ゴブリンスレイヤーRTA 狂戦士チャート (花咲爺)
しおりを挟む

狂戦士1

二番煎じではありますが初投稿です。


 注意事項

 

(ラスト・ダンサー兄貴に触発されてやったんでタイムは求めて)ないです。

(TRPG自体やったこと)ないです。

(ホモ要素は)ないです。

 

 はーい、よーいスタート(棒)

 

 

 

 ままえやろでゴリ押すRTA、はーじまーるよー。

 

 cv梅原裕一郎とcv小倉唯の2重奏からなる素晴らしいタイトルコールを途中で切って迷うことなくニューゲームを選択したらタイマースタート!

 本RTAは偉大なる先駆者ラスト・ダンサー兄貴のレギュレーションを使用したもので、トロフィー【小鬼殺し3号】を取得と同時にタイマーストップとなります。

 

 さっそく出てくるキャラクリ画面です。ここでもたもたしてるとタイムがアーイキソ…

 ではまず性別ですがここでは迷わず男を選択しましょう。理由はラスト兄貴のRTA見てください(ダイマ)

 

 一応理由を説明すると女は割と頻繁に犯されるからです。ゴブリン、トロル、野盗にごろつき、取り敢えず野蛮そうなの全部から尻を狙われます。今回は特に小鬼、ゴブリンから犯される確率が高くなります。

 魔神王を倒すくらいの冒険者でも昔のトラウマで立てなくなるくらい小鬼に犯されるともう気が狂う程、ヤバいんじゃ。

 ブサ小男の乱交リョナレイプなんて異常性癖兄貴以外誰も求めてないって、それ一番言われてるから。

 

 続いてステータス設定。

 種族ですが私は森人(エルフ)を選択します。安定性重視で只人(ヒューム)も良いんですが、私はロマンが好きなのでこちらです。

 実際ほぼ確実に弓の扱いと森での種族恩恵補正が掛かるから実はいろんな場面に重宝する種族です。

 

 見た目の方は一応RTAなのでデフォルトの1を選択。でもデフォルトでもガッツリ美形なのが頭に来ますよー。

 

 続きましては経歴設定。冒険者になる前は何してたん、自分?ってやつですね。

 これには経歴ボーナスがついていて、最初の仕度金が増えたり筋力が増えたりあの有名なフロムソフトウェアの死にゲーよろしく色々とあるんですが、物語始まってからの方が上下激しいんで一部を除いて正直あんまりうま味が少ないです。

 で、ここで私が選ぶのはその旨味がある部類である出自「狩人」、来歴「放蕩」、邂逅「親友」の3つです。

 

 まず出自を狩人にしたのは森人を選んだ場合、斥候になるにしても弓手になるにしても弓矢技能がないと森人にした意味が薄いんですよね。

 ですのでここで弓矢技能を自動取得できる狩人を選択しました。

 

 次に来歴の放蕩なんですがこれ、仕度金が減らされる代わりにランダムで技能を取得できます。ぶっ壊れかよとお思いの方ご安心を、ちゃんとデメリットついてます。

 デメリットの内容は酒、娼婦、ギャンブルが関わることにマイナス補正がかかるようになるくらいです。まあこれはストレス値を溜めない立ち回りをして寄り道しなければ基本的に関わらないのでそんなに留意しなくても良いですかね。あと支度金が減ります(重要)

 

 そして邂逅親友ですが困ったときに助けてもらえるイベントが挿入される可能性(・・・)があります。あくまで可能性というところがポイントですが、どうやら隠し要素で放蕩を選んでおくとイベント挿入の可能性がかなり上がるようです。

 この仕様、開発者からの放蕩してた時の友達は大切とかのメッセージなんですかねぇ…んにゃぴ、よくわかんないです。放蕩歴がある方、コメントよろしくお願いします(露骨なコメ稼ぎ)

 

 さてさて、肝心の技能ですが…お!「信仰心」を得ましたね。これは女神官ちゃんみたいに職業【神官】、またその派生形でなくても奇跡を扱えるようになる技能です。本編進めてるうちに託宣聞いたり、世界の神秘に触れたりしてたまに手に入ることもあるんでこれも技能なんですねぇ。

 序盤ではレベルも上がってないので嘆願回数は基本的に一回固定ですが内容はこの場合だとランダムになります。

 

 今回は…「狂奔(ルナティック)」!…「狂奔」!!?

 

 これ、本編の小鬼聖騎士(ゴブリンパラディン)の奇跡やんけぇ!!!覚知神の信徒とか、やべぇよやべぇよ…

 一応【狂奔】の効果ですが自分含め仲間に大幅な筋力補正が掛かる変わり、命中判定が落ちて攻撃が当たりにくくなります。運ゲガバが出ない人なら当たりの奇跡です。これはどっかの神からの挑戦状かぁ?(運ゲして❤)

 これで属性が混沌になりましたが、ルート的にはバリバリ秩序なので混沌にして善とか、闇と光が合わさり最強に見えますね。でも内実は狂戦士(バーサーカー)ですよ狂戦士。

 

 しかし格好いいのでままえやろ、プレイキャラはやはり厨二に限るという事で続行します。

 

 にしてもこいつ狩人だったけど酒とギャンブルに溺れて最終的に外なる神に救われたから冒険者やるとか、中々とんでもないことになってますね。四方世界の邪教徒になる理由に合致してて笑えません。まあ蜥蜴僧侶さんも位階高めて竜になるために異教徒と強い奴ぶっ殺すのが目的ですし、ままえやろ。

 

 さあ続いて基本ステータス決定です。原作然りゴブスレは基本ステータスを固定値かダイスロールで決定します。森人のステータスは筋力、体力以外が高水準なのでいつもは固定値なんですが、今回見どころさんがありそうなダイスロールで決めます。ダイスロールでも上記の二つ以外は技量や俊敏が下手な只人よりも高くなるので期待大です。

 とは言っても正直見どころさんは奇跡使える所で割と確保できてるんで割とどうでもい…

 

 ファッ!!?筋力最高値!?

 

 森人なのに蜥蜴人並みの筋力とか、こいつヤバすぎぃ!!しかも何故か他のステータスに比べて技量と知力が低めです。弓矢技能はあるので仕事はしてくれると思うんですが、これってマジで狂戦士ルート行けってことなんですかねぇ…もうこの子には筋力ブッパの弓も使える戦闘職の方で括約してもらいましょうか…芦名絶対守るマンかな?

 あ、そうだ(唐突)自分の場合プレイスキルでカバーできるほど履修してないんでガバは見どころさんとして楽しんでもらうことになります(最重要)

 

 最後に職業はポイントを…どうしましょう、こんな場合を想定してなかったのでちょっと悩みます。まあ普通に【斥候】にポイントを2振っておきます。種族補正も相まってこんなガバステでもある程度の対応ができるようになります。こんなのいくらあっても困ることはありません。

 後は…迷いましたが【戦士】にポイントを振って防御と攻撃の底上げを図りましょう。このステだと近接でもいけそうですから切った張ったの大立ち回りをしてもらいます。

 

 技能は無難に【弓矢】と【無骨】を選択。【弓矢】技能は狩人の方で自動取得されていますがダイスロールでちょっと不安な目が出てしまったので保険で上げておきます。【無骨】の方は筋力、敏捷ステに対して補正、近接戦闘の場合出目にも補正がが掛かります。ようは腕っぷしが上がる技能と考えてください。

 これで近距離も遠距離もイける両刀使い(予定)の完成です。

 

 続いて名前入力ですが私は【疾走狂戦士】と名付けることにします。

 ホモにしても良いんですが森人となるとむしろBLの方になりそうなのと先駆者リスペクトで自キャラに疾走をつけさせていただくことにしています。

 

 最後に冒険者になった動機と経緯の設定に行きましょう。こちらはステータスには影響しないので簡単なフレーバーテキストを、じゃけん自動で決めていきましょうねぇ~。

 

 上の森人として森を守っていた職務に忠実な狩人であったが、外部から酒とギャンブルと言った娯楽要素が転がり込み放蕩、その後神からの天啓を受けて冒険者に。

 …ちょっとストーリーとしては36…普通だな!ここまででもうpart1にしてはお腹いっぱいになるくらい見どころさんがゲットできたのでままえやろ。

 キャラ作成は終了です。

 

 さて、スキップ不可の世界観説明ムービーの間、本RTAの概要について、お話します。

 

 本RTAでは先駆者兄貴と同様王道の小鬼殺しルートを走らさせてもらいます。原作準拠のストーリーを追体験するルートで、知っている人ならば分かると思いますが危険度もかなり高めのルートです。普通にやってたら味方もポンポン死にます。

 まあ、どうしようもなくなったら救済措置のゴブスレさんに頼るのでどんなガバプレイしても何とかなるでしょう(フラグ)完走するのが大事だって、それ一番言われてるから。

 

 

 

 さて、ムービーも終わり、操作可能になりましたが最初はギルドへ行かずに工房へ直行です。理由は…君自身の目で確かめろ(先駆者兄貴を見てください)

 

 工房に入ったらまずダガー、ハードレザーアーマー、ロングボウと矢を15本ほど購入しましょう。今回は出自が放蕩なので仕度金が通常銀貨100枚に対し60枚とそれなりに少なく、費用は一銭も無駄にすることは出来ません。

 幸運技能があればここに来る前に金を拾うとかもあったりするんですがないものねだりをしても仕方がありません、ちょっと少なめですが今回は我慢しましょう。装備はちゃんと装備しないと効果がないのですぐさま装備です。

 

 続いて治療の水薬(ヒールポーション)購入。工房の主人に無理を言って買います。先駆者兄貴はここで毒消しの方も買っていましたが金が少ないので今回は治療の水薬一本のみです。

 狂戦士君は遠距離攻撃が多くなるので治療の水薬のみでもなんとかなります、なんとかします(ガバ)

 

 保険として買うだけなんで買わないのもありですがやっぱり不安なので私は買いました。しかし今思い返すと女神官ちゃんがいるので買うとしても毒消しの方が有用でしたね。既にここでガバるとか幸先不安だゾ…これはチャートにちゃーんと書いておきましょう(激ウマギャル)

 あと冒険者セットは初期装備なので買わないようにしましょう(1敗)

 

 結局残りは銀貨1枚、ハードレザーアーマーのお陰で結構減りました。やっぱり仕度金は大事ですね。一応これでも宿には泊まれますが諸経費が少々不安…ですがこれから依頼を受けますし、ままえやろ。

 

 さて装備も整ったのでギルドへ行きます。カウンターで冒険者登録をしますが、ここで音声入力を選択すると手動で打ち込むよりも私の場合は早くなります。活舌悪いとガバですがここは一発成功、認識票を受け取ったら一旦待ちましょう。

 受付嬢から溝浚いや巨大ネズミ等の依頼を斡旋されますが考え中を選択。これから少々暇な時間にはなりますがかといって依頼を受けてしまうとゴブスレさんとの出会いが遅くなりロスです。

 

 一定時間ロビーで王都に悪魔(デーモン)が現れただの、膂力上げる為にはどうすりゃいいかなだのとチュートリアルめいたNPC達の会話を聞きながらうろつくと女神官ちゃんが冒険者登録を始めます。

 見るものが単調でつまらない、み な さ ま の た め に ぃ ー、彼女の解説を行うことにしましょう。

 

 彼女は女神官ちゃん、15歳になり神殿から出て人助けの為に冒険者登録に来たとっても可愛い職業【神官】の女の子です。これ元ネタがドラクエの僧侶だったんだぜ?そう言われてみると法衣の帽子部分になんとなくあの魔物の面影を感じますねぇ。

 戻りまして、彼女の人間性は聖女並であることは周知の事実ではありますが耐久は法衣のみの紙装甲、身体能力もほぼ一般人並みでとても小鬼に近づけるようなものではないです。しかし彼女の真価は奇跡によるサポートによって発揮されます。

 出自【神官】で初期ポイントを全振りしたことによって神官レベルは既に3、さらに来歴が【神殿】なので神学技能を保持していてこの時点で原作ではお馴染みの奇跡、聖光(ホーリーライト)、そしていまいち使わせてもらえてない小癒(ヒール)を覚えている上それらを3回まで嘆願できるのです。序盤のヒーラーとしてはかなり能力が高い部類なんですよね。

 

 ちなみにこのゲームには周回プレイが存在しているんですがプレイキャラの技能持ち越しをし、尚且つ前の周回でゴブスレさんが死んでいた場合彼女が金等級まで超強化された修羅モードなる状態で出現します。

 あまりやり込んでいない自分ですが前に面白半分で登場させて戦ってみたらメインストーリーを終わらせるくらいのキャラがものの3ターンで死にました。バフを盛って脳死特攻したとはいえ女神官ちゃん、マジで強くないっすか?人食い鬼(オーガ)を単独討伐する技量は、はえー、すっごい。

 

 女神官ちゃんの登録が終わったのを確認したら剣士パーティーから声がかかる前にまず話しかけます。選択肢は無難に行きましょう。森人を選んでいるので女性に対しては種族技能の【美貌】がかかり、少しだけ交渉が有利になってるのでよほどの返答をしなければ大丈夫です。

 君のパンツとか、見せてもらえるかな?とか言わない限りは、ね?(2敗)基本的に下の選択肢を選んだ方が早いんですが絶妙なタイミングでこの選択肢が出てきます。これ選んじゃうととバッドステータスとして変態が追加され、昇給審査を受けにくくなります。

 なんでこんな選択肢があるんですか?(憤怒)女神官ちゃんの恥ずかしがるグラフィックが絶妙にセクシー、エロいッ以外に選ぶメリットは、ないです。

 ある程度会話を進めていると横から例の剣士君が小鬼退治の同行を持ち掛けてくるのでこれを受けて小鬼殺しルートの建築が出来ます。

 

 受付で受注の意を伝えると少し心配されますが人数5人いるし、ヘーキヘーキ。時間の無駄なので【美貌】を利用して会話を切りあげましょう。

 準備イベントは先に済ませることでスキップしたので、いざ小鬼の巣穴へ、イクゾー!

 

 移動中に音MADでも仕込めれば一流のRTA走者になれますがそこまでの腕前が無いので私は倍速です。

 倍速にしてもそこそこ暇になってしまいます。

 

 み な さ ま の た め に ぃ ー

 

 この小鬼退治について解説しましょう。

 最初のクエストとなるこれは初見殺し要素強めで、序盤の最難関ポイントです(11敗)

 いきなりゴブリンの上位種である田舎者(ホブ)呪術師(シャーマン)が固定で配置されるうえ、横穴を見逃したりすると不意打ちと原作より多い数の責めで死亡します。初見プレイヤーならコントローラーを投げ出すレベルで難しく、全員生存とかを目指すとなるとある程度慣れた人でも難しいです。むしろ女神官ちゃんまでもが殺されるときもあるので注意一瞬ガバ一生になって来る再走案件製造機になるんだなー、これが。

 

 しかし慎重に行けば腕のあるなし関係なくある程度はなんとかなります、ですがこれはRTA、コンマ数秒を争う戦い、引くことは許されません。しかしこの一党だとほぼ確実にクエストクリア不可能。なのでゴブスレさんとの邂逅をする必要があるんですが、ここでゴブスレさんと会うために時間経過か一定数のゴブリン撃破が必要になって来ます。

 私が選ぶのはモロチン後者ですが、これが中々…難しいねんな…完璧な動きをしないと割と危ないです。取り合えずガバが4ターン以上出ない内には終わらせられるように頑張りましょう。それで最低でも3人以上は生き残ります(無事とはいってない)当然のことながら無策に突っ込みまくると全滅な上女性陣が犯される映像が流れます。NTRとレイプが苦手な私にはかなりの刺激です、精神壊れちゃーう!

 

 さて解説してたらちょうど巣に到着しました。

 入り口にあるトーテムに対して皆?マークを浮かべていますが駆け出し故に何か分かってないようですね。1600歳の狂戦士君さえもどうやら知らないようです。おい引きこもりィ!

 呪物じゃないならままえやろ精神で突入しちゃいます。

 

 洞窟内は只人プレイ等ではマジでゲーム内設定で明るさ調整してないと画面の詳細が分からないくらいには暗いです。しかしここは森人の【暗視】が輝きます。これで松明などの灯りを確保しなくても画面がくっきり見えますね。プレイキャラの種族によって画面の見えやすさにまで工夫がされてるとか今作の面白い所です。

 さらに鉱人(ドワーフ)や蜥蜴人でプレイすると今度は視点がちょっと上下するとかの要素もあります。開発者の努力方向、コレガワカラナイ。まあ結局今回は他の人が松明を使うんですけどねー、初見さん。ついでに俺もつけるか暴力ッ

 

 光源は弓使用を考えると女神官ちゃんか女魔術師に持ってもらうのが良いんですが今回は女魔術師に持ってもらうことにしましょう。どっちも後衛かつ紙装甲ですが、女神官ちゃんの方が石突き付きの錫杖を持っているので振り回してヒットすれば木製の杖よりもダメージを出してくれます。

 ちなみにこの一党の配置は剣士、武闘家、狂戦士くん、魔術師、神官の順で進むように設定してます。ちょうど真ん中にいるのは弓矢技能のお陰で前にも後ろにもかなりの精度で弓が届くからですね。殺り残しはしないとはいえ後ろから来ることも考えるとこれが一番良いです。

 

 加えて森人は耳が良いので横穴をスルーする心配もありません。横穴に潜むゴブリンをこ↑こ↓と指示して剣士君の長剣で突いてもらいしょう、何故剣士君に突いてもらうのかは狂戦士君の装備でお察しください。遠距離と超近距離意外だとこいつまだ激よわなんですよ。刃渡りがクッソ短いので壁ぶちぬくより剣士君の剣でブスリ♂した方が早くなります。失敗すると不意打ち失敗判定で反撃される場合もあるので急ガバ回れです。

 DARKSOULSみてーなことしてんなお前のRTA。

 

 しばらく進むと再びトーテムが出現し、それに気を取られた後衛を置いて剣士と武闘家が先に行ってしまうイベントが発生します。これは進行上強制されるイベントですがここまでの道中で剣士君の好感度を上げているとちょっとだけ気にかけてくれてくれるようになります。デレかな?

 まあ「先に行くゾ」の一言言ってくれるだけなんですけどね。しかしそれでも1ターンは待ってくれるのでその間に横穴に潜んでいるゴブリンをさっくりと殺しましょう。このイベントの横穴は土でカモフラージュして隠れているのではなくただ岩肌の暗がりに潜んでいるだけなのでダガー持ちの狂戦士君の攻撃でも確定で死にます。すぐさま横穴のゴブリンを倒したら正面に向いて湧いてきたゴブリンに対処です。

 前に行った連中もこっちの戦闘音に気づいて駆けつけてくれるとうま味なんですがどうも向こうにもゴブリンたちが群がり始めたみたいですね…急ぎましょう。まずは、お前の汚い顔面を吹っ飛ばしてやるYO!!

 出てきたゴブリンは3体、その内2体が短剣持ち、1体が弓持ちですね。これは…根じゃなを塗りたくってるのは右ゴブだけです。

 

 ここでイキリトすると普通に毒喰らって一転ピンチになるので安全に弓を撃ってもらいまえ”ぇ”ッ!!?(PRGS)

 この距離で外すとか、うっそだろお前!!?しかもジャンピング突きをガッツリ喰らいました、アカンこれじゃ患者が死ぬぅ!!患者が死ぬねんこんな所でッ!あぶあぶあぶあぶあっぶねぇええええ!!短剣がレザーアーマーの方に刺さってくれました。取り合えずカウンターでゴブリンの顔面を壁に叩きつけ、もう一体の方には筋力を活かして鉄の鏃をぶち込みます。

 そこで後ろの女魔術師が恐慌して一発【火矢(ファイアボルト)】を撃ちましたがちょっとピンチだったのでこれはむしろありがたいですね。最後はどうせゴブスレさんが助けてくれますし、ままえやろ。

 

 と、一瞬気を緩めてしまいましたがすぐさま前の方に増援に向かいます。もう剣士君がミンチにされる寸前でヤベェーイ。早くしろ、早くするんだ!

 ふぅ、何ともタイミング良く剣士君が洞窟に剣を引っ掛けて取り落とした所で介入できました。

 

 ホントシビア過ぎて泣きたくなりますよー。後1ターンでも遅かったらゴブリンチが開始されるところでした。剣士君を助けると退治後会話イベントが挿入され、多少長くなりますが私の心の平穏の為にここは助かってもらいます。

 小鬼王(ゴブリンロード)戦時に戦力になってくれるのでうま味がないわけでもないから、多少はね?

 

 では毒にやられた剣士君を女神官ちゃんに任せ、プッツン状態の女武闘家・女魔術師と共闘します。

 ここからがオリチャーですが既にゴブスレさん到着フラグは達成済みです。あとは弓持ちを女魔術師の火矢や狂戦士君の弓でいるだけ減らし、田舎者の顔に矢を撃ち込んだら女武闘家の手を引いて逃げましょう。ただクリティカル判定でも出さない限り顔の脂肪とか生命力の関係で矢を1回ぶっ刺した程度では田舎者はほぼ死にません。タフすぎぃ!

 手を引くときに我を忘れた女武闘家が抵抗してきますが狂戦士君の筋力の前では逆らえません。ジュージューになるまでやるからなぁおい。

 今回は追手としてゴブリンが4体襲ってきました。正直遠距離持ちがいない為さしたる脅威はありません。でも一応無いわけではない投石に気を付けましょう。そしてしばらく手を引いて落ち着いたころで武闘家を離し、体力が切れた女魔術師を今度はお米様抱っこで担いで逃げます。

 ホントに今回は筋力様様です、あ”ぁー助かったー。

 では急いで来た道を戻りましょう。

 

 狂戦士君の疲労度がゴリゴリ伸びたところで松明の灯りと共に、満を持してゴブスレさんが登場してくれました。この人こそ原作ゴブリンスレイヤーの主人公、ゴブリンスレイヤーさんです。

 金臭さ消しで薄汚れた鎧、角折れ兜から出る赤い眼光には正直痺れます、うーん、カッコいい。元ネタからして私は好きでした(隙自語)

 

 既に剣士君が治療を施されたのか横たわっていますね、無事そうで何より。すれ違いざまに既に臨戦態勢だったゴブスレさんがすぐさま戦闘を始めてくれました。やっぱりゴブスレさんは頼りになります。

 

 あとは女魔術師を降ろし、武闘家ちゃんが剣士君を介抱し始めたら狂戦士君も攻撃に参加します。しかし色々と頑張ったせいで疲労が蓄積し、満足な動きが出来ないので今回は弓で対処してもらいましょう。流石は種族:森人と【弓矢】技能、この状態でも弓は当ててくれます。むしろさっきのは致命的失敗(ファンブル)すぎました。

 

 追ってきたゴブリンを全滅させたらあとはゴブスレさんに同行して巣のゴブリンを皆殺しにしましょう。ゴブスレさんに気を取られているゴブリンに対して弓をバンバン乱射して仕留め、時々接近してきた個体はダガーで頭からぶっ刺します。ゴブスレさんに注目してくれてるんで疲労状態でもギリ大丈夫です。

 

 まだまだ元気、モーリモリな女神官ちゃんを連れ、奥の大部屋にいる連中へ聖光の目眩ましと共に攻撃戦です。呪術師にゴブスレさんが槍の投擲をしたのと同時に顔面に矢を撃ち込んで殺し、ついでに入り口付近にいたゴブリンの喉をかき切ります。

 田舎者のほうが狂戦士君を確認するや激昂して追ってくるのですぐさま退いて仕掛けていたワイヤートラップまで下がると、今度は女神官ちゃんがすっころびました。

 これは狂戦士君の疲労のせいで対応できないのでまず味、と思ったらゴブスレさんが腕を掴んで向き直させて聖光を浴びせました、流石だぁ。

 

 聖光が追いかけてきたホブに見事に直撃、ワイヤートラップに足を取られて転倒したところをゴブスレさんが延髄ごと断ち切りました。難所はもう越えたのでここからはもう消化試合になります。

 ガソリンをつけたホブ転がしを行って3体ほど延焼を起こしたら、残ったゴブリンとまるで知ってたかのように玉座裏に潜んでいた小ゴブリンを殺して終了。じゃけんちょっと可愛い小ゴブリン虐殺の強制イベは10倍速しましょうねー。

 

 ぬわぁああん疲れたもぉおおおん!!いやー、きつかったっすねー今日はー、すげーキツかったゾー。矢が尽きてダガーが刃こぼれと血脂のせいで杭としてしか使えなくなってます。クォレハ買い替え必須ですね。

 当初はゴブスレさんよろしく武器替えしながら戦うのも視野に入れてはいたんですけども、疲労度のおっさん(73)、熟練値のにーちゃん(0)、PSガバガバのワシ(21)の3コンボ重複は、いやー、きついっす。

 結果はガバが多数ありましたけど、なんとかなりました。タイムは…ナオキです。ただ皆無事だしままえやろ、平和が一番、ラブアンドピース!愛だよ愛。村長に報告を挟んでこれにてクエストは本当に完了です。結果を見れば60点くらいはあげてもええんちゃう?

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 




取り合えず勢いだけで投稿したので設定的にもTRPG的にも間違ってるところが多々あるとは思いますが優しいホモの兄ちゃん達は感想欄の方で指摘してくれると思います(他力本願寺)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士1裏

ようやく納得がいくのを書けたので初投稿です

1/5 内容をそこそこ変えました。お楽しみいただければ幸いです。


 春とは、多くの新人冒険者がギルドへ来る(ゲームが始まる)季節である。

 

 そう先輩から言われたのは、果たしていつ頃であったかと三つ編みの受付嬢は長いため息を吐いた。

 兎にも角にも仕事が多いのだ。普段の仕事に村から出てくる字もままならない新人の登録、暖かくなってきた為か増えだす無頼漢に対する注意喚起・対応、昇給審査までやらねばならず仕事は山積み。

 しかしどんなに仕事で疲れていても営業スマイルを崩さなくなったのは彼女が熟練者(ベテラン)になったことの証だった。

 冒険者さん達みたいに私も成長してるってことでしょうか?とこの5年間変わらない顔ぶれを思い浮かべ、薄汚れた兜が脳裏に通った所で彼女の口元が自然と綻ぶ。

 そうしながらも手を緩めぬように書類の束を紐解いては振り分ける等していた最中、彼女の目の前にはいつのまにか笹葉のような長耳で美しくロングヘアがたなびく森人が現れていた。辺境のこの町に純粋な森人が訪れるとはそれなりに珍しいことである。

 

「ようこそ冒険者ギルドへ!本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

「冒険者登録をしに来たんだ」

 

 なんと、冒険者登録だった。確かに外套で少し見えにくかったが弓に、短剣、皮鎧が見て取れる。まだ新しい装備に身を包む姿はそこらの新人冒険者と同じで言い方は悪いが少々安っぽい。しかし、それでも布の服よりは大分マシな出で立ちで、動く姿には何やら武芸の経験を積んでいるような気がするのもたしかだ。

 

「字はお書きになれますか?」

 

「すまないね、読みは出来ても共通語(コイネー)にはまだまだ疎いんだ。書いてもらえるかな?」

 

「かしこまりました、少々代筆料は頂きますが、ではお名前から…」

 

 カラカラと何処か幼げな顔からこれまた爽やかな声を聴きながら職業、名前、技能等言われた言葉をスラスラと受付嬢は登録シートへと写していき、最後に血判と代筆料を貰い受ける代わりに白磁等級の認識票を渡す。

 

「助かるよ」

 

 少々高慢な者が多い森人にしては腰が随分と低い。それがこの森人に対して受付嬢が抱いた印象だった。

 身に着けている装備は小奇麗なものが多く見受けられ、新人であることは彼女にも分かったが雰囲気はどうにも大人っぽい。

 しかし、何故普段は森に籠っているはずの森人が冒険者に…雰囲気は特に何でもないがなにか不和でもあったのかと勘繰ってしまう。そういった輩には何かしらかの問題が起こりうるので注意は欠かせないのである。

 だが幼さを残しながらもきっとたくさんの事を経験したのであろう顔を見ているとそんな気は起こらなかった。

 仕事も進めなければいけませんし、自分は奇跡を使えないから考えても仕方ない。奇跡を使えるあの子は今休憩中だ。

 まあ、何事にも例外はあるのでしょうと彼女はそこで思考を締めくくる。

 

「いえいえ、業務ですので。では冒険者登録はこれで完了ですが、今後の予定はございますか?駆け出しの方には下水道関連の仕事をお勧めしているのですが…」

 

「まだ考え中さ、単独(ソロ)では少々不安でね」

 

「分かりました。ではまたご用件がありましたらお伺いください」

 

 そうさせてもらうよ~と間延びした声で森人は張り出された依頼に群がる人混みへとフラフラと混じって溶け込んでいった。

 今ある依頼をざっと見るつもりなのだろうか、右から左、上から下へとその視線を動かしているのを見るに様々な考えを巡らせているのだろう。ろくな準備も無しに依頼を一人で受けようとするような人ではないようだ。

 さて、私も他の仕事を片付けなければと彼女は頬をぴしゃりと叩き、熱い紅茶を流し込んで目を覚ますと新たに現れた新人冒険者へと意識を向けた。

 

「ようこそ冒険者ギルドへ!本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

 

 

 ―――――――――

 

 

 

「君、さっき冒険者登録をしてた子だよね?身なりからして神官さんだよね、今後の予定は決まったかい?」

 

「ヒャウッ、えっと、私ですか?わぁ、ま、まだです…ハイ」

 

 突然後ろから風が吹くかのような囁きを受け振り返ると、女神官はその人並外れた美貌に思わず声を漏らした。彼女の記憶が正しければ確か自分の4つほど手前で冒険者登録をしていた人だ。

 後ろからしか見ていなかったがしばらくして耳を見て彼女はようやく森人なのだと納得した。

 

「そっか、実は僕もでさ~、託宣(ハンドアウト)を受けてここまで来たは良いんだけどさっきから神様がうんともすんとも言わなくなっちゃって、しょうがないからフラフラしてたんだ」

「託宣…ですか?」

 

 地母神を奉じる彼女にとって託宣とは聞き捨てならない。高位の神職や、選ばれし者にしか神は啓示を与えないのだから。

 託宣は未だ神の言葉を聞くこともままならない女神官にとってある種憧れの様な体験の一つなのである。

 

「うん、ちょっと前から声を掛けてくれる神様がいるんだけど、また別の声に君は冒険者になるといいって言われてね。名前も聞いた事無いし、おそらく外なる神(邪神)の類だとは思っているんだけどこれが色んな事を教えてくれるもんでさ~」

 

 時々良い知恵をくれるからありがたがっているんだよ。

 そう言う森人の綻ぶ顔に女神官は少し見惚れる。しかし、しかしだ。通常、託宣は選ばれた者にのみ起こる。しかし、二柱の神から託宣を受けているとはどういうことだろうか。しかも口振りからするにかなり頻繁にである。そしてその内一柱は確実に邪神とか大丈夫だろうか?

 もしかして、私を生贄にでもする気じゃ…と彼女は何か怪しげな儀式の供物にされている自分を想像して身震いをした。

 

「信じてる神はほぼ混沌だけど僕が志してるのは秩序だから最近は疾走狂戦士って名乗ってるのさ、どうだい?中々カッコいいでしょ」

 

「は…はぁ…そうなんですか?」

 

「ハハハハ、ちょっと異文化だったかな?」

 

 まだ志したばっかりだからな~と笑う顔は純粋なもので特に邪気は感じられない。ただの気さくな森人で、きっと杞憂だろうと彼女は不安を打ち消すことにした。

 あまり世俗を知らないままに冒険者となった、神殿あがりの少女にしてはよく頑張った方である。

 そのまま話を聞いていくと疾走狂戦士と名乗る彼は女神官と一党(パーティー)を組みたくて話しかけたらしい。正直自分一人では碌に怪物退治も出来ない身では確かに願ったり叶ったりな話だった。

 

「なぁ、君たち新人だろ?」 

 

「は、はい!」

「そうだよ」

 

「なら丁度いい!今からゴブリン退治に行くんだけどちょっと人手が足りなくて。良かったら君たちも来てくれないか?」

 

 そんな彼女たちへ横から声を掛けて来たのは同じ駆け出しであろう3人組、首からは彼女らと同じく白磁のプレートが垂れている。

 

 傷一つない長剣を背中に背負った党目(リーダー)の青年剣士、その幼馴染だという女武闘家、目つきはキツイが頼りになりそうな女魔術師達の話によるとどうやら近隣の村娘がゴブリンに攫われたので依頼が出されたらしい。

 元々神殿を出て冒険者の助けとなりたかった女神官はそれは早く助けなきゃね、と乗り気な狂戦士と共に、迷うことなく青年剣士の話に乗ってゴブリン退治へと赴くことになった。

 それが、少しの恐怖体験(トラウマ)を残すものになるとは彼女は露とも知らなかった。

 

 

 ―――――――

 

 

 近隣とは言っても西洋の近隣の意味は広い。道はそこそこの距離となり、冒険者稼業の代名詞「歩き」を要求された。

 そしてそんな時間を無言で過ごすのは少年少女には辛いものであり、道すがら初めての依頼で浮足立った一党はいつかは竜を、そして財宝を!と言った和気あいあいとした様々な話をすることとなった。

 暫くはそうやっていたがやがて空想の話は飽きたのか、青年剣士の昔話が始まったのを皮切りに一党全員が冒険者になったきっかけや過去が聞かれるように流れが変わっていく。

 人を助けるために、冒険譚を聞いて、ほっとけない幼馴染の為に、知を追い求めてと言った十人十色な動機が話されていき、最期にこの中で最も年長者である狂戦士へと番が回された。

 

「そうだね、じゃあ昔話を少々しようか」

 

 こうして始まった話は20も生きていない只人のものに比べると文字通り年月が違った。

 なんと普通に接していた狂戦士が実は1600歳と自分達の100倍以上の歳である事実にまず驚き、続く神秘的な森の命の巡りや森人の様々な技能知識、里へ酒とギャンブルが流入したことによって身を崩した話、盗賊の一団と切った張ったの大立ち振る舞いをして窮地に陥った時神の介入があった後冒険者になったのだと言われた時には狂戦士以外の面々の顔はまるで子どもの様に目を輝かせていた。

 全てが彼ら新米達とは一線を画す話の数々だった。

 こういった冒険譚が大好物な青年剣士はもちろんのこと、ほら話でしょと冷静を装っていた女魔術師でさえ途中から古の魔術に興味が惹かれ、質問攻めをしていたほどだ。

 

「狂戦士は凄いんだなぁ」

「そう、実は僕は凄いのさ!」

 

 純粋な青年剣士の言葉にむしろ自信たっぷりに応じるとちょうど不気味なオブジェクトが入り口に建てられたゴブリンの巣にまで一党は到着した。

 

「さ、そろそろ狩りの時間だ」

 

 気を引き締めていこうよ、と言って狂戦士の雰囲気が一変する。いっそだらしない程微笑みを浮かべていた頬は引き締まり、その目は獲物を狩る狩人のものへと転じている。

 今の今までゆるゆるのガバガバだった筈の狂戦士の変わりようは先ほどまで浮ついていた一党の気を引き締めるのには十分だった。

 ゴブリンに対する「雑魚」という先入観は消えずとも、皆己が持つ武器に対して力を込め、口数が減る程に彼の雰囲気が場を支配したのだ。

 

「よ、よし…俺が先頭を行く、皆が後ろをついてきてくれ」

 

 頭目としての役割を果たそうと緊張感の混じった青年剣士の号令に強張った顔で一党の女性陣が頷く。

 いざや突入の時である。

 

 だが、意気込んだ割に洞窟の中はあっけらかんとしていた。奥から漂う諸々が腐ったのであろう汚濁が酷く匂うのと、只人には暗いこと以外に何一つ異常はない。

 松明の灯りが風に揺れるのみという結果に、青年剣士は全く何もないではないかと不平をこぼしたくもなったが狂戦士の言葉を思い出し、口を噤んだ。

 ただしばらく進むと狂戦士の長耳がピコピコと動き、ピクリとその動きを止める。斥候役をかって出た狂戦士が何かを見つけた時の合図であった。

 

「ちょっと剣士、ここをその剣で刺して」

 

「え?壁をか?刃が欠けそうだけど…」

 

「大丈夫さ、この耳に掛けて保証する、さ、早く」

 

「…まあ良いけどさ」

 

 鶴嘴みたいに鋭いのを頼むよと言われ、岩壁に目を向けてみるが只人の目には松明の光を以てしても何があるのかが分からない。ただ自分達よりも含蓄深い言葉にしぶしぶではあるものの剣士が長剣を壁に突き立てた。

 するとメキャりと何かを突き破った音と、くぐもった叫び声が洞窟に一瞬響き、岩壁がポロポロと崩れて中から一匹の息絶えたゴブリンの姿が露になる。

 

「うわっ!!?」

「どうして!?」

 

「やっぱり潜んでたか…こうやって気付かずにある程度進んだら挟撃とかするつもりだったんだろうね、多分他にもいるよ」

 

 狂戦士の声はゴブリンの予想外の行動に目を白黒させた一党とは違い、落ち着いていた。

 手には今の今まで肩に掛けていた筈の弓を持ち、片手には矢と共にダガーが握られ、青年剣士が失敗したらすぐさま迎え撃つつもりであったのだろうことが経験の浅い彼らでも理解できた。

 

「うん、近くにはいないみたいだ。じゃ、進もうか」

 

 その言葉に従って一党は隊列を乱さぬように歩き出す。

 そうして2度3度同じようにして青年剣士が壁に潜んでいたゴブリンを突き殺し、奥の広間へとつつがなく進むはずであった。

 しかし、それも再びトーテムを見つけた前衛二人が先行したことで崩れてしまう。

 

「ヤベいつの間にか二人先に行かれちゃった」

「あら、ホントね…ちょっと狂戦士、貴方遅くない?」

「いやこの一党斥候いないからさ、僕みたいな耳が良くて暗闇も見える目が無いとだろ?」

「確かにそうですね、先ほどの横穴みたいなことがあれば…」

 

「そうそう、そのとお…」

 

 女魔術師の責める声に反論した狂戦士の足がピタリと止まり、耳が動く。先ほどと同様に、何が起こったのか2人に緊張が走った。

 よもや目の前のトーテムについてではないだろうが…

 

「横穴だッ!!」

「「!!?」」

 

 大声で以て二人に注意を促し、すぐさま先の闇へとダガーを突き刺す狂戦士。猿のようなくぐもった声で頭に風穴を作られたゴブリンが松明の炎で照らされた。

 そんな出来立てほやほやの死骸を乗り越え、彼らの前に踊り出て来たゴブリンは3体。

 狂戦士はそれを迎え撃とうと矢筒から3本の矢を取り出したがその手から矢が1、2と抜け落ち、やや体勢を崩しながら放った矢は外れ岩壁に突き刺さる。

 一連の動きを好機と見たゴブリンが狂戦士に向かって全速力で肉薄し、何かに塗れたボロボロの短剣を突き刺した。

 致命的失敗(ファンブル)、一般的にはそう言われることだった。

 

 まさかの事態にすかさず女神官が奇跡を使おうとするが、詠唱が始まる前に狂戦士は行動した。

「うおおおおお!!!」

 短剣を刺してきたゴブリンの顔面を掴み、壁に叩きつけるとそのままの勢いでもう一体のゴブリンの頭に持っていた矢をそのまま拳で捻り込む。

 悲鳴を上げる間もなく2体のゴブリンの死体が出来上がった。

 

「GOG…GUッGI!!」

 

 最後に残った弓持ちも、すぐさま弓を構え、放とうとしたが…

「サ、サジタ・インフラマラエ・ラディウス!!!」

 一連の脅威に恐慌した女魔術師の【火矢(ファイアボルト)】が体に当たり、それが全身に広がって焼け死んでしまう。

 

「だ、大丈夫ですか?今奇跡をッ!」

「待って、これなら大丈夫、皮鎧とは言え、着といて正解だったよ」

 

 今度こそ奇跡をと慌てて駆け寄れば、出会った時の飄々とした態度の狂戦士が待ったをかける。見ればレザーアーマーに軽く突き刺さった短剣が抜け落ちて、カランと洞窟内に音が木霊した。

 どうやらゴブリンの短剣では貫通まで行くことは出来なかったようだ。

 

「【火矢】、ナイスアシストだったよ帽子ちゃん。さ、前に追いつこう」

「アンタっ、あのねぇ…もうッ!」

 

 前からは今し方倒した筈のゴブリンの声、それも今倒した数より確実に多くいる。

 優秀な頭脳で事態を理解した女魔術師は不平を漏らしながらもすぐに会話を断ち切り、走り始めた狂戦士について行く。

 

「お、置いて行かないでください~!」

 

 女神官も遅れて彼らについて行った。

 

 ――――――――――

 

 時は少し遡る。

 暗い洞窟内に何やら光を見つけて駆け寄った青年剣士と武闘家はトーテムを見つけていた。

 

「ゴブリンかと思ったけど、これって入り口にもあった…」

「確かになんかあったな、ゴブリンの趣味か何かか?光の正体は…この石か。あ、狂戦士ー!」

 

 そう呼びかけるが後ろから反応は無く、そこそこの距離に松明の灯りが見える。青年剣士等はどうやら無意識のうちに後方を分断してしまったらしいと気がついた。

 が、ここまであいつ(狂戦士)のお陰で何もなかったけど、そろそろ俺も良い所を見せたいと安全よりも自己顕示欲が勝ってしまい青年剣士は武闘家と共に先へ先へと進んで行こうとする。

 その直後のことである。

 

「GOBOUURUB!!!!」

 

 ゴブリンが正面の闇から徒党を組んで向かってきた。今の今まで突いては一撃で仕留められてきたとはいえいきなり何匹も来られては対応しきれない。

 よって彼が行ったのは横振りによる範囲攻撃であった。

 

「このッ!このぉおッ!!」

 

「ちょっ!危ないでしょ!」

 

 半ば恐慌状態に陥った攻撃は体術で戦う女武闘家という大事な戦力を遊ばせてしまっていたが、それへ気づけるほどの余裕は彼には無い。

 彼の得物は長剣(ロングソード)、その名の通り長い刀身を誇る剣での横振りはある意味では正解であるが、フィールドが洞窟であったことが災いした。

 4、5と青年剣士へ立ち向かうゴブリンがブンブン振られる素人剣術に倒れていくが、一人では全てを切り殺せるわけもなく、取りこぼしたゴブリンの一撃が彼の太ももへと突き刺さると鋭い痛みと恐慌から剣筋が大きく逸れて岩壁へと引っかかったのだ。

 反動による腕の痺れで長剣を取り落とせば、青年剣士に頼る武器は何も無い。

 ゴブリンは邪悪な笑い声を上げると自らの得物を叩き込もうと大きく跳ねた。

 

 そこへ、後ろの闇からヒョウと風を切るように放たれた矢が飛んできて、邪悪なゴブリンの脳漿を散らした。

 さらに青年剣士に群がろうとしていたゴブリン達の頭に首に心臓にと次々に矢が打ち立てられる。

 矢継ぎ早に死んでいくゴブリンへあっけに取られる女武闘家を尻目に、ブーツの音を響かせながら暗闇から松明に照らされ長耳が現れた。

 疾走狂戦士、彼だ。

 

「君たち、もうちょっと後ろのことも考えてくれないもんかい?」

「うぅッ…グぁ…」

「お願い、コイツを助けて!!」

 

 狂戦士のやや軽蔑するような言葉に何かを返そうと青年剣士は口を動かすが、先程短剣に塗られていた毒が回り唸り声を返すことしかままならない。そんな様子の彼に錯乱したように女武闘家が叫んでいる。

 

「おっと、そんな場面じゃないな、神官ちゃん介護お願い!帽子ちゃんは呪文の方で手伝って!」

 

 一党の中で唯一暗視を持つ狂戦士の指示が後衛二人に飛んでいく。

 血色が悪く、体を小刻みに震えさせている青年剣士の肩を組んで後ろへと下がるように指示し、そこを狙おうと動いたゴブリンには容赦なく狂戦士が死を撃ち込んで迎撃する。

 

「よくも私の幼馴染をッ!」

「焦るなッ!!一人で突っ込んだ結果どうなったのかを今見たばかりだろ!」

 

「ッ…」

 

 青年剣士を女神官に任せた武道家は言われた通りの事実に歯噛みをする。

 激情に駆られて今行けば、恐らくやられていたのは自分だった。そもそも狂戦士の弓と彼女の縦横無尽に動きながら拳を叩き込む戦い方は相性が悪い。

 しかし、理解は出来ても体は収まらない、すぐにでも殺してやりたい。そう考えていた所へ狂戦士の指示が飛ぶ。

 

「弓持ちは僕が!君は右の奴を!帽子ちゃんは後ろの方に【火矢(ファイアボルト)】!」

 

 行けと言われれば最早止めるものなどなく、彼女は手刀、掌底、回し蹴りと先ほどまで遊ばせていた力で暴れまわってはゴブリンを殺していく。そして狂戦士の言葉に数秒遅れて後ろから赤い光が迸り、隠れていたゴブリンの顔面を焼き尽くした。

 彼女たちの奮戦も素晴らしいが、狂戦士の技は只人からすれば最早桁外れだ。指示と同時に番えた矢を次々に撃っては自分達には当てずにゴブリンを殺すその技量に女武闘家が内心で舌を巻く。

 そうやって弓を射かけられてはバタバタと死んでいく仲間にゴブリン達は恐怖を覚え始めたのか緑の醜い顔を涙や鼻水でさらに歪めて我先にと後ずさり、死への恐怖を隠そうともしない。

 だが、その後ろから一際巨体のゴブリンがヌッ!と顔を出したことで彼らの顔に再び残虐な笑みが戻る。

 

「なにあのデカいの!!」

 

「ずーだら!いやえーっと、共通語で、ホブッ!ウーン…逃げるよッ!」

 

 叫ぶやいなや狂戦士は矢を撃ち込んでホブの幅広い耳を抉り、次の瞬間女武闘家の腕を掴んで走り出した。

 ゴブリンを殺し足りない彼女も女だてらに鍛えた自分がよもや森人に負けようとは思いもしなかったことに驚きが勝り、なされるがままにされる。

 後に残されたゴブリン達は敵が逃げた、自分達が優勢になったと思うと耳の痛みに悶えるホブを置いてすぐさまその背に追い打ちを掛けようと駆け出した。

 弱い者にはとことん邪悪になる、ゴブリンらしい行動だった。

 

「も、もう放して!大丈夫だから!!」

 

「了解、じゃ今度はこっちだ!」

「キャッ!!?」

「ちょっと揺れるだろうけど我慢してね!」

 

 ある程度冷静になった武闘家を離し、今度は体力の切れた女魔術師を担いで走り始める狂戦士。持ち方に口を挟もうとした武闘家が魔術師の苦しそうな顔を見て今はそんな場面ではないと気づく。

 今は追手のゴブリンからまずは逃げ延びることが万倍大事だった。初めての冒険は大失敗に終わってしまった、そんな未来もまだ十分あり得るのだ。

 

 そのまま来た時には感じることの無かった異様な長さの洞窟をひた走る。だがここまで粉骨砕身の働きを見せた狂戦士から荒い呼吸が聞こえ始め、後ろのゴブリン達の喚き声の大きくなってきたちょうどその時、前方から自分達のものとは違う灯りが近づいてくるのが見えた。

 

「全員無事とは上出来だ、手際が良いな」

 

 聞きなれないくぐもった声が洞窟に木霊する。しかし十中八九他の冒険者のものであると考えた狂戦士はその声の主を確認すると松明を持った男の後ろへと走り抜け、叫ぶ。

 

「ごめ!ゴブリン!押し付け!頼む!!」

 

 途切れ途切れの声に分かったと一言返した男は赤い眼光を幻視させる気迫と共にゴブリンに食って掛かる。

 投げナイフで喉を切り裂き、松明で顔を焼き、盾で防いで剣で突き、殺したゴブリンの武器を奪うと返す刀で最後のゴブリンの頭をまるで薪のように割った。

 

「4か、お前たちがこれまでに殺したのは何体だ?」

 

 淡々とした口調に加えて血に濡れてさらに汚れた鎧の姿はまるで生きた鎧(リビングアーマー)を想像してしまう。だがその首から掛かる銀に輝く認識票は彼こそが在野最上位の冒険者であることを教えてくれた。

 ただならぬ雰囲気で周囲を伺うと剣についた血をゴブリンの腰布でふき取る作業に移ったその男に女武闘家が一体何者かと尋ねる。

 

 小鬼を殺す者(ゴブリンスレイヤー)、男はそう名乗った。

 

 

 

 ―――――――

 

 

 

 これは、冒険ではなく駆除である。そう言われた方が冒険と言う言葉の何倍もしっくりくるような効率化されきった動きをゴブリンスレイヤーは繰り返していった。

 中途半端な長さの剣で突いては殺し、血糊と刃毀れで切れ味が悪くなればすぐさま投げて牽制。先ほどのように殺したゴブリンの武器で新しいゴブリンを殺してはまた投げる。

 

 確実に殺すという明確な殺意を以て行動するゴブリンスレイヤーに新人であり、聖職である女神官は震えるがそうも言っていられない。

 一党の中で奇跡も使わず、さらにさしたる外傷も無く満足に動けるのは最早自分だけなのだ。

 魔術師は術切れ、武道家は剣士の介護と念のための奇襲対策として控えてもらっている。私が頑張らねば、その言葉は自分の後ろから追随してくる狂戦士を意識しての事だった。

 疲労が溜まり、明らかに震えた手で矢を番えそれでもゴブリンには確実に当てている彼の為にも一刻も早くどうにかしなければならない。

 

 ゴブリンスレイヤーの指示によって女神官は彼についていくことになったが女魔術師を降ろした狂戦士が自分も行くと言って後からついてきた。

 もうちょっと頑張らないと、神様が喜ばないからね。引き攣る笑みを浮かべながら緩慢な動作で歩く狂戦士の意志は固く、ゴブリンスレイヤーも人手は多い方が良いと共にいくことを許可した。

 

 狂戦士は仕事をこなし続けた。

 聖光によって照らされた大広間のゴブリンシャーマンの顔面に弓を撃ち込み、追ってくるゴブリンへ矢を放ち、矢筒が空になればダガーでもってゴブリンスレイヤーが取りこぼしたゴブリンの脳天から突き殺す。

 

 ようやく大広間の戦いが終わったと思えばゴブリンスレイヤーが死んだふりをしてるものがいないか喉笛に剣を突っ込んでいるのを横目に奥の玉座を蹴り壊す。彼はそのまま玉座裏に隠されていた粗末な木の板を剥がし、中に潜んでいたものを暴いた。

 

 はたしてそこにはゴブリンの幼体が両手では足りぬほどぎっしりと詰まっていた。まるで命乞いをするようにか細く鳴いては小さな手で身を庇うもの、石を握り明確に敵意を持って向かうもの、中には土下座をして命乞いをするものもいた。

 彼は右手に握るダガーにより一層力を込め、そこへ死亡確認を済ませたゴブリンスレイヤーも入っていく。

 

「子供も……殺すんですか?」

 

「ハハァ…僕たちが見逃してどっかの誰かがさ、ああなっても良いって望むなら。やらなくて、良いかもね」

 

 女神官の問いかけに苦しそうに息を吐いてこう答えた狂戦士が指を差す。その先にいた女を見て、女神官はこの世の無情さを知った。先ほどまで楽しんでいたのかゴブリンから吐き出された汚濁に濡れ、死んだ魚のような眼をした女を見て彼女は思わず法衣が汚れることなど忘れて抱きしめた。

 

「もう、もう…大丈夫ですから…」

 

 そう声を掛けると後ろから鈍い打撃音と引き裂くような悲鳴が響く。しかし、彼女は鎮魂の為の祈りを涙を流しながら口にすることしか出来なかった。

 だが続いて抱きしめた女の口から噴水のように血が流れ、その体から一切の力がふっと抜け落ちる。

 女は事切れた、それさえもよくある事だった。

 

「よし、依頼完了だ。早く終わって、良かったよ…さあ帰ると、しよう」

 

 ほどなくして全てのゴブリンを殺しつくし、すっきりとした顔でそう言ってのけた狂戦士に、彼女は言いようもない感情を覚える。もちろん彼の働きは十分すぎる程に見てきたつもりだ。新人の自分達に指示を出し、自らも十二分に敵を打ち倒した。疲れによって体が満足に動かない中でも自分達の為に動いてくれた。

 森人だから、神の託宣で、私達の為に…理由はいくらでも想像できる、ただ女神官は彼の持つ感情が何か別の方向に向いている気がした。

 

 もしかすると根底からして歪んでいるのではないか?それこそ疾走狂戦士と言う呼び名にふさわしいほどに。

 彼女は同じく神を奉じる聖職者として、血に濡れながらも世の女性が見惚れる程眩しい笑顔を見せる姿からそう感じ取ってしまうのだった。




RTA書いた時より3倍くらいの時間かかりました…ホンマ先駆者兄貴は偉大やで…どういう執筆速度してるんですかねぇ。
あ、本編の方なんですけど正直森人の外見年齢って只人のおおよそ100倍くらいの感じですか?確か2000歳が見た目14,15くらいだったと思うんですけどそれは発育の問題なのか違うのか、でも違うとしたらもしや1600歳は…ショタ?コレガワカラナイ。
そこらへん感想で教えてほしいです。
(あと、先駆者兄貴みたいに書いてみたけどこんなんでいいのかわから)ないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士2

RTAを走る同期が出来たので初投稿です


 ゴブリン殺すより金稼ぎに奔走するRTA、はーじまーるよー。

 

 

 

 前回色々あって女神官ちゃんの目が死んだところからです。

 ゴブリン退治を終えて村に戻ると剣士君がようやく自力で立てるようになり、なんで助けた?とか聞いてきます。ここでお前のことが好きだったんだよ!って言うとゴブリンロードの時助けに来てくれるかが運任せになるのでここは適当なこと言っておきましょう。

 

 一党は仲間だろ、なんで助けない理由があるんだ?

