アルビノなユウリとマリィ (わさべ。)
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1

剣盾の小説は初投稿です(スロースターター)

拙い文章ですが、楽しんでもらえたら幸いです(丁寧な挨拶)




うす暗い部屋の中ベットで横になりながらラジオを聞き、楽しそうに鼻歌を歌っている少女がいた。

 

《さぁ、ジムリーダーになってから初めてのトーナメント戦惜しくも準優勝でしたがマリィさん、今回はどうでしたか?》

 

《…現チャンピオンのホップに負けたのはえらいくやしか……でもっ、ホップになら何度か勝ったことはあるし、次は絶対にまけん…!!……ダンデさんにはわからんけど…》

 

「やっぱり、凄いなぁ……私と同い年でもこんなにしっかりしてるもん…」

 

一人そう悲しげに呟いた少女はマリィの名前が書いてある一枚のカードを手にとって眺めていた。

 

ジムリーダーになる前のリーグカード。証明写真の様な構図で写っているマリィらしいカード。少女の新しく出来た宝物の一つだった。

 

《最後に一言をお願いします!!》

 

《…アニキ、エール団!!…応援、ありがとーねー!!これからもっとスパイクタウンを盛り上げるけん!!だからもっと頑張るばい!!》

 

《ありがとうございました!!それではそちらにお返しします!!》

 

「…いいなぁ」

 

幼い頃からずっと手元にあるピッピにんぎょうに顔を埋める。現実から目を逸らすように。

 

アルビノで極度の虚弱体質。それが彼女の枷だった。

 

一人でトイレやお風呂に行けず、必ず誰かの手を借りなければ一般的な生活を送ることが出来なかった。

 

体調が優れない時には、食事にも手を借りなければならなかった。意思の疎通もロトム越しではないと出来なかった。

 

 

(…こんな私にも、出来ることってあるのかな……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……手紙…?」

 

「うららー?」

 

トーナメント戦が終わってから三日目、ワイルドエリアから帰宅すると郵便受けに一枚の便箋が入っていた。

 

かざりげのない真っ白な便箋に幼さを感じるピッピのシールで封をされていた。

 

(差出人……ユウリ。場所……ハロンタウン)

 

アニキへのファンレターと思ったけど、それにしてはシンプルだった。

 

差出人と場所を見てもイマイチピンとこない。もしかして間違えた所に届いたのかと思ったけど、宛先はスパイクタウンであたし宛だった。

 

(ハロンタウンって確かダンテさんの出身地……ってことはホップなら知っとんやろうか?)

 

とりあえず考えるのをやめて便箋を開けてみることにした。丁寧にシールを剥がしてゆっくり開く。中には一枚の紙と便箋の封をしていたピッピのシールが入っていた。

 

真っ白な紙には大きめな文字でこう書かれていた。

 

《こんにちは、ユウリといいます。

 

マリィさんの勇姿をいつもラジオで拝見させて頂いています。

 

私は生まれつき身体が弱くて外に出た事がほとんどありません。

 

外の世界の事を何も知らなかったのです。

 

でもある時、マリィさんのことを初めてラジオで拝見しました。ジムチャレンジの時の事です。

 

沢山のポケモンを引き連れて、数々のコンビネーションでジムを突破されて。

 

私と同い年で凄い活躍をされていると知ってからは少しだけ外の世界の事を知ることが出来ました。

 

私にとってマリィさんは、世界を知るきっかけでした。

 

本当に感謝してもしきれないです。

 

これからもマリィさんのご活躍をお祈りしています。》

 

 

文字はお世辞にも綺麗とは言えなかった。頑張って自分の言葉で書いたと思う文章。気持ちが、想いが、沢山こもって溢れだしていることはわかった。

 

中に入っていたピッピのシールを手にとって眺める。きっとこのシールは彼女にとって大切なもの。

 

(あたしの、初めてのファンレター…)

 

不思議と心が高まっていく。エール団の応援とは違う、別の心地良さが広がっていく。とても、暖かい。

 

(あたしでも、元気ば分けきると?ひよっこなあたしが?)

 

あまり自分に自信は持てないけど、すんなりと受けとれた。すっと胸に溶け込んでいく様な気がした。

 

(…期待に答えれるようにもっと頑張らな…!!)

 

「うららー!!」

 

「んー?どーしたモルペコ?」

 

モルペコが嬉しそうにあたしの顔を見つめている。

 

「顔に何かついとー…………ぁ」

 

思わず変な声が漏れてしまった。

 

ガラスを見る。

 

そこには練習している時のいつものぎこちない笑顔とは違って、とても自然な笑顔をしていたあたしがいた。

 

「…あたしもこんな風に笑えたんね」

 

「うらら♪」

 

いつもより増してモルペコは嬉しそうだ。

 

「…うん、決めた。会いにいこう、モルペコ」

 

「うららー?」

 

「あたし、ユウリの事が気になるったい。…初めてのファンやし、会ってみたい」

 

「うらら♪」

 

頷いてくれたモルペコを撫でながらユウリの手紙を思い出す。

 

 

《私は生まれつき身体が弱くて外に出た事がほとんどありません。》

 

 

《私にとってマリィさんは、世界を知るきっかけでした。》

 

 

 

(手紙の内容から本当に身体が弱かと……)

 

 

 

(ならあたしがきっかけになったんやけん!!あたしがもっと世界のこと、教えちゃりたか…楽しかことも沢山教えたか…!!)

 

 

 

「待っとってーな、ユウリ」

 

 

 




マリィが笑顔を練習するシーンはやっぱ、最高やな!!(義務教育)

書きたい所がいっぱいいっぱい…(語彙力の低下)

毎秒投稿しなきゃ…(嘘つき)


ローペースで更新をしていきますので、気長にお待ち頂けたら幸いです(よわき)


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2

筆がのったので初投稿です(はやてのつばさ)




ハロンタウン。昔から牧場を営み、ポケモンたちとともに暮らす町。

 

昔から牧場を営むとある様に、土地の大半は牧場で沢山のウールーがのんびり過ごしていた。

 

ここの牧場で取れるミルクを使って作られた乳製品は絶品で特にモーモーチーズは高級品として扱われている。実際、ほっぺたが落ちるほど美味しい。

 

ここに来たのならウールーソフトを食べていきたいけど、それは後回し。

 

今日はユウリに会いに来た。突然の訪問だから驚いてくれるかな…?

 

「うららー」

 

「うん、多分ここばいね」

 

町の外れに近く、まどろみの森の入り口のすぐそばにある一軒家。草木が生い茂っていて、色とりどりなお花で出迎えてくれた。

 

小さな畑の傍では二匹のスボミーが光合成をして気持ち良さそうにうたたねをしていた。

 

今日は天気が良くてぽかぽかしている。きっと光合成日和なんだろう。

 

「…なんか緊張するばい…でもユウリに会いに来たけん…!!」

 

少しだけ勇気を出して扉を叩く。心地よいノックの音があたしを落ち着かせてくれた。

 

「はーい!!すぐ向かいます!!」

 

中から元気な声が響いてきた。家からどたどたと忙しそうな物音が響いてくる。…お取り込み中だったのかな?

 

「はーい、どちら様…?」

 

あたしを出迎えてくれたのはユウリのお母さんだろう。多分。あたしの顔をまじまじと見ている。

 

(…気まずい)

 

このままでは埒が明かないので、思い切って自己紹介をする事にした。

 

「えっと、ユウリちゃんからファンレターを貰って来ました。…マリィです」

 

数秒の間が空く。

 

「!?!!!???!??!!?」

 

声にならない悲鳴と何が起こっているかわかっていないようで、表情が目まぐるしく変わる。見ていて少しだけ面白い。

 

「ま、まままマリィちゃん…!?ですか…!?」

 

「そうです」

 

「ユウリの!?お手紙をみて!?」

 

「来ました」

 

焦っているのか言葉遣いが不思議な事になっている。目はグルグル渦をまいて手元の落ち着きがない。

 

このままではいけないと思ったのか、ちょっとだけ待っててと言い残して家の中に戻っていった。

 

「…うらら?」

 

「…なんか忙しか人やなぁ」

 

 

 

暫くスボミーを眺めていると扉が開く。ユウリのお母さんが恥ずかしがりながら出てきた。

 

「…ごめんねマリィちゃん。…まさか来てくれるとは思って無かったから……」

 

恥ずかしい、恥ずかしいと呟きながら火照った顔を冷やしていた。その姿は綺麗で、あたしも見とれてしまう程たった。

 

「連絡とってないあたしも悪いですし…」

 

ユウリのお母さんの魅力を振り払って、謝罪の言葉を述べた。

 

(…初めてファンレターやったけん少しだけ舞い上がっとったんかも知れんと……気をつけな)

 

「いいのいいの。サプライズって大切よね!!…っと、こんなおばさんとお話してちゃ悪いわよね?」

 

