ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》- (地水)
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第1話:二つのデアイ

 ディケイド放送10周年、仮面ライダージオウにて10年ぶりにディケイド登場。
何かと愛されている仮面ライダーディケイド。
これは完結せず終わった『心残り』を夢見た物語。


 曇天が覆う空が広がっており、その下では高層ビルが並び立つ都会の光景が浮かんでいる。

人々が行きかう大通りから離れた何処かの路上裏、人気がまったくなく薄暗い場所を一人の人物が歩く。

フードを目深に被り、ところどころに傷が見られた服装を着用した若い青年らしき人物は人目に付かない事を好んで入ったのか構わず進んでいる。

 

「………」

 

青年は何事も言葉を発せず進んでいる。目的地にはなく、ただ漠然とした感じで彷徨っているに過ぎない。

そんな彼の目の前に立ちふさがる者たちがいた……。

 

「目標補足、直ちに駆逐します」

 

「……またか、相も変わらずあきらめの悪さは折り紙付きだねえ」

 

『ライオトルーパー』……複数人の連隊からなる量産型の仮面ライダー達は目の前にいる男にコンバットナイフの形の武器・アクセレイガンを構える。

戦闘態勢をとった相手に対して、呆れた様子で青年はフードの奥でほくそ笑むと、一枚のカードを取り出す。

黒を基調とした仮面の戦士が描かれたライダーカードを構え、『彼』は彼らに言い放った。

 

 

「さぁ、こい。全て破壊してやる」

 

 

数分後、曇天から雨雲に代わり雨が降り始めるころ、男を取り囲んでいたライオトルーパー部隊は僅かな残骸を残して全て消え失せていた。

代わりにたった一人だけ立っていたのは、青い複眼を仮面に宿す黒い戦士だった。

黒い仮面の戦士は敵がいなくなったその場からゆっくりと離れていき、降り注ぐ雨の中へ姿は消えていった。

 

 

 

 

世界の破壊者ディケイド。

二つの出逢いを巡り、その瞳は何を見る?

 

 

 

 

前の世界での役目を終えて、次の世界へやってきた光写真館。

窓を開ければそこは近未来を思わせる建物が連なった街の光景が広がっていた。

その街並をフレームで狙いを定め、シャッターを押す一人の若い男性。

 

「新しい世界か。しかし、今までと違って妙なもんを感じるな」

 

窓から一望しながら呟くカメラを携えた茶髪の男の名は、『門矢士』。

またの名を『仮面ライダーディケイド』……いくつもの世界を掛け渡り、巨悪を打ち壊してきた仮面ライダーの一人だ。

つい先日に起きた"生まれ故郷の世界"で失った自分の過去と向き合い、いくつもの並行世界に侵略を企んでいた大ショッカーの戦いを繰り広げ勝利した。

大ショッカーが壊滅した後も、世界を巡る旅を続けている。

今回も例にもれず、次なるこの世界にやってきたのだが……。

 

「違うって私達が旅して来た世界とどう違うんですか?」

 

「さてな、何故だかそんな気がする」

 

何処かの違和感を感じ取る士へ、話しかける二人の仲間。

長髪の女性……『光夏海』と、青年……『小野寺ユウスケ』だ。

光写真館の主・光栄一郎の孫である光夏海は自由気ままに動く士の世話役。

小野寺ユウスケはかつて士が回った世界の一つ【クウガの世界】の住人であり、仮面ライダークウガだ。

彼らは士にとってはかけがえのない仲間達だ。

そんな彼らが疑問に思ったのは、背景ロールに描かれた絵の事だ。

背景ロールに描かれていたのは、暗闇が広がる空間とそこに舞い落ちる模様の入った羽根。

 

「しかし、これはなんでしょう……羽根、ですか?」

 

「模様が書いてあるけど一体なんだこれ?」

 

「分からない以上、行ってみれば何か分かるだろう」

 

「まーた適当なこと言って、士も分かってはないんじゃないか?このこのー」

 

ユウスケは士の頭をわしゃわしゃとしながら、人懐っこい笑顔を向ける。

その笑顔を手で押しのけ、ユウスケを離すと士は身支度を始める。

目的は外に広がる街の様子を伺うためだ。

 

「そうだな、散策でもしてみるか」

 

「そうですね、行きましょう!」

 

「やっほう散策だー!」

 

「ほっほっほ、いってらっしゃい」

 

台所から首だけ覗かせている栄一郎を背に、士たち三人は街へと散策に出た。

彼らに待ち受けるのは『同じく旅する人々』とは知らず……。

 

 

――――――――

 

 

同じ頃、同じ世界の同じ街。

この世界の人々が忙しなく行きかう中、そこに風景が溶けるように歪みが生じる。

通りかかった人々はなんだなんだと思いながら見守っていく中、歪みが液体が弾けるように消え、その中から現れたのは……。

 

「ぷぅ!次の世界へ到着!」

 

「うわぁ、高い建物がいっぱいだねー」

 

「……おい、なんかこっち注目されてるぞ」

 

「小狼君大丈夫?」

 

「はい姫、おれは大丈夫ですよ」

 

この世界にやって来たのは、別の世界からやってきた旅人達。

玖楼国の考古学者の卵で真面目な少年・『小狼』。

玖楼国の姫君で優しい心を持った少女・『サクラ』。

日本国の不愛想で腕っぷしの強い忍者・『黒鋼』。

セレス国のいつも笑みを浮かべる魔術師・『ファイ・D・フローライト』。

そして一同を様々な世界へ導く謎の白い生き物・『モコナ・モドキ』。

彼らは様々な理由で共に様々な次元の世界を旅をすることになり、様々な次元に散らばったサクラの【記憶の羽根】を求めて旅をしている。

タオの国を後にした小狼達はその後もいくつもの世界へ赴き、記憶の羽根を回収してきた。

そして次にたどり着いたのはこの世界だった。

 

「おい、てめぇら見せもんじゃねえんだぞ!」

 

「どうどうどう、くろぴー落ち着いて。ほーら怖がってるじゃん」

 

「もしかして、私達の恰好が怪しまれてるのかな?」

 

「……一刻も早くこの場所から離れますか。騒ぎになっては困ります」

 

小狼達の言う通り、周囲には彼らを注目する人だかりができていた。

怪訝そうにこちらの様子を伺うもの、手持ちの携帯端末で写真を撮るものと人々の反応は様々であった。

そんな周囲をかき分けてやってきたのは、複数の軍服姿の人達を連れた眼鏡をかけた男。

 

「貴様達、一体何者だ。こんなところで騒ぎを起こしよって」

 

「何者…と言われましてもー。旅の者ですけど」

 

にこやかに答えるファイに対して眼鏡の男は舌打ちをうつ。

 

「おい、面倒だ。こいつら捕縛しろ」

 

眼鏡の男に命令されて、そのうちの一人がサクラに手を伸ばそうとする。

だがその腕を小狼の手が払いのけ、彼女の前に立ち塞がる。

 

「……その人に触るな」

 

「チィッ!あったまに来た!!おい、やっちまえ!」

 

眼鏡の男の指示をすると、軍服の人達が小狼達を取り囲む。

すると、軍服の姿が変わり始め、その姿を異形へと変える。

灰色の体色を基調とした怪人と、黒い体にステンドグラスのような模様が入った怪人。

二種類の怪人の出現に野次馬だった人だかりは蜘蛛のように散って去ってゆく。

 

「「きゃああああああっ!!」」

 

「なんだ?こいつら……化生の類か?」

 

「黒りん、人間じゃないないのは確かだよ」

 

「へっ、やって来て早々戦いなんつうのは」

 

黒鋼はモコナの口から吐き出された愛刀・蒼氷を手にし、勢いよく抜刀。

それによって巻き起こした突風を怪人達に浴びせ、何体かを近くの壁まで吹き飛ばした。

蒼氷を肩に担いだ黒鋼は怪人達へ目掛けて言い放った。

 

「かかってこい、バケモノ風情に負けるほどやわな鍛え方しちゃいねえ」

 

『『『グガァァァァァァ!』』』

 

挑発を仕掛けた黒鋼へ向けて襲い掛かっていく怪人達だが、黒鋼は蒼氷の刀身で攻撃をいなしながら、斬りつけていく。

一方、ファイは自分に襲い掛かってくる怪人の攻撃を躱しながら翻弄していく。

 

「黒ろんやるぅ!ひゅー!」

 

『てめぇっ!避けんじゃなねえ!!!』

 

「えー?でも当たると痛そうだしやだよー!」

 

怪人達が振るう武器を避けるファイ。その隣では小狼がサクラを守りながら、体術によって一体の怪人と応戦していた。

 

「くぅ!」

 

「小狼君!」

 

「大丈夫です姫、おれがあなたを守ります」

 

『グオオオオオ!!』

 

「―――ハァ!!」

 

突撃してきた灰色の怪人をジャンプして避け、その背中へと蹴りこむ小狼。

怪人は勢いあまって吹っ飛び、タイミングよくしゃがんだサクラを飛び越えて建物の中へ突っ込んだ。

壁にできた穴を恐る恐る様子を伺うサクラの元へ、小狼が駆け寄る。

 

「大丈夫ですか。サクラ姫」

 

「うん、小狼君凄い」

 

「うーん! 小狼凄い! 悪い奴らをやっつけるなんて!」

 

サクラの肩に乗っていたモコナが小狼を褒めたたえる。

そんな中、先程の眼鏡の男が再び現れて、二人を睨み付けながら舌打ちを打つ。

彼の傍らから出てきた砂の怪人と共に。

 

「チッ、ホントにイラつかせやがって…!!」

 

『おいおい、尚樹ィ?少しは落ち着けよ。面白いことしてるならオレに変われ』

 

「ふざけんなゴースト!こいつは俺の仕事だ!」

 

"ゴースト"と呼ばれた黒と緑を基調とした骸骨の怪人は、眼鏡の男――尚樹の制止を他所に大振りの剣を掲げて小狼達へ切っ先を向ける。

下卑た笑い声を上げつつ、二人へ歩んでいき迫りよる。

 

『お前達、オレを楽しませてくれるか?くれるだろうなぁ!!』

 

「小狼君!」

 

「姫…!」

 

サクラを庇いながら、小狼は目の前の怪人と向き合う。

やがてゴーストが刃を振り上げようとしたその時、その場にバイク音が鳴り響き、一同はある方向へ目を向ける。

そこには、二機のバイクがこの戦場へとたどり着いた。

二機のうちのバイクのハンドルを握っていた青年が、ヘルメットを脱ぎながら言い放った。

 

「随分と派手な歓迎だな。大昼間から怪人達が闊歩してるとはな」

 

「士、これの何処が歓迎かよ。初っ端から暴れてるじゃないか」

 

青年―――士は、怪人達がいる事も気にせず、飄々と涼しい顔で呟き、同行していたもう一人の青年――ユウスケに突っ込まれていた。

しかし、状況をパッと見た三人は『この世界特有の違和感』に気づき、士のバイクに乗っていた女性――夏海がその事について第一声を上げる。

 

「しかも、あれって確か……ファンガイア?」

 

「オルフェノクに加えイマジンもいるな。どうなっているんだこの世界」

 

夏海の疑問に付け加えるように士はゴーストや他の怪人達にも見やって口にした。

三人が今まで旅をしていた世界では、「キバの世界」にいたステンドグラス状の模様を持った吸血鬼の怪人・ファンガイアや、「ファイズの世界」にいた灰色の体色が特徴の蘇った死者・オルフェノクといった、各ライダー世界に対応する怪人はいた。

こうして同じ世界に別のライダーの世界の怪人がいるのはなかなか珍しいとも言える。

だが、今はそれを論議している場合ではないと判断した士はあるものを取り出す。

 

「まあいい、考えるのは後だ。目の前で襲われてる奴がいるんだ。助けないわけにはいかない」

 

白いバックルがついた変身ベルト・ディケイドライバーを腰に装着し、本型アイテム・ライドブッカーから一枚のライダーカードを取り出す。

ライダーカードを敵に向けて翳しながら、あの言葉をつぶやく。

 

「変身」

 

【KAMEN RIDE…DECADE!】

 

サイドハンドルを引き、露になったカード挿入口にライダーカードを装填し、サイドハンドルを閉める。

ディケイドライバーから鳴り響いた電子音と共に、士の周囲にいくつものシルエットが出現。

シルエットが士の姿に重なってアーマー姿に、ディケイドライバーから出てきたライドプレートが頭部に突き刺さると、灰色部分のアーマーが鮮やかなマゼンタ色に染まる。

そこ立っていたのは、緑色の複眼を宿した仮面の戦士。

 

「さて、やるか」

 

「貴様、一体何者だ!」

 

突然乱入した存在に対して尚樹がイラつきながら訪ねた。

仮面の戦士に変化した士はやれやれと言いながら、言い放った。

 

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

 

 

 

 

「あれは……」

 

「――ディケイド」

 

突如登場した通りすがりの仮面ライダー……ディケイド。

未知との遭遇に対して、目の光を失ったサクラは知るはずのない破壊者の名をそう静かにそうつぶやいた。

 




 
 はい、どうも地水です。お久しぶりの人はお久しぶり、そうでない人は初めまして。

今回描いたのはCLAMP原作のツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-及びそのアニメ作品ツバサ・クロニクルと、石ノ森章太郎原作の仮面ライダーディケイドのクロスオーバー作品。
実を言うとこの作品、かつて今でいうフォロワーさんが作っていた二次創作の作品を自分なりにアレンジして作ったモノです。
その小説は個人的に気に入っている組み合わせだったので毎回楽しみに完結せずに終わってしまい、当時は少し悲しかったです。

今となって続きが読めなくなった現在、これを読むには自分でやるしかないなと思い、作品を投稿した次第です。
様々な次元・世界を旅する者たちが出会い、どんな結果を生むのか。

ちなみに時系列時系列扱い
・ディケイドSide……『オールライダー対大ショッカー』後
・ツバサSide…………『ツバサ・クロニクル』第二期終了後


次回はツバサ組とディケイド組が接触編。




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第2話:世界のハカイシャ

 ディケイドの登場に何が起きるのか。
二つの世界を渡る者が出会った時、何が起きるのか。
その先の出来事は、まだ誰にもわからない。


 突如現れた、ディケイドの登場。

その場にいた小狼達四人は彼の登場に驚いた。

 

「なんだありゃ……?」

 

「仮面ライダー?聞いたことない」

 

灰色の怪人――オルフェノクと切り結ぶ黒鋼と、手元にあった棍棒でステンドグラス状の模様を持つ怪人――ファンガイアの攻撃をいなすファイはディケイドの姿を見る。

今までもいろんな世界をたびしてきたつもりだったが、自らの姿を変えて戦う人物は初めて出会った。

経験したことのない未知の存在に遭遇した事に関心を受けていた。

 

「とりあえず、こいつらをなんとかしないといけないよね」

 

「チッ、仕方がない……まずはこいつらを片付けるぞ!そのあとで敵かどうか決める!」

 

「黒さま好戦的ぃ~」

 

「うるせぇ、お前ごとぶった切るぞ!」

 

茶化すファイに対して黒鋼は蒼氷を勢いよく振り被って、剣戟を飛ばした。

ファイが下へ屈み、剣戟は近くにいたオルフェノクとファンガイアへ飛んで行き、そのまま吹き飛ばされてしまう。

 

一方、士が変身したディケイドはゆっくりと小狼達がいる方向へ歩みだして向かっていく。

悠々と向かってくるディケイドに対して、それを見た尚樹が他の怪人達に指示を出して襲い掛からせた。

鮫を彷彿とさせるアクアクラスのファンガイア『シャークファンガイア』の鋭くとがった爪がディケイドへ振りかざされようとしている。

 

「ふん、邪魔だ」

 

『ぐぎゃっ!?』

 

身体を軽くひねって躱したディケイドがお見舞いと言わんばかりに拳を突き出す。殴り飛ばされたシャークファンガイアはなすすべなく地面へ倒れこむ。

続いて襲い掛かってきたキリンの特性を持ったオルフェノク『ジラフオルフェノク』が飛び掛かる。それをタイミングよく蹴り上げ、近くの壁まで吹き飛ばした。

二体の怪人をいなしたディケイドは、本型アイテム・ライドブッカーを取り出し、開いてその中から一枚のライダーカードを取り出す。

 

「まずはこいつでいくか」

 

【KAMEN-RIDE…RYUKI!】

 

「変身」

 

変身した時の手順と同じ手順でカードを装填、その姿を変えていく。

いくつもの鏡像がオーバーラップし、ディケイドの体に重なり合う。

そこには真紅のボディに黒と銀のアーマーを身に着けた龍の戦士が立っていた。

ディケイドは鏡の中の龍騎士(ドラゴンナイト)・龍騎へ変わると、手元に柳葉刀に似た剣型武器・ドラグセイバーを取り出すとそれを使い怪人達へ斬りかかる。

 

「ハァ!!」

 

『ぐぎゃぁ!?』

 

「まだまだいくぜ」

 

【ATTACK-RIDE…STRIKE-VENT!】

 

D龍騎は一枚のカードをディケイドライバーに装填、カードの効果を発動させる。

龍の頭を模した手甲・ドラグクローを右手に装着させると、目の前の二体の怪人目掛けてドラグクローを突き出した。

ドラグクローの口部分から放たれた火炎放射が怪人達の周囲一帯を火の海へと変えていく。

高熱に苦しみ身動きが取れないシャークファンガイアとジラフオルフェノクへ対し、D龍騎は新しいライダーカードを取り出し、追い打ちをかける。

 

「次はこいつだ」

 

【KAMEN-RIDE…HIBIKI!】

 

新しいカードを装填した後、今度は紫の炎に身を包んでいく。

やがて炎が全身を覆いつくすと、勢いよく腕で振り払うと、そこには紫の筋骨隆々の肉体に赤い縁取りが特徴的なのっぺりとした仮面が特徴とした二本角の鬼の戦士の姿があった。

音撃の戦鬼・響鬼となったD響鬼は、強靭な身体能力で怪人達がいる炎へ突っ込んでいき、両拳で殴り掛かる。

 

「どりゃあああ!!」

 

「「がっ!?」」

 

「おいおい、まだまだ熱いバトルはこれからだぞ!」

 

【ATTACK-RIDE…ONIBI!】

 

蹴りや拳を入れた後に、D響鬼の口から炎・鬼火が放たれる。

噴き出した鬼火は二体を文字通り火達磨にしていく。

火炎地獄と化した周囲をD響鬼は抜け出すと、すぐさま新しいカードを装填、三度その姿を変えていく。

 

【KAMEN-RIDE…KIVA!】

 

ベルトを中心として波紋が響き渡り、全身を銀色が包み込む。

やがて銀色が砕け散ると、その中から蝙蝠の形を模した金色の複眼に漆黒の痩躯と真紅の鎧に身にまとった姿が現れる。

次は吸血鬼の王・キバとなったDキバは次なるカードをドライバー差し込む。

 

「トドメと行こうか」

 

【FINAL-ATTCAK-RIDE…KI-KI-KI-KIVA!】

 

Dキバの右足に拘束された拘束具・ヘルズゲートが展開し、蝙蝠の翼を広げたような真紅の姿を現す。

そして右足を大きく振り上げ、そのまま左足で地面を蹴り上げて空高く跳躍。

そこから昼間に浮かぶ満月を背に、二体の怪人目掛けて急降下していく。

 

「ハァァァァ……ハァ!!」

 

『『があああああああ!!!?』』

 

怪人二体を纏めて必殺の蹴りを叩き込むDキバ。

キバの必殺技『ダークネスムーンブレイク』が炸裂し、流れ込んでくるエネルギーと叩き込まれた一撃の威力に爆発。

爆炎の後にオルフェノク特有の灰になった身体と、ファンガイアの砕けた残骸を残して、元の姿になったディケイドが姿を現す。

 

「ま、こんなものか」

 

手を払いながら自身が倒した怪人達を見ながら、そうつぶやくディケイド。

それを見ていた小狼は、驚きと感心の表情をしていた。

 

「スゴイ、あの怪物達を一瞬で」

 

「すっごーい!仮面ライダーって強いんだね!」

 

「仮面……ライダー?」

 

小狼の肩に乗っていたモコナがはしゃぎながらディケイドを見てそう言った。

聞きなれない単語に首を傾げつつ、サクラを庇いながら戦況を見ていた。

 

一方、手下の怪人達が倒されるその様子を見たゴースト…通称『ゴーストイマジン』が怒鳴りながらブチギレる。

 

『なにやってんだ貴様ら!相手はたかがライダー一人だぞっ!』

 

「俺は何人だろうが構わないぜ?五人でも十人でもかかってこい」

 

『ちっ、偉そうにしやがって!』

 

「何ならお前でもいいぜ?ほら、掛かって来いよ」

 

両手を広げ挑発をしかけてくるディケイドを見て、地団駄を踏むゴーストイマジン。

その声には苛立ちが募っており、大剣を振り上げて攻撃しようとする。

 

『そうかよ、そんなに死にたきゃ殺してやる』

 

「――落ち着け、ゴースト。アイツ、例の報告されていた【アイツ】じゃねえのか?」

 

『あん?【アイツ】だぁ?』

 

一歩踏み出そうとしたところで尚樹がゴーストイマジンを制止させ、【アイツ】なる言葉を伝える。

それを聞いてギロリと見やるゴーストイマジンは、ディケイド達を他所に尚樹へと向き直る。

 

『まさか、コイツが正体だってのか!?』

 

「少なくともコイツらが放っておけない対象なのは間違いない……潰すんだったら今だ」

 

『なんだよ分かってるじゃねえか。流石俺の契約者だ』

 

尚樹の同意の言葉を聞いて上機嫌になるゴーストイマジン。

それをニヤリと口角を上げた尚樹は懐に手を入れあるものを取り出そうとする。

 

「行くぞ、通りすがりの。全員纏めて消してやる」

 

(……!?まだ何か仕掛けてくるのか)

 

「ほう……」

 

次の手が残されている事に驚く小狼と、どんなものか見てみたいディケイド。

ファイや黒鋼といった一同を含めた周囲の人達が緊張感に包まれる中、尚樹とゴーストは動こうとする……。

 

だが、突如して聞こえてきた『声』にそれは中断された。

 

『―――何をしている尚樹。お前の目的は調査のはずだろう』

 

「チッ、スコルピオ!邪魔するんじゃねえ!!」

 

「……!あいつ、何処から!!」

 

突然現れた存在に対して、ユウスケが第一声を上げる。

そこには、両腕のクローと尻尾のような鋭い針がついた辮髪が特徴の銀色の蠍の怪人だった。

『スコルピオ』と呼ばれた蠍の怪人はディケイドと小狼達、双方の一同を一瞥すると再び尚樹とゴーストイマジンへ向けて口を開く。

 

『様子を来てみれば、このあり様とはな』

 

『なんだ?文句でもあるのか?』

 

『今は引け。今は落とされてはたまったものではない』

 

「チッ!?俺達があんな奴らにやられるとでも!?」

 

スコルピオの言葉に反発する尚樹とゴースト。

だが、クローの刃と辮髪の針を同時に向けられて二人は黙る。

 

『驕るなよ。他人の度量を見切れずに【世界の破壊者】と戦えるなど努々思うな』

 

「グッ!!わかったよ、くそが!!」

 

苦虫を噛みしめた様な顔で尚樹は了承をする。

そこへやれやれといった表情でディケイドが割り込んでくる。

 

「おい、仲間内で揉めている所悪いが、逃がすとでも思ってるのか」

 

『逃がしてもらわなければ困る……ハァ!!』

 

スコルピオは剣戟を飛ばし、ディケイドへと襲い掛かる。

その攻撃を避けたディケイドも負けじとライドブッカーをガンモードに変形させ、銃撃を浴びせる。

スコルピオに迫る銃撃……しかし、突如としてその姿は消える。

いやそれだけではない、いつのまにか尚樹なる男の姿もゴーストイマジンの姿も消えている。

驚くディケイドは、先程の突如出現した怪人の『種明かし』に察しがついた。

 

「なにっ!?今のはまさか……クロックアップか?」

 

クロックアップ……地球外生命体"ワーム"が有する高速行動能力であり、目に見えないほどの速さで動く事が出来る。

銀色の蠍怪人……言うなれば"スコルピオワーム"は、クロックアップによって目の前に現れており、恐らく尚樹達も引き連れてこの場を戦線離脱したのだと推測される。

現に、他のオルフェノクやファンガイアも尚樹の姿がなくなると同時に、黒鋼達の相手をやめて去って行く。

怪人達がいなくなった今、変身を解いた士は溜息を付く。

 

「やれやれ、行きつく暇もないな」

 

「おい士。大丈夫か?怪我は」

 

「大丈夫だ。見ての通りだ。それよりもユウスケ、他に気にすることはないだろうな」

 

「えっ…?」

 

駆け寄ってきたユウスケに対し、士はある方向を指出した。

そこには一人の少年に心配そうに訊ねる少女……小狼とサクラの姿があった。

顔を見合わせた士とユウスケは、とりあえず小狼とサクラの元へ向かった。

 

「小狼君、大丈夫?」

 

「はい、大丈夫です。おれは何ともないですよ」

 

「おーい、そこの君達。大丈夫かー?」

 

「よく頑張ったな少年少女。怪人達を倒し、助けに入った俺に感謝しろ」

 

持ち前の人懐っこい笑顔を向けるユウスケと、自分が活躍したといわんばかりに主張する士。

そんな彼らに対し、小狼が頭を下げてこういった。

 

「ありがとうございます。見知らぬおれ達を助けてくれて」

 

「お、おう……分かればいい」

 

「なんだよ士、照れてるのか?この子の素直さに照れてるのか?」

 

「うっさいなお前は黙ってろ」

 

小狼の実直な感謝の言葉に返されて、呆気にとられる士。それを茶化すユウスケを額にデコピンを食らわせた。

その隣では夏海が黒鋼とファイへ近づいていき、何者なのか伺っていた。

 

「あの、つかぬ事お聞きしますがあなた達は一体?何で怪人達に?」

 

「オレ達、旅の人達でしてー。この国ついていきなりあの人たちに襲われちゃって」

 

「チッ、あいつら斬りにくいったらありゃしねえ。こりゃ一筋縄じゃいかないな」

 

夏海の質問にファイが答え、黒鋼は怪人達を切れなかった事を舌打ちをする。

刀……?と、黒鋼の帯刀している蒼氷を見てこれで怪人達に立ち向かっていったのかと首をかしげながら夏海は次の質問をする。

 

「ところで皆さん随分と変わった恰好ですが、外国人なのですか」

 

「あはははー黒りん変わった格好だってー」

 

「お前もそうだろう……あん?このやりとり何処かでやったような」

 

「……?」

 

服装の指摘にファイと黒鋼はかつての"ナユタヤ国"にてやったやりとりを行い、夏海は首をかしげる。

士はそれを横目に、小狼の姿を見ながらこう言った。

 

「大体わかった。とりあえずお前達がこの国の住人じゃないな」

 

「……はい、そうですね」

 

「お互い様だな、俺らもお前らもこの世界に……この国に来たばかりだ」

 

「え、そうなんですか?」

 

士の言葉にサクラが驚きの声を上げる。偶然にも次元を超えて旅をしている人達が目の前にいたことにいるとは思ってもみなかった。

彼の言葉に助長するようにユウスケも言葉を紡ぐ。

 

「そうそう、俺達もいろんなところ旅してるんだよね」

 

「なんだか奇遇だねぇー。実はオレ達も色んな世界旅してるんだよね」

 

「そうなんですか……え!?」

 

ファイの言葉に夏海は驚く。まさか同じく世界を超えて旅をしている人達がいるとは思ってもみなかった。

そんな中、黒鋼は先程のディケイドの姿を思い出しながら士を見ながら尋ねる。

 

「ところでテメェ何モンなんだ?あの姿はなんだ?」

 

「相手の名前を知るには自分から名乗るのが礼儀だがまあいい……知りたければ教えてやる」

 

そう言うと小狼達から数歩離れる。

士は自らの名前名乗り上げる。

 

 

「門矢士、仮面ライダーディケイドだ」

 

 

こうして世界を巡る旅を続ける一行と記憶の羽根を求める一行の邂逅が行われた。

この世界での彼らの物語はここから始まる。

 

 

「……あれが、ディケイド」

 

 

彼ら7人の会話を聞いていた者がいると知らずに。

 

 




 どーも地水です、執筆スペースと投稿スペース模索中です。
劇中でも名前を取り上げた国のナユタヤ国。実は原作漫画とアニメでは名称が違っており原作漫画では高麗国(こりょこく)ですが、アニメ版だとナユタヤ国です。

まあそんなこんなで、2回目ですが現状の組織把握です。

・小狼一行
小狼、サクラ、ファイ、黒鋼、モコナ

・ディケイド
士、夏海、ユウスケ、栄次郎

・第三勢力
尚樹、ゴーストイマジン、スコルピオワーム

・不明
海東、鳴滝

現状、こんな感じです。小狼と士たちの敵になるのは一体誰か?
海東と鳴滝はいつ仕掛けるのか?

次回は『この世界』についてのお話。



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第3話:その名はネオライダー

 未知なる敵を退け、ディケイド達と小狼達はついに出会った


 同じ世界を超えて旅をする小狼達と出会った士達。

怪人と戦った場所から少し離れた場所へと移動した一同は、公園にて自分達の事情を話していた。

自己紹介を既に終えた一同は、世界を超えた旅についての話に花を咲かせていた。

 

「なるほど、皆さんも色んな世界を旅をしているんですね」

 

「まあな、それほどってことでもないが」

 

「でも不思議、私達の他に次元の旅している人がいるなんて」

 

「それはこっちの台詞ですよ、サクラちゃん。いやぁ、なんだか親近感がわきます」

 

小狼、士、サクラ、夏海と今まで旅をしてきた事で盛り上がる四人。

その隣では黒鋼がユウスケに対し、『ライダーに関する』質問を投げかけていた。

 

「ところで、聞きたいんだがあの変わった姿ってのはなんなんだ?仮面ライダーとか言っていたが」

 

「それはな、あれは仮面ライダーって言って愛と平和と人々を守る味方なんだよ。ちなみに俺はクウガって仮面ライダーになれるんだ」

 

「テメェもライダーってのになれるのか」

 

「そうなんだよね。俺の他にも色んなライダーがいるんだ」

 

「へぇ、そうなんだー。士君もユウスケ君も仮面ライダーなんだねー」

 

ファイが二人の会話を聞いていつもの笑顔を浮かべる。

小狼達が今まで旅で怪物や人ならざる異形と戦ってきた事はあるが、仮面ライダーのような姿を変えて異形と戦う戦士は初めてだった。

圧倒的な力で退けたライダーに対し、黒鋼は関心を受けていた。

そこへモコナが名乗り上げて、はしゃいだ口調で喋りだした。

 

「モコナ知ってるよー!仮面ライダーは、人間の自由のためにショッカーと戦うのだ!ちなみに侑子はBLACK派なの!」

 

「「BLACK……?」」

 

(……南光太郎の変身したライダーの事だな。会った事でもあるのか?)

 

小狼とサクラはモコナの言い出した新たなるライダーの名前を冠して首をかしげる。

その横では士はとある世界で出会った仮面ライダーBLACK……南光太郎の事を思い浮かべいた。

そこへユウスケが声を上げながら手をたたき、小狼へ訪ねる。

 

「あ!そういえば、小狼達みんな旅しているけども寝床はどうするんだ?何処かへ泊るのか?」

 

「それはこれから探そうと思ってまして」

 

「え、でも皆さん大丈夫ですか?その、あの人達に狙われて危ないんじゃ…」

 

小狼の言葉に夏海は心配そうな表情をする。

それもそうだ、先程怪人達を連れた尚樹なる奴らがいるのだ。あの執念深そうな台詞を考えるとまた狙われてもおかしくはない。

そう考えた夏海とユウスケの2人は士へ詰め寄り、彼に対して言い放つ。

 

「士君!」

 

「士!」

 

「なんだよお前ら雁首揃えて」

 

「小狼達を写真館に泊まらせてやりましょう!」

 

「このままほっとくには心配してしまうって!」

 

「ハァ、勝手にしろ……」

 

士はやれやれと言った感じで二人から離れると、首にかけていたカメラを構えて、小狼達の姿を撮った。

いきなりの幸運な状況に戸惑う小狼であったが、融通利かせてくれたユウスケと夏海の2人にお礼を告げた。

 

「あの、ありがとうございます。初めて会うおれ達にそんな事してくれて」

 

「いいっていいって。こういう機会は絶対ないんだから、さ!」

 

「そうと決まったら私の家に案内しましょう!」

 

にかっと笑うユウスケと新しい仲間を見つけて張り切る夏海。

そんな楽し気な様子を黒鋼は呆れた様子で、ファイは変わらず笑顔を向けていた。

 

 

―――――

 

 

同時刻。某所。

バーを思わせる空間に何人もの人達が屯していた。ある者はカウンター席で酒を嗜み、ある者は設置されたビリヤード台でキューを使いビリヤードボールを突いて遊び、ある者は欠伸をしながら再び惰眠を貪っていた。

どれも共通点は男女問わず黒服を着用している事。

 

そんな中、扉を開いてバーに二つの影が現れる。

一つは眼鏡をかけた黒髪の男……尚樹、本名は『鬼頭 尚樹(きどう なおき)』。

もう一人は蠍型の銀色の怪人……スコルピオワーム。

尚樹はずかずかとカウンター席に向かうと、マスターと思われる人物に対して乱暴に酒の名前を注文する。

 

「おい、リキュール寄こせ!」

 

「おいおい、鬼頭の?随分と荒れてるな」

 

「ああそうだよ、せっかくの獲物を取り逃がしたんだよ……スコルピオの奴に邪魔しなければな!」

 

隣で飲んでいた帽子を深くかぶった黒服の男性に絡まれ、イラつきながらスコルピオワームを睨み付ける。

帽子の男性はふと考える仕草をしながら、同じくスコルピオワームを見て手を叩いて思い出す。

 

「スコルピオ……あぁ、斬刃(きりは)の事か。お前さん、妙なところで感ずるからなぁ」

 

「……悪かったな。何かと性分なもので」

 

深いため息をついて、スコルピオワームはその姿を人の姿へと変貌させていく。

周囲の黒服と同じ黒服の姿に、紫がかった髪と紫の瞳が特徴の若い青年になると、斬刃……『紫電斬刃(しでん・きりは)』は、ビリヤード台のゲームの様子を観戦している女性の隣に立つ。

水色の髪と水色の瞳が特徴の女性が斬刃が傍にいる事に気が付くと、黄色い声で話しかけてくる。

 

「やーんもう、お帰りー斬刃ー!」

 

「おう、ただいま」

 

「どうだった?何処も怪我してない?尚樹の奴に変な事されなかった?」

 

「てっめどういう意味だ風嵐(フウラン)!」

 

斬刃を過度に心配する風嵐と呼ばれた女性……『水野風嵐(ミズノ・フウラン)』に怒鳴り散らす尚樹。

他の黒服たちはいつもの出来事と捉えているのか、再び飲食や遊戯を続けたりしている。

 

だが、再びドアが開きバーへ入ってくる者がいた。

その足音に気付いた黒服達は取りやめ食す事や遊びを取りやめ、一斉に顔を向ける。

重々しい足取りで一同の目の前に立つと、稲妻模様が入った白い仮面を被った男は鋭い目付きで見やる。

 

「全員いるか、ウワバミ」

 

「ライダー全員揃っているぜ、マスクドマンの旦那」

 

帽子の男性……『ウワバミ』は仮面の男……『マスクドマン』に対してそう言った。

マスクドマンは重々しい口ぶりで説明を始める。

 

「まずはお前達に伝えなければならないことがある。―――ディケイドがこの世界に現れた」

 

「なんだと……!?」

 

マスクドマンの言葉に対して、尚樹と始めた黒服達一同はどよめく。

ディケイド……全てのライダーを倒す仮面ライダーであり、【この世界】の秩序の根幹を揺るがしかねない存在だ。

世界を破壊する悪魔とも比喩される存在に、好き勝手やられる前にどうにか始末しなければならない。

斬刃が顎に手をのせて、少し考えた後にあの時であった"マゼンタカラー"のライダーを思い出す。

 

「やはりか、尚樹があったあのライダー……恐らくはとは思っていたがディケイドだったか」

 

「え?ディケイドに会ったの?どんなやつだった?」

 

「二体相手に優勢に立ってたくらいには強い……」

 

「いいなぁ、私も一目でいいから見たかったなぁ」

 

斬刃の肩に乗りかかり、強請る様に声を上げる風嵐。

そんな二人のやりとりを繰り広げている事へ気にせず、マスクドマンは話を続ける。

 

「ディケイドは我ら"ネオライダー"の統治を揺るがす存在を許しては置けない」

 

「つまり、今後の課題はディケイドの討滅でいいんですかい?マスクドマンの旦那」

 

マスクドマンの言葉にウワバミが疑問を持って訪ねる。

彼は頷き、再び黒服達……ネオライダーの構成員達へ言葉を投げかける。

仮面の下からでもわかる、威風堂々堂とした顔つきで言い放った。

 

「我らの目的はただ一つ、この混沌に融合された世界に、秩序と統治を」

 

「「「……」」」

 

「そして反抗勢力を撲滅し、真の平和を勝ち取るのだ」

 

「「「おおおおおおおおおお!!!!!」」」

 

マスクドマンの言葉に盛り上がるネオライダー達。

士気が上がるそんな中、尚樹は鼻で笑いながら心の中で思っていた。

思い浮かべるのは……あの時遭遇した、小狼達の姿。

 

 

(はっ、正義や平和がなんだ。俺は俺がやりたいことをやるだけだ)

 

 

(それにしても、あの小僧ども……次会ったらただじゃおかねえ!)

 

 

―――――

 

 

彼らを連れて一度光写真館へ戻ってきた彼らは、栄次郎が出迎えに来てくれた。

 

「おお、お帰りなさい三人とも。おや、お客さんかい?」

 

「「お邪魔します」」

 

「おお、なら上がっていきなさい」

 

士達が連れてきた見慣れない四人を栄次郎が不思議そうに見ている。そんな栄次郎へ小狼とサクラは礼儀正しく挨拶を行う。

彼らに対して栄次郎は暖かく出迎えると、小狼達四人は憩いの場と化している写真室へ通される。

そこで背景ロールに描かれている『記憶の羽根』を目にして驚いた。

 

「サクラ姫の羽根…!」

 

「え、どうかしたの小狼?」

 

「なるほど……大体わかった、どうやらお前達はこの絵を意味が分かるようだな」

 

小狼を心配そうに声をかけるユウスケの横を通り過ぎ、士は背景ロールの傍までやってくると、近くの柱にもたれかかって指で指す。

そこへサクラに抱えられたモコナがぴょんと跳ね、士の肩へと飛び乗って説明を始める。

 

「これサクラの羽根なの。モコナ達、これを探して旅をしてるの!」

 

「サクラちゃんの羽根ですか?」

 

「ハイ……そうです。その羽根、私の記憶なんです」

 

夏海に聞かれ、サクラは重々しく答える。

そうして小狼達は自分達の事情を話した。

……かつて、記憶の羽根があらゆる次元の世界にばら撒かれた事。

……それによって自分の記憶が失った事。

……自分達はそれぞれの目的で次元を超える旅をしている事。

やがて話し終えると、夏海は悲しげな表情でショックを受けていた。

 

「そんなサクラちゃんの記憶が、思い出が欠けてるなんて」

 

「みんなはサクラちゃんの羽根を探してこの世界に来たのか」

 

「はい、もっともこの世界に羽根があるかどうかは分からないです。それでも探します」

 

ユウスケは訊ね、それを聞かれたサクラは笑顔を作りながら答える。

続いて、小狼は士達へ深々と頭を下げた。

 

「おれ達を助けてくれてありがとうございます。でも、流石にこれ以上はご迷惑はかけません。流石におれ達だけで羽根探しはやります」

 

「そうだよね、話を聞いたところでオレ達の事情に突っ込ませるのも悪いしね」

 

「悪ぃがこっちの事情はこっちで解決する」

 

いきなり出会った士達をこの先に起こるかもしれない危険な目にファイと黒鋼も『協力は不要だ』とそう告げる。

士達は決して悪い人間ではないことは分かっているが、だからこそ巻き込まないために距離を置こうとしている。

そんな中、夏海が声を上げて口火を切った。

 

 

「――――待ってください!士君、私達も小狼君達の羽根探し手伝いましょう」

 

 

夏海の第一声に一同は驚愕した。

彼女は士の元へ向かうと、彼に対して勢いよく声を上げた。

 

「士君、小狼君達の羽根探し手伝いましょう」

 

「聞いてなかったのか?こいつらは必要ないって言ってるが」

 

「そうですけど、放っては置けないじゃないですか!」

 

「お人よしが過ぎるぞ。馬鹿」

 

「馬鹿じゃありません!」

 

士と夏海の口論が白熱していく。

言い争う光景に小狼とサクラはおろおろとし始め、ユウスケは「またか」と苦笑いを作る。

黒鋼はどこ吹く様子で呆れ、ファイとモコナは笑みを絶やさない。

二人が落ち着きを取り戻した頃、ふと夏海は悲しみを孕んだ言葉を吐露する。

 

「それに、自分の記憶を無くすって辛い事じゃないですか」

 

「……」

 

夏海の言葉に士はふと思い至った。

かつて記憶喪失だった自分と、思い出を失ったサクラを重ね合わせているのだと。

記憶を失うのは辛い、ましてや自分を誰かだと思い出す旅をしている彼女と脳裏に思い浮かんだのではないかと士は思った。

そうしてやれやれといった感じで夏海へとこう告げた。

 

「分かったよ、それがこの世界で俺がやるべきことならな」

 

「……!士君!」

 

「士、本当にいいのか?俺はいいけどさ」

 

「うるさい。男に二言はない。こうなった以上、やるだけだ」

 

ユウスケは士の言った事を撤回はないかと確かめる。

嘘偽りのない本当の事であると小狼の肩を掴んで笑顔を向けて喜びの表情を向ける。

 

「よかったな小狼!」

 

「ありがとうございます」

 

「ありゃりゃー、まあいっかー黒るん。人手は多い方がいいし、彼らの善意で受けとろうか」

 

「けっ、勝手にしろ。後悔しても知らねーからな」

 

ファイに話題を振られ、不機嫌になって黒鋼はそっぽを向く。

士は小狼の元へ近づくと、指を指しながら言い放つ。

 

「それにしても幸運だったな、お前ら」

 

「え?」

 

「なんてたってこの俺と出会えたんだからな。手に入れられるのは約束されたと思え」

 

「……士さん」

 

「なんだ?」

 

「案外、いい人なんですね。安心しました」

 

「ッ!?何言いだすんだお前!」

 

小狼の言葉に動揺する士。

その様子を見たサクラや夏海は、にこやかな笑顔を浮かべていた。

 

二つの旅の者達の邂逅による一日は、『サクラの羽根を探す』という同じ目的をやると決めてで終わった。

 




 どうも地水です。感想が来ないという名燃料不足でモチベーション下がってますが何とか投稿してます。

今回判明したのは一同が訪れた世界は『ネオライダーの世界』。
ネオライダーなる組織が怪人達と共に世界の裏で暗躍している世界ですが、その実情は?そしてさっそく怪しい動きを行う尚樹の姿……。

士とサクラの共通点、それは『記憶喪失』。どちらも経緯は異なりますが大切な記憶を失っているのは変わりはないです。それを照らし合わせ、夏海が協力を求めた感じです。なんだこの……夏海ちゃんヒロイン過ぎない?

次回は、多分ディケクロ組の日常回に……したいなぁ←


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第4話:新たなニチジョウ

 謎の組織の存在。
悪魔は記憶を失った少女と重ね合わせ、彼らに協力することとした。


 士達と小狼達が出会って翌日の事。

 

サクラが眠気眼を擦りながら布団から起き上がる。

周囲を見回すと、まず目に付いたのはベットにて寝ている夏海、そして彼女に寄り添って寝ているモコナの光景。

眠っていた頭が段々冴えて来て、ようやく自分の状況を思い出す。

 

「そうだ、私達、今夏海さんの家に泊まってるんだよね」

 

初めてこの世界に訪れた時、怪人達に襲われていた自分達を助けてくれた士さん達。

出会って間もない私達を泊まらせてくれたどころか、羽根集めに協力してくれる事を名乗り上げた。

感謝してもし足りないくらいの気持ちになったサクラは、布団をたたんで起き上がると身支度を整えてまだ寝ている夏海とモコナを起こさないように部屋を出て後にする。

 

階段を下りて一階に降りると、リビングを兼ねている写真室の方からいい匂いが漂ってくる。

ひょっこりと頭を出して覗いてみると、机の上には既に配膳された食事と、それを準備するファイの姿があった。

ファイはこちらの様子を覗くサクラの姿に気が付くと、にっこりと笑いかけて彼女を呼ぶ。

 

「おはよう、サクラちゃん。よく眠れたかい?」

 

「ファイさん、おはようございます。朝ごはん用意したのですか」

 

「まあね、泊めてもらってるお礼として料理でもどうかなってね」

 

「私もお手伝いしますよ」

 

「ありがとう、それじゃあお願いするね」

 

サクラはファイと共に朝食の配膳に努める。

人数分の食器を取り出しながら、サクラはファイとの会話を続ける。

 

「小狼君と黒鋼さんはもう起きているんですか?」

 

「そうだよ、二人とも日課の修行をやってるよー。それと彼……門矢士も一緒にね」

 

「士さんもですか?」

 

「うん、なんでも彼カメラマンらしくてね。二人を被写体として撮りにいくってさ」

 

「上手く撮れてるといいですね」

 

サクラはふとその光景を思い浮かべる。

黒鋼に剣の稽古をつけられてる小狼と、士はその姿をカメラに撮っている。

小狼君の稽古も見てみたいなと思ったサクラは、後でこっそりと現像した写真を士に頼んで見せてもらおうと思った。

 

だが、彼女は知らない。士が撮った写真は世界に拒まれなぜか被写体が歪んで写ってしまう事に。

 

やがてユウスケ、夏海、モコナと起きて、外に出ていた三人が戻ってきたころには栄次郎を含めた一同が席についていた。

並べられた洋風の装いの朝食に、士とユウスケは喜んでいた。

 

「ほう、朝からこんなものとはな。素晴らしい行いだな」

 

「士も見習えよ?2人とも、ありがとね」

 

「えへへ、皆さんには世話になってるからね。オレとサクラちゃんで用意したんだ」

 

「皆さん召し上がってください」

 

「では、モコナが音頭をとるよー」

 

モコナがサクラの肩に飛び乗り、手と手を合わせる仕草を行う。

他の一同もモコナに倣って手を合わせ、頂きますの言葉を言った。

 

「みんな手と手を合わせてー、いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

食事をとり始める一同。

ファイが旅の中で磨いてきた料理が夏海やユウスケがその味に舌を唸らせる。

 

「わぁ、美味しい!こんなに美味しいなんて凄い!」

 

「ホントだよ!いやぁ食が進むよ、ファイの料理美味い!!」

 

「ハハハ、泊まってくれてありがとう。ごはん美味しいね」

 

「いえいえ、それほどでもないですよー」

 

栄次郎の褒め言葉に対してファイは自身の事を謙遜する。

卓を囲む同じ席では、士が小狼に対して羽根の事で会話をしていた。

 

「小狼、お前、羽根の手掛かりについて手掛かりはあるのか」

 

「ええ、まだこの世界にやってきてまだ間もないですが。モコナによるとこの世界に羽根の力を感じる、と」

 

「ほう、そりゃまた便利なことだな。あの白い毛玉は」

 

士はすぐ隣にてハムを取り合ってる黒鋼とモコナの両者の姿を見ながら、小狼に対してそう呟いた。

 

……小狼によれば、昨夜の就寝前、モコナに頼って【この世界】にサクラの記憶の羽根があるか波動を辿ってみたという。

そしたら、モコナは小狼にこう告げたという。

 

―――めきょっ!羽根の力を感じるの!!でも、なんだか妙なの……。

 

―――妙、とは?

 

―――あちこちから不思議な力が出てきて、羽根が何処にあるか分かりにくくなってるの……。

 

小狼はモコナの言葉にふと脳裏によぎるのは、この世界に辿り着いた時に遭遇した怪人達。

もしかしたら、怪人達のような存在が羽根の場所を阻害しているのではないか?

そう考えに至った小狼は士に相談してみる。それに対して士は食事を口にしながらこう答えた。

 

「ありえなくもないな。お前達の見たファンガイアやオルフェノク、イマジンにワームの他にも怪人達はいくらでもいる。そいつらのせいで何処にあるか分からなくしているってのも可能性としては十分にある」

 

「それに、あの怪人達を連れていた黒い服の人達の事が気になります。もし、また襲い掛かってきたら」

 

「その時は俺とユウスケで相手にしてやる。お前達は羽根探しをメインにやっていな」

 

「はい、ありがとうございます」

 

士は小狼にそう受け返され、再び食事に戻るだろう。

この世界にやってきて初めての探索、羽根探しのために気合を入れていかなければ。

 

「白饅頭てっめぇ自分の飯食え!俺の分取るな!!」

 

「モコナの分もう食べちゃったモーン!!」

 

「だからって俺の分ばっか取るんじゃねえよ!!」

 

……黒鋼とモコナの食事の奪い合いが苛烈していくのも気にせずに。

 

 

―――――

 

 

【―――貴方に信頼と安心の美味しさを、SMART-BRAIN食品】

 

 

時刻は昼間、サクラは夏海に連れられて街へと繰り出していた。

街角の巨大モニターに宣伝で流れているCMを横目に、2人は目的地へ歩いていく。

 

「サクラちゃん、服屋行きましょう!ファッションです!」

 

「あの、夏海さん!いいのですか?私なんかのために?」

 

「大丈夫ですよ。実を言えば……じゃーん、士君からの臨時収入が入ったんです!」

 

夏海の手元には少し分厚い封筒が握られていた。

サクラが訪ねてみると、どうやら"この世界"に来る前の世界にて手に入れた物を換金していたものらしい。

胸を張りつつ笑顔の夏海は、サクラの手を引っ張り、ファッションショップへと向かおうとする。

 

「士君から言われたんです。『どうせあの黒服どもに怪しまれて目をつけられるよりはいいだろう。せいぜい可愛くしてやれ』って!」

 

「えぇ、でもそんな悪いですよ!」

 

「いいからいいから、レッツゴー!!」

 

サクラは夏海に連れられて、とあるファッションショップへと訪れ、暫しの着替えを楽しむ。

ミニスカート、和風の服、派手なパンツルック、白いワンピース……そうして夏海がサクラに似合う服を買っていく。

やがて遊び疲れた2人は近くにとある喫茶店に辿り着いた。

中に入ると、そこは落ち着いた内装といくつもの絵皿が飾られた壁、そしてカウンター席の向こう側で珈琲を入れる作業をしている眼鏡のかけた壮年の男性のいる光景だった。

マスターと思わしき眼鏡をかけた男性は、二人に気が付くと声をかけてくる。

 

「いらっしゃい。今すいてるから、どうぞ好きな席に座って」

 

「はい、お邪魔します」

 

マスターの男性にサクラが答えて、カウンター席に座る。

メニューを差し出され、中身を開いた夏海はサクラと相談して注文を決めた。

 

「ご注文は?」

 

「カフェオレ二つでお願いします」

 

「ふふっ、かしこまりました」

 

サクラは物珍しいそうに店内を見回す。壁には1986年から2009年まで飾られた22枚にも及ぶ絵皿があり、この店が相当長くやっていると察した。

ふとカウンター席の奥の壁に設けられた犬小屋に目がつくと、その中からごそごそと何かが這い出てくる。

出てきたのは金色の体毛を持つ大型犬と小さな子犬だ。彼ら二匹のラブラドール・レトリバーは鼻を鳴らしながらサクラの方へ近づき、彼女へすり寄ってくる。

 

「わぁ、可愛い」

 

「あらあら、ブルマンとジュニアが懐くなんて。その子達親子そろって警戒心強いのに」

 

「そうなんですか?マスターさん」

 

「うん、彼女で三人目かなー。珍しい事もあるね」

 

マスターはブルマンと呼ばれた親犬と触れ合うサクラを見て、夏海に教えてくれた。

何処か誰かを重ね合わせるような眼差しを向け、マスターはサクラ達に話し出す。

 

「今この街にはいないんだけどさ、君と同じような不思議な何かを持っていた人が」

 

「私と同じような……?」

 

「そ、不思議なお客さん……懐かしいなぁ。よく仲間内に語っていたよ、"人の音楽を守りたい"って口癖でね」

 

「今、その人はどうしているんですか?街にはいないって……」

 

「さっき言った通りさ。なんでも大事なものを守りに行くって出て行ったきり、姿を見せないのよ」

 

マスターは悲し気な表情でそう言いながら、写真を取り出す。

そこに映っていたのは、仲間達と楽しい様子で映っている茶髪の青年の姿。

サクラと夏海は写真を覗きこみ、マスターに訪ねてみた。

 

「この人がマスターの言っていた……」

 

「あの、お尋ねしますがこの人の名前はなんて言うんですか」

 

夏海が青年の名前を伺うと、マスターはそれに対して笑顔を向けて答えた。

まるで昔の出来事を懐かしむように。

 

 

「―――紅渡、腕のいいバイオリン職人だよ」

 

 

……サクラと夏海、二人がいる喫茶店の時間は過ぎてゆく。

ひっそりと掲げられている看板には、こう書かれていた。

【カフェ・マルダムール】、と。

 

 

――――

 

 

同じ頃、士達男性陣達は羽根の手掛かりを探していた。

小狼・黒鋼・ファイの三人はこの街にいてもおかしくなく活動できる現代の服を買った後、それぞれ分かれて情報集めを行っていた。

やがて待ち合わせのビル近くにて佇んでいた士とユウスケは戻ってきた三人と合流する。

 

「遅かったな。三人とも」

 

「お待たせしました。士さん、ユウスケさん」

 

「で、どうだった?何か分かったか」

 

ユウスケが三人に訪ねてみると、三人のうち小狼が一歩前に出てきた。

その表情は明るくないまま、説明を始める。

 

「この世界……国で羽根に関する情報を集めていたんです。もしこの国に羽根があるなら、これまでは伝説や噂のように何かしらの手掛かりが掴めるんじゃないかと思って」

 

「でも残念ながら、それらしい情報は見つからなかったね。インターネットってやつや、図書館に行って調べたりしたのにね」

 

ファイは残念そうな仕草を見せつつ、小狼の言葉に付け加えた。

士は三人の結果に眉を顰め、溜息を付きながら呟いた。

 

「つまり手掛かりゼロって事か」

 

「だが、白饅頭によると羽根の波動はあるらしい。つまり、【誰かが手にしてる】んじゃないかと俺達は考えてる」

 

「なるほど、誰かが羽根を手に入れてそれを隠してるなら情報が出ないのもうなずけるな!」

 

黒鋼の言葉にユウスケは納得し、うんうんと頷く。

 

……実際、サクラの記憶の羽根が持つ力は凄まじく強く、過去にはそれを手にして悪用する人物がいた。

しかも次元を超えて記憶の羽根をつけねらう輩も存在しており、幾度もその尖兵に差し向かれたこともある。

今回は心強い味方がいるとはいえ、奴らが出てこない保証はない。

 

そんな考えがよぎる小狼の頭を、士の手がポンと乗る。

 

「そう難しい顔をするな。小狼」

 

「え……?」

 

「例え誰がその羽根を狙おうが、俺が倒してやる。こう見えても悪名高い悪魔だからな、俺は」

 

「士さん……」

 

士の言葉に元気づけられた小狼は表情が明るくなる。

小狼達が集めた情報を告げ終わると、次は士とユウスケが集めた情報を三人に話す。

 

「どうやら、黒服達。多くの怪人達と繋がってる様子だな」

 

「怪人達と繋がってる?」

 

「そうなんだよ。ファンガイアにオルフェノク、イマジンにワーム、その他にも魔化魍やミラーモンスターまで従えてるんだ」

 

小狼の言葉に士とユウスケは集めた情報を続ける。

……黒服達は怪人達を連れ、時折人々を襲っているらしい。一般人は誰も刃向えず、奴らに怯えてされるがままだ。

一部には黒服達に対する反抗活動が行われていたが大半が粛清されたらしい。

何故怪人達を従えてやってるかは分からないが、

その話を聞いた小狼と黒鋼は眉を顰めて歯を食いしばっていた。

 

「そんな……悪い奴らを野放しにしているのか」

 

「ケッ、そいつら気に入らねえな。今度会ったら叩き斬ってやる」

 

「まったく、おかしな話だ。いつもならここで仮面ライダーが出てくるはずなんだが……」

 

士は呆れながら空を見上げる。

―――恐らくだが、この青空の下にて何処かにいるかもしれない、【この世界の仮面ライダー達】。

彼らは怪人達を好きにさせたまま一体何処で何をやっているのか……。

 

「おーい、士、いくぞ」

 

「置いていっちゃうよー」

 

「ああ、今行くぜ」

 

ユウスケとファイに呼ばれ、士は少し憂鬱な気分になりながら、皆と共にその場を後にした。

 

 

 




 どうも地水です。

いやぁ、日常回をやれてよかった。
普通にご飯食べ、おしゃれして、喫茶店行って、伏線貼って……ん?
何故か出てきたカフェ・マルダムール。そう【仮面ライダーキバ】にて素晴らしき青空の会の拠点となるあの喫茶店です。
ブルマンと子供のブルマンジュニア登場!最終回にてお産づいたあのワンコ。無事生まれました!←

それにしても渡、何処に行ったんだろうね……。

対して男性サイドは現状整理。
羽根の行方は未だつかめず、黒服達の悪さが明るみに出た……。
ちなみに名前が出なかったグロンギ・アンノウン(ロード怪人とも)・アンデットは今回言及されなかっただけでちゃんとこの世界にいます。

次回、ネオライダーだよ!襲撃開始!


