SoulColors (波津木 澄)
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SoulColors -Pacifist-
Friskは、いいやつだった。これまで隠れてた負い目もあってあんまり表に出れないジブンを引っ張ってくれた。
赤い癖に、いつも誰かのことを考えていた。緑の方が、似合っているのに。
Friskはモンスターに攻撃されても何もしていなかった。掃き溜めからしか見てないけど、確かに優しさを持っていた。話も聞かずに攻撃してくるあの鎧ににらまれながらもモンスターを助けていた。
ずっと、逃げて、隠れていたジブンとは大違いだ。Sansとも仲良くしていたみたいだったし、なによりモンスターを地下から解放して見せた。本当に、ジブンとはちがう。
だから、時々不安になる。Friskにとってジブンに価値があるのかどうか、わからなくなる。Sansがジブンに興味をなくして、どこかに行ってしまうんじゃないかって疑ってしまう。
そういう時はいつも掃き溜めに戻っていた。
今日も、そういう日だった。
いつもみたいにこの掃き溜めで天井を見上げて、一日を過ごそうとしていた。
「オイ、そこのガキンチョ。こんなとこにいたら危ないぞ」
「ちょっとSans、その言い方は……」
けど、なんでかSansとFriskが少ししてからやってきた。訳が分からない。二人には、こんな場所似合わないのに何でいるんだろう。
そんな思いが顔に出たのか、二人は答えてくれた。
「ヘヘ。Papyrusがオマエとパズルがしたいんだと」
「ちょうど4人でやるパズルだったからね」
へぇ、と生返事を返してからふと考えてしまう。
「Andyneでも呼んだらよかったじゃん」
何か二人がきょとんとしている。訳も分からずに不思議に思っていると、なぜだかAndyneにも言ったがデートだと断られたと言葉が返ってきた。
どうやらジブンは口に出してしまったらしい。最悪だ。普段はこんなことしないのに。
けれど、Andyneはもう誘った後だったのか。そうか。ジブンは、結局、数合わせ程度なんだろう。そう思うとなんだか急に気持ちが沈む。
「ごめん。今日はこのあとやることがあってさ」
思わずそう言って断ってしまった。二人は次に誰を誘うかの相談をしている。音を立てずに掃き溜めを離れた、もう、ここにもいられないから二度とこないと心に決めた。
グダグダと適当に歩き回って、結局夜になってからたどり着いたSnowdintownから大きく外れた森の中で寝てしまった。
次の日に意識が浮上するが、どうにも体に力が入らない。頭も妙に浮ついて思考も定まらない。
昔もこんなことになったことがあるが、その時は確か動けもせずに寝てばかりだった。気が付いたら何ともなくなっていたから、今回もきっとそうだろう。そう思って重い瞼を閉じる。あたりに降り注ぐ雪が冷たくて、気持ちがいい。
__________________________________
浮ついた頭がまた自意識を取り戻す。目に映るのは見覚えのない茶色。近くで何か音がする。何だろうと思って顔を動かすけれど、何かの陰しか見えない。けれどその影が少しずつジブンの体を起こす。口の中に入れられた冷たいなにかをされるがままに飲み込んで、ようやく意識がはっきりとしてきた。
今いる場所に見覚えはないが、どうやら隣にいるのはSansらしい。最初に見えた茶色はきっと天井の色だ。
「Sans。なんでジブンはここに?」
「………オマエが森で倒れてたからな。オイラの部屋まで運んだんだ」
「へぇ。ここがSansの部屋なんだ」
まだすこし浮つく頭で会話を続ける。少しするとFriskとPapyrusが部屋に入ってきた。Papyrusはパスタの乗ったお皿を手に持っている。
二人ともジブンを見るなり心配したと言ってくれる。一先ずありがとうと言う。二人はなんだか不思議そうな表情をしている。
「ヘヘ。まぁ無事ならいいけどよ」
「うん。大丈夫」
ニンゲンは、結構頑丈だ。すぐに傷つくけれど、中々死なない。ジブンが、一番知ってる。確かにまだ少し頭は浮つくし、力も入り辛いけれど、動けないほどじゃない。死ぬほどでもない。だから大丈夫だ。
笑って、大丈夫だと伝える。
「……Papyrus。オイラもパスタが食べたくなった。もうお腹と背中がくっつきそうでさ。頼めるか?」
「ニェ? 兄ちゃんそんなにお腹が空いていたのか!? 任せろ! このオレさまが完璧なパスタを作ってやる!」
Papyrusが猛ダッシュで部屋から出ていく。Friskはどうしたらいいのかわからずに迷っているようで、オロオロしている。というか待って。スケルトンにお腹と背中ってあるのか?
