TOUCH THE LIGHT (ローグ5)
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Believe your future
本作に登場するウルトラマンは一応誰かは決まっていますが、描写や今後の都合から具体的な名前は出しておりません。
ただ何処かの地球で人々を護るウルトラマンとだけ今の時点では描写しています。
悪夢魔獣ナイトファング
登場
――――XX県の山間部に九頭村なる廃村の跡地がある。
昭和の時代が終わる頃には既に廃村となっていたこの村は一見何の変哲もない日本の田舎にある廃村に見えるが、一部のオカルト愛好家の間では有名な場所だった。
曰く、再開発の為に入った業者に死亡事故が起きただの、この村の出身者に発狂者が多発しごく短い期間ですべての系譜が途絶えただの、もしくは霊感を持った人間が通りがかっただけで体調を崩しただのと言った嫌な噂が絶えない村である。
そんな曰く付きの土地故に立ち入る者は肝試しに来る者を除きほとんどいない。
今となっては崩れ落ちそうな木造の家屋か幾つかと三階建ての鉄筋造りの建物の残骸が寂しく並ぶだけの侘しい土地となっている。
朧げな月明かりのみがそれらを照らすが音もなくただ朽ちていくだけかに思えた。
「~~~~~!~~~~~~!!いあ!いあいあ!」
だが今日この夜には幾人もの妖しい者がいた。
やや目立つ3階建ての鉄筋造りの建物の残骸の中、およそ人の口舌より放たれるとは思えない奇怪な詠唱が響き渡る。
建物の三階で奇怪極まりない叫びをあげるのは車座になった者達だ。
合唱の様に声を揃え叫ぶ彼らは白人から日本人、老若男女と人種も年齢も、恰好から考えられる社会的立場も様々な者達だ。
しかし彼らは一様に異様な熱狂と共に詠唱を続ける。彼らの信じる神の復活の為に。
彼らが何者かであるかをひとまず定義するならば邪神教団の信者というべきだろう。
様々な理由から邪神の実在とその降臨による救済を信じるようになった彼らは国の枠を超えてこの地に集まり邪神の降臨を目指した活動を始めたのだ。
さらに質の悪い事に彼らの抱いた絶望は単なるサークル活動にとどまらず当然の如く先鋭化しカルトとなり実害を伴う活動に発展した。
その結果がこの奇怪な儀式と拉致された被害者だ。
「……」
カルト信者たちの取り囲む中心には血の様な赤で彩色された祭壇がこしらえられておりその上には縛り上げられた学生服姿の少女が乗せられている。
少女の目には怯えがあるがそれ以上に諦観の情が強い。
まるでこうなる事が分かり切っていたかのように虚ろな目で信者達の行う悍ましい儀式を見ていた。
「いあ!ないとふぁ、いあ!」
少女の見る中儀式は進行していく。
儀式は進行と共に悍ましい気配を増していく。
それは彼らの醸し出す狂気のが形成するのではなく、むしろ村の奥にある朽ちた社から立ち上るこの世の物とは思えない瘴気が立ち上り形を成していく。
そして地の底よりくぐもった地響きが鳴り、信者たちの狂気と共鳴し蘇らせていく。
古の悪夢を。
「いあ!いあ!いあ!いあ!ないとふぁ、いあああっ!!」
そしてとうとう地響きと共に地の其処より『邪神』が姿を現した。
