ヒロアカ~俺の正義の名のもとに~ (むらびとα)
しおりを挟む

プロローグ

とりあえずのプロローグです



 

 

 

その日俺は死んだ

 

 

 

いつも考えていたことがある

 

なぜ自分は生まれてきたのか

 

人類が、いや、思考能力を持った生き物が誕生してから、この問題を解けたものは数少ないはずだ

 

自らの生に意味を見出だせるものは、本物のバカか勘違いか、あるいはそうなるために生まれてきたと自覚できる何かがあったものだけだろう

 

さて、なぜ俺がこんなことを考えているかというと、生きる意味を見つけないと生きられないと感じてしまったからだ

 

 

どこにでもありふれた幸せとそれよりも多い不幸を経験しながら、この20年間生きてきた

 

決して裕福ではないが、幼稚園や義務教育、高校と不自由なく通い、家庭不和はあれども人格否定や暴力なんかはなかった

 

喧嘩もすれば笑い話もする

 

日本と言わず、県や市のなかでさえ、ありふれた家庭の一つだった

 

家庭という枠から外に目を向けると、数は多くはないが友人もいれば、好きだと言葉にできる恋人もいた

 

当時からしてみれば、高々十数年しか生きていない若造が何を言っていると言われるかも知れないが、俺が生きてきたその十数年というなかでの結果だ

 

 

 

だが、物足りなかった

 

幼き日には誰しもが『何か』に憧れただろう

 

だが、己を知り現実を知って、大抵のものは諦め妥協する

 

ほんの一握りの者だけが、その『何か』になれる

 

 

もちろん俺は前者の方だ

 

だが、周りと違う点が一つだけあった

 

諦め切れなかったのだ

 

いつまでもいつまでも、なれないとわかっていながらその妄想に取り付かれ、心を蝕み、そして病んでいった

 

 

決して自分はその他大勢のなかの一人ではない

 

何か特別な才能を持っている

 

自分が悪いわけではない、周りが、環境が、社会が、世界が悪いのだと

 

きっと自分には生まれてきた意味があり、その存在は無意味ではない

 

そう信じたかった

 

 

だが現実残酷だった

 

自分がそんな下らないことを考えている間にも時間は進む

 

まるで自分一人が取り残されているような感覚だった

 

数少ない友人とも連絡をとらず、恋人とも別れを告げ、日々をただ無為に過ごした

 

そんな中で、ふと気づいてしまった

 

誰でもいいから殺したいと

 

そんな欲求が強まる日々だった

 

きっとこのままでは自分で自分を抑えられず誰かを傷付け不幸にし、果ては殺してしまうような…

 

だから、そうなる前に…

 

 

部屋を片付け、荷物をまとめた

 

紙とペンを用意し机に向かう

 

久々に文字なんて書いたな、なんて思いながら下手くそな字を並べていく

 

どれ程の時間がたっただろう

 

外からは車の走る音さえなくなっていた

 

 

 

カツンカツンと階段を登る音が辺りに響く

 

吐く息は白く、指先は痛い

 

耳には風の音でいっぱいだった

 

(もうここら辺で十分かな)

 

目的の場所にはまだ着いていなかったが、登るのをやめ辺りを見回す

 

冷えた風のせいか目には涙が溜まりその上、日も登らないため景色なんて見えやしない

 

下を見るとポツポツと民家と街灯の明かりがあるのだけわかった

 

 

手すりに手をかけ身を乗り出す

 

心臓が爆発しそうだった

 

恐怖に体がすくむ

 

だが、派手に動く必要なんてなかった

 

あとは手を離すだけ

 

それですべてが終わる

 

 

なにも成し遂げられず、途中ですべてを投げ出す自分を思い、情けなくそして、悲しくなった

 

 

もし来世というものがあるならそこで意味を見つけたい

自由に、己が思うままに生きたい

そう思いながら、手を放し体は地面へと向かっている

 

そんなときあることがふと頭をよぎった

 

ある漫画のキャラクターが言ってた

 

『ワンチャンダイブ』だと

 

 

そこで俺の意識は途絶えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に俺が目を覚まし見たものは、知らない天井だった

身体に痛みが走りながらも考えることはただ一つ、まさか死にきれなっかったのかと

あの覚悟は何だったのかと無性に空しくなる

 

 

ただそんな考えはすぐに打ち砕かれた

 

 

「やっと目を覚ましたのね吐喰!!!」

 

知らない顔に知らない声、さらには顔にいくつかの『口』がついていた

その口からは、「よかった」「本当に」「心配したんだから」

など、声色は違うもののその女性に近いものを感じた

 

 

 

まず驚いた、なんて表現では済まされなかった

知らない女性に、顔には複数の口

そして俺の名前は『とばみ』なんて名前じゃない

もっとありきたりな名前だ

 

もしかして他人の体と入れ替わった??

 

ないない

そんなことがあれば世界中大混乱だ

 

 

まあそのすぐ後に俺の考えなんて小さなものだったなんて思いもみなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここヒロアカの世界やんけ・・・




いろいろ中二病満載になるので(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロローグ&退院

まず目を覚ました時にいた場所は病院で、初めに声をかけてきた女性は母親だということがわかった

 

 

そして俺の体が小さくなっていた

 

しかも包帯ぐるぐる巻き

 

だがここで疑問に思うのは何故死んだはずの俺が他人の体で生きているのか

 

母親だと名乗る女性に複数の口があるのかだ

 

あの高さからの飛び降りで臓器が無事なわけないし、仮に無事でその臓器が脳や重要な器官に関わり一時的な混乱かもしれない

 

だけど女性の複数の口の説明がつかない

 

当たりを見回す限り文明が発達した証拠に、高級感溢れる個室だ

 

これだけの状況であの女性の話題が世間に出ていないわけが無い

 

目覚めたのが数年後か、それとも・・・

 

 

 

つまり、まさかの異世界転生?

 

いや、この場合は憑依か

 

 

とりあえず記憶喪失ということにしておこう

 

 

 

 

「あの、あなたは??」

 

 

俺の言葉に驚愕を覚えたのだろう、両目を大きく開き複数の口のはぱくぱくしている

 

 

「と、ばみ?なにをいっているの・・・?」

 

 

「とばみってぼくのことですか?」

 

 

女性は直ぐにナースコールを押し、医師と看護師を呼んだ

 

 

 

 

その後の説明によると俺の名前は口多 吐喰といい5歳らしい

 

生死の境を彷徨い、目覚めたのは奇跡らしい

 

また女性(母親)は口多 蓮といい、父親は亜空という名前で両親共に『ヒーロー』をしているらしい

 

そう、『ヒーロー』である

 

異世界憑依という時点で色々な考えをめぐらせていたが、この不自然な口、整った医療設備

 

 

ヒロアカやん

 

 

そりゃ口がいっぱいあっても不自然じゃないよなぁ

 

つか、ヒロアカの世界の住人に憑依をしたのも衝撃だが、この身体の持ち主が病院に運ばれた理由も衝撃だった

 

 

自殺しようとしたのだ

 

 

この身体にも母親と同じ個性が発現しており、その見た目、勝手に喋り出すなど

 

まぁ虐められる対象にはなるだろうし、5歳の少年には耐えられない苦痛だっただろう

 

この子は賢かったようで拙い文字で遺書を作り『次があるなら』と書き、飛び降り自殺をしたようだ

 

 

 

多くの不幸、来世、俺が飛び降りた時に思い出した『ワンチャンダイブ』

 

 

何となく繋がった気がした

 

 

俺は世界が間違っていると思い、自由に生きたいと願った

 

そしてヒロアカという(個性にもよるが)自由をつかみ取れる世界に来た

 

 

ならばこの身体を、この少年の分まで生き抜いてみよう

 

前世のようにならないように

 

そう心に決めた時病室のドアが激しい音を立てて開いた

 

 

 

 

「吐喰は!!!!!!!」

 

 

かなりガタイのいい男が入ってきた

 

流れ的には父親だろう

 

 

「ちょっとあなた!吐喰は目が覚めたばかりで、それに記憶も・・・」

 

 

やはり記憶という言葉を聞くと誰もが口を紡ぐのだろう

 

 

「蓮、少し外で話そう」

 

 

「はい、あなた。吐喰、ちょっとお父さんと話してくるからいい子で待っててくれる?」

 

 

そう訪ねてくる母に

 

 

「うん!待ってるね!」

 

 

元気よくそう答えた

 

 

 

〜親子side〜

 

 

「あなた、少し落ち着いて聞いてね」

 

そう言った蓮の表情は憔悴しきっており、複数の口からは「なんでなんで」と繰り返し呟かれていた

 

 

蓮は息子が記憶喪失だということを伝えた

 

元から遺書は見つかっており、目覚めるのは絶望的だと言われていた

 

不幸中の幸いだと言えるかもしれない

 

だが、もっと早く自分たちが気づいていればという思いが止まらなかった

 

 

「そ、うか。吐喰が記憶喪失か・・・」

 

亜空の表情も晴れない

 

目覚めたことの喜びはもちろんあるが、自分たちのことを一切覚えてないとなるとその喜びも最高とは言えない

 

 

「ねぇ、あなた。私間違っていたのかしら、あの子のことをもっとしっかり見ていれば、」

 

 

「そんなことはない!蓮は吐喰のことを愛している。そのことは俺もよく知っている!だからそんなことを言わないでくれ。間違っているなら俺の方だ。ヒーローと名乗っておきながら自分の息子を救えなかったのだから」

 

 

亜空の顔は歪んでいた

 

ヒーローというのは人々を救う英雄である

 

かのNo.1ヒーロー、オールマイトを目指し自分なりに最善を尽くしていた気でいた

 

だが、そんなことは無かった

 

 

 

吐喰は4歳で既に個性が発現しており、蓮の個性と自らの個性のハイブリットであった

 

蓮の個性は体に無数にちらばっている口から空気や水、岩など様々なものを喰らい、その口から任意の速度で射出する

 

体の口を一箇所に集め大砲のようなことも出来る

 

デメリットとしては喰らった物を収納するスペースが少ない

 

また見た目と、『口』という体の一部のせいか、本心を勝手に喋りだしてしまう

 

何年にも重ねることで、ある程度は抑えることが出来る

 

しかし吐喰は口が体に無数にちらばっているのに話し出すことは無かった

 

 

 

 

それはきっと俺の個性が混ざったせいだろう

 

俺の個性は収納

 

触ったもの目で見たもの、認識したものを強く意識することで亜空間に収納するもの

 

それは有機物無機物関係なく、更には生きたものですら収納できる

 

容量は鍛えることで少しづつ増えていくが、容量オーバーになると自らの体の一部、あるいは体が弾け飛び収納していたものもその場で飛び出してしまう

 

ハイリスクハイリターンの個性だ

 

 

吐喰の個性は見た目と収納のデメリットを除けば、超強力個性だ

 

俺の個性と蓮の個性を一つにしたようなもので対ヴィランにも、人命救助にも使える個性だ

 

 

俺たちは一部でしか行われていない個性婚で夫婦になった

 

まぁ、個性婚と言ってもお互い愛し合っているし、息子のことも愛している

 

だがお互いがヒーローという職業のため吐喰のことを見れない日も多くあった

 

あの子は大人しくそれでいて賢かった

 

個性が発現してからというもの、その個性の危険性や有用性を理解し、私たちと同じヒーローを目指すため個性を鍛えていた

 

そんな日常だったからだろう

 

吐喰の異変に気づけなかったのは

 

 

 

「ヒーローと言うなら私もよ。ねぇあなた、私決めたの。ヒーローを引退するわ」

 

 

その言葉を聞いた亜空は驚きもせず納得だけしていた

そうしなければならない。それは人としてでもあるが、親としての責務だ。そしてヒーローには常に危険が伴う。ならば俺よりも蓮が引退したほうがいいだろう。

 

 

「その方がいいだろう。本当は俺も引退したいところだがな」

 

 

「あなたは引退しちゃダメ。あなたの活動で救われた人は数え切れないわ。吐喰のことは私に任せて。今度は私が吐喰のヒーローになるから」

 

 

そう蓮は悲しそうな、そして決意に満ちた表情でそう言った

 

 

 

〜両親sideout〜

 

 

 

 

両親が病室を出たあと、激しい頭痛に襲われた

 

「、ぐぁ、。な、んだこれ」

 

まともに話せない

 

流れ込んでくるこの身体持ち主の記憶

 

両親のこと、個性、自殺する原因、最後の悲しみ

 

 

「そう、か。この子は」

 

 

色々と納得がいった

 

この子は賢いが故に自殺という手段をとったのだろ

 

両親に愛されていることは分かっていたが、両親が共にヒーローということで会えない日も多かった

 

だが、それでも両親のことは誇らしかった

 

だから自分もヒーローに成りたいと努力した

 

だが、この見た目だ

同世代の子はヴィランだとはやし立てた

傷つきながらも努力を辞めなかった

だけど、まだ5歳だ

周りから孤立し続けるのは耐えられなかったのだろう

日々ヒーローとして何人もの人を助ける両親に相談できなかった

自分のために時間を使ってしまうと、その分救える人が減ってしまうと理解していたから

 

だから自殺してしまった

 

 

本来この身体はこのまま朽ちていったはずだが、何の因果か俺がこの身体の持ち主に変わった

 

だから俺が・・・

 

 

そこで病室の扉が開いた

 

 

 

 

「初めまして、かな?俺はお前の父さんのあくうって言うんだ。」

 

 

ガタイがいいくせに顔は今にも泣きそうだ

 

 

「吐喰、さっきお母さんとお父さんのことお話したでしょう?」

 

 

「うん!お母さんとお父さんはヒーローをしてて、たくさんの人を助けてるんでしょ!」

 

 

この子の思いを知っているからこそそう応えた

 

これでも一応中身は成人間際だ

 

両親のどちらかがヒーローを辞めるって言い出すことくらい想像がつく

 

 

「あのね、お母さんね、ヒーローを一旦やめようと思うの」

 

 

ほら、やっぱりだ

 

 

「え!?なんで!???お母さんはいろんな人を助けるすごい人なのに!」

 

 

その言葉を聞いて母は動揺したようだ

 

でも、決意は変わらない表情をしていた

 

その顔を見て説得するのをやめようと思った

 

きっとその考えは変えられないと直感したからだ

 

 

「お母さんね、今度は吐喰と一緒にいたいの。だめかな?」

 

 

 

「そんなことないよ!嬉しいけど、ヒーローは?」

 

 

そこで父さんが口を挟んだ

 

 

「そこは父さんの俺に任せておけ!お母さんの分までいっぱい人を助けるから!」

 

 

こちらも覆せない気持ちが籠った言葉と表情をしていた

 

 

「お母さん、お父さん。ぼくうれしいな。少しだけだけど、さみしいって気持ちがなくなった感じがするの」

 

 

その言葉に両親は記憶が戻ったのかとおもったのだろう

 

 

「吐喰、記憶が?」

 

 

「ううん、思い出せないけど、一緒にいてくれるって嬉しいなって思ったの」

 

 

その言葉に両親は涙した

その言葉がどれだけ重いものなのか

親になったことがない俺にはわからないが、なんとなく想像がつく

この言葉のせいで両親は少なからず傷ついてしまっただろう。

でも言わなければならないことだと俺は思った。

この身体の持ち主の思いを少しでも晴らすために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから検査を受け、問題がないと判断され自宅へと戻った

 

 

 

 

久しぶり(初めて)にこの目で見た実家は凄まじく大きかった

 




どうだったでしょうか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

帰宅と決心

「えっと、おじゃまいます」

 

その時母さんが僕の頭に手を置いて

 

「吐喰、ここはあなたのお家よ。だからただいまでいいの」

 

同じように父さんも

 

「そうだぞ吐喰。ここは今までもこれからもお前の家だ。個性の特訓部屋もあるんだぞ?」

 

その言葉にとてつもない喜びを感じた

「ほんと!?お母さんとお父さんみたいなヒーローになれるの!?」

 

「そうだぞ。しっかり努力すれば父さんや母さんよりもすごいヒーローになれるぞ!でもその前に母さんが言ったように、家に入るときはただいま、だ」

 

そうだった。この個性の強さをどうやって鍛えようか悩んでいたらすっかり忘れていた。

というか吐喰の記憶を引き継いでいるから、訓練部屋も鍛え方もわかっている。

ただすごく助かっているのは、5歳のしゃべり方だ。さすがに自分で意識して話すのは厳しい。記憶の引継ぎに感謝だな。

まぁ話す内容は俺が決めているが・・・

 

 

「えっと、じゃあただいま!」

 

「「おかえり吐喰!!」」

 

 

とりあえず家の中はある程度把握しているが、やっぱり両親ともにヒーローは財力がすごい。

まず地下一階に三階建て&敷地内に個性訓練場。地下はサポートアイテムや思い出の品といった倉庫

一階~3階はリビング、キッチン、寝室、浴室、客間など

ちなみに一番多かった部屋は客間だ。そりゃヒーローだもんな。いろんな人が来るから。

 

この家で一番嬉しかったのは訓練場だが、それと同等に浴室だ。俺は昔から広い風呂が好きだったから。こっちの世界ではやっぱりヒーロー関係者が来たりするから、大浴場と家族風呂に分かれている。まぁ家族風呂も父さんがでかいからその分でかいけど。

家の中をいろいろと案内されて、最後は自室だった。

 

「ここは吐喰の部屋だ。今日はいろいろあっただろうからゆっくり休んでな」

 

「そうね。吐喰何かあったらすぐに呼んでね」

 

そういって父さんと母さんは二階に下りて行った。

言い忘れていたが、俺の部屋は三階だ。

 

「さて、とりあえずは今が何年なのかだな」

 

どれほど原作と乖離しているかを確かめなくては。幸い部屋にはパソコンがありいろいろと調べてみた。

まずは主人公の名前『緑谷 出久』検索

反応がない。

つまりこの時点でヒロアカの原作前ということが確定した。いや、ヒロアカに途轍もなく似ている世界かもしれない。

 

次は『オールマイト』検索

うっわ、こんなに検索数があるとは。しかしつまり『オールマイト』が存在しているということはヒロアカ原作で合っているだろう。イレギュラーは俺ということになった。

原作メンバーは何歳くらいだ?神野区の事件は、検索・出てこない

 

つまり原作メンバーは雄英一年以下ってことだ。原作で出ていたオールマイトデビュー動画も原作では古い動画となっていた。確かめるすべがない。少なくともネットでは。

 

というかGPS機能で現在位置を調べたらここが神野区だった。

やばいやばいやばい

早いとこ個性を鍛えるか、引っ越しをしなければ。個性を鍛えればAFOの巨腕も収納できるし、いろいろと被害を抑えられる。でも今が雄英入学直前だったら間に合わない。引っ越しも両親にどう説明する?

 

とりあえずはいろいろな場所に行ってみたいと両親を説得し、なんとか記憶にある海浜公園、折寺中学に行ってみないと。原作は読んでいたが詳しくは覚えてないし、ハイエンド戦までだ。ただここまで知っているだけでも周りとは隔絶したアドバンテージになる。

 

 

後日両親を説得し折寺中学周辺を探索したところ、驚くことがあった。

主人公『緑谷 出久』と『爆豪 勝己』が幼稚園内で喧嘩というかいじめている光景だった。

母さんは気づいていなかったが、俺としては部外者で止められないし、何より俺と同じ年代だったことが判明し心臓が爆発しそうだった。

母さんに伝えればよかったのかもしれない。

だけどここで原作の流れが変わってしまったら?

 

『爆豪 勝己』の性格上、他の誰かから注意されても現時点では強個性という自信があるため、あまり変化は見られないだろう

 

心苦しいがその場を後にした

 

 

帰宅した後はすぐに部屋へと戻り、急ぎメモ帳に原作知識を書き込んだ。

 

まだ時間はある。雄英に入学せずとも他のヒーロー科に入学すればいい。

そして何より俺の個性の原型となった父さんと母さんがいる。これからは記憶にある以上に努力しなければ。

 

ちなみに両親との話し合いの結果幼稚園には通わず、自宅学習&個性訓練をすることになった。

両親としては俺がまた同じようなことにならないように最大限の配慮をしてくれるようだ。

 

 

 

 

 

さあこれからだ

守りたいものを守り、幸せを自由を手に入れ、生きてきた意味を見つけよう。

 

 

 




とりあえず今日は3話投稿しました
物語はまだほとんど始まっておらず、オリジナルストーリーが多く入ると思いますがよろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

個性訓練と家族愛

原作主人公『緑谷 出久』と同年代と知ってから一ヵ月。

 

俺は自分の個性を鍛えていた。

もちろん勉強の方は疎かにしていないが、内容が単純すぎて困ってしまった。逆にこの問題をどう間違えようかということに頭を使った。

母さんがヒーローを引退してからというのも俺にべったりで、勉強の方も個性の鍛錬も、俺の好きな料理と甘やかされているというか何というか。

前世でもこんなに愛情を注いでもらったことはない。

 

心の中で母さんに感謝した。

 

 

個性の鍛錬の話に戻ろう。

俺の個性は母さんと父さんの個性を丸々引き継いだかのような個性だ。

ハイリスクハイリターン。この一言にかける。

 

まず任意の速度で体の中に取り込んだものを射出でき、取り込むときでさえ触った、視認、認識したものを取り込める。ここまで聞くともはやチートだ。

 

だがその分リスクも大きい。身体中に散らばる口については、まだ慣れないものの特に悪さをするものではないから気にしないことにする。

 

問題は次だ。父さんの個性『収納』。母さんの場合よくよく話を聞くと触れているものしか身体にとどめておけないためさして問題じゃない。

 

だけど父さんの個性の視認、認識したものとはいったいどこまでが範囲になるのかわからない。

例えば10メートル先の岩を収納しようとしたとき、正面から見た部分だけを収納するのか、それともそれそのものを収納してしまうのかだ。

 

父さんによるとその岩の周辺にある空気を強く認識し、岩の大きさを把握して、許容内上限の場合収納するそうだ。

 

「どれだけ訓練したらそれができるんだよ」

思わずそう呟いてしまった。

 

しかし地面に埋まっている場合、先に周囲の土を収納してからじゃないと無理だと言っていた。

まぁそれも当然だろう。許容オーバーになった場合、身体が爆散するらしいからな。

 

ちなみに収納許容範囲の鍛え方、オーバーしそうになった予兆としては、爆散する箇所にい裂傷ができるらしい。

 

とりあえずは個性メインの生活を送っていこうと思う。

 

 

 

やはり父さんの個性の有用性を考えると、なかなか帰宅することは難しい。災害における人命救助、ヴィランとの対峙。他のヒーローとの連携。連携においても父さんの個性上、綿密に相談する必要が少ない。

 

一度だけ個性の訓練を見てもらったが、常に母さんの監視が入るようになり、今までよりゆっくりとしたペースで行うしかないようだ。

 

「いいか吐喰。父さんの個性はすごく扱いが難しい個性だ。取り込んだものが万が一、自分の取り込めるものよりも大きい場合、それが少しでも大きかったら身体に傷ができるし、五歳のお前には難しいかもしれないが最悪死んでしまうこともある。だから個性の訓練を行う際は父さんか母さんのいるところじゃないとしてはいけない。わかったか?」

 

「うん。お母さんも見ててくれるし、ヒーローになる前に死んじゃったらたくさんの人たちを助けられないもんね!

でもお父さんの腕にはいっぱい傷跡があるけど大丈夫なの?」

 

父さんは自らの腕を見て

「はは、吐喰に注意したのに恥ずかしいところを見られてしまったな。お父さんも昔はいろいろ無茶をして大変な時があったんだ。でも、そのおかげで今ヒーローとして活動できている。吐喰の場合はまだ五歳だから焦っちゃだめだぞ」

 

母さんも父さんの腕を見た後に俺の目を見てこう言った。

 

「そうね。お父さんは無茶ばっかりだけどかっこいいヒーローなの。吐喰もお父さんみたいなヒーローになりたいでしょ?」

 

「うん!」

 

「ならお父さんとの約束をしっかり守らないとね」

 

そういってその日は二人に指導してもらいながら訓練を行った。

 

 

 

 

自分の個性の可能性について改めて考えてみた。

 

自分なりの解釈だが許容オーバーの時、裂傷ができると言っていた。

 

つまり裂傷もしくは爆散する前に収納したものを、傷ができるスピードよりも速く出せばいいのではないのかと。

また視認で取り込む際には母さんの個性の喰らうという一面を応用して、限定的に取り込めるのではないか。

これは早いうちに検証したいところだ。

 

 

 

 

 

 

その後の訓練で分かったことだが、俺の考えは間違っていなかった。

 

しかしその難しさを考えていなかった。

まだ訓練を開始した直後に、射出スピードや視認したところに母さんの個性を発現させて取り込む。そんなのいきなりは無理だった。

 

よくよく考えればわかることだったが個性の有用性と、早く扱えるようになりたいという気持ちが強く間違った選択をしてしまった。

 

母さんが少し目を離したすきに訓練場の壁に検証を行ったところ、右腕の指先から罅が入るように肩先まで大きくなった裂傷を負ってしまった。

瞬間的に体が反応したおかげか、取り込んだものは勢いよく身体から排出され、壁に当たり大きく音が鳴った。

そのおかげか母さんがこちらを向き急いで応急処置をしてもらい病院へと搬送された。

傷はだいぶ深かったようで母さんが側にいなかったら、出血死しているところだと言われた。

 

そして何より俺が間違ったと思ったのは、母さんを泣かせてしまった。

 

「とばみ、」

母さんは俺の名前を呼び抱きしめながら大粒の涙を流していた。

 

母親に泣かれるという経験が今までなかった。

前世では家族であったがここまでの愛はなかった。

抱きしめられることもなかった。

こんな風に心配されることもなかった。

 

「ごめ、んなさ、い!」

気づけば俺も泣いていた。

大切な人に泣かれること。そんなのは今までの経験で初めてだった。

憑依した時とは別に、自らの行いのせいで泣かせてしまった。

罪悪感とかそういうことを感じる暇もなく、涙が流れていた。

 

 

 

ヒーロー活動から帰ってきた父さんには拳骨を食らった。

 

痛かった。でも何より心が痛かった。

 

父さんも目に涙を浮かべ大きな身体で俺のことを抱きしめ「無事でよかった」といっていた。

 

この個性は使用方法を間違えれば一瞬で死んでしまう個性だ。その危険性を誰よりも知っている父さんだからこそ、裂傷だけで済んだことに安堵していての発言だろう。

 

 

 

 

 

俺は家族の愛を知った。

知ったつもりでいたことが今日確信に変わった。

前世で求めていた家族愛がすぐ近くにあったことが分かった。

俺はこの愛を何よりも大切にしよう。

 




誤字の報告ありがとうございます

今回も短いですが読んでもらってありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

誕生日と初めての友達

内容が大きく変わってしまったのでいったん削除して、改めて投稿しました
削除前に読んでいる方は特に読んでほしいです


それからしばらくの月日が経った

 

もうそろそろ小学校にも通う時期だ

 

両親ともに、特に母さんが心配しすぎるというレベルだった。

 

人間関係で死にかけたのだから仕方ない。

 

でも俺は変わった。

 

見た目以外の全てが変わった。だから大丈夫だ。

一度死んだ人間が高々小学生の悪口程度でどうにかなるはずもない。

 

見た目に関しては個性の訓練の成果なのか、口が増えたのと小さな裂傷が至る所にあるだけだ。

 

大怪我を負ってからしばらくは訓練ができなかったのが辛かった。

だが俺はあきらめずに両親を説得し、少しずつだが訓練ができるようになった。

 

小さな裂傷に関しては父さんを説得して限界ギリギリまで訓練をしたためだ。

 

両親に心配をかけるのは十分承知だったが、この世界へと来た意味を探すため引くことはできなかった。

 

退院後の生活は、大けがを負ってしまった腕のリハビリと入学前の勉強。

自らの個性の可能性。動けないなら頭を働かせた。

 

たまに母さんのヒーロー仲間や、父さんのサイドキックと顔を合わせたり、両親の英雄譚を聞いたりした。

当の本人たちは顔を真っ赤にしたり、必死に止めようとしたりしていたが・・・

 

そんな日々を過ごしてこの世界への理解を深め、知識や人脈を作り上げていった。

まぁ相手からしたら上司の息子程度の認識なのだろうけど

 

 

