースです!ジム内にはジムリーダーが存在!そのジムリーダーからバッジをもぎ取るのも内容の一つとなっております!!」

 

「守矢スタジアム…」

 

 どうやら最終地は守矢スタジアムという場所になるそうだ。然もレースという事もあり、一斉にジムに押しかけるという事になる。規模が大きいという事もあり、かなり緊張して来る。そして紫の話しを聞いていると、彼女は息を少し整え…

 

「それでは!!ジムチャレンジャーが対するジムリーダーの皆様に登場していただきましょう!!どうぞコートへ!!」

 

 コートの入り口が照らし出され、歓声が鎮まったと同時に足音が聞こえて来た。目を凝らしてみてみると丁度8人の姿。そして紫が再び息を整えて…

 

「では紹介致します!!」

 

紅魔の番人!!紅美鈴!!

人里の人格者!!上白沢慧音!!

炎の強者!!藤原妹紅!!

月の査定人!!蓬莱山輝夜!!

植物の母!!風見幽香!!

毒の人形!!メディスン・メランコリー!!

魔界出身の人形師!!アリス・マーガトロイド!!

そしてトップオブトップ!!霧雨魔理沙!!

 

「以上がジムリーダーの皆様です!!」

 

「あの霧雨魔理沙が私の義母さんだよ」

 

 魔美の一言にかなり驚かせられた。トップオブトップ。確かにあの魔理沙という人物からはオーラが感じ取れ、あの鋭い目つきからは恐怖すら感じてしまう。あれが最後まで行けば立ち塞がるという事か…少し圧倒され気味になってしまう。

 

「燃えるじゃん!!あんなメンバーが相手だなんて!!」

 

「1人、こんな状況なのに寝ているような気が…?」

 

 そう感じたのは1人目の紅魔の番人である紅美鈴。かなりウトウトしている様子だ。しっかりと並んでいるが、紫のコールが気に食わなかったのかとばかりに気を抜けた様子を見せるジムリーダーが何人か。本番になったら変わってくるのだろう…それだけに私はかなり警戒していた…




見て下さりありがとうございます。


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3回目の対戦

久々に投稿します。よろしくお願いします。


「いやぁ…開会式、すっごい緊張したね!!」

 

「あんなにチャレンジャーがいると少し不安になってくるね」

 

 開会式を終え、更衣室にて着替えを済ませた私達は受付付近に戻ると一息吐く。生でジムリーダーや開催者を見たという事実を未だに受け入れる事が出来ておらず、足が地面に着いていない感覚だ。それはどうやら私だけではなく、メリーや魔美も同じ風に見える。

 

「一斉に一つ目のジムにチャレンジャーが向かうから、迷う心配はないと思うけど…」

 

「まずはジムリーダーに勝てるように頑張らないと…!!」

 

 同じジムチャレンジャーという事はライバルである証拠。だが私達はまずジムチャレンジを突破出来るように、3人で同時に頷き気合いを入れ直す。そして魔美は一息吐くと…

 

「私、人里付近の道で何かポケモンを捕まえてくる」

 

「え?すぐに行かないの?」

 

「ちょっとだけ不安だから…」

 

 魔美から出た言葉に一瞬疑問を覚えた私達ではあったが、彼女の浮かべた苦笑いとつい出た本音を聞き納得する。当然私はすぐに一つ目のジムに向かう事を決めている為、ひとまず魔美とはここで別れる事になる。彼女は私達を見渡した後に、少し照れつつ…

 

「私もすぐに追いつくから…が、頑張ってね…」

 

「うん。ありがと」

 

 魔美は私とメリーが浮かべた笑みを見て、少し安心したようなそんな表情を見せると「それじゃ!」とだけ告げて、その場を去って行く。義理ではあるがジムリーダーの娘、魔美も相当気合いが入っているように見える。そんな背中を見て、メリーは小さく「よし」と呟くとゆっくり私の方に振り向いて…

 

「蓮子!!ジムに向かう前にポケモンバトルしようよ!何かジムリーダー見ていたらウズウズしちゃって!!」

 

「げ、元気だなぁ…分かった。いいよ」

 

「ありがと!!じゃあ外で待ってるから準備出来たら来てね!!」

 

 魔美の姿やジムリーダーの姿を見て気合いが入ったのだろう。力強くポケモンバトルをしたいという事を私に告げると、少し声を張り上げ気味に呟いた後にその場から走って去って行く。全てが未知の体験であるせいか、あんなに子供のようにはしゃぐメリーを見たのは初めてだ。

 

 もしかしたら現世に戻ったら元に戻るんだと思うけど、今だけの姿として記憶に刻んでおこう。

 

「さて…あんまりメリーを待たせられないし、早く行ってあげよう…」

 

 出すモンスターボールを選択し、ひとまず外に出る。どうやらスタジアム近くにはいないようだ。どこに行ったんだろう?と少し探しながら歩いていると、相手がこちらの姿を見つけたのか。メリーの私を呼ぶ声が聞こえてくる。ひとまずその声に導かれるがまま歩いていると…

 

「蓮子?人が多いからって迷わないでね?」

 

「メリーが呼んでくれたおかげで何とか辿り着けたよ」

 

メリーがいた場所はポケモンセンター周辺。丁度ポケモンバトルスペースがあり、そこにて行うようだ。クスッと笑うメリーに対して、私は小さく息を吐きモンスターボールを出す。メリーも私の行動を見ながら、モンスターボールを出すと…

 

「今度は負けないからね!!行くよ!!」

 

「今回も私が勝つ…行くよ…ロコン!!」

 

「行っておいでココガラ!!」

 

 私はロコンを出し、メリーはココガラというポケモンを繰り出す。ココガラは昨日のバトルで見たポケモンだ。あの時は男のポケモンを圧倒していたように見えるが、今回はどうだろうか。

 

「全力で行くからね!!ココガラ、にらみつける!!」

 

 メリーが第一手として選んだのはにらみつける。これはどういう技なのか分からないが、ココガラににらみつけられたロコンの身体から急に冷や汗が溢れ出す。そう何回も食らっていい技ではないように見える。だったら…!!

 

「ロコン!!でんこうせっか!!」

 

 かなしばりにて技を封じ込めるのも手の一つではあるが、何か攻撃技を持ってる筈。その一個に使う事にし、攻めに転じる。私を指示を聞いたロコンは足元を蹴り出すと、高速でココガラに近づくとそのまま体当たりをかます。でんこうせっかを食らったココガラは少し吹き飛んだが…

 

「ココガラ!つけあがる!!」

 

 ココガラはすぐに体勢を立て直すと、ロコンの下にしゃがみ込みそのまま顎に体当たりをかます。ロコンの顔はそのまま上の方へ、それを見たメリーがさらにココガラに指示を出し…

 

「ココガラ!!つつく!!」

 

 ロコンが顔を戻したその瞬間にココガラのつつくが炸裂。これによりロコンは少し顔をしゃがませるが、逆にココガラが近くにいる事を考えればチャンス。私は思い切りロコンに指示を出す。

 

「ロコン!!やきつくす!!」

 

「やきつくすっ!?」

 

 昨日の事だ。話しかけられたおじさんとバトルした際に身についた技。ひのこの上位互換だというこの技をロコンは使い、炎をココガラにぶつける。ココガラは近くにいたからまともに食らったものの、何とか耐え切った様子。少しふらついているのでチャンスかと思ったのだが…

 

「もう一度!!ココガラ!!つつく!!」

 

「ロコン!!再度やきつくす!!」

 

 ロコンの炎がココガラに迫りきる前に、ココガラのつつくがロコンに炸裂。これによりロコンは怯んだかのように痛がった表情を見せたが、ロコンの吐いた炎は見事ココガラに命中した様子だ。もう一発炎を喰らった所でココガラは吹き飛び、ここでダウン。

 

 メリーは一瞬歯を食いしばりながらも、ココガラをモンスターボールの中に戻してすぐに2体目のウールーを場に出す。特性かもしれないが、物理が効かないウールー。でもほのおタイプの技なら…

 

「ロコン!!やきつくす!!」

 

「ウールー!!たいあたり!!」

 

 何発もやきつくすを使った影響からか、少しばかり息を吸うタイミングが遅くなったが何とか再度炎を吐き出す事に成功。そのまま転がって突撃して来たウールーにも命中したが、何とウールーは炎を食らってないかのように動き、たいあたりにてロコンを吹き飛ばした。

 

「なっ!?前は結構ダメージを受けていた筈…!?」

 

「我慢してくれただけ…!!それよりロコン大丈夫?」

 

 メリーのウールーのたいあたりを食らったロコン。その打ち所が悪かったのか、一気に戦闘不能に。まさか我慢だけで平然とするとは…まさかの事態に私は息を呑みながらも、ロコンを戻しリオルを場に出す。

 

 何回もやっている通り、ウールーには物理技がほぼ効かない。でもまだイーブィを出す訳には行かない…!!

 

「行くよリオル!!前みたいにやってくれたら大丈夫だから!!」

 

 リオルは私の言葉に頷き、ウールーに向かって構える。

 

「行くよリオル!!フェイント!!」

 

 メリーが動く前にこちらが仕掛ける。リオルにフェイントを指示し、リオルは指示通りウールーに近づいて思い切り殴りつけるが、やはり特性のせいなのか全く効いていない様子。然もそこから…

 

「ウールー!!たいあたり!!」

 

 リオルがウールーに近づいたのをいい事に、ウールーのたいあたりが炸裂。あっさりと吹き飛ばされてしまうが、私の前で踏ん張ると一度一呼吸入れた後に、私がリオルに指示を出す。

 

「リオル!!メタルクロー!!」

 

 攻撃力を上げる可能性があるメタルクローを選択。リオルは爪を立ててウールーに思い切り迫ると、そのまま引っ掻く。だがこれもウールーにはあまり効いておらず、その様子を見たメリーはクスッと笑い…

 

「ウールーには物理技は効かないよ!!行くよ!!まねっこ!!」

 

「っ!?」

 

 前に選んだ技はメタルクロー。リオルに向かってウールーの技が炸裂するが、リオルはそんなに効いていない様子。然しウールーの力が少しだけ増したような…そんな気がした…




読んでくださりありがとうございました。


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白烈とした攻防

投稿し直します。


 メタルクローを放ったウールーに対して違和感を抱いていた私、然し今は勝負の最中で指示を出さないと切り込まれるだけ。心の中の違和感を今だけ捨て、リオルにでんこうせっかの指示を出すが…

 

「ウールー!!まるくなる!!」

 

 メリーが取って来た手はまさかのまるくなる。これにより高速でウールーに迫ったリオルの一撃が命中はしたものの、そのダメージが皆無に等しいものとなってしまった。でんこうせっかを食らっても尚、痛がる素振りすら見せていない。

 

「っ!!」

 

「今度はこっちから行くよ!!ウールー!!まねっこ!!」

 

 リオルが先程繰り出したでんこうせっかをウールーは完全に真似をし、でんこうせっかを打ち込んだ後、私の元に戻って来ていたリオルに高速で迫ると体を転がして体当たりして来た。先程のメタルクローの影響からか、その一撃はリオルにとっては重かったようで少し吹き飛んだ。

 

「リオル!大丈夫!?」

 

 リオルは痛がる素振りを見せつつも、大丈夫と言わんばかりにこちらを見てうなずいて来た。これを見て私も気合いが入ったのだが、メタルクローは元々何らかの確率で攻撃力を上げる技。今の技の重さを見ていると、そうなったという事で違いない筈。

 

「一気に攻め立てるよ!!ウールー!!たいあたり!!」

 

「(攻めなきゃやられる…!!)リオル!!フェイント!!」

 

 こらえるの技も頭の中にはあったが、どうせ攻め立てられる感じになってしまう。だったら少しでもウールーにダメージを与えて、最後に控えるイーブィに託すしかない。リオルが倒されるか、攻撃を耐え切るか、これは私の中の賭けだった。

 

 ウールーの攻撃が迫る前にリオルのフェイントによるパンチが炸裂。一瞬ウールーの動きを止めたが、ほんの数秒。リオルは間もなくしてウールーの体当たりをダイレクトに喰らい、私の目の前にまで吹き飛んできた。

 

「リオル!!」

 

 リオルはウールーの体当たりをクリティカルに喰らっていたようで、ここでノックアウト。賭けとしては悪い方には出たが、これもリオルには申し訳ないが予想内。歯を食いしばりながらリオルに励ましの言葉を送りながら、ボールの中に戻すと一息吐きながら気を引き締め…

 

「行くよ…イーブィ!!」

 

 私の中にいるポケモンにして最後の砦。勢いよく地面に当たったボールから出てきたイーブィは気合い充分かのように声を張り上げた後に、一度私の方を横見して頷く。イーブィも状況が分かっているようで、その目からは覚悟が伝わって来る。

 

「出てきたねイーブィ!!ピカチュウを出す前に一気に勝負をつける!!ウールー!たいあたり!!」

 

「そうはさせない…イーブィ!!びりびりエレキ!!」

 

 メリーの指示を受けたウールーがそのままイーブィに転がりながら突撃して来るが、先に動いたのはイーブィの方。身体に電気を溜め込むとそのままウールーのいる前方に放出。近くまで来ていたウールーはかわす事が出来ず、そのままびりびりエレキの餌食となり吹き飛ぶ。

 

 そのままウールーは後方に転がりながらメリーの前で止まり、そこで力尽きたのか横に倒れる。

 

「あっちゃー…やっぱりダメージが蓄積されていたんだ…仕方ない。お疲れ様、ウールー」

 

 ロコンとリオルの二体を倒したウールーがようやく倒れてくれた。ウールーに労いの言葉をかけながら、ボールを戻すメリーを見て一瞬安堵の息を吐いたが、すぐに気を引き締め直しメリーのラストのポケモンを待ち受ける。「そっちがイーブィを出したのなら私も応えないとね…!!行っておいでピカチュウ!!」

 

 ニヤリとした余裕の笑みを見せながらメリーが繰り出したのはこちらも、メリーのラストのポケモンであるピカチュウ。早くも3回目の対決となった。ここまで1勝1分。この対面、私とイーブィにとっては不利な面は今のところない…!!

 

「行くよ!!イーブィ!!でんこうせっか!!」

 

「ピカチュウ!!エレキボール!!」

 

 メリーの指示を聞いたピカチュウは尻尾に電気を貯め始め、数秒もしないうちに電気で出来たボールを作り出す。イーブィはピカチュウがそのボールを放って来る前にでんこうせっかにて、ピカチュウに体当たりをするが技を使用している最中の影響からか、吹き飛ばされる事なく踏ん張り…

 

 そのまま自身の近くにいたイーブィに向かってエレキボールを喰らわせる。爆煙を巻き起こしながら、イーブィは少し歯を食いしばりながら私の前にへと吹き飛びながら戻って来た。

 

「でんきショックじゃないの!?」

 

「えへへ…今はこっちにしてるんだ!そして蓮子、イーブィに気を使わなくて大丈夫?」

 

 ニヤリと笑いながら私のイーブィの事について問いかけて来たメリー。その問いかけにハッとしてイーブィの方をふと見てみると、イーブィが少し苦しそうな表情で動きにくくしている姿が。忘れていた…!!ピカチュウの特性は自身に触れた相手を麻痺させるものだ…!

 

「しまった…!!」

 

「よく考えて指示を出すものだよ!!ピカチュウ!!でんこうせっか!!」

 

 イーブィが痺れてあまり動けなくなっている状態で、ピカチュウはメリーの指示を受けてお返しとばかりに高速で迫って来るとそのまま体当たりをしてくる。イーブィは足にありったけの力を入れて踏ん張ったようだが、その表情はかなり苦しそうだ。

 

「イーブィ!!ピカチュウに向かってすなかけ!!」

 

 ピカチュウが離れる前にイーブィは身体が麻痺しながらも、ピカチュウの身体に砂を浴びせる。ピカチュウはイーブィから離れたものの、目に砂が入った影響で目をパチパチとさせている。

 

「イーブィ!!でんこうせっか!!」

 

 この隙に一気に攻め立て、身体が痺れている中で私の指示を聞いたイーブィはピカチュウの元に高速で近付くとそのままもう一回体当たりを喰らわせ、吹き飛ばす。そして…

 

「イーブィ!!ほしがる!!」

 

 そのままの勢いでピカチュウにほしがるを喰らわそうとした私ではあったが、何故かイーブィの動きがピタリと止まってしまい、私の方を見て首を傾げてしまう事態に。私自身訳もわからずにいたが…

 

「これで終わらせる!!ピカチュウ!!エレキボール!!」

 

 混乱しているうちにピカチュウのエレキボールがイーブィに向かって放たれる。さっきも爆煙を巻き起こした程の威力だった為に、私は一瞬負けを覚悟したがエレキボールを見たイーブィが…「ブイイイ!!」

 

 エレキボールが命中する前に声を張り上げたイーブィ。そのイーブィの声から放たれたのは黒色の衝撃波、結局エレキボールをかき消す事が出来ずにまともに食らったイーブィではあったが、その衝撃波はどうやら攻撃技だったらしくピカチュウも吹き飛ぶ。

 

 イーブィは私の前にまで吹き飛んできて戦闘不能、後はメリーのピカチュウだけだったが先程の攻撃。中々の高火力の技だったらしくピカチュウも一気に戦闘不能に。敗色濃厚だった筈が、訳もわからずに引き分けに。キョトンとしていた私達が、ピカチュウとイーブィに労いの言葉を送りながらボールに戻すと…

 

「れ、蓮子。何か指示出した?」

 

「あ、あんな技…私も見たことがないよ。ほしがるを聞いて、首を傾げていたのも今の技が影響なのかな…」

 

引き分けに終わった勝負。そしてメリーに問いかけられたが、私自身も訳もわからない感じだった為、曖昧な答えしか呟く事が出来ない。少しその場に立ち尽くした後に…

 

「とりあえずポケモンセンター寄ろっか…回復してもらおうよ」

 

「そ、そうだね…」

 

 霊夢さんは教え技を成長で覚えられるイーブィだと言っていた。もしかするとさっきのも…?疑問が尽きぬまま、私達はポケモンセンターにへと向かった…




急に消してすみませんでした。


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謎の技の正体

久しぶりに書きます。よろしくお願いします。


 ジムに行く前のひと勝負を終えた私達は、ポケモンを回復させる為にポケモンセンターへ。ナースの方にポケモンを預けている間、雑談する事にしたのだが…

 

「そういえばさ。ほしがるの技、どうするの?あの訳の分からない技を覚えている訳だから…」

 

「確かに…あの技の正体が分からないと今後は3つの技で戦う事に…」

 

 やはりメリーの口から出たのはイーブィが放った技の件。強引な形、いや運良くというべきか。あれのおかげで引き分けにまで持ち込めた事を考えれば、今後必要になってくる。逆に分からないと3つの技で戦う事になるだけに、その正体を知りたい所。するとメリーが何かを思い出したかのように…

 

「あ!そういえば、どこかのポケモンセンターに教え技について詳しく知ってる人がいるんだって。もしかしたらここにいるかも」

 

「…探してみる?もう少し時間ありそうだし…」

 

 メリーの言葉がきっかけで私達は座っていたベンチを立ち上がり、ポケモンセンターにいるという教え技の人を探してみる。今覚えているびりびりエレキが元々は教え技という事もその人は知っていると思う。

 

 ポケモンセンター内を見渡し、まずは休憩スペースでもあるカフェエリアにへと足を運ぶ。カフェだけかと思いきや、どちらかとフードコートに近く、うどんや天丼と言った看板が視界に入る。

 

「さすがにラーメンとかはないか…」

 

「メリー…ここに食べに来たんじゃないよ?」

 

 メリーは私の言葉に対して苦笑い気味に「分かっているよ」と呟いた後に、そのエリアにへと足を運ぶ。多くの人が座り込んでおり、座る席もあまりないようにも見える。そして気になるのは歩いている人の数、少々探すにしては歩きづらいなと思った程。

 

「んー…ここにはいないのかなぁ…」

 

「でも人が集まれるスペースってここしかない気が…」

 

「だよねぇ…適当に話しかけてみる?」

 

 視界に入るのは人、人そして人。本当に探すのが困難な程に人が多く、少しため息を吐きつつ私達は端っこ辺りから一面を見渡す。噂だけだとどんな人さえも分からないが…どうしよう…

 

 少し考え込んでいると、とある男の人が私達の前で止まる。

 

「君達。先程、勝負していた子達だよね?」

 

「え…?あ、はい…!!」

 

「あ、アナタは…?」

 

 シルクハットを深々と被り、タキシードを身につけた男性。シルクハットのせいか、きちんと素顔が見えないが少しだけ髭を蓄えているのが分かる。メリーがキョトンとした表情で問いかけると、男性は…

 

「私かい?名乗るほどの者ではないが、教え技おじさんと呼ばれているよ」

 

「え…!!」

 

 私達の前に現れたのは今探していた教え技に関する人。性別もどんな格好をしている事さえ分からなかっただけに、これはラッキーとしか言いようがない。急に現れた事により、一瞬私が頭に真っ白になっていると男性は…

 

「君達が使っていたピカチュウとイーブィは私が技を教える事によって、「教え技」という強力な技を使えるようになるんだけど…そこの君のイーブィは教えてもないのに、使っていたよね?」

 

「そ、そうです…!とある人にも特殊だと言われて…」

 

男性は私からの言葉を聞くと「そうだろうね」と一言。そして少し黙り込んだメリーが男性に一つ問いかける。

 

「あ、あの!今ポケモンを預けていて…良ければ後で教え技を使えるようにして貰いたいです…!!」

 

「ピカチュウだね?分かった。後で伝授しよう。…だがその前に…」

 

 メリーの頼みを男性はあっさりと受け入れると、私の方を再び見つめる。そして小さく、息を整えると…

 

「先程の勝負の最後で、指示した技を勝手に忘れてるという自体があったそうだが…」

 

「は、はい…それで身につけたのが教え技…だと思うんですけど…」

 

「びりびりエレキとは少し違ったよね」

 

 勝負を見ていないのなら一から説明をしないと行けないが、男性は勝負を見てくれていただけに話しがスムーズに進んで行く。メリーの言葉と私の言葉を聞いた男性は、少し髭をさすりながら黙り込むと…

 

「恐らくわるわるゾーンじゃないかねぇ…」

 

「わるわるゾーン?」

 

「ああ。あくタイプの技でね、先程そこのお嬢ちゃんが言ったびりびりエレキに似た威力を持つ技さ」

 

 適当に付けた感のある名前だけに少し拍子抜けしたような、そんな気持ちになってしまうが男性の言葉を聞いている内にそんな感情もあっさりと消えた。然しあくタイプの技…リオルがかみつくというあくタイプの技を覚えているが、それとは少し違うような感じのようだ。

 

「だが不思議なのはこうも何故、簡単に教え技を身につけているのかという事なんだよ」

 

「私のピカチュウも成長では覚えなくて…」

 

「意外だね…2人のピカチュウ、イーブィ共に覚えていると思っていたよ」

 

 技の正体は分かったが、男性が気にしていたのは私のイーブィがどうして成長技として教え技を覚えているという事。その事を気にしていた様子だったが…

 

「何にせよ。他の教え技を覚えたいなら私の元に来るがいいよ。そこのお嬢ちゃんのピカチュウと共に技を覚えさせてあげよう」

 

「はい…!!ありがとうございます…!!」

 

 男性はイーブィの事を気にしつつも、教え技を教えてくれると約束してくれた。そしてこの言葉を聞いた後にポケモンセンター内にアナウンスが。ポケモンの回復が終了した事と、私達の名前が呼ばれた。

 

「あ、呼ばれたのでこの辺で…!!後でまた来ます!!」

 

「ああ。待っているよ」

 

「教えて頂きありがとうございました!」

 

 男性に礼を述べて、私達はカフェエリアから戻って行く。そしてナースの方から預けていたポケモンを受け取ると、メリーが私に…

 

「それじゃ私はあのおじさんに技を教えてもらうから…」

 

「次、戦う時は手強くなるなぁ…頑張ってね」

 

「うん!それじゃ、また会おうね!」

 

 私の苦笑いを見て満面の笑みを浮かべたメリーは、そのまま背を向けてその場から去って行く。私はその背中を見送った後に、ポケモンセンターを出て一個目のジムがある場所に向かい始める。

 

「えっと…最初のジムは確か、紅魔ジムって言っていたよね…どこにあるんだろ…」

 

 まずはそのジムに行けるルートを探さないと行けないと思った瞬間、とある森に入って行く大量の人の姿が。…恐らくあのルートなんだろう。なんて分かりやすいんだ…と思いつつ、私もその場所に足を運んでいく。

 

「ん…?あれって…」

 

 足を運んで行くと見えてきたのは人の集まり。ただ進んでいるだけかと思いきや、そうでもないみたいだ。ポケモン勝負かな?と思い、その人集りの前に行くと、聞こえてきたのはサインを求める声。少し背伸びをして、奥を見てみるとそこにいたのは霊夢さんだ。

 

「霊夢さんだ。チャレンジャーにサイン求められて大変そうだなぁ…」

 

 私は慌ただしくサインをしている霊夢さんを見て、迷惑をかける訳には行かないと思いその場所からゆっくりと離れて行き、元にいた集団の元に戻って行く。人について行くと入って行ったのは少し広々とした森。どうやら、分かれ道らしくここでみんな足を止めている。

 

分かれ道前にある看板を見ると、「少しでもチャレンジャーの数を減らすべく分かれ道にしました。外れても元に戻るだけなので、思い切り間違えてください」の文字。親切なのかいじわるなのか分からない感じに苦笑いしか出ないが、ひとまず私は左、真ん中、右がある内の真ん中に進んでみる。

 

「あってるのかな…」

 

そう不思議ながらも前に進んでいると、視界に入って来たのは緑色のポケモンがこちらにやってくる姿。そしてもう一つ視界に入ったのは開会式の会場受付で見た、1人の男性の姿だった…




見てくださりありがとうございました。


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相見える2人の推薦者

久しぶりに投稿します〜。


「メシャ…メシャ…!!」

 

「わわっ…!?」

 

 緑色のポケモンはやって来た男性から逃げるかのように私の後ろに隠れる。突然の事態で驚く私を見て、やって来た男性は少々不満気そうな表情を浮かべつつ、小さくため息を吐き…

 

「なるほど…僕よりその人の方がいいと。そういうんだね君は」

 

「この子…かなりアナタに対して怯えている。何をしたの?」

 

緑色のポケモンは完全に男性に向かって怯えの目を見せている。男性は私の問いかけに対して、「普通に鍛えただけだ」と言い張った。鍛えただけなのにどうしてここまで怯える必要があるのだろうか、疑問に思っていた私に対して男性は再びため息を吐き、言葉を続ける。

 

「そのポケモン。ドラメシャという。ドラパルトというとんでもなく強いポケモンに進化する奴さ。僕のパーティにハマるかと思いきやこのザマ…」

 

「ドラメシャ…」

 

 この小さな緑色のポケモンがとんでもなく強いポケモンに進化する。それだけでも驚きが隠せないが、彼の言葉だけだと間違いなんてしていないように思える。男性は三度ため息を吐き、何か言いたげに私を指差した。

 

「アナタは確か、チャンピオン推薦のトレーナーだったね。82番。僕もチャンピオン推薦のトレーナー。霊矢という」

 

「私達以外にも霊夢さんが推薦したトレーナーが…」

 

私とメリー。霊夢さんが推薦したトレーナーは私達だけだと思っていたが、そうでは無かったようだ。目の前にいる霊矢…一見私より若く見えるが、それでも霊夢さんが推薦する程の実力者なのだろう。だが私を見てニヤリとして来た所を見ると、性格に難がありそうに見える。

 

「僕はチャンピオンに挑むトレーナー。そのドラメシャも一員にしてあげようと思ったけど…逃げ出すなら要らないね。アナタにあげるよ」

 

「そりゃどうも…ただ…何かアンタの態度、どうも気に触るわね」

 

 普通に相手は話しているだけだ。ただ小生意気なだけではないか。それは分かっているが、表情といい言い草と言い、どうも黙ってられない。まるでポケモンを物として扱っているようなその態度に、私が腹が立てていると霊矢は「じゃあ…」と切り出し…

 

「実力でぼくを黙らしてごらんよ。エリートと凡人の格の差を見せてあげるよ」

 

「分かったわ。…ドラメシャ…少し後ろに…」

 

 ドラメシャに私が少し語りかけようとした瞬間、ドラメシャは私から何かを感じ取ったのか怯えながらも前へ。私はそれに大きく驚き、霊矢は高笑いをする。

 

「まさか!君が僕と戦おうと言う訳じゃないよね?」

 

「…ドラメシャ。怯えてるとはいえ、その行為は主人を敵に回すと言う事になるんだよ…?それでもいいの?」

 

 当然私は何があったのかを全ては知らない。霊矢の鍛えたと言うのが、相当スパルタだったから逃げ出したんだと思う。私に言われても尚、ドラメシャの決意は揺らぐ事なく、こちらを横見して頷く。主人を敵に回す形で味方してくれたその決意。

 

 答えない訳には行かない。

 

「分かった…!!君の力少し借りるよ!!」

 

「メシャ!!」

 

「その判断。後悔する事になるよ…じゃあ始めようか」

 

 霊矢からドラメシャのモンスターボールを受け取り、彼自身は鳥のようなポケモンを繰り出してくる。ネイティと言っていた。恐らくその名前だろう。霊矢は余裕そうな表情を浮かべながら、小さく息を吐くと…

 

「行くよネイティ…ナイトヘッド!!」

 

「ドラメシャ!かみつく!!」

 

 ネイティの念力がドラメシャに命中。ドラメシャは少し痛そうな表情を浮かべつつも、ネイティに向かって行くとそのまま思い切り噛みつく。ネイティはドラメシャをあっさり振りほどく。そして霊矢が…

 

「そしてトドメ…!!ネイティ!!つつく!!」

 

「ドラメシャ!!おどろかす!!」

 

 振りほどき、少し吹き飛ぶドラメシャに向かってネイティは羽を羽ばたかせながらドラメシャを攻撃しようとする。ここで攻撃を喰らえば終わり…それでも私は攻勢に出た。ドラメシャに攻撃技を指示したのだが、素早く移動したドラメシャがネイティを後ろから驚かせる。

 

 驚いたネイティは攻撃を中断し、そのまま腰を抜かしたかのように地面に落ちる。

 

「馬鹿な!?」

 

「よし…!!今だドラメシャ!!かみつく!!」

 

「くっ!!ナイトヘッド!!」

 

 ネイティがびっくりした事により形勢が逆転。ドラメシャは霊矢の指示を受けたネイティより素早く動くと、そのままネイティに思い切り噛みつく。ネイティはこれに驚きつつも、ダメージはクリティカル。ネイティはドラメシャが離れた頃には戦闘不能となっていた。

 

「嘘だ…僕のポケモンが役立たずにやられた…!?」

 

「やったね。ドラメシャ」

 

 霊矢に鍛えられているからだろうか。彼に対して怯えてはいたものの、その実力は相当な物のようだ。私がドラメシャに笑顔で語りかけると、ドラメシャは鳴き声を上げ嬉しそうに反応した。霊矢は悔しがりながらも次のモンスターボールを握りしめると…

 

 ネイティをまず戻し、ポニータという馬のポケモンを繰り出してくる。霊矢は笑みを浮かべると…

 

「ドラメシャはドラゴンタイプ!!このポニータは効果抜群の技を持ってる!!さあ…その天狗になった鼻をへし折ってやる!!」

 

「…行ける?」

 

 ドラメシャは私の言葉に頷き、ポニータの方を見やる。一気にトドメを刺すつもりなんだろう。という事はこの一手がドラメシャとポニータとの勝負の命運を握る筈…

 

「ポニータ!!ようせいのかぜ!!」

 

「(早速…!!)ドラメシャ!!おどろかす!!」

 

 少し考えていると予想通り霊矢はトドメを刺さんと効果抜群の技を放って来た。私はドラメシャの素早さを信じ、おどろかすを選択。だがこの対決はポニータの方が素早く、ドラメシャは直前でようせいのかぜの餌食に。

 

 これを喰らい、ドラメシャは吹き飛び一発で戦闘不能。霊矢が高笑いする中で…

 

「ごめんドラメシャ…あとは任せて」

 

「役立たずが…調子に乗りやがって…さあ…次!!」

 

 必死に一体目を破ってくれたドラメシャに感謝しながら、私はモンスターボールに戻す。ようせいのかぜのタイプは恐らく、フェアリー。フェアリーはかくとうタイプも苦手という文書を研究所で見た為、リオルは不利。

 

 だったらここを頼れるのは…!!

 

「行っておいで…ロコン!!」

 

「ちっ…ほのおタイプか…」

 

 私がロコンを出したのを見て霊矢は舌打ちをする。やはりフェアリー技を使えないのを嫌がっているようだ。だがもしかすると他の技も覚えているかもしれない。私はそう頭に記憶しつつ…

 

「行くよロコン!!やきつくす!!」

 

「ポニータ!!サイケこうせん!!」

 

 サイケこうせん…!!やはりフェアリー技とは他の技を…!!ロコンの放った炎とポニータが放った光の光線がぶつかり合い、どちらも譲らぬまま爆発を起こす。少しの爆煙が辺りを包む中…

 

「くっ!!ポニータ!!ねんりきで爆煙を晴らせ!!」

 

 霊矢の指示にポニータは一瞬困惑の表情を見せつつも、ねんりきで爆煙を晴らして行く。だがこれは私とロコンにとっては好都合。晴らされた爆煙、ポニータの居場所が確認出来たことにより、私は攻勢に出る。

 

「いた…!!ロコン!!もう一回!!やきつくす!!」

 

「!!」

 

 私の指示を受けたロコンの炎がポニータの元へ。霊矢が気づいたのは目の前に迫って来てから。ポニータはロコンの攻撃をまともに受け、少しだけ膝をつくが…

 

「くっ…!!まだ終わりじゃない!!今度はこちらから…!!」

 

「ロコン!!でんこうせっか!!」

 

 私はポニータが少し膝をついたのを見て、一気に畳み掛ける。ロコンにでんこうせっかを指示し、ロコンは一瞬にしてポニータの元に迫ると、そのままぶつかる。ポニータは何とか体勢を整え、ロコンもまたでんこうせっかで私の元に戻って来る。

 

私は必死になる霊矢を見て、少しだけ息を飲んでいた…




読んでくださりありがとうございます。


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違う何か

お久しぶりです。投稿いたします。


「ポニータ!サイケこうせん!!」

 

「ロコン!!かなしばり!!」

 

 霊矢は少々焦りつつもサイケこうせんを指示。私もその焦りを突くかのようにかなしばりを指示する。後は素早さの問題だが、先手はポニータ。ロコンはサイケこうせんをまともに食らった後に、かなしばりをしサイケこうせんを封じる事に成功。

 

 少しニヤリとする霊矢であるがこちらも厄介な技を封じれた事は事実。少しばかりのお返しをする為に、攻勢に出る。

 

「ロコン!!でんこうせっか!!」

 

「ポニータ、ねんりき!!」

 

 でんこうせっかは先制技。必然的にロコンの素早さが上回り、ポニータに一撃を喰らわすもののそのダメージは微々たる物。ポニータはすぐにロコンの方を見つめると、霊矢の指示通り、ねんりきの攻撃を敢行。念により浮かばせられたロコンは私の元まで吹き飛ばされる。

 

「おやおや…少し不利じゃないか?」

 

「サイケこうせんがないだけいいって物…!!ロコン…やきつくす!!」

 

 サイケこうせんは高火力の技。今は封じているが、指示されると厄介。私はこの不利を計算に入れつつ、ロコンにやきつくすを指示した。ロコンの口から炎が吐かれるが、ポニータにはやきつくすに対抗する技が今はない。霊矢は歯を食いしばり、ようせいのかぜを指示。

 

 やきつくすの前ではそよ風に等しく、あっという間に炎が風を飲み込みポニータにまともに当たる。これにて少しよろけたポニータを見て私は表情を引き締めると…

 

「ロコン!!そのままでんこうせっかっ!!」

 

「くっ!!ポニータ!!ねんりきだ!!」

 

 私とロコンの攻勢に一矢報いようとする霊矢はポニータにねんりきの指示を出す。だがでんこうせっかのスピードを上回れる筈はなく、ロコンの体当たりをまともに喰らいポニータは少々吹き飛ばされる。

 

 ポニータがそのまま立ち上がらないのを見た霊矢は戦闘不能になったのを確信。少し俯きながら舌打ちをし、歯を食いしばると戦闘不能となったポニータをモンスターボールに戻す。どこにも当てられない怒りを拳を握りしめる事でぶつけ、霊矢は三体目のポケモンをモンスターボールから出す。

 

「行け…エーフィ!!喜べ…僕のラストにしてエースのポケモンだ!」

 

「…?」

 

 霊矢の言葉には違和感を抱かなかったが、少し不思議に思ったのは私のモンスターボールが少しではあるが揺れた事。恐らく今揺れたイーブィのボールと関係するポケモンなのだろう。エーフィ。少しピンク色の身体をした猫のようなポケモンを霊矢はそう呼んだ。

 

 ラストまで取っておいたという事は彼が言うようにエースで間違いないだろう。私は少し深呼吸をし、気を引き締める。

 

「ロコン!!やきつくす!!」

 

「エーフィ!!でんこうせっか!!」

 

 私が指示を出したやきつくす。そして霊矢の出した指示はでんこうせっか。

ロコンが炎を吐き出している隙にエーフィは驚異的な素早さでロコンに迫り行くと、そのまま体当たりにてロコンを吹き飛ばす。それに次いで、ロコンの攻撃はあられもない方向に逸れてエーフィには当たらなかった。

 

「くっ!!ロコン!!でんこうせっか!!」

 

「あまえる」

 

「!?」

 

 せめて一撃を与えたい私の考えが読まれたかのようにエーフィに指示を出した霊矢。エーフィの方がスピードが上であり、ロコンはあまえるにより攻撃力を下げられた状態でエーフィにでんこうせっかを食らわせる。

 

 だがそのダメージはあまりにも貧弱。私は息を呑み、霊矢はニヤリと微笑むと…

 

「トドメ…エーフィ!!ねんりきだ!!」

 

「ロコン…でんこうせ…!!」

 

 エーフィの素早さが勝り、私がロコンに指示しようとした瞬間にねんりきをぶつけられ、ロコンは宙に浮かばせられた後に地面に叩きつけられる。砂煙が少し舞う程の威力で、ロコンはポニータとの戦いにて受けたダメージが蓄積していたのかここで戦闘不能に。

 

 霊矢はこれにニヤリとした表情を浮かべながら勝ち誇ったような感じだ。私は一息吐きながらロコンに「お疲れ様」との一言だけ呟くとモンスターボールに戻し、相性が悪いとはいえまだイーブィを出すまいとリオルを出そうとしていたのだが…

 

「ブイ!!」

 

「い、イーブィ!!まだ出番じゃ…!!」

 

「いいじゃないか。蹴散らしてあげるよ」

 

 既にモンスターボールから出ていたイーブィが私の前に。これにかなり驚かせられたが、霊矢の意見もありイーブィを出すことにした。一息吐くと何故かイーブィが睨みを効かせているエーフィに対し、私から指示を出す事にした。

 

「イーブィ!!びりびりエレキ!!」

 

「エーフィ、ねんりき」

 

 イーブィとエーフィとでは素早さはエーフィの方が上。エーフィの念で浮かばせられたイーブィはそのまま地面に叩きつけられるが、その間にエーフィに雷の一撃をぶつけ、エーフィを少し吹き飛ばす。イーブィとエーフィ、互いに身体を震わせて態勢を立て直したのを見て…

 

「エーフィ…でんこうせっか」

 

「イーブィ!!わるわるゾーン!!」

 

 エーフィが霊矢の指示によりイーブィに迫り、体当たりを食らわせてくる中でイーブィは少し踏ん張りながら黒い衝撃波を出す。エーフィはこれを喰らい吹き飛ばされるが、霊矢の表情が少し疑問を感じた表情になっていた。

 

「何なんだその技…!!イーブィは本来、そんな技を覚えない筈だ!!」

 

「そうね。特別な技だからね。その技の先生から見ても、この子は特別な体質を持つ子らしいよ」

 

「………」

 

 霊矢をここまで怒らせたのは恐らく、聞いたことのない技ばかりだったからだと思う。然もイーブィが覚えている一つの技がわるわるゾーンという、エーフィにとっては効果抜群のタイプの技。エーフィの正確なタイプは分からないが、嫌がっているのは間違いない。

 

「特別だと…!!ふざけるなぁ!!エーフィ!!かみつく!!」

 

「イーブィ!!もう一度わるわるゾーン!!」

 

 霊矢の怒りに乗せられ、エーフィは表情を引き締めながら向かって来る。イーブィの目の前で口を思い切り広げるが、私の指示を受けたイーブィのわるわるゾーンが再度炸裂。エーフィがイーブィに噛み付いたタイミングで、エーフィは再度吹き飛ばされる。

 

「エ…フィ…!!」

 

「何が違う!!お前のイーブィと僕のエーフィ!!同じ種族の筈…!!」

 

「そんなの私が知りたいよ…!」

 

 霊矢の怒りはほぼ頂点に達しているだろう。そんな中で高火力技であるわるわるゾーンを2回食らったエーフィはフラフラしている。私がトドメの一撃を指示しようとした瞬間にエーフィは霊矢の前でダウン。そのまま戦闘不能となった。

 

「エーフィ!!まさか…クリティカルを食らっていたというのか…!!」

 

「効果抜群の技を何発も耐えられる訳がない。然もクリティカルだとね」

 

 霊矢は歯を食いしばりながらエーフィをモンスターボールの中に戻していく。イーブィは勝った事に喜んでおり、思い切りの笑みを浮かべている。私自身、安心した表情を浮かべると元々ここが分かれ道だった事を思い出し…

 

「出ておいでリオル!!」

 

 この道が間違っていないかリオルに確かめてもらう。リオルは私の言葉を聞いた後に目を瞑ると、合っているという事を告げるかのように頷く。それを見てホッと安心した表情を浮かべると、少しショックを受けている霊矢に何も言わずにその場を後に…

 

しようとしたのだが…

 

「この借りは必ず返す…!!次は僕が必ず勝つ…!!」

 

「その時はまた受けて立つわ」

 

 気合い十分に告げてきた霊矢の一言に私も軽く言い返すとイーブィとリオルを再びモンスターボールに戻し、そのままジムに向かったのだった。




後書きまで見てくださりありがとうございます。


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最初のジムへ

久しぶりに投稿しまーす。


 霊矢との一戦を勝利で終え、また最初のスタジアムがある紅魔館にへと歩みを再開した私。その道中、霧の湖と呼ばれる場所にてポケモンセンターを発見し、傷ついたポケモン達を一度、センターの人に預けたのだった。

 

「この先、とんでもない人がいたなぁ…多分そこにジムがあるんだろうけど…」

 

 ポケモンセンターに入る前に目撃した大量のジムチャレンジャーの姿。私はその姿に驚かされながら、ここに入ったのだが…既に挑戦を開始している人もいるのだろうか。一息吐きながらそんな事を考えていると…

 

「あれ?蓮子!!蓮子じゃん!!」

 

「ん?」

 

 ポケモンセンターの窓から少々霧ががっている外を見つめていると、自動ドアが開いたと同時に聞いたことのある声と共に、足音が聞こえて来た。私は窓を見るのをやめ、声の方に振り返るとそこにいたのは先程、人里のポケモンセンターにて別行動となったメリーの姿。

 

 私はもう追いついたのか、という驚きがあったと同時に…

 

「メリー。アナタもここに来たばかり?」

 

「ううん。一度、スタジアム前に行ったよ。でも見てみればもう大渋滞。だから少し落ち着くまでここにと…」

 

 辺りを見渡せば見えるのは一般人には見えるものの、ちゃんとモンスターボールを持っているトレーナーの姿。全員がジムチャレンジャーなのか…メリーの言葉を聞いて少し納得したような気がする。

 

「後、30分くらいかな…そうしないと落ち着かないと思うよ」

 

「そっか…魔美の姿は?」

 

 メリーが来たという事は魔美も行動していると思うのだが、メリーは私の言葉に首を横に振ると「姿も見なかったよ」と呟く。私は「そっか」という一言を返すと、メリーにとある事を聞かれた。

 

「そういえばさっきアフロみたいな奴をもう一度見たんだけど…やたら不機嫌だったんだ。蓮子、何か知らない?」

 

「ああ…アイツか。アイツも霊夢さん推薦のジムチャレンジャーなんだって。さっきそこでバトルしたよ」

 

 メリーは私の言葉を聞き、大きく驚く。そしてバトルした事を聞かされると名前を聞く前にその結果を尋ねて来た。私は勝ったという事を告げると、ようやく何か納得したかのように笑みを浮かべた。

 

「だからあんなに不機嫌だったんだね…」

 

「ちなみに名前なんだけど…」

 

「ああ、いいよ別に。魔美みたいに関わる訳じゃないしさ」

 

 知らない奴は眼中にないという感じでメリーは私の言葉に対して首を横に振った。意外とも言える対応で私は少し驚いたが、表情に出ることはなかった。そんな中、ポケモンセンター内のアナウンスにて私が持っていた番号を呼ばれ…

 

「あ、メリー。ちょっと行ってくるね!」

 

「あ、うん。分かった」

 

 呼ばれたのは私だったのかと言わんばかりにキョトンとした反応をしていたメリー。そんな彼女の表情を一度横見しつつ、センターのナースさんから改めてボールを受け取る。本来はここで終わり…かと思いきや…

 

「あ、お客さん」

 

「はい?」

 

「ドラメシャ…って珍しいポケモンを持っているんですね。アナタに会いたがっていましたので、大事にしてあげて下さい」

 

 ナースの方からドラメシャに関する事を聞かされると、私は若干苦笑いを浮かべながら頷く。そっか…という思いと共に、私はドラメシャが入っているモンスターボールを少し握りしめる。そして一度メリーの元に戻ると…

 

「あ、蓮子!聞いて聞いて!行ってる間にスタジアム関係者の人が来ていたよ。私と蓮子を探していたみたい」

 

「え?私とメリーを?」

 

 スタジアム関係者がジムチャレンジャーに何の用なのだろうか。メリーが言うには外で待っているから私と共にそこに来いと言われたらしい。言われるがまま、私はメリーと共にポケモンセンターを出て関係者が待っているという場所に向かう。

 

 近くにそれらしき姿はない。私とメリー、2人で見渡しながら歩いていると一つの木の陰にて日傘を持ちながら待っている少女が。その肩には羽らしき物が生えている。

 

「メリー。もしかして…」

 

「そうそう!あの人!おーい!!」

 

 メリーは私の言葉に頷くと少女の元に近づいていく。完全に背も低く、私達より年下みたいに見えるが近づけば近づく程に彼女の出す雰囲気から、そうではないと思い知らされる。私が少々息を呑みながら足を止めると…

 

「ふぅん?アナタがメリーと共に霊夢から推薦を受けたトレーナーね?霊矢とはまた違った雰囲気ね?」

 

「………」

 

 霊矢に会ったという事を口に出そうとしたが少女は全て読み切っているような反応を見せていた。「皆まで言わなくていい」と言わんばかりに微笑んでいる彼女に、少々息を呑んでいるとそのままゆっくりと語り始めた。

 

「私はレミリア・スカーレット。ここのジムリーダーである紅美鈴の主人よ。そしてチャンピオンの霊夢とはちょっとだけ因縁深い関係にあるわ」

 

 少女はレミリア。ジムリーダーである紅美鈴の主人だという。霊夢さんと少々因縁深いと話す彼女の言葉を無言で聞いていると、レミリアは少し息を吐き私達の目をじっと見つめる。

 

「…いい目をしているわね。大抵ここに来るジムチャレンジャーは自信なさげの奴らが多いけど、アナタ達は違うみたいね。自信に満ち溢れているわ」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 レミリアさんの言葉に少し言葉を詰まらせながら礼を述べる。メリーは明らかに嬉しそうな表情を浮かべていたが、私は緊張しぱなしでそんな余裕はない。レミリアさんはクスクスと笑みを浮かべると…

 

「そんなアナタ達に少し教えてあげる。美鈴はかくとうタイプを使うわ。ジムチャレンジを突破出来る自信があるなら、紅魔館にいらっしゃいな」

 

 レミリアさんは美鈴がかくとうタイプを使うという事を教えてくれると、軽く挑戦状を叩きつけるかのようにその場から去って行く。レミリアさんの言葉に闘志を燃やすメリー。一方の私は緊張していた。

 

「絶対かぁつ!!それじゃ蓮子!!私、先行くね!!」

 

「あ、ちょっとメリー!!」

 

 勢いよく走り出したメリーは私の言葉で止まる気配すら見せず、その場から一気にジム前にへと走って行く。レミリアさんが言った因縁という言葉も気にはなるが、まずはジムチャレンジに挑まなければ…

 

「よし…!!私も頑張ろ…!!」

 

 覚悟を決めて紅魔ジムに向かってゆっくりと歩き始める。先程よりは少なくなったものの、遠くから見ても分かるぐらいの並んでいる人の多さ。まずはその行列に並びつつ、集中力を高めて行く。

 

 聞こえてくる歓声にどこか緊張が入れ混じり、集中出来ない気持ちも湧いてくるが今はそんな事言ってられない。

 

「………」

 

 待つ事数分。ようやくの思いで紅魔スタジアムの中へ。紅魔館そして紅魔スタジアムと2つの建物が横並びで立っているらしく、レミリアさんは普段は紅魔館という建物に住んでいるとの事だ。数分しか見えなかったが、赤色をした巨大な館だった。

 

 一方の紅魔スタジアムは最初に見た人里スタジアムとは少々内装が違い、オレンジ色を中心とした塗装がされている。ジムリーダーの方がそういう色を好んでいるのだろうか…

 

「……(ゴクリ)」

 

 並んでいる中でメリーが一足先に更衣室に入って行く姿が目に入る。いよいよかという思いが私の緊張を高めて行く。行列を少々進み、ようやく受付の前へ。ジムチャレンジについての説明を聞いた後に…

 

「ここでのジムミッションはポケモンバトルになります」

 

「ジムミッション?」

 

「ジムリーダーと戦う前に行う前哨戦です。今回はバトルですので、お気軽に」

 

 今回はという事は色々あるのだろう。受付に更衣室に向かうように言われた私はそのまま向かうのだった…




見てくださりありがとうございますー。


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ジムミッション

何とか書けましたので投稿します。


「……」

 

 更衣室からでも聞こえてくる歓声。そして受付前に戻って来たチャレンジャーが観客に拍手で出迎えられる。ジムリーダーに勝った人だと思うけど、今からジムミッションにチャレンジする身からすればプレッシャーでしかない。

 

 82番の背番号が付いたユニフォームを身にまとい、息を吐きながら更衣室の扉を開ける。景色は全く変わらないが、私から見える談笑するチャレンジャーの姿はとても輝いて見えていた。

 

「負けられない…!!」

 

 静かに私はそう呟き、改めて受付の人の前へ。ジムミッションをする為に改めてどこに向かえばいいかの説明を受け、私は受付奥の開いた扉に向かって歩いていく。扉の中に入れば、見えた矢印。この矢印通りに進めばいいのだろう。

 

 導かれるがまま、矢印の方向に進んでいくとすれ違ったのはジムミッションを失敗し戻って行くチャレンジャーの姿。成功している人ばかりではない。それを分かっただけに私の心は自然と引き締まっていた。

 

「………!」

 

 矢印に導かれ、階段を降りて行くと見えたのは大きめのバトルコート。その奥には既に待ち構えている人物がいた。銀色の髪、そしてメイド服を身に付けた女性はじっとこちらを見つめ…

 

「次のチャレンジャーね。私はジムミッション担当の十六夜咲夜。準備が出来たならポケモンを出して」

 

「は、はい!!」

 

 レミリアさんは確か、ここのジムがかくとうタイプの使い手と言っていた。それだけに出すポケモンも少し悩んでいたが、バッグに入っていたモンスターボールが突如として揺れだし、私が驚いている間にイーブィが元気そうな声を上げてバトルコートに出てきた。

 

「い、イーブィ!!だめだよ勝手に…」

 

「ブイブイ!!」

 

「いいじゃない。元気がある事は。さて、私もポケモンを出さないとね」

 

 咲夜さんはイーブィと私のやり取りを見て少しクスッと微笑むと、表情を引き締めてポケモンを出してくる。出して来たのは小さな人型のポケモン。バルキーというらしい。そして咲夜さんはふぅ…と一息吐くと。

 

「ジムミッションはいわゆるジムリーダーに挑む資格があるかどうかのテスト。気を抜いてやると倒すから覚悟して」

 

「はい…!!お願いします…!!イーブィ行くよっ!!」

 

「ブイッ!!」

 

 イーブィとバルキー。二体が表情を引き締め今にでも動き出せる状態に入った瞬間。バトルコートにバトル開始の鐘が鳴り響いた。私がイーブィに指示を出そうとした瞬間、咲夜さんがバルキーに一言指示を告げた。

 

「バルキー。ねこだまし」

 

「バルッ!!」

 

 イーブィの前に一瞬で迫って来たバルキーが目の前で手を合わせる。直接的に殴られはしなかったが、これによりイーブィは腰を抜かした。その間に咲夜さんは畳み掛けるかのように指示を出す。

 

「バルキー、メガトンパンチ」

 

「イーブィ、でんこうせっか!!」

 

 バルキーの拳をイーブィは私の指示を聞いた瞬間に、転がりながら回避。バルキーがそれを見て驚いている間にイーブィは体勢を整え、そのまま足元を蹴り出して思い切りバルキーにぶつかる。

 

「バルッ!?」

 

「畳み掛けるよイーブィ!!そのままでんこうせっか!!」

 

 少し怯んだバルキーに対して私はもう一度イーブィにでんこうせっかを指示。一度イーブィがバルキーから離れると再度高速でバルキーにぶつかる。少しバルキーは吹き飛ばされかけたが、何とか踏ん張ると…

 

「バルキー!!メガトンパンチ!!」

 

「イーブィ、びりびりエレキッ!!」

 

 拳を握りしめたバルキーが迫って来る間にイーブィに私は指示を出す。雷の衝撃波がバルキーに命中するが、バルキーはそんなの関係なしにイーブィに迫って来ると、そのままイーブィを思い切り殴りつけ吹き飛ばした。

 

「ブイィィ!!」

 

「バルキー!たいあたり!!」

 

「イーブィ、でんこうせっか!!」

 

 イーブィが何とか踏ん張っている間にバルキーがたいあたりしようと迫って来る。イーブィが地面を抉りながら踏ん張ったのを確認し、私は指示を出す。たいあたりして来たバルキーに対し、でんこうせっかを指示。互いに迫って行き、思い切りぶつかり合う。

 

「バルッ…!!」

 

「ブイ…!!」

 

「イーブィ!!そのままの状態からびりびりエレキ!!」

 

 ぶつかり合っている状態なら確実に攻撃が当たる。そう思った私は強行策に出た。イーブィにびりびりエレキを指示。咲夜さんのバルキーがかわそうとする前に、近くから雷の衝撃波がバルキーに命中する。これによりバルキーは少し吹き飛んだ後、膝をつき…

 

「中々やるわね…でも!!バルキー!!メガトンパンチ!!」

 

「バル…ッ!!」

 

「行くよイーブィ…でんこうせっか!!」

 

 膝をついたバルキーだったが咲夜さんの指示により立ち上がると、そのまま拳を握りしめる。そのまま向かって来たその瞬間にイーブィにでんこうせっかを指示。思い切り足元を蹴り出して、迫り行くとバルキーより先にぶつかる。

それでもバルキーは耐え、そのままイーブィにメガトンパンチを喰らわすが…

 

「ブイ…!!」

 

「バル…!!」

 

「……!」

 

 イーブィはメガトンパンチを食らっても尚、何とか踏ん張り立っていた。そしてメガトンパンチを喰らわせたバルキーも何とかイーブィを睨みつけていたが、急にフラついたかと思えばそのまま仰向けに倒れた。

 

「……!!」

 

「やった…!!やったよイーブィ!!」

 

 素直にバルキーに勝った事が嬉しかった。イーブィも私と同じ感情だったようで、飛び跳ねながらこちらにやって来るとそのまま抱きついて来た。私達の様子を見て、咲夜さんはバルキーを戻して一息吐くと…

 

「お疲れ様。ひとまず合格よ。先に行きなさい。そろそろ前のチャレンジャーのジムリーダーへの挑戦が終わった頃だと思うわ」

 

「はい…!!ありがとうございました!!」

 

 私はジムミッションを担当してくれた咲夜さんに礼を告げると、そのまま彼女の言う通りにバトルコートから試合会場に向かって歩いていく。歓声が鳴り止まない中、私はバルキーとの一戦で頑張ってくれたイーブィにキズ薬を使って回復させると…

 

 試合会場のバトルコートに向かう通路からゆっくりと歩いていく。歓声がプレッシャーとなる中で一度戻っていたジムリーダー美鈴選手がゆっくりと、バトルコートに向かって逆の通路から歩いて来た。

 

「(この人が…ジムリーダー…!!)」

 

 大きめの身長とチャイナ服を身に付けたのは咲夜さんが言っていたジムリーダーである美鈴さん。そのジムリーダーと向かい合った中で冷や汗が出てくる中で、美鈴さんはすぅ…と息を吸って吐いた後にゆっくりと語り出す。

 

「まずはジムミッション合格おめでとうございます。ジムリーダーの紅美鈴です。82番。蓮子さんですね。先程アナタの友達がジムバッジを貰ったばかりです」

 

「そうなんですね…」

 

「アナタはどうでしょうか。緊張しているようですが、私に勝つ自信は?」

 

 笑みを見せながらもどこか真剣さを捻り込んだ言葉に私は改めて表情を引き締めながら、「あります」と声を張り上げる。それを聞いた美鈴さんは「それだけで十分です」と納得したかのように呟くと…

 

「では始めましょうか。私の実力を持ってその挑戦を跳ね除けてみせますから!!」

 

 美鈴さんはそう呟くとゆっくりと私から離れていく。私も美鈴さんから少しだけ離れると、モンスターボールを出す構えを取る。湧き上がる歓声そしてジムリーダーを推す声。完全にアウェーな状況だが負けるわけには行かない。

 

「参ります!!行きますよバルキー!!」

 

「行くよ…ロコン!!」

 

 美鈴さんはバルキーを繰り出し、私はロコンを繰り出す。大歓声の中、私の挑戦が幕を開ける…




見てくださりありがとうございます。


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ジムリーダーとの激突

久しぶりに投稿します。よろしくお願いします。


 私と美鈴さんが互いのポケモンを出した瞬間に大きな歓声がスタジアムを満たして行く。期待されているというプレッシャーが全身を駆け巡る中、先手を取るべく、私達2人が声を上げる。

 

「ロコン、でんこうせっか!!」

 

「バルキー、ねこだましですっ!!」

 

 互いのポケモンが声を上げて足元を蹴り出す。互いに同じタイミングで近くに迫った中、ロコンのでんこうせっかを少ししゃがみ気味にかわしたバルキーがロコンの目の前でパンッ!!と両手を合わせた音を鳴らす。

 

 ロコンはそのねこだましに怯まされ、少し腰を抜かしかけると美鈴さんが畳み掛ける。

 

「バルキー!!続けてメガトンパンチッ!!」

 

「っ!!ロコンやきつくす!!体勢を整えてっ!!」

 

 フラフラするロコンにバルキーは拳を握りしめて、こちらに向かって来る。技の指示するタイミングも完璧でスムーズだ、経験からして向こうの方が圧倒的に上だ。でもこちらとて怯む訳には行かない。

 

 ロコンのやきつくすで放たれた炎は、バルキーの進行を妨害。炎をかわしながら向かって来ているため、時間がかかっている。その間にロコンはしっかりと立て直した。

 

「よし…!!ロコン!!でんこうせっかっ!!」

 

「バルキー!!たいあたりに変更!迎え撃って下さい!!」

 

 ロコンは足元を蹴り出すとバルキーに接近。そのまま思い切りぶつかるが、美鈴さんも技をたいあたりに変更。両者音を立ててぶつかり合うと、衝撃の音と共に互いに少し吹き飛ぶ。ロコンが着地したタイミングで私は指示を出す。

 

「ロコン!!やきつくす!!」

 

「バルキー!!メガトンパンチッ!!」

 

 バルキーは遠距離の技を持っていない。これを好機と見て私はやきつくすを指示。ロコンが炎を吐き出している間にバルキーは拳を握りしめて、こちらに迫って来ようとするが目の前に迫ったタイミングで私は少し賭けに出る。

 

「ロコン!!かなしばりっ!!」

 

「っ!?」

 

 素早さがこちらの方が早いなら通る筈…!!その賭けに出たロコンの技はバルキーより早く放たれ、メガトンパンチを直前で防ぐ事に成功した。しかもバルキーはロコンの目の前。私はこの好機を利用し…

 

「ロコン!!やきつくすッ!!」

 

「バルキー!!かわしてっ!!」

 

 バルキーよりロコンの方が素早さが上。ロコンの攻撃は瞬く間にバルキーに命中し、炎を浴びせた。バルキーは炎を振り払いながら美鈴さんの元に戻ると、美鈴さんは息を呑みながら指示を出す。

 

「バルキー!!たいあたり!!」

 

「ロコンもう一回やきつくす!!」

 

 バルキーはロコンに思い切り迫って来るが、遠距離攻撃を持つこちらの方が有利。ロコンの吐かれた炎の前にしてもバルキーは突撃。ロコンを目の前にして少し膝をつきかけたバルキーを見て、美鈴さんは少し歯を食いしばりながら…

 

「バルキー、その場から戻って来て!!」

 

「逃がさないっ!!ロコン!!でんこうせっかっ!!」

 

 バルキーがたいあたりを諦め、美鈴さんの方に引こうとしたタイミングで私は動く。ロコンにやきつくすをやめ、でんこうせっかを指示したのだ。バルキーより早くその近くに迫ったロコンは思い切り背中にたいあたりを食らわし、バルキーを吹き飛ばした。

 

「バルキーッ!!」

 

「バル…」

 

 このタイミングでバルキーは戦闘不能に。スタジアムのビジョンに提示される美鈴さん側のポケモンが一体減り、美鈴さんはバルキーをモンスターボールに戻す。そしてすぐ繰り出したのは…

 

「行きますよワンリキー!!」

 

「(ワンリキー…!!)」

 

 出てきたのはバルキーに似たワンリキーというポケモン。歓声がピークに達する中、美鈴さんはニヤリと微笑み…

 

「私達は常により高みへ…上を目指しますっ!!行きますよワンリキー!!ダイマックスッ!!」

 

「っ!!」

 

 美鈴さんは一度ワンリキーをモンスターボールの中に戻すと、持っていたダイマックスバンドの力を発動しボールを大きくする。そして気合いを入れると思い切り自身の後ろにボールを投げた。ボールからワンリキーが出るとその姿はどんどんと巨大化。着地と同時に砂煙を巻き起こすと、大きく声を上げた。

 

 ダイマックスの登場に観客の興奮はピークに達する。あまりの存在感に息を呑む中、私はロコンに指示を出す。

 

「ロコン!!でんこうせっか!!」

 

「ワンリキー!!ダイナックルッ!!」

 

 先手を取ったのはロコンだが、あまりに巨大の身体に与えられたダメージは微々たる物。美鈴さんの指示を受け、ワンリキーは気合いを入れると空から巨大な拳の形をした何かを降らせる。ロコンから離れた場所に落ちたが、その衝撃波はバトルコート全体に伝わって行く。

 

 巻き起こる大きな砂煙。次に見えたのは一撃で戦闘不能になったロコンの姿。

 

「一…撃…っ!?」

 

 大きくなった地点で何か起こると思ったが、まさかここまでとは。あまりの威力に私が息を呑む中、ロコンをモンスターボールの中に戻す。相手はかくとうタイプ。イーブィを出せばカモを出しているような物だ。少し悩んでいると、私の一つのボールが揺れているのが分かり…

 

「賭けるよ君に…!!行っておいでドラメシヤ!!」

 

 私が出した2体目のポケモンはドラメシヤ。かくとうタイプの技は全て透かすゴーストタイプだが、ここは油断ならない。私は冷や汗をかきながらももう一つ賭けに出る。

 

「ドラメシヤ!!ダイマックス!!」

 

「へえ…」

 

 ドラメシヤを一旦ボールに戻すと美鈴さんは余裕あるの笑みを浮かべる。ダイマックスバンドの力を発動させ、ボールを大きくすると自身の背後に思い切り投げる。ドラメシヤの大きくなった姿に、観客も意外そうな声を上げる中…

 

「意外なポケモンを持ってますね…いいでしょう…来なさい…!!」

 

「ドラメシヤ!!ダイホロウッ!!」

 

 ドラメシヤは私の指示を受け、何かの物の幻影を出すと思い切りワンリキーにぶつける。ワンリキーは少し怯んだがそのダメージは微々たる物。そこで美鈴さんが微笑み…

 

「ワンリキー…ダイアーク」

 

「ダイアーク…っ!?」

 

 ワンリキーは再び気合いを入れ直すと赤黒い光をドラメシヤにぶつけて行く。この攻撃を受けドラメシヤは爆発し、元の大きさに戻って行く。その光景に驚かせられた。ダイマックスを持ってしても一撃でやられたからだ。

 

「ワンリキーはあくタイプの技も覚えます。アナタのポケモンを全抜きするのは無理ですが…次を出して下さい。後1発…一撃で倒してあげます」

 

 後一撃…私は息を呑む。一か八かの賭け…勝利に繋げるならもうこれしかない…!!ドラメシヤをモンスターボールに戻すと、繰り出したのはリオル。リオルはある技を持ってるが、かくとうタイプのジムリーダーである美鈴さんなら知ってる筈…

 

 とりあえず悟られないように…

 

「リオル…分かりました…一撃で行きますよ…!!ワンリキーダイナックル!!」

 

「(耐えてリオルッ!!)」

 

ワンリキーの攻撃が再びリオルの元へ。リオルも衝撃波をまともに喰らうが、私の願いが通じたのかロコン、ドラメシヤを一撃で落としたワンリキーのダイマックス技を耐え切った。少しボロボロだがもう行くしかない。私は思い切って声を張り上げた。

 

「リオル!!カウンターッッ!!」

 

「っ!?しまっ…!!」

 

 リオルは元の姿に戻ったワンリキーに迫ると、思い切りパンチを喰らわせる。どれほどの一撃になったかは分からないが、リオルをボロボロにさせる威力。ワンリキーはこれにより大きく吹き飛び、戦闘不能となった。

 

「ワンリキー…っ!!まさか…カウンター仕込みだったとは…恐れ入りました…」

 

「やった…!!やったっ…!!」

 

 リオルが私の元に戻って来る。私も安心した声を上げると、リオルを出迎えた。カウンター仕込みと悟られたら全てが終わっていた。上手くいって良かったと私は一安心したのだった…




まずは1人目…とここまで来るのが長かったような気がします…w


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バッジを手に入れた者として

明けましておめでとうございます。新年1発目の投稿になります。


「かくとうバッジ…!!私ジムリーダーに勝てたんだ…!」

 

 一戦を終え美鈴さんからもらったジムバッジをバッジケースにはめ込む。更衣室で呟いた一言が部屋中に反響する中で、私はそんな事お構いなしに試合の勝利を噛み締める。ユニフォームから私服に着替え更衣室を出ると、試合に勝ったからだろうか、人々のこちらを見る目が変わった気がする。

 

 妬みと言ったそんなマイナス的な物ではなく、尊敬などと言ったポジティブな物。悪い気はしなく、私はひとまずジムを出て傷ついたポケモンを回復させる為にポケモンセンターへ。

 

「そういえばメリーはジムバッジを貰ったのだろうか…」

 

 ジムを出て一息吐いた私はふと気になった事を口に出す。先程までいたメリーが居なくなった事を気にしつつ、ひとまずポケモンセンターに赴く。そのセンター内に入ると紫の服を着た女性と語り合っているメリーの背中が見えた。

 

 会話中との事で私はひとまずポケモンセンター内のナースさんに喋りかけようとしたのだが…

 

「あ!蓮子!!無視しないでこっち来てよ〜!!」

 

 すぐに気付かれた。押し切って女性とメリーを無視するのも後味が良くないし、ひとまず私はポケモンの回復を後回しにして2人の元に近づく。

 

「ジムリーダーに勝ったみたいね。おめでとう。ひとまずポケモンを回復させましょうか、ボールケースを出して」

 

「え?あ、はい…!!」

 

 何故ジムリーダーに勝ったか、ポケモンが傷ついているかに気づいたのか全く分からないが私は言われるがままにボールケースを女性に見せると、女性は足元に魔法陣を展開するとボールケースを光らせる。訳も分からないままに、任せていると魔法陣はすぐに消え…

 

「これでいい。アナタのポケモンは全員回復したわ」

 

「あ、ありがとうございます…所でアナタは…?」

 

「パチュリー・ノーレッジ。一応、今回のジムチャレンジのスポンサーの1人よ。先程の試合も見ていたわ。2人ともナイスファイト」

 

 パチュリーと名乗った人は何と今回のジムチャレンジでスポンサーをしている人物だと言う。私がそんな事に対して驚いている間に、笑みを浮かべられて褒められメリーは照れ笑いし私は思わず頭を下げた。私達の反応を見て静かに息を吐いたパチュリーさんは…

 

「メリーにも話したけど、次の場所は人里に逆戻りして開会式が行われたスタジアムで行うわ。私はチャンピオン推薦だと言う実力者の顔を見に来ただけ。…期待してるから頑張って」

 

「えへへ…ありがとうございます!!」

 

「ありがとうございます…!!」

 

 褒められた事は素直に嬉しかった。パチュリーさんは私達の反応に頷くと、ポケモンセンターにまで探しに来たマネージャー…の方だろうか。黒い小さな羽根を生やした女性とその場を去って行く。やっぱりチャンピオン推薦というのはかなり大きな事らしい。気を引き締めないと…

 

 隣のメリーは嬉しそうに去って行くパチュリーさんの背中を見つめていた後に、堪え切れなくなったかのように少し小さめに笑い声を上げ…

 

「あんだけ褒められたら気合いも入るよね…!!よし蓮子!!勝負しようよ!!」

 

「え、ええ…!?私もメリーも試合して来たばかりだよ!?」

 

「だからするんじゃん!!外で待ってるから準備出来たら来てね!!」

 

 メリーの行動力には驚かせられる。私の言葉を押し切って笑みを浮かべたメリーはそのまま勢い良くポケモンセンターを飛び出す。パチュリーさんに回復させて貰ったし、ナースさんに話しかける必要はない。

 

 私は一呼吸を入れるとポケモンセンターを出た。

 

 ポケモンセンターを出て少し離れた場所にメリーはいた。自信満々な表情をして私を待ち構えており、少しの準備体操している姿からはその余裕すら伝わって来る。私は少し緊張しながら彼女に近づくと…

 

「準備出来たんだね!!よーし!!全力で行くよー!!」

 

「変わらないな…メリーは…!!」

 

 モンスターボールを構えた私とメリー。少しばかり表情を引き締めると先手として繰り出して来たのは何とエースであるピカチュウ。初手エースのメリーの策に驚かせられた私だったが、少し対抗するかのようにイーブィをボールから繰り出す。

 

「よーし!!ジムバッジを手に入れた力…見せるからね!!」

 

「それは私もそう…!!行くよイーブィ!!」

 

「ブイ!!」

 

 イーブィに語りかけるとイーブィは力強く返事。ピカチュウも声を上げて表情を引き締めた様子だ。互いをにらめ付け合う両者。トレーナーである私とメリーも少し息を吐いた後に…

 

「イーブィ!!でんこうせっかっ!!」

 

「ピカチュウ!!同じくでんこうせっか!!」

 

 先に動き出したのは素早さが上のピカチュウ。あっという間にイーブィに迫るとそのまま体当たり。イーブィは少し吹き飛ばされそうになるが、何とか踏みとどまるとピカチュウを少し弾き飛ばした後に改めてピカチュウにぶつかる。

 

 イーブィとは違い、少し吹き飛んだピカチュウだったがこれが幸いし、すぐ体勢を立て直すきっかけとなった。これをチャンスと見たメリーがニヤッとした表情から指示を出す。

 

「ピカチュウ!!エレキボール!!」

 

「っ!!イーブィ!!わるわるゾーン!!」

 

 ピカチュウのエレキボールに対してこっちはわるわるゾーンで対抗。だがやはり向こうの方がスピードは上手で、イーブィが黒い衝撃波を放ったその時には電気の玉はほぼ目の前。弾き返す事が出来ずに、イーブィにエレキボールは直撃。

 

 イーブィが吹き飛んでいる間にエレキボールを放てたピカチュウは少し余韻に浸っていたのか、かわす事をせずにわるわるゾーンを直撃。少しイーブィと同じく少し吹き飛んだがすぐに体勢を立て直す。

 

「ピカチュウ!!でんこうせっか!!」

 

「イーブィ!!もう一度わるわるゾーン!!」

 

 体勢を立て直したピカチュウの切り返しが早く、あっという間にメリーの指示を受け止めてでんこうせっかを遂行。イーブィが再びわるわるゾーンを放とうとしたその時には、既に目の前。思い切り体当たりを喰らわして、イーブィの攻撃を阻止した。

 

「っ!!イーブィ!!でんこうせっか!!」

 

「ピカチュウ!!エレキボール!!」

 

 イーブィは少し怯んだ後に体勢を立て直すとすぐに足元を蹴り出して、尻尾に電気を溜め込もうとしているピカチュウに接近。そのまま一気に体当たりを喰らわせたが、技阻止には至らず…

 

「耐えたねピカチュウ!!そのままエレキボールだっ!!」

 

 ピカチュウの尻尾から放たれたエレキボールがイーブィの元へ。私はイーブィに回避を指示したが、やはりスピードはピカチュウの方が上。イーブィが少しその場から離れようとしたその時に、エレキボールがイーブィにほぼ直撃。イーブィは再度吹き飛ばされたが…

 

「イーブィ!!大丈夫…!?」

 

「ぶ、ブイ…」

 

 今のエレキボールが決め手となり戦闘不能に。悔しい思いを隠して私はモンスターボールに戻すと次に託したのはでんきタイプの攻撃があまり効かないドラメシヤ。このポケモンを見てメリーは驚き…

 

「そんなポケモンを捕まえていたんだね…!!でもこれを耐え切れるかな!?ピカチュウ!!エレキボール!!」

 

「ドラメシヤ!!かみつく!!」

 

 ピカチュウが尻尾に再び電気を溜め込み、再びエレキボールとしてドラメシヤに放って来る。スピードはほぼ互角の両者なだけにドラメシヤはエレキボールに上手く対応し、少し掠った程度で済ませるとそのままピカチュウに噛み付いた。

 

「っ!?早いっ!?」

 

 かみついたドラメシヤを振りほどくピカチュウ。ドラメシヤは私の手前に戻ると、私の方をチラ見。それを見た私が一息吐くと…

 

「こっから巻き返すよドラメシヤ!!」

 

「メシャ!!」

 

 と強くメリーの方を見たのだった…




見てくださりありがとうございます^o^


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勝負の行方

久しぶりに投稿します〜。


「ピカチュウ!!でんこうせっか!!」

 

「ドラメシヤ、かみつくっ!!」

 

 ピカチュウのスピードを考えれば微々たる差になるとはいえ、後攻になる。でも私はその事を見越してドラメシヤにかみつくを指示した。ピカチュウのでんこうせっかによる体当たりがものの見事にすり抜け、ドラメシヤがピカチュウにかみつく。

 

 その光景を見たメリーは驚いた様子で…

 

「透けた!?…はっ!!ゴーストタイプかっ!!」

 

「そう言う事!ドラメシヤ、ピカチュウを離してでんこうせっか!!」

 

 ドラメシヤはピカチュウを一度離すと私の指示通り、少し助走を付けてからピカチュウにでんこうせっかをぶつける。噛みつかれて少しフラフラとしていたピカチュウは、少し吹き飛んだもののすぐに体勢を立て直す。ドラメシヤは元々攻撃力に特化した訳ではない為、地道に攻めていかないと行けない。

 

 でも考えないと行けないのはメリーも同じ。前回と技構成が同じなら、効果イマイチのエレキボールしか攻撃手段がない筈…!!

 

「そのまま行くよドラメシヤ!!かみつく!!」

 

「ピカチュウ!!なきごえ!!」

 

 メリーが取ってきた手は鳴き声。ピカチュウが発した声にドラメシヤが少し怯んだものの、完全に行動をストップするには至らずかみつくが再度ピカチュウに炸裂。だが攻撃力を下げられている分、少しあっさり気味に引き離されたが…

 

「ドラメシヤ!!おどろかすっ!!」

 

「やるしかない…!!ピカチュウ、エレキボール!!」

 

 近距離からピカチュウの尻尾に溜めたエレキボールがドラメシヤに炸裂。だが少しのダメージはあったものの、ドラメシヤにはあまり効かないでんきタイプの技。そのまま止まる事なく、ピカチュウの背後に回り込み後ろから思い切り驚かせる。

 

 元々ダメージが蓄積していた影響からか、ピカチュウはここで気絶という形で戦闘不能に。4人抜きの恐れがあっただけに私はひとまず、突破出来た事にホッと一息吐く。メリーはピカチュウをモンスターボールに戻し…

 

「エレキボールもでんこうせっかも効かない…でもゴーストタイプなら…!!行っておいでココガラ!!」

 

「まだ行けるよねドラメシヤ!!」

 

 メリーの2番手はココガラ。ここさえ突破すれば何とかなる筈…!!私の問いかけに元気よく答えたドラメシヤは未だ気合い十分の表情。ゴーストタイプというのはバレている為、ノーマルタイプ以外の技で攻めてくる。そう確信した私はドラメシヤに…

 

「ドラメシヤ!!でんこうせっか!!」

 

「無駄なダメージをつけられる前に決着をつける…!!ココガラ、つけあがるっ!!」

 

 スピードが上のドラメシヤがココガラに急速に接近し、思い切りその体をぶつける。ココガラはこれを受けて少しフラフラしたものの、すぐに体勢を立て直しメリーの指示通りに思い切り、突き上げるかのようにしてドラメシヤを攻撃。

 

 ドラメシヤは何とか私の元に戻って来たが当たりどころがクリティカルだったのか、かなり混乱したかのようにフラフラしている。メリーはその様子を見逃す筈もなく…

 

「とどめ!!ココガラ!つつくっ!!」

 

「ドラメシヤ!しっかりして、ドラメシヤ!!」

 

 私の呼びかけも虚しくココガラの攻撃がドラメシヤに命中。そのまま地面に落ちて戦闘不能となった。少しだけだがピカチュウから受けたエレキボールも影響していたのだろう、私は少し歯を食いしばった後にドラメシヤをモンスターボールに戻し…

 

「お願い…!!ロコンッ!!」

 

 リオルが不利なのは目に見えている。ここでロコンを選んだ事に迷いは無かった。ボールから出てきたロコンは気合い充分の表情。私も一息吐いてメリーとココガラを見つめる。

 

「行くよ…!ココガラ!にらめつける!!」

 

「ロコン!でんこうせっか!!」

 

 私とメリー、同時に指示を出した中で先にその場から動いたのはロコン。ココガラの間合いにあっという間に迫ると、そのまま体当たりを喰らわす。だがココガラは地面を抉りながらもその場に踏みとどまり、にらめつけるを遂行。ロコンに寒気を覚えさせた瞬間に…

 

「今だ…!!ココガラ!つつく!!」

 

「っ!!ロコン、やきつくす!!」

 

 2体の距離はほぼゼロ。その中で先に動いたロコンがやきつくすの炎を浴びせて行くが、ココガラは踏ん張りつつもメリーからの指示を遂行。ロコンをくちばしで思い切りつつき、ロコンのやきつくすを途中で食い止めた。ほぼゼロ距離からの攻撃にさすがに反動はあるようで…

 

 少しふらついているココガラに対し、体勢を立て直したロコンに指示を出す。

 

「ロコン!!でんこうせっか!!」

 

「ココガラ、つけあがる!!」

 

 メリーにとってはこの指示は賭けだったと思う。そして私にとってこの指示はトドメにすると決め込んでの事。先にココガラに迫ったロコンの体当たりと迫って来たロコンに対してココガラの攻撃が同時にぶつかり合う。さすがに少しながらも両者吹き飛んだが…

 

 フラつきが強くなっていたココガラはここで力尽きて戦闘不能に。メリーはその様子を見て怒りを堪えるかのように静かに息を吐くとココガラをモンスターボールに戻して行く。そして3体目、初手にエースピカチュウで来たメリーの最後に残ったポケモンは…

 

「行っておいで!ウールー!!」

 

 ノーマルタイプであるウールー。唯一リオルでしか弱点を付けない相手だが、このウールーの特性が打撃によるダメージを半減させてしまうという厄介な物。ロコンで攻め切るしかない…!!

 

 ウールーとロコンが対面する中で、メリーと私も気合いを入れたかのように小さく息を吐くと…

 

「行くよ…ロコン!でんこうせっか!!」

 

「ウールー!まるくなる!!」

 

 ロコンがウールーに迫り行く中でメリーが取った策はまるくなる。ウールーが少し防御体勢に入った瞬間にロコンがウールーの元へ。そのまま体当たりを喰らわすが、毛皮に弾かれ少しばかり吹き飛ぶ。ダメージが返って来た訳ではなく、ロコンはすんなりと私の前に着地した。

 

「ウールー!たいあたり!!」

 

「ロコン!やきつくす!!」

 

 ロコンが着地した瞬間にメリーは指示を出す。体当たりするために転がって来るウールーに対して、私は遠距離から攻撃出来るやきつくすを指示。ウールーの動きは一直線、ロコンの吐いた炎はウールーに命中しながらも何とかロコンに体当たりを喰らわす。

 

「っ!!ロコン!もう1発やきつくすっ!!」

 

「ウールー!!そのままたいあたり!!」

 

 ロコンは少し離れ、炎を溜め始めた瞬間にウールーはメリーの指示通り突撃。私達2人とも強行策に出たけど結果は…

 

 その距離ほぼゼロ。ロコンのやきつくすの炎がウールーに命中して行く中で、ウールーは身体に思い切り力を入れながら、炎を突破してロコンに体当たりを喰らわして吹き飛ばす。

 

「大丈夫!?ロコン!!」

 

「コン!!」

 

 ロコンは吹き飛びはしたものの、平気そうに私の問いかけに対して声を上げて返事をする。一方のウールーは特性のせいでもあるのか、ほのおタイプの技が2倍のダメージを受けるようになってしまっている為、常に大ダメージを受けていた事になる。

 

 さすがにそう何発も受け切れる体力がある筈もなく、ここで倒れて戦闘不能に。メリーはかなり悔しそうにしながらも、ウールーをモンスターボールに戻す。一方の私はホッとしながらモンスターボールにロコンを戻す。

 

「いやあ…やられちゃったよ…強行策に出たのがダメだったね…」

 

「ううん…メリーもかなり強くなってるよ。私、イーブィがやられた時は負けると思ってた」

 

「…そっか」

 

 何か驚いた表情でメリーは私の言葉に対して呟く。その驚きがなんなのか分からないまま、私はメリーと共に回復させるためにポケモンセンターに駆け込むのだった…




明日は多分違う作品を投稿するかもしれないです。


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久しぶりの対面

久しぶりに更新します。


 私とのバトルの後、少し悔し気味の表情を見せていたメリー。そんな彼女から、「少し遅れて向かうから先に行っといて」と言われ、私は渋々彼女より先に2つ目のジムのある人里にへと戻る。ポケモンは何体か見たが、戦闘になる事なくスムーズな形で戻る事が出来た。

 

「ブイ!!ブイ!!」

 

「イーブィ…大丈夫だよ。メリーにもメリーの感じがある訳だし…」

 

 正直言ってあそこまで悔しがるとは思わなかった。帰り道ずっとその事を考えていた私の気持ちを察してくれたイーブィの頭を撫でつつ、夕日が差し掛かっている空を見上げる。少し急がねばとジムに駆け足気味に向かったのだが…

 

「ん?あれは…」

 

 ジムに足を運ぶとそこにいたのは扉の前に立ち、ゆっくりと一息吐いた1人の少女。黒髪のショートヘア…見覚えがあるような。そんな事を考えながらその背中を見つめていると、少女はゆっくりとこちらの方に振り返る。その顔を見た瞬間に私はハッとした。

 

「あれ?蓮子じゃん。こんな所で何してるの?」

 

 こちらにゆっくりと近付いて来たのはジムリーダーの1人、霧雨魔理沙の娘である魔美。魔美の問いかけに対して、ジムが開いてないか見に来たと答えると、魔美は「あー…」と何か言いたげに呟いた後に…

 

「早いけど、もう今日の営業は終わりだってさ。私も間に合わずに途方に暮れていた訳」

 

「もう閉まったの!?まだ夕方に差し掛かったばかりだよ!?」

 

 魔美の言葉にびっくりして思わず声を上げてしまった。すぐにハッとして魔美に謝ろうとしたが、彼女は驚くどころかクスクスと笑っている。その真意を聞こうとした瞬間に、彼女の口から…

 

「聞いたよ蓮子。ジムリーダーの1人を倒したんだってね。そら気分良く2連勝して一日を終わりたいよね」

 

「かなり苦戦したけどね…まあ、魔美の言う言葉通りなんだけど…こればかりは仕方な…」

 

「じゃあさ」

 

 魔美からの言葉を肯定しつつ、仕方ないと今日は諦めようとしたその時。私の思いとは裏腹に別の話を切り出した魔美の表情からはどことなく自信が伝わり…

 

「ジムリーダーと対決する代わりに私とバトルしない?いずれ、蓮子やメリーとはバトルしないと行けないからさ」

 

「…!同じジムチャレンジャーだしね。いいよ分かった」

 

 自信が伝わってくる表情からの問いかけに私もニヤリと口元を緩ませながら承諾。魔美は私が承諾したのを聞き、クスッと少しだけ笑い何回か頷くとジム前から移動し、メリーともバトルしたバトルコートに移動する。

 

 魔美とバトルするのは当然初めて、私の肩に乗っているイーブィも気合いが入ってる様子だ。

 

「手加減は無しだからね!こちらも全力で行くから!!」

 

「手加減なんてしたら、魔美に無礼だからね…私も全力で行くよ…!!」

 

 魔美はバッグからモンスターボールを出し、私の方に向ける。一方私の一体目は気合いが入っていたイーブィ。ピカチュウとの対戦で敗れてからというもの、リベンジしたいという気持ちが強いらしく表情をかなり引き締まっている。

 

「イーブィでいいんだね?」

 

「ええ。私のイーブィ気合い入ってるから、気をつけてね…!!」

 

「これはこっちのセリフでもあるな…!!行っておいでタタッコ!!」

 

 イーブィと私の方を交互に見てニヤリと笑った魔美はモンスターボールを構えると、ボールからタタッコというポケモンを繰り出す。少しボクサーのような格好をしたタコのようなポケモン。恐らくかくとうタイプだろう。

 

「行くよイーブィ!!ほしがる!!」

 

「タタッコ!!みきり!!」

 

 私の指示を受けてその場の地面を蹴り出し、タタッコに迫って行くイーブィ。そのままたいあたりをかまそうとしたのだが、技を見切られてかわされる。イーブィはかわされた地点で急ブレーキをかけて止まろうとしたのだが、返ってそれが隙となってしまい…

 

「タタッコ!!かわらわり!!」

 

「イーブィかわして!!」

 

 後方から迫って来たタタッコの攻撃が迫ろうとしたその時、私の指示を受けたイーブィが何とか攻撃を回避。タタッコが殴りつけた地面が大きくひび割れたのを見て、息を呑む中私はイーブィに指示を出す。

 

「びりびりエレキッ!!」

 

「にらみつける!!」

 

 イーブィの雷の衝撃波がタタッコに向けて放たれる中で、タタッコはイーブィを睨みつける。当然、この行動をしていた為タタッコに衝撃波は直撃。少し吹き飛びはしたが何とか踏みとどまり、イーブィが見せた少しの寒気を見たら何か効果はあったのだろう。

 

 私は冷や汗を拭い、小さく息を吐くと次の指示を出す。

 

「イーブィ、でんこうせっか!!」

 

「タタッコ、もう一回みきり!!」

 

 地面を蹴り出してタタッコに一気に近づいたイーブィではあったが、指示されていたみきりによりこれをかわされる。かわされたのを見てイーブィが再び急ブレーキ。だがこれがタタッコの射程内に入ってしまい…

 

「タタッコ!!いわくだき!!」

 

「っ!!イーブィ、わるわるゾーン!!」

 

 後方から再び迫ってくるタタッコの攻撃。ここからかわすのはほぼ不可能だと判断し、攻撃技を指示。黒い衝撃波をイーブィが放とうとしたが、タタッコのパンチにより掻き消されてしまい、タタッコのパンチが顔面に命中してイーブィは吹き飛ぶ。私の前で踏みとどまったが、少し堪えたのか膝をつく。

 

「(このままじゃ後1発でやられかねない…!!)イーブィ、交代!!お疲れ様…!!」

 

 いわくだきを食らったイーブィが圧倒的に不利だと感じた私は、ここでポケモンを交代。魔美はその行動に驚いていたが、なりふり構ってられない…!!イーブィをボールに戻した私はかくとう技を透かす事が出来るドラメシヤにチェンジした。

 

「行っておいでドラメシヤ!!」

 

「バトルの中で交代なんて珍しいね…でもさっさとイーブィを引きずり出すよ!!タタッコ!!かわらわり!!」

 

 タタッコがドラメシヤに迫ると、そのまま拳を振り下ろして来るがドラメシヤはゴーストタイプの為タタッコのかわらわりを透かしダメージを喰らわない。技は全て見た…後は押し切るだけ…!!

 

「なっ!?まさかゴーストタイプっ!?」

 

「そういう事!!ドラメシヤ、おどろかす!!」

 

 ドラメシヤの攻撃が若干キョトンとしているタタッコに命中。タタッコはそのままびっくりして腰を抜かしたようだ。もがくが立ち上がれない。それを見た魔美が…

 

「どうせ不利だったしね…少し休んでタタッコ」

 

 私と同様タタッコをここで交代。後から出してくるだろうから、気をつけないと…!!私の前にはドラメシヤ、そして次に魔美が繰り出したのは…

 

「頼んだよ…モルペコッ!!」

 

「うらら!!」

 

 魔美が繰り出したのは初めて彼女と会った時に見たモルペコ。前は知り合いのポケモンとして見てきただけにこうして敵として対するのはどこか不思議な気分になる。でも今は勝負…全力で戦わないと…!!