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第5話:襲撃のアシオト

 女子は日常を楽しみ、男子は世界をうつろう。
この世界での英雄は何処へと消えていったのか。


 某所、何処かの高いビル。

そこの屋上に尚樹とゴーストイマジンの姿があった。

尚樹は忌々しそうに眼下に広がる街を眺めながら呟いている。

 

「あいつら、一体何処にいやがるんだ」

 

『早く会ってみたいもんだ。真っ二つに割ってみたい』

 

「見つからなきゃ意味がないがな……」

 

大剣を振り回しながら暇を弄ぶゴーストイマジンに、尚樹はイラつきながら言葉を飛ばす。

2人の狙いは、あの時とり逃した妙な一行―――小狼達だ。ディケイドと名乗る部外者に邪魔され、渋々とり逃したが今回はそうはいかない。

拳を握りしめ、歯を食いしばっている尚樹の元に黒服の一人がやってくる。

 

「申し上げます。例の一団、発見されましたとウワバミ様から連絡がありました」

 

「はっ、ようやくか。すぐ向かうと伝えろ」

 

尚樹の命令に従い、黒服はすぐさま屋上を去って行く。

首に手を当てて音を鳴らしながら回すと、尚樹はあるものを懐から取り出す。

黒いパスケースのようなアイテムを手にし、ゴーストに見せながらこう告げる。

 

「さぁ行くぞ、ゴースト。これからは俺達の狩りの時間だ」

 

 

――――

 

 

その頃、士達五人は通りすがりで見つけたケバブサンドの販売店にて昼食を取っていた。

情報収集で時間が押して、手軽なものとして選んだのは焼いたチキンをふんだんに使いピタパンで挟んだ食べ物だ。

ユウスケと黒鋼は勢いよく被りつき、その美味しさに舌鼓をうつ。

 

「うっひょー、美味しいなぁコレ!」

 

「タレはちと辛いが味は確かだな」

 

「うーん、オレは甘い方が好きだねー」

 

ファイは2人が齧り付く姿を見ながら、甘いソースが掛かったケバブサンドを食している。

一方、一足早く食べ終えた小狼と士はとある話題について話していた。

 

「士さん、一つ訪ねたいことがあるんです」

 

「なんだ?言ってみろ」

 

「さっき士さんが言っていた言葉が気になっていていたんです。『ここで仮面ライダーが出てくるはず』と」

 

「まったく、お前は目ざといな。小狼」

 

小狼の言葉に士はやれやれといった表情で観念し、自分の知っているライダーについて話を始める。

 

……士達の今まで旅してきた世界では何処も共通してその世界を守る『仮面ライダー』や、それに準ずる世界を守る戦士たちがいた。

本来ならば彼らのような仮面ライダーもこの世界にいるはずなのだが、今集まっている情報だけ見てもそれに関する情報が見当たらない。

 

もしかしたら、『元々怪人達が蔓延る世界』なのかもしれない、と士は言葉を続ける。

 

「……ま、あくまでも俺の推測だけどな。気にするな」

 

「きっといますよ。士さん達と共に戦ってくれる人達が」

 

「どうだかな。俺は『全てのライダーを倒す仮面ライダー』ってもっぱらの噂だ」

 

昼食という束の間のひと時を過ごす士達五人。

だがそこへ、つんざくような悲鳴が響き渡った。同時に破壊される音が聞こえ、そこから人々が逃げる様子が伺える。

異変に気付いたユウスケは士の名前を呼ぶ。

 

「士!もしかしたら…」

 

「ああ、わかってる。いくぞ……」

 

士とユウスケは三人より一足先に現場へ向かっていく。

2人が辿り着くとそこには、怪人達を連れた黒服達の姿があった。足元には怪人達に襲われたと思われる警察官姿の犠牲者達の姿が転がっていた。

それを見た士とユウスケは表情を歪ませる。

 

「随分と暴れっぷりじゃねえか。お前ら」

 

「酷い……罪もない人達になんてことをするんだ!!」

 

怒りと悲しみに孕んだ声を上げて、黒服達を睨み付ける二人。

黒服達は何も答えず、代わりに彼らの傍から出てきたのは二体の怪人……ローマ兵を模した銀色の亀の怪人と、機械めいた外見を持つ緑色の蜘蛛の怪人。

亀の怪人……『トータスロード』と、蜘蛛の怪人……『ソロスパイダー』は二人に襲い掛かろうとする。

 

「アンノウンにミラーモンスターか」

 

「士!行くぞ!」

 

「当然だ!」

 

2人は襲い掛かってきた二体を何とかいなして距離をつめると、変身の準備を行う。

士はディケイドライバーを腰に装着、ライドブッカーから一枚のカードを取り出して構える。

ユウスケは拳法の構えを取ると、腰に霊石がはめ込まれた銀色のベルト"アークル"が出現する。

それぞれ、準備を終えた二人は揃えて掛け声を言い放った。

 

「「変身!」」

 

2人はそれぞれ変身し、士はいくつもの像が重なって、マゼンタの仮面の戦士・ディケイドの姿へと。

一方、ユウスケはその姿を赤い戦士の姿へと変えていく。金色の角に赤い瞳、漆黒の体に赤い装甲……超古代の戦士『仮面ライダークウガ・マイティフォーム』へ変わる。

二人の仮面ライダーが並び立ち、襲いかかる怪人たちへ向かっていった。

 

 

――――

 

 

一方、その頃。

士達の後を追いかけて向っている小狼・黒鋼・ファイは大きな陸橋に差し掛かっていた。

遠くの方では、士達の変身した仮面ライダー達が怪人達と戦っている姿が伺え、黒鋼がそれを見ながら呟く。

 

「あいつらは一足先に戦ってるようだな」

 

「急ぎましょう!」

 

小狼に言われ、一同は走る速度を上げて現場へ向かおうと駆けていく。

だがそこへ一つの人影が立ち塞がり、黒鋼へ飛び掛かってくる。

 

「チッ、テメェ何者だ!」

 

黒鋼は咄嗟の反応へ避けると、襲い掛かってきた相手の姿を確認する。

帽子を深く被った男性は口元をニヤリと歪ませると、黒鋼の顔目掛けて掌底を叩き込もうとする。

寸でのところで相手を突き飛ばす事によって避けた黒鋼は、帽子の男性をよく見た。

黒服達と同じ外見と特徴を持つ彼は、身に着けている衣服についた埃を払う仕草をすると、高らかに声を上げた。

 

「Ladies and gentleman!先日は仲間が世話になったねぇ?ああ、オレの名前は"ウワバミ"だ。以後お見知りおきを」

 

オーバーリアクションをしながら、帽子を外す男性……もとい、ウワバミ。

鈍い光を放つブロンドヘアーと、蛇の眼光のように鋭い目付きが三人に突き刺さる。

彼は何処からか取り出したステッキをクルクルと回しながら、小狼達三人に向けて訊ねてみた。

 

「さーてと、キミ達に特に恨み辛みはないが、対処させてもらうけど……いいかな?」

 

「えー、あんまりそういうのはちょっとなー」

 

「つーか、テメェあの黒服達の仲間だろ?だったらブッ倒す相手に変わりはねえ」

 

嫌がる素振りをするファイと、交戦的な態度を示す黒鋼。

二人の様子をにやついた表情で、回してたステッキを止めると、その杖先を三人に向ける。

 

「だったら、ちょっと遊んでいこうかな……ソォヤァッ!!」

 

帽子を深くかぶりすとウワバミは一歩踏み出し、ステッキを振るい翳す。

攻撃を避けると黒鋼はウワバミへ取っ組み合い、身動きを取らせないようにすると小狼へ向けて叫んだ。

 

「小僧、先に向かえ!」

 

「わかりました!」

 

黒鋼の言葉に制され、先にディケイド達の所へ向かう小狼。

走っていく小狼の姿を見ながら、ウワバミは黒鋼達に不気味な笑みを見せながら訊ねてみる。

 

「おやおや、お仲間をお一人で行かせていいのかい?」

 

「あん?どういう事だ!」

 

「なあに、キミ達二人程度でオレを止められると思ったら大間違いってこと!」

 

「ぐっ!」

 

一瞬で拘束を解いたウワバミが繰り出した握り拳は黒鋼の胸板に直撃する。

黒鋼はよろめき、その間に彼はバックステップで距離を離していく。

すぐに立ち上がった黒鋼へファイが傍に駆け寄って状態を伺う。

 

「黒さま、大丈夫」

 

「問題ない……しかしアイツ、見た目に反してかなり強ェぞ」

 

「あっはっはっはっは!褒めても何も出ないっての!」

 

ウワバミは帽子を深く被り直し、再び黒鋼とファイへ向き直る。

その眼には鋭い光を宿して、ステッキを構える。

 

「さて、と。人数は二人、遊ぶにはちょうどいいかな?」

 

口元を三日月状に歪ませて、ウワバミは一歩前へ踏み出す。悠々とした気分で二人へ攻撃を仕掛けていった。

 

 

―――――

 

 

場面は変わり、ディケイドとクウガVSトータスロード&ソロスパイダーの戦闘は続いていた。

ディケイドはライドブッカーによる銃撃を繰り出すも、トータスロードの背中にある甲羅によって弾かれしまう。

そのトータスロードの頭上を飛び越えてジャンプしてきたソロスパイダーが両腕の巨大な爪で襲い掛かる。

 

『シャアアァァァ!!』

 

「させるか!」

 

ディケイドへ爪が迫る寸前、地面を蹴って飛び上がったクウガが横からタックルを仕掛けてソロスパイダーを吹っ飛ばす。ディケイドはソードモードへと変えたライドブッカーでトータスロードを斬りかかっていく、対してトータスロードは両腕の装甲で防ぐと、一歩下がって距離を離した後に天使の輪のような発光体が出現。

すると、トータスロードの体はまるで水に入るかのように地面へ沈んでいく。完全に沈み切り、泳ぐように移動するその様子を見てディケイドは"その能力"を察して舌打ちを打つ。

 

「お得意の超常現象か……!」

 

『ギシャアアッ!!』

 

「ぐああああ!」

 

地面から飛び上がってきたトータスロードがディケイドへ突撃していく。

トータスロードが何度も突撃され、ディケイドのから火花が散り勢いのあまり地面へと転がり込む。

クウガは相手をしていたソロスパイダーを蹴り飛ばすと、ディケイドに駆け寄って助け起こす。

 

「士、大丈夫か!」

 

「なんとかな……ユウスケ、緑のクウガに変われ。何処からか襲ってくる相手なら有効だ」

 

「なるほど、わかった!超変身!」

 

ディケイドの助言を元にクウガは構えをとり、その姿を変えていく。

 

複眼と装甲は緑に変わり、その手には近くにあった拳銃を変化せたボウガン型武器・ペガサスボウガンが握られていた。

全てを察知する超感覚を宿す緑の戦士・クウガ・ペガサスフォーム。

早速周囲の状況を探り、その意識を地面の下へと集中していく。

 

様々な雑音の中、クウガは地面をかき分ける音……トータスロードの地面の中を潜る物音を聞き取る。

その位置は……ディケイドの後方から聞こえて来た。クウガがディケイド目掛けて叫ぶ。

 

『ギシャアア!!』

 

「―――後ろだ!」

 

襲い掛かっていくトータスロードの気配を既に察知していたクウガは、ペガサスボウガンの引き金を引く。

銃口から発射された空気の弾丸による一撃『ブラストペガサス』が直撃し、地面へと倒れこむ。

本来ならば急所に当たればグロンギですら一発にて仕留められる威力だが、分厚い甲羅によって守られていたのか致命傷にはならずにトータスロードはよろよろと立ち上がる。

 

しかし、攻撃を緩める隙も与えずディケイド次の一手が叩き込まれる。

 

「動くなよ、動くと痛いぞ!」

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE-DE-DE-DECADE!】

 

『ギッ!?』

 

電子音声に気付いて見上げると、いくつものカードの形をしたエフェクトを突っ切ってゆくディケイドの姿があった。

ディケイドの必殺キック『ディメンションキック』が炸裂、トータスロードは十数メートルまで蹴り飛ばされる。

地面へ叩きつけられると光の輪が出現し、その瞬間爆発をしてその身を散っていった。

 

「まず一体、撃破だな」

 

「―――士さん!ユウスケさん!」

 

まず一体倒した事を確認したディケイド達の元へ小狼が駆けつける。

呼びかけられた声に気付き、2人は手を出してそれ以上来ることを制止する。2人のライダーはソロスパイダーの他にやってきた『次なる敵』へ気付いたのだった。

 

小狼がやってきたのをそのタイミングを見計らってか、黒服達の分けて出てくるものがいた。

―――鬼頭 尚樹とゴーストイマジンだ。

 

「ようやく出会えたなぁ、餓鬼」

 

「お前は……」

 

「お前は確か、あの時いた……」

 

「ディケイド……いずれお前の相手もしなくちゃならんが、今はその小僧をやるのが先だ。邪魔すんじゃねえぞ」

 

尚樹は小狼とディケイドを忌々しそうにそう言うと、懐から黒いパスを取り出す。

すると、尚樹の腰に『T』の文字にも『T字の線路』にも見えるバックルのついたベルト出現。

ゴーストイマジンに呼びかけた尚樹は、バックルの横についたスイッチを押すと周囲にくぐもったような音色が響き渡る。

 

「いくぞ、ゴースト」

 

『あっはっはっは』

 

「変身」

 

【Scull Form】

 

尚樹は黒いパス・ライダーパスをベルト・ユウキベルトのバックルに翳すと、周囲にフリーエネルギーのエフェクトが発生。

それらが尚樹の体に付着し、銀色のライダースーツのボディに変わると、ゴーストイマジンが彼の体に憑りつき、同時に出現した黒い装甲が装着。

最後に頭部に髑髏がついた海賊帽子を模した仮面が装着され、変身を遂げる。

腰にはマント、首元には線路のようなマフラーがとりつけられ、手にはゴーストイマジンが持っていた大剣が握られている。

まるで仮面ライダーのような姿を見て小狼は驚いた。

 

「……あれって、まさか……仮面ライダー……?」

 

「アイツも変身できたのか!?」

 

「……大体わかった、こういう世界ってことか」

 

黒服の一人が変身したライダーの姿にクウガは驚き、ディケイドは『この世界でのライダー』の全容を少しばかり理解した。

―――目の前にいる仮面ライダーは、『この世界の人々を脅かす存在』であると。

尚樹の変身した仮面ライダーは、ゴーストイマジンと重ねたような声で名乗り上げた。

 

 

『「―――自己紹介ついでに名乗っておくか」』

 

 

『「―――オレ達【ネオライダー】が一人、幽汽……仮面ライダー幽汽だ!」』

 

 

尚樹の変身した『仮面ライダー幽汽』は、大剣を振りかざしディケイド達へと襲い掛かっていった。

この世界……"ネオライダーの世界"での戦いは、まだ始まったばかりであった。

 




 どうも地水です。ゼロワン、面白いですね←

ようやく本格的にネオライダーの襲撃していく頃合いです。
1話休憩しての挟んでの戦闘シーンは楽しい!
それにしても黒様、普段剣を預かってるモコナを置いてきてよかったのだろうか←

ネオライダーが一番槍、仮面ライダー幽汽!ジオウではいいところないまま終わった幽汽!←
1話でもお話していた通り、かつて誰かがやっていた小説を元にディケクロをやってます。この選抜ライダーの幽汽も当時に添ってやっております。

次回は幽汽との激闘。そこへ現れるのは……?


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第6話:荒ぶるアクリョウ

 ネオライダーの世界にて現れたるは、黒き幽霊。
狂気と狡猾さを宿すライダーに破壊者とニューヒーロー、そして旅人はどうするのか。


 鬼頭尚樹が変身した仮面ライダー……幽汽・スカルフォーム。

自らを【ネオライダー】と名乗った彼は、ゴーストイマジンが使用していた大剣を振るい、ディケイド達へ襲い掛かってくる。

上段から振り下ろされた大剣による一撃が放たれる。その凶刃が狙うのは……小狼。

 

『「おらぁ!!」』

 

「グッ!?」

 

咄嗟にディケイドは当たる寸前に手元を掴み、何とか小狼へ届くことだけは防ぐことに成功する。

ライドブッカーを取り出し、鍔競り合いを始めるディケイドと幽汽は言い争いを行う。

 

「おい、俺達をほっといて変身してない奴を狙うのはないんじゃないか?」

 

『おいおい聞き逃しちゃったわけじゃないよな、お前?』

 

「言っただろう、【今はその小僧をやるのが先だ】ってなぁ!!」

 

幽汽の振るう大剣がディケイドへと直撃し、軽く吹っ飛ばした。

再び小狼へ狙いを定めるも、その前にクウガが立ち塞がり邪魔をする。

 

『「チッ、邪魔だお前」』

 

「小狼、いったん下がれ。こいつの狙いは君だ!」

 

「分かりました!」

 

この場では自身の無力さを痛感した小狼は、近くの物陰へと避難をする。

クウガは先程の破壊された破片から鉄骨を見つけると、それを抜き取り構えを取る。

 

「超変身!」

 

クウガは掛け声と共に再びその姿を変える。

青い瞳と青い装甲を身にまとい、鉄骨は長棒型の武器・ドラゴンロッドへと変貌する。

驚異的な俊敏さと跳躍力を合わせ持つ戦士戦士・クウガ・ドラゴンフォームとなり、幽汽へと攻撃を仕掛ける。

 

「おりゃああ!!」

 

クウガの振るうドラゴンロッドを受け止め、幽汽は横凪に大剣を振るう。

地面を蹴り上げ、斬撃を空高く舞って避けると急降下しながらドラゴンロッドによる叩きつける攻撃を繰り出す。

幽汽は咄嗟に転がる動作で避けると、舌打ちをしながら態勢を立て直す。

 

『「チッ、厄介な!!」』

 

「いくぞ!」

 

地面へと着地したクウガはそのまま幽汽へと向き直り、幽汽へと立ち向かっていく。

 

一方、幽汽に斬り飛ばされたディケイドはなんとか立ち上がる。

戦況を見てみると幽汽とクウガ・ドラゴンフォームが互いの武器で鍔迫り合いをしている光景が見えた。

どちらも実力は互角、少しの間は任せてもいいだろうとディケイドは判断する。

 

「……あっちはユウスケに任せておけばいいか」

 

ディケイドはそう思ってビルの方へ見やると、壁に張り付いたソロスパイダーがクウガの狙っていた。

大方、クウガの猛攻を邪魔する魂胆なんだろうとディケイドは察すると、新しいライダーカードを手にしてベルトに装填した。

 

【ATTACK-RIDE…BLAST!】

 

「おら、落ちてこい」

 

『ギ!?ギシャアア!!!』

 

ライドブッカー・ガンモードの銃身が分身し、数十発にも及ぶエネルギー弾を浴びせる『ディケイドブラスト』が発動。ソロスパイダーが気付いたときには遅し、すべてのエネルギー弾が当たり、地面へと叩き落される。

黒煙を上げるソロスパイダーを見て、幽汽は怒号を上げる。

 

『「チィ!!なにやってんだ!この木偶モンスター!!」』

 

「生憎だったな、俺達相手に不意打ちは効かん」

 

「偉そうに言っちゃって、お前……」

 

偉そうにしているディケイドの言葉に呆れるクウガ。

だが幽汽は二人に目もくれず、何を思ったのか倒れているソロスパイダーに近づくと、ゴーストイマジンの声でこう言った。

 

『お前、もういいよ』

 

―――幽汽は倒れているソロスパイダーの腹部に大剣を突き刺した。

辺り一帯に劈くようなソロスパイダーの悲鳴にも似た啼き声が響き渡る。

 

『ギシャアアッ!!!??』

 

「最後に一仕事しなよ」

 

「なっ、アイツ!?」

 

「自分の仲間を……!!」

 

幽汽の起こした凶行にディケイドとクウガは驚愕する。対して幽汽は突き刺さった大剣を捻り回し、ソロスパイダーの悲鳴を上げさせていく。

すると、周囲の鏡からつんざくような耳鳴り音が響き渡り、同時に鏡面が揺らぎ始める。

その様子を見て、小狼は冷静にその様子を伺う。

 

「……なんだ、これは……"何かが来る"?」

 

『「さぁ来い来い来い!ミラーモンスターども!!」』

 

幽汽の言葉と共に、ビルの窓ガラスから巨大な影が這い出てきた。

巨大な蜘蛛のような姿をした怪物と、ソロスパイダーによく似た外見の怪人が這い出てきた。

蜘蛛型の怪人……『ミスパイダー』と『レスパイダー』はディケイドとクウガに目をつけると、襲い掛かってきた。

 

「こいつら、野生のミラーモンスターか……!」

 

「くそ、これが狙いか!」

 

2人は応戦しながら今の状況を確かめる。すぐそばでは巨大な蜘蛛型の怪物……"ディスパイダー"は手当たり次第に暴れまわり、周囲の建物の一部を破壊していく。

ただでさえ被害が大きい中、二人の目に飛び込んできたのは、幽汽が小狼の目の前まで迫っていた光景だった。

ディケイドとクウガが二体の怪人を相手をしている今、自由の身になった幽汽は当初の目的である小狼へ迫りつつあった。

 

「くぅ……!」

 

『「さぁ、楽しい楽しい狩りの始まりだァ!!」』

 

楽しそうな声を上げながら幽汽は、大剣を小狼へ振りかざした。

小狼は苦渋の表情をしながら、幽汽へ応戦を始める。

 

 

―――――

 

 

同時刻、黒鋼とウワバミはぶつかり合っていた。

黒鋼の繰り出した蹴りをウワバミはステッキで受け止め、攻撃を防ぐ。力を込めて弾き飛ばすと、今度はウワバミが繰り出したステッキで払いのける。

 

「フンッ!」

 

「おっと!危ない危ない」

 

「チッ、剣さえあればもうちっと多少は戦えたんだがな」

 

「仕方がないよ、この世界だと迂闊に剣は迂闊に出せないそうだし」

 

距離を取って態勢を立て直す黒鋼は今は手元にない蒼氷を脳裏に思い浮かべながら相手を睨む。

 

ファイの言葉通りだと、この世界には"銃刀法違反"なる決まりがあるらしく、剣や銃と言った武器を容易に扱ってはならないらしい。それを破ってしまえば、警察という秩序を守る組織の人に捕まってしまうという。

そういうのには経験がないわけではない、かつて訪れた国の一つ……ピッフル(ワールド)やラグタイムワールドでもそうだった。

せめてもの武器があれば、多少は何とかなったが……。

 

「ない物ねだりはしょうがないし、そんじゃオレも頑張りますか……っと!!」

 

「あぶなっ!?」

 

ファイが(恐らくその辺で拾ったであろう)石を投擲し、顔面擦れ擦れに掠る。

その間に態勢を立て直した黒鋼を見て、ウワバミは一息をついて語り掛けてくる。

 

「やーれやれ……中々強いね、君ら。生身でここまで楽しめるなんてのは久しぶりだ。気に入った」

 

「へっ、俺はそのニヤついた顔が何処かのアホ面を思い出して気に入らねえな。二人もいらねえんだよ、二人も」

 

「えー、もしかしてオレの事言ったのー?黒ぴーひーどーいー!」

 

ファイは自分の普段の行いの比べられて抗議するも、黒鋼はスルーしながらウワバミに向き直る。

互いの眼光は相手を見据えて、構えを取る二人。

殺気が満ち溢れる中、互いに相手を仕留めんと動き出そうとしたその瞬間―――。

 

『ギシャアアアアアア!!!』

 

「「!?」」

 

「蜘蛛の怪物……!?」

 

つんざく様な悲鳴と共に現れたのは、巨大な蜘蛛の姿をした怪物……。

その蜘蛛の怪物……ミラーモンスターの『ディスパイダー』はその巨躯を持ってウワバミを含めた三人に襲い掛かってくる。

両者はディスパイダーの突撃を咄嗟に転がって躱すと、やれやれといった表情で襲い掛かってきた相手を見る。

 

「一体なんなんだい?邪魔してくれちゃってさ」

 

「なんだ?テメェの仕業じゃねえのか?」

 

「ハハッ、オレならもうちょっとスマートに不意打ちやってるさね」

 

見境なく暴れ回るディスパイダーを横目にウワバミはステッキを手元に収める。

黒鋼達に顔を向けながら、一枚の名刺を投げ渡す。ファイがそれをキャッチすると、そこに書かれていたのは『ネオライダー所属 ウワバミ』の名前。

 

「今回はここまで。また会うときはやりあおう。じゃあね!」

 

「おい、テメェ逃げる気か!?」

 

「得物を持ってない君達を本気(・・)で倒しても、あまり意味ないと思ってね」

 

黒鋼にそう返すと、ウワバミは駆け足で暴れるディスパイダーをすり抜けて、2人から距離を離していく。

ディスパイダーはウワバミを襲うために追いかけ、八本ある足のうちの前足二本を振り下ろそうとする……。

 

その時、何処からか飛んできたミサイルが前足を直撃し、木っ端みじんに粉砕した。

2人が飛んできた方向へ見ると、自分達よりも身の駆けが倍がある大きな二足型ロボットと、それに跨る機械的な仮面ライダーの姿。

黄色いエネルギーラインと、『χ』が刻まれた紫色の一つ目の仮面が特徴的なそれは、ウワバミが近寄るのを見ると、彼に声をかけてくる。

 

「ウワバミ、退散を提案する。鬼頭尚樹のせいで周囲の野生ミラーモンスターがこの場に呼び出された」

 

「うわぉ、ソイツは厄介だな」

 

「モンスター出現に伴い、【例の要注意団体】が出てくる可能性大。退散を再び推奨」

 

「ならば逃げるとしますか。おっとその前にアイツやっちゃって」

 

「命令受諾、サイドバッシャー再装填開始」

 

二足型ロボット"サイドバッシャー"を駆る仮面ライダー……『カイザ』はハンドルを巧みに操作し、ダメージを受けて身動きが取れないディスパイダーへ狙いを定める。

 

「サイドバッシャー、全砲身準備完了(フルバレルオールスタンバイ)――Fire」

 

サイドバッシャーの両腕にあるミサイルポッドとバルカンの銃口を向け、その引き金を引いた。放たれた銃火器の嵐がディスパイダーに襲い掛かり、その体を硝煙と光子バルカン砲弾で吹き飛ばしていく。

やがて半身を崩れたディスパイダーは大爆発を起こし、エネルギー体となって消えていく。

それを見届けたウワバミは、ロボットの姿からサイドカーの姿へ変形したサイドバッシャーの側部席に座ると、黒鋼とファイの2人へへらへらと手を振り、そのまま発進して消えていく。

 

「アデュー、ディケイドのお仲間さん達。先に言ったあの子は危ない目に遭ってるから急いだほうがいいよ?」

 

「先に行った奴……まさか!?」

 

「小狼君の事か!!」

 

黒鋼とファイは先に行った小狼が危険な事態に遭ってる事に思い至り、現場へ目を向ける。

 

―――そこには、幽汽に追い詰められている小狼の姿があった。

 

 

―――――

 

 

場面は戻り、ディケイドとクウガによるミラーモンスターの戦い。

突如現れたクモ型モンスターを何とか対処している二人。だが、彼らが気にしているのはモンスターの方ではない……。

見れば幽汽に追い詰められている小狼が斬られていた。

 

『「おりゃああ!!」』

 

「ぐあっ!?」

 

なんとか一撃を避ける小狼だが、纏っていた服が切り裂かれ、素肌に一筋の赤い筋が血となって流れていく。

生身の人間を追い詰めるライダーの光景を目撃して、駆け付けようとする。

 

「小狼!!ぐっこの!!」

 

「どきやがれ!!」

 

ディケイドとクウガは今現在相手をしているミスパイダーとレスパイダーをどうにかして、幽汽と対面している小狼の元へ向かおうとする。

小狼は体術の心得があるが、相手は怪人ではなく俺達と同じ仮面ライダー……生身の少年が敵う相手ではない。

 

だが、二体のミラーモンスターをはじめとしたミラーモンスターの出現により思った以上に阻害して近づけない。

 

「どうするんだ士!このままだと小狼が!」

 

「焦るな……何か打開策があるはずだ!」

 

二人がミラーモンスター達を相手にしながら近づこうとする一方、小狼は絶体絶命の状態に追い詰められていた。

目の前に迫りくる黒い仮面ライダー・幽汽が大剣を持って襲い掛かってくる。

 

『「死ねぇ!!」』

 

 

小狼はそれを左足で蹴り飛ばして、地面に無理やりぶつけると、大剣を踏み台にして大きくジャンプ。

大きくジャンプした小狼は仮面目掛けて右足による回し蹴りを繰り出した。

幽汽の顔面に直撃し、一瞬動きを止める……だが、繰り出した右足を空いた手で掴み、力を込める。

 

「なっ」

 

『「いってえじゃねえかこの野郎が!!」』

 

幽汽は小狼を掴んだまま大きくスイングしたのち、近くの柱へと投げ飛ばす。叩きつけられた小狼は、身体中に走る痛みのせいか身動きが取れずにいる。

そこへ幽汽は近づいていき、小狼の首を掴みあげる。

 

「とっととくたばれよ」

 

『あっはははは!やっちまえ尚樹ィ!!』

 

「ぐっ……」

 

掴みあげた小狼の首に力を込めていく幽汽。

このままではへし折る気なんだろう、そう思ったディケイドとクウガは被弾覚悟で向かおうとするが間に合いそうにない。

最悪の状況が望まれる中、幽汽は小狼の息の根を文字通り止めるために締め上げていく。

首を絞められていることにより息苦しくなった小狼は脳裏を過るのは……サクラの姿。

 

 

(……こんなところで死ぬのか……!……サクラを記憶を戻せないまま……!!)

 

 

小狼が死が目の前に迫る。このまま助からないのであろうか。

 

 

―――その時だった、幽汽の顔に弾丸が直撃したのは。

 

 

『「ぐあああああっ!?」』

 

「かはっ……!?」

 

「小狼!!」

 

幽汽に着弾した時に手放された小狼をクウガが近くに駆け寄り、彼を保護する。

ディケイドは何が起こったのかと驚愕していると、自分の近くにいたレスパイダーの頭部に弾丸が直撃し、破壊する光景を目撃する。

その後もミラーモンスターを追撃していく様子を見て、ディケイドはある推測を思いつく。

 

「誰かが狙撃しているのか……?しかもミラーモンスターを倒せるほどの装備で」

 

誰がなんのためにミラーモンスターを倒しているかは分からないが、何にしても幽汽が小狼から離れた今、チャンスと思い、一枚のカードを取り出す。

 

"ATTACK-RIDE(アタックライド) INVISIBLE(インビジブル)"、自身を透明化によりその場を抜け出す効果を持つライダーカードの一つだ。

クウガの元へ駆けよると、カードを装填して効果を発揮する。

 

「ユウスケ、こっちに来い。あの二人の場所まで逃げるぞ」

 

「ああ、わかった」

 

ディケイド、クウガ、小狼の三人の姿は透明化していき、この場所を離脱する。

やがて、銃弾の衝撃から復帰した幽汽は三人の姿がすでにない事に気づくと、激昂しながら叫ぶ。

 

「ああああああ!!畜生がぁぁぁぁぁぁあ!!逃げやがったなぁぁぁ!!」

 

……その後、幽汽は自身の怒りと憤りをディケイド達や謎の狙撃手が倒し損ねたミラーモンスターへ八つ当たりで倒しながら何処かへと消え去った。

 

その様子を見ていたのは二つの人影。

緑の複眼を輝かせる人影は、もう一方のオレンジ色の複眼の相手に話しかけていた。

 

「ネオライダーと交戦していた彼らをどう見る?」

 

「さてな、どうにも私はそういうのは得意ではないです。ただ一つだけ言えるのは」

 

そういうと、オレンジ色の複眼の相手は先ほどまで戦っていた三人の一人を思い出しながら呟いた。

 

4号(・・)がいるなら、きっと悪い奴らじゃないでしょう」

 

「そうなのか……よくわからんな」

 

 

ネオライダーの世界での戦いは続いていく。

未知なる『第三勢力』の影が見え隠れするように……。

 

 

 




 どうも地水です。サウザーが強すぎるんじゃあ。

ネオライダー・幽汽、二対一もあって場数踏んでるディケイドとクウガに対しては対して優勢を取れてませんが、その分狡猾さで補っていきます。
黒服さん達戦々恐々してこわいだろうな!

一方、黒鋼&ファイVSウワバミ戦、ファイの戦闘描写少ないのは元々黒鋼VSウワバミという構図で書いていたため……個人的には一対一の方が進めやすい気がする。
何気に第2のネオライダー、カイザ登場。口調からして有名な草加雅人ではないですが、果たして何奴なのか。

小狼達を助けた謎の2人は一体誰なのか……?正体については分かる人には察しがつきます。(それが正解だとは言ってはいない)

次回、次元の魔女こと侑子さん登場!お楽しみに



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第7話:次元のマジョ

 久しぶりの投稿。
幽汽の狂乱の戦いぶりにより、撤退を余儀なくされたディケイド一行。
謎の手助けにより窮地を脱した彼らがするのは……。


 光写真館の撮影室。

士とユウスケが小狼を担ぎ上げ、合流した黒鋼とファイと共に帰ってきた。

既に帰っていた夏海とサクラは戻ってきた彼らを見て、傷ついた小狼の姿に驚く。

 

「小狼君!」

 

「これは一体!」

 

「とりあえず手当だ。誰か救急箱を持ってこい」

 

士に言われた通りに夏海が救急箱を持ってきて、サクラと共に小狼の手当を始める。

その隣では黒鋼が舌打ち交じりに拳を空いた手で打ちつける。

 

「チッ、あいつら俺達を見逃しやがったな」

 

「どうやらオレ達、格下扱いしちゃってたねぇ」

 

「フン、次あったらただじゃおかねえ」

 

ファイは近くの壁に寄り掛かり、あの時の事を思い返す。

 

ネオライダーの一人であるウワバミに仮面ライダーカイザ、そして鬼頭尚樹が変身した仮面ライダー幽汽。

今の所3人と遭遇したが、他にもいるとなると仮面ライダーに変身できる士とユウスケだけじゃ足りない。

現在何処かにいる【三人目】でもいない限り、対抗策はない。

 

そこへ手当の最中の小狼が話に加わる。

 

「あいつらはおれ達を目の敵にしています……あのままじゃ、羽根を探すどころじゃないです」

 

「小狼君!」

 

「姫、おれの事は大丈夫ですって」

 

「無茶するなよ。防げなかった俺達が悪いんだ」

 

士は苦虫を噛み潰したかのような顔をして、小狼に責任はないと告げる。

だが、対して小狼は険しい表情を変えない。当然と言えば当然だろう。自分が窮地に陥って招いた事によりこれからのこの世界における羽根探しの危険を身を以て知ったのだから。

無事に出歩けない以上、ネオライダーに対応できる変身できる二人に迷惑がかかるだろう。

 

「小狼君……」

 

「でも小狼、サクラちゃんの羽根探しは決して諦めるつもりはないんだろ?」

 

「それは、もちろん……」

 

この世界に羽根がある以上、探して取り戻す以外の以外はない。

……小狼達の間に決して明るくはない何とも言えない空気が支配する中、そこへ光写真館に戻ってきた者達がいた。

買い物に行っていた栄次郎と、彼についていったモコナだった。

 

「みんなーただいまー!」

 

「増えっちゃったから色々買い込んだよー。おや?みんなどうしたんだい?」

 

「栄次郎さん、モコちゃん、おかえりなさい」

 

「サクラーただいま!で、皆何話していたの?」

 

栄次郎の肩から乗っかっていたモコナは彼から降りると、とことこと小狼達の元へ近づく。

近くの机の上へと飛び乗り、サクラ達の話を聞き始める。

小狼達が遭遇した事情を聴き終えると、モコナは何度か頷いて確かめる。

 

「なるほど、他の仮面ライダーに邪魔されて羽根探しどころじゃないってことだよね」

 

「ああ。士さん達もいつもいるわけじゃない。せめて対抗できる手段がないか探さないと」

 

小狼は悔しそうに顔をゆがめる。

モコナは何度か頷くと、自分の手を打つ仕草を打つと『とある人物』の名前を告げる。

 

「そうだ!侑子に聞いてみよう!」

 

「「「侑子?」」」

 

士、ユウスケ、夏海はいきなり出てきた謎の人物の名前に首をかしげる。

黒鋼は苦虫を噛み潰した表情でモコナに言い放つ。

 

「おい、まさか次元の魔女に尋ねるのか?やめとけ」

 

「えー、そんなに邪険に扱う事ないじゃよくろろん。侑子に言いつけるよ?」

 

「黒鋼だ!」

 

鬼の形相でモコナに迫る黒鋼。その横では士がファイに質問を問いかける。

 

「おい、誰だ?侑子って」

 

「ああ、士君。侑子さんってのはオレ達を旅に出させてくれた凄い人っていったところかな」

 

……侑子、もとい、壱原侑子。

こことは別の次元にある『日本』にて願いを叶える店の主を営む女性であり、彼女は店へやってきた客の願いをそれ相応の対価と引き換えに叶えるという。

小狼達が初めて居合わせた時には四人の次元の旅を叶えた人物でもあり、その後も旅先での難題に直面した時にはちょくちょくお世話になっている。

 

その話を聞いたユウスケは、侑子の話を聞いて感心する。

 

「凄いな、他の世界にまで知ってるなんて侑子さんって何者なんだ?」

 

「さてね、オレ達もよくわかってない事多いな」

 

「はん、胡散臭いにもほどがあるな。信用するのはどうかと思うぞ」

 

士はそう言いながら鼻で笑う。それに対して『お前が言うか』と言わんばかりにユウスケは呆れた表情をする。

やがて一旦静かになると、モコナの額の赤い宝石から光が出て、そこから映像が浮かび上がる。

映ったのは、妖艶な雰囲気を醸し出す黒髪の女性。彼女……『壱原侑子』は振り向くと一同に対して口を開く。

 

『――あら、モコナ。それと貴方達久しぶりね。元気にしていたかしら』

 

「侑子!久しぶり!」

 

「侑子さん、お久しぶりです。お元気そうでなによりです」

 

モコナとサクラは純粋に笑顔で挨拶をする。

その傍では夏海が驚いたりしており、士に突っかかる。

 

「士くん!モコナから映像が出てます」

 

「落ち着け!しっかしあの白毛玉、あんなに便利なものだったとはな」

 

『あら?どうやら他にも人がいたようね』

 

騒ぐ二人の存在に気が付いた侑子は目を細める。

まるで何かを見透かすような瞳を見て夏海はたじろぐが、一方士は臆せず会話に参加する。

 

「アンタが次元の魔女ってやつか」

 

『ああ。貴方はもしかして、ディケイドかしら?』

 

「…!!」

 

「え、士の事を知ってるのか!」

 

『ええ、世界の破壊者ディケイド。その悪名高さは次元を超えて色々と入ってくるのよ』

 

士のことを知っていた事に驚くユウスケへ、侑子は笑みを浮かべて返す。

そのあと、小狼達はこの世界で起きた事を話した。

この世界で士達に会った経緯。

一緒にサクラの羽根を探してくれると約束してくれた事。

そこに現れたネオライダーと名乗る集団。

その話を聞いた侑子は、口元に笑みを浮かばせて喋る。

 

『なるほどね、仮面ライダーが存在する世界に来るとはね』

 

「なんだ?仮面ライダーがまるで存在しないような口ぶりだな」

 

『少なくとも、私の世界では絵空事のモノなのよ。その世界で実在するモノが別の世界なんてないなんてこと珍しくもないでしょ』

 

「確かに。ライダーが存在しない世界もあるんだ、そういう世界もあるってことか」

 

士は一人納得したような様子で侑子の言葉に納得する。

やがて侑子は、小狼達へ願いについての尋ねる。

 

『要は貴方達に突っかかってくるライダー達をなんとか対抗できるようにしたい』

 

「……はい。仮面ライダーに変身できる士さん達に頼ってられない。おれ達も戦いたいんです」

 

『なら、こういうのはどうかしら?』

 

侑子は口元を笑みを再び浮かばせ、小狼達へ言い放つ。

小狼、黒鋼、ファイの参人を指差しながら。

 

 

『―――ライダーにはライダーを、貴方達が仮面ライダーになりなさい』

 

 

「えっ!?」

 

「なっ!?」

 

「ほほぉ…」

 

小狼、黒鋼、ファイは侑子の言葉を聞いて思わず声をあげる。

その話を聞いていたユウスケが侑子へ尋ねる。

 

「待ってくれ!侑子さん、小狼くん達を仮面ライダーにできるんですか?」

 

『その手段はなくはない、と言ったところよ』

 

「マジで!?」

 

『但し、ただで仮面ライダーになれるわけではない。その対価も決して安くはないわ』

 

「まあ、そうだよね。その対価って今のオレ達に払えるの?」

 

分かっていたかのようにファイが侑子に尋ねる。侑子はその問いに首を横に降りながら答えた。

 

『本来だったら貴方達だけでは足りない。だけど、この場に巡り合ったからこそいける(・・・・・・・・・・・・・・・・)のよ』

 

「あん?この場に巡り合っただぁ?」

 

「もしかして……士さん達が?」

 

黒鋼は侑子の首を傾げ、小狼は何かに気付いたのか士達を見やる。

この世界で巡り合った人物といえば、士達以外にいない。

小狼達の視線に気づいた士は、溜息を付きながら切り出す。

 

「まったく、俺の万能さも罪なものだ……で、どうするんだ?小狼」

 

「え?」

 

「お前、いやお前達はライダーになる覚悟はあるのか?」

 

士は真っ直ぐな小狼に尋ねる。

尊大な彼だが、その瞳に宿す真剣さは伝わった。

―――この人がどんな旅をしてきたのかは知る由もないが、その経験からくるものだろう。

それでも、取り戻したいものがある。

助けたい人がいる。

その思いを胸に宿した小狼は、士と侑子に頭を下げた。

 

 

「―――士さん、侑子さん、おれ達をライダーにしてください」

 

 

「だいたいわかった……おい魔女、対価は払ってやるから願い叶えろ」

 

『ええ、その願い、承ったわ』

 

士はやれやれといった表情で侑子に言った。

対して彼女は『対価の内容』を一同に告げた。

 

『ではディケイド、あなたの空白のカードの一部あるでしょう?それをモコナへ渡しなさい』

 

「士のカードを?」

 

『ええ、ディケイドの力はその一端でも強大よ。対価にするには十分に値するわ』

 

「まあいい、毛玉。ほれ」

 

「あーい!ぱこーん!」

 

士は手元にあったライドブッカーからブランクのカードを取り出し、モコナに差し出した。

モコナはそれを吸い込み、そのあと口から三つのアイテムが飛び出てくる。

飛び出たアイテムたちは小狼、黒鋼、ファイの元へ渡される。

 

小狼には蝙蝠の紋章が描かれた黒いカードデッキ。

黒鋼には鬼の意匠が入った黒い音叉。

ファイには蛇を彷彿とされる銀色の円盤。

 

三人は物珍しそうに眺める中、士は渡されたアイテムについて侑子へ尋ねる。

 

「何故アンタがライダーのベルトを持っているんだ?」

 

『昔の客にそれを出した人いたのよ。対価として受け取っただけのこと』

 

「え……それって、それを渡したライダー達と会ったってこと?」

 

ユウスケは侑子が対価に渡した人物達と会った事に気づく。

それに対して侑子は何も答えず、にこやかな笑みを一同に向ける。

 

『ではこれで用は済んだようね』

 

「待て、これをどうやって使うのか教えてもらってねえぞ」

 

『それは、彼らが教えてくれるわ』

 

「教えてくれる……?」

 

黒鋼の問いへそう答えた侑子の言葉にファイは首を傾げる。

戸惑う彼らを他所に、侑子は会話を終えるとその姿を消した。

小狼が手にしたカードデッキを眺めていると心配するようにサクラが顔を覗かせる。

 

「小狼君……?」

 

「あ、ああ。どうしましたか、サクラ姫」

 

「無茶しないでね」

 

「大丈夫ですよ。おれなら」

 

そうサクラへ笑いかける小狼、だがそれでも不安そうに彼女は見つめる。

戦う彼らの力になれない、己の不甲斐なさを胸に秘めながら。

 

 

―――――

 

 

某所。

そこには地面に倒れ伏した幾人ものライオトルーパー達がいた。

その光景を目にしながらやってきたネオライダーの斬刃と風嵐は彼らを倒した【襲撃者】を見ながら喋っていた。

 

「ライオトルーパーといえど1小隊を撃破するとはなかなかの腕前だな」

 

「うっわーひっどい。ボコボコにされる覚悟はできてるかしら?」

 

二人の言葉を耳にしてたのか、【襲撃者】は目の前に突如姿を現す。

黒のライダースーツに赤と銀の装甲を纏い、青い複眼に天を指すような猛々しい一本角を携えた仮面の戦士。

―――仮面ライダーカブト・ライダーフォーム。

カブトは無言のまま銃型武器・カブトクナイガンの銃口を二人へ向ける。

 

「………」

 

「いくぞ風嵐、戦闘準備だ」

 

「はーい!わかったよ斬刃!」

 

そう言うと二人はそれぞれのアイテムを取り出す。

斬刃は剣型デバイス・サソードヤイバー、風嵐はグリップ型デバイス・ドレイクグリップを構える。

すると彼らの周囲から二機の昆虫の姿を模した小さなロボット達が出現する。

斬刃は紫の蠍型の"サソードゼクター"を手にしてサソードヤイバーの峰部分へ合体させ、風嵐は水色のトンボ型の"ドレイクゼクター"をグリップへ収める。

 

「「変身!」」

 

【HEN-SHIN】

 

「「キャストオフ!」」

 

【CAST-OFF】

 

電子音声と共に切は斬刃と風嵐の彼ら二人の姿を変貌させていく。

斬刃は紫の装甲と、緑の複眼を持つ蠍を模した仮面の剣士の姿へ。

風嵐は水色の装甲にトンボの翅を模した水色の複眼の仮面の銃士へ。

やがて変化が終えるとそこに立っていたのは二人の仮面ライダー。

斬刃の変身した『仮面ライダーサソード』と、風嵐の変身した『仮面ライダードレイク』はそれぞれの武器を構えてカブトへ襲い掛かる。

 

「援護はいつものように任せて!」

 

「任せた!」

 

ドレイクが繰り出した射撃がカブトの動きを阻害し、そこへサソードが突っ込んでいく。

カブトクナイガンの引き金を引き、銃撃を放つもサソードはそれらを撃ち落として接敵を行う。

クナイガンを持ち換えてガンモードからアックスモードへ変えて応戦をするカブトだが、そこへサソードが繰り出した一撃が放たれる。

 

「おらぁ!!」

 

「!!」

 

サソードの振るうヤイバーを振り下ろし、カブトはそれを受け止める。そこへドレイクの放った銃撃がカブトの装甲を撃ち貫く。

軽く吹き飛ばられるカブト、そこへ追撃を仕掛けようとするサソード。

 

「終わりだ!」

 

「ちっ…!!」

 

振り上げられたサソードヤイバーが振り下ろされる……その瞬間、二人に聞きなれない電子音声が聞こえた。

それもゼクター特有のものとは別の電子音声が……。

 

【THUNDER】

 

「なに!?ぐわあ!!」

 

「なに!?きゃっ!」

 

突如発生した雷撃の直撃を食らい、軽く吹き飛ばされるサソードとドレイク。

その隙をついてカブトはベルトの側面を叩き、スイッチを起動させる。

 

【CLOCK-UP】

 

「チッ、待て!!」

 

サソードは追いかけようとすると、既にカブトの姿は見えずじまいになってしまう。

理由は分かっている、クロックアップ……短時間だけ常人よりはるかに凌駕した超高速移動を行える能力により、この場から脱出したのだ。

自分達と同じシステムを持っているためすぐにその答えへ辿り着いた二人は変身を解く。

 

「ああもう悔しい!すぐに逃げるんだから!!」

 

「無駄な消耗をしたくないんだろう」

 

「私と斬刃の二人ならあんなやつけちょんけちょんにしてやれるんだから!」

 

「ふふ、落ち着け」

 

襲撃者を取り逃した事にむくれる風嵐を頭に手を置いてなでる斬刃。

斬刃は既に姿を消したカブトがいた場所を見つめながら、心の内で呟く。

 

(さぁ、カブト……今回出くわしたのはどっちだ?)

 

 

 




 どうも地水です。よーやくゼロワンが胸のすく様な展開で安心した。

羽根探しの障害となるのはネオライダー一行、そんな彼らの対抗策としてとったのは次元の魔女から取り寄せた謎の出自を持った変身アイテム。
察しのいい皆様にはお気づきですかね?

一方その頃ネオライダーはカブトと遭遇。一体何者なのか。
斬刃と風嵐が変身ライダーをお披露目!しかして大した活躍もできず戦いはお預け。

次回、小狼・黒鋼・ファイ・変身なるか?



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第8話:手掛かりのダンペン

 次元の魔女との対価によって、一同は仮面ライダーの変身道具を手に入れる。
これで変身できるのか?否、課題はいくつもの残されている。
ネオライダー、羽根の行方、立ち塞がるのは一体何者……。
様々な要素が交錯し、物語は加速していく。


 小狼がふと目覚めると、目の前に広がっていたのは何処かの空間。

地下駐車場にも似た場所には、巨大な鏡が聳え立っており、その傍には何人もの仮面の騎士達……否、仮面ライダー達が戦っていた。

一人の仮面ライダーを複数のライダー達が取り囲み、各召喚機へ一枚のカードを読み込ませた。

 

『――、お前にも答えは分からなかったんだろう?』

 

【FINAL-VENT】

 

【FINAL-VENT】

 

【FINAL-VENT】

 

【FINAL-VENT】

 

『お前は答えを見つけるために戦っていたんだ』

 

【FINAL-VENT】

 

【FINAL-VENT】

 

【FINAL-VENT】

 

『俺も戦う、探していた答えを見つけるために』

 

取り囲まれて中心にいる蝙蝠の意匠を持った仮面ライダーは、持ち手の剣を構えて敵のライダー集団へ飛び込んでいく。

敵対するライダー達は相棒というべきモンスター達と共に、必殺の一撃を繰り出す構えをとる。

小狼は蝙蝠のライダーを止めようと手を伸ばすも、届かずにその手は虚空を切った。

 

『うおおおおおおお!!!!!』

 

「待って、待ってくれ!あなたは……!!」

 

小狼は敵の仮面ライダー達へ突っ込んでいく蝙蝠のライダーの背中へ必死に手を伸ばす。

届かない事がわかっていても、止められずにはいられない。

やがて、敵の仮面ライダー達の攻撃が蝙蝠のライダーへ放たれた……。

 

 

その瞬間、小狼の見ていた世界は、暗転した。

 

 

―――――

 

 

「おい、起きろ小狼」

 

「―――あ、あれ?」

 

目が覚めると、そこにあったのは光写真館内にあった士の部屋と、起こしに来たであろう士の姿。

一瞬、何が起きたのか混乱する小狼を、士は呆れながら続けて口を開いた。

 

「どうした?いつも規則正しく起きているお前が寝坊なんて珍しい」

 

「おはようございます、士さん。おれ、どうしていたんですか」

 

「別に?他におかしなところはなかったが」

 

「そう、ですか……」

 

士の言葉を聞いた小狼は少し俯く。先程見たライダー達が戦う光景がなんなのか、何を意味しているのか分からなかった。

浮かない顔をした小狼の姿を見て士は彼を一階へ向かわせるように促す。

 

「ほら、朝食の準備は既にできた。とっとと行くぞ」

 

「分かりました。着替えますんで先に行っててください」

 

次元の魔女・侑子から仮面ライダーへ変身する道具を受け取った後日、あれからネオライダーとの襲撃もなく2・3日は経過していた。

それぞれ受け取った変身道具の扱い方は結局分からずじまいだった。

しいて分かったことと言えば……。

 

『#$%&』

 

「はーい、ありがとう。サガーク、キミはいい子だね」

 

ファイと共に朝食の配膳を行っているのは、蛇の意匠を持った円盤……もとい、メカ生命体の『サガーク』だ。

普段は独特の言語で会話で行っており、モコナの持つ他の国の言葉がわかる力でやっと何を言っているのか意思疎通ができるようになっている。

 

一方、その隣では黒鋼が鬼の意匠が入った黒い音叉・変身音叉を手にして、一枚の銀色のディスクを取り出す。変身音叉を指で鳴らし、それをディスクに翳すと銀色から赤色へ染まっていき、さらに鳥型へと変形していく。

『ディスクアニマル・茜鷹(アカネタカ)』へと変わってリビングから撮影室へ飛び出し頭上を飛び回り始め、黒鋼とユウスケはその光景を眺めていた。

 

「なるほど、こういった使い方もあるってわけか」

 

「これって確か、ディスクアニマルだよな。響鬼の世界で見たことあるよ」

 

「コイツはゆうなれば式神の類か。お前達が知ってるなら安心っちゃあ安心か」

 

飛び回ってきた茜鷹を呼び戻し、ディスク状態として戻ってきた所をキャッチする黒鋼。

ユウスケは彼が短期間で使いこなしている事に拍手する。

 

「おお!流石現役の忍者!」

 

「どうってことねえよこんなもん」

 

「おはようございます。皆さん」

 

「お、小狼君おはよ!今日は遅かったじゃないか」

 

ユウスケは部屋へ入ってきた小狼と士を出迎え、共に席に座る。

やがてサクラ、夏海、栄次郎といった全員が揃うと、朝の食事を始める。

今回は夏海の肩に乗ったモコナが音頭を取る。

 

「ではでは皆さま、お手と手を合わせて」

 

「「「頂きます」」」

 

挨拶を終えると朝食にありつき始める一同。

何気にTVをつけると、そこには一つのニュースが流れていた。

 

『先日起きた頼打区での襲撃事件、未確認生命体を連れた集団により多くの死傷者が出ました』

 

「……もしかして、あの時の事件なんでしょうか」

 

「恐らくはな。こうもドンパチやっている所を報道されるとはね」

 

小狼と士は、先日起きたネオライダーとの戦いの様子を見ながら眉をひそめていた。

命を落とし護れなかった見知らぬ人々、彼らの事を思うと何とも言えない気持ちになってしまう。

 

『これについては警察特殊部隊G3ユニットを投入、事態を鎮圧に辛くも成功しました』

 

「G3ユニット!?この世界にもいたのか!?」

 

ユウスケは席から飛び上がり、驚愕の表情をする。

……かつて、アギトの世界にて未確認生命体と戦う警察の特殊部隊"G3ユニット"。

ユウスケは一時的に隊員として勤めていた経験がある。

同じ名を聞いて驚いている彼を黒鋼が宥める。

 

「落ち着け。飯が冷めるぞ」

 

「あ、ごめん……」

 

「しっかし、聞けば聞くほど不思議なんだよねぇ」

 

「あん?何がだ」

 

慣れない箸からスプーンへ変えて御飯を食べるファイはとある疑問をぶつける。

対して焼き魚の身を器用にほぐしている黒鋼が尋ねると、彼はこう告げた。

 

「いやさ、士君達のこれまでの旅を聞いてみたところでさ。今まで旅してきた仮面ライダーの世界じゃ、それに相当する怪人達がいたそうだね」

 

「それがどうした?」

 

「それなら怪人達と戦うライダー達がいるはずなんだよね。現状はネオライダーとかいう奴らがいるだけだけど」

 

「ネオライダーが【この世界の仮面ライダー】ってことになるんじゃねえのか?」

 

焼き魚の身を口にしながら、ファイの疑問にそう答える黒鋼。

うーんとスプーンを顎に当てながら、ファイは言葉を続ける。

 

「オレもそう思ったんだけど、さっきのニュースが気になってね」

 

「さっきのニュースってG3ユニットのことか?」

 

「ああ、もしかしたら【ネオライダーに対抗する誰か】がいるんじゃないか。と思ってね」

 

ユウスケの言ったG3ユニットの事から『ネオライダー以外の勢力』がいるんじゃないかとファイは語る。

実際の所、思うところはあった……幽汽にトドメを刺されようとした小狼を助けた狙撃。

それがネオライダーと敵対する勢力に所属する誰かのモノだったら全ては話がつく。

しかし、黒鋼が割って入り、ファイの言う別勢力について否定する。

 

「馬鹿。仮にそんな奴らがいたとしても、協力するとは限らねえ」

 

「ええー、そりゃないよ黒ろーん……いい考えだと思ったんだけどなぁ」

 

「ま、ネオライダー以外のライダーがいるってのはいい線じゃないか?」

 

そこへオムレツを食す士がフォローを出す。

士が言う通り、ネオライダーと対する誰かがいる以上、何らかの情報を持っていてもおかしくはない。

もしかしたらサクラの記憶の羽根に関する手掛かりを持ってる可能性もある。

それを示した時、小狼の表情にも少し明るさを取り戻す。

 

「その人達の情報についても探さないと」

 

「だねぇ、厄介な障害を何とかできる目途はたったし、遅れを取り戻さないと」

 

ファイは小狼の言葉に便乗しながら、手元にあった湯飲みを熱がりそうにしながら緑茶を飲む。

その会話を聞いていたサクラが浮かない顔をしており、それに気づいた夏海が話しかける。

 

「どうしたんですか?サクラちゃん?」

 

「いえ、なんでもないの。なんでも……」

 

夏海を心配させないように笑顔でそう答えるサクラ。

その光景を見ていた士は、内心で『やれやれ、大体わかった』と思いながら、再び食事にありついた。

 

 

―――――

 

 

ネオライダーの世界、ネオライダー本拠地。

バーにて屯するウワバミは、この場に似つかわしくないであろう一升瓶から酒を朱色の杯へ注いで飲んでいた。

そこへ黒服を纏った一人の女性が彼の下へ現れる。

銀髪の短髪に、何処か幼さを感じるような特徴のその女性は無表情のまま、ウワバミの名を呼んだ。

 

「ウワバミ、報告が入った」

 

「おお、ユウちゃん。ありがとさん。で、どうだった」

 

「ライオトルーパー部隊は一小隊が全滅」

 

「ああ、嫌だねえ。仮にも仲間を屠られるのは他人といえどいい気分じゃない」

 

『ユウ』と呼ばれた女性……あの時、仮面ライダーカイザに変身していた彼女は尋ねる。

ニヤニヤしながら杯を口へ運ぶウワバミは彼女へ尋ねる。

 

「やったのはどのライダーだい?」

 

「報告によれば、相手は仮面ライダーカブトと」

 

「カブト、ねえ……はてさて、どっちやら」

 

「どちら、というと?」

 

「いいかいユウちゃん。世界の破壊者ディケイド、その能力の一旦は【他の仮面ライダーへの変身する】ってことさ」

 

ウワバミは懐から携帯端末を取り出し、ユウにとある映像を見せる。

それは、ネオライダー達と戦う何人もの仮面ライダー達……その中には士達が変身したであろうディケイドやクウガの他に、響鬼、カブト、キバといった仮面ライダー達の姿もあった。

彼らの映像を見てウワバミはユウへディケイドの能力の怖さを伝える。

 

「仮面ライダーの能力は千差万別、一人だけでも強大さ。その何人かの仮面ライダーを変身するディケイドは、いわば複数のライダーと相手していると同意義なのさ」

 

「確かに、まったく別種の能力を持つ仮面ライダーを使い分けられると厄介」

 

「しかも、能力まで同じく使えるからディケイドが化けたライダーなのかそれとも本物のライダーなのか分からない……なるほどこれは、まさに悪魔的に困る相手さ!ハッハッハ!」

 

「……困ってるようには見えない」

 

高笑いするウワバミを見て、ユウはそう言い返し、一升瓶を掴んで空っぽになった杯へ再び酒をいれる。

彼女の姿を見ながらニヤリと口角を歪ませたウワバミは嬉しそうな表情をしながら飲み干す。

 

「ま、そんな強い奴らにこそ、それ専用の戦略ってのはあるものさ。アンダースタン?」

 

「?」

 

「ハッハッハ、分からないか。分からなくていいさ。こういう頭脳担当は俺の専門だからねぇ」

 

意味が分からず首を傾げるユウへ、笑って許すウワバミ。

彼を高く掲げた杯、その水面にはこちらの世界を覗く無数の目が光っていた。

 

 

―――――

 

 

その頃、街へと繰り出した士達一同7人……それと1モコナ。

今後の方針を『羽根探し』か、『ネオライダーに対する勢力を見つける』かで決めかねていた。

ファイは頭へ手を組み、先に進む一同へ尋ねてみる。

 

「さて、今日はどうしようかね」

 

「俺はその、G3ユニットの所へ行きたい。何か分かるかもしれない」

 

「流石に八代の姐さんがいるとは限らないぞ。ユウスケ」

 

「んな!分かってるってそんな事!」

 

士がユウスケのかつての想い人の名前を出してからかった。

その隣では小狼が『羽根探し』の方へ行くと一同へ伝える。

 

「おれは変わらず姫の羽根探しをやります」

 

「んじゃあオレも羽根探しの方へ行くか」

 

「わりぃが俺は小野寺の方にいくぜ。G3ユニットやらに強い奴がいるかもな」

 

「ええ、黒鋼さん。あまり暴れないでくださいね?」

 

ファイは小狼と、黒鋼と夏海はユウスケの方と別れていく。

そんな中、士はサクラの傍に近づき、彼女へ尋ね始める。

 

「おい、サクラ」

 

「士さん?どうしたのですか」

 

「お前、今朝は何か浮かなかった顔だったがどうしたんだ」

 

士に今朝の出来事について聞かれると、サクラは複雑な表情を浮かべる。

サクラは士を連れて一同から少し離れると、彼へこう答えた。

 

「……私だけ、仮面ライダーっていう力を手にできなかったなって思って」

 

「…?なんだ、それがどうかしたんだ?仲間外れは嫌だったか」

 

「私も小狼君達みたいに強かったら、よかったなって。そしたら、皆が傷つくことが少しも減らせるかなと思ってしまって」

 

少し悲しい表情を浮かべるサクラ……そんな彼女を見かねた士は溜息を付きながら彼女の頭にポンと手を乗せる。

それに驚いたサクラは士の顔を見上げる。

 

「つ、士さん?」

 

「そう躍起になるな。夏ミカンだって同じ立場だ……お前が無事だから安心するんだろ」

 

「………はい」

 

「それにだ、敵と戦うだけが戦いってわけじゃない。―――お前にはお前なりの戦いがある」

 

「私の戦い?」

 

「それを見つけられるのはお前次第だがな」

 

そう言いながら、士はサクラの目線まで視界を下げてそう告げる。

彼の言葉に少しは元気づけられたか、サクラの表情は多少明るくなる。

そこへ彼らを呼びに来た小狼が駆け寄ってくる。

 

「サクラ姫、士さん。行きますよ」

 

「おう、悪かったな。ちょっと話していた」

 

「大丈夫、心配かけたよね」

 

サクラは小狼へそう告げると、二人と共に一同の元へ戻る。

やがて小狼達一行は二手に別れようとしていた時だった。

彼らの周囲に銃撃がばら撒かれる。

 

「なんだ!?」

 

「―――よぉ、初めましてというべきか、御尋ね者の悪魔ちゃん」

 

士が声をした方へ向けると、そこに立っていたのはアクセレイガンを向けるライオトルーパー達と、彼らを連れた一人の黒服の光景。

恐らくネオライダーの一人だろう……先頭に立つ黒服はこちらへ向けて指を指す。

 

 

「こっからはオレ様が相手になるぜ?涙目になって怯える覚悟しとけ!」

 

 

―――ネオライダーの三度の襲撃戦、始まる

 

 

 




 どうも地水です。短期間で投稿するなんてどうかしてるぜっ!

