異種族レビュアーになろう (卯月風流)
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1話 なろう主イン異種族レビュアーズ

「オナニーすると死ぬよ♪」

「は?」

 

 ニッコリと極上の笑顔で微笑む女神の姿。そしてその美麗な口から放たれた死の宣告。

 死の宣告と同時にぐにゃりと歪み始める美の化身の姿に白く明らみ始める世界。

 

「うわぁあっ!!」

 

 自分すらも歪んでしまったかのような感覚に焦りながら飛び起きると、そこはベッドの上。

 もう随分と見慣れた使い慣れた宿の風景に、今さっき見ていたものが夢であることをようやく理解できた。

 

 窓から差し込んでくる朝日に耳に入ってくる鳥のさえずり。

 朝らしく、しっかりと朝勃ちしている下半身も視界に入り大きくため息を漏らしながら、再度ベッドに横たわる。

 

「は~……でもアレ現実なんだよなぁ……」

 

 俺の名はブレイク。

 

 元は日本生まれ日本育ちの生粋の一般人だったのだが、よくある異世界転生に巻き込まれて今は異世界に居る。

 異世界転生の際に女神から名前も与えられ、元の名を捨てて今は『ブレイク』として生きているのだ。なお苗字まで貰った。テクノってな。いらないから名乗ってない。

 

 俺に名前をくれた女神は寛大な女神だった……いや、というか結構適当な感じの女神だ。

 現代に生きる日本人らしく異世界転生に憧れのあった俺は、適当な女神なら案外無茶なこと言っても通るんじゃないかと邪推し、チャンスは逃せないとばかりに定番感のある『戦ったら大体勝てちゃうだろう系チート』を願ったついでに転生先を日本で読んでた異種族レビュアーズの漫画みたいなエロに寛容な世界に行きたいと願った。

 そうしたら、直感通り女神は適当だったようで「ん~、ほんとは一つしか聞けないけど、まぁいいよー♪」と、まるっと希望を叶えてくれたのだ。俺はこの時、女神を生涯敬い続ける事を誓った。

 

 ただ、いざ転生となった時に

 

「望みは一個が普通だから代償として呪いもかけておくねー♪ オナニー大好きだったっぽいから、オナニーしたら死ぬ呪いかけたから気を付けてねー♪」

 

 と宣《のたま》ってくれおったのだ。

 

 

 

 ちょっと待てと。

 

 俺がどれだけオナニーを好きか知らんのかと。

 1日最低1回はヌかないと体調を崩しかねないオナニストだと知らんのかと。

 調子がのれば朝昼晩で3回抜くオナニストであることを知らんのかと。

 ちゃんと毎回パンツが汚れないように、ちんことパンツの間にティッシュを挟む紳士オナニストであることを知らんのかと。

 敬いつつも、あんまりにもキレイだからコッソリ女神をオナペットにしようと決めたオナニストだと知らんのかと。

 

「ちょっ!」

「じゃーねー♪」

「ああああああっ!」

 

 こうして異世界に転生させられた俺は、女神信仰を失った。

 俺からオナニーを奪った女神。許すまじ。

 

「……でもまぁ、こっちの生活も慣れてきたし、今はちょっと感謝してるけどな。」

 

 気色の違う溜息を吐く。

 

 ぶっちゃけ二つの願いを叶えてもらえたおかげで、思ったほど苦労もしていないので最近は女神への感謝は復活しつつある。

 なにせ俺の種族は人間なのだが、女神の加護のおかげで勇者と同じような半神半人(デミゴッド)クラスの戦闘力がある。流石『戦ったら大体勝てちゃうだろう系チート』だ。地上最強と称されている勇者ともタメを張れるとなれば、魔王種・龍種・大精霊とだって戦って勝てる。それだけの戦闘力があれば食うに困ることは無い。困難な依頼もクリアし放題だ。

 

 もちろん勇者のような苦労はしたくないから、こっそり普通の人間として目立たないように生きていくけれどな。

 『力があるから戦う』なんてのはバカのすることだ。

 力があるのであれば、それを隠して有効活用しながら楽しく生きていけば良いのだ。周りに振り回される人生などクソ。自分を中心で考えて生きることこそが楽しい人生の第一歩。目指せパラダイスなのだから。

 

 そして金に困らなければサキュ嬢だって普通に買える。

 そう。サキュ嬢が相手をしてくれればオナニーをする必要もないのだ! オナニーしなくても良いのだっ!

 なにしろ性病も避妊も魔法陣でOKのナマし放題の世界。そしてサキュ嬢も豊富に存在する世界。もうオナニーする必要が無いのだ!

 そしてこの世界には格安の淫魔店だってあった!

 

「遠出する方法もあったしな。」

 

 1日1回は射しておかないと調子が狂う俺だから、ネックになるのは遠征など街から遠くに離れ、サキュ嬢のいない日を過ごさなくてはならないような事態だ。

 日帰りならまだしも片道3泊とかになったらオナニーしてしまって死ぬ未来が見える。

 

 というわけで街から遠出せずに金を稼がなきゃならなかった俺だが、これも街で過ごしているうちに普通に本物のサキュバスに搾り取られたりすれば数日間は性欲がムクムクしなくることが分かったし、冒険者兼業サキュ嬢と組んだりすることで遠征中もオナニーしなくて済む事が分かった。

 

 ぶっちゃけ最近は冒険者兼業サキュ嬢が俺の強さを仲間内に広めてくれたらしく「遠征するなら声かけてー」と立候補してくれる冒険者兼業サキュ嬢だっている程だ。

 強いパーティメンバーであれば一発ヤルくらいへーきという女が多くて助かる。

 

 そう! とうとう俺に弱点は無くなったのだ! 俺は弱点を克服したのだっ!

 

 

 

 ……と、思うだろ?

 

 

 あるんだよ弱点。

 

 

 あるんだよ……

 

 

 

 俺の弱点。

 それは『ハズレサキュ嬢』だ。

 

 

 俺はモンスター相手には無敵な自身はある。チートのおかげで魔王とだって戦える自信があるし多分勝てる。ドンと来いだ。

 

 だが、敵に対してどれだけ強くても、自己主張の弱い日本生まれということもあるのだろう、俺はこと味方に対しては対応が弱い。仲間とか嬢に対して強く当たるのは苦手なのだ。可哀想になってしまうのだ。可哀想なのはヌケない。

 なのでデリバリーサキュ嬢でも「チェンジ」の一言が言えない。

 

 こんな性質だから遠征の時に冒険者兼業サキュ嬢がハズレだったりとか考えるだけで最悪。

 オナニーの方が100倍マシと思える相手でも、しっかり相手をしなきゃいけない未来が透けて見える。オナニーしなくても良いかもしれないけど悩み過ぎてインポになる可能性がある気がしてならない。

 

 こんな俺だから『ハズレサキュ嬢』だけは、どうしても弱点なのだ。避けるべき鬼門なのだ。

 

「はぁ……」

 

 これまでと違った溜息を漏らしながら、漲っているテントを一瞥する。

 今日は朝一から元気が溢れている。調子が良すぎるようだ。

 早々になんとかしなくてはオナニーする危険がある。

 

「よぉしっ! レビューにあった有翼人淫魔店に向かってみることにするか!」

 

 俺は食酒亭のレビューを参考に、これからの行動指針を決めた。 



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2話 有翼人淫魔店を目指そう

 

「ふぅむ……」

 

 有翼人淫魔店へ向かうことを決めた俺は、朝飯とレビューの確認も兼ねて食酒亭に来ていた。

 レビューは写しを買って読み込んでいるので記憶にしっかりと残っているが、もう一度生原稿を確認して有翼人淫魔店への期待に胸踊らせる。

 

 あぁ、チュピィと甘い囀《さえず》りを聞きたい。『囀り』は本来、交尾を誘う鳥の鳴き声のことだったはずだから真の意味で囀りを聞きたいものだチュピィ。

 

「なんです?」

 

 キツイ視線と共に怒気を隠す気を感じさせないメイドリーちゃんの言葉。

 

「なんでもないです。すみません。いえ、違いました。あの、ミードください。」

 

 メイドリーちゃんの言葉の圧力に飲まれ特段飲みたくもない酒を注文してしまう。怒っている女の人ほど怖いものはない。

 

 有翼人淫魔店のレビューが出て以降というもの、メイドリーちゃんの機嫌は悪い。

 まぁレビューを読んだ男どもがメイドリーちゃんを嬲るような目で見ているのだから、この態度になっても仕方のないことだろう。

 なにせこの俺だって、つい見ちゃうんだもの。目で追っちゃう。性的な目で追っちゃう。羽の付け根いじりたくなっちゃう。つーか、むしろ有翼人のメイドリーちゃんをよく見ているからこそ有翼人淫魔店に行きたいと思ったんだし、なんていうか、もうじっくり眺めるのも、いた仕方あるまいて。

 

「はいどうぞ!」

「あじゃじゃじゃす。」

 

 なんとなく乱雑に置かれたミード。そして反動で揺れるたわわなおっぱい。プリプリしてるぷるぷるおっぱいを横目に見ながらミード代を払うとメイドリーちゃんは、すぐに離れていった。

 

「ふぅ……けしからん。」

 

 思わず額をぬぐい、ちみりと飲みたくもないミードを舐める。

 

「なぁにオドオドしてんだよブレイク。」

「おっ? って、なんだタイガか……いや、だってなんか怖かったんだよメイドリーさん。」

「カーッ! あんだけ戦えるクセに、ほんと情けねぇよなお前。」

「うるせぇよう。」

 

 遠巻きに様子を見ていただろう知り合いの虎獣人が声をかけてきた。

 声をかけてくれたのはタイガという名前の虎獣人だ。虎獣人はライオン獣人と近い存在で戦闘力は高い。俺が金目的の高難度の依頼をこなしている時に戦っているのを見ていたらしくソレ以来の縁だ。

 このタイガの中で俺はそこそこヤレるヤツと認識されているらしく気易く話のできる友人の一人と言ってよい。

 

 元日本人の俺が外国人どころではない程に気色の違う獣人という友達ができていることに違和感を覚えるかもしれないが、こっちの世界の住人達は友人の壁が驚く程に低いのだ。

 

 一緒に飲めば友達。一緒に戦えば友達。すぐに友達になれる。

 助け合いが必要になることの多い世界だからこそ、いざという時に助けてもらえるよう知り合いは多いに越したことが無いという考えからなのだろう。

 

 ただ友達の中でも『一緒に戦う』友達になるには其々が決めている一定のラインの強さを超えることを条件にしていることが多く、それ故に一緒に戦える友達は、普通の友達よりもランクが高めになりやすい。

 要は共闘しても良いと判断できる実力のある人間は、その他の有象無象の人間よりも重要な人間という利点重視のシビアな考えだ。

 

 中でもこと獣人においては、この『一緒に戦える友達』というのは中々重要な存在のようで、一度認めてもらえると、こうして向こうから構ってもらえる事も多く、シャイな俺としては助かっている。

 

「まぁ、あんなレビューが出てたら、そうなりもするわよね。ブレイクもねっとり絡むようなエロい目で見てるしさぁ。」

「えっ!? 俺そんな目してた!?」

「してたわよ。じゃなきゃメイドリーがあんな態度取るはずないでしょ?」

「まじか……」

 

 タイガの横から別の獣人が声をかけてくる。

 強い獣人であるタイガが声をかけてくるということは、暗にタイガに認められている程度に力量があるという宣伝にもなり、こうして他の種族が興味を持って話しかけてきたりもする。

 おかげで元来、自分からは行けないぼっち気質な俺でも交友の輪が広がりやすくて助かる。

 

 ちなみに今、話に入ってきたのはミノタウロスのメリッサ。女だ。何度か話をしたことがある友達の一人。

 乳牛系ではないミノタウロスだけれど、やっぱり大きなおっぱいが目を引く。

 うん。当然エロいと思っている。

 正直揉んでみたいし吸ってみたい。顔をうずめてみたいし挟んでみたい。

 

 そうだ。ちょうど良い。

 

「あ、そうだメリッサ。メリッサはさ遠出するとか街を離れる用事とかで仲間探してたりなんかしない?」

「え? アタイかい? ……あぁ、そういうことか。」

 

 メリッサがニヤリと口角の片方を上げた。

 

「ブレイク。あんたレビューの有翼人淫魔店に行こうとか思ってるんだね? で、その道中の相手にアタイをご指名ってことかい。」

「お、ん、おん。」

 

 あっという間にズバリと図星を突かれたことに、つい戸惑う。

 

「ははっ、あんたの噂は聞いてるからねぇ。1日1回はサキュ嬢と遊ぶし、街から出る時は同行する女と遊ぶ。同行する女は警戒も戦いもしなくても良いくらいに楽させてもらえるらしいけど、その代わりに1日1発は必ずヤられるってね。」

 

 あんまりな噂に苦笑いを浮かべずにはいられない。まぁ事実ではあるんだけれど。

 

「いやぁ、あはは。お恥ずかしながらどうにも旺盛なもんで……でも、アレですよ? 女性とは、あらかじめ条件の擦り合わせをしますし合意の無いことはしませんし、嫌がることはしたこともないですよ? それに危険は排除しつくした上で結界貼って安全をガッチリ確保した上でしてますんで、これまで危険な目にあったことのある人もいないですし、その辺も心配しないでください。と口で言っても、とても信じられないでしょうけど……ハハッ。」

 

 なんとなく笑ってごまかす。

 

 遠征中にヤルのはアホ。

 これは世界の常識なのだ。

 

 冒険の最中にせっせとオセッセに励むなど隙だらけだから襲ってくださいませと言っているようなものでしかない。

 安全圏じゃないところで腹出して寝るに等しい行為であり危険極まりないこと。それが冒険者の旅の中でのオセッセの認識だ。

 つまり旅の途中に予め淫行を条件付けるようなヤツなど旅をしたことも無いド素人か狂人のソレ。とてもじゃないけれどパーティを組むなど有り得ない対象となる。

 

 俺の場合はチートな強さがあるからこそ危険把握もできるし、万が一を考えて結界などのバリア対策もしているから、どんな淫行に及んでも問題は無いのだけれど、やはり世間一般の認識では常識離れした提案であり外聞も悪い。

 

 ただメリッサが噂を耳にしたように少しだけど実績を積んでいるから俺の実力は耳ざとい冒険者たちの耳には入っている。だけれど基本的にソロプレイかコンビプレイの多い俺なので事実の確認が難しく、依頼の結果しか分からないような半信半疑の宙ぶらりん状態なのだ。

 なのでメリッサの問答は『本当に本当?』的なカマかけのような意味もあったのだろう。

 

「あ。あと別に1発と言っても、お口でも手でもオッケーですし、それに1発じゃなくて2発でも3発でもオッケーなので。」

「あはは、そうかい。でもあたいは今のとこ街の外に出る予定はないよ。」

「そうですか……」

 

 乳牛系ではないミノタウロスのメリッサ。

 冒険者なので筋肉質だけど、だからこそ逆にサキュ嬢では味わえないような快感が味わえるんじゃないかという期待もあったのだ。筋肉を活かしたキッツキツなぎゅうぎゅう感を味わえるかもしれないと思ったけれど……残念だ。超エロいのに。

 

「俺もまぁまぁスケベな方だけどさぁ、ブレイクのスケベは筋金入りだよなぁ。」

「あ、俺、男の趣味はないからタイガは誘わないよ?」

「俺だっていらんわ悍《おぞ》ましいっ!」

 

 フォローの言葉を入れてくれたタイガを利用して場を和ませる方向に舵を切る。

 俺だって、そこそこ常識の無い事を言っている自覚はあるのだ。相手が乗り気じゃない変な話は、さっさと終わるに越したことはない。メリッサも空気を読んで笑ってくれたので、この話はおしまい。

 

「あ~あ……有翼人の淫魔店行きたいけど、しばらくは我慢かなぁこりゃあ。大人しく小金稼いでサキュ嬢に貢ぐかなぁ……」

「んー……そういえば、あっち方面に行こうとしてた子もいたような気がするわ。折角だから聞くだけ聞いてあげようか? アタイもあんたの噂がほんとか知りたい気もするし。」

「マジでっ!? おねがいしますメリッサ様ぁっ!」

 

 思いがけないメリッサの提案に瞬時にテーブルの上にジャンピング土下座をかます。

 

「ちょ、わ、分かった! 分かったからソレやめろぉ! えぇい! もう、ちょっと行ってくりゅ!」

 

 突然の土下座に、土下座され慣れてないことが伺い知れるような、どこか焦りを感じさせる語尾を残してメリッサは席を離れていった。

 大きな身体なのに慌てっぷりが可愛いらしい。

 

「ふっ……ちょろいぜメリッサ。」

 

 ジャンピング土下座を瞬時に解除して椅子に腰かけて足を組み、ミードを舐めながらニヒルな笑みを浮かべる。

 

「俺はお前が怖いよブレイク。」

 

 そんな俺の一連の動きを見ていたタイガが呟く。

 

「ん? そうか?」

「おう。その動きの早さだけじゃなく躊躇なしに土下座できるプライドの無さがな……んじゃ俺は行くぜ、またな。」

「おうまたー。」

 

 多少の呆れ顔を残してタイガも席を離れていった。

 朝だから、これから出かける予定もあるのだろう。

 

 また一人になったので多少距離のあるメイドリーちゃんの後ろ姿を舐めるように眺める。

 

 はてさて、なぜにメイド服ってのは、あんなにエッチなんだろうか?

 メイドという職業を感じさせるから淫靡なのだろうか?

 

 そしてメイド服と有翼人。

 うーん。籠の中の鳥ならず、メイド服にとらわれた鳥。

 主従的なアレの有翼人ってのも中々に良い物がある気がするなぁ。

 

 っていうか、膝から下が鳥っぽいだけでメイドリーちゃんの太もも。いつ見てもえっちです。

 メイド服から太ももがしっかりあれだけ見えるってのは、つまりパンツが見える可能性が高いってワケで。ちょっとふわりと羽ばたこうものならみえ、みえ、み、み、み

 

 

「お待たせっ!」

「ハァイっ!」

 

 突然かけられた声に驚き震え、その拍子にミードが少しこぼれた。

 慌てて視線を向けるとメリッサだった。

 

「なんだメリッサか。」

「なんだとはなんだよ。」

 

 だがメリッサの横に女の人の姿を捕らえ、すぐに態度を改める。

 

「んんっ! オホンっ! 失礼しました。思いのほか早かったからビックリして。」

「まぁ、この子達がすぐそこにいたから、ちょっと話してきただけだしね。」

「そっか。ありがとう。」

 

 メリッサの横の女の人達に目を向ける。

 

「この人が噂のブレイクかにゃ?」

「ふぅん? なんだか頼りなさそうに見えるけど……ほんとに大丈夫なの?」

 

 能天気そうなケモナー度レベル2のような人成分の多さを感じさせる白とグレーの毛の入り混じった猫獣人と、その肩に座って不安そうに訝し気な顔をしているフェアリーのコンビの姿。うむ。どちらも可愛い。抱ける。いや、抱きたい。いやいや抱かせてください。正直エロいです。ん? み、みえ、みえ? み、み……

 

 金髪と赤毛の中間のような髪色のフェアリーは肩が出ているワンピースのような服を着ており、そしてそのワンピースの丈はミニスカート。ミニスカートのまま肩に座っているとなれば、その奥のお召し物が見えそうで然るべき。

 だがしかしフェアリーサイズなので、よほど注視しなければ奥のお召し物を確認することは難しそうだ。

 

 そしてなにより不信感を感じているだろうっぽいフェアリーのミニスカートを注視して更に不安を増幅させるよりも、まずはその不安を解消しなくてはなるまい。

 名残惜しいが、お召し物の確認はまたの機会だ。

 

「初めましてブレイクと申します。この度は貴重な機会をいただき誠に有難うございます。」

 

 態度を改め、紳士に相応しい礼をする。

 日本生まれ日本育ちの変わり身の早さ、そして取り繕う為のその場しのぎの外面を舐めるなよ。

 

 メリッサ含め、突然の俺の態度に呆気に取られている3人を、まずはこっちのペースに乗せて話を進めるのだ。

 

「私のことはメリッサさんから多少お聞きのことかと存じます。そしてその内容に正気を疑ったことでしょう。ええ。その通りかと存じます。おかしいと思って当然ですとも。なにせ私の出している交換条件は1日1回の秘め事ですからね。湮魔店に行ってろって話ですよね。ですが事実なのです。私は移動の護衛や、クエストのお手伝い等々皆さまの要望に沿って様々なお手伝いをさせて頂きます。そしてその報酬は金銭ではなく1日1回の秘め事。もちろん『こげつき』のような難解なクエストや高難度高報酬クエストの場合には秘め事以外にも私の働きの貢献度によって多少の報酬の分配をいただくこともございますが基本的にはいただいておりません。そして今回、私は別の街への移動を考えており、その移動のついでにできそうな護衛やクエスト消化などなどのお手伝いをさせて頂ける方をさがしておりました。」

 

 ざっと流れるように多くの説明を一気に押し付ける。

 猫獣人は右から入った言葉が左からそのまま流れ出たような顔。

 フェアリーの方は、ちゃんと頭に止まっているような顔をしている。

 

 なるほど。この二人の関係性が少し見えたような気がする。

 

「その報酬の秘め事って具体的には?」

「はい。最低でも1日1回、私をイかせてください。それだけです。方法はおまかせしますが私をオナニー以外の方法でイかせてください。」

 

 フェアリーが少し首をひねる。

 

「セックスじゃなくても良いってこと?」

「えぇ。手でも口でも。なんなら触手でも構いません。ただ、私の好みは人間的ですので、あまり好みから外れるとイけないです。お二人であれば、もう好みドストライクなので、なんの心配もありませんが。」

「ふぅん。」

 

 思ったほど負担が無かったような少しは検討してみても良いかという顔のフェアリー。

 どうやら、まだ話を聞いてもらえそうだ。

 興味がなかったら、もうバッサリ『いらね』と切り捨てられてる頃合いだ。

 

「もちろん旅のさなかに事に及ぶのですから安全面の確認は最重要になりますし、そこに関しては一切の手抜きはしません。お望みとあらば周囲1キロ四方の範囲でモンスターの殲滅もしますし、防御結界に警戒網結界などなど、安心いただける為に尽力します。」

「1キロ四方のモンスターの殲滅ってバカなの?」

 

 思ったままの言葉がそのまま出たのだろう、横からメリッサが口を挟んだ。

 フェアリーもメリッサの言葉を聞き、自分の代わりに言ってくれたような顔をしている。

 

「そう思うのも当然でしょうね。どんだけモンスター倒す気だって話です。そんな実力あんのかって話です。ですのでまずは盲言ではなく実行できるだけの実力があるのか、どうぞ皆さんの思う方法で私を試してみてください。」

「んにゃ? 実力を試すのかにゃ?」

 

 ようやく猫獣人が会話に入ってきた。

 どうやら話の内容が分かりやすくなったらしい。

 

「はい。あなた方が望む方法で私を試していただき、それで私の実力を計ってください。例えば『単独でクエストをこなして依頼達成して来い』だとか私の実力を計れると思う事を仰って頂ければ私はソレで実力を示して安心できるとお伝えできるかと。あ。ただ依頼をこなす場合は報酬は私が単独でやるのですから私が独り占めしますし、あと日帰りでできる範囲でお願いします。長くかかりそうなものは純正サキュバス店を使えば2泊3日レベルまではなんとかなるので、その範囲でお願いします。」

 

 にこやかな営業スマイルを浮かべつつ説明を進めると、フェアリーが一層怪訝な顔になっていた。

 頭に浮かんでるのは何言ってんだこいつ。めんどくせ。だろう。

 

「実力を試す方法は、あなたがたが納得できるのであれば、なんでも良いですよ?」

 

 営業スマイルを強めると、やがてフェアリーは悪戯好きそうな笑みを浮かべる。

 

「ふぅん……それじゃあ手っ取り早く、とりあえず私たちと手合わせしてみてよ。キャットガールのミーニヤとフェアリーの私の2対1でさ。」

「それで納得いただけるのであれば喜んで。」

 

 予定通りの流れだ。

 

 実力を計ってくれと言われた冒険者は大抵の場合手合わせを望むことが多いのだ。

 脳筋冒険者らしい気がしないでもないが、自分の実力を指標にして相手を計る事ができるのだから間違いが少ない選択だとも思う。

 

「それじゃ、お時間があれば、これから街の外ででも試しますか? え~っと……」

「アヤワスカよ。私の名前はアヤワスカ。」

「素敵な名前ですね。アヤワスカさん。」

「フフっ、私達コンビを甘く見てるみたいだから思い知らせてあげるわ。」

「楽しみです。」

 

 さぁて、ニャン娘ちゃんと妖精ちゃんに俺の実力を見せつけてあげましょうとも。

 二人とのハスハスチャンスを手にする為にねっ!

 



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3話 猫獣人と妖精に戦闘力を示そう

 

「でもなんで、わざわざ街の外に?」

「街の外なら何か壊したりとかを気にしたり遠慮する必要もないですし、力をセーブせずに本気で来てもらえますからね。」

「むー、よゆーだにゃあ。」

 

 『アナタタチが本気で来たところで全然俺の相手にならないですよ~』と煽っているのが分かったのか猫獣人のミーニャが不満そうに呟いた。

 

「ふん。いいじゃないミーニャ。口だけだったらボッコボコにしちゃえばいいんだから。」

「うん! やったるにゃあ!」

「どうぞどうぞ。えーっと、この辺で良いかな? よいしょっと。」

 

 『できるもんならな(笑)』と露骨に煽りながら、懐から物を出す振りをしながらアイテムボックスから看板を出す。

 

「ん? 『手合わせ中です。訓練です。※決闘やケンカじゃないので通報しないでね。』って今どっから出した!?」

「いやぁ、ちゃんと分かるようにしておかないと通報されちゃうことがあるもんで。結構皆さん派手にやってくること多いですし。よいさー!」

 

 興味があったのか見物についてきたメリッサが、俺が出した看板に書いてある文字を読み上げながら問うてきたが、説明が面倒なので適当に流しながら看板を地面にぶっ刺し設置完了。

 

 警察とか法律とか意外としっかり整備されているので、こういった対応をしておくに越したことはない。

 ミーニャとアヤワスカに向き直ると、アヤワスカもヤル気になっているのか肩に座らず既に臨戦態勢のように空中に浮いている。

 

「さて道中も言いましたが手加減不要ですからね。後々『あの時は手加減してたから~』とか言い訳されるのも面倒ですし(あらかじ)め言っておきます。あとメリッサさん見物ならコレ渡しておきますね。」

 

 懐から紙を取り出してメリッサに渡す。

 

「ん? なになに……『私ブレイクは手合わせ中に大怪我をしても一切の責任はブレイク自身にあり、例え死んでしまっても問題にしないことをここに証明します』? なんだこれ?」

「『怪我させちゃうと思って~』とか言われることもあったので。本気で攻撃されて、もし怪我したとしても責任はこっちにあるって宣言書ですよ。メリッサさん見物されるようですし先に第三者に渡しておけば万が一、俺がほんとにケガしちゃったとしても、この優しそうなお二方が気に病まなくてすむでしょう? あ、でも安心してくださいね。俺はちゃんと手加減しますし、お二人に怪我なんてさせませんから。」

 

 小道具も使って煽りここに極まれる。

 

「流石にここまで舐められるとカチンとくるわねぇ。ねぇミーニャ」

「カチンときたにゃーっ!」

 

 特に獣人の場合、はじめから本気(フルスロットル)で来てもらうに越したことはない。その方が話が早いからな。

 

「はい。これで準備OKですね。じゃ始めましょうか。あ。もしかして俺が得物持ってないとか気になります? 特に必要ないので安心してくださいね。先手はお譲りしますよ。さぁどうぞどうぞ。」

「ブレイク……あんた煽り過ぎだよ。」

 

 メリッサが本気でカチンと来ているだろう二人の攻撃に備えてジリっと距離を取ったと同時にフェアリーのアヤワスカが魔力を練り始めているのが分かった。うむ。フェアリーもやる気満々。いや、殺る気満々といった感じだ。いい感じ。

 戦いの時は俺もスイッチが入るから女の人が怒気を孕んだ目をしていても、全く問題ない。むしろワクワクする。

 

 首を右に軽く倒すと、コキリとなった。

 

「さんざ余裕ぶって来たんだから、お言葉に甘えて本気で行くわよ。耐えられるもんなら耐えてみなさいな。」

「いっくにゃーっ!」

 

 二人の言葉を聞きながら首を逆に倒してコキリと鳴らしバランスを取る。どっちかだけだとスッキリしない気がするのだ。

 さて、妖精とキャットガール。

 セオリー通りの単純に考えるならフェアリーが補助魔法を使い、キャットガールが物理攻撃主体で攻める形で来るだろうが、はてさてどんなもんだろうかのう。

 

「あ、なんか言いました? すみません。ちょっと今朝、変な夢見たの思い出してました。」

 

 最終煽り完成。

 

 予想通りフェアリーのアヤワスカの表情がニッコリ怒り顔だ。

 

「くらえ! 幻影霧(ファントムミスト)!」

 

 アヤワスカの練っていた魔力が俺の周りに漂い、薄い霧のように変化する。

 霧はアヤワスカとミーニャの姿をダブらせ始め、やがて四方八方を二人に囲まれているような景色に変えていた。

 

「はーなるほどなー。」

「ふん。いつまで余裕ぶった顔してられるかしら。泥沼(スワンプ)!」

 

 さらに足元が泥沼状に変わり動きを制限される。

 やはりセオリー通りの戦いなのだろうが魔法の速度と効果をみるにアヤワスカの補助役としての力量は中々の物に思える。

 

 だがはて? 足元を変えるとミーニャの物理攻撃にも影響するのでは?

