祖龍だけど、一人は寂しいのでハンターになります。 (やいやいのやいの)
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祖龍、集会所に立つ!!
主作品の息抜きなので完全に何も考えてない妄想垂れ流しです。矛盾点などはその辺に転がってると思われますのでどうか許してください!!
ハンター達の楽園、『アイナ』。
そこは世界中から腕自慢のハンター達が集う、大狩都市とも呼ばれる程の大きな街。
全方位を高い壁に囲われたこの街は、空から見れば綺麗に円形になっている事から、円…縁の街とも呼ばれることがある。
「はい、ハンター登録ですね。まずはお名前をお聞かせ下さい」
「はい!ミラボレアスです!」
その都市の丁度中央に、大型集会所は存在する。
温泉、飯屋、武具屋、加工屋、果ては宿泊施設何でもござれな正しくハンター達の楽園に相応しい規模だ。
「み、ミラボレアスさんですか。偽名ではなく?」
「ミラボレアスです!ミラと呼んでくださいっ!」
そんな集会所の一角に、ハンター達がクエストの受注やその他諸々の手続きを行う為のカウンターがある。
そこの一番端っこで、白髪の長い髪を揺らし少女はこれでもかとはしゃいでいた。
「は、はぁ…。ミラさんですね。メイン武器とサブ武器は何ですか?」
「はい!この拳一つあれば充分です!あと口から火が…あっ、雷も落とせます!」
「何この子…帰りたい」
そんな白髪少女の相手をカウンター越しに務めるのが、このアイナ集会所でもきってのエリート受付嬢。名前を『サーシャ』という。
赤の肩まで掛かる程のミディアムボブに、同じく赤色の瞳で、その見目麗しい容姿がハンター達を虜にしてやまない。
だが、そんなサーシャも目の前の変人少女の相手はお手上げと言った風だ。
突然ハンターになりたいと言ったかと思えば、名前は伝説の古龍を名乗るし武器は素手だと抜かし遊ばせるし…。
「武器が無ければクエストは受注出来ませんが…?」
「え……、武器って、何があるんですか…!?」
そこからかよ。
思わず突っ込んでしまいそうになるのをサーシャはすんででぐっと堪える。
ここへやってきたハンター志望の人へ武器の説明などしたことがないサーシャは困惑した。そりゃそうだ、何故ならここはハンターの楽園…武器を知らないハンター志望などいる訳がない。
「(今目の前にいるけど…)現在は、全部で14種類の武器が存在します。大まかに前衛武器、中衛武器、後衛武器の3つの中にそれぞれ分けられます」
「はえー。じゃあ、力使わない武器を登録して下さい!斬ったりしないやつ!」
「…?ガンナーなら剣士程の力は必要としませんが、刀も持ち上げる事が出来ないようではハンターとしてやっていくのは難しいですよ」
「じゃ、そのガンナーって武器でお願いします!サブ?は適当で!」
「はぁ…」
本当に何なのこの子…、と泣きたいサーシャであった。
そもそも、ガンナーは武器種ではないのだが…。
「なら、一番軽く使いやすい“ライトボウガン”をメインにします。サブは…そうですね、偶にトレーニングも兼ねて大剣でも使ってみては?」
「トレーニング何て必要ありませんけど、まぁそれでいいです」
「うぐぐ…そうですか、で、ではこれがあなたのギルドカードです、ハンターとしての身分証明書みたいな物ですので失くさないように」
『ギルドカード』
それはサーシャが言うようにハンターとしての証明書だ。
主な用途としてはクエスト受注時に受付嬢に見せなければならないのと、自らの“ランク”がカードには記載されているのだ。
1つ目の用途は、クエストに向かうハンターの管理が目的である。受付嬢にカードを渡す事でカウンターにある何かあれな機械でピッとやればあら不思議、カードに自分が受注したクエストが登録されるのだ。
クエストクリアしたハンターは、そのカードを受付嬢に見せなければ報酬を貰うことが出来ない仕組みになっている。
そしてもう一つのランク記載。
これはその名の通り自らのランクをカードに記載する事を指す。
ハンターは大きく、『E、D、C、B、A、G』ランクに分けられる。左から右へ順にランクは高くなり、それに応じて受注出来るクエストの範囲も広がるという訳だ。
「よくわかんないけど、わかりました!」
「わかってないんですか!?」
少しこの自称古龍には難しかったようだ。何故か説明をした筈のサーシャが頭を抱える羽目になっている。
「…新人のハンターさん向けに毎週ハンター講座を開催しております、丁度明日の朝に第3闘技場を貸し切って行いますのでミラさんは是非いらして下さい…!!」
「いきます!!」
「え、あはい、ありがとうございます…」
それは来るんだ…。
もう色々と面倒くさくなったサーシャは、考えるのをやめた。
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第3闘技場
何かね、一話目を投稿する前から検索に出てたんですよ、この作品。
一話も載ってないのに検索には引っかかってたってことですよね?本当に申し訳御座いませんでした…!!裸土下座で許してください!