 

 カ――ッ!!!流石は1600歳森人の言葉です、馬力が違いますよ。もう好感度がうなぎ上りです。これからの展開的にはどうなるって?…何の問題ですか♂

 …多分本編には関わってこない…はずです。今作オートセーブがちょくちょく入って知らぬ間にフラグが勃ってるなんてことが、ありますあります。そもそも、森人は上級種族的な扱いされてるので、実は難易度合わせにイベントがいつも以上に苛烈になる可能性が高めなんですよねぇ…さらに危険度Aクラス経歴の放蕩が合わさるので…ヤバいの来てガバにらないように神に祈りましょう。

 ではなるべく会話が短くなる選択を心がけて、じゃけんさっさと町の方に戻りましょうねー。

 

 さあ続いてはギルドでクエスト報告して経験値を貰います。

 TRPG準拠のこのゲームで冒険中に強くなるとか都合の良い事は起きません。報告することでこ↑こ↓でようやく経験値を、GETだァ!

 ちなみに貰える経験値には経験点と成長点の二つがあります。経験点はギルドにとっての貢献度と言い換えても良いやつで、累積させていくことで冒険者ランクを上げられますよ。成長点、こっちはスキルポイント的な奴で様々な技能を取得、成長させることに使えます。RTAではこっちのほうが優先的に上げる必要がありますね。

 

 さて、この報告によって狂戦士君の冒険者レベルが2に上がりました。後半ほぼ芋スナしたお陰で僅かとは言え点も稼げましたし、呪術師殺した点も入ってきて地味にうま味です。もう3になるくらいの経験値は得てますね。

 さらに上位種に掛けられていた報奨金銀貨5枚が付いてきます、ありがたい。

 

 続いて成長点で取る技能ですが「引き絞り・力」を開放、さらに習熟にまで上げときます。これは力任せに弓を引っ張ってパチンコの要領で矢、もしくはダガーなどの小さめの武器を射出するスキルになります。技量がある程度必要ですが威力は筋力ステに左右されるので狂戦士君には頼もしい味方になってくれるでしょう。

 

 ちなみに一番大事な報酬ですがこのルートの場合はクエスト報酬が銀貨20枚固定です、金貨にするとたったの2枚ですね。少ない、少なくない?生活が苦しい開拓村からの依頼やし、まあええわ、今回は許したる。しかしこのルートではゴブスレさんが無償で助けてくれるので上位種討伐報酬として銀貨5枚がプラスされます。呪術師は狂戦士君のとどめなので5枚は彼の物です、さらに一党の分け前である銀貨1枚もついてきます。

 しかし元々の報酬だけだと5人で分けるので一人頭銀貨4枚、今回使用したダガーと弓矢の出費でほぼほぼ相殺ですね。普通に退治しただけじゃ赤字とかアメリカのウェイターか何か?チップを恵んでくれよー、頼むよー。

 でも狂戦士君の場合は上位種倒したお陰で銀貨10枚と倍以上の報酬になってます。ここだけ聞くとただの屑野郎ですが、他の奴ら基本的に足引っ張っただけなんで正当報酬として貰っておきましょう。放蕩のせいで金がただでさえ少ないからね、しょうがないね。

 結局part1ではガバが怖くて奇跡も使う機会が無かったので冒頭での見どころさんづくりとしてしか放蕩が役立ってませんねぇ…道のりはまだまだ長いのでこれから役に立つことを祈るとします。

 

 しかしゴブリン殺したいからとは言え貴重な水薬くれたり無給で働いてくれる所とかゴブスレさんはやっぱ根っからの善人ですね。人間の鑑かな?ちょくちょく行動がぶっ飛んではいますが人を見かけで判断してはいけない。(なりたいとは言ってない)でも「小鬼殺し3号」獲得RTAなんで変なのに仲間入りは果たすんですけどね。

 獲得後?長い寿命を使ってゴブリン達を全滅させてくれるんじゃないっすか?正直なところRTA後のことは、しーらないッ!チャートも組んでないのでやるとしても後だ後。

 

 ではここから先はしばらく準備パートになります。

 

 まずは工房へ行ってゴブリン退治の報酬を使って武器を新調します。選んだ武器は短剣(ショートソード)、洞窟使用を考えるとこれで十分です。あと金の問題…矢の方はあの後ある程度は回収できたので今回は5本貰うことにします。残金は、ウっ銀貨3枚…ですか…1日町で過ごせば無くなるくらいです…

 やっぱ武器は高いですね。これだけでゴブリン退治の代金が丸ごと吹き飛びました。ですがそれに比例して攻撃力とレンジは確保できたので、ヨシ!防御面が改善されてませんがままえやろ。

 自分でチャート作っておいてなんですけど序盤の金貨4枚はマジでデカいですね…

 来歴放蕩を信じろ、信じるんだよ、覚知神 IS GOD(邪教信仰)

 

 では続いて白磁等級に対して張り出されている下水道関連のクエストを3つほど選んで受けましょう。溝浚い、害獣駆除、害虫退治は全て下水道で行われてるクエストなので単独で受けるとこれが良い金策になってくれます。さらにボス級モンスターの暴食鼠(グラトニーラット)とか倒せれば銀貨をなななんと50枚!上位種10体分の報奨金が出るので、見つけたら積極的に狩りに行きましょう。

 ゴブリン退治もありますがあれはソロにしては報酬自体高い代わりにリスクがクソ高いです。一人で受けるのは、止めようね(8敗)

 

 ちなみにこの内私が一番期待してるのは意外に思う方もいると思いますが溝浚いです。

 溝浚いは丸匙(スコップ)片手につまりの元となる泥等をすくって水の通りを良くするお仕事で、基本的にゴミしか出てきません。ですが実は30%の割合で何かしらが出てきます。ここから所謂ドブガチャが始まります。

 30%の内さらに30%の確率で武器が出て、その武器の内30%で通常使用できる武器が出てくるんですが、ここからさらにさらに0,5%の確率で伝説級(レジェンダリー)の何かが出てきます。私はこのドブガチャにちょっと期待している訳ですね。確率にすると実に0.135%程度です。目当て星5キャラ当てるより確率低いっすね…

 こんなん当たるわけないやろ…って私も思ってました…でも当たる時は当たっちゃうんですよねぇ…

 

 試走27回目、蜥蜴人で走ってた時溝浚いしてたら出て来たんですよ…あの時はマジで驚いたんでRTAとか関係なくガッツリ育てて普通に世界救いました。結局最後は位階高めて世界を見守る神龍として神の仲間入り果たしてたゾ。杉田蜥蜴も位階高めたらああなるんですかね?

 

 正直このゲーム原作に合わせて設定の後だしの為にキャラのその後があんまり明確には描かれないんで分からないことが割と多めです。ただ様々なテキスト、態度やムービーからある程度は推測が出来、色んな面白い考察がされてたりしますよ。

 フロム脳が疼きますね。

 

 隙自語になりますが、私が一番好きな女教皇ルートというものが存在します。道中本気勇者ちゃんと戦ったり国を興すのがマジでキツくて面倒ですが、ゴブリン皆殺しエンドにまで到達できると美しすぎる成長を遂げた女神官ちゃんが冒険の果てに女教皇になるんですよ。

 最後に流れるイラスト集がマジで美麗で素敵なのはもちろんのこと、柱の影になんとぎこちないながらも神殿騎士として振舞うゴブスレさんの姿が見れるとか、もう脳汁ドバドバですよ。ハッピーエンドはあ”ぁ”~、たまらねぇぜ!!!感情を得た主人公がヒロインと一緒に世の中を救うとか、もう尊過ぎて読めなぁああい!!

 牧場娘?知らない子ですね…まあ、産めよ増やせよの地母神ですしもしかすると一夫多妻制の可能性が微レ存…とにかくアレは本当に良いものです…えがった…ゴブリンスレイヤーは基本的に悪い結末ばかりを描かれていますがこういう幸せ溢れるエンドもちゃんと存在している所にはまだ救いがありますね。

 骰子の目は平等なんやなって。

 しかしどうにも私の出目は割と悪い方向にばかり出ているように見えるのは、気のせいでしょうか…?まあこういう簡単な所で運ゲが起きないのは評価します。

 

 話を戻して、不快生物達、巨大鼠(ジャイアントラット)大黒蟲(ジャイアントローチ)は汚水から出てきた棍棒でぶっ殺すかこれまでずっと主力を張ってる弓で目を潰す等して倒します。大黒蟲は更に筋力の増した狂戦士君の棍棒で胴体を潰せば大体一発で死に、巨大鼠の方は下水道出身で毒には強い耐性を持っていますが、汚水が目から流れ込めば普通に死にます。そもそも目から矢が刺されば基本誰でも死ゾ。

 

 では再び探索開始、ここは試走時に死ぬほど走り回ったので迷うことはありません。松明も要らないおかげで両手がフリーになるためここから虐殺タイムに入ります。ただ松明を持たないので時々同業者がなんか怪しい奴だと思って攻撃してくるとかがあるのでそこは注意しましょう。

 ワンッ!トゥー!スリーッ!フォー!GO、ろく、なな、はち、シュー…ヨシ、規定数の討伐、完了です。では後はこの繰り返しなので倍速かけます。

 

 

 狂戦士駆除中…

 

 

 ぬわぁあああああん疲れたもぉおおおおん。あれから下水道依頼を4度ほどこなすと純利益は金貨5枚ほどになりました。今回溝浚いで出てきためぼしいものは棍棒一つだけ、しかしこれもまた筋力が活きる武器なので重宝することになります。

 ただ一人で受けてこれってマジで冒険者搾取されてませんかね?途中怖くて買っておいた毒消し(アンチドーテ)とかの諸経費を含めなくてもそんなに稼げないとか…新人冒険者は社畜か何か?文句を言っても始まりませんし、金のキリも良いのでここで諸々の事情で別の依頼を受けることにします。

 

 解説しますと暫く下水道通いばかりしているとバッドステータスとして【悪臭】がつきます…これがあると【美貌】の効果では抑えられない程交渉成功率がググっと下がるのである程度やったら疲労度も考慮して別の依頼を受けるのが必要になって来るんですね。

 あまりに臭いとギルドに入るのも拒否られたりして大ガバです。汚水に突っ込んだりしなければ臭いはつきにくいですが5回も潜ると大体どこかで臭いと毒がつくのでちょっと時間がかかっても大人しく安全策を取った方が良いです。

 

 では依頼ボードを確認。うーん、中々良いのがありません…白磁が受けられる依頼が少ないのもありますが今日はクズ運引いてますね…お?山越えの配達依頼ですか、文字通り配達するのが目的ですがさて報酬は…おーええやん、銀貨17枚やん。しかも近くで薬草採取もやってますね、森人の種族技能で薬草は割と簡単に見つかるので一緒に受けちゃいましょう。合計銀貨25枚、中々な稼ぎで良いぞーこれ

 

 狂戦士移動中…

 

 意外と遠かった…森を主体に通ったので普通に来た時と比べるとあまり疲労度は高くないですがもうすっかり夕暮れだゾ。では早速黒塗りの屋根の住人にお届け物を届けましょう。

 毎度お世話になってます、お届けに参りました…壊れてないのでなんでもしないです。

 確認ヨシ、では長居は無用なので受領のサインを受け取ってすぐに帰るとしましょう。開拓村はギルドよりもベッドが糞程悪く、睡眠の質が良くないので疲労を溜めない為にはむしろここで頑張る必要がありますあります。

 

 ん?村人が慌ててこっちに来ました。おや、どうしたんだろう?(無能)

 おぉ、レアイベントの直接依頼ですか。開拓村や鉱山と言った町から離れた場所で依頼を受けているとたまに依頼終わりにプラスで依頼を持ち掛けられることがあります。内容は落とし物の探索から邪神の眷属討伐まで多種多様、後者は勇者ちゃん案件ですが落とし物の探索くらいならガンガン腰振って受けましょう。

 あとは交渉次第で若干報酬が普通の依頼よりも多くなります。冒険者ギルドに通さない直接の依頼なのでピンハネされないからですね。仲介業者は悪徳ってはっきり分かんだね。

 

 さて、内容が「ゴブリンが畑を荒らしてるから退治してくれ」ですか…難易度星2くらいですね。正直平なら余裕で受けるレベルです。

 さて疲労度のおっさんは現在(32)今日の俺なら、いける(慢心)というわけで受けることにします。あとは、交渉によって報酬を少々吊り上げましょう。

 

 こちら、14万3000円になっております。14万?うせやろ、こんな等級の、冒険者で14万とか、ぼったくりやろ。はー(クソでかため息)、あ ほ く さ。

 しょうがねぇなー、じゃあ銀貨30枚でゴブリンを地獄に、ぶち込んでやるぜ!

 

 交渉、成立です。最初に高額を吹っ掛けることでそれより下の選択肢を強制的に選ばせる高度な手法、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。これでゴブリン退治で得た額以上を貰えることになりました。しかしこちらはギルドには報告出来ない闇依頼なので、経験値は得られません。お前らテープ回してないやろな?

 放蕩で無くなった分の金を回収できるチャンスなのでこれは活かすしかないです。てなわけで、イクゾー!(デッデデデデデ、カーン、デデデデ)

 

 

 

 さて、裏山の畑に着きましたが…なんか不穏やねんな…

 マアアアアアアアア!!!!?田舎者(ホブ)とか、うっそだろお前ッ!!!渡りとはまた運が悪い…

 思わぬ遭遇ですが飯に夢中で後ろ向いてますし、隠密しているのでまだ見つかっていません…【引き絞り・力】を発動して頭狙って撃ちましょう。頭行きますよー?ステンバーイステンバーイ…ゴッ!ビューテフォー…

 

 よし!頭を…頭を…

 

 は?(困惑)

 

 は?(憤怒)

 

 ホブじゃないやん…これ巨人(トロル)やん…何してんだてめぇこら!!矢と斬撃が一番相性悪いやつじゃねぇかよおお!!あ゙あ゙あ゙も゙お゙お゙や゙だあ゙あ゙あ゙!!なんでこうクズ運引きまくるんですか!!どうして俺だけが、こんな目に…ハッ!?

 

(平坦な道でこそ心のスキが生まれる、そうじゃねぇのかい?)

 

 父祖の声が聞こえた気がするので続こちょ、ちょちょっと待ってください!待って、助けて!待ってくださいお願いします!!ヴ”ぁ”あ”あ”あ”-----!!(大ダメージ)

 なんだその素早さ!?普通のトロルの1.2倍とか、こいつすっげぇ変異体だぜ?

 狂戦士君の生命力4割はもうマズいですよッ!顔面にクリティカル判定出さないとこれは死ぬ…本当に死ぬ…ヤメロー、死にたくなーい!死にたくなーい!頼む頼む頼む頼む…(カラコロコロ)…出目良いけど微妙!!おら死ねぇ!あっ、ふーん(察し)アカンわこれ…組みつかれましたね、あ、ちょ、臭い息を吐くんじゃねぇよ、何OROR笑ってんだ!クソがッ!

 

 

 

 

(放心中)

 

 

 

 いやまてここで【狂奔(ルナティック)】使えばッ!!!よっしゃあああああ!!!持ち返したあああ!!!脳がアドレナリンをドバーっと出してきた―!!筋肉万歳!これでかつる!!

 

 やれ!やれ!イケ!イケ!!!!!ホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラぁあああああああああああ!!!

 Fooooooooo!!!気持ちぃ――――!!

 

 大勝利!!あそこからどうにか勝てたー――!!あ”ぁ”---生きてるー、帰ってこれた―!!

 あとはこいつの皮膚片持ち帰ってギルドで報奨金…ちょ、ヤバイ疲労度のおっさんと生命力の兄ちゃんが…

 

 

 今回はこれまで、ご視聴ありがとうございました。

 




今回は先駆者兄貴と違う感じにした…この意味が分かるな?

今回出て来た巨人君は作中でイムが言ったように変異体で、体が小さく、力が弱い代わりに素早さが高い個体です。しかもこれで幼体近い個体なので、完全なユニーク敵ですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士2裏

同僚の方が早く執筆できることに恐怖しながらも初投稿です。
あ、そうだ(唐突)日間で74位になってました。
何をやらせても中途半端な自分が初めてランキングに乗り、恐悦至極です。これからも頑張るつもりですのでどうぞ感想と言う燃料をば、私にはこっちの方が嬉しいです。


 小鬼退治は残酷である。

 

 それはこの世界のありふれたことにして、ある程度の冒険者間では常識のことだ。初めての冒険を楽勝でこなす者、痛い目を見ながら達成する者、そして甘く見て全滅する者。そのどれにしろ、ゴブリンの悪辣さは身によく染みつく。

 様々な形で悪意を受け、そのまま冒険者を続けられるかはその者の心の強さによって決まる。しかし初の冒険で自らの腕の中で女が事切れ、後ろ手に聞いた叫び声は耳に張りつき、彼女の法衣についた様々な液体がもたらすわずかな湿り気はまるでじわじわと彼女の体から熱を奪うかのよう…少女にとって、今までの体験は波乱万丈が過ぎた。

 

 見かねた女性陣からどうにかしようと労いの言葉や賛辞が送られるが「アリガトウゴザイマス、ガンバリマス」の二言しか出てこない。現場に居合わせなかったせいでこうまでなるとは…二人も参ったと頭に手をやるが一人は武芸に心血を注ぎ、一人は知識を求めて過ごしていたため碌に同年代との会話をしてこなかった。さらにどちらも宗教に関しては疎いため、結局時間の解決に任せてしまう。

 だが、翌日にはもう一皮むけてケロっとした顔でゴブリン退治に赴く彼女を見ることになる二人の顔はきっと想像に難くない。

 

「ありがとうごぜぇます!ありがとうごぜぇます!ほんにあんたらのお陰でさぁ!」

 

 洞窟とは打って変わった明るさの村で、先ほどからこう何度も禿げ頭を上げ下げするのは今回の依頼人たる村長だった。冒険者の冒険は戦って勝つまでではない。依頼内容が果たされたことを依頼人に報告し、ギルドに戻るまでが冒険なのだ。だが今回初めてこなした冒険は、彼らが夢見た華々しくドラゴンを倒し、美しい姫から賛辞を受けるとか言ったものではなく、血生臭くゴブリンを倒し、禿げ頭の村長から訛りがキツイ謝礼を受けるという、夢と現実の差を嫌でも感じさせるものだった。

 それさえも全て自分達の力で為し終えていれば悪いものではなかったのであったろうが、一党にとっては自分達は特段何も出来ていないのにこうも叫ばれると逆に心が痛かった…それに耐えられなくなったのか青年剣士は絞り出すようにして叫ぶ。

 

「なんで助けたんだ…俺は、お前よりも目立とうとしてああなったのに…」

 

 喜ぶ人々の横で顔を俯かせ、ズボンを握りしめる青年剣士。顔は見えずとも恐らくはその顔を真っ赤に染めていることだろう。彼は一党の党目と名乗っていながら何一つ為せなかった自分を恥じていた。何をしていたのか、ふざけるな、若造が調子に乗るな。そのどれもが言われても仕方ない言葉である。しかし、彼に降ってきたのは想像していなかったものだった

 

「一党ってのは仲間だろ、なんで助ける理由がいるんだい?まさか死にたかったとかじゃないだろうね?」

 

「そ、そんな訳じゃ…」

 

「なら胸を張りなよ、君は生きてるんだ。只人の、大事な大事な一生があんな惨めな所で終わらなかった。これって、勲章ものだよ?」

 

 何を言ってるのか理解できないと言いたげな顔で、困惑を以ってそう返されては最早何も言えない青年剣士は徐に手を差し出した。

 

「なら、約束する。狂戦士、この借りは必ず返すから」

 

「そっか、覚えておくよ」

 

 一方は熱く手を出し、一方は茶化すようにヒラヒラと。だが確かに握手はなされ、約束が交わされた。

 

 ―――――――――――――

 

 サインを貰って町に着くころには既に日が傾き始めており、精神的にも肉体的にも疲労困憊となった一党はしかし五体満足でギルドへと帰ることが出来たことに安堵した。ここまでくれば最早すべきことと言えば後はもう報酬を貰うのみ。

 ほどなくして受付嬢の笑顔と共に渡された袋は、上位種二体を討伐したことで色がついたとのことで少しばかり重たく感じる。思わず喉を鳴らした彼らだったがその実中身は銀貨が僅かに30枚、無償であそこまで駆けつけてくれたゴブリンスレイヤーが倒した上位種の分も含まれてこれだ。

 ここから狂戦士が倒したシャーマンの分を引き、五人で分ければ一人あたり僅か5枚。命を対価に働いたにしては思わず文句も言いたくなってしまうのは仕方がない。されど銀貨5枚、彼らがその身を以て学んだ授業料と思えばこんなものであろうと一党は口を合わせずとも心で一致した。

 今回はダメだった、だが自分達は生きている。生きているならば次がある。次があるならもっと上手くやる。

 

「君たち気をつけなよー、最初の冒険は生き残ったけど次は…っていうの結構あるんだ。今度からは僕は単独で動くことになるだろうしさ。あ、僕はここで抜けるねー」

 

 そう考えた所へ、腰の小袋に銀貨をジャラジャラ詰め込む狂戦士の言葉が突き刺さり、尚更もう少し気を張ろうと認識を改める一党。工房に向かうと言ってギルドを足早に出ていった彼の姿を見送ると、空気を一新するように青年剣士が唐突に拳を突き上げた。

 

「よし、皆で宴会しよう!金は全部俺が出すよ!そんなに高いの頼まれると困るけど…まだ金はあるから!皆を危険な目に合わせちゃった埋め合わせがしたいんだ、冒険の後はやっぱり宴会もしたいしさ」

 

 最後の方は少しバツが悪そうに頬を掻いてそう言えば、うら若き乙女達が一瞬目を合わせるが彼の人の良さはある程度信頼がおけると判断されたのか、そのまま流れるように葡萄酒、麦酒、火酒と思い思いの酒が次々に注文されていく。

 だが、20にもならない一党の面々はたかが一杯の酒であろうと耐えられなかったようで、見る見るうちに茹蛸のように赤く染まっていき、逆に青年剣士の顔は勘定を見て青ざめていく。それを忘れるかのように自然と彼の周りには杯が積まれていった。

 

「皆さんは、これからどうなさるのですか?」

 

 始まりは、葡萄酒をチビチビと舐めるようにして飲んで顔を赤くした女神官の一言。初のゴブリン退治を終えたが心の何処かに傷を負った面々は、平素であれば一党の誰しもが少々顔を歪めたであろうその質問を、酒が入って気が大きくなったのか皆口端を歪めながらも胸中の言葉を口にしていく。

 

「危ない目にはあったけど、ほっとけないからコイツについていく。あとは…モンスター相手に使える装備に変えたいわ」

 

「私は変わらないわね、知識を求めて進むだけ。それに学院で学んだことだけじゃおちおち冒険出来ないみたいだし…」

 

「結局剣までなくなっちゃったし、俺はまず溝浚いだなぁ…でも、やらなきゃならない事も分かったし、絶対ここから這い上がってやる!」

 

「そうですか…皆さんは凄いですね…ふぁ…ありがとう、ごじゃいましゅぅ…」

 

 三者三様の答えは果たして女神官を満足させたのか、確認する前に彼女は瞼を擦ってそのままテーブルへと沈んでいく。だが、寝顔をみるにどうやら悪くはなかったのかもしれない。こうして十数年後、四方世界に名を馳せることになる一党の英雄譚は幕を開け、夜が更けていった。

 

 

 ―――――――

 

 

「武器をお願いしたい」

 

 町外れの工房へそう言って入ってきたのは笹葉のような耳を持つ森人だ。辺境には珍しい森人の来訪だが、それだけならば別段そこまで驚きもしなかっただろう。だが工房の主たる老爺が驚いたのはその筋肉であった。森人と言えば美麗なる顔に鹿のように細く美しい体を持つ種族と相場が決まっている。ただ目の前にいる森人の筋肉はどう見ても下手な蜥蜴人以上のものでどうにもチグハグな印象を受けるもの。

 

「へへッ、良いじゃねえか。で?何が欲しいんだ?」

 

 老爺は久方ぶりに血沸き肉躍るような依頼が出来そうだと内心楽しみであった。大槌だろうか?斧槍だろうか?それともはたまた大剣か?まるで少年のように目を輝かせる老爺。いくら老練な彼と言えど心の奥底に眠るのは未だ朽ちることのない童心、面白そうなものには惹かれてしまうのだ。

 

「この店で一番安いショートソードを一振り」

「……そうかい、だったらそこに入ってる数打ちから好きなのを選びな」

 

 しかし返答は無慈悲にも老爺の考えを打ち砕く。てっきり魔剣か何かが欲しいと言われるかとも思っていた老爺は少々がっかりしたように肩を落とした。自分の早合点とは言え壮大な肩透かしを喰らったかのような気が湧いて何とも言えずやるせない。そしてよく見てみれば筋肉に目が行ってしまったが朝方訪ねてきた森人ではないか、斥候が付ける外套が無ければこうも印象が変わるのかと目を丸くした。

 

「そんな短いので大丈夫か?お前さんの力を活かすならもっと長柄の…」

「いや、大丈夫。僕はゴブリンを殺すだけだから」

 

「カーッ、全くお前ぇはどことなくあいつを思い出すようなことばかり言いおって」

 

 らしくない食い下がりをしてもやはり答えは変わらず、さらにゴブリンを殺すときた。瞬間老爺の頭に浮かぶのはゴブリンゴブリンとうるさいあの男。安物で身を固めるかと思えば魔剣よりも高くつく転移の巻物(ゲートのスクロール)を頼んできたのは記憶に新しい。それが今日も今日とて冒険にも行かず、駆除(・・)にばかり勤しんでいるのだろう。

 もしやあれと同類かと思えばこれまた森人らしからぬ鉄矢を5本ばかり買ってすぐさま出ていった。これでは人間観察もありゃしない。

 

「はぁ…なんでこう、冒険者には馬鹿ばかりが集まるんだか…」

 

「親方ー!」

 

「分かってらい!今いく!」

 

 老爺のどこか諦めたかのような呟きは、丁稚の青年の声に被さって消えた。どうせ自分は怪物退治には行かないのだ、今更何を思うのか。武具を作ってバカ共を待つ、手前にはそれだけだろうと彼は工房の奥へとその足を運んだ。

 

 ―――――――

 

 

(次はそれとそれと、あとその依頼を受けて)

 

 脳裏に響くのは男のものとも、女のものともつかない抑揚のない声。それにはいはいっと従っては慣れた手つきでコルクボードから依頼を剥がしていく自分。こうして毎日のように下される託宣の声に慣れたのはいつだったか?もう思い出せない程前であったような、それとも一日前だったかのような…どうにも記憶がハッキリとしない。まあいつだったかなどどうでも良い事だろう、どうせ自分には時間などあってないようなものだ。むしろありすぎて変に使いきることが出来ない、不死(イモータル)の嫌な所である。

 今までで大分生きてきたと思っていたが、未だ上の森人(ハイエルフ)の寿命は計り知れない。1600年生きて、未だに寿命の5分の1しか時が過ぎていないとは…なんとも気が遠くなる話だ。しかしまあ、自分の異常性など隅々まで知っている。あそこでずっと放蕩しているよりはこうして使ってくれた方がまだましだろうと一人で納得した。

 

 下水路は臭く、暗く、汚い。そこに無限に湧くかと思えるほど数の多い化物達を数打ちの剣で、そして汚水の中より見つかった棍棒で潰していく。その日々が4日程続き、身を綺麗にしても臭いが多少つき始めた所で再び神の指示が入る。どうやら今度は山を越える配達をするようだ。森人が只人の小間使いのような扱いをされるとは、森の中に籠りきってはふんぞり返る里の連中が聞いたらどんな顔をするのか。むしろ少々見物かもしれないと思いながらも薬草採取の依頼と共にボードから剥がし、窓口まで持っていく。

 相も変わらず受付嬢殿は依頼の重複受注に良い顔をしないが、こちらも何かと金が入用なので許してほしいと心の中で謝罪をする。神がずっと頭の内で金金と鳴くのでうるさくて敵わない。記憶ではどちらも3日ほど前からある依頼であったはずなので、まあ自分が消化しても悪いわけではない筈だろう。

 そのままいつもの如く話を途中で切り上げ、足早にギルドを出ていく自分は、周りから見てどう映るのか?水に泡が浮かぶかのように思いついた疑問も弾けて消えた。

 

 森人は名の通り、森を故郷とする。それは異端たる自分であっても例外ではなく、一度願えば母なる森は子が進みやすいように蔓や枝を丁度良い具合に分けてくれる。森人の軽業はこうして為され、自分はただその間を導かれるままに進んで行く。

 

 そのまま進んで行くと夕暮れになってようやく村へと辿り着いた。体感ではここまで掛かるような気はしなかったが、響く声から察するにどうやら神が道を間違えた(ガバッた)らしい。

 いかな神とて万能ではないという事だろうか?と不遜な考えが頭に浮かぶが有益なことには変わりはなく、自分は指示に従って依頼のブツを届けるだけである。

 そうすぐさま思考を切り替えて探してみると、それ程広くない村で依頼者の家はすぐに見つかった。どことなく高級感のある黒が塗られたそれをみるにどうやら依頼書に間違いはないようだ。

 

「ギルドの依頼で届けに来たよ!」

 

「…おぉ!(超美男子じゃん!サイッコー)これが来るのを待ちわびていたんだ!うん、中身もちゃんとしてる!ありがとう!いい仕事をしてくれたね」

 

「じゃ、サインをここに」

「もちろん良いとも!(キャー顔近い!あ、死ぬわ)

 

 ドタドタと家の中から壮大な音を響かせ顔を出したのは、薬の香りが染みついた、恐らく薬師か黒魔術の女だ。所々森人であることを恨むレベルで何やら見た目に合わない発言をされたような気がするが、気のせいであると信じたい。

 そのまま堂に入った流れでサインがなされ、終始小さな声でワ―キャー言われることにそれほど悪い気はしなかったが、時間が時間な為すぐさま帰路に就く。

 

 そう思って村を出ようとすれば村の若者から慌てたように引き留める声。何だ何だと聞いて見ればどうやら小鬼禍らしい。またゴブリンか…と顔をしかめたが頭の中でここ数日やけに大人しかった神曰く、この依頼も受けた方が良いとのこと。移動で少々疲れていたので最初に金貨100枚出せと言えば、若者が絶望した顔をする。それが少々面白かったので銀貨30枚程にまけると交渉が成立した。

 

 いざ裏山である。

 

 だが、現場についてみると村人の証言が間違っていたことが明らかになった。食べることに夢中になって前かがみなのを含めたとてどう見ても小鬼の小がない。田舎者(ずーだら)かそれに準じた者だろう。話に聞いた渡りだろうかとあたりをつけ、このまま禿散らかした頭を撃ちぬこうと弓を引く。

 だが、そのまま放たれた必中の矢は刺さることなくはじかれ、尋常のホブではありえないそれに神同様自分も動揺してしまう。

 なんと食事を止め、こちらに目線を向けうそれはホブではなく巨人(トロル)ではないか!森にいたときでも片手で数えるほどしか目にしたことが無い化物である。

 

 それ程ない記憶に当てはめてみればどうやら目の前の個体は幼体らしく、ホブと同程度かやや大きいくらいであった。本来の大きさで言えばおよそ民家程であった記憶のトロルと比べると随分と小さいが、一人で倒すことが推奨されるものでは確実にない。

 さて、一体どうするか?と神の声を待つが一向にくる気配がない。

 

「ちょっ、神様ァ!?」

 

 声に出して催促しても次の指示が来ない、あるのはただただ天上と繋がっている感覚のみ。最早骰子がどうとか、自分の筋力がどうだとかの問題ではない。神の指示が無ければどう動けばいいのか(放置された駒はどう動けばいいのか)?咄嗟の判断が下せなかった。

 

「ORROTTTRROO!!」

「フボグッ!!?」

 

 そうしてまごまごしていれば格好の的だろうことに気づけるほど戦いは遅くない。いつの間にやら手に携えていた棍棒が自身の体に強く打ち据えられ、吹き飛ばされる。緩衝材にしては固いが過ぎる大木にその威力のまま叩きつけられると体の中から何かが壊れる鈍い音がし、痛みがじんわりと胸から広がった。どうやらまずい所に傷がついてしまったらしい。

 

 しかし生まれてこの方弓を手に生きてきたのは伊達ではない。すぐさま矢を番え、そのまま顔へと射出する。眼を、もしくは顔の何処かへと突き刺さればこの窮地を脱せるが…「日の下では体が岩のように固くなる」というトロルが持つ特性を、咄嗟に思い出すことは出来なかった。時刻は夕暮れ時、夜には近いが逆に言えば日は未だ落ちていないことを表している。

 一拍置いて思い出しても時すでに遅し、顔に吸い込まれるように進んで行った矢は当たった瞬間に軌道を右に逸らして木に突き刺さる。

 

「ORROTOROOR…」

 

 グフグフと口から吐き出されるのは嘲笑であろうか?こちらへと突進するトロルは平時ならば避けることが出来たかもしれない程の速さ。だが骨が折れ、体の中身すら傷んでいる今では避けられるはずもなく、そのまま凄まじいほどの質量がその身に圧し掛かる。

 

(狂奔を、狂奔を使って!!早くッ)

「神様!おぉおおお『あな盤上繰りし覚知の神よ、我らに狂騒を与えたまえ』!」

 

 以前と比べるとかなり緩慢な神の焦ったかのような託宣に従い、小鬼の牙を触媒として祈りを形にしてみれば確かに奇跡は舞い降りる。どうやらまだ見捨てられたわけではないらしかった。

 それに安堵しながらも体から力が湧き出る対価に急速に考えが覚束なくなっていく。だがそれでいい、今だけは、過去も何もかもを忘れて良いのだ…

 目の光が次第に消えていき、体を走る血管は今にもはち切れそうなほど動きを速めその筋肉を膨張させる。

 

「あ”ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

 呻き声にも聞き取れる咆哮を機に一気に力が増しては押し返されたその背に何か見えたのだろうか、一瞬体をこわばらせたトロルに野獣の如く肉薄し、今し方狂戦士がやられていたような態勢へと持っていく。身長の関係で完全なる逆転とまではいかないが、マウントポジションと後世の者はそう称するだろう姿勢から繰り出される拳は岩の如き表皮を削り、目や鼻等の感覚器官を奪っていく。

 あとはただひたすらに殴っては徐々に岩のような硬さからまるでパン生地でも叩いているかのような感覚へと変わって行く。だがそれを陽が落ちたのだと理解する理性は既に無く、目の前の敵が最早息絶え、顔の原形が無くなった後も蹂躙は続いた。

 

 次第にそれすらも体が限界になってきたのか手数が徐々に減っていき、口から吹き出る血と共に狂戦士の意識が浮上してくる。だが、無茶をしすぎた体に膨大な痛みと疲労が襲い掛かり、そのまま重力に従ってまるで糸が切れた人形のように落ちていった。




やっぱりオリチャーはいけませんね、全然筆が進まないゾ…でもその分リターンが、気持ちええんじゃってなるのでやっぱりやめられない。麻薬かな?
biimチルドレンの編集は個人の持ち味が大事やし、ままえやろ。

追記

誤字報告、機能説明ありがとナス!やっぱり優しい兄貴達を、最高やな!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

世界竜の昔話

実習、就職、経験不足…
息抜きに始めた筈のこれがなかなか、救いやねんな。
しかし、楽しみに待ってる人を差し置いて食う飯は旨いか?となったので(再)から閑話を持ってまいりました。
たぶん1カ月以内に5の裏出しますので、出しますので!


 昔々のそのまた昔、記録神イム・ジッキョウが生まれてしばらく。

 あるRTAを見て奮起したイムが試走と称して様々な冒険者を四方世界に出しては埋もれさせ、出ては埋もれを繰り返していた時の話です。

 とある蜥蜴人の英雄が生まれました。

 それは、運命か偶然か、汚らしい下水のつまりをとっていた時に青く光り輝く曲刀を見つけ出し、数多の冒険を経て勇者と共に魔神王を打倒すと神へと召し上げられた益荒男。

 盤上の駒が神となるのは珍しいですが、例外はどこにだって存在するのです。

 これは、イムに導かれしままに冒険し、神になった。そんな彼の道中のお話です。

(おや、これは【幻想】殿、一体何をしておられるので?)

 あ、ちょ!今説明をしていた最中なんですけど、ちょっと、ちょっとぉ!

(おお!これは我が神と某の記録!末端とは言え、上位の存在になってからというもの、中々話が出来なんだ、お懐かしや…)

 もぅ…勝手に見ないで下さ…あ!そうだ!世界竜、貴方が語ってください!その方が面白い筈!

(何と!うーむ、成程…事情はあい分かり申した。快諾させていただきましょう、某がその役果たさせていただきます)

 流石話がはやい!それじゃ、お願いしまーす。

(は、それでは、始めさせていただきましょう。某が生まれたのは…)

 

 

 彼が生まれたのはとある混沌にして善の蜥蜴人達が暮らす部族だった。

 卵の中より出でて産声を上げれば、新たなる戦士の誕生だと村を挙げての儀式が行われ、父祖とされる竜の大遺骸の前へと晒される。

 儀式は生まれた者、ひいては村の吉兆を計る重要な占いであり、大遺骸に対する赤子の行いによって占われる。

 竜の頭骨によじ登れば頭目・族長となる兆し、腕に行けば益荒男・勇者・豪傑の兆し、腹に行けば頑強・大酒飲みの兆し、足に行けば迅速・早熟・不屈の兆し、尾に行けば生命力・繁栄の兆しといった具合の内容だ。

 それ以外にも母の元に戻る、父祖の爪をしゃぶる、尿を掛ける、骨を遊具とする等の細かな吉兆を占う項目があるが、三十近い項目故省くとして、果たして彼は…「臆病にして勇猛果敢、父祖にも及ぶ益荒男になる」であった。

(ここ、記録と違いません?)

 伝説なのですから。多少は、ね?どうかお目こぼしを…この先の方にご注目くだされ。

(まぁ面白いので許します!)

 それは重畳、続けまするぞ。

 

 占いより5年余り経つと蜥蜴人の戦士となるための準備が始まる。

 蜥蜴人、殊更に蜥蜴人戦士の志は皆同じで気高く強き父祖、恐るべき竜になることを自らの本懐として胸に刻んでいる。

 正々堂々真っ向から得た勝利を誉とし、武勇を広める等の行いを積み重ねて位階を高め竜へと近づいていく。

 故に戦に生き、戦に死ぬ。

 そんな見ようによっては高潔と言うよりも、野蛮な考えを持つ彼らの鍛錬は勿論尋常のものではない。

 

 山の中を四つん這いになって駆け抜け、四肢と尾を鍛える四足駆けから始まり、川では潜水による心肺の鍛錬と並行して魚の狩猟を行われる。

 一息の内に魚が捕れなければその日の飯は無く、恥辱と共に一日を過ごさなければならなくなる為皆必死になって魚を探す。

 それが終われば激流のど真ん中で踏ん張り、親父達から礫を投げつけられる頑強な肉体作りの鍛錬の時間だ。この際礫を防ぐ者はやっせんぼ(臆病者)きっさねもん(卑怯者)と呼ばれ、蔑まれる。

 その後も牙と顎を鍛える石噛み、火中においても戦闘を続けるための火渡りと言った最早鍛錬とも言えない拷問的・苦行的な行いを続けていく。

 鍛錬、鍛錬、さらに鍛錬の日々である。

 全ては屈強な肉体を作り上げ、父祖たる竜に少しでも近づく為に。

 

 この鍛錬を、臆病な彼はどう切り抜けたというと、周りと比べると少々頭が回った彼は様々な方法でどうにかこの鍛錬で楽をしようとした。

 祖竜術を使ってはならないとは言われなかったので術を使って肉体を強化したり。水の中に隠した罠を開いて魚を捕った。

 だが、後でバレて族長に大岩で潰され、嘘は言っていないのに3日飯抜きにされたりもしていた。

 またある時は村に攻め込んできた化物と一対一(サシ)で戦わされたり、同じく鱗を持つ毒蛇と心を通わせる鍛錬中に噛まれる等して何度か死にかけながらもどうにか生き抜きそれなりに過ごしていた。

 そんな日々を彼は大人の蜥蜴人からは「きっさねもん」、同じ齢の蜥蜴人からは知恵者を表す「とろおどん」等と呼ばれながら過ごし、ついにその日が来た。

 

 旅立ちだ。

 

 13歳となった蜥蜴人は成人の儀式と称して外界を知るために外へ放り出される決まりだった。

 放り出された後1年は一度たりとも村へ戻ることを許されず、己の力のみで外界を生き抜かなければならない。

 大半の蜥蜴人は傭兵をするなり、野山の動物を狩って糧とする猟師等になって1年を過ごすのだが彼は違った。

 神からの託宣が唐突に聞こえたのである。

 

『僕と契約して、冒険者になってよ!』

 

 彼は自らの血と魂で繋がっている恐るべき竜を信じていたが、別段他の神を信じていない訳でもなかった。助言が聞こえ、それが良いものであるならば従う、そういう思考回路をしていた。

 故に助言に従い、彼は冒険者として走り始めることとなったのだ。

 

「ゴブリン退治さ!」

 

 そう言ってきた只人の4人と一党を組み、初めての冒険へ行くことになった彼は様々なものを学んだ。

 只人には勇気と無謀をはき違えている浅慮な者もいれば、優秀ながらも他者を見下す高慢な者もいること。そんなものかと思えば己の武技を鍛える武芸達者な者や、竜ではなく地母神等の神を奉じながら世の為人の為に動く者等多数の考えや姿形を持っていることを知った。

 また、小鬼は邪悪であること、卑怯であること、間抜けだが到底許される存在ではないこともその後に理解した。

 里で暮らしていた世を知らない蜥蜴人であった彼には外界全てが目新しく、面白くも厳しい世の中であることをその身を以て学んだのだ。

 

 そして彼は、何やら鱗が浮つくような空気を察知して横穴を看破し、卑怯にも背を襲おうとしていたゴブリンの野望からして嚙み砕くと、彼を追い抜いて先のゴブリン共から襲われていた剣士と武闘家を【竜吼(ドラゴンズロアー)】の祖竜術で助け出した。

 彼は神に言われるまま殿としてゴブリンをあしらいながら逃げ帰る道中で小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)と出会った。

 

 ゴブリンスレイヤーは豪傑や益荒男、英雄という器ではなかったが、彼以上の知恵者であった。

 只人の武器は知恵と投擲である。そう言って憚らなかったゴブリンスレイヤーの策は総じて合理的かつ速く、経験から来るもの。

 ゴブリンスレイヤーと共に彼は当時の強敵であった田舎者、小賢しい【火矢】を使う呪術師等を自らの牙尾爪爪(がびそうそう)で以て切り刻み、心の臓を喰らってようやく最初の冒険(チュートリアル)を終了。

 村を救い、他人より褒められる体験と言うのは存外に心地が良いものであると彼は知ることになった。

 

 しかし、世の為人の為に武勇を立てる前に、まずは自分の為の生活基盤をどうにかしたい。

 元々野獣の肉や魚を売って集めておいた金貨10枚(支度金)を水薬や防具で消費したため武器もなく、触媒を買う金もなかった彼は下水関連の依頼ばかりを神から受けさせられた。

 何でも神によれば汚らしい汚水と泥の詰まった溝にこそ、浪漫(取れ高)は詰まっているのだとか。

 本当に何を言っているのやらと呆れながらも溝の中身を丸匙で掬い、詰まりを取る。まあこれも人の為になる、小鬼を殺す際に鼻がもげそうになったので慣らしだと思えば鍛錬ばかりの日々を過ごしていた彼にとってそれ程苦でもない。

 そんな事を考えていた時のことだった。

 

(汝、我が身を泥濘より掬いし者よ…汝に感謝を。100と余年の月日を以て蓄えられしこの力、存分に振るってくれ)

 

「おぉ!!!??おおおお!!?」

 

 彼の脳内に響き渡る、昏くしかし荘厳で清廉なものを感じる声。

 一体誰かと周りを見回すがそれらしき者は見えない。

 声は神の声ともまた違う、地の底から響いてくるかのようで、もしや父祖の声かと思えば魂に何も反応がない。

 

(汝よ我はここにいる。ここぞ、ここ、おい汝の足に触れておる刀ぞ!こっちを見ぬか!)