 

「行くよドラメシヤ!!でんこうせっか!!」

 

「モルペコ、かみつく!!」

 

 でんこうせっかのおかげでモルペコに迫ったのはこちらの方が早かったが、明らかに反応の速さは向こうが上。その事に驚かせられながらもドラメシヤは何とか指示通り、モルペコに体当たりを食らわしたが問題はこの後。

 

「うらら!!」

 

 モルペコのかみつくが思い切りドラメシヤに命中。そんなにずっとかみつく事なく、離したがドラメシヤは何とその場でダウン。クリティカルを食らったというのは間違いないが…

 

「ドラメシヤ!!(あの威力…明らかにクリティカルだけじゃない…!!)」

 

 魔美はニヤリと笑ったまま何も語らない。何をすれば良いか分からない中で、ドラメシヤを戻すとリオルが勝手にボールから出てきた。私はその事に驚いたが、ひとまずリオルにその場を任せる事にしたのだった…




ここまで見てくださりありがとうございます。


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魔美のエースポケモン

大体こんなペースで投稿出来たらなと思います。


「リオルか。若干不利だけど対せない程じゃないんだよね…!!」

 

「…!!」

 

 魔美はリオルの姿を見て一瞬苦笑いを浮かべていたが、呼吸を整えると再び自信ありげな表情に戻る。彼女の言葉に答えるかのようにモルペコは黄色と黒色した姿から、紫色をした姿に変わった。表情も可愛げな感じから怒りに満ちたいかにも、凶暴な表情に様変わり。

 

 驚く私を見て魔美はニヤリと笑みを浮かべながら…

 

「はらぺこスイッチ…!!強さに注意ね…!行くよモルペコ、かみつく!」

 

「リオル!いわくだき!」

 

 同じタイミングで指示を出したものの、反応の速さは向こうの方が上。リオルが動きだしたその時には既にこちらに向かって飛びかかって来ていた。慌てたリオルだったが、その場に立ち止まり冷静にモルペコを待ち受ける。

 

 モルペコがリオルに向かって口を開けた瞬間に、リオルも拳を突き出す。一瞬噛みつかれはしたものの、リオルの拳はモルペコの頰に命中しそのまま殴り飛ばした。

 

「うらら…!!」

 

「……!!」

 

 モルペコは魔美の近くで体勢を立て直すとまた元の姿に戻る。これで優勢になったとはいい切れないが、これだけじゃ倒し切れないと判断した私はリオルに…

 

「リオル!いやなおと!」

 

「モルペコ!でんきショック!!」

 

 反応の速さはモルペコの方が上だったが、この音を鳴らした際にはモルペコよりリオルの方が行動が早かった。モルペコが放ったでんきショックもあらぬ方向にへと逸れていき、リオルに当たる事はなかった。そして私は一気に畳み掛ける。

 

「行くよリオル!いわくだき!」

 

「モルペコ!でんこうせっか!」

 

 不利になるのを防ごうとした魔美がモルペコにでんこうせっかを指示。この時はまたしてもモルペコの方がスピードは上。一気に迫られるとそのまま突進を食らったが、リオルは足に思い切り体重を込めて何とか踏ん張ると、そのままモルペコの顔面に拳を叩き込む。

 

 モルペコはいわくだきをまともに食らうと魔美の前まで吹き飛んだ。しかもクリティカルダメージだった事もあり、一気に戦闘不能に。いやなおとが響いたんだと少し実感させられた瞬間。ホッと安心するのも束の間、魔美はモルペコを引っ込め…

 

「タタッコでもいいけど…確率は高い方がいい…!!行けカビゴン!!」

 

 魔美が出してきたのはタタッコではなく三体目のカビゴン。リオルより遥かに大きく、さらに強そうな感じが伝わってくる。魔美はカビゴンを出した瞬間に自信を取り戻したかのようにニヤリとした表情を浮かべる。

 

「行くよリオル!いわくだき!」

 

「カビゴン!たいあたり!」

 

 動き出すスピードは明らかにリオルの方が上だが、問題はここからだった。リオルは思い切りカビゴンの腹に拳を叩き込んだのだが、まるで聞いていないのか無表情ながらリオルを見つめるとそのままたいあたりを喰らわし、リオルを吹き飛ばす。

 

「リオル、大丈夫!?」

 

「……っ!!」

 

 カビゴンの恐ろしさはその防御面と図体を生かした攻撃力にあった。1発食らっただけにも関わらず、リオルはフラフラと少し弱ってきた様子を見せている。一旦交代も考えたが、リオルが必死そうにしている以上、その意思をねじ曲げる訳には行かない。

 

「これで一気に倒すよ…カビゴン!のしかかり!!」

 

「(せめて一撃…!!)リオル、かみつく!!」

 

 カビゴンが迫る中、何とリオルは私の指示を首を振って拒否。飛びかかって来たカビゴンに対して必死にリオルに訴えた私。だがリオルはその瞬間、歯を食いしばりながら強烈な光を放つ。

 

「!?」

 

「カビゴン、ストップ!!」

 

 カビゴンが魔美の言葉と共にストップし、光が収まるまで見つめる。その光が収まるとリオルは少し大きくなり、顔立ちも少し大人びた姿となった。人と大して変わらない身長に、私自身驚く中で魔美は苦笑いを浮かべながら…

 

「まさかこのタイミングでルカリオに進化するなんて…然も相当懐いてないと進化しないのに…!!」

 

「進化…そしてルカリオ…それがリオルの新たな姿…」

 

 私をルカリオは横目で見つめると、よく見ておけと言わんばかりに一息吐くと何やら力を溜め始め…

 

「まずい!カビゴン、のしかかり!!」

 

「ゔおおっ!!」

 

 訳も分からないまま、私はルカリオの行動を見つめているとのしかかって来たカビゴンよりもルカリオは早く動き、溜めた力のような物を一気にカビゴンにぶつけて吹き飛ばす。当たった箇所や防御面の高さが影響してか、それなりにしかカビゴンは吹き飛ばなかったが…

 

「…そうしろって言うんだね…!!分かった…!!ルカリオ、はどうだん!!」

 

「カビゴン、もう一度のしかかり!!」

 

 ルカリオが今度は私の指示に従い、はどうだんと言われる力を放出する弾をカビゴンに放って行く。カビゴンは今度は吹き飛ぶ事なく、踏ん張り切り今度はルカリオにのしかかってくる。ルカリオはカビゴンの一撃を受けるものの、あまり効いておらず、あっさりカビゴンから離れると…

 

「カビゴン、たいあたり!」

 

「ルカリオ、もう一回はどうだん!!」

 

 のしかかるのをやめ、カビゴンにたいあたりを指示した魔美。カビゴンが巨体を揺らして向かって来る中、ルカリオはもう一度カビゴンに向かってはどうだんを放つ。カビゴンはまともに喰らい、少しは踏ん張っていたがすぐに吹き飛ばされて魔美の前まで吹き飛ぶ。

 

「カビゴン!!」

 

「………」

 

 カビゴンの力は確かに圧倒的だった。リオルの力が通用しなかっただけに敗北も覚悟したが、リオルが進化した姿ルカリオにかなり助けられた。勝った気でいたが、忘れていた魔美にはもう一体ポケモンが…

 

「おい、そこのトレーナー二人!」

 

「げ!?」

 

「…?」

 

 魔美がタタッコを繰り出そうとしたその時、私達がバトルしていたバトルコートに姿を見せたのは何やら少し銀髪の長身の女性。女性は怒り心頭で私達に声をかけるとそのまま近づいて来る。魔美はジェスチャーでポケモンを戻すように言ってくる。

 

 何が何だかよく分からないが、従わないととんでもない事になりそうだ。とりあえずルカリオにお疲れとだけ告げ、そのままボールに戻す。

 

「こんな暗いのにポケモンバトルとは何事だ!」

 

「え、ええ!?いけないんですか!?」

 

「当たり前だ!変な奴に襲われたらどうする!?ほら、やめたやめた!」

 

 何か反論したい所だが、女性が出すオーラから反論したらダメの気配が伝わって来る。渋々、魔美と共に女性に一礼してその場を離れる。気づけば夕方から太陽が完全に見えなくなる時刻になっていたようだ。それ程集中していたんだと思ったが…

 

「さっきの人、誰か分かる?」

 

「え?いや…分からないけど…」

 

 魔美は女性から少し距離を取った後に私の方を見ながら話しかけてくる。女性についてらしいが、私には当然誰かは分からないが顔はどこかで見た事があるような気がする。魔美が女性の方を見つつ、何か自分の中で納得したような様子を見せているかと思えば…

 

「あの人、ここのジムリーダーの慧音さんだよ。普段は寺子屋の先生。だから怒られたら、とんでもなく長い説教か、頭突きが待ってる訳」

 

「頭突き…!?」

 

「そ、まあ当たるジムリーダーではあるから、今日の事は絶対言ってくるとは思うよ。頭突き喰らわないようにね」

 

 魔美が少しヒソヒソ口気味に語りかけて来る。頭突きと聞いた瞬間にゾッとしたが、魔美があそこまで慧音というジムリーダーを意識するのはそれもあるのだろうか。魔美の言葉にひとまず私は頷いて対応すると、魔美は「先にジムバッジを手に入れるから」という私への宣言をして、私の元から去って行くのだった。




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第ニのスタジアムへ

今回はバトルなしです。それでもいい方見て行って下さい。


 魔美と別れた私は、最初のジムリーダーとの対戦の疲れを癒すために旅館に泊まる。起きて早々2人目のジムリーダー慧音さんと当たる前にリオルがルカリオに進化した経緯もあり、少し技を調整。キズ薬も購入し万全の状態で人里スタジアムへ足を運ぶ…

 

「2人目…どんなミッションとポケモンを使ってくるんだろう…!!」

 

 少し緊張しながらジムの中へ。すると昨日の美鈴さんのスタジアムの時よりは人が少なくなったものの、やはり受付前に出来ている行列。受付前の列に並ぼうとした瞬間、誰かにトントンと肩を叩かれそちらに振り向くと…

 

「昨日以来だね、蓮子」

 

「魔美!ここにいるという事はもう…?」

 

「うん。相性のいいジムだったからね。何とか押し切る事が出来たよ」

 

 私の視界に入って来たのは少しドヤ顔気味の表情を浮かべている魔美。彼女が受付に並んでいないという事を察して、問いかけるとそのまま二つ目のバッジを見せてくれた。相性が良いと話したがどのタイプを使うジムなんだろう…?

 

「魔美。ここのジムって…」

 

「ん?ノーマルタイプだよ。でもかくとうタイプだけで突っ切るのは難しそうだから、色々戦術を考えた方がいいよ」

 

「ノーマルタイプ…とりあえず分かった。頑張ってくるよ」

 

 魔美のアドバイスを受け私は行列に並びに行ったのだが、その列にメリーの姿はない。あまり気にせず魔美に一言告げたのだが、その事に気づいたのは並んだ後。魔美に声をかけようとしてももう後ろには人が。気にはなるが、しばらくはジムチャレンジに集中しよう…

 

 ノーマルタイプのジム…私で言うとイーブィのタイプのジムか。かくとうタイプのルカリオがメインになってくるだろうとは思うが…と魔美の言葉について考えながら一歩ずつ前に進んでいくと…

 

「ようこそ人里スタジアムへ!!受付ですね!!」

 

「ふへ!?あ、はい!!ジムエントリーしに来ました!」

 

「分かりました!!では更衣室にてユニフォームに着替えて下さい!!」

 

 受付の方の元気な声に押されて、戦術についての考えが全て吹っ飛びとりあえず私は更衣室へ足を運んでいく。一瞬受付の後ろから何か悩んでいるような声が聞こえたが、一体どんなジムミッションをしているのだろうか…

 

 何て事を考えながらとりあえず更衣室へ。82番のユニフォームに着替えてバッグをロッカーにしまって出てきたのだが、どうやら今回のジムミッションは1人で受ける感じでは無さそうだ。とりあえず受付に近づく。

 

「似合ってますね!それではジムミッションについて説明しますね!ジムリーダーの慧音さんは寺子屋の先生!と言う事で30人のチャレンジャーと共にテストを受けて貰います!」

 

「ポケモンバトルとかは?」

 

「しません!!それはジムリーダー戦でお願いします!!」

 

 無茶苦茶だとは思ってしまったが、言い方を変えればとんでもなくテストを難しくしていると言う事。大丈夫かな…と思いつつ、とりあえず受付の方の言われるがまま、30人のチャレンジャーとと共に中へ。

 

 少し通路を歩いていると何やら机と椅子が30人分並べられており、その机と椅子の前にある黒板付近には羽を生やした小さな少女が立っており足音とと共にこちらに振り向く。

 

「ようこそ。私はジムミッション担当の大妖精と申します。立ちながらと言うのも酷なので、ひとまず適当に席について下さい」

 

「(どうなるんだ私のジムチャレンジは…)」

 

 これじゃまるっきり勉強会だ。こんな事をしにきたのではないが、文句は言ってられない。目の前の大妖精という方に視線を向けると同時に席に着く。そして大妖精さんは黒板に…

 

「受付の方から説明があった通り。ジムミッションはポケモンに関するテストです。ポケモントレーナーとしての知識が試されると思って下さい」

 

 私は思わず息を呑む。黒板にはリタイア可能という事とジムリーダーに挑む順番はテストの点数が一番高い者からという。制限時間は50分。大妖精さんの近くには待つ時間の削減の為だろうか、何人かの妖精が待機している。

 

 するとチャレンジャーから最下位になるとどうなるかという質問が大妖精さんに出てくる。大妖精さんは席に着いているチャレンジャーの方を全く見ることなく答える。

 

「最下位の方は勉強し直しという事で強制リタイアです。尚強制リタイアの対象は…」

 

 黒板に書かれたのは30人中15人が強制リタイアになるという事。かなり厳しいがポケモントレーナーなら知っていて当然というような問題が出てくるのだろう。昨日も見たが厳しそうな人だった、正にイメージ通りかもしれない。

 

 最下位には絶対ならない…!!そう心に決めていると大妖精さんからジムミッションのテストが配られて行く。テスト内容は本当にポケモンバトルや戦術などの基礎知識みたいな感じだ。

 

「制限時間は50分。私が測ってますので始めて下さい」

 

 ピッというタイマーのような音と共にチャレンジャー達が用意されている鉛筆を使って、テストの解答用紙に書き始める。中には速攻で頭を悩ませている者も。ちなみに1問目はノーマルタイプに対する立ち回りについて。

 

 いきなりこれは…少しハードルが高いような気がするがこれも問題…やるしかない。魔美やメリーそして霊矢さらに美鈴さんと対戦した時に得た経験と知識をフル活用して、解答用紙に書き込んでいく。

 

「(あれ?周りから鉛筆の音がしなくなったような…)」

 

 30人いるのに聞こえてくるのは私の鉛筆の音のみ。全員悩んでいるような声が聞こえたり、机をつつくような音も聞こえてくる。無理もない、内容が全てバトルに関して、それも立ち回りだ。ルーキーのトレーナーもいるだけに確かに立ち回りについて問題にするのは酷かもしれない。

 

 私もルーキーだが今のところはどうにか書き進める事が出来ている。丁度全て終えたのが30分を経過したぐらいの事。何とかなったと信じつつも待つ事20分。タイマーが鳴ったと同時に待機していた他の妖精がテストを回収して行く。

 

「こんなんじゃ一生ここのジムリーダーに挑めねえよ…」

 

「……」

 

 やっちまった…と言わんばかりのチャレンジャー達の声が聞こえて来る。早く終えた私も何点かによっては強制リタイアもあり得る。あり得ないスピードで採点して行く事数分。大妖精さんが息を整えると…

 

「今からベスト15を書いていきます。番号順に書いていきますので、呼ばれた人は他の妖精の案内に従って下さい」

 

 大妖精さんが黒板に書いた最初の番号が82番。100点中95点で堂々の1位でジムリーダーと対戦出来る事に。私は小さくガッツポーズをすると、他の妖精の方の案内を受け、スタジアム前の通路に足を運ぶ。

 

 そして小さく息を吐きながら通路を歩いて行くとバトルコートに出てきた。既にジムリーダーである慧音さんが待機。私が目の前に姿を見せると少し驚いたようなそんな表情を見せ…

 

「ああ…君だったのか。さっき昨日バトルしていた相手と対戦したよ。良いポケモンを使っていた。いいトレーナーだと思ったよ」

 

「私も負けないように頑張ります…!!」

 

「その意気だ。テストで1位通過したその知識はよし…後は実力だね。バトルで見極めさせてもらうよ」

 

 慧音さんはそう笑顔で私に告げると、少し距離を離れてモンスターボールを手に持つ。私も距離を空けモンスターボールを持とうとしたその瞬間。私のボールケースからイーブィが勝手に出てきた。

 

「い、イーブィ!?」

 

「ほう…?やる気だな、そのイーブィ。じゃあ私も出すとしようか。行っておいでウールー」

 

 メリーが出した事のあるウールー。イーブィとウールーの対面にこのスタジアムにいる観客が大きく盛り上がりを見せる。そんな中私と慧音さんによるジムマッチが始まろうとしていた。




見てくださりありがとうございます。


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イーブィの覚悟

久しぶりです。更新しますね。


 スタジアムを満たして行く大歓声。まだ二つ目と言う事もあり、慣れはしないが緊張で頭が真っ白になるということは無くなったような気がする。今は目の前のイーブィへの指示に集中しよう…!!

 

「行くよイーブィ…でんこうせっかっ!!」

 

「ウール、こらえる」

 

 先手が大事と思った私はイーブィにでんこうせっかを指示。だが慧音さんは冷静にこらえるの技を使って、ウールーに耐えさせる構えを取る。イーブィは私の指示に声を上げると、その場を蹴り出して一気にウールーに接近。そのままウールーに体当たりをかますが、堪える構えに入っていたウールーは吹き飛ばされずに耐える。

 

 そして慧音さんがこの時を待っていたかのように…

 

「今だ…ウールー、でんじは!!」

 

「でんじは!?」

 

 ウールーから発せられた静電気によりイーブィは麻痺させられる。メリーのウールーのイメージが強すぎて、電磁波は全くもって頭の中に無かった。こらえるをさせたのもこの為だったんだ…!!だが慌てても仕方ない、必ず攻勢をかけて来ると思った私はイーブィへの指示のタイミングを少しずらし…

 

「ウールー!!とっしん!!」

 

「イーブィ!わるわるゾーン!!」

 

 麻痺しているから当然動く速さはウールーの方が上。それでもイーブィは身体を痺れさせている中で、動いてくれ転がって来たウールーの突進を少し吹き飛ばされながら耐えると、声を張り上げながらウールーに向かって黒色の衝撃波を撃ち込んでいく。

 

 イーブィの近くにいたウールーはこれをほぼ直撃。少し吹き飛ぶと体勢を立て直す為に一度慧音さんの近くに戻って行く。

 

「ウールー、行けるな…?」

 

「グメメ!!」

 

「よし、ウールー、たいあたりだ!!」

 

「イーブィ、待ってびりびりエレキッ!!」

 

 慧音さんはウールーにたいあたりを指示し、イーブィに向かって転がってくる。ウールーが間近に迫って来たタイミングでイーブィは電撃をウールーに向かって撃ち込んでいくが、ウールーはそれに吹き飛ばされる事なくイーブィに向かって思い切りぶつかり、イーブィを吹き飛ばす。

 

「大丈夫、イーブィ!?」

 

「ぶ、ブイ…!!」

 

「アップアップのようだな…それじゃトドメと行こうか…ウールー、とっしん!!」

 

 少しフラフラしているイーブィにダメージが蓄積していると判断した慧音さん。ウールーにとっしんを指示した瞬間、イーブィが計ったかのようにこちらを見つめる。その目からどう言う事か察した私は、慧音さんにバレないように小さく頷くと、タイミングを見計らい…

 

 ウールーが間近に来たそのタイミングで…

 

「イーブィ!!かわしてわるわるゾーンッ!!」

 

「ブイッ!!」

 

 麻痺した状態ながらウールーのとっしんをイーブィはかわし切ると、私の指示通りにわるわるゾーンをこちらに向いて来たウールーに向かって撃ち込んでいく。その距離、ほぼゼロ距離という事もあり直撃。完全に衝撃波によって慧音さんの元まで吹き飛んでいく。

 

「かわされた…!?麻痺している状態で……はっ!まさか…!?」

 

 わるわるゾーンをまともに食らったウールーはクリティカル分のダメージを受けてそのままダウン。そして慧音さんは私のイーブィの方を見て、微かに苦笑いを浮かべると…

 

「気合いで状態異常を解いた訳か…なるほどよく育てられている…!!ならば…!!」

 

「次くるよ、イーブィ…!!」

 

 慧音さんはイーブィの状態を読み取り、静かに呟くとウールーを戻して二体目のハトーボーを繰り出す。ハトーボーは見てみるからに鳥…然も飛んでいる。慧音さんはノーマル使い、という事はでんき技でも通用する筈…!!

 

「このまま行くよイーブィ!!でんこうせっか!!」

 

「ハトーボー、飛んでエアカッター!!」

 

 イーブィがその足元を蹴り出してハトーボーに迫って行くが、ハトーボーは飛んででんこうせっかを回避。そして上空から羽を羽ばたかせてイーブィに向かって風の刃を放って行く。あちこちに放って来た為、全部命中する事はなかったがある程度命中。イーブィが痛がるかのように歯を食いしばる。

 

「ハトーボー!かぜおこし!!」

 

「(一か八か…!!)イーブィ!!びりびりエレキッ!!」

 

 イーブィの物理技は到底届かない位置にいるハトーボー。このままでは衝撃波を放ってもかわされる可能性が高い。そこで私はハトーボーが放って来た突風を利用する事に。成功するか分からない、一か八かの賭け。イーブィは私の指示に違和感を覚えつつ、びりびりエレキを放って行く。

 

 すると賭けは上手くハマり、風に電撃が感電して行きそのままハトーボーの元へ。完全に食らう事はなかったが、ハトーボーが電撃を回避しようと下に降りた瞬間を好機と見て…

 

「今だイーブィ!!でんこうせっか!!」

 

「ちいっ!!ハトーボー、でんこうせっか!!」

 

 空中有利の作戦から一転。慧音さんはイーブィに対してでんこうせっかを仕掛ける。同じく私もでんこうせっかを指示。両者は一気に間近に迫ると、そのまま頭からぶつかり合い、痛がる素振りを見せながら少し距離を取るがイーブィがすぐに表情を引き締めたのを見て…

 

「イーブィ…びりびりエレキッ!!」

 

「ハトーボー!!でんこうせっかで距離を取れっ!!」

 

 イーブィに指示したびりびりエレキ。その電撃がハトーボーに炸裂しようとしたその時、慧音さんの指示によりでんこうせっかの速さでハトーボーは電撃を回避。そしてイーブィより遥か上空辺りにハトーボーは止まり…

 

「エアカッターッ!!」

 

「もう一度行くよびりびりエレキッ!!」

 

 ハトーボーからの風の刃がイーブィに向かって放たれて行く。そしてイーブィはその風の刃で少々傷ついて行きながらも、電撃を打ち込みハトーボーが回避行動を取る前に命中させる。ほぼ直撃した事により、ハトーボーは地面に落ちて行くが…

 

「ハトーボー!体勢を立て直すんだ!」

 

「逃がさない…イーブィ、ほしがるっ!!」

 

 落ちて行くハトーボーがもし体勢を整えたらまた空中戦に持ち込まれてしまう。それを確信した私は、イーブィに追撃のほしがるを指示。ハトーボーが体勢を立て直そうとしたまさにその瞬間、イーブィが目の前へ。そのまま体当たりを喰らわし地面に叩きつけた。

 

「ハトーボー!!」

 

 勝負をつけるつもりで行った為、ハトーボーがもしここで立ち上がるならまた色々と考えないと行けない。砂煙が緊張を高まらせて行く中で、その煙が晴れると戦闘不能になっているハトーボーの姿が。

 

「よし…!!」

 

「まさかイーブィに二体もやられるとはな…だが、それでこそチャレンジャー…!!コイツを出す甲斐があると言う物だ!!キテルグマッ!!」

 

 小さくガッツポーズをした私に対して慧音さんは若干の笑みを浮かべると、最後のポケモンであるキテルグマを繰り出す。現れたのはピンクと黒色をした巨大グマ。私の知っているクマとは遥かに違う姿だ。

 

「ここまで来たのは見事…!!だが余裕を見せた方が負けるのがポケモンバトル…!!行くぞキテルグマ、ダイマックスッ!!」

 

「来るよイーブィッ!!」

 

 キテルグマは慧音のボールに一度戻ると、ダイマックスバンドを通じて巨大ボールから再び姿を大きくしてその場に姿を見せる。相変わらずだがダイマックスの迫力には驚かせられるばかりだ。こちらもダイマックスで対抗しようとしたが…

 

「行くよイーブィ、ダイマック…」

 

「ブイッ!!」

 

 まさかのイーブィはここで私のボールを出した姿に嫌がるかのように首を振る。私は一瞬見間違いかと思ったが、結果は変わらずにダイマックスを拒否。それを見た私は仕方なく、イーブィをそのまま戦わせる事にしたのだった…




今回は我ながら上手く行ったと思います。


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覚悟をカバーする気持ち

久しぶりに更新です。よろしくお願いします。


「ダイマックスはしないのか…?じゃあ後悔のないようになっ!!ダイナックルッ!!」

 

「イーブィ、びりびりエレキ!!」

 

 ダイマックス技は攻撃範囲が凄まじく回避する事はほぼ不可能。イーブィがキテルグマの攻撃を耐える事を信じて、私はびりびりエレキの指示を出す。キテルグマの上空から放たれた巨大な拳。それに対してイーブィの雷の衝撃波がぶつかって行くが、ダイマックス技の前では無力で一瞬にしてかき消された。

 

「ブイッ!?」

 

「イーブィ!でんこうせっか!!」

 

 賭けに等しいでんこうせっかの指示。イーブィは私の指示に耳を立てると、その場を強く蹴り出してキテルグマにへと向かって行く。ダイナックルの直撃は回避出来たものの、拳が地面に当たった際の衝撃波がキテルグマの元に向かって行くイーブィの背中に直撃。

 

 ダイナックルはかくとうタイプの技。この衝撃波だけでもイーブィにとってはきつかったらしく、痛がるかのように歯を食いしばりながらキテルグマを見つめる。

 

「イーブィ…!!」

 

「ダイマックス技は回避出来ない。今のでんこうせっかは賭けだな?」

 

「っ…!!」

 

 まずい…慧音さんに思考が読まれている…!!イーブィが何とかダイマックスしてくれたら、苦し紛れの戦法を取らなくてもいいのに…!イーブィを責めても仕方ない…ここはダイマックスなしで行く方法を考えなくちゃ…!!

 

「イーブィ!!びりびりエレキ!!」

 

「ダイウォール!!」

 

 イーブィが放った雷の衝撃波はやはりダイマックス技の前では無力。キテルグマの前に出来たバリアに完全にかき消されてしまう。このままでは再びキテルグマにダイナックルを打たれるパターンに持ち込まれる…!だがイーブィの覚悟を無下にする事は出来ない…!!

 

 交代したら…だめだ…!突っ張るしかない!!

 

「イーブィ!!ほしがる!!」

 

「悪あがきを…!!キテルグマ!!ダイナックルッ!!」

 

 イーブィは私の指示に嫌気を見せる事なく、そのまま突っ込んでいく。対するキテルグマの技はダイナックル。突っ込んだイーブィにキテルグマのダイナックルが直撃。そのまま地面に叩きつけられた。

 

 巻き起こった砂煙が晴れるとそこには戦闘不能の状態で倒れているイーブィの姿が。歓声が慧音さんに向けられる中、私はイーブィをボールの中に戻す。分かっていた…こうなるのは…!私が少し後悔している間にキテルグマはダイマックスが解けて、元の姿に戻って行く。

 

「後3体いるんだろ?イーブィをカバー出来るか見せて貰おうじゃないか?」

 

「…っ!」

 

 歯を食いしばる私。どれを出してもキテルグマに決定的なダメージを与える事は難しい。でもやるしかない…!私が次のポケモンを構えようとしたその時。私のポケットに入っていたボールからルカリオが勝手に出てきた。

 

「ルカリオ…!!」

 

「………」

 

 ボールから出てきたルカリオは私に迷いを見せるなと言っているかのようだった。その目を見て小さく頷いた私は深く深呼吸をすると、攻撃力が上がっている状態のキテルグマと対する。

 

「頼りないトレーナーでごめんね…!でももう大丈夫…!行くよルカリオ!!」

 

「ぐう!」

 

「覚悟は決まったようだな…行くぞ…かわらわり!!」

 

「はどうだんっ!!」

 

 キテルグマはその足元が抉れる程強く蹴り出すと、一目散にルカリオに向かって行く。私の指示を受けたルカリオは冷静に波動を溜め込むと、そのままキテルグマに向かって放って行く。ルカリオに攻撃する前にはどうだんを直撃したキテルグマは少し吹き飛ばされる。

 

 だがある程度で踏ん張ると…「ぶんまわすっ!!」

 

「ルカリオ!防御の構えっ!!」

 

 キテルグマが身体を回転させながらこちらに向かって来る。私はあえてルカリオに技を指示せずに、キテルグマの攻撃を防御するように指示。慧音さんが疑問に思う中、ルカリオはキテルグマの攻撃を耐え切ると、身体からオーラを出して行く。

 

「っ…!?まさか夢特性!?」

 

「畳み掛けるよルカリオ!はっけいっ!!」

 

 ルカリオの夢特性はせいぎのこころ。この子が夢特性と知ったのはつい最近だが、最初は半信半疑だった。だからこそ本当で良かったと私は静かに笑みを浮かべると、ルカリオにはっけいを指示。ルカリオはキテルグマの腕を弾くと、そのまま身体に拳を叩きつけて吹き飛ばす。

 

「ぐうっ…!!」

 

「ルカリオ!!もう一回行くよ…はっけいっ!!」

 

「キテルグマ、かわらわり!!」

 

 ルカリオが地面を蹴り出してこちらに向かって行くのをじっと待機していたキテルグマはルカリオが迫って来たタイミングで腕を振り下ろす。ルカリオのはっけいが直撃する前にキテルグマはかわらわりをルカリオに命中させ、地面に叩きつける。

 

キテルグマは今攻撃力が上がっている状態で、ルカリオもかなり痛そうにしている。だがここで引いたら押し切られる…!!

 

「ルカリオ!!はどうだんっ!!」

 

「とどめだキテルグマ!!かわらわりっ!!」

 

 キテルグマの拳がルカリオに向かって来る中で、ルカリオは身体を起こすと波動を溜め込む。キテルグマのかわらわりが命中する中で、ルカリオは声を張り上げるとそのまま間近ではどうだんを叩き込みキテルグマを吹き飛ばす。

 

「ぐう…!!」

 

「…っ!!」

 

 両者フラフラしながら向かい合う中、先に倒れたのはルカリオ。そのまま戦闘不能となったが、ルカリオが戦闘不能になったと分かった瞬間にキテルグマも仰向きに倒れ込む。両者戦闘不能、だが慧音さんのポケモンはこれで最後で私のポケモンは二体残っている。つまり…

 

「蓮子選手のポケモン残り2体!そして慧音選手のポケモンは0!よって勝者!蓮子選手!!」

 

 状況を確認した審判から告げられた一言に私はホッとした表情を浮かべると、ルカリオをボールに戻す。そして慧音さんは静かに一息吐くと、私と同じくキテルグマをボールの中に戻し私に近づいて行く。

 

「大した腕だよ。ポケモン勝負の何たるかを知っている」

 

「いやそんな…私の方もギリギリで…」

 

 慧音さんは私を褒めてくれると静かに手を差し伸べる。私はその慧音さんの言葉に苦笑いを浮かべながら、同じく手を差し伸べて握手をする。その後に慧音さんからバッジを受け取った私は気が抜けたかのように、戻った更衣室で一息吐くと着替えてスタジアムロビーにへと出る。

 

「ナイスバトルだったよ蓮子」

 

「あ、メリー…」

 

 スタジアムロビーに出た私の元に近づいて来たのはいつもと変わりないメリーの姿。だがどうしてだろう?どことなく雰囲気が違うような気がする…「なぁに?その不安そうな返事。勝ったから良かったじゃん」

 

「メリー、どうしたの?あんまり元気なさそうに見えるんだけど…」

 

「ん?いや?そんな事ないよ?」

 

 メリーの言葉にいつもの元気がないようなそんな気がする。気のせいだろうか。深掘りすると本人が嫌がるだろうし、そんな事はしたくない。だが友人として何があったかを聞こうとしたその時、メリーが突如ハッとすると…

 

「あ、私ジムの受付行ってくるね。次のジムリーダーの方はダイマックス使わないんだって。頑張ってね」

 

「あ、うん…分かった…」

 

 少し逃げるかのようにメリーは私に次のジムリーダーの情報を告げると、そのまま受付の方に向かって行く。私の考え過ぎだろうか。今までは私が押されるぐらいに元気だったのだが、それすら無くなっているような気がする。

 

「(メリー…一体何があったの…?)」

 

 深まる心配。メリーの事を気にしつつ、私はスタジアムを出て次のジムリーダーの元に向かって行くのだった…




見てくださりありがとうございます。


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再激突

何か上手く出来たので投稿しますー


 次のジムリーダーの場所に向かう前に人里にあるポケモンセンターに寄る事にした私。受付の方にポケモンを預け、次のジムリーダーの情報を確認しながら待つ事数十分。アナウンスにて受付の方に呼ばれ、座っていたベンチからその場所に赴く。

 

「お待たせ致しました。アナタのポケモンはみんな元気になりましたよ」

 

「ありがとうございます」

 

 受付の方から預けていたモンスターボールを受け取り、礼を告げると技を調整する為に丁度人里にいる教え技の方の元を訪問。一時的にでんこうせっかを忘れさせ、新たなにイーブィだけが覚える教え技を教えてもらった。準備は出来た、後は向かうだけ…

 

 と意気揚々とポケモンセンターから出た私を待っていたのは少しアフロのような髪型をしている少年。その目つきと髪型、見たことがある。霊矢、私やメリーと同じくチャンピオンから推薦されたトレーナーだ。

 

「おやおや。こんな所で会うとは奇遇ですね。二つのバッジを手に入れた蓮子さん」

 

「その憎まれ口は直らないのかな?ドラメシヤを捨てたトレーナーさん」

 

 霊矢の煽りのような言葉に対して同じような煽りの言葉で言い返す私。口は完全に少し不満気のように見えるが、私と霊矢二人共ニヤリとした笑みを浮かべている。この口ぶりを見せてもなお、その表情は変わる気配はない。

 

「ふん。僕はエリートですので、このくらいが丁度いいんですよ」

 

「ああ…そう。それで?私に何の用?私これから三つ目のジムに…」

 

「メリーさんを倒した次いでにアナタも倒してあげようと思いまして」

 

 完全に言葉を聞き流そうと思っていた私ではあったが、メリーという言葉が聞こえた瞬間に聞き流そうとしていた彼の言葉がスーッと耳に入ってくる。メリーが元気が無さそうだったのは、霊矢に敗れたから…という見立てを今はしても良さそうだ。

 

「へぇ…上等じゃない。今、アンタからその言葉を聞いて丁度バトルしたいなと思っていたのよ」

 

「それは良かった。メリーさんよりは楽しませてくれると有り難いですねぇ…」

 

「逆にプライドをへし折られないようにしてね…」

 

 親友を傷つけられて黙っている訳には行かない。霊矢と共に人里にあるバトルコートへ。今は昼の時間帯、昨日の魔美の時みたいに勝負をお預けさせられる事はない。溢れんばかりの怒りを抑えつつ、霊矢と対面した私はスッとモンスターボールを出すと…

 

「丁度あの後、新しいポケモンを手に入れたのですよ。それを使ってアナタに目に物見せてあげますよ」

 

「やれる物ならね…!!」

 

「もう負けはしない…行きますよネイティオ!!」

 

 霊矢が繰り出して来たのはネイティオ。姿が似ている事から察するにこないだ対した時に出てきたネィティの進化系だろう。一方の私は初手に繰り出したのは慧音さんとのジム戦で出番がなかったロコン。ジムでは何もしていなかった上に、回復してもらったので元気は充分だ。

 

「ロコン如きで倒せると思わない事ですね…!!行きますよネイティオ!!エアスラッシュ!!」

 

「ロコン!!やきつくす!!」

 

 ネイティオの風の刃とロコンの炎がぶつかり合うが、風の刃がロコンが放った炎を引き裂いていき、ロコンに命中。少々吹き飛ばされたのをみて、私は驚いていたが大丈夫そうなロコンを見て次の指示を出す。

 

「ロコン!!でんこうせっか!!」

 

「ナイトヘッド」

 

 ネイティオが放って来たナイトヘッドをでんこうせっかのスピードでロコンはかわすと、そのまま思い切りネイティオにぶつかり怯ませる。ネイティオが態勢を立て直す前に…!!

 

「ロコン!!おにび!!」

 

 ネイティオが態勢を立て直す前に放ったロコンの炎がネイティオの火傷を招く。それを見て霊矢は歯を少し食いしばったが、ネイティオが態勢を立て直したのを見て再度指示を出す。

 

「これならどうですか!ネイティオ!おいかぜ!!」

 

「っ…!?」

 

 火傷を負っているネイティオに指示させたのはおいかぜ。ロコンよりスピードがあるネイティオのスピードがさらに加速して行く。これにより普通の技ではネイティオの上を取れる事は無くなったが、これは一つのチャンスかもしれない。

 

「そのまま行きますよネイティオ!!エアスラッシュ!!」

 

「ロコン!!じんつうりきでエアスラッシュを止めて!!」

 

 動くのは当然向こうのほうが上。それを分かった上でのじんつうりき。ロコンはこちらに向かって来る風の刃を食い止めると、そのままネイティオにお返しとして投げ返す。予測していなかった攻撃にネイティオは反応できず、そのままエアスラッシュをまともに食らうと…

 

「今だ…!!やきつくすっ!!」

 

「小癪な…!!エアスラッシュ!!」

 

 態勢を立て直すのに時間がかかっていたネイティオがそのままやきつくすをまともに食らうが、耐えながら放ったエアスラッシュで炎を引き裂き、そのままロコンに攻撃を当てる。霊矢がもう一度指示を出そうとしたその時、私は態勢を立て直したロコンに指示を出した。

 

「ロコン!!でんこうせっか!!」

 

「同じことをしてやりますよ!!ネイティオ!ナイトヘッド!!」

 

 ロコンのでんこうせっかがネイティオに命中。そのままネイティオが怯むかと思いきや、そのままロコンの方を見てナイトヘッドを命中させる。ロコンを宙に浮かせると、そのまま地面に叩きつけた。

 

「ロコン!!」

 

「きゅう…」

 

 ここにてロコンは戦闘不能となり、霊矢は自信に満ちた表情をしていたがそのドヤ顔は一瞬にして消え去る事となる。ネイティオが火傷によるダメージによりダウン。それを見て霊矢はネイティオをボールに戻す。そして私もロコンを戻すと次にドラメシヤを繰り出し、霊矢はポニータを繰り出した。

 

「ここまで僕を馬鹿にした人は初めて見ましたよ…後悔させてやりますよ…!!」

 

「私も今アナタのせいで腹が立っているんだよね…全力で行くから…!!」

 

 互いに苛ついているのは目に見えてわかる事。でもそれはポケモンバトルの前では全く関係のない事。私達二人共小さく息を吐くと、ポニータとドラメシヤに指示を出して行く。

 

「ポニータ、サイコカッター!!」

 

「ドラメシヤ!!でんこうせっか!!」

 

 ネイティオが残した追い風により未だに相手が有利な状況。それだけに迂闊な手は取れない。そこで私はドラメシヤにでんこうせっかを指示。ドラメシヤはポニータが放ったサイコカッターをかわすと、そのまま距離を詰めて体当たりをして怯ませると…

 

「かみつく!!」

 

「サイケこうせん!!」

 

 ドラメシヤにポニータが放ったサイケこうせんが命中したが、ドラメシヤが何とか我慢しながらポニータに思い切りかみつく。ポニータが振り払った事により、ドラメシヤは吹き飛んだがポニータに確かなダメージが残った。

 

「相変わらず変な手を使ってくる事…!!でもこれで終わりにしましょう!!ポニータ!!サイコカッター!!」

 

「ドラメシヤ!!もう一度でんこうせっか!!」

 

 2度目のサイコカッターをドラメシヤは再度放ったでんこうせっかでかわすと、そのままポニータに体当たりを喰らわすが今度は吹き飛ぶ事なくそのまま耐え切り…

 

「っ!?」

 

「3度目の正直!!ポニータ!!サイコカッター!!」

 

 近くにいたドラメシヤにポニータから放たれたサイコカッターはドラメシヤに命中。そのまま大きく吹き飛ばすと、ほぼ一撃で戦闘不能に。霊矢はそれを見てニヤリとした表情を浮かべていたが、私は正直言って笑えない状況。ドラメシヤを戻すと次に勝手に出てきたのはイーブィ。

 

 勝手に出てきたイーブィを見てかなり驚いていた私だったが、イーブィの真剣な眼差しを見て私はこの場面をイーブィに託す事にしたのだった…




見てくださりありがとうございますー。


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イーブィの意地

久々に投稿しますー。


「その自信を打ち崩してあげますよ…ポニータ!サイケこうせん!!」

 

「イーブィ!!わるわるゾーン!!」

 

 ドラメシヤを撃破して勢いに乗るポニータの一撃と自信を持ってポニータと対するイーブィの衝撃波が激突。だが一度として拮抗する事なく、ポニータの光線をイーブィの衝撃波が完全に押し切りポニータに直撃。巻き起こった爆煙と共にポニータは一撃でノックアウト。

 

 まさか一撃で倒せるとは思ってなかったから私自身かなり驚いたが、それは霊矢も同じこと。彼は驚いた後に歯をぐっと食いしばると3体目のポケモンが入ったモンスターボールを構える。

 

「すぐに終わらせてあげます…行きますよキルリア!!」

 

「キルリア…!?」

 

 前回との対戦では全く聞かなかった名前だが、ボールから出てきたのは緑色の髪と白色の身体をした若干小柄のポケモン。赤い目から伝わって来る敵意は間違いなく、警戒なしでは行ってはいけない気がする。私は小さく息を吐くと…

 

「行くよイーブィ!!わるわるゾーン!!」

 

「キルリア、めいそう」

 

 キルリアを出してきて初手がめいそう。イーブィの悪の衝撃波がキルリアに向かって一直線の中、少し目を瞑り身体から念を出していたキルリア。わるわるゾーンが命中はしたものの、身体に纏っていた念の影響からかダメージは大して与えられなかった。

 

 してやったりと言わんばかりにニヤリとした表情を浮かべる霊矢。それに対して私はイーブィに少し思考を変えた技を指示する。

 

「イーブィ!!ほしがる!!」

 

「何を出したかと思えば…物理!!笑止!!キルリア、マジカルシャイン!!」

 

「(来た…!!)」

 

 イーブィがキルリアに近づいたタイミングでキルリアが出してきた一つの衝撃波。私はイーブィにほしがるの技を止め、回避するように指示。イーブィは頷くと高々とジャンプして、マジカルシャインを回避。そのままキルリアの方を見ながら…

 

「かわした…!?だが…!!キルリアもう一回マジカルシャイン!!」

 

「今度はそのまま行くよ!!イーブィ、わるわるゾーン!!」

 

 空中からイーブィが悪の衝撃波をキルリアに向かって放ち、その衝撃波を迎え撃つかのようにピンクの衝撃波をキルリアがイーブィに放つ。二つの衝撃波がぶつかり合ったが、威力は向こうの方が上。そのまま押し切られ、イーブィは衝撃波をまともに受け吹き飛ばされる。

 

「イーブィッ!!」

 

「あくタイプの技がフェアリーに通用する筈がないでしょう!!トドメです!!サイケこうせん!!」

 

 墜落して行くイーブィは空中でカッと目を強く開くと、身体を地面の方に向けギリギリでキルリアの光線を回避。そのまま地面に着地すると私に指示を出すように声を張り上げ、私はそれに答えるかのようにイーブィに次の指示を出す。

 

「イーブィ!!びりびりエレキッ!!」

 

「ブイッ!!」

 

 キルリアが次の行動を取ってくる前にイーブィは身体に電気を纏うと、そのままようやくこちらを見たキルリアに向かって放出。めいそうの念がまだ残っていたのか、防ぎ切られたが充分。ここからが本番となる。

 

「畳かけるよイーブィ!!ほしがるっ!!」

 

「倒せると思うなっ!!キルリア!マジカルシャイン!!」

 

 特殊技の威力等、力では向こうの方が上だがスピードなら微かながらこちらの方が上…!!キルリアがマジカルシャインを放つ、その前にイーブィがキルリアに接近しそのまま体当たり。それを食らったキルリアは少しバランスを崩し、放ったマジカルシャインはイーブィとは全然違う方向に飛んでいく。

 

「なっ…!!キルリア、間近からサイケこうせん!!近くからならかわせません!!」

 

「行くよイーブィ!!ほしがるッ!!」

 

 イーブィはキルリアの間近にいる。それだけ攻撃をかわせる可能性が少なくなるという事。霊矢はそれを利用し、キルリアにサイケこうせんを指示。私は微かにキルリアより勝るスピードを利用しほしがるを指示。キルリアがサイケこうせんを放とうとした瞬間、イーブィがキルリアに体当たりをかます。

 

 余程強く食らったのか、キルリアは吹き飛びはしないままその場に倒れ込み戦闘不能に。だがキルリアを倒してもまだ警戒がいる。だって彼がまだ残しているポケモンには…

 

「よくもここまで…まあいいでしょう。行きますよエーフィ!!」

 

 霊矢が完全に怒りに呑み込まれなかった理由はこのエースであるエーフィがいたからだ。高い能力値を持つエーフィ。イーブィは何にしてもエーフィに劣るが、ここは戦術でカバーして行くしかない…!!

 

「行くよイーブィ!!びりびりエレキ!!」

 

「エーフィ、サイコキネシス!!」

 

 イーブィの溜め込んだ電撃がエーフィに放たれて行くが、エーフィはサイコキネシスで電撃をかき消して行き、イーブィにサイコキネシスを直撃させる。これを受け、イーブィは少し吹き飛ぶが立て直す間も入れぬまま霊矢はエーフィに指示を出す。

 

「エーフィ、でんこうせっか!!」

 

 高速で迫って来たエーフィの体当たりがイーブィに炸裂。これでさらに吹き飛ぶかと思いきや、イーブィは身体に思い切り力を入れて踏ん張ると思い切り声を張り上げる。イーブィからのサインに私は…

 

「イーブィ、わるわるゾーン!!」

 

「この状況で…!?させない!!かみつく!!」

 

 エーフィがイーブィに思い切りかみつく。体当たりならぬ噛みつきならまだ技のバランスを取る事が出来る。イーブィは声を張り上げると悪の衝撃波をゼロ距離でエーフィにぶつけて吹き飛ばす。

 

「何!?」

 

「詰め寄る!!イーブィ、でんこうせっ…」

 

「ブイッッ!!」

 

 でんこうせっかを指示しようとした私ではあったが、イーブィが溜め込む気配に驚き指示を止める。態勢を立て直したエーフィがイーブィの方をぐっと見つめる中で…

 

「さっさと倒れなさい!!エーフィ、サイコキネシス!!」

 

「ブイッッ!!」

 

 イーブィにサイコキネシスが命中。そのままイーブィが吹き飛んだその瞬間だった。空から降り注いだ突然の衝撃波が何の対策をしていなかったエーフィにぶつかって行く。イーブィはエーフィのサイコキネシスにより、戦闘不能となったが同時に…

 

「フィ…」

 

「馬鹿な…!?何だ今の技は…!?」

 

 エーフィも同じく戦闘不能に。イーブィの技を見て驚いた霊矢ではあったが、驚いたのは私も同じ事。然し私は教え技の方の話しで見た事があった為、すぐに分かった。息を呑んだ後に小さく…

 

「きらきらストーム…とんでもない火力…」

 

「くっ…!!よくわかりませんが…またしてもアナタに…覚えてなさい…!!近いうちにアナタにリベンジしますから!!」

 

 エーフィをすぐに戻した後に霊矢はそう呟くと逃げるかのようにその場から去って行く。状況をあまり把握出来ない私は、霊矢の言葉に答える事が出来ずただ、ただその去りゆく背中を見つめるしかなかったのだが…

 

「お疲れ様イーブィ。すぐにポケモンセンターに連れて行くから」

 

 戦闘不能となったイーブィをモンスターボールに戻すと、そのままバトルコートから離れてすぐにポケモンセンターへ。まさかイーブィがあんな力を発揮するとは思ってもみなかった。ボールの中でグッタリしているイーブィ、そのイーブィのボールを見ながら私は息を呑む。

 

 駆け込んだポケモンセンターに入り、ナースさんにポケモンを預けている間の事。教え技のおじさんの元へ行き、イーブィの技について聞くとそれがきらきらストームだと言う事が判明。新たな切り札に私は内心かなり嬉しかったが、この後とんでもない事が起きるのを私は知らない…




見てくださりありがとうございます。


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来襲、キテルグマ

久しぶりに投稿します。よろしくお願いします。


 霊矢とのポケモンバトルに勝利し、彼とのバトルにて傷ついたポケモン達を回復させるためにポケモンセンターに赴いた私。教え技のおじさんと色々語り合った後に、回復してもらったポケモンと共に次の場所であるジムに向かおうとしたのだが…

 

「(何か周りがざわめいているな…どうしたんだろ…)」

 

 次のジムリーダーがいると思われる迷いの竹林。その方角に向けて歩いていた私の視界に映ったのは一点を見つめながらヒソヒソと語り合う人々。確かに前方では何かを破壊するようなそんな物音が聞こえてくるが、一体なんだろうか。

 

 その物音が気になった私は少し早足気味に迷いの竹林、その入り口付近に近づいたのだが…

 

「わわっ!?」

 

 迷いの竹林に近づいた私の前に急に現れたのは何かから逃げて来たと思われる青い鳥の姿。青い鳥は私の後ろに身を隠し、私の方をチラチラ見つつ物音がする前方を見つめる。竹林の竹が次々と折れて行く、そんな光景を見て息を呑んでいた私の前に姿を見せたのは…

 

「グウウウ!!」

 

「…!?」

 

 慧音さんが持っていたキテルグマ。当然別のポケモンだが、このキテルグマからは殺気しか感じられない。それ程までに毛が逆立っており、見ているだけでも寒気がしてくる。私の後ろに追っていたと思われる青い鳥がいるのを分かっているのだろうか、ゆっくりと近づいてくる。

 

 そして物音を聞き、キテルグマの鳴き声を聞いたのは私だけでは無かった。私のいる場所に走って来たのは先程、スタジアムにて対戦したジムリーダー慧音さん。私の姿を見るなり…

 

「大丈夫か!?まだ何とも…」

 

「グウウウ!!」

 

「慧音さん!説明は後です!その鳥の子をお願いします!私が何とかします…!!」

 

 キテルグマの殺気付いた様子から見て説明する余裕なんてものは存在しない。慧音さんの声に青い鳥の子を任せると呟いた私は、どうにかこのキテルグマを追い払えないかと、ポケモン勝負を挑む事に。キテルグマと少し距離を取ると私はロコンを繰り出す。

 

「(寒気しかしないけど、ひとまず時間を稼げれば…!!)行くよロコン!おにび!」

 

 幸い、出たロコンの技の方が先手。無我夢中でこちらに向かってくるキテルグマにおにびを命中させ、キテルグマを火傷させる。だがキテルグマの攻撃がロコンに命中し吹き飛ばされたと思いきや、そのまま戦闘不能に。まさかの一撃でのKOに恐怖すら覚えつつも…

 

「少し踏ん張ってくれ…!強いトレーナーを呼んでくる…!!」

 

「っ…!!お願いします…!!戻ってロコン。行くよドラメシヤ!」

 

 青い鳥はロコンがやられている間に慧音さんの元へ。私は自分では敵わないと判断した慧音さんの言葉を信じ、次はドラメシヤを繰り出す。これであっているかも分からない。だがただ攻撃するしかない…!!

 

「行くよドラメシヤ!でんこうせっか!!」

 

「メシャ!!」

 

「グウウウ!!」

 

 ドラメシヤのでんこうせっかがキテルグマに命中したものの、キテルグマの攻撃がまたドラメシヤを炸裂。そのままドラメシヤを吹き飛ばし、またしても一撃ノックアウト。悪夢のような光景に徐々に焦りが出てくるが、ひとまず時間を稼がないと…!!

 

 私が次に出したのはルカリオ。ひとまずやるしかない…!!

 

「頼むよルカリオ!はどうだん!!」

 

「グオウ!!」

 

「グウウウ!!」

 

 ルカリオが先手ではどうだんがそのままキテルグマに命中したものの、まるで効いていなくかすり傷のよう。そしてルカリオに接近すると防御に入ったルカリオを軽々とキテルグマは吹き飛ばし、ルカリオですら一撃でノックアウト。私は頭が真っ白になった。

 

 私が付けて来た自信を壊して行くかのようにキテルグマは攻撃するのをやめない。震える手で私はルカリオを戻すとほぼ意気消沈した状態ながらイーブィを繰り出す。

 

「イーブィ…行くよっ…!!きらきらストームッ!!」

 

「ブイッ!!」

 

 せめて意地を見せる。その私の気持ちを汲み取ったイーブィは私の指示に応えるかのように声を張り上げると、そのままキテルグマに向かってきらきらストームを撃ち込む。この一撃で初めてキテルグマを近くから引き離したのだが、結果はまたしてもかすり傷に過ぎなかった。

 

 爆煙が晴れ、平然と立ち尽くすキテルグマを見て私はついに恐怖からかその場に膝をつく。キテルグマが迫ってくる足音、そしてイーブィが私に向かって声を張り上げる。そんな音だけが耳に入る中…

 

「…こんな所で膝をつくほどアナタは弱くないでしょ?蓮子」

 

「…!?」

 

 キテルグマが途中で私に近づくのをやめて、そのまま後ろから聞こえて来た声の方角に振り返る。そこにいたのは私に推薦状を渡してくれた霊夢さん。その近くには慧音さんもいるが、何故だろう嬉しい筈なのにショックが大きすぎるせいか何も感じない…

 

「霊…夢さん…」

 

「慧音。蓮子をお願い。ちょっと私はコイツを相手にする」

 

「分かった。やり過ぎるなよ」

 

 少しぼやける視界の中で、慧音さんは完全に腰を抜かした私を背中に背負うとそのまま、ゆっくりと霊夢さんの後方に向かって走って行く。既にあんなに私の相手をしていたキテルグマは霊夢さんの方に向いている。そんな最中、霊夢さんが繰り出したのは5体の列を作ったポケモン。タイレーツと言うらしい。

 

「…行くよ…!!」

 

「グウウウ!!」

 

「タイレーツ!!アイアンヘッドッ!!」

 

 霊夢さんのタイレーツはそのままキテルグマに接近すると、頭を思い切りぶつけてキテルグマを怯ませる。キテルグマは私の時と同じくタイレーツを吹き飛ばしにかかるが、タイレーツはまるで吹き飛ばない。

 

「グウ!?」

 

「すう…タイレーツ!!インファイトッ!!」

 

 タイレーツの必死の攻撃がキテルグマに命中して行く。私のポケモンじゃびくともしなかったあのキテルグマが完全に押されており、最終的には一体のタイレーツの体当たりがキテルグマに炸裂。そのままキテルグマを吹き飛ばした。

 

「グウウウ!?」

 

「アンタもただの野生。あのウッウとどんな事情があったかは知らないけど、少しやりすぎよ。これぐらいにするから、出直してきなさい」

 

 吹き飛ばされたキテルグマは霊夢さんを恐れたのか、一気に霊夢さんの方を向いて青ざめるとそのまま竹林の中に引き上げて行く。ショックを受けぱなしだった私の視界に映った確かな霊夢さんの強さ。それを見て息を呑んだ。

 

「あれが…リーグチャンピオン…」

 

「やれやれ…アイアンヘッドだけで充分だったと言うものを。余程、お前のやられ具合に腹が立ったんだろうな」

 

 その背中はあまりに大きく、遠いように感じた。人々が霊夢さんに対して感謝の拍手を送る。慧音さんの言葉に私は上手く返事出来なかったが、イーブィ含め人々が霊夢さんのタイレーツに対して目を輝かせているように感じた。

 

「蓮子。立てるか?チャンピオンの仕事をすっぽかして来てくれた霊夢に礼を言いに行きたいのだが…」

 

「は、はい…立てます…!!」

 

 遠いその背中に今は仮初めでもいいから近づいてみたい。そう思った私は背負ってもらっていた慧音さんの背中から地面に降り立つと、イーブィと共に霊夢さんに近づいて行く。目を輝かせていた私に対して、霊夢さんはストップと言わんばかりに手を広げると…

 

「私より自分のポケモンのケアをしてあげた方がいいと思うわ。やられた3体…ショックが大きいと思うから」

 

「え…?」

 

 私はこの時どのような理由で霊夢さんがこんな事を言ったのか、理解出来なかったが後に霊夢さんの言う通りにその中の一体。ドラメシヤの精神的なダメージがキツい事に気付く事となる…




何かめちゃくちゃですが見てくださりありがとうございます。


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ショックと蓮子の決意

閑話回になりますかね。投稿します。


 キテルグマ来襲の件について私がポケモンセンターに駆け込んでいる間にすぐにリーグ関係者が現場に姿を見せた。近くには記者の姿、現場を抑えた霊夢さんへの取材が行われている。トレーナーとしての無力を感じた。イーブィはギリギリのタイミングで傷付かなかったが。

 

 後一歩タイミングが遅れていたらと思うとゾッとしてしまう。イーブィも怯えきった様子で辺りを見つめている。預けているロコン達の状態が不安になる程、私の中でも余裕がなかった。

 

「ごめんねイーブィ…怖い思いさせたね…」

 

「ブイ…」

 

 私の言葉に答えたイーブィの声はいつもみたいな元気良さが溢れる感じではなく、少し掠れたようなそんな怯えきった声。私がポケモンを出してなかったらポケモン達は傷付く事はなかったが、逆に出してなかったらあの青いポケモンを助けられなかったのではないか?

 

 ぎゅっと拳に力を入れ、ゆっくりと歯を食いしばる。ただ悔しかった。何も出来なかった事実。トレーナー失格だ…そう思うまでに私の心に罪悪感が充満していた。

 

「ポケモンを預けてくれた方ですね?」

 

「え?あ、はい…!!」

 

 ずっと椅子に座り込みながら私に近づいて来たのはポケモンを預け回復に当たってくれていたナースさん。普通はベルや放送などで呼ぶ筈なのにどうかしたのだろうか、私はゆっくりと立ち上がると視線をナースさんの方に向ける。

 

 ナースさんは私を見て息を呑むと…

 

「一体だけ。モンスターボールが機能しないんです」

 

「え…!?」

 

「ポケモン自体がモンスターボールから出るのを拒否してるかもしれません。滅多にないのですが、何か深い傷を抱いたのか…」

 

 そう告げると3つのモンスターボールを私に渡してくる。「ポケモンを保護してる慧音さんに一度話した方がいい」と言う事を告げつつ。私は恐る恐るモンスターボールからポケモンを出して行く。ルカリオ、そしてロコン。平気そうにしてる二体、そして出てこないのは…

 

「ドラメシヤ…」

 

「どんな事があって、中のポケモンが出てこないかはわかりません。然し…今この子はバトル出来る状態じゃないです」

 

「…そう…ですか…」

 

 圧倒的な敗戦、その力の差を見せつけられて来てからこうなるのはわかっていた事だ。トレーナーである私の責任。その重みが心にのしかかって行く。ナースさんに静かにありがとうございましたと私は告げると、ルカリオとロコンを再度ボールの中に戻しポケモンセンターを出て行く。

 

 イーブィもショックを受けながらも私を励まそうとしてくれているのか、肩に乗り顔をすりすりしてくる。そんなイーブィを私は軽く撫でながらひとまず私は先程いた慧音さんがいる寺子屋にへと足を進める。

 

「……」

 

 周りから聞こえてくるのは霊夢さんを讃える声。結局は解決した人がすごいんだなと言う事を思い知らされる。静かに出てきた悔しさを心に押し留めながら静かに寺子屋の門前へ。だがそこにいたのは待っていたと言わんばかりにこちらを見つめる慧音さん。

 

「来ると思ったよ。ナースさんに勧められたんだろ?」

 

「…はい」

 

「霊夢の口ぶりから私も不安になっていた。だが君が来たと言う事はそれが現実になったと言う事だ」

 

 お見通しかのように慧音さんは呟いて行く。こんな人に隠しても無駄だろう。私はドラメシヤがボールから出てこないという事を告げる。慧音さんは否定する素振りも見せずに淡々と頷くと…

 

「…なるほどな。分かった。ひとまずついてこい。その表情では今後ジムチャレンジは出来ないだろ?今のうちに紛い物を払っておこう」

 

「…はい」

 

 慧音さんの言う紛い物とはきっと私の中にあるストレス、落ち込みの部分を指摘しての事なのだろう。慧音さんに言われるがまま、私は寺子屋の中へ。庭で遊んでいる子供達とポケモンを足目に、そのまま家内に入って行く。

 

「普段は授業している場所だが今は気にしないで座ってくれ」

 

「…分かりました…」

 

 何が始まるのだろうか。生徒達が座っている畳に私は腰掛け、慧音さんはいつも立っている教壇らしき場所へ。キテルグマの来襲によりスタジアム含む様々な建物が一時閉鎖。だからだろうか、いつも以上に周りから聞こえてくるざわめきも強い気がする。

 

 何か始まるとたかをくくっていた私。然し数分経っても続く沈黙。どう言う事なのかと彼女に問いかけようとした瞬間、慧音さんが口を開く。

 

「キテルグマは凶暴な生き物でね。よくトラウマを植え付けられてトレーナーを辞めたと言う人も少なくはない」

 

「トレーナーを…?」

 

「ああ。君の中に問いたい。今後立ち塞がるジムリーダー達は曲者揃いの強敵だらけだ。私や美鈴のクラスより遥かに。君はどうしたい?」

 

 私は慧音さんの言葉に思わず息を呑む。分かっていた。私の中にこの際に諦めようとしていたほんの僅かの綻びを。慧音さんはそれを見抜いた上で問いかけて来たのだ。私は隣にいるイーブィの不安そうな表情を見た後に俯きながら…

 

「正直、私自身調子に乗っていた所もあるかもしれません。霊夢さんに推薦されて、ここまで無敗でした。分かっていたんです…でも自信がついたまま霊夢さんに挑みたかった…!!」

 

「……」

 

 つい溢れた本音。畳を濡らす涙は間違いなく悔しさから出てきたものだろう。慧音さんは私の言葉にただ頷くとスゥっと一呼吸入れた後、私の方を真剣な眼差しで見つめ…

 

「ここで力の差を感じて君はどう思った?」

 

「力不足だと…トレーナー失格だと…」

 

「そうか。ならどうしたい?ここでジムチャレンジを棄権するか、これを糧にして進むか。時間は待ってくれない。落ち込んでいる間に事は進んでいく」

 

 私がどうしたいか。トレーナーの不安がポケモン、イーブィを不安にさせる。だが私が棄権したらこの子達はどうなる?誰が面倒を見る?どうモチベーションを持たせる?疑問が溢れ出る中、モンスターボールから出てきたルカリオが私の背中を軽く押す。

 

「!?ルカリオ…!?」

 

「君のルカリオは…君ともっと冒険をしたいと言っているのかもな」

 

「ルカリオ…そっか…そうだよね…」

 

 ルカリオの行動は私に勇気を与えてくれた。私はスゥっと息を吸い、小さく吐くと慧音さんの方を真剣な眼差しで見つめ、ジムチャレンジを続けると宣言した。慧音さんは軽く微笑むと…

 

「君の判断。よーく分かった。今後の君の活躍を祈ってこれを渡す」

 

「わわっ!?」

 

 慧音さんが私に渡してきたのは何かの石のような物。キョトンとする私に対して慧音さんは…

 

「ほのおのいしという。君の手持ちのロコンを進化させるアイテムだ。進化したら元の姿には戻らないが、ロコンはどうしたいのだろうな。この際聞いてみるといい」

 

「…はい」

 

 慧音さんはロコンの反応を見たいという。その言葉に乗せられるかのようにロコンを私はボールから出すとロコンの前にほのおのいしを置いてみる。すると慧音さんが…

 

「ロコンの進化系、キュウコンはとても綺麗で強力な火力を持つポケモンだ。君のイーブィと同じくロコンも進化すればとんでもないポケモンとなる」

 

「慧音さん…」

 

「君からロコンの意思を問え。進化する、しないにしろ。迷いがあるかないか確かめたい」

 

 慧音さんの言う通り、私はロコンをじっと見つめ少ししゃがみ込むと…

 

「ロコン。これはほのおのいしと言ってアナタが…っ!?」

 

 ロコンの行動に迷いはなかった。咄嗟に動きロコンはほのおのいしに手をかざした。するとロコンの身体が光り始め、九尾の狐のような姿に。少し愛らしさもありながらのたくましくなったロコン。いやキュウコンと言うべきか。私はキュウコンを見て気づけば笑っていた。

 

「迷いなんてなかったようだね…アナタは元々バトル好きだもんね。慧音さん、私からお願いがあります。一時的にドラメシヤを預かってくれませんか?」

 

「急なお願いだな。迷いは…なさそうだな。分かった」

 

 今、ドラメシヤがいても戦力にもならないし、ドラメシヤ自体にプレッシャーがあるだろう。だったら休んでもらって心の紛い物を取った方がいい。そう思った私は慧音さんにドラメシヤを預ける。その決断に迷いはなかった…




見てくださりありがとうございます。


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助けてもらった恩

久しぶりに投稿しまーす。


「それではドラメシヤをよろしくお願いします」

 

「ああ。分かった、任せておけ」

 

 ドラメシヤのモンスターボールを慧音さんに預け、三度彼女に頭を下げる。慧音さんは嫌そうな顔を一切する事なく笑みを浮かべると、私の肩をポンと叩く。安心して任せろと言わんばかりの彼女の行動に私は安心すると、笑みを浮かべつつ寺子屋を後にする。

 

 次のジムリーダーは迷いの森にいる人物。宿に泊まっている際に聞いた噂だと、その3人目はダイマックスを使用しない人物だという。幻想郷には何人もいるらしいが、ダイマックスが当たり前の中でジム戦を行っていた為少し不思議な気分だ。

 

「どんな人物なんだろう…分かってるのはほのおタイプ使いという事だけど…」

 

 一度開会式でその姿は見ているとはいえ、その時はガチガチに緊張していた為正直なところ、魔美とメリーと話していた内容しか記憶にはない。会って色々と確かめるしかない。そんな思いで迷いの森に向かって足を進めていると、先程までいたメディアの姿が居なくなっている。

 

「もう少し現場確認とかしそうな感じなんだけどな…人里に被害が出ていないからかな…」

 

 周りを見ながらそんな事を呟いていると迷いの森入り口付近にどこかを見ながら立っていたのは先程、キテルグマから逃げていた青いポケモン。さっきは慧音さんの近くにいたけど、どうして再びここにいるんだろう…

 

 どこかを見ていた青いポケモンがこちらに気づき、振り向く。鳴き声を上げながらゆっくりと近づいて来た。そして目の前で止まり、鳴き声を上げる。

 

「先程のお礼に来たの?…ありがとう。私は大丈夫だよ」

 

「………」

 

 青いポケモンは目の前で私をじっと見つめている。ありがとうという言葉を求めている訳でもないみたいだ。三度小さくながらも鳴き声を上げると今度は私のバッグに近づき、じっと見つめる。キョトンとする私には目をくれず、じっとバッグを見つめる青いポケモン。

 

 言葉が通じたら楽な事はないんだけどなぁ…と思いつつ、バッグを差し出してみると匂いを嗅ぎ始めた。もしかすると食べ物を狙っているとか、そんな感じなのだろうか。なんて事を考えていると…

 

「そのウッウは君のパートナーになりたいんじゃないかな?」

 

「…?…アナタは…?」

 

 ウッウというポケモンの名前を上げるとそう推察をして来たのはカメラを持った一人の男性。先程のキテルグマの事件を取材していた者と口をすると、今私の近くにいるウッウについてこう語り始めた。

 

「先程、チャンピオンの取材をしている時に見たんだけど、誰かを探しているようで周りをキョロキョロしていた」

 

「誰かを…」

 

「ああ。ウッウは食欲旺盛でね、食べ物を前したら例え大事な人でも牙を向く厄介なポケモンなんだけど、他の人が食べ物を持って近づいて目見向きもしなかった」

 

 私が落ち込んで慧音さんのいる寺子屋に行っていた時にそんな事が…全く後ろに振り向く事が出来なかった私は、この男性からの一言に大きく驚かせられた。そしてその食べ物に見向きもしなかったウッウは私に近づき、バッグをじっと見つめている…

 

「モンスターボールを出してごらん。きっと凄い反応を見せると思うよ」

 

「は、はい…」

 

 言われるがまま、バッグからモンスターボールを出すとウッウは鳴き声を上げ食い入るようにモンスターボールを見つめ始めた。その様子を見て私は思わず笑みを溢したが、この子は野生。ルカリオの時のような感じにはならないとたかを括っていたが、そんな事は無さそうだ。

 

「…ウッウって言うんだよね、君の名前。キテルグマに惨敗するような情けないトレーナーだけど…良かったら私のパートナーになってくれないかな?」

 

 キテルグマ戦での惨敗はウッウも見ていた筈。モンスターボールをグッと見つめていたこの子も最悪、気分が変わるかもしれない。私は不安だったが、ウッウは鳴き声を思い切り上げた。それを同意と見た私は一回頷くと、そのままモンスターボールを近づけウッウの額に当てる。

 

 するとウッウはボールの中へ。ボールを持つ手の平が少し揺れる事3回。カチッという音が響き渡り、モンスターボールを胸元に近づけ何度も心の中でありがとうとつぶやいた。そして…

 

「ありがとうございます。アナタがいなければ、ウッウの意見がわからない所でした…」

 

「気にしないで。これがこの子にとって一番幸せな道だと思うから。それに、その子はみずタイプ。次のジムリーダーとの戦いでも絶対活躍するよ」

 

「みずタイプ…」

 

 ウッウがみずタイプという事を聞き、もしかするとこの子はこれに備えて仲間になってくれたのではないかというとんでもない事を考えてしまった。みずタイプはほのおタイプにとっては天敵、ほのおタイプに打点がなかった私のパーティに打点を付けてくれた。

 

「さ、次のジムリーダーはダイマックスは使わないけどかなりの強敵だよ。頑張って」

 

「はい…!!ありがとうございました!」

 

 私は記者の方に頭を下げて迷いの森の中へと進んでいく。既にジムリーダーに挑んでいる人もいるという話は耳に入っている。少し遅れ気味だが頑張るしかない。そんな思いを胸に森の中を進んで行ったのだが…

 

「あれ…?ここ、さっきも通った気が…」

 

 迷いの森と言われるにふさわしい道中。イーブィやルカリオに助けてもらいながら、思考錯誤する事数分。周りをキョロキョロしていると見えてきたのは、少し開けた場所。如何にジム戦をしたという痕跡がちらほら見あたる中で…

 

「何だ、もう次のチャレンジャーが来たのか。やっぱりチャレンジャーにとってはポケモンがいればそんなに迷わないのかな?」

 

 聞こえて来たのは一人の女性の声なのだが、姿は全く見えない。どこにいるのかなと周りを見渡していると、私の助けをしていたルカリオが上の方を見つめている。ルカリオに従うかのように上の方を見つめると…

 

 大木の枝に堂々と座り込み、こちらを見つめる白髪の女性の姿。私が彼女を見て驚いていると、女性は笑みを浮かべながら近くに降りて来た。

 

「当然ながら初めまして、だね。私は妹紅。藤原妹紅。ジムに見えないような場所でジム戦を行っているジムリーダーさ」

 

「は、初めまして…えと…ミッションとかはされてないのですか?」

 

「ああ、ジムミッション?今のだよ。迷いの森にて私のジムを見つける作業。上手いこと貴女迷っていたね」

 

 妹紅さんの笑みを見て確かに迷ったと思ったが、まさかあれがジムミッションだったとは…全然分からなかった。一瞬頭が真っ白になったが、ルカリオにしっかりしろとばかりに背中を押され、意識をはっきりとさせると…

 

「こ、コホン!!じ、ジムミッションも終わらせまし!!ジム戦お願いしてよろしいでしょうか!!」

 

「勢いだけはいいね。まあジムミッションをこなしてくれた訳だしね。いいよ、やろっか。こちらも準備しとくから。今のうちに選出するパートナーを決めといてね」

 

 妹紅さんは緊張しながら呟く私を見てそう呟くとゆっくりと距離を取り、準備体操をする。相手が出してくるのはほのおタイプ。それだけは分かっている。大事なこの一戦、私は位置に着く前に出すパートナーをもう決めていた。

 

「準備…出来ました…!!」

 

「そっか。私もだよ。手加減はなし、全力でかかって来なね」

 

「はい…!!行くよ…ウッウ!!」

 

「マルヤクデ、任せたよ」

 

 私の先手はウッウ。先程仲間になったばかりのウッウ。今回ルカリオ達はウッウの後のバックアップに回す。相手はマルヤクデ。炎を纏ったムカデのようなポケモンだ。勝るはウッウかマルヤクデか、緊張の一戦が始まろうとしていた…




見てくださりありがとうございますー。


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奮戦するウッウ

頭痛いながらも投稿…何とか書けました。


「行くよウッウ…みずでっぽう!!」

 

「マルヤクデ、かわしてどぐろをまく!!」

 

 ウッウが放ったみずでっぽうをマルヤクデは軽々とかわし、蛇かのようにポーズを取る。何のポーズが分からない中で妹紅さんが次に指示したのは…

 

「かえんぐるまっ!!」

 

「ぐおお!!」

 

「ウッウ、なみのりっ!!」

 

 マルヤクデは身体を回転させ始めるとそのまま炎を纏いながらこちらに向かってくる。その一直線の移動を好機と見た私はウッウになみのりを指示。ウッウは地面を叩きつけると、小規模ながらの津波を巻き起こすがマルヤクデは水を蒸発させながらそのままウッウの元へ。

 

 そのままウッウにぶつかり吹き飛ばす。ウッウはある程度で地面を抉りながらも踏ん張ると…

 

「ウッウ!こうそくいどうして接近して!!」

 

「くわっ!!」

 

「来るよマルヤクデ!どぐろをまく!!」

 

 ウッウは鳴き声を上げながら地面を蹴り出すと、そのまま空中をジグザグに動きながらマルヤクデに接近。マルヤクデが再びポーズを取っている間に私は次の指示を出す。

 

「ドリルくちばしっ!!」

 

「マルヤクデ、かえんぐるまっ!!」

 

 ウッウは身体をドリルのように回転させながらマルヤクデに向かって行く中、マルヤクデは再びその場で身体を回転させウッウに向かって行く。マルヤクデとウッウがぶつかり火花を散らす中、2匹の力が爆発を引き起こしその爆風に巻き込まれて2匹は少し吹き飛ばされる。

 

「もう一度行くよウッウ!!なみのり!!」

 

「マルヤクデ、むしくい!!」

 

 ウッウは再びその場の地面を叩きつけ今度は大きな津波を巻き起こす。マルヤクデは妹紅さんの指示通りに牙を立てていたが、途中で中断。引き返そうとするがその瞬間にマルヤクデをなみのりが飲み込んだ。

 

「マルヤクデ!?大丈夫!?」

 

「ぐ、ぐおお…!!」

 

「耐えるか…!!」

 

 ウッウは大きな津波を巻き起こした影響からか、魚を咥えながら私の近くに戻って来た。マルヤクデは大ダメージを負ったがさすがに1発では沈まない。私は息を呑みながら小さく息を吐くと…

 

「ウッウ、みずでっぽう!!」

 

「マルヤクデ、かえんぐるま!!」

 

 大ダメージを負いつつ、マルヤクデは再び身体を回転させ炎を纏うとウッウが放ったみずでっぽうを最も簡単に掻き消し、そのままウッウに衝突し吹き飛ばす。ウッウは何とか踏ん張ると咥えていた魚を放出。そのままマルヤクデに当てて吹き飛ばす。

 

 それを受けて耐えきれなくなったのか、マルヤクデはそのまま倒れ込み戦闘不能に。妹紅さんは驚きつつも少しばかり歯を食いしばると…

 

「忘れていたよウッウの特性…!!魚を吐き出して攻撃する事があるんだよね…!!」

 

「今のは助けられました…!!」

 

「勝負はここから…行くよウィンディ!!」

 

 マルヤクデをボールに戻した妹紅さんは苦笑いを浮かべると、冷や汗を拭いながら2体目のポケモンであるウィンディを繰り出す。少し大きくオレンジ色のポケモンだ。

 

「強そう…!!でもここから…!!ウッウ、こうそくいどう!!」

 

「させない…ウィンディ、しんそく!!」

 

 ウッウが動き出そうとした正にその瞬間、妹紅さんの指示を受けたウィンディの体当たりが炸裂。ウッウがそのまま地面に叩きつけられた中で妹紅さんは手を緩めない。

 

「ウィンディ、おにび!!」

 

「っ!!ウッウ、再度こうそくいどうでかわして!!」

 

 ウッウは何とか立ち上がるとそのまま素早く動き、ウィンディが放ったおにびを回避。何とか体勢を戻すまでに至ったが妹紅さんは少し余裕そうにニヤリとした笑みを浮かべると…

 

「ウィンディ、再度おにび!!」

 

「ウッウ、おにびをみずでっぽうで…」

 

「ウィンディ、おにびに向かってひのこ!!」

 

 私が驚きを見せる中で妹紅さんとウィンディによる荒技が炸裂。おにびに当たったひのこが混ざり合い大爆発を巻き起こし、みずでっぽうを放とうとしていたウッウの体勢を崩しかけると妹紅さんがつかさず動く。

 

「ウィンディ、しんそくのスピードで迫ってかみつく!!」

 

「ウッウ、ドリルくちばし!!」

 

 ウィンディが再度しんそくのスピードで一気にウッウに迫るとそのまま身体に噛み付く。ウッウは痛がる素振りを見せつつ、ウィンディに噛みつかれながら身体を回転させるとそのままウィンディを回転させた勢いで吹き飛ばす。

 

 ウィンディは踏ん張ると身体を震わせ少し余裕そうにしているが、ウッウはマルヤクデ戦の影響もあり少し疲労が蓄積している状態。でもウッウがやる気ならサポートするだけ…!!

 

「ウッウ、なみのり!!」

 

「今度はさせない!!ウィンディ、再びしんそく!!」

 

 ウッウが地面を叩きつけるそのタイミングでウィンディがしんそくのスピードで接近。そのままウッウはウィンディの体当たりをまともに食らうと、吹き飛ばされる。何とか私の前で踏みとどまったが蓄積したダメージが限界に達したのか、ここで倒れ込み戦闘不能に。

 

「ウッウ…ッ!!…お疲れ様…いい働きだったよ…!!」

 

「ふう…マルヤクデを突破したトレーナーは久々だから、少し焦ったけど。何とか倒せたね」

 

「まだまだここからですよ…!!(ウィンディの勢いに耐え切れるのは…!!)行っておいでキュウコン!!」

 

 ルカリオとイーブィでは若干不利となってしまう。そう考えた時に思いついたのがキュウコンという決断。同じほのおタイプだが、ウィンディの手の内は全て見た…後は特性だけ…!!

 

「キュウコンという事は上を取れるポケモンがいない事だね?」

 

「どうでしょうか…!!行くよキュウコン、でんこうせっか!!」

 

 ウィンディが先に動く前にキュウコンにでんこうせっかを指示。地面を蹴り出したキュウコンがそのままウィンディに接近し、体当たりで吹き飛ばす。ウィンディはすぐに踏ん張ると…

 

「ウィンディ、かみつく!!」

 

「キュウコン、じんつうりきッ!!」

 

 動き出したら向こうの方が上。ウィンディは地面を蹴り出すとジグザグに動きながらあっという間にキュウコンに接近。そのまま思い切り噛み付くが、キュウコンも負けじとじんつうりきにてウィンディを自分の身体から弾き飛ばす。

 

「かえんほうしゃっ!!」

 

「…!!」

 

 私が次に選んだ手はかえんほうしゃ。だが妹紅さんは余裕の表情を浮かべている。まもなくしてウィンディにかえんほうしゃが当たるも、ウィンディは身体を震わせるだけで無傷だ。

 

「特性もらいび。かえんほうしゃは効かないよ」

 

「やはりそうですか…!!」

 

「夢特性だったらもう効果は出てる筈…だったら…ウィンディ、最後のしんそく!!」

 

 妹紅さんはあえて威力が上がったほのお技で攻めずにしんそくを選択。迫って来たウィンディがそのままキュウコンに体当たりを喰らわすものの、キュウコンはその場から吹き飛ばされずに踏みとどまった。そして私は息を呑みながら…

 

「その場からは絶対に逃がさない…!!キュウコン、じんつうりき!!」

 

 キュウコンのじんつうりきがウィンディに炸裂。念力によりウィンディの身体を浮かせるとそのままキュウコンはウィンディを地面に叩きつける。ウィンディは痛がったそんな表情を見せつつも、スッと起き上がるが…

 

「隙は与えない…!!キュウコン、でんこうせっか!!」

 

「ウィンディ、かみつく!!」

 

 ウィンディの元に動き出したキュウコンの体当たりがウィンディに炸裂するものの、ウィンディは地面を抉りつつ踏ん張る。すると今度は思い切りウィンディがキュウコンに噛みつき、怯ませるとそのまま噛みながら投げ飛ばした。

 

「キュウコン!!」

 

「キュウ!!」

 

「大丈夫そうだね…よし…続いて行くよ…!!」

 

 キュウコンの前に立ち塞がるウィンディ。余裕そうにするのを見て私は小さく息を呑んでいた…




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息詰まるほのおタイプとの戦い

いつもの更新ですー。バトル回になります。


「キュウコンでんこうせっか!!」

 

「ウィンディ受身の態勢!!でんこうせっかを耐えて!!」

 

 ウィンディの特性、キュウコンの特性もあり両者ほのおタイプの技が使えず、限られた技でしか動けない状態。そんな中私はキュウコンにでんこうせっかを指示。

 足元を蹴り出したキュウコンがそのままウィンディに迫り行くと、そのまま体当たりをするがウィンディはその場から、微動だにする事なく耐えると…

 

「かみつく!!」

 

「キュウコン!!じんつうりき!!」

 

 キュウコンのでんこうせっかを耐えたウィンディが妹紅さんからの指示を受けて、キュウコンに噛み付いて来る。それを聞いた私はキュウコンに再びじんつうりきを指示。ウィンディがキュウコンの身体に噛み付いた瞬間に、キュウコンは念力を働かせてウィンディを宙に浮かせる。

 

「キュウコンの念力が勝った!?」

 

「そのまま投げ飛ばしてっ!!」

 

 キュウコンはウィンディを念力にて宙に浮かせた後、そのまま妹紅さんの方に投げ飛ばす。ウィンディは地面に叩き付けられる前に体勢を整え、妹紅さんのいる場所の僅か手前で踏ん張るとキュウコンに対して唸り声を上げる。

 

「(徐々にながらダメージを与えていくしかない…!!)キュウコン、でんこうせっか!!」

 

「ウィンディ、再び受け身の体勢!!」

 

 キュウコンは私の指示を受けて再びウィンディに接近。そのまま再びウィンディに体当たりをしていくが、ウィンディは地面を抉りつつ踏ん張る。その後に声を上げたウィンディに対して妹紅さんが…

 

「ウィンディ、かみつく!!」

 

「キュウコン、じんつうりき!!」

 

 ウィンディが三度指示にてキュウコンに噛み付いて来る。ウィンディのかみつくをまともに食らったキュウコンだが、歯を食いしばりつつも何とか念力にてウィンディを捉える。そして宙に浮かせるとそのままウィンディを地面に叩きつけた。

 

「ウィンディ!!」

 

「キュウ…!!」

 

 ウィンディは地面に叩きつけられた地点で戦闘不能に。キュウコンもかなり無理をしていたのか、ウィンディが戦闘不能になったのを見届けてダウン。これに少し私は驚かせられたが、キュウコンが踏ん張ってくれないと不利な状況が続いた事を考えると感謝しかない。

 

 キュウコンを戻す際、お疲れ様と一言だけ告げボールに戻す。そして妹紅さんが次に繰り出したのは人型の若干ウサギ耳をしているポケモン。

 

「見た事のないポケモン…!!」

 

「エースバーンというんだ。コイツが私の最後。さて、君はどんなポケモンを繰り出すのかな?」

 

「だったら私はこの子です!行くよイーブィ!!」

 

 バトル前にボールの中に戻していたイーブィをフィールドに出す。イーブィは力強く声を張り上げた後に、エースバーンは余裕そうに口元を緩ませる。チラッと私達の方を見つめて、頷くイーブィとエースバーン。それに気合いを入れさせられる形で私は小さく「よし」と呟くと…

 

「行くよイーブィ!!びりびりエレキ!!」

 

「かえんボール!!」

 

 イーブィは身体から発した電撃をそのままエースバーンに放出していく中、エースバーンは小石を取り出し見事なリフティングを披露するとそのままイーブィに向かって蹴り飛ばして来る。イーブィはそれにびっくりして技を中断すると自分の意思で攻撃をかわした。

 

 びりびりエレキはエースバーンの頰をかすっただけだった。反動が少し大きそうな技だ…何か起点に出来ないか…

 

「イーブィ、でんこうせっか!!」

 

「ブレイズキック!!」

 

 何か起点に出来ないかそう考えながらイーブィにでんこうせっかの指示を出す。イーブィは足元を蹴り出し、ジグザグに動きながらエースバーンに接近。そのまま体当たりをしようとするが、エースバーンのブレイズキックがイーブィにぶつかり、そのまま吹き飛ばされる。

 

「いきいきバブルッ!!」

 

「エースバーン、にどげり!!」

 

 イーブィは何とか体勢を整えるとそのまま息を吸い込み、大量の泡をエースバーンに向かって放っていく。エースバーンは泡をドンピシャのタイミングでかわしつつ、イーブィに接近。一度イーブィの身体を蹴り付け、2回目は回し蹴りかのようにしてイーブィを蹴り付けて吹き飛ばす。

 

「イーブィ!!」

 

「ブイ…!!」

 

「かえんボールッ!!」

 

 何とかイーブィは踏ん張りつつもエースバーンの集中攻撃の前にかなりのダメージを背負わされた。極め付けに妹紅さんはエースバーンにかえんボールを指示。小石を取り出し、再びリフティングをしていくエースバーン。それを見てハッとした私は…

 

「(かけるしかない…!!)イーブィ、でんこうせっか!!」

 

「!?」

 

 言わばギャンブルのような感じだった。イーブィは私の指示を受けてエースバーンに接近。ジグザグに動いてくれたおかげで狙いが定まらずに、エースバーンはかえんボールを中断。そのままイーブィの頭突きをまともに受ける。そして…

 

「いきいきバブルッ!!」

 

「っ!!ひのこっ!!」

 

 エースバーンが少し怯んでいる間にイーブィに再度いきいきバブルを指示。イーブィは息を吸い込み、泡として吐き出す。エースバーンは吐き出したタイミングで体勢を整えたのだが、そこでいきいきバブルをまともに喰らう。だが怯む事なく、ひのこを口から放出する。

 

 イーブィにひのこが命中したが、身体をひのこを取っ払い震わせて再び身構える。

 

「でんこうせっか!!」

 

「ブレイズキックッ!!」

 

 イーブィが先に動かし、再びジグザグに動きながらエースバーンに接近するとそのままエースバーンが足を動かす前に、頭突きを食らわしブレイズキックの標準をずらす。隙を与えたらやられる…だったら…!!

