ハグレられない変な子は悪の組織に就職願いを出して落とされ陰湿な嫌がらせに走る。 (バンビーノ)
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得意気に立てた計画は大抵失敗する、様式美的に。
変な子だ、というのが周りの子や先生達からの評価。変とはだいたい大なり小なりのコミュニティに属さない、ハグレモノの別称のひとつ。ボッチともいう。
なんとなくウマが合わない、というかコミュニケーション嫌いな私は当然の帰結としてひとりで過ごす。つまり変な子で相違ない。こうした自覚もあるうえで独りなので、晴れて“私=変な子”が皆の共通認識。
──野生動物のドキュメントなんかを見て羨ましく思うことがあった。協調性は二の次で、必要以上のコミュニケーションもいらない。強いものが上にたって、弱きはそれに屈して従う分かりやすい縦社会。実にわかりやすくて過ごしやすそうなことか。
社会に出れば、今より各々の立場が明確になって、人との関係構築も幾分かは楽になるはず。しかし、遠い。
今で言えば、倍率の高い学校に進学すれば、実力主義になり弱肉強食のわかりやすい構図のもとで生活できるのではないか。
おいおい、天才かよ私。
そして幾ばくかの月日を経て来たるはIS学園。倍率は五桁越えという恐ろしさであったが私は乗り越えた。ISという名の宇宙活動を前提に作られたマルチフォーム・スーツ、もとい世界最強兵器と謳われる飛行パワード・スーツ専門の学校。そしてここには世界各国から有望株が集まり、ISをもってして上位を目指す超実力主義の高校。どうしようもなく強者の集まるここであれば──
なんて思っていた時期が私にもあった。今はない。
なんだこの男子ひとりの実質女子高は。初日からグループが作られ、キャピキャピした雰囲気は中学の比ではない。コミュ力偏差値まで求められるとか聞いてない。
「もっちー、顔が引きつってるよ?」
「本音は弛んでるわよ?」
「いつものことだね~」
どうしてこうなっているのか。私の六ヶ月計画が成就と共に儚く散ったのだが、責任の所在はどこに求めるべきか。
この
「もっと殺伐とした空気を求めていたのに、何故どうして……」
「真面目なガリ勉が賢いとは限らないし、逆もまた然りだよ~。ほら、私とか」
「真面目に脇目もふらず勉強して、ここに来た私への嫌み?」
だいたい、まずクラスの空気が必要以上に浮かれポンチになってる理由が居るのがいけない。
女にしか動かせないはずの、世界最強の兵器たるISを動かせた男がここにいるのがいけない。
その男がIS世界最強と謳われる女性の弟なのがいけない。
あいつぶっ殺してやろうか(過激派)
「あれれ、もっちーってばおりむーの方を見てどうしたの? もっちーもおりむーにお熱~?」
「怒りの感情に熱量があるならチュンチュンよ。どうして秀才の集まりがただのミーハーになってるの」
「そりゃあ、おりむーは唯一の男子だし、お姉さんのネームバリューがね~。それに、いくら秀才でも年頃の女の子だよ? 女子しかいない学園にイケメンが来たらああなるのは仕方ないよー」
なるほど、本音の言うことは一理ある。元々はきっと女しかいない環境下で浮わついた雰囲気なんてなかったのだろう、たぶんきっと恐らく。
しかし、今年は違う。織斑一夏という異分子が紛れ込んできた。同年代に容器端麗で世界最強の姉を持つという超絶優良物件な彼。そりゃ沸き立つ。
織斑一夏本人は周囲から遠巻きに見つめ続けられる現状で、既にゲンナリとしているがまだ序の口。下手すりゃ明日からでも我先にと話しかけに来る女子で溢れかえるのは想像に難くない。
「でもね本音。私はこんなサプライズ求めてなかったの。実力があれば社会性が低くても許されるような、ヒリついた実力主義の環境を求めていたの」
「うんうん、知ってる知ってる。超ストイックな考え方してるようで、ただ社会性を身に付けるのが苦手なだけのもっちーらしい理由だったよね~」
「その通りよ。なのに、これはなに……?」
教室内だけではない。廊下まで溢れているキャッキャと騒がしい面子のなかには上級生まで見えている。兵器扱う学園で、ここまで浮わついているは如何なものか。