 

 まごまごした彼に対して怒りの声を上げた主が、泥の中から発光を始めた。

 使えるものは使うが武器が声を発するなど尋常のことではない、彼は一度それから手を引こうとした。

 しかし、神の後押しもあって、好奇心を抑えきれなくなった彼は泥の中に手を突っ込み弄ると右手に確かな感触が伝わり掘り起こす。

 見れば、その正体は一振りの刀。抜き身のそれは青く光り、聖なる光を湛えていた。

 共に溝浚いを行っていた女魔術師は、その剣を神剣の類であると見た。

 曲刀は四方世界において東に位置していた彼の村へ数少ない交流を持ち掛けてくれていた只人達が腰に差しているものと同じで、名称をカタナと呼ぶものだった。

 彼はその輝きに夢中になってそこに、大黒蟲(ジャイアントローチ)の大群が丁度そこを通る時間であることにも気づかなかった。

 しかし、聖剣はそれら全てを一太刀で葬った。

 

 目を白黒させる女魔術師を尻目に、彼の口には自然と笑みが浮かんでいた。

 これならば、この剣と共に在るならば己は…

 彼と聖剣の旅が始まった。

 まずゴブリンスレイヤーと共に小鬼の軍を率いて森人の里へ攻め入ろうとしていた人食い鬼(オーガ)の首を討ち取り、その心臓を喰らった。

 次に、邪神の復活を目論んでいた闇人(ダークエルフ)の呪物を破壊。幾本もの手を巧みに操った闇人の首を打ち取って心臓を喰らった。

 少し困ったのは大目玉(ベム)

 とある遺跡で出会った大目玉が放つ【分解(ディスティングレート)】の術を避けに避けて目玉のついた触手を根切りにしたはいいものの、首も心臓も見つからず仕方なく中央の大目玉を喰らうことにした。

 首狩り、心臓狩りの旅はまだまだ続く。

 

 が、その道中で彼は魔神王討伐の旅をしているという少女と出会った。

 少し調子に乗っていた彼はやろうやろうと子どもの如くせっついてきた少女と手合わせをし、全力で以て蜥蜴人の威光を示してやろうと考えていた所をコテンパンに叩きのめされることになる。

 まるで住む世界(ゲームシステム)が違うかのような力の差に軽く絶望を覚えた彼だったが、結局は少女と共に真に世界を脅かす者共の首と心臓を取ることへ目標を少々変えた。

 

 まずは彼が密かに保有していた【転移】の大鏡を勇者の党員であった賢者が解析し、自由に勇者を出張させることができるようにした。

 水の都で事件が起ころうが、雪山で吸血鬼が出ようが、古代遺跡で邪教徒が儀式を行おうがすぐさま勇者が駆けつけて首魁の首をずんばらりする。帰りは己の足でなければならなかったが、それでも大勢の人の命を救う重要な装置として機能していた。

 そんな彼女はまさしく最強(クリティカル)百手巨人(ヘカトンケイル)も外宇宙の物体も祈らぬ者(NPC)共を彼女は等しく切り刻み、聖剣の錆とした。いや、錆にさえならなかった。

 彼女が人知れず倒していた怪物達と比べれば彼の喰らったものは精々虫か小動物と同じと言える程だ。

 

 だが、彼とて神剣携えし蜥蜴人。剣聖や賢者と共に戦いの日々を送る内に彼の位階は以前と比べ随分と高くなっていた。

 背は8フィート(2M40CM)に近づき、肉体は巌のように強靭に、精神もそれに伴い臆病が豪胆になった。さらに彼の使う祖竜術も日に5度の行使が出来るようになった。

 

 彼の名が歌になり始めた所で、彼の耳に凶報が入ってきた。

 それは故郷にてあの父祖の大遺骸が唐突に動き出すと、火炎を吐き爪と牙で部族を壊滅させたという知らせだった。

 全てを見通す賢者はそれを混沌の手合いが父祖の体に悪霊を宿らせ、暴れさせたのだと言った。

 すぐさま大鏡で移動しその場に駆けつけると蜥蜴人達は逞しく蘇った父祖を打ち倒していた。だが、犠牲は大勢。強者と正々堂々戦うことを誇りに思う彼らは多数でかかることを良しとしていなかったため効率よく倒すことをせず、生き残ったのは元いた数の半分にも満たなかった。

 その中には彼の親までもが含まれ、彼の後産まれていた妹達が唯一の肉親として残っていた。

 だが、彼女等の足や腕には火傷や裂傷と言った消えぬ傷跡がついていた。

 蜥蜴人の再生能力は高い、が、血を多く流したり欠損すれば再び生えてこないのも特徴である。

 この時代、彼の耳に凶報が届くまでにどれだけの時差(タイムラグ)があっただろう。彼が急いで駆けつけた時には既に彼らの傷は癒えていた。癒えてしまっていたのだ。

 奇跡も祖竜術も、治ってしまった傷を元の状態に戻すことは出来ない。嫁入りする前の滑らかで光を反射する美しい鱗肌に消えぬ傷、傷、傷…

 何と言うことをしてくれたのだと、まるで溶岩のように煮えたぎる激情を抱いた彼はその時運悪く出て来たマンティコアを殺し、遺骸を踏みつけると勇者に言った。

 

「とどめは任せる、だが魔神王と俺で死合をさせてくれ」

 

 いつも明るく、快活な少女である勇者もさしものこれには首を縦に振らない。

 如何に彼が武芸者として高みにいるからと言って、彼女に剣の一つでも当てられない様の彼に魔神王との一対一は譲れなかった。

 

 それでも納得できなかった彼はすぐさま祖竜術の重ね掛けによって自身の力を何倍にも引き上げると勇者に切り掛かる。

 数年ぶりの手合わせに彼女は何を思ったのだろうか、しかし、勇者は「強い」以外の言葉が出ない相手だった。

 

 音速に迫る神剣の連撃も全て完璧に避けられ、反撃に空いた腹を殴られたたらを踏めば、今度は尾を掴まれ投げ飛ばされる。

 ならば体術でと爪、牙、尾の多重攻撃を行ってもその全て見切られ彼女の拳と柔術で彼は転がされることになった。

 

「攻撃に、殺気が篭ってなかったよ、優しいね蜥蜴さん…」

「う、うぅ…うぅううう…俺は、俺は弱いッ!!!」

「大丈夫!僕、勇者だよ?」

 

 彼女から、一緒にやろうと手を差し伸べられ、彼は涙で塗れた顔でその手を握った。

 また一つ強くなった彼だった。

 傷跡は彼ら一党の中でも新参の聖女がどうにか小さくしてくれ、感謝の言葉も無かった。

 

 そんな出来事(イベント)も挟み、彼の冒険もいよいよ終局。

 混沌の者共の野望をすべからく打ち砕いてきた勇者一党に業を煮やした魔神王との直接の御対面。

 魔神王は虚空から昏きモノを凝縮した闇の剣を生み出すと己に立ち向かう勇者達へその切っ先を向ける。

 

 彼等は一様に戦闘態勢に移るとそれぞれ行動を開始した。

 勇者は空を駆け一撃必殺の構えを取り、賢者は魔法でそれを援護、さらに剣聖が己の剣で魔神王が生み出した眷属共を切り払う。

 

「こちらも抜かねば、無作法というもの…」

 

 そう呟くように発した蜥蜴人の彼は腰に帯びた刀を抜くと魔剣を超えた神剣の輝きが場に満ちた。

 

「チィイエストオオオオオオオ!!!!」

 

 恐ろしい竜の末裔の、恐るべき抜刀術は魔神王の腕を跳ね飛ばし、返す刀で上段からの兜割りが魔神王の剣を真正面から叩き切る。

 蜥蜴人は退かぬ、蜥蜴人は恐れぬ、蜥蜴人は成し遂げる。

 遠き過去、偉大なる父祖の力を受け継いだ者達はそれを胸に抱いて、知恵を捨て(チェストし)恐怖を捨て、その身を一つの剣と化す。

 たとえその力が末端程しか残って無かろうとも、たとえ己は神が盤上に置いた駒であろうとしても、自身が誇る父祖を信じず何とする。

 誉のために勝ちに行くのが我ら、蜥蜴人なり。

 

 彼の心にもう臆病の二文字はなかった。

 ひたすらに突き進めば、仲間と共に結果はついてくるのだから。

 魔神王何するものぞ、こちとら蜥蜴人の勇士、侍である。

 

 右腕が攻撃を受け止められず潰れた、迎撃に使っていた尾が魔法で消し飛ばされた、両の目と足が闇に喰われた。

 だから何だと言うのだ。

 

 左腕がある、牙がある、爪がある、鱗がある、これだけ残れば充分である。

 風の動きを鱗で感じ、牙と爪、そして刀を振り上げ彼は叫ぶ。

 

「シァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 あな憎し魔神王、我らが里を焼きおって。憎し憎し、だがそれはそれとして心を研ぎ澄まし、彼はこれまでになく輝く神剣で以て魔神王の手足を切り落とし、勇者の道を切り開く。

 数瞬あれば魔神王はそれをも再生できるだろうが、数瞬あれば勇者にとっては十分だ。

 

 太陽の爆発!

 太陽の爆発!!!

 おまけに太陽の、爆発!!!!!

 

 聖剣と勇者の力を全身に浴びて爆発四散した魔神王に最早無事な所など見つからない。

 彼の背よりも大きかった肉体は一回り小さくなり、人型に焼け焦げた肉面を晒しながらぐちゃりと地面に堕ちた。

 命の灯が消え行く魔神王に蜥蜴人はずりずりと蛇の如く体を捻って辿り着くと、心配する勇者や同胞達が見守る中朱く輝く核を己が牙で嚙み砕き飲み込んだ。

 それで魔神王は終いだった。

 心の臓ではないが、これもまた強者の臓物、自分を位階を高めるには足り得るだろう。聖女の奇跡でも治せぬ深手を負った彼はそう考えながら息を引き取ろうとした。

 だが、その時、奇跡が起きた。

 

『おめでとう、君は神に、神たる竜になるだろう』

 

 神の声が脳裏に響く。

 彼はついに、ついに来たのかと喜んでいた。

 生え変わりを果たした筈の牙が伸び、口元には何やら突起のようになった髭も生え始め、さらに額からは小さく2本の角が顔を覗かせている己の身についに、ついに。

 これは吉兆と喜んでいたものが、ようやく時を迎えて花開く。

 

 思わず彼は涙した、この世に生を受けて3度目の涙だった。

 彼の肉体には変化が起き始めた。

 潰されたはずの手足が生え、尾が再生し大きく伸び、髭も伸びると言った塩梅に強靭な肉体へ自らの存在が進化していくのを感じ、脳内が歓喜に満ちる。

 神になるというのは、存外に心地が良く、不思議な感覚だった。

 

「GYAOOOOOOOOOOOO!!!!」

 

 変化を終えた彼の啼き声が大気を震わせる。

 5チェーン(100M)もの体躯となった彼の身は比喩でなく、事実として天へと昇り始めていた。

 蜥蜴人から竜へと身を転じさせた彼は風の魔法で雲を生み出しては掴むと、空へ空へと体をくねらせ駆けていく。

 

「竜に、ホントになっちゃった…」

 まさかまさかの出来事に驚く勇者。

 

「彼らの神話は本物だったのか、これは興味深い」

 知識の一つとして自らの手記に今起きたことを記入する賢者。

 

「手合わせ、手合わせを!」

 死合いをしたがる剣聖。

 

 三者三様の反応に竜は身を回転させ竜巻を起こし、周りの雲をすっかり押しのけ晴天を彼らに見せつけるとまた一啼きしてさらに高みへ登り、消えた。

 

(これにて蜥蜴から竜へと成った男のお話は終い、とっぴんぱらりのぷぅ、でございまする)

『おぉー!素晴らしい、素晴らしいです!まさに覇道を行った王道の叙事詩というやつですね。』

(楽しんで頂けたのでしたら、恐悦至極)

 

『あれ?何してんの?』

(おぉ!これは我が神!イム・ジッキョウではありませんか)

『久しぶり~。元気してるみたいで何よりだよ』

(神となったのですから、元気以外にあるはずも)

『確かにそうだ、こりゃ一本取られたよ』

 

「『(あっはっは!)』」

『あ、そうだ。これからまたRTAをやるんだけど見に来る?』

 

 実は寂しがりのイムです、これは見に行ってあげなければ元信徒として可哀想と言うものでしょう。

『ちょっと幻想さん?』

 世界竜と化した後も、彼は自らの神が好きだった。『ちょっと』

 彼の神は今度は森人を操作して世界を救いにいくらしい。『ちょっとって』

 いや、正確には辺境のあの街を救う所で終わるつもりらしいが、それでもまた同じような世界で骰子の一つ一つに一喜一憂の様を見せてくれるだろう。

 世界竜は、世界を見守ると共にイムのRTAも見守る存在だった。『おいゴルルァ!』

 はてさて、結果は如何様になるか…『免許証持ってんのか!』

 

 これは疾走狂戦士と呼ばれることになる筋骨隆々の森人が走り出す、少し前のお話だった。

 




 蜥蜴侍君(最終的な状態)

 8フィートも上背がある益荒男。
 最初はダイスの出目が移動力以外そこまで良くなく、イムにもさほど期待されてはいなかったが洞窟のゴブリン退治(チュートリアル)後の溝浚い中に見つけた日本刀が神剣であった為、興が乗ったイムに世界の果てから果てまで駆けずり回された。
 神剣の効果は身体能力全向上に加えて、聖なる輝きでNPCの能力ダウン、同じ等級以下の攻撃では壊れず、クリティカルで万物両断というクソ程強い神剣。でもビルド的に強化しても標準的な森人の素早さにも負ける鈍足さな模様。
 途中からは勇者ルートに入り、英雄達の一人として咥え入れられ、最終的に方々の体になりながらも魔神王を打倒す。その功績が認められた結果神の一員として迎え入れられた後は世界竜として色々な世界を見て回っている。


四方世界こそこそ裏話

 最初に出て来た父祖占い、そのほかの占い結果は左から将来性なし・臆病、性豪・種付け係・挑戦者、反逆者・変り者、先祖返り・英雄だったりする。一挙一動見られて総合的に判断されるので、下手な事をすると殺されるぞ!
 蜥蜴侍君は一度親元に戻るが、駄目、来ないで!という親からの念を感じて頭骨によじ登り、太鼓のようにペしぺしした結果「臆病者だが見る目あり、恐るべき竜に至るやも」という占い結果でした。
 ここ等辺は完全オリジナル設定です、公式設定ではありません。バンバン使ってくれてもええんやで。

 蜥蜴侍君は中国の龍みたいになる前はドロヘドロのカイマン君がでっかくなった感じの見た目だったぞ。服装はDLCダイカタナが入る前に行ったやつなのでそれっぽいので代用だ!

 今作は色々な作品に書かれていることを流用したり、アレンジしたり、オリジナルのものを掛け合わせたキメラ的なものです。女神官逆行や小鬼殺し√諸兄には本当に頭が上がりません。二次創作ってこういうものだよね、という感じで許してください、何でもしますから!
 本来この話、実は2話投稿時で感想を言ってくれた兄貴からインスピレーションを得て作成しておりました。結局2年も待たせてしまう結果になり本当に、申し訳ありません。

 没ネタ
 蜥蜴侍、蜥蜴司祭に相対す。

「ダイナの僧でありましたか!」

「いかにも、拙僧は恐るべき竜を奉じる蜥蜴人の司祭にて、現在はゴブリンスレイヤーと呼ばれる御仁とその仲間と共に専ら小鬼を滅している身にございます」

「あの小鬼殺し殿と一党を!これぞ奇妙な縁えにし、あぁ、折角の蜥蜴人同士我らの言葉で会話をしないか」

『よか(良ぉございます)』

「しかし、流麗な共通語恐れ入る。俺も蜥蜴人だが、どうにも言葉が伝わりにくくて難儀している身だ。自分以外の蜥蜴人に会うのは久しくないが、そちらはどこの部族出身か。」

「拙僧は鬱蒼と茂る密林の中で暮らす南方の部族出にて、出家をして司祭となりもうした。共通語はその折に身に付けたもの、そちらは中々に知恵が回るしきっと共通語もじき流麗になりましょう。」

「おぉ!ありがたい言葉、銀等級にもなった方が言うならば間違いない。俺も道半ば、努力を続けねば」

「うむ、良い心がけだ」

 こんな感じの会話を薩摩言葉でやろうと思って色々探したけど良い感じの文章が出なくて没に。そもそも昔話口調なので中々組み込むのが難しいねんな…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士3

展開が雑になってきたのを気にせず投稿、気分は初投稿です。


 なんか奇跡が起きまくるRTAはーじまーるよー!

 

 

 前回トロルのせいで狂戦士君の意識が無くなったところからですね…のっけからアカン…これじゃ患者が死ぬゥ!患者が死ぬねんこんなくらいじゃ!!おチャートこわるる~!

 村人、そうだ村人はどうした!様子を見に村人がッ、来てないッ!いやまてトロルの断末魔は聞いたはず…もうこんなのチャートと違うから分からねぇ!!来て、お願い来て…お願いします!なんでもしますから!このままじゃ野獣(直球)による昏睡虐殺ショーが始まっちゃう!!

 

 てかなんでここでトロルなんて化物出てくるんだよ!!中盤以降のウザ強い敵とかマジでガバにもうんちにもならないから!!!ひぃいいいい来てる!!狼来てるぅう!!ねえお願い誰か早く来てぇええ!!ここまでほぼほぼ上手く行ってるんだよぉお!死亡(キャラロスト)はヤメロォ!(建前)、ヤメロォ!(本音)

 駄目みたいですね……はぁ…大人しく再走ですかねクォレハ…悲しいかな…

 

 

 うん?ちょっと待ってください?この匂いは(希望)間違いない!村人です!しかも鍬とか鎌で武装してます!追い払って!早く!もう口から我慢汁タラタラしてるから!殺れ!just do it !!(クソデカボイス)

 いやあ、危なかった…これで狼が興奮してたりしたら村人にも襲い掛かって最悪救助してくれませんからね…危ないあぶない。しかも来てくれた人の中に黒塗りの屋根の人がいるんですが、彼女どうやら薬師だったようでまず裸にさせられ病状チェックしてもらえました。そして腰嚢から何でこの運を他に回せなかったのか奇跡的に割れてなかった治癒の水薬を口移しされ、狂戦士君がどうにか生還です。

 診てるときにハアハア言ってましたがなんとか助かったので良しとします、ありがとナス!

 

 いやホント危ない所でした。何でこういう運ゲでいつも私は敗れるのかマジで理解できません。履修不足もあるとは思いますが何でこうクズ運ばかり…ですが拳がぶっ壊れてるとは言え死亡なくこの場を切り抜けられたので続行します。

 そしてここで朗報です、今倒したトロルですが実はギルドから報奨金がななななななんと、金貨30枚!現れたら村が崩壊するのがほぼ確定な奴なので倒せると「村の英雄」ってトロフィーが貰えるくらいの奴なんですよねぇ。それとタイマン張って殺してあまつさえ生き延びる森人がいるとかマ?

 ともあれこれでもう下水路マラソン走らなくても金策の心配は無くなりました。不幸中の幸いで小金持ちとか、良いぞーこれ。ただ村にしばらくいる羽目になっちゃうのはガバゾ。まあどの道夜は門が閉じちゃって町の中には入れないんで、どっこいどっこい、どっこいどっこいですかね。

 夜間通行出来るのが鋼鉄等級からって仕様、一般的には不評ですけど僕は好きです(鋼の意志)まあ下水路の不快生物達を相手に何度も戦うのはあまり好きじゃないのでこれでも良いでしょう。

 

 狂戦士君にはそこそこ無理をさせてるのでここでしっかり休んでもらいます。先駆者兄貴みたく【忍耐】取ってないとこういうところで微ガバになってしまいますが、気にするな!

 もっとタイム縮めて♡や最善を尽くさずに何がRTAだとか、色々声が聞こえる気がしますが…俺が従うのは、俺が作ったチャートだけなんだよ(唯我独尊)時間ないんで早くしてくださいよぉ!って動かしちゃうと過労死する可能性が出てきたりするからね、しょうがないね。

 

 あとこのまま行けば昇格試験があるので肝心な所で動けないのは、めちゃガバです。筋肉を成長させるには適度な休憩が必要、これ常識。加えて村を救ってくれたと体が治るまでタダで泊めてもらえて、尚且つ薬の処方もしてくれる環境は控えめに言っても最高なんだよなぁ。

 報酬を女で差し出されかけた時はビックリしましたが、biimチルドレンたる私には申し訳ないが女はNGという事で断りました。(まずRTAなんでそんな余裕は)ないです。でもこんなモブ顔美人とも選択肢次第で結婚できるとかホントこのゲームシステムとかどうなってるんですかねぇ…

 

 では回復するまでにー、少し時間がかかるしー、その間暇なので―。

 み な さ ま の た め に ぃ ~。

 狂戦士君のビルド解説を用意しました。

 

 今回私が目指すのはpart1でもちょこっと触れた遠近どちらも対応できる両刀使いです。ゴブスレ一党は原作でも指摘されていたように、術士多め前衛が少なめというピーキー構成になってます。ですので先駆者兄貴はその補填としてタンクを育てていましたが、私は攻撃こそ最大の防御と言うことで遠近どちらでも相手に大ダメージを与えられるように育てることをコンセプトにしました。

 そもそもこのレギュレーションではゴブリンを倒すのはもちろん大事なんですが、田舎者(ホブ)人食鬼(オーガ)小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)等を始めとした普通に強敵もバンバン出てきます。デカい相手にはこちらもデカい一撃、と言う訳でデカい一撃をバーンと喰らわせて出血なり即死なりを引いて、あとは地味にうざいゴブリンの排除に気を使う、これが私が作ったチャートです。

 

 今回みたいなことは稀ですが、狂戦士君の「蜥蜴人の筋力」で「森人の機動力」は正直かなり魅力ですからこれを利用しない手はありません。ですが現在は装備があまり整っておらず、数打ちの剣で攻撃するより石で殴ったり弓で撃った方が威力が出るとか言うとんでも状態です。剣、なんとかしろ。

 それでもある程度までならいけますがこの後出てくるイベントの人喰鬼将軍(オーガジェネラル)戦は現在の装備では満足にダメージを出せないので村から帰ったら装備を一新します。具体的には防御力の底上げと近距離武器を獲得、さらに遠距離攻撃力の元たる弓替えの二つです。

 この村でおよそ金貨32枚、さらに今までの諸々を含めると現在総資産がざっと金貨40枚程になるのでこれを丸々装備へと変換して装備のランクをアップを図ります。金は使える時に使わないとガバの元なので盛大に使いましょう。

 

 

 オ”ッハー!!!(起床)はい、回復完了。結局回復だけで2日掛かりましたが下水路マラソンして毒るよりは、ままえやろ。今作は回復するのがリアルタイムな所があるのが辛い所ですね。早く回復させるには治癒の水薬、寺院へのお布施等の金が必要とかゲームの中ですら現実仕様なのはどうにかならないものか…世界観にはマッチしてるので好きですけどもRTA的にはまず味なので後で開発に意見でも送っておきましょう。

 ただゴブスレさんが瀕死になった時は【蘇生(リザレクション)】とか言う最上位の奇跡使って回復まで1日だから、薬漬けとはいえ瀕死から2日で回復するのは作中だと化物クラスと言っていい回復力なんだよなぁ…よく考えると狂戦士君のポテンシャル、実はヤバかったり?

 そもそも森人なのに蜥蜴人の筋力持ってる時点で相当ヤバい奴でしたわ…

 

 ではトロルの体の一部を腰嚢に詰め込んで、早速治った体を駆使して町までひとっ跳び!来るとき道を忘れてガバったのは内緒ですが、来た時の半分くらいの時間だったことを記録しておきます。

 町に着いたら人波を掻き分けて冒険者ギルドへ直行、依頼報告とトロルの肉片を渡します。受付嬢が配達依頼に加えてトロルを倒したことにビックリしてますが、そんなことしなくていいから…さっさとハンコ押して金を持ってくるんだよあくしろよ。

 

 累積点がこの報告で一定値溜まったので晴れて狂戦士君は冒険者レベル3に!ここでは斥候をレベル3に上げておきましょう。これで隠密行動が捗り、罠解除とかもスムーズに出来るようになります。続いて成長点がトロルを倒したことで結構溜まってるのでこれを使って【無骨】と新しく【同時発射】を取っておきます。【同時発射】は前に解説したクリティカル判定を出した時に矢を2つ射ってくれるのをクリティカルで3つ、通常でも良い目が出たら2つ射ってくれるようになる技能です。

 これは冒険者レベル3以上にならないと得られないスキルな上、初歩からレベルを上げることが出来ません。実際4つ5つと増えていったらバランス崩壊しますからね。でも伝説の武器で矢を5本射れる弓があってぇ、それにこの技能加えると7本同時発射も出来るらしいっすよ?ちなみにどう頑張っても一度に撃てるのは10本が限界らしいです。でも10本射れる弓があったとしてもすぐ矢が尽きそうだなとまず思うのは、僕だけでしょうか?

 

 これで今後に備えた狂戦士君の大幅強化1が終わりました。と、ここで金が出ましたね。しめて金貨31枚と銀貨7枚の大儲け!って、あれ?なんか想定してた額より少なくない?何でや?あっ…そっかぁ、同時受注してた薬草採取を忘れてたゾ…(池沼)ままえやろ、もう小金持ちにはなったので一回くらい妥協しても、バレへんか。

 この依頼失敗で若干信頼度が落ちましたが、トロルを倒したことで累積点がそれ以上に上がりました。これでようやく等級審査のフラグが立ち、冒険(クエスト)の諸々を受けることが出来ます。でもこれ、手続き等の関係か翌日以降にならないと声が掛からないんですよね…溝浚いも午前の部と午後の部に分かれててもう午前の部の受付が終わってるのでぶっちゃけ普通に何もすることがありません。しかし暇を持て余すのも何なのでギルドに併設されている酒場で情報収集とかして時間を潰しましょう。

 

 王都の方で悪魔(デーモン)が大量発生してるらしいな、稼ぎ時か?

 墳墓の邪教徒を倒した勇者様が今度は水の都近くにいた魔神将倒したってよ!

 水の都と言えばこの前珍しく上の森人(ハイエルフ)の冒険者集団が来たらしいな。

 この辺にぃ、美味いラーメン屋の屋台、来てるらしいすよ?じゃけん夜行きましょうねぇ~。

 

 酒場で話されるのは大抵噂話ですが侮るなかれ、情報に従って話されてる場所に行けば高確率でイベントに遭遇出来たりします。今聞いたのはレベル的に歯が立たなくてろくなのが無いですが、時たま金貨の価格が急騰してるとか野盗のアジトが見つかったとかの耳寄りな情報が出されていることもあって重宝します。

 あと酒場はランダムで知り合いに会えたりするのも魅力です。本RTAでは青年剣士パーティーが全員無事なので知り合いに会える確率自体は高め。あ、今回は女神官ちゃんと女武闘家、女魔術師の3人が集まってるみたいですね。女子会かな?

 

 先輩はどこにでもいてどこにもいない(隠密)して壁に寄りかかって聞き耳を立ててみましょうか。ではターゲットを女子に向けてと。

 

 最近頑張ってるのは良いんだけどさ…この前もね?…金が無いからって…変な素振りとかも始めちゃって…

 

 フム…話を纏めるとどうやら青年剣士君が張り切りすぎちゃってるみたいです。金のために溝浚いやりすぎて寝る時臭いがキツイって…なんだおめぇのろけ話かぁ?聞いて損しましたわぁ…

 ん?ってか女神官ちゃんがもう既に聖壁(プロテクション)を習得してる…ってことはもう既にゴブスレさん森人の砦ゴブリンをスレイしちゃってるやん!等級審査で一緒にゴブスレするはずが…えっ…どうしよ…本来ゴブスレさんと一緒に行けないのは片腕欠損レベルのガバなんですけど…まあこの後ノーミスで行けばお釣りが来るので続行します、誤差だよ誤差。チャートはちゃーんと作っておかないと後悔する、皆さんには悪い例を見ていただきました。

 特例ですが、狂戦士君には今一度青年剣士一党と一緒に冒険の旅へと出てもらいます。今度はしくじるんじゃねぇぞ…まあこの辺で情報収集は切り上げて、さっさと溝浚いに精を出しましょう。狂戦士君は30分で5万!(身売り)した方が絶対に儲かる見た目をしてますが流石に市販のゲームではそういう事は出来ないようになってます。大人しく安全健全な方に行こう!

 では後はささっと溝浚いをするだけなので…メイドインヘブンッ!

 

 なんで等速に戻す必要があるんですか(恐怖)

 

 あー、なんだボロ剣じゃ……ファッ!?魔法が掛かってる!?効果は…【浸食(エンクロチメント)】!?…えぇ…切ったところからボロボロ崩れ出す魔剣とかマジか…杉田竜の【腐食(ラスト)】の上位互換と言っていい奴です。伝説の武器ではないですがこれもレア中のレアで確率もメッサ低いはずなのに…何でこう、クズ運と強運がこうも絶妙に混ざり合ってるんすかねぇ…しかもクズ運も死亡してないので全然マシな部類と言う…

 ただこれ「風化した」武器ですね。武器には状態と呼ばれる種類分けがあり、「新品」「熟練」「錆びついた」「風化した」「折れた」など様々な状態が存在しています。その内「風化した」は「折れた」の一つ手前、もうボロボロで通常使用がほぼ出来ない状態のことです。この状態の武器で普通に戦ったら3回攻撃をヒットさせるまでに確実に壊れるので投げつけたり、突き刺したりして使ったりするのが主な使い方になります。

 ちなみにゴブリンが使ってる武器の多くが「錆びついた」「粗雑な」とつく武器です。そんな状態の武器をも華麗に使いこなすゴブスレさんは一体どんな修業したのか…想像も出来ないな。

 

 本題に戻りまして、魔法の武器は伝説の武器と違って錆びるし壊れるので、手入れが必要不可欠です。それに壊れると魔法も無くなるので使い方によっては使い切りの奴も多く、魔女が持ってた「物探しの蠟燭」とかがその最たる例になります。あれは魔法の道具ですが、大きなくくりで言えば同じです。

 ただそれに見合うリターンもしっかりあり、【研磨(シャープ)】の魔法が掛かった剣は使うと自動で研磨され切れ味の劣化が大幅に下がったり【必中(ヒット)】の弓は番えて射ったら対象に確実に当たる等、持ってるだけでアド、売ったりしても大金になる最高の武器ですね。通常プレイでは宝箱とかボスを倒した時くらいにしか得る機会がありませんが、こういう所でも手に入ります。

 

 ただまさかそれがこの段階で手に入るとは思いませんでした。欲を言えば「錆びた」くらいの状態で出てくれれば砥いだりしてどうにか延命出来て良かったんですが、あんまりビルドと合わないのでこれでも全然嬉しいです。この後のオーガ戦で大いに役立つと思いますので括約を祈りましょう。

 にしてもマジであそこから生還できただけじゃなく、魔剣までゲットできるとか僥倖どころの話じゃないですね。RTAの女神は、私に微笑んでいる!?…微笑んでたらもうちょっと良いパターンを引けた気もしますが、流石にそこまで求めるのは強欲が過ぎてますんで心にしまっちゃおうねぇ~。ありがたやありがたや。

 

 さて溝浚いのお仕事も終わり、体を清めたら今度は工房に行って武器を見繕います。ここでゴブスレさんが転移の巻物や武器を頼んでいたように工房の親父へ弓の仕入れを頼みましょう。まずは金貨をざらっと出しまして、相手をその気にさせます。男には美貌が効かないのでこういう所で誠意を見せないと中々動いてくれませんが、どうやら気に掛けてもらっていたようで話を聞いてもらえました。何か特別なことしたっけ?と思いましたが、もしやコイツホモか?

 

 まあそんなこと気にせずにさっさと本題に移します。武器の仕入れ代金で金貨3枚…仕入れでこれはクソ高い!ですが今の私には余裕で手が出せる金額です。トロル倒したりしてますが狂戦士君自体はまだ白磁等級で信頼も何もなく、値引きはしてもらえないのでここは素直に出します、あげるわ貴方に~。

 

 今回私が頼む弓は魔法の武器でもないのに通常店売りされてない品なのでこうしてお取り寄せしないと買えません。店売りしない弓で魔法は付与されてない、聡明な皆さまはもうお分かりだと思いますが私が親父に頼んだのは大弓です。

 通常の弓よりも1.5倍の大きさで2倍の筋力を要求されますがこれが【引き絞り・力】とよく合うんですわ。本来森人ではなく蜥蜴人や鉱人(ドワーフ)レベルの筋力があって初めて使える代物なんですが、トンでもエルフの狂戦士君はこのレベルだとギリギリ使えます。いやはや、筋肉万歳!

 

 あとは金にものをいわせて一番いい装備を頼んでゲイ掘ルグ(TDN槍)ゲットだぜ!します。こちらは数打ちと違って鋼製で耐久値もそこそこ、長柄の武器になるので近距離寄りではありますが中距離戦にもある程度対応できます。お値段は金貨8枚、まあ相応ですね。

 

 あとは、大弓使用と平行させることによって糞程重量が増して動きが鈍くなるので狩人様みたいな外套を買います。これは先駆者兄貴と同じような代物で血濡れ防止も兼ねてるやつです。しかも体の要所を守る鉄板つきなので高性能!今回は金貨5枚で購入できました。

 これで所持金は金貨が10枚程になりましたが、あとは余った金で治癒の水薬、強壮の水薬等の水薬類を一本ずつ買います。保険は大事。

 残ったのは金貨7枚、お取り寄せする大弓は割と種類がありますが大体金貨10枚程掛かるので明日以降金を稼いで行きましょう。

 

 今回はここまで、次回は、金、暴力、S●X!をするゴブリン達を皆殺し(スレイ)します。

 ご視聴ありがとうございました。

 




アカン…本筋から離れてもうてる…これじゃお話になんないよ
でも、でも皆の感想コメがあれば!また、また…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士3裏

執筆速度に比例しない内容、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
ゆっくりしてほしくて初投稿です。


 目が覚めたら知らない天井だった。

 

 それだけならばまだよかっただろう。腕に違和感を感じて見ればなにやら良く分からない管が多数付けられ、尚且つ腹に湿り気を感じて見れば女にへそを舐られていたとしたらどうするだろう…それが全て現実だったなら、どうすればいいんだろう。

 1手遅れて自分は全く情けなく叫んだ、1600年程生きてきてこんな事は初めてだった。

 

「うわぁあああああ!!!?」

 

(あ、やべ)わぁ、起きたんだね!大丈夫かい?あの後どうなったか分かるかな?」

 

 そして今しがたした行いを前に、何事もなかったかのようにふるまわれた場合はどうすればいいのか見当もつかない。だが自分にも何やら分からないものの声が聞けることを思い出しどうにか平静を保つ。自分も中々に神経が太くなっているようだ。多分早口でまくしたてられて勢いに押された訳ではない。

 

「あーうん、もしかして助けてくれたとか?」

 

「その通り!私は君の命の恩人だが、まずはそうだね、村を救ってくれたことに礼を言わねばだ。ありがとう、君のお陰で私たちの村は救われた。その恩返しでこうして君をベッドに招いたわけだ。しかしまさかトロルと殴り合って勝つとはねぇ、どんな筋肉してるんだい?(ふぅ…誤魔化せた)

 

 頭に浮かんだのであろう疑問を口にする女はベッドへと肉付きの良い腰を振りながら座ると、何が良いのか自分の二の腕を上下に摩ってきた。それが娼婦のように蠱惑的な慣れた手つきではなく生娘のような初々しさが出るのだから、何やらチグハグで笑っていいのかそれとも怒って良いのか分からない。

 しかし、どうやら自分はあのトロルと戦い、倒すだけでなく生き延びることが出来たらしい。元々筋肉には自信しかなかったが、まさか岩程硬いトロルを殴り殺せる程とは恐れ入った。古今東西見渡してもトロルを弓矢で以て殺すのではなく殴り殺した森人は自分だけだろう、少々鼻が高い。

 これも神の思し召しだと南無南無しておく。東方式だが件の声を発する神がどこの神だか分からないし、まあこういうのは形式よりも気持ちの方が大事だからきっとセーフだ。

 

 そしてその神が先程からトロルトロルと頭の中にやけに響く声で喚くのがうるさくて敵わない。何度も確認しろと言われればむしろやりたくなくなるのが人間だと言うのに、神は人の気持ちが分からないのか…そう言えばこの神、アルティーエとか言う邪神の類か。

 全く、と少し嫌になりつつもさっき起きたばかりの体をどうにかして起こそうと力を入れればやたらと痛く、筋肉が無理やり動かされていたのか体の芯から痛みがじくりじくりと上ってくる。これが肉体の枷を外す【狂興】の副作用か…やはり覚知神が授ける奇跡は効果はあっても外法ではあるらしい。

 邪神二柱に愛されるのも楽ではないな。

 

「そうだトロルは?あの後トロルはどうなったの?」

 

「トロルなら君に殴り殺されたと今…「ああそうじゃなくて、今どうなってるの?」

 

 流れで回らぬ頭が紡いだ言葉を訂正すれば思案顔で顎に唇にんーと指を当てる女。表情と言い動きと言い先程からいちいちあざとい…一体どこでこんなのを学んだのか?今時淫魔(サキュバス)だろうと、いやあれは直球で来るから比べるのは酷か。

 

「大方は燃やしてあったと思うよ?何か薬学に使えないかと思って一部は私が保管してるけども」

 

 危なかった…討伐部位をギルドに持って行かないとお金がもらえないというのに。まあありがたいのはトロルの討伐部位はその皮膚であることだろう、日光で照らすと硬くなるのはこれ以上ない証明だ。だがトロルの体が薬学にも使えるものだろうか?確かにトロルのように体を硬くすることが出来ればおそらく大きな怪我はしなくなるだろうが。

 ま、自分には良くわからぬことだし関係ないだろう。

 

「ならちょっとでいいから返して貰えない?討伐したってことをギルドに言わないといけないからさ。手のひらくらいあれば多分十分だよ」

 

「そうだったんだ!私が持ってなかったら焼けて完全に無くなってた所だったね」

「あーッ!冒険者さんが起きとる!よがったー!」

 

 どうやら無償で働かされることはないと安心していたら聞き覚えのないしゃがれた声で会話が遮られた。一体だれかと思ったが、知らない人だ…だが杖やら雰囲気やらで何となく村長っぽい人だからきっと村長だろう、多分。

 

「ほんにすまながったなぁ冒険者さん…村のもんが小鬼さ言ったバケモンがトロルっつう危ねぇやつだったんだってな?詫びになんかあげてぇけど、村にゃもうなんもなくってなぁ…だども傷治るまでいくらでも村にいてええからよ」

 

 長々話したことを纏めると大体こんなものだろう。どうやら本当に村長だったらしい…その異様に髪がフサフサな頭には少々驚いたが顔は枯れ木のようにしわくちゃだ。僕も只人だったらこんな見た目になるんだろうか?森人は爺になったらすぐ大木になって森の流れに戻りたがるから比較できない。そもそも誇張なく万年生きなきゃいけないのはなあ…

 取り合えずこれからは冒険者が倒した怪物の死体はむやみに燃やさないようにして欲しいと注意喚起をしておく。倒した怪物の討伐証明部位を持って行きたくても燃やされてましたじゃ換金出来ないからね…昔に比べて穏やかになったとは言え冒険者にはまだまだ血気盛んな輩はいるのだよ、悲しいことに。

 

「あぁッ!!そうだ!娘っ子はどうだね!?おらの孫娘はめんこくて良いぞぉ!」

「いらないいらない。只人ってすぐいなくなっちゃうでしょ?僕これでも1600年生きてるから。多分只人の一生掛けても僕の見た目はほぼほぼ変わらないと思うよ?第一子供だって300年行くかどうかなんだから…自分の子供が自分より年寄りになって死ぬとか、どんな拷問だっての」

 

 何を思いついたかと思えば驚いた。まさか普通に自分の娘を送ろうとしてくるとは…只人との異文化交流はこういう所が面白くて変だ。でもちゃんと話を聞いていたんだろうか?文脈が一致してないと思うのだが…

 

「とにかく無理だね」

「そうかぁ…残念だけんどしゃーないなぁ…ほんにいらんのか?」

 

「根無し草の冒険者にそう言うのは止めておきなって、僕ならまだしも他の男がこの村を捨てて何処かに行くかも分からないから…」

 

 その後も喰い下がっては自分の孫娘をしきりに嫁に出そうとしてくる村長の話を断るのは苦労した…只人って交渉事では他の種族を追随させないってのはこういう所なんだろう。森人とは違ってすぐコロコロ情勢が変わるから口が達者になったのかな?なんて思っていたら了承しかけたのがやはり怖い。

 途中出てきた件の女の子は普通に可愛らしかったけど流石になぁ…最後らへんは最初の繰り返しまで出てて、起き上がれていたら殴ってたくらいのしつこさだった。はぁ、思い返しても何一つ得がないので取り合えず寝よう、回復回復。

 薬師の女は寝てる最中に何かする訳でもないはず…多分…そうであると信じたい…と言って疑っても今の自分だけでは起き上がることもままならない程満足に動けないので結局無駄な抵抗になるだけだと諦めて自分の意識が次第に夢の世界へと遠のいていく。

 翌日のパンツは濡れていなかったが、着替えと称してひん剥かれたのは納得が行かない。結局まだ動けないので2日この村に滞在することが決定し、少し絶望した。只人って怖い…

 

 

 ――――――

 

 

 

「はい、これで冒険者登録は完了です!」

「でしたらこちらの書類はこのように…」

「お疲れ様です、強壮の水薬はいかがですか?」

 

 陽が昇って朝の涼しさもなりを潜め始めた頃、近くの酒場とは裏腹に受付嬢に休みはなかった。閑散期の冬が明け一気に忙しくなったとは言え、通常ここまで行かないであろう程近頃業務が立て込んでいる。まだ昼前だというのに既に書類の山は2つ程形成され、疲れ切った冒険者と顔を青ざめさせた依頼主の対応に毎時追われている身で胃が痛い。

 最近は依頼の重複受注が駆け出し冒険者に広まりその手続きが業務の苛烈さを増しているのだからたまらないのだ。いつもは二束三文で使われている冒険者が金を手に入れるの自体は嬉しい事だが、それとこれとはまた別である。

 思慮の無い者がゴブリン退治と重複させて他の依頼を受注してしまえばその生存率は激減。ただでさえゴブリン退治と侮る者が多いのに加えて疲れた体でこなす依頼はおざなりになり、やはり平時に比べて評判が低くなる。やはり注意しか出来ない受付という立場はこういった時本当に歯がゆく感じてしまう。

 

 それを始めたのはあの人、自分のことを狂戦士と称す長耳揺れる森人だ。言い方は悪いが別にコイツのせいでと咎めている訳ではない、ないがどうにもきな臭い雰囲気が消えない。どこか胡散臭いというか、人間味が無いというか…言いようもない不気味さがある気がするのだ。

 だが単独で不人気な下水道の依頼を率先してこなすし、軽快な話で場の雰囲気をほぐすので依頼主からも良い話しか聞いたことが無い。さらに依頼達成率は脅威の100パーセントでギルドからの評価も高いと来た。これではむしろ貶す方が難しいまであるかもしれない。

 そうだ、たしか当人は今塩漬けになっていた配達依頼を受けている真っ最中の筈だが場所的にもう戻っても良い時間ではないだろうか?

 

 ガチャリ、ドアの開閉音と共にカツカツとブーツ特有の音を響かせながら速足で受付まで歩いてきたのは件の森人、狂戦士。どうやら無事だったようで、歩きながらも懐から書類を取り出しもう報告の準備を整えているのが見える。生き急いでいるのか基本的に行動に無駄がなく、どこか非人間的な狂戦士。

 だがそんな姿に少し安心している自分もいた。それは狂戦士が無事であったことにか、それともどことなく昔の彼を重ねたからか…そう言えば彼の素顔は一体どんな顔だっただろうか?と思った所で代筆を頼まれ慣れた手つきで受付嬢は筆を進ませていく。

 

「村長さんの署名がされた紙をお願いします」

 

「はいはいっと。ああそうだ、これ道中倒したトロルの肉片ね!鑑定よろしく!」

「はい、書類にトロルの肉片…えええ!!?」

 

 流れるように置かれた肉片をトレーに乗せようとした手が止まる。トロル?トロルと頭を巡らせればあの巨人が思い出される。あれはたしか単独では銅等級案件ではないか!?

 

「ど、どこでこんなものを!?」

「依頼があった村の裏山に出たから倒した!以上!ほら早くお金頂戴!」

 

「もももう少々お聞かせ願えますか?」

 

「えー…しょうがないなぁ」

 

 声の震えを抑えられない…鋼鉄等級以上の一党か銅等級でようやく倒せるものをまさかこの人は?

 手短に受けた話を纏めてみてもやはり出鱈目で、トロルと殴り合って勝ったとはやはりおかしい。金貨を取りに行くと伝え、流石に虚偽の報告かと同僚の監察官に看破(センス・ライ)を掛けて貰っても、やはり真実であると知らされ思わず耳を疑った。

 だが至高神の奇跡に間違いはない。つまりは彼が本当にトロルと殴り合って勝ったことの証明に他ならない。よく見てみれば金貨の詰まった袋を受け取る彼の腕は森人とは思えぬほどに太かった。

 

「おほー良いね!この重み最高!じゃ僕はここ等辺で」

 

 本当に倒したんでしょうか…と言う呟きを拾ったのか偶然か笹葉のように長い耳がピクリと揺れ動いたのは受付嬢には見えなかった。

 

 

 ――――――――――――――

 

 

「アイツったら最近ホント臭くてたまらないのよ!頑張ってるのは分かるけど、もうちょっと体を拭くとか入念に汚れを…」

 

「別に、部屋を分けたら良いんじゃないの?」

 

 酒場の片隅で飲み物片手に愚痴を言う女武闘家に女魔術師の提案が入り、女神官も首を縦に振る。傍から見ればただの女子会、だがその実は愚痴の言い合い場であった。女神官はゴブリンスレイヤーとのゴブリン駆除の残酷さで、女魔術師は自らの学んだことを活かす場がないことで、そして女武闘家は彼女の幼馴染たる青年剣士についてしばらく前から愚痴が続いているのである。

 

 女魔術師の提案は確かに良い。しかし、彼女たちは知らない、奇跡の力を買われて銀等級のゴブリンスレイヤーと共に行動してる女神官と、賢者の学院を卒業出来る程知力に長け書記の依頼を受けられる女魔術師に比べ、二人には討伐依頼をこなすくらいしかないことを。

 だが、依頼に行くための十分な装備が無い。つまりは…

 

「お金があったらそうしてるわよ…」

 

 とにもかくにも金である。金金金…嫌になりそうだった。田舎にいた時にはあまり考えたこともなかったが、装備に宿代食事代と都会の荒波は財布に厳しい。村の人で助け合い、時にはおすそ分けや共同作業等をして過ごしていた故郷を思い出して仕方がないのだ。

 帰ってしまいたい、そう口にしてしまえば楽にはなれるが大見え切って人助けをしたいと言った割にまだ何一つ成し得ていない。彼女の信念としてもこのまま終われないのが実情だった。

 

 だが、口から出るのはそれとは真逆の愚痴ばかり。すん、と鼻をすする姿はうら若き乙女にあるまじき哀愁を漂わせている。精一杯やってるつもりであったが蓋を開けてみればどうだろう、成功したことなどあっただろうか?最初の冒険は自分達の失敗で皆を危険にさらし、依頼内容をろくに読めずに依頼を間違え、戻った町では無駄な所で金は飛ぶ。さらに武芸に生きてきたせいで料理や洗濯と言った普段の生活までもがままならないとは…死ななかったから次があるのだけれど、これでは次に行けないではないか。

 そんなぼやけた視界の端から金髪の、ぼやけてなお美しい顔が何となく見える。この特徴に合致するのはただ一人、狂戦士だ。

 

「狂戦士さん、来てたんですか?」

「はーい、みんな大好き狂戦士だよ!何やら浮かない顔してたからちょっと話を聞こうかなと思ってね。あと、僕のことは狂戦士で全然構わないよ」

 

 ほらほら涙を拭ってとハンカチを渡され、それでようやく涙を流していたと分かった。こんな事にも気づかないとは…自分で自分が情けない限りだ。

 

「涙は女の武器って言うのにこんなところで出しちゃったら無駄もいいとこさ、資源(リソース)管理は大事。大丈夫さ、前に進むって一歩でも踏み出す体と意思があればだんだん進めるから。うーん、でもこれは只人の君たちには遅いかもしれないか…まあ君たちはまだ若いし伸びしろありそうだから安心していい」

 

 そうやって朗らかに笑う狂戦士、森人が言う冗句は無駄に含蓄があるから反応に困るが、何やら元気が出てきた気がする。

 

「あ、そうだ。唐突に来たのにゴメンね、そろそろ溝浚いの時間だからさ!」

 

 今度ゴブリン退治にでも誘うからー、と手を振りながらコルクボードに向かって去っていく狂戦士。そう言えば以前もそうやって一人出ていったような気がする背を送る。彼は軽薄なのか世話焼きなのかよくわからなくて不思議だ。ただ悪い奴では無いだろうことは知恵が足りない頭でも理解できる。

 

「私も頑張らなきゃね」

「はい、がんばりましょう!」

「そうね…また皆で冒険したいものね」

 

 女武闘家は拳を握るとアイツにもガツンと言ってやるのだと決意を新たにしたのだった。

 

 

 ――――――

 

 

「うし、こんなとこだぁな」

 

 工房はやけに静かだった。

 工房は男の世界である、それは炉に火が入れられてからの話でもう半刻もしない内に閉められる工房にはまだ無縁の話だ。獣人(パットフット)の女給が作った特製の料理に老爺も丁稚の青年も舌鼓を打っていた。

 ただ獣人女給の視線が貴方に食べてほしいわけじゃないのに…と老爺をねめつけるが甘酸っぱい空気は老爺に合わず10年早いと鉱人染みた巌のような顔で邪悪な笑顔を見せつけ、獣人女給を黙らせてしまう。

 この時間は老爺にとって青年に何を教えてやろうかと頭の中で算段を付け始める為に必要な時間だ、職人としての構想にも大事な時間は邪魔も出来やしないのである。

 今日は槌の振り方でも直してやって槍でも作らせてみるか…老爺がそう考えた所でそれはやってきた。

 

「おやっさんやってるー!?」

 

「来たがったな変なの二号」

 

 笹葉の長耳と端正な顔、それに何一つ合っていない強靭すぎる肉体。ギルドで近頃は噂になっているらしい狂戦士(ベルセルク)、だったか?工房ではゴブリンスレイヤー(変なの)に続いて変なの2号で通っている森人だった。

 それが来るやいなや懐から袋を取り出して中身を出すのだから、何だ何だと見てみれば金貨、それも30枚近くある。本物かと噛んで確かめてみれば確かな歯ごたえが歯に響いた。偽物ではないらしい。

 ただ本物、となるととても駆け出しが稼げるような金額ではない気もするが、コイツなら何となくありえそうなのが怖い所で、暗に駆け出し故にここまでやったのだから話を聞いてほしいと訴えるようにも見える。

 

 だが、その頼み方が…「金は用意した、話を聞いてくれるかい?」これでやる気になれと言う方が無理であろう…雰囲気や態度こそ違えど単刀直入に物事を言う姿にはなにやら昔のゴブリンスレイヤーでも見せられているかのような気分になってくる。

 ただこうして表情に出す分アイツと比べるとまだ分かりやすいのが救いで、これでとっつきやすさもなくなれば完全にゴブリンスレイヤーと瓜二つ状態だ。

 

「ちっ、何でお前はやたらとあいつに言動が似るんかねぇ?で、なんだ?何が欲しい?鎧か?剣か?それとも槌か?」

 

「いやぁ最近急ぐのが僕の流行りでね。うん、武器も飛ばせるくらいの大弓が欲しいんだけど…どうかな?」

 

「心当たりはねぇこたねぇが、森人ってのはなんだ…森が母親で、願えば色々と融通利かせてもらえんじゃなかったんか?只人が作ったような鉄の弓なんぞ使ってる奴ぁ俺は見たことねぇが」

 

 純粋に疑問だったのだ。自然ではなく何故自分のような職人が作った鉄矢を買うのか。そう聞いて見ればなにやら苦虫を嚙み潰したような顔をして端正な顔をゆがめる森人。なにか嫌なとこでも突いてしまったか?