「いえ、大丈夫ばい!!」

 

あたしを気遣ってくれる言葉にあたしは反射でそう答えた。

 

それを聞いたユウリのお母さんは優しく微笑んでくれた。…心が軽くなった気がした。

 

 

 

 

 

「ユウリー?お客さんが来てくれたわよー」

 

「はーい」

 

世間話を少ししてお互いにリラックスが出来た頃、ユウリのお母さんがユウリのお部屋の前まで案内をしてくれた。

 

(…緊張してきた)

 

リラックスしても、やっぱり直前になると緊張する。

 

すーはー、すーはー、と深呼吸を繰り返して、落ち着かせようとする。胸に手を当てるとドキドキしていた。

 

「うらら?」

 

モルペコが心配そうに見つめてくる。

 

「…大丈夫、大丈夫」

 

(…入らな、ユウリが待っとー)

 

「…お邪魔します」

 

そーっと扉を開けて部屋の中に入る。あまり物が置いていない質素な部屋に大きいベット。その中でも目立っていたのはノートとピッピにんぎょう。部屋の中に太陽の光が入らないように、遮光カーテンで守られていた。

 

思わず、息が詰まる。

 

「…ふぇっ!?ま、マリィさん!?え、なんで!!」

 

声の主はユウリ。あたしを見るや否やユウリのお母さんの様に表情が目まぐるしく変わる。手元も落ち着きがなく、あわわわわ、と言う擬音が今のユウリにぴったりだった。

 

(やっぱり親子なんやなぁ)

 

ゆっくりユウリの元に近付いて、至近距離で目と目を合わせた。顔に熱がこもってるような気がした。…多分今のあたしの顔は真っ赤に染まっているのだろう。

 

「へ、ちょっ…!?」

 

 

「ユウリ、お手紙ありがとー。…あたし初めてお手紙貰って嬉しかったと。だから、ユウリ会いに来たばい。直接会ってお礼を言いたかったと!!」

 

 

 

 

「本当に、ありがとーね」

 

 

 

 

一息ついてから、あたしはユウリにそう伝えた。…感謝の気持ちを伝えるのは結構恥ずかしかった。

 

 

……上手く笑えているやろか。

 

 

「……ぁ…」

 

ユウリの赤い瞳から、涙が流れる。次から次へと溜まっていた物が、溢れ出すように。

 

「っぁ、ごめん、ユウリ」

 

「ぁ、っその…違うんです」

 

ぽろぽろと、大粒の涙を流しながらゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

 

 

「マリィさんに、会えたのとか」

 

 

 

「っ、ぁ、わたしなんかが、かんしゃ、されるとか」

 

 

 

「ことばに、できない、んですけど」

 

 

 

「もう、いっぱい、うれしくて…!!」

 

 

 

 

涙を拭ってあたしに見せてくれた顔はほんのりと赤く、満面の笑みだった。

 

それを見た瞬間、あたしはユウリを抱きしめていた。

 

 

 

「…あたし、伝えたか事があるったい」

 

 

 

「あたし新米のジムリーダーやけど、なんも実感が無かったとよ。…こんなあたしなんかがやっとってよかったとやろうかって」

 

 

 

「でもユウリのお手紙で自信を持てるようになったと!!」

 

 

 

「ユウリのお陰で、あたしにも人の心を動かせるって事が実感出来たと!!」

 

 

 

「…だから、ユウリ。力になってくれてありがとうね」

 

 

 

ユウリの背中をさすってあげると、あたしに顔を埋めて声を詰まらせて泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

ユウリ。心の中でそっと呟いた。

 

とても感情が豊かで、自分を周りと比べて低く見ている。

 

人の事を思うとても優しい人。

 

 

(…でも、これは)

 

 

あまりにも、可哀想だった。

 

初めて見た時、時が止まったような錯覚に陥った。

 

ユウリだけ色が抜け落ちていて、何も無い様に感じた。

 

何も入っていない、ユウリの世界。空っぽのハコ。

 

そして、今だ。

 

抱きしめてわかった。骨の一つ一つが細く、身体は酷く痩せていて、筋肉がついていない。

 

あたしを抱きしめる力を感じられない。

 

ユウリのお母さんから聞いてはいたけど、ここまで酷いとは思っていなかった。

 

 

 

 

(…ユウリ)

 

 

(…あたしがいっぱい楽しい物を詰め込んだるけん)

 

 

(それで、ユウリのやりたい事を見つけて、あたしがサポートすると!!)

 

 

 

 

 

(そのためにも、ユウリとお友達にならなかんね!!)




泣き描写難しいゾ……(語彙力)

そして書きたいことをそのままぶつけたから違和感がクルシイ…クルシイ…

細かい描写、ふってこーい!!


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3

お気に入りが50件を超えていたので初投稿です(感謝)


ガバ日本語は仕様です(震え声)


あの後、泣き疲れて眠ってしまったユウリをゆっくりとベットに寝かせてその日は帰宅した。

 

抱き抱えた時、あたしでも軽々支えられた。病弱にしても、あまりにもひ弱に感じられた。

 

…どうか神様、ユウリの体調がこれ以上に悪化しませんように。

 

ユウリのお母さんにはとても感謝された。あんなにも素敵な笑顔を見せてくれたのは、久しぶりだと言われた。

 

あまり、感謝されることには慣れてないから恥ずかしかった。…エール団からのは慣れてるのに。

 

…ぐっすりと眠っていたあの時のユウリ寝顔は本当に幸せそうだった。愛おしくて、たまらなくなった。鮮明に思い出せる。

 

でも、今は思い出す必要は無い。

 

(だって、今じっくり見るーけん。本物を見た方がよかと)

 

ユウリを軽く撫でながらじっくりと顔をのぞき込む。

 

あの時とは違って、ただ眠っているだけ。それだけなのに、見ているあたしがとても幸せになってしまっている。

 

(ダメ、あたしが幸せになってどうすると)

 

 

…そうは思っていても、そう簡単に幸せは手放せなくて。

 

 

(…あたしに子供が出来たら、こんな風に感じるんやろうか)

 

そんな事を思っていると、モルペコが大きなあくびをした。顔の半分以上が口になる程のあくび

 

「うらー…」

 

「モルペコ、あんたも眠うなったと?」

 

鳴き声の代わりにあくびで返事をした。ユウリを撫でるのをやめてモルペコの方に向く。目元をこすっていて眠たそうだった。

 

「…じゃああたしが子守唄ば歌っちゃる。ほら、おいで」

 

よたよたと足元がおぼつかない歩き方であたしの膝の上に乗った。と言うよりは倒れ込んできたと言うべきだろう。

 

「…よしよし」

 

左手でユウリ、右手でモルペコを撫でて、深呼吸をする。

 

「――――――」

 

歌う曲は、昔アニキに歌って貰った子守唄。あたしの思い出の曲。染み付いて、心を満たしてくれている。あたしの心に何時もある曲。

 

あたしが寂しくて泣いていた時に歌ってくれた子守唄だ。

 

いつも、歌ってくれる時は優しく撫でてくれた。あたしが寝付くまで、ずっと歌ってくれた。

 

その時のアニキは、いつもより心地よくて。暖かくて。何時までも聞いていたかった。

 

…今は恥ずかしくて言えないけど、本当は今でもずっと聞いていたい曲。

 

…そういえば、モルペコが来てからだっけ。子守唄聞かなくなったのは。

 

(…そう思うと、あたしとモルペコって結構長かばい)

 

ふと、モルペコ方を見ると小さないびきをしていた。注意すれば聞こえてくる可愛らしいいびきで、いつも眠る頃には聞こえてくる音だった。

 

「…モルペコ、いつもありがとー」

 

あたしとずっと一緒に居てくれて。

 

「らー……」

 

寝ぼけているのかわからないけど、モルペコはあたしの方を向いて、ゆるりと笑って鳴いた。

 

(直接言うのは、やっぱり恥ずかしか)

 

「ん…っぅ………」

 

恥ずかしさを誤魔化そうと思い、ふとユウリを見ると、微睡んでいるように見えた。

 

ピッピにんぎょうを手繰り寄せて抱きしめていた。…あたしの腕と一緒に。

 

「……んー?…うで……?」

 

少し時間を置いてから気付いた様で、ゆったりとまぶたを開ける。でも、そのまぶたは重そうだった。

 

ユウリと目が合う。

 

「おはよーユウリ」

 

「…ぁ、えっと、マリィさん?」

 

少し混乱している様で、はてなマークがいっぱい浮かんでいる光景が見えた。

 

「スキあり」

 

ユウリのほっぺを突っつく。あまり弾力感はないけど、触り心地はスベスベで気持ちがいい。

 

「夢じゃなかったんだ…」

 

「まだ、寝ぼけとー?」

 

