魔法科高校のドイツ人留学生 (YJSN)
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総統命令:留学してこい!

また見切り発車です。許してくださいなんでもしませんから。


 

 

【貴官は国防軍所属最低条件を満たしていない為、不採用とする】

 

そんな通知が来たのはつい先月のことだ。

 

やぁ、風の子元気の子。唐突だけど、ぼくは今ベルリンの空港から東へ遥か彼方のニッポンへと向かっている。

 

その理由は明白。さっきの通知にあった通り、国防軍の最高司令部の閣僚に組み入れてくれないから。

 

それも高卒認定がなかったから...という超単純なことだった。

 

「ちぇっ...なんでぼくが今更高校なんて...。」

 

愚痴をいいつつ、飛行機から降りて空港を出て自動運転の中央管理された乗用車に乗る。

 

確実に極東へ運ばれていく感覚に終身刑を言い渡された感覚に陥る。

 

 

 

______3日前______

 

 

 

 

「総統...なんとか総統のコネで国防軍の連中を説得してくださいよ!」

 

ぼくは必死に総統執務室で懇願を始める。

 

そんなぼくを見かねてか総統がぼくをじっと見据えて、そして口を開いたかと思えば

 

「だめだ。」

 

期待を裏切る言葉にぼくは愕然とする。

 

「いやだって、今更高校なんて行かないよ!?ぼくもう150歳超えてるし!」

 

本当ならヨボヨボのおじいちゃんどころか墓に埋められてそうな年齢を大告白するがそれでも総統は

 

「だーめだ。」

 

「なんでだよ...行くとしても国内の小中高の建物は先の大戦の影響で使えないし...。」

 

そう頭の中で少し思案を巡らす。

 

現在、ドイツ帝国国内の経済および政情は安定しているとは言え、先の世界大戦における空爆等によって建築物等は莫大な被害を受けており、復興は現在進行形で進んでいるところだ。

 

さらに今うちにマトモに稼働する高校があるかと言えばノーだ。

 

で、残る選択肢はただ一つ。

 

「クリューガー、ニッポンへ旅行だ!喜べ。それも第一高校だぞ!」

 

と、総統はニンマリ笑顔でぼくに返してくる。

 

「やっぱりかぁぁぁぁ...!」

 

留学以外になかった。

 

それも総統は【ニッポン】といった。ニッポンといえば、旧同盟国であり今なお友好的な関係にある国だ。

 

更には今世紀に入ってから盛んになっている魔法に関する研究、技術開発も先進的であり、魔法の具現化を手助けするCADなる物の開発も行なっているという。

 

そして第一高校といえば、国立魔法科大学付属第一高校...通称魔法科高校と呼ばれる世界でもトップクラスの魔法専門学校だ。

 

だがしかし、ぼくがそんな国に行くには少し問題があった。

 

「えッ、でもぼく魔法なんて使えませんよ!?それに第一高校なんてエリートばっかじゃないですか!」

 

そう、ぼくは魔法師ではない。ただの軍人、1人の兵士だ。言い忘れていたようだがぼくは ヘローナ・クリューガー親衛隊大佐だ。

 

確かに多少は魔法に関しての知識はあるつもりだ。30年前に盛んに出現したロシア軍の中に混在する魔法師達との戦闘で彼らの魔法の原動力 サイオンについてや、その術式なども。

 

「必要なのは高卒認定の証明書だ。魔法なんてどうでもいいだろう?まぁ、あわよくば我が帝国にその技術を持ち帰ってもらいたいが...。

君は諜報活動に出るのではない。そこまでしなくても良い。

 

魔法についてはお前のその異能で誤魔化せ。そして何よりも普通に振る舞え。お前はお前自身の正体を悟られることなく、無事に仕事を終えて本国に帰還するんだ。」

 

断れない口調で強く言ってくる総統に対して、ぼくはコクリと頷くことしかできなかった。

 

「わ、わかったけど...今から試験勉強...?」

 

疑問を口にしてしまうが、総統はその辺りもぼくを知っているようで少しニヤつきながら

 

「何を言ってるんだ。お前は物知りのくせに。それに、いい機会だ。高校生活を楽しんで来い。」

 

このじじぃ...他人事のように...。

 

ともあれ、本当にマジで行くならあと3日以内に出発しなければならない。超忙しいぞこれ。

 

「航空会社には既に取り合わせてある。行ってこい。」

 

総統がごく真面目な顔になり、僕に念を押す。流石にここで断るってのは野暮ってもんだと思い、僕は右手を掲げて軍靴を揃え、歯切れのいい音を出す。

 

カツンッ

 

「ハイル・マイン=Führer。」

 

「ハイル・クリューガー。」

 

この短い敬礼には、絶対的な服従と忠誠心が込められている。親衛隊は皆、このような感じだ。

 

______________

 

 

そういうわけで、今僕は新しい我が家へと来ている。空港から送ってもらった乗用車はドイツ国内でもよく走っているVGO-315のニッポン製だろう。

 

位置は第一高校から歩いて20分ほどの、総統曰く結構費用はついたようだ。

 

早速認証キーを扉のドアロックにかざして扉を開け、中へと入って行く。

 

ニッポンの家屋はドイツや西洋とは違い、靴を脱ぐ習慣があるため、屋内ではスリッパに履き替える。

 

奥へと歩いてみると、かなり広く外見からでもだいぶ豪華な尺邸だとは思ったけれどここまで広いとは思わなかった。

 

そもそも僕にこんな広さ必要ないだろと、せっかくの豪邸を無駄にだだっ広い建物として評価してしまう。

 

ともあれ、過ごし易いのに変わりはない。

 

そうしてぼくは新しい我が家で一週間後の試験に備える。

 

科目は普通科の基礎科目 つまるとこ社会だの英語だのとの筆記テストと、この学校特有の魔法理論及び魔法実技の主に分けて3点だ。

 

魔法理論は結構好きな方だ。いわゆるペーパーテストという奴で、筆記は大好きだった。

 

だが問題は魔法実技だ。ぼくは魔法は使えない。サイオンなんて、ぼくにとっちゃ架空の存在だ。

 

だがしかし、合格するには試験を通らなければならない為、3日前に言われた通り、例の異能...いや、法則とも言えるものを使うしかないのだろう。

 

先程から皆は疑問に思っているかもしれないが、ざっと説明すると、ぼくにはある効果...効力が使える。

 

いわゆる超常現象とか、超能力だとか言われる現在でも解明されない存在だ。

 

それも魔法に系統されない、マジの、ガチのやつだ。

 

科学者やあらゆる医者の研究で分かっているのはぼくの細胞は奇妙に黒く染まっており何かに寄生されているような黒いモノが細胞の中身に存在するとのことだ。

 

更にはこの寄生されたであろうぼくの身体は表面上は通常のヒトの肌と同じ色をしている。

 

つまるところ感染や症状が外側に出ず、被験体かどうかを見極めるのが非常に困難なのだ。

 

だが不思議なことに、この生命体は通常時はぼく以外に寄生しなかった。切り離されてもすぐに元どおりに細胞は再生される...つまりは死ねない、又は既に死んでいるのどちらかだ。

 