冒頭のアレ、察しの言い方はお判りですがSPのアレです。
小狼が見た夢の光景、これが意味するのはもう少し後の話。

それはそれとして、何気になじんでいるサガークとディスクアニマル達。モコナと共に目指せトップアイドル!(ジャンルが違う
え、誰かを忘れていない?きっと気のせいでしょう

何気に言及された、舞台の一つ『頼打区』、恐らく首都圏の何処かにある街の一つ。
ネオライダーの世界や街だけじゃ名乗りづらいので、名付けてみました。

ファイの言う通り、この世界には【ディケクロ一行】、【ネオライダー】、【謎の勢力】と色々と多い様子。今後も群雄割拠して行く様子

ディケイド対策に講じるウワバミ、カイザに変身していたユウと共に暗躍していく。
そんなことしていたら早速牙を向いてきた!一体どうなる!?

次回、ツバサ組変身なるか?




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第9話:変身するカクゴ

 様々な手掛かりが浮かび、捜索しようとした一行。
だがしかし、ネオライダーの魔の手は既に忍び寄っていた。


 突如士達へ降りかかったネオライダーの襲撃。

ライオトルーパー達を引き連れた黒服の人物は、一同へ指差しながら高らかに言い放つ。

 

「ハン!このオレ、モーニス様にやられる覚悟はできてんだろうなぁ!?やろうども!!」

 

黒服の様相から少し気崩した男勝りな口調で話す白髪の女性……『モーニス』と名乗った彼女は背後に控えているライオトルーパーへ指示を出す。

ライオトルーパー達はアクセレイガンを構え、士達を狙う。

 

「まったく、見つけると否やお構いなしか!ユウスケ!」

 

「ああ!夏海ちゃんはサクラちゃんを!」

 

「分かりました!」

 

ユウスケの言葉に従ってサクラとモコナを連れてこの場から夏海は退避する。

士とユウスケ、そして小狼・黒鋼・ファイを加えた五人はネオライダー達と対峙する。

その最中、士は小狼達三人へ伺ってみる。

 

「お前ら、大丈夫か?ちゃんと変身できるのか?」

 

「いえ、いまだに変身できるのかがわかりません」

 

「まったく、肝心な事は教えねぇでいやがって」

 

「でも変身できない今どうやって乗り切るか考えないとね」

 

今現在、小狼達は自分の手にしたどうやって変身するのかが分からない。

壱原侑子によると、【彼らが教えてくれる】と言ったのだが、その彼らとは一体誰なのか…?

そんな中、何時まで経っても仕掛けてこない事に苛立ちを隠せないモーニスは声をあら上げながら構えを取る。

 

「なんだなんだ?お前ら変身しねえのか?だったらこっちから行くぞ……変身!」

 

モーニスはそう言いながら金色の紋章が描かれた銀色のカードデッキを取り出して構える。

腰に出現したベルトにカードデッキを差し込み、その姿を変えていく。

どことなく仮面ライダーに似たボディにコオロギを模した意匠が施された仮面の戦士に、黒鋼は士に尋ねる。

 

「ありゃなんだ?」

 

「確か、疑似ライダーのオルタナティブだったな。仮面ライダーじゃないが強さが厄介なのは変わりない」

 

【SWORD-VENT】

 

「オラァ!やるぞてめぇら!」

 

モーニスが変身した疑似ライダー『オルタナティブ』は棘のついた大剣・スラッシュダガーを呼び出し、ライオトルーパー達と共に突っ込んでいく。

五人はそれぞれ散ってゆき、士とユウスケは向ってきたライオトルーパーの何人かを軽く避けると、それぞれの変身準備を終えて掛け声を口にする。

 

「「変身!」」

 

【KAMEN-RIDE…DECADE!】

 

変身を終えたディケイドとクウガは、襲い掛かってくるライオトルーパー達へ応戦をしていく。

そんな中、混戦するライオトルーパー達を押しのけてオルタナティブがディケイド目掛けてスラッシュダガーを振り下ろす。

ディケイドは咄嗟にライドブッカーをソードモードへ変形させて受け止めると、鍔迫り合いのオルタナティブから話しかけられる。

 

「よぉ、お前がディケイドだったな!」

 

「なんだお前、俺のサインでも欲しいのか」

 

「冗談言ってんじゃねえぞ、殺すぞ。俺が欲しいのはお前の首と手柄だぁ!」

 

「まったく口が悪い奴だな!!」

 

ライドブッカーで力づくでオルタナティブを押し切るディケイド。

その横では、ライオトルーパーの集団に取り囲まれた小狼達の姿があった。

自分達を狙うライオトルーパー達を見やりながらファイは他の2人に話しかける。

 

「あらら、囲まれちゃったね」

 

「囲まれた、じゃねえぞ。変身できないままでいけなくもないが、どうするんだ!」

 

黒鋼は懐に忍ばせた音角を握りしめながら、荒っぽく答える。

そんな彼らへライオトルーパーは凶刃を振り下ろしてきて、対して三人は応戦する。

 

「変わりませんよ。変身できなくても戦います…!」

 

小狼はキックで往なし、黒鋼は白兵戦を駆使して殴り飛ばし、ファイは自分の身を翻して躱していく。

三者三様の応戦の仕方をしていく彼らを、夏海とサクラはひっそりとその光景を見守っている。

 

「小狼君達、大丈夫でしょうか……」

 

「……小狼君、ファイさん、黒鋼さん、頑張って!」

 

「いけー!みんなー!そこだー!!」

 

まだ変身しない小狼達を心配する二人、その横ではモコナが三人の戦いぶりに応援している。

そこへ彼女達に近づく黒い人影の姿があった。

ゆっくりと近づく黒い人影はサクラ達へ手を伸ばし、……咄嗟に気付いたモコナが触れる直前のその手に体当たりをした。

 

「サクラあぶなーい!」

 

「え!?きゃっ!?」

 

「サクラちゃん!!」

 

夏海が自分達の降りかかってきた危険に気づくと、サクラを連れてその場から走っていく。

サクラの悲鳴に気づきディケイド達が振り向くと、そこには彼女達を追い詰めるライオトルーパーと……モーニスが変身したものとは別のオルタナティブの姿があった。

 

「なに、あれって!?」

 

「チッ、別のオルタナティブもいたのか!」

 

「何もオレ一人だけが相手すると思ってんだ!!喧嘩は頭数が重要ってなぁ!」

 

「ぐあっ!?」

 

モーニスのオルタナティブはディケイドとの鍔迫り合いを一旦やめて離れると、右足で腹部を蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされたディケイドは駆け寄ってきたクウガに助け起こされる。

 

「大丈夫か士!」

 

「心配するな。しかし、コイツ言動の割には手練れだ」

 

「当然だ!そんじょそこらのライダーと一緒にするんじゃねえ!」

 

モーニスのオルタナティブはデッキから人型の怪人の姿が描かれた一枚のカードを抜き、それを右腕についた召喚機・スラッシュバイザーのスリット部分へ通す。

 

【AD-VENT】

 

オルタナティブの傍にコオロギ型の二足歩行モンスター・サイコローグが出現。

呼び出されたサイコローグは頭部の顔面にあるいくつもの穴からミサイルが放ち、ディケイドとクウガへ襲い掛かる。

 

『■■■ーーー!』

 

「まずい……!」

 

「しまっ…!」

 

ディケイドとクウガが避けようと回避しようとするも、間に合わず爆風に飲み込まれていく。

その様子を襲い掛かるライオトルーパー越しに見た小狼が叫ぶ。

 

「士さん!ユウスケさん!」

 

「小僧、よそ見をしている場合か!」

 

「流石にやばいかもね。サクラちゃん達も追い詰められてるし……!」

 

ファイの言葉通り、夏海とサクラは今は逃げているものの別のオルタナティブに追い詰められている。

しかし、彼女達を助けに行こうにも立ち塞がるライオトルーパー達相手に生身で突破するには難しい。

 

一方、夏海とサクラはモコナを引き連れてオルタナティブ達から逃げるために走っていた。

途中で夏海が手元にあった置物や物障害物として仕掛けるもオルタナティブ達は障害物を何ともせず突破し、間の距離を縮めていく。

 

「待て!!」

 

「うわーん!こっちに来ないでー!」

 

「サクラちゃんこっちです」

 

「はい!」

 

何とかして引き離せるように必死に走る夏海とサクラ。

だがそこで二人は立ち止まってしまう……逃げるその先にいたのは、二体のライオトルーパー。

背後からもライオトルーパー達を引き連れたオルタナティブが追いついて立ち塞がる。

 

「これは……!」

 

「いやーん、万事休すだぁ!」

 

「……(……小狼君!!)」

 

サクラは拳を握りしめる。身に迫る恐怖に耐えながら、迫ってくる相手を見据える。

彼女の脳裏には今にも戦っているであろう小狼の姿が映った。

 

次第にネオライダー達により追い詰められていく一同。

そんな中、小狼は心の中で必死に思う。

 

 

(サクラ……!おれはサクラを、みんなを、守りたい……サクラのために手伝ってくれた士さん達のために!)

 

 

小狼は心の底から強く願う……愛する少女と頼れる仲間達、そしてこの世界で巡り合えた旅人達の事を。

 

 

(ハッ、冗談じゃねえぞ……二度も失ってなるかよ!)

 

 

黒鋼は心の底から強く抗う……かつて大切なモノを失った己が誓いのために。

 

 

(流石にオレも本気出さないといけないかな……!)

 

 

ファイは心の底から強く悩む……自ら打ち立てた信念を捻じ曲げるために。

 

 

想う気持ちは異なっていても、仲間を助けるために戦う。

―――その時だった、三人の視界が真っ白に染まる。

 

 

――――

 

 

次に立っていたのは、真っ白な空間……そこには小狼以外にも黒鋼とファイの姿があった。

先程まで戦っていたのに謎の場所に放り出せた三人は戸惑う。

 

「ファイさん!?黒鋼さん!?」

 

「なんだ、ここは」

 

「……ただの広い空間、じゃないってのはわかるよね」

 

 

なぜこんな所へ呼ばれたのか戸惑う三人……そこへ、姿を現すのは三人の男性。

 

一人は和服の衣装を纏った男性。

もう一人は西洋風の貴族服の男性。

そして最後は黒髪を逆立てた現代服の男性。

 

突然現れた男達は、まず和服の男性から話してく。

 

『hello!お前達が俺達の力を受け継いだ奴らか!』

 

「受け継いだ?」

 

「えっと、貴方達は一体何者?」

 

『お前達の受け取ったアイテムの前任者、と言えば分かるかな?』

 

貴族服の男はそう言いながら、小狼達へ人差し指を向ける。

三人の手元にはカードデッキ、変身音叉、サガークが浮かび上がる。

それを目に移した後に現代服の男が小狼へ視線を移し、その口を開く。

 

『……お前達にも、叶えたい願いはあるんだろ?』

 

「―――あります。どうしても叶えたい願いなら」

 

『その願いの先に生き残れなかったとしても、か』

 

「……死ねません、おれの願いを……サクラの記憶を取り戻すためには、絶対に」

 

小狼の真っ直ぐな瞳を現代服の男は暫し眺める。

やがて三人の男は口元に笑みを含め、三人に言葉を告げる。

 

 

『だったら、その願いを決して諦めるな。命半ば落とした俺達の代わりに』

 

 

『へへっ、仲間を裏切ったりロクな最期迎えられなかった俺が言うのもなんだけどよ……守ってやれよ、お前達こそ』

 

 

『少々不安だが、任せるとしよう。存分に使いたまえ。人間達』

 

 

その言葉と共に、三人の男達の姿は透けるように消えてしまう。

やがて、小狼達がいた謎の空間はまばゆい光と共に消えてゆく。

 

 

――――

 

 

夏海とサクラを追い詰めたオルタナティブはライオトルーパー達に逃げ場を生み出さないように取り囲むと、抵抗させないように捕まえるため近づく。

 

「大人しく捕まれ!」

 

「やーん!モコナ達ぴーんち!」

 

「いや…!」

 

オルタナティブがサクラへ手を伸ばそうとする。

その時、巨大な"翼"が通り過ぎ、サクラ達を取り囲むライオトルーパー達を掻き切って吹っ飛ばした。

オルタナティブが振り向くと、巨大な蝙蝠型のモンスターがこちらへ突っ込んでいく光景が広がっていた。

 

『ギシャアア!!』

 

「コイツは……ぐあああ!?」

 

「え、なんですか!?」

 

夏海が視線を向けると、オルタナティブが蝙蝠型のモンスターに空高く突き飛ばされる光景が広がっていた。

一体何が起きたのか、サクラが辺りを見回すと小狼達の姿が目に入る。

 

「小狼君!」

 

一方、小狼達三人。

彼らは先程会った男達が言った言葉と共に、流れ込んできたのは【自分の変身する仮面ライダーの光景】。

脳裏に流れる記憶に従い、それぞれ変身の準備を行う。

 

 

黒鋼は折りたたんでいた変身音叉を展開、指で弾いて鳴らすと額に翳す。

音角から波動が体全体まで包み込んで桜吹雪が舞うと、その体を変貌させていく。

 

「ハァ!!」

 

右腕で振り払う動作をすると、そこにいたのは緑と赤で縁取られた鬼の戦士だった。

歌舞伎にも見える姿は豪華絢爛と言えており、現代の『鬼』とは別の雰囲気を纏った音撃の戦士。

 

その名は、『仮面ライダー歌舞鬼』。

 

 

ファイが指笛を吹くと、何処からかやってきたサガークがリコーダー型武器・ジャコーダーを持ちながら出現。

ジャコーダーをファイに手元へ渡した後、サガークはファイの腰に装着される。

そして、ファイはバックルとなったサガークベルトへジャコーダーを挿入する。

 

「変身」

 

『HENSHIN』

 

ジャコーダーを引き抜くと、サガークベルトから青い波動が放たれ、体は銀色へ色が変わっていく。

やがて砕け散ると、漆黒のボディに銀色の装飾と蛇の頭部を模した青い双眸の複眼が特徴の仮面の戦士へと変わる。

 

その名は、『仮面ライダーサガ』。

 

 

小狼が近くの窓ガラスへカードデッキを映すと、鏡像から出現した銀色のベルト・Vバックルが腰に装着される。

独特の構えを取り、決意がこもった声で言い放つ。

 

「変身!」

 

カードデッキをVバックルに装填すると、いくつもの鏡像がオーバーラップして小狼の姿と重なり合う。

やがて紺色と蝙蝠の意匠を持った仮面の騎士がその場に姿を現した。

 

その名は、『仮面ライダーナイト』。

 

 

「小狼君達が、変身した……!」

 

サクラは驚きながら、その光景を目を張って見ている。

小狼が、ファイが、黒鋼が、彼ら三人が士達と同じように変身した事に驚いたのだ。

 

「よし、こっからが反撃だ」

 

「さーて、いきますか」

 

「はい……!」

 

今ここに、三人の仮面ライダーが立ち上がった。

ナイト、サガ、歌舞鬼の三人のライダーは蝙蝠型モンスター・『ダークウィング』と共にライオトルーパーへ立ち向かっていく。

 

 

 




 どうも地水です。この話書いてる途中はキンヤの「aerial」(劇場版ツバサ・クロニクル 鳥カゴの国の姫君のOP主題歌)をキメて書いてました。

ネオライダーの新たなる刺客・モーニス。疑似ライダーのオルタナティブに変身する彼女ですが、不良キャラには少々あってない気が……。
イメージ的にはスマホ向けゲーム『Fate/Grand Order』に登場するモードレッド(セイバー)とカイニス(ランサー)のような女性不良キャラを足したままかけたキャラで、言動や性格などもろ意識してます←

オルタナティブは一人だけじゃない。もう一人のオルタナティブがサクラの魔の手が迫る!
元々原作龍騎だと13人のライダーに対抗するためオルタナティブも13体複数に作られている予定(とある媒体だと13人のオルタナティブが登場)
そのため、ネオライダーにおけるオルタナティブはロボット作品におけるエース機という扱い。
分かりやすく言えば…

ネオライダー所属の仮面ライダー>オルタナティブ>ライオトルーパー

という感じですね。

やりたかった演出……先代ライダーとの対面。
当初は1話かけて対話シーンをぶちこむ予定でしたが、プロットとの相談により断念しました。
ちなみに『現代服の男』と『和服の男』は言わずもがなあの人達ですが、貴族服の男は設定上は存在している半オリジナルのキャラクターです。
彼らが登場したのは「ただ変身するにしては何かきっかけが欲しい」→「小狼達より前の先代ライダーを登場させよう」という決断

ようやく変身した三大ライダー!
小狼はナイトに。
ファイはサガに。
黒鋼は歌舞鬼に。
ちなみに選抜理由は「これの下になった小説でもこのチョイスだった」からです。
詳しい理由は私も分かってない←


次回、ライダーに変身した3人の初陣!



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第10話:激突のヤイバ

 少年は鏡の騎士へ、忍者は歌舞く鬼へ、魔術師は純血の王へと変身する。
受け継いだ力で、この世界を生き抜くために


小狼達が変身した三人のライダー……ナイト、サガ、歌舞鬼。

彼らはこちらへ襲い掛かってくるライオトルーパーへ向かって走り出していく。

 

ライオトルーパー達の射撃を避けながら近づいていき、まず彼らに斬りかかったのは歌舞鬼。

 

「おらよ!」

 

歌舞鬼は手に持った音叉を一本の刀"鳴刀 音叉剣"に変え、ライオトルーパーの一体へ振り下ろす。

向かってくるライオトルーパー達を切り結んでいく。

 

途中、ライオトルーパーとの鍔迫り合いを行っている最中に別のライオトルーパーが背後から襲い掛かってきた。

だがしかし、自分自身がタイミングよく一歩引いて目の前のライオトルーパーとを背後から襲い掛かってきたライオトルーパーをぶつけさせる。

 

「そぉら!」

 

「「ぐあっ!?」」

 

さらにそこへ、音叉剣を振るい翳して二体を一閃。軽く吹っ飛ばし変身状態を解除させるまで追い込ませた。

こうしてライオトルーパー達は応戦しようとするも、歌舞鬼に変身した黒鋼の洗練された剣捌きに太刀打ちできないでいる。

 

「どうした?もう終わりか」

 

「フォーメーション・α-4!」

 

ライオトルーパー達は一旦、歌舞鬼から離れると一か所に集まり、ガンモードへ変形させたアクセレイガンの銃口を向ける。

引き金を引き、銃撃音があたりに響き渡りながらいくつもの銃弾が歌舞鬼へ降り注ぐ。

距離を離すことで何とか回避しながら、歌舞鬼は次なる一手を繰りだろうとする。

 

「この姿であの技が使えるか試してみるか」

 

歌舞鬼はそう呟くと、音叉刀を両手で握りしめて構えた。

その切っ先からは何とも言いきれない闘気がまとい始め、やがて充分に気が溜まった所を見計らって勢いよく振りかざした。

 

 

「―――破魔・竜王刃!」

 

 

「なんだ……ぐあああああ!!」

 

 

歌舞鬼から放たれた斬撃がライオトルーパー達を襲う。

破魔・竜王刃……黒鋼が使用する剣技の一つであり、彼の必殺技の一つとも言える強力な一撃。

普段なら生身で放つのだが、身体能力が強化されている変身した状態で放ったその一撃はライオトルーパー達を軽く吹き飛ばした。

 

「安心しろ、殺しちゃいねえぞ」

 

そう言いながら歌舞鬼は既に気を失ったライオトルーパーの変身者へ向けてそう言った。

 

黒鋼自身、過去に無駄な殺生をしないために自らの主・知世姫にかけられた人を殺めるたびに強さが減る"呪"をかけられた事により、極力人を殺めないようしていた。

 

今回も、一応命までは取らないよう手加減をして繰り出したはずだった……。

 

「しっかし手ェ抜いたはずなのにあそこまで威力とは。鬼の力ってのも厄介なものだな」

 

歌舞鬼は手に持っている音叉刀を眺めながら、自身に宿した鬼の力を関心していた。

 

 

―――――

 

 

その傍らでは、ファイが変身したサガがライオトルーパー達を翻弄していた。

ジャコーダーをロッド型にしたジャコーダーロッドへと姿を変えると、フェンシングの要領でライオトルーパー達を攻撃を往なしていく。

 

「ハァァ!」

 

「なんなんだこいつ!我らの攻撃が通じない!」

 

「いやぁ、だって当たると痛そうだし、ねぇ?」

 

自分たちの攻撃がいともたやすく往なされてる事に戸惑うライオトルーパー達へ、サガは仮面の下にてへにゃりと笑顔を向けている。

仮にも戦場であるはずなのに笑っている事に不気味さを感じたライオトルーパー達はアクセレイガンを剣状のブレードモードへ変形させ、切りかかろうとする。

サガはアクセレイガンの刃をするりとかわすと、ジャコーダーを鞭状の形態・ジャコーダービュートに変えて、振り回す。

 

「そーれっと!」

 

「馬鹿な!?何処に向けて攻撃しているんだ!」

 

ジャコーダービュートの一撃は、ライオトルーパーより頭上へ通り過ぎ、遠くの建物の出っ張った部分へと巻き付く。

一体何を考えて攻撃を仕掛けたのか……ライオトルーパーがサガの方へ振り向くと、そこにはぶら下がりながらこちらへ迫ってくるサガの姿だった。

サガはブランコの要領でぶら下がって、そのまま勢いで蹴り飛ばしていく。

 

「「「ぐああああああ!!!」」」

 

「うーん、なるほど。魔法とは別の力だから、オレでも思いっきり扱えていいね」

 

サガは振りほどいたジャコーダーを撫でながら、ライダーの力に関して褒める。

 

変身しているファイは、魔術師でありながらとある理由によって魔法は極力使わないと決めている。

この世界での仮面ライダーという存在に対抗するため、手にした仮面ライダーの力は彼にとっては好都合のようなものであった。

 

しかし、対等になったところで優位に戦えるとは限らない……そう思ったサガは"とある事"を思いついてサガークベルトに触り、サガークとの意思疎通を行う。

 

「ねぇ、サガーク。この力を引き出すにはどうしたらいい」

 

『&%$##』

 

「なるほど、魔皇力ねぇ……よーし、やってみますか」

 

サガが意識を研ぎ澄ますと、胸部にある"漆黒の魔皇石"が光り輝く。

それと同時に、ライオトルーパー達の足元に巨大な蝙蝠を模した赤く光る紋章が浮かび上がる。

魔法陣というべきそれがライオトルーパーを取り囲み、同時に見計らっていたサガは指パッチンを鳴らす。

 

―――その瞬間、ライオトルーパー達のいた場所は爆発。

巻き込まれたライオトルーパーの変身者は爆炎に飲み込まれながら変身解除まで追い込まれた。

 

「ヒュー、うまくいったー!」

 

『&%%%』

 

サガは土壇場で思いついた『魔皇力による結界の紋章』は、成功に終わった。

 

 

―――――

 

 

一方、小狼が変身したナイトはライオトルーパー達と激戦を繰り広げていた。

剣型召喚機・ダークバイザーで応戦しながら、距離を保つナイト。

 

(……仮面ライダー、この力はまだおれには扱いきれないかもしれない)

 

ダークバイザーを握る手に力を込め、相手を見据えるナイト。

 

思い起こされるのはエドニス国での一件での出来事。

戦いの師匠である星史郎との再会、彼が記憶の羽根をもっていた時、対峙したときに小狼は剣術の腕は未熟ながらも、愛刀の緋炎を引き抜いて立ち向かった。

だが結局は羽根を取り返せず、そのまま別の世界へ向かったことに許してしまった。

未熟だったゆえに取り返せなかった……そのことを思い出した小狼は、今回手に入れたナイトという力を上手く使いこなすべく、奮闘することにした。

 

迫りくるライオトルーパー達が繰り出す一撃を時にはダークバイザーで受け止め、時には避けながら、臨機応変に対応していくナイト。

そこへ、ライオトルーパー達を押しのけてやってくるのは、先ほどダークウィングによって吹き飛ばされたオルタナティブの姿だった。

 

「貴様、よくも吹き飛ばしてくれたなぁ!」

 

「お前は……」

 

「てめぇをぶったおしてやらぁ!!」

 

【SWORD-VENT】

 

スラッシュダガーを呼び出したオルタナティブは、ナイト目掛けて切りかかってくる。

ナイトとオルタナティブは互いに切り結んでいき、両者ともに白熱していく。

そこへ、ライオトルーパー達がナイトの背後へ襲い掛かろうとする。

それに気づき、ナイトはカードデッキから一枚のカードを引き抜くとダークバイザーに装填する。

 

【TRICK-VENT】

 

「「「はぁ!!」」」

 

電子音声と共に分身したナイトが出現し、背後から襲い掛かってきたライオトルーパー達の刃を受け止める。

敵側のコンビネーションが崩れた今、その隙を見逃さなかったナイトはオルタナティブを押しのけ、そこへ彼の鳩尾目掛けて強烈な蹴りを繰り出した。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぐああああああああ!!」

 

蹴り飛ばされてしまったオルタナティブは近くの建物の壁まで激突、そのまま変身が解除されてしまう。

変身者だった男は、自分を倒したナイトへ手を伸ばしながら訪ねた。

 

「なぜ、命まで奪わない……!?」

 

「おれにはあなたたちを殺める理由がないからだ」

 

「ちっ、生きるってことは他人を蹴落とすことなんだ……そんなんだとお前、いつか蹴落とされるぞ」

 

恨みがましい言葉を吐きながら、男は気を失う。

ナイトに変身した小狼は倒れた男を無言のまま見つめた後、他の仲間のところへと向かった。

 

 

――――

 

 

「おいおい、なんだなんだ!?やられてんじゃねえか!」

 

モーニスが変身したオルタナティブが三人のライダーにやられていくライオトルーパー達を見ながら悪態をつく。

いら立ちを隠せない彼女は、スラッシュダガーを構えてサイコローグと共に彼らの方へ向かおうとする。

そこへ余裕ぶった声でモーニスを引き留める者がいた。

 

「おいおい、俺たちをほっといて新人いびりか」

 

「―――テメェ……!!」

 

声のした方向へ振り向けば、そこには先程サイコローグが攻撃したはずのディケイドとクウガがいた場所には二つの影が立っていた。

一人は紫と銀色の重厚な鎧をまとい、紫の複眼へ変わった剣士『クウガ・タイタンフォーム』。

もう一人は青いスーツに銀色のアーマーを纏うヘラクレスオオカブトの意匠が入った剣士D(ディケイド)ブレイド。

クウガは笑いながらオルタナティブへ答えた。

 

「あいにくだったな!俺たちはこの通りピンピンしてるぜ!」

 

「あの時、防御力を高くして耐えしのいでいたってわけだ」

 

……あの時、サイコローグのミサイル攻撃を受ける直前。

ディケイドとクウガはそれぞれ対抗策として変身した。

 

【KAMEN-RIDE…BLADE!】

 

【ATTCK-RIDE…METAL!】

 

―――超変身!!

 

ブレイドに変身したディケイドは身体をトリノバイトメタルによって超硬質化させ、クウガは防御力を誇るタイタンフォームで防ぎ切ったのだった。

 

Dブレイドはライドブッカーを構え、クウガはライオトルーパーが落としたであろうアクセレイガンを拾い上げて専用武器・タイタンソードへ変換させるとオルタナティブへ立ち向かう。

オルタナティブはサイコローグと共に応戦、両者ぶつかり合う。

まずサイコローグがDブレイドへ襲い掛かるが、一枚のカードを取り出してドライバーに装填。

 

【ATTACK-RIDE…THUNDER!】

 

「少し痺れていろ!」

 

Dブレイドが繰り出したディアサンダーの雷撃が、サイコローグへ直撃して動きを封じる。

さらに新しいカードを二枚を続けて装填、ライドブッカーを構えて発動させる。

 

【ATTACK-RIDE…SLASH!MACH!】

 

「はぁぁぁぁぁぁ…はぁ!!」

 

ブレイドが持つカードの効果の一つである斬撃強化のリザードスラッシュと高速化のマッハジャガーを併用し、高速の斬撃をサイコローグへ繰り出した。

その斬撃を避けることもできずサイコローグは地面へ倒れ伏す。

 

一方、クウガVSオルタナティブ。

猛攻をしかけてくるオルタナティブの攻撃をクウガが分厚い装甲をもって受け止める。

再び切り裂こうとスラッシュダガーを振りかざすも、またもやその防御力によって防がれる。

 

「かってぇ!」

 

「―――おりゃあああ!!」

 

クウガが繰り出したタイタンソードによる刺突がオルタナティブへ炸裂。

タイタンフォームの必殺の一撃『カラミティタイタン』が炸裂し、強化スーツから火花を散らしながら倒れるオルタナティブ。

やがて変身状態が解けて、モーニスの姿へと戻る。

 

「チックショウ!!なんでてめぇらなんかに負けてんだ!」

 

「人々を危険に晒しているお前らなんかに負けてたまるか!」

 

悪態づくモーニスに対して、クウガは啖呵を切った。

この世界を我が物顔にしているネオライダー達の暴虐を許せないクウガ……ユウスケは涙を流した人々を思ってそう返した。

 

そこへかけつけるナイト・サガ・歌舞鬼の三人。

ディケイドは変身できた彼らの姿を見て声をかけた。

 

「よぉ、お前たち変身できたんだな」

 

「おかげさまでねー。みんな変身できた」

 

「力はすげぇが扱いには十分気を遣うぜ。修業が必要だな」

 

へらへらと笑うサガと歌舞鬼は変身音叉を見せながらそう答えた。

ナイトはというと、モーニスへ向けて言葉を切った

 

「もう決着はつきました」

 

「まだだ!まだついてねえ!」

 

オルタナティブのデッキを握りしめ、立ち上がろうとするモーニス。

未だに堪えない闘志を一堂に向け、五人の前に迫ろうとする。

 

そこへディケイド達五人の元へ銃撃がばらまかれる。

咄嗟によけた一同は銃撃が来た方向へ視線を向ける。

近くにあった建物の屋上、そこには奇妙な銃を構えた青年の姿があった。

余裕そうな表情を浮かべる黒髪の青年を見て、ディケイドは思わず声を上げる。

 

「お前は…!」

 

 

「―――やぁ、士。この世界じゃ久しぶりといったところかな」

 

 

黒髪の青年……『海東大樹』は、愛銃をくるりと回転させながら彼ら五人に挨拶を告げた。

 

 

 




 どーも地水です。コロナに負けるな!
正しくは新型肺炎コロナウイルスに負けるな!ですが。

三人のライダー初陣、なかなか決まっていましたね。
本来ならばライダーではない三人が戦っているために、オリジナルの仮面ライダーとは異なる戦い方をしていく感じですね。

歌舞鬼→剣術メイン、違和感がない

サガ→ターザン&魔皇力によるMAP攻撃

ナイト→若干小狼スタイル混じっていく

多分これからばけていくでしょう。きっと、おそらく、メイビー。


次回、海東大樹参戦!!



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第11話:怪盗のライダー

 騎士、鬼、王、三人の受け継がれたライダーはその力に戸惑いながらも奮闘する。
ネオライダーを追い詰めた所、意外な乱入者が現れた。
その名は、海東大樹……!


「やぁ、士。この世界じゃ久しぶりといったところかな」

 

 

突如現れた青年……海東大樹。

士たちと共に旅をして、時には争い、時には共に戦った男。

飄々とした性格の裏で何を考えているかわからない。

彼を知らないナイト達三人は、クウガに聞いてみた。

 

「ユウスケさん、あの人は……」

 

「アイツは海東大樹、俺たちと一緒に旅をしているやつなんだ」

 

「つーことは、お前達の仲間ってことか」

 

「うーん、でもどうにもそういう雰囲気じゃなさそうな気がするんだけど」

 

サガの言う通り、彼から放たれた攻撃はどう見てもこちらへ向けて放たれたものだった。

Dブレイドは海東へ向けて疑問を投げかける。

 

「海東……お前、何のつもりだ?」

 

「おいおい、忘れちゃったのかい?僕の行動理由はたった一つだよ」

 

【KAMEN-RIDE…】

 

そういうと、海東は愛銃・ディエンドライバーにライダーカードを装填。

銃口を頭上へ向けると、あの言葉と共に引き金を引く。

 

「変身!」

 

【DI-END!】

 

ディエンドライバーの銃口から放たれたライドプレートと共に、海東の周囲に緑、赤、青の鏡像が出現。

三つの鏡像が重なり合い、さらにライドプレートが頭部に重なって装着。

灰色だったボディ部分がシアン色に染まり、黒のアーマーを装着した仮面ライダーが立っていた。

その名は『仮面ライダーディエンド』、ディケイドと同じく、もう一人の世界を股にかけ旅をするライダーである。

 

「あの人も仮面ライダーだったんですか!」

 

「そういうことだ、小狼」

 

海東が変身したことに驚くナイトへ、ディケイドは顔を向けてそう呟く。

一方、ディエンドは腰のカードホルダーからライダーの姿が描かれた三枚のライダーカードを取り出すと、先程の要領で再びディエンドライバーへ装填する。

 

【KAMEN-RIDE…RAIA!】

 

【KAMEN-RIDE…IXA!】

 

【KAMEN-RIDE…SABAKI!】

 

「さぁ、僕からの奮発祝いだ」

 

ディエンドライバーから放たれた三つの光がナイト達目掛けて放出される。

三つの光はそれぞれ人の姿となり、やがてそこに立っていたのは三人の仮面ライダー。

 

一人は赤紅色のアーマーと、エイの意匠が入った仮面の騎士・ライア。

もう一人は白き装甲を纏った金色の十字架の仮面を持つ狩人・イクサ。

最後に現れたのは黒い筋肉質な体に赤い縁取りが特徴の鬼・裁鬼。

 

ディエンドによって召喚されたライダー達はそれぞれの武器を構えて、ナイト達へ向かって走っていく。

こちらへ向かってきた敵を向かい打つべくナイト達は応戦していく。

召喚されたライダー達が彼ら三人と戦っている事に不満を持ったクウガはディエンドへ向けて疑問を飛ばす。

 

「おい、何してんだ!?あの三人は俺達の仲間だぞ!」

 

「悪いね。身を覚えがない人だったもんで?何処で知り合ったんだい?」

 

「まったく、ややこしいことをしてくれやがって」

 

Dブレイドはいつものディエンドらしいまったく読み取れない行動へ向けて忌まわしそうにつぶやくと、Dブレイドはライドブッカー ガンモードでディエンドを狙撃する。

ディエンドは高く飛び上がって避けると、Dブレイドへ接敵して殴り掛かる。

 

「前にも言わなかったかい?お宝を求めるのが怪盗ってものさ」

 

「だからって小狼達を襲う理由にはならねえよ」

 

「おいおい、君はいつから名指し付きで他人に固執するようになったんだい?」

 

【ATTACK-RIDE…BLAST!】

 

ディエンドはからかうようにDブレイドへそう告げると、ディエンドライバーから放たれる誘導弾・ディエンドブラストをDブレイドへお見舞いする。

ダメージを負ったことにより、ディケイドの姿へ戻るとライドブッカーを向けて銃撃戦を始める。

 

「今度は何が目的だ!」

 

「決まってるじゃないか!この世界で一番のお宝を手にすることさ!!」

 

互いに互いの放った光弾を撃ち落としていく傍らでは、歌舞鬼と裁鬼、サガとイクサ、ナイトとライアの戦いが繰り広げていた。

 

二本の音撃弦を操る裁鬼に対し、歌舞鬼は音撃棒・翡翠で対抗。

 

銃剣一体型武器・イクサカリバーで切りかかるイクサを、サガはジャコーダーロッドで撃ち落としながら応戦。

 

エイの尾を模した鞭・エビルウィップを振り回すライアへ、ダークバイザーで攻撃を防ぐナイト。

 

三者三葉の戦い方をしていく中、混戦が続く中でクウガはあたりを見回して気づいた。

―――先程倒されていたはずのモーニスの姿がなかった。

 

「アイツ、何処に行ったんだ?」

 

遠くのほうまで視界を広げてみるも時には既に遅し、彼女は他の隊員と共に姿が消えていた。

大方、ディエンドの襲撃の時に隙をついて逃げ出したのだろう……。

そう思ったクウガは、ナイト達の応援に入るべく、彼ら三人の元へ向かった。

 

 

―――

 

 

同時刻

ディケイド達から離れた地下駐車場にて、モーニスの姿があった。

彼女は忌々しそうに壁へ向けて拳をぶつける。

 

「ちくしょう!あのままでいられるかってんだ!すぐに呼び戻せ」

 

「無茶をするのはよくないぜ?"モニカ"ちゃん」

 

「チッ……ウワバミィ!!」

 

モニカと呼ばれ、眼孔を見開いてその名を呼んだ相手を怒号を上げるモーニス。

やってきたウワバミは大げさに怖がる態度を出しながらも、彼は怒る彼女をなだめにはいる。

 

「まぁまぁまぁ、生きてるだけで儲けもんだよ」

 

「クッ、今度会ったらアイツらぶっ殺してやらぁ!!」

 

「ははっ、ぶっ殺すのには待って欲しいなぁ。ディケイドの仲間、にしては少々気になることが多すぎだよ、彼らは」

 

そう言いながら、ウワバミは手を上げて指を鳴らすと、彼の背後から何者かが一瞬で姿を現す。

天井から降りてきたのは、黄緑色の装甲を身に着け、腰にはカメレオンのデッキがはめ込まれたVバックルをつけた仮面の騎士。

『仮面ライダーベルデ』とも呼ばれるその仮面ライダーは、ウワバミへ向けて言葉を発する。

 

「御用か?」

 

「お疲れ、モーニスの回収でお疲れのところ悪いけど、もう一つお頼み申す」

 

「以下用ですか」

 

「ディケイド達一行の事を調べてきてくれ……特に、この三人については用心深くね」

 

ウワバミは三枚の紙をベルデへ受け渡す。

ベルデが見ると、そこに描かれていたのは小狼・ファイ・黒鋼の三人の似顔絵だった。

確認したベルデは無言で頷くと、そのまま姿を影の中へと消える。

従順な様子で従うベルデの事を気に入らないモーニスはウワバミの方へオルタナティブのカードデッキを要求する。

 

「おい、ウワバミ。デッキを返せ、オレはもう一度戦いに……」

 

「やめときなって、モニカちゃん。"災害"が来るのを知ったら流石に止めるって」

 

「その名で呼ぶんじゃねえ……つーか、災害って」

 

モーニスは『災害が来る』という言葉に疑問を浮かべる。

そんな彼女をよそにウワバミはノートパソコンを開いて操作すると、画面に浮かんだのはディエンドと戦うディケイド達の光景。

それを映し出した画面をににやついた表情で見ながら、『何か』が来るのを待っていた。

 

 

―――

 

 

一方そのころ、ナイト達四人のライダーはディエンドの呼んだ召喚ライダー達との決着はついていなかった。

無機質に攻撃を仕掛けてくるライア、イクサ、裁鬼へ苦戦を強いられている四人は武器を構えながら相手の様子を伺っていた。

 

「やれやれ、せっかくネオライダーが退いたってのにねぇ」

 

「つーかあれ、倒していいのか?」

 

「ああ、問題ない」

 

迂闊に相手を倒せない歌舞鬼の問いにクウガは答える。

ディエンドの大きな能力である『他の仮面ライダーを召喚する能力』よって呼び出されたライダー達はいわば、人形や傀儡に近い存在。

別段命の概念はないため、ナイト達が思いっきり倒しても問題ない。

そうと分かった三人は、手加減なく召喚ライダーを倒そうとする。

 

「だったら、あいつらを……」

 

ナイトがダークバイザーを手にして、一枚のカードを引き抜こうとする。

その時だった、四人の耳にとある電子音声を耳にしたのは……。

 

 

【START UP】

 

 

突如、銀色の閃光がナイト達の傍を通り過ぎ、ライア達へ向かっていく。

ライア達三人の召喚ライダーをその手に持った赤い刃を宿した剣で切り付けていく。

それを食らった召喚ライダー達は『φ』の赤い文字を浮かばせながら爆発……そのまま消滅した。

召喚ライダーを倒される光景を見ていたディケイドは驚く。

 

「なに!?」

 

「ふっ、ようやくお出ましか!」

 

【ATTACK-RIDE…ILLUSION!】

 

驚くディケイドをよそに、ディエンドは自身の分身を生み出すディエンドイリュージョンを発動。

6人に増えたディエンドはディエンドライバーを銀色の閃光へ向けて発砲。

銀色の閃光は銃弾の嵐を掻い潜りながら、ディエンドのところへ迫り、本物を狙って蹴り飛ばす。

ディエンドは近くの建物まで勢いよく叩きつけられてしまう。

 

「ぐあっ!?」

 

「海東!」

 

【TIME OUT】

 

電子音声と共に、銀色の閃光がその姿を現す。

装甲が展開されてコア部分が露出した胸部、漆黒のボディをかけめぐるエネルギーライン、そして赤く染まった単眼。

……ファイズ・アクセルフォーム。

現れた存在が自分がよく知るライダーであったことにディケイドは拍子が抜けた言葉を言う。

 

「ファイズだと?これを待っていたのか?」

 

【REFORMATION】

 

「………!」

 

アクセルフォームから胸部装甲を収納、金色の複眼と赤いエネルギーラインへ戻った通常形態のファイズは先程使ったエナジーハンドルブレード・ファイズエッジを構え、ディエンドの元へ歩いていく。

迫りくるファイズに対してディエンドは咄嗟に新しいライダーカードをディエンドライバーへ装填する。

 

「生憎だけど、ここまでのようだ」

 

【ATTACK-RIDE…INVISIBLE!】

 

ディエンドはファイズが迫る直前に自身を透明化、それによりその場を離脱した。

標的であるディエンドの存在を失ったファイズはこの場から去ろうとする。

そこへ、今までの戦いを見ていたディケイドがファイズを呼び止める。

 

「待て、お前一体何者だ?」

 

「………」

 

ファイズは何も答えず、ディケイド達を置いてこの場から消えた。

その後、変身を解いた士はファイズが去っていった方向へ見つめながら一人呟いた。

 

「アイツ、いったい何者だったんだ」

 

「士君!みんな!無事ですか!」

 

そこへ周囲が無事になったため夏海とサクラが一同の元へとかけつける。

サクラは小狼の元へ向かい、彼に怪我がないか確かめる。

 

「小狼君、大丈夫?」

 

「姫、おれは大丈夫ですよ」

 

「でも小狼君、無茶することがあるから……」

 

「ははは……」

 

小狼はやめさせることもできず、サクラにされるがままに確認される。

……サクラ自身、ただ見守ることしかできなかった事に不甲斐なかったのだろうか、念入りに確かめる、

そんな二人の様子を見て、何かを察した夏海は士に尋ねる。

 

「士君、もしかしてあの二人って……」

 

「さてな、今はそっとしておいてやれ」

 

「仲がいいもんね、二人とも」

 

ユウスケはうんうんと頷きながら、小狼とサクラの二人のやり取りを見守る。

……小狼とサクラの仲が思った以上に深いことに。

彼らのやり取りを見ている三人の傍らで、黒鋼は変身音叉を見ながら呟いた。

 

「しっかし、仮面ライダーってのはすごい力だな。変身して分かった」

 

「そうだねぇ。戦えないオレとしてはありがたい助っ人だよ」

 

「はん、何が戦えないだ……あんなに圧倒していたじゃねえか」

 

「今回上手くいっただけだよ」

 

ファイはそう言いながら、黒鋼の追求を笑顔で誤魔化す。

黒鋼はいつもの彼の対応に眉を顰めるが、ファイは別の話題に差し替えるように思い出す。

 

「そういえば、海東とかいう人だっけ。妙な事を言っていたね」

 

「あん?何をだ?」

 

「お宝の事か?アイツにとってはいつもの事だろ」

 

士はやれやれといった表情でそう答える。

実際、海東はここに来る前の世界では様々なお宝を狙っていた。

ファイズギア、G4チップ、デンライナー、カブトゼクターといった特別な力を持った物を"価値のあるもの"として盗もうとしていた。

ファイは士と夏海に対して"海東が放った言葉"を聞き返す。

 

「彼、『この世界で一番のお宝を手にれる』って言ってたよね」

 

「ああ、そうだ」

 

「ええ、海東さん確かにそう言ってました」

 

「モコナが言うにはどうやらこの世界にはサクラちゃんの羽根が存在するんだよね」

 

「おい、まさか……」

 

ファイの語った話に黒鋼はとある結論にたどり着いた。

それは、今は話を聞いていない小狼とサクラにとっては丁度聞かないでよく、しかし決してよくない『答え』だった。

 

 

「―――もしかしたら、海東大樹はサクラちゃんの羽根を狙っている可能性もあるってこと」

 

 

―――小狼達の仮面ライダーとして初めての戦いは無事に終わった

 

―――だが、この世界での戦いは激しさを増す予感がしていた

 

 




 どうも地水です、GWはどうお過ごしでしょうか?

予告通りの海東参戦、10話もどこ行っていたんだお前←
そして相変わらずのお宝優先、彼が狙うお宝は一体……?
挨拶代わりの召喚ライダーでおもてなし、超電王の時といいなにがしたいんだ大前

一方そのころ、ネオライダー組には新たなライダー・ベルデが登場。
ウワバミは小狼達一行を怪しみ、彼らの調査を依頼……。
作中の人物の中でもこいつに関しては一番企みが読めない←

初登場、仮面ライダーファイズ。
なぜ登場したのか、なぜ真っ先にディエンドを襲ったのか、なぜディケイド達には意を解せず立ち去っていたのか…。
その理由は、宝城〇夢ゥ!
君が〇〇〇で●●●に×××したからだ!
ヴェーハッハッハッハッハッハッ!!
(※ネタバレ配慮のため、檀黎斗で隠しました)


次回、久しぶりの日常回。


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第12話:彼女のサガシビト

 怪盗の登場、そして謎の仮面ライダー・ファイズ。
この世界で何が起きているのか、それを知るにはいまだ情報は足りない。
果たして宝を狙うものが手にするのはいったいなんなのか……。


 ネオライダーの襲撃から後日。

あの時の騒ぎのせいでその日調べられないと判断した一同は一度出直すことにした。

 

サクラはモコナと共に買い物へ出かけていた。

栄次郎に頼まれたことであり、彼女は自分ができることならと引き受けた。

現在士達他のメンバーは修業の稽古、羽根の情報収集など勤しみ、今サクラとモコナが外で歩いていた。

 

「サクラ、買い物大丈夫?」

 

「うん、メモに書いてあるものは大体買ったよ」

 

「サクラえらーい!」

 

買ったものをいれた大きな紙袋を両手で抱えながら写真館への帰路についていた。

そこへ、サクラとモコナの視界に入ってきたものがあった。

 

それはキョロキョロとあたりを見回す、サクラより年上の夏海と同じくらいの一人の女性だった。

赤みがかった茶髪と真紅色の瞳が特徴のその女性は、一枚の写真を見せながら通行人に話しかけていた。

彼女は尋ねた通行人からいい返事が聞けなかったのか浮かない顔をすると、頭を下げて離れていった。

 

「なんだろう、あの人」

 

「なんだか気になるなぁ」

 

モコナとサクラは不思議そうに彼女を見ていた。

彼女は顔を下に向けたまま歩き出していく。

その先には交差点……信号は赤信号、行きかい始める自動車達。

だがそんなことも気づかず、進んでいく女性……危ないのではないか?