翌日の朝、ミラはサーシャに誘われたハンター講座(強制参加)に参加するべく第3闘技場へとやってきていた。
そこではミラと同じ新米ハンター達が、これから始まる講義の内容や講師のサーシャの容姿などで各々盛り上がっている様子が見て取れる。
ちなみに、第3闘技場と言うのはハンター達の訓練所みたいな物だと思って貰えばいい。
平均的な学校の体育館の広さはそのままに、上から見た形を円形にしたような場所だ。
この闘技場へアイナが捕獲しているモンスターを放ち、ハンターの稽古相手になって貰うのである。
闘技場と言うだけあってその種類は様々あり、第1、第2、第3と闘技場はあるがそれぞれ役割が違うのだ。
それの説明はまたの機会に行うとして、現在その闘技場の中央で新米達は待っている。この闘技場は他2つと比べると平地が多く、段差が少ない一番スタンダードな形だ。ハンター達からの人気も一番高い。
「みなさん、集まってますね。ではハンターの基本講座を始めたいと思います」
サーシャが来たことで、ついに講座が始まった。
「ーーという訳です。ミラさん、わかりますか?」
「わかります!薬草食べる、アオキノコ食べる、そしたら回復薬です!!」
「分かってませんね!はいあなた…えーと、チサさんはわかりますか?」
「はい。薬草とアオキノコを採取出来たら、ハンターに必ず支給される調合箱に入れます。一定時間経てば調合箱が黒色から白に変化し、それが調合完了の合図です」
チサ、と呼ばれたボンキュッボン!な黒髪ロングストレートお姉さんが言う。
サーシャはその答えにホッとため息をつき、ミラを見た。
「その通りです。ミラさん、分かりましたか?一点だけ補足しますと、調合時間は調合物によって大きく変化する物もあります。例えばボウガンの弾や、弓の矢などは比較的早く完成しますが『秘薬』など使う材料が貴重になればなる程時間は増えていきます」
「なるほど!」
「それはわかってませんね、私、段々分かってきました」
流石サーシャである。その通りミラは理解していなかった。
「先ほども説明しました通り、ボウガン系に弾は無くてはならない必需品ですよ!そして調合とは、ガンナーの方達にとって切ってもきれない事なんですからミラさんはしっかりと覚えて帰ってください!」
「はーい!」
「ガンナーだけではなく、剣士の方もそうですよ。回復アイテムも調合出来るようになれば狩猟クエストなどがかなり楽になります。現役のハンターさんでも回復アイテムは調合分無ければ落ち着かないって方も居るくらいですからね。それだけ大事だと言うことです」
そこまで説明すると、サーシャはぴ、と人差し指を立てる。
「今日は基本的な武器の扱い方と、調合についてお話ししましたね。そして…これが最後の“実践講習”です!」
ででん、と自分で言ってるサーシャがどこからか取り出した用紙に『多人数クエスト』と書いて皆に見せた。
「この場に丁度12名の新米ハンターさんがいると言うことなので、4人3組に分かれて貰います。どの組になるかは武器などを考慮して私の方で決めさせて頂きますのでご了承下さい。それで、まずは多人数クエストの説明から」
多人数クエスト。
その名の通り、多人数で受ける事の出来るクエストの事をそう言うのだ。
他には1人だけで受けるソロクエスト。2人だけのペアクエスト。4人を越えた場合は大規模クエストとなり、多人数クエストとは4人以下のメンバーで受注することの出来るクエスト全般を指す。
基本的にはこの多人数クエストが主流であり、その人数を越えてしまえばいざと言うときの救助に手が回らなくなってしまう為だ。
大規模クエストはそんな事を言ってる場合ではない、本当の緊急事態にのみ適応されるクエストなのでまずお目にかかることはないとはサーシャの談。
