錬金術のアトリエ 1 (東京のぷるぷる)
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錬金術のアトリエ 1

ソフィーのアトリエみたいなゲームは、色々と想像力とかもくっつく訳で。
小説に書いてみる事で更に好きになれる感じがあります今日このごろ。


錬金術のアトリエ 1

 

キルヘンベルと呼ばれている街……

錬金術で賑わい、発展した街ではあるけれど、錬金術士の死をきっかけに人が離れ……そして1年……2年……

どのくらいの時が流れたものか。

 

みるみるうちに人が離れて行き……

1度は発展したものの……人の少ない、のどかな田舎街となった。

暖かい色の石畳の広場に、ヴァルム大教会。

立派なストリートに、高級住宅街を思わせる街並み……

大勢の職人と、大勢の冒険者達で賑わっていたものの、その職人達と冒険者達が離れて行き、僅かな職人、冒険者を残すのみ……

 

そんなのどかな、寂しい田舎街。

そのはずれにある、小高い山の上。

錬金術士のアトリエがあるが、その錬金術士は居ない。

今は錬金術の出来ない娘が1人、住んでいるだけなのだが。

 

 

そんなキルヘンベルの、ある日の朝……

太った少年が、その小高い山へと歩いて行く。

今日も今日とて暖かい風が吹いて、小鳥が飛ぶ。

柔らかな朝の日差し。眩しい緑。

丸っと太ったハト達と、オレンジ足と呼ばれる鳥達に、更に様々な種類の鳥が、今日もそこそこの群れで、地面を啄んでいる。

少年は結構な山の上まで、はるばるとやって来て、そんな山の上の一軒家、アトリエのドアを叩く。

こんな山の上だと、訪問者もそうそう居ない。

 

「ソフィー、遊ぼうぜ~……」

ドアを叩くと、すぐに錬金術士の孫娘、ソフィーが出てきた。

「待ってたよオスカー!」

ソフィーはドアを開けると、笑顔でショートダッシュして、オスカーに体当たりして抱きつく。

細い少女と太った少年。

体当たりされた少年は、びくともしない。

「うおぉ……今日も元気だなソフィー。今日こそは、芋の親分を見つけたいとこだよな……」

痩せすぎてる、細いソフィーを抱き止めたオスカーが、とぼけた声でそう話す。

「そりゃあ、元気だよ~。朝からね、このおばあちゃんの杖に磨きをかけててね……」

ソフィーは振り向き、入り口すぐに立てかけてある杖を指差す。

「この杖、ソフィーには長すぎるよなぁ……」

その杖を見たオスカーは、持ち前のおとぼけボイスで、片眉を上げた。

「それは、皆に言われるんだけどね?」

オスカーが太くて腕が回らないソフィーは、オスカーから離れると、杖の方へと行く。

「もう出掛ける準備は、バッチリなのかい?」

オスカーは身体を避けて、ソフィーと離れる。

「もちろん!おやつも持ってるよ!」

ソフィーは錬金コートのポケットから、紙の包みを取り出す。

紙の包みの中は、オスカーの作ったビスケットだけれど、錬金コートの不思議機能により、綺麗なまんま、割れてもいない。

「いつのだい?」

オスカーは尋ねる。ソフィーはおやつを持ってくのは忘れないのだけど、食べる訳ではないから。

食べる、という事がしんどいらしく、お陰でやたら痩せていて貧相なのだ。

そんな2人は、市街地の方へと錬金術屋敷の山を降りる道へと向かう。

 

「ソフィーちゃん、今日も元気だねぇ……」

そんな2人を眺めて、よくアトリエの井戸の前に居るおばあちゃんが、微笑む。

「えへへ……元気だけが取り柄ですので」

まずは朝の日課、井戸水を飲む。

ソフィーとオスカーは冷たい井戸水を飲み、おばあちゃんと挨拶を交わす。

「ウメさんも、元気そうじゃないか」

そんないつもの朝。

井戸水の桶を戻し、オスカーとソフィーで山を降りる道を歩き、モニカの家へと向かう。

2人とも15歳。この田舎街には、あまりこの年頃の人が居ない。モニカは16歳だ。

錬金術士の娘のソフィーは、錬金術は使えない。錬金術師の屋敷に住んでいるだけだ。

 

そして小高い山のてっぺんにある、錬金術師の屋敷から、山を降りる山道をソフィーとオスカーで降りる。

オスカーは、のっしのっしと歩く。

足も短いから遅そうに見えて、これがなんか早い。

ソフィーは、ちょこまかと付いて行く。

 

「鳩とオレンジ足、今日もせっせと頑張ってるね」

ソフィーは少し離れた場所で地面を啄む、鳩とオレンジ足に目を向ける。

「植物もさ、虫が増えすぎると痩せちまうみたいでな、こうして手入れしてくれる鳩とオレンジ足は大歓迎なんだよな」

オスカーはそう話す。植物と話が出来ると主張するオスカーは、よくそういう話をする。

「黒い親分は?」

ソフィーは尋ねる。時折見かける黒い鶏、ソフィーは黒い親分と名付けた。

「黒い親分もギャーギャー鳥も、植物からしたら友達みたいなもんさ。虫もそうだったりするんだけどな」

オスカーは片方の眉を上げて、そう言って笑う。

 

 

山から市街地へと入り、ソフィーとオスカーは、少し風化して傷んだ石畳の道を歩く。

「モニカ~……洗濯終わった~?」

そして住宅地に入ると、割りとすぐにモニカの家はある。

その住宅に住む奥様達と、モニカが住んでる地域。

見える限り遠くまで、家は建ち並んでいる地域でもある。

ここはそんな住宅街のはずれ……あまり人は居ない。

「終わったわ。今日はどこに行くの?」

レイピアを差したメガネっ娘、モニカがキリッとした佇まいで2人を見る。

「キルヘンミルクスネークカモン!今日もチャレンジさ!」

ソフィーとオスカーが、ヘンなポーズで揃えて答える。

痩せた女と太った男のカップル……

2人とも、やたら元気なのが取り柄だ。

……キルヘンミルクスネークは、近くの森に現れる白い蛇。

この蛇が美味しいのだ。

しかもその蛇の皮からは、上等で上品な皮細工の品が作れる為、ホルストさんのカフェで買い取ってくれる。

「ふふ……まあ、そうよね」

キルヘンミルクスネークの皮からは、可愛い小物も出来る。モニカはお洒落な小物が大好き。

3人は広場へと続く道を行き、ヴァルム大教会へ向かう。

 

 

「パメラ~っ……今日もキルヘンミルクスネークにチャレンジするよ~」

広場を見守るキルヘンベルのシンボル。ヴァルム大教会の掃除をしていたパメラに、ソフィーが声を掛ける。

「あらあら~……よろしくお願いするわ~……」

黒が特徴のゴージャスドレス、うす紫のゴージャスロングヘア……

スカート部分がゴージャス過ぎて、お掃除には向かないけれど……

そんないつもの姿のパメラが、ゆるふわ高音ボイスで言う。

ヴァルム大教会のシンボルのシスターが、キルヘンベルの母、パメラだけど……

シスターには見えないゴージャスさ。

だけど、シスターのパメラ。

 

そしてオスカーとモニカは、教会の子供達の教官、神父様と似た格好のバーニィさんに、声を掛ける。

「少し畑に出してるけど、いつものメンバーは近くの森に行くのを楽しみにしているよ。今日も頑張っておいで」

バーニィさんは、教会の子供達の行動を管理したりしてる教会の人。

次期神父様……かも知れないけど、どうだろう?

子供達の先生でもある男の人だ。

オスカーとソフィーの先生でもあった、厳しくも優しい人。

「よし!掃除は切り上げてよし!近くの森に行く者はオスカー、モニカの所へ集合!」

バーニィさんがパン!と手を叩き、子供達は集まる。

そして子供達は、やいのやいの言いながら、近くの森へと向かう準備をする。

 

「今日はムショーにさ、王様キノコ食べたいんだよ!」

「今日も綺麗な石が、私を待ってるわ!」

「特製の弓矢、今日こそ飛ぶぞ~っ!」

子供達はそれぞれに目標目的があって、それぞれの装備を手に集まって来る。

 

キルヘンミルクスネークは、特別な獲物。

基本的にキルヘンミルクスネーク捕れないのだが、泥蛇にうずまき貝、芋やきのこ、そしてパメラが集めている綺麗な石ころ。

つまりは食欲を満たすモノ、ロマンに溢れる石がそこはかとなく採れたりするのだから、人気も出る。

それに、子供の娯楽なんて今のキルヘンベルには、この採取活動くらいしかない。

 

「あらあら~っ……じゃあまた、オレンジとか赤い小石も取れたりするのかしら~?」

ソフィーに声を掛けられたパメラは、のほほんとした、高音ゆるふわボイスで話す。

今までパメラに渡した綺麗な小石達は、教会の巨大な像の足許に鎮座していて、キラキラしてる。

「もちろん!美味しい夕食摂らないと、大きくなれないもんね!」

ソフィーはガッツポーズを見せる。

「でもソフィーちゃんは、また痩せたんじゃないかしら~?ちゃんと食べないとダメよ~」

パメラはゆるふわボイスで、ソフィーの気にしてる所を抉る。

食べる事がしんどくて、太りたいけれど太れない。

……イマイチ食べられる量も増えない……

……痩せて貧相な自分が、ソフィーの悩みなのだ……

「そ……そうなんだけどね……まあ、栄養のある物、採ってくるね!」

ソフィーはヴァルム教会、噴水広場を出る。

ソフィーとモニカ、オスカーと子供達……その中に派手な出で立ちの子供、コルネリアの姿もあった。

 

コルネリアは教会に住んでる訳ではなく、住宅地に住んでるのだけど、こうして近くの森へと行く時に、どこからともなく現れて合流してる。

……なのだけど、ソフィーとオスカーとはあまり話さず、仲の良い無口な子供と行動していた。

コルネリアと、その仲の良い子供達は、なんとなくお気楽な雰囲気漂うソフィー達を、敬遠していたのだ。

まあ、性格の合わない子供も居たりする。

コルネリア軍団はソフィー集団、オスカー集団とはまた離れて、近くの森へと向かう。

 

……そして訪れる近くの森。合計15人で来たけれど、3班くらいに分かれて蛇を探す。

各々、お手製の小さな蓋カゴを持って歩く。

「ふかふか緑発見~♪」

ソフィーは蓋カゴの外ポッケに、ふかふか緑を入れたりする。子供達も、思い思いに色々と採って歩く森。

「本当にふかふか緑なの?あら、随分といいやつじゃない?香りも強いわね」

モニカが、ソフィーの採ったふかふか緑を確認する。

ソフィーは良く勘違いするので、要確認だったりする。

「おお~♪ソフィー姉ちゃん、これは本物だな。オイラもほら、ひらひらキノコ採ってるんだぜ」

教会の男の子も、蓋カゴを見せる。結構入っていたりする。

「へへ~♪今日はツイてる予感がするね」

ソフィーは得意気に笑い、ふかふか緑の葉っぱを1枚、もっかい嗅いでみる。

ふかふか緑のいい匂いがする。

そうやって、ソフィーとモニカ、教会の子供2人とで、途中に色んな木の実や草の根、食べられる物も探して詰め込んで歩く。

 

この日、近くの森の奥の小川近く……その辺りを探すソフィーとモニカの前で、ガサガサと川べりの草が動いた。

「!」

ソフィーがその場所を見つめる。モニカも少し笑みを浮かべて頷くと、その場所に歩み寄る。

ソフィーがその草むらに石を投げる。

……パサッ……

すると反対側にするするっ、と出てきた蛇を、モニカがレイピアでストン、と仕留めた。

「やった!やった~っ!」

鮮やかな手際に、ソフィーは思わず大声を上げる。

仕留めた蛇は、かなり大物な蛇だった。

「結構な大物じゃない?」

ソフィーが喜び、モニカの顔も綻ぶ。

「すっげぇ~!さすがモニカ姉ちゃん!」

教会の男の子も、大はしゃぎだ。

……こうしてモニカが泥ヘビの大物を捕まえた。

コルネリア軍団の子供達も1匹、泥ヘビを捕まえていた。

オスカー隊が、いつもの葉っぱとか食べられる細い根っこ等々……

その中に更に、王様キノコを見つけていた。

 

いつになく豊作の夕方……いつも通り教会の横の広場で、皆で食べる。

……今日も皆で囲む、美味しい楽しい夕食となった。

……とはいえ毎日バーニィさんとディーゼルさんが、猟師さんやら農家の人なんかを連れて来てくれて、更に食材を追加したりするからなんだけど……

なんとなく、この日はソフィーの隣がディーゼルさんだった。

バーニィさんと同じように、子供の行動の世話をする先生だ。

「ソフィーは、まだ食べるのがしんどいかな?」

筋肉が目立つ25歳、ディーゼルさんがそう聞いた。

バーニィさんもディーゼルさんも、いつからか教会に居る人。

神父様と同じような服装。少し色が違う。

「まあ……そうなんですよね……」

ソフィーは苦笑いする。こんな量でそんなハズないのに……少し食べるとお腹いっぱいになる。

そして無理して食べないと、痩せていくのだ。

小さい頃からの悩みだから、知ってる人も多い。

「無理せず持ち帰って食べてもいいんじゃないかな?食べられない、って悩みはソフィーぐらいだから、詳しく分からないが……」

ディーゼルさんはそう言って、スープのお代わりをする。

バーニィさんもディーゼルさんも、日がな1日街を歩き、街の人々と話し歩くのが仕事。

なので日中は、教会に居る事はほとんど無い。

そして子供達を働かせるのが仕事……夜は読み書きとか、歴史とかを教えていたりする先生だ。

ソフィーが物心つく頃には、おばあちゃんの錬金屋敷に引き取られていたので、あまり教わらなかったのだけれど。

 

「今日も旨いなぁ……王様キノコの味は格別だよな……それに八百屋の塩、様々だな」

ディーゼルさんは美味しそうにスープを飲む。

キルヘンベル唯一の八百屋……

マルグリットさんの八百屋は、隣国に住む旦那様からの流れで、物流を確保しており、特に重要となる塩を一手に捌いている店。

それを元にした調味料をオスカーが研究している。

塩の質が時々で違ったり色々とあるようだ。

……この田舎町、山にあって海が遠いのだ。

 

「今回の骨の味は……どうだろうなぁ……」

オスカーは子供達と一緒になって、蛇の骨を焼く。

食べられる草の実木の実、キノコに根っこと、やたら詳しいオスカーは、子供達にも人気の先生だ。

それでいて八百屋の調味料関係の研究もしていて、キルヘンベルの食を担う名士……それが八百屋の倅、オスカーだ。

貫禄もあるし、王様的なファッションも、その貫禄に拍車をかけている。

 

西日も沈み行く頃……子供達と神父様、パメラやバーニィさんディーゼルさん、日替わりで訪れる農家のおじさんおばさん、猟師のおじさんおばさん……賑やかに過ごす夕食が終わって……

 

広場から解散すると、オスカーとソフィー、モニカと3人で帰路に着く。

ソフィーとオスカーは、13歳ぐらいの時に幼馴染みから、男女の仲となった。

「ソフィー、ちゃんと食べれたか?」

オスカーはお決まりの質問をする。

「美味しかったんだけど、あまり飲み込めなかったかな。疲れてたりするハズなんだけどねぇ……」

ソフィーは答える。

「ソフィーはなんでかしらね?不安になるくらい食べないけど……」

モニカも心配そうに話す。

「今日の泥ヘビ、旨かったけどな……ソフィー用に気まぐれジャムのクッキーを……って……まだあったっけ?」

途中でモニカと別れてから、錬金術師の屋敷へと向かう山道。石畳は終わり、繰り返し歩いた事により出来上がった道……そんな道を歩く。

「あたしは芋ばっかり食べてたかな。蛇より芋の親分の方が好きだからな~……あとオスカーの調味料が美味しい」

ソフィーはオスカーと腕を組む。

恋してるとルンルン気分になれるから不思議だ。土に汚れた腕と腕が絡んで、ジャリジャリする。

「アレ、塩に香り付けしてるだけなんだけどな。まあ、オイラもお気に入りだけどな」

2人になって、ソフィーとオスカーは腕を組んでアトリエへと歩いて行く。

 

薪を足さなくても燃え続ける、不思議な暖炉がアトリエにはある。

おばあちゃんの作品で、しかも暖かいのが下に落ちる造りなのだとか。

ソフィーとオスカーは、その暖炉の前に井戸水を置いて、服を洗い……その後で身体を洗う。

「オスカー、垢が凄いよ……ぼろぼろでるもん」

オスカーの背中を拭い、ソフィーが明るく言う。

ゴシゴシすると、ぼろぼろこぼれる。そんな裸の付き合い。

「今日も汗かいたもんなぁ……」

井戸水を浸した布で、身体を洗う。

「いつも、背中に届いてないんじゃない?オスカー太ってるから」

そんな事を嬉しそうにソフィーは言う。ゴシゴシして綺麗になると、なんだか嬉しい気分になる。

「太ってなくても、届かないだろ?まあ、長いのでやってるんだけどなぁ……」

オスカーが天井の方を見て言う。このアトリエは不思議な物がある。

この照明も、昼も夜も光りっぱなしで、しかも燃料を必要としないのだ。

暖炉もそうだけど照明も不思議だ。

お互いに身体を洗って、水を弾く床板に、汚れも水も流す。

床板はそんな水を隙間から吸い込み、汚れも水も消えて行く……

そして暖炉の前で乾かす。

 

 

「ソフィー、おっぱい育ったか?」

暖炉で身体を乾かす2人……オスカーに背中を預けるソフィーのおっぱいを撫でて、オスカーが呟く。

「そう?そんな感じしないけどね……今やあたしのおっぱい、オスカーの方が詳しかったりするのかな?」

ソフィーはその手に、手のひらを重ねる。

こうなってもう2年……お互いに慣れて、夫婦みたいな気分になる。

最初はドギマギして興奮して……色々とはしゃいでたけど、そんな時期でもなくなった。

だけど夫婦ではない。ゆくゆくはソフィーに子供が出来て……なんてオスカーとしては思うけど、初潮がまだらしい。

……遅すぎないか?

オスカーとしては栄養不足を疑って、よくアトリエに食べ物を持って行く。

ソフィーはそうして誰かから物を貰う事を、良しとしない性格なのは知っているけども……

そんな毎日は続く。

 

オスカーがアトリエに来るのは開花の日、種子の日……と決まり出した。

なお、キルヘンベルでは、1週間が5日だ。

 

双葉の日、蕾の日、開花の日……が平日。

果実の日、種子の日……が休日。

種子の日の次は、双葉の日。

 

双葉の日、蕾の日、果実の日は、ソフィーは独りで寝ないといけない。

それが嫌で、蕾の日にはモニカの所でお泊まりしてる。

昼は近くの森に行き、キルヘンミルクスネークカモン!する事がほとんど。

雨が降った時の方が捕まえられるので、雨が降ると張り切ってやる。

……雷雨なんて大チャンスなんだけど、危ないので皆で固まり、ロープも用意してやる。

この辺りは温暖で寒くないからできる芸当だ。

 

「今日は~……何しようかなぁ……?」

朝になると、ソフィーはアトリエを出る。

本が沢山あるアトリエなんだけど、ソフィーは読書趣味ではなく、アテもなく出かける。

アトリエの山を降りて、住宅地を抜けて教会前、噴水広場へ……

「お!ソフィー姉ちゃん、今日は大馬車が来るみたいだから、見に行くんだ。おいでよ」

キラキラした水が今日も眩しい噴水広場。

教会の男の子に言われて、ソフィーは目を輝かせる。

「行く!黒王丸、元気かなぁ~♪」

「そろそろ来るって話だから、今日じゃないかも知れないよ?」

教会の女の子もついていく。

キルヘンベルの子供達が続々と、思い思いの場所に出発する場所。

それがヴァルム教会前の噴水広場だ。

キルヘンベルの街の入り口。

今日も自警団の人が居て、ソフィーと男の子、女の子はその側の川で釣り糸を垂らしながら、大馬車を待つ。

……キルヘンベルを日々歩き、何かして遊ぶ日々……

 

 

……そんなある日、ソフィーが独りで寝る日に、ベッドとベッドの間に……

四角い……シミ?……のような物が出来たかと思うと、地下への扉となった。

おばあちゃんが使っていたコンテナへの入り口が、また現れたのだ。

「……あれ?おばあちゃんが封印して、無くなったはずだけど……」

ソフィーはしゃがみ、小さな杖の形をした閂を外す。

細い扉……おばあちゃんが時折入って行った扉は、ソフィーは入ってはいけない扉……

おばあちゃんが居なくなる前に、その扉は消えた。

それから2年くらい経つのだろうか……

……カタッ……と軽い音がして閂は外れ、扉を開けてみれば、下へと続く階段が見える。

中は明るく、空っぽの棚たちが並んでいる。

ソフィーがここに入るのは、初めてだ。

 

……初めてのはずだけど……

 

下着姿だったソフィーは、緑の錬金コートを羽織って、下へと降りる。

階段はしっかりしていて、地下へと続く。

なかなか深い。思った以上に階段が長い。

そして地下にも照明が並んでいて、明るい。

右も左も空っぽの棚……空っぽの棚……その果てにドアがある1本道。

そのドアには、豪華な杖で閂がされていて、ソフィーはそれを外す。閂の豪華な杖は、中々の重量感……

ドアは軽く押し開かれ……

こちらは控え目な照明の部屋……

その中には黒くて大きなぷにぷに?の後ろ頭があった。

「きゃっ!プニ!?」

ソフィーは後ずさりして、慌てて部屋を出るとドアを閉める。

……そして脇に避けた豪華な杖に手をやる。

このドアの閂である豪華な杖を手に……少し待つ。

……静かなままだ。

……明るいけれど、あまりにも静かな棚の廊下……

 

……更に少し待つ。何だろ?と豪華な杖を置いてドアを開ける。

変わらずに、ぷにぷに?の後ろ頭がある。

しかもでっかい!

ソフィーの5倍……もっと大きいかも……?

……そしてそのぷにぷに?が居るだけの部屋のような……

ソフィーはくるりとその回りを回る。

この黒いぷにぷにには、顔が無い。

ぷにぷにではないようだ……そしてここで行き止まりみたいだ……

そんな中、ぷにぷに?の身体から、ソフィーに向けて細い腕?みたいなのがぴょこん、と飛び出していた。

 

……身体と同じ色の、黒いテカテカのぴょこん……

ソフィーはおずおずと、それを握ってみる。

「……錬金術士は死んだのか……ああ……そうか……約束の2年が過ぎた。お前は新しい……普通に考えれば……錬金術士の孫娘……そうか……お前は孫娘か……」

そんな思いが伝わって来た。

ツヤツヤした触り心地で、油っぽい見た目なのに、不思議と油っぽい感触は無かった。

「あ、あなたは?」

ソフィーも思いをぶつけてみる。

「マナの柱……と呼ばれていた……我は……我であるとしか言えぬ……だがこの屋敷に力を与え……この街を……この土地を守護している……」

ソフィーはマナの柱のぴょこんを握る。

……なんかしっかりとしていて、温かい。

「おばあちゃんの事を知ってるの?」

思いをぶつける。ぴょこんは、時々上に下に、ほんの少しだけど力強く揺れる。

「……知っている……我の望む物全てを我に捧げた……我は力を与えた……お前も……我に捧げるのか?……歓迎するぞ……」

マナの柱はそう思いを伝える。

頭に響く声として伝わるのだけれど、落ち着いた、安心できる……年老いた男性のような声。

「力?……まさか、錬金術士になれる力!?」

ソフィーは思いをぶつける。

「ソフィー……お前は錬金術士になりたい……のか……その力なら与えられるが……それをお前が受け取れるのかは……お前次第だ……それは天分次第だな……」

マナの柱は答える。

 

それを信じていいのかは分からないけれど、アトリエのコンテナの中に住んでるみたいだし、信じても良さそうだ、とは思う。

「おばあちゃんを錬金術士にしたのは、あなたなの?」

ソフィーは聞いてみる。

「我が力を与えた……受け取れたのは……彼女の……天分だな……」

マナの柱は答える。

「天分って、なに?天才みたいなもん?」

ソフィーは尋ねる。

 

「人間に生まれれば……人間として生きる……マナの柱に生まれれば……マナの柱として生きる……猿なら猿……猫なら猫だな……お前がどういった人間なのかも……既に決まっている……という事だな……」

マナの柱は答える。

思いが伝わってくる分、言葉以上に色々と伝わってくる。

……ソフィーの天分は、人間で女……

そしてこの場所……

受け取れる能力も決まっているだろうけれど、どう決まっているのかまでは、受け取ってみなければ分からない……

 

「錬金術士になれないかも知れない?」

ソフィーはガッカリしながら思いを伝える。

「なれないかも知れないな……だが力を受けたならば……魔法ぐらいは……操れるようになるだろう……」

マナの柱は答える。

「魔法ぐらい?」

ソフィーは少し明るい表情になる。

魔法ぐらいなら、使えるようになるって事……?

「我が……力を与えた者は……数知れず居た……その中で魔法を使えないままの者は……居ない……だから……良くすれば錬金術士になり……魔法も使えるようになる……だろう」

マナの柱は答える。

落ち着いた、あまり興味もないような感じで、さも当然、といった風だ。

 

「あなたが求める物は何?」

ソフィーは尋ねる。

「お前の体液だ……汗や排泄物……脂……髪……そういったお前には必要の無い物を頂く……それと……お前が我に預ける物全てだが……それはお前の天命が尽きるまでは……お前の所有物みたいなものだ……」

マナの柱は答える。

「……ん?それって超エロエロな感じ?……あと、はげ頭になる?……預ける物?」

ソフィーは考えて……

そんな答えを出した。

 

「まあ……エロエロな感じ……というイメージは……合っているな……髪は不都合なら頂かないが……預ける物は……預ける物だ。錬金術の材料等だな。……よって先の錬金術士の……預けた物は……全て頂いた……天命を終えたのだからな……」

ソフィーの答えを受けて、マナの柱は答える。

「さすがにちょっとなぁ……」

ソフィーはもじもじする。

 

「慣れれば便利だぞ……コンテナの部屋も……腐ったりせずに……保管できる……お前にとっては……良いことずくめ……我もその体液で大いに力を得られる……更に……この中では時間を止める事も……出来る……忙しい人間でも……ゆっくり休めたりするぞ……」

マナの柱はそう売り込んでみる。

WinWinな関係になるが、それもソフィー次第だ。

 

「……今、答え出さないとだめ?」

力は欲しいけど……

と、ソフィーは思うけど、超エロエロな展開にはさすがに抵抗があるし、そう聞いてみる。

「我は……ここにある……明日でも……来月でも……来年でも……断るでも良い……まあ……また話をしに来てくれると……我も退屈しのぎになるな……」

ソフィーはぴょこんを離す。

 

ぴょこんを離すと、思いは途切れた。

……静かな部屋。

 

そしてまたぴょこんを掴む。

……ここで帰っても独り……

「ここで寝ていい?」

ベッドもないこの場所で、どう寝るのかは考えてなかったけれど、そう思いを伝える。

マナの柱は、おばあちゃんにも詳しいみたいだし……

「……裸になり……中に入れば……寝る事も出来る……服を着たまま入られると……我の身体が布に捕らえられ……減ってしまう……それに服を汚す事にもなる……」

マナの柱は答える。

 

「……超エロエロな感じになるじゃん……」

ソフィーはそう、思いを伝える。

「……超エロエロになるには……我にも工夫と技が必要だろう……それをしなければ……眠るだけだ……朝日の出る手前には起こそう……」

マナの柱はそう伝える。

なんかサービスもいいみたい。

「じゃあ……」

ソフィーは服を脱いで裸になる。

そしてその途中、ふとマナの柱を見る。

……目が無いから見えないのかも……

 

……そして脱ぎ終わると、ぴょこんを掴む。

「なんか恥ずかしいね……骨とか浮いてるのが……みっともないんだよね……へへ」

ぴょこんを掴むと、マナの柱と会話が出来る……

「ふむ……まあ……我を相手に恥じる事もあるまい……我は……人間ではないからな……それに……我も裸ではある……」

マナの柱はそう伝えた。

「裸……だね。確かに……」

ソフィーはマナの柱を見上げる。

……確かに服は着ていない。

「それと……脱いだ服は外の棚に……置いてくれ……我にとっては……危ない品だ……」

そしてマナの柱は、ソフィーが部屋の隅に脱いだ服に向けて、ぴょこんを伸ばす。

「そ、そうだったね……ごめんね?」

ソフィーはいそいそと服を外の棚へ置いて来る。

 

 

マナの部屋に戻ると、マナの柱は口を開けていた。

「食べられる……?」

ソフィーはマナの柱の口に手を触れて、そう伝える。

「食べたりはしない……朝になったら……起こして吐き出そう……」

マナの柱に言われて、ソフィーは口の中に入る。

まるで身体の中に温かい風が吹くような……

そして身体を預けると寝たまま、宙に浮かぶような……

そんな初めて感じる心地好さに、ソフィーは眠りに落とされた。

 

 

「朝だぞ……」

マナの柱に起こされて、ソフィーは起きる。

吐き出されてみると身体は全然汚れてなくて、しかもすべすべさらさらな感じだった。

エロエロな感じもしなかったし、今までの人生でナンバーワンの寝起きスッキリ感……

ソフィーは、マナの柱のぴょこんを掴む。

「……ありがとう。なんか凄く良く眠れた」

壁は……

少し明るすぎるくらいの光る苔が、うっすらと付いた石。

床は黒い絨毯で、なんか柔らかい毛で出来ていて、足の裏に心地好い。

広いし、なんだかいい部屋だ。

天井には、アトリエにも使われている灯りが幾つも光っていて、控え目だけど明るい。

 

「……眠りが深く……休まったのなら良かった……また来るといい」

マナの柱の声も柔らかく優しい。

寝てみて思う事は、心地好い事と、マナの柱に、怒りも悲しみも感情が感じられなかった事。

だけど少しだけ嬉しく思っていたように思う。

気のせいかもだけど。

 

「次は覚悟決めて来ようかな……力……欲しいもんね」

ソフィーはぴょこんを少し強く握る。そしてその思いを伝えた。

「……そうか……もっと色んな物を食べる事を勧める……栄養不足気味だったぞ……」

マナの柱はソフィーにそう伝えた。

ソフィーはコンテナを出て、アトリエのベッドの間の細い扉を閉じた。まだ外は暗い。

遠くに朝の光りがちょこっとだけ覗く……

そんな時間だった。

 

 

ほんの少ししたら朝になり、オスカーとモニカがやって来る。

ソフィーは外に出て、この日もキルヘンミルクスネークを狙い、近くの森を駆け回る。

この日は、ぐるぐる貝の大物は居たけれど、蛇は取れなかった。

 

 

夜はオスカーが来て、八百屋から色々と野菜を持ってきた。

「ソフィーはこういうの、あまり好きじゃないんだろうけどな……最近また、痩せて来てないか?食べるもん食べないと、母ちゃんも不安がってるんだよな……」

キルヘンミルクと、うに、きまぐれいちごにカボチャと、今日のオスカーはやたらと色々持ってきた。

「……食べるよ。心配かけちゃってるんじゃ、悪いもんね」

ソフィーは錬金釜の近くの台に行く。

そこが台所でもある訳だし、オスカーは色々とそこに並べた。

「スープ、作るな。朝とか昼も、ほとんど食べてないだろ?」

やたら心配かけてるみたいだ。

「まあ……ね」

ソフィーは昨日マナの柱に「栄養不足」と言われた事を思う。

オスカーは手際よくスープを作る。

 

 

「美味しい!オスカー料理うまくない?こんな美味しくなるの?」

沢山作るスープを、オスカーと2人で食べる。

オスカーってば、作りすぎて余るくらい作ってた。

 

「いつもこんなもんだろ?朝の分もあるからさ、朝もちゃんと食べなよ。そうしないとまた痩せて来るからな」

暖炉の前のテーブル。

オスカーの食べっぷりが良くて見とれる。

でもオスカーがこっちで食べてるって事は……

……マルグリットさんは独りで夕食なのかな……

なんて、ソフィーは思う。

 

「オスカー、太い子が好きだもんねぇ……」

ソフィーはそう言って笑う。

マルグリットさんの事は伏せておいた。

「いや、ソフィーが細すぎる感じになってるだけだって」

オスカーはそう言ってソフィーにスプーンを差し出す。

同じものを食べてるんだけど……

ソフィーは身を乗り出して口を開ける。

「あ~ん……」

「へへ……可愛いな。ソフィー」

ソフィーがそんなひとくちを食べて、オスカーは笑う。

「なんか、いつもより食べられる感じする。なんだろ……」

いつもより、食事が美味しく感じる。

そしてもっと食べたいと思えるのだ。

「あ~ん、がいいのかい?もひとついけるか?」

「いけます!あ~ん……」

 

 

……夜は下着姿でオスカーと寝る。

明るいままの部屋で、オスカーは目を布で覆い、ソフィーはそのまま。

昔からアトリエの灯りは消えないから、暗い所で眠る習慣が無い。

 

 

「オスカー……あたし……昨日ね……」

昨日の、コンテナのマナの柱の話をする。

おばあちゃんもそのマナの柱に錬金術士の力を貰った事、街を守っているらしい事、昨日はそこで眠った事……

 

 

「念願の錬金術士になる秘密が、そこにあるのか……でもエロエロな感じにならないとダメなのか?」

ソフィーと抱き合いながら、ひととおり話を聞いて、オスカーはそう話す。

どこかとぼけた……心地好い声で……

「きっと、そう。でも錬金術士になって……おばあちゃんみたいに色々な人の役に立ちたい」

ソフィーはオスカーを抱く腕に力を入れる。

「じゃあ、いいじゃんか……ソフィーがもっとエロくなるって事で……」

オスカーはソフィーの身体をまさぐる。

「ん……んっ……これも勇気だよね……」

ソフィーもオスカーのほっぺたをまさぐる。

「どんな事されちゃうんだろうな?後で教えてくれよ?」

オスカーはイタズラっぽく笑ってソフィーの股に手をやる。

「もうっ……ちょっと悩んでるのにぃ……」

ソフィーは足を閉じて、オスカーはその手を引っ込める。

 

「ソフィーがどうしたいのか、に任せるよ。オイラは、ソフィーのしたい事を尊重するだろ?」

オスカーはそう言って眠りに入る。

……いずれ、オスカーは1人で旅に出るのが夢。

ソフィーはオスカーに縛られず、オスカーもソフィーに縛られず……

それが、2人の約束。

まあ、お互いに自分勝手なだけなんだけど……

 

 

朝になって、オスカーは帰って行く。

今日は八百屋の仕事を手伝うみたいで、ソフィーもアトリエで、本でも読む事にする。

……夜はモニカの所にお泊まりするつもりの日。

……暇だし……

と、コンテナに入る。

相変わらずの空っぽの棚……

そこを抜けてあのドア……

ひどくドキドキする。

 

……魔法の力……エロエロ……

ドアの閂、豪華な杖を外す。

前回と変わらない、薄く明るい部屋に、黒い巨大ぷにぷにがある。

そして黒い巨大ぷにぷにからソフィーに向けて、ぴょこん、と細い腕?を出した。

ソフィーはそれを握る。

「……凄くドキドキしてるね?」

マナの柱はソフィーにそう伝える。

……可愛い、好奇心旺盛な感じのする女の子の声。

「……エロエロなのは……なんか……ね?」

ソフィーはそう伝える。

「イキナリそんな……ガッツンガッツンにやらないよ?私は心得てるからね」

マナの柱は伝える。

この前とは違う、声。

若い女性的な声で、あどけなさの残る感じ……

「ぷっ……ガッツンガッツンって……」

ソフィーは笑う。

 

「まあ……おいで……力を与えてあげる……また受け取れた力については教えてあげるよ……」

マナの柱から、明らかに感情が読み取れた。

好奇心……

嬉しい……

そんな気分が伝わって来る。

「この前とは、違うヒト?」

ソフィーは尋ねる。

「そう。きっと今は2つの人格を持ってるのよ。聞く限りでは……もう1つの人格はおじいちゃんみたいだね」

ソフィーはぴょこん、から手を離して、服を脱ぐ為に部屋を出る。

 

 

服を脱いでドアの外、棚の上に乗せる。

……凄いドキドキする……

魔法の力を受け取る為とはいえ、これからエロエロな展開になりそう……

……いや、エロエロ展開になるに違いない……

「はぁ~……」

ソフィーはやたらと大きいため息をつく。

……暇だし……

……錬金術の力を受け取れるか分からないし……

……オスカーと致してたりするから、エロエロ展開も、少し慣れていたりはするけれど……

 

……これでいいのかな……

とか、やたらと思う。

 

 

とは言え、結局は黒い巨大ぷにぷにの部屋に、ハダカ突撃する。

「決心は固まったみたいだね?」

マナの柱はそう、ソフィーに伝える。

「うん……このままじゃ何も始まらない気がするし……結局突撃したよ」

ソフィーはそう、握るぴょこんに伝える。

「まあ、それでいいんじゃない?勇気が無いとね、得られる物も得られないから」

そしてこの前と同じ……

黒い巨大ぷにぷにに大きな穴が空いて、背もたれが倒れた椅子みたいな部分がソフィーを待っていた。

 

 

ソフィーは中に入り、背もたれが倒れた椅子みたいな部分に座る。

「ようこそ……」

黒いぷにぷにの大きな穴は閉じて、ソフィーの身体を包む。

顔まで埋まるのだけど、むしろラクに息は出来る。

そして宙に浮かぶような感覚……

目から鼻から口から……

ヘソからお尻の穴からお股から……

身体を貫いて心地好い風が吹くような感覚……

「今日、退屈なんだね?楽しくしてあげる。男の子とイイコトしてるし、イイコト好きだもんね?」

そしておっぱいをちゅうちゅう吸われ出した。

温かい風がくすぐるように吹いてる感じに、ソフィーは身体をうねらせる。

「んっ……あうっ……ガッツンガッツンしないって……」

身体の皮膚全体を、その温かい風がくすぐるように巡り……

髪の毛も根本まで撫で付けられて、頭が気持ちいい……

なんか全部心地好い……

つまりは強烈に感じさせられる。

 

「してないよ?まずは気分を出さないとね。ソフィーの身体、美味しく頂いちゃうけど……ソフィーも頂かれたくなっちゃうと……効果抜群なんだよね」

腰がむずむずする。イヤらしい気分になる。

腕が強く掴まれたような感覚。

そして身体の全部を、マッサージされてもにゅもにゅされてる……

「お口、あ~んして?」

ぷにぷにが入って来る?そう思いながら口を開ける。

温かい、ほのかに甘いのが口の中に入って来る。

……なんの香り?ふわっ、と香る。

……花の香りみたいな……?

 

 

「ヤバい……おかしくなりそう……こんなの……」

ソフィーは身体をもじもじうねうねさせながら思う。

「これからよ?お尻の方から私の餌……貰うから……」

抵抗出来ないソフィーの身体を捕まえて、汗と排泄物、脂や髪の毛先、爪の不要な部分を頂く。

その時に、力を与える。

……というか、魔力と同化していき、力を行使出来るようになる。

 

 

……お尻の穴を押し広げて、にゅるにゅると入って来る感覚。

たちまちソフィーは身体をひくん!ひくん!と震わせた。

「あっ!あうっ!」

思わず出るエロい声。

その声は黒い巨大ぷにぷにの中でやたらと響いた。

 

「いい反応!気持ちいいでしょ?」

ハダカの身体をもにゅもにゅされて、ソフィーは思わず顎を上げる。強く目を閉じる。

「このエロエロやばいっ!ハジケちゃうっ!」

ソフィーは目を閉じたまま、身体を震わせる。

 

 

「へへ、ソフィーは可愛いなぁ?……じゃあ……そろそろ入れちゃうな?」

オスカーが現れて、ソフィーのお尻を掴む。

「オスカー!?え?……なんで?」

ソフィーは目を開く。

 

開いてもマナの柱の暗闇のままのハズ……

だけどアトリエの明かりの中、オスカーがソフィーを見ていた。

「ソフィーの中のオスカーの記憶だよ。それがこの中で実態を持つんだよ」

マナの柱がそう伝える。

ソフィーが目を閉じても、オスカーに抱かれてる感覚、熱い体温が感じられて、まるで本物と変わりがないような……

それでいて呼吸は涼しくて……

 

「いまぁっ!ハジケたばっかりっ!あはっ!はああっ!あっ!あっ!あああっ!」

ずん!と突かれて、ソフィーは身体を反らせて顎を上げる。

オスカーはそんなソフィーを掴まえて、乱暴に身体を掴み、揉みくちゃにする。

「ひゃああんっ!あんっ!あんっ!」

 

ハジケた後に、更にもにゅもにゅされて突かれて……

キスを求めてソフィーはオスカーのほっぺたを探す。

そして手のひらに捕まえるほっぺたの感覚……

そして熱い唇の感覚……

「はぁ……はぁん……んぅ……」

ハジケた後で、優しく肉厚な手のひらで身体を撫でられるのが好き……

オスカーに見られて、嗅がれながらぴくんぴくんさせられらるのが続く。

 

「ソフィーの乳首、まだして欲しいって言ってるぞ?」

オスカーのおとぼけボイス……

「はぅぅ……っ……いまは……さすがにダメだよ……へろへろだもん……」

肉厚な手のひらはソフィーの口許に。

ソフィーは口を開いて、その指を口に受け入れる。

足を開いて、参ってるワレメを見られて、太ももをさすられて腰をうねらせる……

 

ひくん、ひくんと感じながら、まだエロエロな気持ちになっていく。

「あふ……ちゅっ……はぁぁっ……ちゅっ……」

ソフィーは、オスカーの指をしゃぶってその手に両手を絡ませる。

……もっとエロエロな気持ちになって、もっとエロエロしたいおねだりをする。

 

「ソフィー……どんどんエッチになってくな?」

そんな意地悪な言葉に、ソフィーはオスカーの顔を見る。

涙に濡れた瞳で見る、滲んだ顔……

でもそんなのが気持ち良くてすっかり病みつきなんだ。

それからも更にハジケてハジケて……

 

 

ソフィーは頭を真っ白にされた。

 

 

マナの柱の行為は止まり、ソフィーは呼吸を整える。

身体を貫いて心地好い風が、ラクに呼吸を整えていく。

……いつのオスカーだろう?