そう思ったサクラは走り出し、彼女の服をつかんで引き留める。

 

「―――あぶない!」

 

「え?きゃっ!?」

 

はっと我に返った女性は、自分が今置かれた状況に気づく。

次の瞬間、目の前に通り過ぎるいくつもの自動車。

危うく自分が轢かれるところだった状態に気づき、呆然とする彼女へサクラが話しかける。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「ああ……うん、大丈夫、私は大丈夫よ」

 

「怪我しなくてよかったねー」

 

サクラの肩に乗ったモコナが女性の顔を覗き込む。

白いふわふわの生き物が喋って来て少し戸惑うも、女性はサクラに感謝の言葉を述べる。

 

「助けてくれてありがとう。お礼は何て言ったらいいのか」

 

「いえ、お礼なんていいですよ!ただ危なかったので助けただけです」

 

「それでも、感謝したいのよ」

 

助けた事に関して褒められるも謙遜するサクラ。

そこへモコナがしんみりとした声のトーンでかけてくる。

 

「……お姉さん、寂しいの?」

 

「えっ?」

 

「モコちゃん?」

 

「モコナ、感じるよ。お姉さん、隠してるけどそれでも伝わるくらいに」

 

モコナはいつもとはおちゃらけた雰囲気はなりを潜め、彼女へと言葉を紡いでいく。

サクラは何故モコナがそんなことを言い出したのか理解した。

モコナには"人の心を感じ取る力"を持っており、自分自身も以前そのことで励まされた事がある。

この人にも、私と同じく寂しさを隠し通している……そう思ったサクラは意を決して声をかける。

 

「あの、私でよければ話してみませんか?」

 

「あなたに…?」

 

「その、なんていうか、私でも力になれることがあるなら」

 

「ふふっ、ありがとう。そんなこと言われたの、初めて」

 

女性は思わず笑顔になり、サクラへ握手を求める。

サクラも伸ばされた手を握り返し、互いに自己紹介を始める。

 

「私はサクラっていいます」

 

「サクラちゃんか……うん、覚えた。私はハル、ハルって呼んでね」

 

名前を聞いて一瞬逡巡するも、すぐに笑顔を向ける茶髪の女性……『ハル』。

サクラ達に出会った彼女は可憐でありながらどこか儚げな笑顔を向けるのであった。

 

 

―――――

 

 

頼打地区内にある森の中、そこには士と黒鋼の姿があった。

いくつもの張り巡らされたロープを設置し終えた士が黒鋼に尋ねる。

 

「おーい、黒鋼。ほんとにいいのか?」

 

「構わん、やってくれ」

 

黒鋼は音撃棒・翡翠を構え、様子を伺う。

始めろと言わんばかりの空気を察した士は、ロープの一本をナイフで切る。

結ばれたロープは吊り下げられた重りに従って引っ張られていき、仕掛けられた木の剣が黒鋼へ向かって飛んでいく。

木剣が黒鋼へ当たろうかとした距離に入る寸前、両手に持っていた翡翠が動く。

 

「―――はぁ!!」

 

黒鋼の振るった翡翠が木剣をはじき落とす。

その後も飛んできた木剣を叩き落としていく。

流石に元の世界で忍びとして戦国の世を生き抜いてきた事もあっての動きの良さに、士は感服の言葉を覚える。

 

「なるほど、それが忍びってやつなのか。大した強さだ」

 

「だが、これを使いこなすにはまだまだ足りない。それこそ、"修業が足りない"」

 

「どうしてだ?お前は結構強いんじゃんかったのか」

 

「鬼の力、だったか。ありゃ凄いが同時に力の使い方を間違えると魔道に落ちかねない」

 

迫りくる木剣を防ぎながら、黒鋼は士との会話を続ける。

 

……聞けば、鬼の力は魔化魍と呼ばれる妖怪を倒すために人が己の肉体を鍛えて手にいれた代物。

だがしかし、鍛える事をせずにして侮ったり怠慢したりしているといずれは魔の道に落ちかねない。

実際、士も響鬼の世界でとある鬼が魔化魍になった事を既に知っている。

 

鬼の力を手にして満足している場合ではない、そう決断した黒鋼は、響鬼にカメンライドした士を付き合わせ、こうして鬼の力を確かめるための修業を行わせていた。

 

「要するに、慢心せず立派な鬼としての修業をするために付き合えってことだろ?」

 

「まあな、お前、俺達と会ったときに紫の鬼に変身していた。お前なら多少なりとも鬼ってのが何なのかわかるはずだ」

 

「まあな……安心しろ、これでも音撃道の師匠を務めた経験がある。みっちりコーチしてやるから根を上げるなよ」

 

「ヘッ、面白れぇ!次だ、次!」

 

士の余裕綽々な言葉に黒鋼は正面から迫ってきた木剣を両手に持つ翡翠で叩き伏せながら、次の修業へと移っていった。

 

 

―――――

 

 

同じ頃、頼打地区のとある街道。

小狼、ファイ、ユウスケは情報収集を終えて合流し、一息をついていた。

 

「黒鋼さん、士さんを連れて何処に行かれたんでしょう」

 

「さてね、でも黒ぴーのことだから問題ないでしょ」

 

「それにしてもサクラちゃんの羽根について何にも情報がないんだよな」

 

ユウスケは疲れた表情を浮かべながら羽根についての情報が収穫がないことに呟いた。

以前から記憶の羽根に関するそれらしい噂や伝統がないと小狼から聞かされていたが、ここまで情報が出ないとなると意図的に隠されている可能性が高い。

 

「一体、何処にあるんだか」

 

「せめて知ってる誰かに出会えればいいんだけどねー。オレ達、この世界詳しくない上にネオライダーが邪魔してくるんだよねぇ」

 

「そういえば、この世界で手に入れたもの中にこれが……」

 

小狼が手にしていたのは一冊の本。

タイトルは"仮面ライダーという名の仮面"、仮面ライダーと呼ばれる戦士達が不死の怪物達との闘いを描いた内容というだった。

一見、ただのSF小説に見える……だが、士やユウスケがこれを見た時、彼らの反応が違った。

何故ならば、(ブレイド)の世界を旅した彼らにとってこの本に出てくる仮面ライダー達はあまりにも特徴と似ていたからだ。

ユウスケは仮面ライダーという名の仮面の本を見ながら答えた。

 

「多分だけど、この世界にもいると思うんだ。仮面ライダーブレイドが」

 

「確か士さんの変身できる仮面ライダーの一人、でしたよね」

 

「ああ……ブレイドがいるなら、この世界の事について聞けるんじゃないか」

 

G3ユニットに続いて、この世界での手掛かりになりうる存在を見つけたユウスケと小狼。

とりあえず、と思ったファイは二人に言った。

 

「んじゃ、とりあえずその著作者……本を作った人のところに話を聞きに行きたいね」

 

「この本の著作者の名前は【白井虎太郎】という方に会ってみますか?」

 

「よし、とりあえずそこから調査してみっか!」

 

小狼達三人は、仮面ライダーの存在を知っているであろう【白井虎太郎】に会うべく、行動を開始する。

 

 

 

―――――

 

 

ハルに案内されて、近くの喫茶店にやってきたサクラ。

サクラとハルはカフェオレ、モコナはたらこスパゲッティを頼むと話に花を咲かせていた。

 

「じゃあサクラちゃんは別の国からやってきたんだね」

 

「はい、探し物をしているんです。とても大切なものを」

 

「探し物?この国にあるの?」

 

「わかりません、ただ少しでも可能性があるのなら探します」

 

まっすぐな眼差しでサクラは答える。

その目を見て、ハルは納得したような表情を浮かべながら言葉を続ける。

 

「……一緒だね、探し物をしているってのは」

 

「ハルさんもですか?」

 

「私は人探しをしているの。とっても大切な人」

 

遠い目をしながらハルはサクラに語っていく。

 

……かつて、共に暮らし、共に時間を過ごしてきた人がいた。

その人はある日、何処かへ行ってしまってそれ以来帰ってきてない。

一体、今はどこで何をしているんだか……。

 

サクラへ向けて苦笑するハル。そこへたらこスパゲッティを食べ終えたモコナが言葉を紡ぐ。

 

「モコナ、感じるよ。ハルの心、あったかいよ!」

 

「……え?あったかい?」

 

「モコナわかるよ、ハル、その人の事好きなんでしょ!」

 

「―――ふぇ!?」

 

モコナに言われて少し呆然としたのち、顔を真っ赤にするハル。

彼女は席から立ち上がり、悪口をまくし立てる。

 

「そんなはずない!あんな奴好きでもなんでもないよ!いっつもいっつも何処かに行っちゃうし、自分の趣味しか興味ないくせに人の趣味には口出すし、いっつも小馬鹿にした態度とってそのくせ変なところで気が回すし…!!」

 

「落ち着いて、落ち着いて!」

 

気が動転した彼女をサクラは宥めて、落ち着かせる。

ハッと我に返ったハルは、目の前にいるサクラにあまたを下げて謝罪をする。

 

「大丈夫ですか、ハルさん」

 

「サクラちゃんありがとう……そしてごめんね?」

 

「でも、そこまで悪口を言うなんて……それほど気にしている人なんですよね」

 

「まあね……曲がりなりにも、一緒に育ってきたんだよ。アイツとは」

 

そう言いながら、ハルは一枚の写真を差し出してサクラに見せる。

そこに写っていたのは茶髪と緑色の瞳を持つ一人の男性。

サクラとモコナは写真を見て、ハルに尋ねる。

 

「ねぇねぇ、ハル。この人のお名前は?」

 

「……ツカサ、十谷(とうや)ツカサ。こんなのでも私の幼馴染なんだ」

 

「幼馴染……」

 

サクラはハルの言った『幼馴染』という単語について反応をする。

かつての自分にもそんな人がいたような気がする……しかし、思い出せない。

自分の記憶が揃ってないせいで自分の過去にどんな人と知り合ったのか覚えていない。

しかし、それでも過去の自分が親しくしていた大切な人がいたはず……。

サクラは写真を返すと、ハルに笑顔を向けてこう言った。

 

「ハルさん、見つかるといいですね。そのツカサさんって人に」

 

「うん、諦めたくないもの。アイツも諦めが極端に悪かったんだもの。徹底的に探し出してやるんだから!」

 

元気になったハルを激励するサクラ。

そんな彼女達二人をモコナはうんうんと頷いてしみじみと感じ取る。

 

「うんうん、友情っていいものだね」

 

サクラとハルは意気投合し、会話を続けていく。

とある喫茶店【ハカランダ】での出来事であった。

 

 

―――――

 

 

とある廃工場。

そこでは二人の仮面ライダーが相手に激闘を繰り広げていた。

蟹の意匠を持ったメタルオレンジのライダー『仮面ライダーシザース』。

ネオライダーに所属する仮面ライダーだが、目の前にいる敵を倒すには力が足りないでいた…。

 

シザースの目の前に立つのは、赤い複眼とヘラクレスオオカブトの模した銀色の仮面を持つ、蒼銀の仮面ライダー。

……仮面ライダーブレイド。

ブレイドは剣型カードリーダー・醒剣ブレイラウザーを構え、シザース達へ斬りかかっていく。

 

「くっそー!お前を倒せば俺達のチームは認められて立派になるんだよ!大人しく倒されろー!」

 

【STRIKE-VENT】

 

シザースは右腕に蟹の腕を模した巨大な鋏・シザースピンチを装着すると、ブレイドへ殴り掛かる。

ブレイドはシザースの攻撃を交わすと、ブレイラウザーで何度も斬り付けていく。

 

「はぁ!」

 

「あいたっ!?あいたたたたた!!?いってーなおい!?」

 

何度も斬り付けられ、最後には飛び蹴りをもらって吹っ飛ばされるシザース。

廃工場の壁を突き抜け、地面へと叩きつけられたシザースは何とか立ち上がりながら一枚のカードを引き出す。

 

「くそぉ、お前なんかな!お前なんかけちょんけちょんにやっつけてやるぜ!!」

 

【FINAL-VENT】

 

「行くぜ、キャン吉!」

 

人間大の蟹型モンスター『ボルキャンサー』を呼び出したシザースは、ボルキャンサーの両腕の鋏に足をかけ、乗って空高くジャンプする。

そのまま高速で空中前転しながら体当たりする『シザースアタック』を発動し、ブレイド目掛けて突っ込んでいく。

対してブレイドは、一枚のカードをブレイラウザーにスキャンする。

 

【TIME】

 

「な、なにぃ―――」

 

ブレイドは"タイムスカラベ"を発動、前転しながら突撃してくるシザースを時間停止させると、自分は射程圏内から離れて避難をする。

再び時は動き出し、シザースの必殺の一撃は勢いよく地面へと炸裂する。

舞い上がった土煙が晴れ、そこに現れたのは上半身だけ地面へ埋まってしまったシザース……ブレイドは悲惨な様子の彼を放っておいて、"マッハジャガー"の高速移動によって何処かへと消えていく。

 

【MACH】

 

ブレイドが立ち去った後、慌ててやってきたボルキャンサーがシザースの足を引っ張って救出した。

ぜぇはぁと息を切らすシザースは、既にこの場にいない敵の背姿へ向けて恨みをぶつける。

 

「おのれ!次こそはお前を倒してやるぞぉぉぉ!あいたったた、キャン吉もっと優しくして」

 

自ら必殺技で自爆した痛みに耐えながらシザースはキャンサーに抱えられて去っていった。

 

その戦いを見ていた男がいた。

ベージュ色のコートと帽子をかぶり、眼鏡を光らせるその壮年の男性は意味ありげな言葉を呟いた。

 

「なるほど……ここが新しくディケイドがやってきた世界か。末恐ろしいものだ」

 

男はそういうと、背後に灰色のオーロラを呼び出し、その場から消える。

―――その男の名は『鳴滝』。ディケイドを世界を破壊する悪魔と称して憎む謎の男である。

 

 

 

 




 どうも地水です。この話は若干苦戦した感がある←

新キャラ登場、その名はハルちゃん!
どうやら彼女は幼馴染を探している様子、一体どこにいるのやら。
サクラと仲良くし馬が合う彼女たちがどんな出会いを生み出すのか。

黒鋼は鬼の修業、鬼の力を見抜いた彼はライダーに詳しい士と共に修業へと足を踏み入れる。果たして何を見つけることができるのか
修業のモチーフは某豪快者のブルー回。

虎太郎!ハラカンダ!そして仮面ライダーブレイド!何かと今回は剣成分がたっぷり!
最近動画サイトで配信しているせいですかね!?(執筆現在2020/05/06)

いよいよもって鳴滝登場、ディケイドを憎む預言者が次に仕掛けるのは一体……。


次回、あの人がライダー変身!?にドッキドキ!!



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第13話:迫るキョウジン

 サクラが出会うは儚き春。
黒鋼は鍛えるは音撃の道。
小狼達が求めるは仮面の戦士を書いた人


 とあるマンションの一室。

高級マンションという触れ込みが売りだったその部屋は当初の優雅さも見る影もなく、置いてあった家具は破壊されていた。

その犯人というべき存在は手に持った得物を家主だった男へ向けながら迫っていた。

 

「……とっとと教えてもらおうか、仮面ライダーブレイドの居場所を!」

 

「し、知らないよ! 僕はただのサイエンスライターなんだってば!」

 

目の前にいるライダーに怯えながら後ずさるのは一人の男……名前を『白井虎太郎』。

かつて仮面ライダーブレイドと不死の生命体・アンデットとの戦いを陰ながらサポートした男。

虎太郎は両手に持つカバンを盾にして、目の前にいる【犯人】へ向けて会話を続ける。

 

「だ、大体ね! 僕だって彼が今どこにいるか知らないんだ!」

 

「はっ、本当なのかどうなのかはともかく、お前さん、仲間を売る人間じゃないだろ?」

 

「ひっ!?」

 

得物を突き付けられて悲鳴を上げる虎太郎。

先程部屋にあった家具を紙切れを破るようにぶち壊した光景を目にしているため、その切れ味の良さは分かっている。

苦無にも小刀にも似たその得物はあと数センチ、下手をすれば虎太郎の首に当たりかねない。

 

「お喋りを続けている暇はないんだ。これ以上続けたいってならば……」

 

「ひ、ひぃぃぃい!!」

 

壁まで追い詰められ、逃げ場はない。

もはやここまでなのか、そう思われた瞬間……部屋に備え付けられていたインターホンが鳴った。

犯人は舌打ちをしながら、虎太郎に促す。

 

「おい、見てこい」

 

「えぇ!? 僕が!」

 

「お前以外に誰がいる」

 

「わ、わかったよ……」

 

虎太郎は渋々部屋に備え付けられた小型モニターの所まで行き、玄関の様子を伺う。

玄関に備え付けられたカメラが様子を伺い、訪ねてきた人物を映し出す。

 

そこに写っていたのは、見知らぬ青年……小野寺ユウスケの姿だった。

 

ユウスケは通話が繋がったのを知ると、インターホン越しに話しかけてくる。

 

『あのー、すいません。ここが白井虎太郎さんのお宅でよろしいでしょうか』

 

「そうですが、あなたは?」

 

『あ、俺小野寺ユウスケって言うんですがちょっとお話伺いたくて。あ、読みましたよ!仮面ライダーという名の仮面! この本についても伺いたいことがあって!』

 

モニター越しに笑顔で話してくるユウスケ。

本来ならば喜んで受け入れるのだが、今現在をもって命を狙われている身。

下手な動きをすれば、こちらが死にかねない……現に、得物の刃を突き付けて犯人は虎太郎に命令する。

 

「断れ、さもなくばお前の首は床に転がるだろう」

 

「わ、わかってるよ……悪いけど、今取り込み中なんだ!帰ってくれ!」

 

『そこをなんとか、お話だけでも!』

 

ユウスケが必死に食らいついて話をうち明かそうとするも、犯人の手によってモニターの会話を打ち切られる。

虎太郎へ刃を向けたまま、犯人は言い放つ。

 

「話を長引かれても面倒だ……時間も惜しい、お前をネオライダー本部へ連行する」

 

「ね、ネオライダー本部だって!?なんでそんなところに!?」

 

「時間は惜しい、と言ったところだぞ。お前は付いてくればいいんだよ」

 

そう言いながら同行を拒む虎太郎の首根っこを摑まえて、この場から連れて行こうとする犯人。

このまま連れていかれれば、何されたもんじゃない……そう思った虎太郎は助けを呼ぶ。

 

「助けて! 助けてぇ!」

 

「……どうやら、死にたいようだなぁ!」

 

先程からイラついた犯人の凶刃が振り下ろされ、虎太郎へと迫る。

その時だった、つんざくような耳鳴り音が聞こえてきたのは。

それと同時に、床に散乱していた"ミルク姫"と書かれた空き瓶のガラスから何者かが飛び出してきた。

 

「はぁ!」

 

「なんだと!? ぐっ!」

 

襲撃者の振るった一閃を避け、距離を話す犯人。

虎太郎の前に立ったのは、一人の仮面の騎士。

蝙蝠の意匠を持つ、一本の剣を携えた紺色の仮面ライダー……姿形は異なれど、その姿には自分の知るライダーと何処か同じ面影があった。

虎太郎は思わず叫ぶ。

 

「仮面ライダー!!」

 

「大丈夫ですか、白井虎太郎さん」

 

紺色の仮面ライダー……小狼が変身した仮面ライダーナイトは、虎太郎に気をかけながら目の前にいる犯人に向けてダークバイザーを構える。

対して犯人は、得物を向けながらナイトに問いかける。

 

「お前、何故気づいたんだ?俺がいることに」

 

「最初におかしいと思ったのは、ダークウィングが様子がおかしかった所からだ」

 

ナイトが語るには、虎太郎の住むマンションへたどり着く直前のこと……。

ダークウィングが鏡越しに『何かがいる』と警戒をかけてきたのだ。

最初は一体なんだとは思ったものの、小狼は何かいると感じ取り、他の二人に提案をする。

自分が変身して鏡の世界(ミラーワールド)に入り、先に偵察をして中の様子を確かめてくる事だ。

そして変身して鏡の中経由で部屋の中を確かめた所、虎太郎が絶体絶命の状況に陥っていた。

ユウスケ達にそのことを伝え、今に至るのであった……。

 

「まさか、ネオライダーが虎太郎さんを狙っていたとは」

 

「そうか、お前がディケイドの仲間か。変なところで会ったものだ」

 

そう言いながら犯人は、得物を構えてナイトへその姿を現す。

カブトムシの角を模した肩アーマーとブロンズの装甲、ケンタウルスオオカブトを模した仮面と緑の複眼を持った仮面ライダー……『仮面ライダーケタロス』。

ネオライダーと名乗ったライダーは虎太郎を狙っている……理由はどうであれ、彼を渡すわけにはいかない。

 

「悪いがこの人にはおれ達も用がある。渡すわけにはいかない」

 

「都合がいい、お前ら揃ってぶっ飛ばすか」

 

ケタロスは4基の射出砲分ついた武器を取り出し、それをナイトと虎太郎達へ向ける。

その武器…ゼクトマイザーのスイッチ部分を押すと、四つの射出砲から虫型の手榴弾・マイザーボマーが放たれる。

マイザーボマーはナイトと虎太郎の周囲を取り囲み、旋回をしていく。

 

「うわぁぁぁぁ!? なんだこれ!?」

 

「まずい……虎太郎さん、おれから離れないでください!」

 

【GUARD-VENT】

 

何か嫌な予感を感じ取ったナイトは、虎太郎に近寄りながらカードデッキを引き抜き、ダークバイザーに装填する。

ダークウイングが変化したマント・ウイングウォールを装着すると、虎太郎ごと自身の体を包み込み、そのままの状態で部屋の窓ガラスを突き破る。

 

―――その瞬間、マイザーボマーが爆発。部屋全体を爆炎へと包み込んだ。

 

 

―――――

 

 

同時刻。

虎太郎が住んでいるマンションの近くにある道路、そこで走りゆく二台のバイク。

突如起きた大きな爆発を視界に入れると、先に先導していた赤いバイクの持ち主が、後方にいる緑を基調としたバイクの持ち主に話しかける。

 

「虎太郎の身に何かあったようだ、急ぐぞ!」

 

「はい!」

 

かつて共に戦った仲間である虎太郎のピンチを見過ごしては置けない……。

二人はバイクの速度を速め、いち早く現場へ向かうため走らせた。

 

 

―――――

 

 

燃え上がる高級マンションの一室。

虎太郎の部屋に当たる窓ガラスが砕け散り、その中からウィングウォールに守られながらナイトが虎太郎を連れながら現れる。

爆炎から逃れた二人は地面に着地すると、安否を確認する。

 

「大丈夫ですか」

 

「うん、大丈夫……って、ああ!?俺の家が……!」

 

ナイトに答える途中で悲惨になった自分の家を見ながら、ショックを受ける虎太郎。

自分の稼いだ金で買ってようやく手に入れた自由……それがいとも簡単に燃やし尽くされた。

これで何ともない人間なんていないだろう……。

 

そこへ現れるは、先に脱出していたケタロス。

ケタロスは自分の得物であるクナイ型武器・ゼクトクナイガンを構えて、ナイト達に迫る。

 

「ネオライダーの所属しない貴様に俺自ら処罰をしてやる!」

 

「―――おっと、その判決は異議申し立てる……なんてねー」

 

ケタロスに襲い掛かる、赤い一閃。

虎太郎が声のした方向へ見ると、そこには既に変身したサガとクウガ・マイティフォームの姿があった。

二人はナイトのところへ駆け寄り、共に並び立ってケタロスと対峙する。

 

「悪い、待たせた!」

 

「まさか爆発するなんてねぇ。それは予想外だよね」

 

「ユウスケさん! ファイさん!」

 

「おいおい、三人に増えた所で有利……なんて思ってるんじゃないだろうな? お前ら!」

 

ケタロスが右腕を上げると、それが合図かのように二体の怪人が彼の傍へ現れる。

一体は右腕にアームガンを取り付けた銀色の怪人、もう一体は毒々しい棘を生やした髑髏の顔を持つ紫色の怪人。

二体の怪人はうなり声を上げながら三人へ襲い掛かる。

 

『『ぐがあああああ!!』』

 

「なんだ、こいつら!」

 

クウガは襲い掛かってきた銀色の怪人に殴り掛かる。

だがそれらを意図も解せず、左腕につけられた電撃棒を振り回し、クウガに直撃させる。

 

「ぐあぁ!?」

 

「ユウスケさん!」

 

殴り飛ばされるクウガへナイトが叫ぶも、立ちふさがる紫色の怪人が立ちふさがって助けに行けない。

紫色の怪人は右腕に取り付けられた一本の棘をナイトへ伸ばす。

ナイトは咄嗟にダークバイザーで受け止め、近くの木へそれを逸らした。

棘が刺さった木は、見る見るうちに腐っていき、ついには枯れ果て倒木していった。

 

「まさか、毒があるのか!?」

 

ナイトは腐れおちた木を見て紫色の怪人の能力の一部を理解し、迂闊に近づけないと悟る。

そこへ、サガが振るったジャコーダービュートが紫色の怪人の右腕にからみつく。

 

「小狼君、いまだよ!」

 

「ファイさん、ありがとうございます!」

 

サガのサポートもあってか、ナイトはダークバイザーで紫色の怪人を斬りつけていく。

火花を散らしながらダメージを追っていく紫色の怪人……だがそこへ、ケタロスが間に割って入ってくる。

 

「おーっと、そこまでにしとけよボーイ!」

 

ケタロスはゼクトクナイガン・クナイモードでジャコーダービュートを断ち切って拘束を解き、次にナイトへ切りかかっていく。

サガが援護へ入ろうとするも、紫色の怪人が杖状の武器を持って襲い掛かってくる。

 

『ぐぉおおおおお!!』

 

「くっ!」

 

サガはジャコーダーロッドに切り替えて、紫色の怪人を応戦していく。

その隣では銀色の怪人が右腕のアームガンがから繰り出す射撃を、クウガが避けていた。

 

「あぶない! あの射撃をなんとかしないと……」

 

格闘主体の赤のクウガ(マイティフォーム)では不利だと判断したクウガは、近くに何かないか探し出す。

そこで見つけたのは、先程紫色の怪人によって倒木した木の枝の部分だった。

それをつかみ取ると、クウガはその姿を変えていく。

 

「超変身!」

 

クウガの赤の鎧は、紫の縁取りを持った銀色の鎧のような形状へと変化。

複眼も紫色に変化し、手に持った木の枝は大剣・タイタンソードへと変わる。

頑丈な装甲と怪力を宿した形態・タイタンフォームになったクウガはタイタンソードを構えて、重い足取りで銀色の怪人に迫る。

 

「これなら、いける!」

 

銀色の怪人はアームガンをクウガに向けて発砲。

クウガの体に直撃し、大きな火花が散るがそれでも歩みを止めない。

その事に戸惑う銀色の怪人は再び発砲するも、びくともしないままクウガは進んでいく。

やがて至近距離まで距離を縮めた時、クウガのタイタンソードが振りはなった。

 

「おりゃあああ!!」

 

振り上げたタイタンソードで銀色の怪人の体を切り裂き、振り下ろした際に左腕の電撃棒を叩き切る。

多少なりともダメージを負った銀色の怪人は不利と判断したのか、クウガに背を向けて退いた。

 

『ぐっ!?』

 

「おい、待て! 超変身!」

 

逃げていく銀色の怪人を追いかけるため、俊敏性に優れたドラゴンフォームに変わり追いかけてゆく。

クウガは向かった先にあったのは、ケタロス達と戦うナイト・サガの姿であった。

見た様子でもわかるように二人が優勢とは言い難く、クウガは心配して駆け寄る。

 

「大丈夫か!」

 

「いやぁ、流石にライダーなりたてじゃこんなものか」

 

サガはお茶らけて言うが、余裕でいられるのも時間の問題……。

加えてケタロスの奥の手はまだ隠されている。

虎太郎を庇いながら戦うため、このままいけば苦戦は必至……。

 

そう思われていた矢先、そこに【新しい乱入者】がやってくる。

 

 

―――ブォォォォン!!

 

 

けたたましい排気音と共に現れたのは二台のバイク。

そこに乗っていたのは二人の男性が下りてきて、その姿を見た虎太郎は思わず二人の名前を叫ぶ。

 

 

「橘さん! 睦月!」

 

 

 

「白井、無事か!」

 

「橘さん、あれって!」

 

「ああ、トライアルシリーズだ」

 

「だったら、俺達の相手だ」

 

二人の男性……『橘咲也』と『上城睦月』は"トライアルシリーズ"と怪人達を呼び、それぞれラウズカードと呼ばれる特殊なカードをバックルに挿入した。

橘はギャレンバックルにチェンジスタッグビートルを。

睦月はレンゲルバックルにチェンジスパイダーを。

それぞれ、腰に装着した二人はベルトを操作して高らかに宣言する。

 

 

「「変身!」」

 

【TURN UP】

 

【OPEN UP】

 

 

それぞれバックルから放たれたオリハルコンエレメントが射出され、それらが二人を潜り抜けるとその姿が変わっていく。

 

紅色のボディに銀色の鎧、緑の複眼を宿した戦士……『仮面ライダーギャレン』。

緑色のボディに金色の鎧、紫色の複眼を宿した戦士……『仮面ライダーレンゲル』。

 

二人のライダーは武器を構えて走り出していった。

 




 どうも地水です、次回予告詐欺にならなくてよかった。

木戸 明(カフェ・マル・ダムールの店長)に続いてようやくレジェンド登場!その名は白井虎太郎!
しかしまさかのネオライダーケタロスに追い詰められながらの初登場であった…。
剣本編といいなんでこうもこうなんだろうね←

虎太郎を救うのはミルク姫だった…(待て
ではなく、窮地を救ったのはナイトこと小狼。もはやおなじみとなってきたミラーワールド戦法での活躍。
地味に初めてのベントインも使ってますね。

そんでもってレジェンドライダー登場!ギャレン&レンゲル!
彼らがどう活躍するのか……。


次回、初の共同戦線!!



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第14話:歴戦のユウシ

 仮面ライダーの伝説をよく知るものを助けた小狼達。
そこに襲い掛かるのはネオライダー、謎の怪物たちを引き連れて互角の戦いを繰り広げる。
そこへ駆けつけたのは伝説の仮面ライダー達だった……。


 突如現れた、仮面ライダーギャレンと仮面ライダーレンゲル。

二人は怪人達……『トライアルシリーズ』へ、立ち向かっていく。

ギャレンは銀色の怪人……『トライアルE』に、レンゲルは紫色の怪人……『トライアルG』に迫り、攻撃を仕掛ける。

 

『ギャレ、ン…!!』

 

「お前の相手は、俺だ!」

 

『レン、ゲル…!』

 

「まさかまた戦うことになるとは…!!」

 

ギャレンは醒銃・ギャレンラウザーによる銃撃による射撃でトライアルEを牽制、レンゲルは醒杖・レンゲルラウザーを構えて突撃してトライアルGと攻撃を仕掛けていく。

ナイト達は物陰に隠れた虎太郎の元へ向かうと、彼らについて尋ねてみる。

 

「あの二人は一体?」

 

「橘咲也、仮面ライダーギャレン。上城睦月、仮面ライダーレンゲル……アンデットを封印するために戦った仮面ライダーだよ」

 

「ギャレンにレンゲル……あのライダーが」

 

クウガは戦うギャレン達を見ながら感慨深そうに呟いた。

かつて旅した世界の一つである剣の世界にもギャレンやレンゲルも存在していたが、変身者が他人を蹴落として自分を利益になることも厭わないという決して人が良くない性格をしていたため、あまりいいイメージがなかった。

それに対して、目の前で激闘を繰り広げている二人は仲間のために駆けつけて戦ってくれている。

それだけで二人のライダーの印象が変わった。

 

一方、ギャレンとトライアルE。

二人はギャレンラウザーとアームガンによる銃撃戦へと勃発していた。

 

「はっ!」

 

『ギッ!!』

 

トライアルEが繰り出す銃撃をギャレンラウザーによる狙撃によって的確に撃ち落としていく。

さらにはそれらを潜り抜けて、ギャレンの放った銃弾がトライアルEの身体へ届く。

 

『グォォォォ…!』

 

銃撃戦では不利だと判断したトライアルEは、距離を詰めて接近戦を仕掛けていく。

ギャレンもそれに応戦して、格闘戦を仕掛ける。

 

場面を入れ替わるように、ギャレン達の傍で戦うのはレンゲルとトライアルE。

それぞれの武器である戦杖でつばぜり合いをしながら、拮抗している状態に入った。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

『グルアアアアア!!』

 

互いに振るう戦杖がぶつかり合って振るわれる。

強靭な脚力による距離を離したトライアルGは、右腕の棘爪・ベノムネイルを伸ばし、レンゲルを貫こうとする。

レンゲルは咄嗟に一枚のカードを腰のカードボックスから引き抜き、レンゲルラウザーに読み込ませる。

 

【Smog】

 

レンゲルの周囲から黒煙が放たれ、周囲を包み込む。

スモッグスキッドを発動される中、トライアルGは構わずベノムネイルを伸ばし貫こうとした。

だが煙幕の中にいるはずのレンゲルに直撃した手ごたえはなく、当の本人は真横へ回ってレンゲルラウザーで切りかかる。

 

「とりゃあ!!」

 

『グォォォ!?』

 

レンゲルの一撃が炸裂し、叩き飛ばされるトライアルG。

飛ばされた先にいたトライアルEと共に追い詰められていく。

ギャレンとレンゲルはそれぞれ決め手となるラウズカードを取り出そうとする。

 

「睦月、決めるぞ」

 

「はい!」

 

「―――そうはさせるか!クロックアップ!」

 

【CLOCK UP】

 

そこへ高速移動からの攻撃を仕掛け、ギャレンとレンゲルを吹っ飛ばす。

地面へ叩きつけられた二人が見やると、二体のトライアルシリーズの前にケタロスが現れる。

ギャレンは自分たちに仕掛けられた攻撃が一体何なのかすぐに理解できた。

 

「クロックアップ……BOARDとは別のライダーシステムが持つ超高速移動か……!」

 

「ご名答!だがお前達にはクロックアップは破れまい!」

 

「何を!!」

 

ケタロスの言葉に激昂したレンゲルは彼にレンゲルラウザーを振るうも、クロックアップによっていともたやすく避けられ、逆に反撃を食らった。

ギャレンに助け起こされてレンゲルは立て直すも、現状トライアルシリーズを引き連れたケタロスをどうやって打破するべきか……。

 

トライアルシリーズの共通した特徴として、倒したとしても数秒のうちにに復活するほどの驚異的な生命力だ。

強力な必殺技を以てして倒す方法しかないのだが、今回のクロックアップして攻撃を仕掛けてきたケタロスのように隙を復活する時間を生み出させてしまう。

 

現状、ギャレンとレンゲルだけでは対抗できる手段はない。

ケタロスが攻撃を仕掛けようと動く瞬間、電子音声がその場に流れる。

 

【NASTY-VENT】

 

「二人とも、耳をふさいで!」

 

二人の叫ぶ言葉と同時にやってきたのは、蝙蝠型の巨大モンスターのダークウィング。

ギャレンとレンゲルが一時的に聴覚機能を遮断すると、ダークウイングが発する超音波『ソニックブレイカー』が放たれる。

ソニックブレイカーを食らったケタロスとトライアルシリーズ達は超音波の苦痛に耐えきれずその場に蹲る。

一体何事かと思ってみれば、虎太郎を助けていたライダー……ナイト、サガ、クウガが二人の元に駆け寄ってくる。

 

「大丈夫ですか!」

 

「君たちは一体……」

 

「とある成り行きで白井虎太郎さんに話を聞きに来た者です」

 

ギャレンの問いかけにナイトが答えた。

見慣れないライダーに対して訝しんだレンゲルは訊ねる。

 

「あんた達、ネオライダーじゃないのか」

 

「んーどっちかというとオレ達、ネオライダーに狙われている立場になっちゃってるからなー」

 

「ネオライダーに……?」

 

サガはレンゲルの問いに、仮面の下で笑みを向けながらそう答えた。

そこにドラゴンロッドを構えるクウガがギャレンとレンゲルに手を差し伸べながら言い放つ。

 

「一緒に戦わせてください。大切な人を守りたい気持ちは同じなんですから」

 

「……分かった、その言葉を信じよう」

 

「ええ、共に戦おう」

 

差し伸べられた手を取り、ギャレンとレンゲルは立ち上がり、ナイト達と共に並び立つ。

五人のライダーが揃った……その光景を見て少し退くもケタロスはゼクトクナイガンの刃を向ける。

 

「はん、数で押し切るつもりか?無駄だ!トライアルのタフさとクロックアップがあるかぎりお前達は不利だ!!」

 

『『グォォォ!!』』

 

ケタロスの合図と共に、襲い掛かっていくトライアルEとトライアルG。

ナイト達五人のライダーは、それぞれ戦う敵へと散りながら向かっていく。

トライアルEにはギャレンとナイト。

トライアルGにはレンゲルとサガ。

そしてケタロスにはクウガ。

ドラゴンロッドを構えたクウガが、ケタロスへと飛び掛かる。

 

「お前の相手はお前だ!!」

 

「返り討ちにしてやる!」

 

クウガとケタロス、両者の武器がぶつかり合う。

今、ナイト達の反撃が始まる。

 

 

―――――

 

 

トライアルEと戦うギャレンとナイト。

アームガンによる銃撃を避けながら、ギャレンはナイトへとらトライアルシリーズの倒し方を教える。

 

「いいか!トライアルシリーズを倒すには強力な攻撃を浴びせる必要がある!」

 

「強力な攻撃を……?」

 

「ああ!そうでなければ、アイツらは再び復活をする!」

 

『ヤラセル、カ!』

 

両者の必殺技を発動させまいとトライアルEはアームガンの射撃速度を速め、素早い連射をお見舞いする。

ナイトは直撃する直前、一枚のカードを読み込ませる。

 

【SWORD-VENT】

 

「やらせない!」

 

ナイトはダークウイングの尾を模した大型のランス・ウイングランサーを手にすると、その大きさを生かして連射された弾を防ぐ。

その間、ギャレンは左腕につけた箱型のアイテム・ラウズアブソーバーから二枚のカードを取り出す。

一枚のカードである"アブゾーブサーペント"をラウズアブソーバーにセットする。

 

【Absorb Queen】

 

続いて二枚目のカード"フュージョンピーコック"をラウズアブソーバーにスラッシュして読み込ませる。

 

【Fusion Jack】

 

二つのカードを読み込ませた後、孔雀の紋章が浮かび上がってギャレンの姿は大きく変わる。

仮面と胸部のアーマーは黄金色に変わり、背中にはマント状の"オリハルコンウイング"が出現する。

強化形態『ギャレン・ジャックフォーム』に変わると、オリハルコンウイングを展開して上空へ飛びあがり、金色の刃"ディアマンテエッジ"を取り付けたギャレンラウザーを連射しながら突貫していく。

 

「うぉおおおおお!!」

 

『ナッ!?』

 

ギャレンが繰り出したトライアルEは銃撃を受け、さらにディアマンテエッジによる刺突が炸裂。

大ダメージを負った所へ、さらなる一撃を叩き込むべくギャレンは3枚のカードを取り出し、ギャレンラウザーに読み込ませる。

 

【Bullet】

 

【Rapid】

 

【Fire】

 

【Burning Shot】

 

ギャレンは上空へ再び舞い上がると、銃口を向けて構える。

そして引き金を引き、火炎弾を連射していく。

ギャレンの放った『バーニングショット』はトライアルEへと襲い掛かる。

何発のも火炎弾を食らい、その手を上空にいるギャレンへ手を伸ばすトライアルE。

 

『グォォォォ! マダダ、マダオレハ!』

 

「―――今だ!」

 

「はい!」

 

ギャレンの合図と共にナイトがウイングランサーを逆手に構え、そして勢いよく投げる。

投げられたウイングランサーはトライアルEの胴体に突き刺さり、絶叫を上げる。

さらにナイトはトライアルEへ向かって走り出し、そのまま地面を蹴って上空へ舞い上がる。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

ナイトは飛び蹴りをトライアルEに突き刺さったウイングランサー目掛けて叩き込む。

"ライダーキック"というべきナイトが放ったその一撃は、トライアルEの胴体へ大きな穴を作り出した。

トライアルEは数歩後ずさると、そのまま地面へ倒れてゆき、体は眩く閃光と共に消えていった。

 

 

―――――

 

 

場面は変わり、トライアルGと戦うレンゲルとサガ。

トライアルGの振るう戦杖を避けながら、ジャコーダービュートによる中距離からの一撃を叩き込むサガ。

そこへレンゲルがラウズカードの一枚・スタッブビーで強化した突きを叩き込んだ。

 

【Stub】

 

「はぁぁぁ!!」

 

レンゲルの一撃は炸裂し、トライアルEは軽く吹っ飛ばされる。

今さっき出会ったばっかりながらも彼のその活躍ぶりにサガは褒める。

 

「うーんやるねぇ!」

 

「それほどでもないですよ」

 

「さて、と。どうするんだい? 橘さんだっけ? 彼の言う通りならこの怪物倒すには強い一撃を叩き込まなければいけないと思うけど」

 

「問題ありません。初対面にこういうのもなんですが、オレ成長してますから」

 

サガの懸念にレンゲルは右腕につけていた箱型アイテムを指し示す。

それはギャレンがつけていたものと同じラウズアブソーバーだった。

彼は二枚のカードを取り出すと、ギャレンと同じように読み込ませる。

 

【Absorb Queen】

 

【Fusion Jack】

 

「一緒に戦ってくれ」

 

ラウズカードに封印した"誰か"に言い聞かせながら、レンゲルの姿は変わっていく。

像のような分厚い装甲に覆われた上半身、両肩には銀色の象牙"オリハルコンタスク"が出現し、手も象の足を模した巨大な手甲に覆われる。

『レンゲル・ジャックフォーム』へと変わり、重い足取りでトライアルEへと近づいていく。

 

『ナンダ……ソレハ……』

 

「これが、"俺達"の力だ!!」

 

レンゲルはその手に持った鉄球を振り回し、トライアルEへ叩きつける。

戦杖へ防ごうとするも強烈な一撃により叩き折られてしまい、そのままお見舞いされる。

さらに追撃と言わんばかりの光のエフェクトを纏ったオリハルコンタスクによるタックルが炸裂。

そして最後はディアマンテエッジがついたレンゲルラウザーによる斬撃が襲い掛かった。

 

『ガァァァ!!?』

 

「これで最後だ!」

 

【Rush】

 

【Blizzard】

 

【Poison】

 

【Blizzard Venom】

 

レンゲルは冷気の纏ったレンゲルラウザーをトライアルGへ突き刺す。

さらには毒を流し込み、致命的なほどまで弱らせていく。

通常形態より強化されたジャックフォームによる『ブリザードベノム』が決まって弱らせていく。

だが、これだけで倒すには決め手が足りない……そこへサガが動き出す。

 

「んじゃ、オレも動きますかっと」

 

『WAKE-UP』

 

サガは白い笛型アイテム・フエッスルを取り出すと、それをサガークベルトの口部分に読み込ませる。

サガークの言葉と共にフエッスルを吹くと周囲の空は夜に変わり、夜空には闇に沈む新月が浮かび上がる。

サガークベルトから供給された魔皇力をジャコーダービュートへ受け取り、そのままトライアルGへ刀身を伸ばして突き刺す。

 

「―――ハァ!」

 

『ギャッ!!』

 

刺し貫かれたトライアルGへサガは魔皇力を直接送り込む。

『スネーキングデスブレイク』を叩き込まれ、体はボロボロへなっていく。

やがて二人のライダーの必殺技を受けたトライアルGの体は耐えきれなくなり、眩い閃光と共に消えていった。

 

 




 どうも地水です。

満を持して登場したレジェンドライダー・ギャレンとレンゲル。
小狼達やネオライダーとは異なる、仮面ライダー剣の本人達ってのは逆に珍しいですね。
後々明かしていく予定ですが、とある法則があります。

小狼達との共同戦線……騙される事に定評がある橘さんにしては英断な選択←
イヤホント、伊坂だったり所長だったりと色々騙されているんですよあの人。

本邦初公開レンゲル・ジャックフォーム!ジャックフォームに関してはS.I.Cにて設定と姿だけは登場してます。
別サイトでライダー小説やっていた時にレンゲル・ジャックフォームは出したことあるんで初めてな感じはしなかったです

次回、VSケタロス戦に決着……?


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第15話:協力者とコクハク

 苦戦するネオライダー達の戦い
疑似なる不死の生物を倒すべく、共に戦うことにした二つの力。
願うは、正しき正義のために。


 四人の仮面ライダーによって改造実験体・トライアルシリーズを打倒した同じ頃。

ケタロス相手にクウガは対等に戦っていた。

ドラゴンロッドによるリーチの差によってケタロスを翻弄している。

 

「おりゃああ!!」

 

「ぐっ!?」

 

クウガの披露している棒術を食らっていくケタロス。

彼の持っているゼクトクナイガン・クナイモードでは太刀打ちしづらいだろう。

 

「お前、一体何者だ!」

 

「仮面ライダー……クウガ!」

 

「クウガだと……!?」

 

クウガのドラゴンロッドを受けながら、驚愕の表情を浮かべるケタロス。

何故そんなに驚いているのか、理由は分からないクウガだが、攻撃の手を緩めるわけにはいかない。

 

「くらえっ!!」

 

「クロックアップ!」

 

【CLOCK UP】

 

ケタロスはクロックアップを発動し、クウガの振り下ろしたドラゴンロッドを避ける。

その超スピードを乗せた斬撃をクウガに叩き込む。

 

「どっせぇい!!」

 

「ぐっ……クロックアップか!」

 

「そうだ、クロックアップに対応できるライダーなど、同じクロックアップを有するライダーしか対抗できない!」

 

尋常ならざる超スピードで周囲を駆け巡りながらクウガへ攻撃を仕掛けていくケタロス。

クウガは傷つきながら吹っ飛ばされていくが、その中で"とある打開策"を見つける。

 

「だったら、これならどうだ……超変身!」

 

クウガは超感覚を宿したペガサスフォームに変身、ドラゴンロッドをペガサスボーガンへと変えるとその場に立ち止まり、感覚を研ぎ澄ます。

クロックアップによる超速度を以て何処をどうやって動き回っているか、常人より強化された視力と聴覚によって周囲を探る。

右……左……前方……後方……。

周囲を攪乱しながら、動き回るケタロスの行動を銃尻のトリガーレバーを引きながら見定める……。

 

―――先に動いたのは、ケタロスだった。

 

ゼクトクナイガンを逆手に持ち、クロックアップの速度で勢いよく飛びあがり、クウガの背後目掛けて目掛けて飛び掛かる。

"このクロックアップは見抜けない"、そう決めつけていたケタロスは大きく勝負に出た。

高く振り上げたゼクトクナイガンをクウガ目掛けて振り下ろそうとする……。

 

「―――そこだ!」

 

「なに!?」

 

その瞬間、クウガは背後を振り向き、ペガサスボウガンをケタロスに狙っていた。

引き金を引き、銃口から圧縮された空気弾が放たれ、ケタロスを捉える。

不可視の鋭い一撃を食らったケタロスは火花を散らしながら、地面に倒れ伏す。

クウガはケタロスを倒したのを見て、ほっと一息をつく。

 

「士から聞いていた話でクロックアップに対抗する手段聞いていてよかった……まさか緑のクウガがそんなことできるとは」

 

この世界に来る前、【カブトの世界】にてクロックアップを使ってくるワームに遭遇した時の万が一の対処法として士から聞かされたことがあった。

その話がまさかここで実践するとはクウガは思ってもみなかった。

そこへ、トライアルシリーズを倒した他のライダー4人が合流を果たし、心配したナイトが声をかける。

 

「ユウスケさん!大丈夫ですか!」

 

「ああ、大丈夫だ。なんとか倒したぜ」

 

「……仮面ライダークウガ、初めて出会ったがすごい実力の持ち主だ」

 

ギャレンは自分達が対応できなかったケタロスを相手にしてなおかつ倒したことに感服していた。

クウガはギャレンの放った言葉に疑問を持つが、それを訊ねる前に"ある人物"が現れる。

 

紫の髪と紫色の瞳を持った黒服の男……紫電斬刃だ。

 

「手ひどくやられたようだな。武田」

 

「お前は……紫電!」

 

「撤退するぞ」

 

そう言いながら、"武田"と呼んだケタロスを担ぎ、この場から去ろうとする。

身構えるナイト達だが、そんな彼らに気づいた斬刃は視線だけ向けてこう告げる。

 

「ほう、あの時出会った子供がいっちょ面してライダーになるとはな」

 

「……!お前は……」

 

「ああ、この姿じゃ初めてか?覚えているか」

 

警戒するナイトへ、斬刃は顔の一部分だけスコルピオワームとしての顔を浮かび上がらせる。

あの時あった蠍の怪人だと気づいたナイトは、息を呑む。

そんな彼の反応を見て笑う斬刃は、ナイト達へ向けて言い放った。

 

「安心しろ。今回はコイツを回収しに来ただけだ。白井虎太郎はお前達にくれてやる」

 

「仲間を助けに来たのか……?」

 

「んー、まあそんなところだ。ああ、追撃は推奨しないぜ……俺も一応、ライダーなんだからな」

 

レンゲルの質問にあっさりと答えながら、斬刃は空いた手に握っていたサソードヤイバーを見せる。

もし五人が襲ってきた場合、簡単に対処できる顕れなんだろう。

誰もが動かない今、手を出さない事を判断した斬刃はケタロスを連れたまま立ち去っていく。

 

その後、変身を解いたナイト達五人、素顔を露わにした橘が呟く。

 

「あれがネオライダー……侮れないな」

 

「俺達の以外にライダーへ変身できる奴らがいるなんて……」

 

クロックアップという驚異的な能力を秘めたライダーシステムの使い手に不安そうな表情を睦月は浮かべる。

そこへ、無事になって物陰から出てきた虎太郎が一同に歩み寄ってくる。

 

「いやー助かったよー!一時はどうなるかと思ったよ!」

 

「あんたが虎太郎さんなのか」

 

「うん、僕は白井虎太郎。サイエンスライターで仮面ライダーと共に戦った男さ」

 

伺ってきたユウスケに対して虎太郎は自己紹介を告げる。

目的の人物に出会えてようやく一安心するユウスケとファイだが、小狼が申し訳なさそうに虎太郎へ頭を下げる。

 

「虎太郎さん。あなたの家をネオライダーから守れなくてすいません……」

 

「ああ、それに関しては残念だと思うけど、大丈夫。必要なものはすでに別の場所へ移してあるし、あそこに置いてあったものはいずれ処分するつもりだったから。それにほら、ここにちゃんとデータあるよ」

 

手に持っていたカバンを一同に見せつける。

虎太郎自身が気にしてないのではればそれでいい……。

すると、睦月が小狼達が何者なのか訊ねてくる。

 

「俺達が来る前に虎太郎さんを守ってくれてありがとう。だが、そもそも君達は一体何者なんだ?」

 

「おれは小狼です」

 

「ファイ・D・フローライト」

 

「小野寺ユウスケ、クウガです」

 

小狼達は橘達にこれまでの経緯を話した。

自分達が別の世界からやってきたこと、自分達の目的である羽根の回収の事、それらの事情に知っていそうな人たちの事について……。

ひとまず聞き終えた橘達は驚愕の表情を浮かべていた。

 

「驚いたよ、まさか他の世界もあって、そこにも仮面ライダーが存在するなんて!!」

 

「なるほど……つまり、お前達の目的はその羽根を探して手に入れる事ということか」

 

「はい、その羽根は大切な人のものなんです」

 

橘の質問に小狼は答える。

その答えを聞いて目を細める橘……睦月が代わりに入れ替わるように答える。

 

「すまない、俺達はそんな羽根の事については耳に入れてない」

 

「うーん、睦月君達も知らないってことか」

 

「力になれなくてすみません」

 

睦月は申し訳なさそうに頭を下げる。

そこへ橘が三人に向けてブレイドの動向の事を告げた。

 

「だが、剣崎一真……仮面ライダーブレイドについてなら俺達は知っている」

 

「仮面ライダーブレイドが今何をしているか知っているんですか?」

 

「ああ、アイツは今、俺達とは別行動を取っている。ネオライダーについて調べているからだ」

 

「ネオライダーの事を?」

 

「詳しいことは未確定のため話せないが……どうにもネオライダーに俺達BOARDの技術が転用されているのは確かだ」

 

ユウスケの質問を答えるように橘が語るには、小狼達が戦ったトライアルシリーズはかつて人類基盤研究所・BOARDに所属していたとある科学者がアンデットの細胞を駆使して作り上げた改造実験体の怪人という。

そのトライアルシリーズの技術が何らかの方法で手に入れ、戦力として利用されている。

"これ以上アンデットの力を悪用されるわけにはいかない"、"これが自分達がネオライダーと戦っている理由だ"、と橘は語った。

 

「そうだったんですか……」

 

「あなたたちもネオライダーと戦うってことは、俺達の仲間のようなものですね」

 

「もし羽根について何らかの情報を手に入れたら、お前達に教えよう」

 

「僕も力になるよ!仮面ライダーの事については任せてよ!」

 

小狼に橘、睦月、虎太郎の順で話しかけていく。

一行はこの世界における"初めての協力者"を見つけたのだった。

 

 

―――――

 

 

小狼達がネオライダーとの闘いを終えた頃。

サクラはハルと共に光写真館への帰路についていた。

 

「あっと言う間に時間過ぎていったね」

 

「そうですね。いっぱい喋っちゃいました」

 

「モコナもいっぱい喋ったー!喋ったー!」

 

モコナは嬉しそうにぴょんぴょんと飛び回る。

その光景で笑みを浮かべながら、ハルはサクラに対してとあることを言う。

 

「それにしてもサクラちゃんにも大切な人っていたんだ?」

 

「え?」

 

「ほら、話に出てきた小狼君だっけ?その時語っていたサクラちゃんの顔素敵だったなーと」

 

「ええっと……!」

 

小狼の名前を出されてサクラは戸惑う。

確かに、小狼の事は大切な人だと思っている。

これまでの旅の中で一緒に過ごしてきて、いつの間にか大切な存在になっていた。

 

「た、確かに小狼君の事は大切です……大切ですけど!」

 

「ねえねえ、その彼に告白とかしたの?あなたの大好きだって!」

 

「こ、こくはっ……」

 

ハルの言葉に顏が真っ赤になり、口をパクパクさせながら硬直するサクラ。

 

―――正直な事を言えば、(小狼)の事は好きだ。大好きだ。

過去の記憶が幾分か揃っている不確かな状態だが、それを差し引いても大好きだ。

この気持ちに偽りなどない……今まではなるべく気づかないようにはしていたが、それでも自覚してしまったのだ。

小狼の事が、好きなのだ……と。

 

だが、サクラは恐れている。

もし記憶の失う前の(サクラ)誰かの事を好きだったら(・・・・・・・・・・・)……。

その事が怖くて怖くて仕方がなかった……。

もし、記憶を失う前の自分が別の人を好きになっていたら。

もし、小狼が好きな人が自分ではなかったとしたら。

その事がたまらず怖かった……。

だから今は言えない、この気持ちを彼に伝えてはいけない。

 

きっと伝えると、今の関係が壊れてしまうから…。

 

落ち着きを取り戻したサクラは唇をかみしめ、答えを楽しみに待っているハルに告げる。

 

「―――言えませんよ、怖くて……」

 

「サクラちゃん……?」

 

「怖いんです……もし、この気持ちを伝えたら、きっと何かが壊れてしまうんじゃないかって。きっと、元に戻れなくなるんじゃないかって」

 

「………」

 

「それだったら、私は言わずにずっとその関係でいたほうがいいです……」

 

サクラは俯いて、か細い声でハルに言った。

モコナはサクラの様子を見て悲しそうな表情を浮かべ、声をかけようとする……。

―――だがその前に、そんなサクラを、ハルは優しく抱きしめた。

 

「……ごめんね、そんなにサクラちゃんが思い悩んでいたなんて」

 

「ハルさん?」

 

「だけど、ずっと言わないってのはやめてね。今じゃなくてもいい、けどいつかは勇気を振り絞ってその言葉を伝えてね」

 

「勇気を振り絞って……」

 

「うん、そう。その気持ちを言わないと、死ぬほど一生後悔すると思うから……」

 

ハルの呟いた言葉がサクラを抱きしめている力を強くする。

その気持ちをモコナは読み取った。

 

「ハルもサクラも、大切な人を思うのは一緒なんだよね…」

 

大切な人を思う彼女たちの気持ち。

その心は、彼女達の内に秘めることにした。

 

 

―――――

 

 

その後、サクラを送り届けたハルは一人暗くなった帰り道を歩いていた。

そんな彼女に声をかける者がいた。

 

『ハルちゃ~ん……いいのぉ?弱み晒しちゃって?』

 

「別にいいわよ。あの子は悪い子じゃないから」

 

何処にも人影がないのにもかかわらず、ハルは当然のごとくその声の主に対していつものように答えた。

 

『別にハルちゃんがいいなら別にいいけどさ……彼女、ディケイドの仲間ってこと忘れていないかしら?』

 

「……ディケイド、か」

 

ハルはそう言ってあの日の事を思い出す。

―――それはディケイドこと士達と、小狼達が初めて邂逅したあの時。

謎の声の主と共に、その光景を見ていたのだった。

 

「少なくとも、サクラちゃんは悪い子じゃないのは確かかな」

 

『んもう、私情なんかいれちゃって!そんなんじゃ見極められるのも見極められないわよ!』

 

「大丈夫、いざというときには倒すから……世界の破壊者、なんて触れ込みだけど、どっちが怖いか教えてやろうかしら」

 

謎の声の主と共にハルは去っていく。

その後ろ姿は、別の異形の姿を覗かせながら……。




 どうも地水です、なんだこの乙女回路!!←

前回に引き続き、ネオライダーケタロス戦。
参考にしたのはディケイド本編のDクウガVSワーム戦、クロックアップに対抗する戦闘としてはとてもいいですね。のちのジオウカブト編でも未来予知や高速移動でいろいろやってますし。

そんでもって再登場、紫電斬刃。
実は尚樹に続いて2話から登場しているネオライダーの一人で、今回小狼達にとっては再会した敵の一人です。

いつぞやの渡と同じく、行方が分かってない剣崎。一体彼はどこで何をしているのやら……。

レジェンドライダーを余韻を吹っ飛ばすかのような女子組の甘いトーク!本当にこんなのよくかけたな!?
実際のところ、サクラの小狼に対する感情についてはアニメや原作漫画だと割と少なかったりします。なのでこのディケクロ本編ではここら辺で明確に入れておきました(原作だとためにためてあの言葉が出てくるのでそれはそれで好きですが)
ドラマCDだと「好き」って単語を心の中とはいえ言ってたりしてますね、サクラちゃん。

お前は誰だ!?(アマゾ〇ズ風)
ハルが一般人らしからぬただものではない人物だと判明。
解説しておくと「……あれが、ディケイド」って言っている人がハルです。
謎の声、いったい誰なんだ…。


次回、新ライダー登場!


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第15.5話:旅人のデート

 今回は若干スランプ中のため、調子を取り戻すために閑話休題の回をご用意しました。
小狼とサクラ、二人が向かった場所は……?

最後には私地水の初めての試みとなる企画があります。どうぞお気軽にご参加ください。


 その日。

小狼とサクラは頼打地区の遊園地"頼打遊園地"を訪れていた。

入園口には二人の姿があり、お互いの顔を見合わせた。

 

「来てしまった」

 

「来てしまったね、小狼君」

 

小狼とサクラはぎこちなさそうに互いにそう言うと、そのまま手に持ったとあるパスに視線を落とす。

それは先日の事、サクラがハルと別れた後、買い物したお店で行われていた福引を回したところ、どうやら特賞の遊園地の人気アトラクション無料パスを当てたという。

最初はみんなで行こうと計画していたが、どうやらペア用として二つだけ用意されていた。

士達は羽根探しで忙しそうだし、仕方がなく夏海を誘おうとしたが……。

 

――ああ、すいませんサクラちゃん!私その日おじいちゃんに頼まれた事があるんでした!

 

――そう、ですか……

 

――代わりに小狼くんが行ってくれますよ!ね、小狼君!