 

 そう思った瞬間、左後ろから俺の顔めがけ飛来した存在があり握って止める。

 

「は~……なるほどなー。ミーニャさんは物理かと思ったら魔法系統だったのか~。やられた~。ダガー持ってたから完全に騙されたー。」

 

 飛んできたものは魔法の矢だった。

 弓を持っている気配も無かったし完全にダガーか素手ごろの格闘家だと思ってしまっていた。先入観での決めつけはイカンな。

 そういえば猫の獣人は体術系と魔力系がいたから雑種っぽいけど多分魔力よりなのかもしれない。

 

 しかしきっちり頭を狙ってきてたから意外とミーニャさんの方が頭に来てたのかもしれない。完全に取りに来てた。命を。かなり本気だな。いい傾向だ。

 

「んにゃっ! なんで止められたにゃっ!?」

「いえいえ驚きましたよ~。」

「むぃー! 余裕しゃくしゃくにゃっ!」

 

 いくつもある幻影の中のミーニャの本体に向き直って手を振っておく。

 だが次の瞬間、また飛来する存在を感じ取り顔を向ける。

 

「ちょっ!?」

「はー。まさかアヤワスカさんが物理で来るとか意外でしたわ。なるほどな~。」

 

 目の前には突撃をしてきているアヤワスカの姿があった。仕込み杖だったのだろう剣となった杖での刺突。なにこの意外性の塊コンビ。

 まさか突撃途中でバレると思っていなかったのだろう驚いた表情をしていたので、ニッコリ笑顔を返しておく。

 

 ニッコリ笑顔が気に障ったのか、激高したように突撃速度を上げるアヤワスカ。

 そんなアヤワスカに対して、俺はノーガードで顔を差し出す。

 

「ふぇっ!?」

 

 だがアヤワスカの剣先は俺の顔に届くことはなかった。

 

 俺の顔から数センチの空中でゆっくりと止まる剣。

 アヤワスカは浮遊しながら、何度も刺突を繰り返すが、何度刺しても俺の顔に剣が届くことはなかった。

 

「おっと?」

「にゃっ!?」

 

 正面からミーニャが躊躇なく股間を蹴り上げてきたが、その蹴りもまた俺の股間に届くことはなかった。

 

「急所を的確に狙ってくる。うん。良い戦い方ですなぁ。」

「う~……にゃあっ!」

 

 がむしゃらな攻撃をしてくるミーニャとアヤワスカ。

 だが、二人の攻撃は俺に届かない。

 

「便利でしょう? コレが旅をしながら致す時に張る結界なんですよ。さらにこんなこともできます。」

「「 わわわわっ! 」」

 

 ミーニャとアヤワスカが見えない壁に押されるように離れてゆく。

 防御結界の範囲を広げているのだ。

 

「大体今は1.5m四方くらいの大きさになりましたかね? これ、攻撃されても魔王クラスの攻撃じゃなきゃ通らないだろうくらいには強いんですよ。外でする時は、この結界の中でするから安心できるんです。さぁどうぞ。好きなだけ結界の強度を確かめてください。」

 

 そう! これは冒険中に致しても大丈夫ですよ! と、本気で安心してもらう為の講習なのだ! 本気で攻撃してるのに全然効かない結界の中で致すのなら平気なのかも? と身をもって体験してもらう。コレぞ俺が行きついた相手と旅で致す事の出来るまでの最短説明ルートなのだ!

 

「あぁっ! 泥沼も解除されてるっ!」

「えぇ、結界内ですからね。魔法も弾きますから。ささ。好きなだけ結界を壊すチャレンジしてください。私はお二人の雄姿を眺めていますから。」

 

 雄姿を眺めると書いて、視姦ともいう。

 この世界の女性冒険者は、基本的に女性であることをしっかりと主張する装備や服装をしているので目に嬉しい。

 

 これは女性であるということを主張することで生き残る率が上がるということを理解していて、死地にあっても最大限生き抜く為の生存戦略だ。

 なにしろこの世界はモンスターもいるが、あらゆる種族がいて、その種族毎に犯罪者も多い。そういった犯罪者に『女性ですよ』と一目で分かる格好をしていれば相手の油断を誘ったり、万が一負けても死なずに済む可能性がある。死んだら終わりという世界だからこそ、生き残るために利用できるものは利用するという逞しい精神から生まれた格好なのだ。

 

「うーん素晴らしい。」

 

 ミーニャの揺れるおっぱい。

 そして尻。

 さらにアヤワスカのお召し物も確認できた。白だった。

 

「うぅ~……どうにもならないにゃあ……」

「結界の中に立てこもるとか卑怯よっ!」

 

 がっくりうなだれるミーニャに、プンスコ怒るアヤワスカ。

 さて視姦も十分堪能できたし、結界の強度の確認も充分に堪能してもらえたようだ。

 

「んじゃ防御力についてはなんとなく分かったと思うので結界消しますねー。」

「にゃっ!?」

「ひゃぁっ!?」

 

 よしかかっていた結界の壁が消え、よろめく二人。

 

「次は結界使わない純粋な体術、体捌(たいさば)きをお見せしますよ~。ほれカモーン。」

 

 クイクイと指を動かし挑発する。

 鬱憤が溜まっていたっぽいミーニャが即座に動き攻撃を仕掛けてきた。やはり獣人。フェアリーよりも血の気が多い。

 

「はっはっはっはっはっはっは」

「にゃーーー!!!」

 

 だが笑いながら全て躱す。

 

 アヤワスカも途中2,3回、隙を突くように攻撃してきたが余裕で躱したら攻撃してこなくなった。泥沼(スワンプ)をかけてきたりもしたけど逆に物理攻撃したミーニャが転びそうになったくらいしか影響はない。

 

「んに゛ゃーーーっ! 当たらないにゃあ~……」

 

 攻撃し疲れたのか、へろへろとアヤワスカの所に戻ってへたり込むミーニャ。

 

「それじゃあ次は、こっちの番ですね。よいしょ」

 

 体術のレベルも堪能してもらえたので、こっちの攻撃力を知ってもらう番だ。

 懐からナイフを出し、それをミーニャに手渡す。

 

「そのナイフ安物ですけど、ちゃんとナイフですよね。確認してください。」

 

 手渡されたミーニャは首を傾げながらも刃を見たり、峰をつまんで曲がるか試したり地面に刺してみたりして強度を確かめ、コクリと頷いた。 

 

「さ。それ俺に投げてください。」

「にゃぅっ!」

 

 流石冒険者。

 大した疑問を抱く様子も、躊躇もなく俺に向けてナイフを投げてくれおった。

 弓のスキルの影響か、スローイングもご丁寧に刃が俺に刺さるように一直線に。

 

 俺は飛んできたナイフを手刀で真っ二つに切り落とし、切り落とした姿の残像を残して二人の横に立つ。

 

「ふぇ!?」

「に゛ゃっ!?」

「とまぁ、ナイフ程度なら素手でも切れちゃったりするワケです。」

 

 ミーニャの首を後ろからつまみ、アヤワスカの胴をそっと握りながら言葉を発する。

 つまり、今、やる気があったら、二人の命を取れたことを暗に伝えたのだ。

 

 すぐに手を放して1歩下がると、アヤワスカは警戒するように身構え、ミーニャは身を小さくして尻尾を股の間に挟み込んだ。

 

「どうです? なんとなく俺の力量は分かっていただけました?」

 

 2人は小さく頷いた。

 








3話はただの俺tueee紹介だったのう……


はよえろ。の声が聞こえる気がしゅりゅ。



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4話 旅の計画をたてよう

 手合わせを終え、猫獣人のミーニャとフェアリーのアヤワスカの二人に俺の実力は充分認められ、無事にパーティを組むことになった。

 街へ戻りながら聞いた話では、どうやら2人は単純に街から街への移動を考えていたらしく、ただ移動するのももったいないから何かお手頃な儲け話なんかが無いか探していたらしい。

 なお、ミノタウロスのメリッサは俺の強さを確認できたことに満足したようで「またね」と離れていったので現在は3人で食酒亭に移動して、どう儲けるかの話を練っている。

 

「結局、運搬依頼を受けて移動するってとこに落ち着くのかなぁ?」

「そうね。護衛依頼は面倒だし商隊とかになると主導権も自由も少ないし……それが一番面倒が少ない形で利益が出そうに思うわ。」

「考える仕事は任せるにゃあん。」

 

 ミーニャがアヤワスカに持たされていた有翼人淫魔店のある街までの道のりを記した地図をテーブルに広げるという大仕事をした後、主にアヤワスカと二人でプランを練っている。日本では『段取り八分』なんていうが、やはり事前の準備は世界が変わっても重要だ。備えあれば憂いなし。しっかりとした計画は成果に大きく影響する。

 尚、アヤワスカは俺の肩に座っていて、ミーニャは逆隣の席に座ってだらだらしながらも時々、気の付いたように俺に身体を擦りつけてきている。

 

 あまりに二人の態度が最初と変わり過ぎている気もするが、こういう変化の仕方には正直もう慣れた。

 この世界の女性は現金なのだ。否、現実主義なのだ。

 『自分の役に立つ』と判断できた男を自分の近くに置いておく為の工夫は惜しまないし、自分自身の持つ魅力も理解している。さらに男の鈍感さも、よくよく理解しているからこそ二人とも分かりやすく親愛の情を露にしているのだ。

 『好き好き』とされて嫌がる男はいない。大抵『俺もしゅき♪』になるのが常。世の真理。

 

 女性に比べ男があまりに単純すぎる思考ではあるが、単純な思考をしている方が楽しいのだから何も問題はない。シンプルイズベスト。

 いや……よくよく考えれば女もシンプルな思考をしているともいえるのかもしれない。男も良い女を振り向かせるために頑張るのだから、そこに差などない。つまり俺が良い男認定されたというだけのことなのだ。うははは。

 

 ミーニャが、また思い出したように俺の腕に頬を擦り付けてきた。うむ、可愛い。

 猫の擦りつけは『これは私の』と主張するマーキングの意味があるらしいが、好かれていると感じられるから、そういった主張をされても構わない。

 戦いに身を置く女の獣人は本能的に強い男を好きになりやすい傾向があるから、ミーニャがマーキングしてくるのは『俺が強いオスである』とアピールされている気にもなる。故にまったく悪い気はせぬのだよ。ぬはははは。

 

「となると何を運ぶかだよなぁ。」

「問題はそこなのよね。」

 

 浮かれる内心を表に出さず話を進める。

 のんきなミーニャと比べ、俺の肩に腰かけて凛々しげなアヤワスカ。本人は普通に話しているのだろうが言葉が放たれる位置が位置だけに、いちいち耳元で囁かれるようなフェアリーボイスが気持ちいい。流石妖精。パンツ見たい。

 

 さてさて、3人組としてパーティを組んで一緒に移動することになった俺たちだが、地図を見る限り目的地までの移動時間は片道5日程度かかるくらいの長い道のりがある。

 これだけの移動距離となると普通であれば儲けたい気持ちと、あまり大きなリスクを背負いたくない気持ちのせめぎ合いが起きたりもして計画を立てることに苦労する。

 

 なにせこの世界では基本的にケンタウロスや飛行種、魔法を使わない限りは自分の足を使った徒歩での移動が多いのだ。

 ミーニャとアヤワスカの二人も今回は徒歩での移動に賛成している。というのもミーニャは獣人だから体力に自信があるし、アヤワスカはフェアリーだからミーニャか俺の肩に止まって移動するつもりだからフィジカル面での問題がまるでないのだ。それにわざわざ金を払ってまでして移動したくもない。

 

 冒険者は何かと金が要ることが多いから節約できるところは節約するという意向が強く、今回の移動では既に徒歩は決定している。無料は強い。

 もちろん俺も無駄金は使いたくないし、それになにより移動にかかった日数の分だけ二人と良い思いができるのだから、むしろ徒歩意外の移動を提案されたら知識をフル動員して反対していたところだ。

 

 さて、そんな無料で脳筋オススメの徒歩での移動だが金はかからない代わりに時間はかかる。

 移動に時間がかかるということは、モンスターや犯罪者、盗賊なんかに狙われるリスクが高まってしまうことになり、それゆえに運搬依頼を受ける話が出た場合でも普通はリスクを減らすため、可能な限り少量で済むような手紙なんかの運搬依頼を受けることが多い。

 なにせ大きな荷物を運搬していたりすれば手間がかかるだけでなく目立つ。目立つということは、それだけ狙われる可能性が増し危険度が増すことに繋がるのだ。『盗賊さーん! カモがネギしょってますよー!』状態を公開しまくるのだから当然だ。

 

「運べるだけ運びたいよな。」

「うん。ロバか馬を借りて荷台で運ぶくらいしたいわ。」

「いいね。ロバとかだったら足は遅いけど着いた先でも売り易いしな。その方向で考えるか。買う為の手持ちはどう? 無かったら俺出すけど。」

「あら、甘えさせてくれる男って素敵よブレイク。」

「んにゃ~ん。」

 

 またもスリっと擦りつけをしてきたのでミーニャの頭をなでる。ゴロゴロ音が聞こえてきて可愛さが増す。猫かわいがりしたい。もう色々撫でたい。愛撫したい。

 

 普通なら目立たないようにする移動だが、今回は敢えて目立っていく為の方法を考えている。

 目立つ荷物を運びながら、その運搬は男と女が一人ずつしかしていないように見せるのだ。なにせフェアリーのアヤワスカは小さいから遠目には確認しづらいからな。

 盗賊が目をつけて観察していれば護衛の男は毎日女とイチャつくような素人丸出し。こうなれば、もう『カモがネギ背負って鍋とコンロも持ってきましたー』状態にしか見えないことだろう。盗賊は罠を盛大に張るなり、ボーナスを逃さないようにがっつり襲いにくるはずだ。

 

 わざわざ盗賊に襲われたいなど普通の冒険者が考える事じゃないが、なにせ俺という存在が普通じゃない。

 

 つまり今回は移動するのが主目的だが、ついでに荷物の運搬で稼ぎ、さらに荷物と護衛の少なさを囮にして盗賊をやっつけて稼いじゃおうという一石三鳥を狙った案というワケだ。

 夜襲とかになっても俺はチート持ち。敵意で反応できるようになっているからなんの問題もない。賞金首さん。いらっしゃ~い! だ。

 

 

「んじゃ、どの運搬依頼を受けるかの詳細は現物の依頼を見ながら決めるとして、さぁ、一番大事な報酬の話をしないか? 俺の報酬の話を。」

「あらあら。」

 

 アヤワスカがクスっと笑った後、ふわりと地図の上に降り立った。どうやら顔を見ながら話すべき内容と解釈したようだ。

 妖精さんのおみ足。かわいらしいのう。かわいらしいのう。

 

「んにゃ? エッチな話するのかにゃ?」

「うんっ! エッチなお話しよ!」

 

 耳をパタパタと動かしながら、俺の腕に手を絡めながら爛々とした目を向けてくるミーニャ。

 発情期ではないのだろうが、獣人はエロに素直で可愛い。

 

「まぁ体裁とかの固い話からするけど、ここの法律上、売春は禁止されてる。だから身体を報酬にしてるとかの取引はあってはならないわけだ。なので俺達は恋人同士の関係で、アヤワスカとミーニャが受けた依頼を恋人である俺が手伝ったって(てい)で行こうと思うけど、まず、ここまでで問題あったりする?」

「フフっ、ないわよ。」

「ないにゃ。」

 

 そう。ここの法律上、売春は禁止されているのだ。

 売春とは『対価を目的に性交すること』を指すから『性交の対価として俺が力を貸す』というのは売春になってしまう。

 サキュ嬢が性交を売りにしてるのは、サキュバスの性質なので問題ない。だってサキュバスだもの。(みだ)らな事しないと死んじゃう。でも無料でサキュバスが男とエッチしまくりだと他の男女の関係はもちろん街の経済がおかしくなっちゃうからサキュバスとのエッチは金銭を絡めるのは最早当然の結果。サキュ嬢がエッチでお金を取るのは常識なのだ。うん。知らんけど。

 

 というわけで俺たちの場合は冒険者同士となるから恋人同士ってことにしておけば性交してても問題ない。

 別にここまで厳格にしておかなくてもとも言われることもあるが、なにごとも建前はしっかりとしておいた方が良いので、これは毎回確認していることだ。

 

「それじゃ移動する時は俺たちは恋人同士ってことで宜しく。」

「なんなら今からでも良いわよ?」

「ミーニャもにゃ。」

「おっ? うへへ、んじゃ今から恋人ってことで。やったぜ、美人の恋人二人もゲットした!」

 

 個人的に恋人って響きが嬉しいだけだったりもするが、やはり建前というのは重要なのだよ。うむ。

 俺の態度にクスクスと笑うアヤワスカと、腕に押し当てられているおっぱいの圧力が増したような気のするミーニャ。やあらかいれす。

 

「それじゃあ大事な恋人のお二人には、これだけはされたくないって事とか無いか聞いておきたいんだけど、なんかある?」

 

「まぁ私は見て分かる通りフェアリーだし、人間だとサイズ的に厳しい人が多いから多分挿入はNGだわ。」

「オッケー。まぁ流石に俺も無理だと思うわ。痛い思いとかさせたくないし。」

「ふふっ、優しい恋人で嬉しいわ。でも挿入がダメな分、全身ズリしてあ・げ・る。」

「ふほっ!」

 

 艶めかしい仕草で投げキスをしてくるアヤワスカ。

 正直それだけで、なんかもうちんこ勃っちゃう。

 全身ズリとか、もう期待に胸だけじゃなく色々ふくらんじゃう。

 

「あと魔法操作でローションプレイもできるわよ?」

「なにそれめっちゃ楽しみ!」

「あら、それじゃあ後のお楽しみね。」

 

 やだ。フェアリーったら。多才。

 

「んにゃー、ミーニャは特に何がダメとかないにゃ、けど舐めると痛いって言われたりするにゃ。」

「え? そうなの? ちょっと舌見せて。」

「んえ」

 

 俺に言われるままに口を開いて舌を伸ばしてくるミーニャ。

 口を開けてすぐに牙が目立つ当たり肉食系の獣人という気持ちになるが、それでも女の子が口を開いて見せるというのは、なんだかそれだけでえっちぃ気がしてくる。

 

「ん? ……あ~、なるほどなぁ。これで舐められると確かに痛そうだわ。」

 

 ミーニャの長い舌の上には細かな(とげ)のような物が並んでいた。

 

「んにゃー、これ便利なんだけどにゃあ」

 

 腕の毛をペロペロと舐めはじめるミーニャ。なるほど舌の棘がブラシのようになって毛を綺麗に整えている。

 

「って、ことはミーニャはお口では無理ってことか……手……も爪こえぇなぁ。」

 

 視線を動かし、ミーニャの身体を舐めるように探る。

 

「となると、もう普通にエッチするか、胸でしごいてもらうかって感じになりそうだけど、どっちなら良い?」

「エッチ!」

「よっしゃっ!」

 

 即答に即、喜ぶ。

 やった。俺はミーニャとヤって良いんだ。

 猫獣人らしくバックから突きまくってヒィヒィ言わせてやるぜ!

 

 あぁ、めちゃくちゃ楽しい旅になりそうだ。

 

 



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5話 日課に勤しもう

 

 最も重要な項目の擦り合わせを終え俺は期待に胸を膨らませる。

 ただ胸だけでなく、その相手をしてくれる予定の美女二人が目の前に居る為、股間もほんのりふっくらしてしまうのはご愛敬。

 

 うむ。もうだめだ。

 このふっくら感は危険信号だ。オナニーしたい欲求がうずいて仕方ない。

 

「なんかエロい話してたらムラムラしてきたから、ごめん、俺ちょっと淫魔店行ってくるわ。アヤワスカ。また午後イチに実際の運搬依頼を確認しながら、どれ受けるかとか、いつ出発するかとか詳細を決めような。それじゃ!」

 

 しゅたっと手を『ごめんね』ポーズに掲げ、爽やかな笑顔と共に女性にかけるべきではない言葉をかける。

 

 俺はオナニーをしたら死ぬ呪い持ちなのだ。そんな俺にとってのオナニーしたい欲求は自殺願望が生まれたに等しい。故にこの世界で生き残る為には少しでも性欲が疼いたら消化しておかなくてはならないのだ。俺はそんな過酷な宿命を背負っているのだから淫魔店に行っても仕方ない。オナニーをしたいと思ってしまったら既に事態は緊急事態だ。なにせ俺は死にたくはないのである。

 

 それに女性だからといって遠慮せずにストレートな言葉をかけるのは、今いる世界が人間やエルフ、様々な獣人だけでなく、妖精に妖怪、精霊に悪魔や天使、魔王に龍、半神など多種多様な種族に溢れている世界である影響が大きい。

 人種どころではなく、そもそもにして生まれ方からして違う種族が一緒に居る世界なのだから変にオブラートに包んだ言葉は誤解を生む可能性があるのだ。それ故に直球の言葉をかけるのは当然のこと。さらにパーティを組む以上、行き先を明確にしておくことは結構重要なことだ。

 

「ブレイク……アンタねぇ……」

 

 アヤワスカが俺の言葉に呆れを隠し切れないような隠すことを諦めたような顔になった。

 美人のそういった顔も素敵。ご馳走様です。でも言葉攻めはやめてね、俺の心はガラスのハートなの。

 

「とりあえずそういうことは、まず私達に聞いてみるなりしなさいよ。仮にも恋人になったでしょ?」

「……お?」

「そうにゃ!」

「お?」

 

 呆れ笑いのアヤワスカにプンスコミーニャ。

 

 この流れはアレか?

 もしかしなくてもアレなのか?

 

 俺の期待を隠さない目に気が付いたアヤワスカが顎に手を当てて考え始める。しばらく検討する素振りをした後、口を開いた。

 

「ミーニャはここんとこ避妊の魔法陣使ってなかったでしょ? だから今日は教会に行くなり、こっそり淫魔店にお願いするなりして使ってきなさいな。」

「うにゃ~……」

 

 『あ~そうだった……しょうがないなぁ』といわんばかりに、しょげながら目を閉じ机に突っ伏すミーニャ。

 女性冒険者にとって避妊は重要なことだ。ある意味死活問題と言ってもいい。

 そして俺は今の言葉からミーニャが『ここんとこご無沙汰である』ということを知れてウキウキが止まらない。あ。だめ。もう変なこと考えたらちんこ勃っちゃう。

 

「今日のブレイクの相手は私がすることにするわ。どうせ挿入できないだろうし。」

「マジで! ありがとうアヤワスカ!」

 

 アヤワスカからの有難い提案。こういう時は即、話に乗るに越したことはない。

 流れ的に「いいのっ!?」と言いたくなっても、折角その気になってくれているのだから「ありがとうっ!」と話を進めてゴリゴリ押すに越したことはないのだ。チャンスは逃がすな!

 

「いいのよ。ブレイクが頼りになることも分かったし、それに今までの話からだと旅の途中の相手はミーニャがずっとすることになりそうだしね。」

「あ~、そっか。盗賊に分かるようにイチャイチャするってなると必然的に俺とミーニャでイチャイチャすることになるのか。」

「んにゃん。」

 

 『いやん』と言いたかったのだろう。ミーニャのワクワク感を隠さない感じが可愛い。はぁ、ミーニャとも致したい。

 

「それに全身ズリしてあげるって約束しちゃったからね。旅の途中で全身ズリしたら後処理が面倒になっちゃうこともあるからシャワーの使える街に居る時の方が都合が良いわ。」

「そうなのかっ!」

 

 アヤワスカの言葉から漂う全身ズリ上級者の予感。

 フェアリー全身ズリ初体験の俺、フェアリーのご奉仕、楽しみ過ぎる。優しくしてね。あぁ、目の前に居るアヤワスカはいったいどんな世界を見せてくれるんだろう……あ。もうだめ。ちんこ勃ったわ。

 

「んにゃ~……ブレイクもうおっきくしてるにゃあ。」

「んぅんっ」

 

 ツンツンしてくるミーニャ。ダメよ。ここは酒場。それ以上はああん。

 アヤワスカも机の端に手をかけて俺の股間を眺めに来た。

 

「あら、やっぱりこのサイズだと私に挿入は無理そうね。旅に出ている間はミーニャが相手で決定。だから出発までの間は私が恋人として相手をしてあげるわ。」

「有難うございますっ!」

 

 優し気な微笑みを浮かべ、天上の言葉をかけてくれるアヤワスカ。俺にはアヤワスカが、フェアリーじゃなくて天使に見えた。

 思わず手を合わせて日本式に拝んでおく。

 

「恋人だから淫魔店よりは安くしてあげるからね。」

「……んっ?」

 

 不穏な言葉に目を開くと、右手の人差し指と親指をくっつけて円を作りウィンクをしているアヤワスカの姿があった。

 

 さすが妖精。悪戯好きさんめ。

 

 

 でも話が早くて助かりますっ!

 

 

 



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6話 フェアリーと致したい

初っ端エロがフェアリーってどうなん? 話の流れでこうなったけど……ねぇ……これってどうなん?




 俺がサキュ嬢に相手をお願いしなくても良いことになったので、淫魔店直行の予定を変更し食酒亭で昼飯を食った後、3人で運搬依頼の内容を確認しに行き、ちょうど良さそうな依頼のリストアップを行った。

 もちろん頭を使うのは俺とアヤワスカでミーニャは、とりあえず頷く感じだ。

 

 ある程度受けられる依頼も固まったので、荷車やロバ、旅の最中の食事なんかの必需品なんかも3人で物色してまわると、かなり都合よく物が揃いそうな感じだったので支払いを済ませ運搬依頼も受注しておくことになった。

 荷車やロバ、品物の引き取りと荷受けは明日まとめて行って、そのまま出立しようという話にまとまったのだ。

 

 ミーニャとアヤワスカの二人は、動くと決めたら、さっさと動くし、臨機応変に対応もしてくれて決断も行動も早い。かなり良い冒険者コンビだと思う。

 

 こうしてある程度の段取りと準備を終えると、さすがに夜も近づいてきており、俺との旅に備えて避妊の処理を受けに行くためミーニャと別れた。

 このままミーニャはアヤワスカと一緒に使っていた宿に戻って一人で泊まり、明日チェックアウトを済ませてから食酒亭で合流する。

 

 つまり今日は、今晩は、アヤワスカが俺の部屋に泊まるということだ。

 

 俺のおちんちんも限界が近づいていたから、テイクアウトの食べ物買ってすぐにアヤワスカを部屋に連れ込んで今に至るのだが、ぶっちゃけ、いつも使っている部屋に女がいるというシュチュエーションだけで、ちんこいきり勃ってしまう。

 

「で? 二人きりになったけど……どうする? 買ってきた食べ物食べる?」

「致したぁいっ!」

 

 んなもん決まってるだろがい。

 食っとる場合か?

