狼王の野望 (のろま亀)
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第一話 君の名前は

戦国時代っぽいファンタジーが今、始まる!って書きましたが実際は作者が好きな要素(獣人との恋愛や戦国時代要素やら)を入れて色んな小説や漫画を
リスペクト(ぶちゃっけパクry)して執筆しました。最後にこの稚拙な小説を読もうと思ってもらいありがとうございます。



「私今どこにいるんだろ?」

 

(ここはいったいどこ?わからない。雨もふっていて林の中っぽいし、まさか私無意識のうちにそこら辺をフラフラ歩いていたのかな?)

彼女がそんな考えをしていたら突然それはおきた。

 

「「「うわぁー」」」

 

恐らく大人数から発せられたと思う大きな雄叫び、だがその声はなにかの勝ちを確信したようなものだった。

 

「え?なに?」

 

彼女は驚きながら周囲を見渡していた、そして声の方向に歩いた。

彼女は林をぬけた狭い土地でおよそ人とは思えない異形の者たちによる血みどろの戦いを見た。

「いったいなにこれ?なにあの動物みたいなの?」

 

(よくわからないけどあの動物みたいなのが戦っているのは明らかだし、気づかれる前に逃げなきゃ。)

彼女は困惑し焦った中で思考したが遅きに失した。

 

「そこにいる者、何者だ!!」

 

異形の群れの中からそんな声が聞こえた。それは彼女が思考し実行しようとしていたその時だった。

(バレた、早く逃げなきゃ。)

彼女は気づかなかった、声がはっせられた直後にこちらに馬を駆って進んできた者に。

 

「人間の小娘なぜここにいる?戦場なのだぞここは。」

 

彼女は逃げようとしていたが、声を聞いた瞬間に驚き恐る恐る後ろをむいた。そして声をかけた異形の者の姿を確認した。

(私はいったいどうしたらこの場を切り抜けられるの?わからない!)

そんな自問自答を繰り返しているうちにまた声が聞こえた。

 

「聞こえておらぬのか?人間の小娘よなぜここにる?」

 

「すみません!私気づいたらここにいて、なにがなんだか。」

 

彼女がそんな返答をしているともう一人異形の者がでてきた、苦虫を噛み潰した灰色のイヌのような顔の者が聞いた。

 

「ほう?つまり貴様はここに偶然来て、先ほどの戦いをみていたと?」

 

「はい、そういうことになると思います。」

 

「ふざけるな!そんなことがあるはずなかろう!だいいち偶然来て見てたなど・・・」

 

苦虫噛み潰した顔でまだ何か言いたげだったが、最初に質問してきた異形の者に言葉をさえぎられた。

 

「おまえは下がってろルシアン、私が話す。」

 

「しかし御屋形様こやつは・・」

 

「私が下がれといったら下がれ!」

 

苦虫噛み潰した顔が睨まれた瞬間に変わった、顔面蒼白という言葉がぴったり合うような顔に。なぜか、それは異形の者ではない彼女も感じ取った肌がピリピリする感覚を。

 

「申し訳ありません御屋形様、ですがせめて陣中でお話ください。」

 

顔面蒼白になった顔で苦し紛れに言った。そしてその言葉の直後から即席で陣を構築するための陣幕が張られ始め、すぐに完成した。また座る床几も用意された。

彼女は周囲をキョロキョロと見渡し、戸惑っていた。

(え?なに?この流れ?)

 

「お互い座って話しをしようではないか、さぁ座れ。」

 

「わかりました。」

 

彼女は床几に腰かけた。160cm近くしかない小柄な人と2m以上の巨体を誇る魔族が床几に座って話しをするというなかなか謎な光景だ。

 

「まだ名前を聞いていなかったな、人間の小娘よ名はなんだ?」

 

「私は有栖、湖上有栖。」

 

「そうかアリスというのか。」

 

「あなたの名前は・・・」

 

「我が名はない、名などとっくに捨てた。」

 

「え?」

 

「名はないが、世間の者は我をうつけや第六天魔王、狼王と呼ぶ。」

 

「!?」

 

(え?なに言ってるのこの人?第六天魔王って、それってあの織・・・)

 

「それより、先ほど言っていたことはまことか?」

 

「えっと、本当だよ。」

 

「そうか?とても信じられないがな?」

 

「本当です!」

 

「フッ、変わっているなアリスは。」

 

「いきなりなに!?いったいなにを考えてるの!」

 

「いや私の前に出た者はほとんどが私が恐ろしくなって震えあがる。たとえそれが屈強な戦士だろうとも例外ではない。だからだ、アリスお前は私が恐ろしくはないのか?」

 

「それは・・・」

 

それを聞いたアリスは一瞬悲しげな顔を浮かべて独り言のように言った。

 

「私はもっと恐ろしいものを知っている、生まれ持った才能を恐れられてだれにも理解されずだれも理解しようとしてくれない、それはとっても孤独で恐ろしいこと。」

 

「それは・・・」

 

「でもあなたの近くにいてこうして話していると知らないとこなのに落ち着く、変だよね私。」

 

(なんだろうこの変な気持ち?てかなに言ってるんだろ。)

アリスが首をかしげて考えているて彼はこう言った。

 

「いや変ではないぞ。」 

 

「そう思うことは普通だが、それを変だと思うことはお前が特別なのだら。」

 

「それに私に対してそんなこと言うとはアリス、お前以外いないぞ。」

 

彼は一呼吸おいてそう言った。先ほどの恐ろしい顔ではなく、優しさに満ちどこか悲しげな顔で。アリスは改めて彼の顔を見たオオカミのようにすらっとし、だが威厳がある顔だった。

 

「そうなの?」

 

「そうだ、それよりアリスお前はこれからどうするのだ?いくあてがないのだろう?気まぐれだが我が城にくるか?」

 

「え?いいの?」

 

「ああいいぞお前を気に入ったからな、だがそのかわり少しの間は捕虜という扱いになるが、いいか?。」

 

「落ち着く場所だけでもくれるならいいわ!」

 

アリスは即答だった、彼はうれしそうな顔で言った。

 

「よし決まったならさっさと戻るぞ。」

 

「すぐに小姓に取り立てられるようにするから少し我慢してくれ。」

 

「ええ、いいわ!」

 

(よくわかないけど、落ち着く場所をくれて働けるなら文句なんてないわ。ん?もしかして移動手段って馬?)

 

「えっと私、馬乗れないわ・・・どうすれば。」

 

彼は小姓に馬を引かせ乗ろうとしていたところにそれを聞いた。そしてアリスをつかんで言った。

 

「馬に乗れないなら私の後ろに乗れ、落ちないように掴まるのを忘れるなよ。」

 

彼はそう言ってアリスを自分の馬の後ろに乗せて駆け出していた。後ろから苦虫噛み潰した顔のルシアンが追いながらなにごとかを言っているがアリスと彼には聞こえない。

 

「まったく王の気まぐれには困ったものだ、あの小娘が敵方の間諜かもしれぬというのに。」

 

ルシアンがそんな独り言をしていると近づいてきた影があった。

 

「いいではないですかルシアン殿、御屋形様のうれしそうな顔はここ何年みていなかったのですから。」

 

おそらくルシアンと同じく彼の重臣の一人が馬首を並べ言った。

 

「ルヴトー殿ですか、もし敵方の間諜だったらどうするのですか?」

 

「私の勘ですがそれはないとおもいます。まあ、あくまでも勘ですが。」

 

「そうですただの勘です、ですから私は信じません。」

 

ルシアンはそう言うと馬の速度をあげ彼とアリスの乗った馬を追った。

 

「やれやれ、ルシアン殿は御屋形様第一ですが少しそれが強すぎですな、できればあの二人が離されなければいいのですが、無理ですかな。」

 

馬に乗って城に戻ろうとしていた時、五千の大軍勢の最後尾で周囲の人に聞こえるような声で喋っていた者がいた。

 

「フッフッフ、兄上の気まぐれはいつも変わっているが今回は特に変わっている、たがこれは好機かもしれんフッフッフ。」

 

軍勢の最後尾で不穏な影が生まれていたがアリスと彼はまだ気づいていなっか。

不穏な影があるがこれがアリスと狼王の出会いだった。

そして長く戦乱に包まれていた魔族の歴史を変えることになるがこの時点ではだれも知らない。




最後まで読んでいただき感謝しかありません。さて小説の内容はどうでしたか?色々と「なにこれ?」となったでしょう、「なんだこれ?ゴ〇か?」「なにこれ稚拙すぎでしょ」「ク〇じゃん」など思った方はコメントにて批判や批評をいだだけると幸いです。最後に読んでいただきありがとうございました。


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第二話 やさしさの捉え方

いやー、5000字近くになってしまいましたが、個人的に満足しました。読者視点でどう映るか不安で不安で仕方がないです。ではどうぞお楽しみください。


アリスは馬に揺られながらされている説明を聞きながら考え事をしていた。

(ここは魔族の国、私はそこに迷いこんだという。なんで迷いこんだんだっけ?思いだそうとしても思いだせない。私はとりあえず彼の城で少しの間は捕虜という扱いでその後、小姓にに取り立ててくれるという。なんで私を?私これからどうなるのかな?)