 

……と、小狼がサクラの相手として一緒についてくることになった。

士達は勝手に引き抜かれた事に意見を申そうとしていたが、夏海が親指を立てて向けると何も言わなくなった。

任された小狼も夏海の押しとサクラと一緒にいることに拒めず、出かけることになった。

 

「と、とりあえず……行きましょうか?姫?」

 

「う、うん……」

 

ぎこちなさそうに小狼は声をかけ、サクラも同じくぎこちない態度で頷く。

二人は照れ臭そうな表情を浮かべながら、入園口を潜って遊園地の中へと入っていった。

 

 

―――――

 

 

まず二人がたどり着いたのは、ジェットコースターだった。

頼打遊園地の目玉でもあるこのアトラクションへやってきた。

上を見上げる必要があるほど高さを見て、サクラは驚いた表情を浮かべる。

 

「す、すごい大きい」

 

「姫、大丈夫ですか?別のものにしても俺は大丈夫ですからね」

 

「ううん、これでいいよ」

 

サクラは小狼と共に、他の乗客の後に並んだ。

数分ののちに自分達の番が回って来て、コースターの席に乗り込む。

すぐさまコースターが動き出し、高くそびえるレールの上を目指して登っていく。

 

「……」

 

「大丈夫ですか?」

 

「うん、ちょっと怖くなってきたかな」

 

「その、おれがついていますから」

 

小狼はサクラの手を握る。

サクラは少し驚くが、その後小狼の手を握り返した。

 

「小狼君の手、暖かい」

 

「姫の方もあったかいですよ」

 

二人が互いに笑顔で返し合った後、ジェットコースターがレールの頂点に達する。

そしてそのまま乗り越えて、自由落下の勢いで加速していった。

 

「わあああああああ!」

 

「きゃああああああ!」

 

二人の絶叫が他の乗客のものと共に加速しながら消えていく。

縦横無尽にレールの上を駆け巡り、超スピードを味わった。

やがて搭乗口に戻り、ジェットコースターから降りた小狼とサクラは感想を言い合う。

 

「凄かったですね」

 

「うん、あんなに早いなんて!」

 

あまりの速さに凄かったのか少し疲れ気味の小狼と比べ、対照的にサクラははしゃいでいるように見えた。

 

 

次に二人が向かったのは、コーヒーカップだった。

ジェットコースターより人が並んでなかったせいか、すぐに自分達の手番へやってきて、ティーカップ型のベンチに乗り込んだ。

並んでいた客が乗りこむと、ティーカップのアトラクションが動き出した。

周囲のが回る中、サクラが小狼に話しかける。

 

「ねぇ、小狼君。少しお話いいかな」

 

「なんでしょうか。姫」

 

「えっとね……その……」

 

サクラは言葉を詰まらせながら、小狼へ質問を投げかけようとする。

しかし、いざ言うと言いよどむ……。

暫し逡巡すると、サクラは意を決して口を開いた。

 

「しゃ、小狼君って好きな人、いるかな……」

 

「……!」

 

サクラの言葉を聞いて、小狼の口元がハッとなる。

見方を変えれば驚いているにも見える表情をしているであろう小狼はサクラの顔を見る。

少し頬を赤くして恥ずかしがっているサクラの顔が視界に映った。

 

「……いますよ、おれにも好きな人は」

 

「い、いるんだ……そっか、いたのね」

 

小狼の言葉を聞いてサクラは一瞬ビクッと身体を跳ね上がらせると、戸惑った様子を見せる。

しどろもどろになっていく様子の彼女を、ただ生暖かく見守る小狼は、何処か悲しいものを隠した笑顔で答える。

 

「でも、もう会えないんです」

 

「そ、それって玖楼国にいた人なの?」

 

「まあそうですね……おれの大切な人ですよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

サクラは肩を落とし、顔を下へ俯かせる。

それを見て、小狼は続きを語っていく。

 

「だけど、今は姫の事も大事な一人と思ってます」

 

「……ッ!!わ、私も!?」

 

「はい、姫も、ファイさんや黒鋼さんにモコナ、それにこの世界で出会った士さん達だって大切な仲間なんですから」

 

小狼はサクラに向けて暖かい笑みを向けながらそう口にした。

―――今まで旅してきた自分の旅の仲間達

―――自分達と同じく、様々な世界で旅を続ける人達

―――そしてこの世界で出会った人達

小狼にとっては、大事な人なのだ。

その言葉を聞いたサクラは少し考える仕草をした後に小狼へと言った。

 

「そっか、そうだよね。変な事聞いてごめんね?小狼君」

 

「こちらこそ満足できた答えができたのなら幸いです」

 

「うん!ありがとう!」

 

サクラは感謝の言葉を小狼へと告げる。

そうして二人が話をしているうちにアトラクションが終わる。

二人もベンチから立ち上がり、コーヒーカップから出ていく。

 

「おれ、飲み物買ってきます」

 

「私、ここで待っているね」

 

「はい、では行ってきます」

 

小狼はサクラの元から離れ、自販機の元へ向かった。

その間、小狼は心の中でサクラの事を思っていた。

 

 

(……けど、サクラはおれにとっての、一番の大切な人だ)

 

(それは今までもこれからも、変わりはしない……)

 

(この世界での戦いは今まで旅してきた世界とは違う……)

 

(もしかしたら、姫にも危ない目を遭わせるかもしれない)

 

(それでも、おれはサクラの羽根を……記憶を取り戻す)

 

 

……小狼が考えていたのは、サクラの事。

この世界にはネオライダーと怪人という驚異が潜んでおり、共に自分達にとっては危険な存在だ。

今でこそライダーの力で張り合えているが、サクラの羽根になる手がかりは未だに掴めていない。

この世界の誰かが悪用するために隠していあるのか、それとも……。

どちらにしろ、サクラの羽根を手に入れるためには戦い続けるしかない。

 

―――そんな時だった、見知らぬ人とぶつかったのは。

 

「おっと」

 

「すいません!」

 

「ふむ、初対面で口だしするのは失礼ながら言わせてもらう」

 

ぶつかった人物……フードを目深に被り、ところどころに傷が見られた服装を着用しているその青年は、小狼の眉間に指をさした。

 

「考え事をしながら走るなんてよくないぞ。眉間に皺が寄ってる」

 

「あっ……」

 

「とりあえずだ。考え事するなら喫茶店でお茶するなりして、止まって考えろよ。今後の参考にしな」

 

青年は小狼へそう言いながら、彼の元から去っていく。

小狼は呼び止めようとするがその青年は人混みの中へ姿を消えていった。

 

「なんだったんだ、あの人」

 

小狼はもうそこにはいない謎の青年の背中を見つめるしかなかった。

 

 

―――――

 

 

小狼とサクラが遊園地を楽しんでいく頃。

とある場所にて、一人の仮面の戦士の複数の怪人相手に戦っていた。

 

「ハッ!」

 

「ぐあああああっ!!」

 

仮面の戦士は飛び蹴りによる必殺の一撃を怪人達へと叩き込んだ。

怪人達は爆発し、その場から消えていく。

後に残ったのは、仮面の戦士……もとい、仮面ライダーただ一人。

その仮面ライダーは自分が手にしているものへ視線を落とす。

それは、【自分がいた世界】にて手に入れた謎の力……。

 

「……一体何なんだ?これは?」

 

―――その手には、記憶の羽根が握られていた。




 どうもお久リぶりです、地水です。新ライダー・セイバーも第一クールが終わって皆さんどうお過ごしでしょうか?

今回は小狼×サクラのデート回!まず最初に言わせてもらうと描いていてこういう初々しいカップルの描写は中々難しかったですね。
そりゃつらいのなんの、某SAOの主人公ヒロイン夫婦ならまだ仲睦まじい様子をかけますが、この二人はそうじゃないですからね。

謎のフードの青年、一体誰なんだ……?

最後に出てきたライダー、お前は誰だ!?
ということで本日12/14~12/25までどのライダーが出て欲しいのかアンケートを取ります。
出てくるのはこのライダー達!


・原点にして頂点、1号
・僕のヴィンテージが豊潤の時を迎える、G
・泥棒かと思った?オニキス
・ディケイドクロニクル初オリジナルライダー


以上の四名でアンケートを取ります。
一番多かったライダーには劇中内に出てもらいます。

それでは、また次回にて。


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第16話:誇りあるケイジタチ

 レジェンドライダー・ギャレンとレンゲルに遭遇した小狼達一行。
彼らとの友情を深め、新しい手かがりを手に入れた。
その一方では、サクラは友人となったハルに言われて自身の恋心を自覚する。
そして、ここに新たなる出会いがあった。


 ―――それは、ユウスケと小狼とファイが白井虎太郎の元へ向かっていた頃の出来事。

士と黒鋼は今日の修業を終えて、帰路についていた。

 

「しかし忍者ってのは、もっとこう忍ぶものかと思っていたんだがな」

 

「なんだ?何が言いたい?」

 

「忍者ってのはこう、分身の術とか五遁の術とか忍術を使ったり、手裏剣を飛ばしたりしているものかと思っていたが」

 

「生憎、忍者って言っても色々いる。俺の日本国にも忍術使ったり忍具使うやつもいれば、俺のような腕っぷし一つで敵を倒すヤツがいるんだよ」

 

二人は他愛ない話を繰り広げながら、道を歩いていた。

そんな中、突然誰かの悲鳴が聞こえる。

見てみると、ひとりの老婆が道に倒れており、その先では怪しい恰好の男が手提げ袋を持って逃げていた。

それを見て士は呟く。

 

「穏やかじゃないな」

 

「ほう、修業の成果を確かめるには丁度いいなぁ」

 

「やれやれ、素早いのは忍者もどこも同じだな」

 

拳を鳴らしながら黒鋼は走り出し、その後を追って士も走って向かった。

老婆の荷物を奪ったひったくり犯の男は、自分を追いかけてくる二人に気づき、急いで逃げていく。

……その様子に気づいたスーツ姿を纏った一人の男性が、倒れている老婆に近寄った。

 

「大丈夫ですか」

 

「ええ、はい。大丈夫です」

 

「あなたはここにいてください。すぐに取り返してきます」

 

一人のスーツ姿の男性は老婆を助け起こしてそういうと、泥棒を追いかける黒鋼達の後を追って男性も走っていく。

 

一方その頃、犯人は後ろから追いかけてくる士をなんとか振り切ろうと逃げ足を速めていた。

士は逃げる犯人を追い詰めながら声をかける。

 

「待ちやがれ!」

 

「な、なんで追いかけてくるんだよ!」

 

「恨むなら目の前で盗んだ自分を恨むんだな!」

 

「じょ、冗談じゃねえぞこの野郎!」

 

犯人は駆け足を速めながら、士から逃れようとする。

なんとか曲がり角を回って、逃げようとするが……。

そこには先程から見えなかった黒鋼の姿があった。

 

「よぉ」

 

「ひぃ!?ど、どうして!?」

 

「あん?木々を飛び乗って先回りしてたっていえば納得するのか?あぁ?」

 

鋭い視線を向けながら、距離を狭めてくる黒鋼。

龍に睨まれたような強張った顔で怯えながらひったくり犯は後ろへ逃げようとする。

だがそこには、追いついた士の姿があった。

 

「悪いがここは通行止めだ」

 

「ちくしょう!どけどけ!!」

 

ひったくり犯は、奪った荷物を捨てて、殴り掛かろうとする。

だが、二人が繰り出す方が早かった。

 

「「―――ハッ!」」

 

士の横蹴りと、黒鋼の突き出した拳。

どちらも顔に当たる寸前の所で止まり、ひったくり犯に風圧が襲い掛かる。

目を見開いたまま、ひったくり犯は恐怖におののいて、その場にへたり込んだ。

その後、スーツの男が一同の元へ駆けつけると、戦意喪失した犯人を取り押さえる。

 

「ひったくり犯、現行犯で逮捕、と」

 

「なんだ?アンタ警察か?」

 

「ああ、刑事をやっているものだ」

 

「そうか、あとは任せるぞ。いくぞ黒鋼」

 

士は刑事の男に対してそういうと、ひったくり犯を任せて黒鋼と共にこの場から去ろうとする。

だが、刑事の男が二人の顔を見て驚いたような表情を浮かべると、声をかけてきた。

 

「待ってくれ。君は、君達は、もしや……」

 

「「……?」」

 

 

―――――

 

 

その翌日の事。

士、ユウスケ、夏海、ファイ、黒鋼の5人はとある場所へ向かっていた。

ちなみに小狼とサクラは遊園地にて遊びに行っており、この場にはいない。

ユウスケは自分達まで連れてこられた事について士に尋ねた。

 

「士、一体どういうことだ?」

 

「どうにもこうにも、お前達も連れて行った方が話が早いと思ってな」

 

「えっ、俺達も?」

 

士の言った言葉にユウスケは疑問を持つ。

小狼とサクラの二人は……察する所、想い人同士だった様子で、たまには二人っきりにさせるのもいいだろうと、この場には呼ばれていない。

だが夏海はともかく、自分とファイも呼ばれるのには何か理由があるのだろうか。

そう思ったユウスケは士に尋ねた。

 

「なぁ、俺達に何か用でもあるのか」

 

「ある意味な。特にユウスケ、お前は驚くと思うぞ」

 

「へ?俺?」

 

ユウスケは士の言葉に眉を顰める。自分が驚くほどの何かが待ち受けているのか?

そう思いながら、士達一同はとある場所にたどり着いた。

―――そこは警視庁であった。

夏海とユウスケは辿り着いた場所に驚き、黒鋼は士達に尋ねる。

 

「おい、なんなんだここは?」

 

「なんていえばいいんでしょう、警察……悪い人を取り締まっている人達がいる所ですね」

 

「つまり、黒りんみたいな悪い顏の人が御用になるところってことだね」

 

夏海の説明を聞いてファイの茶化しに黒鋼は睨みつける。

一同は警備中の警察官に挨拶をしながら、中へと入っていく。

受付の方では、案内役の警察官が士達の姿を見つけると、駆け寄ってきた。

 

「お待ちしておりました。案内します」

 

「ああ、よろしく」

 

士が軽い言葉でそう返すと、一同は案内役の警察官についていく。

やがてたどり着いたのは、とある会議室。

中に入ると、そこには幾人にも及ぶスーツ姿の人物。

その中には、先日ひったくり犯を取り抑えたあの男の姿もあった。

 

「随分とまあ、揃いも揃って、何の集まりだこれは?」

 

「開口一番に失礼ですね。キミ……」

 

神経質そうな一人の男が、士の言動に眉を顰める。

士はその男を見て鼻で笑って返すが、夏海が親指を立てて突き出すと黙り込む。

神経質そうな男はため息をついて士達の事を訊ね始めた。

 

「一条さん、この人達がそうなんでしょうか」

 

「北条さん、あなたも監視映像で何度も確認したでしょう」

 

「そうですが……」

 

士と黒鋼が出会った男――『一条薫』は、神経質そうな男――『北条透』にそう言い返すと、士達に向き直る。

自分の名前を明かしながら、自己紹介をした。

 

「私は一条薫、警部補だ」

 

「で、警察のアンタが俺達を呼び出してまで何か用か?」

 

黒鋼は一条に対して何故警視庁まで呼び出してまでの用について聞き始めた。

 

 

 

「単刀直入に言わせてもらう。君達が未確認生命体第四号……クウガの仲間なんだろう」

 

 

 

それを聞いて、士達は騒然とする。

特にユウスケに至っては驚いた声を上げる。

 

「えっ!?」

 

「おい、クウガって、確か」

 

「確か、ユウスケ君の変身する……」

 

黒鋼とファイはクウガの名前を聞いて、ユウスケの方へ見やる。

ユウスケが変身する、仮面ライダークウガ……自分達が知る限りで心当たりがあるとすれば、彼しかいない。

"ユウスケ"という名前を聞いて反応があったのは一条もだった。

 

「ユウスケ?君、ユウスケっていうのか」

 

「はい、俺、小野寺ユウスケっていいます」

 

「そうか。―――奇しくも同じ名前か」

 

「えっ……それって一体……」

 

一条はユウスケの名を聞いて、"とある男"の事を思い出す。

ユウスケはそこに聞こうとするが、そこで北条がわざとらしく咳ばらいをする。

 

「ごほん……話を戻してもよろしいですか?」

 

「す、すまない」

 

「ごめんなさい」

 

「……で、君達の反応からすると、クウガの仲間なのは確かのようですね」

 

北条は黒鋼とファイの言葉を聞いて、クウガの仲間だと判断しながら訊ねてくる。

それを答えたのは士だった。

 

「ああ。仮面ライダークウガ……ユウスケは俺達の旅の仲間だ」

 

「なるほど、しかし解せないですね。本当にあのクウガなんですか?」

 

「あのクウガ?」

 

士の答えを聞いて北条はさらに訊ねる。

疑問符を浮かべる士と他の一同の反応を見て察して北条は補足を説明する。

 

「2000年、かつて長野県の九郎ヶ岳遺跡にて発見され、それ以降は出現して多くの犠牲者を出させた未確認生命体……グロンギ。そのグロンギと戦ったのが、第四号ことクウガです」

 

「なるほど、大体わかった。あんたらの言いたいことは分かった」

 

「あれ、ちょっと待ってください士君。ユウスケは私達と一緒に旅してきたんですよ?この世界にやってきたのってつい最近なのにおかしいじゃないですか」

 

士はクウガの事を聞いて察し、夏海の指摘をする。

確かに士達はこの世界に来たばかりだ。

だが北条達の言葉を信じるなら、少なくとも過去にこの世界でクウガが現れていることになる。

一体どういうことだ、と他の刑事達がささやく中、士がその答えを告げる。

 

「この世界にはユウスケとは別のもう一人の仮面ライダークウガがいるってことだ」

 

「俺の他にクウガが!?」

 

「要するに本来なら一人しかいないはずのクウガが何故もう一人いるのか、そしてその正体が何者なのか我々は知りたかったのだ」

 

一条が士の説明を補足するために付け加えた。

ユウスケが変身するクウガと、この世界にいるクウガ。

今現在、この世界には"二人のクウガ"が存在する……士達はその事実を知ると、顔を見合わせる。

ユウスケが士にどう説明するか尋ねる。

 

「どうする?士?」

 

「どうするもこうするも……少なくとも、俺達の事知りたいってなら、一応自己紹介しておく必要があるな」

 

「とりあえずオレ達のことは士君達の仲間ってことでいいよね」

 

「ああ、それで行こう」

 

ファイの言葉に士はそう答えると、一条達に自分達の事を話した。

小狼達の事はまた事情が違うため、今回は『士達と同じ仲間』として扱った。

自分達は"仮面ライダー"であり、次元を超えて世界を旅をしていると……。

その話を聞いて他の人々はざわつき、その中でも北条が難色な顔色を示す。

 

「別の世界から来たって……そんなSFでありそうな話、信じられるとでも」

 

「確かに信じられないでしょうね。でも北条さん、現状を見てください」

 

「何が言いたいのですか? 一条さん」

 

「クウガという現代とは逸脱した存在が過去にいた上、今はグロンギ以外にも人々を脅かす脅威は存在する。警察には対処しきれない大きな存在が……だから今更異世界や別の世界だってあるとしても、我々は信じるしかない」

 

一条の言葉を聞いて、北条は苦い顏をしながら黙り込む。

どうやら士達の言う事を世迷言と決めつけてない辺り、一条という事は信頼できる。

そう思った士はふと浮かんだ疑問を一条に質問として投げかける。

 

「その様子だと、他の未確認生命体……グロンギの他にも怪人達のことは知ってるようだな」

 

「ああ、表向きは未確認と同じものとして扱っているが、確認してはいる」

 

士の質問に対して一条は答えた後、部屋は暗くなってプロジェクターにとある映像が映し出される。

そこに映し出されていたのは、……ワーム・ファンガイア・アンノウン・ミラーモンスター・オルフェノクといったいくつもの怪人達。

そして次に映し出されたのは、怪人達と戦う仮面ライダー達の姿……その中にはクウガの姿もあった。

 

「我々警察組織が確認している未確認達と戦う戦士達、通称仮面ライダーは味方と明確に判明しているのは8人……その中にはクウガもいる」

 

「その他に、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、キバ、の7人か」

 

士は怪人達と戦うライダー達の名前を口にする。

この中に電王や士の変身するディケイドがいないのは、時間や世界にて活動しているライダーのため確認できなかったのだろうと勝手に片づける。

北条が士が口にした"アギト"という単語に反応を示す。

 

「やはり、アギトもその仮面ライダーというものに入るのですね」

 

「そうですけど、それがどうか?」

 

「いえ……失言でした、流してください」

 

ユウスケの問いにうっかりしてしまったという表情をしながら北条は一条の人へ話を促した。

一条は士達へ向けてあることを告げる。

 

「君達の事情はある程度分かった。だが、ネオライダーとは極力関わらないほうがいい」

 

「どういうことだ、それは」

 

一条の言い放った言葉に反応したのは黒鋼だった。

黒鋼に対して、一条は話を続ける。

 

「未確認生命体と結託し、さらには我々の見たこともない武装で暴れまわっている……はっきり言って、我々警察では対処しきれない」

 

「確かにねぇ、あちらさんも仮面ライダーに変身しているし……」

 

「だから俺達をこっちへ引き入れる、もしくはアイツらに抱きこまれて先を越されない様に釘を刺しに言いに来たってわけか?」

 

ファイと黒鋼の言葉を聞いて、スーツ姿の男たちは口を閉じる。

一触即発の剣呑な雰囲気が漂い始めた中、一人の人物が慌ただしく入ってくる。

一見すれば中学生にも見える女性警官……夏目と呼ばれた彼女は一条に対して焦った様子で要件を言い始めた。

 

「一条さん、大変です!頼打地区にてまた未確認です!!」

 

「なんだと!?夏目、準備を!」

 

一条をはじめとしたスーツの男たちは椅子から立ち上がり、あわただしい様子で出ていく。

未確認……恐らくは怪人が出たのだと判断した士達は自分達も向かおうとする。

その際に北条に呼び止められる。

 

「待ちなさい。もしかしなくても貴方達も行くんですよね?」

 

「そりゃまあ、聞いた以上は見過ごしておけないからな」

 

「はぁ……なんでこんな人たちがアギトのような人達なんでしょうね。ついてきなさい、警察車両で現場まで送ります」

 

士の言葉を聞いて、渋い顔をしながら五人を案内する。

何故彼があんな顔をしたのか不思議がる一同は彼についていった。

 

 




 書いていたら溜まっていた、大体5000字前後の目安で書いてます。地水です。

士と黒鋼が出会ったのは、とある警察官。
そう、ライダーでなくても戦ったあのレジェンド。
クウガ/五代雄介と共に戦った一条薫!満を持して登場!
さらには警視庁にてクウガの夏目実加ちゃん、アギトの北条透も登場!
怒涛のレジェンド登場で我ながら凄いですわ。


今回の話の主題は「警察におけるライダー達の立ち位置」。
ただでさえ怪人で手一杯なのに、怪人と結託する仮面ライダー達ネオライダーがいるため、警察は大変でしょう。
そんな中現れたのはディケクロ組一行。ネオライダーと敵対する彼らは警察勢力にとってどう目に映るのか。

次回、一条さん共闘するの巻


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第17話:混戦するセントウ

 士と黒鋼が遭遇したのは、伝説の未確認生命体4号をよく知る男・一条薫だった。
彼を始めとした警察組織と邂逅した士達は、この世界のライダーやネオライダーの事をよく知らされる。
そんな中、未確認生命体が現れたという情報が舞い込んできた。


 頼打地区のとあるビル街。

そこでは人間を求めて暴れまわる怪人達の姿があった。

最初の一体は以前にも現れた怪人……アンノウン。

もう一体は緑の蛹のような外見をした地球外生命体……ワーム。

そして最後はおどろおどろしい風体をした妖怪……魔化魍。

全く異なる三種類の怪人達は、逃げる人間達を常人を凌駕する勢いで迫っていた。

 

『Kyurrrrrrrrr!』

 

『グガァァァァァ!!』

 

現れた蟻の姿した二体の魔化魍……『オオアリの怪童子と妖姫』は逃げ遅れた人々を捕まえるべく迫っていく。

逃げ遅れた女性は恐怖に顔を歪めて悲鳴を上げる。

 

「こないで……こないで!!!」

 

『息子の……息子の餌になってくれ』

 

『腹を空かしているんだぁ……』

 

怪童子と妖姫はそれぞれ男女の声を逆に発しながら、女性に手を伸ばす。

このままでは彼女は文字通り彼らの子供の『餌食』になるだろう……。

女性の眼前まで伸ばされた……その手に、銃弾がめり込んだ。

 

『ぐあっ!?あぁぁ……?』

 

怪童子は撃たれた手を庇いながら振り向くと、けたたましいサイレン音が聞こえてくる。

そこに現れたのは、白いバイクに乗った青い装甲の纏った仮面の戦士。

第3世代型強化外骨格……『仮面ライダーG3』はその手に握ったサブマシンガン"GM-01 スコーピオン"を向けている。

その後も他のG3達が駆けつけ、目の前の怪人達にスコーピオンを構える。

 

「G3ユニット、ただいま現着。未確認生命体の総数は10……15……20」

 

「逃げ遅れた民間人を確認、救助を行います」

 

「さーてと、未確認退治と参りますか!」

 

三人のG3は手慣れた手つきで武器を装備をして怪人達に立ち向かう。

一人は弾幕を張って牽制、一人は怪童子と妖姫にタックルを仕掛け、一人は襲われていた女性を助ける。

三者三葉の戦いを彼らG3達は繰り広げていた。

 

その様子を遅れて駆けつけた士達一同と北条が見ていた。

特に【アギトの世界】にて一時的にG3ユニットの隊員として入っていたユウスケは、複数いるG3の光景を見て感心していた。

 

「すごい、G3があんなに」

 

「何を驚いているんですか?例えG3スーツを着ていても、中身は人間……未知の未確認相手には油断は禁物です」

 

驚いているユウスケに対して北条は厳しい言葉を投げかける。

確かにG3の装着者は訓練されているとはいえ中身は人間だ。

それにユウスケや士は他の世界で怪人で出会ったとき、その厄介さを知っている……ワームは羽化すれば超高速能力・クロックアップを有し、成長した魔化魍は鬼が発する清めの音でなければ倒せない。

G3だけでは対処は難しいと判断した士はユウスケ達に声をかける。

 

「ユウスケ、黒鋼、ファイ、いくぞ」

 

「ああ、俺達も戦うぞ!」

 

「仕方ねえ」

 

「夏海ちゃんは刑事さんと一緒にいてね」

 

士、ユウスケ、ファイはそれぞれディケイドライバー、アークル、サガークを腰に纏わせ、黒鋼は音角を弾いて額に翳す。

北条は夏海と共に間近で彼ら四人の姿を変えていく様子を見ている。

変身の準備を終えた四人は掛け声を言い放った。

 

「「「変身!」」」

 

「ハッ!」

 

変身を終えたディケイド、クウガ、歌舞鬼、サガはG3達と怪人の所へと向かっていく。

G3と共に戦いへと身を投じる四人の背中姿を見て北条は呟いた。

 

「あれが、彼ら仮面ライダーですか」

 

北条は自分が知る『とある戦士』の姿を彼らと重ね合わせていた。

アンノウンと戦い抜いた、自身を『ただの人間だ』と表したとある男の姿と……。

 

一方、ディケイド達四人のライダーはG3達に合流をすると怪人達と戦い始める。

ディケイドと歌舞鬼は怪童子と妖姫を、クウガとサガはワームを相手どることにした。

怪童子と妖姫は突如現れた二人のライダーに驚く。

 

『お前、鬼か?』

 

『奇妙な鬼が二人もいるぞ』

 

「こいつらが魔化魍ってやつか」

 

「修業の成果を見せるにはちょうどいい相手だ。いくぞ黒鋼」

 

ディケイドはライドブッカー・ソードモードを、歌舞鬼は音撃棒 烈翠をそれぞれ構えて、戦闘を仕掛ける。

オオアリの怪童子・妖姫は両腕を昆虫の腕のように変化させ、応戦する。

ディケイドは身を翻して避け、歌舞鬼は二本の音撃棒を交差させて防ぐ。

だが、予想以上の怪力によって軽く吹き飛ばされてしまい、よろけながらも着地をした。

舌打ちを打ちながら歌舞鬼はオオアリの怪童子・妖姫を見る。

 

「ちっ、こいつら、力が強い!」

 

「どうやら怪力が持ち味のタイプらしいな」

 

ディケイドは冷静に分析を入れながら、オオアリの怪童子の剛腕による爪の攻撃を受け流していく。

その言葉を聞いた歌舞鬼は、迫りくるオオアリの妖姫の爪を後方に飛んで避けると、一気に迫って音撃棒で殴りつける。

 

「ハァ!!」

 

『ギャッ!?』

 

太鼓を叩く要領で殴りつけられたオオアリの妖姫はそのまま殴り飛ばされてしまう。

その隣ではディケイドがヒット&ウェイの要領でオオアリの怪童子と戦いを繰り広げていた。

 

「よっと、ハッ!」

 

『グゥゥ!?変な姿に強いなんて厄介な鬼だ!』

 

「そりゃどうも!」

 

ライドブッカー・ソードモードによる巧みな剣術を披露しながら、確実に斬撃を与えていくディケイド。

オオアリの怪童子は応戦しようと口から蟻酸を吐き出して攻撃を仕掛けてくるが、ディケイドはそれを見越して一枚のカードをディケイドライバーに装填する。

 

【ATTACK-RIDE…SLASH!】

 

ライドブッカー・ソードモードの刀身に光のエフェクトが灯り、飛ばされてきた蟻酸を切り落とす。

次元エネルギーの纏ったその太刀筋で飛んでくる蟻酸を防ぎながら、ディケイドはオオアリの怪童子へ近づいていく。

 

「吹っ飛べ!」

 

ディケイドはライダーカードによって発動させた強烈な斬撃・ディケイドスラッシュをオオアリの怪童子へお見舞いする。

真面に食らったオオアリの怪童子も斬り飛ばされてしまい、妖姫共々地面へと倒れる。

体勢を立て直そうとふらつく二体の所にディケイドと歌舞鬼は同時攻撃を仕掛けようとする。

 

「いくぞ」

 

「おう。ハァァァァァ……!」

 

ディケイドはライドブッカーをガンモードに変形させ、歌舞鬼は気合を込めると音撃棒 烈翠の先端が緑色の炎が灯る。

そしてディケイドは新しいカードをドライバーに装填し、歌舞鬼と共に撃ちだした。

 

【ATTACK-RIDE…BLAST!】

 

「「くらいな!!」」

 

ディケイドの繰り出した無数に分身したライドブッカー・ガンモードの銃身から放たれる連続銃撃・ディケイドブラストと、歌舞鬼が音撃棒・翡翠を大きく振りかぶって放つ火の弾・鬼棒術 烈火弾が怪童子と妖姫目掛けて飛び掛かる。

二人の攻撃が同時に当たり、怪童子と妖姫は炎に包まれた後、焦げた木の葉となって爆散してしまった。

 

その頃、クウガとサガは蛹のワームと交戦していた。

成体と比べると脅威度は低いが、それでも何時羽化するかはわからず油断は禁物。

クウガは格闘戦が得意な赤のクウガ(マイティフォーム)による使途空拳で、サガはフェンシングスタイルによる接近戦を用いて戦っていた。

 

「おりゃああ!」

 

「ハァ!!」

 

『Kyurrrrrrrrr!?』

 

サナギのワーム達は悲鳴を上げながら反撃を繰り出そうとする。

クウガとサガは何らく攻撃を防ぎながら応戦していく光景をG3達は見ていた。

特にかつて未確認対策班と戦った未確認生命体4号(クウガ)が姿を現した事に驚いている。

 

「あ、あれって4号!?本物か!?」

 

「マジかよ、あの4号が目の前に!?すっげぇ!!」

 

クウガの姿を見て感動に浸っている二人のG3達。

そんな彼らを仲間の一人のG3がアンノウンと応戦しながら声をかける。

 

「タケシさん、ケンタロウさん、何を見ているんですか。俺達も行きますよ」

 

「ああもう後輩!わかってるって!」

 

「俺達G3ユニットの力、見せてやる!」

 

それぞれ本名で呼ばれた"タケシ"――G3-01と"ケンタロウ"――G3-02は、"後輩"と呼んだG3-03と共にスコーピオンを構える。

目の前に立ち塞がる豹に似た姿の二体のアンノウン……『ジャガーロード』に対し、引き金を引いて発砲。

赤い体色と青い体色の二体のジャガーロードは咄嗟に回避すると、赤い体色の方は二振りの剣、青い体色の方は一振りの剣を掴み、G3達に襲い掛かる。

 

『ヌゥン!』

 

「おっと!健太郎(ケンタロウ)、赤い奴はこっちに任せろ!」

 

「じゃあ俺は青いヤツだな、そっちは任せたぞ(タケシ)!」

 

振り下ろされる剣を回避しながら、G3-01は赤いジャガーロードと、G3-02は青いジャガーロードと接近戦を試みる。

残ったG3-03はスコーピオンによる援護射撃で二人のG3のフォローに入る。

 

「ハッ!」

 

『グゥ!?』

 

「ナイスだぜ!おらぁ!!」

 

援護射撃を食らって怯む赤いジャガーロードへG3-01の繰り出した拳が鋭く突き刺さる。

二振りの剣を振るって反撃を試みようとするも、後方にいるG3-03からの射撃で阻まれ、手から落とされてしまう。

その隙を見逃さなかったG3-01はスコーピオンの引き金を引いた。

 

「おらよっと!」

 

『!?』

 

銃口から放たれた銃弾が剣に当たって空中まで弾き飛ばし、それをG3-01は上手くキャッチする。

自身の剣を奪われて怒りの仕草を飛ばす赤いジャガーロードは体勢を低くして、走り出す。

目の前まで迫りくる赤いジャガーロードをその目に捉えたG3-01は、タイミングを見計らって剣を振るう。

 

『ガァァァ!!』

 

「――どっせぇい!」

 

――ガキィン、と鈍い金属音が響いた。

先程まで振るった剣で赤いジャガーロードが仕掛けてきた剣劇を受け止めると、相手の腹部にスコーピオンの銃口を突き立てる。

赤いジャガーロードは狙っているものに気付いたときには、既に遅かった。

 

「持ってけ!フルバースト!」

 

『グガアアアアアア!!!?』

 

全自動射撃(フルバースト)による銃撃が赤いジャガーロードの胴体に炸裂する。

ゼロ距離からの銃弾に逃れるすべもなく、赤いジャガーロードは頭上に光の輪を発しながらその身は爆散した。

一方、G3-02は青いジャガーロードから繰り出される剣による攻撃を避けていた。

 

『シャッ!!』

 

「あぶなっ!?お前銃刀法違反知らないのかよ……っと!」

 

振り下ろされる剣を咄嗟に蹴り飛ばし、その勢いを利用したままの回し蹴りをお見舞いする。

青いジャガーロードはそれを食らって身体がよろめくが、すぐさま体勢を立て直すと叩き斬ろうと剣を振り上げる。

 

「やっば……!」

 

「ケンタロウさん、これを!」

 

「おっと、助かったぜ!」

 

G3-03から投げ渡された装備を受け取ると、咄嗟に受け取り、右腕に装着。

振り下ろされたジャガーロードの剣を"それ"で受け止める……すると、何かが削られていく音が響き渡り、両者の足元に切れた剣の一部が突き刺さる。

 

『ッッ!?』

 

「へへっ、警察の装備をなめんじゃねえぞ!」

 

G3-02は右腕に取り付けた刀剣型武器"GS-03 デストロイヤー"を構えながら、自分の自慢の武器の剣を破壊されて驚く青いジャガーロードへ自慢げに言葉を投げかけた。

それを聞いた青いジャガーロードは剣を投げ捨てると、両手の爪を構えながら飛び掛かる。

一瞬身構えるG3-02、だがそこへG3-03の言葉が飛んでくる。

 

「ケンタロウさん、構わず走ってください……発射!」

 

その直後、G3-03の手元にあるスコーピオンに連結したグレネードランチャー"GG-02 サラマンダー"から放たれた一撃が青いジャガーロードへ炸裂。

撃ち落とされたジャガーロードは地面へと落ちてゆき、そこへ全力疾走のG3が地面を蹴り上げる。

大きくジャンプしたG3-02はデストロイヤーを落ちてくるジャガーロード目掛けて振り上げる。

 

「オラァ!!」

 

一閃、そして爆発。

青いジャガーロードを倒したG3-02は上手く着地すると、ガッツポーズを披露する。

 

「おっしゃあ!未確認生命体、撃破ァ!!」

 

警察組織の人間にしては大げさな仕草を見せるG3-02。

そんな彼らをため息をつきながらも、北条は賞賛の言葉を送った。

 

「小沢さんの今の後継者か。なんともまあ、毎度のことながら彼らと非て似なる人達ですね」

 

「え、小沢さんって?」

 

「ああいや……なんでもないです」

 

夏海に聞かれ、咄嗟に誤魔化す北条。

今のG3ユニットに聞かれれば、どういわれるか分からないからだ。

 

残る怪人はサナギのワームの群れのみ。

弱らせた彼らをクウガとサガが次なる攻撃を仕掛けようとしていた。

 

「ファイ、いくぜ!」

 

「うん、こっちも決めよう」

 

クウガの言葉にサガが同意し、フエッスルをサガークへ挿そうとしていた。

だがそこへ、一振りの剣がサガへと迫り、それに気づいたクウガは咄嗟に飛び出る。

 

「危ない!超変身!!」

 

紫のクウガ(タイタンフォーム)へと変わったクウガは、分厚い装甲を用いて何とか弾いた。

弾かれた剣は回転しながら遠くの地面へと突き刺さり……それを掴んで引き抜いた人物がいた。

クウガとサガは【その人物】の顔を見て驚く。

何故なら、それは二度も出くわした時に見ていたからだ。

 

「おう、また会ったな。見た所あの少年は今回いないようだな」

 

「お、お前は……確か紫電!」

 

「そう、ネオライダーの紫電斬刃、覚えてくれてありがとうな」

 

紫の髪と紫色の瞳を持った黒服の男……紫電斬刃は引き抜いた片刃の剣型デバイス・サソードヤイバーを肩に担ぎながら口角を上げた。

最初にこの世界へやってきた時は銀色の蠍怪人(スコルピオワーム)として、次のケタロスと戦ったときは人間の姿として現れた。

三度目に現れた彼に身構えるクウガとサガ。

そんな二人を見てディケイドと歌舞鬼が合流する。

 

「なるほど、大体わかった。あの時の蠍のワームか」

 

「あん?あの時の銀色のヤツか」

 

「貴様がディケイド……先日はお前の仲間が武田が世話になった。丁度他も含めてお礼参りでもしようかと考えていたんだ」

 

サソードヤイバーの剣先をディケイド達へと向ける。

ディケイドと歌舞鬼も先程のクウガ達と同じく身構える……だがそこへ、場違いな元気のいい声が聞こえてくる。

 

「ちょっとちょっと斬刃ー!私も仲間にいれてよー!」

 

「……風嵐、今カッコよく決めようとしてるんだから抱き着くな」

 

「えー、いいじゃーん!減るもんじゃないしー!」

 

いつの間にか現われて斬刃に抱き着く水色の髪と水色の瞳が特徴の女性……水野風嵐は、彼の肩に自分の顎を乗せながらじゃれつく。

目の前で起きる二人のやり取りに戸惑う一同。

だが無理やり風嵐の顔を押しのけながら、斬刃は鋭い視線でディケイド達に言い放った。

 

「G3ユニット、お前達はネオライダーにとっては危険な障害だ」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

「それは同感だね。警察関係のライダーってのは厄介そうだし……だから倒しちゃうね?」

 

風嵐の無邪気そうな声音と冷徹な言葉と共に、斬刃と風嵐はそれぞれの相棒を呼び出す。

斬刃はサソードゼクターを、風嵐はドレイクゼクターをそれぞれのデバイスに装着。

そして二人は叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

【HEN-SHIN】

 

斬刃はいくつものチューブが通った装甲を、風嵐は潜水服とヤゴを模した装甲の纏っていく。

仮面ライダーサソード・マスクドフォーム、仮面ライダードレイク・マスクドフォーム。

分厚い装甲を纏った仮面ライダーとして変身を遂げると、ディケイド達に襲い掛かっていった。




 今年もあとわずか、変わらず投稿しております地水です。

今回襲っていたのはアンノウン・魔化魍・ワームの三種類。
アンノウンからはジャガーロード。
青い方はパンテラス・キュアネウス、赤い方はパンテラス・ルベオー。
どっちもアギトの劇中だと接近戦を得意とするアンノウンですね。

魔化魍の方はオオアリの怪童子と妖姫。
腕を変化させた昆虫の爪による怪力が特色の怪人です。ディケイドに対して蟻酸吐いていましたが、これに関しては『劇中で披露したか覚えていないが子供(=オオアリ)が蟻酸を吐けるなら、親である怪童子と妖姫も吐けていいんじゃないか』ってことで表現しました。

地味にCLAMPサイド枠で登場しているのは、この世界における『威&健太郎』の二人。
学園特警デュカリオンの主役であり、ツバサでも異世界の同一人物として情報屋の助手として登場している。
デュカリオンが装着タイプのヒーローなので、G3ユニットの装着員として採用しました。

後輩G3ことG3-03、キミは一体何者なのだ……?

次回、ネオライダーのサソード&ドレイク参戦!


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第18話:銃弾とヤイバ

 現場に駆け付けたディケイド一行はG3ユニットと共に戦うことになった。
ディケイドと歌舞鬼は魔化魍を、G3三人組はアンノウンを撃破。
残るワームを前に現れたのはネオライダーの二人であった。


 突如現れたネオライダーのサソードとドレイク。

ディケイドと歌舞鬼にはサソード、クウガとサガにはドレイクがそれぞれ襲い掛かっていた。

サソードはサソードヤイバーを振るい、ドレイクはドレイクゼクターによる射撃で応戦していた。

 

「オラオラオラ!」

 

「えいえいえいっと!」

 

サソードの巧みな剣術でディケイドと歌舞鬼の攻撃を捌きながら剣劇をぶつけ合い、対しドレイクは連射による弾幕でクウガとサガを牽制していた。

ディケイドはライドブッカー・ソードモードを用いて、サソードヤイバーをぶつけ合う。

ディケイドは鍔迫り合いを繰り広げながらサソードに訊ねた。

 

「さっきの怪人どもはお前達の連れか?」

 

「まあな、怪人達をお前らのような奴らから守るのもネオライダーの仕事だ!」

 

「ハッ、人を襲う怪人達を守るって聞いたことがないな!」

 

ぶつかりあうディケイドとサソードは、一歩も引かず刃をぶつけ合う。

そこへ歌舞鬼がディケイドへ向けて叫んだ。

 

「おい、避けろ!」

 

「おっと……!」

 

「地竜・陣円舞!」

 

歌舞鬼が音叉刀を地面を削るように振るって扱う技を使って、ディケイドと取っ組み合うサソードへ飛ばした。

ディケイドは咄嗟に避け、サソードはサソードヤイバーで防ぎながらもその攻撃を受けた。

マスクドフォームによる分厚い装甲によっていくつか威力は軽減されたが、それでも効いたのかサソードは装甲に受けた傷を見ながら呟いた。

 

「なるほど、ライダーとしての力とは別に自分自身の剣技があるとはな」

 

「チッ、分厚い分技の威力が半減されたか」

 

「ディケイドも油断できないが、お前の剣は重みが違う……だったら!」

 

サソードは上半身の装甲に通っているチューブの触手を展開させ、それを用いてディケイドを捕縛する。

ディケイドは脱出しようと藻掻くが、間髪いれずにサソードゼクターの尾を押す形で操作する。

 

「キャストオフ!」

 

【CAST-OFF】

 

【CHANGE-SCORPION】

 

「なっ!? 身動きが!?」

 

サソードはディケイドにチューブを纏わせた状態のままキャストオフした。

弾き飛ばされた装甲はディケイドと歌舞鬼に襲い掛かり、さらにディケイドはチューブと繋がった装甲が身体に纏わりつき、身動きが取れなくなってしまう。

重厚な形態と打って変わってスマートな形態となった"サソード・ライダーフォーム"は、歌舞鬼に斬りかかっていく。

 

「一つ、手合わせ願おうか!」

 

「たく仕方がねえな……ハッ!!」

 

ディケイドを助ける暇がないと見た渋々と歌舞鬼はサソードと対峙して剣と剣をぶつけ合った。

 

一方その頃、クウガとサガはドレイク相手に苦戦を強いられていた。

クウガ・タイタンフォームは近くに落ちていた瓦礫の中にあった鉄屑を拾ってタイタンソードに変えると、自慢の防御力で耐えながら近づいていく。

 

「おりゃあああ!!」

 

「甘い!!えいっと!!」

 

ドレイクはクウガの振り下ろすタイタンソードを軽くかわしながら、クウガへ向けて銃撃を繰り返す。

タイタンフォームの防御力で防がれてはいるが、決して良くない状況なのは目に見えている。

現にドレイクは横から飛んでくるサガのジャコーダービュートによる鞭攻撃をドレイクゼクターの羽根の刃で捌きながら応戦している。

 

「よっと!」

 

「ちょっとちょっと、邪魔しないでよ!!」

 

「生憎とそういうわけにはいかないんだよねー」

 

「お互い様にね!」

 

ドレイクは銃口を向け、光弾をサガへと放った。

そのまま光弾が直撃し、火花を散らしながら吹っ飛ばされてしまう。

攻撃を受けたサガを見てクウガが叫ぶ。

 

「ファイ!」

 

「君も受けな!クウガ!!」

 

「くっ!?超変身!」

 

クウガはドレイクの銃撃を受け切った後、隙を付いてタイタンフォームから姿を変える。

機動力の高いドラゴンフォームへと変わり、ドラゴンロッドによる素早い棒術で応戦を始めた。

 

突如ネオライダーの参戦により、物陰に避難しながら戦いの様子を見ていた北条と夏海は彼ら二人は騒然としていた。

G3の三人はワーム達の対処に追われ、身動きができない。

苦虫を噛み潰したような顔を向けながら北条は呟く。

 

「最近の傾向からわかってはいましたが、出てきましたか!」

 

「士君達、大丈夫でしょうか……」

 

「私達が心配したところで戦っているのは彼らです。僕らにできることは……」

 

北条は夏海にそう言いながら、手元にある拳銃に視線を落とす。

対未確認用に調整された装備だが、それでもネオライダーに通じるかどうか怪しい。

それでもないよりはマシだと北条は構えようとする……そこへ、無線機から通信が入る。

相手は一条からだった。

 

『こちら一条、配置につきました』

 

「ッ!!一条さん!」

 

『状況はこちらでも把握している。今すぐ応戦に出る』

 

通信越しの一条の言葉を聞いて、とりあえず安心した表情を浮かべる北条。

それを見て、夏海は訊ねる。

 

「そういえば、一条さんっていうあの刑事さん。一体どこに?」

 

「彼ならいますよ。一緒に戦っていますから」

 

 

―――――

 

 

ディケイド達がネオライダーと戦っているときに戦っている少し離れたビルの屋上。

そこには一人の仮面の戦士が重火器を構えて狙いを定めていた。

G3に酷似した姿形を持つその仮面の戦士……そのオレンジの複眼で捉えたのは、クウガを追い詰めるドレイクの姿。

銃撃でクウガを追い詰めるネオライダーのボディを狙って、引き金を引いた。

 

「……!」

 

ダァン、と銃撃音と共に飛んでいくライフル弾は音速を超えた速度で向かっていき、遠くの地上にいるドレイクのボディへと直撃する。

予想外の狙撃を受け、ドレイクの身体に装甲越しで衝撃が襲う。

 

「ガッ!?」

 

「何!?風嵐!!」

 

「だぁっ!?テメェ!」

 

怯んだドレイクが視界に入り、歌舞鬼を押しのけて彼女の元へと向かう。

その光景を見て、G3-03の手によってようやくチューブの拘束から助け出されたディケイドは『あの時』の事を思い出す。

 

「今のは、あの時の……!」

 

それは幽汽との戦いの時、とどめを刺されそうになった小狼を助けた謎の狙撃。

あの時の狙撃によって小狼は助け出され、撤退することができた。

その狙撃手について気になっていたが、その答えは意外にもG3-03の口から明らかになった。

 

「G5……一条さんが間に合ったか」

 

「一条……あの時の刑事が?」

 

そう思って、ディケイドは仮面の複眼を見て、遠くに立つビルの屋上にいる狙撃手の姿を見る。

そこにいたのは、白と黒を基調としたG3に酷似した姿を持つ仮面ライダー……『仮面ライダーG5』が大型ライフルを構える姿があった。

一条が装着したG5は、大型ライフル"GR-07 ケイローン"を構えて次の狙いを定める。

 

「……!」

 

再び引き金を引いて狙い撃つG5。

放たれた弾丸はドレイクを庇うサソード目掛けて飛んでいく……対し、サソードは居合の構えを取った後、【何か】を捉えてサソードヤイバーを抜刀する。

 

「そこだ!」

 

一閃。

紫の残光が自分へ飛んできたライフル弾を切り裂き、後方の地面へと着弾する。

その場にいた一同すら目を見開いて驚く業を披露したサソードはドレイクを抱えて遮蔽物のある場所までその身を隠す。

サソードは痛がるドレイクに様子を伺う。

 

「大丈夫か?」

 

「いったたたぁ……マスクドフォーム越しでもこれはヤバイわぁ」

 

「そんな軽口叩けるなら大丈夫だな」

 

「ちょっと、もう少し心配してよ」

 

冷たくあしらわれた事に抗議するドレイクを差し置いて、サソードは暫しこの状況をどうするか考える。

元々怪人達の監視役として見ているだけのつもりで来ていたのだったが、G3ユニットの参戦に加えてディケイド達の参戦で怪人達が劣勢に追い詰められたため、戦うことになった。

アンノウン(オーヴァーロード)も魔化魍の童子と姫もやられた今、残されたのはサナギのワーム達のみ。

G3ユニットならまだしも、ディケイド達がいる中で彼らが成虫になるまで待つ時間はない。

そう思ったサソードは【ある事】を思いつく。

 

「風嵐、お前はマシンゼクトロンに戻って、積んである『アレ』を取って来てくれ」

 

「積んであるってあれを?いいの?」

 

「構うものか。俺達の目的は……」

 

「うん、覚えてる……それじゃあ行ってくる!キャストオフ!」

 

【CAST-OFF】

 

【CHANGE-DRAGONFLY】

 

【CLOCK-UP】

 

ドレイクはドレイクゼクターを操作して、上半身を覆う装甲を飛散……マスクドフォームからライダーフォームへ変わるとクロックアップを用いてこの場から離れた。

一方サソードは再び一同の前へ出てくると、サソードヤイバーを上へ向けて叫んだ。

 

「ワームたちよ!我の元へ集え!!」

 

『『『Kyurrrrrrrrr!』』』

 

サソードの言葉に賛同するかのように鳴き声を上げているワームたちはG3達との応戦をやめて彼の元へと集う。

ディケイドとクウガは他の仲間達と共に集まり、サソードの出方を伺う。

 

「アイツ、何をする気だ?」

 

「みんな、気をつけろ!」

 

謎の行動に警戒するディケイド達。その一方でサソードはサソードゼクターの尾を引き抜いて押し出す形で操作し、必殺技を発動させる。

 

「ライダースラッシュ!」

 

【RIDER-SLASH】

 

サソードはサソードヤイバーの刃先に集約させて光刃を形成して放つ斬撃『ライダースラッシュ』を発動。

円形状に飛ばしたいくつもの斬撃波がディケイド達へ迫る。

 

「全員伏せろ!!」

 

ディケイドの言葉に従ってクウガを始めとしたライダー達は伏せてライダースラッシュの斬撃波を回避する。

周囲へ着弾し爆発が起き、その余波で爆炎が辺りを包む。

視界が煙と炎に覆われてしまい、迂闊に身動きができなくなってしまう一同。

 

「うわぁ、真っ暗だねぇ……一体どこから不意打ちを」

 

「いや、そうじゃねえな」

 

辺りを探るサガに対して、歌舞鬼が否定の言葉を呟いた。

やがて視界が晴れると、……そこにはサソードと彼が集めたワームの姿がなかった。

恐らく先程の爆炎に紛れて何処かへ消えたのだろう。

クウガは拍子抜けしたような声を上げる。

 

「退散したのか?しかしなんで……」

 

「さてな、ネオライダーについては探らないけないことが多いようだな」

 

ディケイドは未だにネオライダーの目的が見えない事を不満そうに呟く。

その隣ではG3達が未確認生命体が退散したことに一先ず危機は去ったと安堵する。

 

遠くの方で戦いを見守っていた夏海と北条も一息ついた。

―――その時であった、地面が揺らいだのは。

 

「きゃっ!?」

 

「なんですか、この揺れは!?」

 

北条は突然発生した地鳴りと揺れに驚き、何か起きているのか周囲を探る。

すると、ディケイド達の前方のコンクリートの地面が砕け散り、そこから『何か』が出てくるのが見えた。

北条は這い上がってくるそれを見て叫ぶ。

 

「あ、あれはなんなんだ!?」

 

『ギリギリギリギリ……!!』

 

 

―――――

 

 

遠くのビルの方にもG5……一条もその光景を確認していた。

G5のサポートのために傍らにいた夏目が出現した『ソレ』を見て叫ぶ。

 

「一条さん!あれは……!!」

 

「巨大な未確認生命体……!」

 

現れたのは巨大な蟻の形をした怪物……魔化魍の『オオアリ』。

硬い地面を砕き割るように現れた二体のオオアリは巨大な大アゴを歯軋りさせながら、ディケイド達へ襲い掛かる光景が目に見えた。

ディケイド達はそれれぞれの武器で応戦しているが、決定的な有効打にはならない様子。

G5はケイローンを構えて、その大きな頭部を狙って引き金を引いた。

銃弾はオオアリの頭部に直撃して一部が抉れる……だが、一瞬怯んだ程度で傷を再生させながら再びディケイド達へ蟻酸を吐きながら足の爪で襲い掛かっていく。

それを見たG5と夏目は驚く。

 

「そんな……G5の装備が効かないなんて!」

 

「あれは俺達の知っている未確認じゃない。現代兵器じゃ通じないということか」

 

「一条さん、私達は……!」

 

「諦めるにはまだ早いぞ、夏目」

 

自分達が知っているグロンギとは全く異なる未確認生命体に消沈しかける夏目に対し、G5の言葉が飛ぶ。

G5は援護射撃を続けながら、彼女に言い放った。

 

「4号が、クウガがまだ諦めずに戦っている……アイツと同じクウガが誰かの笑顔を守るために目の前で戦っている限り、俺達が先に諦めちゃならない!」

 

「一条さん……そうですよね、私達はまだ、戦える!」

 

夏目はケイローンの弾薬をG5に渡し、それをケイローンにセット、再びオオアリへ向けて狙撃する。

今のところは決定打にはならないが、手足を狙って動きを封じる。

それまでに、打開策を見つけなければ……。

 

――その時、二人の頭上を黒い影が通り過ぎた。

 

G5と夏目は思わずその"黒い影"の視線を覆う。

高速で飛んでいく【ソレ】はディケイド達とオオアリがいるビル街へ向かっていく。

夏目はそれを見て、驚いた表情を浮かべた。

 

「あれってまさか……!」

 

魔化魍という魑魅魍魎の存在が巡り合った今、ディケイド達へ向かっているのは何者か。

それを知るのはG5を装着した一条と夏目の二人しかこの場にはいなかった。




 気付けばそろそろ投稿して一周年、知人に言われて気づいた地水です。

今回本格的にディケイドと遭遇した紫電斬刃と水野風嵐。
実は古巣時代にやっていたサソードとドレイクが主役でやっていたカブトのオリ主の二次小説のオマージュキャラです。
今となっては消えてもう読めなくなってしまったですが、せめて何らかの形で残したいなと思って出来上がったのがこの二人ですね。

何気に出てきた一条さんが装着したG3の後継機『仮面ライダーG5』。
見た目は白黒を基調としたG3-Xですが、特段これといった特徴的な能力はないですが、新型武器・ケイローンと一条さんの射撃の腕前で作中トップレベルの強いライダーになりつつあります。
幽汽から小狼を助けた狙撃も一条さんのG5の仕業です。
鬼に金棒ってこういう事ですね!
解釈違いの方はすいませんです……。

清めの音でしか倒せない魔化魍・オオアリ登場、しかも2匹。
有効打のディケイドと歌舞鬼がいるとはいえ、苦戦は必至。

次回、馬の鎧、再び


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第19話:鉄騎のソウコウ

 蠍の凶刃と蜻蛉の凶弾。
旅人たちに容赦なく襲い掛かるネオライダーの刺客達
彼らを救ったのは、伝説の英雄が装着した次世代五番目の『仮面ライダーになろうとする者』。
形勢は逆転……するかと思われたその時、地の底から魔の者が蘇る



 ディケイド達が怪人達と戦っている同じ頃。

東京都の城南地区にある"城南大学"のある研究室。そこではとある人物が日々研究に勤しんでいた。

 

「ふぅ、一息いれるか」

 

部屋の主であるその女性……『沢渡桜子』はパソコンの作業を終えて席から立ち上がる。

8年前までは大学院生だった彼女も、今では母校であるこの大学で准教授として教鞭を執っている。

部屋に備え付けられたコーヒーメーカ―を使って、ブラックコーヒーを入れながら休憩に入った彼女はふと新聞に目を配る。

そこには『ネオライダーまたもや出現』という記事が大々的に描かれていた。

 

「……なんだか、あの時以上に嫌な世の中になっちゃったわね」

 

渋い顔をしながら、桜子は9年前に起きた未確認生命体(グロンギ)による殺人ゲームの事件を思い出す。

あの時は『自分の友人』が現代に蘇った戦闘種族と戦うという大きな関わりを持つことになり、放っておけなかった彼女は手がかりになる古文書の解読や情報を集めていた。

1年間という戦いの末、何とか人間とグロンギとの戦いは終結……それから桜子自身が関わる事が少なくなった。

あれからもグロンギの他にアンノウンと呼ばれる未確認生命体が出た様子だが、そちらについては詳しい事は知らない。

 

9年という歳月の後、その間にグロンギ以外の全く新しい『未確認生命体』が各地にて出現した。

ある時は妖怪のような大きな怪物、ある時は死んだ人間が灰色の怪人となる、ある時は昆虫の特徴を模した地球外生命体、ある時は極彩色の体色を持つ吸血鬼……そんな都市伝説のような信憑性の薄い情報が彼女の耳にも届いている。

しかしグロンギという未知の生命体に関わった人間として、その未確認生命体達が嘘だとは思えなかった。

おまけに先程出た『ネオライダー』なる武装組織が暴れまわり、さらには未確認生命体と共に行動しているという噂まである。

……これでは、グロンギの時より酷いと言いようがない情勢になっている。

 

「不安だな……こんな時、彼ならどうするのかな」

 

彼女は今もこの広い青空の下で旅を続けているであろう『彼』の事を思い浮かべながら、コーヒーを啜る。

そんな中、一人の学生が慌ただしい様子で入ってきた。

 

「沢渡教授!大変、大変なんです!」

 

「ちょっとどうしたの?そんなに慌てて!」

 

「ゴウラムの石が!また光り始めたんです!!」

 