 

「んもう、ソレは構わないけど……ホラ、こっちは?」

 

 アヤワスカがまた右手の親指と人差し指で丸を作った。

 

「お値段次第でサービス内容変わっちゃうかもね?」

「ふむっ!」

 

 アヤワスカの言葉を理解した俺の頭。高速思考の煌めきが増し処理速度が普段の倍以上に加速する。尚、俺の思考は加速後でも一般人の範疇に当てはまるだろうがそこ気にしない。

 

 さて、何の気なしに放たれたアヤワスカの言葉ではあるが、ここで俺が提示する金額というのはかなり重要だ。なにしろ今おかれているシュチュエーション的に、単純に性サービスに対して幾ら払うとかそういうことではない。性サービス料だけでなく『俺から見たアヤワスカの魅力に対する値段』を加算ということになる。淫魔店で指名料プラスみたいなものだ。

 パーティを組んでいる&恋人という事で多少の割引感は許されるだろうが、もしアヤワスカが『低い』と感じる金額を提示してしまった場合、サービスの内容だけでなく俺とアヤワスカの今後の関係においても、あまり嬉しい事はない。中々の難題だ。

 思考をまとめ算定の為に目の前に居るアヤワスカをじっと見つめる。

 

 クスっと笑うアヤワスカの姿。

 

 うむ。アヤワスカは可愛い。元々フェアリーという種族は可愛い種族ではあるけれど、そんなフェアリーにしてはツンツン系&プライド高め系の香りを感じる顔立ちと性格をしていて個性的だ。自分に自信を持っている系の雰囲気もあるし、おおよそ自分につけられるだろう価値についても一家言もっているからこそ、こうして問うているに違いあるまい。

 となればとにもかくにも『安い』と感じられるだろう値付けだけは絶対に避けねばならない。それに、おべっか的な『高い』もあまりよくないだろう。高くつければ心象はよくなるだろうが、色々侮られることになる可能性が高いし、何より、もし全身ズリが最高に気持ちよかった場合、もう一度頼む時に、その高い金が基準になってしまう。それはいけない。いただけない。

 

 ここまで考え、脳裏に浮かぶはこの街の淫魔店のお値段。

 

 『エルフのおやど』エルフの淫魔店が基本料金は60分で3,000G。

 猫獣人の『ニャンニャン天国』は40分コースで3,000G~、60分コースになると5,000Gとお高め。

 最安値だと下級淫魔詰め合わせの店が時間無制限500Gで滅茶苦茶安いが、1,500Gで2時間は楽しめる純粋サキュバスのサキュバスタワーがあるから、なんか怖い下級淫魔使うくらいならサキュバスタワーに行く。

 つまり、この街のサキュ嬢の最安値は1,500Gだ。

 確かフェアリー専門の店もあったように思うし、そこの値段を覚えていれば同じフェアリーのアヤワスカの値段にも見当がつくのだけれど、正直淫魔店に行くときは人型の大きさの方にばかり興味が向くから覚えてない。迂闊だった。だが、今ある情報でなんとかせねばなるまいて。

 

 恋人割引として安くしてもらえたとして、サキュ嬢のサービスの最低料金の1,500Gをサービス料に……そこに指名料をプラスしたと仮定したらアヤワスカのサービスの適正価格は2,000~2,500Gが妥当な値段のように結論付けられる気がする。

 

 だが、アヤワスカはサキュ嬢ではない。冒険者だ。

 サキュ嬢ならサービスしてくれて当然となるが、冒険者がサービスとなると、そこには見えない価値が存在する。プライスレスな価値がある。

 となれば3,000G……俺がサキュ嬢エルフを抱く金額と同額程度の値付けに落ち着く事になりそうだ。

 

 『3,000G』という金額が頭の中で決定し、その状態で再度アヤワスカを見つめる。

 

 アヤワスカは俺がじっくり考えている様子を眺めていたようで、ある程度金額を定めただろう俺の視線に気づくと、空中でポールもないのにポールダンスのようにクルクルと踊り、ミニスカートを艶めかしく持ち上げて太ももを露にしたり腕を寄せて胸を強調したりとセクシーアピールダンスを繰り広げた。

 

「うん。もう5,000Gでも出すわ!」

 

 思考停止した。

 

 だって踊るのがセクシーやったんや。仕方ないんや。

 

「あはははは! もう冗談よブレイク……一応恋人なんだしお金なんて取らないわよ。でも悪い気はしないものね。」

「えっ?」

 

 そう言ってクスリと笑い、俺に近づいて、その小さな唇でチュっと頬にキスをしてくれた。

 

「良い気分にさせてくれたお礼に気持ちよくしてあげるね。」

「ハァン!」

 

 フェアリーボイスなセクシー淫語。意外と攻撃力高いのね。なんか物凄いゾクっとする。

 

 変な声が漏れてしまったがアヤワスカがやる気になってくれた以上、やることは決まっている。

 

「よろしくおねがいしゃあす!」

 

 チートも真っ青の速度でズボンとパンツを脱ぎ去る。すると抑圧されていた俺の聖剣ちんこがブルンと天を突いた。もちろん両手を腰に当て、ちんこの扱いは任せるというバッチコイの体制。さぁ好きにしてくれて良いのだよ。

 

「わぁ……やっぱり人間って大きいわよね。」

 

 ふよふよと空中を漂い、俺のちんこに近づくアヤワスカ。

 ちなみに俺のちんこの大きさは15センチ程。大きさを誇れるでもなく、かなり一般的な日本人サイズだと思っている。

 

 この世界には本当に多種多様な種族がいるから、いちいちちんこの大きさで競い合う必要が無くサイズを気にする必要がない。なにせ人間の中でどれだけでかかろうが、オーガとかサイクロプスとかのデカチン持ち種族から見れば所詮つまようじ扱いされるし、ハーフリングやフェアリーなんかから見れば人間のサイズはデカチンになる。

 もちろんオーガで人間並みのサイズのヤツが居たりもするらしいし、ハーフリングで人間よりデカイのもいるらしいが、この世界でちんこの大きさを競うなどアホらしいことでしかない。

 上には上がいるし、下には下がいる。それに各サイズを気に入ってくれるサキュ嬢だっているのだ。

 

 ちんこは大きさを競う物じゃない。女を喜ばせる為にのみ存在するのだ。

 

「見て? 私の足とおんなじくらいあるよ。」

 

 楽しそうにちんこの隣でミニスカートをめくって足を並べて見せるアヤワスカ。パンツ見えてます。有難い。

 

「うん。やっぱりこの大きさは挿入無理だわ。」

「ハァン!」

 

 そう。ちんこの大きさで争うなど、むなしい事。

 ちんこが人間サイズだからこそフェアリーには挿入できない。そんな悲しさもあるのだから。

 

 やはり男たるもの出せるのであれば膣内で出したい。これは本能なのだ。

 

「ふふっ、ガッカリしないの。」

 

 しょんぼりと少し落ち込んだちんこの様子を見て、アヤワスカは俺のちんこの上にまたがって座った。そしてワンピースを脱ぎはじめる。

 もぞもぞと動く感触と、服を脱いでいる様子を真上から眺めていると、俺のちんこの落ち込みはあっという間に消えた。

 

 ただ、ちんこは元気になったけれど、なんとなくちんこの上に座ったフェアリーという存在にどうしたら良いか分からないような気分にもなる。

 

「やぁん♪」

 

 とりあえず変な気分になったのでワンピースを脱いでノーブラだったことが分かったアヤワスカのおっぱいを両手の人差し指でツンツンしてみたら、なかなか良い反応が返ってくる。

 

 アヤワスカの体は頭の先から足の先までで30センチくらいはありそうな大きさ。横に広がる羽の存在があるから結構大きく見えるが、やはりちんこの挿入は無理そうな大きさに思える。

 だがおっぱいをツンツンしてみれば、フェアリーおっぱいは柔らかいんだなぁとわかるくらいにはおっぱい感を堪能できる大きさではある。うむ。これは中々。

 

「ねぇアヤワスカ。ちょっと身体いじらせてよ。」

「え~? どうしようかなぁ?」

 

 含みを持たせたような少し意地の悪そうな笑顔。

 俺にはわかる。この顔はいじっていい顔だ。

 

「アヤワスカのその綺麗な身体をじっくり見たり触れてみたいんだよ。俺フェアリーの裸とか見たことないから。」

「もう仕方ないんだから♪」

 

 ちんこ跨りをやめて、目の前にふわりと浮かび上がるアヤワスカ。

 その姿はワンピースを脱ぎ捨てて既にパンツ一枚になっている。

 

 表情も少し色気を増したように見える。大人の女を感じさせつつ子供の無邪気さも残しているような、なんとも妖精らしい顔。うん。この顔を見れるだけで元気になるな。

 身体のバランスを見てもスタイルは非常によく、くびれのハッキリとしたメリハリのあるボディ。人間に例えるならD~Eカップはありそうなおっぱいを持った上でモデルも真っ青になるような体型、超ナイスバディと言っていいだろう。乳首の色もまさに桃色ファンタジー。 

 うむ。これは触りたくなって当然。

 

 目の前にあるフェアリーの肢体。こっそりと手を伸ばし指でお尻をサスサスと撫でると、アヤワスカは身をくねらせた。

 

「もうえっち。フェアリーの身体って繊細だから乱暴にしちゃダメなんだからね?」

「うんっ!」

 

 オッケーが出たのでベッドに飛びのり、枕をポンポンと叩く。

 フェアリーの身体を繊細にいじるとなれば枕の上に乗ってもらうのが一番いじりやすそうだからだ。アヤワスカも察して枕の上に腰かけた。そんなアワヤスカに顔を近づけ、まずはじっくりと身体の観察を始める。

 

 うむ。1/6サイズフィギュアって感じのサイズ感で実際どうなんだろうと思ってたけど、これはエロい。そう断言して良い。

 小さい身体をしているからこそ、どこをじっくり見ても、その他の部位も結構見える。つまりアヤワスカの表情が目に入ってしまう。嬲るような視線で観察しているだけで、アヤワスカの『見られてる』『見られちゃってる』という表情も一緒についてくるのだ。これは美味しい発見。

 おっぱいをツンツンしてみても結構おっぱい感があるし敏感に反応してくれるのが良い。なんとなくイケナイことしてる背徳感的な物もかなり感じるし、なかなか楽しくてクセになりそうだ。

 

「ひゃあっ!?」

 

 突然持ち上げられ驚きの声アヤワスカを手の平に乗せて口を近づける。すると、察したようにチュっと口を近づけてくれた。

 正直キスの感覚はサイズが違い過ぎて分からない。分からないが、なんか悪くない。

 

 ただ物足りないので舌を伸ばしてみる。

 するとアヤワスカは抱きかかえるようにしながら舌を愛撫してくれた。

 

 ふむ。新☆感☆覚☆

 

「ひゃあん! きゃははっ! くすぐった~い!」

 

 愛撫させ続けるのも悪いので、舌をねろんねろん動かしてアヤワスカの首やおっぱい、胴を舐めまわしてみる。

 舌で感じるフェアリーボディ。普段使わない筋肉を使ってる感がもの凄いけれど、これは指でツンツンいじるよりも良い。エロいことしてる感があっていいものだ。

 

「ひゃん! ぁん!」

 

 当然太ももも舐めて股の間もナメナメする。

 人間の舌技を。人間もそこそこ繊細な技能を持つのだということをフェアリーに見せつけてやらねばなるまい。

 パンツの上からアソコを舌でスリスリだ。

 

「んん~~……」

 

 素直に気持ちよさそうな声を上げるアヤワスカ。

 とりあえず全身ズリでイカせてもらうことになっているから、俺もアヤワスカをイかせねばなるまい。冒険者は対等なのだ!

 フェアリーの花蜜。おいしいれす。

 

「あっ、あっ、ちょ、んもうっ! ちょっと強い~。もう少し優しくして!」

「あ、ごめん。」

 

 思いのほかフェアリーボディ舐めに夢中になって力が入っていたようだ。

 この後、ちょうど良い感じの力加減を聞きながらイかせて、舌で充分にアヤワスカを味わった。

 

 うん。

 正直なところ、いじるのに慣れてくると、やっぱりサイズ的に物足りなさがある。

 

 そんなことを思ってしまう。

 慣れって怖い。

 

「はぁ~……もう、何考えてるか分かるんだからね。いいようにしてやられた分、お返しするんだから。ベッドに寝て! ブレイク。」

「お、おう。」

 

 俺に舐められまくってデロンデロンにされたアヤワスカが自信ありげに指示を出してきたので全てを任せることにして指示通り仰向けでベッドに横になる。

 

 飛んできたアヤワスカは俺の腹に足を軽く乗せ、ほぼ浮かんでいる状態で魔力を練り始めた。

 

「ふっふっふー、人間の喜びそうなこと、私知ってるんだからね? いくわよ! 幻影霧(ファントムミスト)!」

 

 手合わせの時に見せた幻影を見せる霧の魔法だ。

 あの時はミーニャとアヤワスカの姿が四方八方複数に見えるような幻影を見せられたが一体なにをしようというのか。

 

「どう?」

「おぉぉっ!?」

 

 なんと、なんということか。

 俺の目の前には、アヤワスカが人型サイズの大きさになっている幻影が映し出された。

 どうやら今の姿を幻影で拡大して目の前に映し出しているらしい。なにこれすごい。アヤワスカったら思った以上におっぱいぷるんぷるんやないか!

 

「その上で……こうよ!」

「おっほっ!」

 

 アヤワスカが太い柱に抱き着き、ポールダンスを始めた。

 もちろん俺のちんこが拡大されて太い柱になっているのだが、あ、コレ、あ、いい。結構いい! いや、あ、凄い!

 

 アヤワスカは魔法でとろみのあるローションを作り出し、ねっとりと温かいローションまみれの全身を使って俺のちんこを刺激し始めた。

 時に激しく抱き着き、時に優しく全身を擦りつけ、まさしくポールダンス。

 ポールダンスのポールって、ちんこのことだったんだ。知らなかった。

 

「どう? かなり固くなってきてるわよ?」

「あ~……見えてる姿と刺激が相まって、かなりキテる。正直イキそう。」

 

 俺の言葉にアヤワスカの目が光った。

 

「フフッ! ならここで私の奥の手も見せてあげるわ!」

 

 ちんこポールを抱きしめる力を強めながら、また魔力を練るアヤワスカ。

 魔力が練れたのかアヤワスカの頭の上にローションの塊が生まれた。

 ローションの塊はゆっくりと移動し、ちんこの先に触れる。

 

「あ、(ぬく)い。」

 

 ほんのりとした温かさを感じたチン先。

 その瞬間、温もりがあっという間にちんこ全体に広がってゆき、俺のちんこは温かいローションに包まれていた。

 

「いくわよ! フィニィッシュムーブ!」

「ふぉっ!?」

 

 アヤワスカはぬるま湯ローションに包まれた状態の俺のちんこで、またもポールダンスを始めた。

 だが、なんと今度はアヤワスカの動きに合わせて、ぬるま湯ローションも動き回るのだ。

 まるで洗濯機の中にローションを満たして洗濯機サイズのちんこを突っ込んだような、あぁ、またも新☆感☆覚っ!

 

「あっ、すごい! コレスゴイっ!」

「でしょうっ! さぁイキなさいっ! フェアリーにイかされちゃいなさぁい!」

「あぁああっ! 出る! デルデルデル!」

 

 目の前には裸でポールダンスする超美人フェアリーの映像。そしてその映像とリンクして刺激される俺のちんこ。

 そんな新しい快感の波に、俺は限界を迎えていた。

 

 

 脳に響くような一段と強い快感の波を感じると同時に思ったことが一つある。

 

 ……フェアリー。

 

 結構良い。




ちっちゃいフェアリーとエロとか、そんなんなんもできるわけ…………いや、結構できるな(真理に到達した目)



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7話 異種族レビュー:フェアリー(女冒険者)

 

 まずはじめに一言。

 フェアリーは挿入できなくても気持ちよくしてくれる。

 

 フェアリーといえば小柄な身体の種族だから人間サイズだと挿入が難しいと聞いていたし、正直なところ、どこまで気持ちよくなれるのかという不安はあった。

 ただ、今回相手をしてくれたフェアリーの冒険者Aちゃんは見た目は可愛いし、中々に素晴らしいプロポーションの持ち主。さらに、全身ズリとかローションプレイとか人間サイズ相手での得意な持ち技を(あらかじ)め教えてくれていたので、挿入できなくても最悪イケないことはないだろうという安心感もあり一戦お願いした。(※注1)

 

 一戦の詳細については、まず愛撫とかの触れ合いだが、やはりサイズ感の違いはどうしてもある。

 人間から見たフェアリーは言葉は悪いかもしれないが、やはりお人形さんのように思えので、お人形さん相手にイケナイことをしているような感覚になるのだ。だが、これがなんというか幼児化プレイのような、初めて女体を模した人形を見た時に感じた劣情を思い起こさせるというか、ちょっと背中がむず痒くなるような背徳感を感じるエッセンスになる気がしたので、そういったプレイが好きな者には嬉しい相手だろう。

 こっちが舌を伸ばすと舌にキスしてくれたり手で愛撫したりしてくれたりもするので、普通では味わえないような細かな快感も良い。新鮮だった。それに小柄な種族は敏感な子が多いんだと実感できるくらいに感度は良い。かなり良い。優しく刺激すると大きく反応してくれるから楽しい。ただイケナイお人形さん遊びをしている感覚がマシマシになる。

 

 さて、愛撫をしていれば、やはり男としては発射したくなる。が、やはりサイズの問題から挿入はできない。ここはどうしても萎えポイントだ。

 だが、それを察したAちゃんが『寝て』と言うので従って、どうイカせてくれるのかを観察したのだが……フェアリーの全身ズリはポールダンスだったよ。ナニをポールにしたポールダンス。股間でエロダンスが繰り広げられたんだ。細かな刺激がかなり気持ちよかった。

 ただ、どうしても強い刺激は少ないので、相当溜まってないと中々イケないヤツも多いんじゃないかとは少し思った。

 でも今回相手をしてくれた冒険者Aちゃんは人間の相手にも慣れていたようで、魔法を使っての視覚攻め(※注2)と、さらにローション魔法を使って刺激アップという合わせ技を繰り出してくれて、何の問題もなく気持ちよくイケた。

 サイズに対する知識を持っているフェアリーなら、十分に気持ちよくなれる相手だと思う。

 

 点数は10点満点で7点。

 

 疲れマラの時に完全受け身シチュエーションとか妄想したくなる娘。

 減点要素は、やはり自分で腰を振れないし攻めれないので体力が有り余ってしまう物足りなさが大きい。完全に受け身体質のヤツとか怪我してて療養中のヤツだったら9点くらいつけたくなるくらいには好ましい相手だと思う。

 

 

 あと余談ではあるが、イった後にAちゃんを見たら両手で鼻と口を守ってた。どっかで見たことある体勢だなと思ったら雪崩に巻き込まれる時の呼吸空間確保の体勢だと気づいた。

 Aちゃん曰く、ぶっかけられかたと、かけられたモノの質によっては命に関わることもあるらしい。今回俺から放たれたモノはAちゃんがローション魔法を駆使して受け止めてくれていたのだけど納得だ。人間サイズで考えて風呂桶いっぱいのネットリした粘着物質が顔にべったり張りついたら死ねるわな。

 フェアリー相手にイク時は、みんな気を付けよう。

 ぶっかけたい気持ちはわかるが、ぶっかけ窒息死なんて洒落にならないぞ。思いやり。大切。

 

 ※注1:恋人関係になった上でお願いしています。

 ※注2:攻撃や依存系ではありません。



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8話 出発しよう青寒の旅……否、青姦の旅に!

 アヤワスカが魔法操作でローション内にうまく閉じ込めた俺の精子を排水溝に流すついでに一緒にシャワーを浴びてスッキリし、まったりとテイクアウト飯を食ってからベッドでフェアリーボイスピロートークを繰り広げれば、あっという間に眠りに落ちていた。

 

 その日会ったばかりの冒険者に対して無警戒過ぎるが、俺はチート持ち。

 敵意を感じれば即時臨戦態勢になるので問題ない。安心なのだ。

 

 フェアリーボイス。心地よいスヤァ

 

「――おっ?」

 

 すっきり覚醒する目と頭。

 窓から差し込む朝日の具合から朝の早い時間であることを察する。今日悪夢を見なかったのは隣で妖精が眠っていることが大きいのかもしれない。

 

「おはよう。アヤワスカ……って、居やしねぇ。」

 

 ピロートークフェアリーどこ行った? アレは夢だったのか?

 机に目を向けると二人で食い散らかしたテイクアウトの残骸が目につき、やはり昨日はフェアリーのアヤワスカと致したのだと認識しなおす。

 

「おっ?」

『早く起きちゃってミーニャが心配だから見に行ってくる。朝ごはんに食酒亭で落ち合いましょ』

 

 残骸を利用した書置きを見つけ納得。

 

 今日は段取りではミーニャが一人でチェックアウトして合流する手はずになっていたが、昨日の打ち合わせの時や、その他の時のミーニャの態度を思えば、しっかり者のアヤワスカが心配になっても仕方ないように思えたからだ。

 

 とりあえず見せ金として机の上に置いておいた巾着財布の中身を確認するが減っていない。

 5,000Gの値をアヤワスカに付けたし2,000Gくらいは持ってくんじゃないかと思っていたのだが、無料で良いと言ってくれた言葉の通り金に手は付けなかったようだ。

 

 もし5,000G以上の額を持って行っていれば必要以上の信頼はしないし、2,500Gくらいまでなら様子見。そして今みたいに何も手を付けていないのは好印象だ。俺の中のアヤワスカの信頼度が、また一つ上がった。

 

 冒険の最中に『どこまで頼っていいか』そして『どこまで頼られて良いか』の指標となる信頼関係ってのは重要だ。

 

 基本的に戦いになれば無敵に近いチートを持つ俺だが、仲間同士の信頼というのは、まったく別物。『それはそれ。これはこれ』という奴だ。どれだけ強くても人間的に信頼できないヤツとは冒険はしたくないというのが当然の人情だろう。

 そしてこの信頼というのは些細なことの積み重ねが重要になるから、こうして小さな罠を作って、どこまで信用して良い相手か計っているのだ。

 

 もちろん俺が計っているように、アヤワスカ達も俺のことは計っているはずだろう。多分ミーニャではなく、頭の回るアヤワスカが先に俺の相手をしたことも、その一環のはずだ。むしろ、もし俺をどの程度信頼するかすら計っていないとしたら俺が逆に不安を覚えてしまい信頼度を下げるとも言える。

 今のところ二人は冒険者として、そこそこ信頼して良い感じだし、向こうもきっとそう思ってくれていると思う。

 

 ぼんやりとそんなことを考え、ひとつあくびをして身体も覚醒させる。酸素よ、身体を巡るがいい~。

 

「うっし! 歯ぁ磨いてクソしてチェックアウトすっかな!」

 

 食酒亭での二人の合流に向けて動き出すのだった。

 

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

 

「あ~、ブレイクにゃー。」

「あら? もう来てたの? おはよ。」

「おう、おはよう。美人の恋人が二人もできて、そんな恋人たちと初めての待ち合わせだっつーのに待たせるとかさ……そんなの男のすることじゃねぇだろう?」

 

 朝一の挨拶。

 いつでも恋人に対しては思いつくままに褒めて持ち上げるべし。

 

「意外とキザなこと言うのね。」

「似合わないにゃぁ~。」

「俺もそう思う……って、なんだ? ミーニャその恰好。」

「似合うかにゃ~?」

「似合う似合う! すっげぇ可愛い! けどなんでそんな村娘っぽい格好なんだ?」

 

 ミーニャは冒険者らしい格好ではなく、少し長めのひざ丈のスカートにブラウスとベストを羽織ったような、街のどこにでもいそうな普通の娘の格好をしていた。

 

「フフン♪ 昨日囮作戦話してたじゃない。これなら小さな村に帰る途中の娘に見えるでしょ?」

「あ~、なるほどな! 確かに見えるわ。」

「辺鄙な村の娘が街に出稼ぎに来て、ある程度稼げたからお土産いっぱい買って帰ることにした。護衛とかよくわかんないけど仲の良い男に頼めば何とかなるよね~……って感じの雰囲気を目指したのよ。」

「結構年季の入った中古の服を選んだから、ちゃんと着古した感じも出てるにゃん。」

「なるほどなー! 良い良い! ちゃんと村娘してる!」

 

 俺と並べば、素人の村娘が出稼ぎの帰路を甘く見通し、冒険者気取りの素人の男を適当に丸め込んだって感じに見える。

 なにせ俺も冒険者っぽい格好はしていても獲物らしい獲物も持ってないし、傍目にはイキってる感じの世間知らず素人冒険者っぽく見えないことも無いだろうからな。

 

 まぁ、俺の見た目が勝手に考慮されているのは、ここはひとつ飲み込もうじゃないか。

 別に? 別に構わんとも。だって、俺? 自分で? そういう風に演出してるんだし? ほんとだし?

 

 それになによりミーニャと村娘プレイで致せるのだ。この素晴らしさに比べ、俺の見た目が頼りないと思われていたことなど大した問題じゃない。

 

 それにこのコスプレも、俺の戦いにおける実力をしっかり把握して信頼しているからこそ盗賊を沢山釣ろうと二人が工夫してくれているのだからな。俺の弱そうな演出と実力を信頼しているからこその工夫なのだ。

 うん。なんだ。こう信頼されてしまうと、ちょっと興奮してくるな。

 

「ちょっとブレイク、なにもぞもぞしてんの?」

「おっとスマン。村娘コスプレがあんまりに可愛くてつい。」

「うにゃん。」

 

 すこしおっきした。

 

「昨日しっかりヌいてあげたのに、ほんとスケベね。」

「あれは気持ちよかった……ありがとなアヤワスカ。なんなら今からもう一回やってくれてもええんやで?」

「バカなこと言ってないで、ホラ、朝ご飯食べてさっさと準備して行くよ。」

「ちぇーっ」

 

 アヤワスカの指揮の下、俺たちは行動を開始した。

 と言ってもまずは朝飯なのだが。

 

 朝は大抵簡単なものが多く、バゲットをソーセージとチーズを齧りながら食い、時たま野菜をまるかじりするかスープか茶をすする程度の物で済ますことが多い。

 こういう定番的に決まった物であれば注文して出てくるまでも早いし用意する店も楽。それにボリュームも充分あるから腹も膨れて一日頑張れる。

 もちろん種族ごとに合った朝メシってのがあるから、それぞれお気に入りの店があるのだが、基本人型サイズで肉や野菜に抵抗がない種族の朝はこんな感じが多いように思う。

 

 なお、フェアリーのアヤワスカは果物を食ってた。さすフェ

 ちなみにフェアリーは、あんまり量を食えないからオヤツとか間食が大好きみたいだ。

 単純につまみ食いが悪戯っぽくて好きなだけかもしれんがな。

 

 朝メシを早々に終え、村娘コスプレのミーニャとフェアリーのアヤワスカと共に昨日購入手続きを進めておいた荷車や駄載獣となるロバを受け取った。

 俺もこっちの世界に来るまで知らなかったんだが、ロバは力強い。馬と比べても引けを取らないと思うくらいには役に立つ。買った荷車もロバに合った小型の物で万が一の際は俺でも引けるサイズの物にしてあるのだが、ロバってかなり賢こくて言うことも聞くから逃げられるような事はないだろう。なので、これくらいの荷車を引かせるのであればロバ一択だ。

 

「よーしよしよし♪」

 

 村娘コスプレの猫獣人ミーニャも可愛がってるくらいにはロバは可愛い。ビバロバ!

 餌も奮発して草だけじゃなく豆とか麦とか雑穀を用意しちゃう! 塩も用意しちゃう! だから頑張るんだぞう?

 

 荷車合体ロバの背に乗ったアヤワスカと手綱を引くミーニャに荷車の操作を任せ、俺は先行して運搬依頼を受けた荷物の引き受け処理に向かう。

 

 今、俺たちの居る街は色んな場所に行く際の拠点となるような利便性が高い街だ。火山地帯だって2~3日で行くことができるし他地域へも向かいやすい。つまり様々な物が集まるので運搬依頼に困ることはない。

 特に今回俺たちの向かう先は有翼人淫魔店『有翼人エルドリー』がある森林地帯。結構遠い位置にあるから運びにくい物は留まっているし、こげつきに似た状態になっている物もあるからガンガン受けられた。

 もちろん俺のこれまでの依頼達成の実績記録があるから多く引き受けられるんだがな。

 

 実績のないヤツが『いっぱい運びますよー! もっともっと!』って張り切って受けて、持ち逃げされたり盗賊に盗まれたら笑えないので任せない。だからこそ俺の実力は知らせなきゃいけない所には、きっちりある程度までは見せてあるんだよ。

 もちろんあり過ぎる実力から勧誘もされたけれど、所属したら規則だの諸々に縛られることになるし、それが嫌だからフリーでいるんだけどな。なにせ俺は1日1回は女と致さなくてはならないのだから!

 

「よっこいせ! ……っと。」

「ブレイクー、今積んだ箱は何?」

「あ~? どれどれ? キッチン用品みたいだな。目録チェックしといてくれ。」

「はーい。」

 

 とはいえ、今回の運搬依頼の荷物は基本的に安物が多い。何しろ金があるヤツは圧倒的機動力のケンタウロス輸送隊を使うし、大事なものは全部『速い! 強い! 高い!」のちゃんとした輸送隊に任せることになるからだ。

 

 つまり俺たちフリーの冒険者が運ぶのは『あまり金をかけず』『急がず』『運べそうなら運んで』という品物だらけ。今積んだキッチン用品なんかも『あったら便利だけど、わざわざ作るまでではない。でも並べればそこそこ売れる』とかそんな感じの商品なのだろう。

 だが、安物だって塵も積もれば山となる。荷車に引かせる量になれば一財産だ。高級品と違って気軽に売り捌き安いから盗賊も狙って損はないだろう。

 

 荷物を積みながら、これから向かう先を思い浮かべる。

 森林地帯。これから森林地帯に向かうのだ。とうとう有翼人の囀りを聞くことができるんだ!

 『有翼人エルドリー』も森の中にあるらしく、おおよそ街自体が、ほぼ森なんだろうな。

 住んでいる種族もこの街とは大分変わるんだろうし、多分、森好きなエルフやウッドエルフがいるんだろう。それに森好きな獣人も。アナウサギの獣人は居るんだろうか……マイコニドとかノームとかも多いんだろうな。コロポックルとかもいるのかな?

 うん。街に着いたら他の淫魔店も探して楽しもう。

 

 着いた先に思いをはせながら積み込みをしてたら、いつの間にか終わってた。

 一旦そのままロバと荷を預かってもらい昼飯を取ったら冒険の旅に出発だ。

 

 というわけで、この昼飯を食ったら、しばらくは携帯食とか簡易な食事になる。

 故に、この昼飯では街の有難みを噛みしめなくてはならない。

 

「ステーキとサラダ食べるにゃあ~!」

「私パンケーキ! フルーツとジャムたっぷり!」

「俺、唐揚げと揚げポテトとエール! あとキュウリの浅漬け!」

「あーっ! ミーニャもエールっ!」

「ちょっとあんた達ねぇ……いい加減にしなさいよ? これから依頼なのよ? メイドリーさぁん! 私も花蜜エール!」

 

 食は大事なのである。

 



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9話 冒険のはじまり

 

 この世界は、人間やエルフ、獣人に妖精、妖怪や精霊、悪魔に天使など。ありとあらゆる種族が共存している。

 多種多様な種族が存在する故に種族特性や個々の考えから俗世、社会といった共存の輪を離れ、己の利益の為にのみ生きる者も存在する。

 

 社会と関わらず利己的に動けば、その結果として行きつくところは盗賊などの『奪う者』になりやすい。

 

 『奪う者』となった彼、彼女たちにルールは通用しない。その時の気分次第で慈悲も無く、ただの衝動から戯れに命を奪うことだってある。

 

 もちろん社会ルールを守る側も、デコイ魔法を覚えたり集団を組むと言った方法で自衛のための行動を取るし、それだけではなく、より大きな戦力を用いて反撃して殲滅したり逮捕したりして対処している。

 殲滅されずに逮捕された『奪う者』は社会復帰できるように教育したりもしているらしいが、一度『奪う者』の立場に立った者は、その魅力に囚われ社会に戻ることを望まないこともある。その為、復帰の難しそうな者は死亡率の高い危険な仕事とかに従事させられたり、性転換薬を飲ませてサキュ嬢にして飼殺したりするコースにはめられたりと、結構えげつなく利用、搾取することがあるらしい。

 捕まえて引き渡した時とか、殲滅の報酬とかにもお金がかかるから、そのお金を稼いでもらわないといけないからな。

 

 だが、『奪う』世界で生きてきたのだから、当然立場が変わって『奪われる』ことになっても仕方のないことだろう。戯れに殺してきた者であれば、戯れに殺されても文句は言えないということだ。

 

 そういったデッドオアアライブの殺伐とした世界で生きたくないのであれば、ひっそりと何にも関わらずに生きるか、社会ルールを守って生きれば良いだけのこと。

 

 ただ、この世界はルールを守って生きていてもモンスターが居たりする為、殺伐とした世界になり易い。それがゆえに、これまでルールを守っていた者が突然『奪う者』となったり、ルールを守る外面を持った『奪う者』なんかもいたりして、歴史を重ねても次々と生まれる盗賊なんかの対処が難しかったりもする。ぶっちゃけ盗賊とか、その間者とか数は結構多いのだ。

 

「ふにゃ~……」

「あ~……いい気分。」

 

 ロバの引く荷車に載せられた荷物。その上で、ひなたぼっこをするように伸びているミーニャとアヤワスカ。

 

「ぷぃ~……そこそこ飲んだなぁ。」

 

 ロバの手綱を引く俺も、うっとり夢見心地。

 盗賊とか奪う者の多い世界ではあるけれど、街の近くだと日の出ている内は、ひったくりやスリ程度しかいないし、分かりやすく大っぴらに襲われることは少ない。油断し放題だ。

 

「よぉし! 森林地帯目指して冒険にしゅっぱーつ!」

「「 お~っ! 」」

 

 俺の掛け声に二人が元気に反応し冒険の幕が上がる。陽気な気分で出立だ!