不死身ではなかった。全方面から圧縮され、粉々に粉砕すると細胞ごと破壊され、宿主を失う為その生命体は姿を消す。

 

存在できる空間を破壊する事が何よりもの対策法だった。

 

だが他人に寄生しない事で危険性はなかった。通常時は...。

 

そういった異常性も垣間見せる事はあるが、ぼくは基本的に静かに過ごさねばならない。

 

ただ高校の卒業がしたいだけで、その道中で帝国から魔法について学べとのことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30年前、第三次大戦も終盤へと差し掛かったとき、当時西側陣営として戦っていたドイツ共和国連邦において巨大なクーデターが実行された。

 

東側諸国であるロシア連邦ならびにその同盟国との戦闘は苛烈を増し、前線にはぼくの姿も存在した。

 

ロシア連邦軍に新たに出てきた魔法師なるものも、ぼくの前ではただの蟻だった。

 

ぼくの師団のあだ名は “ 移動虐殺部隊 “と呼ばれるほど東側、そして西側でも強く警戒された。

 

そんな中、ドイツ中央大管区においてクーデターが実行された。

 

戦時中ということもあり、英国やフランスは鎮圧用の部隊を回せずドイツ国内の予備軍で対応するしかなかったが、その予備軍もどういうわけかクーデター側に付き革命は成就した...。

 

だがまずかったのが当時ドイツ国防軍が連邦時代からロシア戦線で戦っていたことだ。

 

革命によって国家体制が変わり、士気が下がり、前線の崩壊の危機さえ存在した。

 

だが新政府である “ 新生ドイツ帝国 “なるものは指揮を継続、中央大管区からの指令が遠方まで行き届き生産と経済は維持、継続され続け国防軍はロシア戦線を維持し続けた...。

 

そうして20年ほど前に第三次大戦の終結と共に世界は静まり返ったというのが、ぼくのいる世界だ。

 

第三次大戦後は世界は各国間で酷く対立し合い、英国もフランスもどの国も一部貿易関連以外は鎖国体制を取り始めた。

 

我らがドイツもニッポンと以外は鎖国を貫いた。

 

そして我らが新生ドイツ帝国の国家元首は、『総統』と名乗るひとりの50代とみられる優秀な男によって統治されている

 

彼、そして彼ら国家社会主義ドイツ労働者党は100年以上前に発端したいわゆるナチ党の政党後継者であると名乗っているが、その正体も何もかもが不明だ。このぼくでさえ知らされていない。

 

だが彼らは的確に前政権よりも確実で効率の良い我がドイツの復興と発展を遂げさせている。

 

彼らは今や祖国ドイツ帝国では英雄扱いだ。

 

そして改めて紹介すると、ぼくの所属する組織は親衛隊でありその中の武装親衛隊第一SS師団

 

ライプシュタンダルテ・SSと呼ばれている部隊だ。

 

更に親衛隊には武装親衛隊と国家保安部であるSDなるものが存在する。

 

国家保安部は我々武装親衛隊と違い戦闘を首班とする者達ではなく、情報戦や防諜、諜報作戦に従事する機関だ。

 

国防軍諜報機関に匹敵する程の能力を持ち、治安維持から国外情勢まで全てをこなす。

 

能力で言えばCIAと似たり寄ったりの規模だ。

 

このようにしてぼくの所属する親衛隊は成り立っている。

 

ちなみに長官はハインリヒとかいうこれまた総統の側近らしい人物だ。どこかで聞き覚えがある名前だが、思い出せない。

 

彼ら、素性や顔を制帽の影などで隠して晒さないためにどっからきたどんな奴なのかなどが一切わからないのが難点。

 

まあ任務に支障は出ないためそれは良いのだが。



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入学

あっという間に時間はたち、ぼくは試験は終えた。

 

なんとかペーパーテストは全問解答用紙には埋めたし、魔法理論も将来における浮遊魔法の理論について述べた程度だ。

 

それと魔法実技なんだが...ここが少しややこしくて、対象の物体を動作させる事が試験達成条件だった。

 

対象の動かすべき物体に対して、CADの介入無しに物体の座標情報が書き加えられたサイオンを封じてある台の上に手をかざして自らのサイオン量と術式の展開によってのみ試験を行わねばならなかった。

 

つまりCADによる術式展開の高速化が不可能となる正に個人の力量試しのところだ。

 

ここまでいうと分かる通り、皆術式の発動には時間をかけている。

 

ぼくは文字通り魔法は使えないし、サイオンなんて夢の話だ。一応サイオン自体に干渉したりする事は僕の悪夢から可能なのだが...。

 

なので少しズルをした。

 

足と地面の接着面から、試験官に見えないように黒いぼくに寄生しているナニカ...正確な事は宿主であるぼくにすらわからないが、悪夢と呼ぶとしよう。

 

そう、この悪夢を地面から這わせ、試験対象の動かすべき物体に到達したその瞬間にぼくはそこに少し加減をしながらこれまたドス黒い液体なのか個体なのか、形が不規則に変わるモノを内側へと入れる。

 

そして機械の中のモーター駆動や構造を覗き見てから、その物体をぼくの方に近づけた。

 

周りから見ればぼくは台に手をかざしただけで僕自身から術式の発動が見られないにもかかわらず、対象が動いたように見えただろう。

 

それも加減を誤って、明らかに周りより異常な速度で試験の物体を動かしてしまった。

 

彼らからすれば魔法式展開を仮に試験官から見えないように行う謎の仕掛けと共に小さな規模かつ大容量のサイオンを送り出しているだろうと推測することになる。

 

この異常な事態に試験官達は何度も繰り返しぼくに試験を行わせたが、結局その謎を彼らは解けなかった。

 

そのまま試験内容自体は達成していたため術式の展開を視認出来ない魔法という事にされながらもイレギュラーとして正式に採点された。

 

ただこの事で目はつけられるだろう。注意しておかねばならない。

 

それにもし、厄介ごとや戦闘に巻き込まれたのであれば、ぼくの壺から我が戦友である親衛隊員を8名、ドイツ帝国内で来る前に遺灰へと戻して入れて置いてあるため彼らを蘇らせることでも戦力の補充は可能だ。

 

核戦争レベルにまで発展する事は想定していないがそうなった場合は駐日ドイツ大使館に配置されている国防軍から国家要人保護の為にワルキューレ作戦が実行される手はずとなっている。

 

ちなみにドイツ大使館に配属されてる部隊の中にはぼくの師団 第1SS ライプシュタンダーテもいる。というより、総統がぼくが第一高校に行く時のために駐屯地をベルリンからここへと変えた。

 

 

 

[ ワルキューレ作戦とは:

 

2080年代に立案された国防軍による反乱鎮圧計画。国内および同盟国領事館周辺でテロ行為及び重大なクーデターが確認された場合、

 

領事館勤務の国防軍及び武装親衛隊は直ちにその区域の大管区の橋、道路、交通網の主要拠点を確保し、ドイツ国民及びドイツ人留学生等の保護の為にあらゆる手段を尽くすとの計画だ。

 

発令できる人はたった2人、国内予備軍参謀総長であるシュタウフェンベルク国防軍大佐と、武装親衛隊師団長 ヘローナ・クリューガー大佐のみ。]

