一夏ちゃんに狙われた俺は、どうしたらいい? (銭湯妖精 島風)
しおりを挟む

美少女 一夏ちゃん 登場

 

 

よく、人生は山あり谷ありと表されたりする、良い事も悪い事も起こり同じ出来事、瞬間は2度と来ない、とか言われたりする

 

俺が小学生になったばかりの頃、ISなんてブっ飛んだモノが発表されて世界の流れが変わるなんて当時の大人達は予想していなかっただろうし、開発者の女子中学生も兵器としての側面が目立つなんて予想していなかっただろう

 

 

ほんと人生何が起こるか分からない、突然両親の海外赴任が決まって両親と弟妹が海外へ旅立って唐突に1人暮らしが始まったり

 

 

自身の姉の決勝戦を観戦しに行った親友が予定より長く帰って来なかったので心配してメールで安否確認したら無事だと返事が来たので安心したり

 

その親友が、美少女になって帰国し、俺の自宅のキッチンに立って鼻歌混じりに味噌汁作ってるのを見たりしたりラジバンダリ

 

うん、訳がわからん

 

よし、冷静になれ俺・・・情報を整理しよう

 

まず、俺の名前は栗田(くりた) (りく)

 

隣に住んでる住人が初代ブリュンヒルデと その弟である事と少し歳の離れた弟妹がいる事とISの開発者 篠ノ之 束と知り合い な事 以外、つまり俺自身は特筆する事がない平凡な男子中学生だ

 

そして明らかに俺の目の前で上機嫌で味噌汁作ってる美少女が初代ブリュンヒルデこと織斑 千冬の実弟であり俺の幼馴染で親友の織斑 一夏、の筈なのだが、高々1週間弱で何故、美少年が美少女にクラスチェンジしてるんだ?

 

いやさ、俺だって最初は疑ったよ?でも俺と一夏しか知らない秘密を知ってたし、人間不信気味で身内以外と全く関わりを持たない束さんからの手紙持ってたから目の前の美少女が一夏だと認めないといけない

 

ちなみに手紙には、ちょっとした仕掛けみたいのが合って、手紙の差し出し人が束さん本人か否かが俺には分かる、間違いなく手紙は束さん本人からだった

 

 

うん、訳が分からない。情報を整理しても分からない

 

 

「よし、出来たぞリク」

 

「お、おう。ありがとう一夏」

 

俺が頭を悩ませているのを知ってか知らずか一夏が男の時と変わらない笑みで言い、オカズや味噌汁を配膳してくれる

 

「んじゃ食おうぜ?」

 

エプロンを外し いただきます と合掌して朝食を食べ始める一夏に続き、俺も いただきます して朝食を食べ始め、まずは味噌汁に口をつける

 

 

んーやっぱり一夏の味噌汁は美味いなぁ、千冬さんが多忙でウチの両親も多忙だから一夏がウチに来て一緒にメシ食ったりして来た

 

ちゃんと一夏と交代で夕飯とか作ってたから、一夏程じゃないが俺も料理は出来る

 

 

半分程 朝食を食べ進めてから俺は意を決して一夏へ質問する

 

 

「なぁ一夏、ドイツで何が有った? 」

 

もし一夏のトラウマになっている様な出来事が起こっていたら、とか考えながら少し緊張していると

 

 

「ん? あぁ、千冬姉の2連覇阻止の為に誘拐されてさ、なんか誘拐された時に眠らされて、寝てる間にヤベー薬かなんか使われたらしくて、起きたら女になってた、いやーびっくりしたわ」

 

 

と、一夏は笑い話の様にカラカラと笑いならが言う

 

いやいやいや、笑い事か? いや、本人が気にしてないならいいが・・・

 

とりあえず一夏が空元気で無理してないか心配になったので

 

「一夏、無理に元気なフリしなくても大丈夫だからな? 辛かったら頼ってくれよ? 」

 

「お、おぉ・・・ありがとう」

 

真面目に心配して言うと一夏は少し顔を赤くして照れて少し俯く様に返事をする、なぜだ?

 

 

まぁしばらくは気にかけておこう、世話する弟妹も両親と一緒に海外だし親友の面倒ぐらい見れるし

 

 

それから朝食の残りを食べ終え、皿洗いまでやろうとした一夏を説得して俺が皿洗いをする、まぁ食洗機に入れて終わったら食器棚に入れるだけだが

 

 

「一夏、これからどうするんだ?」

 

グデっとソファに座ってテレビを眺めていた一夏に質問をする

 

「今日は特に出掛ける予定ないな、ドイツから帰ってきたばっかだし」

 

テレビから俺の方へ顔を向けて一夏は言う

 

「そうじゃなくて、学校とかな? それにお前、女のままで大丈夫か? 」

 

食器棚へ食器を格納しながら再度質問する

 

「学校とかは問題ない、束さんが手を回してくれるってよ。リクは俺が女だと嫌か?」

 

最後辺りに一瞬だけ不満そうな気配を出した気がしたが、いったんスルーして

 

 

「俺が嫌とか、問題じゃねーだろ? お前が心配なんだよ、急に男から女になって不安じゃねーかとかさ? 俺が出来る事がアレば何でも言ってくれ、出来るだけ協力する」

 

俺にとって一夏は物心つく前からの中の幼馴染であり、親友であり、兄弟の様な存在だ

 

だから、力になりたいと考えるのは自然な事だと思う

 

 

「本当か? 何でも言っていいのか? 」

 

余程嬉しかったのか一夏はソファから立ち上がり俺の方を向いて言う

 

 

「おう、俺とお前の仲だろ? 遠慮はいらない」

 

食器の格納を終えたのでキッチンからソファへ移動し、一夏を真っ直ぐに見て言う、すると一夏が何故か赤くなってモジモジとし始める、何故だ?

 

頭の中が???で埋め尽くされていると、一夏は目を閉じて深呼吸をしカッと目を開いて俺を真っ直ぐに見て

 

「り、リク! 聞いてくれ!!」

 

「おう、どうした? 」

 

真正面から改めて見ると、やはり美少女の一夏へ返事をすると

 

 

「ずっとリクが好きだった! 俺と結婚を前提に付き合ってくれ!!」

 

叫ぶ様に、俺は美少女にクラスチェンジした一夏に告白された・・・ヤバイ処理が追いつかない

 

 

えっと一夏は男で・・・いや、美少女にクラスチェンジしたから女か、アレ?

 

 

 






見切り発車しましたw

我慢できなかったよw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

美少女一夏に告白された

 

 

 

今、起こっている事に全く頭がついて行かず、混乱しながら目の前の一夏を見る

 

 

千冬さんとよく似ている黒髪の美少女がモジモジとして少し俯き頬を染めて俺を伺っている、これが一夏・・・いや、元男の幼馴染でなければ、俺はきっとしのごの言わずに告白を受け入れていたかも知れない・・・いや、もともと女でも一夏との距離感だったら どちらにせよ戸惑ってたわ、多分

 

 

とか考え少し現実逃避をしていたが、そろそろ真剣に一夏からの告白について考えよう

 

 

ぶっちゃけ、見た目だけなら好みなんだよなぁ・・・見た目だけなら、かと言って中身は一夏だ、千冬さんに似ているとはいえ、男の一夏の面影が残っているし、喋り方だって男の時と変わってないし、俺は同性愛者ではないから一夏を恋愛対象として見てこなかった

 

と言うか今の今まで全く気付かなかった俺は、鈍感なのか? とか混乱したまま考えていると

 

「リク? 大丈夫か?」

 

一夏は不安、と言うよりは心配といった表情で俺を見ていた

 

「え? あぁ、大丈夫だ問題無い」

 

と答えたら、一夏が本当か? みたいな表情になったが、敢えてスルーする事にして

 

「一夏、あぁ言った手前で悪いけど、ちょっと色々と起こり過ぎててかなり混乱してる。お前相手に言葉は選ぶ必要は無いからハッキリと言うと、正直一夏を恋愛対象として見てなかったし、兄弟みたいな存在だ、だから 告白を受け入れる事は出来ない」

 

今、俺が一夏へ答えられる最大限の言葉で告白を断る、少しだけ罪悪感があるが仕方ない、今の俺には受け入れる覚悟がないのだから

 

 

「・・・そうか、だよな〜 やっぱりか〜」

 

一夏は少し残念そうにしてはいるが、まるで想定内と言った調子で言い

 

 

「でも、未来は分からない。俺は諦めないから、何回でもトライするまでだ」

 

 

ニッと笑み一夏は言う、中身が一夏とはいえガワは美少女だ、目が奪われてしまうが、気になる事があったので

 

「お前、フラれるのも想定してたのか? 」

 

首を傾げて尋ねると

 

 

「ああ、うん。当たり前だろ? 物心つく前からの付き合いだし、リクが同性愛者じゃ無いのは知ってたしな、いきなり女になったからって急に認識が変わる訳じゃないから想定してた、正直ダメもとだったぜ」

 

 

と一夏は肩を竦めて言う、その言葉に案外色々考えてたんだなぁ、と思ってアレ?と思い、一夏の言葉を振り返る

 

 

確か 諦めずに何度でもトライする、だっけ? アレ?

 

 

「なぁ一夏、まさか1回フラれたのに諦めないつもりか? 」

 

「当たり前だろ? 今は男だった俺の記憶が邪魔をしてるけど、これから先は女だからな気兼ねなく誰の目を気にせずにアプローチ出来るんだ、すぐに俺が女だって違和感も無くなる筈だからな!」

 

 

俺の言葉に一夏はニッと笑み力強く言う

 

そういえば一夏って一度決めたらやり通す負けん気が強いんだよなぁ、なんと言うか凝り性な所も有るし

 

「・・・そうか、とりあえず男に戻るつもりは無い、と?」

 

なんか色々とあって気持ちと頭の整理が追いつかない中、一夏に尋ねる

 

 

「全くない、もし俺が男に戻ったら、束さんに頼んで また俺が女になるかリクを女にしてもらう」

 

 

と、ニッコリ笑みを浮かべて一夏は言い切る、最後の辺り怖い事を言ってたけど聞かなかった事にしよう、マジで怖い

 

 

「そーかい、とりあえず お前に現状 女でいる事に不安とか不満が無いなら良い。 でも困った事が有れば言ってくれよ? 」

 

「おう、ありがとなリク」

 

見た目だけなら清楚なお嬢様みたいな一夏は、見た目から想像出来ないボーイッシュな笑みを浮かべ言う

 

 

ほんと、見た目だけなら好みなんだよなぁ、見た目だけなら

 

 

「ん?アレ? そーいや千冬さんは? モンドグロッソ終わったら少し休暇を取るって言ってなかったっけ? 」

 

ふと姉貴分が居ない事に気付き一夏へ尋ねると

 

 

「ん? 千冬姉なら、まだドイツにいる。つーかテレビ見てないのか? 」

 

「え? なんで? 」

 

 

俺の質問に一夏は答えて、そう言い 少し呆れた表情をするので首を傾げていると

 

 

「千冬姉は俺が誘拐された時にモンドグロッソ決勝を棄権して専用機を使って俺を救出したんだよ、で問題になったから日本代表を辞めた上で誘拐事件に協力したドイツ軍でISの訓練教官をしてるんだよ、今テレビを賑わせてるぞ?」

 

 

と一夏は呆れ顔のままで言う、いや俺 元々テレビとかあんま見ない方だしさ?

 

 

「あーマジか、知らなかったわ。 とりあえず千冬さん、弟が妹になってなんて言ってた? 」

 

 

千冬さん、自分に厳しく他人に厳しい人感じの人だけど優しいんだよなぁ不器用で勘違いされがちだけど、とか考えつつ一夏に尋ねると

 

 

「あー最初は弟が妹になって犯人に対してブチギレてたけど、俺的にはリクにアタック出来る様になったから悪くないって言ったら犯人半殺しにしてた千冬姉が、 そうか ならば女の子らしい格好をしないとな? って言われた。んで事情聴取やら色々終わった後に珍しくテンション高い千冬姉にドイツのデパートみたいな所に連れてかれて散々着せ替え人形させられた」

 

「えー・・・ウソだろ?」

 

一夏は少し思い出して疲れた表情をしているので嘘では無いのだろうが、昔から千冬さんを知ってる身としては、信じがたい事だった

 

「マジだよ、何処からか現れた束さんが止めてなければ・・・」

 

 

と一夏は虚な目をして変な笑みを浮かべる

 

 

束さん、ナイス。今度ウチに来たら、ご飯を振る舞ってあげよう、そうしよう

 

 






続きました〜w


ほんと見切り発車だったんでね、全くなんも考えずに書きましたw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

天才現る

 

 

 

 

千冬さんの所業を思い出して目が虚になった一夏をどうにかこうにか立ち直らせる為にアレコレしていると、インターホンが鳴って直ぐに玄関の鍵が開く音が聞こえ、リビングに珍しくパンツルックの世紀の大天才が現れた

 

 

「はろー、リッくん おひさ〜」

 

キラッと束さんはポーズを決めて、そう言ってきたので

 

 

「久しぶり束さん、どうしたの? いつもなら前日には連絡くれるのに」

 

 

乾いた笑いを浮かべている一夏をソファに座らせてから束さんへ尋ねると

 

 

「いやぁ急にゴメンね? ちーちゃんから急に頼まれたもんでね、いーちゃん の付き添いと諸々の裏工作と根回しをね? 」

 

 

「あーなるほど、お疲れ様。インスタントコーヒーで良い?」

 

 

束さんの言葉に色々と察して、俺はキッチンに入り電気ケトルでお湯を沸かしながら尋ねると、束さんの うん、ありがと と返事が聞こえたのでマグカップを用意しながら、少し気になった事を束さんへ尋ねる

 

 

「千冬さん、ドイツから いつ帰ってこれる?」

 

「ん〜確か任期は1年だったはずだから、来年の春ぐらいには日本に帰って来れると思うよ」

 

俺の質問に束さんはサクッと答えてくれる、とりあえず放心状態の一夏の分は作らず束さんの分だけコーヒーを作り束さんへ渡してテーブル挟んで座ると

 

 

「あ、そうそう、ちーちゃんから伝言が有るんだ。『私は暫く帰れない、一夏は美少女だ、家に1人では心配だ。だからリク、お前と同居させる。安心しろ両親には許可を得ている、幸い空き部屋があるから使って良いと言ってくれたからな、私が帰るまで一夏を頼む』だってさ、ちなみ私もちーちゃんに頼まれて時々様子見にくるから、そのつもりで」

 

 

割と真面目な表情で言う束さんを見てマジか、と思う

 

だって千冬さん、一夏が俺を狙ってるの知ってる訳だから

 

まぁ千冬さんが一夏の心配してるのは分かる、分かるけど・・・つかウチの両親になんて言って説明したんだろ?

 

とりあえず束さんが時々来てくれるのは助かる、俺も中身が一夏とは言え美少女と同居するのは緊張する、多分

 

 

「ま、そんな訳で2階の洋間の寝室を使うからね? 」

 

と言い束さんはコーヒーをブラックのまま一気に飲み干し椅子か、立ち上がり

 

 

「2時間も有れば終わるから、いーちゃんとテレビでも見てて? 」

 

そう言い束さんはリビングを出て二階へ登っていく

 

本当なら手伝ったりした方が良いのだが、束さんの場合は逆に足を引っ張る事になるから素直に待機しておこう

 

 

さて我が家は広いしデカい、ウチの両親は共働きで よく分からないが高給取りの分類にいるらしい

 

そして一体何人産む予定だったのか分からないが、空き部屋が3つは有る

 

俺の部屋に、妹の部屋、1番下の遊び部屋と両親の寝室とか有る訳だが それでも部屋が余っている訳だから我が家ながら凄い家だと思う

 

 

さて、と ひとまずはマグカップを片付けてしまおう、その後冷蔵庫の中身確認して昼飯の献立考えないと、と思いマグカップを洗い食洗機に置いてから冷蔵庫の中を確認する

 

 

「調味料とニンジンぐらいか、まぁ昨日買い物行ってねーしなぁ」

 

ウチの場合、両親が多忙な為、俺らが夕飯を作ってる事が多いし、平日なら1番下の迎えに行くついでで、その日の晩と翌朝の分の買い物をしたりしてたし、弟妹に合わせて献立考えていたから基本的にカップラーメンとか備蓄食料の類いが少ない

 

 

そんな事を考えつつ一夏を見ると、窓辺に体育座りして光合成をしていたので、買い物に連れて行くべきか留守番をさせるべきか正直悩む

 

 

まぁ弟妹も居ないから出前とかで済ませても良いかも知れないが、どちらにしろ夕飯分の買い物はしないといけないしなぁ

 

「一夏、昼はどうする? 冷蔵庫の中にニンジンしか残ってないんだけど」

 

光合成している一夏に近付き尋ねると

 

「そういやそうだな、よし買い物行こうぜ? 束さんならほったらかしにしても心配無いし」

 

 

光合成で元気が出たのか一夏が俺を見上げて言う、確かに一夏の言ってる事は賛成だが、もう少し言い方を考えて欲しい

 

束さんって意外と繊細で傷付きやすい人なんだから

 

 

そんな訳で一旦2階の自室へ行き部屋着から外着に着替え、作業中の束さんに声を掛けてから我が家を後にする

 

 

歩き慣れた道を一夏と並んで、行きつけのスーパーを目指しながら歩く

 

「改めて並ぶと実感する、お前だいぶ背が縮んでるな?」

 

「まぁーな、前はリクと同じぐらいだったけど今は約10㎝ぐらい縮んでると思う」

 

俺の目の高さに一夏の頭頂部が有る感じなので、俺の身長が約170ぐらいなので一夏の身長はおおよそ160前後な訳か、10㎝も縮むと体感がブレてたりしないのか? と少し心配になったので

 

「まだあんま慣れてないだろ? 無理すんなよ? 荷物は俺持つから」

 

「お、おう。でも大丈夫だぜ? どうゆう理屈か知らねーけど、チカラ自体は落ちてないみたいなんだ」

 

なんか嬉しそうに身体をクネクネさせてから一夏は言う、その様子から嘘をついている様には見えないし、そもそも一夏は嘘をつくのを嫌うタイプだから嘘では無いのだろう

 

 

いや、待て、今更だけど一夏に使われた薬って、めっちゃヤベー薬じゃね?

 

 







お待たせしました


本作は一夏ちゃんがリクを落とす事を目標としています、ISが この先 出てくる保証は有りませんw


申し訳程度のISの要素で許してくださいw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

買い出し

 

 

 

更なる心配な事が脳裏を過ってしまったが、俺にはソレを調べる方法も確認する方法もなにもない

 

ひとまず束さんが一夏に自由行動させているから今のところは大丈夫なのだろう、と自分を納得させてスーパーへの道を歩く

 

家から10分程歩きスーパーに辿り着き、入り口に有った安売りのチラシを入手してザッと目を通しつつ

 

 

「そういえば学校はどーするんだ? 」

 

隣で俺と同じくチラシに目を通している一夏へ尋ねる

 

「ん? 普通に通うけど? 」

 

俺の質問にキョトンとした表情をして首を傾げ一夏は答えたので

 

 

「お前な・・・男子生徒が女子生徒にクラスチェンジしてんだぞ? 一般常識的に考えたら・・・いや、待てよ?」

 

 

常識的に考えたら1週間弱で性転換なんてしない、だから普通に他人の空似とか思うだろうし、織斑って苗字は珍しいが一夏と千冬さん以外に居ない訳じゃないから同姓同名って誤魔化す事も出来る

 

考えたくはないが、束さんなら記憶の改竄が出来る装置を作って使用したり関係各所の記録の改竄だって出来る訳だから

 

 

「すまん、なんでもない。とりあえず春休み終わったら色々大変かもな」

 

 

「ん? おう? 」

 

一夏は不思議そうに俺を見て首を傾げて返事をしてくる

 

 

さて一夏はモテる、物凄くモテる

 

 

基本的に何でもそつなくこなす器用さ、困っている人を見捨てない優しさ、誰に対しても平等に接し気配りもできる気さくさ、見た目も良いし性格も良い

 

 

根が真面目であり、決めた事をやり通す意識の強さもある。モテて当たり前の様な存在なのだ一夏は

 

 

俺や弾、数馬とバカやってるのが不思議な奴な訳だ、うん

 

 

そう一夏はモテる、女子には勿論、男子にもモテる まぁ男子の場合はリスペクトみたいな感じが大半だった訳だが、一夏は美少女になってしまった

 

つまり男子が、こんな聖人の様な美少女をほっとける訳が無い

 

きっと一目惚れをして告白してくる男子が出てくるだろう、場合によっては力尽くで・・・とかもあり得る

 

「・・・それはそれでヤバイか」

 

「ん? 何が? 」

 

俺の呟きにカートにカゴをのせて押してきた一夏が反応する

 

「あぁ、いやさ お前、かなり美少女になったじゃん? 見た目だけなら華奢な美少女だし、きっと一目惚れした男子が告白しにくるだろうって話」

 

一夏には敢えて力尽くで の件を言わずに説明すると

 

「お、おう。そうか」

 

なんか少し顔を赤くして俺から顔を逸らして、それだけ言う。 なんで照れてんだコイツ 事実だろうに

 

 

「さ、さぁ! 昼は何を食う? 」

 

「あー・・・どうすっかな、ウミもソラもいねーしな」

 

一夏が無理矢理話を切り替えてきたので俺は弟妹に合わせて献立考える必要が無いのを思い出して言う

 

上の妹(ウミ)は小学生だから、あんまし気にしなくても良いが下の妹(ソラ)は幼稚園児だ、好き嫌いをさせない為に工夫をしたりしていたから、基本は2人に合わせた献立を考えていたので、今 逆に困惑している

 

「とりあえず、束さんを労おうぜ? なんか色々と骨折ってくれたみたいだし」

 

「だな、とりあえず見ながら考えるか」

 

俺は一夏の言葉に頷きチラシ片手に店内へ入り商品を眺めながら献立を考える

 

 

「昼まで、そんなに時間ないし時間が掛からない方が良いか? 」

 

商品を流し見しやがら一夏へ尋ねる

 

「そうだな、でも束さん 今日、泊まってくか分かんないしなぁ」

 

と一夏も少し困った様子で言う、束さんが泊まっていくなら夕飯を豪華にして労えるから少し説得してみよう、と思いつつ

 

肉コーナーでトンカツ用の肉を見つけたので

 

「昼はトンカツにしないか? 」

 

「そうするか、えーっと」

 

一夏は俺の提案を受け入れて肉の厳選を始める、どうゆう訳か一夏は目利きが出来る、だからいつも良い物を買ってくるから不思議だ

 

「よし、トンカツの肉はOK、あとはキャベツと付け合わせか? 」

 

 

と一夏は言うが早いかカートをカラカラ押して野菜コーナーへ歩き始める

 

「あと、夕飯分と明日の朝飯分もだな」

 

俺も一夏を追って歩みだし夕飯の献立を考える、ひとまずニンジンが有ったから それを使ったモノが良い

 

朝飯に関しては、卵とハムとかベーコンとか有れば問題無いだろう、気を使わないといけない弟妹も居ないし

 

 

とか色々考えながら一夏と話し合ってカゴへ商品を入れ会計をしてレジ袋2つ分の荷物を持って帰路を歩く、道中 一夏が荷物を持とうとしてくるので その都度 言いくるめて帰路を歩き家に辿り着く

 

キッチンに入り荷物を下ろすと、少し疲れた様子の束さんがソファーに寄りかかっていたので

 

「お疲れ様 束さん、今から昼飯作るから少し待ってて」

 

「ん〜・・・ありがと〜、ご飯出来たら起こして? 時差で眠くて・・・」

 

と束さんは言い返事を聞く前にソファーに横になって寝始めたので

 

「一夏、ブランケット掛けてあげて? 」

 

「おう」

 

一夏はソファーの横にある棚からブランケットを取り出して束さんにかけ、キッチンに来て

 

「一緒にやろうぜ? 」

 

「そうだな、そうするか」

 

一夏の言葉に頷き昼飯用の材料を残して その方を冷蔵庫へ入れて昼飯を作り始める

 

そういや、一夏は時差大丈夫なのか? まぁ大丈夫なんだろう多分

 

 





続きましたw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

昼食と対策

 

 

仮眠を取る束さんにブランケットを掛けてから昼食を一夏と作り始めて約1時間で完成し、テーブルに並べる

 

 

「よし、そろそろ束さん起こすか?」

 

 

「だな、冷めてたら旨さ半減だし、起こすか」

 

 

エプロンを外し定位置にかけながら一夏に尋ねると、俺と同じように一夏はエプロンを外し定位置にかけて束さんの横に移動して束さんを優しく起こす

 

 

「うぅぅ・・・んぅ? いーちゃん?あぁ・・・ごはん?」

 

 

のっそり と体を起こして、まだ眠そうに尋ねる束さんに頷く

 

 

「ありがと・・・」

 

 

ゆっくりとした動きで束さんはソファーからテーブルに移動し、座って手を合わせてから、トンカツを食べ始める

 

 

その様子を見つつ俺も食べ始めたのだが、束さん寝起きに油物食べて胃がもたれないか少し気になったが、すでに食べ始めてしまっているし もう手遅れだなと思い気付かなかった事にすることにした

 

 

「あぁ~やっぱり、いーちゃん のお味噌汁は美味しいなぁ~」

 

 

昼食を食べ進めてく内に目が覚めたのか、いつもの調子を取り戻し、味噌汁を飲み一夏を褒める

 

 

うん、寝ていた筈の束さんが、何で一夏が味噌汁を作ったかを当てられるのかが、少し気になるなぁ

 

 

おかしいな、同じ材料で作ってるし手順もだいだい同じはずなんだけど・・・

 

 

そんな疑問を抱きつつ食べていると

 

 

「それじゃ、すこし今後の事を話ね?」

 

 

お冷代わりに出していた麦茶を飲み束さんは真面目な表情をして言い俺たちは無言で頷く

 

 

「今決まってる事から・・・まずこの先最低1年間は、いーちゃんとリッ君で共同生活をして貰う事になる。私も可能な限り顔を出せる様にするけど、基本は二人で生活する事になるよ」

 

 

束さんは、改めて一夏との同居の事を説明する。そう最低1年間、最低(・・)1年間だ・・・千冬さんのドイツでの教官の任期が伸びたり、ほかの場所で教官をしなくちゃいけなくなる可能性は十分にある、だから最低1年間という表現をしたんだろう

 

 

まぁこれまでとそこまで環境は変わってない気もするし大丈夫だろう、多分

 

 

「次に・・・いーちゃんの要望で、このまま同じ学校に通える様に下準備とか工作しておいたよ」

 

 

と束さんは昼食を食べ終えて麦茶を飲んでいう

 

 

「ありがとう、束さん」

 

 

「いいよ~、私にとって いーちゃんは妹みたいな存在だからね!」

 

 

一夏の言葉に束さんはニコッと笑んで言う、なんだかんだで俺より付き合い長いんだよなぁ、この2人

 

 

そのあと、俺と一夏も昼食を食べ終えシンクに食器を置き水につけて、元の場所に座る

 

 

「それじゃ春休み中で一番重要な事なんだけど・・・いーちゃんには春休み中に女の子トレーニングを受けてもらいます☆」

 

 

束さんはキラッ☆っとポーズを決めて一夏へ言う、他人が見たらふざけている様に見えるだろうが、束さんはいたって真面目に言っているのは俺達には分かる。その証拠に一夏の表情は真面目だ

 

 

まぁそれはそれとして、女の子トレーニングってなんだ?と気になったので

 

 

「束さん、女の子トレーニングって何?何をするんだ?」

 

 

「よくぞ聞いてくれたねリッ君!!ズバリ女の子トレーニングは、いーちゃんを最低限女の子らしくなる為のトレーニングだよ!!!」

 

 

束さんはビシッと効果音が付きそうな勢いで俺を指さして言い

 

 

「今のままだと、見た目と口調・身振りにギャップが有り過ぎるからね、完全には無理でも最低限は矯正しなきゃ、折角超絶美少女なんだから」

 

 

と言い束さんは にぱぁ~と笑む、その笑顔は相変わらず年齢不相応でまるで年端もいかない少女のようだ、そんな事を思いつつ

 

 

「確かに束さんの言う様に、折角美少女なんだし勿体無いと思うぞ? 一夏」

 

 

「お、おぉぅ・・・」

 

 

俺が束さんの言葉に便乗して言うと、一夏は顔を真っ赤にして狼狽し始めたので首を傾げると

 

 

「おぉ~リッ君は大胆ですなぁ~」

 

 

「え? いや、10人中10人が一夏を見て美少女って言うでしょ? 」

 

 

と束さんはニヤニヤしながら言ってきたので、他意もなく返答すると更にニヤニヤとし始めたので再び首を傾げ、一夏を見ると両手で顔を覆い微振動していた、なぜだ?

 

 

「ふふふ~これは、やりがい有りそうだなぁ~頑張ろうね、いーちゃん」

 

 

なんか上機嫌な束さんは微振動している一夏の頭を撫でて言うと一夏は軽く頷き

 

 

「お、俺、頑張るよ、そして・・・」

 

 

顔を真っ赤にしたまま一夏は意志を固めた様だ、頑張れよ一夏、俺には応援ぐらいしか出来ないけどな

 

 

「それじゃ次に、リッ君は いーちゃんのサポートとバックアップをお願いね? 私の予想だけど、今はまだ男子だった頃の残滓である程度の力は出せるけど、それもいつまでも続くとは思えない。いずれは同年代の娘と同等の力になると予想している」

 

 

束さんはニヤニヤするのを辞めて真面目な表情で俺に言う

 

 

俺より付き合いが長いだけあって一夏の性格をよく分かっているって事だ、つまり男の時でさえ男女問わずモテていたのに、そんな奴が美少女になって しかも弱体化するとなれば、良からぬ事を企む奴がいてもおかしくないって訳だ・・・うん、俺だけじゃ手が足りねぇな

 

 

よし、やっぱ悪友達を巻き込もう、なんやかんやアイツ等は信用出来るし、そうしよう

 

 

 

 

 






お待たせ致しました


本格的に、此方を書いていくつもりです


よろしくお願いします



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

招集

 

 

そんな訳で、ある程度の今度の方針を束さんから聞き、それぞれのやる事を認識した翌日、俺は早速 悪友達を我が家に呼び出して協力体制を整える事にした

 

 

なので現在 我が家のリビングには当事者の一夏本人、家主の俺、保護者役兼証人の束さん、そして悪友達の紅一点の鈴を始めとした、数馬と今日は普通の恰好の弾が、やや重い空気を纏いながら鎮座している

 

 

「・・・そろそろ良いか? 今から話す事は他言無用 及び 真実だ」

 

 

俺は3人に順番に見て3人共頷いたのを確認し

 

 

「簡潔に言うと、一夏が誘拐されてヤベー薬を使われたらしくて女になった、そこに座ってる美少女が一夏だ。因みに一夏の隣に座ってるのは束さんな」

 

 

と、とりあえず可能な限り簡潔に3人へ説明をすると3人は予想通り、目を丸くして驚いていた

 

 

そりゃ無理もない事だが、話を進める必要が有るので口を開こうとした瞬間

 

 

「・・・リク、あんた正気? そんな話が信じられると思ってるわけ? 」

 

 

鈴が口を開き、かなり渋い表情で言う。確かに鈴の言う事は間違っていない、俺が鈴の立場なら絶対信じない

 

 

でも、ここは信じて貰わないと困るので、気は進まないが事前に一夏と打ち合わせておいたプランBを実行する為に一夏に目配せをすると、一夏は無言で頷き鈴の横に移動し耳打ちをする

 

 

「なっ・・・なっ・・・なんで、それを!? それはアタシと一夏しか知らない事・・・分かったわよ、アタシは信じるわ」

 

 

鈴は観念した様に軽く項垂れて言う、その姿を確認して数馬と弾へ目を移し

 

 

「お前はどーよ? 信じるか?」

 

と2人に尋ねる

 

 

「そんだけ千冬さんに似てるし、鈴の様子を見る限り、説明が事実なんだろ?なら、俺は信じるよ」

 

 

「右に同じく、それにリクは嘘をつく時に癖が出るからな、見てたら分かる」

 

 

眼鏡をスッと上げてドヤ顔で数馬が言い、弾が数馬に続いて言う

 

 

ひとまず2人を説得する手間が省けた様で良かった

 

 

「それで? アタシ達3人を わざわざ呼び出した理由は何かしら? まさか報告する為じゃないんでしょ?」

 

 

と、何か察しているような表情をしている鈴が尋ねてきたので

 

 

「それが本題だな、簡単に言えば協力者になって欲しい、これから一夏は色々と慣れない事もしないといけない。特に俺では分からない事もあるだろうし、束さんが四六時中 対応できる訳じゃない」

 

 

俺は3人に、これからの大まかな方針と一夏が、このまま偽装転校&偽装転入をする事を伝える

 

「はぁ・・・なるほど、概ね理解したわ。そういう事なら力になるわよ」

 

 

「右に同じく、服選びは任せて」

 

 

「俺も力になるぜ、まぁ荒事要員・・・か?」

 

 

元々面倒見の良い鈴を先頭に弾がwktkしながら言い数馬が少し歯切れ悪く言う、大丈夫だ数馬、荒事の他に一夏のストッパーって仕事もあるぞ

 

 

「3人共、サンキューな」

 

今日で2日目だけど、相変わらず見た目に反して男子中学生のままの言動と表情で一夏は3人にお礼を言う

 

 

やっぱ見た目だけなら好みなんだよなぁ・・・見た目だけなら

 

 

「・・・中身が一夏って分かってても見た目と言動のギャップが有って脳がバグるわね・・・それもアタシが協力したほうが?」

 

 

「ん~そうだねぇ・・・私だけだと見切れないかも知れないし、お願いしようかな?」

 

 

軽く頭が痛そうにしながら鈴が言い、束さんが鈴の質問に答える

 

 

とりあえず、トレーニング関係は専門家(どうせい)に任せる事にしよう、俺にはよく分からないし

 

 

立ち振る舞いだけなら弾もあちらに参加して貰う事にしよう、そうしよう

 

 

 

さてと、俺は俺で新学期に向けて色々と準備しないと・・・課題もあるし

 

 

まぁ部活に所属してる訳ではないし、気楽ではあるけど

 

 

とか打ち合わせをしている鈴と束さん、ファッション雑誌を見ながら一夏にアレコレ仕込んでいる弾の姿をボンヤリと眺めていると

 

 

「んで? 一夏は告ってきたのか? リク」

 

 

「・・・お前、なんでそれを?」

 

 

なんかニヤニヤしながら数馬が尋ねてきたので聞き返す

 

 

「なんでって、そりゃ今まで一夏から相談受けてきたの俺だし? 」

 

 

数馬は肩をすくめてヤレヤレ感を出して言い、それを見て軽くイラっとしたが我慢し

 

 

「・・・昨日、朝飯食った後に告られたよ」

 

 

別に素直に言う必要はないと思うけど、真実を明らかにしないとウザ絡みをしてきそうだったので、素直に言っておく

 

 

「ふぅん、余程浮かれてたんだな? コイツ(いちか)

 

 

数馬は俺の予想より大分落ち着いた様子で一夏へ目線を移し言い

 

 

「なんだよ、イジられると思ったか? さすがにイジらねーって」

 

 

と数馬はカラカラ笑う

 

 

数馬の事は、一旦置いとくとして、一夏は数馬が言ったように浮かれていたんだろう、余程嬉しかったんだろう。スタートラインに立つ資格を得られた訳だから・・・

 

 

俺には想像の出来ない程の悩みも苦しみも抱えていたのかも知れない、きっと一夏に問うても誤魔化されてしまうだけだろう

 

 

なら、俺に出来る事は単純明快だ、一夏と・・・織斑一夏という人間と真正面から目を逸らさずに向き合う事だ

 

 

ん~・・・なんか気づいたら外堀埋まってそうで怖いな・・・・だって見た目だけなら好みだし?

 

 

・・・そうだ、その事は一夏も知ってるんだよなぁ

 

 

あれ? 俺って既に逃げ道ないのか??

 

 

 






お待たせいたしました





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

暫定版ぷろふ

 

 

 

名前*栗田(くりた)(りく)

 

年齢*13(新学期から中2)

 

性別*男

 

身長*172㎝

 

容姿*少し茶色よりの黒髪と黒目のザ日本人

 

備考*

 

本作の主人公であり、幼馴染の一夏に狙われてしまった少年

 

 

一夏 及び 千冬の織斑姉弟とは物心が付く前からお隣さんの付き合いで、ほぼ毎日同じ食卓を囲む程 仲が良い

 

 

両親が多忙な職種な為、家事炊事を一通りこなして少し歳の離れた妹2人の面倒を見れる為、地味にスペックが高いが一夏が それ以上のスペックを誇っている為、自己評価が低く『お隣さんが初代ブリュンヒルデ』『ISの産みの親である篠ノ束と知り合い』『少し歳の離れた兄妹がいる』事以外は特筆した事の無い平凡な男子中学生だと思っている

 

 

知り合いや悪友達が武道 および 武術を収めていることが多く、おのおの少しづつ教えてもらっていてキメラな護身術が出来上がりかけている

 

 

名前*織斑(おりむら)一夏(いちか)

 

年齢*13(新学期から中2)

 

性別*女

 

身長*161㎝

 

容姿*千冬さんに似た美少女、目付きは千冬さんに比べて柔らかい

 

備考*

 

本作のヒロインであり、第2の主人公

 

 

姉の千冬のモンドグロッソ2連覇阻止と言う、よく分からない理由で誘拐され薬で眠らされてる間にナンヤカンヤ有った様で性転換して女になり、クソ強いメンタルを持っていた様で同性だからと諦めていた気持ちに火がついてしまった為、帰国後すぐに主人公への熱烈なアタックを開始した強者

 

見た目だけなら清楚な美少女だが、中身は男子中学生のままな為、口を開くと かなりギャップが有った為、束さん及び有志によるトレーニングを受講中

 

 

帰国後は栗田家の1室を借り、リクとの同棲(仮)を千冬 及び リク両親の合意の元している

 

 

家事炊事スキルEX保持者であり運動神経抜群、頭脳明晰、容姿端麗と 最早 人類か怪しい存在

 

 

 

 

名前*織斑(おりむら) 千冬(ちふゆ)

 

年齢*20歳

 

性別*女

 

身長*168㎝

 

容姿*原作に準ずる

 

備考*

 

一夏が一夏ちゃん化した影響で原作に比べて一夏に甘くなってしまった人、どちらかと言えば常識人枠ではあるがリク程ではない

 

 

一夏の恋路を応援しているので、『ドイツで教官をしないといけないため、一夏を一人で家で生活させるのは不安』という建前で栗田家で一夏とリクを同棲させるために暗躍した張本人

 

 

 

 

名前*篠ノ之(しののの) (たばね)

 

 

 

年齢*20歳

 

 

 

性別*女

 

 

 

身長*164㎝

 

 

 

容姿*原作に準ずるが原作ほど奇抜な恰好はしていない

 

 

 

備考*

 

 

原作に比べてかなり大人しくなっている世紀の大天才で本作では比較的常識を持って行動してくれる人

 

 

リク(栗田家)とは昔から交流が有り、時々遊びに訪れるほど

 

 

リク曰く頼れるお姉さん

 

 

 

 

名前*栗田 海未(うみ)

 

 

 

年齢*8歳

 

 

 

性別*女

 

 

 

身長*130㎝

 

 

 

容姿*未定

 

 

 

備考*

 

 

リクの妹で長女、現在は両親の海外赴任に伴い海外に居る

 

 

 

名前*栗田 蒼空(そら)

 

 

 

年齢*3歳

 

 

 

性別*女

 

 

 

身長*90㎝

 

 

 

容姿*未定

 

 

 

備考*

 

リクの妹で次女、現在は両親の海外赴任に伴い海外に居る

 

 

 

名前*栗田 陽太

 

 

 

年齢*35歳

 

 

 

性別*男

 

 

 

身長*180㎝

 

 

 

容姿*未定

 

 

 

備考*

 

 

リクの父親、リク曰く高給取り。現在は海外赴任中

 

 

 

 

 

 

名前*栗田 (るな)

 

 

 

年齢*36歳

 

 

 

性別*女

 

 

 

身長*172㎝

 

 

 

容姿*未定

 

 

 

備考*

 

 

リクの母親、リク曰く高給取り。現在は海外赴任中

 

 

 

 

 

名前*(ふぁん) 鈴音(りんいん)

 

 

 

年齢*13歳(新学期から中2)

 

 

 

性別*女

 

 

 

身長*150㎝

 

 

 

容姿*原作に準ずる

 

 

 

備考*

 

 

本作の常識人枠筆頭の予定、束さんと協力して一夏のトレーニングを受け持っている

 

 

流派は不明だが、中国拳法の使い手

 

 

 

名前*御手洗 数馬

 

 

 

年齢*13歳(新学期から中2)

 

 

 

性別*男

 

 

 

身長*175㎝

 

 

 

容姿*やや茶色かかった髪と目をしている眼鏡男子

 

 

 

備考*

 

 

リクと一夏の協力者にしてリクの悪友であり、一夏の内通者

 

 

良くの悪くも普通の少年だが、格闘技経験者で協力者の中では荒事担当(自称)

 

 

 

 

 

名前*五反田 弾

 

 

 

年齢*13歳(新学期から中2)

 

 

 

性別*男の娘

 

 

身長*170㎝

 

 

 

容姿*妹の蘭に似て美少女(男)

 

 

 

備考*

 

 

本作では男の娘になってしまった少年、もともと中性的な見た目をしていた為、小さい頃から女装をしていて女装やコスプレに抵抗がない処か趣味

 

 

またファッションやメイクなども収めているので一夏のトレーニングにもかかわっている

 

 

若干シスコン気味

 

 

躰道(たいどう)という武道を収めていて、荒事にも対応できる

 

 

 

 

 

 

名前*五反田 蘭

 

 

 

年齢*12歳(新学期から中1)

 

 

 

性別*女

 

 

 

身長*152㎝

 

 

 

容姿*原作に準ずるが、少し幼い

 

 

 

備考*

 

 

言わずとも知れた弾の妹、原作と違い一夏に恋心を抱いていないので、本作では一夏の良き協力者

 

 

 

若干ブラコン気味

 

 

空手経験者で見た目によらず強い

 

 

 

 

 






タイトル通り暫定のプロフが完成しました



気紛れで編集したりするかもしれませんが、お許しください


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新年度開始

 

 

一夏がドイツから帰国して約二週間、鈴と束さんによる一夏の女の子トレーニングが行われ、冷静なら繕える程度のクオリティーだが一夏の立ち振る舞いと言葉使いの適正化がなされた

 

 

そんな訳で、絶妙に短い春休みが終わり、新年度が始まるので朝食後、久しぶりに学校の学ラン(せいふく)に袖を通し通学カバンを持って自室からリビングへ行くと、セーラー服を着た一夏が束さんに髪をセットされていて丁度、終わった所の様だったので

 

 

「おぉ、さすが束さん。一夏にピッタリの髪型だね」

 

 

「でしょぉ? 束さん頑張ったよ」

 

 

と束さんは満足そうに言いサムズアップする、ますます見た目だけなら清楚なお嬢様な感じだから俺の好みだから困る、ホント困る

 

 

「一夏、セーラー服似合ってるぞ? っと、そろそろ出ないと遅刻だ」

 

 

「う、うん。分かった」

 

 

リビングの壁に掛かっている時計を見てみると、まだギリギリでは無いものの、あまりゆっくりのも出来ない時間になっていたの気付き、何故か顔の赤い一夏に言いリビングを出て玄関に向かう

 

 

「確か今日は始業式とHRだけで、午前授業だったよね?」

 

 

「確か、その筈。どうしたの?」

 

 

まだ顔の赤い一夏を横目に束さん質問に答え聞き返す

 

 

「ん? あぁまぁ、お昼用意しようかと思ってね?結局春休み中は、リッ君と いーちゃん任せになっちゃったし」

 

 

と束さんは少し申し訳なさそうに言うので

 

 

「いやいや、むしろ それ以外で束さんは充分働いてるからね? その上で家事までやって貰うとか、ありえないから気にしないでよ」

 

 

「そうだよ束さん、ずっと私のトレーニングとか色々の根回しとかで働きっぱなしだったんだから」

 

 

と束さんを2人で説得し、自宅を後にする

 

 

久しぶりに歩く通学路を進みながら路肩に生える桜を見上げ春だなぁと実感していると、ちょうど商店街に差し掛かり

 

 

「アンタたち、遅いわよ」

 

 

鈴が軽く不満そうに仁王立ちしていってきたので

 

 

「いや、約束してないし・・・」

 

 

と素直に言うと、鈴は俺の尻に蹴りをお見舞いしてくれて俺が痛みで悶えていると

 

 

「行くわよ一夏、あたし はリクじゃなくてアンタを待ってたんだから」

 

 

と言って、有無を言わさずに一夏の手を握り歩き始める、こいつマジ許さん と思いつつ蹴られた尻をさすりつつ2人の後を追う

 

 

本当なら直ぐにでも報復してやりたい所だが、そんな事していられる程、時間がないので我慢しておく、いつか絶対に報復してやる、倍返しだ

 

 

そんなこんな漸く尻の痛みが引いた頃、学校にたどり着き

 

 

「鈴、私は職員室に行くから、鈴は教室に行ってて?」

 

 

「・・・大丈夫? 職員室までついて行くわよ?」

 

 

後は1人で大丈夫と言う一夏に鈴が心配そうに言う、傍から見たら少し過保護に見えるかの知れないが、鈴の心配は恐らく一夏のメッキが剥がれないかって部分も含まれている

 

 

「さっさと一夏を職員室に連れてって、俺らは教室に行こう。結構時間もギリギリになり始めてる」

 

 

携帯の時計を見て2人に言うと、鈴は再び有無を言わせずに一夏を職員室に連行して、職員室で一夏を先生に引き渡し、俺達は早足で二年の教室へ向かい、廊下に張り出されたクラス分けの表を見て教室へ入り席順の表を見て自分の席に荷物を置くと

 

 

「おはようリク」

 

 

「ん? あぁおはよ弾」

 

 

あ、今日は男子制服(学ラン)なんだなぁと思いつつ弾に挨拶を返す、俺と身長そんなに変わらないのに弾は中性的だなぁと何度目かの疑問を抱きつつ軽く弾と雑談をしていると予鈴が鳴ったので、席に座り担任が来るのを待つ

 

 

さてさて、一夏は上手く誤魔化せるかな? アイツの性格的には難しいかも知れないが、今後を考えると上手くやって貰わまいと困る

 

 

とか、考えてかなり不安を抱くが俺にはどうにもできないので神頼みしておく

 

 

それから神頼みを数分していると担任と一夏が入ってきて

 

 

「はい、それじゃあHRを始めます。織斑さんの席は、そこだね」

 

 

「わかりました」

 

 

一夏は担任の指示で俺の真ん前の席に座る、まぁ名前順だし たまたまだろう、多分

 

 

 

「この後、始業式があるので手短に、私は担任の堂馬芹です。よろしく」

 

 

黒髪ロングで千冬さんとは違い優しい印象を受ける美人な先生だ、去年は見かけなかったから新任なのかな? か考えつつ先生の話を聞く、聞き流すと後々面倒なのは自分だし?

 

 

 

それから一旦HRが終わり、始業式の為に体育館へ移動を始め一夏の隣に並び小声で尋ねる

 

 

「どうよ」

 

 

「本音を言えば少しシンドイ、気を抜くと絶対ボロが出る」

 

 

と一夏は軽くぼやく、まぁそりゃそうだろう。約3週間前まで十数年男子だったのに、約2週間で言葉使いや所作を女子にしろ、というのは難しいだろう、と思いつつ

 

 

「がんばれって、俺は応援しか出来ないけど、応援だけはしてやるから」

 

 

「うん、私がんばるよ。そして・・・」

 

 

俺が応援したら急にやる気を出した一夏を疑問に思いつつ、俺と転入生美少女(いちか)が親しそうに話してるのを遠巻きに見ている同級生の視線を感じ、少し居心地が悪いが逃げ出せるわけでもないので我慢する事にする

 

 

どうせ、後で囲まれて質問責めになるだろうし?

 

 

 

 

 





お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新年度開始 2

 

 

新学期始業式を終えて俺達は再び教室に戻りHRを受ける、内容は軽く今年度の行事の説明とか色々だ

 

 

とりあえず11月には修学旅行があるから今から少し楽しみだな、とか考えている内にHRは終わり、先生はいなくなっていて俺をクラスの男子が囲んで担ぎ上げられて教室の後ろに連行され審問会が開始される

 

 

「これより審問会を始める、お前 なんであんな美少女と知り合いなんだ?」

 

 

「たまたまだ、たまたま」

 

 

なんか血涙を流しそうな勢いで尋ねてくるクラスメイト・・・梶田の質問に馬鹿正直に答える義理もないので適当に答えると

 

 

「たまたまにしては仲いいじゃなーか! 正直に白状しろよ、陸!!」

 

 

梶田は俺の返答が気に入らなかったのか掴み掛ってきそうな勢いで問い詰めてくる、これは面倒だな・・・馬鹿正直に答えるのもアレだしな、どうするかな

 

 

「だったらなんだ? あの娘は俺の彼女なんだ、とか言ったらお前は納得するのか?」

 

 

正直面倒すぎるので、少しブッ込んでみると、梶田は見るからに動揺し壊れた玩具みたいな動きをして

 

 

「おぉ・・・そ、そうだったら納得するしかないな、なぁ?」

 

 

梶田はキャパが超えたのか周りにいるクラスメイト(男子)を一瞥して同意を求める、なんだこれ

 

 

誤解させたままだと後々面倒臭い事になりそうだけど、今誤解を解いても面倒臭い事になるのが目に見えているからどうしたもんかな? と思って、ふと人垣の隙間から一夏の姿が見えたが、一夏はなんでか微振動をしていた、なぜだ?

 

 

「はぁ・・・一夏は彼女じゃねーよ、親の繋がりで昔から知り合いだっただけだ。なぁ・・・もういいか?いい加減ダルイんだけど」

 

 

「・・・仕方ねー、今回はそれで納得しておいてやるよ」

 

 

俺の説明に梶田は何故か上から目線で言う、なんだコイツ・・・まぁ悪い奴ではないし気のいい奴だ、うん

 

 

ただ少し煩悩に忠実な奴なんだ、うん

 

 

そんな訳で俺を囲んでいた男子の輪から抜け出し

 

 

「帰るか、束さんが待ってるだろうし」

 

 

 

「そう、だね。帰ろうか」

 

 

若干顔の赤い一夏に疑問を抱きつつ荷物を持って教室を出ると

 

 

「お疲れさん、リク」

 

 

なんかニヤニヤしている数馬が合流し肩を組んできて言う

 

 

「なんでニヤニヤしてんだよ、気持ち悪いな」

 

 

「酷い言い草だなぁおい、まぁいい・・・順調みたいで俺は嬉しいぞ?」

 

 

と数馬はよく分からない事を言い笑う、マジで意味が分からない と疑問に思っていると

 

 

「あっリク、束さんが用事で外に出なきゃならなくなったから昼は何処かで済ませてきて? だってさ」

 

 

「おー了解、よし五反田食堂に行くか、丁度すぐそこだし」

 

 

とりあえずニヤニヤしている数馬を無視して一夏へ返事をし五反田食堂へと足を向ける、本当は鈴ん家も近くにあるんだけど何となく中華の気分ではなかったんだ、うん

 

 

 

そんな訳で軽くウザ絡みしてくる数馬を引きずる様に歩を進めて五反田食堂に着き中に入ると

 

 

「おう、いらっしゃい。久しぶりだなリク、数馬」

 

 

と厳さんの威勢のいい声が聞こえてなんか安心しつつ適当な席に座りメニューを見る

 

 

「ん? 一夏はどうした? 一緒じゃないのか?」

 

 

「あー・・・他言無用なんですけど、細かい事は省きます、コイツが一夏です」

 

 

お冷を出してくれる厳さんに説明すると、怪訝そうな表情をする。まぁ当たり前か普通冗談としか思わない

 

 

「何がどうしたら男が女になんだ? 弾と違って化粧で化けてる訳でもないんだろ? 」

 

 

「なんかヤバい薬を使われたらしくって俺も詳しくは分からないんです」

 

 

俺の言葉に厳さんは頷き神妙な面持ちで一夏を見て

 

 

「・・・分かった、信じよう。おう一夏、困ったことが有れば相談に乗るからな、あんま抱え込むなよ?」

 

 

と年長者の貫禄たっぷりで一夏に言う、やっぱ厳さんは頼りになる、安心感がすごい

 

 

 

俺もいつかこんな頼れる大人になりたいな

 

 

 







お待たせいたしました


リハビリ&PC執筆慣らしを兼ねての執筆なので今回は短めでしたお許しください




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新年度開始 3

 

 

 

厳さんが頼りになり過ぎる事を再認識した後、厳さんお手製の業火野菜炒め定食を食べ、キチンと支払いをして店舗エリアから弾の部屋へ移動する

 

弾の部屋に入ると、男子中学生の部屋というより女子(りん)の部屋に近い構成の内装が見えるが、いつもの事なので特に気にせずに適当な場所へ座ると弾が格ゲーの準備をはじめ

 

 

「誰からやる?」

 

とコントローラーを持って尋ねてきたので

 

 

「俺は後でもいいや」

 

 

「私も後でいいよ?」

 

 

「んじゃ、俺が・・・今日こそ弾に黒星をつけてやるぜ」

 

 

「数馬が勝てるかなぁ?」

 

 

 

弾はニヤリと笑みを浮かべながら、なんかやる気に溢れる数馬にコントローラーを渡しながら言う

 

 

まぁ、これまでの戦績からだと間違いなく弾が勝ちそうだ、うん

 

 

そんな訳で、弾と数馬の対戦を眺めつつ本棚から買ってに適当な漫画を取りだし読み始める、これもいつもの事だから弾は気付いても特に反応せずに数馬を圧倒している

 

うん、なんで余所見してて余裕で格ゲーで勝てるんだ?コイツ、マジで

 

 

とか考えていると、開けっ放しになっていたドアの前を弾と良く似た赤毛の少女が通り過ぎて数秒後にドアの前へ戻ってきて

 

 

「リクさん、こんにちわ」

 

 

「おっす蘭、久しぶり?」

 

 

ほんと弾と良く似ている弾の妹の蘭が制服(ブレザー)を着た状態で挨拶をしてきたので返答し

 

「今日入学式だったのか?」

 

 

「はい、さっき帰ってきたんですよ」

 

 

俺の質問に軽く笑みながら蘭は答え

 

 

「ところで一夏さんがいないみたいですが、何か用事があったんですか?」

 

 

大抵一緒に行動している一夏(男)の姿がない事を疑問に思ったようで首を傾げて尋ねて来たので、一度一夏の方を向きアイコンタクトと取り頷いたので頷き返して

 

 

「コイツが一夏だ、この前のモンドグロッソが有ったろ? そん時に誘拐されて、なんかヤバい薬を投薬さてた結果らしい」

 

 

と説明するが、蘭は厳さんと同じ様に怪訝そうな表情をする

 

 

そりゃそうだよな、冗談としか思わないわ普通、とか思いつつどう信じて貰おうか考える

 

 

蘭とは言う程付き合いが長い訳でもないから一夏と蘭しか知らない事象があるとも思えないしなぁ・・・

 

 

 

「蘭、その娘は一夏だよ」

 

 

「・・・お兄がそう言うなら」

 

 

弾が数馬を蹂躙しながら蘭へというと、蘭は頷き言う

 

 

蘭って弾の言葉なら、すんなり納得するんだなって言うか、仲良いよなぁこいつ等

 

 

「一夏さん、困った事が有れば相談してくださいね?鈴さんだけでは手に負えない事も有るでしょうし」

 

 

「うん、ありがとう蘭。その時はよろしくね?」

 

 

フンスと若干ドヤ顔気味で言う蘭に一夏はニコリと笑み言う、うーん・・・やっぱり見た目だけなら好みなんだよなぁコイツ

 

 

あぁ・・・俺はもうダメかも知れない、いやマジで

 

 

「勝てねぇぇぇ・・・」

 

 

勝手に軽く敗北感を感じていると弾に蹂躙され過ぎた数馬が叫ぶ様に言いながら後ろに倒れる、心が折れたようだ、可哀想に(笑)

 

 

「それじゃ少し休憩・・・蘭? 一夏を連行」

 

 

「はいな」

 

 

「え?」

 

 

弾の言葉に一夏が反応するより先に蘭は一夏をお米様抱っこして弾の部屋から出てゆき、弾もニッコニコしながら蘭の後を追って部屋を出て行って俺と数馬が取り残された

 

 

「えぇぇ・・・・」

 

 

「相変わらず見た目からは想像出来ない力の持ち主だよなぁ~」

 

 

戸惑う俺を無視して数馬は暢気に床に寝ころびながら言う、そういや数馬って弾とは小学校からの付き合いなんだっけ?