桜子はそれを聞いて、驚きの表情を浮かべる。

―――それは、最近の出来事。役目を終えて眠っていたはずの【超古代の生命メカ】に埋め込まれた石が光出したのだ。

それも一度ではなく、二度、三度も光が灯るときがあった。

まるで、『何か』と呼応するかのように。

何かを感じているのだと思った桜子は生命メカ……『ゴウラム』を保管室から出し、広い倉庫へと移して何かが起きるまで傍観しているつもりだった。

そして今、何度目かのゴウラムの石が光り始めた。

すぐさま研究室から出て、倉庫へと走って向かった桜子。

そこで待っていたのは、今までより緑色の光を石から放つゴウラムの姿であった。

 

「これは……!」

 

「さっきニュースで未確認生命体が出たって言っていました!もしかしたらそれに関係が!」

 

「私達ができることは……今すぐ倉庫の扉を開けて!ここの被害が出る前に!!」

 

「は、はい!」

 

桜子の指示に従い、何人かの学生達は急いで倉庫の扉を開ける。

その瞬間であった……ゴウラムの背中の羽根が大きく開いたのは。

ゴウラムは昆虫特有の羽ばたく音を鳴らしながら浮かび上がり、そのまま倉庫の扉を抜けて外へと出ていく。

桜子は続いて外へと出ていき、大空へ飛び立ったゴウラムの姿をその目で見つめていた。

 

「ゴウラムが動き出したってことは……4号(クウガ)が、彼が戻ってきたの?」

 

多大な不安と一筋の淡い期待、入り混じった二つの気持ちを抱えながら桜子は青空へと消えていくゴウラムの姿を見送るしかなかった。

 

 

―――――

 

 

ディケイド達四人のライダーとG3達警察組織のライダーは突如現れた魔化魍・オオアリに苦戦を強いられていた。

ディケイドはライドブッカー・ガンモードで牽制しながら悪態づく。

 

「くっ、なんでよりにもよって二体もいるんだ!」

 

一体だけなら歌舞鬼と協力して倒せるならまだしも、今回出てきた数は二体。

オオアリ達は餌である人間を求めて建物の一部を壊しながら暴れまわっており、自分達二人だけでは手が付けられない。

しかし、魔化魍を倒すには物理的攻撃だけでは難しい……この場で完全に倒すことができるのは清めの音を発する鬼である歌舞鬼か、その特性を無視して倒せるディケイドのみ。それ以外だと例え必殺の一撃を食らってもまた元通りになる。

どうにかしてオオアリをどうにか対処にディケイドは歌舞鬼へ声を飛ばす。

 

「おい、黒鋼!片方は任せた!俺はもう一つの方に相手する!」

 

「それは構わんが……お互いに一匹一人で大丈夫か!?」

 

「今この場でこいつらを倒せるのは俺達だけだ、やるしかないだろ!」

 

ディケイドはそう言いながら、再びライドブッカー・ガンモードによる銃撃を再開する。

歌舞鬼も音撃棒・烈翠を構えて火炎弾を繰り出して二匹のオオアリと応戦を図る。

その一方ではクウガとサガはG3達と共に出方を伺っていた。

クウガはマイティフォームに戻り、サガと相談する。

 

「ファイさん、これ、どうする?」

 

「いやはや、いろんな世界回ってきたけどこういうのに何度も出くわすとはね」

 

「響鬼の世界じゃこういうのは日常茶飯事だったけど……とにかく、俺達が引き下がるわけにはいかない」

 

クウガとサガはオオアリの進攻を止めるべく、近づいて攻撃を仕掛ける。

G3達も自身達が持つスコーピオンやサラマンダーを駆使して注意を引いていた。

 

「くっ!こんなの聞いてないぞ!」

 

「こんなデカブツ相手がしかも二体!どう対処すりゃいいんだよ!」

 

「やるしかない……俺達の背にはみんながいるんだ」

 

戸惑いながらもスコーピオンを発射し続けるG3-01とG3-02、今もこの場所から逃げているであろう一般人達の事を思いながらサラマンダーで狙い撃つG3-03。

三人のG3による連携攻撃により、オオアリの一体は怯む……だが、それだけだ。

銃撃をまともに受けているにも関わらず、何ともないように暴れまわっている。

このままではジリ貧だ……せめて、大きな隙をつくれば打開策はあるのだが……。

 

―――その時だ、ディケイドとクウガの元に夏海と北条の声が聞こえてきたのは。

 

「士君!ユウスケ!刑事さんが!」

 

「夏海?」

 

「夏海ちゃん!?」

 

「そこの二人!一条さんから連絡です!受け取りなさい!」

 

北条は自身の持っていた無線機をクウガへと投げ渡す。

何らくキャッチしたクウガは無線の相手のG5(一条)へと連絡へと繋げると声が聞こえてきた。

 

『小野寺ユウスケ!』

 

「は、はい!」

 

『今そっちに増援が向かった。目視で確認できるか!?』

 

「増援!?一体誰が……」

 

クウガは空を見上げると、黒い影が通り過ぎる。

その黒い影……黒のボディに金色のパーツを持ったそのクワガタムシの外見の巨大なメカは、二体のオオアリに突撃して激突した。

二体ごとその巨躯を仰向けへと横転させた。

ディケイドは突如やってきた【それ】を見て、名前を口にする。

 

「あれは確か……ゴウラム!?」

 

「士、アレを知ってるのか?」

 

「そうか、お前は知らないのか。あれはゴウラム……かつて古代のクウガが使っていた、馬の鎧だ」

 

「馬の鎧だって?」

 

クワガタムシ型のメカ……ゴウラムを見て、クウガは驚く。

そのゴウラムはディケイドとクウガ達の目の前に浮かぶように現れ、オオアリと対立するように滞空している。

無線越しのG5の言葉がクウガへと投げかけられる。

 

『君が本当に別の世界のクウガというなら持ってるはずだ。ゴウラムと融合するアレを』

 

「融合……馬の鎧……まさか……!?」

 

「なるほど、大体わかった!」

 

無線越しのG5の言葉を聞いてクウガは閃き、その意図を悟ったディケイドはある事をする。

銀色のオーロラが現れ、その中から出てきたのは……ユウスケが普段乗っているバイク・トライチェイサー2000。

元々はクウガの世界で使われていた白バイであり、クウガの乗るとして使われていた代物だ。

ユウスケが世界の旅に出る際に共についてきた愛機として使われていたそれをディケイドの有する"世界を渡る能力"を応用してここに出現させたのだ。

ディケイドはクウガに向かって叫ぶ。

 

「ユウスケ、お前はお前のバイクに乗れ!」

 

「ありがとよ、士!」

 

ディケイドの言葉を聞いたクウガは、トライチェイサー2000に乗りこんだ。

するとゴウラムの上半身と胴体が二つに分かれ手変形、トライチェイサーと合体する。

ゴウラムの巨大なキバを有した戦闘マシン『トライゴウラム』が完成し、クウガは驚きの声を上げる。

 

「これが、馬の鎧……!」

 

「トライゴウラム、丁度いい。魔化魍相手にはこの馬力が必要になりそうだ」

 

そういいながらディケイドはトライゴウラムの後方部分に立つ形で乗りこむ。

ディケイドを乗せたクウガのトライゴウラムは発進し、オオアリの一体へと突っ込んでいく。

 

「いくぞ士!振り落とされるなよ!!」

 

「ああ、いくぞユウスケ!」

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DECADE!】

 

ディケイドは自身のドライバーにカードを装填し、発動させる。

クウガの駆るトライゴウラムの進行方向上にカード型のエネルギーが発生し、それを潜り抜けていく。

ディケイドの次元エネルギーの力と、トライゴウラムの前方に集まった封印エネルギー。

二つの力が融合し、マゼンタ色の光に包まれたトライゴウラムがオオアリへと迫る。

 

『ギリギリギリ……!?』

 

「「いけぇーーー!!!」」

 

マゼンタ色の光に包まれたトライゴウラムの突撃『トライゴウラムアタック』がオオアリに直撃。

数十メートルも押し出した状態が続いた後、オオアリは胴体と上半身が泣き別れになりながら爆散する。

その巨体は枯れた木の葉となりながら消えていった。

 

オオアリの一体が消えたことにより形勢は変わっていく。

G3-01とG3-02は左右から仕掛け、右腕につけたフックのついた射出武器"GA-04 アンタレス"を構える。

 

「銃器が効かないならば!」

 

「これならどうだってんだ!」

 

射出されたワイヤーフックがオオアリの節足に絡ませて、動きを封じる。

身動きが取れないオオアリは蟻酸を吐いて溶かそうと口を開くも、そこへジャコーダービュートの赤い刀身が大アゴに絡みつく。

 

『ギギギギギリ!?』

 

「おっと、そうはさせないよ……!」

 

「ふんぬぅ!」

 

サガとG3-03は協力してジャコーダービュートを掴み、口を開かない様に抵抗する。

そうして身動きが取れなくなったオオアリの背中へ、歌舞鬼が飛び乗った。

 

「悪ぃな、誰も殺させずに戦うってのは難しいんでな」

 

腹部に取り付けられた音撃鼓をオオアリの背中へ取り付ける。

巨大な大きな太鼓となり、音撃棒・烈翠を構えた歌舞鬼は高らかに叫んだ。

 

「音撃打・業火絢爛!」

 

 

業火絢爛

 

 

音撃棒・烈翠で演奏するように叩き込んでいく歌舞鬼。

その度に桜吹雪の花弁が舞い、周囲を彩っていく。

対しオオアリは歌舞鬼の放つ清めの音が効いており、苦しそうな声を上げる。

やがて最後の一撃まで決めるところまで辿り着き、音撃棒・烈翠を大きく振り上げる。

 

「―――ハァ!!」

 

ドォン、と腹の底から響くような太鼓の音が響いた後、オオアリは爆散。

木の葉と土くれとなって、その身は崩れていく。

上手く着地した歌舞鬼は、魔化魍だった残骸を見て呟く。

 

「コイツが魔化魍、この世界の妖魔か」

 

「お疲れ、黒様」

 

「おう」

 

歌舞鬼はサガの労いの言葉に短くそっけなく返した。

G3達は二体のオオアリを倒したディケイド一行を見て、関心を覚える。

特にG3-03は思わず一人呟いた。

 

「あれが、仮面ライダーか……」

 

 

~~~~~~

 

 

頼打地区にあるネオライダー達の拠点の一つ。

『マシンゼクトロン』と呼ばれる専用バイクが止められたその場所に斬刃と風嵐の姿があった。

 

「どうやら、オオアリは上手くおびき出されたようだな」

 

「ふぅん、マシンゼクトロンに載せてあったミラーモンスター用の餌でいけるんだ」

 

「ミラーモンスターも魔化魍も、基本人間が主食だからな。似た者同士なんだろ」

 

斬刃はあの時仕掛けた事を思い出す。

―――それは、マシンゼクトロンに載せてあった『ミラーモンスター用の餌である高純度エネルギー』。

クロックアップで取ってきた餌をあの場にバラまき、オオアリの童子と姫が連れてきた子供達である二体のオオアリに呼び出したのだ。

 

「いい時間稼ぎにはなったよ。おかげで逃げる時間が稼げた」

 

「でもでも斬刃、感づかれたりしない?あんな街中でなんで魔化魍がいたのかって事」

 

「さぁてな、感がいいヤツがいればいいが、それに気づかなきゃ意味がないがな」

 

「ふぅーん……まあいいや、皆が守れたんだし!」

 

風嵐はそう言いながら、周囲にいるであろうサナギのワーム達を見やる。

そこにあったのは何体、何十体、何百体にも及ぶワーム達が群がる光景。

常人ならゾッとする光景だが、二人はそれを見ながら身を寄せ合う。

 

「ねぇ、斬刃。私達、この子たちを守れるかな」

 

「……守り抜くんだ。なんせ消えたあの世界(・・・・・・・)からの数少ない生き残りだからな」

 

互いの温もりを確かめ合うように、彼ら二人は決意を固める。

その瞳には悲しみが秘められていた。




 満を持して登場、クウガの第二の相棒・ゴウラム!
実はこの小説初めてユウスケクウガによるトライゴウラム戦やるのが夢でした。
クウガと一条さんの絡みも我ながら凄い素敵。

実は桜子さんのシーンが一番長かったことについて。
最初はこれを18話のシーンにぶちこむつもりだったんですが、ゴウラム登場させる事ができそうになかったので今回に持ち越しになりました。

歌舞鬼の必殺技、音撃打・業火絢爛!これに関しては漫画版仮面ライダー響鬼 七人の戦鬼を参考にしてました。
漫画版は映画では披露しなかった技を繰り出してるので。

斬刃&風嵐、どうやら訳ありの様子……消えた世界とは一体?

次回、一難去ってまた一難!?


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第20話:繋がるオモイ

 突如現れた魔化魍・オオアリに苦戦を強いられる。
だがそこへ現れるのはゴウラムだった。
トライゴウラムと歌舞鬼の活躍により見事二体のオオアリを撃破したディケイド一行。



 オオアリを倒した後、一度警視庁へ戻った士達一同。

G3ユニットのGトレーラーやガードチェイサー、G3の装備を収容している待機室に案内された一同を待ち受けていたのは一条と北条、そして二人の制服を纏った男女。

一人は30代の年齢に近い黒髪の男性で、もう一人は長い髪をお団子状に纏めた若い女性。

男性の方が士達のユウスケへ話しかけてくる。

 

「君達がクウガの仲間達か」

 

「そうですがあなたは」

 

「俺は尾室隆弘、G3ユニットの主任だ」

 

男性……『尾室隆弘』はユウスケに握手の手を差し伸べる。

ユウスケは不思議がりながら、手を握って応じた。

その姿を見て尾室は笑いかけながら話しかけた。

 

「しっかし、あのクウガが君のような青年だったとは」

 

「あの、その、俺は貴方達の知ってるクウガじゃなくてですね」

 

「分かってる。例え君が俺達の知っている未確認生命体4号……クウガでなくても、かつて先人と共に戦ってくれたクウガと変わりなくてよかった」

 

笑顔でそう言う尾室に、ユウスケは笑顔で返す。

そんなチヤホヤされる様子を見て士は不貞腐れた態度を取る。

 

「なんだよ、クウガやら4号やらって特別扱いしやがって」

 

「そりゃまあ、第4号ことクウガは9年前のグロンギ事件で当時の未確認対策班の人達と共に戦った英雄だもの」

 

士の言葉にそう返してきたのは尾室の隣にいた女性。

彼女は士の前に出て、興味津々な様子で問いかけてきた。

 

「ところで君のその装甲服は?さっきの戦いぶり明らかにG3とは違うのは明白だ!」

 

「何だお前は」

 

「私は絵里衣、数奇屋橋絵里衣(すきやばし・えりい)。G3ユニットで開発担当をしているわ」

 

「変な苗字だな……ディケイドの事がそんなに気になるのか」

 

士は制服姿の女性……『数奇屋橋絵里衣』に対して鬱陶しそうな表情を浮かべる。

だがそんな嫌そうな表情などお構いなしに彼女は質問をぶつけはじめる。

 

「そのディケイドの出力は一体何?その武装の変形機構は?製造元は?何故そんな奇抜なデザインを……」

 

「俺が知るかぁ!」

 

「ちょっと士君!急に怒鳴らないでください!」

 

絵里衣の質問攻めに怒鳴り声を上げる士。

夏海が士を宥める中、黒鋼が何処か遠い視線を絵里衣に向けている事に気づいたファイはこっそり尋ねた。

 

「どうしたの黒りん」

 

「アイツ、桜都国で出会った情報屋だ。あっちにいるG3の二人もその助手をやってた」

 

「へぇ、つまりこの世界でもそういうのはあるんだね」

 

黒鋼が首で指した方向を見て、ファイはその視線を向ける。

そこにはG3-01とG3-02を装着していた二人……『秋海洞威』と『東国丸健多朗』が自分達の装着していたG3のスーツを点検している所だった。

丁度終えた所だったのか、彼ら二人は黒鋼たちの視線に気づくとこちらへ近づいてきた。

 

「さっきの戦いはありがとうございます。俺は秋海洞威っていいます」

 

「俺はコイツの相棒で東国丸健多朗。おかげで未確認もデカブツのも倒せたし、いいことづくめだぜ!」

 

「へへっ、そりゃどうもー」

 

二人の褒め言葉に不愛想な黒鋼の代わりにファイが笑みを浮かべて受け止める。

威はあることに気づくと、健多朗に尋ねる。

 

「あれ、蒼真のヤツどこにいった?」

 

「そういや見かけないな。せっかく同じく戦った仲間なのに」

 

「蒼真?一体誰だ?」

 

黒鋼が聞きなれない名前を耳にして、二人に尋ねる。

それを聞いて威と健多朗の二人は答えた。

 

「雷堂 蒼真、俺達の仲間でG3-03の装着者です」

 

「この中じゃ一番の若手で、よく突っ込む俺達のサポートをしてくれるいいやつだ」

 

二人の説明を受けて、黒鋼は先程の戦闘の時、拘束されていたディケイドを解いたり、サガの補助をしてくれたG3の事を思い出す。

自分のような前線に出て戦うようなタイプではなく、冷静ながら物事に関して対処しているという印象を黒鋼は感じた。

そんな会話をしていた威と健多朗へ絵里衣が怒りの籠った口調で声をかけた。

 

「威、健多朗、お前達は雷堂を見習いなさい!」

 

「なんなんだよ!俺達が悪いってのか!?」

 

「いつもいつも無暗に前へ出て戦って!フォローしなくちゃいけない側になりなさい……雷堂の爪の垢飲ませてやりたいわ!」

 

「いやいやいや、俺達だって考えて行動しているから!」

 

今にも殴り掛かりそうな勢いで迫る絵里衣から逃げる様に威と健多朗は彼女から離れていく。

仮にも警察組織の人間でありながら騒がしい様子を見せる彼らに、北条はため息をつく。

 

「我々にとって頼もしいのは認めなければいけないところですが、彼らがいた昔以上にやかましいですね」

 

「ははは……あれでもG3の装着者としては正義感があって頼りがいがあるのですけどね」

 

北条の皮肉も聞く暇もなく慌ただしく駆け巡る三人……そんな彼らの姿を尾室は苦笑いで見ていた。

士達……特に士とユウスケはかつて巡った【アギトの世界】で見た"仲間の絆"とG3ユニットの仲の良さを感じ取り、生暖かく見守っていた。

その後、士が一条へと話しかける。

 

「ところで一条さんだったか?妙な羽根のようなものについて聞いたことないか?」

 

「羽根だって?」

 

「ああ、俺達の仲間のどうしても取り戻したいヤツがいてな。とりあえず当面の目的はその羽根探しだ。噂でもなんでもいい」

 

「なるほど。君達がそれを探しているのはわかった。一つ心当たりがある」

 

一条は士達にそう告げると、手帳を取り出してメモの内容を見せた。

一同が覗き見ると、驚きの表情を浮かべた。

 

 

―――その写真には【羽根を握りしめた仮面の戦士】の姿があった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

同じ頃、警視庁内部の廊下で夏目はとある人物を探していた。

周囲を見回しても自分を探している『彼』の姿はなかった。

 

「あの人、雷堂さん……一体どこにいるんですか」

 

夏目の探している彼……雷堂蒼真。

自分も親しくしているわけではないが、彼の事は口伝で知っていた。

……G3ユニットに所属しているG3-03の装着者であるが、厳密には警察には所属していない。

元々は増発する未確認生命体による事件への対策として装着者の一般公募から採用された青年であり、年は今年で23になった自分より若い。

それなのに先輩達のフォローをこなしながらG3として未確認生命体と戦う彼はメンバー内でも評価が高い。

私生活についてはG3ユニットメンバーでの焼肉などの付き合いはあるものの、まだ謎が多い。

"十分に戦えない自分"にとって彼は羨望の対象だった。

 

(もう少し彼に、雷堂さんに近づければ……きっと私も……)

 

夏目はそんな淡い期待を宿しながら、蒼真を探していた。

すると携帯電話片手に話している一人の青年を見つける。

端整な顔立ちをし、鮮やかな金髪(ブロンド)と青い瞳を持った若いその青年……『雷堂蒼真』は夏目の存在に気づくと、電話の相手に断りを入れた。

 

「じゃあな、ルメン。また電話はする……お待たせしてすいません、夏目さん」

 

「あの、誰かとご連絡中でしたか?」

 

「ええ、知り合いと。どうかなされたんですか?」

 

「士さん達がG3ユニットと皆さんと出会っている中、雷堂さんの姿がなかったので探していたんですよ」

 

「ああ、丁度知り合いから連絡が入って来てですね。少し抜け出していたんですよ」

 

蒼真は夏目の質問にそう返した後、G3ユニットの待機室へ向かおうとする。

そこへ夏目が蒼真へ恐る恐る声をかける。

 

「あの、雷堂さん。ちょっといいですか?」

 

「なんですか?」

 

「前々から思っていたんですけどあなたはその、怖くないのですか?未確認と戦うのは」

 

「……少なからずあるってところですね。誰だって怖いものはありますよ」

 

蒼真は夏目の方に振り向かないまま答えた。

彼は言葉を続けて彼女へ言った。

 

「でも、一番怖いのは何もできずに失うって事ですよ」

 

「何もできずに失う?」

 

「ええ……目の前で大切なものが失いそうって時に手を伸ばせないで助けられないってのは結構辛いし悲しいし、何より自分が許せなくなる」

 

悔しそうな声で呟くように話している蒼真を見ていた夏目は、彼が自分の拳を握りしめる所を目に入る。

自分の知らない所でつらい過去を背負ったのだろう、かつて未確認(グロンギ)に父を殺された自分のように……そう思った夏目は自分の背負ったものを蒼真に話すことにした。

 

「確かにそうですよね……私も同じです。かつて父親を未確認に殺されて、自分のように誰かが悲しむ事が見ていられなくて、だからこの警察官の道を選びました。助けの手を伸ばすために」

 

「夏目さん……」

 

「それに昔、私を助けた人が言ってくれたんです。『君にもいつか、なんかやるときが来ると思う。お父さんもきっと、それを楽しみに見守ってくれてる』って」

 

「いいひとですね、その言葉を言った人は」

 

夏目の言葉を聞いて蒼真は横顔を彼女へ向ける。

口元に笑みを浮かばせて、夏目に聞こえるだけの声の大きさで呟いた。

 

「その優しさはきっと、貴方の強さになりますから忘れないでくださいね」

 

「えっ……それって」

 

蒼真の言葉の意味を尋ねようと声をかけようとするも、既に姿が消えていた。

不思議がる夏目は待機室へ戻ることにした。

 

 

~~~~~~

 

 

某所。

暗闇に覆われて静けさに包まれた場所……そこに足を踏み入れるのは一つの人影。

その人物がその場所の中心たどり着くと、周囲にいくつものモニターを模したホログラムが浮かび上がる。

どのホログラムにも人の姿が映っており、その中にいたゴーグルをかけた青年から話してきた。

 

『リーダー、関東のネオライダーの活動は日々激化している。特に頼打地区が被害を被っている』

 

「各地に分散している所はあるが、基本的には関東地方を中心に暴れているのか」

 

『まあな。名前付き(ネームド)は関東をメインで活動してるな。他は疑似ライダーのオルタナティブが指示役をしてやがる』

 

「京都の方はどうだ?『暗黒神』は見つかったか?」

 

『いえ、戦闘では何度か交戦するものの、正体までは未だ掴めません』

 

ゴーグルの青年から栗色の髪の少女の映るホログラムに変わり、リーダーと呼ばれた人物の質問に答える。

中心人物となっている『リーダー』は険しい表情で口元を抑える。

 

「どうしたものか、ネオライダーの一員の一部は今日本と【大陸】で活動している。未確認の情報によるがそちらに【例の彼ら】が大陸へ向かった」

 

『日本の守りが手薄になってるのか……なら俺達が離れるわけにはいかないな』

 

「ああ、俺達の目的はネオライダーの魔の手から人々を守るためにこの国を離れるわけにはいかない」

 

ゴーグルの男の言葉を聞いて、リーダーは重苦しく答える。

そこへ頭にバンダナを巻いた少年が声を張って手を上げる。

 

『だがよ、このままだとアイツらの言いようにされるぜ?』

 

『それについてだが、一つ報告がある』

 

「お前か、アギト」

 

リーダーから"アギト"と名前を呼ばれた人物はホログラムに映る。

フードを被っており、若い男の声を発しながらリーダーに申し出た。

 

『異世界からやってきたディケイドとその仲間のライダー達と遭遇した』

 

「……なんだと?」

 

"ディケイド"という名前を聞いて話に参加していたメンバー全員が騒然とする。

ゴーグルの青年が驚きの声を上げながら訊ねる。

 

『おいおい、それって本当なのか!?ディケイドって、あのディケイドか?』

 

『ディケイドと仲間のライダー達はG3ユニットと協力して大型の魔化魍二体を倒した。画像がこっちだ』

 

『へぇ、成長した魔化魍を二体も倒すってのは驚きだぜ』

 

バンダナの少年は嬉々とした声で言った。

噂ではディケイドは他のライダーでは倒せない怪人の特性を無視して倒すことができるという。

複数の怪人を使役するネオライダーと相手する自分達にとっては是非とも味方に引き入れたいライダーだ。

リーダーはアギトに対して仲間達の事を聞いた。

 

「ディケイドの仲間達についてわかっていることは?」

 

『今回ディケイドの他に現れたのはあのクウガと……銀色の鎧に蛇の意匠が入った鎧を纏う戦士と、赤と緑で左右非対称な鬼です』

 

そう言いながらリーダーはホログラムに映し出された情報を浮かび上がらせる。

ディケイドやクウガといった仮面ライダー達が映し出され、その光景の一つを見て、リーダーは名前を呟く。

 

「あっちの銀色は仮面ライダーサガ、緑と赤は仮面ライダー歌舞鬼か」

 

『知っているんですね』

 

「ああ、うちと縁のあるやつがちょいとネタを残していてな……一応覚えてはいるさ」

 

リーダーは目の前に浮かぶ映像の中からとある光景がふと目に留まる。

そこに映し出されていたのは仮面ライダーへと変身を遂げた小狼達三人の姿……彼らの姿を見て、リーダーは眉をひそめた。

 

「何故、彼が仮面ライダーナイトに?」

 

『リーダー、どうかされたのですか』

 

「……そうだな、今関東の頼打地区に近いのはガタックと斬鬼か」

 

リーダーが二人のコードネームらしき名前を呼ぶと、ゴーグルの青年とバンダナを巻いた少年のホログラムに切り替わる。

 

『俺達をお呼び出しとは』

 

『へへっ、お目が高いぜ!』

 

二人は自信満々な表情を浮かべて言葉を待っていた。

暫しの間、閉じていたリーダーの口が開く。

 

 

「二人に告げる。ディケイドとその仲間達に接触せよ」

 

 




 ツバサ名物・異世界の同一人物。
今回は桜都国の情報屋としてでも登場した絵里衣&威&健多朗。
この世界での彼らの職業は『G3ユニットの隊員』ですね。

新キャラ・雷堂蒼真。
第三の仮面ライダーG3として活躍していた好青年。
まだまだ謎の多いキャラですが、一体何者か……彼を掘り下げるのは別の機会にしましょう。

蠢く謎の集団、【大陸】やら【例の彼ら】やら謎の単語が飛び交い、リーダーなる人物が仕切っている様子。
ネオライダーを敵視しているようだが果たして。


次回、アイツらが登場。


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第21話:渦巻くセンプウ

 ネオライダーの仕掛けた魔化魍を倒したディケイド一行。
共闘した彼らから齎されたのは、記憶の羽根の情報。
―――ディケイド達の最初の苦難が今始まる。


 頼打地区。

高層ビル同士の間に張り巡らされた路地裏……そこに地べたに座り込む人の姿があった。

小綺麗にしていたはずの白いスーツは赤黒く汚れ、頬には切り傷によってできた血がついていた。

 

「ハハッ、この姿じゃ女の子は誘えないな……怪我人相手に容赦ないんだよ」

 

顔についた血を手で拭いながら、ぶっきらぼうに笑って呟く茶髪の男。

『この世界』にやってきて、最初に会ったのは見たこともない怪物に襲われる子供達……彼の性格上、見過ごすなんてこともできず、助ける事にした。

何らく怪物たちを倒して襲われていた子供達を助けたものの、怪物の仲間と思われる黒服の連中がやってきて、標的を自分に変えて追われる身となった。

奇妙なことに黒服の連中は"ネオライダー"と名乗り、妙なツールを持って別の姿に変わった。まるで『変身した自分』と何処か被ってみえた。

お世辞にも自分と同じ存在と例えたことに自嘲しながら、男は空を見上げた。

 

「一度は死んだかと思ったんだが、まさかまた『生』を得られるとはねえ」

 

そう言いながら男は胸に手をかざすと、そこからあるものが現れる。

それは淡い桃色の模様が描かれた白い羽だった。

男はその羽根を手で掴み、問いかける様に言葉を投げかける。

 

「お前は何のために俺を生き永らえさせてるんだ?」

 

男は皮肉を秘めた言葉を口にして吐き出した。

その言葉に応える者は誰もいなかった。

 

 

~~~~~

 

 

 G3ユニットの協力によって大型魔化魍を撃破した二日後。

光写真館の撮影室にて、士達7人は机に置いた写真を覗き込む形で見ていた。

机の上に置かれた写真に映っていたのは【羽根を握りしめた仮面の戦士】。

一条から提供された写真の複製をもらったものであり、士達と小狼達、二つの一行がようやく手に入れたサクラの羽根の手かがり。

小狼は写真に写っている人物を見ながら呟いた。

 

「この人が、サクラの羽根を持っているんですね」

 

「だが、見た所持っているのは人間じゃない。どちらかと言えば俺達仮面ライダーに近いな」

 

士は顎に手を当てながら、羽根を握りしめる仮面の戦士の姿を見ていた。

遠くから撮られた写真のため、鮮明な姿の詳細は分からないが、なんとなくだが分かる。

この写真に写っている存在が【仮面ライダー】だと。

ユウスケは一条から伝えられた情報を皆に言う。

 

「一条さんによると、この写真は数日前に撮られたもので、そこでネオライダーの怪人達と戦っていた所を撮影したそうなんだ」

 

「ネオライダーと戦っていたか。あっちが出ないといいけどねぇ」

 

ファイは"ネオライダー"という単語を聞いて、今回も出てくるのではないかと危ぶんでいる。

今までの彼らと戦ってきて一度目を付けた相手には執着する行動原理は幾度の戦いによって明らかになった。

今回も出てくる可能性は十分にある……同じ考えに至った黒鋼がニヤリと口元を上げる。

 

「ハッ、もしもの時は返り討ちにしてやればいいだろうが」

 

「もう黒鋼さんったら……」

 

眉をひそめながら血の気のを多い黒鋼を宥める夏海。

仲間達がこの世界での羽根の情報を手に入れて喜ぶ中、サクラは浮かない顏をしている。

それに気づいたモコナがサクラへ声をかけた。

 

「どうしたのサクラ?」

 

「うん……この人、士さん達や小狼君達と同じ仮面ライダーなんだよね?この人は私の羽根を手にしてどうしてるのかなと思って」

 

サクラは机の写真を見ながら考えに老け込む。

良心的な人物であればまだいいが、もしも羽根の悪用するような人物だった場合、今すぐにでも取り返さなければならない。今までの旅でも記憶の羽根が良きにしろ悪しきにしろ様々な力を発揮し、その世界にその影響を及ぼしてきた。

特に今いる世界にはネオライダーという罪もない人々に圧政を強いらせる脅威がいる……もしも彼らのような人達の手に渡ってしまえばこの世界での旅は過酷になるし、誰かが悲しむ結果になる。

なにより羽根を取り戻そうとする小狼達が大変な目に遭うかもしれない。

―――だったら、せめて私の手でなんとかしないと……。

自分の羽根が及ぼす影響について真剣に悩むサクラ、そこへ士が声をかけてくる。

 

「おい、サクラ」

 

「……え?」

 

急に声を掛けられて士へ顏を向けると、眉間に士の人差し指が添えられる。

突然の出来事に戸惑うサクラであったが、士がいつものふてぶてしい態度で言葉をかける。

 

「何を考えてるのか知らないが、眉間に皺を寄せるのは小狼の専売特許だ」

 

「専売特許って……おれってそんなにしてるんですか?」

 

「ユウスケや黒鋼に聞け。ともかくサクラ、お前は自分の記憶を手に入れることだけを考えとけ。お前ができないことは俺達がやってやるから安心しろ」

 

自分の眉間を心配する小狼を横に、士は眉間に添えていた人差し指を外し、代わりにサクラの頭をポンポンと優しく叩く。

いつもは尊大な態度を取る彼にしては優しい言動……自分と同じ境遇からの彼なりの優しさなんだろうとサクラは納得する。

士は椅子から立ち上がり、一足先に件の仮面ライダーの元へと向かおうとする。

小狼やユウスケといった他のメンバーも続いて写真館の撮影室から出ていった。

 

 

~~~~~

 

 

ネオライダー本部のバー。

そこにはグラス片手につまみのナッツをかっくらう尚樹とゴーストイマジンの姿があった。

尚樹は口に入れたナッツをかみ砕き、それをグラスにいれたリキュールで押し流すと、荒い口ぶりで机をたたく。

 

「たっく、どいつもこいつもディケイドどもに苦戦しやがって!俺なら簡単にやれるっての!」

 

『ハハッ、言えてる!今までディケイドと戦ってきたやつらなんざ雑魚だったんじゃねえの?』

 

ディケイド達がネオライダーと対等に渡り合っている事に怒りが込み上げる尚樹と、そんな彼を見てゲラゲラと笑いながらリキュールを嗜むゴーストイマジン。

我が物顔で過ごしていたそんな二人の元へ、一人の人物が近づいてくる。

 

「おうおうおう、これはこれは尚樹じゃねえか。どうだ?元気か?」

 

「テメェはシザースの……何の用だ?」

 

尚樹はやってきた男……シザースと呼ばれたその人物に何をしに来たのか訊ねる。

"シザース"の男は影で隠れた顔で口角をニヤリと上げながら早速要件を告げた。

 

「なあに、お仕事のお呼び出しだよ。あのお方からだ。お前暇なんだろ?ちょっと面貸しちゃくれないか?」

 

「あの人だと?一体誰が……」

 

「―――私だ。鬼頭 尚樹」

 

その言葉と共に現れた人物を見て、尚樹は目を見開いた。

シザースの男の後を追ってやってきたのは、稲妻模様が入った白い仮面を被った男……。

ネオライダーのトップである男、マスクドマンその人だ。

仮面で隠したその顔から口を開いて言葉を発する。

 

「今この場で動けるのはお前達か。私用で悪いが緊急の仕事だ」

 

『おいおい旦那、急だな?報酬は高く付くんだろうな?』

 

「ああ、それに今さっき入った情報によれば、お前達を狙っている獲物と出くわす可能性が大いにある」

 

マスクドマンが言った話に出てきた【狙っている獲物】と聞いて、尚樹は目を眼鏡越しにギラつかせる。

―――ディケイド達だ。別の世界から来たとされている仮面ライダーだ。

噂によればあの時戦った妙な異国の旅人共も仮面ライダーになったと報告されている。

人々から畏怖の存在である自分へと立ち向かった小僧とその仲間達が気にくわない尚樹は、ようやく回ってきたチャンスを掴むべく、荒々しく立ち上がってマスクドマンへと答えた。

 

「ハッ、やってやろうじゃねえかマスクドマン。仮面の下で何考えてるか分からないお前の企みに乗ってやるよ」

 

「おい尚樹!マスクドマン様に何て言い草を!?」

 

「構わん……では、いくぞ。ネオライダー達」

 

マスクドマンは終始冷えた態度の言葉を発した後、マスクドマンは踵を返してその場から去る。

その後に続いてゴーストイマジンも入れた三人もついていく。

出ていった彼らを見送る様にバーのマスターが頭を下げて見送ったのだった。

 

 

~~~~~

 

 

頼打地区のとある公園。

士達七人は二手に分かれて羽根を持った人物の捜索を開始した。

一方は士、小狼、サクラ、モコナ。

もう片方はユウスケ、夏海、ファイ、黒鋼。

今現在、士達三人はその公園の中を通り過ぎながら話し合っていた。

 

「ここの近くだったな」

 

「ええ、ここに向かう途中に虎太郎さんに連絡したんですが、ここ二日前からネオライダーの黒服の出現情報がありますね」

 

「確かこの世界の仮面ライダーブレイドの仲間、だったな。情報は確かか?」

 

「ええ、信頼できる人物ですよ」

 

仮面ライダーブレイドの仲間と聞いて懐疑的な士へ、小狼は真っ直ぐな瞳を向けて答えた。

ネオライダーケタロスの襲撃の後、小狼達は虎太郎らとの連絡を取り合っていた。

今現在、白井虎太郎はギャレン/橘の仲間達の保護の元匿われているらしく、情報収集をメインに活動をしているらしい。

今回も何らかの情報を手に入れてるのではないかと思って連絡した小狼は見事にゲットしたのである。

 

「仮面ライダーの方については、どうやら怪人達に襲われていた子供達を助けたって事です」

 

「なるほど、大体わかった。少なくともネオライダーのような悪い奴らじゃないってことは確かだな」

 

いつもの口癖を口にしながら、士は小狼とサクラは進んでいく。

その途中、サクラは【あるもの】を見つけて立ち止まる。

 

「ん?あれって」

 

「どうしたの?サクラ?」

 

「モコちゃん、二人とも、あれ」

 

モコナに聞かれてサクラが指さした方向を士と小狼は辿っていく。

そこにいたのは、こそこそと隠れながら走る三人の幼い子供達。

その手には救急箱やら食べ物の入った袋やらを抱えており、不自然さが余計に目立っている。

不審に思った三人は顔を見合わせると、彼らに近づいて声をかけることにした。

ひっそりとついてくる士達三人の事は気づかず、三人の子供達は互いに話し合っていた。

 

「ねぇ、家から持ってきたけどこれで大丈夫かな?」

 

「大丈夫だろ。救急箱も持ってきたし、飯も買ったし」

 

「急いで向かおう。あの時の怪物たちが出てくる前に」

 

三人の子供達……二人の男の子と一人の女の子はこそこそと話し合いながら、裏路地の入り口へと辿り着く。

足を踏み入れようとする三人の子供達、そこへ士が声をかける。

 

「そこから先は危ないぞ、小僧ども」

 

「「「わぁ!?」」」

 

いきなり声を掛けられて、驚く子供達。

振り向けば自分より年上の少年と少女、そして長身の青年が立っており、男の子の内のやんちゃそうな雰囲気の男の子が恐る恐る訊ねる。

 

「何だよお前ら!怪人達や黒服たちの仲間か!?」

 

「誰がだ。ネオライダーの奴らと一緒にするな」

 

「驚かせてごめんなさい。私達、ココへ向かう君達の事を見かけたの」

 

ネオライダー呼ばわりに眉を顰める士と、子供達と同じ目線までしゃがんで自分達の経緯を話すサクラ。

サクラが向けた笑顔にとりあえず警戒心を解いた子供達三人へ自己紹介の挨拶をする。

 

「私はサクラ、こっちは小狼くんで、こっちは士さん」

 

「俺は俊彦」

 

「僕は義男」

 

「私は満里奈です」

 

三人の子供達は士達に自分達の事を話した。

やんちゃそうな男の子……俊彦、大人しそうな男の子……義男、短いツインテールの女の子……満里奈。

自分達の紹介をし終えた後、俊彦が声を上げて助けを求める。

 

「そうだ!なぁ!兄ちゃん姉ちゃん、あいつら黒服の奴らじゃないなら助けてくれよ!」

 

「助けるって誰を?」

 

「仮面ライダーの兄ちゃんだよ!」

 

俊彦の言葉を聞いて、三人は驚く。

―――仮面ライダー、確かに彼らはそう言った。

彼らの言う仮面ライダーが"サクラの羽根を持った仮面ライダー"と同一人物かどうかわからないが、少なくとも怪我をした仮面ライダーがいることになる。

その考えに至った士が子供達に対してこう言った。

 

「とりあえず案内しろ。怪我の具合が見たい」

 

「いきましょう、士さん。放っておけません」

 

「いいの?」

 

「大丈夫、私達怪我した人は放っておけないから」

 

サクラの言葉を聞いて、子供達は互いに見合わせて無言でうなずく。

子供達は士達を連れて裏路地へと入っていく。

―――その様子をオートバイに乗った一人の人物が遠くから見ていた。

 

「……あれは」

 

ヘルメットで顔を隠した男はハンドルを握って、アクセルを吹かす。

バイク音を鳴らしながら、男を乗せたバイクは別の所へと走っていった。

 




 ディケイドクロニクル一周年!間に合わせたぞ!

ようやく手に入れた羽根の情報。どうやら仮面ライダーが手に持っている様子。
特徴は分からないものの、羽根の所有者は一体何者か。

その一方で、ネオライダー側にも動きがあった。なんとマスクドマン自らが動き出す!
シザースと幽汽を引き連れて、何を仕掛けつもりか。

そんでもって今回のツバサ側のゲストは俊彦・義男・満里奈のこばと。の保育園三人組。丁度いい子供達だったので採用しました。
彼らの言う仮面ライダーとは一体……?

次回、マスクドマン顔見せ……できたらいいなぁ。


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第22話:吹き荒れるタイフウ

 久方ぶりの更新

ネオライダーが狙う中、小狼達が遭遇したのは仮面ライダーを慕う少年少女。
彼らの言う仮面ライダーというのは一体何者なのだろうか。
羽根を持つライダーは一体何者なんだろうか?

―――旅人は、大いなる大自然の戦士に遭遇する。


 子供たちに連れられやってきた士、小狼、サクラ、モコナの四人。

辿り着いた場所は階段下に設けられた倉庫の入り口だった。

俊彦、義男、満里奈の三人は扉に近づき、取っ手を手にかけ思いっきり引っ張る。

 

「おーい!兄ちゃーんいるか!」

 

「お薬と食べ物、もってきたぞー!」

 

「無事なら返事してくださいねー!」

 

先に入っていく子供達に続いて、士達三人も中へ入る。

中には埃が舞い、使われなくなったガラクタが散乱されたまま放置されており、お世辞にもきれいな場所とは言えない。

そんな中、倉庫の奥の方から声が聞こえてきた。

 

「うるせぇよ、たっく……生きてるから安心しろ」

 

物陰からよろけながら出てきたのは、一人の男性。

薄汚れた白いスーツに、少し巻きあがった茶髪、整った顔立ち。

鋭い目つきは一同を見やるが、それに対して子供達は叫んだ。

 

「「仮面ライダーの兄ちゃん!」」

 

「大声出すんじゃねえ、怪我に響くだろうが」

 

キラキラと目を輝かせる子供たちに対してぶっきらぼうに返す男。

士達が男の姿を詳しく見てみると、確かに口元には血を拭い去った拭い去った痕があり、服の上から血が滲んでわかるほどの怪我を負っているのがわかる。

それを見たサクラが男に声をかける。

 

「あの、その怪我は……」

 

「あぁ、気にするなよ……で、誰だ? お前ら?」

 

「おれ達は探し物をしている最中でこの子達に会って同行させているものです」

 

男に尋ねられ小狼が素性とここまでの経緯を明かした。

自分より若い年の子に対して渋る態度を男が取っていると、士がふとした疑問を投げかける。

 

「お前、ただの人間じゃないな」

 

「ハッ、何だお前? わかる口か?」

 

「まあな……とりあえず手当だ。おい、救急箱を取ってくれ」

 

士に言われて麻里奈は持っていた救急箱を手渡す。

手に取るとサクラと共に男の手当を始める。

上着を脱がせ、素肌を晒せば血が黒く固まった真新しい傷がいくつもあった。

それを見て目を細め、士は消毒液や包帯で手当を行っていく。

 

「手当、上手いんですね」

 

「俺に苦手なものはない。写真を撮ること以外にはな」

 

「おいおい、それって自慢することかよ」

 

サクラへ向けて士は自慢げに返し、男はジト目でツッコミを返す。

その隣では小狼は手近にあった土台に用意して、その上に食べ物の入った袋を置き、中身を取り出していた。

そこで、男の物であろう手袋があることに気付く。

 

「……これって?」

 

小狼はふと手に取り、手袋を確かめる。

手にしてみると何かが詰まっている感覚があり、傾けてみると中から出てきたのは……黒い血だった。

時間が経てば血は赤黒く変色することもあるが、流れ落ちる血の色はどう見ても黒そのものだった。

一体どういうことか、そう思っている小狼の姿が目に入り、男が形相を変えて叫ぶ。

 

「馬鹿、見せていいもんじゃねえよ!」

 

男は小狼の手に持っていた手袋を無理やりひったくる。

いきなりの豹変ぶりに驚くサクラや子供達……その中で士だけが床に広がった小さな黒い血溜まりを見て、口を開いた。

 

「リジェクション……拒絶反応による影響か。この黒い血も身体から出てきたもんなんだろう」

 

「チッ……、こんなもの、刺激が強すぎるだろ?」

 

「なるほど、大体わかった。こいつらが仮面ライダーとは言っていたが、お前、改造人間のタイプだろ」

 

「……そうだよ、お前の言う改造人間ってやつだよ。どこぞの悪の組織に身体弄られて、逆らった挙句の果てに死の淵を彷徨ってる哀れな裏切り者(ダブルクロス)さ」

 

士に対して横暴気味に答えながら、自嘲的な笑いを浮かべる。

やさぐれているような男の様子に子供達のうちの麻里奈が心配そうに見つめる。

 

「仮面ライダーのお兄ちゃん……」

 

「ほら、ここはあぶねぇから怪我したくなかったらさっさと……」

 

子供達に対してこの場所から去るように告げようとする男。

だがそれを遮るかのように、目の前に突き出されたのはコンビニのお握りだった。

男があっけにとられたような表情でしていると、小狼が話しかける。

 

「とりあえず、離れるにしても休むにしても、これを食べてからにしませんか?」

 

「……は?」

 

「その、お腹空かしてるんじゃないかと思いまして」

 

「お前、怖くないのか? 黒い血なんか流す人間の姿がいた化け物なんてのが目の前にいて」

 

眉を顰めながら男は小狼に訊ねる。

自分のような尋常ならざる力を持っていたら、誰しもが恐れる。

だがそれを覆すかのように小狼は男へ告げる。

 

 

「子供達を心配しているあなたをどうしても悪い人とは思えなくて……優しい人なんですよね、あなたは」

 

 

その言葉を聞いて、男の脳裏に浮かんだのは、とある人物の光景。

―――命は美しいと信じて、どこまでも愚直で真っ直ぐな男。

背丈も格好も全く違うのに、何処となくあの男とそっくりだと嫌でも実感する。

そのことに気付いた男は思わず吹き出して笑った。

 

「たっく、どこぞのお人よしを思い出させてくれるよ」

 

「えっ……?」

 

「なんでもない、こっちの話だ」

 

男は奪い取らんと勢いでお握りを掴むと、包装を破きながら食べ進める。

険悪な雰囲気からいい雰囲気に一転した事に子供達は安堵し、サクラはにこやかな笑みを浮かべる。

その後、手当を終えて食事に有り付く男へ小狼達は自己紹介を始める。

 

「そういえば、名前名乗っていませんでしたね。おれは小狼です。こっちが……」

 

「サクラです」

 

「門矢士だ。で、お前は一体何者だ?」

 

小狼達が自己紹介を終えた後、男は口内に入っていたものを飲み込み、ペットボトルのお茶を口にして整える。

そして一息つき、名乗り始めた。

 

「一文字隼人。俗にいう仮面ライダーってやつだよ」

 

その仮面ライダーの男―――『一文字隼人』はニヤリと口角を上げた。

 

 

―――――

 

 

 士達が謎の男・一文字と遭遇した頃。

ユウスケ、夏海、黒鋼、ファイの四人は別の場所で羽根を持っているであろう仮面の戦士の行方を探していた。

四人が丁度高架下の道に差し掛かろうとしたときのことだった。

黒鋼が妙な気配を感じ取ったのは。

 

「………」

 

「あれ? どうしたの? 黒鋼さん」

 

「ユウスケ、そこのふにゃへりと一緒に光から離れるなよ」

 

そう言いながら黒鋼は一同の一歩前へ出て、腰にぶら下げていた待機状態のディスクアニマルに手をかけ、それを思いっきり近くの柱へ向けて思いっきり投げ飛ばす。

風の切る音をしながら飛んでいくディスアニマル……物陰へ迫ろうとした瞬間、振りかざされた何かによって弾き飛ばされてしまう。

戻ってきたディスクアニマルをつかみ取り、黒鋼は叫ぶ。

 

「出てこい、いるのはわかってんだ」

 

「―――なるほどな、その気配の探り方にその技、只者ではないな」

 

黒鋼の披露した忍者として身に着けた技を称賛しながら現れたのは、仮面をつけた一人の男。

稲妻模様が入った白い仮面を被ったその男は、一同を見据えながら名乗り始めた。

 

「自己紹介しよう、私はマスクドマン。ネオライダーの頭目をしているものだ」

 

「ネオライダーの頭目ですって!?」

 

「ありゃりゃ、つまりはお偉いさんが自らじきじきにやってきたってことか。こりゃ大変だ」

 

ネオライダー……それも今まで出会ってきたライダー達を纏め上げるトップが目の前に現れ、夏海は驚き、ファイはへらへらとした笑みをうかべながら目の前に立つ仮面の男・マスクドマンを見据える。

一方でマスクドマンは片手を上げると、それが合図かのように周囲から何人をもライオトルーパー達が出現する。

その数は20人近く……さらに彼らライオトルーパーの隊員達をかき分けて現れる人影があった。

 

「やいやいやい、貴様達が俺達ネオライダーに仇名すアベンジャーか!」

 

ライオトルーパー達の前へと名乗り出てきたのは、ふくよかな体系をした男。

今まで黒服と同じ恰好をしているが、頭部にはピンク色に染めたモヒカンが聳え立っており、丸々と太った顔にサングラスをかけている。

おおよそネオライダーの刺客であろう男……その男に視線を向けた黒鋼とファイは呆気にとられたような表情を浮かべた。

 

「あん? アイツは……」

 

「あれ?」

 

「ど、どうしたんですか? 黒鋼さん、ファイさん?」

 

二人の普段見せない様子に気づき、夏海が戸惑いながら訊ねた。

……それもそのはず、目の前にいる男は小狼達一行が初めて巡った『阪神協和国』をはじめ、時折さまざまな世界で顔を見せた男。

モヒカンの男はマジマジと見つめる黒鋼とファイに気づき、眉を顰める。

 

「なんだなんだ? この多良場 蟹夫に何か言いたいことでもあるのか!?」

 

モヒカンの男・蟹夫……もとい、『多羅場 蟹夫(たらば・かにお)』は大声で叫びながら、黒鋼とファイを含めた四人へ指を指した。

二人はバツが悪そうな顔をしながらマスクドマンの方へ向き直った後、ユウスケが言葉をぶつける。

 

「俺達に何するつもりなんだ!?」

 

「無論、粛清だとも。混沌としたこの時代にネオライダーが秩序をもたらそうとしているのだ。その秩序を乱すお前達こそ、悪だ」

 

マスクドマンは仮面越しから見せる鋭く冷たい目を向けながら、手を上げて合図を送る。

同時にライオトルーパー達の手に持ったアクセレイガン ガンモードの銃口を向け、今にも引き金を引こうとした。

それを目にした瞬間、ユウスケ達は行動を移した。

 

「夏海ちゃん、掴まって!……変身!」

 

「きゃっ!?」

 

「サガーク、行くよ! 変身!」

 

『HENSHIN』

 

「ハッ!」

 

夏海を抱えてユウスケはクウガ・ドラゴンフォームへ変身し、頭上へと飛び上がった。

その瞬間、アクセレイガンから放たれる銃弾の嵐……それらを掻い潜って、変身した歌舞鬼とサガが出現。

二人は鬼棒術・烈火弾とジャコーダービュートをそれぞれ放ち、ライオトルーパーの何人かを蹴散らした。

倒れるライオトルーパー達を見て蟹夫は歌舞鬼とサガを睨みつけた。

 

「ちくしょう、出遅れてたまるか! 変身!」

 

蟹夫はカードデッキを取り出し、独特のポーズを取りながら腰に装着されたVバックルに装填する。

周囲に鏡像が出現し、蟹夫の身体に重なるとその姿をメタリックオレンジの装甲を見に纏った仮面の戦士へと姿を変えていく。

蟹を模した鏡の戦士・仮面ライダーシザースに変わると、腕に備え付けられたハサミ型の召喚機・シザースバイザーを構えて歌舞鬼とサガへ突撃してきた。

 

「オラオラオラァ! この俺様に倒されやがれってんだ!」

 

「チッ、コイツもライダーなのかよ!」

 

「ここまで来ると腐れ縁ってレベルだよね!」

 

襲い掛かってくるシザースの猛攻を何とか捌きながら対応していく歌舞鬼とサガ。

その一方で、ライオトルーパーの編隊を飛び越えてクウガと夏海は離れた所へ着地すると、夏海を物陰へ隠した。

 

「夏海ちゃんはここにいて」

 

「は、はい……!」

 

クウガはライオトルーパーへ向き直ると、近くにあった工事用のコーンバーをドラゴンロッドへ変えて、ライオトルーパーへ向かっていった。

ライオトルーパーはブレードモードに変形させたアクセレイガンで応戦を図る。

ドラゴンロッドの長いリーチによる殴打と、ドラゴンフォームによる素早い身のこなしにより翻弄していく。

だが、そこへライオトルーパー達の間を駆け巡り、クウガへ迫る存在がいた。

 

「シャッ!!」

 

「なっ!?」

 

嫌な気配を察知したクウガは寸での所でドラゴンロッドで防いだ。

だが、パキリと金属音が響いたと同時に手に持っていたドラゴンロッドが真っ二つになり、危機感を感じて大きく後方へ飛びのいた。

見れば、先程までいた場所にはマスクドマンの姿があった。

 

「ふむ、少し浅かったか」

 

「コイツ、変身してないのに……!?」

 

「せっかくだ、少しギアを上げていくか……!」

 

「くそっ、ならば超変身!」

 

クウガは真っ二つになったドラゴンロッドを投げ捨てると、青のドラゴンフォームから赤のマイティフォームへフォームチェンジ、使途空拳でマスクドマンと相対する。

ぶつかり合う拳と拳、蹴りと蹴り、二人が紡ぐ格闘戦がライオトルーパーを取り囲んで繰り広げられる。

だが拳を放つ中でクウガは疑問に思っていた。

ライダーにも怪人にもなっていない生身の人間がなぜこれほど張り合えているのか?

その考えが巡る中、拮抗していた二人の間に動きがあった。

 

「ハッ!」

 

「グッ!?」

 

マスクドマンが放った回し蹴りがクウガの胴体を捉えた。

軽く吹き飛ばされ、道路標識にぶち当たって拉げさせてしまう。

迫るマスクドマン……彼の放つ殺気に異様なものを感じったクウガは態勢を立て直そうとする。

物陰で戦いの様子を見守るしかない夏海も、シザースと相対する歌舞鬼とサガが行く末を見守る中、―――激しいバイク音が戦いの場に響き渡った。

 

 

―――ブォォォォン!

 

 

ライオトルーパーを蹴散らしながら現れたのは赤いラインがボディに入った白いバイク。

そのバイクはクウガとマスクドマンを割って入る形で止まると、運転手である男はマスクドマン目掛けて蹴りを放った。

その蹴りを腕を交差させて防ぐと、後方へ退いた。

突如現れた男はヘルメットを脱ぐと、黒髪と穏やかな顔立ちを露にする。

態勢を立て直したクウガは助けに入ったその男に訊ねた。

 

「あなたは一体……」

 

「―――俺は本郷猛……コイツらネオライダーに用がある者だ」

 

その男、―――『本郷猛』は愛機・サイクロン号から降りながらマスクドマンを見据え、構えをとった。




 どうも地水です。なんで令和になってまでゲンム神復活してるんだ()

子供達が言う仮面ライダー……それは、とある世界からやってきた改造人間だった。
その名は一文字隼人。

ネオライダーに襲われたユウスケチーム、そこへ駆けつけたのは一人の青年。
その名は本郷猛。

そう、今回明かされたのは新たなるレジェンドライダー!
『仮面ライダー THE FIRST/NEXT』シリーズより本郷猛と一文字隼人です。
アンケート取った結果、ダブルライダーの登場になりました。
え、本家の方じゃない?そんなありきたりするものか←

そんでもってシザースの男こと蟹夫。
ツバサ及びツバサ・クロニクルでは度々登場している憎めないキャラですね。
苗字の"多良場"は名前だけでは違和感持つため、今作限定でつけました。

マスクドマン、トップやっているだけあってクウガと互角……カブトの乃木(ガタックを生身で倒したワーム)かな?

次回、今回は俺とお前でダブルライダーだ。


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第23話:変わるトップウ

 久しぶりの更新。
最近はオリジナルライダーに力を入れていたせいでこっちをかまけてました。
ぶっちゃけ人気あるかわからないですが、気が向いたので書かせてもらいます。


巡り合うは【再誕した伝説】
戦いの息吹はすぐそばまで迫っていた。


 突如クウガ達の前に現れた一人の男・本郷猛。

彼は目の前に立つマスクドマンに向かっていくと、挨拶代わりの右フックを放った。

マスクドマンは本郷の拳を片手ではじき、お返しと言わんばかりの裏拳を繰り出す。

だが、本郷は眼前に迫ったそれを片手で受け止めると、力強く握り、そのまま引っ張る。

 

「―――ハァァ!!」

 

「ヌッ!?」

 

マスクドマンの腕を掴み、思いっきり投げ飛ばす本郷。

一瞬、マスクドマンの姿が本郷の手から消えたかと思えば、次の瞬間、叩きつけられる凄まじい轟音と共に叩きつけられる光景が広がった。

表面が砕かれたコンクリートの壁にマスクドマンはめり込んでおり、その姿見たライオトルーパー達は唖然とする。

 

「ま、マスクドマン様が……!?」

 

「嘘だろ、何なんだアイツ!?」

 

ネオライダーの頭目であるマスクドマンが突如現れた男によって圧倒されている光景にライオトルーパーは目を見開いて驚いていた。

それはクウガ達も同じだった……変身した相手にも素手だけで推していたマスクドマン、その彼と渡り合う本郷に一同は凄みを感じた。

動けなくなったマスクドマンを一度見て、本郷は背を向けて次の相手であるライオトルーパー達の方へ向かおうとする。

だが、本郷の背後から凛とした声がかかってきた。

 

「なるほどな。その膂力、その力強さ……お前、人間じゃないな」

 

「……ッッ!!」

 

背後から聞こえてきた本郷が振り向くと、そこにはコンクリートから抜け出したマスクドマンの姿があった。

自分の身体が埋まっているコンクリ部分を力を入れて壊した破片の跡が足元に広がっていた。

解放された片腕はだらりとと下がっており、それがあまりにも凄まじい力によって肩の関節が外れた事を本郷は察し、それでも平然と立つ彼に驚いていた。

 

「そんな、手加減したとはいえ投げ飛ばされて平然と立ち上がるなんて……」

 

「私の腕を外しておいて、あれで手加減か。相手を思うその詰めの甘さが弱点だが、それでも余りある力の持ち主だな」

 

「……」

 

関節が外れた肩の痛みなど気にせず語るマスクドマンと、静かに睨みつける本郷。

二人が対峙する空間に緊張した空気が張り詰める……そんな中、二人の間へと割って入る人物がいた。

 

「マスクドマン様! ここは俺が相手になってやるぜ!!」

 

本郷の前に立ちふさがったのは多羅場蟹夫が変身した仮面ライダー・シザース。

彼はベルトのカードデッキから一枚のアドベントカードを引き抜くと、それをハサミがついた手甲型召喚機・シザースバイザーに装填した。

 

【STRIKE-VENT】

 

「俺がマスクドマン様を守るんだ! おっりゃああああああ!!」

 

シザースの片腕に装着された蟹のハサミの武器・シザースピンチを構えると、そのまま本郷目掛けて突撃を仕掛ける。

振りかざされようとするシザースピンチが本郷の首を狙う。

クウガは息を飲み、助けに入ろうと駆け出す……だがその前に、本郷の身体が動いた。

 

 

「―――ハァッ!!」

 

 

その瞬間、一陣の風が本郷の姿を変えた。

否、本郷猛は『変身』したのだ……クウガ達と同じ、仮面の戦士に。

深緑色の二つのラインが入った黒を基調としたライダースーツ、深緑色のブーツとグローブ。

頭部全体を追うのは飛蝗を模した仮面、二つの赤い複眼、腰部には赤い風車が内蔵された白いベルト・タイフーン。

 

改造人間"ホッパー"、またの名を『仮面ライダー1号』。

 

本郷猛が姿を変えた1号は自分に迫っていたシザースピンチをつかみ取ると、握る力を込める。

するとベキベキと鈍い音を鳴らしながらシザースペンチの鋏部分が歪み、ついにはバキリと音を立てて粉砕された。

契約しているミラーモンスター・ボルキャンサーと同様の硬度と鋭さを秘めたシザースピンチがこうも容易く壊されるとは思ってもみなかったシザースは動揺していた。

 

「そ、そんな!? オレの武器がぁ!?」

 

「トリャァァ!!」

 

「なにぃ!? ぐああああああああ!!」

 

自慢の武器の一つであるシザースピンチを使い物にならなくされて戸惑うシザーズへ、1号が放った鉄拳が直撃。

そのまま殴り飛ばされたシザースは1回転しながら歌舞鬼とサガを取り囲むライオトルーパー達へと激突、そのままなだれ込む形で倒れてしまう。

先程まで戦っていた歌舞鬼とサガはシザースを殴り飛ばした1号の方へ視線を向けた。

 

「おい、アイツ強ぇぞ」

 

「そうだなぇ。あのパワー、俺達よりも凄そうだねぇ」

 

「見たところ、門矢や小野寺のヤツと違って人間離れした力技が得意みてぇだが」

 

歌舞鬼――黒鋼は1号の戦いぶりを見て、彼の特徴を冷静に分析をしていた。

他の仮面ライダーに変身できるディケイドや、超変身によるフォームチェンジで臨機応変に対応できるクウガとは異なり、1号はその身に宿る常人離れした身体能力で相手を迎え撃っている。

これまで出会ってきたライダーとは一線を画す仮面ライダーの登場に歌舞鬼は胸の奥で僅かばかりの好奇心を持たざるおえなかった。

 

その一方、1号はクウガの元へ駆け寄ると、彼に声をかける。

身体をマスクドマンへ向けて身構えて、ネオライダー達から守るつもりだ。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ああ……貴方は一体?」

 

「本郷猛、わけあってこの世界に迷い込んだ知り合いを追ってやってきたんだ」

 

「知り合い? この世界? それってもしかして」

 

1号の語った経緯を聞いて、クウガは"件の羽根を持った仮面ライダー"に思い当たる。

まさか知り合いなのか? それを追求しようとした矢先、1号とクウガへ風を切る音が聞こえてくる。

二人は咄嗟に避けて振り返ると、エネルギー刃が飛来し、近くのコンクリートの壁に大きな切り傷を残した。

飛んできた方向を見ると、そこに立っていたのは2体のオルタナティブ……大方、ネオライダーの新しい刺客であろう二人のオルタナティブはマスクドマンを守るように立ち、武器であるダガーを構えた。

 

「マスクドマン様、ここはお下がりください」

 

「そんな怪我を負われていたら士気が下がります」

 

「必要ないと言いたいが、士気が下がるのは捨てておけん。任せた」

 

ダラリと下がった片腕を掴み、力任せにハメて戻したマスクドマンはクウガ達の前から一旦退く。

それと同時にオルタナティブ達はクウガと1号へと襲い掛かった。

クウガと1号は互いに見合わせると、無言で頷き、襲い掛かってくるオルタナティブ達を迎え撃った。

 

 