……こんな感じで激しくされて……

夢中になった日があった。今回はお尻の刺激まで凄くて、すっかり夢中になった……

「排泄物も頂くんだから、初めてだけどごめんね?今度はオスカーにも使わせてあげる?」

肩を揉み……

少し風も涼しくなって、マナの柱が伝える。

 

「……うう……後悔してるかも……これクセになるよ……めっちゃガッツンガッツンしてくるし……」

ソフィーはお尻の穴にまで侵入されて、身体を震わせながらそう伝える。

ぴくぴくするのが止まらない。

「ガッツンガッツンされたいスイッチまで、入っちゃったもんね?それにクセになるでしょ?うんちとかおしっこだけでもいらっしゃいな。時間を膨らますなら、時間も節約できるから。それに綺麗になるし」

そう伝えながら、マナの柱はソフィーを休ませる。

 

……今度は火照った身体に涼しい風が吹いて……

心地好いため息をつく……

それと、最近は少し燃え上がらない絡みを思い出す。

オスカーも飽きたのかな……

……とか悲しく思う。

気分も身体も落ち着いて、冷めてく。

 

 

「なんでこんなの食べるの?マナの柱は……」

ソフィーは、涙まで舐め取られてるのを感じながら、マナの柱に尋ねる。

「私にも良くわかんないんだけどね……ソフィーが何故、草を食べないでパンを食べるのか?オレンジ足は虫を食べるのか?って聞かれてるようなものね。それとあらかじめ言っておくと、ここは男の子は入れない仕組みがあるよ。男の子がアトリエに居ると、コンテナに入れない仕組みよ」

……そんなギミックがあったのか……

とソフィーは思う。

 

「さて、ひと休みした所で本命に行こうかな……素敵な悲鳴を頂戴ね?」

……また温かい風が、くすぐるように吹いてる感じが始まる……

そしてソフィーの女性器に入り込んでいたのが、温かくなってぴくっ、ぴくっと動いた。

「本命……!?さっき本命だったよね……っ!」

ソフィーの身体も、やたら敏感にぴくっ、ぴくっと震える。

「でも、これからまたして欲しいの、知ってるよ?ソフィーの気持ち、全部分かっちゃうんだから……」

 

ほんの少し、じゅる……じゅる……

と出入りしたら、ソフィーは電撃に撃たれたように、まだ敏感さの残っていた身体を跳ねさせた。

「きゃああぁんっ!あぁんっ!」

エロい叫びはやたら反響して、真っ暗な世界に浮いたソフィーが、身体を震わせる。

今度はそんな世界のまま……

 

 

激しい快楽に、また頭が真っ白になる。

強烈としか言い様がない刺激に、ソフィーはぐったりして、マナの柱はまた止まった。

身体が余韻に震えて、何もかも敏感になるのを感じる……

涼しく心地好い風すらも、その敏感な身体を苛むような……

「可愛い……15歳だもんね?1番ステキな蜜が出る時期。ソフィーは男の子を知るのが早かったんじゃない?なのに、ここは擦られた事なかったんだ?」

マナの柱が伝える。

ソフィーは口の中を舐め取られながら……

思いが湧いてこない……何も考えられない……

 

 

暫く休み、おっぱいをちゅうちゅうされる。

身体を揉まれてまたびくん!びくん!と身体を震わせる。

そしてまた休み……

 

 

「ふふふ……今日はこのくらいでソフィー……満足しちゃったね?だから終わりにするよ……ソフィー……あなたに力を与えたよ……まだまだ力を注がないと物足りないけれど、ソフィーの言う錬金術士の力を、あなたは受け取れたよ……」

ソフィーは気を失って眠った……

心地好い涼しい風が……

温かく眠りに落とす風になり……

ソフィーの眠りを深くしていく……

 

 

膨らんだ時間の中で眠り……

8時間程ゆっくりと眠る。

……深く浅く深く……浅く……

眠りのサイクルもマナの柱はしっかり心得ている。

……ソフィーは身体も頭も上質な眠りで休めて、目を覚ます。

マナの柱はぺた~んと平たくなっていて、部屋の明かりが目に眩しい。

「……力、貰ったの?」

裸のまま動き出したソフィーは思う。

腰ぐらいまで浸かっている、なんでかぺた~んとしているマナの柱に、それは伝わる。

「与えたよ。ソフィーの身体に入ったから、この世界の不思議な力を使えるようになったよ。それはまだ弱いけど……あなたの力を教えるね」

 

 

……錬金術、特性。素材の特性が解る。

……錬金術、力。錬金術を行使する時、新しい物を生み出す。

……錬金術、技。錬金術を行使する時、特性を移す。

……錬金術、剛力。錬金術を行使する時、安定させる。

……魔法。魔法が使える。また技として常人離れした攻撃や防御が出来る。

……魔法、HP。ダメージを受ける時、魔法の力のバリアを消耗する。

……魔法、MP。魔法を行使する時、魔法の力のバリアを消耗する。

……魔法、LP。疲労を受ける時、魔法の力のバリアを消耗する。

……特性適用、業。装備品の特性を自身に適用させる。また、周囲の仲間にも適用させる。

……慈愛、特。マナの柱の力を受けて、その覚醒能力を持つ。

と、説明された。

 

 

「凄いね。ここまで派手に力を受け取れるなんて、ソフィーは欲張りだね。これなら随一の錬金術士になれるんじゃないかな」

ソフィーは裸のまま、また放心状態になった。

「嘘……ついてる?」

思わずそう伝える。

錬金術なんて出来なくて、蛇を捕まえるのも上手くないし……

……これからどうしようか……

それを考えるのが嫌だった。

自分の力で、何も出来ないような気がしてた。

 

「嘘ついてどうするの?でもその力は不充分で弱いから、ここに通わないとダメだよ?天才錬金術士の誕生は、もうちょこっと先になるね」

マナの柱は楽しそうなウキウキと共に、そう伝える。

「通うのかぁ……エロエロ凄すぎてオスカーが霞んじゃうのが怖いなぁ……」

黒いマナの柱に半身浴しているみたいな感じで、ソフィーはそう思う。

オスカーとエロエロしてる時にため息とか出ちゃいそう……

とか思うのだ。

 

「そこも大丈夫だよ。そういう能力も得てるからね。慈愛、特。の能力は、男の子を誘惑する能力で、マナの柱の覚醒能力を男の子に使う事になるよ。オスカーも錬金術士になっちゃうかもね?」

そんなソフィーの思いを伝えても、マナの柱はウキウキしたまま、そう返して来た。

むしろオスカーのエロ元気100倍、ソフィーへのエロ視線100倍!

 

……みたいな感じになる目論見で、マナの柱はソフィーではないのに、ウキウキワクワクなのだ。

「そ、そうなの?」

ソフィーは戸惑う。

マナの柱のウキウキワクワクが伝播して、ウキウキワクワクさせられてきた。

「オスカーとのラブラブも、深まるといいね!私も応援しちゃうんだからね!」

そんなやり取りをして、ソフィーはマナの柱から出る。

「またおいでね!」

 

 

……ソフィーはマナの柱の部屋を出ていく。

散々ハジケたけど、しっかり休んでいるので、足取りもしっかりしてるし、頭もスッキリしてる。

棚の並ぶ廊下で服を着て……

コンテナを出た時、朝だった。

時間が止まるらしい話は本当みたいだ……

早速、錬金釜に向かう。

でも、レシピは何もない。

……井戸水と近くで手に入れたうにを入れてみる。

……何も起こらない……

「……力が弱いのかな……まだ1回じゃダメって事かぁ……」

今出来る事はなんだろ?

……食べる事かな……

栄養不足じゃマナの柱に文句言われるし……

 

 

まだ朝……

マナの柱に錬金術の事を聞きに行く。

ドアを開けると、マナの柱から、またぴょこんと細い腕が出る。

「錬金術やってみたけど、何も起こらないよ……?」

ソフィーはそう伝える。

「ちゃんと通わないと、貰う力は完成しないよ?まだ弱すぎるし、それも安定してないからね」

ぷにぷに的なカタチに戻ったマナの柱は、答える。

「……あたし、何をするべきかな……?」

ソフィーは尋ねる。

また、ここで……?……今から?

なんて思う。

 

「何をするべきか……ねぇ……美味しい物を食べる事じゃない?食べれば身体が充実するし、充実してた方が何かと良いよね?」

身体が資本……

美味しい物を食べるのが今出来る仕事……

「美味しい物を食べるには……キルヘンミルクスネークを!採らないと!?」

ソフィーはそう伝える。

それしか思い浮かばなかった。

「ん~……まあ、濃いモノかなぁ……ソフィーの食生活を思うに、オスカーからの貰い物と、キルヘンミルクスネークカモン!でいいんじゃないかな。私が干渉した事で、きっともっと食べれるようになってるよ」

マナの柱にそう伝えられて、ソフィーはアトリエに戻った。

 

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[錬金コート]
ソフィーの着ている藍色の錬金術師っぽい上着。勝手に命名。

[錬金コートの不思議機能]
ポケットの中の物が、汚れたり濡れたり割れたりしない。

[ウメさん]
ゲームにも出てくる井戸の所のおばあさん。ただ、名前は出てこない。ソフィーとは近所付き合いがありそうだし、名前も知らないのは不自然だと思い、勝手に命名。

[ソフィー×オスカー]
ゲームでは、特に恋仲なんて事はない。

[鳩]
鳩。

[オレンジ足]
ムクドリ的な小鳥。夕方には群れで巨大な雲になり、その雲が激しく蠢き、寝床と決めた大木へと帰って行く。

[黒い親分]
黒いニワトリ。鳩とかと同様、あまり人を恐れない。

[ギャーギャー鳥]
キジ的な鳥。ニワトリよりは少し小さい。機嫌が悪いと襲って来る事もある。

[教会の子供達]
ゲームでは、近くの森には犬を追いかける謎の少年ぐらいしか見かけない。

[キルヘンミルクスネーク]
白い蛇。そこそこ居るので、探し歩く日々。

[バーニィさん]
ゲームでは出てこない。教会関係者の人。教会の子供達が働いていたり、教育を受けていたりする為、スタッフを増やしたくなったので登場。

[泥蛇]
採れた蛇の不確定名。キルヘンベルの蛇は泥を纏って生活するものが多いので、洗わないと分からないタイプの蛇。

[うずまき貝]
カタツムリ的な生き物。

[ふかふか緑]
シソ的な植物。

[ひらひらキノコ]
キクラゲ的なキノコ。

[王様キノコ]
シイタケ的なキノコ。

[ディーゼルさん]
教会のスタッフを増やしたくなったので登場。バーニィさんよりも筋肉が凄い。

[塩と八百屋]
ゲームでは、特に塩とか食事風景が出てこない。ソフィーはいつもお腹へった言ってるけれど。

[床板の隙間]
アトリエの暖炉の前の床板。排水的な場所が欲しくなったので登場。ゲームでは、特に生活排水が出ないので、登場しない。

[栄養不足]
ゲームでは、特にソフィーが痩せているなんて事はない。

[大馬車]
物流トラック的な物も欲しくなったので登場。酒瓶、酒樽は重いハズなので、でかい馬車となった。また、何もない田舎で、子供が興味を示さないハズがないと思われるので、子供にも人気、という事に。

[黒王丸]
大馬車、という事で大きな馬も欲しくなったので登場。ラオウの乗ってるアレ的な馬。

[ベッドとベッドの間の地下への細い扉]
アトリエの地下室に、この世界の魔法の源が欲しくなったので登場。地下室の入り口として、ここかな~的な感じ。

[コンテナへの入り口]
ゲームでは、どこがコンテナなのか不明。四次元なのか……?ぐらいのキャパシティでアイテムを保管出来るけれど。

[ドアの閂の豪華な杖]
閂が欲しくなったので登場。

[マナの柱]
魔法の源が欲しくなったので登場。ゲームでは、勿論登場しない。

[2人の約束]
所帯じみてはいない2人。

[食べられない悩み]
痩せている、という設定故の呪い。

[錬金術の力][マナの柱から貰う能力]
ゲームでも錬金術を使える。でもこんな感じのステータスは出てこない。



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錬金術のアトリエ 2

ソフィーのアトリエDX版が!



錬金術のアトリエ 2

 

美味しいもの……ソフィーは考える。

とりあえずは、オスカーの八百屋にタカる……

それが近道……

……なのは解るんだけど……

自力で何とかしたい……

 

とはいえ、既にアトリエにあるオスカーからの貰いものを食べる。

「マナの柱の影響なんだろうなぁ……食べる事がなんか……辛くない……」

作りおきスープとか、冷めたままなのに食べれた。

気まぐれジャムのクッキーも、1枚がでっかいんだけど、全部食べれた。

 

アトリエを出て、ソフィーは辺りを見回す。

オスカーが仕事で居ないと……

草とか虫とか採ろうにも、それが安全かどうか……それに寂しく行動していると、狼が出たり熊が出たりするし……

キルヘンミルクスネークカモン!も、実は命がけだったりする。

 

……今日はウメさんも居ない……

……どのみち、今はオスカー頼みだったんだなぁ……

とか思って、ため息をつく。

何気なく歩く事にする。

街はずれを抜けて広場……

そしてキルヘンベルの、メインストリート……

人が居ない……

 

人気のないキルヘンベルをぼんやりと歩いて、遂にストリートまで。

そして八百屋前に来ると、マルグリットさんに呼び止められた。

「ソフィーちゃん、いい所に来たね。ちょっとだけ店番頼めるかい?オスカーは配達でさ、アタシはちょっと、本屋に用があるのさ」

オスカーの母ちゃん……

マルグリットさんに頼まれる。お客さんは居ない……

「は~い。いいですよ~」

ソフィーは笑顔で答える。

 

そして店番に立ってみると……

しかし、人居ない……

寂しい街、キルヘンベルだ……

かぼちゃの種類が沢山ある。

キャベツにナス……りんご……青りんご……?

土いも、銀いも……ラーメル麦などなど……

う~ん……あまり食欲湧かない……

さすがに原材料だし……食べたばっかだし……

寂しい中で独り……そんな事を思いながら店番していると、お客さんより先にオスカーが戻って来た。

 

 

「おお?珍しいなソフィー……店番なんて」

オスカーがのっしのっしとやって来て、少し明るく言う。

「通りかかったらね、マルグリットさんに捕まったんだ」

ソフィーは笑顔を見せる。

独りぼっちの寂しい感じは嫌いだから……

オスカーが来て、安心して笑顔になった。

「そうだ。ソフィーが気に入るかも、と思ってお菓子作ったんだよ。はじけるベリーも余らしたりしてるから、そのジャムでなぁ……」

ソフィーは八百屋の奥に通されて、キルヘンミルクと、新作のジャム焼き菓子を食べる。

これまた1枚がでっかい。

「美味しい~っ!」

きっと栄養あるよコレ……

……まあ、分からないけど……

「だろ?モニカの分もあるからさ。今日はモニカの所にお泊まりなんだろ?エルノアさんの分もあるからさ、持ってってくれよ」

暇な店番のオスカーは、笑顔で言う。オスカーってば、クッキー焼くのも上手い。

「ありがとう!今ね、栄養つけなくちゃって思ってるとこだから嬉しいよ!それになんか、食べれるんだよね!」

ソフィーは思わずガッツポーズになる。

「お?遂にソフィー……その気になってくれたか!じゃあ、明日の朝、食べる用に……銀いもも付けるよ。モニカと一緒に食べてくれ!」

オスカーは青い三白眼を見開いて喜んで、凄い笑顔になると、銀いもも付け加える。

「でも、お金ないよ?」

豪華八百屋セットを受け取って、ソフィーは笑って言う。

「そんなの知ってるよ。……でもさ、今はこの街も寂しいだろ?せめてソフィーとモニカの笑顔が照らしてくれないとさ」

オスカーは寂しいストリートに目をやる。

「上手い事ゆっちゃって~……」

ソフィーは肘でオスカーをつつく。

「そうか?明日こそはキルヘンミルクスネーク……取ろうな!」

 

 

なんか色々と持たされて、まだ昼なのにアトリエに帰る。

モニカは教会で色々してるはずだし……

……あ……夕方にモニカをアトリエに誘って、マナの柱に会わせてみようかな……とか考えた。

昼だし……マナの柱に会ってみる。

モニカを会わせてもいいものなのか……

コンテナに入り、あのドアを開ける。

またぴょこん、と細い腕が出て、それを掴む。

「……トイレか?」

マナの柱はそう聞いた。

「むむ。そういえば……それもあるかも」

聞かれて思う。

おしっこしたいかも……

「……服は脱いでもらわないと……いけないのは面倒だろうが……脱いで使ってくれ……あと服は……外の棚に置いてくれ……」

まあ、求められてるモノでもあるし……

と、ソフィーはマナの柱の部屋を出る。

……棚が並ぶ廊下。

服を脱いで棚に置く。

服を脱いでも寒くはない空間。

ハダカになったソフィーは棚の並ぶ階段への道を眺める。

……寒くもないし、暑くもない。

 

マナの柱の部屋に戻ると、マナの柱の口が開いた。

と、言うと……

中の背もたれが倒れた椅子みたいな部分は、舌っぽい。

「んん~、でないかも……」

座ると、身体を包まれる。

……なんか温い風に包まれてるような……

ふわふわと空に浮いてるような気分になる。

ぷにぷにに触れている……という感じではない。

「少し待てば出るだろう……そんな気分だろうからな……少し座っていればいい……」

マナの柱はそう伝える。

「ところで、今日の夜にでもモニカを呼びたいんだけど……」

ソフィーはそう伝える。

モニカについて詳しく伝えなくても、どうせ分かっちゃってるんだろうな……とも思う。

「歓迎するぞ……我はいくらでも餌を食らう事を望む……力を与えるのは……自然と与える事になるが……まあ……今日の所は顔見せだな……それに……ソフィーの思うモニカ像を考えるに……エロエロ儀式には……大きく抵抗がありそうだ……」

ソフィーの記憶とか、思ってる事が伝わるらしく、話が早い。

……そうこうしてるうちにおしっこが出た。

「ううぅ……ふぅ……」

どういう仕組みなのか、おしっこをしたら、すぐさま消える……みたいな感じがする。

しかも不快に熱い感覚がまるで無くて、むしろ涼しい感じがしてて……

出た瞬間にどこかに消えているような、不思議な感覚。

 

 

用を済ませて、マナの柱の口を出る。

部屋の絨毯は素足に柔らかく、ふさふさしてる。

ついでに汗とかスッキリした。

あの風のおかげなのか、またすべすべさらさらの身体……不思議。

「なんか……これもクセになるね……身体を洗う必要ないかも」

ソフィーは口を閉じたマナの柱に触る。

口が開いてないなら、中に入れないくらい硬いけど、ぷにぷにしてる……

「必要なくなるだろうな。……汚れていれば……汚れているほど歓迎だ……外の様子も判る」

マナの柱はそう伝える。

「……体当たりしても大丈夫なの?」

ソフィーは黒くて、テカテカしてるマナの柱を見つめる。

……なんかぼよんぼよんしそうじゃないか……

「……まあ……問題ない……」

マナの柱はソフィーの思いを汲み、答える。

「とおっ!」

ソフィーは胸から飛び込んでみる。

むにょ~んとめり込んで、そして戻る力で跳ねるようにして戻された。

しかも、ぼよ〜ん、という音のオマケ付き。

「あははは!面白い!とおっ!とおっ!とお~うっ!あははは!はははっ!」

 

 

気が済むまで体当たりして、ソフィーはマナの柱の部屋を出て、服を着る……

そしてコンテナを出る。

棚の廊下は何の音も風も無くて、寂しい。

 

 

そして夕方、ソフィーはモニカを誘ってみる。

「え?……夕食の用意しちゃってるから、食べてからならいいわ。見せたいものなんて、どうしちゃったのかしら?」

なんか今日は、モニカの機嫌がいい。

モニカと一緒に住んでいるおばさん、エルノアさんの夕食をご馳走になってから、アトリエに行く事にする。

 

 

「見て見てソフィーちゃん、今日はマルグリットさんにね、また新しいペンタスを貰っちゃったのよ?」

ご機嫌のエルノアさん、星型の小さい花が沢山ひしめき合ってる植物がテーブルの上に4鉢。

赤と白、紫と白、真っ赤、ピンク色と赤と白のやつ。

「こんな花があると、食事も華やかですね!紫のやつが、今日貰ったペンタスですか?」

ソフィーは立ち上がり、ペンタス達を眺める。

そして椅子に座り、下からも見たりする。

「そうなのよ!ソフィーちゃんも覚えてくれてたのね!紫のペンタスは珍しいらしいけれど、マルグリットさんたら、枯らしそうだから~、なんて言うのよ?」

エルノアさんは可愛らしく微笑みながら、ソフィーと一緒にペンタスを眺めてみたり。

そんな感じで、モニカの家で夕食をご馳走になって、エルノアさんと色々お話して……

 

 

なんだかんだで夜……

 

 

アトリエへ続く山道をモニカと2人、ソフィーは杖を振り振り歩く。

「あ!夜バト見っけた!」

ソフィーは道端の夜バトを見つける。夜に活動する、やたら白い鳩が月明かりを受けて輝いていた。

「本当、ツイてるかも」

モニカも、そのやたら白く輝く鳩を見る。

鳩と違って1羽で行動する鳩。見た目綺麗だ。

そして夜も星がやたら明るいのでそう暗くない。

……夜もそんな真っ暗にはならないと言うのが、この世界では当たり前だ。

 

そして2人でアトリエに入り、ソフィーはベッドの隙間の床の、入り口の細い扉……

閂の杖を外す。

「……こんな地下室……あったのね?」

モニカも膝をつき、閂の外れた床扉を眺めて言う。

「錬金術に使う素材を、貯めておくコンテナなんだけどね。おばあちゃんが作ったんだよ。きっと」

ソフィーはそう言って扉を開ける。

ギィ……とか言いそうなものだけど、音も無く軽く開く。

「きっと?」

ソフィーから中に入る。

モニカもソフィーに続く……

地下へと続く階段を降りると、中は明るく、広い。

左右に並ぶ、空っぽの棚が並ぶ道……

その道の向こうのドアへと行く。

「地下室まで明るいのね……このアトリエは」

モニカが呟く。

このアトリエ、夜も明るいままで、どうやら灯りが消えないらしい。

「これ。この中に巨大ぷにが居て、マナの柱って名前なんだって。モニカにも会わせてみたいんだよ」

ソフィーは棚の廊下の突き当たりのドア、豪華な杖の閂を外してドアを開ける。

廊下が広い分、突き当たりのドアも大きい。

そして中には、黒い巨大ぷにが相変わらずぷにぷにしてる。

「なにこれ!?綺麗な白……宝石みたい!……触っていいの?」

モニカはそう、可愛い小物を見つけた時のような喜びの声を上げる。

「ええ~っ!?白!?」

ソフィーは驚く。

……どうみても黒にしか見えない……

「何?白じゃないの?」

モニカも驚く。

「あたしには黒に見えてるけど……」

ソフィーはそう伝える。

「嘘!?白くてキラキラしてるじゃない。部屋が明るいからなのね。で、触っていいの?」

モニカはそう言うと、マナの柱を見る。

 

……聖なるぷにぷに……

モニカの瞳に映るマナの柱は、キラキラと白く輝いている……

モニカからは、そんな風にしか見えないのだ。

「全然触っていいよ。声が聞こえてくるよ」

ソフィーは、目をキラキラさせてるモニカに言う。

「うわぁ~……ツヤツヤ……ぷにぷに……」

言われるやいなや、モニカは両手でマナの柱を撫でる。

触り心地がいい。

「……我を見る者は……それぞれに色を言う……青と言う者あり……白と言う者あり……黒と言う者あり……」

マナの柱はそう伝える。

ソフィーは触っていないけれど、伝わってくる。

「声……聞こえる……な、何!?」

モニカは驚く。

……触っていないのに……

ソフィーも驚いて、自分の手を見る。

「我が何者か……何色か……我は知らぬが……マナの柱と呼ばれていた事がある……モニカ……これも何かの縁……よろしく頼む」

マナの柱は答える。

「あ……よろしく……あなたがソフィーに錬金術を教えているの?」

マナの柱に両手を置いたまま、モニカがそう聞く。

「教える?……力を与える事は出来る……教える事も……こうして言葉を交わせるのだから……可能だが……我は錬金術について……知識を持っておらぬ……」

マナの柱は答える。

「力を与える?……ソフィーは何でも信じちゃうんだから、適当な事を言って騙さないで頂戴!」

モニカはそう叱りつけた。

「ええええええええええ~っ!?ちょっ、モニカ!?」

ソフィーは慌てる。

なんか騙されてる事に、なっちゃってるけど……

「我の言葉に……嘘はない……信じないのであれば……それはそれで構わぬ……」

マナの柱は答える。

「証拠はあるの?」

モニカが詰める。

「……動けぬ身で……証拠もないものだが……我の言葉が嘘という証拠も……ないだろう……」

マナの柱は答える。

怒ってるでもなく、淡々と……

ソフィーの頭の中にも声が響く。

「それはそう……だけど……」

モニカはマナの柱から手を引いて、俯く。

引いたモニカの手に、マナの柱のぷにぷにが、むにょ~んと付いてきた。

「ソフィーが騙されて……悲しむ姿を心配しているのか……案ずるな……ソフィーは大いに力を受け取れる器の持ち主……来年には錬金術士……としては……師が無いので分からぬが……魔物と渡り合える力は……得られよう……」

 

 

それからも、モニカとマナの柱で色々と話し合う。

マナの柱は淡々と……

モニカは感情的になって……

 

でもマナの柱からの力が嘘だったとして……

でも本当の可能性もあって……

「モニカ……貞操と共に自分を守るも良し……だがそれでは力は得られまい……力を得られるのは信じた者のみ……ソフィーはもう……信じる道を決めている……たとえ騙されたとしても……」

 

 

それからも話し合う。

マナの柱の話の方が堂々としていて、納得出来る感じ。

モニカの方が、分が悪くなってくような……

 

 

……信じなくてもいいが、信じる者の邪魔をするな……

……もしソフィーが力を得て外へ旅立てる時、力を得ていないモニカは、力にはなれない。

長い年月を掛けて鍛えるか、力を得るか。

魔物の爪や牙に引き裂かれる者は、旅に出られない……

 

 

長く話した気がする。

マナの柱は終始淡々と話していた。

 

「……負けたわよ。ソフィーが騙される時、私も一緒に騙されればいいんでしょ?」

モニカは服を脱ぐ。

エロエロ儀式しないと、力は得られない訳だし、力を得られなければ、旅に出るのは厳しい。

 

爪や牙に引き裂かれ、ソフィーの目の前で死を晒す事を覚悟した物になる。

マナの柱の話が本当ならば、HPMPLPの魔法、剣に込める魔法はまず得られるハズ……

そこさえあれば、死ぬリスクを大きく減らせる。

更に慈愛も得られる事が多いという。

慈愛は、男と交わる時、マナの柱のように力を覚醒させるというもの。

ソフィーは「慈愛、特。」により、オスカーが強くなる。

男はマナの柱に会えない場合が多いので、こうして力を得るのだと言う。

 

「あ~っ!モニカおヒゲ生えてる!」

ハダカになったモニカの股を見て、ソフィーは驚く。

金色の陰毛が、ちょろちょろ生えてるのだ。

「え!?でも生えてるものじゃないの!?」

モニカは顔を赤らめて、少し裏返った声で言う。

「あたし、生えてない……」

ソフィーも服を脱ぐ。

そしてハダカ同士になる。

……ハダカ族だ……

 

「……ソフィー、本当に痩せてるわねぇ……ちゃんと食べないとマズイんじゃない?」

モニカはソフィーの裸体を見て呟く。

陰毛あるないよりも、あばら骨が浮いてるのとか、やたら骨っぽいのが目につく。

「そ、それはそうなんだけど……でもこれからきっと太れるから、オスカーばりのナイスバデーになるよ!」

ソフィーも顔を赤らめる。

痩せてる貧相な身体を見られるのが、1番恥ずかしい。

「オスカーばりの!?……それはやり過ぎなんじゃない?」

モニカは言う。ソフィーはモニカの身体を見つめる。

おっぱいもどーんとでっかいし……

「モニカ、脱いでも可愛いなんてずるいなぁ……あたし、こんなんだからしょんぼりだよ……」

2人はそう話し、マナの柱に向く。

 

マナの柱……巨大ぷにぷには、かわらずにそこにある。

「……ふふっ……貞操を死守するつもりじゃないんだけど……初めてがぷにぷにって……滑稽ね」

モニカは苦笑いする。

「ん~……あたしは初めてがオスカーだけど……あまり大差なくない?」

ソフィーは真顔でそう話す。

「ぷっ!ひどいわソフィー……それはさすがにひどい!」

モニカは笑う。

「そう?どっちも可愛いじゃない」

ソフィーはモニカと手を繋ぐ。

モニカの手は震えていた。

「覚悟決めた所……悪いのだが……服は外の棚に置いてくれ……我が……触れると……我の身体が……ちぎれてしまう……」

 

マナの柱に言われて、2人は外の廊下……

棚に服を置いて……

 

そして、またマナの柱へと戻る。

「布に弱いのね……ごめんなさいね」

「あたし、2度目かな……えへへ……ごめんね?」

2人はマナの柱に謝る。

「まあ良い……まずは朝までゆっくり眠り……気分が良いのなら……エロエロ儀式……と行こう……」

口が開いて、舌が2つあった。

ソフィーもモニカも入り、あまりにも柔らかいベッドに沈むようにして寝る。

マナの柱の中で、宙に浮いてるような感じ。

モニカのドキドキが、マナの柱を伝ってソフィーにも伝わる。

「あたしも、オスカーと初めてした時、こんな感じで破裂しそうなくらいドキドキしたよ……マナの柱もドキドキしたけどでも……」

頭まで覆われて、ソフィーもモニカも目を閉じる。

でも思いが、マナの柱で反響して回ってる。

モニカがどう感じているのか、胸が痛くなるくらい解るのだ。

 

……きっと、あたしの気持ちも……

モニカに伝わってる……

「……私の方がソフィーより年上なのに……ソフィーの方が勇者なんだから……色々と飛び込んで行くの……もっと勇気が必要なのに……ソフィーの勇気が羨ましいわ……」

……モニカから伝わって、ソフィーから返して……

「勇気じゃないよ……守りたい自分が無かっただけ……モニカみたいな美人なら、飛び込んでないかも……でもやせっぽちのあたしは……あたしが嫌いなんだ……」

……思った事を共有するのだから……

隠し事は出来ない。

 

モニカの「私の方が優れている……」

なんて余計な優越感も伝わる。

ソフィー的には、モニカが羨ましくも、なんか口煩いと思っていたり。

そんな汚い心も苦い思いも悲しい気持ちも……

肌をすり抜けていく、マナの柱の温かい風が……

それに怒ったり、イライラしたりする暇も隙も与えずに、ソフィーとモニカを眠りに落としていく。

 

 

……朝。モニカがソフィーよりも早く目を覚ました。

「……おはよう」

少し考えて、昨日のマナの柱の事を思い出す。

そして挨拶を伝えてみる。

しかし……凄く寝心地が良かった……

寝つきの良くないモニカも、すぐに眠りに落ちた感覚だったし……

「おはよー。良く寝れた?」

マナの柱は答える。

「あれ?昨日とは違う感じなの?」

モニカは尋ねる。

昨日の年老いた男性の声ではなく、若くて可愛い女の子の声なのだから、そう思う。

 

「そう。きっと今はね、人格が2つなの。私はマナの柱で産まれた子供なんじゃないかな。モニカも、もし子供が出来て、でも育てるのが不都合なら、引き受けられるよ」

マナの柱は、明るい声で答える。

「え……?子供……できるの?」

モニカは驚く。

……女の子とマナの柱の子供?

「ふふ~ん……違うよ?マナの柱とモニカでは、子供は出来ないわ。安心して」

マナの柱の笑いの混じる声。

 

……誰かと話す事が嬉しい、という思い。昨日とは随分と違う。

なんか感情の無かったお爺さんと違って、やたらと感情豊かだったりする。

「でも、子供……取られちゃうの?」

モニカは尋ねる。

「そう望めば。望まないなら、取らないよ。むしろ痛みとか吐き気とか、そういうのを軽減出来るから、応援できるよ」

マナの柱は答える。

 

「……おはよう……」

モニカとマナの柱で話していると、ソフィーが起きた。

「おはようソフィー……こんな所だから聞くけど、ソフィーって子供出来ないの?」

起き抜けのソフィーに、モニカが尋ねる。

オスカーとエロエロしてるとか公言していたし……

と、気になる所だった。

「初潮がまだなんだよね……」

ソフィーは答える。

答えにくい話でも、思いが伝わってしまうのだから、嘘も何もない。

 

「えええ!?15でしょ!?まだなの!?……ひょっとして子供出来ない人なの?」

モニカは驚く。

そして余計な事を考えて、それも伝わってしまう。

「気にしてる所なんだけどね……でもこんな貧乏状態で子供出来ちゃっても……まあ……皆貧乏だし、オスカー金持ちっぽいから……いいのかな?」

ソフィーも色々考える。

 

「……さてさて、気分はどう?エロエロ儀式できる?」

マナの柱は2人にそう問いかける。

「えええ!?……うう……そうよね……でもその前にトイレしたいかも……」

モニカが、もじもじする。

「ここでしちゃえばいいじゃない。それがあたしの餌なんだから」

マナの柱が明るく伝える。

「この人格の時って……そういえば……」

ソフィーが思う。

食いしん坊だからなのか、とっととエロエロ儀式に入るんだこの人格……

「んっ……んうぅっ……おっぱいだめっ……」

 

 

モニカが悶え出した。ソフィーの方も始まる。

「はぁっ……くうぅっ……ん……」

ソフィーはモニカに手を伸ばす。

見えないのに、モニカの居る方は解るのは不思議だけど……

そしてモニカもソフィーに手を伸ばして、2人は手を繋いだ。

「モニカ……可愛い……んうぅっ……興奮しちゃうよぉ……」

ソフィーは、マナの柱に色々と舐め取られて悶えながら、モニカの手を握る。

モニカも、ソフィーの手を握りしめる。

「私……こんなのっ……軽蔑されちゃう……んっ……だめぇっ……だめぇっ……」

モニカは色々と葛藤しながら、でも抗いようもなくその感覚に震えている。

そしてマナの柱は動きを止める。

……ソフィーの方は、まだ動きを続ける。

「んあっ……気持ちいいっ……そこぉっ……あうぅっ……あうぅっ……」

モニカに、そんな思いが伝わる。

まるで触れてるかのように、伝わってしまってるのが解る……そんな感覚に、ソフィーは気まずく思う。

 

でも……何か壊れていく感じがあって……

スッキリするような感じ……

「ほおおぉっ!!おっ!!」

奥を擦られて、ソフィーは痙攣する。

意識がどこか吹っ飛んで気を失った。

身体中を舐め取られて……吸われて……

「ソフィーって美味しい~……この部屋の時間が膨らんでるよ……5時間くらいかな。モニカも美味しいけど……まだ硬いから休ませてあげるね?」

マナの柱は機嫌良さそうに、喜びにはしゃぐ声で伝える。

「こんなこと……いつもしてるの?」

モニカは尋ねる。

お尻の穴に……女性器に入り込んでる……

ぷにぷにが入り込んで、色々と舐め取られてる感じがする。

でもそれは、モニカを刺激しないように……?

僅かに、うにゅうにゅしてるだけだ。

その僅かなうにゅうにゅが、また心地好くてひくひくと身体が反応する……

 

「人間が芋を食べるように……植物は土と光に栄養を求めるように……私は女の子に栄養を求めるように出来てるね」

マナの柱は答える。

モニカに、嬉しい的な感情は伝わってくる。

「はぁ……ふぅ……」

モニカは身体をひくつかせながら、呼吸を整える。

いつもよりも爽やかな空気が吸えて、吐く時もスムーズにその空気は出ていく。

……抜けていく感じもする。

「ソフィーが時間を膨らませ過ぎたね。あと5時間くらい、外の時間に追い付かないから……部屋を出れないね」

マナの柱は呟く。

 

力を与える干渉があると、この部屋は時間が膨らむ。

外の時間が止まっている状態になるので、膨らんだ時間が終わるまでは、外に出れなくなる。

「じゃあ、モニカと遊ぼうかな……まだ気持ちいいのされたいもんね?」

モニカを包むぷにぷにが、少し強くなって、ひくひくと動き出す。

モニカはその感覚に、思わず身体を捩らせる。

 

「また……うにゅうにゅされちゃうの?」

モニカはそう聞いてみる。

でもしてほしいって気持ちがあって、ここではそれを隠す事は出来ない。

「されたいでしょ?ちゃ〜んと気持ち良くしてあげる」

マナの柱は、モニカのおっぱいを刺激し始める。口に侵入して、舌を刺激する。

 

……甘い感じがして、甘い香りがする。

「んううっ!……私の分もっ……はぁっ……時間が止まるんじゃない?」

ぴくっ、と身体を震わせる。

弱く、心地好い刺激に香り、味……

モニカの長い髪も撫でられてる。

「そこに気付くなんて、頭いいのね?でもして欲しいって思っちゃってるもんね?してあげるね」

モニカを包むぷにぷにが、もにゅもにゅと動き出す……

「そんなこと……あっ!あんっ!」

モニカはまた、マナの柱にうにゅうにゅされて、敏感な身体の感覚に流されて悶える。

ほんの少しの刺激で、びくんびくんと身体を脈打たせて、モニカは脱力する。

 

……それからもマナの柱は、モニカをエスカレートさせていく。

モニカは、身体中を舐め取られてるように感じて、身体を震わせる。

……震えてしまう。そして身体から吐き出されていく物を……

きっと汚いものを舐め取られてる……

お尻の穴にまで入り込んで……

食べ尽くされてる……

 

「私……こんなはしたない子じゃ……っ!あんっ!それダメッ!」

身体の敏感で恥ずかしい所を、全部明け渡したような気分に、モニカは頭を振る。

ただ、どうしようもない身体に、どうしようもない感情が沸いて、モニカの若い女の身体は、みずみずしく何度もハジケる。

「モニカも凄く美味しいよ?男の子とこんな事したら、男の子はもうメロメロになっちゃうね?」

マナの柱にいいようにしゃぶられて、でも気持ち良くして欲しくなって……

 

「もう!もうっ!あはぁああん!はぁぁあん!」

しばらくして、モニカも女の声で鳴き上げ、身も心もマナの柱に預けた。

 

 

……そんな時間が経って、モニカもソフィーも眠り……

そして起き出す。

「ううう……あたし、強くなってるのかな……こんなんで……」

ソフィーはマナの柱の中、ふわふわと浮き上がっていたけれど、地面へと降りて来る。

「力を受け取れてるから、強くなってる筈だけど……使い物になるまでには掛かるよね……」

マナの柱が答える。

 

「……という事は私も……これから何回もここに……?」

モニカが尋ねる。

「そういう事だね。2人ともまた来て、私のお腹を満たしてちょうだいね」

マナの柱は、意地悪な笑みを浮かべている……

そんな感じのする声で伝える。

「そ、そんな私……そんなエッチな子じゃ……」

モニカは声を強くして……

その声は途切れた。

「あたしはエッチな子だからなぁ……モニカもエッチな子でいいじゃない。モニカのおっぱいちゅうちゅうしてみたい」

ソフィーが身体を起こす。

包んでいるぷにぷにの中で、でも身体は動き、ソフィーはモニカに抱きついた。

「ちょっ!ソフィー!?」

モニカはソフィーに抱きつかれて、おっぱいを吸われる。

拒絶しようとは思わなかった。

そしておっぱいを吸っている、ソフィーの頭を優しく抱いた。

「2人とも可愛いね?モニカのお陰でソフィーとモニカが、どんな顔でどんな表情の子か、あたしにも見えたよ」

マナの柱がそう伝える。

 

「さてさて、私の中だと視界が不自由だからね。お互いがちゃんと見えるようにしとくね」

ぷにぷにはぺた~んと広がって、2人に敷かれてるような感じになって、お互いが見えるようになった。

 

……時間はまだまだあって、2人は退屈から、お互いの身体で遊んでみたりする。

「ソフィーの身体って、なんかうっすらとした筋肉しか無い感じなのねぇ……」

モニカは、ソフィーの身体を撫でながら思う。

知的好奇心としても、同じ年代の女の子のハダカっていうのは興味がある。

……ここまで痩せてるとは思わなかった、という驚きもあって……

そんな思いが伝わる。

服を着てると、痩せてはいるけれど、ふわっとしたシルエットで誤魔化していたものの、脱いでしまうと本当に可哀想に思えるぐらい痩せていて、いたたまれない気持ちになる。

 

「女の子って感じじゃないけど、なんかおっぱいだけはぷっくりしてるんだよね〜……」

モニカの憐れみを受けながらも、あまり凹まないソフィーは、呑気にそう話す。

 

それからもモニカは、やたらとオスカーとの関係を気にしていて、ソフィーは素直に答える。

ここでは思った事が伝わるのだから、嘘もない。

オスカーのほっぺたが好きな事。

食べられる物を識別できて、植物と話が出来る、と言うオスカーを信じてる事。

夜にどんな風にエロエロしてるのかまで、モニカに伝わる。

 

「ソフィー……ホントにオスカーの事が好きなのね?信じられないけど……ホントだったのね~……」

モニカは感心する。

「モニカもホントはオスカーの事が好きで、あたしが出し抜いちゃったから……負い目みたいなの感じてたけど……モニカはホントに何とも思って無かったんだね~……」

ソフィーも感心する。

なんとなく抱えていたモヤモヤも解決した。

「そうね~……オスカーが頼りがいがあるとか……実はお金持ちとか……誠実とか……可愛いとか……考えた事も無かったけど……言われてみればそうなのかもね?」

モニカが思う。

身体はぷにぷにから出てるのに、浅く浸かってる状態だからか、思うと伝わる状態は続いていた。

 

「あ~っ!今からオスカー誘惑したらダメなんだからね!モニカの方が可愛いんだから!困るんたから!」

急にソフィーがしがみついて、モニカのおっぱいを揉む。

「いや!そうじゃないってば!そんなことないってば!私はアイツとウマが合わないというか……ソリが合わないというか……そういうのあるから!あとおっぱい揉むなぁ!」

裸の2人がじゃれ合う。

この部屋で、まだあと3時間程過ごさないといけない。

時間が止まるのも考えものだ。

その時間に、モニカの受け取れた力を説明された。

 

 

……魔法剣。魔法剣が使える。

……魔法、HPMPLP。ダメージを受ける時、魔法を行使する時、疲労を受ける時、魔法の力のバリアが肩代わりする。

……慈愛、特。マナの柱の力を受けて、その覚醒能力を得る。特に大きく覚醒させるが、マナの柱の力は超えない。

 

 

「普通はこうよね。こんな感じが普通なのよ。ソフィーはひたすら受け取れちゃったけどね」

マナの柱はそう伝える。まだ時間があるから……と、マナの柱とソフィー、モニカで語らう時間になった。

 

マナの柱は既に1000年程生きているらしい。

おじいちゃんの記憶を受けた人が、そう言っていた……

と言う話を、ソフィーより以前に、マナの柱の力を受けていた女の子から聞いた……

というだけで定かではないのだけれど。

「凄い~……この人格も?1000歳?」

マナの柱の部屋の中、うつ伏せになってるソフィーは尋ねる。

ソフィーの胸の辺りで、ぷにぷにが盛り上がってみたりしてる。

「あたしは20年くらいかなぁ……時間の流れが曖昧でよく分からないんだよね。長く眠ると数年飛ぶし、どれだけ寝たのかよく分からないし……誰も来なくて退屈だと、そうなるね」

マナの柱はそう伝える。

「じゃあ今は?結構楽しいの?」

モニカは胸をソフィーのお尻に、2人してうつ伏せで重なっていたり。

裸の2人が、思い思いに蠢く。

「楽しいよ!こんな風におしゃべりできるなんて、やっぱり素敵な事だよね!あと餌を得て力が入るとね、暖かくなるんだよ。だからすごくこまめに来て欲しいな」

マナの柱は明るく言う。

 

「我は……誰?……ってヒトは?」

ソフィーが起きあがり、モニカから逃げるように蠢きながら聞く。

「ん~……寝てるから分かんないなぁ……ちょっとボケてるって感じの時もあるの?3つ目の人格かな?それ?」

マナの柱のこの人格は、他の人格を知らないらしい。

「ちょっとソフィー?そんなボケてなかったわよ?」

モニカが突っ込む。

「えへへ……」

ソフィーは笑ってごまかす。

 

「そうだ!モニカもぼよんぼよんしようよ!すっごくぼよんぼよんするから楽しいんだよ!」

ソフィーは目を輝かせる。ぼよんぼよんが何か、モニカにもマナの柱にも伝わる。

「それ……面白そうね」

「楽しそうだね、それ!」

モニカもマナの柱も乗り気で、ハダカ族2人でぼよんぼよんする。

マナの柱もノリノリで、平たくなって真上にぼよんぼよんしたりする。

「あははっ!あはははは!はー……!」

「もうっ!子供全開じゃない!」

「モニカだってすっごい笑顔………あうっ!」

跳ね過ぎてお互いに頭をぶつけた。

「痛ぁぁ~……」

「中に入ったら治せるよ?」

マナの柱の中に入る。

痛みが、す~っと風に吹かれて無くなって行く。

「凄いわ……こんなにすぐに痛みが消えるなんて、初めてよ」

「ほえ~……魔法みたい」

あまりに素早く痛みが無くなって、ソフィーもモニカも驚く。

「魔法みたいも何も、この世界の魔法の源が、マナの柱だから、じゃないかな?」

マナの柱はそう話す。

そして2人は更に、思う存分、ぼよんぼよんして過ごした。

 

 

……そうこうして3時間過ごし、コンテナを出ると朝のまま。

キルヘンミルクスネークを捕まえる日だ。

「凄い!肌さらさらだし、髪も綺麗……!メガネもなんか、新品みたいになってる!」

コンテナを出たら、すぐにあるアトリエの鏡を見て、自分のメガネを見て、モニカは驚く。

「これ、もう冷たい井戸水で身体洗う必要ないよね?」

ソフィーも鏡を見る。モニカの髪が本当にサラサラで、輝いてる。

「こんななら、通っちゃうわね……ソフィーの本心も分かっちゃうし!」

「モニカの本心も分かっちゃうんだからね!」

2人は笑い合ってアトリエを出る。

 

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[気まぐれジャムのクッキー]
気まぐれいちご、なんてアイテムがあるので、ジャムにしたくなったので登場。ラーメル麦粉、というアイテムもあるので、クッキーだってあるハズ。

[キルヘンミルクスネーク]
白い蛇。特に縁起がいいとか神の使い、みたいなイメージは無い。

[ウメさん]
アトリエの井戸の番人。居ない事も多いが、ゲームに於いては、雷雨なのに番人してる姿も見受けられる。

[オスカーの作ったお菓子]
[新作のジャム焼き菓子]
ゲームでは、オスカーは特に料理したりしない。が、きっと上手いハズ的な期待も込めて。

[エルノアさん]
ゲームでは、登場しない。モニカは両親と住んでいたりするのだろうか?両親の話も出てこない。天涯孤独なのかも。モニカに可愛い同居人が欲しくなったので登場。可愛いおばさん。

[マナの柱]
この世界の魔法の源。

[ペンタス]
花言葉は、「希望が叶う」「願い事」だそうです。

[夜バト]
白く輝く、夜に活動する鳩。幻の鳥だという話で、触れる事が出来ないらしい。

[ベッドの隙間の細い扉]
コンテナへの入り口。
左右に並ぶ空の棚が並ぶ道。

[コンテナの中]
マーケットの陳列棚的なイメージ。

[おヒゲ]
陰毛の事。

[時間が膨らむ]
その場所だけ、時間を止めている状態。

[痩せたソフィー]
食が細すぎる呪いにより、痩せている。




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錬金術のアトリエ 3

錬金術のアトリエ 3

 

この日もまた、キルヘンミルクスネークを狙って近くの森へ。

噴水広場……

ヴァルム大教会から子供達を連れて……

キルヘンミルクスネークカモン!が始まる。

「なんかソフィー……この前からさ、髪がツヤッツヤじゃないか?」

オスカーがソフィーの髪を触る。

「えへへ~……マナの柱の力なんだよね。オスカーは入れないけど、これであたし、将来に希望も出てきたんだ!今は栄養を付けて、成長期!成長しないとね!」

ソフィーはキラキラの笑顔でガッツポーズする。

 

 

近くの森……

モニカは教会の子供達と小川の方に。

ソフィーは、歳の近いコルネリアちゃんと子供達で、茂みの方へと行く展開となった。

「ソフィーさん、ソフィーさん……」

ハスキー眠くなるボイスで、コルネリアちゃんがソフィーのコートを掴む。

「ん?なに?コルちゃん」

ソフィーは振り向く。

謎の民族衣装とポックリ、という靴?