 

 

「弾には劣るけど蘭の蹴りは痛いぞぉ~?マジで痛い」

 

 

「なんで蹴られたんだよ?練習?」

 

 

「弾はスパーリングだけど蘭のは・・・まぁちょっと怒らせてしまって、な?」

 

 

おいおい割と温厚な方の蘭を怒らせるって何したんだよ数馬、とか思いつつコイツの事だから何か良からぬ事をしたんだろう、と勝手に結論づける

 

 

にしても、なんで弾は一夏を回収していったんだ?わざわざ蘭に命じて、方向的に蘭の部屋に連行してったし・・・

 

 

うーん・・・分からん

 

 

 

 

 






お待たせしました


PC執筆になかなか慣れない今日この頃、ひとまず目標1500文字程度でPC執筆に慣れていきたいと思います




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新年度開始 4



一夏ちゃん視点



 

 

 

弾の一声により蘭に抱え上げられ蘭の部屋の前を通り奥の部屋に運ばれ俺は何が起こったのかがよく分かっていない

 

 

そんな感じで混乱していると蘭は部屋の真ん中に俺を下ろして弾を見てので、俺も弾を見ると

 

 

「それじゃ、リクを誘惑する為に服を選ぼうか」

 

 

と弾はニコニコ・・・いやキラキラして言う、弾って自分を着飾るのも好きだけど、人を着飾るのも好きなんだよなぁ

 

 

とか思いつつ扉の方をチラ見すると蘭が立っていて簡単には部屋を出ることが出来なさそうだ・・・まぁ逃げる必要はないんだけども

 

 

「さてさて、今の一夏にはドレがいいかなぁ・・・」

 

 

弾は俺の返事を聞かずに部屋一面にある服を眺めながら選び始める、俺の見た体感で100着ぐらいありそうだ

 

 

「んん~・・・リクは清楚系が好みだから・・・」

 

 

服を手に取り唸りながら眺めて独り言を呟く、弾の頭の中では今最適解を求めて高速で思考がされているのだろう、多分

 

 

「こうなったお兄は周り見えなくなりますからね、暫くは反応しませんね」

 

 

「う、うん・・・知ってるよ?うん」

 

 

蘭は軽く肩を竦めていうので答えると

 

 

「本気でリクさんを落とす覚悟をしたんですか?」

 

 

「うん、千冬姉には悪いけど人目を気にせずにリクを狙えるようになったからな」

 

 

ヤレヤレ感を出して肩と竦めていた蘭が真剣な表情になり俺へ尋ねて来たので答える

 

 

ホント千冬姉には悪いと思っている、俺が誘拐されたせいでモンドグロッソ2連覇の可能性を潰してしまったし、千冬姉の選手生活を終わらせてしまった

 

 

まぁそもそも、そろそろ引退して後進教育をする教育者になるつもりだったらしいのだが

 

 

で、少しショックだったのは本当は妹が欲しかったと言われた事だけど、今なら少し気持ちがわかる気もする・・・多分

 

 

「そうですか、なら私も微力ながら協力しますね?」

 

 

 

「ありがとう、蘭」

 

 

蘭はニッコリと笑みそう言ってくれたので、俺も笑んで返すと

 

 

「さて一夏さん、リクさんの好みは知っていますね?」

 

 

「ん?うん、清楚系のお嬢様みたいな人だろ?」

 

 

「喋り方、元に戻ってますよ?」

 

 

唐突な蘭の質問に首を傾げつつ答えると蘭は笑顔で圧を掛けてくる、あれ?俺トレーニングの事を蘭に話したっけ?と疑問を抱いていると

 

 

「意識して喋り方を矯正しているのは予想できますよ、お兄の部屋で話した時、いつもと話し方が違いましたし? 一夏さんがリクさんを落とす為に お兄や鈴さんがトレーニングをしない筈ありませんから」

 

 

と蘭は何とも適格に言い当てる、すごいな蘭・・・とか考えていると弾が俺達の方を向き

 

 

「一夏、お着換えの時間だ」

 

 

弾は目をキラキラさせてサムズアップしていってくる、これは間違いなく逃げられない、まぁ逃げないけど

 

 

「それじゃぁ、まずは制服を脱いでもらって、このハンガーにかけてね?皺になったら面倒だから、それじゃ蘭あとはよろしく」

 

 

「まかせて、お兄」

 

 

弾は俺にハンガーと選別した服を渡した後、蘭に告げ部屋を出ていく、弾なりの気遣いの様だ

 

 

「それじゃ一夏さん、制服を脱いでください」

 

 

「なんか怖いよ蘭」

 

 

と蘭が手をワキワキさせながら言いジリジリ距離を詰めて来たので少し後退りながら言う

 

 

 

「あはは、冗談ですよ。さ、早く着替えてリクさん攻略しに行きましょう?」

 

 

「そ、そうだね」

 

 

蘭はクスクスと笑い言いテキパキと俺の着替えの手伝いを始める、なんでか凄く手馴れてる感がする、うん

 

 

着替え終えたら透かさずにドレッサーの前に座らされて髪をセットされる、やっぱり手際が良い、俺と違って女子歴が長いからだろうか?多分

 

 

「よし完成、ささ攻略開始です」

 

 

「う、うん」

 

 

なんか蘭も弾みたいにノリノで戸惑うし、いざリクに見せるとなると何でか緊張してきて足が進まない、そんな俺を蘭は再び抱きかかえて輸送し弾の部屋で下し

 

 

「どうですか、リクさん」

 

 

「お?おう、良いと思うぞ?うん」

 

 

とそんな声を聴きながら俺は色々と我慢する、リクの好みは清楚系 慎ましい方が良い

 

 

 

今は我慢だ、嬉しい過ぎてもうたまらん、我慢だ 織斑一夏

 

 

 







お待たせしました


一夏ちゃん、こんなでいいっすかね?w




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1次攻略作戦


続一夏ちゃん視点




 

 

 

そんなこんな1人で煩悩と戦っていると

 

 

「カズ君、ちょっと来て」

 

 

「なんだよ?」

 

 

蘭は数馬を呼び自室へ連行していく、なんだろう? と言うか弾はどこ行ったんだ?なんで部屋の主がいないんだ、そして今俺をリクと二人きりにしないでくれ、煩悩が爆発してリクを押し倒しそうなんだから、さ!!

 

 

こういう時は深呼吸して素数を数えると良いって束さんが言ってたぞ、よし・・・深呼吸して・・・素数ってなんだ?

 

 

と、こんな感じで内心荒ぶっていると

 

 

「大丈夫か?」

 

 

「う、うん、大丈夫・・・大丈夫」

 

 

リクが俺の様子がおかしい事に気付いて尋ねて来たので答え、幸せをかみしめる

 

 

あぁ、俺は幸せだ。両親は他界していて肉親は実姉が1人、誘拐されて性転換したけど、俺は好きになった人と同じ時を生きている

 

これ以上の幸せは中々ないんじゃないだろうか?

 

 

「無理するなよ?なにせ慣れない事ばっかりだろ?」

 

 

「ありがと、でも本当に大丈夫だから」

 

 

リクは軽く心配そうな表情で言ってきたので、微笑んで答え

 

 

「それはそうと、弾は?」

 

 

「弾?あー・・・なんか少し前に下に行ったっきり戻ってきてないな・・・」

 

 

俺の質問にリクは首を傾げて言う、弾が下に行ったのが俺が着替え始めた直後と仮定すると、髪のセットも含めて結構な時間が経ってしまっている筈なので、少し用と済ませる程度なら時間が掛かり過ぎている、となると

 

 

「厳さんに用事を頼まれた、のかな?」

 

 

「あぁー・・・そうかもな、うん」

 

 

そんな感じで結論づけていると

 

 

「ふぅ・・・あ、一夏 着替え終わったんだ?うんうん似合ってるよ、流石は俺」

 

 

なんか一仕事終えた雰囲気の弾が戻ってきて俺を見て自画自賛する、まぁ間違った事言ってないんだけどね?うん

 

 

「それじゃ、二人でデートにでも行ってきてよ?」

 

 

「なんなんだ?唐突に」

 

 

「えっっ!?」

 

 

弾は本当にニッコリと笑み言いリクは怪訝そうに返事をし、俺は驚いて返答が出来ないでいると

 

 

「ほら折角一夏を着飾った訳だしさ?勿体ないじゃん?」

 

 

と弾はより一層ニコニコと笑みを浮かべサムズアップしていう

 

 

「まぁ時間もそんな無いから遠出は出来ないけど、少しは良いんじゃないかな?」

 

 

「・・・しゃぁねぇか」

 

 

ニコニコしたまま弾がリクの傍により何かを耳打ちをしてリクが何かを悟った様な表情になり呟き

 

 

「行くぞ、一夏」

 

 

「え?あ、あぁ・・・うん」

 

 

リクは立ち上がり手を差し出してきたので軽く邪念と戦いながらリクの手を取る、やべ俺やっぱり幸せだわ、もう天にも昇る気分だ

 

 

「それじゃ、楽しんできなね~? あぁ制服と荷物は気にしないで良い、後で数馬とリクん家に運んでおくから、さ」

 

 

「おぅ、頼んだぞ?弾」

 

 

「え?あ、ありがとう?」

 

 

なんかお母さんみたいなオーラを纏い始めた弾にリクはそう言い俺の手を引き弾の横を通り廊下に出る

 

 

「お?蘭の言った通りか、楽しんで来いよ~」

 

 

「リクさん、一夏さんは美少女なんですからキチンと守ってくださいね?」

 

 

丁度蘭の部屋から出てきた数馬と蘭が、それぞれ言いたい事を言う

 

 

確かに男だった時以上に千冬姉に似た顔になったけど、俺ってそんなに美少女なんだろうか?自分的には普通だと思っているんだけど・・・あとこう美少女、美少女と褒められると訳もなく照れて恥ずかしくなってくる

 

 

「分かってるって、一夏は蘭みたいに暴漢を胴回し回転蹴りで無力化できないからな、まぁ俺も出来ないけど」

 

 

「なんです?今度教えましょうか?喜んでその身体に教えてあげますよ?」

 

 

「リク、やめとけ。マジで痛いぞ?蘭の胴回し回転蹴り」

 

 

「カズ君、後で組手ね?」

 

 

リクの言葉に蘭はニッコリ笑み言うが、琴線に触れたのか笑顔が怖いな・・・あと数馬は余計な事を言うから、ドンマイ

 

 

それはそれとして、俺も護身術を履修しておくべきかな?

 

 

 







お待たせいたしました


弾の一人称と蘭が数馬を呼ぶ時の呼び方は、ちょっと悩んでいる所で、もしかしたら後で変更するかも知れませ、特に弾の一人称


ご意見ありましたら、コメント等お待ちしております



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1次攻略作戦 2


リク視点


 

 

 

訳有って弾の指示の元、一夏とデートに行くことになった訳だが、弾や数馬・蘭の様に 今まで彼女が出来た事がない俺にデートの仕方なんて分かる訳がなく、どうしたものかと割と頭を悩ませている

 

 

と、まぁそんな感じで、特に目的地も定まっていないのに五反田家から送り出され、俺達は一先ず商店街へと向かう事にした、あそこならデートの(てい)を繕えるだろう、多分

 

 

まぁ向かうと言っても、距離は然程離れていないんだけどな

 

 

そんな訳で2分足らずで商店街へ辿り着き

 

 

「さて・・・何処か行きたい場所、有るか?」

 

 

「ん~・・・そうだなぁ~・・・肉屋?」

 

 

一夏に要望を訪ねてみると、何ともデート先と思えない場所を口にしたので、コイツ大丈夫か?と思ったが、何も思いつかない俺よりはマシか、と思い直し一応理由を尋ねてみる

 

 

「なんで肉屋?」

 

 

「え?だって今日の夕飯分の買い物してないから家に材料ないし、丁度 商店街に来てるから、ほら いつものスーパーとは反対側だから」

 

 

コイツ、本当に中学生か?と思う理由を言う一夏に少し戦慄しつつ、見た目が美少女故に家庭的な印象を受けて、また俺のSAN値が削られている様な気がするし、親友達の全てが一夏の支援に回っているから俺には逃げ場が無い、質が悪い事に今の一夏の見た目は極めて俺の好みなんだ、もうド真ん中だよ、マジで

 

 

そう俺の好みは弾を始めとして蘭まで知っている、だから俺のSAN値が凄い勢いで目減りしてる気がする

 

 

「まぁ、お前がそれでいいなら・・・」

 

 

「うん、行こう?」

 

 

一夏は俺の手を取りニコッと笑み歩み始める、その笑みに不意にドキッとしてしまい俺は自分が思っている以上にやられているのかもと思い始める

 

 

あー・・・俺はダメかも知れない、割とマジで

 

 

そんなこんなで肉屋まで移動し、一夏がショーケースをのぞき込みながら

 

 

「今日は何食べたい?」

 

 

「そうだな・・・うーん」

 

 

一夏にリクエストを聞かれ考える、こういう時に何でも良い何て絶対に言ってはいけない、言われた側はクッソ面倒臭いと感じるからだ

 

 

何でも良いと言っておきながら、いざ出した時にアレの方が良かったとか言われた日にはブチ切れられても文句を言えないのだ、いやマジで

 

 

因みに俺だったら、弟妹相手でも切れて出した物を下げるし、反省するまで絶対に出さない

 

 

まぁそんな訳で夕食のメインを考える、もう春だから鍋は違う気がする・・・これは悩ましい

 

 

と頭を悩ませながら俺もショーケースを覗き込み献立を試案していると、俺の目に鶏もも肉が目に入り

 

 

「一夏、唐揚げとかどーよ?」

 

 

「唐揚げ?良いね、唐揚げ」

 

 

俺の提案に一夏は同調しニコニコと笑んだ後、鶏もも肉をソコソコの量購入し

 

 

「よし、次は八百屋だね」

 

 

「だな、付け合わせは何が良いだろ?」

 

 

そんな会話をしながら、ふと束さんって今日戻ってくるのか?と思う、用事って言ってたし束さんの性格から考えて、家に戻ってきそうではあるけど、用事の内容次第では戻ってこれない可能性も十分ある、と結論を出し

 

 

「そういや、束さんの用事ってなんなんだ?」

 

 

「さぁ?詳細までは分からないけど、ラインには夕飯までには帰る予定って書いてあったよ?」

 

 

「そっか・・・ふぅん」

 

 

夕飯までに帰ってくるなら良いか、それにしても束さんの用事ってなんだろう?

 

 

なんだかんだで束さんって本業が何か分からないし・・・仕事関連か?と言うか束さんが働いてる所見たことないな

 

 

まぁ当たり前か、オフの時にしか会わない訳だし、少なくとも在宅業ではないのだろう、多分

 

 

そういや、箒は元気かな・・・いやアイツが風邪を引くと思えないし、多分元気だろう

 

 

束さんの事だ、定期的に会いに行ってるだろうし、夕食の時に聞いてみよう。剣道まだ続けてるか少し気になるし

 

 

まぁ、これデートではないな、あとで弾に文句言われそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

体力テスト

 

弾の指示の元に行ったデート擬きは予想通り弾達のお気に召さなかった様で、主に弾と蘭に かなり説教を食らってしまい軽くトラウマになりそうだ

 

 

弾の目にハイライトが無くって、その状態で滾々と刷り込む様に説教されるんだ、マジでトラウマものだった

 

 

まぁそんな事が起きようと時が止まる事は無く約1週間が経ち、体力テストの日がやってきた

 

 

「体力テストか・・・めんどうくさい」

 

 

「普通の座学よりはマシじゃね?」

 

 

俺が机の上に頬杖をつき呟くと数馬が俺の肩をポンポンと軽く叩きながら言う

 

 

 

「そうかもなぁ・・・」

 

 

数馬の言葉に、そうかも と納得する

 

 

なんか最近夢見が悪くて眠りが浅いのか、あんまり寝た気がしないんだよなぁ・・・困った

 

 

そんな事を考えながらカバンから体育着を取りだしつつ、新学期が始まってから何度目かの教室で着替え始めようとした一夏を鈴が連行して行き、クラスメイト女子が教室から居なくなったのを確認してから着替えを始める

 

 

体育着に着替えるだけなので大した時間はかからずに着替え終わり、某青セイバーみたいに髪を纏めた弾と数馬と共に体力テストの会場である体育館へ向かう

 

 

相変わらず器用だな、俺には真似できない。いやまぁ真似しないけど、そもそも髪の長さが足らないし・・・一夏も似合いそうだな、この髪型

 

 

そんなこんな邪念を抱きながら体育館に到着し中に入り適当な場所で弾達と軽く雑談をして時間を潰し先生の号令でクラス毎に整列し授業が始まる

 

 

「んじゃ授業を始めるぞ? 今日は午前全部使って体力テストをする、シャトルラン以外の項目は自由に回って良いが、四時間目にシャトルランを一斉にするので、それまでに全部回る様に、各項目には記録担当がいるから用紙を渡して記録をつけてもらう様に、それでは散開」

 

 

先生は軽く説明をした後、散る様に支持をだし体育館の外に出ていく、そういや外じゃないと出来ない項目もあったな、うん

 

 

「さてさて・・・どれから行くかな」

 

 

シャトルランは最後にするから除外するとして、面倒そうな奴から終わらせるかぁと決めて外で計測する項目を終わらせるために内履きから外履きに履き替えグラウンドに出る

 

 

「・・・晴れてるな」

 

 

雨よりはマシだが、やや寝不足で快晴の日差しがキツイと感じつつソフトボール投げの場所へ移動する

 

 

「リク、大丈夫?」

 

 

「おぅっっ・・・一夏か、ビックリした」

 

 

少しぼぉ~っとしていた様で後ろから一夏に声を掛けられるまで気付かず、思わずビックリしてしまった

 

 

鈴にセットされたのか教室から連行されて行った時と髪型が変わっている、連行前はハーフアップだったが、今は運動する事を考えて某艦隊をコレクトするゲームの電みたいに纏めて結ってアップスタイルでセットしてある、似合ってるな

 

 

 

「朝も聞いたけど、あんまり顔色良くないよ?」

 

 

「大丈夫だって、少し寝不足なだけだから」

 

 

「でもリクが、こうゆう時に大丈夫って言うけど、大丈夫じゃない事が多々あるから・・・」

 

 

俺の邪念を知らない一夏が、かなり心配そうな表情をして言うので説明をするが全く信じていない様だ、過去の行いのせいだな、多分

 

 

「そこまで向こう見ずでもねーよ、よっしゃやるか」

 

 

と一夏に言い俺は用紙を記録係に渡し、ソフトボール投げのサークルの中に入りソフトボールを手に持ち感触を確かめつつ考える、これって上投げだっけか?と

 

 

「なぁ一夏、ソフトボール投げって上投げだっけか?」

 

 

「え?あぁ、うん。そうだよ?」

 

 

「そっか、さんくー」

 

 

俺は一夏にお礼を言い今一度ソフトボールの感触を確かめて投げやすい位置を探り、しっくり来る位置で持ち全力で遠投する

 

 

「記録、24.89m」

 

 

「・・・パっとしない記録だなぁ」

 

 

計測係の申告を聞き何とも言えない気分になる、悪くもなく良くもない本当パッとしない記録だ

 

 

そんな感じで2投目も投げたが、2投目も変わらずパッとしない記録を叩き出し、何とも言えない気分になる

 

 

因みに一夏は、俺より良い記録を出していた、マジでコイツすげぇな

 

 

これは筋トレとかしなきゃな、あとで弾と数馬に相談しよう、もしもの時に一夏を守らないといけないしな

 

 

 

 





お待たせしました


*2月2日、一部加筆修正を行いました


*2月6日、一部加筆修正を行いました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怠慢の代償

 

 

「・・・知らない天井だ」

 

 

目を開けると清潔なベッドに寝かされていて、ソコソコシミのある天井が見えたので、なんとなく呟きつつ何で保健室に居るのかを考える

 

 

「・・・えぇっと・・・確か一夏とハンドボール投げをした後も一緒に項目を埋めに回って、それから・・・」

 

 

寝起きでイマイチ鈍い思考をフル回転させ思い出す、そうシャトルランまでは鳴かず飛ばずの平均的な記録を出してたんだけど、結構怠くなってたけどシャトルランに挑んだんだ

 

 

「そう、シャトルランを受けて・・・あー・・・そうだ、そのまま貧血でも起こしたか」

 

 

シャトルランをゴールした瞬間まで思い出し、微かに痛む額に手をやり呟く

 

 

 

これは一夏に後で怒られそうだ、失敗したなぁ

 

 

とは言え、仮眠を取れたお陰で気分は良くなったのは怪我の功名と言えるのではないだろうか? 多分使い方間違ってるけど

 

 

「さてさて、今は何時だろ?」

 

 

このまま中々快適な布団の中に居たい所だが、起きてしまった以上は居座る訳にも行かないので体を起こし軽く伸びをすると

 

 

「もう放課後だよ」

 

 

「マジか、3~4時間寝てたのか・・・一夏?!」

 

 

余りも自然だったので流しそうになったが、視界に一夏の姿を捉え軽く驚きながら一夏を見ると、微笑んでいるが纏うオーラが修羅のソレで如何にも怒ってますな感じで、軽く焦っていると

 

 

「良かったよ、目を覚まして・・・言い訳は有るか?」

 

 

「お、おぉぅ・・・ないです、はい」

 

 

途中までは繕えていた一夏のメッキが剥げたが、そんな事を気にする余裕なんてない程のオーラに押され、俺は一夏に ただただ(こうべ)を垂れ許しを請うしか出来ない

 

 

そもそも一夏は自分自身の事柄で基本的には怒らない人間だ、誰かの為を思い1mmの下心やマウント意識がない純度100%善意で怒れる聖人の様な人間なのだ、そんな一夏が怒っている原因が俺なら潔くコウするしかないと思いベッドの上に正座をして土下座をする

 

 

「おいリク、俺は再三 確認をしたよな?大丈夫か?って、そしたらお前なんて言ったか覚えてるか?」

 

 

「えぇっと・・・確か、大丈夫と答えた・・・かな?」

 

 

仁王立ちに移行し、俺を見下ろしながら問うて来たので、俺は記憶を探り答える

 

 

「お前は『そこまで向こう見ずでもねーよ』って自信を持って言い切ったんだぞ?でも結果はどうだ?倒れてんじゃなーか、お前ふざけてるのか?」

 

 

「いや、その・・・いけると思ってたんだけど・・・」

 

 

「判断が甘いよ、このアホ」

 

 

一夏の怒りの熱が冷めて来たのか、怒りオーラが弱まってきて何か言葉使いがメッキを再装着してくる

 

 

「ほんと、心配したんだから」

 

 

「・・・すまん」

 

 

一夏の本当に心配していたであろう声を聴き、反省する

 

 

何が一夏を守らなきゃだ、何がフォローしなきゃだ、一夏に心配かけてたら元も子もないじゃないか

 

 

「・・・そろそろ良いかしら?」

 

 

「うん、ありがと」

 

 

保健室のドアが開き鈴が入ってきて言い、一夏がお礼を言う。多分鈴が根回しして保険室近辺から人払いをしてくれてたんだろう

 

 

「リク、次は無いわよ?次、無茶して一夏を悲しませたり心配させたりしたら、アタシがアンタを殺すわよ」

 

 

「わ、わかった」

 

 

と鈴はガチめの殺気を込めた視線を俺に浴びせてくる、これは本気だなと理解し次が無いようにしようと心に誓う

 

 

「一応アンタは病み上がりだし、説教は今日の所は勘弁しといてあげるわ。それじゃぁ帰りましょう?弾と数馬も待ってるわ」

 

 

「そうだね、帰ろう?」

 

 

「そうだな・・・って俺は まずは着替えなきゃだわ」

 

 

「あ、リクの荷物ならソノ椅子に置いてある奴だよ」

 

 

なんとも手際の良いフォローを貰い罪悪感が更に積もっていく様で肩が重い様な気がする

 

 

 

あぁぁ・・・こんな美少女に介抱されたら危うくコロッと落ちてしまいそうだ、気を付けなければ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 







お待たせいたしました



本当は体力テストの続きを書く予定が、説教回になってしまったw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

葉桜

 

 

 

寝不足が原因で貧血を起こし一夏に心配と鈴に オマコロ宣言をされてから約2週間が経ち春の陽気から夏の気配を感じ始める季節となり衣替えが行われた

 

 

冬用の黒いセーラー服も かなり似合っていた一夏は、中間期用の白の長袖セーラー服も似合っている

 

 

最近では束さんの手を借りずに髪のセットを自力で完遂出来るようになったので、相変わらず飲み込みが早い様だ

 

 

簡単なセットなら俺もウミとソラのをしていたから出来るが、流石にハーフアップや編み込み系は無理だ、ほんと一夏はってか世の中の女子はすごいと思う、マジすげぇ

 

 

 

「いてぇ・・・」

 

 

「リクさん、もう終わりですか?まだ始めて10分ぐらいしか経ってませんよ?」

 

 

俺は仰向けに倒れ蘭の声を聴きながら、そろそろ現実逃避を辞めようと決意し立ち上がり防具がズレていないか確認する

 

 

 

「まだまだ行ける」

 

 

「そうで無ければ困ります」

 

 

俺は緩く構えている蘭を視界に納め距離を測りながら近づく

 

 

さて、なんでこんな事をしているかと言えば、弾伝手で俺が無理して一夏に心配をかけた事が蘭の耳に入って俺が蘭に護身術として色々使えそうな技とかを教えて貰う為に蘭と組手をしている

 

 

因みに相手が鈴ではなく蘭なのは鈴だと素人(おれ)に使ってはいけない技を使い殺しかねない、という弾の判断だ

 

 

その事が不満だったのか俺の代わりに組手の相手をした数馬を八極拳の肘撃(ちゅうげき)で吹っ飛ばしていたので弾の判断は正しかったと思う

 

 

そんな訳で俺は深呼吸をして蘭を見据える、当たり前だが隙が無い流石は全国大会常勝者だ

 

 

今後、俺に必要なのは誰にも負けない戦闘力ではなく一夏と俺自身が死なずに出来るだけ無傷で障害から退避するスキル、または危機を察知し回避するスキルだ

 

 

だから、今やるべき事は目の前の強敵(らん)から隙を見つけるか、隙を作り出す方法を模索する事

 

 

「・・・まぁ言う程簡単じゃないわな」

 

 

「なんです?なんか言いました?」

 

 

瞬き(まばた)をしたタイミングで蘭は間合いを詰め右中段蹴りを放ってきたので必死に後ろへ跳ぶが蘭の左上段回し蹴りが右顔面にクリティカルヒットし意識がブレる、おいおい防具越しだぞマジかよ、とか思っている内に地面が起き上がってきて一夏の声が聞こえた瞬間、意識が途切れた

 

 

どれ位経ったか分からないが、なにやら柔らかい感触を後頭部に感じつつ目を開けると今日は緩く髪をおさげにした一夏が目に映り、相変わらず見た目は好みだなと思い少し一夏を観察しておくと俺の視線に気づいたのか一夏が俺を見下ろし

 

 

「あ、起きた?大丈夫?」

 

 

「あぁ・・・なんとか」

 

 

なんか嬉しそうな一夏に答え身体を起こし一夏の方を向くと少し不満そうな表情をしていたが敢えてスルーする事にしよう

 

 

と言うか、一夏は何で俺に膝枕してんだ?重いだろうに・・・

 

 

「ほんとに大丈夫?まだ寝てて良いんだよ?」

 

 

「い、いや、もう大丈夫、うん」

 

そう言い一夏は自身の脚をポンポンと叩きながら言う、見た目は大変好みなので、とても魅力的だがこのままでは外堀が埋まりきって真っ平になりそうなので誘惑に打ち勝ち、言うと一夏は更に不満そうな表情をする

 

 

それを見ていて、コイツがこう言う表情をするのは珍しいっていうか、こう言う表情もする様になったんだなぁと思う

 

 

「ほんとに大丈夫?この前の前科が有るからイマイチ信用出来ないんだけど?」

 

 

「・・・それは痛い所を突いてくるなぁ」

 

 

「よし、なら、はい、寝て」

 

 

おっとコレは強制イベントだったようだ、回避できないわ。俺は一夏との交渉?に負け、再び一夏の膝枕を享受する

 

 

あぁ・・・中身が一夏じゃなければ惚れては俺、こんな美少女が こんなに甲斐甲斐しく世話してくれたら間違いなく落ちる、これすなわち必然・・・中身が一夏でなければな、うん

 

 

まぁそもそも一夏じゃなかったら、俺にこんなに甲斐甲斐しく世話しないだろうけどな、うん

 

 

二律背反って奴か、多分使い方間違ってるけど

 

 

 

 

 







お待たせしました


数馬の扱いが、やや雑でスマナイw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黄金連休明け

 

 

 

蘭の回し蹴りによって起こった一夏による強制膝枕イベントが有ったり、これまで我が家に同居して、一夏に女子化トレーニングを施していた束さんが『仕事が溜まってるから、そろそろ一回戻らないと』と残念そうな表情をして我が家を旅立って行った

 

 

そんなゴールデンウイークが明けた今日この頃、いつもの様に一緒に登校し下駄箱を開けた一夏が珍しくあからさまに眉を寄せて不愉快そうな表情をしているのが見え、ほんと珍しいなと感じる

 

 

 

二月(ふたつき)前までは、こうもあからさまに不愉快そうな表情をあまり見せなかったのに今では時々見せる様になった、まぁ時々と言っても本当に珍しいんだけどな

 

 

「どーしたよ」

 

 

「・・・これ」

 

 

とりあえず一夏の異変に気付いたので尋ねると、一夏は2つの封筒を俺に見せて来たので

 

 

「ふぅん、なるほど・・・ここで開ける訳にもいかないし、教室に行こうぜ」

 

 

「・・・うん」

 

 

封筒の中身を察して俺は一夏に言い、一夏と共に教室へと向かいながら、とうとう来る(きたる)日が来てしまったか、と思う

 

 

実は、そろそろ来るんじゃないか?とは思ってはいたんだ、新学期が始まって約1ヵ月が経ち、新入生も新しい生活に慣れてきただろうし、こんな美少女が目立たない訳がないし、一夏は性格の最良の部類に入る

 

 

そんな聖人君子みたいな美少女へチャレンジするなって方が理不尽だろう、多分

 

 

まぁ・・・一夏本人が、それを迷惑と思うかは別の話な訳だけども

 

 

そんなこんな少し憂鬱そうな一夏と共に教室へ入りクラスメイトに適当に挨拶をしつつカバンを机にかけてから時計を見て、まだ時間に余裕がある事を確認してから一夏の横に移動し

 

 

「教室で開けるか?」

 

 

「ん~・・・流石に差出人に悪い気もするし人気(ひとけ)のない場所で読みたいかな」

 

 

小声で尋ねると一夏は少し困った様な表情で言う、人気のない所・・・か

 

 

HRが始まるまで約15分、内容次第ではHRの直後に呼び出してる可能性もあるから、さっさと確認するにこしたこと無いけど、なかなか難しいな・・・あ、俺が付きそう必様無いからトイレの個室でも問題ないのか、と結論付け

 

 

「トイレの個室で、パパっと読んできたらどうだ?」

 

 

「あぁ・・・そうだね、そうする」

 

 

俺の言葉に一夏は頷き2つの封筒をスカートのポケットにしまい、相変わらず少し憂鬱そうな表情で教室を出て行き、いつの間にか登校していた鈴が、その後を追っていく

 

 

鈴が居れば大丈夫だろう、多分

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

一夏視点

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

最近漸く一人称を私と言っても違和感を感じなくなってきた今日この頃、私は下駄箱に入っていた2つの封筒を見て、あぁ再開したなぁと感じ、断りに行かなきゃな と思いながら2つの封筒を手に持ち軽く宛先の部分を見て、思わず眉が寄るのを感じる

 

 

なぜなら、片方は普通のラブレターだけど、もう片方はラブレターに偽装したナニカだったからだ、そもそも偽装の方は紙にしては重量が有り過ぎるしバレバレだ

 

 

私に、偽装ラブレター(コンナモノ)を送り付けてくる人に心当たりは全くないが、弾か数馬かリクの誰かを狙ってる娘なのかな?よく女の嫉妬は怖いと聞くけど、それは本当だったのかも知れない。そもそも弾と数馬は結構前から彼女居るんだけどね?

 

 

 

そんな感じの事を考えていると、リクに異変を悟られてしまい尋ねられたのでバレない様に2つの封筒を見せて説明して一旦教室を経由してからリクの提案でトイレの個室で開封する事にした

 

 

個室に入って通常ラブレターを読む、内容は まぁ在り来りのベタな感じだったが、本人なりに頑張ったんだなぁと思える字だった、まぁ断るんだけどね?

 

 

「さて・・・行きますか」

 

 

通常ラブレターをポケットにしまい、慎重に偽装ラブレターを開封して中身を確認すると中には大量のカミソリの刃と便箋が1枚入っていたので、ハンカチを左手に広げてその上にカミソリの刃を全部出してから便箋を取りだす

 

 

「さすがにカミソリに毒が塗ってあるとは思えないけど、抜き身だと危ないからなぁ・・・さてさて、どんな言葉が書かれてるかな?」

 

 

軽く独り言を呟きながら便箋へと目を通すが、おおよそ予想通り私への罵詈雑言と警告の文面が書かれていて、差出人の意中の相手はリクだった

 

 

弾や数馬なら、2人に相談して差出人を探し出してOHANASHIするだけで済ませるつもりだったけど、相手がリクなら話しは別だ、これはもう徹底抗戦する他ない、もちろんリクには秘密にしないといけない、心配かけたくないしね?

 

 

差出人、お前がそのつもりなら受けて立とうじゃないか。ここから戦争開始だ。私は10数年もの間、想っていたんだ、リクは誰にも渡さない

 

 

 

リクを幸せにするのは、この織斑一夏(オレ)

 

 

 

 





おまたせ致しました



なんか知らん間に予定になかった事を書いてましたw



おっかしいなぁ、能天気ストレスフリーの筈がw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一次作戦会議



一夏視点


 

 

私が決意を固めていると、個室の扉がコンコンと控えめにノックされ

 

 

「一夏?大丈夫?」

 

 

と鈴の声が聞こえる、どうやら鈴に後をつけられていた様だ、相変わらずネコみたいに気配を消すのが上手いなぁ

 

 

「うん、問題ないよ鈴、ありがと」

 

 

一先ず鈴に返事をしながらカミソリを包み込んだハンカチと手紙を手早くポケットにしまい、個室を出る

 

 

「・・・ポケットの中身を出しなさい」

 

 

「え?何の事かな?」

 

 

出た瞬間に鈴に言われ少しドキッとしたが表情を繕い誤魔化そうとしてみるが

 

 

「あんた、嘘をつくのに向いてないわよ、すぐ顔に出るんだから。もう一度だけ言うわ・・・ポケットの中身を全部出しなさい、これはお願いじゃないわ。命令よ」

 

 

私より10㎝以上背の低い鈴から想像できない程の物凄い気迫で言われ私は渋々ポケットから通常ラブレターを取りだし鈴に渡す

 

 

「・・・あら、全部とアタシは言ったのだけれど、聞こえてなかったのかしら?」

 

 

通常ラブレターを受け取った鈴は中は開かずに軽く見分してから私を睨む様に見て言い威圧してくる、なんでかバレてしまっている様だ、なんでだろう?

 

 

とりあえず偽装ラブレターも取りだし鈴に渡すと、鈴は迷わずに封筒から便箋を取りだして文面を確かめて

 

 

「・・・これほどのテンプレな罵詈雑言を目にする日が来るとは思わなかったわ」

 

 

「それについては私も同意見だよ」

 

 

鈴は呆れた様子で肩を竦めて言い私はそれに同意する

 

 

「にしても、この学校にこんなのが潜んでいるとは思わなかったわ。リクも変なのに好かれたわね」

 

 

「そうだね、でもまぁ・・・仕方ないかな?リクってなんだかんだ言っても面倒見良いし」

 

 

「それはアンタの影響と妹の世話してたからよ」

 

 

鈴の言葉に返事をすると鈴は呆れた様子でため息をはいて言いヤレヤレ感を出され私は首を傾げるしかできなかった

 

 

鈴の言う事はよく分からないけど、リクの良い所は沢山あると思う、なんだかんだ言いながら私のやる事に付き合ってくれるし、困っている人を助ける事が出来る人、そして私の気持ちを尊重し拒絶しないでくれた

 

 

同性愛に嫌悪を抱く人も少なからずいる中で、リクは嫌悪を抱かず理解を示してくれた。リク自身は同性愛者ではないのに、だ

 

 

そんなリクが、これまでモテなかったのが不思議な事だったのだけど、リクに想いを抱く娘が居ると分かって少し嬉しい反面、危機感を抱いている。変な娘がリクにちょっかいを掛けないか、と言う危機感を

 

 

リクが傷付く事が起こって欲しくないからね、うん

 

 

 

「さて・・・まだ中身が足りないけれど、それについては見逃すとして・・・どうするつもり?」

 

 

「ん?どうするって?なにが?」

 

 

鈴の言葉の意図が分からずに聞き返すと

 

 

偽装ラブレター(これ)の差出人について、よ」

 

 

 

鈴は偽装ラブレターをプラプラと軽く振りながら言ってきたので質問の意味を理解し

 

 

「もちろん全面戦争、徹底抗戦するつもりだよ。もちろん正々堂々とね!」

 

 

私はニッコリ笑み鈴にサムズアップして言うと、鈴はあからさまに呆れた表情をして

 

 

「アンタねぇ・・・ほんと・・・はぁぁ」

 

 

鈴はなんか言いたそうにしていたが何でか言葉が出てこなかった様だ、なんでだろう?

 

 

「あぁ~・・・リクには話さない方が良さそうね、取り合えずアタシの方でも少し探ってみるわ、だからしばらくは出来るだけ目立たないで頂戴、良い?」

 

 

「うん、善処はしてみるよ、善処はね」

 

 

鈴に言われ一応頷いておくけど、私自身は目立とうとして行動していないから目立たない方法と言うのが分からないから、意識していくしかないのかもしれない、うん

 

 

「あ、その前に通常ラブレター(これ)の方を処理しておかなきゃね、本気の様だし」

 

 

「そうだね、お断りしに行かなきゃ」

 

 

一先ずは放課後にお断りをしに行かないと、私はリク一筋なのだから

 

 

 

 

 

 






お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黄金連休明け2




リク視点


 

 

一夏と鈴を見送り、とりあえず教科書とかをカバンから机に移そうと思い自分の席に座りカバンから教科書を出して机に入れた瞬間、何か紙っぽい物を潰した感触を感じ、机を探り違和感の正体を取りだして眺める

 

 

つい先ほど見た物と同じタイプの封筒で、宛先には丁寧に俺の名前が書かれているが、差出人の名前は封筒には書かれていない、持った感じは紙っぽいな

 

 

 

さて・・・これはラブレターか?マジかよ、初めて貰ったわ。一夏が戻ってくる前に中身を確認してしまおう、そう決めて俺もトイレの個室へ向かい個室で封筒を開封し中身を確認する

 

 

 

「・・・なんだろう、なんか思ってたのと違う」

 

 

テレビとかあんまし見ない方だけど、漫画とか読むしラノベのソコソコ読むから、こういうラブレターのテンプレって何となくわかるんだけど、これは想いが重いし差出人の名前が便箋(なかみ)にも書かれていない

 

 

まぁ、呼び出しの場所と時間が書かれてはいるからまだマシなのかも知れないけど・・・いや、そんな訳ない普通に怖いわ、うん

 

 

こんな好感度を稼いだ覚えないし、身に覚えがない。マジでない

 

 

そりゃぁ、一夏と・・・ってか、一夏に巻き込まれて色々と人助けもしたけど、俺が自主的にした訳じゃなく一夏に巻き込まれただけだから、一夏の好感度が上がるならまだしも俺の好感度が上がる訳がないし、いちいち何処で誰の手伝いをした とか、何をしたか なんて覚えてない

 

 

そんな事より、下の妹(そら)に どうやって好き嫌いさせない様に、バランスよく食べさせるか の方が重要だったしな、うん

 

 

三歳児の健康管理って気を使うんだ、マジで。一夏が協力してくれて良かった・・・まぁ苦ではなかったな

 

 

 

「・・・さて、どうしたものか」

 

 

まぁ、どうしたもこうしたもない、答えは決まっている。呼び出し場所に行き断れば良い、ただ文面から滲み出てる闇のオーラ的なものが不安だ、断ったら逆上して殺しに掛かってきたりしそうでマジで怖い

 

 

行かなかったら行かなかったで後が怖いからなぁ・・・弾とか数馬に相談してみるか・・・いや、弾と数馬は一夏について行って貰わないとな、もしもの時に鈴だと過剰にダメージ与えそうだし

 

 

「・・・怖いけど1人で行くしかない、か」

 

 

俺の周りには、何でか凄めに人間が揃ってるけど、俺自身は一般的な男子中学生だからビビる時はビビるんだよ、マジで・・・これが悪戯だったら良いのに、とすら思い始めている

 

 

そんなこんなでHR開始5分前の予鈴がなったので、少し憂鬱になりながら封筒をポケットにしまい個室を出て教室へと戻る途中、背後から誰かに見られてる気配を感じ振り向くが誰もいなかった。えぇ・・・怖いんだがぁ

 

 

教室に戻ると一夏が戻ってきていて出ていく前より表情が曇っていなかったので、鈴がどうにかしてくれた様だ。一応 鈴に感謝しておこう、そうしよう

 

 

「どこか行ってたの?」

 

 

「トイレだよ、トイレ」

 

 

戻ってきた俺に気付いた一夏が話しかけて来たので嘘ではない事を返答しておく、ラブレター(これ)の事を一夏が知ったら自分の事を差し置いて俺の為に動きそうだから、黙っておく必要ある。一夏は善人過ぎる

 

 

「そっか」

 

 

「はいはーい、HR始めるよー」

 

 

一夏は何か言いたげに俺を見ていたが先生が入ってきたので俺は席に着く、流石に一夏も先生を無視する訳には行かず大人しくHRを受ける

 

 

まさか、一夏に感づかれたとかないよな?いや・・・一夏はこういうのには鋭い所があるからなぁ、末恐ろしい

 

 

 

とりあえず、全力で誤魔化そう、今一夏の負担を増やすのは合理的じゃないからな、うん

 

 

 

 

 

 

 







お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

単独任務(笑)

 

 

HRの後、一夏からの追求をどうにかこうにか何とか躱し、特別何もトラブルもなく授業を受けて放課後になり、一夏が鈴を伴って教室を出て行ったのを確認し2人を見て口を開く

 

 

「そんじゃ、2人とも一夏の事頼む」

 

 

「任せておいて」

 

 

「良いけど、お前1人で本当に大丈夫なのか?」

 

 

 

一夏からの追求は躱せたけど、弾からの追求は躱せなかったので、弾と数馬(ふたり)には想いが重いラブレターの事がバレているので、数馬が俺を心配して言う

 

 

因みに鈴も俺が重いラブレターを貰った事に感づいてる様だった

 

 

「・・・正直に言えば、めっちゃ怖いけど、今は俺より一夏を優先するべきだろ?」

 

 

俺がそう言うと数馬は、あからさまに呆れた表情をして

 

 

「お前と一夏が幼馴染なのがよく分かったわ、とりあえずあんま無理すんなよ?ヤバかったら逃げろ」

 

 

「お、おう」

 

 

数馬に前半 何を言われたのかが分からなかったので少し曖昧な返事すると、『こいつ本当大丈夫か?』みたいな表情をされてしまったが、もう指定された時間になるので、自分を奮い立たせ教室を後にする

 

 

本音を言えばマジで怖いから行きたくない、だが行かなかった場合に相手が逆上して一夏や弾達を傷つける可能性が否定できないから行くしかない、せめて対話が可能な事を祈ろう

 

 

「さてさて・・・指定場所は定番の校舎裏っと」

 

 

この学校の定番の告白ポイントは2つ有って、1つ目が北校舎裏で、もう1つが東校舎屋上で北校舎裏が東校舎屋上からソコソコ見えるので、東校舎屋上は覗き見スポットでもある

 

 

そんな訳で指定場所へ行くと、茜色のボブで前髪が長くて片目が隠れている身長155~8くらいの女子がソワソワして立っていた

 

 

その表情は、あんな手紙を書くように見えないぐらいには血色が良い・・・俺の予想とは違った、うん

 

 

 

それはそれとして、この人は見憶えないな・・・うーん?

 

 

「あ・・・来てくれたんだ」

 

 

彼女は俺に気付き嬉しそうな表情を浮かべる、そんな彼女を見ながら改めて彼女を観察してみる

 

 

まず髪は茜色、弾程ではないけど赤系の色をしていてボブっぽい髪型で前髪が長くて右目が隠れてる、次に当たり前だけど この学校の制服を着ている、リボンの色が俺達2年の色(あお)ではなく3年の色(あか)だから先輩、と言うのが分かった

 

 

やっぱ該当する記憶がない・・・多分

 

 

 

「待たせてしまった様で、すみません」

 

 

 

「うぅん、気にしないで大丈夫だよ」

 

 

俺が軽く謝ると彼女は少し焦った様に言い軽く手を振る、この人・・・自分で重いラブレター(アレ)を書いたのか?ってぐらいギャップが有るんだけど・・・とりあえず対話できそうで良かった

 

 

「て、手紙にも書いたのだけれど、わ、わわ、私は君の事が好きなの、だから私とお付き合いしてください!!」

 

 

先輩の出方をうかがっていると、意をけしった先輩が赤面しながら告白してきた

 

 

これで人生2回目の告白か・・・と思いつつ、全く心を動かされていない事に驚く、もともと断るつもりだったけど、少しぐらい感情ってか何かが起こると思ってたけどな、うん

 

 

「ごめんなさい」

 

 

「な、な・・・なんで・・・?」

 

 

俺が告白を断ると先輩は、断られるのを想定していなかった様な表情をして聞いてくる

 

 

「そうですね・・・まず俺は貴女の事を何にも知らない、それこそ名前すらも」

 

 

俺は真っすぐ先輩を見据えて言う、尤もらしい事をこじつけて理由っぽく言ってるだけの詭弁を彼女へ言う

 

 

「そんなの付き合ってからでも知れる、君は優しい人だから・・・ふふ、私が君を自由にしてあげるから、ね?」

 

 

「何を言っているんです?」

 

 

これは不味い、非常に不味いかもしれない、急に何か言い出したぞ?誰だ対話できそうって言ったの・・・俺だよぉ

 

 

先輩が急に眼のハイライトを消し謎の微笑みを浮かべ始めて、めっっちゃ怖いんだけど、逃げたい

 

 

「大丈夫、私が君を救ってあげる・・・ほら、死もまた救済とも言うし?」

 

 

「いや、何を言ってるのか、さっぱり分からないのですが?あの、会話してください。お願いします」

 

 

先輩はハイライトを消したままニッコリと笑み言うので問いかけてみたが、これは届いてなさそうだな・・・勘弁してくれ

 

 

 

「君はアイツに何か弱みを握られているのでしょう?だから嫌々従っている・・・だから私が、君を苦しみから救ってあげるよ、大丈夫・・・君を独りになんてしない、私も一緒に逝くから・・・ね?」

 

 

「だから、マジで会話を・・・それは不味いのでしまって貰えません?」

 

 

ポケットから刃渡り95mmの折り畳み式アーミーナイフを取りだし抜き身にして俺へ切っ先を向けて言ってきたので説得を試みるが、これは効果は無さそうだ

 

 

と言うか、逃げるに逃げられない、この人は絶対に見境なくナイフ振るタイプだ、此処でどうにかしないと、と俺は腹を括り深呼吸して先輩を見据える

 

 

アーミーナイフを右手に持ち緩く立っている、その姿は素人のようだ・・・素人で有ってくれ

 

 

「最初は痛いかも知れないけれど、すぐに痛くなくなる様に頑張るから安心して?逝くよ」

 

 

「何を安心しろと?俺は死にたくないんだけど!!」

 

 

振られたアーミーナイフを避けながら、どこかでアーミーナイフを奪わなきゃなと思い、隙をついてアーミーナイフを持つ先輩の腕をつかんだ瞬間

 

 

「リク、そのまま維持して」

 

 

「一夏?なんで」

 

 

突然現れた一夏が言い、俺の質問に答える前にスカートを翻して華麗な右後ろ回し蹴りが先輩にクリティカルヒットして彼女の意識を刈り取る

 

 

一夏、強くね?まぁ助かったけど・・・マジ助かったわ

 

 

 

 

 

 

 







お待たせいたしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迎撃任務



一夏ちゃん視点



 

 

 

鈴と今後の方針を話した後、教室に戻るとリクが居らずトイレかな?と気に留めないでいたがリクが教室に戻ってきた時の表情を見て、何か有った事に気付いたので何処に行っていたのか尋ねると、トイレに行っていたとリクは答えた

 

 

 

うん、リクは嘘はついてない。嘘はついてないだけだけど

 

 

 

追求をしようとしたら時間が来てHRが始まってしまったので一旦追求を諦めHRを受けてHR後に改めてリクへ追求をしてみるが、はぐらかされてしまう

 

 

やっぱり何か隠してると確信したが、鈴に『リクにも隠したい事の1つや2つぐらい有る筈よ』と諭され渋々追求を諦める

 

 

 

そんなこんなで昼休みになり鈴に人気(ひとけ)の無い空き教室に呼び出され

 

 

「・・・一先ず、カミソリの犯人の目星がついたわ。犯人は3年の先輩で、だいたい半年前にリクが困っていた先輩を助けたらしいわ、もともと思い込みが激しいタイプだったみたいね」

 

 

 

鈴は手帳を見ながら言う、こう言う情報を短時間で集められるのは本当凄いなぁといつも思っている

 

 

「次なんだけれど、その先輩が今日の朝に下駄箱とウチの教室から出てきた所の目撃情報が有ったわ、推測だけれどリクの机にラブレターでも入れたんじゃないかしら?」

 

 

「ふぅん、そっか」

 

 

人を好きになる事自体を止める事は誰にも出来ない、だから先輩がリクの事を好きになってしまったのは仕方ない事だ、先輩がどんな人間であっても、だ

 

 

まぁ好き勝手させるかは別問題だけどね?

 

 

「ひとまず、リクからアンタを引きはがして自分が有利な位置に着こうとする理性は有るようだし、流石にリクに直接被害は出ないでしょう。多分ストーカーになるでしょうけど」

 

 

と鈴は肩を竦めていう、ストーカーになってる時点で被害出てると思うのだけれど、私の気のせいだろうか?

 

 

 

「取り合えず、まだ犯人を制裁できるだけの材料が揃っていないから活動は続けるわ、アンタは放課後に告白を断ってきなさい?まずはそれからよ」

 

 

「そうだね、それが筋だもんね?」

 

 

鈴の言葉に頷き一先ずは、ラブレターをくれた彼へ誠意あるお断りの言葉を考える

 

 

 

そんなこんなで午後の授業を受け放課後になり、相変わらず顔色の悪いリクとリクを心配している弾と数馬を置いて鈴に引っ張られる様にして教室を後にして指定場所へと向かう

 

 

「弾と数馬は後で合流する予定よ」

 

 

「え?うん・・・ん?」

 

 

鈴の言葉を流しそうになったが、なんか引っ掛かり首を傾げ

 

 

「弾と数馬、こっちに来るの?」

 

 

「そうよ、リクもそう言っていたって弾が言ってたわよ?」

 

 

そういわれ、途端にリクが心配になってきたが、もう指定場所の東校舎屋上に辿りついてしまったので、今更引き返す訳にも行かず軽くため息を吐きフェンスにより軽く下を向くと北校舎裏が見え、茜色の生徒が見える

 

 

そういえば犯人の先輩の容姿について聞いていなかったと思い振り返るが鈴の姿は消えていた、相変わらずすばしっこいなぁ鈴は

 

 

軽く苦笑してフェンス越しに雲を眺めていると彼が現れた

 

 

 

「ま、待たせたかな?」

 

 

「うぅん、大丈夫。さっき来たばかりだよ」

 

 

 

彼は大分緊張している様で少し挙動がおかしいけど特に指摘せず彼の言葉の続きを待つ

 

 

 

「織斑一夏さん、俺は貴女の事が好きです。付き合ってください、お願いします」

 

 

彼は色々と前置きを省いて単刀直入に告白してくる、うん思いっきりの良さは評価できるね、うん

 

 

「ごめんなんさい、君の気持は嬉しいけれど、私には心に決めた人がいるから、君と交際できない」

 

 

「知ってた、栗田の事だろう?見ていたら分かるよ、応援してるから俺」

 

 

 

彼を真っすぐ見て断ると彼は苦笑してそう言われ、少し恥ずかしくなってしまい彼に背を向けフェンス越しに北校舎裏でリクが襲われてるのが目に入り

 

 

「リク?!ごめん行かなきゃ」

 

 

「うん、頑張って」

 

 

私は彼にそれだけ告げて駆け出し屋上から階段へ入り、パルクールの要領で3階まで降りて開いていた窓から飛び降り急いで走り北校舎裏へ向かう

 

 

北校舎裏へ入る角を曲がるとリクが襲撃犯のナイフを持った腕を掴んでいたので

 

 

「リク、そのまま維持して」

 

 

「一夏?なんで」

 

 

リクが疑問を投げかけて来たけど、襲撃犯を無力化する方が先決と思い蘭に教えてもらった右後ろ回し蹴りを放ち襲撃犯の意識を刈り取り、ハッと気づき翻ったスカートを押さえて

 

 

「・・・見えた?」

 

 

「・・・いえ、見てません」

 

 

私も問いにリクは軽く顔を逸らして言う、これは見られてしまった!と確信し顔が熱くなっていくのを自覚する

 

 

 

でも見られたのがリクで良かったとも思うしリクになら見られても良いかな?を思う少し複雑な心境になってしまった

 

 

 

 

 







お待たせしました



一夏ちゃんは強い娘ですw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

収束?


リク視点




 

「言い訳はある?」

 

 

北校舎裏で気絶した先輩の横に正座させられ仁王立ちした一夏に見下ろされ尋ねられる

 

 

あれ?一夏がメッチャ怖いなぁ・・・

 

 

「もう一度聞くけど、言い訳はある?」

 

 

怖いので一夏と目を合わせないでいると一夏から感じる覇気が倍増し、再度問いかけられる

 

 

「・・・なにについての言い訳をしろと?」

 

 

「今の状況に陥った件について、だよ」

 

 

恐る恐る聞くと一夏は覇気を纏ったまま言う、あぁ・・・俺が先輩の告白を断りにきた事じゃなくて、危険を承知で一夏を優先して無茶したから怒ってるのか、多分

 

 

「今、お前が第一に考えないといけないのは自分の事、だろ?だから何も言わなかったんだよ。言ったら自分の事を後回しにするだろ?お前」

 

 

「・・・私の事よりリクの方が大切だよ」

 

 

俺の言葉に一夏が返答する、その答えを聞き俺の判断が間違っていなかった事を確信する

 

 

 

そう、一夏はいつも自分より他人を優先する癖みたいなのがある、それは一夏の良い所であり悪い所だ

 

 

成績優秀で運動神経抜群、容姿端麗であり聖人の様な人格者、大抵のことはそつなく熟せる超人染みた人間

 

 

そんな性質故に一夏は誰かを頼る事に慣れていない、何せ大抵は自己解決出来てしまうのだから

 

 

だからこそ、俺は一夏に今回の件を伝えなかった

 

 

「見込みが甘かったのは認めるけどな?まさか対話が出来ないと思わなかった」

 

 

「もう、私が見つけなかったらどうするつもりだったの?」

 

 

「ナイフ奪って無力化するつもりだったけど?」

 

 

 

覇気を纏うのをやめて一夏が尋ねてきたので、実行予定だったことを伝える

 

 

「ふぅん、まぁ妥当かな?うん」

 

 

一夏は納得したのか分からないが相槌を打ち徐に落ちているナイフを拾い上げガン見し始め、少し怪訝そうな表情をする

 

 

「どうした?」

 

 

「このナイフなんか違和感を感じてさ」

 

 

俺は立ち上がり一夏の前に立って尋ねると、一夏はナイフの刃をマジマジと見ながら答え、刃に指を当てて

 

 

「ツルツルすぎる・・・まさか」

 

 

「一夏、おま・・・え?」

 

 

一夏は人差し指をナイフの刃に当てたまま少しナイフを動かしたので、一夏を咎めようとするが、一夏の人差し指から血は出ておらず無傷だった

 

 

「・・・やっぱり、これ刃が付いてないよ。多分偽物だこれ」

 

 

「・・・なんでだ?」

 

 

俺達は気絶して地面に倒れたままの先輩を見て考える

 

 

考えられるのは、先輩はナイフが偽物だと知らなかった、これは充分考えられる。どうもこの先輩は思い込みが激しかったし

 

 

次に脅すだけが目的だった、いやまぁ・・・普通に襲われたんだけどね、うん

 

 

あとは、なんか思惑があったとか?・・・うん、わからねぇ

 

 

「・・・ねぇ、いい加減起きていいかな?土とお友達するの飽きて来たんだ」

 

 

先輩は急に起き上がり、そう言いながら一夏に蹴られた場所を擦る。それを見て俺達は少し警戒しながら先輩から距離を取って様子を伺う

 

 

「ありゃりゃ、警戒されちゃった。まぁアレの後だしね、それが正解だよ君達」

 

 

先輩は胡坐で座り直しカラカラ笑う、なんかさっきと雰囲気が違うんだけど・・・

 

 

「え、えぇっと・・・先輩?もう襲わないですよね?」

 

 

「あぁ勿論だとも、もうやるべき事、目的は達成されたからね?なかなか真に迫っていたろ?ボクの演技は」

 

 

「演技?」

 

 

なんだ、この先輩は・・・何のために大がかりな事をしてんだ?いやマジで

 

 

「そう、演技。詳細は話せないんだけど、一芝居打って欲しいって依頼が有ってね。ボクは演劇部で去年の文化祭で劇をしたんだけど・・・興味なかったか、残念」

 

 

先輩は肩を竦めて言う、誰だよそんな依頼した奴・・・

 

 

「じゃぁ、私に蹴られたのも?」

 

 

「うん、あえて蹴られた。気絶したフリ上手かったでしょ?あと後輩を唆したり不幸の手紙錬成したりラブレター製作したり、下準備は大変だったよ?」

 

 

先輩はニっと笑み言う、それを見て疲れがドッと溢れてきて少し気が遠くなる

 

 

「織斑ちゃん、君は良い友達を持ったね、誇ると良い」

 

 

「私には勿体ないぐらいの親友です」

 

 

先輩は一夏を見てそう言い微笑み、一夏は先輩に返答し笑む。2人とも美少女だから絵になるなぁ

 

 

「栗田くん、織斑ちゃんを大切にしなよ?お姉さんと約束だぞ?」

 

 

「はぁ、善処します。はい」

 

 

俺の返事が気に入らなかったのか先輩は一夏に、こんなのが良いのか?とか言っている、この先輩・・・結構失礼な人だ

 

 

 

まぁなにはともあれ、これで問題解決・・・だよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





お待たせしました



さてさて、依頼主は誰何でしょうね?←






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

織斑一夏観察記録?