 

「イーブィ、いきいきバブル!!」

 

「エースバーン、にどげり!!」

 

 エースバーンの蹴りをイーブィはまともに食らいながらも地面を抉りながら踏ん張り、イーブィはエースバーンに向かっていきいきバブルを放っていく。イーブィがエースバーンに吹き飛ばされる時には、エースバーンにいきいきバブルが全て命中。

 

 イーブィの隙を与えぬ猛攻に耐えきれなかったのか、かなりフラフラした後にエースバーンはその場に倒れ込む。一方のイーブィも私の横にて倒れ込んで戦闘不能に。

 

「……まさかかえんボールの一瞬の隙を突かれるとはね…確か君、ルカリオを持っていたよね?」

 

「持ってます」

 

「そっか…じゃあ私の負けだね。おめでとチャレンジャー」

 

 私の一言に小さく息を吐くと妹紅さんはエースバーンを戻して、私に近づいて来る。一方の私もイーブィに一言お疲れ様とだけ告げて、ボールに戻して妹紅さんに近づいていく。

 

「素晴らしい戦術だったし…君結構ギャンブルみたいな感じ好きなんだね?」

 

「あはは…直感で動いている感じで…」

 

「そっか…あ、これバッジね」

 

 妹紅さんは苦笑いで私にそう問いかけるとバッジをズボンのポケットから取り出して私に渡して来る。私はバッジを見て安心し切ったかのように一息吐くと、妹紅さんの方を見て「ありがとうございます」と礼を述べる。

 

「いやいや。君は勝ったんだしさ、当然だよ。後…」

 

「…?どうかしましたか?」

 

「君が来る前に君とは違うトレーナーが来たんだけどさ。普通なら印象に残らないんだけどね…かなり怒りがこもっていた目をしていたんだよ」

 

「はあ…」

 

 妹紅さんの話しを聞いていくとその人物が私と同じチャンピオンから推薦されたトレーナーだという事が判明。霊矢かメリーか。どちらにしてもジムリーダーに印象を残すのは相当な事だとは思うが…

 

「いずれにせよ。会ったら気をつけな。変に刺激したらダメだよ」

 

「わ、分かりました…」

 

 妹紅さんの忠告を受けて私は倒れた仲間を回復させつつ、先に進んでいくのだった…

 




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親友の異変

久しぶりです。何とか書いたので投稿します。


 激戦の末、3人目のジムリーダーである妹紅さんに勝利した私。彼女からきっちりとバッジを受け取り、そのまま目指すは4人目のジムリーダーの元。今は丁度真昼時、ジムが閉まる時間帯までには辿り着きたくその足を進めていた…

 

「然し妹紅さんの言う怒りをこもった目をしていた人物って誰だろう…大体は絞れてるけど…」

 

 ルカリオとイーブィに手伝ってもらいながら足を進める中、ふとした事を考える。チャンピオンが推薦したトレーナーといえば私か、メリー、そして霊矢しかいない。霊矢なら私に負けた腹いせで怒りの目をしていたというのは充分理解できるが…

 

「メリーはね…あり得ないよね…」

 

 自分の中でそう考えを落ち着かせるものの、思えば前遭遇した時もかなり雰囲気がおかしかった。あんなに元気一杯に笑みを浮かべていたメリーの落ち込み具合…おかしいとは思ったが。…やめよう。まさかの事を疑いたくない。

 

「グウ!」

 

「うん。歩いているよルカリオ。え?前を見ろって?」

 

 少し下を向きながら足を進めていた私に対してルカリオが声を張り上げる。適当に返事したと感じたのか、ルカリオは一瞬私の方に顔を向けた後に、視線を前方に向ける。私の肩に乗っているイーブィも同じようにしている。2人して同じ方向を向くと言う事は何かあるのだろう。

 

 そう思った私はパッと顔を上げて前の方を向く。そこには立ち止まっているメリーの後ろ姿。声が聞こえたならパッと後ろで振り向くはずの彼女がこちらを見ない事に疑問を抱いた私は、メリーにゆっくりと近づくと…

 

「ん?あ、蓮子じゃん」

 

「メリー。どうしたのこんな道中で立ち止まって」

 

「何でもないよ。ちょっと足を休めていただけ。蓮子は?」

 

「そか。私はこれからジムに向かう所だよ」

 

 何だろうか。いつも通り些細な話をしているだけなのにメリーからはどこからか哀愁のような物を感じるのは…

 

「そか。私もう少し休憩しとくから。先に行って」

 

 偶然や気のせいだと思っていたけどこうも表情に表れると親友として黙っている訳には行かない。ふぅー…と息を吐きながら下を向いたメリーに私は息を呑みながら問いかけてみる。

 

「ねえメリー…どうした…」

 

「元気がいつもよりないって。そう言いたいんでしょ?」

 

「え?あ、うん…」

 

「色々あってね…今大スランプなんだよ。それだけ」

 

 大スランプだけでこんな落ち込むものなの?私の言葉を察したメリーからの一言にそう疑問に思った私。それだけで済んだら絶対そんなに落ち込んではいない。私は首を横に振り小さく「違う」そう呟くと…

 

「絶対それだけじゃないよ!どうしたんだよ、何がどうあって…」

 

「いいから先行ってよ!!ほっといて!!」

 

 必死に疑問をぶつけようとする私に対してメリーは一度歯を食いしばった後に私の方を見ながら怒鳴り声をあげる。その声に驚いた私が一歩メリーから離れたその瞬間に私の前に立ったルカリオ。

 

 それを見たメリーがハッとしたようなそんな表情を浮かべると…

 

「そっか。私達はポケモントレーナーだもんね。羨ましいよそんなにポケモンに慕われていて。逆に私は…」

 

「メリー…」

 

「気遣いは無用だよ…蓮子のルカリオが気合い充分だから、それに乗せられる事にするよ」

 

 ルカリオが勘違いして私を守ろうと身構えていたのを見て、メリーはスゥ…と息を吸い小さく吐き、私から少し距離を取りモンスターボールを構えると中から青い色をした鳥ポケモンを繰り出す。

 

「この子…どこかで…」

 

「アオガラス。ココガラの進化系だよ。蓮子!加減はいらないからね!」

 

 アオガラスは元々メリーの手持ちにいたココガラの進化系。その事に私は驚きつつ、メリーの言葉を聞いて気を引き締める。メリーから感じる焦りと集中。恐らく後者の方が凄いだろう。私も油断せずに行かないと…

 

「行くよアオガラス!!にらみつける!!」

 

「ルカリオ、がんせきふうじ!!」

 

 メリーの指示からバトルが開始。アオガラスがこちらを睨みつけてルカリオの防御力を下げてきたが、こちらは攻勢。ルカリオが私の指示を聞いて地面を叩きつけると、跳ね上がってきた岩をそのままアオガラスに波動で放って行く。

 

「アオガラス、かわしてドリルくちばし!!」

 

 アオガラスはくちばしの先を光らせるとこちらに向かって来た岩をジグザグに動きながらかわすと、そのままルカリオの元へ。身体を回転させながらルカリオに突進して行く。

 

「ルカリオ、はっけいで受け止めて!!」

 

「グウ!!」

 

 アオガラスの動きをルカリオの手で止めようとするが、アオガラスがあまりに高速で回転している事から、手が弾かれてしまいそのままドリルくちばしを直撃。ルカリオはそこでようやくアオガラスを跳ね除けると、一度アオガラスから距離を取る。

 

「アオガラス、つめとぎ!!」

 

「はどうだんッ!!」

 

 私の指示を聞いてメリーは少し驚いた表情を浮かべる。アオガラスが爪を研いでいる間にルカリオが溜めた波動が一気にアオガラスに放出される。アオガラスははどうだんの存在に近づいてきてから気づいた為、直撃。致命傷にはならなかったものの、少々吹き飛ばされ…

 

「ッ!!アオガラス、つけあがる!!」

 

「クワッ!!」

 

 体勢をすぐに立て直したアオガラスは一度降り立った地面を強く蹴り出すと、そのままルカリオに接近。足を思い切り顎に当てる。攻撃力が上がっている分、威力も倍増しているがそれはルカリオも同じことで…

 

「今だ…ルカリオ!!その場で再度がんせきふうじ!!」

 

「アオガラス、ドリルくちばし!!」

 

 その近くで再び回転し始めたアオガラスに対して、こちらは思い切り地面に拳を叩きつける。地面に埋まっていた岩が浮かび上がり、アオガラスに直撃。岩がアオガラスの攻撃を打ち破り、アオガラスはメリーの目の前まで吹き飛びそのまま戦闘不能となった。

 

「アオガラス!!がんせきふうじのどこにあんな力が…!!」

 

「ルカリオの特性、せいぎのこころ」

 

「!!」

 

「アオガラスのつけあがるの技はあくタイプ。それを食らってルカリオの攻撃力が上がった訳」

 

 メリーは思わず忘れていた…と言わんばかりの表情を浮かべ戦闘不能となったアオガラスをボールの中に戻す。少し歯を食いしばった後に小さく息を吐くと、ボールを出し…

 

「行くよ…バイウールー!!」

 

「バイウールー…ウールーの進化系…?」

 

 バイウールーがウールーの進化系である事を認めるかのように無言で頷くメリー。だとしたらノーマルタイプのバイウールーではがねタイプが入っているルカリオに対する事となる。メリーの焦りを感じたのか、ずっと黙っているが不安そうな表情を浮かべるイーブィ。

 

「ホントにいいんだね?バイウールーが二体目…」

 

「蓮子。相手に気遣いは無用だよ」

 

「…ブイ…」

 

「分かったよ。こっちも加減しないから!!」

 

 私の言葉を聞いて身構えるルカリオ。一方のバイウールーも身構えたようなそんな姿勢を見せる。一時訪れる静寂。私とメリー2人とも一息吐くと…

 

「行くよルカリオ!!はどうだん!!」

 

「グウ!!」

 

 私がルカリオに指示出した事に対してメリーはバイウールーに指示を出さない。どういう事か考えている間にルカリオのはどうだんがバイウールーに放たれたのだが…

 

「バイウールー。かわしてまねっこ!!」

 

「まねっこ!?」

 

 バイウールーは身軽な動きでルカリオのはどうだんをかわすと、今度はバイウールーがルカリオに向かって溜め込んだはどうだんを放つ。これはあまりに予想外で、次が考えられない。そうしているうちにルカリオにはどうだんが命中し、少し吹き飛ばされた。

 

「そういう事か…厄介だな…」

 

 メリーが考えている事。この地点では読めずにいた…




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ルカリオの意地と消沈する親友

久しぶりです。しんどいですけど投稿しますー。


「しねんのずつきッ!!」

 

「ルカリオ!よーく引きつけて…!!」

 

 バイウールーが放って来たまねっこの技により弱点を突かれるかもしれない。そんな不安が攻勢にへと転じれない中でメリーはそんな事お構いなしにバイウールーにしねんのずつきを指示。角と頭の間に念力を溜め込んだバイウールーがこちらに向かって来る。

 

 息を吐きながらその距離を測り、ルカリオの射程内に入った瞬間に…

 

「今だルカリオ!!はっけい!!」

 

 ルカリオが私の指示に頷き、身構えた姿勢を取るとそのまま拳を握りしめて一気に突き出す。バイウールーの念力と拳がぶつかり、最初はその場から動かない戦いが続いたものの、やがてルカリオが地面を抉りながら押されていき…

 

「っ!!ルカリオ半身の体勢!バイウールーを受け流して!!」

 

 ぶつかり合っている中で難しい指示だとは思ったが、ルカリオはこれをきっちりとこなしてくれ、半身の体勢からバイウールーの攻撃を左に移動する事で受け流す。バイウールーはルカリオが目の前からいなくなった事により体勢を崩しかける。

 

「逃がしちゃダメバイウールー!!まねっこ!!」

 

「(しねんのずつき以外なら!!)ルカリオ、バイウールーに向かってもう一度はっけい!!」

 

 バイウールーが体勢を立て直した瞬間にメリーはまねっこを指示。エスパー技であるしねんのずつきとかくとうタイプの技であるはっけいならしねんのずつきの方が勝るかもしれないけど、相性関係なしなら後はパワーの差…!!

 

 向かって来るバイウールーに対してルカリオは再度拳を握りしめて一気に突き出す。バイウールーの勢いに一瞬再度押されそうになるが、こちらは攻撃力が上がっている分今度は押し切りバイウールーを吹き飛ばす。

 

「(よし…!!見立てがハマってくれた…!!)」

 

「バイウールー!!」

 

 ルカリオのはっけいを受けてバイウールーはクリティカルダメージだったからか、1発でダウン。だが同じ1発でもルカリオは耐えた訳だが、やはり蓄積しているのか疲れたような仕草を見せている。このまま行くのはしんどいかもしれない…

 

「ルカリオ、お疲れ…」

 

「グウ!!」

 

 気を遣ってここで交代しようとしたがまさかのルカリオが声を上げてこれを否定。ルカリオの意思を尊重し、そのまま3体目も相手をする事に。どこかでピカチュウを繰り出して来るはず…それまで持ってくれたらいいけど…

 

 一方のメリーはバイウールーをボールに戻し、少し3体目を迷った挙句に出したのは魚のようなポケモン。

 

「メリー。そのポケモンは?」

 

「バスラオ。みずタイプのポケモンだよ。一筋縄では行かないと思って…アクアジェットッ!!」

 

「っ!!(先制技ッ!?)」

 

 一瞬ポケモンの正体を問いかける為に私が気を抜いた瞬間をメリーは逃さず、バスラオに指示を出す。バスラオはぐっと身構え一瞬にしてルカリオにぶつかる。ルカリオは何とか持ち堪えた所を見て私は反撃に転じる。

 

「ルカリオ、がんせきふうじ!!」

 

「反撃はさせない…そのままずつき!!」

 

 ルカリオが地面を思い切り叩きつけようとした瞬間、バスラオのずつきが炸裂。ルカリオの技が中断される中、このままでは相手のパターンに入れられてしまう…そう思った私はルカリオに一旦後退を指示した。

 

 ルカリオがバスラオから離れるのを見てメリーは…

 

「逃がさない!!バスラオ、ずつき!!」

 

「(一旦間を作り出すしかない!!)ルカリオ、はっけいでバスラオを押し返して!!」

 

 バスラオがこちらに向かって来る中でルカリオは身構えて一気に拳を突き出す。バスラオとルカリオの拳がぶつかり合う中、ここはバスラオをルカリオの一撃で吹き飛ばす事に成功した。

 

「っ!!やはり押されるか…!!」

 

「よし…ルカリオ、いのちのしずく!!」

 

 バスラオが着地する間に私はルカリオにいのちのしずくを指示。ルカリオが目を瞑り手を合わせると、少しだけだが身体に出来ていた傷が引いていきルカリオも一息つく。メリーは少しだけ悔しそうな表情を浮かべた後…

 

「その間を作るのも今が最後…行くよバスラオ、アクアジェット!!」

 

「ッ!!」

 

 バスラオのアクアジェットが再度炸裂し、あっという間にルカリオの腹部に頭突きが炸裂。ルカリオが苦悶の表情を浮かべる中、バスラオの身体を掴みそのまま自身から引き離すかのように投げ飛ばす。

 

「指示なしに動いた!?」

 

「私の考えを読み取ってくれたのかな…まあいいや、いくよルカリオ!がんせきふうじ!!」

 

 自らの考えで動いたルカリオに感謝をしながら私はルカリオにがんせきふうじを指示。バスラオが着地する前に地面を叩きつけ、地面に埋まっていた岩を浮かばせるとそのままバスラオに向かって蹴り飛ばして行く。

 

「バスラオ!アクアジェットでかわして!!」

 

 バスラオは岩をアクアジェットでかわしていく。そして岩がようやく落ち切ったタイミングでメリーは別の指示を出し…

 

「バスラオ、にらみつける!!」

 

「にらみつける!?」

 

 ここに来てまさかの睨みつける。全く予想していなかった指示だけに驚きはかなりあったが、驚いてばかりでは話にならない。自分の気持ちを落ち着かせると…

 

「そのままバスラオ、アクアジェット!!」

 

「(行けるか…!?)ルカリオ、はっけい!!」

 

 バスラオがアクアジェットにて一瞬にしてルカリオに迫り、腹部に再度タックルをしてくる。ルカリオはなす術もなく攻撃を受けたのだが、何とここでルカリオは踏ん張りきり事前に握りしめていた拳をバスラオに一気に突き出し、バスラオの身体に当てて吹き飛ばした。

 

「バスラオッ!!」

 

 吹き飛んだバスラオはそのまま戦闘不能に。一か八かの賭けに近かったがルカリオを信じて良かった…メリーは歯を食いしばりながらバスラオをボールに戻す。そして彼女はこれが最後と切り出しボールを出すと…

 

「行っておいでヤクデ!!」

 

「!!」

 

 最後に出てきたポケモンはピカチュウではなく、マルヤクデの進化前であるヤクデ。ヤクデを出した事に驚きはなく、びっくりしたのは最後までピカチュウを出さなかったという事。私は静かに息を呑みながら…

 

「メリー?ピカチュウは…?」

 

「………」

 

「メリー!!」

 

「うるさいっ!!ヤクデ、かえんぐるまっ!!」

 

 ピカチュウが何故最後ではないのか、というもしかしての想像をしながらヤクデが身体を火で包みながらこちらに回転しながら向かって来る。今は邪念を捨てないと、静かに一呼吸をしルカリオに指示を出す。

 

「ルカリオ!かわしてがんせきふうじ!!」

 

「グウ!!」

 

 ルカリオがサッとヤクデのかえんぐるまを回避した後にがんせきふうじをする為に再度地面に拳を叩きつける。浮かびあがって来た岩や小石をヤクデに向かって蹴り飛ばしていく。

 

「ヤクデ、かわしてひのこ!!」

 

「ルカリオ、はどうだんッ!!」

 

 ヤクデががんせきふうじをかわしながらルカリオに向かってひのこを放つ。ルカリオは岩を蹴り飛ばした際に浮かびあがっていた為、空中から波動を溜め込み一気にヤクデに向かって放出。両者の一撃がぶつかり合う中、かわし切れなかった岩がヤクデの頭に当たり…

 

「!!」

 

「ヤクデ!!」

 

 ヤクデはそれにより目を回転させて混乱。その中でルカリオの一撃がヤクデのひのこを打ち破り、そのままヤクデに当たった。巻き起こる爆煙が晴れるとそこには戦闘不能となったヤクデの姿が。メリーは下を俯きながらボールにヤクデを戻す。

 

「メリー…」

 

「私の負けね……ピカチュウは……いいや、察して。それじゃ…」

 

 意気消沈し切ったメリーが呟きかけた一言。疑問に思いつつも私は彼女の言葉、そしてその背中を見ることしか出来なかった…




見てくださりありがとうございます。


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不穏な噂と4人目のジムリーダー

久しぶりです。8月最後の投稿になります。


 あんな姿を見たのは初めてだった。確かにバトル開始早々からメリーの覇気が全く持って伝わって来なかったし、戦術や指示にも迷いがあるようにも見えた。前回バトルした時より明らかに様子が変わっており、不安に感じていたがまさかピカチュウを外すまでになっていたとは…

 

 信じられない気持ちにもなったし、親友の疲弊しきった姿を見て何かしてあげられないと行けないとも感じた。このまま私はジムチャレンジの4人目に挑んでもいいのだろうか、今頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。

 

「ブイ…ブイ!!」

 

「!?え、あ、イーブィ?どうしたの?」

 

「ブイ!!」

 

 私の肩に乗っていたイーブィの鳴き声により私は我に帰る。俯きながら先行してくれているルカリオについて行っていた物だから、イーブィの鳴き声には大変驚かせられた。ふとルカリオが止まっているその先を見つめると、そこには存在感ありありと立っているスタジアムが。

 

 その隣には和風の病院があるのだが、近くにポケモンセンターがない事を考えるとこの病院がポケモンセンターの代わりをしているのだろうか。

 

「お疲れ様、ルカリオ。イーブィも一旦戻って。少し休んでジムに挑もうか」

 

 迷いが消えたかと言われたら全然消えてはいない。だがいつまでも暗い表情を見せていたらこの子達に影響してしまう。心配を心の中に押し留め、一旦イーブィ達をボールに戻してから病院に近付いて行く。

 

 病院の門に近づくとそこには「永遠亭」という看板が貼られており、恐らくこの名前がこの病院の名前なのだろう。門もただ開きの様子なので遠慮なく入らせてもらう事にした。

 

「待った」

 

 真正面にある入り口に入ろうとした瞬間に聞こえてきた女性の声。身体を少しばかりピクッと反応させ、声が聞こえて来た方角に振り返るとそこにいたのはうさ耳をつけた制服のような服を身につけた女性の姿が。

 

「ジムチャレンジャーよね?」

 

「はい。そうです」

 

「分かったわ。こっち来て。その入り口はポケモンとか取り扱っていない永遠亭の入り口だから」

 

 女性にそう言われ納得したのも束の間、サッと前方を歩いて行く女性の後ろをついて行く。歩いている間に話してくれたのだが、「この時期はジムチャレンジャーが良く来るから、特別にポケモンセンターも兼ねている」という事らしい。ジムチャレンジの時期はポケモンセンターはやってないらしい。

 

 何て話を聞きながら歩いていると丁度裏側に見慣れたポケモンセンターのマークが貼ってある場所が。急造の為かセンター並には設備はしっかりしていない。

 

「ここよ。ポケモンを回復させるならあそこの縁側に座っているウサギに話しかけて」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

 制服の人は忙しいのだろうか。私にそう告げるとその場から立ち去って行く。縁側近くに置いてあるベンチには新聞らしき物を持ちながら待っている人と、ここまで歩いて来てくたびれている人などいるが妹紅さんでつまづいている人が多いのか人数的には多くはない。

 

 ふと周りを見渡すがメリーの姿はない。小さく息を呑み、軽く息を吐くとそのままポケモンを回復させる為にベンチ前の縁側に座っているうさ耳の小柄の女性に声をかける。

 

「あの…すいません」

 

「ん?どーしたの?」

 

「ここに案内してくれた女性がポケモンを回復させるならアナタに声をかけろって言っていたもんで…」

 

「ああ、鈴仙ね。分かった、ひとまず回復させたいポケモンのボールを渡して」

 

 小柄の女性は小さく息を吐くと縁側から立ち上がり、ボールを受け取る為に手を差し出す。私は言われるがままに回復させたいルカリオ達4体のボールを女性に渡す。女性はボールを持つと…

 

「ちょっと待ってね」

 

 そう一言だけ告げると置いてある装置にボールをセットして行く。セットした後にボタンを押すと電流が流れ始め、セットされているボールを光らせて行く。こんな感じになっているんだという発見と、これで本当に回復しているのだろうかという疑問があったが…

 

「アナタ、不安みたいな表情を浮かべているね?」

 

「あ、いえ。そんな事は…」

 

「ホントォ?まぁいいけど。ポケモンセンターに置いてある装置使ってるから大丈夫だよ」

 

 こちらをからかうようにそうニヤリと女性は笑みを浮かべたが、すぐに装置の電流などを調節していく。ちゃんとポケモンセンターにある装置を使っているとの話を聞いて、一安心したのも束の間。女性は何かを思い出したかのように私の方を見て…

 

「あ、そうだ。アナタ新聞見た?」

 

「いえ、見てないです。何か書いてあったんですか?」

 

「うん。大した事件じゃないんだけど、一人のジムチャレンジャーがなーんか他のジムチャレンジャーから金を巻き上げる行為をしてるらしいよ」

 

 十分大事件ではないかと思ったが今はその思いを隠しておく事にして。ジムチャレンジャー同士でポケモンバトルという風景は見た事があるが、バトルしてるだけで金を使うといった行動は見た事がなかった。話しから伝わる異常さに私が息を呑んでいると…

 

「十分違法行為なんじゃ…」

 

「だからリーグ委員会が調査してるんだってさ。まあバレたら確実に処分が下るだろうね。本来ポケモンがいる世界じゃバトル後の金銭のやり取りは当たり前らしいけど、幻想郷では禁じられているから」

 

「幻想郷全体で…という事ですか?」

 

「そうそう。特にジムチャレンジャーとなるとさらに厳しいと思う」

 

 リーグ委員会に推薦状を提出してようやく成り立つジムチャレンジャーとしての姿。ほぼリーグに管理されていると言っても過言ではない。ポケモンがいる世界じゃ当たり前という言葉も気になるが、気にしても他の世界だから聞いても意味ないだろう。

 

 そう話しているうちに装置から終わったという音楽が鳴り響く。女性は4つのボールを手に取ると、私に近づいて来て…

 

「まあ、気をつけなって話しかね。はいこれ」

 

「ありがとうございます」

 

「ここのジムリーダーはフェアリータイプの使い手。何か後継者を探してるみたいで、ジムミッションは何かコンテストみたいな感じになってるよ」

 

「こ、コンテスト…!?」

 

 聞き間違いかなと思いきやそうでもないらしい。女性の表情が真顔という事で真実味などが伝わって来たが、とりあえず向かってみるしかないだろう。じっとスタジアムの方を向いていると…

 

「何か感じはただのポケモンバトルなんだけど。何かバトルの時の戦術とか戦法とか、または指示の美しさとか…」

 

「指示の美しさはいらないんじゃないですか…?」

 

「知らないよ。ジムリーダーに言ってよ」

 

「そ、そうですね…」

 

 何だかただ話しを聞いているとワガママな感じに聞こえて来なくないが、ひとまずそのジムミッションを突破しないとジムリーダーとは当たれない。審査されるのかぁ…と思いつつ、色々話してくれた女性のてゐさんに礼を告げると永遠亭から離れてスタジアムに向かって行く。

 

「…よし」

 

 一言自分の中で気合いを入れてその中へ。中は普通のスタジアムと一緒で内装がピンクなだけだが、問題なのはその受付。何だかジムチャレンジャーをジロジロ見つめながら、メモを取っている。ここまで見られるのか…と気色悪さを感じつつ並んでいない受付に近寄ると…

 

「あの…すいません…」

 

「ジムチャレンジャーの方ですね。ジムミッションを受ける手続きをしますか?」

 

「え、は、はい」

 

 全部見抜かれているようなそんな受付の人の口ぶりに息を呑んだが、とりあえず言われるがままにジムミッションを受ける手続きをする。ここまでは良かったがこの先、とんでもない感じになる事を今の私は知らない…




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ミッションというよりは…?

久しぶりに投稿します。少し気がだるい中投稿したので文が変かもしれませんがそこはそっとして頂ければ…


「こちらになります。ここのバトルコートで準備をしておいてください」

 

「は、はい…分かりました…」

 

 4人目のジムリーダーに挑むべくジムミッションの受付をした私。受付の人から案内されたバトルコートは、一見は何の変哲もない場所。人里にもあるような誰でも使えるような形には見えるが、問題は周りの観客席にいる人の数。

 

 見渡す限りにメモをつけているジム関係者の方…が左から右に見渡してもたくさんいる。誰一人として歓声や喋り声等を上げていない事からかなり気持ち悪い。

 

「い、いつもこんな感じでやってるんですか?」

 

「いいえ。ただ、今のジムリーダーが後継者を探しているらしく。合格した人にオファーを出している感じです」

 

「は、はあ…なるほど…」

 

 去ろうとする受付の人に一つだけ質問をするとこのような返答が返って来た。これがジムミッションのスタイルならそれはそれで仕方ない事。私は顔をパンパンと2回叩き、小さく「よし…」と呟いて気合いを入れ直すと入場してくるであろうバトル相手を待ち構える。

 

待つ事3分。うずうずしているポケモン達のボールが揺れ始める中で私の視線の先に銀色の髪をし、少し中国服のようなそんな服装をしている女性が視界に入ってきた。

 

「ごめんなさいね。本職は医者なもんだから」

 

「あ、いえ…大丈夫です」

 

「さて、ジムチャレンジの方よね。ここに案内される前に受付から色々説明されたとは思うけど…ここのジムミッションは1対1のバトルよ。後は周りからの評価でクリアかどうかを判断する」

 

「(やっぱりただ見つめているだけじゃないんだ…)」

 

 本職は医者であると言うジムミッション担当者の人から再度あらかたの説明を受けた後に自身が永琳だと名乗る。周りからの視線が気になるがひとまずやるしかない。永琳さんは「それじゃ…」と小さく呟くとボールを取り出し、中からピンクの肌をしたポケモンを繰り出す。

 

「私の方はピクシーよ。色々気になるだろうけど表向きはただのバトル。気にせずにやりなさい」

 

「…了解です…行っておいでウッウ!!」

 

 永琳さんからの助言を受け私は小さく頷くと思い切り前に踏み出し、ボールを投げる。中から出てきたウッウが羽を羽ばたかせながら地面に着地し気合い十分かのように声を張り上げる。こちらからポケモンを出した事により微笑む永琳さん。

 

 そんな永琳さんがスッと手を挙げた瞬間にどこかにあったゴングが鳴り響いた。

 

「行きます…!!ウッウ、なみのり!!」

 

「ムーンフォース!!」

 

 ウッウは声を張り上げながら地面を叩きつけると自身の周りから少し高めの津波を巻き起こし、ピクシーに向かって放って行く。永琳さんは冷静にピクシーに攻撃技を指示。ピクシーは前に指を向けると光の一撃を放ち、自身だけが当たらないように津波に風穴を開けた。

 

「そう来ますか…!!ウッウ、こうそくいどうでピクシーに接近して!!」

 

「ピクシー、その場で待機!ウッウの接近を待って!」

 

 永琳さんの指示はまさかの待機。波が丁度ピクシーがいる場所以外に流れていった後にウッウがピクシーの目の前に接近。ここで永琳さんが動く。

 

「ピクシー、うたう!!」

 

「!?ウッウ、つつく!!」

 

 選択肢はうたう。ピクシーが歌い始めるまさにその前に私はウッウにつつくを指示。ジムに入る前に覚えさせた技でピクシーがモードに入る前につついてピクシーの技を中断させた。

 

「ピク!?」

 

「畳みかけるよウッウ!!ついばむ!!」

 

「ピクシー、マジカルシャイン!!」

 

 連続して攻撃を叩き込もうとした瞬間、ピクシーの身体から放たれた光の弾丸がウッウに命中。ついばむの技が中断されウッウも少しピクシーの前から吹き飛ばされたが…

 

「ウッウ!!やっちゃえ!!」

 

「!?」

 

 永琳さんは一瞬なんの事か分かってなかったみたいだが、閉じていたウッウの口が開いた瞬間にそれを理解した。ウッウがなみのりをした時からずっと口の中に閉じ込めていたサシカマス、それをウッウはピクシーに向かって思い切り放出した。

 

 眩い光が放っている中で放たれた攻撃にピクシーは何の対応も出来ずに口から放たれたサシカマスが命中した。

 

「ピク!?」

 

「っ!!ウッウの特性…!!まさかこれを狙って接近したというの…!?」

 

「ナイス、ウッウ!!もう一度行くよ…!!なみのり!!」

 

「ピクシー、つきのひかり!!」

 

 ピクシーが怯み永琳さんが驚いている間に私の元に戻って来たウッウに私は再度指示を出す。ウッウは再度地面をくちばしで叩きつけると、またしても津波を巻き起こしピクシーに向かって津波を放って行く。ピクシーは津波が迫る中、受けた疲労を月の光で回復。

 

 なみのりをかわす気配もなく、防御の態勢にてダメージを喰らいながらも凌ぎ切った。

 

「回復されたか…!!」

 

「ピクシー、ムーンフォース!!」

 

「ウッウ、こうそくいどうで回避!!」

 

 ピクシーの指から放たれた光の一撃をウッウはこうそくいどうにて回避。ウッウはそのまま宙に浮きながら私の指示関係なしにピクシーに急接近し…

 

「ナイスウッウ!!そのままついばむ!!」

 

「好都合…!!トドメをさしてあげる…ムーンフォース!!」

 

 ウッウは私の指示を受けて再度口を閉しながらピクシーに突撃。ピクシーはこちらに指を向け、光の一撃を放ちウッウに命中させたが、ウッウは吹き飛ばずにそのまま踏ん張り上を向くとそのまま2匹目のサシカマスを放出。

 

 ピクシーに再度命中させた後に…

 

「ついばむっ!!」

 

「グワッ!!」

 

 ピクシーの身体を思い切りついばむ。これによりピクシーは吹き飛び、そのまま永琳さんを背にして仰向けで倒れて戦闘不能。ウッウも同時のタイミングにて戦闘不能に。私が一息吐いた後に永琳さんが話しを切り出そうとした時に、黙っていたジム関係者から拍手が。

 

「…拍手…」

 

「どうやら問いかける間もなく合格みたいね。ジムリーダーもこのミッションをモニターから見つめていただろうし、ジムリーダーからokが出たのかも」

 

「ジムリーダーから…」

 

 永琳さんの言葉から少し無意識のうちに笑みが溢れる。モニターから見つめていたという事もあり、見つめていたジム関係者の一人から今からジムリーダーが準備を始めるという事が呟かれると…

 

「君、名前は?」

 

「あ、蓮子です」

 

「じゃあ蓮子。ジムリーダーが準備する間にウッウを回復してあげるわ」

 

「あ、はい!お願いします!!」

 

 永琳さんの気遣いもあり戦闘不能となったウッウを回復してもらえる事になった。ジム関係者達が本バトルコートに移動する中で私はウッウを回復してもらっているのをじっと待つ。耳には本バトルコートから伝わる歓声が遠くからでも聞こえてくる。

 

 このジムリーダーを破れば4人目、半分という事になる。今までジムリーダーと対していた筈なのに無駄に緊張が込み上げてくる。

 

「緊張する?」

 

「え?は、はい…」

 

「そらそうよね。大体のジムチャレンジャーは今回のジムリーダーを通過できなくて辞退する人が多いから」

 

「そうなんですね…」

 

 永琳さんからふと漏れた一言にさらに緊張感が出てくるが、今はただ頑張るしかない。胸の鼓動を静かに落ち着かせていると…

 

「大丈夫。今回のアナタのバトルで出した力を出し切ればきっと勝てるわ」

 

「ありがとうございます…」

 

「ほら、回復したわよ。頑張って来なさい」

 

「…はい!!」

 

 回復してもらったウッウのボールを受け取り、永琳さんの言葉に私は深々と頷いた後に歓声が響き渡る本バトルコートに足を進めていく。溢れ出す緊張と硬さを隠し切れない感じが自分の中にあったが、それ以上にやらなきゃという気持ちが溢れ出していた…




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後継者を求めるジムリーダー

久しぶりに投稿します。遅くなりました。


 その歓声はいつも以上に大きく感じた。永琳さんが言うにはジムチャレンジに挑んだチャレンジャー達はここで諦める事が多いという。いわゆる第一関門。今席にいる観客達はどんな思いでコートに足を踏み入れた私を見ているのだろうか。

 

 一歩一歩歩きバトルコートに足を踏み入れて行く中でその反対側の通路から長い黒髪を靡かせ、一人の女性が歩いて来た。まだ後継者を求めるのが要らなく感じる程の美人だが、何か思う事があるのだろうか。

 

「さて…ようこそジムチャレンジ、エントリーの方。私は輝夜。美鈴、慧音、妹紅と退けた実力はモニターから確認させてもらったわ」

 

「試されるような感じだったので少し緊張しました」

 

「ごめんなさいね。でも試験はまだ続くの。この私が試験官よ。ポケモンにどんな反応させるか見せて頂戴」

 

 輝夜と呼ばれるジムリーダーは私との会話の中でクスっと笑みを浮かべると、クルッと私に背中を向けて距離を開けて行く。彼女につられるように私も輝夜さんから距離を開けてモンスターボールを取り出す。小さく息を吐いて気持ちを落ち着かせようとする中、輝夜さんが手を叩き…

 

「合図お願い」

 

 と一言呟く。その一言呟く間に輝夜さんはモンスターボールを取り出す。観客席の後方にある鐘が力強く鳴り響き、輝夜さんは表情を整えてボールを投げる。私も彼女に再びつられ…

 

「行きなさいトゲキッス!!」

 

「頼んだよキュウコン!!」

 

 輝夜さんがフィールドに繰り出したのはトゲキッス。若干付いている羽で空を浮遊しているポケモン。フェアリージムという事でフェアリータイプというのは確定している。私の先鋒はキュウコン。ウッウで行きたかったが先程の疲労も考慮してこの選択となった。

 

「キュウコン…だったらトゲキッスで対処しないとね…トゲキッス、しんそく!!」

 

 トゲキッスは輝夜さんの指示を聞くとその場から目にも止まらぬ速さで動き、キュウコンに接近するとそのまま体当たりをかましキュウコンを少し吹き飛ばす。地面を少しだけ抉りながら何とか踏みとどまったキュウコンに対し私は…

 

「キュウコン、おにび!!」

 

「トゲキッス、おにびをエアスラッシュでかき消して!!」

 

 キュウコンから放たれた複数の紫の炎がトゲキッスに向かって行くが、トゲキッスは羽を羽ばたかせて風の刃を巻き起こすと炎を切断しかき消して行く。その間に私はさらに畳み掛ける。

 

「キュウコン、じんつうりき!!」

 

「トゲキッス、マジカルシャイン!!」

 

 トゲキッスの始動がほんの僅か遅れたその瞬間、技を放つ前にキュウコンのじんつうりきによる波動がトゲキッスに命中。その命中したダメージにより怯んでしまい、マジカルシャインを出せなかったがそれでも輝夜さんは怯む事なく…

 

「エアスラッシュ!!」

 

「やきつくす!!」

 

 トゲキッスが少しふらっとしながらも何とか体勢を立て直し、再び羽を羽ばたかせて風の刃を放って行く中私も応戦しキュウコンに指示を出す。炎の弾丸が風の刃に命中し、相打ちを起こし爆煙を巻き起こす。爆煙により前方が見えない状況だが…

 

「キュウコン、かえんほうしゃ!!爆煙をかき消して!!」

 

 爆煙の中に紛れ攻撃される恐れがある。その心配から私はキュウコンにかえんほうしゃを指示。キュウコンは左から右へ炎を吐き続けた瞬間、これがいい方に転がりトゲキッスに攻撃が命中。炎をまともにくらいトゲキッスは歯を食いしばるが…

 

「トゲキッス、しんそく!!」

 

「キュウコン、応戦してやきつくす!!」

 

 トゲキッスは再び目にも止まらぬ速さでキュウコンに接近。キュウコンが技を出し切る前に体当たりをかましてキュウコンを吹き飛ばす。さらに吹き飛んだキュウコンを見てさらに輝夜さんが畳み掛ける。

 

「エアスラッシュ!!」

 

 若干後ろめの体勢からトゲキッスは羽を羽ばたかせて風の刃を巻き起こし、吹き飛んでようやく踏みとどまったキュウコンに刃を命中させていく。風の刃により巻き起こった爆煙を見て心配していた私だったが、その不安は的中。ここでキュウコンは戦闘不能となった。

 

「優勢かと思ったのに…!!さすがに簡単には行かない…!!」

 

「あら?期待はずれかしら?」

 

「何の!!ここから巻き返します!!」

 

 トゲキッスにかなりのダメージを与えていた筈だったが、倒れたのはキュウコンの方。少し余裕を見せる輝夜さんの笑みに対して対応しつつも、キュウコンを戻し悪い流れを断ち切るために私はこのポケモンに場を託す。

 

「頼んだよ、イーブィ!!」

 

「ブイ!!」

 

「(ただのイーブィと思いたいけど、ちょっと特殊らしいわね。慎重に行きましょう)」

 

 観客は私が出したイーブィに対して拍子抜けといった感じで笑っていたようだが、輝夜さんはそうでも無さそうだ。ただキュウコンとは違いイーブィにはフェアリータイプに対して耐性がない。仕留めるなら1発…1発で行かないと…!!

 

「トゲキッス、マジカルシャイン!!」

 

「行くよイーブィ!!かわしてびりびりエレキッ!!」

 

 トゲキッスの体が突如光だしその光から無数の光の弾丸がイーブィに向かって放たれて行く。イーブィは軽い身のこなしでマジカルシャインの弾丸を全て避け切ると、タンっと地面を蹴り出して空中へ。そのまま身体に電気を溜め込みトゲキッスに向かって放出して行く。

 

「ッ!!トゲキッス回避!!」

 

「!!」

 

 かわそうとしたトゲキッスにびりびりエレキの電撃が命中。それが蓄積していたダメージに影響したのかトゲキッスはそのまま地面に落下し、戦闘不能に。長引かせればこちらが不利だっただけにこれは心底ホッとした。

 

「ナイス、イーブィ!!

 

「ブイ!!」

 

「ただのイーブィと侮るなかれ…ね。なら徹底的に潰しに行く!!行きなさいクチート!!」

 

 トゲキッスをボールの中に戻して繰り出したのは二体目のクチート。身体を常に後ろに向けており、その後ろの髪のような所には牙がついた巨大な口が。フェアリータイプというのは間違いないが、先程みたいにいい流れで行けるような相手ではないだろう。

 

「気をつけて…行くよイーブィ!!でんこうせっか!!」

 

「そのまま受け切ってクチート!!」

 

 イーブィにでんこうせっかを指示した瞬間に輝夜さんが微笑んだのが目に入る。イーブィはジグザグに動きながらクチートに接近すると、そのまま体当たりをかますがクチートは何も食らっていないような反応を見せ…

 

「ッ!?効いてない!!」

 

「タイプぐらい、しっかりと見極めるものよ!クチート、アイアンヘッドッ!!」

 

 クチートがこちらに振り向き、イーブィに向かって思い切り頭をぶつける。イーブィはその一撃を喰らい、かなり吹き飛ばされたがコートの芝を抉りながら何とか踏みとどまった。アイアンヘッドははがねタイプの技…まさかはがねタイプ…!?

 

「はがねタイプ…!!だから出してきたのか…!!」

 

「そう。生半可な技じゃ返り討ちにしてあげるわ、クチート、ようせいのかぜ!!」

 

「イーブィ、いきいきバブル!!」

 

 クチートの後ろの口が思い切り開き、そのままピンク色の風が放たれて行く。私も応戦しイーブィにいきいきバブルを指示。イーブィは口から無数の泡を放って行くが、ようせいのかぜといきいきバブルがぶつかり合い相打ち。再び爆煙が巻き起こった。

 

「っ…!!(どう攻める蓮子…!!先制技が通用しないのなら…)」

 

 立ち塞がる最初の難関。少し浮き足立っていた私の感情はこの時にはすっかりと消え、いつのまにかこの状況をどうやって打破しようかという気持ちに変わっていた…




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攻めるという一つの戦術

火曜日になっちゃいました。更新しますね。


「一気に押し切るわよクチート!!アイアンヘッド!!」

 

「(ここは無茶な戦法でも攻めるしかない!!)イーブィ、きらきらストーム!!」

 

 攻めなければ勝ちは見えてこない。頭をグッとこちらに向けてイーブィに向かってくるクチートに対して、私が取ったのははがねタイプであるクチートに対してのフェアリータイプの技を放つ事。一瞬びっくりしていたイーブィだったが、頷くと声を張り上げる。

 

 すると空からクチートに向かって衝撃波が落ちて行くが、効果があまりない影響からかその動きが遅くなっただけ。

 

「こんなの蹴散らしてあげる!クチート、ようせいのかぜ!」

 

「(来た!!)イーブィ、身構えて!!」

 

 クチートはアイアンヘッドを中断すると衝撃波に向かって思い切り口を開き、ピンク色の風を放って行く。衝撃波とドンピシャのタイプでぶつかり合い、爆煙が巻き起こったのだが攻めづらい状況の中イーブィに身構えさせていた私は…

 

「イーブィ、でんこうせっか!!一気にクチートに迫って!!」

 

 イーブィがここに来るまでに見せてくれていた嗅覚を信じ、攻勢に出る。イーブィは爆煙の中に突っ込んで行くと、爆煙で周りが見えなくなっているクチートに接近し声を張り上げる。

 

「あの爆煙をかき分けて!?」

 

「今だイーブィ!!びりびりエレキッ!!」

 

 イーブィは間近で身体に電気を纏うとそのまま一気にクチートに向かって電気を放出。クチートにダメージを与えたがまだ倒れない。このタイミングで爆煙が晴れていき、輝夜さんがクチートに指示を出す。

 

「近くにいるのは好都合!!クチート、アイアンヘッドッ!!」

 

 クチートは大きな頭のような物をこちらに向けるとそのままイーブィに思い切りぶつけ、イーブィを吹き飛ばす。イーブィはかなり吹き飛んだが最後は地面を抉りながら私の手前で踏ん張る。少しよろけるイーブィに対して輝夜さんは好機と見たのか…

 

「クチート、とどめにするわよ!!かみくだく!!」

 

「(信じるしない!!)イーブィ、びりびりエレキ!!」

 

 大きな頭のような物に付いている口を思い切り開き、自身は背を向けながらイーブィに向かって飛んで向かって来る。その間にイーブィは身体に電気を溜め込み、クチートに向かって一気に放出。クチートは命中しながらもイーブィに接近。

 

 そのままイーブィの身体に思い切り噛み付いたのだが、数秒もしないうちに耐えられなくなり頭を離しそのまま俯けにダウン。それに連れられる形でイーブィも倒れ、ダブルノックアウトとなった。

 

「へえ…やるじゃない。私の2体目まで倒すなんて。まあいいわ」

 

「お疲れ様、イーブィ。あとは任せて…」

 

 私の残るポケモンは二体。ウッウは先程の疲労がある影響からか、選出しづらい戦況であるイーブィもキュウコンも倒れた。だったら託せるポケモンは一体しかいない。

 

「後は任せるよ…ルカリオ!!」

 

「参ったわね、中々相性悪い奴で来たじゃない?まあ覆して見せましょうか」

 

 輝夜さんが繰り出したのは若干蝶のような羽を持ったポケモン。彼女の口からはアブリボンと呟かれた。私のポケモンはルカリオ。こういう逆境の中で必ず頼りにして来たのがルカリオ。現状の私のエースとも言えるポケモンにこの場を託す。

 

「行くよルカリオ!!がんせきふうじ!!」

 

「アブリボン、かふんだんご!!」

 

 ルカリオは地面を思い切り叩きつけ砂煙を巻き起こすと、どこからか取り出した二つ程の岩をアブリボンに向かって投げつける。アブリボンは自ら作ったかふんだんごにて岩を粉砕したのだが、私の思いを汲みとったルカリオが砂煙の中に突っ込んで行き…

 

 アブリボンの目の前へ。そして…

 

「バレットパンチッ!!」

 

「!!」

 

 相手に指示を出させぬままにルカリオの先制技であるバレットパンチがアブリボンに炸裂。高速のパンチをアブリボンは何発も喰らい、少し怯んだようなそんな仕草を見せたがすぐに体勢を立て直すと…

 

「ドレインキッスッ!!」

 

 フラついたので少しルカリオを離れさせようとしたのだが、予想以上に立て直すのが早く指示を出せなかった影響もあり、アブリボンの攻撃がルカリオに炸裂。キスされた頰をさすりながらルカリオはアブリボンから距離を取ったのだが…

 

 鋼タイプが入っている事もあり済んだダメージは最少限で済んだ。

 

「アブリボン、あまいかおり!!」

 

 これで終わりという訳にもいかずに輝夜さんは畳み掛ける。アブリボンは身体全身からピンク色の煙を出し、ルカリオの視界を妨げるように放ったが極め付けは煙から香る匂い。目も鼻もあまいかおりに持ってかれる中で…

 

「アブリボン、再度ドレインキッス!!」

 

「(アナタなら行ってくれる…!!)ルカリオ、バレットパンチッ!!」

 

 私からの言葉を聞いた瞬間にルカリオは目を瞑り、向かって来ているであろうアブリボンの気配を探る。すぐに目を開けると近づいて来たアブリボンに対し、再度高速のパンチをお見舞い。最後の1発を受けて吹き飛んだアブリボンはそのまま戦闘不能となった。

 

「あちゃあ…やっぱり不利だったか…」

 

「ナイス、ルカリオ!!」

 

「さて、こっから本番で行かせてもらうわよ」

 

 観客のボルテージが最高潮に達して行く中でアブリボンを戻した輝夜さんが繰り出したのは、マホイップというクリームのような素肌をしたポケモン。輝夜さんはスゥ…と息を吸い、大きく吐くと…

 

「簡単に負ける訳には行かないからね、粘らせてもらうよ。マホイップ行くよ…キョダイマックス!!」

 

「キョダイマックス!?」 

 

 輝夜さんはマホイップをボールに戻すとダイマックスバンドからのパワーにてボールを大きくし、後方にへと投げつける。ボールから出てきたマホイップは普通の姿とは違い、ケーキの上にいるかのようなそんな姿に。私はその姿に驚かせられたが…

 

「グウ!!」

 

「へ?あ…ごめん…こちらも行こっか!!ダイマックス!!」

 

 ルカリオに喝を入れられ、気合いを入れ直した私はルカリオをボールに戻すとダイマックスバンドからのパワーでボールを巨大化。そのまま後方にへと投げ付け、出てきたルカリオは巨大な姿で声を張り上げた。

 

「キョダイマックスとダイマックス、どちらが上だろうね!!マホイップ、キョダイダンエン!!」

 

「ルカリオ、ダイスチルッ!!」

 

 大歓声が湧き上がる中、マホイップが放った星達とルカリオが放った鋼の岩。ギリギリのタイミングでマホイップの放った星からの光がルカリオに命中し、ルカリオが放った鋼の岩もマホイップに命中した。互いにダメージを負い、少しよろける中で…

 

「もう一度!!ダイスチル!!」

 

「キョダイダンエンッ!!」

 

 どちらも強気に攻勢に出てお互いの技がお互いに命中。二度目のキョダイダンエンを受けたルカリオがよろめきを見せる中で、マホイップの方は爆発し鳴き声を上げながら撃沈。元の姿に戻ったかと思えばそのまま戦闘不能となった。

 

「…ふぅ…」

 

 輝夜さんが一息吐いた瞬間にルカリオも元の姿に戻り、このタイミングで少し地面に膝をついた。

 

「お疲れ様、ルカリオ。戻って」

 

 このタイミングでルカリオをボールに戻す。輝夜さんが一息吐きながらマホイップを戻し、そのまま私の元に近づいて来たのを見て私も歩み寄って行きすぐ近くに。私が手を差し伸べると輝夜さんはその手をがっちりと掴み握手を交わす。

 

「いい勝負だったわ。お疲れ様」

 

「はい!ありがとうございます!あのジムリーダーの試験の奴は…」

 

「ああ…不合格よ」

 

「え」

 

 笑みでそう教えてくれた輝夜さんではあったが、何が悪かったかとかはそういうのは教えてくれなかった。この後少しだけ疑問に思いながら、ジムを後にする事になるのだった…




見てくださりありがとうございます。


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歪んだプライド

久しぶりです。投稿して行きますね。


「ほら。アンタのポケモンはみんな元気になったよ」

 

 輝夜さんとの一戦を終え、ジムリーダーの試験としては不合格ながらもジムバッジを入手し、第一の関門を突破した私。傷ついたポケモン達を回復させる為に人里に戻る前にてゐさんの元へ足を運び、ポケモンを回復してもらっていた。

 

「ありがとうございます。色々とアドバイスをもらって勝つ事が出来ました」

 

「よせやい。ジムバッジをもらったのはアンタの実力だろ?ポケモン達を褒めてやりなよ」

 

 てゐさんは私からの礼の言葉を聞き、少し照れ臭そうにしていたが笑みを浮かべながらモンスターボールを返してくれた。私はもう一度てゐさんに頭を下げて改めて礼を告げると、もう一度人里に戻る為にてゐさんの元を後にする。

 

 再び差し掛かる迷いの森。意を決して再びルカリオやイーブィの力を頼りに突入しようとしたその時。ふと前から歩いて来た人を見てモンスターボールを出すのをやめた。

 

「よ。第一の関門突破、おめでとう」

 

 少し笑みを浮かべながらその場に現れたのは久々の再会となるにとりさん。私は遠目からではその姿が分からなかったが、その声を聞いた瞬間に駆け寄って近づく。

 

「お久しぶりですにとりさん!!こんな所まで珍しいですね?」

 

「いやあ。ポケモン研究の為にたまたまここに寄ったんだけど、何せ快進撃を続けるジムチャレンジャーがいるもんだからさ。見に来ちゃった」

 

「あはは…まだまだですよ」

 

 にとりさんという事が分かるとイーブィも勝手にボールから飛び出し、笑みを浮かべながらにとりさんに近づいて行く。私のイーブィも元々はと言うとにとりさんが保護していたポケモン。かなりの恩は感じているとは思う。

 

 にとりさんに遠回しながら褒められ、少し照れ臭く笑みを浮かべているとにとりさんが…

 

「メリーの方は思い悩んでいるみたいだね。さっきここのジムに入って行くのを見たよ」

 

「あ、あのにとりさん…」

 

「言わなくていいよ蓮子。アンタは悪くない。トレーナーは絶対迷う時期が来るからね。アンタはいつも通り突き進んで、アイツを待てばいいと思う」

 

 メリーが落ち込んだのは明らかに私とバトルをしてから。霊矢にやられたからと言う可能性もあるが、その事に対して少しだけ話を切り出したにとりさんに呟こうとしたが、読まれたかのように激励の一言をもらった。

 

 この一言でメリーに対する不安が完全に消えた訳ではないが、少し和らいだのが事実。にとりさんの言葉に私は深々と頷くと…

 

「よし。じゃあこれからも頑張ってね蓮子。イーブィと共に頂点に立つ事を期待してるよ」

 

「ブイ!!」

 

「あはは…頑張ります」

 

 にとりさんはこれからジムに入って行ったというメリーのジムチャレンジを次いでがてら見に行くと言う。そんなにとりさんからの激励を受け、少し苦笑いを浮かべる私とは対照的に力強く声を張り上げるイーブィ。にとりさんの背を見送った後に三度迷いの森に入ろうとしたのだが…

 

 ドォン!!と前方から聞こえて来た大きな物音。私はそれに大きく驚いたがひとまず状況確認の為、音が聞こえて来た方角に向かって進んでいく事に。

 

「少し焦げ臭い…イーブィ!案内してくれる?」

 

「ブイ!!」

 

 イーブィは前に出て少し焦げ臭い匂いがしている方角にへと走って行く。私が今いる場所は迷いの森。一瞬油断すると迷うかもしれない。それを警戒してイーブィについて行く形で進んで行ったのだが、そのポイントに近づけば近づくほどに焦げ臭い匂いが増して行く。

 

「この焦げ臭さ…まさか森が焼かれている…!?」

 

 不安と疑問が入れ混じる中、先導してくれていたイーブィが前方を見ながら立ち止まる。私もイーブィと同じく足を止め、前方を見つめるとそこには迷いの森の竹が燃えており、さらにピンク色のポケモンと共にその光景を見つめているアフロ気味の頭をした少年がいた。

 

 その姿を見て一瞬にしてその犯人が分かった。霊矢と近くにいるのがイーブィの進化系であるエーフィ。私は息を呑むと意を決して霊矢に話しかける。

 

「そこで何やってるの霊矢!!」

 

「ん…?ああ。アナタでしたか。簡単ですよ。他のジムチャレンジャーが迷わないように竹を燃やしているんです」

 

 霊矢は私の方を見てため息を吐くやいなや、全く反省した素振りを見せる事なくニヤリとした笑みを浮かべながら燃えている竹の方を指差す。確かに迷いの森はスタジアムに向かうジムチャレンジャーが迷いやすくはなっているものの、誰もが燃やしてくれと言っている訳ではない。

 

「アンタ…こんな事をしてどうなるか分かっているの?」

 

「ええ。分かってます。チャンピオンが褒めてくれるんです。当たり前じゃないですか。そのためにやってるんですから…」

 

 少し性格に難がある奴とは感じ取ってはいたがまさかここまでとは。怒りを拳を握りしめる事で隠し、まずはその堂々としているニヤけ面に一泡吹かせてやりたいと言う私の感情が勝り、気がつけばボールからウッウを繰り出していた。

 

「おや?そんなポケモンを繰り出してどうするつもりです?」

 

「ウッウ。アイツ巻き込んでもいいからなみのり」

 

 側から見ればやり過ぎとしか見えない行動ではあったが、これ以外に一泡吹かせる方法がこの時に思いつかなかった。ウッウは私の指示を聞き、びっくりしながらも霊矢に向かって地面を叩き込み、巨大な波を放って行く。霊矢はかなりびっくりしながらなみのりを回避。

 

 このウッウのなみのりにより竹についていた水を一気に鎮火した。

 

「っ!!最低だ…アナタはトレーナーの事をなんとも思わないのですか!?」

 

「アンタに一泡吹かせるには丁度いいでしょう。私もねはらわたが煮え繰り返りそうなのよ」

 

「ことごとくアナタとは気が合わないですねぇ…!!」

 

「奇遇ね。私もそんな事を思っていたわ。そのままポケモンバトルを申し込むわ」

 

 ポケモンには申し訳ないがどうしても感情に身を任せたい状況だった。少し怒りの表情を霊矢に向けると、霊矢も怒りを見せながら「いいでしょう」と呟く。先手はその場にいたエーフィだ。

 

「ごめんウッウ。後で出してあげるから戻ってくれる?」

 

「クワッ!!」

 

 ポケモンには申し訳ない気持ちで一杯だったが、そんな私の気持ちを汲み取ってくれたかのようにウッウはボールの中に戻りイーブィは私の前に出てエーフィに向かってうなり声を上げる。

 

「イーブィ…ごめんね。今だけは感情に身を任せた行動をさせて」

 

「私がこのバトルに勝てば、この事を訴えてやりますからね…!!」

 

「そうなっても構わない…!!そのかわりただで勝てると思わない事ね…!!」

 

 全ての覚悟はしていた。ジムチャレンジャーの資格を剥奪されてもコイツには勝ちたいと言うのが今の本心だった。怒りを滲ませる霊矢に対して怒りの表情を向ける私。両者抱く思いが同じな中で…

 

「イーブィ、でんこうせっか!!」

 

「エーフィ!!こちらもでんこうせっかです!!」

 

 イーブィ、エーフィ共に少し地面がぬかるんでいる中で足元を思い切り蹴り出し、お互いに向かって行くと思い切り頭をぶつけ合う。お互いを押し切ったようなそんな形でお互いに距離を取ると…

 

「とにかく先制したい。その思いがだだ漏れだったもんで」

 

「そっちも一緒じゃない?いかにも合わせたように言ってるけどさ」

 

「本当にムカつきますねアナタッ!!エーフィ、サイケこうせん!!」

 

「イーブィ、回避ッ!!」

 

 霊矢が指示して来たエーフィのサイケこうせん。エーフィの額から光線が放たれたが、イーブィは軽々と回避した。怒りの感情はあるものの、心は冷静になっていた。少し呼吸を整えながら私はバトルに臨んでいく…




見てくださりありがとうございます。


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正反対の推薦者

久しぶりです。予定通り投稿します。


「エーフィ、もう一度サイケこうせん!!」

 

「イーブィ、びりびりエレキッ!!」

 

 エーフィの身体から念力による光線が放たれて行く中で、イーブィは全身の毛を静電気によって逆立て、一気に電撃として静電気を放出。サイケこうせんとびりびりエレキはぶつかり合い、相打ち。そのまま爆風と共に爆煙を巻き起こす。

 

 指示する私達ですら前方が見えない状況だったが、イーブィというポケモンが持つ能力を私は信じ指示を出す。

 

「イーブィ!エーフィの匂いを探って!でんこうせっか!!」

 

 イーブィは私の言葉に頷き、爆煙の中突っ込んでいくと煙の匂いに妨害されながらも確実にエーフィの位置を特定。爆煙により何も見えなくなっているエーフィを奇襲。そのまま体当たりを喰らわし、吹き飛ばした。

 

「っ!?逃がすか!!エーフィ、サイコキネシス!!」

 

 今、イーブィがいる位置は私からは全く持って見えない。今度はそれを逆手に取られエーフィがある程度で地面を抉りながら踏ん張った後、エーフィのサイコキネシスがイーブィの身体を浮かせ、思い切り地面に叩きつけて私の元まで吹き飛ばして来た。

 

 このイーブィが私の元まで吹き飛んできた後に爆煙が晴れ、視界がくっきりと見えるようになって来た。

 

「イーブィ、大丈夫?」

 

「ブイ!!」

 

「確かなダメージは与えた…!!確実に仕留める!!エーフィ、でんこうせっか!!」

 

「いきいきバブルッ!!」

 

 エーフィのでんこうせっかをまともに食らう事を想定して私はイーブィに指示を出す。イーブィが息を吸い込んだ瞬間にとんでもないスピードで突撃して来たエーフィがイーブィに衝突。吹き飛ばされそうになるが、その場の地面を少しだけ抉っただけで踏ん張り…

 

「ブイッ!!」

 

 口から泡を一斉に放出。ゼロ距離からこの攻撃をかわせる筈もなく、エーフィはまともに喰らい霊矢の前まで吹き飛ばされて行く。この攻撃の後にイーブィ、エーフィ共に痛みを感じたようなそんな素振りを見せ…

 

「これでトドメを刺します…!!エーフィ、サイケこうせん!!」

 

「イーブィ、きらきらストームッ!!」

 

 エーフィの身体からサイケこうせんが放たれて行く中でイーブィは天高く叫び声を上げると、イーブィにサイケこうせんが当たったと同時タイミングで空から光がエーフィに衝突。この一撃により再度爆煙が巻き起こったが、イーブィはフラフラの状態。

 

 爆煙が晴れるとフラフラながらも立っているエーフィの姿。イーブィが先に倒れた瞬間、エーフィもダウン。ほぼ相打ちという形となった。

 

「ち…相打ちですか。ですが次はこうは行きませんよ!!行きなさいギャロップ!!」

 

「お疲れ様、イーブィ。後は任せて。行くよキュウコン!!」

 

 お互いにボールに戻し、次に出したのは霊矢がギャロップで私がキュウコン。両者前にいたポニータとロコンを進化させたような形だ。だが今は2人とも勝利に飢えている為、進化させたのか…というような会話が一切なく…

 

「叩き潰してあげましょう!!ギャロップ、サイコカッター!!」

 

「キュウコン、おにび!!」

 

 キュウコンの防御力なら一撃くらい余裕で耐える。そう思った私はおにびを指示。ギャロップの念力刃がキュウコンに命中したが、少し歯を食いしばっただけで何のその。ギャロップにしっかりとおにびが命中し、やけど状態になったのを確認し…

 

「小癪な!!やけどくらい耐え切ってみせます!ギャロップ、マジカルシャイン!!」

 

「かえんほうしゃ!!」

 

 ギャロップの身体が突如光出し、その眩い光から放たれた光の弾丸がキュウコンに放たれて行く中で、何発か命中しながらもキュウコンの口から放たれた火炎が弾丸を一掃。そのままギャロップに火炎が直撃した。

 

「っ!!ギャロップ、でんこうせっかで脱出してください!!」

 

「キュウコン、じんつうりき!!」

 

 ギャロップかわかえんほうしゃの火炎から脱出したタイミングを狙い、私はじんつうりきを指示。もちろんギャロップはエスパータイプであり、同じエスパータイプの技であるじんつうりきはあまり効かない。だがそれだけでいい。

 

 キュウコンのじんつうりきはあまりダメージがないとはいえ、その場で怯ませ少しばかり膝を付かせる。

 

「ギャロップ、再度マジカルシャイン!!」

 

「もう一度かえんほうしゃ!!」

 

 ギャロップから放たれた光の弾丸が再度キュウコンに命中して行くが、キュウコンはそれに少し体勢を崩されつつも口から火炎を吐いて行き、再度弾丸を一掃。そのままギャロップに再度命中し、その場で爆煙が巻き起こるとやけどにより積み重なったダメージが影響したのか。

 

 ギャロップはここでダウンした。

 

「っ!?ギャロップ!!」

 

「…ふう…!!」

 

「こんの…調子に乗らない事ですね!!」

 

 ギャロップを戻し、次に繰り出したのはネイティオ。このポケモンは前回人里の時に対した事があり、どちらかと言われたら嫌なイメージがあるポケモンだ。キュウコンはこちらを見て一つ頷く。まだいけるという事なのだろう、ここもキュウコンに託す。

 

「行きますよ…ネイティオ、おいかぜ!!」

 

「やきつくす!!」

 

 ネイティオが羽を羽ばたかせ風を吹かせている間に、先程とは思考を変えてキュウコンにやきつくすを指示。キュウコンの口から放たれた火の玉だが、おいかぜによりかき消されてしまった。おにびもこうなるのだろうと私は息を呑んだ瞬間…

 

「さあ!!私のネイティオに潰されるがいいですよ!!ネイティオ、エアスラッシュ!!」

 

「かえんほうしゃ!!」

 

 ネイティオは一時的に動きを止め、一気に大きく羽ばたかせると風の刃をキュウコンに向かって放って行く。対抗策としてかえんほうしゃを指示したのだが、おいかぜの影響だろうか。火炎が引き裂かれ、そのままキュウコンに命中した。

 

「!?」

 

「いい気味ですね!!もう一度!!エアスラッシュ!!」

 

「(ほのおは通用しない…だったら!)じんつうりき!!」

 

 ネイティオが放って来た風の刃をキュウコンは念力でそのまま宙に浮かせて阻止。そのまま念力でエアスラッシュをお返しとばかりに投げ返して行く。ネイティオはこれを回避。そこに隙を見た私は博打に出る事にした。

 

「キュウコン、かえんほうしゃ!!」

 

「無駄な事を…ネイティオ、ナイトヘッド!!」

 

 ネイティオの目から紫色の光線が放たれて行く間、その隣をキュウコンのかえんほうしゃが通過。ネイティオのナイトヘッドがキュウコンに命中したが、同じくおいかぜの勢いに負けつつもかえんほうしゃがネイティオに命中した。これにより、ネイティオを宙から少しだけ引きずり落とす。

 

「おにび!!」

 

「二度は同じ手は喰らわない!!ネイティオ、エアスラッシュ!!」

 

 少しよろけたネイティオを見て、おにびを試みるが霊矢が指示しようとしたその時にはネイティオは体勢を立て直し、風の刃を放ちおにびを真っ二つに。そのまま向かって来た風の刃はキュウコンに命中。タフであるキュウコンではあるが、先程の影響もありガクッと体勢を崩す。

 

「キュウコン!!」

 

「トドメ!!サイコキネシス!!」

 

「(賭けに出るしかない!!)キュウコン、かえんほうしゃ!!」

 

「何!?」

 

 キュウコンがネイティオのサイコキネシスにより、宙に浮かせられたその瞬間。私は博打に打って出る。キュウコンにかえんほうしゃを指示したのだ。ネイティオが地面に叩きつける前に放たれたかえんほうしゃがそのままネイティオに命中。

 

 これを受けまさかのネイティオがノックアウト。キュウコンも地面に落ちた。

 

「キュウコン!!お疲れ…今は休んで」

 

 キュウコンは大丈夫そうだったが念のためここで交代。ネイティオを怒りをこもった目で霊矢は戻すと次に繰り出したのはキルリアの進化と思われるサーナイト。こちらはルカリオで対峙。私達の戦いは最終局面を迎えようとしていた…




見てくださりありがとうございます。


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決着と自分のやった意味

久しぶりです。投稿しますね。


「サーナイトによる2連勝!それで決着をつけてあげます!サーナイト、サイケこうせん!!」

 

「ルカリオ、かわしてバレットパンチ!!」

 

 最後の一体になったという事で気合いを入れ直した霊矢はサーナイトにサイケこうせんを指示。サーナイトは手を叩くと念力の光を作り出し、両手を突き出し光線として一斉放出。ルカリオは少ししゃがみ気味でサイケこうせんをかわし…

 

 その場を一気に蹴り出しジグザグに動きながらサーナイトに接近。そのまま殴りかかる。

 

「サーナイト、めいそう!!」

 

 咄嗟にサーナイトがめいそうにより小さなバリアを作り出したが、リフレクター並みの硬さにはならず、ルカリオの拳の前にあっさり粉砕。高速で繰り出されたパンチが数発、サーナイトに命中しサーナイトは少しだけ吹き飛ばされる。

 

「サイコキネシスッ!!」

 

 少し吹き飛ばされたサーナイトではあったがすぐに体勢を立て直すと念力にてルカリオを宙に浮かし、一気に地面に叩きつける。砂煙が多少巻き上がる中霊矢は攻撃の手を緩めず…

 

「サーナイト、マジカルシャインッ!!」

 

「ルカリオ、がんせきふうじッ!!」

 

 サーナイトの身体が突如として光始め、その光から生成された光の弾丸がルカリオに向かって放たれる中、砂煙の中で立ち上がったルカリオは地面を叩きつけ岩を宙に浮かせると光の弾丸を岩に当てさせて攻撃を塞ぐ。

 

「小癪な手を!!」

 

「攻勢に出るよルカリオ!バレットパンチッ!!」

 

 立ち上がったルカリオは砂煙を巻き上げ、走り出すと一気にサーナイトに接近。またしても数発パンチを叩き込むが今度はサーナイトが地面を抉りながら踏ん張り切る。また攻勢に出られるかもしれない…その事を危惧した私は賭けに出る。

 

「ルカリオ、はっけいッ!!」

 

「4倍半減の技に何が出来ますか!!サーナイト、めいそうッ!!」

 

 体勢は崩していなかったサーナイトは迫ろうとするルカリオを前にして、自身が瞑想する事で小さなバリアを作り出す。ルカリオのはっけいはバリアが粉砕したと同時に防がれ、サーナイトの能力を上昇させる結果となったが今はこれで構わない。

 

 攻撃させなかった事がこの場面では重要だから。

 

「サーナイトは特殊技を使うタイプ!!このめいそう2段積みは勝ちと言ってもいい!!サーナイト、マジカルシャイン!!」

 

「(迂闊な手は直撃を招くだけ…!!)ルカリオ、バレットパンチ!!」

 

「血迷いましたかっ!!餌食になるといい!!」

 

 サーナイトの身体が光始め光の弾丸が至近距離で放たれて行く中、私はあえて攻撃技を指示。ルカリオは弾丸を何発か喰らいながらもサーナイトに接近。拳を突き出し、サーナイトの身体に一撃を加えると先程と同じく何発も高速でパンチを叩き込む。

 

 攻撃はもうさせない!!少しふらつくルカリオを見てそう感じた私は思い切って指示を出す。

 

「ルカリオ、はどうだんッ!!」

 

「そんな物!!消し飛ばしてあげます!!サイケこうせんッ!!」

 

 ルカリオが波動を溜め込み、サーナイトは手を叩き両手を突き出し、はどうだんとサイケこうせんを一斉に放出。両者の一撃はお互いに端の方に当たった事により微妙に変化し、そのままサイケこうせんはルカリオに、はどうだんがサーナイトに直撃。

 

 ただお互いにダメージを蓄積していた影響か、地面を抉りながら耐え切りはしたものの耐え切った後にそのまま両者倒れ込み戦闘不能。ダブルノックアウトという形での決着となった。

 

「負けた…!?馬鹿な!?僕がまたアナタに負けた!?」

 

「霊矢選手!!」

 

こちらには戦闘には参加していなかったウッウが残っている為、この瞬間に私の勝利は確定。だがその現実を受け止めきれない霊矢は唖然と言った表情を浮かべ、何度も同じ言葉を呟いていたがこういう事をすればすぐにバレるというもの。

 

 違う声が聞こえて来たものでふと背後に振り返ってみるとそこにはスタジアムスタッフの方とジムリーダーである輝夜さんの姿が。

 

「何をしてるんですか二人とも!!竹が燃えてるじゃないですか!!」

 

「これには事情があって…」

 

「事情あるでしょうねこれは。言い分を聞きましょう」

 

 輝夜さんの目は若干怒りに満ちていたが言葉自体は冷静だった。ボソボソ口だった霊矢とはっきりと無関係である事を伝えた私。さすがにトレーナーに対してなみのりを指示した事は怒られたが、信じてくれたようでその矛先は霊矢に傾く。

 

「どういう意図があってやったのか説明してもらえる?」

 

「と、トレーナーが通りやすくする為ですよ!!ややこしいの何の!!トレーナーの為にやって!!ジムチャレンジの難易度を下げてるんです!!」

 

「難易度はこれでいいの。迷ったらウサギ達が人里に送る仕様になってるから」

 

 輝夜さんの話を聞いて初めてその事を知ったが、今は黙っておこう。声を張り上げて口を開く霊矢に対し首を左右と一回ずつ動かし、ため息を吐く輝夜さん。若干眉間に皺を寄せた表情を見せつつ霊矢を指差し…

 

「いい?妹紅はね、この迷いの竹林で迷わない事をミッションにしてる訳。普段はムカつくし、殺してやりたい奴だけど!私もそれを了承してる訳ッ!!」

 

「古臭い風習が何だというんですか!!甘ったるい考えで希望を摘み取ってどうするんです?何の為のジムチャレンジで…」

 

「ジムチャレンジはッ!!勝ち上がる事の厳しさを叩き込む大会なの!!希望は勝った奴が吐ける台詞なのッ!!」

 

 徐々にながら輝夜さんの語気が強くなって行き、怒りの表情を見せた彼女が霊矢に詰め寄っていく。自分の為に怒っているのではない。ジムチャレンジや妹紅さんの為に怒りを露わにしている…

 

「スタッフ!!」

 

「は、はい!!」

 

「霊夢に報告して!!コイツの根性、しばらく叩き直してやるって!!」

 

「り、了解しました!!」

 

 輝夜さんは言葉では治らないと思ったのか、霊矢の事について霊夢さんに伝える事を指示。自身は霊矢の手をがっちりと掴み、ジムに向かって引っ張って行きその場を後にしていく。どういう事か分からないままその場に取り残された私だったが…

 

 その場にてゐさんが歩いて来て…

 

「何か大変な事になっていたみたいだね?」

 

「て、てゐさん…!!そうなんです…霊矢が…」

 

「皆まで言わなくても分かるよ。アンタはアンタの事に今は集中しな。どうなったかは勝ち抜いてから分かるだろうし」

 

てゐさんの言葉に納得した私はひとまず霊矢については輝夜さん達に任せる事に。てゐさんが言うには次と次のジムリーダーはダイマックスを使わないという。その事に驚きを隠せずにいたのだが…

 

「後、今にとりから連絡が入ってね。人里に戻ったら慧音がいる寺子屋に向かえって。アンタが預けているドラメシヤが元気になって、アンタを待ってるって」

 

 私にとってその言葉が何よりのサプライズだった。どんなトラウマを植え付けられていたのだろうと。モンスターボールから出てこなくなった時はどれほど心配しただろうか。私はふと笑みを浮かべ、てゐさんの言葉に深々と頷いた。

 

「分かりました…!!ありがとうございます…!!」

 

「礼は慧音に。アンタが預けていた間ずっと世話していたんだから」

 

 私はもう一度深く頷き、てゐさんにお辞儀をしてその場から去っていく。迷いの森から戻ったその時、まずはポケモンの回復など色々用事はあるがドラメシヤを迎えに行ける…!!

 

 ルカリオ達が戦闘不能の為、道をゆっくりと思い出しながら人里に戻って行く。私の心は既にドラメシヤと再会出来る思いで一杯となっており、ジムリーダー二人を倒した疲れを吹き飛ばしてくれていた…




戦闘描写は上手くいったと感じてます。


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あの時以来の再会

次の20日が今年ラストになります。


「お待たせしました!ポケモンはみんな元気になりましたよ!!」

 

「ありがとうございます」

 

 ドラメシヤとの再会に向けすぐに寺子屋に向かうのではなく、まず倒れたルカリオ達を回復させる為にまずポケモンセンターに寄った私。回復してもらったポケモンのボールを受け取った後、すぐゆっくりと息を吐く。変…ではないだろうか。

 

 寺子屋に進もうとした足がナースさんからボールを受け取った所から少しだけ進み、ポケモンセンター出口付近で止まる。苦渋の決断だったとはいえ、私はドラメシヤを置いて行った形に見てもおかしくない行動を取った。

 

「………」

 

 再会に浮かれていた私を何かが引っ張り込んでいるようなそんな気がした。拳をぎゅっと握りしめ、自分自身に「大丈夫」と言わせるかのように私は首を縦に一回頷く。竹林から抜けた後の空を見てみれば、夜空の雲がかかった薄暗い空。

 

 ジムチャレンジ開催中という事もあり、開いていたスタジアムからも観客の声が聞こえなくなり、そろそろ閉じる時間なのだろう。

 

「行こう…!!絶対大丈夫…!!」

 

 自身にそう言い聞かせて私は止めていた足を一歩一歩前へと踏み出していく。前へ、前へ。ただ寺子屋に向けた足を止めない為に。邪心を今は頭の中に入れずただ前へと歩いていると、ポケモンセンターと寺子屋の距離がそんなに遠くない事からあっという間に寺子屋にたどり着く。

 

 たまに夜間授業をやっているとの噂らしいが、この日はさすがにジムチャレンジ中という事もあり子供達の声は聞こえて来ない。だが私の前に聳え立つ寺子屋の門がいつも以上に大きく見えるのは確か。

 

「……?」

 

「ブイ!!」

 

「大丈夫…だよね。分かった、行こっか」

 

 門に近づき緊張する私に見かねてだろうか。ボールの中にいたイーブィが外に出てきて私を激励。そんなイーブィの笑みを浮かべての声に私も笑みを浮かべて一回頷くと門をゆっくりと押していく。ギギギ…という木の乾いた音が辺りに響き渡って行き…

 

「どこにいるんだろう…ドラメシヤは…」

 

「そこにいるのは誰だ?」

 

 門を開け、寺子屋にいるドラメシヤを探そうと辺りを見渡していると背後から聞こえてきたのは一人の女性の声。ビクッとした私はすぐに背後に振り返るとそこにいたのはジムチャレンジから戻って来たと思われる慧音さんの姿。こちらにゆっくりと近づくと…

 

「何だ蓮子だったのか。もう3つ目、4つ目のジムリーダーを制したんだな」

 

「お久しぶり…ではないですね。伝言を受けて戻って来ました。ジムも苦戦しながらですが…」

 

「それでいいんだ勝てればな。それで伝言の事か。ついて来い。少々説明するには難しい状態となっていてな」

 

 慧音さんはこちらを見るなりニンマリとした笑みを浮かべて一回頷くと、私の前に出て付いてくるように一言。病気や怪我はしていないとあらかじめ言った上で寺子屋内にへと歩いて行く。そんな慧音さんに私はついて行くと、案内されたのは寺子屋の裏側で…

 

「ドラメシヤはゴーストタイプだ。日中はどうしても太陽が苦手で陰のあるここに…」

 

「…?」

 

 少し暗めの裏側。慧音さんがドラメシヤはゴーストタイプであるが故にここにいると呟いたのだが、その予感が的中…?したかどうかは分からないが視線の先に映ったのは一体のドラメシヤと若干黒めの顔をしているドラメシヤに似たポケモンの姿。

 

「ブイブイ!!」

 

「あ、い、イーブィ!!」

 

「ふ…イーブィはしっかりと仲間の匂いを覚えているみたいだな」

 

「え…?」

 

動揺する私を置き去りにし、イーブィは一体のドラメシヤと共に一緒にいる黒めのポケモンの元に。黒めのポケモンはイーブィとの会話に盛り上がった後にゆっくりとこちらに振り返ると、そのままゆっくりとこちらに近付いて来る。

 

 緊張からか鼓動が早くなる中、黒めのポケモンはこちらに近づくなり一つ鳴き声を上げた。

 

「…!!ドラメシ…ヤ…なの?」

 

「数時間過ぎた辺りかな。やってきた一体のドラメシヤと共に進化したんだよ」

 

「進化…!?ドラメシヤが…!?」

 

「ああ。名前はドロンチ。ドラメシヤの進化系さ」

 

 私がジムリーダー二人を倒している間に元気になり、あっという間に進化した事に私は大きく驚き、ドラメシヤの進化系「ドロンチ」に私は緊張しながらもスッと手を差し伸べると、ゆっくりと顎を乗せてきた。溢れ出しそうな涙をグッと堪えながら…

 

「ドラメシヤなんだね…?間違いないんだよね…!?」

 

「グオン」

 

「良かった…元気になって…本当に…」

 

 こぼれ落ちそうな涙を拭き取った瞬間、イーブィが私の元に戻って来て肩の上に乗る。ドロンチは私の手からゆっくりと離れると、どこかしらに移動。私が探そうとした瞬間にモンスターボールを持って戻って来た。

 

「ずっと竹林の方を眺めていたんだよ。多分、お前の方を見ていたんだろな」

 

「許してくれないと思っていた…!!自分が苦しい時に助けなかったって…!!傍にいてくれなかったって…!!」

 

「だがコイツにとってのトレーナーは蓮子。お前なんだよ。コイツはお前の為に強くなり、進化したんだ」

 

 ふと溢れ出した私の弱音。それをかき消すかのように慧音さんは軽く微笑みながらドロンチの方を見ながら呟いて行く。まるで何も感じなかったかのように首を傾げたドロンチに対して私は、込み上げる物を抑えきれなくなり…

 

 地面に涙をポタポタと落として行く中でドロンチが持って来たモンスターボールを受け取り…

 

「ドロンチ。私は平気でアナタの傍にいずにジムチャレンジを進む事を選んだトレーナーなんだよ?それでもアナタは…私と一緒に…」

 

「グオン」

 

 許す。そう言わんばかりに笑みを浮かべるドロンチに対して私も涙を再度拭き取り肩にいるイーブィも頷きながら声を発する。スッとモンスターボールを差し出すと、ドロンチは自ら近づいて行きその中へ…と思いきや、私のボールの中がモゾモゾしたかと思いきや、ウッウが出てきた。

 

「ウッウ…!?どうしたの…!?」

 

「クワっ!!」

 

「グオン!!」

 

「ウッウ…そうか。仲間に入ったんだな。だったらコイツなりに歓迎してるんだと思うよ」

 

 別れた後にウッウが仲間になった為、ドロンチとはほぼ初対面となるウッウ。ウッウがドロンチに声をかけ、ドロンチもそれに応えるかのように声を張り上げる。一言だけの会話ではあったが通じ合ったようで、ウッウもモンスターボールをじっと見つめ…

 

「グオン!!」

 

 ドロンチが発した声と共に少し吹っ切れた私はスッとモンスターボールをドロンチの前に差し伸べると、ドロンチはそのままモンスターボールにコツンと当たり、モンスターボールの中にへと入って行く。私はそれを見て小さく笑みを浮かべ「お帰り」と呟いた後…

 

「ようやくあるべきところに帰ったなドロンチも」

 

「慧音さん…」

 

「次は無名の丘と呼ばれる場所に向かう事になる。最後の舞台がある所とは正反対の所で二人のジムリーダーが待ち受ける。二人共ダイマックスは使わない」

 

「…!!」

 

 安心したように息を吐いた慧音さんが次に私が向かうべき所を呟く。次は無名の丘。5人目と6人目のジムリーダーが待ち受けるという。何と妹紅さん同様に二人共ダイマックスを使わないという。

 

「ダイマックスに頼れない戦いが続くが…行けるよな?」

 

「…はいッ!!」

 

「よし…じゃあ行って来い。頑張れよ」

 

 己の力とポケモンだけで戦うバトルが続く為、慧音さんから呟かれる言葉の語気もかなり強かったが、私は力強く返事。そこから慧音さんにもらった一言と共に一日挟んで5人目、6人目の元へ向かって行く…




見てくださりありがとうございます。


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太陽の畑への道

今年ラストです。次回の更新は一月になります。


3人目の妹紅さん、4人目の輝夜さんを見事打ち倒し5、6人目がいるという無名の丘へ歩き始めた私。ドロンチも加わり、万全の状態で向かって行くのだが無名の丘は人里からかなりの距離がありその道中では太陽の畑という場所に差し掛かる。

 

 バッジ集めも後半戦。二人共ダイマックスを使わないという妹紅さんと同じタイプのジムリーダー。気合いの入れどころかもしれない。

 

「無名の丘まで9キロで太陽の畑まで7キロ…遠いな。でもジムバッジの為だもん、頑張らなくちゃ」

 

 自らにそう言い聞かせ一歩ずつながらも前へと進んでいく。魔法の森や最後の舞台がある妖怪の山とは全く別のルート。当然見た事のない景色で、右も左も分からない状態なので地図を片手に進んでいくしかない。

 

 ちょくちょく止まりつつ、地図を確認し再度前へ。その繰り返しでただひたすらに歩いていると視界に入って来たのは一人の女性がキョロキョロしながら待っている姿。

 

「女の人?」

 

 遠めの場所にいた為一瞬誰か分からず、私はそう呟いてしまったがその女性に近づくように前に進んでいくと、その女性がメリーという事が判明。以前のような暗めの雰囲気は感じ取れないものの、どことなく真剣味などは伝わってくる。

 

 メリーは私を見るなり、寄りかかっていた看板から体勢を戻すとゆっくりとこちらに歩いて来た。

 

「1日ぶりだね蓮子。来るのを待っていたよ」

 

「メリー…」

 

「先に行っても良かったんだけど、あんな姿を見せちゃったから。私の中でずっとモヤモヤしていたんだ」

 

 この前はこれっぽっちも見せなかった笑みを浮かべ、来るのを待っていた事を呟いたメリーは私に対してあの時は本当に申し訳なかったとばかりに思いを語って行く。私は無理に言葉を発さずに黙って聞いていると、メリーは私の方をグッと見つめながら…

 

「蓮子。私とバトルしてくれない?アナタとのバトルで私のモヤモヤを吹き飛ばしたいから」

 

 メリーは笑みを浮かべ元気よく呟きながらモンスターボールを私に向ける。その目に全くの迷いも感じられなくなった事にホッとした私は頷くと、バッグからモンスターボールを取り出し同じく彼女にモンスターボールを向ける。

 

「よし!じゃあ全力で行くよ蓮子!行っておいでウオノラゴン!」

 

「久しぶりにやるよドロンチ!」

 

 少し距離を空けお互いに繰り出したのはウオノラゴンとドロンチ。ウオノラゴンはメリーにとって新参だろうか、腕がないのには少々驚かせられる物があるが何タイプなのだろうか。戦いながら探って行くしかない。

 

「加減しないでよ蓮子!ウオノラゴン、げんしのちから!」

 

「ドロンチ、りゅうのはどう!」

 

 ウオノラゴンは念力で地面から無数の岩を浮かばせると、そのままドロンチに向かって放って行く。一方ドロンチの口から放たれた波動が岩を粉砕したのだが、破壊できたのは一個。残りはそのまま直撃しドロンチは少し怯む。

 

「ウオノラゴン、かみつく!」

 

「っ!ドロンチ、ダメおし!」

 

 ドロンチに岩が命中している間に接近していたウオノラゴンにまともに噛み付かれたドロンチではあったが、自らダメおしの技を放つ事で何とかその噛みつきを振り解く。そして…

 

「たたりめ!」

 

 少し体勢を崩しかけたウオノラゴンに対して、ドロンチは目を光らせウオノラゴンの周りに魂を浮かばせるとそのままぶつけ体勢を崩させそのまま倒れさせる。

 

「ドロンチ、ロックオン!」

 

「ウオノラゴン、まもる!」

 

 ドロンチの狙いを確実にしようとロックオンを指示したが、そうはさせまいとメリーはまもるを指示。ドロンチはウオノラゴンに狙いを定めようとしたが、ウオノラゴンが発したまもるのひかりによりそれが妨害され狙いを定めるには至らず。

 

「ウオノラゴン、みずでっぽう!」

 

「かわしてりゅうのはどう!!」

 

 腕がないウオノラゴンにとっては起き上がる事さえ至難の業。メリーはその事を十分熟知しているためか、遠距離攻撃のみずでっぽうを指示。ウオノラゴンは顔だけドロンチに向け、水を放出するもドロンチはあっさりとかわし空中からウオノラゴンに波動を放つ。

 

 ウオノラゴンに波動は直撃。爆煙が巻き上がりその爆煙が晴れるとそこにはウオノラゴンが戦闘不能になっている姿が。

 

「ふふ…さすがにやるね。だったらコイツはどうかな!」

 

 戦闘不能になったウオノラゴンをメリーはボールに戻し、次に繰り出したのは妹紅さんと対決していた時に見たマルヤクデ。前に持っていたヤクデが進化したのだろう。一度は戦った相手だが今回はトレーナーが違う。気を引き締めないと…

 

「気を引き締めて行くよドロンチ!りゅうのはどう!」

 

「かえんぐるま!」

 

 マルヤクデは回転し始め炎を纏いながらドロンチに向かって突進。ドロンチは応戦するためにりゅうのはどうを放ったが、マルヤクデの回転が勝りかき消されるとそのままドロンチに衝突。そのままドロンチを吹き飛ばした。

 

 爆煙が出てきてドロンチは起き上がるかと思ったが、ウオノラゴン戦のダメージが響いたのかそのまま戦闘不能に。効果イマイチの技で戦闘不能にまで持ってかれるなんて…やはり強い!

 

「お疲れ様ドロンチ。ナイスファイト。ほのおタイプなら…!」

 

 私が次に繰り出したのはウッウ。妹紅さんのマルヤクデの時と同じ対面になった。気合い十分のウッウに対しマルヤクデも睨みを効かせる。私とメリー、両者一息吐くと…

 

「行くよウッウ!なみのり!」

 

「かえんぐるま!」

 

 ウッウは地面を叩きつけ地面から水を溢れさせ、津波を巻き起こしてマルヤクデに向かわせて行くとメリーのマルヤクデは先程同じくかえんぐるま。自身を回転させ、そのままウッウに向かって行く際に水に衝突。ダメージは受けなかったが炎が消されたが…

 

「マルヤクデ、そのままかみくだく!」

 

「ドリルくちばし!」

 

 ウッウの目の前で回転は止まったが、そのままマルヤクデは噛みつこうとウッウに接近。私はそうはさせまいとドリルくちばしを指示、今度はウッウがドリルのように回転しながらマルヤクデに接近して行く。マルヤクデの牙とウッウのくちばしがぶつかり合ったが…

 

 勝ったのはウッウ。そのままドリルくちばしをマルヤクデに食らわせ、マルヤクデををウッウの近くから離れさせる。

 

「ひのこ!」

 

 そのままドリルくちばしでマルヤクデを追撃しようとするウッウに対してメリーが出した指示がまさかのひのこ。マルヤクデはひのこを放つとそのひのこはウッウのドリルにて着火。大爆発を巻き起こした。

 

「ウッウ!」

 

あんな小さなひのこなのに大爆発を巻き起こすなんて…私はびっくりして息を呑んだがウッウは軽く爆煙を晴らして大丈夫ということをアピール。そのウッウを見て私はホッとしたが、メリーも一息吐いているのに気づくと…

 

「上手く行ってくれて良かったよ」

 

「どう言う事?」

 

「あんだけ回転してるからひのこが一番効くんじゃないかって思って。何の考えもなく、咄嗟に思いついたような感じだけどね」

 

 咄嗟に思いついた戦法がまんまと上手く行き、ウッウのドリルくちばしを遮った訳だ。当初のメリーはガンガン行く感じでこんな戦法がなかった為、一筋縄では行かないなと言う事を実感。小さく私は息を吐くと…

 

「なるほどね…でも勝負はここから!全力で行くよ!」

 

「そう来なくちゃ…行くよマルヤクデ!」

 

 ウッウ、マルヤクデ共に声を張り上げ臨戦体勢に入る。私とメリーも気合いを入れ直しこの対面でのすべき事を考える。私はメリーから確かな自信とその自信を体現する力を感じ取っていた…




今年も見てくださりありがとうございます。また来年もよろしくお願いします。


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メリーとの激戦

明けましておめでとう御座います。
今年初更新となります。


 ウッウのドリルくちばしとマルヤクデのかみくだくの技がぶつかり合い、辺りに火花を散らす中両者はお互いに距離を取る。相性では私のウッウが有利なものの、実力に関しては完全に互角。ここは少しいつもとは違う戦法で攻めるしかない。

 

「ウッウ、こうそくいどうっ!」

 

「マルヤクデ、かえんぐるま!」

 

 ウッウは私の指示に対して声を張り上げるとその場の足元を蹴り出して、今まさにその場で回転し始めようとしているマルヤクデにこうそくいどうにて一気に接近。相手はまだ炎を纏っていない、ここで畳み掛けないと勝機は見えない…!