そのポックリを履いた女の子、コルちゃんは少し汚れてピンクの髪もぱさぱさしてる。

「コルちゃん……?それはともかく……髪がツヤッツヤで、目を惹きました。油……でもないようなので……その秘密を教えて欲しいです……」

コルちゃんは丸い金属の甲羅の付いた、長すぎる袖で口許を隠して、ハスキー眠くなるボイスで言う。

口調もゆっくりすぎる。

「コルちゃん、今何歳?」

ソフィーはふと空を見る。

紹介しようにもエロエロ儀式だし……

コルちゃんまだコドモコドモしてるからなぁ……

とか思って聞いてみる。

「14歳です……もうすぐ15歳になります……」

ソフィーもぼちぼち16歳……

1つか2つ年下ってだけだった。

「嘘!?結構大人!?」

ソフィーは驚く。

「大人……なのかは定かではありませんが……」

コルちゃんは袖で口許を隠して、ハスキー眠くなるボイスで呟く。

あまり話さない子……

だけどキルヘンミルクスネーク取りに、長らく来てる。

ソフィーとしては、あまり話した事のない、少しとっつきづらい子なんだけど、なるほどハスキー眠くなるボイスで、話すのがゆっくりだからか……と思う。

あと、やたら口が小さくて可愛い。

 

……これから旅に出るに当たって……

コルちゃんも来てくれたら、更に頼もしい存在になるかも……

ソフィーはニヤリと微笑む。

「実は……かくかくしかじかで……」

そしてマナの柱の話をする。

エロエロ儀式で、凄い力ゲット!

髪もツヤッツヤ肌もすべすべ……

しかもぼよんぼよんできる……

「なんと!……私も……凄い力欲しいです……エロエロ儀式します!」

覚悟決めるのが素早い子だった。

……騙されやすそうでもあるな……

ソフィーは人の事言えないけれど……

 

 

そしてその日、泥蛇に大ウシガエルが採れた。

モニカの方も大ウシガエルが2匹、更に泥蛇も2匹採れてた。

過去最高記録だ。しかも泥蛇を洗ってみたら、1匹は……

キルヘンミルクスネークだった!

「何これ!何これ~っ!」

夕方、踊り出さん勢いで皆で喜ぶ。

オスカーと神父様でカエルや蛇を捌く。

オスカーの方も土いも?

……と思う程に長~い土いもが採れて、オスカーもびっくりしてた。

しかも王様キノコの生えまくってる、木の枝まで拾って来た。

ソフィーも蛇の肉を食べる。

……きっと凄い栄養があるに違いない!

 

 

そして夜は、モニカとコルちゃんとソフィーの3人で、アトリエへと帰る。

「だ、大丈夫かしら?コルちゃん……」

小川に落ちて泥だらけのモニカが、コルちゃんを心配する。

「モニカさん……私も……凄い力が欲しいです……そして……やりたい事……知りたい事があります……」

コルちゃんは本気みたいだった。

今日は随分張り切って、茂みにダイブしてたから、帽子と飾りまで土に汚れてる。

「汚れてても歓迎って言ってたけれど……大丈夫かな?」

同じく泥に汚れたソフィーが言う。

朝にツヤッツヤだった髪も、夜にはばっさばさだった。

 

……でも大ウシガエルを1匹、捕まえたし。

 

アトリエのベッドの間に、コンテナの入り口……

コルちゃんが居ても、マナの柱の部屋まで普通に入れた。

「コルちゃん、何色に見える?」

ソフィーが聞く。

巨大ぷにぷに……

モニカは輝かしい白に見える。

ソフィーにはテカテカの黒に見える。

「空の色です……少し透き通った……青空の色……」

コルちゃんには、青空の色に見えるようだ。

3人で触れる。

「……汚れていれば汚れているほど歓迎する……綺麗にもなる……だが……服は綺麗にならない……ぞ……」

マナの柱に言われて、3人はお互いを見る。

……綺麗になっても、この服を着たら台無しだ。

「ふふふ……先に洗濯しないとです」

コルちゃんは笑う。

その笑顔は、目がネコみたいに細く長くなって可愛い。

「暖炉で乾かさないとね」

モニカも笑う。

「えへへ……出直し出直し」

 

3人は部屋を出て、棚の並ぶ廊下に。

そこの棚に、ソフィーの頭くらいの大きさのぷにぷにが居て、声を掛けて来た。

「……靴や……金属物……布でない物ならば……この棚に置くと……この番人が綺麗にするぞ……餌としてな……」

棚の番人ぷには小さく、ソフィーの頭サイズなのだからカワイイ。

プニプニみたいな顔はなく、のっぺらぼうだけど……

ぴょこぴょこする手?がカワイイ。

いつの間にか……

棚の廊下に3匹?くらい居るのだけど、その3匹は寝てるのか、大人しい。

「……モニカ、このぷにぷに……何色?」

ソフィーは聞いてみる。

「キラキラして白いけど……ソフィーは黒に見えるの?」

モニカはソフィーを見る。

「私は……透き通った青に見えるです……」

コルちゃんは、番人ぷにぷにをつつきながら呟く。

「まあ……それっぽい物は棚に置くね」

3人は靴を脱いで棚に置く。それと武器……コルちゃんの手甲は布と繋がってるので、やめとく。

 

 

そしてアトリエに戻り……暖炉前に。

井戸水で服を洗う。下着まで洗わないとだし、もう裸になる事にする。

「うおぉっ!コルちゃん、そんなあっさり脱げるの!?」

するっ、すとんと服が落ちて下着姿になったコルちゃんに、ソフィーは驚く。

脱ぐのが早すぎる。

「その下着……際どいのね……」

V字のおぱんつを見て、モニカも驚く。

「スリットが深いので、こうした下着じゃないと横から下着がひらひらしてしまうので……」

コルちゃんはそう話しながら、下着も脱ぐ。

「あたしも、そういう下着の方がいいのかな~?」

半ズボン的な下着を脱ぐソフィーが呟く。

「それはそれとして……本当に不思議なぷにぷにが居たです!これで凄い力まで手に入ったら……素敵です!」

素っ裸でコルちゃんは目を輝かせる。

……小柄な割に、おっぱいあるな……

と、ソフィーはその姿を見る。

あと、意外に太いし、おヒゲも生えてる。

……羨ましい……

「コ、コルちゃんまでおヒゲ生えてるし……あたしが1番子供な感じ……」

ソフィーはショックを受ける。

「おヒゲ生えてますけど……まだちょろちょろなので……」

コルちゃんはピンクのおヒゲを指で摘まむ。

更にいい感じに太ましいのが羨ましい……

 

 

ともかく、3人は丁寧に服を洗う。

出て来た時に面倒だし、モニカとコルちゃんに合わせて、ハダカ族でここまで出てくるしかないか……

とか思いながら、暖炉に服を干す。

今日は独りぼっちの夜だったはずなのに、賑やかな夜になりそうだった。

 

そして3人は裸でコンテナに入り、マナの柱の部屋へと行く。

マナの柱は口を開く。

その口の中には、舌が3つあった。

ほんの少しだけ躊躇して、コルちゃんは真ん中の舌に座る。

先にソフィーとモニカが、間を空けて座ったのでそうなった。

「さて……エロエロ儀式を望む……ようだが……今日は3人揃って疲れている……ようだな……まずはゆっくり眠り……朝になったらまた……始めるとしよう……」

マナの柱はそう伝える。

確かに疲れていたし、身体を温められて肩とかもにゅもにゅされると……

3人は途端に眠りに落ちていく。

コルちゃんが真っ先に眠り、ソフィー、モニカと眠りに落ちた。

 

 

……朝になり、モニカが起きる。

「おはよう」

マナの柱がそう伝える。

あの若い女の子の人格。

「おはよう。クセになった訳じゃないけど……また来ちゃったわ……あんなに疑ってたけど……綺麗になるし……その……気持ちいいし……」

モニカがふわふわと寝たまま、思う。その思いは反響して拡がって……皆の知る所となる。

 

「新しい子も居るのね。この子も頂いちゃっていいのかしら……それはともかく、力を与えるのは、10回程掛かるのね。同時に違う子に力を与えられるのは、5人が限界かな。1人でも力を与え終わったなら、違う子にも与えられるんだけどね」

マナの柱はそう伝える。肝心のソフィーは眠っているけど……

「わ、私が連れて来たんじゃないけど……そうなの?」

モニカは尋ねる。

「そうよ。でもこの子はどんな力を受け取れるのかしら。楽しみね?」

マナの柱はウキウキしてる。そんな気持ちが伝わってくる。

「私は至って普通みたいだから、何か物足りないな……とは思うけど」

モニカは自分に与えられるだろう力について、そう伝える。

「ふふん、少ない力を受け取る子は、でも大きく力を受け取れたりするのよ?様々な力を受け取る子は、1つ1つは小さかったりするわ。モニカは……その美貌があるじゃない。それ以上は贅沢……かもね?」

マナの柱はそう伝える。

「美貌……かしら?」

そう言われてモニカは、ふわふわと地面へと降りる。

マナの柱の中で、身体が自由に浮いたり降りたり出来るし、身体を起こしていてもラクな姿勢で眠れるのは不思議な限りだ。

「あたしには美貌かどうか、の審美眼は無いし、目が無いから見えないけど、ソフィーとコルネリアは、そう認めているみたいよ?」

マナの柱はそう伝える。

「確かに、目が無い……わね。なんか不便そう」

モニカはそう伝えて、そう思う。

「昨夜はモニカの泥とか、ソフィーとコルネリアの土も頂いたわ。あなた達との刺激で土や泥も肥沃さと潤いを増やしているのね。マナの柱はあなた達の世界に、あなた達が思うよりも大きく、影響を与えているわ」

マナの柱がそう伝える。

 

 

しばらくすると、ソフィーが起き出して……最後にコルちゃんも起き出した。

「おはよう……」

「おはよう……です……」

マナの柱はまた、ぺた~んと平たくなって、起き出した2人も見えるようになった。

すっかり綺麗になってる。

「さて、この辺りで時間を膨らませると都合がいいでしょうし、始めようかしら……でもモニカとソフィーは、昨日受け取った力がまだ安定してないから……今日は身体回りを頂くだけだね」

マナの柱はそう伝える。ウキウキした明るい声。

「あれ……?昨日とは違う声です?」

コルちゃんがそう言う。そしてマナの柱の中で、少し色の濃いのが、コルちゃんの肩まで包んで行く。

「……ふぁぁ!?……あっ……あぁっ……」

刺激されて、コルちゃんは恍惚とした表情をする。

エロエロ儀式……イキナリ始めるな相変わらず……

しかも平たくぺた~んとなっているまんま、出来るみたいだ。

……と思ったら、ぷにぷにがどんどん盛り上がり、ソフィーの視界が黒いテカテカになる。

 

「コルちゃんも気持ち良さそう……」

ソフィーは、そんなコルちゃんに近づく。

視界が真っ黒テカテカだけど、モニカの見るイメージに集中すると、白いキラキラの中のコルちゃんが見れる。

……自分の目ではない所から、状況を脳に仕入れる感覚も、凄く新鮮な感じ。

 

「はうぅ……んぅぅっ……」

コルちゃんの小さな身体がひくひくして、小さな口が半開きになってる。

小さな唇がエロく見える。しかも白いキラキラ空間なので、モニカフィルターを通してるイメージだけど、可愛い。

そしてソフィーは、白いキラキラ空間の中のコルちゃんに集中する。

 

……めっちゃ可愛い……

「甘い香りと……甘い味がするのよね……」

モニカが、そんなコルちゃんを見つめる。

「2人とも刺激を足さないでね。今回の子は、力を受け取り過ぎるのは危険だから。見るだけにしてね」

マナの柱がそう伝えて、ほんの少しの時間で、コルちゃんはびくびくっと震えて、後ろに倒れてふわふわ~っと浮いて行く。

「危なくコルちゃんに触る所だったよ……」

ソフィーは手を引っ込める。

「私はおっぱい吸われたし、揉まれたんだけど……」

モニカも手を引っ込める。

そしてそう伝えた。

「じゃれあってる分にはいいんだけどねぇ、受け取る能力によっては、感覚を足されるのは困るんだよね」

コルちゃんはひくひくしながら、眠ったみたいだった。

「この子も受け取れてるわね……でも危険な能力を受け取ったみたい」

マナの柱はそう伝える。

とにかく、時間も膨らんだので2人も出れなくなった。

 

 

コルちゃんが起きるまで待つ事にする……

待つしかないし……

「しかし、コルちゃん可愛いよね~……」

ソフィーは、ハダカ族で眠るコルちゃんを眺めるモニカのイメージを辿る。

小さいしピンクの髪も長いし……

「確かにそうね~……ネコみたいな可愛さがあるわね」

モニカも白い巨大ぷにぷに世界の中に、ふわふわと寝てるハダカ族のコルちゃんを見て、そう呟く。

「ふふ、ソフィーもモニカも可愛いよ?」

マナの柱もそう伝える。

巨大ぷにぷにの中で、モニカはコルちゃんを追い掛けてふわふわしていて、ソフィーは巨大ぷにぷにの底であぐらを描き、目を閉じて悟りを開く構えとなっている。

 

そのうち、マナの柱は平たくなり、浅い温泉に浸かっているような感じになり、ソフィーも目を開ける。

そんな浅い温泉モードのマナの柱は、所々硬いぷにぷにで、枕になってくれたり。

背もたれになってくれたり。

明るくて閉鎖的な部屋だけど、なんかのんびり優雅な時間……

ハダカ族だし。

 

「あ。今日はオスカー来る日だから~……でも夕方くらいに身体を洗いたいよねぇ……」

ソフィーはモニカに話す。

「そうねぇ……でもオスカーも暖炉で身体を洗うのよねぇ……」

モニカも考える。

あまり外で待たすのも……

さすがに気が引けるし……

「ちょこっと時間を膨らませれば、3人は時間掛からずに綺麗になって……それからソフィーがオスカーを洗えばいいじゃない?」

マナの柱はそう言った。

笑うような無邪気な声がちゃんと聞こえる。

「それか~……そうすればオスカーも待つ時間が短くなるね」

ソフィーとモニカは感心する。

 

マナの柱と過ごす時間は、時間を膨らませる事も出来るのだから、膨らませちゃえばいい……

「そんな訳だから……ガンガン汚しておいで?」

マナの柱はそう言う。

食いしん坊だから、汚れてきた女の子は、美味しい餌なのだろう。

そんな意識が伝わって来る。

「なんで男の子はだめなんだろ?オスカーも肌綺麗なのに……」

ソフィーは呟き、思う。

「何でだろう?あたしも知らないのよねぇ……」

マナの柱も考える。

……知らないんだ……

ソフィーとモニカは思う。

 

「……ところで、男の子がここに来ちゃったら、どうなるの?」

モニカが尋ねる。

「マナの柱がテレポートするよ。どこに行くのかは分からないんだけど、ここからは消えるわね。そして戻せなくなるんじゃないかな?」

マナの柱は、あっけらかんと答える。

「ウソ!?大問題じゃない!?」

ソフィーとモニカは思う。

与えられてる力も、今は中途半端だし……

「でしょ?だから気を付けてね」

軽い感じの声で、マナの柱は伝える。

テレポートしても、マナの柱としてはあまり大問題ではないみたいだ。

 

 

「むぅ……エロエロってなんたるか……初めて知ったです……」

コルちゃんが起きた。

「おはよ~……気持ち良かった?」

ソフィーが尋ねる。

「……どうなんでしょうか……ショックだったような……気持ち良かったような……でもまたされたい……みたいな……」

コルちゃんが不思議そうな表情で答えて、しかも結構昔に見かけた、死にかけの大きい蜘蛛がピクピクしてる光景に、自分を重ねていたりして……

……あの蜘蛛も……

……こんな気持ちだったのでしょうか……

 

「コルちゃん……それはまた別な感じじゃないかな……」

ソフィーはそんなイメージを遮ろうと、思いを巡らせる。

「そうよ……どうせ思い浮かべるなら……何かしら……」

モニカも思いを巡らせるけど、何も出て来なかった。

ともかくコルちゃんの受け取った能力は……

 

 

……錬金術、複。同じものを増やす錬金術。

……魔法。魔法を行使出来る。

……魔法、HPMPLP。ダメージを受ける時、魔法を行使する時、疲労を受ける時、魔法の力のバリアを消耗する。

……魔法、SP。錬金術を行使する時、魔法のバリアを消耗する。

……慈愛、変。マナの柱の力を受けて、覚醒能力を得る。効果は大きい。また覚醒した者について覚醒能力を使うと、覚醒能力を変化させる事がある。

 

 

そうなった、とマナの柱は伝える。

「錬金術の複は、自身を消耗する能力だから、受け取りが完成するまで、使ってはダメよ?」

マナの柱はそう付け加えた。

「これ……私の一族の力……」

コルちゃんは呆然とソフィーを見つめる。

「そ、そうなの?知らないけど……一族?」

ソフィーはそんなコルちゃんを見る。

「コルちゃんは、なんか皆と違う格好してるものね。この街は移民の多い街だって話だから……一族を探してるの?」

モニカもコルちゃんに身体を寄せる。

「はい……錬金術を使って商売をしていた、と聞いた事があります……」

コルちゃんもモニカに身体を寄せる。

そして白い乳首の、モニカのおっぱいを見つめる。

「おっぱい大きい……これはなんと大きいのでしょう……お母さんよりも大きいから……甘えてみたいです……」

考えた事が、だだもれのこの場所だし……

そんな思いもモニカに伝わる。

「こ、こんな所だし……甘えていいわよ……」

モニカはコルちゃんから顔を逸らす。

そしてコルちゃんは、モニカのおっぱいに顔を埋めた。

「ぱふぱふです……」

コルちゃんは自分のルーツを知りたいらしい。

生まれた所はキルヘンベルだけど、ルーツは違う……

……とかなんとか。

 

「よし!じゃあぼよんぼよんしよう!」

ソフィーが立ち上がり、片手を上に上げるポーズをする。

「ぼよんぼよんしたいオーラが凄いです……」

ぼよんぼよんしたい気持ちが、そんなソフィーからだだもれで、コルちゃんも立ち上がる。

コルちゃんからも、ぼよんぼよんしたいオーラが出てくる。

「私もまあ……ぼよんぼよん楽しいわよね……」

取り繕う事を諦めたモニカも、立ち上がる。

跳ねる楽しげな全裸モニカとか、近付いては離れてく天井とか……

そんなイメージも、ソフィーからだだもれてる。

 

「ハダカのモニカさんが、楽しげにぼよんぼよん……見たいです!」

コルちゃんも、それに乗っかった。

「その思いが邪魔で楽しめなさそうだけど……」

モニカは複雑な顔をする。

「んじゃ、やるかな~」

マナの柱は平たくなり、厚みを増やして3人を持ち上げる。

今まで所々あるのか無いのか……

マナの柱に埋もれる所があったり、ぷにぷにしてる所があったりだったけれど、全部ぷにぷにしてる所になる。

「あははっ!とうっ!」

そしてそのぷにぷにが、ぼよんぼよんできるような弾力を発揮して、ソフィーが飛ぶ。

「これは……本当に初めて味わう楽しさです!ぼよんぼよん楽し過ぎるです!」

コルちゃんも、ピンクの長い髪を振り乱して飛び跳ねる。

「髪が邪魔かな、なんて思うけど、髪を踏んでも痛くなったりしないのよね!」

モニカも飛ぶ。

というか、マナの柱に飛ばされる。

「髪越しキャッチも心得てるからね!任せなさい」

マナの柱も楽しそうな声を出した。

それにこの部屋、天井が高い。

そして3人でぼよんぼよんして、膨らんだ時間を過ごすけれど、ひとしきりぼよんぼよんして、まだ時間があった。

 

 

「……なんだかあたしの乳首だけ可愛くない、みたいな感じしない?」

ソフィーがそう言い出す。

「モニカさんの白い乳首に大きなおっぱい……理想の形じゃないでしょうか?」

コルちゃんは、モニカのおっぱいに手を伸ばす。

「コルちゃんのピンクの乳首も、可愛いじゃない」

コルちゃんに甘えられながら、モニカも言う。

モニカからは、あまり乳首の話はしたくないオーラが出てる。

「でも3人のおっぱいが、ぽよんぽよん並ぶと……なんだかパンみたいです」

モニカの白い乳首おっぱい……

コルちゃんのピンク乳首おっぱい……

ソフィーの茶色乳首おっぱい……

2つずつイメージしたら、パンに見えるオーラがコルちゃんから発生した。

「確かに!パンの頭ってなんかちょこ~っと乗ってた方が可愛いかも!」

ソフィーにパンオーラが伝播して、強烈なパンオーラになる。

「なんだかお腹空いちゃうわね……白いてっぺん……バターかしら?」

モニカにも伝播する。

「バター!」

ソフィーが甘えてるおっぱいの乳首を、つんつんする。

「ひゃあんっ!ちょっと!」

モニカの身体がぴくんとなった。

「あはは……ごめん!もうしないから」

ソフィーはモニカのおっぱいに頬擦りする。

「ピンクは……何でしょうか……」

コルちゃんは考え出す。

「はじけるベリーと、はじけるベリージャムだね!」

ソフィーがオスカーの焼いたクッキーを思い出してピコーンと閃く。

「うおお!?なんとそんないいものを食べてるなんて!しかもまだアトリエに余ってるだなんて!」

コルちゃんが、甘えてるおっぱいから顔を離して、身体を起こす。

「皆食いしん坊だね~……その調子でじゃんじゃん食べて来てくれると、マナの柱的には嬉しいよねぇ~……さて、膨らんだ時間が終わって、外に出れるよ」

マナの柱がそう言って、ぷにん、とした。

「また来るわね。なんか恥ずかしいけど……」

「一族の力!完成まではバッチリ来ないと!あと寝心地が最高でした!」

「あたしはまた、すぐ来るかな……わかんないけど」

3人はそれぞれに、マナの柱に挨拶する。3人が抜けると、マナの柱はいつもの巨大ぷにぷにに戻った。

 

 

そして裸の3人は、扉を出て棚の廊下に預けた物を回収する。

ピッカピカに綺麗になってる。

「凄い……皮が綺麗になってる~!」

ソフィーとモニカはブーツを手に取る。

中までピッカピカなのだ。

「ポックリもピッカピカです……!」

コルちゃんも、コルちゃんの靴を手に驚く。

……ポックリって名前なのかその靴……

ソフィーとモニカは思う。

そもそも靴なのだろうか……

棚に居る番人……番人ぷにぷに達は寝ている。

杖も剣もピッカピカだった。

そしてアトリエに戻り、それぞれの服を着る。

暖炉で暖まって乾いた服……

「私のおっぱいが意外と大きい事……ソフィーさんとモニカさんにバレてしまいました……」

モニカとソフィーに髪を整えて貰いながら、コルちゃんがいつものポーズ……

口許を袖で隠したポーズで呟く。

「あはは、でも服の上からでも解るんだけどね」

ソフィーは笑う。

大胆に生足出してる服だし。

肩も出てるし……

でも手甲がデカいからだろうか……

おっぱいには、目が行って無かったけど……

 

 

「裸になって、あの部屋て過ごして……本当にソフィーさんとモニカさんが、優しい……いい人なんだって思いました……私は……あまり人を信じられない性格なのですが……宜しくお願いしますです……」

そしてアトリエを出る時、コルちゃんはそう言ってぺこりと頭を下げた。

「それであまり話さなかったのかしら……いつも距離があるから、こっちも話し掛けづらくて……ごめんなさいね」

モニカが言う。

そしてコルちゃんと握手した。

手甲に伸びる袖がぶらんとして、その袖の下からコルちゃんの白くて細い手が出てきて、モニカと握手する。

……そんな構造なのかその服……

 

「あたしも、同じ錬金術士としてライバルだし!宜しくね」

ソフィーもモニカの次に、その手と握手する。

「ソフィーさんも……錬金術の複……私の一族の力を受け取ったのですか?」

アトリエで握手するコルちゃんは、錬金釜を見る。

「え?あたしは錬金術の力とか剛力とかって、言われたんだけど……」

ソフィーは思い出してみる。

……確かそんな事を言われた。

「また確認してみましょう……ライバルではないかも知れませんから……」

まだ暗い朝……

モニカとコルちゃんは、それぞれに家に帰る。

モニカは家に朝食が待ってるみたいだし。

コルちゃんは、お外で食べるお店の時間があるみたいだし。

 

そして1人残されたソフィーも、朝ごはんを食べる。

オスカーからの貰い物と、昨日のお土産。

ガブッ……ふふふ……栄養付けて……

凄い錬金術士に……なるのだ!

 

 

アトリエから外を見れば、雨が降っている。

雨の日は……より泥蛇とか取れるチャンスの日だ。

その日も……モニカもコルちゃんも、教会の子供達も、皆やる気で集まり、また近くの森へと行く。

そして今日も、食べる物を探す。

 

そしてこの日も泥蛇2匹、ぐるぐる貝が無数に採れた。夜には雨も上がり、教会前で大鍋で煮て食べる。

コルちゃんとモニカは、アトリエには寄らずに、それぞれに家に帰り、ソフィーとオスカーでアトリエに帰る。

「オスカー……ちょこっと待っててね?」

ソフィーはそう言って、アトリエに入る。

マナの柱で身体を洗う方が、マナの柱も喜ぶし綺麗になるし。

コルちゃんとモニカは、また泥々の服を着てもアレだし……

そう言って、まっすぐ帰ったけれど。

「ああ。ここで待ってるよ」

すっかりどろどろのオスカーは、空を見る。

眩しいくらいの星が幾つも輝いている。そんな星空。

 

ソフィーは暖炉に汚れた服を置いて、裸になってマナの柱の部屋へと行く。

「また……今日も随分と……汚れて来たな……」

マナの柱はソフィーに伝える。

「森で食べ物探ししないとだからね。栄養ついてるよ!きっと……」

ハダカガッツポーズのソフィーは持ち前の笑顔で言う。

 

マナの柱は口を開き、ソフィーは舌の上に座る。

「男を待たせてるのか……ほんの少し時間を膨らませて……ゆっくり味わうとしようか……」

マナの柱はソフィーの乳首を、首を刺激する。

そして女性器を刺激した。

「んっ……んあっ……」

ソフィーは身体をひくひくっ、とさせる。

「時間は膨らんだ……待たせてる事は気にせず……ゆっくりしていけ……膨らんだ時間が終わったら……起こそう……」

マナの柱はそれからは刺激しないように、ソフィーの身体を冷やして、舐め取る。

……肌に風が吹き回る感覚が心地好い……

「なんで……そんなに都合いいの?」

ソフィーは背中を倒し、ぷにぷにに包まれながら聞く。

「何度でも……我の所に……来て欲しいからな」

ソフィーは、吹き回る風と、ぷにぷにと気持ちのいいマッサージに、意識を落とした。

 

 

「……膨らんだ時間が終わる……」

マナの柱に起こされて、ソフィーは身体を起こす。

「へへ……ありがと」

ソフィーは部屋のドアを押し開く。

「……こちらこそ……」

マナの柱はそう伝えた。

ソフィーはアトリエに上がり、外へのドアを開き、ハダカ族のままなので顔だけ出す。

すぐ横でオスカーが空を見ていた。

「オスカー、お待たせ」

そう声を掛けると、オスカーはソフィーを見る。

オスカーは、青い三白眼を見開いて、驚いた顔をしていた。

ソフィーは、ひと寝入りして1時間程過ごしたのだけど、オスカー的には、ほんの2、3分しか経っていないのだ。

「早いんだな……あれ、もう綺麗になってないか!?凄いなオイラびっくりしたよ」

泥だらけのオスカーを、アトリエに招き入れる。

「まずは服……じゃなくてオスカーから綺麗にしなきゃね」

ソフィーは暖炉の方へと歩く。

オスカーはドアの所で足を止めて、ソフィーを見つめてた。

「……あれ?オスカー……?」

ソフィーは暖炉まで来て振り向く。

当然来てると思ったオスカーは、何故かドアの所で呆然としてるのだ。

「ソフィー……綺麗だ……」

見慣れた裸の見慣れたソフィーなのだけど、肌が磨かれて特に白く、髪もツヤッツヤでサラサラなのだ。

井戸水で洗ってるクオリティーとは……全然違う。

オスカーはそう思って、見とれていた。

「そ、そう……?なんかそんな目で見られると恥ずかしいんだけど……」

ソフィーは暖炉の前に置いた、泥だらけの錬金コートなんかに、手を寄せる。

暖炉の前には、あらかじめ置いておいた、暖炉で幾らか温まっただろう井戸水の桶が2つ、置いてある。

「すんすん……」

オスカーは暖炉の前に来るなり、ソフィーを捕まえて匂いを嗅いだ。

「ええ~っ!?何嗅いでるの!?」

ソフィーはオスカーに捕まりながら、怯む。

「なんか、凄い……なんかエロい匂いがするな」

オスカーはソフィーを捕まえて、首筋を嗅ぐ。

オスカーの鼻がいいのは、ソフィーもモニカも教会の子供達も知る所だけに、ソフィーは照れて顔を背ける。

「ちょっと……エロい匂いって何……?」

ともかく、泥だらけのオスカーを洗わないと……

捕まったソフィーは、両手を泳がせる。

 

「……ごめん、なんか我を忘れたよ。でもマナの柱だっけ?凄いよな。こんな綺麗になるなんて」

オスカーはソフィーを離して服を脱ぐ。

そして燃え続ける、不思議な暖炉を眺めた。

「あ……あたしも鏡見て驚いたもん。モニカの髪なんか金色に輝いて、あの長さでサラ~ってなってるんだから……凄いよね」

ようやくオスカーの身体に、濡らした布巾を擦る。

「いや、それだけじゃないな……不思議な力がソフィーにくっついてるんだよきっと……オイラ匂い嗅いでさ、クラ~っと来たぜ。オイラを誘う匂いなんだよ……それは」

オスカーは自分の身体を拭いながら言う。

確かにオスカーのちんちんが、今までにないくらいギンギンに勃ってる。

ソフィーはオスカーの肩越しに、そのちんちんを見る。

「な、なんか凄い勃ってるもんね……ちょっと怖いくらいだよ」

そしてソフィーはオスカーの身体を拭い、土を落とす。

「ちょっと痛いくらいだよ」

オスカーも自分の胸や脇なんかの垢を、汚れを拭う。

……いつもよりも長く感じる。

垢が拭われていく所に、集中出来てない……

早くギンギンのちんちんと遊びたいな……

とばかり考えてた。

 

 

服を洗って……

歯磨きして……

ようやく……本当にようやく……

オスカーに後ろから抱き締められて、ソフィーは顔を上げる。

「硬いの……当たってる……」

オスカーの熱い体温を感じて、ソフィーは目を細める。

「ソフィー……オイラ、エロい匂いにやられてるんだ……それに綺麗過ぎるよ……」

オスカーはソフィーの乳房を、乳首を後ろから弄り、ソフィーはオスカーのほっぺたに手をやる。

ソフィーの髪と頬を、オスカーのほっぺたに付けるように身体を伸ばし、後ろに反らす。

「んぅぅっ……気持ちがハジケそう……っ」

ソフィーの反らした身体は、乳房を、お腹をオスカーの掌に撫でられてぴくっ、ぴくっ、と震える。

「エロい匂い……強くなってきた……オイラ……ソフィーをめちゃくちゃにしちゃいそうだ……」

オスカーはソフィーの乳房を撫でながら、女性器の方に手を下ろす。

ソフィーは少し足を開いて、その手を受け入れる。

「めちゃくちゃにされたいよ……あたし……ハジケたい気分っ……あんっ……あぁんっ……オスカー……」

オスカーの指が入ってソフィーは身体を震わせる。ちゅっ、くちゅっ、ぷちゅっ、と恥ずかしい音を立てて、ソフィーのエロ汁がこぼれて太ももを濡らす。

「ソフィー……今日は多いんじゃないか?エロ汁じゅぷじゅぷ言ってるぞ?」

オスカーは悪戯な笑みを浮かべて、ソフィーの熱い、エロい匂いのする女性器に指を立てる。

乳首が硬くなって、それを摘まむとソフィーは腰を揺らして応える。

「うんっ……オスカーがやる気で……嬉しいんだ……っひんっ!」

びくっ……びくっ……

と、ソフィーは震えながらその理由を考える。

 

立ったまま、絡み合う2人。

いつもよりも凄く身体がひくひくして、エロい匂いとかエロ汁も溢れてる。

オスカーもギンギンだし……

「ソフィー、いつもより熱いんじゃないか?ここ」

ソフィーはオスカーのほっぺたにキスをして、首筋へと舌を這わす。

そのソフィーの女性器を指でかきまぜながら、オスカーはそう話す。

「んぅぅっ……オスカーがギンギンだから……あたしもっ……あんっ……あぁんっ!」

ソフィーは足を震わせて、ハジケる。

オスカーは指を抜いて、ソフィーをベッドに寝かす。

 

 

ソフィーはひくつく身体をベッドに沈めて、オスカーに手を伸ばす。

「なんか、もう、すっかりぴくんぴくんだよぉ……」

オスカーは伸ばされた手を握り、二の腕をてのひらで優しくしごく。

……ぞくぞくして、ソフィーは思わず膝を折る……

「んっ……」

また、身体がぴくん、と反応して、声が漏れた。

 

 

「どれどれ……ソフィーもいつもより余裕無いみたいじゃないか」

オスカーは、ベッドの上のソフィーの足を開く。

そして、エロ汁じゅぷじゅぷの女性器を見る。

そして鼻を近付けてエロい匂いを嗅ぐ。

脱力したソフィーはされるがまま、嗅がれて舐められて……腰を揺らす。

「それっ……はぁぁ……っ……はぁっ……ダメぇ……あぅぅ……あぁんっ……」

ソフィーはオスカーの髪とほっぺたに両手を伸ばし、身体を震わせる。

2年もこうしてきて、オスカーもソフィーのツボを心得ている。

長い悪戯で、ソフィーをとろけさせて行く。

 

 

「オイラも我慢限界だよ……ソフィー……」

すっかりとろけたソフィーを抱いて、オスカーが構える。

「えへへ……キスして?」

ソフィーもオスカーを求める。

キスをして、オスカーのギンギンなのが入って来る。

「あああっ!あっ!あっ!……ちゅっ……ちゅっ……」

ソフィーはハジケて、両足を震わせる。

……ひどく大袈裟に、ぷるぷるした……

 

 

そして、オスカーにしがみつくように足を絡めようとする。

オスカーの顔に掴まるようにして、キスをする。

……なんかエロい匂いがする……

なんとなく……

腐りかけのキルヘンミルクの匂いみたいな……

変な匂いなのに、やたら頭がふらふらする。

……頭がエロくなってくみたいな……

「ううっ……ソフィーの中……すげえっ!」

オスカーもハジケて、ソフィーのお尻を捕まえる。

ハジケたのにギンギンのままだった。

「オスカー……好きっ……好きっ……」

涙をこぼしながら、ソフィーはオスカーを捕まえる。

……もっとしてほしい……

……もっと恥ずかしいの、見てほしい……

 

 

そして長くエロいキスを続けて、身体を震わせる。

好きがハジケて、それでもまだハジケられるから……

「ソフィー……また行けるよ……ソフィーは?」

ほんの少しの時間で、オスカーは言う。

ソフィーの中で、熱いのが硬いまんまで、しかも持ち上げてる。

お腹がひくひくさせられて、シビレてるような感じ……

「あたし……だめかも……えへへっ……」

ソフィーはそう言って、オスカーの青い瞳を見つめる。そして口を開けた。キスのおねだり。

キスをされて、奥を突かれて……

ソフィーはまたハジケて、オスカーに掴まる。

「ダメなとこっ……おおっ!……あ!……やだやだやだやだっ!」

オスカーは奥を突いてすぐに止まる。

意地悪なやつ。

ハジケそうにして、凄くハジケたいトコロで、ハジケさせないやつだ。

「ソフィー……今日は浅いよな?」

オスカーはソフィーのおっぱいを揉んで、吸う。

「ぅううっ……はぁぁ……はんっ……意地悪やだぁ……やだよぉっ……」

……オスカーが意地悪に笑ったり、めちゃくちゃにされて暴れさせられたり……

ソフィーもオスカーもハジケまくり……

……そんなエロエロの果てに、ソフィーとオスカーは眠った。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[キルヘンミルクスネーク]
白い蛇。日本でも、白い蛇がそこそこ居たなら、探し歩く人も居たのだろうか。

[マナの柱]
この世界の魔法の源。1番の友達と反応して、どんな魔法の世界になるのかが決まる。

[エロエロ儀式]
マナの柱の中のエロい出来事。

[泥蛇]
泥の中で生きているので、いつも泥だらけの蛇。洗ってみるとテカテカの青だったり緑だったりして、細かい鱗がびっしりしている。

[大ウシガエル]
小さいツノが生えてる、まだら模様のカエル。ウシみたいにのんびりしてて、どっしりしてる。なので捕まえやすい。

[ぐるぐる貝]
カタツムリ的な生き物。

[王様キノコ]
シイタケ的なキノコ。

[おヒゲ]
陰毛の事。

[ぼよんぼよん]
ぼよ~んぼよ~ん。

[オスカーの鼻がいい]
ゲームでは、特にそんな話は出て来ない。



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錬金術のアトリエ 4

錬金術のアトリエ 4

 

……朝。オスカーのお腹の上でソフィーは目を覚ます。

「あちゃ~……」

身体を起こして……

オスカーから身体を外して、ベッドを降りると……

ベッドびっしょびしょで、流石のソフィーも苦笑いした。

「おおっと……」

腰がふらふらして、床に座り込む。

昨日はハジケ過ぎた……

でも久しぶりに、愛し愛されな感じだったし……

と余韻を反芻してみて、にやけてしまったりする。

 

「ぅああ……なんか冷たいな……おおっ……」

オスカーも目を覚ます。

そしてベッドから起き出すと、床に座り込むソフィーを眺める。

ソフィーもそんなオスカーを見てた。

「えへへ……おはよ。オスカー」

ソフィーは裸で座り込んだまま、オスカーに笑い掛ける。

「下っ腹が痛いよ……昨日ハジケ過ぎたなぁ……」

オスカーは自分の腹をさすって笑う。

 

オスカーは隣の空きベッドの不思議毛布を掴むと、身体を拭い、ソフィーに渡す。

これもおばあちゃんの作ったやつ。

濡れた物を綺麗に拭き取る事が出来る。

「凄かったね……腰がへろへろだもん……何も分かんなくなるぐらい、オスカー激しいんだもん……昨日はどうしたの?」

ソフィーも床に座り込んだまま、身体を拭う。

オスカーは、暖炉で乾いた服を着る。

「ソフィーの言う、マナの柱の力なんじゃないかな……凄くエロ元気が出る匂いがしてさ、ギンギンが終わらないんだよ……それにソフィーの方も柔らかい……と言うかチョロいと言うか……すぐハジケてる感じだったぜ?」

オスカーはそう言って、ソフィーに顔を近付ける。

ソフィーはオスカーのほっぺたに手をやると、軽くキスをした。

「オスカーが、ギンギンだったからだよきっと~」

ソフィーはそう言って、またオスカーの顔に唇を寄せる。

「凄く可愛いかった。夢中になったもんな」

オスカーはそれに応えてもう1度、キスをした。

 

 

この日もキルヘンミルクスネークを取りに、近くの森へと皆で行く。

ソフィーとコルちゃんが、数人の子供と一緒に小川の方へと歩く。

「ソフィーさん……腰を痛めてるです?」

時々、腰を押さえるソフィーに、コルちゃんが尋ねる。

「昨夜ね、オスカーが激しくて……」

ソフィーはコルちゃんに耳打ちをする。

他の子供達も付近に居るから、ソフィーなりに気を遣う。

「……?……腰と何の関係が……?」

コルちゃんは首を傾げた。

「……だよね~……」

ソフィーは苦笑いする。

 

 

ソフィーは笑って茂みを当たる。

若さもあり、マナの柱の力もあり、お昼を過ぎたくらいには、腰ももう痛まず、茂みに隠れた蛇を追い掛けてヘッドスライディングしていた。

 

夕方、この日も泥蛇2匹、ふかふか緑、ひらひらキノコと王様キノコ、ぐるぐる貝と大ウシガエル1匹を戦利品に、広場で夕食となった。

「毎日採れるなんて、神様の機嫌がいいのね!」

「私の祈りが通じたのかも!」

「なんか……ツイてたよ!獲りやすい所に居たんだ」

子供達が口々に神父様に言って、笑顔で夕食の時間。

夕暮れの赤い空が、何だか今日は一際眩しい。

「野菜の納品も上々みたいでねぇ……今日は沢山持ってこれたよ」

マルグリットさんも来て、八百屋の野菜を持ってきてくれていた。

そしてオスカーとマルグリットさんも、この広場で夕食を囲んだ。

 

 

「栄養もバッチリ付けたです!……昨日はお休みでしたから……今日は錬金術の力も増えるです!」

夕食も終わって、今日も土に汚れた3人でアトリエへと向かう。

コルちゃんが、おおはしゃぎして先頭を歩く。

人を見ると嘘を疑うらしいコルちゃんも、マナの柱の嘘の無い世界の部屋で、ソフィーとモニカと接した事で、信じてくれたようで……

「ところでソフィーさん……何故オスカーさんが激しいと……腰が痛くなるのです?」

アトリエへと向かう道。コルちゃんが振り向き、ソフィーに尋ねる。

「ソフィー……なんて事教えてるの?」

モニカがソフィーを睨む。

「えええ!?……でもどうせマナの柱に聞こうと思ってたんだけど……」

ソフィーはモニカに睨まれて怯む。

「な……何を聞くの!?」

モニカも怯む。

ソフィーはエロエロについては実践豊富な分、モニカよりずっと詳しい。

その上で恥じらいがないのだ。

……何を言い出すのか、分かったものではない。

「あのね……」

「待って!私の心の準備が……」

ソフィーが答えようとして、モニカが遮る。

「心の準備」とは言うものの、どう準備したらいいのかなんて分からないけれども。

「……モニカさん……何か変ですよ?」

コルちゃんが呟く。

 

……モニカ的には……

コルちゃんもソフィー側の人間だ。

……コイツもおおよそ恥じらいがない……と思われる。

目をぱちくりしながら見つめる男の子の前で、とんでもないポーズで獲物に夢中……そんな所を何度も目撃している。

初めてモニカとソフィーの前で裸になる時も、何のためらいも無かったし……

 

アトリエの近くまで来て、ソフィーはアトリエ前に干した毛布2枚とシーツを眺める。

取り込もうにも、泥だらけ土まみれの3人……

「……雨が降ったらどうするつもりだったの?」

モニカが尋ねる。

「まあ……賭けに出るしかないんだよね~」

ソフィーはそう答えながら、アトリエのドアを開ける。

モニカとコルちゃんは井戸水を汲んで、中に入る。

燃え続ける不思議な暖炉に、脱いだ服を並べる。

そして水を掛けて洗う。

「もう一杯持って来るね」

替えの下着を着たソフィーが、井戸との往復をする。

このアトリエ、やたら井戸が近いのは便利だ。

それに山の上のぽつんと一軒家だから、こんな夕暮れなんて人も来ないし。

「この輝き……!」

ハダカ族のコルちゃんが帽子の飾りを洗い、明かりに向けて眺める。

「それ、綺麗よねぇ……」

コートを丁寧に洗いながら、モニカがコルちゃんを見る。

「お母さんから貰った陰陽飾りの帽子ですから、大切にしないと……」

ソフィーも錬金コートを洗う事にする。

そんなこんなで、3人は暖炉前に洗った服とか下着を並べる。

他の暖炉とは違い、温かいのが低い所に溜まるように出来てるので、乾かすのが早い。

おばあちゃんの作った、不思議な暖炉は地味に凄いのだ。

そして、3人はマナの柱の部屋へと行く。

 

 

「モニカさん……」

コルちゃんが、モニカのおっぱいに手を伸ばす。

「……コルちゃんは、おっぱい好きなの?」

モニカは隠したい衝動を抑えながら、聞く。

「はい。……私……モニカさんに甘えて生きていたい……そう思ってしまうのです」

モニカのおっぱいにくっつくと、コルちゃんは深いため息をついた。

……土に汚れたおっぱいだけど……

そんなコルちゃんを、モニカは抱きしめる。

肩とか背中とか、1つ1つのパーツが小さくて可愛く思う。

それに、柔らかくも張りのある肌に、掌が心地好いのだ。

 

……恥じらいも何も……マナの柱の部屋では、考える事まで丸裸……モニカは自分が改めるべきかしら……

と、コルちゃんに甘えられながら考える。

そんな3人でマナの柱の部屋に入る。

マナの柱は口を開けて、3つの舌を見せる。

「……今日も森か……頑張って来たのだな……」

3人がその舌に座り、背中を預けるとマナの柱はそう伝える。

「最近食べれてるから、あたしの栄養不足は解消してるかな?」

ソフィーが尋ねる。

 

「気にしていたのだな……栄養不足は解消しつつあるな……良い事だ……長生き出来るぞ……それに……健康的な生活というのは……何物にも代え難いからな……」

マナの柱はそう伝える。

 

「……なんか……そうよね。やっぱりソフィーは……貧乏だものね……それを凄く気にしてるみたいだし……」

モニカがそう思って、それが伝わってしまう。

モニカも別に羽振りが良い訳でも無いのだけれど……

「えへへ……でも錬金術の力が育てば!こんな貧乏生活……ん?お金持ちになりたい訳じゃないんだよね……八百屋でキルヘンミルク買って、ぐびぐび飲みたい野望はあるけど……」

そんな思いを受けて、ソフィーは自分の野望を思う。

「ふふふ……私はお金持ちになったら……素敵な馬車を雇って……私のルーツを探る旅に出てみたいです……八百屋でキルヘンミルク……なんて素敵な野望……」

そしてコルちゃんの野望も返って来た。

「馬車を雇って旅かぁ……素敵な野望ねぇ……」

モニカは、そんなコルちゃんの野望に共感する。

「ともかく……疲れているだろうから……まずは眠るといい……今日は良い夢が見られそうだな……」

マナの柱はそう伝えて、口を閉じた。

 

 

「ふふふ、錬金術の力!」

馬車の横で、ソフィーが杖を高々と振りかざす。

草原に雷が落ちると、地面からちょうど良く焼けた蛇がぽーん、と飛び出した。

「ソフィーさん!凄いです!」

馬に跨がっていたコルちゃんが、諸手を挙げて喜ぶ。

そして飛び出した蛇の所に行くと、その蛇を持ち上げる。

「私も……錬金術の力を!」

コルちゃんはそう言って蛇を持ち上げ、高く掲げる。

焼けた蛇から、焼けた蛇と焼けたぐるぐる貝がぼろぼろ落ちて、焼けた蛇だらけになる。

コルちゃんはそれを拾うと、3頭の馬に、馬車を操るおじさんに、ソフィーとモニカ、オスカーに配る。

 

 

「ふあぁっ……んああぁっ……気持ちいいの……爆発してます……ふああぁぁ……」

コルちゃんのハジケる思いと、反響する可愛い声に、モニカは目を覚ます。

……今の……ソフィーの夢……?