束さん視点




 

 

2000年代のいつかの3月ぐらい、私の幼馴染で親友である織斑千冬は第2回モンドグロッソ決勝へコマを進め、私は自分の持てるコネをフル活用して特等席をゲットし、彼女がモンドグロッソ2連覇をする瞬間を目に納めるつもりでいた、そうつもりでいた(・・・・・・)

 

 

結果から言えば、彼女は2連覇を逃し、現役引退をする事になってしまった。その原因はどこかの馬鹿が彼女の2連覇阻止の為に彼女に唯一残された肉親である織斑一夏を誘拐し決勝を棄権する様に要求してきたのだ

 

 

表情を出す事が苦手で口下手な彼女は勘違いされがちだが織斑千冬という人間はかなり優しい人間であり弟の一夏を守る為になら命を懸ける様な人間だ、そんな彼女が愛する弟が誘拐されて冷静に居られる訳も無く自身の専用機である暮桜を身に纏い弟が誘拐されて監禁されている場所へと急行、誘拐犯を1人残らず捕縛しシバキ回した・・・と言うのを私は一夏が救出された後に聞かされた、良かった・・・事が終わった後で、私が現場に居たら今頃誘拐犯は三途の川の向こうだった

 

 

 

そんな事を思いつつ久しぶりに会った彼は、もともと千冬(しんゆう)に似ていたが更に彼女ソックリな美少女(・・・)になっていた、流石の私も目を疑い柄にもなく目を擦って6度見ぐらいしてみたが何度見ても親友ソックリな美少女がそこにいるので現実だと受け入れ、彼へ色々と質問を投げかける

 

 

その結果、分かったことは、誘拐時に何か薬で眠らされてしまい監禁場所へと輸送された事、気付いたら既に性転換が済んでいた事、一夏本人は全く気にしていない事、親友が誘拐犯をシバキ回した事ぐらいで、私の知りたかった性転換の理由や原因が全く分からず手掛かりの無い状態になってしまっているし、一夏本人が気にしていなくっても何か不具合が有る可能性が有り過ぎるので私は一夏をかどわかし私の息が掛かった病院で精密検査をうけてもらう

 

 

「・・・効果の高い睡眠導入剤みたいなのと、ナノマシン、か」

 

 

精密検査の項目の1つ、血液検査の結果を見て呟く。この結果を見て推測すると、前者は誘拐時に眠らせた時に使われた物だろう

 

 

 

でも、後者のナノマシンが分からない。まさか性転換に使われたとは思いたくない、そんな簡単に人体を短時間で組み替えられる訳が無いからだ。徐々に年単位でなら可能かもしれないが・・・

 

 

そして検査結果を見る限り一夏が男性だった痕跡は殆どなく、完全に女性である。という現実が書かれている

 

 

 

「・・・一先ずは、いっ君の身体に異常が無かった事を喜ぶべき、かな?」

 

 

臓器機能や細胞、その他機能にテロメア、隅の隅までありとあらゆる検査をして調べつくした結果、健康体であり異常なし、ゆくゆくは子供も産めるだろう、という花丸な検査結果だ。一先ずその事を喜んでおく事にしよう

 

 

 

検査結果を千冬と一夏に伝えると一夏は諸手を挙げて喜んで、千冬は少し複雑な表情をしていたが、リクへ合法アタックをすると一夏が宣言した頃には、やる気に満ち、必要品を買いに行った先で一夏を着せ替え人形にしていた

 

 

 

それをいい具合で嗜めたり、千冬に頼まれた根回しや裏工作をしたり一夏のサポートをしたり合間でドイツの裏事情を利用して暗躍して可愛い助手をゲットしたりしてなんだかんだ忙しい日々を過ごす

 

 

さてさて、性転換の推測と検証とかしないと・・・まぁ理論的には数年掛でナノマシンを用いて性転換させるのは可能だろう。ただ相応の負担とリスクが生じるのは確かだろう

 

 

ではナノマシンを用いない場合は?となると、自己細胞を操作・培養し生殖器を作り外科手術により移植する方法。これも相応のリスクを覚悟する必要がある、まぁそもそもこの線は無い。一夏には傷1つ無かったしね

 

 

ならば暴論中の暴論、量子変換機技術を利用する方法はどうか・・・結論でいえば可能だろう。肉体全てを量子変換し0と1の数字の羅列へしてしまえば0と1を打ち変える事で再構成が可能な筈だ、理論上は

 

 

そして私なら実現できるだろう、本気で取り掛かれば一月(ひとつき)程度で、でも実現させてはいけない技術だ、危険すぎる

 

 

何せクローンを作り放題になってしまうし、疑似不老不死も死者蘇生も恐らく可能になる、だから世に出して良い技術じゃない

 

 

 

まったく、この世界は本当に悪い意味で飽きないよ

 

 






お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2次進行?



リク視点


 

 

 

偽装告白のあと、何でか先輩にディスられた日から約2週間が経った今日この頃、ますます夏の気配が強くなっている

 

 

それに伴い薄い長袖から半袖に移行していて俺と一夏も半袖に衣替えを行った、うん・・・一夏の半袖セーラーが眩しいぜ

 

 

見た目が益々俺の好みになっていくので、そろそろヤバいなぁと思いつつ朝食を食ってシンクの桶に皿を入れ水を張り、テレビの天気予報を見ている一夏を眺める

 

 

窓から射す太陽光で一夏の黒髪が煌めいて見える、男の時は髪の手入れは俺と同じく無頓着だったのにドイツから帰ってきて女子化トレーニングで本格的な手入れを始めたら、めちゃくちゃ艶のある髪になって、お嬢様みたいな見た目に拍車がかかって、ホント見た目が好み過ぎる

 

 

そんな邪念と戦っている俺を知って知らずか一夏が天気予報から目を離し俺の方を向き

 

 

「リク、今日は雨降らなさそうだよ」

 

 

「そうか、荷物が増えないのは良い事だな」

 

 

水を止めて一夏に返事を返して一夏の座るソファーの方へ移動すると一夏が立ち上がり

 

 

 

「リク、私はリクが好き。だから私と結婚を前提に付き合って欲しい」

 

 

「お、おふぅ」

 

 

二月(ひたつき)前と言い方を変えてきた一夏の告白に出鼻を挫かれてしまい、変な声が出てしまった

 

 

 

さて人生三回目の告白を貰った訳だが・・・うん、3分の2が一夏からで、1回は偽装だったんだよなぁ・・・いや、中身が一夏だけど見た目は好みの美少女から告白されて嬉しいは嬉しい、ただ一夏なんだよなぁ・・・

 

 

 

とはいえ、最近は言葉使いの女子と化してきたからなぁ、これは困った。うん・・・俺はダメかも知れない、でも答えは出ている。俺の中で一夏は一夏(おとこ)のままだ

 

 

「・・・俺の中でまだ一夏は男のままだから、ごめん」

 

 

「ううん、気にしないで?もともとダメ元、ワンチャン有るかなぁ?ぐらいのつもりだったから」

 

 

俺が申し訳なさそうな顔をすると一夏はニコッと笑みいう、コイツ性転換してからメンタル強くなりすぎじゃね?と思ったが口には出さないでおく

 

 

下手な事を言って鈴に漏れた時に鈴からの制裁がヤバいからな、鈴は一夏ガチ勢だ・・・マジでなんなん?

 

 

「でも、私は諦めないから」

 

 

そう言い一夏は微笑む、その表情はホント絵になっていてヤバいぐらい俺の好みだったので普通に見惚れてしまった

 

 

「リク?大丈夫?おーい」

 

 

「お?おぉ・・・大丈夫だ問題ない」

 

 

見惚れすぎて一夏が心配して俺の目の前で手を振りながら声を掛けてきたので、一応返事をしておく

 

 

「本当に大丈夫?」

 

 

「大丈夫だって」

 

 

「ん~・・・血色も悪くないし本当みたいだね?」

 

 

 

一夏は俺の顔をマジマジと見て言う、どうも体調関連では一夏にイマイチ信用されていない様だ・・・うん完全に自業自得だね!

 

 

 

「そろそろ行こう?鈴たちが待ってるよ」

 

 

「だな、行くか」

 

 

一夏の言葉に頷き通学カバンを持って玄関を出て空を仰ぐ、そこには快晴の空が広がっていて少し気分がいい

 

 

「晴れてるな、良い事起こると尚良しだ」

 

 

「ふふ、そうだね」

 

 

玄関のカギと閉めて一夏と並んで登校を開始する

 

 

 

「もうすぐ6月か、梅雨に入るな」

 

 

 

「そうだね、洗濯物は外に干したいんだけどねぇ」

 

 

俺の言葉に一夏は肩を竦めて言う、一応ウチには家事の負担を減らすために衣類乾燥機が有るから部屋干しして生渇きみたいな事は無いのだが、人一倍拘りを持つ一夏は天日干し派な為、6月は一夏にとって天敵なのだろう。多分

 

 

俺はその辺り無頓着だから着れればいいし、ぐらいでしかないので普通に衣類乾燥機を使うんだけとな、うん

 

 

 

まぁそもそも今ウチに居るのは俺と一夏だけだし、各々(おのおの)で洗濯はしている。流石に一夏の下着類を俺が洗う訳にも行かないし、一夏の思う所があると思うし?

 

 

 

あぁ・・・今日は良く晴れてるなぁ

 

 

 

 

 







お待たせしました



はい、2回目でしたw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

呼び出し

 

 

一夏からの二回目の告白から二日が経った今日この頃の放課後、今月何回目かの告白のお断りへ向かう一夏を見送り、ご丁寧に靴箱に入っていた呼び出しのお手紙(笑)に従い、足取り重く演劇部の扉をノックする

 

 

「カギは空いている、入って来たまえ。栗田君」

 

 

「失礼します」

 

 

大人しそうな見た目に反して人を食った様な笑みを浮かべて俺を呼び出した張本人(センパイ)のニヤついた笑みが目に入り更に気が重くなる、正直この人に苦手意識を持っているんだ俺

 

 

「待っていたよ栗田君、いやはや・・・あんな事の後だから呼び出しに応じてくれる可能性は低いと思っていたのだけれど、君はやはりそれなりにはお人よしの様だ」

 

 

と先輩はカラカラと笑い言う、ホントこの人は人を食った様な何とも言えないしゃべり方をする、ホント苦手だ

 

 

「・・・それはどうも、それで要件はなんです?」

 

 

 

「ふふ、君はせっかちな方ではない筈なのだけどね?あぁボクが悪かったよ。睨まないでくれ、もっとふざけて煙に巻きたくなってしまう」

 

 

 

単刀直入に要件を尋ねると本題に入らなそうだったので軽く睨むと何とも禄でもない事を言い出す、この人性格に難が有るタイプだな、間違いない

 

 

「さて、本題に入ろう・・・栗田君、君を我が演劇部にスカウトしたい」

 

 

「え?何でです?俺は演技なんてずぶの素人ですよ?」

 

 

先ほどまでニヤついていた先輩が真面目な表情をして言ってきて、その内容に少し混乱し尋ね返す

 

 

「あぁスマナイ説明が足りなかったね、君にお願いしたい事は役者ではなく裏方、特に衣装関連の事だ」

 

 

「衣装・・・ですか?」

 

 

先輩の言葉を聞き反芻する、確かに俺は一夏程ではないがソコソコ縫物は出来るほうだ。一夏には及ばないが

 

 

 

演劇用の衣装も縫おうと思えば多分縫う事は可能だと思う、しかし問題はそこではなくて、なぜ俺が縫物できる事を先輩がしっているか、だ

 

 

 

何せ俺と先輩の接点なんて無いし、裁縫スキルについては去年のクラスメイトと家庭科の時に軽く話したぐらいだ、多分

 

 

 

「うむ、実は衣装作成担当はいたのだけれどね、卒業と親の都合で転校してしまって、今居ないんだよ衣装作成担当が。新入部員も皆 役者希望でね」

 

 

 

そう言い先輩は肩を竦めて言う、なるほど・・・話の筋は通ってる、通ってるが・・・やはり何で知ってるかが分からない

 

 

「あぁ、なぜボクが君の裁縫スキルについて知ってるか不思議なんだね?簡単だよ、ボクの実弟が君のクラスメイトなのさ。ん?そういえば今の今まで名乗ってなかったねボクは梶田優希(ゆうき)、よろしくね栗田君」

 

 

 

「梶田・・・梶田ってクラスメイトの梶田智和(ともかず)ですか?」

 

 

 

名前を聞き尋ねると先輩は、そうそう と言いながら頷き笑う、なるほどアイツは去年もクラスメイトだったから俺の裁縫スキルについてしっててもおかしくない

 

 

俺より一夏の方がレベルが上なのは梶田も知っているが、それはあくまでも一夏(♂)であって一夏(♀)が裁縫スキル持ちなのを梶田は知らない、だから俺に白羽の矢が立った訳か

 

 

 

「さて、一応これでスカウトした理由は話した、改めて君を演劇部の衣装作成班としてスカウトしたい」

 

 

先輩は真面目な表情をして俺を真っすぐに見据え言ってくる、正直に言えば俺はこのスカウトを受けても良いと思っている、部活をしない理由の大半を占めていた妹達は今海外だからだ

 

 

でも俺は今やらないといけない事がある、それは一夏のフォローだ、一番長く一夏の傍にいる事が出来るのは俺なのだから、俺が一夏のフォローをしていたい、一夏は人に甘すぎるのだから

 

 

 

「まぁ、スカウトなんて仰々しい事を言ったけれど別に毎日部活に来る必要は無いよ、演劇に使う衣装も結構な数が保管されているから1から作る事もそうそう無いだろうし?仮に入部してくれるなら君がする仕事は細かい調整とかになるのかな?多分」

 

 

「・・・なるほど」

 

 

 

思ったより一夏のフォローに支障をきたさないかも知れない、これは少し考えた方が良さそうだな、うん

 

 

 

 

 






お待たせしました


先輩の名前が決まりましたよw


もう出てこない予定でしたけどねw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

混沌

 

 

 

先輩と梶田って全然似てないなぁとか下らない事を頭の隅に追いやりつつ、スカウトの件を真剣に考える。一夏のフォローの事を考えると少し不安要素が有るけど、そこは一夏や弾・鈴と相談だなってか俺だけで決められる事じゃないしな

 

 

「・・・少し考えさせて貰っていいですか?」

 

 

「構わないよ、でも出来るだけ早く返事は欲しいかな?差し迫ってのイベントは無いけれど、衣装作成担当を選出する必要があるから」

 

 

先輩は俺の言葉に頷いていう、本心では当たり前だが俺が衣装作成担当に就任する事を望んでいるが、俺が断った時の為の代案も彼女の中にはあって、部員を説得するつもりの様だ

 

 

「分かりました、出来るだけ早く返事をする様にします」

 

 

「君は本当に・・・ふふ、まぁいい。そんな君にこの間卒業した先代部長の置き土産を渡そう」

 

 

先輩は俺を見て何か言おうとして辞め部室の本棚から薄い本状の物を取りだし差し出してくる

 

 

「ん?台本ですか?」

 

 

「うぅん、まごうこと無きR15ぐらいの薄い本だよ」

 

 

「は?」

 

 

先輩相手に思わず威圧してしまったが、仕方ない事と許してほしい、何せ先輩はニヤニヤしているのだから・・・一先ず受け取り表紙を見ると、そこには一夏に似ている男と我が家の母さんに似ている女が描かれている・・・なんだこれ

 

 

「先代部長は発酵している御仁でね、演劇部の脚本と担当する傍ら、創作活動にも力を入れていたんだ」

 

 

「は、はぁ・・・これ、男の方のモデルは一夏ですよね?」

 

 

「うん、そのようだね」

 

 

先代部長が腐女子だとか正直に言えばどうでもいい、それより俺は気になる事が有ったのでジャブの質問をすると先輩は素直に答える、これなら答えが得られるだろう、と思い恐る恐る口を開く

 

 

「・・・なら、こっちの女の方は誰がモデルなんですか?」

 

 

 

「あぁ、君だね」

 

 

 

「はい?」

 

 

「その薄い本のヒロインは君がモデルだと言ったんだ、栗田君」

 

 

先輩が発した言葉を受け入れられずに曖昧な返事をすると先輩はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら俺の現実を叩きつけてくる

 

 

おいおいおい、先代部長よ・・・発酵しすぎなんじゃなーの?マジかよ・・・と現実にノックアウトされかけていると

 

 

「ささ、中も見てみてくれたまえ、ボク的には良い作品だと思う。君や織斑君がモデルのキャラクターの容姿を変更し出版社に持ってゆけば、それなりに売れる作品になると思う程度にはね」

 

 

 

「は、はぁ・・・」

 

 

急に力説し始めた先輩の圧に押され生返事を返しつつ捲りたくない最初のパージを捲り自分たちがモデルになっている薄い本を読み始める

 

 

最初は嫌々だったか、読み進める間に引き込まれ、気付けば3回読み直し作品の内容を把握しようとしていた

 

 

「その様子を見る限り聞くまでもない様だけれど、あえて聞こうか。どうだった?」

 

 

「引き込まれました、確かに俺と一夏がキャラクターのモデルになっていましたが、あくまでもモデルになっているだけですね」

 

 

そう、この薄い本はメインの2人のキャラデザを変えれば売れると俺も思う程に内容が良かった

 

 

なるほど、創作活動と脚本を同時にしているからこそ、登場人物の動きや感情、場面の情景の描写が上手いんだ、きっと

 

 

「気に入って貰えた様で嬉しいよ、続編もソコの本棚に有るから読んで構わいよ。あぁ、別にこれで釣ろうとは考えていないから安心してくれ」

 

 

そういい先輩は偽装告白の時のおしとやかな顔でフワリと笑み、その表情に少しドキッとしてしまう・・・これがギャップって奴か、気を確かに持て俺、この人はヤベー人だ

 

 

そんな事を自分に言い聞かせる様に念じておく、この先輩は悪い人ではない・・・意地が悪い人では有るが悪人ではない、多分

 

 

 

さて・・・改めて見ても先輩と梶田が全然似てないなぁと思う、あーでも欲望に忠実な所は少し似てるのかも知れない、多分

 

 

 

 

 






我慢できなかったよw


もともとウス=異本の話を書く予定で先輩ちゃん出したんですけど、前置きで一話使っちゃったんで、連日投稿しちゃいましたw






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

水無月、休日の話

 

 

 

六月も半ばに差し掛かった今日この頃、もう真夏になりそうな日差しを感じつつ軽くリビングの掃除をしている

 

 

そう、今日は土曜日で休みだからな!とか誰向けか分からない事を何処かに投げかけつつクイックルワイパーでリビングの床を擦る、ホント便利だよなクイックルワイパーって

 

 

そんなこんなクイックルワイパーで床を擦っているとガガガとかバリバリとか如何にも工事中ですな音が聞こえ始める

 

 

「そういや、向井さん 実家の家業を継ぐとかで引っ越しして家売りに出してたっけ・・・もう買手ついたんだ、はえーな」

 

 

この辺りは、まぁまぁ立地が良いからソコソコ人気らしいといつだったか束さんが言ってたような気がする

 

 

さて向井さんとは、ウチの向かいに住んでいた家族の事だ、向かいに住んでる向井さん、とても覚えやすい名前だったな、うん

 

 

「んぅぅ・・・おはよう・・・りっくん・・・」

 

 

 

「おはよう束さん、コーヒー飲む?」

 

 

「うん、ありがとう」

 

 

いつものハイテンションがなりを潜めたローテンションの束さんがノッソノソをふらつきながら現れ俺に挨拶してきたので目覚ましにコーヒーを作るか聞き、返事を聞いてからコーヒーを淹れる

 

 

束さんの様子を見るに、昨日の夜戻ってきたばかりだから、まだ時差ボケが抜けてないか、また徹夜で仕事してたな、これ・・・と思いつつ座ってるのに軽く揺れてる束さんにコーヒーを渡し

 

 

「大丈夫?」

 

 

「んぅ~・・・大丈夫だよぉ?ちょっと仕事でイレギュラーが出て処理に時間かかっただけだからぁ」

 

 

ほにゃほにゃ と笑む束さんを見てホントか?と少し疑いつつも、コーヒーを飲んで意識が覚醒してきたのか少しシャキッとしてきたので、多分大丈夫だろうと、想う事にした

 

 

「あれ?そういえば、いーちゃんは?」

 

 

「一夏なら鈴に引きずられて授業で使う水着を買いに行ってる」

 

 

もうすぐプールの授業が始まるからと、鈴が気を利かせ一夏を強制的に連行していった、珍しく俺は留守番を命じられた訳だけど、なんでだろう?

 

 

 

「あぁ、もう六月だもんねぇ~プールの季節かぁ」

 

 

「そういうこと」

 

 

クイックルワイパーのシートを本体から外してゴミ箱に捨てコーヒーを飲んでいる束さんの方を向き

 

 

「昼どうする?」

 

 

「ん~・・・何がいいかなぁ」

 

 

束さんはマグカップをテーブルに置き腕を組んで考え始め、数秒後に

 

 

「久しぶりに瑞鳳のゴハンが食べたい」

 

 

「そういえば俺も最近行ってなかったし、行こうか。そんで夕飯の買い物に、その後行けば良いか」

 

 

「ふふ、りっくんとデートだねぇ」

 

 

いつもの調子になってきた束さんの戯言を適当に流しつつ出かける準備をし戸締りもキチンとしてから家を出てお向かいを見ると、昨日まで有った家が跡形もなくなっていて、なんかウサギのマークの入ったヘルメットをした人たちが、基礎工事か何かをしていた

 

 

そんなこんなウサギのマークが気になりつつも腕を組んできた束さんに瑞鳳に連行される、余程楽しみなんだろうな、うん

 

 

そんなウッキウキな束さんに連行されること十数分、瑞鳳(鈴の両親のお店)に到着したが、看板が支度中になっていた

 

 

「あれ?いつもなら開いてるけどな・・・なんか有ったのか?」

 

 

「・・・ん、おかしいね」

 

 

いつもなら開店している時間であるにも関わらず開店しておらず、そもそも土曜日は定休日でもないので、仮に臨時休業なら、その旨の張り紙が有ってもおかしくない

 

 

なのに、開店していないとなると・・・と俺と束さんは想っている訳だ

 

 

 

「ん?話し声?」

 

 

「聞こえるね?ん~と・・・病気がなんちゃらって聞こえる」

 

 

俺よりかなり耳のいい束さんが会話の内容を傍受し言う、病気か・・・これはかなり不味いのかもしれないな、マジで

 

 

あぁ・・・どうしたらいいんだ?俺達が解決できる事案でもなさそうなんだけど・・・

 

 

 

 

 





お待たせしました


2回連続で一夏ちゃんが出てこなくてスマナイ、多分次も出ない、すまない



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

水無月、休日の話 2

 

 

俺がどうするか悩んでいる間に束さんは真面目な表情をして入口の扉を開け店内に入ってゆく、その背中を追い俺も店内に入ると鈴の両親が驚いた表情をして俺達を見ていた

 

 

「やぁやぁ、なんだか束さんにとって重要な話をしている様だから勝手に入らせて貰うよ?」

 

 

と束さんは珍しく有無を言わせないオーラを纏い言う・・・本当に珍しい、束さんは基本的に余程不愉快にならない限り楽しそうな表情とオーラを崩さないのだ、そんな人が珍しい事に有無を言わさないオーラを発している

 

 

そんな束さんに戸惑っているのか楽音さんと美鈴さん(鈴の両親)は互いの顔を見合わせ困った様な表情をしている

 

 

「さて・・・どっちが病気?それとも二人ともかな?」

 

 

困惑の雰囲気を無視し束さんは我関せずに問いかけを辞めない、この辺りの何事にも物怖じしない束さんの性格が羨ましく感じる

 

 

 

「・・・俺だ、少し前に受けた人間ドックで引っ掛かって再検査と精密検査を受けたんだ、その結果・・・癌だとさ、末期寸前らしい」

 

 

「ふぅん・・・そっか」

 

 

楽音(がくいん)さんは重々しく口を開き、淡々と語り束さんは何かを思考しながら話を聞く

 

 

「あ、あの・・・鈴には?」

 

 

「・・・伝えていないわ、言ったらあの娘は何をするか分からないもの」

 

 

美鈴(メイリン)さんは苦笑しながら言う、確かに鈴なら何が何でも楽音さん(ちちおや)わ救うために合法非合法手段を問わず、その方法を探す出すだろう、その先で鈴自身が死ぬ危険が有っても、だ

 

 

「もう俺には時間が残されていない、今から治療しても完治の可能性は限りなくゼロ、延命治療になるかどうか・・・って所らしい、だから2人には親類縁者のいる中国に戻って欲しい・・・のだが」

 

 

「貴方を残して戻れる訳がないでしょう?鈴には貴方が、父親として、そして師として必要なのよ」

 

 

俺と束さんがいるのに構わずに口論に近い事を始める2人、それぞれの意見は筋が通っている、楽音さんは余命少ない自分より美鈴さんと鈴の為に未来を選んで欲しい

 

 

美鈴さんは諦めるのは早い、解決策を模索しよう、と言っているのだ・・・互いが互いを思い言っているのだからどちらの意見も甲乙つける事は出来ない

 

 

「延命治療にも膨大な額の金が掛かるんだぞ?未来のある鈴に金を掛けてやりたいんだ、俺は」

 

 

「それでは鈴は喜ばないわ、あの娘ならそのお金で貴方を生かす事に使うと言うわよ」

 

 

大分熱くなってきている2人、折れたらダメな事があると2人は分かっている、分かってしまっている

 

 

「・・・2人共黙って、私がどうにかする。私ならどうにか出来る」

 

 

ずっと黙っていた束さんは一喝して、そういうが俺を含めてポカンとしてしまう、なぜならそう簡単な事なら、こんなに2人が揉めたりしないなだから

 

 

「ただし、相応のリスクと対価と覚悟が必要だという事を事前に了承してもらう必要があるし、治療法も今は明かせない」

 

 

とはいえ、束さんはやると言ったらやる人だ、信用できる

 

 

束さんの言葉を聞き2人は数秒顔を見合わせた後、軽く頷き

 

 

「束ちゃん、このままでは死ぬだけ、失敗しても死ぬだけ、覚悟はできてる、リスクも承知の上だ。だが対価とは?やはり金かい?」

 

 

楽音さんは真面目な表情で束さんを真っすぐと見据え尋ねると

 

 

「私の基本スタンスはギブアンドテイク、与え与えられる関係である事、そして対価についてなんだけど、私ってば余裕で50mプールを万札で満杯にする遊びできちゃうから今更いらない、だから私が求める対価は・・・瑞鳳の経営権の譲渡と2人の生涯雇用保障確約だよ」

 

 

と束さんはニコッと笑み言うが俺にはイマイチ理解が出来ていないので2人を見ると困惑した表情をしている

 

 

「あー・・・うん、嚙み砕くね?瑞鳳の経営権の譲渡は、オーナーを楽音さんから私にするって事、次に譲渡に伴い楽音さんと美鈴さんには私に雇われて貰う形になるよ、福利厚生諸々の管理もこちらで受け持つし、療養中も給料保障もする、基本的にはこれまで通りに生活してもらうよ」

 

 

そこまで聞いて俺は思った、何がギブアンドテイクだ、あまあまな事言ってるじゃないかって

 

 

まぁ俺の解釈が間違ってなければ、なんだけどねぇ

 

 

ほんと束さんには敵わないわ

 

 

 

 





お待たせいたしました



鈴のお母さんの名前が分からなかったので、捏造してみましたw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

赤き飯の祝い

 

 

束さんによる交渉(ゲロ甘)により楽音さんとの契約が締結され瑞鳳は建前上は束さんのお店になった、建前上は

 

 

一先ず、楽音さんと美鈴さんの希望で鈴には楽音さんの病気の事とお店の事は秘密にする事に決まった、鈴が事の次第を知れば生涯を使い束さんの為だけに働きそうだからだ。これには束さんも了承した、束さんも『鈴ちゃんには幸せになって欲しいからね』と笑んでいた

 

 

さて、そんな俺が抱えられるギリギリの秘密を抱えながら土日を過ごした、週明けの月曜日の朝、程ほどに冴えない頭のまま顔を洗う為に洗面所へ行くと何やら話し声が聞こえ、今洗面所へ入るのは不味い気がして、一旦足を止めて聞き耳を立てる

 

 

「いやぁ~私の予想より少し早かったけど、これで いーちゃんも立派なレディーの仲間入りだね」

 

 

「そう・・・なのかな?でもお気に入りだったんだけどなぁ・・・これ」

 

 

と束さんと一夏の会話を盗み聞きしているのだけれど、何の話をしているかさっぱり分からない

 

 

一夏が立派なレディーの仲間入りして、なんでお気に入りが出てくるんだ?一夏の言い方的には汚れたか何かしたみたいだけど・・・分からん

 

 

と、まぁ考えても分からないし、いつまでも此処で盗み聞きしてる訳にも行かないので

 

 

「あー顔洗いたいんだけど、入って良い?」

 

 

「おや?りっくん?もう少し待ってねぇ今いーちゃんに服着せるから」

 

 

「お、おぉー」

 

 

束さん何で一夏を脱がしてんだろ?とか思ったが束さんの思考を理解しようとしても難しいから考えるのをやめ、とりあえず待つ

 

 

それから五分ぐらいで万全の制服姿で心なし顔の赤い一夏と何か機嫌の良い束さんが洗面所から出てきて

 

 

「お待たせ、ごめんねぇ」

 

 

「構わないけれど・・・一夏大丈夫か?」

 

 

「だ、大丈夫だよ?うん」

 

 

何となく心配して尋ねたら一夏が珍しく慌てた様に曖昧な返事をしてササっとキッチンの方へ去って行く

 

 

「・・・なんでさ?」

 

 

「ふふ、リッくんに聞かれちゃったからかなぁ?」

 

 

一夏の様子がおかしい理由を束さんは知っている様でクスクス笑み言い、俺は意味が分からなくて首を傾げる

 

 

「さ、早く支度をしないと遅刻しちゃうよ?」

 

 

「う、うん」

 

 

そう束さんに軽く肩を叩きながら言われてしまい追求できずに支度を始める

 

 

それにしても一夏の様子がおかしかった、間違いなく何か有ったみたいだけど、束さんが対応はしてくれてるみたいだから大丈夫なのか?

 

 

うぅん・・・やっぱ分からないな

 

 

洗面所で顔を洗ったり寝癖を直したりして食卓へ行くと、何かソワソワして座っている一夏と俺のマイエプロンを装備した束さんが朝食を錬成している束さんが目に入る

 

 

「もうすぐ出来るよ、リッくんも座ってて?」

 

 

「あ、うん」

 

 

一夏の様子が変なのに加え束さんのテンションも高いな、なんでだ?とか思いつつ定位置に座ると、数分経たずに束さん手製の朝食が食卓に並ぶび

 

 

「さぁ食べよう」

 

 

ニッコニコした束さんが言い手を合わせてから食パンを齧る

 

 

いつもテンション高めだけど、今日は特に高いな束さん・・・何か良い事有ったのか?とか思いつつ俺も牛乳を飲んでから食パンを齧る・・・美味いな、この食パン

 

 

 

そんなくだらない事を考えつつ食事をしていると

 

 

「あ、リッくん 今日の夕食は私がお赤飯を炊くつもりだから全部任せてくれるかな?」

 

 

 

「え?あぁ、うん良いけど・・・何で赤飯?・・・赤飯か」

 

 

今日は俺が夕食の当番だったので束さんが、そう言い俺は束さんが赤飯を炊く理由を察して、一夏がソワソワして様子のおかしい理由を理解する

 

 

つまりあれだ、予期せぬ初潮で一夏は寝間着を汚してしまったんだろう、で色々を束さんにレクチャーしてもらった、と・・・多分そんな感じだろう

 

 

「一夏、あー・・・とりあえず、おめでとう?」

 

 

「う、うん・・・ありがとう、リク」

 

 

何か顔を赤くしてソワソワしてる一夏可愛いなとか思いつつ、束さんの言ってた意味が何となく理解できた気がした

 

 

 

 

 

 







お待たせしました





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夢か予知か

 

 

ジャァーと蛇口から水が流れ排水溝へと流れていく、それを眺めて思い出した様に手を洗い顔を上げる。そこには鏡が有り俺の顔が映る、少し疲労した様な顔で軽く髭が伸び始めていて、最近ますます若い時の父さんに似てきた様な気がする

 

 

まぁ髭については仕方ない、朝剃ってから大分時間が経ってしまっているのだから・・・と誰に言い訳をしているか分からない事を考えつつ、せめて少し乱れた髪を整えてから蛇口を捻り水を止めてハンカチで手を拭く

 

 

特に左手の薬指付近は念入りに拭く、出ないと結婚指輪(・・・・)と指の隙間が蒸れて痒くなったりするんだ、いやマジで

 

 

トイレを出てコツコツと靴を慣らし、目的地へと戻ると分娩室前の長椅子に俺の両親と千冬さん、長椅子の横にウミとソラが立っていて長椅子を挟んで逆サイドに束さんが立っている

 

 

ソラ以外は成人しているからか比較的に落ち着いているが、ソラは何でかソワソワしてうて、なんか逆に俺が冷静になれているのでソラには感謝しておこう、言わないけど

 

 

「ソラ、あまりソワソワして動くなよ。お前がソワソワしても何も変わらないぞ?」

 

 

「わ、分かってけど・・・なんでお兄ちゃんは落ち着いてられるの?今、一夏ちゃんが頑張ってるんだよ?」

 

 

最近反抗期気味の今は懐かしいIS学園(ぼこう)の制服を身に纏ったソラが、そう言い俺に嚙みついてくる。最近ホント生意気になったもんだが、これも成長かぁとしみじみ思う

 

 

「いやぁなんか、お前がソワソワの見てると不思議と落ち着いていられるんだよ、なんでだろうな?」

 

 

「お姉ちゃん、お兄ちゃんがイジメるよう」

 

 

俺の言葉にソラはキっ俺を睨み、隣に立つ(ウミ)に抱き着き甘えウミは慰める様にソラの頭を撫でる、これも我が家では よく見る光景なので特に何も言わずにいると

 

 

「兄さんは、もう少しソラに優しくした方が良い」

 

 

「十分優しくしてきたと思うんだけどな?足りないか?」

 

 

「全然足りない」

 

 

少し前に成人したウミは(おれ)より(ソラ)の方が優先順位が上な様で、大分ソラに甘い。だからこそ飴をウミに鞭を俺が担っているんだけど、コイツは理解していないのかもしれない

 

 

内心肩を竦めていると、分娩室からオギャーと過去に2回は聞いた声が聞こえ分娩室へ繋がる扉を看護師の人が開く

 

 

「どうやら産まれた様だな、リク・・・お前が最初に行くのが筋だらう?」

 

 

「うん」

 

 

千冬さんに言われ俺は頷き扉を潜り一夏の元へ向かう

 

 

「お疲れ様、一夏」

 

 

「うん、ありがとうリク」

 

 

少し疲れた様子の一夏が微笑み言い

 

 

「私たちの赤ちゃん、だよ」

 

 

そう言って自分が抱いていた赤ん坊を俺に差し出してくる、俺はそれを抱いて

 

 

 

「ようこそ、栗田家へ歓迎しよう盛大にな。まずは名前だな、名前は・・・・」

 

 

 

名前を口にしようとした瞬間、ピピピピピと聞きなれた目覚ましのアラームが鳴り俺は目を覚ます

 

 

 

「・・・・なんなんだ・・・なんつぅー夢だよ」

 

 

身体を起こして目覚ましのアラームを止め、ため息を深く吐く

 

 

昨夜は一夏の為に赤飯を束さんが炊き、鈴と弾が物凄い張り切って絢爛豪華な料理の数々が食卓に並んで、食卓が七色に輝いている様な有様だった

 

 

流石に千冬さんはドイツから帰ってこれないとビデオ通話で祝いの宴に参加していて、チラチラ後ろに千冬さんの教え子だろう人たちが映ったりしていたけど、色々と大丈夫なんだろうか?ほら機密とかあるだろうし?

 

 

「・・・子供、か」

 

 

いや、子供以前に何で当たり前の様に一夏と結婚してんだ俺は・・・もうダメっぽいのか俺

 

 

一夏は美少女だ、性格も良いし家事全般文句なしに出来る完璧超人だ

 

 

俺は・・・どうしたら良いのだろう?

 

 

 

 







少し短いですが、我慢できなかったので書きました


衝動だけで書いてるのでクオリティに関しては目を瞑っていただけると嬉しいですw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

今至る答え

 

 

一夏のお祝いと一夏と結婚している夢を見てから暫く経って7月へと突入した今日この頃、もう真夏と言っても過言じゃないかと思うぐらい暑い

 

 

まぁ体育でプールの授業が有るだけマシと思う事にしよう、うん

 

 

と、まぁそんな感じに他愛のない事を考え、至って平和な日常を過ごし一夏の事、一夏との接し方をアレから何度も考えている

 

 

でも、考えは纏まらずに堂々巡りを続けていて結論へ至らない

 

 

そんな事を一夏にバレない様に1人抱えながら、今日も一夏と共に下校する、今日は行きつけのスーパーで特売をしているので学校から直行でスーパーへ向かっている

 

 

商店街とは道が逆なので弾達とは学校で別れているから今日は珍しく学校から家まで一夏と2人きりだ、いつもは途中まで弾とか鈴が居るから、ほんとうに珍しい

 

 

「今日は何食べようか?」

 

 

「そうだな・・・暑いし何かアッサリしてるのが良いかもなぁ」

 

 

一夏の言葉に何となく答えると一夏は軽く上を見ながら思案顔になる、ほんとこうしていると一夏は美少女だな・・・4月頃の様子が嘘の様だ

 

 

と1人考えていると、なんだかんだ道が狭くて いつもなら殆ど車が通らない、この道を黒塗りのハイエースが此方へ進んできたのに気付き一夏に声を掛けて路肩に寄りハイエースと擦れ違おうとした瞬間、ハイエースのサイドドアが開き3人男が居りてきて2人が一夏の方へ向かいヤバいと思った瞬間、俺は 残り1人にスタンガンか何かを当てられたのか、ブラックアウトしてしまった

 

 

 

「・・・つぅ・・・ここは・・・」

 

 

気付くと俺は何処か施設のベッドに寝かされていたので体を起こして少し痛む頭を擦り周りを見ると

 

 

「おや?起きたね、大丈夫かい?栗田君」

 

 

「梶田先輩?なんで・・・ここは?」

 

 

夕日が差し込む窓から外を見ながら携帯を触っていた先輩が俺に気付き軽く微笑み携帯をポケットにしまい、言うがイマイチ状況が呑み込めていない俺は彼女へ尋ねる

 

 

「ここはウチの病院だよ、理事が祖父で院長が一番上の兄なんだ」

 

 

「は、はぁ・・・」

 

 

先輩の返答に、父はどこ行った?と思ったが今はそんな些末な事どうでもいい、と結論付けベッドを降りると

 

 

「・・・何処へ行くきかね栗田君」

 

 

「一夏を助けに行きます」

 

 

先輩は俺の腕を掴み引き止め尋ねて来たので素直に答える

 

 

「君が行った所で、どうか出来る相手なのか?初手で昏倒させられた君に」

 

 

「・・・それでも、行きます。行かないとダメなんだ」

 

 

先輩は俺を睨む様に見ながら俺に問い俺は真っすぐと彼女を見て答える

 

 

「君が行かなくても、織斑ちゃんは無事に帰ってくるよ?」

 

 

「そんな保障なんてどこにもないですよね?」

 

 

「ボクは演技はするが嘘はつかない主義だ、だから断言しよう彼女は無傷で帰ってくる」

 

 

先輩は、より一層俺の腕を強く握り問いてくる、その目に嘘はない

 

 

「それでも行くと言うならば、なぜ行くか教えてくれたまえ」

 

 

「それは・・・俺にとって一夏は掛け替えのない人間だからです」

 

 

「それは幼馴染だから、かい?」

 

 

先輩の問いに答え更なる問いを投げかけられ、『そうだ』と答えようと思った瞬間、それだけでは無い事に気付く

 

 

確かに一夏は幼馴染で産まれた頃から知る兄弟分で親友だった、でもそれだけじゃない

 

 

「そう、君は織斑ちゃんが幼馴染だから助けに行くわけじゃない。彼女が君にとって特別だからだ」

 

 

「とく・・・べつ」

 

 

先輩は俺の腕を離し、いつもの不敵な笑みを浮かべ芝居臭い身振りで言う

 

 

「君達にどんな事情が有るかボクは分からないけれど、栗田君・・・君は自覚した方がいい、自分の気持ちを」

 

 

「俺の、気持ち・・・ですか?」

 

 

先輩挙動から目を離せずに尋ね返すと先輩はニッと笑み

 

 

「人を好きになる事、人を愛する事に、いちいち理由をつけなくても良いんだよ。もっと単純で構わないのだよ?」

 

 

丁度夕日と先輩が重なり後光が射している様な状態の先輩の言葉を聞き、何かがストンと落ち収まった気持ちになる

 

 

そうだ、俺は・・・一夏が好きなんだ。あれこれ理由をつけて来たけど、もうどうでもいい、俺は一夏が好きなんだ、それが分かった

 

 

「うん、理解したみたいだね?っと・・・そろそろかな?」

 

 

先輩が満足気に言いなんか呟き、その事に首を傾げていると病室の扉が開き

 

 

「リク、無事で良かった」

 

 

「一夏?!いや俺より一夏の方が大丈夫だったのか?」

 

 

 

「え?あ、あー・・・うん私は無事、無傷だよ」

 

 

 

病室に入って来たのが一夏で驚きつつ尋ね返すと一夏は軽く目を泳がし答え、それを見ていた先輩がクック笑い出す

 

 

「そりゃぁ無事だよ何せ、誘拐されてない処か、誘拐犯を1人で全員叩きのめしたんだからさ?」

 

 

「あ、優希先輩それはリクには内緒って!!」

 

 

「おや?そうだったかな?」

 

 

と先輩は胡散臭い笑みを浮かべ一夏と漫才を始める、その様子に安心し自覚した想いをいつ告げようかと、夕日を眺めてみる

 

 

うん、悪くない気分だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







お待たせしました



自覚させたでw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

答えを得て収束へ至る

 

 

7月の半ばを超え夏の日差しが強くなり夏休みを明日に控えた今日この頃、俺は靴箱に入っていた人生2個目のラブレターの文面・・・否、文字を見て思う。コイツまた手法を変えて来たな、と

 

 

想いを告げる方法をアレコレと考えていたが、呼び出されたし丁度良いか、と思う事にして俺は既に鈴を伴って教室を後にした一夏の待つ東校舎屋上へと向かう

 

 

数馬がメチャクチャ ニヤニヤしていたのは触れないでおこう、なんか癪だし

 

 

そんなこんな少し緊張しながら東校舎屋上へ通じる階段を上がると、屋上に出る鉄扉の前に鈴が立っていた

 

 

「さぁ一夏が待ってるわよ」

 

 

「知ってる」

 

 

「勝ってきなさい?」

 

 

鈴は俺の背中にソコソコの力で平手打ちを入れていう、正直何に勝てば良いか分からない、これは先手を打てって事だろうか?

 

 

と、メチャクチャ痛い背中をさすりながら屋上に出て真夏の日差しの元、美少女が更に美少女になっている一夏を見据え彼女に歩み寄る

 

 

「お待たせ、待った?」

 

 

「うぅん、そんなに待ってないよ」

 

 

俺の言葉に一夏は微笑み答える、うん やっぱり一夏は可愛いな・・・ほんと俺の好みド真ん中だ

 

 

「リク、私・・・」

 

 

「一夏、聞いて欲しい事があるんだ」

 

 

「うん?うん、良いよ」

 

 

流れ的に告白して来ようとしてきた一夏の言葉を遮り言うと、一夏は少し困った様な表情をして了承する

 

 

「一夏、今度は、今回だけは俺がお前に言わなきゃならないと思った、約3か月前に初めてお前に告白されてから、もう3か月経った・・・いや、まだ3か月しか経ってないとも言えるけど、この3か月の間 俺はお前の努力を知っている。俺の為に努力をしてくれたお前を俺は見てきた、俺は・・・お前が好きだ、だから俺と付き合ってくれ」

 

 

「・・・はい、喜んで!!」

 

 

俺の言葉を飲み込むのに少し時間がかかったのか、一夏はポカンとしてからホロリと涙を流し満面の笑顔で答える

 

 

「待たせてごめん」

 

 

「ううん、そんなに待ってないよ」

 

 

一夏は俺に抱き着き答える、ほんと一夏は俺には勿体ない美少女だ。だから俺の出来る範囲で一夏を守っていこう

 

 

一先ずは・・・進路を考えるか、この分だと一夏は死ぬまで俺を離してくれなさそうだし?

 

 

「おーおーお熱いねぇ?」

 

 

「おめでと~ 一夏」

 

 

「おめでとう、一夏」

 

 

なんかイキってるヤンキーみたいな言い方をする悪友1号(かずま)と今日はセーラー姿の悪友2号(だん)一夏ガチ勢のオカン(りん)が現れ、数馬以外は一夏を祝福する。なんでこんな奴に彼女が出来たんだ?と数馬を見ながら思う、割とマジで疑問だ

 

 

 

「これで独り身は鈴だけだな?」

 

 

「・・・ふっ」

 

 

ニヤニヤして鈴をからかいに入った数馬が鈴の虎砲でブッ飛んでフェンスに激突する、これは自業自得だな、うん

 

 

「鈴? 確かに今のは数馬が悪いと思うけど、流石に屋上で虎砲は危ないと思うよ?」

 

 

「・・・そうね、次からは関節技にするわ」

 

 

一夏の言葉はすんなり聞く鈴は、そう答え一夏は その答えに納得したのかサムズアップする、それでいいのか?一夏

 

 

まぁやたら頑丈な数馬は何事もなくケロッとした顔で戻ってきてるしいいのか?多分

 

 

 

「さて、一夏とリクが無事にくっ付いたしお祝いしましょ?」

 

 

「そうだね、それじゃぁ・・・ウチに行こっか、爺ちゃんも母さんも蘭も祝ってくれると思うよ?」

 

 

「よっしゃ、決まりだな?行こうぜ?」

 

 

当事者(俺と一夏)の意見は全く聞かれずにトントンと話が決まって行き、いつまにか五反田食堂へ行くことが決定していた、相変わらず凄い連携だな

 

 

でも、悪くない。美少女の彼女と悪友が2人、頼れるオカンみたいな親友が居る、今が俺は好きだ

 

 

さぁて夏休みが始まる、今年は何をしようか?何が出来るだろうか?楽しみだ

 

 

 







お待たせしました


少し短いですが、お許しください


はい、という訳で本作最大の目標が達成されましたw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夏休みの前日譚

 

 

数馬にニヤニヤとされ軽く弄られながら俺達は真夏の日差しの元五反田食堂へと歩き、準備中と看板が出ている五反田食堂の店舗入り口に弾は迷わずに入っていく

 

 

いつもなら厳さんに注意されるので弾が店舗側から中に入ることがないので不思議に思いつつ弾に続き中に入ると白を基調とした独特な制服を着たハチミツ色の髪にヘアバンドをした眼鏡をかけた美少女が制服姿の蘭と談笑していて、なぜ全寮制の学校に通っている筈の彼女が此処にいるのかに疑問を抱く、あそこってカリキュラムぎちぎちに詰まってるって聞いた覚えがあったし?

 

 

とまぁそんな俺を知ってか知らずか弾は彼女を視界に納めたようで

 

 

「あれ?虚さん、学校は?」

 

 

「今日は終業式で半休でしたし、とくに用事もなかったので来ちゃいました」

 

 

弾の質問に虚さん・・・布仏(のほとけ) (うつほ)は弾に会えて嬉しいのか少し恥ずかしそうに答える

 

 

「そっか、ありがとね?虚さん」

 

 

「いえ、私が弾くんに会いたかったので」

 

 

弾も虚さんに会えて嬉しいのか、いつもよりニコニコして虚さんと甘い空気発生させ2人の空間を作り出す、まぁいつものことだし半ば遠距離恋愛みたいな状況だから仕方ないかなぁ?と思いいつもの様に弾と虚さんの事は放置する事にして

 

 

「蘭も今日が終業式だったのか?」

 

 

「はい、夏休みは嬉しいですが課題が多くて少し気が滅入りそうです」

 

 

「分かんない所は教えてやるから遠慮なく言えよー」

 

 

「うん、ありがとカズ君」

 

 

暑いからか髪をアップスタイルにしている蘭に尋ねると苦笑して答え、いつもは蘭の尻に敷かれ気味の数馬が珍しく年上の威厳を出し言う、普段の態度やら色々を見ても想像できないが数馬は実は俺たちの中で一番成績が良い・・・いや正しくは俺以外は学年トップ15にランクインしているぐらいだ、俺は60~70ぐらいをフラフラしている

 

 

普段の生活態度からはホント想像できない、でもやる時はやる男、それが数馬だ。まぁどこが良いか俺にはよく分からないが蘭が良いなら良いのだろう、多分

 

 

そんな訳で蘭と数馬が夏休み何処に行こうか、と相談を始めて此方も甘い二人だけの空間を形成し始めたので弾と虚さんと同様に放置を決める

 

 

こういうのは放置するに限る、割ってはいるのは野暮ってものだ、多分

 

 

「おう、リク腹括ったんだって?良くやった」

 

 

「あはは・・・なんで知ってるんですか?厳さん」

 

 

厨房で何やら作業していた厳さんが出てきて俺の肩を軽く叩き言い、俺は疑問を尋ねる

 

 

「ん?そんなの弾から聞いたに決まってるだろう?いくら俺がジジイとはいえ孫とラインでメッセージのやり取りぐらい出来る」

 

 

「え?!あ、あー・・・そうですか?そうですか・・・」

 

 

厳さんがラインをしているイメージが全くと言っていいほど浮かばず変な返事をしてしまい、厳さんに変な奴だな?みたいな目で見られてしまう、いやホント厳さんがライン出来る事にビックリしている

 

 

「今、弾に頼まれて蓮と色々準備してる、もう少し待っててくれ」

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

厳さんは軽くのつもりなんだろうけどバシバシと俺の肩を叩き厨房へ戻っていく、その背中を見送りながら叩かれた肩を軽く擦る。痛いんだけどぉ

 

 

祝福してくれるのは嬉しいけど、厳さんは力強すぎるよ、マジで・・・蘭の怪力も厳さんの遺伝は?あぁ納得できるぞ、うん

 

 

そんな厳さんの背中の向こう側に蓮さんが何か作っているのが見える、弾と蘭と同じ綺麗な紅色の赤毛でどうもても中学生の子供が2人いる母親には見えない二十代ぐらいの女性、それが蓮さんだ

 

 

ほんと弾も蘭も蓮さんにソックリだな・・・遺伝て凄いなぁ

 

 

あれ?蓮さんも実は武闘派とかないよな?いや、ありそうだな・・・マジで有りそうだ

 

 






お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夏休みの前日譚 2

 

厳さんに叩かれた場所を軽く擦りながら一夏&鈴と雑談をしていると、店舗入り口の引き戸が開き落ち着いたお姉さん風の装いの束さんが入ってきて

 

 

「おめでとう、いーちゃん」

 

 

と満面の笑みを浮かべて束さんは一夏を抱きしめ、急なことで一夏は驚いた表情をしている

 

 

一夏の表情を見る限り一夏は束さんに連絡はしてない様だ・・・誰が連絡したんだろう?

 

 

「いやぁこれで、ちーちゃんも色々安心できるね?」

 

 

 

「う?うん、そうなのかな?うん」

 

 

一夏を抱きしめるのを止めて満面の笑顔を浮かべたまま束さんは言い一夏は曖昧な返事をする、気持ちは分かるぞ一夏、俺もよく分からないしな

 

 

「お待たせ、できたわよ」

 

 

俺たちが困惑していると丁度いいタイミングで蓮さんが出来上がった料理を持って厨房から出てきてニコニコしながらいう

 

 

ほんと中学生の子供が2人いるとは思えない見た目だな、うん

 

 

「一夏くん・・・いえ、一夏ちゃんかしら?おめでとう、今日は貸し切りだから気にせずに楽しんで頂戴?」

 

 

「え?はい、ありがとうございます蓮さん」

 

 

「リク君はキチンと一夏ちゃんを守るのよ?」

 

 

「ははは・・・善処します」

 

 

蓮さんは料理をテーブルに置きながら一夏に言い、そのあと俺を見て言い俺の返答を聞き少し眉をよせ

 

 

「そこは自信が無くても、『任せてください』ぐらい言うものよ?例え一夏ちゃんの方が強くても、ね?」

 

 

「次からはそうします、はい」

 

 

なんか五月ぐらいに蘭と立ち会った時の鋭い目つきと同じ目を蓮さんから感じ、俺は素直に従う事にした、蘭の強さは蓮さん譲りだ間違いない

 

 

「一夏さん、遅くなってしまいましたが、この度はおめでとうございます」

 

 

「ありがとうございます、虚さん」

 

 

弾との時間を堪能し終えたのか虚さんが、こちらを向き一夏へお祝いの言葉を言う、見た目 落ち着いたお姉さんで実際落ち着いたお姉さんだからなんか、頼れるお姉さんなんだよなぁ

 

 

趣味が服飾作成で、それ関係のオフ会で弾と出会い交際を始めたと言っていたっけ?

 

 

時々一夏と一緒に弾の衣装製作の手伝いをしていた時に虚さんもいた事があったなぁ、なんでか弾より俺の方が裁縫スキル高かったっけ、まぁ一夏の方が更に上だったけど

 

 

「リクさんはお疲れ様でした、それなりに苦悩も有ったのではないですか?」

 

 

「ん~・・・そうでもなかったです、気付くだけでした」

 

 

「ふふ、そうですか。距離の関係でそんなに手を貸したりはできませんが、相談ぐらいなら乗れます、遠慮しないで相談してください。これでもお姉さんですから」

 

 

「その時はお願いします」

 

 

と虚さんは頼れるお姉さんオーラを出して言ってくれる、おぉマジ感謝しよう虚さんマジで頼れるわ

 

 

言わないけど恋愛関連だと束さんと千冬さんに相談するより虚さんに相談した方が信頼できる・・・なんたって現在進行形で交際中だし、ね?

 

 

だって千冬さんと束さん(姉貴分2人)に、そういう浮いた話が有った記憶なんて無いし、そんな気配はない・・・いや、まぁ俺は知らないだけで2人共恋人が居たり、居た事が有ったかも知れないけど、うん

 

 

まぁそもそも束さん&千冬さんと俺達は歳が離れすぎてる感は有る、なにせ9個も歳が離れていて虚さんとは2個だけしか差が無いからってのもあるかも知れない、多分

 

 

そんな事を考えていると弾が俺の肩を叩き

 

 

「今日の主役の片方がボンヤリ突っ立ててちゃだめだよ?ほら座って」

 

 

そう言い弾は俺を一夏の隣に座らせニコニコしながらカウンターの上に置かれた飲み物を配り始め、慣れているからか相変わらず手際が良い

 

 

 

「それでは、一夏の祝勝会を始めたいと思います。おめでとう一夏」

 

 

弾は全員に飲み物が行きわたったのを確認し乾杯の音頭を取り、弾の音頭ともに俺以外の参加者がおめでとうと続く

 

 

 

まぁ確かに、一夏の勝ちだわ・・・まちがいねぇ

 

 

 

 







お待たせしました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

来訪

 

一夏の祝勝会から約1週間が経った今日この頃、休日でも早寝早起きを是としている一夏との生活のお陰で俺も早寝早起きの習慣がついているので、今日も今日とて定時に起き徒歩3分の近所の公園のラジオ体操へ行き体を動かして『あー今日もいい天気だなぁ』とか一夏と他愛ない話をして1日を始めている

 

 

そういえば束さんは前回とは違い我が家に滞在する期間が短く、2日前に仕事現場に戻っていった。ほんと忙しい人だなぁ

 

 

まぁそんなこんな朝飯を食った後に一夏と手分けして家事をしていて10時を回った頃、不意にピンポーンと我が家のインターフォンが鳴り、今日は来客の予定はなかった筈だし何か注文してる訳でもないけどな?と思いつつ玄関に近かった俺が対応する事にし、玄関を開ける

 

 

そこには髪をポニーテールに結っているのに毛先が腰を超えている美少女が少し険しい表情をして立っていた、何処かで見たような気がする・・・この子

 

 

「・・・ここは栗田陸の家で間違いないでしょうか?」

 

 

「え?あぁ、はい。なんのようでしょう?」

 

 

美少女は険しい表情のまま尋ねてきたので答え用を尋ねると

 

 

「・・・まさか、お前はリクか?私だ、箒だ」

 

 

「え?箒?!おぉ久しぶりじゃん、暑いだろ?ほら入れよ」

 

 

「あぁ助かる」

 

 

俺は美少女改め箒を家の中に招き入れるを、箒は救済されたような表情をして我が家に入る、今日は殺人級の日差しだからなぁ・・・そりゃ表情の険しくなるわ、とか考えつつリビングに案内して冷蔵庫から冷えた麦茶を淹れ箒に出すと余程日差しにやられていたのか箒は麦茶を一気飲みして

 

 

「ありがとうリク、まさに干からびる寸前だった」

 

 

「そうか、干からびる前で良かった」

 

 

箒の話に適当に合わせつつ掃除の為に開けっ放しにしていた窓や扉を閉めてエアコンのスイッチを入れ冷蔵庫から麦茶を取りだし箒のコップにお代わりを注ぎ、自分の分の麦茶を淹れ飲み

 

 

「ほんと久しぶりだな、3年ぶりぐらいか?」

 

 

「あぁ、大体3年ぐらいだな」

 

 

俺は箒の正面に座り彼女と会話を始める、箒は少し嬉しそうに微笑み答え

 

 

「先に織斑家を訪ねたのだが留守だった様で一夏には会えなかったが、お前と再会できてよかった」

 

 

箒は、少し残念そうな表情で言う、あれ?箒って一夏に恋愛感情持ってなかった筈・・・とか思いつつ、幼馴染に会えなくて残念って意味か?と勝手に解釈しておく

 

 

「あぁ~・・・ちょっと待っててくれ」

 

 

「あぁ構わないが?」

 

 

一夏を読んでこようと思い箒に言うと箒は首を傾げ頷く、それを横目に見つつリビングから出て2階のベランダで洗濯ものを干している一夏の元へ行くと、丁度洗濯を干し終えた様子だったので

 

 

「一夏、干し終わった?終わってるなら、リビングに来て欲しいんだけど」

 

 

「干し終わってるけど、どうしたの?」

 

 

「お前にお客だ」

 

 

俺の言葉に、そう と答えエプロンをしたままリビングへ歩いていく一夏の後を追いリビングへ戻ると、一夏と箒が見つめ合い対峙していた、なんだこれ

 

 

「・・・箒?」

 

 

「お前・・・一夏か? お前女だったのか、そうか見違えたぞ」

 

 

 

箒は座っていた椅子から立ち上がり一夏に近寄りマジマジと一夏を観察して感嘆の声をあげる

 

 

そんな2人を見て思う、箒と一夏って背は あんまり差がないな、確か160ぐらいって一夏は言ってたっけ?まぁ何処とは言わないけど箒の方が大きい部分はあるけど、な

 

 

「久しぶり箒、3年ぶりぐらいだよね?」

 

 

「そうだな、まさか此方に居るとは想定していなかったぞ?」

 

 

「え?何の話?」

 

 

箒が先に織斑家を訪ねている事を知らない一夏はキョトンとして箒に聞き返す、やっぱ可愛いな一夏(コイツ)

 

 

神様、こんな可愛い彼女を生んで下さりありがとうございます

 

 

そんな事を普段信じていない神様に感謝しておく、なんとも都合のいい生き物だな俺は

 

 

 

 

 

 





おまたせしました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

来訪2




一夏視点


 

 

 

 

 

なんの前触れもなく箒が尋ねて来た事には驚いたが、そんな驚きよりも箒と再会出来た事による嬉しさの方が勝り頬が緩む

 

 

そんな箒が私の性別が元から女で有ったと勘違いしているが、これについては箒には悪いけれど勘違いさせたままの方が私達にとっては都合がいいと判断し、箒の勘違いを放置する事に決めて、箒の『まさか此方に居るとは想定していなかったぞ?』という言葉に首を傾げて問うと

 

 

「あぁ、此方に来る前に織斑家を訪ねただけだ」

 

 

 

「あーなるほど、そういうことかぁ・・・今、千冬姉も海外赴任しててウチは無人なんだよね」

 

 

と明後日の方向を向き何やら拝んでいるリクを横目に、箒に軽く説明する

 

 

「無人?今家が無人ならば一夏、お前はどこに住んでいるんだ?」

 

 

「え?何処って・・・栗田家(ここ)だけど?」

 

 

私の説明に箒は何か引っ掛かった様で、眼光を光らせ尋ねられたので答えると

 

 

「なんだと?!リクの両親が居るとはいえ兄弟でもない男女が同じ屋根の下で生活など・・・」

 

 

「?陽太さんも(ルナ)さんも海外赴任中だからリクと2人だけど?」

 

 

なんか急に興奮してお説教の様な事を言い始めた箒の言葉に首を傾げて言うと、箒は口をパクパクとさせ唖然とした表情をしていて、なんか少し可愛いなと感じる

 

 

それはそれとして、箒は元々考え方が固いというか古いというか硬派な所がある。それは箒の良い所でもあり悪い所だろ私は思ったりする、良い娘なんだけどねぇ

 

 

「な、猶更問題じゃないか!? 男女七歳にして席を(おな)じゅうせず、常識ではないか」

 

 

「えぇっと・・・確か意味は7歳にもなれば男女の別を明らかにしてみだりに交際してはならない、だっけ? つまり?」

 

 

「年頃の男女が同じ屋根の下で暮らすなど、何か間違いが起こるに決まっている!!」

 

 

と箒は軽く顔を赤くしながら熱弁を繰り広げてきたのだけど、私が思ったのは箒って結構ムッツリなんだなぁ、と

 

 

色々言って誤魔化しつつ少し揶揄っても良いかな?とも思ったけど止めておこう、箒って怒ると言葉より先に手を出すタイプだしね?