そんなある日、両親がソワソワしている日があった。

俺としては何が何だかわからないが、とりあえずいつも通り過ごそうとしたら珍しく外出を促された。

 

とりあえず行く当てがないことを伝えてみたら、図書館に行ってみたらどうかといわれた。

 

読書好き&ヒロアカ世界の歴史を知るにはもってこいだった。

 

「それじゃあ図書館に行くから着替えてらっしゃい」

母さんはすでに外出着だった。

 

「わかったー!」

 

急いで部屋に行き、お気に入り(口がデザイン)の服に着替え玄関に向かった。

 

「着替えてきたよ!」

 

 

「そんなにニコニコして。よっぽど楽しみなのね」

母さんは口に手を当てくすくす笑っていた。微笑ましいとでも思っていたのだろう

 

そんな母さんを見て俺の方こそ微笑ましいと思ってしまった。

 

 

図書館につくと、どうやら用事があるようで迎えに来るまでここにいてねと言った。

 

「係員さんにも吐喰がここにいることを伝えたから安心してね」

 

「うん!それじゃあまたあとでね」

俺は急ぎ足で個性に関するコーナーに向かっていった

 

現在個性は千差万別だ。同じような個性でもデメリットがあったり、訓練し続けても強くならない個性。異形系個性でも、その元となった生物のできることできないことなど様々だ。

 

個性についてはまだわからないことが多くあるが、わかっていることもある。それに他の個性を知ることによって、自分の可能性を広げたり対策を取れたりする。

 

そんなことを考えながらいろいろな本を読んでいると、ポンポンと肩をたたかれた

 

「ん?」

 

肩に手を置いたのは俺のことを迎えに来た母さんだった

 

「随分と熱心に読んでいたのね。お母さんの用事も終わったしそろそろ帰ろうか」

 

「うん」

 

名残惜しかったがお迎えが来てしまっては仕方がない

 

 

 

母さんと手を繋ぎながら帰る道は夕日がきれいだった

 

 

家に近づくにつれ母さんが今朝のようにそわそわし始めた

何かがあるんだろうけど、まったく思いつかない

 

そうしているうちに家に着いた

 

 

 

 

「さあ吐喰。ドアを開けてみて?」

 

言われた通りにドアを開けてみると

 

 

 

 

「「「「「ハッピーバースデー!!!」」」」」

 

クラッカーと共に父さんやサイドキックの人たち、母さんの友人など多くの人たちがいた

 

ぽけーっと口を開けていると後ろから母さんが

 

「吐喰、6歳の誕生日おめでとう!」

 

そうか、今日が俺の誕生日だったのか

これだけの人に祝ってもらうのは初めてだ

言葉が出る前に口がにやけてしまう

 

「ありがとうございます!」

 

それは心の奥底からでた一言だった

 

 

 

それからはどんちゃん騒ぎで静かな時がないくらいだった。

母さんの友人たちにはもみくちゃにされ、父さんの友人たちには個性訓練の話を父さんが話してしまい、

 

「これは将来が楽しみだ」だの「将来は俺のサイドキックにならないか?」など褒められまくりだった。

流石にこれは恥ずかしかった。

 

 

誕生日プレゼントなのだが、これまた驚きのものだった

何とヒーロースーツ的なものとサポートアイテムだった

ヒーロースーツは母さんが使っていたものを改良したもので、どうやら俺の細胞からできており、成長とともにスーツも大きくなり、最大の特徴である『口』も口の使用と共にスーツがジッパーのように開き破けることがないようだ。

仮に破けても俺自身の細胞(抜けた髪の毛)などを少量破けた部分に置けば、スーツが自動的に吸収し復元するらしい。

 

いやいや、どんな性能ですか。むしろこれ一つで個性のようなものですよ

 

さらにサポートアイテムでは、これまた父さんが使用しているものを改良したもので、亜空間に取り込んだもの、限界容量を表示してくれる優れもの。

また手足や関節には衝撃を抑えるものを使っており、母さんのスーツと同じ仕様のものだ。

 

値段は聞かないでおこう。怖すぎる。

でも亜空間に吸収したものの限界容量を表示するものがあったならもっと早く教えてもらいたかった

でも嬉しかった。私有地以外での個性の使用は禁止だが、両親が俺の夢を押してくれていることが

 

 

「お父さん、お母さん、本当にありがとう!!!」

 

お祝いに来てくれた人たちみんなで写真を撮り、最高の誕生日を終えた

 

 

 

 

後々サポートアイテムの話を聞くと、俺の誕生日に合わせて父さんが協力しやっと完成したものだったようだ

だが限界容量がわかるといってもある程度らしいので注意が必要とだけ言われた

 

 

 

それからの生活ではヒーローアイテムのすごさを実感したり、訓練で少し傷が増えてしまったこと以外、特別変わったこともなく時間は過ぎていった

 

強いて言えば俺の見た目がヴィランに見えることくらいだ。

それは自他ともに認めている。

特に裂傷の跡が顔にもあるため、幾度となく戦闘を行ったようにも見える。

仮に俺がヒーローになれたら、ヴィランっぽいヒーロー堂々の一位だろう。

 

 

そして人生の一大イベントが来た

そう、小学校に入学だ。

両親のはしゃぎようはいつも通りなので置いておくことにしよう・・・

 

 

 

 

小学校に入学してからというもの、周りの子供に泣かれた。

いや、この見た目だからね。仕方ないのかもしれないけど、すぐに泣かれるのはさすがに少し傷ついた。

 

クラスが決まって簡単な自己紹介をして席に戻る。

今自分の置かれている状態は、触らぬ神にたたりなしって感じだろう。

とにかく誰も目を合わせてくれない。あったらあったで速攻涙目になる。

先生でさえビビってるからなぁ。こればっかりは時間が解決してくれるのを待つしかない。

今思えばよくこんな俺を苛める度胸のある子がいたもんだ。ある意味尊敬する。

 

 

それから数日たち、毎日のように学校で何があったか聞いてくる母さんにたまに帰ってきては訓練をしてくれる父さん。

毎日が充実している。

一日が24時間じゃ足りないと思えるくらいだ。

 

友達が一人できた。名前は蜘蛛異 繭(くもい まゆ)。

異形系個性で幼稚園では自分と同じように嫌がらせにあったという女の子だ。

見た目としては腕が六本に目が八つという蜘蛛型個性だ。

女の子には残酷な個性だろう。

 

まあ前世でいろいろと飼育していた俺としては全く気にすることではないが。

 

「とばみ君はこんな私でも気持ちがったりしないでいっしょにあそんでくれるよね。どうして?」

 

それは彼女なりの純粋な疑問だろう。彼女はすごく大人しいというかつつましいというか、そんな性格だ。

 

「どうしてって、一緒にいて楽しいからに決まってるじゃん」

 

「気持ち悪いと思はないの?」

 

「思わないよ。繭ちゃんは気にしてるかもしれないけど、その瞳だってつぶらで綺麗だしその腕でいろんなことができる。この前だって巣から落ちた雛を元に戻してあげてたでしょ」

噂では繭ちゃんが雛を食べたってことになってて、教師には報告したけど。

 

「え、っと」

繭ちゃんが泣き出してしまった

「家族以外の人からそんなこと言われたの初めてで、うれしくて」

 

「よかった。何か傷つけるようなこと言っちゃったかとおもったよ」

言葉だって立派な暴力になるからな

 

そんなこんなで初めての友達は女の子で、母さんはなんでかしらないけど喜んでいた。

家に呼んでくるようにも言われたり・・・

 

 

 

最高の誕生日や夢を応援してくれる両親

初めての友達

なんて幸せな日々なんだろう

これが当たり前だなんて思わないで毎日を過ごしていこう

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

繭ちゃん

全話の最後と今回の最後の繭ちゃんとの会話で、重なる部分がありますがご容赦ください


小学校に入学後、繭ちゃんという異形系(蜘蛛)の友達ができた。非常におとなしくつつましい。そのうえ優しい。

 

だが周囲はその見た目から嫌悪し、近づこうともせず剰え悪口を広めるありさまだ。

 

人は見た目じゃない。そういうことがわかるのはもう少し年を重ねるか、直接その優しさにふれるかのどちらかだと俺は思っている

 

巣から落ちてしまった雛を、繭ちゃんが巣へ戻すという出来事があった。

それを見ていた周りの生徒が、繭ちゃんが雛を食べるために巣へ向かったと非常に悪いうわさを流した。

 

正直はらわたが煮えくり返りそうだった。

直接の暴力は何があってもしてはいけない。ヒーローを志して来たからそう思ってしまう。

今の自分にできることは噂の鎮静化と、教師への報告だ。

 

人の噂も七十五日というが噂で傷ついた繭ちゃんの心の傷は治らない。だから少しでも側にいて支えよう。

 

 

 

繭ちゃんは次の日から学校に来なくなってしまった

そこでクラスの担任が、普段仲良くしている俺にプリントを届けてくるように頼んだ。

はっきりってこの教師はあまり好きになれなかった。

俺の見た目に関してもそうだが、繭ちゃんにも似たような目で見ていたからだ

 

でもいまは何より繭ちゃんのことが最優先だ。

教師からプリントを受け取り住所を教えてもらい、学校が終わり次第すぐに向かうことにした

 

俺はこの現代においてこの情報管理に危機感を覚えるのであった

 

住所を確認してみると俺の家から数件離れたところに繭ちゃんの家があるようだった。

世間は狭いというか、まぁ同じ学校に通っているのだからこういうこともあるだろう。

蜘蛛異という表札を見つけたのでインターフォンを押した。

 

「すみません。繭ちゃんと同じクラスの口多吐喰といいます。繭ちゃんにプリントを持ってきました」

そういうと「あらあら」という声が返ってきた。

 

玄関のドアが開き、繭ちゃんの母親らしき人物が出てきた

 

「初めまして。繭の母の女郎(じょろう)といいます。あなたが吐喰君ね。繭からよく話は聞いているわ。いつも仲良くしてくれてありがとう。プリントを持ってきてくれたみたいだけど、いったんお家に上がっていかない?」

 

そういわれたが冷静になってみると昨日の今日で会うのも繭ちゃん的にどうなのかと思った。

 

「初めまして!あの、繭ちゃんは大丈夫ですか?」

 

そういうと女郎さんは

 

「そうね、今は部屋に閉じこもってるわ。でも吐喰くんと会ったら繭も元気になるとおばさん思うの。だから繭に会ってくれないかしら?」

 

そういわれて断れるはずもないし断りたくなかった。

 

「もちろんです!それじゃあおじゃまします!」

 

靴をしっかりそろえて繭ちゃんの部屋の前まで連れてきてもらった。

 

「繭、お友達の吐喰君が来てくれたわよ」

 

おばさんは僕に小声で「あとは任せてもいいかしらといったので」、間を置かず「はい」と返事をした。

 

 

おばさんから俺が来たと聞いて、部屋からガタガタっと音がした

でも一向に繭ちゃんからの返事がなかったので、俺から話しかけてみることにした。

 

「繭ちゃん。学校のプリント持ってきたよ」

 

そうすると返事があった。

 

「ありがとう。部屋の前に置いておいて」

 

いつもの繭ちゃんから感じられる優しさがなかった。

当たり前だよな。でも俺はこのまま帰ったりしない。

もしかしたら逆に傷つけることになるかもしれないが放ってはおけなかった。

 

「繭ちゃん、僕の話を聞いてほしいんだ。僕は繭ちゃんが周りの人が言っているようなひどい子じゃないって信じてる。僕はヴィランみたいな見た目で幼稚園でいじめられていたんだ」

 

その言葉を聞いてか否か、部屋の中で息をのむような声が聞こえた

 

「それでね、なんだか生きるのが嫌になっちゃって、高いところから飛び降りたの。何とか助かったけど記憶がなくなっちゃってお父さん、お母さんにいっぱい心配かけちゃったんだ」

 

そういうと部屋のドアが開いた

 

「とばみくん、それってほんとうなの?」

 

「うん。だから傷ついている繭ちゃんを助けたいと思ったんだ」

それはヒーローになりたいだからとかそういうことじゃなかった。純粋に助けたいと思った。どうしてこんなに優しい子が傷つかなければいけないのか、それが納得できなかった。

 

繭ちゃんは言った

「みんな私のこと気持ち悪いっていうの。ヴィランだって。それなのに一緒にいてくれたり、遊んでくれるのはどうして?」

 

繭ちゃんの目から涙がポロポロ流れていた」

 

だから俺は言った

「どうしてって、一緒にいて楽しいからに決まってるじゃん。繭ちゃんは気にしてるかもしれないけど、その瞳だってつぶらで綺麗だしその腕でいろんなことができる。この前だって巣から落ちた雛を元に戻してあげてたでしょ。それは繭ちゃんの個性があったからできたことだよ。だから僕は気持ち悪いとか、ヴィランだって思ったりしない。それにヴィランみたいなら僕の方だよ」

 

 

涙を流しながら

「家族以外の人からそんなこと言われたの初めてで、すごくうれしい。でもとばみ君こそヴィランなんかじゃないよ!だってこんなにやさしいもん!」

そう声を張り上げていた

 

「ありがとう。もしよかったらだけど明日から一緒に学校にいこう?ぼくの家と繭ちゃんの家ってすごく近かったんだ」

 

繭ちゃんの目にはもう涙は浮かんでなくて「うん!」と返事をしてくれた。

 

時間も時間だったのでお暇することにした

 

おばさんに挨拶をしていたら繭ちゃんも玄関まで来てくれた

 

「とばみ君、今日はありがとう!明日は一緒に学校に行こうね!」

 

それを聞いていたおばさんはまた「あらあら」と嬉しそうに言っていた

 

「うん。それじゃあまた明日!」

 

 

 

 

 

帰宅するとどうして帰るのが遅くなったのかを聞かれて、詳しく話すと頭をなでて「よくやったわね」といってくれた

ついでに

 

「その繭ちゃんって子、今度は家に連れてきてね!」

母さんは妙に張り切っていた

 

 

 

改めて偏見という現実を知った

そのうえで繭ちゃんを救えたと思う

でもこれからだ。繭ちゃんのことも、偏見で決める世界のことも

少しだけだけど、目標が見つかったような気がする

 




どうだったでしょう
物語的にはあまり進んでいませんが、主人公的には大きな一歩です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

繭ちゃん2

繭ちゃんと一緒に登校する日

 

少し早めに家に向かうと、既に家の前に繭ちゃんの姿が見えた

 

 

「おはよう、繭ちゃん。もしかして遅れちゃったかな?」

 

 

繭ちゃんは少し顔を赤くして

 

「ううんっ!その、とばみ君と一緒に行くのが楽しみで、」

 

 

あ、可愛い

 

手を前で組みながらモジモジしている

ついでに蜘蛛の足もわちゃわちゃ動いてる

 

素直というか、隠しきれてないですよ繭ちゃん

 

 

 

「そっか!それならよかった!じゃあ行こっか」

 

 

二人で歩いてはいるが会話がない

 

多分繭ちゃんは学校が怖いのだろう

昨日の今日で行っても噂は収まってない

 

 

俺は俺で学校に着いたらどうしようかと悩んでいる

できる限り一緒にいるのは確かだが、俺もヴィランに見えるのに一緒にいて大丈夫なのか

そんな考えが頭をよぎる

 

 

「ねぇ、繭ちゃんは僕と一緒にいて嫌じゃないかな?」

 

 

驚いた顔でこちらを見ていた

 

 

 

「僕って昨日も言ったように見た目はヴィランでしょ?それで繭ちゃんも同じように見られたらって考えたら、どうなのかなって」

 

 

 

それを聞いた繭ちゃんは少し怒ったような口調で

 

「とばみ君はヴィランなんかじゃない。だって私を助けてくれたヒーローだもん!」

 

 

その言葉に衝撃を受けた

 

 

そっか、俺はちゃんと繭ちゃんの心を助けられたのか

ヒーローってこんな感じなのか

決して優越感とかではない

でもすごく心が踊った

 

 

 

「そこまで言ってくれて嬉しいよ!じゃあこれからはずっと繭ちゃんのヒーローで居続けるね!」

 

 

これまた顔を真っ赤にして

 

「ずっと!?」

 

 

 

「うん!」

 

あ、これってプロポーズって言うか告白みたいだな

まぁ小さい頃に将来結婚するって約束して、結局忘れてるパターンだから気にしなくても大丈夫だな

 

 

 

「えへへ、そっかぁ。私がとばみ君とずっと・・・」

 

 

どうやらすごく嬉しそうだ

 

 

 

そんな話をしていたら学校が見えてきた

 

繭ちゃんが怯えるように俺の制服の端を掴んできた

 

 

「大丈夫だよ、僕が一緒にいるからね」

 

 

「う、うん。でも怖いよ」

 

今にも泣きそうだった

 

 

「大丈夫、繭ちゃんのヒーローがいるんだから!」

 

少しでも気を紛らわせる言葉をかける

 

 

「そ、うだよね。とばみ君は私のヒーローだもんね」

 

 

少し元気が出たようだ

よかった

 

 

 

校門をくぐりると周りの視線が気になる

 

どうやら噂は学校全体に広がっているようだ

 

 

下駄箱に靴を入れ教室に向かう時は、もっと視線が強くなった

だけどこちらは何も悪いことはしていない

心無い噂に踊らされているだけの人達だ

 

 

クラスに入ると、一瞬で会話が無くなった

 

目を逸らすもの、凝視するもの様々だ

 

 

裾を掴む手に力が入った

 

 

「大丈夫」

 

力強くそう言った

 

 

 

 

だが、机の前に着くと繭ちゃんは涙を流し、俺はキレた

 

 

机には化け物だのヴィラン、早くヒーローに捕まれなど幼稚ではあるものの、心を傷つけるには十分なものだった

 

人はここまでこうなれるものなのかと、前世と何も変わらないと思った

 

 

 

「おい!これを書いたやつは誰だ!」

 

さすがに我慢できなかった

直接文句を言うなら、その場で誤解を解くことは出来るかもしれない

だがこれを書いたヤツらは、卑怯だ

自分の言いたいことを言って、あとは傍観者気取り

 

 

さすがに俺が怒鳴り声をあげるとは思わなかったのだろう

 

周りからは「っひ」と怯えたような声や、ガタッと音も聞こえてくる

 

 

「言いたいことがあるなら直接言えよ!こんなの卑怯だ。こんなことをする方がヴィランだ。繭ちゃんは噂通りのことをする子じゃない!とても優しい女の子だ!」

 

 

頭で考えた言葉がそのまま口に出る

本当に許せなかった

どうしてこんなに優しい子が、心無い悪意に晒されなければならないのか

だったら泥を被ろうとなんだろうと、俺が解決してやる

 

 

「ヴィランに見えるなら俺の方だろ?なのに、なんで俺の机にはそれが書いてない?怖いんだろ。反撃出来ない女の子しか標的にできないクズが」

 

 

 

この言葉には繭ちゃんも驚いてしまったみたいだ

 

普段の話し方と全く変わってしまったことに気づいた

 

 

だがここで運がいいのか悪いのか、教師が少し慌てたように教室に入ってきた

泣いている繭ちゃん、キレている俺、ビクビクしている周りの生徒

 

さぞ慌てたことだろう

 

 

 

「一体どうしたの!?」

 

 

教室を見回しても、誰も答えない

 

だから俺が答えた

 

 

「このクラスの誰かが繭ちゃんの机に落書きしたんです。これ見てくださいよ」

 

 

そう言って教師をこちらに呼んだ

 

 

さすがに一年生でこんなことをやるとは思わなかったのか、教師も驚いていた

 

 

「これは本当にクラスの子がやったの?それとどうしてみんな黙っているの?」

 

 

当然の疑問だろう

 

それと確実にクラスメイトがやったかどうか分からないのに、俺がいった言葉は間違いだった

 

 

「それは分かりません。でもそれを見た時に、こんなことをする人がいるのかと思って、僕がみんなに卑怯だって言ったんです」

 

 

 

教師は納得したかのような顔で言った

 

 

「そういう事だったのね。とりあえずこのことは先生たちがどうにかするから、吐喰君は大人しくしていて」

 

 

 

やはり俺の見た目が大きいのだろう

あれ以上ヒートアップしていたら、俺がこのクラスにいることを怖がる子が多くなっただろう

多分現状でも多いだろうが・・・

 

 

 

教師のいった言葉は至極当然な事だ

でもこいつも見た目で判断することはわかっている

だがこれ以上俺のできることは少ない

 

 

 

「わかりました。でも早く繭ちゃんの誤解を解いてください」

 

 

 

その後教師はクラスから出ていき、数分後全校集会が行われることがスピーカーから伝わってきた

 

 

 

「ごめんね繭ちゃん、僕怖かったよね」

 

 

「ううん、とばみ君は私のために言ってくれたことだもん。最初はびっくりしたけど、うれしかったよ」

 

 

目が赤く腫れながらも笑顔でそう言ってくれた

繭ちゃんは優しいだけじゃなくて強い子なんだな

 

 

 

全校集会では、繭ちゃんの行ったことを詳細に説明し噂は全くの誤解だということを生徒たちに伝えた

 

 

下校時間となり、繭ちゃんと今朝通ってきた道を歩いていた

 

 

「とばみ君、今日はありがとう」

 

 

「ううん、僕は何もしてないよ」

 

 

「違うよ、とばみ君がそばにいてくれたこと、周りに言ってくれたこと、わたしうれしかったもん」

 

 

「そっか、それならよかった」

 

 

 

お互いに今日のことを振り返り、繭ちゃんを家まで送って帰宅した

 

 

母さんは今日も学校であったことを聞き、女の子を守ったことに関しては褒めてくれたが、俺が怒ったことには注意してくれた

 

やはり次のターゲットが自分の息子にならないようにだろう

 

 

今日得た教訓を忘れずにヒーローを目指そう

 

 

 

 

 

数日がたち悪口などは無くなったが、やはり視線を感じる

 

だが、ハッキリと教師たちから誤解だということを伝えられ、傍には俺がいる

直接なにか言ったり、机や物に落書きはなくなるだろう

これもひとえに俺の見た目のおかげかもな

 

 

だがびっくりしたことに、俺が傍に居ても繭ちゃんに謝りに来た子やその場で友達になったことがあった

 

お零れで俺も友達になれた

 

見た目は怖かったようだが、中身は怖くないということが、この前の出来事でわかってくれたようだ

 

 

はぁ〜、よかった

 

広く浅くより狭く深く派の俺としては友達は繭ちゃんだけでも良かったが、俺が側に入れないときや、繭ちゃんには俺以外の友達も必要だろう

 

 

 

 

入学して一年も経ってないのに濃い日々だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、あと繭ちゃんから告白された




感想、評価随時募集中です



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

訓練&小さくても女です!1

繭ちゃんから告白された

衝撃的というかアンビリバボーだ

 

 

と、とりあえず告白に至るまで何があったか遡ってみよう

 

 

 

 

 

 

 

噂の収束はしてないものの、事実をしっかり理解して謝りに来る子や、友達になってくれる子も出来た

 

 

とてもいいことだなぁと、横で微笑んでいるとどうも俺とも友達になってくれる人もいた

 

俺=ヴィランみたいなイメージがあったから、驚いた

 

 

そのことを繭ちゃんに伝えると

 

 

「何いってるの?とばみ君はやさしくてわたしのヒーローなんだよ?友達100人どころかもっともっと友達できるよ!」

 

 

もうニッコニコしなが言っている

 

 

 

個人的には友達なんて繭ちゃん以外にできるとは思ってもみなかったからなぁ

 

それに繭ちゃん、何気俺が言った「繭ちゃんのヒーローで居続ける」ってことだいぶ気に入ってるみたい

 

 

 

でもヒーローって言ってくれることは俺も嬉しい

 

なんか「私のヒーロー」って言うと特別にも感じるんだよな

 

 

 

 

 

繭ちゃんに友達が出来て数日が経ち、どうやら俺=繭ちゃんのヒーローってことがクラスに定着しつつある

 

え?なんで?

 

 

どうやら友達に俺が繭ちゃんにしたことを伝えまくってるようだ

 

何気繭ちゃんって独占欲というか、なんだろうな

 

いやいや、あの繭ちゃんがそんなことないよな?

 

 

本当にないよな????

 

だってあの心優しく慎ましい繭ちゃんだからね

 

うん、大丈夫だ

 

 

まぁ後日判明したことがあるがそれは後で説明しよう

 

 

 

 

母さんから、早く繭ちゃんを連れてきなさいと言われ続け、ついに俺の家で遊ぶ日が来てしまった

 

なんか、母さんすごい勢いだったよ?

 

 

 

「今日はとばみ君の家で遊ぶの楽しみだなぁ。でも私が行っても大丈夫かな?」

 

 

うーん、やっぱりまだ見た目を気にしているようだ

 

 

 

「大丈夫だよ。母さんには繭ちゃんのこと伝えているし」

 

 

そう言った途端繭ちゃんが俺の前に立ふさがるように来て

 

 

「どんなこと伝えてるの!?悪い子だと思われたりしてないかな、」

 

 

いきなり正面にこられてびっくりしたがそういう事か

 

 

「大丈夫大丈夫。繭ちゃんが優しくていい子だってことを伝えただけだよ」

 

 

 

「そ、そっか」

 

(うぅ、余計にドキドキするよぉ)

 

その後繭ちゃんが何かボソボソ言ってたような気がしたけどまぁ空耳だろう

 

 

 

繭ちゃんが俺の家に来ることはおばさんに伝えてあるし、夕方くらいまでなら遊べるだろう

 

だけど遊ぶものってあんまりないんだよなぁ

 

 

そんなことを思いながら自宅に着いた

 

 

 

「ここがとばみ君のお家!?すごくおっきい!!!!」

 

 

うん、それは俺も同じ気持ちだよ

 

今でも大きすぎて慣れないからね

 

 

「うん、まぁ、そうだけど僕の部屋とかはそんなに広くないし、見た目だけだよ」

 

 

謙遜だ。俺の誕生日プレゼントのことを思い出して欲しい

 

あのレベルとまでは行かないが、高そうなものがあってなかなか触れない

 

自分の家だがそこら辺はまだなぁ。元々貧乏性だったから尚のこと慣れない

 

 

 

「そうなんだ、でもやっぱり大きいなぁ」

 

ぽけーっと家を見つめていて、このままだといつまでもこうしてそうなので

 

 

 

「早く家に入ろ!」

 

 

そう促して繭ちゃんを連れて帰宅した

 

 

「ただいまー!」

 

 

そうするとパタパタと足音が聞こえてきて、母さんが玄関まで来てくれた

 

 

「おかえりなさい。それと横にいる可愛い子が、吐喰がよく話してくれている繭ちゃん?」

 

 

 

母さんの言葉を聞いて顔が赤くなりながら繭ちゃんは母さんに挨拶をした

 

 

「おじゃまします!あ、あのはじめまして。とばみ君の友達の繭って言います。よろしくお願いします!」

 

 

 

何をよろしくするんダロウネ

 

何となくだけど、俺も鈍感じゃないから・・・

 

でもまだ小学一年だし・・・

 

 

 

「はい、よろしくね繭ちゃん。吐喰と仲良くしてくれてありがとう。この子なかなか友達が出来なくて心配していたんだけど、繭ちゃんみたいないい子が友達でいてくれるなんておばさん嬉しいわ」

 

 

 

「そ、そんな私なんて。私の方がとばみ君に仲良くしてもらってて凄く嬉しいし楽しいです!」

 

 

 

うん、玄関で長話はやめようか

 

そろそろ止めるとしよう

 

 

「母さん、そろそろ僕の部屋に行っていい?」

 

 

 

「あら、せっかくの繭ちゃんと遊べる時間を邪魔しちゃってごめんね」

 

 

母さんそれ中身が俺じゃなかったら拗ねられてるよ

 

 

 

「夕方までしか遊べないから!」

 

 

 

そう言って繭ちゃんの手を掴み自室へと向かった

 

 

 

咄嗟に手を掴んでしまったが

 

後ろを向いてみると、俯きながらも少し顔が見えている

 

真っ赤に染まっていた

 

 

あー、あー、

 

うん大丈夫、何が大丈夫なのかわからないけどとりあえず大丈夫だ

 

 

 

階段を登りきり、自室へと入った

 

 

「ここが僕の部屋だよ。何も無いけどね」

 

 

改めて自分の部屋を見てみると、筋トレ器具や日々のスケジュール表、ノートパソコン

 

 

小学生らしからぬ部屋だ

 

どうやって遊ぼう

 

困った、非常に困った

 

 

 

「繭ちゃん、なにかしたいこととかある?」

 

 

情けないけど繭ちゃんに頼ることにした

 

 

 

「えっと」

 

部屋を見渡しても何も無いことはわかっている

 

繭ちゃん、それは俺がさっきしたことなんだ

 

 

 

「その、とばみ君は個性の訓練をしてるんだよね?それって見せてもらうことできる?」

 

 

え?そこ?