「という訳なので、ハンターさんは基本的に4人パーティーを組んでいられる場合が多いです。そこで、今この場にいる12人のハンターさんに経験も兼ねて実践して貰おうと言う訳です」
「実践!!…でも、私武器持ってません!」
「支給しますので、そちらを使用して下さい」
「内容はどういった物ですか?」
チサの質問に、サーシャはこう言った質問が欲しいんだよね、とちらちらミラを見ながらうんうんと頷く。
「新米ハンターさんですので、何も難しい事をさせるつもりはありません。この闘技場にランポスを一頭放ちますのでそれを無力化する事で今回の講座はマスターと言う事にします」
「なる程、わかりました」
「ランポスかぁ〜…」
途端つまらなさそうにし出したミラにイラっとしながらもサーシャは話を続ける。
と言うより、武器も知らなかったのにランポスは知ってるってどう言う事なのか、彼女はミラの出自の方が気になる所であった。
説明ばっかで申し訳ないです。まだ序盤なので許してください…。
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命に関わる手違い
「せぇぇいッ!!!」
「うおおおおおッ!!!」
「はぁああああッ!!」
何て気迫だ…とミラはサーシャが決めた自分のパーティー3人を眺めながら思った。
1人はサチだ。彼女の使用武器は片手剣で、初心者御用達だと一般市民からは思われている『超高難易度』武器である。
確かに片手剣は他の武器と違い、片手にしか剣を持っていない為抜刀中でも道具の使用や調合を容易に行える利点はあるのだが…何せ火力不足なのだ。
勿論、そんな片手剣にも救いはある。もう片方の手に持つ盾の存在や、『刃薬』と呼ばれる片手剣専用のドーピングがあるのだが、初心者に使いこなせる筈もない。
だからハンターの間では片手剣とは武器の中でも最上位レベルで扱いづらい物なのであった。
そしてもう1人はヒビキという青みのある黒髪ショート女子である。
ショートと言ってもよくある男並みの短さではないが、その体型は男並みにスランとまな板だ。本人は気にしているので触れないであげよう。
そんな彼女の武器は元気印のハンマーである。
片手剣とは違い、扱いは単純。ただモンスターの頭を狙って集中的に攻撃するだけでいい…が、頭以外はハンマーより他の武器の方が火力が出る為パーティーを組むのならずっと頭を狙い続けなければいけない。
扱いは単純とは言え、何も簡単な武器ではないのだ。だけどその分リターンは大きく、頭を集中的に殴ると言うことは脳が揺れると言う事に他ならないので、ハンマーだけでなく打撃系の武器で頭部を叩き続ければいつかはモンスターがスタンする。
スタンとはその名の通りなので説明は省くが、つまりハンマーとは頭特攻の超脳筋武器だと言うことだ。脳筋ヒビキ乙。
最後の1人はアーシャだ。彼女は受付嬢ミーシャの妹で容姿も似ているのだが、姉とは違って髪の毛は長く、後頭部で一つに纏めておさげにしている。ミーシャと似ていると言っても比較的おっとりとした印象を受ける姉より、妹である彼女の方が全体的にキリッとしているようだ。
所謂真面目ちゃんと言うやつか。
真面目ちゃんの武器は世界中で大人気、太刀である。
長いリーチを生かしモンスターとの間合いを常に把握しながら立ち回る必要のある刀は、モンスターだけではなく味方の位置にも気を配らなければならない。
その理由は武器の刀身の長さにある。刀ではあるが、突きではなく斬る事をメインとする武器なので勿論振らなければならない。
だけど振り回すとなれば、どうしても味方との距離を把握しておかないとモンスターではなく自分の味方を斬ってしまう事に繋がるのだ。