 

 

「間違いが何なのかは今は問わないでおくとして・・・大丈夫だよ、間違いが起こっても。その時はリクに責任取って貰えば」

 

 

いつの間にかキッチンに移動して昼食の支度をしているリクをチラッと見て確認して言うと、箒は更に顔を赤くし

 

 

「な、なななな何を言っているんだお前は!!」

 

 

やっぱり箒ってムッツリだなぁと思いつつ

 

 

「いや、ほら。将来を誓い合う仲なら問題ないじゃない?そもそも私はリクを逃がすつもりは無い訳で」

 

 

「待て、今聞き捨てならない事をサラッと言わなかったか?なぁ一夏?」

 

 

先ほどまで赤面して軽くあわあわしていた箒が私の言葉を聞いて急に怪訝な表情になり尋ねてく

 

 

「ん?私はリクを逃がすつもりが無い訳で?」

 

 

「違う、いや違わないが、その前だ」

 

 

「あぁ、将来を誓い合う仲ならって?」

 

 

「あぁ・・・もしや?」

 

 

箒の質問に答えると何か少し混乱した様子で箒は私を真っすぐ見てきたので

 

 

「うん、私とリクは交際中だよ?さっきも言ったけど私はリクを逃がすつもりは無いから・・・ね?」

 

 

私はニッコリと笑み箒に言うと、箒はますます混乱しているのかブツブツと小声で何かを高速詠唱をし始めたので少し心配になる、大丈夫かな?

 

 

「あー・・・将来を誓っていて清いお付き合いをしているなら良いの・・・か?」

 

 

「良いんじゃないかな?」

 

 

箒は相当混乱している様で、自信無さ気に私に尋ねて来たので肯定しておく、その方が私にとってとても都合が良いしね?

 

 

「ふむ、そうか・・・分かった、まぁなんだ?おめでとう、で良いのだろうか?昔からリクの事好きだったのだろう?」

 

 

「ありがとう、そうだね。ずっと好きだったよリクの事」

 

 

「少し残念だな・・・実は私も昔はリクの事が好きだったんだ、今は違うがな」

 

 

そう箒は少し儚げな笑みを浮かべて言う、多分箒はほんの少しだけ嘘をついている。でもその事を私は追求する事は出来ない、してはいけないと思った

 

 

いつか、箒にも良い出会いが有りますように、神様お願いします

 

 

そんな普段祈りもしない神様に願っておこう、彼女も幸せになって欲しいから

 

 

 

 







お待たせしました


予定では1話で終わらせる予定でしたが2話に増えましたw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

交流会

 

 

箒が唐突に栗田家(わがや)を訪れた日の夜、なんでか焦った様子の束さんが夕方にウチに来て箒を見て安心した表情を見せ、その晩はウチに泊まっていき翌朝、箒を連れて再び我が家を旅立って行った

 

 

 

そんなこんなで面倒な登校日を経た7月末頃、俺達は数か月振りの場所に来て死なない戦争で汗をかいている

 

 

「リク右側押さえられてるよ、気を付けて」

 

 

「OK、了解」

 

 

ガスマスク越しで少しくぐもっている一夏の声を聴き返事をしながらベネリM4にデュアルドローでショットシェルを込めながら、どうしたものかと考え一夏の居る場所のバリケードから軽く顔を出し

 

 

「こっちサイドも居るっぽいな・・・どうする?」

 

 

「ん~そうだなぁ・・・出来るだけ引き止めた方が左ルートが楽になるよね?」

 

 

「まぁそりゃそうだ」

 

 

グロック17をホルスターに納めM1887にショットシェルを込めながら一夏が言うので肯定する

 

 

今のゲーム参加人数なら向こう側(左ルート)に余程の猛者(バケモノ)が居ない限り、楽になる筈だ

 

 

さて、今俺達が参加しているのは弾と虚さんが所属しているグループ?サークル?の交流会だ

 

 

年に何回かあるイベントや交流会でコスプレをしたり薄い本を販売していたりと、そこそこの人数が所属していて、年齢層も俺たちの様に中学生もいるし高校生大学生等の未成年組、成人組では自衛官や漫画家、イラストレーターに警察官と色々な人がいる

 

 

今日の催しは仮装サバゲーであり、俺と一夏も漏れずにコスプレ中だ、俺は艦これの最上のコスプレをしている、真夏で暑いし装備的に軽いからな

 

 

そして一夏はクラシカルなメイドである、めっちゃ似合ってて俺得で俺は大変満足している

 

 

「されじゃぁ・・・突撃しようか」

 

 

「まぁ、そうなるよなぁ・・・残り時間も少ないしな、うん」

 

 

ガスマスクで表情は見えないが不敵に笑んでいるであろう一夏に答え俺も腹を括る、どうせ今からじゃフラッグを取りに行けないし、少しでも道ずれにしてスコアを稼いだ方が良い

 

 

グロック17のマガジンも換えた一夏が俺を見て無言で頷いたので頷き返すと、一夏は身を翻しバリケードから飛び出して次次飛んでくるBB弾を躱して敵に接近しM1887で仕留め、スピンコックで排莢し その場で屈みBB弾を回避、その後グロック17で飛んできたBB弾を撃ち落とす

 

 

という人間と思えない神業を披露してくれたので俺も負けじと一夏の後に続きベネリM4で敵を仕留めクリアリングして進行していく

 

 

にしてもスピンコックを会得したのか一夏、結構難しいのになぁ・・・俺には難しすぎたし、何より実用性が低い

 

 

何故なら、俺が今使ってるセミオートタイプのショットガンもある訳だし、片手で使うならハンドガンが有る、アサルトライフルだってある訳だから

 

 

まぁ、ロマンがある事は大いに評価しているし、考え方は人それぞれだからね?うん

 

 

とまぁ、目の前で超時空駆動している一夏の背中を守りながら少しずつ進行していく

 

 

どうしたら飛んでくるBB弾を撃ち落とせるんだろう?目が良いとか、そんなちゃちなものじゃねぇぞ?マジで

 

 

「リク!!」

 

 

「はいよ」

 

 

M1887を撃ち切った一夏が俺の方へM1887を投げ渡して来たので代わりにベネリM4を一夏に投げ返し俺はM1887にショットシェルを込める

 

 

束さんが紹介してくれたショップの人、すげぇな。本来なら専用のショットシェルしか使えない筈のM1887を一番普及してるタイプと規格を合う様に改造するとか、マジですげぇ

 

 

世の中、凄い人で溢れてるな、よくよく考えなくても年上の幼馴染(千冬さん)も凄い人なんだよなぁ・・・身近過ぎてあんまり実感ないけどな、うん

 

 

にしてもM1887ショットシェルが込めにくいな、やっぱ慣れてないと違和感しかないし、ロマンて努力の賜物なんだなぁ

 

 

 

と遠い目をしてる間も一夏の無双は続いていた

 

 

 





お待たせしました


メイド一夏ちゃん、良くないっすか?


私は良いと思ってます




※装備説明


〇M1887


ターミネーター2で出てきた世にも珍しいレバーアクションのショットガン


装填数5発



〇ベネリM4

ジョン・ウィック チャプター2等で出てきたセミオートショットガン


装填数7+1の計8発



〇グロック17


軍・警察共に採用している国が多いハンドガン

ハンドガンと聞かれてグロックが思い浮かぶ人も少なくないと思われる


装填数10+1、17+1、19+1、33+1

※装填するマガジンによって差が有り、実銃のデータである







目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

そうだ、ドイツに行こう

 

 

ある晴れた異国の地で俺は・・・

 

 

 

「貴様さえ居なければ!!」

 

 

「なんの事かなぁぁぁ?」

 

 

同世代の中で小柄な鈴より更に小柄な眼帯をした銀髪美少女に襲い掛かられている、薄い本的な意味ではないガチの襲撃だ

 

 

なんでこんな事になったんだ?俺は悪いことしてないぞ?マジで・・・と思いながら必死に銀髪美少女(しゅうげきしゃ)の攻撃を躱す

 

 

なんでこうなった?

 

 

 

そう、あれは交流会をケガもなく、大きなトラブルも起こらずに終えることができ、8月に突入した何でもない日、いつもの様に唐突に帰ってきた束さんがニッコニコしながら『ちーちゃんに会いに行こう』と言い出した

 

 

あんまりにも唐突で俺達がポカンとしていると

 

 

「ちーちゃんは契約で日本に帰国出来ないけど、此方から会いに行くなら契約上は問題はないし、1日ぐらい休暇も貰えるだろうしね?」

 

 

「休暇の件は別にして、確かに理屈ではそうなるか・・・」

 

 

「千冬姉にリクとの事を報告してなかったし、丁度良いかもね?」

 

 

と、束さんの提案に肯定的な意見しか出てこなかったので急遽ドイツ旅行へ行くことになったわけだ

 

 

そして都合よく俺はパスポートを持っていて、とんとん拍子に準備も終わり、束さん引率の元ドイツに到着して束さんが取ってくれたやたらセキュリティが高そうなホテルに荷物を置き、ホテルのロビーに行くとお嬢様風の銀髪美少女が立っていて

 

 

「お待ちしていましたリクさん」

 

 

「え?なんで俺の名前・・・」

 

 

彼女は目を閉じたまま俺の方を向き微笑んで俺の名前を呼んだので疑問を口にしてしまう

 

 

「その疑問は最もです、私は束様の助手や秘書の真似事をさせていただいておりますクロエともうします、以後お見知りおきを」

 

 

「あーそれはどうも・・・」

 

 

俺の質問に答えお辞儀をしたクロエに俺もつられて軽く頭を下げる

 

 

「やぁお待たせ、少し仕事の電話が入ってね遅くなっちゃった」

 

 

「私は心配の鈴から電話来てたよ」

 

 

相変わらず忙しい様子の束さんと、軽く苦笑している一夏がロビーに現れ合流し

 

 

「束様、準備は滞りなく」

 

 

「うん、ありがとうクーちゃん。さ、行こうか」

 

 

「こちらです」

 

 

クロエの先導でロビーから移動を開始して何か高そうな車に乗って千冬さんに会う為に車に揺られる事数十分、肩から小銃を下げてるガチムチ門番が2人いる施設に到着し、運転手が運転席側の窓を開けて何か話して、数分掛からずに門が開き中へ入り、駐車場らしき場所で停車したのでおりると

 

 

「お待ちしていました篠ノ之博士」

 

 

「急なお願いしてごねんね?クレアちゃん」

 

 

「いえいえ、これぐらい大丈夫です。教官も喜びますし」

 

 

ドイツ軍の制服を着た黒髪美女が立っていて束さんと2~3言会話をして俺達の方に向き

 

 

「ようこそドイツへ、建物に入る前に此方を首から下げてください、入館証です」

 

 

俺達は入館証を受け取り首から下げてクレアさんの先導で建物へと入る

 

 

「ここは殆どIS教育関連の施設ですが、軍の施設に併設されていますので、可能な限りはぐれない様にしてください、場合によっては逮捕もあり得ますから」

 

 

クレアさんは真顔で、俺を見て言う。しまった少しキョロキョロし過ぎた様だ、でも男心をくすぐるから仕方ない、うん仕方ない

 

 

そんなこんなクレアさんの案内で千冬さんが居る室内訓練場へ入り千冬さんを見つけ、近寄っていたら眼帯とした銀髪美少女に、いきなり『貴様さえ居なければ!!』と叫びながら襲撃された

 

 

ホント暇を見て蘭たちと組手とかしといてよかった、マジで良かった

 

 

「落ち着けよ、俺がなしたってんだ?」

 

 

「何をしただと?貴様は!教官の栄光に泥を塗ったというのに!!自覚が無いとは、万死に値する!!」

 

 

「だから、落ち着けって!」

 

 

とりあえず襲撃者を説得したがらチラッと千冬さんを見ると頭が痛そうにしていて、一夏は少し気まずそうな表情、束さんは俺を指さし爆笑、クレアさんは興味深そうに観察していた、いや助けてよクレアさん

 

 

 

まぁなんだ?なんで俺は人違いで襲われなきゃなんないのさ?

 

 

 

 

 







ハーメルンよ私は帰ってきた!!



お待たせしました、いやホントお待たせしました


とりあえず、次もドイツの話が続きます



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

そうだ、ドイツに行こう 2

 

一夏と千冬さんは兎も角、束さんは爆笑してないで助けてくれとか思いつつ襲撃者の攻撃を躱し続けていると

 

 

「そう、貴様さえ居なければ教官は人類初の栄光を得る事が出来たのだ、織斑一夏・・・貴様さえ居なければな!!」

 

 

「アンタがどう思おうと勝手だけど、人類初の栄光なんて そんなもの為にあの人はブリュンヒルデになった訳じゃない、大切なものを守るチカラが欲しかったからブリュンヒルデになったんだ」

 

 

「貴様に教官の何が分かる!!」

 

 

俺の言葉が癇に障ったのか攻撃速度が上がり思いっきり顔にグーパンを食らいよろけた隙をつかれて、もう2回ほど容赦ないグーパンを食らい足が縺れて仰向けに倒れてしまい、襲撃者にマウントポジションを取られる

 

 

「貴様に、貴様に教官の何が分かると言う!!ただ教官に守られているだけの、教官の脚を引っ張っているだけの貴様に!!」

 

 

「アンタこそ千冬さんの何を知ってんだよ!千冬さんは不器用だけどメチャクチャ優しい人なんだよ!家族の為にブリュンヒルデになったんだ、アンタには分かんないだろうけどな!!」

 

 

マウントポジションから容赦なく振り下ろされる拳を出来るだけ逸らしながら俺も襲撃者が美少女だとか関係なく顔に拳を叩きこむ

 

 

「俺は生まれた時から千冬さんを知ってる、せいぜい数か月の付き合いしか無いアンタよりずっと千冬さんを知ってるつもりだ」

 

 

「それがどうした!十数年もの間、教官の足枷になっていた事に変わりは有るまい!!」

 

 

「千冬さんは足枷なんて思ってない!!」

 

 

途中から殆ど・・・否、完全に子供の喧嘩の様に感情に任せて言葉を吐き拳を繰り出す攻防が続き

 

 

「・・・もう止めろ、これ以上は問題になる」

 

 

「く・・・教官が、そう言うなら」

 

 

襲撃者の思いっきり振りかぶった腕を千冬さんが掴み制止し襲撃者は些か不満そうに俺の上から退く、コイツ・・・

 

 

「大丈夫か?」

 

 

「このぐらい何とも・・・まぁもう少し早く止めてほしかったかなぁ?」

 

 

俺は千冬さんの差し出された手を握り立ち上がって軽口を叩くと

 

 

「すぐ止めるつもりだったが途中から子供の喧嘩になったからな、アイツが感情を表に出すのも珍しかったしな」

 

 

「そか・・・」

 

 

とりあえず千冬さんには千冬さんなりに考えが有る様なので適当に相槌を打っておきつつ殴られた所を擦る、うん普通に痛いわ

 

 

「・・・これはやはり、ISどうこうより先に解決するべき問題があるな」

 

 

「でしょ?準備は進んでるから、安心してね?」

 

 

「すまんな、助かる」

 

 

「いいよ、私とちーちゃんの仲じゃない」

 

 

何か千冬さんと束さんが密談してるけど、よく分からないな・・・まぁいいか、気にしないでおこう、うん

 

 

 

「さて・・・ラウラ、お前には紹介しておこう、私の妹の一夏だ」

 

 

「あー・・・初めまして、織斑一夏、です」

 

 

「い、妹?え?妹ですか?教官!?」

 

 

若干ふてくされている様子だった襲撃者(ラウラ)は見るからに取り乱し始める、そりゃそうか・・・さっき殴り合いしていた奴が織斑一夏だと思っていたのだろうからなぁ

 

 

「そうだ、唯一の肉親は妹の一夏だ。お前が先程襲い掛かり殴り合っていたのは一夏の幼馴染で私の弟分のリクだ」

 

 

「栗田陸、産まれた時から織斑家の隣に住んでる幼馴染だ」

 

 

「え?それじゃぁアレか?私は人違いで殴り掛かっていたのか?」

 

 

「うん」

 

 

ラウラは動揺して少しプルプル震えながら尋ねて来たので素直かつ簡潔に答えると

 

 

「栗田、すまない!!」

 

 

それはもう綺麗な土下座をラウラは決めて俺に謝罪してくる、おっとコイツ本当は悪い奴ではなさそうだぞ?

 

 

コイツ、マジで千冬さんが好きすぎるだけの千冬さん信者なのかもしれない、仮にそうだとしても、許せない事も有るけどな

 

 

それはそれとして、千冬さんに一夏の事をどう説明してたか聞かないとな、うん

 

 

 

 






お待たせしますた


気分が乗れば次もドイツの話になるかも知れません



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

そうだ、ドイツに行こう 3

 

 

とりあえず襲撃者(ラウラ)に立つように言い俺が襲われる事になった元凶の千冬さんの方を向き

 

 

「ねぇ千冬さん、コイツ(ラウラ)に一夏の事、なんて説明したのさ?」

 

 

「ん?ラウラにか?」

 

 

「うん」

 

 

俺の質問に千冬さんはラウラを見てから俺を見て尋ねて来たので頷くと思案顔をして

 

 

「あー・・・確か『私には日本に唯一の肉親の一夏がいる、少し前に誘拐されたのが一夏だ。弟の様な存在と今は暮らしているから、今の所は安心だろう・・・』だったか?あぁ、あと『一夏は正義感が強くて色々と行動を起こすから妹と言うより弟に近い感覚かも知れん』とかも言った様な気もするな、うん」

 

 

そう言い千冬さんは、はっはっはっと誤魔化す様に笑う、まぁ他愛ない世間話をイチイチ全部は覚えていられないだろうから、だいだいなんだろうけど・・・割と雑な説明をしたに違いない、千冬さん口下手だし

 

 

「とりあえず、俺が襲われた原因は千冬さんに有る事は理解できた」

 

 

「なんだと?それは言い過ぎではないか?」

 

 

「いや十中八九、千冬さんの説明不足だと思うんだよねぇ」

 

 

俺の言葉に千冬さんは不服そうな表情をしていたが、ラウラが一夏に襲撃を掛けていたが弄ばれているのを見て今の内に俺的には本題を告げる事にした

 

 

「まぁラウラの件はもういいとして、千冬さんに報告があるんだ」

 

 

「ん?お前が私にか?なんだ?珍しい」

 

 

千冬さんは少し首を傾げて不思議そうな表情をする

 

 

「・・・少し前に、一夏と交際を開始した」

 

 

「なん・・・だと・・・!?」

 

 

俺の言葉に千冬さんは珍しく目を見開き驚いた表情をする、基本表情を大きく変えない千冬さんにしては物凄く珍しい、マジで珍しい

 

 

「リク、ありがとう。一夏を受け入れてくれて、ありがとう」

 

 

「え?ちょっ・・・そこまで?」

 

 

千冬さんは目に涙を浮かべて、俺にそう言ってきて俺は正直困惑してしまう

 

 

「一夏は私にとって唯一の肉親だ、家族は血の繋がりだけではないが、やはり私にとって一夏は血の繋がった唯一無二の存在だ、何事にも代えがたい存在なんだ」

 

 

「うん、知ってる」

 

 

家族は血ではなく心の繋がった者同士の事を言う、俺は俺達はそう思っている

 

 

それ故に、心も血も繋がっている者同士は更に掛け替えもない存在だと思う、だから千冬さんは一夏の事を本当に大切にしている、それを俺は良く知っている

 

 

「そして、お前もまた代えがたい存在だ、リク。一夏がお前に想いを明かすと言った時、私は一夏を止めるか ほんの少し悩んだんだ・・・一夏が想いを伝える事で弟分であるお前との関係が悪い方向に変わってしまうのではないのか?と思ってな・・・」

 

 

「・・・うん」

 

 

千冬さんは本当に一夏の事を大切にしていて、俺の事も弟の様に可愛がってくれている、本当に千冬さんは優しい人だ、だからこそ一夏が、そして俺が傷付く未来を予想してしまったのだろう

 

 

 

「しかし、私には一夏に思い留まらせる言葉は無かった・・・そもそもある訳も無いのだがな?」

 

 

そう千冬さんは苦笑して言う、ほんと口下手だなぁ

 

 

「だが、結果的に言えば杞憂だった。お前は一夏の気持ちを受け止めて向き合ってくれたのだからな、だからありがとうリク。一夏を頼む」

 

 

「まかせてよ千冬さん、死なない程度には頑張ってみるから」

 

 

「そうだな、死なない程度で良い。一夏だけならどうとでもなるだろうしな」

 

 

そう言い千冬さんは俺の肩をバシバシと叩きながら笑う、うん嬉しいのは分かるけど普通にチカラが強くて痛んだけど・・・まぁいつもの事ではあるけどねぇ

 

 

どうしてこう、俺の周りに居る頼りになる人はパワー系の人が多いのかな?

 

 

必死に一夏に襲い掛かるが弄ばれているラウラを眺めつつ考えたが、答えが出る訳も無かった

 

 

 

あれ?よくよく考えなくても俺の彼女強すぎじゃね?

 

 






お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

諸国漫遊 英1

 

ラウラを弄んでいた汗もかいていない一夏を止めて、ぐったり気味のラウラを励ましたりして夜には束さんが予約した何か高そうなお店で夕飯を食べながら色々と千冬さんに話した

 

こうやって並んでいる所を改めて見ると2人はホントによく似ている、誰が見ても姉妹としか思わないだろう・・・何でか俺が一夏と間違われたけど、なんでだ?

 

 

それはそれとして、翌日から3日程千冬さんは休みを取ったらしく俺達とドイツ観光をしてくれた、結構スケジュールに無理を強いてたみたいだ

 

 

そんな訳で、随分と有意義な夏休みを過ごしてるなぁと寝起きの頭で思いつつ寝間着から着替えて携帯と部屋の鍵を持って廊下に出ると、丁度一夏と束さんも出てきた所だった

 

 

「おはよ」

 

 

「おはよー」

 

 

「おはよう、リク」

 

 

うん、今日も一夏は美少女だな、うん

 

 

挨拶もソコソコに3人で朝食を食べる為にダイニングレストランへ向かう

 

 

このホテルは朝食ビュッフェをしているので、自分の好きな組み合わせで食べられるので楽しい、でもそろそろ一夏の味噌汁が飲みたくなってきた

 

 

そんなこんな選んで3人で適当な場所に座り食べ始めると

 

 

「予定通り、このホテルは今日チェックアウトするのだけれど、急用が出来ちゃってね?二人だけで日本に帰すの色々と問題が有って難しいんだ、だから私に着いて来てくれるかな?」

 

 

束さんは少し真剣な表情で俺達に言う、そいうや一夏がドイツから帰ってくる時も束さんが付き添いしてたんだっけ?

 

 

まぁ・・・そりゃ中学生2人では問題しかないな、特に一夏は千冬さんの妹なんて事は調べたらすぐにわかる、だから此処が日本はら兎も角、海外では大人の随伴は必須も必須、しかも信用信頼できる大人、がだ

 

 

「折角の夏休みだし、良い経験じゃない?」

 

 

「そうだね、確かに」

 

 

「そう?ありがとう、2人共」

 

 

俺の言葉に一夏はニコっと笑み頷と束さんもニコっと微笑む、やっぱ束さんは笑顔の方が似合うなぁ

 

 

 

「それで、行先は何処?ドイツの何処か?」

 

 

「うぅん、イギリスだよ。その後にフランスにも行く事になってる」

 

 

「イギリスとフランスかぁ」

 

 

多分、欧州3国を梯子するのか、これは中々出来ない経験だなぁ

 

 

イギリスって何が有名なんだろう?お茶とスコーンぐらいは知ってるけど、ほかは良く知らないな

 

 

そんなこんな朝食を食べて部屋に戻り荷物を整頓しカバンに詰め込んでロビーに行くと当たり前にクロエが相変わらずお嬢様然と立っていた

 

 

「おはようございますリクさん」

 

 

「おはようクロエ」

 

 

そんな適当な挨拶を交わしているとすぐに束さんと一夏も合流し毎度の事ながらクロエの先導で相変わらず高そうな車に荷物を載せて空港に行き、一般的なゲートじゃなくて何かVIP専用みたいなゲートを潜りプライベートジェットって奴に乗せられる

 

 

「束さん、この飛行機・・・」

 

 

「ん?うん束さんのだね、ほら束さん すんごい忙しい人ですので」

 

 

俺の質問に束さんは にぱーと笑み言い

 

 

「本当はISで飛んで行った方が早いし楽なんだけど法律的にアウトだからねぇ~是非もなし」

 

 

そう束さんは冗談ぽく言っているが、束さんは本気で思っているに違いない、うん間違いない

 

 

「束様、オルコット様からお電話です」

 

 

「・・・状況が変わったかな?2人は席に座ってシートベルトをして?私は書斎に入るから」

 

 

束さんは言うが早いかササっと簡易的な書斎へ入って行き扉を閉める

 

 

本当に束さんは忙しいのだろうな、なにせ簡易的な書斎が飛行機の中にあるんだから

 

 

「リクさん、一夏さん、シートベルトの方をしてください、間もなく離陸します」

 

 

クロエの言葉に軽く返事をしてシートベルトをカチャカチャと四苦八苦して装着?する、毎度の事だけど飛行機のシートベルトって着けづらくない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせいたしました


仕事とか色々と忙しくてヤバいっす


また書けたり書けなかったりし始めますが、お許しを



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

諸国漫遊 英2

 

 

束さんのプライベートジェットに乗せられ運ばれる事数時間も掛からずにイギリスに到着し、例に漏れず高そうな車に乗って何処かで見たようなウサギのエンブレムが描かれた固そうな車が俺達の前後に付いて走り出す

 

 

ドイツでは、こんな固そうな車は走ってなかったんだけどなぁとか思いつつ知らないフリをしとこう、どうせ束さん絡みだろうし

 

 

そんな訳でプライベートジェットを降りてからも空間投影されたディスプレイを操作し何やら忙しそうにしている束さんを横目に窓の外を眺めておく

 

 

そんなこんな1時間程車に揺られて何かデカい施設に到着して車から降りて見上げ

 

 

「・・・この建物なんだろう?」

 

 

「なんだろうね?」

 

 

「これは病院だよ」

 

 

俺の呟きに同じく建物を見上げていた一夏が同調し束さんは答えを教えてくれて、俺は再び建物を見上げ

 

 

「日本の病院とは何か違うなぁ」

 

 

「そうだね」

 

 

「さ、行こう。待ち人は結構気を揉んでる筈だからね、クーちゃん」

 

 

「はい、此方です」

 

 

いつもの表情から真剣な表情に変わりクロエの名前を呼ぶとクロエは先導を始める、まるでこの建物の行動を熟知しているかの様に迷いない足取りで

 

 

俺はその事に疑問・・・違和感を感じたが今は黙ってクロエに付いて行こう、何か人を待たせてるみたいだし

 

 

「束様、こちらです。オルコット様は既に中に」

 

 

「分かった、ありがとう。隣も押さえてあるんだよね?」

 

 

「はい、では一夏さんとリクさんは此方に」

 

 

 

この病院はそれなりに大きい様でそれなりの時間をかけて移動し何か高級そうな絨毯が敷かれたエリアに辿り着き、束さんはクロエと軽く会話をしてから『行ってくるね』と言い部屋に入って行き、俺達はクロエに続き隣の部屋に入るとソコには金髪の如何にもお嬢様な美少女が少し不安そうな表情で高そうなソファーに座っていて、その傍らには如何にもなメイドさんが控えていて彼女も不安そうな表情をしている

 

 

「・・・クロエ、人がいる」

 

 

「はい、今回の商談相手のご息女と彼女の侍女です」

 

 

クロエは俺の質問にサラッと答え、お嬢様の方へ歩み寄り

 

 

「先程商談に入りました、上手く話が纏まれはそう長い時間はかからない筈です」

 

 

 

「・・・そうですか、分かりましたわ。チェルシーお茶をお願いできますか?」

 

 

 

「かしこまりました、お嬢様」

 

 

チェルシーと呼ばれたメイドさんは部屋の端にある簡易キッチンみたいな所に向かい作業を始める

 

 

「あなた方も、そんな所に立っていないで此方にお座りになったら?」

 

 

まだ不安そうなお嬢様が俺達に声を掛けて来たので、とりあえず言われた通りに開いている対面のソファーに一夏と並んで座る

 

 

「クロエ、束さんはまた何か発明でもした?」

 

 

「今回は以前開発した物の応用になる筈です、本来の用途では無いですが、有用性が確認出来ています」

 

 

「応用、ねぇ」

 

 

ISを皮切りに束さんは各分野で様々な発明をしているから、それのどれかが医学分野に転用または流用出来たんだろう、多分

 

 

ホント、普段どんな仕事をしているか分からないなぁ束さんは

 

 

「お嬢様、お待たせいたしました」

 

 

「ありがとうチェルシー、この方たちにも」

 

 

「はい」

 

 

お茶を受け取ったお嬢様の指示で俺達にもお茶が配られたのでお礼を言うと

 

 

「自己紹介がまだでした、(わたくし)はセシリア・オルコットと申します。此方は私の侍女のチェルシーですわ」

 

 

「俺は栗田 陸だ」

 

 

「私は織斑 一夏」

 

 

そんな感じでお嬢様改めセシリアに自己紹介をすると

 

 

「あなた方は篠ノ之博士の関係者なのですか?」

 

 

セシリアは好奇心からなのかは分からないが俺達に質問してくる

 

 

「ん~・・・関係者、か。多分そうなるのかな?多分」

 

 

「そうだね、歳の離れた幼馴染?って言えばいいのかな?多分」

 

 

俺と一夏が曖昧な事を言ってしまったのでセシリアは少し怪訝そうな表情をする

 

 

ごめんセシリア俺達と束さんの関係って何て言い表せばいいか結構曖昧なんだよ、多分一夏の言った歳の離れた幼馴染が一番適格なんだとは思うけどさ?うん

 

 

 

 

 





お待たせいたしました



やっぱ不定期更新になります



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

諸国漫遊 英3


セシリア視点


 

 

(わたくし)セシリア・オルコットは転生者である、前世の話は不毛でしかないので割愛するとして私は転生者で有るが故に 5歳の誕生日に この世界がISの世界であると認識した時は気を失いそうになるぐらい動揺したものだ

 

 

それはそれとして、多少うろ覚えでも原作の知識を知っている私は手始めに両親の観察をしてみる事にした、此処が原作に忠実な世界ならば両親の仲は良くない筈だからだ

 

 

結果から言えば、両親の仲は良好だと分かった、これは喜ばしい事で有ると同時に不安要素でもあるのだが、まぁどうにでもなるだろうと思い一先ずは保留する事にして、これからの事を考える事にしよう

 

 

そうい訳で未来に向けて色々と下準備をしていると私専属の侍女としてチェルシーが私の傍に控える様になり彼女の妹であるエクシアは私の遊び相手をする様になった、もともと二人の両親が我が家で働いてるので、その流れでだろう

 

 

私が前世の記憶を取り戻してから数年が経ち、原作とは乖離しているが仲が良好な両親、頼りになる姉の様なチェルシーと可愛く妹の様なエクシア、そしてオルコット家の使用人達に囲まれて私は幸せな日々を過ごし、この先もずっと この穏やかな日々が続いていくと思っていたある日、エクシアが病に倒れた

 

 

普段落ち着いているチェルシーが珍しく動揺している姿を見て大事だと思うと同時に、エクシアを救う算段を立てなければ両親の命が危険に晒される事を思い出し、行動を起こす決意をし使えるものを総動員し算段を立てる

 

 

行動を起こしたは良いが問題は山積みだ、生態融合型のISを用いれば十中八九エクシアの病は完治するだが、その生態融合型ISとISコアの入手、施術できる医師または技師の確保をどうするかとか多岐に渡る

 

 

幸いエクシアの病状は急激に悪化するタイプではないが制限時間が有るのは揺るぎ様のない事実である上に両親の命の危機も迫っている訳なのだから焦るなと言う方が無理な話なのだ

 

 

最悪エクシアを見捨てて両親の命を優先するべきなのでは?という想定まで思い始めた頃、私が行動を起こしていることが両親に筒抜けだったらしく父は私と向き合ってくれ、私は胸の内に溜め込んだ物を全て吐き出すことが出来た

 

 

自分には前世の記憶がる事、この世界は前世では小説として出版されている創作物で有る事、エクシアを救う方法とエクシアを救う為に両親が取った行動の結果 両親が事故に見せかけられて暗殺されてしまう事、私が知りうる全てを父に話した、私は原作のセシリア程出来た人間ではない、なんでも人並みには出来るがそれ以上には出来ない、もう私の力では先へ進めないと判断する他ない

 

 

私の言葉を聞き父は最初こそ困惑していたが解決策を聞いた頃には真面目な表情になり私の話が終わると私を優しく抱きしめ、『よく頑張ったね』と褒めてくれて私の中の何かが決壊し大泣きして父の胸を濡らしてしまったが父は気にせずに私を許し『あとは私達に任せなさい』と言い父は私の頭を撫でて頼もしい背中で部屋を後にした

 

 

それから1週間経った頃、エクシアの治療の目途がついたと父に告げられ不安と希望を抱き私達はエクシアが入院している病院に向かい、控室の様な部屋で待っている様に言われて待っていると銀髪の美少女(クロエ・クロニクル)と見知らむ少年と世界最強にソックリな美少女が入ってきて私は可能な限り表情を表に出さない様に努めつつ混乱する頭で思う『なんで織斑マドカが此処に?』と思ったが、篠ノ之 束が先に拾ってきただけかもな、と思う事にした

 

 

さて、この少年は何者だ?とか色々と考えて自然な流れで名前を尋ねてみると彼の名前は全く知らず、織斑マドカと思っていた美少女は織斑 一夏だと判明した、なるほど私が思っている以上にこの世界は原作から乖離している様だ、もともと私にどうしようもないのだから、受け入れよう、そうしよう

 

 

それから二人と気を紛らわせるために色々と話をしたりしてる内に父と篠ノ之 束が現れ父に商談が成立したので安心する様に言われ一先ず安心する

 

 

取引の相手が篠ノ之 束ならば恐らく暗殺されるリスクの低いはず、そう信じるしかない

 

 

 

そして、もしもの時の為にチカラを手に入れておかねばならない、ISという絶対的なチカラを

 

 

 







お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

諸国漫遊 仏


リク視点


 

 

クロエから貰ったヒントを元に俺なりに色々を考えてみたが全く束さんとセシリアの親御さんが何の商談をしたかが分からなかった、病院だから医療関係で有る事だけは予想出来るけど、それだけだ

 

 

そんな訳で商談を済ませた束さんは、いつの間にか居た見覚えのない人に書類を渡して代わりにタブレットPCを受け取り2~3言話したあと『あとはお願い』と告げ、クロエの先導の元俺達と一緒に部屋を出て相変わらず高そうな車に乗って固そうな車に挟まれる形できた時とは違う空港に車のまま乗り入れる

 

 

「束さん、もしかしてプライベートジェットを複数持ってる?」

 

 

「え?あぁ、うん。そうだよ?」

 

 

何か真面目な表情でタブレットPCを見ていた束さんに尋ねると、タブレットPCから俺の方へ向き直りニパーと笑み答える

 

 

俺が想像していたより束さんはお金を持っている様だ・・・忘れがちだけと束さんって世界で唯一ISコアを製造できる人間な訳だからISコアのレンタルなりリースなりのお金が束さんの元に入ってる訳だから、お金を持ってて当たり前だし、そもそも束さんは発明家とか開発者だから色々な特許とか諸々を保持してるんだよなぁ

 

 

「本当はイギリス観光を入れる予定だったのだけど、その余裕が無くなっちゃってね直ぐにフランスへ飛ぶ事になったんだ、ごめんね?」

 

 

「うぅん、大丈夫だよ束さん」

 

 

「そそ、風景が見られるだけでもラッキーな訳だし?」

 

 

本当に申し訳なさそうに言う束さんに一夏が笑んでいうので俺も一夏に続き言うと束さんは『ありがと』と言い

 

 

「クーちゃん、もう離陸できる?」

 

 

「機長並びに副機長は既に搭乗済みですが、荷物の付き込みと燃料積載で後5分程掛かるそうです。なので搭乗してお待ちいただければと」

 

 

「そう、分かったよ。さ、乗り込もう?」

 

 

束さんの様にタブレットPCも何も持ってる様に見えないクロエはスラスラと答える事に凄い違和感を感じつつ束さんに続きプライベートジェットに乗り込んで座席に座る

 

 

そういえばここ数日の付き合いだけど、クロエが目を開いてる所を見た事ないな・・・まぁあんまり正面から顔を見て会話してないからなのかも知れないし目を閉じてる様に見えるだけで糸目なのかも知れないし、視覚に頼らずに行動できるタイプなのかも知れない。あとは束さんの開発した何かしらのデバイスを使ってる可能性もあるか、うん

 

 

そもそもクロエって何歳なんだろう?とか考えつつ、ふと窓の外に目を向けると雲が流れて行く様子が入ってくる、どうやら考え事をしてる間に離陸したようだ

 

 

「フランスでは、私達が所属している企業と相互協力関係にある企業の私有地へ着陸します。流石に移動の際に社外秘の物が有る区画を通る事は無いと思いますが、出来るだけキョロキョロとしたり、はぐれたりはしない様にお願いします。今回の事で我が社はあちらに多大な恩を売る形になっていますし、細心の注意をお願いします」

 

 

とクロエが説明しながらペットボトルに入ったミネラルウォーターを渡してきたので、受け取り頷く

 

 

あんま詳しくないけど、このプライベートジェットは少人数乗りではあるが、それでもソコソコのデカさが有るから、それなりに整備された場所じゃないと離着陸出来ない筈だ、多分

 

 

と言う事は元々空路を利用して資材搬入やらなんやらをするタイプの業種と予想出来るけど・・・まさかIS関係か? うん、そうだと色々辻褄が会う気がする

 

 

 

そんなこんなで目的地に着陸してプライベートジェットを降りると、俺達と同じ歳くらいの金髪で紫の瞳をした中性的で美少年にも美少女にも見える謎人物が立っていた

 

 

「ようこそデュノア社へ」

 

 

謎人物は声まで中性的で全然性別が分からない・・・困ったな

 

 

 

 

 

 

 






大変お待たせいたしました


仕事が地獄続きだったもので、漸く一筆書く気力がわきました、次はいつ湧くか分かりません


申し訳ない



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

諸国漫遊 仏2

 

 

 

俺が謎人物の性別について考えていると束さんが謎人物の前に立ち

 

 

「お待たせ、どうかな?」

 

 

「今は落ち着いていますし意識も有りますが、予断は許さない、と」

 

 

謎人物は束さんの質問に不安そうな表情を答え、束さんは少し険しい表情をして

 

 

「・・・わかった、本当はもう少し検証をしてからの予定だったけど、そうも言ってられないね。行こうか」

 

 

「はい」

 

束さんの言葉を聞き謎人物は歩き始め、建物の中に入り何か迷路の様な廊下を進んでいく。これは案内無しで歩いたら迷子になりそうだなと思いつつ絶対に逸れない様にしっかりついていく

 

 

暫く歩くと、SF映画とかで見る治療ポッドみたいな物と白衣姿の人がガラス越しに見える区画に辿り着き

 

 

「指示通り準備は出来てるみたいだね」

 

 

「何とか間に合わせました、後は博士の持っている最後のパーツを設置すれば完成ですね」

 

 

「そうの様だね・・・」

 

 

2人のやりとりを聞く限りガラス越しに見えた治療ポッドは治療機器なのは間違いなさそうだ、アレか?ナノマシンを使った集中治療をする為の治療ポッド的な奴、それなら規模的にも納得できる大きさだった

 

 

そんなこんな予想を立てながらついて行くと何か高級感のある応接室みたいな所に入る、中には顎鬚を生やした厳格な風貌でピシッとしたスーツの如何にも社長な人が立っていて、謎人物と束さんに気付いたのか此方を向き

 

 

「案内ご苦労シャリー」

 

 

「おまたせ、お父さん」

 

 

シャリーと呼ばれた謎人物は束さんと如何にもな人に道を開けるために脇によると

 

 

「お待ちしていました篠ノ之博士、予定外の来訪ですが歓迎します」

 

 

「歓迎ありがとうございますデュノア社長、では仕事に取り掛かりましょう」

 

 

束さんの言葉に社長は頷き

 

 

「シャリー、彼等を頼む。此処は花を摘むのも苦労するだろうしな」

 

 

「うん、分かったよ。篠ノ之博士、お母さんをよろしくお願いします」

 

 

「任せて」

 

 

シャリーの言葉に束さんは強く頷き社長と一緒に応接室から出て行き、扉が閉まって数秒して

 

 

「さて、まずは自己紹介からかな? 僕はシャルロット・デュノア、よろしくね?」

 

 

そうニコッと笑みながらシャリーことシャルロットは自己紹介する、シャルロットって事はコイツは少女なんだな、見事に分からない中間存在だったけど、一応疑問は解決したな、良かった

 

 

「俺は栗田 陸、気軽にリクって呼んでくれ」

 

 

「私は織斑 一夏、私も一夏でいいよ」

 

 

「わかった、僕のシャルロットでいいよ?」

 

 

お互いの自己紹介が終わり少し気になった事を聞いてみる事にした

 

 

「さっきシャリーって呼ばれてたけど、あだ名?」

 

 

「あぁ、シャリーはあだ名っていうよりは短縮形とか愛称って言うのかな?家族とか親しい人にはシャリーって呼ばれてるんだ」

 

 

「へぇ~」

 

 

「因みに、他にはロッテとかロッティとかも一般的な愛称だよ?」

 

 

そうなのか~と思いつつ相槌を打つ、愛称って色々あるんだなぁ

 

 

そういえば原型が全く分からない愛称が存在するって束さんとか弾とか言ってたような気がするな・・・確かローレンスの愛称がラリーだったりとか、その文化圏の人なら分かるのかも知れないけど、日本人には難しいな、うん

 

 

「デュノア社って何の会社なの?俺の予想はIS関係だと思ってるんだけど」

 

 

「正解、デュノア社は主に第二世代型ISの販売と装備の販売、次世代機と装備の研究開発をしていて、副業としてIS技術を転用した様々な機器の研究開発と販売をしているよ、此処に来る時に見えたのも転用物の1つだね」

 

 

「やっぱりIS技術は応用が効くのか・・・なるほど」

 

 

ISについて詳しい訳ではないけど、確かナノマシンの技術も使われていた筈だし、そもそもISは謎技術の塊だからIS技術を他分野に応用・転用出来ても不思議でも何でもない

 

 

例えばGPSだって、そもそもは軍事目的の技術だったらしいし?

 

 

うん、束さんが自称・正義の科学者で良かった。もし束さんが悪の科学者だったら世界征服されてたかも知れない、うん

 

 

 

 

 

 






お待たせしました


恐らく何名かの方は予想していたかも知れませせんが、謎人物の正体はシャルロットでしたw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

諸国漫遊 仏3



シャルロット視点


 

 

僕ことシャルロット・デュノアには前世の記憶がある、いわゆる転生者と言う奴だ

 

 

前世の僕は何処にでもいるサラリーマンでオタクだったのだけど、神様の気紛れか何かで気付いたら転生していた、最初の頃は多少は戸惑ったものの前世に未練も無かったので今の人生を満喫する事に決め、自分の置かれている環境を少し調べてみた結果分かった事は

 

まずこの世界はISの世界で有る事、自身がISのヒロインの1人であるシャルロットで有る事、父親がデュノア社の社長アルベール・デュノアで有る事、僕の母親がデュノア社社長の第2夫人(・・・・)で有り 第1夫人のロゼンダとは幼少の頃からの付き合いで仲が良い事が分かった

 

 

うん、色々と僕の知っているISと乖離しているから、この世界はISに限りなく近い世界なのだろうと思う事にして、とりあえずはロゼンダにビンタされる未来が無くなった事を喜ぶことにしよう、痛いのは嫌だしね?

 

 

まぁそんな訳でロゼンダは僕を本当の娘の様に可愛がってくれるし元々研究職だったらしいお母さんはISの発表後はISの研究開発をする部署で働き始め、デュノア社はシェア世界3位の地位を手に入れる事になる

 

 

前世が男だった名残で一人称が僕だけど周りは特に気にされず、不妊体質のロゼンダに年相応の可愛い恰好を着せ替えられたりするけど、まぁ普段はズボンとか中性的な恰好が多いから仕方ないかぁと甘んじて受けたりして他愛ない日々を過ごしていると、いつの間にか篠ノ之束と業務提携をしていた様で、学校が休みの日に お母さんの手伝いをしていると彼女遭遇して、ほんの少し動揺してしまった

 

 

幸いな事に篠ノ之束は原作よりも・・・否、原作とは違い理性的で社交的に大人の対応をしてきて、メチャクチャ良いお姉さんをしていて僕は一安心し、彼女と色々と話をする事が出来、自分の為にも、デュノア社の為にも彼女とは長い付き合いにして行きたいと強く思う

 

 

そんなこんな奇抜なアイディア・・・特にロマンの塊を篠ノ之博士は喜々として聞く傾向にあるので、前世の記憶を頼りにガンダムとかマクロスとか色々はロボアニメのネタを博士に提供したら 『ISに可変機が有ってもいいよね?』 と言うノリでIS可変機製作プロジェクトが立ち上がり、博士を唆した僕が責任を持ってテストパイロットをする事になり 『博士相手に迂闊な事を話すな』 とお父さんとお母さん、ロゼンダ母さんに物凄く怒られてしまった、無念

 

 

テストパイロットをする事になったとはいえ、非可変を前提とした基本フレームを可変に対応させるのは一朝一夕で出来る物ではなく、思いついたアイディアをシュミレーターで何度も繰り返し検証して形にしていく

 

 

プロジェクトが開始して1年ほどが経ち、そろそろ実機が組めそうだな という所まで来た ある日のこと、お母さんが倒れた

 

 

僕は失念していた原作でシャルロットの母親は亡くなっている事を、知っていたのに、だ

 

 

先んじて対応していれば僕にも出来る事が有ったかも知れないが、もう遅いお母さんには余命宣告されてしまっている、もうこの状況を打開出来る可能性が有るのは1人しかいない、彼女が匙を投げたら、その時点でゲームオーバーだ

 

 

そして何を対価にしてもお母さんを助ける、こんなにも暖かい場所で育ててくれたのだから。意を決して篠ノ之博士に連絡を取ると直ぐに用意をすると2つ返事が返ってきてお父さんと話をすると言われ電話を切られる

 

 

その後、お父さんに呼ばれ色々と話を聞くと篠ノ之博士との共同研究の1つを使用してお母さんを治療する事になった言われ、治療の概要を説明してもらい、お父さんは『大丈夫だ、シャリー』と僕の頭を撫でて言う

 

 

ほんと幾つになっても親には敵わないよ、ほんと

 

 

篠ノ之博士に依頼を出して数日、彼女がお供を連れてデュノア社を訪れ僕は彼女たちを、お父さんの待つ応接室へと案内する

 

 

クロエは時々篠ノ之博士に随伴しているから居ても不思議じゃないけど、テロリストのマドカと全く知らない男の子が居て少し困惑してしまうが、今気にしても仕方ないと自分に言い聞かせ案内をして応接室へ案内をして、お父さんと篠ノ之博士が応接室を出て行ったのを確認し、後は成功を祈る他ない

 

 

神様、お願いします。どうかお母さんをお救いください

 

 

 






お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夏半ば

 

 

あの後、束さんによる最終調整を施した治療機器でシャルロットのお母さんの治療が開始され、一先ずこれ以上の病気の進行は無いと説明をされたシャルロットは少しだけ安心した表情をしていた

 

 

そんなこんなでフランスでのやる事も終えた俺達は少し観光をしてから日本へと帰国した

 

 

 

そんなドタバタ海外旅行(仮)は中々良い経験だったなぁと感じながら日本に帰国して暫く経った今日この頃、空調の効いた我が家のリビングに悪友達が集まり課題に取り組んでいる

 

「課題・・・面倒くさい」

 

 

「そうね、問題自体は解けるけれど」

 

 

「だよなぁ・・・蘭、そこ計算式間違ってるぞ?」

 

 

「え?あ、本当だ。ありがとうカズ君」

 

 

俺のボヤキに鈴と数馬が便乗し数馬は片手間で蘭の勉強まで見ている、本気を出せばそれなりの学校に行けた筈なのにな、なんで私立じゃなく公立に来たんだろ?まぁお陰で出会って友達になれたから良いんだけど

 

 

そんな感じで忘れがちな数馬のハイスペックさを思い出しつつ課題に取り組む、因みに弾と一夏は日記等の毎日更新系の課題以外は終わらせているそうだ、いつの間に?

 

そんな2人は、用があると出掛けて行ったので勉強会にはいない

 

 

「2年も もうすぐ半分か・・・そろそろ進路を意識しないとなぁ」

 

 

「進路、ねぇ・・・」

 

 

課題に飽きたのか数馬が手を止めて首を回しながら呟き、俺も伸びをして数馬の呟きを拾う

 

 

そう、もう1年足らずで高校受験がやってくるのだ、考えていて損はない

 

 

と言っても、今の所特別やりたい事もなりたい物も無いからな・・・どうしたものだろう?とか考えつつ鈴をチラッと見ると、珍しく思い詰めた表情をしていたので

 

 

「鈴、どうした?具合でも悪い?」

 

 

「・・・うぅん、体調は問題ないわ。体調は」

 

 

いつもの鈴らしからぬ含みのある言い方をする鈴に違和感を感じ、これは何か有ったな? と思い

 

 

「らしくない言い方だな? どうした?」

 

 

「・・・アタシ、来年度から中国に戻ろうと思っているの」

 

 

鈴は広げていた課題を片付け真剣な表情で言う、その表情を見て鈴は本気だと感じるのは良いとして・・・

 

 

「なんで中国に戻るんだよ」

 

 

「・・・お父さんもお母さんも隠してるみたいだけど、たまたま聞いちゃったのよ、お父さんが病気で治療費が物凄く掛かるって」

 

 

鈴の言葉を聞き、バレてしまったかぁと思いつつ何で中国に戻るかが まだ分からず相槌を打つ

 

 

「だから、IS操縦者になって治療費を稼いでくるわ」

 

 

「おいまて、どっからIS操縦者の話が出てきた?」

 

 

「あぁ、そうね・・・話を盗み聞きしたあと少しして、たまたまIS適正検査を受ける機会が有って、アタシ適正がソコソコ高いらしいの、で この前中国の方から候補生候補にならないかって話が来たのよ」

 

 

「なるほど・・・そっか」

 

 

鈴がいつ盗み聞きしたかは分からないけど、楽音さんの件は殆ど解決済みではある、ただ束さんと楽音さん達の契約内容を鈴に知られる訳にはいかない

 

だから、ここで俺は知らないフリをしないといけない・・・シンドイんだけどぉ

 

 

「代表候補生になれば手当が出るから時間稼ぎにはなる筈、代表になればお店の宣伝効果も万全って算段よ」

 

 

そう言う鈴の表情は何を言っても聞かない程の決意と覚悟を決めた表情をしている、俺の言葉では100%意見を曲げないだろう、一夏や美鈴さんでも難しいぐらいだ

 

 

「頑張りなよ鈴、鈴なら代表になれるさ」

 

 

「だな、鈴ならすぐに候補生になれるだろ、多分」

 

 

「鈴さん頑張ってください、応援します」

 

 

なんだかんだ鈴の事を理解している俺達は説得が無理である事を察して、鈴を応援する事に決め三者三葉の言葉を掛ける

 

 

楽音さんの件は兎も角、鈴が代表になれば宣伝効果が計り知れないのは間違いないから鈴の行動は無意味にはならない

 

 

・・・後で、楽音さんと美鈴さんに相談するように鈴に言い含めておかなきゃな

 

 

 

 

 






お待たせしました


もうそろそろ夏休み期間の話を終えるかも知れませんが、まだわかりませんw


一応、鈴が中国に戻る理由を取って付けましたw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

招集

 

 

一通りの雑談をした後、勉強会は解散となったので帰り際に鈴に両親(楽音さんと美鈴さん)に中国へ帰る件についてキチンと相談する様に言っておいたが、鈴の表情的に後戻り出来ない所まで行ってからしか話をしなさそうだな、と思い帰路を歩く鈴の背中を見ながら美鈴さんに電話して鈴が来年度から中国に戻ってIS操縦者を目指している件をチクっておいた

 

 

一応、帰ってすぐに話をする可能性も有ったから少し様子見をして貰う様には言っておいたから多分、大丈夫だろう・・・多分

 

 

そんなこんなで夏休みも残り少なくなってきた今日この頃、俺は個人的には苦手な先輩に呼び出され、久々に制服を着て部室へと向かい、部室の扉の前で深呼吸すると

 

 

「早く入って来たまえよ、栗田君?」

 

 

「・・・はい」

 

 

中から先輩に言われ『なんで、分かった?』と戦慄しながら返事をして部室の中に入ると約1ヶ月ぶりの相変わらず大人しそうな見た目に反して人を食った様な笑みを浮かべている先輩が全開の窓を背に立っていた

 

 

「やぁ栗田君、久しぶりだね? 呼び出しに応じてくれて感謝するよ」

 

 

「お久しぶりです梶田先輩」

 

 

俺が返答すると先輩は肩を竦め『優希で良いと言っているんだけどねぇ』とヤレヤレみたいな表情をして言う

 

 

「・・・要件は何です? 部活についてとは聞きましたけど」

 

 

「君はせっかちな方ではない筈なんだけどね? あぁごめんごめん、そんなに睨まないでくれ」

 

 

相変わらずの先輩を軽く睨む様に見ると、いつもの様にクック笑う、これだから俺はこの人が苦手なんだよ

 

 

「さて本題だけれど、文化祭でする演目の役者が本決まりしたから、使用する衣装の調整を頼みたい」

 

 

「分かりました、じゃぁ先に話した様に、俺が中心になって作業をすれば良いんですよね?」

 

 

「あぁ、それで構わないよ。今年衣装班には3年が居ないし1年も居ないし君に一任する事になる」

 

 

そう言い先輩は窓際から壁際にある机に移動しA4サイズの茶封筒を持ち上げ俺に差し出す

 

 

「これが今回の役者の採寸表だ、使ってくれ」

 

 

「嫌に手際が良いですね、必要って話しましたっけ?」

 

 

「ははは、去年・一昨年と衣装班が忙しそうに採寸していたのを覚えていただけさ」

 

 

先輩は軽く笑い用意した理由を言う、そりゃ毎年恒例の事象なら覚えていてもおかしくないか、うん

 

 

「使用する衣装は演劇部が毎回利用させて貰っているクリーニングに出しているから、作業自体は来週からだね」

 

 

「わかりました、他に要件はあります?」

 

 

先輩の言葉に返答すると再び先輩は肩を竦め

 

 

「君はせっかちな方では・・・そう睨むな栗田君、そこまで露骨に必要最低限の会話だけされると流石のボクでも傷付くかも知れないぞ?」

 

 

「傷付く人は、そんな人を食った様な笑みを浮かべて煙に巻くような事を言わないと思いますけど・・・」

 

 

俺が軽く睨みながら言うと先輩はカラカラと笑う、うーん この先輩黙ってなくても美少女なんだけど口を開いたらマイナス点しかないな・・・黙ってたら文句なしの美少女なんだけど、勿体ない

 

 

「確かに、君の言う通りかもしれないね? さて・・・最近、織斑ちゃんとは どんな感じかな?」

 

 

「・・・どんな感じ、とは?」

 

 

人を食った様な笑みを浮かべていた先輩は再び窓辺に移動して俺に背を向けて聞いてきて、質問の意図が読めずに聞き返す

 

 

「夏休み前に交際を始めたのだろう? その後の進展具合はどうだい? って事さ」

 

 

「・・・なんで知ってるんですか?いや、マジで」

 

 

先輩は俺に背中を向けたまま質問の意味を説明してくれるが、新たな謎が浮上して来て再度聞き返す

 

 

「え?普通に織斑ちゃんから聞いたけど? あぁ君はボクに苦手意識を持っているから、必要最低限の付き合い方だけれど、織斑ちゃんとはソコソコ仲良くしている、ボクとて花の女子中学生だ仲のいい後輩と恋バナの1つや2つするさ」

 

 

 

「あ、そうっすか。把握したっす」

 

 

情報元が一夏なら良いか、と思うと同時に目の前の先輩が恋バナに興味ある様に思えずに困惑する

 

 

いや、案外その辺りは年相応の感性をしているのだろうか?謎だ

 

 

 






お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夏の終わりに

 

 

 

俺が個人的に苦手な梶田優希(センパイ)に色々と一夏とのアレコレを聞かれ適当に相槌を打ったり誤魔化したりして乗り切り、大分精神的に疲労して帰宅し一夏の美味しい夕飯を3人で食べた

 

 

それから2日して束さんは、また忙しいと我が家を後にし入れ替わる様に父さんが一時帰宅し一夏の美少女化に、かなり驚いていて俺と一夏が交際していることを告げると再び驚いた後に『よくやった』と謎のグッジョブを貰い今度は俺が困惑する番になってしまった、自分の親だけど何を思っているかは、よく分からない

 

 

一時帰宅した父さんは無理やりスケジュールを調整していたらしく滞在2日で、また赴任先へと戻って行き、工事中だった元お向かいさんの向井さん宅(仮)には立派な一軒家が建ち、ウサギ印の見慣れない引っ越し業者が家財道具やらを搬入しているのがチラッと見えた

 

 

「家って意外と早く建つんだな? 俺もう少し時間が掛かるものだと思ってたわ」

 

 

「そうだね、えぇっと・・・2ヶ月ぐらいかな?」

 

 

「・・・いや早いな」

 

 

クリーニングから戻ってきた衣装を回収して、リビングで一夏と2人テレビを垂れ流しながらサイズ調整をしながら雑談をしていたが、いくら何でも

早すぎるので思わず誰にでもなくツッコミを入れてしまう

 

 

「あはは、確かに早いよね。私はまた束さん絡みなんじゃないか?と疑ってる」

 

 

「いやいや、流石にないだろ」

 

 

一夏は冗談っぽく言い俺も流石に、な?と思い口では否定するが束さんならやっても不思議じゃないと思ってしまう

 

 

「文化祭まで1ヶ月以上有るし微調整も含めても余裕があるね」

 

 

「だな、梶田先輩は性格に難が有るけど芝居にかける情熱は本物だからな、スケジュール管理も完璧だ」

 

 

そう、その情熱を持っている事こそが俺が梶田優希(センパイ)の事を苦手にしていても嫌いになれない理由だったりする

 

 

 

そんなこんなチクチクと作業しているとピンポーンと我が家のインターホンが鳴り、たまたま一夏より玄関に近い位置で作業していた俺がリビングから移動して玄関を開けると、約3週間ぶりに見る綺麗な銀髪の美少女が、何処かのお嬢様的な清楚な装いで立っていた

 

 

「・・・ラウラ?なんで日本に?」

 

 

「む?お前は栗田、そうか此処はお前の家だったのか・・・んぅん、この度向いに引っ越してきたラウラ・ボーデヴィッヒと他多数です、此方つまらないものですが」

 

 

「あ、これはご丁寧にどうも」

 

 

俺の質問には答えずにラウラは何処かで影響を受けたのかテンプレートを言い俺に菓子折りらしき物を渡してくる

 

 

ん?コイツ今 他多数って言ったか? つまり向いにコイツ以外にも居るって事か・・・あ、コイツの家族とかか?なら何か転勤か何かか、多分

 

 

「では、私はこれで。まだ一軒挨拶をしていないお宅があるのでな」

 

 

そう言い織斑家の方へ歩みだすラウラに

 

 

「その家の住人なら姉妹2人暮らしなんだが、姉が海外赴任中で妹も姉の海外赴任中はウチに下宿してるから今誰も居ないぞ?」

 

 

「・・・なに?」

 

 

俺の言葉を聞きラウラは歩みを止め踵を返して俺の前に戻ってくる

 

 

「ならば、今お前の家にいるのか?」

 

 

「あぁいるぞ?呼ぶの面倒だな・・・うちに上がってけよラウラ」

 

 

「うむ、失礼する」

 

 

俺が出るまで俺の家を知らなかったって事は、隣は織斑家で有る事も知らない様子だ、つまり一夏が此処にいる事も知らない訳だから驚いた表情が見れそうだな、と少し悪戯心が芽生えてしまったのと本当に一夏を呼びに行くのが面倒だったのでラウラを招き入れる

 

 

「あ、なんか時間かかってたけど・・・あれ? ラウラ?」

 

 

 

「な・・・なんでお前が此処にいる! 織斑一夏!!」

 

 

ラウラの姿を見て数秒キョトンとしていたが直ぐにニコニコとし始め、やっぱ俺の彼女は可愛いと再認識してラウラの驚く表情も見れて俺は満足したので

 

 

「一夏がさっき説明した隣の住人の妹の方だ、もちろん姉の方は千冬さんだな」

 

 

「貴様、分かっていて!!くっころ」

 

 

俺の悪戯がお気に召さなかった様でラウラが変な事を口走り始める、コイツ大丈夫か?