 

 

 ――当然ながら、これもフラグ建築作業。

 これだけ流通拠点として大きな街。当たり前のように盗賊のまわし者だって情報を探っていることだろう。行き先を宣言する素人が大荷物持って出発しましたの宣伝だ。これからの5日間、どれくらいのボーナスタイムがあるか楽しみでならない。

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

「にゃん♪ ニャン♪ にゃにゃ♪ にゃーん♪」

 

 荷物の上に座席を作り上げたミーニャが上機嫌で鼻歌を歌っている。

 アヤワスカはミーニャの膝の上でくうくうと子守唄を聞き眠り始めた。

 のんびりと牧歌的な二人に馴染むように、俺も手綱を引きながら猫獣人の奏でる可愛いメロディーに耳を傾けつつ足を動かす。

 出発して小一時間というところだが、まだまだ道を行く人達も多いし、今のところ俺の察知にかかるような動きも感じない。平和そのものだ。

 

 徒歩の旅は、この『道程を踏みしめて進んでいる』という感覚がなんとも楽しい。旅してるって感じがする。もちろんこれも始めの内だけで半日も歩けば『早く着かねぇかな』って気持ちの方が大きくなるんだがな。

 でも今回は美人猫獣人が傍に居るし、そんな気分になることも無いだろう。むしろイチャイチャできるだろう夜が来るのが楽しみ過ぎる。

 

「にゃあんブレイクー?」

「ん~? どしたミーニャ。」

 

 荷物の上からの声に、軽く目を向けつつ言葉を返す。

 高い場所のスカート姿って素敵。

 

「なにかブレイクのお話を聞かせて欲しいにゃあ。」

「おー、いいなぁ。それじゃあ俺の話をするからさ、ミーニャのことも聞かせてくれよ。かわりばんこでどうだ?」

「いいにゃ~。」

 

 ただの移動でも誰かと話をしながらであれば時間の進み方が変わる。

 移動する事だけが主目的の黙々とした移動は、移動速度だけをみれば速いが疲労速度もマシマシになるものだ。今回のように美女とのんびり進めば、移動速度は遅くとも疲労は少なくてすむ。

 

「よぉし。それじゃあ俺の話でもするか。でも何から話すかなぁ……まぁ、あれだ。俺はとにかくスケベだな。今もミーニャの足をチラチラ見てるくらいだ。」

「んにゃ、それは知ってるにゃ。」

「あっはっはっは。知ってたか。でもまぁ報酬にエッチをもってくるくらいには度を越したスケベではある。それが俺という人間だな。」

「んにゃー……ミーニャそっちよりも、なんでブレイクがそんな強いのかとかの方に興味があるにゃ。」

「ミーニャ。俺の強さの秘密はな……それは俺がスケベだから強いんだよ。」

「んにゃん!」

 

 『ンもう』とでも言いたげに拗ねたようなミーニャの声。

 

「おいおい人間の本能は、食う寝る遊ぶだぞ? 遊ぶってのはスケベの事だ。本能に忠実だから強いんだぞ?」

 

 強さの秘密を聞かれたところで正直に答えても『チートだから』とかワケの分からない回答になるのだから、お茶を濁すしかないのだ。

 それに秘密なんか敢えて話すもんでもない。

 

「ほれ、俺の話はしたぞ。次はミーニャな。」

「んにゃ~……ミーニャはにゃ、キャットガールにゃ!」

「見りゃわかるよ!」

「んにゃっ! ブレイクだって見たらわかる事言ったにゃっ!」

「えっ!? 俺って女から見たら、それだけで分かっちゃうくらいスケベなの!?」

「そうにゃ! 初めて会った時も、一番初めにおっぱい見たにゃ!」

「おいおいミーニャ……男がおっぱい見ないで何みるってんだよ。後ろ姿なら尻を見る。前を向いてりゃ乳を見る。それから顔を見る。それが男ってもんだろう?」

「にゃ? そうなのかにゃ?」

「おうっ! あたりめぇよ! ミーニャだってよくおっぱい見られてるだろ? そういうことなんだよ。」

 

 納得のいかないような顔で首を傾げるミーニャ。

 俺も振り向いて首を傾げながらスカートの奥が見えないか眺めてみる。だが、ふわふわした白とグレーの混じった足の毛と肉球しかみえなかった。残念だがこれ以上は見えなさそうなので前に向き直って足を進める。

 

 

「ほれ、キャットガールなのは見て分かることだし、それで話を聞いたとは言えないぞ~。もっとミーニャの事を教えてくれよ~。」

「んにゃ~……なんか騙されてる気がするけど、まぁいいかにゃ。」

 

 おう騙してる騙してる。

 

「キャットガールも種族が色々あるにゃけど、ミーニャはにゃあ、にゃんかリビアヤマネコ種ってのになってるらしいにゃ。」

「へぇ、キャットガールって種類に分かれてんのか?」

「そうらしいにゃあ。人間はないにゃ?」

「あ~……いわれてみりゃあ人間もあるかも。なんだっけな……コーカソイドとかモンゴロイドとか、そんな感じで系統別れてたっけな。」

「ブレイクはどっちにゃ?」

「どっちなんだろうな? 多分モンゴロイド? 人族モンゴロイド種って感じかなぁ?」

「初めて聞いたにゃ。みょんごろいど。」

「モンゴロイドなー。」

「みょんどろいどみゃー。」

 

 なんだろう。幼稚園児と話してるような頭からっぽにして話せる感じがしてくる不思議。

 これがキャットガール、にゃんにゃんの魅力だろうか。かっわいい。

 

 この後も思いつくままに適当に話をし、ミーニャと仲良くなった。

 そして俺の危険感知はまったく反応しないまま、夕暮れが近づいていた。

 

「今日はこれくらいにして野営準備すっか。」

「さんせー!」

「んぁ? ……おはよ。」

「おう、おそよう様。アヤワスカ、野営すっぞー。」

 

 ミーニャの伸びで落ちそうになったアヤワスカが目を覚ました。

 多分寝だめして夜に備えていたのだろう。

 いくら俺が大丈夫と口で言ったところで、本当に大丈夫かどうかを決めるのは彼女たちだ。なにしろ冒険初日。俺の夜襲などに対する防御力を確認するまでは、彼女たちも個々に備えて然るべき。昼の警戒はミーニャ。夜の警戒はアヤワスカがすることになっているのだろうし、そこに俺の文句はない。

 

 早く盗賊が襲ってきてくれれば、アヤワスカも安心して夜眠れるようになるだろうが、こればかりはなるようになるとしか言えない。

 

「乾麺のパスタ茹でて、スープパスタなんてどうだ?」

「ハムとチーズいれるにゃー。」

「おなか減ったからなんでもいいわぁ……」

 

 むにゃむにゃと寝ぼけ眼のアヤワスカ。普段のしっかりとした感じではなく、どこかポヤっとしたフェアリーらしい雰囲気がのぞいて可愛らしい。

 

 さぁ、恋人達との夕食だ。

 

 そしてメシ食ったら、とうとうミーニャと一戦だぁいっ! うぇっへへへへへ!

 

 



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10話 猫獣人と致しぁいっ! ……のでその前に

「ンマイっ!!」

「ほんとかにや? よかったにゃぁん♪」

「ホラ言ったとおりでしょ?」

 

 フフンと鼻を鳴らすアヤワスカ。確かに簡易料理としてみれば誇って良いほどの味わいになっている。

 野営準備をしてメシを作ることになり、適当にぶち込んで茹でても食える素材の為、オラオラ感満載の男の料理を作ろうとしたらアヤワスカに止められた。

 

「どうせ食べるなら美味しく食べたい」と。

 

 俺はそのままミーニャと交代させられたのだが、どうやらミーニャはスパイスセットを持つほどに独自のこだわりがあるようで、作る様子を眺めながら休憩していたのだが、その手慣れた調理の様子から、かなりの料理の腕の持ち主であることと、アヤワスカとミーニャのコンビではミーニャが料理番を担当していることが伺いしれた。

 まぁ、体格差を考えれば当然だが、草食系の獣人ならまだしも肉食系の獣人は人間よりも料理が雑というイメージがあったので意外だった。

 

 料理についても玉ねぎ入れたりという普通の調理から、レーズンをちょっと入れはじめたり、ハチミツ入れてみたり、なんとなく少し不安になるような感じに変化したけれど、イチイチ文句をつける男はモテないので当然ながら何も言わずに感心してみせたとも。どんなにまずくても美味い! と言ってみせる決意とともに。

 

 だが、結果として仕上がったスープパスタは俺が作るよりも完全に美味しいものが出来上がっていた。

 

「ミーニャおいしいの好きだから勉強したにゃあ!」

「キャットガールの鼻は伊達じゃないのよ。」

 

 鼻を高くしているアヤワスカは、当然のように何もしていないのだが?

 可愛いから別に良いが。うん。

 

「そっか〜。ミーニャは良いお嫁さんになりそうだなぁ〜うんうん。うまいうまい!」

「えへへ〜、味に飽きてきたら言ってにゃ? スパイスひと(ひと)振りで一気に味が変わるから飽きずに食べられるにゃ。」

 

 ちゅるちゅるとスープパスタを食べながら褒める。いや、ほんとうまい。

 

 普通に食べたら塩っ気が濃いめなのだろうがガッツリ歩いてきた体に丁度良く感じられる濃さに調整されている。塩漬けハムとか使ってるのに塩分の調整が完璧だ。野菜も果物も入って栄養のバランスも良い。たかが5日の簡易食だから街に到着した後に野菜を食べまくって調整すれば良い気もするけれど、やはり日々きちんと取るに越したことはない。無駄に長い便秘しなくて済む。さらに栄養バランスを考慮しているだけでなくスパイスを使って味を変化させて最後まで美味しくいただこうという工夫付き。スパイスでの味変であれば香りや風味、刺激を中心にした調整だから栄養バランスを崩す心配がない。スパイスは慣れない限り使い勝手が悪いからミーニャは日々料理をしているということが伺い知れる。

 

 それになんとフェアリーのアヤワスカ用に麺を別に取って戻しておいた乾燥果物なんかを使ってフルーツパスタを別に作ってあげる気遣いまである。俺だと、そこまで細かく気は配れない。『食えないことなきゃいーだろ』くらいで一括して3人分作ってしまっていたことだろう。

 

 俺も簡単な料理はするから分かることだが、ここまでうまいと思えるメシを作れる女は中々いない。そして料理上手の女となれば、やはりそれだけでかなり好きだ。つい嫁として見た場合とかを妄想してしまう。

 

 目を閉じながら、もっちもっちと美味しそうにパスタを噛んでいるミーニャを眺める。

 村娘服を着ているから冒険者には見えない。ますます嫁妄想が膨らむ。

 当然嫁妄想をしていれば夜の生活も妄想するし、股間もムクムク膨らむ。

 

 この世界に来てから日本にいた頃じゃ考えられないような綺麗なエルフも抱いたし、色んな獣人も抱いた。もちろんハズレを引きたくないから人の形に近い雰囲気ばかりを選んで抱いてきたのだが、そんな中でも犬獣人と猫獣人は俺の中での抱きたい獣人ランクトップ5に入ってくるくらいのエロ実力をもった種族だ。

 

 だが、その相手をしてきた女はサキュ嬢がほとんどだし、村娘を相手っていうのはまだ経験がない。

 いや、村娘も副業でサキュ嬢をしてたりするし、そこに差はないのかもしれないが、やはり雰囲気っていうのは重要だ。

 

 そう! 雰囲気を醸し出し主張することのできる『制服』は重要なのだ!

 

「んにゃ?」

 

 パっと目を開くミーニャと俺の視線が交差する。

 ついフヘッと変な笑顔を作ってしまうが、スンと鼻を動かしたミーニャの視線はすぐに俺の股間に動く。

 そして俺の股間が張ってきているのを確認したのか、スッと目を細めながら口角を少し上げた。

 

「ブレイク〜? ちゃあんとご飯を食べてからにゃあん。」

 

 ウィンクをしながら軽く舌なめずりをするミーニャ。

 辛抱たまらん。

 

「うんっ!!」

 

 俺はうまいご飯を一心不乱に食った。

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

 

「念の為に軽く見回りだけしてくるわ。」

「「 はーい 」」

 

 俺だけ食い終わってもミーニャが、もっちもっちと食事をしていれば、エロいことができるわけなかったよ。

 

 というわけで食い尽くしてしまい暇を持て余した俺は、万が一にも致している際に中断するような事態に陥ることが無いように警戒をすることにした。

 

 危険察知と結界があるから致している最中に襲ってきても危害を加えられることはないが、相手をしてくれているミーニャは、そうは思わないだろうし迎撃体制を取るはずだ。

 つまり、イケないままに中断されるかもしれない。それはイケない。

 ましてミーニャとは初エッチなのだから最高に気持ちよくフィニッシュを迎えたいからこそ、念には念をいれなければならない。

 

 食べた直後なので、軽く身体をストレッチでほぐす。

 お腹いっぱい食べたから、あまり激しい運動はできない。

 

 目を閉じて筋を伸ばしつつ、魔力の警戒網を広げ警戒に引っかかる者がいないかを調査する。

 俺たちの後ろに小さな集団の気配はあるが、盗賊か商隊かは不明。もし盗賊だったとして襲ってくるにしても、まだ街に近いから明日、もしくは明後日くらいだろう。一定の距離を保っているから、これは放置案件。

 

 進む方向も特に気になる気配はないが、道ではないところにモンスターらしい気配は確認できた。

 向こうは気づいていないから襲ってくる可能性は少ないが、もし襲ってきたとして後発の集団が盗賊で、なにかしらの方法でモンスターを討伐しているところを見られるとしたら、それは面白くない。

 

「ふむ……」

 

 やってくるか。

 

 魔力の警戒網をモンスターに集中し探る。

 スキャンした結果は大したモンスターではない。普通の冒険者なら戦って9割9分勝てるようなモンスターだ。初心者冒険者でも7割くらい勝てるだろう。初心者の2割は不意打ちされて逃げ出すか死ぬ。残った1割は冒険者になるべきではない人間が冒険者気取って死ぬって感じの相手だ。

 敢えて戦う必要もなさそうな相手だけれど、ことの最中の邪魔や盗賊の警戒アップなどが起こりうる以上、不安の目は潰すに限る。

 

 素人の足運びで道を外れしゃがむ。

 すぐに足に魔力を集中し、音もなく消える。

 

 盗賊が万が一、俺の確認不可能な方法で遠視していたとしても、大きめの用を足すように見えただろうし、間近に居たミーニャ達は俺の力を改めて認識したはずだ。

 これもまた一石二鳥。

 

「よっと。」

 

 サクッと手刀で中型犬サイズのモンスターを()ね、飛ぶ頭に返す手刀を向けて耳も切り取り、ミーニャ達に見せる狩った証拠を確保する。

 

「さてさて。」

 

 そして、その場にしゃがんで本当に用を足す。

 鼻の良い獣人でもモンスター討伐の強い匂いを持っていれば、用を足した匂いよりも気になるはずだ。

 

 人間の当然の摂理だが、日本生まれの俺としては、やはり美人達に用を足している気配など見せたくないものなのだ。

 薄く輝き始めた星空のもと、しっかりと用を足し終え、モンスター討伐の証拠を持って戻るのだった。

 

 さぁ、後顧の憂いは全て断ち切った。

 

 いざゆかん。村娘コスプレ猫獣人の秘密の花園へ!

 

 




たくさんのお気に入り登録や評価有難うございます! 励みになります!


そしてようやくフェアリーより、まともなエロをかけそうで一安心。


……猫か。
うん。猫獣人か……う、ん。

まともに…なると……いいな……



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11話 にゃんにゃんとイチャイチャ

 

「ほいっ、モンスター狩っといた。」

「ん? どの辺にいたにゃソレ?」

「あっという間に、どっか行っちゃうんだから……近くにいた? あまり気配感じなかったけど。」

 

 モンスターから刈り取った耳をプラプラさせながら戻ると、プラプラさせている物が何かを把握したミーニャとアヤワスカが問うてきた。

 

 焚火で明るい野営地にいた二人は食事を終えたようで、鍋や皿、スプーンとフォークの合体した食器なんかをアヤワスカの魔法で作った水で軽く流して手ぬぐいで拭いたり、細かな後始末をしている。

 

「えーっとね、ここから1kmくらい離れたとこかなぁ??」

「んにゃ? あの短時間でそんなに動いてたのにゃ? あれっ? っていうか、そんな距離の敵がブレイクは分かったのかにゃ?」

 

 ミーニャが首をひねる。

 

「おう。分かっちゃうんだな俺。俺たちの後方にきっちりついてきてるヤツが居るってのも確認ずみだぞ。」

「うーん……本当かしら? でも手合わせした時の残像の残った移動を知ってるから嘘とも思えないのよね……」

「俺は嘘ツカナ~イ。ほら街でも『不安だったら1キロ四方のモンスター殲滅』とも言ってたじゃん? 実行できないことは言ってないんだよ。」

「はにゃ~……ブレイクはすごいにゃあ。」

「まぁまぁ本当っぽいし、そうだとすれば、ますます規格外ね。大精霊とだって戦えちゃいそう。」

「大精霊とヤったことはないけど、そこそこイケると思うぞ~? ほい、お次は結界はるよー。」

 

 ミーニャ、アヤワスカ。そしてロバと荷車を覆う半円のドーム状の不可視結界を構築する。

 物理攻撃や魔法を弾く結界なので万が一雨に降られても大丈夫な便利結界なのだが、それゆえに空気穴を忘れると、そこそこ恐ろしい技としても使えたりする。焚き火中は細かな空気穴に対する配慮も重要だ。

 

 殲滅し、そして結界をはったとなれば、いよいよ準備が整った。軽く手を打って両手をスリスリ擦り合わせつつミーニャを見て舌なめずりをする。

 

「さぁて、お二人さん。危機を排除し結界を構築したということは? ねぇねぇねぇん!」

 

 イチャイチャタイムの準備が整ったということだ! ほら、すけべしようやぁ!

 

「ねぇブレイク、なんかすっごい動きづらいんだけど?」

 

 だがそんな俺のアレな態度を気にする素振りもないアヤワスカが、微妙にふらふらしながら口を開いた。

 

「あ、悪いアヤワスカ。ロバの荷物あたりまで結界内なんだけど、結界は魔法弾く系だから魔力操作に多少不具合でるかもっての言い忘れてた。」

「はぁ? そうなの? ……まぁ、あの結界の中っていうなら仕方ないか。ねぇミーニャ。飛びにくいから、あの荷物の上に私を載せて。」

「わかったにゃ。」

 

 手入れしていた食器を片付け、手ぬぐいで水を拭ったミーニャが、アヤワスカを昼間ミーニャが寝床にしていた荷物の上に乗せた。

 

 ぶっちゃけ魔法操作に支障が出ない結界も貼れるのだが、なんといってもフェアリーは悪戯好きな種族だ。

 今日はミーニャと初イチャイチャだから、存分に横槍を感じることなくミーニャを味わい尽くしたいのだ。明日は3Pになっても良いように支障の無い結界張るけど、今日はスマン! ミーニャを堪能したいんじゃー! いっぱい話ししたから結構ミーニャに夢中なんじゃー!

 

「ありがと。んじゃ私はここで休んでるから、あとはよろしくね? ミーニャ。」

 

 見通しの良い荷物の上で、後は好きにやってろ的な態度のアヤワスカ。

 

「よろしくねっ!」

 

 もちろん全力で乗っかる。好きにやりたぁい!

 もうめっちゃ好きにするでぇ! にゃんにゃんミーニャとお楽しみタイムや! ワイな? もうイチャイチャえんやこら致したくてたまらんのや。

 

 すると、そんな俺に目を向けたミーニャがクスクスと笑った。

 

「んもうブレイク~? そんなに慌てないにゃあん。ミーニャは今日は村娘にゃん。何も知らない普通の娘なら、ご飯の後には、お茶を飲んだりお話したりして、まったりのんびりするものにゃん。」

「んんん~……」

 

 既に俺は致したぁい! 却下!

 

「もちろん、まったりタイムのミーニャの席はブレイクの横にゃん♪ 夜は長いんにゃから、ゆっくりたっぷりイチャイチャするにゃん。恋人同士のイチャイチャにゃん♪」

「うん! その通りだねっ! お茶しよお茶!」

 

 俺の完全なる同意を得たミーニャは自分の荷物から、お茶っ葉を取り出したりケトルで湯を沸かしてお茶の用意を始めた。

 

 俺は俺でイチャイチャの為にポンチョマントを地面に引いて、焚火の当たり具合、座り心地や寝心地などに色々支障がないかを確かめる。小石がマントの下にあったりすると致してる時に気になったりするからな。致している時は致す事に集中したい。心地よいイチャイチャの為には、やはり準備は重要だ。

 

 ポンチョマントの上でリュックをクッション代わりの背もたれにしてみたりして万全のリラックス場所を整える。

 

 この世界のポンチョマントは防寒具としても使えるし、敷物、はたまた毛布の代わりにも使えるという便利な一品なのだ。リュックも結構多機能だしキャンプセットのような物は、かなり工夫されたものが売られている。

 これは、おおよそ転移者と呼ばれる者達が、元居た世界で持っていた知識を色々と活用した結果なのだろう。今日の夜メシの時に使っていたフォークとスプーンの合体した携帯用の先割れスプーンなんかの日本で馴染みのある食器なんかも街で普通に売ってたりするし、これまでいた街では米だって普通にあるし生魚だって食っている。場所によっては寿司を出す店もあるらしいから食文化に日本の息吹を感じずにはいられない。

 つまり食生活や食文化に影響を与えるくらい色々やらかした転移者がいたということ。そしてそれは、ほぼほぼ確実に日本人。文化が広まるくらいには昔から存在し、その日本人は大きな影響力や発信力を持っていたのだろう。

 俺も日本人転移者の一人としてこの世界に来たから分かるが、きっと、かなり好き勝手やらかしてきたに違いない。はっちゃけたのだろう。俺も日本に居た頃からは考えられないほど好き勝手してるからな。人生を謳歌してるって感じがする。

 

 ミーニャとだらける為の場所を整えながら、そんなことを考えていると木彫りのカップを持ったミーニャがやってきた。

 

「はいにゃ。ブレイク。」

「おう、ありがとミーニャ。」

 

 リュックを背もたれにして腰かけ足を伸ばし、お茶をすする。炒った豆のお茶の風味が中々どうして悪くない。温かい飲み物にほっと息を吐くと、ミーニャがぴったりと身体をくっつけるように隣に座った。

 

 ふぅむ。なぜ獣人の女の子は良い匂いがするんだろうか。

 日向ぼっこをしていたからか、太陽をいっぱい浴びた毛がお日様のような香りを大きく纏いながらも、そこに女子独特の甘さを感じるような、なんとなくいやらしいエッセンスのようなものを感じる。

 

「ん~……お茶もいいけどミーニャは良い匂いがするなぁ~。」

「にゃあ? そうかにゃあ?」

 

 スンスンと鼻を動かしながら、ミーニャのネコミミや頭の匂いを嗅ぐ。

 ミーニャはミーニャで俺の胸元や脇に鼻を近づけてスンスン鼻を動かしている。

 

「ミーニャもブレイクの匂い好きにゃあ。」

 

 そう言って可愛く笑った。

 

「あ、好き。」

 

 気が付けばハートを撃ち抜かれていた。

 キャットガールの人懐っこい笑顔、可愛すぎ。

 

「にゃふー、なんかそういうの言われると照れるにゃあ~♪」

 

 俺に体重を預けながらクネクネしだすミーニャ。なにこの可愛い生き物。

 なんかもう茶とか飲んでる場合じゃねぇ!

 

「んにゃ?」

 

 軽く一口啜って、まだまだ茶の入ったカップを横に離して置き、両手をミーニャの腰に回して引き寄せる。俺の股の間にミーニャを落ち着けると、すぐにミーニャは俺を背もたれにして、その身を預けてきた。

 

「ん~……ムチュチュチュチュー!」

「にゃはっ! にゃはは!」

 

 首筋や肩、ネコミミににチュッチュチュッチュと口付けると、こそばゆかったのかミーニャは笑い始める。だが、その笑い方にも、時折ゾクっとしたような(みだ)らな息が少し混じっていた。

 夜のお楽しみの時間の幕は上がったようだ。

 

「んもう、やめるにゃあん」

 

 発せられる言葉の甘ったるさ。そして色気を伴い始めた身体の反応から既にミーニャがその気である事を察し、ミーニャの腰回りに回していた手を、ゆっくりと、おなか、そして太ももに動かし、ミーニャの柔らかさを手から感じ取る。

 

 スカートを通して右手に触れる太ももは、冒険者であり獣人である強さを感じさせながらも女性ならではの柔らかな弾力を感じ取り、腰回りをなぞる左手は革のベストの固さを感じながらも、手の移動曲線が素晴らしいまでの(しな)やかさのあるくびれを察知している。冒険者ならではの無駄な脂肪の無い腰にお腹。なんと魅惑のラインか。

 

 だが、お腹をなぞる左手は、すぐに大きな壁に当たって止まった。

 下乳という大きな壁に。

 

 ミーニャに初めて会った時に目を引き付けられた胸。そのEカップはありそうな大きなおっぱい。下乳の弾力を手の甲で(もてあそ)ぶ。 

 

 右手は太もも、左手はお腹。手の甲はおっぱい。唇は首や耳。あぁ大忙しだ。トゥービズィー

 

「にゃふん。」

 

 耳に聞こえるミーニャの楽し気かつ甘美な声。

 こういった声を聞けると、どれだけ大忙しでも、もっと頑張ろうという気にもなる。

 

 頑張って(まさぐ)っていると、ミーニャの右手が俺の右手の上に優しく添えられた。手の甲から伝わる猫獣人ならではの肉球の柔らかさがなんとも言えない。

 そしてミーニャが俺に顔を向け、キスに忙しい俺の頬に軽く戯れるように口づけをした。

 

 ミーニャの戯れに発奮した俺は、お腹と下乳のダブルで忙しかった左手を無意識の内にミーニャの胸に移動させ、服の上から鷲掴みにしていた。そして右手も内ももへ、内ももの奥へ向かって滑っている。

 

「がっついちゃダメにゃん。」

「んひっ」

 

 突如、俺の股間に密着していたミーニャの尻が震えるように動いて息子が大きく刺激され、その刺激に手が止まる。

 

「お茶を飲み終わるまでくらいはブレイクとの恋人気分を楽しませて欲しいにゃん。それにちょっとお話もしたいし。」

「お話? 話なら移動中もいっぱいしたじゃん?」

 

「そうにゃけど、移動中にエッチなお話したらブレイクが発情してエッチされると思ったから出来なかったにゃ。」

「むぅ……それは否定できんな。」

 

 移動中二ミーニャとエロい話をしたら盛り上がってしまって、ミーニャに一発お願いしていた可能性が高い気がしなくもない。

 なにせ俺はオナニーしたくなったら一発を願う男だ。うむ。ミーニャの懸念通りだな。

 

「もちろんエッチなお話だから、ミーニャのおっぱい触っててもいいにゃん。」

「うん。お話しよ。エッチなお話しよ。」

 

 すぐにミーニャの大きなおっぱいを両手で下から揉む。

 やわらけぇ、やわらけぇ、ありがてぇ。

 なんでおっぱいを揉むと感謝したくなるんだろう。不思議だ。

 

「にゃあん♪ もっと優しくするにゃあ。」

「うんうん♪」

 

 優しく、もんにょもんにょと服の上から、たわわな果実の手触りを堪能する。堪能ついでに時折、乳首も人差し指でピンピンと弾く。

 

「んにゃん! ……もう、えっちぃ。」

 

 弾きに敏感に反応するミーニャ。

 これは楽しい。致したくなるのも早そうだ。となればミーニャの話も、さっさと聞いて終わらせておくべきかもしれない。

 

「それで? エッチなお話ってなに?」

「んにゃ~……ブレイクはキャットガールの性質はどれくらい知ってるにゃ? 人間とおんなじとか、あまり大差ないとか思ってないかにゃ?」

「ふむ?」

「んにゃんっ!」

 

 キャットガールと人間の差を確認する為に、いじられたせいか服の上からでも分かるようになった、ぽちっと立った両方の乳首を両手でつまんでコリコリと動かす。

 つまむ刺激にビクっと一段と大きく反応するミーニャの身体。

 

「うん。乳首の感度よーし。この感度が人間よりもキャットガールの方が良いくらいで、他はあまり大差ないと思ってたけど違うのか?」

「ふにゃぁー……違うにゃあん! あん! もう、つまむのやめるにゃん!」

「ゴメンゴメン。」

 

 つまみクイクイを止めて、もみもみ&なでなでに移行する。

 

「キャットガールは人間と似てるけど、猫の性質をもってるんにゃ。」

「うんうん。」

 

 もんにょもんにょ。

 

「ん……猫は交尾の時は、メスが発情してオスを誘うって知ってるにゃ?」

「へ〜、そうなんだ?」

 

 さすさす、ぽいんぽいん。

 

「にゃ、ん。そうにゃ。メスの発情した匂いを嗅いで、オスが発情するにゃから、その気になるのは、まずはメスからなのにゃ。」

「ん? ……つまり、アレか? エッチはミーニャが発情するのを待てってことなのか?」

 

 衝撃の事実に、ガバっと鷲掴みにして高速もみもみで発情を促してみる。

 

「んな! ちがうにゃあー! ……もう、今日はこのままエッチするにゃ。」

「なんだ良かった。エッチはできるんだ。」

 

 安心の、まったりもみもみに戻る。

 

「んにゃ〜ん……獣人のメスは強いオスが好きだから、ミーニャも獣人だから、どうしてもそんな感じがあるんだにゃ。舌が猫っぽいくらいには猫っ気も受け継いでるにゃ……そしてブレイクは強いオスにゃ。」

「お? なんだ? ミーニャに好かれるんなら、もっと強いとこ見せちゃうぞう?」

 

 右手で太ももお尻周りサスサスを追加する。

 

「んにゃん! そこが……問題にゃ。」

「問題?」

 

「多分、もし、ほんとに見ちゃったらミーニャ発情(ヒート)するかもしれないにゃ……」

「ほうっ! そうなのかっ!」

「そうなのにゃ……そうなったら、ブレイク、ちゃんと相手して欲しいんにゃ……」

 

 ミーニャがうるうるした大きな目で見つめてきた。

 

「おいおいミーニャ……任しとけよっ! 発情(ヒート)したら……任せとけよ!」

 

 願ったり叶ったりのお願いに、力強い握り拳と笑顔を返す。

 

「んにゃん! よかったにゃあー!」

 

 ミーニャが抱きついてきたので受け止める。

 スリスリと頬を俺の顔に擦りつけてマーキングをするミーニャ。ほんと可愛い。

 ざーりざーりと俺の髪をグルーミングするミーニャ。うーん。それはどうだろう。でもおっぱいが顔に当たるのでばっちこいっ! いーよー! パフパフいーよーっ!