一方でその間合いさえ確実に掴めれば太刀がモンスターへ与える攻撃力や、攻撃と攻撃の間に存在する隙の無さなどは武器の中でもトップクラスである。太刀強い。
とまぁ、長くはなったがミラは現在その3人とパーティーを組んでランポスを相手しているのだ。
他の2組はミラ達より前に終了しているので、この組が最後の挑戦組ということになる。
冒頭に戻るのだが、そんなランポス相手にどれだけ本気を出しているのか、とミラは呆れている訳だ。
1つ、3人を擁護するとすれば、まだ彼女達は新米であり対モンスターの経験がないのだからランポスとはいえ油断は出来ないのは事実で、本来ならば彼女達の対応が正しい。
こんなアホ白髪少女のようにのほほんとボウガンを眺めていられるような余裕などない筈なのだ。
「…っ!ちょっとあんた!手伝いなさいよ!」
「えー…。だってランポスですよ?的が小さいから撃つに撃てないんですよ」
「大丈夫!ガンナーが居なくてもあたし達ならできるぜ!!なぁ!?」
「ええ、早いとこ終わらせちゃいましょう」
いい加減痺れを切らしたアーシャに怒鳴られるミラだが、撃てないと言う。要するにお前ら邪魔と言っているのだ。
そんなミラは放っておいて、3人はランポスをいじめ…いや、体力を削っていく。
何だかんだと言ってもランポス一頭だ。普段は群れで行動をするランポスだが、一頭となればただの雑魚モンスターに過ぎない。
…いや、群れても雑魚は雑魚だが。
「んー?でもあのランポス、やけにタフねぇ…」
他の8人とサーシャは、講習生4人の邪魔にならないように観客席へ離れている。
何故ドームのような観客席があるのかと言うと、アイナではモンスター対ハンターの試合が都名物となっているからだ。流石はハンター達の楽園、ハンター以外の一般人にも娯楽を与える精神を忘れない。
「なーんか、トサカが大きい気もするし…」
バン!!
「さ、サーシャさん!!」
「え、な、何ですか!?」
突然、外とこの観客席を隔てた扉が係の者によって開かれる。
彼女はこの第3闘技場管轄の者であり、ここに捕獲されているモンスターの管理を主な仕事としているのだ。
「た、大変です!!こちらの手違いで…ランポスの檻に“奴”が紛れ込んでいました…!!今彼女達が戦ってるモンスターは…!!」
「ま、さか……!!」
サーシャは背中に手を伸ばし、空を切る。
無意識のうちに武器を取る動作をしてしまったが、これは彼女が数年前まで現役のハンターだった頃の名残なのだ。
「…くっ、今すぐ実践講習を中止します!!あなたも手伝って!武器を早く用意して下さい!!」
「は、はい!!」
ドタドタと慌しくその場を後にするサーシャを、残された8人はポカンと見送るしか無かった…。
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命に関わる手違い(笑)
「このランポス、絶対何かがおかしい…!こんなのが群れを成しているっていうの?」
「はぁ…はぁ…、確かに…変だぜこいつは。おいチサ、まだいけるか?」
「まだまだいけるわ。…けど、支給用の砥石もそろそろ…」
「確かにそのランポス、ランポスにしては強そうですね!」
「「そう思うなら手伝って!!」」
3人の魂の叫びが轟いた。
4人はまだ知らないことだが、今相手にしているモンスターはランポスではない。その親玉…“ドスランポス”である。
ランポスを率いて常に群れて行動する彼らは、『D』ランク級のモンスターだ。
しかし通常のドスランポスよりも幾分か体格が小さく、ランポスとあまり変わらない体格の為に同じ檻に放り込まれていたのだ。
「どうやって撃つんですかね。こう?」
バン!