ひどく能天気な夢を思いながら、モニカは白いキラキラ空間を見る。

そんな能天気な夢の犯人は……と思ったものの、ソフィーは眠っていないみたいだし……

「んっ……!それヤバっ!んくうぅぅっ!あうぅぅ……」

ソフィーのハジケる思いと可愛い声も伝わり、聞こえる。

……どうやらさっきのは……モニカ自身の見た夢のようだ……

 

「モニカも起きたのね?時間が膨らみ過ぎちゃうけど……置いてけぼりは嫌よね?」

マナの柱はそう伝える。

そんなマナの柱の可愛い声が、モニカの頭に響いて来た。

「そ、そうね……んっ……イキナリ……そっ……そんなトコ……んあぁっ……」

モニカの身体の中に吹き込んだ風が、形になるのを感じる。

それは、ぷにぷにしてて温かくなって……

お尻の穴とか女性器、脇とか腰とか……

敏感に感じるところを、ぷにぷにと刺激する。

……柔らかく、優しく刺激するも、とんでもない場所だけに、モニカもたちまち身体を震わせる。

甘い味……

甘い香りが……

モニカを興奮させる。

更にコルちゃんの思い……

ソフィーの思いに当てられて……

「んうっ……あっ!あっ!あっ!あっ!!……っはぁぁっ……はぁぁん……」

モニカもハジケて、脱力するとマナの柱は止まる。

「ごちそうさま……3人とも美味しく頂きました」

マナの柱はそう伝える。

 

 

「ねぇ……この前オスカーがね……凄い激しかったんだけど……マナの柱の能力と関係あるの?」

少しして落ち着いて……

ぺた~んとしてるマナの柱に、半身浴してるみたいな3人。

そんなのんびりタイムに、ソフィーが尋ねる。

モニカは今さっき、あられもなくハジケたのを恥じ入っていたものの、ソフィーもコルちゃんも、あまり気にしていないようだった。

……みんなそうだし……ってな感じだ。

 

「……能力のうち、慈愛は、1回受け取るとそれでほとんど完成する能力なのね。で、慈愛の能力は男の子を誘惑、興奮させる効果もあるのよね。エロエロ100倍増し、くらいでの交尾になったでしょ?」

マナの柱は相変わらず、好奇心の笑みを浮かべたような声でそう伝える。

「あ~……交尾ってどうするのです?」

コルちゃんも尋ねる。

分かんない、分かんない、知りたい!知りたい!

という気持ちも伝わる。

「男の子のおちんちんをね、女の子のおちんちんがあるべき所の……穴ぽこに入れる事が、交尾だよ。今はマナの柱のぷにぷにが入って、ニセ交尾みたいになってるけれど。擦るとふわぁぁっ!ってなるでしょ?」

ソフィーが答える。

「ほうほう……なるです。ふわぁぁっ!ってなって……気持ち良い感じになって……熱くなるです……」

コルちゃんは納得する。

モニカは、そんな2人を眺める。

……無垢な女の子だなぁ……とか思う。

……本とかで読んで知ってしまう、というのは……あまり、よろしくないのだろうか?

 

「……モニカさんは本で読んだのです?」

コルちゃんが、そんな事を思うモニカに尋ねる。

思った事が筒抜けなものだから、少し後ろ暗い読書のイメージも伝わったのだろう。

「まあ……興味はあるし……生理痛の事を調べる時に……そっちも書いてあったから……ね」

モニカは答える。

思った事が、そのまま伝わるだけなんだけど。

「生理痛……血が出るやつですね……私も……生理痛はあるです」

コルちゃんは、生理痛来ていたみたいだ。

「あたし……なんでそれが無いんだろ……?」

ソフィーは考え込む。

「ところで、なんで交尾なんてするです?時折、イヤらしい目で、足を眺める職人さん、商人さんが居たりするですけれど、関係ありそうですね……」

コルちゃんも考え込む。

「ん?コルちゃん、犬の交尾見た事ない?子供を作る為に交尾するんだよ」

ソフィーは事も無げに言い、モニカにくっつく。

「ちょっと!私でやるの!?」

「だって、その方が分りやすいじゃん」

そしてソフィーとモニカで犬の交尾の構えを取る。

「あははっ!ははっ!犬がそんな事するですか!?」

コルちゃんが大爆笑した。

「人の場合は……こう!」

四つん這いの姿勢のモニカのお尻に、ソフィーはおヘソを当てて、右目で右、左目で左を見て、口を開けて舌を出して見せる。

「ひ~っ!なんか可笑しいです!子供をっ!ひ~っ!」

更に大ウケだった。

 

 

「ソフィーは生理が来たら……そのまま子供が産まれそうね。だって交尾してるんでしょ?」

ひとしきり笑って落ち着いて、マナの柱はそう伝える。

3人分、朝から時間が膨らんで止まった時間。

どうせゆっくりまったりだ。

「確かにそうだよねぇ……なんで生理が来ないんだろ?」

ソフィーは疑問に思う。

そんな疑問に、今は答えなんてのも出ないんだけど……

「むむ……私は交尾をしたら子供が産まれる……という事になるですね……」

コルちゃんはそう呟くと、子供と暮らすコルちゃんのイメージをする。

 

何かをする時に、コルちゃん+子供で、更に能率アップする!素敵!って感じのイメージだった。

「なんか、凄い可愛いわね……でも私も、子供も一緒に教会のお役に立てるかもだわ……」

モニカも、コルちゃんに影響を受けたイメージを巡らせてみたり。

「うう……あたしの場合、増えると迷惑ばかり掛けてそう……」

ソフィーも、コルちゃんに影響されたイメージを巡らせるも、あまり良いイメージにはならなかった。

 

「モニカさん……髪が綺麗です……」

膨らんだ時間は続き、コルちゃんはモニカに身体を寄せる。

また、おっぱいに甘えるようにして抱きついた。

「甘えんぼさんね……あなたのピンクの髪も素敵よ」

モニカは、そんなコルちゃんの頭を撫でる。

「あたしも、甘えんぼさんだから!」

ソフィーもモニカに抱きついた。

「でもまさか、モニカさんとソフィーさんと、共にハダカ族になって過ごすとは……私の人生設計には、ありませんでした」

コルちゃんが、そう話す。

「私にも無かったわよ……何が起こるかなんて分からないものね」

モニカは苦笑いをする。

「あたしにも無かった!でもモニカのおっぱいは興味ある時もあった!」

ソフィーはそう話す。

そして、ソフィーの理想体型を思い浮かべる。

「ちょっと!おっぱいはともかく、オスカーになってるじゃない!」

オスカーばりのナイスバデーなソフィーのイメージに、モニカが驚く。

「オスカーさん体型のソフィーさん……なんか強そうです……」

コルちゃんは冷静に、そんな感想を思う。

……止まった時間の中で……3人はのどかな時間を過ごす。

 

 

近くの森で食べ物を探す日々。

3人はマナの柱の部屋に通い、力を与えられる日々でもある。

マナの柱は毎回軽くハジケさせて、後は止まった時間の中で……

3人は夢を語り合ったり、将来の話をしたり……

今日の出来事に話を弾ませたり、ぼよんぼよんして自分たちが弾んでみたり……

 

 

そんな日々もひと月もすると、与えられる力が完成した。

ソフィーの錬金術、コルちゃんの錬金術、モニカの魔法剣。

そしてソフィーはかなり太った!

ガリガリに痩せていたのが無くなって、頬もすらっ、とした曲線を描いてるし、胸もお腹もバッチリ肉が付いた!

……コルちゃんの方が、まだ太ましい感じがあるけど、ソフィーも食べられるようになって、オスカーからの評判も上々。

エロエロも上々な日々となった。

 

 

キルヘンミルクスネークカモン!も上々。

ソフィーは魔法を地面に撃ち、キーンと言わせる事で、びっくりした地中動物を出して、そこを皆で捕まえると言う荒業を得た。

コルちゃんもモニカも同じように、地面魔法を得た。

教会の子供達とソフィー達は、食べ物事情が凄く良くなった。

また、コンテナの中の番人ぷにぷにが増えた。

これもマナの柱の一部なのか、ソフィーには黒く見えるぷにぷに。

モニカには白く見える。

コルちゃんには青空の色。

コンテナに、色々な物を入れておく事が出来るのだけど、この番人ぷにぷにが整理や抽出を行い、錬金釜の中に送る……と言うのだ。

番人ぷにぷに達が依頼して、コルちゃんは瓶を増やした。四角い瓶、丸い瓶……白い陶器のコップや、丸いグラス……これらは錬金術に使う大事な物で、この案内人も増やせるらしい。

 

 

……ただ、ソフィーの錬金術は芳しく無かった。

 

 

錬金釜に、近くの火ブロックを寄せると、錬金釜が沸き立ち、錬金術的な反応が起こる。

それはマナの柱から聞いて知った。

錬金術に詳しくないマナの柱でも、錬金釜の沸かし方は知っていたのだ。

逆に言えばソフィーは、それすら知らなかった。

 

 

「おやソフィーじゃないか」

……そんなある日、マルグリットさんに呼び止められる。

なんとなくストリートを散歩してた時。

「なんだか、ソフィーに会うのは久しぶりのような気がしますねぇ……」

ちょうど、マルグリットさんと一緒に居たホルストさんが、八百屋の品物を片手に、微笑んでソフィーを見る。

相変わらず、ガタイのいい片眼鏡のオジサン。

それがホルストさんだ。

 

「まあ……近くの森かアトリエか……ですので」

ソフィーが答えると、ホルストさんはソフィーに向けて、驚いた顔をした。

「なんだか……いい感じに太って……見違える程可愛くなりましたね?」

マルグリットさんに品物を預けて、ホルストさんはソフィーの顔を捕まえる。

「えへへ、自分でも鏡見てびっくりしてるんですよ」

ホルストさんに、ほっぺたをむにむにされながら、ソフィーは答える。

 

「最近ねぇ、ソフィーが可愛くなってねぇ……でも錬金コートはともかく、服がぼろだからさ、アタシが新しいのを作っているのさ。もうすぐ出来るからね?」

マルグリットさんはそう言って、ホルストさんと笑い合う。

「オスカー君と恋仲なんでしたね?彼に目を付けるとはソフィー……中々目の付け所がいい。更にこんなに可愛らしくなって……」

ホルストさんはソフィーの顔を、むにむにしながら、目を閉じてしみじみと呟いた。

「むに~……」

そんなホルストさんに、ソフィーは結構長くむにむにされた。

 

 

……そんなソフィーだけど、錬金術への情熱は大爆発していて、アトリエに籠っては錬金生活に勤しんでる日々となった。

「うにを入れて……魔法の草を投入……」

しかし、錬金術に何度も挑戦するも、何のレシピも方法も無いソフィー。

……釜は怪しく光り、変な匂いを放ち、そして爆発を起こして、ダークマターが出来上がる。

……それの繰り返しだった。

そして、ソフィーとオスカーは16歳になり、コルちゃんは15歳、モニカは17歳となった。

 

 

「そうですか……ソフィーの錬金術は、上手くいっていませんか……」

キルヘンベルのカフェ、店主のホルストさんは呟く。

モニカが近くの森で採れた、キルヘンミルクスネークを持って、カフェへと行った時だ。

地面魔法のおかげで、2日に1匹はキルヘンミルクスネークが採れるようになった。

キルヘンミルクスネークってば、昼は地面の中で眠っている蛇だったみたいだ。

白い蛇皮が採れるようになってきて、それのせいなのかは分からないけれど、キルヘンベルの街には、ぽつぽつと行商人が訪れるようになった。

「まあ、なんか理論?みたいなのが分かってきてるとか………本人は言ってるんですけどね………」

モニカはそう言って、ホルストさんから依頼料を受け取る。

 

「ふむ……さて……山師の薬は、錬金術で作れる、とも聞きますし、初歩の初歩……だとか。これをソフィーに依頼……いえ、モニカ、貴方に依頼しましょう。ソフィーもこれなら……何とか形になるかも知れませんからね」

ホルストさんは苦笑いして、そう言った。

「へえ……どこから聞いたんですか?」

モニカは尋ねる。

「最近、可愛い男女の……旅の兄妹……と言った感じのお客様がいらして……そう話すのを耳にしまして」

ホルストさんはそう答えた。

「まあ……ダメなんでしょうけど……一応当たってみます」

モニカはアトリエへと向かう。

 

 

「なんか……相変わらず、凄い臭いがするわ……」

アトリエのドアを開けずとも、近寄るだけで異臭を感じる。

最近はマナの柱に行く度に嗅ぐ臭い。

……かれこれ半年ぐらい……ソフィーはダークマターを量産しては、マナの柱に与えている。

マナの柱的には、ダークマターも歓迎らしい……

力は与えられ、マナの柱から受け取れる力は、もうない。

与えてはいるけど、受け取れていない……

らしいけれど……

綺麗になるし時間は止まるし……

しかも喜ばれるし……

仲も良くなったし……

で、便利なのでちょくちょく訪れてる。

 

 

「ソフィー……頼みたい事があるんだけど……」

ダークマターの匂いにも慣れたモニカは、山師の薬を用立てて欲しい、との依頼をソフィーに伝える。

ソフィーはそれを聞いて、おばあちゃんの本を探し始める。

……なぜ始めから、そうしたレシピを探さずに、ダークマターを量産してるのか……

モニカは不思議に思う。首を傾げる。

 

「うわーんモニカ~……見つからないよぉ……」

なんか弱音を吐き始めて、モニカも一緒に本を探す事になった。

かなりの量の本に溢れてるアトリエでもある。

「なんか、ひときわ立派な本があったわ……付箋も、やたらされてるけど……何かしら」

モニカが窓際の机に置いてある本を、ソフィーに見せる。

「ん~……本当になんか……立派な本だね。こんな本あったかなぁ……あれ……最初の方だけ錬金術の図鑑みたいだけど……ほとんど全部白紙だなぁ……」

ソフィーは手に取って見る。

「不思議な本ねぇ……付箋だらけなのに、白紙ばっかりだわ……この付箋……ソフィーは本に付箋なんてしないわよねぇ……」

モニカも本を覗き込む。

「あ!でも山師の薬の作り方、思いついたよ!」

ソフィーは閃く。

「……おばあちゃんの本……なのかしらね?まぁ……思いついたなら、作れそうなのかしら?」

モニカは疑いの眼差しを向ける。

何せ半年もダークマターを作り続けている、ダークマターのアトリエだし……

とはいえ、モニカがやっても錬金釜は何も反応しなかった。

コルちゃんがやっても、錬金釜は反応しない。

ソフィーがやると反応するのだ。

……ダークマターとは言え、錬金術の力は備わってる……

という事なのだろう。

 

 

そしてモニカの魔法剣も、確かに使えるようになったのだ。

マナの柱の力は、確かに与えられている。

……ソフィーの錬金術は、力があれど、方法が無いのだ。

おばあちゃんが健在の時は、ソフィーには錬金術の力が無かった。

……そして錬金術の力を得た時には、ソフィーには錬金術の方法が無い。

コルちゃんは増やす錬金術、らしくて瓶とか器、井戸水の桶をバリバリ増やしまくっていて、雑貨屋を営むべく、色々と準備をしているらしいけれど。

「これは……やれる気がするよ!」

ソフィーはやる気満々で錬金釜に向かう。

 

 

そして1時間……錬金釜から山師の薬が出来上がった。

いつもの黒い塊ではなく、四角い瓶に入った軟膏が、出来上がったのだ!

「出来るじゃない!ソフィー!」

モニカはソフィーに抱きついた。

ソフィーも少し呆然として、そしてじわっと来た涙を拭う。

「うん!……図鑑にちょっと書き足しておくね……忘れたら大変だもんね」

ソフィーは図鑑に向かうと、何やらペンを走らせ、そして出来上がった山師の薬を持って、ソフィーとモニカは、カフェへと行く事にした。

 

 

「ホルストさ~ん!」

ソフィーは喜びの声でドアを開けて店に入る。

「ちょっ……最近気難しい行商の人が……今は居ないみたいね……」

モニカも後からカフェへと入る。

「ああ、2人とも。どうしたんですか?」

カウンターでグラスを拭くホルストさんは、2人を見ると、いつもよりも笑顔だった。

最近コルちゃんの錬金術で、グラスなどが調達出来た事もあり、ホルストさんはホクホク上機嫌なのだ。

そんなホルストさんに、山師の薬を届ける。

「えへへ……山師の薬出来ました……それで届けに来たんです」

コトッ、と山師の薬をカウンターに乗せる。

四角い瓶に入った、魔法の草の軟膏。

「ほ~う……これは見事な山師の薬ですねぇ……ソフィーの錬金術で作ったのですか?」

ホルストさんはそう言って山師の薬を手に取り、眺める。

「はい!」

ソフィーは元気良く返事をする。

「では、報酬を差し上げなければなりませんね。これを……」

ホルストさんが2人にお金をくれた。

「わーい!」

喜ぶソフィー。モニカも手間賃としてお金を貰い、2人はアトリエへと向かって歩く。

モニカは途中の広場で、近くの森へ行くみたいで、別れた。

 

 

「遂に……遂に錬金術が出来たよぉ……山師の薬なら、もう何度でも作れそうだよ……ふふふ」

ソフィーはアトリエに帰り、ガッツポーズしながら独り言を呟く。

パサッ……パサッ……パサッ……パサッ……

「ん?えーーーーっ!?本が飛んでる!?」

ソフィーは、あの付箋の付いた立派な本が飛んでる姿に気付き、激しく驚く。

「帰って来るなり、騒々しいですね……」

しかも本が喋った。

……口も無いのに喋った。

 

「……んんんん……おばあちゃんの手の者……?」

マナの柱に番人ぷにぷに……そして本。

おばあちゃんの錬金術が生み出した、不思議なアトリエ。

今更あまり驚かない……

いや、充分驚いた後だけれど。

 

「手の者……それはちょっと違う気がしますが……私はプラフタと言います。あなたの名前は?」

本は自己紹介する。

「あ、あたしはソフィーって言います」

ソフィーも自己紹介する。

「……ん~……プラフタさん?」

自己紹介して、ソフィーはプラフタを見る。

ぱたぱたふわふわと、付箋だらけの本が飛んでるけど、付箋は落ちない。

「プラフタで結構です」

プラフタは答える。

レスポンスが早い。

「じゃあ……プラフタは、おばあちゃんの錬金術が作り出した本なの?」

ソフィーが尋ねる。

なんかあまりにも、おばあちゃんの記憶がないんだけど、プラフタなら何か知ってるかも、なんて思いながら。

「……妙ですね……ソフィーの言うおばあちゃん、とは誰なのですか?」

プラフタも、おばあちゃんの事は知らないみたいだった。

「あ、知らないなら……違うのかな……まあマナの柱も、おばあちゃんが作り出した訳じゃないかもだし……」

ソフィーは髪を弄りながら、錬金釜を眺める。

「ソフィー……このアトリエは……他にも何かあるのですか?」

プラフタは尋ねる。

「あるんだよ。あたし、錬金術の力をね、マナの柱に与えて貰ったんだ。そうだ、プラフタにも紹介するね!」

そしてソフィーは、プラフタを連れてコンテナへと入る。

本の姿の謎生物と、打ち解けるのがやたら早いソフィーなのであった。

 

 

「この子達が番人ぷにぷに。コンテナの中の物をね、錬金釜に送ってくれるの。完成したら瓶とかにも入れてくれるんだ」

コンテナに入った所の棚に、ソフィーの頭くらいの大きさのぷにぷにが居て、今は寝ていた。

いつも寝てる気がする……

……散々、ダークマターを瓶に入れて出来上がりにしていたけど、番人ぷにぷにが入れてくれてる。

そしてマナの柱の部屋のドアも開かれて、中に入れた。

どうやらプラフタはこの部屋に入れる……

声も女の子だし。

 

 

部屋には巨大ぷにぷに……

マナの柱が変わらずあって、口は開けずにぴょこん、と細い腕を伸ばした。

「ソフィー……これは?」

「これがマナの柱。身体を綺麗にしてくれたりするんだけど……マナの柱から力を与えられて、あたしは錬金術の力を得られたんだ。でもプラフタは本だから……とにかく、ぴょこんに触れるとマナの柱と喋れるよ。カバー部分に触ってみる?」

ソフィーはプラフタに手を伸ばす。

プラフタは本を閉じてソフィーの手に乗る。

ソフィーはマナの柱のぴょこんに、プラフタのカドをくっつける。

「……新しい客は……本か……我はマナの柱と呼ばれていた……紙も我の身体が染み込んでしまう……革の部分も……望ましくはないが……」

マナの柱はそう伝える。

ソフィー達3人はもう、触らなくても聞こえてくる声。

「初めまして。プラフタと言います」

プラフタはそう、自己紹介する。

「名前か……我は名前は無いな……詳しくはソフィーから聞ける事だろう……」

マナの柱はそう伝える。そしてぴょこんを引っ込めた。

 

 

「半年くらいかな?ダークマターを作るたび、ぷにちゃんが喜んで食べていたんだけど……それも今日まで!これからは良いものを作り出す日々なんだから!」

ソフィーはプラフタとアトリエに戻る。

意気揚々としていたけれど、錬金釜の前に立つと……

ため息をついた。

「……どうしたのですか?ソフィー」

プラフタが尋ねる。

「ダークマター作り過ぎて……また材料がな~んにもないっ!」

ソフィーはガニ股でしゃがみ、頭を抱える。

 

 

「材料が無いのでは……私も何もアドバイス出来ませんね」

プラフタが呟く。

そんなプラフタを、ソフィーは見つめる。

「プラフタ……ひょっとしたら……錬金術詳しいの?」

期待の眼差しを受けて、プラフタはソフィーに近づく。

「山師の薬しか出来ないあなたよりは……記憶を失っているものの……私の方が詳しいでしょうね」

プラフタはそう言ってパタパタ浮いてる。

「師匠!錬金術……教えてっ!」

ソフィーはプラフタを掴もうとして、でもプラフタは、ひらりとかわした。

かわされた手を地面に、ソフィーは両足でプラフタを捕まえようとする。

よくオスカーを捕まえているので、慣れた体捌きだったりする。

「こら!なんとはしたない!あなたはスカートを履いている自覚がないのですか!」

プラフタはそれもかわした。

 

「全く……教えるのは良いですが……まずは材料をどうにかしなければならないのは、変わりませんね」

なんか怒られて、床に正座するソフィーに、プラフタは話す。

「最近は八百屋さんにも頼れないし、明らかにダークマターにしかならない素材ばっかだし……」

近くの森で採れるぐるぐる貝とか蛇とか草の実、キノコ等々……

色々試してみたけど……

錬金術には使えないみたいだし……

実際、ダークマターしか出来なかったし……ダークマターにしかならない予感までする。

 

「よし!モニカを連れて採取の旅に、行ってくるしかないね!魔物が襲って来るって話だけど……」

ソフィーは立ち上がる。そして窓を見る……

そんな夕方。

「……明日の朝、行く事にしようっと」

ソフィーは椅子に座る。

「まあ、初めてならばそうですね。色々と整えてからにするのが良いでしょう」

プラフタはぱたぱたと飛びながら、そう話した。

 

ソフィーとプラフタが少しまったりしていると、もう夕方の時間な訳だし、土に汚れたモニカとコルちゃんが来た。

もはやモニカとコルちゃんにとって、このアトリエは、家みたいな物となっている。

「髪も身体も……綺麗にしないとね……ぷにちゃんも喜ぶし」

マナの柱は、ぷにちゃんの愛称で親しまれていた。

「ふふふ……おや?」

アトリエに入り、近くの森から採れた蛇と小いも、ぐるぐる貝の焼けたやつをソフィー用に持って来てくれて、コルちゃんが暖炉前のテーブルに……

と、歩く所でプラフタに気付いた。

「……同居されている方でしょうか?私はプラフタと言います」

プラフタは相変わらず、パタパタと浮いてる。

そして相変わらずのトーンで、そう自己紹介した。

「……ソフィーさん!?遂に錬金術が成功したのです?」

コルちゃんは、ぱ~っと笑顔になってソフィーを見る。

「やったじゃない!山師の薬の次は……空とぶ本を……ってあれ?この付箋……」

モニカも一緒になって喜ぶけど、見覚えのある本にはた、と動きを止めた。

コルちゃんは、持ってきた食べ物をテーブルに置いた。

 

 

「……え~と……私はコルネリア。……コルちゃんと呼ばれています………増やす錬金術を使います……同居はしてないです」

コルちゃんは、プラフタに向かって自己紹介する。

「私はモニカ。ぷにちゃんから力を与えられたけれど、錬金術は使えないみたい。ちょっと残念ね。パワーアップさせる錬金術とか使えたなら、良かったのにね……なんてね。あと……同居はしてないのよ」

モニカも自己紹介する。

「あたしがね、錬金術が上手く行ってなくて……でも魔法とか使えるようになったから、近くの森で食材の調達も楽になったからって、休ませて貰ったりしてるんだよね」

ソフィーはそう言うと、暖炉の側に棒を掛ける。

服を干す為の竿だ。

「洗うのはやっておくから、先に行ってて~……」

モニカとコルちゃんは、服を脱いで暖炉の前に置き、ベッドの隙間、コンテナへと入って行く。

 

「さて……服を洗うのもダークマター後の片付けも……錬金術は上達してないけど……こちらはお手の物だよ~……」

ソフィーも服を脱いでハダカ族となると、井戸水と布キレを構える。

「……2人はどこへ……?」

プラフタは尋ねる。

「ぷにちゃん……マナの柱の所。ダークマターだけじゃなくて、身体の汚れを食べるから、凄い綺麗になるんだよ。髪もさらっさら、身体もつやつや、すべすべになるんだ。その上で力を覚醒させる事も出来るんだけど……女の子しか入れないんだ」

ソフィーは服を洗いながら答える。

「……それは不思議な……裸で行く……ものなのですか?」

プラフタは、ベッドの隙間のコンテナへの入り口辺りへと近づく。

 

「服は、ぷにちゃんと一体化しちゃうから、ダメなんだって。ガラス瓶とか、つるつるした物なら綺麗に出来るみたいだから~……モニカのレイピア、あたしの杖、コルちゃんのポックリは、番人ぷにちゃんが歓迎なんだけどね。プラフタも、紙はダメなんだってね」

ソフィーは服を洗い、干して……ハダカ族のままで食事をする。

「……裸で夕食……というのは見てて違和感がありますね……」

プラフタは呟く。

「なんか、ぷにちゃんが現れてから、すっかりハダカ族なんだよねぇ……えへへ。朝に出てくるから……プラフタはゆっくりしててね」

ソフィーは食事を終えると、そう言って食事の残りを持ってコンテナへの扉を開ける。

「……私も休むとしましょうか……ぷにちゃん……ねぇ……」

プラフタは本を閉じて、釜の側の机に横たわった。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[不思議毛布]
ゲームでは、特にそんな話は出てこない。天然物よりも人工的な物の方が人に都合よく出来ている。……としてもおかしくはない。

[マナの柱]
魔法の源。

[エロ元気の出る匂い]
フェロモン的な感じ?

[キルヘンミルクスネーク]
白い蛇。鱗も柔らかい。

[ふかふか緑]
シソ的な植物。見るからに美味しそうな葉っぱ。香りも良い。

[ひらひらキノコ]
キクラゲ的なキノコ。煮るとぷるぷるしてる。柔らかい毛が生えてて、毛も食べられる。

[王様キノコ]
シイタケ的なキノコ。煮ると、その煮物全体が美味しくなる。

[ぐるぐる貝]
カタツムリ的な生き物。食べられるやつと、食べられないやつが居る。それを見分けるのは、中々難しい。

[大ウシガエル]
ウシみたいなカエル。瞳が横に長いので、ヤギみたいでもある。

[恥じらいがない]
世界観的に、原始時代っぽいので恥じらいもなくしてみた。

[陰陽飾りの帽子]
ゲームでも出てくるが、帽子の名前までは出てこないので、命名。

[錬金コート]
ソフィーのコート。錬金術士として相応しいコート……なのだとか。

[不思議な暖炉]
火が消えない、燃え続ける不思議な暖炉。燃料は、マナの柱の魔法パワー……ってことならば何も不思議ではない。ハズ。

[地面魔法]
魔法の音がする。キーン。

[番人ぷにぷに]
コンテナの利便性を更に上げる為にこういうのが欲しかったので登場。

[コルちゃんと番人ぷにぷにが、器を作っている]
中和剤がフラスコに入っていたりする。その犯人を、コルちゃんと番人ぷにぷに、としてみた。

[火ブロック]
釜を沸かす手段。

[白い蛇皮]
白い蛇の皮。色々と使えるハズ。

[可愛い男女の、旅の兄妹]
メクレットとアトミナ。おそらく、プラフタを密かに持ち込んだのもこの2人。そうとしか思えない。

[ダークマター]
産業廃棄物。出来損ないの魔法錬成の成れの果て。

[ぷにちゃん]
マナの柱の愛称。

[服を干す為の竿]
洗濯と乾燥くらいするだろう、って事で登場。

[布キレ]
雑巾的な生活アイテム。

[ハダカ族]
ハダカ!



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錬金術のアトリエ 5

錬金術のアトリエ 5

 

マナの柱で朝まで眠る。

力を与えられても、もう受け取れない。

でもエロエロすれば時間は膨らみ、ゆっくり休む事が出来る。

もう随分とエロエロしていて……

1年と半年くらい、ソフィーとモニカ、コルネリアでハダカ族で絡む日々を過ごしているのだから、かなり慣れた。

オスカーとソフィーだと、もう3年ぐらいなのだから、ハダカ族のベテランである。

 

 

そんな1年と半年……

16歳にして、ついにソフィーにもおヒゲが生えた!

 

でも3人分もエロエロし過ぎると、時間が膨らみ過ぎてしまい、もて余すから……

と、当番制になった。

それにモニカがきゅんきゅんしてる姿とか、コルちゃんがふわぁっ!あぁぁっ!と喘ぐ姿とか……

ソフィーがぽろぽろ涙を溢しながらびくんびくんする姿とか……

なんかお互いに幸せな気分になるし。

 

 

「……今日はモニカだよね?」

ぷにちゃんはぺた~んとなって、ソフィーはモニカのお尻に抱きつき、コルちゃんはおっぱいに抱きつく。

「今日はあまり……激しくしないでよ……?」

コルちゃんに乳首を弄られて、目を細めながらモニカは言う。

いつぞや、調子になって、めちゃめちゃハジケまくって、38時間まで膨らんだ事もあった。

お腹減らして監禁状態……ひどい目に遭った。

「えへへ……モニカの匂い……」

ソフィーがモニカのおヒゲを撫でて、トロトロのおクチを指でぐるこんする。

「もうっ!もうっ!」

モニカはブリッジしてハジケて、脱力するとソフィーはお腹を優しく撫でる。

「モニカさんも……いつか素敵な殿方を……この匂いで誘惑しちゃうのですね……」

コルちゃんもモニカのおっぱいを、肩を撫でて乳首をぺろぺろしてる。

「んうぅ……はぁ…はぁ……そんな男性、現れるかしら……」

モニカはコルちゃんの頭を胸に抱いて、足を閉じた。

 

「キルヘンベル、最近はちょこちょこ色んな人が来てるみたいだし……でも裏酒場なんて行くのはダメだよ?」

ソフィーが言う。

ホルストさんのカフェが、お昼のティータイムや、一般向けのカフェ。

少しお値段が高く、依頼はここで提供している。

……そしてその健全さを担保しているのが、不健全さを引き受ける、裏ストリートにある、ホルストさんの裏酒場……

この店に、冒険者は集まっているようだ。

ガラの悪い店で、行きずりエロエロ目的を商売とする、そんな女の子も出入りしているらしい。

それと、ガラの悪い裏酒場でも依頼を提供しているとか。

 

「そんなの、怖くて行けないわよ!……どこにあるかは知ってるけど……」

モニカは首を横に振る。

「あ、そんな話じゃなくって……今日の朝ね、錬金術の採取をしたくて……雛鳥の林にね、一緒に行ってくれないかな~……って」

ソフィーは、モニカの顔に顔を近づける。

「やっとその気になったの?……今日の朝って……今じゃない。……行くわよそんなの。私の能力は旅でしか役立たないんだから」

モニカは即答する。

「私は……まだお店の準備がありまして……」

コルちゃんは色々と人と会ったり、小物を自作したかったり……そんな思いが伝わって来た。

「雛鳥の林で色々と集めて来たら、今度はコルちゃんがお休みだね」

ソフィーはすっかりエロ可愛くなってるモニカを抱き締めながら、そう言って笑う。

「助かるです……というか、そろそろ近くの森は卒業……ではないでしょうか?」

コルちゃんは冷静にそう言った。

 

 

ぷにちゃんの部屋を出ると、朝。

つまり、雛鳥の林へと出発の時間。

「プラフタ、行って来るね!」

ピッカピカになって、ぷにちゃん部屋から出て来たソフィーとモニカ、コルちゃんはそれぞれに服を着て、アトリエを出る。

「行ってらっしゃい。ソフィー」

プラフタに見送られて……

八百屋に行ってオスカーを誘う。

ぷにちゃんの話が本当なら、オスカーはソフィーの慈愛の力により、能力が解放されているはずだし、なんかスコップを突き刺して不思議な力をキーンコーン出来るようになっているから、力を受けているっぽい。

「あの子ねぇ……どこほっつき歩ってるのか……居ないんだよねぇ……」

八百屋で聞いてみたら、マルグリットさんはそう言っていた。

仕方ないから、モニカと2人で出掛ける事にする事に。

 

 

キルヘンベルの入り口……

出口でもある場所に、自警団の人と、街の案内人の女性が居る。

「お?お嬢さん達、たった2人で街を出るのかい?感心しないなぁ……」

自警団のモヒカンの男の人が、そう声を掛けた。

「ま、まずいですか?」

ソフィーが怯む。自警団の人が集まって来た。

「そりゃあ、マズイよ。だって街の外は危険な魔物が出るんだ。マズイだろ?」

自警団の人達は、心配そうな顔を並べてソフィーとモニカを見る。

「すぐ近く、雛鳥の林まで行くだけです。私達も準備はしています」

モニカが言い、レイピアを少し抜いて、またパチン、と戻す。

「まあ、そう言うなら通すさ。通さない為に俺らが居る訳じゃないからな……雛鳥の林ったって魔物は出るから、気を付けるんだぞ?」

ソフィーとモニカは、キルヘンベルから出る橋を渡る。

この川を渡る橋から先は、キルヘンベルの外だ。

 

「大丈夫かしら……」

モニカは呟く。

キルヘンベルを出て歩く初めての旅路……

相方は能天気娘、ソフィーだけだ。

「大丈夫!実はね~……我がアトリエ秘伝のうに爆弾が5発、5発で10発あるんだよ。ほら」

ソフィーはモニカにうに袋を見せる。

「秘伝……?なんかしけってて古くさいわね……なんか仕舞い込んで、忘れてただけじゃないの?」

モニカは自称・秘伝のうに袋を手に取って、冷静に見つめる。

「バレたか……まあ、雛鳥の林なら、きっと大丈夫だよ。街の近くで出る魔物は、ぷにちゃんの守護の力により、激しい弱体化がかかるそうだから」

ソフィーはそう言って、街道を歩く。

一応は街の外も、ぷにちゃんと予習したのだ。

「そう言えばぷにちゃん、そんな事言ってたわね。だから街に魔物は出てこない……なんて話だけど」

そんな話をしながら歩く雛鳥の林までの道。

……片道3時間だ。

 

 

雛鳥の林に着くと……

なんとオスカーが居た。

「こんなところに居た。おーい、オスカー!」

ソフィーに呼ばれてオスカーは立ち上がり、振り返る。

「お?こんな所にどうしたんだ?」

おとぼけボイスで、オスカーは言う。

「いやいや、オスカーこそどうしたの?こんな所で1人なんて危ないよね?」

ソフィーがツッコむ。モニカも頷いた。

「まあ、近くの森の植物達も観察し尽くした感があるからなぁ……ちょっと遠出をしてみたんだよ。ソフィーこそ、どうしたんだ?散々怖がっていたじゃないか」

オスカーはそう話す。

 

ソフィー的には、魔物プニプニと戦う決心がつかず……

街から離れるのも怖くて、踏み出せないでいた。

そのお陰で、ダークマターのアトリエになっていた、とも言える。

「あたしは、錬金術の材料採取に来たんだ!錬金術、上手く出来たんだよ!」

ソフィーは、遂に出来上がった山師の薬を思い出して、元気良く答える。

……そう、遂に錬金術が動き出したのだ!

 

「へえぇ〜!本当にダークマター以外の物が出来たのか!やったな!ソフィー!」

オスカーも喜んでくれた。

「師匠が出来まして〜……おかげでこれからも、どんどん錬金術が進む予定なんだよ〜!」

ソフィーはじたばたしながら、そう報告する。

そして喜びの報告会と、プラフタの話になった。

 

「ソフィーも遂に、その気になったのか……」

オスカーは、いつものトーンに戻って、言う。

「痛いのは嫌だもんねぇ……でもそんな魔物の巣にも、突撃しないと錬金術の材料が……ないからね!」

ソフィーは、杖を空に向けて上げる。

「錬金術の為なら、どこでも行けるのね、ソフィーは」

モニカはメガネをくいっ、と持ち上げてそう話す。

「そうかぁ……ならオイラも力になれそうだし、ソフィーに便乗すれば、色々な所に植物観察出来そうだよな……」

オスカーはそう言うと茂みの方を向き、スコップを構えた。

「早速プニが来たみたいだぞ?」

ソフィーとモニカも、そちらを見る。

 

青空色の、顔も付いた本物のプニがテンパったような顔をして出てきた。

「なんだか……子供の頃に見かけたのとは、雰囲気が違うわね……」

モニカも身構える。

ソフィーも、こちらの空気を揺らされるような、嫌な予感に身構えた。

「今まではやり過ごしてたんだけどな。3人居るなら戦ってみるのもアリかもな」

オスカーはスコップを構えたまま、言う。

「プニプニ~!」

青いプニプニはゴロゴロと転がり、結構な勢いでオスカーに体当たりしてきた。

「うおおおっ!」

その衝撃で、オスカーを少し後ろに下げる。

かなりの勢いのタックルだ。

 

 

「このまま、やられたりしないわ!」

青プニプニが反動で跳ね返り、着地した所にモニカが駆け寄る。

そしてレイピアの一撃!

「あたしだって!負けてられないんだから!」

ソフィーもモニカに続く。

杖を握りしめて、怯んだ青プニプニに向かってダッシュ!