 

なにかおままごととまで幼稚なものでは無いが、俺の訓練なんか見て何が楽しいか分からない・・・

 

 

「たぶん見ててたのしくないよ??それに他にしたいこととかない?」

 

 

そう聞いてみるが

 

 

「ううん、見てみたい」

 

 

引く様子はないようだ

 

 

「わかった。でも本当に見てて楽しくないからね?とりあえず母さんのところ行こっか。1人で訓練は禁止されてるから」

 

 

 

そう言って自室を出て母さんに事情を伝えて、訓練場に向かった

 

 

母さんと繭ちゃんはなにか楽しそうに話しているが、俺はスーツやサポートアイテムを付けるためその場を離れた

 

 

 

黒をメインとしたスーツを着て、原作の『緑谷 出久』のような手袋やブーツ、また1番大切な許容上限表示アイテムを目を覆うように付け、訓練場に出た

 

 

 

「お待たせ繭ちゃん」

 

 

この姿になるとやはり気合と死ぬかもしれない可能性があるため緊張感が走る

 

 

「それがとばみ君のヒーロー姿!?かっこいい!!」

 

 

お、おう。トレードマークが口にだからヴィランっぽいけど、繭ちゃんの目にはかっこよく見えるらしい

 

 

「ありがとう。それじゃあちょっと普段やってることをしてくるから見てて」

 

 

 

「う、うん!がんばって!」

 

 

 

「吐喰、気をつけなさいよ」

 

 

 

「うん、わかってる」

 

 

そう言って多少のウォーミングアップをし訓練を開始した

 

 

今のトレーニングは収納上限を増やすことと、取り込んだものを緩急を意識して吐き出すこと、そして自分の移動に関してだ

 

ただそこに立っているだけではダメだ

 

視認が難しい相手と対峙した時に、応戦または生き延びる力が必要になる

 

 

 

まずは訓練に置いてある岩などに手を触れ取り込む

 

いくらスカウターのような物があっても、最終的には自分の感覚しだいになる

 

亜空間、体内に入るのとはまた別の感覚が体全体に広がる

 

現在俺の収納可能な容量は3畳程度の広さだ

 

父さんにはこの歳でこれだけ収納出来るのは凄いことだと、頭をわしゃわしゃされた

 

 

取り込む時は父さんのように取り込むと言うよりは、母さんの個性を使って取り込んでいる

 

やはりいっぺんに収納出来るサイズのものを収納していても、周りの空気も一緒に取り込んでしまう場合がある

 

そのせいで身体中に傷跡が残っている

 

 

まずは少しづつでいいんだ

 

ガキっ、バキッと音を立てて岩が削れていく

 

次第に収納するサイズを大きくするため、身体中にある口を1箇所に集めるように強く意識する

 

すると今までと比べ物にならないサイズで石が削り取られた

 

いや、喰われたと表現した方が正しいだろう

 

収納されてない岩には喰われたような跡が残っている

 

 

そこで一旦集中をきる

 

だいたい空気を含めて八割りほど容量が埋まっている

 

残りの二割は空気で埋めていく

 

少しづつ少しづつ、慎重に取り込んで、スカウターが赤く染まり、98%という数字が表示された

 

やはり父さんのおかげだな

 

かなり精密に測ってくれている

 

これのおかげで父さんが居なくても、収納の訓練が出来ている

 

だが、後1%

 

そこが運命の分かれ目だ

 

 

残り2%と残り1%では、個性の成長に大きな差がある

 

100%になると暴発の危険がある

 

0.00001%でもオーバーしたら死だ

 

 

 

本当に慎重に慎重に

 

そして99%になった瞬間に、誰もいない空間に向かって岩を放出する

 

 

バゴッ!!!

 

と大きな音を立てて土煙が上がる

 

ちなみにここは防音のため周囲に迷惑をかけることは無いので安心だ

 

 

今の俺には収納限界ギリギリの状態で放出する速度をコントロールすることは難しい

 

なので毎回俺のこれ以上は不味いという拒否の意識があるため、放出する速度も体に負担が掛かる

 

 

とりあえず収納の訓練はここまで

 

 

次は放出速度の訓練だ

 

拳大の岩を取り込んで数十メートル先にある的に向かって放出する

 

俺の今の限界速度は約120キロ

 

ただその速度だと腕が悲鳴をあげるため、基本は110〜118キロで放出する

 

ちなみにその速度もスカウター様のおかげで分かるようになりました

 

いきなりその速度では腕が壊れてしまうため、ウォーミングアップで50キロなどで少しづつあげていくが

 

 

身体中の口を1箇所に集めるように、逆に意図的に場所を決めて散らばせることも出来る

 

まぁそれはこの訓練では使わないが

 

 

手や顔の口を意識しそこから放出する

 

本来なら後ろや横、斜めなども放出することがあるが、さすがに後ろには母さんと繭ちゃんがいるため、今回は正面だけだ

 

 

次はランニングや腕立て伏せなどの筋トレ

 

基本は大切だ

 

 

それが終わったら移動に関する訓練だ

 

 

パルクールと、足や手に口を出現させ、そこから空気を放出し、3次元的な動きをする

 

 

これは身体に空気を取り込みながら行う

 

限界ギリギリまで意識しなくていいため、最初の訓練よりは楽だ

 

まぁバランスを崩せば骨折などもありえるが

 

 

このアイデアはオールマイトの師匠を思い出して始めた訓練だ

 

 

三半規管が鍛えられる

 

最初の頃は空中でバランスを崩し大変だった

 

 

これらをメインとし、クールダウンをして一日の訓練を終える

 

 

ちなみに繭ちゃんがいるため今回はだいぶ少ない時間でこれらを行った

 

 

 

 

〜母&繭side〜

 

 

「あの、いつもとばみ君はあんなことを?」

 

 

「そうね、最初は大変だったのよ?あの子ったら加減がわからなくて大怪我しちゃって。でも私や旦那のようなヒーローになるって言って諦めなかったの。だから私たちはそれを全力で後押しすることに決めたの」

 

 

それを聞いて繭は大きく目を見開いた

 

 

「おばさんってヒーローだったんですか!?それよりもとばみ君が大怪我って!?」

 

 

それを聞いた母はくすくすと笑って

 

 

「もう引退しちゃったんだけどね。あと吐喰はそのことをしっかり忘れないで、ああやって訓練してくれるから私達も少しは安心してみていられるの」

 

 

「それにしても繭ちゃんは吐喰のこと大好きなのね」

 

 

 

それを聞いた繭は今までで1番顔を真っ赤にしていた

 

 

「ど、どうしてわかったんですか・・・?」

 

 

「それは同じ女だからかな?と言うよりは繭ちゃんわかり易すぎよ。たぶん吐喰も気づいていると思うわ。あの子は妙に鋭いからね」

 

 

 

「え、え!?バレちゃってるってことですか?!」

 

顔を青ざめてそう言った

 

 

それに対し母は

 

「大丈夫よ。吐喰は気付いてて一緒にいる。少なからずあなたのことを嫌ってることはないわね」

 

 

「本当ですか???」

 

 

 

「本当よ。繭ちゃんのこと毎日家で話すくらいだからね」

 

 

くすくすと母は笑う

 

 

 

「それじゃあとばみ君も私といっしょなのかな・・・?そうだといいな」

 

 

 

 

〜母&繭sideout〜

 

 

 

やはり短い時間でも相当に気力と体力を使うな

 

訓練中は母さんと繭ちゃんが何を話していたのか全然分からないが

 

 

繭ちゃんがタオルと飲み物を持ってこっちへ走ってきた

 

母さんに言われて持ってきてくれたのだろう

 

 

 

「とばみ君!お疲れ様!すごくかっこよかったよ!」

 

 

すごくいい笑顔でそう言われた

 

かわいいなぁ

 

 

「ありがとう!でもまだまだなんだよね」

 

 

これは本心だ

 

これじゃまだ足りない

 

 

「とばみ君はすごいよ」

 

 

真剣な目でそう言ってくれた

 

 

「そうかな、ぼくはまだ・・・」

 

 

 

「けんそん?はしちゃダメだよ!」

 

そう言って持っていたタオルで汗を拭いてくれた

 

 

この行動にはびっくりしてしまった

 

 

「あ、ありがとう」

 

 

「ううん、どういたしまして」

 

 

 

精神が身体に引っ張られているのか、繭ちゃんのことが魅力的に見えて仕方がない

 

 

 

 

 

訓練を終えてリビングに行った

 

 

「吐喰、今日もお疲れ様」

 

 

「ありがとう、母さん」

 

 

 

「なんかごめんね、一緒に遊ぶって言ったのに」

 

遊ぶって言ったのに訓練見せるって、どんなだよ

 

 

 

「ううん、普段のとばみ君を見れて私は嬉しかったな」

 

 

 

あー、やべぇよ

 

小学一年生でこんななのか?

 

これはヒロアカ世界特有なのか?

 

 

「そっか、そう言ってくれるとこっちも嬉しいよ」

 

 

 

 

 

それから他愛もない話をしていると、繭ちゃんが帰る時間になった

 

 

 

 

「じゃあ送ってくるね」

 

 

「気をつけなさいね、繭ちゃんもまた遊びに来てね。おばさん楽しみにてるから」

 

 

「はい!今日はありがとうございました!」

 

 

 

繭ちゃんの家は本当に近いのであっという間に着いてしまった

 

 

 

「今日は送ってくれてありがとう!また遊ぼうね」

 

 

「うん!今度はちゃんと2人で遊べようにするね」

 

笑いながらそう言った

 

 

「うん!それじゃあまた明日!」

 

 

「うん!また明日」

 

 

 

そう言って別れた

 

 

 

 

 

 

 

〜繭side〜

 

 

とばみ君は今日もかっこよかったなぁ

 

私を助けてくれた時から、すぐ好きになってしまった

 

私だけのヒーローでいてくれるなんて(キャー)

 

お母さんに相談したらグイグイ行きなさいなんてアドバイスまでされてしまった

 

 

うん、とばみ君は私の運命の人!

 

本当に大好き!

 

とばみ君のお母さんも、とばみ君が私のこと嫌ってないって言ってたし・・・

 

 

早く好きって伝えたいなぁ

 

 

 

 

 

 

 

〜繭sideout〜

 




どうだったでしょうか
感想、評価お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

繭のアプローチ&痛みの始まり&繭

繭ちゃんが家に遊びに来てから、数か月が経った

あれからの日常に大きな変化はない、というかあった

まず繭ちゃんのスキンシップが多くなったこと、そして俺が上級生からの嫌がらせがあったことだ

 

まず繭ちゃんについてだ

あの日以来、どうも母さんに何か言われたのか、それとも自分の中で大きな変化があったのか登校時に手を繋いで来たり、学校の休み時間とかでも側にいるようになった。

俺や繭ちゃんの見た目に慣れたからか、夫婦だとはやし立てる男子もいた

しかし繭ちゃんは一切それを否定することなく、ニコニコしている

 

 

流石に付き合っているわけでも、まして夫婦になったわけでもないので俺がやんわりと違うと否定すると、繭ちゃんが悲しそうな目でこちらを見てきた

 

それ以来俺は否定することをやめた

繭ちゃんって本当に小学一年生?

女の子なのに女って感じがするよ

いや女なんだけど精神年齢的にね・・・

 

繭ちゃんは半異形型個性のため、目の上に目がついており牙が露出している

腕は人間の腕プラス大型の蜘蛛の腕が左右、合計四本の腕がある。足は人間の足だ

 

おばさんはジョロウグモという感じだったが、繭ちゃんはタランチュラという感じだ

目の位置や人間の腕や足があるということは、先祖血が濃く出たか、ミューテーションだろう

 

タランチュラは毒のある毛を飛ばすことができる

つまり足についている毛が飛ばないように、サポートアイテムがついている

 

これにより周りに毒を飛ばすこともないし、俺が近くにいても問題がない

繭ちゃんが側にいることによってクラスメイトが近づいてくることがない

 

まぁ問題ないけど、やっぱり繭ちゃんは独占欲が強いのかな?

 

 

 

そんなこんなで学校生活=繭ちゃんと一緒にいるという構造ができあがった

 

 

 

次は俺に関することだ

繭ちゃんの一件以来、どうも見た目に反して中身は違うということがわかり、俺のようなヴィランを退治するといいと言う輩が出てきた

 

机に落書きなどはまた全校集会や何かしらかの罰が自分たちに降り注ぐことを理解しているのか、下駄箱や周りに見られないようなとことに嫌がらせや、呼び出しの手紙が入っていた

最初は無視をしていたのだが、手紙に繭ちゃんや両親のことが書いてあった

 

俺事態を蔑むのはいい

だが関係のない人たちや、俺が一番大切な人たちが蔑まれるのは違う

だから繭ちゃんと帰る誘いを断り、手紙に書いてあった場所に行った

 

場所は体育館裏とかベタな場所ではなく、人気のない住宅街を進み林のような場所についた

 

そこでまっていたのは上級生6人

 

「よーやく来てくれたな化け物ヴィラン」

 

「お前の周りでうろちょろしている気色悪い蜘蛛とママのことをバカにされてやっときたんですかー???」

 

そういってゲラゲラと笑っている

正直な部分こいつに生きている価値を見い出せない

前世からもそうだった

なぜこういった輩が生きている?

他人を貶し、自分たちが楽しめればいい。他人のことなんて考えていない

暴力を振るわれ負った傷はいつか治る。でも振るわれた事実、言葉の暴力

他人には人の心が見えない

たった一つの言葉が後押しになって死んでしまうこともある

 

前世で学んだことだ

 

ヒーローになりいろんな人を助けるという目標もある

でも俺の心にはこういった黒い面もある

正直自分はどちらにも傾く存在だと思っている

それがヴィランの方に傾かないのは、大切な人がいるからだ

 

その人たちが貶された。蔑まれた

 

この場でこいつらを叩きのめすのは簡単だろう

とりあえずはあいつらが攻撃してくるのをかわし続けよう

 

「言いたいことはそれだけか?たしかにお前らが言ったように、繭と母さんが蔑まされたからここに来た」

 

「だがお前らは俺一人に対し六人で来て恥ずかしくないのか?まるでチンピラだな」

 

 

笑いながら言った

だが心は煮えくり返っている

 

 

「てめぇ!ふざけたこと言ってんなよ!!」「クソガキがっ!」

「ぶっ殺してやるっ!」

 

 

そういってあいつらは俺に向かってきた

 

現時点で訓練場、緊急事態などを除いて個性を使うことはない

とりあえずパルクールなど、ここでは生かしやすい場所だ

遊んでやるか

 

 

あいつらは躊躇いもなく個性を使ってきた

水や腕を伸ばすもの、声で三半規管を狂わすもの

 

だがどれも俺には通じない

個性の練度が違う

さらに普段の訓練での成果、そして林という俺の動きやすい場所

 

二十分も経つと六人の息が荒く、個性の使えないものが多くなっていた

個性の訓練をしていないと、使用時間や回数が少なくなる

 

「どうした?終わりか?」

 

そういう俺はまだまだ余裕だ

こんなもの一割にもなっていない

 

だがここで状況が変わった

 

 

「っ!いつまでも、避けてんじゃ、ねーよ」

 

『お前が無理なら、あの蜘蛛女だな』

誰かがそう言った

 

 

 

 

コロシテヤロウカ

 

 

 

 

だめだだめだ!!!!

だがそれはできない!

それをしてしまったら、すべてが終わる

だから俺は避けるのをやめた

 

 

「狙うならバレない場所にしろ」

 

 

そういって立ち止まった

 

「よっぽどあの蜘蛛女のことが好きみたいだな」

「気持ち悪い奴だな」

「まぁこいつも似たようなもんだし、お似合いじゃね?」

 

そう言って俺の体にいくつもの傷をつけていった

だが繭に危害が加わらないならそれでいい

 

 

 

「俺らのこと言ってみろよ、蜘蛛女がどうなっても知らないからな」

「次も呼ぶからたのしみにしてな~」

 

 

そう言ってあいつらはこの場を去っていった

 

 

「クッソ、いってーな」

だがこのことが周りにばれてしまったら、繭が責任を感じてしまう

 

だから俺はこのことを心にしまうことにし、落ち葉や泥をできる限り掃い家へと帰った

 

 

母さんには別の友達と遊び制服を汚してしまったと説明し、身体が痛む中訓練を行い、この日は眠りについた

 

 

 

 

それから何日、何十日、一年と毎日ではないが暴力を振るわれ続けた

 

 

 

 

 

 

~繭side~

 

最近とばみ君と一緒に帰る日がすくなくなっちゃったな

とっても残念

誰と遊んでるかも教えてくれないし・・・

 

でも登校の時は毎朝一緒だからまだいいのかな?

 

でもでもとばみ君って優しいしかっこいいし、他の人に取られたりしないかな?

大丈夫だよね。とばみ君は私の隣にいてくれるもんね

 

信じてるよとばみ君

私の大切なヒーローでオウジサマ?

 

~繭sideout~

 




今回は少し短いですが、話の流れが大きく変わってきました
繭ちゃんの様子も

繭ちゃんのイメージ画像はもうしばらくお待ちください


繭ちゃんの次は主人公のイメージ画像


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな訓練&マユ

休日なので二話投稿です


明日も頑張れたら頑張ります


それと原作開始時と近づけたいため少し時間を飛ばしました


身体に傷が増えていく毎日だった

痛い。あいつらは同じ場所ばかり狙ってくる

 

だが、前世で感じた痛みと今あるこの身体の持ち主が感じた、過去のあの痛みに比べれば蚊に刺された程度だ。

 

 

「よくお前もあの蜘蛛女のためになんか耐えられるな」

主犯格の少年は笑いながらそう言った

 

 

「他人のことを考えられないお前じゃわからないことだよ」

俺も笑って言ってやった

 

 

すると主犯格の少年は、俺に言い返されたことに対し周りの少年たちから笑われていた

 

「っ!お前みたいな気色の悪い奴が俺に口答えしてんじゃねーよ!!!」

 

そう言いながら水球を放ってくる

 

 

水球をくらい俺は吹き飛ばされる

だが俺にダメージはほとんどない

 

 

俺に対する嫌がらせはすでに二年が経過していた

二年だ。二年も経ってただ相手の攻撃をくらっていたわけではない

 

まず水球が当たる瞬間に、当たる場所から口を移動させ空気を吐き出す

水球と空気弾の衝撃で俺は吹き飛ぶが受け身を取る

そのあとにうめき声を出すのを忘れない

ただ全くの痛みがないわけでもないし、直接蹴られたり殴られるときに毎回空気で相殺してるとバレる可能性があるので、直接受ける必要がある

 

 

だが問題はない。この二年間ただ一人で訓練をしていたわけじゃない。父さんや母さん、また繭ちゃんが訓練に参加することになったのだ

 

もちろん収納上限、遠距離収納、射出速度の緩急、三次元的動きの訓練も忘れていない

ただ、これら対人の訓練が開始されたのは最近で、結構ハードだ。

しかも対人訓練を行うといったのは両親のほうで俺としてはありがたかった

 

訓練の結果としては圧倒的な差をつけて俺が負けた。ハイブリット個性で善戦できる自信があった。

だがやはり、経験の差が違う

とてもいい経験になった

 

 

繭ちゃんの訓練に関しては、まず視野を広げること

普通の人の4倍見ることができるということは、焦点を様々なところに向けることができ、予想外の攻撃を察知することができる

他には意識的に毒毛を飛ばしたり、牙から出る毒の調整、糸を使った三次元的運動、糸を使った索敵

糸は蜘蛛の足の部分から出るようだ

個性の要素が大きく出てる部分が背中を基準とした腕なので、お尻から出ることはないようだ

これに関してはとても安心した

 

繭ちゃんはどうやら才能があるらしく、すさまじいレベルで自分の個性をものにしていった

対戦訓練も最近では繭ちゃんと行うこともある

 

繭ちゃんが訓練に来ているということは、一緒にいる時間がさらに増え、家族同士の交流も多くあった。

 

最近ではお泊りも多く、なぜか母さんは繭ちゃんを俺と同じ部屋で寝るように言ったり、繭ちゃんはそれを寿葉ることはない。さらにおばさんも一緒に寝てほしいとお願いしてくる始末だ。

 

ぶっちゃけ付き合っているようなものだけど、お互いに告白など明確な行為は行っていない。友達以上恋人未満って言葉も会わない気がする

 

 

 

そんなことを考えていると終わりの時間がやってきた

 

「今日もご苦労さん」「そろそろ俺らも卒業だし、解放されるぜ。よかったな」

 

そういってあいつらは去っていった

 

 

「ふぅ。ほんと毎回こんなところまでご苦労様だよな」

呆れるが本当にご苦労様だと思う

だけどあいつらが卒業してくれることによってこの行為は終わり、繭ちゃんにばれることはない

 

とりあえずはそこまでの我慢だ

 

 

 

 

 

家に帰ると見慣れた靴があった

俺と色違いの靴だ。つまり繭ちゃんの靴だ。

 

「ただいまー」

 

「「おかえりなさい」」

 

なんか毎回のように繭ちゃんが玄関にいてくれると奥さんというか、毎回家に来てくれるから通い妻みたいだ

 

 

「これから、訓練にする?それともわ・た・し?」

 

 

そう、繭ちゃんは超積極的というかこれはもう告白と取っていいのではないのだろうか

 

むしろ俺が告白しないのが情けないのか

たぶん俺が情けないんだろう

 

「うん、訓練かな・・・」

苦笑いしか出てこない

 

 

訓練場に移動するが着替えるのは、母さんと俺と、そして繭ちゃんだ

おばさんと母さん、父さんで俺と同じようにスーツとサポートアイテムだ

 

繭ちゃんは母子家庭だ

おじさんは昔ヒーローをしていたが殉職してしまったらしい

 

スーツやサポートアイテムはおじさんが使用していたものを改良プラス自動修復機能を兼ね備えた、繭ちゃん専用にしたもので、どこかに通ったデザインである。

トレードマークは蜘蛛だが、俺の特徴である口もデザインされている

これは繭ちゃん要望だそうだ

 

 

三人でウォーミングアップをし、それぞれの訓練を開始した

母さんも感覚を取り戻すと言って、俺らと一緒に訓練している

 

母さんレベルなら感覚を取り戻さなくとも十分なような気もするが・・・

 

 

一人で行っていた訓練よりも充実感と満足感がある

個性の応用もだいぶ身についてきた

収納限界は八畳、射出スピードマックスは約300キロ

立体移動に関しては、よほどの妨害がない限り自由に行える

負担はかかるものの、空を飛ぶことも可能だ

 

 

だが何年も訓練してきた俺と一、二年で対戦訓練を行える繭ちゃんには正直嫉妬する

 

まず訓練を行う際、取り込むものや、繭ちゃんが糸を使い俺に投擲するものはカラーボールのようなものを使用している

 

 

勝率は五分五分だ

まず、繭ちゃんの移動速度が速いこと、そして様々なとことに糸を張り巡らせ、毒毛を飛ばすことで状態異常を付与して来たりする

 

牙でかむことは基本的に禁止

なぜなら一度牙でかまれたことがあったのだが、なかなか話してくれず一日麻痺した状態になった。噛みついていた時の繭ちゃんはどこか興悦としておりゾクッとした

ちなみに麻痺していた時は繭ちゃんにお世話された

どこまでされたかは内緒だ

 

 

 

訓練を終え風呂に入り飯を食って寝る

繭ちゃんはお泊りだ

 

スヤスヤと俺に抱き着いて寝てる

 

 

 

 

転機があったのは俺が四年生となり、誕生日を迎える少し前のことだった

 

 

 

 

 

 

~繭side~

 

ああ、今日も吐喰くんは可愛かったなぁ

かっこよくてかわいくて、本当に私の運命の人

何も知らないというか、教えてないのは可哀想だけど、愛を感じるためなら仕方がないよね

 

周りは吐喰くんの本当の良さを理解していない

 

だから誰に奪われることはないし、奪わせない

 

まぁ吐喰くんが誰かを私のように受け入れることがあるなら、その時はその子とイロイロお話ししなくちゃね

 

 

 

 

 

 

吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん吐喰くん

 

 

 

アイシテルヨ

 

 

~繭sideout~

 




どうだったでしょうか?


感想評価お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

変わる日常

四年生となり俺に嫌がらせをしていたやつらは卒業していった

四年生というか、日常的に変わったことと言えばヴィランが活発的になったことだ

ニュースではヴィラン関係のものばかり

 

なので尚更訓練に身を投じなければ

 

そんなある日、父さんが帰ってきて話があると言われた

側には母さんもいる

 

 

「吐喰、大切な話があるんだ」

 

こんなに真剣な顔をした父さんを見るのは初めてかもしれない

 

「本当は自分の子供にも話してはいけないことなんだがな、吐喰は賢いからこの意味が分かると思って話をする。今度大きな仕事がある。今のヴィラン活性化と関係のあることだ。俺たちヒーローはその大元を突き止め、捕縛することになった。だがあれらのヴィランを束ねる存在だ。だから命の危険も十分にある」

 

 

その言葉を聞いてAFOのことを思い出した。オールマイトが重傷を負った事件だ。

 

「待って、父さん。そこには言っちゃダメ」

 

ここは引いてはいけない

様々なヒーローが参加してなお、オールマイトに重傷を与え生き残った存在だ

その後ヴィラン連合の大元となり、脳無を作成し神野区の事件でオールマイトを引退に追い込んだ。

だがAFOは死ぬことなくタルタロスに収容されることとなった

 

その事実を知っているため俺はここで何としても止めなければいけなかった

 

 

「父さん。そこに行ったらたぶん父さんは死んじゃう」

 

まさか自分の息子にこんなことを言われるとは思わなかったのだろう

 

しかし父さんは

「オールマイトや他の有名ヒーローも来てくれるんだ。それに母さんもな。それに吐喰を残して父さんが死ぬわけないだろう」

 

少しだけ悲しそうな顔をしてそう言った

 

まさか母さんも行くとは思わなかった。でもなぜ母さんが訓練を再び開始した理由に納得がいった

そしてどれだけAFOが危険な存在なのかを知っていることも・・・

 

 

「一生のお願いだから行かないで」

もしかしたら死なないかもしれない。だが死んでしまう可能性のほうが高い

 

母さんは今にも泣きそうな顔でこう言った

 

「ごめんなさいね。でも大丈夫よ。私たちはちゃんと帰ってくるから。それに今ヴィランが活性化していて被害にあっている人が大勢いるの。だから私たち『ヒーロー』が助けてあげなくちゃいけないの。『ヒーロー』を目指している吐喰ならわかってくれるわよね」

 

 

そんなことを言われても、俺は周りの人よりも父さん、母さんを失いたくない。繭ちゃんもおばさんも

自分に力がないのが憎かった

先日の母さんとの対人訓練でもボロボロにされた

実力が全く足りていない

 

「それでも行かないで!」

 

泣きながらそう叫んだ

 

 

「吐喰。よく聞け。『ヒーロー』っていうのは常に危険がつきものだ。いついかなる時にも危険が伴う。それを承知して俺たちは『ヒーロー』になったんだ」

 

 

そんなことはわかってる!!!