 

「ついばむ!」

 

 メリーが新しく指示を出そうとした瞬間にウッウのくちばしがマルヤクデにぶつかり、マルヤクデはその場から少し吹き飛ばされるがその吹き飛ばされ方が私の方に向かって回転してくるというもの。それを見たメリーはハッとした表情を浮かべ、マルヤクデに再度指示を出す。

 

「マルヤクデ、そのまま回転しながらかえんぐるま!」

 

「そうくるか…ウッウ、なみのり!」

 

 マルヤクデは私の前からクルッと切り返し身体に炎を纏わせ、ウッウに接近。ウッウは地面を叩きつけ再度津波を起こすとマルヤクデのかえんぐるまをまともに食らいながらも、地面を抉りながらその場に踏みとどまる。そしてウッウとマルヤクデ両者が水に叩きつけられた。

 

「ウッウ!」

 

 巨大な水飛沫に一瞬目を瞑った私が再度目を開けるとそこには戦闘不能となって仰向けで倒れているマルヤクデとウッウの姿。どちらにせよなみのりが相打ちの決め手となったようだ。私とメリー、一息吐いた後にお互いのポケモンをモンスターボールに戻すと…

 

「やっぱり蓮子は強いね。一体一体がかなり粘りがあるから大変だよ」

 

「メリーの方こそ。ポケモンにかなりの粘りがあるよ」

 

「ありがと。だからこそこの子で有利に持っていく!」

 

 メリーが鋭い眼差しでそう呟き、次に繰り出したのは鋼の鎧を身につけたようなそんな身体をしており赤い目をしている鳥ポケモン。大きく砂埃を撒き散らしながら翼を羽ばたかせ、空中にて戦闘態勢を取る。不利に持ち込まれたくない状況。

 

 私はボールを構え繰り出したのはルカリオ。ルカリオが出た瞬間にメリーが息を呑み…

 

「ルカリオか…このアーマガアは同じはがねタイプ。前回のような連勝では終わらせない」

 

「はがねタイプ…だったらルカリオでも戦える…いくよ。ルカリオ、バレットパンチ!」

 

「アーマガア、いやなおと!」

 

 その場の足元を一気に蹴り出し、高速で空中にいるアーマガアに向かって飛んで拳をぶつけようとしたルカリオ。だがアーマガアが発した古びた機械のような音を前にしてルカリオは怯んでしまい、攻撃を中断。メリーはそこにつけ込む。

 

「このくらいでやられてはアーマガアは倒せないよ!はがねのつばさっ!」

 

「っ!ルカリオ、はっけい!」

 

 アーマガアが羽を鞭のようにしならせてルカリオに攻撃してくる中、ルカリオは拳を突き出して応戦。翼と拳、お互いに火花を散らしあっての衝突となったがルカリオが先程の音を気にしての影響か、軽く怯んだ瞬間にアーマガアが一気に押し切りルカリオを吹き飛ばす。

 

「ルカリオ!」

 

「いやなおとの影響だね…まだまだ行くよ!アーマガア、ドリルくちばし!」

 

「はどうだんっ!」

 

 ルカリオは吹き飛びながら地面に手の平を触れて立ち直すと、ドリルのように回転して迫ってくるアーマガアに対して片手に溜め込んだ波動を一気に放出。弾となった波動はアーマガアに衝突し大爆発を巻き起こし、近くの湖の水面を大きく揺らす。

 

「ルカリオ、バレットパンチ!」

 

 爆煙が辺りに充満する中で私はルカリオを信じ、攻勢に出る。私の言葉に深々と頷いたルカリオは足元を蹴り出すと、爆煙の中を心の目で掻き分けてアーマガアに接近。アーマガアは迫るルカリオに気づいていない、ルカリオはそのアーマガアの背後を取り連続パンチを叩き込む。

 

 アーマガアはパンチを食らった瞬間に翼を大きく羽ばたかせて爆煙を振り払うと…

 

「そこにいたのね!アーマガア、はがねのつばさ!」

 

「今度は影響はない筈…ルカリオ、はっけい!」

 

 アーマガアの鞭のようにしならせて来た翼とルカリオの拳が再度衝突。お互いにはがねタイプという事もあり、そのぶつかり合いに火花が散る中でこの対決はルカリオが押し切る形となったがダメージを与えるまでには至らず。お互いに距離を取るほぼ相打ちという形となった。

 

「ルカリオ、がんせきふうじ!」

 

「アーマガア、はがねのつばさ!」

 

 少ししゃがんだような状態からルカリオは地面を叩き割ると、そこから出てきた岩や石をアーマガアに投げつける。アーマガアははがねのつばさにて岩や石を粉砕。だが目眩しには最高の砂埃がアーマガアの視界を覆い尽くし、その隙に私は動く。

 

「ルカリオ、そのままはどうだん!」

 

「アーマガア、ドリルくちばし!」

 

 ルカリオはその場で波動を溜め、片手から一気に放出。一方のアーマガアもその場でドリルのように回転して砂埃を払って行くと、そのまま一直線にルカリオに向かって突進。だがその道中にてルカリオのはどうだんにぶつかり、大きな爆煙を巻き起こす。

 

 爆煙が晴れるとそこにいたアーマガアが空中から地面に落下。あっという間にはがねタイプの互角の戦いはルカリオが制した形となった。

 

「やっぱり強い…あの時のイメージ、しっかり頭に入ってるよルカリオ」

 

「メリー…」

 

「蓮子。その子は天才だよ、でもその子を倒さないと私はまたレベルアップ出来ない!」

 

 気合いの篭った目と共に覚悟を再度決め直したかのように呟いたその言葉。メリーが次に繰り出したのはバイウールー。前回までならこれがラスト。メリーにとっては迷っている自分にさらに実力で追い討ちをかけたルカリオ。故意ではなかったとは意識はかなりしているように見える。

 

「行くよ蓮子、その子をまず倒す!バイウールー、しねんのずつき!」

 

「ルカリオ、はっけい!」

 

 バイウールーは頭に念を溜め込み、足元を強く蹴り出すと一気にルカリオに接近していく。対するルカリオも万全の構えから拳を突き出す中、バイウールーの念に押し切られる形でルカリオはずつきをまともに喰らい、吹き飛ばされた。

 

「ルカリオ!っ…はどうだん!」

 

「まねっこ!」

 

「!?」

 

 両手を地面につけ地面を抉りながら体勢を立て直すとルカリオは片手に波動を溜め込み、再度一気に投げつけるようにして放出。しかしバイウールーはかわすことせずにまともに食らうと、まねっこの技にてはどうだんをお返しに放って来た。

 

 これに対応出来なかったルカリオと私。ルカリオにはどうだんが衝突する形となり、ルカリオは少し吹き飛んだ後仰向けで地面に叩きつけられ戦闘不能となった。

 

「驚いたよ…まさかそんな戦法をとってくるなんて」

 

「賭けだよ、私にとって。でもルカリオはこんな手を使わないと倒せない。次はキュウコンでしょ?その子も因縁があるんだから」

 

 メリーに諭されるかのように私は戦闘不能となったルカリオをボールの中に戻すと次に繰り出したのはキュウコン。キュウコンを見た瞬間、メリーは一息吐く。そして真剣な眼差しでこちらを見つめると…

 

「この対面、覚えてる?当時はロコンとウールーだった」

 

「紅魔館前でしょ?」

 

「うん。ウールーは手も足も出ずにロコンに敗北した。そこで何か歯車が狂ったような気がするの。だから今度は負けない、今度はそのキュウコンを倒す!」

 

 メリーの闘志に火をつけたキュウコンとルカリオ。私はそのメリーから感じる覚悟に押されながらも私自身も覚悟を決め直した…




本年もよろしくお願いします。


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激戦の決着

お久しぶりです。新年初投稿以来の投稿となります。


地面は既にこれまでの戦闘から大きく荒れ果てている。そよ風から感じる匂いも何かが焼かれたかのように焦げ臭い匂い。鼻に感じるもの、耳に感じる音にも思わず顔をしかめてしまいそうなものばかりだが、集中しなければ勝てない。

 

 私とメリー。お互いに呼吸を整え気合いを入れ直すと私より先にメリーが声を張り上げる。

 

「行くよバイウールー!ボディプレス!」

 

「やきつくす!」

 

 先手の指示を出したのはメリー。バイウールーにボディプレスを指示すると、バイウールーは2歩前に進んだ直後に地面を抉りながらジャンプ。そのまま風の音を立てながらキュウコンに落下してくる。キュウコンも私の指示通りに息を溜め込むと一気に火焔玉として放出。

 

 一直線に向かって来ていたバイウールーに命中はしたものの、気合いで突っ切られてしまいあっさりかき消されるとバイウールーの身体がキュウコンにのしかかった。

 

「っ…じんつうりき!」

 

 バイウールーの体重全てがキュウコンにのしかかる中でキュウコンは念波でバイウールーを宙に浮かばせると、そのまま投げ飛ばしたかのように近くの地面に叩きつける。だが体勢を立て直すのもすぐ、上手く受身を取ったバイウールーに対しメリーは…

 

「しねんのずつき!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 バイウールーは頭に念波を纏いそのままキュウコンにへと突撃。キュウコンも再度息を溜め込むと今度は火炎として口から放出。バイウールーにまたしても火炎が命中するが、今度は耐えきれず押し切られて吹き飛ばされる。だが問題はこの後。バイウールー方面から放たれた火炎によりかえんほうしゃがかき消され…

 

「っ!まねっこ!」

 

「こうする手もあるんだよ…さあ反撃するよバイウールー!すてみタックル!」

 

 火炎の残り火があちらこちらに舞う中、バイウールーは足元を力強く蹴り出して突撃。バイウールーが一直線にこちらに向かって来る中、私は…

 

「キュウコン、おにび!」

 

「おにび?」

 

 キュウコンは私の指示に頷くと軽く火の粉を放ち、バイウールーにぶつける。先程みたいにかき消されるかと思いきや、小さな火の粉はバイウールーの身体に浸透させやけど状態にさせる。バイウールーが熱がって動きを止めた瞬間に私はさらに動く。

 

「その時を待っていた!キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

 熱がっているバイウールーに対して放ったかえんほうしゃ。バイウールーに火炎が命中した瞬間に、それが着火剤となったのか大爆発。キュウコンも吹き飛ぶ羽目となったがすぐに私の目の前で踏ん張る。そして爆煙が晴れたかと思いきや、そこにいたバイウールーは戦闘不能の状態。

 

「バイウールー!」

 

「…最後じゃないんでしょメリー。もう一体まだいる」

 

「正解よ。あの醜態を見せて言えるものじゃないけど。私にはあの子がいる」

 

「…キュウコン戻って。あの子で勝負したい」

 

 キュウコンをボールに戻しこのタイミングでポケモンを交代。私の後残っている手持ちはイーブィのみ。メリーは絶対一回は抜いたあの子を出してくるはず…!

 

「行くよイーブィ!」

 

「ピカチュウ!任せた!」

 

 その場に出たのはイーブィとピカチュウ。きっとあの時より格段に強くなっている筈。何せその苦しみを近くで見て来ただろうから。イーブィ、ピカチュウ共に真剣な表情。メリーはそんな中軽く微笑む。何となくながらその気持ちはわかる気がする。

 

 何故なら私はこの対面を楽しみにしていたから…!

 

「文句はなしだよメリー!イーブィ、びりびりエレキ!」

 

「ピカチュウ、10まんボルト!」

 

私の言葉にメリーは力強く頷くと私と同じくピカチュウに指示を出す。イーブィが放った雷の衝撃波とピカチュウが放った電撃がぶつかり合う。両者の一撃は互角で先程の大爆発に次いで再度爆発を巻き起こす。巻き起こった爆煙により前が見えなくなる中…

 

「ピカチュウ、あなをほる!」

 

「イーブィ、もう一度びりびりエレキ!」

 

 とりあえず闇雲に攻撃を打っても意味がない。メリーが出した指示に警戒を示しつつ、私は再度びりびりエレキを指示。イーブィが放った雷の衝撃波で爆煙を晴らしていく間に、ピカチュウが地面を突き抜けそのままイーブィに突進を食らわせて吹き飛ばす。

 

「っ!イーブィ、ほしがる!」

 

「エレキボール!」

 

 イーブィが何とか体勢を立て直したのを見て、私はほしがるを指示。イーブィが足元を蹴り出し、ピカチュウに迫って行く中でピカチュウは尻尾に電撃を溜め込み、一気に放出。電気球が一直線に向かっていたイーブィに命中し吹き飛ばされそうになったが、地面を抉りながら踏ん張り電気球を弾き返す。

 

「ピカッ!?」

 

「イーブィ、そのまま突っ込んで!」

 

 ピカチュウにエレキボールがそのまま命中し、さらに追い討ちとばかりにイーブィがピカチュウにお返しと言わんばかりに突進を食らわせる。ピカチュウはこれを喰らい吹き飛んだが、両手を地面に付け身体全身で踏ん張り切ると…

 

「でんこうせっか!」

 

 その足場を力強く蹴り出し、ジグザグに動きながらイーブィに接近。イーブィに反撃も防御の隙すら許さぬスピードで体当たりをかまし、イーブィをお返しとばかりに吹き飛ばす。だがイーブィもピカチュウ同様地面を抉りながら踏ん張り切る。

 

「イーブィ、きらきらストーム!」

 

「ピカチュウ、10まんボルト!」

 

 イーブィが声を張り上げている間にピカチュウの体全体から発した電撃がイーブィに炸裂。イーブィを感電させて行く中でイーブィの一撃が空中からそのままピカチュウの元に炸裂。再び爆発を起こしたがイーブィは爆煙が起こる前にダウン。

 

 そしてピカチュウは爆煙が晴れるまでじっと待っていたが…

 

「ぴ、ピカ…」

 

 イーブィとは違う形ながらもそこには仰向けとなって戦闘不能となっているピカチュウの姿が。ほぼ相打ちという形だが、私にはまだキュウコンが残っている。私が「ふぅ…」と一息吐いた後にメリーはピカチュウをボールに戻し…

 

「これで最後だよ蓮子。私の負け…でも気迫は見せられたかなとは思う」

 

「本気なんだなという事が十分に伝わってきた。本当に強かったよ」

 

「ありがと蓮子。でも負けていたら意味がない」

 

 私もメリーと同じくイーブィをボールに戻していると、メリーは私の言葉に笑みを浮かべつつもその眼差しは真剣そのもので。ゆっくりとメリーは私の近くにへと歩み寄ってくる。

 

「メリー…」

 

「私ね蓮子。アナタに勝ちたい。次どこで会うか分からないけど、その時は私の最高のメンバーを蓮子にぶつけるから!覚悟しておいてよね!」

 

 私が気がつけば緊張がほぐれ笑みを浮かべていた。それと同じくしてメリーから感じた気迫が私の闘志に火をつける。メリーの言葉に私は力強く頷き返すと…

 

「私も今いるこの子達を精一杯強くしてメリーに再度挑むよ。今までの勝ちなんて私には関係ないから。その時まで誰にも負けちゃダメだよ!」

 

「もちろん!」

 

 メリーはそういうと私に手を差し伸べてくる。私はその差し伸べて来た手に対して手を差し伸べ返し握手を交わす。この先メリーはどんなに強くなってくるのだろうか。彼女に負けないように私も鍛えていかないと。

 

「私、ポケモンセンターにまた戻るから会ったらその時はバトルしようね!」

 

 メリーの言葉に対して再度強く頷き返す。メリーはその握手していた手を離すとそのまま私とは違う方向にへと歩いて行く。その背中が見えなくなるまで見送った後、私は太陽の畑の方にへと振り返ると…

 

「ポケモンを回復させつつ向かおう…」

 

 ポケモン達の元気を戻しつつ、私はそのまま5、6人目のジムリーダーがいる太陽の畑にへと向かったのだった…




見てくださりありがとうございます。


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太陽の畑にて

お久しぶりです。
なんとか書けましたので投稿します


 メリーとの激しいポケモンバトルに見事勝利した私。戦闘不能となったポケモン達を回復させながら、歩いていると見つけたのは太陽の畑と書かれた看板とその地面には何かの弾丸が外れたかのような抉れた跡。その太陽の畑と書かれた看板前で足を止め私は周りを見渡す。

 

「幻想郷にも向日葵はあるんだ…」

 

 視界に入ったのは高く生えている向日葵畑。人を簡単に隠してしまいそうなぐらい長く、根元がしっかりしているのか見ている限りだとまるで倒れる気配がない。人の畑であるのは確かだが、看板にはここを進めとばかりに矢印が書かれている。ここが正規ルートなのだろう。

 

「お邪魔します…」

 

 軽く看板に向かって一礼し、向日葵畑に足を踏み入れて行く。現代の畑でもこんなにしっかりと生えている向日葵は見たことない。余程手入れしているんだろうな…と思いつつ、足を進めていくとどこからか声が聞こえて来た。

 

「…?」

 

 私は足を止め周りを見渡す。だが周りには何もいなく、向日葵の側に隠れている様子もない。だが聞こえてくる何かの声。人ならすぐ分かるはず、足元に目線を向けるとそこにいたのは真っ白の身体に白い殻のような物を身につけたポケモンの姿が。

 

 真っ白なポケモンは鳴き声を上げながらこちらをじっと見つめている。

 

「ハミ!」

 

「君…小さいね、私全く気づかなかったよ」

 

 ここにいるであろうジムリーダーのポケモンなのだろうか。鳴き声を上げた真っ白なポケモンは私に背を向けると、ゆっくりととある方向に向かって動き始めた。カタツムリのような動きでどこかに向かっている様子だが、あまりにスピードが遅く見ているだけで眠ってしまいそうだ。

 

「この子この先に向かおうとしているのかな…」

 

 真っ白なポケモンが向かおうとした方角に視線を向ける。止めていた足を再び前に踏み出そうとしたその時、今度は大量に咲いている向日葵の方から物音が聞こえ、私は今度はそちらの方に目を向ける。すると私の近くにやって来たのは日傘を持った女性。

 

「見知らぬ声が聞こえて来たから何だと思えば…ジムチャレンジャーがやって来ていたのね」

 

 広げていた日傘を閉じ、ゆっくりと私の方に歩み寄ると数秒黙ってこちらの方をじっと見つめ、ふぅ…と言う一息と共に女性はゆっくりと口を開く。

 

「君の前に現れたポケモン…その子は私が保護しているポケモンなの」

 

「保護…?アナタのポケモンじゃないんですか?」

 

「そ。どこかしらか迷い込んだのを保護しただけ。さて、ちょっとついて来て下さる?ジムチャレンジャーさん」

 

 私がジムチャレンジャーという事を理解しながら、女性は真っ白のポケモンが向かった方角にへと歩き始めると、途中で進んでいた真っ白のポケモンを抱き抱える。私はよく分からないままその背後を歩き始める。どこに向かおうとしているのだろうか…

 

「あの…アナタは…?」

 

「ああ…名前ね。風見幽香、この向日葵畑を管理している者よ。同時にジムリーダー…この肩書きをしているからジムチャレンジャーさんとは戦わないと行けないけど」

 

 今私の前を歩いている女性はなんと5人目のジムリーダー。ここを進めという看板があるぐらいだからいるもんだとは思っていたが、こうも早く会う事が出来るなんて…

 

 そしてジムリーダーである幽香さんは戦わないと行けないと呟いた上で、ここでポケモンバトルをすれば向日葵がめちゃくちゃになってしまうと若干横目ながらもこちらを睨んだような目つきでそう呟いた。その威圧感と来たら寒気を覚えてしまう程、思わず息を呑んでしまった。

 

「ここならいいかしら。悪いわね、少し移動してもらって」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 あんな目を見せられたら少し疑問を抱いていたとしても頷くしかない。ようやく笑みを見せてくれた幽香さんに連れられてやって来たのは、向日葵畑から離れた少し開けた場所。そこで抱き抱えていた真っ白のポケモンを下ろすと…

 

「この子ユキハミというの。普段は寒い場所に住んでるって話だけどどうしてここにいるのかしらね」

 

「寒い時に迷い込んだんじゃなくて?」

 

「残念ながら寒いとは真逆の暖かい時期に迷い込んだの。さて…話はここまでにしましょうか、君はジムバッジが欲しいのよね?」

 

 ユキハミというポケモンについての話をしていると幽香さんは再度一息吐き、チラッとこちらを見つめる。私は若干緊張しながらも頷くと幽香さんはだよね…と呟きつつ、ユキハミを下ろす際しゃがんでいた姿勢を元に戻し、ポケットの中からモンスターボールを取り出す。

 

「知っているとは思うけど…ここはダイマックス出来る所じゃないわ、己の力が試される場所」

 

「慧音さんから良く聞きました、理解はしているつもりです」

 

「そ…なら始めましょう。ジムチャレンジャーさん名前は?」

 

「宇佐見蓮子です」

 

 幽香さんは私の名前を聴きながら何回か頷くと、小さく分かったと口にする。若干睨んだような目つきで再度こちらを見つめ直す中、幽香さんはボールを投げてポケモンを繰り出す。出てきたポケモンは頭に花を付けたポケモン。そして私もポケモンを繰り出す。

 

 出したのはさっきのメリーとの戦いで唯一生き残ったキュウコン。一番疲労が少ない為、キュウコンの選択となった。

 

「さてアナタの実力見せてもらうわよ蓮子。キレイハナ、ムーンフォース」

 

「キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

 キレイハナというポケモンから発せられた光が一つの巨大な玉としてキュウコンに向かってくる。そんな中キュウコンは口から火炎を吐く。両者の一撃が衝突し、相打ち。大爆発を巻き起こすがとりあえず攻めるしかない。

 

「キュウコン、やきつくす!」

 

 キュウコンの口から再び火炎が放出。火の玉が巻き起こった爆煙に穴を開けていき、キュウコンと同じく視界を見失っていたキレイハナに火の玉が衝突。キレイハナに炎が一気に燃え広がって行くが…

 

「はなふぶき」

 

 自身を回転させる事で燃えていた炎を完全に振り払い、そのはなふぶきによる風の刃がキュウコンに命中した。炎を振り払うだけに見えたが立派な攻撃技。それに驚いていた私だが、幽香さんはそんな私に油断すら与えてくれなく…

 

「マジカルリーフ」

 

「っ!!かえんほうしゃ!!」

 

 キレイハナから紫色をした葉が放たれ、キュウコンの火炎が放たれる前にキュウコンの身体を命中。キュウコンは一瞬怯みはしたものの、気を取り出し火炎を吐いて行く。すると幽香さんは再度…

 

「はなふぶき」

 

「この状況で…!?」

 

私が驚いている間にキレイハナは自分の身体を回転し始め、自分に完全に命中している火炎を振り払って行く。キュウコンは当たるまで火炎を吐こうとしたが、途中はなふぶきの風の刃が飛んできて、キュウコンに命中した為溜まらず中断。

 

 何に驚いているのかというとキュウコンのかえんほうしゃを全て振り払った事。そしてその風の刃が再びキュウコンに命中した事。それに驚きを隠せずにいた。

 

「っ!!じんつうりき!」

 

「マジカルリーフ」

 

 焦っているのだろうか私は。顔から止まらない冷や汗を拭いつつ、キュウコンにじんつうりきを指示。だがこのじんつうりきが功を奏し、キレイハナが放って来たマジカルリーフを止める形となった。これにはさすがの幽香さんも少し驚いたような様子ではあったが…

 

「攻めるなら今しかない…!キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

「はなふぶき」

 

 キュウコンのかえんほうしゃとキレイハナの回転が再度ぶつかり合おうとしたが、今度はキュウコンの火炎が勝ち、爆煙を巻き起こす。その爆煙が晴れると戦闘不能となっているキレイハナの姿。辛くもだが最初のポケモンを突破した形となった。




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勝るのは勢いか、余裕か

1週間遅れました!
少し文がおかしいかもですが、もしおかしかったら言って下されば幸いです。


「さすがにここまで勝ち進んで来たトレーナーは伊達ではないわね。しっかりとした戦略を練っているのが伝わってくるわ」

 

「まだまだ…勝つまで突き進みます」

 

「その強気はよし。それがどこまで続くか見させて頂戴」

 

 キレイハナをボールの中に戻し一息吐いた幽香さんが次のポケモンが入ったモンスターボールを手にしながら口を開く。その浮かべている笑みからは何を考えているのか分からないが、私が言い放った言葉は彼女にとって好印象だったらしく、2回頷くと2体目のポケモンを繰り出す。

 

 幽香さんの前に出てきたのは緑の髪の毛のような物を身につけたゴリラのようなポケモン。幽香さんはゴリランダーと言っていた。どんなポケモンか分からないが気は抜けない。

 

「全力で行くよキュウコン!かえんほうしゃ!」

 

「10まんばりき」

 

 キュウコンは息を吸うとそれを火炎としてゴリランダーに向かって放って行く。一方のゴリランダーはクラウチングのような姿勢を取ると、地面を強く蹴り出しキュウコンに向かって突撃。キュウコンの火炎に突っ込んだ形となったが、それでもゴリランダーの勢いは止まらずあっという間にキュウコンの目の前へ。

 

「じんつうりき!」

 

 火炎を完全に突っ切って来た事に私は驚いたが、このままではキュウコンがまともに突進を食らうと思い次の指示を出すが、さすがに相手を目の前にして技の動作すら入る事が出来ずにゴリランダーの突進をまともに食らう。そのままキュウコンは吹き飛ばされ、一撃で戦闘不能に。

 

「キュウコン!」

 

「少しゴリランダーを飲み込むには火力不足だったようね」

 

(さっきのキレイハナといい、弱点はついてる…!パワーは凄いけど地道に攻めていけば…!)

 

 幽香さんの方を見て私は小さく息を呑むとキュウコンをボールの中に戻す。若干動揺する自分の心を静かに落ち着け、バッグからモンスターボールを出し2体目のポケモンを繰り出す。2体目はひこうタイプを持っているウッウ。そのウッウを見て意外そうな表情を浮かべた幽香さんは…

 

「意外なポケモンを持っているのね。ますます面白いわ」

 

「じゃあもっと面白くします!ウッウ、こうそくいどう!」

 

「ちょうはつ」

 

 ウッウが空に浮かびゴリランダーに向かっていこうとしたその瞬間、ゴリランダーが見せた煽るような動きにウッウは怒りのあまり技を中断。その怒りはすぐに収まったが、技を中断した事に私は驚きを隠せず…

 

「野暮な技は無しよ。ゴリランダー、ドラムアタック」

 

「っ!ドリルくちばし!」

 

 ゴリランダーは背中に背負っていた太鼓のような物を叩くと地面から木の根のような物を召喚。その木の根のような物は空にいるウッウに向かって伸びて行くが、ウッウの回転を前にして根は弾き飛ばされウッウはそのままドリルのように回転しながらゴリランダーに落下して行く。

 

「ウッドハンマー」

 

 技を弾かれても幽香さんは動揺をまるで見せる事なく、次の技を指示。ゴリランダーは拳を緑色に光らせると突っ込んで来たウッウに向かって拳を突き出す。お互いの技が火花を散らす中、結果は相打ち。少しの爆煙が起きる間に両者が少し吹き飛ばされる。

 

「なみのり!」

 

「ドラムアタック」

 

 ウッウは空中から地面に着地すると地面を叩きつけ、どこかしらか津波を巻き起こしそのままゴリランダーに向かって放って行く。一方のゴリランダーは再び太鼓のような物を叩き、木の根を出すと自身の前に壁を作り出す。

 

 その壁は津波を受け流し、ゴリランダーに1ミリとて喰らう事はなかったが私の狙いはこの後。

 

「ドリルくちばし!」

 

 ウッウは小さくジャンプするとそのままドリルのように高速回転。そのままゴリランダーの壁に向かって突進して行く。そのドリルはあっという間に壁に風穴を開け、そのままゴリランダーの目の前へ。

 

「ウッドハンマー」

 

「そのまま突っ込んで!」

 

ゴリランダーの再び緑色に光らせた拳とウッウが衝突。両者の技は再び火花を散らすが今度はゴリランダーの一撃をウッウが競り勝ち、ゴリランダーにドリルくちばしを直撃させる。ウッウがゴリランダーから離れた瞬間、ゴリランダーはそのまま仰向けに倒れて戦闘不能となった。

 

「ウッドハンマーは元々反動ダメージがある技なの。ちょっとやり過ぎたわね」

 

 倒れたゴリランダーに対しても幽香さんは無表情を崩さずにボールの中に戻す。これで2体目、ウッウの体力は万全に近いが次にどんなポケモンが出て来るかによってはそれが一気に削られる可能性が高い。幽香さんはスッとモンスターボールを出すと、3体目のポケモンを繰り出す。

 

 出てきたのはりんごのような身体に羽がついた若干小さめのポケモン。幽香さんはアップリューと言っていた。

 

「さて、このまま負けるのは気持ち良くないからちょっと本気を出すわよ。つばさでうつ」

 

「ついばむ!」

 

 アップリューは羽を羽ばたかせるとそのままウッウの元へ。ウッウは向かって来るアップリューに向かってくちばしを突き出したが、軽くかわされた挙句背後に回り込まれその翼で思い切り叩かれた。

 

「ドリルくちばし!」

 

「ドラゴンダイブ」

 

 ウッウはその場でドリルのように回転し始めようとしたがアップリューの光を纏った突進をまともに喰らい、技を中断させられる。身体が小さいせいかスピードは明らかにアップリューが上。どうにか近くから引き離せないだろうか。

 

「ウッウ、アップリューと距離を取って!」

 

「アクロバット」

 

 少しだけだがウッウの方が動くのが早く、間一髪ではあったもののアップリューの攻撃を回避。どうにかしてアップリューを近くから引き離す事が出来た。後は…

 

「ウッウ、ドリルくちばし!」

 

「Gのちから」

 

 ウッウがアップリューから離れた場所で高速回転しながら、自らアップリューに近づいて行く。アップリューは目を光らせるとどこかしらかりんごを降らせるが、りんごをウッウは軽く弾き返すとそのままアップリューにドリルくちばしを直撃させる。

 

「ドラゴンダイブ」

 

「っ!?」

 

 まともに攻撃を食らっているのにも関わらず幽香さんの指示は突撃。アップリューの身体が光り始めた瞬間、2匹の間で爆発が起きる。爆煙を掻き分けすぐに幽香さんの近くに戻ったアップリューに対してウッウの姿はない。すると爆煙が晴れたその時に見た姿は戦闘不能となっている姿だ。

 

「ウッウ!」

 

「さて少し驚かせられたけど次はアナタも3体目。どうする?」

 

「勝負はここからですよ…」

 

 私は幽香さんに強気の態度を示しつつ、ウッウをボールに戻すと次のモンスターボールを出し、3体目のポケモンを繰り出す。3体目はドロンチ。アップリューがドラゴンダイブを使っていたため、ドラゴンタイプじゃないかと思ったからだ。

 

「へえ…ドロンチ。どこかしらのトレーナーが大事に持っていたのは見たことあったけど…ウッウに次いで面白いポケモンを持っているのね」

 

「他のトレーナーの話しは今は無しにしましょう」

 

「えらく強気じゃない?気に入ったわ、バトルを続けましょう。アップリュー、ドラゴンダイブ」

 

「りゅうのはどう!」

 

 私の言葉に幽香さんは笑みを浮かべるとそのままアップリューに指示を出す。光を纏ったアップリューがドロンチに向かって突撃して行く中でドロンチは表情を引き締めると、波動を口から放って行く。しっかりと狙いを定められたのだろうか。

 

 アップリューに波動が命中。光を纏っていた影響からかその場で爆発が起きたが爆煙が晴れるとそこには戦闘不能となっているアップリューの姿が。

 

「へえ。賢いのねアナタのドロンチ」

 

「私も1発で沈めるとは思ってなかったです」

 

「でしょうね。さてクライマックスよ、4体目で相手するわ」

 

 追い詰められていても尚、笑みを崩さない幽香さん。アップリューを戻すと4体目のモンスターボールを構えながら私につぶやいてきたのだった…




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立ち塞がる要塞と決着

何とか間に合いました。本日の投稿でございます。


余裕そうな表情を浮かべて4体目のポケモンが入ったモンスターボールを手前に投げた幽香さん。繰り出されたのはアップリューと少し形状が似たようなポケモンなのだが、アップリューは翼があり飛んでいたのだがこちら亀のように鈍重に見える。

 

「タルップル。私はこの子がラストよ。この子が最後の牙城…潰す事が出来るのか楽しみね」

 

(堅そう…でもやるしかない…!)

 

「勝ってバッジはもらって行きます!ドロンチりゅうのはどう!」

 

 とりあえず幽香さんが繰り出すポケモンはこれで最後。追い詰めたというのを頭に入れ、ドロンチに指示を出す。口から放たれた波動はあっという間にタルップルに命中したのだが、巻き起こった爆煙越しでも伝わって来た光。光が全て無くなったその瞬間にあったと思われる傷が治っていた。

 

「無傷!?」

 

「じこさいせい…傷を回復させたの。今度はこちらも行くわりゅうのはどう」

 

「こちらもりゅうのはどう!」

 

 タルップルから放たれた波動に対抗するかのようにこちらもりゅうのはどうを指示。お互いの口から放たれた波動がぶつかり合い、爆煙が巻き起こっている間にテンポ良く攻めないとダメージを回復されてしまうと思った私は大技を食らわす戦法から変えることに。

 

「ドロンチ、ダメおし!」

 

「よく狙ってタルップル、エナジーボール」

 

 爆煙の中ドロンチは突っ込んで行き、爆煙を掻き分ける形でタルップルに接近。そのまま尻尾を喰らわせにかかるが、待ち構えていたタルップルのエナジーボールが直撃。少し怯ませられた事により、尻尾はあらぬ方向の地面に当たりタルップルに当たる事はなかった。

 

「ドロンチ、たたりめ!」

 

「エナジーボール」

 

 ドロンチはタルップルの方に向くと目を光らせ、近くに召喚した火の玉をタルップルにぶつけていく。だが微々たるダメージに留まり怯ませる事は出来ず、エナジーボールが再度タルップルの口から放たれていきドロンチに命中。少しタルップルの近くから吹き飛ばされる。

 

「りゅうのはどう!」

 

「じこさいせい」

 

 ドロンチから放たれたりゅうのはどうが再びタルップルに命中したのだが、幽香さんはタルップルがドロンチより後手というのを理解していたのだろうか、じこさいせいを指示。確かに命中はしたがまたしても傷が光によって回復されてしまい、タルップルは万全の状態に。

 

「っ!これじゃキリがない…!」

 

「3体をテンポ良く倒したはいいけど、この子を崩すのは難しいわよ」

 

「倒さないとバッジは貰えない…だったら!」

 

 特殊な技で攻めるほどこちらに余裕はない。ドロンチでもダメージは与えられるが厄介なのはじこさいせい。何回も何回も繰り返されたらこちらが消耗するだけ。だったら一気に行くしかない、ドロンチを一旦戻し私はルカリオを投入する。

 

「任せたよルカリオ!」

 

「驚いた、まさか交代してくるなんてね」

 

「勝つ為ですから!行きます、ルカリオ、バレットパンチ!」

 

「りんごさん」

 

 ルカリオが地面を蹴り出した瞬間にタルップルは口から液を前面に放出。道を塞ごうとしてくるが、ルカリオはそれを掻い潜りタルップルの後方へ。背後から数十発のパンチを連続として食らわせる。

 

「…!」

 

「回復はさせない!はっけい!」

 

 回復されては二の舞。だったら指示するテンポすら与えなければいい。ようやくその表情に曇りを見せた幽香さんからの視線を感じつつ、ルカリオの拳がタルップルに命中。少しだけしか吹き飛ばなかったが怯ませるには十分。

 

「タルップル、りゅうのはどうをアナタの周辺に」

 

「がんせきふうじ!」

 

「がんせきふうじ…?」

 

 読みが外れたのか幽香さんの口ぶりからようやく焦りが見せ始めた。ルカリオの地面を叩きつけての一撃、そこから撒き散らされた岩はりゅうのはどうと相打ち。砂煙が巻き起こりルカリオとタルップルの視界からお互いが消える。

 

「私はルカリオを信じる…ルカリオ、はどうだん!」

 

 ルカリオが両手を合わせそこから波動を作り上げる。両手で収まり切るのがやっとのサイズに成長した波動がそのままタルップルにへと投げつけられる。波動の軌道は一直線にタルップルへ。砂煙が振り払われていく中、今度はタルップルに命中したはどうだんにて爆煙が巻き起こる。

 

「…!」

 

 爆煙が晴れるとそこには猛攻に耐えられず戦闘不能となっているタルップルの姿が。幽香さんは戦闘不能となっているタルップルを見て驚いた表情を見せていたが、すぐに笑みに変わるとタルップルをボールにへと戻す。

 

「私の負けよ。大したものね、状況の判断といい思い切りの良さといい。思わず圧倒されてしまったわ」

 

「途中まで私も負けるかと思いました…幽香さんの表情が少し崩れてから行けると感じたぐらいですから」

 

「まあ…そう言いながらももう一体、アナタはポケモンを隠していたんでしょう?タルップルに有効な技を覚えた子が」

 

 私は幽香さんの言葉にびっくりさせられた。確かに私はルカリオ、ドロンチ、さらにイーブィと3体を残していたが幽香さんが言ってるのは間違いなくイーブィだろう。しかもその技がイーブィが覚えているきらきらストームの事。この読みには驚きしか出てこない。

 

「正解です…何で勝てたんでしょうか、完全に読み負けしてたんですが…」

 

「謙虚に言わなくてもいいわ、アナタは実力を持っているという事。さてこの先にいる6人目に挑みに行く前にお願いがあるんだけど…」

 

 私の苦笑いを見てクスクスと笑みを浮かべた幽香さん。そんな幽香さんの視線が遠くからこちらを見つめていたユキハミにへと向けられる。幽香さんはそんなユキハミに歩み寄ると、猫を持ち上げるかのように軽く持ち上げそのまま私の元にへと近づいてきた。

 

「この子、チャンピオンになるであろうアナタのパーティにしてやってくれないかしら?」

 

「ち、チャンピオンだなんてそんな冗談を!」

 

「いいえ、アナタの実力はここに来た今年のチャレンジャーの中ではダントツの強さよ。そんな強く優しいアナタならこの子を進化させる事ができる筈」

 

「ハミ!」

 

 進化というワードに疑問を抱いていた私だが、どうやらこのユキハミ、進化系があるというのは知れ渡っているが進化させた人物というのは存在しないらしい。幻想郷に寒い地域が存在しないからだろうか。

 

「進化方法とかは…?」

 

「ルカリオを持っているアナタなら分かっている筈よ」

 

「…!」

 

 私はルカリオが入ったボールを見つめる。ルカリオも確か特殊な進化方法だった。だとしたらこの子も…?力強く見つめてくるユキハミに対してその力強さに応えたくなった私は…

 

「この先厳しい戦いが待ってるけどアナタは…」

 

「ハミ!」

 

「問題ないって。随分懐かれたものね」

 

「分かった…!じゃあ、これからよろしくユキハミ!」

 

 私がモンスターボールを取り出し、ユキハミに向けるとユキハミはボールの方にへと飛びついてきた。そのままボールに入り、そのボールの中へ。ボールを見つめながら軽く笑みを浮かべそのあとに幽香さんの方に視線を向けると…

 

「ようやく肩の荷が降りたわ。その子の事よろしく頼むわね」

 

「はい!」

 

「この先にいるジムリーダーはちょっとした私の知り合いでね。幽香に勝ったという事を伝えたら相手してくれる筈よ」

 

「分かりました…私頑張ります!」

 

 幽香さんからのアドバイスをもらい、お礼とばかりに頭を下げてその場から立ち去って行く。そして向かうのは太陽の畑を越えた先にある無名の丘という場所。6人目ジムリーダーの元にへて回復させつつ向かう事にしたのだった…




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無名の丘へ

お久しぶりです。何とか落ち着いたとはいえないですが書ける状態にはなったので投稿します。


日が落ち始めて来た。幻想郷に時計がないのであまり分からないが時間が夕方辺りに差し掛かっている証拠だろう。人里から出て太陽の畑にて幽香さんと対してバッジをゲットしているから時間を食ったのは納得する。待ち受けるは六人目のジムリーダー…

 

「メディスン・メランコリー…」

 

 文書には元々人間嫌いの人形という記述がしてあった。何故人間と対さないと行けないジムリーダーになったのだろうか。疑問が出てくるがそんなの気にしていたらジムチャレンジを継続する事は出来ない。夜まで時間がないだけに私は少し駆け足で無名の丘にへと歩いていく。

 

 歩いていくと見えたのは大量の鈴蘭。無名の丘は鈴蘭だけが咲く平原らしくメディスンさんはその奥にいるという記述がしてあった。見えてきた鈴蘭を目標に足を進めていくと視界中に鈴蘭が入って来た。綺麗だがあまりに数が多すぎる。

 

「この中からジムリーダーを探せっての…」

 

 私の口元が無意識に苦笑いを浮かべていた。いくらジムリーダーとはいえメディスンという人物は人形。つまり人間よりは背丈も身長も小さい訳だ。気配を探れるルカリオが手持ちにいるが、メリー、幽香さんそして六人目のメディスンさんと3連戦になる恐れがある。

 

 出来れば遭遇するまでボールの中で休んでいて欲しい。

 

「ええい、やるわよ蓮子!ジムチャレンジ突破のため!」

 

 自分にそう言い聞かせ軽く深呼吸を挟みつつ大量の鈴蘭の場所にへと足を踏み入れる。恐らくここが無名の丘なのだろうが看板がない為決めつける事はできない。意を決して踏み出したはいい物の分かっていた事は大量の鈴蘭が咲いているという事。

 

 然もジムリーダーが人形である事から探すにも少々工夫をしないといけないだろう。周りをじっと見つめ歩いていると…

 

「…何してるの?」

 

「え…?」

 

 気を張っていた為か背後からの声にとんでもなく驚いてしまい、顔を青ざめながら背後に振り返るとそこには宙に飛んでいる人形。その傍らにはその人形より小さい人形と手には鈴蘭が握りしめられている。

 

「着物でよくここまで来れたよね」

 

「あ、はい…えっとアナタは…?」

 

 向こうは私の事はどうでもいいかのように話を進めてくるがこちらはそうする訳には行かない。問いかけに対して軽く答えた後に誰かを問いかけると人形は少しため息を吐きながら…

 

「メディスン・メランコリー。ここに住んでいる人形」

 

「メディスンさん…あ、あの…!」

 

「分かってる。ジムチャレンジに来たのよね。一応ジムリーダーだから何となくそんな事は分かっていたわ」

 

 こちらを見つめる事なく私の言葉を耳に入れると鈴蘭の方を見つめながらそう答える。彼女…と言ってもいいのだろうか。そんなメディスンさんは空を見つめながら一息吐くと私の方にへとゆっくりと振り返る。

 

「私、ジムリーダーやってるけどそのジムチャレンジについての情報については疎いの。でもアナタが順番でここまで来たというのは何となく理解出来る」

 

「幽香さんを倒しました。5人目の彼女からはアナタにそう伝えたらいいって」

 

「常に幽香はチャレンジャーを試しているから…でもあの幽香を破ったんだ。凄いね。ポケモンを持っている身からして少しワクワクして来た」

 

 厄介者という話は聞いていたが記述された頃よりは少し人間に馴染んだのだろうか。少しビックリめの表情を浮かべた後に笑みをメディスンさんは浮かべる。私から少し離れ指を鳴らすとどこからか4体のポケモンがメディスンさんの周りに姿を見せた。

 

「幽香を倒した凄いトレーナー。アナタの名前を聞かせてくれる?」

 

「蓮子…宇佐美蓮子です」

 

「蓮子ね、分かったわ。アナタにとっては連戦でしょうが、ひとまずやりましょう。夜になってからだと色々見えないし」

 

 メディスンさんはそうニヤリと笑みを浮かべながらそう呟くと彼女の周りに姿を見せていた3体のポケモンが地面の中に隠れ、火を宿したポケモンがメディスンさんの前へ。火を宿しているという事はほのおタイプだろうか、その事を見越して私はウッウを繰り出す。

 

「頼むよウッウ!」

 

「ウッウなんて…幻想郷ではあまり見ないポケモンを持っているのね。…まぁいいわ、始めましょう。シャンデラ、れんごく」

 

「ウッウ、こうそくいどうでかわして!」

 

 シャンデラという炎を宿しているポケモンは宿している炎を増して行くと、一気に放出。ウッウがいたポイントに巨大な火柱を召喚して来た。トレーナーである私ですら伝わってくる熱気だ、食らったらひと溜まりもなかっただろう。間一髪でれんごくをかわしたウッウ、シャンデラに狙いを定めると…

 

「行くよウッウ!ドリルくちばし!」

 

「おにび!」

 

 ウッウはそのまま空中からドリルのように回転し始めるとその勢いのままシャンデラに突撃。ウッウに対するシャンデラはメディスンさんの指示通りに火の玉を放つ。だがドリルのように回転しているウッウには効かずにあっさりかき消され、シャンデラはドリルくちばしをまともに食らう。

 

「シャドーボール!」

 

「シャドーボール!?」

 

 回転しながらシャンデラに体当たりをかまし、直撃を食らわせたウッウ。だがその後のシャンデラが黙っている筈もなく、メディスンさんが指示を出したのはシャドーボール。黒い玉を作り出すとそのままウッウに放出すると、驚くのも束の間シャドーボールがウッウに直撃する。

 

「反撃の隙は与えない!シャンデラ、れんごく!」

 

(ウッウが持ち堪えてくれている事を期待するしかない!)

 

「ウッウ、なみのり!」

 

 シャドーボールから巻き上がる爆煙。そんな中シャンデラが再び炎を溜め始めたと思いきや、爆煙の中から聞こえて来たのは地面を叩きつける音。爆煙を振り払う形でシャンデラに大量の水が襲いかかり、ウッウがいるポイントには巨大な火柱が出てきた。

 

「っ!ウッウ!」

 

 シャンデラもなみのりをまともに受け少し弱り始めた中、れんごくによる火柱が晴れた所にいたウッウは火傷を負った様子ながらも立っている。だが少しフラついているようで…

 

「シャンデラ!おきみあげ!」

 

 ふらついているシャンデラにメディスンさんは見切りを付けたのか。シャンデラが倒れたかに見えれば魂のような何かがウッウに降り注ぐ。ほのおタイプの技とはいえ、あれほどの火柱だ大ダメージを受けたのは間違いないだろう。

 

「ウッウ、戻っ…」

 

 ポケモンを交換しようとしたその時。ウッウはシャンデラと少し遅れたタイミングでそのまま地面に倒れ込み戦闘不能に。私は驚いた後に少しだけ歯を食いしばるとそのままウッウをボールの中に戻す。

 

「倒れるならおきみあげしなければ良かったわ」

 

「ふらついていたとはいえ、犠牲にしてまでの戦法は間違ってなかったと思います」

 

「そう…さあ次、私はこの子で行くわ。いらっしゃいヤミラミ」

 

「私の次は…」

 

 メディスンさんが自分の戦法に少し反省の言葉を述べる中、彼女の近くに姿を見せたのはヤミラミという目がダイヤのような形をしているポケモン。対する私もポケモンを繰り出さないと行けない訳だが、モンスターボールを出そうとした瞬間勝手にドロンチが姿を現す。

 

「ドロンチ!?」

 

「ドロンチ?へえ…同じゴーストタイプのポケモンを持っているなんてね」

 

 クスクスと笑みを浮かべるメディスンさんに対して出てきたヤミラミに対して向けるドロンチの表情は真剣その物。先程のバトルにて引っ込められたのが少し悔しかったのだろうか。

 

「…賭けてもいいんだね?」

 

「グオオ!」

 

「よし…行くよドロンチ!」

 

 ドロンチの勢いを買った私がヤミラミと対する。この戦いの中でドロンチに対してあんな事が起きるとは知らずに…




見てくださりありがとうございます。


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迎えるその時

久しぶりの投稿です。近々東方関係で新作を投稿するかも?


「まずは先手を!ドロンチ、りゅうのはどう!」

 

「ヤミラミ、みきり!」

 

 ウッウとシャンデラが対した第一ラウンドから私とメディスンさん、両者が繰り出した2体目ドロンチとヤミラミが対する第二ラウンドに突入。先に指示の声を上げた私の言葉にドロンチは従い、口から波動を放って行くがヤミラミは自身の前にバリアを貼り込み波動を完全に防ぎ切ると…

 

「かげうち!」

 

「ドロンチ、ダメおし!」

 

 ヤミラミは地面に影となって潜り込むとそのまま目にも止まらぬ速さでドロンチの最後にへと回り込むと、そこで影から飛び出し平手打ちを振り向いたドロンチに喰らわせる。ヤミラミの攻撃で少し怯んだドロンチだがすぐにヤミラミの方を見つめると、尻尾でヤミラミを叩きお返し。

 

 近くにいる分攻撃は通りやすい。ここで叩きかけにかかる。

 

「りゅうのはどう!」

 

「ナイトヘッド!」

 

 近くでドロンチのりゅうのはどうとヤミラミの目から出たビームがぶつかり合い、相打ちとなり爆煙を巻き起こす。その爆煙はトレーナー、ポケモン共に前方が見えない感じだが両者のポケモン共その場から動いていない筈…!

 

「もう一回りゅうのはどう!」

 

 爆煙を晴らす為にもう一度りゅうのはどうを指示。ドロンチから放たれた波動が一直線に爆煙に穴を開け、ヤミラミの居場所までに向かって行くがヤミラミがいた場所にその姿はない。私がそれを見て驚いているとドロンチの背後に出てきた影を見て…

 

「ドロンチ、後ろ!」

 

「気づいてももう遅い!ヤミラミ、はたきおとす!」

 

 ドロンチが影の方に振り向いたその時。既に影の中から飛び出して来たヤミラミの拳がドロンチに炸裂。そのままドロンチは殴られた勢いのまま地面にへと叩き付けられる。

 

「ドロンチ!」

 

「トドメ!ナイトヘッド!」

 

 少し巻き上がった砂埃からか地面に叩きつけられたドロンチの姿が見えないが、メディスンさんはトドメとばかりにヤミラミにナイトヘッドの指示を出す。歯を食いしばりながらドロンチがやられる事を覚悟したその時。ゼロというべき距離からドロンチはナイトヘッドを自力で回避。

 

 これには私とメディスンさん2人共驚いた中でドロンチは私を背にして声を張り上げるとその体が突如として光り始める。

 

「嘘!?このタイミングで!?」

 

 光り始めたドロンチはそのまま身体も大きくなり、さらに近くにいたドラメシヤが2体に増える。光が完全に消えたその時、地響きが起こる程の咆哮を上げながらヤミラミの方を睨み付ける。

 

「…ドラパルト…!」

 

 霊矢が口にしていたドラメシヤ、ドロンチが迎える最終進化。メディスンさんがこの状況で思わず苦笑いを浮かべる中で私は息を呑む。ドラパルトはゆっくりとこちらを見て一回頷くと思わずその行動に勇気づけられ…

 

「反撃と行くよドラパルト!りゅうのはどう!」

 

「ヤミラミ、みきり!」

 

 ドラパルトが放った波動が再びヤミラミが作ったバリアにより完全に防がれるが、問題はこの後。バリアをヤミラミが無くしたその後に私は狙いを定める。

 

「ドラゴンアロー!」

 

「グオオ!」

 

「来るんだったら…!ヤミラミはたきおとす!」

 

 自身の耳付近に待機していたドラメシヤ2体をドラパルトは放出。向かって来たドラメシヤの一体目をヤミラミは思い切り叩いて弾いたものの、二体目を防ぐ事は出来ずにそのまま直撃。吹き飛びはしなかったが腹部に直撃しヤミラミは怯みを見せる。

 

「りゅうのはどう!」

 

 怯んでいるその隙を見逃す筈もなく私はドラパルトにりゅうのはどうを指示。放たれた波動がフラフラしながらもようやく立ち上がったヤミラミに直撃。爆煙が辺りを覆う中煙が晴れるとそこには戦闘不能となっているヤミラミの姿が。

 

 トドメを刺されようかという展開からのまさかの逆転劇。まだ完全に勝ってはいないものの、心がかなり昂った。

 

「進化して勝ったからって連勝はさせない!行くよギルガルド!」

 

 倒れたヤミラミをシャンデラ同様にモンスターボールの中に戻すと次に姿を見せたのは盾のような物が身体となっているポケモン。ギルガルドと言うらしい。声を上げながら気合い十分にメディスンさんの前に出たギルガルドに対してこちらは変わらずドラパルト。

 

「行くよドラパルト!ドラゴンアロー!」

 

「キングシールド!」

 

 ドラパルトが打ち込んだ二体のドラメシヤに対してギルガルドは防御の構え。二体のドラメシヤがギルガルドに思い切りぶつかって行くがギルガルドが張っていたバリアに防がれて弾き飛ばされる。ドラメシヤ達がそのままドラパルトの元に戻った瞬間、メディスンさんが攻勢に出る。

 

「アイアンヘッド!」

 

「たたりめ!」

 

 盾を突き出したようなフォルムからその盾を片手にしながらこちらに突っ込んでくる。ドラパルトが目を光らせ念力をぶつけて行く中、ギルガルドは怯みつつもドラパルトの元へ行き思い切り身体をぶつける。息を呑むのも束の間、ドラパルトは吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。

 

 ヤミラミとの戦いで元々疲弊していた状態だ、私は戦闘不能を覚悟したがドラパルトはゆっくりながらもまだ立ち上がる。

 

「まだ戦闘不能にならないの!?いいわ!全力で倒す!つじぎり!」

 

「ダメおし!」

 

 ここでの技指示は一種の賭けのような物だった。ギルガルドが盾を手に持ちながらこちらに突っ込んできたのを見てドラパルトも対抗するかのように突っ込んでいく。

 

 スピードはこちらの方が上。ギルガルドの攻撃よりも先にドラパルトの尾での攻撃がギルガルドに炸裂。だが倒し切るまでにも至らずギルガルドからの反撃を受けて再び吹き飛ばされると、今度は立ち上がれずに戦闘不能に。

 

「っ…!ドラパルト…!ナイスファイト…後は任せて」

 

 ヤミラミを倒した上ギルガルドにもダメージを入れた十分過ぎる活躍だ。ドラパルトに向かって笑みを浮かべるとモンスターボールに戻し、ウッウ、ドラパルトと来て3体目は自分の中でもう決めていた。

 

「行くよイーブィ!」

 

 幽香さんとの戦いで出番がなかったイーブィ。ノーマルタイプとゴーストタイプ。これだけ聞くとイーブィが不利に感じるがアイアンヘッドを覚えている事を考えると恐らくはがねタイプが入っている。それならイーブィでもやりようはある。

 

「イーブィとはね…みくびられた物ね!ギルガルド、つばめがえし!」

 

「あんまり舐めていると痛い目見ますよ!イーブィ、めらめらバーン!」

 

 向かってこようとするギルガルドに対してイーブィは毛を逆立てながらもギルガルドからの斬るような攻撃をなんとか吹き飛ばされずに踏ん張る。そして身体中を燃やしながら一気にギルガルドに向かって放出。攻撃したてで距離は詰め寄られたままで回避出来ずに直撃。

 

 巨大な爆煙が巻き上がる中爆煙が晴れていくと身体を震わせているイーブィとその前方で戦闘不能となっているギルガルドの姿が。

 

「まさか…!?一撃…!?」

 

「この子だけが覚えるめらめらバーンはほのおタイプの技です。いくらこの子であろうとも打点があればやりようはあります」

 

「意外性って所ね。びっくりしたわ。でもびっくりするのもここまで!ここから巻き返すよポットデス!」

 

 ギルガルドがボールの中にへと戻され、次にメディスンさんの前に姿を現したのはポットの中に何かが入ったポケモン。顔を出しているがあの紫の胴体が本体なのだろうか。

 

「行けるよねイーブィ」

 

「ブイ!」

 

 メディスンさん4体目のポットデスと私の3体目であるイーブィ。イーブィも気を引き締めながらポットデスの方を見つめる。夜が迫る中バトルは最終盤を迎える…

 




見てくださりありがとうございます。


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決着と近づく完走

久しぶりです。投稿します。熱出しながら書いたのでいつも以上におかしいかもしれないです。


「行くよイーブィ…!めらめらバーン!」

 

「ポットデス!ふいうち!」

 

 私自ら胸を叩く事で気合いを入れ直しラストスパート、イーブィに指示を出す。身体中の毛を逆立ててギルガルドに放った時のように炎を宿して行くイーブィ。その身体から炎が放たれようとしたその時、地面に潜り込みいつの間にかイーブィの背後に迫っていたポットデスから体当たりを喰らう。

 

 トレーナーの私ですら気づかなかった暗さを利用したポットデスの攻撃。イーブィは背後からまともに攻撃を喰らった事により、炎をポットデスがいる方向とは違う所にへと放ってしまい炎は空の中に消えた。イーブィが背後に振り返ったがポットデスの姿はそこにはない。

 

「いない…!?」

 

「ゴーストタイプは元々暗闇に強いからね…!さらに行くよ!ポットデス、メガドレイン!」

 

(どこかにはいる筈…!)

 

「イーブィ、周りに向かってびりびりエレキ!」

 

 イーブィの身体から吸い取られて行く生気。姿は見えないがポットデスがどこかしら技を放っているのだろう。賭けに出た私はイーブィにびりびりエレキを指示。身体に稲妻を纏わせたイーブィが身体の稲妻を自分の周りに放出。するとポットデスの近くに行ったのか、慌てて姿を見せた。

 

 イーブィの前方、今イーブィは私の方に向いている為背後に当たる位置。びっくりした素振りを見せるポットデスを見て…

 

「イーブィ、後ろ!もう一回びりびりエレキ!」

 

「まもる!」

 

 イーブィは振り向かずに再度身体に宿した稲妻を自分の周りにへと放出。背後にいるポットデスにも向かっていったがバリアを貼った事によりダメージは受けず。バリアに弾かれて稲妻は空中にへと消えて行く。空はもう夜空が見えかけている。早々に決着を付けないとトレーナーの私が対応出来ない…!

 

「真っ暗じゃ何もわからないでしょう!ポットデス、ちからをすいとる!」

 

(近づいてくる筈…!この一撃にかける!)

 

「イーブィ、めらめらバーン!」

 

 夜の空はもはや私にイーブィがどこにいるか、ポットデスがどこにいるかも分からなくさせているがイーブィに近づいて来るとの賭けに出た私はイーブィにめらめらバーンを指示。身体に宿した炎により多少周りが明るくなったが背後から迫ってくるポットデスの姿が視界に入った。

 

「捉えた!イーブィ、そのまま一気に放出して!」

 

「ブイッ!」

 

 イーブィはポットデスの接近を許す中で炎を自分の周りに放出。私もメディスンさんも爆風に巻き込まれたが起きた爆煙によりイーブィとポットデスの姿が見えない。暗闇の中微かに見える視界を頼りに煙が晴れるのを待っているとその場で倒れているイーブィとポットデスの姿が。

 

「ポットデス!」

 

「イーブィ!」

 

 倒れた2匹に対してメディスンさんと私は同時に駆け寄る。あまりに必死だった為私とメディスンさんは激突。そのまま2人とも尻もちをついた。痛さで一瞬歯を食いしばったがお互いに顔を見合わせると息を整えたメディスンさんが…

 

「私の負けね。まあジムチャレンジの勝敗なんて気にしてないし、別にいいけど。とりあえずおめでと。見える内にバッジを渡しておくわ」

 

 月の光が完全に地面を照らし始めたその時。メディスンさんは少し汚れた所の土を払いながら私にジムバッジを渡して来た。どうやら彼女にとって今のポケモンが最後だったらしい。悔しくなさそうに平然としていたが…

 

「次は確か…アリス!そして魔理沙ね。私を突破しているトレーナーはアナタ以外にも何人かいるわ」

 

「知っている限りは?」

 

「えっと確か魔美という子が」

 

 お互いにイーブィ、そしてポットデスをボールに回収しながらメディスンさんは自分を突破した人物を語ってくれた。その中には魔美の名前も。あれだけ強いトレーナーだ。私の先を行っていてもおかしくはない。少しだけ驚いた反応を見せた私に対してメディスンさんは…

 

「この後一旦人里に戻るんだよね?」

 

「そうですね…でもさすがに今は戻れないですけど」

 

「そうだね。じゃあ私に勝ったご褒美としてここに泊めてあげる。その代わりちょっとした話し相手になってよ」

 

 メディスンさんの要求に従う形で私はこの夜だけこのメディスンさんがいる鈴蘭の花畑に泊めてもらう事に。周りは真っ暗で何も見えないがひとまず今日はポケモンセンターを使えない為、自力で回復しないと行けない。倒れたウッウ、ドラパルト、イーブィの3体を手当てしながら私はメディスンさんの話を聞く。

 

「アリスはエスパータイプ、そして魔理沙はドラゴンタイプの使い手だよ」

 

「という事はドラパルトのような強いポケモンも?」

 

「そこまでは分からないけどジムリーダーとしての魔理沙は結構真剣にやってるから、私のようなテスト感覚では挑ましてくれないと思うよ」

 

 メディスンさんによると後継者を求めるジムリーダーも多く、そのモチベーションの無さからかテスト感覚でチャレンジャーと勝負しているリーダーも少なくないとか。メディスンさんもその1人らしいが後継者が見つからない為継続して続けている形になっているとの事。

 

「ここまではぶっちゃけ気持ちが強いトレーナーなら突破すると思うけど、アリスと魔理沙は本当に強敵だよ。本戦と同じ気持ちでやってるもん」

 

「本戦?」

 

「そ。ジムチャレンジ後のセミファイナルトーナメント。何かどこかの地方の真似らしいよ。幻想郷は幻想郷なりのやり方をすれば良いのにね」

 

 思わずメディスンさんからため息が漏れる。セミファイナルトーナメント。ジムチャレンジを勝ち抜いたトレーナーだけで行われるトーナメントであり、そのトーナメントを勝ち抜いた物だけがジムリーダー達が待ち構える本戦にへと進む。その後は…

 

「本戦の後は霊夢だよ。まあそこまで行けたらの話しなんだけどね、チャレンジャーが勝てなければリーダーが行くって話しだから」

 

「今までいるんですか?ジムリーダーが霊夢さんに挑んだパターンって」

 

「魔理沙が何回もチャンピオン戦に挑んでるよ。結果は全敗。手も足も出ないって感じで」

 

 今後私が戦うであろうジムリーダーを持ってしても霊夢さんには敵わない。私はメディスンさんの言葉を聞いて息を呑む。ジムリーダーからしても最も強いトレーナーらしく、その足元には遠く及ばないとの事。

 

「確かアナタってメリーという子と幻想入りして来たんだよね?チャンピオンになったらどうするの?」

 

「…ひとまず戻れるまで幻想郷を楽しんでみようかと思ってます」

 

「そう言うしかないよね。無理もないよ」

 

 私に同情するような形で語って行くメディスンさん。人間嫌いという話しらしいがかなり話してくれる。私にとっては今後の話しを聞くには貴重な機会だが彼女にとっては大丈夫なのだろうか…

 

「メディスンさん。確かにとりさんから人間嫌いだって…」

 

「チャレンジャーまで嫌っていたらさすがにどうしようも出来ないじゃない。人間とチャレンジャーは別って考えてる」

 

 メディスンさんは私の言葉に対して少しため息を吐きながら返答する。そして暗闇の中静かに私のボールの方を見つめると…

 

「アナタ、多分幽香からポケモンを貰ったわよね?」

 

「え?何で分かるんですか?」

 

「何となくそう思っただけ。なるべく育てておいた方がいいよ。もしかしたらその子の力が必要になるかもだから」

 

 何かを察したメディスンさんからの一言。多分ユキハミの事を言っているんだろうけど、読まれたかのような一言に私自身メディスンさんの方を見つめながら息を呑むしかなかった…




見てくださりありがとうございます。今日は描き終えたのでゆっくり休みます。


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人里への帰還

久しぶりですー。ひとまず投稿していきますね。


「ユキハミ、こなゆき!」

 

「ハミ!」

 

 鈴蘭畑に泊めてもらった翌日。朝早くに目を覚ました私はたまたま起きて自主練習を繰り返していたユキハミに指示を与える。練習相手は敢えてユキハミにとって相性最悪なルカリオ。ユキハミの身体全体から放った吹雪がルカリオに命中して行くがやはりそよ風程度か。ルカリオはびくともしていない。

 

「その様子だと食らっても何にもない感じだね…」

 

「……」

 

 ルカリオは私の言葉を聞きもう一度攻撃しろと言わんばかりに手の平をクイっと動かす。仲間の特訓相手になってくれると言う気持ちに感謝しつつ、ユキハミに再度こなゆきを指示。ユキハミは必死に吹雪をルカリオに向かって放って行くがやはりルカリオの表情は一切変わらない。

 

「特訓じゃないんだよね多分、ユキハミの進化って…」

 

「ハミ!」

 

「お疲れ様、ユキハミ。食事もあるし一旦ここまでにしよっか」

 

 進化させた人がいないとされるユキハミ。ルカリオを進化させた私なら知っていると言う事はこの子に対する愛情という事になるのだろうか。ルカリオは充分時間があったが…もしこのままだとジムチャレンジ最後までこの姿という事になる。貴重な氷タイプの技を持っているし、このままでは逆にこの子に失礼かもしれない。

 

 色々考える事があるがひとまずルカリオに傷薬を塗り、ダメージを回復させるとルカリオとユキハミ二体同時にボールの中に戻す。軽く私は息を吐くとそこに…

 

「おはよう。随分早起きなのね」

 

「あ、メディスンさんおはようございます」

 

「特訓でもしてた?」

 

「はい。ひとまずユキハミにはゆっくりでいいので戦い方を覚えて欲しいなって」

 

 メディスンさんが私の背後から目を擦りながら話しかけて来た。あくびをする彼女にひとまず苦笑いを浮かべながら私はユキハミについて語っていたが、メディスンさんは目を擦りつつ一つ大きな息を吐くと…

 

「接して上げる時間も必要よ。確かにジムチャレンジ内では厳しいかもしれないけど」

 

「競争の中なんで…ひとまず与えられるだけの時間をこの子に上げたいとは思ってます」

 

「まあ、なるべく無理しない事ね。完走目指して頑張って」

 

 メディスンさんの激励に私は大きく頷く。ひとまず私のポケモンみんなが起きるのを待ってから食事の時間へ。軽めの朝食をポケモン達と済ませ、メディスンさんとひとまず別れる形で鈴蘭畑を後にする。鈴蘭畑から出発し再び差し掛かった幽香さんがいる太陽の畑。

 

 再び挨拶しようと思ったが今は不在の様子。少し周りを見渡しながら私はその場を静かに後にする。行きはメリーやジムチャレンジ等のバトルが重なり、鈴蘭畑に行くまでの時間が長くなったが帰りは誰にも会わない分早く戻れている気がする。

 

「えっと確かジムリーダーのアリスさんと魔理沙さんがいるスタジアムは魔法の森だったよね…人里に一旦戻るなら慧音さんの所に顔を出しておこうかな…」

 

 幻想郷の地図を広げ歩きながら確認しつつ、人里にへと足を進めていく。アリスさんと魔理沙さんがいる場所は人里から少し離れた森。そこにスタジアムが二つある。アリスさんの所はスタジアムという名前ではなく、人形劇場という名前らしい。

 

 そしてフェアリータイプの使い手…私のパーティの中にはルカリオしかフェアリータイプに対して大きく打点を取れるポケモンがいない為、余程苦しい場面に遭遇しない限りはイーブィ達で何とかしたいなぁ…

 

「ふぅ…少し考え込み過ぎかな。今作戦考えても意味ないよね…」

 

 一度足を止め胸に手をやりながら小さく息を吐くとボソッと自分に言い聞かせるように言葉を呟き、再び歩き出す。人里の門番の方に一礼し人里の中へ。慧音さんの所にいるジムチャレンジャーが減ったからか、かなり静かになったような気がする。

 

「大分静かになったなぁ…やっぱりジムチャレンジャー達が違うところに行ったからかなぁ」

 

 ふと周りを見渡し私はそう呟くとひとまずポケモンセンターにへと歩き始める。本当は慧音さんの顔を見たい所だが慧音さんもジムリーダー。この時間はスタジアムにて何かしらの作業等しているに違いない。そう私は思い込み足を進めていると…

 

「ん?」

 

 寺子屋前にて1人の女性と話し合いながら立ち止まっている黒髪の少女の姿が。遠目からだった為誰かが分からなかったが、近づいて行く度にその少女が魔美だという事を思い出した。魔美の隣にいるのは慧音さんだろうか?

 

「おーい魔美!」

 

 声を張り上げながら魔美の名前を叫びながら彼女に近寄って行く。魔美は声に気付きこちらに振り向くと、近づいて来た私に笑みを浮かべながら手を大きく振る。

 

「久しぶりだね蓮子!太陽の畑の方から帰って来たという事は順調にバッジを集めているみたいだね」

 

「魔美こそ。私より先に人里にいるという事は一歩早かったという感じだよね」

 

 お互いに健闘を讃えあいながら笑みを浮かべていると魔美と話していた女性がこちらの注目を自分にやりたいのか、息を整える。よく見ていなかったから分からなかったが魔美が話していたのはどうやら慧音さんだったらしい。

 

 慌てて私は慧音さんに頭を下げたが…

 

「そんなに慌てるな。たまたま行く道中で魔美と会ってな。2人共バッジ集めは順調みたいだな」

 

「はい!後アリスさんと魔理沙さんだけで…あ…」

 

「いいよ蓮子。義母さんは今私にとって通過点だから。名前出されたぐらいでムッとはしないよ」

 

「通過点か。そうだな。ただお前達にとってとんでもない壁になるのも間違いないよな。あの2人は私達から見ても別格だからなぁ」

 

 ふと口を滑らせてしまったかなと私はかなり焦ったが寧ろ笑みを浮かべながら魔美は目標を口にした。その魔美の言葉を聞いた慧音さんは笑みを浮かべながら何回か頷くと、私達の方を見つめながら呟いて行く。その言葉に目を輝かせたのは魔美。

 

 すると彼女は真っ直ぐな瞳でこちらを見つめると…

 

「蓮子、バトルしようよ!何か慧音さんの言葉で火がついた!」

 

「え!?今!?」

 

「そう今!ライバルが目の前にいるんだもん!私のポケモン達がどこまで強くなってるか見ておきたいし!」

 

「いいんじゃないか?今ならバトルコートも空いているだろうし」

 

 力強く言い放つ魔美の言葉に押されつつも慧音さんの同意もあって、少々疲れている感じは否めないがひとまず魔美と共に慧音さんがいる寺子屋を後にし、空いている人里のバトルコートにへと足を運ぶ。お互いに距離を取り…

 

「手加減は当然なしだからね蓮子!」

 

「魔美も歩いて来ただろうに…元気だなぁ」

 

「だったら私の不戦勝にする?」

 

「それはさすがに嫌だね。やるからには勝ちに行くよ」

 

 魔美の挑発にも似た発言に私の中のスイッチが入ったようで拳をグッと握りしめて表情を引き締めると「勝ちに行く」という強気の言葉を発した。その強気を聞いた魔美は笑みを浮かべると…

 

「言ったね?だったら私も全力で勝ちに行くから!」

 

「ありがとうね魔美。気合い入った」

 

「だったらもう気を遣わなくて大丈夫だね?よし…なら行くよ…モルペコ!」

 

「ドンとぶつかっておいで…ユキハミ!」

 

 魔美と私。お互いに気合いを入れてモンスターボールを取り出すと思い切り振りかぶり魔美はモルペコ。そして私はこのバトルでデビュー戦となるユキハミを場に出す。

 

「ハミ!」

 

「魔美!この子にとってこれがデビュー戦になるけど、遠慮なくお願いね!」

 

「言ったね?だったら一撃でやられても何にも言わないよね?」

 

「もちろん…!」

 

 気合い充分のユキハミと堂々と身構えるモルペコ。ユキハミにとってのデビュー戦はどんな感じになるのか、私自身ワクワクしていた…




バトル続きだったんで強引ではありますが閑話回にしてみました。


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希望と期待を込めた初陣

久しぶりですー。地味にゆっくり茶番劇の件で東方二次創作の規制が強くなるのでは?と警戒していた私です。まあ大丈夫だったので良かったです。


「一撃で仕留めにかかるよ!モルペコ、オーラぐるま!」

 

「ユキハミ!こごえるかぜで地面を凍らさせて!」

 

 その場の地面を何回も蹴り付け、光の円を作り出すとその円を回転させながらユキハミに突撃。突撃してきたモルペコに対してユキハミは風で地面を凍らせて行く。結果的にはこれがハマりモルペコはツルツルになった地面に対応出来ずにその場で転ぶ。

 

 この結果に驚いた魔美。一か八かの方法が上手く行った私は攻勢に出る。

 

「むしのていこう!」

 

「ハミ!」

 

「モルペコ、スパーク!」

 

 ユキハミから放たれた光が一直線にモルペコに向かって行くがモルペコは身体に電気を纏わせて光をかき消して行く。電気熱を帯びた地面の氷はあっという間に溶けていき、モルペコが身体の電気を解いたその姿はまんぷくもようの可愛げのある姿からはらぺこもように変化し…

 

「かみくだく!」

 

「ようせいのかぜ!」

 

 モルペコは地面を蹴り出すとそのままジャンプし、ユキハミ周りに一切着地する事なくユキハミ本体にへと口を開ける。ユキハミは身体を震わせて風を巻き起こすが、ジャンプの勢いを弱めただけで止めるに至らず。

 

 ユキハミにモルペコは思い切り噛みつき、左右に振り回した後に私の後方にへとユキハミを投げ飛ばす。

 

「ユキハミ!」

 

 鉄網に叩きつけられたユキハミに近寄った私。ユキハミはモルペコからの一撃を耐え切る事が出来ずに戦闘不能に。魔美が宣言していた一撃での突破。こうなる事を覚悟していただけに私は悔しさを押し殺してユキハミをボールの中にへと戻す。

 

「まずは一体ね。どんどん突破してあげるから」

 

「あの時の決着を付ける…行くよルカリオ!」

 

「出たわねルカリオ。今度は倒すから!」

 

 ユキハミを突破し調子良く笑みを浮かべていた魔美。私は一息吐くと2体目に繰り出したのはユキハミの練習に付き合っていたルカリオ。魔美にとっては最後に見ていただけにその言葉にも強さが混じる。静かに身構えるルカリオに対しモルペコも唸り声を上げ…

 

「行くよモルペコ!オーラぐるま!」

 

「はどうだん!」

 

 地面を何回も蹴り出し再び光の円を纏ったモルペコがそのまま突撃してくる。ルカリオも身構えて両手から波動を纏いモルペコに対して投げつける。ルカリオの波動とモルペコのオーラが火花を散らしながらぶつかり合ったが相打ちとなり爆発。

 

 爆煙を巻き起こし前方が見えなくなったが…

 

「ルカリオ、はっけい!」

 

 ルカリオは相手の波動を確かめる事が出来るポケモン。その能力を信じルカリオに指示を出す。ルカリオは頷くと爆煙の中に突っ込んでいき周りを見渡しているモルペコに正確に接近。少ししゃがんだような姿勢から手の平をモルペコにぶつけ、モルペコを吹き飛ばす。

 

「スパーク!」

 

「はどうだん!」

 

 身体に電気を纏わせながら突撃してくるモルペコに対して爆煙の中でルカリオは悠然と波動を溜め込み、爆煙を掻き分けて来ているモルペコに波動を投げつける。電気が一瞬波動を押し返しかけたが完全に押し返せずモルペコに直撃。小さな爆煙がさらに巻き起こり、その爆煙が晴れた所にいたモルペコは仰向けで倒れて戦闘不能に。

 

「モルペコ!…さすがに強いね…!」

 

「勝負はまだまだ始まったばかりだよ。褒めるのは早いんじゃない?」

 

「言ってくれる…」

 

 魔美は私からの言葉にニヤリとした笑みを浮かべるとモルペコをボールの中にへと戻す。そして小さく一息吐いて繰り出したのは青いタコのような足を数本生やしたポケモン。

 

「タタッコが進化したの…?」

 

「そうだよ。ルカリオと同じかくとうタイプのオトスパス。さーて…押し返しにかかるから!」

 

「気を引き締めて行くよルカリオ!」

 

 オトスパスというポケモンは鋭い眼差しをルカリオに向けつつ、身構える。魔美は気合いを入れ直したかのように一息吐くと力強い一言を発する。負けてられないのは私とて同じ。小さく一息を吐くとルカリオに語りかけた。

 

「じごくぐるま!」

 

「はどうだん!」

 

 地面を蹴り出して向かって来たオトスパスはルカリオが溜め込んだ波動をあっさりと掻き消すとそのままルカリオの身体を掴みそのままジャンプ。そして自分ごと思い切り地面に衝突させる。

 

「ルカリオ!」

 

「たこがため!」

 

(身動きを封じられる訳には…!)

 

「バレットパンチ!」

 

 オトスパスが自分の体を思い切り広げた地点で拘束する技だという事を察した私はユキハミの時と同様賭けに出る。ルカリオが起き上がるのが先か、オトスパスが拘束してくるのが先か。ゆっくり体を起こすルカリオに迫るオトスパス。オトスパスが今まさに拘束しようとしたその時。

 

 ルカリオがその場から咄嗟に離れて回避。そして体勢が少し前屈みになっているオトスパスに地面を蹴り出して向かって行くと数十発の拳を叩き込みオトスパスを微々たる距離ながらも吹き飛ばす。

 

「一気にトドメ刺すよ!ばかぢから!」

 

(攻めるしかない!)

 

「はどうだん!」

 

 後手後手の戦い方はこちらが消耗するだけと判断した私は攻勢に出る。血管が浮き出るくらいに力を溜め込んだオトスパスはそのままルカリオに向かってくると、ルカリオは波動を放出して対抗。オトスパスに直撃はしたものの勢いを止めるには至らず、渾身のラリアットをルカリオはまともに受け地面に叩きつけられる。

 

「ルカリオ!」

 

 巻き上がった少しの砂埃が晴れるとそこにいたルカリオは戦闘不能の状態。ルカリオでも太刀打ち出来ない力に私は思わず息を呑んだ。早くも3体目を出す羽目になった訳だが出来る限り攻勢に出るしかない…!

 

「行くよキュウコン!」

 

 私の3体目はキュウコン。ロコンの状態を見ていた魔美は少し驚いたような表情から「進化したんだ…」と思わず声を漏らす。それに対して私が力強く頷くと…

 

「三体目を引きずり出す!キュウコン、じんつうりき!」

 

「ちょっとやそっとの念力なんて!オトスパス!きしかいせい!」

 

 地面を思い切り蹴り出しこちらに向かって来るオトスパスに対しキュウコンは目を光らせると念力によってオトスパスの動きを封じ込め、そのまま宙に浮かせて一気に地面に叩きつける。これが余程当たりどころが悪かったのか、予想外の一撃koという形になった。

 

「い、一撃!?あんなに元気だったのに…!?」

 

(じごくぐるま…さっき自分ごと叩きつけていたからか…助かった)

 

「ほのおタイプか…だったら!行くよウオチルドン!」

 

 じごくぐるまの反動がいい方向に働いてくれた事に感謝しながら私は一息吐くと魔美は若干納得行かないような様子からオトスパスをボールの中に戻すと、キュウコンがほのおタイプである事を察した上で三体目であるウオチルドンを出してきた。

 

「…?どこかウオノラゴンに似てるような…」

 

「よく分かったね。同じ化石ポケモンよ、ウオノラゴンとウオチルドンは」

 

「教えてくれてありがとう。モヤモヤが消えたよ」

 

「じゃあ続きと行きましょ」

 

 ウオノラゴンとウオチルドンが似ている事に若干モヤモヤしていた私ではあったが魔美からの言葉を聞き納得。そのまま私と魔美2人共気合いを入れ直して表情もぐっと引き締める。

 

「行くよキュウコン!かえんほうしゃ!」

 

「ウオチルドン、フリーズドライ!」

 

 キュウコンが口から火炎を吐きウオチルドンは自分の周りを凍らせて行くが氷は炎には弱いもの。あっさりと氷は溶けて行くがその溶けた氷が水となりなんと火炎を鎮火してしまった。

 

「っ!?嘘…!?」

 

「簡単に当てられると思わないでね?さぁて!今度はこちらがやり返すんだから!」

 

 上手く行ったからか魔美は勝ち誇ったかのような笑みを浮かべ私を見つめる。それを見た私は更に気を引き締めていた…




見てくださりありがとうございますー。
今後ともこのペースで更新するのでよろしくお願いします。


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緊迫とした戦い

週一は続けたいと思いますー。


「かみくだく!」

 

「じんつうりき!」

 

 炎とフリーズドライが巻き起こした水蒸気を吹き飛ばし、ウオチルドンが高速でキュウコンに迫って行く中でキュウコンは目を光らせ、ウオチルドンの動きを止めるとそのまま地面に叩きつける。

 

「まだまだ行くよかえんほうしゃ!」

 

「フリーズドライ!」

 

 身体をゆっくりと起こしながらウオチルドンが冷気を放とうとする中でキュウコンは口から火炎を放つ。若干の冷気では火炎をかき消す事は出来ず、ウオチルドンに火炎が直撃。炎は一気に燃え広がり爆発を巻き起こす。爆煙が私の視界を覆い尽くす中で…

 

 ウオチルドンは若干の傷を受けながらも平然とこちらに突撃し…

 

「かみくだく!」

 

 ウオチルドンは思い切り口を広げキュウコンに噛み付く。この執念とも見える一撃に私はかなり驚かせられたがずっと驚いている訳にも行かない。少し一息吐くと…

 

「かえんほうしゃ!」

 

「ウオチルドン、そのまま噛む力を強く!」

 

 ウオチルドンの噛みつきが強くなって行く中キュウコンは口を広げ、顔を振り回しウオチルドンを振り飛ばすと吹き飛んだウオチルドンに向かって火炎を直撃させる。この一撃を受けウオチルドンは吹き飛ぶとそのまま魔美の前で倒れて戦闘不能に。

 

「よし…!」

 

「まさか…反撃されるなんて…でもその勢いここで止めるから!相性は不利だけど…!行くよキレイハナ!」

 

 魔美はウオチルドンを引っ込めると4体目に繰り出したのはキュウコンとは相性不利のキレイハナ。キレイハナとは幽香さんとバトルした際にぶつかっている…!やり方は違うかもしれないが若干その経験が有利に働くかもしれない。

 

「行くよキュウコン!やきつくす!」

 

「はなふぶき!」

 

 キュウコンが吐き出した炎の弾を前にしてキレイハナは竜巻のように回転し始めると風で炎の弾をかき消す。その風はそのままこちらへ。キュウコンの身体を傷つけて行くが、これも経験している。

 

(対策はできる筈…!)

 

「キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

「なっ…!?」

 

 花吹雪の勢いが弱まって来たタイミングでキュウコンは動き出し、火炎を吐き出すとそのまま火炎は指示を受けていないキレイハナにへと直撃。高火力かつ効果抜群の一撃。さすがにかなりのダメージは受けた筈…!

 

 息を呑みながら再び巻き上がった爆煙が晴れるのを見守っていたがキレイハナにとって余程当たりどころが悪かったのか、一撃で戦闘不能に。魔美は驚きながら…

 

「あちゃあ…確か幽香さんってくさタイプのジムリーダーだったよね。キレイハナは…」

 

「出していたね。経験がいい方向に働いたよ」

 

「やっぱりね。手慣れていると思った。でもラストここからひっくり返すんだから!行くよ…カビゴン!」

 

 キレイハナがなす術もなく倒れたのを見て魔美は思わずため息を吐いたが、気合いを入れ直すと声を張り上げキレイハナをボールに戻した後に5体目のポケモンを繰り出す。ルカリオが進化するきっかけとなったカビゴン。カビゴンもあの時より相当強くなっている筈…!

 

「まずはキュウコンに退場してもらうよ!カビゴン、10まんばりき!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 カビゴンがゆっくりとながらこちらに迫ってくる中で私はキュウコンにかえんほうしゃを指示。口から吐かれた火炎がカビゴンに命中するが特性からなのか、全然食らっている素振りを見せない。

 

 そのままカビゴンはキュウコンに突進を食らわせ、そのままキュウコンを私の後ろにへと吹き飛ばした。

 

「キュウコン!」

 

 カビゴンの突進を受けたキュウコンは一撃で戦闘不能に。炎が効かなかったのはカビゴンの特性だろうか。炎が効かないとすれば何で攻めればいい…!カビゴンはノーマルタイプ…対策はしているだろうが私にはこの時一体しか思いつかなかった。

 

「頼むよ…今の私にはアナタしか思いつかない…!ドラパルト!」

 

 私の頭の中に浮かんでいたポケモン。それはイーブィでもウッウでもなくドラパルトだった。カビゴンの素早さならいくらでもイーブィ達でも上回る事は出来たのだろうが、次にバトンを渡すそれか勝負を決めるという意味ではドラパルトが適切ではないだろうかと考えた。

 

 キュウコンをボールの中に戻している間の魔美の表情が一瞬驚いた後笑みに変わり…

 

「あの時のドラメシヤだよね。随分大きくなって!」

 

「大きくなったのは姿だけじゃないよ…行くよドラパルト!りゅうのはどう!」

 

「かみくだく!」

 

 ゴーストタイプだと言うのは既に読まれている。魔美の元に戻ったカビゴンがドラパルトに向かって走って行く。ドラパルトは口から波動を放つとカビゴンに命中。一瞬びくともしない素振りを見せたがそのお腹が大きく揺れ、カビゴンは攻撃を停止した。

 

「なっ!?」

 

「さすがに先程よりは食らっているね…!さらに行くよドラパルト!ドラゴンアロー!」

 

「のしかかり!」

 

 ドラパルトが耳付近からドラメシヤを発射している間にカビゴンは飛び上がって空中へ。ドラメシヤは見事にカビゴンにかわされ、カビゴンは空中からドラパルトにへと落下して行く。

 

「10まんばりき!」

 

「押し返すよドラパルト!りゅうのはどう!」

 

 まるで隕石かのように身体に熱を帯び始めたカビゴンに対してドラメシヤが再びドラパルトに戻っている間に口から波動を打ち込んでいく。カビゴンには命中しているがまるで勢いが弱まらない。そしてカビゴンはドラパルトに落下。直撃とも言える感じで砂埃を巻き上げる。

 

(賭けるしかない…!)