 

 

そんな感じで少しラウラの事が心配になってきたが、まぁ一夏も居るしメンタルケアは出来るだろう、多分

 

 

 

 

 

 

 

 

 






お待たせしました



多分、今回で夏休み編は終わりますw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新学期

 

 

お向かいにラウラが越してきて暫く経ち朝食を食べた後に、大体2週間ぶりに制服に袖を通し忘れ物が無いかを念の為に確認する

 

 

「今日から新学期か・・・何か色々濃ゆい夏休みだったな」

 

 

ほんと色々濃ゆかった夏休みを思い返しつつ確認を終わらせてカバンの口を閉じて自室を出てリビングに入り

 

 

「お待たせ」

 

 

「行こうか」

 

 

立ったままテレビで天気予報を見ていた一夏に声を掛けると振り返りニコッと笑んでテレビと消し歩み寄ってきて、そう言う

 

 

誰が何と言おうと俺の彼女は可愛いのではないのだろうか?

 

 

そんな訳で夏休みの課題で絶妙に重いカバンを持って家を出ると一夏と同じ制服(夏用セーラー服)を着たラウラと出くわす

 

 

「おはよう、ラウラ」

 

 

「おはよラウラ、やっぱ同じ学校だったか」

 

 

「む?おはよう2人とも、よろしく頼む」

 

 

この短期間で一夏は持ち前の聖母の如き慈愛パワーでラウラの懐柔に成功し、以前は警戒されていたが今は何の事もなく会話できている

 

 

「おはようございます、ラウラの事、よろしくお願いしますね?ある意味箱入りで世情に疎い所がありますから」

 

 

「おはようございますクレアさん、フォローは出来るだけ頑張ってみます」

 

 

「任せてくださいクレアさん!」

 

 

声を掛けられ振り返ると相変わらずクール系の黒髪美女なクレアさんが立っていて、そう言われたので俺の適当な返事に比べ一夏はヤル気に満ち溢れる返事を返す、これは一夏らしい

 

 

この一見クール系のクレアさん、見た目とは裏腹にシュミはアニメ鑑賞や漫画・ラノベ購読と言った所謂オタクと呼ばれる部類の人間でラウラの謎な語録はクレアさんからの影響だと先日判明した、何してるんだろう、この人は

 

 

まぁそれはそれとしてラウラが日本の中学に通う事になっている様にクレアさんは大学へ通う事になっている様で今どきの落ち着いたお姉さんの装いをしている、それとお向かいに住んでいるのは2人だけじゃなく2人が所属しているIS操縦者育成チーム?のメンバー全員で共同生活しているらしい

 

 

「ではお気をつけて」

 

 

「はい、行ってきます」

 

 

「行ってきます、クレアさんも気を付けて」

 

 

「うむ、行ってくる。クレアも気を付けるんだぞ?」

 

 

少し雑談をしてクレアさんと別れ学校へ歩み始める、にしてもまだ暑いな・・・

 

 

そんな事を考えつつ歩を進めると見慣れたツインテールとまだ暑いからかアップスタイルで男子制服の赤毛と合流する

 

 

「おはー朝から暑いね」

 

 

「ほんと暑いわよね」

 

 

「おはよ、ほんと暑いよな」

 

 

そんな感じで適当に挨拶をソコソコに交わして残暑について愚痴りながら学校へ向かう為に歩くが、いや暑い

 

 

「んで?その娘は?転入生?」

 

 

「私か?私はラウラという」

 

 

「ラウラ、先日ウチの前に引っ越してきたんだよ」

 

 

鈴がタイミングを見て尋ねてきてラウラと一夏が答える、ただ厳密には栗田家(おれんち)の向かいであって織斑家からだと斜向い(はすむかい)だぞ、一夏

 

 

まぁ今は同居してるから些細な問題か?うん

 

 

「そう、アタシは凰 鈴音、鈴と呼ばれているわ」

 

 

「俺は五反田 弾、よろしく」

 

 

「ん、よろしく頼む」

 

 

3人のファーストコンタクトは上々そうで良かった、これならクレアさんも安心してくれるかも知れない

 

 

「ん?ラウラ、ちょっと髪触るわよ?」

 

 

「構わんがなんだ?」

 

 

残暑の暑さに溶けていた鈴の気配が急にピりつき鈴は何かを確認する様にラウラの髪を触り始め毛先を凝視し始める

 

 

「・・・傷んでる」

 

 

「ん?何がだ?」

 

 

「全体的に髪が傷んでるって言ってんのよ!!折角綺麗な銀髪なのに、勿体ない!!」

 

 

「おい、何をする、はな・・・揺さぶるな!」

 

 

ラウラの髪を確認していた鈴がブツブツ高速詠唱を始めたと思ったらラウラの肩を掴んでガクガクと揺さぶり発狂し始め、ラウラが混乱し悲痛な叫びを上げている

 

 

鈴て一見ガサツそうだけど割とそうゆうのは気にしているタイプみたいで、一夏の強化訓練の時も時々こうなって一夏と揺すってたなぁ、こうなった鈴は俺と弾には危険だから正気に戻るのを待つしかない

 

 

下手したら虎砲とか飛んできそうだしな?

 

 

 

 






お待たせしたしました



そういやクレアの本名を名乗らせてない事に今さっき気付きましたw


前作読んでいただいてる方は知っているかも知れませんが、クレアはクラリッサの愛称です



なのでクレア=クラリッサですので、よろしくお願いいたす




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

来る祭りに向けて

「ドイツから来たラウラ・ボーデヴィッヒだ、よろしく頼む」

 

 

登校中に散々鈴に揺さぶられて道中、少し顔の青かったラウラが都合よくウチのクラスに転入して来て軽く自己紹介をしている、今見た感じだと回復したようだ良かった良かった

 

 

 

「ではボーデヴィッヒさんの席は、あの空いてる席に座ってね?」

 

 

「了解」

 

 

ラウラは先生に返事をして指示された空席に座り、それを確認した先生が話を始めHRが終わり、始業式の為に体育館へ移動する事になった訳だが、ラウラがクラスメイトに囲まれていた

 

 

「やっぱ目立つか・・・この時期に転入だもんな」

 

 

「そうだね、2学期からって珍しいし、日本人以外の転入だしね」

 

 

拳を交わした仲だから何となく分かるけど、ラウラは人見知りするタイプではないが口数自体が多い方じゃない、それにこんな風に囲まれた経験もないだろうから、どうしたらいいか分からず困惑している様に見える

 

 

「ほらアンタ達、転入生が気になるのは分かるけど始業式が有るしラウラが困ってるわよ、早く移動なさい」

 

 

さて、どうしたものか・・・と考えていると鈴がラウラに群がるクラスメイトに一喝しラウラを救出する

 

 

うん、流石は鈴だ、クラスメイトからの信頼度が高いからみんな素直に言う事を聞いて体育館に移動を始めた

 

 

「感謝する、鈴」

 

 

「このぐらい良いわよ、それより行くわよ?」

 

 

「うむ」

 

 

そんなこんな鈴とラウラの友情を眺めつつ俺達も体育館に移動し始業式に出てから教室に戻り、今日最後の授業を受ける、まぁ授業と言っても文化祭の出し物を決めるだけだけど

 

 

「それじゃぁ文化祭で何をやるかを決めたいと思います、例年通り余程でなければ大体は大丈夫らしいので」

 

 

委員長がそう言うとクラスメイトがガヤガヤと相談をし始める

 

 

俺達の通う、この中学校は余程アレでない限り生徒に自由を与えている、弾の服装関連とか梶田先輩の所業とか、うん

 

 

そんな割と自由の効く校風の文化祭が地味になる訳も無く常識の範囲内で盛大に行われるのが恒例になっている

 

 

噂によると過去にクラスメイト全員でスク水着て接客する喫茶をしようとして教師にシメられたクラスが有ったとか無かったとか・・・いくら何でも色物過ぎるよな、うん

 

 

「ごちゃごちゃ話し合っても纏まんないだろうし、今から用紙を配るからソレに思いついた出し物書いて」

 

 

 

そう言って委員長はメモ用紙サイズの紙を配っていく、相変わらず要領が良いな

 

 

さてさて文化祭の出し物は何が良いだろうか?俺としてはあまり手の込んでいないのが良いと思うんだよな、余裕が有るとはいえ衣装直しがまだ残ってるし、あんまりクラスの方に手を出していられないかも知れないし?

 

 

そんな思惑もあって俺はフリマとだけ書いて委員長に用紙を提出する、暫くして用紙の回収が終わり先生と委員長が出た意見を精査し始める

 

 

一応、出来る出来ないの判断を先生がするみたいだ

 

 

「えー・・・意見を精査し似た意見を統合した結果、我がクラスの文化祭の出し物はメイド喫茶カッコカリに決まりました」

 

 

と委員長は無駄に威厳のある表情で言い、俺は何を言われているか理解するのに数秒かかってしまう

 

 

なんだ?メイド喫茶カッコカリって・・・なんだろう、嫌な予感がしてきた

 

 

「あー・・・このクラスの人数だと3交代でメイドをして貰う事になると思うのだけれど・・・男女関係なくメイドはして貰う事になる、メイド役以外の人は全員裏方として何かしらの作業をして貰うので」

 

 

と委員長は少し面倒そうな表情で言う、そりゃ面倒だろうな・・・振り分けをミスると絶対サボる奴が現れるしな

 

 

それにしてもメイド服か、一夏はメイド服に合ってたな、とても良かった

 

 

そんな事を思い出し1人悦に浸る、今度一夏にまたメイド服を着てもらおうかな

 

 

 

 

 

 






お待たせいたしました




依然として仕事が修羅場だったり色々と有って中々時間が取れず、執筆する気力も出ない為、更新が滞ると思いますが、ご容赦ください




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

むげん

 

 

 

文化祭に向けての企画会議から暫く経った今日この頃、元々抱えていた衣装の調整と同時進行でクラスで使うメイド服を新造するという些か無謀な事を敢行する事になって少し疲労が溜まっていたのか、毎朝聞いている目覚ましのアラームにイラつきながら起きて体を起こす

 

 

「・・・なんかダル・・・い・・・?」

 

 

目覚ましに手を伸ばしアラームを止めると、サラリと見慣れた色の髪の毛が視界に入り困惑するし、クローゼットを開け姿見で自分の姿を確認する

 

 

 

「・・・マジか?」

 

 

 

俺の姿が映る筈の姿見に、困惑顔の少し茶色よりの黒髪が背中半ばまである黒目の少女が そこには映っていた

 

 

 

「俺まで性転換した?なんでだ?」

 

 

確かに一夏という前例が居る以上、人間を性転換させる技術は存在する、それは理解できる

 

 

だが、それはあくまでも技術が存在するだけで、俺が性転換する要因に心当たりが全くない事が問題なのだ、まさか突然性転換する奇病に発症したなら話は別だが、流石に突飛すぎると思う

 

 

それから暫く思考を巡らせるが、やはり思い当たる節が全くない、例外中の例外で言うなら束さんが犯人と言う可能性が有るが、多忙で俺を目の前で経過観察できないのに、束さんがこんな事をする訳がない筈だ

 

 

そんな具合で思考を巡らせているとコンコンと扉がノックされ

 

 

「リク、起きてるか?」

 

 

「・・・あ、あぁ起きてるよ」

 

 

「もう朝ご飯出来てて束さんが待ってるぞ?もしかして体調悪いのか?」

 

 

「体調は問題ない、すぐ行くから先に食べといてくれ」

 

 

「分かった、体調悪かったら無理するなよ?」

 

 

約半年ぶり(・・・・・)だったせいで一瞬誰かが分からなかったが、すぐに一夏(・・)の声だと思い出して返事をする、そう一夏ってこんな声だったわ、うん

 

 

さて、これはどういう事なのだろう?一夏が男に戻っているぞ?

 

 

「うーん・・・分からん」

 

 

一先ずは朝ご飯を食べてから考えよう、よくよく考えなくても寝起きで脳みそに栄養素が届いていないしね

 

 

そう決めた俺は寝間着を脱ぎクローゼットに掛かっている中間期用の白い長袖のセーラー服をササっと着る・・・なぜ着れた俺

 

 

さも毎日来ているかのように自然にセーラー服を着る事が出来た自分自身に戦慄しつつ髪をウナジの部分で結い自室を出てリビングへ向かう

 

 

「あ、りーちゃんおは~」

 

 

「おはよう束さん、一夏もおはよう」

 

 

「おはよう、リク・・・うん顔色は悪くないな」

 

 

相変わらずニッコニコニーと年齢不相応の無邪気な笑顔で挨拶してくる束さんに挨拶を返し一夏に挨拶すると、一夏は俺の顔色を窺い安心した様に言いニコッと笑む、その表情にドキッとする、やめてくれ一夏、今のお前は俺によく突き刺さる

 

 

あー俺って性別関係なく一夏が好きなんだなぁと認識していると

 

 

 

「おぁ~朝からお熱いですなぁ~」

 

 

「ちょっ束さん、恥ずかしいから」

 

 

俺と一夏のやりとりを見てニヨニヨとしながら、からかう様に言う

 

 

ほんと、この人は良い性格してると思うわ、マジで

 

 

そんな訳で誤魔化すために定位置に座り一夏の作ってくれた朝食へ手を伸ばすと、遠くから名前を呼ばれている気がして振り向くと視界が暗転し自室の床の上でメイド服を傍らに横たわっていて、いつ見ても美少女の一夏が心配そうに俺を見下ろしていた

 

 

「あ、起きた?もう、寝るならちゃんと布団で寝ないとダメだよ?」

 

 

「あれ?・・・あぁそうか作業中に寝落ちしたのか俺、すまん」

 

 

メイド服作成の終盤で一気に仕上げようと作業をしていたら、そのまま寝落ちしてしまった様で体のアチコチが痛い、バッキバキだわ

 

 

それにしても、凄まじい夢を見た気がするけど、束さんにからかわれたことしか覚えてないな・・・まぁいいか、今日も学校だしそうゆっくりもしていられないしな、うん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






大変お待たせ致しました



毎年の事ながら繁忙期に突入し修羅場の為、執筆時間があんまり捻出できていません



気長に更新をお待ちいただけると幸いです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

文化祭




 

 

残暑の影響も減り徐々に秋の気配が見えてきた今日この頃、丁度良すぎる気温でウトウトとしていると聞きなれた声に呼ばれ軽く肩を叩かれ目を開けると、見慣れた色の髪の毛が視界に映り違和感を感じていると

 

 

「リク、大丈夫?メイクに時間かかったし寝ぼけてる?」

 

 

「・・・あぁ、そうみたいだ、うん」

 

 

クラシカルなメイド服を身に纏った弾が俺をからかう様な表情で言い、俺は弾にメイクを施されていた事を思い出し溜息を吐きだして弾に返答する

 

 

「もう動いて大丈夫だけど、あんまり顔は触らないでね?あぁ手鏡はソコに有るから」

 

 

「おー了解」

 

 

弾に返事を返し椅子から立って伸びをしてから机の上の手鏡を使い今の自分を確認すると、少し眠た気な少し茶色よりの黒髪が背中半ばまで有る黒目の少女が映る、まぁ俺なんだけどね

 

 

弾の技術が高すぎて何処から見ても少女にしか見えない、弾恐るべし

 

 

「相変わらず弾の技術はすごいね」

 

 

「だよな、ただ欠点があるなら相応に時間かかって眠くなることだな」

 

 

「ははは、それは仕方ないね」

 

 

俺と弾同様、クラシカルメイド服を身に纏った一夏に話しかけられたので少しふざけて言うと一夏は笑って言ってくる

 

 

「さぁ文化祭当日だ、一応部門ごとに審査が有るから頑張って行こう、ホールの方は予定通り弾と鈴を中心によろしく」

 

 

「OK、任せて」

 

 

「任せなさい」

 

 

厨房担当の委員長がエプロンをしたまま裏から現れ言い弾と俺達と同様メイド服を身に纏う鈴に言う

 

 

飲食店の息子と娘がいるから接客の方は安心できて良かった、まぁホール担当は全員メイド服を着てて弾によりメイクが施された居るから、見た目だけじゃ全員少女なんだけどね?うん

 

 

「ホール、集まりなさい」

 

 

踏み台の上に鈴は立ちホールを招集したので素直に鈴の前に集まる

 

 

「さっき委員長も言っていたけれど今日が文化祭の本番よ、上手く交代しながら接客をする事にするから極力アタシ達の指示に従って頂戴ね?あぁ、不躾な輩がいた場合は問答無用でぶっ飛ばして良いわよ?」

 

 

こういう時はホントに鈴は頼もしいが、相変わらず考えが物騒だなぁ・・・まぁ一夏に良からぬ事をしようとする輩がいたら容赦しないでおこう、そうしよう

 

 

 

そんなこんなで鈴がホール担当の士気を上げていると、チャイムが鳴り文化祭が開始を宣言する放送がされる

 

 

「さぁ、やるからには目指すは1位よ!!」

 

 

「「「おー」」」

 

 

 

ホール担当の士気は鈴の鼓舞のお陰で上々、あとは変な客が来ない事を祈るばかりだが、多分無理だろうな・・・絶対に変なの来る

 

 

 

そんな蛇が出るか鬼が出るか内心冷や冷やしつつ客が来るのを待っていると、赤紫の髪色をした女子大生風の落ち着いた装いの女性が来店したので

 

 

「お帰りなさいませお嬢様、此方のお席にどうぞ」

 

 

事前に指示されていたセリフを言い女性を席に案内して

 

 

「こちらメニューになります、お決まりになりましたら、お申しつけください」

 

 

定型文を言い一旦女性から離れ気付かれない様に女性を観察する・・・うん、髪の色が違うし変装してるけど、多分束さんだな、この人

 

 

なんでわざわざ変装してるのか一瞬不思議に思ったが、束さんは世界的VIPだし俺らとの関係性をあまり公の場で示さない方が良いとの判断なのだろう、多分

 

 

それから少しして束さん(暫定)が注文する品を決めた様で呼ばれ一夏が接客をして注文を取り厨房へ注文を流す

 

 

うん、一夏の横顔を見る限り一夏も束さん(暫定)に気付いたみたいで、俺にアイコンタクトを送ってきたので無言で頷いておく

 

 

多分、束さんからの感想は家に帰ってから聞くことになるだろうから、一応期待しておこう、うん

 

 

 

 

 

 

 

 






お待たせしました


少し短いですがご容赦ください




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

文化祭 2

 

 

 

束さん(暫定)の来店から客足は止まらず大盛況だが、鈴と弾の指示で特にトラブルも起こらずにメイド喫茶カッコカリを続けることが出来ている

 

 

ほんと、鈴と弾は凄い、指示が的確で頼りになり過ぎる、本当に中学生か?と思う程の仕事ぶりだ

 

 

まぁそんな訳で開店から2時間が過ぎた頃、少し眠た気な少し茶色よりの黒髪が腰まで有る黒目をしていて眼鏡をした女性・・・いつだったかの俺がモデルだったウス=異本のヒロインにソックリな人が来店し、俺は少し驚くなぜなら今日本に居ない筈だからだ

 

 

「お、お帰りなさいませお嬢様、此方のお席にどうぞ」

 

 

俺の案内に無言で頷き案内された席に座り女性は俺を眠た気な目をしたままガン見してくる

 

 

「こちらメニューになります、お決まりになりましたら、お申しつけください」

 

 

と定型文を一応言うがメニューを受け取り一瞥してから再び俺をガン見してくる、頼むから何か喋って欲しい

 

 

まぁ元々口数が少ない人では有るから慣れているけど

 

 

「・・・ブレンドコーヒーと、メイドとお話権」

 

 

「かしこまりました」

 

 

数か月振りに聞いた声に少し懐かしさを感じながら注文を取り厨房に流すしブレンドコーヒーを持って提供し女性の正面に座り

 

 

「いつ戻って来たのさ」

 

 

「昨晩だね」

 

 

ブレンドコーヒーの色を見てブラックのまま飲み彼女は俺の質問に答える

 

 

「昨晩って・・・じゃぁ何で家に帰って来なかった訳?」

 

 

「日本に着いて、そのもも会社で仕事をしてきたからだよ、無理矢理スケジュールに休みをねじ込んだんだ」

 

 

彼女はそう言い真っすぐに俺を見据え

 

 

「今の君は、まるで昔の私の様だ、親子とは言えソックリ過ぎる」

 

 

「弾の技術のお陰かな、多分」

 

 

「弾君の仕業か、それならば納得できる」

 

 

俺の言葉に頷いて母さんは微笑みを浮かべ言う

 

 

「あんまり無理はしないでよ?母さん」

 

 

「この程度無理の内に入らないよリク、可愛い息子の姿を見れば疲れなんて吹っ飛んでしまうからね」

 

 

そう言い母さんは俺の横に移動して来て頭を撫でてくる、ほんと親ってのは敵わないぜ

 

 

あと可愛い息子の部分は、女装してる息子が可愛いって意味じゃないよね? 違うよな?

 

 

「ん? そういえば何で文化祭が今日って知ってるの?」

 

 

「随時束ちゃんから情報は貰っているからね」

 

 

席に戻った母さんはブレンドコーヒーを飲み、さも当たり前の様に答え、束さんは文化祭の事知ってたなぁと思いだす

 

 

なんだかんだ母さんと束さんは仲が良いしね、うん

 

 

「私が此処にいる理由や文化祭に開催日を知ってる理由は話した、そろそろ重要な事を確認したい」

 

 

母さんは眼鏡をスッと上げて俺を真っすぐ見据え真剣な表情をして言うので俺も住まいを正し母さんを見ると

 

 

「陽太に聞いた、リク・・・彼女が出来たんだって?」

 

 

鬼気迫るオーラを纏い母さんは俺に聞いてきて、俺は何は気が抜けてしまう。どんな重要な事かと思えば、些細な事だった

 

 

「あーうん、そうだよ」

 

 

「そうか、そうか、で?どんな娘なんだい?」

 

 

母さんにしては珍しくテンション高めに聞いてくる、まぁそれは良い、それは良いとしてだ、俺は母さんの質問が気になった

 

 

「ん? 父さんに聞いてないの?」

 

 

「頑なに教えてくれなかった、知りたかったら直接会って聞いてきたら良い、とね」

 

 

「えぇ・・・」

 

 

何で教えないんだ父さんは・・・いや俺は良いけどさ?あー元々文化祭の日とかで休みを入れる予定とかだったのかな?

 

 

「で?どんな娘なんだい?」

 

 

「そんなグイグイ来ないでも話すし、何なら連れてくるから、いつもの落ち着いた母さんに戻ってくれ」

 

 

「む、すまない。善処しよう」

 

 

身を乗り出しそうな勢いの母さんに言い一旦落ち着いてもらい教室の中を見渡し一夏を探す

 

 

束さん程では無いがハイテンションの母さんに今の一夏を会わせるのは少し心配があるけど仕方ない、うん仕方ない

 

 

 

 

 

 







大変お待たせ致しました


仕事を中心に修羅場で精神肉体共に疲労で執筆できませんでした


この先も、ちょっと更新が滞ると思います、すみません



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

文化祭 3

 

 

教室を見渡して数秒も掛からずに一夏を発見したら丁度目が有ったのかニコリと一夏が微笑む、やはり一夏は可愛いな、うん

 

 

そんな事を考えつつ小さく適当なハンドサインを一夏に送ると俺の意図を汲んだ一夏が此方に近寄ってきて

 

 

「どうかした?」

 

 

「ちょっとな」

 

 

俺の横に来て小声で耳打ちしてきた一夏に俺も小声で返し、改めて母さんの方を見ると、いつもの冷静沈着な表情と雰囲気はなく楽しみで仕方なくてソワソワしているのが目に映る

 

 

「こんな(ルナ)さん、見たの4年ぶりくらいに見た気がする・・・どうしたの?」

 

 

「・・・俺の彼女に会えるって浮かれてるんだよ」

 

 

浮ついている母さんを見て一夏が戸惑いながら聞いてきたので答えると、え? という表情をし

 

 

「陽太さん、月さんに説明してないの?」

 

 

「してないらしい、だから楽しみにしてて、こんなに浮ついてるみたい」

 

 

えぇぇ・・・と一夏は更に戸惑い困惑した表情をする、うーん困惑顔も可愛いな一夏、俺得俺得

 

 

そんなこんなで気を取り直して一夏にアイコンタクトをしてから母さんを真っすぐ見据え

 

 

「あー・・・母さん、この娘が今付き合ってる人、まぁ一夏なんだけど」

 

 

「久しぶり?月さん、リクとお付き合いしてる一夏です」

 

 

俺が一夏を紹介すると母さんは目をパチパチとさせて数秒停止した後

 

 

「なるほど、陽太が頑なに秘密にする訳だ。リクよくやった」

 

 

なんか父さんと同じ様に謎のグッジョブを貰い、夫婦って似るんだなぁ~と思っていると

 

 

「一夏、私達は君の事を我が子同然と思っていて何時かは離れなければならないと思っていた、出会いと別れはセットだからね・・・しかしこれで憂いは無くなった、リクの事をよろしく頼むよ? 自分を普通と思い込んでいるお人よしだからね」

 

 

 

「ありがとう月さん、リクの事は任せて? 慣れてるしね」

 

 

なんか母さんが良い事を言ってるんだけど、俺軽くディスられてない?気のせい?

 

 

まぁ元々母さんと一夏は仲良かったし、母さんが受け入れてくれて良かった良かった

 

 

「それはそれとして君達が大変な時に海外赴任をしてしまって、すまいね」

 

 

「ううん、気にしないで月さん、お陰でリクを攻略する機会が増えたから結果オーライだったし」

 

 

「そうか、それならよかった。いつも君とリクには色々任せっぱなしになってしまっていてすまないね」

 

 

母さんと一夏の話を横目に聞き流していると母さんが、そんな事をいう

 

 

詳しくは知らないし、イマイチ興味も無いのだけど母さんと父さんは、海外に拠点や支部・支社を持つ大企業で働いていて、2人共それなりに良い役職にいるとか何とか聞いた気がする

 

 

とりあえず一軒家を土地込みでローンを組まないで購入できるくらいには稼いでいるらしいってか、それぐらいしか知らない。両親の職業がどうであれ俺は二人を尊敬しているし愛されていると思うからね

 

 

「あ、そういえば・・・ウミとソラは? 元気?」

 

 

「2人共元気だよ、ソラが最近 君に会いたがっているよ」

 

 

「ソラが?そっか」

 

 

小学生のやや生意気になりつつある上の妹(ウミ)とは違い下の妹(ソラ)は素直で可愛い、まぁ大分歳離れてるし可愛くて仕方ないかもしてない、仕方ない

 

 

「ウミは私に似て口数が多くないから少し心配だったけれど、上手く馴染んでいる様だから安心しているよ」

 

 

「ウミなら上手くやるだろ、口数は多くないけどコミュ力は低くないし」

 

 

そう、ソラは口数は多くないが言う事は言うし、人見知りもしない、何なら目上の人間だろうと遠慮なく意見を言うタイプだ、ホント将来有望だと思う

 

 

そんなこんな数か月振りなのもあって話し込んでしまったが、その辺の事情を察してくれたクラスメイトからお咎めはなかったが、共通認識として一夏の状態が彼女から婚約者にランクアップしていて、過半数にはからかい半分でいじられ、一夏過激派には『一夏を泣かせたらお前を殺す』と宣言されてしまった

 

 

これは進路考えなきゃな、マジで・・・死にたくないし、うん

 

 

 






大変お待たせ致しました



やっと執筆時間が取れて、執筆できるくらいメンタルが回復しました


仕事は地獄だわ休日に用事が立て込むはで更新が伸びに延びてしまいました





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生誕祭の準備

 

 

 

一夏過激派のクラスメイトに『一夏を泣かせたら、お前を殺す』と釘を刺された後、何とか交代の時間まで働きクラシカルメイドのまま一夏と共に部室へ向かい、支度が済んでいる部員に声を掛けて問題が無いか聞き、対応して舞台へ送り出し、俺達は出店されている奴を回る、梶田先輩や部員には悪いが演劇に興味がないからね

 

 

そんな訳でクラシカルメイドのまま一夏との文化祭デートを敢行していたのだか、不定期にチャラ男にナンパされて一夏とのデートに水を差されて少し切れそうだ

 

 

いや、一夏は美少女だからチャラ男の習性としてはナンパせずにはいられないのかもしれないが、なんで俺にまでナンパか仕掛けてくる?見たら分かるだろ?と何回目かのチャラ男を撃退した後に思ったが、たまたまガラスに映った自分を見て、弾により見た目だけは少女だったのを思い出したが、ナンパされるのは正直面倒だなと思う

 

 

まぁそんなこんな大きなトラブルも起きずに文化祭を終え、怒涛の9月も下旬に差し掛かり俺はここ最近では珍しく休日に1人で大型複合施設レゾナンスに足を運び、色んな店を見て回りながらない頭を捻り、一夏へのプレゼントを考える

 

 

そう、もう少しで一夏の誕生日がやってくる、これは頑張らない理由などない

 

 

そんな恰好をつけてみた物の、一夏はあまり物欲がある訳でもない、何ならめっちゃ切れ味の良い包丁とかあげても喜んでくれるだろうが、花の女子中学生に名刀の様な包丁をプレゼントするのはどうかと思うし、一夏過激派にシバかれてしまう

 

 

そんな訳で一夏へのプレゼントをどうするか考えつつ店を見て回るが、いまいちピンとくるものがない

 

 

「・・・どーすっかなぁ」

 

 

こうゆう時のプレゼントって何を送ったら良いんだ?こちとら年齢=彼女いない歴だったんだぞ?マジで分からない・・・こんな事なら弾か数馬を連れてくるんだったな・・・

 

 

レゾナンスに単独出来た事を少し後悔しながら歩いていると、少し奥まった場所に如何にもなヤンキー風のチャラ男が2人と見覚えのある茜色の髪色をした少女が見え、俺は天井を見て監視カメラの位置を確認すると、どうやら死角になっている様子なので気配と足音を消し、盗み聞きをして状況把握に努めると、どうやらチャラ男達が無理矢理ナンパをして、追い込み漁よろしく この場所に追い込んだ様だ

 

 

幾ら苦手な先輩でも見捨てる何て選択肢は俺には無いので腹を括り

 

 

「先輩、探しましたよ? 直ぐに迷子になるのは何なんです?」

 

 

「あ、栗田君ごめんなさい・・・すみませんが彼が来たので退いて貰えませんか?」

 

 

俺が現れた事に一瞬驚いた様子だったが直ぐに見た目相応のネコを被りチャラ男達に弱弱しく言う・・・この人、本当女優だな

 

 

「はぁ?彼氏持ち?まぁ関係ないな、俺らと遊んだ方が面白いと思うぜ?」

 

 

「そうそう、そんな雑魚そうな奴より楽しませやるからよ」

 

 

チャラ男2名はヘラヘラと笑い何か下品な意味が多大に含まれている事を言う、ダメだこいつ等早く何とかしないと とか思いつつ、どうにかする方法を考えていると

 

 

「面倒になって来たし、彼氏ボコって連れてこうぜ?」

 

 

「そうだな、こんな雑魚ワンパンで終わらせるわ」

 

 

「えぇ・・・急にIQ下がったか??」

 

 

急にIQがダダ下がりしたチャラ男達にドン引きしつつ、深呼吸しヘラヘラと笑い俺を見下しているチャラ男Bに意識を向ける、正当防衛を狙うには最初に一撃貰う必要がある、しかし跡が残るレベルで一撃を貰うと一夏にバレてしまうから見た目は派手に吹っ飛ぶがダメージ自体は皆無みたいな演出をする事に決める

 

 

俺は腹を括りチャラ男Bのブレッブレのパンチをワザと左頬に受け、ダメージを受け流しつつ、さも殴り飛ばされました感を出して派手に吹っ飛んで倒れるとチャラ男Aはケラケラと笑い俺をディスるがチャラ男Bは少し不思議そうにしているのを見つつ立ち上がり

 

 

「先に手を出したのはアンタらだからな?これで正当防衛成立したよな?」

 

 

いつの間にか携帯で一部始終を撮影をしている先輩を横目にチャラ男達を挑発する、俺はなんで彼女の誕生日プレゼント買いに来てチャラ男と喧嘩してんだろ?

 

 

ま、いいや。現役女子中学生の意見を聞けるなら悪くない対価かも知れないし?まぁこの先輩は個人的には苦手なんだけどね?うん

 

 

 

 






お待たせ致しました



あけましておめでとうございます

本年もよろしくお願いいたします



一先ず2021年度中に、この作品が書き終える事を目標にしたいと思っています



ちょっとモチベの維持が厳しくなってきていまして、すみません




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生誕祭の準備 2

 

俺の挑発がお気に召したのかチャラ男Bは不思議そうな表情からイラついた表情に変わり、蘭が手抜きして放った拳の足元にも及ばないパンチを繰り出してきたが弾から習った海老蹴りでカウンターをチャラ男Bの鳩尾(みぞおち)に叩き込むとチャラ男Bが崩れる様に膝をつく

 

 

「お、良いとこにクリティカルしたっぽいな・・・んで、アンタはどうする?」

 

 

俺はチャラ男Aの方を見て尋ねると、『こんな筈じゃなかったのに』みたいな表情をしているのが見える、これは完全にビビってるな、うん

 

 

「先輩、行きましょうか」

 

 

「あ、うん」

 

 

今だ撮影と演技をしている先輩に声を掛けて通りの方へ移動して貰い安全確保が出来た事を確認してチャラ男の方を見て

 

 

「これに懲りたら喧嘩を安売りしない方が良い、あと無理矢理のナンパもな?」

 

 

聞こえてるかは分からないが、それだけ言い俺は先輩を連れその場を去る

 

 

それからソコソコ距離を取った所で

 

 

「助かったよ栗田君、ありかとう」

 

 

「いえいえ、幾ら苦手な先輩でも先輩は女の子ですから見つけて見過ごせませんよ」

 

 

先程までの大人しい雰囲気はなりを潜めいつもの人を食った様な笑みを浮かべ俺にお礼を言って来たので、オブラートに包まずに本音を告げる、最近気を使う必要が無い気もしてきたしね?うん

 

 

「ははは、言うねぇ。うんうん君らしくて良いんじゃないか?」

 

 

俺の言葉が気に入ったのか先輩はカラカラと笑う、ほんとよく分からない人だなぁ

 

 

「さてと・・・栗田君、織斑ちゃんは一緒じゃないのかい?」

 

 

「あぁ、今日は一夏の誕生日が近いんでプレゼントを買いに来てて俺1人なんですよ」

 

 

先輩の質問に素直に答えると、先輩は少し目を丸くして瞬きをし

 

 

「君がボクに素直にそういう事を言うとはね、いやはや驚いた」

 

 

「なんで驚いてるかよく分かりませんが、俺は先輩の事は苦手ですけど信用してますし尊敬もしてますよ?」

 

 

なんか驚いている先輩に本心で言うと先輩は更に目を丸くし少し挙動不審になるが直ぐに元に戻り

 

 

「君はホントに・・・まぁいい、それで?織斑ちゃんへのプレゼントは買えたのかな?」

 

 

「あー・・・実はまだ買えてないんです、何をプレゼントしたら良いかが決まらなくて」

 

 

「そうなんだね・・・よし此処はボクが一肌脱ごうじゃないか、お姉さんに任せると良い」

 

 

先輩はそう言うと返事を聞かずに俺の手を掴み引きずる様にズンズン進んで行く、いやまぁ元々アドバイス貰うつもりでいたからありがたいんだけど、やっぱ先輩も女子中学生だから買い物とか好きなんだろうか?だから乗り気なんだろうか?多分

 

 

そんな訳で先輩に逆らう事無く引きずられながら一夏へのプレゼントを吟味する事になり

 

 

「織斑ちゃんの趣味は確か料理をする事だったね?」

 

 

「あーそうですね、後は読書とか?ラノベも読みますし漫画も読みますね」

 

 

ラノベは主に俺と数馬、漫画は弾と鈴、蘭が一夏に貸したりしていたりする、なんだかんだゲームはあんまりしないんだよな、俺と一夏

 

 

まぁソラとウミの世話したりしてて腰を据えてゲームする時間が無かっただけってのもあるけど、うん

 

 

「ん~そうだねぇ・・・最近流行りのレジピ本と他諸々のセットはどうだい?丁度そこに織斑ちゃんに似合いそうなエプロンが有るしね?」

 

 

少しの間思考を巡らせていた先輩はそう言い指を指す、その先には先輩が言った通り、一夏に似合いそうなエプロンが掛かっていたので売り場へ歩み寄り吟味を始める

 

 

プレゼントするからには可能な限り良い物を贈りたいしな

 

 

そんなこんな先輩とアーダコーダと意見を出し合い吟味をして無事に一夏へのプレゼントを買うことが出来た

 

 

「ありがとうございます先輩、お陰で無事一夏へのプレゼントを用意できました」

 

 

「いやいや構わないよ、ボクにとっても織斑ちゃんは可愛い後輩だ、彼女の為なら一肌脱ぐさ、君にはまた助けられてしまったしね?」

 

 

日が傾き出した帰路を歩きつつ先輩にお礼を言うと先輩は、いつもの人を食った様な笑みではなく普通に微笑み言う

 

 

 

「その様子だと本当に覚えていない様だね?まぁ君が忘れていても僕は覚えている、それだけの事さ・・・君に彼女がいなければ危うく君に惚れてしまうくらいには君は魅力的なんだ、だから気を付けたまえよ?」

 

 

 

「はぁ・・・?」

 

 

先輩は急にいつも以上に芝居掛かった仕草と口調で言うが、何を言ってるのかイマイチよく分からなかったので曖昧な返事を返しつつ帰路を歩く

 

 

 

今度、改めてお礼しなきゃな・・・うん

 

 

それにしても、綺麗な夕日だなぁ

 

 

 

 

 

 

 






お待たせ致しました


エビ蹴りは躰道の技です、文字での説明が私の能力では無理でしたので、YouTube等で調べて見てください


主にカウンターとして使うらしいとかなんとか






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生誕の日

 

 

レゾナンスに一夏へのプレゼントを買いに行って何故か梶田先輩を助けるためにチャラ男達と喧嘩をした日から少しして満を持して一夏の誕生日がやってきた

 

 

毎年の事ながら一夏は自分の誕生日を忘れてる傾向に有るので鈴を始めとした親友達が織斑家で誕生日会の準備をしている間は俺が一夏の気を逸らせる為に鈴と弾の提案で一夏とデートをしてくる事になった

 

 

因みに合鍵を俺は千冬さんから預かっているので今回はソレを鈴に託してある

 

 

「今日も晴れてるね」

 

 

「だな、残暑は残ってるけど、秋晴れって奴かな?」

 

 

相変わらず清楚の化身の様な一夏と並んで駅に向かいながら会話をしつつ鈴に作戦開始のメッセージを送る、定期的に織斑邸も一夏と協力して掃除をしていたので改めて掃除する必要は無いだろうから鈴たちは大丈夫だろう、多分

 

 

「それにしてもリクが私を自らデートに誘うなんて珍しいね?何かあった?」

 

 

「そうか?まぁ色々忙しかったし、一夏には色々助けられたからな、たまには良いだろ?」

 

 

相変わらず勘の鋭い一夏の言葉に少しドキッとさせられたが適当に誤魔化す、これで誤魔化されて欲しいと割と本気で思う

 

 

「そう?そんなに助けたかな?ん~記憶にないなぁ」

 

 

「お前の記憶にないだけだろ、だってお前は呼吸をする様に人助けができる奴だからな。まぁ俺はお前のそういう所好きだぞ?」

 

 

俺の言葉に首を傾げ記憶を探り言う一夏に本心を告げると一夏は急に顔を赤くし始める

 

 

「なっ、急に何で言うかな?不意打ちは流石に」

 

 

「何言ってんだ?本心をそのまま口にして何が悪い」

 

 

更に俺が追い打ちを仕掛けると一夏は更に顔を赤くして照れ始める、うーむ照れてる一夏も良いな俺得俺得

 

 

そういえば一夏と付き合いだしてから、具体的には告白して以降キチンと好意を言葉にして伝えてないなぁと思ったので、これからは積極的に言葉にしていこう

 

 

何せ一夏及び俺の保護者公認の清いお付き合いなのだから、もう何も怖くない・・・いや一夏過激派からの私刑は怖いわ、うん

 

 

そんな訳で一夏を悲しませたりするのは俺も不本意だから出来るだけ幸せにしようと心に決めて電車に乗ってレゾナンスへ向かう

 

 

小1時間ほどでレゾナンスに到着し休日とあってソコソコ人の多い店内を見た一夏が腕を組んでくる・・・一夏さんや当たってます

 

 

右腕に一夏の胸部装甲の破壊力を感じながら歩きだしウインドウショッピングを開始し先日梶田先輩がチャラ男達に絡まれていた場所に差し掛かると先日のチャラ男が全く同じ場所に居て俺達・・・いや俺をガン見してきた

 

 

「待ってたぜ、この時を」

 

 

「いや、なんで居るんだよ。意味が分からん」

 

 

「そんな事どうでもいいだろ」

 

 

物凄い殺気立ってるチャラ男Bの言葉に答えるがチャラ男Bは血走った眼で俺だけを見て近づいてきたので一夏を背に庇う様にしチャラ男Bと俺は対峙する

 

 

「あのさ、見ての通り彼女とデート中なんだわ、邪魔しないでくれない?」

 

 

「知らねぇよ、こっちはメンツ潰されてんだからなぁ」

 

 

「一夏」

 

 

「はいな~」

 

 

何とも堪え性の無いチャラ男Bの相変わらずブレッブレな拳にカウンターを放つ俺の動きに合わせて俺に邪魔にならない様に動く一夏はやっぱすげぇなぁを思っている内にチャラ男Bの顔面に卍蹴りがクリティカルヒットしチャラ男Bが吹っ飛ぶ様に倒れる

 

 

「いやホント、何しに来たんだよ・・・マジで」

 

 

「俺らのオヤジはヤクザだぞ?こんな事してただで済むと思ってんのか?」

 

 

俺が呆れていると今まで黙っていたチャラ男Aが、いきなりそんな事を言い始めてポカンとしてしまう

 

 

「いや知らんし」

 

 

「リク行こう?」

 

 

「そうだな」

 

 

一夏も呆れた様子で俺に言って来たので気を取り直し一夏とのデートに再出発する

 

 

アイツ等、これで懲りたらいいけどなぁ・・・うん

 

 

 

 






お待たせ致しました


忙しすぎてモチベの維持が出来ませんでした、申し訳ない



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生誕の日 2

 

 

チャラ男達の襲撃を乗り越え一夏とのデートに再度出発した後は特にトラブルもなくデートを行っていると予め設定しておいたアラームが起動したので少し惜しいが帰宅し一夏の生誕祭を行う為にデートを切り上げる

 

 

そんなこんな行きと同様に小1時間掛けて帰路を歩きつつチャラ男達が尾行していないか時々背後を警戒しておく、アイツ等は絶対懲りてないと思うし

 

 

自宅の最寄り駅に着いた段階で鈴にメッセージを送り準備は完了している旨の返信を受け取る、あとは一夏を織斑家に誘導すれば俺の任務は概ね完了する

 

 

最寄り駅から徒歩で10分程で栗田家(じたく)に辿り着き、一夏が道から玄関の方へ曲がろうとしたので

 

 

「一夏、もう少し直進」

 

 

「え?うん、うん?」

 

 

俺の言葉に一夏は首を傾げつつ素直に軌道修正し直進する、ホント素直だなコイツ、なぜ理由とか聞かないんだろう、信用してくれてるって事なんだろうけど、なんか心配だな・・・詐欺とかに引っ掛からない様に見とかないとな、うん

 

 

 

距離にして栗田家の玄関から30mほど直進し織斑家の玄関に辿りつき

 

 

「よし、とりあえず入ってくれ」

 

 

「入るけど何で織斑家(ウチ)なの?」

 

 

「入れば分かる、リビングに直行でよろしく」

 

 

俺の言葉を聞き一夏は『わかった』とだけ呟き玄関の扉を開き靴を脱いでリビングへ直行し扉を開けた直後、パンパカパーンと如何にもなクラッカーの音と紙吹雪や紙テープが舞い『一夏誕生日おめでとう』の合唱が聞こえる

 

 

「誕生日おめでとう一夏」

 

 

「あ、あぁそっか今日は誕生日だった」

 

 

一夏は漸く状況を認識できたのか、そういう

 

 

「なんで毎年自分の誕生日を忘れるんだ?」

 

 

「はは、なんでだろうね?」

 

 

一夏は俺の言葉に少し恥ずかしそうに言う、その表情を見て俺得俺得を思っていると

 

 

「ほら早くこっちにいらっしゃい?今日の主役がいつまでも入口に居る物じゃないわよ?」

 

 

「そうだな」

 

 

鈴の言葉を聞き俺は一夏を上座へと誘い、数馬が一夏に本日の主役タスキを掛け、弾が飲み物を注いで渡す、これは良い連携なんじゃないか?

 

 

「それじゃぁ、改めて・・・一夏誕生日おめでとう、これはアタシから」

 

 

「ありがとう鈴」

 

 

そこから鈴を皮切りに順番に一夏へ誕生日プレゼントを渡し一夏を祝福していると

 

 

「ふぅ、ギリギリ間に合ったかな?」

 

 

少し疲労が見える束さんがニコニコニーと登場する、大丈夫かな束さん、いくら丈夫なのが取り柄とはいえ、ね?

 

 

「いやはや本当は、もう少し余裕のある予定だったんだけど色々ゴタついちゃってね~。まぁそれはそれとして、誕生日おめでとう、いーちゃんコレは私から、こっちはちーちゃんから」

 

 

束さんはそういうと、それなりにデカいブツを何もない空間から召喚し一夏にニコニコしながら渡す、手品か?いや普通に量子変換技術か何かか、束さんだしそれくらい容易いだろう、多分

 

 

「ありがとう束さん」

 

 

「うんうん、喜んでもらえて私も嬉しいよ。因みにちーちゃんは帰国できなくて本当に悔しそうだったよ」

 

 

千冬さんの様子を苦笑して伝える束さんの言葉を聞き容易に千冬さんの様子が想像できてしまう、なんだかんだで千冬さんは一夏を大切にしているし元々ブラコンの気は有ったし?シスコンにジョブチェンジしてパワーアップしていても何の不思議もない

 

 

「束さんと千冬さんの後だと何かアレだけど、誕生日おめでとう一夏」

 

 

「ありがとうリク」

 

 

束さんと千冬さんのプレゼントからしたら、かなり見劣りするプレゼントを一夏に渡すが、一夏は本当に嬉しそうに受け取ってくれる、あぁ俺の彼女は天使・・・いや聖母だ

 

 

ホント、俺は恵まれてる、こんな聖母な彼女はいるし、頼れる親友に頼りになり過ぎる姉貴分がいるんだから

 

 

なんだろ、そのうちなんかよくない事でも起こるのか?これ

 

 

 

 

 

 

 

 






お待たせしました


これ今年度中に完結させれるかな?w


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

体育祭 密談

 

 

社畜の成り損ないの様な状態になった文化祭と一夏へのプレゼントを買いに行ったらチャラ男に絡まれて撃退したり、一夏とデートに行ったら前回撃退したチャラ男に再度絡まれて再び撃退したり、一夏の誕生日を祝ったりした怒涛の9月も過ぎ去り10月になって暫く経った今日この頃、俺は演劇部の部室で外から聞こえる喧噪を耳にしながら苦手だが信用はしている先輩と対峙している

 

 

「待たせてしまってすまなかったね、漸く彼等の正体の裏付けを取る事が出来たよ」

 

 

「いえ、無理なお願いだったのは理解していますから、ありがとうございます梶田先輩」

 

 

いつもは人を食った様な笑みを浮かべている先輩だが今日は真面目な表情をしていて俺の言葉を聞き『優希で良いと言っているんだけどねぇ』と肩を竦めて言う

 

 

先の襲撃の後、嫌な予感がしていた俺は先輩に件のチャラ男について相談をしていたのだ

 

 

「その事については置いておいて・・・ボクにナンパを仕掛けてきて君によって撃退された彼等の事だけれど、彼等は本当にヤクザの子供の様だ、それも組長の息子らしい」

 

 

 

「なるほど、だからあんなに意地を張っていたと」

 

 

先輩は俺の言葉に頷き呆れたように肩を竦めヤレヤレと顔を振る

 

 

「それから組の鷹神組、組長は荒川秀二だそうだよ。組長自身武闘派らしいけど堅気には手を出さない方針なんだけど、どうも自分の子供には甘くなりがちの様だね」

 

 

「・・・なんとも傍迷惑な」

 

 

「まったく、その通りだ」

 

 

俺の言葉に先輩は苦笑して頷く

 

 

本当に迷惑だ、何か起こってからでないと警察に相談も出来ないし、今は様子見しかできないのが口惜しい

 

 

「改めて、ありがとうございました、梶田先輩」

 

 

「構わないよ、ボクにとっても他人事ではない案件になりそうだったしね?」

 

 

そう言い先輩は再びヤレヤレと肩を竦めて

 

 

「結果的にはボクは大丈夫そうだったけれど、君に関しては楽観視は出来ないかも知れない、知り得た情報からすると彼等は君を探し続けている様だ」

 

 

「それに関しては予想通りですから大丈夫です」

 

 

そう、あの日わざわざ来るかも分からない俺を待ち伏せていた奴らが、そう簡単に諦める訳がないと思っていたからだ

 

 

そして危惧すべきことはレゾナンスでの待ち伏せを辞めて俺を探し出した時だ、アイツ等が何処に住んでいるかは知らないが、レゾナンスに居たのなら移動手段込みで俺の生活区域と被る可能性も十二分にある

 

 

 

「まぁ君ならば、そうだろうねぇ」

 

 

なんか納得した様な事を先輩は言い

 

 

「一応は最悪を想定しておくといい、君は彼等よりは強かった、しかし現役のヤクザに勝てる保証もないのだから」

 

 

 

「・・・分かりました」

 

と先輩は珍しく茶化さずに年上の風格を出して言う、いつもこうなら苦手意識が目減りすると思うのだけれどねぇ・・・とか思いつつ返事をすると

 

 

「それじゃぁそろそろ時間もないし、準備に入ろうか、座りたまえ」

 

 

「・・・はい、よろしくお願いします」

 

 

先輩は壁際からパイプ椅子を取り展開してニヤリと笑みながら俺に言う、本当なら逃げ出したい所だが、これが先輩が俺に要求した対価なので仕方ない

 

 

「この数か月で随分と髪が伸びたね? やはりこれならばウィッグを使うよりエクステでアレンジした方が良さそうだ」

 

 

「お好きになさってください」

 

 

俺の背後に立ちガサゴソと準備しつつ新年度以降ずっと散髪をサボっていて伸びっぱなしの髪を弄り先輩は言う

 

 

なんだかんが髪が長いメンツが俺の周りには多いから特に気にしていなかった結果がこのざまだ、笑うしかない

 

 

とりあえず、メイクとかの腕については先輩を信じよう、何せ演劇の時は自分でしている筈だから

 

 

 

 

 

 

 

 






お待たせしました



うん、今年度中に完結しないのが確定しましたw



久しぶりの更新で一夏ちゃんが出てこなくてすまない




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

体育祭

 

 

 

依頼した調べものの対価にルンルンと俺の髪を弄る梶田先輩にされるがまま身を委ねる事、数十分が経った頃

 

 

「髪はこれぐらいで良いかな?ご覧よ栗田君」

 

 

先輩が満足気に言い、俺に手鏡を渡してきたので受け取り覗き込む

 

 

そこには文化祭の時(ぜんかい)よりは短い肩口ぐらいの長さになった髪が映っていた

 

 

「違和感ないですね」

 

 

「当たり前だろう?違和感が出ない様に馴染ませているのだから」

 

 

俺の言葉に先輩はドヤ顔をしていう、この辺りは年相応、見た目相応の表情をするんだなぁと思っていると

 

 

「次はメイクだね、安心したまえボクはメイク得意なんだ」

 

 

「・・・信用してます、先輩」

 

 

「任せたまえよ」

 

 

俺は一抹の不安を抱きつつ目を閉じて先輩に再び身を委ねる、大丈夫、大丈夫の筈だ

 

 

そんな感じで自己暗示を施す事さらに十数分で先輩の満足気な声を聞き目を開け再び手鏡を覗くと、少し中性的な少女になっていた

 

 

「この後に君も競技に出るのだろう?だから汗などに強い物を使ったんだ、と言ってもそこまで数が有る訳でもないからね、その程度が限界だったよ」

 

 

「十分凄いと思いますけど・・・」

 

 

「次が有れば化粧道具も含めて君に用意して貰おうかな?」

 

 

と、どの程度本気か分からない事を言う先輩に愛想笑いを返しつつ立ち上がり時計を見て

 

 

「もうそろそろ行かないと競技に遅れるので行きますね」

 

 

「あぁ、行きたまえ。遅刻は良くないからね?昼休憩後に部活紹介があるから君も来るように」

 

 

「了解です、部室(ここ)集合ですか?」

 

 

ポケットからハチマキを取りだし巻きながら先輩に尋ねると彼女は『そうだ』と頷いたので、分かりましたと伝え部室から退室し少し早足で移動する

 

 

 

早足で移動したおかげで競技の待機場に余裕を持って到着する事が出来た

 

 

「あ、用事は終わったの?」

 

 

「まぁな」

 

 

自前の髪を例の如く某青セイバーな髪型の弾に見つかり声を掛けられたので適当な返事を返す

 

 

「ふぅん・・・一夏は何か感づいていた様だよリク」

 

 

「・・・マジで?どんだけ勘が鋭いんだ?」

 

 

なんだかんだで諸々の事情を知っている弾の言葉に少し戦慄する、ホント一夏は油断できない

 

 

「まぁ一夏だし仕方ないね、にしても優希先輩は腕が良いね?リクあとで応援用の服を着てくれない?」

 

 

 

「応援用の服って・・・アレか?」

 

 

弾は一夏が此方に近づいているのを察知しすぐさま話題を切り替えて言うので、その応援用の服・・・もといチアガール服を着ている一夏を見て尋ねると、弾は良い笑顔で頷く

 

 

「あれか・・・」

 

 

ニコニコと応援している一夏の様子を見るに体育着の上から着るタイプの様だ、チラチラと体育着見えてるし

 

 

まぁ今更その程度の女装?で何とも思わないから良いかと、弾にOKと言うと良い笑顔でサムズアップされた、よく分からないが良かった、うん

 

 

「あれ?そういえば数馬は?」

 

 

「逢瀬が捗ってるのかもね?」

 

 

俺や弾と同じ競技に出る筈の数馬の姿がない事に気付き弾に尋ねると肩を竦めてそういう、いやもう少し他の言い方をして欲しい、聞き手によっては勘違いしそうな言い方だ

 

 