コールタールの様な黒と鬱血した肉の様な赤紫の二色で構成された身体は不快な丸みを帯びており、無数の触手が体には巻きついている。
さらには巨大な一対の翼を持ち、角の様に伸びた頭部には狂気的な紅い相貌と額に血走った第三の目がはまっている。
実に悍ましきこの世に存在してはいけない異形の姿だった。
これこそが九頭村に封じられていた邪神の姿。
その異形の姿は信者達に連れ去られた少女―――――霧島藍に死をもたらす運命の邪神に違いなかった。
「はあ……」
私、霧島藍はため息をつきながら家路を歩く。
夕日に照らされる道は綺麗なはずで、おそらくそれは昨今時たま何らかの目的で地球に来る宇宙人でさえ魅了するのだろうけど今の私にはどうでも良い物だった。
「進路相談どうしよ……」
私の目下の悩みは進路相談だ。
進学かそれとも就職かまだ決まってない道について考えるのは普通に考えても憂鬱な事だが私にはそれ以上に嫌な事がある。
子それは私の心に根付いた鬱屈。
子供のころから自分に明るい未来どころか、絶望しかないように思える様な気持ちだ。
(どうせ何やっても無駄……って思っちゃうんだよね)
私には悩みがある。
最も家族関係や友人関係といった事ではない。今住んでいる家は私の叔母一家の家だけど従妹二人を含め根暗な私に優しくしてくれるいい人ばかりだし、数は少ないけど友達も同じだ。
それ以外にも特に容姿とか学業の事で悩みはない。
私がの悩みはいうなれば子供のころから自分を取り巻く諦観だ。
私が11歳の時両親は交通事故で亡くなった。
当時の私は世の中そんなに悪くないし自分の人生はきっと光に満ちていると子供ながらに考え能天気に生きていたけど、両親の死はそんな私の考えを粉々に打ち砕いた。
人の未来はある日突然、暗転する。
当然の事ながら思い知った私は予期せぬ両親の死に怯えて、未来に待ち受けるのは良い事だけではないって教えられた私は毎晩のように泣いた。
そんな私に追い打ちをかけたのが数日後から見るようになった悪夢だった。
大体半年に一度、見る夢の内容はいつも同じ。
カルトの信者達に攫われた私は山奥まで連れていかれ、そこで邪神の復活の儀式で生贄にされる。
妖しい儀式で復活した邪神――――悍ましい三つ目の邪神は私を見つけると肥大した口を開けた邪神の闇が私を……そこでいつも終わりだ。
そんな恐ろしい夢の事を私は誰にも話さなかった。
叔父さんやおばさんに迷惑をかけたくなかった事もあるけど私の中には諦観があったからだ。
如何に怪獣や宇宙人等が実在するといっても邪神などはこの世にいないのだから、この夢は私の精神や運命の暗示なのだろうと考えている。
しかし両親が突然事故で死んだ事から分かる通り、私の未来は不確定的で暗く、いつ暗転するか分からない脆い物だと。
そんな暗い気持ちはいつしか私に根付き夢を見るたびに強くなっていく。
幾度なく見てきた夢は毒の様に私の魂を侵食し苛んでいく。
(アイはさ、別に今すぐやりたい事とか見つけなくてもいいんじゃない?受験はしなくていいし私たち若いんだしさ。それより今度遊びに行こうよ!新しい店隣のショッピングモールにできたっていうしさ!)
(藍……あなたはもう私達の娘なんだから、何も遠慮しなくていいのよ?何か悩みがあったら遠慮なく話してちょうだい
(アイねーちゃん元気出してー!)