彼女が考えていたら、ふと耳に声が入ってきた。

 

「アリス、聞いているのか?」

 

彼が後ろを向きアリスに問いかけた、アリスはそこで考え事から解放された。

 

「あっ、ごめん。」

 

「まぁいい、どこまで聞いていたのだ?」

 

「えーと、最初のとこ以外全部かな。」

 

「アリス、お前という奴はいったいなにを聞いていたのだ?」

 

「あはは、ごめん。」

 

「ではまた最初から説明するぞ今度はしっかり聞いとけ。」

 

「はーい。」

 

彼が言うには、魔族の国は広大な土地にありこの世界には人間の国もあるが魔族の国とは国境があり、ほとんどの者はそれぞれの国を出ることはないという、そして魔族の国はその広大な土地を統治している強い勢力がいないという。元々は全国を統治する勢力いたが時代が進むにつれ影響力が弱くなり、結果戦乱になっていったという。

 

「えっと、つまり戦国時代ってことかな?」

 

「ん?よくわからないが、恐らくそうだ。」

 

「でも全国を統一しようとする人は現れなかったの?」

 

「現れたが志半ばで倒れたりして未だ全国を統一した勢力はいない。」

 

彼が言うように全国を統治できる勢力はいない、アリスはふと疑問がでできた。天下布武を唱える者はいるのかという疑問が。

 

「そうなんだ、いまは誰かいないの?」

 

(ん?そいえば彼って自己紹介のとき第六天魔王って言ってたはず・・・)

 

「ああ、一応はいる。」

 

「わかったわその人!あなたよね?」

 

彼は一瞬驚いたがその直後に面白くなったのか突然笑いだした。

 

「フッフッフ、なぜだ私と思った?いやなぜ私とわかった?」

 

今度はアリス面食らった。いきなり笑いだしたのだから。

 

「いやー、なんとなく?」

 

アリスが思って言ったことは事実であり、勘だった。第六天魔王と言われてるのだからアリスとしてはそうだと思った、だがそれはアリスの世界の歴史であって、この世界は歴史はアリスがいた世界の歴史と同じではないのだから。だから半分は事実でも、もう半分は勘だった。そんなの言えたものではないから咄嗟に誤魔化した。

 

「重臣や親類にも本当のことは言ったことはない野望なのだがな・・・」

 

「そうなの?」

 

「ああ、そうだ。」

 

(なぜ私の野望を知っている?それも人間の小娘がいったい、なぜだ?」

彼は物凄く強い好奇心に襲われた。それは彼の悪い癖だったがそれは結局かなわなかった。なぜか、アリスが寝ていたのだ。

 

「うぅぅぅ。」

 

「ん?どうしたアリス?」

 

「・・・・・」

 

 

「アリス?寝ているのか?」

 

「・・・・・」

 

(まったく私の背中を抱き枕がわりとは、だがアリスもつかれたのだろうな。)

彼は少しながら残念に思ったが余計に好奇心が強くなった。

(まぁ、また今度でいいな。そういえば牢はどうするか、人間の捕虜となると普通の牢だったらすぐに食い殺されてしまうな。ならばあそこにするか。)

 

アリスは寝ぼけた状態で考えた。

(寝ていたんだ、私。寝むって何時間たったかな?)

そんなこと考えていたら突然の驚きがアリスの全身を包んだ。

 

「うぅぅ、なに?なに?」

 

それは時代劇で見たような戦国時代や江戸時代の町並みの町に続く道、建物の真ん中の道を埋め尽くす民衆。そして町を包み込むような大きな歓声、歓声に歓声。それは戦で戦った勇士たちへの感謝と労いを込めたものだった。だが大きな歓声は次第にざわめきになった。民衆は口々に言う。

 

「あれはなんだ?」

 

「人間?」

 

「なぜ人間が?」

 

いつもは民衆の目に留まるのはをに畏怖し尊敬する国主さまだが、その時は違った。馬に跨がる国主さまに両手でしがみついている人間の小娘、つまりアリスに目が留まったのだ。さらに周囲を確認しようとアリスがキョロキョロとしていたため、ざわめきは加速した。ルシアンは歯がゆい思いだった。

(だからお止めしたのだ。第一なぜ御屋形様が小娘をはこんでるのだ。挙げ句の果てに寝るとは、礼儀をしらぬのか。)

だが突然ざわめきが止まった、ルシアンは訝しんだ。

(なぜだ?なぜ止まった?)

なんとなく民衆を見たらその表情は強張っていた。そう、ざわめきに変化している途中なにか癪にさわったのか、その鋭くも威厳のある目力で民衆を睨み言葉を発さずに黙らせたのだ。

 

「えっとなんでこんなに(魔族)が?」

 

「アリスは意外と鈍感なのだな。この民衆は合戦に勝利した我らを労うべく道の端にでているのだ。」

 

「え?そうなの?」

 

アリスは思った。やはりこの世界は、自分が好きな戦国時代のような感じだが、根本的には違うと。そんなことを考えていると、ふと馬が止まった。そして頑張って彼の後ろから顔をだすと、そこには城があった。それは西洋風ではなく、和風の城に似ていた。

 

「さあ、ついたぞ。ここが私の居城だ。」

 

アリスはいささか驚いていた。今日に現存している城は数が少なく、さらに今は無き山城なのだから。彼とアリスが乗っている馬は山を登らずに麓の屋敷にむかった。

 

「捕虜の間はここにいろ。くれぐれも外に出るな。」

 

「わかったわ。」

 

「食事を出すように言っておく、しっかり食べろ。小鳥達よアリスが逃げないように見張ってろ、私は論功行賞のため大広間に向かう」

 

「フッフッ、じゃあね~。」

 

アリスは少しばかり小鳥と戯れていたら、突然ふと我にかえった。

(ん?私って小姓になるまでここにいるの?ここって・・・)

そうアリスが捕虜の間いる場所は、

(まさか彼の部屋?え?え?なんで?私って捕虜だよね?捕虜は普通は地下とか地上にある牢とかじゃないの?)