とか思ったが、数馬が蘭と一緒にいる事は確実だろうなぁと思い特にツッコミを入れないでおこう、うん

 

 

そこまで考えて、ふと気になった事が有ったので弾に質問を投げかけてみる

 

 

「そういや、虚さんは見に来てるのか?」

 

 

「一応は話したけど、流石にスケジュールの都合がつかなかったみたい」

 

 

俺の質問に弾は残念そうに苦笑して言う、確かにIS学園はスケジュール調整が難しいだろうな、噂程度にしか知らないけど

 

 

その後も弾と他愛もない雑談をしていると数馬が本当に競技かいしギリギリで登場し係りの先輩に怒られていたが自業自得なので見なかった事にしよう

 

 

それはそれとして、チアガールの一夏も可愛いな・・・なんかやる気出て来たし、がんばろう

 

 

 

 

 

 

 

 






大変お待たせ致しました


精神疲労がヤバくてちょっとモチベの維持が難しいのですが、エタらない様に頑張ります




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ジャック・O

 

 

一夏のチア服でヤル気を出したり、弾と鈴の巧みな話術で少し恥ずかしそうにチア服を着させられたツインテールのラウラを見て、コイツは妹属性だなぁと確信した、因みにクレアさんがガチ目のカメラで激写していた

 

 

それを横目に俺とは違い無加工のままチア服を着て完全にネタ枠になった数馬が場を盛り上げたり、俺もチア服を着て一夏を筆頭の5人で応援団(笑)をしたら場が盛り上がった、教師陣からの注意も無かった

 

 

そんなこんなして昼休憩で一夏の手製弁当を食って至福の時間を過ごして昼休憩後に部室に行くと、俺まで衣装(女物)を着て演劇部のプラカードを持つことになったり、そんな色々と飽きない体育祭を経て10月のほどほど過ぎた今日この頃、俺は商店街で色々と吟味している

 

 

「ま、先輩には借りばっか作ってる気もするからなぁ・・・是非も無し」

 

 

俺は梶田先輩からのお願いで月末にあるイベントの為の買い出し、主に配る用のお菓子類と関係者用の仮装の衣装の材料の買い出しに来ている

 

 

10月末のイベント、そうハロウィンの準備だ

 

 

以前お世話になった梶田先輩の病院でハロウィンパーティー?をするらしく、俺を始めとした演劇部衣装班に声が掛かった訳だ、だから今商店街には俺の他に弾と数馬がいて、一夏と鈴はハロウィンに向けてカボチャを使ったお菓子を量産する為の試作をしている

 

 

 

 

「なぁ~ハロウィンの仮装ってどんなんが良いんだ?」

 

 

「依頼はスタッフ用の衣装だから、あんまり派手じゃない方が良いんじゃないか?」

 

 

「一応病院だし、お菓子配ったりするのは看護師さんやお医者さんだろうから」

 

 

数馬の質問に答えつつ布を吟味して答えると弾も数馬に答える、確かにそれはそうだ

 

 

彼等には彼等の本業の医療行為がある、となれば仮装も羽織るだけとか、上から着るだけとかの簡単な物の方が良いかも知れない

 

 

そんな事を三人であーでもない、こーでもない、と相談しながら布を購入し、一旦五反田家に布を置いた後で配る用のお菓子を買いに業務スーパー的な場所へ向かう

 

 

本当なら商店街で済ませたかったが、量が量になってしまうので仕方ない、無念

 

 

そんな訳で下らない話をしながら業務スーパー(仮)に到着するとチャラ男AとBもとい荒川兄弟(仮)が待ってましたとばかりに仁王立ちで立っていて、思わず二度見してしまう

 

 

「待ってたぞ、栗田陸」

 

 

「なんで、居るんだよ・・・つか名前ぇぇ」

 

 

「あぁ?今んなことどうでもいいだろ」

 

 

相変わらず沸点が低めのチャラ男B 改め荒川Bが俺の呟きに反応する、普通にどうでもよくない件について

 

 

とか思いつつ横に立ってる親友2人をチラ見してみると、2人共自然体に見えるがいつでも行動できる様な立ち方をしている、流石は武術経験者

 

 

「少し前からリクにちょっかいかけてるって2人組は君達かな?リクに手を出そうというなら・・・俺は手加減しないよ?」

 

 

「てめぇらには関係ねぇだろ、見逃してやる邪魔だ、失せろ」

 

 

荒川Bは会話機能が昨日してないのか?と思いたくなるほど弾と話が嚙み合って無い気がする

 

 

「まぁまぁ落ち着けよ弾、そうゆうのは・・・俺が先って約束だろ?」

 

 

「ちっ・・・めんどくせぇな、まぁ良いまずはテメェからだ」

 

 

イキイキと数馬は前に出て言い荒川Bの正面で不敵に笑む、コイツ完全に舐めてるな・・・まぁ俺で対処できるレベルの不良だ、数馬からしたら軽い運動にもならないかもなぁ

 

 

とか思っている内に荒川Bが相変わらずブレブレ大振りの拳を繰り出し、数馬はわざと紙一重で躱して荒川Bの背後を取りそのまま抱える様に荒川Bを掴み、自分が頑丈なのを良い事に投げっぱなしジャーマンみたいにして荒川Bを投げる

 

 

 

「数馬、下アスファルトなんだけど?」

 

 

「え?別に受け身取ってるから、そんな痛くねーよ」

 

 

「そうだけど、そうじゃなくて・・・」

 

 

俺と数馬がコント擬きをしている内に毎度の如く荒川Aが荒川Bを回収し、『覚えてろよ』と在り来りな捨て台詞を吐いて帰って行った

 

 

正直、もう来ないで良いなぁと思ったが、その内また会いそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






お待たせしました


ホント数馬がネタ要員扱いですまないw


でも喧嘩はリクより強いから、許してクレメンスw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

トリック オア トリート

 

 

何度目かの荒川兄弟の襲撃をやり過ごし何とも微妙な気持ちを抱きつつ梶田先輩から与えられた依頼を終わらせて一夏を含むイツメンで簡易仮装の錬成をこなし、特にトラブルもなく月末になり俺達はハロウィンイベントの手伝いで梶田先輩んちの病院にいる

 

 

「梶田、配るお菓子が届いたんだけど」

 

 

 

「おー、アッチに姉貴がいるじゃん?あそこに頼むわ」

 

 

「あいよ」

 

 

俺は配達のお兄さんに声を掛けて梶田先輩の居るテントの方へ荷下ろしをお願いしせっせと働く、先月からなんだかんだで働いてる気がするけど、悪い気分じゃないな、うん

 

 

 

「先輩、配るお菓子はこれで全部です」

 

 

「うむ、ありがとう栗田君」

 

 

テントの飾りつけをしていた先輩に報告すると、相変わらず少し芝居掛かった口調でお礼を言われ

 

 

 

「続けてで悪いのだけど、厨房へ行って織斑ちゃんの手伝いをお願いしようか、そろそろ例の物が仕上がっているだろうしね」

 

 

 

「わかりました」

 

 

まだ力仕事に駆り出されてる数馬を横目に俺は先輩の指示の元、厨房へ移動を開始する

 

 

首から認識票を首から下げて病院で有る以上、派手な飾りつけは出来ていないが、ほんのりハロウィンを感じる廊下を進み食堂を経由して厨房を覗くと一夏と鈴、弾がテキパキと作業をしていたので

 

 

「一夏、塩梅はどう?」

 

 

「概ね順調かな?パウンドケーキを切って個包装する作業を今弾と鈴にして貰ってる所」

 

 

一夏の言葉を聞き2人が作業している方を見ると鈴と目が合い

 

 

 

「良い所に来たわねリク、アンタこれを運んで頂戴」

 

 

「了解」

 

 

鈴の言葉に返事をして個包装されたパウンドケーキ満載の食品用コンテナ(番重)×3を持ちテントまで戻り

 

 

 

「先輩、パウンドケーキは何処に置きますか?」

 

 

 

「そうだね・・・その長机の上に」

 

 

「わかりました」

 

 

先輩の指示通り長机の上に番重を置くと先輩はパウンドケーキの1つを手に取り

 

 

「織斑ちゃんは末恐ろしいね?既製品と遜色ないクオリティで製菓してしまうとわ・・・栗田君は良いお嫁さんを見つけたね?」

 

 

とニチャァと些かネットリした笑みを浮かべて俺に言う、ホントこの人は・・・とか思いつつ

 

 

「そうかも知れませんね」

 

 

と適当に流し、2往復目へ向かう事で揶揄う気満々の先輩から逃げる、俺は学んだんだ、この手の話題で先輩と真面に話をしてはいけない、凄まじく体力を浪費してしまう事を俺は学んだ

 

 

ほんと梶田先輩は黙ってたら彼氏の1人2人は出来そうなモノだけど、多分無理なんだろうな・・・うん

 

 

そんなこんなテントと厨房の往復を繰り返し自分の作業を完遂してイベントスタッフの俺達は先輩の前に一堂に帰す

 

 

「まずは忙しい中今日のハロウィンイベントに参加してくれてありがとう、君たちのお陰でイベントの準備も滞りなく終わった、心より感謝を」

 

 

 

そう言い先輩は俺達に頭を軽く下げて

 

 

「間もなくイベント開始の時刻がやってくる、もう暫く付き合ってくれると助かる、では配置に着いてくれたまえ」

 

 

先輩の声を聴き俺は簡易仮装の入った箱の蓋を開けてイベントスタッフや看護師さんや医師の先生の元を練り歩き簡易仮装を配って回り、簡易衣装の配布が終わったら、イベントでお菓子を配るので、そちらに合流して空になった段ボールとかを片付けたりする

 

 

 

イベントが開始してから1時間が経った頃、用意していたお菓子の残数が少なくなってきたなぁと思っていると、如何にも肩で風を切っていますよぉと言う歩き方で此方に近寄ってくる荒川兄弟(仮)が見え、今まで良かった機嫌がダダ下がりしていく

 

 

何で、こういう日にまで荒川兄弟(仮)(この2人)に邪魔されないといけないのか・・・と思いイライラとし始める、念の為に言っておくが俺は短気な方ではないので悪しからず

 

 

それはそれとして・・・荒川兄弟(仮)をどうにかしないとなぁ・・・あぁ面倒だ

 

 

 

 

 

 

 

 






お待たせしました


いい加減、チャラ男ズとのやりとりも終わりにしようと思っている今日この頃ですw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

トリック オア トリック

 

 

俺以外の人も如何にもな荒川兄弟(仮)に気付き2人を避ける為にモーゼの様に道を開け始め、荒川兄弟(仮)は満足そうに俺の居るテントまで近づいてきたので、俺も仕方なくテントから出て周りの人に現在位置から距離を取る様に言い、荒川兄弟(仮)を見据える

 

 

「栗田陸、ちゃんと首を洗って待ってたよな?」

 

 

「待つわけないだろ、ホント迷惑なんだが」

 

 

荒川Bが、使い方が絶妙に会ってるか否か分からない事を言い相変わらず荒川Aは喋らずにドヤ顔で恰好つけた立ち方で此方を見ている・・・さて、どうしようか、いつもの様に返り討ちにするしかないか?とか考えていると

 

 

「何か、トラブルですか?」

 

 

「あー・・・まぁ」

 

 

少々疎らな人垣から違う場所で作業をしていた蘭が出てきて俺の隣に立ち尋ねて来たが、なんと答えた物かと迷い言葉を濁していると

 

 

「あぁ、少し前からリクさんに付きまとってるヤンチーですか?なるほど」

 

 

「あぁ?舐めてんのかガキ、女だろうがガキだろうがナメってっと殺すぞ」

 

 

蘭の如何にも馬鹿にした言い方が気にいったのか荒川Bは相変わらずの沸点の低さで蘭に食ってかかる・・・のだけど、荒川Bの言葉を聞いた蘭の方が目つき鋭くなって殺気立ち始めてるんだよなぁ

 

 

「殺す、今 殺すと言いましたか?その言葉を使うという事は覚悟が出来ているのですよね?」

 

 

「あぁ?意味わかんねーこと言ってんじゃねーぞガキが!!」

 

 

御殿手(うだぅんでぃ)を使い正中線を一切左右に揺らさずに荒川Bへ歩み寄る、あぁ蘭は激オコ状態だな、コレは

 

 

この歩法は本来なら歩く時に多少ブレる筈の体幹がブレず隙がないことが強み・・・いや真骨頂だ、1対1や今みたいな平地の状態で真価を発揮する

 

 

そんな訳で全く隙の無い蘭に殴りかかった荒川Bは無事回避され上段回し蹴りで浮いた所を左後ろ回し蹴りで追い打ちをかけ右前蹴りを鳩尾へ叩き込み荒川Bを荒川Aへぶつける様に返却し

 

 

「殺すという言葉は殺される覚悟の有る者のみが使っていい言葉です・・・お帰りください」

 

 

とニッコリと笑み荒川兄弟(仮)を威圧し屈した荒川Aは引きずる様に荒川Bを抱えて帰って行った

 

 

相変わらず蘭は規格外なコンボを見せて来たなぁ、人間てあんなに風車みたいに回ったりするんだなぁとか思いつつ、蘭にお礼を言い持ち場に戻って自分に任された仕事をこなす

 

 

それからは特別トラブルは起こらずにハロウィンイベントは終わり、片付け・撤収作業を終了させる

 

 

「親愛なる有志諸君、今日はありがとう。お陰でハロウィンイベントは無事終了できた、本当にありがとう」

 

 

いつもの人を食った様な表情ではない梶田先輩の見た目相応の美少女の笑顔が見れただけで今日の収穫としては上々かも知れない、ほんと黙ってれば儚い系美少女に見えるのに、うん

 

 

そんな一夏にバレたら少し拗ねそうな事を考えつつ病院の敷地から出て数分、歩道を歩きながら一夏と喋っていて違和感を感じ振り向くと、間近に軽自動車が迫っていて、咄嗟に一夏を突き飛ばし車線上から退避させ次に来る衝撃への覚悟を決める、そして次の瞬間には俺の身体は軽自動車に容易く跳ね飛ばされ空を舞いグルングルンと視界回り最後には地面に叩きつけられる

 

 

その一工程の全てが終了して初めて俺は痛みを自覚する、これはヤバい・・・鈴にケツを蹴られて死ぬほど痛いとか言ってたが、そんなの比に成らないぐらい死にそうなぐらい痛いってか、下手しなくても、このままだと死ぬ

 

 

全身痛いし息し辛いし妙に静かだし何か視界が不透明だ・・・あぁでも一夏が何か言ってるのは分かる

 

 

 

これは鈴を始めとした一夏過激派に折檻される奴だな、鈴の折檻は容赦ないからな・・・今のうちに覚悟決めとかないとな

 

 

 

なんか気が遠くなってくたな、あーこれは本当にヤバい

 

 

 

 







お待たせしました



予定では、もう少しで一旦締めるつもりなんですがね、うん


ほんといつになったら完結するやらw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Observer


梶田優希視点


 

 

少々無理に部活に勧誘した後輩を始めとした部活の後輩や仲間の協力により、一部トラブルは有ったがハロウィンイベントは無事に終了する事が出来た

 

 

ホント、栗田君を始めとした2年生メンバーは各々特出した能力があるとボクは思っているのだけれど、これを(栗田君)へ行っても、『自分は普通枠です』とか言うんだろう

 

 

ボクからすれば、君も十分 普通枠からはみ出ていると思うよ、と言いたいが、彼には届かないのだろうね

 

 

そんな事を考えつつ、実弟をこき使いながら衣装等の細かい片付けをしていると、ドンと大きな音が聞こえ軽く黒煙の様な物が見えボクは嫌な予感が過ぎり駆け出す

 

 

 

背後から『姉貴?』と聞こえた気がしたが無視して兎に角走り現場へと急ぐ

 

 

演劇の為にトレーニングをしてきたお陰で軽く汗をかく程度で現場に辿り着いた僕の目に映ったのは、目に見えて出血と外傷のある栗田君と彼へ声を掛けながら応急処置をしている五反田君の妹の蘭ちゃん

 

 

怒髪天で般若の形相でいつもの彼女から想像も出来ない程粗々しい口ぶりで喋っている織斑ちゃんと織斑ちゃんを3人掛かりで抑え、落ち着くように宥めて居る五反田君・鈴ちゃん・御手洗君の3人

 

 

そして栗田君を執拗に付け狙っていた荒川兄弟(仮)が軽く黒煙を吐きながら壁にめり込んだ軽自動車の横でボッコボコの状態で伸びていた

 

 

 

「なんだこれは・・・どういうことなんだ・・・」

 

 

なんとも混沌としている様相に流石に困惑したが直ぐに意識を切り替え、蘭ちゃんの方へ向き

 

 

「救急へは?」

 

 

「事件直後に、もう数分で救急車はくると思います」

 

 

「了解、君はそのまま栗田君に声掛けを、言わないでも大丈夫だと思うけれど、頭部は動かさない様に」

 

 

「はい」

 

 

ボクは蘭ちゃんに指示を出し返事を聞いてから、明らかに荒川兄弟(仮)への戦意が衰えていない織斑ちゃんを3人掛かりで抑えている彼等の方へ向き自分の携帯を操作しメッセージを送ってから移動し

 

 

「落ち着き給えよ織斑ちゃん」

 

 

「優希先輩、アイツ等がリクを・・・リクをやりやがった!許さねぇ!!」

 

 

普段の温厚な彼女からは想像もできない程に、その目は殺気を帯びさながら野獣の様だ。この娘(織斑一夏)にとって(栗田陸)は、それ程までに大切な存在なのだろう、さながら逆鱗の様だ

 

 

あれら(荒川兄弟(仮))を処理しておきたい気持ちは分かるけれど、それを君がしてはいけない」

 

 

「なんでだよ、今ここでやっとかないと、またリクを狙う筈だ」

 

 

普段の冷静な彼女ならボクの言葉に反論なんてしてこない聡い彼女がボクの言葉に異を唱えてくる、見ていて分かっているが今彼女は冷静さを欠いている、故にボクの言葉を納得できない

 

 

「あれらには司法の場でキッチリ罰を受けてもらう、それが法治国家のルールなのだから」

 

 

ボクは安心させる為に抱きしめた風を装い彼女を抱きしめ小声で耳打ちする

 

 

「大丈夫、あれらには死を救済とする程の苦痛へ落ちて貰う準備がある、だから今は納得しておくれよ、ね?」

 

 

「・・・はい」

 

 

ボクが身体を離していうと、織斑ちゃんは渋々不服ながらも納得した様な様子で頷くと同時に蘭ちゃんが呼んだであろう赤十字のマークが入った救急車とウサギのマーク(・・・・・・・)の入った救急車が到着し、赤十字へ栗田君と織斑ちゃん・鈴ちゃん。ウサギへ荒川兄弟(仮)を収容し、搬送していく

 

 

その後、消防と警察が来たので色々な説明をしたりして、五反田兄妹と別れ帰路に就き歩きながら携帯を取り出して、とある人に電話をかける

 

 

「・・・もしもし、梶田です。想定外の事態が発生し彼を負傷させてしまいました、申し訳ございません。ですがアレ等の収容は完了しました・・・はい、ではこの先は予定通りに?分かりました、よろしくお願いします。今では彼はボクの可愛い後輩ですから、はい。では」

 

 

 

通話が切られ携帯の画面に映るウサギのエンブレムを見つめ、大きく息を吐く

 

 

 

後はあの人に任せよう、もうボクに出来る事はない・・・なんとか首の皮1枚つながったかな、うん

 

 

 

 

 






お待たせしました


これにてチャラ男との争いも終了ですw




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

療養機関

 

 

荒川兄弟(仮)に車で撥ねられて気が遠くなったと思い気が付いたら青っぽい空間に棒立ちしていて困惑しつつ周りを見渡しても青い空間が広がっているだけで、何の情報も得られず、どうした物か考えていると急に目の前に空間投影されたウィンドウが出現したので軽く驚いていると

 

 

「やぁやぁりっくん、意識はハッキリしているかな?」

 

 

「なんだ束さんの仕業か」

 

 

「その反応を見るに意識はハッキリしてるみたいだねぇ」

 

 

ウィンドウに映る人物を見て仕立て人が彼女で有る事に安心し納得し、疑問が浮かび

 

 

「あれ?俺は車に撥ねられた筈なんだけど?」

 

 

「あぁそれはね?今、君は束さん謹製の特殊ネットワークを利用した仮想世界にいるからなんだ」

 

 

「・・・ごめん、全然理解できてない。俺に分かる様に説明して?」

 

 

俺の言葉に束さんニコッと笑みOKとサムズアップし

 

 

「まず君は荒川兄弟(仮)に車で撥ねられてしまった、そして救急搬送され一命は取り留めたんだけど、ちょっと不味い所が負傷していてね」

 

 

「不味い所?」

 

 

「うん、背骨とか腰骨とか骨盤とかがバリバリ砕けちゃって脊髄とかボロボロになっちゃってて」

 

 

そう言うと束さんは困った様な表情をする、これは文字通り不味い事になっているな俺の身体は・・・これは良くて車椅子生活になるのか?

 

 

「あー車椅子生活になりそう?」

 

 

「私がいなければ通常はそうなる可能性が高いね、えっと・・・それでね?君が何故そこに居るのかと言うと、私の開発した治療装置で君を治療する事になったんだ」

 

 

「束さんの作った治療装置・・・うん?」

 

 

束さん作の装置となるとシャリーのお母さんのアレか?それとも別の何かか?

 

 

うーん・・・束さんだから俺の知らねい開発物が有ってもおかしくないんだよなぁうん

 

 

「そんなこんなで装置のお陰で全治数か月の入院が約2週間の入院に短縮されたんだ、でも約2週間に短縮されたとはいえ、その間暇でしょ?だから仮想世界に招待した訳さ」

 

 

「あー・・・うん、何となく理解はした、色々ありがとう束さん」

 

 

「いいよ、りっくんは私の大切な弟分だもの」

 

 

俺がお礼を言うと束さんはニッコニコしていう、ほんとお世話になりっぱなしな気がするなぁ

 

 

「そんな訳で、約2週間を仮想世界で過ごしてね?」

 

 

「わかった、おりがとう束さん」

 

 

「あ、そうそう一応注意というか告知しとくね?今りっくんは意識だけ仮想世界にいる状態なんだけど、睡眠状態に移行するのを束さんの方で制限及び操作する事は出来ないんだ、だから急に睡眠状態に移行して夢を見ている状態に入る事もあるから留意してて?」

 

 

「う、うん・・・うん?」

 

 

束さんの説明を聞きイマイチ理解できずに曖昧な返事をすると、束さんは少し苦笑して

 

 

「まぁ急に寝落ちしてしまうよって事、仮想世界と夢の境目が曖昧だからねぇ」

 

 

「了解、何となく理解した」

 

 

束さんは俺の返事を聞き『あ、そうそう』と手を打ち

 

 

「このウィンドウ越しになるけど いーちゃんともお話は出来るから、その内会いに来ると思うよ」

 

 

「そうなんだ、わかった」

 

 

一先ず俺の事は置いておいて、一夏が無事でよかった・・・あれ?俺、一夏に怒られる奴じゃない?

 

 

あーうん、甘んじて受けよう、荒川兄弟(仮)が元凶とはいえ原因は俺だし・・・やべぇぇめっちゃ怖いんだけど

 

 

これは開幕土下座作戦しかないな、うん間違いない

 

 

「例の事件での負傷者は君と いーちゃんがボコボコにした荒川兄弟(仮)だけだし、隠蔽工作とか根回しとか束さんがしといたから安心して?」

 

 

「う、うん、わかった」

 

 

なんか聞いてないのに聞いてはいけない事を聞かされた気がするけど気付いてないフリをしておこう、うん

 

 

 

それはそうとして、約2週間か・・・修学旅行は間に合わないな、無念

 

 

 

 

 

 






大変お待たせいたしました



多忙で精神疲労がヤバいっす


更新遅くて申し訳ない



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

療養機関 裏



束さん視点


 

 

『それじゃぁ、仮想世界を楽しんでね?』と りっくん へ言い通信をオフにして仮想世界のプログラムを起動させ座っていた椅子の背もたれへ背を預け天井を見上げ息を吐く

 

 

「・・・山を越えてくれた、良かった」

 

 

彼を安心させる為に先程まで勤めて繕っていた表情を放棄し、心からの安堵と封じ込めていた疲労を曝け出す

 

 

幸いこの室内には装置の中の りっくん と私しかいないので気を緩めても気が咎めない

 

 

私は椅子に背を預けながら彼の入っている楕円形の装置へ目を向け

 

 

「搬送から緊急手術を経てから集中治療・・・そこから意識回復まで約1週間、本当気が気でなかったな・・・」

 

 

私自身、元々作業を始めたら集中してしまい徹夜とかよくする方だから多少は耐性は有った筈なのだけど、今回は嫌に疲労を感じる・・・私にとって彼はそれほどに大切な存在だという事だろう、まぁそんな事分かり切っていたのだけれどね?

 

 

「本当に良かった」

 

 

椅子から立ち上がり装置に触れ呟く

 

 

この装置は急造品、それ故に不具合が発生する可能性も十分あった。意識も戻らない可能性だってあったが、どうにかなってくれて良かった

 

 

まぁ彼には・・・私以外は知らない皆には明かしてない裏技を秘密裏に仕込んでいるから彼が死ぬ事は万に一つも無いのだけれどね?

 

 

今後、未来の事を考えれば、もっと前に仕込みを済ませておけば良かったと今更後悔しているが、過去は変えられないので未来に向けて仕込みを施す

 

 

この世で私以上の先駆者はおらず、今だ私の開発物に並び立つ物を作れた者はいない、現行最強の名を関しているアレを彼が扱えるように、原初にして至高のリミッター処理なんてさてれいない子を使った

 

 

私と織斑千冬(ちーちゃん)の心血を注いだ子をだ、この子ならば りっくん を守ってくれる筈

 

 

「この子と一緒に居ればもう二度と君は、いーちゃんを悲しませる大怪我を負う事はなくなる筈だよ」

 

 

まぁ、その事実に気が付く時が来ない事が一番良いのだけれどね?

 

 

私が彼の入った装置に触れ彼に語り掛ける様に独り言を呟いていると不意に病室の扉がノックされ開かれ

 

 

「失礼します」

 

 

茜色のボブで前髪が長くて片目が隠れている美少女が少々固い表情で入室してきたので、私は顔だけ彼女に向けて

 

 

「こうして直接会うのは初めてだね?梶田優希ちゃん」

 

 

「そうですね、篠ノ之束博士」

 

 

私の言葉に表情が硬いまま答え彼女は、 りっくん の入った装置に歩み寄り

 

 

「その・・・栗田君の様子はどうですか?」

 

 

「さっき意識は回復したから、もう心配ないと思うよ」

 

 

「そう、ですか・・・良かった」

 

 

彼女は私の言葉を聞き安堵した表情をして、私へ向き直り

 

 

「想定外の事態とは言え栗田君が、この様な状態になってしまい申し訳こざいませんでした」

 

 

「構わないよ、報告を聞き指示を出していたのは私だしね?ホント読み違えたよ・・・まぁ結果的には良い機会だったのかもね?」

 

 

「良い機会、ですか?」

 

 

彼女は私の言葉に首を傾げ聞いてきたので

 

 

「あぁ、此方の話だよ。気にしないで?」

 

 

「・・・はい」

 

 

私がそう言うと彼女はこれ以上は踏み込まず頷いて返事をする

 

 

 

「そうそう、これまで依頼ご苦労様だったね?色々とありがとうね?」

 

 

「いえ、有り余る報酬を頂いていますし、それに今では彼等は可愛い後輩ですから」

 

 

「そう?それでもありがとう、お陰で いーちゃんは想いを遂げられた訳だし、ね?」

 

 

そう、私は いーちゃんや りっきん 達には内緒で学校内を始めとした色々な場所に協力者を手配していた

 

 

彼女、梶田優希は協力者の1人だ、たまたま彼女の兄や父と知り合いだったから伝手で依頼をしたって訳

 

 

もしもの時は実家が病院だし役にしか経たないだろうしね?うん

 

 

そんな思惑は今回的中してしまった、運が良いのか悪いのかは分からない

 

 

さぁ、あとは りっくん の自己回復と装置のチカラを信じて待つだけだ、あぁあとで いーちゃんに連絡しなきゃなぁ

 

 

 

 

 

 

 





お待たせいたしました


これ今年中に終わるかな?w



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

おいでませ、仮想世界

 

 

束さんと通信が終了した瞬間、目の前に ろうでぃんぐ という文字が浮かび呆気に取られている内に気付くと周りに先程までは無かった建物が立っていて、目の前に全体的に白い人?が立っていた

 

 

「ようこそサイバースペースへ、私は案内役のハジメと申します。以後お見知りおきを」

 

 

「あ、あぁ・・・どうもリクです」

 

 

ハジメと名乗った彼女は俺の言葉に微笑み軽く頷き

 

 

「此処は篠ノ之博士が先程軽く説明していた様に仮想世界、まだ正式名称が存在していないので仮称でサイバースペースと私は呼称しています」

 

 

「なるほど?」

 

 

「ここでは様々な事を行う事が可能です、現実世界で出来る事は勿論、現実世界では困難または不可能な事も此処サイバースペースではすることが可能になります」

 

 

彼女は微笑みながら説明する、現実世界では出来ない事、例えばなろう系の主人公になってみたりとか? それはそれで心惹かれるなぁうん、だって俺は男子中学生なのだから

 

 

「今、リクさんの考えた なろう系の主人公にもなれますし、ガンダムに乗って無双みたいな事は勿論、補正無で希望も何もないどうしようもない戦場へ言って戦死を体験する事も可能です」

 

 

おいおいおい、なんでこの人めっちゃいい顔で微笑んでおいて怖い事いうんだ?めっちゃ怖いんだけど・・・いや、そもそも俺の思考読んだよね?怖い

 

 

「え、えぇっと・・・戦死はしたくないかなぁ?って」

 

 

「ふふ、そうですよね?勿論冗談です、気が変わりましたらノルマンディー上陸作戦辺りがおススメです」

 

 

いやいやいや、絶対冗談じゃなかった目をしてんじゃん?すでにトラウマになりそうなんだけど・・・助けて一夏

 

 

「さてこれにて一通り説明は終わりになります、リクさんは何をご所望ですか?」

 

 

「俺が望む事、か」

 

 

俺が望む事、この機会にしたい事・・・うーん何でかパッと出てこない、どうしたものか

 

 

「思いつかない様でしたら、ランダム選択が可能ですが、如何でしょう?」

 

 

「・・・それってノルマンディー入ってますよね?」

 

 

「幾つかの条件を決めて絞り込めますから、ノルマンディーを含める事も可能です」

 

 

「ノルマンディーは除外でお願いします」

 

 

 

『左様ですか』と彼女は微笑み頷くが何か不満そうだ、どんだけ俺をノルマンディーに行かせたいんだ、この人は

 

 

 

「では条件は『補正無』『戦死前提』『ノルマンディー上陸戦』は除外した物でよろしいですか?」

 

 

「はい、それでお願いします」

 

 

「畏まりました、では絞り込みを行ったのちに抽選を開始しますので少々お待ちください」

 

 

「わかりました」

 

 

彼女の言葉に頷き一息吐いて改めて周りを見てみる

 

 

正面にははハジメさんが立っていて彼女越しの向こう側には人が行きかっているのが見え、周りに聳え立つビルの窓にも人影が写っている

 

 

そういや束さんは仮想世界って言ってたけど、まさか目に映る人影がすべてAIとかな訳ないよな?いや・・・まさかな?

 

 

「あの、ハジメさん質問が」

 

 

「なんでしょうか?あぁあと私の事はハジメと呼び捨てで構いませんし敬語も不要です」

 

 

「分かった、ハジメ・・・ここは仮想世界、サイバースペースって言ったよな?チラホラ見えてる人影は俺と同じで人間だよな?」

 

 

 

「そうですね・・・そのチラホラ見えている人影の中には貴方と同じく人間はいます、ですが見分ける事は難しいかも知れませんね?」

 

 

 

そう言いハジメは怪しく微笑む、なんだこの蠱惑的な笑みは・・・含みが有り過ぎて怖いんだけど

 

 

 

「このサイバースペース内には人間と人間ではない者・・・仮にスクルドと呼称しましょう、スクルドとそれ以外のモノがいます、私には分かりますが、貴方には見極める事は難しいかも知れません」

 

 

 

そう言いハジメは蠱惑的な怪しい微笑みを浮かべる

 

 

なんか少し混乱してきたぞ?

 

 

 

 

 

 






お待たせしました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

始まりました 仮想世界 チュートリアル

 

 

 

ハジメが蠱惑的な微笑みを浮かべながらしてくれた説明に少し混乱しながら自己解釈していると一瞬世界が漆黒に染まり瞬きをした瞬間、先程まで立っていた場所とは違う場所に立っていた

 

 

「どこだ?ここ」

 

 

「リクさんの要望で絞り込みをした体験型のゲームです、気を楽にして下さい。所詮はゲームですので」

 

 

なにやら学校らしい門の前で棒立ちで建物を見上げて呟く俺にハジメはニコリと微笑み言うので

 

 

「具体的に、どんな内容なんだ?」

 

 

「具体的に、ですか?そうですね・・・アクションRPG+恋愛シュミレーションでしょうか?」

 

 

「なんだそれ・・・」

 

 

俺の予想斜めを行く内容で何が起こるかさっぱり分からなくて正直不安しかない

 

 

「先程も伝えた様に所詮はゲーム、貴方は気にせずに楽しめば良いかと。さぁチュートリアルを受けに参りましょう」

 

 

相変わらず蠱惑的な微笑みでハジメは言い、俺から建物の方へ向き歩み出し、俺は彼女の後を追い、敷地内へと足を踏み入れる

 

 

ハジメの後に続いて数分、なんと言うか漫画やゲームやアニメに出てくる金の掛かっている学園と言う感想を抱く作りをしている

 

 

そんな感じでキョロキョロとしながら歩いていると

 

「此方です、私は案内役ですので此処より先は貴方が選択し好きになさって下さい、困った事が有ればいつでも呼んで頂ければ対応致します」

 

 

「・・・分かった、ありがとう」

 

 

ハジメは説明した後に俺の返事を聞いて一度頷き電子に解ける様に姿を消す、そして俺の目の前にチュートリアルを開始しますか? とウィンドウが浮かび俺は迷わずYESのボタンを押す

 

「ようこそサイバースペース・ゲームズへ、プログラムNo.08のチュートリアルを開始せます、まずは目の前のロッカールームへ進み初期の得物をお選びください。制服も有りますので着用をお願いします」

 

「得物、ね」

 

 

扉を開けてロッカールームへ入室すると大小様々なSFチックな武器が一面に置かれていて少し圧倒されてしまう

 

「グングニル、ダインスレイフ、ブリューナク、グラム、アステリオン・・・いっぱいあるな」

 

 

大小様々と言っても目の前にある武器は、小型のヤツでも対人間に使うにしてはデカいし、なによりブレードと銃口が混在している様に見える物もある

 

試しにグングニルを手に取って軽く振ってみる

 

「・・・重心が大分切っ先側にある様に感じるな」

 

とか考えていると、武器の掛かる壁から見て左の壁に制服とリングピローに金色の指輪が置いてあり、指輪を手に取れとポップアップがあったので、1度グングニルを元の場所に戻してから指輪をつまみ上げ、内側を見ると何語かは分からないが文字がビッシリ刻まれていた

 

「造り込み凄いな・・・指輪に嵌めろ?」

 

次は右中指へ指輪を嵌めろと指示が表示されたので素直に嵌めると緩々だった指輪がピッタリサイズになりしっくりくる

 

「ふぅん、すげぇな」

 

右手をグーパーとしてみたりするが、指輪に対する違和感が少なくて少し感動しつつ、charm(ちゃーむ)を選べと指示が更新される

 

「この武器の名前はcharmって言うのか?なるほど?」

 

指輪を嵌めたお陰か先程まで見えなかった初心者にオススメとか上級者向けとかの簡易的な性能の情報が見え、フレーム部分とかのカラー変更が可能な事にも気付く

 

どうやらcharmは斬撃による近接戦闘と銃撃による中遠距離戦闘を両立する為に可変する武器らしい、中には可変中の僅かな隙や強度向上を目的にした可変機構を廃したモデルもある様だ

 

とりあえず可変機構付きだと扱えるか不安なので、俺はエゼルリングと言う非可変のcharmを使う事にした

 

こうゆうのはシンプルイズベストだと思うんだ、うん

 

 

そんな訳で、フレーム部分の色を初期の赤から青に変えてから軽く振ってみると、驚くぐらい手に馴染んだ

 

 






お待たせしました


charmはアサルトリリィに出てくる武器です

形状が気になる方は検索してみてください


個人的にはアステリオンが私は好きです←




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 チュートリアル 2





 

 

エゼルリングを一旦立て掛けて改めて制服を見て少し考える

 

「・・・女子制服だよな、これ」

 

そう目の前に掛かっている制服は明らかに女子制服なのだ、それもお嬢様的な感じの少しフリフリなヤツ

 

 

「コルセットスカートにノースリーブのブラウス、リボンと上着・・・こっちはケープと選択か」

 

ふむ、と現状を認識して軽く頭を掻き違和感を覚え、頭を掻いた手を軽く握りそのまますく様に手を動かすと、肩口を超えるぐらいまで髪の毛があり軽く動揺する

 

「えぇぇ・・・さらに伸びてんじゃん」

 

この電脳世界に入る前は肩口に届くかなぁ?ぐらいだったのが明らかに伸びているので、恐らく束さんの仕業だろうと勝手に結論付けて自分を納得させる

 

 

束さん、冤罪だったらゴメン

 

 

「見た所、服はコレしか無いみたいだし郷に入れば郷に従えとも言うし着るか」

 

文化祭でクラシカルメイド服を着てるので今更、多少フリフリしてるモノ程度では、どうも思わないので目の前の制服を着る

 

 

流石にニーソやらタイツやらを履く気にはなれなかったのでクルーソックスを履きローファーへ履き替え、制服で隠れていた姿見で自分を確認する

 

 

「・・・文化祭の時より更に母さんにソックリだなぁ、これも束さんの仕業か?」

 

文化祭の時は化粧で擬態していたが、今は明らかに その時より更に少女へ寄っているし、気持ち身長も縮んでいる気すらする

 

 

「まぁいいか、どうせゲームってハジメも言っていたし」

 

どうせゲームで尚且つ知り合いにも会わないだろうと結論を出してケープを羽織ってエゼルリングを持ち軽く振る

 

「よし、いけるな」

 

そう呟くと新たな指示がポップアップし視界にルート指示のビーコンみたいななが表示されたので、辿っていく

 

 

ロッカールームを出て1〜2分歩き、なんかグラウンドみたいな場所に辿り着くと

 

「君が今日来た新入生だな? 早速だが君の実力を測らせて貰う、ダミーと模擬戦をしてくれ」

 

 

何か如何にも教官みたいな人が立っていて、そう言ってきて説明を聞きますか?とポップアップが表示されたのでYESを押す

 

 

「では模擬戦を始めて貰う、まず目の前に居るのはhuge(ヒュージ)と言う敵だ、まぁ今回は訓練用のダミーだが」

 

 

教官は俺の知らない情報を教えてくれる、目の前のhugeは球体に三日月形の足が付いた様な形状をしていて、体高が3mぐらい有りデカい

 

 

「hugeには区分が有り下からスモール・ミディアム・ミドル・ラージ・ギガント・アルトラとなっている、基本的には名の通り下から順にデカくなって行き強くなっている通常兵器の効果が有るのはミドル級までで、ラージ級からはcharmでの攻撃しか有効打になり得ない」

 

 

なんとも芸の細かい設定だなぁと思いつつ教官の話を聞く、聞き逃したら後々面倒なことになりそうだしね

 

 

「よし実技に移るぞ? charmを構えてcharmに意識を集中してみろ」

 

 

「はい」

 

俺はエゼルリングを構えて教官に言われた通りに意識を集中する、するとクォーンとやや高音の狼の鳴き声の様な音が鳴りエゼルリングのコアみたいな部位が淡く光りルーン文字の様な物が映る

 

「よし無事charmとの契約が出来た様だな、次はダミーを切ってみろ」

 

「わかりました」

 

エゼルリングを片手で握りダミー目掛けて振り下ろすが、弾かれてしまう

 

しかし、手は思ったより痺れておらず少し驚く

 

 

「ダミーとはいえ、そう簡単に切れてしまっては訓練にならない、だから切れなくて当たり前だが、実感した通り 今君はcharmを介してマギにより強化されている状態だ、だから返ってくる衝撃が緩和されている」

 

教官の説明に、なるほど と納得して、再び数回ダミーを切ってみるがやはり硬い感触が返ってくる

 

 

これはキチンと戦い方を考える必要があるな、見るからに金属の装甲してるし

 

 






タイトルを変更しましたw


予定では次でチュートリアルを終わらせるつもりです



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 チュートリアル 3

 

 

教官の説明を聞きながら数回ダミーを切り付けてマギってスゲェと思っていると

 

「近接攻撃は分かったな?では、次は射撃をして貰う。一旦あの印のある位置まで移動してくれ」

 

「はい」

 

教官はダミーから少し離れた場所を指を指したので、そちらを見るとポップアップが指定位置を示していたので移動する

 

 

「位置についたな? フォログラムを真似てcharmを構えてみろ」

 

 

教官が、そう言った瞬間、俺の隣にフォログラムが生えてcharmを構えて、それを数秒間隔で繰り返す

 

「えーっと・・・こうか?」

 

フォログラムを真似て構えてみて思う、『あれ?照準器ねぇな』と

 

「よし、ダミーを撃て」

 

エゼルリングを構えたままダミーを見て『照準器なくても大丈夫そうだな』と思える程、ダミーがデカい

 

これだけデカければ精密射撃をしない限りは問題は無さそうだ、とか思いつつ引き金を引くと、予想外の反動の少なさに少し驚きつつ、もう数回引き金を引きダミーを撃つ

 

「素人で的に当てられるだけ凄いが、君はセンスがある様だな?」

 

「ありがとうございます」

 

なんか教官に褒められて、少し変な感じがする

 

「では最後に模擬戦をしながらレアスキルの確認を行う」

 

「え? あっちょっっ」

 

教官がそう言った瞬間、俺とダミーを囲う様に防壁が生えてきてダミーが動き出して、襲いかかってきたので咄嗟に躱しダミーの懐に潜り込んで脚の付け根を斬り付けるが、やはり硬い

 

 

「レアスキルはマギによりリリィが発現する基本1人1つの能力の事だ、現在16種類のレアスキルが確認されている」

 

 

「なるほど? おっとっっ」

 

教官の説明を聞きながらダミーの攻撃をギリギリで掻い潜りつつ攻撃を繰り返していると、少しずつダミーが繰り出す攻撃の軌道が見えてきて、伸び切ったダミーの触手の装甲が付いていない関節部分へ斬撃を加えられる様になっていく

 

「ん? 動きが変わってきたな、レアスキルが発現したか」

 

なんか教官が言っているが、気にする余裕も無くダミーとの戦闘を続けていると、ダミーの攻撃軌道の予測線と俺の回避軌道の予測線が視界に広がり最適の回避軌道を取ってダミーへダメージを蓄積させていく

 

さらに集中し踏み込むと予測線やダミーの動きが、ゆっくりとなる瞬間が度々起こる様になり、ダミーがゆっくりの間に装甲の隙間に連続で攻撃を加えたりして、漸くダミーを機能停止させる事に成功する

 

「ふぅ・・・なんとかなったな」

 

「ご苦労、君のレアスキルはゼノンパラドキサの様だ」

 

 

「ゼノンパラドキサ?」

 

いつのまにか俺とダミーを囲んでいた防壁が無くなっていて、教官が俺に近寄って、レアスキルの名前を言うがさっぱり分からないので首を傾げると

 

「掻い摘んで説明すると、目視下の力の方向性を感じ取り状況を予見する事が出来る、この世の理と高速移動が出来る宿地の要素を含んだ複合スキルだ。かなり有用なレアスキルだぞ?」

 

 

と教官は説明してくれる

 

 

なるほど、これは中々使い勝手の良いスキルの様だ・・・でもスキルを過信し過ぎない方が良いかも知れない

 

何故なら、『目視下の』と言ったからだ。つまり視界内に映らなければ予見出来ないと言う事だろう

 

まぁhugeが群れで来るかどうかは俺には分からないから、ゼノンパラドキサの弱点が気にする所なのかはわからないけど、頭には入れて置こう、うん

 

 

「これで入学テストは終了だ、今日は寮に戻って休むといい。あぁそれと、charmを抜き身で持つのは道中危ない、コレを使う様に」

 

 

「分かりました、ありがとうございます」

 

 

教官からcharmを入れる専用の鞄を貰い、収納して担いでみると結構しっくりくる、なぜだろうか?

 

ちなみに鞄の形は管楽器のケースに似ている気がする

 

そんな訳で俺は教官に言われた通り、寮へと向かう事にした

 

 






お待たせしました


スキルに関しては私の解釈で書いていますので悪しからず



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 スイレン 1

 

 

グラウンドを出て寮へ向かう道中、歩きながら色々と見てみたが、これが現実ではなく電子で構成された物だと俄には信じられない程、リアルだと感じる

 

 

髪を揺らし肌を撫でる風の感触、仄かに香る草木の匂い、微かに聞こえる人の声、その全てが偽物だと思えない

 

 

「・・・2週間もここに居て大丈夫か?俺」

 

 

なんか急に不安を感じつつ視界内に映るビーコンみたいなのを辿って1年寮へと進むと、ちらほらと俺と同じ制服を着た生徒が見え始め、人集りに遭遇する

 

 

「なんだ?」

 

 

一旦足を止めて人集りの方へ意識を向けて聞き耳を立ててみると、どうやら血の気の多い新入生が上級生へ絡んでいる様だったので、少し様子を眺めてみる事にする、どんなcharmの扱い方するかも気になるし

 

それと今気付いたけど、やっぱり俺の身長は低くなってる、目の前にいる生徒・・・女子達と対して身長が変わらないってか俺よりデカい人がチラホラいるぐらいだ

 

と言う事は、今の身長は160前後ぐらいか? って事は・・・だいたい2〜3年前ぐらいまで退行してるっぼいな、そりゃ母さん似の俺が更に母さん似になる訳だ、うん

 

 

そんな訳で喧嘩?の成り行きを見ている訳だけど、何人か新入生に紛れて上級生も居るようだが、なんで上級生は喧嘩の仲裁をしないのだろう?

 

まぁ野次馬の俺が言えた事ではないけど、うん

 

 

と、一瞬周りを見ている隙になんか俺の後方にいた筈の桃髪の娘が仲裁に入っていた、速いなぁ とか思っていると、何処からかゴーンゴーンと鐘の音が鳴り響き、最上級生らしき人が現れ『生体標本のhugeが逃げたので捕獲又は撃破をする為に出撃する様に』みたいな事を言う

 

すると新しくタスクが追加された旨を知らせるポップアップが表示されたので、選んで詳細を表示し内容を読み、タスクを受注してアクティブにして戦闘エリアへ伸びるビーコンを辿り歩き始めると

 

 

「待ちなさい、あなた新入生でしょう?単独では危険よ・・・ユウキさん、チワさん、この子をお願い」

 

 

「仕方ないね、承知したよ生徒会長。では行こうか」

 

 

「命を大事に、初陣で死んだら元も子もないかんなー」

 

 

「・・・よろしくお願いします」

 

 

なんか生徒会長らしき人に呼び止められて振り返ると、知らぬ間に黒よりの青髪の、俺が苦手にしていても尊敬している先輩に似ている上級生と、その実弟で俺のクラスメイトを女子にしたら、こんなだろうなぁと思う娘が目の前に現れてパーティーを組まされいた

 

なんか少し変な感じがするが、どうしようも無いので2人に続いて再び歩み出す

 

 

「君は新入生だね? ボクは杉田 優姫(ユウキ)、こちらは」

 

 

「シルトの杉田智和(チワ)でーす、よろしくなー」

 

 

「あ、栗田陸です、よろしくお願いします」

 

 

少し歩みを進めると自己紹介が始まったので自己紹介を返しておく

 

何か喋り方まで梶田先輩に似てて本能的に苦手な雰囲気を感じる、これは失礼な事だけど、仕方ない

 

「あ、あの・・・シルトって?」

 

「シルトとは、シュッツエンゲルの契り・・・義姉妹の契りを交わした義妹の事だよ。シュッツエンゲルの契りは、先達の上級生が未熟な下級生を守り育てる制度みたいなモノだね」

 

「ウチと優姫姉様は、その契りを交わしてるって訳」

 

 

「へぇ〜」

 

義姉妹制度かぁとか思いつつ優姫さんを先頭に歩を進める

 

「この任務を生きて帰れたら君にもシュッツエンゲルの誘いが来るかも知れないね? 君は・・・筋が良さそうだからね」

 

 

「は、はぁ・・・」

 

 

シュッツエンゲルの誘いってなんじゃら分からないが、流れ的に上級生が俺の所にくるのか? 知らんけど

 

 

これ、ちょいちょい用語が出てきてよく分からないな、ライブラリとか無いのか? 探しとかないと何か不便だな

 

 






お待たせ致しました


一部加筆修正しました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 間話 用語解説



独断と偏見、自己解釈で書きます、悪しからず


 

 

 

⚫︎マギ

 

charm(チャーム)を使用する為に必要な魔法の力、charmを介して身体を強化したりしている

 

 

 

⚫︎マギクリスタルコア

 

charmの中核を成すコアパーツ、コンピュータ制御されたマギの宝玉

 

10代の少女と共鳴しやすい特性がある

 

 

⚫︎charm(チャーム)

 

 

huge(ヒュージ)にトドメをさせる唯一の決戦兵器

 

 

リリィが扱う武器で、様々なメーカーから多種多様のcharmがリリースされている

 

幾つかの世代を経ており、現行主流で使用されているのは第二世代

 

 

しかし世代が上がれば強い訳ではなく、時と場合 使用者の実力次第で、どうとでも変わる

 

 

⚫︎リリィ

 

charmを用いてhugeを撃滅する為に戦う女性達の総称

 

主に養成機関ガーデンに所属し、日々hugeとの闘いを学び撃退している

 

 

 

⚫︎アーセナル

 

charmの整備、カスタムを行う技術屋

 

戦うアーセナルと言う少し変わったリリィも存在する

 

⚫︎ガーデン

 

リリィの養成機関にして対huge戦の最前線であり政治干渉されない聖域

 

世界各地に存在し、数多のリリィが生活している

 

 

本作では、百合ヶ丘女学院をモデルとしたモノが拠点になっている

 

 

⚫︎huge(ヒュージ)

 

突如として現れた異形のモンスター

 

ヒュージ細胞と呼ばれるモノが暴走し成長・捕食・寄生を繰り返して様々な姿を獲得し多種多様な種類が確認されている

 

下から順にスモール・ミディアム・ラージ・ギガント・アルトラとサイズで区別されていて

 

ミディアムまでは通常兵器で対処が可能だが、ラージ移行はcharmを使用しなければ撃破できない

 

アルトラに至ってはcharmの連携必殺攻撃でなければダメージを負わせられない

 

 

ヒュージネストと呼ばれる巣を有していて、ステルス進行やケイブと呼ばれる異次元ワームホールを使い出現する

 

 

 

⚫︎スキル

 

リリィが発現する特殊能力、特に能力の発現が著しい物をレアスキルと呼び一定値以下の物はサブスキルと呼ばれる

 

 

レアスキルは使用者の生き様が反映される為、基本的に1人1種といわれる

 

 

現行確認されているレアスキルは16種類ある

 

 

サブスキルは複数所有でき、7種保有した者が確認されている

 

 

⚫︎シュッツエンゲルの契り

 

上級生が下級生と義姉妹となり導く制度、基本的に1学年下の下級生と契りを交わす事が推奨されており、3学年全てが揃っている状態をノルンと呼ぶ

 

 

基本的に上級生が下級生へ声をかけて契りを交わす様だが、作中を見るか決まり下級生から上級生へ打診する事もある様子、ただし断られていたが

 

 

姉を守護天使(シュッツエンゲル)、妹をシルトと呼ぶ

 

 






ひとまず最低限は書いたつもりです

足らない場合は追記します



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 スイレン 2



英語表記とかが面倒になったのでcharmとかhugeを此処からカタカナ表記にします

許してクレメンス



 

 

そんな感じで気を張りすぎない程度の雰囲気で適度に会話をしたり、分からない事を質問したりして、薄く知識をつけつつ逃げたヒュージを捜索する

 

 

「逃げたヒュージって、どんなヤツなんです?」

 

 

「おや、生徒会長の言葉を聞いていなかったのかい?まぁボクも詳しくは知らないのだけど、周囲の環境に擬態出来るらしいね」

 

 

「周囲の環境に擬態、ですか」

 

 

「ウチと姉様が居るから死なせない、大丈夫大丈夫」

 

 

「・・・ありがとう」

 

 

優姫さんに質問し、相槌を打つと智和は俺が不安になったと勘違いしたのか、俺を安心させる様に前向きな事を言う

 

別に不安になったわけではないが智和にお礼を言っておきつつ考える

 

 

俺のレアスキルは擬態状態のヒュージにも適応されるのか、を

 

 

ゼノンパラドキサは目視下の力の方向性を感じ取り状況を予見する事が出来る、この世の理と高速移動が出来る宿地の要素を含んだ複合スキル

 

この目視下の範囲を正確に把握しなければミスって死亡、なんて事もあり得る

 

 

とりあえずケースに手を突っ込んでエゼルリングの柄を握りマギを入れレアスキルを発動させて辺りを見渡す

 

 

「・・・この辺りには痕跡は無さそうですね」

 

 

「ふむ、索敵に便利なスキル保持者か。なるほど・・・では、もう少し進んでみようか、まだ撃破の連絡も来ていないしね」

 

 

「そうですね姉様」

 

「了解」

 

優姫さんはポケットから少々ゴツいガラケーを取り出し液晶を見て呟く、恐らく配給されている連絡媒体だろう・・・俺もってねぇな

 

 

後で配られる事を祈りつつ辺りを警戒しながら進むと俺の目が異変を捉える

 

「10時方向に戦闘の痕跡、誰か戦ってるみたいです」

 

「僅かに煙が上がっているね、急ごう」

 

「はい、優姫姉様」

 

「了解」

 

 

俺の言葉に優姫さんはいち早く反応し、彼女を先頭に戦闘区域へ走り出す訳だが、悪路故に半ばパルクールの様な壁走りや障害物を飛び越えたり踏み台にしたりして移動を行う

 

普通なら体力を消耗してしまいそうな機動だが、マギのおかげかさほど疲れを感じずに前を走る優姫さんと智和に着いていけている

 

 

「煙が近くなってきたね、警戒を」

 

「はい」

 

「了解です」

 

 

少し薄くなり出している戦闘区域に近づき、優姫さんは指示を出す、やはり経験の差があるのかも知れない

 

それから少し走り更に戦闘区域に突入した俺は辺りを見渡し

 

「これは・・・少量の血痕を確認、負傷者がいる様です」

 

「了解、このままボクと智和が先行、君はボク達の後ろをついてきてくれ、君の目は索敵に重要だけど、君はまだルーキーだ」

 

 

「分かってます、急ぎましょう」

 

俺の言葉に優姫さんは真面目な表情で言い、智和はポンポンと俺の肩を叩いてニコッと笑み優姫さんと共に走り出し、俺も2人から少し距離を空けてから走る

 

 

「・・・見えた、距離120、崖下にヒュージ。3名交戦中・・・いや、今撃破した模様」

 

 

「なるほど、それは良かった」

 

 

「しかし倒れたヒュージが周りを崩してリリィが生き埋めになってる可能性が・・・」

 

 

「・・・由々しき事態だね」

 

 

速度を維持したまま戦闘区域に突入し崖下を見下ろすと、ヒュージの残骸とヒュージの体液と瓦礫に塗れたリリィが2人、穴の中に避難して埋まってるリリィが1人居るのが視えた

 

「なるほど、白井ちゃんが討伐者か。ボクは今から救助隊を要請するから、智和と君は埋まってる娘を掘り起こしてあげて」

 

「了解です」

 

「了解です姉様」

 

俺達に指示を出して優姫さんは何処かへ電話をし始めたので彼女の指示通り、生き埋めになっているリリィを救出する為に瓦礫を退かし始める

 

 

あんまり時間も掛けられないし、そこそこ急いで瓦礫の撤去をしつつ声を掛けて生存確認をすると声が聞こえるので意識はある様だ

 

 

あとは負傷者でない事を祈ろう、負傷者だと更に急がないといけなくなるし

 

 

 






お待たせしました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 スイレン 3

 

 

優姫さんの指示の元、智和と生き埋めになっていたリリィを発掘して救出しヒュージの体液塗れで瓦礫に埋まり掛けているリリィ2人の方へ向かおうとして智和に腕を掴まれる

 

 

「ちょっちょっ待って、まさか素手で2人の救助するつもり?」

 

 

「なにか、問題があるのか?」

 

 

「問題しか無いって、ヒュージはヤベーもん持ってる可能性が有るんだから」

 

 

一度捕まれた腕を見てから智和へ目を向けて尋ねると、軽く焦ってる様な表情で俺の質問に答える

 

見た目からしてバケモノ、その体液なら人体に有害であって当たり前だ

 

どこかで聞いたが、野生動物ですら人間に有害な寄生虫や病原体を保有しているのが当たり前らしいのだから、ヒュージなら尚更だろう

 

 

そんなやり取りをしてる内に救護隊がヘリで到着し、防護服を着た隊員がアッと言う間に2人を救出・収容し、生き埋めになってたリリィも救護隊に連れられてヘリに乗り飛び去った

 

 

「・・・仕事が早ぇぇ」

 

「彼等は優秀だからね、おかげで僕等は仮に負傷しても生きていれる」

 

いつの間にか隣りに立っていた優姫さんが俺の肩を軽く叩き言われ、ヒュージの残骸に目を向けて思う

 

こんなのと戦っている時の負傷が軽い訳が無い、幾らマギによって身体が強化されているとは言え、この巨体から繰り出される触手は相当な質量を有している筈だ、だから下手しなくても手足の1本ぐらい簡単に吹っ飛ぶだろう、少なくとも骨は折れる

 

 

「百合ヶ丘に確認したら撤収の許可が出た、やはりコレが目標だった様だね? さぁ帰ろう、戦闘こそ無かったけれどスキルも使っていたし疲れたろう?」

 

 

「そうですね、百合ヶ丘へ帰りましょう」

 

 

「走ったから汗かいたし帰ったらシャワー浴びたい」

 

優姫さんの言葉に頷き百合ヶ丘へ歩き出すと、ミッションクリアと文字が表示された後、リザルトに移り俺のレベルが上がりステータスが少し上昇した

 

 

うん、変な感じがする。なんかリアル過ぎて此処がゲームの中って事を忘れてるし不意に思い出して変な気分になる

 

 

まぁゲームじゃなかったらヒュージなんてバケモノと戦いたく無いけども

 

 

そんなこんな百合ヶ丘への帰路を自問自答しながら歩き、敷地内に入ると

 

 

「それじゃぁボクは生徒会長へ報告をしてくるから此処で」

 

「あ、ウチも姉様についてくから」

 

「分かりました、また」

 

 

優姫さんと智和と別れ、俺は寮へ向かおうとして

 

「そこのアナタ、入学式の時間が変更になったわ、寮へ行くのは構わないけれど、指定の時間までには講堂へいらっしゃい?」

 

「・・・分かりました」

 

通りすがりの先輩に言われたので適当に返事をして、特に知り合いがいる訳でもないし暇なので寮への道を覚えるついでに学園内を徘徊する事にした

 

 

やはりリアル過ぎて笑えないが、緑は目に優しいから良い。そんなこんなで高台にある足湯へ辿り着き景色を眺める

 

 

「木々に侵食される市街地だった廃墟・・・か」

 

そこがリリィとヒュージの主戦場なのだろう、マギを使わないでも肉眼で分かるぐらいに戦闘の痕跡が見える

 

 

「・・・はぁ、早く此処から出たいな。何もかもがリアルで違和感がなくて逆に変な気持ちになる」

 

 

それに一夏と会えないと言うのも結構シンドイ、一夏の作った味噌汁が飲みたいなぁ

 

 

とか1人でボンヤリとしていると、入学式の時間が迫ってきたので仕方なく講堂へ向かう事にした

 

 

そういえば束さんがウィンドウ越しに一夏と会話ができるとか言ってたな・・・早く会いたいな

 

初手で説教かも知れないけど、甘んじて受けよう。今ならトリプルアクセル土下座を披露出来る自信もあるし

 

 

束さんに頼んで一夏もサイバースペースにイン出来ないだろうか? 少なくとも一夏が居れば正気を保てる気がするんだ・・・うん

 

 






お待たせ致しました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 ハーデンベルギア

 

 

キーンコーンカーンコーンと澄んだ鐘の音が遠くでする、恐らくは終業を知らせる鐘の音だろうけど、今日に限っては入学式の終わりを知らせているのかも知れない

 

 

夕陽の差し込む部屋の大きな窓越しに夕陽に照らされながら、私はリクを待つ

 

 

時間にして約1週間もの長い時間、私はリクに会う事が出来なかった。それ程までに彼の傷は深く重かった

 

 

私が あの時もっと周囲に気を配っていれば・・・なんて、ありきたりな自己嫌悪に襲われもしたが、そんな事をした所でリクの傷が治る訳でも無い事に5日目ぐらいで気付いて、その後は装置の中で眠るリクが無事に回復する事を祈る事に気を回す様にした

 

 

約7ヶ月前も1週間程 リクと会えない期間があったが、あれは私の都合だったし何より電話をすれば声が聞ける状態で、私はまだ(おとこ)であった・・・思えば今の私は俺だった頃に自制出来ていた感情を自制出来なくなっている気がする

 

これは最早偽る事も出来ない程に恋する乙女そのものじゃないか と夕陽を眺めて1人苦笑していると、キィっと小さく扉の開閉する音が聞こえ

 

 

「・・・一夏?」

 

「おかえり、リク」

 

 

振り返り凄く驚いた表情をして私の名前を呼ぶリクと目を合わせ微笑み言うと、リクは少し乱暴にケースに入ったチャームを床に置き、私に寄ってきて力強く抱きしめてくる

 

「本当に一夏なんだな、会いたかった」

 

 

「私もだよリク、だから束さんに無理言って来ちゃった」

 

私もリクを抱きしめ返し、そう告げる。本当に束さんには無理を通して貰った、本来なら束さんが使う予定だった電脳ダイブ用の端末を急遽 私が借りて使用しているのだから

 

「束さんには悪いけど、俺は一夏に会えて嬉しい。此処はリアル過ぎる」

 

 

「そうだね、私も此処が電子で構成されているなんて信じられないよ」

 

 

少し真面目に話してる風を装いつつ約1週間ぶりのリクの匂いを堪能しながらリクの言葉に同意する、今堪能しているリクの匂いも本物にしか感じないし、五感の全てで感じる感覚が偽物とは思えない

 

まぁ私にとっては、どうでもいい事だ。今 此処にリクが居て触れ合えている、それだけで私は充分だ

 

 

「リク、私を助けてくれて ありがとう」

 

「お前を助けるのなんて当たり前だろ? まぁ結局は俺は轢かれてこのザマだけどな」

 

暫く味覚以外の五感をフルに使いリクを堪能した後、リクから離れ彼へお礼を言うと、リクは少し気まずそうに苦笑して言う

 

 

「それでも ありがとう、復帰したら鈴は説教するって息巻いていたけど弾と数馬が宥めてるから、きっと大丈夫だよ」

 

 

「・・・マジか、鈴は一夏ガチ勢だからなぁ」

 

私の報告にリクは勘弁してくれ、と言う表情をして苦笑する

 

 

「束さんに無理を言ったついでに、私も暫くはサイバースペースで過ごす事にしたから」

 

 

「え? いや俺としては、お前と一緒にいれるのは嬉しいけど、学校はどうするんだよ」

 

 

私の言葉にリクは困惑した様子で言う、まぁそれが普通の反応と言えば普通の反応だろう、うん

 

 

「自分で言うのもアレだけど、私は優等生だから多少嘘をついて学校を休んでも内申点は問題無いんだ」

 

 

「・・・ま、まぁお前が、それで良いなら良いけど」

 

イマイチ私の言葉を納得出来ていない様な表情をしてリクは言うが、事実なので納得して貰うしか無い

 

「とはいえ、四六時中ログインしっぱなしは出来ないんだけどね?」

 

 

「あー俺は治療機器に入ってるけど、一夏は何か違う端末を使ってるかってことか?」

 

 

「そうそう、リクは点滴とかで栄養補給してる状態だけど、私は端末でログインしてるだけだから、食事他色々の都合があるんだよね」

 

 

私の言葉にリクはなるほど、と言い頷き

 

「まぁ俺はお前が時間限定でも居てくれるだけで嬉しいから良い」

 

そう言いニカッと笑むリクを見てなんか色々と刺激されてしまう

 

あぁ神様、此処は電脳空間ですので、リクを押し倒して美味しく頂いてはダメでしょうか?