そして降りおろす。

全力杖ストライクが綺麗にヒットした。

「プニプニ~……」

青プニプニは、顔のパーツがバラバラになって、パラパラと転がったかと思うと、すぐに顔のパーツごと立て直し、元に戻った。

 

「どぉーん!」

オスカーの、スコップの一撃が続く。

青プニプニはその一撃でうつむき、顔が無くなった。

3人はその青プニプニを見つめて、各々の武器を構えたまま警戒する。

「やっつけた……の?」

青プニプニは動かない。

そして青プニから光が飛び散り、消えて行った。

 

すると、3人の身体が僅かに光り、ぷにちゃんの力が膨れていくような感じがする。

魔法の力が、増えて行く感覚がする……

そんな温かさ……

「おお~っ!なんか凄そうな感じがする!」

ソフィーは思わずジャンプする。

モニカもオスカーも、何だかはしゃいでた。

動かなくなった顔の無い青プニプニを探ると、ぽろぽろと、ぷにぷに玉が転がり落ちた。

 

「……ところでオスカー、さっきのタックル平気だったの?」

モニカが尋ねる。オスカーにバッチリ青いプニ汚れがついてる。

「HPバリアだっけ?それが削れた感じはしたけど、オイラは平気だよ。なんだか……本当にマナの柱の力ってのがあるんだな……」

オスカーは、相変わらずのトーンで言う。

「ねえ、危険な魔物が出るなら一緒に来てよ。可愛いソフィーちゃんが怪我したら、良くないでしょ?」

ソフィーはオスカーに肩を寄せる。

半年で随分と太り、貧相だったのが治って、自分でもちょっと、可愛さに自信を付けた。

「まあ、一緒に行くさ。ソフィーが出掛けないから1人で来てた訳だし」

3人になって、雛鳥の林を探索する。

 

「……ソフィー、それが魔法の草だぜ?」

魔法の草を素通りしたソフィーに、オスカーが声を掛ける。

「えええええ!?これ!?」

ソフィーは、何の変哲もない草を見る。

色々な草と、低い木に埋もれて気付きづらい。

……でもよく見ると魔法の草だ。

オスカーが鎌で切ってくれた。

 

 

そうして採取して、キルヘンベルに帰る事にする。

「でも地面魔法……ここだと何が出て来るんだろう?」

ソフィーは呟く。

近くの森で蛇とか蛙、モグラネズミとか土ネコ、ナマズガエルに蜘蛛……

色々出て来る地面魔法だし、気になる。

「やってみるか。何かしら戦利品を持ち帰りたいもんな」

「じゃあ……」

ソフィーは地面に杖を差す。

……パキーン……

空間が揺れるように波紋を広げ、地面に向けて音を立てる。

モニカもオスカーも使えるけど、ソフィーの地面魔法が1番範囲が広く、音も強く響き渡る。

 

 

……キーン……キーン……

「イヂュ……ヂュ……」

「イヂュ……ヂュヂュ……」

「イヂュ……イヂュゥ……イヂュ……」

なんか体毛の薄いネズミが地面から出て来て、ヨタヨタフラフラと、鈍く動き回る。

「豚ネズミだ!これは凄い獲物だぞソフィー!」

オスカーがスコップで叩き、1匹仕留める。

モニカもストン、とレイピアで1匹仕留める。

1匹がデカい。10kg級のネズミで、丸々と太っている。

顔を見ると、凄く目が小さい。

残る1匹……

ヨタヨタフラフラしているものだから、ソフィーの杖でも仕留める事が出来た。

頭を叩くと、あっさりと気絶する豚ネズミ。

「凄いね……食べたら栄養満点……ぽい感じ」

3人はそんな戦利品を手に、キルヘンベルへと帰って行った。

 

 

……汗と土に汚れた3人がキルヘンベルに帰り、あの川の橋を渡る。

「おお、無事に帰って来たのかい?」

キルヘンベルの入り口……

自警団の人と教会騎士の人が3人に歩み寄る。

「心配掛けましたけど……この通りです」

モニカが担いでる、戦利品の豚ネズミを見せる。

ソフィーもオスカーも、1匹ずつ担いでいる。

「ほぉ……やるなぁ……」

「何はともあれ、無事に帰って来てくれて良かったよ。寂しい街が更に寂しくなるからな……」

自警団の人と、教会騎士の人に見送られて、3人はキルヘンベルの街、八百屋のあるストリートへと凱旋する。

そして途中、ヴァルム教会に獲物を納める。

 

「パーメラー!」

夕方のヴァルム教会。

噴水広場辺りで、子供達がちょうど教会に帰って来つつある時間。

ソフィーは杖を高々と上げて、満面の笑顔での凱旋となった。

「あら?何か凄い大物を仕留めたのね~」

パメラはソフィー達を向き、子供達も駆け寄って来る。

「ソフィー姉ちゃん、何取ったの?」

「凄いでっかいネズミ!何これ!?」

「豚ネズミ!?これ、豚ネズミなのか!?」

群がる子供達。それにディーゼルさんもやって来た。

「雛鳥の林でさ、取れたんだよ。もっと沢山居たけど今日はさ、このくらいだけどな」

オスカーが、担いでる豚ネズミを降ろす。

 

「1匹は錬金術の材料として……ふふふ」

ソフィーが怪しく笑う。

そして杖をぐるこんして見せる。

「ソフィー姉ちゃん、豚ネズミをどうするつもりなんだ!?」

そんな黒魔術な笑みを見せるソフィーに、子供の1人が尋ねる。

「モチロン……食べるのさあぁぁ……」

すっかり黒魔術なソフィーが答える。

「普通じゃん!」

子供は笑う。

 

豚ネズミ2匹と、雛鳥の芋をたくさん。

それらを教会に寄付して、3人はアトリエへと帰る事にした。

 

 

そして満を持してアトリエで夕食、となる。

「3人でも豚ネズミ1匹は多いけど……外で捌いてくるな」

オスカーはアトリエの外でネズミを捌き、ソフィーとモニカは、オスカーが採っていた雛鳥の芋を洗い……

そうして作る夕食。

作っていると、コルちゃんが夕暮れのアトリエへの山道を登ってくる。

遠目から見ても、なんかやたらと軽い足取り、手甲がフラフラするシルエットなのが特徴的だ。

 

「今日はお外でごはんです?」

木くず?に汚れているコルちゃんが、オスカーとソフィーの近くに寄る。

そして見慣れない瓶詰めを抱えていた。

「……これ、取引先から頂いた、お隣の国のトマトピューレだそうです。これのお裾分けと……今日もぷにちゃんと寝ようかなぁ……と」

取引先……?

なんか、コルちゃんが遠い世界の人のようだ。

「コルちゃんいい所に!夕食済ませちゃった?」

ソフィーは尋ねる。

「はい。食べましたが、少し物足りない夕食でした」

コルちゃんは袖と瓶詰めで口許を隠して、そう言う。

「コルちゃん食べるもんね!じゃあ丁度良かったよ。豚ネズミだよ!初めて食べるんだけどね。今オスカーが捌いてるんだよ」

ソフィーが言うと、コルちゃんはオスカーの方を見る。

そして目を輝かせた。

「おおおおおおお!?蛇とは比較にならないくらい……お肉です!?美味しそうです……!」

さすが肉食系女子。

お肉に目がない。

オスカーの捌く豚ネズミに、釘付けとなった。

 

柔らかくて薄い皮を剥ぐと、白い脂身と赤いお肉になる。丸々と太っているのに、脂身は少なめだった。

「教会にも2匹納めて来たし、明日も採りに行こうと思ってるのよ」

そう話すモニカとソフィーの洗う雛鳥の芋も、また初めて食べる芋だ。

ブドウみたいに小さい玉が集まってる芋。

「ワタはぷにちゃんが好きなのか?埋めようかと思ったけど、お土産にするか?」

オスカーが内臓を分けて入れた、井戸水を入れる桶を、ひょいっ、と上げて言う。

「あ。持ってく。ぷにちゃん桶を綺麗にしてくれるし、そういうの大好物みたいだから」

……マナの柱……

なんかゴミ箱みたいな……

でも喜ぶのだから仕方ない。

毒物でもダークマターでも、土でも喜ぶ。

お肉でもお野菜でも喜ぶけれど、ぷにちゃんとしては、あまり価値が変わらないそうだ。

 

 

そしていざ実食!トマトピューレの瓶詰めは、使い方を調べてから……

となり、アトリエにストックしておく事に。

豚ネズミ肉、雛鳥の芋の石焼きが夕ごはん。

アトリエの火ブロックを調理ブロックに寄せると、焼き物用の台になる。

火が起きなくても、熱で調理出来るという……

おばあちゃんが残した不思議な道具の1つ。

 

そして実食!

コルちゃんは服を汚さないように、上半身は下着で臨む。

ソフィーも錬金コートは脱いで、構える。

オスカーとモニカは普段通りだ。

「……野性的ね……」

モニカが呟く。

「コル助には、ソフィーのシャツでも着せた方がいいんじゃないか?」

オスカーもそう話す。

「今!今が勝負だから!」

「そうです!今が勝負なのです!」

ソフィーとコルちゃんは、どうやらそれどころじゃないようで……

 

「これ!栄養凄いんじゃない!?」

ソフィーが食べて目を輝かせた。

「美味しいです!肉汁……脂……なんと美味しいのでしょう……!」

コルちゃんも、目を輝かせてはしゃぐ。

口の回りの汚れが、ほっぺたにも及んでいるのが可愛い。

「コル助、口が小さいからなぁ。ほら、ナプキン」

オスカーがポケットから白い布を取り出し、コルちゃんに渡す。

「オスカー、オスカーのほっぺもテッカテカだよ?」

ソフィーが笑う。

「こうして見ると……お口回り綺麗なのは、モニカさんだけです」

上半身下着で臨む、コルちゃんが言う。

そして食事は進む。

オスカー印の塩と果実の調味料も相まって、とんでもなく美味しい食事となった。

 

 

「明日も!雛鳥の林行こうよ~!」

ソフィーが叫ぶ。

「元々その予定じゃない!子供達も神父様も喜ぶわ!それに栄養も付くし……教会が賑やかになりそうね!」

モニカも明るい笑顔を見せた。

「明日はウチの荷車を出そうかな。豚ネズミは重いからな」

オスカーはそう話した。

 

 

そんな夕食が終わり、オスカーも帰り……

3人でぷにちゃんの部屋に行く。

それぞれの服や装飾品、武器とか靴は、棚に置くと番人ぷにちゃん達が綺麗にしてくれる。

布部分は触れないみたいで、綺麗になる部分とならない部分がある。

「豚ネズミ背負っちゃったから……土汚れが……凄いよぉ」

ソフィーは服を脱ぎながら呟く。

「靴は汗とかで匂うから恥ずかしいのよね……」

モニカは靴を脱いで棚に置く。

「なんだか、番人ぷにちゃんに綺麗にしてもらうのも、恥ずかしい汚れとかあるですけど……」

コルちゃんはそんな事を言いながら、下着を脱ぐ。

「くんくん……うわぁっ……これはくさい!」

ソフィーは、モニカの靴の匂いを嗅いで怯む。

「嘘ぉ!っていうか……嗅がないでよ!ソフィーのだって、大差ないんじゃないの!?」

モニカが慌てる。

そして匂い嗅ぎ大会になった。

 

「なんで自分のは、わかりづらいんだろ?」

ソフィーは、番人ぷにちゃん隊長をつんつんしながら呟く。

4つ居る番人ぷにちゃんだけど、唯一ぷにちゃんの人格とは違うのが、番人ぷにちゃん隊長だ。

見た目は変わらない。

「おしっこの匂い的なものまで、というか……ソフィーさんが、匂いに敏感なんじゃないです?」

コルちゃんも、服とか靴とかに取りつく番人ぷにちゃん達をつんつんしながらソフィーを見る。

「私……鼻がおかしいのかしら……?」

3人でそんな話をしながら、それぞれを棚に置く。

置いた物の傍らで、番人ぷにちゃん達が動き回っている。

長い廊下に長い棚……

アトリエ側には、豚ネズミのお肉の残りとか、採って来た雛鳥の芋、魔法の草、ぷにぷに玉……

そうした採取品が並ぶ。

 

つい先日まではダークマター素材も、うず高く保存されていて賑やかだったけれど。

ソフィーは遂に決心して、ダークマター素材は全て破棄する事を決めた。

決めた途端、番人ぷにちゃん達に食べ尽くされたので、随分とスッキリした。

 

それはともかく……

ぷにちゃんの部屋へのドア側の棚まで、からっぽエリアが長く続く今現在。

そのからっぽエリアの果て……

ぷにちゃんの部屋のドア付近に、それぞれの服とか靴とか帽子とか並べている訳だけど。

「まあ……慣れるまでは……違和感もあるだろう……」

番人ぷにちゃんの1つは、そう話した。

 

 

3人で、ぷにちゃんの部屋に入り、口を開けるぷにちゃんの中に入る。

「はぁ……なんだかふわ~っとリラックス出来るです……」

ぷにちゃんの中で、コルちゃんはふわふわ浮かぶ。

長いピンクの髪も、ひらひらと膨らみ、ぷにちゃんは1本1本の汚れを余す所なく食べる。

「凄く居心地いいのよね、ぷにちゃんの中……」

モニカも同じように、ふわふわ浮かぶ。

ソフィーからすると見えないのだけど、低い所をふわふわしてるモニカの意識が伝わる。

「髪に涼しい風で頭なでなでされるのが……最高の気分になるよぉ……」

ソフィーも大絶賛だ。

 

3人は目を閉じてリラックスする。

目を閉じてるのに、目玉までスーっ……と涼しい風が撫でるような感じ。

身体の中にまで、そういう風が吹く感じ。

……あまりにも心地好い……

「……居心地が良いのなら……我も嬉しい……こうした共存が……我の糧となる……」

そして3人は眠りに落ちる。

 

……でもソフィーが起き出した。

「やっぱり錬金術しときたいなぁ……」

起きた、というより気にかかる事があるから、ぷにちゃんが起こした……

なんだけど、ソフィー的には起きた、という感覚。

「ならば、錬金術をしておくといい……いつでも出る事も出来る……」

ぷにちゃんはそう伝える。

時間が膨らんでいないなら、出れる訳だし。

「そうだよね……ちょっと行って来るね」

ソフィーは、ぷにちゃんの中から出る。

そして眠る2人を残して、ぷにちゃんの部屋を出る。

 

 

「へへ~……錬金術しときたくて、夜中なのに出て来ちゃった」

コンテナからソフィーが出て、錬金釜に向かう。

すると、プラフタがふわっ、と浮いてパタパタと飛んだ。

「それを待っていました。こうして過ごすのも暇ですから」

プラフタはそう言いながら、左右に飛ぶ。

「へへ、また明日は出掛ける予定なんだよね……だから尚更、今のうちに錬金術しないとね」

そしていよいよ錬金術。

プラフタに習いながら、山師の薬を作る。

 

 

以前作ったやつよりも……

断然分かりやすく教えてくれて、効果的で品質も良いものが出来上がった。

「凄い!凄いよお……錬金術……あたし出来てるんだ!」

散々ダークマターを入れては、ぷにちゃんに渡して……

ダークマターが食べられて綺麗になる……

そんな繰り返しだった四角いガラスに、ダークマターではなく、肌色の軟膏が入っている。

ソフィーは両手に持った、それを見つめて喜ぶ。

 

「ソフィー……あなたの錬金術の力と言うのは……かなり確かな力のようです。それに力強さを感じました。あとは方法と理論さえ押さえれば……かなり凄い錬金術士となれそうですね」

プラフタに誉められて、ソフィーは有頂天で3人分の服を洗う。

なんだか元気だし、やっとく事にした。

山師の薬の浸け置きの時間が1時間もあったし……

……それにどうせ朝は時間を止めて、ゆっくり休む予定だから……

疲れも残らないし……

そしてソフィーは改めて、ぷにちゃんの部屋へと行き、眠る。

 

 

「ふわぁっ!あっ!モニカさんっ!指……強いですっ……それ……ふわぁっ!はあぁぁ……っ!……っ!」

朝になって、今日はコルちゃんのエロ汁で時間を膨らます番。

モニカがノリノリで、コルちゃんをハジケさせる。

片足をぷにちゃんが固定して、モニカに見つめられながら、コルちゃんはハジケた。

「コルちゃんのワレメ可愛い……ひくんひくんしてるよ?」

ソフィーがその匂いを嗅いで、おヒゲに指を立てたりしながら、コルちゃんのワレメを舐める。

……舐めてる感覚よりも、伝わってくる舐められてる感覚を楽しみながら……

「うぅっ……いま……あっ……はううぅ……」

黒いぷにちゃんに、半身浴しているみたいなコルちゃんは、全身ひくんひくんさせて、荒い息遣いで訴える。

「コルちゃん、おっぱいあげる?出ないけど……」

モニカがそんなコルちゃんの頭を抱いて、乳房を寄せる。

モニカが見るコルちゃんの姿は、ソフィーにも伝わる。

白いキラキラなぷにちゃんだから、ハダカ族コルちゃんが神々しく見えたり。

……なんでソフィーから見ると真っ黒なのか……

それはそれで趣があるけども……

 

 

そうやってお互いの身体ではしゃいで、自分の身体ではしゃいで……

膨らんだ時間をゆっくり休んで……

それでも膨らんだ時間が終わらないから、2度寝までしちゃって……

ぼよんぼよんしちゃって……

 

ようやく時間が追い付くとアトリエへと戻る。

まだ暗い時間の朝。

「オスカーには悪いけれど、元気全開だからね!よし、行こう!」

コルちゃんは、お店の準備。

ソフィーとモニカ、オスカーのパーティーは、今日は雛鳥の林で夜を過ごすかも……

と、プラフタに話はしておいた。

「プラフタ、行って来るね!」

モニカとソフィー、コルちゃんはアトリエを出る。

 

 

……市街地のはずれ……

広場側に、なんか裕福なおじさんが歩いていた。

……市街地のはずれ……

これまた広場側に、旅芸人と、その見習いの男の子が芸の準備をしていた。

「……キルヘンベル、なんか賑やかになって来たね?」

ソフィーはモニカに話す。

ダークマター工場生活の半年の間で、キルヘンベルは少し賑やかになったような……

「そうね……去年くらいなんか、寂しい街だったハズなのに……どうしたのかしら?」

モニカもそう呟く。

 

モニカとエレノアさんの、おばさんの会合にも新しいおばさんが参加してる話をしたり。

そして広場に行くと、朝から神父様が外に出ていた。

「あれ?どうしたのかしら……」

2人で神父様の所に行くと、教会の大掃除をしているのだと言ってたので、手伝う事になった。

バーニィさんとディーゼルさんは……居ない。

……まあ、いいけど。

教会にはパメラが居て、パメラ印のお札、パメラ印の聖水なんかが、なんとゴミ扱いとなっていた。

ソフィーが見る限り、なんか得体の知れない念と特性を持っていて、錬金術に使えそうなのだ。

 

「どうせゴミ扱いだから、持ってってもいいわよ~♪」

ゆるふわ高音ボイスで、パメラは言う。

手塩に掛けて作っているのに、ゴミとはどういう事なのか謎過ぎる。立派な器に入った聖水まであるのに……

「ど、どう見てもゴミじゃないよね?パメラ……」

良くできた器の聖水を手に、ソフィーは呟く。

「そう言ってくれるのは嬉しいわ~♪でもね、もう何年も使い道が無いまま、放って置かれてるのよ~?」

パメラは言う。

どうやら使い道は無いようだ。

「じゃあソフィー……寄付をして、その代わりに持って行けばいいんじゃないかしら?」

モニカが余計な事を言って、教会に寄付する時に貰える事になった。

さっそく聖水とお札を貰って、なけなしのお金を寄付する。

 

 

……広場には裕福なお姉さんと、一流の冒険者が居た。

……そして行商人とコルちゃんが話している……

そんなのどかな噴水広場……

……ストリートを通り、八百屋前でオスカーと合流。

なんか八百屋さんに、ソフィーの錬金術用の商品棚が出来ていて、買い物をする。

ピンっピンのラーメル麦に、ぴっかぴかの気まぐれいちご……

はじけるベリー……

と、いうわけで残金が80コールとなった。

そんな散財をした後……

ふとカフェを見ると、カフェの入り口にホルストさんが居て、手招きしてる。

「ホルストさん、どうしました?」

オスカーが手配した荷車と、荷車を取り巻く3人はホルストさんに近づく。

「……その感じは、何か外で調達でもするのですか?まあ、立ち話もなんですから、中へどうぞ」

とにかくカフェの中へと誘われた。

 

カフェの中……

3人にホットミルクとカリカリトーストを、サービスだと言って出してくれて……

ホルストさんは、にこやかに尋ねる。

「はい!雛鳥の林で、雛鳥の芋と、豚ネズミをしこたま採ろうと思っているんです」

ソフィーは答える。モニカも頷く。

カリカリトーストが凄く美味しい……

「ならば、出掛ける時にはこちらに立ち寄り、依頼を見て行って下さい。勿論……報酬もお渡ししますよ」

ホルストさんはそう言うと、書類を出して来た。

「雛鳥の林……ですか。駆け出し冒険者みたいな場所へ行くのですねぇ……さて……」

オスカーも、その書類を見つめる。

モニカも大注目だ。

「人の役に立つ仕事……なんだか1つ、夢が叶った気分だわ」

モニカがそんな事を言うから……

さっそく秘伝のうに爆弾1つに買い手があって……

101コールでホルストさんに渡した。

 

「魔物の討伐なんてのもあるんだな……どうやって倒した事を証明するんだい?」

雛鳥の林、ゴースト討伐、青プニ討伐なんかを受ける。

「ゴーストならゴーストの消えそうな帽子、青プニならプニの体液(青)が、証となりますよ。新鮮でないとダメですので、依頼を受けてから、倒して下さいね」

ともかく依頼を受けて、3人はキルヘンベルを出る事になった。

 

またあの川に架かる橋を渡る。

「お?今度は本格的だな、お嬢さん達」

自警団の人達が、ソフィー達3人に声を掛ける。

「今度はも~っといっぱい、豚ネズミ採って来ますよ!食べたら美味しかったから!」

ソフィーが杖を高々と上げ、意気揚々と話す。

「そりゃいいな……俺の口にも入りゃ、言う事なしなんだが……なかなか出回らない物は、お高いからなぁ……まあ、怪我せずに帰って来いよ」

自警団の人達に励まされる。

「ありがとうございます。気を付けて行って来ますね」

モニカが丁寧に挨拶して、3人はキルヘンベルを出発した。

 

 

「ところでソフィー、良かったの?秘伝のうに爆弾、1つ渡しちゃって……」

キルヘンベルを出て……

雛鳥の林への道で……

モニカは心配して話し出した。

「何だかね……ぷにちゃんの力が無い人が、せめてうに爆弾の力が役に立てばいいな、って思ったんだよ」

ソフィーは答える。

「いえ、あのしけってる奴……役に立つのかしら?」

モニカは思い浮かべる。

あの古臭い、しけってるうに袋を。

「あ……渡さなければ良かったかもね……」

ソフィーも、そう思った。

雛鳥の林まで……そんな3時間の道……

ソフィーとモニカに空の荷車を託し、オスカーは少し離れた場所で、植物達への挨拶回りに余念がない。

「オスカーは元気ねぇ……あんなに忙しく動き回ってるなんて、意外だわ」

モニカはそう呟く。

「どしゃ降りの時のキルヘンミルクスネークカモン!で皆を引っ張ってる時とか、結構張り切ってるんだけどね」

ソフィーはそう話す。近くの森でもアクティブに動き回る話も、子供達からよく聞いてるし。

 

 

そうして語らう道のり3時間……雛鳥の林に着く。

前回同様、青プニ1匹がぷるぷるしてるのかと思ったら、これが大間違い。

青プニ2匹と緑プニが出て来た。

「緑のやつ、やたら強そうだな……」

オスカーが怯む。

でもプニプニ達は、既に戦闘モード。

やる気満々で、こちらの空気をビリビリ震わせている。

 

 

プニプニを叩き叩かれ、ソフィー達が勝利した!

……HPバリアとか無かったら、余裕で死んでるよ……

ぐらいタックルを連打で食らい、更にプニ天空プレスとかしてきた。

……野生のプニ恐るべし……

「ううう……しかしマナの柱の力……凄いな……もし無かったら……と考えると冒険者って凄いんだな……」

ようやく倒して、オスカーが呟く。モニカも頷く。意外や意外、しけってるうに爆弾は強かった……

 

そして採取生活。

プニプニ達は居るものの、そうそうソフィー達を感知して襲って来る……

と、いう訳でもなく、基本的には何の目的なのか、あさっての方向へころころしていたり、植物観察していたり……

刺激して戦闘モードになると怖いけど、遠目に見てる分には、プニプニ達は穏やかな生活をしているみたいだった。

 

 

そんなプニプニ達をやり過ごして……

雛鳥の林を満喫しつつ、採取生活をして……

そろそろお昼……

動き回ってるし、お腹も減ってきた。

 

「お?雛鳥の芋だな……掘り出して……昼飯にしようぜ」

オスカーが言って、2人はプニを警戒する。

雛鳥の芋は、生でも食べられるのが良い所。

新鮮な若い芋なら生で美味しく食べられる……

筈だそうだ。

小さい芋の土を丁寧に払って……

皮を剥いて食べる。

美味しいんだけど時間がかかる……

1つが葡萄よりちょっと大きい程度なので、幾つも幾つも剥かないといけない。

そしてナイフは1本しかない。

「へへへ、オイラが剥いてやるから、モニカとソフィーは食べなよ……」

オスカーは手際よくスルスルと土を払い、さくさくと剥いて行く。

「凄い凄い……オスカー器用……」

ソフィーとモニカは感心する。

「ホルストさんの所へ商品を納める時は、剥いて水に浸けて……って時もあるからなぁ……慣れたもんだよ」

オスカーの調味料も生芋に合うし、3人でお腹いっぱい芋を食べた。

 

 

そして雛鳥の林の探索を続行する。

爆発的によく燃えるという、夕焼け草や、正体不明のタマゴが採れる。

そしてやはり緑プニが強い。

そしてアタックが激しい。

でもHPバリアに少し余裕を持たせて倒せる。

それに倒すと、マナの柱の力が明らかに強くなるのだ。

これは倒せるやつは、倒したくもなる。

 

 

……そして日暮れ……

スーパーよく燃える夕焼け草があるから、火を起こして野営。

正体不明のタマゴを器用に割って、殻を焼いて中身が焼ける。タマゴ焼きが夕食になった。

「熱っ!塩タマゴ最高だね!」

ソフィーもモニカも、元気な笑顔でタマゴを食べる。

オスカーの野営能力が高い。

「私、オスカーを見直したわ。植物と話してる変な人だとばっかり思っていたんだけど……」

タマゴの白身と黄身を器に掬いながら、モニカが言う。

その器も、木で出来た「椀」という、オスカーの手作り品だし、スプーンも「匙」という、木で出来たオスカー手作り品だ。

「オスカーは可愛いし、気前いいし、優しいし……ほっぺたがラブリーだし、声も心地好いし……凄い人なんだから」

ソフィーがオスカーにくっついてフォローする。

「いやまぁ……美味しかったなら調味料作って良かったよ。まだまだ改良して美味しくなるから……期待しててくれよな!」

オスカーはそう言って照れ笑いした。

八百屋でもよく売れる調味料、主力商品でもあるけど、オスカー曰く、「塩を提供してるに過ぎないから、こんなんで満足してちゃダメなんだ」そうだ。

 

 

そして雛鳥の林の探索続行!

……まだ夕方……

青プニと緑プニがころころしてる……

でも少し戦ってから、夜のゴーストに備えてやり過ごす事にした。

 

 

昼のプニプニ戦を繰り返した結果……

マナの柱の力が明らかに強くなっていて、HPバリアも厚くなっている。

攻撃もゴーストに、さくさく通る。

プニプニよりも、ゴースト達はあまり強敵……でも無かった。

おそらく、強くなるスピードが早すぎるのではなかろうか?

なんて3人で話し合ったり。

「なんか、凄い早さで強くなってる気がするわ……」

レイピアを見つめて、モニカは呟く。

更に山師の薬で、HPバリアを回復出来る。

盾みたいになっているオスカーを回復しつつ、ゴースト狩りをする。

そのゴースト狩りでも、マナの柱の力が強くなっていく。

「ガラスの破片が綺麗だね……傷が目立つけど……」

戦利品はガラスの破片。

やたらポロポロ落とす。

 

 

朝までゴースト狩りをして、ソフィーの地面魔法で豚ネズミを取り……

大収穫でキルヘンベルへと帰ると、朝の9時だった。

 

 

「丸っと1日……冒険してたなぁ……さすがに疲れたよ……」

オスカーが笑顔で話す。

モニカの方が、顔に疲れが見えていたりする。

「オスカー、疲れた顔してないよ~♪でも凄く強くなった感じがしたよね!」

ソフィーも笑顔で話す。モニカも頷いてた。

そんな帰り道。そして八百屋前へとやって来た。

 

「んじゃ、錬金術に使えそうなのは、持って帰ってくれよな。納品モノと教会に納めるのは、オイラがやっておくからさ」

ソフィーとモニカはアトリエへ。

オスカーは八百屋へと帰って行く。

豚ネズミ達と雛鳥の芋は、オスカーがホルストさんのカフェと、教会へ納めておいてくれるそうだ。

錬金術に使えそうな材料は、アトリエに持って帰る。

「おかえりなさい。ソフィー」

アトリエに帰ると、プラフタがお出迎えしてくれた。

「ただいま~……まずは洗濯と……おねむだよ……」

ソフィーもモニカも、プニのアタックでべとべとしてる。そこに土や砂埃がこびりついていて、洗濯も戦いとなった。

 

「落ちない……」

髪がべったりしたりして、妙な髪型になっているソフィーが呟く。

「これ、ちょっとどうしていいのか……時間かかるわね」

モニカも悩む。

ハダカ族の2人が、それでもなんとか汚れを落として、ぷにちゃんの所へと行く。

身体の汚れは全部綺麗にしてくれるし、しかもその間寝てていいし。

それでいてぷにちゃんに喜ばれるのだから、使わない手はない。

なので、すっかり寝る場所として定着した。

ついでにモニカの悩み、汗が人より匂う……

というのもあっさり解決してくれて。

ソフィーの悩み、食べられなくて痩せる……

というのも解決したし。

 

 

コンテナの棚に、持って来た材料を並べる。

番人ぷにちゃん達が、そこにやって来る。

材料もピッカピカにしてくれるのだ。

「おお……これはこれは……また大層汚れて……じゅるり。材料は任せて下さい。この中なら、悪くなる事もなく、安心です」

番人ぷにちゃん隊長が、流暢に話す。

この番人ぷにちゃん隊長だけ、ぷにちゃんの人格とは違う。

そんな番人ぷにちゃん達が、このコンテナから直接、錬金釜に材料を送るのだから不思議だ。

しかも品質順、サイズ順、手に入れたのが新しい順とかに並べ替えて釜に映すのだから、選びやすい。

「特性の抽出も、出来ますよ。……良い錬金術を」

恐ろしく便利だ……ぷにちゃんの食事が、この番人ぷにちゃん達の食事でもあるようで、汚れて帰ると、番人ぷにちゃん達も喜ぶ。

ゴミみたいなお土産やダークマターも喜ばれる。

「番人ぷにちゃん、可愛いよぉ……」

ソフィーが番人ぷにちゃんを、つんつんする。

ソフィーからは黒く見える、ソフィーの頭サイズのプニプニには顔が無い。

だけど、ぴょこん、とした手で色んな物に抱きつく姿が可愛い。

「触っても特に邪魔じゃないのかしら?」

モニカから見ると、白く輝く番人ぷにちゃん達。

「触っても平気だよ?」

番人ぷにちゃん達は答える。

一瞬、番人ぷにちゃんの背中に口が出来て、その口が喋る。

「え?大丈夫なのね……」

モニカも番人ぷにちゃんを撫でてみる。

心地好い弾力と冷たさ。肌触りいい。

アジサイの花びらみたいな触り心地。

 

 

ともかく、ぷにちゃんの部屋へと行く。

「えへへ……プニタックルでこんなんなっちゃって……」

ソフィーがそう伝えると、ぷにちゃんは口を開く。舌が2つあった。

「時間膨らませて、寝る?ひくひくっ、てして気持ちよく眠ったら……朝のまんまだよ?」

ぷにちゃんはそう伝える。

……なんとステキな……

「それ……ステキ!」

ソフィーは笑顔で答える。

エロエロする事になるけど、結構、ほんの少しぴくんぴくんすると終わるし。

「寝るなら2人分で……6時間くらい膨らませたら、ゆっくり眠れるんじゃない?そんな激しくハジケるのも、疲れるだろうし……ね?」

ソフィーとモニカは、舌の上に身を任せる。

髪を、耳を……口の中を……

そしてワレメの中に、お尻の穴の中まで……

いつものようにぷにちゃんに揺らされて、ひくひくっとハジケさせられて……

2人は眠った。

 

 

「ふあぁ……」

膨らんだ時間が終わると、少し身体を冷やされて、ぷにちゃんに起こされる。

「モニカもソフィーも、良く眠れた?」

ぷにちゃんは平たくなり、起きたソフィーとモニカは顔を見合わせる。

……お互いに、髪も肌もすっかり綺麗になっている。

「まだ寝たいかも……」

ソフィーは思う。

そしてそれが伝わる。

……でもモニカは違ったから、ぷにちゃんの部屋を出る事にした。

 

 

コンテナに入った時間が11時。

そして出て来た時間も、11時。

……時間が止まる……って……素晴らしいと思う。

「……なるほど。マナの柱とは凄い力の持ち主なのですね……」

スッキリした顔の2人を見て、プラフタは言う。

べたべたで、うっすら疲れの見えていた顔が、ものの数分でスッキリ!

肌ツヤも良くなっているのだから、凄い力としか言いようもない。

「じゃあ、私は教会の方に行ってるわね」

今ひとつ綺麗になりきれなかった、湿った服を着て、モニカはアトリエを出る。

ソフィーもまだ濡れてる服を着て、錬金釜へと向かう。

 

 

「では、錬金術を始めますか?ソフィー」

プラフタがパタパタと近寄る。

「うん。色々と教えてね、師匠!」

そしてプラフタと錬金術をするも、焼き菓子とソティーしか出来ず……

14時には材料が枯渇した。

 

「……ん~……ダークマターなら材料は選ばないんだけどなぁ……」

ソフィーは錬金釜を見つめて、口許に指を置いて呟く。

「……だからダークマターになったのでは……」

プラフタはうっすらと、笑ったような感じでそう言った。

「明日も採取に調合に忙しくなるはず……今日は時間にゆとりが出来ちゃったから……オスカー誘おうかな……」

ソフィーはそう言って、プラフタをちらっと見る。

「オスカー……あの男の子ですね。このアトリエは賑やかですね」

プラフタは、変わらないトーンでそう言う。

「あたしの恋人なんだよ。ラブラブする場所ってこのアトリエしかなくってね……オスカーの家はマルグリットさんが居るから」

ソフィーはそう念を押してみる。

……プラフタをコンテナに入れればいいのかも……

とか思いながら。

「ラブラブ……ですか……そうですね、私は居候の身……本棚にでも収まっているとしましょうか」

プラフタは気を利かせて、そう呟いた。

「ともかく、行ってくるね。プラフタ」

 

 

ソフィーは暇なので、外をふらふらする。

……明日の朝にはまた出掛けたいし……

その時は、巡礼街道へと行こうと企んでる。

広場でモニカと合流して、八百屋でオスカーと合流。

外には行かないけれど、カフェに討伐依頼の報酬を貰いに行く。

 

 

「やっほー☆」

カフェにはテスさんが居た。

ウサギ耳の頭飾り、銀髪美人……

カフェのアイドル、テスさんが復活していた。

「テスさ~ん!」

ソフィーは駆け寄る。小さい頃、木登りとか蛇を捕らえる身のこなし、色々と教わった先輩だ。

「ソフィー!?……凄く可愛くなってるじゃ~ん!なんか可哀想だけど、元気な感じだったのに!」

相変わらずの悪戯小悪魔な笑顔で、テスさんは驚く。

そしてカフェには、お客さんも多かった。

 

テスさん目当ての冒険者とか、見慣れない顔ぶれもあったけれど、皆大人しく食事をしていた。

「えへへ……最近食べる事が楽しくて!」

ソフィーは胸元で指を絡ませる。

「いいねぇ……こんなんなら、ちょっとあたしに付きまとうさ、冒険者が2つ3つあるんだけど、どう?食べてみる?」

テスさんはウィンクして言う。

「ちょっとテス!そういうのけしかけないでよ!ソフィーがその気になっちゃったら、どうするの?」

モニカが慌てて、割って入る。

「まあ……でもあたしにはオスカーという心に決めた人が居るから……」

「あ。はいは~い今、行きますね~」

ソフィーがノロケようとしたら、テスさんはお客さんに呼ばれたみたいで客席へと駆けつける。

……まあ仕事中だし……

 

 

取り敢えずホルストさんの所へ行き、依頼報酬を貰う。ゴーストの消えそうな帽子、プニの体液(青)を渡し、500コールをそれぞれ貰う。

「……こんなにお金になるもんなの?」

モニカとソフィーは驚く。

「ゴーストの帽子が随分沢山ありましたから。オマケに、今は夕食時ですからね……夕食をご馳走しますよ。オスカーからの納品、豚ネズミと雛鳥の芋で美味しい物をお作りしましょう」

ホルストさんは、そう言ってテスさんを呼ぶ。

 

3人は、テスさんに促された席へと座る。

「マスターが喜んでいるんだよ。また街が賑わいを取り戻して来てるからね。あたしも期待しちゃったりしてるんだよね。まあ、今日はしっかり食べて、元気付けてってね」

テスさんは、そう言ってウインクする。

「なんか、こんな所で食事となると、オイラ落ち着かないぜ……」

オスカーが呟く。

「そうなの?まあ、こんなお洒落なイメージ、オスカーにはないけど……」

モニカがお洒落なカフェの色々な所を眺めて話す。

「モニカは、こういう所も似合うよな。あと庭のペンタス、随分と増えてるじゃないか。母ちゃんも、モニカとエルノアさんは、ペンタスが似合うって言ってたぞ」

オスカーは、そう言って笑う。

モニカってば小顔だから、なおさらペンタスが似合う感じある。

「……そんな、なんかお洒落な事言わないでよ。ソフィーも、そうやって口説いたの?」

モニカは少し困ったような顔をして返す。

「ソフィーを口説いた……そんな記憶ないなぁ。ソフィーは口説かれた記憶あるか?」

オスカーは、おとぼけボイスで話して、片眉を上げてソフィーを見る。

 

「はい、まずは紅茶お待たせ~♪」

そんな話をしていると、テスさんが紅茶を持って来た。

「テスさん!あたし、オスカーに口説かれたみたいな話、ありましたっけ?」

ソフィーも記憶になくて、テスさんに聞いてみる。

「うん?あたしに聞かれてもなぁ……」

テスさんは、そう言ってクールに去って行った。

 

……結局、口説かれた話は思い出せなくて、じゃあ……何をキッカケにオスカーと一緒に居るのか……

分からないまんまだ……

 

 

……ホルストさんのカフェの夕食は……

豚ネズミの香草焼きに雛鳥の芋……

それに4枚花を付けて、そして更に香り油のカリカリブレッド………

「はい!豚ネズミの香草焼き!お待ちどぉ~!」

テスさんが豪華な食事を持って来る。

周りのお客さんも、その元気な声にソフィー達を注目する。

「うわぁ~!凄いよ!凄い美味しそうだよぉ~……」

ソフィーがゆらゆらしながら、驚きの表情で豪華な食事を見つめる。

食べると、本当に美味しそうな顔をして食べるのだ。

「……こっちもアレ、豚……ネズミ?のやつ。3つ」

「……あたしもあの子のやつ」

「……こっちも」

周りのお客さんも、豚ネズミの香草焼きを頼む。

ソフィーはそんな事お構い無しで、豪華なご馳走に夢中だ。

「……なるほど……ホルストさん、やるなぁ……」

オスカーが呟いた。

ソフィーの食べる時の顔の幸せそうな事……

これもマナの柱の力なのか……

そんなカフェの夕食、3人はゆっくりと食べた。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[エロエロ]
ハダカでイヤらしい絡みをする事。

[ハダカ族]
ハダカで行動している人。もしくは、ハダカ複数で居る感じ。
お金持ちはハダカ族らしい?

[おヒゲ]
陰毛の事。

[裏酒場]
そこそこ広いキルヘンベル。勿論、スラム的な区域もある。という事で登場。

[自警団のモヒカンの人]
ヒャッハー!する時もあるのだろうか。いい人オーラを纏っている。

[ぷにちゃんの守護の力]
魔物が変質する。マナの柱に近付くと、魔物はその力を変質させる。と、考えれば、近場に強敵が出ない理由になるのかも。

[モグラネズミ]
キルヘンベルの近くの森にて、地面魔法で出てくる。人に有害な病気を幾つも持ってる生き物らしく、食べられない。目が無い。と思ったら、ちょこっと大きい毛穴みたいなのが、目なんだとか。

[ナマズガエル]
ヒゲの立派なイボイボのカエル。食べるとお腹を壊すらしい。

[蜘蛛]
足が8本。

[豚ネズミ]
丸々と太っている地中生活のネズミ。豚という生き物と同じか、それ以上の大きさの豚ネズミも居るらしい。豚肉と、ほぼほぼ似た味なんだとか。モグラネズミよりもおっとりした顔をしていて、目が大きい。とはいえ、身体全体の比率で見れば、目が小さいのだけど。
モグラネズミは病気が怖くて食べられないけれど、豚ネズミは食用として名を馳せている。

[雛鳥の芋]
雛鳥の林で採れる、ブドウみたいな芋。親玉と、無数の子供が繋がっている。新鮮なら生でも食べられる、美味しいおいも。

[トマトピューレ]
太陽の果実の美味しさの瓶詰め。料理が太陽の味になる!

[ゴーストの消えそうな帽子]
ゴーストを倒した事の証明となる。特に使い道は無い模様。

[プニの体液(青)]
青プニを倒した事の証明となる。

[ダークマター]
魔法錬成の成れの果て。薬的な匂いが強烈だったり、腐った匂いがしたり。

[肉食系女子]
何故かコルちゃんに、肉食系女子のイメージが。

[火ブロック]
四角いブロックが2つ。近付けると上のみ熱くなる魔法の品物。

[調理ブロック]
火ブロックがちょうど入る、少し大きめの四角い石。ただの石でもある。

[ウチの荷車]
八百屋配達用の荷車。3号機まであるけど、現役なのも3号機だけらしい。冒険には、2号機を直したやつを使っている。

[番人ぷにちゃん]
コンテナに住む、ソフィーの頭サイズのぷにちゃん。

[番人ぷにちゃん隊長]
コンテナに住む、ソフィーの頭サイズのぷにちゃん。声が違う。

[膨らんだ時間]
止まった時間。

[タマゴ焼き]
殻ごとタマゴを焼いたもの。でかい。

[椀]
木製。木をくりぬいて作ったそうだ。

[匙]
木製。木をくりぬいて作ったそうだ。

[オスカーの調味料]
塩と何かしらの干物の混合。美味しい。

[モニカの悩み]
汗が匂う。

[ソフィーの悩み]
痩せまくる。

[ペンタス]
可愛い花。

[エルノアさん]
可愛いおばさん。モニカと同じくらいの背の高さ。

[4枚花]
花びらが4枚の、香りの強い花。

[香り油]
謎の甘い香り。木の香りなんだとか。

[カリカリブレッド]
カリカリに焼かれた香ばしさ満点のパン。お洒落で美味しい!



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錬金術のアトリエ 6

錬金術のアトリエ 6

 

カフェでの夕食が終わり、3人はカフェを出る。

カフェを出てすぐに見える八百屋さんでは、マルグリットさんと、教会の子供が店じまいをしていた。

「母ちゃん、今日はソフィーの所、行って来るな」

3人は、マルグリットさんの所へと行く。

そしてオスカーが、そう声を掛けた。

「お盛んだねぇ……まぁ、若いウチはそうでなきゃ……でもソフィーちゃんは、まだ生理来ないのかい?」

マルグリットさんは、心配そうな顔をする。

「まあ……何ででしょうかね?」

ソフィーは苦笑いしながら答える。

……ぷにちゃんに聞いても解らなかったし……

 

「でもね、アタシも少し安心してるんだよ。ソフィーちゃんは痩せてて、頼りなかったからねぇ。元気そうではあったからさ、余計なお世話なんだけどね」

マルグリットさんは、そう言って笑う。

今や過ぎた事……今のソフィーはふっくらとしてる。

「あたしも、痩せてるのは気に病んでましたけど、とにかくあの頃は、身体が食べる事を求めてなかったんですよね……今は結構食いしんぼうですよ!」

ソフィーは、獲物を襲う獣のポーズをする。

「はははっ……とにかくウチの馬鹿息子を宜しくお願いするよ。こんな太鼓腹がいいなんて、珍しいからね」

マルグリットさんはそう言って、店じまいの続きを始める。

 

 

そして八百屋を離れ……

モニカと別れて、アトリエに帰る。

「おかえりなさい。ソフィー……さっきコルネリアがコンテナに入って行きましたよ」

プラフタはそう言って出迎えた。暖炉の所に、コルちゃんの服と、V字のおパンツと、おっぱいに巻く布が干してあった。

「そっか……オスカー……ちょっと外で待っててね」

ソフィーはオスカーに言う。

アトリエに男の子が居ると、コンテナが開かなくなるのだ。

 

「お、おう……」

ソフィーはコンテナの中に、そしてぷにちゃんの部屋へ入る。

コルちゃんは既に、ぷにちゃんの中で眠っていた。

「……来客かな……」

ぷにちゃんが、そう伝える。

「ぷにちゃん、男の子が居るとコンテナが閉まるけど……その状態って分かるものなの?」

ソフィーが聞く。

「……勿論……そうか……コルネリアが起きた時……オスカーがまだ居るなら……そう伝えよう」

ぷにちゃんはソフィーの気持ちが伝わる分、話が早い。

コルちゃんも明日の朝イチは、特に何も予定はないみたいだった。

「えへへ……よろしくね」

 

 

ソフィーはぷにちゃんの部屋を出て、アトリエに戻ると、オスカーを招き入れる。

「オスカー、お待たせ」

オスカーは井戸の水を汲んでた。

コルちゃんが増やしてくれたおかげで、井戸水用の桶もキルヘンベル中に、井戸1つにつき、たくさんあったりする。

 

「おう。でもなんか、オイラは邪魔的な感じになってきたなぁ……」

オスカーは呟きながら、アトリエに入り直す。

「ぷにちゃんが、男の子を寄せ付けないからね。消えてしまわないように、そういう不思議な鍵になってるみたい」

ソフィーは干してある竿をどかして、暖炉前で服を脱ぐ。

プラフタは本棚に収まっているみたいだ……

「しかし、コル助の下着、際どいんだな」

コルちゃんのV字おパンツを見て、オスカーが呟いた。

ソフィーとモニカは短パン的なパンツだけど、コルちゃんは服のスリットに合わせて、このV字のおパンツなのだとか。

「も~…コルちゃんのおパンツなんて、見つめてないでよ~」

ソフィーは甘えた声を出す。

「いやな、母ちゃんの下着もV字でさ、それのちっこい奴だから……妹とか居たら、こんなんかなって思ったんだよ」

オスカーはソフィーを見て、またコルちゃんの下着を見る。

言われてみれば、マルグリットさんもスリットの深い服を着ている。

 

ソフィーとオスカーは、暖炉の前で身体を洗い合う。

ソフィーはオスカーの広い背中を流したり……

「今日もギンギンじゃない。……なんか苦しそう」

オスカーの後ろ頭に、ソフィーが呟く。

「ソフィーの匂がさ……マナの柱が現れてからだよな、ソフィーの裸を前にすると匂いがして……堪らなくなる」

オスカーは自分のちんちんを指で左右に揺らした。

ほんの少しだけ揺れて、固そうな感じ。

「身体を洗ったら……ね?」

ソフィーはそう言って、オスカーのほっぺたに頬を寄せた。

その夜は控えめ?に抱き合って、ハジケて眠った。

 

 

……朝、オスカーは3時くらいに起き出して、ソフィーも起きる。

昨日寝るの早かったから……

そのくらいに起きた。

「今日は巡礼街道に行くんだろ?また調味料とか準備しないとだな。あそこは川も近いからさ、魚が釣れるかもだしな!」

早いウチに、オスカーはアトリエを出る。

 

「ふう……結構な大声でしたね……」

オスカーがアトリエを出ると、プラフタが本棚から出てきた。

「えへへ……やっぱギンギンなんだもん。ハジケちゃうよねぇ……」

裸のままのソフィーは、乱れたままの頭を掻く。

「服は着ないのですか?」

プラフタは、呆れた声でソフィーに言う。

「うん。ぷにちゃんに綺麗にしてもらってから、服を着るよ。ちょっと行ってくるね」

ソフィーは、ぷにちゃんの部屋へと行く。

 

 

そして数分で綺麗になって、コルちゃんとアトリエに戻り、それぞれの服を着る。

「オスカーがね、マルグリットさんの下着と、コルちゃんの下着が似てるって言ってたよ?」

ソフィーがそう言うと、コルちゃんはソフィーから目を逸らして俯いた。

「オ、オスカーさんに見られて……しまったのです?ひょっとしたら私……お嫁に行けないかも……知れないです」

……落ち込んでる!?