 

「ドラゴンアロー!」

 

「っ!?攻撃を喰らったすぐ後に!?」

 

 カビゴンが起き上がったのが目に入った私はドラパルトがすぐに起き上がるのに賭けてドラゴンアローを指示する。ちょっとした間、油断してもおかしくない数秒の中でカビゴンのお腹にドラメシヤが一体ずつ衝突。カビゴンを自らの近くから押し返す。

 

「あの一撃を受けて耐えたと言うの…!?」

 

「さすがだよドラパルト…!行くよりゅうのはどう!」

 

「押されないでカビゴン!かみくだく!」

 

 少し吹き飛ばされたカビゴンは気合いを入れた表情でドラパルトに接近して行く中、ドラパルトは少しボロボロの身体の中カビゴンにりゅうのはどうを打ち込む。カビゴンは少し止まりながらも迫ろうとしたそのタイミング。さすがに耐えきれなくなったのか、動きを完全に停止しその場に倒れ込む。

 

「カビゴン!」

 

「………」

 

 倒れたカビゴンに対して息を呑んでいると魔美が駆け寄り目撃したのは戦闘不能となったカビゴン。ドラパルトは戦闘不能となったのを見てその場にゆっくりと座り込む。

 

「勝つ自信しかなかったのになぁ…ホント強くなったよね蓮子」

 

「魔美こそ。ホント紙一重の差だったと思うよ」

 

 お互いに健闘を讃えあいながらドラパルトとカビゴンをボールに戻して行くとその背後にはどうやらバトルを見に来たとばかりに大量の村人の姿。私と魔美がようやくその見られている事に気付くと村人達はハッとした後に拍手をする。

 

 有名人になった気分だ…大量の人に拍手をされているのを見て少し恥ずかしくなった。

 

「有名人になった気分だね。何だか」

 

「それだけいい勝負が出来た証なんじゃないかな…」

 

 苦笑いを浮かべる私に魔美は一歩ずつ近寄って行くと少し見ている村人達を気にしてか、笑みを浮かべながら手を差し伸べて来た。

 

「次は負けないから。その日まで負けちゃダメだよ」

 

「魔美…もちろん!」

 

 魔美の言葉に思わず一息吐きながら彼女と同じく手を差し伸べ、握手を交わす。そこに起きる拍手。モチベーションがグッと上がった瞬間、次のジムリーダーに向かって私は気合いを入れ直した…




見てくださりありがとうございます。


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迫る終わりの時と覚悟の入れ直し

久しぶりです。今回は閑話回。軽くながら書いていきます。


「見事な勝負だったな2人共」

 

「慧音さん!」

 

 村人達による拍手が巻き起こる中でスッとその場に姿を見せた慧音さん。ジムに行く途中だったのか、その近くには何人かジムトレーナーを引き連れている。魔美と共に私は慧音さんに頭を下げると慧音さんは笑みを浮かべながら私達に語りかけて来た。

 

「勝敗は付いたが紙一重だったと思う。お前達と一緒にいたメリーも同じように鍛えに鍛えているんだろうな」

 

「メリーも強かったけど、やっぱり蓮子だよ。メリーには引き分けだったから」

 

「私もギリギリだった。迷いを吹っ切ってからとんでもなく強くなってると思う…」

 

「噂によれば…メリーはパーティを入れ替えているらしい。会話したというにとりが教えてくれたよ」

 

 私達のバトルについて語った後慧音さんの口から出たのはメリーの名前。魔美ですら互角の引き分けに終わり、私ですらキュウコンがいなかったら引き分け。相当強くなっているなという話をしていると慧音さんが口にしたのはパーティを入れ替えているという話。

 

 それについて魔美が驚き、私が息を呑んでいると…

 

「博麗神社に行く近くの道はとんでもなく強いポケモンが沢山いる。その事は2人共知ってるな?」

 

「はい。見ただけでバトルはしてないですけど…」

 

「どうやらメリーは通い詰めているらしくてな。修行がてらにバトルして何体かゲットしているらしい」

 

「あそこのポケモンを…!?」

 

 リオルが仲間になった博麗神社への道。そこにいたポケモンはその時じゃ敵わないポケモンばかりでスルーするかのように通り過ぎていたが、慧音さんの話がもし真実なら太陽の畑行くまでとは比べ物にならない程強くなっている筈。慧音さんが驚く私達を見ながら…

 

「お前達も頑張れよ。気合い入れないとチャレンジャートーナメントで負けるかもしれないぞ」

 

「大丈夫ですよ慧音さん!私には私のポケモン達がいます。絶対負けないです!」

 

「期待してるよ。チャレンジャートーナメントで上がって来ないと元も子もないからな。2人…いや勝った勢いを見せた選手が上がってくる事を期待してる」

 

 慧音さんの口から出た言葉はこの先必ず行く事になるだろうチャレンジャートーナメントやセミファイナルなどの大会。ジムチャレンジを勝ち抜いてもまだ終わりではない。期待をかけてくれた慧音さんが去って行く中で私がチラッと見つめた山の方のスタジアム。

 

「あそこに行く事になるんだよね8つ集まれば」

 

「そうだね。…ねえ、蓮子」

 

「ん?」

 

「私蓮子やメリーと会えてよかった!勝ちたいと思える目標にもなってくれて感謝だよ!何回も言うけど、次は絶対に負けないから!」

 

 幻想入りしなければポケモンにも会えなかったし魔美にも会えなかった。まだ終わりではないが、終わりが近づいている事を考えれば後一踏ん張りと思える。魔美の言葉に一回頷くと魔美は笑みを浮かべながら、その場を後にして行く。少し離れた所から私の方に振り向き直し手を思い切り振る。

 

 後もう少し。皆が見てくれていると言う事と霊夢さんに挑むと言う目標を胸に今はやって行く。魔美に対して手を振りながら私はもう一度グッと気合いを入れ直した。

 

「よーし!ポケモンセンターで回復してからアリスさんの元に行くぞー。絶対ジムチャレンジを突破してやるから!」

 

 大きく独り言を呟きながらまずはポケモンセンターへ。向かったポケモンセンターにてポケモンを預けている間、私はこの人里のフードコートにいる教え技おじさんにへと近づいて行く。1人だけタキシードなど洋風な服装を着ている為毎回見つけやすい。

 

「ご無沙汰してます。おじさん」

 

「ん?ああ、蓮子ちゃんか。見ていたよ6つのバッジを手に入れたんだって?」

 

「はい。残るはアリスさんと魔理沙さんだけです」

 

 人里に通りかかった際にはイーブィの技の調整等で世話になっていたおじさん。私が声をかけると若干笑みを浮かべながら6つジムバッジを獲得した事を話して来た。私も彼に対して笑みを浮かべながら後二つという事を報告する。

 

「そうか…アリスと魔理沙はな。他のジムリーダーから聞いたかもしれないが、ジムチャレンジを突破させる気のないジムリーダーだ。メディスンを突破したチャレンジャーが2人で諦めると言う事は珍しくない」

 

「何人かはテストのような感覚で勝負してくれてました。2人は…」

 

「バッジどうぞのスタイルじゃないのは確かだな。成績にこだわって本気でチャレンジャーに向き合っている。一筋縄では行かないと思うぞ」

 

「メディスンさんを突破したチャレンジャー…に私も該当するんですよね。という事は…」

 

「最後の難関になるのは確かだろう。だが君なら突破出来ると私は信じておるよ」

 

 今まで当たって来たジムリーダー達はどちらかと言えば突破される為に戦っていた。アリスさんと魔理沙さんはおじさんの話によればその形にはハマってなく、ジムチャレンジだろうがなんだろうが真剣に戦ってくるという話。久々とも言えるダイマックスしての戦いになる。

 

 拳を握りしめ私は正直な思いをおじさんに話した。

 

「何?イーブィがダイマックスしてくれない?」

 

「今まで戦って来たジムリーダー。ダイマックスしてくれたのはドラパルトとルカリオだけ…他はタイミングが合わなかったとはいえ、イーブィは嫌がって…」

 

「なるほど…もしかしたらあの子はダイマックスを嫌うタイプなのかもしれないな」

 

「どうしたらいいのか…最初に仲間になったのはあの子です。ルカリオも才能がありますけどあの子を蔑ろにする感じは本望じゃなく…」

 

「確かに君のエースはファンの人が見ている限りだとルカリオだろうな。あの子は君を信頼し切っている。技の使い方、呼吸などが全て噛み合っている。逆に聞くが…ルカリオかイーブィ。どちらが大将だと思う?」

 

 私の中の時がおじさんの一言で止まったような気がした。それは今までイーブィの事をあまり考えて来なかった私への罰なのだろうか。ファンから見たら確かにルカリオだ。スタジアムでの試合は大体がルカリオでフィニッシュを決めている。

 

 私は表情を引き締めながら言葉を発しようとしたその時。ポケモンセンターの呼び出しのチャイムが鳴り響き、私を呼ぶアナウンサーが聞こえて来た。

 

「あ…」

 

「どうやら呼び出しだね。話はここまでにしよう」

 

「…っ!」

 

「そう迷った顔を見せるな。大事なのはイーブィを信じてあげるという事。ルカリオが応じてくれたんだ。きっと…君次第だと思うよ」

 

 イーブィを信じる事。そう一瞬迷った私の心に深々と刻まれたその言葉を胸に私はおじさんに頭を下げてその場から去って行く。ポケモンセンターのナースさんから回復してもらっていたポケモンを受け取り…

 

「蓮子さん。ユキハミを連れてますよね?」

 

「え?あ、はい…」

 

「凄い楽しそうなのがボール越しでも伝わって来ました。今この子はきっとアナタとジムチャレンジしているのが楽しいんだと思います」

 

「ジムチャレンジが…」

 

 ルカリオを持っている私は進化方法が分かる。その幽香さんの言葉を思い出した。ナースさんの言葉を聞いて私は一言お礼を告げると覚悟を決め、イーブィを一旦ボールから出す。

 

「ありがとうございます。ナースさん。少し覚悟が決まったような気がします」

 

「そうですか。良かったです」

 

「イーブィ。今度ダイマックスしてくれと言われたら…行ける?」

 

 見つめてくるイーブィに語りかける私。一種の賭けだった。イーブィがダイマックスしてくれたら私の戦術やこの子の戦い方の幅も広がる筈。一瞬困惑したようなそんな表情だったが、私の真剣な表情を見たイーブィは力強く頷く。少しだけではあるが語りかける事で心の距離が縮まったような気がした…




見てくださりありがとうございますー。
次回は進めていこうと思います。


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魔法の森へ

久しぶりですー。ペースを崩さずに進んでいきます。


 教え技おじさんとの久々の対面からの助言にてイーブィとの心の距離を少しだけ縮める事が出来た私。ポケモンセンターにてポケモンを回復させ、気合いを入れ直しいよいよジムチャレンジ突破に向けて魔法の森にへとその足を向けていた。

 

「魔法の森…確かナースさんが瘴気があまりにキツイからガスマスクをリーグの方から受け取って下さいって言っていたけど…」

 

 ポケモンセンターから出る前に魔法の森についてナースさんに尋ねたのだが、言われたのがガスマスクの存在。リーグとしては6つのバッジを持つトレーナーが現れるまでは魔法の森の行き道を封鎖しているとの事らしいが、地図通りに魔法の森に向かって進んでいくと…

 

「誰かいるのかな…封鎖された後がなくなってる…」

 

 チャレンジャーは入らないで下さいと書かれた看板と共に封鎖されていたと思われるロープのような物が既に取っ払われており、その残骸が近くに置いてある。肝心のリーグサポーターの方が見当たらないが、果たしてどこにいるのか。キョロキョロと私は周りを見渡していると…

 

 後ろからトントンと肩を叩かれ、ハッとした後に私は背後に振り返るとそこにいたのはメリー。

 

「メリー?」

 

「後ろ姿を見たからつい追いかけちゃってね。蓮子はそのまま魔法の森に向かうんだよね?」

 

「うん。でもナースさんが瘴気があまりにキツイからリーグサポーターの方からガスマスクを貰って下さいって」

 

「ああ…そんな事確か慧音さんも言ってたね。あ、そうだ」

 

 途方に暮れている私に声をかけてきたメリーは笑みを浮かべながら淡々と話すと私の言葉を聞き納得した後、持っていたバッグを下ろし開けると丁度探していたガスマスクを取り出したのだが…少しシュノーケリングのような物に見えなくはないが…

 

「さっきリーグの方から受け取ったんだよ。一個どうぞ」

 

「あ、ありがとメリー。これ…シュノーケリングじゃあ…」

 

「息吸う所はついてないでしょ?大丈夫だよ。アリスさんの所は魔法の森からそんな遠くないって話だしさ」

 

「そ、そうなんだ。公式のだったら疑っても仕方ないよね…」

 

 確かにシュノーケリングのような息を吐き出す所は付いておらず、口元とゴーグルだけ。ホントに大丈夫かな…という不安もあるがメリー曰くそんな離れた場所にはないらしい。ひとまずそんなに遠くないという言葉を信じるしかない。少し気合いを入れた私に対してメリーは…

 

「頑張って。私も後で追いつくよ」

 

「え?一緒に行かないの?」

 

「ちょっと博麗神社の道の場所で張り切り過ぎちゃってさ。ポケモン達も回復させないと行けないし、お腹空かしているから進み出すのはそこからかな」

 

「そうなんだ…じゃあ先に行ってくるよ。メリーも頑張って」

 

「ありがと。それじゃまた後で!」

 

 修行から帰って来たばっかりだったというメリーは魔法の森に向かおうとする私から離れていき、そのまま人里に向かって歩き始める。普段ならバトルを申し込んできそうだが、どこか自分のペースで進んでいるような余裕が感じられた。負けられない…!

 

 私はそう拳をグッと握りしめるとメリーから貰ったガスマスクを付けて魔法の森の中に歩き始める。中を歩き始めると視界を覆い尽くす瘴気が襲って来たが、何とか前へ。幸いにも行き道から声らしき音は聞こえてくるため迷う事はないと思う。

 

(既に何人かこの先のスタジアムで戦っているんだ…)

 

声らしき音に導かれるまま、ただ霧のような濃さを出している瘴気のど真ん中を歩いていると何かをくぐった音と共に瘴気が全く持って無くなり、目の前に見えてきたのはスタジアムというか、少し洋風の劇場のようなそんな場所。ここで間違いないのだろう。

 

 その証拠とばかりに1人のリーグサポーターが私に近づいて来た。

 

「宇佐見蓮子さんですね?」

 

「え?あ、はい」

 

「ここまでお疲れ様です。ジムリーダーのアリスさんから来たチャレンジャーの体調をチェックしろと言われまして。手を見せて頂けますか?」

 

「どうぞ」

 

 リーグサポーターの方に言われるがまま手を差し出し、リーグサポーターの方は手の平をじっと見つめた後に納得したかのように頷き、無言で私の目の前から距離を取ると…

 

「okです。お進み下さい」

 

「ありがとうございます…」

 

 相手が真剣になれる状態で戦いたいのだろうか。アリスさんの意図をいまいち理解できないまま、私はリーグサポーターの方に一度頭を下げて劇場の方にへと足を進めていく。自動で開いていくカーテンのような物に驚きを隠せないまま、劇場の中にへと入って行くが…

 

 内装は今まで通ったスタジアムと一緒でただ壁紙などがカーペットのような布な感じとなっている。

 

「内装は一緒だけど景色は今までの所と一風違うなぁ」

 

 ここまで進んできたという事もあり、周りをふと見渡しているとこちらを見るなりキラキラとした目を向けてくる人が沢山。すっかり有名人になった気分で悪い気はしない。少しばかり苦笑いを浮かべながら人に向かって軽く頭を下げると、そのまま受付の方へ。

 

「ジムチャレンジの受付ですね」

 

「はい」

 

「ここのジムチャレンジは少し変わっていまして。ポケモンに関する問題を答えて行くという感じとなっております」

 

「変わってないように感じますが…」

 

「一つの問題が三択なんですが。正解しなければジムトレーナーと戦わされた挙句、問題を出した部屋からやり直しになります」

 

 私は思わず受付の人の言葉に対して「えっ!?」という声を上げてしまった。受付の人は一瞬クスクスと笑いながらも説明を続ける。問題は3問。全部正解したらひとまずバトルコートに通じる通路にへと進めるという感じみたいだ。

 

「問題は少ないですがアリスさんが出す難問です。準備が出来次第声をかけて下さい」

 

「分かりました…」

 

 受付の人に言われ私はジムチャレンジの服装にへと着替えに行く。ロッカールームにて着替える際にふと目についた背番号。何となくで決めた背番号82。まだ終わってはいないが何だか感慨深い物を感じる。

 

「後二つ…がんばろ…!」

 

 笑みを浮かべながらジムチャレンジの服装にへと着替え再び受付の方にへと足を運ぶ。受付の方は私に向かって一度頭を下げると笑みを浮かべながら…

 

「この先にどうぞ。この先の緑に光るパネルのような所からこの先に進めますので」

 

「あ、はい。分かりました」

 

 受付のその先の扉が開くとそこには部屋の中央の位置に置いてある巨大なパネル。このパネルから進めると聞いていたが、踏めばいいのだろうか…?疑問に思いつつもパネルを踏んでみるとパネルが突如光り出し、意識が一瞬どこかに飛ばされるような感覚と共に先程の部屋とは全く違う場所に。

 

 これがワープという感じなのだろうか…

 

「い、一瞬で移動したけどどこだろここ…」

 

「ようこそチャレンジャー!」

 

「うわあ!?」

 

「そんなにびっくりしなくても大丈夫よ。私はアリス。ここのジムリーダーね。とりあえずポケモンの知識を問題にしたから頑張ってね〜」

 

「嵐のように通信を切ったなぁ。とりあえず頑張ろ」

 

 目の前にある看板に問題が乗っているらしく、ひょこっと見つめてみるとイーブィの進化系であるサンダースは何タイプ?と看板に書いてある。サンダース?エーフィなら見たことあるがサンダースは知らない。とりあえず三択から探るしかない。1つ目がでんき。2つ目がフェアリー、3つ目がドラゴン。

 

 とりあえず固まる事数秒。考えても答えが出ずに…

 

「ええい正面突破ァ!行くぞぉ!」

 

 と思い切りフェアリーの解答の部屋に突っ込んでいくと視界に入って来たカーテンが無くなった先にいたのはジムトレーナー。女性のトレーナーはため息を吐きつつ呆れたような表情を見せると…

 

「残念。外れ。私とバトルね」

 

「そんなぁ!?」

 

 言い訳も通用せずに繰り出して来たのは黄色のポケモン。ピカチュウでも無ければ当然イーブィという訳でもない。ひとまず言い訳は出来ないので私は対抗してキュウコンを繰り出す。この時私はこのポケモンがヒントになっている事をまだ知らない…




皆様には簡単な問題で。蓮子には難しい問題を出しております。


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得たヒントと思い出したゾクゾク感

お久しぶりですー。やっていきますね。
とりあえずバトルパートにつなげたい…


「キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

「サンダース、まもる!」

 

「さ、サンダース!?」

 

 私がその名前に驚いたのはしっかりとキュウコンに指示を出した後の事。キュウコンの口から吐かれた火炎がサンダースに向かって行くが、サンダースはバリアを自分の周りに貼り攻撃を防ぎ切る。そうか…今キュウコンと対しているのがサンダース…何タイプだろうか?

 

「よーく観察してよね」

 

「え?」

 

「ここはあくまでジムミッションであって本戦じゃないから。1日かけて解かないと行けない問題を出すほど酷じゃないわ」

 

「は、はあ…」

 

 だから私がこの部屋に突っ込んで来た際に呆れたような反応を見せていたのか。女性の口ぶりからしてかつて1日かけてしまったトレーナーがいたのだろう。サンダースをチラ見しつつ、今はバトルの最中こちらをチラ見して来たキュウコンに対して私は指示を出す。

 

「やきつくす!」

 

「ほうでん!」

 

 キュウコンから吐かれた炎に対してサンダースは体から静電気を発生させると電気として放出。炎は電気によってあっという間にかき消され、キュウコンに電気が命中した。多少ダメージは受けたが身体を震わせて健全さをアピール。キュウコンから前が見えない中私は指示を出す。

 

「かえんほうしゃ!」

 

 キュウコンが爆煙が包み込む前方に向かって火炎を吐くと爆煙を振り払いながら全く持って油断しきっていたサンダースにへと命中。命中したと同時に再度爆発を起こし、爆煙が再び広がっていく中その爆煙が晴れると一撃で戦闘不能と化しているサンダースの姿が。

 

「い、一撃?」

 

「はい。終わりね。さっさと1問目の解答に戻った」

 

「え?ちょ!?」

 

 バトルに勝利したという事に浸らせてくれないままに私はサンダースについての問題を出された場所にへと逆戻り。改めて問題を確認し1番の場所に向かって歩いていく。一番のカーテンをくぐり抜けるとピンポンという音が鳴り響き、私の目の前に再びクイズが書かれた看板が。

 

「なるほど…問題に不正解したらヒントみたいなものが出されるのか…考えてるねホント…」

 

 自分が考えていないだけなのか?という事を感じつつも看板に書かれた問題を目に通していく。問題はまたイーブィ系統。ブラッキーは果たして何タイプか?と書いてある。これも見たことのないポケモンだ。1つ目はあくタイプ、2つ目はでんきタイプ、3つ目はノーマルタイプと書いてある。

 

 でんきタイプはサンダースでノーマルタイプはイーブィだから…あくタイプか。というか冷静に考えていたら普通に正解できたかもしれない。1つ目の解答のカーテンに進むと、新しい場所と共に正解の音が鳴り響く。

 

「もしかして間違えた私がおかしいみたいな感じなのかな…」

 

 少し自信を失いつつも三つ目の看板を見つめる。問題は幻のドラゴンタイプのポケモンドラパルトは果たして何タイプか?1つ目はドラゴン・ゴースト。2つ目はドラゴン・ノーマル。3つ目はドラゴン・フェアリー。この3つだが少し看板前で立ち止まっているとここまで一緒に来ていたキュウコンに裾を引っ張られ…

 

「あ、キュウコン…」

 

「コン!」

 

 キュウコンが見ている方向は1番の方向。私はキュウコンに笑みを浮かべながら礼を告げると、一旦キュウコンをボールに戻し1番の解答に向かって歩き始めていく。1番のカーテンを抜けるとピンポン!という音と共にたどり着いたのはバトルコートに通じる通路。上からは観客の声が聞こえてくる。

 

「正解でいいんだよね…はー…良かったぁー…」

 

 この先に進めば今度はアリスさんが立ち塞がる。通路にいるのを利用して軽く深呼吸を繰り返し、パッと鋭い目つきでバトルコートにへと歩いていく。しばらくはスタジアムがなかった為、この感覚を忘れていたが声が聞こえてくるたびにゾクゾクしてきた。グッと私は拳を握りしめ、バトルコートに足を踏み入れる。

 

「……」

 

 見え始めたバトルコートとスタンドを見て気持ちがどんどんと昂っていく。どこかで冷静にならないと行けないと感じた自分は大きく一息吐きつつ、バトルコートの中央にいるアリスさんの元に近づいていき…

 

「少し時間がかかりましたがお待たせしました」

 

「ジムミッションお疲れ様。頭をだいぶ回した所で今度は私とのバトルで盛り上がりましょうか。でも…勝たせる気はないから」

 

「覚悟の上です…!」

 

 アリスさんは私の言葉に対して笑みを浮かべながら言葉を発していく。お疲れ様という労いの言葉がありつつも、その勝たせる気はないと言った時の威圧感と言えば凄まじいもの。息を呑みつつも真剣な表情でアリスさんを見つめ返すと、アリスさんも頷き返し…

 

「簡単に突破出来るとは思わない事ね。それじゃ位置について」

 

 アリスさんは私に背中を向けながらそう呟くと私は再度一息を吐きながらアリスさんと距離を取っていく。離れた距離にて静かにボールを構える私達。アリスさんがパチン!と指を鳴らした瞬間にゴングがスタジアム中に鳴り響く。

 

「いくよサーナイト!」

 

「任せたよウッウ!」

 

 私はウッウ。そしてアリスさんはサーナイトを場に。2匹の気合いの入った声が伝わってくる中、私とアリスさんは声を張り上げて指示を出す。

 

「マジカルリーフ!」

 

「ドリルくちばし!」

 

 サーナイトは自らの周りに葉っぱを浮かばせると弾丸かのように投げつけてくる。それに立ち向かう為に回転し始めたウッウ。ドリルのように高速に回り続けるウッウにマジカルリーフが向かって行くが、ドリルに当たり一瞬にして粉々に。サーナイトにウッウが迫っていく中…

 

「サイコキネシス!」

 

「そのまま突っ込んで!」

 

 サーナイトの目が光り出し自らの前でウッウの動きを念力にて止める。もがこうとするが強力な念力の前にウッウは動けない。そのままサーナイトはウッウを地面に叩きつける。

 

「もう一回マジカルリーフ!」

 

「っ!こうそくいどうでその場から離れて!」

 

「何!?」

 

 サーナイトが放った葉っぱの弾丸は地面に刺さり、ウッウは私の前にへと退避。すぅ…と一息を吐いた私は表情を引き締めてウッウに指示を出す。

 

「なみのり!」

 

「だったらムーンフォース!」

 

 ウッウは地面を叩きつけて巨大な津波を起こすとアリスさんはサーナイトにムーンフォースを指示。両手を広げ、ピンク色の球を放出。確かにムーンフォースは津波に風穴を開けたが、吹き飛ばすまでには至らず。サーナイトに襲いかかった。

 

「っ!?サーナイト!」

 

「ウッウ!もう一度ドリルくちばし!」

 

 水を吹き飛ばしながらウッウは再度サーナイトに対して突撃。サーナイトも水を振り払いながらアリスさんの指示を待っている状況。アリスさんは息を呑みながらも指示を出す。

 

「サーナイト!サイコキネシス!」

 

「もう一回突っ込んで!」

 

 目を光らせて自分の周りにオーラをサーナイトが溜め込もうとしたその時。サーナイトの目の前にいたウッウのクチバシの直撃を喰らう。さらにウッウが動きを止めたのを見てサーナイトはウッウを再び地面に叩きつけた。

 

「サーナイト!」

 

「ウッウ!」

 

 地面に叩きつけられたウッウとドリルくちばしの直撃を食らったサーナイト。ウッウは爆煙が晴れた瞬間に戦闘不能となっているのが判明。そしてサーナイトはフラフラとし始めた瞬間に仰向けに倒れた。歓声が上がる中まさかのダブルノックアウト。

 

「何の…まだまだ一体よ!」

 

「こっちだってまだまだ負けません!」

 

 ウッウとサーナイトをボールに戻しアリスさんは2体目にエーフィを出し、私は博打に打って出てユキハミを場に。アリスさんには呆れられかけたが私は真剣だった…




何とか目標としていた場所までは行けました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。


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上がって行く鼓動

お久しぶりです。今回はバトル回、行ってみよう!


「馬鹿にしてるのかしら?その余裕を叩き潰してあげる!エーフィ、シャドーボール!」

 

「こっちは至って大真面目です…!行くよユキハミ!こごえるかぜ!」

 

 火力の差で言えばどう考えたってエーフィの方が上。だが私には秘策があった。アリスさんの言葉にニヤリとした笑みを浮かべた私はユキハミにこごえるかぜを指示。エーフィから生成されたシャドーボールがユキハミに向かって来る中、ユキハミは氷の風を吹かせる。

 

 シャドーボールは徐々に勢いを止め最終的に完全に停止し何と凍った。さすがのアリスさんもこれには驚いたが何とか出来ないかと思っていた私の考えが上手く行った形となり、私はさらに指示を出す。

 

「こっからが本番です!ユキハミ、ようせいのかぜ!凍ったシャドーボールをエーフィに運んで!」

 

「っ!もう一回シャドーボール!」

 

 地面に落下しそうなシャドーボールに向かってユキハミは風を吹きかけ、そのままエーフィの元へ返す。エーフィは再度シャドーボールを放ち、凍ったシャドーボールとぶつかり合って爆煙を起こす。視界を覆い尽くす程の煙が巻き起こる中、キョロキョロしていたエーフィに緑の光が命中して行く。

 

 エーフィは一度は歯を食いしばったが身体を震わせて光をかき消す。

 

「っ!?今のは!?」

 

「むしのていこう…!その高い攻撃力下げさせて頂きました…!」

 

「へえ…やるじゃん。ユキハミはこの煙を苦にしなかった訳ね。だけど高いのは特攻だけじゃないよ!エーフィ、でんこうせっか!」

 

「こなゆき!」

 

 煙が晴れてきたタイミングでアリスさんは次の指示を出し、エーフィは地面を力強く蹴り出すと左右ジグザグに動きながらユキハミにへと迫る。ユキハミは自分の周りを凍らせたが、エーフィのでんこうせっかでの体当たりをまともに喰らい、吹き飛ばされるもエーフィが凍った地面にハマりその場でコケる。

 

「っ!?」

 

「エーフィの差し掛かった地面は既に氷のフィールド!簡単には踏ん張れない筈…!ユキハミ、むしのていこう!」

 

「エーフィ!ムーンフォース!」

 

 ユキハミが何とか地面を抉りながら体勢を立て直したのをしっかりと確認してむしのていこうを指示。ユキハミから放たれた緑の光が再びエーフィに向かって行く中で、氷の足場で中々踏ん張れないエーフィは何とかバランスを取るとピンクの光の玉を作り出すとユキハミに投げつける。

 

 緑の光はムーンフォースをかいくぐりエーフィに命中。ユキハミにもムーンフォースが直撃。こちらは直撃した際に爆煙が巻き起こり、晴れた場所にいたユキハミは既に戦闘不能。エーフィもかなりのダメージを負ったがまだ立っている。

 

「手間取らせて…結構苦戦したわよホントに…」

 

「お疲れ様ユキハミ。いい仕事だったよ」

 

 ユキハミをボールの中に戻した私。ウッウ、ユキハミと来て次のポケモン…エーフィの素早さとあの特攻に対抗出来るのは私の中で一体しかいない。ボールを取り出すと勢いよく…

 

「行くよドラパルト!」

 

「ドラゴン、ゴーストタイプのポケモンね」

 

「よく分かりましたね。一気に行きます!ドラパルト、りゅうのはどう!」

 

「サイコキネシス!」

 

 次に私が出したのはドラパルト。改めて表情を引き締め直した私はドラパルトにりゅうのはどうを指示。ドラパルトの口から放たれた波動がエーフィの念力を突破して、そのままエーフィに命中。直撃という形となりエーフィはこのまま横に倒れて戦闘不能に。元々ダメージ、能力を下げられた状態。

 

 ユキハミがこなしてくれた仕事に私は静かに感謝していた。

 

「ユキハミの分のダメージか…仕方ない。お疲れ様エーフィ。次行くよ…ギャロップ!」

 

 出てきたのはピンクの髪を引っ提げた馬のようなポケモン。ポニータと姿が少し似ている。もしかしたらその進化系かもしれない。ドラパルトが静かにこちらを見つめた後に頷いたのを見て、私はドラパルトの続投を決意。小さく「よし」と呟くと再び身構える。

 

「行くよドラパルト!ロックオン!」

 

「ギャロップ、マジカルシャイン!」

 

 ドラパルトは宙に浮きながら目を光らせギャロップに狙いを定めて行く。そんな中ギャロップは体を光らせて無数の光の弾丸をドラパルトに向けて放って行く。ロックオンに集中していたドラパルトにマジカルシャインが直撃。ドラパルトは少しふらついたがすぐに表情を引き締め直すと…

 

「たたりめ!」

 

「ギャロップ、サイコカッター!」

 

 ギャロップから放たれた念の刃をドラパルトは自分の体を左に傾けながらかわすとドラパルトは再度目を光らせて、今度はギャロップの前に魂を出現させ魂達がギャロップに一斉に体当たり。ギャロップは膝を付き掛けたが、何とか踏ん張る。さらに畳み掛けたい所だが…

 

「ドラパルト、戻って!」

 

「!?」

 

 この交代にアリスさんも観客も驚いていたがエーフィこそエスパータイプのみだが、恐らくこのギャロップはフェアリータイプが付いている。ドラパルトの半分以上がドラゴンタイプの技の為、たたりめしか攻める手がない。少なくともここはダメージの通る技を持つポケモンを出さないと…

 

「行くよルカリオ!」

 

「ルカリオ?…そうなるほどね。ドラパルトだと不利だと判断したという事ね」

 

「一つの技だとどうしても見抜かれてしまいますからね…行くよルカリオ!はどうだん!」

 

「サイコカッター!」

 

 私が次に出したのはルカリオ。ルカリオは私の指示で波動を溜め込むとギャロップに向かって放出。ギャロップも声を張り上げながら念の刃を放出。はどうだんとぶつかり合った結果爆煙を巻き起こすが、ルカリオはそういう影響を受けないポケモン。ルカリオに対して力強く頷くと…

 

 ルカリオはそのままギャロップに向かって突進。一気に目の前に迫り…

 

「バレットパンチ!」

 

「っ!?ギャロップ、スマートホーン!」

 

 ルカリオの拳とギャロップの角がぶつかり合う中、ルカリオは上手く拳を引きギャロップの体勢を崩させるとそのまま顔が迫って来た中で無数の拳を浴びせ、最後に殴り抜き吹き飛ばした。アリスさんの目の前まで吹き飛ばされたギャロップは戦闘不能に。

 

「ギャロップ!」

 

「ルカリオ。ちょっと下がってくれる?」

 

「グウ?」

 

「大丈夫。うちのエースにバトンを渡すだけだから」

 

 ギャロップをアリスさんがボールに戻す中でルカリオをボールに戻した私。違うボールを取り出した私は既に覚悟を決めていた。この子で絶対決めるって。アリスさんが繰り出したのはピンク色の少し手の無さそうなポケモン。アリスさんはブリムオンと言っていた。

 

 私が勢いよく繰り出したのは…

 

「行くよイーブィ!」

 

「ブイ!」

 

「知ってるわよイーブィ使いのトレーナー。霊夢が推薦していたからホントかなとは思ったけど。アナタの事だったのね」

 

「この子は私の切り札です!…行くよイーブィ!」

 

 イーブィをボールに戻した瞬間アリスさんは察したのか。アリスさんもボールの中に戻す。観客がざわめく中ダイマックスバンドの力でボールを大きくし、それぞれ反対側に投げる。出てきたイーブィ、ブリムオン共にダイマックス。これには観客も大盛り上がりだ。

 

「この感覚…楽しくなってきた!今出せる私の全て!一緒に出し尽くそうよイーブィ!」

 

「何か変なスイッチが入ったみたいね。私も全力で行くから!ね、ブリムオン!」

 

 昂る心臓。イーブィがダイマックスしてくれたという嬉しさを抑え切る事が出来ずに私は思わず笑みを浮かべたがアリスさんも反応するかのように笑みを浮かべる。イーブィ対ブリムオン。この戦いのクライマックスを迎えようとしていた…




見てくださりありがとうございます。えー書き終えて少し頭が痛いです!
書き終えたのでまた明日も頑張ります!


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高まった鼓動と決着

お久しぶりでーす。お盆関係なしに投稿していきまっせ。


「イーブィ、ダイバーン!」

 

「ダイウォール!」

 

 両者ダイマックスしてのぶつかり合い。イーブィが放った炎をブリムオンはバリアを貼って防ぎにかかる。炎はバリアによって完全にかき消されたが残った火の粉がスタジアムの天候を日照りに変える。観客の熱気からの日照りの熱、この時ばかりは私は気持ち良く感じた。

 

 アリスさんも笑みを浮かべるとブリムオンに再度指示を出す。

 

「今度は攻勢に出る!ブリムオン、ダイサイコ!」

 

「ダイバーン!」

 

 日照りはほのおタイプの技を2倍の威力に変える。イーブィから放たれた炎は日照りの熱気により勢いを増し、ダイサイコとぶつかり合う事なくそのど真ん中を通過。ブリムオンに直撃。然しイーブィにもダイサイコによる念波が直撃。イーブィに当たったダイサイコが特殊な空間を作り出す。

 

 エスパータイプに有利なフィールドに加え、さらに日照りによるほのおタイプの技が2倍と化す天候。それより私の気持ちをさらに昂らせていたのは観客による熱気。歓声に後押しされているような気がした。

 

(後1発…!どうかは分からないけど落とせるとも思わない…!)

 

「キョダイテンバツ!」

 

「イーブィ、キョダイホーヨー!」

 

 空中から星が降り注ぎイーブィの体に直撃。イーブィの放った衝撃波も地面からブリムオンに伝わり直撃。ダイマックス技は必ず直撃するが問題はここから。少しふらついたイーブィはキョダイテンバツの影響により、目を回転させながら混乱状態。ブリムオンもメロメロ状態とアリスさんの声が届いていない。

 

「イーブィ、めらめらバーン!」

 

「ブリムオン、サイコキネシス!」

 

 私とアリスさん、2人ともイーブィとブリムオンに指示を出したが両者混乱とメロメロで指示が届かない。それでもイーブィを信じずに変えるなんて事もうしたくない。私は声を張り上げもう一度イーブィに指示を出す。耳に入っているようで後はフラフラの体勢を戻せるか。

 

 アリスさんも必死に声を張り上げた瞬間ブリムオンに届いた様子。次の一撃で全部が決まる…!イーブィの可能性に賭けた私、イーブィが体勢を整えた瞬間に再度声を張り上げる。

 

「イーブィ、真っ直ぐにめらめらバーン!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 イーブィは身体に炎を纏わせ一気に放出。日照りにより増した炎の量。ブリムオンが放って来た光の弾丸をもろともせずにブリムオンに炎が直撃。こちらまでくるほどの爆煙を巻き起こす。だがブリムオンの一撃も確かにイーブィに命中。数発光の弾丸の直撃を受けたイーブィ。

 

 ブリムオンがどうなったかを見届ける事なくその場に倒れ込み戦闘不能に。一方のアリスさんの周りにあった爆煙が晴れるとそこにいたブリムオンは晴れたタイミングで倒れ込み、戦闘不能となった。

 

「…!…ふぅ…」

 

 観客の大歓声と共にまだポケモンを残している私は勝利を確信。アリスさんはブリムオンが倒れたのをみて自らを落ち着けるかのように大きくため息を吐くと、ブリムオンをボールの中に戻しゆっくりと私の方にへと歩み寄る。

 

「アナタの気持ちの強さに負けたわ」

 

「アリスさん…ありがとうございます!本当にいい勝負でした!」

 

「アナタとはまたファイナルでやり合いたいわね。まずはジムチャレンジを頑張って」

 

「はい!」

 

 アリスさんからバッジを手渡され、私はやり切ったかのように一息吐きつつ笑みを浮かべる。バッジをひとまずポケットにしまい、次にアリスさんと握手。ファイナルでやり合いたいというアリスさんの言葉に嬉しさを覚えつつ、私は少し大きめの声で返事。

 

 観客からの大歓声を浴びながら私はバトルコートから着替え室にへと戻って行く。戻る最中、バトルコート付近の通路にて待っていたのは何と霊夢さんだった。

 

「霊夢さん…!?」

 

「アリスからバッジを掴み取ったようねおめでと」

 

「ありがとうございます。どうしてここに?」

 

「アンタがいるという事と霊矢、メリーが準備してるらしいからどんな感じになってるから見に来たの」

 

 通路にて姿を現した霊夢さんに思わず私は驚いたが霊夢さんは私がいるという事と霊矢、さらにメリーがここにいるという事でどうやら自分の推薦したチャレンジャーがどんな感じで戦っているのかを観察しに来たようだ。私が苦笑いを浮かべると霊夢さんが…

 

「ファイナルに上がってくるチャレンジャーはただ一人。それもジムリーダーかもしれない。そもそもセミファイナルでジムチャレンジャーが一人にされるからね」

 

「……」

 

「そんな緊張したような顔を見せなくて大丈夫よ。まあ…今残っているチャレンジャーの中ではアンタが一番勢いがあるでしょうし」

 

「…私が?」

 

 霊夢さんは私の言葉に小さく頷く。ジムチャレンジャーの中で今私が一番勢いがある…嬉しい事なのだろうがイマイチピンと来ない。どんな表情を浮かべないと行けないか、分からない中で霊夢さんは私を見ずに遠くを見つめながら…

 

「強くありなさい蓮子。今のままで良いのよ。アンタらしくを貫けば魔理沙にも必ず勝てるから」

 

「霊夢さん…」

 

「私はアナタがセミファイナルまで上がってくる事を期待してこう声をかけているの。頑張りなさい」

 

「…はい!」

 

 霊夢さんは私はもう少しここにいるからとだけ呟くと再びスタジアムの方を見つめる。私は霊夢さんにお辞儀だけするとその場から去って行く。激励されたという感謝を胸に私は最後のジムリーダーである魔理沙さんとの戦いに向け、気合いを入れ直す。

 

 ジムバッジをバッジケースにはめ込み、チャレンジャーの服装から着替える。アリスさんですら今までのジムリーダーとは段違いだった。勝てたのは恐らくまだアリスさんが本気じゃなかったから。拳を握りしめ、闘志を燃やすと着替え室を出る。

 

「お?蓮子。さっき以来だね」

 

「メリー?」

 

「さっき霊矢がジムミッションに入った所。どうやら霊夢さんがいるんだって?」

 

「うん。さっき遭遇したよ。頑張れって」

 

 私の前に姿を見せたのは霊夢さんの話しの中に出てきたメリー。霊矢もいたようだが私が着替え室が出たタイミングでジムミッションの挑戦を開始したようだ。私の言葉にメリーは笑顔を浮かべながら頷くと…

 

「次は魔理沙さんだよね。最後の難関。絶対セミファイナルで蓮子と戦うんだから覚悟してよね」

 

「強気になったねメリー。うん、絶対セミファイナルで戦おう」

 

 一時期のどん底を見てしまっているだけに今のメリーがどれほどたくましく見えるか。メリーの言葉に私は笑顔で頷くとメリーも笑顔を浮かべながら…

 

「挫折しないでよ?魔理沙さん、相当強いらしいから」

 

「メリーの方こそ」

 

「言ったなぁ?私は絶対勝ってセミファイナルに行くんだから」

 

「私もだよ」

 

 メリーの笑顔を見てさらにセミファイナルに行きたいという気持ちが強くなって行く中で、ビジョンでは霊矢がジムミッションを頑張っている姿が目に入る。負けてられない…!二人のライバルを目にしてさらに気合いが入った私だったが、アリスさんとの激闘を経てポケモンはボロボロになっており…

 

「勢いよくそのまま魔理沙さんに挑みに行きたい所なんだけど…」

 

「うん?」

 

「何体か倒れてさ…」

 

「回復しなよ…」

 

「だよね…」

 

 さすがにメリーに苦笑いされながら同じく苦笑いを浮かべる私。この後再度人里のポケモンセンターに戻り、ポケモンを回復してもらう事に。運良くここまで無敗で来ているが、アリスさんとの戦いではそれなりの危機感は感じた。これからどうなるか全く分からない。

 

 それだけに私の中では警戒がありつつも魔理沙さんに勝ちたいと言う思いが強すぎる程に身体の中を満たしていた…




一周休んでいるからワイにはそんなに休みが要らんのじゃ。


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浴びる注目と入る闘志

久しぶりですー。
恒例の更新ですね。今回は閑話回です。
バトルは次から頑張ります。


 アリスさんとの激闘にて傷ついたポケモン達を回復するために人里にあるポケモンセンターに再び寄った私。傷ついていないポケモンも傷ついたポケモンもまとめて疲れ等を回復させる為にナースさんに一度預け、私自身はポケモンセンター内にある椅子に腰掛けながらその時を待つ。

 

「アリスさんのスタジアムの先に魔理沙さんのスタジアムがあるのか…」

 

 小さく地図を見て小さく呟くと大きく息を吐く。今見つめている天井には何もないのだが、霊夢さんから掛けられたプレッシャー、さらにメリーや霊矢が頑張っているという事を考えるとこういう1人だけでボーっとする時間も大事かもしれない。

 

 眠ってはないのだが視界がぼやけ周りから聞こえてくるざわめきが少し小さくなったような気がする。連戦、連戦。さらにその度に緊張しているという事も考えると少し精神面が疲れ過ぎていたかもしれない。

 

「随分お疲れのようじゃな。ジムチャレンジャーさん」

 

「…?あ、おじさん…!ご無沙汰しています!」

 

 少し疲れ切ってボーっとしていた私の元に姿を見せたのは人里のポケモンセンターにいる技教えおじさん。ふと現れたおじさんに私は驚きを見せつつ挨拶をすると、おじさんは笑みを浮かべながら私の隣に腰掛けつつとある事を聞いてきた。

 

「イーブィをダイマックスしたそうじゃな」

 

「え?何故それを知っているのですか?」

 

「このポケモンセンターはジムチャレンジの風景をよく専用のTVで流していてな。それで確認したんだよ。ついに壁を破ったな」

 

「私の言葉にイーブィが応えてくれただけです。良かったのはイーブィですよ」

 

「謙遜するな。ポケモンバトルはトレーナーとポケモンの共同作業で勝ち負けが決まる物だ。勝ったという事は君の指示が良かったという事だね」

 

 ジムチャレンジの風景を流していたのか…少し恥ずかしいが褒められるのなら悪い気はしない。私自身イーブィやチームメンバーのおかげだと思っていたが、ポケモンバトルはトレーナーとポケモンの共同作業と言われた瞬間に少しながら嬉しい感情が出てきた。

 

「私ははっきり言うが君のエースはルカリオだと思っている。だがイーブィがしっかり君の指示、期待に応えられるならいずれチャンピオンのエースを越えられるエースにへと変貌を遂げるかもしれないな」

 

「私は…最後はイーブィで貫き通すつもりでいます。負けていないから言えるかもしれませんが、危機感を募る試合はいくつもありました。例えポケモンの数が圧倒的に差が空いてもです」

 

「ほう。余裕という感情はまるでなかったという事だな」

 

「ポケモン達はあったかもしれないですけどね。毎試合押し潰されそうで。ホント、みんな強いなぁって」

 

 私のバトルはいつもポケモン達に助けられている。トレーナーの私が動揺していても焦る素振りをポケモン達はまるで見せないから。私の強さは彼らに依存しているんだと思う。拳を握りしめながらみんな強いとふと漏らした本音に対しておじさんは一息吐きながら…

 

「その警戒心が君の強さではないかな?」

 

「え?」

 

「油断があり隙があるポケモントレーナーはどうしてもひっくり返される事がある。だが君の場合はないだろう?私はひっくり返されるトレーナーを良く見てきたんでね。君の強さは警戒心とそこから来る粘り強さにあると思う」

 

「……」

 

「怖いのは十分理解出来るが君はもう少し自信を持った方がいい。そうしたら誰も手をつけられないトレーナーになると私は思うよ」

 

 そういうおじさんの表情は自信あると言わんばかりに堂々としていた。そう堂々とした表情、笑みを浮かべる彼の目から私は何かヒントを得られたとは思う。自分自身かなり弱気になる部分は消していったとは思うが、どうしても勝負に対しての弱さが消えていかない。

 

 おじさんの言葉に私が静かに笑みを浮かべた瞬間、ポケモンセンター内の放送にて私の名前が呼ばれた。

 

「今後どんなトレーナーになるかは君次第だとは思う。だが自信を持ってあげるといいと思うよ」

 

「…ありがとうございます」

 

「いいよいいよ。さあ呼ばれただろ?行ってあげなさい。どうやら君の事を待っている人もいるようだしね」

 

「え?あ、はい…」

 

 おじさんはそう告げると私がナースさんの所にポケモンを返してもらうタイミングで自分が元いた場所にへと戻って行く。預かってもらっていたポケモンを返して貰い、礼を告げてその場を立ち去ろうとしたその時。ナースさんが私を呼び止め…

 

「蓮子さん」

 

「…どうかしましたか?」

 

「さっき天狗の記者がアナタを探していると言ってここに来たんです。まだその時はいなかったのですが、まだ近くにいる筈です。有名な記者なのでいい記事期待してますから」

 

「いやいや…プレッシャーかけないでくださいよ」

 

 ナースさんからも待っている人がいるという風に説明され、その人物が天狗の記者だった事が判明し、ナースさんから笑みでプレッシャーをかけられる始末。私は苦笑いを浮かべ一言呟く事でかわしたが、直接取材したいという事なのだろうか。何だかドキドキしてきた。

 

 外に出るとすぐ近くで待っていたという天狗の記者が私に近づいて来て声をかけて来た。

 

「宇佐見蓮子さん、ジムチャレンジャーの方ですよね?」

 

「あ、はいそうです」

 

「ジムチャレンジを突破しようとするチャレンジャーに取材を行っています。射命丸文と申す者です。そんなに時間は頂かないので取材よろしいでしょうか」

 

「どうぞ」

 

 天狗はこないだにも話しかけられたのだが、背中には翼が見える。射命丸さんという方らしいがナースさんがいうには有名な方だという。私が一言どうぞと呟くと射命丸さんは「では」と呟きメモ帳を取り出すと…

 

「蓮子さんはここまで勝ち進んで来たチャレンジャー。まだ終わってはいませんがここまで残れたという感想聞かせて下さい」

 

「正直言ってどこかで心が折れるかなと私個人の感想では思っていました。私がこうして魔理沙さんと戦う権利がある所まで進めたのはポケモン達のおかげだと思っています」

 

「自分自身の力ではないと?」

 

「私は指示を出しているだけです。その子達がいるので私は堂々と指示を出せているんだと思います」

 

 有名な記者相手に取材を受けているという事もあり、周りに村人が集まって来た。記者会見みたいな感じになっているけどちゃんと喋れているかな…若干心の中に慌てという物が生まれつつも、射命丸さんは私の言葉に納得するかのように頷いている。

 

 そんな射命丸さんが次に質問してきたのは…

 

「ジムチャレンジャーさんには手間を取らせないよう二つの質問だけをしています。二つ目に行きますね。魔理沙さんは幻想郷の中でトップのジムリーダーです。その魔理沙さんと対する気持ちなどはいかがでしょうか?」

 

「これまで戦う中で危機感、緊張感は吐き気がする程にありました。魔理沙さん相手でも変わらないとは思いますが、私はポケモンを信じれば勝てると信じているのでひとまずはその心で行きたいと思います」

 

 私が射命丸さんの言葉に答える度に周りにいる村人達が拍手が巻き起こる。何か恥ずかしいという気持ちがありながらも射命丸さんの取材はここで終了。頑張ってという言葉を告げられると、射命丸さんは何事もなかったかのようにその場から立ち去る。

 

 拍手の中一礼するのは私。注目されているんだという事を噛み締める。

 

(人が集まるという事は注目されているんだ…頑張らないと…)

 

 一礼しその場から去って行く私を拍手を送りながら村人達は送り出す。魔理沙さんのスタジアムに向け、気持ちを入れ直した私。待っているのは幻想郷の中でトップのジムリーダーにして魔美の義母である人物。どこかやりにくさを感じつつも私は静かに闘志を燃やしていた…




見てくださりありがとうございます。


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ついに訪れる決戦の時

お久しぶりです〜。まあ予定通りなんですけど。
やって行きますねぇ。


 村人達に送り出され再度ガスマスクを装着しながら魔法の森にへと向かい始めた私。ひとまずアリスさんのスタジアムに差し掛かり、その先にあるという魔理沙さんのスタジアムを見据える形となったが…

 

「凄い大歓声…」

 

 魔美、そしてメリーとどちらかがまだ戦っているんだとそう感じる程に外からも大歓声が響き渡ってくる。錯覚ではあるが地面が揺れているようにも感じるその大歓声を耳にしながら、森の中から軽く突き出ているスタジアムを目指して再び歩き始める。

 

 さっきは通らなかった所。少し迷いやすいのかなぁとも感じていたがジムチャレンジ用に道を作っているのか、矢印の書かれた看板と共に明らかに切り開いたと思われる自然の通路。

 

「…ふぅ…」

 

 伐採された後の木をチラッと視界に入りながら枯れ葉を踏みしめつつ、その通路を歩いていく。この先にきっとスタジアムがあるのだろう。軽く深呼吸をした私は瘴気が広がりあまり見えない前方にゆっくりと足を進めていく。すると瘴気が一気に晴れ、スタジアムが眼前に見えてきた。

 

「アリスさんの所と一緒で結界のような物が貼られているのかな…」

 

 眼前に広がるスタジアムを見つめるとゆっくりとその扉にへと踏み入って行く。自動ドアから中に入ったはいいものの、足元、いや視界に大量の物が置かれており何かの嫌がらせかというくらいに物が置いている。いやこれは本か?よく見るとタイトルが書いてあるが…

 

「随分ホコリまみれ…これを掻き分ける事がジムミッションなの?」

 

 よく見るといつもは何人かファンがいる筈なのだが、このスタジアムの受付付近には不在。いやぁ…という言葉を私は口にしつつ、この本の足元をゆっくりと歩き始めたその時だった。後ろから聞こえてくる足音にふと振り返ると…

 

「あ、すいません!ジムチャレンジャーの方ですよね!?」

 

「え?あ、はい。受付は…」

 

「申し訳ございません…ここはリーダー魔理沙のプライベートスペースになっていまして…!普段は閉めているのですが…」

 

「ぷ、プライベートスペース…」

 

 通りで汚い訳だ…やって来たジムのスタッフの方に教えてもらう形でひとまず私はそのスタッフさんに案内されてもう一つの入り口にへと足を運ぶ。真正面がプライベートスペースだと分からないですよね、と苦笑いで口にされつつ頷くしかない私。その正面から丁度裏側。

 

 しっかりとジムロゴも書かれている入り口に踏み入るとそこには何人かの客と待ち構えていた魔理沙さんの姿が。

 

「リーダー!またプライベートスペース開けっぱなしにしてたでしょ!?勘違い者がまた出ましたよ!」

 

「あれ?また?はっはっは!すまんすまん」

 

 スタッフさんに怒られている魔理沙さんの元に私は近付くと苦笑いの表情から一変し軽く真剣な表情で私の方にへと振り返る。

 

「さてジムチャレンジャー。お前が今年のジムチャレンジでは私に対する初の挑戦者になる訳だが…」

 

「初の挑戦者だからわざわざ出迎えを?」

 

「まあそれもある。初で良かったな…という事で私のジムなんだがジムミッションはない」

 

「え?ないってどういう…!?」

 

「私のジムミッションはジムチャレンジを突破する勇気があるかどうか…つまり気持ちだな。私はバトルコートで待ってる。諦めるか挑むか、気持ちが固まり次第受付に知らせろ。いいな?」

 

 魔理沙さんは私に告げるだけ告げるとその場を後にして行く。スタッフさんがため息を吐く中、私の方にへと振り返ると挑みますよね?と問いかけてくる。私はそれを聞いて笑顔で頷くと…

 

「リーダーに挑んで意気消沈して帰るチャレンジャーも多いんです。だから敢えて厳しく言ったんだと思います」

 

「そうなんですか…」

 

「頑張ってくださいね。受付の方には私から言っておきますから」

 

 スタッフさんにありがとうございますと一言告げると私は何人かのファンが見つめてくる中で更衣室にへと足を運ぶ。魔理沙さんはジムミッションに挙げたのは自分に向かってくる気持ち。それだけ厳しい戦いが来るという事なんだろう。淡々と着替えを済ませる中で私は一息吐くと…

 

「厳しい戦いが待ってるんだろうな…」

 

 自らに言い聞かせるようにそう呟くと小さくよしと呟いて着替えをしっかり終わらせて更衣室を出る。もう一回小さく一息を吐き、受付の人の近くにへと足を運ぶと…

 

「宇佐見蓮子さんですね。リーダーがバトルコートにて待っています。この先をお進みください」

 

 受付の方が道を開け、私はその先にへと進んでいく。受付先の扉が開くとすぐに耳に入って来た大歓声。いつから待っていたんだろうかという風に感じるその声に若干緊張しつつも、一歩ずつ進んでいくとすぐにバトルコートに繋がる通路に出る。

 

 大歓声を耳にしながら通路からバトルコートに出るとそこには出てきた私を見つめながら笑みを浮かべる魔理沙さんの姿。私はそんな魔理沙さんに近付くと…

 

「来たみたいだな。だったらもう覚悟は問わねえ。お前の実力は私自身で確かめる。いいな?」

 

「…はい!」

 

「よっしゃ。じゃあ始めようぜ」

 

 魔理沙さんは軽く言いたい事だけ告げると私から離れていき、距離を取ってモンスターボールを構える。一方の私も距離を取り、一息吐きながらモンスターボールを構える。今、開始のゴングが力強くスタジアムに響き渡り…

 

「行くぜジュラルドン!」

 

「キュウコンお願い!」

 

 魔理沙さんの初手は鋼の鎧を身につけたジュラルドンというポケモン。こちらはキュウコン。両者の鳴き声が響き渡り大歓声が響き渡る中で指示を出そうとした私に対して魔理沙さんはニヤリと笑みを浮かべると…

 

「ここまで来たなら容赦はしねぇ!私のポケモンでお前を吹き飛ばす!」

 

「っ!?」

 

 魔理沙さんのジュラルドンがボールの中に戻って行く。まさかとは思ったがそのまさかだった。魔理沙さんのダイマックスバンドから光が出てきたと思いきやジュラルドンが入っていたボールがキョダイ化。魔理沙さんが後ろに投げると中からダイマックスをしたジュラルドンが現れる。

 

「初手ダイマックス!?」

 

「いいやキョダイマックスだ。さあ勢い入れて行くぜ!ジュラルドン、ダイアタック!」

 

(最悪でも3発…!後に繋げる気持ちで行かなきゃ…!)

 

「キュウコン、おにび!」

 

 キュウコンの地面から巨大なヒビが出来、キュウコンに向かって光が突き出てくる中でキュウコンは歯を食いしばりながらも火の玉をジュラルドンに当て、やけどを負わせる。

 

「随分考えた戦法をとってくるんだな。だがパワーで蹴散らしてやるぜ!ジュラルドン、ダイドラグーン!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 キュウコンの口から火炎が吐かれ、ジュラルドンにしっかりと命中して行く中でジュラルドンが発したオーラがキュウコンに命中。竜巻のようになったそのオーラは空中にキュウコンを巻き上げた後、地面に叩き落とす。

 

「キュウコン大丈夫!?」

 

(後1発…!何とか耐えて…!)

 

「随分ぼろぼろだが耐え切れるか!ラストだジュラルドン!キョダイゲンスイ!」

 

「キュウコン、やきつくす!」

 

 ジュラルドンから巨大な光が溜まって行く中でキュウコンから炎の球のような物が吐かれ、ジュラルドンに命中して行く中でジュラルドンからキュウコンにオーラが再び命中。竜巻のような物から鋼の破片が入り込み、キュウコンを傷つけて行く。

 

 今度は吹き飛ばす事はなかったがその間にジュラルドンは元のサイズに戻ったがジュラルドンのダイマックス技、3発を耐え切ったキュウコンは役目を終えたかのようにその場に倒れ込み戦闘不能となる。

 

「キュウコン!…お疲れ…みんなを救った戦いだったよ…!」

 

 耐え切ってくれたキュウコンに感謝しかない。そんな思いをキュウコンに呟く形で私はキュウコンをボールの中に戻すと2体目のルカリオを場に出す。魔理沙さんは相変わらず余裕の表情。先手されてしまったがひとまずやり切るしかない。その思いが今は充満していた…




見てくださりありがとうございます。
今回は閑話長めでしたが何とかバトルに入れました。
次からも頑張ります。


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譲らない攻防

お久しぶりです。書いていきますね。


「バレットパンチ!」

 

「迎え撃つぜジュラルドン!ワイドブレイカー!」

 

 私の2体目ルカリオと魔理沙さんの1体目ジュラルドンとの激突。私の指示を受けてルカリオは地面を力強く蹴り出すと、左右ジグザグに動きながらジュラルドンの懐に一気に接近。ジュラルドンが尻尾を振り回そうとしたタイミングで…

 

「ルカリオ、指示変更!ジャンプしてはどうだん!」

 

 先陣でダイマックスを使ってくるあたりこの人に普通の手は通用しない。短い尻尾をオーラによって引き伸ばすと、ルカリオに向かって鞭のように振り回してくる。事前にジャンプを指示していた私。ルカリオは指示通りにジャンプすると空中にいる間の少ない時間に波動を溜め込み、ジュラルドンに撃ち込む。

 

 魔理沙さんが少し表情を真剣にする中、はどうだんを直撃したジュラルドンから巻き上がる煙。煙が上がっている間にルカリオは地面に着地する。

 

「はかいこうせん!とりあえず周りに!」

 

「はかいこうせん!?だったらはっけい!」

 

 ジュラルドンが魔理沙さんの方を向きながら光を溜め込むとひとまずその状態から回転。光線を吐きながら動き回るジュラルドンに対して、煙によって見えないジュラルドンの死角からルカリオはジュラルドンに接近。一気にそのまま背後に回り込むと、片拳を背中に叩き込み少し怯んだ間にもう片拳をジュラルドンに叩き込む。

 

 叩き抜かれたジュラルドンはそのままルカリオに殴り飛ばされ、私の目の前にまで飛んできた。吹き飛んできたジュラルドンが地面に激突した際に起きた砂煙を見て息を呑む。するとその煙が晴れるとそこには戦闘不能になっているジュラルドンの姿が。

 

「…ふぅ…」

 

「よくジュラルドンがはがねタイプだという事を見抜いたな」

 

「見たまんまはがねタイプだったので…」

 

「そうか。じゃあコイツは分かるかな!?行くよジャラランガ!」

 

 ジュラルドンを戻す際に笑みを浮かべながら尋ねてきた魔理沙さん。私はそんな魔理沙さんの言葉に苦笑いを浮かべると、魔理沙さんは白い歯を見せたニヤリとした自信満々の表情でジュラルドンを戻しつつ、2体目のポケモンをフィールドに出す。金の鎧を身に付けたポケモン。

 

 パッと見。そのタイプというのは把握できない。分かるのはジャラランガという名前のみ。戦って把握して行くしかない。

 

「行くよルカリオ!バレットパンチ!」

 

「インファイト!」

 

「インファイト!?」

 

 しまったかくとうタイプか!私は指示を撤回しようとしたが既にルカリオは既にジャラランガの目の前。ジャラランガに対して両拳を連続して叩き込んでいくもジャラランガは痛くも痒くもしていない様子。ルカリオが異変を感じたその時。ジャラランガの右ストレートがルカリオの顔面に炸裂。

 

 ルカリオが怯んでいる間に拳の連撃を叩き込み、最後はルカリオの身体を思い切り殴り抜き私の前まで吹き飛ばす。ルカリオから巻き上がった砂煙が晴れるとそこには戦闘不能となっているルカリオの姿が。

 

「一撃…!?」

 

「ルカリオははがねタイプ。ジャラランガはかくとうタイプ。となりゃあ一撃の確率はかなり高くなるよな?」

 

「…っ!」

 

 アリスさんと魔理沙さんは本気でかかってくるとは聞いていたけどここまでとは…!特に魔理沙さんに対しては戦術がワンパターンじゃないから何をしてくるのか全く読めない…!飲み込まれちゃダメだ…どうにかして勝てる道筋を探さないと…!

 

 私はひとまず戦闘不能のルカリオを戻し、インファイトを食らわないドラパルトをフィールドへ。ドラゴンタイプだから弱点は付かれるが、今はこれしか思い浮かばない。

 

「本当にドラパルトでいいんだな?」

 

「状況が状況ですから。遠慮なく…!」

 

「そうかい。じゃあ遠慮なく行くぜ!ジャラランガ、スケイルノイズ!」

 

「りゅうのはどう!」

 

 ジャラランガが自らの体を震わせ衝撃波を巻き起こして行く中でドラパルトは口から波動を放出。両者の一撃がぶつかり合い相打ち。爆煙を巻き起こしていき、ジャラランガが全く持って見えない。それでも先手を打たなければまた勢いに飲み込まれる…!

 

「ドラパルト、ロックオン!」

 

「ジャラランガ、いわなだれで視界封じだ!」

 

 ドラパルトが目を閉じ爆煙の中ジャラランガを探ろうとするが、ジャラランガの地面叩きつけからのいわなだれを前にして、思わず私は技を中断させ回避を指示。向かってくる岩を何とかドラパルトは回避すると、爆煙がそのタイミングで晴れてジャラランガがドラパルトの視界に入る。

 

「今だ!ドラゴンアロー!」

 

「ドラゴンクローで迎え撃て!」

 

 空中からドラパルトの中にいるドラメシヤを放出。そのままジャラランガに突っ込んでいくが、一体は爪を光らせたジャラランガの一撃によって地面に叩き落とされたがもう一体はジャラランガの体に突撃。ジャラランガを怯ませると私は2体のドラメシヤが離れたのを見て…

 

「りゅうのはどう!」

 

「スケイルノイズ!」

 

 空中からドラパルトは波動を撃ち込み、ジャラランガは再び身体を震わせて震動波をこちらに向かわせてくる。両者は今度はぶつかり合う事なく、ドラパルトにスケイルノイズが、ジャラランガにりゅうのはどうがぶつかり合う。ドラパルトが思わず地面に戻ってくる中、ジャラランガは倒れ込む。

 

 私がふぅ…と再度息を吐く中、魔理沙さんは驚いた表情を浮かべつつもボールにジャラランガを戻すと…

 

「まさかジャラランガまで倒されるとはな。だがスケイルノイズでドラパルトが痛手を負ったのも事実。ここで仕留めさせて頂くぜ。行くぜアップリュー!」

 

 魔理沙さんの言う通り、ドラパルトがジャラランガの一撃により痛手を負ったのも事実。場にはアップリュー。幽香さんの時で対決したポケモンだが魔理沙さんの事だ…読めない手を使ってくるのは間違いない…!私は大きく息を吐くと…

 

「行くよドラパルト!たたりめ!」

 

「牽制で来ると思った!突っ込めアップリュー!ドラゴンダイブ!」

 

 ドラパルトが目を光らせ念力にてアップリューにダメージを与えて行く中、アップリューは青白いオーラを纏いながらドラパルトに迫るとそのまま身体に激しくぶつかって衝突。爆煙を巻き起こしながらもドラパルトは地面に落下し戦闘不能に。

 

「ドラパルト!」

 

「これで3体だ。終わりじゃないよな?」

 

(戦術どうこうで通用する相手じゃない…攻めないとこの人には勝てない!)

 

「行くよウッウ!」

 

 3体目にしてまさかのタイに持ち込まれる事態に。今まで通用した流れが通用しない感じに私自身焦りを感じながらも4体目であるウッウをフィールドに出す。同じ翼を生やした者同士。戦いようはあると思う。

 

「ウッウか…行くぜアップリュー!つばさでうつ!」

 

「なみのり!」

 

「何!?」

 

 風を巻き起こしながらアップリューはウッウに空中から迫ろうとするが、私はこの状況ではあり得ないなみのりを選択。ウッウは地面を叩きつけると大波を巻き起こし、アップリューはその大波を回避。然しウッウが元いた位置にいない事に気づき…

 

「くそっ!フェイクか!」

 

「ドリルくちばし!」

 

 アップリューの後方に回り込んだウッウは身体を回転させるとドリルのような回転をしたままアップリューに激突。回転をぶつけられながら最後くちばしで突き出され、地面に叩きつけられる。

 

「…リュ…」

 

「あれぐらいでは倒れないか…!」

 

 アップリューはすくっと立ち上がり、ウッウに向かって再度飛んでくる。空中にて両者が睨み合う中、ウッウはサシカマスをキャッチし口で跳ねさせる。ニヤリと笑う魔理沙さんと余裕がない私。この勝負を観客は拍手しながら見守っていた…




見てくださりありがとうございます。ちょっと戦闘描写意識してみたんですがあまり変わってないかも。コツとかあったら教えてください。


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激戦の末の…

お疲れ様ですー。書いていきますねぇ。


「ドリルくちばし!」

 

「エナジーボール!」

 

 サシカマスを咥えた状態で回転し始めそのままアップリューに向かって突進して行くウッウ。ウッウに対してアップリューは緑の波動を放出。ドリルのように回転するウッウに緑の波動はかき消されたものの、ウッウは回転をアップリューの目の前でやめサシカマスを口から投げつける。

 

「っ!かわせ!」

 

「ついばむ!」

 

 サシカマスをアップリューが回避している間にウッウは私の指示を聞き、一気にアップリューの間合いに接近。クチバシを思い切りアップリューにぶつけ、そのまま地面に吹き飛ばす。アップリューは地面に墜落、巻き上がった少しの砂埃が晴れると…

 

 そこには戦闘不能となったアップリューの姿。魔理沙さんが少し驚き歯を食いしばる中で、私は小さくガッツポーズ。ウッウは私の目の前に戻って来て、再び魔理沙さんを視界に捉える。

 

「まだ行けるねウッウ」

 

「クワ!」

 

「ひこうタイプには不利なのは分かっていたが…お前も残り3体。一体は使い物にならないぐらいと聞いてる」

 

「!」

 

「つまり私が残り1体まで行けば勝ちも同然…大逆転といこうぜヌメルゴン!」

 

 アップリューを戻し次に繰り出して来たのは若干紫色の巨大なポケモン。これもドラゴンタイプなのだろうか。使い物にならないのは多分ユキハミの事を言ってる筈。こっちは残り3体…向こうが残り1体ならウッウとイーブィで攻めれば…!

 

「ウッウ、ドリルくちばし!」

 

「かみなり!」

 

「かみなり!?」

 

 ヌメルゴンは叫び声を上げると回転して地面を這うような形で迫って行くウッウに対して雲を作り出すと、雷を降らせる。その一撃がかわす素振りを見せなかったウッウに命中。一度はドリルのような回転でかき消そうとしたが、耐えきれず感電。

 

 そのまま墜落し一撃で戦闘不能に。

 

「ウッウ!」

 

「勝負を焦ったな。やはりアリスから得た情報は本当みたいだな」

 

「っ…!」

 

 まさかでんきタイプの技を持ってるなんて考えてもなかった…私は戦闘不能となったウッウをボールに戻す。私の手持ちは残り2体。イーブィは最後まで取っておきたいが、ユキハミにはいくら何でも荷が重すぎる。イーブィのボールを見つめながらイーブィを場に出そうとしたその時。

 

 魔理沙さんの言葉をボールの中から聞いていたのだろうか。違うボールの中からユキハミが真剣な目つきでフィールドに出てきた。

 

「ゆ、ユキハミ!」

 

「なるほどな。幽香がとあるトレーナーにポケモンを預けたと言っていたが…」

 

「幽香さんが…?」

 

「ああ。でもどうするんだ?そんなポケモンでヌメルゴンに敵うとでも?」

 

「ハミ!」

 

 魔理沙さんの言う通りだ。図体も実力も今のユキハミは絶対に敵わない。でもユキハミはヌメルゴンに立ち向かう気でいる。真剣な目つきを見てトレーナーが黙る訳には行かない。私は小さく息を吐き、真剣な表情で頷く。

 

「ポケモンの気持ちを粗末にする訳には行きませんから…!」

 

「ハミ!」

 

「やれやれ。後悔しても知らないからな。ヌメルゴン!りゅうのはどう!」

 

「ようせいのかぜ!」

 

 魔理沙さんはかなり呆れ気味にヌメルゴンに指示。ヌメルゴンは口に波動を溜め込むと一気にユキハミに放出。ユキハミはヌメルゴンに向かって思い切り風を吹き付ける。波動の方が威力が勝ると思ったその時。ユキハミの一撃はまさかの相打ちに持ち込む。

 

「!?」

 

「むしのていこう!」

 

 ユキハミは身体から光を出しそのまま光をヌメルゴンに向かって放出。電撃のような痺れを与え、キョトンとしていたヌメルゴンに微かながらダメージを与えて行く中魔理沙さんは一瞬驚いた後ニヤリと笑い…

 

「もういいか。トドメと行こうか!ヌメルゴン、なみのり!」

 

「こごえるかぜ!」

 

 ヌメルゴンは地面を叩きつけると自身の後方から津波を巻き起こしユキハミに向けて放って行く。ユキハミは驚きながらも必死に氷の風を吹いて行く。だがそよ風のような物。やられる覚悟をしたその時だった。

 

「ハミ…ハミ…ハミ!」

 

「!?」

 

 観客が驚いたようなそんな声を上げる。ユキハミから突如放たれた光は津波を回避すると言う行動に移させ、魔理沙さんも多少驚いた表情をする中光はユキハミに翼を生やし、ユキハミを空へと舞い上がらせる。ふと私の頭の中に幽香さんの言葉が蘇る。

 

「ルカリオを持っている私なら分かってる…でもこれは…」

 

「私の言葉がコイツの闘志に火を付けたと言うのか…!だが進化したとて!ヌメルゴン、りゅうのはどう!」

 

「ユキハミ…いやモスノウ!こごえるかぜ!」

 

 おじさんが密かに教えてくれたユキハミの進化系。モスノウは私の指示に頷くと翼を羽ばたかせ強烈な氷の風を巻き起こす。りゅうのはどうはモスノウの目の前まで行ったが風の勢いに耐えきれず消滅。魔理沙さんが驚いた反応を見せる中さらに私は畳み掛ける。

 

「モスノウ、こなゆき!」

 

「かみなり!」

 

 ヌメルゴンが再び叫び声を上げ雷雲を作り上げて行く中、モスノウから放たれた雪がヌメルゴンに命中。ヌメルゴンがその雪の当たる勢いに押されて行く中、よろけてしまい雷雲を作り上げる事が出来ない。

 

「っ!りゅうのはどう!」

 

「ようせいのかぜ!」

 

 魔理沙さんは技を中断。ヌメルゴンに再びりゅうのはどうを指示。今度はモスノウより先に波動がモスノウの元に。爆煙を巻き上げながらぶつかって行く中、その爆煙をかき消しながら風を吹かせるモスノウ。向かって行った風は確実にヌメルゴンに命中して行く。

 

「っ!なみのり!」

 

「突っ込んでモスノウ!こごえるかぜ!」

 

 ヌメルゴンが地面を叩きつけ再び自身の背後から津波を巻き起こして行く中でモスノウは突進。津波より遥か高くに舞い上がり、空中からヌメルゴンの元へ。そしてほぼ目の前で氷の風を巻き起こしてヌメルゴンを吹き飛ばした。

 

「ヌメルゴン!」

 

 なみのりの津波が若干私にかかる中魔理沙さんの見つめる先のヌメルゴンがそのまま起き上がる事が出来ずに戦闘不能となった。観客から湧き上がる大歓声。魔理沙さんは悔しさを露わにしながらボールにヌメルゴンを戻すと私の元にモスノウが戻って来た。

 

「モス…」

 

「ナイスファイト。ありがとうチームみんなを救ったよ」

 

「モス!」

 

 魔理沙さんは若干不服そうにしていたがすぐ笑みを浮かべると私の近くに歩み寄り、手を差し伸べる。

 

「今のが私の最後のポケモンだ。背番号82番。ジムチャレンジ突破おめでとう!セミファイナル突破したその時にまた戦おうぜ」

 

「…ありがとうございます!またファイナルで!」

 

 私は魔理沙さんと握手を交わす。モスノウもこの姿を見て笑顔を浮かべる中、観客達も私達に大歓声を送る。私が魔理沙さんにとって最初のジムチャレンジャーという事は最初にジムチャレンジを突破した事になる。達成感と共にまだまだやらないと行けないと気を引き締める。

 

「あーあ…先に突破されたかぁ。やるなあ蓮子」

 

 そんな大歓声を浴びる私をTV越しに見つめていたのはメリー。メリーがそう呟いている間に魔美と霊矢がやってくる。

 

「あの人が一番でしたか」

 

「まあ普通なら霊矢が一番だったんだろうけどね」

 

「ほっといてください。彼女はセミファイナルでねじ伏せますから」

 

「言うねぇ。じゃあ蓮子を倒した霊矢を倒すとするかな」

 

 私が余韻に浸る中で悔しさとばかりに話し合うメリー達。当然この会話を私は聞いていない訳だが、この後にメリー達が魔理沙さんに挑む事になるが私はその光景を見ることなく、魔美達と会話を交わした後にセミファイナルの舞台に向かって行く…




若干しんどかったから休むべきやったかな…w


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送り出されのいざ決戦の舞台へ

今回は閑話回になるかな。頑張っていきます。


 魔理沙さんを倒し遂にジムチャレンジを突破を決めた私。セミファイナルの切符を手に入れまずは一安心と行った所で迎える激戦等に備える為に一旦人里に帰還。ポケモンセンターにてポケモンを預け、再びおじさんと再会していた…

 

「セミファイナル進出を決めたようだな」

 

「はい。おじさんの言う通り本当に強かったです」

 

「ジムリーダー魔理沙は初手のダイマックスで圧倒するのが大好きでな。然し良くキュウコンが踏ん張ってくれたな」

 

 さすがにあの戦法には驚かせられたがドラゴンタイプのポケモンは元々実力を兼ね備えたポケモンが揃っているのも事実。魔理沙さんの戦術と相成って一番苦戦させられたのも確かだ。おじさんの言葉に私は深々と頷くと…

 

「だが魔理沙と対決する機会はもう一回あるかもしれぬぞ?」

 

「セミファイナルを越えた先でのファイナル…ですか?」

 

「ああ。ファイナルではジムチャレンジャーとして見る必要はない訳だからな。そんな魔理沙と当たるにはセミファイナルを勝ち上がる必要もあるが…」

 

 セミファイナルにはきっとメリー達3人が上がってくるだろうという事がどうしても頭をよぎる。今まで何回か対して来ただけに誰と当たっても私の戦法等を知る相手。一層気合いを入れ拳をグッと握りしめる。

 

「君の同期か。しかも霊矢はメリーや君と同じくチャンピオン推薦」

 

「魔美も魔理沙さんの推薦です。苦戦はするかもしれないですけど、私のライバル達は絶対突破してくると思ってます」

 

「なるほど。どこかで会話を交わして確信した訳だな。君が言うならそうなんだろうな」

 

 私のニヤリとした笑みを見たおじさんは同じく笑みを浮かべ、私の言葉に頷く。メリー達を越えなければ魔理沙さんや慧音さん達とも対せないし、それを越えなければ霊夢さんに挑む権利すら得られない。胸の高鳴りが同時に微かながらの緊張を生む。

 

 ジムチャレンジの時からも必ずこの緊張感が出てくると言うのは理解していた。だがその緊張ですら今は心地よく感じる。

 

「次向かうのは守矢スタジアム。妖怪の山に向かう訳だが妖怪の山には強力なポケモンがかなりいる。道はリーグスタッフの方が作ってくれているだろうが、一歩道を間違えるとポケモンセンターに世話になる事になると思う。気をつけろよ」

 

「本当にありがとうございます。私頑張って来ます!」

 

 ちらほらと人里から見えていた一個のスタジアム。次に向かうのはあそこなのだろう。おじさんの言葉に私は再度深々と頷くと礼を告げた訳だが、その礼を告げたタイミングでセンター内での呼び出しが入る。私はおじさんのいる席の近くから立ち上がると、再度頭を下げてその場を去って行く。

 

 ナースさんの元に近寄ると預かってもらっていたポケモンを返してもらい、ナースさんからは…

 

「ジムチャレンジを突破したそうですね、おめでとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

「妖怪の山付近のポケモン達は本当に強力なポケモンばかりです。気をつけてくださいね」

 

「お気遣いありがとうございます。頑張ってきます!」

 

 ナースさんに気遣いをいただきながら私は礼を告げてその場から立ち去って行く。ふと頭にはキテルグマにより壊滅的な被害を受けた事がよぎるが、今はどんな困難も打ち破れる筈。意気揚々とポケモンセンターから出た私に対して、多くの人々が拍手を送って来た。

 

「え…!?え…?」

 

「蓮子、ジムチャレンジ突破おめでとう!セミファイナル、アンタを応援する!頑張れよ!」

 

「ありがとうございます…?」

 

 ポケモンセンターにたどり着いた時はこんなに拍手を貰わなかった為、驚きと嬉しさが入れ混じるがひとまず激励してくれた人々に頭を下げてその場からゆっくりとながら去ろうとすると…

 

「蓮子さーん!」

 

「?…射命丸さん!先程ぶりです!」

 

「いやはやジムチャレンジ突破おめでとうございます。私が新聞を配ったらみんなアナタの事で大盛況ですよ。この方達みんなポケモンセンター前に陣取っていたんです」

 

「は、はあ…なるほど」

 

 私の近くに降り立って来たのは記者の射命丸さん。先程魔理沙さんと対する気持ちを聞かれたのだが、ジムチャレンジを突破したと言う記事を書いた新聞を配った所私に対しての拍手喝采が起きたようで。驚きを隠せない私に対して射命丸さんは私の目を見つめる。

 

「迷いが自信に変わった感じですね。今のアナタから堂々とした物を感じます」

 

「…ありがとうございます!」

 

「ちょっと目から迷いが見えたので大丈夫かなと思っていたんですが、杞憂に終わって良かったです」

 

 射命丸さんの言葉に思わず口元が緩む。笑みを浮かべる私に対して射命丸さんが頷いているその時、私達の周りを囲んだかのように拍手を送っていた村人達がふと道を開ける。どうしたのかなと思っていたらそこにやって来たのは慧音さんとにとりさんだ。

 

「ジムチャレンジを突破したそうだな。セミファイナル1番乗りおめでとう!」

 

「慧音さんににとりさん!お久しぶりです!」

 

「この騒ぎはアンタの仕業かい?射命丸」

 

「みたいです。私の新聞でこうなったみたいですよ」

 

 たまたま近くに寄っていたにとりさんが最後まで自分に挑んだチャレンジャーの挑戦を放棄した所を見届けた慧音さんと合流。そして村人達が集まっているのを見てここにやって来たらしい。私の突破を聞き笑顔で頷いていた慧音さん。そして隣にいたにとりさんが…

 

「メリー達は今魔理沙の元かい?」

 

「はい。挑戦するって言ってました」

 

「ならセミファイナルに次に上がる奴が出てくるのも時間の問題だな」

 

「慧音さんはさっき遅れているチャレンジャーを…」

 

「良く見ていたな射命丸。そうだ。私の推薦者でな。もう間に合わないから来年頑張ってくれと」

 

 慧音さんの話によればどうしても慧音さんに勝てなかったチャレンジャーが慧音さんの推薦者だったと言う話。もう一度推薦状を送る事を約束し、チャレンジャーは辞退したという。厳しい世界だなと思いつつ息を呑んでいるとにとりさんが私の方を見つつ呟く。

 

「これから守矢スタジアムに向かうんだろ?頑張れよ」

 

「ありがとうございます。頑張って来ます!」

 

「にとりさんちょっと取材したいんですがよろしいですか?」

 

「ああ、構わないさ。それじゃ蓮子。いい報告を待っているよ」

 

 その場から去って行くにとりさんと射命丸さん。慧音さんが村人達の方を見て一回頷くと村人達はその場から離れて行く。慧音さんは笑みを浮かべながら私の方を見つめ…

 

「セミファイナルを突破すれば私と対戦する機会もあるかもしれないと言う訳だ。多分メリー達が突破してくるだろうが、その目だと心配は要らないな」

 

「本当にお世話になりました慧音さん。ドラパルトの件の恩義は守矢にて」

 

「ああ。期待してるよ。セミファイナルまではお前を含めみんなを応援する。ファイナルは…覚悟しとけよ?」

 

「はい!望む所です!」

 

 私の言葉を聞き再び真剣な表情から笑みを浮かべ私の肩を軽くポンと叩く。慧音さんも次の試合で当たる時は必ず楽には勝たせてくれない。それだけは私の中では分かっていた事。私はそんな慧音さんに頭を下げるとその場から立ち去っていく。

 

「また守矢で!」

 

「はい!当たった時はお願いします!」

 

 村人達そして慧音さんに送り出されながら私は守矢スタジアムのある妖怪の山にへと歩を踏み出して行く。この先今までジムチャレンジで戦った時よりも厳しい戦いが待っているのだろう。ワクワクとドキドキが自分の中で充満して行く中、それ以上に闘志が自分の中で燃え上がっていた…




見てくださりありがとうございます。パッと書いているのですぐバトルに入るかもしれませんがその場、その場で頑張ります。


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いつの日か夢見たあの大地

今回は守矢スタジアムまでの閑話回となります。
久々過ぎて書けるかどうか心配ですがとりあえずそこまで予定してます。


 人里からは度々目には入っていた。聳えるスタジアムは一体何を意味しているのだろうという気持ちは常にあった。セミファイナル、ファイナルが行われチャンピオンマッチまで開催されるジムチャレンジ終焉の地である守矢スタジアム。

 

 そこに向かう私の一歩はどれほどの大きな一歩になるのだろう。人里から一歩、一歩進んでいく足が少しフワフワしているようにも感じた。

 

(確実に今まで進む一歩じゃない。どこか遠い…重い道のりをしているなって感じる。でも嫌じゃない…)

 

 そこに向かう私の足から不思議と緊張や不安という感情を抱く事はなかった。どこかワクワクしている。辿り着く前だというのにもう勝つイメージしかしていない。人里から妖怪の山に繋がる階段を一つ、また一つと上がって行く。適度に荒れる呼吸も今だけは心地よく感じる。

 

「…ふぅ…」

 

「…?」

 

 階段を上がると1人の女性が私の視界に入って来た。文さんとは違う…どこかてゐさんに似たような耳を付けている。赤い眼差しで階段を登り切った私を見つめると、軽く一息つきながら木元からゆっくりと私の前へ。その胸の付近にはリーグスタッフの印がされている。

 

「ようやく上がって来ましたか。ジムチャレンジ突破おめでとうございます。宇佐見蓮子」

 

「ありがとうございます…どうして私の名前を?」

 

「この期間限定の仕事が始まるに辺り、全てのチャレンジャーの顔写真には目を通しています。一度見ればある程度は記憶出来ます」

 

 全てって最初は何百人ぐらい居たはずなのに…軽く話しているがとんでもない方だ。ジッとこちらを見つめながら話してくる女性に何か言って欲しいと思いつつも息を呑んでいると…

 

「ああ、失礼。見ていたのではなく匂いを自らに覚えさせておこうと。後で通ったか上司に聞かれるので」

 

「は、はあ…」

 

「申し遅れました。私は犬走椛。今だけはリーグスタッフです。チャレンジャーが間違ったルートを辿らないようにいます。右側を通って進んでください。左側はとんでもないポケモンが一杯いるので物好きで無ければ通らないように」

 

「分かりました…犬走さんありがとうございます」

 

「告げないと被害者が出ますから。頑張って来てください」

 

 犬走さんに一言礼を告げると左側の通路を通らないようにして立つ彼女を横見しながら右側の通路にへと進んでいく。鳥ポケモン達が自分の前を飛んでいき、左耳からは滝のような音が聞こえてくる。ちょくちょく聞こえてくるポケモンの咆哮は危ないと言われる由縁だろうか。

 

 遠目ながら視界に入る守矢スタジアム。どんな観客の元戦うのだろう、どんな歓声を浴びながら戦うのだろう。ワクワクと勝つイメージが湧いても戦うイメージが湧かないという事に思わず笑みを溢しながら歩を進めていく。

 

「ブイ!」

 

「!イーブィ?」

 

 歩を進めていく私のボールから出て来たイーブィが突如として声を張り上げると、イーブィも同じく笑みを浮かべながら私の肩に飛び乗って来た。イーブィを軽く撫でながら私は…

 

「ワクワクしてるように見える?」

 

「ブイ!」

 

「そっか。絶対勝とうね」

 

「ブイ!」

 

 語りかけられたイーブィは満面の笑みだった。イーブィも楽しんでいるという証拠なのだろうか。笑みを浮かべながら頷いたイーブィに対して改めて背中を押されながら、私は守矢スタジアムにへと再び歩を進めて行く。人里の旅館にて夢に出て来たスタジアム。

 

 夢に出て来たあの時は不安しかなかった。今足を進めて行く私の気持ちはずっと高鳴り続けているのは確か。ちょくちょく休憩を挟みながら歩みを進めて行く事1時間。スタジアム前の最後の階段が目に入る。

 

「ここを上がれば…!」

 

「ゴールはすぐそこだよ!ダッシュでもして上がって来な!」

 

「あの人は…?今はそんな事はどうでもいいか…」

 

 階段の遥か上にいた女性に声をかけられるも声が届かないと思いひとまずは無視。言われた通りダッシュで階段を一段、二段と早いスピードで駆け上がって行く。ダッシュすれば長いと思った距離もあっという間。

 

 大きく息を荒らす自分にどこからか何かから降りる音が聞こえ、ふと上を見つめるとフワフワと人がゆっくりと私の前にへと降り立って来た。

 

「ようこそ守矢神社へ。と言いたい所だけど今アンタが行くべき場所は神社の隣にあるよ」

 

「守矢神社?スタジアムではないのですか?」

 

「残念ながらゴールはもう少し先だ。ま、そうは言っても5分もかからないような場所だけどね」

 

 カエルのような帽子を被りながらそう語りかけて来た小さめの女性は神社の左奥の方を見つめる。左側の方に確かにスタジアムが見える。後もう少しという所か。私は息を呑みながらもう少しだけ気合いを入れる。

 

「噂の宇佐見蓮子だね?早苗達から噂は聞いているよ」

 

「私、噂になっているんですか?」

 

「アンタには自覚はないようだけどリーグから見てみればアンタの名前は逐一上がるほどの有名人さ」

 

「あはは…そんなに言われると照れますね…」

 

 女性に笑みを浮かべながら語られ私の表情が気合いを入れた感じから少し緩む。イーブィはそれを見てキョトンとしている様子。それでいいと小さく呟く女性に対して私は思わず疑問の表情を浮かべると…

 

「それでいいんだよ。気合いなんか入れなくても平常心でいれば勝てるさね」

 

「ありがとうございます。私、意識し過ぎたかもしれません」

 

「まあ気持ちは分かるけどね。そいじゃ行ってきな。アンタは必ず勝ち上がる。洩矢諏訪子が保証するよ」

 

「ありがとうございます…!全力を尽くして来ます…!」

 

 激励を貰いながら神社の横にあるスタジアムにへと足を進めて行く。意識し過ぎと感じる程の大舞台。諏訪子さんの一言に大きく人押しされたようなそんな気がする。気持ちが昂り、歩を進めて行くとざわめきが聞こえ始めそして守矢スタジアムが視界に広がる。

 

「守矢スタジアム…最後の舞台…」

 

「ブイ!」

 

「大丈夫だよイーブィ。思った以上に緊張はしていない。さ、行こっか」

 

 周辺にはこの期間だけのために作られた風に見える屋台。そしてその隣にはリーグスタッフの方が何かを売っている。ホントお祭りなんだなとそう感じながら気を引き締めて行く。私がスタジアム前の入り口に立ったその時だった。

 

 背後から聞こえてくる足音にイーブィが気付いたのか、背後に振り向き声を張り上げると私の背後を振り返る。そこにいたのは…

 

「蓮子!はあ…はあ…やっと追いついた!早く進みすぎだって!」

 

「め、メリー!?い、1時間くらいの距離があった筈だよ!?」

 

「んなもん相棒達と共にすっ飛ばして来た!道間違えてポケモンに集中攻撃されそうだったけど何とかなったね!」

 

 汗だくの笑みを浮かべながら語って来たのはメリー。私も来たばっかりなのにそれに追いつくとは…正直言って驚き以外の感情が出てこない。そのメリーに遅れるかのように魔美と霊矢がゆっくりと歩きながら到着。3人が辿り着き私は驚きが頭の中を支配して言葉が出てこない。

 

「驚いてるね。まあ理解は出来るよ」

 

「メリーさんのアーマガアに乗って来たんです。一応人を乗せても大丈夫なポケモンだそうなので」

 

「そういえばメリー、ひこうタイプ持ってたね…」

 

 ようやくメリー達がどうやってここに私と同じ感じでたどり着いたのか合点が行った。それなら普通に私と同じ時間で辿り着く事なら可能だろう。発想のスケールで既に敗北したという感情になっていたが、思わず私は唖然とした感情しか出てこなかった。

 

 偶然と言い4人が揃った。どんな舞台になるか分からないが夕方に雌雄を決する事になる。そこまでの時間。同期との時間を屋台巡りにて楽しんでいた…




見てくださりありがとうございます。
次回から本格的に始まる感じで。頑張ります。


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ライバル同士のぶつかり合い

今作初めてライバル対決を描いてみようかなと思います。頑張ります。


「守矢スタジアムにお集まりの皆さん!此度は歴史の中の1ページになるであろう最高の舞台にお越しいただきありがとうございます!」

 

 TV越しから実況の人が守矢スタジアムに集まった観客達に呼びかけ、私達4人は男女の更衣室に分かれてその光景を横見しながら確認。いよいよ始まる。セミファイナルトーナメントの試合順は私達には告げられているが、観客達が目の前にするのは初めてだ。

 

「勝ち上がって来た4人によるセミファイナルトーナメントまもなく開催でございます!」

 

「いよいよだね蓮子。勝ち上がるのは私だから」

 

「それはみんな同じ気持ちだよメリー。まずはじっくりと戦い方を鑑賞させてもらうよ」

 

「そっか。蓮子達は第二試合だもんね。鑑賞して後悔しても知らないよ」

 

 メリー、魔美の表情からも気合いが伝わってくる中強気の発言に思わずワクワクからか私は笑みを浮かべる。同期と当たれるのは勝つにしろ負けるにしろこれが最後となる。拳を見つめながら私はTVをじっと見つめる。

 

「セミファイナル第一試合!メリー選手対魔美選手!そして第二試合は霊矢選手対蓮子選手のカードとなります!さあ皆さん気持ちを激らせろッ!」

 

 実況の言葉に観客達が大歓声を上げる中、気持ちをしっかり整えた私はメリー、魔美に少し遅れる形で更衣室を出る。メリーと魔美、私と霊矢。それぞれ違う場所に案内されていく中、スタッフの方についていきながら霊矢が私に対して呟いてくる。

 

「蓮子さん。このまま歩きながら聞いてください」

 

「何よ改まって」

 

「久しぶりに僕から離れたドラメシヤの姿を拝見しました。立派なドラパルトになって。アナタの中では欠かせない戦力になっていると思います」

 

「私自身悩んだ時期もあったけど…ドラパルトは自分の力で着いてきてくれたと思う」

 

「僕がアナタと最後に当たった時。そこにはドラパルトの姿はありませんでした。だからこそドラパルトに僕のチームが君を凌駕する所を見せつけたいと思います」

 

 霊矢からも本気という感情が伝わってくる。それだけみんなセミファイナルに賭けている。霊矢を横見でチラッと見つめながら、私達2人はスタッフの方に案内される形で控え室入り。そこからメリーと魔美の試合をじっくりと見つめる。