「…Frisk。Papyrusを見ていてくれるか?」
Sansの言葉を受けてFriskは渋々と言った形ではあるが従うことにしたようで、静かにドアを開けて出ていく。これで、この部屋にはもうジブンとSansの二人だけだ。
「なぁ…オマエさん、何をそんなに焦ってるんだ?」
「焦る?」
どういう事だろうか。焦るって一体なんなんだ。ジブンは焦ったりなんてしていない。いつも通りだ。そう伝えようと思っているのに、なぜだか言葉が出ていかない。
Sansは確かに少し怒ったような雰囲気を出しているが、言葉に詰まるほどの威圧感ではない。それにもかかわらず、ジブンは何も言えずにいる。ダメだ。この調子では。早く何かを言わなくては…。
「オイラは、オマエさんとそれなりに過ごしてる。だからわかるんだよ」
Sansがいつになく真剣な眼でジブンを見つめる。その眼を見ることができず思わず顔を逸らしてしまう。
「今のオマエさんは、何かに焦ってる。………恐れてるって言いかえてもいい」
焦って、恐れている。Sansに言われた言葉が頭の中をグルグルと駆け巡る。自問自答しようにも、答えは一向に出てこない。
ジブンは、いったい何を恐れているのだろうか。死ぬこと? バカ言え。いくらジブンがニンゲンだからって、この程度の不調で死ぬはずがない。じゃあ、何を。
いつもいつも逃げ隠れることしかしてこなかったジブンには、自身のことにすら立ち向かうことができない。
「………ハハ。ジブンは大丈夫だよ、Sans」
「いいや。大丈夫じゃないね」
………普段Sansは面倒くさがりだ。だからこうしてはっきりと否定をいうことも少ない。適当に言葉を濁して、論点をずらして。のらりくらりと躱していくのが普段のSansだ。
それなのに今はこうしてはっきりと否定して、自分の意見を通そうとしている。本当に、珍しいことだ。
さすがに、もう誤魔化しもできない。
「ちょっと、ね。ジブンなんかがみんなと仲良くなる価値があるのかなって、思っちゃって」
「…………」
Sansは何も言わない。とりあえず話してみろ。そういう事だろう。
「や、ほら。ジブンのケツイって白いでしょう? これってつまり"
「…………―――」
Sansが少し考えるように目を閉じた後でゆっくりと口を開く。
「バカか? オマエさん」
「――はぇ?」
真剣な話をしていたというのに、この骨は一体何を言っているのか。まるで分らなくって思わず変な声が出てしまった。
が、そんなことはどうだっていい。このスケルトンは一体何を言っているんだ。
「オマエさんは、オイラの親友だ。違うか?」
「え、そりゃ、ジブンだってそうありたいって思ってるけど」
「だったら、少なくともここにいるオイラはアンタと仲良くなりたいって思ってるわけだ」
うん? いや、まぁ。たしかにそう言える。けどそれがどうしたって言うんだ。
「オイラは、アンタと仲良くなりたいんだ。それなのにアンタはアンタ自身を卑下してる。つまりオイラの親友を。オイラの価値観を貶すってのか?」
「そ、そんなつもりは全くないよ!? ジブンはただ、ジブンが――」
「兄ちゃんの言う通りだぞ! ニンゲン!!」
バン! と大きな音を立ててドアが開かれる。見てみればPapyrusとFriskがドアの先に立っている。Friskは少し申し訳なさそうだ。
「兄ちゃんにスケルトンだからお腹も背中もないだろうって言いに来てみれば、ニンゲンはそんなことで悩んでいたんだな!」
ずかずかと、いかにもと言わんばかりの怒りのオーラを纏ったPapyrusが近くに来る。バトルスーツの圧が普段の何倍にも膨れ上がっている。
「ニンゲンは! 最高にグレートでクールなオレさまの次に頭がいいんだ! それにずーっと一人でいるなんてオレさまには耐えられないぞ!」
真正面からの言葉にはなれていなくて、逃げようと顔を動かしてみればPapyrusの後ろでFriskが首を縦に振っているのが見える。
…………なんだ、これは。一体何が起きているんだ。もう何が何だかわからない……。
「ケツイの色って、どうなってるの?」
「え、っと。話を聞く限りだけど、自分のためのケツイが、赤。誰かのためのケツイが、緑。誰の為でもないケツイが、青。……のはずだよ」
「つまり、白い君はまだこれから何色にもなれるってことだね! それって素敵なことじゃない?」