 

「あぁ、まあ…家の事情が少々あってね、僕は家を勘当されたようなものだからさ。森にもちょっと嫌われているというかなんというか」

 

 当たってしまったようだ。歯切れ悪く声が尻すぼみに小さくなる様を見るにどうやら嘘ではないらしい。成程、家の事情か…森人のお家事情など手前には良く分からないが、そういう事ならそういう事なのだろう。

 知り合いに当たるのが面倒なので金貨3枚と言えばポンと出すあたり割と本気で探しているようだ。「浪漫武器って楽しいよな」が座右の銘の知り合いに、どう話をつけてやろうかと一瞬考えそれを頭の隅に追い払う。

 今はそんなことよりだ。

 

「で、他には?」

「じゃ一番良い槍を頼む!あと外套とかがあれば欲しいかな」

 

 老爺は再び期待を裏切られ、心の中でため息を吐いた。まあ仕事はこなすのが彼の良い所でぶつくさ文句を言いながらも言われた品を提供するのは職人の鑑と言えるだろう。

 しかし、しかしだ。老爺は大剣や大槌を使わせようとした自分を棚に上げて考えるが森人は普通弓と短剣を武器とする。これが大前提だ。森人が長生きなように、鉱人が石に長けているように、そしてゴブリンが低能で悪辣なように例外はほぼ存在せず、華奢な体で手足も長いと種族が種族故に、それは大体の者に当てはまる。時々魔法の才がある森人が剣に魔法を付与するなどして戦う魔法剣士になる等すれば剣や他の武器の使用もやぶさかではないが変なの2号は己の膂力のみとやはり当てはまらない。

 むしろ実は森人ではなくまるっきり存在そのものが違うと言われた方がしっくり来る程、不変である森人が蜥蜴人並みに力に長け、その種族と言えばの弓を使わず、森の恵みも満足に使えないのは変を通り越して可笑しい。

 きっと何かがあるのだろうが、それは自分が聞いていい範囲をとうに超えているだろうと老爺は口にしようとした言葉を飲み込んだ。触らぬ神に祟りなし、藪をつついて蛇を出すのは御免である。

 

 老爺の頭の中を知ってか知らずか狂戦士は鼻歌さえ歌いながら今度は血濡れ防止だと外套の物色をしていた。普通の森人と比べると2回りは大きい肩幅に合う外套はうちでは一つしかないので素直にそれを奨めておく。鉄板を要所に仕込んである外套、通常の外套よりはやや重いがその分体を守ってくれる狩人等に人気の品だ。

 

 そんな代物をどうやら狂戦士は気に入り、代金だと袋から取り出した金貨をカウンターの方まで投げてよこす。だが放ったそれは全てが全て別の所に行ってしまい結局四つん這いになって金貨を探すさまは正直に言って傑作だった。

 人間味があるのかないのか、こうして先ほどから見てみてもどうにも全容が掴めない。長年の勘は例外には作用しないのだろう。未知のことなど大体はそんなものかと一人で納得し、外套と一緒に注文された水薬類をまとめて渡す。

 

「うちは何でも屋じゃねえんだがなぁ…」

 

「そう言いながらもちゃんと仕事するの、僕ぁ好きだぜ!」

 

 で、兎みてぇにぴょんぴょん跳ねて出ていくのだから、コイツは本当に分からない奴だ。まぁ、面白い奴ではあるが…結局こうして評価をするしかない。釈然とはしないがこれもまた冒険者か。

 

 そして、老爺は客のいなくなった工房を閉めるのだった。




これまで沢山の感想、評価ありがとナス!ホモの皆さまの声援のお陰で私はこうやって話を書くことが出来ました。
しかし、話を作る技術がまだまだ未熟で、皆さんのお目汚しをしてしまう可能性もあるのでまた誤字報告、感想での批評お待ちしております。作品の矛盾点、これ可笑しくない?ってところもバンバン受け付けておりますのでどうかこれからもよろしくお願いします。
以上、クソ投稿者からでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ターバンを巻いたゴブリンのお話

こっちの方で見てほしかったので投稿します(気まぐれ)


 そのゴブリンは実にツイていました。

 周りに比べて一回り背が小さく力も弱い彼でしたが、小鬼並以上の逃げ足でどこまでも狡賢く、口喧嘩にも負けずに運よく生き抜いてきた過去を持っています。

 そんな彼の運は留まる事を知らず、とあるゴブリンの巣穴にいた時、彼はターバンや宝石、曲刀等を身に付けた冒険者達の攻撃を受けました。

 

「ハッハ―!辿り着いたぜェ!男はひき肉女は家畜!?許せねえよなぁ!!」

 

 そんなことを叫びながら曲刀でばっさばっさとゴブリン達を斬り殺していきます。

 最初は逃げてばかりの彼も大勢の仲間(肉壁)がいれば怖いものなし。

 自分が死ななければあとはどうでも良いので、仲間をけし掛け自分は影から弓を撃ち、小さい体を活かして物陰に隠れ、進んできたところで胸を突き刺すことに成功して気分はもう有頂天。

 頭目を失った冒険者達の動きが鈍った所をゴブリン達は数の責めや横穴作戦で以て不意を突いて殺すことに成功しました。

 

 獲得した戦利品は仲間と分配です。

 仲間は冒険者が使っていた曲刀やら綺麗に磨かれた石やらをぎゃあぎゃあ言いながら奪い合う非常に醜い争いをしています。

 しかし、そのゴブリンは倒した冒険者が身に着けていたターバンが気に入りました。

 何やら惹かれるものを感じて、調べてみると中に小さな魔力の詰まった宝石が埋め込まれています。

 これは魔道具だ!博識な彼は気づきます、この事実を見抜いたのは彼一人。

 周りの大馬鹿共はこれの値打ちを知らない、俺のものだ、俺のものだと大喜びのゴブリンは誰も見向きもしなかったターバンを手にしました。

 

 彼は渡りになることにしました。

 なんせ簡易的な【転移(ゲート)】の呪文が刻んであったのです、攻め込んでくる冒険者の決まって左の太腿に転移した彼の一撃は必ずと言って良い程決まりました。

 ゴブリンが魔道具を持っている、さらにそれが【転移】という高等な術が仕込まれていて、さらに左の太腿に飛んでナイフで刺してくることなど小鬼退治に駆り出されるレベルの冒険者が思いつくはずもありません。

 彼の大進撃は続きに続き、終いにはとある人食い鬼(オーガ)からも声が掛かりました。

 

「貴様が最近噂になっている渡りか、フン、精々雑兵以上の働きをしろ。まぁ、そこ等の奴よりはいい待遇で雇ってやろう、感謝するが良い」

 

 正直ウザったい上司でしたが、彼の持っていたターバンは人間程度になら効果絶大ですがオーガ並みになって来ると話が違います。

 ただの鉄ではオーガの肉体に傷の一つもつけられないのです。

 彼の持つナイフも以前に比べると性能の良いものになっていましたが、その実なーんの効果もありません。

 彼はゴブリンです、自分にとって不都合な事よりも他の自分より体の大きいゴブリン達が彼に従う事の方に注意を向けました。

 幸いここにはいつもより上等な孕み袋(エルフ)もいましたし、彼はオーガから優先してそれを宛がってもらえたので不満はいつもより少なめです。

 孕み袋を殴り蹴り、唾を吐きかけこき下ろす邪知暴虐の毎日は彼にとって天国でした。

 

 このまま上司がくたばってくれれば最高だ!と不遜な感情を隠しもせずに持っていた彼はついにその運命を変える冒険者に出会います。

 弓矢使いに術使い、戦士もいますし、ズカズカと嫌なブーツの音を立てて近づいてくる冒険者もいました。

 そんな奴らに彼が率いる20程の小鬼の一団が接敵したのです。

 彼はいつものように仲間のゴブリンを盾にして冒険者と戦いました。

 

「グアッ!!」

 

 まずは間抜けそうな顔をした只人冒険者の太腿にナイフを突き刺しぐりぐりと捻ります。

 それだけで痛みに顔を歪めた冒険者の出来上がりです。

 

「ッ!何よこのゴブリン、どこから現れてッ!?アァアアア!」

 

 生意気そうな森人冒険者の綺麗な太腿にナイフを突き立てます。

 こちらもぐりぐり捻ると、絹を裂くような良い悲鳴。思わず笑顔が零れます。

 

「こら小鬼が魔法の装備持ってやがんのか!グゥッ!!」

 

 事態にいち早く気づいた鉱人冒険者の太腿に今度は杭を刺します。

 彼の経験から2回使ったナイフは切れ味が悪くなるので刺すだけなら杭を刺した方が冒険者達を殺すのには良いことを知っていました。

 彼の野獣の眼光は次なる獲物を決めています。

 

「キャッ!!?」(パリン)

「息を止めろッ!」

 

 そして、一番弱っちそうな法衣を来た冒険者に攻撃をしようと彼は転移し、さぁ終わりだと息巻いた瞬間、彼の体に激痛が走りました。

 辛い!痛い!苦い!目に染みる!痒い!思わぬ衝撃で彼は地面に尻もちをついてのたうち回ります。

 一体なんだと涙と鼻水でグズグズになった顔をどうにかして上げるとなにやら宙に赤黒い粉が舞っているのが見えました。

 

「コイツは決まって左の太腿を刺すらしい。だから、足元にこれを撒けば引っかかる」

 

 何やら卵のようなものを持った汚い鎧の冒険者が何か言っていますが、鼻がもげそうだし体中痒くて死にそうな彼には知った事じゃありません。

 体中をかきむしり、汚い悲鳴を上げる彼にこれまた汚い鎧姿の男がズカズカと近づいてきます。

 死ぬほどの辛い目にあっている彼は一瞬痛い思いをして楽になりました。

 

 彼には誤算がありました。

 それは今まで戦ってきた冒険者とは一線を画す冒険者が来ていたこと。

 それが、銀等級という在野最上位の人間だったということ。

 自分がゴブリン(愚か者)だったということでした。

 

 そんな彼の冒険はここで終わってしまいました。

 あーあ、残念です。

 また別の駒に期待しましょう。

 

「ふむ、効果が強すぎるとこちらにも被害が強まりそうだ、改善が必要だな」

「ちょ、オルクボルグ私達治療して…」

「じ、自分もお願いしたいであります…」

 

 死んだ彼には関係のない話ですが、冒険者達のアドベンチャーは続きます。

 まぁ、RTAには失敗したのでまた再走だ、また再走だッ!!とどこかの誰かさんが悲しんでいますが、愉悦愉悦と笑ってあげましょう。

 さて、次のお話は心躍らせてくれるのでしょうか。




今回もご視聴ありがとナス!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士4

ファッ!?日間ランキング47位!?なんだこれはたまげたなぁ…これも皆さんの応援のお陰です。ホントにホントにありがとナス!

気持ち新たに初投稿です。


 リベンジと討伐で阿鼻叫喚のRTAはーじまーるよー。

 

 さて、前回狂戦士君の装備を整えたところからです。

 

 朝になり、まずギルドへ行くと話があると監察官に談話室へ連れられます。ここでは基本昇級の話が出てることを知らされるか、なにかしらヤバいことをして取り調べられるかのどちらかですが今回はちゃんと昇級の話でした。やはり単独で依頼を受けまくっていたので仲間との連携が出来るかどうかが昇級のネックになっており、今度の依頼でそれを図るとのこと。

 “それが出来ていればもう余裕で昇級できるので頑張ってくださいね、組む冒険者は一任しますが見つからなければギルドから紹介します”

 はえー、なるほど、森人で冒険してるとこういう所で地味ーなセリフの変化があったりするんですねぇ。あ、初見兄貴に一応説明しますと、監察官含めたNPC達は性別、種族が違うと大体の者の台詞に変化が見られます。ちなみに先ほどの台詞ですが何が違うかと言いますと…

 

通常「昇級できます」

森人「昇級できるので、頑張ってくださいね!」

 

 こんな感じに違ったりします。他にも女性の台詞がちょっと好印象になるのが森人ロールの特徴です。イケメンは…イケメンは何もしていなくても好印象…やっぱ、つれぇわ。でも狂戦士君は下水道の仕事も笑顔でこなすし、村を亡ぼすくらいには強いトロルと死闘を繰り広げる程の歌って踊れる(戦って殺せる)好青年なので、嫌いじゃないしむしろ好きだよ。

 

 では、ほんへにもどしまして昇級イベントをこなしていきましょう。取り合えず内容はゴブリン退治で行くんですが…まずは酒場で人が来るのを待ちます、朝早く来たのはこれから来る知り合いと一緒に冒険に出る為、その為の待ち、あとその為の酒場。

 

 しばらく待つとクエストが張り出された所でまず女神官ちゃんがやって来ました。神殿上がりで規則正しい生活をしていたためか女神官ちゃんの朝は早いです。おじさんはねぇ、君みたいな清純な女の子が好きだったんだよ!としたい所ですが抑えましょう。申し訳ないが、NTRはNG。

 ではまず彼女を一緒に冒険に出ないかと誘います。初めての冒険以降は一人で下水の依頼をこなしていたのであんまり信頼はされていませんがそこは万能な美貌でなんとかします。

 

 君と冒険したいんだ、ネネ、良いだろう?

 何で行く必要があるんですか?(正論)

 嘘つけ絶対リベンジしたい筈だゾ。

 しょーがねーなぁ(悟空)

 

 余裕!超余裕!!という事で女神官ちゃんの参加は決定しました。

 一応これだけでも依頼を達成すれば昇級は出来ますが、そこはせっかくのリベンジゴブリン退治、やっぱり一党全員呼ばなきゃダルルォ!!(建前)ゴブリン退治には人出が必要ダルルォッ!(本音)と言う訳で全員強制参加です。

 

 しばらくすると女武闘家と青年剣士が一緒になってギルドに入ってきたのでこれもまた一党に組み込みます。すんなりと入ってくれたのは嬉しいですが、お前警戒心ガバガバじゃねぇかよ。農奴堕ちには気をつけろよオラァ!(注意)あと、半刻経ってようやく来た女魔術師は乗り気ではない状態ですが、うるせぇ!行こう!!と連れていっちゃいましょう。問答無用で来てもらいます、良いですね!!

 

 ではではゴブリン退治の依頼を受けて…冒険にイクゾー!!

 

 デッデデデデデ・カーン・デデデデ!!

 

 道中はこの前と大体同じなので倍速です、好感度が上がったという事だけ記しておきますが逆に女魔術師はさっきので若干マイナスになりました。これだから女は…(差別)

 

 

 と言う訳で巣穴に着いたのでまずはトーテムの有無を確認、無いので呪術師はいないな!突、そうじゃなくてぇ~、まずは見張りに出て来たゴブリンを狂戦士君にトンでも軌道で撃ち殺してこの中の中に入ってしまいましょう。最初とは違うのだよ最初とは。

 ただ見どころ無いので、加速装置ッ!

 

 金!で買った(ボウ)!でS●X!してたゴブリンをバンバン殺していきます。するとするとぉ~、ホブゴブリンが出てきました。なんでや(殺意)四の五の言っても始まらないので下がって撃つを意識して殺しましょう。経験を積ませるためにちょっと仲間にも攻撃させてみましたが、結論から言います、遅い…

 女魔術師や女神官ちゃん等の駆け出し呪文職はAIが基本的にゴミなのでこういう時に役に立ちません。ここで撃てって時に撃ちませんし、別にいらんやろって所でなんか撃ったりします。友好度が上がっていれば助けようとしてもう少し早めに出してくれたりもするんですがほぼほぼ運なので期待しない方がいいカナー。ちなみに戦闘職も割とゴミAI、PSの見せ所さんですね。私は出来ていませんが。

 はい、と言う訳でホブゴブリン、討伐完了です。まさかの4ターン掛かったゾ…

 

 まああとはゴブリンの武器とか矢を使いながら遠距離からどんどんやっていきましょう。正面から切った張ったの真剣勝負?ゴブリンにそんなもの存在しないので一方的に嵌めます。それに正々堂々やってくるのって小鬼聖騎士だけだから(それすら周りを見張るゴブリンが自分か相手のどっちか弱ったら叩いてくるクソ仕様ですが…)これもタイムの為、卑怯とは言うまいな…

 いやー、しかし【引き絞り・力】やっぱり強いですな。狂戦士君のビルドに中々マッチしてていい火力が出ます。ジャベリンサイズのゴブリンが使う武器飛ばしに成功すると後ろにまで貫通したりするので冒険が捗ってイィ…矢羽根が無いので時々変な軌道になるのは玉に瑕ですが、TRPGは固定値で殴るより運任せでやった方が盛り上がる、盛り上がらない?ってことで容認します(ガバ)

 

 ただ問題は…初回以上には盛り上がらない所ですね、やはり最初の冒険がヤバすぎました。上位種2体にゴブリン40体、さらに20匹ほどの幼体がいたあの洞窟…あれスタンピードの前兆じゃね?ってくらいに殺意マシマシで普通の依頼と比べるとかなりエグイです。でもそれ以外の依頼で出てくるのは基本5~25匹くらいの群れ、渡りはいても1匹くらい。さっき出たのでもういないでしょう。

 

 まあ、出ちゃうんですけどね、何も言うまい…

 私のクズ運でまたまた上位種が出やがりましたが言っても別にもうお前なんて怖くないんだYOッ!最初期に出ていればこいつだけでも全滅必須になりますが、今の一党なら時間は掛かれど囲んで叩けば狂戦士君無しでも行けちゃうくらいです。修行を積んだ4人に勝てるわけないだろッ!まずクソつよ森人の狂戦士君がいるので(負けるのはありえ)ないです。「聖光(ホーリーライト)」からの矢の顔面ヒットに加え、女魔術師のアツゥイ「火矢(ファイアボルト)」、さらに青年剣士の聖剣月が喉に命中して呼吸が出来なくなった所に女武闘家の玉蹴りが炸裂して男性器確認できずであっけなく死にやがりました。やったぜ。

 

 残ったゴブリンも掃除してねぐらにも着きましたが攫われた孕み袋もいない(意味深)ですしこれで終わり!閉廷!した後ギルドでこれで解散ッ!以上!ありがとうございました!して分け前を貰いましょう。今回の冒険では渡りのホブが2匹いたので金貨一枚が報奨金として出されますが、これはあげるわ貴方にと一党の門出を祝って青年剣士君にあげます。功績はしっかりと称えないと伸びないからね。

 さて、言い忘れていましたが青年剣士一党が最初の冒険から生存している状態で、もう一度ゴブリン退治から生還させると「英雄の芽吹き」というトロフィーが貰えます。青年剣士君、生きてれば英雄にまでなれたんやなって。ただ原作では…あゝ無情。ですがゲームではちゃんと救えたのでOKです。

 

 しかし、狂戦士君が消耗品を使ってしまったので報酬である銀貨15枚の分け前、3枚は貰っちゃいます。ゴブスレさんよろしくボランティアは金が貯まらないのでやりません。にしてもやっぱり報酬自体少ないですね…国から補助金かなにか出してやれと思いますがこの国、税金取るくせに基本的にゴブリンには何もしてくれないクズ国家です。こんな国で暮らしてたらそりゃゴブスレさんみたいな奴が産まれるわけだぁ…

 騎士か兵士を村に1人か2人常駐させるだけでもだいぶ変わると思うんだけどなー俺もな-、まあ他に比べ物にならない危機があるし資源(リソース)管理は大事だからね、しょうがないね。

 

 はい、そうこうしていましたが狂戦士君、無事に昇級完了しました!やっと、黒曜等級にまで上がったんやなって。これで受けられる依頼も増えてかなり金策がしやすくなり、さらにレベルアップ時にもらえる成長点も若干増えるので技能を習得しやすくなります。

 

 と言う訳でまずは技能を取得。今回取るのは【忍耐】と【過重行動】の二つ!これが後半重要になってくる技能です。

 前回頼んでおいた大弓なんですが届くのは森の恵みで作られたものと比べるととんでもなく重いんですよ。しかし重い事は悪い事ばかりではなく、言い換えれば重みは強みとも言えます。強靭な腕力から繰り出される矢はホブさえ当たり所によっては一撃で葬り去れる威力です。それを口の中、目の中、そして男の勲章等にぶち込めば後はもう、お分かりですよね?加えて普通に殴ってもそこそこ使えるとか言う万能武器。

 ただやっぱり金も掛かるし、重量も重いしで大変なので【過重行動】が必須の技能になってきます。ダクソで言うハベル指輪のようなものだと考えてください。あと装備重量による疲労度も軽減してくれるのがうま味。ここに【忍耐】を加えることでこれからの長旅や依頼の疲労度を少しでも軽くするのが2つ目の目的です。

 もうすぐ本RTA最大の山場が来るので見た目的にも性能的にもここでドボンは絶対に避けねければなりません。精神研ぎ澄ませコラ!

 

 では最早ルーチンワークと化した下水路巡りを4日程して、工房に行きます。あ、収穫はオフ会でした。

 お や っ さ ん コ ン グ ってやってる!?とドアを開けると同時に即購入画面へ、届いた大弓を買いましょう。今回は…鬼穿ちの大弓!!このRTAで一番ありがたい鬼系怪物へ特攻が入る大弓じゃないっすか!最っ高!これでこの後色々捗るぞぉーこれ!魔法が掛かってないのになんで特攻出るんだって考えるのは、しないようにしようね?

 ただこちらお値段の方…14万(金貨14枚)!!?うせやろ?と思いましたが持ってた剣と弓を売り払って金を用意します。買った時と比べると買い叩かれてしまいますがないよりはマシで二つで金貨3枚!ギリギリ買えました。ここで買えないとなると他の装備を売り払うまであるので買えてよかったです。

 

 じゃ工房の親父にさよならを告げます。ありがとうー、さよならー♪(卒業式並感)

 買いたてほやほやの大弓を担いでギルドに帰るとそこには…原作同様金床弓手、大樽道士、杉田僧侶の3人がギルドでオルクボルグはどこだ?かみきり丸はどこだ?と受付嬢に詰め寄っていました。タイミングの良い事にイベント開始です。

 まずは受付嬢に助け舟を出してあげましょう。貴方が言ってるのはヤギねッ!えっ、違う?ならゴブスレさんでしょ(適当)と最速で正解を引いて談話室を取っておきます。ここは監督官に話を持ち掛けるだけでOK。

 

 続いて3人の中で一番口うるさい妖精弓手に話しかけて仲良くなりましょう。森人の冒険者は数自体が少ないのでこういう時に会話をして打ち解けられると後々かなり優遇されたりするのでここは割と必須。それに何でこいつがいるんだよって真っ先に口に出すのがコイツなのでここを抑えておくと後の二人が割と黙ってくれます。

 なのでゴブスレさんが到着するまで軽快なトークを繰り広げておくとむしろガバが少なくなって良いです。交渉系の技能が無くたって、話し合いが出来るってことを見せつけてやりますよ。あ、そうだ(唐突)森人に対しては「美貌」の効果は無いから気を付けようね!

 

 そして肝心のゴブスレさんが到着したらさっさと本題に移させます。普通に話すと2000歳児がゴブスレさんの無愛想さにキレて無駄に話が長引くのでここは速やかにゴブリンの話に移行し、報酬額は私が決めること、と最高金額の金貨50枚を頂く話にしておきます。仮にも国からの依頼なので他のと比べて恐ろしいほどに金払いが良いです。ただギルド通さないなら青玉級らへんから割とこれくらい貰えるのでやっぱりギルドは悪。

 

 ゴブスレさんになんか言われる前に俺も仲間ダルルォッ!と一方的に告げてホイホイチャーハン!?ついていってしまいましょう。そして今度は女神官ちゃんにゴブスレさんの「連日ゴブリン退治していたがお前は大丈夫か?若い娘だし一旦休め、今回はどうする一緒に来るのか?無理そうなら、俺一人で行くが」から「休め、今回は俺一人で行く」まで圧縮してはいけない所まで圧縮された言語が飛び出す前に同行を決意して貰います。この子の奇跡が今回のカギになるのでしっかり連れて行かないと死ゾ。

 

 談話室の会話が終わるとここから長距離移動フェーズに移行です。今まではほぼほぼ日帰り出来る距離でしたが遠方の目的地に数日掛けて移動する場合は1日移動だけの日もあったりします。長距離移動はストレスや疲労度等のコンディション管理を怠ると内輪揉めを起こしたりしてしまう魔のクエストになります。なのでそれを防ぐために嗜好品を使ったりして疲れやストレスを出来るだけ取ってあげましょう。

 

 まず長距離移動には食料、水が必須です。食事を摂らないで進めば疲労度が、水を摂らないで進めば生命力が減り続け、そのまま放置すると死にます。今回は食料を少しは現地調達出来るので食料も水も1日分用意、帰りは助けに来た森人に求めれば分けてくれるのでこれくらいでもう十分です。買い物イベントも既に買うべきものを買っているとちょろっと嗜好品買うだけで済ませられるので集合場所に行って移動開始。

 

 移動については速度を一定にするように心がけます。野営用の荷物はやっぱり数もあるので重く、休憩をちょくちょく挟まないと体が壊るるぅ~しちゃうのでスタミナ管理も肝心です。疲労が溜まっちゃうと移動速度低下に加えて休憩時間の増加が起きちゃうのでここは慎重に、時に大胆に行くのが鉄則になります。

 ただ狂戦士君自身は初歩とは言え【過重行動】【忍耐】を持ってるので大丈夫ではありますが、周りが付いて来られるとは限らないので休憩は少し多めにとってあげましょう。まあ言ってもこの中で未だに白磁等級な女神官ちゃん以外、心技体の優れた銀等級なので結構無茶しても大丈夫です。唯一の懸念材料たる女神官ちゃんをおぶって運ぶのも体力に余裕があればやっちゃいます。

 ルートの方なんですが疲労度を考慮して最短距離ではなく、街道を行くことにしました。

 

 道中は女神官ちゃんを背負うことになった以外何もなかったので倍速!狼や盗賊とかが出なくてよござんせ。さて野営ポイントに着いたら薪を探し、ついでに食料も調達してパパパっとテントを張ってワーッと火を起こして終わり!

 

 野営はこういう要素があるゲームと同じく食事に休憩、装備の点検や嗜好品の使用等が出来ます。本作では嗜好品を使用することでストレス+疲労度を減らし、信頼度を上げたり強化(バフ)を掛けて能力を高めることが出来ます。

 焚火を囲んで語らいながら原作同様ゴブスレ一党の皆がチーズや森人お菓子などが出される中、満を持して狂戦士君の番になりました。

 

 ではイカしたメンバーを紹介するぜッ!

 まずは受付嬢がゴブスレさんに出したで有名、疲労度回復効率上昇効果の檸檬の蜂蜜漬け!!

 やっぱり成人したならこれだよね!信頼度上昇効果あり、葡萄酒&火酒!!

 見た目はゲテ物だがハマる奴はハマる!効果ランダム!森人の主食、虫の蒸し焼き塩味風味!

 

 檸檬の蜂蜜漬けは妖精弓手と女神官ちゃんがムシャムシャ、火酒は野郎が、葡萄酒は女性陣がグビグビ、蒸し焼きは女神官ちゃん以外には高評価でした。やったぜ。

 

 ではちょっと面倒な就寝タイムへ。当然ながらこの四方世界に襲われる確率が低い場所は町以外にないので野営時は交代で見張りが必要です。呪文職は呪文が使えないと困るので休ませなければならず、見張りは戦士と野伏で交代することになります。

 なので見張りはゴブスレさん、狂戦士君、妖精弓手でローテーションを組みます。先駆者兄貴のようにわざと交代時間で妖精弓手を起こさないことも考えましたが、狂戦士君が持ってる【忍耐】は道中で女神官ちゃんを抱えてしまってその効力をほぼほぼ使い果たしてしまい、万が一にでも狂戦士君の奇跡が使えなくなったら大ガバなので今回は3人態勢で見張ってもらいます。

 もし妖精弓手のコンディションがガバガバになって駄目でも、狂戦士君がいるからヘーキヘーキ。私のクリティカルダイスを喰らわせてやりますよ(慢心)

 

 さあ、日が昇ったらいよいよダンジョンアタック開始です。入り口の見張りは妖精弓手のお陰でサックリ殺せて楽ですが、ゴブリン体液濡れイベントは厄介です。時々ガチで嫌がられてロスの原因になるんですが、良かった、大丈夫みたいですね。会話やら嗜好品で好感度上げたのがここで役立ちました。

 

 ダンジョン内部は罠が満載で、鳴子や落とし穴(ピット)がそこかしこにあります。ただここで上げておいた斥候のスキルが役立ち、あ、罠みーっけ!いただきまーす!!(と言うように2人で罠をどんどん解除していくとT字路にまで来ました。

 ここから先がさっきの体液濡れ以上に妖精弓手へメンタルダメージを与えることになる森人冒険者の救出です。半分だけをボコ殴りにされているので助け出してあげましょう。その前に、糞だまりに隠れたゴブリンをまず始末。ドアを蹴破ってすぐさま接敵し、狂戦士君のそのための右手(右ストレート)を炸裂させると顔面が柘榴になりました。殴りだけでも一撃で殺せるのは流石の膂力だぁ。

 そしてすぐさま拘束してた鎖を壊したら森人冒険者の体に付いた血やゴブリン液を丁寧に拭いてあげ、女神官ちゃんが【小癒(ヒール)】を使う前に水薬を飲ませます(早口)ここまでで紛らわしい殺して発言を言わせる前に何とか出来てたら上出来です。

 

 ここ等で妖精弓手のメンタルが大分傷ついてきましたが、森人冒険者の雑嚢を渡して決意を抱かせるとある程度挽回出来ます。ここ等辺は同族意識が働いて良いですねぇ、では竜牙兵(ドラゴントゥースウォリアー)君に彼女の送り届けを頼んでそのまま進みます。

 ここから先はゴブリンが徘徊するようになって少々面倒ですが、銀等級4人の足を的確に刺す魔法の頭巻(ターバン)を巻いたゴブリンでも現れない限りは大丈夫です(1敗)超激レア湧きの魔法の装備身につけたゴブリンとか対処できるわけないんだよなぁ…

 

 まあそんな事が早々起こる訳もなく、一本道を進んで決戦場所の回廊前で休憩します。ここで妖精弓手のコンディションチェックが出来るんですが…ある程度言い合いが出来るくらいには大丈夫ならOKか。これは期待の新人だァ!

 

 休憩を終えて回廊を覗き込むと、何とそこには…数えきれないほどのゴブリンがいました。一人10体くらい倒せればイケるか?はい、いけないのでしっかりと鉱人道士の【酩酊(ドランク)】と女神官ちゃんの【沈黙(サイレンス)】を掛けてもらいましょう。

 これを忘れて突撃すると50を超えるゴブリンに群がられて勇者でもない限り死にます(2敗)。だから貴重な呪文を掛けてもらう必要があったんですね。ですが掛けて貰えばもう安心。ここからはゴブリンを殺しまくります。

 ただ、ちょっとこの後大事な攻撃があるので狂戦士君はある程度殴り殺したら上で待機しててもらいます。もたつくとバッタリ遭遇しちゃいますからね、何やら音がしたとか適当なこと言って柱の影にでも隠れておきましょう。

 

(ズズゥウウン…)

 

 噂をすれば何とやら、人喰鬼将軍(オーガジェネラル)こと魔神将から軍を預かった人喰鬼君が登場しました。表記は人喰鬼なのに実力はそれ以上の人喰鬼将軍とか言う詐欺怪物です。ぶっ殺してやりましょう。

 

 魔神将云々と長たらしい口上をスキップしたい気持ちはありますが、次の攻撃を確実に成功させたいのでここはぐっと我慢です。代わりに今更ですがダメージ計算のお話をしましょう。とは言え私は理解が甘く…説明がし辛いです。いつもの先駆者兄貴のやつ見てくださった方が分かりやすいですかね。向こうはもう完走してるので見応えグンバツ、たくさん見て、どうぞ?(ダイマックス)装甲値とか暫定ダメージとか盾受け値とかこれもう分かんねぇな。

 

 ただなんとなくで良いのでダメージ計算は鉄鎧を着ててもオーガの一撃はくっそ痛いけどゴブリンの一撃ならほぼ無効化可能って感じで覚えてくれれば取り合えず大丈夫かと。

 だから狂戦士君がいくら後衛で弓をぶっぱなすと言ってもオーガの一撃で即死しないだけの装甲値は確保しておく必要があったんですね。ただまあ即死しない可能性が高いってだけなんですけど。この世界乱数が怖すぎるッピ!!

 

 お、そうこうしている内に(激うまギャグ)オーガがゴブスレさんからバカにされて【火球】の呪文詠唱を始めたので口の中に魔剣をぶち込みます。原作の幕間で槍使い兄貴が混沌の魔術師相手にやってたあれ、厄介な呪文使いは口を塞ぐかなんかして呪文を使わせなければ良い…というわけで隠密狙撃決行!

 意を決して…ン狙撃ッ!お!武器飛ばしにしては上出来です。人間で言えば舌を爪楊枝が貫通してそこが膿んで大ダメージと言う所でしょうかね。

 これで相手の舌がもつれ、尚且つ腐った事で喋りにくくなり【火球】は失敗判定になりやすくなりました。

 まあそんなことしたらヘイトがエッグいくらい集まるのでさっさと逃げましょう。ゴブスレさんや杉田竜の痛痒(ダメージ)には目もくれずにこっちの足場を簡単に壊して来ますが激昂したオーガの攻撃等回避は余裕です。

 これからは避けながら射撃部隊として動き、妖精弓手か狂戦士君がオーガの目を潰せたら近接戦にも参加するようにします。

 

 そしてここでオーガ戦の解説ッ!

 このオーガ戦にはゴブスレさんが転移の巻物(ゲートのスクロール)使用に至ることが基本的(・・・)な勝利条件です。この条件は通常攻撃が効かない+攻撃が入っても再生される+オーガが2度目の火球を使ってくるか確認の3つが必要になる通常ルートです。

 取り合えずここまで持ち込めればウォーターカッターでオーガは最低でも胴体が半分に分かれて死、最高で縦に分かれて辞世の句も詠めずに死ぬの2択で、大体の走者はこれを目指して走ります。

 

 皆さんはこれより早くオーガを倒せる道なんてない、そう思ってないですか?(HND)私も、そう思っている時期がありました。しかーし、これより早く倒す道がちゃんと用意されているのです!!!自由度の高さがウリのこのゲーム、まさかまさかの別方法で早く倒せるムーブが存在しました。毒でもなく、伝説の武器を使うでもない…これは私が前走でようやく見つけられたワザップ投稿不可避のインチキ技。

 

 その名も脳漿炸裂オーガ!!(別名募集)

 

 はい、ネーミングセンスが無いのと達成条件が割とシビアでなかなか出来ないんですがこれを成功させるとこれまでの失敗がチャラに出来るくらいのアドが生まれます(当社比)

 

 勝利への道筋はこうです。

 妖精弓手もしくはプレイキャラによる目潰し+オーガのどちらかの足の腱を切る+蜥蜴僧侶又はプレイキャラの力で転倒させる+女神官ちゃんの聖壁でオーガの胸を押さえつける+オーガの目から槍をシュー――――――ッ!!脳漿炸裂ワザマエ!!!超エキサイティンッ!!!!!

 

 と、言う訳なのさッ(冥府神HDS)

 前から体勢を崩すことが出来るのは知っていたので色々と試していたんですが、ある時女神官ちゃんの聖壁がゴブリンロードを押し潰す時に使われていたことを思い出しまして、それをオーガ挟みに使ってみたら中々面白いことになりました。ゴブリンロードみたいに全身押しつぶすのは無理ですが部位を指定することでそこを拘束できるようです。ただ、挟み込む都合上2枚は無いと駄目な仕様になってます。

 で、す、が、ここも対策済み。虚空で挟むのが駄目なので合って、そこを床とサンドイッチさせたらどうでしょう。上からの聖壁で拘束できるんです!!しかも2枚重ねで!だから【火球】を防がせない+森人冒険者を助ける時に【小癒】を使わせない必要があったんですね。

 ぶっちゃけこうやって書き出してみると無理ゲーに近いですがどうせ失敗してもゴブスレさんが殺すのでやる価値は十分にあるムーブです。

 

 (11.4514倍速)

 

 目を潰すんだよ、あくしろよ(焦り)あれ可笑しいね、全然チャンスが来ないね?何で?全員ガッツリ攻撃を当てまくって…あれ?ゴブスレさんの動きが何やら悪い気が…ゴブ毒でポジってないかステ確認…

 

 あ”っ!!?好感度ひっく!!

 

 THE WORLD!

 

 一瞬時を止めました(メニューバーを出しました)可笑しい、どうしてこうなった…どこだ?どこで間違えた…野営の時にもうちょっと話を聞いていれば?それとも回廊のゴブリン退治に最後参加しなかっ…

 あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ!!!!!!!!森人の砦アタック以降ゴブスレさんと一緒にゴブリン退治行けてないから好感度規定値に上がってないやん!何下水路マラソンしてるんだコラァッ!!

 

 あ…これは、終わった…いやでも待て…巻物は好感度には左右されないはず…行けるのか…?いや、行くしかない!けんちゃんまだ1回表、試合は始まったばっかりよ?これからノーミスならお釣りが来るので続行します!

 

 お前のここが隙だったんだよッ!!(両目潰し)妖精弓手さん!!?

 

 い”よ”っ”し”ゃ”ーー!!僕”の”勝”ち”だ”ぁ”あ”あ”!!!

 

 喰らえぇっ!闇に喰われろ!!!(狂奔)意を決してここで杉田竜と一緒に狂乱だこら!!暴虐竜(タイラノ)並みの働きを期待してますからね!本当に!擬竜(パーシャルドラゴン)に加えて狂奔で一時的に巨人程の筋力にまで成長した悪質タックルを喰らえい!

 堕ちろ!(願望)堕ちたな…(安堵)本性見たりって感じだな!死ねよ、ここで女神官ちゃんに【聖壁】2枚挟みさせてぇ!はい成功!女神官ちゃんやりますねぇ!!

 後は目に槍をぶっ放してお前の脳までぶち込んでやるぜェっ!したら終わりッ!突撃ぃい!!バンザーイ!!

 

 カラコロコロ

 

 お、待てい真実(GM)ここでそのダイスの音はまず…あああああああああああ!!!!ふざけるな!ふざけるな!馬鹿野郎ッ!!

 

 なんでこんなとこでまぐれ当たりするんだよぉッ!!こっちは全然耐久振ってないのにうわああ、生命力の8割が削られてます。死ぬぅう!!衛生兵(女神官ちゃん)!!

 槍も刺さりが甘くてダメージが思ってたより出ません!ヤバイ…ヤバイヤバイヤバイよホント!笑えないよ!!こっちはもう満足に動けないし聖壁もヒビ割れて砕け散りそうです。

 えっ、ちょ、ゴブスレさんなにし…

 

(SHINOBI EXECUTION)

 

 ゴブスレさんありがとう!!中井さんありがとう!!フラーッシュ!!押し込んで脳まで突き貫くとかやはりゴブスレさんは最高やで!!作戦大成功!!

 ただ最後の被弾はいる?いらなくない?まあ生きてるぅ~なら次があるし、この後完璧な動きをすればお釣りが来るので構わず続行です。そもそもあんなん避けれんやん…

 

 さて、意識を失った狂戦士君を野郎共に運んでもらって後は来た道を戻るだけです。地上に着いたら迎えに来た森人の戦士たちに引継ぎを頼んで帰りの馬車に乗り込みさっさと家にまで帰ってしまいましょう。何もなければこのまま町に直行できます。

 

 いやぁ、道中が綱渡り過ぎてもう気が狂いかけましたが、オーガ戦、点数の方ですが60点とさせていただきます。

 ただまた療養かぁ、壊れるなぁ…

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。




遅れて申し訳ありませんでした。
なんとか作り上げましたが、日に日にクオリティが下がってる気がしてなりません。
しかし、それでも続けます。頑張ります。ここまでの皆さんの感想のお陰でここまで来ることが出来たので最後まで走り抜けたい所存です。
ただもっと、もっと感想と評価が欲しぃ…欲しぃの…

四方世界こそこそ裏話

 このお話で、イムが暴君竜バォロンを暴虐竜タイラノと言っていたが、これは世界竜君が冒険者だった時に暴虐竜と呼んでいた名残。自分が結構気に掛けてた駒が言ってたことは覚えてるというちょっとエモいネタだった。
 部族間でも言語や考え方、文化が地味に違うのもゴブリンスレイヤーの世界観なのでこれはセーフです(屁理屈)
 でも正式名称は暴君竜なので、間違えないようにしようね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士4裏

ゴブスレ原作者がRTA書き始めたってマ?と思ってたら有能兄貴がリンク貼ってくれて見てみました。うっそだろお前、な事ばっかり書いてました…原作者ならではの小話と言うか小さい所まで描いてくれてウレシイ、ウレシイしたので皆さんも読んで、どうぞ?3裏の感想から飛べます。

あ、驚きのあまり初投稿を潜影蛇手です。



 確かに借りを返すとは言った。

 

「GOBRORBBB!」

「GOOOBBBB!!」

 

 もちろん二言は無かったつもりだし、恩義も感じなかったわけじゃない。だが、これはどうだろうか?止めようとでも誰か言ってくれやしないだろうか?

 洞窟の暗闇からペタペタと湿った足音と共に何かが猿叫に似た声をあげながら迫ってくる。いや、分かっている、分かってはいるのだ。濁った声と生臭い匂い、そして治ったはずの右足から広がる寒気と痛みの感覚は忘れもしない、あいつ等。

 

 ゴブリン(・・・・)

 

 こうして炎を増やし盾を使って尚恐ろしい。ゴブリン退治の専門家(ゴブリンスレイヤー)を真似て新調した鎧と盾が自分に何とか前に進む勇気をくれるが、見落としをしてないか、あいつ等がすぐそこに潜んでいるのではないかと勘繰ってしまう。

 それ程までに体には奴らの悪逆さ、厭らしさが染みついている。

 

 しかし、後ろには守るべき仲間がいるのだ。幼馴染のアイツに、ちょっと口が悪い魔術師、天使のような神官に、何時だって頼りになる狂戦士。皆がいるからには尻尾を巻いて逃げ帰ることなど出来ようか。まずここで狂戦士に借りを返さなければ何か二度と返せないままになる気がする。

 

 青年剣士はやったるぞとやや前傾に構え、松明の炎に照らされて暗闇から醜い顔が顔を覗かせたと思えばすぐさまそこに刃を叩き込んだ。少し短く磨られた剣はそれでもきちんと剣としての効力を発揮し、硬い物を突き破るような感触と共に小さく悲鳴を上げたゴブリンを地面に落とす。

 だがそれが骨が砕けた感触だったかや、ちゃんと殺せたのかと言うのを確認する暇はない。暗闇の奥底からまだまだ湿った音と声が近づいてくるのはまだ終わって等いない証拠だ。ゴブリンが最も得意とする戦術、数頼みの特攻はやはり初心者にとても刺さり、『常にゴブリンは人間より数が多い』と謳われるように無限と思えるほどその音は止むことがない。

 

「ほらほらほらほら!団体客のお出ましだぞぉ!」

 

「分かってるよ!畜生(ガイギャックス)!」

 

 この一党で唯一夜目が利く狂戦士の茶化すような声に青年剣士は苛立ちを混ぜて返し、次々に飛び掛かってくるゴブリンを相手取る。これでも援護射撃によって半分以下にまで頭数が減ってるのだからまだ良い方だ。

 洞窟で得物を振り回すのは禁物、刃毀れも少なくするためには刺突を多くした方が良い、待ちの戦法を取れば多数相手でも何とかなる。ギルドで稽古をつけてくれた先輩達からの知恵を思い出しながら、青年剣士はゴブリンの目、喉、顔を突き抜いていった。

 

「フンッハイッ!ィイヤァッ!!」

 

 やがて息が切れれば女武闘家と位置を変え(スイッチ)、彼女の籠手(ガントレット)に覆われた拳で以て腕や足が枝のように折られて運悪く死ねなかった者達を息を整えながら切り飛ばす。ここに来るまでに決めたようにことが進んで行くことに安堵しながら、結構動けてるな俺?と考えた矢先に彼の頭にゴブリンの投石が当たり、慢心が霧散して消え去る。

 兜が無ければ即死…そうでなくても意識は失っていたかもしれない。後衛がお返しに投石紐(スリング)の石と矢を人生最後の贈り物として届けたお陰で2撃目は無かったがそれでも油断は出来ない。

 だが、駆け出し(白磁)にしてはまさに理想的な動きでゴブリン退治は行われていった。

 

「初回よりはハァ、まだましだな!」

「止めるんだ、そんなこと言ってると…」

 

 未だ敵が残る中、口から出るのははったり染みた虚勢の一言。そして、もしかするとこれがいけなかったのかもしれないと、考える程には軽率な一言が口から放たれた。狂戦士によって制止されても一度口にした言葉は消えず、それを運命か偶然の神か何かが拾ったのか暗闇からそれが顔を出す。

 

「HOBOO!!!」

「げぇッ!?田舎者(ホブ)!?」

 

 驚きの声が洞窟に響く。

 ようやくゴブリンを殺しまくったお陰で向こうの手が止まったのにも関わらず、こうして敵の将軍級が出てくるとなれば形勢は一気に不利になるのは明白だ。顔に怖気を浮かべていた筈のゴブリンが途端に残虐な笑みを浮かべて息を吹き返したように動きが活発になっていくのをどうにかこうにか躱し、盾でいなして切り飛ばしていく。

 そろそろ剣も脂がついて切れ味が悪くなってきている…それが分かるくらいには自分も経験が積めていた。こういう所で経験と言うのは大事になって来るのだろう。

 だからと言ってこの状況をどうにか出来る腕があるわけじゃないけれど…

 と、考えながら敵を切り捨てれば敵が使っていた鉈が目に入ってくる。あ、これかぁ!!と閃きが彼の頭に駆け巡り、感じるままに投げてみれば只人の真の武器は投擲であるとはまさにこのことかと言わんばかりに田舎者の耳までを抉って落とす。

 

 部下をけしかけて自分は高みの見物をしていた田舎者の顔が一度の苦痛によって100年の恨みを抱えたような顔に変わり、炎に照らされた緑の顔に太い血管の影が出来る。

 そのままこの恨み晴らさでおくべきか!とでも言っているのか濁った叫び声をあげ渾身の一撃(クリティカル)を出そうと棍棒を振り上げて突進してくる。勿論単純な膂力で言えば青年剣士を上回り、ゴブリンの倍はくだらない体躯で振り抜けば青年剣士などすぐに死んでしまうことだろう。

 しかし、田舎者は知らない。いや、分からなかった。こんな狭い場所で大きく振りかぶる等自殺行為でしかなく、死神の音を鳴らしてしまうことなど。衝撃で棍棒がすっぽ抜けた彼の生は、何やら口をへの字に曲げた只人の何とも言えない刺突を目に映して終えることになった。

 

 

 ――――――――

 

 

 そのホブゴブリンは幸運だった。

 中々に大きい巣穴に生まれ、下っ端として生き、先祖返りの素質があった為にたらふく食べた結果田舎者と呼ばれるほどに大きくなった、それがこのホブゴブリンだ。今まで誰かに巣穴を荒らされた訳でもなく、飯にありつけないという事もなく、爪弾きにされて来た訳でもないホブゴブリンはゴブリンにしては恵まれ過ぎた環境に生きてきた。

 渡りとなって様々なゴブリンの巣を渡り歩いた今でもそれは変わらない。他の小さい奴らよりもたらふく食べて、穴蔵の底でぐーたら寝て、たまに来る馬鹿な冒険者を倒して犯しての日々だ。

 

 だが、ゴブリンは誰かを僻み、憎むもの。このホブゴブリンもそれに漏れずに、最近取り分が少ない気がする(・・・・)、いつも威張ってるあいつを殺してしまいたい。お気に入りだった孕み袋が死んだ、全部全部無暗に使う手下の阿呆共のせいだとイラついていた。

 まったく我慢がならない、そも用心棒だと言われてこの巣穴に来てやったのに待遇が良くないのがいけない。それもこれも全て俺より小さくて弱い癖に使えないあの肉盾共のせいだ。何がお前は二人目だ、偉そうに言いやがって。

 

「GBOBBBB!!」

 

 イライラした表情で死んだ孕み袋を腹から喰らう。ここは骨もないし、食いでがあって美味い。しかしゴミ共の管理がなってないせいで痩せていて肉も硬くなっている。どいつもこいつも使えない奴らだと彼は自分のことを除いて考える。

 そして額から幾本もの青筋が浮かびいよいよ他のゴブリンを殺してしまおうかと棍棒に手を掛けた、その時だった。

 

「くっそまた田舎者かよ!!」

「HOBBBOOO!!!」

 

 冒険者だ!それもたくさんいる!いや、数はやはりこちらの方が上だ。しかし前にいた奴らは何をしていたのか…やっぱり弱っちい奴らだ、使い物にならない。と、彼は同じく使い物にならなくなった孕み袋を放って棍棒を手に取る。

 そうしてみれば冒険者達の顔が見る見るうちに歪んでいく、それがたまらなく心地良いもので、男は飯に、女は孕み袋にしても遊んでも楽しそうだと彼の脳内に花が咲いた。ただ連中も数が多く、ゴブリンは弱い、一瞬逃げることも頭に浮かぶ。

 

「焦るな!さっきの倒したみたいに行くよ!」

 

 倒す?そうだ、そうではないか!ここに来たって事はアイツはもう死んだってことだから…俺が一番だ!!この巣穴は俺だけのものだ!!