 

 

 

さて、これまで厄介ごと関連について話してきたがそんなに気にすることはない。

 

なぜなら、多少怪しまれてもぼくは普通にこの学校を卒業できればよいのだ。

 

そして先週に合格の通知が届き、無事今日は入学式だ。

 

気持ちいい朝を迎えたが、それも昨日むちゃくちゃ早寝したからだ。登校初日を寝坊するなんてだらしない。

 

身だしなみを整えて歯磨きして、朝食のトースターを食べる。

 

トースターと紅茶とはなかなか英国風味があるが、まあそのあとは新しく届いた1校の制服を着る...。

 

この制服、割と少しブカブカだがこれでも最小サイズだ。ぼくの低身長と体格の無さが響いたようで新調するときにこれしかないと言われた。

 

身長の問題は人生の問題だな...。

 

しみじみ思いつつもこの豪邸を出て家の前に停めてある乗用車...空港にもあったように市の交通課中央管轄下に置かれた自動運転による4人乗りのタクシーのようなものに乗り込み、あっという間に第一高校の手前へと着く。

 

ここからは徒歩で向かう。

 

それにしても人が多く、新入生と思われる人達がズラリとぼくと同じ1校への方向へと歩いている。

 

今は8時。あと30分で入学式が行われる予定だ。

 

ガヤガヤと賑わう中を歩いて1校の校門をくぐると、デッカいホールが左手にあった。

 

おそらくあそこが式の会場だろうが、まだ20分ほど時間があるので校内を探索して回る。

 

「へぇぇ...総統官邸には及ばないけれども、凄まじい広さだな...。」

 

感銘を受けながらこのバカ広い敷地内を探索して地理や地形を頭に叩き込んでいく。

 

歩いてる途中、二人組の男女が話しているのが遠目で見えた。何か言い合っているようだ。

 

1人はすんごい美人さんで、もう1人は背の高い...2科生だ。

 

言い忘れていたが、ぼくは1科生で入学した。魔法実技と英語以外は満点だった。

 

英語だけは超苦手だ。ブリテン島の言う言葉など信用できないし、そもそもぼくが得意なのは東スラブ言語に属するロシア語とポーランド語辺りだ。

 

英語など勉強したこともなかったため65点と少し低めの点となってしまったが、まあ他の教科がそれを補ってくれた。

 

魔法実技の方は前に言った通り、むちゃくちゃ怪しまれた試験となり物体の移動という内容自体はクリアしたため合格とはなっているが99点と1点引かれている。

 

理由は解答の試験官の備考メモ欄に記載されていた『魔法の行使を試験官にわかるように理論立てて成立させていない事による』とされていた。

 

ま、そりゃそうか。さて、話を戻すと

 

(2科生の生徒にしては早いな...。)

 

口には出さないがこんなに早く来るとは何か用事でもあるのだろうと察しをつけてぼくはその場を立ち去って次々と建物を見て回って行った。

 

 

 

 

そうしているうちに既に式開始まで5分前を切ってしまったため急いで会場である大きなホールへと向かう。

 

が、道中で来た道がよくわからなくなり、完全に迷子状態へと陥ってしまう。

 

「ここどこ...。」

 

周りはさっきからずっと続く建物の羅列ばかりで道しるべはなく、人もこの時間だからか通っていない。

 

路頭に迷っていたぼくは、不意に唐突な声をかけられる。

 

「あら、まだ新入生がいたの?」

 

綺麗な澄んだ声でぼくに声をかけてくれた...女の子の声めがけて後ろを振り返る。

 

「え...。」

 

いきなりの美人の登場によって少し動揺するが、いけないいけないと言わんばかりに首を振って改めて道を訪ねようとする。

 

「あ、はい!少し道に迷ってしまって...ヘローナ・クリューガーです!ドイツからきました!」

 

子供っぽくハキハキと喋って出来るだけ兵士であることを悟られないようにする。

 

「そう...あなたが留学生の...実技は確か2位でしたよね!クリューガーくん。

 

私はここ第一高校の生徒会長を務めている七草真由美です。七草と書いて、サエグサと言います。

 

道に迷ったならちょうどいいですね。私も入学式のホールへと向かう途中だったの。良ければ一緒に行きませんか?」

 

と、穏やかに優しそうな笑顔でぼくを見据える七草会長...。

 

って、会長!?いきなりどえらい人にぶつかったな...。

 

第一高校というエリート育成校に入っただけでも良いとして、そこの会長となると相当な魔法士であることに変わりはないはず。

 

現に目の前の優しいお姉さんはその気迫だけでも会長足りうるものである。

 

「うん...じゃなくてはい!わかりました!」

 

「ふふ...じゃぁついてきなさい、クリューガーくん。」

 

ぼくの低身長と子供っぽさを少しからかったかのように微笑み、ホールへと連れて行ってくれるのであった...。

 

 

 

 

 

 

その後はホール内へと会長によって案内されてから適当な席に座ってと指示を受けて、席を探す。

 

(...なんだこれは、たまげたナ...。)

 

1科生は前の方に、2科生は後ろの方にくっきりと席が分かれている。

 

会長は少し神妙な顔で空いてる席ならどこでも良いと言っていたがこの事だったのか。

 

事前情報として、この学校には1科生をブルーム...花弁と呼び、2科生をウィードと呼ぶ傾向がある。

 

もちろんこれはニッポンに潜入するSD...国家保安部による諜報内容によるものだ。

 

現地...つまりここに潜伏するSD隊員はこれらの1科生 ブルームによる排他的構造によって2科生とは完全に分離していると報告していた。

 

だがぼくはそんな事気にせずに、もはや前の方の席は空いていなかったので、後方の席...いわゆるウィード 2科生が座る右端の...右から四番目の席へと歩み寄り、座る。

 

ドスンっ

 

思ったより椅子の位置が低かったのか、ぼくはそんな音を出しながら不恰好に座ってしまう

 

そして遅れ気味とはわかりつつも...

 

「あ、あのぉ...隣いいですか?」

 

「「座ってから言うなっ!」言わないでください!」

 

と2人の女の子が声をあげる。

 

隣に座っていた赤毛の女の子と、さらに隣の黒髪の眼鏡っ娘、そしてさらに奥の席、一番右端に座る1人の男子生徒...彼はこちらをじっと見据えている。

 

彼の奇妙な視線に少し浮かされながらも、自己紹介を始める。

 

「ぼくはクリューガー!ヘローナ・クリューガー!よろしくね!」

 

と元気よく挨拶すると、向こう側もおどおどした雰囲気で

 

「わ、私は千葉 エリカよ。エリカって呼んでね。」

 

「私は柴田・美月と申します。よろしくお願いしますね。」

 

と、2人とも挨拶をするが、奥の男子生徒だけはこちらをじっと見つめているだけだ。

 

「...あのー、達也さん...?」

 

と、美月と名乗った女子に促されてその男子生徒はハッと我に帰り、

 

「...っ、いや、すまない。俺は司波 達也だ。達也と呼んでくれていい。」

 

自己紹介を済ましてくれて、彼らの視線は次にぼくの腕の辺りへと移る。

 

「えっと、ヘローナ...さん?でいいのよね。」

 