あんなに堂々と干しといて……

落ち込んでるの!?……ソフィーは少し慌てる。

「あ、そんな気にしなくても……ね?」

慌てるソフィーを横目に見ると、コルちゃんは背筋を伸ばして、ネコみたいな笑顔になった。

「冗談です。マルグリットさんもスリットの深い服ですので……同じ下着になるだけです」

そしてそのスリットの深い服を着る。

「もー……冗談なの~……?」

なんかおかしいとは思ったけれど、コルちゃんの演技に引っ掛かったソフィーは言う。

分かりにくい冗談だし……

「お嫁に行くまで、下着を見られてはいけない……なんて宗派ではないですから」

ハスキー眠くなるボイスも心なしか元気で、コルちゃんは髪を纏める。

ネコミミシルエットになるような、器用な纏め方。

「宗派……?」

そんな話をしていたら、側でパタパタしていたプラフタが光り輝いた。

「お……おおぅ!?」

光るプラフタに、コルちゃんも驚く。

「ど……どうしたのプラフタ!?」

ソフィーが心配する。

「……1つ……記憶が戻りました」

プラフタは、いつもの落ち着いた感じで、事も無げにそう言った。

「記憶が戻ると……光り輝くの?」

ソフィーは言う。プラフタはパタパタと浮いてる。

「……そのようです」

 

 

そしてプラフタはフラムのレシピ、新しい採取地を思い出した。

ついでに、プラフタの装丁はアウレ牛の革を使っているそうだ。

かなり高級品……なのか……

「アウレ牛……聞いた事ない牛ですが……牛は……お肉の王様と言われています……憧れの響きです……」

コルちゃんは話を聞いて、そう呟いた。

 

 

とにもかくにも……朝4時……

巡礼街道へと出掛ける為、ソフィーはアトリエを出る。

コルちゃんは今日も、お店の為に色々とやることがあるみたいで、別れた。

モニカの家の前、モニカが居たので合流する。

「昨日は、無事イチャイチャ出来たの?」

メガネをくいっ、としながらモニカは言う。

もう1年以上もソフィーとモニカ、コルちゃんはハダカ族でエロエロしてる訳だし、抵抗も薄れたみたいで。

「うん。控え目にね~……」

ソフィーはそう答える。

「私も、なんとなくそんな事をする殿方が欲しいかな、なんて思うようになりました。きっとこれは、ソフィーさんのせいです」

コルちゃんが、そんな話をする。

「私も、ソフィーの影響あるなぁ……なんかそういうラブラブとかイチャイチャとか憧れるものねぇ……」

モニカも相槌を打つ。

3人で絡み合う日々の中で、モニカの意識も随分と変わった。

もういっそ堂々とハダカ族の方が、みっともなくないな、と……

「あ!モニカ、オスカーに色目を使ったらダメなんだからね!」

ソフィーはそう言って、モニカに抱き付く。

「使うかそんなん!アイツとはウマが合わないって言ってるじゃない!」

モニカはソフィーの頭を捕まえてもがく。

「オスカーさんも、モニカさんが苦手っぽいですよね」

コルちゃんがそう話す。

「え?そうなの?」

モニカに捕まれてるソフィーが、コルちゃんを見る。

「なんでソフィーはそこに気付かないのよ」

モニカはソフィーの頭を揺さぶる。

「あうあう……でも、オスカーはモニカの事、カッコいいって言ってたもん」

ソフィーはそう話す。そんな広場への道。

 

 

……広場に、パメラと子供達が居た。

子供達の世話が大変そうだ。

「もー!いたずらっ子ばっかりなんだから~……」

パメラが子供達を追いかけて……

地面まで届く、ごっついスカートなので、走っているのか、ホバー移動してるのか……

 

そんなパメラを尻目にストリートへ行くと……

黒いレザーのスマートな佇まい。

かなり前に旅に出て行ったイケメン、ロジーさんが居た。

「おおソフィー。久しぶりだな……ソフィー……だよな?」

どこか優しい声……

そして懐かしい声で、ロジーさんがそう挨拶した。

やはり痩せていたイメージが強くて驚くようだ。

そしてソフィーのほっぺたを、むにむにする。

「ソフィーですよ!食べる事がしんどくなくなったので、ふっくらしました!ところで……最近、全然見なかったけれど、どうしたんですか?」

ソフィーはそう言って笑う。

「ふっくらして、見違えたな……俺は修行の旅に出ていたんだ。ある程度技術を習得したからな……これからはこのキルヘンベルで……まあ、今はどこを店としようか……悩んでいるんだ」

そう言って、足早に教会広場の方へと行ってしまった。

お店を開くらしいけど……

……何の修行?何のお店?

 

ともかく、ストリートはホルストさんのカフェ、八百屋へと向かう。

そして八百屋前で、オスカーが荷車のメンテナンスに精を出していた。

「オスカー!」

ソフィーが駆け寄り、ジャンプ体当たりする。

モニカは、そんなソフィーを眺めて……

本気でラブラブなのよね……と思う。

てっきり八百屋で食べる為の方便なのかと……

疑ったりした事も、あったりしたけれど……

この女、ガチっぽかったけど、ガチなのだ……

 

 

旅に出る前は、カフェに行く。

「ホルストさ~ん。お金無いけど来たよ~」

八百屋、ソフィー用商品棚に並ぶ魅力的な商品を買ってしまい、残金が9コールとなっていた。

モニカは、そんなソフィーを眺めて……

金銭感覚ってどうなってるのかしら……と思う。

でも新鮮なキルヘンミルクをコンテナに入れれば……

ソフィーが死ぬまで新鮮なまま……なのだそうだ。

マナの柱パワーはこんな所にも……

なお、死んだ場合は、マナの柱が全部食べてしまうので、おばあちゃんがコンテナに入れて、残っていた材料は、ソフィーには受け継がれなかった。

何故か、しけったうに爆弾2個は本棚にあったので、受け継がれたのだけど……

 

「連日、出掛けるのですねぇ……ソフィーとモニカはともかく、オスカーはどこか疲れた顔をしているようですが……」

ホルストさんがそう言って、ホットミルクとカリカリトーストをサービスしてくれた。

「そうかい?」

ソフィーはオスカーを見る。

……疲れた感じはしない……

「あ、お金あるから払いますよ?」

モニカが言うと、ホルストさんは首を横に振った。

「依頼の為に、ここへ立ち寄るように勧めたのは私ですからね。それに依頼をこなして頂ければ、私にも実入りはあるのです。これからもモーニングサービスくらい、させて下さい」

カウンター席で、3人はホットミルクにカリカリトーストを食べる。

……依頼報酬も貰えるし、感謝もされるなんて……

ステキだなぁ……

と、ソフィーは目を輝かせた。

「青プニと緑プニなら良く見るし……頑張ります!」

青プニと緑プニの討伐依頼を受けて、いざ出撃する。

巡礼街道だと、魔法の蔦と呼ばれる草もあるらしく、オスカーとモニカはその依頼を。

ソフィーは、ソティーと素朴な焼き菓子に買い手があるみたいで、それを追加で。

ホルストさんはニコニコして3人を送り出した。

 

 

「あ!なんか落ちてる」

巡礼街道に行く途中、袋に入ったお金が落ちていた。

「行商の人の落とし物かな?まあ、貰っておこうよ。……うわ結構入ってるなぁ……」

山分けしたら、それぞれ500コールも手に入った。

「凄いラッキーじゃーん!」

ソフィーは大喜びだ。

「そうやって浮かれて……あなたが落とさないようにね」

モニカが冷静にそう言った。

「あはは、あたしみたいな人が落としたんだよね。きっと」

ソフィーは財布を握りしめた。

 

 

巡礼街道に着く。早速行商人と出会った。

「お昼にどうだい?この近くの川で取れた奴だけどね」

商人のオジサンは笑う。そして商品を並べて見せた。

オスカーがカワナマズと、ハットチェットと呼ばれる、四角いナイフを買ってた。500コール払ってた。

モニカも鮮やかな黄色いリボンを買って、ソフィーはしおれた人参が錬金術に使えそうで、買いそうになったけど、オスカーに止められた。

「珍しい形ってだけでただの土いもだよ。それが500コールなんて……インチキ品を巧く混ぜてるぜ」

「へへへ……まいど」

そして商人のオジサンと別れる。

 

 

お昼のカワナマズも確保できたし、採取品を探す。

荷車に、たちまち魔法の蔦が増えて行く。これは錬金術には使えないのだけど。

「この蔦って何に使うの?」

ソフィーがオスカーに聞く。

「丈夫なロープになるんだよ。あと家の回りに植えると補強材としても、いいらしいぜ?」

オスカーが答える。需要あるから依頼品な訳で。

錬金術材料としては、コバルト草、カーエン石、魔法の草が採れる。

敵は青プニばっかりで、緑プニは出て来なかった。

「緑プニって、ここには居ないのかしらね。雛鳥の林の方が、魔物は強かったわ……」

少し物足りなさそうに、モニカが呟く。

「まあ……ここは一応、街道だからなぁ……」

オスカーがそう答えた。

 

 

そんなこんなでお昼になり、3人は川へ。

冒険者3人組と挨拶した。それに教会の騎士の人も釣りをしていた。

……釣りが趣味だから、非番の時はこうして魚釣りをしているらしい。

「さて、釣れるかどうか分からないカワナマズが買えたって事で………捌くぞ~!」

オスカーが荷車を横にして、中身を地面に置く。

「どうすればいいかしら?」

モニカが尋ねる。

「じゃあ、まずは鍋に水を汲んで来ておくれよ。ソフィーと2人でさ」

オスカーは答える。

モニカとソフィーで水を汲んで、荷車の横にかけ流す。

オスカーは魔法の蔦で擦り、洗う。

荷車の横……

あおり部分をまな板にして、オスカーはカワナマズを捌く。

その捌く時にも水をかけて洗い、そこらへんの石でかまどを作ると、鍋で煮る。

「凄い!オスカー魚も扱えるんだね!」

ソフィーは目を輝かせて鍋を覗く。

豚ネズミを捌くのも、蛇や蛙を捌くのも早いし、丁寧。

そこで活躍するオスカーの愛用ナイフを見つめる。

「キルヘンベルの街にも川はあるし、カワナマズが釣れる事もあるからな。あまり魚は好まれないから商売にはならないけど、カワナマズは旨いんだぜ?」

ここでもオスカーの調味料が活躍して、美味しい昼食になった。そして採取に戻る。

 

 

「しかし……空き家多いわよね……ここ」

モニカが辺りを眺めて呟く。少し風の音が聞こえる、そんな巡礼街道。

青プニも、どこへ行くのか……

風に吹かれているのか、ころころと転がって行く。そんな景色。

「プニがやたらころころしてるもんね。昔は居なかったのかな?」

ソフィーも呟く。緑プニは居ない。

魔法の草、魔法の蔦、コバルト草、そしてカーエン石で荷車を満たして行く。

 

……なんだか、のんびりとした時間が流れて、草地で寝転がって休憩とかした。

「夕方ねぇ……ここ、住んでもいいかも。なんか心地好い風が……好きだなぁ……」

のんびりした風に吹かれて、ソフィーは呟く。

「錬金術、出来ないんじゃないか?」

ソフィーの隣に寝転ぶオスカーが言う。

「ん~……もし錬金術の出来ないあたしだったら~……こんなのんびりした所で~……って思ったんだよねぇ~」

ソフィーは目を閉じて、そう話す。

「まあ、のんびりした人生を……って考えちゃう事はあるわね。ソフィーも、そう思う事があるのね。いつもバタバタしてるのが好きなのに」

そんな2人を見て、女の子座りのモニカが言う。

 

 

そんなのどかな時間を過ごして夕方になり、茹でた青プニを食べる。

加熱しないと、どろどろしてる死んだプニも、加熱すると、ぷにぷにしてる。

「青プニ……美味しい……」

ソフィーが匙を口に目を輝かせる。

爽やかな甘さ……

いくらでも食べられそうな、素敵ゼリーだ。

「まさかこんな美味しいなんて思わなかったわ。オスカー、何で知ってるの?」

モニカもお椀を手に、オスカーを見る。

「本屋にあったんだよな。ただ、本では青プニも緑プニも珍しい生き物、とあるんだけど、見る限り、そんな事はないみたいだよな」

オスカーはそこら辺でころころしてたり、ぽよんぽよんしてる青プニを眺めて話す。

 

 

更に、採取したり戦闘したり……

ほのぼのしたり……

そんなのどかな時間を過ごして夜になった。

「街の近くなのに……あ。プニも星空を見てる」

ソフィーが妙な青プニを見つける。青プニも、テンパった顔で襲ってくるのと、平常心で襲って来ないのが居る。

「本当。なんか可愛いわね。話せたら友達になれたりしないのかしら」

モニカも、星空を見上げる2つ並んだ青プニを見る。

青プニはこちらに気付くと、2つ揃ってどこかに行った。

 

 

そんな中、やっと出てきた緑プニと、いつもの青プニを倒したら、新しい魔法を覚えた。

ソフィーがオーラフィールド、モニカがブレイブハート、オスカーが大回転シャベルを覚えた。

「こういうのって、なんか涌き出てくるみたいに覚えるのね……私のこう、周辺を熱くさせて鼓舞するみたいな……」

モニカがレイピアを眺めて呟く。

「なんか不思議だよなぁ……オイラも回る風にスコップを乗せるイメージが湧いてきたんだよな」

オスカーも少し回りながら呟く。

ソフィーも同じように、突如として魔法のカタチが閃いた。

 

そして眩しい星空の夜……のどかな景色、癒し系の魔物……

心地好い風……

巡礼街道で過ごす、夜の時間……

「こういう旅、したかったんだよねぇ……」

夜空を眺めて、オスカーに寄りかかって座るソフィーがしみじみと呟く。

「そうねぇ、まさかこんな近場で叶うとは思わなかったけどね」

モニカも微笑む。

「夜空ってのが新鮮だよなぁ……いつも明るい時間に忙しくて、夜は寝てるもんな」

オスカーも、そう話す。

 

 

そして……朝になった。

今度こそ釣りをしようと、3人は川へと行く。

「釣りをするのはいいけど……釣り竿ないじゃない」

モニカは荷車を見る。

釣り道具……は小瓶だけだ。

「へへへ……ソフィーもモニカも驚くぜ?この瓶の粉を魔法の蔦に振りかけて……」

オスカーは魔法の蔦を川の中へ。

ここから4、5時間待たないといけないらしく、魔法の蔦はほったらかしで、朝食に使えそうなモノを探す。

 

「むむ!これは土いも!」

ソフィーが見つけて杖を向けて、オスカーに言う。

「ん~……ちょっとおじいさんだなァ……これは掘って食べるモンじゃないな」

オスカーが首を横に振る。

それからも探して、オスカー好みの芋にロックオンした。

……なんか赤い、見た事ない株だ……

それが沢山生えてる一角を見つけた。

 

「これは珍しいな!こいつが食べ頃だな……」

そしてオスカーが、人参みたいな土いもを掘り出して、それを銀いもの皮を使って焼いて……

「なんか、食べ物にウキウキしちゃうわね……買って食べるのとは全然違うものね」

焚き火に乗せた網台の上の、歴戦の銀いもの皮に包まれた赤い土いも……

それを眺めてモニカが言う。

「そうだね~……なんか教会で食べた夕食を思い出すけど3人だから……抜け駆けして食べるみたいな気分になるよ」

ソフィーも笑顔で話す。

朝の少し涼しい風が吹く川辺の草地。

楽しい採取生活……

 

「甘いのね!」

いざ食べると、いつもの土いもよりも甘さが凄く強くて、モニカの目も輝く。

「本当だ!もうほくほくな香りが甘いもん!」

ソフィーも鼻を膨らませて喜ぶ。

「紅いもよりは甘くないけど、この辺りじゃ珍しいし、いやぁ……元気な味だよなァ」

オスカーも、そんなほくほくタイムに舌鼓を打つ。

 

 

「……ん~……掛かってないなぁ……」

ほくほくタイムも終えて、採取と休憩で過ごし、お昼。仕掛けた魔法の蔦を見て、オスカーは呟く。

ソフィーとモニカには、良く分からない。

もうしばらく採取と休憩……

15時……これで取れてなかったら諦める予定で、また仕掛けた魔法の蔦の所へ行く。

「来てる来てる!」

魔法の蔦を引っ張り上げると、無数の小さなカニが居た。

赤い甲羅が綺麗なカニ達だ。

そのまま荷車に乗せて帰る事になった。

「これ……逃げないのね……」

帰り道……

モニカは荷車の中、集団で魔法の蔓にしがみつくカニ達を見て呟く。

「こんがり焼いたら全部食べられるんだよな。母ちゃんの好物でもあるから……でもこいつらはホルストさんに頼むかなぁ……」

 

 

そうこう話してキルヘンベルへの道……

そしてキルヘンベルに着いたら夕方だった。

随分と長い旅になったものだ。

ソフィーとモニカはアトリエに。オスカーは八百屋で別れた。

「おかえりなさい。ソフィー」

帰るとプラフタが出迎える。

昨日もコルちゃんが来て、ぷにちゃんの部屋で寝て行ったらしい。

錬金術品用の四角ガラスやソティー用のカップ、丸フラスコなんかを、コンテナの中にしこたま追加していったみたいだ。

「調合すると、自動的に入れ物に入ってるのは……番人ぷにちゃんとコルちゃんのおかげなんだねぇ……」

ソフィーはしみじみ言う。

「恵まれた環境で錬金術が出来る……良い事ですね」

プラフタもしみじみ返す。

 

 

まずは洗濯……

ソフィーとモニカは服を脱いで、暖炉の前で洗う。

青プニタックルのべたべたに、汗と土の汚れ……

強敵との戦いが始まる。

「なんか、すっかりハダカ族だねぇ……」

ハダカ族ソフィーが笑う。同じくハダカ族のモニカも苦笑いした時、アトリエのドアをノックされた。

「ええええ!?今はちょっと……ヤバいよモニカ代わりに出て!」

「私も着てないわよ!ど、どうしよう……!?」

慌てる2人。身体も汚れてるし……

「来てるのはコルネリアですが……どうしますか?」

窓に行ったプラフタが伝える。

「コルちゃんかぁ……なんだぁ……」

ソフィーとモニカは、安堵のため息をついた。

いたずらっ子な笑みを浮かべて、コルちゃんが入って来る。

「おかえりなさい。ソフィーさん、モニカさん」

心なしか上機嫌ハスキー眠くなるボイスで、コルちゃんは挨拶しながら服を脱いで、洗濯に混ざる。

「考えたらこの時間、コルちゃんだわ……」

服を洗いながら、モニカがため息がちに言う。

「服がべたべたです……外はやっぱり危険な所です?」

コルちゃんもハダカ族になって、自分の服は後回しに、モニカの服の洗うのを手伝う。

「そうでもないわ。楽しめる所よね?ソフィー」

「そうだね。オスカーが凄いんだよ。魚も捌いてね、美味しく食べられるようにしてくれるんだよ」

外の話をしながら、裸の3人は服を洗い、暖炉の前に干す。

そしてぷにちゃんの所へ行く。

 

 

「……おお……待っていたぞ……ゆっくりと休むといい……ところで……時間はどうする?……膨らますのか?」

ぷにちゃんは口を開き、3つの舌を見せる。

そして、そう尋ねた。

「……時間を膨らませると、起きても夕方……って事よね……でも寝ちゃったから夜に寝れない……って事よね……」

モニカは思う。

「時間トクするです……膨らませたいです……早くお店を出して……バーニィさんが子供達を派遣してくれるらしいので……私もソフィーさんとモニカさんと……旅に行きたいです……」

コルちゃんはそう伝える。

お店も出したいし、旅にも行きたい……

時間を膨らますと、それだけ早くお店が出せるし……

そのお店に教会の子供達を定着させて……

そうしてから旅にも行きたい……

そんなコルちゃんの野望が伝わって来た。

「あたしも、起きたらプラフタと錬金術したいかなぁ……プラフタを待たせてばっかりだから……時間が止まった方が都合いいなぁ……」

ソフィーも時間トクした方がいい派だった。

 

 

「ふあぁっ……んはぁっ……んんんっ!」

凄く気持ち良さそうに、コルちゃんはハジケる。

すっかりハジケ慣れて、素直に背伸びしながら身体を震わせる。

「エロいの好きになった?」

コルちゃんの中のソフィーが、優しい笑顔でそう話しかける。

首から肩を撫でる、てのひらの感触。

ぷにちゃんの送るそうした感覚は、本当に良く出来てる。

「はい……はぁ……でも今は……だめです……」

「大丈夫だよ……あとは一緒に眠るだけだから……」

ソフィーと抱き合う感覚。ぷにちゃんの中の幻。

だけど安心出来て瞼が重くなる。

……そうして眠りに落ちていく。

 

 

「もうっ!……あっ!あっ!あんっ!……それずるいぃっ!」

モニカも身体を震わせながら、少し暴れる。

タメてからハジケるようで、ハジケると大人しくなる。

ぷにちゃんも、今回は年寄りの男の人格みたいだけれど、そうした事は心得ており、しっかりと獲物をしゃぶる。

……恥と思っていたこうした事も、生まれつき備わっているモノ。

恥と思ったのはモニカの勝手な価値観で、ソフィーもコルちゃんも、その価値観は薄い。

ぷにちゃんに至っては、そんな価値観を持ち合わせてもいない。

大人しくなった後も、心地好いマッサージをされる。

モニカの抱えていた、わだかまりみたいなのを溶かして行くような……

なんか、そんな自分にも納得出来て、素直に眠る。

 

 

「んっ!……あんっ!……はあぁぁ……んんっ!」

ソフィーは弱いトコをぷにぷにされて、素直にハジケる。

うっとりとして、余韻をもう少し責められて強くハジケて、ばたんきゅ~で眠る。

……そうして、ぷにちゃんは3人を美味しく頂き、時間が膨らみ、その後で温めて……

眠らせるマッサージと、身体の表面を美味しく頂き、3人は眠りに落ちる。

 

 

膨らんだ時間……8時間程が経過し、3人は起きる。

「おはよ~……なんかぷにちゃんにお任せで眠ると、凄く元気になるね~……」

ソフィーが呑気にそう言って、起き出す。

髪も毛先はぷにちゃんが頂き、整っている。

爪も、伸びた分だけ頂いているそうで。

「そうよね。寝心地がいいのよ……」

モニカも起き出して、ソフィーとコルちゃんを見る。

ぷにちゃんが平たくなるので、起きる時にはお互いが見れる。

「寝心地……最高です……」

コルちゃんも絶賛だ。そして3人はコンテナを出る。

コルちゃんもモニカも、それぞれに帰る。

 

 

「……早いですね。入って数分で出てくるなんて……」

プラフタが、パタパタとやって来る。

……これ、明日も旅に出れるくらい元気だけど……さすがにオスカーはどうなのだろうか?とも思う。

慈愛の力は……あまり休まってる感じはしないし……

「うん。……時間を膨らませて、寝たからね。たっぷり寝たのに数分……というぷにちゃんの不思議な力だよ。さて、錬金術やるよ~!」

ソフィーは髪に指を通しながら言う。

するする通る時は、そういう仕草も気持ちいい。

「さて、何を作りましょうか?」

プラフタもパタパタする。そして錬金術生活!

 

 

だけど中和剤?が無いのでフラム作れず。

動物素材が無いので山師の薬1個で終了。

うにが少なくてうに袋、素朴な焼き菓子も断念。

ソティーだけは……

あり余る夕焼け草で作れるので作る。

 

とにかく、まずは場数を踏むのだ。

夕焼け草を滅ぼした所で朝になった。

図鑑の閃きエリアを見ると、ゼッテルが現れていた。

ひとつの紙の製法なので、本屋に行くと、閃けそうだ。

 

 

朝だし、アトリエを出て本屋へと行く。

途中にモニカと合流して、本屋の前でオスカーが居た。

「あらオスカーじゃない」

モニカが驚く。

「おお、モニカ。ソフィーも。本屋なんて珍しいんじゃないか?」

オスカーは、いつものトーンで言う。

あんまり疲れては居ない、みたいな感じだった。

「ちょっと錬金術でね、紙の作り方を調べに来たんだよ」

ソフィーはそう話す。

「ふーん……今日はどんな予定なんだい?錬金術してるのかい?」

オスカーはそう尋ねた。

「本屋でちょこっと調べたらさ、カフェ行こうよ。依頼報酬を貰ったら、なんか思いつくかも!」

ソフィーはオスカーとモニカに言う。

「そこで、どうするか決める……でいいか。オイラの荷車も、準備はバッチリだぜ」

オスカーは乗り気で、モニカも頷いた。

 

 

「エリーゼお姉ちゃ~ん……」

ソフィーは姿勢を低くしてしゃがみ歩き、本屋に入る。

モニカとオスカーは、ソフィーに止められて本屋の外で待っている。

「たまに来たと思ったらどういうアプローチよ~……」

黒髪ロングヘア、黒縁メガネのエリーゼお姉ちゃんは苦笑いした。

「ソフィー……なんかしばらく見なかったけど、随分美人になったんじゃない!?」

でもふっくらしたソフィーに気付くと、両手で顔を捕まえた。

「えへへ……なんか皆に驚かれてるんだよね……」

その後で3人で本を探し、ゼッテルの製法を見つけたのでメモする。

 

 

そしてまたカフェから旅に……

と企んでストリートへ行くと、ロジーさんの鍛冶屋がオープンしてた。

「ロジーさんが鍛冶屋を始めたんだよな。前々から鍛冶屋になりたいって言って、修行の旅とか行ってたんだぜ?」

オスカーはそう説明した。

早速、入ってみることにする。

 

「お?ソフィーにオスカー……モニカか!」

鍛冶屋ロジックスに入ると、ロジーさんとコルちゃんが居た。

「あれ?コルちゃんも鍛冶屋さんに用事なの?」

ソフィーは驚く。

「金属加工品は、やはり鍛冶屋さんですし……それに何かしら増やせる物で、お役に立てる事があるかも知れませんから……私のお店はまだ開けて居ませんが、顔を繋いでいたのです」

コルちゃんは袖で口許を隠して、そう言った。

「顔を繋ぐ……なんか一端の商人みたいな言い回しだな……」

ロジーさんが苦笑いする。

「でも、ロジーさんが鍛冶屋さんだったなんて、知らなかったなぁ……」

ソフィーが呟く。

「え……?俺が鍛冶屋って……知らなかったのか……どれだけ俺に興味無かったんだ……」

ロジーさんは頭を押さえた。

 

「これ、売ってるの?鉱石は錬金術の世界を広げてくれそうだから……買います!」

ソフィーは陳列されていた鉱石が安かった……

というか、手持ちのお金で全て買えるので、全て選んだ。

拾った500コールが44コールになった。

「ま……まいど」

ロジーさんは戸惑いながら、ソフィーからお金を受け取る。

そんな寄り道をして、3人はカフェへと行く。

 

 

「ちょっと遅い時間ですが、トーストは食べられますか?」

ホルストさんが、にこやかにそう聞いて、3人にモーニングセットを出す。

「ロジーさんが鍛冶屋を開いていたよ。オイラもスコップとか新調しようかなぁ……」

そんな世間話から始まり、3人はホットミルクとジャムトーストを食べる。

そして噂や依頼を受ける。

 

 

「巡礼街道で巨大な魔法の草を採取……その後でゴースト討伐に、まだ1匹しか倒せていない緑プニ討伐を追加……なんか忙しいスケジュールねえ……」

キルヘンベルを出る3人。

モニカがメモを見て呟く。

「これ終わったら……2日くらいゆっくりしようよ。ちょっとはりきり過ぎてるよね?」

ソフィーが言う。特にオスカーを酷使してる感じするし……

「今回は歩け歩けになるから、疲れるかもなぁ……ゆっくりするのもいいかもな」

オスカーはおとぼけボイスで、そう答えた。

 

だけどめっちゃ元気に、道中は植物観察と挨拶回りをしている。

「なんか……元気なのよねぇ……」

モニカが、その姿を眺めて呟く。

「あはは!オスカーらしくて安心するよ~」

空の荷車を引きながら、ソフィーが笑う。

一応、野営道具箱だけ入っている。

 

 

「でかっ!!」

巡礼街道で、噂の魔法の草を採取する。

本当にでかい。

ソフィーとモニカはそんな、巨大な魔法の草の群れを見て驚きの声を上げる。

「これ、凄いなあ……オイラも初めて見るサイズだよ……こんな立派になるんだな……」

オスカーも驚く。

昼過ぎの野営は、この魔法の草の煮物とした。

味はともかく、元気になれる食事だ。

 

 

そこから、雛鳥の林へと移動。

キルヘンベルを通過する。

そうして歩くと時間も経ち、日も傾いてくる。

「お!遠くに街が見えてきたな……確かこの辺りに……」

街から、ほど離れた場所。

その辺りには4枚花、と呼ばれる花が咲いている場所があり、その花びらが香り高く、ホルストさんのお店で常用されているのだと言う。

夕飯は4枚花の花びらと、土いもを焼いたやつになった。

「この香り……昔食べた事あるかも……」

モニカは花びらを乗せて食べる、焼いた芋を食べて呟く。

「あたしも……この爽やかな香り……」

ソフィーも鼻を膨らませる。

ホルストさんのお店のやつよりも新鮮な分、涼しげな香りが、強い。

「以前、土いもをいかに美味しく……なんて工夫してたからなぁ……母ちゃんが行商人から安く買った花びらが、コイツだったんだよな」

ちょっと昔を思い出す……そんな野営の食事……

 

 

そして、雛鳥の林へと歩く。

夜に到着して、ゴースト退治をする。

「LPバリアってのは疲れなくなる訳じゃなく、疲れにくくなるんだわ……あと眠くなるのは……防げないのかもね」

ゴーストを何体か倒した時に、モニカが呟く。

朝になったら緑プニも退治しないとだ。

「オイラはそんな眠くもないけどな……」

オスカーは言う。

昔からやたら元気にマイペースだったし、それは今も健在だ。

……という事なのだろう。

「あたしは……どうなんだろ?」

ソフィーも首を傾げる。

今度はそこの所をぷにちゃんに聞いてみようと考えた。

 

 

朝になり、緑プニを数体倒し……

最後にはソフィーの地面魔法で、豚ネズミを獲る。

見事にぞろぞろと出てきて、明るい場所ではヨタヨタしてるものだから、沢山獲れた。

そして……3人はキルヘンベルに帰る。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[V字おパンツ]
セクシーなおぱんつ。横で結ぶ。

[井戸水用の桶]
井戸水を汲む桶。

[短パン的な下着]
シンプルな肌着。腰で縛る。

[カワナマズ]
丸い魚。ヒゲが長くて、目が大きい。

[ハットチェット]
なんか使い込まれた銀の大きめのナイフ。草むらを道にするのに便利なんだって。

[魔法の蔦]
よくある蔓植物。凄く丈夫。

[オスカーの愛用ナイフ]
尖ってるナイフ。よく切れる。

[オスカーの調味料]
キノコの干物の粉と、塩で作っていたり。ふかふか緑の粉を使っていたり。美味しい。

[茹でた青プニ]
温かいけど、爽やかな甘さ。

[歴然の銀いもの皮]
焦げまくって黒い。凄く厚い皮だったみたいで、レアアイテムなんだとか。

[赤い土いも]
ほんのり赤い土いも。普通よりも甘い。

[紅いも]
中身が黄色い。凄く甘い。

[無数の小さな赤いカニ]
こんがり焼いて食べる。マルグリットさんの好物?

[四角いガラス]
[ソティー用のカップ]
[丸フラスコ]
色んな錬金術品の入れ物。コルちゃんが素早く増やせる。番人ぷにちゃんも、ゆっくりと増やしているらしい。

[図鑑の閃きエリア]
うっすらと文字が……

[4枚花]
香りの強い花。お洒落な食事!

[井戸水用の桶]
コルちゃんが増やしてた。

[モーニングサービス]
ホルストさんのサービス。ゲームでは食事が無いので、出てこない。

[カリカリトースト]
平べったい四角いパンが、カリカリに焼かれていて、美味しい。

[魔法の蔦]
そこらじゅうに生えてる蔓植物。でもキルヘンベルの街の中のやつは植えてるやつだから、切るのはNG。生育がいまひとつ遅い。

[丈夫なロープ]
魔法の蔦を干して、更に強度を上げたロープ。

[家の回りの補強材]
魔法の蔦は、根っこも長く伸びる。その根っこが家を守るのだけど、アトリエ付近には生えていないし、植えてもいない。

[釣りをする教会の騎士の人]
非番の過ごし方として、心が癒されるらしい。

[茹でた青プニ]
フルーティー。

[人参みたいな土いも]
土いもの形はさまざま。少し赤いのも、形はさまざま。自由を感じる。

[銀いもの皮]
銀いもの皮は、金属。薄いけど。

[無数の小さなカニ]
カニは平べったくて尻尾が無いんだけど、このカニは尻尾つき。ハサミつき。

[青プニ汚れ]
べたつく。フルーティーな香り。

[バーニィさん]
色々知ってる教会の先生。

[ジャムトースト]
カリカリトーストにジャム付き!

[野営道具箱]
オスカーの野営用品が入っている。歴戦の銀いもの皮とか、金属の網とか。

[元気になれる味]
魔法の草を煮て食べると、あっさりしてる。ほんのり苦い。



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錬金術のアトリエ 7

錬金術のアトリエ 7

 

キルヘンベルに帰り着くと……もうすぐお昼。

そんな時間だった。

 

「正直、あたしも眠くてしょうがない時もあったよぉ……今回、ハードだったよねぇ……」

キルヘンベルに入る小川の橋を渡り、ソフィーが呟く。

「途中、何回か寝ながら歩いてたもんな」

オスカーが片眉を上げて、苦笑いを浮かべる。

 

そんな訳でお腹も減ったけど、プニアタックされたせいで、3人ともプニ汚れべたべた。

カフェに立ち寄る訳にも行かない。

「職人さん達もお昼時かぁ……」

オスカーは、ソフィーとモニカを見る。

髪が服にべったり付いてたりして、頑張って来た感がある。

「モニカさん、目の下のクマが……」

ソフィーはモニカを見る。

眠いけど眠れなくて……

モニカは、目の下のクマが出来やすい人だったみたいだ。

「なんか歩き疲れてさ、街も近付いたものだからって、朝ごはんも抜いちまってるから……腹減ったなぁ……」

オスカーは猫背になる。

「豚ネズミ……食べる?」

ソフィーが荷台を見る。

「イケるか?豚ネズミ……まあでも、カフェ裏広場ならイケなくても職人さん達が食べてくれそうだよな……」

オスカーも豚ネズミを見る。

なんか、この前よりも更にデカいような……

「私は無理……」

疲れた顔のモニカが呟く。

「モニカさん……ちょっと怖いな……」

「モニカさん……ちょっと怖いね……」

ソフィーとオスカーはモニカに背中を向けて、でもやたら近くに寄って囁き合う。

「なんで聞こえるように囁くのよ……」

元気のないツッコミを、モニカは呟いた。

 

「じゃあ、こんなナリだけど、カフェ裏の広場で昼食にするか!そろそろ職人の人とか、自警団の人なんかで賑わう時間だもんな」

オスカーに続いて……カフェ裏の、草が刈られていて丸太が転がってる広場へ行く。

「こんな所あったんだねぇ……」

即席で造ったのか、歪んだテーブルや丸太を割っただけの椅子が、そこかしこに置いてあった。

オスカーは大鍋に水を張り、ソフィーは豚ネズミの調理準備をする。

 

 

お昼になって、職人のおじさんと若いお兄さんがやって来る。

「おや……君たちは……自警団の人かな?プニの群れでも居たのか?」

職人のおじさん、若いお兄さんがソフィー達を見て心配してくれた。

「えへへ、依頼とかもありまして……」

ソフィーがそう答える。

それからも自警団の人達、職人の人達、農家の人達、とカフェの裏は賑わう。

そんな中で、オスカーの捌いた豚ネズミ肉の焼いたのを食べた。

マルグリットさんもホルストさんも顔を出して来た。

お昼は、ここに来たりもするらしい。

「おやおや、ソフィー達もここに来ましたか……また汚れて帰って来たものですね……」

ホルストさんがそう言って笑う。

職人さんも自警団の人も、いい感じで汚れてた。

「あたしも強いんです!豚ネズミも取れるんです!がるるる……」

笑顔でポーズを取り、ソフィーは答える。

「私も強いのよ!豚ネズミも取れるんたから!」

やけっぱちモニカもポーズを取る。

モニカはいつになく眠たい目をしていて、汚れとクマで、中々の負のオーラを纏っている。

 

 

オスカーにホルストさん、マルグリットさんが広場の真ん中の焚き火で調理して………

振る舞う串焼きの肉や焼き芋、少し苦い黒いパンに、ソフィーはワイルドに食らいつく。

職人さん達やマルグリットさんにウケた。

「教会の子達と、蛇を追いかけてた子だろ?やるなぁ……」

職人のおじさんが旅汚れたソフィーに拍手を送る。

「面白いぞ、姉ちゃん!」

自警団のお父さんも笑顔で声を贈る。

「あれじゃないか?錬金術士の孫娘じゃないか?あの紺色のコート」

その隣の男が、ソフィーのべたべたのコートを見て呟く。

「もう!ソフィーちゃんたら……」

マルグリットさんは、そんなソフィーの姿を呆れながら見る。

人見知りしないのはいいのだけど、悪ノリ癖もあったようだ。

「この教会の姉ちゃんも……頑張ってるんだなぁ……」

草地に力尽きて眠るモニカを見て、職人さん達と自警団の人達は感心する。

 

 

そんな昼食を終えて、ソフィーとモニカはアトリエに帰る。

連日冒険したから、明日明後日はお休み、とオスカーにも伝えておいた。

「おかえりなさい。ソフィー」

プラフタが出迎える。

ソフィーとモニカは、採取してきた物を持って帰って来た。

ソフィーの鞄もべたべただけど、番人ぷにちゃん達が、入れた材料に関しては綺麗にしてくれる。

「また鞄ごと汚れて……じゅるり……」

番人ぷにちゃん隊長が、ソフィーの鞄を見つめる。

ぴょこんと伸ばしたのが手なのか……

そして目も無いんだけど。

「汚れ……美味しいの……?」

ソフィーが、そんな番人ぷにちゃん隊長に聞く。

「それはもう……今のこの汚れは……かわいい味……がしますね」

そうやって、番人ぷにちゃん達は、ぷにちゃんがソフィー達を綺麗にするように、魔法の草とかの材料を、武器や靴、鞄などを綺麗にしてくれる。

……かわいい味ってなんだろ……?