「きゃあーーッ!ちょっと、私の真横抜けてったけど!!?」
「だから的が小さいんですよ!当たらなかっただけ褒めてくれてもいいじゃないですか!」
「だけどその子が言ってることも一理あるわ!えーっと…アーシャちゃん、よね?一旦離れて体制を立て直すのもアリじゃないかしら?」
「チサ、あたしはまだ大丈夫だ!」
「だめ、あなたもこっちに来なさい」
ぐえ、と声を漏らしたヒビキの首根っこを掴んで引きずり、チサはドスランポスから離れた。
アーシャとミラも流れでそこに集まり、4人で敵さんを警戒しつつ話し合う。
「…私の見立て何だけど、あのランポス…多分、ドスランポスだわ」
「……やっぱりね、特徴が似てるとは思っていたのよ。私以外にも思ってる人がいてくれてよかった」
そんな2人にヒビキは首を傾げる。
「ドスランポス?って何だ?」
「さっきの2組が倒したやつの親玉よ。ランポスより遥かに強靭な爪を持ってるって聞くけど、こうして見ると確かに…って思うわね」
「ドスランポスですよね?早く狩りましょうよ!」
「あんたはもう少し危機感を持てばどうなの?ドスランポスよ?Dモンスターなの、私達はE。この意味がわかる?」
「EとかGとかよく分かりませんけど、とにかく倒しましょうよ。こんなとこで話し合って何か変わるんですか?」
「あんたねぇ…あー、なんだかこいつと話してたら無駄にビビってた私が馬鹿みたいじゃない」
「え?ビビってたんですか?ドスランポスですよ?」
「あーもう!うるさいわね!!ちょっとあんた!こいつ何とかしてよ!」
「面白いから放置で!」
うぐぐぐゥ…!!とヒビキの笑顔に青筋を浮かび上げるアーシャだが、すぐに気を取り直して太刀を構えた。
「…とにかく、あいつを倒さなきゃ私達は終わりって事でしょ。ムシャムシャ齧られて腹の中でこの赤目と心中なんて死んでもごめんだわ」
「赤目って私のことですか?あなたも赤いじゃないですか」
「うるさいわね!!…どうする?チサ」
「そうねぇ…。えっと、ミラ…ちゃん?ミラちゃんのそのボウガン、使用できる弾は何があるのかしら」
「さっき教えて貰いましたけど、通常弾だけの試験用なんたら〜って事です。頑張れば弾に雷纏わせられると思います!」
「通常弾と電撃弾か…」
実際はミラの言ってることは冗談でも何でもないが、他3人には冗談だと捉えられてしまったようだ。
「もう撃っていいですか?」
「まだ何の作戦も練ってないでしょ!」
「だけどこいつの言う通りだぜ、早くやんないと…奴さんこっちに狙い定めてる」
ドスランポスの鋭い瞳が4人を射抜く。
先程まではキョロキョロと辺りを伺っていただけなのだが、ここに来て狙いを絞ったようだ。
「撃ちますよ、えい!」
「ちょ……。えっ」
「「えっ」」
バチバチとボウガン全体に電撃が走り、それが銃口に集中して放たれた弾丸は物凄い速度でドスランポスの胴体を容易く射抜いて吹っ飛ばした。
流石に死ぬまでは行ってないが、一撃でドスランポスを転倒させたのだ。
「い…今の…電撃、弾?」
「あれが眉間に当たれば…もしかすると一撃で倒せてたのかしら……いえ、今はそんなことより…!!」
「ああ、チャンスだぜッ!!」
通常の電撃弾とは一線を画すその砲撃に、3人は一瞬だけぽかんとするが今がせっかくのチャンスだ、逃すわけにはいかない。
「あたしから行くッ!!うぉおおおりゃぁあ!!!」
ズドンッ!!