「うん!」

 

呼び方を言ってなかったようだけど、特に決めてないからなんでもいいや。

 

千葉エリカと名乗った女の子に対して返事をして続きを促す。

 

「どうして1科生であるあなたがここに座ってるのかしら...いや、別にあたしは気にしないけどさ!ほら...。」

 

と、何かを察したような雰囲気でぼくに語りかけるエリカさん。

 

「えっと...単純に前の席が空いてなかったからだけど...。」

 

別に変でもない理由で答えると

 

「あ、そ、そっか!そうだよね!ごめんね変なこと聞いちゃって、あはは!」

 

(...僕のこと気遣ってくれてるんだな。)

 

と第二の優しいお姉さんとの会話が進む。

 

すると突然右端に座っていた達也と名乗る男子生徒が

 

「その...クリューガー、と呼んでいいか?日本人のようには見えないが、どこからの留学か教えてくれないか?」

 

と名前に関する疑問を口にする。当然だ、銀髪で目は青く、明らかに日本人ではない外見をしているぼくの出生地が気にならないわけがない。

 

ヘローナ・クリューガーは本名だが、ラ・シーア...CIAの情報やあまつさえロシア連邦捜査局にもデータベースが存在しないため、僕の身分を調べるのは困難だ。

 

「どんな呼び方でも構わないよ。それとぼくはドイツからきたんだ。留学で魔法理論や魔法工科学について知りたかったから。」

 

「へぇー、ヘローナって真面目なんだな!見た目の割には!」

 

「見た目の割にはってなんだよ!」

 

と、エリカが茶化す。

 

「ちょ、ちょっとエリカっ。初対面なのに失礼でしょっ。」

 

「いーじゃんいーじゃん。こんだけちっこくて可愛い子供みたいな奴だし、な!」

 

「ぐぬぬぅう...身長だってどうせ伸びるもん...。」

 

「もぉー...エリカったら。」

 

と、美月が間を濁す。

 

「ほぉ...ドイツではかなり魔法工学は進んでいると聞くが、まさかはるばる留学までとは...。」

 

達也くんが再び神妙そうな顔持ちに戻るが

 

「あ、まぁ...あはは...っと、3人とも!式が始まるみたいだよ。」

 

と、ぼくが声をかけてあげると、みんな式へと意識を戻す。

 

それにしてもエリカといったか、この赤毛の女...だれがちっこくて可愛いだ、ぼくは男だぞ。

 

少しの私怨をまだ知り合ったばかりの2科生のウィード達相手に混じらせながら入学式を執り行っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入学式終了後、個人認証用のIDカードを渡されて各教室へと向かうことになった。

 

そして成り行きで達也やエリカ、美月さんと色々と話していたところ、1科生である司波 深雪...入学式の時に新入生総代として挨拶をしていた女の子が来た。

 

「お兄様っ。」

 

と、先程司波 達也の方から説明を受けた兄妹の達也へと向うの1科生のグループから来て

 

「お兄様...早速デートですか?」

 

と、少し間が抜けたような内容を達也に聞くが

 

「そんなわけないだろう。ただのクラスメイトだ...そこの1人以外は。」

 

と、ぼくのことを指摘された。

 

「どうも、千葉 エリカです。」

 

「柴田 美月です。」

 

「ど、ドイツから来ました。ヘローナ・クリューガーです!」

 

と、順番的に挨拶が最後になりつつも元気に話す。

 

「あ、あの!深雪って呼んでもいいですか?」

 

「ぼ、ぼくも!」

 

そうしてエリカや美月とぼくが深雪さんと談合していると達也がふと深雪の後ろを見て

 

「深雪、生徒会の方々の用は済んだのか。」

 

と深雪に用事の事を思い出させる。

 

深雪さんの後ろには先程お会いした七草 真由美生徒会長と、隣にいる茶髪の男子がいた。

 

そういえば深雪さんは新入生総代として生徒会とも関わりがあったんだっけ。

 

というか生徒会に入ってたんだっけ...?

 

あまり諜報員がよこしてくれた情報を詳しく見てなかったせいで少し混乱気味だ。

 

「大丈夫ですよ。深雪さん、先程の話はまた日を改めてにしましょう。それと達也くんとも、またごゆっくりと...では。」

 

「か、会長ッ!」

 

とあの人、ぼくらの雰囲気を思ってくれてか用事の件はまた後日にしてくれたらしい。優しい人だ。

 

それに対して隣にいた1科生であろう男子生徒はこちらを睨みながら、帰っていく会長の元へと戻っていった。

 

「「「...。」」」

 

このあまり良くない事に皆雰囲気は気まずく黙り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてその日は終了となり、ぼくは自宅へと帰った。

 

「ふわぁぁあー、つかれたぁー。」

 

ドサァッ

 

帰ってから早々目の前のベッドへとダイブした。

 

(...それにしてもあの司波兄妹、ブラコンとシスコンだったとは...相性がヤバすぎる程マッチしてたなぁ。)

 

くだらない事を思い返しながら、ぼくはまた明日の事へと頭を回すのであった。



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ウィードとブルーム

翌日、達也たちとは違う教室で受講登録や色々な事を済ませてから色々と教員から教えられてその日の授業?的なものは終わった。

 

本格的な授業は明日からだろう。

 

ぼくのクラスはA組。A組には有名で昨日お会いした司波 深雪がおり、彼女はぼくにも声をかけようとしてきてくれたがその前に周りの取り巻きが結構多かったので、ぼくは遠慮した。

 

それに、ぼくはそっちよりも会いたい人がいるしなっと思いぼくは食堂の方へと向かっていった。

 

食堂に着くと、既に3人ともテーブルで席について昼ご飯を食べていた。...それにもう1人増えてるし。

 

「よーっ、達也くんエリカさん美月さんに...誰だっけ?」

 

「お、誰かと思えばヘローナくん!クラスが違うから今日は合わないかと思っちゃったよ!」

 

と赤毛のエリカが元気よく答えてくれる。

 

ぼくも彼らと同じテーブルの席に座り、もう1人の体格のいい男子生徒について質問する。

 

「あぁ、俺は西条レオンハルト。レオンハルトって呼んでくれていいぜ。」

 

キラーん

 

と効果音が出そうなほど1人増えた原因が自己紹介を始める。

 

「改めまして、ぼくはドイツから来たヘローナ・クリューガー。呼び方はどっちでもいいよ!」

 

「おう!じゃぁヘローナって呼ぶぜ!」

 

そんな風に段々とおしゃべりしていると

 

「お兄様っ。」

 

「深雪っ。」

 

案の定、司波兄妹の妹の方...司波 深雪さんが僕らのテーブルへと向かってきて、達也がそれに反応する。

 

「ご一緒してもよろしいですか?」

 

「深雪、ここ空いてるよ。」

 

と、エリカが少し左にずれて彼女の分の席を空ける。

 

すると、隣から1科生の団体旅行客とも言える人達がこちらに来て

 

「深雪さん、もっと広い場所にしようよ。」

 

と、深雪さんを誘ってきた。

 

ばかやろーこっちが先に深雪さんを取ってあるんだぞと言わんばかりにぼくは鋭い眼を向ける。

 