「いやはや~、もっちーが望んだ実力至上主義の社会は遠のいちゃったねぇ」
頬をつついてくる本音を恨めしげに睨むも、彼女の朗らかな笑顔は絶えることがない。つつく指もめちゃくちゃ萌え袖になってるせいで、袖ごと顔に当たってかなり鬱陶しい。
「本音の
「えぇ~、可愛いでしょ?」
「センスが掠りもしてないわ」
「ぶーぶー。そういうもっちーは飾り気なさすぎじゃないかな~」
私はノーマルなだけだ。いくら学園公認とはいえ、登校初日から制服改造している方が少数だろう。クラスを見渡しても、片手で数えられる程度。
「第一、ここ半年はお洒落とか気にしている余裕もなかったし」
「中学三年生からIS学園を目指したんだっけ? そんなことしてるんだから、当然と言えば当然なんだけど~」
「そう? ここを目指し始めてからの生活の方が性に合ってたのだけれど」
そして、こうしてIS学園に来たまでは予定通りだったのだ。うん、来たまでは、予定通りだった。それ以降は全くの予定外。クラスに踏み入って秒足らずでご破算。RTAならたぶんこれが一番早いと思う。
「……それにしても、もっちーってメンタル強いよね」
「藪から棒になに? さすがの私も脈絡が無さすぎて戸惑うわよ」
「藪から棒にって言うか、私が耐えられなくなってきたというかぁ~」
「私と話すのが苦痛なら早く席に戻りなさいよ。私もその方が楽なのだけれど?」
「もっちー酷い~! でもそうじゃなくてぇ」
そわそわと周囲を気にして、チラチラと隣を見る本音は落ち着きがなく鬱陶しい。こうやって他人の所作を疎ましく思うのも、私が普通に馴染めず変な理由とわかってはいるが、直せないものは仕方ない。
今も席の近くに来ている本音は名前に反して、こちらに合わせて会話してくれているようで、惰性で会話が続いているだけだと思う、ではなく。どうして落ち着きがないのかだった。
「いやね、本当にね、もっちーがブレないことがね~」
「回りくどいのは面倒だから結論」
「は~い。隣の席が原因だよ~」
言われて隣を見るとぎこちない動きをする織斑一夏と視線があった。
「あれがなに?」
「そう言えるところがもうおかしいんだよ~。皆近くの子は席を空けて離れちゃってるのに」
「ここは私の席よ。退けたくば実力行使で来なさい」
うわぁと言う本音も、私の近くにいる時点で大概だろう。ついでに言うと私のメンタルは強くない。強ければコミュ力を求められる環境から逃げようとはしてない。意図的に無視してるだけだ。
しかし、本音には散々愚痴ってしまったが、いつまでも織斑一夏に当たっていても仕方ない。この浮わついた空気も、時期に収まってくるはずだ。なにせここは世界最高峰の兵器を扱う学園。半端な社交性よりも実力がものをいうに違いないのだから──!(即落ちスクロール)
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「織斑、もう一度いってみろ」
「電話帳と間違えて捨ててしまいました」
「……隣の望月に見せてもら」
「はい、これ。私中身はほとんど覚えてるから一人で使ってもらえるかしら?」
「うわっ、えっ、この分厚さをか!?」
「覚えたわよ」
事前に取り寄せ、半年前から読み込んだ教本を織斑に投げつけ、さめざめと内心で泣いた。
どうして、どうして教本を電話帳と間違えて捨てるんですか……?(現場猫)
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「望月さん! ISについて教えてくれ!」
「は?」
「3日後のオルコットとの試合に備えるには、教本を覚え込んでるほどの望月さんにしか頼めないんだ! 箒とはもう剣道漬けで結局ISの知識が増えないし」
「で?」
「望月さんが教えてくれたら心強い」
「私は怠いが」
他の生徒でもよくない……? お前、食堂で3年生に話しかけられてたの知ってるんだぞ。いや、土下座とかやめて。さすがにこの視線の集まり方は私が生きづらくなる。やめてやめて……3日間ぐらい勉強でもなんでも見てやるからヤメロォ!