 図体だけデカくなっても都合のいい脳をしたゴブリンはもう自らの勝ちを確信したように汚らしく黄色くなった乱杭歯の笑顔を晒す。こいつ等に溜まりに溜まった鬱憤を晴らそう、そして自分はこの巣穴の王になるのだ!まず近くにいる奴らをけしかけて剣を持ってる奴から殺して…

 

「―お恵みください!」

 

 彼が思い描いた黒い妄想を白い光が塗りつぶし、体の様々な所に連続して激痛が走る。何だ何だと彼が理解する前に今度は一際大きい衝撃が股から走った。

 

「【聖光(ホーリーライト)】!」

偉大なる一射(グレートフルショット)

「【火矢(ファイアボルト)】!」

鋭い一撃(シャープスマイト)!」

「何よそれ!?ええーっと…ぼ、玉崩し(ボールクラッシュ)!」

 

「HOB!!?GOBo(bo)…」

 

 なまじ生命力があっただけに最後まで意識を保ってしまったことが彼の一番の不幸だろう。強烈な光で目を潰されたかと思えば矢が頬を貫き、肩を炎で焼かれ、喉が突き抜かれたと思えば次の瞬間男の勲章さえもが潰される等誰が思おうか。

 ゴボゴボと自分が吐き出した血に溺れ、ホブゴブリンの意識が猛烈な痛みと苦しみの中に沈んで二度と浮いては来なかったのも仕方のないことであったのだ。

 

 

 ――――――

 

 

「だーかーらー、オルクボルグよ!オルクボルグ!ここに居るって聞いたわよ?」 

 

「かーっ、耳長言葉が只人に通じる訳なかろうて!かみきり丸、かみきり丸じゃ嬢ちゃん、これでわからんか?」

 

「あの……すみませんよく分からないです」

 

 最近の辺境の冒険者ギルドは平和そのものだった。ようやく爽やかな風と日差しが射す初夏に差し掛かり新人冒険者の登録が下火になり始めたのに加え、同時受注も実力が無いと無理だと何となく噂され目に見えて減ってくれた。おかげで業務が滞りなく進むようになって万々歳だ。

 ただそうは言っても慢性的に処理されず塩漬けになっていくクエストに、冒険者達の情報処理、ギルド側の人手不足が改善されないのが悲しい所だが、それでもギルドはなんとか回っていた。

 

 そんな所にやってきたのがこの3人組だ。一人は新緑の髪色をした笹葉の如き耳の森人野伏(エルフのレンジャー)、一人は恰幅の良い体に真っ白な髭を蓄えた鉱人精霊使い(ドワーフのシャーマン)、そして最後の一人は辺境では珍しい鱗肌に爪と尾を備えた蜥蜴人司祭(リザードマンのプリースト)だ。

 それが、先ほどから恐らく何となくでしか聞いたことのない人探しを始め、現在に至るのである。だがオルクボルグにかみきり丸、どちらも受付嬢はちらと聞いたことも無いもので、先ほど聞いてみた樫の木(オーク)でなければ彼女には最早お手上げなのが正直な所であった。

 

 コルクボード付近にいる者達に目線を向ければ、皆顔馴染みの受付嬢に突っかかる3種族の珍しい編成に一瞥を向けるのだがその誰もが話しかけようとはしない。しかしそれもそのはず、こうして揉めているとはいえ彼らの首から提げられている認識票は在野最高の()であり、よほどの者でなければ近寄ろうとも思わないのだ。

 

「やぁ!笹葉耳の同胞に恰幅良き白髭殿、何やらお困りのようだが手を貸そうか?」

 

 そうしてしばらくやんややんやしている中に凛とした声が響く。

 一同が振り向けば、そこにいたのは腰に手をあてニヒルな表情を浮かべた青年がいた。膝までかかるサーコートに加えて下には皮鎧を着こみ、手入れが為されていないのかそれとも汚しが為されているのか全体的に汚れが目立つが、背中に担いだ大荷物から飛び出る大弓や槍から傭兵を思い起こすような姿だ。

 加えて容姿が端麗で、見てみれば耳は妖精弓手のように笹葉の如く長く、上の森人であることが分かる。首から下がる黒曜等級の認識票を見るに、珍しい森人の新人冒険者であるようだ。

 

「あら…って森人じゃない!何?オルクボルグを知ってるの?」

 

 驚いたように妖精弓手が問うと、森人の冒険者は腕を組みながら眉を上げやれやれ、と言ったように話しを始めた。

 

「知ってるも何もオルクボルグでしょ?懐かしい物語だ…あぁ、受付嬢さんに説明するとオルクボルグって言うのはね、小鬼に近づくと青白く輝いて教えてくれる伝説の聖剣の事を言うのさ。森人語だから知らないのも無理ないね。で、これを共通語(コイネー)に変えると『小鬼殺し』になるから…それで人探しって言うともしかするとゴブリンスレイヤーさんの事だったりするんじゃない?」

 

「ああ!あの人のことだったんですか!でしたらまだ戻っておりませんね」

 

「ゴブスレさんにわざわざ用があるって事は、小鬼関連かな?あの人は小鬼以外に関心が薄いらしいしね。もし話があるなら談話室でも取っておくと良いよ、あそこなら密な話も出来る」

 

 話が出来るのなら異論ない妖精弓手達が頷けば監督官さん、借りても大丈夫かい?と狂戦士が談話室を貸してくれるように頼んであれよあれよと言う間に話を通し、そのまま3人を談話室へと連れて行った。

 

「…何で貴方まだいるの?」

 

 先程から少し思っていたが案内が終わればそこでいなくなるはずの部外者がまだいる事に眉を顰める妖精弓手。

 

「いやぁ、ゴブスレさんは無愛想が過ぎる人でねぇ、なんだか話がこじれるかもしれないと思ってここにいるのさ。加えて、可愛らしいお嬢さんとも話せるかもしれないと来た」

 

 森人冒険者も珍しいものだしね、と優雅な手付きで茶を注いでいきカップを妖精弓手の前に置く。

 ほら飲んでと促されたお茶を一目見れば、正しい淹れ方をしたのかとても香りが良い。どうやら混ぜ物もされていないようだと少しの警戒を残しながら茶を一口飲んで舌で転がす。少し苦みがありながらも鼻から抜けるような爽やかな香りと味、彼女好みのお茶だった。

 

「うーん、美味しい。これで砂糖があれば完璧ね!ありがと。で、そう言えばあなた誰なの?」

「申し遅れたね、僕は疾走狂戦士!混沌の神を信じながらに善なる道を目指す森人さ、歳の方は千と六百少しだよ」

 

「なに年下なの?じゃ、これからは先輩と呼んでくれて構わないわよ!って待って、混沌?」

「へぇ!年上か!よろしくパイセン、それは追々ね」

 

 仮にも政の話を任される程度には信を置かれている彼らが一瞬で空気を一段重くした圧に、対面のソファーにドカッと座った狂戦士は悪戯っ子のような笑みで答えて返した。対する妖精弓手はパイセンと呼ばれ、何やら敬われているのか貶されているのか分からず頭に疑問符を浮かべるのみだ。

 

「…まあいいわ、貴方は何処の里出身なの?」

「あぁ、僕はねぇ…」

 

「俺に用があると聞いた」

 

 狂戦士が話しかけたのとズカズカとした無遠慮な靴音と共にゴブリンスレイヤーが扉を開いたのはほぼ同時の事であった。

 

 

 ――――――――

 

 

「前書きはいらないらしいから単刀直入に言うわ、ゴブリン退治に協力して」

「分かった、受けよう」

 

「…え?」

 

「規模、上位種の有無、地図はあるのかだけ教えろ。すぐに出る、報酬は好きに決めておけ」

「ちょちょっと待って、なんか無いの!?何でこんなことになったのか、何で自分が選ばれたのかとか少しは無いわけ?」

「聞いて何になる、興味がない。俺はただゴブリンを殺すだけだ」

 

 同族に言われた通りに本題から入れば、あまりにきっぱり言われたことに呆気に取られ固まってしまう妖精弓手。そんな彼女の代わりに蜥蜴僧侶が様々な情報を言えば、分かったとぶっきらぼうに一言発してゴブリンスレイヤーはすぐさまドアノブに手を掛けた。

 瞬間、待ったをかけたのは狂戦士だ。

 

「ああ、ゴブスレさん僕も一緒について行っても構わないかな?仲間(人手)はいくらいても良いと思うんだけど」

「?…分かった、構わん」

 

 何やら引っかかる言い方をしては足早に部屋を出ていくゴブリンスレイヤー、恐らく準備をするのだろうことは文脈から何となくは分かったがそれすら言わないとはと妖精弓手の顔がムッとする。

 これでは吟遊詩人の歌は大ウソではないかとぷりぷりとしながら腕を組むが、事実吟遊詩人の歌は脚色が強く耳触りの良い言葉でしか語られていない。彼女の世間知らずが良くも悪くも作用した結果だった。

 

「じゃそういうことで!先輩方これからよろしくね~!さて、ゴブスレさんはああ言ってたけど、報酬はいくらかな?国からの依頼だし結構高いんじゃない?」

 

「こいつも急かしいのぅ…そだな、金貨30枚ってとこだぁな」

嘘だね(ダウト)

 

「ぬぅ?」

 

「規模、森人領、そしてギルドを通さない依頼…多分あと、30枚、いやそれはキリが悪い感じがするしあと20枚ってとこかな?確か話の森は秘薬(エリクサー)の産地だから…結構儲けてるはずだしあそことなると金払いも中々良い筈…これ、金貨50枚は出せるでしょ?」

 

 突然の否定から何を言うかと思えばスラスラとまるで水を得た魚の如く言葉を発し、そしてそのどれもが不可能ではない程度に筋が通っているので質が悪い。さらに情報の出し渋りを防ぐためか何やら片手が服の中に入れられており、これがもしいつの間にか【看破(センスライ)】等の真偽を問う奇跡を使われていた場合に痛い目を見ることになるのは確実だ。

 まあ躱す術もない訳じゃねぇが…と顎髭をしごくが、見た目と態度の割に中々ずる賢いことをすると鉱人導士は舌を巻いた。

 

「…中々目端が利くじゃねえの!そこの耳長娘も見習った方がええのこりゃ。してどうする耳長よ?」

「うるっさいわね!まあ、でも確かに払える金額だとは思うけど…私達が決めても良いのかしら?」

「拙僧は金勘定が得意な方ではないが、多少交渉すれば恐らく可能かと…こちらには縁故深き弓手殿もおります故」

 

 むむむ…と唸ってしばらく悩んだ妖精弓手であったがついに長耳がピコンと跳ねる。解は出たようだ。

 

「そうね分かったわ、報酬は金貨50枚にしたげる!ただその分活躍はして貰うわよ!分かった?」

「もちろんもちろん、我が神の名において誓おう」

 

 

「と、言う訳なんだ!」

「どういう訳なんですか…」

 

 つまりはそう言うことだった、と言われたとしても納得できるかは別だと思うのだ。と女神官は心の中でそうごちる。

 先刻終わったゴブリン退治の報告にとギルドに顔を出したら、ゴブリンスレイヤーに何やら話がある人がいると談義室に連れていかれてしばらく、彼女の目の前にいたのはゴブリンスレイヤーでなく狂戦士。神官ちゃん!と声を掛けられ、事情を話されたと思えばあれよあれよと同行を決意させられていたのだ。何を言っているのか自分でも理解できない、けれどつまりは冒険だ。この、なんだか良く分からない不思議な人と一緒に再びゴブリン退治に赴くのだ。

 

 …何で?

 

 別に不安であるとか、怖いという訳ではない。むしろ一緒に冒険に出るなら心強いくらいこの人は強い。先日の手伝ってほしいと話を受けたゴブリン退治の時も、やはりこの人は優秀だった。指揮をし、自らも戦い、強敵(ボス)が出たかと思えば慌てぬようにと軽口さえも叩いてみせる。そして結局はちゃんと倒して皆と共に呵々と笑う。正直物語の英雄みたいな人だとさえ感じる程の才覚と言えるだろう。

 ただ、そんな人が何やら旅支度と大弓を担いで何の脈絡もなく突然冒険に行こう!さあ早く!と捲し立てるのだから何やら疑問を感じてしまうのはしょうがない事だと思う。

 

 まずしっかりと事情を説明されてもそもそもの話狂戦士の思惑が見て取れないのだ。話を聞くに元々銀等級の人の尋ね人を当てただけであるし、ゴブリンスレイヤーとは最初の依頼で助けて貰ったきりのはず。とてもではないが、友好関係を築けているとは思えない。

 

 何となく森人の領地だからと言う理由付けが無い訳ではないが、以前聞いた話では森人と言う種族そのものにはあまり頓着をしているようには見えなかった。よしんばあったとしてそれが無理やりついていくような話になるだろうか?

 

 そして最後に残ったのは己の義の為…これが一番しっくりと来る理由だ。そもそも狂戦士はいつもへらへらして分かりにくいがああ見えて正義漢であり、人が嫌がるような下水路の仕事や塩漬け依頼も人の為になるならばと率先して行っていた男だ。人の脅威になり得そうなこの冒険について来たのも納得は出来る。

 

 それでなければ…と彼女に思い浮かんだのは以前聞いた邪神の託宣(ハンドアウト)の話。何処か狂戦士が非人間的な行いをする時は大抵この神の託宣によるものらしいのだ。出来ればこれが当たっていないと良いのですけど…そんなことを祈りながらも彼女は旅支度をしに一度自分の部屋へと戻るのだった。

 

 

 ―――――――――

 

 

 陽が落ちれば空に輝く数多の星と一層際立つほの赤い月と緑の月。その満点の星々が照らす平原の一角では一党が焚き火を囲み、歩き疲れを癒すために酒や肉を振舞っての酒盛りが始められていた。

 4種族集まった一党は会話の種やちょっとした自慢にと自らの故郷から持ち寄ったチーズや菓子等様々な品物を振舞っていく。そしてそれは一人異質な雰囲気の狂戦士にも伝播し、彼はニっと笑うと背嚢からガチャガチャと音を立てて布で覆われた酒と黄金色に輝く瓶詰め、そして何やら葉っぱに包んだ物を広げた。

 

「うーん、葡萄酒はともかく火酒が被っちゃったのはちょっと誤算だったなあ…まあ量が増えたとでも思ってくれるとありがたいね。代わりと言ってはなんだけど、お酒にも合うゲテ物でも如何かな?」

 

 思いついたかのように手を叩いた狂戦士が差し出したのは葉っぱに包まれた何かだ。封を開いて見ればなにやら白身らしきもの、しかし火の光にあててよく見てみれば黒く光る殻がついており、身はまるで海老のようになっている。

 

「あら、虫じゃない」

 

 いち早く何であるかに気づいたのは同じく森人である妖精弓手だった。そして、その一言によって女神官が小さく悲鳴をあげて虫と判明した身から遠ざかる。歴とした婦女子である女神官にはゴブリンは慣れても虫はまだ早かったようだ。

 

「森にいた時には良く食べていたんだけど、森人の土地が近いからかな?さっき偶然穫れたんだ。これが酒の肴に良いものでねぇ」

 

 そうして丁寧に殻を剥いては火で炙ってひょいと口に放り込むとその勢いで葡萄酒を流し込んでいる。それが中々様になっていて上下から照らされるのも相まりまるで一枚の絵画のように見えてしまう。

 だが、それが虫であるとを忘れることが出来ずに女神官はその身を狂戦士へと差し戻した。

 

「なんとこれはまた旨し!甘露と合わせて喰らわば尚よぉございますな!」

 

「密林育ちはこれだから…まあ確かに中々イケるもんじゃのう、酒とも合うわい」

 

「むむむ、なんだか故郷を思い出すわね…あ、でも味付けがちょっと違う?」

 

「分かってくれるかご同胞!実は檸檬のしぼり汁と塩を振ってみたんだがこれがまた美味いんだ。しかし神官ちゃんは無理かぁ、良いものなんだけどねぇ」

 

「すみません、ちょっと見た目的に…」

 

「いいっていいって異文化だもの、代わりにこの蜂蜜檸檬とかいかがかな?」

 

「わぁ、美味しそう…頂きますね」

「あー!私も貰う!!」

 

 一口一口を大事そうに食べていく女神官とは対称に妖精弓手(2000歳児)は言うが早いかもう既に栗鼠が如く頬が膨らむ程に口の中にしまうとこれまたおいひーと幸せそうに顔を綻ばせ、今度はチーズの方に手を差し伸べる。

 

「はいはい慌てない慌てない、他の人もどう?」

 

「ん、貰っちゃる。しっかしやけに荷物が多いと思っとったらお前さん色々と持って来とったんじゃな」

 

「うむ、荷物に加えて神官殿を抱えて歩く等…その体躯にてよもやよもや」

 

 妖精弓手の様子にため息を吐きながらもこれも中々と言って狂戦士の持ってきた火酒をグイっと呷った鉱人導士と甘露甘露と目を細めて笑う蜥蜴僧侶も口端から甲虫の足を覗かせ狂戦士を称賛する。

 種族単位の仲の悪さ、場合によっては戦争さえも辞さない異教徒に純粋なる賛辞の言葉を遠慮なく紡げるのは彼らがそれ相応の知見を持っている証だ。

 

「そういえば、みんなどうして冒険者になったの?」

 

 しばし酒盛りが続いた後、こう言い始めたのは妖精弓手だ。会話が欲しくなったのか、それとも酔いが回って自分の武勇伝でも語りたくなったのか、とにかく彼女の質問に鉱人導士が旨いもんを食うため!と自信満々に答えたことで完全にその雰囲気に変化する。

 蜥蜴僧侶の異端を殺して竜になるため、女神官の困った人の助けになればと答えたのに続いて、一応の党目であるゴブリンスレイヤーはゴブリンと言いかけた所で妖精弓手からアンタのは何となく分かると止められ、鉄兜に覆われた表情は分からないがどこか釈然としない様子だ。

 

「それで、アンタは何で冒険者に?」

 

 お楽しみなのかそれとも仲間外れを出さない為か最後に妖精弓手が狂戦士に話を振る。コイツ藪蛇つつきやがったぞと鉱人導士の視線が妖精弓手に突き刺さるが既に酔っ払いと化した彼女を止める術など眠り以外にある訳が無く、むしろ蜂蜜檸檬のおかわりをせびるついでと言う風だ。

 それに狂戦士は蜂蜜檸檬の瓶ごと渡してやるとどこか張り付けたような笑顔で怒る訳でも無く淡々とした口調で語り始める。

 

「託宣を受けたんだ」

 

 ふざけた様に、だが瞳は何処か遠い所を見ていて何もかもがちぐはぐな狂戦士は続けた。

 

「そもそも僕は昔盗賊…まあ盗賊か。それから襲われた時、何の因果か知識を植え付ける(・・・・・)外なる神に気に入られて奇跡を授けてもらったんだ。で、窮地を脱した僕は神官ちゃんには言ったと思うんだけど、そこからちょっとして覚知神様とは違う『イム・ジッキョウ』という神様、この世界風に言えば記録神みたいな存在から君は冒険者になると良いって言われて始めてみた訳さ」

 

 どちらも確実に邪神ではないかと言う感想を一同が抱き、妖精弓手が何なのコイツ?と言うように問いかける。

 

「じゃあアンタ神官戦士って訳?」

「そうとも言えるしそうでないとも言えるね。次はこれ、ここはこうとかやたら具体的な託宣はくれるけど操られて秩序陣営全滅の凶行を!…ってのはまだないかな。単に面白がられてるってのもあるかもね」

 

 だから大手を振って僕は善行を行ってるのさ、と妙に堂々と言われれば胡散臭くとも納得をするしかない。女神官だけは一体どのような神なのかと複雑な顔をしていたが、それも次第に一党の醸し出す雰囲気に流され薄れていく。

 手札は多い方が良いと、空気と化していたゴブリンスレイヤーが一党の皆に使える術、奇跡の説明を求めたり、自慢の筋肉を蜥蜴僧侶と見せ合ったりする等して次第に夜は更けていった。

 

 

 ―――――――

 

 

 遺跡の探索は順調に次ぐ順調だった。妖精弓手の魔法染みた曲射が門番を射抜いて少し、多少ゴネたものの運命を受け入れた彼女があーうー言いながらもゴブリンの体液が塗られていく。唯一の味方である筈の女神官から肩を叩かれ、死んだ目で慣れますよと言われてしまえば彼女にもう逃げる手立てもなかった。

 

 それからは狂戦士と二人体制で通路の半分ずつを見ているお陰で罠の心配もほとんどない。ほどなくして分かれ道に差し掛かり、床の減り具合で左をねぐらを判断した鉱人導士の言葉にゴブリンスレイヤーが首を振る。

 

「右で行くぞ」

「んー…確かにヤバそうだ。パイセンも聞こえない?」

 

 狂戦士が耳を澄ませ、妖精弓手にも同じようにさせれば一瞬で彼女の表情が張り詰める。

 

「急ぐわよ!」

「はいなー」

 

 短く叫んだ妖精弓手と狂戦士が足音を立てない最速の速さで走り出す。それでも目視できる罠を見ながらなのだから流石の銀等級と言った所だろうか。少しして、彼らは強烈な悪臭が漂い出てくる朽ちかけた扉が見えた所で足を止めた。

 

 嗅ぎなれない悪臭に顔をしかめる妖精弓手とケロっとした顔の狂戦士が見合って頷くと狂戦士が無言で握りこぶしを作り上げ扉を破壊する。

 妖精弓手が暗中の体の半分が爛れた森人冒険者を見出す前に、狂戦士が虜囚となった彼女の足元に潜んでいたゴブリンの頭をまるで柘榴のように弾けさせた。そのまま登場すらさせてもらえなかったゴブリンを踏み潰して確実に仕留めると、彼は虜囚となっている森人の拘束具を怪力で捻じ曲げ外し、重力に従って落ちてくる森人を抱きかかえる。

 

「これを飲んで!」

「あぅ…」

 

 委縮した喉を開かせ、目に見えてぐったりしながらもくぴくぴと少しずつ薬を飲む森人冒険者を良かった…と狂戦士が胸を撫で下ろし、少々咽て吐き出してしまう彼女にゆっくりでいいからと続きを促す。

 飲み終れば、緊張からの解放からか森人冒険者が小さく寝息を立て始める。その際に目から薄く涙が零れ落ちたのを一党の誰もが見逃しはしなかった。

 

「呼吸が安定してる…良かった、なんとかなったみたいだ」

 

 そう狂戦士は締めくくり、やや遅れて駆けつけた蜥蜴僧侶の提案で召喚された【竜牙兵(ドラゴントゥースウォリアー)】がしたためた文と彼女を抱いて外へ連れ出した。彼女の体に布をかけて送り出した狂戦士は、部屋の角で俯いていた妖精弓手の手に無理やり汚らしい雑嚢を握らせる。

 

「これは、パイセンが持っておいて」

「…」

 

 自然の素材のみで作られた雑嚢はどう見ても森人のものだ。こんなことした奴を殺そうねという意味なのか、それともまた別の意図か渡された雑嚢をじっと見つめる妖精弓手。これもまた強烈な悪臭と汚れに塗れており、森人冒険者が一体どのような行いをされたのかは想像に難くない。次第にふつふつと彼女の奥から怒りの感情が湧いて来た。

 

「絶対に、ぶっ殺してやるんだから…」

 

 小さく呟いた彼女の目には覚悟の光が宿っていた。

 

 道中何度か起こったゴブリンとの戦闘を終え、一党は最深部に到達していた。おそらくこの先がやつらのねぐらで間違いないことを確認した一党は一度呼吸を整えるために小休止を挟む。

 同胞が辱められているのをこの目で目撃し、ゴブリンの体液に濡れた妖精弓手。鉱人導士さえ言葉を掛けるのを躊躇う程のありさまだ。だが…

 

「パイセン、弓捌きキレてる、キレてるよ!腕に森の勇者宿ってるんかい!そこまで仕上げるには眠れない夜もあったろう!!」

 

「おべっかは止めて頂戴」

 

 さっきまで真面目にしていたかと思えばこうしてすぐに狂戦士の喋り虫が鳴り出す。しかし、裏にある気遣いの気持ちは妖精弓手にもちゃんと届き、キッと結ばれた彼女の口端が僅かだが上がる。

 

「ありがと」

 

「言い返せるならまだ大丈夫だ、こういうのは言える時に言っておかないと駄目だからね」

 

 小さく返せばにっと歯を覗かせ笑う狂戦士。妖精弓手は本当に良く分からないが、この男は悪い奴では無さそうだと認識を改める。続く冗句を耳に挟みながらも意識は戦闘用に切り替える。

 

 遺跡の奥は吹き抜けとなっており、底をねぐらとしているゴブリンがかなりの数確認できる。普通に突っ込めば白金等級(勇者)でもない限り押し寄せるゴブリンに手数が足りずすぐに死んでしまうだろう。そこで一党はゴブリンスレイヤーの提案した精霊術によりゴブリンを泥酔させ、奇跡によって音を消し去った状態で寝込みを襲う作戦を決行した。

 

 無防備に眠るゴブリンをゴブリンスレイヤー、蜥蜴僧侶、妖精弓手、狂戦士がそれぞれ始末していく。ゴブリンスレイヤーは転がる雑多な武器を使い捨てるように、蜥蜴僧侶は祖竜術により呼び出した鋭き爪のごとき刃で喉元をかっ捌き、妖精弓手は短剣で喉を突いて作業的にゴブリンの数を減らしていった。

 

 血で滑る短剣に四苦八苦した妖精弓手がちらと横を見れば、何と狂戦士が自らの腕を振るってゴブリンを一体一体殺して回っている。成程、あれならば血もつかない…が、狂戦士の一撃を受けたゴブリンを見るに本当に怪力無双と言うのは真実のようだ。

 自分も黒曜等級には負けていられないともう一人の変なのたるゴブリンスレイヤーを見習ってゴブリンの使う武器を使って駆除をし始める。

 

 と、そんな時にいつの間にか背後に回っていた狂戦士に肩を叩かれ、何やら身振り手振りをし始めた。

 

「(嫌な予感がするからちょっと上見てくるね!)」

 おそらくこんなことを言ったのであろう狂戦士が足早に階段を駆けていく。止めようと手を振り上げれば血で武器が滑り、取り落としそうになるのを何とか取り繕っている間に姿が消えていた。

 

「(ちょっ!オルクボルグ!アイツ行っちゃったけど大丈夫なの!?)」

「(構わん、上にゴブリンはもういない。手を動かせ、効果が切れるまでに殺し切らんと面倒だ)」

 

 たまらずゴブリンスレイヤーに伝えに行けば門前払いのように一蹴され、実際その通りではあるのでゴブリンを駆除しに戻ろうと足元の武器を拾おうと少しかがむ。

 が、何か様子が可笑しい。見れば地面の剣が震えているではないか。音はせずとも振動自体は無くならない。次第に自身も揺れ動くので何事かと伺えば沈黙の効果が切れたのか地鳴りの音と荒々しい呼吸音が次第に近づいて来るのが感じ取れた。

 

「小鬼共がやけに静かだと思えば…雑兵の役にも立たんか」

 

 低く重厚な声と共に回廊奥の闇から表れたのは筋肉の鎧に身を包み、額に角、口に牙の生えた青肌の巨人、人喰鬼(オーガ)だ。

 

「オーガッ!!?」

 

「…ゴブリンではないのか?」

 

 慌てる妖精弓手に対し的外れな意見を言うゴブリンスレイヤー、ゴブリン以外に興味を持たない彼ゆえの発言だが、それがオーガを激怒させた。

 

「貴様ッ!この我を、魔神将より軍を預かるこの我を、侮っているのかぁ!!?ならば身を以て我が威力を知るがいいッ!!!火石(カリブンクルス)……」

 

 オーガの右手に数多の術を修めた魔術師をも焼き尽くすと言われる種火が生まれる。ただ種火と言っても巨躯で小さく見えるだけでそれだけでも女魔術師の【火矢】よりも何倍も大きな火だ。

 

成ちょ(クレスクン)「カラドボルグ!!!!」

 

 頭上の大声と共に風を切って進む剣が口の中に突き刺さり、たちまち口の中から血と臓腑が腐ったかのような臭いと味がし始める。不意打ちなど、気にも止めず、眼下にいるこれだけがこいつ等の総力なのだとオーガは勝手に勘違いしていた。

 狂戦士はそこを突き、オーガの口の中へ【浸食】の魔剣を撃ち込んだのだった。

 世界を改変する真なる言葉が打ち切られれば、大きくなりかけた火球はぶしゅうという火に水を掛けたような間抜けな音で消え、失敗を告げるしかない。

 

 不意打ちなど、武人気質の彼にとって到底許せる行いなわけがなかった。先ほど聞こえた位置へと目をやればそこの下手人が手を叩く。

 

「助っ人参上!やーい!やーい!不意打ち喰らってやんのー!!」

「ひひゃまかああああああああ!!!!この我ひょ、侮りおっへえええ!!!」

 

 殺す、オーガの怒りは頂点を迎えた。凄まじく頭に来る口調と馬鹿にしたような小踊り、これほどまでに戦いを侮辱されたことなどオーガには未だかつて無かった。

 

「ハハハハハハ!威厳もへったくれもないじゃん!!これで魔神将とか笑っちゃうねぇ」

 

 魔剣が舌を穿ったことで呂律が回らないオーガをここぞというばかりに煽る狂戦士。これがもし前衛職(タンク)ならばそれだけ他が集中出来ようが彼は一応後衛、オーガの鉄塊の如き戦槌には防御もへったくれもない状態である。

 

「いかん!小鬼殺し殿、援護を!」

「分かった」

 

 慌てて足を止めようと蜥蜴僧侶とゴブリンスレイヤーの斬撃が繰り出されるがどちらもオーガの表皮を浅く切るだけで終わる。それさえジワジワと繋がっていく様は端的に言えば絶望的だ。

 

「父祖の牙が通らぬとは!」

 

「あー!治ってんじゃん!おいそれ卑怯(ズル)だぞ!!急所狙うしかないじゃんか!!」

「貴様は不意打ひをしひゃだろうが!!」

 

 狂戦士が煽ればオーガの激昂は絶頂をさらに超え、手にした戦槌で足場となる石床を粉砕する。しかし、当たらない。こっちこっちと手を叩かれては軽々と逃げられるだけだ。

 

「図体ばっかりデカいくせして当てられないでやんのー!」

「貴ッ様どこまひぇ我を!愚弄ふるのらああああ!!」

 

 様は決まらなくとも大きいと言うのはそれだけで脅威だ。足元では長身なはずの蜥蜴僧侶ですら子供以下の体躯にしか見えず、分厚い筋肉は鎧にも攻撃にも用いられ一党の決死の攻撃をも受け付けない。

 

「やっべ!!」

「死ねぇぃ!!!!」

 

 連続攻撃によって足場が崩れ体勢を崩す狂戦士、そこを狙ってオーガが戦槌を振りかぶれば、隙を見た妖精弓手の渾身の二射(クリティカルヒット)が無防備な目に突き刺さる。

 

「ぐぁあああああああああ!!?クひょ!」

「だらっせい!!【岩弾(ストーンブラスト)】ォ!!!!」

 

 思わず目を覆ったオーガに好機を見た鉱人導士がオーガの攻撃で溜まりに溜まっていた土の精霊を開放した。大量の岩が轟音と共にオーガを打ち据え、たまらずオーガが膝をつく。その隙にゴロゴロと転がって蜥蜴僧侶の下へ駆けつけた狂戦士が懐中から取り出したのは黄色くなった小鬼の乱杭歯が2つ、それが彼の奇跡発動に使う触媒らしい。

 

「竜の末裔さん、俺と一緒に狂乱してくれるかい!?」

 

「ハハハハ!!野営の時に言っておられたあれですな?ならば断わる理由も無し!外なる神が授けし奇跡をも喰ろうてやりましょう!!」

 

「何か不敬な気もするけど行くよ!『あな盤上繰りし覚知の神よ、我らに狂騒を与えたまえ』!!」

 

 果たして祈りは天へと届き、覚知神は自らの信徒を助けようと外法を授ける。まず体に起こるは異変、狂戦士のただでさえ多かった筋肉がミシミシと徐々に膨れ上がりダボついていた狩り装束の繊維を張り詰めさせ、その目からは次第に理性の光が消えて焦点が合わなくなっていく。まるで何かに魅了された者のようなその様はまさに狂戦士と名乗るに値するだろう。

 さらに戦達者で知られる蜥蜴人、それも銀等級にまで登り詰めた蜥蜴僧侶に【狂奔】を掛けてしまえばどうなるかなど言わずとも知れる。狂戦士以上に服がミシミシと音を立てて引きちぎれていき、瞳孔が次第に蛇の如く縦に開き始める。

 

「おぉ!おぉぉおお!!これは何ともや!!然らば拙僧もなりふり構ってはおれまいて!『おお気高き惑わしの雷竜(ブロントス)よ、我に万人力を与えたもう』!!」

 

 続いて恐ろしき竜の末裔が己が力を開放した。祖竜術【擬竜(パーシャルドラゴン)】によって父祖の力を自身に降ろした蜥蜴僧侶の筋肉はより一層の肉の膨張を始め、身に着けた服が意味を成さぬほど破れ鱗に覆われた肌が露出する。

 肌からも闘気が迸るように大気に揺らぎが出る程の熱気が蜥蜴僧侶から溢れ、まるで本物の竜を相手取るかの如き雰囲気は味方の一党でさえたたらを踏んだ。

 

「シアアアアア!!!」

「?ガぁ!!!!??何ひょッ!?」

 

 暴力の化身が如き蜥蜴僧侶の鋭い牙が足の腱を食い千切る。オーガの強固な筋肉に覆われた肉体を以ってしても太古の顎による攻撃は防げない。さらに蜥蜴僧侶と狂戦士の二人が立つ力のない足へ勢いよく衝突をかますものだから、たまらずオーガの体は重力に従って石造りの床に倒される。

 

「神官ひ”ゃん!!コイツどじごめでぇえ!!」

 

「え…は、ハイ!!いと慈悲深き地母神よ…」

 

 辛うじて理性の残る狂戦士の悲痛な叫びとも取れる声に従い、女神官の敬虔な祈りは奇跡を起こす。聖なる力で胸を押しつぶされるかのように展開された【聖壁(プロテクション)】でオーガは悲鳴を上げるが透明な壁にはすぐさま小さく亀裂が生じていく。

 純粋に技量(レベル)が足りないのだ。本来、金等級になってようやく対峙出来るような敵を少しでも射止められるのはむしろ称賛に値する程素晴らしいがことここに至っては強度、範囲がまるで足りていない。

 

「もっか”いぃぃい!!」

「!はい!!」

 

 ならば量を、と狂戦士の声を理解した少女の祈りは重ねられ、自らの可愛らしい信徒の為にと慈悲深き神の力は邪悪なるオーガを地面へと深く縫い留める。

 

「ぐぅうう!!何だ!?一体何ガ起きているのぁア!!?」

「ごろォオオオオず!!!!!ごろずごろうころう!!!」

 

 困惑するオーガに対し、焦点の合わない目を血走らせ口から大量の涎を撒き散らす狂戦士の様は常日頃見ていたものとは確実に異なる。外なる神、覚知神のもたらした奇跡は誰の目からしても邪法だった。

 さらに狂気に染まった彼の体のあちこちから血管が破裂して内出血を起こし、傷もついていないはずの体に赤黒いシミが出来ていく様を見ていられず、思わず女神官が叫ぶ。

 

「狂戦士さん!!」

「びゃんざあああああああああああああい!!!!」

「ORRRGAAAAAAAAAA!!!!??」

 

 それが合図となったのか狂戦士は槍を携え、放たれた矢の如く目にも止まらぬ速さでオーガの顔面に迫り、その目へ槍を突き出した。

 だが、偶然か運命か、カラコロコロと言うやけに乾いた音が女神官に聞こえたと共に、オーガが錯乱してやたらめったらに振り回した腕が狂戦士の体を虫か何かを跳ね飛ばすように打って飛ばした。

 こちらにとっての蛇の目(スネークアイズ)にして、オーガにとっての六の目(ドゥデキャプル)。まさに起死回生の一手となった腕の振りは楔となって腕に喰らい付いていた蜥蜴僧侶までもを弾き飛ばす。

 

 何を、すれば…?女神官の頭は一瞬で白く染まる。

 回復?もう使える術は全て使ってしまった。援護?非力な自分に何が出来る?攻撃?それこそ一番出来ないことだ。

 

「ハッ、ハッ、ハッ…」

 

 呼吸が浅くなる。視界が狭く暗くなっていく。前で戦っている一党の皆がまるで窓越しに見ているように現実感が無い。最初の冒険のように自分の力が及ばない状況は彼女をジワジワと侵食していく。

 

「落ち着け、俺が行く」

 

 そんな折、くぐもった声が彼女の肩の背から掛けられる。たったそれだけ、ただそれだけで意識が引き戻され、精神の浸食が収まった。

 声の主はゴブリンスレイヤー、この一党の党目にして…彼女を救ってくれた冒険者だった。

 

 

 ―――――――

 

 

 自分は出来が悪い男だ。昔から何をしても失敗ばかりで、大事な所でも失敗しかしてこなかった。知力も膂力も鍛えたとて人並み、いやそれ以下だろう。

 思い出すのは師匠の言葉。

 

「あの時何で姉を助けなかった?えぇっ!?言ってみろ!!」

「俺に、力が無かっ、た、からです」

 

 寒さに震える声で必死に考えた答えを言えば、しゃがれた声の師匠が怒鳴る。

 

「違ぁああう!!手前ぇが何もしなかったからだ!!」

 

 罰を表すように頭に投げられた石入り雪玉の冷たさも、それを溶かしていく自分の血液の温かさだって覚えている。痛みと寒さを段々感じなくなっていく感覚も、覚えている。何も失敗しなかった筈の姉が、玩具とされて死んでいったのも、とても…とてもよく覚えている。

 

 だが初めて、こんな自分を頼ってくれる者が出来た。「聖剣に選ばれたから殺せまぁす!」

 幼馴染のあの娘だって帰りの遅い自分を案じている。「偶然強くなれたから殺せまぁす!」

 死ぬ気は毛頭ないのだ、悲しませる気もない。「そんなもんただの鍍金よ、すぐ剥がれて落ちて手前ぇは仕舞ぇだ!」

 

 何時だって。

 

「お前は阿呆だ!雑魚だ!塵屑だ!力もねぇし技術も智慧も、姉もいねぇ!!考えろ!頭を回せ!死力を尽くして勝利が得られるなら何だってやれ!」

 

 そうだ、今だって。

 

 目を見開く。頭をすっぽりと覆う形の兜は灯りの少ない回廊と相まって暗い。しかし、勝利への道筋は不思議とはっきりと見て取れた。

 死力を尽くして勝利が得られるならば…今動くしかない!

 

「おぉおおおおおおおお」

「なんヴぁぁ!!クソ、何もみぇん!!矮小なる秩序ノ塵共が、この我にぃ!!」

 

 目が潰れた恐慌と何が迫っているか分からない恐慌で何とかの動きが甘く、仰向けに倒された奴の胸を走り抜け、目に突き刺さった槍に手を掛ける。何時ものようなゴブリンから奪って使うような小さな槍とはまた違う、作りのしっかりとした長柄の武器。

 ゴブリンは皆殺しだ、他の混沌の輩も邪魔をするなら殺そう。

 

「目は脳にまで繋がっていると、姉は教えてくれた」

「やめっ、GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」

 

 渾身の力で刺し込んだ槍からゴブリンの内臓を突き抜けるかのような感触が伝わり、オーガがまさしく文字通りの断末魔を上げて鼻から滝のように大量の血を噴き出すと息の根を止めた。

 最後に助けを求めるかの如く天へと大きく伸ばされた腕が床に落ち、ぐしゃりと石畳の地面を叩いて揺らす。

 

 それが、人食い鬼が発した最後の音だった。

 




コロナの影響で自分はまだ春休みですが、皆さまはどうお過ごしでしょうか(露骨なコメ稼ぎ)
いや、なんか回が増すにつれて自分の文才を改めて感じます。悪い方に…いやホント、マジで先駆者兄貴と同僚兄貴凄いっすね。筆の速さ、クオリティ、どれを取っても素晴らしい。
しかし、ここまで評価されたからには逃げは駄目…週刊42位まで上げてもらった恩を晴らさずにいるのは本当によろしくない…新学期始まったらさらに投稿頻度低くなるとは思いますがどうにか投稿続けていく予定ですのでどうかこれからもよろしくお願いします。

狂戦士兄貴の個人情報晒してちょっと間を持たせるかも?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士5

後続がどんどん続いてくれて嬉しい限りの投稿者です。
皆も投稿、しよう!どんな文章でもある程度のストーリーがあれば読んでもらえます!自分の拙作でも楽しんでくれている方がいるので間違いない(隙自語)


 山場を越えると一気に取れ高が不足するRTAはーじまーるよー。

 

 

 前回綱渡り戦法でオーガを倒したところからです。

 

 まな板の鯉状態だった筈のオーガが我武者羅に振った手がまぐれ当たりするとか言うクソ被弾によって生命力がかなり削れた狂戦士君、まず回復ですね。幸いポーション類はグレーターレゴラスとレッサーレゴラスの森人戦士達に頼めばくれるのでこれを活用したいと思います。

 一応里に襲来するはずのオーガ倒したんだし報酬として秘薬くれても良いじゃんかよーケチー、と抗議したいところですがくれただけでも御の字です。贅沢は敵、良いね?(戦時中並感)実際割と人類存亡の危機が起きまくってるので狂戦士君にあげない方が良いかもしれないまであります…勇者ちゃん寝る間も惜しんで頑張って。

 

 まあ貰えたので活用しますか、ただこれ生命力5しか回復してくれないんですよねぇ…薬草並みの効果は今の狂戦士君には薄過ぎるので忘れかけてた杉田さんに頼んで癒合(リフレッシュ)を掛けてもらいましょう。おぉ!18!流石は銀等級です、良いゾーこれ。

 

 ただそれでも体力が万全じゃないのでやっぱり療養ですねクォレハ…長旅+色々動いて瀕死のせいで溜まりに溜まった疲労度もどげんとせんといかんしままえやろ(適当)マイナス補正のせいでここで酒とか娼婦に逃げられないのは少し辛いですがアル中とか性病に掛かったりするともう、気が狂う!ので大人しく療養しましょう。

 馬車の中は疲れ切った一党の会話がひたすら流れるだけなので倍速倍速ぅ!特筆することは…一党全員の好感度上昇?あ、でも女神官ちゃんは伸び率低めですね、何でやろうなぁ?

 

 

 さて、町に着いたらまず回復のために女神官ちゃんにとっての実家的場所、地母神殿へと赴きましょう。ここでは負傷者の手当て、赤ん坊への祝福、祭事等が行われている言わば病院兼教会のような施設でして、通常プレイでは結構お世話になる所でもあります。ただ本来RTAでは使わない場所です。

 が!チャートは臨機応変に変えていかなければいけないのでこれでもOKです。

 まあ回復に時間かけたくないので、タイム短縮のために色々と無茶を通した狂戦士君をこの施設にぶち込むことで早めの回復を図ります。お布施代は少々痛いですがこれもタイムの為…無駄とは言うまいな。

 

 癒えてるかぁ~?大丈夫っすよ、バッチェ癒えてますよぉ~。ん?ちょっと待って、狂戦士君が反応してるやん!どういう事これ?

 

 昔が懐かしい?…あ、来歴の「邂逅親友」!これかぁ!ようやく役に立つ日が回ってきたみたいですね。どうやら今回の治療を任された地母神官が一昔前に色々と一緒にやってたようで蘇生(リザレクション)を掛けてくれるそうです!

 

 あぁ~、いぃっすねぇ~。聖職者にしては傷が多い顔と、紅を塗った厚めな唇がとてもエッチだと思いました(小並感)これで褐色だったらこの子を嫁にしてたまである容姿ですわぁ。

 ま、これは誰が何と言おうがRTA、人生の墓場に狂戦士君を連れていくわけにはいかない(戒め)

 

 ただ申し出自体はありがたいのでここはモロチン【はい】を選んでいきましょう。二人で部屋に入って…これでハートマークが出なければ蘇生成功です。頼むぞ狂戦士君、君は自制が出来る奴だと信じてるからな!

 

 パ~ララララ、パッパー。あぁ~、生き返るわぁ~。ヒャッホーイ!ガバ帳消しぃ!蘇生によって狂戦士君の生命力が全回復しました!男女二人きり、きのうはお楽しみでしたね、にはならないんだよなぁ…発動に処女同衾が必須の奇跡とk…ん?いやちょっと待て、という事はこの人…あっ(察し)

 

 さて、用が済んだらさっさととんずらこきましょう。グズグズしてたら狂戦士君がパパになっちゃうだろ!(クズ男並感)あ、でも待って奇跡だと疲労度どうにもならないから結局休まなきゃじゃーん。スタポないんでこのまま休まなきゃ。

 ちなみにですが依頼終わりにこういう所で休むと報酬の方から天引きされる方式が取られてるそうです。世知辛いですねぇ…まあもうほぼほぼ装備は整ってますし、慌てなくても分け前分の金は貰えるので別に大丈夫ですね。それに小鬼王イベント発生まで結構時間もあるので言ってもこれはガバではないです。

 

 パ~ララララ、パッパー(2度目)

 はい、何事もなく退院出来たので早速ギルドへ行って先に依頼報告を済ませていたゴブスレさんから金を貰います。ゴブスレさーん!退院したから、お金ちょうだーい!(貝塚勃起土竜)ワーオオゥオウォオオウ!金貨50枚!色々引かれてもこれだけ残るのは嬉しい限りです。これだけあれば魔法の装備も視野に入れられますね、ま、滅多に仕入れてこないので今は特に使い道がありません。なので掘り出し物の武器とかが時々並んでる工房とかに行きましょう。

 

(投稿者品確認中)

 

 どうやら掘り出し物は無いようですが、丁度いいので買い物ついでに武具の修理を頼んでおきます。おいちゃーん、水薬類補充と修理しておくれー!いやしかし工房が最早便利屋ですねクォレハ。ま、実際食料品等の販売にお取り寄せから武器の改造、修理まで出来るんだから(市販の店に行くメリットが)無いです。これからも、頼りにしてるからな?

 

 あとはこの暇な時期にギルドを彷徨ってると、オーガ討伐で昇格の話が来るので質問(インタビュー)に答えていきましょう。狂戦士君、突貫して療養やら、へらへらしてて言動が軽いせいでなんやコイツって思われがちですが実は依頼達成数と成功率がかなりの水準なので有望株として期待されてたりします。なのでまあ当然っちゃ当然ですね、オーガも実質狂戦士君の策で倒したようなものですし。疾走の名は伊達じゃない!

 審査もそうですねぇ、シュー、2、3回ですかね、やりますねぇ!やっぱり僕は王道を往く…とか答えてたらパパパっと昇級して終わりッ!でした。ちなみに同席してくれた銀等級はガッツ兄貴、多分結婚する聖騎士姉貴が新米戦士とか青年剣士と模擬戦してて暇だったので受けてくれたみたいです。

 

 と、言う訳で鋼鉄等級にまで昇級できました!認識票も本格的にドッグタグらしくなって国の犬感が一気に増しましたが、これでもう夜に出歩いたりして も大丈夫になりました。半年も経ってないのに凄いっすね…疾走の名は伊達じゃない!(2回目)

 まあでも本来はもっと等級高い、高くない?となるくらいには狂戦士君は強いしある程度の礼儀も教養もあるんですが、ゴブリン退治や下水路での駆除作業では評価が上がりにくいのが辛いさんです。逆に依頼主が国や神殿などの案件はバンバン評価が上がるので今度から機会があればそういう依頼も受けてみましょうか。

 

 とは言うものの、依頼自体がないならやっぱりもうやる事が無いです。次のイベント戦である小鬼王(ゴブリンロード)の襲撃は諸々準備できるのがゴブスレさんの依頼後なのでなんも出来ません。牧場の叔父さんに協力も取り付けられないので実質事前準備は無理ですね。

 あ、でも前に性別を女に、出自を農民にしておくと低確率で叔父さんが話を聞いてくれるようになるとか聞いたことがありますあります。ただ確率低すぎて本格検証出来て無いって言ってたような…まあもしこれが本当なら性別を女にする唯一のメリットになりますかね。途中がゲロクソゴミカス難しくなること請け合いですけど。誰か検証して?(他力本願)

 

 準備できないならまた青年剣士君のことを深堀り♂?と思いましたが新米剣士と見習い聖女を取り込んでちょっとした団体を作ってるみたいでもうあんまり手が出せなさそうです。女神官ちゃんを時々この一党に入れるので経験点がうなぎ上りになって良いぞ―コレ。あ、でも今はゴブスレさんに怪我が無いので女神官ちゃん連れて嬉々としてゴブリン退治に赴いちゃってるんでしたっけ。

 

 うーん…マジでいよいよやる事がありません、下水路マラソン再び?ドブガチャやって伝説の武器ゲットする可能性に掛けるのが吉かもしれないですねぇ…つまり倍速案件…まあ取れ高はこれまでである程度取れているので、ちょっとくらい編集さぼっても、バレへんか…視聴者兄貴達のガバマンなら許してくれるでしょう。

 

 ほんじゃ倍速イックッ…ん?おや、ガッツニキじゃないすか、何か用ですかい?ふむふむ…えぇ…白銀の鷹人(ホークマン)退治ぃ?審査の時から目をつけてた、遠距離手段が薄いから来てくれないかって、名持ちの依頼とか難易度☆6くらいの銅等級以上の依頼を鋼鉄等級に持ってこないでくださいよヤダー。

 って、これよくよく考えたら原作の原作オマージュじゃないっすか。狂戦士君にはもってこいの依頼っちゃ依頼ですけどもハッキリ言って面倒くさいですね…重戦士一党は割と遠征するので疲労度管理とかが面倒なんですよ。しかも遠征は何かしら大ガバが起きたらちょっと間に合うか微妙になるんでいつもはご遠慮願うんですが…ただただ倍速するよりもこっちの方が楽しそうなので受けましょう!

 名持ちの討伐なので上手く行けばガッツニキに強化、もしくは狂戦士君に新たな強化が入る可能性があるのでここで攻めます!どうせ良いタイムなど出ないので何度目かのオリチャー発動です!いいよ、来いよ!

 

 では、討伐の旅にイクゾー!!と息巻いてたら受付嬢に止められました。何の問題ですか♂あのさぁ…心配してくれるのは嬉しいですが俺だってまだ生きてるし、貴方だって昇格させてくれたじゃあないか。それでノーカウントだろう?強壮の水薬も飲んでますしちゃんと休んだので大丈夫でーす。第一銀等級の一党の依頼なんですから狂戦士君にそこまで負担が来るわけないじゃないですかーヤダー(慢心)

 

 実は防具を修理に出していて皮鎧のみの紙装甲ですが、当たらなければどうということは無いのできっと大丈夫です。(正直ここ等辺の記憶は無いです、深夜から走り始めたし多少はね?)

 

 指定された場所に赴くと重戦士兄貴達がもう待ってました、遅れて申し訳ナス!でも集合時間15分前にもう皆集まってるとか、プレッシャーを掛けてくる上司か何か?まあいいや、ほれいくどー。

 あ、そうだ(思い付き)またまた着くまで時間が掛かってしょうがないので、ここらで重戦士兄貴のパーティー解説タイムと参ります。

 

 まずは頼れるリーダーガッツニキこと重戦士兄貴から、重戦士兄貴はですね、基本的にはグレートソードと言われる特大剣を主な武器として扱う冒険者でして、若干ゃ力が、強くてグレソ、あの大きく分厚く、であと重くて大雑把な鉄塊なので、小鬼英雄も殺せるくらいに。膂力ぅ…ですかねぇ…魔法の指輪に、すっと、水薬とかを使ってドーピングするとなると膂力のみなら並みの金等級を余裕で超えてしまいます。

 

 続いて女騎士姉貴、この人は…まあ無難に強い冒険者ですね。盾で受け流してカウンター、姫騎士時代に仕込まれた剣術、一日2回の奇跡とそこそこな教養持ち。ぶっちゃけて言えばただただシンプルに強い人と言えます。ちょっと怒りやすいのは玉に瑕ですがゴブスレさんのフィジカル面で上位互換と言って良い為、戦う時には一人こういう人が欲しくなりますね。

 

 あとは少年斥候、少女巫術師の二人組。この子等が主な遠距離攻撃の手段持ちになります。少年斥候はうーん…まあ補助的な意味が強めですかねぇ?ガッツニキがちょっとピンチになった時に隙を作り出せるくらいの実力?弥彦的とかイシドロ的ポジションなので良く分かりません、冒険者になって5年経つのにそんなに実力が無い子です。

 少女巫術師、彼女は圃人(レーア)なので小柄で常時裸足です。使う術は森の動物を使役する【使役(ドミネート)】と女魔術師さんよろしく【火矢】の2種類です。【使役】は動物限定に加えて使える回数も一度きりなので使用するのは滅多にないとは思います。

 あ、ちなみに圃人の成人は30歳以上なのでギルドの方に嘘偽りなく申請していた場合もしかすると一番ガッツニキの一党で年齢が高い子です。ロリババアかな?