 

 ミーニャが満足するまでマーキングやグルーミングを好きにさせつつ、俺は俺でブラウスの上からおっぱいとピンと立ち固くなった乳首を堪能する。

 

「んにゃ……」

 

 十分に堪能し終えたのか、少し身を離すミーニャ。

 

「それじゃあブレイク……そろそろ……しよ?」

 

 ミーニャは熱っぽい目で、そう囁き、そしてブラウスを下に引いた。

 

 



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12話 にゃんにゃんとにゃんにゃん!

「それじゃあブレイク……そろそろ……しよ?」

 

 ミーニャが熱っぽい目で囁き、ブラウスを下に引くと、その豊満なおっぱいが露になった。

 

 獣人で日向ぼっこの好きなミーニャなので少し焼けたような肌の色。だが普段服で覆い隠されているおっぱいの色は白、そして鮮やかな目に優しいピンクのアクセント。

 冒険者の時はチューブトップのような服を着ているから、日焼けした肌と日焼けしていない肌の境界が、なんとも健康的。なにより見てすぐに分かる程の、おっぱいのハリとツヤ。ぷるんとした弾力を感じさせる大きさを持ちつつも冒険者の大胸筋に支えられているのだろう垂れることなくツンと立った胸と乳首。見事な円錐型おっぱいというだけでミーニャの(すこ)やかさが感じられる。

 

 もちろんこの健やかさは俺のちんこを固くしてやまない。

 

 あぁ、どうして。どうして生のおっぱい。生乳(なまちち)は、こうも男を狂わせるのか。

 獣人は躍動する肉体を支える為に筋肉もしっかりとついている。だからこそ、おっぱいが若い。ミーニャの年齢は聞いていないが、おっぱいだけで年齢を当てるとすれば、間違いなく10代のおっぱいと答えたくなる。高校生なんじゃない? そう思える程のおっぱい。そんなファンタスティックビューティバストだ。イッツソーニャンダフル。

 

 吐息が可視化されたような程に上気し、頬を紅潮させるミーニャ。

 この表情だけでメシが3杯食えそうになるが、ぐっとこらえて俺にまたがるミーニャに手を伸ばす。

 

「んにゃ……あん。」

 

 真正面から両手で生乳を鷲掴みにすると、艶めかしさの溢れた愛らしい声が耳をつく。

 声につられるまま、弾力を手の平いっぱいで感じ取りながら、指の付け根で乳首を挟んで刺激し、ミーニャの唇を優しくついばむ。

 

「んふ……んっ、ん。」

 

 バードキスに、完全にその気になっているキスが返され気分が盛り上がる。

 舌は猫舌なので舌先だけをミーニャの口内で絡め合わせてゆくと、ミーニャも更に気分が乗ってきたようで、スカートを自分で持ち上げて足を開いて俺にまたがり、俺の股間に当てつけるように腰をくねらせた。

 

 ミーニャの誘うような動きにのって右手をスカートの中に滑らせ、太ももを、そして腰を撫でる。すると、そこで違和感に気づいた。が

 

「ん? ミーニャ……おまえパンツどうした?」

「にゃふふ。いつブレイクがやる気になるかわかんなかったから最初から履いてないにゃ。」

 

 なんということでしょう。

 このキャットガール。荷車の荷物の上にノーパンスカートで座っていたのだ。結構高い所にノーパンスカートで座っていたのだ。そして俺は何度となくスカートの中を覗こうとしたが見えなかった、もし見えていたら、多分襲っていたかもしれない。

 

「ブレイクはチラチラ何度も見るから結構ゾクゾクしたにゃ」

「お前……才能あるな。」

 

 なんの才能なのかは分からない。

 だがノーパンのスカートの中を覗かれるかもしれないという行為に、心の高まりを覚えているミーニャは確実に才能があるはずだ。なんの才能かは知らんが賞賛を送らずにはいられない。

 

「ふにゃっ!? あんっ!」

 

 賞賛の気持ちを行動に移し、スカートに突っ込んだ右手を即時ミーニャの股間に移す。これまでソフトタッチだった俺の動きが一転して荒々しく感じられたのだろう、ミーニャが驚きの声を上げた。だが、驚いただけで、まったく拒否感は感じない。

 

「なんだミーニャ? もう準備できてるんじゃないか、んん?」

「んんんっ! にゃぁん♪」

 

 手全体に感じる湿り気と、触れた指に伝わる液体の感触。

 しっかりと濡れていることが嬉しく、ミ―ニヤの甘い声が耳を嬲り、否応にも気分は最高潮。

 

 濡れそぼる秘所に指を這わせ、更なる潤滑を催促する。

 中指の付け根で陰核を擦り、指全体は陰裂を撫でると、ミーニャは快感を堪えきれないように俺にしがみつき胸を押し付けて強く反応した。

 当然押し付けられたおっぱいには舌を這わせ、這った舌が突起に辿り着けば舌で弾くし吸いつきもする。

 俺の行動一つ一つに細かく身体を震わせ、愛くるしい声を上げるミーニャ。

 

 こういう打てば響くような反応は男として嬉しくもなるし気分もどこまでも盛り上がる。そしてなにより相手に対する愛着も沸く。

 

 獣人は可愛い。

 反応が可愛い。

 敏感娘で可愛い。

 行為の時はマウント取られたがったり、支配下に置かれたい願望みたいなモノをもってて可愛い。

 男に好かれることに全力だし、媚を売るのも色目を使うのも躊躇が無く全力で可愛い。

 

 そんなミーニャの可愛さに対する思いが溢れ、俺のちんこは、もうミーニャに突撃したくてたまらなくなっていた。

 

 ミーニャは濡れているし、俺はギンギンに勃っている。

 この状態で何を我慢することがあるだろうか? いや、ありはしない。

 

 欲望のままにベルトに手をかけると、ミーニャも俺が脱ぎやすいように腰を浮かした。ミーニャも欲しくてたまらないのだろう。

 腰を浮かせたまま胸で俺の頭を抱き、髪をグルーミングなのか軽く一舐めするミーニャ。その様子が愛おしく思え、待たせない速度でパンツも脱ぎ去ると、カッチカチを通り越した程に固くなっている俺の男根は空中に浮いている花園を目指してそそり立っていた。

 

 俺のもぞもぞとした動きが収まったのを察したミーニャは、手を動かして、そっと俺自身に触れる。

 

「わぁ、すっごい固さにゃ」

 

 悪戯娘のような笑みを浮かべ、男根を握り、そして自身の腰を動かす。

 ミーニャの動きにより、陰茎がミーニャの陰裂を数回往復するように撫で、やがて少しだけ落とされた腰により亀頭だけが少し割れ目に侵入した。

 

 この挿入前の感覚は本当に最高だ。

 

「んにゃ……それじゃあ、いくにゃ。」

「おう。交尾のはじまりだ、なっ!」

「んにゃあぁんっ!」

 

 挿入しようとタイミングを計っていたミーニャの腰を両手でつかんで乱暴に下げると、一気に俺の陰棒はミーニャの膣内へと押し込まれ、タイミングをずらされたミーニャは大きく声を上げた。

 

 ミーニャが俺に騎乗している体勢で、ミーニャが主導しているような前戯だったが、挿入だけで顔をのけぞらせるミーニャの態度に交尾の主導権は一気に俺へと変わった。

 

 俺はミーニャの腰を掴み、しっかりと俺の腰に引き付けながら、前後左右にゆっくりと腰を動かす。

 まずは抜き差しではなく俺のちんこでミーニャの膣内を刺激するのだ。挿入されてる感も、セックスしてる実感も、そしてクリトリスが擦れるのも、どれも気持ち良いはず。

 

「にゃ、にゃ、に、にゃん!」

 

 小さな動きに関わらず、敏感に反応するミーニャの身体と声。

 

「んにゃ、ん、あ、ソレ、気持ちいいにゃ! あーーっ!」

 

 あまりに反応が良いので、右手でクリトリスをローター気分で震わせるように動かして刺激する。ミーニャの愛液で潤滑もまったく問題ない。

 

「あ…ぁっ、イクゥ……イ…! ク…ゥ! にゃ…あっあ…んんっ!」

 

 ビクンと大きな震え。

 そしてキュキュキュッと激しく数回締まった膣の感触。

 

 ミーニャは、挿入腰グリグリとクリトリス愛撫の合わせ技だけで、あっという間に果ててしまった。

 

 クタリと俺に倒れてきたミーニャを抱きとめる。

 ミーニャのおっぱいから胸に伝わる息遣いと、そして耳元に感じるミーニャの浅く激しく繰り返される呼吸。

 どうやら本当にイってしまったようだ。

 

「ゴメ……ン。ミ……ィーニャ、感じ…っや…ぁす……ぅいぃんにゃあ……」

 

 俺はよしよしとミーニャの頭を撫でる。

 

「おいおいミーニャ。感じやすい女なんて男から見たら最高の女だぞ?」

 

 脱力したミーニャを俺の上から下ろして横に寝かせる。

 

「んにゃ……」

 

 俺にされるがままの満足気なミーニャ。

 どうやらミーニャは満足したようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、当然。

 

 俺は出してないし、

 

 満足していない。

 

 

「んにゃあっ!?」

 

 

 仰向けに寝かせたミーニャの両足を掴んでおっぴろげる。

 

「最高の女だよ。楽しくて仕方ない。

 さっ、俺がイクまでミーニャが何回イケるか試してみような。」

 

 

 正常位でミーニャに挿入し、激しく腰を打ち付けた。

 



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13話 にゃんにゃんににゃかだし

 

 

「んっ! んんんにゃ…ぁにゃあにゃぁぁ…っ!」

 

 腰を打ち付ける度に上がる声。

 たーのしー!

 

「あんん…! …やあ! ぁんん…にゃ…ぁ……ぁぁっ! にゃあぁあぁっ!」

 

 感度の良い娘とするのは本当に楽しい。

 単純な肉体的な快感だけでなく、昼間仲良く話したミーニャという女が夜は自分の腰の動き一つで甘い声を上げているというのが、まるでミーニャという個人を思うままに支配して嬲っているような気になり、どこか加虐さを秘めた支配欲求が満たされる感覚があって肉体の快感を2割増しにする。

 

 まして昨日はアヤワスカの全身ズリを受けたとはいえ、受け身でいいようにされていたフラストレーションも感じただけに自分自身の思うままに腰を振って快感を貪ることができるという自由度が良い。そして自由に腰を振るだけでミーニャは喘ぎまくる。まるで自分に性の才能を与えられたかのような万能感も感じて、更に快感2割増しだ。

 

 腰と腰のぶつかりあうパンパンパンパンという小気味よい音とリズム。普段の4割増しの快感に気分もどんどん昇ってゆく。

 

「ニャ! ア……ァ! アッフゥウ! ンンニャァァンンッ!」

 

 まだまだ我慢しようと思えば射精を我慢でき、長く快感を味わい続けることもできるが、ミーニャの激しく首を振って悶える様を見ていると、あまり長引かせるのも可哀想に思えてくるので我慢しないことにした。

 

「あー……気持ちいー! 気持ちよすぎて、そろそろイキそうだミーニャ!」

「ン…ニャァァ来…て……ぇっ来…! てぇぇ…ニャァアア…ッ!」

 

 ミーニャの身体に覆いかぶさり抱きしめながら、ミーニャが動かないように固定して一層激しく腰を振る。

 イクと決めた心と激しい動きに、あっという間に精子が玉から動き始めているのが分かった。

 

「イク! イクぞっ!」

「出っしい…ぃてぇええ! 早…くうう…うう出…しいぃっ! てぇ…えっ!ぇ……っ」

 

 ミーニャの言葉が、俺の背中に食い込む爪の痛みが、少しでも俺の腰の動きを抑制しようと回され力を感じる両足が、ミーニャの限界が近い事を物語っていた。

 快感を長く味わう為に無意識にしていた少しの我慢も全て止めて、欲望を解き放つ。

 

 すると即座に、ぶびゅっる! と音がしそうな程の脈動に肉棒が震え、容赦なく精を吐き出した。

 大きな脈動は2回、3回と起こり、その度に肉棒を通ってゆく精が腰や頭を一段と強い快感に震わせる。

 

「あー……」

 

 あまりの気持ちよさに声が漏れる。

 ミーニャの膣内の最奥に至るよう深く差し込まれたイチモツは小さく震えながら悦びと電気のような物を頭に送り続け、俺はその電気を味わ尽くす為に、そして子種の最後の一滴まで全てをミーニャの膣内で吐き出すことができるようにミーニャを抱きしめて離さない。この猫獣人は、今は俺だけのモノなのだ。

 

 ミーニャも俺の動きから交尾が終わりを迎えたことを悟り、まるで『もう動いちゃだめだからね?』とでも言わんばかりに手と足で強く俺を抱きしめて離さない。それだけ感じた快感が強かったのだろう。可愛いやつめ。

 

 自由になる顔を動かしてキスをすると、ミーニャも応え舌先を軽く交差させる。そしてキスで手足の力が緩んだ隙を突いて、再び軽く腰を振る。

 

「んんっ!? にゃぁあぁ! ん……」

 

 最後の最後まで精子をミーニャの膣内に出し切る為の膣コキだ。

 グリグリと動かしては少し抜き、また差し込んでちんこに残る精子を全部膣内に送り込む。

 仕上げに先っちょを突っ込んだまま、ちんこを右手で握って膣でしごききれなかった尿道に残った精子も全部ミーニャの膣内に出しきる。

 この世界では膣内出しが当然のことだが、日本生まれの俺にとって、やはり膣内出しは特別感があって最高に気持ちよい。

 

 セックス中にちんこしごいてもはオナニーにはならないから当然俺も死ぬことはない。

 ただ『自分でちんこしごく』という行為がオナニーになるかもしれないと思うと少し怖いから亀頭だけ差し込んだまましごくという念は入れるのだが。

 

 

「ふぃー……満足満足。」

 

 ちんこを握ることを止め、亀頭も全て抜いて一息つく。セックス後の脱力感はとっても心地よい。

 ミーニャの隣に寝転がると、ミーニャの膣で温まったちんこから、ほかほかと湯気が上がった。

 

「終わった?」

「おう終わった終わった~。」

 

 荷物の上のアヤワスカが声をかけてくる。

 俺もとりあえず外敵が近づいてないか警戒網の意識を広げて確認するが特に大きな変化はない。あった変化としては後続の商隊なのか盗賊や夜盗の類なのか不明だった集団の数人が、こっちの様子を探るように近づいていることくらいだ。

 これが盗賊の観察なのか、それともミーニャの大きな喘ぎ声で男女が致しているの察して覗きにきた出歯亀助け平なのかは分からない。俺も旅の最中にどこかから喘ぎ声を察知すれば様子見に行く自信があるからな。『けしからんことをしてるのは誰だ? 確認してやろう!』と。

 エロい声が聞こえれば確認に向かうのは冒険者なら当然のことのはず。もしかすると襲われている可能性だってあるからな。救出など互助の気持ちは冒険者には必要なことだ。故に、今の動いている者たちの目的が盗賊の情報収集か、はたまたスケベ心かの断定はできない。

 

「中々良い声出てたわよミーニャ。」

「んにゃぁ……別に出そうとしてたわけじゃあ……ないにゃあ……ブレイクが激しかったにゃ……」

 

 クッタリと疲れた雰囲気のミーニャ。移動の時よりセックスの後の方が俄然疲れている感がある。あれだけ大きな喘ぎ声を出せば疲れて当然だろう。

 

「にゃ~……人間は長持ちにゃから疲れるにゃあ~……」

 

 だが流石獣人。疲れたと言いながらも体力お化け(フィジカルモンスター)

 すでに息が整っているしクールダウンも早い。思考もあっという間に通常のソレに戻り始めている。

 

「長持ちって、俺、今日はめっちゃ早くイッたような感じだぞ?」

「んにゃあ~……猫獣人とかだともっと早いのが普通だからミーニャには長かったニャ。」

「そうよブレイク。猫獣人って、すぐ満足する種族が多いから楽なの。まぁ、アレが凶悪な形してたりするから難儀もするんだけど……」

 

 ピロートークという程、甘くない雰囲気を察したアヤワスカが会話に入ってくる。暇を持て余して寂しかったのだろう。

 

「へぇ~。早漏はまぁ分かるけど、凶悪ってどんな?」

「……一言で言うなら……サボテン?」

「マジかよ。」

 

 アヤワスカの言葉に思っていたより凶悪なイメージが思い浮かぶ。

 

「そうなのにゃ……先っちょの所に矢の『かえし』みたいな感じの棘がブツブツ生えてるニャ。」

「やべぇなソレ……めっちゃ痛いんじゃねぇの!?」

「痛いにゃっ! だから人間とエッチする方が良いにゃ!」

 

 憤懣やるかたなしと言わんばかりのミーニャ。

 

「もちろん棘の無い猫獣人もいるんだけどね、ミーニャの舌が猫獣人でも珍しいみたいにさ。」

「あ~……なるほど。猫獣人でも人間と同じような舌の娘も多いもんな。」

「んにゃ? この舌便利だから無い猫獣人は可哀想にゃあ。」

「はは、俺としちゃあ、その舌で舐められると色々削られそうで少し怖いけどな。」

 

 フェラさせたら、ちんこ肉がそぎ取られそうで。

 

「んにゃ。お肉食べる時とか、骨回りの肉食べる時にも便利なのにゃ。」

 

 悪戯娘っぽい顔で、俺が何を思ったかを察したようにレロっと長い舌で舌なめずりするミーニャ。

 

「おいおい、おっかねぇこと言うなよミーニャ。あとおっぱい丸出しで舌なめずりされると誘われてるって感じちゃうぞ? もう一戦するか?」

「にゃっ!? ミーニャは今日はもういいにゃ!」

「そうか、もうちょっとくらいは致してもいいのか。それじゃあ……」

「にゃーー!」

 

 無理矢理曲解してミーニャのおっぱいに手を伸ばす。だがミーニャは両手でおっぱいを隠して防御した。  

 

「はいはいブレイク、それくらいにしときなさい。魔法でちんちん洗ってあげるから、ちょっと結界解いて。」

「お? すまんな。」

 

 『おふざけもそこそこに』という感じのアヤワスカに従って結界を解くと、あっという間に魔法で水球を作り出し、ちんこが水球に包まれ軽く揉み洗いされた。

 

「あ。結構きもちいい。」

「バカね。」

 

 笑ったアヤワスカは、刺激を少しだけ強めて洗ってくれて水球は道端で弾けた。ちんこのお洗濯。スッキリして良い。

 すぐにまた水球を作って、ミーニャの股間も洗浄するアヤワスカ。

 

「あ~……気持ちいいにゃー……」

「バカが増えた。」

 

 若干、俺のちんこが元気を取り戻しそうになったけれど、初日から飛ばすこともあるまい。旅もまだまだ先が長いし、二人ともまだまだ不安があるだろうからな。

 それにミーニャが発情するかもとか言っていたし、もしかすると発情したミーニャに求められすぎるかもしれないのだから、とりあえず今日はこんなもんで満足しておくことにしよう。

 

 はー! ミーニャとのエッチ。気持ちよかったれす!

 

「あ。アヤワスカ。気ぃぬいたら先っちょから精子がジワってきたから、もっかいやって。」

「んにゃ、ブレイクの精子垂れてきた気がするにゃ。ミーニャももっかい。」

「もう自分でなんとかなさい。」

 

 アヤワスカに呆れられた。

 だってフェアリーの魔法、気持ち良いんじゃー!

 

 



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14話 森林地帯への旅路 二日目

 

 無事に予定通りミーニャとの一戦を終え満足した俺は大人しく眠る事にした。ミーニャも垂れる精子でスカートが汚れないよう使い捨てシートを付けたパンツを履いて就寝。

 

 アヤワスカは、やはり夜に備え不寝番をして警戒するようだったので『俺が敵意を感じれば即時臨戦態勢になる』という特性を持っていることを証明する為にも、俺が眠った頃合いに少し離れてから敵意や殺気を向けて実験でもしてみるように伝えておいた。

 ただ、やる際には、悪戯心程度だと普通に見逃して反応しない可能性も有る為、少なくとも怪我をさせてやるくらいの悪意をもって攻撃をすることと、くれぐれも接近しすぎない様に注意するよう伝えておいた。これは真横など、あまりに近い位置で殺気を向けられた場合、俺が寝ぼけて状況把握できていない状態のまま反撃が進んでしまい、寸止めが間に合わない可能性を懸念してのこと。間違ってもアヤワスカに怪我はさせたくない。

 伝えるだけ伝えた後、実験に備えてミーニャとの添い寝は諦め、念の為多少の距離を取ってスヤァと就寝する。

 

 次に目覚めた時、俺は空中に浮かぶ水の塊を切り裂いていた。

 

 切り裂いた水の塊は、魔力の流れも同時に断ち切った為はじけ飛んだが、どうやらアヤワスカは『使い方次第では死にかねないような悪戯で窒息させることができるか試してみよう』という感じの攻撃をしてみたようだ。俺が伝えた内容が悪戯は見逃し、敵意や殺気は反撃するという曖昧なものだったから、その隙間を縫うような方法をいきなり試してくるのが、なんともアヤワスカらしい。

 さらに目を向ければフェアリーの小ささを利用して隠れんぼまでしている念の入れよう。見つけられるもんなら見つけてみろとでも言いたげだが、残念ながら俺は戦ったら大体勝てちゃうだろう系チート持ち。魔力の残滓から位置を辿るなどワケもないので、アヤワスカの居る場所に向けて即座に手を振っておく。

 

「本当に対応できちゃうのねぇ……」

 

 俺の様子に居場所が完全にバレていることを悟ったアヤワスカが顔を覗かせながら呟いた。尚、居た場所は背中を向けて眠るミーニャの向こう。

 ミーニャを盾にしているとも取れるがご愛敬。

 

「おやすみぃ。」

 

 とりあえず証明できたので一言告げて眠る。

 攻撃を受けると一瞬で覚醒するが、対応が終わればきっちり睡眠欲も復活するのだ。やっぱり眠いもんは眠い。

 

 その後2回程、暇を持て余したアヤワスカに違う悪戯攻撃で起こされたが、その内の1回は近くで眠るミーニャに向けての攻撃で、ミーニャへ向かう攻撃でも俺が起きるかどうかの実験も兼ねていたようだ。

 その攻撃でも俺が目を覚ましたおかげで夜中の警戒については多少の信頼が得られた。

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

「んがっ」

 

 4回目の起床。

 ちょいちょい起こされていたおかげで寝たけど眠い。

 

「おー! ほんとだにゃー!」

 

 俺の左手が魔法の矢を握りつぶしていた。

 放ったのだろうミーニャがパキパキと握りつぶされる魔法の矢を見て、手を叩いて喜んでいる。

 

「んあぁ……おはよう……」

 

 朝の起床時間になっていたようで、まだ薄暗いと感じるような朝焼け手前の空模様。

 アヤワスカが焚火を絶やさずにいてくれたようで、寝ていても焚火の光で明るい感じがしていたので夜中と変わりない雰囲気が漂う程度には、まだまだ眠っていたい時間だ。

 だが今回の冒険は、ほぼ日が落ちると移動をやめて野営準備。野営準備ができたら飯つくって食ってヤッて寝るということの繰り返しだ。昨日はミーニャと一回しかしてないし睡眠時間だけで考えれば十分な程に取れている。もちろん邪魔されて起こされてなければの話だが。

 

 あくびをしながら、ぼけっとそんなことを考える。

 

「すごいのにゃーブレイク。」

「おう。すごいよー俺。」

「まだ寝ぼけてるみたいね。」

「んにゃ、そうみたいにゃ。」

「夜中に何回も起こされりゃあ眠くて当然だろがい。ふぁ〜あ……」

 

 軽く文句を言いつつ、朝もはよから動き始めている二人に目を向ける。

 鍋が火にかかっており、そこそこいい匂いも漂っていた。

 

「おっ? 朝メシ作ってくれたのか?」

「そうにゃ!」

「料理はミーニャに任せれば安心できるのは昨日で分かったでしょ?」

 

 昨日のミーニャのメシは美味かったので、ミーニャの作る朝メシというだけで期待から腹が減る。

 飯にありつこうと身体を動かすとベッドで寝るのとは違う固さや底冷えの寒さ、それらの影響で、どうしてもコリが生まれていた。身体を軽くほぐしながら調子を見るが、やはり少し冷え気味で筋肉が硬い気がしてならない。といっても戦ったら大体勝てちゃうだろう系チート持ちだから、戦い事態には支障ないのだがな。

 

「あ~……やっぱ野営は身体がバッキバキになるなぁ……」

「人間はそんな感じみたいね。ミーニャは温かいわよ。」

「猫獣人は体温高いからにゃあ。ほいにゃブレイク。今日はサンドイッチでもしようかと思ったんにゃけど、もうパン固くなってたし、結構寒かったから体があったまるパンがゆにしたのにゃ。」

 

 カップにパンがゆをよそって渡してくれるミーニャ。

 受け取ったカップから濃厚なチーズの香りが漂って、なんとも旨そう。

 

 アヤワスカが既に食べているパンがゆは、チーズとパンだけのようだが、俺のカップには削ぎ取った塩漬けハムとスパイスがふりかけられていてチーズの香りだけでなくスパイシーな香りも混ざっていて食欲をそそる。

 食欲につられるまま湯気の昇るカップに口をつけた。

 

「あちっ! ……は~、あったまる~……うめぇうめぇ。」

 

 そこそこ対策しているとはいえ底冷えの響いている身体にあったかい食べ物は5割増しで美味しさを感じる。

 

「んにゃ。よかったにゃあ。」

 

 しかも食ってる物を、にっこり微笑む美猫獣人が作ってくれたとなれば更に5割増しのうまさだ。あったかさと美人の手料理というアクセントで元々うまいメシが倍以上に美味くなる。

 

 ミーニャはエロくて可愛くて料理も美味い。最高の恋人だなぁ。

 

 まぁ、寝てる俺に躊躇も容赦もなく矢を撃ってこれるのは……冒険者として頼もしいとでも思っておこう。

 

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

 

 メシを食って後片付けをし早々に出発する。

 日が出ている時間内しか移動に適さないのだから、のんびりだらだらしているのはもったいないのだ。

 ちなみにロバも奮発した飯をふんだんに食っているので元気満々。水もしっかり飲んでるし塩も舐めてたから今日もしっかり働いてくれるだろう。

 

「ん~っ?」

「何よ?」

 

「いやぁ……んん~?」

「気持ち悪いわね。言いたいことがあるんなら言いなさいよ。」

 

 時々振り返って首をひねる俺を、ロバの上のアヤワスカが面倒くさそうに突っ込んだ。

 

「おう……んじゃあまぁ聞くけど、なんか逆じゃね?」

 

 昨日の夜番をしていたアヤワスカが、そのまま起きていて、ミーニャが日向ぼっこしながら寝ているのだ。

 昨日の様子から昼はアヤワスカが寝てミーニャが動き、夜はミーニャが寝てアヤワスカが動く感じだと思ったが、どうにも逆。

 

「言わんとすることは分かるわ。でもね私達コンビで交代制を組む時は、本当なら昼は私、夜がミーニャの担当なのよ。」

「あ、そうなの?」

 

「そうよ。そもそもミーニャは猫獣人だし夜の方が血が騒ぐような夜行性。本来は夜の方が元気なのよ? その性分を考えたら、そっちの方が自然でしょ?」

「は〜……さよか。それじゃどうして昨日はイレギュラーなパターンを?」

 

「あら? ブレイクったら分からないの?」

「おう。わからんぞ。」

「はぁ〜、女心が分からないことを、そう自信ありげに誇られてもねぇ……」

 

 俺の考える素振りすらない返答にアヤワスカが溜息をつきながらフワリと俺の横まで飛んできた。

 