Friskがジブンの持ちだしたケツイの色について、褒めてくれる。Papyrusはジブンについて褒めてくれた。
この少しの時間だけでジブンの物差しが壊れているような気がしてくる。
「ヘヘ。これでさらに二人。オマエさんを認めてるってことになるな。…なぁ、オマエさんは、オマエさんを見つめているオイラ達のことを信用できないのか?」
「そんなわけがないだろう!」
強く、強く否定する。Friskは地下世界を救って見せた救世主だ。Papyrusは希望を持たせてくれるリアルスターだ。Sansはかけがえのない親友だ。それを信用できないはずがない。
「じゃあ、オマエさんを信じるオイラ達を信じろ」
「……………。ジブンは、ニンゲンが嫌いだ。もちろんFriskは違うってわかるけど、ニンゲンってのは自分の利益の為に平気で誰かを蹴落とす」
「ああ、そうらしいな」
「ニンゲンは、自分の娯楽の為に誰かを貶すし、殺す。そんなニンゲンである、ジブンが、もっと嫌いだ。そんなニンゲンの力を借りないと、ジブンの価値を見出せないジブンが、なによりも嫌いだ」
「それがどうした。オイラ達はオマエさんがそんな奴だとは思わないぜ」
三人とも、嘘偽りのない、真剣な眼でジブンを見ている。
「そんなジブンでも………いいの?」
「オイラはオマエさんだから親友になりたいんだ」
「オレさまはニンゲンを信じているぞ!」
「ボクは、キミがキミ自身を好きになれるように応援するよ」
三人が、手を差し伸べてくれる。ジブンは、価値のないニンゲンだ。いまだって、変わらずにそう思っている。
けど、この三人なら。
この三人が信じてくれる
「ヒヒヒッ。……皆、ありがと」
――――――ケツイが灯る。
自分のために。自分を信じてくれるこの三人のために。自分自身を
は?(威圧)って思われてそうなので解説。
散りばめられたネタ
→気づいた人がいたら……すごいね。(小並感)
オリ主
→性別不明。ソウル(ケツイ)の色は白。Frisk曰く「なんにでも変われる色」知識はあるが普通にSansより下。何気に結構早く落ちていたが、モンスターの殺意がマシマシだと思い込んでいたので全力で逃げて、隠れていた。隠れていた場所はゴミ山。Sansに近道を使われバレたが、懇願した結果としてどうにか見逃してもらっていた。時々食料も貰ってた。自己評価が低い。
Sans
→冒頭で雪に埋もれているところを見つけてないはずの心臓が止まるかと思った。白い炎を案外気に入っていた。
Papyrus
→マジでいいヤツ。パスタの神(なお食べれるとは言っていない)
Frisk
→最初はしゃべらせるつもりもなかったが、しゃべってくれた方が都合がいいからしゃべらせた。
SoulColor
→完全オリジナル設定。ケツイはあくまでニンゲンの力の総称であると仮定。親切は完全に他人のためじゃん? ってことで緑は他人のため。勇気は自分を奮い立たせ、同時に他人をも奮い立てるから他人部分を抜いて赤は多分自分のため。青は……世界を解き明かすとかそんな感じのフィーリング。理論的に説明できない語彙力の無さが憎い。まぁ、大体そんな感じ。
《信用》のケツイ
→色は……[ERROR]色。………あれ? [ERROR]、[ERROR]、山吹色の波紋疾走、ブラッドオレンジ…[ERROR]………(´・ω・`)アレェ?
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Soulcolors -Genocide- 1/2
最近、何人目かのニンゲンが落ちてきた。落ちてきたニンゲンは全員、例外なくAsgore王に殺されている。そしてソウルを抜かれて……。オイラ達みたいなモンスターの為に利用させられる。
大昔にニンゲンとの戦争で多くのモンスターが犠牲となり、さらには地下に閉じ込められた。それに、王子を奪ったのだってニンゲンらしい。それを受けてオウサマはニンゲンを皆殺しにすると宣言した。だからこそニンゲンに恨みを向けるモンスターは多い。
けれど大半はその具体的な理由を知らず、またニンゲンの姿も知らない。弟だって例外じゃなく、その姿を知らない。……Papyrusの場合は恨みじゃなく、自分がロイヤルガードに入るために捕まえようとしているんだったか。最近じゃニンゲンとも仲良くなれるかもなんて考えてるらしいぜ?