彼女が疑問に思ったのはここにいるということに対してだ。普通は捕虜が収容されるのは地下や地上にある牢だ。だがここは魔族の国だ、地上や地下の牢では下手しなくても食べ殺されるのは考えたらわかる話だ。そこで、彼が導いた答えはひとつ。自らの部屋に捕虜という立場のアリスをおこうと。さすがに人間の小娘を自分の命と引き替えに食べようとする愚か者はいないと。だがやはりというか必然というか論功行賞の後の合戦の戦後処理は荒れに荒れた。ある者の言葉を借りると、

 

「まぁ是非もないよね!」

 

彼は論功行賞と戦後処理、勝利の宴を終えて、自らの部屋に向かってている途中にふと足が止まった。その後ろには彼と少し検討することがあったため、ルシアンも続いていた。そしてルシアンが庭に目をむけて呟いた。

 

「ん?あそこにいるのは・・・」

 

次の瞬間ハッとして言った。

 

「なぜ、あの小娘が庭にいるのだ!?」

 

彼はすぐさま動き、そして素早くアリスを抱えあげた。

 

「アリス、なぜここにいる?」

 

「あはは。」

 

「小鳥達よ貴様達にアリスを見張れと命じたはずだぞ?」

 

軽く睨まれた小鳥達は力なくうつむき、

 

「うぅぅ、ごめん小鳥さんたち。」

 

アリスもまた力のない声でそう呟いた。

 

「お前は己の立場をわかってない。部屋に戻るぞ。」

 

「御屋形様?お待ちください!まだ話すことが・・・」

 

「今日はもういい。日も暮れているしな。」

 

彼はそう言うと足早に部屋に戻った。

そしてそこには、ポツンとルシアン一人だけがのこされた。

 

彼は部屋に戻ると天蓋付きベッドに腰をおろし、アリスを問い質した。

 

「私があれほど言ったのに、なぜ部屋を出た?」

 

「だって、おーかみさんの部屋ギラギラして落ちつかないの。」

 

アリスはベッドの周りを歩きながら答えた。

アリスが言った事は事実だった。実際、彼の部屋には色々な物があった、地球儀や装飾が施された刀剣類に魔女が被るような帽子など例をあげるときりがない。

 

「ちょっと待て、そのおーかみさんとは私か?」

 

「そうだよ。だって名前聞いた時に名前は無いっていったから、私なりに呼びやすくしたの。」

 

彼は少し頭を抱えた。だがすぐに切り替えた。

 

「話を戻そう。お前がこの部屋から出たらどうなると思う?」

 

「え?そりゃ下手したら食べられるのかな?」

 

「下手しなくても食べられるぞ。」

 

「そうなんだ、じゃあお礼言わないと。おーかみさんはやさしいね、ありがと!」

 

「ん?なぜだ?」

 

「だって私のこと心配してくれて、忠告までしてくれてるんだから。」

 

その発言が終わった瞬間だった。

 

「私がお前を心配だと?ふざけているのか?たしかに私はお前を気に入ったと言ったが、それとこれとは話が違う。私がその気になれば、お前を八つ裂きにだってできるのだぞ、今すぐにな。」

 

アリスは体を引き寄せられベッドの上に仰向けにされていた。彼はアリスに大きく発達した牙を見せ、鉤爪をたてて言っていた。

(私を脅している?でもどこか辛そう。なんでだろ?)

アリスに大きな牙を見せ、鉤爪をたてた姿はまさに世間から言われている第六天魔王や狼王にふさわしいものだ。だがアリスは不思議に思った。なぜか彼の表情が不自然に強張っていたのだから。

 

「もしかして私にわからせようと無理してる?」

 

「なぜそう思った?」

 

「だっておーかみさんの顔が不自然に強張っているんだもん。」

 

「恐ろしくはないのか?」

 

アリスは一瞬黙ったが、すぐに、

 

「恐ろしくないって言ったら嘘になるけど、そんなに強張っていたら恐ろしい以前に不思議に思うよ。」

 

彼女は彼に話をしていながら、まるで独り言のようにいっていた。彼はそんなアリスを解放して起き上がり、アリスは力がぬけたのを感じると起き上がった。彼にのしかかって、話を続けた。

 

「別に私を小姓にしなくていいんだよ?だっておーかみさんに無理させたくないし、家臣の人達も納得してないんだろうし。」

 

「それに人の命なんていつかは尽きるから、それが今になるだけだから。」

 

「哀れな奴なのだなアリスは。」

 

「おーかみさんさんはやさしいね。こんな私に同情してくれるなんて、でも私がこの部屋にいる間は無理しなくていんだよ?」

 

アリスはそれを言い終わると、ベッドに倒れて静かに寝息をたてて寝ていた。彼もまた自分によしかかっていたアリスが寝たのを確認するとベッドに横たわり目をつむった。

 

そんなやりとりをアリスと彼がしている時にある陰謀が進んでいた。彼やアリス、家臣団が騒然とさそかねない謀反による御家騒動が。

 

「やはり、このまま兄上に任せていてはすぐにお家が潰れてしまう。」

 

「そうでしょうか?ボーゲンを奇襲し討ち取って先の合戦に勝利しましたが?」

 

「それは違う。兄上は本当のうつけ者だ」

 

「フェンリル様が仰ていることは違いますぞ!世間の者は御屋形様が本当はうつけ者などではなく、本当は歴史に名を残す英傑なのだと。」

 

陰謀の企てをしていた者の中で唯一、陰謀に頑なに加わろうとしない者がいた。

 

「ルヴトーはなぜ頑なに兄上の肩を持つ?お前は僕付きの家老だろ?」

 

そう、(狼王)に一時の幸せをもたらさしたアリスをよく思っていた、ルヴトーが。

 

「肩を持つもなにも、まず御家が乱れますし、フェンリル様は二度も謀反を起こし二度許されました。ですが次はないですぞ。」

 

「御家が乱れるもなにも、そこらにいた人間の小娘を捕虜とし自分の部屋においている兄上自身が御家を乱しているではないか。」

 

「それに当家最強と言われているお前が本気を出せば、今度こそ成功する。」

 

「私はそのような事には加担しましせんぞ!」

 

ルヴトーは頑なに謀反に加担することを拒んだ。だが彼以外に謀反に反対する者がいないため、結局謀反を起こすことが内々に決まった。ルヴトーは歯噛みした、合戦に勝利したばかりのため、勝ち目は限りなく低いとうことに気づかないことに。第一御屋形様()が幸せそうにしているのは人間の小娘のおかげなのに。だが結果として決まってしまったため、腹を括った。こうなれば手段は選んではいられない。

 

「口実はそうだな、人間の小娘をつかうか。」

 

陰謀というにはとても拙い陰謀が進んでいた、彼とアリスの運命はどうなるのか。




どうでしたか?面白かったですか?相変わらず拙い文章ですか、一応確認しましたが勢いだけで書き終えてしまったため、誤字脱字ありましたら、お手数ですが報告お願いします。ではまた第三話でお会いしましょう。


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第三話 過去とやさしさの先にあるもの

三話です。相変わらずのように、勢いで書いてしまいました。二話よりも文字数が千文字ほどすくないですが、まぁ多分いいでしょう。相変わらずのどこかで見たことある内容ですが、お楽しみください。では三話はじまります。


「フェンリル様のお付きの家老でありながら、お止めできず申し訳ありません!!」

 

アリスは朝早くから困惑していた。昨日のことは大して気にしなかったが、ものすごく濃い一日だっため疲れて寝てしまっていた。そして起こされ、すぐに準備しろと言われて準備したら茶室に連れてかれ、知らない(魔族)が入ってきた。部屋に入ってきた者が最初に発したのが、

 

「弟君のフェンリル様からの伝言でございます。人間の小娘を処刑もしくは引き渡すこと。」

 

と言い、彼が茶室に入ってきた者を睨んで言った。

 

「なんだと?なぜアレにそんなこと言われる?関係ある話か?」

 

「実は・・・」

 

「なんだ?言ってみろ。」

 

「はい。実は弟君フェンリル様は御屋形様に謀反のお心があるのです。」

 

そして今に繋がる。彼は呆れた口調で言った。

 

「またか。つくづく愚かだなアレは。」

 

「擁護は出来ないですが、周りの世間知らずがそそのかしているので、決して本心というわけでは・・・」

 

「だが、それを本気にしているのはアレだ。救いようがない」

 

彼の横にちょこんと座っていたアリスはやはり、彼の表情と言葉を不自然に思い、不思議に思った。

 

「まだ、お止めできるかもしれません。このルヴトー、命をとしてでも、お止めしようと思います。」

 

「お前が命をかけて説得したとこで、変わりはしないだろう。それに下手したらルヴトー、お前が殺されかねない。」

 

入ってきた者、ルヴトーは顔面蒼白になりながら必死に自分の主君であるフェンリルを庇いながら彼をなだめていた。

 

「おーかみさん?そのおーかみさんの弟のフェンリル?っていう人、今までに謀反を起こしたことあるの?」

 

「いきなり、なんだ?そうだな、お前がまだいなかった時にアレは二回も謀反を起こしている。」

 

アリスはやはりと思った。このままでは彼の弟のフェンリルがどうなるかも、そしてこれからの彼の心の内もぼんやりと、歴史に基づいた考察ができた。

 