 

 と、解説終わりに野盗に襲われましたね。町の外はこういうことがままあるので怖い所です。まあオーガの時に来なかったのでヨシ!(現場猫)このゲームの素晴らしい所はこんなモブキャラにもランダムで顔が生成されてることですが、取り合えずぶっ殺してしまいましょう。辺境最高の一党に勝てる訳ないだろ!

 はい、ぶっ殺し完了、死体漁りで額は少ないですが臨時収入が手に入ったのは地味に嬉しいですね。飛ばすための小さな武器も3つほど頂いておきます。

 

 後は何事もなく野営タイムになりました、良かった良かった。では、ここらで嗜好品をば提供してあげましょう。まあこの前に出しちゃったのでそんなにないですが燻製肉とかのちょっとした高級保存食を持ってきてますのでそれを出します。好感度を上げるのが目的なので、強化なんか必要ねぇんだよ!

 他の人たちはシンプルに酒、チーズ、干し肉、クソ硬いパンなどのオーソドックスな者でした。あ、チーズはあの牧場のものらしいですね。操作キャラ以外のPCが出すものなのでそんなに言う程のバフは盛られません。微々たるものです。

 

 そして野営の方はガッツニキ、女騎士ネキ、少年斥候にお願いすることになりました。術を使うには精神使うからね、しょうがないね。と言う訳でおやすみなさいこれもタイムのため、卑怯とは言うまいな…

 

(ガキィン!)

 

 …夜襲だ――――!!!??

 アカン、夜襲イベント来ました。さっさと準備して迎え撃たねば!

 

 夜襲は文字通り夜寝入った時に発生するイベントで、野盗や怪物が攻めてきます。今回は野盗ですね。で、それを追い返す。または殲滅することでイベントは終了、戦利品などを獲得できます。ただ、疲労度回復が半分になるのでほぼほぼゴミイベです。

 

 状況はもう既に交戦が始まって、周りの色んな声からして敵は7人、仇を討ってやる!や、アイツの恨みを果たしてやらぁ!とかの言動を見るに昼間ぶっ殺した野盗の残りが攻めて来たらしいですね。銀等級がいるので負けることは無さそうですし、丁度いい機会なのでガッツニキ達に【狂奔】を見せてやるとします。

 

 野生開放(ルナティック)!!よし、無事発動できました。そう言えばなんですが、この前の説明でふんわり説明した【狂奔】ですが、これを使う場合、奇跡の触媒として小鬼の歯を始めとしたNPC(祈らぬ者)の一部分が必要になります。ですので実は最初の冒険ではそもそもの話使えなかったことを訂正してお詫びいたします。

 

 ちょっと疲労が残ってるので動き自体は良いものではないですがそんなに苦戦することも無いみたいです。弓で2体倒したところで向こうのボスが魔術師で【火球】を撃ってきましたがオーガを見てるこっちとしては怖くも何ともありません。ガッツニキの大剣ガードであっさり防がれてずんばらりされました。さすガッツ。

 いよぉし!!これで終わりです。戦利品は…(めぼしいものが)ないです。まあ重量制限喰らう寸前まで詰め込みますか。これでも一応金にはなります。

 

 今度こそおやすみなさい…

 

 

 おっはようございまーす!(YMST)昨日は割と散々でしたが今日はきっと大丈夫…なはずです。疲労度もこれならなんとかなるか程度には回復してますし、気にしても何にもならないのでさっさと行きます。スタポと一緒に朝餉を食べて森へGOGO!

 

 しばらく歩いたらなんか見えてきましたけど、あれって確実に手ですよね…巨大な手の像とか完全にベルセルクじゃないですか…著作権どないなっとんねん!しかも近づいて見るとこれ彫られてるの完全に人面やんけ、蝕やんけ。最早コラボしてるんじゃね?って思うくらいにオマージュしてますねクォレハ。

 

 と、人面の手を見てたら今回の獲物、鷹人が丁度小指のところに立ってました。話に違わぬ白さです。通常鷹の色をしている鷹人ですがスッゲー白くなってる、はっきり分かんだね。

 そんな鷹人が俺が空の王だとか何とか言ってますがそんなの無視して攻撃戦だぁ!お前のここが隙だったんだよッ!ふ、雑魚が、足に命中して落ちたので殺しに行きましょう。

 第一空の王はお前じゃないんだよ、王って言っていいのは戦いの最中にいきなりワールドツアーを開催しやがる天空の王者(笑)さんです。アイツのせいでどれだけタイムが伸びたことか…

 

 と言う訳で頭を柘榴にしてやるわ!喰らえッ超必殺棍棒ブンブンアタックーーー!あ、避けられた。反撃痛ーーー!クソが、意外と立て直しが早いですね。流石に☆6依頼は一筋縄ではいかないようです。しかも召喚術の【小鬼(クリエイトゴブリン)】とか中々に面倒なことしてきやがりました…はぁーーー(クソでかため息)まあこっちは手持無沙汰なガッツニキ達に任せましょう。狂戦士君等は弓であれを撃ち落とすのが役目です。

 ただ上空に上がってると回避率が上昇して中々攻撃があた、るんだよなぁ、こっちには弓の名手たる森人とゴブスレ訓練場で指南を受けた投石紐(スリング)持ちの精霊使い少女、ついでに少年斥候がついてるので迎撃は結構余裕なはず。

 堕ちろ!(miss)堕ちろ!(miss)堕ちろ!!(miss)当たらないだろ!動くと当たらないだろ!!クソがッ!ちょ、名持ち早すぎぃ!!想像を絶する速さでこちらの攻撃がかすりもしないジャマイカ!ガバエイムもありますがさっきの攻撃で羽を撃ち抜けなかったのがここで来るとは…

 マジでこの一党強力な遠距離手段が少ないですね…狂戦士君がんばえー、他のもがんばえー。

 

 あ、女騎士姉貴プンスコして挑発しないで、小鬼相手じゃ物足りないからってそれ余計に相手を助長させるだけなんでちょっと!ってあーーーーーーーー!ゴミカスーーーーっ!!ッ死ねェぇぇええええ!!!!あああああああああああヤバいです少女巫術師が上空に連れ去られました!!連れ去りはヤベェよやべぇよ…このゲームでPC死亡理由第一位の落下は良くない!良くないぞぉ!アカンこのままじゃ少女巫術師が地面のシミになって死ぬゥ!女の子が死ぬねんこんなくらいじゃ!!

 ここで重戦士兄貴に何かデバフがついたら小鬼英雄との戦いで大成功判定出しづらくなっちゃうのおおおお!!RTAが大惨事になるのはいやぁああああ!!

 

 レスキュー開始!どうにかして助けます!(無策)あ、ちょ!【火矢】はマズいですよッ!準備する時間が…あぁああああああ何やってんだァああああああ!!

 

 えっと…えっと…あーーーーーーーー…そうです!このゲームのフレンドリーファイア機能を使って肩を撃ち抜きます!(・・・・・・・・)タゲを移して…「引き絞り力」!行け、頼む!当たってくれぇえ!!あ、駄目だわ…まだまだぁあ!!神は言っている…ここで死ぬ定めではないと…因果点使用!はいどうにかなったー!!少女にかなりのダメを与えてしまいましたがなんとか救助成功!

 この勢いで【火矢】喰らって落ちた間抜けな鷲人を殺しま…ガッツニキつよーい、でもいよぉおし!ガッツニキの一刀両断のお陰でおわ、おわ…黒くデカくなる第二形態とか(展開が)熱いんじゃないのこんなところでぇ!

 

 今はタイムの方が割とどうでもいいので見所さんが目白押しになってますよこれ!やりますねぇ!ただお前はこのまま死ねぃ!!原作の方でキャスカ姉貴があんな事になったのは誰のせいか私は知ってるんですからね!

 言っても上手く行かないのがこのゲーム…焦りはミスを産みまくります。【狂奔】使ってぶっ殺そうかとも思いましたが空を飛ばれると撃墜自体が難しくなり、そのまま味方にチキン戦法で攻撃してくる可能性も出て来てしまいます。焦らない焦らない、一休み一休み。

 

 そろそろ集中が切れたせいでプレイがガバガバに…しかし、ここで大弓3連射!良いですよー!やっと一発羽に当たりました!カス当たりではありますが、当たりは当たり、これから少しだけ攻撃が通りやすくなります。いやー、長かったぁ…

 

 良いのが当たるまで倍速!

 

 …急速装填!そして、発射ぁ!!いよぉおし命中!待ったお陰で突っ込んできたので今度はしっかり骨に突き刺さりました!直接殺せないまでもこれでようやく五分です!堕ちたな。これで原作同様こっちの攻撃が曲げらりたりしたらヤバかった…危ないあぶない。

 

 満を持して小鬼をぶっ殺していたガッツニキが接敵し、鷹は鷹でも能ある鷹じゃねぇみてぇだなぁ!の一言で鷹人が見事に縦にずんばらりされました、やったぜ。あ、でも第三形態が…ないみたいですね。良かったぁ。

 

 では、帰りましょう。そう言えばですが、今回は珍しく狂戦士君が被弾することも突貫することもなかったですね。まあむしろ四方世界ではこれが当たり前なんですけども、ゴブスレ一党精神状態可笑しいよ…ところでですけど、これ小鬼王戦に間に合う?間に合うよね?なんか不安に…

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました!次回、最終回になります。お楽しみに。




コロナの影響で4月いっぱい大学に通うことが無くなりました。しかし、授業は行う模様…なんでや…まあコロナですししょうがないですね、皆さんもホント体に気を付けてください。あと、濃厚接触は避けるように。こんな時期にラブホに入る馬鹿にはならないでくださいね。

感想欄でアンケは駄目らしいので大人しく作中でアンケを作ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士5裏

この辺にぃ、何だかんだと理由をつけて裏を書かなかった奴がいるらしいんっすよ。
人間の屑がこの野郎ッ。許してください、完結させませすから…

あ、そうだ(唐突)今回投稿するのはモチベを切らさない為の奴です。クオリティ、長さそれぞれあまり良いものとは言えないかもしれません。でも順次書いてるから楽しみに待っててくれよ~、頼むよ~。


「GAAAAA…」

 

 断末魔の叫びが次第にかすれ、ずしんと凄まじい重量を伴った腕が石畳を強く打つ。

 ゴブリンスレイヤーの手によって恐るべき怪物人喰鬼(オーガ)は邪悪な企みを成し遂げることなく死んだのだった。

 

 だが往々にして怪物を倒した所で冒険というものは終わらない、無事に街に帰るまでが冒険なのである。

 だが帰る為には未だ砂塵の中にいる筈の狂戦士をどのような姿であれ見つけ出し、オーガの心臓を喰らいながらに血濡れで狂乱する蜥蜴僧侶をどうにかしなければならない。そのどちらも行わなければいけないのが一党にとって辛い所だった。

 

 幸いにも精神力の消費はあれど一党には無事な者自体は多く、加えて蜥蜴僧侶もやみくもに牙尾爪爪を振り回してはいるものの術が切れかけているのか多少の意識は戻っているらしい。

 咆哮の合間に「しばし離れよ」だの「なんとかする」だのと途切れ途切れに言っている様子からどうやら大事はないようだ。

 ならば後は狂戦士の救助だと男衆はぶっきらぼうな手付きながらも一つ一つの瓦礫をどかし、瓦礫の中で微かに息をする狂戦士を見つけ出す。

 彼は意識こそ失ってはおれど奇跡的に全身を強打したにも関わらず目に見える大怪我はない。後頭部が触って分かるほど腫れている程度で一党に少しの余裕が戻る。

 せっかく怪物を倒したのだし誰かが死んでは悲しい、そう言うものだからだ。

 

「分かっとるなかみきり丸」

 

「ああ、今回は終いだ。引き上げる」

 

 狂戦士と蜥蜴僧侶の様子を鑑みたゴブリンスレイヤーはそう簡潔に判断を下した。

 そんな彼の一言に一党は異論を挟むことも無い。彼らは戦利品になるかも分からぬ棍棒を捨て置き、帰路を急いだ。

 一目見て大事ないとはいえやはりあれほどの無茶をした狂戦士の体はどうなっているのかが分からない。ゴブリンスレイヤーの過去の経験からしても当然の事だった。

 

 ゴブリンをあらかた倒していたために帰路の道中は特に何もなく遺跡の入り口まで戻った彼らを迎えたのは、竜牙兵の文で慌てて駆けつけた森人たちだ。

 そのままの勢いで森人戦士たちの歌うように流麗な謝辞を受け流し一党は彼らの背に用意された馬車に乗り込んでいく。その折に狂戦士はまるで屍人(グール)かのように砂埃で汚れた体をのっそりと起こしてこう言った。

 

「あ”-…ヴんッ!水薬があればくれると嬉しいんだけど…頼めるかな?」

「おぉ、ご同胞!意識を取り戻されましたか…我らの危機に身を挺してくださったのです、もちろん差し上げますとも!」

 

「申し訳ないね…グっ…あぁジャリジャリする。うーん、駄目だなやっぱ僕もう無理ぃ…」

 

 渡された水薬を一息に飲み干し、小さく呟いた狂戦士はそのままうなだれてしまう。その手からは飲み干した瓶が零れ落ち、パリンとこれまた小さな音を出して割れ、力尽きたか!?と一党が驚いて思わず顔を見やるが狂戦士から聞こえるのは小さな寝息ばかりだった。

 何とも人騒がせで本当に心臓に悪いと女神官が思うのも無理は無いことである。

 

 

 馬車の中は異様に静かで外からの車輪がガタガタ揺れ動く音の中で狂戦士の小さなすーすーと空気の抜けるような寝息さえ聞こえていた。

 

「すみませぬなぁ…拙僧もよもや自力で立てぬようになるまで狂乱するとは思わなんだ」

 

 まるで通夜かのような雰囲気に耐えかねたのか、それとも自らの未熟さを戒める為か服の破れと所々鱗の剥げが見受けられる蜥蜴僧侶がそう切り口を作る。狂戦士から受けた【狂興(ルナティック)】の効果により、オーガが死した後にも暴れまわっていた彼は恐らく一党で最も活躍し、最も一党に迷惑をかけていたことだろう。

 

「しゃーなしじゃしゃーなし、あれが無けりゃこっちがおっ死んでたわ」

「確かにアレはねぇ…他に手は無かったとはいえ…」

 

「いや、あった…だが決定的な隙でも無ければ先手を打たれていただろう」

 

「え、あったの?なんかオルクボルグがそう言うと妙に怖いんだけど」

転移(ゲート)巻物(スクロール)だ。深海に繋げている。もし隙があればこれで奴の体を両断するつもりだった」

 

「待って待って、転移ってあれよね?あの敵地から逃げたりするときに…」

 

 ゴブリンスレイヤーが言い放った転移の巻物のまさかの使い方に始まった妖精弓手の説教を右耳から左耳へとすり抜けさせ、鉱人導士は蜥蜴僧侶に向き直る。

 すると力なく、しかし目だけは爛々とした蜥蜴僧侶が口を開いた。

 

「いやしかし、覚知神…鱗と尾があれば鞍替えも視野に入れる程!かの暴君竜(バォロン)の如き力、一時とは言えこの身に宿らせたは凄まじき所業にございましょう、おぉなんと悩ましいことか」

 

 たしん、と尾を振って高揚を表すがやはりそこに力は認められない。まあこの狭苦しい馬車の中で尾を力強く振られても困るが自らの武勇、戦働きを讃える蜥蜴人らしい表情を浮かべている(鱗に覆われたそれを表情と言って良いのかは謎だが)

 

「止めい鱗の…お前さんがあんなの毎度使っておったらおちおち周りも歩けやしねぇや」

 

「むぅ…確かに拙僧も味方を潰しかねぬ力は少々御免頂きたいですな。竜へと至ればやぶさかでもありませぬが今は大人しく異端の心臓と首を捧げることといたしましょう」

 

 思わず窘めればまた物騒なことを言い始め、さらに舌なめずりをしながらに言うのだから鉱人導士が蜥蜴僧侶に恐怖を感じる。

 会った時から怒る所は未だ見たことが無いが狂乱した時と同じかそれ以上であるならば対処が出来ない。島津兵(リザードマン)は死したとて何かしらの損害を出すのだから怖いのだ。

 

「そいつもまた物騒だなぁ…いや物騒と言えばこいつの方か」

「むにゃむにゃ…もう食べられないよぉ~」

 

「はぁ…何の夢を見てるのやら…絵物語でしか聞かない寝言漏らしおったぞこやつ…」

 

 鉱人導士がわざと話題を変えて狂戦士の方を見やれば気持ちの良さそうな顔をして眠る狂戦士。

 先刻見せた鬼神の如き顔は何だったのか、呑気に意識を失っているものだと鉱人導士が息を吐く。強靭な肉体と普段の調子から案外無事かと思われたがやはり体にはガタが来ていたらしくすぐに眠ってしまった。

 それでも為すべきことを為したのは覚地神とか言う外なる神を信じながらにしてそれに飲み込まれぬほどの強靭な精神力故だろうか。

 だがその分狂戦士の作戦は本当に見事に決まってしまった。本来金等級以上の案件たる人喰鬼を魔法の装備も、大した設備も無しにこの人数でよく倒したものだと息を吐く。

 

 ただ、自分を大事にしていないかみきり丸に加えて狂戦士(ベルセルク)、コイツもある意味極まっておるのかもしれんと鉱人導士は小さく呟くとまるで滝のように伸びに伸びている自らの長髭をしごく。

 

 生まれてきて100と余年、未だに分からぬことの方が多いのはこの世界に起こることのなんたる多さか。

 謎と言えば他にもある。森人にしては珍しい程に鉱人導士との仲も悪くないことも挙げられるだろう。気の合う奴は種族超えているとして、元来の嫌悪感を抱かない者は少ない。そして極めつけは狂戦士の腕…妖精弓手の腰回り、は言い過ぎであろうがそれに近しい太さとはどういうことか。尋常の森人にはこんな力も精神力もない筈だが…

 

「ふーむ…やはり世界は広い、未だ秘密の鋼は解き明かされぬと同じか」

 

 分からぬものは分からぬ、そう言うものを調べるのは学者の仕事だ、オラ知らね。鉱人導士はそうして思考を隅に追いやった。

 

「ほう、秘密の鋼!初めて聞く言葉ですなぁ…委細教えていただいても?」

 

「うんにゃ、別段貴重な話でもないし構わんわい、こらぁな?…」

「なになに!秘密の話?ちょっと混ぜなさいよ」

 

 興味深げに話を聞きに来た妖精弓手と蜥蜴僧侶に話をしながらちらと周りを伺う鉱人導士。

 馬車に揺られる一党、相も変わらぬかみきり丸と、少し気落ちしたものの故郷を救ったと鼻高々な妖精弓手、あとは何やら憂え気な神官の嬢ちゃんと視線の先にいる狂戦士、蜥蜴僧侶…凸凹過ぎて逆に面白いと思える一党が馬車に揺られていた。

 奇縁、というのもあるものだ、四方世界の一党は数あれどこれほど他種族が混ざった一党も珍しいだろう。しかしどうにもここの居心地は良い、願うならばこの先またこの一党で…そんなことを思った見た目だけならば一番年上の鉱人導士はやがて辺境の町の食事に意識を向ける。

 それは誰も死ななかったからこそのことだ。

 

 

 ―――――――――――

 

 

 

 

 

 




Q、狂戦士はあれだけ狂乱したのになんで蜥蜴僧侶すぐ直ったん?
A、ゴブスレ世界において奇跡(魔術もですが)というのは触媒が必要になります。それを使って奇跡を起こすのが常ですが触媒の品質にもピンキリがあるようで狂戦士が使う奇跡「狂奔」は触媒のランクによってその効果を大きく変えます。今回使った小鬼の牙は最低ランク、狂戦士君のような技能で尚且つ脳筋使用のキャラだと掛かりがすごいですが銀等級の蜥蜴僧侶兄貴には効果は出るけども…レベルに落ちる、または掛かる時間が少なくなる…そういう設定だと思いください…さらに質問がある方はコメ欄で返信いたします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士5裏Ⅱ

さて、卒論が終わりましたので頑張って仕上げました。
これで3年続いたこの物語もついに全話完了しましたので、楽しんでいただければ幸いです。



 世界の中心は私で、私を基にして世界は回っているのだと思わなくなったのは、いつからか。

 

 戦神を信仰し、混沌の者どもに死をくれてやっていたあの時からか。

 それとも、へまをして女として終わりかけたあの時からか。

 または、鞍替えして地母神様を信仰するようになったあの時からか。

 

 まぁ、どうでもよいことだ。私がいなくなろうとも今日も今日とて世界は巡る。

 だが、そんな自分とて出来ることもまたあるもので、この神より授かりし奇跡を以て、病人や怪我人、果てや赤ん坊まで遍く人に奇跡を授けている。

 世界の主役にはなれなかったこの身でも人の役には立っているのである。

 

 そんなある日のことだ。

 

「これは奇跡を使った方が良いかもしれない…」

「新しい包帯と綺麗な水をお願い!出来るだけ早くね!」

「残念だけど…もうこの人は」

「汝の生に幸あらんことを」

 

 すすり泣きながら死体袋を運ぶ者たちの裏で、新しく生まれた命を祝福する祝詞が詠まれる。

 怪我が治って歓喜する者、間に合わず命を落とす者、運が足りなかったのかそれとも体力が持たなかったか皮肉にも神殿で無数の人間が死んでいく。

 救えた命、救えなかった命、どちらも価値に上下をつけてはならない、もし死んでしまえば丁重に墓を作って弔うことで魂の救済を図るのが常である。

 しかし時代が時代、それでも十分上等な死にざまだ。

 混沌の者との戦いで、財宝目指し冒険で、迷宮の罠で…遺品か体の一部でもあればまだマシで、この時代怪我も死者も尽きることは無い。

 地母神殿等の医療施設で人手は基本何時だって欲しいものだった。

 

 その中で機敏な動作で動く筋肉質な女神官は傷の多い顔に精一杯の笑顔を乗せ、届いた綺麗な包帯を怪我人の腕に巻いていく。

 処置を施しながら彼女の目線の先にはくすんだ鎧(金臭さ消しだろう)の冒険者に担がれた新たな患者、今度は出来るだけ軽傷であれば良いのだがと誰にも聞こえない程小さな声が発せられた。

 

「頼む、金は払う」

 

 こちらを見るや開口一番ぶっきらぼうにそう言った鎧の男が、肩を貸していた人を台に降ろす。

 砂埃で汚れた装備だし顔も隠れているが、フードからはみ出る程長い笹葉耳は上の森人のそれであった。

 

「診てくれるか、こいつは頭を打っていた」

「はい、お任せください!ッ…確かにかなり頭が膨らんでいますね、呼吸も浅い…」

 

 フード越しにでも瞬時に分かる程に膨らみが確認できる、加えて治り始めてはいるが全身が強い衝撃を受けた痕が出来ていた。

 この感じだと頭の中に血溜まりが出来ているかもしれない、そうなればいつの間にかぽっくりと逝ってしまうことも十分あり得る。

 早めに来ることが出来て運の良い人だ。まあお布施が無ければこういうのに手出しをしてはいけないのが歯がゆい所ではあるが…

 しかし、分別はつけなければいけない。

 

 彼女が手を出せばそこに鎧の冒険者がボロボロの花柄袋を置いた。中を改めてみればたっぷりと金貨が詰まっている。

 

「余剰分も取ってかまわん」

 

 どうやら患者は随分と金のある人に救われたらしい。というか、よく見れば胸の鎧からはみ出るタグは銀色、銀等級ではないか。

 在野最高の党員であるならばの扱いかと女神官は心の中で合点がいった。

 そのまま神殿を後にした冒険者を見送ると、彼女はさぁてと腕をまくる。

 処置の準備にと彼女は男の上半身の身ぐるみをあっという間に剥ぐと、顔に掛かっていたフードも取り払い目線を顔に移した。

 移して、しまった。

 

「ッ!?コイツは…」

 

 彼女は口調が荒々しくなっていることに気づきもせずに、男の顔を穴が開く程に見つめる。

 偶然かそれとも運命か、女神官はその男をとても良く知っていた。

 一度は他人の空似だと考えたが、そう思えない程その顔は整っていて、体つきに関してもただの森人と全く違い、まるで御伽噺に出てくる神様のように筋骨隆々なのは記憶の中では一人だけしかいない。

 見れば見る程に目の前の森人が彼女自身の知っているそれと重なっていく。

 酒を飲んでは呵呵大笑して、時々やけに悲しい目を見せていた。

 彼女がかつて逃げるように退団し、もう二度とその姿を見ることが無いと思っていた傭兵団長その人だった。

 

「さーせん先輩、コイツ俺が看病してもいいっすか?」

 

「えぇ、構いませんよ。しかし、珍しいこともあるものですね。貴方の口調がそのようになるとは…出来ればもう少し丁寧な口調で言ってくださると嬉しいですが」

 

「…すみません、この方は私が看病してもよろしいでしょうか?」

 

「良く出来ました、ではお願いしますね。ここはまぁ、何とかしておきましょう」

 

 眉を上げて困ったように言葉を直させたのは彼女にとっての先輩司教。

 女神官が女戦士だった時代からの知己であり、また改宗する際にも手を焼いてくれた恩人だ。

 

 彼女はすぐさま台上の森人を部屋へと移し、ベッドを用意する。

 ふんわりとしていて太陽の香りを感じるそれは触媒としての効果も備わっている優れもの、治療の効率を上げてくれる。

 

 女神官が抜けてからしばらくして、あの傭兵団は滅びたと聞いた。しかし、団長が生きているという事はあるいは…と彼女は少しの希望を抱いていた。

 【蘇生】でも何でも掛けてやるからさっさと治れ、と彼女は団長をベッドの中へと放り込むと服を脱がし自分も裸になってベッドへとその身を投じる。

 でも、本当に良かったのか、今からでも皆のヘルプに…診断ミスをしていないか、だがあの瘤は随分と…司教もああいってくれたし…ただ埋め合わせが、というかコイツ本当に団長か?オレの記憶違いかも…この年になって異姓と一緒になるの初めてだし…でも本当に団長なら私が子どもの時から知ってるし…

 いやいや、でもでも…様々な事に悶々としながらも、最近の勤務疲れが溜まっていたようで彼女の意識は気づかぬ間に眠りに落ちていった。

 

 

「止めてくれ皆…痛いよ…止めてよ、お願いだ…」

 

 何かの声が寝耳に入り、女神官はシバシバする目を気合で開きながら起き上がった。

 パリパリと乾いた目をこすり、一体私は何をしていたかと思い返そうとしたところで右手になにやらむわっとした温かさが伝わってくる。

 毛布を捲れば月明かりとランプで照らされた、ぐっしょりと寝汗をかいてうなされている男がいた。

 彼女は全てを思い出すと、うっ血するほど固く握られたその手に目を移す。

 

「ギぃいい!!!あ、ぁああ!窓に窓に…うわぁあ…あぁああ!!!?やめろッ!瞼の裏にまで来るなッ!!エリー赦してくれ!赦してくれ!!俺には、俺にはどうしようも無かったんだ!御免なさい…ごめんなさい、もぅ…もう嫌だ…誰か、俺を赦してくれ…解放してくれよ…皆…」

 

 何やら凄まじい悪夢を見ているらしく、小さく体をまるめてうずくまりながら震えている。

 傷があった頭に手を伸ばせばもう瘤も傷跡も残っていない、そのはずなのにだ。

 となればこれは恐らく精神の方に問題があるのだろう、そう考えた女神官は両手で握り拳を作ると…

 

「起きろ団長!!!」

「グボヘァッ!!?」

 

 思いきり背中に振り下ろした。

 

「えッ!?あっ!…えぇ?」

「おいお前、俺の名前を言ってみろ」

 

 目を白黒させて状況を確認しようと辺りを見回すさまは率直に言って喜劇的(コメディチック)だ。

 やはり暴力、暴力は全てを解決する。

 そのための右手だと煙さえ見える拳での治療は、精神を侵され正気を失った者に使う彼女の十八番だった。

 一瞬この薄明かりの中で見えるかと思ったが、森人には暗視がある。

 耄碌でもして衰えていなければ見えるはず、これで忘れたと言われればもう一度殴ってやるつもりであったが…

 

「……ッ君は!!?」

「へっ、随分時間掛けたじゃねえか。そうだよ、オレだ」

 

 どうやら、団長は気づいたらしい、嘘をつくほど腹芸が出来る人物でも無い、その言葉は真実だろう。

 ただ、彼女に気づいた彼の目は暗く濁り、かつてはまだあった輝きさえも失っていた。

 ”目は口程に物を言う”傭兵時代に彼女が聞いた東洋の諺があるが、まさしく今がそれである。

 それだけで彼女は、彼が最早全てを失っていることに気づいた。

 

「訳を話せ」

「え?」

 

「お前の目がぺちゃくちゃぺちゃくちゃ喋ってんだよ。生き残り…いないんだろ?」

「ッ!…そんなに分かりやすかったかな…?」

 

 カマかけが当たってしまったかと女神官は額に手をあて、天を仰いだ。

 最悪だ、最悪な話である。

 いやまあ傭兵などよっぽど上手くまとめなければ盗賊になるか、餓死するか、戦死するかだ。

 50数年続いたというのだからむしろよくまとめたものだろう。

 第一、あの場所から逃げるように出てきてしまった彼女に責める気は微塵も存在しなかった。

 ただ、納得できるかは別なだけだ。

 

 それからは団長の口から様々なことが話された。

 傭兵団の終わりから、信仰する神の二股、果てはオーガを殺した話へ。

 二転三転しながらも団長はそうして話を紡いでいく。

 本来異教であるし、邪神に近いナニカを信仰する彼へ女神官は何かを言うべきだったのであろうが、彼の目に束の間でも光が戻ったのを感じたのでそれを言うのは憚られた。

 だが…

 

「こんな、所かな…?ハハ、いやぁ、僕が生きてるのがまさかまさかだよね。伊達に1600年生きてる訳じゃない生命力ってことなのかな。ハハ、ハハハ…」

 

 あの団長の一人称が(ボク)とは…やはり信じている神が悪いのか…

 もしくはそれが彼の精神を支えているのだろうか、新しい人格を作り出しているとかそんな感じで。

 いやまぁ戦神から地母神様に鞍替えして口調や態度を諸々変えてる彼女なので、深くは言えなかった。

 女神官はそれからも卑屈で平身低頭な態度の彼へ頭から毛布をかぶせた。

 

「大人しく寝てろ、んで、冒険行ってこい。それで辛くなったら…また俺の所へ話にくりゃいいんだ」

 

「でも「でももだってももうるせぇ!うるせぇんだよ…いっつも捨てられた子犬みたいな目で周りを見てやがって!アタシはそういう所が…一番ッ嫌いだった!アタシを見ろ!」

「えっ…」

 

 薄い衣も脱ぎ捨てて自分の全てをさらけ出す。

 古傷となって消えない顔の傷、胎に刻まれた呪印の痕、切断された跡が残る指。

 彼女がとある冒険で失敗(・・)した結果だった。

 

「これはアタシの責任だ!自分の意志で冒険して!馬鹿晒してこうしてんだよ!それの何が悪い!アタシが悪かっただけだッ!」

 

 実力が足りなかった、運が足りなかった、注意力が足りなかった。

 当時は若く、金が必要だと聞いて勝手に冒険(アドベンチャー)した。

 そして、「冒険者は冒険してはいけない」を守れなかったから勝手に失った、それだけだ。

 

「命があるなら何でもできるって、他でもないアンタが言ってくれたんじゃないか…そんなアンタがこの様じゃ、アタシまで惨めになるだろうが」

「そうだよね…ウン、いやホントそうなんだけどね…」

 

 女神官の激情の訴えにも相も変わらず曇り顔の元団長の姿に、彼女のはらわたが煮えくり返る。

 

「ッハ――――ッ!これだからアンタは!過去にばっかり囚われて前が見えてねぇ!」

 

 彼女の最初の記憶、町で乞食をしていた所にやってきたのが彼だった。

 それだけで、彼女には救いだったのだ。

 

「あの闇の中みたいな路地からアンタはアタシを見つけてくれた!女として終わりかけた私をまた救ってくれた!理由なんてなんだって良いんだよ!」

 

 混沌の巣窟染みたあそこから自分を拾い上げ、真っ当な教育さえ施してくれた。

 傭兵団でも、自分の待遇に不満を持ったことさえない、だが彼女は弱さゆえに逃げ出した。

 

「あの時アタシは、俺はアンタに救われたんだ!今度は私にも助けさせてくれ」

 

 彼女にとってあそこは救いだった。

 救いだからこそ、彼女はそこに迷惑を掛けたくなかった。

 思い込みであろうとも、周りが止めようとも、若く瑞々しい彼女はそれが良いと信じて突き進んだのだ。

 

「逃げ出してごめんなさい…でもアンタも生きてろよ、団長まで死んだら誰がこの先墓に花を添えんだよ」

 

 彼女はそれきり毛布に溶け込むようにしてベッドへ潜り込んでんいった。 

 そもそもとして、彼女は弁が立つ人間ではない、しかし、それでも伝わるものは伝わる。

 狂戦士はしばらく呆然としたようにそのままいたが、横から可愛らしい寝息が聞こえ始めたところで彼女の頭をっさらりと撫で、ベッドから起き上がるとほの明るい窓辺にその身を移す。

 狂戦士の濁り切った目は、夜空に輝く緑の月と薄紅色の二つの月をひたすらに映し続けていた。

 

 

 翌々日に狂戦士は心も体も万全な状態にまで回復したためすぐに神殿から引き上げることになった。

 元気になったらすぐに他の者と入れ替える、神殿は宿ではないのだ、それも仕方のないことである。

 

「ありがとう、世話になったね」

「あぁ、達者でな…」

 

 狂戦士は女神官の言葉に無言で頷き手を握ると、冒険者ギルドへ向かって走り出す。

 彼女が異変に気付いたのは、そのすぐあとだった。

 

「なんだぁ、ありゃ…?」

 

 小さくなっていく背を見送る彼女には天気も良いのに狂戦士の肩になにやら塊になった影のようなものが乗っているのが見えていた。

 それが何だろうと思う前に、彼女の頬を湿り気の混じった風が過ぎ去っていき意識は別のことへ移っていく。

 今日も仕事は山積みである。昨日の詫びも兼ねてしっかりと取り組まなければと、彼女は姦しい話が立ち上る修道女達の輪へ入って行った。

 

 ――――――

 

 倒されたオーガの報酬は狂戦士が交渉した通り金貨が50枚、の筈だったのだがゴブリンスレイヤーへの義理立てと称して金貨を15枚程彼に返しておいた。

 いらん、と言われようがお構いなしにするりと雑嚢を開いて入れておく。

 このまま借りを作っておくのは良くないし、実際助けになったのだから彼には受け取る義務があるとゴリ押した。

 渡す時にそうか…と相も変わらずぶっきらぼうな一言と一礼を受ける。

 便宜を図ってくれたのだからこれでも別に良いだろう、何も言われないよりはすこぶるマシだ。

 全財産で金貨50枚があれば良いのだ、神もそういうものだと理解してくれる。

 

 狂戦士は療養明けにさっさと浪漫を浚い(溝浚い)に行くかと気合を入れ、受注をしに受付に行った所で三つ編みの受付嬢から昇級の話が持ち上がっていることを聞いた。

 なんでも狂戦士の策でオーガを倒したことを銀等級の一党が言ってくれていたようで、女神官と共に彼には面接に来てほしいとのことだった。

 そうお上から言われればさっさと行かなければいけないのが冒険者だ、階段上の講談室へと足を運ぶ。

 丁度審査を終えて出てきた女神官に軽く挨拶をすると、中から狂戦士の名が呼ばれそのまま部屋へと入っていく。

 中で待っていたのは【看破《センスライ》】役の審問官と、蝙蝠のような黒髪の受付、そして銀等級だという冒険者の3人だった。

 

「さぁ、まずは座って」

 

 始まった昇級審査に対してはああだのうんだの、そうですねぇといった共通語でのやり取りが為され、受付から、じゃあ混沌の輩が出たらどうするの?と聞かれた所で。

 

「殺りますねぇ!」

 

 そう答えた狂戦士に目を細める審問官と逆に歯をむき出す銀等級。

 あ、ふーん、とどこか間の抜けた反応を見せた受付にやりますやりますとさらに追撃するかの如く付け足し、さらに娼館とかには行ったりするのいったりするの?とセクハラまがいの質問を受け流すといつの間にやら解放されていた。

 結果は合格、彼は胸にかけた黒光りする鋼鉄級のタグを揺らしながら、鼻歌交じりでギルドの階段を下りて行った。

 

 ―――――――

 

 銀等級、重戦士はこの辺境の5本の指に入る冒険者である。

 ゴブリンスレイヤー、槍使い、魔女、聖騎士、そして重戦士のそもそも5人しかいないが嘘は言っていない。

 本気で腕試しをすれば…さて何位だろうか。

 

 そんな彼はこれまでに多数の異名をつけられてきた経歴がある。

 だんびらを使っていた時代の「ぶんぶん丸」から始まり、徐々に名が知れてきた時代の「大物喰らい(ジャイアントイーター)」銀等級となってからは「辺境最高の党目」と呼ばれ、様々なクエストにいそしんでいる。

 彼は現在、ある冒険(アドベンチャー)に必要になるであろう人材を探す最中だったが、先程良いものを見つけていた。

 

 昇級審査でのあの佇まい、長髪に筋骨隆々、長身、いかにもな益荒男、中々に良い人材だ。

 こういう類の奴とは、出来るだけフランクに…

 

「よぉ!さっきぶりだな」

「えーっとさっきの昇級審査の時に居合わせた、確か銀等級の…」

 

「おう、重戦士をやってる、この辺境最高の頭目様よ」

 

 邂逅はまあ上々。

 狂戦士と呼んで(本人も自称してるが)新人達が怖がっていたが、確かに隙を特に作り出さず、尚且つ武器はすぐに手に取れるような工夫もしている。

 だが、狂戦士から感じるのはそれを抑えて尚余る程の善性と人懐っこさだ。

 それらを鑑みて、狂戦士はどこか狂った戦士であるが悪い奴では無い。重戦士はそう結論づけた。

 いつもはぽわわんとしているが、いざという時に雰囲気が一変する奴はまあまあ見ている。

 それに、これでも彼は頭目を務めてそれなりにやっている、人を見る目には一家言あった。

 

「早速で悪ぃがよ、お前の力を貸してくれ」

「良いね、速い話は嫌いじゃないよ」

 

 猟奇的な目が重戦士を見据える。成程確かにコイツはあの変なの(ゴブリンスレイヤー)が時々浮かべやがる目だ、ガキ共が怖がるのも分かる。

 重戦士は面白い、と小さく呟きどっかと卓につくと、腰の雑嚢から一枚の紙を引っ張り出した。

 

「俺たちの一党ははっきり言って遠距離攻撃の手段が薄ぃ、いや、それでも普通の依頼ならなんてこたぁねえんだぞ?だが…こんな依頼が来ちまった」

 

 狂戦士の座る卓に重戦士が叩きつけるかのように置いたそれは、一枚の依頼書。

 それは、とある森に突如現れたという鷹人(ホークマン)の討伐依頼だ。

 辺境の地において最高の一党だとお聞きして、から始まるお貴族様特有の長ったらしい文をスラスラと狂戦士が読むと、ああ成程という小さい呟きを耳が拾う。 

 理解できたようで何よりである、説明の手間が省けた。

 

「つまりは僕の弓が必要な訳だね」

「そういう事だ。一丁付き合ってくれや、金は出すぜ?」

 

 親指と人差し指で丸を作ってずいっと迫れば狂戦士も少し厭らしく笑顔を浮かべて悪い顔になる。

 ノリのいいやつだと重戦士が差し出した手を何を言う訳でもなく狂戦士は握りしめた。

 交渉成立、と見て良いだろう。

 

「話が分かる奴で助かるぜ。ヨシ、んじゃ準備するぞお前ら!」

 

 重戦士が快活な声でそう言えば、後ろの卓で待機していた面々が動き出す。

 

「いや、話が早すぎやしないか?お前が決めたのならついては行くが…」

「兄貴が認めた人なら俺は構わないぜ」

「頭目が決めたなら私は従います」

 

「気の置けねえ奴らだ、どうか仲良くしてやってくれ」

 

 そういって一党の面々が小さく頭を下げる。

 白い装備を基調とした聖騎士に小さいながらも装備はしっかりとした斥候、裸足の令嬢のような出で立ちをした圃人(レーア)の巫術師、彼の自慢の一党だ。

 実は本来もう一人、会計役がいるのだが、丁度実家に帰っているところで今はいない。

 と言う訳で、遠距離に向けた確かな手立てを持ってない一党なのだ。

 

「どうも、僕は疾走狂戦士。弓の腕は天下一品!この腕にかけて皆に手出しさせる前に打ち抜いてあげよう!」

 

 そう言って狂戦士は女騎士の腰ほどもある腕で力こぶを作る。

 それは弓で撃ち殺すのか、それとも腕力で体に風穴を開けるのか、どちらの意味でも取れるようで、一党の面々は苦笑を浮かべた。

 何はともあれ、強力な助っ人を入れて冒険へ出発だ。

 

 

 

 冒険が、初っ端から先行き不安になるとは…

 

 最悪なことながら、重戦士たちは町の外に出て半里も歩かない所で盗賊に襲われていた。

 と言っても、最早最後の一人が半泣きで剣を振り回しているところである。

 盗賊側の練度もそうだが、銀等級もおり、総合力の高い辺境最高の一党に喧嘩を売ってしまった彼らは頭も運も悪かったとしか言いようがない。

 ぶんぶん丸となった盗賊の剣技を見事にすり抜けた矢が頭蓋を右から左に綺麗に貫通し、盗賊の体から諸々と吹き出て襲撃は終了した。

 見事な腕前だが、倒れ込むとほぼ同時に盗賊の懐を漁り始めた狂戦士に一党はぎょっとする。

 死体漁りは同業者に対してはもっての外だが野盗でもあまり良いものとはされていない。

 

「オメェ…いや、屑はこいつら、俺らは官軍だ。ウン」

 

「何さー、襲ってきた賊の懐に六文銭入れてもしょうがないでしょ?それとも丁寧に弔う気かい?頭目は君だし止めろと言われたら素直に止めるけど」

 

「いや、そういうわけじゃねえが…あー、ロクモンセンってのは何だ?聞いたことねえぞ」

 

 少し楽しそうにお宝お宝と口ずさんで身ぐるみを剥いでいる狂戦士の、まあ正論…を右から左へ流しながらも、聞きなれない言葉に話題を移す。

 

「あー…死者への手向け的な?東方の文化だよ、ほら、カタナとかいう曲刀を使う人達の」

「ほう!あの者達の言葉か、以前一緒に食事をしたときに彼らはな?―――」

 

 いがみ合いと呼ぶほどのものではないが、不和が起こりそうになった所へ聖騎士が割って入る。

 彼女はそのまま東方の武人が食事の際に椅子の上で胡坐や正座をしていただだの、食べ方がきれいだっただの、女子の特権と呼ぶべき他愛なく長い話を始めた。

 結局意外と白熱したために夜になるまで話が終わらなかった聖騎士をどうにかこうにか別のテントへ追いやったところで、狂戦士の耳が異音を拾う。

 

「よし…野郎ども、かかれ!!!」

「「「うぉおおおおお!!!!」」」

 

 剣を引き抜く音、ドタバタ走る輩の足音、酔っていなければ上の森人の耳から逃れることはできない。

 自分の布団を跳ね飛ばし、すぐさま装備を整える。

 

「「敵襲だぁああああああああああ!!!」」

 

 丁度見張りをしていた少年斥候とほぼ同時に声を張り上げ、周りに情報共有を行う。

 

「あ”ークッソ、こんの畜生めがッ!せっかくいい気持ちで眠ろうとした所に…」

 

「そんなことを言ってる場合じゃないだろうっ!さっさと応戦だ」

「お姉さま方、もう賊が来ております!」

 

 すぐさま飛び起きるのは彼らが日ごろからしっかりと戦闘の訓練を怠っていない証拠である。

 傭兵団等、正規の軍でない者は後先考えずに酔いつぶれて敵の凶刃にかかるということは少なくない。

 この時点で野盗の目論見は上手く行くことはそうそうないだろう。

 だがいつだって骰子は不確定、勿論彼らにも勝ち目はあった。

 ゴブリンが竜に勝つくらいの、あってないような勝ち目が。

 

「てめえぇ!あいつ等の仇だ!」

「許さねえぞ!」

「輪切りにして酢漬けにしてやらぁ!」

 

 野盗達はてんでばらばら、さらに口汚く自分たちの場所を伝えるかのように吠えて突進してきている。

 素晴らしい程の猪突猛進ぶりに敬意を表して狂戦士が彼らの顔に矢を突き立て、重戦士と聖騎士はその剣で迎え撃つ。

 一瞬で上下に別れた野盗が衝撃で死ぬと、剣の側面で掃われるかのようにして2人が聖騎士に送り出される。

 

「こんなプレゼントは、いらんッ!」

 

 そして、聖騎士は送られたプレゼントの一人を両片手剣(バスターソード)で斬りつけると、もう一人を聖撃(ホーリースマイト)で狂戦士へ送り込む。

 まるで熟練の職人のような見事な連携に素晴らしいと見惚れながら、狂戦士は小さく祝詞を紡いだ。

 

「あぁっハッハッハッハ!!!」

「ぴぎっ!」

 

 クロスカウンターで拳を野盗の顔面にめり込ませると、ようやく狂気的なリレーが終了する。

 その様を見たもう一人が慌てふためき、化け物を見る目でこちらを見ていたがそんなものは関係ない。

 逃げようとするその首を握りしめ、筋肉をミチミチと膨らませて次の野盗へ鈍器のごとく叩きつけると両方の肉がぶつかり合い、派手に血がぶちまけられた。

 

「貴様らぁッ!よくも俺の部下をッ!『火石、成長、投擲』ぁああ!!!」

 

 恐怖しながらも見かねた頭らしき男が杖を振りかざし【火球】の魔術を狂戦士へ向け放ってきた。

 だが激情に駆られた魔術師の一撃など何も怖いものが無い、来る場所が分かるのであればいかに早くとも対処が出来る。

 運悪く近くにいた野盗を盾にして、そのまま狂戦士が咆哮を上げ突進していく。

 二発目を放とうと息を吸い込んだ呪文使いはもう速攻が鉄則だ、狂乱していようとその程度は身に染みている。

 オーガレベルの【火球】でなければまず当たる道理はない。

 さあその顔面をつぶしてやろうと駆けた狂戦士に、重戦士が割り込んで大剣で【火球】を防ぎ、袈裟切った。

 

 まあ彼の気持ちも推し量るべきであろう、話には聞いていたが確実に危ない気配を漂わせている狂戦士に対処するなら先手を取った方が良い。

 

「おいクルルァ!!狂戦士!おめえ意識あんのか!?」

「ある…よ!」

 

 狂乱をしていようとも、重戦士には取れる手札が多数ある。

 それ故にまず彼は狂戦士に問いかけ、理性の光を目に宿していることを確認し少し安堵した。

 

「あーもう危ないッ!狂戦士それがお前の言っていた奇跡だな?なんと危なっかしいのだ!やはり邪教の奇跡と言うだけのことはある…」

 

「きが、いは…加えない…」

 

 半分以上の白目を剝きながらこう言う狂戦士に一同はやや恐怖するが、言葉通りに野盗の武器を搔き集めた所で自分を抱くようにして動かなくなった狂戦士をひとまず置いておいた。

 事実これでも前と比べれば彼の自制心は上がっている、小鬼の牙程度なら意識を失うこともない。

 それが付き合いのあるゴブリンスレイヤーや女神官が見ていれば良かったが、生憎重戦士一党は狂戦士初見である。

 事前に情報を伝えられていたとはいえ、こうも狂乱した様を見せつけられれば警戒心を抱くなという方が難しい所だ。

 だがその姿勢のまま狂戦士が寝始めたので、その警戒も無意味なものとなった。

 何というか、これは確かにゴブリンスレイヤー並みに怖いな(分からないな)と重戦士は聖騎士へ狂戦士を連れてきたことを謝罪する。

 

「うーむ、いやまぁ…うーー…至高神様からは何も言われていないのだし、大丈夫だ、安心しろ、平気平気というやつだ」

「おう、そうだな」

 

 なんかもう面倒だなと、重戦士は空返事のように聖騎士に返すとそのまま自分のテントへ潜っていく。

 そんなこんなでむわっと血の臭いがむせかえるような夜の森でこの世から野盗団が一つなくなった。

 

 翌日、昨日のことはあまり考えないようにしようと一党内で共有し、依頼された場所に向かっていたただ中のことだった。

 

 それが表れたのは唐突で、まるで霧が塊になって出来上がったかのように虚空から巨大な黒い影が滲んで浮かぶ。

 黒い影が光に照らされると、今度は照らされたところから影が剥がれ、白く輝く塔が表れた。

 塔は重戦士がかつてゴブリンスレイヤー、槍使いと銀等級3人で共に打倒した魔術師が作り出した塔のように白く、異形の顔が多数埋め込まれた明らかに自然にできた訳の無い、巨大な腕だった。

 

「兄貴!上だ!小指の所にいるよ!」

 

 そうしたところで遠眼鏡を覗いた少年斥候が件の怪物の出現、というより純白の鷹人が腕の塔の小指に立っていたのを告げる。

 まるで彫像かの如く磨き上げられた肉体美故に、鳥の頭を持っていなければ気づけなかった程の擬態率を誇ったその鷹人と一党の目が合う。

 

「YO人間共、俺様特製の像、気に入ったかい?題名は渇望ってんだぁ!」

「ッ!!?アイツ!」

 

 鳥特有のキンキンとした鳴き声を響かせ、素早く、それでいて一直線に進んでくる鷹人。

 会敵して5秒、状況を理解する間もなく鷹人の攻撃が始まった。

 爪に羽に魔術にと、種族特有の能力と魔法を織り交ぜた複雑な戦い方だ。

 

「HOHO…これは俺の夢に出て来た5柱の邪神様方が立ってた玉座を模したもんだ。クソッ、自分の技術の拙さが嫌になるぜェ…ホントはもっと人間の顔を埋め込んで、もっと悲痛に歪んだ顔で、もっと、もっと悍ましいものだったぁあああッ!!!!???」

 

 先陣は、狂戦士によって切られた。

 放たれた弓は見事に鷹人の胴を狙って放たれたが、直前で気付かれ足を打ち抜く程度に終わる。

 それは本来、鷹人の眉間への軌道だったが、直前で大空に上がった鷹人に追随するかのように曲がったのだった。

 落ちた鷹人はすぐに体制を立て直し、大空へと飛び立つ。

 

「くぁああ!!卑怯な奴がいるみてぇだNA!俺の怒りを買って後悔するんじゃねえ!」

 

 鷹の顔でも分かる程に血管を浮き立たせ、純白の鷹人は自らを語りに語る隙を晒しながらも数の差をものともせずに縦横無尽、天空と大地を繰り返し往復してこちらを斬りつけた。

 

 これではまるで一方的な狩りだ、と重戦士は何度目かになる攻撃を大剣で受け流す。

 聖騎士や狂戦士も剣や棍棒で応戦しているが、如何せん痛打足りえていない。

(アイツもいるが、ガキ共を守りながら射落とすの待たなきゃなんねえのは、キッチィな。)

 重戦士がそう思う程には鷹人の攻撃は激しく、またとめどなかった。

 

「なのにこれと来たらどうだ、てんでなっちゃいねぇ。でも俺様の人生で一番の作品だ、まだ届かねぇ、真実味(リアリティ)が足りてねえんだ…でも、でもよぉ、お前らが来てくれた…この白銀の空王様の前にYOOOOO!」

 

「ハッ!見れば見る程趣味が悪いな!!流石は混沌の者だ、美的感覚もヘドロの如く汚いらしい」

「ハァッ!?んだとコラ!翼も持たねぇ塵芥が芸術を語るんじゃねぇYO!!空の王たるこの俺様に…勝てると思ってんじゃねえ!!」

 

 イラつき交じりに吐き出された聖騎士の無自覚な挑発は、鷹人の芸術観を傷つけるには十分なものだったようだ。

 

「俺様を怒らせたこと、後悔しやがれ!!」

 

 そう宣言した鷹人が羽ばたくと、事態は一瞬だった。

 銀等級の守りを抜け、一飛びで圃人巫術士の両肩を掴むとそのまま上空へと飛び去っていく。

 恐ろしい程の早業で、既に周りの木々よりも高く高く飛んでいく。

 咄嗟に詠唱した彼女の【火矢】が鷹人に撃たれたことで、すぐに落とされたが彼女もまた、落下を始めた。

 

 【降下】も、祈祷使いもいやしない。

 そもそも巨人3人分の高さから落ちても、人は容易く死ぬのだ。

 彼女は自分の死を垣間見ながら、ぎゅっと目をつぶり衝撃に耐えようとした。

 だが、その衝撃は別の所から来ることとなった。

 

「荒い矢だけど、我慢してね!」

 

 幸運なのは狂戦士がいたことか、一党の手が届かない森へと捨てられかけたことか。

 強弓から放たれた一射は圃人巫術士の肩を射抜いて大木へと彼女を張り付けたのだった。

 

「す、みません…お願…」

 

「ごめんよ!何とか救助完了だ!頼むよリーダー!」

 

 中々筋が良い冒険者だとは思っていたが、これほどとは…

 あの軌道でこの結果にはならないような気がするのだが、なんにせよ助かったのは事実である。なんと凄まじいことか。

 狂戦士の技量に内心舌を巻きながらも、重戦士の足はぐんぐんと鷹人との距離を縮めている。

 そして燃え盛る鷹人との間合いに入った瞬間、空中に首が舞った。

 それで依頼は終わった、はずだった。

 

「待って、動いてるッ!」

 

 狂戦士の耳は肉が動く音を逃さなかった。

 飛ばされた首に向かって、残りの人体がミシミシベキベキグチャグチャと粉砕しては捏ねるような異音と共にひき肉のようになって首を囲って徐々に肉の卵のようになっていく。

 それに嫌なものを感じた銀等級の2人と狂戦士が奇跡や斬撃、弓矢による攻撃を試みるが、表面を傷つける程度でそれらが全く痛打に足りえていないのは誰が見ても分かってしまった。

 

 そして、それは再誕した。

 

「…ッ、なんだこりゃ、(クロウ)じゃねえか」

「ふっはああああああーーーーーーー!!!この俺が、この俺様が、簡単に死ぬもんかよ!!!」

 

 肉の卵から生まれたのは墨の中にどっぷりとつかったかのように黒く輝く羽を手に入れた鷹人だった。

 それが翼を大きく広げ、重戦士達に見せつけるかの如く、煌々と照る日の元に飛び出す。

 二回りは大きくなった体躯を見せびらかすように飛ぶ、鷹人の目は憎悪に駆られ、ギラギラと輝いている。

 時折炸裂する雷光から分かるどす黒く淀んだ魔力は、鷹人がその身を混沌に堕とし切り、魔の力を得た証だ。

 本来それなり程度の依頼となるはずが、金等級の一党か、勇者案件だと思われる怪物の討伐に変わった瞬間だった。

 

 だが、狂戦士と重戦士の両名に至ってはむしろ笑みさえ浮かべている。

 大物喰らい(ジャイアント・キリング)は重戦士の本職であり、障害駆除は狂戦士の得意技だ。

 故に怯えず、野郎二人の顔に焦りは無い。

 

 それがたまらなく不愉快だったのは鷹人で、青筋(体色を考えれば黒筋)を浮かべ空から小鬼の牙をばら撒くと、【小鬼(クリエイトゴブリン)】の呪文を行使し、醜い顔の小鬼を次々に誕生させていく。

 その数30、武器も持たずおよそ一撃で葬れる雑兵とは言え手数が手数だ。

 いきなり湧いて出たゴブリンは邪魔者以外の何者でもない。

 

「ここは私達に任せろ!」

「よ、よし!アニキはそっちを倒してくれ」

 

「応ッ!」

 

 平地のゴブリンならば弓矢と剣で事足りる。

 そう判断を下し、聖騎士を筆頭にしてゴブリンと戦闘を開始した。

 このような開けた場所で指揮もいないゴブリン等、精々嬲り殺しが良い所。

 常であれば愚策であることに鷹人も気づいただろうが、今彼の脳を支配していたのは歓喜であった。

 この素晴らしい速さ!膂力!魔力!最高だ、最高以外の何物でもない!