「あんた昨日がミーニャとの初エッチだったでしょう? 私と違って、しっかり本番の。エッチする相手のことくらいよく知りたくなるのが人情ってもんじゃない?」

「あ〜……そういえば昨日は移動中ずっとミーニャと喋ってた気がするなぁ。」

「ミーニャって猫獣人にしては身持ち固い方だからね。エッチする前にしっかりブレイクのこと知って仲良くなっておきたかったんでしょ?」

「まぁ、確かに仲良くはなった気がするなぁ。色々聞いたし話したし。」

「私もブレイクが起きる前にミーニャと話したけど、アンタ結構なつかれたみたいじゃない。」

「おっ? そうか?」

 

 発情したら相手してと念を押されたし『なつかれた』と言われるのも悪い気分はしない。

 

「まぁ私もブレイクの夜襲警戒の能力を昨日ある程度見せてもらえたし、ミーニャも満足するくらいには仲良くなった。だがら私たちはブレイクのことを信用してみようって話に落ち着いたワケよ。というわけで今日から通常パターンに戻すわね。すっごい眠いけど。」

「おぉ、なんだ。俺のことを信用してもらえたのなら嬉しいな。」

 

 信用が早すぎる気がしないでもないが、美人二人の信用は素直に嬉しい。

 

「眠いならミーニャと一緒にアヤワスカも寝てていいぞ? どうせ日中はロバ引くだけだからな。もちろんなんかあったら、すぐ起こす。」

 

 上機嫌で伝えながら荷物の上で丸まって眠っているミーニャに目を向ける。

 猫の語源が『寝子』から来ていることに納得できそうな寝姿。猫獣人もやはり寝子っぽい。

 

 だが目を閉じて寝ていても、耳はきちんと起きていて、時々動いては音を探っている様子が見て取れる。

 日本に居た頃に猫は熟睡するのは3時間だけという豆知識を学んでいたから、猫獣人のミーニャも身体を休める省エネモードにしているだけなのだろうことが想像できた。昼はアヤワスカに任せていると言っていたが、実は、そう見えるだけでミーニャは常に警戒を怠ってはいないのかもしれない。流石獣人。

 

「ミーニャもなんだかんだで警戒に気を配ってくれてるみたいだしな。」

 

 俺の呟きに、ミーニャがそっと大きな目を開いて視線を一度だけくれた。

 そしてまたスっと目を閉じる。

 

「そう……じゃあわたしちょっとねる。」

 

 許可を得た途端に言葉がもう寝始めたアヤワスカ。ふよふよとミーニャの所へ飛んでいき、丸まっているミーニャに身体を突っ込んで暖を取って寝始めた。

 素直に提案に従うところに信頼感を感じないでもないが、ミーニャの肉布団はかなり羨ましい。あったかい上に柔らかそうだ。

 

 眠る二人から目を外し、前を向いてただ歩く。

 昨日は話っぱなしだったけれど、今日は黙々と歩く日になりそうだ。だが、それも悪くない。

 やはり実際に野宿をするとベッドが恋しくなってしまう。野宿中にミーニャを抱けるのは良いけれど、無駄に長引かせずに予定通りの5~6日の移動で到着できるように、今日はしっかりと距離を稼ぐとしよう。

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

 黙々と距離を稼いでいても、そこそこに警戒は怠らない。

 昨日のゆっくり進行と比べ少し早めの移動になっているとは思うが、後続の集団の距離が変わらないからだ。こうなると意図的に後続集団が速度を調整している可能性が高い。

 

 だが、その意図がどこにあるのかが分からない以上、こちらから敢えてちょっかいを出すこともない。もしかすると俺の強さを知っている人間がいて、その強さをモンスターや危険避けに利用している可能性だってあるからだ。なので今は後続よりも、すれ違う集団の方への警戒感が強い。

 当然のことながら野盗が野盗らしく襲ってくることは少ないからだ。

 

 基本的に野盗は冒険者を装ったり商隊を装ったりと工夫をする。隙を突いて襲う方が被害が少ないのだから当然だ。まぁ、野盗が化けている場合には、囮班と奇襲班がいたり、そこそこの数が周りに散らばっていたりするから俺からすれば分かりやすいんだがな。

 

「ん~……」

「……どうかしたにゃ?」

 

 俺から漏れる悩まし気な響きを耳ざとく拾ったミーニャがすぐに声をかけてくる。

 やはりミーニャは眠っているように見えて眠っていなかった。

 

「いやな、そろそろすれ違うだろう集団がいるんだけど……なんか普通の集団とも思えるけど変な感じもして判断が付きにくいんだよなぁ……」

「んにゃ? どういうことにゃ?」

 

「商隊なら斥候が先行して、その後に本隊が続く。輸送隊ならアホみたいなスピードで駆けている。冒険者ならそこそこの間隔を空けて、ある程度警戒しながら歩いてたりするから、なんとなく隊列だけでも、ある程度の感じが分かるんだが、なんか、一般人の集団っぽい感じなのに、微妙に違う気がするような、そんなよくわかんねぇ感じのヤツとすれ違いそうなんだよ……」

「んにゃ。」

「ふえ?」

 

 ミーニャが動き、その動きで目を覚ましたアヤワスカが可愛い声を漏らした。ミーニャはアヤワスカにシーツを被せてから俺の横に降り立って歩き始めた。

 

「よくわからない場合には警戒しとくに越したことはないにゃ。」

「おう、そだな。」

 

 アヤワスカは、むにゃむにゃと目をこすりながら荷物に隠れた。どうやら様子見を決めたようだ。

 ちなみに俺が本気で索敵すれば、分かる事も多いのだが、ミーニャがやる気になってくれたのだから成り行きに任せることにして、しばらく歩く。

 

 そして集団が見え始め俺は目を見張った。

 

「にゃあ……」

 

 そしてミーニャは冷めた目をしながら呆れたような声を上げ、再び荷物の上へと戻り始めていた。

 

 向こうからやってきたのは馬車。馬車なのだが引いているのは馬ではなく、男ミノタウロスが2人で引いていた。

 だが、その珍しい光景よりも馬車に目立つように付けられた派手な看板が目を惹きつけて止まない。

 

 『恵まれないサキュバスに愛の手を』

 

 そしてその横には

 

 『10,000Gのご寄付で、30分間サキュバスが感謝を捧げます』

 

 と記してある。

 

「移動……淫魔店……だと。初めて見た……」

 

 馬車を引く男ミノタウロスは用心棒も兼ねているのだろう。大きな馬車を力強い足取りでゆっくりと進んでいる。取り出しやすそうな位置にある大斧は、人を簡単に真っ二つにしてしまいそうな大きさで、その膂力が伺い知れる。

 人間では持つことも危うい武器を扱えるであろうミノタウロスが力強く引く馬車を、呆気に取られながら眺めていると、俺の様子を男ミノタウロスは軽く一瞥しただけで、そのまま歩みを進めていった。

 

 おおよそミーニャと二人組と判断し、早々に客ではないと察したのだろう。すれ違う馬車を眺めていると、馬車の窓から数人のサキュ嬢が手を振っていた。

 手を振っているサキュ嬢は綺麗な兎獣人、スライム娘、それだけでなく戦ったら強そうな女ミノタウロスなんかもチラリと見えた。きっと彼女たちは、いざという時には戦闘もできるサキュ嬢なのだろう。

 

「30分で10,000G……か。絶妙にギリギリのラインを責めてやがる。」

 

 街でこの値段設定であれば高級店かぼったくりかのどちらかだ。だが街の外の旅の途中となれば話は別だ。移動の最中で悶々とした男たちであれば、普段の倍以上の金額であっても一発お願いしたいと思わないはずもない。

 彼らが野盗という可能性も捨てきれないが、他に追跡する者の姿は見当たらないし本当に移動淫魔店をやっている可能性も捨てきれない。きっと怖いもの見たさで利用してみる冒険者もいるだろう。俺が一人だったら間違いなく利用した。値段設定も利用ターゲットも本当にギリギリのニッチな所を攻めている淫魔店。中々真似できる店じゃあない。

 

「世界は…………広いな。」

 

 俺の知らないことは、まだまだ沢山ある。

 そう痛感し天を仰ぐと、太陽がまぶしく感じられた。

 

 

 はてさて、あの馬車と出会った後続が一体どんな反応をするのか楽しみだ。

 



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15話 後を追う者たち

 移動淫魔店とすれ違ってしばらく移動を進め、やわら移動淫魔店が、後ろをついてくる連中と接触する頃合いを見計らって休憩を取った。

 

 流石の俺も移動の為に身体を動かしながらだと遠方の詳細な様子の把握が難しいからだ、荷車に腰かけて警戒網を広げ、意識を集中して二組が接触する様子を探ってみる。

 

 すると、丁度接触のタイミングだったようで移動淫魔店と後続組の両者の動きを止め対峙し、後続組の2人が交渉の為かミノタウロスに近寄っている様子が伺い知れた。

 

「おっ、タイミング良いな。さっきのミノタウロス達と追跡してたヤツらが接触した。」

「ふぅん。」

「にゃー。」

 

 反応のしようもないような二人の声。

 二人は遠方の様子を探れない以上、俺が言っていることだけしか根拠がないから、そういう反応になっても仕方ないとは思う。

 なんとなく自分だけ情報を得ていることが悪い気もしてくるけれど、なにかしらのアクシデントが起こりそうな場面なので雑念を振り払って様子を探る事に集中する。

 

「あ~……」

 

 だが雑念を振り払う必要がないくらい事態は分かりやすく動いていた。

 

 後続組の一部の動きが、どうにもおかしい。

 ミノタウロスに見つからないように、こっそり隠れているヤツがいるのは分かる。害の無い集団であっても、警戒して奇襲に対応できるように伏兵を配備する者がいることもあるだろう。だが今回は、どうにも、その伏兵の動きと交渉している人間の動きが怪しい。

 多少の用心をしての動きというよりも、どうにも交渉役が伏兵が奇襲をかけやすいように注意を惹きつけて伏兵に狙わせているような狩る為の動きに思えるのだ。

 

 男ミノタウロスが2人いて、それなりに警戒しているせいで中々隙ができていないが、この2人の注意が逸れて伏兵に揃って背を向けようものなら、一気に矢が撃ち込まれる流れになるだろう。

 

「どうにも後ろについてきてたやつらは盗賊だったっぽいな。」

「あら、そうなの?」

「あぁ。すれ違った淫魔店はぼったくり価格を掲げてたし、ここまで旅してきたなら、そこそこ金を持ってる可能性が高いからな……獲物として見逃す気はないらしい。なんかもう襲う気満々の体勢に思えるな。」

「ふぅん。」

 

 アヤワスカもミーニャも盗賊に狙われていることが確定したという追加情報に興味を持ったようだが、それでもあまり興味なさそうに見える。やはり目視できない場所での出来事だから他人事になっても仕方なくはある。

 

「ちなみに……俺一人なら事が起こり始めてから動いても向こうに参戦することができるんだけど、それを踏まえてアヤワスカとミーニャの意見を聞きたいところだな。」

「にゃ~?」

「それは、美味しいところを持っていけるって解釈して良いのかしら?」

「おう。小遣い稼ぎも今回の契約の内だ。任せとけ。」

 

 ミーニャが何も考えてないような顔で首を傾げ、アヤワスカがにんまりとフェアリーらしからぬ腹黒そうな笑みを浮かべた。俺もアヤワスカのお代官様的な笑みに応えるように越後屋の笑みを浮かべてみせる。

 

 当然のことながら襲われるであろう淫魔店を『助ける』『助けない』云々の話ではない。

 

 この世界でも『人助け』という概念はあるし、その行いは善き事であり美徳とされている。

 まして盗賊は悪であり、裁かれるべき存在。悪を裁くことは正義を掲げる事でもある。

 

 だがしかし、善い事や美徳、正義で腹は膨れないし、生きていくことが目的の場で、それらに意味や価値などありはしない。

 

 道中の危険が日常としてあり、皆がその危険を知っているこの世界において、旅とは全て自己責任なのだ。

 自己責任だからこそ、美徳を積むのも自由ではあるが、余計な危険を避けること、争いを無視することも正しい選択となる。君子危うきに近寄らず。リスクに対して元気に両手を振りながら近づく者など愚か者でしかない。

 

 盗賊やモンスターがいて襲われる可能性がある道を進む以上、各々が、そのリスクに対応できるよう準備をして旅をするのは当然のこと。

 襲われて命を失うことになった場合、襲う方が悪いのはもちろんのことだが、その程度の予測も準備もせずに旅をしたヤツも同様に悪いのだ。死にたくないのであれば死なない様に備える。それを怠って死んでしまうのであれば、それは当然の結果でしかない。自業自得。怠る者が悪いのである。

 

 故に、この世界において善意のみで誰かが助けてくれるというのは強者の余裕か気まぐれか程度の極々稀な事でしかない。

 

 旅は自己責任だからこそ自己保全と自己利益の確保が第一条件となり、無関係な他人の利益や安全などが条件に入ることはないからだ。

 

 通常、盗賊やモンスターに襲われている者がいたら、その襲われている者を餌にして逃げるか、はたまた餌に食らいついている隙を突いて襲っている者を狩るかを考える。

 餌を食っている敵は餌を食い終わるまで動かないし、餌が死に物狂いの抵抗をすれば襲う方も手傷を負い、倒しやすくなる可能性が高い。だから無関係の他人が襲われていようが蹂躙されていようが、それを無視しても利用しても問題にはならないのだ。

 

 だからこそデメリットの多い助けるという選択をする場合には、必ず助けるだけの理由が存在する。

 怪我をするかもしれないリスク、下手を打てば死ぬかもしれないという大きなリスクを負って一方に加担し助力するのだ、当然その見返りを欲しての事でしかない。ハイリスクに見合ったハイリターンが無い限り人は動かないのは自明の理。

 

 この世界は危険が多い殺伐とした世界だ。

 

 危険がある世界だからこそ『余計な事に首を突っ込む=死』を頭から外す者は少ない。この考えを忘れた途端、死ぬリスクが大きくなるからだ。そして死に立ち向かう為に自分以外の存在に対して遠慮も容赦もすることはない。

 

 この殺伐とした観念に対応できるよう、きっちりと割り切りができていないと冒険者としてやってなどいけないし、そもそも、この世界では生きてなどいけない。

 冒険者をやるというのは、明るい世界と暗い世界のどちらも行き来して生き抜く。そういうことだ。

 

「まず起こり得るデメリットを考えてみるが、さっきのミノタウロスが2人は結構強そうだったし、もし盗賊が奇襲に失敗して移動淫魔店が勝ったら、まぁ、そん時は当然のことながら俺たちに利はゼロになるってことだな。今日か明日にでも襲われる感じだっただろうけど、その盗賊が来なくなるってことだからな。」

「その逆に順当に盗賊が勝って略奪が始まった場合、その後に盗賊を狩れば丸儲けできるわよね? 戦いが終わった後に記録水晶で盗賊が略奪してる現場を撮影してから全員狩って略奪品も持ち物も、ぜーんぶ収穫する方がお得だと思うわ。だから少し成り行きを見てみたらいいんじゃない? どうせどっちが全滅するにしろ、そこそこ時間はかかるだろうし。」

 

 アヤワスカの提案に俺も少し考える。

 『順当』と言ったように、奇襲する側が負けるってことは、そうそう無いことだと思える。奇襲するのは勝てると見込んだからこそ奇襲するのだから。

 

 移動淫魔店側に助太刀しても、俺のチート能力を使えば『助太刀があったおかげで楽に勝てた。怪我がなかった』くらいには活躍できるとは思うが、それだと精々盗賊の首を狩ったくらいの礼金を淫魔店からもらって終わりになるだろう。利はあるが、そこまで多くはないはずだ。

 

「んぅ~……アヤワスカの言う通り、とりあえず観察しとくのが良い気がするなぁ。」

「うん。もし盗賊が弱くてミノタウロスが優勢になりそうなら感じになったら、その時に助太刀で参加して少し礼をもらう感じにすれば?」

 

 アヤワスカと方針を探り、ある程度方向性が定まった。

 

「んにゃー、悪いやつらなら、ぜーんぶ捕まえたら得だとミーニャは思うにゃ!」

 

 だが、俺とアヤワスカが『だいたい方針決まったな』と沈黙した途端、元気の良い声が響いた。

 声に目を向けるとミーニャがニコニコと上機嫌。

 

「ん~? ミーニャ? そりゃまたなんでだ?」

「だって盗賊は捕まえたらお金貰えるにゃ。ザコだったら首じゃあ、あんまりお金にならないにゃ。ザコは捕まえるとお得にゃ!」

「おう、そうだな。」

 

 当然のことながら、生きている犯罪者は『その後の利用価値がある』為、報酬が上乗せされる。この世界では法律が整っている為、犯罪者という証拠があれば首だけでも報酬は出るが、お尋ね者でもない限り、犯罪者である証拠を残すことが意外と難しかったりすることもある。だから盗賊は殺しっぱなしで放置ということも間々あったりする。

 

「ブレイクは後ろからついてきてる連中が盗賊って言ってたにゃから、きっと街からついてきた盗賊にゃ。」

「んだな。」

「街の中に拠点を構えているタイプの盗賊ってことにゃ。お宝の隠し場所があったとしても街の中にゃ。」

「まぁ、そうだろうな。稼ぎは拠点に隠してるもんだろうしな。」

「だから捕まえた方が得にゃ!」

 

 言わんとすることが分かるような、分からないような気がする。

 

「あっ! そうよ流石ミーニャだわ! ブレイク。捕まえた方が得よ!」

「おうっ! ……?」

 

 一人だけ理解が遅れる孤独感。

 盗賊の拠点にお宝があるから、盗賊全員ひっ捕まえて、もう一回街に戻って回収しようってことだろうか?

 

「んもう、さっさと行ってミノタウロスを助けた方が『収穫ゼロ』と『略奪待って全取り』の天秤を計るより楽に儲かるって言ってるのよ! 後味もずっと良いしさ。」

「んー! よしっ! 詳しく頼む!」

 

「もう盗賊と淫魔店が接触してるんだろうから簡潔にまとめるわよ?」

「おう! すまんな!」

 

「要は、盗賊をひっ捕まえてミノタウロス達に高く売りつけるのよ!」

「……うん?」

 

 なんとなく繋がらず解釈につまって首をひねると、アヤワスカが俺の目の前にフワリと飛んできて教鞭を振るい始めた。

 

「いい? まず私たちが盗賊に襲われても記録水晶で襲われる様子を取ってから殺して首の報酬をもらうのがメインの考えになるじゃない? 盗賊を連行するのは大変だし、わざわざ連行なんてして『盗賊捕まえましたー』って主張してたら別の盗賊に襲われる可能性も低くなるからね。」

「うん。そうだな。」

 

「でも当然のことだけど連行した方が報酬は高い。そして、それはみんな知ってる。さっきのミノタウロス達も知ってる。だから盗賊を全部捕まえたら、私たちが連行しなくても街に向かうミノタウロス達に連れて行ってもらうことができるわ。彼らに盗賊を高く売ればいいのよ。」

「うん……うん?」

 

 なぜ連れて行ってもらえると確信できるんだ?

 分からないことは聞いてみるに限る。

 

「でも、ミノタウロス達が連行してくれるのか? アヤワスカも自分で連行は大変だって言っていたし首を刎ねて終わりになる可能性もあるんじゃないか? なんてったってミノタウロスだし。」

 

 パワーこそが正義(ジャスティス)のミノタウロスだぞ?

 

「高い報酬を手に入れることが確定すれば、サキュ嬢の中にいるんだろうリーダーが止めるはずよ。連行だって私たちが4日連行するのと、1日連行するだけの彼らとだったら大変さは違うし、労力と儲けを考えれば、まず乗るでしょ。」

「ふむ。」

 

「それになにより奇襲されるってことは、襲う側が勝算あってやってることで襲われる方は当然大きな被害に遭いやすいのも常識でしょう? 私たちは、それを防いで被害を最小限に抑えた上、儲け話を提案してくれる有難い立場になるから交渉もしやすいはずよ。」

「……一理あるな。」

 

 頭の上を言葉が流れ始め、なんとなくの理解しかできていないが、とりあえず捕まえた方が儲かりそうな気がしてきた。

 

「というワケでブレイクは、淫魔店が大きな被害に遭う前に盗賊を全部捕まえてきて! 捕まえ終わる頃に私かミーニャのどっちかも合流するから! さぁ動いて!」

「よしきたっ!」

 

 なんとなくで納得しておく。

 時は金なりというが、盗賊と淫魔店が一触即発の状態ならば、尚のこと考えるよりも早く動くに越したことはないだろう。

 

 俺は足に力を籠め、飛び出した。

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

「いやいや、高いにもほどがあるだろう? こっちはそこそこの人数がいるって言ってんだから、もっと割引なりしてくれても良い話じゃないか?」

「アホなことを言うな。人数がいるならサキュ嬢の負担が増えるってことだ。負担が増えるのに割引をするなど道理が通らん話だろうが。」

「おいおい、あんまり頑固なことを言うなよ。こんだけ高い値段ついてんだ。こっちは誰も利用しないって選択だってあるんだぞ? なにせこちとら街から出て、そんな時間も立ってないからな。出る前に街のお気に入りサキュ嬢でたっぷり楽しんできたやつが多いんだ。『それじゃあさようなら』って話もあるってことを忘れんな。そうなりゃお前らの儲けはゼロだぞ。どうだ? 多少割引しても、大きく稼ぐ方が利口ってもんじゃないか?」

「それならそれで構わんぞ? ウチのサキュ嬢は街のような(ぬる)い環境で生きていないサキュ嬢だ。街のサキュ嬢とは全く違うサービスを受けられるかもしれない絶好のチャンスを逃すだけだからな。」

 

 商隊のような恰好をした男が二人、男ミノタウロスの一人と話をしている。

 男ミノタウロスのもう一人が、しっかりと警戒をしていて中々隙がないので襲う機会を掴めていなかったようだ。まだ戦闘は起きていない。

 

 俺が様子を探る限り、商隊のような恰好をした男は金額交渉をする一般人を装っているが、離れて見ている7人の仲間と、隠れて奇襲の機会を探っている伏兵5人の気配から、やはり盗賊だと確信できた。なにせ今もミノタウロスの隙を探って弦を引いているのだから。

 

 さて、合計12人の盗賊。

 もうそろそろこの商人のような恰好をして交渉している盗賊は、物別れついでにケンカをふっかけるようなフリをして見張っているミノタウロスの注意を引き、伏兵からの奇襲が始まるといったところだろう。

 

 さっさと行動するとしよう。

 

「こんにちはー。」

 

「あ?」

「ん?」

 

 俺が露骨に水を差すように会話に割って入る。

 当然ながら、いつ、どこから現れたと言わんばかりの顔の男たち。

 

 俺は馬車の窓から顔をのぞかせるサキュ嬢に手を振ると、流石サキュ嬢。ウィンク付きで手を振り返してくれた。

 

「なぁミノタウロスのにーさん。俺さっきすれ違った者だけどさ、今って記録水晶でちゃんと撮ってたりするかい?」

「あぁ。当然だろう。なんだお前?」

 

 記録水晶は映像や音声を記録できるビデオのようなもの。要はこの場で分かりやすく言うなればドライブレコーダーのようなものだ。

 間違っても善人を殺すという罪を犯すわけにはいかないので、相手が悪人であるという一目で分かる証拠が必要なのだ。

 こういう危ない橋を渡っている移動淫魔店ならトラブルに遭いやすいだろうし客と話す時には記録していると思ったが、やはり記録していた。好都合だ。

 

「ミノタウロスのにーさん方が弓で狙われてるの気づいて無さそうだったから忠告に。あと盗賊相手の助太刀にきた。」

 

 俺の言葉に一気にミノタウロスの顔つきが変化した。

 

「おいおいおいおいおい! ちょっといきなりとんでもない言いがかりは止めてくれよっ! ミノタウロスのあんたらも、こんなワケの分からないヤツの言葉を信じるとか、どうかしてるぜ!」

 

 交渉役の盗賊が慌てて声を上げ、おちゃらけ者か道化師かとも思えるような大袈裟な動きで場を和ませようとする。

 だが一段警戒の増したミノタウロスには通じなかった。

 

「それによう! こいつ助太刀って、なんの武器も持ってねぇんだぞ!? どんだけ鈍いやつでも(たち)の悪い冷やかしってことぐらい、すぐわかんだろ!?」

 

 イラついたような男が俺に歩みを進めてきたので、手の平を向けて制止する。

 

「おっと、それ以上近づくなよ? 警告だ。それ以上近づけば敵対の意思ありと見て行動を開始する。」

 

 一瞬だけ盗賊は止まった。

 

 一瞬の制止。

 分水嶺。

 盗賊たちの運命の。

 

 交渉役は仲間と一度だけ目くばせをし、すぐに動き出した。

 

「……何を言ってやがんだ。最初からケンカ売って敵対しようとしてたのはお前の方だろうが!」

 

 そう言って俺に殴りかかってくる盗賊。

 

 当然ながら、戦ったら大体勝てちゃうだろう系チート持ちの俺。殴ると見せかけて暗器を手にしているのを見逃さない。そして殴られるワケもない。

 右手首を握り、肘関節を捻ると、すぐに相手は膝をつき、そして、その手にもった暗器が煌めいた。

 

 煌めいた暗器は、拳の先に突き出たようなナイフ。プッシュナイフ。

 

「ほい。殺す気満々の証拠。ははっ、こっちは素手って自分で言っときながらコレはどうよ?」

 

 事態が動いたことで、すぐにミノタウロス達めがけて伏兵たちの放った矢が飛んでくる。

 

 だが飛んできた5本の矢は全てが壁に当たったように空中で壊れた。

 

 ミノタウロスの2人も完全に相手が敵であることを把握したようで、すぐに大斧を手に取り、もう一人いた交渉役の盗賊に切りかかる。

 

 だが、その大斧も大きな音を立てて空中で止まった。

 

「あー、ゴメン。盗賊全員結界で囲ってあるから、向こうから攻撃はできないし、こっちからも攻撃はできないんだわ。」

 

 伏兵含め、盗賊たち全員が逃げだせないように結界で囲んでおいたのだ。

 

 結界を縮めてゆくと、何かに押されるように盗賊たちは押され、やがて一ヵ所に集められた。まるで透明な牢獄に押し込められたように。

 

 関節を決めていた盗賊は膝で組み伏してあったので、結界に穴をあけて透明牢獄に投げ入れると、あっという間に鎮圧は終わった。

 

「ほい、鎮圧完了っと。」

「へぇ……アンタ、面白い技を使うね。」

 

 一仕事終え満足していると、妙に高く可愛らしい声が馬車の中から響いた。

 

 



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16話 移動淫魔店の主

「へぇ……アンタ、面白い技を使うね。」

「あ?」

 

 唐突にかけられた声に視線を向けると、そこにあったのは馬車から顔を覗かせる幼女の姿。

 日本生まれの為、どうしても外見で印象を決めてしまいがちになるが、おおよそ状況を考えれば普通の幼女ではなくハーフリングだろう。

 

 ハーフリングはドワーフやホビットのような小柄な種族で、人間の俺から見ると大人でも人間の子供のような体型や見た目をしているというのが最も大きな特徴と言える。身体は子供、頭脳は大人! という感じの種族だ。

 外見以外の特徴としては小さな手を器用に操るので細かい作業が得意な者が多い。そして大抵のハーフリングは用心深い性格をしている。

 臆病遺伝子を強く持っているとされる日本人としては『備えをきちんとしないと落ち着かない』とか細かなところで共通する感覚をもっているように思えるので話は合いやすく気の合う種族の一人だ。

 ただ、ハーフリングは話していると、年を重ねても子供の外見という持前の特徴を活かす狡猾さもしっかり持っていると感じないでもない。

 これまでの人生ならぬハーフリング生で積んだ経験をフルに活かし、尚且つ外見の特徴もフルに活かして、とことん損をせず生き抜いてやる。そんな意思を感じる種族でもある。なので、人間よりも長く生きている者が多いし、そこそこ仲良くなると大抵の場合は話の中でかなり年上であることを、やんわりと匂わせてくる。

 ただし、その匂わせた年齢が本当にそうなのか、それともハッタリ(ブラフ)なのかを確かめる術は普通の人間は持ち合わせていない。

 

 可愛らしいだけでなく、いざという時には利用できるものは、なんでも利用するくらいの狡猾さを兼ね備えた種族。それが俺の感想だ。

 

「あー……ハーフリングのアンタが、この淫魔店の主人か?」

「主人っていうよりも交渉役だよ。想定外の事態とか面倒な交渉は、あたしみたいな鉄火場で矢面に出れないヤツがする。その方が公平だし話もスムーズに進むからね。」

 

 戦闘要員ではないという事を全面に出しながら人懐っこい笑顔を浮かべ馬車から降りてくるハーフリング。

 そして俺は、その姿を見て膝をついた。

 

 女児用のワンピースに身を包み、その無邪気な天真爛漫さを笑顔とともに表現することを忘れない。子供の持つ穢れの無い純真さのような物を、しっかりと武器として、その身に纏わりつかせているのだ。

 

 このハーフリングは()()()()()

 ()()()()()ヤツだ。

 

 自分の事をしっかりと知っていて、相手が求めるモノもしっかりと知っている。

 そして自分の持っている武器を使うことに何のためらいもない。

 そういう奴は強い。

 

 こういう分かっているヤツと交渉するのは百戦錬磨の手練れでなければ相手に良いように扱われてしまうのがオチ。そしてコイツは他人を良いように扱うことに楽しみを見出しかねないタイプのヤツだ。姿を見て、すぐに悟った。

 コイツと話したら、きっと俺は『よしよしわかったわかった』と言ってしまうかもしれないと。『何が欲しいんだいおじょうちゃん』と言ってしまいかねないと。だから話すべきではない。

 

「ね? おにーちゃん。わたしとおはなししよ?」

「うん!」

 