「違うよ。さっき、夢の中でマリィさんに会ったんだ。…多分、子守唄かな?…すごく安心する歌を歌ってた」

 

にへらと幸せそうな笑顔を浮かべて、顔を赤らめてピッピにんぎょうに顔を埋めていた。

 

「…それに、マリィさんが私に会いに来た事が信じられなくて」

 

まだ夢だったりして、なんて呟いて、あたしの手に頬擦りをした。まだ体温は温くて、目覚めていない様に感じた。とても暖かくて、あたしも少しだけ眠たくなる。

 

「…マリィさん。子守唄歌って欲しいな。…また眠たくなっちゃった」

 

ふわぁという擬音が似合うあくび。とろりとした睡魔にまとわりつかれているユウリ。

 

「ん、わかった」

 

ユウリと手を繋ぐ。あたしの事を実感するようにふっ、と握られた。

 

 

 

 

歌い始めると、ユウリはすぐに眠ってしまった。一定のリズムで寝息が聞こえてくる。

 

 

寝顔は前に見た時とは違った。幸せそうで、愛おしくて、たまらなくて、更に今のユウリは微笑んでいた。

 

 

…ユウリと繋いだ手は強く握られていて、今のユウリと昔のあたしが重なった。

 

 

手を繋いで、アニキと一緒に眠っていた頃のあたし。

 

 

(あの頃は、寂しかったけど)

 

 

(…あたしは、アニキと一緒で幸せやった)

 

 

(…ユウリ)

 

 

(今のユウリは幸せやろうか)

 

 

(…そうやったらよかね)




小さい頃、マリィがネズさん子守唄を歌って貰っていたという独自設定

書いててとても楽しかったです(小声)





(ダンテさんじゃなくてダンデさんだった)


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4

アメリカから初投稿です(おくれてすまんかった)

ちょっと色々忙しくてだな…(テンプレ)

そして今回めっちゃ悩んだ(難産)



そんなことより、アメリカってね、色々大きいの。ってか何でもかんでもでかい。ヒトもモノもメシもハートもでけーの。やばい。

新しい発見が沢山あるな!!(めっちゃたのしい)




今日も今日とてユウリに会いにいく。プレゼントのモルペコにんぎょうを持って。

 

「うららー!!」

 

「そうね、楽しみばいね」

 

今日はユウリにモルペコと合わせてみるつもりだ。

 

今の所、ユウリとモルペコがしっかり顔を合わせたことはない。大体ユウリかモルペコのどちらかが眠ってしまうからだ。

 

きっと、ユウリが見た事があるポケモンはほぼいないと思う。一緒に住んでいるゴンベと、いつも畑にいるスボミー、そして牧場でよく見るウールー。多分、その三匹しか知らないのだろう。

 

だから、新しいことを知ってもらいたい。ユウリだってきっとそう思っているはず。

 

「んみぃー!!」

 

「うらぁー!!」

 

「こんにちはスボミー。今日も元気と?」

 

そう聞いてみると、元気よく返事をしてくれた。

 

玄関前にいるスボミーにだいぶ懐かれてきた。モルペコとも仲が良くて、ここに初めて来た時からずっと友達だ。

 

スボミーにモモンのみをあげると、嬉しそうに食べ始めた。

 

今日はユウリしか家にいない。ふたりっきり。ユウリのお母さんは買い物に出かけているそうだ。

 

「…おじゃまします」

 

扉に手をかけ、家の中に入る。

 

きちんと整理されていて、余計なものを置いていないリビング。テーブルの上にはクッキーとお手紙が置いてあった。

 

《マリィちゃんへ

 

今日も来てくれてありがとう!!

 

クッキーを焼いたから良ければ食べてね!!

 

ユウリママより》

 

可愛らしい丸みを帯びた文字でそう書かれていた。

 

「うらら♪」

 

「あー、もう食べとー?」

 

モルペコに釣られてクッキーを一枚頬張る。

 

口の中にいっぱい広がる甘みとバターの香り、ココアパウダーのほんのりとした苦味。それが綺麗に調和して、とても食べやすいクッキーだった。

 

「…おいしー」

 

モルペコを見るとお口いっぱいに詰め込んでほっぺたが膨らんでいた。…このペースだとすぐに無くなってしまいそうだ。

 

「もーモルペコ、食べ過ぎ」

 

モルペコを抱っこして、クッキーが届かないようにする。少しの間、抗議をしているのか足をバタバタさせてあたしの腕の中から逃れようとしていた。

 

「…クッキーはまた後で。ほら、行くばい」

 

モルペコははっとした顔であたしの顔を見た。

 

(…さては忘れてたと?)

 

モルペコらしいと思いつつユウリの部屋に向かう。プレゼントの包を持って。

 

「……?」

 

部屋からぶつぶつと声が聞こえてくる。…ラジオから声にしては暗いイメージがあった。

 

数回扉をノックする。…返事は無い。

 

名前を呼んでみる。…返事は無い。

 

(…もしかして、寝てるとー?)

 

ゆっくり、起こさないようにして扉を開ける。

 

「…………………………」

 

ユウリが身体をおこして真下を向きながら何かを呟いていた。

 

ピッピにんぎょうを抱き締めながら虚空を見つめているユウリ。何故かはわからないけど、とても怖かった。

 

「ユウリ…?」

 

ユウリの傍で名前を呼んでも反応が無い。表情は無機質で何も感じられない。

 

「ユウリっ!!」

 

「…っ、あ、マリィさん。いらしてたんですね」

 

あたしの事に気が付いたとたん、いつもの表情のユウリに戻った。笑顔で語りかけてくれる幸せそうな表情。あたしによく見せてくれる顔だ。

 

「…?…どうかしましたか?」

 

今のあたしはきっと険しい顔をしているのだろう。心配そうにあたしを見つめてくる。モルペコは不安そうにして、手に擦り寄ってきた。

 

 

「…ねぇユウリ」

 

 

「なんですか、マリィさん…?」

 

 

ユウリはあたしに対して、もしかしたらお母さんに対しても、いつも笑顔でいるのだろう。

 

 

「悩み事があるなら教えて欲しか」

 

 

「……いいんです。私のことなんか」

 

 

…でも、それはきっと本心じゃない。自分を偽っている。そう思った。…そう確信した。

 

 

「…っ、あたし、もっとユウリの力になりたか」

 

 

「…私は大丈夫です。来てくれるだけでも、とっても嬉しいです」

 

 

……ユウリが振り向く時の表情に胸が締め付けられた。何かで歪んだ表情。それを見てしまったからにはもう、見過ごせない。

 

 

「…だからさ、ユウリ」

 

 

「………」

 

 

「もっとあたしを頼り」

 

 

 

 

 

 

 

「…うるさいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしのことなんか、放っておいてよっ!!」

 

 

 

 

 

 

初めての拒絶に思わず言葉を失った。ユウリの表情は怒りと妬みでぐちゃぐちゃになっていた。

 

布団を強く握りしめて、あたしの事を睨む。一旦モルペコにはボールに戻ってもらった。…ごめんねモルペコ。

 

 

 

 

「なんで私なんかに構うの!?」

 

 

 

 

「もう、来ないでっ…!!関わらないで…っ」

 

 

 

 

「私なんかっ、必要とされて無いんだからっ…!!」

 

 

 

 

一瞬、瞳が潤んだような気がした。

 

言葉が詰まってしまいそうになるのを必死にこらえて声をかける。…この状況、どうにかしなきゃ………あたしが踏み込んだからっ………

 

 

 

 

「ゆ、ユウリ」

 

 

 

 

 

「帰ってよっ!!」

 

 

 

 

その言葉が聞こえたと同時にピッピにんぎょうをぶつけられた。

 

 

 

 






























シリアス展開ぶち込みざむらい(展開はやくね?)