~~~~~

 

 

 クウガ達と1号が出会った同じ頃。

子供達の伝手によって仮面ライダーである男・一文字隼人と出会った士達。

負っていた怪我をある程度まで処置すると、士は本題を切り出した。

 

「一文字隼人、お前に聞きたいことがある」

 

「なんだよ。答えられない質問は答えないぞ」

 

「数日前、お前はネオライダーと交戦したか? 俺達はコイツを探している」

 

一文字にそう言いながら、士は例の羽根を持ったライダーの写真を撮り出す。

その写真を見て、一文字は少しの間見つめると、眉をへの字にして答えた。

 

「ああ、それは俺だぜ。こいつらが難癖付けられたところを見ていられなくて助けたら、相手が白いのとステンドグラスみたいなのに化け物姿になってな」

 

「オルフェノクとファンガイアか……」

 

「ま、こう見えても俺、歴戦錬磨だからな。何らく倒せたんだけどな……その後、ネオライダーって名乗る奴らに目をつけられたが」

 

「同じだな。で、同一人物なら話が早い。お前、羽根のようなもの持ってないか?」

 

士の口にした『羽根』という単語を聞いて、眉を顰める。

子供達の相手をしていた小狼もサクラも気になって視線を向けた、

サクラの記憶の羽根を求めてやってきた3人の視線を一文字は受ける中、フッと不敵な笑みを向けて言い放った。

 

「ああそうだぜ。俺がお目当ての物を持ってるぜ」

 

「「ッ!」」

 

「本当ですか!?」

 

「ッ、なんだよ……そんなに欲しいのかよ?」

 

一文字の放った意外な言葉に目を見開いて驚く士と小狼。

そして羽根の持ち主であるサクラは身を乗り出さん勢いで驚きの声を上げた。

3人の反応に戸惑いながらも、一文字は困ったような表情を浮かべて羽根の話題に移ろうとした。

 

だが、それを割って入るかのようにイラついた声が建物の中に響いた。

 

 

「俺も欲しいものがあるんだよなぁ。ディケイド、お前達の首がな」

 

 

一同に聞こえた瞬間、扉を蹴り破って入ってきたのは、鬼頭尚樹とゴーストイマジンの二人。

彼ら二人の登場に叫んだのは、幽汽として変身した時に圧倒されていた小狼だった。

 

「お前達は!?」

 

「また会ったなぁ、ガキ。何をしているから分からんが、お前達もいるなら濡れ手に粟ってヤツだ」

 

『まずはテメェだ、その後で一網打尽にしてやるぜぇ!!』

 

ゴーストイマジンが大剣を振り回して走り出した。

向かっている先は……一文字隼人。

狙いを先に察した小狼は、ゴーストイマジンの前へと躍り出て、蹴りで応戦し始める。

 

「一文字さんが狙いか!?」

 

『ああ! なんでもソイツは他のネオライダーを蹴散らしたっていう不届き者らしくてな、討ち取れば俺達の手柄になるってもんだ!』

 

「……ッ! させるか!」

 

ゴーストイマジンの振り下ろす大剣を回し蹴りで弾くと、小狼はゴーストイマジンの胴体を蹴り飛ばす。

意外な反撃に地面へと転がりながらゴーストイマジンは怒りを露にしながら舌打ちをうつ。

小狼が阻んだおかげでサクラが子供達と一文字を逃げる隙ができ、同時に士が尚樹の方へ向かい、こちらでも彼へと交戦を始めた。

 

「ハァッ!!」

 

「あっぶなっ!? てんめぇ、何しやがる!?」

 

「お互いに変身していないからって、何もしないと高を括ると痛い目見るぞ。覚えておけ」

 

「クソがぁ! 生意気なこと言ってんじゃねえぞ!!」

 

蹴りや拳を主体に放つ士に対し、応戦しようとする尚樹。

だが、生身での戦いが慣れていないせいか、それとも生身での戦闘が得意じゃないのか、尚樹の振りかざした拳は空を切り、逆に士の格闘術によって圧倒されていた。

そして士の繰り出した足刀蹴りが尚樹の腹部へとめり込み、そのまま蹴り飛ばされてしまう。

 

「ぐはっ!?」

 

「どうした? その程度か?」

 

「くっそぉ……舐めやがって! ゴースト!!」

 

『たっく、どいつもこいつも!』

 

地面を転がっていたゴーストイマジンの元へ腹部を抑えながら尚樹はユウキベルトを構え、腰部に装着。

それを見て士と小狼もそれぞれのディケイドライバーとカードデッキを構えた。

 

「変身!」

 

「「変身!」」

 

【KAMEN RIDE…DECADE!】

 

士、小狼、尚樹、三人の掛け声と共にその姿を変えていく。

士が変身するのは、仮面ライダーディケイド。

小狼が変身するのは、仮面ライダーナイト。

尚樹がゴーストイマジンと共に変身するのは仮面ライダー幽汽。

三人のライダーは変身を終えてそれぞれの武器を構えると、ディケイドとナイトは幽汽へと飛びかかっていった。

 

一方、ディケイドとナイトが幽汽と戦っている頃。

子供達三人と共に逃げるサクラと一文字は建物の近くにあった公園へとたどり着いた。

だが、サクラと一文字は視界に入った存在に気付き、足を止める。

そこにいたのは、複数のライオトルーパーを連れた二体の怪人。

サボテンの特性を備えたオルフェノク・カクタスオルフェノクと、カニを彷彿させるシークラスのファンガイア・クラブファンガイア。

二体もの怪人に俊彦、義男、満里奈は恐怖に顔を染めていた。

 

「か、怪人!?」

 

「なんで、なんでここにいるんだよ!」

 

「うぅぅ……!」

 

怯える俊彦と義男、泣き出し始める満里奈。

三人をどうにか守ろうと、サクラは自分自身が戦える事ができないとわかっていてもネオライダー相手にしっかりと見据えていた。

士さんは、小狼君は今もたたっている中、私一人が諦めるわけにはいかない。

 

―――そんなサクラの表情を見て、フッと笑ったのは一文字だった。

 

一文字はサクラの前に手を差し出すと、不敵な笑みを見せて口を開いた。

 

「子供達を頼んだぜ」

 

「一文字さん……?」

 

「さぁてと、手当と腹ごしらえは済んだ。多少は戦えるようになってるからな」

 

そう言いながら、サクラ達を背に、一文字は一歩を踏み出した。

一人悠然と向かってくる一文字の姿を見て、まず動いたのはカクタスオルフェノクとクラブファンガイア。

カクタスオルフェノクは素手、クラブファンガイアは両腕の鋏で一文字を攻撃しようと仕掛けてくる。

だが、そこで一文字は空高く飛んでジャンプし、二体の怪人の攻撃を避けた。

 

怪人達の背後に降り立ち、振り向いたカクタスオルフェノクとクラブファンガイアは降り立った一文字の『変身』した姿を見て驚いた。

 

モスグリーンの二つのラインが入った黒を基調としたライダースーツ、モスグリーンのブーツとグローブ。

頭部全体を追うのは飛蝗を模した仮面、二つの赤い複眼、腰部には赤い風車が内蔵された白いベルト・タイフーン。

 

改造人間"ホッパー"、またの名を『仮面ライダー2号』。

 

かつて死の淵を彷徨い、命尽きようとしたもう一人の仮面ライダーは自分を助けた若き命を守るため、再び戦いに挑むのであった。




 そろそろセイバーも最終回近いですな、地水です。

今回は本格参戦、1号と2号が変身して登場。

何気に改造人間の本郷の一撃食らって倒れないマスクドマンって一体。
士チームは第6話以降の尚樹/仮面ライダー幽汽との対決。
ディケイドとナイトとはどうなるか。

そして2号、復活の変身。
異世界の怪人相手にどう戦うか?


次回、大乱闘ライドブラザース。


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第24話:怒涛のシップウ

 力の1号、技の2号。
二人の仮面ライダーに旅人達は遭遇する。
ネオライダー達の猛攻に、一同は立ち向かうのであった。


 一文字隼人が変身を遂げた仮面ライダー2号。

彼は自分とサクラ達に迫りつつあるカクタスオルフェノクとクラブファンガイアへ向き直り、地面を蹴って距離を詰めた。

二体の怪人のうちカクタスオルフェノクが迎え撃ち、全身に覆われた棘による素手で迎え撃とうとする。

だが、振るわれた腕を軽く避けると、カクタスオルフェノクの横を潜り抜け、クラブファンガイアへ向けて拳を振るった。

 

「タァァァッ!!!」

 

「ガッ!?」

 

2号が放った鋭いパンチは分厚い装甲の間を縫うように的確に急所を撃ち抜いた。

いきなり急所を狙われよろけるクラブファンガイアの所へ、2号は両腕のハサミを掴むと、瞬時に足払いをお見舞いする。

足を蹴飛ばされ一瞬宙に浮いたクラブファンガイアを、二号は力を込めて投げ飛ばした。

 

「そらよっ!」

 

「グアッ!?」

 

「ちょ、待て……んぎゃ!?」

 

投げ飛ばされたクラブファンガイアはカクタスオルフェノクへと激突し、そのまま絡み合って派手な音を立てながら地面へ倒れこむ。

二体の怪人を対処した2号はライオトルーパーの方へ振り向くと、すぐさま飛びかかっていった。

 

「そらぁ! おらぁ! ハッ!」

 

「ぐぎゃっ!?」

 

「がはっ!?」

 

「ぐはっ!?」

 

ライオトルーパーはアクセレイガンを振るって2号へ攻撃を仕掛けてくるが、それらを慣れた身のこなしでよけると、すれ違いざまに胴体へパンチやキックを叩き込んでいく。

一対多にも関わらず、数の不利さをもろともしない2号……そんな彼の戦う雄姿を見て、不安がっていた俊彦・義男・満里奈の三人は目を輝かせていた。

 

「すっげぇ……!」

 

「たった一人で黒服と怪人達を……!」

 

「仮面ライダー、頑張って!」

 

自分達を守るために戦っている2号に向けて、応援の言葉を向ける子供達三人。

そんな彼らを傍らに、サクラは内心ではあの場に残った小狼と士の事を心配していた。

 

(小狼君……士さん……大丈夫なのかな。ううん、きっと大丈夫だから……)

 

これまでどんな壁をも乗り越えた小狼と、いくつもの世界を滅びから救ってきた士。

彼ら二人がこんなことで負けるはずがないと信じているサクラは、できるだけ子供達と共に安全な場所で見守ってることだけ。

下手に動けば戦っている彼らの戦いの妨げになると思い、子供達を連れて物陰に隠れていた。

―――せめてもの私ができることを……私ができる戦いを行う。

そう思ったサクラは子供達と共にライオトルーパー達ネオライダーと戦う2号の様子を見守っていた。

 

 

~~~~~

 

 

 

一方、ディケイドとナイト対ネオライダー幽汽。

場所を室内から屋外へ移し、幽汽の振りかざす大剣をそれぞれの剣で防ぎ、何とか防御を続けるディケイドとナイト。

その狡猾な戦い方によって以前小狼は窮地に追い詰められた。

だが今回は"仮面ライダーナイト"という同等の力を持ち、相対している……簡単に負けるわけにはいかない。

ナイトはダークバイザーを構え、幽汽へ向かって走り出した。

 

「ハァァァァ!!!」

 

『「オラァ!!」』

 

ナイトのダークバイザーと幽汽の大剣が火花を散らしながらぶつかり合い、鍔迫り合いを行い始める。

暫しの間力の拮抗が繰り広げられるが、次第に幽汽の方が優勢になっていく。

仮面の下で苦しい表情を浮かべるナイトに、幽汽は嘲笑う。

 

『「ハハハハハ! どうしたよ! ライダーに変身してもその程度か!!」』

 

「くぅぅぅ……!!」

 

ゴーストイマジンの膂力も上乗せにした幽汽の大剣が迫り、冷や汗を掻くナイト。

変身した今でも、どうにかして変身している相手に食らいついている……伊達にこの幽汽がただの仮面ライダーじゃないことを意味しているかもしれない。

それでもこの状況を打開しようと思ったナイトは、咄嗟に身体と剣を傾かせ、幽汽の大剣を反らした。

突然の行動に一瞬何が起こったのかとバランスを崩す幽汽、そこへ死角に回ったナイトの鋭い横蹴りが背中へと直撃した。

 

「ハッ!!」

 

「ぐぉっ!? テメェ!!」

 

ナイトの反撃に地面を転がった幽汽は激昂を込めた拳を地面へ叩きつけると、立ち上がって態勢を立て直そうとする。

そこへ、ディケイドの振りかざしたライドブッカー・ソードモードの剣撃が迫り、それを咄嗟に受け止める。

ギチギチと刃をこすり合わせる金属音を鳴らしながら、ディケイドは幽汽へ話しかける。

 

「お前、この俺を忘れていただろ」

 

「ディケイド! 貴様ぁ!」

 

「次は俺が相手にやってやる。コイツでな」

 

ディケイドは手にした一枚のライダーカードを幽汽へ見せつけると、あらかじめ展開していたベルトへと装填。

接敵していた幽汽から離れると、ディケイドライバーのバックル閉め、その効果を発動させた。

 

【KAMEN-RIDE…DEN-O!】

 

電子音声が鳴り響いた後、電車の発車BGMに似た音色と共にディケイドの周囲に光のエネルギーが出現。

それらは六つのアーマーと変わり、ディケイドの身体を黒と銀色の軽装をした素体ボディへと変えていく。

やがて六つのアーマーはボディ上半身に取りつき、赤い装甲へと変貌。

その後、桃を形どった仮面が出現し、正面に辿り着くと、上下真っ二つになるように変形した。

過去と未来を行き来する時間の守護者・D(ディケイド)電王へと変わると、ライドブッカーを構えて幽汽へと突撃を仕掛けていった。

ディケイドが変身したそのライダーを見て、幽汽――ゴーストイマジンは驚いた。

 

『電王だと!? テメェ電王にもなれるのかよ!?』

 

「あんだゴースト!? そんなに電王ってのがまずいってのか!?」

 

「知らないか? 『俺、参上』って名乗りの仮面ライダーをな!」

 

電王の姿を見て動揺するゴーストイマジンと、イマジンの天敵ともいえる電王の存在を存じない尚樹。片方が動揺して身動きが一瞬鈍くなった幽汽へD電王が振りかざしたライドブッカーが捉えた。

幽汽は咄嗟に受け止め、その後数度打ち合うが、若干D電王にって押され始める。

ゴーストイマジンの動揺もあるが、D電王の繰り出す手数の多さと勢いに幽汽は戸惑っていた。

 

「くっ!? なんだ!?姿が変わっただけで!?」

 

「良いこと教えてやるよ、『戦いはノリのいい方が勝つ』らしいぜ!」

 

かつて出会った『電王の世界』のとある人物(イマジン)の持論を口にしながら、D電王は幽汽を圧倒していく。

幽汽は何とか打開をしようと、ライダーパスを手にし、それをユウキベルトのバックルへと翳した。

 

【Full Charge】

 

「でかいのいくぞぉ!!」

 

『こいやぁっ!!』

 

『「ハァァァァァ!!」』

 

幽汽の掲げた剣の刀身に青白い鬼火が宿り、それを地面を叩きつける。

砕きながら放たれた衝撃波『ターミネイトフラッシュ』がD電王へと迫っていった。

―――追い詰めすぎたか……、そう思ったD電王の元へ声が聞こえてきた。

 

【ADVENT】

 

「士さん、掴まってください!」

 

「ッ!!」

 

ターミネイトフラッシュの衝撃波が直撃する寸前、D電王は咄嗟に上へと手を伸ばす。

その手を掴んだのは、アドベントによって呼び出したダークウィングを背中へ合体させたナイト。

空を自由に飛ぶ能力を得たナイトは、D電王を軽々と運び上げ、それによってターミネイトフラッシュの一撃を回避した。

必殺の一撃を避けられて驚く幽汽……上を見上げれば、空高く舞い上がったナイトとD電王の姿があった。

ナイトとD電王は一枚のカードをベルトとダークバイザーに装填し、必殺の一撃を繰り出す準備をする。

 

「小狼、行くぞ」

 

「はい!」

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DEN-O!】

 

【FINAL-VENT】

 

それぞれの電子音声が鳴り響くと、ナイトの手からD電王は離され、そのまま堕ちていく。

重力による自由落下を感じながらD電王は手に持ったライドブッカーの先端から赤いオーラで出来た刀身を生み出し、それを撃ち出した。

放たれた赤い刀身は幽汽へ炸裂し、さらにライドブッカーの動きと連動するように何度も斬りつけていく。

 

ナイトはウィングランサーを装備、それと同時にダークウィングが防具となる漆黒のマント・ウィングウォールへと変わり、さらにドリル上に包み込んだ。

ウィングランサーを構えたままナイトは急降下による突撃が幽汽へと向けられる。

 

「ハァァァ!」

 

「タァァァ!」

 

『「なっ……ぐあああああ!?」』

 

D電王の『エクストリームスラッシュ』とナイトの『飛翔斬』、二人の同時に繰り出した必殺技が幽汽へと叩き込まれる。

幽汽は防ぐ間もなく受け、そのまま爆発を巻き起こした……爆炎の中から変身が解除された尚樹とゴーストイマジンが飛び出し、地面へと倒れこむ。

ボロボロの姿になりながらも、尚樹は信じられないような顔で睨みつける。

 

「うそ、だろ……なんで、こんなガキに……!?」

 

「コイツは自分の願いを叶えるために変わった、変身する覚悟をした。今更お前なんかに負けるかよ」

 

自身がナイト―――小狼に負けた事実を信じられない尚樹に対し、電王の姿から元の姿に戻ったディケイドがそう告げた。

この世界の仮面ライダーや怪人達と渡り合うために、なにより大切な人の記憶を取り戻すために戦う小狼をディケイド――士は見てきた。

仮面ライダーになれる事を優位に思って慢心していた幽汽/尚樹に、自分の想いを抱えて戦っていたナイト/小狼が強いとディケイドは語った。

それを聞いた尚樹は目くじら立てて、怒号を上げた。

 

「ふざけんなよ! 何が願いだ、バカバカしい! テメェの願いなんざ何一つ叶えられるか!!」

 

「……それでもおれは決めた。やると決めたことをやる、それだけだ」

 

「ッッ!!」

 

尚樹の言い放った否定の言葉にナイトは忽然とした態度で自分の意思を呟いた。

それを耳にし、尚樹は目を見開くと、自身の顔を地面へと俯いた。

戦闘の意思がなくなったと判断したディケイドはナイトを連れて、サクラ達の元へと向かった。

取り残された尚樹は、未だ気を失っているゴーストイマジンの傍らで、己の拳を震わせていた。

 

 

「……クソッ……クソッ……畜生……!!!」

 

 

「―――アアアアアアァァァァァッッッ!!!」

 

 

「許さねぇ……許さねえぞ……テメェの願い、否定してやる……台無しにしてやる……!!」

 

 

顔を上げ、既に立ち去ったディケイドとナイトへ向けるのは、怒りと悔しさが入り混じった瞳。

未だ必殺の一撃を受けてまともに動けない尚樹は黒い感情を胸の内に溜めつつ、怨嗟の言葉を呟くのであった。

 

 

~~~~~

 

 

場面は戻り、1号とクウガ。

相対する二人のオルタナティブと対峙しており、互角の戦いを繰り広げていた。

 

「ハッ!」

 

「タァ!!」

 

格闘戦を繰り広げて戦う1号とクウガ、それをスラッシュダガーで捌くオルタナティブ2体。

互いに背中合わせで戦う二人……クウガはふと、1号へと質問をぶつけた。

 

「本郷さん、なぜあなたは彼らと戦っているんですか?」

 

「俺は、ある人物を探すためにこの世界にやって来た。ネオライダーはアイツを狙っていると聞いて、彼らと対立をした」

 

「そうだったのか……その人物を助けたいのですか?」

 

「ああ、アイツは俺の親友だからな」

 

クウガと1号は斬りかかってくるオルタナティブを迎え撃ち、的確に拳を叩き込む。

そして殴り飛ばした後、1号はクウガの方へ視線を向けて彼の名前を訊ねた。

 

「キミの名前は?」

 

「小野寺ユウスケ、仮面ライダークウガです!」

 

「ユウスケか。成り行きで悪いが一緒に戦ってくれ」

 

「ああ、まずはこいつらネオライダーをどうにかしてからだ!」

 

お互いの気持ちを伝え合った1号とクウガはオルタナティブ達へと視線を向ける。

態勢を立て直して、再び得物を構えるオルタナティブ達へ走り出す。

 

「トォォォォォ!!」

 

「オリャアアアアア!!」

 

1号とクウガが繰り出したストレートパンチ。

二人の繰り出した一撃をオルタナティブはスラッシュダガーで受け止めるが、勢いを抑えきれずに弾き飛ばされてしまう。

相手の武器を弾き飛ばした今、チャンスと見た1号とクウガは互いの顔を見合わせた。

 

「今だ!」

 

「ああ!」

 

「「―――ハァッ!」」

 

1号とクウガはお互いに頷くと、地面を蹴り上げて空高くジャンプし大空へ舞い上がる。

空中で1回転すると、同時に片足を突き出し、オルタナティブ達へと向けた。

飛び蹴りの構えで1号とクウガは必殺の一撃を叩き込んだ。

1号の放った『ライダーキック』と、クウガの炎を纏った飛び蹴り『マイティキック』。

ダブルライダーが繰り出した必殺キックはオルタナティブへと炸裂し、そのまま蹴り飛ばした。

オルタナティブはまともに受け、数回空中を回転しながら地面へと激突し、爆発。

装着者であった男達が投げ出され、そこには砕け散ったカードデッキが散乱するのであった。

 

その様子をライオトルーパーと対峙していた歌舞鬼とサガは感心していた。

 

「アイツら、初対面のくせによくやる」

 

「本郷さん、だっけか。強いね彼」

 

「くそぉ! 余裕ぶってんじゃねえぞ!」

 

ライオトルーパー達相手に器用に歌舞鬼とサガへ、シザースがシザースバイザーを構えて殴りかかってくる。

ライオトルーパー達に紛れて仕掛けてきた攻撃を歌舞鬼は音叉剣で受け止めると、すぐさま斬り返す。

咄嗟に装備していたGUARDVENT(ガードベント)・シザースシールドで防ぐシザースだが、踏ん張りが足りなく直撃したまま押し出された。

 

「オラァ!!」

 

「ぎゃふぅ!?」

 

歌舞鬼によって大きく飛ばされたシザースはそのまま弧を描いて何処かへと飛んでいった。

後に残されたライオトルーパー達は敵わないとみると、シザースの後を追って立ち去っていく。

いつの間にかマスクドマンの姿もなくなり、一通り敵を倒した一同はひとまず夏海の元へと合流しようとした。

 

 

―――その時であった、5人の近くの場所で火柱が上がったのは。

 




 特撮番組でいう所の4分の1を切ってしまった事に戦慄している地水です。

今回のテーマは『乱戦』
2号がいともたやすくオルフェノクとファンガイアを相手している所で他陣営は色んなバトルを繰り広げてました。(オルフェノクとファンガイアのチョイスは、本家仮面ライダーのサボテグロンとシオマネキング)

ディケイドとナイトは幽汽とのリベンジマッチ。
クウガと1号は"はじまりのライダー"繋がりで共闘。
シザースをシバき倒す歌舞鬼とサガ。

三者三葉の戦い方をする一同、書いていて楽しかった←
しかし、そんなディケイド一行withダブルライダーVSネオライダーの戦いに新たな波乱が……?


次回、漸く登場、彼の名は?


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第25話:再会のソウフウ

 開戦、激戦、接戦。
伝説の大自然の戦士の参戦に寄り、仮面ライダー達のバトルが白熱。
ネオライダーを打ち倒していく中、そこへ『乱入者』が現れる。

激情の狼煙は上げられた。


 同時刻、ライオトルーパー達を蹴散らした2号はクラブファンガイアとカクタスオルフェノクを相手に圧倒していた。

殴りかかってくるカクタスオルフェノクの攻撃を避け、胴体目掛けて蹴り飛ばす。

ハサミで断ち切ろうとするクラブファンガイアの一撃を受けとめ、そのまま膝蹴りを叩き込んで破壊。

どちらも戦闘に支障が出るほどのダメージを負って満身創痍な状態の所へ、2号は静止の言葉を述べた。

 

「おっと、そこまでにしておけよ。サボテンにカニ公」

 

「「ぐっ……!?」」

 

「これ以上やるなら、容赦はしないぞ? さっきはもう暴れられない程度にしておいたが、ここから先は命のやりとりだ」

 

2号の言葉を聞いて二体の怪人達は顔を見合わせると、背を向けて逃げ出した。

主力戦力である怪人達が逃げ出した姿を見たライオトルーパー達も後を追うように立ち去っていく。

自分の敵性勢力である黒服と怪人達が逃げたのを確認した2号はやれやれと言った表情で嫌味を漏らした。

 

「まったく、甘い所も本郷から移っちまったか? 我ながら嫌になるなぁ」

 

両腕を振るいながら先程の自分らしからぬ甘さに身の毛のよだつ思いをした2号。

もしかしたら小狼とかいう少年があの本郷(バカ)と彷彿させたからかもしれないと思案する。

自分の甘い部分を確認した2号へ叫ぶ声が聞こえた。

 

「一文字さん!」

 

「「「ライダー!!」」」

 

「うん? おお、大丈夫だったか」

 

物陰から顔を見せたサクラと子供達の顔を見つけた2号は、安堵の言葉を漏らした。

怪人達も去った今、彼らの元へと向かおうとする……その時であった。

 

「……!?」

 

「一文字さん……?」

 

「来るな! 隠れろ!!」

 

異様な殺気と熱量を感じ取り、咄嗟に振り向く2号。

そこで目にしたのは、―――爆炎に包まれた、6本角の異形であった。

 

 

~~~~~

 

 

 ディケイドとナイトが『立ち上がった火柱』に気付いたのは、すぐ傍だった。

二人が駈けつけるとサクラ達を守るように拳を構える赤い瞳の仮面の戦士――2号と、相対する人ならざる異形の戦士。

恐らく前者の方が一文字の変身した姿だとディケイドはすぐさま察した。

 

「士さん、あれって……!」

 

「ああ、サクラ達を守ってるのは一文字隼人……仮面ライダー2号だ。だがもう一人は……」

 

ディケイドは2号と戦っている相手の姿に視線を向けた。

全てを焼き尽くさんと灼熱の炎を噴き出しているのは、溶岩を思わせる罅割れた赤い装甲。

黄色の複眼に6本へと展開した角、そしてなにより龍を思わせるその姿にディケイドは見覚えがあった。

 

「仮面ライダー……アギト?」

 

ディケイドが口に漏らした通り、そこにいたのは『仮面ライダーアギト』。

あの姿は"バーニングフォーム"と呼ばれるアギトの強化形態であり、高位のアンノウンすら渡り合える火力と有り余る力によって暴走する危険性を孕んだ両極端な姿だ。

そのアギト・バーニングフォームは上半身から燃え盛るプロンミネンスを用いて、火炎攻撃を2号へと放っている。

素手である2号は回し蹴りによる風圧で何とか凌いで入るものの、辺り一帯を燃やし尽くさんとしている勢いで身体からプロンミネンスを噴き出している。

このままでは2号はもちろん、サクラ達にまで被害が及ぶ……そう思ったディケイドはナイトに向かって叫んだ。

 

「小狼、お前はサクラ達を守れ! 俺が加勢しに行く!」

 

「わかりました!」

 

ディケイドの言葉を聞いたナイトはすぐさまサクラ達の元へ走っていき、ディケイドはライドブッカーを構えて狙いを定めた。

 

一方、謎の乱入者――アギト・バーニングフォームフォームに苦戦を強いられている2号。

燃え盛る炎に押され、劣勢を強いられる2号。

 

(チッ、流石にきついな……かといって、ここで引き下がるわけにはいかないが!)

 

自身の腕や脚を振って炎を吹き飛ばしている2号は、ふと後ろへと視線を向ける。

後方には自分の戦う背中を見つめるサクラと子供達の姿があった。

―――負けられない、倒れてはならない、彼らを守れるのは俺しかいない。

そう思った2号はアギトから繰り出された炎を振り払うと、握りしめた拳を構えて、振り放った。

 

「オラァァァ!」

 

「ぐっ!?」

 

「もういっちょぉ!!」

 

アギトの胴体へ鋭く突き刺さる2号の『ライダーパンチ』、そして間髪入れず放たれた『ライダーキック』。

ものの見事なコンボにアギトの体躯は一瞬揺れる……これならどうだ、と2号は仮面の下で不敵な笑みを浮かべる。

だが、アギトは踏みとどまると、2号の足を掴み、そのまま逃がさんと勢いで炎が噴き出し始める。

しまったと思った瞬間、アギトの赤い装甲から炎が放出され、2号をを飲み込まんとした……。

 

【ATTACK-RIEDE…BLAST!】

 

「それ以上だと黒炭になっちまうぞ、ハッ!」

 

だがその時、アギトへ向けて放たれたいくつものディケイドブラストによる光弾が炸裂。

ダメージを受けて2号を開放し、倒れようとする2号を何者かが抱き留めた。

見ると、ディケイドが2号の肩を支えており、破壊のために全てのライダーを知っている彼だからこそその名を呼んだ。

 

「大丈夫か、2号ライダー?」

 

「お前は、まさかさっきの……?」

 

「助太刀するぜ。まだ相棒と再会しちゃいないんだろ?」

 

「へっ、どいつもこいつも……足引っ張るんじゃねえぞ」

 

目の前に立ちふさがるアギトへ態勢を立て直すディケイドと2号。

敵が二人に増えたアギトは炎を纏わせた拳を振り放ち、ディケイドと2号を攻め立てる。

迫りくる火炎攻撃を掻い潜り、ディケイドは2号と共にアギトへと接近戦を仕掛ける。

二人が避けた炎は周辺に燃え移って焼き尽くしていき、ついにはサクラ達のいる物陰へ飛んでくる。

 

「「うわっ!?」」

 

「きゃっ!?」

 

「危ない……!」

 

迫りくる炎を庇うようにサクラは子供達の前に出る。

子供達を庇うサクラへと炎が飛んでいく……だがそこへ、電子音声が鳴り響いた。

 

【GUARD-VENT】

 

「ハァッ!」

 

電子音声が鳴り響いた直後、サクラの前に躍り出たナイトが漆黒のマント・ウイングウォールで炎を防ぐ。

誰も傷一つ追わなかった事を恐る恐る確認したサクラは目の前に立つナイト――変身した小狼に向かって叫んだ。

 

「小狼君!」

 

「もう大丈夫です、姫」

 

「うん!」

 

小狼が変身を遂げたナイトの登場に、サクラは勇気づけられ笑みをこぼした。

戦う力のないサクラ達を守るように、アギトとの戦闘をディケイドと2号に任せることにした。

 

一方、ディケイド・2号対アギト・バーニングフォーム。

ディケイドのライドブッカー・ソードモードによる剣戟と2号の巧みな蹴り技により、ようやく互角に渡り合うようになった。

二人相手では不利だと判断したアギトは紫色に染まったベルト・オルタリングに両手を翳すと、専用武器・シャイニングカリバーが出現。

形に閉じた状態・エマージュモードから薙刀状のシングルモードに変形させると、ディケイド達に斬りかかる。

 

「ハァッ!」

 

「くっ!? コイツ!」

 

「手強い……!」

 

2号と共にシャイニングカリバーを受け止めるディケイドだが、アギトから繰り出される腕力により簡単に押し切られる。

よろめきながらもなんとか猛攻を止めようとする二人だが、アギトはシャイニングカリバーの刀身に炎をともすと、それを思いっきり振りかざそうとした。

 

「タァ!!」

 

「まずい……!」

 

ディケイドはアギトが繰り出そうとする技に冷や汗をかいた。

アギト・バーニングフォームの必殺技の一つである『バーニングボンバー』……炎の刃で切り裂く大技を飛ばすことで二人に目掛けて放たれた。

アレをまともに食らえばひとたまりもないと察したディケイドは咄嗟に一枚のカードを装填する。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DECADE!】

 

「ハァッ!!」

 

ディケイドが繰り出したのは、数枚の金色のカード型エフェクトをくぐって放つ必殺キック『ディメンションキック』。

アギトの繰り出したバーニングボンバーとぶつかり合い、暫しの間拮抗する。

だが、ディケイドのディメンションキックを押し切ろうとアギトが叫んだ。

 

「―――うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「なっ、があああああああ!?」

 

ディケイドをシャイニングカリバーで上空へ打ち上げたそのまま吹っ飛ばされる。

残された2号へアギトはその複眼で睨みつける。

 

「邪魔者はいなくなった……おまえを倒す」

 

「チッ、俺が狙いか!」

 

2号一人だけとなった今、アギトはゆっくりと2号へと迫る。

自分が狙いだと判明した今、2号は身構えた……アギトがシャイニングカリバーで斬りかかろうとした瞬間。

―――その時であった、2号を守るべく飛びかかる存在がいたのは。

 

「ハァ!!」

 

「なっ!?」

 

力任せに放たれたキックはシャイニングカリバーを蹴り飛ばし、明後日の方向へと飛んでいく。

何が起きたのか、と戸惑ってる2号の元へ空中から降り立つのは――自身と酷似した姿を持つ、飛蝗を彷彿とさせる仮面の戦士・仮面ライダー1号。

1号は顔を向けると、その名を口にした。

 

「一文字……」

 

「本郷……」

 

「ごめん、遅くなった」

 

「フッ、いいさ。それより、この暴れん坊をどうにかするぞ」

 

申し訳なさそうにする1号と、笑って許す2号……二人は互いに顔を見合わせると、目の前にいる豪炎の戦士へと向き直った。

アギトは両腕を構えて1号と2号へ突撃仕掛けてきた。

だが1号と2号は一瞬互いの顔を見合わせ、そして襲い掛かってきたアギトの両腕を掴む。

 

「「ハッ!!」」

 

タイミングよく二人で投げ飛ばし、地面へと叩きつける。

多少なりともダメージを追いながらも起き上がるアギトだったが、そこで見たダブルライダーによるライダーパンチを繰り出す光景に驚く。

 

「「タァ!」」

 

「ぐっ!?」

 

ダブルライダーの息の合った一撃を食らい、退くアギト。

再び身体から発する炎を繰り出そうとするが、そこへ身体を拘束するように赤い鞭と触手が飛んでくる。

サガのジャコーダービュートと歌舞鬼の鬼鞭術がアギトを拘束していた。

 

「おっと、そうはさせないよ」

 

「今だ、小野寺! 門矢!」

 

二人が叫んだと同時にアギトの耳に聞こえてきたのはけたたましい羽音。

上を見上げるとそこにはゴウラムに乗ったディケイドと、ゴウラムの手足にぶら下がったクウガの姿があった。

 

「吹っ飛ばされた直後に助かったぜ、ゴウラム……ユウスケ!」

 

「ああ、同時攻撃だ!」

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DECADE!】

 

ディケイドとクウガはゴウラムから飛び降りると、そのままアギト目掛けて足を突き出す。

それを見た1号・2号も地面と蹴って飛び上がり、空中へ舞う。

 

「「「「ハァァァァ!!」」」」

 

『ディメンションキック』、『マイティキック』、そして『ダブルライダーキック』。

4人の仮面ライダーの繰り出した必殺の一撃はアギトへと飛んでいく。

アギトは己の拳に炎を纏わせて繰り出す『バーニングライダーパンチ』で相殺しようとする。

だが、アギトのバーニングパンチをも押しのけ、4人のライダーキックが思いっきり蹴り飛ばした。

 

「ぐぅぅぅぅぅ……がぁぁぁ!!!」

 

地面から足が離れ、一回転二回転と地面を転げながら倒れたのちに爆発に巻き起こって巻き込まれたアギト・バーニングフォーム。

地上へと降り立ったディケイド・クウガ・1号・2号と、サクラ達を連れたナイトと合流を果たしたサガ・歌舞鬼、合計7人のライダー達はその姿を見ていた。

 

「……ハァ、ハァ、ハァ……!」

 

爆炎の中から這い出てくるのは赤い装甲と黄色の相貌。

だが、揺らぐ陽炎と共にアギト・バーニングフォームの姿が変わった。

赤い装甲は黒を基調としたボディへと変わり、黄色の複眼は青い複眼へと変わる。

 

―――やがて先程とは全く異なる姿へと変貌して現れたのは、漆黒の仮面の戦士。

 

青い双眸がディケイド達を見つめる中、ふと視線を止める。

ナイトが庇うサクラの姿を見て、少しの間彼女を見つめていた。

 

「……」

 

「……えっ?」

 

「アイツ、サクラを見ている?」

 

ナイト――小狼だけは『アギトだった存在』が見つめるサクラの視線に気付いた。

何故サクラにだけ興味を示したのか……それを問いただそうとした時、漆黒の仮面の戦士は炎に飲まれて消えていった。

尋ねる相手が姿を消して、やり場のない不安を抱えたナイトをディケイドは手に肩を置く。

 

 

ネオライダーの他にも戦わなければならない『存在』を悟ったディケイド達。

1号と2号の出会いを得て、ようやく最初の羽根を手にしようとする今、一抹の不安を感じるのであった。




 祝・ディケイドクロニクル25話を迎えました、地水です。

ネオライダーの刺客を返り討ちにした2号の前に現れたのは、まさかのアギト・バーニングフォーム。
2号とディケイドがタッグを組んで挑むも、苦戦を強いられる……。

そんな中、本郷/1号と再会、祝ダブルライダー再結成。
ディケイド達と協力共闘、なんとかしてアギトを退かせるものの……お前は一体何者だ!?

察しのいい方はお分かりの通り、1話冒頭の彼です。
再登場までどこまでかかってるんだ……。
謎の仮面ライダーの正体は一体……。


次回、Wライダーとの別れ、そして新たなる出会い。


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第26話:別れのオクリカゼ

 謎の仮面ライダー・アギト バーニングフォームの襲撃。
追い詰められる2号をディケイド達が助け、なんとか退けることができた。
だが、その正体はアギトを騙る何者か……漆黒に包まれたその身を消しながら、仮面の戦士は去っていった。



 謎のアギトを騙った何者かを退けた士達一行。

夕方となった日、彼らは今、旅立とうとする本郷と一文字との会話に勤しんでいた。

 

「何処かに旅立つんだな」

 

「ああ、俺達は元々こことは別の世界の人間だ。元の世界に戻る手段を探しながら旅を続ける」

 

本郷と共に戦ったユウスケは別れの言葉を交わしていた。

 

―――元々、本郷と一文字はこの"ネオライダーの世界"とば別の世界からやってきた者だ。

元々は【第3の仮面の男】を迎えた後、本郷は行方不明になった一文字を探すべくこの世界まで来たそうだ。

一方、度重なる拒絶反応(リジェクション)によって身体の限界を迎えるはずだった一文字……だが死ぬ間際の所へサクラの記憶の羽根が舞い降りた。

長時間の生死を彷徨った後、気が付けばこのネオライダーの世界におり、自身の身体はリジェクションが起きない健康体になっていたという。

巡った因果にとって、一文字にとってはサクラや小狼達に恩義を感じる……と、心の内で留めて置いている。

 

そんな一文字へ、士と小狼は話しかけていた。

 

「お前も旅の途中なんだな」

 

「ああ……どうやら、そうらしい。死にかけることもなくなった今、どこへ向かうかはわからないけどなぁ」

 

「ありがとうございます、一文字さん。今までサクラの羽根を守ってくれて」

 

「いいってことよ……誰かのために戦うヤツはどうしても嫌いになれないだけだ」

 

頭を下げて感謝を述べる小狼へ一文字は気さくに返しながら、隣に立つ本郷へ視線を向ける。

対して本郷はユウスケらのと会話を一区切りすると、士達7人を改めて見て告げた。

 

「もし、君達に何かあった時は俺達が助けに行く」

 

「この世界は分からないことがあるからな。何が起こるか分からない以上、俺達が手を貸す」

 

「頼もしい限りだな。なぁ、士」

 

「さぁてな、だが悪い気はしない」

 

本郷と一文字から受け取った言葉に喜びの表情を浮かべるユウスケとニヒルな笑いを浮かべる士。

そして一文字は小狼達へ顔を向けると、自身の癒していた記憶の羽根を小狼へと差し出す。

 

「大事なモノなんだろ? 受け取れ」

 

「サクラの羽根……!」

 

小狼はそれを受け取り、一文字に深々と頭を下げた後、記憶の羽根を見つめる。

桃色の模様が入ったその白い羽根に小狼は顔を綻ばせた。

 

「ようやく、羽根を手に入れた」

 

「小狼君、私に渡すのは後にしてね。お二人の別れを惜しみたくないから」

 

「姫……わかりました」

 

サクラの言葉を聞いて、羽根を受け取ったままにする小狼。

二人のやりとりを見て本郷と一文字はそれぞれの愛機・サイクロン号に跨ると、エンジンを吹かしつつ、最後の言葉を交わした。

 

「みんな、また会おう」

 

「じゃあな、元気でいろよ」

 

士達一行にそう伝えると、本郷と一文字はサイクロン号を走らせ、瞬く間に去っていった。

まるで吹き抜ける風のように何処かへと消えていく二人を見送る一同。

二人のライダーが旅立ったのを見送った後、タイミングよく起き上がる者がいた。

夏海が気になって振り向くとその声の主はサクラに抱えられたモコナだった。

 

「ぷぅ! 羽根見つかってよかった!」

 

「モコちゃん、おはよう」

 

「モコナ、おはようございます。ところでずっと黙っていたけどどうしたのですか?」

 

「寝てた!」

 

「あんな状況で寝ているなんて図太いですねこの子!?」

 

夏海が戦闘中でも黙って寝ていたモコナに驚きの声を上げた。

そんな彼女へとモコナは抗議の言葉を告げる。

 

「でもモコナ、羽根の波動、見つけたよ!」

 

「モコナ、それは一文字さんが持っていた羽根じゃあ……」

 

「違うの! 他にも羽根があるの!」

 

「「「「!?」」」」

 

モコナの驚きの発言に聞いて驚く小狼、サクラ、ファイ、黒鋼の4人。

その場にいた士とユウスケも眉を顰め、モコナに問い詰めた。

 

「どういうことだ、白毛玉? 羽根は他にもあるって?」

 

「そうだよ! モコナが感じていた羽根って一文字さんが持っていた物じゃなかったのか?」

 

「違うの! モコナ、あの時感じたの! あのライダーが戦ってるとき、めきょってしたの!」

 

「「「めきょって?」」」

 

「めきょっ!」

 

「「「うわぁっ!?」」」

 

今まで糸目だったモコナの目が見開き、思わず悲鳴を上げてしまう士、ユウスケ、夏海。

今まで知らなかった一面に驚くも、モコナの告げた言葉にさらに驚愕した。

 

「それに、この世界に来てから感じてるサクラの羽根の波動、まだあるの!」

 

「ああ、そういえば……一文字って人がネオライダーと最初に交戦した日って数日前ってことになるよね」

 

「おれ達がこの世界に来た時より、少し後なのか」

 

モコナの言葉を聞いてファイと小狼が思い出す。

サクラの羽根を感じ取れたのは、この世界に来てからすぐの事。

そして2号とネオライダーが交戦した時期と日付はこのネオライダーの世界に来た後。

―――少なくともこの世界には他にも記憶の羽根があるという事実が一同の前で判明した。

 

それに、モコナが述べた事を信じるのならばあの【アギトを騙った何者か】も記憶の羽根を持っていた事になる。

……状況を振り返れば、あの時羽根を持っていた2号を狙っていたのも、羽根を手に入れるためだと説明がつく。

幸いにも今回は撃退することはできたが、この世界にある羽根を狙わないとも限らない。

いずれぶつかるときもあるだろうと士達はその考えに至った。

 

「たっく……また面倒事になりそうだな」

 

「そう、ですね……サクラ姫の羽根を狙う人がいるとは」

 

「それもあるが、複数あるのに一つも手掛かりがつかめない所を見ると、隠しているヤツがいるな」

 

「羽根の情報すらない……そこまでして、羽根に固執するのは」

 

士と小狼が居所のつかめない羽根の持ち主について考察をし始める。

そんな中、夏海の持つ携帯が鳴り響いた。

電話の相手は栄次郎……通話ボタンを押して通話を繋げると、栄次郎の声が聞こえてきた。

 

『もしもし、夏海かい? 今士君と一緒にいるかい?』

 

「どうしたんですか、お爺ちゃん?」

 

『いやね、君達に会いたいって人がいるんだよね』

 

「えっ、私達に?」

 

栄次郎の口から述べられた『自分達に会いたい』という人物を聞いて夏海を始めとした一同は首を傾げた。

―――この出会いが後の大波乱になる事も知らず。

 

 

~~~~~

 

 

 某所、とある港。

あの場から逃げ延びたアギトに化けていた黒い仮面の戦士は地面に倒れ、息を切らしていた。

流石に7人をもの仮面ライダーを相手にするのは堪えた模様で、事実立っているのもやっとであった。

変身した黒い姿から元の姿に戻ると、フードで姿を隠したその傷ついた服装を誰もいないその場に晒した。

 

「……逃してしまったな。無敵の仮面ライダー様も地に落ちたもんだ」

 

皮肉気味な口ぶりを吐きながら、消耗が激しいその身体を鞭打つように起き上がらせる。

その際にフードがずり落ち、素顔が露になる。

首の所で切った茶髪に、鮮やかな緑色の瞳を持つその整った顔立ちの青年は自嘲するように呟いた。

 

「こんなんじゃ、壊せるものも壊せねえな……、ああ、我ながらに嫌になるね」

 

青年は嫌味を吐きながら立ち上がると、今後自分がとるべき行動を思案する。

 

―――今の自分の目的は、あの力ある羽根を回収すること。

 

―――現に、今はこの世界で確認されている10枚のうち1枚を確保している。

 

―――その中で所在が判明している2枚のうち1枚は『ネオライダーの誰か』が、もう一つはあの仮面ライダー2号が手にしている。

 

―――2号の方は比較的新しく【この世界】にやってきたものだから最悪あのまま手に入れられても別に構わない。

 

―――だがもし、この世界にある羽根を手に入れようとするヤツがいるなら、それより先に回収しなければならない

 

―――あの羽根は、【大いなる力】と【災い】、二つの祝福をもらたすものだから。

 

その考えに至った時、青年は毎回同じ答えに至った。

 

「やっぱ、羽根をどうにかしないとな……にしても1号はまだしも、なんだったんだ。アイツらは」

 

苦い顔をしながら青年が思い出したのは、あの時2号を助けるべく加勢しに入ったライダー達の事。

2号と深いかかわりのある1号はともかく、クウガや歌舞鬼にサガ、そしてあのディケイド。

遠く方でナイトも見かけた気がしたが……まるで2号を助けるべく集まった5人のライダーによって羽根を奪われてしまった。

彼らが何者なのかは分からないが、相対する予感がすると青年は思った。

 

「そういや、前にもあったよな。あいつらと」

 

溜息を吐きながら思い出すのは、ディケイド達の事。

いつぞや最初にあった時はクソ野郎(ディエンド)を打ん殴るためにファイズ・アクセルフォームで追いかけてきたが、その時すでに出会っていた。

あの時は気が進まず手を出さなかったが……彼らの目的は一体何なのか。

だがしかし、青年のやることは変わらなかった。

 

「だがまあ、今更降りる気はさらさらないんだがよ。さてはて、国盗り合戦ならぬ羽根盗り合戦。やっていこうじゃねえか」

 

『次の行き先』を見出し、余裕ぶった笑顔を浮かべながら、歩き出す青年。

闇夜に浮かび上がった光で照らす道を歩きながら、当てもない目的地へと向かっていった。

 

彼が辿り着くのは、闇か、光か。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

士達一行と別れ、道路を走る2機のサイクロン号。

そこで一文字はとあるものを見つけ、思わずサイクロン号を止める。

一文字の様子に気づいた本郷も自身のサイクロン号を止めて、彼に訊ねた。

 

「どうした。一文字」

 

「悪い本郷、ちと世話になった奴に挨拶し忘れた」

 

「……そうか。気が済むまで話してみたらどうだ?」

 

「そんなに語ることもねえよ」

 

笑顔を浮かべる本郷にニヒルな笑みを浮かべながら一文字はそう返すと、サイクロン号から降りて歩きだす。

目指す場所には傍らに存在する歩道には俊彦と義男と満里奈……傷ついた自分を見つけ、手当してくれた三人の姿があった。

彼ら三人の前に辿り着いた一文字は膝を曲げてしゃがみ話しかけた。

 

「よぉ、坊主達。出迎えに来てくれたのか?」

 

「うん……それで、また何処か行くの?」

 

「ああ、俺達にも帰らなきゃならない場所があるからな。それの手がかり探しだ」

 

「また、会えるかな」

 

「俺達、待ってるよ! いつでも、いつまでも!」

 

「嬉しいことを言うなぁ……そうだな、帰る前に顔出しくらいはしてやる」

 

「「「ホントに?」」」

 

「ああ、本当だ。俺の友達も一緒にな」

 

俊彦と義男と満里奈とのたわいもない会話を交わす一文字。

少しの会話を終えた後、サイクロン号の方へ戻った一文字は本郷と共に再び出発しようとする。

そこへ、自分の背中に向けて飛んでくる声が聞こえた。

 

 

「「「お兄ちゃん!」」」

 

 

「「「―――ライダー!」」」

 

 

子供達から送られたのは、『仮面ライダー』という英雄の名前。

それを受け取った二人は背を向けたまま、代わりに片腕を上げて答え、バイクを走らせるのであった。

 

―――二人の大自然の戦士の『この世界での旅』は続く。

 

―――いずれ『帰るべき世界への術』を見つけるために。

 

 