 子供のような言葉遣いで声をかけてきたハーフリングに、俺はただ笑顔で快く応える事しかできなかった。

 

 なぜなら可愛いは正義だからだ。

 こんな初心(うぶ)そうに見える娘が、あくどい事とか考えるはずないんや。ピュアッピュアなハートフルで他愛のない話するんや。ただ俺とお話したいだけなんや。

 

 

 

「って、つられてたまるかい!」

「こっちかて、こんなんで引っ掛かると思ってないわ。」

 

 まさかのジャブでノックアウトされかけたが、なんとか堪え、額を拭って立ち上がる。

 若干ハーフリングが笑ってる気がしないでもないが気にしない。

 

「え~っと、まぁ俺の仲間もこっち向かってるから交渉なら後から来た方と話してくれ。俺はただの制圧係だからな。交渉は別だ。」

 

 アヤワスカが色々言っていたけれど完全に理解しきれているかと言われたら怪しいし、適当に話を進めてアヤワスカの望むことと俺のやる事が食い違ってたら面倒だからな。

 追っかけてくると言っていたのだから、それなら最初から話を全部任せるのが一番賢い選択だ。

 

 それに俺は別に今回の旅で報酬をメインに考えていないしな。どうせ移動先の高難度クエストで報酬を稼げるし、今回のお小遣い稼ぎはアヤワスカ達の取り分になる契約になっている。彼女たちが話すのが道理だろう。

 

 なにしろ彼女たち主導でやりたいようにさせていれば、夜のサービスもずっと良くなるであろう可能性が高いからな。これが最良の選択なのだ。

 

「わかったでー、でも、ある程度は話きいてるんやろ? わざわざ追っかけてきて盗賊を拘束してるくらいやしな。やることに納得してないはずないし。とりあえず拘束するんなら手伝ったるさかい、そいつら縛りながらでも少しだけ話くらい聞かせてーな。あ、ちなみにウチはソフィー言うんや宜しくな。おーい、お前ら、はよこいつら縛るもんだしーや。」

 

 俺の交渉を断る言葉を聞いても、まったく話を切らせる気は無かったらしく、ソフィーと名乗ったハーフリングは口を動かしながらテキパキと行動を始めた。

 そしてソフィーは透明牢獄に押し込まれている盗賊たちに目を向けて首を傾げる。

 

「なぁ、アンタ。アレはなんかギッチギチになってるけど一人ずつ出せるん? 一人出そうとして全員ぼーんと襲ってきたりせぇへんの?」

「あぁ、俺が引っ張りだせば一人ずつ出せるな。」

「ほーん……でもあいつらめっちゃ元気やけど、そんなん引っ張り出して怪我しーひんの?」

「怪我しーひんわ。」

 

 言葉が移った。

 なにこの訛りのクセの強さ。

 

 俺の変になった言葉使いに対して、関西人なら『急に気持ちわるぅ!』とか不機嫌になりそうなところだが、ソフィーは一向に気にするような素振りもなく口を開いた。

 

「わかった。ほなちゃっちゃと出して縛ってこか。アンタらも手伝ったりーや。」

 

 男ミノタウロス2人がソフィーに顎で使われたが、大人しく大斧を仕舞い俺に『どうしたらいい?』的なボディランゲージを見せてきた。

 

「そんじゃあ、俺が一人ずつそっちに引っ張り出すから連行できるように服とか剥いて縛ってもらっていいか? 暴れたら遠慮なくぶん殴って黙らせる感じで。」

「おう。」

「わかった。」

 

 ミノタウロス達の了解を得たので、早速、結界に穴をあけ、盗賊の一人の襟首を掴んで透明牢獄から引きずりだす。

 当然、武器を手に持っていてまだまだ元気な盗賊は反撃してくるが、すまんな。俺、チート持ちやねん。と、適当にいなして武器を落とさせて、そのままミノタウロス達の方へと腕だけで一本背負いする。

 背中から落ちた盗賊は背中を激しく打ち付けて悶えるが、その隙にミノタウロス二人に服を剥かれ始めた。

 

「や、いやぁー!」

「うるせぇ!」

「ぐえ」

 

 筋骨隆々のムキムキミノタウロス。しかも二人がかりで裸に剥かれれば盗賊だって乙女のような叫び声をあげることもあるだろう。なにせムキムキマッチョメンなミノタウロスに無理矢理脱がされるのだ。貞操の危機を感じた声が出ても違和感はない。

 だが当然のことだが男ミノタウロスも別に男の裸を見たいが為に脱がしているのではないのだから反応にイラっとすれば殴りもする。

 

 何故盗賊の服を()ぎ、裸に()かせているのかと言えば(ひとえ)に安全の為だ。服のどこに武器を隠しているかもわからないし魔法の補助具を持っているかもわからない。指輪が何かの発動体かもしれないし、足首や手首に暗器を隠している可能性もある。だから完全に無力化しておく為には裸に剥く必要があるのだ。

 そして副次的な効果として、ある程度、文化に触れている者であれば裸にされてしまうと極端に不安になり易い状態になり逃げ出しにくくなるという効果もあったりする。それに盗賊の服でも物によっては金になるから、よりお得。

 どっちが追剥(おいはぎ)か怪しくなる気がしないでもないが、逃げ出さないように足を折ったり、恐怖感を植え付ける為に見せしめで生皮を剥いで遊んだり、拷問魔法の実験台にしていない分、まだまだ可愛げがある対応だろう。

 

 剥かれた第一盗賊は人族だったようで、後ろ手に縛られ足も必要以上に開かない程度に縛られて転がされた。盗賊を全員同じ状態にしたら、最後に全員の首をロープでつないで縛って連行縛りの完成だ。

 早速、次に剥くのを誰にしようか盗賊を見回す。流石に総勢12人の盗賊ともなれば色んな種族が入り乱れバラエティに富んでいる。パッと見ただけで獣人、悪魔、単眼、ゴーレム、リザードマンなんかも目につく。悪魔と単眼は魔法を使いそうに思えるし連行を考えると、さて、どうしたものか。

 

「魔法使い用の拘束具もあるでー。」

「おぉ、用意がいいんだな。使っていいなら使わせてくれ。もしかして転送魔法とか魔法陣もあったりするか?」

「ははは、あるわけないやろ。」

「ですよねー。」

 

 拘束具がミノタウロスの手に渡るまで待機もなんなので、その間に魔法を使わなそうな獣人を一本釣り&一本背負いでミノタウロスにご献上。

 

「はー豪快やなぁ……暴れる獣人を気にもせんとか、やっぱり強いんやねぇ。」

「まぁそこそこ強い方だな。」

「で? で? わざわざ助太刀して拘束してるんやから、この後どうする気なん?」

「だから俺の仲間もこっちに向かってるし、こいつら全員を拘束し終わるくらいには多分合流するだろうから、もうちょっと待っててもらえないか?」

 

 剥かれる獣人の様子を眺めながら適当に答える。

 フッサフサの犬獣人。フッサフサやんか。

 

「おしえてよう、おにいちゃぁん。ちょっとだけでいいからぁ。」

「盗賊買わない? って話するらしい。」

「ほかほか、なるほどなぁ。まぁそうやろなとは思うてたわ。」

「はっ!? 俺は今いったい何を……」

 

 微妙な関西っぽいノリに乗せられてしまった気がしてならない。

 まさか魔法で思考誘導が……

 

「いや別にウチ特になにもしてへんで。」

「うん。知ってる。」

 

 魔力系の催眠だの思考誘導だのであれば、俺は普通に弾く。

 単純に『おにいちゃん』という言葉に魅力があっただけのことだ。

 

「まぁアンタらは、これから遠出、ウチらはもうすぐ到着やしな。どうせなら連行させて儲けたろってなるわな。んで――」

「なぁ、俺が盗賊の仲間とか、別の盗賊って見方はしないのか? 全員縛り終わったらあとに襲うかもしれんと。」

 

 ソフィーの話のペースに乗せられそうな気がしてきたので不穏な言葉で会話をぶった切っておく。

 警戒心を煽るような言葉を言っておけば多少なりと言葉も詰まるだろう。

 現にミノタウロス達から向けられる注意が、さっきよりも増している。

 

「あっはっはっは! んなわけないやろ!」

 

 だがミノタウロス達とは真逆にソフィーは面白そうに笑い始めた。

 

「アンタが盗賊やったら最初すれ違った時に何かしらしてるやろ? どうやったかは知らんけど、わざわざ『そいつら盗賊やでー』って言う為に追っかけてきて、んで今、盗賊縛るん手伝ってるしなぁ。それに襲ってきた連中は、まずアンタにしっかり殺意を向けてたんやし、そいつらの仲間ってことはないやろ。」

 

 ケタケタ笑いながらツッコミを入れてくるソフィー。

 

「それにアンタが別の盗賊やったらウチらが無傷なのがおかしいんちゃう? やり合ってクタクタになるの待つか、その盗賊と一緒くたにぎゅうぎゅう詰めされてるのが普通やろ。つーか、なによりも敵意も殺気もまるで感じんし明らかにこっち側や。面白い事いうなー。」

 

 ソフィーの言葉でミノタウロス達の注意が『それもそうか』と言わんばかりに霧散した。

 

「えっ? ……もしかして真面目に『えっ!? おにいちゃんは私たちの敵かもしれないの!? 嘘よね?』とか可愛らしい感じで返した方が良かった? やりなおす?」

 

 『大丈夫? おっぱい揉む?』的な優しい感じで声をかけてくるソフィー。

 

「いや結構です。」

「『結構です』って言葉はイカン思うでー? どっちとも取れるし。どっちか分からんわ。分からんし言っとこか?」

 

 笑いながらバンバンと叩いてくるソフィー。

 俺、わかった。このハーフリング。俺より大分年上だわ。

 

「はいはい。ややこしい事言ってすみませんでした。そうです。盗賊じゃないですー。ただの冒険者ですー。」

「ただの冒険者ってこともないやろ? そんだけの腕あったら。」

「いーえー、一介の冒険者ですー。」

 

 とりあえずけん制が無理ならやさぐれてみる。

 

「そない分かりやすう拗ねんでもええやんか?」

「はぁー? 拗ねてないですけどー?」

 

「おにいちゃん。もしかしておこっちゃったの?」

「そんなことあるわけないじゃないか。」

 

 無理だった。可愛いに抗える男など存在しない。

 

 やさぐれも、けん制もまるっと無視される程度に完全に話のペース握られていることが流石に理解できた。

 おおよそ俺の性格も多少読み取り終えたのだろうソフィーは、この拘束中も交渉についての追及の手を緩めることはない気がしてならない。

 

「はぁ……でもほんと触りしか聞いてないぞ?」

「ありがとなぁ。触りで全然かまへんかまへん」

 

 なので、適当に話を合わせることにする。

 決して相手を続けるのが面倒になったわけではない。

 

 どれだけ俺がチート的に強くなっても、口喧嘩とかの強さって別次元の話よね。

 

「んじゃあ早速聞くけど、とりあえずその後から合流する仲間って、女? すれ違う時いたのは女の猫獣人やったと思うんやけど、男が来たりはせぇへんの?」

「女だぞ。」

 

 アヤワスカが来るかミーニャが来るか分からないが、どっちが来ても女だ。

 

「そっかー残念やなぁ……もし男が来るんやったら報酬にウチのフルコース接待を組み込むって手も使えたと思うんやけどなぁ。」

「フルコース…………接待……だと?」

「せやで? ウチのサキュ嬢全員でのフルコースや。」

 

 馬車に目を向けると、馬車から降りて様子をうかがっている綺麗な兎獣人と、女ミノタウロスの姿。馬車の中のスライム娘。全員が全員、目が合うだけで扇情的な表情や仕草を返してきた。

 

「フルコースやからな……当然ウチも相手するで?」

 

 聞こえた声の方に目を向けると、そこには無邪気な微笑みのハーフリング。

 

「ねぇねぇおにいちゃん。おいしゃさんごっこってなぁに? しってる?」

「知ってる知ってるーっ!」

 

 



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17話 交渉

「ねぇねぇおにいちゃん。おいしゃさんごっこってなぁに? しってる?」

「知ってる知ってるーっ!」

 

 お医者さんごっこ。

 それは、魔法の言葉。

 

 お医者さんごっことは、いわゆる『ごっこ遊び』。

 おままごとのように役割を演じて遊ぶという幼児の遊びのことだ。

 

 この『おままごと』の『まま』は(メシ)の事を指すように、一般的な『おままごと』では家庭などでの食事のシーンなどの日常を演じて遊ぶことが多い。

 誰かがお父さん役を演じ、誰かがお母さん役を演じ、誰かが子供やペットなどの役を演じて、ありきたりな日常を模倣する。

 子供は日常を模倣することで生活様式を反芻し大人や自分の在り方を学んだり、はたまた想像力を働かせて日常で起こり得る未来を具体化させたりと、知育の面からみても非常に有効な教育的な遊びだ。

 

 『お医者さんごっこ』は、やはりごっこ遊びの一種で知育の役に立つ遊びではあるのだが、知育の中でも別の側面を持っている。

 

 このお医者さんごっこでは、触診の模倣など一緒に遊ぶ相手の脱衣を見たり、身体に触れることも多く、子供ながらに『身体のつくり』を学ぶ機会にもなるのだ。幼いながらにそうして男女の身体のつくりの差を学び、性差など、性に関わる知識を得るという側面がある。つまり『性的に一つのステップを上る』切っ掛けともなる遊びでもあるということ。

 これはもちろん子供同士の場合だが、子供に乞われて大人が相手をする場合等もあり、子供と大人の関係でのお医者さんごっこの場合、大人であっても身体的接触という点で非情になんとも言えない気持ちになり易い遊びでもあったりする。

 

 そして通常、その『なんとも言えない気持ち』には照れや恥ずかしさを覚えたりするものだが、そこに劣情を覚えるもいるのだ。

 

 その劣情を覚える者は単純に幼い身体に興奮するなどの性的な志向を持っている場合もあるが、『年端もいかない子に、いけないことをしている』という背徳感であったり、自身が幼児期に退行して倒錯的な興奮を覚えたり、無知な存在を自分好みに教育したりする支配的快感、無垢な存在を汚すような嗜虐的快感であったりと様々な思惑が絡み、それが複雑な快感を醸し出し快楽へとつながる。

 

 つまり『お医者さんごっこ』とは、子供の遊びでありながら大人であっても愛してやまない者がいる。そういった遊び。プレイなのだ。

 

「知ってるー! お医者さんごっこ知ってるー!」

 

 お医者さんごっこ未プレイだった俺。

 どういうプレイか知ってるので気になります。

 魔法のあるこの世界でのお医者さんごっこ。触診はどこまでが触診なのでしょう。治療はどこまでが治療なのでしょう。気になります。大変気になります。

 

 なぁに相手は子供に見える大人だから倫理的に問題もない。

 だって大人対大人なんだもの。立派な女性なんだもの。

 大人の男が大人の女に劣情を覚えるのは自然な事。

 だからソフィーとお医者さんごっこしたいでござる。

 

 気が付けば、そんな思いを全力で言葉に出していた。

 

「はっ!? また、俺の口が勝手に、クッ! 今の俺は……俺じゃないっ!」

「いやだからウチなにもしてへんからな? 全力でノッてボケ倒すんやめーや。」

 

 ボケたつもりはなかったが、なんかソフィーが普通に話してくれたから助かった。

 

「ふぅ……紙一重だったぜ……」

「まぁ、アンタは話にノってくれそうって事が分かったしええか。」

「の、のらん! のらんぞー!」

「うーわ、こない感情こもってない言葉初めて聞いたわ。」

 

 少し引きつつもソフィーは軽く愛想笑いをした後、何かを思い出したようにニヤリと笑った。

 

「ちなみにウチのスライム娘なんやけどなぁ? 前立腺刺激プレイが得意やから未体験やったら未知の快感に悶えられるでぇ? 挿入()れながら挿入()れられる快感刺激しまくりプレイ。どや? 興味あらへん?」

「あ。僕そういうのいらないです。」

「急に素面(しらふ)になるなや!」

 

 ソフィーのお誘いに水ぶっかけられたくらいには冷静になれたので、新しい盗賊をミノタウロスに投げながらソフィーの話を受け流す。俺はアハンケツイクに興味などない。

 

「あせったわー、なに急にスンとしとんねんな。いや、ほんとイキ過ぎてスゴイんやで?」

「断ったのになぜ勧めるぅっ!」

 

 ソフィーがスンとした。

 

「そら常連になるからや。」

「えっ? …………マジで?」

「うん。驚きのリピート率。」

 

 スライム娘に目を送ると、アナルプラグのような形にした指先をブルブルと小刻みに震わせながら舌なめずりしていた。

 

 興味など……なぁいっ!

 スライム娘にアナルほじられてメスイキなど興味……なぁいっ!

 

 しかし……常連になるくらいのメスイキとはいかに?

 ふと盗賊を剥いているミノタウロスの二人に目が向く。

 

「もしかしてあんたら……」

「「 …… 」」

 

 俺の言葉を作為的に無視した様子で黙々と盗賊を剥くミノタウロス。

 

「なんか言えや!」

 

 あからさまに無視しすぎているので、つい声をかける。

 すると盗賊の服を剥き終わったミノタウロスが、ゆっくりと立ち上がって俺に近づき、そっと肩を叩いて暖かな眼差しを送り、そして定位置に戻っていった。

 

「いや! なんか言えやっ!」

 

 だが俺の言葉には生暖かい眼差ししか返ってこなかった。

 どうなん? もしかしなくても、このミノタウロスの二人も経験済みなん? という思いが止められないが『はよ次の盗賊よこさんかい』的な空気を作られて聞くことはできなかった。

 ソフィーに色々と探りをいれながら盗賊を剥いて拘束を進めていると、あっという間に全員の拘束が終わり、そして俺の気配察知に引っ掛かる存在に気がつく。

 

「あれ?」

「ん? どしたん?」

「いや来ると思ってた仲間だけど、予想外の方が来た。」

 

 俺が目線を送った先にソフィーも目を送ると、スタタタと軽快に走って、こちらに向かってくるミーニャの姿があったのだった。

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

「にゃー!」

 

 まるで『おっす! 久しぶりー!』とでも言わんばかりの笑顔で片手を振りながら親し気な顔で近づいてくるミーニャ。

 

「あの猫獣人がアンタの仲間なん?」

「おう。」

「なんや変な顔しとんなぁ?」

「おう。交渉役できるかちょっと不安で。」

「はぁ?」

 

 そんなことをソフィーと話しているとミーニャが完全に合流した。

 

「思ったより遠かったにゃ。ブレイク早すぎにゃー。」

「おうそうか? ごめんなぁ。」

「この距離だったら、やっぱりミーニャが来てよかったにゃ!」

「あ。そっか。」

 

 アヤワスカはフェアリーだ。中距離走くらいの距離が離れているのであれば、こっちに向かってくるのは、なかなか難儀することだろう。おおよそアヤワスカの魔法か何かで俺までの距離を辿ってミーニャを向かわせることにしたに違いない。

 

 念の為アヤワスカのところまで警戒網を広げ、その先にも敵影が無いかを探っておくが、しばらくはアヤワスカに留守番を任せていても問題なさそうだ。

 

「アンタ名前ブレイクっちゅーんか。」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「言ってへんで~。ウチ名乗り損やったんやで?」

「そっか悪かったな。俺はブレイクだ。」

「で、あちらがミーニャさんやな?」

 

 ソフィーが視線で紹介しろと促してきた。

 

「あ~、ミーニャ。こっちの人が交渉役らしい。ソフィーっていうんだ。」

「そっかー! ブレイクの仲間のミーニャにゃ! よろしくにゃ!」

 

 いつもよりも元気そうな能天気全開の自己紹介。そしてはじける笑顔。

 やはり猫獣人は可愛い。

 

「ソフィーや。よろしゅうに。」

 

 ソフィーもしっかりと笑顔を返し二人は握手をした。

 

「ほんで? ブレイクはんから、あんさんが交渉役って聞いとるんやけど、それでええんかな?」

「そうにゃー。ミーニャ交渉役にゃ!」

「ほなら、今回の件、どうするか話しよか。」

「にゃ!」

 

 『うん』と言っているだろうことが容易に分かる頷きよう。

 そしてミーニャは元気に笑顔で口を開いた。

 

「有り金全部で勘弁してやるのにゃ!」

「はぁ?」

 

 ソフィーよりも俺が驚く方が早かった。

 



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18話 交渉とは?

 

「有り金全部で勘弁してやるのにゃ!」

「はぁ?」

 

 俺が驚きの声を上げているにも関わらず、まったく気にする様子もなく逆にフフンと誇らしげに胸を張るミーニャ。

 そして当然のことながらミノタウロスが片付けた大斧に近づいていった。なにせミーニャの要求は、もはや盗賊のような要求にも聞こえる。警戒だってするだろう。

 

「いやいやミーニャ、いきなり何言ってんの? カツアゲなの? それとも盗賊なの?」

 

 突然の盗賊宣言に妄想していたお医者さんごっこもスライム前立腺アハンケツイクも吹き飛び、焦りながら口を挟んだ。

 

「ニャ? もしかしてブレイク盗賊相手に活躍できなかったにゃ? にゃあ~……そうしたら有り金全部は諦めるにゃあ……」

 

 しゅんと落ち込むミーニャ。

 

「いや活躍はしたよ? がっつり捕まえる手伝いしたし、いや、むしろ手伝いって言うよりは彼らには拘束する時ぐらいしか手伝ってもらってないくらいには活躍したよ?」

「にゃ! なら有り金全部で勘弁してやるにゃ!」

 

 またも胸を張るミーニャ。

 

「いやいやいやいや! だからソレ完全に盗賊の要求になってない?」

「盗賊じゃないにゃ。交渉にゃ。んにゃ? 交渉に見えないかにゃ?」

 

 首を傾げるミーニャに俺も思わず首を傾げる。どうやったらカツアゲ以外に見えると?

 

「ブレイクはんブレイクはん、まぁ、ちょい待ちぃな。とりあえず要求は一旦置いといてやな。まずはお互いに現状を把握しーひんか?」

 

 無茶な要求をされたにもかかわらず人懐っこい笑顔で口を挟んできたソフィー。ソフィーの様子から、とりあえず場をこじれさせる気はないのだろうことが伺い知れる。

 

 そもそもソフィーの立場に立てば、実力が未知数ながらも相当ヤバイ力量を持っているであろう俺が、これをきっかけに居直り強盗に変化し敵対するかもしれないという事態だけは避けたいはず。できる限りうまく場を治めるという意思が働いても不思議ではない。

 そして逆にミーニャ・アヤワスカの立場にしてみれば、そんなある意味『核のボタン』のような俺の立場を活用して絞れるだけ絞りたい。なんだかんだ言っても暴力は最も通用する言語だし、力のある者が要求を通すのはどこの世界でも一緒の事だから、最大限の要求を考えてもおかしくはないと思える。

 

 どちらにしろ、俺の胸三寸にあるということだが。

 

「まぁ、ミーニャさん? まずはウチの立場の話なんやけど、盗賊に襲われるところをブレイクはんに助けてもろたことは確かに助けてもろたで? でもな? そもそもウチはそこそこ腕に自信があるからこそ、こんなんやってるワケや。実際襲われることを想定してウチの仲間も構えててん。」

「にゃ? そうなのにゃ?」

 

 ミーニャが素直に首を傾げる。

 

「せやで。ウチの仲間も全員奇襲警戒してたしな。ブレイクはんが突然来たから、わやになってもうたけど。」

「あれ? ソフィー達は奇襲に気づいてたのか?」

「兎は耳いいんやで?」

 

 ソフィーが顎でサキュ嬢の兎獣人を指すので目を送ると、兎獣人サキュ嬢は器用に耳をピコピコ動かした。

 ただ俺は首をひねる。

 

「にゃ? ブレイクどしたにゃ?」

「いや気づいてたにしては対応が微妙だったような気がしないでもなくてな。」

 

 実際に奇襲の時に放たれた矢は俺の結界で止まっていたのだからミノタウロス達がサクっと射られていた可能性は高い気がしないでもない。

 

「ハッキリしてへん状態やったしな。それにウチの男どもは頑丈やねん。」

 

 ソフィーの言葉に突如マッチョマンポーズを決めるミノタウロス達。

 矢が刺されば怪我はしたと思うが、ひょっとすると怪我をしたとしても回復させるような手札を持っていたということなのかもしれない。

 

 が。今喋ってるのはハーフリングだ。ハーフリングならハッタリもよく使うから、どこまで本当のところが分からない。

 

「ちゅーわけで襲われるのも日常茶飯事やから奇襲対策はできてたんよ。」

「そーかい、そりゃ余計なお世話おかけしましたねー。」

「いやいやいやいやちゃうで! 気ぃ悪うせんでなブレイクはん! 実際助けてもろたとは思てるんや。それにウチらやったら全員無傷での拘束は無理やったやろし。」

 

 どこまでがハッタリか分からないまま向こうの言い分を飲み込むのも気持ち悪いので嫌みくらいは返しておくと、あからさまなご機嫌取りをしてくるソフィー。

 おおよそ最低限の謝礼程度はするつもりであるということと敵対する気が微塵もないことは伝わってきた。だが必要以上の譲歩もしないということも伝わってくる。

 

「おにいちゃんのおかげなの。ありがと。」

「いいってことよ!」

 

 そして、こう、ハーフリングから露骨にご機嫌取りさせてると小さい子に気を使わせているような気になってきて心地が悪く、なかなか拗ねた態度を継続させるのは難しい。

 俺の態度から、すっぱり嫌みが消えたのを見計らってミーニャに向き直るソフィー。

 

「ちゅーわけで、ウチらはもうすぐ街につくんやし盗賊ども(こいつら)の連行やったら手伝っても良いし、その報酬を加算した礼をするのも当然やと思っとる。せやけどな、流石にそれでも有り金全部は無いわ。」

 

 『こっちの最大限のラインは引いたけど、そっちの要望はどないや?』と言わんばかりの顔でミーニャの言葉を待つソフィー。

 ミーニャは『うん!』と頷いて笑顔になった。

 

「わかったにゃ! そんにゃら盗賊ども(こいつら)は全員首刎ねるにゃー。」

 

 ルンルン笑顔でダガーに手を伸ばすミーニャ。

 

「ちょっ!」

「ちょ待ちぃな!」

 

 流石に俺もソフィーと一緒になってミーニャを止める。

 

「ちょ、ちょっと待とうかミーニャ! なんでそうなった!? 理解がついてけてないから俺に教えてくれ!」

「にゃ? ミーニャは『有り金全部もらってくる』か『盗賊討伐の成果の山分け』してくるのどっちかしか選んじゃダメって言われたにゃ。でも、そこの子が盗賊達はブレイクなしでも戦えたって言ってたし有り金全部もらえないのも分かったから(しるし)を分けて『盗賊討伐の成果』にして山分けするにゃー。」

「オーライミーニャ。とりあえずわからんから一旦ストップだー!」

 

 再びダガーに手を伸ばしながら縛られている盗賊に足を動かし始めたミーニャを抱きしめて止める。

 

「ニャー、ブレイク止めちゃダメにゃー。そもそも盗賊たち(そいつら)はミーニャ達が街で釣ってきた獲物にゃー! 横取りされるくらいなら全部締めるのにゃー!」

 

 ミーニャが俺の抱きしめに抵抗する。だが抵抗する力は思ったより薄い。

 俺に抱きしめられて止められたら動けないことを分かっている、ということだろうか?