 

そしてソフィーとモニカは暖炉の前で洗濯を始める。

強敵、プニべたべたをやっつけるのだ。

ハダカ族ソフィーとモニカで、服を綺麗にする。

プラフタはパタパタと、それを見守る。

「もう少し錬金術が進めば、汚れを落とす薬も作れるようになるでしょう。今現在、錬金術の街であったはずのこの街に、その薬が出回っていないのは不思議ですけれど……」

プラフタはそう話す。

「ソフィー……期待してるわよ?」

モニカがソフィーを見る。

凄く眠そうだ。無理矢理動いてる感じもするし……

「これは……頑張らないとだね!」

ソフィーも応える。

プニ汚れが強敵過ぎる……

そして2人はぷにちゃんの部屋へ行く。

 

 

「……待っていたぞ……ソフィー……モニカ……今回は……時間を膨らませるか?」

ぷにちゃんは口を開き、2つの舌を見せる。

「うん。膨らませて欲しいかな」

ソフィーが伝える。

「眠い……」

モニカが思う。

 

「んっ……んうぅっ!あぅぅ……はっ!あっ!」

元気なソフィーがハジケて、時間を膨らませる。

モニカはようやく深く眠り……

ソフィーに意識を向ける事もなく、ぷにちゃんに癒されていく。

 

……起きても昼。

ソフィーとモニカはコンテナを出る。

「服が乾いてないのね……」

完全復活したモニカは、暖炉の前に干した服を確かめる。

ソフィーは替えの下着を着て、モニカは不思議な毛布で身を包んだ。

「なんか、限界まで付き合わせちゃってごめんね?でもぷにちゃんの力……凄いね……」

ソフィーは笑う。

「もう……我ながら不甲斐ないわ……もっと頑張らないと納得できないもの……」

モニカは俯いて反省する。

「でも職人さん達も自警団の人達も、モニカを見直してたよ?……こんな限界まで頑張ってるんだなってさ?」

ソフィーはカフェ裏……

草地に眠るモニカを思い出す。

旅汚れてぷに汚れてるけど……

なんか……

尊いモノを見たような気分になったような……

「まあ……過ぎた事はしょうがないけど、不覚だったわ……次はそうならないように、もっと緊張感を高めて行かないと……」

不思議毛布くるくる状態のモニカは、遠い目をどこかへ向けて反省していた……

 

そしてプラフタと錬金術生活を始める。

中和剤(赤)のレシピ構築、そして作成だ。

下着ソフィーとプラフタで、錬金釜の側の机に向かい、話し合う。

素材の扱い、釜の火、かける時間……

錬金術の理論が飛び交う時間。

「ソフィーらしからぬ、難しい話をするものなのね……」

意外にもダークマター工場だった半年の経験が、ここで活きてきている。

ソフィーの話に、プラフタが納得したりする場面もあったし、主導権はソフィーのようだった。

……服が乾いてないから下着姿なんだけど……

モニカは暖炉の側のテーブルに着いて、そんな2人の姿を見守る。

 

1時間で中和剤(赤)完成!1回で5個出来た。

丸フラスコを、やたらコルちゃんが増やしていたのも、この為だったのか……

と、ソフィーは思う。

「さて、中和剤は錬金術の基本中の基本ですが、中和する薬……なので何かを洗う際に、水と汚れを中和し、洗い流しやすくする薬でもあるのです。このまま使うと汚れはおろか生地まで中和してしまう為、洗剤としては使えませんが……」

 

レシピ調合ではない、時間のかからない調合……

ちょこっと調合としての錬金術を習う。

こちらの調合であれば、より薄い中和剤を、ものの5分で調合出来たりもするのだけど、この中和剤を図鑑の調合に使う事は出来ない。

でも、生活に実用的な物を作れる。

 

「なるほど~……確かにちょっと疑問はあったんだよね。浸け置きに時間掛けても、なんかあまり変わらないって感じがあったんだ」

ソフィーはそう話す。

「確かに、効果は大差ないのですが、キッチリ落ち着かせる為には、適度に素材を休ませる時間が必要になるのです……」

プラフタは錬金術談義を始める。

 

こうして錬金術の話をすると、プラフタは生き生きしてるような……

そんな上下にパタパタするプラフタを、ソフィーは眺めて、大人しく話を聞く。

ちょこっと調合で、食事も作れる。

大概何でも作れるけれど、特性を乗せられない。

そしてちょこっと調合の品物は、図鑑の調合には使えなくなる。

 

「ん~……でもちょこっと調合の、薄い中和剤を使えば……頑固なプニ汚れも……これでバッチリスッキリ!?」

ソフィーは口許に指を置いて、首をかしげながら明るい笑顔になる。

「そうですね。ではそのレシピを教えましょう。図鑑ではなく、他の本にでも記すといいでしょう」

そしてプラフタとちょこっと調合。

 

中和剤石鹸(赤)の作成。

5分くらいであっさり出来上がる。

「どう?モニカ~?なんか石みたいに硬いんだけど」

ソフィーは、調合の浸け置き時間に淹れたお茶を飲む、不思議毛布くるくる状態のモニカに、中和剤石鹸(赤)を見せる。

 

「実際に洗わないとわからないけど、どう使うの?」

モニカは手に取った赤く濁った色の石を見て、首を傾げる。

「水に濡れた布に擦ると泡が出る筈です。まだソフィーがイメージを確定していないので、思ったような出来上がりではありませんが……これから良くなって行くでしょう」

プラフタは落ち着いたトーンでそう話す。

便利に使える品となるのは、まだこれからのようだ。

「ん~……夕食はカフェに行こうよ。服も乾くだろうし……討伐報酬貰って……明日明後日はいい休日にしないとね!」

ソフィーは明るく言う。

オスカーと街をぶらぶらしようかな……

なんて考えたりしながら。

 

 

日が傾いた頃、ソフィーとモニカでアトリエを出る。

広場の子供達から、オスカーは旧市街の方へ行ったと聞いて、旧市街へ行く。

エリーゼお姉ちゃんの本屋がある区域だ。

「オスカーが本屋?……なんかイメージと違うわね」

モニカが言う。

「そう?オスカーは植物研究してたりするから、常連さんだって言ってたよ?」

ソフィーはそう話す。

植物と話せるオスカーだけれど、何もかも植物に聞いたりしてる訳ではないようだ。

植物だって、嘘を言う知恵があるらしいから。

 

 

エリーゼお姉ちゃんの本屋から、オスカーが出てきた時に、丁度2人が本屋に着いた。

「おお。ソフィーとモニカも調べ物かい?」

オスカーが尋ねる。

「ううん。カフェで依頼報酬貰って、夕食も食べようかな、なんて思って。明日明後日はお休みだし、お金あったら出来る事もあるかもだからね」

ソフィーが話すと、オスカーは頷いた。

「そうだなぁ……オイラは母ちゃんが夕食作ってくれてるだろうから遠慮するけど、報酬は貰いに行かないとだよな」

 

 

そして3人でカフェに向かう。

「オスカーオスカー、あたし、今日石鹸作ったんだよ!もっと改良して、オスカーにもあげるね?」

ソフィーは明るく笑う。

「ほお。なんか、お洒落なものを作ってるんだな。出来たら貰おうかな」

オスカーはいつものトーンでそう返した。

「あれ?でもオスカーの服は随分綺麗じゃない?既に何か使ってるんじゃない?」

モニカはオスカーの服を見て、気付く。

ソフィーもモニカも後遺症が残っているのだけど、オスカーの服には残っていない。

 

「魔法の蔦とか、ラーメル麦なんかを燃やした灰を、教会で配ってるじゃないか。あれを使って洗ってる………ぐらいかな。あっさり落ちるぜ?」

ソフィーとモニカは衝撃でのけぞる。

「え……なんで早く言わないの……」

ソフィーが言う。

「いや、灰が無い方が落ちるって言ってたのは、ソフィーじゃないか。確かに土とか砂は、使っても使わなくてもなんだけどな………」

 

 

そんな事を語り合いながらカフェへ。

ストリートに差し掛かった時に、ハロルさんが通りかかった。

「あれ?ハロルさん」

まだ時計店の閉店には早い時間。

ソフィーは不思議に思いながら声を掛ける。

「おう……トリオじゃないか。これからメシにしようと思っていた所だ……そうだ、一緒にどうだ?」

ハロルさんは少し上機嫌で、ほろ酔いっぽい。

「時計店、今日はもうおしまいなんですか?」

モニカが聞く。

「堅い事を言うなよ、独りでやってる都合でな。時折は早く終わらないと、俺は店と心中だ……」

 

 

そしてハロルさんと一緒にカフェへと行く。

「いらっしゃいませ。3人には報酬も出ていますよ」

ホルストさんが迎えてくれる。

テーブルを案内されて、4人で囲んだ。

「報酬?ソフィー、お前依頼とか受けているのか?……お前……本当にソフィーか?」

ハロルさんが驚いた顔で3人を見る。

そしてソフィーの顔を掴まえる。

「うん。ソフィーだよぉ……魔物退治とかしてるよ?」

ソフィーが答える。

なんか気付くの遅いような……さてはハロルさんは服で判断していたのか……

「あの悪ガキ3人が……俺も年を取る訳だな。まあ、好きな物を頼んでくれ。俺からも祝いだ」

上機嫌ハロルさんは、少し笑みを浮かべるとそう言った。

……不真面目時計店のハロル……

そう噂が回ってるのもあって、3人は複雑な顔をする。

それでもお金はある……のか。

ここは好意に甘える事にした。

 

「ハロルさん、時計の修理はもうやってないとか聞いたけど、実際はどうなんだい?」

好意に甘えて、結局食べていく事にしたオスカーが聞く。

「あ?……まあ……やってない事は無いが、直る物と直らない物があるからな。直せそうもない物は引き受けていない。それだけだ」

ハロルさんは気に入らない、という表情をしてから、いつもの感じで答えた。

「私のはちょくちょく調整して貰ってるもの。ね?ハロルさん」

モニカが言う。

ハロルさんも交えての食事。

 

よく飛ぶナイフを売っていたり、最近は実用的ではないにしろ、銃を扱っている話を聞いた。

ハロルさんが、いつも胸のホルダーに銃を入れてるのは、宣伝なのだそうだ。

それにキルヘンベルの街は、隣の国から移り住んだ人達によって作られた街で、その他の土地からも来てるらしく、銃の話を仕入れたくて、店は閉めがちになっているそうだ。

 

 

ハロルさんから色々な話を聞けて、カフェを出る。

オスカーとモニカと別れて、ソフィーはアトリエに帰る。

すっかり夜になっていた。

「おかえりなさい。ソフィー」

プラフタが出迎える。

「ただいま。プラフタ。なんか中々ゆっくり錬金術が出来なくてごめんね?」

ソフィーはそう言って時計を見る。20時……

「今日はまだコルネリアが来ていませんね」

プラフタが言う。

「そうなの?どうしたんだろ?」

ソフィーはそう言って、アトリエのドアを見る。

まあ……自宅に帰った、のだろうけれど。

 

「さて、錬金術しないとね!今回はゼッテルを作るよ!」

レシピ構築は出来ている品物。

作ると4枚纏まって出来上がるのだけど、なんと6時間も掛かる。謎の紙だ。

「ゼッテルですか。これも錬金術の基本ですね」

プラフタと錬金術話をしながら、ゼッテルを仕込む。

6時間掛かるけど、そのほとんどは浸け置きの時間。

仕込み終わったら5時間程寝てられる。

 

「……錬金釜は使えないし……持て余す時間だね……」

ソフィーは窓を見る。

外は夜の景色。天気が良くないみたいで、少し暗い。

「洗濯でもしてはどうですか?石鹸を試すチャンスでもありますが」

プラフタは言う。

「それだ!」

ソフィーは早速、中和剤石鹸(赤)を試すべく服を脱ぎ、洗濯を始める。

色々と課題が見つかり、プラフタとちょこっと調合図鑑に課題点を記す。

そして身体を綺麗にする為に、ぷにちゃんの部屋へ行き、アトリエのベッドで一眠りする。

プラフタに起こされて、ゼッテルを仕上げた。

「……紙だね……よし、次を作るよ~!」

ソフィーは張り切る。そして遂にフラムの作成に入る。

 

 

「……これ、応用すれば雨でも火を焚ける物が作れないかな」

フラムの浸け置き約3時間……

プラフタと、フラムについて話し合う。

雨でも問題なく使える品だと言う話で、ソフィーは閃く。

「良い閃きです。ですがフラムの瞬発力を、焚き火の持久性に変換するにはまだ……ソフィーの錬金術では難しいのではないですか?」

そんな話をしながら3時間、そしてもう一度3時間。

フラム2つを作り、朝になった。

 

 

赤い爆弾8発分。1つで4個セットだ。

「……これ……どんだけ威力あるんだろ?……ごくり」

ソフィーは、出来上がったフラム1発分を手に取って見つめる。

「屈強な戦士の一撃に匹敵する威力を持っています。くれぐれも間違えた所に使わないように」

プラフタは、そんなソフィーに声を掛ける。

「……練習しないとだねぇ……ともかく朝だし……買い物でもしとこうかな……」

ソフィーは窓を見る。今日もいい天気……

ではなくて、どんより曇っていた。

 

 

旅はお休みの今日と明日……

お金もあるし……ソフィーは八百屋へと行く。

「八百屋だけだし……プラフタも一緒に行こうよ?」

ソフィーは謎の土下座ポーズで声を掛ける。

プラフタもずっとアトリエの中……

と、いうのも何だか不健康な気がするし。

「……あなたは、時折変なポーズを取りますね……それはともかく、今にも雨が降りそうですから……やめておきます」

あっさり断られて、1人で出掛ける。

 

 

そして辿り着く八百屋の、ソフィー用の棚……

ピンピンのラーメル麦、きまぐれいちご等々……

今までの恩もありまくりだし……

と散財する。

「ソフィーちゃん、そんなにお金あったのかい?」

「お金あったら、全部使っちゃうって……いいのか?」

マルグリットさんとオスカーに、心配された。

「へへへ……錬金術やるぞー!って気分になれるんだよね。コンテナの中で悪くなったりしないから、いいんだ」

ソフィーは、ほっくほくの表情でアトリエに帰る。

しっかり食べ物も買ったし。

 

 

帰る時、ロジーさんの鍛冶屋から、コルちゃんが出てきた。

「おはよう、コルちゃん」

ソフィーは挨拶する。

コルちゃんと言えば、昨日は珍しくぷにちゃんの部屋で寝てなかった。

「おお、ソフィーさん、聞いて下さい!」

明るい表情で、コルちゃんは長い袖をパタパタして……

はっ、と気づくと袖で口許を隠した。

「なんか……凄くいい事があったみたいだね?そんな顔してるよ?」

にやけて両袖を頬に当てるコルちゃんに、ソフィーもにやけて、尋ねる。

「いい事ありました。この前……ロジーさんを見てからと言うもの、寝る時とか……やたらとロジーさんの顔が浮かぶようになりまして……」

鍛冶屋の前から、ストリート入り口の、謎の壺の場所へとコルちゃんは歩き、ソフィーはついていく。

「完全に恋してるじゃん!それで会いに行ったの?」

ソフィーもテンションを上げる。

 

ロジーさんたらイケメンだし、商人だし年の頃も近いし……

なんとなくコルちゃんに、お似合いな感じもするし。

「はい。こんな事は初めてでしたので……ロジーさんに聞きに行ったのです」

落ち着かなく足踏みして、ほんのりにやけ顔のコルちゃんは言う。

「……え?ロジーさんに聞きに行ったの?……なんて聞いたの!?」

ソフィーは驚く。

勇者だな……コルちゃん……マナの柱に突撃した時も即決だったし。

 

「はい。昨日の夕方に……ロジーさんの顔が浮かぶ事を相談したんです……凄く顔が熱くてドキドキしましたので……その事も……」

口許を隠して、そう話すコルちゃんは、顔を赤らめる。

「そ、そしたら?そしたら?」

ソフィーは食い入るように、そんなコルちゃんを見つめる。

恋するコルちゃん可愛い……

 

「そしたら……気が済めば治るんじゃないかって……一緒に夕食を食べて……添い寝してくれました……凄く幸せな気分で眠れました」

コルちゃんは目を細めて、顔を真っ赤にする。

……治ってはいないみたいだ……

というか……

ロジーさんもその反応だったのか……

 

「な、治ってないよね?」

ソフィーが尋ねる。

「はい。だからまた、今度鍛冶屋が終わる時間に……おいでって言われまして……へへ……」

嬉しさのあまり、落ち着かなく足踏みしながらコルちゃんが言う。

……それで昨日の夜にはアトリエに来なかったのか……

と思う。

「でも良かったね!ロジーさんも協力してくれて!」

ソフィーはそう言って喜ぶ。

少なくともロジーさんはフリーみたいだし。

……なんか子供扱いされてる感じはするけど……

 

「はい。だから……今日からはお昼過ぎくらいにアトリエに寄りまして……夜は鍛冶屋に行こうかと……」

コルちゃんはソフィーを見る。

「今まで通り、コルちゃんの好きな時間に来てくれていいよ」

ソフィーはそう言って笑う。

恋するコルちゃんがあんまり嬉しそうだから、ついついソフィーも嬉しくなる。

 

 

そしてソフィーは、アトリエへ帰る事にする。

コルちゃんはお店の準備もあるから、と別れた。

「おかえりなさい。ソフィー」

雨が降り出して、ちょっと降られながらソフィーはアトリエに帰る。

「ただいま。プラフタ」

ソフィーは買った物をコンテナの棚に並べてから、錬金釜に向かう。

 

 

そして錬金術生活が始まる。

予定通り、ゼッテルから仕込んで行く。

とにかく上達の為に、場数を踏まないと。

「ゼッテル6時間だからな~……」

ソフィーは釜の中の素材を見る。

ソフィーの錬金術の力で配置された素材は、浸け置いて落ち着くまで、錬金釜の中の世界で揺れている。

これが落ち着いてから、沸かして混ぜる。

落ち着くまでおよそ6時間……

「アトリエの掃除などしても宜しいのでは?」

プラフタが言う。

それもそうだ、とソフィーはアトリエの掃除をする。

 

 

そんなこんなでお昼になり、オスカーが来た。

「オスカー!どうしたの?」

ノックされてドアを開けて……

ソフィーは笑顔になる。

「ハロルさんからヌルヌル魚を貰ってさ。昼時だし一緒に食べようかな、ってさ」

キルヘンベルの川で超稀に取れるヌルヌル魚……

蛇ではないみたいだけど、長くて蛇みたいなやつ。

オスカーはパンとヌルヌル魚をソフィーに見せる。

「わお!お茶淹れるね。あ……錬金釜でお菓子……ゼッテル中だった……」

慌てるソフィーを尻目に、オスカーは落ち着いてまな板を手に取る。

「もうすぐモニカも来るからさ。捌く時の水を頼むよ」

外は雨だけど、雨の中ヌルヌル魚を捌く。

あとは焼くだけにして、アトリエに戻る頃に、モニカとコルちゃんが来た。

 

 

コルちゃんは紫と赤の「蛇の目」で雨を凌ぎながら、優雅に来た。

「うわぁ~……コルちゃん優雅……」

蛇の目の紫が華やかなその姿に、ソフィーが驚く。

「ふふ……お母さんの蛇の目……持って来ちゃったです」

コルちゃんは目を細めて笑う。

ネコを思わせる表情。

「おお、コル助もヌルヌル魚食べて行きなよ。食べた事あるかい?」

オスカーが声を掛ける。

「今日はお昼を食べたので……それに今、ヌルヌル魚を専門にしている商人さんも来ていますので……つい先日頂きました」

さすがコルちゃん、詳しい。

ハロルさんも、その商人から買ったのだろうか。

コルちゃんをコンテナに送り出して、3人はお昼を食べる。

「これ、美味しい!」

ハチミツ入り複雑スープを煮込んだ、というタレを付けて、ソフィーもモニカも大絶賛して食べた。

ヌルヌル魚がおいしいのか、タレが美味しいのか……

「この魚とタレ、高いのかしら?」

モニカがオスカーを見る。

「ハロルさんから貰ったから、値段は知らないんだよなぁ……」

 

 

そんなお昼を食べて、ソフィーは錬金釜を見る。

ゼッテルを完成させて、次のフラムを仕込む。

錬金釜の中にコルちゃんが見えて、オスカーにアトリエを出てもらう。

男の子が居ると、コンテナが開かないから、コルちゃんが出て来れないのだ。

「雨が強くなってるなぁ」

コルちゃんがコンテナから出たら、オスカーを呼び戻す。

ちなみに錬金釜に使う材料は、番人ぷにちゃんが、錬金釜の中に送って来る……

だからコンテナが開かなくても、錬金術をする分には問題ない。

 

 

「そうだ、コルちゃんがね……」

ソフィーが嬉しそうに、ロジーさんとコルちゃんの話をする。

「おお!やるなコル助」

オスカーも喜びの笑顔で、コルちゃんに言う。

「嘘ぉ!?そんな感じなの!?」

モニカは驚いて、コルちゃんを見る。

「まだ子供扱いですが……私も一端の商人になって……認められたいです」

コルちゃんは、ネコみたいに目を細めて言う。

子供扱いの自覚は、あったみたいだ……

 

そんな話を少しして、コルちゃんはまた蛇の目を開いて、アトリエを出て行った。

蛇の目を使う後ろ姿が、なんか凄いお洒落だ。

 

「しかしコル助、素早いなぁ……」

オスカーが言う。

「コル助で定着しちゃってるのね……コルちゃん」

モニカが呟く。

……ロジーさんも、コル助って呼んでたような気がする。

「でも明日も休みじゃ暇だよな……明日はどっか行かないか?ソフィー」

オスカーを思って提案した休日だったけど、オスカーが退屈だったみたいだ。

「じゃ、明日は朝にカフェに行って……どこか行きましょうよ。オスカーもこう言ってる事だし」

モニカも賛同する。

採取生活も美味しい物を食べてるし、色々と楽しい事があるから、悪くなかったりするし。

今までもキルヘンミルクスネークカモン!な日々だったし。

 

「じゃあ、明日は依頼報酬を目当てに採取生活しよっか」

ソフィーもそう言って、食事の後片付けをする。

雨が強いから、アトリエで3人で過ごす。

オスカーとプラフタが、なんだか意気投合して会話が盛り上がってた。

ソフィーは更にフラムを作る。

「あ~!これ、分かったかも!」

錬金釜からフラムを取り出して、ソフィーは叫ぶ。

モニカが驚いた。

「何!?もう……イキナリ叫ばないでよ……」

驚くモニカをよそに、プラフタがソフィーに近寄る。

「何が分かったのです?」

 

「超微粒子」などの特性を1つ、引き継げるようになった。

ソフィーはその事をプラフタに話す。

「なんと!それが出来る錬金術士となると、かなりハイレベルな錬金術が出来ますよ!あなたは……かなりの力を受けているみたいですね」

プラフタが驚く。

錬金術士は結構居るらしいけれど、特性を選んで引き継げる者は珍しいようだ。

「……選んで引き継げるかまでは分からないんだけど、一応希望通りだったよぉ」

ソフィーは照れ笑いして、言う。

 

 

……夜になると雨は上がり、オスカーにちょっとアトリエを出て貰って、モニカとソフィーでぷにちゃんの部屋へ行く。

「コルちゃん凄いわねぇ……好きな人が出来たらすぐに告白するなんて……」

コンテナに入り、ぷにちゃんの部屋までの、棚に挟まれた道……モニカが呟く。

「凄くドキドキしたって言ってたよ」

相変わらずの能天気な笑顔で、そう言いながらソフィーはドアを開ける。

今日もぷにちゃんが、いつものようにそこに在る。

モニカには白く輝いて見えるらしいけれど、ソフィーには黒く見える。

「あら。なんかいいことあった感じ?」

ぷにちゃんはそう言って2人を迎えた。

 

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[カフェ裏広場]
服の汚れたお客さんの為に、お昼だけ解放される食事場所。座るだけなら24時間。

[ちょこっと調合]
図鑑の調合と違って、浸け置きの時間が無い。なので忙しい調合。

[錬金術談義]
銀いもの銀部分の名前とか構成とか、中身の名前とか構成とか……難しいお話。

[頑固なプニ汚れ]
なかなか落ちない。

[本屋で植物研究の常連]
オスカーってば本屋の常連さん。物語も読んでるみたい。ゲームでも本屋の近くに居る事も多い。

[少し苦い黒いパン]
大人の味。麦が違うんだって。

[中和剤石鹸(赤)]
ちょこっと調合品。赤い石にも見える。

[教会で配ってる灰]
火を扱う事も多いので、その度に増えるそうだ。教会の子供達が集めてまとめている。

[よく飛ぶナイフ]
ハロルさんのナイフ。

[銃の宣伝]
ロマンがあるらしい。

[コルちゃん×ロジーさん]
ゲームでも、2人は近い場所に配置されている。が、誰かと誰かが恋仲、という設定は全く見かけない。

[コル助]
可愛い愛称。しかし日本的なのが気になるところ。

[ヌルヌル魚]
うなぎ的な生き物。

[蛇の目]
和傘。オリエンタル。

[ハチミツを煮込んだタレ]
うなぎのタレ的なタレ。



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錬金術のアトリエ 8

錬金術のアトリエ 8

 

ソフィーのアトリエでは、今日もオスカーとラブラブするソフィーの姿があった。

……明日の朝は、また街の外におでかけだ。

 

 

そんな夕方、コルネリアはロジーの鍛冶屋に居た。

鍛冶屋ロジックスはまだ営業中なので、剣マニアの少年と他愛の無い話をしながら、売り物の剣とか斧とかを見ていたり。

農家の人々がよく訪れて、農具の直しの注文が多く、ロジーの直した農具は、木の柄の形などが丁寧ないい出来で、農家の人々に評判だった。

 

武器を作りたいロジーではあったけれど、注文は農具ばかり。

しかも後10日程、農具の予約の消化……

むしろぽつぽつ現れた冒険者は、ハロルの店の投げナイフを買うという……

アイツ時計店じゃないのか……

……しかも、かなり評判の高性能ナイフだ。

ロジーも1つ見たが、バランスといい刃といい……

かなりハイレベルなナイフだ。

それに時計の針のようなデザイン……

この見た目のお洒落さで、冒険者も投げナイフというロマンを追い掛けているという。

 

そして更に近々、拳銃の開発もしているとか。

そう、コルネリアから情報を聞いた。

 

……日も暮れて、ロジーは店を閉める。

コルネリアは手甲も付いた、小柄な身体に似合わず大きな袖で口許を隠し、にこやかにロジーを見ている。

「……気は済まないか……」

ロジーが言うと、コルネリアは、にこやかに頷いた。

「夕食、何を食べるです?」

コルネリアは顔を上げる。

ロジーの背が高くて、顔を見るにはそうなる。

「近い所、でまた壺屋になるかな……」

 

コルネリアと2人で、ロジーが毎食食べるという、壺屋へと行く。

鍛冶屋の隣で、冒険者や行商人も良く訪れているこじんまりとした店だ。

ちなみに他の選択肢としては、ホルストさんの裏酒場エリアの屋台になる。

どかん、と勢いのある料理を売りにしていたりする。

 

「壺屋じゃなかったら、壺屋をオススメする所でした。……今日の壺屋は……へへ……」

ロジーとコルネリアで、壺屋へと行く。

ストリートの謎の壺が看板の、行商人と農家の人がやっている店で、とにかく安い。

ただ、出て来る食事は、その日その日で決まっていて、注文出来るのは芋の調理法だけだ。

そしてロジーとコルネリアで壺屋へ行くと、中にハロルが居た。

 

「おお、ロジーにコル助か……」

ロジーとコルネリアは、ハロルの着くテーブルに着く。

3席しかないこの店のルール。

顔見知りで、嫌っていないなら相席だ。

「へへへ……今日は15コールでいいよ。芋はどうする?」

行商人が寄って来る。芋は煮るか蒸すか焼くか選べる。

「蒸してくれ」

「同じで……お願いします」

2人は注文する。

 

ハロルはヌルヌル魚と蒸した芋を食べて、もう食べ終わる所だった。

「今日は……ヌルヌル魚なのか?15コールでいいのか?」

ロジーはハロルに聞く。

「……団子になってるのを捕ったらしい。高値で売ろうにも日持ちしないからな。多くの人に振る舞いたいんだとさ」

ハロルが答える。

 

……冒険者風の客が3人、やって来た。

そして沈黙のテーブル……ハロルは黙々と食事をする。

ロジーは考え事をしていて、コルネリアは冒険者風の客を眺めていた。

「明日、また恵みの森かなァ……だといいんだけどなァ……」

「まあ、予定は木の実拾い、蜂の巣拾いだからな……」

冒険者の、そんな会話が聞こえて来る。

店が狭いので隣のテーブルが近い。

なんとなく汗の匂いも、ふんわりと漂って来たり。

 

「ハロル……買ったナイフだが……なかなかの出来だ。どうやって作るのか教えてもらえないか?」

ハロルの食事が終わる頃に、ロジーがそう尋ねた。

「……商人から買ったナイフを研ぎ直してバランスを取っているだけだ……細工品は焼き繋げている」

ハロルはそう言うと、器を手に調理場へと向かう。

 

ロジーとコルネリアは、ようやく運ばれて来た、蒸した芋とヌルヌル魚を食べる。

「これ……!めちゃくちゃ美味しいです!」

コルネリアは目を輝かせる。甘いタレがどストライクだ。

どうせここで食べられるから、とソフィーのアトリエでは断ったのだけど、ソフィーとモニカも大好きな甘さ。

「なるほど……これは……」

ロジーも食べる。

ヌルヌル魚なんて、以前はいつ食べたものか……

食べたら店を出て、店の外の歯磨き桶で歯を磨き、そしてロジーは鍛冶屋に帰る。

少しこみ合う夕飯時……コルネリアは壺屋に並ぶ順番待ちの商人の人達、職人の人達、冒険者と自警団の人達なんかとお話タイムだ。

 

 

壺屋の行列が無くなってから、コルネリアは鍛冶屋に入る。

ロジーは鍛冶屋の地下の部屋へと、コルネリアを通す。

「では……お待ちしています」

コルネリアは地下の寝室へと行き、ロジーも地下の寝室へと降りる。

壺屋の行列の商人達、職人達と顔を繋ぐ目的のおしゃべりタイムはそこそこ長く、ロジーはもうすっかり身体も洗い、軽く片付けや掃除までしてしまっていた。

 

……それに昨日は色々と勉強になった。

子供に懐かれたと思いきや、コルネリアは店を出すと言うだけあって、今のキルヘンベルの流通の情報に通じていた。

ハロルの店に冒険者が行ってるのも、ナイフが人気なのもコルネリアから聞いた話だ。

そんなコルネリアは、ロジーに恋をしているらしい。本人が言っていた。

 

寝間着を着てるロジーは、コルネリアと並んでソファーに座る。

コルネリアは淡いピンクの民族衣装的な……

肌襦袢とか言う寝間着を着ていた。

……普段着は露出が多いのだが、寝間着は露出は少なく、足首まで隠すくらい、丈が長い。

「……へへ……よろしくお願いするです」

コルネリアは少し顔を赤らめて、袖で口許を隠す。

子供と言うには、着物や仕草に品がある。

「いや……こちらこそ……?」

戸惑いながら、ロジーは黒い革のソファーに座っている、コルネリアの肩に手を回す。

「はぁぁ……ドキドキするです……」

コルネリアはロジーに頭を寄せて、ため息をつく。

……ロジーもドキドキしている。

女の子とどうのこうの、といった経験もなく、あまり考えてもいなかった。

コルネリアは小さく、肩も細く……なんか壊れてしまいそうな……

 

「いや、コル助の増やしてくれた木の棒、凄く助かってるよ。おかげでこちらは金属部分に集中出来るからな」

平静を装って、ロジーはそう言ってみる。

「いえいえ、まいどありです……あの棒は何か特別な棒なのですか?」

コルネリアは目を閉じたまま、ハスキー眠くなるボイスで呟くように言う。

「持ちやすく削ったり磨いたりしているし、特に丈夫なやつだからな。アレが増えてくれたから、予約をこなすのもひと月かからずに済みそうだ」

ロジーはそう言って、コルネリアの頬に顔を寄せてみる。

「はぁぅ……」

目を閉じているのに、コルネリアはそれを感じて、変なため息を吐いて顔を逃がした。

ロジーは小さく笑い、ソファーに身体を預けて眠る。

 

 

……朝になり、コルネリアは鍛冶屋を出る。

晴れたキルヘンベルの乾いた石畳は、少し眩しい。

コルネリアがそれに目を細めてると、ちょうどソフィーとモニカが通りかかった。

 

 

「おはよう……です」

コルちゃんは挨拶する。

「コルちゃんおはよ!……昨日はどうだったの?」

ソフィーとモニカが尋ねる。興味津々の眼差し。

「昨日より……ドキドキが弱かった気がします。……その分、大人になったと言う事でしょうか……」

コルちゃんは、そう言って口許を隠す。

少しノロケ話を聞いて、ソフィーは八百屋へと行き、オスカーと合流してカフェへと行く。

 

 

ホルストさんのモーニングのサービスを食べて、依頼を受ける。

豚ネズミ需要に、うにの雨が降り注ぐ噂を聞いて、雛鳥の林へと行く事にした。

「豚ネズミが人気だって知らなかったなぁ……しかも地面魔法カキーンってやらないと出て来ないみたい」

ソフィーが呟く。

「まあ、あれ美味しいよな。肉って感じだしさ」

オスカーが答える。オスカーも大好き豚ネズミだ。

「ホルストさんも、持ってきただけ買い取るって言ってたものね。でも地面に何か突き刺して、音を立てれば取れるんじゃないかしら」

モニカが呟く。

「それだな。駆け出し冒険者も稼げる豚ネズミ……ホルストさんに教えてやらないとだな」

そんな話をしながら歩く、雛鳥の林までの道。

 

 

何故か緑プニ3匹が出て来た。

緑プニ1匹でも強いのに……

「フラム大先輩!お願いします!」

叩き合いしてたら、こちらの身が持たないのは明白。

ソフィーは素早くフラムを投げる。

……どすっ……ころ……ボボーーーーン!!

フラムは爆発して、緑プニ2匹がそれで俯き、顔が無くなった。

 

「つ……つええええーー!」

本当に動かなくなった緑プニを確認してから、オスカーが叫ぶ。中々にトンデモな威力だ。

周りで豚ネズミが飛び出して右往左往し出した。

「わおーーー!」

作った本人もビックリして、思わず声が出た。

残った緑プニはテンパッた表情で必殺プレスしてくる。

戦意喪失したりはしない……

更に、フラム大先輩が敵を倒しても、ちゃんとマナの柱の力が強くなる!

「なんかズルい気はするけど、これでバンバン強くなれちゃうね!」

ソフィーもモニカもオスカーも、ニンマリしてしまう。

強くなれば、もっと違う場所へも冒険に行けそうだし……

 

 

そして夜はゴースト退治をする。

なんか幾らでも居るのは不思議な話だけど、よく落とすガラスの破片も、需要がある。

錬金術素材としても欲しい。

今やゴースト相手なら、フラム大先輩も必要ないし。

なので朝までゴーストを倒し、朝になったら豚ネズミを捕まえて帰る。

芋やトゲが鋭いうにの群れ、豚ネズミに夕暮れ草、魔鳥の羽根と、荷車を結構満たして帰る。

……キルヘンベルには、お昼過ぎに帰って来た。

 

 

「ふう。野営にも慣れてきたね!」

プニべたべた(緑)の3人は街の入り口を通る。

「そうね。魔物と戦って帰る為に出かけるなんて、本当になるなんて思わなかったわ」

「今日はモニカ、そればっかりだな……」

自警団の人がまた、そんな3人を見て微笑んでいた。

オスカーは八百屋に帰り、ソフィーとモニカはアトリエに向かう。

 

 

中和剤石鹸(赤)と教会で貰える麦とか蔦の灰で、プニ汚れとの闘いが始まる。

中和剤石鹸の改良を企む時間だ。

「おかえりなさい。ソフィー」

プラフタがパタパタと浮き上がり、ソフィーとモニカを出迎える。

「ただいま~……さて、石鹸の力を試すよ~……」

ソフィーはやる気満々で服を脱ぐ。モニカは少し遅れて服を脱ぐ。

灰の水はなるほど、プニ汚れを溶かして綺麗になる。

灰は服にこびりついたりしないようだった。

「私はこっちの方が、オシャレな感じするから好きだけど、ソフィーの灰の方がよく落ちるみたいね」

モニカが中和剤石鹸(赤)を使って感想を言う。

「中和剤石鹸を粉にしたら……もっと使い勝手良くなるかも」

そんな話をしながら、2人は服を暖炉に干す。

 

 

……コンコン。

ドアをノックする音。ハダカ族の2人。

「またぁ!?」

慌てる2人。今度は昼間だから、誰か分からない。

「カーテンとか付けたら、どうですか?」

プラフタは冷静に言う。

そしてノックの主はコルちゃんだった。

イタズラっ子な笑顔で、窓からこちらを覗き込んだから、分かった。

 

「……お昼過ぎくらいに行きますって……言ったのですけど……」

コルちゃんは口許を隠して言う。

「……コルちゃん、洗濯って何か使ってる?」

ソフィーはハダカ族のままで、中和剤石鹸と灰の話をして、コルちゃんに聞いてみる。

もはやコルちゃんは、マナの部屋でのエロエロ仲間。

ハダカ族でもへっちゃらだ。

 

「ふむ〜……紙で汚れを吸う感じで使っています……汚れ紙と言いまして、服の汚れを吸ってくれるです」

なんて便利な物を使っているのか。でもソフィーは閃いた。

でも今はハダカ族なので、メモをするに留める事にした。

「ソフィー……あなたと言う人は、裸で……」

ハダカ族のままで窓際の台に向かい、ペンを走らせるソフィーに、プラフタが呆れて声を上げる。

「コルちゃん脱ぐまで時間あるから……大丈夫」

何が大丈夫なのかは不明だけど、ソフィーはそう言って書き込み、そしてハダカ族3人でぷにちゃんの部屋へと行く。

 

 

ぷにちゃんに時間を膨らませてもらう、エロエロマッサージ……

その後でコルちゃんに、オスカーとの交尾の話を聞かれた。

「な……あの……コルちゃん……?」

モニカが慌てる。

ソフィーはどんなだったか想像して、それが2人に伝わって行く。

 

最近はマナの柱の力で、エロい匂いがするとかで……

オスカーがその太い指で、お股をくちゅくちゅして……

ソフィーはオスカーのほっぺたを両手で捕まえて、キスしながら、くちゅくちゅされてハジケる。

それが交尾する前の儀式みたいな感じで……

明るいアトリエのベッドで、ソフィーが太って来た事もあって、オスカーに匂い嗅がれたり……

太ももとか二の腕とかおっぱいとか……

恥ずかしい事を言われながら、色んなポーズで品定めされて……

 

そうした後に、オスカーのギンギンなちんちんが入って来ると、ソフィーは身体を震わせて叫ぶ。

エロい声で、オスカーを抱き締めて……

抱き締められて………

もう正気が保てないくらい、めちゃくちゃにされて……

何度も魂が抜ける感じになって……

ソフィーから、そういうイメージが流れだす。

 

「あ……そ……そんな……ぷにちゃんよりも……凄い……」

コルちゃんがうろうろと、うろたえる。

気を失いかけてる所に、抱き締められて中を突かれて……

足を震わせて身体を震わせて……

エロい叫びが止まらなくて……

「我も……やれば出来るが……時間が膨らみ過ぎる……からな……その調節を1番に考えて……いる……」

そんなイメージに狼狽える2人に、届くか届かないか……

ぷにちゃんは冷静に、そう伝える。

 

「えええええ!?……ソフィーって……最近はそんな感じだったの……!?」

モニカも顔を赤くして……

落ち着かなくうねうねしながら思う。

……エロ気持ちいいのが、ちっとも終わらないし、へろへろで目を覚ました時に、また始まるし……

ハジケ地獄のインパクトが凄い。と、いうか酷い。

「オスカーがそんな野獣だったなんて……」

「私も……そんなされちゃう……です?」

モニカとコルちゃんは混乱して、うねうねする。

そんな事はお構い無しにソフィーは眠り、2人も悶々としていたけれど、眠る。

 

 

時間を膨らませているので、起きても昼過ぎのまま。

コルちゃんは少しモニカのおっぱいに甘えて、おヒゲで指を遊ばせて遊ばれて……

ぼよんぼよんして過ごしたりして……

膨らんだ時間が終わると、3人はぷにちゃんの部屋を出る。

 

「さて……錬金術頑張りますか!」

ソフィーは元気いっぱいに、替えの下着姿で錬金釜に向かう。

「私は……これで鍛冶屋に行くです。お店の小道具も、ロジーさんと一緒だと良いものが出来そうです」

コルちゃんはアトリエを出る。

 

「乾くまで……待つしかないわよね……」

モニカは服が乾いてないので、不思議な毛布にくるまり、暖炉の側のテーブルに着く。

「……ん?モニカそれひょっとして……」

ソフィーは、もう1つの不思議な毛布を手に取る。

……この毛布やたらと汚れるのが早く、そして干して井戸水を掛けると綺麗になる。

乾くのがやたら早い……

 

そしてモニカの服を、もう1つの不思議な毛布にくるんでみる。

すると、濡れて居たのがみるみる乾いて、着れるようになった。

「……おばあちゃん……使ってなかったの?」

すっかり乾いた服を見つめて、モニカが聞く。

「うん……汚いまま寝ても、綺麗になる……という代物でして……」

ソフィーは申し訳無さそうに答える。

「次から、洗濯……ラクかも。凄いわね」

モニカは感心する。

……そういえば……この毛布は毎日干してたな……

ソフィーは思う。

 

モニカが帰り、翌朝まで錬金術生活。

 

 

そして翌朝になると、モニカとオスカーがやって来た。

「ソフィー……行きたい所があるんだけどさ……」

オスカー曰く、メーベルト農場行きの馬車があって、昼に出発なのだけど、乗せて貰えると言う。

「馬車!行く!」

ソフィーは手を上げる。

痩せていた頃、お酒を運んで来る大馬車と黒王丸、キルヘンミルクを運んで来るメーベルト農場の馬車……

 

お馬に会えるのが嬉しくて、それとやたらとヒマヒマで、教会の子供達と一緒に、お馬と遊びに行ってた。

けれど、メーベルト農場なんて危なくて、行った事は無い。

「ただ、メーベルト農場の荒れてる所にはさ、キメラビーストっていう……強烈な魔獣が居るらしいんだよ。そこでは宝石だか……鉱石だかが採れるらしいんだよな」

対キメラビーストどうしようか会議をして……

ソフィーとオスカーはフラム装備、火力重視で行く事にした。

 

 

午前中のうちにホルストさんのカフェで、トーストとホットミルクにありつく。

青プニと緑プニの魔物退治依頼を受ける。

「メーベルト農場ですか……黒の鍾乳洞付近となると……危険な所ですが、大丈夫ですか?ソフィーとモニカとオスカー……だけで……」

ホルストさんが心配する。

「大丈夫です。この錬金術爆弾、フラム大先輩が合計12発分あるのです」

ソフィーはホルストさんに、フラム大先輩を見せる。

「ほおぉ……いかにも爆弾!って感じの爆弾なんですねぇ……」

ホルストさんは感心する。

「それとホルストさん、雛鳥の林でコイツを使うと、豚ネズミがわさわさ出て来るんだよ」

オスカーが、その話をする。

いずれ、このフラムを調達する依頼も、出て来るだろうと話をした。

 

 

馬車の出発を待つ。

既に馬車は居て、街の入り口で自警団の人達に見守られて草を食べていた。

「ロ~ザリ~♪」

ソフィーは白い馬、ロザリに近寄る。

教会の子供達も、何人か馬車の馬を見に来ていた。

またこの馬が3頭ともでっかい!

結構懐いてたハズのロザリは、明らかにソフィーを嫌がっていて、草を食べていたのに止めて、少し向きを変えた。

「がび~ん!なんか良く分からないけど、ロザリに嫌われてる……!」

ソフィーは衝撃を受ける。

「ソフィー姉ちゃん、もはや別人ぐらい太っちゃったからじゃないか?」

「ロザリ、人見知りだもんね」

どうやらロザリは、もうあの時のソフィーと今のソフィーを、別人認識しているみたいなので、ソフィーはロザリの視界の、少し離れた所でしょんぼりする事にした。

 

視界に入る所からやり直しだ。

「ブレスト、マレフも元気そうだなぁ……」

オスカーは焦げ茶の馬、ブレストを撫でる。

ロザリも、オスカーに対してはあまり変わらない態度だった。

モニカも、マレフと仲良くしてるし。

 

 

「待たせたね」

麦わら帽子をかぶったおじさん達が来て、馬車は出る。

かなり大きな馬に車。

3人と、オスカーの荷車も乗れた。

「いつもより目線が高いからかな。景色がよく見えるね」

ソフィーは馬車の上の、古い屋根の支柱を掴み、立ち上がって景色を見る。

 

「お嬢ちゃん達が、メーベルト農場の黒の鍾乳洞付近に行くのかい?」

おじさん達も、ソフィー達を心配する。

でもフラム大先輩達を見せると、納得した。

でもマナの柱の力が無かったら……

こんな軽装で来る所でもない。

「しかし、こんな可愛い女の子がなぁ……」

「ウチのヤツよりも綺麗な肌をしてるねぇ。なんか秘密があるのかい?」

おじさん達に、肌の綺麗さを誉められる。

ソフィーもモニカも、ぷにちゃんに舐め取られてるのが効いてるのか、やたら肌が綺麗だ。

けれど、中和剤石鹸(赤)のせいにして、宣伝してみたり。

 

 

おじさん達と楽しくお話をしてから、野営なんかもして夕方まで過ごす。

「ロ~ザリ~……」

夕日に照らされるロザリに、少し離れた所から呼び掛けてみる。

明らかにロザリは、ソフィーの方を見ないようにしている。

ともかく、メーベルト農場に着いたのでお別れした。

おじさん達も楽しかったようで、また機会があれば、と誘われた。

 

 

ともかく、プニも獣も出る麦畑と、黒の鍾乳洞エリアへと行く。

「麦の香りが凄いわね……ここの畑、棄てられてる割には麦でぎっしりねえ……」

モニカが、金の髪を風になびかせながら言う。

「ムギイチゴ、ムギキノコがこの廃棄畑の名物だな。どっちもきのこなんだけどな……」

オスカーが麦の根本に生えるキノコを取りながら言う。

「食べられるの?」

ソフィーが聞く。

「調味料に使えるぐらいかな。香りが強いから。それとムギイチゴは痛み止めの薬にもなるよ」

 

そして採取生活。

麦畑を3人は探す。

魔物は青プニがちょこっと居るくらいで、ラーメル麦、きまぐれいちご、カーエン石を採取。

麦畑のど真ん中でカーエン石が採れるって………

 

 

そして黒の鍾乳洞を見ると……

キメラビーストが入り口を守るように、うろうろしている。

……もう夜だった。

 

「よし、防御陣形で、フラム大先輩、モニカはうに爆弾で……あれを倒すよ……」

3人はキメラビーストに闘いを挑む。

こちらの空気を震わせる敵の気配が、かなり強烈な戦いを思わせる。

出会い頭に、フラム大先輩の一撃を2発当てる。

更に、うに爆弾も当てるも、キメラビーストはまだ生きていた。

 

「生きてるしー!」

そしてキメラビーストが飛び掛かって来る!

「はあっ!」

モニカが肩の盾からキメラビーストに突っ込み、キメラビーストの攻撃を受けながら、レイピアの切っ先を向ける。

鮮やかな戦士の動き!