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5

アメリカ最終日なので初投稿です(フライトの準備をしたまえ)

またも難産でした(頑張った)

新しい試みをしてみた。うまく表現できてるかこれがわからない。


私は生まれつき身体が弱い。ほかの人と比べ物にならない程に。

 

少し歩けば息切れして歩けなくなる。トイレにも中々行けない。食べ物を一人でうまく食べられない。固形物を人並みに食べてしまえば、消化不良で戻してしまう。咳をすれば、喉が傷付いて血が出る。咳を数回すれば過呼吸になる。

 

どんなに些細なことでも私にとっては害がある。挙げ出したらきりがない。

 

 

 

嫌だ。なんで私が。

 

 

 

それに加えて私はアルビノだった。

 

一般的なアルビノの人は日光対策すれば普通に外を出歩けるみたいだけど、私は違った。

 

 

 

なんで私だけ。皆と一緒に暮らしたい。普通に生きたい。

 

 

私は日光で火傷をする。曇りの日でも皮膚がただれる様な火傷をしてしまう。だから、うちは光がはいってこないようにカーテンとかで遮ってくれている。

 

 

 

私なんか居なければ。 おかあさんだって苦労しない。

 

 

 

…そして、私は光を見ることが出来ない。蛍光灯の明かりで何も見えなくなってしまう。本当に少しの光しか見ることが出来ない。

 

 

 

私には何も無い。

 

 

 

こんな私だから、誰かの助けが無いと生きていけない。誰かの足をひっぱってでしか生きていけない。

 

 

 

私ができることは何も無い。何かをすれば、負担になってしまう。

 

 

 

ベットの上で寝たきりで私が外に出ることは無い。だって必要無い。動かなければ、求めなければ、負担は減る。

 

 

 

何も無い。いつも私はからっぽだ。

 

 

 

私は何も要らない。だって苦しめてばかりだから。

 

 

 

何も、無い。あるのは価値の無い、ちっぽけないのちだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、いっその事、死んで何も無かったことに―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ってよっ!!」

 

 

マリィさんに向かってピッピにんぎょうをぶつけた。

 

 

マリィさんの表情が濁っていく。唇をかみしめて、私を見る。

 

 

私は咄嗟に目を逸らした。

 

 

 

…ごめんなさい。

 

 

 

あぁ、またやってしまった。ホップくんにもやってしまった同じ事を。

 

 

 

だって私に必要無い。マリィさんも私なんか必要無い。

 

 

怒ったかな、呆れたかな、どうだろうね。

 

 

これでまた一つ無くなった。私は一人でいい。何も要らない。

 

 

これも、マリィさんの為。これで、きっとこれでいい。

 

 

 

私なんかが関わっていい存在じゃない。

 

 

 

 

 

…でも

 

 

 

 

ひとりはいや、さびしいよ…

 

 

 

 

たすけてよ、もう無くしたくない…

 

 

 

 

わたし、どうしたらいいの…?わかんないよ……

 

 

 

 

………私を、からっぽにしないで……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぎゅっと何かに包まれたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の中に暖かいものがとくり、とくりと流れてくるのを感じた。微睡みの中にいる様な感覚。

 

不思議とその感覚に覚えがあった。

 

 

そしてゆるやかに流れてくるものが私の中にゆっくりゆっくり貯まっていって、

 

 

 

その暖かいもので私の中がいっぱいになった。

 

 

 

 

「ユウリ、ごめんね。辛かったね」

 

 

「怖かったね、苦しかったよね」

 

 

「…頑張ったね」

 

 

流れてくる暖かいものはマリィさんだった。

 

「…ぁ」

 

マリィさんを認識した瞬間、ほろりと涙が零れた。止めようと思っても止まることはなく、ぽたぽたと雫を落としてしまう。

 

 

「あたしは、ユウリの事が必要ばい。ユウリが、ユウリの事が本当に大切やと思うけん」

 

 

 

「…っで、でも、私が生きてると、迷惑かけちゃいますっ……頼らないと、私何も出来ないんですよっ…」

 

 

 

「頼らないと生きていけん、それの何がいかんと?」

 

 

「あたしだって、いっぱい頼ったと。いろんな人に助けて貰って、今のあたしがいるけん」

 

 

「…だから、ユウリもいっぱい迷惑かけんしゃい。そしたらいろんな楽しかことば全力でやるけん!!」

 

 

 

暖かいものが溢れ出す。心がきゅんとして、ぽかぽかする。

 

 

「っどうして、そんなにもやさしいんですか…っ」

 

 

「…ユウリに幸せになって欲しいばい。ブティックで服買ったり、ポケモンと触れあったり、いろんな事を知って欲しか!!」

 

 

 

 

あぁ、やっと私はからっぽじゃ無くなった。だって、こんなにも、溢れるほど、暖かくて。

 

 

 

 

 

 

 

心の中でマリィさん、と呟く。

 

 

私の憧れの人で、私の事を思っていてくれる人。

 

 

心でマリィさん、と呟く度に胸いっぱいに広がる暖かいもの。

 

 

 

 

 

 

 

「…私、マリィさんと居ると、すごく暖かい気持ちになるんです。すごく心地よくて、手離したくない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の言葉を聞いたマリィさんはにっこりと笑ってから私にこう言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それがきっと《幸せ》ばい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッピにんぎょうをぶつけられたとき、何も考えられなくなってしまった。

 

ユウリに喜んで欲しくて、幸せになって欲しくて、沢山の事を考えていた。

 

それが、全部無くなった様に感じた。

 

取り返しのつかないことしたって思った。

 

…傷付けてしまったって思った。

 

でも、それは違った。すぐに気付いた。

 

だって、ユウリの心が泣いていたから。

 

ユウリが自分自身を押さえつけてあたしに、ユウリのおかあさんに心配させないようにしていたんだ。

 

 

 

 

きっと、これで良かったんだ、あたしのした事は。ユウリの心の枷を取り払うことが出来たから。幸せを噛み締めれるようになったから。

 

 

 

 

 

 

 

その日から、ユウリの笑顔が心做しか増えたような気がした。

 

 




書き終えた感想


…最終回かな?(錯乱)

これで締めたらスッキリ終われるね!!

でもまだまだこれからなんじゃ(まかせろ)



てぇてぇ書くのムズい…ムズくない?


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6

日にちが空いてしまったので初投稿です。

いろんな作品のアイデアが浮かんでくるけど原作を知らなかったりで設定だけがもりもり増えていく病気にかかりました(震え声)


一人で貯めておいても腐らせてしまうだけので、設定とか触りの部分だけ置いて他の方のインスピレーションを高めれるような場所を作ろうと思ってます(宣伝)

がっこうぐらしRTAとかダンまち勘違いモノとか書きたいけど情報が足りない(原作未視聴)





難産でした()



「じゃあ、よろしくお願いします。マリィさん、モルペコ」

 

「ん、ユウリも無理はしないで」

 

「うらあ!!」

 

日が暮れて月が登る。雲一つない空をオンバットが飛んでいた。

 

そろそろ晩御飯時で美味しそうな匂いが漂い始める頃、あたしとユウリはブラッシータウンのブティックに向かおうとしていた。

 

と言うのも、ユウリから行きたいと言う要望があったから。あたしと一緒に服を見たいって言ってた。

 

ユウリからの初めてのお願い。あたしはとっても嬉しかった。

 

(ユウリ、やっとあたしを頼ってくれたけん)

 

横目でユウリを見つめる。大きく息をしながらゆっくりと歩いているユウリ。

 

一歩一歩は小さいけど、きっとユウリとっては大きな歩なのだろう。

 

おぼつかないユウリの身体を支えながらゆっくり、ゆっくりと歩いていく。…本当は、歩かせる予定では無かったけどユウリに自分の足で歩きたい。と言われてしまった。

 

(ユウリも、きっと変わろうとしとーんよね。…あたしがいっぱいいっぱいエールを送るけん!!)

 

「っ……ぅ……」

 

喘ぎながらも、一歩ずつ慎重に歩いていくユウリ。額には汗が滲んでいる。足は震えていて、あたしにもたれる力が強くなっていく。

 

…とても苦しそうだ。

 

「…ユウリ、大丈夫?休憩すると?」

 

「っ…うん……ごめんね、っ…そう、する」

 

悔しそうな表情を浮かべて倒れる様にあたしに抱きついた。

 

あたしはそーっとユウリをあたしの膝の上に座らせた。あたしにもたれかかって、身体を震わせて苦しそうに呼吸をしている。

 

ユウリの家を出て、すぐ下にあるハロンタウンの看板の手前に座った。…体力が無いとは聞いてはいたけど、予想以上だった。…本当に深刻なんだと、改めて実感した。

 

胸がきゅっと締め付けた様に苦しくなった。

 

(でも、ユウリの方が辛かと……あたしが打ちひしがれとる場合じゃないと!!)