「それに...ウィードと一緒に相席なんてやめるべきだ。」

 

1科生の深雪を誘ってきた奴の1人が2科生である彼らとの相席を否定する。

 

「なんだって...?」

 

と、エリカが案の定反抗する目で見返す。

 

「1科生と2科生のケジメはつけたほうがいいよ。」

 

と、後ろにいた男子からも声が上がる。

 

「てめぇ...。」

 

血気盛んなレオンハルトが立ち上がり、双方引かない状態が続くが、

 

「深雪、俺はもう済ませたから、先に行っておくよ。」

 

と、達也の方からこの場を鎮め始めた。

 

「あ、ちょっと達也!」

 

「司波!」

 

それに続くようにレオンハルトやエリカ達も彼に続いていく。

 

そして次に相席していたぼく、1科生へと目が向けられ、

 

「君は1科生だよね?どう、僕らと一緒に食事でもとらないかい?」

 

と、彼らとは打って変わった態度でぼくに接する。

 

「申し訳ないけど、人種論は嫌いなんだ。また別の機会にするね。」

 

と、彼らとの会食も断り、ぼくも達也達の方へと急いで向かう。

 

争い事は嫌いだ。だから彼らと同じく避ける。

 

「なんでウィードなんかと一緒に...。」

 

と後ろから声を漏らされるが、気にはしない。

 

彼らは第三帝国時代にいたアインザッツグルッペン...移動虐殺部隊となんら変わらない思考を持っているようだ。

 

残念ながら第1SS師団 ライプシュタンダーテは無意味な殺害には関与をしていない。

 

そのような命令はたとえ総統命令だとしても拒否、計画立案者の射殺を常としてきた。

 

共に生きれる仲間を破壊し、奪い尽くす民族の破壊者は徹底的に殺してきたのだ。

 

かの総統、アドルフ・ヒトラー自身はぼくにその命令を出さなかった。

 

それはひとえにぼくにそんな汚れ仕事はさせたくなかったのだろう。

 

だが現場では現地指揮官がぼくらSSに指令を下すこともあった。それが移動虐殺部隊との連携による虐殺効率化だ。

 

もちろんその指揮官は殺したが、1科生の連中のやっているいわゆる選民思想及び民族破壊と分裂は愚の極みだ。

 

次、ぼくの前でそんなこと言ったら犯罪の有無なしに射殺だぞ。

 

憤慨しながら、ぼくは達也たちの元へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

だがその後も、放課後になってからもトラブルは相次いだ。

 

1Aの連中が深雪をまたまたよこせと行ってきたのだ。

 

残念ながら放課後は深雪にはお兄様である達也くんと用事があり、そこで揉め事となっている。

 

「まぁまぁ...両者とも抑えて...。」

 

と、ぼくは中間で宥め役となっている。

 

「これは1Aの問題だ。ウィードごときが口出しするな!」

 

と、昼食の時深雪を誘ってきた男子生徒がレオンハルト達に向かってウィード 雑草という英単語を使ってくる。

 

その場で暗黙に浸っていたぼくは、流石にピキンと来た。

 

ウィードだと...?...英語は敵性言語だ...。

 

と、本来推測できない観点において憤慨しながらぼくはA組の方へと迫り、

 

「ウィード...?」

 

と、目の前にいる強気のA組 同じ組の男子生徒に迫る。

 

「な、なんだよ、こいつらウィードじゃねぇか!何か文句でもあるのか!」

 

息巻くが、ぼくが言いたいことはそうではない。

 

「ウィードじゃない!

ウンクラウトだ!Das Unkraut!わかったか!!英語なんて使うなこの馬鹿!!」

 

「...は...?」

 

と、誰もが場違いのこの怒りに謎の表情となった。

 

だが再びA組の男子生徒はハッとなり、

 

「な、なんだかよくわからんが、ウィード如きと絡むお前も同類だ!!」

 

と激しく非難する。

 

そこを言われるの別にいいけどさ...と軽く受け流す。

 

だが美月は黙っていなかった。

 

「同じ新入生じゃないですか!ブルームである貴方達が一体どれだけ優れているというんですか!」

 

と、反論すると

 

「まずいな...。」

 

深雪をそばに携える達也から小さな声で漏らされる危機感。

 

そうして目の前のA組の男子生徒がニヤリと口角をあげて笑うと

 

「いいだろう...だったら教えてやる。これがウィードとの差だ!!」

 

と、身構えたレオンハルトに対して金色の光を放ちながら拳銃型CADを向けるA組男子...

 

 

 

 

 

(...まずいッ!)

 

流石に今日会ったばかりとはいえいい奴であるレオンハルトを害することは許さない。

 

そもそも同じ民族を破壊するモノ自体絞首刑ものだ。

 

色々な懸念はあるが、それでもぼくは目の前の破壊者へと鉄槌を下すべく、その能力を行使する。

 

グッ...

 

と、ぼくの動いてもいない心臓が縮こまる。

 

そしてその瞬間、ぼくは、ぼくに寄生するモノは黒い個体でも液体でもないモノを地面を通して一瞬のうちに彼、A組男子生徒に足から流し込む。

 

ぼくが足をつけている地面からあのA組男子生徒の足元までには一瞬黒い物体が細長くなりつつも彼の足元まで伝達した。

 

本当は空気媒体...空気中に含まれるごく僅かなサイオンからでも伝染が可能だが、物理的な地面におけるわずかなサイオン媒体からでも可能であり、そちらの方が確実なのでそうした。別にあまり差異はないが。

 

ちなみに真空中では空間中のサイオン媒体となり、空気中のサイオン量の0.04倍の伝達率となってしまう。

 

彼のサイオン情報体であるCADの魔法式へと侵食を始め、展開式がぼくの持つ悪夢によって一瞬で金色から黒色に染め上げられ、破壊されていく。

 

そればかりか彼のCADは内部構造までがぼくに情報として送られてきており、破壊の命令を請求してくるがぼくはそこまでは拒否する。

 

ここまでしたなら、次は君の脳だな...

 

彼の頭への侵食を目論み、脊髄から脳内部分へと侵入を行なったその瞬間、

 

 

 

 

「がッ...ぐぐッ...ぅ...。」

 

ドサッ...