そう言いたかった。

でもわかっていなかった

原作という事実だけを見て、普段の父さんの活動、過去の母さんの活動に目を向けていなかった

 

もしかした今回と同様に危険なこともあったかもしれない

 

だからこそ父さんはそう言ったのだろう

 

 

「お父さんには私がついているから!ちゃんと二人で帰ってくるから、その時はいつも通り「おかえり」って言ってくれないかしら」

 

ああ、なんでそんなことを言うんだよ

なんで母さんたちは『ヒーロー』になんかなってしまったんだろう

 

心の中では到底納得のできないことだった

でも原作で父さんたちが参戦して生き残った可能性もある

ここで俺が決めつけてしまうのも、また違うのかもしれない

 

言いたくはなかった

止めなくちゃいけなかった

でも言ってしまった

 

 

「っ。わがっだ」

顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらそう言った

 

 

両親ともに俺を抱きしめ、頭をなでたり鼻を拭いてくれた

 

 

 

それからは繭ちゃんとの二人での訓練になった

 

父さんと母さんは、対策会議や本格的な訓練のため家に帰る日が少なくなっていた

 

「おじさんとおばさんはどうして最近訓練にいないんだろうね」

 

何も知らない繭ちゃんがそういった

 

「仕事が忙しいみたいなんだ」

そう言うしかなかった

 

「そっか、じゃあ二人で頑張っておじさんとおばさんをびっくりさせちゃおう!」

 

「そう、だね。がんばろっか」

 

二人のことが頭から離れない

 

 

そんな状態で集中できるはずもなく、まともに訓練できなかった

 

繭ちゃんからは心配され、今日の訓練は終了となった

 

 

 

 

 

 

 

そして約束の日が来た

二人が家をでる

 

外まで見送りに行った

 

「絶対帰ってきてね」

二人の腕をぐっと掴んでそう言った

 

「ああ、約束だ」

 

「ええ、いい子で待っててね」

 

 

二人の姿が見えなくなるまで手を振った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、下の階から何かを壊すような音が聞こえてきた

 

一瞬で察した

今日が『あの日』なのだと

 

急いでヒーロースーツに着替え、亜空間に仕舞ってある捕縛アイテムなどを確認し部屋の窓から外に飛び降りた

 

家の中は危険だからだ

戦闘となった時家が崩れたらたまったものではないし、二人が帰ってくる場所をこれ以上壊したくなかった

 

「おい!クソヴィランども!こっちだぞ」

 

まだ家の外にいたヴィランに向かってそう言い、牽制として泥水を射出した

ああいう輩はバカにされると血が上るからな

 

「クソガキが!」

「おい、ガキがこっちにいるぞ!お前らも来い!」

 

そう言いながら追いかけてくるヴィランを、いつもの訓練場に誘い込んだ

 

「バカだなぁお前。知ってるか?こういうのは袋のネズミっていうんだよ」

「大人しくしておけば、何もなかったのになぁ?いっちょまえにヒーロー気取りか?」

 

ヴィランどもはそう言い爆笑していた

 

その気が抜けている瞬間に、出口を大岩で封鎖し本当の密室を作りこんだ

 

「な、何が起こった!?」

慌てるヴィランどもにそう言った

 

 

「ドアをふさいだだけ。何も慌てることじゃないよ」

 

冷静に、ヴィランども目を見てそう言った

 

 

「なめやがって!!!!」

 

一斉に攻撃してくる

躱すのは簡単だ。そこらのヴィラン崩れに後れを取るほど俺は弱くない

 

炎や風、身体から刃を生やすもの

相手は四人だが、母さんましてや繭ちゃん以下だ

 

 

数分で片が付いた。

捕縛アイテムでヴィランどもを拘束し素早く岩を取り除き、家に戻った

 

一階は破壊しつされていた。

だが、二階にみんなで撮った写真などが飾ってあったので、そこが荒らされてなくて安心した

地下には気が付かなかったようで安心した

地下にはヴィランが使えるサポートアイテムがあったからだ

 

 

 

できる限りサポートアイテムや思い出の品を収納しておく

この後またヴィランが来るかもしれないからだ

 

 

少し時間が経った頃、繭ちゃんの大きな声が聞こえた

 

 

「どうしたの!?」

 

 

 

 

 

焦燥した顔で、血のような赤い液体を滴せながら

 

 

「吐喰く、ん。私、人、殺しちゃった・・・」

 

 

 

 

一瞬で様々な考えが頭を巡った

繭ちゃんが人を殺した?

いや、殺すってことはまさか繭ちゃんの家にまでヴィランが!?

繭ちゃんに傷はない

でも、おばさんがここに来ていない・・・

 

 

「おばさんはどうしたの」

 

心臓が激しく動いている

 

 

「殺されちゃった」

 

 

聞きたくなかった

あの優しいおばさんが

二人目の母親のように、優しくしてくれて

繭ちゃんと一緒にいるところを微笑ましい顔で見守ってくれていたおばさんが・・・

 

 

 

「今から繭ちゃんの家に行く。見たくもないものがあるだろうから目を閉じてていいよ」

 

 

 

数件の距離を歩く

 

ヴィランが破壊したような跡が残っている

 

 

つないでいる手が震えている

どちらの手が震えているのかわからない

 

 

繭ちゃんの家に着いた

玄関は無残にも破壊され、見る影もない

 

「おばさんとヴィランは」

 

そう尋ねると

 

「お母さんとヴィランはリビングに・・・」

 

 

 

 

リビングに到着して俺が見たものは

 

胸に大きな穴が開いたおばさんの姿と、白目をむき、口から泡がこぼれ、首筋から大量の血が流れているヴィランの姿だった

 

 

「いったい何があった」

 

 

 

「突然ヴィランが家に入ってきて、私を狙ったヴィランからお母さんが私をかばって、あとは無我夢中で・・・」

 

 

 

 

薄情かもしれないがおばさんの死を悲しんでいる暇はない

このままでは繭ちゃんはヴィランとなってしまうかもしれない

正当防衛でヴィラン認定されなくともそれ相応の施設へと連れていかれる

 

それでは繭ちゃんが壊れてしまう

そう直感で感じた

 

 

 

俺は黙ってヴィランを収納した

 

 

「吐喰くん、なにを・・・」

 

 

「繭ちゃんのヒーローでいるって言ったでしょ。こんな場所で言うことではないかもしれないけど、俺は繭ちゃんのことが好きだ。だから僕の側以外どこにも行かせない。たとえヒーローになれなくても、繭ちゃんのことは守るから」

 

そう言って俺は隠蔽工作と、事情聴取の際のつじつま合わせを行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~繭side~

二階で寝ていると、とてつもなく大きな音が鳴った。

吐喰くんと訓練をしているときでさえなかなか聞くことがない音だ

 

母もこの音には飛び起きたようで、すぐに私のところに来てくれた

母も私もヴィランがこの家に来たことはわかっていた

 

「お母さんは隠れてて!」

 

そう言って急いで一階に下りていく

 

玄関は破壊され外から家の中が丸見えの状態だった

 

個性を使い周りの音を拾い、ヴィランがリビングにいることが分かった

 

私は身を隠しながら毒毛を飛ばし、ヴィランの様子を窺った

ヴィランは金目の物を探しているようで、私の毒毛には気づいていないようだ

 

ヴィランの様子が少し変わってきた

私の個性が効いているようだ

 

個性で捕縛できるが念のため捕縛用サポートアイテムを手にヴィランのもとへ近寄った

 

捕縛できる自信があったが相手のほうが一枚上手だった

 

 

「お前が俺に攻撃してきたやつか?」

 

動きが鈍っていたのが嘘のように立ち上がり私にそう言った

 

 

「な、なんで」

 

「あ“?んなもん気づかないわけねえだろ。さて俺を攻撃したってことは死ぬ覚悟があるってことだよな?」

 

そう言って腕が金属の用の変化し、拳を握り私に迫っていた

 

殺気というものだろうか

私は動けず、ヴィランの攻撃がスローモーションで迫っているのがわかった。

あ、私死んじゃう

そう思った時目の前に黒い影が私の前に現れ、暖かい液体が顔を覆った

 

「え?」

 

「だ、いじょ、ごほっ」

黒い影は母さんだった

ヴィランの拳が母さんの胸を貫いている

 

「あ?なんだこの女は?こいつの母親か?」

そう言ってずるりと母さんの胸から腕を抜いた

 

「に、げな、さい」

 

「お前は黙ってろ」

母さん蹴とばした

 

「お前もこの女と同じ場所に連れてってやるよ」

 

 

そこからの記憶は曖昧だ

 

気が付いたらヴィランは死んでおり

私の口には暖かく、鉄臭い液体が満ちていた

 

口の中の液体を吐き出し、急いで吐喰くんの元へ向かった

 

 

 

~繭sideout~

 

 

 

おばさんの遺体をベッドに寝かせ、繭ちゃんにはシャワーを浴びてもらった

 

 

俺はテレビをつけて番組を見るとどのチャンネルでもヴィランが起こしている被害

それに対応しているヒーローの姿を映していた

 

 

 

繭ちゃんがシャワーから戻ると、スーツに身を包んでいた

 

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

 

「とりあえずはおばさんを襲った後、繭ちゃんの毒をくらって逃走したことにしよう。もし本当のことを伝えたら、ヴィランとならずとも、離れ離れになるとおもう」

 

そう聞いて一層顔を青くした

 

「大丈夫、そんなことにならないようにああしたんだ。それに事情聴取の時には俺も一緒にいるから」

 

 

 

 

少しでも不安をかき消せるように強く強く抱きしめた

 

 

少し落ち着いたようで先ほど俺が言ったことを思い出したようだ

 

「吐喰君が私のことが好きって本当?ずっとそばにいてくれる?」

 

 

「当たり前だよ。ずっとだ。何があってもだ」

 

「うれしい。私も大好きだよ・・・」

 

 

 

そう言って眠りに落ちてしまったようだ

 

 

壊れた家で生活していると、ヒーローと警察が訪ねてきた

 

どうやらヴィランの多くが身を隠したようで、やっと被害の確認ができるよになったみたいだ

 

おばさんの遺体を病院に運んでもらった

 

 

ヒーローはおばさんを助けられなかったことを謝罪していた

繭ちゃんの目は冷めきっていた

 

 

事情聴取にきた警察なども想定通りにごまかすことができた

 

壊れた家で生活するのと、子供だけでいることが心配だというヒーロー、警察だったが俺には約束がある

 

それを伝えるとしぶしぶ、毎日確認に来ることで手を打ってもらった

 

 

 

 

 

だがいまだ父さんと母さんが帰ってこない

どうやら他のヒーローは戦闘で負傷し帰宅が遅れているものもいるようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後

警察とヒーローがやってきて俺を病院に連れて行った

 

車の中では何も考えられなかった

 

なぜなら両親ともに殉職したことを伝えられたからだ

 

 

 

 

 

 

 

病院の遺体安置室前につくと、ヒーロー協会から預かっていたという遺言書を受け取った

 

 

内容は、約束を守れなくてすまなかった。それから今までの思い出や、俺に対する思いがつづってあった。そして側にいるヒーローが俺の後継人になってくれるということが書いてあった

 

 

今にも崩れ落ちそうだった

 

 

 

ヒーローがこういった

「これから先には君のご両親の遺体がある。僕は君の両親の後輩でね・・・。君にはこの先へ行く資格があるが、僕は辞めておいたほうがいいと思う」

 

 

その言葉で察してしまった

 

 

 

「いいえ、行きます」

 

「そうか」

 

身体に力入れて前へと進む

遺体安置室に入って目にしたものは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにあったのは腕や足といったものだけで、胴体や顔は欠損していた

 

 

「おかえり」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういって俺の意識は闇に沈んだ

 




どうだったでしょうか
感想評価お待ちしております




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

選択と誕生

今回は少し短いです


目を覚ますと俺はベッドに寝かされていた

普段見たことがない部屋とこの世界に憑依した時と同じような構造なので、どうやら病室の様だ

 

辺りは暗く俺が病院についた時間から考え、だいたい10時間ほどだろうか

 

俺の後見人と名乗った『間壁 断空(まかべ だんくう)』さんがいないことを考えると、面会時間も終わっているようだ

 

 

俺は気を失う前のことを思い出していた

 

母さんと父さんは確かに帰ってきた

物言わぬ、まるで人形のような手足、欠損した顔で

 

 

悲しいという感情が出てこない

『アレ』が母さんと父さんだと思えないからだ

 

 

俺は確かに約束を守った

だけど約束は一方的なものとなってしまった

 

 

 

果たして『ヒーロー』とは何だろう

 

『ヴィラン』という存在は明確だ

他者に害なす者。程度の差はあれど、一歩線を踏み越えればそれはヴィランとなりうる

 

 

だが『ヒーロー』はどうだろうか

様々な訓練、試験を突破し民間人を守る

簡単に言ってしまえばそんなもの

 

でも果たして命を懸けてまで行うものなのだろうか?

そこには様々な思いがあるだろう、十人十色だ

名声を得たい者、お金を稼ぎたい者、憧れていた人物に近づけるようにヒーローになった者、自分の個性がヒーローになりえるから、純粋に困っている人を助けたいから

 

どんな理由でさえ、本来の目的を達成するためとはいえ人々を救っている

立派なことだろう

 

だが俺は『ヒーロー』にはなりえない存在だと気づいてしまった

 

いや、本当はもっと前から気が付いていた

 

 

 

 

 

前世でもよく考えていたことがある

例えば、自分勝手な理由で人を殺し、警察に捕まる

だが場合によっては数年という短い期間で社会に戻ってくる

 

 

殺されてしまった人には、残り何十年という未来があったのだ

それが一瞬にして奪われ、それを犯した者は規律はあるものの、そこらの人よりも健康的な生活を送り、被害者家族、犯人に対して怒りを感じている人たちの金を使い、その人物を生かしている

 

 

こんな理不尽なことがあっていいのだろうか

被害者家族は、のうのうと生きている加害者が憎いだろう

だが現代では復讐をすることは非常に難しい

 

 

何年もそれを思い続けてきた

 

 

それはこっちの世界に来ても変わらなかった

ヴィランを捕縛する際、傷つけることはあっても、殺すことはない

それが『ヒーロー』だ

 

ヴィランが捕まって安心する民間人がいる一方、被害を受けた者たちの心の傷が癒えることは少ない

 

 

『ヒーロー』であってもヴィランを殺してはいけない

ヒーロー協会や警察が決めたことかもしれない

だが、『ヒーロー』という存在が現れてから、なぜそれが定着してしまったのか

 

 

俺のように同じ考えを持つものはいただろう

だがそれは多数決という名の圧力で潰されていった

 

 

『ヒーロー』は確かに多くの、被害にあっていない民間人を多く救っている

だが傷ついた被害者家族の心の傷を、憎しみを救えてはいない

 

『ヒーロー』という縛られた存在が逆に人々を傷つけている

 

 

だから俺がそれを変えなくてはいけない

 

目には目を

 

歯には歯を

 

痛みには痛みを

 

苦しみには苦しみを

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死には死を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がこの世界に来た理由がやっと見つかった

 

 

 

握った手からは血が流れ、頬には熱い涙が伝わっている

 

 

 

外から差し込む月の光は新たな存在の誕生を祝っているようだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つかってよかったね」「君が見つけたものなら、僕は応援するよ」「もうこれからは本当に君の身体だ」「ここから先はいばらの道だけど、諦めたらだめだよ」「最後に僕から君への名前をプレゼントするよ」

 

 

今まで一言も話すことのなかった口がそう言った

 

 

 

 

そして最後に

 

 

 

 

 

 

「ハッピーバースデー、『復讐者(アヴェンジャー)』

 




どうだったでしょうか



後々改訂するかもしれませんが、大筋は変わりません



感想評価お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



~繭side~

 

ヒーローと警察での事情聴取では緊張はしたが、隣に吐喰君がいることで安心することができた

 

 

吐喰君の想定道理に事が運んでいく。

 

事実お母さんが殺された後のことはよく覚えていない

 

 

 

ヴィランを殺してしまったのは隠しようのない事実だ

あの場には私しかいなかった

 

 

 

それにヴィランの死体の状況を見る限り、私の個性によるものだとはっきりわかった

 

 

お母さんが死んでしまったこと

ヴィランを私が殺してしまったこと

 

 

 

すぐに吐喰君に助けを求めに行った

 

 

だがそこで見た光景は、一階が無残にも破壊された家だった

 

 

思わず私は吐喰君の名前を叫んでいた

すると吐喰君はすぐに駆けつけてくれた

 

私はありのままの事実を伝えた

嫌われてしまうとか、そんなことを考えている余裕はなかった

 

 

 

私の家に近づくにつれ、頭がはっきりとしてきた

 

 

お母さんが死んでしまったことによって私は一人になってしまった。

ヴィランを殺してしまったことによって、ヒーローを目指す吐喰君とも一緒にはいられない。

 

 

本当の独りになってしまう

 

 

家に着きヴィランのもとへつくと、吐喰君は衝撃的なことをしだした。

 

 

私が殺したヴィランを個性を使って収納したのだ

 

 

私はとっさに何をしているのかと思った

 

 

すると吐喰君は

 

『「繭ちゃんのヒーローでいるって言ったでしょ。こんな場所で言うことではないかもしれないけど、俺は繭ちゃんのことが好きだ。だから僕の側以外どこにも行かせない。たとえヒーローになれなくても、繭ちゃんのことは守るから」』

 

 

 

私にとっては衝撃的な一言だった

 

 

あの時の言葉を今でも覚えていたこと

 

 

約束を守ってくれること

 

 

私のことを好きだと、どこにも行かせないと

 

 

 

 

 

そして、たとえ『ヒーロー』になれなくともと

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に私は歓喜してしまった

 

 

 

 

 

 

『吐喰君が上級生から嫌がらせを受けていることを私は知っていた

そしてそれを卒業まで続けさせたのは私だ』

 

 

 

私が訓練に参加する前から、自らの部屋で訓練を行っていた

 

 

あの時、私を守ると言ってくれた日から、今度は私が吐喰君を守りたいという思いができたからだ

 

 

私の嫌がらせが解決してから、今度は吐喰君に対する嫌がらせが始まった

それに気が付いたのは少し後のこと

 

 

いつも一緒に帰っていた吐喰君がいきなり、他の友達と遊ぶと言って私と一緒に帰らなくなった

 

 

いつもの表情じゃないのは私の目には丸わかりだ

 

いつもいつも見ていたから

 

 

 

見慣れない住宅街を進んでいく吐喰君の後をばれない様に進んでいく

 

 

ついた場所は人気のない林だった

 

 

そこにいたのは身体の大きさからみて上級生だろう

それが六人だ

 

いつもは無視をしていたのに、どうして今日は・・・

 

 

すると私が耳にしたのは衝撃的な一言だった

 

 

 

おばさんと私のことのために、今まで無視を決め込んでいた吐喰君が動いた

嬉しさもあったが、一体六では明らかに不利だろうと思っていたが・・・

 

 

一切反撃することなく六人を疲弊させていた

 

 

やっぱり彼はヒーローなんだ!

 

 

そう思ったとき、私のことを狙うと上級生が言った

 

 

今の私は弱くはない

あの頃よりもずっと強くなった

 

 

 

だから大丈夫

 

 

だけど彼は動きを止め、上級生からの暴力をその身に受けだした

 

 

今にも飛び出しそうだった

 

 

でも吐喰君は私のためにその身を捧げてくれた

 

 

 

 

 

身体がうずくのを感じた

言葉では表せない感覚が身を襲った

 

 

 

 

 

 

 

ああ、なんて素敵なんだろう

私なんかのために傷ついて、私が傷つかないようにするなんて

 

 

 

 

 

やっぱり私は吐喰君を愛している

 

 

 

 

 

 

歓喜におぼれていたがやることを思い出した

やつらは見逃せない

 

 

 

 

 

 

吐喰君が倒れ伏しているのを、心苦しく思いながらその場をたち、あいつらを追った

 

 

 

 

都合よくあいつらはまたも人気のない場所で話をしていた

 

 

 

私は毒毛を飛ばし、あいつらが痺れて動けなくなるのを待っていた

 

 

少し時間が流れ、一人、また一人と膝をついていく

その様子を見て私はあいつらの前に出て行った

 

 

 

「初めまして、あなたたちが言っていた蜘蛛女です」

 

微笑みながらそう言うと、私に対して文句を言おうとしている

 

 

だが痺れていてうまく言葉が話せていないようだ

 

 

 

「ふふ、バカにしていた人にいいようにやられるのはどんな気持ちですか?」

 

 

一人一人の腹を蜘蛛の腕を使って殴っていく

 

 

中には吐き出すものもいた

 

 

 

 

 

「卑怯なんて言わないでしょう?さっきまで私の吐喰君を苛めていたんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はあの時の感覚が忘れられずにいた

 

 

 

傷つきながら私を守ってくれる彼の姿を思いだす

 

 

 

 

彼はいつまで私を守ってくれるのだろ?

そう思ってしまった

間違った感覚だということも幼いながらに自覚していた

 

 

 

 

 

 

 

でもでもでもでも止められなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のこと、とばみ君に言ったら殺すから」

 

牙から毒液を滴らせながら言った

 

 

「でも、とばみ君に対する嫌がらせは辞めないでね」

 

 

 

 

何を言っているんだという顔で私を見ていた

 

 

 

 

 

「私はあの林でいつも見ているから」

 

「もしこのことを話したり、ばらすようなことをしたら、さっきも言った通り殺すから」

 

 

 

そうして私は個性の実験台と、吐喰君を愛を同時に得た

 

 

 

 

 

それから一緒に訓練をするようになり、才能があると言われたが、私には実験台があるから追いつくのも当然だろう

 

 

 

だがあいつらは卒業時に『「今日もご苦労さん」「そろそろ俺らも卒業だし、解放されるぜ。よかったな」』といった

 

 

あれは仲間に対して言っており、解放とは私からだ

 

 

 

危なく吐喰君にばれるところだった

 

 

 

 

お仕置きはもちろんしたけどね

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてあの日に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

私は吐喰君と一緒に暮らすことにした

 

 

むしろ吐喰君が一緒にいろと言ってくれた

 

 

トイレを除くときはいつでも一緒にいた

 

 

お風呂では裸を見てしまった

 

筆舌にしがたい多くの傷があった

 

それは彼が今までヒーローになるため負った傷だ

 

 

 

 

 

でもそれは、今は私のもの

 

 

 

とても愛おしい

 

 

 

 

一緒に暮らし始めてから一週間がたったころ、吐喰君は病院へと向かい私は一人この家で彼の帰りを待つことにした

 

 

 

 

 

 

 

その日彼は帰ってこなかった

 

 

 

 

付き添いのヒーローから、おじさんとおばさんが亡くなったこと

 

そしてその事実を知った彼が気絶してしまったことを伝えられた

 

 

 

 

それを聞いた瞬間、個性を使い家を飛び出そうとした瞬間に、謎の力によって私の身体は閉じ込められた。

 

 

「あらら、この子だいぶ個性を使いこなしてるな、もちろん吐喰君も。将来のお嫁さんだーって気を入れすぎだよ。まったく先輩も何やってるんだよ・・・」

 

 

「君は吐喰くんのお嫁さんって、先輩、吐喰君のお父さんたちに認められてたんだよ。だから旦那さんの帰宅を待ってないと」

 

 

 

 

 

涙を流しながらそう言って私を押さえつけていた力が消えた

 

 

 

 

 

そう言われて落ち着いた私はのそのそと椅子に座り吐喰くんのことを考えていた

 

 

 

 

 

~繭sideout~

 




いかがだったでしょう



活動報告にも書きましたが、ヴィランのアイデアがありましたら提案していただけるととてもありがたいです



感想評価お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たなる始まり

『俺』が誕生してから、いや、憑依したと言ってもこの身体にはまだ本来の『吐喰』が残っていた

 

 

本心に誓ったことで『俺』は『俺』なれた

 

天秤の様な状態じゃなくなった

 

俺はもう心は『ヴィラン』だ

 

それが俺の進むべき道だ

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めってから眠ることはなく、朝になるまでずっと考えていた

 

 

気が付くと面会時間になり、繭と間壁断空さんが来ていた

 

 

 

 

「おはよう」

 

俺は笑いながらそう言った

 

 

「大丈夫!?」

 

繭は慌てたようにそう言った

そんなに慌てなくても大丈夫なのにな

 

「ああ、大丈夫だよ。繭は心配し過ぎだ」

 

 

間壁さんはどうやら俺らのことを見守っているようだった

 

 

「ね、ねぇ吐喰くん?さっき私のこと繭って呼んでくれた?それになんかいつもと違うような…」

 

 

繭はやはり賢いな

賢いというより、普段から俺の様子を見ているからか、

 

 

 

「そうか。違って見えるなら胸のつっかえが取れたからかな」

 

 

 

~間壁side~

 

何かがおかしい

そう思うのは俺だけではなく、繭ちゃんも同じだったようだ

 

明らかに雰囲気や目つき、話し方が違う

 

吐喰君は覚えていないようだが、誕生日などで顔を合わせている

それに先輩から聞いていた人物像と大きく違って見える

 

「俺の息子は賢いうえに努力家でな、その上言葉使いも優しくて。将来は俺たちみたいにヒーローになりたいと言って、もう訓練を始めているんだ。

更にはもうすでに一人の女の子を助けたみたいで、その女の子は息子に惚れているみたいで、将来が楽しみだ」

 

そう、酒をかわしながら自慢話をしていた

 

 

だが今はどうだろう

 

どことなく青年のように感じる

少なくとも小学四年生とは思えない

 

 

もしかしたら先輩たちの遺体を見て、ショックを受け何かしらかの変化があったのかもしれない

 

この子は以前にも記憶障害を発症しているとも聞いていたし・・・

 

とりあえずは精密検査を受けさせよう

 

 

先輩たちに託された希望なのだから

 

 

 

~間壁sideout~

 

 

 

 

 

「間壁さんにも心配をおかけしました」

 

何やら考え込んでいる彼にも声をかけた

 

 

「あ、ああ、気にしないでくれ。それよりも吐喰君の方こそ大丈夫かい?」

 

 

まぁあれだけのものを見て気を失ったんだ

そう思うのも当然だろう

 

「ええ、大丈夫、とは言えません。まだ両親が死んでしまったことに現実味がなくて。もしかしたらあれは自分が見た夢のようにも感じるんです」

 

 

嘘だ。もうわかっている父さんも母さんもAFOに、もしくはそれに近しい人物に殺された。

相手は相当の手練れだろう。何年もヒーロー活動を行い強個性の訓練を絶えず行ってきた二人が殺されたんだ。予想としてはAFOが妥当だろう

 

 

俺としては、『俺』というイレギュラーがこの世界に誕生しているため、AFOは本当に死んでいる可能性もある。少なくともオールマイトが死んだという情報が入ってきてはいないので、生きてはいるだろう。ヴィランの活動が収まったということは、あの戦いに決着がつき、ヒーロー側が勝利したことになる。でなければ今頃町はヴィランであふれかえっていることだろう。

 

しかしだ、オールマイトという平和の象徴が死んだということが世間に広まれば、またヴィランが活発化するかもしれない。情報規制がされているかもしれない

これに関しては間壁さんが答えてくれるだろ

なぜならその戦いで両親を失った息子の願いだからだ

 

 

 

「間壁さん、少しお聞きしたいことがあるのですがよろしいですか?」

 

 

「いいとも。私が知っていることに関してはだけどね」

 

快く承諾してくれた

 

 

「では単刀直入にお聞きします。今回の戦いで多くのヒーローが死傷したでしょう。その中でも平和の象徴たるオールマイトは生きていますか?」

 

 

 

間壁さんの表情が変わった

 

「どうしてそう思うんだい?」

 

 

「父が任務に行く際、オールマイトも参戦すると言いました。それでも両親はあの状態で帰ってきた。そして、この一週間オールマイトの活動を耳にしていません。ヴィランの大元と対峙したオールマイトが生きているのか、もしくは活動を休止するに得ない状況になったのか。どちらですか。答えられないはなしです。ヒーローネットワークや、あの日、町にいなかったあなたなら知っているはずです」

 

 

 

 

 

「そうだね。君はやっぱり先輩が言っていた通り賢いようだ。それにする同洞察力を持っている。守秘義務もあるから本当は言えないだろけど、教えないわけにはいかないだろね・・・

少なくともオールマイトは生きている。これだけ言えば君なら理解してくれるはずだ」

 

 

渋い顔でそう言った

 

 

 

これで原作と大きく乖離することはなくなった

現時点でAFOは死んでいると思われている

だが俺というイレギュラー程度で、この世界は変わらない。

 

 

たぶん、きっと『そうできている』

 

 

俺は大切なものを一日にして多く失った。いや失いすぎた。もしも神という存在がこの世にいるというのなら、自ら命を絶った罰であり、この世界での苦しむ罰を与えた。

だがそんなものはもう関係ない。俺には決めたことがあるからだ。仮に神がそうなるように仕組んだとしても、何物にも邪魔させる気はない。自らの信念でもある。

 

 

 

「ありがとうございます。オールマイトが生きていなければ、またヴィランどもが活動を始めますからね。俺も私有地以外で個性を使いたくはないですし、何より俺と繭のような思いをする子が減りますから」

 

 

「ああ、繭には悪かった。おばさんのこと思い出させちゃったか」

 

 

繭はハッキリとした口調で

 

「ううん。大丈夫。お母さんが死んじゃったのは確かだけど前を向かなきゃいけないって、吐喰君を見て思ったの」

 

 

俺はその発言を聞き嘘だと思った。少なくとも繭と特別親しい人間はこの世に四人。おばさん、俺の両親、そして俺。半分以上を失ってそんなこと思えるはずがない。少なくとも俺は、それが原因で人生の分かれ道が決まった。しかもだ、俺の精神年齢は二十歳を超えている。それで決めた進む道だ。確かに俺は前を向いたが今までとは反対方向だ。道が、目的があるからこそ精神が保たれている。

なのに繭の精神年齢は、身体よりも高いとしても倍にはならないだろう。

 

 

「そうか。何かあったらすぐに言えよ」

 

 

少し顔を赤くして

「は、はい!」と答えた

 

 

 

 

そこから間壁さんから精密検査を受けるように言われ、検査を受けたが異常はなし

 

帰宅することができた

家では一日離れていたためか、繭が腕に引っ付いてきてキャーキャーしていた

間壁さんはこの家に住むことになり、繭は不機嫌になっていたが致し方ない

 

 

繭との時間が減るかもしれないのはすこし残念だが、自由に動けなくなるのが非常につらい。

 

 

だが今まで訓練していても歯が立たないヴィランやヒーローが現れるかもしれない。

間壁さんという新しい個性を相手に訓練できるのはありがたいことだ。

 

 

一応ここで間壁さんの個性について軽く説明する。名前からわかる部分もあると思うが、空間を断つことができる。まぁ簡単に言えば透明な壁が作れたり、空間掌握の範囲以内であればヴィランを押し潰したり、真っ二つにできる可能性もある。

 

繭の動きを止めたのも立方体のように空間を断ち、閉じ込めたということだ

かなりのやり手である

繭の移動速度は、尋常じゃない

それを正確無比に、傷つけることなく行えたという時点で凄腕だ。

 

早く訓練が楽しみだ。

 

 

 

~繭side~

 

吐喰君が倒れたと聞いて早一日

次の日の朝一番に、彼のところに連れて行くように頼んだ。

間壁とかいうヒーローもそうする予定だったらしい

 

 

病院に到着し、病室を開けると吐喰君?がいた

いつもの彼と違うのは一瞬で分かった。まず雰囲気が違う。顔つきや、私の名前を呼び捨てにした。一日前の彼とは大きく変わっていた

おじさんとおばさんが亡くなってしまって、ショックでそうなってしまったのかと最初は思った。

でも、それは違うと私の直感が告げている。

彼がその理由を話さないということは、それ相応の理由があるのだろう

それがわからないのは悔しい・・・

 

でも変わってしまった彼でも、ほんわかした優しさより大人びたというか、とにかくかっこいい優しさがあった。

 

 

移り住んできたヒーローが邪魔に思えて仕方がないけど、彼と一緒にいるには必要なことだから仕方がない

それに彼は訓練が楽しみだと言っていた

いつもより好戦的な目で

あああああ、かっこいい!!!!!!!!