「それ、ジブンに言ってどうするのさ」
目の前にいるぼろ布を被って体を一切晒さないヤツは呆れたと言わんばかりの態度だ。もっとも、顔すら隠されてるから気づけるのは長年の付き合い故ってトコだな。
フードのように加工された穴からは白色の炎が覗いている。けれどヤツはGrillbyのような炎のモンスターではない。覗いている炎はヤツの"ケツイ"を表すものだ。とはいえ、具体的な目的のないただの漠然としたソレらしいがな。
「いや? オイラの弟は最高にクールだろ? って話だ」
「………確かに君の弟は話を聞く限り相当にクールなモンスターみたいだね」
「だろ? だったらどうだ。ここはひとつオイラの家まで――」
来るか? とそう続けようとするがその前に手で遮られる。やっぱり、まだダメらしい。
仕方なしに肩をすくめてヤツの住むごみの山から下り、"近道"を使う。目を開けばそこは普段過ごしているオイラの部屋で……。
またオイラはヤツのことを考え始める。
「全く、スケルトンのオイラに骨の折れるほどに面倒なことを頼みやがる…」
ヤツは、ニンゲンだ。だからいつものようにオイラは話しかけて、ロイヤルガードに入ろうとしている弟の話をした。アイツはこれまでのニンゲンと違って強い気持ちを持っていなかった。
"お願いだ。
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真っ赤なソウルを持ったニンゲンが新しく落ちてきた。そのニンゲンがモンスターたちと友達になって、そしてその様子を見たヤツもついに重い腰を上げた。
これでようやくPapyrusにオイラの最高の友達を紹介できる。
「よぉ。こっちを向いて握手しな」
「いつかの焼き増しかい? 悪くない」
そういいながら振り返って勢いよくオイラの手をヤツは握る。SnowdinTownにブーブークッションの音が鳴り響く。
普段よりも音量が高く、不思議に思ってみればヤツの手からもオイラの持つそれと同じものが出てきた。
「ヘヘ。オマエさん、中々いいシュミしてるな」
「ヒヒヒ。オタクもそうだろ?」
二人して笑い、Friskが新しいSnowdinTownの住人に気付く。Papyrusが家から飛び出してきてオイラの隣を見て目を見開く。他のSnowdinTownの住人も、なんだなんだと集まってきて、気が付けば包囲網が出来ちまってる。
ここまで集まってきたら、逃げることもできないだろう。今更逃げ道をふさがれたことに気付いたヤツが慌て始める。それを見てもう一度笑い、フードを無理やり剥がす。
そうして周りの全員が新たなニンゲンの登場に驚く。これで本当に逃げ道はない。
「ヘヘ。紹介するぜ。こいつはオイラの友達…。いや、親友さ」
恨むから、と隣から聞こえた気がするが、オイラは聞く耳持たないからな。スケルトンだし。
少しすると諦めたようにそいつの自己紹介が始まる。
「ジブンは見ての通りニンゲンだけど…えっと、よろしく」
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そんなこんなで、Friskが落ちてきてくれたことによってモンスターたちは地下から解放され、ヤツは孤独から解放された。
解説…………させて?
ぼろ布
→ゴミ山で見つけた。きちゃない。
Genocideはどこ?
→次。To be continued.
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Soulcolors -Genocide- 2/2
最悪だ。最悪だ。最悪だ。最悪だ。
真っ赤なケツイを抱いたあのクソガキが時間軸を滅茶苦茶にして、オマケにオイラが微かに覚えてる限りでも数十回はモンスターを救っては殺しって行動を繰り返していやがる。
ああ糞が。みんなで地上に出ることができて、仲良く暮らしました。それでいいだろうが。なんでわざわざ滅茶苦茶にするんだ。
クソガキはオイラに殺され続けて諦めたかと思えば、思い出したみたいに皆殺しを始める。本当に訳が分からない。あのクソガキは一体何がしたいってんだ。
おまけにクソガキの行動を把握する頃には軒並みもう手遅れになっている。訳が分からない。
でも、一つだけはっきりしてる。あのクソガキはPapyrusを殺した。そんな奴をオイラが――オレが、許せるはずがないんだ。
きっと、こいつをケツイって呼ぶんだろう。そうはっきりとわかるくらいにはオレは今、ケツイに満たされている。
慈悲は、絶対にない。
__________________________________
クソガキの振るナイフがオイラに突き刺さり、抜ける。
どれだけオイラがランダムに行動しようが、規則性はあるみたいでこいつは一切迷いなく避けてきやがった。
一体、それだけのパターンを割り出すのにどれだけやり直したのかはわからないし、わかりたくもない。
………こんなに、動いたのは久しぶりな気がする。Grillby'sで休みたい。あぁ、Papyrus。お前も来るか…?