 

ダメでしょうね、無念

 

 






お待たせ致しました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 トリカブト 1

 

 

サイバースペースへの一夏の参加により、俺のSAN値は何とか正気のラインを保たれている

 

そんな訳で一夏と共にデイリータスクのダミー相手の模擬戦闘を利用して連携を確認したり、一夏のレアスキルを確認したり、そんなこんなサイバースペース内での生活を過ごす

 

他の悪友達が束さんに無理言って途中参加して来ない事を祈ろう、流石に束さんは働き過ぎだし、うん

 

 

とある日の事、一夏が用事でログアウトしていて暇なので、なんとなく学園内を徘徊している時に学園内へ迷い込んだ猫相手に奇行をしている金髪の娘を見て凄い表情をしている茶髪の娘を見て、どうしたものか と思っていたら一目散に茶髪の娘が桃髪の娘を引っ張って逃げ去って行ったので、俺は見なかった事にして、その場を去る

 

こうゆう時は見なかった事にするのが1番だ、うん、そうに決まっている

 

 

我ながら暇を持て余してるな と思いつつ校舎に入り掲示板を見ると、学校新聞が目に入り軽く眼を通す

 

夢梨(ゆり)結璃(ゆり)でシュッツエンゲルの契りを交わしたのか? ん?縦読みか?これ・・・」

 

と読みづらいなぁとか思いつつ新聞の写真を見て

 

 

「左の人、この前一夏が所用でいなかったから暇で見学しに行った時に暴れてた人か」

 

 

アレは見事な戦い方だった・・・と言うか、マトモにヒュージとの戦闘をまじかで見れたのは、その時が初めてだったからってのは有ると思うが、とにかく見事な戦い方だった

 

俺は回避に念頭を置いてるから敢えて受け、受け流すみたいな戦い方をする度胸は無い、怖すぎる

 

 

まぁそうゆう恐怖心があるからこそ、ゼノンパラドキサという 危険を予見し高速で回避するレアスキルが発現したんだろう、多分

 

 

そんな1人で自嘲をしつつ掲示板に張り出されている他の掲示物も眼を通すと

 

「レギオン募集か、募集者は・・・一柳 梨璃(ひとつやなぎ りり)?」

 

ついさっき見た学校新聞に名前と写真が載っていたな、と思う

 

「レギオン、か・・・」

 

掲示物を読むのをやめて俺は再び徘徊を始めつつ、考える

 

レギオンは最低人数9名でヒトクミのチームの事だ

 

なのでヒュージ迎撃は基本的に最低9名ヒトクミで投入される

 

何故9名かと言うとノインベルト戦術と言う必殺技を使うのに9名必要だかららしい、俺はまだノインベルト戦術を眼で見てないから、よく分からないけど凄いらしい

 

 

さっきレギオンメンバー募集が掲示されている事から俺みたいにフリーの数が少なる事は予想出来る、更に言うとレギオンは最低9名であって定員9名ではない

 

だから1つのレギオンに9名以上の人員が所属していてもおかしくないので、更にフリーが減る

 

 

まぁそんなに気にする必要もないかも知れないけど

 

 

それに俺に残された時間は約1週間と少し、俺がログアウトした後の事が不明である以上は下手に加入するのは不安要素がデカい

 

 

「・・・俺って、こんなに真面目だったかなぁ?」

 

校舎屋上に登り晴れた空と爽やかな風を感じつつ遥か向こうに広がる海を見つめ考える

 

俺はもっとこう、数馬や弾とバカやってる様な普通の男子中学生だったと思うんだけど、此処数ヶ月で真面目な優等生になってきてる気がする・・・気のせいか?

 

 

「・・・束さんにナニカされた? いやまさか、そんな面倒な割り影響が些細な事を束さんがする訳がない」

 

 

束さんがするなら丸っと別人格とか別人と中身を丸々入れ替えるとか、そのレベルのハッキリと分かる事をする筈だ

 

 

「まぁいいか・・・考えた所で分からないし、とりあえず一夏がログインするまでは暇だな」

 

次の当番の時は実戦を経験出来るかも知れないな、本物と戦えば何か掴めそうな気もする

 

此処での経験がリアルで活かせるかは分からないけど、無駄にはならないと思う、うん、多分

 

 





お待たせ致しました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 トリカブト 2

 

 

そんなこんな暇を持て余して校舎の屋上から海を眺めていると、チカチカと閃光が瞬いている事に気付く

 

 

「なんだ、アレ? ヒュージ・・・じゃないな、鐘が鳴ってない」

 

 

そう、ヒュージならば出現を知らせる鐘が鳴り響く筈なので、ヒュージでは無い

 

となると、他の要因になる訳だけど、俺には皆目見当もつかない

 

 

「双眼鏡とか視覚強化系のスキルが有れば見えるんだろうけど」

 

 

そんな都合の良い事はなく、そもそもチャームすら持ち歩いていない、本当に学園内を徘徊してるだけだ

 

 

と、まぁ閃光の正体が気になりつつも視界端に表示されている時計を見れば一夏が、ログインを予定している時刻に迫っていたので一旦寮へ戻る事にし、階段を下り寮への道を歩く

 

 

目に映る木々花々 その香り、歩む度に返ってくる床や地面の感触、すれ違うリリィや職員の姿と声、その全てにおいて何一つ偽物と思えないと何度目かの事を思う

 

だからこそ怖い、此処に馴染んで(リアル)へ帰りたくなくなるのではないか?

 

俺にとって此処が生きる世界になってしまわないか、此処とリアルの境目を区別出来なくなってしまわないか、とか考えてしまう

 

 

束さんの技術力を持ってすれば電脳世界へ人間1人 電脳生命体へする事なんて容易い事だろう、まぁそれを当人(ひけんしゃ)が望む望まないは別の問題として、だけど

 

 

「・・・一夏が居てくれるなら何処にいようと構いはしないけどな」

 

何より1番怖い事、それは一夏と居られなくなる事だ。もう俺は一夏が居ない生活に耐えられる自信がない、それこそ世界に絶望して世界を滅ぼす悪党へなる可能性もある・・・いや先に自分で命を断つか、うん

 

まぁ周りの力が強いメンツが、そんな事をさせないだろうけどな

 

 

仮に一夏が何かしらの理由で死んだりした場合、俺より先に千冬さんが闇堕ちして場合によっては束さんは千冬さんの味方をするだろう

 

そうなったら多分、高い確率で世界は滅亡するだろう・・・一夏の生死で世界の命運に関わるのはヤバいな

 

 

そんな何の為にもならない事をウダウダと思考し、寮の部屋へ戻ると丁度一夏がログインしていた

 

 

「あ、リクおかえり。どこに行ってたの?」

 

 

「あ〜・・・散歩?」

 

暇を持て余して学園内を徘徊してきたので一応は散歩と言っても大丈夫だろう、多分

 

 

「そうなんだ、何か見つかった?」

 

「一柳って娘がレギオン募集してた、あとは海辺の廃墟群の方で閃光が瞬いてた」

 

「レギオンかぁ・・・私達には関わりが少ないね?」

 

「そうだな」

 

 

一夏が微笑み尋ねてきたので答えると、一夏も俺と同じ様な考えをしているのか、そう言ったので頷いておく

 

 

「よし、それじゃぁ見に行ってみようか」

 

 

「ん? 何を?」

 

 

「閃光の正体、だよ? ほら現場に行けばリクの(レアスキル)で分かるかも知れないでしょ?」

 

 

と一夏は自身のチャームの入ったケースを担ぎ、俺のチャーム入りケースを差し出してくる

 

「ま、確かにな。どうせこの後に何するか決めて無かったし、行ってみるか」

 

俺は一夏からケースを受け取り担ぎながら一夏の言葉に頷き、一夏と共に閃光が瞬いていた現場へ向かう事にした

 

 

さて、鬼が出るか蛇が出るか はたまたヒュージが出るか、楽しみだ

 

 

「さて、結構海側だったよな・・・」

 

 

「どう?分かりそう?」

 

 

元はマンションだった廃墟の上に立ち辺りを見渡し目的地の当たりをつけようとすると一夏に尋ねられたので

 

 

「多分大丈夫・・・ん? なぁ一夏、アレ」

 

「どうしたね?」

 

進行方向 左手の山に不自然な痕を発見し一夏へ声を掛けて指で示し

 

 

「アレ、あそこの2箇所、煙上がってないか?」

 

 

「あ、本当だ。あの2箇所だけ煙が上がってるね」

 

 

「・・・あの辺りが現場か」

 

 

ケースの中に手を突っ込みマギを身体に浸透させて廃墟から飛び降り呟く

 

 

なんとなく楽しくなってきた

 

 

 






お待たせしました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 トリカブト 3

 

 

閃光の正体がいたと思わしき場所のアタリを付けて移動をする事、十数分で現場に到着し俺は早速レアスキルを使いながら辺りを見渡す

 

 

「・・・ん〜」

 

 

「どう?何か分かる?」

 

 

「いや、全く」

 

 

レアスキルで一通り辺りを見渡してみるが、左手の山に何かの痕がある事以外は何も分からず一夏の問いに素直に答え

 

 

「少しマギの痕跡が有るぐらいか? まぁここはヒュージ迎撃の最前線だし痕跡が有って然りだろうな」

 

 

「まぁ、確かに」

 

 

一夏の同意の相槌を聞きつつ考える

 

ヒュージ出現で無いのなら、リリィが実地で何かしたのかも知れない

 

 

例えば模擬弾を使用した模擬戦とか、射撃練習とか? 移動しながらの射撃練習の可能性もゼロではない

 

 

「・・・やっぱリリィか?」

 

 

「流石にこんな場所に侵入する人は居ないと思うよ?」

 

 

「だな、リリィが訓練か何かしてたんだろう、多分」

 

 

ケースから手を抜いてレアスキルの使用を止め一夏へ言い、眼下の海を眺める

 

 

至る所に以前は人が生活していた痕跡の朽ちた車やら自販機やら家やらが見え雑草も茂っている、ほんと芸が細かい

 

 

「治療が終わったら、何処かデート行こうか一夏」

 

「え? うん、行こう?」

 

何気なしに誘うと一夏は嬉しそうに笑んで俺の隣に立ち腕を組んでくる

 

一夏さん胸部装甲当たってますよ、思春期の男子中学生には刺激が強いですよ

 

 

とか煩悩と戦っていると、何かピリッとした気配を感じ辺りを見渡してみる

 

 

「・・・気のせい、か?」

 

 

「リク、どうかした?」

 

 

「今なんか敵意というか殺気を感じた気がしたんだけど・・・気のせいだったみたいだ」

 

 

「そう?」

 

俺の言葉を聞き一夏の目付きが少し鋭くなり俺と同じ様に辺りを見渡していると、10m程先に黒い点が現れみるみる大きくなり空間に大穴が開いて中からラージ級のヒュージが溢れ落ち穴が消える

 

 

「さっきの殺気はコイツか?」

 

 

「かもね」

 

俺達はケースからチャームを取り出してマギを全身に浸透させ、遠くで響く鐘の音を聞きつつ目の前のヒュージを見据える

 

「学園のリリィが到着するまで約15分と言った所か」

 

 

「ヒュージに増援がなければ倒せるんじゃない?」

 

 

「おいおい、俺達はこれが初陣だぞ? ま、やれるか俺とお前なら」

 

ケースを地面に置き、一夏の笑みを見て肩をすくめつつ俺も笑い頷き、建物から跳びヒュージへと向かう

 

 

「俺が銃撃でタゲ取るから、隙を見て一撃よろしく」

 

 

「オッケー、任せて」

 

 

一夏の了承を聞き、一夏と逆方向へ移動しながらエゼルリングで射撃しヒュージの注意を引くと、予想通りヒュージは俺の方へ攻撃をしてきたのでレアスキルを使い交わしつつ攻撃を継続する

 

 

「はぁぁああ!!」

 

「すげぇな一夏」

 

鉄甲型チャーム ヤーレングレイブルを装備した一夏の一撃は巨体のヒュージを揺るがす程の威力があり、それを見て俺は驚愕する

 

 

アレ?やっぱ俺の彼女って強い? とか思ってる

 

 

と言うか、この巨大なヒュージ相手にブン殴りに行くスタイルのヤーレングレイブルを選択するとか一夏の度胸が凄いと思う

 

 

鉄甲型って事は拳打による攻撃になる、もちろん脚には未装備だから足技は無い、俺には選択出来ないチョイスだ

 

 

刀剣類なら多少なり遠心力も加味して攻撃できるしな、うん

 

 

まぁ一夏も俺と同じく当たらなければ問題ないタイプの戦闘スタイルだから問題無いのかも知れない?

 

 

そんな感じで一夏の凄さを噛み締めつつ、タゲを取る事を意識しながら戦闘を続ける

 

 

「敵弾は俺で処理する」

 

 

「了解、任せるね」

 

 

ヒュージが吐き出した榴弾みたいな物を俺は撃ち落とし、一夏はヒュージに張り付いてガンガン殴って行く

 

ヒュージは、その巨体故にインファイトが意外と効果的な様だ、これは勉強になったな

 

あと案外 俺には射撃の才能があるみたいで榴弾を撃ち落とせてる

 

 

さて、リリィの増援が到着するまでに削り切れるかな?これ

 

 





お待たせしました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

var強襲百合 トリカブト 4

 

ラージ級ヒュージと接敵して約10分、一夏の苛烈な拳打によりヒュージには幾つもの凹みが見られるが、まだ元気に触手を振り回して暴れている

 

 

「意外としぶといな」

 

 

「そうだね、これはセオリー的に心臓を潰さないと倒すのが難しいパターンかな?」

 

 

触手と榴弾を躱しながら言うと一夏が言う、確かに こう言う謎の超生物みたいな敵の場合、制御機構やら何やらが集約されている心臓部を破壊しないと撃破出来ないって作品が多々ある

 

なんなら心臓部を破壊しない限り無限に再生するとか言うパターンすら存在する、その場合はかなり面倒だ

 

 

「今更だけど、ヒュージ討伐ってレギオン単位のリリィを投入するのがベターなんじゃ?」

 

 

「そうかも、2人じゃ少しキツいね」

 

 

俺の言葉に一夏は軽く苦笑し答えつつ、ヒュージに一撃叩き込む

 

 

ソロでヒュージ討伐を成せるリリィは存在する、少なくとも俺は1人知っている

 

 

しかし、そんな事が出来るリリィなんて、ほんの一握りの実力者だけだろうし、必ずしも1対1の状況になるとも限らない

 

 

だからヒュージ討伐は基本的にレギオン単位のリリィを投入する筈だ、9名も居れば不測の事態に対応も出来るし、人数が増えれば その分レアスキルのバリエーションも増えて状況に対応出来る能力がチームとして上がる

 

それに単純な火力がソロとレギオンだと9倍になる訳だし?

 

 

そんな訳で、2人だと単純火力が足りない状態になっているのが今の状況だ

 

 

まぁ正しくは削り切るには時間が掛かるってのが正解なんだけどな?うん、一夏が何回もヒュージを凹ませてるから、いつかは倒れるはずなんだ、うん

 

 

そう、いつかは倒れる。つまり増援のリリィが来るまでにヒュージを討伐出来ないと言う事だ、まぁ特に拘る必要は無いと思うけども

 

 

「おっと・・・無茶苦茶に暴れ始めたな」

 

 

「だいぶ削れたみたいだね」

 

 

一夏がヒュージをボッコボコに凹ませ続けた結果、ヒュージも生命の危機を感じたのか無茶苦茶に触手を振り回したり広範囲に榴弾をばら撒いたりし始めて下手に近寄れなくなってしまう

 

 

「どうする?」

 

「射撃で仕留める?いや無理か、私がボッコボコに凹ませてるのに動いてるし」

 

 

一旦距離を空けて廃墟の影に隠れてヒュージの様子を伺いつつ一夏と作戦会議をする

 

増援のリリィが到着するまで楽観的に見て5分ぐらい、安全第一で回避を重視して射撃による牽制と誘導に徹する事もアリはアリだ、俺と一夏の2人だけじゃ少し荷が重いし

 

 

「でも、それじゃ面白くない。せっかくのレアスキルが有るんだしな」

 

 

「じゃぁ役割交代する?私がタゲ取る役・・・アレ、タゲ取れるかな?」

 

 

「まぁ取れなくても視えるし大丈夫だろ」

 

 

「オッケー、じゃぁそれで」

 

一夏との作戦会議を済ませ、深呼吸してエゼルリングを握り直して集中し廃墟の影から飛び出しヒュージへ駆ける

 

そしてレアスキルを発動しヒュージへ至る道を見極め速度を落とさずに触手と榴弾の隙間を縫ってヒュージの懐に飛び込み装甲の隙間に刃を深く突き刺す

 

 

「これでどうだ?まだか?」

 

その身体に刃を深く突き刺されたヒュージは体液を撒き散らしながら大暴れしピシピシと嫌な音がエゼルリングから聞こえる気がするが構わずに、更に深く突き入れると、ヒュージがビクンと大きく跳ね急に脱力して俺の方へ落ちて来たのでエゼルリングを引き抜こうとしたら刀身がポッキリと折れ、足を滑らせ転けてしまい、ヒュージの下敷きになってしまう

 

 

「大丈夫?リク」

 

 

「くそ、最後の最後に・・・は? 来るな一夏、コイツ自爆する気だ」

 

 

此方へ駆け寄ってくる一夏にレアスキルで視えた事を伝える、ガッツリ足を挟まれてる俺は間に合わないと悟る

 

 

「今、助けるから」

 

「いや、間に合わない。全く俺ってヤツは」

 

 

やれやれ と肩を竦めて苦笑した瞬間、ヒュージは自身の体内にある榴弾を一斉に起爆して自爆し、俺を道連れにする

 

 

これは一夏・・・いや鈴に怒られる案件かも知れない

 

ほんと俺は詰めが甘い、反省しよう

 

 

 






お待たせしました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

りざると

 

 

まんまとラージ級ヒュージの自爆に巻き込まれてしまった俺は『YOU DIED』と表示され、初期位置・・・俺がサイバースペースにログインした青い空間に立っていて、目の前にハジメが立っていて相変わらず蠱惑的な笑みを浮かべていた

 

 

「お疲れ様でした、リクさん。どうでしたか?」

 

 

「あーまぁ・・・楽しめた、かな?」

 

 

何と答えるべきか分からず曖昧な返事を返すと

 

 

「それは良かった、退屈しなかっただけでも私達には収穫になりますね、特に篠ノ之博士が、お喜びになります」

 

「そっか、それは良かった」

 

「えぇ、それはそれは大変お喜びに」

 

 

ハジメは俺の相槌に何か含みを感じさせる言い方をするが、気にしても仕方ない気もするので気付かなかったフリをしておく

 

どうせ束さんの事だから、なんかの実験を盛り込んでたんだろう、多分

 

「私自身も貴方を見ていて色々と成長出来た部分が有り、大変満足しています」

 

「・・・見てたのか?」

 

 

「はい、最初に申し上げた通り私は案内役です、なので要請に応じ事態に対応出来る様に貴方を見ていたのですよ?」

 

 

俺の言葉にハジメは微笑みを浮かべて答える、そういえばチュートリアルを受ける前に『困った事が有ればいつでも呼んで頂ければ対応致します』とか言っていた事を思い出し、色々と思考が駆け巡り戦慄する

 

 

「つまり、つまりだ。一夏とのやり取りも見られていたって事か?」

 

 

「えぇ、それはバッチリと。いやはや恋愛とは美しき尊い物ですね」

 

 

「お、おぉふ・・・マジかよ・・・マジか」

 

 

誰にも見られて無いと油断してたので、見られていた事に羞恥心で精神的にダメージを負うが、目の前のハジメは何か満足そうなのはなんでだろうか?

 

 

「・・・一夏は、どうしてる?」

 

「一夏さんは現在ログアウト処理中です、貴方のリザルトが終了し通常区間へ移動が完了すれば合流可能です」

 

 

「そっか、ありがとう」

 

相変わらずハジメの含みが有る言い方に少し引っ掛かりを感じつつお礼を言う

 

 

「それでは評価を表示致します」

 

 

「・・・総合はBか、まぁまぁだったか」

 

 

「そうですね、初陣での戦闘としては高評価でしたが最後の最後で自爆により撃墜でしたので、それにより評価が下方へ修正された様です」

 

 

ハジメが手元に有るナニカを見ながら俺に説明してくれ、やはり最後の自爆を回避出来なかったのが減点だったかぁ とか思う

 

「レアスキルの使用評価も高評価ですし、自爆回避が出来なかったのが大きな減点対象だった様です、これは次回に生かすと良いかと」

 

 

「次回、か・・・」

 

 

俺としてはアソコへ再びログインする気は今の所ないので、レアスキル等を活かす次回は来ないと思うのだが、もしかして他のゲームにログインしても引き継ぎされたりするのだろうか?

 

仮に、そうだったら便利だけど世界観が崩れそうだな・・・

 

 

「ハジメ、さっきので獲得したレアスキルって他のゲームに引き継ぎ出来たり出来るの?」

 

 

「可能ですよ? ただログインした世界観に添う形のスキルへ変化します。貴方が得たレアスキルをロボゲーに変換すると、予見力・反応速度・反射速度の上昇と機体の瞬間加速能力の上昇と言うバフが掛かる、と言う具合になるかと」

 

 

「なるほど、ありがとう?」

 

 

なんか凄い扱いになるんだなレアスキル・・・ゼノンパラドキサ

 

確かに視覚由来によるスキルの内容が反映されるのは分かるけど、身体機能由来のスキルの方を反映出来るのは凄い

 

このレアスキルは便利だからリアルでも使いたい、特に この世の理の部分が

 

 

まぁ無理か・・・いや、ワンチャン 束さんに相談したら使えたりしないか? だってサイバースペース内で使用出来てる訳だし

 

そう考えるとなんかいけそうな気がしてきたぞ? よし束さんに相談してみよう、ゼノンパラドキサがダメでも この世の理の使用が出来ないか相談だ、うん

 

 

この世の理が有れば、次は一夏を悲しませずに助けるすべが分かる筈だから

 

 

 





お待たせしました

アサルトリリィ編は終了ですw


次の予定は未定なので悪しからず


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ユメマボロシ?

 

 

ハジメに束さんに相談したい事が有るから時間が有る時にログインして欲しいと言伝を頼みリザルトが終わり、通常区間へ戻り一夏と合流する為に歩いていると、気づくけば俺は何故か知らない教室で席に座っていた

 

 

「・・・あれ?」

 

 

サイバースペース内を歩いていたので、強制的に何かしらのゲームへログインさせられているのだろうと推測し、今置かれている状況を把握する方へ意識をシフトし、ひとまず自分の状態を確認する

 

右手を見れば白を基調とし赤と黒のラインが入っている独特なデザイン制服で、当たり前の様にスカートを装備

 

前回から引き続き肩口ぐらいの見慣れた色の髪、制服越しで分かり辛いが僅かに確認出来る胸部装甲の膨らみ、うん・・・色々とナニカされている様だ

 

 

やれやれと思い頭に手をやると、縁無しのメガネを掛けていた・・・母さんのと同じデザインだ

 

 

「と言う事は十中八九 束さんの仕業か、なるほど?」

 

とりあえずメガネを外して見るが視力に変化が無いので伊達メガネか、と思いもう一度掛けて周りを見渡す

 

そこには俺と同じ制服を着た生徒が多数居て各々が思い思いに雑談をしている訳だが、恐らくクラスメイトなのだろうけど名前とか分からないと不便だな とか思った瞬間、生徒の頭の上に名前が表示され、驚いて二度見をしてメガネを外して目を擦り裸眼で見ると表示が見えず、メガネを掛けてから見てみると、表示されている

 

「・・・このメガネ便利だな」

 

このメガネ、ただの伊達メガネじゃなくてメガネ型のデバイスだった様だ、そういやテレビとかのCMとかで、たまに見た記憶がある気がする

 

それなりに高価だった様な気もするが、まぁサイバースペース内だし気にしないでおこう、そうしよう

 

そう自己完結し、このメガネ型デバイスなら この世の理 を発現させる方法がありそうだな と思う、まぁ束さん頼りだけども

 

 

そんなこんな状況把握をしていると

 

「なんか挙動不審だぞ?リク、大丈夫か?」

 

 

「・・・あ、あぁ、問題ない。無問題(モーマンタイ)だ」

 

 

「そうか? それなら言いけど、お前は直ぐ無理するからなぁ」

 

俺と同じデザインの男子制服(・・・・)を着た男の一夏(・・・・)が俺の目の前に立ち、肩を竦めて そう言う

 

なんだ?何が起こっている?目の前の男は一夏だ、約半年前の一夏だ。姿形声に至る全てが一夏だと認識している

 

だが、中身は一夏か? サイバースペース内ならば一夏の形をした電子の塊の可能性の方が高いのでは無いか?

 

「やっぱり、調子が悪いんじゃないか?リク」

 

「いや、本当に大丈夫だ。少し風に当たってくる」

 

「お、おう。やばそうなら保健室に行けよ?」

 

 

一旦 頭を冷やす為に そう言うと一夏が心配して来たので頷くだけの返事を返して教室を後にする

 

 

やめてくれ一夏、今の俺には良く突き刺さる。俺はお前の性別関係なくお前が好きになっているのだから・・・ついでに恐らく俺は今 性別が女子になってるしな

 

と、そんな事を考えつつ教室から逃げる様に早歩きで屋上へ移動し手すりに身体を預け空を見上げて溜息を吐く

 

 

「悪ふざけにしてはタチが悪いな・・・」

 

 

「おやおや? 栗田ちゃんじゃないか、こんな所に君が1人なんて珍しい」

 

 

「・・・梶田・・・先輩?」

 

 

「そうとも、僕は梶田ユウキだよ? なんだい?一晩会わない程度で先輩の顔を忘れてしまったのかな?」

 

 

不意に声を掛けて声の主に目をやると、茜色で長めの髪 特に前髪が長くて右目が隠れてる男の梶田先輩(・・・・・・)が、相変わらず大人しそうな見た目に反して人を食った様な笑みを浮かべて、俺を揶揄う様な言い回しで言う

 

なんだ、何が起こっている? なんで先輩まで?

 

これが束さんの仕業なら悪ふざけがすぎるし、束さんの仕業じゃなかったら、何なんだコレは・・・

 

 

 






お待たせしました


皆様はメガネの娘、好きですか?

私は好きです



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ユメマボロシ? に

 

 

何だか俺の精神を蝕んでSAN値が削られそうな状況で無い頭をフル回転させていると

 

「いつに無く眉を寄せて、どうしたんだい? 心なしか顔色も良くない、保健室へ行くかい?」

 

 

「・・・いえ、大丈夫です。少し考える事が多くて疲れているだけなので」

 

 

もともと持ち合わせている梶田先輩への苦手意識故に少し突き放す様な言動をしてしまった事を少し後悔しつつ先輩の様子を伺うと

 

 

「そう? ふむ、あまり無理はするものでは無いよ? 君は僕に苦手意識があるのは承知しているけれど、僕にとっては可愛い後輩の1人なのだから遠慮は要らないよ」

 

 

「・・・その時はお願いします」

 

 

目の前に居る梶田先輩もガワは男だが中身や仕草、喋り方などは俺のよく知る先輩そのものだ

 

先輩は口がよく周り、人を揶揄うのが好きで、人を食った様な言い回しを好むが、一夏程ではないが困っている人には手を差し伸べる懐の深さを持ち合わせている

 

少なくとも演劇部の部員からは人望がある、演劇・・・芝居へかける熱意も本物だしな

 

 

だからこそ、俺は梶田先輩の性格が苦手であっても先輩を尊敬している

 

 

それはそれとしても、今現在確認出来ただけで2人も性転換している・・・いや一夏に関しては元に戻っただけなんだけど、それはそれとしてだ

 

 

なんで俺の周辺人物が性転換しているんだ? アレか?ドキドキメモリアル的なアレ、そんで俺が攻略対象・・・いや考えたく無いけど逆に俺がプレイヤーキャラ枠で一夏とか梶田先輩が攻略対象的なヤツか?

 

 

いやまさかな? いやいや、まさかまさか・・・

 

 

だって、仮そうだとして、俺は一夏一筋だ、一夏以外と付き合うつもりは微塵もない

 

それに梶田先輩が攻略対象だとしても元来の苦手意識が邪魔して攻略しに行く気が起きない訳で、それじゃ意味が無い

 

 

・・・数馬辺りなら、こうゆうゲームのアレコレを知ってると思うから相談しやすいんだけど、居るか分かんないしなぁ

 

 

とか考え、次はどうしたものか と考える

 

 

「それでは、僕はそろそろお暇させて貰うよ、真冬では無いにしても少々冷える、あまり風に当たりすぎない様にね栗田ちゃん」

 

 

「はい」

 

 

なんと言うか、男になった梶田先輩は何か女子にモテそうだな、とか思いつつ先輩を見送る

 

 

さてさて、次はどうしたものか・・・悪友の所在でも確認するか?

 

いや、その前に所持品を確認しとこう

 

そう思い屋上にある東屋まで移動してポケットと言うポケットを探り東屋に設置されているテーブルへ置いて行く

 

「まずはスマホにハンカチと学生証、メガネ用のクリーニングクロス・・・携帯?なんで携帯?」

 

スマホが有るのに携帯がある事に疑問を覚える、更に言えばいわゆるガラケーと言われるタイプの二つ折りの携帯で、やたら頑丈そうな銀色を基調としていて黒で縁取りされていて真ん中にΦのマークが入っている

 

この携帯はなんだろう? と思うと、名称が表示され携帯は専用機の待機状態である事が分かった

 

 

「なるほど、専用機か・・・いやいやいや、なんで俺が専用機持ってんだよ。まぁ確かに?薄々ここがIS学園である事は分かって居たけどさ?」

 

 

ひとまず束さんが主犯だと仮定して、束さんは俺に何をさせたいんだろう? いや只のイタズラなだけかも知れないけど、何が意図があるかも知れない

 

 

それと この世の理(仮)の使い方も何となく分かって来た、発動させるには対象に集中したり知りたい、と言う意思を持たないとダメっぽい

 

 

とりあえず現状の所持品の確認は出来た、次は悪友の所在確認かな?

 

 

それとも先に専用機の確認に方がいいのだろうか?

 

 

「専用機はアイツ等の状態を確認してからで良いか、なんかモヤモヤするし」

 

 

という訳で次の目標を決め、所持品をポケットに納めてから屋上から屋内へと入る

 

 

鈴まで性転換して男になってない事を祈ろう、弾は見ても分からないだろうけど、数馬は・・・まぁ性別変わっても扱いは変わらないな、うん

 

 






冬休みで時間が取れたので連日投稿しました

ファイズ、カッコいいですよね



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ユメマボロシ? さん

 

 

そんな訳で色々と不安を感じながら階段を降りて俺達の学年があるフロアへ辿り着く

 

「さてと・・・鈴は何処かなっと」

 

 

階段踊り場から見て左右に広がる教室を眺めて考えるが、どうせなら端から見れば良いかと思い、ひとまず右側の端の教室から見る事にした

 

「えーっと、ここは8組か」

 

廊下で立ち話をしている生徒も一応確認しつつ8組の中を確認すが、鈴の名前が表示されないので、居ない事が分かり次の教室へ向かい確認していく

 

 

そんな感じで繰り返し2組へ到達すると、漸く鈴を発見し安堵する

 

 

「よかった、鈴は元のままだ・・・でも何か独特なカスタムしてるな制服」

 

 

なんとも言語化し難い形状の肩出しの制服を着ている鈴を見て思う、俺の制服が奇抜なデザインじゃなくて良かった

 

 

やたら袖が長い訳でも長袖なのに肩出しではなく個性的なアクセサリーが付属されている訳でもない、膝下ぐらいの長めのスカートなぐらいだ、うん悪くない

 

 

常用する服は、この可も不可もないぐらいの普通が1番だと思う、間違いない

 

 

「ん? お前、2組を覗いて何してんだ?」

 

 

「・・・数馬」

 

 

「はい、数馬です」

 

 

鈴の制服に触発されて色々考えていたら、トイレ方向から現れたらしい数馬に声を掛けられて名前を呼ぶと、変な返事をされてしまう

 

と言うか普通に居るのか数馬、なら弾も居そうだな

 

 

「あーなんて言うか、気にしないでくれ」

 

 

「ん〜? そう言うならそうするけど・・・お前、なんか変だぞ? また調子でも悪いのか? 」

 

 

「そんな病弱じゃねーよ、大丈夫だから」

 

 

「そうか? 無理すんなよ? 無理して一夏に叱られるのは お前なんだし」

 

 

何というか、性別が女になった俺は病弱な様だ。何でか男の時より会う人会う人が優しい気がする

 

 

なんだか、このまま女でも良いかなぁって思う様になりそうで怖い

 

 

そんな恐怖を覚え、俺は2組から1組へ移動し中を見渡し、教卓の真ん前に一夏、奥角で誰かと電話をしている男子制服姿の弾を見つけ少し肩の力を抜く

 

 

「弾も数馬も元のまま、性別が変わってるのは一夏と梶田先輩だけか、良かった」

 

 

「ん? なんか言ったか? リク」

 

 

「何も言ってないぞ数馬」

 

 

「そうか? そうか」

 

 

俺の呟きが聞こえたらしい数馬に尋ねられたが、適当に誤魔化すと、首を傾げながら自分の席へ歩いて行く

 

俺も一夏の真後ろの自分の席に座り一息つく

 

ひとまず今分かっている事は、此処はIS学園 またはIS学園に類似した学園施設で有る事

 

俺はISの専用機を保有している事

 

一夏の性別が男に戻っていて、梶田先輩が男になっている事

 

梶田先輩の口振りからして今の季節は冬辺りである事、だ

 

 

あとで本当に俺の性別が女か目視で確認しよう、今の所 相棒の存在感が消失してるし胸部装甲が有るから暫定で女になってると思ってるけど、実際は違うかも知れないし?

 

と考え、ふと思う

 

メガネを通して自分を見たらステータスまで見えるんじゃね?と

 

そんな訳で試しに自分の左手を意識して見てみるとステータスが表示され、何に必要か分からないがレベルの項目がある、謎だ

 

 

ひとまず一通り目を通す事にし、項目に目を通し性別の項目に女と書いてある事を確認する、やはり女らしい。まぁ念の為に目視で確認はしとこう、うん

 

なぜかレアスキルの項目がありゼノンパラドキサと記載されているのを発見し、ますます謎が増えるが、まぁいいか と気にしない事にする

 

とりあえず一通り見て思った事は、ステータス値は悪くない値では無いか?と言う事

 

周りのクラスメイトのステータスを盗み見して比べて見たが、まずまずクラスメイトより上の値だった

 

まぁ一夏や弾は段違いの高いステータス値を誇り、数馬も2人程ではないが俺より大分高い値だった

 

この分なら鈴もかなり高いステータス値だろうな、俺の悪友達ってハイスペック過ぎない? 気のせい?

 

 





明けましておめでとうございます

今年もボチボチ執筆していきます



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ユメマボロシ? よん

 

 

ナンヤカンヤで放課後になり俺はトイレに向かい目視で性別を確定させる、うんまごう事なき女だった

 

約十数年共に過ごして来た相棒は綺麗に消失していて、鈴ぐらいの胸部装甲が確認できた、まぁあんまり大きくても戸惑うし丁度いいかな?

 

 

そんな訳で目視による確認を終えてトイレから教室に戻ると

 

 

「待っていたぞ、栗田陸」

 

「・・・千冬さん? いや、違う・・・え?」

 

 

俺のよく知る織斑姉妹・・・特に千冬さんの学生時代にソックリな美少女が人を見下す様な雰囲気と立ち方で俺を見て言う

 

まぁ身長の関係で彼女は俺を見上げる構図になっている訳だけど

 

 

「ふん、度し難い間抜け面だな。やはり貴様には一夏は惜しいな」

 

 

「いや、何を言って?」

 

やれやれと彼女は首を振り言うが、俺には全く状況が飲み込めていないので、どうしたものか考える

 

 

「察しも悪い、やはり分からせる必要があるな・・・来い、今日という今日は我慢ならん、おい」

 

「御意」

 

「いや、だから何を言ってるんだ?ちょっ何なんだ」

 

 

彼女が指をパチンと鳴らすと、何処からか黒子が現れ俺を担ぎ上げ移動を開始する

 

本当になんなんだ、これは? 誰なんだコイツは、いやマジで

 

 

困惑しているうちに、なんかコロッセオみたいな場所に運ばれて、その中央に降ろされ

 

 

「では貴様が真に一夏に相応しいか見極めてやる、構えろ」

 

 

「いや、だから何なんだ? それにアンタ誰だよ」

 

 

「全くもって度し難い、歳上への口の聞き方もなってない、益々分からせてやる必要があるな」

 

 

俺の言葉が気に入らなかったのか、彼女は俺を睨む様に言い、黒を基調とした金縁の携帯を取り出し何か操作すると、彼女の腰にライダーベルトが装着され、軽く斜めに携帯を構え

 

 

「早くISを展開しないと死ぬぞ? 来い黒騎士!」

 

ライダーベルトに斜めから携帯を挿入し水平状態にしてロックされると、閃光に包まれ、次の瞬間には彼女はISを展開し臨戦態勢に入っていた

 

 

「くっ・・・やるしかないか」

 

俺も携帯を取り出しボタン操作するとライダーベルトが俺に装着され真上に携帯を構え、そのまままっすぐ下ろしてライダーベルトに挿入し半回転させ水平状態になりロックされると、俺も閃光に包まれISを展開していた

 

 

「では行くぞ? すぐにやられてくれるなよ? 面白くないからな!!」

 

 

「ふざけんな!!」

 

 

戦闘が開始された瞬間、俺の視界には見慣れた情報線が映り俺は彼女の射撃を躱す事が出来た

 

そう、ゼノンパラドキサのおかげだ

 

 

これなら何とか戦えそうだ、と思いつつ装備品の1つのビームライフルを展開して彼女へと撃つ

 

 

「なるほど、撃ち返す度胸はあるか。ならば容赦などしない」

 

「どうせ結果は変わらないだろう?」

 

シールドを構え動きを止めない様に心がけて彼女からの射撃を躱し防ぎ、反撃でビームライフルを撃ったりリニアキャノンを撃ったりするが、擦りもしない

 

 

これはどうも実力差がヤバいヤツだ、勝てる気が全くしない

 

 

と言うか、この人誰だよ、マジで

 

織斑家に親戚が居るなんて聞いた事も無い、だが この人は一夏の事を気にかけているし、何より千冬さんにソックリ過ぎる、これで赤の他人とかだったら生命の神秘過ぎる

 

 

そんなこんな右に左に躱しながら何とか戦えている状態を続けつつ、困った時の最終手段1個手前であるハジメへの連絡をしてみるが、トゥルルルと音がするだけで一向に繋がる気配がない

 

 

「全くもって度し難い、その程度で一夏と並び立とうなどとはな」

 

 

「いや、だから何なんだよアンタは」

 

 

「貴様の様な塵芥が知る必要は、ない!!」

 

 

「無茶苦茶だな、本当!!」

 

 

黒騎士から放たれた極太ビームをシールドで受けるが、謎の回転が入っていてドリルの様にシールドに大穴を開けて俺を撃ち抜き激しい痛みを感じつつ意識が暗転する

 

 

本当、なんなんだ?これ?

 

 






ファイズとカイザの変身、カッコいいですよね

あとリクのISはデュエルダガーをイメージしてます



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

現実への帰還

 

 

徐に目を開けると、そこにはシミ1つない白の天井が見える

 

 

「此処は・・・」

 

 

ピッピッと等間隔で鳴る電子音を聴きながらボンヤリした頭で考える、確か俺は束さん謹製のサイバースペースに居た筈だ

 

目を開ける寸前に酷い目に遭った気がするが、まぁ今はどうでもいい

 

今、問題なのは、此処が現実かサイバースペースのどちらであるか、だ

 

そのどちらで有るかが俺に区別出来ると思えない、束さん頑張り過ぎ

 

 

「・・・まぁこのままって訳にも行かないし起きてみるか」

 

そう思い身体を起こし辺りを見渡して今の状況を確認する

 

点滴台に心電図モニター、そこから伸びてる管とコード・・・下手に動けないなコレ

 

そう思い、さてどうしよう?と思っていると

 

 

「あ、目が覚めたんだね?リッくん」

 

「まぁね、おはよう束さん」

 

「うん、おはよう」

 

落ち着いたお姉さん冬の装いな感じの束さんが病室(仮)に入って来て、俺に気づいてニッコリと笑み問われたので、返事を返し

 

 

「束さんが居るって事は、此処は現実って事で良いのかな?」

 

「そうだね、それで合ってる」

 

「そっか、ありがとう」

 

どうやら此処は現実らしい、良かった。戻って来れてる

 

現実へ戻って来れた事に安堵し肩の力を抜き気づく

 

「・・・あの、束さん? 俺、なんか髪伸びてない?」

 

「え? あぁ治療(かいぞう)の副作用かな? あと緊急だったから リッくんの体積も減ってるよ、主に身長と体重が少し減ってる」

 

「いや、ちょっと理解が出来てない。分かる様に説明して」

 

俺が理解出来ずに待ったをかけると束さんは少し思案顔をしつつ口を開く

 

 

「えーっとね? リッくんの治療に使った装置は簡単に言うと対象を量子変換して0と1の数列にして無理矢理 不具合を直すってモノなんだけど、例えば怪我の場合、損傷箇所や欠損部位が極々少数なら材料を投入する必要は無いんだ、元の体積から変換しても変動は極々微小になるからね」

 

 

「壊れてるデータ量が少ないから外部か足さなくても修復出来る訳か」

 

 

「そうゆう事、でね? 損傷箇所が広大な場合、外部から材料を投入しないと元の体積を使用しちゃうから帳尻を合わせる為に身長や体重の減少が発生してしまうって訳」

 

 

「俺の場合、緊急だったから材料の用意が間に合わなくて身長と体重が犠牲になってる、と」

 

 

束さんの説明を聞き、それは仕方ないからなぁと思う

 

 

そもそも背骨や脊髄が粉砕・玉砕・大喝采してて良くて車椅子生活だった訳だから多少身長体重が減少した程度の副作用なら安い物だ

 

と思い、1つ気になった事が出来た

 

「それじゃ、何で髪が伸びてるの?」

 

「ん〜そこはバグかなぁ? 正直 治療後に出力する時に髪とか爪は、正確に出力する必要は無いから主要な機能を優先して開発改良して実用化してるんだよねぇ」

 

「まぁ確かに爪も髪も切れば事足りる訳だし、それもそうか」

 

死ぬ瀬戸際では些細な副作用だな、と思い納得する

 

「束さん、改めて ありがとう」

 

「構わないよ、君は私の可愛い弟分なのだから」

 

俺がお礼を言うと束さんはニッコリと笑み俺の頭を撫でて言う

 

「さてさてリッくん、残念ながら目が覚めたからと言っても即日退院とは行かないんだ」

 

 

「やっぱり?」

 

「念の為に精密検査を受けて貰う必要が有ってね、検査自体の順番もあるから後数日・・・最短3日は入院生活が続くよ」

 

「そっか、分かった。ありがとう束さん」

 

「ううん、構わないよ。リッくん」

 

最短3日か、つまり3日後に鈴による折檻がある可能性があるのか、避けれるかな? 無理そうな気がしてきたな、うん

 

 

まぁいいや流石の鈴も病み上がりの俺に即死技の秘奥義とか使って来ない筈だ・・・多分、いや そうであって欲しい

 

 






次回から再び不定期になる予定です

悪しからず


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日常へ

 

 

体感入院生活約2週間を経て冬休みも見えて来た今日この頃、束さんのおかげで生活に困る後遺症も無く生活出来ている

 

 

それにしても束さんの治療は凄いな、見える範囲でだけど傷跡らしい傷跡も見当たらない、素晴らしい治療だ

 

 

俺もつい先日知ったのだけど、そんな若干ヤベー治療機器を楽音さんも使用しているらしい

 

超絶大怪我の俺とは違い、楽音さんは癌と言う病気の為、俺の様にただ修復すれば良い訳では無いらしく、癌が再発しない様に修正も同時にしている様で膨大な時間がかかるらしい

 

 

よく知らないが癌は細胞分裂の異常が原因とか何とかだから、面倒なのは何となく分かる

 

 

「・・・やっぱり少し鬱陶しいな」

 

肩甲骨辺りまで伸びてしまった髪に少し鬱陶しさを感じ少しため息を吐く

 

 

鬱陶しいなら切れば良いだろう、と思うだろうが何故か一夏が俺の髪を弄るのに楽しみを見出したらしく、暇な時とか俺の髪を弄り出すので一夏から散髪するなと言われてしまっている

 

一夏のお願いを基本的には俺は断れないので、甘んじて我慢する事にした

 

そういや梶田先輩も入院生活中に暇だとか言って俺の髪を弄りにきてたな、まぁ俺も暇で話相手が出来て良かったけど

 

・・・あれ?普通に平日で学校有った筈なんだけど、なんで先輩は俺の病室に来てたんだ?

 

いや、気付かなかった事にしよう、先輩は謎が多い人だし、解明しても碌な事にならない気がする、うん

 

 

「ダメだ、集中力が切れた」

 

入院で欠席した分を取り戻す為の課題をしていたのだが、集中力が切れて課題と全く関係ない雑念が頭を駆け巡ってしまったので、一息入れるか と伸びをしてから椅子から立ち自室から出てキッチンへ向かい、コーヒーを淹れる

 

 

「・・・1人の家は静かだな」

 

ソファーに座りコーヒーを飲みながら呟く

 

こんな静かな自宅は、いつ以来だろう? 寧ろ有ったかな? ぐらい珍しい状況だ

 

 

一夏は、蓮さんが風邪をひいてしまったと言う事で五反田食堂のヘルプへ行っている

 

本当は俺もヘルプへ行くつもりだったのだが、課題が終わっていないのと一応病み上がりという事で、自宅待機を一夏と弾に命じられ仕方なく自室で課題を消化していた訳だ

 

「なんというか、広い家が更に広く感じるな・・・」

 

普段1人になる事が少ないからか、少し寂しさを感じている気がする

 

やっぱり俺には一夏や悪友達が居ないとダメだな とか思い温くなってしまったコーヒーを一気に飲み気合いを入れて立ち上がりシンクの方を向くと

 

「やぁリッくん、体調は良さそうだね?」

 

「・・・ビックリするわ、いつの間に」

 

俺から1m程離れた位置に音も気配も無く立っている束さんに驚き、碌なリアクションが取れず、少し微妙な言葉を束さんへ言ってしまう

 

 

「え? 普通に玄関から入って来たよ? なんか考え事に没入してたみたいだし、気付かなかっただけじゃない?」

 

 

「そう? そっか、それはごめん」

 

 

「ふふ、構わないよ」

 

束さんは相変わらず年齢不相応の笑みを浮かべる

 

「最近忙しそうだけど、大丈夫?」

 

「ん〜? 大丈夫だよ、それこそ嬉しい悲鳴って類のヤツだし」

 

「それは大丈夫の根拠にならないんじゃ?」

 

俺としては幾ら束さんが超人とはいえ、疲労はする筈だから睡眠時間とか休息が確保出来てるか心配してるんだけど、束さんは分かってないみたいだ

 

 

「束さん、参考までに平均睡眠時間は?」

 

「ん〜どれぐらいだろう? 私は元々ショートスリーパーなんだけど、ここ数年は3〜4時間じゃないかな?」

 

「・・・束さん、もう少しゆっくりしても良いと思うよ?」

 

「え? うーん私的には ゆっくりしてるつもりなんだけどなぁ」

 

俺の言葉に束さんは珍しく困った様な表情をする、本当に珍しい

 

 

「ま、それはそれとして、仕事関係の知り合いからお菓子貰ったから食べようよ」

 

 

「それじゃ、コーヒーを淹れるよ」

 

 

何か高そうな雰囲気を醸し出している紙袋を俺に見せて来た束さんに、そう告げて俺はキッチンへ入る

 

 

課題は もう終盤だし夜にでもやれば終わるだろう、多分

 

 






忘れてた楽音さんの治療を入れましたw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Geburtstag いち

 

 

 

12月に入って久しい、ある晴れた日の事 魔法以上の愉快が降り注ぐ訳もなく寒いなぁと思いながら起床し、毎朝の事になりつつある寝癖と水の冷たさと戦い、朝のルーティンをこなす

 

 

早寝早起き規則正しい生活を是としている一夏のおかげで、最後に風邪を引いたのが、いつだったか思い出せないぐらいだ

 

 

そんなこんな下らない事を考えつつ、先日束さん自ら組み立てたコタツで溶けてる束さんを横目に、休日にやっているクイックルワイパーでの拭き掃除をしている

 

 

「んぇ・・・あれぇ? いーちゃんは?」

 

 

「なんか鈴に頼まれた事が有るらしくて、30分ぐらい前に出掛けたよ」

 

 

「そっかぁ」

 

 

どうやらコタツの魔力により うたた寝をしていたらしい束さんが、徐に俺の方を向いて聞いて来たので答えると、まだ夢心地なのか いつも以上に間延びした返事が聞こえる

 

 

これは後で今の会話を覚えてない可能性もあるな、まぁ良いけど

 

 

そんな訳でフニャフニャな束さんを横目に拭き掃除を終わらせて昼の献立をどうしようか、と思い冷蔵庫を開けるが、特にめぼしい食材が無い

 

 

「そういや昨日使ったままか、うーむ」

 

 

腕組みをしフニャフニャな束さんを見つつどうするか考える、俺1人なら買い物に行って適当な惣菜やら弁当やらを買って食べるけど、コタツでフニャフニャになってる束さんがいるからなぁ

 

 

それとなんか忘れてる気がする、特に重要では無い何かを

 

 

「忘れてるって事は重要じゃ無いって事だろうし、その内思い出すだろ、うん」

 

 

考えても仕方がないと思い、ひとまず束さんに昼の要望を聞こうと思い冷蔵庫前から束さんの方へ歩み出そうとした瞬間、インターホンのチャイムが鳴る

 

 

「誰だろ? 弾と数馬も用事だって言ってたし・・・セールか?」

 

確かに休日なら来る事もあるか? と思いつつ玄関に移動し扉を開けると、多少身長が減った現在の俺よりも更に背の低い銀髪の美少女が姿勢良く立っていた

 

 

数ヶ月ぶりの再会だが、相変わらず良家のお嬢様みたいだなぁ

 

 

「お久しぶりですリクさん、突然の訪問 申し訳ありません。束様はいらっしゃいますか?」

 

 

「久しぶりクロエ、束さんならコタツで溶けてる所だけど、どうかした?」

 

 

「ちょっとしたお使いです、束様に持ってくる様仰せつかっております」

 

 

「そっか、外寒いし入りなよ」

 

 

「失礼致します」

 

 

俺が招き入れると相変わらず目を閉じたままキッチリ靴を揃えてから家に上がり束さんが溶けてるダイニングへ入ってゆき、束さんの側に膝を付き

 

「束様、ご指示の品をお持ち致しました」

 

「あぁ〜クーちゃん、ありがとぉ〜〜。コタツあったかいよ〜入ってごらん?」

 

 

「畏まりました、失礼致します」

 

 

何かフニャフニャな束さんに硬い喋り方をするクロエの会話が少し面白いなぁと思いつつ、クロエに暖かい飲み物を出す為にケトルでお湯を沸かしながら様子を見ていると、クロエが束さんにコタツを進められて入るとみるみる溶けていった

 

 

やはり人間はコタツの魔力には抗えない様だ

 

 

「今ほうじ茶しかないから勘弁な」

 

「いえ、お気遣いありがとうございます」

 

「わぁい、ほうじ茶だぁ」

 

ゆっくりとした動きで身体を起こし、ほうじ茶の入った湯呑みを手に取り嬉しそうに飲み始める束さんとクロエを見つつ俺も寒いのでコタツに入り ほうじ茶を飲む

 

 

うーん、一夏が淹れた方が美味いな・・・手順とかたいして変わらない筈なんだけど、不思議だ

 

 

「んー・・・よしクーちゃん、例の物を」

 

 

「はい、此方に」

 

 

伸びをして急にシャキッとしだした束さんと その束さんに呼応して元に戻り何か小包を取り出して束さんに渡すクロエを見て、何だろう? と思っていると

 

 

「うんうん、これで間違いないね。ありがとうクーちゃん」

 

 

「いえ、この程度 些末な用ですから」

 

「ふふ、そう? はい、りっくん。ハッピーバースデー」

 

「リクさん、Alles Gute zum Geburtstag」

 

と急に楕円形の茶色いケースに入った物を差し出され祝われる、何語かは分からないが、多分クロエも祝ってくれている

 

 

あーそういや、今日が俺の誕生日だったか、忘れてたな

 

 






お待たせ致しました

Alles Gute zum Geburtstagはドイツ語で誕生日おめでとうって意味です






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Geburtstag に

 

 

ひとまず『ありがとう』とお礼言ってから差し出された楕円形の茶色いケースを受け取り少し観察する

 

まぁ観察するまでも無く既視感と言うか、このケースの形状は見慣れているのでケースを開いて中身を見ると、そこには予想通りの物・・・メガネが入っていた

 

メガネを手に取りケースをコタツへ置いて、次はメガネを観察する

 

 

細縁の薄い青色のスクエア型で、レンズ自体も薄い軽量タイプで度は入っていない様だ

 

 

一通り観察してから一度付属のクリーニングクロスでレンズを拭いてからメガネを装着し

 

「どうかな?」

 

「似合う似合う」

 

「お似合いですよ、リクさん」

 

 

「ありがとう」

 

 

もう一度お礼を言うと、急に視界に色々と表示され始め、『フォーマット及びパーソナライズを開始します』とか音声が聞こえ困惑していると

 

 

「ふっふっふー、驚いた? それはメガネ型万能デバイスなんだよ〜」

 

 

「束様傘下の企業で販売されている商品のハイエンドカスタムタイプとなっています」

 

「ハイエンドカスタムって・・・」

 

悪戯が成功して喜ぶ子供の様な表情で俺へ与えられたプレゼントの正体を説明してくれる2人の言葉に戦慄する

 

少し金銭感覚が狂ってる時がある束さんがウン万円はする誕生日プレゼントを寄越して来たのは、まぁ過去何回かあるから良いとしてもだ

 

ただでさえウン万円する高価なデバイスのハイエンドカスタム、下手しなくても2桁万円になってそうで怖い

 

しかもパーソナライズって生体認証機能とか超高性能なロック機能のアレじゃないのか?