 

 話によれば慧音さん達ジムリーダーも今日は試合はしないものの、既にスタジアム入りをしてこのセミファイナルを観戦する予定らしい。控え室で私から離れた距離に移動する霊矢に対し、私も一息吐く。

 

「試合が近づきましたらまたそれぞれの場所に案内しますのでしばらくお待ち下さい」

 

「分かりました」

 

 スタッフの方にそう告げられ、私達はTVの方をじっと見つめる。メリーと魔美はもうそれぞれの入場ルートに入ったのだろうか。湧き上がる歓声が控え室にまで響き渡ってくる中、聞こえてくる声に闘志を燃やす。

 

「お待たせしました皆様!セミファイナルトーナメント第一試合!まもなく開幕です!」

 

「始まりますね」

 

「うん」

 

「まずは左コーナー!蓮子選手と共に幻想入りしてきた実力者!スランプに陥りながらもセミファイナル進出を果たしたメリー選手!」

 

「対する右コーナー!魔理沙選手の養子であり、その実力は既にジムリーダー級!魔理沙選手が届かなかった道に届く事は出来るのか!魔美選手!」

 

 2人の表情に当然ながら緩みはない。真剣な表情で入場した2人は中央にて対面を果たすと何かを察したかのように無言で2人共頷く。観客のざわめきと共に距離を離していく。どちらかが負けどちらかが私か霊矢の相手になる。真剣な表情で向き合う2人。

 

 その手には既にモンスターボールが握られていた。

 

「両者用意はよろしいでしょうか!」

 

「いつでも…!」

 

「バトル!スタート!」

 

「行くよバイウールー!」

 

「お願いキレイハナ!」

 

 メリーのポケモンはバイウールー。魔美のポケモンはキレイハナという対面。ポケモンが出されたと同時に三度大歓声が巻き上がる中、魔美が気合いを入れるかのように胸を2回叩くとキレイハナに指示を出す。

 

「マジカルリーフ!」

 

「コットンガード!」

 

 キレイハナが身体を揺らし、葉を浮かばせると念力で数枚を弾丸かのように放って行く。バイウールーも身体を揺らし、体毛を浮かび上がらせると体毛で葉を停止させ元に戻ると同時にキレイハナに向かって弾き返す。

 

「はなふぶき!」

 

「ボディプレス!」

 

 自分が放った攻撃を巻き起こした嵐によってかき消して行くと同時にバイウールーが空高くジャンプし、一気にキレイハナの元に隕石のように落ちて行く。

 

「ギガドレイン!」

 

「押し切れッ!」

 

「キレッ!?」

 

 バイウールーがそのままキレイハナを押しつぶすかのように落下。ギガドレインが少しばかり命中した甲斐もあり、無傷では済まなかったようだが吹き飛んだのはキレイハナ。少しぼろぼろになりながらもバイウールーを見据える。

 

「スタートからの激しい技のぶつかり合い!然し技の威力からしてバイウールーが有利でしょうか!」

 

「魔美…」

 

「ムーンフォース!」

 

「すてみタックル!」

 

 キレイハナが身体を光らせて光の玉をバイウールーに放っていく中、バイウールーは身体にオーラを纏いながらキレイハナに突進。ムーンフォースと真っ向からぶつかり合い、火花を散らし爆煙を巻き起こしたと思いきや、バイウールーが爆煙を突っ切ってキレイハナの元へ。

 

「ッ!?はなふぶき!」

 

 キレイハナが再び地面から自分の周りに嵐を巻き起こして行く中、バイウールーは構わずキレイハナに突撃。爆煙が再び上がり、吹き飛んできたキレイハナの元に審判が駆け寄る。

 

「キレイハナ、戦闘不能!バイウールーの勝ち!」

 

「まさに電光石火!一撃、一撃で圧倒したバイウールーが先勝を飾りました!」

 

「お疲れ様…キレイハナ。行くよ…オトスパス!」

 

 バイウールーが勝利の雄叫びを上げる中、魔美はキレイハナを戻すと次に繰り出したのはオトスパス。ノーマルタイプのバイウールーには圧倒的に打点を取れるポケモンとなる。両者一息吐く。そんなTVをじっと見つめている中でスタッフの方が私に語りかける。

 

「蓮子さん。案内しますので移動をお願いします」

 

「分かりました」

 

「行くよオトスパス!ばかぢから!」

 

「しねんのずつき!」

 

 私がスタッフの方の言葉で違う控え室に移動を始めていく中で、オトスパスが地面を抉りながらバイウールーに突撃していく。バイウールーも同じくオーラを纏いつつオトスパスに突撃。溜め込んだ拳をバイウールーにぶつけていくが、吹き飛ばせずに…

 

 バイウールーの頭突きをまともに食らったオトスパスが吹き飛ぶ結末に。これには魔美も驚きを見せる中で…

 

「ばかぢからまさかの不発!しねんのずつきに押し切られたァ!」

 

「ッ!」

 

 魔美は再三歯を食いしばっている。実力の差とでも言うのだろうか。そんな苦しそうな魔美に対してメリーはかなり冷静な表情を浮かべている。徐々に歓声がざわめきに変わっていく中で魔美はオトスパスに指示を出す。

 

「きしかいせい!」

 

「すてみタックル!」

 

 バイウールーが先に地面を蹴り出し、あっという間に目の前に迫り行くとオトスパスにタックルをかます。だがオトスパスは静止。そのままバイウールーを止めると顔面に思い切り拳を叩き込んで殴り飛ばした。

 

「オトスパス必死の反撃!何とかバイウールーを近くから離れさせる!」

 

「まだまだここから!」

 

「オト…」

 

「っ!?」

 

 この一撃をお土産という形でオトスパスダウン。魔美は一瞬混乱したが頭によぎったのはばかぢからを使ったという事。防御が下がっている状態からの一撃に耐えられなかったという事だ。歯を食いしばる。バイウールーの2連勝がコールされる中、片耳で話を聞きつつ私は前を見つめていた…




ポケモン新作発売しますね。またこちらもゆっくりと頑張ります。


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近づいて来るその時

最初から決めているんですが今回は蓮子の一人称で説明文は書かない予定ではいます。とりあえず3人称からの最後らへんに蓮子の一人称を挟もうかと。あらかじめ伝えておきました。


「行くよウオチルドン!」

 

「魔美選手3体目はウオチルドン!6対3!どこかで巻き返さないときつい事になります!」

 

 魔美の3体目はウオチルドン。メリーは未だに1体目のバイウールーが場に陣取る。追い詰められているのは完全に魔美だがその表情から焦りがあまり出ていないというのが彼女の中の光だろうか。魔美が大きく一息を吐き、声を張り上げる。

 

「フリーズドライ!」

 

「ボディプレス!」

 

 地面を力強く蹴り出し、空にへと舞い上がったバイウールーがそのままウオチルドンにへと落下していく。ウオチルドンは冷風を放ち、それを一気に凍らせて行く。バイウールーはウオチルドンに落下して行く際に氷を粉砕して行くが、少しずつ傷ついているのは確か。

 

「かわして!」

 

「!」

 

 バイウールーの攻撃をウオチルドンは回避。その場の地面がひび割れると同時に砂埃が大きく空中に舞う中、バイウールーの一撃をかわしたウオチルドンに魔美が指示を出す。

 

「いかりのまえば!」

 

「コットンガード!」

 

 砂埃が視界から消え始めたその時。ウオチルドンは勢いよくバイウールーに向かって行くと、そのまま噛みつきにかかる。バイウールーは身体から毛皮を押し出し、身動きの取れない状態で防御体勢。ウオチルドンがバイウールーの身体に噛みつき、そのまま毛皮を引きちぎる。

 

 バイウールーは転がりながら押し出した毛皮を元通りにすると反撃とばかりにメリーが…

 

「毛皮を引きちぎったウオチルドン!元に戻ったバイウールーにダメージはあったのかッ!」

 

「すてみタックル!」

 

「かみくだく!」

 

 バイウールーが体勢を立て直すとそのまま地面を力強く蹴り出し、走りながらオーラを纏って行くとウオチルドンもバイウールーに向かっていき、バイウールーに噛みつきにかかる。両者のタックルと牙が火花を散らした後に爆煙を巻き起こす中、吹き飛んできたのはウオチルドンのみ。

 

 バイウールーはその場で倒れ込み戦闘不能の状態に。

 

「バイウールー2タテでストップ!魔美選手反撃に転じます!」

 

「よし…!」

 

「お疲れ様バイウールー。後は任せて」

 

 メリーが5体の魔美が3体とまだメリーの方が有利。ウオチルドンはバイウールーを撃破したものの、疲労は蓄積されている。そんな中バイウールーをボールに戻したメリーが次に繰り出したのはこおりタイプのウオチルドンには不利な相手のヌメルゴン。

 

 霊矢とは違う控え室に案内された私がTVを見てかなり驚いた。ヌメルゴンはドラパルトと同様600族と呼ばれる優秀な種族。それを見て息を呑む私。そしてメリーは…

 

「この子で一気に行くよ!ヌメルゴン!10まんボルト!」

 

「フリーズドライ!」

 

 ヌメルゴンの付近に冷気を打ち込んで行くウオチルドンに対し、ヌメルゴンは電気を溜め込むと一気にウオチルドンに向かって放出。ヌメルゴンが冷気により歯を食いしばる中、ウオチルドンに電撃が直撃。電撃による爆煙が広がる中…

 

「チル…」

 

「ウオチルドン、戦闘不能!ヌメルゴンの勝ち!」

 

「やはりバイウールー戦のダメージが響く!ヌメルゴンが得意の特殊技で猛攻を退けました!」

 

「お疲れ様ウオチルドン…」

 

 ヌメルゴンの一撃によりウオチルドンがその場で倒れ込み、戦闘不能に。バイウールー戦でのすてみタックルはやはり響いていた。魔美は歯を食いしばると違うボールを出し、祈るかのように握りしめる。そして大きく一息を吐くと…

 

「この状況を打開出来るのはアナタしかいない…お願いモルペコ!」

 

「モペ!」

 

「魔美選手4体目モルペコ!さあどう反撃に転じるのでしょうか!」

 

「行くよヌメルゴン!りゅうのはどう!」

 

「オーラぐるま!」

 

 魔美の4体目はモルペコ。ヌメルゴンが口から波動を吐く中、モルペコがオーラを大きくしタイヤのようなサイズにすると力強くオーラを蹴り出す。波動とオーラがぶつかり合い相打ちし爆煙を巻き起こす中、モルペコははらぺこ模様に変化。

 

 それを見た魔美が爆煙が広がる中…

 

「オーラぐるま!そのまま突っ込んで!」

 

「ポイズンテール!爆煙をかき消して!」

 

 ヌメルゴンが尻尾に毒を宿し、身体ごと振り回しながら爆煙を振り払って行く。そうすると自らの懐付近に現れたモルペコにメリーすら驚かせられる中、モルペコがオーラごとヌメルゴンに突進。オーラをまともに食らったヌメルゴンが少し吹き飛ぶ。

 

「ポイズンテール!」

 

「いちゃもん!」

 

 ヌメルゴンが再び尻尾に毒を宿そうとしたその時。モルペコが発した声により、技に対する行動が強制中断。再びまんぷくもようからはらぺこもように変化したのを見て魔美はもう一度…

 

「オーラぐるま!」

 

「りゅうのはどう!」

 

 ヌメルゴンにモルペコのオーラぐるまがぶつかり、すれ違いでヌメルゴンのりゅうのはどうがモルペコに衝突。巻き上がる爆煙に観客が大いに盛り上がる中、当事者である2人は息を呑んだ様子。爆煙が晴れるとそこにいたモルペコ、ヌメルゴンが倒れている姿が。

 

「ヌメルゴン、モルペコ共に戦闘不能!ダブルノックアウトです!」

 

「押し返しては押し返され!魔美選手ついにラスト!メリー選手はまだ4体も残しています!」

 

「お疲れモルペコ。ありがとう。行くよカビゴン!」

 

「押し返される訳には行かない…確実に行く。行くよピカチュウ!」

 

 魔美が最後まで残していたのはエースのカビゴン。対するメリーもエースのピカチュウをバトルフィールドへ。両者の目付きが鋭くなる中、魔美がカビゴンのモンスターボールを突き出し…

 

「負けるためにここにはいない!絶対に勝つ!」

 

「!…望むどころ!」

 

「両者ボールにカビゴンとピカチュウを戻す!そして…!」

 

 魔美とメリーがボールにポケモンを戻す中、ダイマックスバンドが光り始める。それと同時にボールが大きくなり、2人が背後に投げる。するとピカチュウとカビゴンがお互いにキョダイマックス。声を張り上げながらお互いに対する。

 

「お互いにキョダイマックス!さあクライマックスなのか!」

 

「キョダイサイセイ!」

 

「キョダイバンライ!」

 

 カビゴンが地面に身体を打ちつけ、ピカチュウの真下から波動を打ち込んで行く。その中ピカチュウは放った電撃を空に舞い上がらせると、雷としてカビゴンに落下。お互いから爆煙が再び巻き上がると、爆煙が晴れたその時にはピカチュウのダイマックスが解かれる。

 

 一方のカビゴンもダイマックスが解かれたが…

 

「カビ…」

 

「!」

 

「カビゴン戦闘不能!よって勝者!メリー選手!」

 

「決着!圧倒に次ぐ圧倒!カビゴンを一撃で沈めたピカチュウ!そしてメリーが一回戦突破だッ!」

 

 その瞬間は歓声が上がっているにしてはあまりに静かに思えた。きっと場に戦っているというのがそういう感覚なんだろうなって。隣にいたポケモン達の檄を受けながら、私は頷くとポケモン達の方を見ながらゆっくりと立ち上がる。

 

「決勝の相手が決まった所で!みんな…絶対1回戦勝ちに行くよ!」

 

「ブイ!」

 

 私の声に一斉にポケモン達が声を張り上げる。TVから見つめ魔美と握手を交わすメリーがとんでもなく輝いて見えた。ポケモン達の声に私は勇気をもらっていたその時、魔美の表情がかなり落ち込んでいるようにも見えた。当然なんだろう、自分の挑戦が終わったんだから。

 

 拳をギュッと握りしめる。大きく一息吐きながらポケモンをボールに戻す。そして先程案内してくれたスタッフの方が私の前に近づいて…

 

「蓮子選手。次戦です。準備お願いします」

 

「分かりました」

 

 スタッフの方に一言だけ告げるとバトルコート通路に繋がる道にへと足を運んで行く。通路からでも伝わってくる大歓声。そこで戻って来ていた魔美と遭遇した。

 

「魔美…」

 

「蓮子…絶対1回戦勝ってね。応援してるから…」

 

 今にでも泣き出しそうなくらいに悔しそうな声を漏らしながら魔美はその場を去って行く。よく頑張ったよと歓声にかき消されるくらいの小さな声で呟くと、バトルコートにへとゆっくりと歩みを進めたのだった…




次は蓮子です。頑張ってもらいましょう。


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いざ決戦の舞台へ

ついに蓮子が出陣です。しっかり書けるように頑張ります。


「聞こえますでしょうか。スタジアム中に響き渡る大歓声!魔美選手とメリー選手のバトルが終わり、観客は今か今かと次の試合に向けたざわめきを起こしております!」

 

 どこかから聞こえてくる実況の声を耳にしながら、バトルコートに繋がる通路を歩いて行く。声というかはどちらかというと大歓声の方が耳に入っているが、バトルに集中する事になるとどちらも聞こえなくなるのだろう。

 

 靴の音が通路中に響くが私の耳には聞こえてこない。だがこれだけの歓声を浴びても前みたいに緊張しているという事はない。スッと一歩一歩進みバトルコートへ。

 

「今、左サイドから蓮子選手!そして右サイドから霊矢選手が入場して来ました!残るルーキーの中では無敗を誇りながら勝ち進んで来た蓮子選手!待ち侘びたファンも多いでしょう!」

 

「先程ぶりですね。蓮子さん。雑音はまだ聞こえていますか?」

 

「敢えて聞くようにはしているよ。悪口でも褒め言葉でも気合いが入るしさ」

 

「…そうですか」

 

 バトルコート中央にて私と霊矢が控え室でいた時以来に顔を合わせる。先程のバトルを見ていたせいか、霊矢の言葉、顔を見るのが随分久しぶりに感じる。霊矢は私の言葉に軽く笑みを浮かべた。そして審判の方が近づいて来たのを見て、私と霊矢は距離を取る。

 

 スタジアム中が一気に黙り込む。私は目を瞑り大きく一息を吐くと、顔を両手で叩き気合いを入れ直す。雑音は消した…後は勝つだけ!

 

「両者モンスターボールを構えて下さい!」

 

 審判に言われるがままに私と霊矢はボールを取り出す。それをしっかり確認した審判が…

 

「レディ…ファイト!」

 

「行きますよギャロップ!」

 

「頼んだよモスノウ!」

 

 スタジアム中が一気に湧き上がる中、私はモスノウをそして霊矢はギャロップをフィールドに。有利対面…とは言いづらいか。相性だけは互角…勝利に導けるかどうかはトレーナー次第…!

 

「サイコカッター!」

 

「れいとうビーム!」

 

 年の刃がこちらに向かって放たれて行く中、モスノウは身体全体を使ってビームを放出。刃とビームがぶつかり合い、相打ちで爆煙を引き起こす。その中でもギャロップは確実に動いていた、爆煙を突っ切ってモスノウの前に姿を見せると…

 

「でんこうせっか!」

 

「ただでは帰さない!むしのさざめき!」

 

 ギャロップが思い切りモスノウに体当たりをかまし、少しモスノウを吹き飛ばしたがモスノウは羽を強く羽ばたかせて音波を起こし、少し離れた距離からギャロップにさざめきをぶつける。ギャロップが吹き飛ばされ、霊矢の近くにて踏みとどまる。

 

「序盤から激しい攻防!先手を取るのは果たしてどちらか!」

 

「マジカルシャイン!」

 

「こちらも行くよ!マジカルシャイン!」

 

 ギャロップが光の弾丸をモスノウに放ってくる中、私もモスノウに同じ技を指示。両者から出されたマジカルシャインがぶつかり合い、激しい爆煙を巻き起こす中それでも霊矢は攻めてくると確信した私は…

 

「攻めてくるよモスノウ!爆煙に向かってゆきなだれ!」

 

 モスノウが目を光らせ、空中からどこから寄せたなだれを落としたその時。眼前に映るギャロップの姿が。ギャロップが驚く間もなく雪崩に巻き込まれる中、霊矢は…

 

「マジカルシャインでかき消せ!」

 

 雪の重みがのしかかってくる中、ギャロップは光の弾丸を雪にぶつけていき全て粉砕する事で対処。雪解け水がギャロップに降り注ぐ中、ギャロップとモスノウの距離はほぼ間近だ。

 

「ゆきなだれをマジカルシャインでかき消したギャロップ!だがその距離は縮まらない!」

 

「逆に好都合!サイコキネシス!」

 

「むしのさざめき!」

 

 念をモスノウに向けてくる中、モスノウは羽を羽ばたせて音波を巻き起こすと念と音波を火花を散らしながらぶつけ合って行く。最終的に音波が念を切り裂き、ギャロップに衝突。激しい爆煙を再び起こした。

 

 爆煙を起こした所に審判が駆け寄る。ギャロップはふらつきながらもモスノウを見据えていたが、横に倒れ込んだ。

 

「ギャロップ、戦闘不能!モスノウの勝ち!」

 

「先鋒戦を制したのはモスノウ!激しいぶつかり合いを制した形となりました!」

 

 歯を食いしばりながら霊矢がギャロップをボールの中に戻す。観客の声にかき消される形となったが一言だけ呟き、次のポケモンのボールを取り出す。霊矢が一息吐きながら場に出したのは船の錨のような形をしたポケモンだ。

 

「霊矢選手、二体目はダダリン!モスノウ相手だと若干不利か!」

 

「ダダリン…私は初見のポケモンだな。出して来たという事は何か打点あってのことだろうけど…」

 

「いられると少し厄介なんでね…潰させていただきます!ジャイロボール!」

 

「れいとうビーム!」

 

 ダダリンは地面を抉りながら回転し始めるとそのままモスノウに向かって突撃していく。モスノウは身体を思い切り動かしビームを発射。ダダリンの身体には命中しているが、全てかき消されて行く始末。そのままダダリンはモスノウに衝突し、モスノウを吹き飛ばす。

 

「ジャイロボール命中!モスノウが吹き飛ばされる!」

 

「モスノウ!」

 

「モス…!」

 

「まだ立ち上がりますか…!」

 

 モスノウは一瞬は起き上がったものの、すぐに再び地面に落下しそのまま戦闘不能に。これで両者が一体を失う状況。モスノウをボールに戻し、お疲れ様と一言だけ呟くとまずはジャイロボールを止めないと行けないと思った私が次に繰り出したのは…

 

「行くよキュウコン!」

 

「場にほのおタイプのキュウコン!ダダリンのタイプを察したか!」

 

「やりようはある…!ダダリン、ジャイロボール!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 心の中で来たと思った。再び回転しながら向かって来るダダリンに対してキュウコンにかえんほうしゃを指示。思い切り吐いた炎でダダリンの勢いを飲み込んでいくと、そのまま直撃させた。大爆発が巻き起こり爆風がこちらまで来た中、爆煙の中聞こえて来た何かが落ちる音。

 

 爆煙が晴れ審判が近づくと…

 

「まさかの一撃!モスノウを撃破したダダリンがキュウコンの前に沈黙した!」

 

「よし!」

 

「っ!自分の甘さか…!」

 

 モスノウを沈めたダダリンを撃破。思わず拳を握りしめながらよし!という声を漏らした。霊矢はダダリンをボールに戻すと次に繰り出したのはエーフィ。ここで霊矢のエースが出てくる形となった。

 

「エーフィ…ここで出てくるか…!」

 

「状況は渡しませんよ。エーフィにて逆転させていただきます!」

 

「強さはあらかた知ってる…気を引き締めて行くよキュウコン!やきつくす!」

 

「サイケこうせん!」

 

 キュウコンから火炎が吐かれエーフィの赤い部分から光線が放たれて行く。火炎と念波がぶつかり合う中、数秒経たないうちに火炎を掻き消してキュウコンにサイケこうせんがぶつかる。

 

 だが身体を震わせて健在ぶりをアピールするキュウコン。それを見た私はふと笑みが溢れた。

 

「行けるよねキュウコン」

 

「コン!」

 

「よし…気張って行くよ!かえんほうしゃ!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 キュウコンの頼もしき声に私はよしと再度呟くとかえんほうしゃを指示。キュウコンの口から火炎が吐かれる中、対するエーフィはマジカルシャイン。身体全体から光の弾丸を放ち、火炎をかき消して行く中私は…

 

「おにび!」

 

「おにび…!?」

 

 かえんほうしゃがマジカルシャインによりかき消されて行く中、おにびを指示。小さい火の粉のような物がエーフィに命中。火傷を負わせた。歯を食いしばる霊矢と息を吐く私。

 

 エーフィが若干苦しそうな表情を浮かべる中、キュウコンはさらに気を引き締める。その中で私までその緊張具合が伝わり、ピリピリとした感じがしていた…




見てくださりありがとうございます。


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大歓声とプレッシャー

明けましておめでとうございます。
命です。さて今回が書き始めになる訳ですが、まあボチボチと今年も頑張りますのでよろしくお願いします。


「サイケこうせん!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 エーフィの額から放たれた光線とキュウコンの口から放たれた火炎がぶつかり合い、激しくぶつかり合った後に大爆発を巻き起こす。相打ちという形で爆煙が私と霊矢の視界まで見えなくさせる中、先に動いたのは霊矢の方だった。

 

「でんこうせっか!」

 

 火傷によるダメージを受けつつ、エーフィは目を瞑るとそのまま地面を蹴り出し爆煙を掻き分けてキュウコンの目の前へ。その懐に入り込むと思い切り突進する。突進を直撃し吹き飛ばされそうになったキュウコンだったが、足元の地面を抉りながら何とか踏ん張り…

 

「エーフィのでんこうせっか!然し食らっただけで耐えた!」

 

「ッ!」

 

「やきつくす!」

 

「サイコキネシス!」

 

 その距離ほぼゼロ。キュウコンが火炎を吐こうとしたその時にエーフィは目を光らせる。だが念力を起こすまでに間に合わず、キュウコンのやきつくすが直撃。吹き飛びはせず、何とか立っていたエーフィだったが一気に横に倒れ込んだ。

 

「エーフィ!戦闘不能!キュウコンの勝ち!」

 

「キュウコン2連勝!確実な作戦がエーフィを破った!」

 

「やはり強いですね…僕だってこれで終わる訳には行かない!…行きますよサーナイト!」

 

 エーフィが戦闘不能がコールされスタジアム中から大歓声が湧き上がる。大歓声とは違い私達は檻の中で戦わされているような物。霊矢が4体目サーナイトを出しても尚、油断できないどころか持ってかれるんじゃないかという緊張すらある。

 

 気は抜けない。このまま持って行く…!

 

「行きますよサーナイト!めいそう!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 サーナイトが目を瞑ったのを見て私はかえんほうしゃを指示。キュウコンが火炎をサーナイトに吐くがサーナイトが貼っていたバリアを破ったのみでダメージは与えられていない。煙をサーナイトは振り払い、霊矢が次の指示を出す。

 

「ムーンフォース!」

 

「やきつくす!」

 

 サーナイトが身体を光らせ自身の光から巨大な玉を作り出すとそのままキュウコンに投げ飛ばす。キュウコンは体勢を崩さず、口から火炎を吐く。やきつくすの一撃はあっという間にムーンフォースに飲み込まれ、キュウコンに直撃した。

 

「キュウコンにムーンフォース直撃!爆煙が広がった!」

 

「っ!」

 

 爆煙が晴れたその時エーフィみたいにサーナイトを見据えていたキュウコン。だがいざふらつくとそのまま倒れ込み、戦闘不能に。私が歯を食いしばり霊矢が一息吐く。キュウコンをボールに戻し、一言声をかけると次に繰り出したのはルカリオ。

 

 霊矢がルカリオを見た瞬間に気を引き締めた表情を浮かべる。

 

「次に出て来たのはダブルエースの一角ルカリオ!この選択がどう出るか!」

 

「来ましたね…土をそのルカリオに付けてやりますよ」

 

「持って行かせない…ここで止める!行くよルカリオ!がんせきふうじ!」

 

「サイコキネシス!」

 

 ルカリオが地面を叩きつけ、岩を地面の中から出すとそのまま尖った岩がサーナイトに向かって行く。サーナイトは念波を起こすと岩を止め、そのまま念で刃物で切ったかのように岩を真っ二つにした。

 

「バレットパンチ!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 サーナイトが岩に気を取られている間にルカリオは地面を強く蹴り出し、降り注ぐ岩の横を通り過ぎてサーナイトに接近。光の弾丸を手を広げながら打ち込んできたサーナイトの一撃を掠りつつ、懐へ。そこから無数のパンチを浴びせサーナイトを吹き飛ばした。

 

「ムーンフォース!」

 

「はどうだん!」

 

 光の玉とはどうだんが同時のタイミングで放たれ、火花を散らしながらぶつかり合う。はどうだんが封殺されムーンフォースが向かって来た瞬間に私はルカリオに指示を出す。

 

「走ってルカリオ!バレットパンチ!」

 

「グル!」

 

「ムーンフォースが向かってくる中、ルカリオが走り出した!どうするつもりなのか!」

 

 ムーンフォースにぶつかりに行くタイミングで向かって行ったルカリオ。ギリギリのタイミングでムーンフォースを回避。そのまま驚くサーナイトの元へと赴くと、スピードを飛ばしてサーナイトの懐へ。そのまま高速でパンチを打ち込み、サーナイトを吹き飛ばした。

 

「サーナイト!」

 

「サーナイト、戦闘不能!ルカリオの勝ち!」

 

「サーナイト立ち上がれず!ルカリオの勝利!霊矢選手後がなくなりました!」

 

 霊矢が拳を握りしめる。ルカリオは少しのダメージがあるがまだ余裕そうにも感じる。霊矢がこの大会に連れてくるまでに持って来たポケモンは5体。次がラスト。私はもう一度一息吐く。ボールを見つめ霊矢が繰り出したのは…

 

「行きますよブリムオン!」

 

「ブリムオン?」

 

 場に出て来たのは塔のように見える見た目のポケモン。どうやら髪に見える水色の所は手らしい。霊矢が顔を少ししかめる。するとブリムオンをボールの中に戻し、ダイマックスバンドを光らせた。ボールが巨大化して行き…

 

「世代一番と呼ばれているアナタに勝ち!チャンピオンに挑む!行きますよブリムオン!キョダイマックス!」

 

「ならこっちも…!行くよルカリオ!」

 

「グル!」

 

 ブリムオンがキョダイマックスして行く間にルカリオをボールに戻し、ルカリオをダイマックスさせる。ルカリオとブリムオンが声を張り上げる中、大歓声を上げるのは観客。

 

「行きますよブリムオン!キョダイテンバツ!」

 

「ダイスチル!」

 

「両者ダイマックス!決めに来た!その行方はッ!?」

 

 ルカリオにブリムオンから放たれた星が降り注ぎ、ブリムオンに地面から伝って鋼の牙のような物がぶつかって行く。大爆発が三度巻き起こり、爆煙が観客まで見えなくさせる中、一撃で元の姿に戻ったのはブリムオンとルカリオ。

 

 ルカリオが膝をつきブリムオンが相当息を切らしていたが、そのままブリムオンが後ろ向きに倒れ込んだ。レフェリーが三度霊矢のポケモンに駆け寄る。

 

「ブリムオン、戦闘不能!ルカリオの勝ち!よって勝者蓮子選手!」

 

「ブリムオン敗れたッ!ルカリオの2連勝で幕を閉じました!」

 

「ナイスファイトルカリオ!」

 

「グル!」

 

 ルカリオとハイタッチを交わす私に対して霊矢は静かに目を閉じ、ブリムオンに駆け寄るとお疲れ様とだけ一言かけてボールの中に戻す。歓声が上がる中、私と霊矢2人がバトルコート中央に近寄ると…

 

「悔しいですが負けですね。メリーさんが待ってます。ナイスファイトを期待してますよ」

 

「ありがとう霊矢。みんながいたから私も強くなれた。またバトルしよう」

 

「アナタには敵いませんね…」

 

 霊矢は本当に悔しそうにしていた。その中で私は手を差し伸べると霊矢も手を差し伸べ握手を交わす。拍手が起きる中、別室で気を引き締めていたのはメリー。歓声を浴びながら一旦私が控え室に戻るとそこには笑みを浮かべた魔美の姿が。

 

「おめでとう蓮子。無事に1回戦突破だね。私は…」

 

「…魔美もよく頑張ったよ。ポケモンバトルというのはどうにもならない時だってある。運や実力、さらに戦術なんてそこら辺が離れていたら勢いだけではどうにもならない」

 

「蓮子…」

 

「魔美があんな簡単に負けたという事は相当メリーが強いという事だよね。仇…取ってくる」

 

 魔美は私の言葉に軽く微笑むと静かに頷く。聞こえてくるのは若干の歓声。私は魔美に静かに手を差し伸べると魔美はすぐにその手を取り握手を交わした。とんでもなく強くなったって事は分かってる。だからこそ気を抜く訳には行かない。

 

 魔美と力強く握手を交わす。そして…

 

「決勝…観客席で見てるから。無様な戦いをしたら許さないよ?」

 

「肝に銘じるよ」

 

 一言かけ控え室から去って行く魔美。そんな彼女の背中を見つめた後に私は拳を握りしめ次の戦いへの気を引き締めたのだった。




見てくださりありがとうございます。次はメリー戦になりますね。
連続にするか閑話回を挟むか考えたいと思います。それでは。


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ついに訪れる決戦の時

あっという間に1月も終盤ですね。今回からメリー戦です。
頑張って書きます。


「セミファイナルも決勝戦!残ったのはこれは運命なのでしょうか!4人のファイナリストで評価が最も高かった2選手です!」

 

 TVから流れてくる音声を聞きながら、ふとモンスターボールに目をやる。ここで敗退するという事はチャンピオンに挑む権利を無くすという事。ふと考えた。敗退していった霊矢や魔美にも2人を応援していたファンがいたんじゃないかって。

 

 ポケモンが流れ着いた事により文献に記載されていたイメージより遥かに違う姿で目に入って来た幻想郷。現代にいてもありそうな試合を前にするなんて想像すら出来なかった。

 

「メリー…」

 

 太陽の畑への道で再戦を誓った親友とのバトルが今間近にまで近づいている。どっちが勝ってもジムリーダー達が待つファイナルにへと進出する人物が決まる。それは私かメリーかのどちらかだ。

 

 一瞬TVを見つめメリーの姿を見直すとゆっくりと座っていた椅子から立ち上がる。覚悟は決めた。勝利するか敗北するかは神様が決める事。私に出来るのは控えるバトルに対して全力を尽くすのみだ。

 

「蓮子選手、時間です。バトルコートに足を運びください」

 

「分かりました」

 

 スタッフの方に声をかけられ私はバトルコートに繋がる通路にへと足を運ぶ。一歩、また一歩。コートに足を向けていくたびに歓声が強くなって行く。どちらかが負け、どちらかが勝利する事を願う人々。両頬を強く叩き、気合いを入れ直すとコートへ向かって行く。

 

「チャンピオンの場所に挑むチャンスを手に入れるのは果たしてどちらか!まず入場してきたのは魔美選手に対して圧勝してきた超新星メリー選手!」

 

「対するは!世代No.1!その無敗は果たしてどこまで続くのか!ファイナル進出予想第一位!蓮子選手ッ!」

 

 左通路、右通路と歩いてきた私達に送られるのは私達に合わせた声援。耳に聞こえても決して目に入れる事はない。バトルコート中央にて向かいあった私とメリー。そのどちらの表情も迷ったような目つきはない。

 

「見違えた。こっち来てからの蓮子、結構自信なさげに見えたんだけど。その違和感はまるでないね」

 

「メリーこそ。元々あった自信が肌にまでピリピリと伝わってくる」

 

「そんな力ないけど…勝つ自信がそうさせているのかな。さあやるよ蓮子。今だけは観客達は私達しか見ない。ジムチャレンジにおける私達の集大成…見せるよ!」

 

「分かった…!全力でやろう!」

 

 観客達は今だけは私達しか見ない。メリーの言う通りだ。緊張を通り越して気分が昂って来た。少し距離を離して向き合う私とメリー。両者笑みを浮かべ観客達が静まり返る中、審判が私とメリーの間に入り…

 

「素晴らしい戦いを祈ります!レディ…ファイト!」

 

「行くよバイウールー!」

 

「行ってウッウ!」

 

 審判からの声が響いた瞬間に静まった観客が地響きを起こすくらいの大歓声をあげる。場に出たのはウッウとバイウールー。集大成であり今しか私達に目が釘付けにならない大舞台。笑みが止まらない。私は昂る感情を抑えながら指示を出す。

 

「ドリルくちばし!」

 

「コットンガード!」

 

 ウッウがドリルのように回転しながらバイウールーに向かって行く中、バイウールーは自身の顔が見えなくなるくらいに毛皮を全面に押し出す。ウッウのドリルくちばしがバイウールーに命中する中、バイウールーは毛皮で受け止めると同時に勢いを殺す。

 

 そして声を張り上げながら毛皮を仕舞い込み、ウッウのバランスを崩すと…

 

「しねんのずつき!」

 

「こうそくいどう!」

 

 ウッウが私の指示を受けて高速に移動した事でギリギリでバイウールーの突進を回避。そのままウッウはバイウールーの届かない空中へ。バイウールーが見失いながら止まったのを見た私がウッウに指示を出す。

 

「ついばむ!」

 

「バイウールー、ウッウは空中にいる!しねんのずつき!」

 

 ウッウが羽を強く羽ばたかせ、バイウールーに落下して行く。バイウールーはメリーの言葉を聞き、上を見上げると頭に念を纏いウッウが落下してきたタイミングを狙って頭上に頭を突き出す。嘴と頭がぶつかり合い、火花を散らす中バイウールーが押し切りウッウを吹き飛ばす。

 

「激しいぶつかり合いの末、吹き飛ばしたのはバイウールー!然し一体目から息を呑む攻防!その表情は楽しんでいるようにも見えます!」

 

「なみのり!」

 

「すてみタックル!」

 

 ウッウが嘴を地面に叩きつけ、地面を揺らしながら津波を巻き起こして行く。地面を力強く蹴り出したバイウールーが熱を纏いながらウッウに突撃。なみのりがバイウールーを飲み込んでいく中、一瞬にして吹き出した蒸発した水。そこからバイウールーが出てくるとそのままウッウに突進。

 

 バイウールーがウッウを視界に捉えたがその嘴にはサシカマスの姿が。メリーがそれに気づくがウッウに突進をかまし、吹き飛ばしたが口からサシカマスを放出。バイウールーに直撃させた。

 

「ウッウのうのミサイル直撃!然しウッウも大ダメージを食らったッ!」

 

「ウッウ、大丈夫!?」

 

「クワ!」

 

「しねんのずつきッ!」

 

「来るよウッウ、ドリルくちばし!」

 

 再び頭に念を纏わせるバイウールーが地面を蹴り出して空中にいるウッウに飛び掛かる。一方のウッウも回転しながらバイウールーに向かって行く。両者がぶつかり合うが今度は爆発する形で相打ち。バイウールーとウッウ両者が地面に墜落し、そのまま倒れ込む。

 

「!」

 

「ウッウ、バイウールー共に戦闘不能!引き分け!」

 

「まさかのダブルノックアウト!激しすぎる攻防は波乱の幕開けとなった!」

 

「お疲れ様、ウッウ。後は任せて」

 

「ナイスファイト、バイウールー。ボールの中から応援よろしく…!」

 

 ダブルノックアウトで始まった一戦。私達それぞれボールにウッウとバイウールーを戻すと、次に繰り出したのは私がドラパルトでメリーはオレンジの狼のようなポケモン。見たことがある、妹紅さんが使っていたウィンディというポケモンだ。

 

「2体目はウィンディとドラパルト!蓮子選手は早くもドラパルト投入です!」

 

「昂って来た…!行くよウィンディ!とおぼえ!」

 

「ドラパルト、りゅうのはどう!」

 

 ウィンディが咆哮を上げる中、私はドラパルトにりゅうのはどうを指示。ドラパルトから吐かれた波動がウィンディに直撃し爆煙を起こすが、ウィンディはかすり傷を負っただけで怯み傷にはならず。身体を震わせるとドラパルトを見据える。

 

「しんそくっ!」

 

「しんそく?」

 

 私が疑問に思っているとウィンディが地面を力強く蹴り出し、ドラパルトの間合いに一瞬にて迫ってくる。これを見たメリーが少しばかり笑みを浮かべ…

 

「かみくだく!」

 

「接近だけが狙いか!ドラパルト、ドラゴンアロー!」

 

 ウィンディがドラパルトに噛み付く。ドラパルトは痛そうに口を開けたが、何とか反撃する形でドラメシヤを放出。一体目がウィンディを引き離し、2体目がウィンディを突進にてドラパルトの前から吹き飛ばす。吹き飛ばされたウィンディは地面を抉りながらドラパルトを見つめる。

 

「たたりめ!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 ウィンディが炎を吐いてくる中、ドラパルトが目を光らせ闇の念波をウィンディに送り込む。ウィンディが少し歯を食いしばった事により技は中断。ドラパルトが尻尾にて残火をかき消して行く中…

 

「ドラゴンアロー!」

 

「しんそくでかわして!」

 

 ドラパルトが再びドラメシヤをウィンディに向かって発射する中、ウィンディは2体のドラメシヤの突進をしんそくにてかわす。かわされた事に私は一息吐いたが、必死なのは向こうも同じ。だがその笑みは崩れる事はない。大歓声を聞きながら私達は気を引き締めた…




見てくださりありがとうございます。
また次回もしっかりと頑張ります。


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激しさを増して行くライバル対決

はーいどうもでぇーす。
調子がいいのか悪いのか分からない命です。今回も頑張ります。


「ドラパルト、ロックオン!」

 

「かえんほうしゃ!的を絞らせないで!」

 

 ドラパルトが目を光らせウィンディに狙いを定めようとしたその時。ウィンディが放った業火に視界を防がれた事によりドラパルトは技を中断。火炎を放ったウィンディは再度視界をその場に向けたドラパルトの見える範囲にいなく、砂埃を撒き散らしながらドラパルトの後方へ。

 

「かみくだく!」

 

「ドラゴンアロー!」

 

 ダメージを受けるのを覚悟だった。地面を力強く蹴り出したウィンディがドラパルトの方に向かっていき、牙を向ける。クルッと振り返った時には既に目の前。放とうとした攻撃も当然間に合わず、ウィンディの牙がドラパルトに刺さると噛みつきながらドラパルトを吹き飛ばす。

 

「りゅうのはどう!」

 

「しんそくでかわして!」

 

 吹き飛ばされながら波動を撃ち込むドラパルト。波動は動き出したウィンディに掠る事なく、ウィンディがいた場所に焦げ目を付けるのみ。私は歯を食いしばるとある事を思いつく。一か八かの賭け。私は集中力を高める。

 

「蓮子選手の眼差しがキツくなる!何か考えているのか!?」

 

「何考えているか分からないけど…ウィンディかみくだく!」

 

「…ここ!ドラパルト戻って!」

 

「っ!?」

 

「行ってルカリオ!」

 

 咄嗟のタイミングでドラパルトを戻し、ルカリオを場に出す。戸惑うメリーとウィンディを目の前にしてウィンディのかみくだくがルカリオに命中したその時、ルカリオは一瞬表情をしかめたがダメージを然程喰らっていないのは分かっていた。

 

「ルカリオ、はっけいッ!」

 

「ウィンディ、ルカリオを…!」

 

 噛みつかれたままルカリオは身構えるとウィンディが引き離す前に、その顔面に拳を叩きつけ殴り抜く。殴られたウィンディは地面を抉りながらメリーの前まで吹き飛び、会場からはどよめきが起きる。やっている自分が一番緊張している。だが少しだけ安心した。

 

「何というサイクル!かみくだくを予想していたとしか言いようがない見事な交代劇!」

 

「蓮子選手のルカリオって…」

 

「ああ、せいぎのこころ!かみくだくが来ることを予想してわざとルカリオで受けたんだ…!」

 

「すげぇ…!ルカリオのカウンターまで計算済みという事かよ!?」

 

(次をどうする蓮子…!さっきみたいな手は今段階では使えない…!)

 

 メリーがしてやられたと言わんばかりに苦笑いを浮かべる。観客達が人一倍声援を上げる中、私は深呼吸をし直し考えを練り直す。

 

「次をどうする蓮子!かえんほうしゃ!」

 

「押し切るしかない!ルカリオ、がんせきふうじッ!」

 

 ウィンディから地面を抉りながら火炎が吐かれて行く中、ルカリオは声を張り上げながら地面を叩きつけ、巨大な岩を出すと火炎をかき消しながらウィンディの元へ。ウィンディは自分の行動で何とか何個かの岩をかわしたが、残った一個が直撃。

 

 爆風が起きる中ウィンディ戦闘不能という結末をもたらした。

 

「ウィンディ、戦闘不能!ルカリオの勝ち!」

 

「相性を読んだ抜群のサイクル!メリー選手、してやられたような感じでしょうか!」

 

「まだ深呼吸をできる余裕もある…行くよアーマガア!」

 

 ウィンディを戻し次に繰り出したのはアーマガア。ルカリオと同じくはがねタイプのポケモンなのだが、ひこうタイプも持つ少し厄介なポケモン。私はルカリオを戻すと次に繰り出したのは…

 

「行くよ…イーブィ!」

 

「ブイ!」

 

「ここでイーブィ…」

 

「蓮子選手の選択はイーブィ!早くもダブルエースを場に出した形となりました!」

 

「行くよイーブィ…!」

 

 私はイーブィをボールの中に戻すとスタジアム中がざわめく。驚くメリーを目の前にして私はボールをダイマックスさせて行くと、後方に投げつける。戦いは中盤。そんなの言ってられない。私の中にあるありったけを…メリーにぶつける!

 

「キョダイマックスイーブィ!蓮子選手ここでダイマックスのカードを切ってきました!」

 

「燃えてくるよ蓮子!行くよアーマガア!ドリルくちばし!」

 

「ダイッ!バーン!」

 

「ブイッ!」

 

 アーマガアがドリルのように回転しながらこちらに向かって来たその時。イーブィの周りから噴射された炎がアーマガアを飲み込んで行き、地面周辺で大爆発を巻き起こす。私とメリー、さらに観客の視界が爆煙見えなくなる中、墜落して来たのはアーマガア。

 

 そして爆煙が晴れるとダイマックスの一撃に耐えきれなかったイーブィが元のサイズに戻る。

 

「アーマガア、戦闘不能!イーブィの勝ち!」

 

「一撃必殺!たった一撃のダイマックス技がアーマガアを倒したっ!」

 

「ダイマックス出されたら仕方ないか…お疲れ様アーマガア。何とかしてみせるよ」

 

「メリー選手3体に対して蓮子選手は5体!メリー選手、使って来た戦法に対応出来なかったか!」

 

 メリーがグッと表情を引き締め直すとアーマガアをボールに戻し、次に繰り出したのはヌメルゴン。イーブィ続投と行きたいがかなり疲労が溜まっている様子。私はイーブィをボールに戻すと次に繰り出したのは…

 

「行くよドラパルト!」

 

「ドラパルトが再びフィールドへ!先程はルカリオのお膳立てとなったドラパルト!さあヌメルゴン対ドラパルト!600族の戦いとなります!」

 

「りゅうのはどう!」

 

「こっちもりゅうのはどう!」

 

 お互いのフィールドにはドラゴンタイプ。種族が違うとはいえ種族値は同じ600。通の間では600族と呼ばれる両者のぶつかり合い。ヌメルゴンから吐かれたりゅうのはどう。そしてドラパルトが吐いたりゅうのはどうが正面衝突。火花を散らしながらも相打ちとばかりに爆発。

 

 爆煙が私とメリーの視界を見えなくなせる中、私は声を張り上げてドラパルトには指示を出す。

 

「ドラパルト!空中に上がってロックオン!」

 

「ヌメルゴン、10まんボルトで当たりの煙をかき消して!」

 

 ドラパルトは空中へ。そしてヌメルゴンは電撃で煙をかき消して行く。晴れた場所にドラパルトの姿はない。メリーが上を見上げ歯を食いしばったその時。ヌメルゴンに声を張り上げる。

 

「ヌメルゴン、りゅうのはどう!」

 

「ドラゴンアローッ!」

 

 空中から狙いをしっかりと定めたドラパルトが二体のドラメシヤを発射。一体はヌメルゴンが放ったはどうによってはたき落とされてしまったが、2体目が見事ヌメルゴンの頭に頭突きを喰らわせる。ヌメルゴンは少しふらつきながらも踏ん張り…

 

「たたりめ!」

 

「ヌメルゴン、りゅうのはどう!」

 

 ドラパルトが目を光らせようとしたその瞬間、ヌメルゴンが口を広げ波動を撃ち込んで行く。狙いを定めようとしていたドラパルトにこの一撃が直撃した。私は歯を食いしばる。一瞬気が抜けたと思ったからだ。

 

「ドラパルト、戦闘不能!ヌメルゴンの勝ち!」

 

「メリー選手追い縋る!両者のポケモンは拮抗とした状態になった!」

 

「お疲れドラパルト。ナイス仕事!後は任せて…!」

 

 元々ウィンディ戦にてそれなりのダメージを蓄積されていたドラパルト。ドラパルトに少し申し訳ない気持ちが浮かびながらも私は気を引き締め直すと、ドラパルトをボールの中に戻し繰り出したのはモスノウ。

 

「蓮子選手、次に繰り出したのはモスノウ!」

 

「ヌメ…!」

 

「行くよモスノウ!」

 

「モス!」

 

 メリー3体の私4体というほぼ互角のような展開ながら賭けに出過ぎた影響からか、何体かがダメージを負いながら戦っている状況。ヌメルゴンに対してモスノウで何が出来るのか。

 

 歓声が聞こえなくなるほどに集中し切っていた私の目に映るのは若干楽しそうにしているメリーの姿。私は拳を握りしめると息を吐きながら笑みを浮かべたのだった…




見てくださりありがとうございますー^_^


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有利か不利か。立ち塞がる耐久型のポケモン

お疲れ様です。命です。ちょっとコロナにかかっておりまして、少し違うsnsで文章練習して、文章を慣らしてからの今日となります。
なので1日遅れております。ブランクのような物もあるかもしれないので違和感を感じたら言ってください。


「りゅうのはどう!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 ヌメルゴンが放った波動とモスノウの身体から放たれた光の弾丸が衝突。光の弾丸は波動をかき消してヌメルゴンに当たって行くがその表情から痛みというのは見えない。するとメリーが動く。

 

「ポイズンテール!」

 

「迫ってくる気なら…!モスノウ、れいとうビーム!」

 

 尻尾に毒を纏わせヌメルゴンは地面を強く蹴り出すとエネルギーを溜め始めたモスノウに急接近。ビームを掠りながらも尻尾を振り回し、モスノウを地面に叩きつける。叩きつけられた事による砂埃が指示する私達の視界すら見えなくするが…

 

「マジカルシャイン!」

 

「もう一度ポイズンテール!」

 

 モスノウさえ動いてくれたら…!酷な頼みかもしれないが私はモスノウに技を使ってくれる事を祈りつつ、声を張り上げるともう一撃打とうとヌメルゴンが毒を尻尾に纏わせる。もう一度モスノウを見ようとするが姿が見えない。ヌメルゴンが悩んでいる隙に光が発生。

 

 無数の光の弾丸がヌメルゴンの身体に命中しながらヌメルゴンを煙が上がった場所から引き離す。煙を取っ払い健全ぶりをアピールしたモスノウに私は安心して一息吐く。

 

「強烈なカウンター!だが顔色が悪いぞ!毒を食らったか!」

 

「っ!」

 

「毒を喰らわせる狙いは達成したようだね…だったら!りゅうのはどう!」

 

「れいとうビーム!」

 

 ポイズンテールによる毒を浴びたモスノウに私は少し歯を食いしばる。そしてメリーが声を張り上げヌメルゴンにりゅうのはどうを指示。こちらも反撃する為にれいとうビームを指示する。同じタイミングで放たれた波動とビームが力強くぶつかり合うと爆煙が発生。

 

 再び私達の視界が見えなくなる中、爆煙が晴れるとそこにはヌメルゴンとモスノウ。同時に倒れている姿が。

 

「ヌメルゴン、モスノウ!お互いに戦闘不能!ダブルノックアウトとなります!」

 

「まさかのダブルノックアウトだぁ!ヌメルゴンはドラパルトとモスノウをフィールドから引き摺り下ろす健闘ぶり!さあ!状況が分からなくなってきました!」

 

 3対2の状況。メリーは2体の数だけでは不利だが私のポケモンは全て一度フィールドに出てダメージを…いやちょっと待てよ?完全不利かと思った私は表情を少し引き締め、一つのボールを出して見つめる。メリーはそんな私に目もくれず5体目のポケモンをフィールドに。

 

 蛇のようなポケモンだ。顔に尻尾が巻き付いているように見えるが何タイプか?だけどこの子にかけるしかない…!

 

「行くよ…キュウコン!」

 

「蓮子選手、ついに出してなかった最後の一体をフィールドに!メリー選手のフィールドにはサダイジャ!じめんとほのおのタイプ相性がどう左右するか!」

 

 蛇のようなポケモンはじめんタイプか…弱点を付けなくてこちらの弱点を突かれる形になるけど…じめんタイプならイーブィ以外は弱点を突かれる。数的にも有利はある。焦る前にどれだけ削れるかやるしかない!

 

「行くよキュウコン!おにび!」

 

「がんせきふうじ!」

 

 キュウコンから火の粉が吐かれる中、サダイジャは地面に頭を叩きつけどことなく浮かばせた巨大な岩を浮ばせキュウコンに降らせていく。キュウコンが放った炎がサダイジャに命中する中、キュウコンにも岩が命中。少しキュウコンが歯を食いしばるが大丈夫そうだ。

 

「強烈な一撃!然しサダイジャに負わされた火傷がキュウコンにとって追い風になるのか!?」

 

「まだまだッ!すなあらし!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 キュウコンから吐かれた炎が砂嵐を発生させようとするサダイジャに直撃して行くが、炎をかき消してサダイジャはフィールドをすなあらし状態にする。視界に若干入ってくる砂が近くにいるキュウコンすら見えなくさせる中、メリーは臆さず指示を出す。

 

「じしん!」

 

「もう1発!かえんほうしゃ!」

 

 サダイジャがジャンプし地面に強くぶつかった瞬間にサダイジャから衝撃波が発生。キュウコンが技を中断して衝撃波をまともに喰らうが、その後に仕返しとばかりにかえんほうしゃをサダイジャに再び直撃させる。キュウコンは少しふらついている。

 

 砂嵐は追加ダメージも喰らう天候…これじゃ追い打ちを喰らうだけだ。

 

「キュウコン一旦戻って!」

 

「ここで蓮子選手、キュウコンを戻します!」

 

「戻した?」

 

「行くよ…ルカリオ!」

 

 ここでキュウコンを失う訳にはいかない。そう思った私はキュウコンを一旦引っ込めると場に出したのはルカリオ。はがねタイプの為すなあらしのダメージは通らない。だが弱点を突かれる事に変わりはない。少し不利だが賭けるしかない。

 

「蓮子選手、再びルカリオをフィールドに!サダイジャ相手にどう戦うか!」

 

「バレットパンチ!」

 

「近くに来るなら…!じしん!」

 

 ルカリオは地面を蹴り出すとサダイジャがジャンプする前に懐に入り込むと、1発のパンチを当てた後に無数の拳を叩き込んでいき吹き飛ばすが技を中断させるに至らず、サダイジャは耐え切った後に大きくジャンプし地面に落ちて行く。

 

「ルカリオ!はどうだん!」

 

 サダイジャの地面にぶつかった際の衝撃波とルカリオのはどうだんが衝突。大きな爆発と共に爆煙が巻き上がる中、このタイミングですなあらしが無くなり、若干周りが見えやすくなった。後は…!

 

「ルカリオ、もう一度はどうだん!」

 

「アイアンヘッドで吹き飛ばして!」

 

 ルカリオが目を瞑りながら溜め込んだ波動を打ち込んだその時。サダイジャは頭にオーラを纏わせ、波動にぶつかる。激しい火花が散る中、再び巻き上がった爆煙。その煙が晴れたその時、その場にいたサダイジャが横に倒れ込み戦闘不能になっている姿が。

 

「サダイジャ!」

 

「サダイジャ、戦闘不能!ルカリオの勝ち!」

 

「サダイジャ落ちた!ついにメリー選手ラストとなります!」

 

 メリーが大きく一息吐く。3対1とはいえメリーのラストのポケモンは一度もフィールドに出ていない万全の状況。こちらは手傷を負わされている。ここにあのポケモンが出てきていないと言う事はラストはあのポケモンと踏んで間違いないだろう。

 

「あらかたの予想はしているんでしょ?蓮子」

 

「この試合になって一度も出てきてないなとは思ってた。いるのは分かってるよ」

 

「…私の集大成であり、最初のポケモン。その進化をアナタに見せる!行くよピカチュウ!」

 

「ピカァ!」

 

「フィールドにはルカリオとピカチュウ!ピカチュウはこの試合では一度もフィールドには出てきてませんでした!この万全ぶりがどう試合を左右するか!」

 

 フィールドにはピカチュウ。そしてメリーはピカチュウを戻し、ダイマックスバンドを光らせる。こう来るだろうと言う事も予想出来た。ボールが大きくなって行き、メリーは後方に投げつける。メリーの後方で巨大化していくピカチュウ。私は一息吐く。

 

「キョダイマックスピカチュウ!最後の最後でメリー選手、ダイマックスを切ってきました!」

 

「やれるねルカリオ」

 

「グウ!」

 

「よし…はどうだん!」

 

「行くよピカチュウ!キョダイバンライ!」

 

 ルカリオが波動を溜め込む中ピカチュウは電気を天に向かって放出。ピカチュウにはどうだんが命中する中、ルカリオに降り注ぐ雷。回避不能の一撃を前に爆煙が巻き上がる中、ピカチュウはダイマックスの一撃を経て元の姿に戻った。

 

 爆煙が晴れるとそこには戦闘不能となっているルカリオの姿が。

 

「ルカリオ、戦闘不能!ピカチュウの勝ち!」

 

「キョダイマックスの一撃にさすがに耐えきれず!戦闘不能ッ!」

 

「お疲れ様ルカリオ。後は任せて」

 

 ピカチュウのキョダイマックスを解かせただけでも立派。ルカリオに感謝を述べた私はキュウコンをフィールドに。ピカチュウは少しのかすり傷のみでキュウコンと対する事になる。私は深呼吸をすると表情を引き締めピカチュウとメリーに対するのだった…




見てくださりありがとうございます。
次の話からは多分あるブランクが無くなると思います。


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勝者と敗者 決着の時

お疲れ様です。命です。
どんな出来になるか分かりませんが頭はしっかりと回ってくれてます。
しっかりと書いていきたいと思います。


「多くのドラマを生み出したセミファイナルもついにクライマックス!蓮子選手2体、メリー選手はピカチュウを残すのみ!このクライマックスを制するのは果たしてどちらか!」

 

「私にはこの子と対面させないと行けないポケモンがいるの!だからキュウコン、アナタには退場してもらうわ!ピカチュウ、10まんボルト!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 ピカチュウが放って来た電撃とキュウコンが放った火炎が衝突。互角にぶつかり合わないまま、爆煙と化すとその流れでメリーが声を張り上げる。

 

「あなをほる!」

 

 煙が上がっている中ピカチュウはメリーの指示で地面の中に潜り込むと、音だけが聞こえて来たキュウコンが辺りを見渡す中、キュウコンの真下から飛び出しキュウコンに衝突し上空にへと頭突きで吹き飛ばす。空中から下にいるピカチュウを見据えるキュウコン。

 

 そんなキュウコンを見て私は指示を出す。

 

「じんつうりき!」

 

「キュウ!」

 

「ピカ!?」

 

「ただでやられないキュウコン!ピカチュウの動きを縛ったッ!」

 

「そのまま地面に叩きつけて!」

 

 空中から地面に落ちるまで僅か数秒。ピカチュウが地面に落ちて行くたった数秒の中で念力で動きを縛ると、そのまま自分が地面に落ちている間にピカチュウを地面に叩きつけた。地面にヒビが入り、砂埃が広がる中メリーは表情を引き締めながら…

 

「でんこうせっか!」

 

「ッ!?」

 

 メリーの声と共に砂埃が起きた中心から地面を蹴り出す音。砂埃をかき消しながらピカチュウが出現すると、3歩地面を踏まないうちにキュウコンに思い切り体当たりをしキュウコンを吹き飛ばす。ある程度吹き飛びながら踏ん張ったキュウコンを見てメリーは…

 

「かみなり!」

 

「おにび!」

 

「おにび!?」

 

 身体中に電気を溜め込んだピカチュウがキュウコンに再び電撃を撃ち込んでくる中、私が出した指示はおにび。少しの炎がキュウコンに電撃が命中している間にピカチュウに命中。その一瞬は電撃による爆煙で客には見えなかったが…

 

 爆煙が晴れピカチュウが火傷を負い、キュウコンが息を切らす。私が歯を食いしばる中、キュウコンは倒れ込む。

 

「キュウコン!戦闘不能!ピカチュウの勝ち!」

 

「やけどという置き土産を残してキュウコンダウン!さあ蓮子選手もついに残り一体!ついにどちらかが倒れた瞬間!勝者と敗者が決まります!」

 

「やけどを負わされたか…でも…!」

 

「お疲れ様キュウコン。ナイスファイト。これだけやってくれたら…!最後だよイーブィ!」

 

 キュウコンはピカチュウにやけどを負わせた事とダメージを負わせてくれた。充分だ。残ってるイーブィにとってはかなりのメリットとなる。私はイーブィをフィールドへ。メリーが笑みを浮かべている。この時が来るのを…彼女が一番望んでいたかもしれない。

 

「蓮子!ピカチュウとイーブィ。私達が最初に貰ったポケモンだったよね?なのに、一時私はピカチュウを外したりしてスランプにハマって…」

 

「…メリー…」

 

「イーブィもルカリオが出て来てから影が薄くなっていた。でも私達の戦いの中でこの2体は最後のフィールドに立ってる!蓮子も私もこの子達より明らかに能力がいいポケモンを連れているのに!」

 

「そうだね。泣いても笑ってもこの子達で終わる」

 

「そう…!だからこそ結局どちらが強いか!決着を付ける!」

 

 メリーの言葉にスタジアム中が大歓声を上げる。ピカチュウとイーブィは向き合いながらニヤリと笑う。何故だろうか、今だけはその気持ちが直接伝わってくる。私の中の心の鼓動が早くなりワクワクが止まらない。改めて気を引き締め私達は指示を出す。

 

「10まんボルト!」

 

「めらめらバーン!」

 

 ピカチュウが電撃を放って来てイーブィが身体に溜め込んだ炎を一気に放出して行く。お互いが火花を散らしながらぶつかり合い、爆煙を巻き上がらせる中爆煙で視界が見えなくても私達は怯む事はなかった。

 

「でんこうせっか!」

 

「ほしがる!」

 

「爆煙の中、動く音が聞こえてきます!お互いの場所が分かるとでも言うのでしょうか!?」

 

 爆煙の中地面を蹴り出す音を響かせながら動いた両者。私の視界には見えないが確かにぶつかった音が聞こえ、そして煙が晴れると頭をぶつけ合っているイーブィとピカチュウの姿が。

 

「かみなり!」

 

「押し切るしかない!イーブィ、そのまま突っ込んで!」

 

 ゼロ距離から電撃を溜め込もうとするピカチュウに対して近くで技を放つのは不可能だと判断した私はイーブィにそのまま突っ込む指示を出す。メリーが驚く中、イーブィは声を張り上げながらピカチュウを頭突きで吹き飛ばし技を中断させる。

 

「脅威の執念!技を中断させた!」

 

「きらきら…ストームッ!」

 

「もう一度かみなりッ!」

 

 ピカチュウが電撃を溜め込み、イーブィが念波を天に放つ中巨大な星が空から降り注ぐ中ピカチュウの電撃がイーブィに向かって行く。ぶつかり合う星と電撃。火花を通り越した光のような物がスタジアム中を包み込む中、星と電撃が消滅する時に爆発を巻き起こす。

 

 爆風で私達まで吹き飛ばされそうになる中、私はありったけの声を張り上げる。

 

「めらめらバーンッ!」

 

「10まんボルトッ!」

 

 イーブィが私の声を聞き取り、炎を身体に溜め込んでいく中ピカチュウも電撃を身体に溜め込む。両者声を張り上げながら炎と電撃をぶつけ合って行く。爆煙が晴れたら次は電気と炎。私達も感覚で指示を出してるようなそんな感じの中、ピカチュウとイーブィも歯を食いしばる。

 

 ピカチュウがやけどのダメージで一瞬技の威力を弱めたその時。イーブィが炎を強め、電撃を一気に押し込んでいきピカチュウに炎を直撃させる。

 

「めらめらバーンがピカチュウに命中ッ!やけどが響いたッ!」

 

「ッ!」

 

 ピカチュウがいた場所から煙が巻き上がり、ピカチュウが息を切らしながら煙を振り払う中イーブィを見据える。耐え切ったとスタジアム中が大歓声を上げ、私もさらに気を引き締めたその時。ピカチュウはフラッと目を瞑った瞬間、そのまま倒れ込んだ。

 

 スタジアム中から伝わって来た熱気が一気に凍りつく。審判が慌ててピカチュウの元に駆け寄ると…

 

「…ピカチュウ、戦闘不能!よって勝者宇佐見蓮子選手!」

 

「決着ッ!激戦に終止符!4人によるセミファイナルを制したのは蓮子選手ッ!」

 

 私の中の時が一瞬止まったようなそんな気がした。何も音が聞こえなくなり、メリーが悟ったかのように目を瞑りピカチュウに近づいて行く中、イーブィが私に飛びかかって来た。

 

「ブイ!ブイ!」

 

「イーブィ…?」

 

「…何ボーッとしてるの蓮子。アナタは勝ったんだよ。スタジアムの歓声を聞いてごらんよ」

 

 メリーが近づいて来て勝ったと言う実感を得た。スタジアム中の歓声が再び聞こえて来て、喜んでいるイーブィに笑みを浮かべ軽く撫でる。そして目の前にいるメリーと笑みを浮かべながら向き合い…

 

「ありがとうメリー。アナタがいなかったらきっと…私ここまで進めてなかった」

 

「礼はこっちの方だよ蓮子。最高のバトルをありがとう」

 

 メリーが差し伸べて来た手を私は力強く掴む。いつだって話に出て、いつの間にか遠くに行っていた気がした私の最高のライバル。握手を交わした私達を見てスタジアム中から拍手が送られる中、スタジアムで見ていたとある女性に慧音さんが近づく。

 

「勝ち上がったのは蓮子だったな。推薦したお前はどう思う?」

 

「悪くなかったんじゃない?決勝でやり合うとは思ってなかったけど、この出来じゃないと私も燃える物が出てこないから」

 

 会っていたのは霊夢さん。私達が歓声に応えているのを見ながら笑みを浮かべていたがその目には確かに闘志が宿っているとそう慧音さんは確信していた…




見てくださりありがとうございます。
最後だれた感じはありましたが自分の中では問題なく行けたんじゃないかなと思います。次は閑話回になります。


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健闘を讃えあう中での一幕

お疲れ様です。命です。
今回は予告していた通り閑話回となります。では書いていきます。


 スタジアムで浴びた大歓声がまだ頭の中で響いている。無音の筈の着替え室なのに耳の中と頭の中では未だにあの音が残ってる。信じられない体験をしていたかもしれない。集中していて雑音は全てかき消すようにしていたけど、胸の高鳴りが止まらないのが答えなのかもしれない。

 

 着替え終わり私は静かに胸に手を当てながら軽く微笑む。自分に気合いを入れ直すかのように一息吐いた私はロッカーに掛けていたバッグを手に取り、着替え室から出る。そこにまずいたのは控え室にいたメリー。

 

「蓮子。お疲れ」

 

「メリー…」

 

「わざわざ出てくるのを待っていたのよ?きっと同じ感想を抱いているんじゃないかって思って」

 

「同じ感想?」

 

「幸せな時間だったと思わない?私にとってはもう終わったけど、あの時間だけは幻想郷全体が私達に夢中だった事」

 

 待っていたメリーの言葉から感じられた悔しさ。だがそれ以上にメリーはあの大歓声でやれたという事を幸せに思っているように感じた。メリーが私に見せた笑顔。私は少しキョトンとした表情を浮かべていたが彼女の言葉の意味をしっかりと理解すると、頬を緩ませた。

 

「私とメリー。私達が考えている事が一緒なら…まだやってるようなそんな感じ…とか?」

 

「そうだね。蓮子と考えていた事は一緒かもしれない。本当に残っているよ。頭と耳、そして目に。全てが思い返せばサッとそこにいる気分になる」

 

「集中していてとんでもない事言ってるんじゃない?」

 

「あー…言っていたかもしれないね」

 

 私の一言にメリーが苦笑いを浮かべる。つい先ほどの事なのにもう過去について語っているような感じになってしまっている。それ程までに長そうに見えてあっという間だったんだと思う。私とメリーで談笑していると控え室に入って来た2人の男女。

 

 魔美と霊矢だ。キョトンとする私達を見て何やら急いでくれと言わんばかりの表情で…

 

「いつまで談笑しているつもりなんですかね、2人とも」

 

「健闘ぐらい讃えあってもいいじゃん。それか何か用事でも?」

 

「そう、まさかのその用事。そこにチャンピオンがいるの。談笑するのもいいけどまず貴女達の健闘を讃えてあげたいチャンピオンに会ってきて」

 

「れ、霊夢さんが!?」

 

 すぐ近くに霊夢さんがいる。その事に驚きしかないが魔美の一言でひとまず私とメリーはロビーの方に向かう。霊夢さんもチャンピオンという立場で暇ではないと思う。慌ててロビーに辿り着くとそこにいた霊夢さんが傍にいた慧音さんが見てる前で私達に近づいてくる。

 

「チャンピオンを待たせるなんて中々の大物ね、2人とも」

 

「本当にすいません!魔美と霊矢に言われるまで気づきませんでした!」

 

「全く…私と慧音さんの元に来ようとしたファンを止めてくれているスタッフの気持ちにもなりなさいよね」

 

(霊夢さんが堂々とロビーにいるからじゃ…)

 

 慧音さんがゆっくりと私達の元に近づいてくる中、霊夢さんはため息を吐く。謝罪の言葉を述べるメリーの隣で思わず心の声が出てしまいそうになったが、霊夢さんはその後笑みを浮かべながら私達の方を見つめると…

 

「何かあっという間に強くなったわね2人とも。私に推薦状を貰いに来た時がつい最近のように感じるわ」

 

「本当にお疲れ様だ2人共。霊夢はメリーや蓮子が若干悩みながら勝ち進んでいた時にとんでもなく心配していてな。付き添いでいたスタッフが見てられないと私に相談を持ちかけた程だったんだぞ?」

 

「ちょっと慧音さんやめてよ!霊矢は輝夜に何か誘われるわ、メリーはスランプそして蓮子が悩んでる。私の推薦者ばかりだからさすがに焦りは…するでしょ」

 

「霊夢さん…」

 

「そんな有り難いみたいな眼差しで見ても何も出来ないわよ?蓮子。アンタ私の推薦者2人をぶっ倒したんだから上がって来た残り3人の分まで戦う事を今誓いなさい」

 

 霊夢さんが若干恥ずかしいからか顔を赤くする中、私はそんな霊夢さんに対して頷き再度気を引き締める。霊矢とメリーは私と同じく霊夢さんの推薦者。そして魔美はライバル魔理沙さんの推薦者だ。気にしてはダメだが終わらせてしまったのは胸に刻んだ方がいいかもしれない。

 

 そんな中メリーが何か気になったかのように一言呟く。

 

「あの霊夢さん…魔理沙さんには…」

 

「魔美の事よね。…私から声は掛けちゃ行けないとは思う。結果的に私の推薦者がファイナルに進出した訳だから。でも何か言っていたのよね慧音さん」

 

「そうだな。…会ったらという言葉を付け加えていたがファイナルの決勝で待ってろとだけ言っていた。それだけで分かるな蓮子?」

 

「…はい」

 

 きっととんでもなく怒りに打ち震えていたんだとは思う。魔理沙さんの口からではなくてもそれだけは理解できる。魔理沙さんはこの幻想郷では1番のジムリーダー。ジムリーダーと対するトーナメントにおいて魔理沙さんは優勢と言ってもいいかもしれない。

 

 覚悟が自然と芽生える。そしてそんな私を察するかのように霊夢さんが…

 

「当然慧音さんとも当たる可能性がある訳だから。メリーか蓮子をどちらかが上がってくるのを誰よりも待っていた人だからね」

 

「お、おい霊夢…」

 

「とりあえずよ。勝敗はついたけどナイスファイト。あの盛り上がり方はチャンピオンマッチにも引けを取らないと思うわ。私からも一言」

 

「……」

 

「チャンピオンマッチで待ってる。変な試合を見せたら許さないからね。長話もあれだし私達はこれで退散するわ。お疲れ様」

 

 霊夢さんと慧音さんがその場から去って行く。霊夢さんに言われて改めて気が引き締まる。スタッフが抑えていたファンが離れて行く中、去り行く霊夢さんと慧音さんの背中を見つめる私達の隣に控え室から戻って来た魔美と霊矢の姿が。

 

「えらく長く話し込んでいたね。戻ってくるタイミング迷っちゃった」

 

「霊矢は何か言われた?一応私達と同じ推薦者でしょ?」

 

「ナイスファイトとは言われましたよ。多分貴女達が話し込んでいる間に話したい事は話していたんじゃないですかね」

 

「そっか…」

 

 霊夢さんは魔美と霊矢とも会話をしていた。それを聞いただけでもホッとはした。メリーがニヤリと笑みを浮かべながら頷いている間に魔美が私とメリー、そして霊矢の方を見渡しながら一言呟く。

 

「3人共疲れたよね?ひとまず屋台行こうよ。メリーがさっきこれでもかというぐらいに見ていた屋台があるんだ」

 

「は、恥ずかしいからそういう話しはやめてよ魔美!」

 

「とりあえず乗った。お腹も減ったし」

 

「言ったからには美味いもの食わせてくれるのでしょうね?」

 

「あ、圧が…」

 

 魔美と霊矢そしてメリーとスタジアムを出ると再び目に入った大量の屋台。何か3人と話していると疲れが吹き飛んだ気分になる。階段をすぐ降りたその時。とある緑髪の女性が近づいてくるのが目に入った。

 

「ごめん3人共。ちょっと先に行ってくれないかな」

 

「え?あ、うん分かった」

 

 私は魔美達3人に謝る形で3人の元から離れて緑髪の女性と対面する。周りが少しざわついている。私目的なのか女性目的なのかは分からないが、ひとまず女性は私に近づくと小さく一礼をし笑みを浮かべながら話しかけて来た。

 

「折角の機会。心遣い痛み入ります。私は東風谷早苗。この守矢スタジアムの管理人という立場にいます」

 

「スタジアムの管理人さん?確か早苗さんって諏訪子さんに話しをされていたという…」

 

「諏訪子様を知っておられましたか。私の立場は管理者と神社の巫女の二つ。諏訪子様には巫女としてお世話になってます」

 

「それで待っていてまでの用事は…?」

 

「私とバトルしてください」

 

 時が止まったように感じた。バトルを見て来たなら疲弊してるのも…いやスタジアムの管理人だからかバトルまでは見切れていないのか?思わず一息吐いてしまった私に対して早苗さんは…

 

「もちろん今すぐとは言いません。明日の午前。バトルコートを借りて待ってます故、もしよろしければお願いします」

 

「…確かファイナルは夕方でしたっけ。わかりました」

 

「ありがとうございます。私から告げたいのはそれだけです。どうぞ合流なさってください」

 

「あ、はあ…ありがとうございます?」

 

 何かを隠されているような気がするがひとまず早苗さんにお礼を告げてその場を後にする。メリー達と合流し守矢スタジアム付近の屋台を再び回るのだった…




見てくださりありがとうございます。
次回はファイナル前では最後のバトルにはなるかと思います。
ではお疲れ様でした。


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その笑みは余裕かそれとも…

お疲れ様です。命です。
スマホにて書き続けて来たハーメルンでの小説ですが、もう少しでパソコンに変わるかもしれないです。
その時は報告します。


 かつてライバルとして争っていたメリー達と時間を共にしたその日。守矢スタジアムでの健闘を讃えあいながら過ごした日が過ぎ、あっという間にファイナル当日の日を迎えた。スタジアム付近の旅館で一泊した後、朝早くに旅館を出た私はバトルコートにへと向かう。

 

 理由は昨日疲れ切っている私にバトルしようと言って来た早苗さんに会うためだ。午前とは言ったが日が完全に出切っていない時間帯。果たして早苗さんはいるのだろうか。

 

「おはよう御座います。もう少し遅めにくると思ってました」

 

「私も早めに出たとは思いましたけど…まさかいるとは思ってなかったです」

 

「準備には時間をかけるタイプでして。私もつい先ほど来たばかりですよ」

 

 その微笑んだ表情は昨日と一切変わらない。バトルコートの扉を開けそこにいた早苗さんに話しかけると少し警戒する私に対して変わらぬ口調で話し始めた。先程来たというがこの人からはどうもどう考えているのか全く読み取れない。不気味という言い方がいいのかもしれない。

 

「八雲紫はこの大会を自分の物かと言わんばかりに威張っていますが…我々守矢がこのスタジアムを貸さなければ始まらない事」

 

「……」

 

「アナタを賞賛した諏訪子様は人を見抜くのが得意なお方。…それだけに賞賛した実力、オーラというのを体感して見たくて」

 

「守矢に対して随分自信を持ってるんですね」

 

「それが私の生きる道ですから。さて準備が出来たら距離を取って下さい。ダラダラと話しましたが私も戦いたいのは事実ですから」

 

 早苗さんは目を瞑りながら淡々と話すと私から少しばかり距離を取って行く。その冷静そうな表情は一切変わらない。私は少しばかり息を吐くと早苗さんから距離を取り、モンスターボールを構える。「用意は出来たようで」と早苗さんが呟くとすぐにポケモンをフィールドに出す。

 

 出て来たのはメリーの時に対戦したアーマガア。相性通りに出してもいいかもしれないが夕方には1発勝負の本番が待っている。いつもの戦いは出来ない。私はエースのイーブィをフィールドに出す。

 

「ブィ!」

 

「イーブィですか。いきなり本気ですね」

 

「朝から対応出来るのがこの子くらいなんで」

 

「なるほど…では行きます。アーマガアはがねのつばさ」

 

「めらめらバーン!」

 

 アーマガアが声を張り上げ翼を光らせながらイーブィに向かってくる中、イーブィは身体を燃え上がらせ体全体から炎を放出していく。アーマガアにかわす素振りはなし。直撃となり大きな爆煙が広がる中、爆煙が消え視界が開けるとそこにはアーマガアが戦闘不能となっている姿。

 

「なるほどお強い。アーマガアも中々に鍛えているのですが」

 

(戦闘不能になって当然と言わんばかりの態度…あまりにも真剣さが無さすぎるような気がする…)

 

「では次行きます。行ってくださいフライゴン」

 

「フライゴン?」

 

 アーマガアを戻し出て来たのは緑の体と赤い目をした龍のようなポケモン。私は完全に初見のポケモンだ。見た目は龍みたいだけどとりあえず様子見みたいな感じは必要かもしれない。

 

「びりびりエレキ!」

 

「ワイドブレイカーでかき消して下さい」

 

 身体中に溜め込んだ電気をイーブィは一気に放出。一直線にフライゴンに向かって行くが尻尾で薙ぎ払いあっさり電気をかき消す。技の衝突で消えたにしてはあっさり過ぎる。じめんタイプだとすぐに悟った私は他の技で行く事にした。

 

「イーブィ、きらきらストーム!」

 

「じしん」

 

 イーブィが声を張り上げ空に光を打ち込むとその間にフライゴンが尻尾で地面を叩きつけ振動を起こすと、イーブィにも一撃が命中。イーブィが少し歯を食いしばっている間に空に打ち込まれた光がフライゴンの元に降り注ぎ直撃。対抗するような指示すら出さなかった事に私は驚きを隠せずにいた。

 

 直撃の爆発と共に広がった爆煙が消えて行くとそこにいたフライゴンが一撃で戦闘不能になっている姿。少しは悔しいのかなと思いきや早苗さんの表情は何かに納得したかのように充実したようなそんな表情。

 

「どうかなされましたか?勝負に集中出来ていないようですが?」

 

「…いえ。何でもないです」

 

 どういう感情で早苗さんがバトルしてるのか全く読み込めない。そんな中で早苗さんは首を傾げるとフライゴンを戻すと最後の一体と呟いた上で水色のポケモンを出して来た。

 

「あら?見たことありませんでしたか?よく博麗神社方面にいますが」

 

「博麗神社方面には霊夢さんに推薦状を貰った時に行ったきりなんで」

 

「なら仕方ないですね。この子はギャラドスと言います。さて淡々とここまでやられましたが簡単に3タテを許すわけには行きません。少し反撃させていただきます」

 

「こっちも全力で行きます…!めらめらバーン!」

 

「ぼうふう」

 

 ギャラドスというポケモンに対して私はイーブィにめらめらバーンを指示。イーブィが再び体全体に炎を宿し一気にギャラドスに放出して行く中でギャラドスは風を巻き起こし炎に向かわせて行く。竜巻のような勢いで炎を巻き込むとそのまま消滅させる。

 

 驚いた私が咄嗟に次の指示を出す。

 

「びりびりエレキ!」

 

「たきのぼり」

 

 イーブィが再び体全体に電気を纏わせ一気にギャラドスに向かって放出。ギャラドスは身体に水を纏わせるとそのまま一気にイーブィに向かって行くが、途中でびりびりエレキの電気が水に当たり感電。そのまま水のバリアのような物が解け、ギャラドスがそのまま倒れ込む。

 

 戦闘不能となった。あっさりという言葉で片付けてもいいのかそれとも早苗さんが本気を最初から最後まで出さなかったという言い方の方が正しいのか。ギャラドスを戻した早苗さんが…

 

「お見事です。まさか3タテされるとは。ファイナルまで上がって来たチャレンジャーの実力。この身でしっかりと体験させていただきました」

 

「早苗さん」

 

「何でしょう?」

 

「…失礼な事を言いますが本気でやりましたか?3体とも本来ならかなり強いポケモンだと思います。戦術も表情も…何か不気味だったというか…」

 

「私がもっと実力を出せたと?…どうでしょうか。試すように見えたのならそうかもしれないですし、本気を出した戦いをしていないのならそうかもしれないですね」

 

 早苗さんは私の問いかけに関して笑みを浮かべながらそう呟いた。上手く問いかけをかわされたというべきか。本当に何を考えてどういう意図でバトルしようと言って来たのか全く分からない。私の考えすぎだろうか?誰にもこんな態度なら考え過ぎかもしれないが…

 

「私はアナタのようには強くありません。本気を見せていないように感じたのなら私の無力だと思いますよ」

 

「…そうですか」

 

「私は満足です。いい物を見させて頂きました。諏訪子様が期待したアナタの実力、後はスタジアムにて見物させて貰おうかと思います。それでは」

 

 早苗さんはそう言ってギャラドスを戻し頭を下げるとその場を後にして行く。何だろう勝ったのに何だかやり切れないような気持ちは。勝って嬉しいはずなのに考え込むだなんて私はなんて失礼な事を考えているのだろうか。

 

「何かスッキリしない…とりあえずポケモンセンターによろう…」

 

「ブィ!」

 

「うん…とりあえずイーブィを回復させなきゃだからね」

 

 気分良さげに笑みを浮かべるイーブィに対して私は笑みを浮かべながら呟き返すと一旦イーブィをボールに戻し、その場を後にして行く。この後この考え込んでいた事が私の中から消えていたのだが、この早苗さんとのバトルをきっかけにとんでもない事が起きようとしている事はまだ私は知らない…




見てくださりありがとうございます。
長過ぎてもアレなんで1話で終わらせました。次回からファイナルに入ります。


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ファイナルの開幕

お疲れ様です。今回はファイナル開催ですがバトルの予定はありません。そこだけよろしくお願いします。


 私が早苗さんとバトルしてから少しの時間が流れ、ファイナル開催式の時間が刻々と迫る中再び守矢スタジアムに出向いた私を待っていたメリーが私にとある事を告げる。

 

「リーグ委員長が守矢スタジアムの経営者と話して不在?」

 

「うん。2時間くらい前だったかな。急にそれが決まったから運営も大慌てだったみたいだけど、とりあえずチャンピオンマッチまでは出番がない霊夢さんに代わりに開催宣言をしてもらう形で片付いたみたい」

 

「あまりに急だね…ファイナルの進行に問題はないって事?」

 

「うん。でも知っていなければいけない事だから慧音さんが蓮子に伝えておけって」

 

 スタジアムの経営者…早苗さんと?ファイナル開催式は何事もなく開催されるそうだがリーグ委員長…確か紫さんだったか。出れなくなるのは少しびっくりだな。メリーの伝えてくれた言葉に私は感謝するとファイナル開催式に出席する為にスタジアムへ。

 

 スタジアムの入り口に入ると客席にいるファン達が自分を見つめてくる。セミファイナルの時もそうだったが、やはり守矢スタジアムに舞台を移すとその歓声というのに重圧のような物を感じるような気がする。グッと気を引き締め更衣室へ足を運ぶ。

 

「あ」

 

「あ、あれ霊夢さん!?何でこんな所にいるんですか!?」

 

「うっさいわね。紫が祝辞を読む予定だったのにバックれたから覚えるのに必死なのよ。いくら出番がないとはいえ便利屋じゃないっての…」

 

 更衣室にいたのは何と霊夢さん。チャンピオン専用の部屋もある筈なのだが…どうやら私しかここには来ないというのを見越して紫さんが読む予定だった祝辞を頭に叩き込んだらしい。いや私しか来ないとは思うけど何故ここで…

 

「ち、チャンピオン専用のルームとかは…」

 

「あんな所喧しくて覚えられないわよ」

 

「ええ…」

 

「とりあえず控え室で待ってなさい。チャンピオンは伊達じゃない事を見せてやるわ」

 

 チャンピオンはポケモンバトルの実力なんじゃ…本当に大丈夫なのだろうかと内心思いながらもとりあえずユニフォームへの着替えを済ませる。理由は何であれ覚えるのに真剣な表情で祝辞を確認してるので、自分が心配する事ではないだろう。

 

 少し一息を吐くと霊夢さんの気を紛らわさないように軽く一礼をすると私は更衣室から控え室にへと向かって行く。このユニフォームを着たからには歓声はあまり聞いてはいけない。少しプレッシャーになってしまうからだ。

 

「宇佐見蓮子さんですね。チャンピオンは…」

 

「更衣室にいました。専用ルームでは集中したい事が出来ないと言ってましたよ」

 

「昔から更衣室で何かを確認したり気合いを入れたりする人でしたから。控え室に案内します」

 

 控え室の扉前にいたスタッフさんの一言で初めて更衣室にいた理由を理解した。だったらあれは霊夢さんなりの一つの戦闘態勢だったかもしれない。そんな事を考えながら控え室に案内されるとそこには既に揃っているジムリーダー8人。

 

 ジムチャレンジで対している時は何とも思わなかったがこうやってみると多かったんだなと何となくながら感じる。少し驚く私の元に慧音さんが近づいてきた。

 

「何だ蓮子。今更怯えた訳ではないな?」

 

「無我夢中で戦っていたので改めて見て驚いただけです」

 

「そうか。対戦相手とかを確認しておけよ。誰と当たるかで戦略が変わってくるが…」

 

「?」

 

「答えを言うならお前の相手は私だ」

 

 慧音さんがニヤリと微笑む。この発言を私は一瞬疑ったがトーナメント表を確認するとそこには私の対戦相手の名前に慧音さんの文字が。一層気を引き締める。トーナメント表が書かれたモニターを確認しに行った私の元に慧音さんが再度歩み寄り…

 

「お前とはある程度縁があるが…当たる以上は負ける気はない。ジムチャレンジのようなお試しでは行かないからな」

 

「はい…!」

 

 慧音さんの次は輝夜さんや美鈴さんの名前があるがまず慧音さんに集中した方がいいだろう。その当人たちは話しかけられないほどに集中し切っている。少しリラックスしているのは慧音さんと魔理沙さん程度か。

 

 全員と当たる可能性があると考えるととんでもなく気が引き締まる。そんな私と慧音さんの元にベンチに座っていた魔理沙さんが立ち上がり、スッと私に歩み寄る。

 

「…魔理沙さん…」

 

「他の奴と一緒で何か試合までのルーティンとかを持っていたら良かったのにな私も。…言わなくてもほとんど分かっているな?」

 

「大体は。魔美が敗れた地点で真っ先にその矛先が私やメリーに行くのは理解してました」

 

「お前とは決勝まで当たる事はない。慧音さんにあっさり負ける事があるなら私は許さない。分かったな?」

 

「…はい」

 

 魔理沙さんからの言葉からはこの前みたいな緩んだような気は感じられず、感じられたのは明らかな圧。決して感情に突っ走っていないのも大体理解は出来る。感情で語りかけているなら隣にいる慧音さんが止めに入っている筈。

 

 冷や汗を私がかきながら頷く中、スタッフの方が今控え室にいる全員に開催式がそろそろ行われるから向かってくれと語りかける。それぞれのルーティン、決まり事をこなしていたジムリーダー達が一斉にスタジアムのバトルコートに向かって歩き始めて行く。

 

「決勝でお前に勝つ。今告げるのはそれだけだ」

 

「分かりました…」

 

「火花を散らすのもいいが開催式もある。少し後にしてやれ」

 

「分かった」

 

 魔理沙さんに思い切り圧をかけられた後に私は慧音さんと共にバトルコートにへと足を運ぶ。大歓声が上がるが今はジムリーダー達に向けられた感じだろう。ジムリーダー達が適当な位置につく中、守矢スタジアムのライトが一度全部消灯され…

 

「皆さんお待たせいたしました!セミファイナルを勝ち上がった蓮子選手を含めたジムリーダー9人で戦うファイナルトーナメント!このトーナメントを勝ち上がった者が霊夢選手が待つチャンピオンマッチにへと進出となります!」

 

「……」

 

「それではまずは開催宣言をしてもらいましょう!このファイナルトーナメント開催を宣言してくれるのはチャンピオン霊夢選手です!」

 

 消灯されたライトが登場してきた霊夢さんに差し向けられる。スタジアム中が地響きが起こりそうな大歓声を上げる中、霊夢さんが若干眩しそうにしながら息を整える。スタジアム中の視線が今だけチャンピオン霊夢に差し向けられる中…

 

「私は博麗霊夢。訳あってリーグ委員長の祝辞を述べさせていただくわ。ファイナルトーナメント開催にあたって散って行った多くのジムチャレンジャー。残った9人で私の所にまで上がってくるのを大いに期待してるわ」

 

「ファイナルトーナメント開催をここで宣言するわ!」

 

 霊夢さんがそう声を張り上げると祝辞を述べていた時に静かだったスタジアム中が再び湧き上がり、ジムリーダー達が気合いを入れ直したようなそんな表情を浮かべる。消えていたライトが再びつき直し私も拳をグッと握りしめながら気合いを入れ直す。

 

「やり切ったな霊夢の奴…」

 

「急遽開催宣言の祝辞を述べるのが決まったんですけどね。結局あの人のパフォーマンスみたいになりました」

 

「パフォーマンスをやるなら覆してやればいいじゃないか。そろそろ土を付けないと私達もジムリーダーをやっている意味がない」

 

 準備のため一度控え室に戻る私達。その前にいるジムリーダー達から思わず喋り声が漏れる。聞こえてきた声に歩きながら耳を澄ました私だったが、慧音さんがいつもの事だ気にするなと私に一言告げる。

 