「スタンしたッ!まだ起き上がってこないぞ!!」
「なら次は私が…!!…はぁッ!」
片手剣を倒れて目を回すドスランポスの目玉に突き刺し、地面に縛り付けた。なかなかえぐいお姉さんである。
「…最後は、任せて…!」
そんな端から見れば凄く可哀想なドスランポスの前に仁王立ちしたアーシャが、太刀を上段に構えて思い切り振り下ろした。
結果、ドスランポスは首と体がさよならバイバイ、いくらドス系とは言えここまでお膳立てされてしまえば首チョンパなど訳なかったのだ。
「あ、あなた達…これは…!?」
「え、えぇ〜!?もう終わってる…?」
駆け付けてきたサーシャと係員がドスランポスの惨状を見て口元を引きつらせた。
「おわった〜、どうでしたか?」
1人、未だに状況の分かってない古龍(自称)がいるが、サーシャはそんな事を気にしている場合ではなかった。
ドスランポスとは言え、初心者が4人集まった所で勝てるようなモンスターではない。
しかも持たせている装備の質だってランポス用の物だ、ドスランポスに攻撃が通るわけが…。一体、何がドスランポスを倒す決め手になったのか…?
サーシャはドスランポスの体に空いた弾の貫通穴を見ながらそう思ったのだった。
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採取クエストに行こう!
「おい、あの子どんだけ食うんだよ…」
「可愛いのにあの大食らいじゃ…声かけたくてもかけらんねぇよ」
集会所内のクエストカウンターの前には丸テーブルがそれはもう大量にあり、その中でもカウンターに1番近いテーブルでむしゃむしゃと食べ物を頬張る人物がいた。何を隠そうミラなのだが、その可愛らしい容姿とは裏腹にめちゃくちゃな大食漢であった。
せっせと動き回るアイルーコック達に、積み重なっていく無数の皿は正に圧巻の一言に尽きる。その細い体のどこに入るのかと周りのハンター達は見ているだけで胸焼けを起こしそうになっていた…。
「おかわり!」
「あ、あのー、ハンターさん、もうそろそろ食料が尽きそうニャ…ここらで勘弁…」
「おかわり!!」
「ニャ〜…」
とぼとぼと厨房へ戻る料理長『ニャラ』の背中には哀愁が見て取れる。
そんな
「ミラさん、食料は無限にある訳ではないのですよ、あまり食べ過ぎては周りのハンターさんも困ります」
「え〜、まだ食べれますよ、私!」
「そういう問題ではなく…」
どう言えば良いのか、この天然バカ古龍(自称)には言葉が通じないのではないかと最近サーシャは思ってきた。
あの闘技場事件から早一週間が過ぎて、講師を務めていたサーシャを含めた闘技場の関係者が後処理に追われる日々も既に過ぎた事だ。
…しかし、サーシャにはどうしても気になる事があった。それはあの時見たドスランポスの“銃創穴”。あれは、どう考えてもおかしいのだ。
何故なら、サーシャが講習生に配った弾はランポス用の通常弾…しかもLv1の無限に撃てるあいつである。決して貫通弾なんかではない。
「……とにかく、これ以上食べるのならミラさん自身で食料調達してもらう事になりますよ!」
「食料調達…!甘美な響きです!行きます!!」
「行くんかい」
思わず突っ込んでしまったが、この少女は本当に何を考えているのか分からない。一体何が彼女の琴線に触れたのだろうか。
ハンターは、基本狩猟クエストを好む。食料調達のような採取クエストは全くと言っていいほど人気が無く、ギルドとしてはほとほと困り果てているのだ。
と言うのも、採取クエストだって元は依頼人がいる訳で…ずっと放置しているとその依頼はキャンセルされる訳だ。ついでに依頼人のギルドへの信用もデリートなのである。