 

「俺はこの世の頂点の存在になったのだぁッ!!」

 

 つむじ風に舞う木の葉のごとく、銀等級達の目にもとまらぬ速さで大空を飛翔する烏。

 少年斥候に至っては残像程度にしか見えていない。

 だが、熟達した狩人は空高く飛ぶ鳥をも落とすもの。

 ましてや先程に比べ、速さだけ増しても直線状に飛ぶ鳥など…

 

「悪いけど、的みたいなもんだよ」

 

 彼の剛腕と技術によってひかれた弓はギリリと貯められていた力を解放した。

 

「GAA!!?き、貴ッ様ぁあああああぐがあああああああ!!!!」

 

 加速した体は、最早自身でも止められぬ弾丸であった。

 貫通するよう放たれた弓矢は鷹人の首から背中へと貫通し、一矢で片翼を縛り付けては飛ぶ鳥を地へと堕とす。

 目にもとまらぬ速さでそのままもんどりを打って地面に叩きつけられた鷹人は重力に逆らうようにして立ち上がり、地面に黒いシミを垂らしながら千鳥足を思い起こさせる足取りで、狂戦士へと歩を進めてくる。

 体力を削れているものの、徐々に体を再生させながら迫ってくる様は率直に言ってホラーである。

 

「随分と狙いを付けるのに時間をかけたが…ふはっ、見たか、見事命中だ。しかし、まるでゾンビだな、さっ、リーダー、魔に挑むのは戦士の誉だよね」

 

「おうよッ!!この飛竜にも劣るド畜生がッ!鷹は鷹でも、お前はなぁ!!」

「てめッ!!!!!GLッ!!?」

 

 言葉を発する時間も無く一撃、二撃と重戦士の文字通りの重たい攻撃に鷲人は爪や羽で防御を試みるが、三撃目で流石に受けきれず胴体がまるでがら空きとなってしまう。

 鷹人は強化された肉体なのに、何故!?という疑問を抱くが、狂戦士の指に嵌められた光り輝く指輪を見て理解した。

 成程自分の強化と同様に相手にも強化する手管があったのか。

 

「能ある鷹じゃあ、なかったみてえだなッ!!!」

「IGIGGGRUッ…!トニトルス(雷撃)オリエンス…ぎぃやぁああああああああああ!!!!!!」

 

 ずんばらり、黒き烏は自らの胸から下の感覚が消え失せ、次に自分の視界が滲んで消えていくのを寒々とした体で感じた。

 

「ふざけんな、俺は、俺は…カァッ…」

 

 次第にその感覚すら薄れ、野望も何もかもが消え失せたのだと理解すると、烏は小さく鳴いて目を張り裂けんばかりに見開くと、死んだ。

 本当は鷲人なのに…という訂正の一言すら言えぬ間の出来事だった。




ご愛読、ありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士6

どうしようか迷いましたが裏の前に投稿しておきます。

最初に言っておきますが、皆さまこんな拙作を見てくださりありがとうございました。裏も頑張って投稿しますのでよろしくお願いします。


 最後はズバッと決めたかったRTAはーじまーるよー。

 

 前回人面が彫られたオブジェを芸術とか言いやがった鷹人をガッツニキ達と殺した所からです。

 

 取り合えず依頼が終わったのでさっさと帰還開始!ちょっと急ぎ目に帰るようガッツニキと話しましょう。党目のガッツニキに交渉するのは男であることに加えて見た目に反して割と論理的な頭をしてるので通常交渉系の技能が無ければ難航しますが、前夜で女騎士姉貴の恋バナフラグを立てておくと説得に加勢してくれ、割と簡単に話が通るようになります。やだもうホント可愛い、か”わ”い”い”な”あ”女”騎”士”姉”貴”一度も女扱いされてない女騎士って、良いよね(隙性癖語)

 じゃ、交渉出来たら走るー走る―、別段大きな遅れは無いとはいえ遠出はやはり怖く、早い所合流したいんで早く走るんだよ、あくしろよ。

 

 道中昨日襲ってきた野盗共が動物に喰われてるのを目撃して軌道修正…おっぶえ!また道忘れる所でした…ダンジョンじゃないところのマッピングは苦手やねんな…そもそも広大すぎんよマップー。辺境の町から半日かかる距離でもマップの1パーにも満たないとかブレワイか何か?

 後ろからあ待ってくださいよ!とか少年斥候が言ってますがそんなの無視だ無視!体力がないぞ体力が、元々体力少ない森人にも負けるって根性ねぇなぁ。待てと言われて待つ奴は正直すぎるってそれ一番言われてるから。

 しかしスタミナが無いと走れないのは道理なので一端休みます。ここですいませぇ~ん、狂戦士ですけど、まだ時間かかりそうっすかねぇ?(挑発)するとガッツニキがいい加減にしやがれ!ってブチギレるので大人しく秘蔵のスタポを差し上げましょう。

 

 しばらく走って後ろをついて来た人達にひいひい言わせながらようやくギルドに着くと、なんと丁度ゴブスレさんが小鬼王の襲撃対応を頼んでいた真っ最中でした。おっぶえ!これ逃すとイベント途中参加になってトロフィーゲット出来なくなるんですよねぇ…まま、間に合ったんでえやろ(ガバチャート並感)

 

 しかしやはりというべきか、最初の呼び掛けでは知己以外の人に協力は取り付けられてないみたいですね…悲しいなぁ。

 

「狂戦士!お前もこの戦いに参加するのか?」

 

 ゴブリンなんて面倒くさい、素材も無いし安い、金寄越せー!とか好き勝手に言うガヤに紛れて見ていましたがなんか横から話しかけられましたね…フルフェイス兜被ってるので誰かわがんね…お前は誰だぁ!?

 

 ファッ!?青年剣士君!君かぁ!見違えましたねぇ。兜に鎧に腰嚢とは、これゴブスレさんを参考にしてるんすね。臓物などによる臭い消しはされてないようですがかなり凄い変化です。男子、三日会わざれば刮目して見よとは言いますがこうも変わるとは、なんか…感動的。

 等級も黒曜等級、それももうすぐ鋼鉄くらいには評価も上がってるみたいですし小鬼王戦の括約には以前の恩返し含めて期待出来るでしょう。

 

 一緒にいる女魔術師の方も杖に若干の改造と腰にナイフを差して体つきが若干ごつく胸は大きく、女武闘家に至ってはゴリウーを地で行ってますね、尻に敷かれたら痛そう…新米戦士と見習い聖女は…これ変わってます?…よく見たら剣と棍棒を一緒に持ってるので黒蟲殺し(ローチキラー)イベントはこなしたと見て良いんでしょうか。なんかこうして見ると皆して純粋な強化されてて草生えますね。本来だったらこうなってるべきやったんやなって…あゝ本編。

 

 と、再会を喜んでいたらようやく槍使い兄貴がゴブスレさんに酒を一杯おごれと男らしい一言で協力を取り付け、ゴブスレさんガチ恋勢の受付嬢がゴブリン退治一体ごとに金貨一枚の報酬を出すよう上に頼んでくれました。実は彼女がキーウーマン、有能オブザ有能でした。これで俺たちは冒険者だからな!と皆で武器を掲げての協力を取り付けることが出来ます。

 

 では冒険者オールスターズを確認したら今回の最終目標たる「小鬼殺し三号」のトロフィー獲得条件を確認していきましょう。達成するべき目標は3つ。

 

①イベント終了時点でのゴブリンの累計討伐数が100体以上に達している。

 

②小鬼王襲撃イベントで出現する小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)を単独で討伐する。

 

③小鬼王襲撃イベントを大成功判定でクリア。

 

 累計討伐数はゴブスレさんと一緒にいたら達成できる筈ですが本RTAでは私のミスで全然同行出来ていないのが怖いです、多分超えてると思うんだけどなー俺もなー…最悪この襲撃で稼ぎましょう。

 

 小鬼英雄の方は試走の時に何度か確かめまして、強弱ランダム性の強いゴブリンがどれくらいの割合で強くなるのか調べたところ6:2:2くらいの割合で田舎者レベルの個体が出てくる確率の方が高いっぽいのでそこに賭けます。逆に2割の確率でオーガ並みの個体が現れますが、ここで田舎者個体引いてくれたらマジでかなりの短縮になるので頑張りましょう(お祈り)不意打ち出来れば一撃でもやれる可能性もありますからね。

 

 最後に、イベントで大成功判定を出すにはこちらの人員死亡数が一定数以下である必要があるのでここは事前準備に力を入れなければなりません。今持ってる金を全て使って新人へおいおい硬くなってんぜ?(体が)って緊張をほぐしながらちょっと良い防具を買い与えておくと良さげです。この戦い、何だかんだで3割くらい新人が入ってますからね。

 商人の援助や周りへの根回しが出来て無いので序盤のゴブリン共の攻勢によっては結果がちょっと不安になりますが先駆者兄貴によると目当てのSSRを単発で、それも一発で入手するくらいの確率らしいので大丈夫ですね(某英雄ゲーを見ながら)

 

 ガバったら躊躇なく因果点を使う予定なのでここら辺はそんなに恐れることも無いです。この前使っちゃったけどちょっとくらい…バレへんか…因果点使い切るレベルの出来事が起こらないように祈りましょう。何だよ、結局お祈りゲーじゃねぇかよ。まあTRPGってそんなものだし多少はね?

 

 じゃ、俺迎撃戦の準備フェーズに移行するから…

 

 戦場になる平原に柵を建てたり、冒険者が隠れる用の堀を掘ったり、槍衾を作ったりと色々と用意するものがあります。狂戦士君は弓は撃てるのに技量が低いので槍衾の作成とかが苦手です。じゃけん力仕事の方を頑張りましょうねぇ~。ここで術者や斥候と言った頭を使う系だと裏方に回ることも出来ますがこの子理力も高くないんでやらせるとミスが多発します。やめようね!

 

 はい、溝浚いの要領で土をどんどん掘っていきます♂堀り終わったら木材運びです。いきなり絵柄が変わって某やややややっふぅーと尻でジャンプする配管工よろしくえっさほいさと木材を運んでいくミニゲームはちょっと面白いことで有名ですね。

 運び終わればスタポを飲んで休憩します。只人並みの体力とは言え流石にこうも働くと狂戦士君もばてますんである程度働いたらさっさと休みましょうねぇ。皆必死になってますがこっちも体から汗が煙になるくらい頑張ったんだから、ね?(威圧)実際戦闘になった時にばててると大変なことになっちゃうんで…

 ちょっと疲労度が回復したら防具を配るおじさんと化しましょう。

 

 ここまでやっても乱数によっては村壊滅エンドを迎えたり、ゴブスレさんが死ぬなどしてしまうので注意が必要です。ちなみに先駆者兄貴も言ってましたが村壊滅でゴブスレさんが殺人機械(キルマシーン)化すると得られるトロフィーが「ゴブリンにとってのゴブリン」、村は守れてもゴブスレさんが死んだ場合に得られるのが「彼女にとっての白金等級」になります。この彼女っていうのが女神官なのか、牧場娘なのかは議論が分かれています。私は牧場娘派です(過激派)

 

 さぁ、そんなこんなで急いで準備をしてたら日没を迎え、ついに決戦開始(デュエルかいし)ぃいいいい!!!!

 

 開幕はギミック戦になります。肉の盾とされている人質の回収をし、小鬼騎兵(ゴブリンライダー)を槍衾を使って処理するなど、原作通りの迫力ある攻防が見られるのですが、狂戦士君にほぼ出番は無いです。精々が妖精弓手と一緒に小鬼呪術師とかが魔術で攻撃してくる前に頭を撃ち抜くとかその程度ですね。正面から切った張ったはここでは殆ど行いません。

 逆にその後の小鬼王の策を使った絡め手から力押しに切り替えてゴブリン特有の数を頼りとした神風特攻で突撃ー!!!と突っ込んでくる場面からが狂戦士君の本領発揮です。

 タンクじゃない狂戦士君は後衛らしく後ろからバンバン撃って撃って撃ちまくり、ゴブリンを殺していきます。槍使い兄貴の連れである魔女姉貴が張った【矢避け(ディフレクトミサイル)】のお陰でこっちの攻撃だけが届く最高の戦いになるので被弾を気にせずどんどん戦いましょう。時々危なそうな新人冒険者を助けに攻撃を当てておくのも割と効果的です。矢の残弾数も今は気にしなくて良いくらい数がありますし、これだけで新人の死亡率が下がりますからね。

 

 FOO~、気持ちいぃ~。救える奴救ってたら死亡者がほぼゼロっすよ(0とは言ってない)小鬼英雄が出る時に間抜けが確定で殺されるんですよねぇ…悲しいなぁ…

 ではここらで、あのさ…俺そろそろバイトなんだよね、と誰にも見つからないようにボッチの小鬼英雄が出現する牧場の端へダッシュで向かいます。他の冒険者に見つかるとタイムがナオキになるので気をつけましょう。

 

 うまいぞ隠密(自己評価)これならだれにもバレずに小鬼英雄をぶっ殺せるでしょう。逆にオーガ個体が出ると誰にも気づかれずに死ぬんですけどね、初見さん。

 

(GBRRRYRGGG)ファッ!!?何だお前ら!

 

 ゴブリンが5体程ワラワラと出てきました…またクズ運だ!またクズ運だッ!今は小鬼英雄をぶっ殺すのが先なんだよ、どうせ他の冒険者がどうにかしてくれるのでこんなもん無視だ無視。では横から無視して通り抜け…(1HIT)無視して…(2HIT)無視…(3HIT)む…(4HIT)(5HIT)野郎オブクラッシャー!!!!!!!!ここにいるゴブリンは全員殺す!良いですねッ!!

 

(GO IS GOD)

 

 ちょっと時間掛かっちゃったゾ(池沼)でもゴブリンくらいなら余裕で一撃死出来る狂戦士君、良いぞ―コレ。これはこれからの戦いの肩慣らしってことでオナシャス!エンジン掛からないとタイムに大きな差が出来ちゃいますからねぇ。

 はいダッシュー、ここに来たら一秒でも早く終わらせに掛けますよーかけかけ。スタミナなんか気にせず走れー!不意打ち判定+ヘッショ判定+鬼討ち特攻が出れば小鬼英雄なんてほぼ一発なんでここは急いで行きます。

 

 どこだぁ~探す…いたぞぉ!いたぞぉ!!えーっと、ドデカ棍棒デブ体躯、片目潰れ…おぉ?おぉおおお!!?これ田舎者個体だぁあああ!!

 ここで田舎者個体が引けるのは本当にありがたい!ガバチャートの穴埋めも出来るぞー、これ!生意気にも胴体部分を鉄板で守っていますがそんなもん狂戦士君の前では最早紙屑同然、そもそも頭を守らないと駄目だぞぉ❤でもそんな君がちゅき。

 

 じゃあ、死のうか(無慈悲)

 

 こっちが捕捉してるだけの今なら隠蔽判定出れば不意打ちが可能になります。そして完全な不意打ちにならずとも避けられないタイミングで攻撃を仕掛ければ開幕の一撃を確実に当てられるお得な仕様。さらにさらに運が良ければ大成功もあり得るので狙う価値は十分にある攻撃になります。

 はい、よーいスタート。細かい所の解説は先駆者兄貴に任せていざいざ不意打ち攻撃じゃあ!遠慮なく撃ち抜かせてもらおう!!筋肉の筋肉による筋肉の為の一撃!!

 

 FOO!ここで会心の一撃(クリティカル)!!確率はやはり収束していた!?じゃもうひるむ理由はゼロゼロゼーロ!僕の勝ちだァ!!!

 あ、でも流石に英雄だけあって体力は高いっすね、今の一撃で死なないとは…だが最早瀕死状態の小鬼英雄に成す術はないんだよぉ!太いゲイボルグが頭の中に入っちゃっ、てるぅ!!

 

[小鬼英雄を倒した!]デデデデ―デーデーデッデドン!!

 

 やっとRTAが終わったんやなって…RTA終わり!閉廷!!以上!これで解散!この辺にぃ、美味いラーメン屋あるらしいんすよ、じゃけん夜行きましょうねぇ。行きてぇなぁ、すっげぇキツかったゾ~。木村早くしろ~。あ、待ってくださいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …ん?何でタイマー止まってないん?あれ、トロフィーは?進行度チェック良し!ルートチェック良し!図鑑チェ……

 

 

 

 

 小鬼(ゴブリン):累計討伐数87

 

 

 累計討伐数87

 

 

 

 87(迫真)

 

 

 

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)

 これゴブリン100体殺せてないナリ!当職もう学生生活終わりなり!

 

 なぁにやってんだぁあああミカぁああああ!!いや待て、原因が分かれば急げばいいんだ!急げ、急ぐんだ!ゴブリンはまだ残ってる、ここを抜ければ私は勝てるんだから!

 

 ワン!トゥー!スリー!フォー!!!死ね!死ね!(闇野)襲撃戦が終わる前にお前ら全員死ぬんだよぉ!!青年剣士お前の獲物寄越せ!今こそ恩返ししろ!足りてるか?足りてないのか?分かんねぇ、不安だからやっぱ全員ぶっ殺ピロン

 

 トロフィーを獲得しました!

 

【小鬼殺し3号】

 

 あっ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ままえやろ…

 

 はい、タイマーストップです。

 記録の方ですが1600時間2分46秒。現在投稿した中ではまだ暫定2位の記録ですね。

 

 と言う訳で何事もなく終わってしまいました…手に汗握る見どころさんが、無い…何で?と疑問を抱かれた方もいるかもしれませんが、RTAだからこういうことも多少はね?

 

 完走した感想ですが、なんだこのRTA…最初っから最後まで終始何が起こるか分からなくてまさに混沌(カオス)でした。こんなの想像できるわけないだろ!いい加減にしろ!って場面多すぎでしょ…

 

 補足しますと狂戦士君はかなり余裕を残して勝てたので現在祝勝会で酒をがぶ飲みしてます。放蕩でマイナス補正が掛かってるせいか妖精弓手に悪酔いされて絡まれたり、周りの冒険者から耳を引っ張られたりしていますが、その怪力で冒険者が乗った机ごと持ち上げたりと楽しくやっているようです、良かったね。RTAが完走出来て私も良かったね。

 

 先駆者兄貴と比べると5日弱も時間的に遅れてますが、狂戦士君の療養が2回来たのが痛かった…それさえなければむしろ超えられた可能性も微レ存してるあたり実は私、かなり引きが良かったですね。あとはガバが多かったです…道を間違えたりオリチャー増やしてミスったりと親にも見せられない程の無鉄砲さでもう気が狂うッ!

 こんなガバしないでしょwwとか先駆者兄貴を笑って見てましたけどあの時の自分を殴りたいですね。先駆者兄貴は普通に早かった…見よう見まねのガバガバチャートでやってみた結果がこれとかワロスワロスですわ。

 

 最後に骰子の出目ですが、小鬼王戦の時だけほぼ悪くなかったです、でも色んな所でファンブル引きすぎィ!ホントにマジで辞めたくなりました。でもこういう確率的な所もしっかりとプレイスキルでカバー出来るのもまた魅力だと思います。私は出来ませんでしたけど(EBO構文)

 

 ただ楽しくプレイは出来ました、モニターの前で見てるそこの君!走ろう!!こんなガバガバチャートでもちゃんと走れたんだから、誰だって出来るさ。

 

 では、これにてゴブリンスレイヤー小鬼殺しルート、狂戦士チャートを一端の終わりとさせて頂きます。

 

 ご視聴、ありがとうございました!

 




取り合えずの報告ですが拙作をたくさんの人に見てもらい、さらにアンケートも現在までに500人以上の方が答えてくれているので狂戦士君の過去編制作決定です!しかし…大学も始まり、バイトも入れるようになったので投稿ペースがガクンと落ちると思います。出来ればじっくりねっとり待ってくださるとありがたいです。

狂戦士君の過去編は昔話調にすべきか、それとも先駆者兄貴ルートで行くべきか…悩みますなぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狂戦士6裏

執筆意欲が続いてくれたので、初投稿です。

気づくのが遅れてしまいましたが、この作品もファンアートを描いて下さる兄貴がいたのでご紹介をしておきます。

銀鮭#機縁卓#ニキ、ファンアートありがとう!フラッシュ!!!
https://twitter.com/deepsnow_silver/status/1268905598344548354?lang=ar
URLはこ↑こ↓他の走者兄貴の主人公達も出てるぜ!
左から二番目の狂戦士君、ええやん…(恍惚)

狂戦士チャートはファンアートを随時募集しております、描いてくれると続きが出ますッ!(乞食)


 森人、というものを知っているだろうか?

 

 眉目秀麗で鹿のようにすらっと伸びた華奢な体の美男美女、千里離れた的をも射抜く弓の腕前の持ち主で森の命の巡りを初めから終わりまで見届けることも可能なほどの不老長寿の種族。

 恐らく他の者達からすれば羨ましい、特に只人からすれば喉から手が出る程に欲しい能力ばかりだろう。

 

 だが何事にも例外が存在するように、それに身の丈ほどの岩を持ち上げる怪力と、凡そ只人と同じ感性を持たせればどうだろうか?

 

 森人の能力が既にあるのだから贅沢を言うものではない、と言われてしまうかもしれない。だが、もしもその体験が己の身に降りかかった時その者の顔がどう歪むのか自分は気になる。

 自分にとってこの人生は長い。

 誰かから疎まれ、蔑まれ、また運が悪かった者にとってはこの森人という生はあまりにも長すぎる。

 

 ここまで来るのに実に色々とあった、それを乗り越え尚自分だけが生きている。

 最愛の人に先立たれ、子も孫もいなくなり、自らの無能さから輩と呼べる者達は既にこの世に一人とていなくなってしまった。そんな中でただ自分だけが生きている。

 勇者と呼べるだけの力とカリスマ性があればどれだけ良かったか、辺境と言わず王都に至っても英雄として名を馳せることが出来た可能性も、血縁ともっと長く過ごすことさえ出来たかもしれない…とたらればを繰り返す。

 全く以て自身が腹立たしい、爺になっても未だ若さを捨てられない己に嫌気しかささない。俺は、いや自分は彼女と共に歳を取り、子や孫に囲まれながら幸せな暮らしが出来ればそれで良かったのだ…

 

 孤独な老人、つまるところそんなものなのだ己は。

 

 だがその言葉すら否定して自分は小さな声で無能な老害だろうと呟いた。事実でしかない、頭も悪く、腕しか取り柄の無い自分ではあんな事はそもそもするべきではなかった。

 生まれるべきではなかったのだ。

 

「ねぇ、ねぇってば狂戦士!」

 

 やや現実逃避気味の自己嫌悪に陥っていた中、少年斥候から肩を叩かれ、ようやくと自分は正気に戻る。

 そうだ、自分は何をしていたのか…いや、思い出した、鷹人を退治しに来て、それで…

 

「へっ、胸糞悪ぃ野郎だったな」

「まさか変身があるとは…」

 

 そうだ、純白の鷹人が変身したのをなんやかんやで倒したのだった。

 鷹と言うよりは最早烏のようになった姿で上から【小鬼(クリエイトゴブリン)】、【稲妻(ライトニング)】に連れ去り攻撃など…卑怯と言うか、種族特性を遺憾なく発揮してきた害悪な敵だった。

 いや待てよ、途中に肩を打ち抜いて木に縫い付けた少女巫術師はどうなった!?

 

「にしてもお前、中々荒っぽいことするな…いや、あそこでああいう機転を利かせなきゃこいつは死んでたんだけどよ」

 

 そう考えた時に何とも都合よく重戦士が口を開く。指さされた場所には小さく、しかし確かに息をする少女巫術師の姿が見える。

 女騎士から色的に霊薬(エリクサー)に類するものを飲ませてもらっているので、恐らくあれなら大丈夫だろう。流石は銀等級、資源(リソース)を豪快に使う。だがそのお陰で大事無い様で良かった。

 今思えば肩ではなく、服でも打ち抜けばよかったと少し後悔するが、どのみちバタバタ暴れられて体の先端付近に当たってしまえば勢いを殺せずに終わったはずだし、神が言うのだから多分大丈夫、キットダイジョウブ。

 少なくとも手加減もしたし、咄嗟だったので許してほしかった。

 

「だが、これで依頼は達成だ。あの気味悪ぃ手の彫刻もぶっ壊れたしな!後片付けも必要ないと来てる!」

 

「うむ、それではギルドへ戻るか!いやぁ、私の【聖撃(ホーリースマイト)】が決め手だったな!」

「何が決め手だ、お前のあれ毛ほども効いてなかったじゃねえか」

「何を―!お前が最初の一撃で倒せなかったのがそもそもいけないのだろう!」

「おまっ、それを言うなら…」

 

 ピピピ、ピピピ…あ、神からの託宣だ。

『辺境の街に危機が迫っている、早めに戻りなさい』

 えー…この距離早めに戻るのか…それは中々キツイ。

 速めに見積もっても半日は掛かる距離なので、出来れば歩いて帰りたい所ではあるが、神の言葉である。駒は駒らしく従うとしよう。

 

「あー、ゴメン夫婦喧嘩してる中申し訳ないんだけ「「誰と誰が夫婦だって!!?」」ふー息ピッタリ!いやさ、託宣でね。『早めに街へ戻れ』とのことなんだ」

 

 女騎士と重戦士の諍いを中断すれば、どちらも少々顔を赤らめてこちらへ言い返す。正直、二人の間柄はもう少しでどうにかなりそうな気がするのだが…それは流石に無粋が過ぎる為言及はやめておく。

 こういうのはしっかりと温かい目で見て、茶化せそうな時に茶化して、精一杯応援するのが良いのだ。でも、アツアツなのは良いことだけど出来れば少年少女の目の前でやらない方が良い気がした。

 

「託宣?あー…昨日言ってたアレか?だがあの町に何があるって?詳細は?」

「うーん、詳しくは言ってくれないけど僕の託宣は大抵ヤバい内容だからなぁ、よくない事だとは思う」

 

 嘘はついていない、”危機が迫っている”とだけ言われても危機が迫っているとしか言えないだろう。

 

「よくないこと?なんだそりゃ分からねえな、不確定なのに動きたくねえぞ」

 

「今までの託宣の内容からして、あの街に何か混沌の輩が攻めてくるか、それとも地下に封印が解けかけた邪神でもいるか…あるいは地面が突然すっぽり抜け落ちるみたいな天変地異でも起こるのか…」

 

「…俺等が行くメリットあるかそれ?」

「まあまあ、狂戦士は慣れぬ私達に着いてきてくれたのだし、今度は我々が話を聞いても良いんじゃないか?貸し借りはできればすぐに清算した方が良い。我々の負傷者はこの子だけだしな」

 

 もっともらしく考えてみれば大体こんなところだろう。

 言った瞬間に重戦士の顔にイラつきが芽生えるが、見かねた女騎士のナイスなフォローによって重戦士のムッとした顔が元の強面にまで戻る。

 こういう手助けはかなりありがたい。

 

「…ったくしゃーねぇ、こっちも党員(パーティーメンバー)助けてもらった借りもあるし…動くかぁ。奇跡使える知り合いもあっちにいる、完全に治すなら帰った方が速ぇ」

「うん、速いのは良いことだ。かたじけないねぇ…」

 

 即断即決、しかし判断は的確な重戦士一党が辺境の危機に手を貸してくれるならば頼もしい限りだ。恐らく今回のことは自分一人では出来ないことも多数出てくるだろう。この前の自分のものと周りので何かする規模位なら良いが…

 これまでの託宣の難易度高騰(インフレ)具合から何処か緊張感を拭えない。

 しかし、帰り道はその不安を嘲笑うかの如く何もなかった。

 

 

 ――――――――――――

 

 

 精神的疲労でやっとの思いで街へと到着した時、狂戦士の人より優れた聴覚が拾ったのはゴブリンスレイヤーの嘆願だった。

 そのままギルドへと直行すると、数多の冒険者に向けて頭を下げて「規模が大きいゴブリン退治の報酬に俺の全てをやる」とゴブリンスレイヤーは意訳すればそんなことを宣っていた。

 

『今、何でもするって言ったよね?』と脳裏にイムの声が響き、そんなことは言って…いや、言ってるなと少しゴブリンスレイヤーの身が心配になる。

 加えて、結局ゴブリン退治じゃねえか!と周りからは大バッシング。

 急にそんな事言われても、たかがゴブリンだろう。割に合わない。ゴブリンは汚いから嫌だ。お前を手伝う義理は無いぞ。

 装備も様々、種族も様々な周りの発言にゴブリンスレイヤーの最悪な未来が頭に浮かぶ。

 

 しかし、現実はそうならなかった。

 

「後で一杯おごれ!」と辺境最強の槍使いの一言から始まり…

「冒険に付き合ってもらうわよ!」と妖精弓手。

「酒樽よこせ」「拙僧はチーズを」「僕はまあ金で」「お、俺はその…稽古をつけてくれ!」とゴブリンスレイヤーがこれまで築いてきた知己達が協力を申し出た。

 さらに、受付嬢のゴブリン一体に突き金貨1枚という破格な報奨金が書かれた書類が提示されたことによってギルドに集っていた他の冒険者達の表情も変わる。

 

 彼らは金の為に、人の為に、経験の為に、夢の為に動きたかった。ただ、依頼内容は「ゴブリン退治」何かのきっかけが欲しい。しかし、最後の一押しが押されたのならば、もう迷う必要もない。

 俺たちは冒険者だからな!とそれぞれの武器を天へと掲げ、その場のほぼすべての人間がゴブリン退治の依頼へ殺到する。

 ゴブリンスレイヤーを中心として、ここに小鬼との戦争の火蓋が切られたのだ。

 

 ゴブリンスレイヤーがこれまでの人生で身に付けられた対ゴブリン知識をフル活用し、迎撃戦の準備は進む。

 

 曰く、待ち伏せをしろ、奴らは奇襲されるのには慣れていない

 曰く、肉の盾が使われる、奴らを眠らせる術を使い、その隙に救出しろ

 曰く、攻撃呪文ではなく補助的呪文を多く使え。

 曰く…

 

 と、周りの冒険者が舌を巻くほどにゴブリンスレイヤーはペラペラとゴブリンへの対処法を論じていった。成程、確かにこの通りにことが進めば小鬼との戦闘など楽勝と言える。

 それ程までにしっかりと練られている作戦なのだ。それに、10年ゴブリンを殺し続けてきた男の言であるので信頼もされた。

 

 では、自分が戦いに備えてやったことはなんだ、と言われれば単純だ。

 土を掘って人が隠れられるようにしたり、槍衾や柵を作るための木材を運び、新人冒険者達へ鷹人(ホークマン)の討伐報酬に、諸々を加えた全財産である金貨実に40枚を使って揃えた防具の配給などをした。

 

 最早何でも屋である工房の親父にはお前、何するつもりだと問い詰められかけたのは記憶に新しい。というか先程の出来事である。

 新人達に怪しまれながらも、自分の美貌や話術をふんだんに使い、尚且つこれまで信頼点を積み重ねてきた甲斐もあって工房へ18人の新人冒険者を招待しながら体に合うよう調整をした防具を買い与えた。

 勿論信頼できそうな人間を選んだつもりだ。

 大体一人当たり金貨1~2枚程度の安ものではあるがそれでも新人達の装備がランクアップしたのは紛れもない事実だろう。

 

 ただ正直なことを言えば先輩風を吹かせ過ぎて、本当にこの戦いである程度ゴブリンを倒さなければ元手も取れない為内心冷や汗ダラダラだったりする。

 (イム)も『全財産を使って防具を新人達に配給しろ!』とは無茶を言うものだと自分は装備の点検へと意識を移した。

 

 どうやら自分がやるべき事は、ただのゴブリン退治で終わらないらしいのだ。

 と言う訳で念入りに、それこそゴブリンスレイヤーの如く自分は装備の一つ一つを点検していく。

 刃毀れは無いか、血糊で鈍らになってはいないか、弓矢の張りや数はどうなっているか。

 自分は堕落し、森に嫌われた森人故に道を示してくれる以外で森に協力は求められない為、新たな矢の補充は求められない。

 出来ればゴブリンの使う矢は使いたくないが、そういう状況になったら四の五のは言ってられないだろう。

 今回は冒険ではなく戦争なのだ。傭兵時代に弓捌きのみなら天下無双と呼ばれた自分の腕の見せ所である。

 

 そうして夜は更けていき、少し寝て自分の肉体から疲れが抜けた所で召集の合図が鳴り響く。

 自分が着いた時にはもう既にゴブリン達の声が聞こえる距離にまで接敵されていた。

 

 そして、ゴブリン達が王と思われるゴブリンからの指示で動き出す。

 果たして、ゴブリン達が森の暗がりから出て来た時抱えていたのは女が括り付けられた盾。

 ゴブリンスレイヤーのまさに言う通りの行動に、周りの一同は驚きの表情を浮かべている。

 勿論伝えただけでは飽き足らず、ゴブリンスレイヤーから授けられた策は実行済みだ。

 酒の香りと一緒にふわふわと漂う夢の雲がゴブリンに向けて流れ、それを吸い込み眠ったゴブリンから冒険者達はさっさと盾を取り上げる。

 

 これでゴブリン達の盾は無くなった。

 次に登場したのは狼に跨ったゴブリン達。騎兵(ライダー)とでも呼ばれる存在だ。

 しかし、これもゴブリンスレイヤーは予知しており、自分が運んだ木材を加工し作られた槍衾によってそのほぼ全てが機能停止。

 無様に狼から転げ落ちたゴブリンには各々の武器から重い一撃が加えられる。

 

 これでは精々呪術師共を撃つか、新人達の助けに矢を放つくらいしか自分の仕事がない。

 だが、肉盾も無く、騎兵は槍衾で全滅、小鬼王が授けた策はそれを上回るゴブリンスレイヤーの策で悉く打ち砕かれている。

 

 ゴブリンはやはり愚かだ。さっさと踵を返して逃げ帰れば良いものを、業を煮やした小鬼王が力押しへと切り替える。

 ならばここからは自分の活躍どころである。金の為にも、神の為にもゴブリンは皆殺しだ。

 

 一射一殺を心掛け、矢筒から矢を取り出してはゴブリンを殺していく。

 戦場において、自分のような弓の名手が全体を見通せる場所にいるのは前線で戦うものからすればありがたいだろう。

 新人冒険者がへまを打てばそこに矢を放ち、熟練冒険者の背を討とうとする不埒者にも矢を浴びせる。

 しかし、一党デカい小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)が出た時、神からまた言葉が発せられる。

 

『牧場の裏手に敵影あり、英雄を殺せ。他の者には見つかるな』

 

 ゴブリンとは言え英雄殺し、何とも良い響きである。

 神もたまには良いことを言ってくれると自分はすぐさま闇色の外套に身を包み、早足で牧場の端へと向かう。

 

 このまま行けばすぐに着くと思った所でゴブリンが5体、ワラワラと現れ道を塞ぐ。

 数にものを言わせて厭らしい笑みを浮かべているのが何とも神経を苛立たせる。

 だが今は火急の用なので、さっさと横を突っ切らせていただこう。

 

 しかし、まわりこまれてしまった!

 

 成程、逃がす気は無いらしい。

 足を右に動かせば右へ、左へ動かせば左へピッタリとくっついてこちらに武器を突き付けてくる。

 まあやる気ならばこちらもやぶさかではない。『野郎オブクラッシャー!!!』神もこう言っている。

 自分が拳を鳴らせば怖気づいたように一歩二歩下がる小鬼達。だが、逃がしはしない。

 

「GOBUッ!?」

「BIGOB!」

「GIIGR…」

「GORRGッ!!?」

「RIGURG!」

 

 五者五様の断末魔を上げ、3手(30秒)程で片付いてくれた。

 戦いとも呼べない小事の後は臓物や脳漿で黒く染まった拳を振って、赤黒い血を多少なりとも落としておく。臭いで気づかれるのはまっぴらだからだ。

 

 自分の土地勘が間違っていなければ、この先は本陣の丁度裏手に当たるはず。

 万が一ではあるが、自分が負けて進行を許してしまえばどうなるだろう…銀等級も、ある程度強い冒険者もいるのだから万一があってもどうにかはなる…だが、見逃して良い理由もない。

 傭兵時代にも何度かこういう場面には出くわしている、まああの時は味方がいたがゴブリンならば大抵は何とかなる、ここで倒す。最悪奇跡を使えばいい。

 

 森と牧場の間を駆け足で進むと地面の小さな揺れに加え、カサカサと草木が揺れ動く音が聞こえてくる。音の主は十中八九でゴブリン英雄、次点でゴブリンが召喚した下級魔神(レッサーデーモン)か何かだろう。

 答え合わせに音の方へ目を向ければ、何と言うか、図体に比べて随分と弱そうな小鬼英雄が森の暗がりから出て来た。

 でっぷりとした腹にデコボコの鉄板を括り付け、見るからに重そうな大棍棒を片手で持ちながら偉そうに付き従うゴブリンに指示を出している。

 何か気に入らないことでもあるのか、付き従っているはずのゴブリンをぶん殴ってはゲラゲラと汚い笑みを浮かべ、そのまま不用心にも大股で進行してきているのが見て取れた。

 舐めているのだろうか…まあ慢心してくれているならこちらの攻撃も通りやすくて好都合ではあるが…

 

『不意打ちだ、出来るだけ頭を狙って撃って』

 

 そう思っていた所に神の声が響き渡り、自分は背中の大弓に手を掛ける。

 …そこだ!

 ギリリと引き絞った弓矢が手から離れた瞬間、これは最高の一射だと分かった。

 

「GOAA!!!?」

 

 光跡さえ幻視出来る見事な一射は空を切って英雄に命中する。

 後頭部が弾け、脳漿が炸裂、結果ズシンと大きな音を立てて英雄が倒れ伏せた。

 まごう事無き会心の一撃(クリティカル)だ。

 

「GIGOG…」

 

 しかし、英雄が呻き声を上げ、震えながらも立ち上がる。なんと、まだ死んでいなかったらしい。

 上位種は無駄にしぶといとは、確かゴブリンスレイヤーの言だったかと自分はすぐさま得物を槍に持ち替えて大声を発しながら走り出す。

 死にかけの英雄がこちらを指さしてゴブリンをけし掛けてこようとするが一撃で倒れ伏した英雄に従うものはおらず、他のゴブリンはまるで蜘蛛の子を散らすかのように汚い叫び声を上げて逃げ出した。

 人望もといゴブリン望が無い、哀れな英雄の顔面へ力を込めて槍を突き入れる。

 絶望の顔を浮かべた小鬼英雄は赤黒い血を垂れ流す噴水となり、二、三度揺れ動いて不意に止まった。

 という事は、かねてから言われていた「試練達成」になる。自分の試練はなんとまあ、あっさりと幕を閉じて終わった。

 これから更に幽鬼のように立ち上がった小鬼英雄と手に汗握る力比べも何もなく自分は小鬼英雄を倒してしまったのだ。

 

「なんだぁ?てめぇ…」

 

 あまりの手ごたえの無さに思わず小鬼英雄の顔面を殴って今度こそ全てを弾けさせてしまい、その血が飛び散って顔に張り着く最悪の結果に終わる。

 

(やったぁ!やったぁ!近藤さんありがとう!中井さーん!!ん?ちょっと待って、トロフィー…あああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 

 頭の中のイム・ジッキョウの声が歓喜で満ち溢れる中、本当にこれが試練の終わりか?と自分が思わず考えた次の瞬間イムの発狂したかのような叫び声が頭に激しく響く。これは、あの時(オーガ戦)以上に激しいッ…

 しかし腐っても神なのかすぐさま平静を取り戻したイムは口早に自分にこう告げる。

 

 曰く、ゴブリンをさらに殺せ、目に付く限り全てを殺せ。奇跡も使っていいから早く殺すんだッ!と。

 

 最早試練でも何でもなく殆どただの作業ともいえることを再びやれと言われ、自分の興が削がれるが、これでももう乗り掛かった舟である。今更もう少し試練が伸びたとして、自分の寿命に少したりとも響かない。

 さらにこれで終わりだというのだから良いだろう、混沌の輩を全て殴殺すればそれこそ真の終わりだ。

 

「それじゃ、これでも使いますか」

 

 自分は足元に広がる血の海から指程ある乱杭歯を一本抜き取って祝詞を紡ぐ。

 瞬間、脳裏から覚知の神が笑う声が聞こえた。

 

 

 ―――――――――

 

 

「これで4ッ!!」

 

 同時刻、青年剣士は数による攻めに転じて来たゴブリンといつ終わるとも知れない戦争の真っただ中で戦っていた。

 今し方切り捨てたゴブリンの顔面を鉄を仕込んだ靴によって踏み潰し、また湧いて出たゴブリン達と対峙する。もうすでに金貨4枚だが、これからさらに増えそうである。彼の懐は少し温くなること間違いなしだろう。

 剣士がゴブリンをスレイする傍ら熟練者(ベテラン)達の取りこぼしか、無数にいるゴブリンの中には田舎者らしき大きな個体が斧を振りかざすのが見えたが、剣士にもう足の震えはなかった。

 確かに閉所で、それも暗闇の中ゴブリンが押し寄せて来たあれは辛かったがこうして平原で戦うのなら別だ。

 ぎゃあぎゃあ喚いては錆びていたり、雑な作りの武器を手に突撃してくるゴブリンを得物の長剣で突き殺す。

 別に閉所では無いので思い切り振っても良いのだが、如何せんこの乱戦に近い状態なので突いて殺した方が味方に当たらないし、何より速い(・・)のだ。

 しかし速いと言えば…と剣士の脳裏に一人の森人が浮かぶ。

 

(狂戦士、アイツ今何してんだろ…)

 

 おそらくは同じ戦場にいるであろう狂戦士に意識が動く。あの力量なら油断しなければそうそう死ぬことは無いが、何と言うか…危ない雰囲気を持っている男なので少し心配なのも事実だった。

 短い付き合いではあるが、それなりに仲も深い為無事を祈らずにはいられない。

 言ってしまえば笑われるような、事実少し脳内の狂戦士でも笑うようなことだ。ああ見えて笑いのツボは浅い為、青年剣士がこれを伝えれば大笑いをするだろう。

 

「GRUOURURURU!!!」

 

 思考に割って入る田舎者の一撃を剣士は小盾で受け流し(パリィ)、反撃に突き刺した剣を上に引き抜いてそんなことを考える。

ハハハハハハハハハハーーーーー!!!

 そう、まるでこんな感じだ…と嫌にイイ笑顔の狂戦士が頭に浮かんだ。

 だが脳内にいるはずのその顔面が、高らかな笑い声と共に物理的に迫って来ている気がするのは気のせいだろうか。

 いや、事実そうだった。

 

「ハハハハハハぁあ!!!剣士ィ!その獲物寄越せぇえええええ!!!!」

「おいどうした狂戦士、お前なにし…「GOBBBA!?」

 

 青年剣士は始めて見るまるで狂乱(バーサーク)したかのような狂戦士の動きに目を白黒させながら圧倒され、ただことではないと道を開けた。

 そうすれば、狂戦士の殴打によってゴブリンが一瞬で首を1回転させ即死。

 何と言う馬鹿力だろう。狂戦士は以降も【狂奔】し、まるで風のような速さで次の獲物にとびかかっている。

 まるで狼か何かの獣にでも憑りつかれたかのように見えるその姿は青年剣士が懸念していた危うさそのものだ。

 そして勢いのままに狂戦士は彼の記憶が正しければ戦の準備時に防具や武器を買い与えた者達から獲物を奪い、次へ次へとゴブリンを殴り、槍で突き刺し、首の骨を握りつぶす等して戦場を突き進んで行く。 

 

「アンタ何してッ、ってあれ?防具くれた…」

「おい!借りは返すって言ったけど、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!」

「私の金貨が、金貨がぁ…」

「ひぃいい!何だコイツこえぇ!!」

 

 辺りに響くゴブリンの絶叫と、新人冒険者達の嘆き…阿鼻叫喚だ。

 なまじ防具を受け取った時に協力してくれるね?とイイ笑顔の狂戦士に言われただけあって、言い返せないでいる。

 事実彼らが身に付ける防具も良いものになってはいるので損はしていないのだ、損は。

 

「…借金取りか何かかよ」

「ハッ!言い得て妙とはこのことだーな、ありゃ押し売りした分の金を剥ぎ取ってんのよ。ったく質が悪ぃことしおって」

 

 術を撃ち尽くし、投石紐も乱戦状態になってからは使えないと手斧に切り替え、肉弾戦に精を出していた鉱人導士の呆れの一言が青年剣士の耳に届く。

 

「一応、買い与えた防具は金貨にすると数枚分位だから………?」

「元は取れとるんじゃねーんか?」

「算術は苦手だけど成程!確かに!」

 

 襲い掛かって来たゴブリンの捨て身の一撃を切り捨て両者は背中合わせになる。

 これこれ、こんな戦いがしたかった!