 

と、いきなり叫びこみ、そして地面へと倒れた。

 

ここまでの現象に至るまでわずか0.7秒 通常の人間ではいきなり何が起きたかわからなかったであろう。

 

...1人は除いて。

 

「ちょ、ちょっと森崎くん!?貴方何をしたの!?」

 

達也くんが後ろから怪訝にぼくの方を思いっきり見つめながら、何かをしようとかざしていた手を下げる。

 

「お、俺は何もしてねぇよ!そいつがいきなり倒れただけで...。」

 

彼のA組の連れである女子生徒がレオンハルトに聞き迫るが、彼はなんのことか全くわからないといった顔になる。

 

 

 

あの倒れた男子生徒 森崎と呼ばれた彼は今頃、ぼくの脳内に存在する第2の空間である精神世界と言うべきところに閉じ込められているだろう。

 

もちろんこの悪夢はぼくが許さない限り永遠と続く、生き地獄だ。

 

彼はどうやら夢の中で、ある白い一本通路にて立ち往生しているらしい。

 

後ろも横も白い壁で覆われた狭い一本道。上の天井からは真っ赤な血が横の壁沿いに垂れているが、自分の頭より下の高さには垂れてきていない。

 

「っ...どこなんだよここは...ともかくここを出ねえとウィードの連中がまだ何かしてるかもしんねぇ...。」

 

不思議で不気味な空間の中を出ようと目の前にある扉を開けるため手を伸ばすと

 

 

グゥゥゥゥンッ

 

 

と、扉と自分の距離が伸びる。

 

「!?」

 

森崎くんは驚きながらもまた扉に近づこうとするがまた扉の方から距離を離されると言う繰り返し繰り返しの無限ループへと陥っているようだった。

 

「な、なんなんだよこれは!」

 

ずっと走り続けてもいつまで経っても着かない扉へイライラが増してくるのか、遂に自らの拳銃型CADで壁にあたりちらし、出れないかを確認する。

 

だが壁は頑丈であり、どれだけ蹴っても叩いても撃っても何も起きなかった。

 

そして彼はふと後ろを見ると、なんと何百メーターも走ったであろうはずなのに後ろの行き止まりである白い壁との距離が一切離れていなかったのだ。

 

わけがわからなくなり、混乱し、狂い出す計算と畏怖の存在。この空間はぼくに寄生するナイトメアが悪夢なるものを生み出し、空間内にいる全ての生命体に対して精神的攻撃を行う。

 

今回の場合、彼はまだ優しい無限ループに陥ったようだった。

 

「...は...ふは...はは...。」

 

彼は次第にこの何をしても出られない状態に耐えきれなくなり、ただ餓死か自殺かを迫られるのみであった...。

 

状態としてはサイオン枯渇の前段階である、サイオンの急激な使用による精神力の破壊的打撃を受けた状態だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼がぼくの悪夢によって彼自身の脳内に作り出された精神世界に幽閉されている頃、現実世界では厄介なことが起きた。

 

周りのA組の生徒達がこの騒ぎに乗っかり様々な魔法を発動し始め、ぼくらに対して徹底抗戦の構えを取る。

 

そしてそんな中で、A組の女子の中に同じA組の暴走を止めるべく魔法を発動し始める女子生徒の1人が

 

「やめなさい。」

 

と、新たな人物の一声とともにその展開途中だった魔法は打ち砕かれた。

 

新たな登場人物に皆、目をそちらに向けると

 

「自衛目的以外での魔法の使用は犯罪です。」

 

と、前にお会いした生徒会長である七草 真由美と

 

「風紀委員の渡辺 摩利だ。事情を聞かせてもらおう。全員ついてきてもらおうか。」

 

全員連れていかれそうになる。

 

(...面倒ごとはごめんだ。)

 

と思い、その場を離れようとそこの森崎君と呼ばれた生徒...さっき女子生徒が名前言ってた奴の体に忍ばせてあったぼくの寄生物の悪夢を取り払い、意識を取り戻させる。

 

「う、...っつッ!」

 

と、再び現実世界に帰ってこれたことに安堵と先程までの謎の空間について戸惑いを見せる森崎君だが、今はそんなことを言ってる場合ではない。

 

そろー...そろ〜...っと、壁伝いにその場を離れようと試みるが

 

「...そこの君!君もだ。名前は確かクリューガー、だったな。君もくるんだ。」

 

「...ちぇっ...。」

 

と、気配を消していたぼくを見つけ出すとはなかなかな...この渡辺といったか、風紀委員も伊達ではないな。

 

まずい空気になりつつあったが、突然、達也が動き出す。

 

「すみません...渡辺委員。少しばかり手違いがありまして。」

 

「手違いだと...?」

 

渡辺委員達の方へと近寄っていく達也に警戒して彼女はとある魔法を展開する。

 

が、彼はその予想とは裏腹に僕らの弁明を行ってくれた。

 

森崎君の技能の高さによる魔法の展開の鑑賞、そしてA組の女子生徒の攻撃性魔法行使について。

 

だが森崎君の意識不明は少し言葉が濁ったので、ぼくが付け足そうと前に出て

 

「森崎君に関しては多分、力加減を誤ったのと、見栄を張ったのだと思います。

魔法展開時に自身が普段使用する以上のサイオン量をCADに費やした為、超負荷がかかり意識を一瞬失ったと思われます渡辺委員閣下...。」

 

と、おそらく先輩であろう渡辺さんに進言する。

 

サイオン量の長時間使用以外で意識を失ったり体調を崩すサイオン枯渇状態、になるのはまずあり得ない話なのだが、短期間でその膨大な、しかも森崎と呼ばれたあの男のサイオン量を費やすには相当な無理があっただろう。

 

だが渡辺さんはぼくの話を話半分で聞きながら、

 

「君は1科生...さっき見たところ森崎君との間に入っていたようだが、森崎君が君らに魔法の行使を見せるのにあんなに近づいては誤射の可能性もあったぞ。なぜ、あそこまで近づいていた...?」

 

ぼくに関する疑問点を聞いてきた。

 

「そ、それは...。」

 

ズバリ、ぼくの寄生虫たる悪夢を彼に忍ばせるためでしたー、なんて言えるわけなくてその場でおし黙る。

 

すると達也君が助け舟を出してくれて

 

「興味本位の心が勝ってしまい、つい彼の手元まで近づいていった、その辺りかと思います 渡辺委員殿。」

 

と、ぼくの弁明もしてくれた。

 

「そ、そうそう!そうなんだよ!ね、達也くん!」

 

「あ、あぁ...。」

 

むちゃくちゃごまかしながら

 

ナイス達也くん!!

 

そう目で合図すると達也くんもこちらに頷き返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はなんとか誤魔化すことができ、会長と深雪の取り繕いもあってか渡辺委員達は去っていったとさ...。

 

だがそんな中で少しアクシデントもあった。

 

先程A組の連中の中にいた女子生徒 そして攻撃性魔法を発動した本人 光井 ほのかがこちら側へと迫り、場を納めてくれた達也くんとぼくにお礼と自己紹介をしてきてくれたのだ。

 

そしてその後、駅までご一緒してもよろしいでしょうか?と彼女の連れである北山 雫さんも一緒になり、帰ることになったのだ...。

 

てか達也くんの睨む目がマジで背中に刺さる。

 

さっきのあの一瞬のことを彼だけは見れていたようだが、一体どうやって...。



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ただの昼食会

誤字修正通知が初めてきてビビってます
クリューガー「みんなありがとう...ドイツ国籍あげます!」


 

 

「んくぅ〜〜ッ...よく寝たぁー。」

 

情けない声を出しながらベッドから這い出るのはぼく、ヘローナ・クリューガー親衛隊大佐だ。

 

昨日の一件からぐだぁーっと体を休めていたが、目覚める朝が来て絶賛朝から少し重めのパスタを食べている。

 

パスタとサラダ 生野菜との組み合わせが最高なんだッ...

 

ちなみにぼくは菜食主義に傾いてはいるものの肉も一応食べる派だよ。

 

ムシャムシャ...