 

ふと、ユウリの顔を見ると酷く落ち込んでいた。顔色も少し悪い様に見えた。

 

「うららー」

 

心配そうにユウリの顔を覗き込むモルペコ。不安でいっぱいなのかあたしの手を掴んで離さない。

 

「…っごめんね、マリィ、モルペコ……けほっ…けほ…」

 

「大丈夫と、気にしんといて。ユウリのペースでゆっくりいくばい」

 

軽くむせてしまっていたので優しく背中を叩いてあげた。少し楽になった様で安心した。

 

 

 

 

ユウリに深呼吸をするよう促してその様子を見守る。

 

その間もモルペコは不安そうであたしから離れようとしなかった。

 

モルペコの頭を撫でてあげると、少し不安が和らいだのかユウリの手を抱き締めていた。元気づける様に笑顔で。

 

 

 

(あたしもよくこうやってモルペコに心配されとったなぁ)

 

 

昔のあたしはずっとモルペコと一緒だった。アニキがジムの用事で居ない時の遊び相手だった。

 

 

一緒においかけっこをしたり、泥まみれで遊んだり。

 

 

ご飯を食べたり、寝たり、何をするにしてもモルペコと一緒だった。

 

 

モルペコと居れば寂しさは紛らわせた。だってとっても楽しかったから。

 

 

でも、どうしても寂しくなって、泣いていた時。モルペコが笑顔であたしの手を握ってくれた。

 

 

あたしが泣いた日は、親が子供を寝かしつける様に優しく寄り添ってくれた。

 

 

身体はとても小さいけど、あたしにとっては心強い家族だった。

 

 

(ま、今はモルペコの方が甘えん坊さんやけど)

 

 

五分ぐらい過ぎた頃だろうか、ようやく落ち着いてきた様で、だんだんと呼吸がととのってきた。

 

「ユウリ、落ち着いた?」

 

「…うん」

 

「…うらー?」

 

でも、ユウリの顔色は優れない。モルペコもそれを見抜いたのか、心配そうにユウリを見つめていた。

 

「…ごめんね、久しぶりに外に出たのと、マリィさん達と一緒にお出かけ出来るって思ったら、頑張らなきゃって…」

 

また私のせいで、と小さく呟いて俯いた。

 

「…えい」

 

軽くユウリのおでこを小突くと、うへ、と言う声を漏らしてあたしを見つめてくる。

 

「無理はしないで、ってさっき言った。ユウリのペースでよかっちゃん!!あたしは大丈夫やけん、もっと頼りんしゃい!!」

 

だって、もうユウリは頑張ってる。今まで挑戦してなかった事をやっているから。それも、自分で決断して。

 

はじめの一歩を踏み出す。それは簡単な事じゃない。

 

 

(あたしだったら出来とらんかった。ジムリーダーだって、アニキに、エール団の皆に、背中を押されてようやっと決断出来たんやけん)

 

 

「…ユウリ、焦らんでもええんよ。あたしはユウリを見捨てたりなんかしない」

 

「……マリィさん、本当にありがとう」

 

ユウリの瞳が少しだけ潤む。ぐっと堪えて、涙を流さないようにしていた。

 

「…でも今日は辞めておこうと思うの。私がこの調子じゃマリィもモルペコも楽しめないだろうから……」

 

あたしの目を見て、ユウリはそう言った。気遣いの言葉。

 

 

「…何より、私の体力が無いから……」

 

 

「…これから頑張ればいいけん。そしたら一緒に行くばい!!ブティック以外にも!!いろんな所に!!」

 

 

 

「…っ!!はいっ!!」

 

 

 

その返事は今日一番明るく、満面の笑顔だった。

 

 




たった2000文字程度を1ヶ月以上かける人が居るみたいですよ?(震え声)

他の作品考えてる暇があればこの小説に専念すればいいんだよなぁ…(なおモチベ)

完結まで失踪はしないとはいえ遅いと思いました(反省)

(ただ忙しくなって行くだろうから更に不定期になると思われ)


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日記1

お待たせしました(閑話)

…こっそり投稿しても、バレへんか(初投稿です)

課題の波ととあるもの影響されて迷走していました()

迷走した辺りは完結後に出そうと思ってます。

(本編のストックは一つだけあります近いうちに投稿します)



今回は、1話より前の出来事です。





@月#日

 

マリィさん、という私と変わらない女の子の事をラジオで聞いた。お兄さんの跡を継いだ新米のジムリーダーさんで、とってもしっかりしていて街の皆から愛されているらしい。

 

相棒はモルペコ?という子でマリィさんが小さい頃からずっと一緒に居るポケモンみたい。…テレビが見れないから、どんなポケモンなのかはわからない。

 

マリィさんとモルペコのコンビネーションは抜群で、アップテンポな試合で場を掻き乱して流れをこちら側に持っていくスタイルらしい。…よくわからないけど、きっと凄い事なんだと思う。マリィさんのお兄さんのネズさんが嬉しそうにラジオ番組で言っていた。

 

それ以外にもマリィさんについての色々なことを語っていた。幼少期から、今になるまでの幅広い事。

 

…途中マリィさんが乱入して番組どころではなくなってたのが一番印象に残っている。

 

それでもネズさんは楽しそうに語り続けていたのが印象に残っている。エール団?って言う人達も一緒になって盛り上っていた。

 

…でも、それだけ皆がマリィさんの事が大好きでマリィさん皆の事が大好きなんだろうなぁ……

 

そういった皆からの気持ちに答えるために、今開催しているトーナメント戦で猛威をふるっているそうだ。

 

…機会があったら聞いてみようかな。マリィさん試合中継。

 

…今の私には出来ない事だ。

 

…すごいなぁ……私も元気だったら、普通だったら、あんなふうに活躍出来たかな…?

 

…私の分まで頑張って欲しいなぁ。私なんかより、マリィさんが輝ける方が嬉しいなぁ……

 

 

 

@月%日

 

今日はお母さんにマリィさんの事を聞いてみた。

 

マリィと聞いて、何かを思い出したのか暫くの間思い出そうと唸っていたお母さんの顔が面白かった。

 

どうやら丁度マリィさんのリーグカードをご近所さんから貰っていたらしい。マリィさんのファンで、布教をしているとか。不思議な人だなぁ。

 

お母さんがマリィさんのカードを私に見せてくれた。

 

他の人はポーズとかしているのに、マリィさんは無表情で棒立ちの写真。

 

でも、これがマリィさんなんだろうなぁ…

 

 

 

 

@月&日

 

たい ちょ う わる い

 

 

 

@月-日

 

二日間寝込んだ。むせて血を吐いた。呼吸器も久しぶりに付けた。

 

横になっているのも辛くて、何度ももどした。

 

ベットとか服とかいっぱい汚してしまった。

 

ごめんなさい、おかあさん。心配かけて、ごめんなさい。

 

頑張って毎日、日記を書こうと思ってたのに。

 

やっぱり、私って何も出来ないんだ。

 

 

 

@月=日

 

昨日はネガティブな事を書いてしまったから消した。

 

良いことしか書かないって決めてたのに。

 

 

 

今日はマリィさんの試合中継を聞けた。サイトウさん?との準々決勝の試合。

 

実況は大体マリィさんが一枚上手と言っていた。聞いてもどんな状況か解らなかった。

 

でも、マリィさんが楽しんでいるということはわかった。

 

実況でも語られていたほどだったから。イキイキとした表情だったらしい。

 

でもマリィさんリーグカードの写真は無表情だったから、楽しそうな姿は想像出来なかった。

 

マリィさんの笑顔、少しだけ見てみたいかな。

 

 

 

 

@月/日

 

 

久しぶりの外出をした。行先は病院、定期検診だ。

 

他の人より身体が一段と弱いから、いつも夜遅くに病院へ向かう。光も苦手だから布に包まって街頭の光が当たらないようにする。

 

 

病院では体調崩した後の経過観察も見てもらった。もどしすぎたからか喉に炎症があって、炎症を抑えるための薬を貰った。

 

先生に会いに行きたい人に会いに行ってもいいか聞いたら、難しいって言ってた。

 

…わかっていたけど、ちょっと辛いかな。

 

 

 

 

@月:日

 

マリィさんの試合中継を聞いた。準優勝だった。相手はお隣さん。チャンピオンになっているなんて知らなかった。

 

…やっぱり何がどうなっているのかはわからないけど白熱した試合だったことはわかった。

 

中継越しから聞こえてくる応援歌。胸が熱くなって一緒に口ずさんでマリィさん応援していた。どこに居てもこの曲のお陰で応援している人達とひとつになれた気がした。

 

日記を書きながら口ずさんでいる。少し楽しい。

 

叶うことはないと思うけど、いつか応援しに行きたいな。

 

 

 

お母さんがレターセットをくれた。会いにいくのは難しいかもしれないけど、お手紙なら。って。

 

多分、昨日先生に聞いていた事を覚えててくれた。

 

ありがとうお母さん。

 

 

 

でも、何を書けばいいんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 




改めて毎日投稿をされている方々を尊敬しました。頭が上がりません(震え声)

それに文字数書ける人も強い(確信)




完結までは、絶対に逃げないっ!!


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7

ポケマスが1周年なので初投稿です。(8/26二次創作日刊76位でしたありがとうございます(土下座))



9/10のリーリエに備えてリリース開始時からため続けたダイヤが火を吹くぜ(120000ダイヤ)



所で剣盾キャラ追加まだー?