 

~~~~~

 

 

時間は夜、晩飯頃。

別の世界からやってきた二人の仮面ライダーの旅立ちを見送った後、光写真館へと戻った士達一行は館内に入った。

すぐさま撮影室へと繋がる廊下から栄次郎が顔を出して出迎え、手招きしていた。

 

「みんな、お帰り。お客さんが君達に会いたがっているよ」

 

「随分と大人気みたいだな。俺達」

 

「でも変な話だよね。俺達ここにきてそう長くないはずなのに」

 

士とファイが指摘する通り、彼らがネオライダーの世界にやってきてそう長くないはずだ。

知り合いも虎太郎や小室、一条といったライダーに関する人を除けばネオライダーに有名なくらいしか心当たりはない。

どちらかといえば後者は避けたいところと思って、士達が撮影室を覗くと……。

そこには、撮影室に置かれた机の上でお好み焼きを食する若い二人の男がいた。

 

「豚玉、いっただきー!」

 

「おいバカ、勝手にとるんじゃねえよ!」

 

「いいだろ出来上がってるんだから。しかも美味いし」

 

「たっく食い意地だけは張りやがって」

 

一人はバンダナを取り付けた少年、もう一人はゴーグルが特徴的な青年。

鉄板の上で焼かれたお好み焼きを前に取り合う光景を見て、士達は呆気に取られている。

そんな中、二人の姿を見て反応したのは、小狼だった。

 

「龍王!? 笙悟さん!?」

 

「「へっ……?」」

 

初対面の小狼に"名乗ってないはず"の名前を呼ばれ、素っ頓狂な声を上げる男二人。

片やバンダナの少年、その名は『龍王』。

片やゴーグルの青年、その名は『浅黄笙悟』。

かつて小狼達が旅した世界にて出会った人達が、また別の形で、初めての人物として、再会することとなった。




 1号、2号、本当にありがとうございます。また会う日まで!

今回は羽根の所在について。
1.ディケクロ一行は一枚確保した。
2.謎の漆黒戦士も実は持っていた。
3.ネオライダーの誰かが持ってる様子。
4.他にも羽根がある。漆黒戦士は何個あるか把握している。
5.ディケクロ一行は2と3と4のことを知らない。

やっと一枚手に入れたものの、この世界に最初からあったものではなかった。
そして小狼を待ち受けていたのは、思わぬ異世界での再会だった。

次回、組織遭遇。


今現在、平成~令和の登場ライダーが出るかもしれない読者参加型企画をやってます。
詳しくは活動報告にて!


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第27話:この世界のシンジツ

久しぶりの投稿。

大自然の戦士と別れた一同。
暗躍するネオライダー、正体のつかめない漆黒の戦士。
そんな中、現れたのは新たなる第三勢力だった。


 頼打地区、とある高層マンション。

何も変哲もない場所へ目指すように士逹はやってきた。

今ここにいるのは士、小狼、サクラ、夏海の四人とモコナだけ。

ユウスケ、黒鋼、ファイの三人は以前知り合った一条の連絡を受けてできた別件でこの場にいない。

士は写真館にやってきたあの二人……笙悟と龍王から渡されたメモを見ながら呟いた。

 

「ここか。待ち合わせの場所は」

 

「どう見ても普通のところですね」

 

士の言葉にサクラが反応して返す。

その隣では小狼が眉を顰めており、様子がおかしいと思った夏海がそのことについて尋ねた。

 

「小狼君、一体どうしたのですか?」

 

「夏海さん……大丈夫です。ただ、あの二人……笙悟さんと龍王にまた出会った事に驚いているんです」

 

小狼が士と夏海の二人を前に話したのは、かつて巡った世界のでの出来事。

 

最初に訪れた"阪神共和国"で出会った自警団(チーム)の青年『浅黄笙悟』。

 

その後に訪れた"桜花国"で出会った大剣使いの少年『龍王』。

 

どちらも小狼達と戦い、共に友情を深めた二人であり、小狼にとってはかけがえのない出会いの一つだ。

この世界に訪れる前にも"ピッフルワールド"にて異世界の同一人物として二人と再会しており、こうして再び出会う事も一度ではなかった。

その話を聞いた士たちはクウガの世界とアギトの世界で巡り合った女性警察官・八代の事を思い出した。

 

「つまり、別の世界で出会った知り合いってことか」

 

「まるで八代さんの事を思い出しますね」

 

「ああ、そうだな。しかしこの世界でのアイツらは何をしているんだ?」

 

夏海の出した八代の名前に反応しながら、士は自分たちの目の前に現れた笙悟と龍王の事を訝しんでいた。

その脳裏に思い出すのは最初に出会ったときにやりとした時の言葉……。

 

――――お前たちに伝言を預かってきた。リーダーがディケイド、お前達と話がしたいと。

 

――――聞いて驚け、俺達はネオライダーと戦う秘密組織の一人だ!

 

――――馬鹿、話しすぎだ龍王。

 

――――あいたっ!?

 

……その際に繰り広げたコントじみたやりとりはともかく。

あの時、二人が口にした『ディケイドと話がしたいリーダー』という存在と『秘密組織』。

つまり、秘密組織のリーダーが自分達の事を目につけている状況なのは分かった。

 

自分達の行動は意外と第三者に見られているとわかった士は小狼達を引き連れてマンションの中へと入っていった。

高層マンションの内部へ入り、記された部屋番号の場所へと向かっていく四人。

やがて高さ19階、メモに記された部屋の前に辿り着くと、士が前に出てインターホンを押そうとする。

 

「押すぞ」

 

士がインターフォンを押すとチャイムが鳴り、すぐさま若い男の声が出てきた。

 

『トマト出汁の……』

 

「「トマト?」」

 

「メモに書かれてある合言葉だ……確か、味噌汁」

 

聞きなれない言葉に首を傾げる小狼とサクラ、それに対して士は『味噌汁』という単語を出した。

その言葉を口にした後、ガチャリと鍵が開き、その中から顔を出してきたのは……龍王の姿だった。

 

「よぉ、よくやってきたな。早速だが入れ」

 

「お、お邪魔します」

 

夏海が挨拶した後、士達4人は部屋の中へと入った。

廊下を通ってリビングの中へと入ると、そこに広がるのは質素な内装だった。

目につくのはベッド、冷蔵庫、マット……最低限の生活品しか置いてなく何処からどう見ても異質だった。

士達を案内した龍王はマットの元へ向かうと、それを手に掴んだ。

 

「悪いな、ここは隠れ家へ繋がる道の一つなんだ」

 

「ここが拠点じゃないのか?」

 

「いつどこであいつらネオライダーが狙っているかわからないからな」

 

士の疑問に軽く答えると、龍王は思いっきりマットを引っ張り、裏返す。

マットの裏に描かれていたのは、何らかの魔法陣。

龍王は裏返したマットを魔法陣が描かれている方を上にして敷きなおすと、突如魔法陣が光りだした。

一体何が起こったのか、と思う士達一同……そこへモコナが小さな声でしゃべった。

 

「ねぇねぇこれ、空間を繋げる魔法だよ」

 

「魔法? これがですか?」

 

「うん、侑子がよく使っている魔法によく似ているの。マット自体が魔法具の一種だと思う」

 

目の前に繰り広げている光景にモコナが自分の持つ知識を以て解説する。

夏海がモコナの魔法の解説について聞き入ってると、龍王は敷きなおしたマットの魔法陣へ入ろうとする。

いきなりの行動に小狼が静止の声をかけた。

 

「ま、待ってくれ!」

 

「なんだよ、魔法の道で繋がるだけだって。さ、騙されたと思って突っ込んでみろよ」

 

慌てる小狼の様子を見て、不敵な笑顔を向けながら龍王は魔法陣の中へと入る。

するとまるで穴に落ちるが如く魔法陣の中へと沈み、そのまま姿を消した。

人一人が消えた光景に驚く一同……しかし、それを見ていた小狼は魔法陣へと一歩進み、そして中へと入った。

 

「……っ!」

 

「小狼!」

 

「小狼君!」

 

「ちょ、士君、サクラちゃん、待ってください!」

 

魔法陣へと入った小狼に続いて、士、サクラ、夏海とモコナと続いて入っていく一同。

少しの間、眩い光に包まれた後収まると、そこは先ほどの殺風景な部屋とは何処か別の場所であった。

床一体を覆う畳のような大座敷、その奥に鎮座するのは大きめの腰掛け椅子と、二人の人物。

 

「よう、先に待っていた」

 

一人はくつろいでいる笙悟。

そして一人の人物。

着流しを纏い、黒髪と眼鏡をかけた一人の若い青年。

青年は士達を視界に捉えると、一瞬息を呑む仕草をする。

一瞬真剣な表情を見せるも、すぐににこやかな笑みを向けながら声をかけた。

 

「やあ、よく来たね。ディケイドと……そのお仲間たち」

 

「あなたは?」

 

「俺か? 俺の事は『エンプティ』って呼んでくれ。俺達"ライダーアライアンス"のリーダーをやっている」

 

小狼が訊ねたことに返しながら、青年――『エンプティ』は自分の名前を告げて自己紹介をした。

蠱惑的な雰囲気を醸し出す彼に士は目を細めて視線を飛ばし、小狼達と共に腰掛の席に近づく。

笙悟・龍王も含めた全員が席につくと、エンプティは再び話を続けた。

 

「ディケイド……門矢士だったかな、君達の事は多少だけど知っているよ。ネオライダーと戦っているんだって?」

 

「成り行きでな。この世界で俺達が探している物の邪魔をしているんだよ。あいつらネオライダーがな」

 

エンプティの質問に対してそつなく答える士。

腰掛へと座った士達4人の目の前に、エンプティが入れた5個の粗茶が入った茶碗が差し出される。

士、小狼、サクラ、夏海は茶碗を掴み、口をつけた。

そこで小狼が差し出された粗茶が一つ余っている事に気付き、それについてエンプティへ訊ねた。

 

「あの、一つ多いような気がしますが」

 

「ああ。それはそこの君に差し出したものだよ」

 

「そこの君って、一体誰の事を?」

 

「光夏海君が持っているその子だよ」

 

粗茶を啜る士の質問に対して、エンプティは夏海へと指をさした。

正確には夏海が持つモコナを指差していた……その光景を見て、士は心の中で少し驚く。

 

(コイツ、白毛玉を人形か何かだと思ってないのか?)

 

普通の人間から見れば、モコナは黙っていれば何等かのマスコット的ぬいぐるみだと思われていた。

だがしかし、この部屋に入って一言も喋ってないのにもかかわらず、この男は見抜いたのだ。

 

「わーい、飲んでもいいの?」

 

「ああ、熱いうちに飲んでくれ」

 

「ありがとー!……んん?」

 

夏海の肩から降りたモコナは茶碗を両手で持ち、中身の粗茶をグビリと一飲みにする。

すると不思議そうな表情を浮かべ、ふと上へと見上げてエンプティの顔をじっと見つめた。

 

「うーん?」

 

「どうしたんだい?俺の顔なんか見つめて?」

 

「……どこかで見たような顔、どこで見たんだろう」

 

エンプティの顔を見ながら考え込むモコナ。

そんなモコナをサクラが回収し、タイミングを見計らってた笙悟が話題を切り出した。

 

「お前達をここへ招いたのは他でもない。リーダーがお前らと話がしたいと言ってきたんだ」

 

「リーダー、というとエンプティだったか。お前が?」

 

「知りたいんだろう、ディケイド。今この世界で何があったのか、何が起きようとしているのか」

 

余裕たっぷりの笑顔を見せるエンプティに対し、士とピクリと眉を動かす。

その様子に小狼は気づき、士の顔色を伺う。

士はチラリとエンプティの顔を一瞥した後、いつものような太々しい態度で物申した。

 

「もったいぶらず話せ。俺達はこう見えて忙しいからな」

 

「それは失礼、じゃあ早速本題に入らせていただこう」

 

士の偉そうな言葉を軽く返すと、エンプティはとあるものを取り出す。

それはいくつもの紋章が描かれた紙であり、士と夏海はそれらを見て見覚えがあった。

何故なら紙に描かれている紋章は自分達が巡ってきた仮面ライダーが表すライダーズクレストだからだ。

キバ。

電王。

カブト。

響鬼。

剣。

ファイズ。

龍騎。

アギトとクウガ。

それらが長机の上に置かれると、エンプティは話し始めた。

 

「いくつもの次元、いくつもの世界に様々な仮面ライダーが生まれた。彼らは自分の生まれた世界で別々の物語を描いた」

 

「別々の世界の仮面ライダー?」

 

「ああ、そうさ。彼らの物語は実に豊潤で一言では収まりきらない」

 

サクラの言葉と共にエンプティが語るのは、とある英雄達の物語。

 

――ある者は創造主から齎された力をかけがえのない人々のために戦った。

――ある者はたった一つの願いを叶えるために鏡の世界で死闘を繰り広げた。

――ある者は死を乗り越えた者達が支配する世界で闇を切り裂き、光をもたらした。

――またある者は不死の生物との戦いを再び始め、戦いを終わらせた。

――時には時代を超えて、戦国の世に魔物から人々を守る鬼として戦った。

――決められた結末を引っ繰り返すために、時空を超えて歴史を変えた。

――また世界を超えて人々の大切な記憶と時間を守るために戦った。

――ある者は古代から復活した魔王との因縁に導かれ、運命の鎖を打ち砕いた。

 

それは、とある英雄達の『激情の戦い』。

自分達が知らない、別の世界での『仮面ライダーの物語』。

士達は聞き入るようにエンプティの話を聞いていると、エンプティが真剣な声で告げた。

 

「本来ならば交わることのない別の世界……だがある日、いくつもの世界は融合した」

 

「「えっ!?」」

 

「ゆ、融合したのですか!?」

 

エンプティの衝撃の事実を告げられ、小狼とサクラは驚き、夏海は思わず聞き返した。

ただ一人士が無言で見つめる中、エンプティは机に置かれた紙を集める。

一まとめにしたそれを再び机に置いて、エンプティは話を続ける。

 

「それぞれの世界は衝突し、混ざり合い、まるで最初からそうだった(・・・・・・・・・)ように新しく存在することとなった。知らない異形の存在も、未知の大自然の戦士達も一緒に」

 

「そんな事がありえるんですか!?」

 

「ああ、世界はそう造り替えられて(・・・・・・・・・・)しまったからね。それがきっかけが意図しないものでもね」

 

驚いた小狼の言葉をエンプティは冷静に答える。

別の世界を旅する小狼達にとって、世界が融合するなんてことは今までなかった。

サクラも信じられないという言わんばかりに驚愕の表情を隠し切れない。

そんな中、士が自信ありげに呟いた。

 

「大体わかった、この世界の成り立ちの事はな。道理で別の世界の怪人が同じ世界にいるはずだ」

 

「でも、何か変ですよ。別々の世界が融合するなんてそんな大ごと、世界が混乱するはずじゃあ……」

 

「そりゃ最初に気づいた聡い奴らがいたから、多少は混乱したぜ? だが、それどころじゃなくなったんだよ」

 

夏海の疑問を答えたのは龍王だった。

龍王は粗茶を一気に飲み干し、茶碗を机に置いて夏海達に言った。

 

「未確認生命体、食い違う認識、見知らぬ土地……その混乱に乗じて現れたのが今世間を轟かせているネオライダーだったんだ」

 

「なんだと?」

 

「ネオライダーが?」

 

龍王の口にしたネオライダーという言葉に対して士と小狼の表情が険しくなる。

彼らの行動が気になっていたが、まさか融合を遂げた"この世界"が生まれて間もない頃から活動していたとは思ってもみなかった。

ネオライダーに関する話を今度は笙悟が続けて語った。

 

「世界の融合して間もない頃、あいつらはライダーシステムやファンガイアやオルフェノク、ワーム達を利用して刃向かう奴らを倒していった。今アイツらに立ち向かえるのは仮面ライダーぐらいしかいねぇ」

 

「笙悟さん……」

 

「俺はカタギにすら手を出すネオライダーが許せない。だから奴らに対抗する仮面ライダー達を集めた集団・ライダーアライアンスに入った」

 

笙悟は苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる。

彼の顔から伺えるのは悔しさと怒りだと小狼とサクラは察した。

そして、笙悟の様子を見たエンプティは少し視線を下へと落とした後、士達へ向けて言葉を向けた。

 

 

「ディケイド、君達の目的を邪魔するつもりはないし、むしろ同じネオライダーに対抗する者同士協力したい。ライダーアライアンスは君達と協力関係のスタンスで行きたい」

 

 

「だが、一つだけ聞かせてほしい」

 

 

「――世界の破壊者よ、すべてを破壊せんとするお前はその瞳で何を捉える?」

 

 

士達へと向けられたエンプティの言葉。

彼が見つめる二つの目には、すべてを見抜かんとするしっかりとした光が宿っていた。

それを聞いた、一同の答えは……。

 




 新年あけての何発目かの投稿。

今回現れたのはネオライダーと敵対する集団"ライダーアライアンス"。
リーダーのエンプティを始めとしたライダー達で構成された彼らはネオライダー達と戦っています。
その中には小狼達が出会った人達である笙悟や龍王も構成員として含まれています。

そんな彼らから語られたのは『この世界の成り立ち』。
ディケイドTVシリーズの『ライダー大戦の世界』のようにいくつもの仮面ライダーの世界が入り混じったこの世界。
あれ、前に桜子さんが語った怪人達の情報と矛盾しているのでは……その通り。
気づいていない人間にとっては【この世界】は最初からそうだったように認識してるのです。
別の世界が混じっている事も知らず、最初からその世界にあったように。

最後にエンプティが問いただしたのは、ディケイドOPの口上のオマージュ。


次回、士達の出す答えは?そして……。


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第28話:揺るぎないコタエ

 ネオライダーと対を成す組織・ライダーアライアンス。
彼らの言葉に揺らぐ一同。
そんな中、士が返した言葉とは……?


「世界の破壊者よ、すべてを破壊せんとするお前はその瞳で何を捉える?」

 

エンプティが士達へと投げかけたその言葉。

彼の投げかけた言葉を聞いてサクラと夏海は口を閉じて黙り込む。

小狼も答えられる言葉が見つからない。

龍王と笙悟が見つめるそんな中、士は一呼吸整えると、エンプティの問いかけた言葉に返事を返した。

 

「そうだな、少なくとも今の世界の状況を壊さなければいけないのは確かだな」

 

「この世界の状況を壊す、と?」

 

「この世界での出来事をまだまだ把握していないが、少なくとも今の俺達がやるべきことは決まっている」

 

「それは?」

 

「――――俺の仲間の記憶探しだ」

 

エンプティの問いかけに対して士はしっかりとした眼差しで言葉を返す。

その言葉を聞いた小狼達……特にサクラは驚いた。

出会ってまだそれほど経ってないのに、まさか他人に対して言い張るまで思い入れがあるとは思ってもみなかった。

士の"答え"を聞いたエンプティは再び質問を投げかけた。

 

「なるほどなぁ、でも問題は山積みなんじゃないか? お前達の邪魔するネオライダー達しかり、記憶とやらの手がかりとしかり」

 

「その方法はこれから見つける。生憎と、今は頼れる仲間が多いもんでな」

 

腰掛に深く座り、ふんぞり返りながら士は答えた。

まるで目の前の相手にさえ逆らう気概を見せる彼に龍王も笙悟も呆気に取られる。

だが、士の答えを聞いたエンプティは込み上げてくる笑いを少しの堪え、そして高らかに笑い声を上げた。

 

「アッハッハッハ! なるほど、そういうことか! ディケイド、やっぱ会っていて正解だったなぁ!」

 

「そんなに人の答えが面白いのか?」

 

「いやぁ、気を悪くしたのだったらすまない。あんまりにも俺が予想していた答えとは違っていたからさ。正直、お前は他人の事を気にしない奴だと思っていたが」

 

「かもな。だが旅のせいで俺はお前が言うお人よしに変わってしまった……特に、この世界だと余計にな」

 

エンプティにそう言いながら、士は傍らにいるであろう小狼とサクラを横目で見た。

自分と同じくある目的を抱いて別の世界を旅をする少年と、自分と同じく過去の記憶を失った少女。

自分のように強くはないがそれでも揺るぎない自分だけの強さを持つ彼らに士は放っておく気にはなれなかった。

今こうして共にいるのも、サクラの羽根を探す小狼達を手伝うためだ。

士の答えを聞いたエンプティは口角をつり上げて笑った。

 

「お前の答えを聞いて納得したよ」

 

「リーダー、どうするんだ?」

 

「そのニヤケ面だと、きっととんでもない事なんだろうな」

 

エンプティの表情を見て笙悟がため息を訊ね、龍王は予想がついたのか呆れた表情を浮かべる。

二人の様子に不思議そうに見ていた小狼とサクラ達を前に、エンプティは余裕たっぷりの笑顔で答えた。

 

「俺達、ライダーアライアンスはお前達を協力者として手を貸すよ」

 

「なんだと?」

 

「驚いてるだろ? まあお前達と俺達はそれぞれの目的のために立ちはだかるネオライダーを撃退したい……ほら、利害一致はしているじゃないか」

 

「まあ、確かにそうですけど……」

 

エンプティが言い出した思いがけない申し出に士と夏海は難色を示す。

それなりに旅をしてきた士達からしてみれば、目の前にいるエンプティという男は類を見ないほど『掴みどころがない』。

今まで出会ってきた人達には必ず何らかの願望や熱意、夢や希望といった抱えている物が垣間見ていたがこのエンプティにはそれが見当たらない。

否、どちらかといえばネオライダーの撃退は嘘じゃないが、本当の何かを隠していると見えた。

士と夏海の二人がエンプティを怪しんでいると、そこへ小狼が口を開いた。

 

「ありがとうございます。でも、おれ達の探し物はおれ達で……」

 

「ああ、心配するな。そこも俺達が情報提供させてもらうよ」

 

「えっ……いいんですか?」

 

「ああ、遠慮せずに頼っていいぞ」

 

流石に自分達の記憶の羽根探しまで手伝わせるわけにもいかないと思った小狼だが、エンプティは先ほどとは異なるにこやかな笑顔で返した。

先程とは異なるエンプティの対応に士は目を細めた。

 

何はともあれ、士達とエンプティ率いるライダーアライアンスが協力関係を結んだ。

その事実を目にしてひとまず先に喜んだのは同じ場にいた龍王と笙悟の二人だった。

 

「ま、何がともあれお前達と一緒に戦えるならそれでいいさ!」

 

「龍王……」

 

「おう! ……つか、最初に出会ったときから思ったけど、なんで俺の名前知ってるんだ?」

 

小狼と共に戦えることになった事を喜ぶ龍王。

肩に腕を回し、互いに肩を組み合う形になりながら笑いあっていると、そこへ笙悟が話しかけてくる。

 

「よろしくな、小狼。もっともどうやらそっちは俺達の事はなんか知ってるようだかな」

 

「え、なんでそんな事がわかるんだよ」

 

「龍王、お前はエンプティの話聞いていなかったのか? こいつらがこの世界じゃない別の世界で俺達じゃない俺達と小狼達が出会っていただろうってヤツ」

 

「ああ、あれかぁ! 俺気になるんだよなぁ、別の世界じゃ俺って何やってるのかなぁって!」

 

「たっく……でも気になるのは確かだぜ。別の世界ってのにも興味がある」

 

あっけらかんな態度の龍王に呆れてため息をもらす笙悟。

二人のやりとりを見て、小狼は思わずにこりと笑う。

別の世界に人間なれど、かつて出会った人とこうしてまた出会うのは小狼にとって嬉しいことだった。

 

 

~~~~

 

 

東京都都内・関東医大病院。

とある一室、そこでは最新医療機器の上に横たわるユウスケの姿があった。

寝かされているといってもいい状態にユウスケは困った表情で訊ねた。

 

「あのぉ、いつになったら終わるんですかこれ?」

 

「なぁに、もうちょっとで済む。じっとしてろ」

 

最新医療機器にスキャンされるユウスケを、ガラスが嵌められた壁越しに話をするのは、一人の男。

関東医大病院に勤める法医学士の意思……『椿 秀一』はパソコンを操作しながら、画面に映った状態を確認していた。

 

以前知り合った一条に呼ばれ、黒鋼とファイと共にここへとやって来たのだが、待っていたのはユウスケに対する身体検査だった。

一条の知り合いでもあり、かつてクウガの身体検査に協力していた人物として紹介された椿と対面。

そして今、黒鋼とファイの二人を待合室に待たせながら、一先ずの検査を終えた。

 

「やっと終わった……」

 

「まだ終わってないぞ。お前の体は興味深いかな、小野寺ユウスケ」

 

「ええ、まだあるんですか!?」

 

一旦上着を纏いながら一息入れるユウスケに、椿は容赦なく言い放つ。

片手にはレントゲンの写真があり、それを見ながら会話を続ける。

 

「しっかし驚いたな。まさか生きているうちにまた第四号……いや、クウガの体を調べる事になるとはな」

 

「椿さんはその、クウガの事を知っているんですか?」

 

「まあな。クウガにとっちゃ世界でたった一人のかかりつけだったんだよ。ああ、お前で二人目だがな」

 

「ええっ!?」

 

驚くユウスケの姿を見ながらけらけらと笑う椿。

椅子に腰かけると、椿はユウスケの顔を見て、少し真剣な表情で見つめる。

 

「今のお前の体は、ある意味驚かされるよ」

 

「なんか、悪いところでも?」

 

「ベルトから伸びている神経が殆ど全身に伸びている……小難しいことを省けば、本来だったらお前はグロンギ(未確認)と同じ存在に達している」

 

「それって……」

 

「前に見たことがある。その気になれば、究極の闇と呼ばれる存在になれるそうだ」

 

椿の口にした『究極の闇』について、ユウスケは心当たりがあった。

 

――それは、かつて士の故郷である世界で起きた大ショッカーによる大きな世界征服を乗り出さんとした時の事。

ユウスケは士の妹・小夜が扮する大神官ビシュムによって操られ、地の石によって漆黒と黄金の禍々しい姿へと変わった事があった。

その名は『ライジングアルティメットクウガ』、究極の闇を超えた【禁断の闇】として発現した姿だ。

その圧倒的な能力で士やライダー達を苦しめた。

 

大ショッカー壊滅後、不思議とその姿になる事はなくなった。

ユウスケ自身は外部による一時的な強化した姿だったと片づけていたが……。

椿の話を聞いたユウスケは"あること"を思いつき、椿に訊ねた。

 

「それってまだ、俺に強くなれる余地はあるんですね」

 

「お前……よからぬことを考えているな。その顔には見覚えある」

 

「えっ!? そ、そうですか?」

 

「医者として忠告しておくが、危ないことだけはするなよ。お前達のような奴らを無茶させるために医者がいるわけじゃないからな」

 

ユウスケの顔に険しくなった表情で椿の鋭い視線が貫く。

まさか自分が"ライジングアルティメットを自由に使いこなせる"ことができるんじゃないかと思ってしまった事は口が裂けても言えなかった。

 

一方、ユウスケと椿が話をしている頃。

待合室で仲間の帰りを待っている黒鋼とファイは紙コップに継がれた飲料水を飲みながら話をしていた。

 

「いつまで掛かってんだ? 小野寺のヤツ」

 

「まあユウスケ君ってクウガだからねぇ。話で聞いたけどあの人、この世界のクウガの事知ってるらしいし……」

 

「親しい相手に似てるから話し込んでいるってヤツか」

 

未だに検査を受けているであろうユウスケと検査を担当している椿の事を話題に出す。

そこで気難しい顔にしている黒鋼に気づき、ファイはふと訊ねた。

 

「何か浮かない顔だねぇ、何か気になることでもあるの?」

 

「ああ……」

 

「当てて見せようか。あの黒い姿の誰かのことでしょ」

 

「アイツは羽根を持っていた一文字を狙っていた。つーことは、羽根の事を知っているかもしれねぇ」

 

黒鋼の脳裏に浮かぶのは、前回の戦いで姿を見せたアギト・バーニングフォームに化けていた謎の黒い戦士。

あの時、2号はサクラの羽根を持っており、それを見抜いたかのようにアギトは狙って攻撃をしていた。

なら少なくとも羽根に秘められた力の事を理解していると見ていい。

この先、羽根を探す自分達とぶつかる可能性がある……その事を黒鋼は懸念している。

 

「また戦うときがあったら、奴をぶった切るまでだ。そこは変わらねぇ」

 

「でも、黒様はそれでいいかもしれないけど、小狼君とユウスケ君はそうはいかないよね」

 

「門矢のヤツは知らんがな……アイツらが倒せないなら俺がやるまでだ」

 

「譲らないねぇ」

 

手に持っている飲料水を飲み干すと、黒鋼とファイは話をいったん止めて紙コップをゴミ箱に入れようと立ち上がった。

二人はまだ知らないが、異世界からやって来たクウガことユウスケの身体検査はまだまだかかるだろう。

別行動の士や小狼達が何の話を聞かされているか思いながら、二人は待合室から離れるのであった。

 

 

~~~~

 

 

 そこはとある次元。

誰とも知らぬ場所、そこにいるのは一人の男。

漆黒の意匠に身に纏った壮年の男――『飛王(フェイワン)』は険しい顔をしていた。

 

「予期せぬ出会いが更なる混沌を渦巻いていく。まるで本来対極であった白と黒が灰色という結末に変わっていくように」

 

飛王はそう言いながら見ているのは、鏡で映し出されているとある光景。

それは士達と共に行動する小狼達の姿であった。

自分の抱く"ある野望"にとって、次元を渡る存在である士達をはじめとした仮面ライダーは不確定要素だ。

下手をすればただでさえ外れている予定調和を破壊し、予想外の結果を招くことを危惧していた。

眉を顰める様子を傍らで見ていた一人の若い女性・『星火(シンフォ)』は呟いた。

 

「迂闊なことはできないわね。横やりを入れてしまえば余計狂ってしまうわ」

 

「フン……だが、このまま放っておくわけにはいかん」

 

星火の言葉に対して飛王はそう返すと、鏡に映る光景を別のものに映した。

 

――鏡に映ったのは、とある次元の光景。

種々様々な時代の服装の人間達が行きかく中、人混みをかき分けて逃げ惑う一体の猫に似た着ぐるみ姿の人物。

その片腕に抱えられているのは、大きなガラスケースに入った記憶の羽根だった。

謎の着ぐるみが羽根を手にしている事に星火は疑問を出だした。

 

「あれは……?」

 

仮面ライダー(あの戦士)達がいる世界の一つに落ちた羽根を手に入れた者だ。これ以上の混沌を招く必要はない……どれだけの血を流そうが、手に入れるぞ」

 

そう言いながら、飛王は腕を振るって指示を仕向けると、着ぐるみの人物の周囲の時空が歪み、そこから漆黒の兵士達が現れる。

謎の敵に周囲の人々は悲鳴を上げて逃げ惑う……こうなれば羽根を持った人物の命はないに等しい。

 

 

――だが、飛王はその時知らなかった。

サクラの羽根を持ってる人物が常人ではないことに。

 

――この時の士達は知らなかった。

新たな乱入者が自分達のいる世界へ旅立つことに。




 今回は割と難産回でした←

今までの士だったらぶっきらぼうに返していたんだろうけど、ここでの士は"自分に重ね合わせた人物"がいるから、多少ばかり軟化しているんですよね。
小狼の心の強さとサクラの優しさ、二人の少年少女によって変わりつつあるかもしれない。
しかしエンプティ、何を隠している?

今回のレジェンドはクウガより椿秀一。原作クウガでは主人公の雄介と念密なかかわりを持つ頼もしい大人の人です。
以前知り合った一条さんからの紹介という形で登場させました。
ライダーばかりで登場させるばかりじゃなく、こうしてかつて支えた存在を出すのは楽しいですね。

ところ変わって、おそらく初めてとなるのは飛王一派。(ようやく登場)
どうやら小狼一行が士/ディケイド達と一緒に行動している事が不服の様子。
とある仮面ライダーの世界に落ちた羽根を回収しようとするも、果たして……。

次回、異世界からの奇妙な旅人、参上。


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第29話:蟒蛇からのサソイ

 次の話へ行く前のちょっとできあがってしまった幕間の話。
久しぶりの話がこんなんですが、兎年もよろしくお願いいたします。


 東京・頼打地区。

無辜の人々が平和に行き交う光景が広がる中、近くに立っているビルの窓ガラスが怪しく光る。

人々が気付かないまま、その窓ガラス……その鏡面に映った緑の人影は高く飛び上がって別のビルの鏡面へと入り込む。

やがて街一番を争うほどの高層ビルへと辿り着くと、緑の人影は街の方へと振り向いた。

その緑の人影――仮面ライダーベルデは誰もいない屋上にて一人呟いた。

 

「未だに不明な点は多いが、ある程度集まったようだな」

 

ネオライダーに所属する一人であるベルデは自分達と敵対する異世界からの来訪者たちディケイド一行……特に、小狼と黒鋼とファイの3人を調べていた。

一体何者なのかと興味を持ったウワバミの命令により、ケタロス/武田の白井虎太郎の誘拐、サソード/紫電斬刃とドレイク/水野風嵐のエネルギー輸送作戦、謎の飛蝗の仮面ライダー(1号と2号)の戦いなど一行の静観しながら調査を進めていた。

彼らの事については何処から来たのか、出身地は何処なのか等の素性は湧かないままだが、それでも目的は分かった。

 

「どうやらディケイド達とあの4人は元々別の行動をしていたようだが、今まで集めた会話から察するに奴らは羽根なる何かを探しているようだな」

 

ベルデはライダー特有の強化された五感を駆使して、遠くの方にて歩いているとある人物達の姿を捉える。

それはサクラと士と夏海であり、どうやら他の仲間とは別行動のようだ。

ついでだ、小狼達の四人目の仲間である彼女のことももう少し調べよう。

そう思い近くの所まで歩み寄ろうとしたベルデ。

 

だが、足を踏み出そうとしたその矢先、足元が火花が散った。

 

いや、違う……直前に聞こえてきた発砲音がこれが威嚇射撃のものだとわかっていたのだ。

すぐさま銃撃が放たれた方向へ振り向くと、そこにはこちらを見てにやける一人の青年が近づいていた。

 

「やぁ、君がネオライダーのカメレオン君でいいかな?」

 

「貴様は……!?」

 

「海東大樹。君達ネオライダーに興味があってね、とりあえず士の周りにいるから聞きに来たんだ」

 

現れた青年・海東はディエンドドライバーを向け、ベルデへ問いかけてきた。

その手にディエンドのライダーカードを構え、ディエンドドライバーの装填口へと挿入する。

 

【KAMEN-RIDE】

 

「変身」

 

【DI-END!】

 

海東が変身したディエンドは銃口を向けると、その引き金を引いて発砲した。

放たれた光弾をベルデはバク転によって巧みに避けると、Vバックルに収められたカードデッキから一枚のカードを引き抜き、それを自身の召喚機であるバイオバイザーからワイヤーへセット。

ワイヤーは自動的に巻き戻って、そのままカードは挿入された。

 

【HOLD-VENT】

 

「シャッ!」

 

ベルデはカメレオンの目玉を模したヨーヨー・バイオワインダーを装備すると、すぐさま勢い良く投げた。

バイオワインダーは空を切って鋭く飛んでいき、ディエンドの胸部装甲へと掠る。

咄嗟に避けたにも関わらず攻撃が当たった事、相手がかつて"龍騎の世界"に巡った時に見たベルデというライダーでありながらその腕前は上という事にディエンドは驚いていた。

 

「なるほど、君は相当強い部類のようだね」

 

「強くあらねばならない……そうでなきゃ隠密担当は務まらない」

 

「言うねぇ。じゃあこれならどうだい?」

 

【KAMEN-RIDE…G3!】

 

「いってらっしゃい」

 

ディエンドは一枚のライダーカードを装填すると、そのまま引き金を引いて撃ち出した。

赤、青、緑の虚像が重なって出現したのは、青と銀色の装甲で彩られた仮面ライダーG3。

知ってか知らずか、かつてディエンド/海東自身が装着した"G3-X"の前身であり、この世界でディケイド達が共闘した仮面ライダーでもある。

召喚されたG3はサブマシンガン・GM-01 スコーピオンを乱射し、銃弾がベルテを襲う。

 

「ぐっ!?」

 

「次はコイツだ」

 

【KAMEN-RIDE…THEBEE!】

 

続いて召喚されたのは黄色と黒の装甲を身に纏ったハチのデザインが施された仮面ライダー。

"仮面ライダーザビー"は召喚を完了すると、左手に備えているザビーゼクターの針を向け、ベルテへと向けて接敵。

そのまま左手からいくつものジャブを繰り出していく。

 

「なんのっ!!」

 

ザビーから繰り出された針をベルテは躱していくと、地面を蹴り上げて高くジャンプ。

急降下しながらの踵落としを叩き込もうとするが、ザビーは咄嗟に右手でベルテの蹴りを受け止める。

暫しの間拮抗した後、ディエンドとG3の繰り出した銃撃を体を捻って避け、バク転しながら着地。

自分の周囲を一瞥すると、目の前にはディエンド・G3・ザビーと並び立つ三人のライダーが並び立っている。

三対一という不利な状況にベルテは小さくつぶやいた。

 

「貴様、人海戦術が得意と見た」

 

「おや、そこまで見抜くなんてすごいね君。どうだい? 僕のお願いを聞く気になったかな」

 

「貴様の話を聞くかどうかはコレを見切ってからにしろ」

 

【CLEAR-VENT】

 

ベルテがバイオバイザーへ新たなるカードを装填、その効果を発動させる。

電子音声が鳴り響くと、ベルテの体は周囲の景色を溶け込むように透明化し、その姿は消えた。

すぐさま周囲を探るザビーとG3……だがその直後、ザビーが首を抑えて苦しみだす。

気付いたディエンドがザビーの足元へ乱射すると、その粉塵がザビーの体……否、ザビーを締め付けていた不可視の糸へ付着して 気づく。

それはベルテのバイオワインダーのワイヤーであり、ザビーの首に巻き付いて食い込んでいたのだ。

 

「これは……!」

 

「――シャッ!!」

 

驚きの声をディエンドの横で、クリアーベントの透明化を解いたベルテがG3の首を両脚で締め上げる。

暫しの間抵抗されながらも、バキリと嫌な音を立ててG3は地面へと倒れ込んだ。

まるで力尽きたように動かなくなると、空気に溶けてその姿が消えていった。

ディエンドの呼び出したライダーの一体を始末すると、次はザビーへと標的を変えて、更なる猛攻を仕掛けてくる。

 

「タァッ!!」

 

ベルテの手刀がザビーの首元へと迫り、そして直撃。

常人なら胴体と頭が泣き別れするであろうその一撃によって、ザビーは先程のG3と同じ光景で消えていく。

早くも手駒のライダー2体を倒されたディエンドはベルテの向かってある種の関心を覚えた。

 

「へぇ、すごいねぇ。本来の仮面ライダーベルテにそこまでの戦闘能力はなかったはずだが」

 

「まるで他のベルテの事を知っているのうな口ぶりだが、生憎俺はお前が言っている奴らとは違う。俺は俺だ」

 

「言ってくれるねぇ、君」

 

ディエンドのお世辞にも聞く耳を持たず、達弁で返すベルテ。

二人の間にただならぬ緊張感が支配し、今にも相手を狩らんとする一手を繰り出そうとした。

それぞれのカードを自身の武器へと装填しようとしたその時だった。

 

 

「ちょっとその勝負、水を差させてもらうぜ」

 

 

その瞬間、紫の巨大な影が二人の間を通り過ぎた。

這いずるような移動音と甲高い蛇の鳴き声に気づいたベルテは咄嗟に振り向くと、そこへ一人の男が現れた。

その帽子を被った黒服を纏ったウワバミはニヤリと不敵な笑みを向けながら、ベルテとディエンドの両者に立った。

 

「異世界のライダー相手に白熱してるじゃないか。お兄さん妬けちゃうねぇ」

 

「ウワバミ様、アナタがわざわざ起こしに来るなんて……」

 

「面白い事やってる君が言う立場じゃないでしょ? 月虹殿よ」

 

「……その名前、敵の前で口に出していいのですか?」

 

ベルテ――"月虹"と呼ばれた変身者はディエンドの前に姿を現したウワバミを心配する。

だがウワバミはそんな事など気にもかけず、ディエンドへと話を持ち掛けた。

 

「お前が仮面ライダーディエンドこと海東大樹、で合ってるよな?」

 

「そう言う君は確か、ネオライダーの……」

 

「ウワバミと気軽に呼んでくれ。とりあえずだ、酒でも飲んで会話するか?」

 

ニヤリと口元を歪ませ、何処からともなく一升酒を取り出しすウワバミ。

何かある、と思いながらもディエンドは変身を解くと、彼から受け取ったグラスを掴む。

渡されたグラスに何も無い事を確認すると、視線をウワバミへと戻して言葉を紡ぐ。

 

「僕はこの世界でお宝になりそうなものを探っていただけなんだけどなぁ」

 

「お宝、ねぇ……生憎とココはいわば玩具箱みたいなもんだ」

 

「玩具箱だって?」

 

「楽しくて愉快な面白い物がいっぱいあるからね。華麗なる怪盗である君が狙うお宝なんて検討がつかないさ」

 

ケラケラと笑いながらウワバミは一升瓶の蓋をあけ、自分のグラスに酒を注ぎ始める。

目の前にいる彼が以前何を考えているのか分からないと思った海東だが、底知れない何かを感じるとウワバミへとグラスを差し出した。

目の前へ出されたグラスへ半透明の酒を注ぐと、海東は恐る恐る口をつける。

酒特有の甘い香りと苦みを含んだ独特の美味さが口内に刺激する中、幾分か警戒していた海東の眉がピクリと動いた。

 

「これ、大吟醸じゃないのか? それもとてもいいものじゃないか」

 

「正解! ネオライダーになれば高い酒の一つや二つ入手の融通が効くんだぜ?」

 

「きっとロクでもないルートなのは言うまでもないが……たかがお酒のために暴れているわけでもないんだろう?」

 

チビチビと飲む海東の前ではグビグビと飲み進めるウワバミ。

彼はグラスの中に入った愉快そうに訊ねた。

 

「そりゃなぁ……ところでなぁ海東大樹、お前さんも気になるんじゃないか? お前さんも狙われたアイツ(・・・)の事を」

 

「あぁ、彼の事か。最初は信じられなかったが、実物を前にすると信じざるおえないさ」

 

「だろうねぇ。特にお前さんらは驚くだろうなぁ」

 

「やれやれ。その笑みはどうにも気に食わないねぇ」

 

海東は目の前で座ったウワバミがニヤケ面を絶やさない事に若干の不満を持ち始めた。

この男が自分が欲しがりそうな何かの情報を隠し持っている事は明らかだ。そうでなければ自分の前で酒を飲みかわすなんて余裕のある事をしないはずだ。

現に先程まで戦っていたはずのベルテもあきれた様子で戦闘態勢を解いていた……つまるところ、身構える必要がないほどこの男は手練れだという事の表れだという事を悟った。

今はむやみに手を出さない方がいいと悟ると、何処からともなく取り出したのは一つの干し肉だった。

 

「今はこれしか持ち合わせがなくてね」

 

「ほーう、いいじゃないか。それは?」

 

「自家製の保存食さ。前の世界で捕った鹿肉で作ったものなんだが、酒の肴には丁度いいんじゃないかな」

 

「いいね、ああとってもいいね。ありがたく頂くとするよ」

 

差し出された干し肉を遠慮なくもらうと、ウワバミはそのまま口に運んでかっ食らう。

少し強い塩気と歯ごたえのある感触にある種の満足感を味わうと、再び酒を煽った。

ある程度食べると、満面の笑みで感想を口にした。

 

「中々いい出来じゃないか。いいねえ、異世界のライダーも味がわかるやつがいるとは上々だ」

 

「そうかい。気に入ってもらえて何よりさ」

 

「そうだねぇ、上手いモン食わせてくれたお礼だ。情報の提供と一つの取引をしようじゃないか」

 

「……へぇ」

 

不敵な笑みを浮かべるウワバミの言葉を聞いて、海東は感心した。

彼はいかにも含みのある笑顔で提案の続きを語ってくれた。

 

 

「まずはお前さんが欲しがりそうな宝になりそうなアイテムの情報をいくつか提示しよう。ネオライダーの情報網で集めた限りのな」

 

 

「そんでもって、俺達との取引なんだが……」

 

 

「――俺達ネオライダーと一度だけ手を組まないか?」

 

 

ウワバミは酒を片手に飲みながら、ニヤリと笑う。

その目の前に極上の宝があるような魅惑的な悪魔のような誘いが海東の前に迫るのであった。




 どうも地水です。覚えていますでしょうか?

前回は士達とエンプティの話でしたが、今回は変更してネオライダーのウワバミと海東のお話。
腹の探り合いまさぐりあいは難しいですね、まったく←

ディエンドVSベルテ、3対1でも相対できるほどベルテの()ペック強し。
これは13RIDERSのベルテや後年のRIDERTIME龍騎のベルテとはまた違った強さを差別化するべく演出したものです。
当人は一体なんなんだろうか……。

差し出された取引の条件は【ネオライダーとの共闘】、果たして受けるかどうかは今後次第。

次回、正真正銘の異世界からの奇妙な旅人が参上します。


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第30話:奇妙なリンジン

 ネオライダーと相為す組織ライダーアライアンスと接触したディケクロ一行。
彼らとの問答の果てに協力関係を果たすが、彼らの出会いの後にあるのはもうひと波乱であった。

キーワードは『奇妙』『鏡』『記憶』




 

 その日、サクラは士と夏海と共に出掛けていた。

目的は食材の買い物であり、士達の写真館に居候しているサクラ達5名の分を買い足しているのだ。

 

「まだ出会ってそんなに日が経ってないですが、賑やかになりましたね」

 

「そりゃ俺達と同じくらいの人数がもう一組増えているからなぁ。にぎやかになって当然だろ」

 

嬉しそうな笑みを浮かべる夏海と、すまし顔で流す士。

彼らの片手には沢山の買い物をした証の紙袋が抱えられていた。

後から付いて来ているサクラに至っては、目の前が見えないほど積み上げられていた。

 

「おっとっと……」

 

「サクラちゃん大丈夫ですか? 私達が少し持ちますよ?」

 

「だ、大丈夫です。これくらい私が出来なくちゃ……」

 

夏海の助けを遠慮しつつ、視界が見えないままサクラはそのまま運ぼうとする。

それを見かねた士は一息溜息つくと、サクラの持っていた紙袋を奪い取った。

 

「あっ」

 

「無茶をするな。見ているだけのお姫様になりたくないのはわかるが、無茶するというのは違うぞ」

 

士はサクラが持っていた紙袋を持ち直すと、夏海の元へと戻る。

戻ってきた士を夏海が怒っているようにも呆れている見える何とも言えない表情で見つめている中、サクラは少し俯いた。

 

 

(また、力になれなかった)

 

 

(小狼君や、士さん達の力になりたい。でも今の私じゃ……)

 

 

士と夏海が帰路へとついてサクラはとぼとぼと歩いて二人についていく。

街の人々が己の向かう場所へと向かう中、サクラは自分が力自分の無力さに痛感した。

 

――この世界へやってきて遭遇した怪人という未知の脅威。

今まで遭遇してきた人々とは明らかに違うその存在は私達の旅に暗雲が立ち込めた。

幸いにもその場に居合わせた士さん達に助けられ、さらには小狼君達が手にした新しい力。

『仮面ライダー』という存在によって襲い掛かる悪意を対抗できるようになった。

だけど、私はなにもできない無力のままだった。

この世界は今まで旅をしてきた世界と明らかに違う……きっと無力のままじゃ小狼君達が、士さん達が傷ついてしまう。

それだけは嫌だった。自分が傷つくのはまだいい、だけど大切な人達が傷つくのは許せない。

 

サクラが延々と解決できない悩みを頭の中で巡らせていると、そこへ近づく影があった。

……それは黒服姿のネオライダーの構成員。偶然にも買い物の最中の士達を見つけのだ。

二人はサングラスの奥の瞳を野望でギラギラと光らせながら打ち合わせをした。

 

「おい、アイツら指名手配の」

 

「ディケイド一味か。まずはあの弱そうなガキを捕まえるか」

 

ディケイド達の強さは自分達より強いネームドのネオライダー達と渡り合った事を証明している。

正攻法では勝てないと分かり切っているなら、邪道で行くしかない。

人質としてサクラを狙うことにした二人はコッソリと忍び寄ることにした。

 

「……」

 

考え事をしているサクラへとそっと忍び寄る黒服の構成員達。

生憎と士と夏海の二人は気付いていない。絶好のチャンスだ。

そう思って人質にするべくサクラへと魔の手を伸ばした……。

 

 

その時だった、サクラの瞳が銀色に変わったのは。

 

 

――気が付けばサクラはいつの間にか裏路地にいた。

先程まで人々が行き交う大通りの近くを通っていたはずなのに、何時の間にか人気がない所に立っていた。

ここまで来た経緯が記憶になく、サクラは戸惑っていた。

 

「あれ、私、どうしてここに?」

 

周囲には転がったゴミの空き缶と、あふれ出らんとするゴミ箱があるだけで人気らしいものはない。

大通りから覗く僅かな光と薄暗い暗闇がサクラの中にある恐怖心を刺激する。

不安な気持ちが大きくなる中、そこへ自分の手を掴むものが現れた。

 

「サクラちゃん!」

 

「きゃっ!?」

 

軽い悲鳴を上げてサクラが振り向くと、そこにはこちらを心配して見ている夏海の姿。

見知った人間がいて少し安堵すると、夏海が訊ねてきた。

 

「どうしたのですかサクラちゃん。こんなところで何をしているんですか?」

 

「あれ……? 私一体何を?」

 

「こんなところにいたら危ないですよ。ほら、士君を待たせてるんで行きましょう!」

 

夏海に手を引かれて、裏路地を離れていくサクラ。

後に残されたのは薄暗い暗闇が広がる光景と……。

 

「「あぁ……いってぇ……」」

 

その曲がり角にて巻かれた白い砂と、ボロボロの姿で倒れ込んだ黒服達の姿だった。

 

 

~~~~

 

 

 翌日。

この世界へやってきて何度目かの羽根探しに出かける事になった士と小狼達。

新しい羽根の情報を手に入れるべく、出かける一行であったが、そこでとある違和感に気づく。

その違和感を最初に口にしたのはファイであった。

 

「ねぇ、黒さま。気付いている」

 

「ああ、アレか。姫の様子がおかしい事が」

 

黒鋼とファイが一足先に向かって歩いている小狼、サクラ、ユウスケ達を観察していた。

小狼とユウスケが楽しく談話している様子をサクラが笑顔で見守っているという光景が広がっている。

一見いつものサクラだと思われているが、二人は彼女に変化に気づいていた。

 

「サクラちゃん、彼女本人は気付いてないけど妙な気配からするんだよね」

 

「それが何なのか分からないが、俺達に襲い掛かってくる気配はねぇみたいだな」

 

黒鋼が鋭い視線でサクラを見る。

ファイの言葉の通り、今のサクラには何ともないように思えるが、それでも彼女とは違う微かな気配を感じ取っていた。

その隣にいた士と夏海は思い当たる節が頭によぎった。

 

「士君、そういえば昨日サクラちゃんの様子がおかしかったんですよね」

 

「一度俺達とは別の道に向かったってヤツか? アイツも年若い乙女だ。たまには一人の時間も欲しくなるんじゃないのか?」

 

「それがサクラちゃん、私が追いかけたら薄暗い裏路地にいたんですけどそこへ向かった記憶がないみたいなんです」

 

「記憶がないだって?」

 

夏海の言葉を聞いて、士は眉を顰めた。

無意味にそんな治安が悪そうな所へ向かう性格ではないと知っているため、妙な違和感を士は覚えた。

 

「これはちょっと調べる必要がありそうだな」

 

「そうだねぇ。でもサクラちゃんと一緒にいるあの二人にはこの事を黙っておこうか。ユウスケは隠し事するには顔に出やすいし、小狼君はサクラちゃんの事になるとねぇ」

 

「だがどうやって調べるんだ? 姫に何が潜んでいるか分からない今、迂闊に手ぇ出せねぇだろうが?」

 

ファイの言葉を聞いて黒鋼が口を挟む。

確かに今の自分達ではサクラに何が隠れているかを調べる術はない。

どうしたものかと悩む一同……その一方で、サクラの傍らで小狼とユウスケは会話が弾んでいた。

 

「そこでおれ達は王様の前でお芝居をすることになったんです」

 

「へぇ、王様の前でお芝居なんてすごいし面白そうだなぁ!」

 

かつて訪れた国『水上都市コラル』での出来事を話す小狼と、彼らの旅の様子をユウスケは楽しく聞いている。

そんな和気藹々とした様子の二人にサクラはモコナを抱えながら見守っていた。

 

「楽しそうだね、小狼!」

 

「そうだね、モコちゃん。小狼君とユウスケさん、楽しそうね」

 

「ああ、夢中になってごめんね。小狼君が旅をしてきた世界の話があまりにも面白くてね」

 

「いえ、見ているこっちも楽しいですよ」

 

申し訳なさそうにするユウスケにサクラは笑顔で返した。

小狼が何かを嬉しそうに語る姿がサクラ自身にとっても嬉しかった。

できるなら、こんな幸せな光景を眺めていたい……また戦いに出て傷つくは見たくない。

小狼達一同に悟られないようにそう思いながら、サクラは作り笑いを浮かべた。

 

 

『君はもうちょっと、自分に我儘になってもいいんじゃないか?』

 

 

「えっ?」

 

突然聞こえてきたのは誰かの声。

男にも女にも聞こえるその声音は諭すようにサクラの中に響いた。

周囲を振り向くも自分達の他には第三者の姿はない。

サクラの戸惑う姿を見てモコナが声をかけてきた。

 

「どうしたの、サクラ?」

 

「ううん、なんでもない」

 

モコナに心配をかけないように笑顔で言葉を返すサクラ。

彼女の様子に首を傾げる小狼とユウスケだったが、深く聞ける様子じゃないので声をかけなかった。

遠くで様子を見ていた四人も、近くにいた二人もサクラの様子がおかしい事に気づき始めた。

 

 

――――

 

 

その様子を遠くから見ている者がいた。

ディケイドを付け狙う謎の男・鳴滝であり、何とも言えない複雑な表情で一同の姿を見ていた。

 

「ディケイド……門矢士、見慣れない仲間を集めてこの世界で失せ物探しか。だがその望みは絶たせてもらう」

 

"この世界"でのディケイド/士の役目を阻もうと鳴滝は次元の架け橋を呼び出した。

銀色のオーロラのようなそれからいくつもの人影が映り、鳴滝は指示を出す。

 

「行け、ディケイドを、門矢士を倒せ」

 

鳴滝が呼び出した仮面ライダーは一旦に互いに顔を見合わせると、次元の架け橋へと潜りこんだ。

次元の架け橋が消えると、鳴滝はそのまま最初からいなかったように姿を消していった。

 

 

――――

 

 

一方、その頃。

士・夏海・ファイ・黒鋼は頼打地区内の海浜公園へと辿り着くと、そこで一休みすることになった。

 

「見つかりませんね、羽根の情報」

 

「そうだねぇ。でも代わりの情報は手に入ったよねぇ」

 

夏海とファイが言う通り、記憶の羽根に繋がりそうな情報は見つかった。

すぐ傍に立っている黒鋼が持っている情報端末には『D&P(ディベロープメント&パイオニア)、新エネルギー開発事業をスマートブレインに買収を図られる』という代物だった。

士とユウスケが同じように覗き込む中、小狼が口にしたのは以前訪れた世界での事。

 

「前に訪れたピッフル(ワールド)という国で街一つの発電を賄えるエネルギーとして羽根が優勝トロフィーとして紹介されていたんです」

 

「つまり、この世界じゃサクラの羽根がエネルギー開発の元として誰かの手に収まっているってわけか。悪くない線だな」

 

「だけど今訊ねて大丈夫なのか? なんかほかの会社に買収されそうになってるし、俺達の事なんて取り合ってくれるか?」

 

投げかけられたユウスケの質問に士と小狼は見合わせる。

そして、二人が出した答えにユウスケ達は目をギョッとさせた。

 

「当たって砕けろだ。アポなしで行く」

 

「アポイントメントできるかどうかわかりませんが、最終手段として直接乗り込みます」

 

士はともかく、小狼まで似たような事を言い出して、夏海とユウスケは驚き、黒鋼は呆れ、ファイはなんともいえない笑みを浮かべた。

そんなやり取りをやっている一同から離れて、サクラはモコナと共に近くの自販機へ赴いていた。

 

「サクラー、モコナこれが飲みたーい!」

 

「ふふっ、わかった」

 

サクラが小銭を入れて自販機のボタンを押そうとした時、そこへ視界の端に何か映った。

それは道路の真ん中と倒れてしまった幼い女の子と、そこへと向かう一台のトラック。

トラックは道中に子供が倒れている事に気づいていないのかそのまま走って近づいく。

このままでは敷かれてしまうのではないか、そう思った矢先サクラは咄嗟に走りはじめた。

 

「あぶない!」

 

「きゃっ、サクラ!?」

 

モコナが名前を呼ぶことも気にも留めず、子供を助けようと助けたいサクラ。

なんとか女の子の元にやってきたのだが、既にトラックが眼前まで迫っていた。

その時過ったのは、自分の死。

 

 

「あっ……」

 

 

一瞬過るのは恐怖感と、一つの後悔。

女の子を助けた事を後悔したわけではない。このまま死んだら大好きな君(小狼)にこの気持ちを伝えられなからだ。

黒鋼さんのように早く動けるわけでもない、ファイさんのように特別すごい魔法を使えるわけでもない。

トラックに轢かれようとする中、サクラは思わず目を瞑った。

 

――その時だった、またあの声が聞こえてきたのは。

 

 

『やれやれ、仕方がないなぁ……』

 

 

『ハァッ!!』

 

 

その瞬間、サクラの体は少女を抱えて大きくジャンプをした。

自分の意思ではない、誰かの意思によってサクラの体は宙を舞った。

そして少しの間空中を舞った後、地面へと降り立つ。

そこへ、騒ぎを聞きつけた小狼とユウスケが駆けつけてきた。

 

「姫!」

 

「サクラちゃん!」

 

「ん?」

 

「「……ッ!?」」

 

名前を呼ばれて振り向いたサクラ……だが彼女の『変貌』ぶりに小狼とユウスケは驚いて思わず足を止める。

彼女の綺麗な翡翠色の瞳は煌くような銀色へと変わっており、肩まで切っているはずのハニーブラウンの髪は腰まで長く伸び、さらには一筋の銀色のメッシュが入っていた。

先程までなかった容姿の変化に驚いていると、サクラは彼女に似つかわしくない含みのある笑顔で答えてくれた。

 

 

「どうも初めまして。仮面ライダー諸君。オレ(・・)の事はストレンジと呼んでくれ」

 

 

驚いている小狼とユウスケを前にして今のサクラ――ストレンジと名乗った『何者か』は自己紹介をした。

 

大波乱の予感は、突然に始まった。




 地水です、地味にディケクロ4周年でございます。時間の流れって怖い←

今回の話はお分かりの通り、サクラちゃん回でございます。
サクラちゃんの様子がおかしい? 一体何があったのか。

小狼とユウスケの話で出てきた『水上都市コラル』はツバサ・クロニクルのドラマCDで登場した舞台です。
あの話は王様の雪兎さん相手に演劇をするという話でしたが、しんみりとした話でしたと印象残ってます。

羽根の行方は未だにわからず、しかし手がかりは確かにつかんだ。
そんな最中で現れたのはサクラの中に潜む何者か?
アナタは何者!?(CV:ルナドーパント)

次回、ストレンジがディケクロ一行と邂逅します。


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