それでも周囲に支えられて私はこれまでどうにかやってこれた。
自分の人生に完全に絶望しなくて済んだのは周りの人たちが優しかったお陰だ。
でも、それでも未来への恐怖が消える事はない。
だからか私は恐怖を感じてもどこか納得の気持ちがあった。
突然背後に停まった車から降りてきた人たちに腕を掴まれ口に布を当てられて引きずり込まれてもああと嘆くばかりだ。
やはりこれが夢でさんざん嫌という程見てきた私の運命なのだと。
今この山奥で蘇り、悍ましく咆哮する邪神こそが私の終焉であり絶望なのだと。
夜の闇に塗られ黒く浮かび上がる山々よりもなお暗い黒を湛えた邪神は天へと奇怪な咆哮を上げる。
自然界にはあり得ないグロテスクな姿の邪神は信者たちにはないとふぁなる名前で呼ばれていたが、其の秘されし真名は悪夢魔獣ナイトファング。
遥古に宇宙より飛来した宇宙怪獣の一種であり、悍ましい姿に違わない強大かつ不可解力を秘めたまさに邪神というべき魔獣だ。
「オオオ……これがないとふぁ様の真の御姿!何と神々しいっ!」
「ないとふぁ様―ッ!復活の宴にふさわしい贄を用意しました!お納めください!」
復活した邪神の姿に信者達は沸き立つ。
いったい彼らには何が見えているのだろうか。
あんな、あんな悍ましい異形の復活に大興奮する等常人には理解不能に過ぎる。
信者達の歓声に気づいたのかナイトファングは信者達に顔を向ける。
第三の目を見開いた顔は本当に不気味で、しかも何処か笑っているかのように見えた。
びたりびたりと無数の触手がずんぐりした体に打ち付けられて音を立てると同時に血走った目が瞬いた。
「あっごへえ……!?」
「教祖様!?一体あうっ」
信者の中でも中心的な人物だったのであろう身なりの良い初老の男性が昏倒し、慌てふためく周囲の信者達も昏倒していく。
「うわあああああ!!やめてくれ……喰わないでくれ!」
「蟲が、蟲があああああああっ!!」
「熱い……熱いよ……」
昏倒した信者達は皮肉にも彼ら同様に多種多様な叫び声をあげてもだえ苦しむ。
ただナイトファングが凝視しただけで、まるで悪夢を見ているかのように一斉に人々が苦しむ惨禍がこの廃墟の中に巻き起こっていた。
これこそが悪夢魔獣と称されるナイトファングの恐るべき能力。
額の一つ目からの波動で人々に悪夢を見せ苛み、その苦しみを自分の糧とする危険極まりない能力こそがナイトファングが邪神として扱われる由縁。
状況によってはウルトラマンすら蝕む恐るべき邪視をナイトファングは明確な悪意を以て行使していた。
「あっああああっあああ……悪夢を、見せられるの?」
その悍ましい姿に、そして悪夢の権能に藍は絶望する。
この邪神は悪夢を見せる力を持つ。
なら自分が何度も見ていた邪神に喰われる悪夢はこの邪神による物なのか?
そうすると自分はいつから、いつからこの信者や邪神に狙われていた?
常識も何もかも破壊する邪神の超常的な力と執念に藍の頭の中が疑問と恐怖に満たされ、体の震えが止まらない。
そんな藍の疑問に答えるかのように悪夢に苦しむ信者達を舐める様に見回していたナイトファングの視線が重なり合う。
異形の邪神の面持ちはこの世のどの生物とも異なるが、確かに笑っているかのように藍には見えた。
「ひっ……!!」
邪神の悪意に藍の心は折れた。
「あっやああ……痛っ!」
何とか縛り上げられ拘束された体を必死に捩って逃げ出そうにも、せいぜいできるのは祭壇から逃れるくらいで、落ちた後も芋虫の様に転がるしかできない。
対して全長60mを超す邪神は大股で藍を目指してにじり寄ってくる。
如何なる理由かは知らないが邪神にとって藍はこの上なく甘美な供物なのだろう。
「い、いやだ死にたくないっ!死にたくないよぉ……」
嘲笑う邪神に対して涙する藍。
確かに藍はいつからか未来に対して明るい気持ちを持つ事が出来なかった。
でもそれでも大切な人はいるし、まだ何も夢もないけどまだ長い人生がある。
こんな邪神に喰われて死ぬなんて、人生を終えるなんて御免だった。