 

お母さんもおばさんもおじさんもいなくなっちゃたけど、これで吐喰君の側には私だけ

 

 

 

なんてシアワセナコトナンダロウ

 

 

 

 

~繭sideout~

 




どうだったでしょう



感想評価お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな日常

まずこれからの生活について三人で話し合った

 

俺と繭には知る限り親類はおらず、今頼れるのは間壁さんしかいない

 

親類がいないことについては俺も知らない

 

そして現在、頼ることは特に思いつかない

 

両親はこの家と保険金をかけており、生活には全く困らなかった。

 

 

ヴィランの活動が鳴りを潜めている状態で、この家に侵入しようとしてくるやつは少ないだろう。それに、俺と繭のコンビならその辺のヴィランには負ける気はしない

 

 

学校については俺と繭二人そろっていかないことにした。最初はもちろん反対させたが、両親のことや自らたちがヴィラン寄りの見ためをしていること、嫌がらせや暴力を振るわれていたこと。そして両親が残してくれたこの家にいたいということを伝えると、折れざるを得なかったようだ

 

 

勉強に関しては、俺から前もって間壁さんに高校三年までの問題を出してもらった。間壁さんは「いくら何でも・・・」と言っていたが、繭の家庭教師も務める予定だったので、試験のような形で勉強を行った。

 

 

結果としては正解がほとんど。これに関しては間壁さんもぽかんと口を開けていたが、『ヒーロー』になるためには訓練だけじゃだめだと思い、日頃からやっていましたと嘘をついた。それを証明できる人物はもういない

 

 

 

では学校に行っていない間は何をするのか。

それは訓練だ。脳筋と思われるかもしれないが、今できることと言ったらこれくらいしかない。強いて言うなら俺のこれからの活動を行う上での仲間集めくらいだ。

 

もちろん情報屋もいるだろうが、それだけではあてにならない。

そのものが犯した罪を、真実を知れる個性が必要となってくる。

 

原作では、洗脳という個性が出てきたが、あれの上位互換がほしいところだ。相手の記憶に潜れる個性などだ。洗脳に関してはかなり強いと思うが、相手が返答しなければ意味はない。俺の活動が始まれば小さな噂から、真実にたどり着く者もいるだろう。

その上で、仲間の個性を知られたら洗脳の個性は使えない。

拷問でもすれば答えるかもしれないが、それで真実が捻じ曲がっていた場合、俺の信念に反する。

 

 

とりあえずは中学に上がるころには、活動する予定だ。

それまでに間壁さんレベルのヒーローを押さえつけるだけの力が必要になる

 

 

間壁さんは俺たちの後見人にはなったが、ヒーロー活動は二十四時間だ。

当然帰ってこれない日もある。それは大きなチャンスにもなりうる。遠出することができるからだ。

仲間集めやヴィランの分布を調べておきたい。

 

 

 

また、その日を利用してサポートアイテムを新たに考案してもらえるよう、知り合いの企業に行く予定だ。自分が実験台となることでよりいいデータが取れるはずだ

 

 

新しく始まった日常は、両親がいない以外特に変わったことはない。繭は常に俺の側にいる。繭がどういう道に進むかは繭次第だ。繭がヴィランを殺し、それを隠ぺいしたことや、今まで一緒にいたこととはつり合いのとなれないほど大きな選択だ。そもそも繭には黙って家を出るか、説明をしてから家を出るか迷っている。

繭のことだから付いてきそうな気もするが、命にかかわることだ。場合によっては無理やりにでも止めるか。

 

 

訓練では今まで通りの訓練なのだが、妙に個性が扱いやすい。抑えられていたものが解放されたような感じだ。もしかしたらこの身体が本当に俺のものになったからかもしれない

 

 

そして新しい訓練を始めた。遠くのものを母さんと父さんの力の両方を使い、喰らうように取り込むことができる。ならその場所に目には見えなくとも『口』が存在するのではないかと。ならば逆に遠くの位置に『口』を出現させ、そこから射出もでき可能性がある。

もしくは一定範囲を超えると『口』が見えなくなるという特性もあるのかもしれない。

個性は鍛えれば鍛えるほど、可能性が広がりそれが開花するときがある。俺はまだ始まりに立ったばかりなのかもしれない。

 

 

そう思い立ってからさっそく訓練を始めた。今まで以上にハードなものを。残された時間は短い。許容上限を増やすときには、鮮血が舞い、射出の際には筋肉が悲鳴を上げ、骨がきしむ。

 

繭はこちらをじっと見て何も言わなかった

 

 

だが流石にこれにはストップがかかった。訓練での怪我が間壁さんにバレたのだ。

 

「僕は君たちを、君のお父さんから託されたんだ。自分の身を傷つけるようなものは認められない」

 

 

そう言われたがこちらも引くことはできない

 

 

「力がないからあの日、二人は殺され、繭のお母さんも死んだ。いつまた惨劇の日がやってくるかわからない。だから、ヴィランが活動を控えている今こそ力をつけるチャンスなんです」

 

 

間壁さん困ったように言う

「それは、僕たちヒーローの役割だ。あの日それができなかったのは本当に申し訳ない。だが君がそこまでする必要はないんだ。今度は必ず、あの惨劇日が来ないよう努めるよ」

 

 

だが俺は反論した

「それはあくまで間壁さんの見解です。他の人も同じとは限らない。もし、過剰な訓練をやめてほしいならお願いがあります」

 

 

 

「それは、確かにそうだ・・・。そしてそのお願いとはなんだい?」

 

 

 

「間壁さんの時間の取れるときは、全力で訓練の相手をしてください。俺をヴィランだと思って。間壁さんが培ってきた経験と技術を俺に見せてください。ただ手を抜いたと一回でも思えば、今と同じような訓練を行います」

 

 

 

「それは本気で言っているのかい?流石に僕も『ヒーロー』を名乗るものだ。手を抜かないというのは、今行っている以上に傷を負わせてしまうかもしれない。そのお願いは少し卑怯じゃないかな。結局君を傷つけることになる」

 

 

 

 

「『ヒーロー』に傷を負わせてしまうかもしれないと言われるのはうれしいですね。そこまで俺のことを評価してくれているってことですから。なら一回だけ試してみましょうよ。俺と間壁さんにどれだけの差があるのかを。それで決めましょう。完封されるようであれば無理な訓練はしません。ですが間壁さんと善戦できた場合、今の訓練を認めるか。それとも毎回全力で間壁さんと訓練をしてもらえるか。まぁどちらにしろ完封される以外なら俺はどっちでもいいんですよ。卑怯でも自分のためですから」

 

 

 

だいぶ上から目線になってしまったが仕方がない。譲れないことだから

 

 

 

 

「随分と自信があるようだね。いいよ、その条件に乗った。だがその代わりその一戦だけは手を抜かない。申し訳ないけどしばらく訓練はお預けにするよ」

 

 

つまり痛い目を見せるってことか

 

上等だ

 

挑発も込めて

「ヒーロー活動に支障がでないといいですね」

そう言って訓練場を出た

 

 

 

その後の話し合いで模擬戦は一か月後

本来であればこういった模擬戦などは禁止されるだろう

 

 

だがこれは俺のこれからと、間壁さんが父さんとの約束を守るために戦うのだ

 

 

もしもだ、俺が善戦できお互いに負傷した場合でも、サイドキックや他のヒーローもいるから安心だ

 

 

 

 

この準備期間でどれだけのことができるか

 

訓練については、過度なものは禁止された。だがそれでもいい。本物のヒーローと全力で戦えるのであれば安いものだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの一ヵ月という準備期間は俺に幸運の女神が舞い降りた

 




感想評価お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出会い

まずは間壁さんの活動を知ることにした。

ヒーロー活動をしているとあって、どのようににヴィラン保捕縛したのか、どのような個性なのか

 

 

この世界では個性から名前を取る傾向にある。俺も繭もそうだ。原作組もそうだった

 

 

 

 

間壁断空

 

個性、『空間断裂』

 

 

 

空間という概念そのものを断ち切る力を持ち、断たれた空間は本人が解除する以外、解除不能(個性を消せる個性なら解除可能)

 

 

 

断たれた空間は、何も存在しないからこそ触ることができない。

 

そこには空間という概念がないため、閉じ込められた場合この世界から隔離されたも同然だ。はっきり言ってこの個性は強すぎる。

 

デメリットまではわからないが、間壁さんは確実に俺のことを、初手で閉じ込めてくるだろう。

それを回避するには繭以上の速度を出し、常に死角に回り込むしかない。

 

 

流石に身体を断裂されることはないが、それ相応の怪我を負うことになる。それがどうやって負わされるかだ。はっきり言って、間壁さんが個性を攻撃に使用したら、腕や足がすっぱり切られるだろう。

 

可能性で言えば、前もって空間を断裂しておき俺がそこに当たり、自爆

 

こんな感じか。

 

 

作戦としては、新たな訓練で得た能力をうまく使いこなし背後や死角から強襲、または砂煙を起こすことによって、空間が存在しない位置を把握し接近戦に持ち込むしかないだろう。短期決戦になる長期戦になると、度合いによっては訓練場のいたるところに断裂ができ、何もできないまま終わる可能性がある。

 

 

 

そう言えば間壁さんと模擬戦を行うとなってから、繭が大人しい。本当にあの瞬間まではべったりだったのに、今ではべたべたとくっつく様なことはなくなり一人で読書や訓練を行っている。

それが不思議でならなかった。あの繭が、だ。異常事態である。何かあったのかと聞いてみても、何もないよと笑顔で返してきた。

 

 

いや、今はそっとしておこう。何かしらかの心の変化があったのかもしれない。下手に刺激するとよくないことが起こるかもしれない。

 

 

 

それから一週間がたち、新しい個性の使い方もなんとなくではあるがコツがつかめてきた。繭と模擬戦をしてもらい、繭の速度がどの程度なのかを把握し、背後から『口』の強襲を行ったところ見事成功した。だが俺も腹にいい一撃をもらい完勝というわけではなかった。

 

 

このままでは間壁さんとの模擬戦では危ういと思ったところで、とても大事なことを思い出した。

 

 

 

 

亜空間に収納したヴィランだ

 

 

俺の亜空間の広さはだいたい教室ほど高さはたぶん10メートルほどで、収納したものを区別することに成功した。

空気、岩、サポートアイテム、食料といった風に様々な区画に分かれている。

前世のゲームのストレージをひたすら思い浮かべたらできた。簡単に言っているが、ほぼ一日中それに思考を割いていたようなものだ。

 

 

 

 

話を戻すがこのヴィランをどうしようかと迷っている。

活動を開始し、情報屋とコンタクトを取り少しづつことが進んだあたりで、世間に公表するか。

それとも限りなく早く処理するかのどちらかだ。

正直言っておばさんを殺しヴィランであり、繭がそれを殺した証拠になる物をいつまでも収納したくないという思いが強かった。

 

 

 

 

悩んだ結果この期間に処分することにした。

 

 

 

 

 

間壁さんに気分転換をするということで二泊三日の外出の許可を得た。繭もついてこようとしたが、心の変化が起きているであろうこの時についてきてもらっては困る。

なので繭には悪いが一人で行くことにした。

 

 

 

 

場所は静岡県。とりあえず富士山を近くで見たいという適当な理由でそう決めた。間壁さんにだけ伝え、繭には伝えないでほしい趣旨を伝えた。どうやらあの日以来俺との関係に変化を感じたのは間壁さんも同じだったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして俺は今静岡県のとある場所にいる。富士の樹海だ。俺の個性なら土を掘り返す返すことなく、そっくりそのまま埋めることができる。

 

なるべく奥のほうに進み、木の根がない場所を深さ8メートルほど抉り、念のため誰の死体かわからないように細切れにして底に放り込んだ。後は収納した土をズレが無い様に放り込んだ。これで今回の旅行ですることはなくなった。

 

 

 

 

樹海から出た後はそこら辺をふらふらしていると、視線をいくつも感じる

 

 

ああ、どうやらまた見た目のせいでいろいろと誤解を受けているみたいだ。だがもう会うことのない奴らには要はない。無視をし歩みを進めた。

 

 

適当に歩いていたためか、どうやら道に迷い込んでしまったようだ。携帯はあるがこれも旅のだいご味かと思い、歩みを進めるが住宅街を歩いているのでなんの代わり映えもしない景色が視界に移る。それでも歩き続けるとどうやら路地裏についてしまったようだ

 

 

 

 

さすがにナビを使って戻ろうと思った時、室外機の奥のほうに何やらしゃがみ込んでいる人影を見つけた

 

 

 

 

 

 

なんでまたこんなところに

ヴィランかと思い気配を消して近づくと何やら音と声が聞こえてくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ。カァイイねえ、カァイイねえ」

そしてチウチウと何かを吸うような音が聞こえてくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかと思った

 

こんなところで、会えるなんて

 

 

 

 

 

 

 

気配を消すのを忘れ走ってその声の持ち主の前にたどり着いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見られちゃいました。ねえねえ、あなたもキレイだとおもいませんか?」

 

 

 

 

 

 

彼女は烏の死体を持っており、口は血でぬれている

 

 

 

 

 

 

ああ、やっぱり彼女だ

 

 

 

 

 

 

ここで俺は『渡我 被身子』と出会った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~繭side~

 

私は吐喰君が負けると思っている。彼が倒れたと聞いて身体は無意識で動いていた。自ら意識して動くよりも早く、あの時は動いていた。

でも一瞬して動きを封じられた。

いくら彼が強くてもあの反応速度について行けるとは思わない。それに私と模擬戦を行った時も、新しい個性の使い方で負けてしまったが彼に一撃をくらわせることができた。その時点で彼に勝ち目はないと、負けると思った。私と近いレベルではだめ。

なおかつ間壁さんは個性を攻撃に使うつもりでいる。なぜなら彼の両親の知り合いの、治癒系個性の持ち主を模擬戦に呼んでいるからだ。このことは彼は知らない。

来てくれる人の個性は接合。つまり彼はどこかを断ち切られる。そうすれば勝ち目はない。勝敗がわかってしまった私には彼とどうやって接すればいいのかわからなかった。

 

本当は彼を痛めつける間壁をどうにかしやりたい。

 

 

でもできないし、それを彼は望んでいない。

 

 

 

 

私はどうしたらいいのかわからない

 

 

 

 

そんなある日彼が二、三日家を離れると聞いて、私もついていこうとしたが拒絶されてしまった。捨てられてしまうかもしれない。それが怖くて仕方ない

 

 

 

 

だか彼が私を捨てようとするなら、私が捨てさせないようにすればいい

 

 

 

 

 

彼がいない間訓練に励んだ

 

 

~繭sideout~




感想評価お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

渡我被身子

短いです
トガちゃん出ます


俺の目の前にいる少女は原作でヴィラン側で出てきたキャラクター

 

 

『渡我 被身子』

 

 

確か個性は『吸血』いや『変身』だったか?

 

 

原作の知識がどんどん朧気になっていっている

 

 

個性の要素は血を吸った相手に変身することができ、吸った量に応じて変身時間が延びるというものだったような・・・

 

 

「ねえねえ、この子カァイイと思いませんか!」

 

 

 

彼女は烏の死体を両手で持ち、血を滴らせながらにこやかに笑っている

 

 

異常だ

 

 

でもこの世界ではこれも普通。前世でも普通とまではいなかったがサイコパスといわれ、そういう存在がいた。

 

 

そして『オレ』もそんな存在だった

 

 

「口が血で濡れているのは、その烏を食べたから?」

 

 

流石に動物の死骸をかわいいと思えなかったので話を逸らすことにした

 

するとトガちゃん(心の中だしそう呼んでもいいだろう)はふるふると首を振り

 

 

 

「違います。血を吸っていたんです!それにしてもあなたは逃げ出したり、気持悪がったりしないのですか?」

 

 

逃げ出したりするはずないじゃないか。俺と同じ人間なのだから

 

 

 

 

「血を吸うのが君の個性のために必要なことなの?気持ち悪いなんて思わないよ。だってそれは君にとって必要なもので、その個性は君を形作る一つじゃないか。だから俺はそれを否定しないよ。それを否定する周りが間違っているんだよ。あと、俺もこんな見た目だしね」

 

 

 

 

そういって俺は顔に『口』を移動させて、腕をまくった

 

 

 

「わあ!すごくカッコイイですねェ!!!!それにその傷跡も素敵です!!!!」

 

興奮したようにそう言った。まぁ好みは人それぞれだしね

 

 

そんなことを思っているとトガちゃんは話をつづけた

 

 

「そうです。私の個性は変身っていうのです。でも周りは私の個性を、私を否定します。どうしてなんでしょうか。私はただ普通に生きたいだけなのに、お父さんにもお母さんにも否定されました。そんな顔で笑うんじゃない。私は私になれません」

 

 

 

ああ、もうこの時から周りはたった一人の女の子を殺しに来ているかのか。両親でさえ否定して、この子には誰もいない

 

 

独りぼっちだ

 

 

いったい誰がこの子を救ってあげられるんだろうか

 

驕りかもしれないが俺以外にはいない気がする

 

でも俺と深く関わりすぎると、ヴィランの道へ引きずり込んでしまう。どうしたらいい。トガちゃんを救うには・・・

 

 

「どうしたらいいでしょう。ずっと考えているのです。でも私じゃ何もできない。素直に笑うことさえできません」

 

 

マチガッテイル

 

 

 

トガちゃんはこっち側に引きずり込んで、たとえヴィランになろうとも幸せをあげよう

 

この世界はやっぱり間違っている。ヒーローも今後出てくるであろうヴィラン連合も間違っている。正しさを知っているのは俺だけだ。

 

 

「俺の名前は口多吐喰って言うんだ君の名前を教えてくれないかな?」

 

 

「あ!私は渡我被身子って言います。11歳の小学五年生です!トバミ君って呼んでもいいですか?」

 

 

マジか

俺よりも年上だったか

 

 

「うんいいよ。俺はトガちゃんって呼んでもいいかな」

 

 

「もちろんです!仲良くしてくれると嬉しいです!」

 

 

元気だなぁ

果たしてこれは本来のトガちゃんなのか。抑圧され続けた環境で生まれたトガちゃんなのか。これから先関わっていけばわかるだろう

 

 

 

「トガちゃん、自由に、自分が自分で生きられる世の中ってどう思う?」

 

 

トガちゃんは目を輝かせて

「とっても素敵です!!!!」

 

 

 

続けて俺は言った

「じゃあ、ヒーローって間違っていると思う?」

 

 

どうしてそんな質問をという顔で返答してくれた

 

 

 

「間違ってないと思うのです。いろんな人を助けて周りから認められて」

 

 

「じゃあどうしてヒーローは苦しんでいるトガちゃんのことを助けてくれないんだろうね」

 

 

するとトガちゃんは目を泳がせ言葉に詰まった

 

 

 

 

「俺はね、ヒーローはヴィランと変わらないと思っているんだ。だって目に見えることだけを救っている。トガちゃんのように苦しんでいる人のことは助けない。いつか助けてくれるっていう期待だけ押し付けて、助けようともしない。ヒーローはヴィランを傷つけることはしても、殺しはしない。それがどれだけの罪を抱えていようと。ヒーローは被害者の心を見ていない。司法の場に連れ出すだけだ。ヴィランはたとえ人を殺していても、数年後には何事もなかったように社会に戻ってくる。おかしいと思わない?俺はおかしいと思う。どうして被害者は損をし続ける。こんな世の中間違っている。だからね、俺はこんな世の中壊そうと思うんだ。痛みには痛みを、苦しみには苦しみを、死には死をってね」

 

 

 

 

それを聞いていたトガちゃんは恍惚とした表情で

 

 

 

 

「素敵です!素敵です!素敵です!私もそれに参加したいです!壊しちゃいましょう!こんな世の中!そしてそんなことを考えられるトバミ君はもっと素敵です!!!血を吸わせてください!!!」

 

 

 

 

軽くトリップしているようだった。たぶん最後の発言もそのせいだろう。でもこれでトガちゃんヴィランとなることが決定した。そして俺が幸せをあげることも。

 

 

 

だから俺はまず始めに

 

 

「いいよ、血がほしいんでしょ」

 

 

そう言って刃物を取り出し腕を切った

鋭い痛みが走り、血が腕を伝って指先からぽたぽたと地面に落ちている

 

 

 

「遠慮しなくていいよ。トガちゃんはトガちゃんなんだから」

 

 

 

チウチウと指をくわえ血を啜っている

多分これが初めて誰かから許された行為であり、渡我被身子という存在を認めてもらった瞬間なのかもしれない。

 

 

 

 

 

トガちゃんは涙を流しながら血を啜ていた

 




口調がおかしかったらすみません


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

個性の可能性

血が止まりやっと興奮が収まったのだろう。トガちゃんはちゅぱと音を立てて口から指を離した

 

 

「個性が変身って言っていたよね。俺の血を吸ったってことは俺に変身できるってことだよな」

 

 

「血、ありがとうございました!!こんな風に私を私と扱ってくれたのはトバミ君が初めてなのです。それと短いですが、変身できますよ!でも服も併せて変身するとなると、裸にならなきゃいけないので、トバミ君の前では恥ずかしいです」

 

 

 

 

普通の少女のように顔を赤らめ手を前に組んでもじもじしている

 

 

 

 

「いや!さすがにそこまでしなくていいよ。服とかはなしの方の変身をお願いできるかな」

 

 

 

 

「わかりました!」

 

 

 

 

そうすると蝋が顔を覆っていき、俺の姿が出来上がった。先ほどまで見ていたトガちゃんの面影すらない。傷跡も、今ある口の位置も同じだ。まるで鏡、いやドッペルゲンガーの様だ

 

 

 

「おお、女装をした俺の姿だ。ここまで精密に変身できるとなると、癖とかさえ把握しておけば誰にもバレないだろうね」

 

 

 

 

 

俺の顔と俺の声で

「嬉しいです!私、トバミ君になっちゃいました!!」

 

 

 

うん、嬉しいのはわかるけどそうキャピキャピしないでほしい。ヴィラン顔して傷だらけの少年が女の子の服を着て、喜んでいる。まったく誰得だ。精神的によくない。できるならモザイクをかけたいくらいだ

でもこうも喜んでいるのを、しかも自分からお願いして変身してもらったんだ。なんとなく止めずらいが・・・

 

 

 

 

そんな風に思っていると俺の顔がドロドロと溶けるようにしてトガちゃんの顔が見えてきた。よかった。可愛いトガちゃんに戻ってくれた

 

 

 

「あぁ、もう変身が解けちゃいました。残念です・・・」

 

 

 

トガちゃんは俺と反対でとても残念がっていた

 

 

 

「また今度吸わせてあげるから」

 

そういうとパッと顔をあげて喜んでいた

 

 

 

 

「そういえばトガちゃんはここら辺に住んでるの?」

 

当たり前のことだが聞いておいた。万が一旅行で家族から離れ迷子になっているかもしれないからな

 

 

 

「そうですよ。ここを抜けてちょっと歩くと私の家です!」

 

 

 

ならばよかった。この位置を記録し、また今度会う時の待ち合わせ場所にできる。早いころあんな環境から連れ出してあげたいが、何もないのにいきなりいなくなると捜索願いが出されるであろう。もしくは誘拐事件としてトガちゃんの顔が全国に流れるかもしれない。それだけは困る。俺の活動に参加してくれて、同じ志を持つ子だ。他の誰かに大っぴらに見られるわけにはいかない

 

 

 

 

だが俺の住んでいるところからここまでは距離があるし、小学五年生と言っていることから、学校には通っているんだろう。必然的に長い時間一緒にいられるのは土日のどちらかか、両方だ。間壁さんには向こうで友達ができたとでも言っておけば、頻繁にではないだろうが会わせてくれるはずだ。まあ最終手段として無断外泊という手もあるからな。

 

 

 

 

 

話は変わるが、亜空間のなかに自分は入れないのだろうか?入れるならば世界から断絶された空間内で過ごせるのだが・・・

 

 

 

いや、やめておこう。流石にそれは危険すぎる。亜空間というものを何もない部屋という認識でいるが、もしかしたら球体かもしれないし捻じ曲がっているかもしれない。

 

 

 

まあ、今まで収納したものは変化なく射出できることから、中に入って死ぬことはないだろう。お自身は決して入ることはないが、念のため実験してみよう。

 

ん?今思ったが、収納物に変化がない?

 

まさか時間が止まっている????