「今生きているってことは、二回とも許したんだよね?」

 

「あぁ、許した。結果がこれだ。」

 

「なにか、方法はないの?そのフェンリルを助ける方法は。」

 

アリスはもしもの希望にかけた。だが、

 

「これ以上そのような甘いことを言ってはいられない。アレより先に手を打つ」

 

「御屋形様!それがしが命をとしてフェンリル様を説得します!ですから何卒寛大な処分を・・・」

 

ルヴトーは必死だった。主君筋へのフェンリルの謀反をを止めたいし、彼がフェンリルを処刑して親類の血で手を汚してほしくはない。だが、彼の返答は残酷だった。

 

「二度も言わせるな。下手してお前が討たれたら私の野望が頓挫する。」

 

かくして彼の弟フェンリルへの処分が決まった。アリスはとてつもない危機感を抱いた。それは本当はやさしさの塊みたいな彼が真の第六天魔王になることに。

(どうしよう。このままじゃおーかみさんがだれにもやさしくでかなくなる。たとえ家族でも家臣でも。)アリスは決意した、たとえ自身をなげうつことになっても。

 

なぜなんだ。兄上の城からルヴトーが顔を青白くさせて帰ってきた。ボクが、

 

「どうしたんだい?顔が青白いが?」

 

と理由を聞いたら、

 

「フェンリル様申し訳ありません。御無礼を承知の上で取り押さえさせてもらいます。」

 

と言われて、なにを言いだすと思ったら、次の瞬間にボクは彼に取り押さえられていた。

 

「何をする!?痛いから離せ!離してくれ!!」

 

その騒ぎを聞きつけた側近たちが来たが、簡単になぎはらわられて、ボクは兄上の城につれていかれた。

 

「ボクは死にたくない!ルヴトーなんでなんだ!!」

 

フェンリルは家臣団が集まっている大広間でその高めな声と華奢な体で大声を出して泣き叫んだ。

 

「フェンリル様、私が命をとして説得しますので何卒お気を確かに。」

 

「ルヴトー、よく取り押さえた。だがその格好はなんだ?」

 

彼は白装束の格好をした、ルヴトーを睨んだ。

 

「私が、フェンリル様お付きの家老でした。私の不手際でこのような事になってしまったため、フェンリル様を命じるのではなく、私に切腹をお命じください!!そうでないと私は命じられなくても切腹します!!」

 

ルヴトーの覚悟に押されたのか、話し合いが始まってからしきり切腹を提案していた家臣達も、うつむき黙っていた。だが彼だけは、押されたなかった。

 

「ルヴトー。何度同じ事を言わせる?お前が死ねば私の野望が頓挫すると。ここは下がれ!フェンリルの処刑以外に私の頭には無い!!」

 

凄まじい声音で大広間にいた者どころか、城にいた者の大半を圧倒し、かなりの覚悟を見せていた、ルヴトーも圧倒され黙っていた。フェンリルはガタガタと震え、うわ言のように、死にたくない、死にたくないと喋っていた。そんな惨めな彼に引導を渡すべく、立ち上がって

 

「後悔するなら自身の愚かな選択を後悔しろ。」

 

と言って、手に持った太刀に手をかけた時、突然入り口の方から声がし、次の瞬間に入り口が開けられた。

 

「おーかみさん、止めて!絶対にそんな事しちゃダメだよ!!」

 

騒ぎの正体はアリスだった。アリスが大広間に入ろと廊下を渡っていたため、止められた。アリスは物怖じしなかった。そしてついには大広間に入ったのである。そんなアリスに声をかけたのは、いつも彼女に口うるさくしているルシアンではなく、アリスがおーかみさんと呼ぶ彼だった。

 

「アリス、口を慎め。もう決定した事だ。変える気はない。」

 

「慎まない!おーかみさんは本当に処刑したいと思っているの?」

 

「ああ、そうだ。」

 

 

アリスは物怖じないどころか、その聡明な姿はキラキラと、輝き目を奪われた。そんな姿を見ていると彼は焦りを感じた。その焦りは声に表れたが普通はそれを感じ取らない、それほどに彼が自分を自制していたのだ。だがアリスは感じ取った、彼が動揺していることに。

 

「嘘言わないで!おーかみさんはそんなことを思ってない。本当は処刑なんかしたくないでしょ?じゃあいいじゃない。おーかみさんはそれを決める権利をもっているから。」

 

「そのような事をしたら、真のうつけだと言われ、家臣たちに示しがつかぬ。」

 

大広間の会話はすでにアリスと彼の二人だけで交わされていた。そこに一切入り込める余地がないからだ。アリスはついに自分の考えで最も大切なことを伝えた。

 

「おーかみさんの野望は、夢は、そんなことで汚してはダメなの!おーかみさんの夢はそれだけ綺麗な夢なの!!」

 

「私の夢だと?」

 

「そうだよ。おーかみさんの夢はとっても綺麗。でもそれを一回、血で汚したら、おーかみさんはどんどんすり減って、綺麗な夢は、冷酷な野望になっちゃう。私はそんなおーかみさんは見たくない!」

 

「アリス、お前はいったい・・・」

 

彼は言葉を詰まらせた。必死に訴えるアリスをじっと見た。家臣団にもそれが伝わり、大広間にいた者の全員が、多少思うものがあった。アリスはそんな家臣団を気にせずにゆっくりと歩きだした。ルヴトーとフェンリルがいる位置へ。

 

「もしもまだ、処刑しようと思うなら、処刑していい。でもその時は私も処刑して。私は優しいって心から思えるおーかみさんになら仕えようって思えた。誰も信じることができなくなるおーかみさんには仕えられない。」

 

「私は優しいおーかみさんに仕えたい。」

 

「・・・・」

 

彼は少し沈黙した後、答えを出した。

 

「この件は明日に持ち越す。今日は終了だ。」

 

家臣団は彼を自分達をいつでも導いてくれる日輪だと、思っていた。うつけと言われていた彼が合戦時に見せた、あの焼けるような輝きを見た時から。だが、今日新たに違う日輪を見た錯覚に襲われた。それはアリスだった。彼を前にしても物怖じすることなく、凛とした姿で意見していた聡明な人間の少女に。

 

「私、とんでもないことしちゃったな。このまま城にいたら、おーかみさんの邪魔になっちゃう。」

 

大広間の一件の後、アリスは庭園で見張りだった小鳥達と戯れながら考えていた。後悔はない。自分が処刑される事に対してはなにも怖くない。だが、アリスは自分の せいで彼の考えの迷いを家臣団の前で見せる原因になったという事とは話が別だった。

(もう、いっその事、この城から逃げようとして魔族に食べらてしまおうかな。彼の傍からいなくなれるなら、私は ・・・)

そんな考えをしていたら突然視界が上がった。

 

「ここでなにをしている?さっさと部屋に戻るぞ、アリス。」

 

「おーかみさん!なんで私が部屋に戻るの?私、さっきあんな酷い事しちゃったのに・・・」

 

「それは後だ。今はさっさと部屋に戻る事が大事だ。」

 

アリスと彼は部屋に戻ってからしばらく無言だった。そしてやっと会話が始まった。

 

「さっきの件は、気にするな。あれは私の浅はかさが原因だ。」

 

「そんな事ないよ。私が悪かったの。あんな出過ぎた真似した私が。だからね、もういっその事さ、私を処刑してもいいよ。それだけ酷い事をしたんだから。」

 

「酷い事などではない。アリス、お前は私に教えてくれたのだ。私の夢は綺麗だと。だから必要のない、血で汚してはダメだと。」

 

アリスはまだ迷った。このまま自分がいていいのか。だから自分の本心を思い切って伝えた。

 

「私はここにいていいのかな?私がいたらやっぱりおーかみさんの邪魔になっちゃうから、私を処刑しても・・・」

 

「この、たわけが。」

 

彼はそう言うと、アリスを軽くこずいた。

 

「え?なに?」

 

「私はお前を小姓として取り立てる。そう約束したのだ。一国の国主が約束を反故になど、するわけなかろう。それに私もお前が傍にいると落ち着くのだ。」

 