されど正気を纏いし邪神は進み続ける。
自分の復活を祝う贄を捕食する為に。
「……助けて。誰か助けてえ……」
これまでの藍は両親の事故という惨事があった物の孤独ではなかった。
だが今彼女の前に居るのは邪神ナイトファングのみ。
孤独なままの死を迎えようとする彼女を救う者は今この場にいない。
ナイトファングの異形の顔が藍の視界一杯に広がり瘴気な最中からも紅い目が彼女を捉え大口を開く。
声もなく孤独な彼女を邪神の脅威から――――――救う『光』が瞬く。
空を一陣の光の流星が駆け抜け、藍に覆いかぶさろうとする邪神を吹き飛ばした。
「え?」
吹き飛ばされた邪神の巨体が地面と衝突し地響きを立てる中光の流星が藍を守るように
そう、轟音と共に勇ましく大地を巻き上げ降り立った光には二本の足がある。
徐々に人型を成していくその姿を藍は知っている。
それは光の巨人。
幾多の世界で、幾多の星で、この地球で人々を護り抜いてきた光の巨人。
幾星霜もの月日を戦ってきた永遠のヒーロー。
「……ウルトラマン」
闇の中迷える人間を導いていく、光の様な『ウルトラマン』が藍を守る為邪神へと立ちふさがっていた。
藍は廃墟の中に転がされている事もあり自分を助けに来たウルトラマンがどんな姿をしているかはよく見えない。
その体色すらせいぜい銀と黒があり、宙に浮かぶ軌跡から刃をふるっているのが見える程度。
だがそれでも藍を守る為にナイトファングに勇ましく立ち向かっているのは直観的に分かった。
ここから一歩も下がらない、そんな意思を込めた裂帛の気合と共にウルトラマンは拳や蹴りでナイトファングを攻撃する。
ナイトファングも巨体に蓄えたその強大な腕力でウルトラマンを迎え撃つ。
深夜の山々の間で生と邪、光と闇の化身が激しくぶつかり合う。
太い両腕のガードを潜り抜けた光の巨人の一撃がナイトファングにめり込み苦悶の声を上げさせる。
よろめき後退したナイトファングは一転激怒したかのような叫びをあげて突進するが、いかにナイトファングの質量が膨大としてもそれはウルトラマンも似たような事。
巧みな受け流しで直撃を避けたウルトラマンは山にぶつかり動きを止めたナイトファングの背にある翼を掴むと、逆上がりの様に駆け上がりそのまま空中で回し蹴りを放つ。
アクロバティック極まりない延髄切りの一撃にナイトファングの巨体が蹴り倒された。
しかしずんぐりした体が幸いしたのかナイトファングは体を丸め転がるとウルトラマンの追撃を振り切って体勢を立て直す。
そしてかつて古の時代に猛威を振るった火球を連続して吐き出した。
村の一つ程度なら全域を焼き尽くす火球をウルトラマンは側転して躱していき、次々と飛来する火球はウルトラマンの柔軟な機動に追い付かない。
火急の連弾が途切れた所でウルトラマンが居合の様な鋭さで刃の様な光弾を放ちナイトファングの第三の血走った目を撃つ。
火花を上げてひび割れる第三の目に邪神は苦悶の声を上げた。
「や、やったぁ!」
だが流石は古より生きる悍ましき命か。
ナイトファングは自身の纏う瘴気を一点に集中させたかのような濃厚な闇をウルトラマンに吐き出す。
闇の奔流はウルトラマンを包み込むが、弧を描くような光を纏った腕の一薙ぎで消し去られる。
しかしその一瞬の隙を、ナイトファングの太い触手が回り込むように伸ばされ、ウルトラマンの首に巻き付けられた。
闇の奔流を囮にウルトラマンを拘束したナイトファングは勝鬨を上げてウルトラマンを持ち上げ締め上げて苛んでいく。
触手の強烈な拘束で苦悶の声を上げるウルトラマンに藍は悲鳴を上げた。
「ああ……っ!ウルトラマン……!」
状況はナイトファングがウルトラマンを圧倒している。
だがそれでも藍は決して自分を諦めない。
孤独の中苛まれていた自分を助けに来た闇夜を照らす光の戦士の勝利を、自分の未来を諦めていなかった。
それは彼女の両親が、関わってきた人達が、闇の中手を伸ばしてくれたウルトラマンの光が教えてくれた事。
だから藍は叫んだ。