 

 

「折れず曲がらず堅くて傷付かないのに軽量かつ高性能、いやぁ自分で作っておいてアレだけど才能が怖いねぇ」

 

「お、おぉぅ・・・そうだね、うん」

 

なんでか分からないけど、なんか凄いご満悦の束さんの言葉に何とか相槌を打つ

 

いや、ホントなんでこんなにご満悦なのかが分からないぞ?

 

 

そんなこんな ご満悦の束さんに困惑していると『フォーマット及びパーソナライズが完了しまいた』と音声が聞こえ、目の前に『ようこそ』と文字が表示され数秒で消える

 

 

そういえば この音声、聞き覚えがある気がするな・・・どこで聞いたんだろう? 割と最近だと思うんだけど

 

まぁどっかのCMとか何かで聞いたのかも知れないな と自己完結する事にした、答えで無さそうだし?

 

 

「と言う訳で、これがその他諸々の備品だよ〜 充電はケースに入れたら出来て、ケースの充電はコレをコンセントに挿して乗せればOK」

 

何処から出したか分からないが、なんか備品を取り出して充電の仕方を説明してくれる束さん

 

何かコースターみたいなヤツにコードを接続してコンセントに挿せば良い様だ、これがいわゆる接触充電と言うヤツなのだろう、多分

 

 

「待機状態で約170時間、アクティブで約60時間連続使用が出来るよ」

 

 

「・・・とりあえず凄い事だけは分かった」

 

束さんの本気が凄すぎて何となく理解出来た、うん凄いと言うのは理解出来た

 

 

「あぁあと君になら言う必要は無いかもだけど一応、ペアレントコントロールの設定されてるからね?」

 

 

「まぁそりゃ当たり前っちゃ当たり前か、参考までに聞くけどソレに抵触する物を検索したりとかは出来ない感じ?」

 

 

「Googleとかで検索したら結果は出るけど閲覧は出来ないね、あと保護者の端末へ何を検索したか通知が届く仕様だったりする」

 

 

「・・・なんと恐ろしい」

 

 

悪用するつもりは無いが、興味本位で聞いたら かなりヤベー対策されていて絶対にペアレントコントロール設定に抵触しない様にしようと心に誓う

 

 

「ま、一度警告文が表示されるから、分かりやすいと思うよ? 表示されなければセーフな訳だし」

 

「なるほど? それは分かりやすいかも?」

 

 

要は普通に使えば良いんだ、普通に使えば

 

これを機に何か始めても良いかも知れない、プログラミングとか

 

うん、悪くないかも知れない

 

 

 






束さんの本気はヤバい(語彙力)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

聖なる日の事

 

 

束さんから中学生が貰って良いのか分からない程の高額な誕生日プレゼントを貰い、有効活用する方法を束さんと雑談をしながら考えていると、用事で出掛けていた筈の一夏が帰宅して、凄いニコニコしたまま有無を言わさず織斑邸に連行され悪友一同が揃い踏みしていて誕生日を祝われ

 

鈴に『一夏もだけど、アンタも自分の誕生日ぐらい覚えておきなさいよ』と軽くディスられてしまった、解せぬ

 

 

まぁそんなこんなでデバイスが便利なので、テストや体育など運動する時以外には常用する事にして、起きている間は着用している

 

ちなみに束さんは一夏に俺の色違い?のシルバーフレームのデバイスを俺の誕生日の日に渡していて、次の日から一夏も常用している

 

どうせ渡すなら一夏の誕生日の時に渡せば良かったのに〜と思ったが、なんでもオプションの施工の枠の都合で遅れたらしい、つまり あのデカいブツの大半は千冬さんからのプレゼントだったとの事・・・千冬さん張り切りすぎ

 

 

それはそれとして、メガネ美少女の一夏は俺得でしかない

 

うん俺の彼女ってば本当に美少女

 

 

本当、このデバイスは便利で特別構える必要も無く写真とか動画が撮れる、勿論ガチガチにペアレントコントロール設定がされているから、痴漢的な盗撮とか法律に引っかかる事は出来ない、それでも何気ない一夏とか風景とか撮影するのには十分ってかオーバースペックだ

 

まぁデバイスの何処にカメラが付いてるのかはサッパリ分からないんだけど

 

 

そんなこんな充実した日々を送りつつ寒さに震えながら生活をしている事、数週間

 

 

あっという間に2学期が終わり冬休みに突入した今日この頃、聖なる日がやってきて、雪が降りおった

 

 

「・・・さっむいな」

 

 

「あはは、リクは寒いの好きじゃないもんね」

 

 

「暑いのは割と平気なんだけどな」

 

 

コタツに入り暖を取る俺の背後に座り俺の髪を弄る一夏がクスッと笑い言い、相槌を打つ

 

 

冬生まれが寒いのが平気とか、そんな事ない。俺は普通に寒いの好きじゃない

 

 

「雪、降ってるけど、積もる程ではなさそうだね」

 

 

「積もったら困る、雪道用の靴は靴箱の奥の奥に眠ってるからな」

 

 

「それもそうだね」

 

 

せっかく一夏とデートへ行くと言うのに、面倒な作業を増やしたくないってのが正直な気持ちだ

 

 

今日に限っては、弾と数馬と行き先が被らない様に作戦会議をしたから、出会わない筈だ、まぁ雪が積もったら公共交通機関に影響が出てしまうから願わくば積もらないで欲しい、いやマジで

 

 

「よし、出来た」

 

「んじゃ行くか」

 

「そうだね」

 

一夏が満足したらしく今日はハーフアップに決まり、コタツの電源をオフにして一夏と手分けして戸締りを確認し家を出るとクレアさんが空を見上げていた

ので

 

「おはようございます、クレアさん」

 

 

「ん? あぁおはようございます、リクさん一夏さん。お出掛けですか?」

 

 

「はい、今から水族館へ」

 

「ふふ、良いですね、青春してますね。この分なら交通機関に影響は無いと思いますが、お気をつけて」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

クレアさんと軽く言葉を交わし、一夏と共に駅へ向かい歩き出す

 

 

それはそうとクレアさん、なんで空を見上げてたんだろう? クレアさんも出掛ける用事でもあったのか?

 

まぁ気にしても仕方ないか、気にしないでおこう、うん

 

 

「・・・去年とは大違いだな」

 

 

「急にどうしたの?」

 

 

クリスマス仕様に飾り付けられた商店街を歩きながら唐突に思い呟くと、一夏が首を傾げて尋ねてくる

 

 

「去年は父さんも母さんもソラやウミも居て、家の中で騒がしいクリスマスだったなぁって思ってさ? 」

 

 

「あぁ、そうだね? 陽太さんも月さんも忙しくて出掛ける事も出来なくて日中はソラとウミと遊んであげてたっけ? それはそれで楽しかったけどね」

 

 

俺の言葉に同意しながら、ニコニコしながら一夏は言う

 

 

「それに今年は俺には勿体ないぐらい超絶美少女の彼女だって出来たし? 去年はそんな事起こるとは、これっぽちも考えてなかった」

 

 

「っっっ!?」

 

 

ついでに不意打ちで本音を一夏へぶつけると、照れたのか顔を赤くし手で顔を覆い微振動し始める

 

 

おっと、俺の彼女は やはり可愛いんじゃないだろうか?

 

 






お待たせしました

リクは一夏へ向ける言葉に羞恥心なんて持っておらんのですw



*2/11 加筆修正を行いました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迎春 1

 

 

可愛い一夏を見れて大満足の聖夜を超え約1週間程の時が流れたが、相変わらず寒さが続いていて俺には少々辛い季節だ

 

まぁ世間は、そんな事お構いなしに新年を祝う催しが開催されていたり、テレビも特設番組しかやっていない

 

そんなドンチャン騒ぎの中、俺はコタツで暖を取りながらビデオ通話をしている

 

「多少の事なら心配しないけど、車に轢かれたと聞いた時は流石に心配したぞ?」

 

 

「俺だって好きで轢かれた訳じゃないよ、参考までに言うとスゲー痛かったからオススメはしない」

 

 

「安心しろ、俺も学生時代に轢かれてるから痛いのは知ってる」

 

 

「・・・遺伝した、と?」

 

 

数ヶ月前に帰国してしまったから今回は帰国出来なかった両親とのビデオ通話、母さんは何か仕事の電話をしている様で、今は画角から居ないが父さんの後ろでウミがソラの相手をしているのが見える

 

 

そんなこんな父さんと会話をしていると、何を安心したら良いか分からない事を言われ、変な返答をしてしまう

 

 

親子揃って車に轢かれてるとか、ヤバいな アレか?栗田家の男は そうゆう定めってか? 普通に嫌だな

 

 

「今でも覚えてる、(るな)さんが轢かれそうになってるの助けたんだよ」

 

 

「父さん達って確か高校時代の先輩後輩なんだっけ?」

 

 

「そうそう、同じ部活だったけど特に仲が良かった訳でも無かった・・・ってか、ほら月さん、無口じゃん? 挨拶ぐらいしかした事なかった」

 

 

と、父さんは少し苦笑する様な表情で言う

 

確か、昔に比べたら今は喋る方になったとか、父さんが前に言ってたな・・・え? 母さん、ほんと喋らない人なんだけど昔はもっと喋らない人だったのか? マジかよ

 

 

「そんな人と良く結婚までこぎつけたな?って顔してるな、簡単な話だよ。車に轢かれそうになった月さんを助けたのが切っ掛けで交流を始めたんだ、此処だけの話、月さんって当時から滅茶苦茶モテてたんだ」

 

 

「なるほど、そう言うからくりが・・・」

 

 

なんか最後に聞いてもない自慢が入ったけど、聞こえなかったフリをしとこう

 

 

去年辺りに母さんがチャラ男にナンパされたのを父さんが颯爽登場して退けた話を思い出したし?

 

 

そんな記憶は脳の奥底に収めるとして、改めて考えると父さんも そうだけと、母さんって3児の母の見た目はしてないよな

 

 

なんて言うか・・・見た目が若い、確か今36歳だった筈なんだけどな

 

 

俺から見ても二十代中盤ぐらいに見える、なんなら父さんの方が2〜3歳ぐらい年上に見える

 

 

「何やら面白い話をしている様だね」

 

「月さん!? 電話は大丈夫だったの?」

 

「あぁ問題ない」

 

相変わらず少し眠たげな様子の母さんがヌッと画角に生えてきて、父さんは驚いているのが見える

 

この様子だと音もなく戻って来たんだろうなぁ・・・母さん、表情筋ニート気味で無口だけど、イタズラする時はするし

 

 

「私達の馴れ初めの話はまたの機会にしよう、それでリク、一夏はどうしたんだい?」

 

 

「一夏? そういえば一夏は、ビデオ通話を始める少し前に束さんが外に連れて行ったままだな、どこいったんだろ?」

 

 

「そうか、それなら仕方ない。せっかくの機会だから一夏の顔を見ておこうと思ったんだけどね」

 

 

そう母さんは少し残念そうな表情をする、まぁ身内以外が見ても表情が変わった様には見えないだろうけど

 

 

「にー」

 

「兄さん、髪伸びた。お母さんみたい」

 

漸く俺とビデオ通話をしてる事に気付いたソラがヌルっと画角に生えてきて母さんの遺伝子をモロに受け継いだウミが、相変わらず感情の起伏が平坦な声色で言う

 

「おー久しぶりだな妹達よ、元々母さん似だしな俺」

 

 

「グッド」

 

「ぐー」

 

 

なんかよく分からないがウミからサムズアップを貰い、ソラは理解していないだろうが、ウミのマネをしてサムズアップをする

 

 

スクショして後で一夏に見せよう、喜びそうだし

 

 





栗田家 母 は喋ったのに父は喋って無かったので、今回はしゃべってもらいましたw



少し巻き気味で更新予定です、もうしばらくお付き合い下さいませ



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迎春 2

 

 

一夏に見せる為に妹達のスクショを撮っていると、玄関が開く音がして数秒後に束さんがニッコニコして現れ

 

「ふっふふー、束さんを崇めたまえよ?りっくん」

 

「・・・まさか呑んでる?」

 

「失礼な、束さんはシラフだよ」

 

謎のハイテンションな束さんに尋ねると飲酒を否定してきて、自身の背後から普段から美少女の一夏が晴着姿で現れる

 

「束さん、感謝」

 

「なんでリクは束さんに拝んでるの?」

 

「もっと拝むとよい」

 

急に拝み出した俺に困惑する一夏とビデオ通話越しに一夏を絶賛する栗田家一同、俺に拝まれ良い気分になってる束さん と言う混沌とした空間が完成してしまった

 

 

「一夏、久しぶりだね。君の晴着姿を生で見られないのは残念だ」

 

「あ、月さん。久しぶり、まだ機会が有る筈だから」

 

「ふふ、そうだね。それは楽しみだ」

 

 

ビデオ通話に気づいた一夏は束さんを拝んでいる俺を横目に母さんと会話を始め、珍しく・・・いや数年ぶりの母さんの笑い声が聞こえる

 

 

「一夏君が、ちゃんになってる。美少女、グッド」

 

 

「いちかちゃ〜」

 

 

 

とりあえず束さんを拝むのに飽きたので束さんと2人て一夏と妹達の会話を見守る事する

 

ウミは一夏の性別が変わっている事に気付いているが、特に思う事はない様で、謎のサムズアップを一夏に送る

 

ソラに至っては多分理解していないので、ニコニコして一夏に手を振っている、コイツ可愛いな

 

 

「2人共、久しぶり。元気だった?」

 

 

「兄さん同様、頑丈さには定評がある」

 

 

「げんき〜」

 

 

一夏の質問にウミは自信たっぷりに言うが、それは答えになってないと思うぞ?ウミ

 

ソラは元気一杯とワチャワチャと身体を動かしアピールしてくる、そういえば俺も含めて風邪らしい風邪をひいた記憶がないな

 

 

「少しばかり惜しいが、そろそろ私達は出掛け無ければならなくてね。続きはまた今度」

 

「そっか、それは仕方ないか。またね母さん、父さん」

 

「また、陽太さん、月さん」

 

「束ちゃん、2人をよろしくな」

 

「かしこまっ」

 

「ばいばい、兄さん、一夏ちゃん」

 

「やー、まだはなすー」

 

本日に残念そうに母さんは言い、父さんが束さんに俺達の事を頼むと束さんはキャピッとしたポーズで了承して、少し暴れるソラを宥める母さんの姿が写りビデオ通話が終了する

 

 

これはソラの機嫌を直すのは手間が掛かるかもなぁ

 

 

「みんな元気そうで良かった」

 

「だな、あと何年かしたら帰ってくる筈だから、そん時はみんなで初詣行ける筈」

 

 

「それじゃぁ、初詣に行こうか」

 

 

「了解、着替えてくる。あ、一夏 それ超似合ってるぞ?」

 

ビデオ通話が終わり少し会話をしてから一夏の晴着姿を褒め初詣へ行く為に自室へ着替えに向かう

 

とりあえず束さんはご満悦の様でニヤニヤしていた

 

 

そんな訳で一夏に比べたら軽装の冬装備に着替えて3人で家を出る、ちなみに晴着装備なのは一夏だけで、一夏に晴着の着付けをした束さんは、普通におしゃれ女子大生みたいな服装だ(語彙力)

 

 

我が家から歩いて十数分、毎年初詣に来る神社である篠ノ之神社へ辿り着くが、毎年の事ながら思う、人が多い

 

いや、まぁ当たり前だけどね? うん、初詣だし

 

 

「相変わらず人が多いねぇ」

 

「毎年の事だし、仕方ないね? あ、最後尾はアソコみたい」

 

「1〜2時間は覚悟しないとだな、こりゃ」

 

 

参拝客の列は境内から伸びに伸び神社の敷地内からハミ出て敷地の外周の4分の1ぐらいまである

 

 

各所にいる整理員の人が大変そうだ、頑張って下さい

 

 

まぁ、それはそれとして・・・生家に一般参拝客として列に並んでる天才(束さん)が居るが、この人は手伝いに行かなくて良いのか?

 

あーでも今は親戚が維持管理してるんだっけ?

 

まぁ良いか、人様の家庭問題だし、俺が首を突っ込んだらダメだ、うん きっとそうだ

 

気付かなかった事にしよう、そうしよう

 

 






お待たせしました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迎春 3

 

 

 

そんな訳で人の大河に身を任せる事、約2時間を費やし漸く拝殿に辿り着き、賽銭箱に賽銭を入れ大鈴を鳴らし手を合わせ、昨年の無事への感謝と本年の幸せ、ついでに邪念を少々願っておく

 

最後に一礼し顔を上げると、見覚えのある背中が見えたが、いやまさか彼が居る筈がないと思い、気のせいだと判断して御守りを購入する為に社務所の方へ移動する

 

「やっぱこっちも混んでるな」

 

「そうだね、まぁ初詣だし、仕方ないよ」

 

「ふぅ、ちょっと束さん疲れちゃったから先に敷地の外に出ておくね?」

 

「逃しませんよ?束」

 

「ひょっっ」

 

御守り購入の最後尾がどこかな?と見渡しながら話していて束さんが、そんな事を言った瞬間、音もなくヌルっと現れ束さんの肩を掴み穏やかな笑みをたたえる顔の作りが箒に似ている女性が言う

 

束さんが驚くぐらいだ、俺も心臓が止まりそうになるぐらい驚いた、マジで全く気付かなかった

 

おかしいな、この人は剣士であって忍者じゃなかった筈なんだけど

 

 

「全く貴女という子は仕方ない子ですね、人の手は幾ら有っても良いというのに」

 

「いやぁ〜 それはそうかも知れないけれど、束さんってば次の予定があるので、はい」

 

 

「いいですか束? 一体どれだけの月日を貴女の母をしてると思っていますか? 貴女の嘘や誤魔化しなんて分かりますよ?」

 

 

「ひぇっっ」

 

ん〜相変わらず穏やかな人だなぁハタキさん、見た目は束さんより少し歳上に見える程度なんだけど、この見た目で2児の母親、つまり束さんと箒を産んでるんだよなぁ

 

蓮さんといい、ハタキさんといい、なんか若さの秘訣でもあるのだろうか?

 

少なくとも母さんに関しては何も特別な事はして無いのは間違いない、していたら俺が気づく、うん

 

 

「そういう訳で、リク君と一夏君・・・束はこちらで回収していきますね?」

 

 

「あ、はい」

 

「分かりました」

 

 

ハタキさんは俺達の方へ向き穏やかな笑みを浮かべて言うので、ひとまず了承しておく

 

「では着替えて来なさい束、もし逃げる様な事が有れば・・・わかっていますね?」

 

 

「ひゃいっっ」

 

 

おーいつも誰にでも物怖じしない束さんがビビってる、流石の束さんも産みの親には頭が上がらない様だ

 

 

束さんは自由奔放だから幼い頃から刷り込まれているんだろう、きっと

 

 

少し情け無い声で返事をして居住区へ早足で駆けていく束さんを見送り再びハタキさんの方を向くと

 

「束の方からおおよその事は聞いています、んー・・・大変だったと思いますが良かったですね、一夏君」

 

 

「あーえーんー・・・はい」

 

 

ハタキさんは、少し言葉を選んだ様子で言い、一夏も少し返事をし辛そうに曖昧な返事をする

 

まぁ2人の複雑な気持ちは分かる、なにせ一夏は誘拐された結果、性転換して意中の(おれ)を射止める事が出来ている訳だ

 

一般的に誘拐された事は不幸な出来事だ、でも誘拐されていなければ一夏は性転換して俺と交際出来ていないのだから、なんとも言葉にし辛い事だろう

 

 

「それと箒には一夏君が元男児である事は伝えていませんので、ご安心を」

 

 

「ありがとうございます、ハタキさん」

 

「いえいえ」

 

 

巫女服の美女と晴着の美少女が会話してるのは絵になるなぁ、こっそり写真撮って保存しとこ

 

 

そういえば鈴は進路を決めたんだろうか、いやまぁ鈴の事だ 中国に戻るつもりでいるだろうな

 

俺個人としては鈴も含めて、この近辺の高校へ進学したいけど、鈴は一度決めたら突き通すタイプだから、俺がどうこう言える訳がない

 

やれやれ、進路を考えるのは少し億劫だな

 

受験勉強も始めないといけないのか、ほんと億劫だ

 

 

なんか受験しないで入学が出来たりしねーかな?

 

 






お待たせ致しました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

冬の日

 

 

 

篠ノ之神社へ初詣へ行き、数年振りにハタキさんと再会してから数日が経った今日この頃、冬休みも残り少ないので、鈴・数馬・蘭が我が家に集まり課題を片付けている

 

 

弾は、漸く都合がついた虚さんと遅めの初詣、一夏はクレアさんのお願いでラウラの服を調達しに行っていて不在だ

 

 

あれ?この組み合わせは夏頃にもあった様な?まぁいいか

 

 

「課題・・・面倒くさい」

 

 

「そうね、問題自体は解けるけれど」

 

 

「だよなぁ・・・蘭、そこの英文の訳、間違ってるぞ?」

 

 

「え?何処?」

 

「此処」

 

「ありがとうカズ君」

 

俺のボヤキに鈴と数馬が便乗し数馬は片手間で蘭の勉強まで見ている、相変わらず高スペックで羨ましい

 

そんな訳でコタツを囲んで課題消化している訳だが、例に漏れず集中力が切れたので、飲み物でも用意しようと思いコタツを出てキッチンへ行きケトルのスイッチを押す

 

 

「もう冬休みが終わるし、3学期なんて あっという間に終わる訳だけど、受験も考えないとな」

 

 

「そうだなぁ、受験は面倒だけと・・・ま、余裕だろ」

 

 

「それはお前だけだ、数馬」

 

「そうね、アンタだけよ数馬」

 

「私もカズ君だけだと思うなぁ」

 

 

数馬は本当に余裕だと思っているのが分かったので、集中砲火を喰らわせておく、この雑な扱いが数馬の扱い方である、まる

 

 

「ひでぇなぁ、別に日本屈指の進学校に行く訳でも無けりゃ、余程の事がなければ大丈夫だろ? 特にこの近隣の学校なら倍率高くないし」

 

 

「とりあえず数馬、お前は色々な人に謝った方が良いと思うぞ?」

 

「そうね、懺悔なさい?数馬」

 

「はははは・・・」

 

俺と鈴の追い討ちに蘭は苦笑気味に笑い、数馬は微妙な表情をする

 

「まぁ俺は受験余裕だしいいとして・・・鈴、お前はどうするんだよ」

 

「・・・そうね、来年度から中国へ戻るわ」

 

茶葉とお湯を急須に注ぎ、急須と湯呑みをお盆に乗せてコタツへ戻ると、数馬が鈴を指差し問い掛けると、鈴は決意した表情で答える

 

 

「夏頃に話した通り、お父さんが病気でお金掛かるし、中国政府からのオファーもあるしね? それに・・・目の前で世界最強の背中を見ていたのだもの、憧れを抱くなって方が無理よ」

 

「そりゃそうだ、俺が女なら、俺も千冬さんの背中を追ってたかもなぁ」

 

「確かに、千冬さんを見てたら着いて行きたくなるわ」

 

鈴の言葉に俺と数馬は同意し、肩をすくめる

 

「えーっと、千冬さんって確か去年、ウチに何回か一夏さんと食べに来たお姉さんですよね?」

 

「そうそう、一夏の姉で初代霊長類最強のIS搭乗者(ブリュンヒルデ)で、俺にとっては年上の幼馴染」

 

「そんな凄い人だったんですね、ウチに来た時は一升瓶を数本開けてベロベロだったので」

 

「千冬さん・・・」

 

本当、千冬さんは大丈夫な時とダメな時の差がハッキリしている、酒さえ飲んで居なければキリッとしたカッコいいクールビューティーなお姉さんなのだが、酒が入るとちょっと面倒くさいお姉ちゃんに成り下がるのだ

 

まぁ酒を飲む事が出来る機会自体少ないだろうし、ほろ酔いぐらいまでなら理性的に行動出来るから、まだマシとは言える、うん

 

 

「確か一夏さんがファイヤーマンズキャリーで連れて帰ってました」

 

「・・・千冬さん」

 

「ま、まぁシラフの時は凄い人なのよ、一夏が誘拐されていなければ連覇は必然だった、と言われるぐらいには、ね」

 

 

「千冬さんにとって、世界最強の称号や賞賛なんかより家族(いちか)の方が大切だったって事、そんな所が千冬の背中に憧れる要因の一つなんだよ」

 

 

だって千冬さんは、一夏と生活し一夏にお金の面で不自由をさせたくないから国家代表になったのだから

 

千冬さんは、守る者がいると強くなる主人公タイプの人間なのだろう

 

まぁそもそも溜め込むタイプの人だから、お酒飲むとタガが外れて泥酔するんだろうな、うん

 

 






お待たせしました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

煮干しの日

 

 

 

蘭から久しぶりに千冬さんのダメなエピソードを聞いてから早くも1月(ひとつき)が経った今日この頃

 

年明けの喧騒ほどではないが、世間は色目気合い 何というか甘い匂いが、そこらかしこから香ってくる

 

「なんつーか、みんな元気だなぁ」

 

「彼女持ちの お前に言われるの何か腹立つな」

 

 

休み時間なのでダラけて机に突っ伏し何気なく言うと、俺の前に座っていた梶田が振り返り、そんな事を言う

 

「へいへい、さーせんねー」

 

「羨ましいぜ、あんな絶世の美少女からチョコを貰えるなんてよ!」

 

「なんか、暑苦しいぞ梶田」

 

俺の返事が気に入らなかったのか梶田は、何故か熱弁し始めて、少々面倒だな と感じる

 

今日の日付けは2月の14日、世間で言うとバレンタインデーであり煮干しの日だ

 

だから、教室を始めとした至る所からチョコレートの甘い匂いが漂って来ている、多分先生も気付いては居るが、もともと緩々な校風だから気付かないフリをしている様だ

 

まぁ授業中とかに つまみ食いとかしたら流石に怒られると思うけども

 

 

そんな訳で朝からチョコレート獲得戦争が勃発していて、恋人持ちからのドヤ顔がチラホラ見え、独り身勢がチョコレートを獲得しようとしてあの手この手を使っていて、なかなかに騒がしい

 

 

「で、リク? お前は一体どんなチョコを彼女から貰ったんだ?」

 

「おん? 貰ってない」

 

「は? そんな訳ないだろ?」

 

面倒だから机に突っ伏したまま梶田と目を合わせないで答えると、何か凄い声色で威圧感された、失礼なヤツだ

 

 

「いやマジで」

 

「・・・いや、まぁ確かにまだ休み時間だしな、うん」

 

マトモに話す気が無い事に気付いたのか梶田は何か納得してくれる

 

コイツ、ホント良い奴なんだよなぁ、見た目も悪くないし黙ってればモテそうなんだけど、黙ってれば

 

 

「相変わらず寒いと冬眠中の野生動物みたいだなリク」

 

 

「よく言われる、すげぇ戦利品だな数馬。何人分だ それ」

 

 

梶田との雑談が一区切りしたタイミングで呼び出されていた数馬が笑いながら戻ってきて言うので身体を起こし数馬を見ると、大きめの紙袋一杯のチョコを持っていたので尋ねてみる

 

 

「えーっと大体30ぐらいか? 呼び出されて行ったら便乗で一斉に渡されてさ、正確な数はわかんね」

 

 

「お前、本当モテんな」

 

「本当、羨ましい」

 

この御手洗数馬と言う男、頭脳明晰容姿端麗の癖に気さくで自分の学力をひけらかす事をしないし、一夏と俺(おれたち)程では無いが荒事に首を突っ込み人助けを繰り返している

 

それ故に、数馬はめちゃくちゃモテる、まぁ一夏ほどではないが、うん

 

ちなみに弾がクラスメイトの女子とチョコの交換をしているのが見えたが、特に理由はないが、見なかった事にしよう

 

 

「俺、彼女居るって毎度毎度言ってるんだけど、押し付けられて」

 

 

「くっっ一度は言ってみたいな、そんなセリフ」

 

 

「そうゆう事を言ってるからモテないんだと思うぞ?梶田」

 

チョコレート(これ)どうすっかなぁ と呟いた後に、そんな事を言い、梶田が凄い形相をしているので、率直な意見を梶田にブツけておく

 

 

「リク、真実は時に人を傷付けるんだぞ?智和が可哀想だろ?」

 

 

「そうだな、すまん梶田」

 

「くっころ」

 

 

俺と数馬の追撃に梶田がよく分からない事を言った所で予鈴が鳴り、各々が自席に戻り次の授業の準備を始める

 

 

ま、それはそれとして、一夏がチョコを錬成していたのは知ってるんだ、実は

 

 

ただ まだ直接受け取ってはいないので、梶田には嘘はついていない

 

なんかスゲェ気合い入ってて栗田家(ウチ)では無く織斑家(じたく)の方で束さんと協力して錬成していた様だ

 

そういえば例年、一夏からチョコを貰ってたけど、てっきり余り物とか食べきれない奴のお裾分けだと思ってたけど、違ったかも知れない

 

作って配ってたのがカモフラージュで、本命を俺に渡してたのかも・・・まぁわかる訳ないわなぁ

 

一夏、恐ろしい子

 






だいぶ巻きで進めてます

お許しください



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

花車

 

 

梶田や数馬と下らないやり取りをしたり弾からチョコの配給を貰ったり、帰宅して一夏から立派なトリュフチョコを貰い、妙にリアルなクマ型のチョコを束さんから貰ってリアクションが取り辛かったりした煮干しの日を超えて

 

2月の半ばには演劇部が勢揃いし、時期部長を決める会議をして、なんとか部長になる事を回避する事が出来た、割と危なかった、うん

 

 

そんな平和な忙しさがあった2月が終わり、3月

 

 

本年度も、もう終わり俺達は本格的に進路を見据えないといけない時期になる訳だが、その前に大きなイベントが残っている

 

そう、卒業式だ

 

 

今生の別れでは無いかも知れないが、別れを惜しみ、新しい門出を祝う日

 

 

そういう訳で、下駄箱に入っていた見覚えのある便箋に見覚えのある文面で呼び出しの場所が北校舎裏を指定されていたので、卒業式出席後に向かう

 

 

こんな手の込んだ事をする変わり者なんて、片手で足りるぐらいしか知らないので、大体差出人の予想は出来ている

 

そんな事を考えつつ北校舎裏に到着すると、茜色のボブで前髪が長くて片目が隠れている身156㎝の女子が立っていた

 

 

「あ・・・来てくれたんだ」

 

 

彼女は俺に気付き嬉しそうな表情を浮かべる、今度は俺に何をさせたいのだろう、この人は

 

 

「待たせてしまった様で、すみません」

 

 

「うぅん、気にしないで大丈夫だよ」

 

 

俺が軽く謝ると彼女は少し焦った様に言い軽く手を振る、この人・・・本当、実力が相当だな と改めて思う

 

 

「て、手紙にも書いたのだけれど、わ、わわ、私は君の事が好きなの、だから私とお付き合いしてください!!」

 

 

先輩の出方をうかがっていると、意を決した先輩が赤面しながら告白してきた

 

「ごめんなさい」

 

「な、な・・・なんで・・・?」

 

俺が告白を断ると先輩は、前回同様 断られるのを想定していなかった様な表情をして聞いてくる

 

「なんでって、そりゃぁ彼女居ますし? 先輩も知ってるでしょう? 先輩、一夏とも仲良いですし・・・というか、いつまで続けるんです?」

 

 

「・・・やれやれ、君はそんなに せっかちな方では無い筈なのだけれどね? あぁボクが悪かったよ、そんなに睨まないでくれたまえ、余計にふざけたくなってしまう」

 

 

俺の言葉に梶田先輩は、後輩に告白しにきたヤンデレな先輩を演じるのを止めて、普段の口調に戻して相変わらず人を食った様な表情で俺へ言う

 

 

「ふふ、すまないね。性格が悪くて」

 

「いえ、もう諦めてますから」

 

「言ってくれるね、君」

 

 

俺の返事が、気に入ったのかニコニコしている先輩を見て改めて思う、黙ってたら絶対モテるだろうなぁと

 

 

「ふぅ・・・約10ヶ月前、ボクの誘いを受けてくれて、ありがとう。本当に君には感謝しているよ」

 

 

「・・・え? 先輩? なんです? なんか変な物でも?」

 

 

「流石に失礼だぞ、栗田君? いくらボクだって人に感謝ぐらいするんだぞ?」

 

 

人を食った笑みを止め真剣な表情で言う先輩に驚いて、失礼な事を口走ると、先輩が珍しく苦笑して言われ、ひとまず謝っておく

 

 

「君が演劇部に来てくれなければ文化祭も成功しなかったかも知れない」

 

 

「いえ、俺は大した事は」

 

 

「君にとっては大した事では無いのかも知れない、だけれど他人からすれば、それは偉業だと言う事だってあるのだよ?」

 

 

「・・・そういうものですか?」

 

 

「あぁ、そうゆう物だよ」

 

先輩は本気で そう思っている様で真剣な表情で言う

 

本当、先輩には敵わない。彼女の言葉には力があって、自然と正しく思える

 

 

それこそ先輩の持つ演技力が成せるワザなのかも知れない

 

 

「ボクは先に夢へ向かって行かせて貰うよ、ボクに会う方法で1番手っ取り早いのは智和に自宅へ案内して貰う事、かな? ま、連絡先は知っているだろう? そこに連絡してくれても構わないよ」

 

 

「はい、機会が有れば。先輩、頑張ってくださいね」

 

 

「うん、ありがとう栗田君。さぁ部室へ行こうか、きっとみんな待っているからね」

 

「はい」

 

先輩は俺ね背中を軽く叩いてから先に部室へと歩き出し、俺も数歩遅れて彼女へ続く

 

 

梶田先輩の夢への門出に幸多からん事を

 

 






お待たせ致しました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ムスカリ

 

あの後、演劇部の部室で梶田先輩達との別れを惜しみ門出を祝う歓送会を行った、当たり前の事だが、梶田先輩以外にも上級生が居たので、キチンと挨拶はしておいた

 

まぁ梶田先輩が1番付き合いが深かったのは間違い無い

 

 

そんな訳で先輩達を送り出した後は特出した事も起こらず、無事3学期を終業する事が出来た

 

春休みに入り数日、新学期への準備をしなければならないのだが、そんな事は後回しにして、俺達は空港へ来ている

 

 

「・・・皮肉なぐらい晴れね」

 

 

「そうだな」

 

 

展望エリアで鈴と並んで離発着する飛行機を眺めながら会話をする、心なしか鈴の声色が硬い

 

一夏と束さんは美鈴さんに付き添い搭乗手続きの手伝いをしているので、今は俺と鈴の2人しか居ないので、鈴が弱気なのは俺しか分からない

 

 

「不安か?」

 

「まぁ・・・そうね、ヤル気だけは有るけれど・・・この不安は何度経験しても慣れないわ」

 

 

「新天地への、か」

 

 

あんまり見ると蹴られそうなので、横目でチラッと見るだけに留めて鈴の顔を見てみると、小5の時に転入してきた時と似た表情をしていた

 

そりゃ緊張もするし、不安にもなるだろう

 

4年も掛けて築いた生活を捨てて、再び真っさらの状態から築き上げなければならないのだから

 

「でも、まぁ・・・言語から習得して友達作るよりはマシなんじゃないか?」

 

 

「ふふ、そうね。少なくとも言語は不自由しないわね」

 

 

俺の言葉に鈴は軽く笑い同意する

 

「アンタにも世話になったわね、ありがとう」

 

「なんの事かサッパリ分からねぇな」

 

「そうゆう所よリク、アンタも一夏程ではないけれど影ではモテてたんだから」

 

「ちょっと、何言ってるか分からない」

 

 

突然 鈴に感謝され本気で何の事かが分からずに言うと、マジで意味不明な事を鈴が言う

 

 

「だから、アンタは一夏が根回ししてなかったら告白されてた可能性が有ったって言ってるのよ、分かった?」

 

「おい、何で今このタイミングで言った? 何それ知らなかったんだけど!?」

 

「あら、言う訳ないじゃないの、忘れたのかしら? アタシは一夏の味方なのよ? 一夏が不利になる事をする訳ないじゃない」

 

 

俺の方を向き俺に指を突き付けて言う鈴に向き直り鈴に抗議すると、鈴が胸を張りドヤ顔で言ってきた

 

「ナイスミドル!!」

 

「アンタ、今・・・余計な事を思ったわね?」

 

コイツ、無い胸を張ってドヤ顔しおって、と思った瞬間 俺の脚にミドルキックが炸裂し膝をつく俺を見下し覇気を纏いながら鈴は言う

 

なんで分かんだコイツ、サイコメトラーか?

 

「4年も一緒に居たのよ? アンタが考える事ぐらい手にとる様に分かるわよ」

 

 

「そりゃどうも」

 

 

鈴は溜息を吐いて言う、多分本気なら脚の骨折れてたな、と思いつつ立ち上がり

 

「4年か、なんかあっという間だった気がする」

 

「そうね、一夏のお人よしで色々とやったけれど、楽しかったわ」

 

 

「はは、それは違いない」

 

4年前、鈴が転入してきた日、日本語が全く出来なかった鈴をイジメようとした阿保共をシバきに行った一夏を追って俺も参戦したっけ

 

そのあと先生やら親やらに怒られたけど後悔はしてない、話せば分かる? 対話で全て解決出来る? そんな事は夢幻、幻想だ

 

武を用いないと解決出来ない問題は山程ある、言葉で、対話で、信念で平和になるならば、この世に犯罪なんで起こらない

 

 

「あの日の事は覚えてるわ、不覚にも一夏に惚れてしまって秒で失恋したけれど、アンタには感謝してる」

 

「俺は当たり前の事をしただけだよ、まぁ結局一夏が先に突撃してったしな」

 

 

肩を竦めて鈴は言い、俺も肩を竦めて返答し時計へ目をやると、そろそろ移動しないと行けない時間になっていた

 

「そろそろ美鈴さん達の所に行くか」

 

「そうね」

 

俺達は並んで合流場所へ向かい歩み出す

 

「たまには帰って来いよ?」

 

「えぇ必ず、アンタは一夏を泣かすんじゃ無いわよ?」

 

「分かってるって」

 

「一夏を泣かしてごらんなさい? アタシがアンタを殺すわ」

 

「だから、何でそんなに過激なんだよ?!」

 

 

そんな締まらない雰囲気で俺達は会話をする

 

これで良い、俺達はこれで良いと思う

 

湿っぽいのは俺達ぽくない気がする、いつもみたいにバカ話して、また明日って言って鈴を見送る、そんなぐらいが俺達らしい、そんな気がする

 

行って来い鈴、俺はお前が成功すると確信してるぞ?

 

 






お待たせしました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

終幕 ポインセチア

 

 

 

桜舞い散る季節、春の陽気を感じる桜並木を抜け長い時間を電車に揺られ漸く辿り着く人工島に建てられた学校の一室、そこに俺は座り周りのクラスメイトは元気だなぁとか、陽気に当てられて眠りそうな頭の片隅で思う

 

 

鈴を送り出しラウラが唐突に帰国すると言い、旅立ってから約1年と少しが経ち俺達は高校生に無事になる事が出来た

 

この約1年の間に色々と有った、一夏に厄介なストーカーが出来たり、モテ過ぎる数馬が新1年生のヤンデレに好かれてしまって、何故か その子に刺されたけど無傷だったり

 

虚さんには俺達と同じ歳の妹が居て、姉妹で兼業従者をしている事が判明したり、俺の身長は伸びたが声変わりが全然しなかったり

 

そして1番重要な事、俺が何故かISに適合している事が分かってしまい、IS学園へ強制入学が決定してしまった

 

千冬さんが帰国した後、早々に転職先を見つけた千冬さんに、受験勉強の息抜きも兼ねてIS学園の見学してみないか? と誘わられたので、物珍しさに釣られて一夏と俺でホイホイ職場見学へ意気揚々と行った訳だ

 

それで整備室に有った第2世代型IS 打鉄を見学している時に、少し近寄って見ていたら段差に躓いて、うっかり触れてしまい気が付いたら打鉄を纏っていた訳だ、うん・・・何故だ?

 

正直、千冬さんと一夏以外に人が居なかったら隠蔽も可能だったと思うんだけど、運悪く人が居たんだよ、身内以外の人が

 

 

そんな訳で、千冬さんパワーでも隠蔽が出来ない事態になって俺はIS学園に強制入学する羽目になった訳だ

 

まぁ前向きに考える事にして、望んでも出来ない経験が出来るからラッキーと思う事にした

 

幸い、一夏も居るし、なんなら俺とは別の事故で入学してきた男子生徒(ぎせいしゃ)も居るから気が楽ではある

 

 

とりあえず一夏と束さんの強い希望で女子制服を着用してるし、一夏による化粧術のおかげで中性よりの少女に擬態出来ている

 

すまないな、セカンド君

 

君から見たら俺も異性に見えるだろうけど、俺は君が同性だと分かってるから気紛れに絡みに行くからな

 

まぁそのセカンド君は、今の状態がシンドイのか自席で頭を抱えて般若心経を唱えている、可哀想に

 

俺は今更 周りが女子生徒だらけなだけの空間で生活するのに抵抗がない、そもそも俺ん家は5分の3が女だし、約2年間 一夏と寝食を共にしてきたし、合間合間に束さんは居たし千冬さんが帰国後は千冬さんも参入してきたから慣れてる

 

 

まぁ元々その辺り無頓着な所が有るからってのも有るかも知れない、うん

 

 

にしてもISって、ややこしい技術や用語が大量にあって予習が大変だった、アクティブなんちゃら とかシールドバリアが如何たらとか

 

これを丸々覚えて入試に受かって入学してきた生徒のみなさん、マジで尊敬するわ

 

改めて束さんってスゲェ人なんだなぁって思った、全然実感出来てないけど

 

 

にしても今日は天気が絶妙で眠くなる、昼寝したら最高なんだろうけど、残念ながらIS学園は入学初日から普通の授業が存在しているから寝る訳にはいかない

 

 

俺の為に骨を折ってくれた姉貴分2人の苦労を無下にもしたくないし、卒業後の進路の為にも内申点は稼いでおかないといけない

 

 

身も蓋もない事を言うと、俺とセカンド君に限っては男性IS適合者ってステータスだけで進路は ある程度自由に選ぶ事が出来るかも知れない

 

いや、下手したら実験動物扱いもあり得るから気をつけないとな

 

 

それはそれとして・・・そろそろ俺を睨む様に見つめて来てる箒と向き合うべきだろうか?

 

箒がIS学園(ここ)に居る事は想定外だったな

 

なんて説明するか・・・知らなフリして後でバレたら流石に箒泣きそうだしなぁ困った

 

 

助けて束さん、結構なピンチな気がしてきた

 

まぁ居ないんですけどね、束さん

 

 

俺の、俺達の戦いはこれからだ!!

 

 

 

= to be continued =

 

 






予定より約1年超過して漸く第1部完となりました

終盤は、かなり巻きで話を進めて行きました

本来なら、もっと時間を詰めて書かないとダメなんですが、なにぶんネタが出て来なかったので、お許し下さい

言い訳になりますが、元々2部であるIS学園編も書く予定でしたので、飛ばして執筆していました

第2部に関しては、主役をリクと一夏ちゃんから別の子にする予定です

遠くない内に第2部を書き始められると良いなぁと思っています


それでは、お付き合い頂き、ありがとうございました



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エピローグ

 

 

 

ジャァーと蛇口から水が流れ排水溝へと流れていく、それを眺めて思い出した様に手を洗い顔を上げる

 

そこには鏡が有り俺の顔が映り、少し疲労した様な表情をしている

 

昔程じゃないけど、母さんに似てるなぁとか思う・・・髭、生えてこなかったなぁ、うん

 

 

そんな事を考えつつ、少し乱れた髪を整えてから蛇口を捻り水を止めてハンカチで手を拭く

 

 

特に左手の薬指付近は念入りに拭く、そうじゃないと結婚指輪と指の隙間が蒸れて痒くなったりするんだ、いやマジで

 

 

波乱の高校生活開始から約10年の月日が流れ、俺達は今 IS学園で教員をしている

 

俺が整備士科で一夏が実技、まぁ一夏は向こう最低1年は産休中、俺は一夏と相談して産休を取得する予定だ

 

話は変わるが、年に1回ぐらいの割合で、鈴・セシリア・ラウラ・シャルロットから各々の専属整備士になってくれないか? と勧誘を受けているが、全て断っている

 

 

一夏と離れて単身赴任は御免被るからな、うん

 

 

トイレを出てコツコツと靴を慣らし、肩を回しつつ目的地へと戻ると分娩室前の長椅子に、俺の両親と千冬さんに千冬さんの旦那さん、長椅子の横にウミとソラが立っていて長椅子を挟んで逆サイドに束さんとクロエが立っている、身内が勢揃いだ

 

ソラ以外は成人しているからか比較的に落ち着いているが、ソラは何でかソワソワしてうて、なんか逆に俺が冷静になれているのでソラには感謝しておこう、言わないけど

 

 

「おいソラ、あまりソワソワして動くなよ。お前がソワソワしても何も変わらないぞ?」

 

 

「わ、分かってけど・・・なんで お兄ちゃんは落ち着いてられるの?今、一夏ちゃんが頑張ってるんだよ?」

 

 

IS学園の制服を身に纏った最近反抗期気味のソラが、そう言い俺に嚙みついてくる。最近ホント生意気になったもんだが、これも成長かぁとしみじみ思う

 

 

やれやれ10数年前は、俺を にー って呼んできて可愛かった、まぁ今も可愛い妹である事は変わらないんだけど

 

 

「いやぁなんか、お前がソワソワの見てると不思議と落ち着いていられるんだよ、なんでだろうな?」

 

 

「お姉ちゃん、お兄ちゃんがイジメるよぅ」

 

 

俺の言葉にソラはキっ俺を睨み、隣に立つ(ウミ)に抱き着き甘えウミは慰める様にソラの頭を撫でる、これも我が家では よく見る光景なので特に何も言わずにいると

 

 

「兄さんは、もう少しソラに優しくした方が良い」

 

 

「十分優しくしてきたと思うんだけどな?足りないか?」

 

 

「全然足りない」

 

 

少し前に成人したウミは(おれ)より(ソラ)の方が優先順位が上な様で、大分ソラに甘い。だからこそ飴をウミに鞭を俺が担っているんだけど、コイツは理解していないのかもしれない

 

 

内心 肩を竦めていると、分娩室からオギャーと過去に2回は聞いた声が聞こえ分娩室へ繋がる扉を看護師の人が開く

 

「どうぞ、入室なさって下さい」

 

 

「どうやら産まれた様だな、リク・・・お前が最初に行くのが筋だろう?」

 

 

「そうだね、行ってくる」

 

 

千冬さんに言われ俺は頷き扉へ歩むと千冬さんに軽く背中を叩かれて送り出されて扉を潜り一夏の元へ向かう

 

 

「お疲れ様、一夏」

 

 

「うん、ありがとうリク」

 

 

少し疲れた様子の一夏が微笑み言い

 

 

「私たちの赤ちゃん、だよ」

 

 

そう言って自分が抱いていた赤ん坊を俺に差し出してくる、産まれたてホヤホヤのシワシワな新生児、そんな我が子を俺は抱き

 

 

「ようこそ、栗田家へ歓迎しよう盛大にな。まずは名前だな、名前は・・・・」

 

この子の一生を左右する大事な名前、今日まで一夏と話し合い検討を繰り返して来た

 

「名前は、六夏(りつか)だ」

 

「ふふ、よろしくね、六夏」

 

俺の陸は大字で6を意味していて、その六と一夏から夏を合わせて六夏、男女関係なく使えるしな、うん

 

ちなみに陸も男女関係なく使える名前らしい、少し前まで知らなかった

 

ともあれ、俺と一夏の子供ならば、これ以上の名前は無いだろう、少なくとも第1子には的確だと思う

 

 

さて、守るべきモノが増えたし、これからも頑張らないとな

 

よし、頑張るぜ

 






前回で最後みたいな後書きでしたが、気がはやってエピローグを書く事を忘れていました


キリよく100で完結させたいので、蛇足を1話書くかも知れません



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蛇足〜オマケ〜
長男は妹に甘い 1







 

 

 

IS学園での愉快な3年間を過ごし大学へ進学し教員免許を取得してからIS学園で整備士科の教師として勤務し始めて約3年、凡人の俺としては中々に成功を収めているのではないだろうか? と思う今日、この頃

 

 

週末の休日である今日、我が職場であり母校であるIS学園へ入学を果たした末妹のソラが整備に感じて教えて欲しいという事で、この数年で普及した新次元ネットワークであるサイバースペースへログインしている

 

 

丁度 一夏が婦人科へ定期検診へ出掛けているので良い暇潰しになりそうだな、本音を言えば付き添いたかったが、母さんと共謀した一夏により締め出されてしまった、無念

 

 

そんな訳で片手間ぐらいの感覚で勉強を見てやるつもりでログインした訳だが、予想していないヤツが居て少し驚く

 

 

「なんでウミが居るんだ? 」

 

 

「ソラに呼ばれたから」

 

 

「ソラに? はぁ・・・」

 

 

「あ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、お待たせ〜」

 

 

母親譲りの茶色寄りの黒髪で身長156㎝ 齢15歳 美少女、我が家の末っ子、ソラが俺達を見つけ手を振り駆け寄ってくる

 

何というか、天真爛漫で喜怒哀楽がハッキリとしている嘘をつけない性格をしているソラを見て、少し心配になる、ちょっと無邪気すぎる

 

 

「おいウミ、なんでソラまで呼んだんだ? ISの勉強見て欲しいんだろ?」

 

 

「うん、そうだけど、勉強の前に最近 お兄ちゃん、お姉ちゃんと遊べてなかったから遊びたいなぁって思って〜」

 

 

「ウミが遊びたいなら、幾らでも付き合う」

 

 

「・・・はぁ、これは良くない流れだ」

 

 

このソラと言う末妹、歳が離れている関係で幼少から俺や一夏が積極的に世話をして来たおかげで、大変 俺達に懐いている

 

特にウミはソラを猫可愛がりする傾向にあり、もうソラを甘やかす

 

そしてソラは甘やかされる事に慣れている為、まずウミを懐柔し2対1の構図にして俺が折れる状況にする事を覚えてしまった

 

そして俺は粘っても疲れるだけだと学習している

 

 

まぁそもそも自習を いつするかは自由だ、休日だし兄妹で遊ぶのは間違ってはないし、ソラは一応は嘘はついていない。勉強の前に、と言っているしな

 

 

「はぁ・・・仕方ないな、付き合ってやる」

 

 

「ありがと〜」

 

 

「今日も妹が可愛い、ぐっど」

 

 

「へいへい」

 

全身で喜びを表現するウミを見て誰に対してか分からない事を言いサムズアップするソラを流しつつ歩き出す

 

「それで? 何する?」

 

「実は前からやってみたかったのがあるの」

 

「ソラの為なら何でも付き合う」

 

「お前、ブレないな本当」

 

 

何でかキメ顔のウミに少し呆れていると、ソラは俺達を気にする事もなくゲームを起動しはじめる

 

なんで俺の周りの女衆は、こうも自由奔放過ぎるのだろうか?

 

 

そんな訳で、いつも様に急に景色が塗り変わり格納庫らしき場所に立っていて、俺達の目の前には3色のマシンが鎮座している、確かに3人居ないとダメだな と思うと同時に、なんでこのチョイスなんだ? と少し末妹の感性が心配になる

 

 

「私イーグル号〜」

 

 

「なら私はジャガー号に」

 

 

「おい、相談無しかよ・・・やれやれ、ベアー号っと」

 

 

我先にキャッキャしながら走ってイーグル号に乗り込んでいくソラを見てウミが自然な流れでジャガー号に乗り込むのを見て、溜め息をつきつつベアー号に乗り込みシートベルトを一応装着する

 

 

俺の予想が正しければソラが無茶苦茶 機体をブン回す筈だ、現実に影響がなくても痛覚はあるから、備えていて損はない筈だ

 

 

「よーし、行くよ。お姉ちゃん、お兄ちゃん」

 

 

「問題ない」

 

「おう」

 

 

本当、無邪気なソラの声に返事をするとソラは声高らかに

 

 

「ゲッターロボ、発進!!」

 

 

そう叫び、スロットル全開でゲットマシンを発進させる

 

 

これも兄の勤めと腹を括りソラが満足するまで付き合ってやろう

 

 

 






兄は妹に甘いのであったw



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長男は妹に甘い 2

 

 

ハイテンションで声高々に発進したウミに続きゲットマシンを発進させて基地を出ると、皮肉かってぐらいの青空が広がっていて、あー休日って良いなぁと感じる

 

 

「さてと、発進した訳だが・・・この後は?」

 

 

「わかんなーい」

 

 

「・・・くる」

 

 

空気を読んだ様にレーダーにアンノウンが表示される、ウミも大概だがソラの第六感も鋭いな

 

 

「よし、多分 敵だろうけどタイプが分からないから慎重にな」

 

 

「はーい」

 

 

「了解」

 

 

相変わらず分かってるのか分からない軽い返事を返すソラと短い返事しかしないウミの返事に少し不安を感じつつ目視可能距離まで近づく

 

 

「あー・・・蟲タイプ、か? 」

 

 

「じゃぁ、敵だね! 行っくよ〜、チェーンジ ゲッター1!!」

 

 

「合わせる」

 

 

「だから、人の話を聞けと・・・」

 

 

無邪気に声高らかに告げるウミに合わせて合体をしインセクターと対峙する

 

 

どうして、この妹達は俺の言う事を聞いてくれないんだろうか、いやまぁ悪さはしないんだけどさ?

 

 

「正直、インセクターとの戦闘知識はないから完全初見だ、だから慎重にな」

 

 

「大丈夫だよ お兄ちゃん、勇気が有れば! 勇者とは勇気ある者の事なのだから!」

 

 

「それ作品違うぞ」

 

 

「はえ?」

 

 

「ソラは可愛い、可愛いは正義、だから大丈夫」

 

 

「本当ブレないな、お前」

 

 

素で知識が混ざっているソラへよく分からないフォローをするウミに呆れていると、観察に飽きたソラがゲッター1を急発進させインセクターへ近寄る

 

 

「っっだから、慎重にって言ってるだろソラ」

 

 

「大丈夫、見えてるから」

 

 

「そう言う問題じゃないんだけどな」

 

 

「ソラ、好きにすると良い。私が合わせる」

 

 

「わーい」

 

 

「話を聞けってば」

 

 

「ダブルトマホーク!!」

 

 

我が妹2人は(おれ)の言葉を全く聞かずに楽しそうにしている、まぁ主にそうソラがキャッキャしてる

 

 

俺がゼノンパラドキサを発動させてようやく回避して行けるレベルの攻撃を素で見て回避している末妹のポテンシャルに末恐ろしさを感じつつ、操縦桿を握り締め襲ってくるGを耐える

 

 

正直に言おう、結構ヤバいGだ

 

 

過去の事故で束さんに改造され強化された俺でもキツいGをソラはキャッキャしながらインセクターとの戦闘をしているのだ、いくらサイバースペースの中とはいえ、今回は身体機能の設定は現実と同じの筈だから、ソラもウミも同じ状態の筈なのだが、ソラは無邪気にキャッキャしてる

 

 

これは将来有望だな、ほんと

 

 

ちなみにウミも少々堪える様で少ない口数が更に減って全く喋らない

 

 

「ん〜攻撃のパターンも見飽きたし、そろそろ倒しちゃうね?」

 

 

「・・・舐めプしてんのか、恐ろしい」

 

 

「ソラはかわいい、だから正義」

 

 

「何を言ってるんだ? お前は」

 

 

「ゲッタービーム!」

 

 

やはり少々シスコンを拗らせている様に思えるウミの言葉にツッコミを入れている俺を他所にソラはインセクターに止めをさし、インセクターが爆発四散し、一息つく事ができる

 

 

「あまり攻撃パターンなかったなぁ〜」

 

 

「お前、余裕そうだな」

 

 

「うん、楽しかった。次はもっと強いと嬉しいな」

 

 

「・・・それは勘弁だ、身体が持たん」

 

 

「誠に遺憾ながら兄さんに同意せざる得ない」

 

 

「えぇ〜そんなぁ〜」

 

 

珍しくウミが俺の味方をした事でソラが情け無い声でクレームを言うが一旦スルーする

 

 

今日の教訓は、ゲッターに乗る時は次からは身体機能を強化しておく事だ。またはGキャンセルをしてもらうか、だな

 

 

本当、身体が持たない。サイバースペースでは死なないが苦痛は感じるので、ただの拷問のソレになりかねない

 

 

下手に気絶したら強制ログアウトするかも知れないし、なんとも言えない

 

 

とにかくゲッターは、もう こりごり なのでソラを説得して身体に優しいゲームに移る事にしよう、うん

 

 

 






お兄ちゃんしてるリクなのであったw


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。