今まで気にしたことはなかったが、樹海でヴィランを細切れにした時も腐乱臭がしなかった。まさか・・・

 

ここでまた俺の個性の新しい可能性に気が付けるなんて

 

 

今日はなんていい日だ

 

 

おっと、考え事はそこまでだ。トガちゃんに返事をしなければ

 

 

「そうなんだ。じゃあ気軽には会えないね」

 

 

 

「え!?どうしてですか?」

トガちゃんは焦るように言ってきた

 

 

 

「実は俺、神野の方に住んでて気分転換に旅行に来たんだ。だから普段はこっちにいないから気軽に会えなくなると思う」

 

 

 

 

そういうと涙目になってしまった

泣かせたいわけじゃないが事実なんだよ、トガちゃん

できることなら俺も毎日会いたいものだよ

 

 

 

「でも携帯で連絡も取れるし、俺の住所とかも教えるから!それにまた近いうちに絶対会いに来るから!というか明日も会えるから!」

 

 

 

そう、静岡県に着いて一日目である。富士の樹海を置くまで進みヴィランを処分した後、道に迷いトガちゃんと出会った。とても濃い一日だった

 

 

 

「それならよかったです!」

 

トガちゃんはそう言って、それからは他愛もない話をしてお別れの時間となった

 

 

 

「それじゃあまた明日ここで会おうね」

 

 

 

「はい!トバミ君!!」

 

 

 

 

トガちゃんは俺が見えなくなるまで手を振ってくれた

どうして俺の周りには不幸な人しか集まらないんだろか?

 

 

 

 

 

 

携帯のナビを使いながらやっとこさ予約していたホテルに着いた

かなりいいホテルで値段は考えたくない。今回は間壁さんのご厚意で俺は金を一銭も払っていない。申し訳ない気分でいっぱいだ

 

 

 

 

 

夕食や風呂を済ませ『個性』について考えていた

この世界ではすでに当たり前となっている個性だが、前世の世界ではおとぎ話のようなものだった

だが、この世界は前世の世界の上位互換のようなもの。そしておとぎ話のようだったということを、この世界の人たちは忘れている。生まれた時から個性は当たり前のことだったからだ。だから発想力が低下している。サポートアイテムについては例外だ

 

だが俺は前世の知識を持っている。この一ヵ月、完璧に習得できる必殺技があれば、間壁さんをその場から動かせずに勝つことができる作戦がある。間壁さんの周りに『口』を二つ出現させ、『口』と『口』の間を砂でも水でも、細く糸状で高速移動させれば牢獄の完成だ。たとえ間壁さんが空間断絶を使いそれを防いだとしても、お互いに動けない状況が続く。そうすれば戦いは対等だ

 

それに空間という概念を排除、除外できるこの世界では俺の個性で空間断裂を喰らうことができるかもしれない。

まだまだ頭を働かさなければ

 

 

そしてトガちゃんの個性についてだ。『変身』という個性はただ相手の姿に変わる物だけではないとは思う

この世界では発想力と、それができると思う強さで、自分の個性をどこまでも伸ばせる。例えばだが、『変身』の個性を極めれば、変身した相手の記憶を覗くことやその個性を使うことができるかもしれない

原作B組に個性をコピーできる個性があった。それを考えればできないということもないはずだ

これは明日トガちゃんに伝え、活動始動の時までに何とかしてもらおう

 

まぁ俺の予想でしかないからな

あまり期待だけはしないでおこう

 

 

ワクワクが止まらない

 

 

まるで遠足前の小学生のように楽しみでなかなか眠れない夜を過ごし、一日が終了した

 

 

 

 

 

 

~渡我side~

 

 

今日はとてもカァイイカァイイ鳥さんを見つけました

 

血を吸っているときはとても幸せです

 

 

でもそれはおかしいと周りから言い続けられました

 

でもカァイイ鳥さんよりもとってもいい出会いがありました。私の姿を見ても逃げ出さず、私を私と認めてくれました

 

こんなことは初めてで、心が何かで満ちたような感覚でした

 

 

そして『トバ様』の考え方は私の、私たちのような人たちを救う『ヒーロー』でした

 

 

感激して私はそれに参加すすことに決め、ついつい血を下さいと言ってしまいました。勢いで言ってしまったと気が付いたのは後のことでした。

 

なぜならトバ様は自らの腕を斬り私に血をくれたのです。傷だらけの腕。そこを伝う真っ赤でキレイな血。素敵すぎます!

 

 

地面にしたたり落ちる血がもったいなくて、指にしゃぶりつきました。きっとお父さんとお母さんから言われた気持ち悪いと、やめなさいと言われた顔をしていたと思います。でもトバ様はそれでも側にいて血をくれました

 

 

 

なかなか会えないと、わかった時には絶望しましたが、また今度会えると言ってくれたので安心です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、なんてトバ様は素敵なんでしょう

 

 

 

 

~渡我sideout~

 




感想評価お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

『変身』とハプニング

次の日、トガちゃんと昨日会った場所で待ち合わせをした

 

今日が日曜日なので、明日は会うことが出来ない

トガちゃんには申し訳ないが、朝から会うことにした

 

一日たった今でも果たして本当にトガちゃんをヴィランにしてもいいのかと悩んでしまう

トガちゃんを巻き込まずとも、俺一人で少しでも現状を変えることができたのでは無いのかと

 

『ヒーロー殺し』という大人が行った行為でさえ、世間に注目されていた

なら、それよりも子供という影響力のあるものを使えば多少は変わるかもしれない

 

トガちゃんは活動に参加することに賛成してくれたが、たまたま俺が優しくしてくれたからそうなっただけだろう

 

もしも、他のヒーローが気がついていればトガちゃんはこれから普通の人生を歩めていたかもしれない

あるいは、自分と同じような境遇の子を助けるヒーローになっていたかもしれない

 

 

俺は独りの少女を助けるのと同時に茨の道へと誘い込んだ

 

果たして俺はいったいどこを目指しているのか分からなくなってきた

 

 

両親とおばさんが死んだ時、前世からの思い

 

そこから俺の人生は変わった

 

信念だってある

 

だけど、その信念を、トガちゃんを率いれたことによって捻じ曲がってしまったかもしれない

 

 

 

 

いや、深く考えるのはやめよう

 

これは俺の悪い癖だ

 

俺は俺のやりたいようにやる

 

それで十分だ

 

 

 

 

 

待ち合わせの時間になってトガちゃんが現れた

 

 

 

「あれ?遅刻しちゃいましたか?ごめんなさいです」

 

 

「いや、俺がちょっと早く来ただけだから気にしないで。それよりもこんな朝早くからごめんね」

 

 

そう、今は朝の八時だ

流石に早過ぎるが時間が有限だったため仕方がない

 

 

「気にしないでください!トバ様と会えるなら問題ないです!」

 

 

「昨日から思ってたんだけどトバ様ってなに??」

 

 

 

「トバ様はトバ様です!私を私と認めてくれて、目標もくれました。私はトバ様のこと愛してます!トバ様になりたいです!なので血をください!」

 

 

 

早速か

 

トガちゃんはボロボロな人に興味を持つのと、確かステインの動画を見てヴィラン連合に加入

その理由がステインを愛していて、ステインを殺したいっていたような・・・

 

 

 

多分俺の信念に感激したのと、俺がボロボロなのもあるのだろう。

 

昨日の今日で愛してるは予想出来なかったが、こうなるとそのうちトガちゃんに背中を刺されるかもしれない・・・

後繭にも・・・

 

 

ま、まぁそれは置いておこう

 

そうならない様に気をつけなくては

 

 

「愛してるってそんなに簡単に言っちゃダメだよ?それとトバ様もなんか、俺なんか様付けされるような人間じゃないし。あと個性の訓練のために血はあげるから安心して」

 

 

 

そう言うとちょっと怒ったような顔をした

 

 

 

「トバ様は私を私と認めてくれた『ヒーロー』です!トバ様と出会わなければ私は私になれませんでした。トバ様の考えは生きやすい世の中にしてくれます。見えないところまで助けてくれる『ヒーロー』なのです!あと、血は嬉しいです!」

 

 

 

 

っ!『ヒーロー』か

 

トガちゃんから見たら俺は『ヒーロー』になるんだろうか

俺は当たり前のことを当たり前のように言っただけだ

だが、その当たり前のことすら満足に出来ていない。この世界では、いや前世でも出来ていない

どの世界でも結局光があれば影ができるのだろう

俺が、俺たちが歩こうとしてるのはその真ん中だ

白をヒーロー、黒をヴィラン、灰色は俺たち

どちらにもなれるし、どちらにもなれない

 

 

中途半端な存在

 

 

だが、俺たちは自らが掲げる『正義』がある

 

 

それは『ヒーロー』にも『ヴィラン』にもある

 

 

勝った方が『正義』となる

 

 

 

 

だから俺たちは勝ち続けなければならない

歪んでいる世界を正すために

俺たちの活動は普段、ポイ捨てされたごみを拾うような存在だ

大きなごみは周りが排除してくれる。たまに大きな廃棄物を処理するだけだ

そしてリサイクルされたものを更にリサイクルするだけだ

 

 

海に捨てたごみが生物に害を与え、また海岸に戻ってくる

それを本当の意味で無くすのが俺たちの役目

二度と同じようなことができない様に徹底的に・・・

 

 

 

 

「トガちゃん、俺は『ヒーロー』なんて存在じゃないよ。これだけは覚えておいて。当たり前のことを当たり前にしているだけだから。それとトガちゃんの個性なんだけど、血を摂取すれば、血の持ち主になれるんだよね」

 

 

ぶーと口を膨らませ、トバ様はヒーローなのにと言っている

 

 

 

「はい。血の量にもよりますが身体の爪から毛先、服装まで再現することができますよ!」

 

 

 

「じゃあ今から血をあげるから服装ごと変身してくれないかな。俺は少し離れたところにいるから」

 

 

 

ううっと唸って顔を赤くして

「トバ様のお願いなら仕方ありません」

 

 

昨日よりも多くの血を吸わせ、変身が終わるまで少しだけ待った

 

 

 

「お待たせしましたトバ様」

 

 

そこにいたのは『スーツとサポートアイテム』をつけた俺だった

 

 

 

そう、今回試したかったのは俺の活動アイテムであるスーツの復元能力だ

 

 

 

「トバ様のこの服とサポートアイテムはかっこいいです!」

 

 

「ありがとう。ちょっと試したいことがあるからその場を動かないでね」

 

 

そう言って俺はスーツの一部分を喰った

このスーツは防刃防弾耐火耐冷など様々な耐性があるため、生半可な攻撃じゃ破れない。そして俺が成長した証として、喰らう範囲を精密にコントロールできるようになった。今思えば血の滲むような日々だった・・・

 

おっと考え事はここまでだ

 

 

スーツの一部を喰われた俺もといトガちゃんは聞きたくもないキャッと声を出していた

 

 

 

「トガちゃん、その服には復元能力がついていて髪の毛一本くらいの量で破れたところを修復できるんだ。試しにやってみてくれないかな」

 

 

はいと返事をして、髪の毛を一本抜いてスーツが破れたところにあてた。予想通りにスーツは復元を始めた。これで確定した。『変身』の個性の可能性について

 

 

 

「トガちゃん。君の『変身』の個性は変身した相手と遜色なく、この世界では同一人物として認識される。その証拠が今修復を始めている俺の服だ。それは俺の細胞以外では自動修復しない。つまりトガちゃんは個性を極め、血さえ採取できるなら誰にだってなれるってことだよ。これの凄さがわかる?変身した人の記憶や『個性』さえ使えるってことだ!!」

 

 

 

 

まくし立てる様に言った俺に対して、トガちゃんはポカンとしている

 

 

 

「え、っとそれはほんとうですか?」

 

 

 

「間違いないと思う。どれだけの訓練が必要かはわからないけど、必ず俺の予想は当たる。それがさっき証明されたからね」

 

 

 

 

と、その時だった

 

 

 

 

俺が溶けて、そこには一糸纏わぬ姿のトガちゃんがいた

 

 

 

個性の時間切れだった

今度は俺がポカンとする番だった

 

 

 

事態に気が付いたトガちゃんはキャーーーと声を出して、しゃがみ込んでしまった

 

 

 

俺は急いで後ろを向いて

 

「ご、ごめん。個性の時間について考えていなかった」

 

 

 

するとトガちゃんは唸りながら

「ど、どこまで見ましたか?」

 

 

 

 

「ノーコメントで」

 

 

 

 

 

「お嫁にいけません!!!!」

 

 

 

そう言ってその場を動く音が聞こえた

服を着に行ったのだろう

 

 

 

数分後、顔を真っ赤にしたトガちゃんが戻ってきた

 

 

 

 

「お父さん以外の男の人に初めて見られました・・・」

 

 

 

そして言った

 

 

 

 

 

 

 

『責任取ってください』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家には繭がいる

というか彼女だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わった




感想評価お待ちしております





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

帰宅と繭のイメージ画像

なんて説明すればいいのだろうか

まさかこの歳でそんな悩みができるとは思わなかった

多分繭は俺と一緒に活動してくれるだろう

そこに俺に愛してるといい、責任を取って下さいとまで言われた相手が加わる

 

繭はなぁ

独占欲が凄い

トガちゃんも独占欲が強い

 

 

もしかしなくても殺し合いの発生!?

 

 

とりあえずトガちゃんには彼女がいることを伝えなくては

 

 

 

「トガちゃん、申し訳ないけど責任は取れない。実は俺には彼女が居て、彼女のことが好きなんだ」

 

 

 

するとトガちゃんは驚いたような顔をしてこう言った

 

「トバ様みたいな素敵な人に彼女がいない方が不自然ですので、少し驚きましたが大丈夫です。

でも関係ありません。私はトバ様のことが好きです。愛しています。片想いでも構いません。私は私に対して正直になるって決めたんです」

 

 

どうして俺の周りにはこうも強い女の人が現れるのだろうか・・・

 

 

決してトガちゃんのことが嫌いではない

前世では結構好きなキャラであったし、その人に好意を寄せられて嬉しくないとは言わない

だが、俺には繭がいる

裏切る訳にはいかないし、トガちゃんは片想いでもいいと言っている

なら、繭ちゃんには今回の旅行であったことを正直に全部話そう

誤解が産まれる前に

 

 

 

 

「そっか、ありがとう。その気持ちに応えることは出来ないけど、好いてくれてることは嬉しいよ。そして自分に正直に生きることを決められたことが俺はすごいと思う」

 

 

 

この世界はとても息苦しくルールという鎖で縛られている

 

それは万人が自由に生きるために作ったものだろう。

 

 

だがそれは鳥籠の中と変わらない。

 

 

俺は鳥籠の外側からこの世界を生きたい

 

 

そして、本当の意味で自由に生きられる人を増やしていきたい

俺たちの活動はそれを誘発するものだ

 

 

 

 

「私はすごくありません。トバ様が変えてくれたんです。凄いのはトバ様です」

 

 

 

なんだか崇拝みたいだな

でも、もし俺たちが『ヒーロー殺し』のような存在になればそう言う、信者みたいのもできるのだろうか

 

もし、その存在が俺たちの理念からズレたことをすれば排除しなければならない

 

 

いや、今の時点で先のことを考えすぎだ

 

 

 

今はトガちゃんという味方を手に入れ、自らの個性にも可能性を見つけた

 

 

時間が止まっているかもしれないという考えは正しかった

氷を収納し1時間後に取り出したら、収納する前と変わらなかった

 

生き物では虫で試してみた

 

虫が動いたら分かるような仕掛けをつけて収納した

これは生き物の場合、時が止まっているのか、それとも亜空間内で動き回れるのか

一応空気のある部屋に収納した

 

 

1時間後、取り出した虫は収納時に行った仕掛けが外れていなかった

しかし、取り出すとすぐに動きだした

 

つまり生き物も時が止まるということだ

 

 

これは大きい

もし負傷した時などに使える

 

本来なら俺は両親が望むような『ヒーロー』になるべきなのだろう

これだけ救助、対人に向いた個性はない

 

あのオールマイトでさえ超える

 

だが、あの日俺の道は決まった

決まってしまった

 

だから今考えても仕方がない

 

 

 

「俺は全然すごくないよ。それは本当に。理由はいつか話すよ」

 

 

 

「私は理由を聞いても納得しないのです」

 

 

 

強情だなぁ

 

 

 

 

 

 

その後トガちゃんに再度血を与え、俺の姿を模倣してもらい俺の個性である『口』を動かしてもらうことにした

 

だが全くもって動くことはなく、俺血がどんどん減っていくだけだった

 

トガちゃんは個性を上手く扱うことが出来ず残念がっていると同時に、血を吸えたということに対して喜んでいた

 

 

当の俺は貧血で地面に横たわってる

 

 

あー、空ってこんなにも青いんだなぁ

頭が働かない

 

 

するとトガちゃんが近寄ってきて膝枕をしてくれた

 

 

「個性を上手く使えなくてごめんなさい。あと、血をくれて嬉しかったのでそのお礼です」

 

 

頭を撫でてくれた

すると徐々に瞼が閉じていった

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めるとどうやら寝てしまったようだ

辺りは夕日に染まっている

 

 

「あ、起きましたか?」

 

 

どうやらトガちゃんはこの時間まで膝枕をしてくれていた様だ

 

 

「ごめんトガちゃん。寝ちゃってて。膝枕大変だったでしょ」

 

 

 

「気にしないでください!トバ様の可愛い寝顔を見れたので満足です!」

 

 

 

そうだよなー、寝顔とか見られてるよな

なんか恥ずかしい

 

 

「そ、そっか。でも本当にありがとう。こんな時間になっちゃったしそろそろ解散かな」

 

 

 

 

 

やはり寂しいのだろう

顔を俯かせてしまった

 

 

「トガちゃん、安心して。できる限り毎日連絡するし、近いうちにまた会いに来るから。それまでに自分の個性なら何ができるか考えてみてよ。その個性はトガちゃんなんだから」

 

 

 

うるっとさせた目でこちらを見て

 

「はいっ!」

 

と大きく返事をした

 

 

 

 

夕暮れの中お互いの姿が見えなくなるまで、手を振りあった

 

 

 

 

 

 

その後ホテルでは、部屋のものを収納したり出したり、筋トレをしたりと実家で行っていたことをしていた

 

 

旅先に来たからと行って、部屋ですることは特にない

それも一人旅では余計に

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼、新幹線に乗って神野まで帰ってきた

2日しか離れてなかったとはいえ、密度が濃かった分懐かしく感じる

 

 

 

 

 

 

 

実家に着くと誰もいなかった

繭なら出迎えてくれるかな?とも思っていたが、繭には繭の生活があるだろう

 

 

「ただいま 」と声をかけてみても返事がない

どうやら家自体に居ないようだ

 

 

試しに訓練場の方に行ってみると繭はそこにいた

 

 

この二日間でかなりレベルアップしてるのがわかる

動きを目で追うのがやっとだ

果たして寝ているのだろうかと思えるほど、見違えてる

 

 

 

訓練の邪魔をしてしまうかもと思ったが

「繭、ただいま」

 

 

すると動きを止めてこちらを振り向き、笑顔でおかえりと言ってくれた

 

 

 

だがそのあとの一言が問題だった

 

 

 

「吐喰君、傷増えてるよね?なんで?」

 

 

 

傷が増えたといっても、ほんの少しだ

 

それが一目見ただけで分かるものか?

 

 

繭がどれほど俺を見ているのかがよくわかった

 

 

 

早めにトガちゃんのことを話さなければ

 

 

 

 

 

じゃないと大変なことになりそうな気がする・・・

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 




繭のイメージ画像をあげました


気になる方は見てください


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

繭とトガちゃん改

修正させていただきました

話の大筋は変わっていません


とりあえず旅行であったことを、俺の考えを繭に伝えた

これが間壁さんに伝われば、それ相応の施設に連れていかれるだろう

これから俺達がなすことは犯罪だ

 

 

ある者にとっては救いである物には罰を与える

執行者、被害者たちの思いを降す復讐者

 

 

ヴィランという存在にはそれ相応の報いを受けてもらう

俺たちはそういう存在になる

 

 

 

そしていずれ俺たちもその対象になる

 

 

繭はなんて応えるだろうか

 

 

俺の話を、真剣に聞いてくれている

 

時折こくこくと頷き、トガちゃんの名前が出ると眉間に皺を寄せている

やっぱりトガちゃんが問題か・・・

 

 

 

「私はいつだって吐喰君の隣にいるよ。考え方も凄くわかる。お母さんを殺されて、反射的だったけどヴィランを殺したことに後悔はないし、私みたいな子を救えるなら救いたい。そのトガちゃんって子が言っていたように吐喰くんは『ヒーロー』だよ。周りに認められなくても、 私たちにとったらもう既に救われているんだもん。否定しても私たちはそれを否定するからね。それとトガちゃんって子にも1回合わせてね??」

 

 

 

やはり繭は俺について来てくれるようだ

当初心配していた対ヴィラン戦についても、問題はないと思う

試合をした時、あれは不意打ちで勝っただけだ

実力はほぼ同じと考えていいだろう

あとは、間壁さんとの試合とトガちゃんの個性の成長具合による

 

 

 

それから数日が経ち、いつも通り訓練を行う

その後繭との試合ではやはり五分五分の勝率だ

繭の個性を扱う才能か、俺が個性を扱いきれていないのか

多分どちらも正解だろう

 

 

繭は訓練に参加し、個性を受け入れたことによって飛躍的に個性が身体に馴染んだように感じる

 

俺がいない間何があったのかは分からないが、明らかに個性が有利の俺に対して半分は勝っている

 

このままでは間壁さんとの試合には負けてしまうだろう

だから、繭にお願いをした

命をかけたお願いだ

 

それを繭はすぐに承諾してくれた

本来ならばこれは使いたくない手段だ

はっきり言って卑怯というかなんというか

それに、繭の命に関わるかもしれない

 

 

 

 

繭の力を借りて訓練と試合を行い、その合間に2人でトガちゃんに会いに行った

 

 

 

 

約束はいつもの場所で、トガちゃんは口をモチーフにした服を着ていた

恐る恐る横にいる繭を見てみると、ニコニコと笑っている

 

逆に怖いよ

 

 

「お久しぶりですトバ様!!それと横にいるのはトバ様が言っていた彼女ですか?」

 

 

あ、俺がトガちゃんに彼女って説明したことを聞いて、繭がさっきとは違った表情で笑っている

 

 

「その黒くて丸いお目目も、太い脚?腕?も素敵ですね!」

 

 

トガちゃんは個性に偏見がないのだろう

いや、逆にあっては困るのだ

 

 

「ありがとう。私は繭っていうの、個性のこと気にしないんだね」

 

 

「はわ!私はトガです!私の個性は血を吸わなきゃいけないので、周りから嫌われていたのです。でもそんな時トバ様に救われたんです」

 

 

「吐喰君みたいにトガちゃんって呼んでいいかな?」

 

 

「もちろんです!私は繭ちゃんって呼びます!お友達になれますか?」

 

 

「もちろん!吐喰君のことをわかっている時点で友達だよ!もし良かったら吐喰君抜きで2人で話さない?女の子同士の話も必要だと思うの。いいよね吐喰君」

 

 

いや、この流れで断れるわけないよね

この後血にまみれた繭が戻ってきたりしないよねー?

 

 

「もちろん。あんまり遠くに行き過ぎないでね」

 

 

 

そう言って2人は俺から離れていった

 

正直不安で仕方がない。彼女と、それを狙う泥棒猫とも言っていい存在

 

諍いがないといいが、繭は独占欲が強いしトガちゃんはヤンデレっぽいし

 

どうしたものか

前世でこんな経験したことないからなぁ

あるとしたら読んだ漫画とか見たアニメとか

アニメの方だとかなり有名なやつがあるからなぁ

頭だけ切り取られて、ボートに乗せられないか心配だ

 

 

 

〜繭&トガ〜

 

「改めまして繭です。一体どういうつもりで『私』の吐喰君に近ずいたんですか?事と次第によっては潰しますよ?」

 

 

「繭ちゃんってそういう感じの人だったんですね!驚きです!トバ様の側にいるのは、トバ様が私を救ってくれてトバ様の考えに賛成だからです。お友達の繭ちゃんと喧嘩したくありません。トバ様のことが好きなのは本当ですが、私の片思いなので心配しないでください。それに繭ちゃんの個性についても嘘は言っていません!それに同じ人を好きになっちゃうなんてなんだか繭ちゃんとも運命を感じちゃいます!!」

 

 

そうトガは話してくれたが実際はわからない。人間の汚さと欲深さをよく知っている。少し話しただけで信用できるはずがない。それにさっきも言った通り『私の吐喰君』だ。それを会って数週間の女が彼のことを狙うなんて・・・

 

彼はまさしく『ヒーロー』に成しえる存在だ。今後もトガのような存在が出てくるかもしれない

それに、彼の話を聞く限りトガの個性は、彼の活動に欠けてはならないものだ。

消すにしてもそれが活動の妨げになる

私は吐喰君の『彼女』なのだから誰よりも理解してあげなくちゃ

だから今は見逃してあげる

 

 

「それはすみませんでした。不要に近ずいて欲しくなかったので。私と違って貴方には吐喰君しかいなかったんですよね。私も彼に救われて彼の側にいました。彼がなそうとしてる事はなんとなくですが予想は出来ました。ヒーローを目指していたのに、個人を優先してしまう人ですから。でも真に『ヒーロー』になれるのは彼だと思っています。貴方もそうなのでしょう?」

 

 

「はい!トバ様は私の個性を認めてくれて居場所になってくれたのです。トバ様は自分はヒーローじゃないと言っていましたが、私たちにとってはヒーローで、これからも多くの人のヒーローになります。偏見のなく、悲しみを少なくするために自らを傷つけるトバ様は本物の『ヒーロー』です」

 

 

私たちは吐喰君について話し合った

 

そこで改めて気が付いた

 

彼はそこらの人とは違う

 

他人を思い自らを犠牲にし、平和を求めてしまう

 

だから、私が支えなくてはいけないと思っていた

 

だけどきっと彼はそれじゃ満足できない

いや満足という言葉も正しいのかわからない

彼は彼の成すことをなして、どこを目指しているのだろう

 

彼はどこか歪んでいる

 

自らを犠牲にし他者の幸福を願う人間が普通なわけではない

私の愛し方と同様にどこか歪んでいる

 

そう感じてしまうのは何故だろう

直感としか言いようがないけれど、なんとなくそう思ってしまう

 

トガちゃんは吐喰君に従順だろうから問題ないけど、個性の扱いを上手くしなければ、私たちには着いて来れない

 

彼の役に立つためには私も協力しなくては

 

 

 

 

 

 

 

トバ様の彼女さんはとても素敵な人でした

トバ様のことをよく理解していて、トバ様を第一に考え、トバ様の邪魔になるなら私を直ぐに排除しようと考えていました

殺気というのでしょうか?