 

そんなこんなで一高に行く支度をしながら色々と物思いにふける。

 

昨日はA組の光井ほのか、そして北山 雫と名乗ってくれた2名と共に帰宅する事となり

 

その際に達也に色々と聞かれた。

 

何やらサイオンの流動や魔法式の展開が見られなかったのに、どうして森崎に干渉できたんだー、とか。

 

はたや精神干渉系の魔法かー、だとか。

 

色々と聞かれたが、

 

「他人の魔法式の展開がわかるの!?」

 

と言うぼくの驚きの声と、更には達也くんがボロを出したとこを突いて話は曖昧にしておいた。

 

ぼくの能力の詮索やぼくへの警戒はなんとなくわかる。

 

司波 達也...それに妹である深雪...彼ら2人は何かありそうだ。

 

後で国家保安部の調査対象にでもしておこう。

 

色々と考えをめぐらせてると、気づけばいつもの大通りに出ており、登校ムードになっていた。

 

腰にかけてあるホルスターと、制服の下に親衛隊の黒服とを両方隠しながら歩く。

 

周りに数多くの一高の生徒が歩く中、先ほどの思案の中にも出てきた例の2人の背中が見える。

 

「おっはよぉーーーうっ!達也、それに深雪さん。」

 

子供っぽい挨拶の仕方で彼らに近づいて達也の背中にダーイブっ。

 

緊張を解くのと、単にカッコイイ兄的な存在に抱きついてみたかったのが理由だ。

 

170かそれ以上ありそうな達也に、150cm程度の小さな子供の身体が突貫していく。

 

ぼすんっ

 

と音を鳴らしながらぼくは彼の背中にもふる。

 

「ぐふふ〜...極楽極楽ぅ。」

 

達也をしばしの間もふっていると、

 

「あー...クリューガー...そろそろやめたほうがいいと思うぞ?」

 

と、達也が何やら意味ありげなことを口走る。

 

「ふぇ?」

 

間の抜けた声を出すと、隣から非常な冷気が被さってくる。

 

「...お兄様に...私だけのお兄様に...ハグ...など...不潔です...ッ!」

 

顔を下に傾けて冷気を放つそのブラコンを解放しせし張本人、深雪がぼくを思いっきり睨む。

 

「ひっ...たしかにヤバイね。」

 

若干戸惑いの声を上げながらも、異常な愛情をお持ちのようでと心の声で付け足す。

 

「いっただろ...はぁ、深雪 落ち着くんだ。」

 

落ち込んだ達也が鎮めにかかると深雪はハッと我に帰り、

 

「も、申し訳ありません、お兄様。ですが同性とはいえ、余りにもスキンシップが過ぎます。

 

ね、クリューガーさん。」

 

同意を求められたぼくは、微笑ましい笑顔を向けながらも全く笑っていないその顔に意表を突かれて

 

「う、うんうん!その通りです!ぼくが悪いのです!」

 

へこへこと平伏した。深雪パワー、おそるべし。

 

「ふふ、それで良いのです!」

 

深雪が悦しそうにしている。ブラコンパワー系女子だなこれは。

 

くだらないことを考えながらその後も達也達と登校していると

 

不意に更なる人物の声が後方からかけられる。

 

「おはよう〜、達也くん、深雪さん。」

 

ニコニコしながら先程までのことを知らない七草 真由美 生徒会長本人が後ろから迫ってくるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、達也と深雪達は話があるとのことで生徒会室にお昼休みの時に来て欲しいと七草生徒会長から言われた。

 

ちなみに話の方は全くぼくに関係無いけれど、

 

「昼食は、クリューガー君も一緒に取りたいなら来てもいいですよ〜。」

 

お、生徒会長いい計らい、実は今日食堂のメニューにサラダメインのものがなかった為困っていたのだ。

 

ぼくは快く快諾して、時はすぐに来てしまい、お昼にまで到達することとなる。

 

 

 

 

 

 

ぼくは今達也達と生徒会室の扉の前に佇んでいる。

 

コンコン...

 

礼儀良く二回ノックしてから、

 

「入って〜。」

 

と、軽い声が上がると、達也は扉をあけて中に入っていく。

 

中に入っていくと、順番に挨拶をしていき、深雪さんの凄い整った礼に一同驚愕...。

 

その後、ぼくも

 

「おはよーございます!...じゃなくて、こんにちはか。1年A組のヘローナ・クリューガーです!」

 

相変わらず元気よく声を出すものだから、子供っぽいとでも思われたのだろうか。

 

会長や書記等がクスっと笑う。

 

 

 

その後、順調に生徒会室に備え付けの食堂からの供給システムからサラダ一択を選んだ。

 

「うげっ...よくそんなものたべれますね...。」

 

手に届いたサラダしか入っていない弁当を見て、生徒会長の隣に座るやや褐色色の子が言う。

 

「失礼なっ、この緑色こそが僕らを救済するのであります。」

 

むふふんとしながら蓋を開けながらぼくは待ち遠しかった緑達を眺める。

 

「ふわぁぁああ...なごむ。」

 

「野菜見てなごむって、クリューガー君はかなりの偏食なのだな...。」

 

斜め前に座る渡辺 摩利が言ってくる。

 

「先輩も食べますか?」

 

「いや、私はこっちがあるからな...。」

 

風鬼委員長は机の上に自家製のお弁当を置いたようだった。

 

会長は少し引きつる顔をしていたが、朝に小麦であるパスタを食べたのでサラダを、

 

菜食を求める欲求がッ止まらんのですっ

 

という本心を隠しながら皆と会食していく。

 

こんなもんばっか食ってるから育ちが悪いんだよぼくは...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事が終わり、本題に入っていくと、生徒会長から直に深雪さんに対して

 

「生徒会に入ってくれないかしら?」

 

と、言われた。なんでも新入生総代は例年通りに生徒会に入ることが決まっているようだった。

 

そんな中、深雪はとある爆弾発言を産み落とした。

 

といっても、それはぼくにとってではなくて隣にいる達也...にとってだったが...。

 

「会長は...お兄様の成績をご存知なのですか...?」

 

深雪が切り出したこの言葉から、達也の委員会強制入籍が決まったようなものだった。

 

残念ながら規則によって1科生からしか生徒会の役員にはつけない、と会長は宥めるが

 

「まてよ...そういえば風紀委員推薦の枠がひと枠余っていたな...。

 

風紀委員の推薦なら、2科生でも問題なかったはずだろう?七草。」

 

「ちょ、ちょっと摩利?その話はまた後日と言ったでしょう!?」

 

会長はこの急な達也くん絶対入れるマンの展開に驚きを隠せないが、

どうやら渡辺 摩利委員長はこの達也を大きく買っているようで引かない。

 

「ふぁーあ。話の途中でごめんなさい。寝ててもいいですか?」

 

大胆にも議論の途中にこんな無礼な事を聞く。

 

「あ、ヘローナ君は...そうね、貴方にはあまり関係がない話かしら...。

なら、もう帰ってもいいわよ?授業もあるし。」

 

会長は見繕ってくれたようで、ぼくに親身になってくれた。

 

「ごめんね達也。君の援護はできそうにないや。諦めて入ってあげなよ。」

 

「...クリューガーからそんな言葉が出るとは、観念したくないのが山々なんだが...。」

 

達也は何かを秘匿しつつも生徒会やましてや風紀委員などに関わるのを極度に控えていた。

 

ふむ、何かありそうだな。

 

色々な思案と共に生徒会室を出ていくのであった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?結局ぼくはなんのためにあそこに行ったんだ?