 私は頷きながらも心の中では霊夢さんに対しての闘志を熱く燃やしていた…




見てくださりありがとうございます。
次回から本格的にバトルが始まります。蓮子の相手は慧音。
思う存分頑張りますので読んでくださると嬉しいです。
では次回へ。


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お世話になった人物との再戦

お疲れ様です。いやあ体調不良でして休むのを考えましたけど案が湧いたので書きます。よろしくお願いします。


 ファイナルの開催が霊夢さんによって宣言され多くのファンが湧き立つ中、私やジムリーダー達も登場場所を変えるために9人同じところにいたのが見事に5人と4人に分かれた。魔理沙さんはシード。トップジムリーダーである特権なのだろうか。

 

 TVで行われているメディスンさんと輝夜さんとの試合に目を凝らす中、私の隣に美鈴さんが腰掛けて来た。

 

「隣、失礼しますよチャレンジャー」

 

「美鈴さん…」

 

「何を考えていたかは分かりませんが…そんなに緊張し切った状態だと足元を掬われますよ」

 

「もちろん試合になればしていた緊張はある程度解けるかと思います。でも相手が…」

 

「慧音さんですね。あの人に散々お世話になったと聞いています。然しお世話になったアナタしか出来ない彼女との戦い方もある筈。胸を張ってください」

 

 美鈴さんは私の当たった最初のジムリーダー。慧音さんともよく話すらしくちょくちょく私やメリーの話は聞いていたらしい。軽く笑みを浮かべながら美鈴さんは私の背中を軽く叩くとTVの方を見つめながら…

 

「勝負以外だと甘いくらいに優しい彼女ですけど、勝負になると相手の緊張を逆手に取ってくるくらいの戦法を取ってきます。試合になればじゃなくて今のうちに緊張は解いておいてください」

 

「美鈴さん…」

 

「あの人には散々突かれましたから。その度に「勝負では甘さは肝心だぞ」って言われたので。次の試合ですよね、これ以上集中力を解くのも失礼なのでここまでにしときます。頑張ってくださいね」

 

「…はい」

 

 美鈴さんは私の隣から立ち上がるとそのまま離れていく。TVでは輝夜さんとメディスンさんとの試合がそろそろ終わりそうな気配。拳をグッと握りしめ気を引き締め直すと椅子から立ち上がる。片手に持っていたモンスターボールをしまい大きく一息吐いたその時。

 

 受付方面にいたスタッフさんが私の方に近づき…

 

「宇佐見選手。準備ができましたのでバトルコートにへとお願い致します」

 

「分かりました」

 

 当然バトルコートに出向く私に激励など飛んでこない。ここにいる全員がライバルだからだ。スタッフさんに案内される形でバトルコートの通路に入る中、通路内で先程自分がいた通路からバトルコートに出向いた輝夜さんと再会。

 

 輝夜さんは私に手を振りながらその足を止めると…

 

「霊矢の件ではお世話になりました」

 

「まさか。アナタが対処してくれなければある程度は私も対応出来ていなかったわよ」

 

「…勝敗は?」

 

「私の勝ち。これで十分かしら?」

 

「…十分過ぎます」

 

 時間の都合上交わした言葉は本当に数少ない感じだったが、次は輝夜さん。それだけは理解した。気合いを一段と入れ直す中、歓声が聞こえてきた所でスタッフさんが足を止める。今だけは感謝は捨てる。ゆっくりと足音を立てながら通路から私はバトルコートにへと出た。

 

「お待たせいたしました1回戦第2戦!左から入場してきたのはここまで無敗のチャレンジャー!宇佐見蓮子選手!」

 

「対する右からはノーマルタイプの使い手!人里での評価は最大級!人格者上白沢慧音!」

 

 この胸のモヤモヤは緊張ではなく高鳴りだろうか。慧音さんの本気と戦うというのは私の中で一つの目標だった。実況の人格者という言葉が最もハマる人物だと私は思う。感謝は捨てた、今はするのは勝利という恩返しだ。

 

 中央にて向き合った私と慧音さん。慧音さんは私を見ながら…

 

「無駄に意識してるんじゃないかと思ったが安心したよ。その表情はすぐにでも私を呑み込んでしまいそうだ」

 

「私の中で本気のアナタと戦うのは憧れでもあったんです。だから緊張で手を抜くなんて行為は一切しない」

 

「フッ…強くなったな蓮子。私の出せる全てを出し切る事を誓う。だからお前も全力で来い」

 

「…はい!」

 

 私と慧音さん。そう言葉を交わすとお互いに距離を置く。大歓声で地面が揺れているような感覚がありつつも心は氷のように冷静だった。スッとモンスターボールを前にやりながら目を瞑る。深く…深く深呼吸をしながら目を力強く開ける。

 

 私と慧音さんがモンスターボールを出したその時に開始のゴングが鳴り響くと…

 

「行くよバイウールー!」

 

「任せたウッウ!」

 

 勢いよくフィールドに飛び出してきたのはバイウールーとウッウ。大歓声が集中し切っている中でも聞こえてくる中で私の中を満たす心臓の音。自らが昂り過ぎないようにちょくちょく息を吐きながら慧音さんの方を見つめると…

 

「ついばむ!」

 

「でんじは!」

 

「でんじは!?だったらドリルくちばし!」

 

 大きく羽を羽ばたかせながらウッウはバイウールーの方に向かっていくと滑空しながら身体を大きく回転する。ドリルのように回転しながらバイウールーに接近するが電気はかき消せずまひ状態に。然しドリルくちばしは命中。押し出すようにしてバイウールーを吹き飛ばす。

 

「さすがに無理か!」

 

「機転はさすがだな…然しそのまひは中々に堪えるだろう!バイウールー、すてみタックル!」

 

「なみのりッ!」

 

 バイウールーが足元を強く蹴り出し一気に加速していく中、私はウッウになみのりを指示。だがまひ状態であるが故か行動に移せず、地面に着陸してしまう始末。バイウールーのタックルをまともに喰らい吹き飛ばされ、私の前まで吹き飛ばされるが慧音さんは畳み掛ける。

 

「しねんのずつき!」

 

「こうそくいどう!」

 

「蓮子選手、ここは素早さを戻す作戦できました!」

 

 バイウールーが頭に溜め込んだ念をそのままウッウにぶつけてこようとするが、今回は動くのに成功し空中に飛ぶ事でバイウールーのずつきを回避。ウッウがまた動くのを祈りつつ私はさらに指示を出す。

 

「こうそくいどうでついばむ!」

 

「こらえろバイウールー!」

 

 堪える体勢に入ったバイウールーに対してウッウは高速移動をしながら急落下。バイウールーにくちばしを当てるが地面にヒビが入っただけで大ダメージには至らず。くちばしの先でバイウールーがウッウを見据える。

 

「しねんのずつき!」

 

「ウッウ、離れて!」

 

 2倍されているスピードでどうにかバイウールーから離れようとするがまひがここでも響いてしまい、ウッウは動けない状態に。念を纏いながらバイウールーはウッウに突進を食らわし吹き飛ばす。ダメージ以上に響くまひ。劣勢と見た私はボールを出し…

 

「ウッウ、お疲れ様。後は任せて」

 

「おっとここで蓮子選手、交代の選択肢を取ってきました!さあ誰が出てくるか!」

 

「行くよルカリオ!」

 

「なるほどな。でんじはを持っているなら早く仕留めた方がいいよな。判断は間違っていないな」

 

 私はウッウを戻すとルカリオをフィールドに。バイウールーがでんじはを持っている以上下手には出られない。やるなら一気に片付けないとこちらが一気に不利に持ってかれるだけだ。

 

「さあ来い!お前の目論見を粉砕してやる!」

 

「はどうだん!」

 

「こらえる!」

 

 ルカリオが両手で波動を溜め込み一気にバイウールーに向かって放出。そのままバイウールーに直撃させるが既に堪える体勢に入っていたバイウールーはこの一撃を持ち堪える。

 

「バイウールー耐えたッ!さあどうする!」

 

「バレットパンチ!」

 

「でんじは!」

 

 ルカリオが足元の地面を蹴り出し少しフラフラのバイウールーに接近していく。バイウールーが再びでんじはを放とうとしたその時。ルカリオの拳がバイウールーに1発命中してから数発一気に命中し、そのまま慧音さんの前までバイウールーは吹き飛ぶ。

 

「バイウールー!」

 

「バイウールー、戦闘不能!ルカリオの勝ち!」

 

「奇術にサイクルで対応した蓮子選手!まずは初戦を取る!」

 

「さすがだな…本当に強くなっているよ…!」

 

 歓声がニヤリと笑った慧音さんの声までかき消す。私が息を大きく吐く中、2体目のケンホロウを慧音さんは出すのだった…




見てくださりありがとうございます。閑話が少し長かったですけど何とかバトルに入れました。初戦の更新頑張ります。


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三度向き合う存在と翻弄する存在

こんにちは。こんばんはでしょうか。
どちらでもいいです。お疲れ様です。
また頑張りますね。


「がんせきふうじ!」

 

「でんこうせっかでかわせ!」

 

 ルカリオが地面を叩きつけ大きな岩を召喚するとケンホロウに向かって投げつけていく。一方のケンホロウはジグザグに高速で動きながらかわしていくと空中からルカリオを視界に捉える。

 

「つばめがえし!」

 

「はっけい!」

 

 くちばしをこちらに向けた状態で向かってくるケンホロウに対して私はルカリオにはっけいを指示。向かって来たケンホロウのくちばしがルカリオの身体に直撃し、そのまま切り裂くように動こうとした瞬間にルカリオは拳をケンホロウに向けて吹き飛ばしていく。

 

「バレットパンチッ!」

 

「フェザーダンス!」

 

「ケンホロウ体勢を整える!既にルカリオを待ち構えているッ!」

 

 空中でケンホロウは体勢を整えると足元を抉れるぐらいの強さで蹴り出しジャンプしたルカリオに白い羽をぶつけていく。羽は当たるだけで消えたがルカリオの拳が命中してもケンホロウは平気そうな表情を浮かべている。地面にルカリオが着陸する中で…

 

「フェザーダンスを食らってさすがに火力不足か!痛くも痒くもない表情を浮かべている!」

 

「能力を下げる技…!攻撃力か…!」

 

「さすがに察したな。だったらこれならどうだ!」

 

「させない!はどうだん!」

 

「いばる!」

 

 ルカリオが両手から波動を打ち込んだタイミングでケンホロウはルカリオを挑発するかのように笑みを浮かべる。ルカリオの顔が真っ赤になった瞬間、一瞬にしてルカリオは目をぐるぐるにして混乱してしまった。ケンホロウにはどうだんは命中したものの、少しふらついている程度。

 

「グウウ…」

 

「フェザーダンスにいばる!何というコンビネーションなんでしょうか!能力値を元に戻した状態で混乱状態にした!」

 

「お前だってやっていなかった訳ではあるまい?」

 

「っ…!ルカリオ、がんせきふうじ!」

 

「戻れケンホロウ」

 

「慧音選手、ケンホロウを引っ込めた!次出すのは…!?」

 

 ルカリオは混乱しておりフラフラの状態で私の指示で余計な混乱を招いたか自分を殴りつけてしまう始末。私が歯を食いしばる間に慧音さんが次に繰り出したのは忘れもしないピンクと黒色のポケモン。キテルグマ。

 

 対戦した事は当然あるが一度チームメンバーを含む私にトラウマを与えた存在だ。忘れたくも忘れられる訳がない。

 

「キテルグマ…」

 

「お前にとっては馴染みの深いポケモンだ。対戦出来ないとは言わないな」

 

「言いません。ただこのポケモンが来るならもう一度当たらせたいポケモンがいるんです。再度のスタートになるように…」

 

「…?」

 

「ルカリオ、戻って」

 

「蓮子選手、ここでルカリオを引っ込めます!どうしたんでしょうか!」

 

 キテルグマが来た地点で私の中で出すポケモンは決めていた。一度ルカリオを引っ込めて繰り出したのはドラパルト。慧音さんがドラパルトを見た瞬間にニヤリとした笑みを浮かべる。ビビりっぱなしだったドラメシヤの時とは違い、怯みのようなものはない。

 

「行けるね?ドラパルト」

 

「グオ!」

 

「よし!行くよ!ドラパルト、りゅうのはどう!」

 

「ぶんまわす!」

 

 キテルグマはその場で回転しながらドラパルトに向かっていく。ドラパルトから放たれた波動が回転しているキテルグマにかき消され、その腕がドラパルトに直撃。ドラパルトは空中に飛ばされる中私は違う指示を出す。

 

「ドラゴンアロー!」

 

「しっぺがえし!」

 

 ドラパルトが空中からドラメシヤ2体を飛ばしていく中、キテルグマはそのドラメシヤ2体の突進を吹き飛ぶ事なく耐え切ると溜まった念をドラパルトに向けて放出。ドラパルトは直撃を喰らい爆煙を浮かばせると地面に落下。そのまま戦闘不能となった。

 

「ドラパルト、戦闘不能!キテルグマの勝ち!」

 

「ドラパルトまさかの2発ノックアウト!これで倒れたポケモンは同じとなりました!」

 

「…お疲れ様ドラパルト。本当によく頑張った。さて…行くよルカリオ!」

 

「再び蓮子選手、ルカリオをフィールドに!」

 

「戻れキテルグマ。行くぞケンホロウ!」

 

 ルカリオがフィールドに出ればケンホロウがもう一度フィールドに。キテルグマの独壇場となった戦いの中、同じ組み合わせで再スタートを切る事に。私は大きく息を吐く。そんな中慧音さんも表情を引き締め…

 

「両者同じポケモンをフィールドに!さあどちらが優勢に持ち込むのか!分からなくなって来ました!」

 

「行くよ…!はどうだん!」

 

「いばる!」

 

「ルカリオッ!」

 

 ケンホロウが再び挑発するかのように笑みを浮かべる中、ルカリオは私の呼びかけに答える形で冷静になる。目も青色に光らせ両手から放たれた波動はケンホロウに向かって行き、直撃すると爆煙を立てる。慧音さんが驚く中ケンホロウは墜落。そのまま戦闘不能に。

 

「ケンホロウ!戦闘不能!ルカリオの勝ち!」

 

「イーブンを優勢に戻したのは蓮子選手!さあまた勝負が蓮子選手に傾くのか!」

 

「黙ってやられる訳には行かない…!行くぞキテルグマ!」

 

「グウ!」

 

 ケンホロウから再びキテルグマへ。次の4体目はなるべく慧音さんは出したくないのだろう。再び向き合ったキテルグマ。ルカリオの表情も少しばかり強くなっている気がする。私も気合いを入れ直し大きく息を吐くとキテルグマに向き合う。

 

「ルカリオ、はっけい!」

 

「かわらわり!」

 

 足元を蹴り出したキテルグマとルカリオは同じ場所で拳を突き出すと、キテルグマの拳とルカリオの出した拳が同じタイミングでぶつかり合う。一度ルカリオが身を引く形で後ろへ。キテルグマが地面を叩きつける。それを見た私はルカリオに…

 

「バレットパンチ!」

 

「能力を上げる形になってもいい!ぶんまわす!」

 

 迫って来たルカリオがキテルグマの体に拳を連続して叩き込んでいる間にキテルグマは回転し、ラリアットをかますようにしてルカリオをその場から吹き飛ばす。ある程度で踏ん張りルカリオの能力も少し高まる。キテルグマも少し疲れて来ている。

 

 こちらの疲労を考えるならもう攻めるしかない!

 

「はっけい!」

 

「かわらわり!」

 

 再び足元を蹴り出し走りながらキテルグマに接近しその懐から拳を次出すルカリオ。キテルグマも腕を振り下ろす中、キテルグマの腹部とルカリオの肩に両者の拳が直撃。私が少し歯を食いしばる中で2体がその場で止まる事数秒。少しふらついた両者がそのまま仰向けで倒れ込む。

 

「っ!」

 

「キテルグマ、ルカリオ!共に戦闘不能!ダブルノックアウト!」

 

「まさかのダブルノックアウト!蓮子選手有利未だ変わらず!然しキテルグマに苦戦を強いられる形となりました!」

 

「ここまでは想定内。だがもう少し粘らせてもらう。行くぞタチフサグマ!」

 

「行くよキュウコン!」

 

 私のフィールドにはキュウコン。そして慧音さんのフィールドにはタチフサグマと呼ばれる何だか鎧のような物をつけたポケモンが現れた。キテルグマとケンホロウというサイクルを駆使してまで出さなかった存在だ。私は気を引き締め直す。

 

「随分自信がないように見えるが?」

 

「これは昂る気持ちを抑えているだけです。ここからもっともっと上げて行きます!キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

「ブロッキング!」

 

 キュウコンが火炎を吐きつける中でタチフサグマは思い切り声を張り上げる。一瞬浮かび上がったマークが火炎をかき消していく中で私が少し驚き笑みを浮かべた中で慧音さんも笑みを浮かべ…

 

「簡単に行くと思うなよ?」

 

「ここまでで簡単に行ってるとは思わないです」

 

 大歓声が耳に入り私と慧音さんが一段と気を引き締め直す。キュウコンとタチフサグマが向き合う前で私は昂る気持ちを必死に抑えていた…




次くらいで慧音さんとの勝負は終わるんじゃないでしょうか。
まあ次も頑張ります。
見てくださりありがとうございます。


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恩返しと決着に向けた一幕

お疲れ様です。命です。
このストーリーも終盤が近づいて来ました。
頑張って更新します。


「かえんほうしゃ!」

 

「バークアウトでかき消せ!」

 

 キュウコンが口から炎を吐きつけ地面を焦がしながらタチフサグマに向かって行く中でタチフサグマは身体から衝撃波を放ち火炎に衝突。相打ちにより起きた爆煙は再びスタジアムの視界を奪って行く。視界が見えない中私はキュウコンに指示を出す。

 

「やきつくす!」

 

「もう一度バークアウトだ!タチフサグマ!」

 

 キュウコンから放たれた炎が煙を振り払って行く中でタチフサグマも衝撃波を放って煙を払って行く。次に動いたのは慧音さん。キュウコンの姿を捉えるやいなやタチフサグマに指示を出す。

 

「じごくづき!」

 

「遠距離戦から一転!タチフサグマがキュウコンに詰め寄る!」

 

「じんつうりき!」

 

 地面が抉れる程に強く足元を蹴り出したタチフサグマは足音を立てながら向かってくる。キュウコンが念波を発したその時。慧音さんが笑った。何故かと思った次の瞬間、念波はタチフサグマの前で消滅。そのまま目の前に接近を許すと突き出された腕がキュウコンに命中。

 

 キュウコンが歯を食いしばりながらある程度で踏ん張る。驚いたのは私もキュウコンも同じだが…

 

「何故じんつうりきが…!?まさか!?」

 

「そうだ。タチフサグマはノーマルとあくタイプ。あくはエスパーの技を一切受け付けない。かくとうに滅法弱いんだが…ルカリオはあいにく戦闘不能。カードは残しておくべきだったな」

 

「…いやそうでもないですよ。あくタイプならやりようはある!キュウコンかえんほうしゃ!」

 

「ブロッキング!」

 

 私の中で少し確信があった。ノーマルだけなら厄介だったこのポケモンが複合タイプ。然もあくタイプ。ルカリオだけでも打点は十分に付く。キュウコンに火炎を吐かせるとタチフサグマは声を張り上げてバリアを生成。火炎をバリアで完全に防ぎ切ったその後。

 

 私はそこを狙っていた。

 

「おにび!」

 

「そう来たか…!バークアウト!」

 

 キュウコンが放った小さな火が何個かタチフサグマによる衝撃波でかき消される中で一個が命中。そのまま小さな火傷に繋がると火傷状態に。キュウコンはこちらの意図を見て理解したのか頷いた。あいにくバークアウトは命中してしまったが問題無さそうだ。

 

 私はキュウコンをボールに戻す。

 

「蓮子選手ここでキュウコンを戻します!打開策があるのか!?」

 

「こういう時だから一番頼りになる…!行くよモスノウ!」

 

「モス…!」

 

「モスノウ…なるほどしてやられたな…!」

 

 私が出したのはモスノウ。タチフサグマの攻撃力はキュウコンの反応を見るなり相当な物だ。最悪一撃で持ってかれるかもしれない。キュウコンが撒いてくれたやけどはこのために活きる。後は私とモスノウ次第だ。慧音さんが驚いた反応を見せる中、私はモスノウに指示を出す。

 

「行くよモスノウ!むしのさざめき!」

 

「ブロッキングだタチフサグマ!」

 

 モスノウが羽を羽ばたかせ衝撃波を打ち込んでいく中でタチフサグマは再び声を張り上げバリアを張り込む。衝撃波はあっという間にかき消されバリアがこのタイミングで消滅。そのタイミングで私はもう一つの指示を出す。

 

「マジカルシャイン!」

 

「マジカルシャイン!?しまった、フェアリー技持ちか!タチフサグマバークアウト!少しでも軽減しろ!」

 

 モスノウから放たれた無数の光の弾丸がタチフサグマに向かって行く中でタチフサグマは再度衝撃波を放つ。フェアリーとあくではフェアリーの方が強いのか。マジカルシャインにバークアウトはかき消されそのまま全弾までとは言わないがタチフサグマに命中。

 

 大ダメージを食らったタチフサグマはそのまま膝をつき掛ける。

 

「タチフサグマ、大ダメージ!強烈な一撃を喰らった!」

 

「れいとうビーム!」

 

「ブロッキング!」

 

 モスノウから放たれたビームがよろけたタチフサグマにブロッキングをさせる前に直撃。冷たい風が混じった煙が舞い上がる中その煙が晴れるとそこにタチフサグマが戦闘不能となっている姿が。

 

「タチフサグマ戦闘不能!モスノウの勝ち!」

 

「タチフサグマ戦闘不能!さあ慧音選手追い詰められました!」

 

「してやられたな。本当にバトルが巧みになった。だが私だってまだ希望はある!行くぞカビゴン!」

 

「カビゴン…」

 

「慧音選手ラストはカビゴン!4ー1から慧音選手はどうひっくり返すのか!」

 

 何もない筈がないとは分かっていた。カビゴンはそもそもの能力が難敵。ルカリオがいれば何とかなったかもしれないが今はそのルカリオが不在。そしてウッウが重傷、キュウコンもダメージを負っておりしっかり戦えるのがイーブィとモスノウのみ。

 

 どうにかするしかない。私は大きく息を吐きカビゴンを見据える。その中慧音さんはカビゴンをボールに戻すとスッと私に見せるようにしてボールを構える。

 

「お前と戦えた事本当に感謝する。だからこそ最後の最後までお前と全力でぶつかる!覚悟は…してるな?」

 

「…はい!」

 

「行くぞカビゴン!キョダイマックス!」

 

 慧音さんからの感謝に少し気が引き締まった中、ボールが巨大化していき慧音さんが後ろに投げつける。投げつけられたボールから出たカビゴンが巨大化していき、慧音の後方にて地響きを上げるようなそんな雄叫びを上げた。

 

「カビゴン、キョダイマックス!慧音選手最後のカードを切ってきました!」

 

「さあ…いくぞ!カビゴン!キョダイ!サイセイッ!」

 

「モスノウ、マジカルシャイン!」

 

 慧音さんが指示を出し私も指示を出す。モスノウが光を放って行く中でカビゴンも光を発するが当然サイズは向こうの方が上。無数の弾丸がカビゴンに刺さって行くが効いているかどうかすら分からない。そんな中でカビゴンは声を張り上げてモスノウに向かって光を投げ飛ばす。

 

「れいとうビーム!」

 

 どうにか光をかき消せそうと動くがハエが人間に立ち向かっているような物。ビームはあっという間にかき消されそのまま一気にモスノウに直撃。大爆発により煙が舞い上がり再びスタジアムが煙まみれになる中、審判が喰らったモスノウに駆け寄る。

 

 そしてダイマックスパワーを使い切ったカビゴンは元のサイズに戻る。

 

「モスノウ戦闘不能!カビゴンの勝ち!」

 

「執念の一撃!一つ削ったのはカビゴンだ!」

 

「やはり強い…でも勝つ!モスノウお疲れ様。行くよ…イーブィ!」

 

 カビゴンの攻撃を喰らったモスノウは一撃でノックアウト。私は思わず歯を食いしばる中、唯一出していなかったイーブィを場に出す。イーブィが声を張り上げカビゴンを見据える。

 

「やっと出て来たなイーブィ。お前さえ崩したらだ。全力で行く…!」

 

「こちらも全力で行きます!イーブィ!ほしがる!」

 

「近づいてくる気なら…ギガインパクト!」

 

「っ!?」

 

「詰め寄るのが仇となったか!?まさかのギガインパクトだぁ!」

 

「めらめらバーン!」

 

 引くという手はもう存在しなかった。カビゴンが立ち上がりそのまま向かって来たその瞬間。イーブィもその場に立ち止まり体に炎を宿す。そして向かって来たカビゴンとイーブィが同時に一撃を叩き込もうとしたタイミングで爆煙が発生。

 

 私達でも驚いた中で煙が晴れるとカビゴンのギガインパクトとイーブィのめらめらバーンがぶつかり合っている姿。

 

「ゴンッ!」

 

「ブイッ!」

 

 衝突から僅か20秒。カビゴンをイーブィが炎にて吹き飛ばした。イーブィとカビゴンが両者倒れ込み戦闘不能となる。ダメージを受けたようには一切見えなかったが…

 

「イーブィ、戦意喪失!カビゴン戦闘不能により勝者!蓮子選手!」

 

「結末は2ー1!押されも押されず!そんな死闘に相応しいゲームに皆さん拍手をお送りください!」

 

「完敗だ。イーブィ本人が耐えきれない力を出し切るとはな」

 

「慧音さん…」

 

「おめでとう。私の分まで頑張ってくれ」

 

 近づいて来た慧音さんと握手を交わした私。イーブィの底力に驚きつつ初戦に勝ち慧音さんに勝てた事にホッとするのだった…




見てくださりありがとうございます。
ゆっくりとながら頑張って行きますー。


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生まれた迷いと親友の語りかけ

お疲れ様です。命です。今日はバトルも含みながらの閑話回の予定です。よろしくお願いします。


 慧音さん達数人の敗退が決まり、私含む数人の準決勝進出が決まった。ノックアウト方式とは理解はしていたが、負けた者はチャンピオンに挑戦出来なくなると決まっているのは残酷にも感じる。私は慧音さんの光を断ち切った。その光を胸に抱きながら勝たないと行けない。

 

 息を吐きながら控え室に戻った私に1人の人物が声をかけてくる。

 

「勝ったのに少し嬉しそうじゃないね?」

 

「…?メリー…!?どうしてここに!?」

 

「一応敗退はしてるけど関係者だから入ることだけは出来るんだよ?コートには出られないけどね」

 

「そっか…」

 

「慧音さんを破った時から何か現実を受け止められていないような顔をしていたからちょっと顔出しに来た」

 

 そこに現れたのはメリーだった。一応敗退したとはいえこのスタジアムで戦っていたメリー。控え室に入る権利というのはあるらしい。そんな彼女の言葉に核心を突かれて私は言葉に詰まった後苦笑いを浮かべながら私はメリーに語りかける。

 

「このノックアウト方式は当然ながら負かしたら相手のチャンピオンへの挑戦への希望を断ち切る訳だけど…分かってはいるんだ。でもどうしてもグサっと刺さる物があるというか」

 

「次の試合に切り替えられそう?」

 

「あ…そういえば魔理沙さんは!?魔理沙さんはどうなったの!?」

 

「今試合をしているよ。向こうのブロックだけは準々決勝が行われるらしいから先に試合を開催する予定みたい。妹紅さんとやってるけど終わったら次は蓮子。切り替えはしといた方がいいよ」

 

「…そうだね。いつまでもクヨクヨしてられないもんね」

 

 メリーの言葉で私は少し頷くと切り替えるために大きく息を吐く。ビジョンではメリーの言った通り魔理沙さんと妹紅さんの試合が先に開催。そのどっちかの勝者が片方で待ち受けるアリスさんと試合を行う予定だ。然しアリスさんが試合を行うのは私の後だ。

 

 試合風景を見て顔を軽く叩いて気合いを入れ直す。そんな私を見てクスクスと笑ったメリーが…

 

「気合いの入れ方が特殊だね」

 

「え?いつもの事だよ」

 

「そっか。まもなく呼ばれると思うから頑張って」

 

「ありがと。気合い入った」

 

 メリーが私に激励の一言を送った後に再び控え室から離れていった時にスタジアムのスタッフさんが魔理沙さんと妹紅さんの試合が終わったから準備してくれと告げてきた。試合結果は知らされていない。私はそれに頷くと拳をグッと握りしめて表情を引き締める。

 

 現在前の試合の影響を緩和するために整備中。そして次の相手は先程本人からも報告があった通り輝夜さんだ。スタッフさんがビジョンを見ながら一回頷くと…

 

「お待たせいたしました。お願いします」

 

「分かりました」

 

 スタッフさんの語りかけから私は控え室を出て再びバトルコートにへと向かって行く。このバトルコートに入る通路に入ると気合いがグッと入る。ポケモンの回復は控え室に戻るまでに済ませた。後は私自体がしっかりするだけだ。

 

 通路から響き渡る歓声を耳にしながら再びバトルコートに入ろうとその足を動かす。

 

「激闘の末の激闘!皆さん疲れているかもしれませんがこれが更に続きます!残る選手は5人!果たして先に決勝進出を決めるのはどちらか!では紹介しましょう!」

 

「まず右側から入場するのは先程メディスンを打倒する力を見せつけた輝夜!その力は決勝に届くのか!対する左側から入場するのはジムリーダー慧音を打倒して未だ無敗!最強のチャレンジャー蓮子選手!」

 

 実況が私と輝夜さんを呼びかけ観客達が大歓声を上げる。私がもう一度息を吐きながら観客の声を聞かないようにすると右側から入場して来た輝夜さんと中央にて向き合う。私を見た輝夜さんは何かを悟ったかのように小さく息を吐くと…

 

「ちょっと慧音を破って落ち込んでいるのを期待したけどそうはならなかったわね」

 

「迷いなら親友との会話で消して来ました」

 

「それは残念。じゃあ始めましょうか」

 

「はい…!」

 

 少しばかりの会話を交わした後に私と輝夜さんは距離を取る。真ん中に入ったレフェリーが私達に用意は出来たかどうかを語りかけると私達は頷く。レフェリーが試合開始の宣言をしゴングが鳴らされると私達はモンスターボールを取り出し…

 

「行くよルカリオ!」

 

「任せたクチート!」

 

 輝夜さんはクチートを私はルカリオをフィールドに出す。クチートはフェアリータイプを持っているが同時にルカリオと同じくはがねタイプも持っているポケモン。弱点は付けないが不利という相手でもない。とりあえず強気な姿勢は崩さない…!

 

 私は声を張り上げてルカリオに指示を出す。

 

「ルカリオ、バレットパンチ!」

 

「クチート、なきごえ!」

 

「なきごえ!?」

 

 ルカリオが地面を強く蹴り出し一瞬にしてクチートの目の前に迫るとそのまま無数のパンチを浴びせるが地面を抉りながらも吹き飛ばされなかったクチート。そのクチートは思い切り声を張り上げルカリオを怯ませたその時に輝夜さんが笑みを浮かべ…

 

「不利は不利なりに戦い方という物があるのよ。クチート、アイアンヘッド!」

 

「対抗するよルカリオ、はっけい!」

 

 クチートは後ろの大顎を振り回すようにしてルカリオに殴りかかってくると対するルカリオも身構えて拳を突き出す。大顎と拳がぶつかり合ったが先程の鳴き声の影響か押し返されてしまい、大顎がルカリオに直撃。そのまま吹き飛ばされるが地面を抉りながらもある程度で踏ん張ると…

 

「じゃれつく!」

 

「なきごえはこれのためか…!はどうだん!」

 

 クチートが足元を蹴り出しそのままピンク色のオーラを纏いながら向かってくる中、ルカリオに指示を出した私。ルカリオは波動を溜め込むとそのまま波動をクチートに向かって投げつける。ルカリオの波動とクチートが火花を散らしながらぶつかり合うとそのまま爆発。

 

 クチートが輝夜さんの前まで吹き飛ばされている間に私は少し不利だと感じ…

 

「戻ってルカリオ!」

 

「おっと蓮子選手ここでルカリオの交代を決断!どういう意図があるのか!」

 

「能力を下げられたから不利と悟ったみたいね。ある程度は予想出来るけど。クチート戻って。まだアンタを失う訳には行かない」

 

「輝夜選手も交代を決断!このサイクルがどう響くか!」

 

 私がフィールドに出したのはキュウコン。一方私の決断を見た輝夜さんもクチートを引っ込めその場に出したのはトゲキッス。対戦はした事がない相手ではない。爆煙が晴れ私が一息を吐くとキュウコンに指示を出す。

 

「キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

「エアスラッシュ!」

 

 キュウコンが火炎を吐いている間にトゲキッスは羽を羽ばたかせ風の刃をキュウコンに放って行く。風の刃は炎とぶつかり合うが相打ちとなり同時に消滅。それを見た輝夜さんがさらにひと押しにかかる。

 

「トゲキッス、しんそく!」

 

「おにび!」

 

 トゲキッスが身体をドリルのように回転させながらも目には追えないスピードでキュウコンに迫って行くとそのままタックルを喰らわせる。キュウコンは少し吹き飛ばされながらもおにびを撃ち込むと少し油断していたトゲキッスに命中。

 

 輝夜さんが少し表情を変える中で私はキュウコンに指示を出す。

 

「キュウコン、やきつくす!」

 

「エアスラッシュ!」

 

 キュウコンが口から吐いた炎をトゲキッスは少し苦しげの表情をしながらも羽を羽ばたかせ風の刃を放ったその時だった。炎が真っ二つにされキュウコンに命中したのだがその残り火がトゲキッスに命中した時、何か着火したかのように大爆発。

 

 トゲキッスは大きく吹き飛ばされキュウコンは体を震わせながらも何とかその場に留まる。観客が大歓声を上げる中私は安心したかのように笑みを浮かべていた…




見てくださりありがとうございます。何か不利なら引っ込めるというサイクル戦になってしまってますが…次はどうなるでしょうか。お楽しみください。では。


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ぶつかる実力、進みたい信念

お疲れ様です。非常に進め方に困る終わり方をしましたが何とか思いつきましたので書いていきます。


「何が起きたんでしょうか!トゲキッスが大きく吹き飛びそしてスタジアムに何度かの大爆発が起こりました!」

 

「トゲキッス、大丈夫!?」

 

「キッス…!」

 

「仕留めるには威力が足りなかったか…!」

 

 空中で体制を整えたトゲキッスは輝夜さんの前に降り立つとその問いかけに対して深々と頷く。少し吹き飛ばされそうになったキュウコンの表情が再び引き締まる中、私は一息吐きながらキュウコンに指示を出す。

 

「キュウコン、やきつくす!」

 

「エアスラッシュ!」

 

 キュウコンから放たれた炎の球をトゲキッスは自身の羽を羽ばたかせる事で起こした風の刃で真っ二つにして行くとその風の刃は地面に跡をつけて行く。残り火が若干ながらトゲキッスを見えなくさせる中、輝夜さんはさらに指示を出す。

 

「しんそく!」

 

「迎え撃つよキュウコン!かえんほうしゃ!」

 

 トゲキッスが羽を羽ばたかせた後滑空の姿勢に入り、残り火をかき消しながらキュウコンに接近するとそのまま体当たりをかましキュウコンを吹き飛ばす。キュウコンは足で地面を抉りながら何とか踏みとどまると目の前にいるトゲキッスに向かって火炎を吐きつける。

 

「はどうだん!」

 

「キッ…!」

 

「あっとトゲキッス!やけどのダメージで反撃が遅れたぁ!」

 

 何かしらの反撃をしようとしたトゲキッスの動きが少しばかり遅れ、キュウコンのかえんほうしゃが直撃。再び巻き上がった爆煙が晴れる前にトゲキッスは地面に落下し、審判が駆け寄ると落下していたトゲキッスは戦闘不能に。

 

「トゲキッス、戦闘不能!キュウコンの勝ち!」

 

「2体のサイクル戦!一手を取ったのは蓮子選手だ!」

 

「よし…!」

 

「お疲れ様。トゲキッス。後は任せて」

 

 輝夜さんがボールを動かしながら若干悩んだようなそんな素振りを見せるとトゲキッスを戻した後に繰り出したのはピクシー。ピクシーは永琳さんとのジムテストで対戦した事のあるポケモン。決して未知数というポケモンではない。

 

「まだ行けるねキュウコン!」

 

「キュウ!」

 

「よし行くよかえんほうしゃ!」

 

「ソイツにはちょっと眠ってもらうわよ…ピクシーうたう!」

 

「うたう…!?」

 

 ピクシーはキュウコンからのかえんほうしゃをまともに食らいながらも歌い始め、炎を吐き続けていたキュウコンの意識が朦朧とし始めるとそのまま倒れ込み眠ってしまった。

 

「あーっとキュウコン眠ってしまった!クチートにも有利が効くキュウコンを眠らせる作戦で来たか!」

 

「ソイツは私のパーティが相手するには若干厄介だからね…」

 

「っ!戻ってキュウコン!」

 

「さすがに眠らされては万事休す!キュウコンを引っ込めます!」

 

「行くよウッウ!」

 

 ルカリオはまだ輝夜さん相手のジョーカーとして残しておかないと行けない。私はキュウコンを引っ込めウッウをフィールドに出す。眠らされては攻撃を喰らわされるだけだ。ここで要らぬ抵抗かもしれないがキュウコンを失う訳には行かない。

 

「ここで蓮子選手はウッウ!さあピクシーにどう対するのか!」

 

「ウッウ、なみのり!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 ウッウはくちばしで地面を叩きつけると後方から巨大な津波を起こしそのままピクシーに向かわせて行く。ピクシーは身体を思い切り光らせると光の弾丸を前方に放ち津波を打ち消して行く。だが津波に乗っていたウッウがピクシーの目の前に迫ると…

 

「ドリルくちばし!」

 

「もう一回マジカルシャイン!」

 

 口の中にサシカマスを加えながら回転しようとしたウッウだったが目の前のピクシーのスピードを上回れず、再び身体を光らせてからの光の弾丸を数発まともに食らったが、口から放たれたサシカマスがピクシーに直撃し怯ませる。

 

「ウッウ、こうそくいどうからのついばむ!」

 

「っ!つきのひかり!」

 

 こうそくいどうでスピードを上げるとそのままのスピードでピクシーにくちばしを突き立て、直撃させる。少しふらついたピクシーだったがあらかじめ念じていたつきのひかりでダメージを回復させる。

 

「脅威の耐久力!ピクシーがつきのひかりでダメージを回復した!」

 

「ムーンフォース!」

 

「そのまま行くよウッウ!ドリルくちばし!」

 

 ウッウがピクシーに向かって回転し始めそしてピクシーも三度身体を光らせ、そして身体からウッウに向かって光の球体を放出して行く。ウッウがドリルのように回転しながら光の球体と火花を散らしながらぶつかり合って行く中、ピクシーも何とか突き出そうとする。

 

 両者の攻撃は大爆発を起こし、爆煙の中ピクシーとウッウを吹き飛ばすとそのまま爆煙が晴れた後に両者が倒れ込む。

 

「ピクシー!」

 

「ウッウ!」

 

「ピクシー、ウッウ!共に戦闘不能!ダブルノックアウトとなります!」

 

「お互いに戦闘不能!輝夜選手は2体目、そして蓮子選手は初のポケモンダウンとなります!」

 

 私が一息を吐き輝夜さんも一息を吐く。そして輝夜さんは戦闘不能になったピクシーを戻すと再びフィールドに出してきたのはクチート。普段ならその流れでキュウコンを出すかもしれないが、現在眠っておりいつ目を覚ますか分からないキュウコンに賭ける程余裕はない。

 

 モスノウやドラパルトではクチートに立ち向かうのが難しい以上こちらの選択肢としては一つしかない。

 

「行くよイーブィ!」

 

「蓮子選手、フィールドにイーブィ!ルカリオを出さないという選択肢を取って来ました!」

 

「まだ出さないという事ね。だったら引き摺り出してあげる!クチート!アイアンヘッド!」

 

「イーブィ、めらめらバーン!」

 

 地面を強く蹴り出しこちらに向かってくるクチートに対してイーブィは身体に熱気を溜め込むとクチートが迫って来たタイミングで身体全体から炎として放出して行く。その炎がクチートに命中するがダメージを負いながらもクチートは大顎をイーブィにぶつけ、イーブィを吹き飛ばす。

 

 イーブィは足で地面を抉りながら踏ん張ると輝夜さんがさらに仕掛ける。

 

「ほのお技を持っているなら早く仕留めにかかる!じゃれつく!」

 

「もう一度行くよ!めらめらバーン!」

 

 イーブィを吹き飛ばしたタイミングでクチートは再びその場の足元を蹴り出すとそのままイーブィの元に迫って行く。イーブィはその場で再び身体に熱気を溜め込みにかかるが、クチートがその隙に突進を食らわせる。空中に吹き飛ばされながらも熱気を溜め込んだイーブィが炎としてクチートに放出。

 

 たまらず輝夜さんは…

 

「クチート、大顎を前に防ぎに行って!」

 

「クチ!」

 

 クチートは大顎を前にして防ぎにかかる。クチートに浴びさせられる炎を何とか防ぎ切ったクチートだったが、イーブィを再び見据えたタイミングでフラつきが発生しそのまま前に倒れ込む。それに驚いたのは輝夜さん。審判は慌ててクチートに駆け寄ると…

 

「クチート、戦闘不能!イーブィの勝ち!」

 

「先程の一戦のダメージが残っていたか!クチートがここでダウンだ!」

 

「ルカリオから受けたバレットパンチか…!蓄積って奴ね…」

 

「まだ行ける?イーブィ!」

 

「ブイ!」

 

 輝夜さんがクチートを戻すと次に繰り出したのはアブリボン。これが輝夜さんの4体目。ある程度数的には有利で来ているがその内の一体のキュウコンは眠ったまま動けない。私は大きく一息を吐きながら心を冷静に保つ。

 

「行くよイーブィ…!」

 

「ブイ!」

 

「まだまだここから。巻き返してやるわ」

 

「アブリィ!」

 

「数は5対2。数的には蓮子選手ですがキュウコンはねむり状態!さあどう動くのでしょうか!」

 

 見据えるはアブリボン。パートナーと共にただ目の前の輝夜さんを倒す事だけを考えていた…




お疲れ様です。何とか書けました。
次で輝夜さんとの勝負は終わるかもです。
ではまた次回も頑張ります。


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見据える決着とその先の存在

お疲れ様です。最近しんどいですが頑張ります。


「イーブィ、ほしがる!」

 

「マジカルシャイン!」

 

「ブイ!」

 

 イーブィが足元を強く蹴り出しアブリボンの元に向かって行く最中、アブリボンは身体を光らせて視界を埋め尽くす程の光を放つ。その中から放たれた弾丸は地面に何個か当たりながらも確実にイーブィの元に向かって行く。

 

 視界を少しやられたイーブィはアブリボンに近づく事が出来ない。それを見た私はイーブィに向かって声を張り上げる。

 

「かわしてイーブィ、めらめらバーン!」

 

「蓮子選手、ここで方針を変えてきました!」

 

「あまいかおり!」

 

 マジカルシャインの光の弾丸をジグザグに動きながらイーブィはかわし切るとそこから視界をアブリボンの方に向け、身体に炎を溜め込み一気にアブリボンに向かって放出して行く。放たれた炎がアブリボンに向かって行く中、霧のようにあまいかおりを噴出したアブリボン。

 

 その一撃は爆煙を立ててアブリボンに命中したかと思いきや、いた場所には花粉と思わしきものの焦げた姿が。

 

「な!?」

 

「もぬけの皮に騙されるなんてね!アブリボン、むしのさざめき!」

 

「ッ!イーブィ、きらきらストーム!」

 

 花粉らしき姿はアブリボンが放ったと思われる技の一部。当のアブリボンはイーブィの真上へ。さすがに反撃はすぐにできないと思った私はイーブィにきらきらストームを指示。イーブィが空に向かって声を張り上げている間、アブリボンは羽を羽ばたかせ衝撃波を放つ。

 

 イーブィの真上から放たれた衝撃波はイーブィに直撃。爆発したかのように砂埃を巻き上げさせる。先程のダメージが蓄積されたからか今の一撃でふらつくイーブィ。フラフラしている中、空に魔法陣が錬成され巨大な星がアブリボンに降り注ぐ。

 

「マジカルシャインで潰して!」

 

「めらめらバーンッ!」

 

 輝夜さんは驚いたような表情を浮かべていた。アブリボンが光を放ちそこから大量の弾丸を星に向かって撃ち込んで行った間。私は賭けに出た。イーブィが動けたら多くのダメージを与えられるが一歩遅ければかわされる。そのどちらかだと。

 

 イーブィが炎を身体から噴出したその時。アブリボンはその熱気に気付きイーブィの方に向いた。だが振り向いただけで輝夜さんからの指示はない。包もうとする熱気がアブリボンを飲み込み、大爆発を起こす。それと同時にイーブィも吹き飛ぶ。

 

「イーブィが吹き飛びアブリボンはどうなったかッ!」

 

「ブリィ…!」

 

「無事です!然し痛手を負った様子!」

 

「ブイ…」

 

「イーブィ!」

 

 めらめらバーンを命中させたイーブィは技の反動からか立ち上がれなくなってしまい戦闘不能に。だが充分過ぎるほどの仕事は果たしてくれた。キュウコンが眠り状態で動けない今4体ではなく3体で戦っているような物。この人に勝つにはこの子に賭けるしかない。

 

「お疲れ様イーブィ…行くよルカリオ!」

 

「グウ!」

 

「ここで蓮子選手再びルカリオ!イーブィが戦闘不能でどう変わるか!」

 

「キュウコンが眠っている今…アンタさえ潰せば…!アブリボン、マジカルシャイン!」

 

「バレットパンチ!」

 

 私のフィールドには再びルカリオ。そのルカリオがアブリボンが再び動き出す前に足元を蹴り出すと一瞬にして目の前へ。一撃右ストレートの拳を浴びせると無数のパンチを浴びせ、再び右ストレートでアブリボンを吹き飛ばす。吹き飛ばされた勢いでアブリボンは地面に叩きつけられる。

 

「アブリボン!」

 

「キュウ…」

 

「アブリボン戦闘不能!ルカリオの勝ち!」

 

「一撃ッ!余程当たった場所が悪かったのか!アブリボンが持っていかれた!」

 

「っ…イーブィを持ってただけいい所よ。ありがとアブリボン」

 

 ルカリオの攻撃にてアブリボンは戦闘不能。立ち尽くすルカリオを前にして輝夜さんはため息を吐きながらボールにアブリボンを戻す。残るは輝夜さんは一体。輝夜さんはもう一度一息吐きながら次のポケモンをフィールドに出す。

 

 マホイップだ。再び輝夜さんのエースとして立ち塞がる形となった。

 

「現在4ー1。然しキュウコンは眠り状態。仮に輝夜選手がそこまで追い込めばまだ勝機はあります!」

 

「さすがに強いわね。でも私も諦める訳には行かない。だから…」

 

「っ…!」

 

「輝夜選手マホイップをボールに戻した!まさか!?」

 

 輝夜さんのダイマックスバンドが光り始める。その光にボールが包まれボールが巨大化。輝夜さんは後ろに投げつける。光と共にマホイップがキョダイマックス。私もルカリオを戻す。焚き付けられたか私もダイマックスバンドを光らせ、ルカリオをダイマックスさせる。

 

「輝夜選手、蓮子選手共にダイマックスだ!さあクライマックスを迎えようとしています!」

 

「さあ行くよマホイップ!キョダイダンエン!」

 

「ダイスチル!」

 

 マホイップが空を見上げて雄叫びを上げる中、ルカリオは勢いよく両手を突き出す。ルカリオの足元から鋼の突起物がマホイップに向かって行く中、マホイップの真上からはルカリオに向かって少しテカリを見せる塊が降り注ぐ。直撃したタイミングで大爆発が巻き起こる。

 

 爆煙が晴れるとそこにはルカリオ、マホイップ共に元の身長に戻っている姿が。

 

「強力な一撃を放ちあった両者!その姿は元の大きさに戻りました!然しお互いに大きなダメージを負いましたが若干マホイップの方が有利か!」

 

「グウ…!」

 

「ダメージを与えられたら充分…!でもただでは引き下がらない!ルカリオ、バレットパンチ!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 マホイップが身体から光を放出しようとしたタイミングで足元を強く蹴り出したルカリオがマホイップのすぐ目の前にへと迫る。三度右ストレートをマホイップに叩き込むと無数のパンチから再度右ストレートを叩き込み、マホイップを吹き飛ばす。

 

 然し踏ん張ったのはマホイップ。身体から光を放つとその光はルカリオを直撃する。光の中に紛れ込んでいた光の弾丸に何発も命中するとダイマックス技を食らった影響からかなりふらつき、そのまま仰向けで倒れ込んだ。

 

「ルカリオ!」

 

「ルカリオ、戦闘不能!マホイップの勝ち!」

 

「ダブルエースを切り崩す!さあ輝夜選手!じわじわと反撃を開始します!」

 

「ごめんルカリオ…!」

 

 私はルカリオに謝罪しボールに戻す。私も残るは3体。一体は眠っているキュウコン。それは分かっている。なるべくドラパルトは不利というのを考えると残したい。だったらこの子に託すしかない。ボールをギュッと握りしめ、フィールドに出す。

 

「行くよモスノウ!」

 

「モス!」

 

「蓮子選手5体目はモスノウ!残りを考えるとここで決めたいか!」

 

「ただではやられはしないわよ…マホイップ、マジカルシャイン!」

 

「れいとうビーム!」

 

 マホイップが再び光を撃ち込もうとしたその時。私はモスノウにれいとうビームを指示する。ビームが光に命中し火花を散らしながらぶつかって行く中、弾丸がぶつかったタイミングか。再び爆発。煙が舞い上がる中それでもマホイップがそこにいる事を信じ…

 

「モスノウ、ゆきなだれ!」

 

「モス!」

 

 モスノウが目を光らせマホイップに向かって雪を大量に降らせる。マホイップは煙で反撃の構えを取る事が出来ずモスノウのゆきなだれを直撃。そのまま雪の中に埋もれた形となったのだが、その雪はすぐに溶ける。そこにいたマホイップは倒れ込み…

 

「マホイップ、戦闘不能!モスノウの勝ち!よって勝者蓮子選手!」

 

「ギリギリによるギリギリの攻防!制したのは蓮子選手だッ!」

 

「あー…負けた負けた。あれからどれだけの鍛錬を積んだのよホント」

 

「いやいや…私もドキドキしましたよ」

 

 お互いが再び歩み寄り私と輝夜さんが握手を交わしていたその時を控え室で見ていた1人の女性。腕を組みながらニヤリと笑うともう一度私と輝夜さんが映るTVを見直し拳を握りしめたのだった…




見てくださりありがとうございます。
とりあえず書けました。勢いで書いてしまうタイプなんで中々勢いに乗れないとね…まあ次回もよろしくお願いします。


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運命の決勝戦前…

どうもです命です。さて今回から決勝戦に入ります。
まあ今回は閑話回になるかな?とりあえずお楽しみください。


 私と輝夜さんの一戦が終わり、私と輝夜さんが元いた控え室に戻ったタイミング。敗戦が決まりそのスタジアムから足を払おうとしている輝夜さんに近づく1人の女性。輝夜さんは更衣室で着替えるのを中断し女性の方に視線を向ける。

 

「高みの労いのつもり?魔理沙」

 

 輝夜さんがため息を吐いた後に睨み付けるようにして言葉を呟いた対象。それは真顔で輝夜さんを見つめていた魔理沙さんだった。一足早くに決勝進出を決めた私を見て拳を握りしめていた魔理沙さん。睨みつけて来た輝夜さんに対して何か思ったかのように一息吐き…

 

「蓮子は余裕を残しての勝利だった。ドラパルトなんて顔も出さなかったんだぞ?」

 

「手を抜いたっての?…まさか。完全な実力負けよ。向こうのサイクル戦の仕掛け方も博打の掛け方も上手かった。ジムチャレンジの時とは別人になっていた」

 

「悔しくないのか。お前は」

 

「悔しいに決まっているじゃない。ようやくあの霊夢に挑むチャンスが来たというのに。それが1人の挑戦者に潰された。…あの子の実力はアナタも垣間見ている筈よ」

 

 敗戦した輝夜さんよりも感情をむき出しにしている方は魔理沙さんだった。誰だって負けたら悔しいと感じる、それは当然の事だ。私が輝夜さんに余裕を見せた風に見えたのが魔理沙さんにとっては気に食わないらしく、それでも敗戦しても感情を露わにしない彼女に対し…

 

「アイツは運や博打にしか頼っていない。それでは霊夢には勝てない」

 

「…どうかしらね。霊夢もあの子も似たような戦法よ」

 

「何だと?」

 

「分からないなら決勝に行って確かめてみなさいよ。アリスも勢いで勝てるような人物じゃないけどね」

 

「…上等だ。お前の言葉が本当がどうか確かめて来てやる」

 

 私の勝ち方が気に入らないという魔理沙さんに対してジムチャレンジの時とは別人と話した輝夜さん。そんな輝夜さんの言葉を聞き魔理沙さんは拳をグッと握りしめると、輝夜さんに背を向けそのまま更衣室を立ち去る。そんな背中を見送りため息を吐いたのは輝夜さん。

 

 そんなやり取りが行われている事を当然私は知る由もなく控え室にてやって来ていたメリー、魔美、霊矢の3人と言葉を交わしていた。

 

「魔理沙さんが真剣になってる?」

 

「うん…元々バトルには本当に真剣だからさ。慧音さんの話だと蓮子のバトルスタイルが気に入らないらしい」

 

「私の?」

 

「運や博打にしか頼っていない所が気に食わないとの事らしいです。…まあアナタの事ですしそんな事ないのは分かっていますが」

 

「魔理沙さん…」

 

「決して油断しちゃダメ…ってしてないか。さっきもあんなに焦りを溜め込んでやっていたもんね」

 

 メリーには何を思っているのか筒抜けらしい。そして私が苦笑いを浮かべるとその場に少し笑い声が溢れる。余裕そうに戦っている風に見えてしまっているのだろうか。TVに映り込んだ魔理沙さんを見た後に拳を握りしめた私を見て霊矢が…

 

「はあ…見てられませんね」

 

「霊矢?」

 

「そんな言い掛かりが出てくるなら実際に戦って思い知らせばいいだけでしょう。それが許される舞台なんですから」

 

「勝負なんだから相手を気遣う必要はない。ここに来てまで気を遣った事があった?」

 

「…ないね」

 

 一瞬迷った心を霊矢と魔美の言葉が引き戻してくれた気分だ。2人の言う事は間違ってはいない。その言葉で笑みを浮かべた私。そしてTVに映っている魔理沙さんは何かに取り憑かれたかのようにアリスさんを圧倒して行く。その目は一歩間違えれば相手を殺してしまいそうだ。

 

 ポケモンバトルだからそれがないとはいえあまりに必死になっている姿を不安そうに見つめるのは魔美。当然だ。養子とはいえ魔理沙さんは彼女にとっては憧れの存在。それがバトルとはいえ感情に身を任せたようなやり方…見てられないと思う。

 

「今の魔理沙さん…とんでもなく強いと思う。大丈夫?」

 

「大丈夫じゃないなんて言ったら絶対圧倒されると思う。だから大丈夫。感情に任せてる分、付け入る隙はある筈」

 

「ホント…?」

 

「ホント。ただ私も真剣な魔理沙さんと当たるのは初めてだから全て予想でしか語れない。初手ダイマックスとかの手を取られたらその場その場で何とかするよ」

 

「…蓮子さん」

 

 霊矢に名前を呼ばれふと画面を見つめるとそこには試合終了のゴングが鳴り響いていた。エースジュラルドンのまさかの6タテ劇。観客も呆気に取られたようなそんな風に静まり返っている。覚悟を決め直す。そして大きく息を吐く。そんな風にスイッチを入れ直していると…

 

「失礼します。蓮子選手。決勝のカードが決まりましたのでバトルフィールドを整備致しましたらすぐお呼び出来ると思います」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

「6タテとは…さすがチャンピオンの次と呼ばれた人です。本気を出せばこんな物という事ですか」

 

「……」

 

 話でしか聞いた事がないが魔理沙さんは霊夢さんにライバルと呼ばれている存在だ。だからこそ実力は一級品。私に見せた実力なんて4割程度かもしれない。でも負ける訳には行かない。スッと表情を引き締めて待っていると…

 

 再びスタッフさんが私の元に。

 

「再度失礼します。蓮子選手バトルフィールドへ」

 

「分かりました。行ってくる」

 

「武運を祈るよ蓮子」

 

 ライバル達に送り出され私はそのままスタッフさんに連れられる形で通路へ。観客の声が聞こえてくる中で通路に足を踏み入れた私を待っていたのはアリスさん。目を擦っていたがすぐに私の方に振り向くと…

 

「ああ…もうそんな時間?申し訳なかったわね」

 

「アリスさん…」

 

「ちょっとショック過ぎてね。私のやって来た努力は何だったんだろうって。武運を祈ってるわ。アナタなら魔理沙にも抗える筈」

 

「…勝ちます」

 

「それくらい強気じゃないとね」

 

 去っていくアリスさん。そのアリスさんの言葉に再度息を吐き直し顔を少し強く叩く。睨みつけたような眼差しで前方を見つめると再びバトルコートに向かって歩いていく。時刻はあっという間に夜。一度も席を離れない観客達は本当に凄いと思う。

 

「お待たせ致しました。ファイナルトーナメント決勝!チャンピオン霊夢に挑むのは果たしてどちらでしょうか!まずは左側!その戦い方はもはや王者の風格!最強のチャレンジャー蓮子選手!」

 

「対するは先程たった6分で終わらせたチャンピオンのライバル!既に対戦相手の蓮子選手を敵視しております!霧雨魔理沙選手!」

 

 私と魔理沙さんのコールを聞きスタジアム中から大歓声が上がる。魔理沙さんの目からは既に圧しか感じない。気を抜けば本当に圧倒されてしまいそうだ。その無意識のうちの緊張からの心臓の鼓動が早くなる。それを抑える為に小さく息を吐いた。

 

 お互いに中央で足を止める。

 

「よお」

 

「どうもです」

 

「お前と話す言葉はない。さっさとやろうぜ。どちらが強いか思い知らせてやる」

 

「私も負けませんから」

 

 少ない言葉しか交わす事はなかった。それだけ既にバトルの中に入り切っている。魔理沙さんの言葉に少しだけ私は反論してそのまま魔理沙さんから距離を取って行く。今にでも始まってしまいそうな感じの為審判が間に入る。

 

「用意はよろしいでしょうか!」

 

「…いつでも!」

 

「それではポケモンを出してください!」

 

「行くぞジャラランガ!」

 

「行くよドラパルト!」

 

 魔理沙さんはジャラランガ、そして私の前にはドラパルト。奇遇にもドラゴン対決。そして伝説のポケモン以外では最大の能力を持つポケモン同士のぶつかり合いだ。ジャラランガが声を張り上げドラパルトは私の方を見つめる。

 

 私は笑みを浮かべてドラパルトと共にジャラランガを見据えるのだった…




見てくださりありがとうございます。
とりあえず次から決勝戦、魔理沙戦となります。
次もお楽しみください。では。


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ぶつかり合う邪念と信念

お久しぶりです。命です。
最近暑さにより体調が悪いですが書くには至ったので書きます。
趣味の範囲内ですからね。


「いわなだれ!」

 

「ドラゴンアローで破壊して!」

 

 まずは仕掛けて来たのは魔理沙さん。ジャラランガにいわなだれの指示を出すとジャラランガは地面を思い切り叩きつけ、空中に無数の岩を浮ばせる。そしてその岩を雨のように降らしていく。ドラパルトは自身に向かってくる岩に向かってドラメシヤを発射。

 

 勢いよく発射したドラメシヤは岩をあっという間に粉砕していく。粉砕した際に巻き上がった砂埃が若干視界を見えなくさせる中、魔理沙さんは再度声を張り上げる。

 

「スケイルノイズ!」

 

「りゅうのはどう!」

 

 身体を思い切り震わせ振動を発生させるとそのまま音波をドラパルトに向かって打ち込んでいく。私はドラパルトにりゅうのはどうを指示。ドラパルトの口から放たれた波動と音波が火花を散らしながら衝突。そして大爆発を起こす。空中に少し吹き飛ばされたドラパルトに戻ったドラメシヤを見て私は…

 

「ドラパルト、ロックオン!」

 

「この煙でどう狙いを定める!ジャラランガ、ドラゴンクロー!地面の煙を増やしてやれ!」

 

「あーっと!魔理沙選手砂埃を増やしに行きました!どう言う意図があるのでしょうか!?」

 

 巻き上がった砂埃のせいで目で必死に追うドラパルトの狙いが定まらない。魔理沙さんはこれにニヤリとした笑みを浮かべる中さらに攻めかかる。

 

「狙いを定められるなよ!ジャラランガ、いわなだれ!」

 

「行くしかない…!ドラパルト、りゅうのはどう!」

 

 何も見えない地面から聞こえる叩きつけるような音。煙を巻き上げながら空中に舞い上がった岩達がドラパルトに降り注ぐ中、賭けに出たのは私。ドラパルトはグッと表情を引き締めると爆煙が広がる中の場所一直線に波動を打ち込む。

 

 ドラパルトに巨大な岩一つが命中し、そのまま地面に叩きつけられそうになったがドラパルトの視界の先に映るジャラランガも少しよろめいており、煙で気づかなかったがダメージを負っているようだ。

 

「お互いに命中!一本入りました!」

 

「こんな物…!ジャラランガ、ドラゴンクロー!」

 

「ドラゴンアロー!」

 

 ジャラランガは爪を光らせるとそのまま地面が抉れそうなくらいに強く蹴り出し、ドラパルトに迫っていく。ドラパルトは目の前のジャラランガに向けて2体のドラメシヤを発射。一体がジャラランガの勢いをとめ、もう一体が腹部に直撃しジャラランガを吹き飛ばす。

 

 踏みとどまるジャラランガに悔しさを見せた魔理沙さんは歯を食いしばりながら…

 

「スケイルノイズ!」

 

「りゅうのはどう!」

 

 身体を叩きつけそのまま震わせると音波を発射。ドラパルトも放たれたおんはに合わせて口から波動を発射。波動と音波が再度火花を立てながらぶつかり合う中で大爆発を巻き起こす。再びフィールドに煙が広がる中、魔理沙さんはその中でも声を張り上げる。

 

「ジャラランガ、ドラゴンクロー!」

 

「視界が不安定の中で攻撃を選んだッ!?」

 

「来るよドラパルト!ドラゴンアロー!」

 

 煙を巻き上げながら聞こえて来た確かな足音。それに合わせてドラパルトは表情を引き締め、前方に向かって身構えると煙を掻き分けて現れたジャラランガの姿。ドラパルトは戻って来たドラメシヤ達を発射。一体はジャラランガの左肩に当たったがもう一体は思い切り殴られそのままドラパルトを殴り飛ばす。

 

 ある程度で踏ん張ったドラパルトは再度ジャラランガを見据えたが、踏ん張ったドラパルトを見届けもう一度声を張り上げようとしたジャラランガは受けた抜群のダメージが効いたのか。そのまま力無くドラパルトの視界で前屈みに倒れた。

 

「っ!」

 

「実況するスキすらないとんでもない試合!ジャラランガが倒れたッ!」

 

「ジャラランガ戦闘不能!ドラパルトの勝ち!」

 

「まだ行ける?ドラパルト!」

 

「グオ!」

 

 一息付く暇も全くなかった。息を止めないとこの攻防についていく事は出来ない。私は大きく一息を吐きながら拳を握りしめた魔理沙さんの方を見つめる。ジャラランガを何とか倒したとはいえドラパルトも中々のダメージを負っている。油断するわけには行かない…!

 

「いくぞ…ヌメルゴン!」

 

「魔理沙選手2体目はヌメルゴン!さすがドラゴンパーティ!出てくるポケモンもトップクラスです!」

 

「まずはコイツに退場願う…!ヌメルゴン、りゅうのはどう!」

 

「ドラパルト、りゅうのはどう!」

 

 ジャラランガを戻し出して来たヌメルゴン。魔理沙さんはこちらに余裕を与える気がないらしく、すぐに指示を出す。ヌメルゴンの口から吐かれた波動とドラパルトから吐かれた波動が衝突。ただ先程のダメージで少し痛がる素振りを見せたドラパルト。

 

 衝突していた波動のぶつけ合いが押し切られてしまい、ドラパルトにりゅうのはどうが命中。私が歯を食いしばる。ドラパルトは平気そうにしていたがそのまま地面に倒れ込んだ。

 

「ドラパルト!」

 

「ドラパルト、戦闘不能!ヌメルゴンの勝ち!」

 

「ただで有利にはさせない!魔理沙選手の意地がドラパルトから勝利をもぎ取った!」

 

「お疲れ様ドラパルト…後は任せて。いくよイーブィ!」 

 

 ドラパルトに労いを入れた私が次に繰り出したのはエースのイーブィ。モスノウやウッウという選択肢もあったかもしれないが、そもそもがドラゴンタイプしかいないパーティ。有利である所から選択して行った方がいい。

 

「蓮子選手ここでイーブィを選択しました!この選択がどう響くか!」

 

「誰が相手だと関係ない…!ヌメルゴン!あまごい!」

 

「行くよイーブィ!ほしがる!」

 

 ヌメルゴンが天に向かって声を張り上げると雨雲が出来上がり、雨が降りつける。そんな最中地面を力強く蹴り出したイーブィはヌメルゴンの目の前に迫るとそのまま腹部に突進し、ヌメルゴンを吹き飛ばした。ある程度で地面を抉りながら踏ん張ったヌメルゴンに対し…

 

「かみなり!」

 

「イーブィ、びりびりエレキ!」

 

「電気技に対して電気技!?どう言う事でしょうか!?」

 

 空中からヌメルゴンが声を張り上げ雨雲から雷を落とす中、イーブィは身体に電気を溜め込んでいく。それをバリアのようにして自分の周りに放出すると、ぶつかり合った雷が火花を散らし大爆発を巻き起こす。その大爆発は雨雲さえも振り払ってしまった。

 

「雨のフィールドを晴れにしてしまった!?」

 

「味な真似をしてくる…!」

 

「大丈夫!?イーブィ!」

 

「ブイ!」

 

 一かバチかの賭けだった。雷同士をぶつければ爆発するんじゃないかと思ったが天候まで変えてしまうとは考えていなかった。当然ダメージをかき消せている訳ではない。大きな雷の一撃を喰らった分のダメージは確かに残っている。

 

「りゅうのはどう!」

 

「きらきらストーム!」

 

 ヌメルゴンから放たれる波動の直撃を覚悟だ。イーブィが空に雄叫びを上げ、そして空に魔法陣を作り上げたその時。ヌメルゴンのりゅうのはどうがイーブィに命中した。少しの爆煙と共にふらつくイーブィ。そしてそんなイーブィに気を取られていると、空中から巨大な星がヌメルゴンに降りかかる。

 

 魔理沙さんは驚きはしたが指示は出していない。そのままヌメルゴンにも巨大な星が命中し大爆発を巻き起こした。耐え切ったヌメルゴンとイーブィが煙明けから睨み合っていたが、そのまま2体同時に倒れ込んだ。

 

「イーブィ!」

 

「イーブィ、ヌメルゴン!共に戦闘不能!ダブルノックアウト!」

 

「まさかのダブルノックアウト!開始数分にして両者2体を失う事になります!」

 

 息を吐く間も本当にない。手汗びしゃびしゃだ。私はイーブィを労うと次はモスノウをフィールドに。魔理沙さんはドラパルト。観客達がざわめき出す中3体目の戦いが始まろうとしていた…




見てくださりありがとうございます。
次回も楽しみにください。では^_^


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凌ぎ凌ぎの死闘

お疲れ様です。命です。執筆しているのがお盆真っ最中になりますね。
台風の影響は皆さんは大丈夫でしょうか。こちらは何とか大丈夫でした。災害には気をつけましょうね。


「マジカルシャイン!」

 

「10まんボルト!身の回りに放電させろ!」

 

 モスノウから発せられた光に混ざり込んだ光の弾丸がドラパルトに向かって行くがドラパルトは身体から電気を発生させ、自分の周りに撒き散らすと光の弾丸を破壊して行く。一発は当たると思っていた私はこれに驚いたがすぐに魔理沙さんが笑みを浮かべると…

 

「その余裕を命取りにさせてやる!ドラパルト、ドラゴンアロー!」

 

「むしのさざめき!」

 

 ドラパルトの顔付近から放たれた2体のドラメシヤ。猛スピードでモスノウに向かって行くがモスノウが発した音波に思わず2体はスピードを緩めた。それを確認した私はさらに動く。

 

「れいとうビーム!2体丸ごと吹き飛ばして!」

 

「させるか!りゅうのはどう!」

 

 モスノウが身体からビームを発したその時にドラパルトからも波動が発せられる。ドラメシヤにぶつかりそうなタイミングでビームと波動が相打ちで爆発を巻き起こすと爆煙の中、ドラメシヤ達は一時的にドラパルトの中に撤退する。一瞬たりとも目を離すと流れを持ってかれそうだ…

 

 冷や汗を拭い私は大きく一息を吐く。観客にはこの瞬間は一瞬に見えているのだろうか。やってる私からしたら溜まった物じゃないけど…!

 

「シャドーボール!」

 

「モスノウ、ゆきなだれ!目の前に壁を作り込んで!」

 

「モス!」

 

 ドラパルトの口から黒の球体が撃ち込まれる中、モスノウに対して私はゆきなだれを指示。モスノウは目を光らせると雪崩を発生させ自分の前に壁を作り込む。シャドーボールはそれを貫通するがその先にモスノウの姿はなく魔理沙さんは歯を食いしばる。

 

「壁が功をなす!渾身のシャドーボールをかわされたぁ!」

 

「どこに逃げたッ!上か!」

 

「れいとうビーム!」

 

「りゅうのはどう!」

 

 壁の上から現れたモスノウが口からビームを放ち、ドラパルトが口から波動を再び撃ち込む。ビームと波動が再びぶつかり合い火花を散らすとまたしても爆発し爆煙を巻き上げる。だが今度は待たない。その場にドラパルトが待機しているのに賭け私は声を張り上げる。

 

「マジカルシャインッ!」

 

「何!?10まんボルト!」

 

 ドラパルトが再び身体に電気を纏ったが逆にそれが目印に。モスノウはそれを確認してから身体から光を発しドラパルトに向かって光の弾丸を撃ち込む。ドラパルト側からはモスノウの居場所を特定出来ない。それが功を成し、無数の光の弾丸がドラパルトに命中した。

 

「グウ!」

 

「初めてこの対戦が始まってから技が命中!しかも高火力だッ!」

 

「ちっ!ドラパルト、ドラゴンアロー!」

 

「来るよモスノウ!ゆきなだれ!」

 

 その晴れかけの煙の中魔理沙さんが仕掛けてくると判断した私は再びモスノウにゆきなだれを指示。読まれているかもしれないがその先を行くしかない。ゆきなだれで再び壁を作り出すとドラメシヤが煙を突っ切って壁に突進。一体が壁を破壊するも再び姿がそこに無し。

 

 2体目が見つけモスノウに突進して行く中…

 

「れいとうビーム!」

 

「モス!」

 

 ドラメシヤの突進をまともに喰らいながらもモスノウはその場で踏ん張ると口かられいとうビームを放ち、ドラメシヤ諸共ドラパルトの元まで吹き飛ばす。同じ戦法を取られた事に気づかなかった魔理沙さんは吹き飛んできたドラメシヤに驚きを見せる。

 

 ドラメシヤと共にれいとうビームがドラパルトに直撃しドラパルトがそのまま地面に叩きつけられた。ドラパルトが地面に叩きつけられた衝撃で砂埃が舞う中、砂埃が晴れると流石に効果抜群の技を二発食らって耐えきれなかったのかドラパルトは戦闘不能に。

 

「ドラパルト戦闘不能!モスノウの勝ち!」

 

「実力は互角!だが戦法がこの対戦の上を行った!勝者はモスノウ!」

 

「ふう…」

 

「…よくやったドラパルト。後は任せろ」

 

「魔理沙選手残り2体!こおりタイプのモスノウにどう切り崩していくのか!」

 

 ドラパルトを戻した魔理沙さんは何かを確認したかのように一息を吐くと4体目のポケモンをフィールドに出す。4体目に出て来たのはこの前の対戦でウッウと対戦したアップリュー。このポケモンもドラゴンタイプの筈…大きく一息を吐く。モスノウにはまだ余裕がある。

 

 何とかしてくれる筈…!

 

「行くよモスノウ!れいとうビーム!」

 

「かわしてアクロバットだアップリュー!」

 

 モスノウが口からビームを再び放ち小柄のアップリューに放つが、ジグザグに動きながらアップリューはかわすとそのまま地面スレスレを滑空しモスノウに急接近すると思い切りぶつかり込む。その体当たりにモスノウは吹き飛ばされそのまま地面に叩きつけられた。

 

 砂埃が舞う中モスノウは何とか立ち上がり、アップリューを見据える。

 

「仕留めきれないか…!」

 

「むしタイプを持つモスノウに相当な痛手!アクロバットの存在がどう左右するのか!」

 

「仕留めに行くぞアップリュー!アクロバット!」

 

「れいとうビーム!」

 

 素早く羽を動かしモスノウに向かって滑空して行くアップリューに対してモスノウは少し痛がった表情を浮かべながら冷気を溜め込む。ジグザグに再び動いた後にアップリューは再びモスノウに突進。モスノウは羽を羽ばたかせどうにか地面スレスレで堪えるとアップリューに対してビームを撃ち込む。

 

 当然反撃なんてされると思っていなかったアップリューは驚き、かわしきれないままビームを直撃。魔理沙さんの前まで吹き飛ばされるとそのまま戦闘不能に。一撃でアップリューを戦闘不能にした反面、モスノウも戦闘不能に。私が歯を食いしばる中審判が確認し…

 

「アップリュー、モスノウ共に戦闘不能!ダブルノックアウトとなります!」

 

「ダブルノックアウトだ!モスノウが自身が倒れる代わりにアップリューを道連れにしたッ!」

 

「お疲れ様モスノウ。本当によく頑張ってくれたよ」

 

「モス…」

 

(何が届かない…!私が必死に苦難を共にしたポケモン達とコイツのポッと出のポケモン…何が違う!愛情とでも言うのか…!)

 

アップリューを戻した魔理沙さんが歯を食いしばる姿を見て違和感を感じていたのは観客席から見つめていた魔美。明らかにいつもの雰囲気とは違いどこか焦っているような様子。私も確かに明らかな敵対心というのは感じた。モスノウを一旦戻すと…

 

「私は勝たないと行けない…!少し勝ち上がって来たお前とは一勝の価値というのが違う!そうじゃないとチャンピオンに近づく事が出来ない!」

 

「魔理沙さん…」

 

「敗者は負けたという結果しか残らない!だから私は勝ちを目指す!例え厳しい状況でもだ!行くぞジュラルドン!」

 

「行くよルカリオ!」

 

「魔理沙選手がエースジュラルドン!そして蓮子選手はイーブィと同じくダブルエースの一体であるルカリオがフィールドに立ちます!」

 

 観客が大歓声を上げる中魔理沙さんは残すはジュラルドン。こちらは3体残しているとはいえジュラルドンに打点を入れられるのはルカリオしかいない。当然終わるまでは最善の策を考えるがルカリオの負けは終わりに近いかもしれない。

 

 魔理沙さんがジュラルドンをボールの中に戻す。それを見た私は…

 

「行けるよねルカリオ」

 

「グルウ!」

 

「よし!」

 

(余裕を見せられるのも今のうち…!私が霊夢に挑戦する!)

 

私もルカリオをボールに戻し魔理沙さんと共にダイマックスパワーをボールに纏わせる。巨大化したボールを後方に投げつけるとジュラルドンがキョダイマックスし、ルカリオがダイマックスをする。ダイマックス同士のぶつかり合いに観客がさらに声を上げる中…

 

 私はこの場面を凌ぐ事しか考えていなかった…




見てくださりありがとうございます。魔理沙さんとの試合が次がラストになるんですかね。その後はちょっとしたエピソードを入れようかなとは考えてます。お楽しみください。では。


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見せる意地か、それとも決着か

お久しぶりです。一周開けて帰ってきました。とりあえず今回も頑張って書いていきますね。


 観客達から大歓声が上がる。それは三体という優勢である私への勝ちの期待か、それとも魔理沙さんの大逆転勝ちを期待しての声か。その歓声からは意図というのは当然分からない。向こうも当然気を抜いてくれないというのは理解している。そんな中私は気合いを入れ直し…

 

「行くよルカリオ!ダイナックル!」

 

「この一撃で沈める!キョダイゲンスイ!」

 

 ルカリオとジュラルドン共に声を張り上げルカリオは空中から拳の波動を降らせ、ジュラルドンは身体から発したオーラからルカリオの下に竜巻を巻き起こす。お互いの一撃が火花を散らす中大爆発を起こす。三度の爆煙に私と魔理沙さんも前方が見えなくなる中、ダイマックスの光が発せられたのを確認できた。

 

 爆煙が晴れるとそこには元の姿に戻ったルカリオと同じく元の姿に戻ったジュラルドンの姿。本来三発打てるダイマックス技。だがこのレベルが極限にまで達すると一発のぶつかり合いで効果が切れるのはよくある事だ。

 

「ダイマックス技のぶつかり合い!それにより両者元に戻ってしまった!」

 

「行けるよねルカリオ!」

 

「グウ!」

 

「跳ね返すぞジュラルドン!」

 

「グオオオ!」

 

 私の語りかけにルカリオが答え、魔理沙さんの檄にジュラルドンが声を張り上げる。ダイマックスの権限は今使い果たした。後はトレーナーの戦術とポケモンの頑張り次第となる。私は顔を両手でパンと叩き気合いを入れ直すとルカリオに指示を出す。

 

「ルカリオ、はどうだん!」

 

「ラスターカノン!」

 

 ルカリオが両手で溜め込んだ波動をジュラルドンに放つ中、ジュラルドンは口から鋼の波動を打ち込む。両者の波動が火花を散らしながらぶつかり合う中、相打ちとなり前方を曇らす爆煙を巻き起こす。それを踏まえて私はルカリオに指示を出す。

 

「ルカリオ、はっけい!」

 

「狙ってくるぞジュラルドン!ワイドブレイカーでかき消せ!」

 

 ルカリオが地面を蹴り出し爆煙の中を突っ込んでいく中でジュラルドンは前に一歩踏み出し、尻尾を振り回す。尻尾から発せられた衝撃波は確実に煙をかき消す中、ジュラルドンの視界に入ったルカリオは自分のほぼ目の前。しゃがみ気味の体勢から拳をジュラルドンにぶつける。

 

 そのまま押し出しジュラルドンの体勢を若干崩す。

 

「ボディプレス!そのまま飛びかかれ!」

 

「っ!?」

 

 崩れかかった姿勢のまま何とか倒れていない足に力を込め、ジュラルドンは思い切り空中に飛び上がり空中で体勢を立て直すとそのままルカリオに向かってジュラルドンは隕石のように勢いを増しながら落下していく。私はルカリオに向かって声を張り上げる。

 

「はどうだん!」

 

「グウ!」

 

 ルカリオが波動を溜め込み落下してくるジュラルドンに向かって放出していく。落下してくるジュラルドンとルカリオの波動がぶつかり合う中、両者の一撃が三度相打ちとなりジュラルドンは勢いを無くし地面に落下する。その一瞬を好機とみた私はルカリオに指示を出す。

 

「はっけい!」

 

「ドラゴンクロー!」

 

 着地したタイミングジュラルドンは一瞬だけ動き出すのが遅れた。ルカリオはサッと地面を蹴り出しジュラルドンに接近していく。ジュラルドンの爪にオーラが放たれる中、接近して来たルカリオにそれを振り下ろそうとする。渾身の一撃を叩き込んだのはルカリオ。

 

 腹部に叩き込まれた一撃と同時にルカリオの頬に爪が掠った後がついた。ルカリオを攻撃しようと前屈みになっていたジュラルドンはそのまま前方に倒れ込んだ。ルカリオが体勢を戻し審判が駆け寄る。

 

「ジュラルドン戦闘不能!ルカリオの勝ち!よって勝者蓮子選手!」

 

「決勝戦ですら冴えた戦術!アリス選手を6タテで沈めた勢いをチャレンジャーらしからぬ落ち着きでかわしてみせた!」

 

 会場から大歓声が上がる。魔理沙さんはジュラルドンが倒れた事に最初は受け入れられない様子だったが俯いて歯を食いしばるとジュラルドンをボールに戻した。私はルカリオに歩み寄りハイタッチをかわすと…

 

「ありがと。お疲れ様」

 

「グウ」

 

「……」

 

「魔理沙さん」

 

「現実を受け止められないが何かがお前を勝ちに導いたんだろうな。私も餓鬼みたいに怒り散らしたが負けたという現実は受け止めないと行けない。…悔しいがな」

 

 溢れんばかりの気持ちを押し殺しているのだろう。歩み寄って来た魔理沙さんは何回も息を吐きながら私に手を差し伸べる。私は彼女に対して何も声をかける事が出来なかった。ただ差し伸べられた手を取りギュっと握りしめた。

 

 この握手で会場から拍手が巻き上がる中控え室にて見ていた霊夢さんは無言でその場を去る。そしてスタジアムに映ったトーナメント表は私の勝利を映しそして実況も一つ声を張り上げる。

 

「魔理沙選手を突破しチャンピオンマッチに進出した蓮子選手!彼女にこの大会に挑む権利を差し伸べた霊夢選手に蓮子選手が挑む形となりました!チャンピオンマッチは3日後!皆様お楽しみに!」

 

「負けんなよ」

 

「…魔理沙さん」

 

「私を破ったんだあっさり負けるなら許さねえからな」

 

 魔理沙さんはそう言い残すと私から離れて控え室に戻って行く。遠いように感じたチャンピオン霊夢さんへの挑戦権。受け止められない…いや正直挑むという気持ちはまだ湧かないが勝負は3日後に迫っている。胸を張って私も控え室に戻る。

 

「恐るべき人ですね本当。無敗のままチャンピオンに挑む権利を得るんですから」

 

「お疲れ様蓮子。ナイスファイトだったよ」

 

「魔美、霊矢…うん。ありがと。…メリーは?」

 

「さっきまで一緒にいましたよ。アナタも見ていたじゃないですか」

 

「そ、そうだね」

 

「という冗談はさておきジュースでも買いに行くって言ってました。もう戻ってくるのではないでしょうか」

 

 私を出迎えるようにその場にいたのは魔美と霊矢。メリーは一旦この場にはいない。私の戦いぶりに苦笑いを浮かべる霊矢と笑みを浮かべながら私に労いの言葉を送ってくれた魔美。そんな2人と話していると控え室の扉が開く音が。そこからビンに入った飲み物が私に投げつけられる。

 

 私は割らないように慌てて受け取るとその視線の先にはニヤリと笑みを浮かべたメリーの姿。

 

「驚いた?勝っても負けても奢ってあげようと思ってさ」

 

「これビンじゃん!びびったよ本当!」

 

「随分すぐの帰還ですね」

 

「幻想郷に甘味処以外の飲食出来る場所があるとは思わなかったけど、あるんだったら利用しようって思って」

 

 してやったりのメリーと安心したように息を吐く私。そういえばポケモンセンターにこちらで言う自販機のような物があったがあれもポケモンが幻想入りした影響で生まれたものだろうか。すると魔美が何かハッとしたかのようにメリーに呟く。

 

「メリー、蓮子が…」

 

「知ってる。今じゃないけどチャンピオンマッチだね。技の調整しっかりしないとダメだよ」

 

「分かってるよ。実感は湧かないけど頑張る」

 

「そんな調子で勝てるんですかねえ?」

 

「う、うるさいなあ!大丈夫だって!」

 

 メリーのアドバイスと私の言葉に対する霊矢の語りかけに思わず苦笑いを浮かべる私。そんなやりとりに思わず魔美からは笑い声が漏れる。帰宅していく観客達の中ビジョンに映し出されたのは霊夢さんの文字。その場に立つ時自分はどんな気持ちになるんだろうか。

 

 今は全く想像も付かない。だが勝ちたいと言う気持ちでグッと身が引き締まる。そんな私を見たメリーが私を軽く押し…

 

「肩の力入りすぎ。蓮子ならきっと行けるって」

 

「メリー…ありがと」

 

 迫る3日後を控えて気持ちが昂る私。だがその中でとある事が動き出しているとは知るよしもなかった…

 




ブランクがあったので自分の中では納得が行く感じでしたが皆さんの中ではどうでしょうか。暇だったら意見もらえるとありがたいです。
では失礼します。


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動き始める緊急事態

お疲れ様です。命です。今回からジムチャレンジからちょっとだけ離れたシナリオになります。ご了承の程よろしくお願いします。


 大々的に幻想郷の新聞の一面にはチャレンジャーである私の快進撃が報じられる。チャレンジャーがチャンピオンマッチに進出するのは5年ぶりとの事。そこまではずっと魔理沙さんが進出しておりその期間は魔理沙さんという壁を誰も越えられてなかった。

 

 誰もが羨むチャンピオン霊夢さんのライバル。それが魔理沙さんだった。ファイナル突破を決めさらに気持ちが強くなった後の翌日。私はこのままでは霊夢さんに勝てないと人里を抜けようとしていた。

 

「チャンピオンマッチまで後3日…そこまでにもっと力を付けないと。あの魔理沙さんが5回やって5回負けている存在だから」

 

「ブイ!」

 

「イーブィ…力入りすぎてる?大丈夫だよこの力みは3日間で自信に変えるから」

 

 人里を抜けた先に待つ大きな草原。幻想郷で唯一単独での突破が厳しいとされるエリア。博麗神社に通ずる道にはとんでもなく強力なポケモンがコレでもかといる。メリーもセミファイナルまでその場所で特訓していたらしい。私にとってはキテルグマに襲われて以来だが…

 

 自信が大きくなかったあの時よりは強くなった。もう大丈夫だ。堂々と人里の門を抜けその草原に向かおうとしたその時だった。突如前から突風が吹いて来たと思えば前から羽音。そして目の前に1人の女性が降り立って来た。

 

「チャンピオンマッチを決めたチャレンジャーさん。お久しぶりです」

 

「あ、アナタは確か記者の方々の…!」

 

「そう。射命丸文でございます。ジムチャレンジはこの期間の中では幻想郷の中の大イベントの一つ。チャンピオンマッチなんてスタジアムに入りきれない程の客が入ってくるビッグマッチです」

 

「つまり…そこに行く事が決まった私が凄いと?」

 

「ややこしくなってしまいましたね。ええそうです。そして今はそのチャンピオンマッチに備えて鍛えに行こうとしているのですね?」

 

「そうなりますね。自信を盤石な物にしたいので」

 

 私の前に現れたのは文さん。セミファイナルが始まる前に取材をしてもらった記者さんだ。私の目は間違っていなかったと言わんばかりに目を輝かせながら話しかけてくる彼女の勢いに少し気持ちが押されそうにはなっていたが冷静に対応する。

 

 すると文さんがなるほど!と笑みを浮かべながら呟いたその時だった。

 

「そういえば知っていますか?大会委員長とスタジアムを貸している守矢の様子がおかしい事を」

 

「え?どういう事ですか?」

 

「私も有識者から得た情報なので全てが定かではありませんがジムチャレンジを良くないと思っている輩がいるようでして。どこかで潰せないかと企む連中がいるそうです」

 

「もし…それが嘘なら…」

 

「私もとんでもない事話しているのは理解できますがねえ。話してくれた有識者が自信満々で話してくれるもんですからねえ」

 

 情報が定かではない。でもその情報を有識者は文さんに堂々と語っていたという事なのだろう。私は少し信じられない気持ちになった。だが文さんは周りを見ながら私に近づくと…

 

「あえて聞かれても大して広がらなさそうな場所で話していますがシークレットですので。この件は内密にお願いします」

 

「内密な件をどうしてチャレンジャーである私に?」

 

「噂が本当だったらすぐ動いてもらいたいからですよ。霊夢さんはそもそも面会を却下されたんで。強引ではありますが心構えだけよろしくお願いします」

 

「わ、分かりました…」

 

「それじゃ。噂にされると面倒なので私は退散致しますね。修行頑張ってください」

 

 要件をあらかた伝えた文さんは私に一礼するとその場から飛び立ちあっという間にその場から去って行く。私は飛び立った文さんの背を見えなくなるまで見た後にグッと拳を握りしめる。心の中にはそんな事はあり得ないという思いが充満していた。

 

 ただ…もし本当の事だったらと思うと。…嫌な事を考えさせられたかもしれない。深呼吸をし心配そうに見つめていたイーブィと顔を見合わせる。イーブィに笑みを浮かべた後にもう一度草原に向かって進み始めようとしたまたしてもその時だった。

 

 悪い予感はあっという間に的中した。人里の方から聞こえて来た爆発音は文さんが話していた悪い噂を現実にする物だったのだろう。振り返ると人里では何も起きていない。人々はとある一点を見つめている。

 

「ブイ…」

 

「文さんが話してくれている間にも何かしらの動きがあった…という事なのかも。現実になってほしくないという思いは強かったけど…仕方ないよね。行こうイーブィ。何が起きたか確かめなくちゃ」

 

「ブイ!」

 

 人里に再び戻り爆発音がした方向に走り出す。人々が不安そうに見つめるのは先程まで滞在していた守矢スタジアムの方。人里からはあまり分からないが山に煙のような物が出ているのが理解できる。守矢スタジアムに向かって走り出したその時だった。

 

 不安がる人々の中に明らかに私の進路を防ごうとして現れた1人の女性。足を止めた私に対して笑みを浮かべながら質問して来た。

 

「そんな真剣な表情をしてどこに行く?チャレンジャー」

 

「爆発音の方向を確かめに行こうと…」

 

「その必要はない。あれは幻想郷とこれからのジムチャレンジに重要な事だ」

 

「見知らぬ人の言葉をはいそうですかと信じられるとでも?」

 