足がすくんでしまいました

8つの目に見られ、何時でも臨戦態勢に入れるように構えていました

でも私は血がなければ何も出来ない出来損ないです

彼女には勝てません

でも、彼女私を認めてくれました

これからどうトバ様を支えていくかを話し合い、私の個性訓練も手伝ってくれる見たいです

 

流石トバ様の彼女さんです

私のお友達です

素敵です、素敵なお友達です

 

 

 

〜繭&トガ〜

 

 

 

 

 

 

 

1時間ほどだろうか、二人が手を繋いで戻ってきた

どうやら仲良く出来そうだ

これで1つ安心することが出来た

 

あとはこの3人で訓練をし目的の日までに成すべきことをなすだけだ



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

試合

繭とトガちゃんが戻ってきてから今後のことを話し合った

 

トガちゃんの個性については繭の血液を与えて訓練することとなった

 

 

俺も半異形型と言ってもいいのだろうが、『口』を動かすのは容易ではないし、俺は憑依した時からなんとなくで動かせていたから問題なかった

だがこれを一からやるとなると相当時間がかかる

 

 

 

 

なので繭のような異形型のほうがトガちゃんの成長に繋がると思った

明確に腕という当たり前のものを見ることができて、それを自分の体の一部だと認識しやすい

少なくとも俺よりは繭のほうがいいという結論となった

 

 

 

 

二人が何について話し合っていたかは定かではないが、まあ問題はないだろう

 

 

 

 

この日は繭の血液で個性の訓練をし、今後繭の血液を静岡まで送るということで話が付いた

今の世の中腐る前にいてのところに届くなんて容易だからな

便利な世の中になったものだ

 

 

 

「じゃあトガちゃん、繭から定期的に血を送ってもらうから誰にもバレない様に訓練して、通話でどのくらいの精度で変身、個性を使えるようになっているか確認するのとまた直接会いに来るから」

 

 

 

「わかりました!!繭ちゃんから聞きましたけど、トバ様もいろいろと頑張ってください!!私応援してます!後々、繭ちゃんも私のためにありがとうございます!!大切に使わせてもらいます」

 

 

 

「トガちゃん。私はあくまで吐喰君のために血をあげるんですからね。そこのところを勘違いしないことと、頑張ってください」

 

 

 

なんだか繭の言い方が固いというか何というか

仕方のないことだと割り切るしかないか

 

 

 

それじゃあまた今度と約束をし俺たちは帰路に着いた

 

 

そうしてまた訓練には実に日々を送っている。正直今の段階では間壁さんに善戦するのは難しい

 

 

 

だけど約束の時は来てしまった

 

 

 

間壁さんはヒーロースーツに身を包み、見知らぬ女性を伴ってやってきた

間壁さんから話を聞くと治癒系の個性を持っているということだった

 

つまりは間壁さんは俺に対して攻撃してくるということだ

 

身体に緊張感が走る

 

繭とその女性は訓練場の端で待機しててもらい、俺と間壁さんは10メートル離れたところで向き合っていた

 

 

「この一ヵ月でどこまで成長できたのかはわからないけど、ヒーローの先輩としてきついお灸を据えてあげるよ。僕のことは心配しなくていいから全力でかかってきなよ」

 

 

 

「俺がまだ子供だからって甘く見ていませんか。間壁さんが治癒系の個性の方を連れてきたということは、俺も全力でやらせていただきます」

 

 

 

「今からこのコインを上に投げる。それが地面に着いたら試合の開始だ」

 

 

 

「わかりました」

 

 

 

 

そうして間壁さんの手からコインがくるくると回転しながら宙を舞った。

神経を尖らせ、相手を見つめる

 

 

そしてコインが地面落ちた

 

 

俺は速攻でその場を離れ、亜空間に仕舞いこんでいた砂を空気と共に訓練場にはなった

案の定、試合開始時点の俺の場所は透明な壁のようなもので覆われていた

 

 

「僕の個性のことをよく調べているみたいだね。それに初動と僕がどこに壁を配置したかをわかるために砂埃を出したのもいい判断だ」

 

 

間壁さんは余裕といった声色でそう言った

 

 

「それはありがとうございますっ!」

 

 

砂埃のおかげで間壁さんの個性の位置を把握することはできたが、間壁さんがどこにいるかわからないので攻撃に転じれない。だがそれは間壁さんも同様だろう

 

 

しかしこの砂埃もいつまでも有効なわけではない

そこで俺は、最小の空気の射出で訓練場ぎりぎりを移動しながら、空気の玉、空気砲を全体的に打ち込んでいく

 

 

だが空気の通り道で見たものは、間壁さんは空間断裂で身を包み、試合開始時点から動いていなかった

 

 

想像できていたことだったが、これでは消耗戦に持ち込まれ確実に俺が負けてしまう

そこで俺は繭との試合で行った『口』を間壁さんの後ろに出現させ攻撃を行うことにした

確かに空間断裂は強い。だが自らの周りを囲うには少しの隙間ができてしまう。それに空気も必要だ

 

 

だからこれが今現時点で俺に切れるカードの一つ。切り札はまだ残してある

 

 

間壁さんの背後に口を出現させ、攻撃しようとした瞬間、間壁さんを覆っていた壁が消え、攻撃が外れてしまった

 

 

 

「ここまで個性を使いこなしているとは思わなかったよ。先輩、君のお父さんに話を聞いておいてよかった。遠くのものを取り込めるなら、遠くから攻撃できるかもって先輩が言っていたからね。それと視線でバレちゃうから注意が必要だよ」

 

 

本当に遊ばれている感覚だった。俺の考えていることがすべて見透かされ、手のひらで踊らされているようだった

 

 

悔しくてたまらない

 

 

それから動き回りながらの攻撃、遠隔操作した口での奇襲を行い続けたが、間壁さんには傷一つついていなかった

 

だから切り札を使うことにした

 

 

「すみません、間壁さん」

 

 

そういって俺は間壁さんを覆っている壁事、

亜空間に取り込んだ

 

 

少なくともこれで間壁さんは俺に手出しをできない

俺も手を出すことはできないが・・・

 

 

全く手が出なかった

 

均衡状態を保っているため引き分けといってもいいだろうが、実際は俺の負けだ

 

気を抜いたその瞬間、バキバキバキと音を立てて、空間が割れていく

まさかと思った。

あり得ない。あそこは亜空間、この世界のどこにも通じてない空間のはず。それにあそこに入った生き物は仮死状態のようになるはずだ

なのに、割れた空間から間壁さんは出てきた

 

 

 

「随分と思い切ったことをしたね。でも残念。個性の相性と君のミスが二つある。一つは空間断裂という僕の個性。空間に干渉できるんだから出てこれてもおかしくはないだろう。それにこれは君のお父さんの個性で何度か経験済みなんだ。二つ目は君の個性の亜空間をこの世のどことも繋がっていないと思っているようだけどそれも違う。ああ、これじゃ三つ目になっちゃうけど、僕を覆っていた個性ごと収納したのが一番のミスだね。あれじゃあ僕が収納されても、僕の個性が周りを覆っているから、意味がない。きっと今のが君の切り札だろう?まだ続けるかい?」

 

 

 

完璧に負けた

手も足も出なかった

 

 

だけどここじゃ終われない

 

 

無駄だとわかっていても同じ事をつづけた

 

 

「君も強情だね。だけどこれで終わりにしようか」

 

 

間壁さんがそう言った瞬間、右腕に違和感が走り、どさりと音が聞こえた

 

 

音の方を見るとそこにあったのは俺の腕だった

 

それは身体が瞬時に起こした反応だった。切られた腕の場所に口が移動し止血し、間壁さんから距離を取った

 

 

 

だがまた次の瞬間、今度は左腕が宙を舞い、後頭部に衝撃が走った

 

 

 

「すごい判断だったな。完璧に止血を行い僕から距離を取ったことは。でも、それじゃあだめだよ。僕の攻撃範囲と、空間の壁は動かせるんだ。そこをしっかりと把握しておかなくちゃね。でもやっぱり君は先輩の子供だ。最後まであきらめないその姿勢は素晴らしかったよ」

 

 

 

 

 

その言葉を聞いて俺は意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっぱり弱いなお前は』

 

『そうだね僕』

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



ここはどこだ?

 

 

先程まで俺は間壁さんと戦っていた

 

俺は無様にも間壁さんに一撃入れることすら出来ず、腕を切断され、まだ戦おうとしたところから覚えていない・・・

 

 

 

 

そして多分意識を失ったのだろう

 

意識を失っているのに意識があるなんておかしな話だ

 

夢でも見ているのだろうか

 

 

 

だが何だこの気持ちの悪い、吐き気の催す世界は

 

 

 

 

色々な色が混ざり合い、所々には穴が空いている

 

地面は混ざりあった色が泥のようになっており、上手く歩けない

 

その泥のようなものは穴に落ちていく

穴を覗き込んでも暗闇だった

 

割れた窓のようになった場所

 

ぐにゃぐにゃと歪んでいる場所

 

そこを通り過ぎていった

 

 

 

少し遠くに地面が黒くなっている場所があった

 

それは今までに見たことの無い大穴で、下を見ることが出来た

 

 

そこにあったのは俺だった

 

俺の人形?

 

 

今違う

様々なものに憧れて、それになれなかった出来損ないの俺だった

 

 

 

ここはきっと・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに少し進んでいくといくつかのドアがあった

 

笑っている顔、喜んでいる顔、哀しい顔、怒っている顔、目や鼻が着いていないのっぺらぼうの顔が三つ

 

 

 

正直開けるのが怖い

 

 

 

なぜならそれらの顔は前世の俺の顔だったからだ

 

 

 

 

なんで今更前世の俺が出てくるんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そりゃお前が弱いからだろ?』

 

 

 

 

 

 

 

真後ろからどこか聞いたことのある声が聞こえた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうだね。弱いし歪んでる。ここはとても気持ち悪い空間だね』

 

 

 

 

 

また違う声が聞こえた

 

 

 

 

 

 

俺は意を決して振り返った

 

 

 

 

 

 

 

そこに居たのは前世の俺と、憑依した時のこの世界の俺だった

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、お前らがここに」

 

 

 

 

『何でも何も、ここはお前の心の中だからだよ』

 

 

『そう、そして僕の心の中でもある』

 

 

 

2人はそう言った

 

 

 

俺はこの二人が俺の前にいること自体に驚きと戸惑いを隠せなかった

 

 

 

 

『お前は死んでも、力を手にしても変わらないな。前世でもこの世界同様の愛情や力があっただろう?それを気がついていても見ないふりをしたのオレでお前だろ?確かに家庭は歪んでいたが、母さんの頑張りがあって欲しいものも買えたし、学校にも通えた。だがそれはオレが望んでいた愛情ではないと思い、理解しながらも感情が勝った。そうしてオレはおかしくなり自殺した。別に人を殺そうと思えば向こうでも殺せただろう?今お前が目標としてることも、やろうと思えば出来たはずなのにな』

 

 

 

 

 

『オレ』が『俺』に対してそう言った

 

 

 

 

 

そんなことは俺が1番よく理解している

 

なぜならオレは俺だから

 

だけど前世の俺は何もかもに不自由を感じていた

 

まだ将来何があるか分からない

 

それでも自殺した

 

周りから見たらおかしな話だろう

 

 

だが、俺からしたら真剣だった

 

 

 

 

『そうだね、まぁ僕もそれは分かっているよ。君が僕の身体に入った時、僕はこの世界に来て今まで過ごしていたんだから。本当に気が狂いそうだったけど、君の前世の扉があったからね。あそこはこっちと比べて文明の発達が遅れていたけど面白かったよ。君の前世追体験と、自由に動き回ることが出来たからね。それにしても前世の君が言う通り、君はわがままで、僕から見たらとてもわがままだよ。兄弟もいて友達もいて、両親からの愛情は、君が欲しい愛情じゃなかったみたいだけど、おばあちゃんに育てて貰って、恋人までいたじゃないか。それなのに満足出来ないなんてね。だから僕はわかったんだ。ここは壊れた空間。この穴は君が満たされない証拠だ。本来この水は人の心を満たし満足させるものだ。それが君のように汚い色をしてる人も、青空のように綺麗な色をしてる人もいる。それらが満たされた時、その人が成り立つんだ。でも君はそれをなしえない。この穴のせいでね』

 

 

 

 

幼い『僕』がそう言った

 

 

 

 

 

「だからなんだよ、なんだって言うんだよ!」

 

 

 

 

 

 

『まだ分からないのか?お前、オレはこの世界でも変われないんだよ。『僕』も言っただろう?この世界、『俺』の心は前世のまま壊れている。今世の物を取り込むというのは皮肉なもんだなぁ。いくら取り込んだって『俺』の心が埋まることは無いのに。そして『俺』は気づいてないが、個性は1人につき1つだ。じゃあ『オレら』の存在はどうなるんだろうなひとつの身体に三つの意識、魂と言った方がいいか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

ははは、笑えない話だな

前世から、こっちに来て変わったと思っていたが、何も変わってないなんて

俺の心はこんなに汚く澱んで、穴だらけ

常に満たされることはなく、供給し続けなければ枯渇する

 

 

 

 

 

 

 

ん?

個性は1人につき1つだ

それは正しい

だが、心が3つある俺たちはどうなる?

『吐喰』の個性

もしも『オレ』と『俺』の個性があるなら?

いや、元々『オレ』と『俺』はひとつだ

だから1つの可能性もある

だけど、魂が個性に関わっているとしたら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今回は特別に『オレ』と『僕』が表に出るよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それともう一つだけ。これはゲームでも妄想でもない。やり直しのつかない現実だからな。そこを履き違えるなよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして2人の姿が消えた

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

心2とげんじつ

げんじつ?

 

そんなこと当たり前じゃないか・・・?

 

あいつらは何を言っているんだ

 

確かに漫画みたいな話だけど、こうして俺は生きているじゃないか

 

あれ?

 

漫画みたいな話?

 

ヒロアカは漫画で、その世界に憑依したんだよな

それで、新しく父さんと母さんがいて・・・!?

 

 

 

その瞬間バチリと脳内にある光景が浮かんできた

 

 

 

 

肉片にされた両親

 

暗い部屋で物言わぬ両親の遺体

 

 

部分部分でやっと判別できるくらいに損傷した肉体

 

もうこちらを見てくれることも、声をかけてくれることも無い

 

 

え、あ?

 

 

 

 

この世界の吐喰と入れ替わってからの両親

 

抱きしめてくれたり、撫でてくれたり、好きなご飯を作ってくれたり、時には叱ってくれて俺を包み込んでくれた

 

記憶じゃなく別の人格、吐喰本人ではないのに愛してくれた

きっと、別の人格が入り込んだなんて思ってもいなかっただろうけど

 

それでも母さんと父さんとの思い出が沢山ある

沢山あるんだ

そう、あるしこれからも?

 

これから?

これからって何だ?

 

だって2人は死んじゃったじゃないか

漫画の世界で、今後の展開を知ってて見捨てたせいで

 

俺というイレギュラーがいたせいで、繭のお母さんも

 

 

いつもニコニコしていて、早く孫の顔が見たいわ、なんて小学生に何言っているんだって思った元気で明るいあの人も・・・・?

 

 

 

 

 

げんジつ?

 

 

もう元には戻ラない??????

 

 

 

ナンデ?

ナンデソバニイナインダ?

 

 

 

 

その瞬間、心の世界に豪雨と濁流が押し寄せて来た

 

それに飲み込まれ視界はあの汚い色に染まっている

 

水のようなものはきっと感情や思い出といったものなのだろう

 

それが穴に吸い込まれていく

 

だが、量が多すぎて吸い込みきれない

 

どこからかバキバキと音が鳴る

 

ああ、また壊れていく

 

壊れて壊れて

 

どうなってしまうんだろう

 

 

 

俺はそれに溺れながら声にならない声で叫んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜現実side〜

 

その場に居た誰もが、吐喰君の敗北を認めた

 

私も間壁さんも

 

私も急いで駆けつけたかったができることがない

拳を握りしめ下を向いていた

 

 

間壁さんが私の傍にいた接合さんを急いで呼びに行こうとした時、吐喰君が起き上がった

 

え?

 

 

 

『真壁さんも酷いですね。こんな一方的にやるなんて。僕らがやらなくちゃいけなくなったんですよ?』

 

 

『そうそう。あいつは馬鹿だから現状を理解出来てないからな。オレらがやることになった』

 

 

 

 

アレはなに?

吐喰君?

ううん、吐喰君だけど吐喰君じゃない

雰囲気とか表情、話し方

今までの彼じゃない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吐喰君?何を言っているんだい?あの状況から戦うなんてこれ以上は無理だ」

 

ある程度危険と分かってはいたが、あのままでは吐喰君は四肢を切りをとされるまで戦っていただろう

だからこそ四肢を欠けさせ、実力の差を分からせた上で意識を飛ばしたというのに、すぐに起き上がった?

ありえない

 

 

いや、当たりどころが運良く外れ起き上がれたとしても、彼はなんて言った?

 

彼は普段一人称を俺と言っていた

だが、起き上がった彼は僕らと言った

『僕ら』だ

つまり彼には・・・

 

 

 

 

 

 

『じっとしてていいんですか?』

 

 

 

その言葉と同時に岩石が物凄い勢いで飛んできた

 

個性を発動させ何とか防いだものの、あれが当たっていたら死んでいたかもしれない

 

あくまでこれは試合だ

 

それは彼も理解してるはず

なのに何故?

 

 

『それ、壊しちゃいますね?』

 

 

岩石を防いだ空間壁がバキリと音を立てて、崩れ去った

しかもいとも簡単に

 

そう、いとも簡単に壊された

 

 

でもおかしい

彼と同じく空間系個性だから壊せてもおかしくは無い

戦いの中で成長する子は珍しくない

 

だが急激に変化し、尚且つ『口』が見えなかったことそして起き上がってからの様子が少しおかしい

 

 

 

 

 

『あー、間壁さん。こいつやばい事になってるんで早めに終わらせます』

 

 

 

彼はそう言いながら血の涙を流していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間彼が視界から消えた

 

音もなく、気配も感じない

 

まるでその場から居なくなったかのように

 

彼の移動方法は知っている

 

だが、その場から消え去るような移動方法なんて知らない

奥の手なら、倒れる前に使っている

あの壁を壊した個性の使い方もだ

 

 

そんなことを考えていると

 

 

 

『チェックメイト』

 

 

胸元から声が聞こえ、顔の正面に『口』が突きつけられていた

 

 

 

『いつ目を覚ますか分からないんで、繭のことよろしくお願いします』

 

 

そう言って彼はその場に崩れ去った

 

 

 

 

『アレ』は一体なんだ?

急激な個性の成長

姿を消すという、まるでもう1つ個性があるとでも言っているような・・・

まさか彼は奴との接触が!?

 

 

 

 

 

私はその場で立ち尽くしていた

起き上がった吐喰君は吐喰君であって私の知る吐喰君じゃない

私と模擬戦をしていた時とまるで動き方が違かった

 

私の吐喰君はどこに行ったの?

 

そんなことを考えている間に試合は終わっていた

 

彼は再度倒れており、目からは血が流れている

 

私は急いで彼の元へ向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おいおい、あの数分でどうしてこうなるんだよ』

 

 

『そんなの僕より君の方がよく分かるでしょ?『オレ』は今の『俺』を形作った大元なんだから』

 

『それはそうなんだが。やっぱり最後の一言が不味かったか?』

 

 

『それ以外ないと思うよ。まぁ何とかなると思うけど、こんなに荒れている所には居られないから、部屋に入ろうよ』

 

 

『だよなぁ。メンタルクソザコナメクジだからな。特大ブーメランなんだけど。その意見には賛成だ』

 

 

2人は足並みを揃えて部屋へと入っていった

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



内容を少し変えました


ここは、どこだ?

 

あれからどうなった?

 

濁流に飲み込まれたあとの記憶が無い

 

だが、この場所にはなんだか見覚えがあるような気がする・・・

 

 

 

 

 

あれは!?

 

 

 

 

 

前世の俺とおばあちゃん?

 

 

 

確か幼少の頃は踏切の近くに行って電車を見るのが好きだった

なんで好きだったかなんて覚えてないけど

よく手を繋いで連れて行ってもらってた

 

 

 

なんで忘れてたんだろう

 

 

 

一緒には暮らしてなかったけど、家が近くて良く面倒を見てもらってた

 

 

出かける時はいつも一緒だった

この頃は杖を着くことも無く、歩幅を合わせてニコニコしながらスーパーや踏切、近くの公園に行っていた

 

 

兄と姉もいたけど、歳が離れていたのと学校に通っていたため、夜寝るまではほとんど祖母といた

 

 

どうやら俺は俺自身の過去を見ているようだ

 

 

 

 

 

空間が歪んで場面が変わった

 

 

今度は俺が幼稚園に通っている光景だ

 

 

兄と姉も同じ幼稚園に通っていたようで、長く務めている先生は俺の事を知っているようだった

通っている地域では珍しい苗字で、3人目だから知っていてもおかしくはない

 

幼稚園ではごく普通の子供と言った感じだった

 

兄と姉はバスを使ってここに通っていたが、俺が通うようになってからは徒歩でも行ける距離のところに引っ越した

 

幼稚園での思い出は特にない

 

今見ている光景で、こんな遊具もあったな程度だ

 

どちらかと言うと引っ越したマンションでできた一つ下の友達との思い出の方が感慨深い

 

これは今でもしっかり覚えている

 

まぁ俺が中学に上がってから、関わりあいはほとんど無くなったが

 

 

 

また場面が変わった

 

 

 

今度は小学生になってからの日々のようだ

 

 

 

よく人をからかって怒られたり、宿題が面倒で答えを移してやっていた悪ガキだった

 

 

 

家では基本的に1人

兄弟とは歳が離れているためあまり遊ぶこともなかったし、関わるとすれば喧嘩ばかりだ

 

 

テレビが1台しかなかったため見たい番組で喧嘩なんてしょっちゅうだった

 

 

 

夜中、仕事から帰ってきた両親がすることと言えば喧嘩

 

怒鳴り声が響き渡って、怖くて怖くて布団に潜っていた

 

 

お金のせいで喧嘩していることは物心ついたときからわかっていた

 

 

 

 

 

そんな時、いきなり引っ越すことになった

 

 

 

いつの間にか離婚していたようだ

 

 

これも酷い話だ

何も知らないうちに家族が離れ離れ

 

果たして家族だったのか今も分からないけれど

 

 

経済力や、借金をしたのが父親だったため子供はみんな母親について行った

 

 

 

 

ここがきっと人生のターニングポイントだったのだろう

 

 

 

再婚はしていないが新しく父親ができた

内縁の夫のようなものだ

 

 

 

 

初めは戸惑うことばかり

 

家にいるのが苦痛で仕方なかった

 

だが子供3人を養うためには仕方の無いこととわかっていた

できる限り俺たち兄弟に、お金に困らないよう生活させるためだって言うのはわかっていた

 

 

 

新しい父親はどうもその日の機嫌次第の人のようで、暴力は振るわれなかったが精神的苦痛は毎日のようにあった

 

 

 

そこで俺が出会ったのがマンガやアニメ、小説だ

 

あそこは現実逃避するにはいい場所だった

 

 

だがそれも奪われる時すらあった

 

 

それもこれもお金のせいだ

 

だから安定した収入を得るための職を意識した

 

 

 

見ている光景にノイズが走る

 

これは心を壊す光景だ

だから、未だにセーフティがかかるのだろう

だけど記憶にはしっかり焼き付いている

 

 

筆舌し難い日々が、心が壊れる毎日が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時だ

死にたいと思ったのは

消えたい

ここから飛び降りたらどうなるのか

赤信号に飛び込んだら・・・

 

 

 

だけどそんな心の声に耳を塞いだ

それを周りにも隠した

自分が死んだ瞬間を想像する

それを見ないようにした

自分で作った傷を隠した

 

 

生まれた意味を探した

 

 

だけどどこにも見当たらない

 

自分はその辺の石ころと変わらないと思った

だけどそれと同時に何かを成し遂げられる人間だとも思った

 

 

 

 

自分の周りの不都合なことには耳を塞ぎ目を瞑り、前に進んだ

 

 

 

それでも周りの、自分とは違う人生を送っている人間を酷く羨んだ

憎んだ

 

 

そんな時、恋人ができ愛を知った

家族愛とはまた違う愛だ

 

 

 

その愛に溺れた

溺れて他のことは考えられなかった

 

 

だけど心が満たされることは無かった

 

他人から注がれる愛程度では足りなかった

 

 

もう遅かったのだ

 

 

 

この時点で心は壊れていた

 

 

 

それからも無為に何かに憧れ、それに敗れ

また見ないふり、聞こえないふり

 

そして本当の自分を他人に見せないよう、聞こえないようにした

だが自分でもどれが本当の自分が分からなかった

 

 

 

生きる意味を探す以前に自分を見失っていた

 

だからだろうか

 

何かを傷つけることで自分はここにいたと証明したかったのかもしれない

 

 

果たして生きてきたこの十数年で得たものはなんなのだろうか

 

得意なことは現実逃避

苦手なことは生きること

 

だからあの日俺は生きることを辞めたんだ

 

 

 

 

 

 

そして人生最後の日に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目を覚ました時に周囲にあったのは、壊れた俺たちだった

あの大穴に落ちたんだ

 

笑って、泣いて、怒って、悲しんで

色んな壊れた俺がいた

 

 

ああ、捨ててきたけどこれも全部俺なんだな

 

受け入れなきゃいけない

 

 

そうじゃないときっと前に進めない

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時上から声が聞こえて、手が伸ばされた

『オレと吐喰だ』

 

 

 

 

 

 

『目覚ましたか』

 

『おかえり』

 

 

 

 

2人の手を取って上に上がる

 

 

 

 

辺りを見回すと、初めにここに来た時よりも醜く醜悪な空間になっていた

 

 

 

「俺はどうなって・・・」

 

 

 

『お前はそこら中に空いている穴の特別大きいのに落ちてたんだよ。それをオレらが引っ張りあげた。それだけだ』

 

 

『ねぇ『俺』、見てきたんでしょ?過去を』

 

 

 

そうだ、俺は見てきたんだ

自分がどんな人間だったのかを

 

 

 

『君がさ、どうして僕の身体に憑依したのかわかる?』

 

 

「そんなの、偶然だろ」

 

 

『ところがどっこい、違うんだよね。君の心って埋まることないでしょ?で、僕の個性は喰らうこと。溜め込むことも出来る。だから、君はこの身体を無意識に選んだんだよ?』

 

 

「そんな、馬鹿な」

 

 

『馬鹿な話じゃないよ。どんな神様が君をこっちに送ったのかは知らないけど、君がしたかったことをするためにこっちに送ったんじゃない?まぁ、神様何てものがいたらだけど』

 

『オレからも一つ。お前は個性を三つ持っている。一つは吐喰の個性。二つはオレとお前の満たされない個性と見せない聞かせないの個性。なんでこの個性かは言わなくても分かるよな』

 

 

 

 

 

 

満たされない個性、つまりは心

 

見せない聞かせないの個性は前世の行い

 

 

 

 

 

 

なんだか仕組まれているみたいだな

 

でも、もし何者かに仕組まれてるなら、それが生きる意味なのか?

 

この2人は幻覚かもしれないが、俺に、俺のやろうとしていることにヒントと力をくれる

 

ほんとなんなんだろう

訳が分からないけど、結局やることは変わらない

 

ここが現実だと改めて理解出来た

 

 

だから、これからすることも全て現実だ

 

 

そこから逃げることも出来ない

 

 

やると決めたから

 

 

 

 

現実とわかったからこそ、早く繭に会いたい

 

 

 

 

『そうだな。早く戻ってやれ』

 

 

『あの子はずっと君を待っているよ』

 

 

俺は立ち上がって

 

「行ってくる」

 

 

そう言って以前見た、顔のない扉の方に進んでいく

 

そしてそこにあったのは、前世の俺と吐喰を足して2で割ったような顔をした仮面だった

 

この扉から出ればここから出られると、なんとなくだがわかった

 

 

『またな』

 

『またね』

 

 

 

二人はそういった

 

 

 

俺は後ろを振り返らず扉の中へ足を進めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実に戻ってきたのだろう

 

 

またどうやら病室のようだ

 

 

だが、なんだか今までと違った感じがする

 

 

腕が妙に細くなっており、点滴などの管も多く着いている

 

 

 

その時だった

 

 

ガラッと音がして、ドアが開いた

 

 

 

そこに居たのは、繭のような人だった

 

 

 

「め、目を覚ましたの!?吐喰君!」

 

 

 

 

「っぁ」

 

上手く声が出ない

 

 

おかしい

 

 

 

「私の事わかる!?繭だよ!!あれから四年経ったんだよ!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

帰還

現実に戻ってきたのだろう

 

 

またどうやら病室のようだ

 

 

だが、なんだか今までと違った感じがする

 

 

腕が妙に細くなっており、点滴などの管も多く着いている

 

 

 

その時だった

 

 

ガラッと音がして、ドアが開いた

 

 

 

そこに居たのは、繭のような人だった

 

 

 

「め、目を覚ましたの!?吐喰君!」

 

 

 

 

「っぁ」

 

上手く声が出ない

 

 

おかしい

 

 

 

「私の事わかる!?繭だよ!!あれから四年経ったんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞き間違いか?

 

 

 

今四年って

 

 

 

まさかあの試合から?