幾多の地球で地球人が叫んできた言葉を。
「―――――――頑張れ!頑張って、ウルトラマン!」
藍の祈りが通じたのかは分からない。
けれど確かに飛来した剣の刃がウルトラマンを拘束する触手を切り裂きその身を開放する。
ちぎれ飛ぶ触手と苦悶するナイトファングを置き去りにしてウルトラマンは飛ぶ。
暗き空を引き裂いて高く高く高く飛んだウルトラマンは一瞬のみ静止し、そして反転するかのように飛び戻り、自身の身を高速で回転させ炎を纏った蹴りを繰り出した。
狙いを過たず放たれた凄まじい勢いの飛び蹴りは破裂音すら立ててナイトファングを吹き飛ばした。
巨体が宙を飛び転がる中ウルトラマンは着地する。
その銀色の目はよろめきながらも立ち上がるナイトファングを一点に見据えている。
この世の条理を外れたかの様な気味の悪い叫び声をあげながら瘴気のエネルギーを纏い突進するナイトファング。
対するウルトラマンは両腕を円を描くように動かすと十字を組む。
撃ちだされるのはウルトラマンの必殺光線。
蒼き光の奔流がナイトファングをめがけて迸る。
『――――――――――光線っ!!!』
愛を勇気を未来を信じ、無限とも思える防衛の道を、あきらめる事無く前を見て、限界を超えて歩み続ける。
そんな険しき道を自ら選んだ光のウルトラマンの一撃が邪神如きに止められる物ではない。
青き破魔の奔流はナイトファングの身体を貫き、纏う闇をも霧散させ、邪神の巨体をも完膚なきまでに爆発させた。
必殺光線の直撃を受けて爆散したナイトファングの破片は瞬く間に浄化され消滅していき、青く輝く粒子が廃村の闇を打ち払う、
その最中に立つのはウルトラマンの雄姿。
「……ありがとう、ウルトラマン」
闇を打ち払ったウルトラマンは藍の言葉にうなづくと光となって消えていく。
邪神や信者達によって穢されたこの廃村を浄化するような
絶望や諦念を打ち払われた藍は穏やかな気持ちで目を閉じる。
薄れゆく景色の中、生きて大切な人たちと会える事が何よりも嬉しかった。
「よし、と。進路志望調査書は忘れてないね」
私の通う大学付属の高校の入り口でもう一度バッグの中身を私は確かめる。
あの日からもう半年以上が過ぎていた。
結局あの後すぐに怪獣騒ぎを聞きつけて来た警察に昏倒した狂信者たちは全員逮捕され私も家に帰る事が出来た。
家に帰った時はおばさんたちや友達に泣かれてしまって私もつられて泣いた。
その後も色々とひと悶着あったけど私の心には以前の様な諦念の様な澱はなかった。
むしろあの日のウルトラマンが私の中の闇を払ってくれたから、むしろ元気なくらいだ。
それに私にはやりたいことができた。
我ながら急な思い付きで本当に笑ってしまうけど、私は今何か不幸な事や悩みごとの有る子達に一人じゃないって伝える事が出来るような、色々あるけどそんな仕事に就きたいと考えている。
まだ具体的な内容も決めていないけどそんな事を前向きに考えられるように私はなっていた。
「きゃっごめんなさい」
なんてことを考えている内には誰かにぶつかってしまった。
ぶつかってしまった人はおそらく大学の方の私より何歳か年上の人。
鍛えられていそうな体つきだけど失礼な事をしてしまった。
「イヤ大丈夫。そっちこそ怪我無い?」
「はい、大丈夫です」
「そっか。なら良かった。そんじゃ気を付けて」
そう言ってその人は特に気にした様子もなく歩いていった。
見た事のない人だったけど何処か不思議な、何か暖かい気持ちを感じさせるような人だった……気がする。
(あっ、そろそろ時間だ早くいかないと)
そうこうしている内にそろそろ急がないと進路指導の相談が始まってしまう。
慌てて私は進路指導室へ向かうことにした。
当たり前の事だけど周りの人と喜びも苦しみも分かち合って生きていく為に。
その過程でまたあの日光に触れたウルトラマンにまた会えたらいいなと思いながら。
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