「名前を語ったら更に警戒心が高まると思ってな。だがそこまで行ってたら隠す必要もないか」

 

 私の問いかけに対して分かっていたかのように笑った女性はモンスターボールを出すと空中に高々に投げる。空中から出て来たのは一体の人型のようなポケモン。場に人がたくさんいる事から関係なしに繰り出した彼女に驚きを隠せない。だが女性はそんな周り関係なしと言った感じで…

 

「私は八坂神奈子。お前が会った東風谷早苗、洩矢諏訪子とは知り合いでもある。お前が言いたいのはこんな周りでポケモンを堂々と出すなんて…という事だろう?皆まで言わなくてもわかる」

 

「だったらどうして…!」

 

「あの爆発は我々が関与していてな。早苗が頑張ってくれる事でそれが成功する。私は足止めだ。今霊夢とほぼ同じくらいに強いお前を行かせる訳には行かない」

 

「……」

 

「先に行きたいのなら私を通してもらおうか。そうしなければお前はカイリキーに吹き飛ばされる事になる」

 

「…分かりました。そこを通してもらいます。行くよイーブィ!」

 

「ブイ!」

 

 立ち塞がって来た神奈子さんの前にはカイリキーと呼ばれるポケモン。周りがざわめき出したがやらなければこちらが吹き飛ばされる。私は覚悟を決めると肩に乗っていたイーブィを前に。神奈子さんはずっと笑みを浮かべている。その笑みは余裕からなのかわからない。

 

「お、おい!ここは里の中だぞ!?」

 

「守矢の権利でここをフィールドとする。文句はあるまい?」

 

「ぐ…!ご、強引な…!」

 

「さて先程も言ったが通させる訳には行かないからな。意地でも防がせてもらう」

 

 苦情を入れようとした男性に睨みを効かせて撃退すると再び笑みを浮かべながら私の方に見つめる。カイリキーというポケモンは今にでも飛び出して来そうなくらいに鼻息を荒くしている。イーブィも表情を相当真剣にしている中神奈子さんがゆっくり口を開き…

 

「カイリキー、じしん」

 

「っ!ほしがる!」

 

 向こうは止められたらいいから里への影響なんてお構いなしだ。カイリキーは容赦なしに地面を叩きつけると衝撃波を発生させる。イーブィは走りながらジャンプしてかわすとそのままカイリキーに体当たりを喰らわせる。

 

 イーブィがそのままカイリキーを吹き飛ばしたがその損害は微々たるもの。すぐに踏ん張る。こんなに集中出来ない勝負は初めてかもしれないがやるしかない。私は少し歯を食いしばった…




まずは前座。神奈子さんが立ち塞がりました。まあ察する方もいるかもしれませんがまあゆっくり書いていきます。見てくださりありがとうございます。


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潜り抜けるべき壁

お疲れ様です。命です。この作品も最終盤に入って来ました。
やり切りますのでもう少しだけ応援よろしくお願いします。


「イーブィ、ほしがる!」

 

「カイリキー、ビルドアップ」

 

 周りから冷ややかな視線が送られる中イーブィは私の指示を聞くと足元を強く蹴り出しカイリキーに迫って行く。迫られたカイリキーは筋肉を強張らせると防御の構え。イーブィが仕掛けた体当たりをカイリキーは4本の腕を前方に出すことで防ぎ切り弾き飛ばす。

 

 弾き飛ばされたイーブィがある程度の所で踏みとどまる中神奈子さんがカイリキーに向かって指示を出す。

 

「クロスチョップ!」

 

「めらめらバーン!」

 

 カイリキーは声を張り上げると足元を抉れるくらいに強く蹴り出し今度はカイリキー側がイーブィに迫っていく。イーブィは体毛を逆立てカイリキーが目の前に迫って来たタイミングを見て身体中から炎を放出。カイリキーは手刀を振り下ろそうとしたが炎の前に引き下がる。

 

「畳み掛けるよイーブィ!びりびりエレキ!」

 

「じしん!」

 

 カイリキーが引き下がったタイミングを見て私はイーブィに指示を出す。今度は身体に電流を纏わせ一気に放出。カイリキーに向かって行く中でカイリキーは地面を拳で強く叩きつけ衝撃波を起こすと電気を衝撃波で消滅させる。衝撃波がそのままイーブィに向かって行く中で…

 

「飛んでイーブィ!」

 

「ブイ!」

 

「っ!?」

 

 衝撃波が迫る中で私はイーブィにジャンプを指示。イーブィは力強く返事をすると足を強く地面に叩きつけ空中に舞い上がり衝撃波を回避。そして更に私は指示を出す。

 

「きらきらストーム!」

 

「いわなだれ!」

 

 空中からイーブィが声を張り上げるとイーブィの真上から巨大な星がカイリキーに向かって降り注いでいく。カイリキーは目を光らせるとイーブィと同じく真上から大量の巨岩を降らせて行く中岩は星に封殺され、星はそのままカイリキーに直撃。直撃したタイミングで爆発を起こす。

 

 爆発による爆煙が舞い上がる中煙が晴れるとそこにはカイリキーが倒れて戦闘不能になっている姿。神奈子さんは舌打ちをするとカイリキーを戻し…

 

「さすがに一筋縄では止められないな。でも私も引き下がるつもりはない。行くぞルンパッパ!」

 

「その壁壊させていただきます…!」

 

 次に出して来たのはメキシコにいそうな姿をしたポケモン。特に帽子がその形に見えるがポケモンなのだろう。煽っているかのように踊っている姿を見せるが私も気を緩ませる訳には行かない。頬を両手で叩き気合いを入れ直すと私はイーブィに指示を出す。

 

「イーブィ、びりびりエレキ!」

 

「エナジーボール!」

 

 イーブィが身体に電流を纏わせると再び放出。その放出された電気がルンパッパの方に向かって行く中でルンパッパは両手から緑色の波動を放出。電気と波動が火花を散らしながらぶつかって行く中で私はイーブィに指示を出す。

 

「隙を与えないでイーブィ!めらめらバーン!」

 

「ブイ!」

 

 電気と波動が相打ちとなり爆煙を巻き起こす中あらかじめの場所は想定出来ているルンパッパに対してイーブィは身体から炎を放出する。煙をかき消しながらルンパッパに向かって行き炎が直撃。二重に重なる形で爆煙が広がる中でルンパッパは炎を水を使ってかき消す。

 

「容赦ないな。それと焦りも感じる」

 

「水…草タイプだけじゃないですね?」

 

「ああ。よく見抜いたな。そうだこのルンパッパにはみずタイプも入ってるが…そのイーブィにルンパッパの弱点を付ける技は無さそうだな」

 

「だったら地道に行くだけです…!」

 

「ルンパッパ、しねんのずつき!」

 

「びりびりエレキ!」

 

 私が声を張り上げた瞬間に神奈子さんが声を張り上げる。ルンパッパが身体に念波を纏わせ足元を蹴り出すとそのままイーブィに突撃してくる中でイーブィは身体に電気を纏わせ一気に放出して行く。ルンパッパに電気を放出して行くがかき消されて行きあっという間に目の前に。

 

 そのままルンパッパに突進を喰らいイーブィは吹き飛ばされる。

 

「イーブィ!」

 

「はたきおとす!」

 

「びりびりエレキ!」

 

 イーブィが体勢を立て直している間にルンパッパはもう一度足元を強く蹴り出しイーブィに接近して行く。イーブィが残った電力を活用して一気に電気を放出して行く。今度はバリアのような物がなく電流はルンパッパに直撃。そのまま爆煙を巻き起こしながらルンパッパを吹き飛ばした。

 

 ルンパッパはそのまま神奈子さんの前で倒れて戦闘不能に。神奈子さんは歯を食いしばりながらルンパッパを戻す。

 

「びっくりしたよ。これ程短期間でな…」

 

「……」

 

「なるほど。遊んでいる時間もないようだ。だったら…行くぞミロカロス!」

 

 爆発音は未だ鳴り止む事はない。神奈子さんはそれでも時間稼ぎには最適と言った感じでミロカロスというポケモンを出す。キリッとした目つきをしているが綺麗なポケモンだ。見た目に目を奪われてしまいそうだが今はそんな事言ってられない。

 

 少しのダメージを受けたイーブィもまだまだ元気そうだ。私は拳を握りしめてイーブィに指示を出す。

 

「イーブィ、めらめらバーン!」

 

「ハイドロポンプ」

 

 イーブィが身体に炎を溜め込み放出したその時。ミロカロスは口から水流を放ち炎を瞬く間に鎮火させる。ハイドロポンプはそのままイーブィに直撃。吹き飛ばされそうになるが地面を抉りながら踏ん張り込み、水をかき消すと私はさらに声を張り上げる。

 

「びりびりエレキ!」

 

「もう一度ハイドロポンプ!」

 

 ミロカロスからもう一度水流が放たれる中でイーブィは身体に電気を纏わせ一気に放出。ミロカロスが放って来た水流と正面衝突をする中水に電気が感電しそのままミロカロスに電気が直撃する。あまりの電気にミロカロスは技を一旦中断。

 

「ミロカロス…ッ!」

 

「畳み掛けるよイーブィ!びりびりエレキ!」

 

「なみのり!」

 

 イーブィが再度電気を纏わせる中でミロカロスは尾で地面を叩きつけ津波を巻き起こす。突然の津波に人々が逃げる中でイーブィにも津波が直撃。だが水に電気が直接流れそのままミロカロスまで。直接感電しミロカロスはそのまま倒れ込んだ。

 

「ミロカロス!」

 

「私はまだやれますよ。さあ次がいるなら…」

 

「蓮子さん!」

 

 歯を食いしばる神奈子さんを前に彼女を睨みつけるようにして話しかける私。イーブィの体力が持つまでと思っていたがその場に先程話した文さんが地面を抉りながら着地する。先程の様子とは違いかなり慌てた様子だ。

 

「すいませんね。まさか話しをした直後に起きるとは…!」

 

「文さん…!」

 

「普段背中に人を乗せる義務もないんですが何せチャンピオンがうるさいもんでして。背中に乗ってくれますか?」

 

「いいんですか?」

 

「今回は特別で!」

 

「わ、分かりました」

 

 私の前にいた神奈子さんに目もくれずそのまま私とイーブィを乗せて文さんは高くジャンプ。そのまま羽を羽ばたかせて一気に爆発と爆音が起こった守矢神社の方にへと向かって行く。しっかり捕まっていないと振り落とされてしまいそうなぐらいのスピードだ。

 

「何があったんですか?」

 

「守矢の方が何やらポケモンを叩き起こしたらしく…それも伝説とかそこら辺でもないらしいんです」

 

「え…!?」

 

「話は諏訪子さんがしてくれます。とりあえず私はそこまで」

 

 文さんが守矢神社の前に降り立ち私が守矢神社の前に降り立つとそこには鳥居から降りて来ていた諏訪子さんの姿が。

 

「悪いねうちのもんが」

 

「諏訪子さん。同じ守矢では…」

 

「私の知らない所で進めていたみたい。とりあえずチャンピオンが迎撃している所まで案内するよ。時間がない」

 

 私は諏訪子さんに言われるがままチャンピオン…霊夢さんの事だろうか。彼女がいる所まで案内してもらう事に。既に大変な事になっているとは知らずに…




見てくださりありがとうございます。
次も頑張ります。


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立ち塞がる災厄の存在

お疲れ様です。ちょっと調子が悪くなって来た時に物語のクライマックスが来てしまった訳ですけど…まあ頑張ります。


「っ!?」

 

「大丈夫かい?」

 

「え、ええ…何とか…」

 

 諏訪子さんに抱き抱えられながらそんな私達の真横を通り抜けた一本の光線。地面は真っ黒に焦がされ周りにあった大木の根元だけが残る。根元から上はその光線によって消し飛んだようだ。一本なら良かったがかなりの威力だったらしく数本が消し飛んだみたいだ。

 

 諏訪子さんから降ろされ再び地面に足を置いたその時。恐怖を感じていたのが分かった。殺気しか感じない一撃に思わず青ざめるしかなかったが深呼吸を2回繰り返し…

 

「驚くよね。ポケモンと人が共存してる中でこんな殺しに来てるとしか思えない一撃を放たれたら」

 

「霊夢さんはこんな殺気に立ち向かってると…?」

 

「そうなるね。私も正体は見てないからアナタと一緒に初めて見る」

 

 諏訪子さんの言葉に頷き大きく息を呑んだ。その一瞬は感じた事のない恐怖を感じたが霊夢さんを助けなきゃと言う気持ちが先走り覚悟を決めた。諏訪子さんも私が落ち着いたのを見て口元を緩ませる。風切り音や物音が近づけば近づく程に強くなっていく。

 

 森を抜けるとそこは神社にある鳥居が大量に設置されている湖。物音はこの奥。霊夢さんのポケモンと思われるオレンジの翼が生えたポケモンが身体奥にコアのような物を搭載したポケモンに対している。霊夢さんのポケモンを大きくコアのポケモンが図体で上回っている。

 

「捕まりな。ここからは湖だ。陸地がある場所まで運んであげる」

 

「よろしくお願いします…!」

 

「だいもんじ!」

 

「グルアア!」

 

 諏訪子さんに運んでもらう間にも霊夢さんの声が聞こえて来た。その口から吐かれた炎がコアのポケモンに直撃するが何ともないかのように身体を大きく動かすとコアのポケモンも口から波動を放ち飛び回る翼のポケモンに確実に命中させ地面に叩き落とす。

 

 そんなタイミングで私が霊夢さんの元に合流した。

 

「リザードン!」

 

「苦戦してるようだねチャンピオン」

 

「アンタ…守矢のとこの…!…蓮子!」

 

「大丈夫ですか霊夢さん!」

 

「大丈夫って言えたら良かったんだけどね…」

 

 リザードンというポケモンをボールの中に戻し苦笑いを浮かべながら「手を貸してくれる」と一言呟いて来た霊夢さん。私がそれに頷くと相手が飛んでいるという事で飛べるポケモンの方がいい。私はボールからドラパルトを出す。霊夢さんのボールから出て来たのは…

 

「行くよラティアス!」

 

「キュワ!」

 

「後でメリーも合流してくれるからそこまではどうにか踏ん張って。アンタも責任持って居てよ!協力してくれてるんだから」

 

「そのくらいは責任を取るつもりだよ」

 

「了解です…!行くよドラパルト!りゅうのはどう!」

 

 ドラパルトが口からコアのポケモンに対して波動を放つ中コアのポケモンはその巨大な身体とは思えない程の身軽な動きであっさりと波動をかわすとそのままドラパルトの方に突撃してくる。

 

「サイコキネシス!」

 

「グルアア!」

 

「りゅうのはどう!」

 

 ラティアスの念波により突撃して来ていたコアのポケモンを食い止める中私がドラパルトにりゅうのはどうを指示。動きが止まっているコアのポケモンに波動を命中させる。爆煙が舞い上がる中雄叫びを上げながら煙を一気に振り払う。

 

 怒りを任せるかのように口から火炎を吐きつけてくる中、霊夢さんが声を張り上げる。

 

「りゅうのはどう!」

 

「ドラゴンアロー!」

 

 ラティアスが口から波動を吐きつけ火炎をかき消す中私がドラパルトにドラゴンアローを指示。2体のドラメシヤが一斉にコアのポケモンに向かって行く中咆哮を上げてドラメシヤを止めるとポケモンは身体を振り回し、ドラメシヤ2体を尻尾で吹き飛ばす。

 

「っ!?」

 

「グルアア!」

 

「ドラパルトかわ…」

 

「アイツポケモンを狙ってない!」

 

「え…?」

 

 コアのポケモンに溜め込まれたエネルギーはポケモンを狙わずにトレーナーである私に向けられて放たれた。ドラパルトはあっさり回避気味で私も咄嗟に動こうとしたが足が動かない。そんな時に霊夢さんが私を突き飛ばす。

 

 放たれた光線は地面を抉りながら霊夢さんを吹き飛ばす。そのまま水面に墜落した音が響き渡った。

 

「霊夢さんッ!」

 

「アンタはそっちに!霊夢は任せて!」

 

「は、はい!」

 

 霊夢さんのラティアスと諏訪子さんが霊夢さんの元に急行する中私に向かってコアのポケモンが再び雄叫びを上げる。だが一発一発に物凄い労力を必要とされているのかその場から動く事はない。溢れ出す怒りを抑えつけドラパルトに指示を出す。

 

「ドラパルト、ドラゴンアロー!」

 

 吹き飛ばされながらも戻って来たドラメシヤ達を再度発進させるドラパルト。今度は行動を起こせない為無防備の状態。ドラメシヤは2体同時にコアのポケモンにぶつかり地面に墜落させた。水飛沫が上がり飛沫で前が見えなくなる中…

 

「やるじゃん…」

 

「霊夢さん!大丈夫なんですか…?」

 

「数多の弾幕を受けた事あるからびっくりするぐらい丈夫みたいだね」

 

「ただこの場は無理…ちょっと任せた…」

 

「分かりました…!」

 

 霊夢さんの言葉を聞いている間に地面に墜落したコアのポケモンが浮き上がる音が響き渡る。再び水飛沫が上がるまでに覚悟を決め表情を引き締める。拳をグッと握りしめドラパルトと顔を合わせている間にポケモンの雄叫びが辺りに響き渡る中聞こえて来た風切り音。

 

「ドラパルト、りゅうのはどう!」

 

 水飛沫の中突撃して来ていたコアのポケモンにドラパルトは思い切り波動を顔面にぶつけて吹き飛ばす。霊夢さんが笑みを浮かべ諏訪子さんがガッツポーズをする中霊夢さんが私に聞こえないほどの声量で小さく呟いた。

 

「強くなった…ほんとに」

 

「つい最近までイーブィしか持ってないトレーナーだったらしいね。誰が見出したのかな?」

 

「私がやったとでも?まさか…本人の努力の成果だよ」

 

 大きく私が一息を吐く。そしてゆっくりと立ち上がって来たコアのポケモンを見据える。そうしている間にもアーマガアに乗ったメリーが私達の元に合流した。コアのポケモンとは違う羽音を聞こえて私がふと振り返ると…

 

「大丈夫!?蓮子!」

 

「メリー!」

 

「遅いよ…メリー…」

 

「すいません。ムゲンダイナについて聞いていたら遅れて…」

 

「ムゲンダイナ?このポケモンの事?」

 

「うん、まあ…にとりさんから聞いただけ…」

 

 メリーが隣で構えようとしたその時だった。ムゲンダイナというポケモンから発せられた雄叫びはただの雄叫びではなく身体から光が発せられムゲンダイナはその光に沿って大きく浮かび上がって行く。

 

「物語で良くある第二形態って事…?」

 

「ポケモンじゃないねここまで来ると…!」

 

 空に浮かび上がったムゲンダイナは空の色を一気に暗くさせ巨大な手のような形に。今まで見て来たようなポケモンとはまるで違う姿に思わず青ざめるしかなかったが覚悟を決めるしかなかったが…

 

「ドラパルト!りゅうのはどう!」

 

「ドリルくちばし!」

 

 ドラパルトとアーマガアが攻撃体勢に入ったその時だったがムゲンダイナから発せられた波動が技を出すのを防いでいるようで2体共に動けない様子。それに私とメリーは驚きしか出て来なかったがその間にもムゲンダイナはエネルギーを溜め込んでいる。

 

「どうするのこれ!?」

 

「私に言われても…!」

 

「何でもいいから起きるのを祈るしか…!」

 

「そんな都合良く起きる訳…!」

 

 そう言い争いしている間にもムゲンダイナはずっとエネルギーを溜め込んでいる。霊夢さんを持ち上げるラティアスが目を瞑ったその時だった。遠くから微かに響き渡った鳴き声。それが突破口になるとは私達はまだ知らない…




見てくださりありがとうございます。ムゲンダイナとの戦いが始まりましたがしっかり書き切れるようにがんばりますので応援よろしくお願いします。


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猛威を振るう災厄と現れる救世主

お疲れ様です日本シリーズの影響で大分空きましたがとりあえずしっかり書かせてもらったものを投稿させていただきます。よろしくお願いします。


「幻想郷に…雲が…」

 

「守矢の方が呼び起こしたというポケモンが巻き起こした物なんですかね」

 

 滞在先の守矢スタジアム周辺から幻想郷の地域全てにかかったドス黒い雲。幸いかつてレミリア達が起こした異変に比べて無害ではあるが、昼間は気持ちよく昼寝でも出来るくらいの青空だっただけに幻想郷にかかった雲は人々に不安の気持ちを駆り立てさせる。

 

 魔美と霊矢はその雲を巻き起こした正体を視界に捉えていた。だが彼女達より先に蓮子とメリーが先行していたのは事実。二人と同じくただそのドス黒い雲を見つめるだけだった魔理沙が魔美と霊矢の元に小さな足音と共に近寄る。

 

「信じるしかないだろ。あそこにいる全員を」

 

「お母さん?」

 

「そこで信じられないのならアイツらは何のためにあのポケモンの所に出向いたんだよ」

 

「魔理沙さん…」

 

(何も出来ないまま終わる訳ないよな蓮子…お前には霊夢を倒して貰わないと行けないんだからよ)

 

 信じようと言った魔理沙の表情には当然緩みのような笑みはない。だが魔美や霊矢と同じく彼女も信じるしかなかった。人々の想いがムゲンダイナと対している蓮子達に注がれる中、ムゲンダイナの足止めを食らっている現場ではエネルギーを溜め込むムゲンダイナを目の前にして息を呑む蓮子達の姿。

 

「あのエネルギーが放出されたら世界が滅ぶ!?」

 

「間違いなく幻想郷が吹き飛ぶだろうね。想像してごらんよ。コアに溜め込んだエネルギーだけでもムゲンダイナは草木を消滅させたんだよ。今溜め込んでいるエネルギーはそれ以上になるって容易に分かる」

 

「でもどうすれば…」

 

「……」

 

 諏訪子さんの言葉は残酷だが真実だ。ムゲンダイナの一撃は軽く草木を消滅させられるレベル。溜め込みがいるとはいえその力は普通のポケモンより桁外れ。今溜め込んでいるエネルギーが放出されたらと考えるとゾッとする。だがメリーが言う通りどうしたらいいかも分からない。

 

 考えるだけ時間が無駄に消費されてしまいそうだ。ムゲンダイナは絶対に待ってくれない。拳をグッと握りしめただ攻撃出来ない事実を我慢する。目の前に対象はいるのに何も出来ない。今の私達が出来るのはただ願う事だけだが…

 

「キュア?」

 

「どうしたのラティアス?」

 

「グオオオオ!」

 

「もう溜め込み終えたの!?」

 

「こうなれば私が…!」

 

「霊夢さん…!?」

 

 ムゲンダイナの身体が突如として光り始めたその時。ぼろぼろの霊夢さんが後ろを一瞬振り返ったラティアスから降りようとしたその一瞬だった。ムゲンダイナから発せられた光に私達がただ目を瞑った瞬間に光がただかき消されるような音が響き渡った。

 

 そして目を瞑った私達の気を向けるかのように聞こえて来た狼のような遠吠え。一筋の光が晴れたその時に私達の前に姿を見せた二匹の青と赤のポケモンは状況が理解できない私達を前にして剣を蓄え、鎧を装着した。

 

「この二匹は…!?」

 

「ウルゥード!」

 

「蓮子!動いているよ二匹!」

 

「願いでも通じたのかね…?今しかないよ押してやりな二人とも!」

 

「…はい!」

 

 現れた青と赤のポケモンの影響だろうか。ムゲンダイナにされていた呪縛は完全に消えドラパルトもアーマガアも再び動き始める。ムゲンダイナから咆哮が響き渡る。青のポケモンからの咆哮が響き渡り、赤のポケモンが光を発する中私は高らかにドラパルトに指示を出す。

 

「行くよドラパルト!りゅうのはどう!」

 

「アーマガア、ドリルくちばし!」

 

「グオオオオ!」

 

 動きを封じられた先程とは違いドラパルト、アーマガア共にしっかりとムゲンダイナに技を出す。ムゲンダイナに直撃した波動とくちばし。だがまるでムゲンダイナがダメージを受けたと言う素振りすら見せず、逆に自分が放って来た炎がドラパルトとアーマガアに直撃。

 

 二匹は一瞬で戦闘不能になりゾッとしたがその不安を消し飛ばしたのが青と赤のポケモンだった。二匹は剣と身体を光らせそのままムゲンダイナに向かって行き、片方は斬りつけ片方は体当たりを喰らわせ巨大化したムゲンダイナを怯ませた。

 

「怯ませた…!?」

 

「凄い…勝てる…勝てるよ!」

 

「ザシアン…ザマゼンタ…」

 

「霊夢さん?」

 

「伝説のポケモンよ。眠っていると聞いたけど…そこの神の言う通り…願いでも通じたのかしらね…」

 

「ウルゥード!」

 

 霊夢さんが緩く微笑む。ザシアンとザマゼンタが現れた奇跡に湧き上がるメリーが横に。どうしてだろう。圧倒的な火力をムゲンダイナは持っているのに絶望感を感じない。ただ希望しか感じない。私とメリーはドラパルトとアーマガアを戻し、ヌメルゴンとモスノウを出す。

 

「行くよモスノウ、れいとうビーム!」

 

「こっちもいくよヌメルゴン!りゅうのはどう!」

 

 モスノウがビームを放ちヌメルゴンが口から波動を放つ中、ザシアンとザマゼンタは再び剣と身体を光らせて突撃していく。ムゲンダイナがモスノウとヌメルゴンの一撃でふらつく中、身体から衝撃波を放ちザマゼンタを吹き飛ばすがザシアンの一撃までは変えられず。

 

 空中からの斬りつけに再び怯ませる。二匹の火力と言えば本当に私達のポケモンの力がアリのように感じてしまう。

 

「モスノウ、マジカルシャイン!」

 

「ヌメルゴン、もう一度りゅうのはどう!」

 

「モスッ!」

 

「ヌメッ!」

 

 モスノウが身体を光らせ光の弾丸を大量にムゲンダイナにぶつけていく中で追い討ちかのようにぶつけられるヌメルゴンのりゅうのはどう。爆煙が広がる中、ザシアンとザマゼンタは三度剣と身体を光らせてムゲンダイナに突撃していく。

 

 ムゲンダイナは爆煙を振り払うとザシアンとザマゼンタに向かって炎を吐きつけるが炎を振り払いながらザシアンとザマゼンタは突撃していき、ムゲンダイナに渾身の一撃をぶつける。ザシアンの斬りつけからのザマゼンタの体当たりに巨大化したムゲンダイナは遂に弱った素振りを見せる。

 

「ふらついた!」

 

「蓮子!ムゲンダイナを!」

 

「メリー…!?…分かった!」

 

 一瞬動揺したがすぐに覚悟を決めるとモンスターボールを巨大化させ渾身の力を込めて弱り切ったムゲンダイナに投げつける。弱り切りながらもムゲンダイナはボールを潰そうと抗おうとするが、モンスターボールの吸収力に怯んだ素振りを見せた瞬間に吸い込まれる。

 

 ザシアン、ザマゼンタ達も見つめる中地面を抉りながらボールはゆっくり、ゆっくりと動いていく。私達もただ黙って見つめる中ゆっくりと動いていたボールは遂に止まり、赤い光と共に元の大きさに戻る。

 

「!」

 

 カチッと言う音が周りに響き渡る。ムゲンダイナがへし折った柱などがその後方にて倒れ込む中メリー達の歓喜した表情が見え、私は静かにボールを手に取った。ボールからもうムゲンダイナの反発するような声は聞こえて来ない。曇っていた空が再び光り始める。

 

 そんな中私の隣に歩いて来たザシアンとザマゼンタは元の状態に戻ると再び鳴き声を響かせながらその場を去っていく。嵐のように来て嵐のように去って行ったザシアンとザマゼンタを見て諏訪子さんが…

 

「アンタら二人を助けるためだけに来てくれたみたいだね」

 

「諏訪子さん…」

 

「お疲れ様だよ2人共。まさかどうにかしたいと言う思いが伝説に通じるとは思わなかったけどね」

 

「…本当…そうですね。あ、霊夢さんは…!?」

 

「見届けた瞬間に気を失ったよ。大分ぼろぼろだったからね」

 

 ラティアスの背中で気を失う霊夢さんを見て何故か笑みが溢れた。メリーも私の隣で笑みを浮かべる中、私達はムゲンダイナとの戦いを終えて大きく息を吐いたのだった…




ムゲンダイナを終えたので…後は分かりますね?次回も楽しみに。読んでくださりありがとうございます。


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迫る真の決戦の日

今回は最終章に向けての前座となります。
バトル回が増えてくるのは次回からになると思います。
その予定でよろしくお願いします。


 ムゲンダイナとの死闘から1日が流れた。1日とはいえ世の中の動きというのは早い物。あの死闘からくたびれた私達のそばに諏訪子さんがいたという事が文さんから人里に伝わり、守矢が引き起こした大騒動は少しずつ鎮火の流れとなっていた。

 

 ムゲンダイナの一撃をまともに喰らい重傷を負った霊夢さんは元々予定されていた3日間以内に状態を回復させると意地を張っていたが、永琳さんからドクターストップがかかり1週間後に延長。チャンピオンマッチを開催しようとする根性がとんでもないなというのが本心だった。

 

「1日かけて諏訪子さんが謝罪しまくったという話を耳にしたんですが…?」

 

「まさかあのブン屋に助けられるとはね。早苗と神奈子がヤケになって引き起こしたという面で許される事になったよ」

 

「原因は何だったんですか?」

 

「原因ねえ…本人達はムゲンダイナの力が必要とかほざいていたけど。あんな力が必要なら八雲紫とかが役目を失ってしまう。あの2人以外はそれを分かっていたんだと思う」

 

 博麗神社の行く道にある強力なポケモン達が住み着くエリア。来るべき1週間後に向けて特訓を重ねる私の所に現れた諏訪子さんはくたびれた私達が休んでいる間に何があったのかを説明してくれた。諏訪子さんは2人の計画を知っていないからかもしれないが呆れ気味だった。

 

 たまたま話し合っている時間が休憩時間。ポケモン達がそれぞれの事をして戯れている時間帯に諏訪子さんが来ていた。そんな彼女が気になったのはイーブィと戯れるムゲンダイナ。

 

「あんなに懐っこい性格だったの?」

 

「最悪な縁だったですけど、私のポケモンになったからは出迎えようと思いまして。…諏訪子さんが来る前に慧音さんが来てくださったんですけど、何も分からない状況で攻撃されたから暴れたんじゃないかって」

 

「霊夢の正義はムゲンダイナにとっては邪悪だったって事ね…」

 

「イーブィが中心に距離を詰めてくれて。今のところはトラブルなく…」

 

「なるほどね…」

 

 ムゲンダイナが私のポケモンにすっかり馴染んでいるのを見て諏訪子さんはかなり驚いている様子だった。違うポケモンをほとんど捕まえる事なく突き進んできた私にとって、試合に出せなくてもチームメンバーと一緒にいさせるという事が必要だったんじゃないかと話した。

 

 説明した私の言葉を聞き諏訪子さんは笑みを浮かべながら頷いた。諏訪子さんは私の方を見ながらとある事を呟いて来た。

 

「ねえ蓮子。ムゲンダイナ…チャンピオンマッチに出してみる気はない?」

 

「そんな…7体になりますよ?」

 

「チャンピオンの霊夢がムゲンダイナと当たらせろってうるさいらしくてね。紫を中心としたリーグ委員会が動いてるらしいよ」

 

「7対7…という事ですか?」

 

「向こうはエースのポケモン以外は色々組み合わせをして来た奴よ。受諾されても急に育てるなんて事はしないとは思う」

 

 7対7と聞かされて驚いた表情を見せる私に対して私に語りかける諏訪子さんの表情はどこか堂々としていた。霊夢さんは7対7となった時7体目を選ぶ事に苦戦しないだろうと。確かにムゲンダイナは既にチャンピオンマッチに出していいぐらいの実力を持っている。

 

 でもムゲンダイナは急な事でパニックになって自分を守るだけの為に戦っていたとしたら?人に急に指示を出された時にこの子は対応出来るのだろうか。もし試合に出すとなれば不安なのはそこだけだ。

 

「向こうが求めるのはムゲンダイナだから誰かを抜くのも選択肢だけど」

 

「出来ると思いますか?」

 

「言うと思った。霊夢には言ってないけどリーグは7対7で考えてるって。抜くなんて選択肢をさせるのはアナタにも失礼だもんね」

 

「まだ決まってないんじゃ?」

 

「大好きな霊夢の言う言葉だもん。意地でもって紫は思ってるよ」

 

 大好きな霊夢さんと言うのがさすがによく分からないが、どうやら私のポケモンを7体で行かせようと言うのがリーグの方針らしい。早苗さんと神奈子さんがスタジアムの管理から少し離れたと言う事から、そのツケが諏訪子さんに来ているらしい。

 

 私が諏訪子さんに苦笑いを浮かべる中で私は指笛を鳴らすとムゲンダイナを呼び寄せる。ムゲンダイナはゆっくりとこちらにやってくる。

 

「ねえムゲンダイナ。君を試合で見たいって沢山の人が言ってるんだって」

 

「蓮子?」

 

「グウ?」

 

「君はどうしたい?」

 

 諏訪子さんから言われたのは私にとってはサプライズだがムゲンダイナはどう感じているのか。私の語りかけに諏訪子さんが疑問を抱いたようなそんな表情を浮かべる中、ムゲンダイナはじっと私を見つめる。そんなムゲンダイナの周りに集まってくるイーブィ達。

 

 イーブィが率先してムゲンダイナの隣に歩み寄ると…

 

「ブイ!」

 

「グルウ!」

 

「グルア!」

 

「出る気満々みたいだねムゲンダイナは」

 

「君の力を借りれるならありがたいよ」

 

 イーブィとルカリオがムゲンダイナに語りかけた後にムゲンダイナが私を前にして声を張り上げる。気合い満々のムゲンダイナに対してそれを見た諏訪子さんが私に語りかけると私がそれに頷き、笑みを浮かべてムゲンダイナに呟いた。

 

 来るべき1週間後に向けてムゲンダイナの参戦に向けて私達が気合いを入れ直す中、スタジアムで特訓している霊夢さんの所に紫さんと魔理沙さんが近づいていた。

 

「まだ休めと言われてんのに。不死身かお前」

 

「こちらは出来るつってんのよ。1週間なんて怠けるわよほんと」

 

「休むのが苦手というか…で。7対7で本当にいいのね霊夢」

 

「今更アイツのパーティから誰かが抜けてるなんて想像出来ない。アイツは必ず7体を引き受ける。引き受けなければ辞退してもらうわ」

 

「随分手厳しいんだな」

 

 強い口調で語りかける霊夢。魔理沙と紫の顔を決して見ることはなかったがその表情はどこか楽しみかのように笑みを浮かべていた。ポケモン達の調整の具合を見ながら霊夢が目を向けていたのは普段こういう大イベントには参加していない4体のポケモン。

 

 その4体を見た後に霊夢の近くに魔理沙が近寄って来た。

 

「絞りきれてないのか?7体制を推進しながら」

 

「慣れてないのよ。当然向こうも慣れてない。あり過ぎる時間についてはその日いいポケモンを連れて来てる。20ぐらい候補があるからね」

 

「今日連れて来てるのはギャラドス、イワパレス、オンバーン…そして…ん?おい霊夢。4体目のポケモンは何だ?」

 

「あら珍しいわね。アンタがそんな事言うなんて」

 

「魔理沙の言う通りよ。あんなポケモン幻想郷にいたかしら?」

 

 霊夢は紫と魔理沙の問いかけをかわすかのように笑みを浮かべた。青っぽいカラーリングをしたポケモンを見つめながら「候補だから出すかどうか分からない」とケムに巻いた。幻想郷のポケモンを長らく見ていた魔理沙と紫を持ってしても分からない霊夢のポケモン。

 

「あのポケモンはゲッコウガ。そうねえ…タイプまで答えを出すと楽しくないからそこは煙に巻いておくわ」

 

「その口ぶり…あのゲッコウガというポケモン以外に何体か隠しているわね?」

 

「さあ?何のことかしら。私はあのゲッコウガというポケモンを聞かれたから返事しただけよ」

 

「勝負事になるとお前中々に性格が悪くなるよな…」

 

「人聞きが悪いわね」

 

 魔理沙に苦笑いを浮かべられ睨みつけるかのような表情を浮かべた霊夢。その後今その場に出していないモンスターボールを見つめ、グッと握りしめる。そして何かを思い出したかのように歯を食いしばる。冷静そうに見えて心の中はかなり熱くなっていた。

 

 そして霊夢は息を吐きながら空をゆっくりと見上げたのだった…




見てくださりありがとうございます。最終章のバトルは本編でも話している通り7対7の予定です。7体目は今から考えます。それでは。


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迎えた決戦の日

お疲れ様です。今回からチャンピオンマッチの予定です。
まああともう少しでマジで終わります。駆け抜ける予定なんでよろしくお願いします。


 ムゲンダイナとの死闘からあっという間に1週間の月日が流れた。霊夢さんが提案した事により幻想郷の話題を掻っ攫う事となった7対7のマッチ。私がムゲンダイナを仲間に入れた事も霊夢さんがこれから7体目を厳選しようとしている事も新聞を見た人は誰1人として分からない。

 

 遂に迎える事となったチャンピオンマッチを一目でも見ようと多くの観客が守矢スタジアムに詰め寄せた。多くのTVが無敗同士のタイトルマッチと私達の戦いを報じる。セミファイナルでは感じた事のない足元が揺れそうな地鳴りのような大歓声を私は浴びる事となる。

 

 拭い捨てた緊張もこの時ばかりは強くなる。溢れんばかりの観客が座り込む中、先に席を取っていた魔美、霊矢の元にメリーが駆けつける。

 

「試合開始間際ですよ。どこに行っていたんですか?」

 

「ごめん、ごめん。ちょっと蓮子の所に」

 

「緊張してるだろうね。チャンピオンマッチはジムチャレンジの集大成みたいな物。まして蓮子は無敗で勝ち上がったから…」

 

「片方の連勝が止まり、片方が初めての敗北を喫する事となる。勝負の世界は非常です。どちらともハッピーで終わるタイトルマッチなんて誰も望んでいない」

 

「霊矢…」

 

「それでも僕たちが出来るのは僕たちを破り頂点に挑まんとするライバルに期待する事だと思いますよ」

 

 3人とも今自分がジムコートにいない事の悔しさは感じ、この舞台に挑まんとするライバルの気持ちがかなり分かった。両方が幸せに終わるタイトルマッチなんて存在しない。あるのは共に突き進んできたライバルの背中をその目で焼き付ける事で精一杯押す事だ。

 

 挑むのは初の頂点を掴んで以来何人たりとも寄せ付けなかった絶対王者。その壁は今までのトレーナーなんて比にもならない。それは控え室で入場を待ち受ける蓮子が一番その偉大さを分かっていた。

 

「もうすぐだよイーブィ」

 

「ブイ!」

 

「私達が歩んできた集大成がこの一戦で出る。勝とうね」

 

「ブイ!」

 

「蓮子選手。入場時間です。準備お願いします」

 

「分かりました」

 

 地鳴りのような大歓声が控え室にまで伝わっていた。イーブィをボールに戻しスタッフの方の隣を通り過ぎてジムコートに一歩、また一歩とその足を踏み出していく。差し込む光と同時に大歓声が私の身に襲ってくる中、一度足を止め大きく息を吐く。

 

「お待たせいたしました!ムゲンダイナの戦いにてチャンピオン霊夢選手の謎の負傷から1週間!無敗同士のタイトルマッチはどちらがその無敗記録を継続するのでしょうか!さて選手の入場です!」

 

「多くのチャレンジャー、ジムリーダーを蹴散らしその積み重ねの一戦の中で刻んだ勝利は全て勝利!推薦状を渡したトレーナーが頂点に引導を渡すのか!蓮子選手の入場です!」

 

「やっちまえ蓮子!蹴散らせ!」

 

(凄い大歓声…気持ちが緊張よりとんでもなく昂ってくる…)

 

「対する逆サイド!幻想郷リーグ初代チャンピオン!その連勝記録を一切途絶えさせる事はありませんでした!今回もファンは彼女の連勝記録を期待します!その名前を呼びましょう!チャンピオン!霊夢ッ!」

 

「チャンピオンッ!チャンピオンッ!」

 

 私と霊夢さんの背中を後押しする声が中央に行くまでに大きくこだまして行く。その小さな姿が歩いて行く度に大きくなって行く。決して背丈は大きい方ではない。然しその存在感は私を覆い尽くそうとしていた。手汗が流れ始める中、私と霊夢さんは中央にて対面する。

 

「とうとうこの時が来たわね蓮子」

 

「霊夢さん」

 

「分かってるだろうけどかたやアンタのチャンピオンを期待し、かたや私の連勝を期待する。どちらかの敗北を期待する残酷な人々が私達の試合を見つめ、歴史の証人となる」

 

「分かってます。もう私はビビらない。アナタと真正面から向き合いチャンピオンの座を手に入れます」

 

「強くなったわねアンタ。じゃあその覚悟。私にぶつけてきなさい。私も本気という最大の敬意でアンタの覚悟を完膚なきまでに叩き潰す。それがチャンピオンとしての意志よ」

 

 霊夢さんはニヤリとした笑みを浮かべながら私から距離を取って行く。私も霊夢さんから距離を取りそこから少し離れた距離から霊夢さんと向き合う。大歓声がざわめきに変わる。表情を引き締め私はボールを握りしめたその瞬間。霊夢さんは羽織っていたマントを触れる。

 

 審判のロトムが私達の間に入り、一言声を上げる。

 

「両者準備はいいでしょうか」

 

「いつでも!」

 

「こちらも!」

 

「バトル!スタート!」

 

 ロトムの開始のコールと共に霊夢さんがマントを脱ぎ捨てボールを投げる。出てきたのはキテルグマ戦で助けてくれたタイレーツ。私の先手は決まっていた。振りかぶるとボールを投げつける。出てきたのはモスノウ。大歓声と共に多くの観客が息を呑んだ。

 

「行きます!マジカルシャイン!」

 

「はいすいのじん!」

 

 幻想郷の全ての人々がこの一戦を見つめる中、試合が始まって行く。先に声を張り上げたのは私だった。モスノウに向かって声を張り上げるとモスノウは羽を羽ばたかせながらタイレーツに光の弾丸を打ち込んでいく。霊夢さんのタイレーツは声を張り上げると身体を光らせ、マジカルシャインを何もなかったかのように耐え切る。

 

「はいすいのじん入り!霊夢選手特有の入り方だッ!」

 

「アイアンヘッドッ!」

 

「ゆきなだれで壁を作って!」

 

 タイレーツが身体を鋼に変色させ突撃してくる中、モスノウはどこかしらから召喚した雪崩をタイレーツに向かって降らせて行く。雪崩を粉砕しながらモスノウに向かって行ったタイレーツ。然し突き抜けた先にモスノウの姿はない。霊夢さんが声を張り上げる。

 

「来るわよタイレーツ!空中に向かってインファイト!」

 

「れいとうビーム!」

 

「ビームをインファイトで受け切る気か…!?」

 

 空中に舞い上がったモスノウから放たれたビームをタイレーツはグッと身構え目では追えない程のスピードで身体を押し出し、ビームを消滅させていく。ビームによる水蒸気がタイレーツの周りに上がる中私はさらに畳み掛ける。

 

「マジカルシャイン!」

 

「蓮子選手畳み掛ける!反撃の隙を与えない!」

 

「飛んでタイレーツ!アイアンヘッド!」

 

 地面が抉れる程の勢いで飛び上がったタイレーツは空中から羽から光の弾丸を飛ばしてきたモスノウの一撃を喰らいながら、身体を鋼に変色させてモスノウに思い切り体当たりを食らわし地面に向かって吹き飛ばす。地面に当たりそうになったその時。

 

 モスノウは羽を思い切り羽ばたかせ激突を阻止する。

 

「耐えたッ!」

 

「でも攻撃する体勢で言えばタイレーツの方が…!」

 

「アイアンヘッド!」

 

(気持ちで滅入る訳には行かない!)

 

「モスノウ、れいとうビーム!」

 

 モスノウがギリギリ耐え仰向けになっている中、空中から落ちてくるだけのタイレーツはモスノウに向かって行ける状態。然しここで回避という選択肢はなかった。私が声を張り上げるとモスノウがれいとうビームをタイレーツに向かって打ち込んでいく。

 

 アイアンヘッドを打ち込もうとしたタイレーツが顔をしかめるとその矛先がモスノウから少しズレる。そのままモスノウの隣に墜落し砂煙を巻き上げる中、モスノウはその位置から少し離れる。

 

「凄い戦い…!」

 

「バトルスタイルはどちらとも力で押し切るタイプ…ただそれがいいように繋がらないというのは2人とも分かっている筈…!」

 

「蓮子…!」

 

「1体目から何という死闘!さすが無敗同士の戦い!」

 

 メリー達が緊張の息を吐く中、私も大きく息を吐く。お互いに向き合ったモスノウとタイレーツ。その決着を焼き付けようと観客達は息を呑んでいた…




見てくださりありがとうございます。来年の序盤には完結予定です。
よろしくお願いします。


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立ち塞がるチャンピオンという牙城

お疲れ様です。今回で今年の更新は最後となります。
今年一年ありがとうございました。また来年もよろしくお願いしますね。


「マジカルシャイン!」

 

「アイアンヘッドで打ち消して!」

 

 モスノウが羽を強く羽ばたかせ光の弾丸を打ち込んでいく中、タイレーツは体を鋼色に染め上げマジカルシャインの弾丸に体当たりを食らわしそのまま火花を散らせながら消滅させる。モスノウに攻撃技以外覚えさせていない。このまま突っ切るしかない!

 

「れいとうビーム!」

 

「マジカルシャインから切り替えた!」

 

「マジカルシャインをかき消したアイアンヘッドにかき消されるのが目に見えている…!」

 

「きしかいせい!」

 

「きしかいせい…!?」

 

 モスノウが空中でもう一度羽を羽ばたかせれいとうビームをタイレーツに打ち込んでいく中、タイレーツは体にオーラを纏わせ足場を強く蹴り出す。一瞬にして姿が見えなくなり次に視界で確認出来たのはモスノウの真下。タイレーツのいた場所の地面にはビームが当たった跡だけが見える中。霊夢さんは声を張り上げる。

 

「そのまま飛びつけッ!」

 

「何というスピード!これがはいすいのじんの効果なのかッ!」

 

(反撃するか…!?いや普通にやっていたらこの人には勝てない!)

 

「戻ってモスノウ!」

 

「ッ!」

 

 相手がその手はないという博打を踏まなければ確実に相手のペースに飲み込まれる。そう確信した私はタイレーツが迫る中モスノウをボールの中に戻すときしかいせいはかくとう技とタイレーツははいすいのじんで今引き返す事は出来ない。だったらこの手しかない!

 

「行くよドラパルト!」

 

「ドラパルト!?」

 

「蓮子選手が出したのはドラパルト!きしかいせいが通らないッ!」

 

「考えたわねアンタ…!」

 

「反撃はさせない!ドラパルト、りゅうのはどう!」

 

 タイレーツの目の前に姿を見せたドラパルト。当然ゴーストタイプにはかくとう技は通らない。技がすり抜けた事によりタイレーツはバランスを崩し、そのまま体に力を入れる事が出来ずに地面に落下していく状態。そんなタイレーツにドラパルトが振り向いた瞬間に私は声を張り上げた。

 

 ドラパルトが発したりゅうのはどうは落下していくタイレーツに直撃。煙が舞い上がる中タイレーツは地面に落下しそのまま戦闘不能に。

 

「タイレーツ、戦闘不能!ドラパルトの勝ち!」

 

「何というサイクル!変えられないのを利用し霊夢選手の初手を打ち破った!」

 

「直感でしょうね」

 

「こうしたら…というのが通じる相手じゃない。いくら霊夢とはいえ教科書外の事をされたら戸惑う筈さ」

 

 会場を大きな歓声が満たす中メリー達が拳を強く握りしめる中、ジムリーダー達が映像から笑みを浮かべる。うまく行ったがその偶然が何度も通じるような相手ではない。そのままドラパルトを残す選択肢もありだがドラパルトはまだ残しておきたい。

 

「ドラパルト、戻って」

 

「蓮子選手、ドラパルトを引っ込めます!」

 

(さっきみたいな作戦がゼロとは言い切れない。必ずどこかでくる筈。私の手持ちの中で何をやられても対処出来るのは…)

 

「行くよリザードン!」

 

「モスノウ!」

 

 霊夢さんはリザードン。ムゲンダイナの一戦の時に考えたらほのおタイプ。私がモスノウを出した事が理解できない程にみんなにとっては圧倒的に不利な相手だ。会場が騒めいているのがよく理解できる。私の手持ちの中ではウッウがほのおタイプに強いが…あの後に出して来たという事は何か弱点対策をしてる筈。

 

 大きく息を吐きグッと目の前を見据える。

 

「リザードンにモスノウ…圧倒的に不利じゃん!」

 

「無策でこの出し方をやる奴じゃない。霊夢も分かってる筈よ」

 

「ただ蓮子さんからしてもまだ手の内は大きくは見せたくない筈…」

 

 観客席から違う別ルームにてその一戦を見守っていた魔理沙さん達が一息吐く。そしてその見つめられている側となっている私は大きく息を吐いていた。霊夢さんは私の考えている裏を理解しているのか。この圧倒的な有利対面でも笑みの一つすら見せない。

 

「手を出したくないのなら手を出させるのみ…行くよリザードン!だいもんじ!」

 

「ゆきなだれ!」

 

 リザードンが思い切り大の字の炎を吐きつける中、モスノウが雪を召喚し雪の壁を作り出す。その雪の壁は炎によってあっさりと溶かされる中、モスノウは壁を盾にだいもんじを回避。その横に出てくると私が声を張り上げる。

 

「れいとうビーム!」

 

「向こうは手負いよリザードン!ほのおのちかい!」

 

 モスノウが思い切り羽を羽ばたかせ氷のビームを打ち込んでいく中、リザードンの口から炎が放たれる。ビームは炎によって消滅させられる中、モスノウにほのおのちかいが命中。爆煙が起こった後にモスノウが地面に落下する音が。私は歯を食いしばる。

 

「モスノウ!戦闘不能!リザードンの勝ち!」

 

「さすがに相性の差は覆せないか!奇襲のモスノウの戦いはリザードンの勝ち!」

 

(何か考えてる筈。当てずっぽにこんなのをやってくる奴じゃない)

 

「お疲れ様モスノウ。酷な使い方をしてごめんね」

 

 モスノウをモンスターボールに戻しそのモンスターボールをグッと握りしめる。私の中でも酷な使い方をしたというのは自覚していた。ほのおタイプのリザードンに対せるのは…いやまだあの子は早い。だったら私の選択肢は一つだ。

 

「行くよウッウ!」

 

「クエ!」

 

(ほのおタイプにはみずタイプ。それは教科書通りではあるけどこちらもリザードンでやりくりできる)

 

「行くよリザードン!ほのおのちかい!」

 

「なみのり!」

 

 リザードンが声を張り上げ口から炎を吐きつける中、ウッウが地面を叩きつける。私はそれを見た瞬間に笑みを浮かべる。地面から湧き上がった水流。モスノウが残した雪からの水蒸気はリザードンが放って来た炎を弱めた。水流は瞬く間に炎をかき消し、リザードンに水流が襲いかかる。

 

「だいもんじ!」

 

 リザードンが放った炎がなみのりの水流にぶつかるが、その勢いを防ぎ切る事が出来ずになみのりに飲まれた。ウッウはその間にサシカマスを口に加える。思い切り羽を動かしリザードンは水気を払うと霊夢さんはさすがに不利と悟ったのか。

 

 リザードンをボールの中に引っ込めた。そして霊夢さんは笑みを浮かべると…

 

「何もアナタだけが交代を使うと思わない事ね!行くよシルヴァディ!」

 

「シルヴァディ…!?」

 

「霊夢のポケモンにこんなポケモンは…!?」

 

「霊夢が選別していた7体目のポケモン…!まさか私達に見せていた以外のカードを出してくるなんて…」

 

 白色の肌に鋭い眼光を放つポケモン。リザードンの次に出して来たのはシルヴァディというポケモン。スタジアムが騒めいているという事は霊夢さんが今回のために入れていた手持ちだったのだろう。恐らく7体目のポケモン。出してくるという事はきっと…

 

「シルヴァディ!ドラゴンクロー!」

 

「ウッウ!アクアブレイク!」

 

 シルヴァディが地面を蹴り出しウッウに向かっていく中、ウッウは手に水を溜め込む。シルヴァディの爪がウッウに命中する中、ウッウはサシカマスをシルヴァディに吐きつけて怯ませアクアブレイクを直撃させシルヴァディを吹き飛ばす。

 

 シルヴァディが地面を抉りながら踏みとどまる中、ウッウは声を張り上げながらシルヴァディを睨みつける。私は押し殺すような声で息を吐くと…

 

「ドリルくちばし!」

 

「マルチアタック!」

 

 ウッウが空中に飛び出しドリルのように回転しながらシルヴァディに向かって行く中、シルヴァディは爪にオーラを纏わせながらジャンプするとそのままウッウに突撃して行く。ウッウのくちばしとシルヴァディの爪が火花を散らしながらぶつかり合う中、相打ちとなり両者吹き飛ばされた。

 

「痛手的にウッウの方が有利か!然しその目の闘志は消えていません!」

 

 両者痛手を負っていたがウッウもまだ闘志を宿した状態。その目を私は信じ霊夢さんの3体目であるシルヴァディと対して行くのだった…




終盤集中が切れてしまいましたが何とか書き切れました。
次回はまた来年頑張りますね。
当初はあんまり考えてなかったこの作品も来年でラストです。
最後までよろしくお願いします。


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ギリギリを攻めに攻めた攻防戦

明けましておめでとう御座います。
改めて今年一年よろしくお願いします。
この灯火の星もエンディングまで突っ走るのでよろしくお願いします^_^


「両者出したポケモンの数は三体!その一体がダメージを負っていない状況!場に出ているのはウッウとシルヴァディ!ダメージだけならウッウがリードか!」

 

「シルヴァディ、シザークロス!」

 

「アクアブレイクッ!」

 

 シルヴァディが声を張り上げながら地面を蹴り出す中、ウッウは翼に水を纏い始める。ジグザグにウッウを撹乱するように動いていたシルヴァディはウッウを正面に捉えながらジャンプ。空中から爪を振り下ろし、その爪にウッウが翼を出していく。

 

 爪と翼がぶつかり合っていく中纏った水気が爪の矛先を翼から少しずらし、シルヴァディのバランスを少し崩し前屈みのような状態にさせる。私は思わず声を張り上げた。

 

「ウッウ、もう一度アクアブレイク!」

 

「アイアンヘッド!」

 

 ウッウは違う翼に水を纏わせ頭だけで反撃しようとするシルヴァディの頬を思い切り叩きつける。そのまま勢いそのままに叩き抜き吹き飛ばしシルヴァディは地面を抉りながら霊夢さんの近くまで吹き飛び、霊夢さんは少し歯を食いしばる。

 

「シルヴァディに強烈な一撃が入る!既にふらついてるぞ!大丈夫か!?」

 

「グウ…」

 

「!」

 

 何とかウッウの方を睨みつけながら立っていたシルヴァディではあったが、顔をしかめた後にふらつくとそのまま横に倒れ込む。審判のロトムがシルヴァディの戦闘不能をコールしスタジアム中が驚きと歓喜に満ち溢れた大歓声を送る中、霊夢さんは息を吐きながらシルヴァディを戻す。

 

「急ピッチで良く戦ってくれたわ。ありがとう」

 

「やっと2体目!」

 

「ただ霊夢さんはまだ無傷のリザードンが控えてます」

 

「それなら蓮子も同じ…心配なのはウッウのダメージだけど…」

 

 霊夢さんのポケモンは後5体。シルヴァディが奇襲枠ならもう未知数なポケモンは繰り出してこない筈。スタジアム中が騒めき出す中霊夢さんが次に繰り出したのは薄緑色の巨大なポケモン。そのポケモンが出始めた瞬間に足元から砂嵐が巻き起こり、そのままスタジアムに砂嵐を巻き起こす。

 

「霊夢選手の選択はバンギラス!ウッウに対しては不利な対面だ!」

 

「バンギラス…!」

 

「抜群を食らっても大丈夫という見立てなんだろうな霊夢は」

 

「ウッウ!まだ行ける?」

 

「クワ!」

 

 不利な対面…という事はあのポケモンはウッウで弱点を付けるタイプのポケモンという事。だが霊夢さんの手持ちはラティアスがいる。それを踏まえて出してきたという事はあのポケモンも弱点対策はしてる筈。冷静になれ蓮子。正攻法で攻めちゃ行けない…!

 

「ウッウ、こうそくいどう!」

 

「バンギラス!いわなだれ!」

 

 バンギラスが一歩前に踏み出し声を張り上げるとそのままどことなく召喚した岩をウッウに降らせていく中、ウッウはジグザグに動きながらバンギラスの近くに迫っていく。迫った瞬間に霊夢さんがニヤリと微笑む。

 

(笑った…!?)

 

「いわなだれは近くにつり出す為の餌よ!バンギラス、10まんボルト!」

 

「ウッウ、ドリルくちばし!」

 

「弱点を掻き消そうというのか!?」

 

 バンギラスが身体中に電気を纏い身体から電気を放出していく中、別室にいた慧音さんが驚いた私の選択。ウッウはその場でドリルのように回転していき、電気すら飲み込んでいく中これは私にとっても一か八かの賭けだった。電気は順調に吹き飛んだか…のように見えたが。

 

 やはり弱点には勝てず。ウッウは電気に飲まれそのまま地面に落下。そのまま倒れ込んだ。

 

「ウッウ!」

 

「ウッウ、戦闘不能!バンギラスの勝ち!」

 

「霊夢選手、すぐにタイに戻す!弱点を撒き餌に使うとは!驚きです!」

 

「ウッウ、お疲れ様。後は任せて」

 

 ウッウを戻した後にモンスターボールをギュッと握りしめた後、私はスッとバンギラスの方を見据える。霊夢さんはここでバンギラスを再びボールに戻し、リザードンをフィールドに。砂嵐が若干視界を狭める中ドラパルトなら弱点を付けるかもしれない。

 

 だけど今私が出来る選択は一つしかない。スッと一つのモンスターボールを握りしめ前方に投げつける。そこから出てきたのはムゲンダイナ。メリー達が表情を引き締める中、観客達からはどよめきが起きる。

 

「蓮子選手4体目はムゲンダイナ!遂にフィールドに現れました!」

 

「来たわね…アンタの手持ちになってから戦いたいと思ってた…!」

 

「落ち着いて…大丈夫。私がいるから…!」

 

「グルウウ!」

 

「リベンジよリザードン!ほのおのちかい!」

 

「ダイマックスほう!」

 

 リザードンが思い切り炎を吐き付ける中、ムゲンダイナはコアにエネルギーを溜め込みリザードンに向かって放出していく。炎とダイマックス砲が一瞬ぶつかり合ったが、炎を一瞬にて粉砕すると瞬く間にダイマックス砲はリザードンに直撃。

 

 爆煙を巻き上げながらリザードンは翼で煙をかき消しながら声を張り上げる。

 

「ムゲンダイナによる強烈な一撃!リザードンのほのおのちかいをあっさりとかき消し、瞬く間に直撃を喰らわせた!」

 

「そうしてくれないと楽しくないわね。リザードン!じしん!」

 

「まだまだ行けるよねダイナ!」

 

「グルアア!」

 

「ダイナ、かわしてラスターカノン!」

 

 リザードンが地面を叩きつけ衝撃波を巻き起こす中、ムゲンダイナは空中に舞い上がり衝撃波を回避するとリザードンに向かってラスターカノンを打ち込む。鋼の弾丸がリザードンに向かっていく中霊夢さんが声を張り上げる。

 

「今度はこちらの番よ!リザードン、だいもんじ!」

 

「ダイナ、そのまま行くよ!ヘドロばくだん!」

 

 リザードンに向かって行った鋼の弾丸がリザードンが吐きつけた炎によって一瞬にして溶かされていく中でムゲンダイナから放たれたヘドロばくだんがだいもんじとぶつかり合い、相打ちで消滅させる。火花がムゲンダイナとリザードンの周りを飛び交う中…

 

「リザードン、周りにほのおのちかい!」

 

「ムゲンダイナを狙わない!?」

 

「っ!?」

 

 リザードンが声を張り上げ炎を吐き付けると舞っていた火花に炎が引火し、爆弾のように大爆発を巻き起こす。その大爆発は瞬く間にムゲンダイナの周りを舞っていた火花を着火させ、ムゲンダイナを大爆発に巻き込む。ムゲンダイナが空中から私の近くに落下してきた。

 

「ダイナ!大丈夫!?」

 

「グルア!」

 

「すぐに倒せるなんて考えてもない…!リザードン!じしん!」

 

「霊夢選手、畳み掛ける!リザードンに地震を指示だ!」

 

(やるしかない…!)

 

「ダイナ、ダイマックスほう!」

 

 リザードンは空中から地面に滑空すると拳で地面を叩きつけ、衝撃波を巻き起こす中ムゲンダイナはコアに再びエネルギーを溜め込み一気にリザードンに向かって放出する。じしんの衝撃波とムゲンダイナのダイマックス砲が火花を散らしながらぶつかり合う中、じしんの衝撃波をダイマックス砲がかき消す。

 

「ッ!?リザードン、だいもんじ!」

 

 ダイマックス砲に向かってリザードンがだいもんじを吐き付けるが、だいもんじがかき消されリザードンにダイマックス砲が直撃し爆煙が舞い上がる。霊夢さんが歯を食いしばる中リザードンは横に倒れ込み…

 

「リザードン、戦闘不能!ムゲンダイナの勝ち!」

 

「さすがに二発のダイマックスほうは耐えきれず!ムゲンダイナの勝ち!」

 

「よし!」

 

「さすがにやばいわね…だったら私も…」

 

 リザードンの戦闘不能を受けて霊夢さんが繰り出したのはラティアスだった。奇遇にもリザードン、ラティアス共にムゲンダイナと対した事があるポケモンばかり。だからだろうか試合前は緊張気味だったムゲンダイナが大分リラックスしている風にも見える。

 

 有利なのは数だけ。一進一退の攻防に私は冷や汗を流しながら息を吐いていた…

 




見てくださりありがとうございます。
今年一年も頑張るのでよろしくお願いしますね。


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仕掛けられるサイクル戦

お疲れ様です。残り少なくなって来た灯火の星の更新です。
とりあえず今は駆け抜ける事しか考えてないので最後までお付き合いよろしくお願いします。


「ラティアスとムゲンダイナ…」

 

「霊夢の話では直前までムゲンダイナを苦しめていたのはドラパルトとラティアスと聞く。今は蓮子のパーティにいるポケモンだ、ドラパルトとは和解しているだろうが…」

 

「敵意剥き出しの方がバトルするには丁度いい。何せバトルに慣れていないポケモンだからな」

 

(相性的には有利でもあり不利でもある。どう戦う蓮子?)

 

 TVから見守っていた魔理沙達はムゲンダイナとラティアスという対面に思わず言葉を交わす。キョダイマックスするまでにムゲンダイナを苦しめていた一体のラティアス。ムゲンダイナとの戦い方は熟知している筈だが今回はトレーナーが指示を出す。

 

 現在5対4で蓮子が有利の中で息を呑む者も居れば冷静に戦況を見つめる者も。息を吐いた蓮子はムゲンダイナに指示を出す。

 

「ラスターカノン!」

 

「りゅうのはどう!」

 

 ムゲンダイナから鋼の弾丸が放たれそしてラティアスからりゅうのはどうが放たれる。弾丸と波動が火花を散らしながらぶつかり合う中ラティアスの目つきが鋭くなった瞬間にぶつかり合っていた両者の一撃は爆発する。ラティアスは目を瞑りながらムゲンダイナに向かってくる。

 

「どこでもいい!ダイナ!かえんほうしゃ!」

 

「おっと!ムゲンダイナ煙がかかる前方に火を吐いた!」

 

「当てずっぽうもいい所!ラティアス、サイコキネシス!」

 

 ムゲンダイナが煙に向かって思い切り炎を吐き付け煙に風穴を開けたがそこにラティアスの姿はなし。次に姿を見せたラティアスはムゲンダイナの真横。突っ込むような体勢から念力にてムゲンダイナを拘束し、顔を動かしムゲンダイナを空中に突き飛ばす。

 

「ダイマックスほう!」

 

「吹き飛ばされながら!?」

 

「血迷った!?ラティアス!りゅうのはどう!」

 

 吹き飛ばされながらもムゲンダイナがある程度体勢を立て直しているのを把握していた私は賭けに出た。踏ん張りを効かせながら溜め込まれたエネルギーはラティアスが同時に放ったりゅうのはどうを正確にかき消すとそのまま一直線でラティアスの元に。

 

 霊夢さんからの掛け声でダイマックスほうはラティアスに命中する事がなかったが地面に命中したダイマックスほうは確実に抉った地面から視界を覆う程の砂埃を巻き上げた。

 

(無差別にダイマックスほうを放ったのはコレが狙いか…!)

 

「ラスターカノン!」

 

「10まんボルト!」

 

 空中から確実にラティアスの位置を捉えていたムゲンダイナから放たれた鋼の弾丸は確実にラティアスに向かっていく。霊夢さんのラティアスは10まんボルトにて身の周りに電気を放ち弾丸とぶつかって行くがここで私がさらに畳み掛ける。

 

「かえんほうしゃ!」

 

「っ!」

 

「何と技の二つがけ!これはさすがに耐えきれないかッ!」

 

 電撃と鋼の弾丸が互角にぶつかり合って行く中でムゲンダイナから放たれた火炎は瞬く間にラティアスの踏ん張りをかき消しそのまま地面に叩きつける。霊夢さんが歯を食いしばる中私は声を張り上げる。

 

「ヘドロばくだん!」

 

「戻ってラティアス!」

 

「ッ!?」

 

 ムゲンダイナから放たれたヘドロばくだんがラティアスに投下されたタイミングで霊夢さんは交代を決断。ラティアスがボールに戻りその場に出て来たのは盾を剥き出しにしたポケモン。ヘドロばくだんは盾を前にして粉砕し消滅した。

 

「現れたのはギルガルド!毒技のヘドロばくだんは効かない!」

 

「毒を無効…!はがねタイプか…!」

 

「はがねタイプのギルガルド…ムゲンダイナが持っている技を考えたら…!」

 

「一応ムゲンダイナはかえんほうしゃを持ってます。しかしこの戦術を取られるならバンギラスも視野に入れないと行けないという事…」

 

「ラティアス、バンギラスにはかえんほうしゃは効かない…でもムゲンダイナの技はギルガルドにはほぼ…」

 

 ラティアス、バンギラスがいて鋼タイプのギルガルド。その3体を潜り抜けた先にエースがいる。ムゲンダイナをこのまま突っ張らせるのも私の選択肢の中にはある。観客席にいるメリー達は何を考えているのだろうか。私の中の選択肢は一つだった。

 

「ダイナ、お疲れ様。戻って」

 

「蓮子選手、ムゲンダイナを戻しました!」

 

(この状況…アナタなら簡単に突破してくれる筈…!)

 

「行くよルカリオ!」

 

「ルカリオ?そうか…ルカリオという選択肢があったか!」

 

 ムゲンダイナを戻した私はルカリオをフィールドに。ルカリオを見た瞬間に霊夢さんの目つきが鋭くなったのを感じた。ギルガルド自体を見るのは私は初めてだ。鋼タイプ以外のタイプを持っているかもしれない。

 

「行くよルカリオ!はっけい!」

 

「ギルガルド、シャドーボール!」

 

(シャドーボール…!?)

 

 ギルガルドから発せられた黒い球がギルガルドを攻撃しようとしていたルカリオに命中。そのまま空中で動きを止められてしまい、シャドーボールはルカリオの側で大爆発。ルカリオをギルガルドの側から吹き飛ばした。

 

「大丈夫!?ルカリオ!」

 

「グウ!」

 

「ルカリオ、今のでタイプに合点が行った。信じてくれる?」

 

「グウ!」

 

「よし…行くよルカリオ!バレットパンチ!」

 

「キングシールド!」

 

 ギルガルドは盾を剥き出しにしているポケモン。攻撃の際は形態が変わる。だったらその攻撃から守りに入る一つの隙…!それを突く!ルカリオが足元を蹴り出し変形しバリアを作り出したギルガルドに迫ったその時。私はルカリオをボールに戻しキュウコンをギルガルドの前に出す。

 

「なっ!?」

 

「蓮子選手、ルカリオとキュウコンを一瞬で切り替えた!然も同じ位置だ!」

 

「準備出来てたよねキュウコン!だいもんじ!」

 

「キングシールド!」

 

 ギルガルドの目の前に入ったキュウコンはギルガルドがバリアを張り込む前に火炎をギルガルドにぶつける。バリアを貼りきれないまま火炎を直撃したギルガルドは霊夢さんの前まで吹き飛ぶ。

 

「ギルガルド!」

 

「ギルガルド、戦闘不能!キュウコンの勝ち!」

 

「まさかの一撃必殺!キュウコンの火力がギルガルドを打ち倒した!」

 

「よし…!」

 

「これで5対3!断然蓮子選手有利となった!」

 

 私はこのタイミングでキュウコンを引っ込める。そして再びフィールドにムゲンダイナを出す。霊夢さんはギルガルドをボールに戻すとその場に再びバンギラスを繰り出す。優勢に進んでいるが一度元に戻される可能性がある。私は大きく息を吐くとムゲンダイナに指示を出す。

 

「ダイナ、ラスターカノン!」

 

「バンギラス、じしん!」

 

 ムゲンダイナから放たれた鋼の弾丸とバンギラスが地面を叩きつけた際に巻き起こした衝撃波が一度はぶつかり合ったが、鋼の弾丸はあっさり打ち砕かれ衝撃波がそのままムゲンダイナに命中し爆煙を巻き上げる。爆煙が晴れるとそこにはムゲンダイナが戦闘不能になっている姿。

 

「ダイナ!」

 

「ムゲンダイナ戦闘不能!バンギラスの勝ち!」

 

「バンギラス2連勝!ビハインドでも輝きを見せる!」

 

「バンギラスを蓮子としては止めないと…!」

 

「霊夢さんがサイクル戦を仕掛けてくる以上。あのバンギラスも次蓮子が出すポケモン相手に不利を貫くとは思いません」

 

「お疲れ様ダイナ。後は任せて」

 

 後方にはラティアス。後1体は恐らく不利になった際の絶対切り札の枠。バンギラスとラティアスしか選択肢は霊夢さんの中ではない筈。だったら私が出す選択肢は…!

 

 ムゲンダイナをボールに戻した私が次に繰り出したのはドラパルト。これには会場が驚きを見せる。

 

「あくタイプにゴーストタイプで…!?」

 

「いや…ドラパルトとバンギラスのスピードの差は相当な物。蓮子はそこを狙ってるかもしれない」

 

「行けるねドラパルト」

 

「グオウ!」

 

「こっからひっくり返すよ!」

 

 現在私と霊夢さんのポケモンは私が4体で霊夢さんが3体。場にはバンギラスとドラパルト。厳しい戦いになるというのは把握している。でもやるしかない。私は気合いを入れ直すとバンギラスに対するのだった…




見てくださりありがとうございます。
残り少ないですが頑張ります。


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隠されていたチャンピオンのエース

どうも皆さんお疲れ様です命です。いやあ徐々に近づいてますね。
今日も頑張ります。


「ドラゴンアロー!」

 

「バンギラス、いわなだれで寄せ付けないで!」

 

 空中を勢いよく移動するドラパルトが放った二体のドラメシヤを前にしてバンギラスは声を張り上げると空中から自分の周りに岩を降らせていく。ドラメシヤ二体はその岩に衝突し一度こちらに戻ってくるがバンギラスの気がドラメシヤに行っている間に…

 

「グオ!?」

 

「りゅうのはどう!」

 

「10まんボルト!」

 

 バンギラスのほぼ目の前に迫っていたドラパルトに私はりゅうのはどうの指示を出す。バンギラスが身体から電撃を放とうとする目前で波動をドラパルトはバンギラスの身体に叩きつける。技は怯みにより中断。このバトルにて初めてバンギラスが怯んだ。

 

 バンギラスはフラフラと後ろに2歩下がり立て直すと霊夢さんが声を張り上げる。

 

「かみくだく!」

 

「あくタイプの技!」

 

「それを待っていた!戻ってドラパルト!」

 

「技の途中で蓮子選手交代を決断!その宛先は!?」

 

 バンギラスが足元を蹴り出しドラパルトに迫ろうとしたその時。私はドラパルトを引っ込め会場が騒めく中ルカリオをドラパルトがいた位置で繰り出す。霊夢さんが驚く中バンギラスの牙がルカリオの肩に刺さるが、はがねタイプのルカリオには対して効いておらず弾き飛ばすと…

 

「ここでルカリオ!ルカリオの特性「せいぎのこころ」がルカリオの能力を上げる!」

 

「あくタイプの技を受ける事で攻撃力が上がるせいぎのこころ…!わざと抜群を取れるドラパルトで誘発した…!」

 

「蓮子凄い…!」

 

「ルカリオ押し切るよ!はっけい!」

 

(ここで引いても何もならない!)

 

「バンギラス、じしん!」

 

 バンギラスが地面に拳を叩きつける間にルカリオがバンギラスの懐に迫り、拳を叩き込む。バンギラスは吹き飛ばされながらもじしんの衝撃波を巻き起こしバンギラスの近くにいたルカリオに衝撃波が直撃。私は思わぬ展開に歯を食いしばったが…

 

 衝撃波により私の前に吹き飛んできたルカリオと後方にまた数歩下がった後にルカリオを睨みつけたバンギラス。スタジアムが息を呑む中バンギラスが仰向けにルカリオも仰向けに倒れ込んだ。

 

「バンギラス、ルカリオ共に戦闘不能!ダブルノックアウトとなります!」

 

「まさかのダブルノックアウト!バンギラスが3体目を道連れにする形でポケモンの数は3対2!さあこのチャンピオンマッチ、クライマックスを迎えようとしています!」

 

「一体で3体も…!」

 

「残るは手負いのラティアス…蓮子のキュウコンとドラパルトはほとんど無傷の状態!」

 

「ラティアスはキュウコンでは打点が通らない。イーブィで勝負してもいいでしょうけど。霊夢さんと一緒で最後に出すのでしょう」

 

 スタジアムにいるメリーや霊矢達が会話を重ねる中当の本人蓮子は一度頬を軽く2回程叩き霊夢の方を見つめる。エースを温存する霊夢が繰り出したのは手負いとはいえラティアス。蓮子も息を吐くとドラパルトをフィールドに出す。ムゲンダイナ戦でダメージを蓄積したラティアス。

 

 そしてタイレーツを無傷で突破しほぼダメージを受けてないと言っても過言ではないドラパルトが両者を見据える。ここまでは不利な霊夢ではあるが控え室で見ていた魔理沙達は霊夢がどんな状況でも出さないエースの存在。その恐ろしさを知っていた。

 

「行くよドラパルト!りゅうのはどう!」

 

「りゅうのはどう!」

 

 ドラパルトにりゅうのはどうを指示し、ラティアスもりゅうのはどうを打ち込んでくる。両者の波動が火花を散らしながらぶつかり合った後に爆煙を巻き起こす中霊夢さんはラティアスに指示を出す。

 

「ラティアス、いのちのしずく!」

 

「いのちのしずく!?」

 

「おーっとラティアス爆煙を利用!ダメージを回復した!」

 

(回復技を持ってる…?だったら長引かせるわけには…!)

 

「ドラパルト、ドラゴンアロー!」

 

「サイコキネシス!」

 

 煙が上がる中で傷を回復するラティアスを見て私は煙が無くなったタイミングでドラパルトに指示を出す。2体のドラメシヤを打ち込むと霊夢さんはラティアスにサイコキネシスを指示。念力でドラメシヤを吹き飛ばす間に私は…

 

「りゅうのはどう!」

 

「こっちもりゅうのはどう!」

 

 ドラパルトが放ったりゅうのはどうはサイコキネシスで遅れたラティアスに確実に命中。いのちのしずくでダメージを回復したとはいえ確実に負っていた疲労が形となり、ラティアスは地面に墜落した。

 

「ラティアス!」

 

「ラティアス、戦闘不能!ドラパルトの勝ち!」

 

「ラティアス倒れた!霊夢選手!残すポケモンは1体だ!」

 

「まさか…あの霊夢がアイツを出す羽目になるなんてね」

 

「向こうは3体残しだ。猛威を振るったドラパルトはピンピンしている」

 

「アイツのエースと対するのは3体残しが丁度いい」

 

 控え室で見ていた魔理沙達は存在を知っているだけにこれでも霊夢は逆転するんじゃないかと思っていた。追い込まれた霊夢。だがその表情は久々に相棒を出すまで追い込んでくれた蓮子に対する感謝が籠っていたようにも見えた。

 

 グッと笑みを浮かべながら霊夢はボールを握りしめた後に空中に投げ込む。

 

「さあ行くよラプラス!久々にアナタの出番!」

 

「ラプラス…!」

 

「クアア!」

 

「感謝するわ蓮子。長らくコイツを出すまでに至らなかったの。どうしてかしら…追い詰められているのにワクワクが止まらないの」

 

(スタジアムの雰囲気が変わった…!最後まで出さなかった霊夢さんの逆転のカード…気を引き締めて行かないとこちらが飲み込まれる…!)

 

 霊夢さんの表情は1体なんてどうでもいいと思っているぐらいに笑みだった。霊夢さんの前に出たラプラスは一度霊夢さんのボールに戻り、ダイマックスのパワーを纏って行く。巨大化して行くボールを前にして息を呑む私に対し霊夢さんは笑みを浮かべると…

 

 ボールを何回か上にやった後に後ろに投げつける。ボールから出てきたラプラスはダイマックスした姿となって大きな声を張り上げた。

 

「キョダイマックスラプラス!チャンピオンマッチでは四大会以来の登場だ!」

 

「一撃で倒れないでよ!こっちはワクワクしてんだから!キョダイセンリツ!」

 

「ドラパルト、10まんボルト!」

 

 キョダイマックスラプラスから巨大な氷の塊がドラパルトに向かって降り注ぐ。ドラパルトは当然キョダイマックス技をかわせる訳もなく、直撃を食らったが10まんボルトはしっかりとラプラスに浴びせた。だがそれが最後の一撃。ふらついたドラパルトは一撃で倒れた。

 

「ドラパルト!」

 

「ドラパルト戦闘不能!ラプラスの勝ち!」

 

「また始まるのかラプラスの快進撃!蓮子選手も残り2体となりました!」

 

「キョダイセンリツはリフレクターとひかりのかべの効果をオーロラベールによって発生させる…!あの火力でダメージが通らないとなれば…!」

 

「お疲れ様、ドラパルト。後は任せて」

 

 ドラパルトを戻した私の選択肢はただ一つ。キュウコンをフィールドに出す。オーロラベールが掛かる中不安そうな表情を浮かべた魔美達の表情が一瞬目に入る。ルカリオももういない。一度はキュウコンはダイマックス技を3回持ち堪えた。きっとやってくれる。

 

「ダイドラグーン!」

 

「あの巨体なら外れない!キュウコン、だいもんじ!」

 

 ラプラスが竜巻をキュウコンにぶつけてくる中キュウコンは炎をラプラスに吐きつける。命中はしているがダメージとしてほぼ通ってない。キュウコンも大分フラフラしているが霊夢さんの表情がさらに明るくなり…

 

「耐えた…なら!ダイサンダー!」

 

「だいもんじ!」

 

 ラプラスは今度は空中から電撃を降らせキュウコンに命中させる中でキュウコンは2回目のだいもんじをラプラスに浴びせに掛かる。ラプラスが小さくなったそのタイミングにキュウコンのだいもんじが命中し、ラプラスはやけどを負ったがそのタイミングでキュウコンが倒れた。

 

「キュウコン戦闘不能!ラプラスの勝ち!」

 

「ラプラス2連勝!蓮子選手も1体となりました!」

 

「ありがとう。ダイマックス技を耐えてくれた事感謝してる」

 

「厄介なのを背負ったわね。でもどうにかする…!」

 

「行くよ…イーブィ!」

 

「蓮子選手遂にイーブィをフィールドに!決着が近づきます!」

 

 霊夢さんのフィールドにはラプラス。私のフィールドにはキュウコンからバトンを受け取ったイーブィ。キュウコンは確かにバトンを繋いでくれた。後は形にするだけ…!バトルのクライマックスが間近までに迫っていた…




次回完結予定です。遂に終わります。灯火の星。なんだかんだ駆け抜けられて良かったと思います。次回まで突っ走ります!


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決戦の終幕と導かれた結末

お疲れ様です。灯火の星最終回となります。最終回ですが今回スマホからではなくパソコンからの投稿となります。多少変な感じになるかもしれませんがこの物語の結末を見届けてくれると幸いです。では書いて行きます。


「蓮子選手、霊夢選手共に残すポケモンは一体!その残っているポケモンが両者エースポケモンとなっております!」

 

「よく私に食らいついて来たわね蓮子。貴女のイーブィが倒れるかそれとも私のラプラスが倒れるかでこのバトルは決着を迎えるわ。倒れたら終わりという佳境なのに気持ちが昂って仕方ないの」

 

 スタジアムの大歓声とともに霊夢さんは笑みを浮かべながら私に語り掛けてくる。自分のラプラスが倒れた瞬間に敗北が決定するというのにこの人はまるで緊張という二文字を抱いていない。だがその気持ちは私も一緒だ。ここまで一緒に来てくれたイーブィやこのバトルで最善を尽くしてくれた私のポケモン達に感謝しながら、私はこのバトルに勝ち栄冠を掴む!

 

 入れられる気合はありったけ入れた。後はイーブィと私の伸びしろをただ信じるだけ。

 

「私も同じ気持ちですよ霊夢さん!本当は終わらせたくないけど私は必ず勝つ!行くよイーブィ!びりびりエレキ!」

 

「かみなり!」

 

「ブイ!」

 

「キュウウ!」

 

 声を張り上げ体から電気をラプラスに向かって放出していく中ラプラスも声を張り上げ自分の頭上に雷雲を作り出すとそのままイーブィに向かって降らせていく。お互いに向かっていった電撃が鼓膜が鼓膜が壊れそうなぐらいの物音でぶつかり合うと、激しい火花を散らした後に大爆発を巻き起こす。風を纏った煙に思わず私もイーブィも吹き飛ばされそうになる中で、私は声を張り上げる。

 

「イーブィ、ほしがる!」

 

「ブイ!」

 

 地面を抉れるくらいに強く蹴り出し爆煙の中に突っ込んでいくとあっという間にラプラスの目の前に出向き、そのまま懐に体当たりをかます。強くぶつかったイーブィはそのままラプラスを吹き飛ばすがある程度で踏ん張ったのを確認して霊夢さんが声を張り上げる。

 

「りゅうのはどう!」

 

「びりびりエレキ!自分の周りに発生させて!」

 

 ラプラスから放たれた波動がイーブィに向かっていく中で私はびりびりエレキを指示。自分の周りに電撃を発生させたイーブィに撃ち込まれた波動は三度火花を散らした後に爆発を起こす。イーブィも吹き飛ばされる中でラプラスはキュウコンが負わせたやけどにより思わず顔を食いしばる。私の前まで戻ってきたイーブィを見て私は一つ覚悟を決める。

 

(オーロラベールで殆どダメージが通らない…だったら…)

 

「イーブィ。ダイマックスで決着を付ける。いいね?」

 

「…ブイ!」

 

「蓮子何か仕掛ける気だ…!」

 

 私はイーブィに向かってボールを差し出すと一瞬ボールの中に戻す。これにスタジアム中が騒ぎ出す中で察していたのは観戦してくれていたメリー達。少しだけ私は笑みを浮かべるとボールにダイマックスパワーを纏わせ巨大化させていく。そして勢いよく後方に投げつけるとボールから出てきたイーブィがキョダイマックスの姿で地面に着地し声を大きく張り上げる。

 

「蓮子選手、イーブィをキョダイマックス!このダイマックスがクライマックスを迎えたバトルにどう影響するのか!」

 

「行くよイーブィ!キョダイホーヨー!」

 

「ダイマックス技なら技で跳ね返すのみ!ラプラス、ふぶき!」

 

 イーブィが声を張り上げ地面にオーラを流し込んでいく。そのオーラは瞬く間にラプラスの真下に大きなヒビを作り込み一気に膨大なエネルギーを真下から当てていく。ラプラスが歯を食いしばる中でラプラスはふぶきをイーブィに向かって撃ち込んでいく。イーブィに吹雪が当たった瞬間にイーブィから爆煙が発生する。その爆煙は瞬く間にイーブィを飲み込んでいくと何と一撃でダイマックスの状態から戻してしまった。

 

「イーブィ!」

 

「一撃…!?」

 

「霊夢のラプラスはダイマックス殺しとしても有名だ。本当に土壇場。火傷を負っている状態でのダイマックスだ。火事場の馬鹿力というかそんな力を出したんだろうぜ」

 

「それだけであそこまでの力か。本当に恐ろしいな…」

 

「キョダイホーヨーでもラプラスのオーロラベールは破れない。貴女に勝機は…」

 

「いや…ありますよ。今のダイマックス技で確かにオーロラベールにヒビが入った…!」

 

 スタジアムはどよめきそして霊夢さんは驚きを見せた後に笑みを浮かべた。確かにカキッという何かが割れるような音は聞こえた。確信がないまま言ったがラプラスが行動を起こそうとしたその時だった。その言葉は確信だけから現実に変わった。どこかしら何かの破片が落ちてきたのをきっかけにオーロラベルは完全に崩壊。その破片がラプラスの前に積み重なった形となった。

 

「何という事でしょう!オーロラベールが崩壊が現実となりました!」

 

「これが布石…!このチャンスを逃さない!行くよイーブィ!きらきらストーム!」

 

「サイコキネシス!」

 

 イーブィが声を張り上げた後にラプラスの念力にイーブィが捕まりそのまま空中に浮かびあげさせられるとそのままラプラスが首を動かした瞬間に地面に思い切り叩きつけられる。そしてイーブィが声を発したその後に空中が光った後に発生した魔法陣から巨大な星がラプラスに向かって降り注ぐ。霊夢さんはそれを見て歯を食いしばるとラプラスに向かって声を張り上げる。

 

「ふぶき!」

 

「ほしがる!」

 

 ラプラスが発した吹雪は瞬く間にイーブィが降らせた星を凍らせていく。そうしている間にも体を引きずりながらも立ち上がったイーブィが地面を蹴りだしラプラスの目の前に迫ったその時だった。

 

「当たっても構わない!りゅうのはどう!」

 

「当たるの覚悟で…!」

 

「ラプラスは耐久力のあるポケモン…2回程度の体当たり何とも感じないはず…!」

 

 向かっていったイーブィのタックルをラプラスは再びまともに食らう物の歯を食いしばりつつ踏ん張ると口に波動を溜め込み一気にイーブィに向かって放出していく。波動をまともに食らった挙句ラプラスが凍らした星と正面衝突。ざわめきが起きる中私も冷や汗を流しながら歯を食いしばる。イーブィが星を押しのけラプラスを睨みつける。だがその態度がやせ我慢に見えるまでにイーブィはフラフラで息を切らしている。

 

 そしてその息の切らし方はラプラスも一緒だった。火傷を負った状態でずっとイーブィに立ち向かっていたラプラス。にらみつけるイーブィに対して何か満足したかのようにニヤリと笑うと意識なく前方に倒れ込む。その瞬間は霊夢さんも相手側にいた私も大きく驚きそして声が出なかった。頭が真っ白の状態で何かの声を発しようとしたその瞬間だった。ラプラスが倒れたのを見届けてイーブィも倒れ込んだ。

 

 審判がイーブィとラプラスの前に入り込み両者の顔を確認した後に…

 

「イーブィ、ラプラス共に戦闘不能!然し!ラプラスが先に倒れたことにより判定勝ちでイーブィの勝ち!よって勝者!蓮子選手!」

 

「決まったァ!激闘を制し!幻想郷リーグが始まってから無敗を誇っていた霊夢選手を破ったのはチャレンジャー宇佐見蓮子だァ!」

 

「勝った…蓮子が勝った!」

 

 実況の声と共にスタジアムから割れんばかりの大歓声が巻き上がる。そしてゆっくりと立ち上がったイーブィがこちらに向かって笑みを浮かべた瞬間に思わず嬉しくなりイーブィの元に駆け寄り、思わず私は涙を流す。霊夢さんはラプラスを労った後にボールに戻すとゆっくりと私の元に歩み寄り私に手を差し伸べる。その後方では喜ぶメリー達の表情が少しばかり目に入る。

 

「ナイスファイト。良いバトルだったわ」

 

「霊夢さん…」

 

「チャンピオンが膝をついていてどうするのよ。ほら立ちなさい」

 

「は、はい!」

 

 霊夢さんが差し伸べてくれた手を取り私はゆっくりと立ち上がる。大歓声を耳に傾けたら語り掛けてくる霊夢さんの声が聞こえなくなってしまいそうだ。肩に霊夢さんが手を置きながら真っすぐ見つめながら声を張り上げる。

 

「幻想郷よ!よく聞きなさい!ここに新しいチャンピオンが誕生した!その名は蓮子!」

 

「れ、霊夢さん!?」

 

「うっさい。今だけ黙ってなさい。強いものが作り出した未来はきっとどんな強大な悪にも立ち向かってくれるはず!そんな彼女が作り出す未来を私たちは祝福しましょう!」

 

 守矢スタジアムに大歓声が響き渡る。その大声援は霊夢さんの言葉を聞き取り呼応しているようにも感じた。それは私の勝利を祝福するかのようにその場から私が居なくなるまでずっと続いた。イーブィが作り出してきた一つの未来は大きな成果を生み出した。それは私でも制御できないほどに。

 

 やがて私はメリーと共に幻想郷から元居た世界に戻ることになる。だがそれは遠い果ての未来の話…




見てくださりありがとうございます。見事灯火の星完結となりました。
今まで見てくださった方々本当にありがとうございました。
機会があればまた剣盾にもありましたエンディング後のストーリー的な物を書けたらいいなと思います。ひとまず本編は完結です。本当にありがとうございました。


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