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2組に織斑のセカンド幼なじみが転入してきたらしい。隣の席のせいで聞きたくもないのに耳に入ってくる。というか授業合間の雑談がてらに話された。話しかけんな。
「それで鈴のやつが滅茶苦茶怒ってさぁ」
「あー、うん。はいはいはい。そういうのは相手の立場になって考えるものらしいわよ。私の敬愛する(ぐぐーる)先生にもそう書いてあったもの」
「相手の立場になってか……」
「というか何故私に相談する?」
「隣の席だし、箒とセシリアはこの話すると怒るし」
せんせー、席替えしてくだ……却下ぁ!? 下手に席替えをすると混乱が巻き起こる? あ、なるほど織斑のせい。織斑と離れられないとかこいつ呪いの人形か。
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「織斑一夏、お前を認めない」
ドイツ系転入生ボーデヴィッヒからビンタを食らった織斑と目があった。こっち見んな。
「も、望月……なんで俺はビンタされてるんだ?」
「何故私に聞く?」
「わからない。俺にはなにもわからない……!」
私にもわからないが? むしろ少しスッキリしている節がある。なるほど、これがザマァという感情。ボーデヴィッヒに今度ご飯くらい奢ってもいいかもしれない。
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「望月さん、よろしくね。僕はシャルル・デュノア」
「あ、はい。ヨロシクですね」
デュノア家に子はいないはずですが誰これ? 隠し子とか、そういうのが男として二人目のIS操縦者になったとか言わないでほしいのだけれど。
それでどうして私に挨拶するのよ。
「一夏が望月さんにはお世話になったし、僕も困ったら頼ってみるといいって」
「は?」
織斑、お前ちょっと来い。いいから来い、お前本当にいい加減にしないと許さんぞ。
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「
「は?」
「そ、それはわたくしも聞きたいですわ!」
「オルコットさんたちは普段から話してるじゃない! 私たちにもチャンスを!」
「は?」
「意地悪しないで教えてよー」
「わ、私も混ぜてくれないか?」
「ほらほら、ちゃっちゃと吐いちゃって!」
「はぇー???」
織斑と誰が仲がいいって? 私がか。ハハッ、ワロス。いや笑えるか。
くそ、人に群がるな。専用機持ちも他のクラスメイトも鬱陶しい。織斑の好みがなんだって? わからないなら聞いといてほしいってなんでよ。嫌だよなんで私が──ぐわぁぁぁ!? やめろやめろ、
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早く、早く純なる縦社会に(出来る限りの上位で)羽ばたくために、各企業や偉いさんが集まるこの学年別対抗戦では勝ち進まないといけない。ただでさえ、計画頓挫して消耗の多い学園生活。このままでは耐えられなくなる……。
交渉の末にボーデヴィッヒと組んだから、いいところまでは確実に行けるはず。
なんて思ってたら、一回戦で織斑・デュノアの専用機持ちペアとの対戦。ふざけるな! ふざけるなよばか野郎! どういうクジ運してんのよボーデヴィッヒッ!(八つ当たり)
ふぉぉぉん、ボーデヴィッヒが堕ちたぁぁぁ!?
んァァァァアアアア!? ボーデヴィッヒがなんかタール状のなにかに包まれて、非常事態発令? 状況レベルD? 試合は中止ぃ???