「迎えにきたよ、ユウリ」

 

「こんばんはマリィさん。モルペコも」

 

今日のユウリは白のキャスケットを目印にグレーのニットパーカー。中に白のリボンワンピースを着込んでいる。

 

ユウリが選んだまだオーバーグラスは付けてはいない。

 

「ユウリ、眩しくなかか?」

 

「うん、まだ大丈夫。ありがとう」

 

(……光に弱からしいばってん、無理せんごとしてほしか)

 

何かあれば、すぐに助けれるようにはしてある。

 

 

(……でもやっぱり、あたしの目に狂いはなかったけんね)

 

ユウリの服装は、あたしと一緒に選んだ服装。ブティックに買いに行けなかったあの日。ユウリと一緒にカタログを小一時間にらめっこして決めた。

 

 

「ユウリ、よう似合っとるね。……ばりあいらしか…」

 

 

「…っ!?」

 

 

顔を真っ赤に染めて目を逸らしたユウリ。あたしの頬が自然と緩むのを感じた。……ユウリと一緒におると、自然に笑えるような気がする。

 

モルペコがユウリの足元に駆けよっていき、ひょこひょこと跳ねまわった。ジムリーダーのお仕事や取材でここ最近は会いにいけてなかったからかモルペコは嬉しそうだ。

 

 

「うらー!!」

 

「わわ、モルペコ。元気だった?」

 

「もーモルペコ、ユウリが困っとーやろ」

 

 

(…まぁ、あたしも嬉しかばってんね)

 

 

いつもよりおめかしに時間をかけたのはユウリには内緒だ。

 

 

「じゃあマリィさん、今度こそよろしくお願いします」

 

 

ユウリと会うのは一緒出かけようとしたあの日以来。少しだけ不安を覚える。

 

「…本当に大丈夫と?」

 

「うん、この日の為に頑張ってリハビリしたから」

 

マリィさんが頑張ってること知ってるから、私も頑張ったんだ!!と嬉しそうに話してくれる。…恥ずかしか……

 

手を繋いでゆっくりと進む。…あの日と違って自分の力で歩けている。一歩一歩呼吸を整えながら、確実に。

 

 

「……すごい」

 

 

ユウリの表情は真剣で、あたしの声は聞こえていなさそうだった。モルペコも後ろから着いてきて、ユウリの事を応援している。

 

ハロンタウンの夜は静かで、風に揺られて草木が擦れる音と遠くから聞こえてくるホーホーの鳴き声ぐらいしか聞こえてこない。

 

ちょっと前のスパイクタウンなら、アニキのライブで騒がしくなってくる時間帯だ。…今は多分あたしの事について話し合っているはずだ。……アニキが主体になって。

 

ジムリーダーになったあたしをどうやって補佐していくかの話し合いらしい。…でも、この間たまたま聞こえてきたあたしの彼氏?についての話には、思わず耳を傾けた。

 

なんか、どこの馬の骨〜とかマリィには早い〜とかようわからん事を話しとったっけ。

 

その時のアニキは魂が抜けたように、ばり落ち込んどったなぁ……

 

 

 

 

「マリィさん、私行きたい所があるんです」

 

 

森の中に入って、少し休憩をしてからユウリはそう言った。

 

 

「行きたい所?どこ行きたかと?」

 

「ここの一番奥に行きたいんです。…まどろみのもりは私が今ほど貧弱じゃなかった頃、お隣さんに連れられて来た所なんです」

 

 

お隣さん……?ホップのことやろうか?…ホップならありえそうやね……

 

 

「結局その時は一番奥にたどり着く前に霧が深くなって、途中で戻らざるを得なくなって」

 

 

何処か懐かしいそうな表情だった。…きっと数少ない思い出の一つだから……?

 

少しだけ、胸が痛くなった。

 

 

「後々、まどろみのもりの事を調べたんです。それでも何も出てこなくて」

 

「だから、一度でいいから見てみたいって思ったんです。……でも、今日は難しいかな………」

 

 

これだけの距離、歩いただけなのに。と自嘲が混じった笑でひっそり呟いたのが聞こえた。

 

 

「……ユウリっ」

 

 

あたしは、思わず抱きしめてしまった。ユウリも優しく抱き返してくれる。…やっぱり、抱きしめられる感覚はなくて……その腕は細かった。

 

「……マリィさん、聞こえてました…?……ごめんなさい。…っ私、言うつもりはなかったのに……」

 

……暫く抱きあってから、ユウリはぽつりぽつりと話し始めた。

 

 

「…やっぱり私、辛いんです。手伝って貰っても、何も出来ない事が。……それなのに、私、わがままなんて言って」

 

 

「……何も、出来ない癖に……何も、返せない癖にっ」

 

 

心做しかユウリの抱きしめる力が強くなる。ふとユウリを見ると、涙が頬をつたっているのがわかった。

 

「…ユウリ。それは違うっ」

 

……まだ、ユウリは不安定だ。だから、あたしが手を引っ張ってあげんと………

 

「前にも言ったやろ、頼らな生きていけんって」

 

色々な人達の助けを借りて、あたしは生きている。どんなに些細なことでも、力を借りている。モルペコにだって。

 

「…でもっ」

 

…ユウリは一人でいることが多かったから、ユウリ自身を除いて考えてしまう癖がついている。

 

自分がやりたいからでは無く、相手がどう思うかで行動をしている様な気がする。

 

 

「ユウリ、あたしはユウリからいっぱい貰った物があるんよ?……こうやってユウリとゆっくり話す時間とかだってそう」

 

「ユウリと過ごす時間、あたしにとってばり大切ばい!!」

 

…いつまでも、ユウリと一緒におれたらいいのに。

 

「…あたし、ユウリと一緒におることが出来て、ばり幸せよ」

 

「っ!?」

 

その言葉を聞いたユウリが顔を真っ赤にして目線だけ逸らした。……今のあたしも、まっかっかやろなぁ。

 

…言わんときゃよかった。ばり恥ずかしか………目が合わせれん……鼓動の音が普段より大きく聞こえる。……ドキドキが止まらないっ……

 

 

少し落ち着けるよう、軽く深呼吸をしてからユウリと目を合わせて話す。

 

「…ユウリにも出来ることはあるっ」

 

「それって…」

 

あたしはユウリから貰ったファンレターを取り出す。今のあたしの大切な、大切な宝物だ。

 

「ユウリのお陰でね、あたしは勇気を貰ったけん。それに、あたしがユウリに会うきっかけにもなったやろ?」

 

 

純粋な思いは、人の助けになる。あたしはユウリの純粋な思いに力を貰った。

 

 

「こうやって、気持ちを伝えること。ユウリは上手ばい!!」

 

 

言葉を素直に伝えられる力は、きっと皆を幸せにする事が出来る。その力をユウリは持っている。

 

 

「………っ、そう、なのかな……」

 

 

険しい表情で不安げに呟くユウリ。納得出来ていない様だ。…やっぱり、根づいてしまった負の感情は簡単には振り解けない。……ユウリなら尚更だ。

 

 

「…ねぇ、ユウリ。お願いがあるんよ」

 

 

ユウリなら、また溜め込んでしまいそうだ。自分の価値を下げる考えをしてしまうだろう。

 

 

…それならあたしは、言葉でユウリを動かすっ。あたしは、ユウリに前を向いて欲しいっ!!ユウリなら、出来るって教えたか!!

 

 

 

 

「…あたしを、応援してほしか」

 

 

 

 

 

「…私になんか出来ません………それにエール団さん達の応援の方が……」

 

 

ユウリの手を両手で握る。目線を合わせて、ユウリの言葉を遮る。

 

 

「…嫌。あたしは、ユウリの応援が、いい」

 

 

「それに、ユウリなら大丈夫。きっと出来る。別に失敗したって、あたしはそれが嬉しいんよ。……だって、ユウリの応援やけん」

 

ユウリの応援で百人力ばい!!と言うと、何だか照れくさそうにしていた。

 

 

(これで少しだけでもユウリが前向きになってくれたら、あたしはばり嬉しか!!)

 

 

 

 

 

 

休憩を取りながらあたしは暫くエール団とのエピソードを話していると、ユウリがふと、考えて事をしている事に気がついた。

 

「ユウリ?どうしたと?」

 

「…マリィさんのお家です。ふと、気になって……」

 

心做しか、ユウリの顔が赤くなったような気がした。多分、気のせいだろう。

 

…あたしの家、か。ユウリがそう思ってくれとってばりうれしかよ!!