 

「ちょい待ちぃな。今の『釣ってきた』ってのはどういうことや?」

「あぁ、俺らが街から出るときに盗賊に襲ってもらいやすいように餌まいてたんだよ。小遣い稼ぎ用に。それで釣った。」

 

 ミーニャを抱きしめていると動く気はなさそうなので、そのままソフィーの質問に答える。

 

「なんや……てことはウチらが襲われたんはブレイクはんらのせいでもあるってことやないか。」

「あ~。」

 

 相手方の有利な情報を迂闊に出してしまった事に、つい、しくじった声が漏れる。

 

「にゃ? それは違うにゃ。『恵まれないサキュバスに愛の手を』とか『10,000Gのご寄付で、30分間サキュバスが感謝を捧げます』とか金も女もあるって看板を出してるから襲われるにゃ。」

 

 俺のしくじりへの言及を、スッパリと切るミーニャ。

 

「それに淫魔店は正式な店以外でやるのはご法度にゃ。どうみても違法にゃ。違法は金が貯まるにゃ。そのせいだにゃ。」

 

 スッパリと切っただけでなく返す刀まで振るうミーニャ。

 なんだこのミーニャ。頼りになる。

 

「いやいや、そもそもウチは襲われても対応できる言うてるやんか? それに別に『淫魔店です』なんて言ってないで? 看板は見ての通り『恵まれないサキュバスに愛の手を』やし『寄付のお願い』してるだけやしな。そのお礼は感謝を捧げる言うてるだけやし、これをどう見たら淫魔店に見えるっちゅーんや? 寄付をお願いする看板掲げたら問題なんか?」

「にゃー? それなら仕方ないにゃ。」

「いやいやいやいやミーニャ! 全然屁理屈じゃん! 納得したらダメだろ!」

 

 ミーニャが納得したように頷いたので、たまらず口を開く。

 

「でもその通りみたいにゃん。」

 

 看板を指さして『ほら見てみ』と言わんばかりのミーニャ。一瞬でも頼りになると感じたのは幻想だった。

 確かにソフィー達の看板に淫魔店とは書いてない。書いてないが『金でサキュ嬢がサービスします』と認識させるには十分だ。わざわざ誤認させる書き方をしているのだからツッコミようはどれだけでもある。

 たまらず口を開く。

 

「盗賊を釣ってきたのは俺らだが、そもそもの話として、俺らだって狙われやすくなる程度の振舞いくらいしかしてない。つまり実際に盗賊が追ってくるかは不透明だったし運任せなところがあったんだ。そして奴らの目的は俺らだったはずで、行きがけの駄賃とばかりに狙われるなら狙われるだけの理由がある。ミーニャの言うように盗賊と遭って奇襲されるソフィー達は、その見た目に原因があったのは明白だろ。」

「そうやなそれも一理ある。せやから今回のところは、助けてもろた礼として連行してもらえる3分の1くらいの金額でドヤ? それで丸く収まらんかな?」

 

 結論を見越していたかのようなソフィーの提案。

 俺は妥当といえば妥当な気がしてミーニャに目を向ける。

 

「にゃ? それだと街の盗賊の拠点のお宝も丸儲けにゃからダメにゃ。もらうなら有り金全部にゃ。ダメなら丸儲けさせない為に全員狩るにゃ。」

「あっ、そっか盗賊の拠点のお宝ってのがあったか。」

 

 ここにきて、なぜミーニャが盗賊全員をキュっと締めようとしたのか理由が推測できた。

 

 この盗賊は俺たちが街から釣ってきた盗賊であり、街に拠点を持っている可能性が高い盗賊どもだ。つまり生かしたまま情報を吐かせれば拠点への襲撃が可能となるし、その襲撃を成功させれば連行した報酬だけでなく、それ以上に稼げる可能性がある。

 

 この可能性を考えれば、確かに有り金全部でも悪くない賭けになるようにも思える。

 有り金全部でも盗賊の連行報酬は確定しているし、その後の追加報酬は未知数。もちろん未知数だから追加報酬がない場合もある。ソフィー達の有り金がどれくらいかは分からないが、今回襲ってきたのは商隊を偽装するだけの準備ができて、それなりの人数を動員できる盗賊だ。分が悪い賭けとまではいかないだろう。

 

 今のところ盗賊どもは一人残らず捕まえてあるし、拠点に向けて連絡員が走ったということも無いので、うまく情報を聞き出して拠点を襲撃すれば盗賊どもが溜めたお宝を手にできる可能性は高い。

 もちろん、襲撃を成功させる為には当然のことながらこれだけの人数を連行して街に入るわけにはいかない。もしこのまま連行すれば盗賊の仲間に全員が捕まえられたことが知られる可能性も跳ね上がり、情報を得た拠点の残党どもは逃げ出したり解散したりする可能性がある。

 襲撃や連行方法など、準備もそこそこに必要になるが、それでもやりようはある。

 

 ソフィー達が拠点を襲撃をする気がないのであれば、俺たちが盗賊全員の口を塞いでおくというのは重要になる。

 なぜなら、今回盗賊を捕まえたのはあくまでも俺だ。拘束を手伝ってもらったが、捕まえたのは俺。生殺与奪の権利は俺が一番持っているからこそ、ここで全員きっちり締めておけば拠点の盗賊に情報が入るのが遅れ、また俺たちが街に戻った時に盗賊を釣ったりして拠点を襲撃してお宝を得られるチャンスがあるかもしれないからだ。

 12人も減れば解散してお宝がなくなる可能性も有るけれど、可能性がゼロじゃない以上チャンスを増やしておくに越したことはない。

 

 なるほど。だから『有り金全部もらってくる』か『盗賊討伐の成果(みしるし)の山分け』となるわけだ。分かりやすい。

 ここにきて、ようやくアヤワスカの言っていたことの全容が把握できた。

 

「なるほどな。ようやく理解できた。なぁソフィー。やっぱりこっちの要望はソフィーには悪いけれど『有り金全部』か『盗賊全員殺した上で成果分け』のどっちかしかないみたいだ。一応、有り金全部の場合には、そっちのメリットとして連行した報酬の他、盗賊の街の拠点襲撃チャンスが手に入る。」

 

「いやいやブレイクはんまで、ちょい待ちぃな。そもそもの話やけど盗賊ども(こいつら)が街に拠点を持ってるてどうして確信できるんや?」

「どうして確信できるのかと言われると俺の能力としか言えないんだけどさ……俺が離れた場所からソフィー達と盗賊が接触するのを分かったように、街からこいつらを追ってくるのを確認してたから断言できるんだ。」

「……ブレイクはんの能力やー言うんなら、そこは納得せんでもないけど、でも流石に有り金全部は無茶やろ。そもそも拠点の情報吐かせたとしても、拠点の規模もわからん以上、そこを襲撃するにも人がいっぱいいるやん? 人はゼニでしか動かんのに、そのゼニを渡してもうてるんやで? 手持ちもないのに襲撃なんかできんやん。」

「まぁ、それもそうだな。」

 

「にゃー。だから有り金だけで物は要らないにゃ。そいつらの着てる服も武器も、商隊に偽装する為の品物も全部いらないにゃ。ぱっと見て中々良い物持ってるにゃ。これだけあれば担保のお金くらいにはなると思うにゃ。それにこれだけ偽装させたり装備品を揃える盗賊団の拠点なら、報酬を餌にして仲間を集めるって手も十分期待できると思うにゃ。」

「まぁ、それもそうだな。」

 

 ミーニャとソフィー、どっちの言い分も一理あり、悩む。

 なんだかんだ言っても決定権は俺を大きく握っている。俺が舵を取らない限り決着はつかないだろう。

 

「あ〜……ソフィー。俺はまずミーニャ側の人間だ。だが、どっちの言い分もあってるように思える。正直どっちでもいい。そう考えている上での話だが、ミーニャは『有り金全部もらってくる』か『盗賊討伐の成果の山分け』の二択しか納得しないみたいだし、ソフィーがどっちか選んで済ませるのはどうだ?」

「えぇ? ウチがどっちか決めるんか?」

「おう。拠点の襲撃をするかしないかはそっち次第だしな。成果の山分けでも小遣いは入るだろうし、そっちにマイナスはないだろ? ミーニャは俺の提案をどう思う?」

「ミーニャはどっちかに決まればそれでいいから任せるにゃ。」

 

 ミーニャがニッコリ微笑んで完全に交渉役のお仕事を放り投げた。

 

「えぇ〜、ちょい待ちぃな……」

 

 全部丸投げされ、ソフィーが嫌そうな顔で思案を始める。

 盗賊たちから剥がれた服や物品にも目を向けているので採算が合うかを検討しているのだろう。

 

 俺とミーニャを狙ったように、小者すら取りこぼさないような盗賊団。もしかすると、とんでもない規模の盗賊団の可能性もある。そうなれば情報を聞き出して警らに通報というのがソフィーが選びそうな現実的な選択だろう。

 となると、連行と密告での報酬が有り金全部と釣り合うかどうかになるから、それを悩んでいるに違いない。

 

「にゃー……ミーニャは、この際ブレイクが襲撃手伝ってあげたらいいと思うにゃ。」

「は?」

 

 暇を持て余したミーニャから、また突然、迷言が飛びだした。

 

 

 



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19話 ハーフリングの策略には勝てない

 

 

「にゃー……ミーニャは、この際ブレイクが襲撃手伝ってあげたらいいと思うにゃ。」

「はぁ?」

 

 何言ってんの? を、そのまま顔に出してミーニャの方へ向く。

 

「だってブレイクは強いにゃ。そして移動も早いにゃ。ここは街から1日と半分くらい距離は離れてるけど、きっとブレイクが本気出したら、数時間かからず街までいけるにゃ?」

「ふむ。そうだな。俺は強いし早い。だがミーニャ? ミーニャは俺に数時間全力で走り続けろと?」

 

 正直なところチート持ちだからミーニャの言う通りの移動はできる。

 移動した後も拠点の場所が分かっていれば殲滅もできるし制圧もできる。時間をかければ全員動けないように拘束して捉えることもできる。面倒だが。

 

 なのでミーニャの言うように、ソフィー達が襲撃に不安があるのであれば俺が半日程度かけさえすれば、その不安や手間を省くことができるし、おおよそミーニャの想像する通りの結果を得ることが可能だろう。

 

 

 だがしかし。

 

 俺はマラソンを喜べる程のドMではない。

 走って、しんどい思いをして気持ちよくなれる程の上級者ではないのだ。

 

 一応、チート持ちだから肉体的な疲労は少ない。少ないが、それでも疲れることは疲れるし、チート的加速移動中は色々気にしなきゃいけないことも多い。

 例えるなら高速道路で160キロで爆走している運転手みたいな感じだ。10分20分なら『ヒャッハー』気分にもなるが、2時間3時間と続いてみろ。肉体的な疲労と精神的疲労のどっちも溜まって疲労困憊になる。

 

 しかもそうやって到着したら殲滅か強奪をするという追い打ち作業。

 多分だが、俺の単独行動になるから奪ったお宝をソフィー達の指定する場所に隠しておくとか、そういったひと手間な作業も必要になるはずだ。さらに、それが終わったら、またここまで帰ってこなければならない。ブラック企業も真っ青な考えただけで疲れてしまうくらいには面倒臭さだ。

 

 そもそも、なぜ俺が移動したい場所に行く時に高速移動じゃなくて、わざわざミーニャとか女冒険者の仲間を集ってパーティで移動しているかといえば辛いことを避けてスケベしながら楽しく生きて行きたいからだ。もし労働っぽい作業をこなし疲労困憊にでもなったら疲れマラ解消の為に無意識にオナニーして死んでしまうかもしれない。俺は死なない為に疲労困憊も避けなくてはならないのだ。

 

 そもそも『貴方ならできる』『貴方にしかできない』という理由で頼まれたり任されるのは俺が避けたいと考える『勇者の生き方』そのものだ。

 この頼み文句は、少し言葉を変えれば『できるやつがやれ』『おまえしかできないんだから、さっさとやれ』だ。俺はこの世界で自由に楽しく生きると決めたから、そんな頼みは聞きたくもない。

 

 

 それにしても、俺は確か『ミーニャ側』に立って話をしていたはずなのに、こんなことを提案してくるミーニャは、なんとなくソフィー側にいるのかな? という気にもなってしまう。

 

「だって、ちっちゃい子が悩んでると、なんだか可哀想にゃ。」

「お姉ちゃん優しい!」

「おいやめろソフィー。」

 

 ミーニャの言葉をしっかりと聞いていたソフィーがハーフリングの技を駆使してミーニャにキラキラした目を向けて全力で媚を売っていた。

 

 こうして完全に第三者の目線で見るとハーフリングの『あざとさ』がよく分かって冷静にもなる。

 

「……おにいちゃん。」

「お、おい、やめ、やめろ。こっち向くな。」

 

 あざとさ全開オーラ丸出しのソフィーが俺に向き直り、その様子に危機感を覚えずにはいられない。

 

「おにいちゃん……そふぃーこまってるの。」

「……やめ…ろぉ」

「おにいちゃんは、たすけてくれないの?」

「やめ、やめ……」

 

「おにいちゃんが、たすけてくれたら、みんなで『おいしゃさんごっこ』してあそぼ?」

「うん! 俺、行ってくる!」

「おにいちゃんすきー!」

「よーしよしよし!」

 

 抱き着いてきたソフィーを撫でる。

 かわいいのう。かわいいのう。

 めんこい子の頼み事は断れんのう。

 

「はっ!? 俺は何を……また、なのか……」

「ブレイク。あんたほんとノリえぇなぁ。」

 

 わなわなと震える手を感じたのかソフィーが離れて普通に戻った。

 またか? またなのか?

 

「でも言質は取ってもうたで?」

「くっ!」

 

 俺一人だけが疲れる事を約束してしまうとは、なんたる失態か。

 

 でも……『みんなでおいしゃさんごっこ』があるのであればトータルイーブン。いや、稼いで淫魔店に貢ぐということを繰り返している俺的には、イーブンどころかプラスかもしれない。

 

「はっ!?」

 

 ふと、今ここにはミーニャがいる事を思い出し慌てて目を向けると、ミーニャの目はしっかりと俺を観察していて、視線がばっちりと交差する。

 

「にゃー……ミーニャが言ったことにゃけど、流石に恋人のミーニャがいるのに、ちょっとヒドイにゃあ。」

 

 そう。俺はミーニャという恋人が居る前で、乱交と引き換えに手伝いますとも宣言をしてしまったのだ。

 仮の恋人とはいえ恋人は恋人。恋人の目の前で『ちょっと他の女を抱くために働きますわ、うへへへ』と言い出すなど下衆の極み。俺の紳士道にあってはならない失態。これはいけない。いけない……が、かける言葉が見つからない。だって仮は仮だもの!

 

「でもミーニャが言い出したことだから口を出しにくい気もするニャー……にゃあー……」

 

 『うーん』と自問自答しているように悩み始めるミーニャ。

 俺もどう反応すべきか困る。

 

「おねえちゃんも、おにいちゃんといっしょにあそぼ? みんなでなかよししよ?」

「にゃー!」

 

 ソフィーの言葉に『自分も一緒にたのしめばいいのか!』と言わんばかりに納得したようにミーニャが手を打った。

 完全にソフィーに乗せられたアホの子であるが、納得できればそれでよい。

 

 なにせ俺はフルコースお医者さんごっこが出来れば、それでよいのだから。

 

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

 

 『俺が拠点を襲撃してくる』

 

 ミーニャの提示した選択肢には無かった第三の選択をしたことで、ソフィー達と取り分の決め方は大きく変化したので、一人ポツンとお留守番状態のアヤワスカも合流させて俺が襲撃している間に、じっくり話を詰めておいてもらうことに落ち着いた。

 

 俺がアヤワスカを迎えに行っている間に、捕まえた盗賊から情報を聞き出しておくことになり、盗賊たちから情報を聞き出す方法については拷問でもして聞き出せばと提案したが、ソフィー達がそういう事に慣れていると自信ありげに言ったので一任して俺は行動を開始した。

 

 

「アハンケツイクーっ!」

 

 

 アヤワスカとロバを連れて、ソフィー達と合流した俺の目に飛び込んできたのはスライム娘による盗賊アハンケツイク調教の姿だった。

 

 メスの顔しやがって……な盗賊。

 

 そして何人かの盗賊は、すでに仕上がったのだろう状態で放置されていて非情に気持ちが悪い。

 

「さー、次に女の子になっちゃうのは誰にしようかなー? んー……キミに決めたぁ!」

 

 ソフィーの指差しで、アハンケツイクフィニッシュで絶頂に達して色々ビクンビクンと痙攣しながら白目をむく盗賊をぽいっと捨て、指を指された盗賊にスライム娘が近づいてゆく。

 

「い、いやぁー! 言う! 言うからやめてぇーっ!」

「ほか。ほなさっさと言いや。」

 

 スライム娘の不定形な身体がじわじわと盗賊に纏わりつきはじめ、その様子に怯えながら盗賊が口を開く。

 

「裏通りの――らめぇええっ!」

「あー間に合わんかったなー。まぁ落として素直になった欲しがりさんから聞いた方が早いからなー。」

 

 既に素っ裸の盗賊。あっという間にケツにスライム注入(なり)

 

「あぁブレイクはん着いてたんか。情報、色々聞き出しといたでー。」

「お、おう。」

 

 男もレイプされるんだな。

 

 なんとなくそんな感想を持ちつつ頷き、ソフィーから仕入れた情報を聞きとり俺の単独の襲撃の詳細も決まった。

 

 

「ほな街に着いたらハーフリングの淫魔店に行ってパルティナってのに、この手紙渡してくれるか? 手紙の内容はお宝の査定依頼や。ブレイクはんが盗賊捕まえた後、おおまかな物の価値の査定とか処理をお願いするように書いといた。」

「おう。わかった。ハーフリングの淫魔店のパルティナな。その子にはソフィーから預かったで通じるか?」

「行商のソフィー言うたら通じるわ。終わったらパルティナから目録受け取って持ってきてな。手間かけてスマンけどこっちでミーニャはんらに幾ら渡したらええんかとか価値高すぎるもんあったら、どういう形で利益渡すかとかそういうの決める話の参考にするさかい。」

「ん。了解。」

 

 ソフィーから手紙を預かり出撃準備が整ったので、軽く屈伸運動をする。

 こういう『これから動きますよー』という運動をすると、きちんと行動しなきゃいけない気持ちになって、やる気が出てくる。

 

「にゃー。ブレイク気をつけて行って来てにゃ。」

「おっ?」

 

 ミーニャが抱き着いてきて、背伸びしながら俺の肩にスリスリと頬ずりをした。

 

 恋人アピールだろうか? 確かに、この場で『俺の恋人』という事をアピールしておくことは非常に大事な事だろう。なんといっても半日くらいソフィー達と共に過ごすのだ。なにか良くないアクシデントが起こることも考えられないわけじゃあない。保険は大事だ。

 

「おうおう。任せとけ。すぐ帰ってくるからな。」

 

 当然のことながらお尻を撫でまわしオッパイをいやらしく揉みしだく。なぜなら親密なアピールをしなければならないからだ。これはミーニャの安全を得る保険の為の行動であって下心などではない。

 

「にゃぁん♪ えっちにゃあ。」

 

 ミーニャも嬉しそうな反応。

 当然のことながらチンコたった。

 

 

「じゃ、行ってくる。」

 

 ミーニャに別れを告げると同時に、俺の足が砂ぼこりを巻き上げた

 

 

 さっさと終わらせて、早く帰ってこよう。

 なにせ、帰ったら、大人数お医者さんごっこが待っている。

 

 

 ロリっ子。ネコ。ウサギ。ミノタウロス。スライム。そしてあわよくばフェアリーも。

 たくさんの患者が俺の治療を待っているのだから。

 















 そろそろ頑張ってエロ書いてみるお。


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20話 拠点制圧など小事! ちょちょいのちょいよ





 

 お医者さんの行う治療方法を具体的に想像しながら街へと急ぐ。

 

 盗賊が待ち構えるであろう拠点を襲撃するという、ある種の攻城戦を前にしているにも関わらず余裕たっぷりすぎるが、実際俺は戦ったらチートで勝てるのだから仕方ない。俺もだいぶチートを持つ自分に慣れたものだ。

 

 通常多くの戦いでは『数が物をいう』為、攻城戦っぽいことは非常に苦労する。

 ソフィー達を襲っていた盗賊達も12人という数がいたというのも、その理屈だ。

 ソフィー達は6人だから倍の人数がいての奇襲になるのだから、おおよそ戦っても勝てるという算段が強い。だから襲った。

 

 ただ、このファンタジー世界では本当に文字通りの『一騎当千』がいたりするから常識が通じないこともある。

 

 例えば、ヘカトンケイルとか巨人族は、その存在だけで普通のサイズのヤツは勝てない。質量は頑丈さにも力にも比例する。猿と象がタイマンで戦ったら象が勝つだろうことは用意に想像できるのと一緒。

 そして俺は、武器すら持っていない男だけれど、そのヘカトンケイルと戦ったとしても秒で勝てる程度には強い。つまり一騎当千を蹴散らせるくらいの強さがあることになる。なので俺と戦うことになる拠点の盗賊達は、もう災害にあったと思って諦めてもらうしかない。運が悪かったのだと。

 

 それに今回は手加減もする気がない。

 なぜなら、お医者さんごっこの為に超特急で終わらせなければならないからだ。

 

 おいしゃさんごっこ。

 嗚呼、おいしゃさんごっこ。

 おいしゃさんごっこ。

 

 ロリっ子のちっぱい触診したい。

 

「ん?」

 

 触診の妄想で無意識に自分の胸すらまさぐるように手が動いたことで胸元の違和感に気が付き胸ポケットを探る。

 するとポケットに入れておいたソフィーから渡された手紙の他に、見覚えのない紙きれが入っていた。ざっくりとした二つ折りにされているメモ用紙のような紙を取り出し、広げてみる。

 

『お宝に指輪があったらミーニャ欲しいにゃん♪』

 

「ふはっ!」

 

 目を通すと同時に笑いが漏れた。

 どうやらミーニャが抱きついて俺に色々揉まれている時に滑り込ませただろうメモだった。

 

 俺が今から襲撃しにいく拠点でお宝があれば、ソフィーの知り合いのパルティナが目録を起こすことになっている。

 だけれど実際のところ、どこまでパルティナが書く目録に信用を置いていいかは俺やミーニャ、アヤワスカには不透明なのだ。なにせハーフリング。パルティナという人物は目利きができるからこそ任されているんだろうしパルティナが誤魔化そうとした場合、俺はコロっと誤魔化され騙されてしまうだろう。

 なにせ名前からして女ハーフリングだ。俺の扱いがソフィーの二の舞になることは確実。

 

 そしてなにより俺自身が盗賊のお宝に興味がないことも理由として大きい。

 なぜなら今回の約束上、旅の最中に得た物の権利は全てミーニャ達に渡すことにしているから、どれだけ沢山お宝を手に入れようが俺には関係のないお宝でしかなく、ぶっちゃけ査定金額が高かろうが安かろうがどっちでも良いのだ。

 

 俺に取って大事なのは、どれだけ女達のサービスが手厚くなるか。これのみ。

 今回、盗賊を襲い、ソフィー達から金を巻き上げ、更にプラスアルファを手にする為に動いている現状だから、もうこれ以上ミーニャ達にプラスを積み重ねても、あまりサービス内容が変わらないことは容易に想像がつく。もうすでに最高級の対応とするくらいにサービスをしているのだからな。

 

 そんな事情をミーニャはおおよそ本能で察したのだろう。なかなか欲張りなネコ娘だ。

 だが貪欲な方が、この世界では生き残れるから好ましくもある。それに、おねだりの内容も『もしあったら』程度。昨日、膣内出しして仲が深まっているからこそ、可愛らしいと思える程度の内容で抑えられていて、わきまえている。

 

 指輪というチョイスも襲撃に俺が先行すればパルティナが合流するまでの間に、こっそりとパクっておくのに丁度いいし、ソフィー達と別れた後の移動の時にも邪魔にならない。なにせ物を運搬する依頼を受けていて、パーティで運べる限界に近い状態まで物を持って移動しているのだ。あまり嵩張る物が増える余裕はない。

 だが指輪程度であれば荷物にも入らない上に価値も高い。

 

「ははっ、オッケーオッケー!」

 

 ミーニャの抜け目の無さに称賛を送りつつ、目を引く物があったら、ちょろまかしておくことを決意し、街へと急いだ。

 

 

 ・。・。★・。・゜☆・。・。★

 

 

 

 パルティナ。

 

 可愛い。

 

 

 

 

 パルティナは可愛かった。

 

 可愛いは正義。

 

 

 ソフィーはセミロングの髪型で雰囲気が女の子女の子してるハーフリングだったが、パルティナはボーイッシュな感じの女の子。

 

 なんというか『お、おまえ! 男の子だと思ってたけど女の子だったのか!』プレイが出来そうな感じといえば良いのだろうか。

 男の子のような雰囲気といっても決して胸が無いわけじゃなく、敢えて胸が目立ちにくいように計算されている服を着ている感じの、わざと中性さを演出しているような作為的な何かを感じないでもないが、正直なところ即一発お願いしたくなった。それくらいに可愛い。

 

 

 だが、

 

 だがしかし、

 

 俺にはお医者さんごっこが待っている。

 

 

 頑張れば……この後、襲撃を頑張って終わらせてしまいさえすれば、今日中にソフィー達の所まで戻れてしまうのだ。

 そして夜は「おいしゃさんごっこパーティ」。

 

 もし今ここで一発出してしまおうものならパーティでフルコースを味わっている時に、もう一発が出せなくて生涯悔やむことになるかもしれない。

 

 なにせロリっ子、ネコ、ウサギにミノタウロス。スライム。そしてあわよくばフェアリーがいて、そんな異種族全員参加型お医者さんごっこなのだ。

 こんな機会は今後も有り得ない可能性が高い。

 それに対してパルティナは淫魔店に居るのだから店にくればお願いできる。となれば再現が難しい方を優先するのは当然のことだろう。

 誠に残念だが、ロリっ子系統無知ックスはソフィーでもできるのだ。できてしまうのだ。

 

 なんといっても今日のお医者さんごっこでは全員に1発ずつ発射するとか考えようもの最低でも6発の残弾が必要になる。

 

 俺はチート持ちだが精力チートではない。

 3発も出せば『今日はいっぱいイッたなー!』と満足してしまう。多分ものすごく頑張っても4発とかが限界だろう。

 純正サキュバスの能力とか使われたら6回イケるけど、普通に4発とか出したら、もう充分次の日は賢者になると思う。つーかそもそも4発も発射するとかだと夜通しになるんじゃなかろうか? 物凄く溜まってたら2発連続でもイケるけど昨日もミーニャに中出ししてるし、普通に休みながらしないとチンコ勃たない。回復タイム。大事。

 

 もちろん裏技としてエッチを『戦い』とさえ認識すれば『戦っても負けないチート』を発動して色んな意味で勝てるのだが、そもそもエッチは戦いじゃない。戦いじゃないんだ。

 世の中には戦いのエッチもあるだろうが、俺はそんなエッチよりも楽しく潤うエッチがしたい。とにかく気持ちよくなって満足したいのだ。

 

 故に、これらの事情を鑑み、今の俺はボーイッシュロリっ子と一緒にお風呂に入って『お、おまえ! 女の子だったのか!』倒錯プレイはできないという結論で締める!

 

 そんな鋼の意思の下、涙を飲んでパルティナに手紙を渡す。

 

 

 ……またこの街に来たら、この店には絶対に来よう。そんな鋼鉄の意思と共に。

 

 

 

 手紙を受け取り無言で読み始めたパルティナに行商のソフィーからということを伝えると、身体の軽さを表現するかのようなフットワークで、あっという間に動き出し、俺も即、盗賊拠点の襲撃及び捕獲を命じられた。

 『この男なら一人で全員捕獲できる』的なことが書いてあったらしい。

 

 元々やる気ではあったが、なんとなく(てい)よく使われるような気がするのは、どうにも釈然としない。

 

 だが

 

 「カッコイイとこ見れるって書いてあったよ! おにいちゃん!」

 

 ボーイッシュロリに、そう言われたら聞かないワケにはイカン。

 なんだかちょっと嬉しいれす。

 あぁ『おまえ女の子だったのか』プレイしたい。

 

 ボーイッシュロリとの「なにそれ、ボクに無いのがついてる!」「おう触ってみていいぞ」「わぁ! 大きくなってきた!」プレイ詳細を妄想して悶々としつつ移動。

 「……なんだかココがムズムズしてきたよう」「や、やめてよぉ(蕩け声)」まで脳内でのプレイが進んだ時、盗賊たちは透明牢獄に全員捕まえられていた。

 

「はっ!? 俺はいったい何を……」

 

 ボーイッシュロリ……恐るべし。

 

 正気に戻った途端、ぎゃあぎゃあ騒ぐ盗賊が五月蠅いことに気がついたので少しの実力行使を披露し全員を大人しくしておく。盗賊は全員透明牢獄にギュウギュウづめにしてあるし、早速お宅拝見開始。

 

 拠点の規模は倉庫兼ヤクザの事務所って感じ。牢獄に捕まえた盗賊は全員で15人くらい。中々の規模だ。おおよそ今、外出している仲間も多いだろうことが推測できる程度のお宝もばっちりあった。

 街に居るからだろう、現金化には苦労していないようで現金もそこそこにあったので俺の分とミーニャ達の分を少しパクる。物として残っているお宝は足の付きやすそうな物か特殊な物が多そうだ。完全にソフィー達の有り金全部でも余裕でプラスになるんじゃないかな程度は容易に想像つく量。

 これはお医者さんごっこの内容が楽しみになってきた。 オラわくわくすっぞ。

 

 ミーニャのリクエストもあったし、ミーニャとアヤワスカのご機嫌取り用に指輪も5個程度趣味がかぶらないようななデザインをパクっておいた。

 

 ザッとお宅探索を終えてお土産ゲットを終えてもパルティナの姿が見えず、暇を持て余したので、しばらく盗賊の拠点から外を眺めつつ待つ。

 小一時間が過ぎた頃、パルティナが仲間を連れてやってきたので手を振って呼び寄せる。

 

 連れてきた仲間を確認すると6人。種族は人間にハーフリング、エルフとナーガ、あと珍しいことにアンドロイドまでいて、ざっくばらん。全員男っぽいのが残念だが、制圧も済んでいるので、さっさとお仕事を終わらせるべく捕縛と目録お越しに取り掛かってもらう。

 

「ふむ。これなら盗賊の拠点という証拠は十分ですね。」

 

 インテリっぽいアンドロイドの機械音性。

 アンドロイドは中々お目にかかれない種族なので、つい興味も沸く。性別あるのか?

 アンドロイドは盗賊や拠点の様子を盗賊達を一通り確認をした後、お宝の方へと移動して、パルティナとハーフリングと一緒に何やら話し合いながら目録お越しに取り掛かっていた。

 

 多分だが、このアンドロイドは盗賊であることの証拠保全とか、お宝鑑定の為に呼ばれた鑑定屋なんじゃないだろうか? アンドロイドに証拠として提示されたら、それだけでなんか説得力が増す気がする。

 

 そんなことを思いつつ、人間やエルフとナーガと盗賊達の捕縛を進め、適当にダベって時間を潰す。

 

 うむ。やはり男同士の話は楽しい。

 

 ボーイッシュロリシチュエーションについて話せば「それな」「わかる」と相槌が返ってくるし、ちんこの話をすれば、ナーガのちんこが種族によっては二又に分かれていたり、トゲだらけだったり、挙句の果てには二又に分かれた上でトゲトゲだったりするという豆知識も仕入れられる始末。やはり異種族のちんこ話は鉄板ネタから外れない。

 

 そんな話が充実していると時は夕方が近づき、ようやくパルティナの目録お越しも終わった。

 

 封をした上で紐で縛り、さらに蝋印で完全に未開封を徹底した書類をパルティナから受け取り、後の処理を任せて俺は早々に街を後にした。

 

 パルティナに次回街に来た時に予約したいことだけは、しっかりと伝えて。

 

 

 夕方に街を出て、お医者さんごっこの気運を高めながら本気で走って帰路を道を急ぐと、夜のとばりが下りた頃にソフィー、ミーニャ達のキャンプに合流することができた。

 

 

 おらぁ! 触診させろ! お注射させろぉっ!

 

 



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