結局、学年別タッグマッチは一回戦のみで終わることとなった。ボーデヴィッヒ、お前許さないからな(冤罪)
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自販売機を前に立ち尽くしていると織斑が来た。来んな。来ないで……なんで来るの?
「……」
「も、望月、目が死んでるぞ?」
「あのさ、織斑の好みって、どんなの」
「んー、飲み物は冷えてるのより、ぬるめのスポーツドリンクとかの方が好きだな」
「あ、そう……」
ものども、織斑の好みはぬるめのスポーツドリンクだって。
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夏! 海! 臨海学校で思う存分練習!
の予定は謎の待機命令にて中止でぇす!
は???
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夏休みのある日。織斑宅に専用機持ちが集まっているらしい。シャルル改めてシャルロットちゃんからメールが来た。どうせ皆いるし来ないかとのお誘い。ふざけるなバカ。
わ た し を み ん な に ふ く め る な !
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夏休みが明けての新学期。
「学園祭の準備とか、鬱陶しいから嫌なのだけれど」
「そう言わずに! というか織斑くんに執事させるため説得を手伝って!」
「望月ぃ! 助けてくれ!」
「……メイド服着せれば?」
「「「それだ!」」」
「違うだろ!? やめっ、わかった! タキシード着るから、着るからやめてくれ!」
…………はぁ。
学園、結構頑張って来たのに、なにもかも上手くいかない。しかも、めちゃくちゃコミュ力化け物揃いなのだけれど……私が拒否しても拒絶しても波のように寄ってたかるクラスメイトたち。
スゥーーーー。
ヌゥン!ヘッ!ヘッ!
ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛
ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!
ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!!!
フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!!!!
フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥン!!!!(音割れ注意)
知らなかった、なにも知らなかったのよ! IS開発者の妹から代表候補生は揃いも揃って恋愛脳! 他のクラスメイトも狂ったコミュ力で押し寄せてくる! 織斑一夏も当然のように私に話しかけてくるようになってる!
こんな、こんな学園にいられるものですか……ッ!
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IS学園の学園祭には、普段の警備の厳重さからは考えられないほどの来賓が押し寄せる。というのも各生徒に配られた招待状を受けた一般人が参加できるからだ。なかには企業勤めの人間や、国の重役なども紛れているが、一般人の方が多く、IS学園にしては珍しい光景となる。
そこで問題になるのがセキュリティ。
ここまで外部の人間を引き入れる兼ね合いで、不穏分子が紛れる確率は上がる。生半可では侵入できないが、それでもセキュリティは甘くなる。
加えて、今年は唯一の男性操縦者の織斑一夏がいる。間違いなくなにかが起きる。
(だって今、織斑が巻紙礼子を名乗る女と更衣室に入っていったし)
望月結奈はそうひとりごちながら、その光景を眺めていた。入っていくのはもう少しあとでと算段をつける。
なにが起こるかは予測できているが、
鈍い音が壁越しに伝わってきた。学園祭で騒々しい校内では目立たない音であるが、望月には更衣室でなにかが起きたことを知らせる合図であった。これ以上は手遅れになっても面倒だと、扉に手をかける。
「お邪魔するわよー」
「んだてめぇ!?」
「なっ、望月!? 逃げろ!」
更衣室に入るとISを纏う巻紙礼子らしき女と、ISも纏わずロッカー突っ込んでる一夏が目に入った。