そう言って、PapyrusとGrillby'sに向かって歩くが、すぐに限界がきて崩れ落ちてしまう。
―――最後に、懐かしい白の炎を見た気がした。
__________________________________
今、目の前で親友が死んだ。初めてできた友達だった。
時がたつにつれて、だんだんと親友になれたと思っていた。
あんな掃き溜めじゃなく、ちゃんとした場所で話し合いたいって思ってた。弟にだって、会ってみたいと思っていた。臆病なジブンは、結局できなかったけれど、まだ可能性はあったはずだ。
けど、どれも今できなくなった。それも目の前にいるニンゲンのせいだ。
殺してやる。
ケツイの炎が赤黒く染まる。視界が真っ赤に燃え盛る。
思考が弾け、気が付けばすでに拳を振りぬいていた。ニンゲン――否、化け物はまともに食らって大きく跳ね飛ぶ。
さぁ、戦闘開始だ。
化け物がナイフを振りぬく。知ったことか。体に切り傷が刻まれるが関係なしにまた殴る。今度は避けられた。
化け物がナイフを振る。ケツイを青く染める。化け物の体はなにかに引っ張られるかのようにして壁に叩きつけられる。
化け物が跳ぶ。ケツイを黄色に染める。いつか親友がくれた空っぽのピストルの中から出る弾丸が化け物を撃ちぬく。
化け物が走る。ケツイを紫に染める。化け物は亀裂の上しか走れなくなった。
化け物がナイフを投げる。ケツイを水色に染める。ナイフは少ししか刺さらなかった。
化け物があがく。ケツイを緑に染める。ジブンの体にあったはずの傷が無くなった。
化け物がケタケタと愉快そうに笑う。ケツイを橙に染める。化け物を殺すだけの勇気を抱いて、拾ったナイフを振りぬいた。
殺したはずの化け物が笑う。殺す。また化け物が笑う。殺す。化け物が嗤う。殺す。嗤う。殺す。嗤う。殺す。
殺して、殺して、殺して、殺して、殺して。でも化け物は諦めない。気持ち悪い。殺す。
「なぁ、こんなことをして何になる?」
化け物は何も言わずにナイフを振りぬく。
「お前のその赤いソウル……一体何をケツイした?」
化け物は答えない。振るわれるナイフを撃って弾く。
「ジブンの感覚じゃ、ソウル……ケツイは、自分本位のものを抱くにつれて赤くなるはずだが」
化け物は応じない。地面に打ち付ける。
「おい、答えろよ」
何も言わない。手を撃つ。
「答えろ!」
何も言わない。………脳天を貫く。
__________________________________
攻撃を全て避けられる。まるで知ってるみたいに化け物は動く。
こっちにはまるで覚えがないのに、誰かを殺したって感触が付きまとうのが気持ち悪い。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
なのに化け物はケタケタと嗤っている。
今すぐ殺す。絶対に殺す。許しはしない。慈悲はない。殺す。殺して殺して殺して…何度だって殺してやる。
ケツイが赤黒く染まる。そのケツイを乗せて奪ったナイフを振りぬく。
しかしそのナイフも宙を切った。化け物の拳が伸びるのを見てケツイを水色に染める。染まり切る前に殴られて吹き飛ばされた。
頭を振って前を見れば目の前に紅く染まったナイフが――――
解説ぅ…いるのか? これ
赤黒いケツイ
→またの名を"殺意"
ケツイを青く染める
→誠実、重力操作。
ケツイを黄色に染める
→正義、遠距離攻撃能力向上
ケツイを紫に染める
→不屈、攻撃した相手に移動制限付与
ケツイを水色に染める
→忍耐、防御強化
ケツイを緑に染める
→親切、回復能力
ケツイを橙に染める
→勇気、精神異常耐性付与
ケツイが赤黒く染まる
→殺意、攻撃能力の超上昇/攻撃後大きな隙が生まれる
ロード感知
→オリ主にその能力はないが、原作でも少しは覚えている以上、人を殺す、なんて印象強いものは残ると判断。
最後
→いくら生命力が高くとも、どれだけ即時回復能力に優れていようとも、ニンゲンは脆い。一撃で殺されては耐えるも何もない。
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