 

…でも。やっぱり気になるのはユウリの体調面だ。ハロンタウンからスパイクタウンまではかなり離れている。

 

「…うん。あたしも誘いたかったんよ。でも、結構距離があるけん。……タクシー、乗れると?」

 

もし行くなら、空を飛んで向かうことになる。気温も低く、揺れも激しいタクシーではユウリが弱ってしまいそうで。

 

「…なら私っ、もっと頑張るっ。リハビリして、マリィさんのお家でお泊まりしたいっ」

 

「一人で歩ける様になって、マリィさんと一緒に居たいっ」

 

「…そっか。ありがとね、ユウリ。……でも、無理はせんようにね?わかっとる?」

 

今日見せてくれた一番の笑顔でユウリは返事をしてくれた。不思議と曇が晴れて言った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ふと、考える。

 

 

(……ユウリは、どれだけ努力したんやろうか)

 

 

歩くこと。あたし達には普通のことだけど、ユウリは違う。誰かの手を借りなできんこと。

 

あたしとしては、もっと頼ってほしかったけれど。

 

でもユウリはそれをよう思わんかった。前にユウリのおか

あさんが言っていたことを思い出す。

 

 

 

 

―――ユウリはね。マリィちゃんと対等になりたいのよ。身体が弱いから、気を使わせちゃうのが嫌みたいで。

 

―――……実はマリィちゃんが初めてなのよ。ユウリの事を親身になって考えてくれた子って。…ありがとねぇ。

 

―――ユウリはね、マリィちゃんと一緒にいろんなところに行きたいって。その為にも一人で出来ることを増やさなきゃいけないって言ってて。

 

―――前にはなかった、生きる気力が。マリィちゃんのお陰で…………

 

―――だから、ユウリを応援してあげて。きっと、ユウリも……………

 

 

 

 

……多分、果てしない道なはずだ。それでも、ユウリはその道を歩んでいる。

 

頑張ってとは、言わない。きっと、ユウリは嫌がるから。

 

なら、あたしに出来ることはユウリのそばに居てあげること。

 

それだけだ。

 

 








あと2、3話は近いうちに更新できるかも(するとは言っていない)


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8

超絶ひかえめ勘違いギャグ回なので初投稿です(ユウリ不在)



(遅れましたが、UA10000突破&評価者10人突破&評価バー色つき本当にありがとうございます)

(しょーもない文章力ですが、これからもどうかよろしくお願いします(感想書いて♡))









モルペコを抱っこしながら、アニキの元に行く。モルペコは相変わらずきのみを片手に歌を歌っていた。ユウリのお陰か、最近はいつもごきげんだ。

 

 

「ねぇアニキ。ちょっとウチに連れてきたか子が居るんやけど」

 

 

ライブ用の機材を手入れしているアニキに相談を持ちかける。連れてきたい子はもちろんユウリ。

 

この間、ユウリからこっちに遊びに行ってもいいかと言う連絡が来た。最近のユウリの様子を見ていると、かなり成長していた。一人でなら食事も出来るようになる程に。ユウリの努力が、実ったんだ。

 

それなら、あたしはユウリの努力に、希望に答えたい。そう思って、エール団の皆に協力して貰おうとアニキに声をかけた。

 

「…マリィ、その子はファンレターの子ですか?」

 

「うん、そうやけど」

 

アニキにはユウリの事をあまり伝えてはいない。あたしに初めてのファンレターをくれたことと、あたしにとっての大切な人っていうことしか伝えてない。

 

断られはしないだろうけど、難色を示されたらユウリの事を話すつもりだ。

 

「…向こうから、お願いされたのですか?」

 

「…お願いされたけど、あたしも来て欲しかったけん。やっぱり、こげな事は初めてやけん」

 

(ユウリもあたしもこうやって遊ぶことはあんまりなかったけん、ばり楽しみばい!!)

 

あたしがそう言った次の瞬間。どんがらがっしゃーん!!とド派手な効果音をつけてアニキはぶっ倒れた。

 

「!?」

 

ライブ用の機材がアニキに降り注ぐ。

 

「アニキっ!?誰かー!!アニキがー………?」

 

助けを呼ぼうと周りをふと見ると、エール団の皆も倒れていた。中にはダイイングメッセージを残すものまで。

 

 

(何が起きとーと!?あたし、何か悪いことしてもーたと!?)

 

 

「…うらー」

 

 

どうしよう。どうしよう。と慌てふためいていると、モルペコが足を引っ張ってきた。どうやらこっちに来いと言っている様だ。

 

箱が積み上がってる物陰で待機を命じられて、そのままモルペコは阿鼻叫喚になっている場所へかけて行って。

 

 

 

 

 

 

「うー…………ら゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁあ゙あ゙あ゙!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

モルペコは、特大の雷をぶっぱなした。(モルペコのスパーキングギガボルト!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

阿鼻叫喚だったこの場は、モルペコのお陰で収束した。(焦げ付いているけど)皆も落ち着きを取り戻して本題に入る前に、あたしはアニキに問いかけた。

 

 

「…んで、なしてアニキはぶっ倒れたと?…なんかあたし、悪いことでもしてもうた?」

 

 

「……あぁ………マリィにもついに彼氏が出来て、大人として1歩を踏み出すと……」

 

 

燃え尽きたボクサーの様なオーラを漂わせながら、アニキは呟いた。アニキの周りで励ましているエール団もいれば、さっきの様に倒れているエール団もいる。……それにしても彼氏……?

 

 

「アニキ?彼氏って何のことと?……そう言えば、こん前馬の骨〜とか何とか言ってたっちゃんね?」

 

 

その言葉と同時に、一斉に皆の顔が上がって、目が合う。

 

(い、一体何と?)

 

 

「……マリィ、ファンレターの子ってどんな子です?」

 

 

「…?えっと、ユウリはひ弱だばってん、ばりあいらしゅうて、あたしの、大事な支えばい!!」

 

 

(沢山は語らんけど、誰よりもユウリが好いとーけん)

 

 

言葉でうまく伝えられないかも知れないけど、簡潔にあたしは伝えたかった。

 

 

「…あぁ、なんですか。女の子でしたか。無駄な心配をしてましたね」

 

 

アニキとエール団の皆が復活した。よく分からないけど、なんだかアニキ達の後ろに花畑が見える。あくタイプなのに。

 

 

「ktkr!!」 「いいぞ、もっとやれ」 「てぇてぇ……」 「ぐふっ…(吐血)」 「うっ(心停止)」 「やば、すこ……」 「…私、もう死んでもいいや」 「バカ、これを見届けてからにしろ!!」

 

 

(……なんかさっきよりも酷いことになっとらん?)

 

 

転がって悶える者、涙を流しながら喜ぶ者、胸を掴んだまま静止した者などとさっきの倍ぐらいの阿鼻叫喚。

 

 

「アニキ、もう大丈夫と?」

 

 

後ろでの騒ぎを見ないふりをしてアニキに声をかけた。

 

「えぇ、もうすっかり。……所で、オレたちに出来ることはありますか?マリィの事です、多分頼みたいことがあるでしょう?」

 

(…やっぱり、おみとおし。あたしの自慢のアニキやね!!)

 

不思議と少しだけ嬉しくなった。

 

 

「うん、ユウリに何かあるといけないけん、色々準備をしておいてほしか。もちろん、あたしも手伝うばい」

 

 

やる事をまとめたメモをアニキに手渡す。多くはないけど少なくもない量のやる事リスト。アニキは暫く眺めてから、あたしに向けて口を開いた。

 

「…確か、ユウリでしたね?…身体はどれくらい弱いのです?」

 

「………最近はようやく一人でご飯が食べるーようになった。…けど、初めてあった頃はベットで寝たきり」

 

忘れることは無いあの時のユウリ。…もしあたしと出会えてなかったらと考えると心がきゅっと痛む。

 

「…わかりました。あいつらにも伝えておきます。いざと言う時はあいつらにも頼りなさい。マリィの為なら、きっと力を貸してくれます」

 

(…アニキはやっぱり頼りになるけん)

 

 

「…アニキ、ありがとー」

 

 

ユウリのお陰で、気持ちを伝える大切さを知れた。だからあたしは、アニキにありがとうを伝える。…恥ずかしくて顔を見て言えなかったけど。

 

 

「…わ」

 

 

アニキに頭を撫でられる。ぶっきらぼうだけど、優しさが詰まった大きな手のひらで、昔の事を思い出した。

 

(…やっぱり、アニキは暖かい)

 

今度、アニキに子守唄を歌ってもらおう。そう決意した。

 

 

「当然です。妹に頼られてそれを聞かないアニキがどこにいますか」

 

 

また、頼ってください。オレも嬉しいですから。そうアニキは言って、エール団に指示を出し始めた。さっきまでの騒ぎは何処へやら、アニキの指示を真剣に聞いていた。

 

 

 

「あぁ、あとマリィ。1つ言いそびれてた事が」

 

 

「…?」

 

 

「さっきのマリィ。凄く上手に笑えてましたよ。1人前の笑顔です」

 

 

 

 

 

「もちろん!!だってユウリのお陰やけん!!」

 

 

 

 

 










百合の間に挟まる男だけは生かして返すな(過激派)

所でネズさんの口調難しい…難しくない?


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9

お泊まり編突入!!のエピローグです。よろしくな!!