そんな採取クエストだが、初心者には大人気だ。
何故なら中級者以上にとっては狩猟クエストの合間に採取をすればいいだけなのだが、初心者はその狩猟クエストを満足にこなす装備が揃っていない。
という訳で初心者の基本は採取クエストで素材を集めて装備を作ってからモンスターを狩るぞ!という感じである。
「なら、丁度よかったわ。私も薬草を切らしてたのよ、着いてっていい?」
「あたしも連れてけー!」
「そんなこんなで、私もお願いね」
丁度近くにいた闘技場メンバーが集まってきた。あの事件からこの4人で集まる事が多くなってきているのは、やはり死線を共に乗り越えた仲だからだろうか。
…ミラに関しては死線どころか記憶に留めているかも怪しい所だ。
3人がやってきた途端に輝くミラの顔にサーシャは首を傾げるが、何もそこまで深く考える必要はない、ただ此奴は人が沢山いれば喜ぶ奴ってだけなのだ。
「姉さん、そういう訳だから何かクエスト紹介してくれない?」
「アーシャ…。そうですね、4人で受けるのなら…」
サッとどこからともなくメモ帳を取り出してぱらぱら捲っていく。そういう細かい所もエリートには必要なテクなのだ、社会に出るならメモ帳は必須だぞ!
「特産キノコの納品クエストがありますね、数は10個以上ならいくらでも構わないとの事です」
「キノコ!いいですね、スープにしましょう!」
「こら、納品クエストよ」
「大丈夫ですよアーシャ、10個以上納品した後の余りをニャラさんに渡せば希望の料理を作ってくれますから」
それを聞いて更に目を輝かせるミラ。頭の中は食べ物の事だらけであった。
「すぐに出発しますか?それとも準備しますか?」
「すぐに行きます!」
「そうね、特産キノコ取るだけなら大丈夫でしょ。2人もそれでいい?」
「ええ、ヒビキもいいわよね」
「いいぜ!早く行こう!」
4人はサーシャにギルドカードを渡してカウンターに向かう。その際ついでにミラは会計を済ませた。…足りなかったので3人に借りたのは別の話だ。
「こちらが今回のクエストになります」
『お師匠さんの為に』
・特産キノコ10個以上の納品。
達成条件➖特産キノコ10個以上の納品
失敗条件➖クエスト受注から1日以上が経過。特産キノコの納品数10個以下
依頼人:師匠思いのアイルー
《最近、お師匠さんの元気がないニャ…それもこれも突然アイナに現れた大食い女のせいニャ…!許せないニャ!…それはそうと、お師匠さんの元気がない原因の食糧不足を是非解決して欲しいのニャ!特産キノコが10個あれば大丈夫ニャ、それ以上でも嬉しいニャ!》
「「「…………」」」
結局原因こいつじゃんか…。
クエストを確認した3人は心の中でそう思ったのだった…。
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卵が食べたかった等と供述しており…
「きゃーーーーーッ!!!何で!!?何でこんなに執拗に追ってくるのよぉ!!!」
「わっかんねぇ!でも危ないぜこの状況!!!」
「ええ…!本当…一体どうして……!!」
「えっほ、えっほ」
現在、アイナから南に進んだ場所に存在する森へ例の特産キノコ狩りにきた4人はとあるモンスターに小一時間追いかけ回されていた。
ちなみに、この森の名は
目撃情報から推測される主な生息モンスターは、有名所で言えばイャンクックやリオレウスなどが代表的だが、他にも様々なモンスターが集まる場所だ。
そして、今4人を怒りの形相で追いかけ回しているモンスターは…。
「おい!また火吐くぞ!避けろッ!!」
「また!?もうっ!毒といい炎といい……何で“リオレイア”にここまで追われなきゃいけないのよーーーーーッッ!!!!」