いや、意識を失って自分の心に潜っていた体感時間はせいぜい数時間だ

 

 

でも、現実と乖離していても何もおかしくない

 

 

 

そして、この人は繭なんだろう

 

個性とかじゃなくて雰囲気とかそういうのが繭だって伝えてくれる

 

 

 

「ま、ゆ?」

 

 

「そうだよ!吐喰君の彼女の繭だよ!覚えてる!?」

 

 

 

なかなか上手く声が出せないが、単語なら問題ない

 

「う、ん。覚えてる、よ」

 

 

 

「よかった!本当によかった!あ!!今お医者さん呼んでくるね!!」

 

 

そう言って慌てて病室を出ていった

 

 

 

そうか、四年か

 

 

 

約束の期限は過ぎてるし、繭は制服を着ていた

きっと中学校に通っているんだろう

トガちゃんとはどうなっているか

 

 

 

間壁さんも・・・

 

 

 

これから考えることはいっぱいあるけど、四年という月日は身体に大きな影響を与えているようだ

 

これはリハビリが必要だな・・・

 

 

 

 

 

 

 

それから数分たって繭と白衣を着た男性が来た

 

 

どうやらこの白衣を着た男性は、こっちの世界の俺が飛び降りをした時に担当した医者のようだった

 

 

記憶の有無、身体の動作など様々な確認を行ったあとこう言った

 

「まさに奇跡だ」

 

 

そう、奇跡だ

 

四年という月日は軽くない

 

だが、あの空間から戻ってこれたこと

 

そして、さらなる力を手に入れたこと

俺はついに俺に成った

 

 

前世の俺とはもう違う

今までとこれからの全てを受け入れる

 

きっとそこから始まる

 

 

 

医者が病室を出ていってから繭と話をした

 

 

「繭」

 

俺はそう言って繭に手を伸ばして、繭はその手を取ってくれた

そのままの勢いで抱きしめた

 

「四年も待たせてごめん。待っててくれてありがとう。大好きだ」

 

 

 

繭はそっと俺の背中に手を伸ばし抱きしめ返してくれた

そして俺の言葉を聞いて少しづつ力が込められていく

 

「う、ん!まっだよ!わだじもだいずき!!!」

 

涙を流しながら、そう言ってくれた

密着する身体からは繭の鼓動が伝わってきた

 

そんな一言で償えるものでは無いことはわかっている

でも今はそれを伝えたかった

 

暖かい

 

満たされている感覚がある

 

でもきっとこれもすぐに無くなるんだろう

 

だが、この温かさは心の穴を埋めてくれる

そんな気がするんだ

 

そこから1時間くらいは抱きしめ合っていた

 

 

 

「この、四年で、何があったか、教え、てくれる?」

 

 

 

「うん」

 

 

 

あの日俺が意識を失ったあと、俺であって俺じゃない雰囲気を放って立ち上がったあと、間壁さんを圧倒して試合に勝ったようだ

 

それも姿が消え、初めからそこにいたように間壁さんの前に立っていたそうだ

 

その後直ぐに倒れ、切られた腕を接合してもらい病院に搬送

 

 

間壁さんは私闘で未成年、自分の庇護下にある俺に対して試合の結果から、ヒーローを引退しようとしたらしいが、繭が引き止めてくれたらしい

 

 

それは俺が望んでいる事じゃないと説得して

そのおかげか間壁さんは未だにヒーロー活動をしてくれている

 

 

トガちゃんについては、今も交流があるらしく繭に変身して、繭の個性を使い訓練をできる段階まで来ているらしい

お見舞いにも来てくれていると言っていた

 

 

繭は自宅近くの中学に通い始めたようだ

本当なら今までのように生活したかったが、そうもいかず、俺が目を覚ますまで学生生活と訓練、お見舞いの日々を送っていたと言っていた

 

 

 

そしてちょうど今、中学二年と聞いた

 

 

 

原作開始前後だ・・・

 

不味い

 

 

 

 

 

 

繭には一部を除いて全てを話すことにした

 

前世の記憶があること

 

試合の時に間壁さんと戦ったのは別の人格ということ

 

自分が酷く歪んでいること

 

 

 

驚いたことにあまり衝撃を受けないと言ったことだ

 

どうやら俺は周りよりも達観しており、年齢不相応だったようで、前世の記憶ということは想定外だったが驚きよりも納得したと言った感じらしい

 

 

そして前世の記憶を持っていようと俺は俺だと認めてくれた

 

 

 

「吐喰君は吐喰君のままだよ。あの日私を助けてくれて、私のヒーローになってくれたかっこいい『ヒーロー』。そしてこれからも吐喰君は色んな人の『ヒーロー』になれるよ。世間が認めてくれなくても、私やトガちゃんのように救われた人がいる。だから、大丈夫だよ」

 

 

やっぱりすごく暖かい

 

言葉の一つ一つが、心の穴を埋めてくれるような、そんな感じがする

 

 

やっぱり繭のことが好きだ

 

 

 

「嬉しい!私もだよ!」

 

 

「あれ?声、にでてた?」

 

 

「うん!」

 

くすくすとお互い笑いあっていた

 

 

夕日が差し込む病室で、笑みを浮かべる彼女は何よりも綺麗な存在だった

 

 

 

 

 

 

 

 

これから繭は今まで通りの生活を送り、俺の退院に備えるようだ

トガちゃんとも会う頻度を増やし、少しでも動けるようにするらしい

 

俺は当分リハビリ生活にはなるが、何としても高校入学まで、特にUSJ事件の時までにはなんとかしたい

 

約1年という期間があるが、肉体だけでなく個性の調節も行わなければならない

 

早く退院して、実家の訓練場に戻らなくてはならない

 

そして自らの死を偽装する必要もある

繭、トガちゃんのもだ

 

 

正体が直ぐにバレてしまっては行動もしづらくなる

致死量の血液を亜空間に保管し、表舞台から去ると同時に訓練場血液をまく

そして訓練場を崩壊させ、俺の新しい個性を使い身を隠す

 

お金や食料などは予め準備しておけば大丈夫だろう

 

あとは、情報屋と繋がれればなんとかなる

 

 

 

やることは多い

 

だが、止まるわけにはいかない

 

そういう道を『俺』が選んだんだから

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

退院

入院してから約半年

 

 

リハビリと今後について考え、お見舞いに来てくれる繭やトガちゃんと話をしている毎日だったがようやく退院の目処が着いた

 

 

最初の頃は腕を上げるだけでも痛みが走る身体だったが、今では意識を失う前以上に筋力が着いている

 

この世界の医療のおかげだろう

 

身体の成長は意識を失ってても、起きていた時と同様に成長しており、身長は170を超えている

さすがに筋肉といった部分は衰えていたが、リハビリ生活で予想以上に引き締まった身体になった

 

 

荷物をまとめて久しぶりに自宅に戻る

 

間壁さんから外出を禁じられていたこともあり、久しぶりの帰り道だ

 

外出を禁じられていた理由は教えて貰えなかったが、複数の個性を持つ俺が奴、AFOとの接触を危うんでだろう

 

ヒーロー達の中では死んだとされるAFOだが、もし奴の個性を受け継いだ者がいるとすれば、と間壁さんは考え俺の外出を禁じたはずだ

 

奴の思想を受け継いでいるとすれば、俺をこのまま世に出すのは危険と判断したのだろう

 

まぁそんなことは無いのでこちらとしては非常に困っていたが・・・

 

 

やっと自宅が見えてきた

 

約半年ではあるが非常に懐かしく感じる

 

あの日、倒れてから四年と半年

 

今は主に繭が生活している状況だ

 

今は午前中なので学校にいる

つまりは俺一人な訳だが、おかえりの一言が欲しかった

 

 

溜息をつきながら鍵を開けると

 

「「おかえり!」」

 

 

そこには繭とトガちゃんの姿があった

 

いや、繭なら学校を早退、もしくは休むという選択肢があるがどうしてトガちゃんがここに??

 

 

「た、ただいま・・・2人とも学校は?それとどうしてトガちゃんまで??」

 

 

 

そこからは衝撃だった

 

 

話を要約すると、俺が目を覚ました時期からトガちゃんはこっちで暮らしていたようだ

なんでも、この個性なら雄英も夢じゃないと繭と間壁さんが両親を説得し、ヒーローが後継人になっている人の家なら安心と言うことで引っ越してきたらしい

 

トガちゃんについては繭から間壁さんに話して、トガちゃんの居場所を作るためにこちらに呼んだようだ

 

そうして2人で生活していたようで、俺がリハビリを行っている際、よく2人で来ていた理由が判明した

 

一緒の学校に通っている&暮らしているなら頻繁にお見舞いにもこられるだろう

 

 

これはとても嬉しいサプライズだ

 

 

 

それから退院祝いを行う予定だが、間壁さんが夜に来るらしくそれまでは今後の予定について話しておいた

 

 

俺の個性のこと

 

俺たちが死んだように偽装すること

 

AFOという存在が居て、その後継者もいること

 

 

つまりUSJまでには表舞台から姿を消すことを話した

 

 

 

二人は了承してくれた

 

 

あとはいかに俺が動けるかにかかっている

 

 

二人は俺のために手料理を振舞ってくれるらしく、その間暇になった俺は久しぶりに訓練場に行くことにした

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの個性の発動

 

 

まずは『吐喰』の個性

 

 

 

うん、上手く発動出来ている

前よりもスムーズに発動できているようにも思える

 

次に『オレ』の個性

 

前世のオレは自らの事を隠し言わなかった

それを悟られないようにもした

そして現実逃避をした

 

それであの個性だ

 

目の前にある岩に視線を向け、消えろと念じる

10秒ほどたってどんどん岩が透けてきた

さらに10秒たった後には、そこには何も存在していないように見える

 

そう、あくまで見えるだけだ

 

岩は見えないが確かにそこに存在している

 

触れでもしない限り認知出来ない

 

そしてもうひとつ

音の消失

 

それが『オレ』の個性

 

 

 

最後に『俺』の個性

 

これは容量に限界があると幼少時に覚えたせいか、それとも『俺』という存在がまだ確立していなかったために、発動しなかった個性だ

 

 

簡単に言うと亜空間の限界を無くすこと

 

 

もしかしたら繭達の存在で有限になるかもしれないが、今の俺の状態ではどんなものをどれだけ入れても、身体に傷がつくことはない

 

 

ハッキリ言ってチートだな

 

 

どんなものでも喰らえ、その上限はなく、存在を認知させない

 

 

ただし、口の数にも限界があるため全包囲攻撃などをされたらさすがにアウトだ

 

 

あと、戦闘で思いついたのが相手の攻撃をそのまま相手に返すというものだ

 

口はどこにでも設置できるため、例えば相手が俺の腹を直接殴ろうとした瞬間に、その地点に口を出現させ腕を飲み込む

噛みちぎらないのがポイントだ

 

そしてその勢いのまま相手の背後でも、俺の顔面でもいい、2つ目の口を出現させ飲み込んだ部分を吐き出す

 

そうすれば俺は攻撃を喰らわずにすむ

 

 

透過の上位互換だな

透過と、予想外の位置からの反射

 

 

うん、やっぱりチートだ

 

まぁ上手く使いこなせればの話だが

 

 

 

とりあえず存在を認知させない個性を素早く発動できるよう訓練していこう

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再開

瞑想をしながら個性を発動していると、訓練場の入口から繭の声がきこえてきた

 

 

「吐喰君!準備できたよー!ってあれ?いないのかな。ここだと思ったんだけど・・・」

 

 

 

準備が出来たってことは間壁さんも来たってことか

 

それと個性は発動できていたようだ

今俺のいる場所は入口からでも良く見える位置だ

 

 

聞こえないように意識して声をかけた

 

 

「俺はここにいるぞ!」

 

 

どうやら聞こえていないようだ

消音も成功

 

少なくとも意識を集中して行えば使うことができる

それがわかっただけでも良い成果だ

 

 

個性を解いて繭の前に姿を現した

 

 

「ここにいるよ。わざわざ呼びに来てくれてありがとう」

 

 

 

「わ!?」

 

驚いて尻もちをつきそうになったが蜘蛛の脚で身体を支え、斜めの状態になっている

 

 

「咄嗟に使えるようになったんだね」

 

繭の背中に手を回しこちらに引き寄せる

 

 

「あ、ありがとう。今のって新しい個性?」

 

 

「そうだよ。まだ意識を集中してないとダメだけど使えることには使える。ちなみに消音も出来たよ」

 

 

「自覚してから使ったの初めてなんでしょ?やっぱりすごいなぁ。あ!そうだ、トガちゃんと間壁さん、それに吐喰君のご両親の知り合いも来てくれてるんだよ!急がないと!」

 

 

それはなんとも嬉しいことだ

きっと誕生日に来てくれた人達だろう

 

 

 

 

 

 

 

「「「「退院おめでとう!!!」」」」

 

 

 

思ったよりも人数が多くて驚いた

ただあの日に出会った人たちも若干老けている

いや、そこまで歳のいった人たちはいないから、老けているという表現は正しくないだろう

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

ひとつ思ったのだが、意識を失った時と今の話し方などいろいろと違っているが疑問に思われないだろうか?

 

まぁなんとかなるか?

 

 

 

みんな一言一言おめでとうと言って中には抱きしめて来る人もいた

男女関係なく居たが、女性の時に殺気というかものすごい視線を感じたが無視することにした

 

後でいっぱい可愛がってあげよう

 

 

 

間壁さんが挨拶に来た

 

「あの日、君を傷つけてしまって本当に申し訳ない。本来ならヒーローを引退するべきなのに」

 

 

「気にしないでください。あれは事故ですし、逆に引退なんてされてたら怒っていたところですよ!」

 

 

「そう言ってくれてありがとう。退院おめでとう」

 

 

 

 

お互いに言いたいことは伏せている

 

 

「ありがとうございます。また後でお話しましょう」

 

 

そう、あの日俺の個性が複数あることを知っている間壁さんには説明が必要だろう

 

少なくともAFOとの接触はないこと

その意志を継いでないことも

 

 

 

夜も更けてまた1人また1人と家を出ていく

彼らはヒーローだ

泊まって行く暇はないだろうし、俺も困る

 

 

 

 

最後の一人が家を出てから間壁さんに声をかけられた

 

 

 

 

「吐喰君、少し話したいことがあるけど大丈夫かい?」

 

 

「はい。もちろんです」

 

 

「君の個性についてだ。あの日、君は姿を消し音もなく僕の元にたどり着き勝った。基本的に個性は一人一つ。複合個性という二つの能力を使える者もいる。それは君自身がよくわかっているだろう。だが、君はあの日僕が知らない個性を見せた。それはどうしてかな?」

 

 

 

「それは俺にもよく分かりません。記憶喪失という状態で、新しい人格が構成されました。人格によって新しい個性が目覚めたという可能性はありませんか?」

 

 

 

 

「確かに個性についてはよくわかっていない部分があるから、君の言う可能性は否定できない。だが、僕は個性を複数持っていた人間を知っている。その者は個性を奪い与えることも出来る存在だった。そう、あの日君の両親を殺したAFOというヴィランだ」

 

 

そうだと思っていた。

やはり俺の両親を殺したのは奴だったか

 

ギリっと歯を噛み締める音が聞こえてきた

 

それは自分のものだった

 

 

「すまない。だが確認しなきゃいけない事なんだ。君は奴から個性を貰ったか」

 

 

間壁さんの目は子供を見る目をしていない

憎悪と嫌悪に満ちた目をしている

余程憎く、そして関係者がまだ存在するなら・・・

 

 

「その、AFOっていうのがどういうやつかは間壁さんから聞いたことしか知りません。少なくとも個性を貰う?なんてことは無いはずです。どんな方法で個性を与えるのか分からないのでなんとも言い難いですが」

 

 

そう言うしかない

間壁さんよりAFOより詳しいが、それを話してしまうと大事になるからな

前世の記憶のことも、繭にはヒロアカという漫画があるということは説明していない

あくまで前世の記憶があると話しただけだ

 

 

「そうか、わかった。ちなみに奴はあの日ヒーローによって討ち取った。君のご両親がいなければなせなかったことだったよ」

 

 

 

「そう、ですか」

 

奴は決して死んでなんかいない

 

 

 

「済まなかったね。退院したばかりなのに。あとはゆっくり休んで」

 

 

間壁さんはそう言って家を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

「吐喰君、大丈夫?」

 

 

「トバ様大丈夫ですか?」

 

 

 

心配して声をかけてくれた

 

 

 

「大丈夫だよ、ありがとう。今日の手料理も美味しかったしこれから三人で生活していくのが楽しみだよ」

 

 

 

「うん!トガちゃんには渡さないけど!」

 

 

「あ、私だってトバ様のこと愛してるんです!」

 

 

そう言って右腕、左腕に抱きついてきた

 

 

繭はヤンデレなような気もしたが、俺が眠っていた間にトガちゃんのことを認めたのか?

 

 

とりあえず俺は今両手に花の状態だ

 

 

少し顔がニヤケてしまう

 

 

 

退院一日目は怒涛の一日だった

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二日目

 

とりあえず繭たちが帰ってくるまでは訓練を行うことにした

 

 

 

今回は『俺』本来の個性

はっきり言って『吐喰』の個性がなきゃなんの意味もない個性だが・・・

 

 

 

だが上限が無くなったおかげで、一気に喰らうことができる

 

 

あくまで『口』を集合させて出来た『特大の口』の範囲だが

 

 

取り込むだけなら視認さえできれば家だろうとビル、果ては山だろうと関係ないだろう

 

見た瞬間に相手を取り込むこともできる

勝てないと思える相手が出てくれば、取り込み先程の取り込んだ山の下敷きにしてもいい

 

 

繭やトガちゃんの緊急脱出というか、救助にも使える

 

 

 

 

 

とりあえず壊れても大丈夫なものを地下室から持ってきた

 

とりあえずリハビリも兼ねて少しづつ取り込んでいく

 

少なくとも今のところ異常は感じない

以前はなんとなくだが、圧迫感というものがあったのだがそれすら感じない

 

本当に取り込んでいるのか?と疑うほどだ

 

 

 

ならしが終わったので以前の許容上限ギリギリまで一気に取り込んだ

 

 

 

・・・・・

 

 

 

何も感じない

 

 

本当に取り込んでいるのか不安になったので、取り出してみると、確かに取り込んでいた

 

 

ならば次だ

 

許容上限オーバー

 

訓練に使用している岩などの障害物が置かれているエリアを地下10メートルまで取り込むことを強く意識する

 

 

集中しろ

 

これは俺なんだから

自分で自分を信じろ

繭達が信じてくれた自分を信じろ

 

 

 

取り込んだ感覚があった

 

目を開けてみると障害物エリアが消えていた

急いで消えたエリアに向かう

 

 

そこには今まで使用していた障害物や地面が全くなくなっており、本当に10メートルかは分からないが地下深くまで消えていた

 

 

平気な感じでいるが本来なら、腕が弾け飛ぶどころか全身が爆散して死んでいる状態だ

 

 

 

次は取り込んだエリアをそのまま元に戻すことだ

 

流石にこのままにはしておけないからな

 

 

またしっかり集中をし、取り込んだエリアを元に元にイメージをしっかりする

でないと少しのズレで訓練場が破壊してしまう

取り込んだものがものだからな

 

 

 

汗がぽつりと手のひらに落ちた感覚で目を開けた

 

 

 

 

 

よしっ!

取り込む前の状態に戻っている

 

だが取り込んだ為に生じたエリアとそうでないエリアでは線が出来ていた

 

 

つまりこれは夢ではなく現実だってことだ

 

 

成功してよかった

 

 

 

 

 

これを繭達が帰ってくるまで繰り返し行った

 

 

 

 

繭たちが帰ってきた

俺が学校に編入すること伝えると二人してニコニコして、どっちが勉強を教えるか言い争いになっていた

 

 

 

二人に教えてもらうのが一番なのだが、二人にとっては訓練を一番に考えて欲しいので、その主を伝え訓練休みの時に教えてもらうことになった

 

 

 

だが自分たちの学校に俺が編入してくることが嬉しいようで、まだ編入が確定していないのにお祝いだと食材を買いにいった

 

 

二日連続でパーティーなのか?

 

 

まぁ楽しければそれでいいか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今』は楽しめることは楽しもう

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

編入試験

訓練と勉強会での日々が3ヶ月を過ぎた頃、俺の編入試験の日がやってきた

 

繭達が通っている学校は雄英や士傑などヒーロー科の名門校に現役で合格する人が毎年何人かいる、これはまた名門校だ

 

だからといって俺が合格できない訳では無い

流石に前世のレベルよりは高いが、あくまで中学の編入テストだ

前世の知識と今世で学んできた事を統合すれば十分合格圏内だ

 

その日は休日で間壁さん同伴で試験を受けに行く

試験は学科と面接の2つだからだ

 

 

 

「今日は時間を取ってくれてありがとうございます」

 

 

「いや、元々僕のせいで君の学校生活を送らせてしまったからね。これくらいしか出来ないけど、試験の方頑張ってね。君なら合格出来るだろうし、先に少し事情を話しておくから」

 

 

「あれはあくまで事故です!間壁さんが今も気にすることじゃありません。ありがとうございます。繭達との時間も無駄にしないよう頑張ります」

 

 

 

そう車の中で話していると、これから通うであろう学校が見えてきた

 

雄英程の大きさでは無いものの、様々な個性に合わせて作られたであろう大きい校舎だ

 

 

 

学校の教師用玄関から中に入り、受付の女性に要件を述べる

 

 

「すみません。本日編入試験を受けに来た口多吐喰です」

 

 

「はい、ただ今確認致しますね」

 

 

1分もかからないうちに確認が取れたようだ

 

 

「確認が取れました。後ろの方は保護者様でよろしいでしょうか?」

 

 

そう言われて間壁さんはヒーロー免許証を提示して、その通りだと言った

 

 

「では学科試験は2階のAクラスで行われます。そちらの階段を上がって、真っ直ぐ進めば着きますので。頑張ってくださいね」

 

 

「ありがとうございます。じゃあ間壁さん、試験後にまた」

 

 

「うん。ミスのないようにね」

 

 

 

 

言われた通りに階段をあがり、試験を受ける教室を目指す

 

この、階段の一段一段がひどく懐かしく感じる

いや、事実懐かしいのだ

学校は違えど、『学校』という雰囲気がこの世には存在する

 

前世で毎日のように上がっていた階段の懐かしさでいっぱいだ

 

だが、2階という事もあって直ぐに登りきってしまったが

 

 

 

当目からでもAと書かれたクラスが見えた

 

あそこがこれからを左右する場所だ

だが、今までしてきた努力は無駄ではない

それを証明しよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験は3回ほど見直しができるほどスラスラ解けた

実際学科試験は心配していない

面接も多分大丈夫だろう

 

 

お昼を挟み面接を行い、2〜3日以内に合否の発表らしい

 

 

 

 

「試験はどうだった?」

 

片手にコーヒーを持ちながら間壁さんは聞いてきた

 

 

俺にはいちごミルクを渡してきた

別にコーヒーでも良かったんだが…

 

 

「バッチリですよ。繭達との時間は無駄になることはなさそうです」

 

「それは良かった。あとは面接だけだけど、君なら試験以上に簡単だろう」

 

 

「そうだといいんですけどね」

 

 

2人で笑いながらお昼をすごした

 

 

 

 

 

面接の時間がやってきた

 

聞かれたことと言えば、学校に入学したあとの進路と個性

周りと上手くやっていけるかということだった

 

 

進路については雄英のヒーロー科

元々両親がヒーローだったこともあるし、この個性だ

 

問題は次だ

周りと上手くやっていけるか

 

まぁたしかにいじめやら何やらで学校に通ってなかった上に、数年意識を失って1年経たないうちに入学だもんな

 

精神年齢のことが気がかりなのだろう

 

だが、自らの考えと繭やトガちゃんがいること

また間壁さんのアシストのおかげで、精神年齢は問題ないと思って貰えたようだ

 

ちなみに学科に合格していれば、編入可能とまで面接で言われてしまった

 

おい名門校、それでいいのか?

と思ってしまったのは内緒だ

 

 

 

 

 

 

「今日はお疲れ様。面接でも学科さえ大丈夫なら合格ってあの場で言われるくらいだから心配する必要は無さそうだね」

 

 

「間壁さんもお疲れ様です。まさか面接でそんなことを言われるとは思いませんでしたよ」

 

 

「それはそうだ。僕も驚いたからね」

 

 

 

他愛もない話をしているとあっという間に家に着いてしまった

 

 

間壁さんはこれから自らの事務所に戻って仕事があるらしい

 

 

 

「今日はありがとうございました。結果が来たら連絡しますね」

 

 

「うん、待ってるよ。じゃあまたね」

 

 

 

そう言って間壁さんは去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 

 

「「おかえりなさい」」

 

 

どうやら編入試験の終わる時間を教師に聞いていたらしく、訓練場ではなく自宅の方で待っていてくれたようだ

 

 

 

 

「試験の方はどうでした?」

 

 

「トバ様なら余裕の筈なので私は聞かなくても大丈夫です!」

 

 

「ああ、大丈夫だったよ。学科の方さえ合格基準ならすぐにでも編入可能って面接で言われたよ」

 

 

 

「それは良かったです。今日はお祝いですね」

 

 

「やっぱりです!トバ様はすごいです!」

 

 

 

いや、まだ合格したわけじゃないんだけどな…

まぁいいか

 

 

「ありがとう。近いうちに結果が来るみたいだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして2日後、合否通知が送られてきた

 

 

 

 

 

 

 

繭達は学校でいない

二人に勉強を見てもらった恩もあるし、二人がいる時に見た方がいいのかもしれないけど、間壁さんにも報告しなきゃだからなー

 

仕方ない

一足先に見るとするか

 

学科試験は余裕と言っていいほどスラスラと解けたが、いざ結果が来るとなると心臓がばくんばくんと鳴る

 

 

手紙の封を切って結果を確認する

 

 

そこに書いてあった文字は

 

 

 

 

 

 

合格

 

 

 

 

ま、まぁ当たり前だよね

ここで不合格とかだったら笑えないから

俺の計画とかガッタガタに崩れ去るからね

 

 

 

 

 

 

とりあえず一安心

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学まで

久しぶりの投稿で自分でも設定を忘れているところがあります



手紙には3日後に入学と書かれていた

それまでに服屋教科書などを揃えておかねば

 

 

 

 

繭とトガちゃんにはいい報告が出来そうだ

もちろん間壁さんにも

 

 

 

それにしても高校受験をする年齢から学校にまた通い始めるのは予想外だったな

 

きっと生きていたら母さんと父さんも驚きつつも喜んでくれたはずだ

今度墓参りでも行って報告してこよう

俺がこれから歩む人生は決して褒められることではない

だが、こういう日常もあったと伝えに行こう

 

 

 

そうこう考えているうちに辺りは日が暮れ始め窓ガラス越しに夕日が差し込んできた

 

 

 

 

「ただいま(です)」

 

 

どうやらふたりが帰ってきたようだ

 

 

「おかえりふたりとも。試験の方は無事合格で3日後から一緒に通えるよ」

 

 

 

その言葉を聞いてか否か、夕日に照らされている2人の顔がさらに赤くなったように感じた

 

「おめでとう!吐喰君とやっと一緒に通える!」

 

「おめでとうございますトバ様!トバ様との通学夢見てました!」

 

 

おおう、思ったよりも2人の反応がオーバー。

まぁ基本的に学校の時間はふたりとは離れ離れだったから、嬉しいことに変わりはないけどね

 

 

 

「ありがとう。俺も2人と通えるようになって嬉しいよ」

 

 

 

その日の夕飯は豪勢だった。ふたりとも料理上手だからどれも美味しかった

 

 

 

夕飯と風呂を終え自室でこれからのことを考えていた

 

 

俺の個性上、今のところははっきり言ってチートだ

相手を視認した瞬間に「口」で飲み込むか噛みちぎりでもすれば、完璧に封殺出来る

またまだ完璧とは言えないが「存在抹消」の個性を使えばどんな相手でも不意打ちが可能だろう

 

繭やトガちゃんの協力もある

 

現時点で恐れるものはオールマイトかAFOくらいだろう

 

今のところヴィラン連合に警戒すべき敵はいない

 

 

なのでいつも通りに訓練を行いつつ、粛清対象を見つければいいだけ

 

そう、本来の目的はヴィランのみの粛清ではない

金と権力に溺れたヒーローもその対象になる

 

極力ヒーローを殺すことはしたくない

だが邪魔になるなら話は別だ

 

 

俺が歩くは修羅の道

毒を以て毒を制す

 

 

原作に『ヒーロー殺し』がいたが、俺は違う

 

その逆を行く存在だ

 

法で裁けぬ悪があるなら、死を持って償ってもらう

 

俺たちは『ヴィラン殺し』だ

さっきも言った通り、ヒーローを殺すこともあるだろうが…

 

 

 

 

オレや僕に言われたことを思い出しても、これが俺のやりたかったことなのかわからない

 

 

だが、過去にも先にも今の俺が望んでいることはきっと、前世で納得できなかったことを成し遂げたいんだと思う

 

 

 

ゆっくり瞼が閉じていく

 

 

 

 

そうして入学までの一日が終わった

 




構成とかぐちゃぐちゃなんであとから修正いれます


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。