夜も更けて家の明かりが消え始めた頃、あたしはユウリをタクシーで迎えに来ていた。おじさんの相棒のアーマーガアは落ち着きがあって、安定感があった。

 

これならユウリに負担は掛かりにくいだろう。

 

「ほいよ!!ここで良かったかい?」

 

空から降り立って、ユウリの家の前にゆっくりと着地する。

 

「うん。おじさん、ちょっとまってて」

 

今日は前から予定していたユウリとのお泊まりの日だ。その準備にアニキとエール団が色々手伝ってくれた。

 

スパイクタウンは埃っぽいから、まず最初に大掃除をした。すると、あっちこっちに出てくるきのみの山。それは、野生のモルペコが集めてきたもので、時々きのみに埋もれたまま眠るモルペコが居てとても可愛かったのを覚えている。

 

そのきのみの山は、野生のモルペコ達に皆で調理してから振る舞った。スパイクタウンの入口を塞ぐほどのきのみの山があっという間に無くなっていく光景は圧巻だった。

 

モルペコ以外のポケモンも美味しそうに食べていて、ちょっとだけ嬉しかった。

 

 

次に取り掛かった事は、光源の調整だった。皆にユウリの目の事を話すと、喜んで協力してくれた。いつもなら、ネオンでギラギラしていたのが、少し大人しめの光量になって新鮮な光景になっていた。

 

…その時に気付いたけど、何故かあたしを模したネオンが作られてあった。結構古びていた。……いつからあったと…?

 

後は、日光対策様に屋根を補強したり、大きなカーテン用意して、昼間に入る日光の量を極力減らせるようにした。

 

(…ユウリの体調にもよるけど、お昼からお散歩はしてみたいけん。…あたしの秘密の場所もあるし)

 

他にも沢山やった。…スパイクタウンにいる間だけでも、普通に暮らして欲しかったから。

 

(…本当にアニキ達には感謝せんとね。…今度お菓子でも作ろ)

 

皆の事で思いを巡らせていると、ユウリの家の扉が開いて、ユウリとお母さんが出てきた。

 

「えへへ、マリィさん。お誘いありがとうございますっ!!まさか、お泊まりまで出来るとは思ってなくて!!私、とっても嬉しいですっ!!」

 

いつにも増して元気なユウリと向かいあって手を繋ぐ。口角が上がり続けているユウリを見て、心が満たされていく。

 

「うん!!あたしもばり嬉しか!!」

 

(…こんなに元気なユウリの姿。……羽目を外しすぎて体調を崩さないか不安けん)

 

悪くなったらすぐにでも助けられるように準備はバッチリだ。…この準備が無駄になってくれる事が一番嬉しい。

 

 

「マリィちゃん、本当にありがとね。言葉だけだと足りないかもしれないけど、本当に…ありがとうっ」

 

 

ユウリのお母さんが深々と頭を下げた。……ユウリのこんなにも元気な姿。ここ最近は見たことがないだろうから、少しだけ声が震えている。

 

 

「…いえ、あたしからも言わせてください。…ありがとうございます。…ユウリが明るくなれたのも、お母さんが支えてくれたお陰ですから」

 

 

そう言うと、お母さんは泣き始めてしまった。

 

 

「…マ、マリィさん……恥ずかしいですっ…ほ、ほらお母さん、泣かないで」

 

 

ユウリがお母さんを抱きしめる。…前までならユウリからは抱きしめれなかったはずだ。

 

少しの間、抱き合ってからお母さんは見送ってくれた。送る時に何も言わなかったのは、もしかしたらあたしを信用してくれているからかもしれない。

 

(そう思ってくれとるかわからんけど、あたしは期待に応えるばい!!)

 

 

「お嬢ちゃん、出発するか?」

 

「……ちょっと、怖いです。…タクシーに乗るのが初めてで」

 

ブランケットを羽織ってユウリはあたしの手を握る。心做しか握る手は震えている。

 

「おじさんのアーマーガアはばり頼もしか!!…それに、あたしが居るやけん安心しんしゃい!!」

 

しっかり手を握り返してユウリに伝える。

 

「…そうですね、マリィさんが居れば安心ですっ」

 

ユウリも少し落ち着いた様なのでスパイクタウンまで、とタクシーのおじさんにあたしはそう伝えた。

 

 

「よし!!任せな嬢ちゃん達!!そらとぶタクシーの名に恥じぬ快適な空の旅をお届けするぜ!!…いくぞ、アーマーガア!!」

 

「……がぁ!!」

 

 

アーマーガアが鳴いた瞬間、空に飛び上がる感覚が走る。握られる手が強くなったのでふとユウリを見ると、目をぎゅっと目をつぶっていた。

 

 

「…ま、マリィさん……だ、抱きついてもいいですか…?」

 

「うん。おいで、ユウリ」

 

 

そう言うと、すぐに飛びついてきた。ユウリの鼓動が早く波をうっているのを感じる。

 

……いつもなら事ある毎に抱きついているはずなのに、わざわざ許可をとってきた。……ちょっと刺激が強かったかもしれない。

 

でも、この間のまどろみのもりの時と比べると少しだけ筋肉がついている様な気がする。抱きしめる力もだいぶ強くなっている。

 

(…もしかしたら、お散歩ぐらいは気軽に出来るごとなるかもしれんね)

 

あたしに抱きついてからもずっと目をつぶっているユウリを撫でながらそう思った。

 

 

「…ほら、ユウリ。ユウリの家がもうあげんにも小さくなっとーよ?」

 

 

ユウリの家を指さしていると、ユウリは恐る恐る目を開き始めた。…少し、抱きつく力が強くなった。

 

「っ、ホントだ。私の家、空から見るとあんな感じなんだ…」

 

 

《そうだろ、白いお嬢ちゃん。空ってのは今まで見ていた物がまた違って見えるんだ。新鮮だろ?》

 

 

タクシー内に取り付けられている通信機から、おじさんの声が聞こえてきた。

 

「はいっ!!」

 

高らかに返事をするユウリ。さっきとは打って変わって覗き込む様に大地を見下ろしている。

 

 

《…空はな、何かを考える時にはうってつけの場所なんだ。ウチの嫁さんと喧嘩した時はよくコイツと空に来るんだ》

 

アーマーガアががぁと鳴く。嬉しそうな声色だ。

 

《喧嘩した時はムシャクシャしてるんだけどよ、空に来るとスッと冴えて俺が悪かったかなってなるんだよ。…それですぐに帰って仲直りするんだ》

 

ユウリは楽しそうに話を聞いている。…ユウリにとっては何もかも初めてだからだろう。

 

(…って言っても、あたしも楽しか)

 

暫く、おじさんとのたわいも無い会話が続いたあと、ふとおじさんはユウリに質問を投げかけた。

 

 

《…なぁ、白いお嬢ちゃん。なんか悩んでるだろ?》

 

「っ、そんなこと、ないです」

 

言葉に詰まるユウリ。あたしと目が合わなくなった。

 

《…おじさんな、長い事この仕事をやってるから分かっちまうんだよ。こういう感じの子はほっとけなくてな》

 

ひゅうひゅうという風の音だけが聞こえる。アーマーガアが風を切る音だろう。

 

…暫くして、ユウリは呟いた。

 

 

「…私、身体が弱いから迷惑をかけてないか心配なんです。…何も、出来ないから」

 

 

それは、ユウリが抱える大きな悩みで、ユウリが努力を始めたきっかけとも言える思いだった。

 

幼い頃からのコンプレックスは、根を張ってしまっている。

 

 

《…そうだな、白いお嬢ちゃん。見方を変えてみな。それはお嬢ちゃんが相手の事を心から思えるってことだ。昔から出来てた事だろ?》

 

 

それを聞いたユウリは、はっとする。長年のもやもやが晴れていく。そんな表情だった。

 

 

「…そっか。私にも、出来るんだ。私にも」

 

 

《そうだ。…別に出来なくてもいいんだぜ。それが人それぞれの良さってもんだからな》

 

 

ぷつんと通信が切れる音が聞こえて、また静寂が流れる。ふと、ユウリを見ると涙をほろほろと流していた。

 

何も言わずにあたしは抱きしめる。ユウリの心のしこりがほぐれていく感覚が伝わってくる。

 

 

 

「っ…マリィさんっ……私、本当は死にたくて死にたくてしょうがなかったんですっ」

 

 

 

「…何も出来ない私が居るせいでみんなの足枷になってるって、生きてる価値が無いと思ったからっ」

 

 

 

「でも、こんな私にも出来てた事があったんですねっ……」

 

 

 

「うん!!他にも出来ること、ユウリには沢山あるばい。こうやって、一緒に遊べる様にもなったっちゃんね!!」

 

 

 

 

「っマリィさん、私、生きててもいいんですか……?」

 

 

 

 

「うんっ、ユウリはあたしの大切な、大切な人ばい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おじさん「うおおおおおおおおお!!!!!!恥ずかしいいいいいいいいいいい!!!!!」

これ以降は幸せたっぷりシリアスナシナシの予定(未定)

百合の間に挟まるおじさんじゃないようにはしたはず……したはず……(不安)




(ワンパターン…ワンパターンじゃない?(震え声))


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