アイアンデク (シルバーサムライ)
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アイアンデク
緑谷出久は無個性だ。
しかし、ただの無個性ではなかった。彼は天才だった。しかもただの天才ではない。言葉にはしづらいが、ありえないほど天才と言えるレベルの天才だったのだ。
両親亡き後、父親の緑谷久が経営していた日本の巨大企業ミドリヤインダストリーズを幼いながら受け継いで、経営する社長だ。
両親を思春期の幼い頃に亡くし、ひねくれて内向的になってしまっていた為に友人も幼馴染の爆豪
『私が来た!! もうダイジョーブだ!』
その偉大な背中に憧れた。全てを救い、誰もが憧景を覚えるその大きな背中に。"オールマイト"。出久はそう呼ばれる男に憧れたのだ。
しかし、現実は非情であった。緑谷出久がいかに天才であろうとも、いかに財力を持ち、世界有数の企業の経営者であったとしても彼は無個性だった。世界人口の8割が個性という超常的な力を持っている世の中で無個性というのはそれだけでハンディキャップであった。
もちろん、差別などは存在するが人権問題になり得るためにそれが表面化することはなく、異形型の個性持ちや無個性でも、誰もが暮らしやすいようにバリアフリーにも気を使われている。そのため、一般的に平和に暮らしていく分には問題がない。
しかし、ある職業だけは違った。それはヒーローと呼ばれる職業。ヴィランという個性を悪用する犯罪者に対抗するために存在する職業。個性の悪用に対抗するためか個性持ちのみがヒーローになっており、無個性のヒーローは存在しない。
そう、無個性ではヒーローにはなれない。これが現実だった。無個性では警察や自衛隊、米軍などのように銃も戦車も無くどうやっても炎や雷などと対抗できない。
結果的に、緑谷出久は人生で三度目の挫折を味わうことになった。
しかし、もう三回も経験した挫折だ。一度目の挫折、無個性の発覚はその後に両親が亡くなったため、学業に経営と忙しくなりいつのまにか気にしなくなっていた。
無個性という事実を気にしなくなった原因である二度目の挫折である両親の突然の死は幼馴染兼秘書の爆豪
ましてや、あの偉大なるno.1はたかが挫折で止まるような男ではないだろう。数多の困難に陥り、どんな凶悪なヴィランが待ち受けていたとしても必ず乗り越えるはずだ。
そして、緑谷出久は天才だ。天才に不可能はない。無個性でもヒーローになる為にある補助するためのスーツを開発することなど造作もないことだろう。
そして。
☆☆☆
「えー、会見は久々で、僕は原稿に頼ることになる。緊張しているからな。許してくれ。さて、私が発表するミドリヤインダストリーズの重大発表だが……僕の緊張をほぐすために発表の前に一つ、最近噂のヴィジランテについて話をさせてくれ。僕は彼のファンでね」
「それは、御社の危機を救ったという紅いスーツの男、アイアンマンと呼ばれているヴィジランテのことでしょうか?」
たくさん集められたうちの一人の女性記者が手を挙げて質問をした。その質問に緑谷出久は何故か少しばかり照れるように頬をかいた。
「そう、その超カッコいいスーパーヒーローについての話だ。今から言うことを良く聞くといい。僕は一回しか言わないからな」
原稿に目を落とし、緑谷出久は少しばかり逡巡を挟んで顔を上げ宣言する。
「僕がアイアンマンだ」
ちなみに緑谷出久は三度挫折を経験したんですが、あまりに天才だったためにかっちゃん(女)の心も折ってかっちゃんも丸くなってます。
かっちゃんが女になった理由? ペッパー枠が欲しかったんや……
そのためにかっちゃんには犠牲になっていただきました。犠牲の犠牲にな…(?)
許してかっちゃん
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