彼はそう言ってアリスに微笑みかけた。その瞬間にアリスの胸が高鳴りだした。なんで、こんなに私、胸がドキドキしているの?なんで?わかんない!そんなアリスを見て彼が言った。

 

「アリスどうかしたか?顔がみるみる赤くなっていくぞ?」

 

「え?なんで!?」

 

「私にはわからん。自分で考えろ。」

 

「うぅぅ。もう寝る!」

 

顔を赤くしたアリスはベッドに勢いよく倒れ、目を閉じた。彼もまた、自分の夢のために、命をかなぐり捨てるような事をしてくれたアリスに、他とは違うものを感じた。それは例えるなら、なんであろうか。

(私の独り善がりかもしれん。だが、アリスがこんなにも私のためにしてくれているのだから、私はそれに応えなければならない。)

彼は一つの決心をした。たとえ、茨の道をいこうとも。最初から覚悟していたのだから。自分が描いた夢を成し遂げるために。

「これより保留にした、フェンリルの処遇について伝えたえる。」

 

大広間に集まった家臣団に、その上座へ腰を下ろした彼が言った。ここから、彼とアリス、そして家臣団の運命の分岐点である、処分が伝えたられようとしていた。

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?楽しめてもらえれば幸いです。まぁ色々とお見苦しい点もあり、自分でももう少しよくできないか、と試行錯誤中ですので、変なとこがありますが、つぎの話も見ていただけると幸いです。ではまた四話で。


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第四話 月女神の祝福

まず、これを見てくださってありがとうございます。まぁ、「え?いきなり?」という展開があるかもしれないので、改善点を感想で書いていただいたら幸いです。前書きが薄いのでは、と思いますが、どうでしょうか?では、第四話お楽しみください。


「これより、フェンリルの処遇を伝えたえる。フェンリルの今回の謀反未遂は不問とする。そして、ルヴトーは私の直属として、そそのかした愚か者どもは足軽に降格とする。」

 

大広間には家臣団、そしてその上座に腰を下ろした彼がいた。その決定は前代未聞だった。だが下手に騒げない。なにしろ主君の決定だから。

 

「今回のお前の処遇については、恩赦ではない。命を繋いでもらったに過ぎない。わかっているな?」

 

「はい。わかっています。これからは心を入れ替え兄上への忠勤に励みます。」

 

フェンリルは改心していた。改心しなかった、前のように表面上は改心したのではなく、本当に。なぜ改心したか。それは、対して知られてないはずの自分を命をとして庇った人間の娘アリス、自分の愚かな行いのせいで心を壊しかけて自己を消そうとした兄。二人が、それぞれの考えをもって自分を生かしてくれたのだから、フェンリルにはそれだけで、とても良かった。幼き日に兄に見た日輪を、また見れた。それも二つ。フェンリルは思い出した。あの時の自分の思いを。兄上のお力になりたい、と心から思っていた、自分を。

 

「ボクはなぜ兄上に謀反などしていたのか。兄上は常に偉大だったはずなのに。どんどん成長していく、兄上に置いてかれた思いでボクは、兄上を苦しめる愚かな行為に手を染めて・・・」

 

フェンリルの整った顔から、二つの大粒の涙がこぼれていた。

 

「なぜ、もっと早くに気付かないのだ。」

 

言葉は冷たくても、兄上はボクを本心から思っていたと。そしてもう兄上に苦しませては、ならない。フェンリルは心に誓った。

 

「フェンリルの処遇は終わった。まだ、何かあるか?ルシアン。」

 

彼はルシアンに声をかけた。ルシアンはフェンリルの処遇を伝えた時からなにか話しがあると、気付いていた。

 

「はい、話し合いをすべきことが、二つ。一つは我が国マイアに接する、ソーグロを支配する、ヴィペラが是非一度話しがしたいという旨を書状で伝えてきました。」

 

「なに?ヴィペラからだと?」

 

彼は耳を疑った。それは彼の父がヴィペラと敵対していたため、こちらを敵視しているのではないかと。だから、これは渡りに橋だった。彼としては、いずれ話しを一度するべきと思っていたかだ。

 

「ならば、話しは早い。その話し合いを受けると返答しろ。」

 

「わかりました。日程について書状には返答の後に調整となっております。」

 

「そうか。二つ目はなんだ?」

 

「はい。それは、あの人間の娘についてです。」

 

「なに?どういうことだ?」

 

彼はルシアンをキツく睨んだ。家臣団は、そんな姿を見て震え上がった。だが二人だけ、動じなかった者がいた。一人はルヴトーで、もう一人は

 

「いつまでも処遇を先延ばしにする事は、無理です。ですので、さっさと処遇を決定するべきだと思います。」

 

ルシアンだった。ルシアンはアリスの存在があると世間の風当たりが強くなるのは、必然的だったため、素早く処遇を決定すべきと思ったのだ。

 

「アリスは我が小姓とする。そう一昨日伝えたはずだが。」

 

「それでは、納得できない者が出てきます。ですので、納得のいく処遇を。」

 

「では、その納得のいく処遇というのは、なんだ?」

 

「はい。ずばり処刑です。御屋形様に対して不遜な態度をとっているので、処刑が妥当かと・・・」

 

「ふざけているのか?私の決定は小姓にするという事だ。そのような、ことは認めない。」

 

家臣団はさらに震え上がった。彼はみるからに頭に血が上っていた。

 

「では、この件はまた明日、聞きますので。納得のいく処遇をご決定してください。」

 

彼は怒りを抑えて自室に戻った。そんな彼を見てアリスが聞いた。

 

「なんかあったの?もしかして私のことで・・・」

 

アリスは深く考えて、彼の怒りの理由を探った。

 

「いや、なんでもない。それより、お前を私の小姓にするという事に対してどう思うか、聞かせてくれ。」

 

「うーん、私は別にいいけど、家臣の人達は納得してないんじゃないかな。おーかみさんの傍にいれるなら、私は別に小姓にならなくてもいいけど。」

 

「そうか。アリスは自分が処刑されると言われたら、どうする?」

 

アリスはやっとわかった。彼は恐らく自分の事で、なにかあったのだ。

 

「私は、おーかみさんの手で処刑されるなら、処刑されてもいい気がする。」

 

「なぜだ?アリスお前は怖くないのか、自分の死が。」

 

その時だった。月光がちょうど差し込み、アリスの艶やかな黒髪に当たった。彼はアリスが一瞬だが、銀髪に見える錯覚に襲われた。なぜ、そんな錯覚に襲われたのか、彼にもわからなった。そして、まるで女神のような微笑みで言った。

 

「私は怖くないよ。だって、この苦しみをわかってくれる、おーかみさんの傍に、今いれるだけで充分だよ。だから、処刑される時は、おーかみさんの手で処刑されたいな、私」

 

「アリス・・・」

 

アリスの言葉に心を撃たれた彼はそれ以上、言葉を紡ぐ事ができなった。その後しばらく沈黙が続いた。そして彼が、

 

「わかった。アリス、お前の意思を尊重しよう。」

 

「ごめんね。やさしいおーかみさんに、無理させちゃって。」

 

「構わぬ。私についてこい。」

 

彼はそれだけを言うと、太刀を持って部屋を出た。アリスは急いで彼を追った。そして二人は大広間に入った。誰もいない。光も殆どない。あるとしたら、月の美しい光だった。

 

「アリス、そこに座れ。」

 

「わかった。最後に一つ、いい?名前を捨てたって言っていた、おーかみさんの名前を考えたの。」

 

「名前だと?」

 

「うん。名前。ロボっていう名前なの、おーかみさんにはぴったりだと思うの。」

 

「わかった。その名前、受け取ろう。」

 

「ありがと!これでもう、本当になにも怖くないよ。」

 

彼改めてロボはアリスの背後に立ち、静かに心を整えた。これは、ロボにとって一か八かの賭けだった。アリスを処刑すれば、家臣団は納得する。だが、同時に心も死ぬ。生かして、小姓にすれば謀反が起こる。だか、心は生きる。だから、今から行う事は賭けなのだ。

 

「私はロボ。今からアリス、お前を処刑する。」

 

「最後まで無理させてごめんね。」

 