 

ご飯食べるため?



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嵐の前の静けさ

速書きで書いたので誤字とか時系列がガチャガチャしてるかもしれませんが...




あの後、数日が過ぎて無事、風紀委員会入りした達也くんが年上の学年の女子生徒を質問責めにしたーだとか、色々一悶着あった。

 

達也くんも色々と大変だねぇ

 

それから流れるように月日が経ち、普通に授業を受け日々を過ごしていた時のことだった。

 

『全校生徒の皆さん!!』

 

突如、授業中にも関わらず校内放送が教室に響き渡る。

 

「な、なに?」

 

「一体なんの騒ぎだ?」

 

ガヤガヤとA組のクラスが騒ぎ出すが、放送室から送られてくる有線の音声は止まることはなく

 

『私達は校内差別の撤廃を求める有志同盟です!』

 

と、なにやら政治的な方向性を見せ始めた。

 

「ゆ、有志同盟ぇ?」

 

ぼく、クリューガーはイマイチその目的がわからずにいた。

 

校内差別の撤廃:これについてはおそらくウィードとブルームの事を指しているのだろう。

 

それはいいことだろうけど、なにも放送室を占拠しなくたっていいジャマイカ...

 

そううなだれたぼくはこの後、どうせ臨時休校かなんかで帰ることになりそうだし

 

この騒乱を利用してさっさと去るか

 

思い立っていざ机から立ち上がり、喧騒に包まれる教室から出ようとする

 

すると、当然のごとく皆から奇異の視線を向けられ、

 

「ちょっと、クリューガーさん?どこに行くんですか?」

 

抗議の声をあげたのは同じA組の 光井 ほのかだ。

 

ちょっと前にちょっとした司波姉妹の騒ぎに巻き込まれてたまたま知り合いになった...だけ

 

そこまで深く関わってはいないが、ぼくに対して不安な目を向けている。

 

おそらくぼくが放送室に行って何かをしでかす、とでも思っているのだろう。

 

その誤解を解こうと、口を開く。

 

「...かえる。」

 

「そ、そっか...気をつけてね。」

 

意外な返答に満足したのか、彼女は引き下がり、ぼくは教室を出て行く。

 

 

 

 

 

帰路に着いたぼくは珍しく徒歩で帰宅していた。

 

「今日の夕飯は何にしよっかな...。」

 

周囲にはSD隊員が自分の護衛のために障害物等に身を隠しながら死角から見守ってくれているのだろう。

 

明日の予定やディナーについて考えを巡らせていると

 

コツ コツ コツ...

 

硬いアスファルトの上を歩いていると不意に視線を感じる

 

...つけられてるのか

 

別に構わないが、ぼくをつけるということは明らかに国家規模の諜報機関 スパイかそれに準ずる組織...

 

まてよ、今日の放送室の一件が絡んでたりするのか?

 

周囲のぼくの護衛についていた国家保安部 SDの隊員は射殺を試みているが、ぼくはやめろ、と合図を出す。

 

色々と思案しながらまずは情報を得る為に右手でポッケからよくあるスマホよりも便利なデバイスを出して

 

「さっさとどっかいって欲しいなー。ストーカーさんならまた後日にお願いするよ。」

 

と、後ろに向けて声をかけると、気づかれたか、と言わんばかりにその黒い影は離れていくのであった。

 

「はぁ...見逃したのはSD 国家保安部につけさせる為だよ。」

 

さらっとひどい事を口走る。

 

そんなこんなで、ようやくデバイスを起動して、ある人物にかける。

 

かけられたその番号からは即座に返答がくる。

 

『Hallo?』

 

「ぼくだ。」

 

『ク、クリューガー大佐、ハイル・ヒトラー。』

 

「ハイル・ヒトラー。周辺の護衛のSD隊員に既に気づいているようだが、ぼくをつけていた男を監視させろ。」

 

フッ 逆ストーカーだな、これは。ざまーみやがれ。

 

「身長は180-186cm 大柄で黒い服を着ていて、赤い腕章をつけていた。腕章のマークまでは見えなかったがこれだけ情報があればいいだろう。

 

急げ。あいつは路地裏と人気のない通りをよく歩くようにしていた。ここから3km圏内にまだいるはずだ。」

 

『ヤヴォル すぐに隊員を向かわせます。となると大佐の護衛用のSD諜報員が抜けてしまいますが...』

 

「構わん 護衛など元から不要だ。それと隊員に伝えておけ。ヤベー所なら国防軍に連絡を、と。」

 

『ヤヴォル。ハイル・ヒトラー。』

 

「ハイル・ヒトラー。」

 

はぁー、とため息をつきながら、少し早いが夕焼けの靄がかかった空を見上げてうなだれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから後日、学校に登校してきてからというもの、校内は騒然としていた。

 

A組でいつものように話している北山 雫と光井 ほのかがぼくが教室に入ってくると

 

「あ、おはよークリューガーくん!」

 

「おはようクリューガー。」

 

「お、おはよう...。」

 

昨日は寝不足であまり眠れなかった。

 

司波家の事に関して色々と調査を行ったりして大変だったのだ。

 

情報戦とは楽じゃない仕事です...

 

心の中で呟きながらぼくは周囲の喧騒の原因を彼女たちに問いただす

 

「ところで、みんな騒がしいけどまだ何かあるの?昨日の放送室の件は片付いたと思うけど...。」

 

と、怪訝な顔で聞き出そうとする。

 

「そ、それがねクリューガーくん。どうやら昨日の有志同盟って人達と、生徒会との討論が行われるそうなの。

 

それで全員出席だって...。」

 

「ま、まじで!?くっそ暇そうじゃない!」

 

「クリューガー...その言い方は失礼だと思う。」

 

北山がぼくにツッコミを入れる。

 

「あはは、でも僕らにはあんまり関係のない事じゃ...。」

 

「ま、まぁそうだけれど、この前の深雪さんとの一件を思えば聞いていて損はないと思うの。」

 

ふむふむ、まあ校内の統一は課題の一つでもあるが...。

 

普通に授業を受けたかった...へこっ...。

 

「うーん、そう。ならぼくも行こうかな。」

 

「よかった!じゃぁ雫ももちろん一緒に行くよね?」

 

「うん、そのつもり。」

 

決まり!という顔でガッツポーズをとるこの元気な女の子にぼくは微妙な面構えになっていった...。




次回は国防軍国内予備軍参謀総長 もう一人の大佐によるワルキューレ作戦が...

ちなみに本編で出てくるワルキューレ作戦(Oparation Valkyrie : オペラチオーネ ヴァルキリー)は有名なトムクルーズ主演の洋画【Valkyrie】から取ってきてます

ナチ党と総統 ヒトラーの絶滅収容所等への命令や悲惨な戦況を鑑みたシュタウフェンベルク大佐が

暗殺計画と共に全ドイツ領の占領計画の為に『ワルキューレ作戦』を利用したとされています


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