一夏が専用機の白式を纏ってないことに疑問は残るがおおよそ予想通りのパーフェクト。学園入学以来の想定通りの流れに、望月の頬が弛んだ。
「貴女、巻紙礼子さんね」
「……なんだお前。どうして私のこと」
「調べたのよ。今日学園に来る外部の人間を全部ね」
「全部だぁ?」
そう、全部である。名前から所属、経歴まで洗いざらいを調べぬいた。半年でIS学園に合格するまでに至った彼女の執念がまたここで発揮されたのだ。いったいいつから検索を始めていたのか、そのための技術を身に付けていたのか──間違いなく、ひとりで時間があり余っていた夏休みである。
「そうしているとね、貴女の経歴だけ辻褄が合わなくて、もうちょっと調べたら、貴女がどこの誰かわかっちゃったの」
「おい、待て。てめぇ、もしかして連日の不正アクセスの」
「巻紙礼子さんじゃなかったわね。
薄ら寒い微笑を浮かべた少女を見て、オータムの背筋に寒気が走った。流れるような動作でラファール・リヴァイヴを身に付け、織斑一夏との間に立った彼女は笑顔を絶やさない。愉しくて仕方がないと言わんばかりの表情だ。
「はっ! 私の正体がわかったからなんだ! てめぇひとりでその種馬助けてヒロインにでもなろうってのか!」
「……は? 薄気味悪いこと言わないでもらえるかしら。私がここに来たのはね」
急に不機嫌そうになった彼女はチラリと後ろに丸腰でいる一夏を見て、再度オータムを見る。
──オータムは内心焦りを見せ始めていた。織斑一夏を罠に嵌めたと思った矢先に、望月を名乗る少女の乱入。たったひとりの加勢にしては余裕がありすぎる。更に、ハッキングによりオータムの正体を見破っていたということは、
間違いない。そう思ったオータムの予想は、大外れであった。
「私、
「はっ?」
「私、
「聞き取れなかったわけじゃねぇ」
一瞬の沈黙のあと、望月逆ギレ!
「なんでよ! 私なにか悪いことした!?」
「言うに事欠いてそれかてめぇ!? 私のこと知ってるってことは、うちのデータバンクにハッキングかけただろ!」
「過去を振り返らないでいきましょう。ほら、今の私を見て判断してほしいのよ。この情報力は有力よ。それに他のPRポイントは執念深いところね」
「執念深さは長所越えて恐怖しか感じねぇよ! 今のお前を見てもただのキチガイだ!」
「は? ここまでして駄目ですで納得できないわよ! あんたじゃ話ならないから上司呼びなさいよ上司!」
「呼ッ! ぶかぁぁぁ!」
「ちょっ!?」
どう考えても望月のおかしい主張に、ついにキレたオータムがIS《アラクネ》の背から拡がる八脚がマシンガンをぶっぱなした。射線状に捕獲対象の織斑一夏もいたがお構い無しだ。
あわやミンチより酷ぇやだった一夏の前にシールドが展開される。言うまでもなく、この中でぶっちぎり頭のおかしい望月結奈によるものだった。
「何故、こうなるの……私は、私はただ社交性の低い環境で生きたいだけなのに」
「なに言ってるんだ!? というかここからどうするんだよ!」
「潜入とかやってるってことは話通じると思ったんだけどなぁ。なんで私の計画ってこうも上手くいかないのかなぁ……お前のせいだよね織斑?」
「結構思い当たる節があって申し訳ないけど! 今回は完全に俺関係ないよな!?」
「……チッ、そうね」
露骨に舌打ちをしたあと、銃声に掻き消されないよう声を張る。それは望月なりの最後の忠告だった。
「聞きなさいオータム!
「はぁ!?」
「今日は貴女の、オータムと巻紙礼子のエロコラ画像を世界に流す! どこに行っても『あっ、あの人エロコラの……』ってなるようにしてやるから!」
「本当にどうしたんだ望月!?」
「おまっ、ぶっ殺す!」
「なら就職させなさいよ! マジで流すわよ!」
「マジで死ねぇぇぇえええ!」
聞くにも堪えない、最後の忠告だった。
けたたましく鳴り響く銃声に、想像を下方に絶する程度の低い罵り合い。
一夏の正気が薄れつつあるなか、颯爽と現れた生徒会長がヒーローに見えたんだ。とは後の一夏の談であった。これ吊り橋効果という。
読了ありがとうございます。
今作の内容につきましては久々に勢いで、書け、麻雀負けたの、んほぉ。以上です。
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