(これでよかったと思う。だって私がいなくなる事でおーかみさんが、ロボが家臣の人達の信頼を得れるなら。)

ロボは太刀を一閃させ、同時にアリスの意識はそこで途絶えた。

 

ルシアン殿も無体な選択を突き付けるものよ。御屋形様はあの人間の娘が来た時、久方ぶりにやさしい顔を見せたというのに。さて、どうなるものか。ルヴトーはそんな事を考えていた。そして、彼が入ってきた。

 

「御屋形様でございます。」

 

そう声が聞こえたため、家臣団は一斉に平服した。家臣団は各々どうなるか、胸にいれたまま。そして彼が、上座に腰を下ろし、言った。

 

「全員、面を上げよ。」

 

家臣団はその声で一斉に顔を上げた。そして驚愕の事実を見た。そう、彼の傍らに

 

「御屋形様?いったい、どのようなご冗談ですか?なぜ、そのような・・・」

 

「冗談ではない。私は決心したのだ。ここにいる“有栖”を我が正室に迎える、決心を。」

 

家臣団は呆気にとられた。ルシアンはなんとか気を保ち、聞いていた。自ら主君の姿を見た時に、問題の人間の娘が今までの、どこのかわからない服装ではなく、質素ながらも質素さの中に美しさのある着物を着て、傍にいたのだから。

 

「そのような世迷い言、聞いたこともないですぞ!」

 

ルシアンがそう言った途端、ほかの家臣達からも声があがりはじめた。だが、ロボは一向に気にしなかった、これは最初からわかりきっていた事なのだから。そんな彼でも看過できない事があった。

 

「捕虜の娘を正室になど、なにを言っているのですか!」

 

それを聞いた瞬間に彼の顔に眉間にシワが走り、言ってきた者を睨んだ。

 

「アリスは処刑した。ここにいるのは、“有栖”だ。間違えるな。」

 

彼の威圧に押され、睨まれた者をはじめ、他の者までもが黙ったら。だが、そこで流れを変える一言があった。

 

「御屋形様が正室を迎えるのであれば、祝言の日程はどうしますか?」

 

ルヴトーだった。彼だけが、この話に賛成した。それは、フェンリルを不問に動いてくれた事と、主君に笑顔を運んできた事が、彼が賛成した理由だろう。

有栖は困ったという気持ちでいっぱいだった。まず、彼の正室になる事、これは今でも信じられない。なぜだろう。有栖にはそれよりも困る事があった。それは、自分が生きている事だ。自分がいなくなれば、彼の夢は達成しやすくなると思っていた。だが、自分が生きているとなると、これから、尋常ならざる困難が待ちうけているだろう。

 

「うぅぅ、なんで私を。私のせいで家臣の人達が反発しているのに。」

 

「ふん。奴等には、お前の器量が見えていないのだ。」

 

「だいたい、昨日の夜に私、本当に処刑されると思っていたから、最後とか言ったちゃけど、今考えるとスゴく恥ずかしい、うぅぅ。」

 

有栖は顔を赤くしたかと思ったら、青くして何度も、「うぅぅ。」と言って頭を抱えていた。そんな、有栖を彼は楽しそうに見ていた。少々遅れたが、なぜこのようのな事になったか、少し時間を巻き戻して説明しよう。彼は確かに太刀を振り下ろした。だがそれは、有栖の横に振り下ろしたものだった。有栖は振り下ろされるのを感じると、無意識的に眠った。結果彼女は自分が処刑されたと思った。これが、昨夜の真実だった。そして、有栖は処刑されたと思っていたら、朝起こされた。

 

「うぅぅ、ここはどこ?三途の川?」

 

「なにを言っている?ここは城だ、有栖。」

 

「え?でも私、処刑された筈・・・」

 

有栖は困惑した。自分が処刑されていないという事は、家臣団の反発は免れないという事だ。

 

「なんで私を処刑しなかったの?なんで・・・」

 

有栖は彼に関係ない血で手を染めてほしくかいから、自らの死を選んだ。そしたら、ふと涙が溢れてきた、いつからか流すことのなくなった涙を流していた。有栖のキャパシティはもう悲鳴をあげていた。わけがわからない。ただ、それだけが有栖の頭の中を支配していた。冷静に考えたら、理解できる事だが、それほどに有栖は困惑していた。

 

「まず、着替えなければな。すぐに準備をしろ。」

 

彼は最後にいつもと同じ事を言った。そして、今に至る。有栖はなにかが戻った気持ちになった。なぜかは、わからない。だが、今が有栖にとって幸せなのは理解できた。

 

 

 







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第5話 幸せと絶望の淵で

五話目です!まぁ、相変わらずの見たことある展開があります。一応戦国時代っぽくしたいですが、戦国時代には欠かせない戦いがないと、「どゆこと?」ってなりますね。設定もわかりずらいですし。なぜ、こんな未熟な頭で小説を出しているのか、自分に疑問です。
では、第五話お楽しみください。


有栖を正室にするという突然の声明より数日がたった。ある日のことだった。ここ数日の間、有栖は魔族の文字を学び、書庫に入って色々な事を調べていた。いつものように書庫に向かうために、廊下を歩いていた。

(あれ?なんで目まいが・・・)

有栖は突然目まいに襲われた。そして、体を保とうとした瞬間に意識が途切れた。有栖が倒れたという報告は、家臣達に考え直すように言われている中の事だった。

 

「くどいぞ。何度も言わせるな!」

 

「ですが・・・」

 

「ご報告します。人間の娘が書庫に向かう途中、倒れました。」

 

それを聞いた瞬間、彼は立ち上がった。だが、

 

「御屋形様?お待ちください!話は終わっておりませぬ。」

 

「私を止める気か?」

 

彼は家臣達を睨んだら、すぐさま大広間を後にした。

 

「では、有栖が倒れた原因は、魔族が纏う魔力にあるというのか?」

 

彼は医者の診察を聞いて耳を疑った。魔族が纏う魔力が原因だとすると、このまま有栖がどうなるかを信じたくないから。だが、事実は残酷だった。

 

「人間が長くこの国に留まった事はないですが、恐らくはもう長くはないでしょう。」

 

彼は心を打ち砕かれたようだった。有栖には傍にいてほしいが、このままでは命が尽きてしまう。生きてほしいならば、有栖を人の国に送るべきだ。彼には選べなかった。

 

有栖は起きた。だが、見知らぬ天井の部屋だった。慌てて周囲を見ようと起き上がろうとするが、体に力がはいらない。必死に起き上がろうとしていた有栖を、止めた者がいた。

 

「ロボ?」

 

「そうだ。大丈夫か?辛くはないか?」

 

「ううん。なんでないよ、これしきの事。」

 

その言葉とは裏腹に起き上がることすら今の有栖に辛かった。そんな、力の入らない有栖を止めて彼は優しく諭そうとしていた。

 

「無理をするな。今は静かに寝ることだ。」

 

有栖はそれを見て胸の奥からこみ上げてくるものがあった。有栖は透き通るような笑顔で言った。

 

「ありがとう。でも大丈夫。」

 

「だから、ロボの仕事に戻っていいよ。」

 

弱りきった声でかろうじて有栖は言葉を発した。そんな、有栖の急激に弱っていく姿を見てると、彼は頷くことしか出来なくなった。

 

「必ず助けるぞ有栖。」

 

彼はそう呟き、有栖の願い通りに部屋を後にした。有栖はそんな彼の後ろ姿を見ていると、また意識が途切れた。

 

(私、どうなるのかな?でも、このままいなくなってもいいよね、ロボの迷惑になるから。)

有栖は夢とも現実ともとれる世界の中を彷徨っていた。そこで魔族でもない、異形の者を見た。有栖は初めて見る筈なのに、不思議と知っているような気持ちに襲われた。そして、その者が有栖に聞いた。

 

「汝、死した者か?」

 

そう、その者は一般的に死神と、言われる者だった。だが、相変わらず有栖はそうした者への恐怖が微塵もなかった。なににも怯えず、ただ静かに、独り言のように呟いた。

 

「あなたが、私に聞くという事は、逝ったのね・・・」

 

「汝はまだ生きたいか?」

 

有栖の解答に大した興味がない、と言いたげにすぐに次の質問をした。

 