 年相応の感情を抱く剣士は努めて冷静を心掛けながらも、体の底で熱いものを感じる。

 彼は生粋の冒険者なのだ、こういう如何にもな場面で興奮するな、油断もするなという方が難しい。

 と言ってもそれは、顔面を陥没(前が見えねぇ)させられたゴブリンがこちらに飛んできたりしなければ、の話だった。

 

 

 ――――――――――

 

 

 再び狂戦士の意識が昇って来た時には事は既に終わっていた。

 イムのお疲れさまと言う労いの言葉が彼の頭に響き、どうやらことは済んだらしいと狂戦士が遅れて理解する。

 改めて彼は自信の身を顧みれば体の所々が内出血によって黒く変色し、動かすたびにミチミチバキバキと関節や筋肉からあまりして欲しくない音が鳴った。

 骨には特に大事無いらしいが、取り合えずと買っておいた治癒の水薬によって僅かに傷を癒す。正直まだまだ痛いものには変わらないので後で奇跡が余ってる人がいたら金を払ってでも直してもらうと狂戦士は結論づけた。

 もう試練は終わったのだ、自分の意思で動いてもまあ許してくれるだろう…

 

 

 今日は、世界にとっては小事でも、辺境にとっては凄まじい一日だった。

 

 牧場で起きた、150を超える小鬼達との戦いが終わったのだ。

 

 小鬼王は辺境勇士ゴブリンスレイヤーの手によって打ち倒され、小鬼英雄たちも銀等級の活躍、疾走狂戦士による影の活躍によって一体残らず切り伏せられた。残りの小鬼に至っても冒険者たちの奮戦によって殺しきることに成功している。

 

 死傷者も普段の冒険と比べて格段に少ない。これを戦争と呼んだならまさに「大成功」や「圧勝」と言える最高の結果だった。

 迎撃には成功、街は守られ、冒険者の懐には少なくない金貨が舞い込むことだろう。

 

 誰もが勝利に歓喜する中、疾走狂戦士の頭の内には周りの歓喜の声さえ打ち消すほどの大騒ぎが響いていた。

『FOOOOOOOO!!!終わった終わった終わったーーーー!!!コンドウダイスケーーー!コンドウダイスケ見てるかーーー!!ナカイさんありがとー!フラッシュ!!』

 まるで危ない薬か何かでもキメてるかの如くうるさい神、心なしかキィーーンという高音の異音も付いているそれに狂戦士の顔が歪む。先ほども素晴らしくうるさかったが今回は継続している為なおのことうるさかった。

 

『ああ、ごめんごめん流石に五月蠅いよね、それじゃまた後で!』

 

 不遜な考えが神に届いてしまったのか、それきり黙る神。いや、天上と繋がっている感覚も無くなった為、恐らく干渉はされていないのだろう。

 そう当たりをつけ、大きく伸びをした狂戦士はこの真夜中にも関わらず灯りの灯るギルド内へと足を運んだ。

 

「あの変なのに…カンパーイ!!!」

「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」

 

 ワイワイガヤガヤと小鬼王含めた小鬼達の殲滅を記念し、何度目かも分からない乾杯が交わされる。

 合戦の血も乾かぬほどの時間にギルドの酒場に集った彼らは祝勝会と称して大宴会を開いていた。

 酒に料理に歌と金貨のジャラジャラした音。それを背に今回の成果や反省を賑やかな雰囲気の中で話し合う。冒険者ギルド内でも中々ない程の盛り上がり様である。

 

 その只中で狂戦士は麦酒(ビール)一杯でベロンベロンとなって絡んでくるパイセンこと妖精弓手の相手をしていたりした。

 

「アヒャヒャヒャヒャ‼ノミナサイ!ノムノヨ!キョウセンシーーーー!」

「はぁ…パイセン酒に弱すぎだって…僕もそうだけどさぁ」

「ナニヨー!ワタシノサケガノメナイッテノーー?」

 

 いつも以上に饒舌な妖精弓手が勧めてくるのは彼女を酔い潰した元凶である麦酒だ。

 周りの冒険者もそれに乗ってか狂戦士に酒を飲ませようとしてくる始末。どうやら退路は無いらしい。

 かつて体験した数多ある宴会でもこうして誰かに酒を飲ませられていた気がする…と狂戦士は過去を振り返り、折角の場をしらけさせるのもあれかと差し出された麦酒を一息に飲み込む。

 すると面白い程に顔がすぐに赤くなり、狂戦士の目も虚ろになっていく。

 

「お、おい大丈夫かよ?」

 

 見かねた他の冒険者が卓を乗り越えるのも憚らず声を掛けた。

 すると、彼が乗る卓には浮遊感が与えられた。

 

「ハッハハハハーーーー!!」

「おいおいヤベーぞ!コイツ酒飲ませると暴れるタイプかッ!!」

「ハハハハ―!」

「「おわぁああああああ!!??」」

 

 片腕で人の乗った卓ごとを持ち上げ、余った右手でポカンとしている冒険者から麦酒を奪い取ってはグビグビ飲み干す狂戦士。

 最早普段の姿の面影すら感じられない酔いっぷりである。

 

 卓から冒険者をずり落とすと狂戦士はそのまま宴会芸のように、卓の上に他の冒険者から受け取っては飲み干した杯を放り投げて立たせるという、お前そんな器用だったのかよ!と周りの冒険者を驚かせる一芸が披露され、負けじと妖精弓手が見事な軽業で狂戦士が持ち上げた卓上で片手逆立ちを披露したりと宴会はさらに盛り上がりを見せていた。

 満更でもないと妖精弓手がニマニマしていたが、ある一点を見た彼女の顔に驚愕が走る。

 

「あーーーーっ!オルクボルグが兜外してるーーー!!」

 

 赤ら顔で指さした先には確かにあの特徴的な兜を傍らに置いた青年の姿が見て取れる。

 何ッ!なんだとッ!貴重ですよ!とこの好機を逃さないのが冒険者達だ。

 すぐさま卓上を抜け出てゴブリンスレイヤーの元へと行った妖精弓手を筆頭に、彼らの意識はそちらに注目し、手に杯や料理を持ってわっと押し寄せていく。

 その後はトトカルチョ表持って来い!だの大穴狙ってたのに…だのと好き勝手にゴブリンスレイヤーの顔を見ては一喜一憂の冒険者達。

 

 狂戦士も釣られてゴブリンスレイヤーの顔を見やれば、彼の手から卓が滑り落ちた。

 ガシャーンバラバラと大きな音を立てて落ちる卓へゴブリンスレイヤーに注目していた面々が振り返るが、それも一瞬のこと。呆然と立ち尽くした狂戦士を気に掛けることは特にない。

 再びゴブリンスレイヤーへと視線を戻し、興奮冷めやらぬ顔でトトカルチョ表と睨めっこしながらこれは美男子だろう、青年だろうと賭けの支払いについて揉めている。

 

 彼らの後ろで狂戦士は一人泣いていた。

 

「あぁエリー…君との愛は、繋がっていたんだね…」

 

 涙で濡れ、視界は朧気、だがしかと見たゴブリンスレイヤーの瞳を思い出し、狂戦士は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった笑顔でくつくつと笑う。

 人生とは、本当に何が起きるか分かったものではない。

 

「ハハハハハ!!良かった…()もようやく眠れそうだ…」

 

 紅の目を持つ君よ、君の目は、彼女にとてもよく似ているんだね…

 狂戦士は懐から出した一枚のボロ紙を握りしめ、そこらに転がっていた皮盾(レザーシールド)を枕代わりに寝息を立て始める。

 そして彼の口はむにゃむにゃとこう言葉を紡いた。

 

 ご視聴ありがとうございました、と…

 

 




狂戦士…お前、パパだったんか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一応やり切った神様の話

ちょっと箸休めとして初投稿します。
完走まで2年かかってるとかちょっと編集遅すぎんよぉ…



 

 ピコン

 

 画面にトロフィーを獲得しましたの文字が出た時、周りからは沢山の歓声がそれはそれは大きく上がりました。

 そんな中、一柱(ひとり)だけプルプルと震えている神様がいました。神様の名はイム・ジッキョウ、とある神を父祖としてそこから数多生まれ落ちた神の中の末端です。人の生首だけのような見た目のそれがプルプルと震え、次第に抑えられなくなったのかしばらくすると遂に虚空に飛び出し、叫びました。

 

「父祖よ、ご覧あれ!私はやりました!やりましたぞ!!」

 

 その小さな体で一体どれだけ飛んだのか、やがて落ちてきたイムを誰かが受け止めるとイムは周りにいる様々な神様と一緒になってまるで憑りつかれたかのようにひとしきりワイワイと騒ぎました。そして騒ぐ神様達は次第にイムのRTAの感想を口々に言い始めたのです。

 

「楽しかった」

「面白かった」

「またやってくれ」

 

 いつもガバを楽しんで笑っていた神々から賛辞を受け、イムの目にはうっすらと涙が浮かんでいました。しかも中にはイムがRTAを走るきっかけになった神までいたのですから、彼、もしくは彼女の喜びは計り知れないでしょう。

 

「稚拙でも、ガバってもとにかく最後まで終わらせる」イムの目的はこうして果たされたのです。

 

 次第に感想を言ってくれる神も去り、やっと終わった…辛かったけど楽しかったなぁとイムが自分の盤を閉じて他の盤を見に行こうとしたその時の事でした。

 いつの間にかイムの背後ににじり寄っていた神様がいたのです。その神様の速いこと速いこと、まさに電光石火の早業でイムは《混沌》に捕まってしまいました。イムは驚き、汚い声で「流行らせコラ!」と身をよじらせますが離してくれる気配はありません。言ってしまえば首だけの神ですからこうなってしまえばイムに逃げることなど不可能です。

 そして冷や汗でダラダラになったイムに混沌はニヤニヤと笑みを浮かべながら口を開いてこう言いました。

 

「走って❤」

 

「ヤダ!小生やだ!!」

 

「嫌だって言ってもやるんだよ!!RTAを!」

 

 自分の陣営の駒を使ったんだしね?と物理的にも精神的にも圧力を掛けられてしまえばイムに断ることなどできません。しかしそれでも、いや、えっとと言葉を濁すイムについに痺れを切らした混沌がイムの体をガッチリと盤に固定してしまいました。

 もう逃げられないッ!と自分の死期を悟ったイムは泣く泣くWikiや攻略サイトを調べます。そうです、混沌はイムに続きを見せてもらうことにしたのです!方法はあまり喜ばれるものではありませんでしたがこれには周りの神様も喜びました。

 最後に俺も走ったんだからさ…と小さく声をあげてイムは再び盤に戻りました。

 

 イムの操る駒、狂戦士。実はもう少し彼の物語は続く、のかもしれません…

 

 




文章量少なすぎィ!!!本編の方もう少しかかります、お待ちください…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

とある森人の話

最早覚えている人も少ないであろう疾走狂戦士君の昔話です。



 愛しい君よ瑠璃の目の君よしばしの間待ってておくれ

 

 右手に剣を握ってるんだ左手には弓を握ってるんだ

 

 許しておくれ愛しの君よ大丈夫すぐに戻るから

 

 剣も弓もほっぽり出して君を抱きしめに行くから

 

 おお麗しの君よ紅の目を持つ君よ

 

 自分が傍で眠るまでしばしの間待ってておくれ

 

 

 生き地獄とはこのことかと、その森人は1000年経とうが変わらない空に伏した目を持ち上げた。

 空に輝く太陽は煌々と煌めきながら世の遍くを照らし、今日も今日とて人の歴史は紡がれ、各地には伝説が生まれているのだろう。

 今日もいい天気と森人の口は思ってもいないことを呟く。この癖が生まれたのはいつだったか?もう100年は経つくらいだろうか?森人は思案をし始めた。

 

 最近は伝説の聖剣が何処かにあるだとか、それが選ばれし勇者でなければ抜けないとかそう言った話題が周りではひっきりなしだ。まあ最早ほぼ終わって出涸らしとなった自分には関係のない事ではあるが。

 

 人生とはあまりに長いものだ。特に森人の、それも上の森人(ハイエルフ)と言われる種族の寿命の何と長い事か。

 

 自分がそう思うようになったのは、確か生まれてから500年経った頃からだった。

 

 腰が重い森人が嫌いだった、目の前で助けを求める者を助けないことにイライラしていた。そして自分達こそが至高の存在なのだと信じてやまない周りの者に対して嫌気が射すのも時間の問題だった。

 

「何故そんな未来の事を言ってるんだ?」

 

 この言葉が決定的だったのだろう。村の者は自分を避けるようになっていた。そして、自分は村にいることが徐々に苦痛を感じていくようになっていった。周りの者は自分に対して一枚壁を置いたような話をするし、空気はどこか冷たい。

 

 自分はきっと生まれるべきではなかったのだろう。もしくは生まれる種族を間違えたか。

 しかしあぁ、何という事だろうか。母はそれでも笑ってくれて、父はそれでも愛してくれた。愛を注がれてしまった自分は外道には堕ちるには余りにも恵まれていたのだ。

 

 自分は森の為に生きることにした、森の命の巡りの管理、つまりは狩人として。

 森の命は刻々と変化して飽きが来ないのもきっと性に合っていたのだろう。季節の果実を取り、獣が増えれば狩り、落石が起きていればこの腕を以て岩をどかしたりした。生態系の変化が起こらぬよう、森の恵みが得られるようにしっかりとすることが自分にとっても生きがいだ。

 

 そうして自分の生に意味を見いだせないまま、だがそれでも1000年そうして過ごしていた。

 

 彼女が森にやって来たのは運命の悪戯か、偶然の産物か。只人が森人との国交をしたいだとか言って森の中に異種族文化が入り始めた時のこと。酒に博打に娼婦に芸能と、それはそれは楽しく蕩けるようで森の中で一生を終えていたら生涯味わうことのなかった刺激が森の中に溢れた。

 

 爺連中は変化を嫌って良くないことだと排斥しようとしていたが、結局の所村にその文化は根付いた。私は刺激を求めて毎日の如くそれらに通った。時に勝ち、時に大負けし、酒を飲み、女に溺れ…放蕩の日々が始まった。

 

 ある時娼館に行くと彼女がいた。クリっとした左右色が違う目にすっとした鼻、唇は瑞々しくて幼いながらに妖艶。体は艶やかで、胸は程よく尻は肉厚な…あぁ、自分の語彙の無さが嫌になる…千の言葉でも表せない程、彼女は魅力溢れたとびきりの美人だった。

 

 彼女の名前はエリーと言った。名前からして美しく、可憐な彼女の一夜限りの愛をまず私は買った。あれこそ人生で最高だった瞬間と言えるだろう。

 

 あの様の私にとって彼女の愛が一夜分だけではあまりに足りないのは言うまでも無く、何度も彼女を買った。

 彼女も私の力にかそれとも顔か、ともかく私を好いてくれた。そんな日々が続き、思いつくことは全てしたような所である日、彼女は語った。

 

 曰く、辺境の寒村に生まれた娘であったこと。

 曰く、生まれつき片眼の色が違うので迫害されていたこと。

 曰く、彼女が私にしかその体を許していないこと(人気が無かったとも言う)

 

 そんな話をされれば居ても立っても居られず彼女を身請けしたのはそのすぐ後の事だ。少々高い買い物ではあったが後悔など微塵も無かった、はずだ。少なくともあの時は。

 

 それから始まった愛し合う二人の日々の何と幸せな事だろう、何と楽しい事だろう。生まれて初めて味わう喜びに私が歓喜したことも何もかもが記憶に残っている。

 この幸せな日々を享受しながら2年程経った時、ついに子供が生まれた。只人にしては長く、森人にしては短く厚い耳をした、利発さ溢れた顔をした子達だった。実際その子等は私に似つかず頭が良く器量が良い子に育ってくれた。

 

 だが、只人がその変化を追うには余りに長すぎる時間だった。子どもが成人と呼べる程度の大きさになった時、いつの間にか彼女は老いて見目麗しい顔には皺が刻まれ体は重力に従って垂れ下がり、私の肩ほどだった背は胸にまで落ちていた。

 老いてなお美しい彼女に気づかなかったが私はようやく気付いたのだ。森人の私と只人では時を共にするのは厳しすぎると。

 

 程なくして彼女は死んだ。流行り病でもなく、怪我でもなく、老いて死んだのだ。眠った次の日に、彼女には当たり前に来るはずだった今日が来なかった。

 きっと幸せだったのだろう、死に顔はとても晴れやかで、全盛の彼女にも劣らない笑顔に見えた。

 

 だが、それは私にとって辛すぎる死だった。驚愕と共に無力さに打ちひしがれ、慟哭の叫びを彼女を思い出す度に上げた。

 いっそ誰かに殺されてくれた方が自分を恨めて良かっただろう。自分の至らなさに打ちひしがれることはあれど、確固とした目的もあったはずだ。しかし、老衰は自分にはとてもどうしようもない。

 そもそもの種族を変えるようなことでもなければ只人が森人の寿命に寄り添えることなど出来ようか。

 その時ばかりは自分の馬鹿らしさ、愚かさに発狂した。失ったもの、器から零れた水はもう元には戻らない。自分は只人の10倍以上も生きていてそんな簡単なことにさえ気づかなかったのだ。

 

 彼女が亡くなって3日程経った時、必死の形相で子ども達が私に差し出して来た手紙にはこんなことが書かれていた。

 

いきて

 

 森人語で書かれたそのたった三文字の筆跡は確かに彼女のものだった。

 それからその一言が自分を生かしていた(縛っていた)。彼女のミミズがのたうったような字で書かれた、優しさに溢れた一言が自分を現世につなぎ止めたのだ。

 

 だが、自分の魂はその日から呆けたようになった。彼女を失った自分は最早何をする事にも意義を見出すことが出来なくなってしまったのである。

 だがそれでも子ども達は自分を励まし続けてくれた。

 

 そうして10年程の日々を過ごしていた自分に孫が生まれ、自分はおじいちゃんになった。

 可愛らしい子供たちだった、鼻はあの子ににてふっくらと、耳は自分に似てつん、と尖っていて…彼女との愛がまだ繋がっているのだとようやくその頃になって自分の腑抜けも治ったのだった。

 自分は孫に恥じぬよう、子ども達に笑われぬように、また、10年の空白を取り戻すかのように冒険(クエスト)に勤しんだ。

 

 南に行ってクラーケンを、北に行ってイエティを、東に行って悪鬼を、西に行ってオーガを。道中得た仲間達との奮闘で自分はそれ等を打ち倒し、その仲間達と新しく傭兵団を作ることにした。

 それこそが死した彼女の目に肖った傭兵団の誕生だった。

 

 戦乱の世はまさに傭兵団にとっては苦しくも最高の時代だった。隣国との戦争、英雄達の露払い、怪物たちとの闘争、仕事は無くならず財貨はどんどん入ってくる。

 少し落ち着けば物件を選び、人手を揃え、教育やら訓練やらの編成をしながらも酔った勢いで高額な竜の牙を買うなどバカ騒ぎをして過ごす。

 欠けた心を忙しさで塞ぐかのようにしながらも自分はそこで団員の心の支えであり頼るべき長である傭兵団長として存在していた。

 

 だが創立して50年、只人にしては長い年月が経ち老舗となってきた傭兵団にも問題が発生した。

 金だ、金が足りないのだ。

 何をするにも金金金、装備を整えるにも酒を飲むにも人を養うのにも金が必要だ。それが無くなる、つまりは傭兵団にとっての死が訪れることと同義だ。

 

 それを回避するため、頭をひねりにひねった自分の発案に団員たちは耳を疑っただろう。死の迷宮、始まりは何であったか、もう誰にも分からないその迷宮は最近になって巷を騒がせ始めていたそれに潜ると言うのだ。

 曰く、怪物たちが闊歩し、財宝がとめどなく溢れ、そして生きて最下層に到達したものは未だいないという。危険はあるが財貨を得るには最も手っ取り早く分かりやすい方法で金策は行われる手筈になっていく。

 

 結果を先に言うならば必要とされていた分、いやそれ以上に財貨は得ることが出来た。ただその代わりとして団員の実に4割が死の迷宮に呑まれて消えることにもなってしまった…

 

 それでも金は金、生き残れなかったのは(エッジ)が足りなかったからだ。

 酒を湯水のように体に取り込み、そう思い込んで死んでしまった者を悼むことしか彼らに道は存在しなかった。

 それは私とて同じだった、最愛の孫と子が一緒くたに死んだのだから…彼らは勇敢に殿を務め、団員を守って死んだ。だが、死因などどうでも良かった。

 ただ、生きて帰ってくれさえくれれば、自分はそれで良かったのだ…

 得た資源(リソース)をジャンジャン放出し、浴びるように酒を飲み女を侍らせ下品な冗句で笑い合う、愚かで馬鹿でまさに放蕩だ。

 

 そんな様では気付けぬのも無理は無いだろう、死の迷宮から帰った者の中によもや死に魅入られた輩が混ざったことなど、誰が気づけようか…

 まるで植物が土へと根をつき伸ばすように瞬く間に組織は腐敗していった。

 

 自分が気づいた時には6割が邪教に魅入られ、自分以外の全員が殺されていた。

 私は自室へと追い詰められていた。

 弓も剣も彼奴らの手に握られており、それが徒党を組んで己を殺しに来ている。

 対する自分は身一つ…ハッキリ言って死んだも同然の状態だった。世界を救う勇者様でもないのだ、当然死ぬに決まっている。

 だが、彼女と交わした約束を果たす為に、自分は絶対に生き残らねばならない。

 魔の手は自分を追い詰める。多勢に無勢、どう考えても私は死ぬ、子にも孫にも先立たれ、終いには彼女との約束も果たせずに…

 

 何か、何かないか!こいつ等を全て殺せるような何かが(・・・・・・・・・・・・・・・・)!切迫した私の脳裏にこんな言葉が浮かぶ。だが、浮かんだところで何が出来るわけでもない、妙案が浮かぶわけでも、突然力が湧くわけでもない。八方塞がりの様は神でさえ匙を投げたことだろう。

 

 尋常の神ならば…

 

『やぁ、困っているようだね』

 

 凛とした声だった。とても通る声、それが私の頭に次々と言葉を入れていく。外なる神は、往々にして気まぐれであるが力は強い。

 覚知神は面白いと思った愛しい駒へ外法を授けた。

 自分の頭に邪悪な祝詞が浮かび、聞くに堪えぬ声で祈れば奇跡が起こる。

 

 まず、自分の肉体から音がした。

 ベキベキと体が内側から変わって行く音を感じ、目線を動かせば執務室の壁に掛けた恐るべき竜の牙から流れ出た力が自分に注がれていた。

 見る見るうちに体が膨れ上がり耐え切れなかった服を貫いて弾けさせると変化の音は止まった。だが注ぎ込まれた力の余剰分か、それとも滾る力か魔力が波紋の幻影となり、見た者に遍く死を与えることを予見させたことだろう。

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」

 

 ただ啼いただけ、ただの威圧でさえも大気を震わし、邪神信者の耳を潰す武器となる。恐るべき蜥蜴人が誇る父祖が持っていた力はそれほどまでに凄まじい。

 

「ッ行け!我らが神に贄を捧げるのだぁあああ!!」

「我らが神の為に!」

「いあいあ!!」

 

「GGGGAAAAAAAAAAAAA!!!あああああああああああああ!!!!」

 

 それでも怯えず突っ込んでくる狂信者共(元仲間たち)に、自分が拳を振るった。

 まともに当たった者は肉を突き抜け、骨が飛ぶ。当たらずとも余波で十数の人間が吹き飛んでいく。

 何という力だろうか、と思わず自らの手を見れば肉と皮がぐちゃぐちゃになった両手が映る。いくら自分が強靭な肉体を誇っていようと上限以上の力を出そうとすれば器は耐えられぬのが通りだ。

 

「ギィイイイイイイイ!!!」

 

 一瞬遅れて体に走った激痛に言葉にならぬ叫び声を上げたが同時に団員達の顔が浮かんだ。さぞ無念だったろう、さぞ悲しかったろう、仲間であった者や親友であった者から裏切られ、殺された思いは計り知れない。

 

 そうだ、無念は晴らさねばならないのだ。

 

 思考が歪み出す、だが気づくことも訂正することもしない、出来ない。自分は自らの体をも壊す力であろうとも最早余すことなくぶつけ、30と少しの邪神信者を自らの肉体のみを使って彼らが信じた邪神の元へと送りつけた。

 

 そして数多の悲しみと地獄の痛み、苦しみの中より、ここに覚知神の信徒であり後にとある神(イム・ジッキョウ)より啓示をうける狂戦士(バーサーカー)は誕生した。

 




私は作者として無能者です(自己批判)
しかし、偉大なる先駆者兄貴達のお陰でようやく投稿することが出来ました。
ただそれでも狂戦士君の話が最低でもあと2話分残ってて、笑っちゃうんすよね。 

四方世界こそこそ裏話

 狂戦士君が元々傭兵団やってた時に買った竜の牙は実は蜥蜴侍君が世界竜になった後諸国行脚してた時にポロっと落ちたものだぞ!お値段なんと金貨120枚!高過ぎィ!サメの如く牙が何度も生え変わるので世界各地に落ちていたりする。これを削って触媒にしたり、アクセサリーにしたり、武器にされたりもする万能素材としてちょっと有名だ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

真夏の夜の夢

最後のお話になります、拙作の読破ありがとうございました。


 

「知らない天井だ…」

 

 気が付くと、自分はどこかの部屋に座っていた。 

 目覚めた場所には何やら珍妙な飾り物が辺りに飾られており、お香か何かだろうか?不思議な香り…思考がはっきりしなくなるような香りな気がする。

 罠の可能性もある、あまり嗅がない方がいいかもしれない。

 

 見渡してみれば、身長を優に超える金棒、太刀のような竜の牙、邪悪な気配のする木乃伊のように干からびた黒い腕。

 その外にもどこか見覚えのある金臭さ消しのされたみすぼらしい兜や地母神官達が掲げる輝ける錫杖、金銀銅の戦利品(トロフィー)らしきものが広がっている。

 自分は誰かのこれまでの実績を表しているかのような気もする、触媒倉庫染みているそこを歩いていった。

 

「…ばぁッ!!」

 

「うわぁああああああああ!???」

 

「ヒッヒッヒ!!!いやぁ、良いものだね。顔の良い男の驚く声は」

 

 思わず大声で叫んでしまった。

 物音も、鼓動さえ聞こえず、いきなり物陰から現れてきたのだからそれも仕方がないだろう。

 顔を隠した…老婆だろうか、腰も曲がっていて伸びてもおそらく自分の胸程の背しかない程だ。

 

「もし、ここはどこでしょうか?ご存じないですか?」

 

「アンタ森人だろ、そんな言葉遣いせんでいいよ。私の何十倍も生きてるんだから」

 

「ならここはどこなんだい?僕の知ってるところとはまた違うみたいだ」

 

「さーて、どこだろうねぇ?この婆もよく知らないのさ。でも、導くことは出来るみたいだよイィッヒッヒ!」

 

 さ、こっちへおいでと言葉を締め、人を小馬鹿にしたような態度で老婆はそのまま歩き出す。

 それに何を言うべきか迷った自分は結局何も言わずについていくことにした。

 

 少しすると、自分はどこかの広間にいた。

 そこは何やら民族の模様が所々に描かれ、いやあれは…

 覚知神の紋章だ…一体なぜ?

 

 自分は紋章について考えようと、体をそちらに向けたが、すぐに老婆に手を引かれ広間の中心に連れていかれてしまう。

 頭上の燭台には、いつの間にか火がともっていた。

 もう一度見渡してみれば、さながら小さな舞踏会場のように広間は豪華になっている。

 顔を隠した老婆は皺の刻まれた手を自分の方に差し出すと、小さく音楽を口ずさみ始める。

 何故かそれを聞いた瞬間に体が自然と動き出し、自分は老婆の手を取ると軽やかにステップを踏み出した。

 それは、何処かで聞いたような古臭い歌だった。

 

「あの、貴方は…どちら様で…?」

 

 老婆は質問に答えずに曲がった背中をさらに丸めて顔を俯かせ、歌い続けるだけ、しかし踊りにはしっかりとした足取りでついてくる。

 

 不意に涙が零れてきた。何故だろう、自分は確か、こんなことを前にも体験したことがあったはずなのに記憶に靄が掛かっているかのようで今一つ出てこない。

 自分の記憶力も随分といい加減になったものだ。

 

 気が付くと、さわやかな風が吹く野原に老婆と二人で立っていた。

 何故だろうか、ここも以前見たような…

 しかし、依然として自分の脳には靄がかかり、答えにはたどり着けない。

 

「なんだ、俺は何を忘れてる?」

 

 目を見開きながら周りを見ても何一つ分からない、ああ神よ、俺に知恵を授けたまえ。

 すると老婆のステップが転調して一気に激しくなり、あたりの風景も今度は月夜の海へと変わった。

 俺はというと、その動きに寸分たがわずついていけていた。

 その代わりとしてか、また風景が思い出せないもどかしさもあったが。

 確実に来たことがあるはずなのに、誰かと一緒にいた筈なのに思い出せない。

 思い出せず、気持ちが悪い、率直に言ってもう吐きそうであった。

 そこに、一陣の風が舞い込んできた。

 不思議と潮の香りもしない、湿り気のある、強風。

 それは老婆が被っていたフードを勢いよく吹き飛ばすとすぐに掻き消えていた。

 一瞬風に気が行ったが、それよりも今は老婆である。

 老婆の方へと目をやると、老婆は烈火の如き紅と海の如き蒼を湛えて俺をじっと見つめていた。

 

 不意に老婆が走り出す。

 

「ちょ、待って。待ってよ」

 

 杖も無ければ碌に歩けなさそうな老婆の走りは思いのほか素早いものだった。

 こちらも急がねば、追いつけぬほどだろう。

 すぐさま追おうと足を踏み出した所で、老婆の体に変化が起こる。

 枯れ木を思い起こす体にはハリと若々しさが、摺り足のようだった老婆の走りも次第に足取りも確かに、髪の毛は灰色に近かった白髪から金色に変わっている。

 自分は森人の軽業を使って全速力で彼女を追うが、少女の足は、いや彼女の足は止まらない。

 ずっと走るのかと思ったところで彼女は急に止まった。

 草木の茂る森の中、よく分からない自分が困惑しながらも見覚えしかない背中に手を伸ばす。

 やっと振り向かせることに成功すると、そこには俺が渇望していた顔が覗いていた。

 

 彼女だ、エリーだ。

 

 クリっとした目にすっとした鼻、瑞々しい唇、艶やかでハリのある肉体、俺が愛してやまなかった若かりし頃のエリーがそこにいる。

 姿も雰囲気も、呼吸音に至るまで記憶にしまわれていたものと一致した、完全なる一致だった。

 この子はエリーだ、間違いなくエリーなのだ。

 だが、彼女の体温だけは感じ取ることが出来なかった。氷のように冷たく、これではまるで…

 

「やっと、気づいてくれましたね。でも、残念ですけどお別れです」

 

 この体温は何かと伝えようと目を上げた時、彼女はそう言って俺の頬を一撫でするとあろうことか突き飛ばしてきた。

 尻もちをついて目を白黒させる俺に彼女が口を開く。

 

「大丈夫です、私達は貴方を待ってます。だからそんなに慌てないで下さい」

 

 私の勇者様…そう言って愛しい愛しい彼女は突如として現れた光り輝く門に向かって歩き始める。

 目を閉じて尚溢れだす強い光に追いすがるが彼女との距離は開いていく一方。

 待って、待ってと泣き縋る子どものように泣きじゃくる中遂に彼女が光の奔流に呑まれていった時、俺は大勢の人間が手を振る影を見た。

 

 君達、お前達は…

 

(待ってくれッ!頼む!皆、俺も、俺もそっちに!!!)

 

 自分はもう目を覆う手も退けて息も絶え絶え走り続け、必死になってそう叫ぶ。

 だが、パクパクと打ち上げられた魚のように口が開閉するだけで声が音にならない。【沈黙(サイレンス)】の奇跡を使われた訳でもないのに…

 大粒の涙が彼女の触れてくれた頬を伝い、零れていく。

 眩い光は彼女を取り込んで尚広がると俺を含めて全て吞み込み、自分の体にふっと重力が戻ってきた。

 

 自分は目覚めた。

 本当に()()()()()()()()夢だった。

 

 外を見れば眩しい程の陽の光が部屋へと差し込んでいる。

 くそぅ、また死ねなくなる理由が増えてしまったじゃないか…

 彼女達がこうして夢に出たということは、つまりはそういう事だろう。

 彼らは待ってくれると言った、ならば自分は信じるのみである。

 

 涙が乾いた跡を掻き消すように顔を洗い、生まれたままの姿から、装備を身に付け、自らの得物を肩にかけるとギルドへ向かって走り出す。

 土産話を作るとしよう、これから先随分と待たせるのだから本にして100冊にもなる超大作を。

 ゴブリンスレイヤーの行く先、青年剣士の英雄譚、女神官達の建国記。

 いや、ネタは沢山あるのだし、自分でお話を作るのも良いかもしれない。

 彼、彼女等の冒険は始まったばかり、自分も少し遅いが第二章を始めるとしよう。

 

 自分は拳を突き上げ、こう言った。

 

「俺達の冒険は、まだ始まったばかりだ!」

 

 ああ瑠璃の目の君よ、紅の目を持つ君よ。

 

 いつか剣も弓もほっぽりだして、君を抱きしめに行くから。

 

 愛しの君よ、麗しの君よ、しばしの間待ってておくれ――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

『くぅ~ッ!疲れました!これにて完結です』

 

 さて、私イム・ジッキョウのRTA、およびおま〇けはどうだったでしょうか?楽しめていただけたなら幸いです。

 正直編集とか編集とか編集とか…諸々辛かったゾ…

 しかし、つらかったのはこんな私に待たされていた皆様だと思いますので、これ以上は泣き言言いません。

 3年に渡る拙作のご視聴、ありがとうございました!

 

 え?死者を生き返らせることなんて出来ないだろいい加減にしろ?

 ゴブリンスレイヤーの世界観で、こういうことはNG?

 やめたらこの仕事?

 

 はーつっかえ!淫夢だって夢です、夢のパワーってものはとても偉大なものなのです。

 そして、(淫夢)の力に覚知神兄貴姉貴(アンサートーカー)の力を加えて、試練を超えた奴にちょっとくらい褒美を取らせても…

 まま、えやろ。

 

「ヤジュ!」

 

「エリー!」

 

 何百年か何千年か後の世界で、二人は幸せなキスをして終了。

 めでたしめでたし。




物語が終了したのである程度の設定をば…
(TRPG的のステータス表は)ないです。


疾走狂戦士 

 とある上の森人の部族に生まれた怪力の森人、年は1600歳と少し。上半身も下半身も大きすぎる男。

 森人にしては凄まじい筋力と同時に不器用さと知恵の足りない頭(森人基準)を持っている。感性は凡そ只人ヒュームのそれで、100年、1000年先のことを考えて行動するという感覚が理解できず、森人の氏族から外される並みの扱いを受けていた。そんな中で操作する駒として申し分ないステータスだし何より見どころがありそうという理由でイムに選ばれてしまった可哀そうなお友達が狂戦士君。

 RTAのために生み出された存在ではない為、本来の一人称は俺で感情が豊か。只人年齢でいう成人年齢になるまでに酒やら娼婦やら博打やらに溺れる放蕩生活を続け、運命の彼女を見つけた後本当に色々な事をして波乱万丈な人生を過ごしていた。

 彼女との駆け落ちから始まり、只人の町で3人の子どもが出来て、妻が老衰で死んで気が狂いかけてもどうにか正気を失わず、孫が生まれて立ち直り、その勢いで古今東西の化物退治に精を出し、そこで得た仲間と一緒に傭兵団を作ったりした。なお傭兵団名ェ…

 結局その後ある程度の長さ存続したけども財政難から死の迷宮に挑んで孫を含めた約半数が死傷してしまった…悲しいなぁ…
 しかも死に魅入られた団員達が数日後に殺しに来るとかうっそだろお前ッ!なこともされて心が死にましたぁ~(クッキー☆)。

 そこで覚知神に救われてからしばらくして死の迷宮が踏破され、復讐する相手もいないとまた放蕩。本来運営に回されるはずの資金が手元にあった為そういう生活が10年くらい出来る程には金持ちだったことも相まって無職のプー太郎でもなんとかなっていた。

 結局金が尽きるちょっと前にイムから託宣を受けて冒険者になることに。突然そういう流れになって周りが混乱する中駆け足で都に向かったのが物語の始まり。
 そして傭兵団を事前に抜けていた修道女が見た時にはもう既に自分を顧みない新人絶対生かすマン化を遂げている。

 ビルド構成は遠近両刀のアタッカーで近づかれる前に弓で殺すか、近づいた奴を持ち前の筋肉でどうにかするという防御どうしたというレベルのピーキー性能。放蕩の結果ついて来た「信仰心」はあるにはあるが、信心深いと言うには彼女への思いの方が強く、かといって魔術師には頭の出来のせいでなれない純脳筋。 

 RTA終了後は神から自立、ゴブリンスレイヤーやら周りの新人達と一緒に冒険譚を貯めて、死んだ彼女達に自分の活躍を聞かせるのを心の拠り所としている模様。でも色々な依頼を受けてはその先々で脳筋な自暴自棄作戦に及んでいたりする。
 本人自体は割といつ死んでもまあ良いや精神でいるのでこいつやっぱり狂ってやがると皆からは一目置かれていたりしている。狂戦士君は狂戦士やし多少はね?

 子どもは3人、孫は2人いた(過去形)彼女はいないけどまあこういう日々も…と言う所で皆死んだので早く会いたいというのが狂戦士君の心情。でも、今を楽しんでお話伝えなきゃというある種義務感と彼女の書置きもあるので死ぬに死ねない。種族を変える魔法の道具とか、彼女、ひいては家族をまた現世に呼び戻す何かをゴブスレ一党との関わりの中探索している。
 時々闇人みたいに黒肌の生首が肩の上に乗っかっているような姿を女神官やら見習い聖女、剣の乙女と言った聖職者達に幻視されたりしている。

 何やらゴブリンスレイヤーと関係がある模様。

 これにて続きに続いた狂戦士君の物語は終わりです、ここまで読んでくださりありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その後の狂戦士

仕事を始め、クソほど疲れ…でも、でも…書くことは止められず…
出すのにこれほど掛かってしまいましたが、楽しく読んでいただければ幸いです。


「ゴブリン退治だ!」

「ゴブリンを殺そう!」

「ゴブリンだね」

 

 ゴブリン・ゴブリン・ゴブリン・ゴブリン、ゴブリンゴブリンゴブリンゴブリン、ゴブゴブゴブゴブゴブリン三昧(フロア熱狂)

 草原で、闇深き森で、洞窟で、下水道で、雪山で…これまで優に1000体は倒したのではないだろうか?小鬼殺し3号とか言われているのも納得の討伐数だろう。あ、一号は勿論ゴブスレさん、二号は女神官ちゃんのことだ。

 なんで彼らは僕より何倍もゴブリン殺してるんだろう…いやマジでなんで?

 成程、自分の長い寿命はこういうことに使うのも良いらしい。村の英雄とか言われるも小慣れてきた。まあ、ホントのことを言えば、冒険者としての先輩方にくっついていったらこうなったというだけなのだが…

 現に今もこうしてゴブリンスレイヤーと一緒にゴブリンの首を掻き切っている。

 

「いやぁ、やっぱりゴブリンスレイヤーさんがいると捗るね」

 彼彼女からのゴブリン討伐はほんと、嫌になるほどの数に上っている、たぶん二人で合計一万は超えてる。 

 たぶんだけど、この世界の平穏の一端はになっているんじゃないだろうか、絶対に個人で殺せる怪物の数を超えている。

 

「そうか、いや…そうなのか」

 

 いや、事実だから。

 ゴブリンスレイヤーはゴブリンのことになると様々な方法を瞬時に考え、実行する。実行し続ける。

 もしかしたら頭の中にイム様のような尋常ならざる神が宿っていたりするのかもしれない。

 と、そこまで考えて首を振る、何故なら彼は骰子を振らない、振らせないからだ。

 毒塗れの撒き菱を撒いて一網打尽、山を崩して、川から水をひいて、大鰐を使って、雪崩を起こして…これを地頭で以て考え付いているのはシンプルに凄い。

 と同時に、そんなことがパパパっと出来るくらいには狂っている。成程同族と言われるのも納得だ。

 

 だが…

 

「ゴブリンスレイヤーさん!今の策は何ですか!!?」

「ちょっとオルクボルグ!ヤバいの駄目って言ったじゃない!!」

 

「む…毒も爆発も巻物も使わなかったが…?」

「「そういう問題じゃありません(ないの)!」」

 

 度々何かやらかしては女子陣が凄まじい剣幕でゴブリンスレイヤーを問い詰める。

 思わず尊いものを見て目が蕩けてしまうとか言っていたかつての友人のように、眩しいものを見るように手で目を覆う。

 

 でも俺は筋肉あるし、既婚者だし、子供も孫もいたもんねーー!!!とガキにも劣る負け惜しみを心の中で送っておく。最早過去のことだが、今くらいは別に誰も責めないだろう。

 彼は玄孫か、それよりも下なのか、何というか森人でいる限り、寿命の長さからいろいろなものがうつろいやすくて敵わない。

 しかしやはり羨ましい、俺だって頑張ったねと頭を撫でられながらエリーの胸の中に潜りたいのに…あぁ、ダメダメダメ…悲しくなってしまう。

 どこまでもこの世の中は厳しいものだ…と天にいるだろう彼女に祈りを捧げる。

 

「貴方もよッ!この大ボケ老人!!!」

「ちょっ!何だよパイセン!」

 

 我関せずを貫いていたら飛び火してきた。

 全く、これだから女は…

 

「アンタ何したかわかってんの?」

「何って、矢が切れたから拳でずーだらを殴っただけだけど?」

「ハァーーーー(クソでかため息)アンタねぇ…」

 

 巨人と同じく田舎者を殴って殺したことにご立腹らしい。

 もう放蕩してそこそこに落ちていた膂力も戻ったので田舎者くらい割と何とかなるだろうと思って行動しただけだと言うのに…

 俺も青玉級になって割と経つ、失敗する可能性は低い。万が一失敗していたとしても誰かがサポートしてくれたはずだ。

 

「あれ?俺何かやっちゃいました?」

「おバカ――――!!!」

 

 スパーン、と子気味良い音が頭から流れ出る。

 これくらい全く持って痛痒足りえないが、こういったツッコミは正直楽しい。また一つ、皆に話すことが増えた。

 

「にしても…アンタここ最近で変わったわねぇ…」

 

「おいおいパイセン、俺はもう1年前からこんな感じだぜ?」

「…最近じゃない?」

「そうか…そうかも」

 

 実際問題、俺の変化もだんだん周りに馴染んで受け止められてきた。

 時間の流れる感覚が違うのはまあ、俺が可笑しいし、俺よりも400年程年齢が上だからだろう。その割に体躯は華奢で、胸も他の女性陣に比べて金床ではあるが…

 

「…何か変なこと考えてないわよね?」

「イイエマッタク」

 

 女ってのはなぜこんなにも感が鋭いのか…だから女の前で隠し事は出来ないんだ…

 話を戻して、神官ちゃんでさえ出会った時から比べれば身長も体つきも少し変わってきている(具体的には筋肉がついてきた)

 俺と比べて日々物事が変わる中で、よくぞまあここまで生きてきたものだ。少し泣きそうになる。

 

 遺跡に住み着いたゴブリン退治はまあ、こうして楽勝ムードで終わった。

 まあ当然である、俺の曾孫がいたのだから(爺バカ)

 

 ----------------------------

 

 

「ウァァ!!おれも逝っちゃうぅぅぅ!!!ううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううう!いぃぃいぃ!!!!」

「おいおい大丈夫か大丈夫か?」

 

 毒が回り始めた青年に解毒薬を飲ませていく。

 ゴブリン退治の引率で、俺は巣穴に潜っていた。

 

 毒草やらゴブリン達の糞尿が混ぜられた毒はすぐさま体へ回り熱を持つ。

 即効性も高く、新人冒険者を殺すのにそう時間も掛からないだろう。

 新人達の懐具合では、解毒薬も買えるか、よしんば買えたとしても他の所に回す金は少なくなるはずだ。

 まあ、そこを工夫するのが冒険者であるため頑張ってほしいと胸の中で念を送っておく。

 

 ゴブリン退治は新入りに「冒険」とはこういうこともある、という大切な要素を教えてくれる依頼でもある。キチンとこなしてもらわなければならない。

 実際そのゴブリン退治に四苦八苦していた者がそこから紆余曲折を経てドラゴン退治までしてみせたこともある。

 これはあの剣士一党のことだが、下位の竜とはいえあの若さにてよもやよもやなことだった。

 願わくばここで滅茶苦茶に泣いている二人もそうなってほしい限りである。

 

「逝く逝く逝くッ逝く逝く、逝くなよぉ!」

 

 そんな小さな願いを胸に抱いた瞬間、恰幅の良い甲高い只人中年の声が洞窟内に木霊する。

 死にかけの仲間への動揺か言語能力に著しい低下がもたらされている、これはいけない恐慌(パニック)致命的失敗(ファンブル)の元だ。

 すぐさま、きつけの苦虫やらの粉末を吹きかける。

 

「ヴォエッ!!!ゲホッゲホッゲホ…」

 

 涙と嗚咽で尚更ひどいことになった…しくじった、こういう時の判断力が俺はやはり低い。

 ゴブスレ達に見られたら呆れられそうだ。

 まあこういう落ちこんだ時には…

 

「GOOOBッ!?」

 

 取り合えずゴブリンの頭を打ちぬいておく、この手に限る。

 そのまま【狂奔】も使わずに、そこ等中にいるゴブリンを矢やら拳やら槍やらで蹴散らしていく。

 銅等級(・・・)になった俺なのだからこれくらいは出来る、そうでなければいけない。

 このまま彼ら新人冒険者たちをギルドへ連れていくことこそが俺の仕事なのだから。

 

「た、助けていただきありがとうございました」

「本当に感謝の言葉もございません…」

 

 さっきとはとんでもない豹変ぶりだ。危機的状況に陥った時だけのアレなのかもしれない。

 しかしとんでもない変わりようなので素直に賛辞は受け取っておこう。

 新人を助けるということは素直にうれしいことだった。

 

 ----------------------------

 

 

「ウララララララ!!!!」

「ワァ…」

「二人とも」

 

 獣人の3人組だ。兎と、犬と、あとは何だろうか…鼠か?熊か?良く分からないものもいる。

 3人が皆獣人としては小さくどうにも可愛らしい。しかし、逆に虐めてやりたくなるような加虐心をくすぐる見た目をしていた。

 

「ヤッ!イヤッ!!!」

 

 そんな邪な思いを抱いていたからだろうか、熊獣人に対してどうにか意思疎通を試みようとするが涙を流しながら拒否してくるためままならない。

 兎獣人も甲高い声で反応はするものの、会話にならず中々に厳しい。

 唯一まともに話せる、犬獣人にもしや呪いか何かを掛けられたかと聞いてみれば、そう言う訳でもないらしい。

 成程と狂戦士は腕を組む。普段でこれでは昇級審査に引っかかるのも道理だった。

 

 山の中に潜んでいるゴブリンの討伐依頼、それが彼らが請け負った依頼である。

 まあ正直なところ、そんな軽い説明文で済ませられるほど事態は軽くない。

 なんと実態は30を超えるゴブリンに加えて、その指導をこなす呪術師もどきに、傭兵としてか巨人(トロル)のような見た目になってる一つ目(サイクロプス)が一緒になっている。

 普通に依頼をこなすのさえ彼らには難しいだろう。

 

 まあ、そんなものは銀等級になった自分からしたら朝飯前のようなものなのだが。

 勿論数は脅威だ、それは古今東西変わりはしない。

 だが一矢4射放てる自分のようなものが相手でなければの話である。

 

「行ってくるよ、エリー」

 

「OOOODEEEEEEE!!!!!」

 

 恐ろしき一つ目の咆哮が洞窟内を揺らす。

 露払いはお願いして、俺は右手に握る巨人の牙を触媒に力を籠めて祝詞を呟いた。

 さぁ、いざ殴殺の時だ。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ある日のある時のことだった。

 すっかり大樹となった墓に狂戦士は花束を添える。

 それは一般にシプリペディウムと言う花とエーデルワイスと呼ばれる花、デイジー等も含まれているが中でも目を引くのが見事な紅葉だった。

 それは彼が東奔西走の日々の内に見つけていた、彼女に見せたいと思っていた花や草木。

 

「よしっ、それじゃこれくらいにしておこうか、またね、エリー」

 

 それは狂戦士が墓に一通り祈りを捧げ終え、立ち去ろうと腰を上げた時のことだった。

 不思議な事が起こった。

 大樹の枝がぬっと伸びたのだ。森の加護等、最早狂戦士には存在しない筈なのに…

 そんなことを考えた彼の目の前で枝は一輪の花を差し出すと、何かを待つかのようにその成長を止めた。

 不思議な事もある事だ、しかしと狂戦士は跪いてその花を手に取り口づけをした。

 彼は空を見上げると、そう言えば、今年は彼女が死んで丁度100年だったか…と小さく呟く。

 花は何も言わなかったが、何処か嬉しそうに赤く色づいている気がした。

 

 狂戦士は軽く微笑み、歩き出した。

 麗しの君よ、ちょっと気が早いだろ。

 俺はまだ、君に話す物語を貯めないとなんだ。

 

 じゃあ、またね(・・・)

 さようならじゃなくて、きっと会えるから。




ご視聴ありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。