「えっほっほ」
そんな訳でリオレイアであります。
先に名前が上がったリオレウスを雄個体だとすると、このリオレイアは雌個体でありリオレウスの番だ。
本来ならCランクに上がる為の試験モンスターレベルの存在だが、その生息地は広く割と何処にでもいる。(流石に極寒の地にはいない)
リオレイアは通称「大地の女王」と呼ばれており、夫である「空の王者」リオレウスとは違って陸戦が基本である…が、勿論夫同様に空中戦も問題なくこなせてしまう。
「もしかしたら、彼女の縄張りに入ってしまったのかもしれないわ!このまま森を下れば…!」
「残念だったなチサ!もう麓だぜ!」
「えっほー」
中腹でキノコを狩り倒した4人はキャンプに一度戻り納品アイルーに物を届けようとしていた時に、何故かリオレイアが突如として現れ怒り狂ったように追いかけてきたのだ。
ここでまた説明が入るが、納品アイルーとは採取クエストにのみ同行するサポート役のことだ。普段はキャンプから動くことはなくハンターから依頼の品を受け取ればそのままギルドまで向かい報告するのが仕事だ。赤箱みたいなもんである。
「誰かリオレイアの巣でも刺激したんじゃないの!?さっきそれっぽい巣があったでしょ!!」
「あったけど近づいてすらないぜ!こんな風に追われたくなかったからな!」
「結局追われてるのよねぇ…!アーシャちゃん、どうする!?」
「そうねぇ…!!」
「えっほっほっほ」
「……ていうか、あなたはさっきから何をえっほえっほ言ってんの!?随分余裕ね!?」
最後尾を走るミラの緊張感のなさ(いつも通り)に青筋を浮かべながらアーシャはチラリと後ろを見た。
「えっへへ、見て下さい!キノコだけじゃ足りないかと思って……じゃん!!おっきなタマゴ!取ってきました!!」
「あ、あああああああなたたたたたた…っ!そ、そそそれ!!」
“おっきなタマゴ”とか能天気に答えるミラを見て、アーシャは戦慄した。先頭を走るアーシャの顔色が蒼白に染まった事に残った2人は全てを察したのだった…。
「それにしても、リオレイアしつこいですねー!」
「あ・な・た・の!!!!!持ってる
アーシャの絶叫が森中に響き渡る。
彼女が言う通り、ミラが腕に抱き抱えている『飛竜の卵』が全ての原因であった。
その理由はリオレイアの生態に隠されている。基本外に出て食料を集めるのは夫の役目だが、その間の巣の警備はリオレイアの担当なのだ。
…つまり、ミラが巣からウキウキ気分で手に入れてきた『そいつ』を取り戻そうと母親がブチ切れているのである。
「捨てちまえよ!そったら追ってこねぇだろ!」
「ダメよヒビキ!そんな事をしたらリオレイアの怒りが治らないわ!そっと、そっと卵を置くのよ!!」
「そんな時間どこにあるのよぉ!!もう終わりじゃないの!ミラのバカぁ!」
最早半泣きアーシャになってしまった。追ってくる理由は分かったけど、解決法が見当たらないのだから仕方ない。ガン泣きしないだけ彼女の心は強いのだ、強く生きろ。
「え?それって私がみんなから離れれば大丈夫なんじゃ?」
「ば、バカ言わないで!確かにあなたはバカでアホで一回そいつに食べられた方がいいかもしれないけど、本当に死ぬわよ!?ドスランポスとは格が違うんだから!!」
「ドスランポスもリオレイアも、私からすれば同じ雑多ですよ!じゃ!」
「あっ、ミラちゃん!」
「あのバカ…ッ!!」
卵を持ったまま道を逸れ、リオレイアもミラを追っていく。
残された3人はミラの能天気さに呆れながらも放ってはおけないと頷き合ってミラの走った方へ向かったのだった。
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