「私?私はもう逝ったのなら、なにも・・・」

 

「汝はまだ生きたいと思っているはずだ。なぜなら、我々にはそれが、見えるぞ、汝の心が。汝には大切に思う者はいないのか?」

 

「私の大切な人?私の大切な人は・・・」

 

そんな事を考えていると、不意に涙が溢れてきた。ロボと過ごしている内に取り戻した涙を。そこからは止められなくなった。

 

「私はまだ生きたい。だって、ロボとまだ全然過ごしてない。」

 

「それで?」

 

「私はまだ、ロボの苦しみを聞けてない。私はまだ死にたくない!私はまだ・・・」

 

「・・・・・」

 

そこから先は言葉にならなかった。死神はそれを聞いて少し黙った後に、なにかを言おうとしていた。だが、それと同時に夢から目覚めるように視界が、急激にぼやけた。そして、手を伸ばした瞬間に夢から覚めたような感覚が全身を包んだ。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「ここは・・・まさか、家?」

 

有栖は目を覚ました。温かな太陽の光、懐かしい料理わを調理する音、甲高く響く皿に、自分の部屋、懐かしいが、どこか寂しいこの気持ち。

 

「夢だったんだ。」

 

有栖は沈んだ声で言った。

(私は夢をみていたんだ。そうだよね、ありえないよね。今の私が幸せになれるなんて、あるわけないよね。)

自分が見ていた世界は夢なのだと、残酷な現実が有栖の心に突き刺さった。彼女の体はよくなったが、なぜか全身から力が抜けるようだった。

 

「有栖?起きてるなら、降りてきて朝御飯を食べなさい。」

 

声が聞こえた。母の声が。懐かしいはずなのに、どこか心に穴が空いた感覚。いや、心にはとっくの前に穴が空いていたのだ、それが夢の中では埋まっていたにすぎない。有栖には体から、スッと生気が抜けるような感覚があった。そして、沈んだ声答えた。

 

「わかった。着替えたらすぐに降りる。」

 

 

・・・・・・・・・

 

夢でもよかった。いずれ夢から覚めることになっても。短くとも幸せで、とても充実した時間を過ごしていた。目覚めなくてもよかった。それが夢だという現実を受け入れた有栖は、死人同然だった。学校に行く準備をして、朝御飯を食べて学校に行き、学校の授業を受ける。周りにとっては何気ない毎日。だが、有栖にとっては一番怖いものだった。誰にも理解されない才能、不気味がってだれも理解しようとしない才能、だれもが彼女を哀れむこともなく、だれも関わろうとしない。有栖にとって、それは死んだも同然だった。生きる意味などない。そして家への帰路。その帰路についている途中、有栖は回想した。自分が涙を流さなくなった、私心が消えた始まりの日を。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

あの日も学校に行って帰る途中だった。なにを考えていたのだろう。学校のテストで誉められ、天才と言われ、嬉しくなっていたのか。突然だった。騒然とする周りの人々。振り向くと猛スピードで突っ込むトラック。それからは一瞬だった。激しい鈍痛の後に暗転する視界。そして、次に目を覚ましたのは見知らぬ天井の部屋だった。その時から心に穴が空いた。

 

「有栖!?よかった!本当によかった!」

 

母の声。

 

「えぇ、本当によかったです。まさに奇跡です。」

 

医者の声。

 

「ここは?」

 

多少動揺しているが、普段通りの母の声に違和感を感じた。普通の人では言葉から読み取れる事のない意図を感じ取った。それはとてもいいことかもしれない。だが、現実は違った。知りたくもない意図を感じることは、まだ年端もいかない有栖にとって苦痛だった。そして病院を退院した後、冷たいものが全身を包むようになった。

 

「なんで、心配してるって嘘をつくの?」

 

有栖にとっては何気なかった。ある友人が、

 

「心配してたんだよ!よかった!」

 

そう言ってくれた。だが、有栖には大して心配してないよいに感じた。そして聞いた。その友人含めて周囲は青ざめていた。自分に声をかける者全員に聞いた。だが、不気味がられて答えてくれなかった。今思えば、それは当たり前だった。人は未知のものに出合うと離れようとする。そう当たり前な事だ。そこから有栖は少しずつ喜怒哀楽の感情が消えていく感覚に包まれる中で、月日が流れていった。中学校に上がると部活に対して自身を見出だすため有栖は弓道を始めた。そこでは、自身を見出だしそうになった。上がっていく弓の腕。一年生ながらにして部活随一になった。色々な人から注目され、才能が、自分が理解された気がした。やっと自分が生き返った気持ちになった。だが、その希望はすぐに砕け散った。それは単純だった。上級生が有栖を妬み始め、その妬みは瞬く間に燃え上がった。そして、陰湿な嫌がらせ。自分を理解した人達がたちどころに離れた。また、それの少し前の時期から弓道に自身を見出だせなくなり始めていた。そして元に戻ってしまった。有栖は弓道から離れた。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「私って結局なんなんだろ。」

 

有栖はそう呟いた。私心など、とっくの昔になくなった。もうなにもわからない。あの幸せな夢をもう一度。無理だとわかっていても、そう願ってしまう。

 

「お嬢ちゃん、逃げろ!」

 

声をかけられて振り返ると、トラックが目の前にせまっていた。有栖が気づかない内に。そう、あの時と同じように。

(またなの?また、私はなにかを失くしてしまうの?今度はなにが失くなるんだろう?)

有栖は体に衝突するまで、そんな事を考えていた。そして、味わったことのある激しい鈍痛。暗転する視界。

(あの時と同じだ・・・あの時と・・・)

有栖の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 




設定解説コーナー?

人物解説

有栖
主人公兼ヒロインで年齢は16歳。小さい頃は天才と言われていた。だが、交通事故に遭い辛いか運命を背負うことに。作者としてはなるべく正統派ヒロインで描いていきたいと思ってる。
一言コメント
正統派ヒロインで描きたいけどきつい運命を背負わせるのが辛い。

世界観解説

魔族の国と人間の国はしっかりとした境界があり、その境界を越える者はまずいない。魔族の国は内戦状態。有栖とロボがいる国はマイアという名前の三方が陸で一方が海という地形の国。マイアは魔族の国の中の一つで都道府県みたいなもの。都道府県の呼び方は明治までの日本と同じで〇〇国。一応のモデルは尾張。つまりそこを支配しているロボは(ry


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第六話 夢から目覚めたら

第六話です。少し投稿間隔が空いてしまって数少ない見ていただいてる方に対して失礼ですね。これからも精進しますのでどうかロボと有栖の物語を楽しめてもらえるなら作者としても幸いですら。では第六話お楽しみください。


また、なにかを失す。有栖はそんな恐怖感で支配されていた。もういっそなにかを失すぐらいなら、逝ったほうがマシ、そんな思いにすらなっていた。有栖はまたあの死神と出会った。

 

「汝、死した者か?」

 

「またなの?私にはもう生きている意味なんて・・・」

 

今回も有栖の返答に大した興味がないようで次の質問が飛んできた。

 

「汝に大切な者はいるか?」

 

「汝が一生傍にいたいと想う者はいるか?

 

有栖はハッとしたような顔をして、死神をじっと見て、その瞬間虚ろな目に生気が戻った、そして言った。

 

「夢でも別にいい、でも私の大切な人は変わらない。」

 

「・・・・・・」

 

死神は黙って聞いていた。

 

「私の大切な人はロボだけ!夢でもいいからロボの傍にいたい!」

 

「なぜもっと早くに言わない。それが汝の生きる意味なのだろう?」

 

今まで私の返答に興味ないようだったのに。有栖は思った。すべてが見透かされていたのだ。そこには例外などはなく。

 

「汝はもう我々と話すのも三回目だ。できれば次はないことを、お互いに祈りたい。」

 

「それってどういう・・・」

 

有栖は困惑し、どういう事か聞こうとしたが、前回のように霧に包まれてその会話は終わった。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「有栖は起きるのか?倒れてからから寝たきりだが?」

 

「処置をしましたので、恐らくは・・・」

 

声が聞こえる。なぜか落ち着く彼の声が。また夢を見ているのかな。夢でもいい、この夢では自分がある。自分を捨てなくていい。

 

「そこにいるのはだれ?ロボ?」

 

有栖は少々弱いが確実に回復したであろう声で聞いた。その声を聞いた瞬間、彼は有栖に顔を向けた。

 

「起きたのか。そうか。」

 

彼の反応は淡々としていた。だが明らかに安心したようだった。有栖はまだ目の前の事が信じられない様子にいた。

 

「お前は席を外せ。」

 

彼は医者を見て言った。医者が退室したため部屋は有栖とロボの二人だけになった。彼は有栖の寝ているベッドに腰を下ろし、有栖を見つめた。有栖はどこを見つめているかわからない視線で聞いた。

 

「これは現実?私はまだ夢を見ているの?」

 

有栖は虚ろな声だった。彼はそんな有栖を見て一瞬顔を曇らせたがすぐに尋ねた。

 

「なにを言っている?夢とはどういうことだ?」

 

「今見ている光景は夢で、いつか目覚める。私はそれが怖い・・・」

 

彼は一瞬で悟った。有栖が一体どのようなものを見たのか。

(寝ている間はうなされているようだったが、それほどまでに有栖にとって恐ろしいものを見たということなのか・・・)

ロボは胸がつまる思いだった。そして言った。

 

「有栖、これは夢ではない。現実だ。怖がる必要などない。」

 

有栖は涙を流していた。彼の前では会ってから一度も流していなかった涙を。そして嗚咽で上手く言葉にはならないが言った。

 

「本当に夢じゃないの?本当にロボの傍に・・・」

 

 

それ以上は言葉になっていたかったが、有栖の言いたい事はわかった。有栖はただ泣いて、そんな有栖をロボは不器用ながらも優しく抱き締めていた。有栖はしばらくして泣き止むと、ぽつりぽつりとなにかを言い始めた。

 

「私、もとの生活に戻る夢を見たの。」

 

それは、これまで自分の事を語る時に独り言のようだった語りとは違い、本当に誰かと話している語りだった。

 

「でね、お母さんの声がしたの。それで私は現実に戻ったと思った。それまで見ていたロボとの思い出は夢だったんだって。」

 

有栖の言葉に彼は静かに耳を傾けていた。

 

「私にはそれがとても怖いことに思った。だってあそこに戻ってもだれもが私を避けて、私から離れていくから・・・」

 

「ご母堂はどうだったのだ?有栖を理解してくれてたのか?」

 

ロボは静かに聞くつもりだったが、思わず聞いてしまった。自身が想像した以上に、いや、まったくもって想像できなかった、過去を聞いていくと不憫に思わずにはいられなかった。

 

「お母さんは最初は理解しようとしてくれたけど、結局考えるのをやめた。」

 

「それでは、あまりにも・・・」

 

私も母に理解してもらえず、時が経つと母は離れていった。私はそれでいいと思った。だが、有栖は違う。なぜ理解されない?彼はまたも胸がつまる思いに襲われた。

 

「私って、人が発した発言を聞くと、その人がその時に思っていることがわかるんだ。」

 

有栖はゆっくりとしつつもしかっりと言葉を紡いでいった。

 

「小さい頃の私にはそれがとっても辛かった。」

 

 

突然の事で驚いたが、彼は動揺することなく静かに聞いていた。そんな姿を見た有栖は不安が混ざった表情で言った

 

「変だよね私。もしかしたら私の妄想かもしれないのに。それでも本当の事って、思ってくれる?」

 

「私としては真だと思う。有栖が現状で嘘を言う必要などないのだから。」

 

「それに、有栖が私に対して言っていた事は真だったしな。」

 

それを聞くと有栖は安心したように言った

 

「信じてくれるの?やっぱり優しいねロボは。」

 

有栖は続けて言った。

 

「私は最初、お母さんだけが信じてくれてるって思ってたけど。ある夜の事だったの。私が何気なくお母さんと話をしに行こうとしたら、そこではお母さんがのお父さんと話していたの。」

 

「・・・・・・」

 

「で、私のことでお母さんが悩んでた。あの子は一体どうなってしまったのって。あの子がわからないって。私、それを見てわかった気がした。」

 

「私を理解してくれる人はだれもいないって。お母さんでも、ましてやお父さんでも例外なく。」

 

「・・・・・・」

 

彼は言葉を詰まらせた。あんなに元気に振る舞っていた有栖がこんなに辛い事を背負ってた事に。

 

「もういいの。私はまたロボの傍に戻ってこれた事だけで嬉しいから。」

 

ロボはそんな静かな佇まいで優しく微笑む彼女に口にはできない神々しさを感じた。

(私はなにを考えていたのだ?有栖に哀れみや慰めの言葉をかけてなにになる?私はただ離れるのを恐れていたのか・・・)

 

「ごめんね!私の事で。ロボは仕事に戻っていいよ、みんなが困っちゃうでしょ?私は自力で部屋に戻るから。」

 

有栖は話を切り替えるために精一杯の笑顔で微笑んでいた。

 

「起きたばかりなのに自力で戻るのか?それにもう仕事は終わっているぞ?外を見てみろ夕暮れだ。」

 

そんな有栖を見て彼も静かに微笑んで言った。

 

「それにだ、お前がまた今までと同じように過ごすとまた倒れるだけだぞ?」

 

彼は微笑みながらも普段と同じように有栖に聞いた。それを聞いて有栖は困惑した。そんな困惑した有栖を見て彼はどこか嬉しそうな声で言った。

 

「これを常に身に付ければ、もう倒れる心配などない。」

 

彼が差し出したのは、紅色に染められた1mほどの紐だった。有栖は首を傾げて尋ねた。

 

「え?これなに?どうして倒れなくなるの?」

 

「これはRealという特殊な液体に浸した紐で、常に身に付けていれば人間の体に悪い魔力を浄化して、魔力の耐性を付けてくれるのだ。」

 

有栖はその紐の説明を聞いて不意に嬉しくなった。それはいきなり込み上げてきて言葉に出来なかった。

 

「大丈夫か?色が気に入らなかったなら、色を変えるが。」

 

「ううん、すごく気に入ったよ!私、すごく嬉しいよ。ロボが私のために用意してくれたんだから。」

 

「そうか。」

 

彼は素っ気なかった。だが、その声に宿っていたものは有栖を心から思ったものだった。

 

「ところで顔が赤くなっているが大丈夫か?まだどこか悪いのか?」

 

「え?また?!なんで!?」

 

「どこか悪いなら医者を呼ぶが・・・」

 

「どこもわるくないから大丈夫だよ!」

 

(なんでまた顔が赤くなっているの!?うぅぅ、なんで・・・)

有栖は感情がほとんどといっていいほどない現代の時とは打って代わり顔を赤くしている事に対し若干取り乱しながらも答えた。彼は多少心配だったが有栖が言うのでそれ以上は聞かなかった。

 

「さて、そろそろ戻るか。有栖はどうする?あと少しこの部屋で横になっているか?」

 

彼はそう言って有栖に聞いた。

 

「え?どうしよう。」

 

「まだ横になるというなら無理には連れていかないが・・・」

 

有栖はそこで思い出した。あの死神の問いに対して自分が言った言葉を。彼らがそれを聞いた真意を。

 

「私も部屋に戻る!」

 

彼はそれを聞くとすぐに立ち上がって有栖をお姫様抱っこで持ち上げた。不意打ちとも言える彼の行動に有栖はまた顔を赤くて言った。

 

「いきなりどうしたの!?」

 

「どうしたはなんだ?部屋に連れていくだけだが。」

 

「そいうことじゃなくて・・・」

 

有栖はその問いに対して口ごもってそれ以上は言えなかった。そんな姿を見て彼はやっと日常が戻ったような気持ちになった。たった数日の出来事がまるで日常だったように思えた。彼自身にはよくわらなかった。だが確信していた事はあった。自分が有栖を失えばその時こそ自分は何者でもなくなる事を。

 

「では行くか。」

 

「わ、わかった。」

 

ロボはそう言うとゆっくりと歩んでいた。有栖はたどたどしく返事をしてその言葉に頷いていた。二人にとってはもう日常なのだ。やっと戻った日常だった。



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