 

キメラビーストは素早く身を翻し、また距離を取った。

そして、さらに襲い掛かるフラム大先輩……

キメラビーストは倒れた。

「これ、爆弾無かったらやられてたわね……」

モニカが呟く。

そこそこ増えたモニカのHPバリアも、さっきの一撃で4割ほど削られていた。

オスカーは豚ネズミよりも更に、ひと回りでかいネズミが、麦畑の外周でうろうろしているのを、捕まえる。

「ここにも居るんだな……餌がいいからなのか、でけえなぁ……」

20kgクラスの豚ネズミ……雛鳥の林のと比べて重さ大きさ2倍だ。

なんか心なしかお肉が、がっしりしてるし。

 

 

ともかく、黒の鍾乳洞へと入る。でっかい穴……

中は明るく、青い色をした石英の塊、蒼剛石を採取。

冷たい鉱石、ハクレイ石を採取。

ありふれた便利鉱石、アイゼン鉱も採取した。

「緑プニでも、叩き合いになったら厳しいからなぁ……フラム大先輩に余裕が無くなったら帰らないと、だね」

そう話して歩く黒の鍾乳洞。

黒の鍾乳洞と言う名前だけど、景色は青く輝く洞窟だった。

……そして甘い香りがする。

 

そんな、こぢんまりとした洞窟ではあるけれど、緑プニと時折戦闘になり、ジェントルファントム3体とも戦闘になる。

ソフィーとオスカーのフラム大先輩2連発で倒す。

「フラム大先輩の音……耳がキーンってする……」

こぢんまりとした洞窟に、フラム大先輩の爆音が響く響く。

少し離れた緑プニも、その音に目を回していたり。

「フラム大先輩、頼りになるなぁ……」

ソフィーは耳を押さえながら、フラム大先輩を見つめる。

これがなかったらどうにもならない。

そんな戦いで、マナの柱の力がどんどん強くなっていく。

HPMPLPバリアも厚くなってるし、その他の能力も、どんどん目を覚ます感じがする。

……そして洞窟の中の蒼キノコを採取する。でかい。

オスカーの片足程もある、デカイきのこなのに、食べられるくらい柔らかい。

 

 

黒の鍾乳洞を出ると、昼ぐらいだった。

早速、蒼キノコを焼いて食べる。

「オスカー……これ本当に大丈夫なの?」

モニカが聞く。つやつやブルーで綺麗なんだけど、それだけに怪しい……

毒キノコっぽい見た目なのだ。

「これに似たキノコもあるけど、匂いが特徴的だからな、コイツは。焼くと更に特徴的だから、間違いようがないんだよな」

焼くと甘い香りが漂う。

つやつやブルーな傘も、焼くと飴色になって美味しそうな色になった。

 

食べると甘くて、香ばしい香りがして、凄く美味しい。

「これ、街に持って帰る分、採らなくていいの?」

モニカが聞く。

辺りを見れば、でっかい蒼キノコはまだまだ生えている。

「ん~……コイツはどうだろうかなぁ……」

オスカーは考える。

そしてお腹いっぱい食べた後に、なんか邪悪な……

イタズラな笑顔を見せる。

 

「そろそろかな……ソフィー、モニカに息を吹きかけてごらんよ」

そう言われて、ソフィーは素直にモニカに向かって息を吐く。

「くっさああぁぁ!!なにこれ!?」

モニカは鼻を摘まむ。

「え?本当に?」

ソフィーは口を手で覆って息を吐く。

「ぐっはぁぁ!?スッゴいうんちの臭いがする!!」

ソフィーは仰け反る。

 

そしてオスカーを捕まえて、モニカと共にくさい息攻撃を仕掛けた。

「や、やめろぉ!うわあぁぁ!くっさぁぁ!!」

オスカーは、ごろごろと転がって逃げる。

転がり進むオスカーが、あまりにも早くて驚くソフィーとモニカ。

 

「なんて物を食べさせるのよ!オスカー!」

それは取り敢えず、モニカもお怒りになった。

「まあまあ……だからコイツは街で食べるには……あまり良くないんだよ」

オスカーはそう話す。

でも食べたキノコが胃袋を通過すると、口の臭いは無くなるらしい。

更にうんちになって出る時には薬的な匂い、変な花の匂いになり、悪臭ではなくなる……

 

……と、エリーゼお姉ちゃんの本屋で情報を仕入れた、などとオスカーは供述した。

「なんだか面白いね。錬金術で使えないかなぁ……」

ちょっと1つだけ、お持ち帰りする事にした。

そして麦畑で少し採取して帰る事にする。

 

 

「うんち臭い息の女の子、好き?」

帰り道、ソフィーが2人に尋ねる。

「さすがにヤバいよ、それは……」

「今は匂わないのかしら?もうトラウマだわ……これ……」

ソフィーとモニカで、それぞれの息を確認する。

あの衝撃的な匂いはしない……ようだけど……

「でも植物って面白いよな」

荷車を引きながらオスカーは笑う。

「なんであんな匂いになるんだろ……さすがのあたしもトラウマになりそうだよ……」

ソフィーもモニカも、もう息の臭いはしなくなっていた。

そんな呟きやら談笑しながら……

途中の泉とか、香りのいい花とか……

そんな道草を食いながら、一行はキルヘンベルへの道を歩く……

 

 

……キルヘンベルに帰ると、夜中だった。

オスカーとは別れて、モニカとアトリエに帰る。

「おかえりなさい。ソフィー」

プラフタがお出迎えする。

「ただいま、プラフタ」

ソフィーとモニカは、汚れた服を不思議な毛布で洗ってみる。

なんと水を使わなくても、みるみるガンコなプニ汚れも不思議な毛布に移っていき、今までにないクオリティーで綺麗になった。

しかも時間も掛からない。

 

「これ……なんで今まで気づかなかったの!?」

モニカが至極もっともな事を言う。

「えへへ……知らなかったよ~……でもあたしの力で綺麗にしたいかなぁ……」

ソフィーは不思議な毛布を見て言う。ヒントがあるなら、ソフィーにも作れる筈なのだ。

 

綺麗になった下着にコートを羽織り、ソフィーとモニカは、外に出て不思議な毛布に水を掛ける。

外の物干し竿に引っ掛けられた不思議毛布は、井戸水を掛けると、汚れと水をぼたぼた落として、みるみる綺麗になってゆく。

「便利すぎる~♪」

はしゃいで水を掛けるソフィー。

下着姿で、井戸水の桶を持つモニカ。

「本当に、凄いわよねぇ……」

夜中にはしゃぐ2人。

 

でも、少し寒いので早めにアトリエに戻り、毛布を暖炉の前に干す。

「ところでソフィー……実は……」

そんな2人に、プラフタがパタパタと近寄って声を掛ける。

……昼過ぎくらいになると、コルちゃんが訪れてぷにちゃんの所へ行き、少し過ごして帰る。

その際にプラフタとも話すのだけど、どうやら鍛冶屋のロジーさんの所で、加工する前の金属がどうも足らないらしい。

その話を受けて、プラフタはインゴットのレシピを思い出したのだそうだ……

 

 

ソフィーとプラフタで、インゴットのレシピを構築する。

そして新しい採取地を思い出したので、地図にそれを書き加えた。

「プラフタの記憶、ちゃんと戻るといいよね」

ソフィーは図鑑にペンを走らせ、プラフタに笑い掛ける。

「はい。ですがここのアトリエでの生活なら……きっと記憶も取り戻せると思います」

プラフタは言う。ソフィーには、その声はどことなく嬉しそうに聞こえた。

「ともかく!ちょっと時間を膨らませて寝たい!」

ソフィーはモニカに抱きつく。

「膨らませるの?」

暖炉の前に干した毛布を整えていたモニカは、あまり動じずにソフィーを見る。

「2人で膨らませたら、エロエロされるのは半分で済むし!普通に錬金術生活すると、引きこもりになっちゃうし」

そしてソフィーとモニカは、ぷにちゃんの部屋へと向かった。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ハロルの店の投げナイフ]
冒険者に売れている。冒険者たるもの、スッとナイフを飛ばす、なんてのは憧れるカッコよさ。

[壺屋]
職人さん御用達の食事処。農家のおじさん達がやってる。ロジーさんもホルストさんも、コルちゃんもよくここで食事をするみたい。鍛冶屋のお隣。

[ホルストさんの裏酒場エリアの屋台]
キルヘンベルの裏市街、スラムエリアの食事処。冒険者の誰かがやったりやらなかったり。

[鍛冶屋の地下室]
居抜きで借りた鍛冶屋。以前の住民がワインとかの保存場所としてつかっていた。寝室としても、ひんやりと寝心地がいい。

[ピンクの肌襦袢]
コルちゃんが着る、薄いピンクの色っぽいパジャマ。

[歯磨き桶]
虫歯怖いもんね。

フラム[大先輩]
歴代の錬金術士達も、このフラム大先輩のお世話になったらしい。

[麦と蔦の灰]
教会で配ってる灰の正体。尚、ゲームでは洗濯という概念も無いので、灰なんて出てこない。

[不思議な毛布]
不思議なアトリエの、不思議な毛布。汚れを吸い取り、竿に掛けて水で流すと汚れを吐き出す。
竿とセットのアイテム。

[ハダカ族]
温暖なキルヘンベル。寒くならない都合で、ハダカ族が暮らしやすい土地でもある。

[エロエロ]
温暖なキルヘンベル。エロエロすると暑い。夜ならまだ涼しい。

[メーベルト農場行きの馬車]
キルヘンミルクを持ってくる。

[大馬車]
[黒王丸]
お酒、塩なんかを持ってくる。巨大な馬1頭で馬車を引いてくる。巨大なので、めっちゃ迫力あるけど、穏やかな性格。後ろから近付いてはいけない。

[ブレスト]
焦げ茶の馬。人にも動じないおじいちゃん。黒王丸に比べると半分程の大きさ。

[マレフ]
茶色の馬。人懐こいお兄ちゃん。ブレストよりちょこっとだけ小さい。

[ロザリ]
白い馬。人見知りする妹ちゃん。マレフよりもちょこっとだけ小さい。なお、3頭は家族ではなく、他人。

[ムギイチゴ]
キノコの一種。痛み止めになる。香りが強いので調味料にもなる。

[ムギキノコ]
キノコの一種。香りが強いので調味料になる。

[蒼キノコ]
オスカーの片足程の大きさ。でかい。甘い。でも食べた後の息が絶望的に臭い。

[外の物干し竿]
生活アイテム。魔法の毛布を干して水を掛ける台でもある。


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錬金術のアトリエ 9

錬金術のアトリエ 9

 

ハダカ族のソフィーとモニカで、ぷにちゃんの中に入る。

抱き合って、ハジケて眠った場合は、時間が膨らみ、夜中なら夜中のまんま。

これはやはり、やたら便利だ。

 

「では……」

ぷにちゃんが始まる事を伝える。

「んっ……はあぁ……はあぁ……」

ソフィーとモニカで抱き合って、ぷにちゃんにしゃぶられる。

ソフィーはモニカのおっぱいに甘えながら、びくん、びくんと身体を震わせる。

「うくっ!んっ……あんっ……」

モニカのエロい声も、なんか随分と馴れて柔らかくなって、そんな声にソフィーも心地好く耳を寄せる。

 

「モニカ可愛いよぉ……んっ……くうぅっ……」

身体の中をくすぐられる感覚に、ソフィーもモニカも抱き合いながら震える。

思わずエロい声が出る。

「あっ!もうっ!それっ!!」

「これっ!はあぁァあァんっ!!」

そして程よくトドメを受けて、2人してハジケて、眠らされる。

散々恥ずかしい思いをしたけど、もう馴れた感じもあって、だけどこうされたいって気持ちが強くなった。

すっかりクセになった訳で……

ソフィーとモニカは、抱き合って眠る。

 

 

……そして充分に眠ってから起き出す。

「はぁぁ……すっごい元気になったよ!」

抱き合ったまんま目を覚ます。目を覚ますと2人は離れて、余り時間を確認してみる。

「まだ20分程、部屋からは出れないが……」

ぷにちゃんはそう伝える。眠らせているのだから、時間ぴったりに起こせるのだけど、敢えて20分程余裕を持たせている。

 

「ぼよんぼよん出来ちゃうわね」

モニカが微笑む。

「おー!ぼよんぼよん、しないとだよね!」

ソフィーもノリノリだ。そしてぷにちゃんで、ぼよんぼよんするのが始まる。

 

……あまりに心地好く休めるものだから、起きると元気があり余っていて、ぼよんぼよんする時間があると、ソフィーもモニカもご機嫌だ。

尚、コルちゃんも、ぼよんぼよん大好きなので、同じように早めに起こす。

……モニカと抱き合って眠ったり、コルちゃんと抱き合って眠ったりしてきて、ソフィーには分かった事がある。

オスカーと抱き合ってる時は凄いドキドキしてたり、ほっこりしてたりするんだけど、モニカとコルちゃんだと、単に心地好い。

……ってだけなんだ……

 

恋はしていない。

でも、抱き合って眠る。

……というのも貴重な経験なのかも知れない。

ぷにちゃんが居るので日常になってるけど。

ぷにちゃんが居なかったら、そんな事してない訳だし。

そして、そんなソフィーの思いはモニカにもコルちゃんにも共有されていて、そしてモニカもコルちゃんも、恋はしていない。

単に心地好い、と感じている。

 

 

「さて、じゃあ私は帰るわね」

ぷにちゃんの部屋を出てアトリエに戻り、モニカはそう言って帰る。

 

そして、ソフィーは錬金術生活。

フラム大先輩を更に生み出したりする。

「インゴットかぁ……依頼のラーメル麦粉を先に作って、朝イチで八百屋に行きたいかな」

ソフィーは新鮮うに等、欲しい物があったりして、行動計画を立てる。

「それは好きに作ると良いでしょう。それにソフィーの錬金術は見た感じですが、とても力強い感じがします。錬金術とは願いの力。その思いが強いのかも知れませんね」

……色々とプラフタと語り合いながら、少し眠ったり本を読んだりしながら、ソフィーは夜中の錬金術生活を送る。

 

そして朝になる。

今日は雨が降っている。

「ちょっと行って来るね。今日はすぐ戻って来るから」

雨だけど、ソフィーはアトリエを出る事にする。

元々、キルヘンミルクスネークカモン!

……で、雨といえば外出する日だったりする。

「もし長く出掛ける事になっても、私の事は気にせずどうぞ。いってらっしゃい、ソフィー」

プラフタはソフィーを見送る。

 

 

雨の街外れ、広場……

モニカの姿が見られない。

……まあ、雨だし家でゆっくりしてるのかな……

ソフィーはそう思いながら、広場の噴水を眺める。

……中和剤(青)を閃いて、素早くメモを出した。

 

他に何か閃くかも……

ソフィーはストリートではなく、逆の旧市街の方へと行ってみる。

雨なのに、エリーゼお姉ちゃんが本を手に、近くの森の方へと歩いて行くのが見えた。

 

キルヘンミルクスネーク取りに明け暮れた森……

……懐かしいなぁ……

いや、つい最近までキルヘンミルクスネークカモン!

ゆってたけれど……

最近は教会の子供達で、まだ狙っているのだろうか……

ソフィーも、近くの森へと足を向ける。

雨の凌げる木陰で、エリーゼお姉ちゃんは本を読み出した。

 

「エリーゼお姉ちゃん」

ソフィーが声を掛けると、エリーゼお姉ちゃんは本に落とした眼差しを、ソフィーに向ける。

「あら?ソフィーじゃない……どうしたの?」

エリーゼお姉ちゃんは言う。

「いや……お姉ちゃんを見かけたから来てみたんだけど……お店はいいの?」

ソフィーは気になった、お店の事を聞く。

「ちょこっとだけ、常連のお客さんが見てくれてるのよ。たまには外にでないと……ね」

エリーゼお姉ちゃんは、そう答える。

でも……雨なのに……

「そうなんだぁ……雨なのに……外で本を読むの?」

そう聞いてみる。

「みんな不思議に思うみたいね。でも大丈夫なのよ。この場所だけ、雨が降らないから」

ソフィーは上を見る……

大きな木が雨を防ぎ、その根本だけ地面も濡れていない。

……何の木だろう?

 

「エリーゼの木って言うの。私の名前も、この木から取ったらしいのよね。この辺りの草花も、エリーゼの木の根本にしか生えないそうよ」

エリーゼお姉ちゃんはそう言うと、また本に目を落とした。

「エリーゼお姉ちゃんに、ついてきて良かったかも。こんな素敵な場所、知らなかったもん」

これ以上は邪魔みたいだし、ソフィーはアトリエに帰る事にする。

 

 

そして、錬金術生活を再開する。

 

お昼過ぎに、コルちゃんがやって来た。

「コルちゃん、それからロジーさんとはどう?」

来たからには聞いてみる。

「……へへ……キスしちゃいました……ロジーさんも私の事を、段々と女の子だと……見てくれるようになったのかと」

コルちゃんは嬉しそうに笑う。

今日も鍛冶屋さんで寝るべく、ぷにちゃんに綺麗にしてもらうのだとか。

それと、お店も順調で、鍛冶屋さんの近くに露店として出せるように、話は進んでいると言う。

時間が膨らむ都合で、5分程でコルちゃんは出てきてアトリエを出て行った。

 

……錬金術生活は続く。

 

 

夕方頃にオスカー……

との期待もあったけど、来なかった。

 

 

なんか夜中にモニカが来た。

「なんか、凄い時間に来たね。モニカ」

むしろ朝に近い時間で、ソフィーはそう言う。

「うん……実はね……え~……と……ぷにちゃんの所に行こうか。その方が伝わるもんね」

モニカとソフィーで、ぷにちゃんの部屋へと行く。

そこでモニカに何が起きたのかを伝えるという事で。

 

 

……ジュリオさん、というイケメンな騎士がやって来て、モニカがマナの柱に能力を覚醒されてる事を見抜いたのが始まりで、モニカはジュリオさんに声を掛けられた。

「君……マナの柱って知ってるかい?」

そう声を掛けられて、モニカはドギマギする。

モニカの好みど真ん中な感じで、誠実そうで……

それでいてガッシリしていて……なのに太くはなくて……

……あまりにも理想の人……

その問いに何て答えたのか……

モニカはもう、覚えていなかった。

 

……ただ、色を聞かれたので、輝くような白だった、でもソフィーは黒と言い、コルちゃんは青空の色と言ってた、と答えた。

「マナの柱は、1000年以上前に、錬金術で作られた物だって話でね……そして複数作られたのだと、文献や、地域の話にあったんだ」

ジュリオさんは、マナの柱について話した。

かなり詳しく知っていて……

ソフィーのアトリエにあるマナの柱はおそらく、オリジナルだと言う話をモニカに話した。

 

そして、マナの柱に力を覚醒させられた女性と、肉体的に結ばれた男性も、力の覚醒を得られる。

「……僕を、君を守る騎士にして欲しいんだ。モニカ」

ジュリオさんに言われて、モニカは戸惑い、でも頷いた。

 

彼の誰かを守りたい、という話にも心を打たれたし、会ったばかりだけど、あまりに好みのど真ん中だったから、冷静に考える事も逃げる事も出来ずに、あれよあれよとジュリオさんのペースで……

街の入り口の、入り口からは離れた川沿いの宿に行った。

 

格好いいジュリオさんの横顔……

知的な会話。

……なんと大人の男性……

という感じなのは、モニカフィルターを通したからなのだろうか。

ソフィーにも、なんかそんな素敵な男性として、ジュリオさん像が伝わってくる。

 

暗闇の中で肩を撫で合って……

色々と話をして……

ハダカの絡みもロマンチックというか……

参考になるというか……

そしてこんな朝近くまで、ジュリオさんに、モニカに合わせたペースで悦ばせられて……

その後でアトリエに来た、と言う事がソフィーに伝わる。

 

「……そ……そんなちんちんでかくて硬いの……?それにお腹揉んでおっぱい吸って……ハジケ方もなんか柔らかくて……ちょっと羨ましいかも……でも細いけど……」

ソフィーは思う。

ジュリオさんは、「いつかマナの柱に、力を覚醒させた女性に会った時に」

……と女性の扱いにも、真面目に修練を重ねて来たのだと言う。

恐ろしく真面目な男だ。

そしてモニカは散々優しくされて……

エロ狂わせられてきた……と言う事だ。

 

「ど……どうせぷにちゃんの部屋でバレるし……ソフィーがハジケ倒してる所も知ってるから……でもあんなにされて、それでまたされたくて……ジュリオさんの事、好きになっちゃって……はぁ……私ってなんなのかしら」

モニカは盛大に、自己嫌悪のため息をつく。

「いいじゃん!騎士様で好みど真ん中で、真面目でエロエロも達人レベルなんて……羨ましい話だよ!」

欠点がない完璧超人じゃないか……

と、さえ思える。

 

そしてモニカは家に帰った。

 

 

ソフィーは錬金術の続きをする。

「はぁ……あたしもそんな大人の恋……してみたいかも……」

錬金釜に向かって、ソフィーはため息をつく。

「……どうしたんですか?急に」

プラフタが尋ねる。

「うぅ~……モニカがね……」

ソフィーはモニカのいきさつをプラフタに話す。

 

「なるほど……ソフィーとオスカーの場合……獣の恋、といった風情ですからね」

「え!?そんな評価なの!?」

ソフィーは驚く。

「まあ……男女の営みというものは往々にして、そういうもの……かも知れませんけれども」

プラフタはそう言うとソフィーから離れて行く。

「……改めた方がいいのかも……?」

ソフィーは錬金釜に向かって考え込んだ。

 

 

そんな錬金術生活で朝になり、オスカーがやって来た。

「大変だソフィー!」

なんか血相変えて慌てている。オスカーらしくない。

「どうしたの?なんか慌てちゃって……」

ソフィーは不思議に思いながら聞く。

「すっごい魔物が出たんだ!忘却のナーセリーって場所なんだけど、一緒に倒しに行ってくれよ!」

オスカーは、そう言ってソフィーを見る。

キメラビーストも倒したから、その魔物も倒せる……

そういう話だろうか……

「フラム大先輩なら増やしてるから、またフラム大先輩に頼ろうかな……じゃあ、行こう!オスカー」

ソフィーはオスカーとアトリエを出る。

朝になった訳だから……

どうせ、どこか行こうと思っていたし。

 

 

そしてオスカーと一緒に広場に行くと、モニカとジュリオさんが居た。

「やあ。僕はつい先日こちらへと来た、隣国アダレットの教会騎士団所属、ジュリオと言います」

ジュリオさんはそう自己紹介して、ソフィーとオスカーを見て微笑む。

モニカフィルターを通したジュリオさん像よりは格好良くもないし、キラキラしてもいないけれど……

誠実そうで優しそうな笑顔。騎士様って感じ……

でもどこの国のファッションだろうか?

お堅い騎士様……という感じでもなくて……

どこか旅人が混ざったような……

 

「ん~……オイラは八百屋の息子のオスカー。だな」

オスカーがそう言って自己紹介を返す。

「あたしは錬金術士のソフィーって言います」

ソフィーもオスカーに続く。

なんと今回から、ジュリオさんも採取に同行してくれるそうで……

騎士様が居たならフラム大先輩、出番ないかも……

 

 

カフェに行き、依頼報酬を貰いながらの朝食。

エリーゼお姉ちゃんが本を読んでたので、一緒する。

「あらソフィー、オスカーにモニカも」

エリーゼお姉ちゃんは顔を上げる。

「へへ……最近オイラ達、外に出て色々と調達しているんだ」

オスカーは鼻を掻きながら話す。

「エリーゼさん、ご無沙汰してます」

モニカは丁寧な挨拶。

「今日はカフェで読書?」

ソフィーは昨日ぶりだし……

そんな感じで、エリーゼお姉ちゃんに声を掛ける。

「ええ。新しい本が幾つか入ったのよ。目を通さないと、どこに置いたらいいか分からないものね」

 

紅茶と、色々なメモがあるテーブル。

エリーゼお姉ちゃんは優雅に見えて、お仕事だった。

「さすがキルヘンベルの知の番人、エリーゼさん」

モニカがそんな事を言う。

……確かにそうだけど……

「変な肩書き入れないで?それと、新しくこちらに来た方かしら?」

エリーゼお姉ちゃんはそう言って、ジュリオさんを見る。

「はい、隣国アダレットから来ました……ジュリオと言います。以降、お見知りおきを」

ジュリオさんも丁寧に挨拶した。

 

 

……邪魔しても良くないので、ホルストさんの所へ行って依頼を受ける。今回は忘却のナーセリー行き。

そう伝えると、ホルストさんは忘却のナーセリーに関係する依頼を探してくれる。

それと……錬金術品に買い手があった。

 

 

「ちょっとお金入ると、すぐに散財するんだから……」

モニカに呆れられながら八百屋で散財していると、コルちゃんが現れた。

「……おはようございます……買った物、アトリエのコンテナに預けておきましょう……こちらの騎士様は?」

コルちゃんが八百屋で買った品物を預ってくれた。

「僕は隣国、アダレットの教会騎士団所属、ジュリオと言うんだよ。君は?」

ジュリオさんは、微笑みながら自己紹介する。

さわやか好青年だ。

「私はコルネリア露店の主、コルネリアと申します。お店はこれからなのですが……もうじき、御披露目となりますので、宜しくお願いします」

コルちゃんも口許を隠しながら、ゆっくりしっかりと、自己紹介する。

それからコルちゃんと色々と世間話していたら、アプコールを閃いて、素早くメモを出す。

 

 

「見てくださいジュリオさん、こんな秘密兵器があるんですよ。でも今回、すっごい魔物らしくて不安だったんです」

キルヘンベルを出て歩き出す、忘却のナーセリーへの道。

「ほう。ソフィーは錬金術士だったね。これは中々に良くできたフラム……大先輩?だね。色々と見てきたけれど、危なっかしい出来で、後から補強されてる、なんてのも珍しくないんだ」

ジュリオさんは他の旅の出来事を話してくれる。

それと守りを重視する隊形も教えてくれて、4人で打ち合わせをする。

いつもやっている事とあまり変わらなかったけれど、勉強になる。

 

 

お昼過ぎ、恵みの森を通過した所で恵みの森の名物であると言う、白丸大根をオスカーが掘り出し、煮て食べる。

 

「なるほど……これは外に出るのが楽しみになるね。ヴァルム食堂でも食べたけれど、別物くらい違う……美味しいよ」

ジュリオさんが掘りたての白丸大根を食べて絶賛する。

キルヘンベルでも、この白丸大根の畑があって、出回っているそうだ。

特にヴァルム食堂では重宝しているみたい。

 

「新鮮だからな。今掘った……ってのが大きいんだな。ヴァルム食堂だと少し時間が経っていても、勿体ないから使うんだよ。その代わり安いし、時間が経たないと出ない味もあるから、悪いだけじゃないんだけど」

オスカーが言う。

ヴァルム教会の食堂には、八百屋からの納品があるから詳しいみたいだけど、ソフィーは店の存在すら知らなかった。

 

「あと、オスカーが掘るのは、ちょうど食べ頃のやつだから、めちゃくちゃ美味しいんだよね!」

ソフィーも食べて、左右に揺れる。

揺れながら言う。

美味しいものを食べると、左右に身体を揺らす癖がある。

「私もオスカーの作る料理にはもう、やられっぱなしだもの。植物の声が聞こえる、というのも嘘じゃなさそうだものね」

モニカも舌を出して笑って見せた。めっちゃ可愛い。

 

 

そして忘却のナーセリーへと着く。

いきなり緑の悪魔が1体、宙に浮いてうろうろしていた。

「ちょっとオスカー!あそこまで凄そうな魔物なんて聞いてないよ!」

ソフィーが慌てる。

「嘘つけ!オイラちゃ~んと言ったぞ?」

オスカーも答える。すっごい魔物って噂だった訳だし。

「なんであんな悪魔みたいなのが……居るのかしら……?」

モニカが呟き、そんな風に、ざわざわするソフィー達4人に気付いて、緑の悪魔は凄い早さで間合いを詰める。

 

「はぁぁっ!」

そこにジュリオさんの一閃!

緑の悪魔はあっさりとやられて消えた。

「凄い!強すぎる!」

「さすが騎士様だ……オイラもびっくりだよ」

「きゃーーーー!ジュリオさーん!」

モニカがなんか、ファンみたいな黄色い声援を送る。

ソフィーもオスカーも、モニカの意外な声色に、驚いてモニカを見る。

「今の声……!?」

「オイラもびっくりしたよ……」

2人に見られて、モニカは赤面してあさっての方向に俯いた。

「こ、こほん……」

照れ隠しに咳払いをしてるのが、凄く可愛い。

 

 

その後はせっかくだし、採取生活をする。

歩む者なきアベニュー方面へ。

緑プニとマンドラゴラが歩んでた。

「……ペアなのかも……」

テンパった表情で襲い掛かってきたけど、やり過ごした。

緑プニがめっちゃ???出して、今居た筈の侵入者を探していた。

ともかく粘銀の糸採取。

やたらとある。

 

「何でか、丈夫だね……」

人食い蜘蛛の糸らしい。

なお、巣に掛からなければ襲って来ないし、巣が張ってあっても、大体居ない。

1匹で幾つも巣を張り、巨体のくせに地中で暮らしているらしい。

……じゃあ、巣いらないじゃん……

 

「この蜘蛛は変わり者でね。女王蜘蛛が居て、蟻みたいに社会を持っているんだけど……それがどうやらかなり大規模らしいんだ。1匹はジュリオさんよりもでかいから、人食い蜘蛛と呼ばれてるけど……」

オスカーが説明する。

……キルヘンベルのエリーゼお姉ちゃんの本屋によると、人は食べないそうだ。

巣は、栄養過多となった蜘蛛がダイエットの為に作るそうで、餌はプニ。

プニに効く毒を持っているのだとか。

「……で、美味しいの?」

最近、すっかり食いしん坊のソフィーは聞いてみる。

 

「美味しいらしいけど、糸液が凄く硬かったり毒液があったりで、捌くのは手間みたいだな。あと、見かける事がそもそもないからなぁ……」

そんな話を色々と聞いて、ソフィーは束ねた金糸を閃く。

 

そして人を襲う魔物、魔鳥アードラが襲って来た。

出て来ない蜘蛛よりも、こちらの方が余程脅威だ。

フラム大先輩は、ここで大活躍。

アードラを弱らせ、ついでにお供のプニをやっつける事が出来る。

それなりにHPバリアを削られ、アードラを倒して行く。

ジュリオさんが攻撃を受け止める。

凄い攻撃………というより凄い防御の人だ。

 

「やっぱり騎士様、頼れる存在過ぎる」

オスカーが呟く。

「でもこうして戦いに身を投じてるなら、あまり人を頼るスタイルは良くないけれどね。ゆくゆくは君も頼れる存在になるのだろうからね」

ジュリオさんはそう、オスカーに話す。

「既に頼れる存在なんですよ!オスカーは!」

そしてソフィーが入って行く。

「確かに。僕もあれほど美味しい料理、食べた事が無かったからね」

ジュリオさんはオスカーを見る。

戦いも野営も、オスカーは貪欲にレベルアップしている。

 

 

そんな中、ソフィーはクロースとハチミツを閃く。

そしてこの辺りで採れる大白玉ニンニクを採る。

オスカーはここに来て、ひたすら大白玉ニンニクを採っていて、荷車を満載にしてた。

 

「匂うわ……」

モニカが荷車満載の、大白玉ニンニクを見る。

野営でも食べたけど、確かに美味しいし、元気になる。

重要が高く、食べると息が臭くなる。

けれど、あの蒼キノコみたいな絶望的な臭いではなく、強壮剤としても有用で、キルヘンベル農家も扱っているそうだ。

 

「ん~……元気な匂いだなぁ……畑で育てると少しこの匂いが弱くなるんだよな……」

オスカーはそう呟きながら、ジュリオさんの引いてくれる荷車を覗く。

そんな帰り道となった。

「でも人気なのも分かるかも。なんか元気になったし!」

ソフィーはお得意のガッツポーズを取る。

「ははは、僕も元気になったよ。これを持って帰れば、ヴァルム食堂でも使われるかと思うと、楽しみになるね」

ジュリオさんは、ガッツポーズソフィーを笑って眺める。

そうして、キルヘンベルには夕方ちょっと前に到着した。

 

 

ソフィーとモニカは、散々汚れたのでアトリエに帰る。

「えへへ……明日は久しぶりにオスカーと……お腹マッサージかぁ……」

アトリエへの帰り道、ソフィーはそう呟く。

明日は外に出るのはお休み、モニカもジュリオさんの住む家を教わって、そっちに行く。

「まあ……そうなんだけど……楽しみにし過ぎでしょ……」

モニカは言い、呆れた顔をソフィーに向ける。

 

行きの道すがら、帰りの道すがら、ジュリオさんと夜のエロエロ話をし出すソフィー。

しかもオスカーも混ざって、モニカは赤面して俯くばかりだ。

とはいえ、3人揃ってモニカの話をする訳ではなく、エロエロ達人に、これからのエロエロを習う感じで、真面目な話だったりする。

ジュリオさんはモニカの話はしなかったが、女性の扱い方については、丁寧に説明していた。

そしてソフィーは、真面目にメモを取っていた。

 

 

そして夕方になる頃にアトリエに帰り、ぷにちゃんの部屋へと行く。

「も~……ソフィーはエロい話ばっかりジュリオさんに聞くんだもの……」

モニカはぼやきながら、ぷにちゃんの部屋へと向かう。

「いや~……それだけモニカが羨ましかったりするんだって」

ソフィーはそう話して笑う。

そして時間を膨らませて身体を綺麗にしてもらい、ゆっくり眠ってアトリエに戻る。

 

洗濯も済ませ、モニカはアトリエを出て、帰路に着く。

 

「さて、錬金術……やるよ~……」

 

ソフィーは夜中に錬金術生活をする。

とは言っても、浸け置きの時間が長いから、うとうとしてたりするけど。

ちょこっと調合。洗濯用ふわふわゼッテル作成。

コルちゃんに絶賛されるかも知れない。

使った後は燃料にしかならないけど。

 

身体を洗う用、中和剤石鹸(青)も作る。

泡立ち重視で、見た目も宝石みたいで綺麗だ。

 

化粧品も作る。色だけを抜く錬金術で、石鹸みたいに固めた口紅やチークも作る。

プラフタがやたら詳しい。

 

そして、プラフタが記憶をまた1つ取り戻す。

500年前に生まれたらしい。

そして500年前は、今とあまり変わらないらしい。

そして新しい採取地を思い出した。

フラム大先輩のような爆弾、こちらは氷の爆弾……

レヘルン先生を作る。

そしてプラフタと錬金釜のレシピ構築。

更にいい物を作る為に、錬金釜を改良するレシピだ。

 

「錬金釜で、錬金釜を調合するの?」

ソフィーが聞く。

「錬金釜はセットしなければ小さくなりますからね。ソフィーはセットを外した事が無いでしょうけれど………」

プラフタが答える。

ちなみに、おばあちゃんの錬金釜で、おばあちゃんの錬金釜を作る場合、内側を作るような錬金術をすれば良いらしい。

 

 

……そんなこんなで朝になり、ソフィーはお出掛けする。

モニカはどんな顔をしている事やら……

 

街外れを行き、教会広場に来ると、見慣れないお洒落な服の女の人が居た。

「ちょっとあなた……」

ソフィーは呼び止められて、キルヘンベルの街を色々案内というか……説明をした。

 

そんな所を、ハロルさんが通り掛かる。

「ちょ……ちょっとあなた……あのお洒落貴族……誰!?」

仕立師だと言うレオンさんは、ソフィーに尋ねる。

なんか今までとは変わって、必死になった。

「あ……あれは時計店のハロルさんだよ。時計はあまり扱ってないみたいだけど……」

レオンさんにしがみつかれながら、ソフィーは答える。

「な……なんてお洒落なのかしら……それにイケメンだわ……ど、どうしましょ?」

少し遠くのハロルさんをうっとりと見つめて、ソフィーに尋ねる。

ハロルさんはこちらを見て、不思議そうな顔をしていた。

「ハロルさ~ん」

ソフィーが呼んだ瞬間、猛ダッシュで逃げて行った。

「嘘ぉ!?なんで!?」

 

ソフィーは追いかける。

ストリートの方へと行った。

普通に考えて時計店だろう。

時計店へと行く。しかし逃げ足早い。

「なんで逃げるのハロルさん!」

時計店に入る。

「なんだ?なんかまた面倒な話が飛び出すに……お?誰だその女性は……お前の友達ではないな……?」

なんか平静な感じで、ハロルさんはカウンターの中に居た。

そしてレオンさんも、時計店に来ていた。

「私はレオン。旅の仕立師をしているわ……偶然あなたを見掛けて……そのお洒落な服はどうしたのかしら?」

レオンさんが聞く。

ハロルさんが面倒臭そうな顔をソフィーに向けた。

ソフィーは知らんぷりを決め込んで外に出てく。

 

 

「……何があったです?」

時計店を出るとすぐに八百屋。

そこではコルちゃんと教会の子供達が、ミルクを飲んでいた。

「あれ?コルちゃん?」

ソフィーは足を止める。

「ソフィーさんもミルクいかがですか?これからもお世話になりますので、どうぞ一杯」

気前良くコルちゃんが、60コールもするキルヘンミルクをご馳走してくれた。

 

「お金、大丈夫なの?」

ソフィーは心配する。

「お皿やグラスなど、増やして欲しい注文はありますので……お金は大丈夫です。それに、今日から露店がオープンしますので、ソフィーさんもご利用……お待ちしています」

そんな訳でソフィーもキルヘンミルクを飲む。

朝の新鮮ミルク、美味しい。

「ぷはぁ~……美味しい!」

ソフィーとしては好物だし、ミルクを飲む。

うまい!

……と言うかキルヘンミルクが不味い訳がない。

「ソフィーさん、いい飲みっぷりです。さすがです!」

コルちゃんは機嫌良さそうに笑う。

マルグリットさんも微笑んでいるけど、お客さんに追われていた。

最近凄く繁盛していて、教会の子供達も手伝っている。

 

「コルネリア露店も宜しくお願いします。ソフィーさんの枠もありますので、増やしたい物がありましたら、可能かどうか分かりませんが、可能なら増やしますので」

コルちゃんは、ぺこりと頭を下げた。

遂にコルネリア露店が開店……と言う事だ。

「あ。コルちゃんがこの前言ってた汚れを落とす紙、あたしが作ってみたんだけど……アトリエに行ったら見てみて。良ければ増やしたりして、商売になるかもだから。他に石鹸とか口紅とか色々あるけど、商売になりそうならどうぞ」

 

ふと思い出す。コルちゃんも喜んで貰えるかもだ。

「ソフィーさん……売り物はひどく大きな課題でした……ありがとうございます!」

コルちゃんは目を輝かせる。

凄く喜んでいるみたいだった。

「そこまで喜んで貰えるとは思わなかったけど、頑張ってね」

ソフィーは鍛冶屋の方へと行ったコルちゃんを見送る。なんかキルヘンベルも賑わってきた。

 

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ハダカ族]
一糸纏わぬ、産まれたまんまの姿。とか言うけれどおヒゲ生えてたりするから、そうでもない。

[ハジケて]
エロい事されるとびくんびくんする。人は皆……そうなのだろうか?

[ぷにちゃん]
アトリエの地下のマナの柱の愛称。ぼよんぼよんも楽しい。

[キルヘンミルクスネーク]
白い蛇。地中生活で夜行性。夜になると木に登ったりするらしい。

[エリーゼの木]
根本にエリーゼの木ならではの植物が茂る。

[マナの柱オリジナル]
全ての条件が揃って作られたマナの柱が、オリジナル。何らかの条件を、代替品としたのがイミテーション。より優秀な錬金術士だけが、イミテーションのマナの柱を作れたそうだ。

[川沿いの宿]
キルヘンベルの入り口の川沿い、入り口からは離れた場所にある宿。

[モニカ×ジュリオさん]
お似合いのカップルだと思われる。ゲームでも2人の配置は近い。ゲームでは、特に惚れた腫れたの人間関係は出て来ない。

[紅茶]
原料となる葉っぱは、大馬車が持ってくるみたい。キルヘンベルならではの紅茶も、鋭意研究中。

[白丸大根]
恵みの森にやたら生えてる。畑でも作っている。

[人食い蜘蛛]
女王蜘蛛から産まれて、社会生活をする巨大蜘蛛。蜘蛛の巣を張るけれど、地中生活をしている。主食はプニ。人を食べる事は無いのに人食い蜘蛛と呼ばれている。人前に現れる事も無い。巣だけがやたらと見つかる不思議な蜘蛛。女王蜘蛛は金の糸の巣。他の蜘蛛は銀の糸の巣を作る。が、どちらも地中生活が基本。

[大白玉ニンニク]
忘却のナーセリーにやたらと生えてる。キルヘンベルの畑でも作っている。

[洗濯用ふわふわゼッテル]
ちょこっと調合品。汚れを吸い取る紙。

[中和剤石鹸(青)]
ちょこっと調合品。青い石なので、オシャレ。

[化粧品]
口紅とか肌水とか。モニカも唇油を付けてたりする。

レヘルン[先生]
歴代の錬金術士を支えて来たらしい氷の爆弾。

[ハロルさん×レオンさん]
お似合いのカップルだと思われる。ゲームでも2人の配置は近い。

[教会の子供達]
孤児も居るけど、大体はキルヘンベルに両親の居る子供。大人の仕事中に事故にならないように、また教育が行き届かない、という事がないように教会に10年くらい預けている。勿論、ゲームではそんな設定は無い。

[汚れを取る紙]
白くてごわごわした紙。品質も良くないけど、汚れを取れる!



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錬金術のアトリエ 10

錬金術のアトリエ 10

 

朝、コルちゃんと子供達、ソフィーで並んでキルヘンミルクを飲む。

そんな儀式が始まり出した。

 

……朝のカフェでホットミルク飲む必要無くなったなぁ……

そう思いながら、ソフィーはリュックを見る。

インゴットが入っていた。

……そうだ、ロジーさんに渡そうと思っていた2個のインゴット。

道理で、いつもより重いと思った。

 

遂にできたコルちゃん露店は、ストリートの噴水広場寄りのはしっこ……

鍛冶屋さんの前に出来ていた。

コルちゃん露店の店番に、コルちゃんと教会の子供達2人が居る。

なんかディーゼルさんが通り掛かり、子供達の様子を伺うと……どこかへ歩いて行った。

「あれ?今ディーゼルさんが通った?」

ソフィーはディーゼルさんを目で追うも、ディーゼルさんは、賑わうキルヘンベルのストリートに紛れた後だった。

 

「バーニィ先生もディーゼル先生も、僕らがいじめられたりしてないか、見に来るんだよ。職場によっては、僕らは手伝ってあげられなくなったりするんだよ」

子供が、そう話す。

逆に働きが悪くて、子供が注意される事もあるそうだ。

 

「……ディーゼルさんも、ちゃんと働いているんだねぇ……」

ソフィーは呟く。

「……そりゃ、先生だからな……ところでソフィー姉ちゃん……」

「うわ!何これ錬金釜じゃん!!」

子供の話の途中で、ソフィーは「練習用の錬金釜」が500コールで売られているのを見つけた。

「妖精の泥だんご」も安いし目を引く。

 

「ふふふ。ソフィーさんなら買うかと思いまして。仕入れちゃいました」

そんなソフィーに近寄り、コルちゃんは口許を隠して笑う。

「買うし!泥だんごも買うし!」

ソフィーは手持ちがあったので買う。

妖精の泥だんごは、錬金術材料だし。

「あ。それとこれを登録で。今ロジーさんに見て貰おうと思ってたけど、1つは登録するね」

ソフィーは、リュックから取り出したインゴットを、コルちゃんに渡す。

「うおおぉぉ!これは……錬金術インゴット!行商の人も扱っていなかったから、凄く助かります!」

コルちゃんは目を輝かせて、インゴットを受け取る。

「じゃあ、ロジーさんにも渡さないと……」

 

そんなやり取りの後、ソフィーは話していた子供を見ると、他のお客さんと話をしていた。

コルネリア露店に溶け込んでる……

 

 

ともかく、ロジーさんの鍛冶屋へと行く。

なんか壁に木の棒ばかり飾ってあった。

「あれ……?剣とかあったのに……」

ロジーさんは暇そうにライデン鉱を撫でてる。

「おう……ソフィーか……今、鉱石なら入荷してるぞ」

なんか、元気がない。

「あの……なんかあったんですか?」

ソフィーは尋ねる。

「売れたんだ……剣も何も。でも金属が手に入らなくてな……新しいのが打てないんだ……」

ロジーさんは遠い目をした。

「あの……あたしが作ったんですけど……この金属が使えれば……コルちゃんにも渡してあるので、増えて来ると思うし……」

ソフィーはインゴットを渡す。

「ソフィーが作った金属?」

ロジーさんは、インゴットを手に取る。

 

「これを……!?あの鼻たれお転婆な……ソフィーが……!?」

使える金属のようだ。

ロジーさんが、そんな表情をしてソフィーを見る。

……イメージ悪かったんだなぁ……と思う。

「嘘ぉ……鼻は垂らしてなかったよね?」

さすがに反論する。

「俺が見た時は両ハナぶら下げて、誰かを追いかけていたけどな……あまりに立派な青っパナだった記憶があるな」

ロジーさんは、平常心で答えた。

 

……そんな事してたっけ?……一体何歳くらいの記憶だろうか……

「ま……まあ……今、プラフタって言う本なんですけど……錬金術の師匠が居ますので……確かな手順で作った物なんですけれど……あと……鉱石下さい」

インゴットを手に、何かしら考えてるロジーさんから鉱石を買う。

ここの鉱石も安いし……

そしてライデン鉱で、ドナーストーン伯爵を閃く。

 

……そしてアトリエへと帰る。

時間があるなら12時間掛かる大調合、錬金釜の改良をしたい。

「おかえりなさい。ソフィー」

プラフタがお出迎え。

「ただいま。プラフタ……さて、錬金釜の改良、やるよ~……」

早速おばあちゃんの錬金釜のセットを外し、練習用の錬金釜をセットする。

小さくなると置物みたいなサイズになるし、中身があるように見えるけど、無くなる。

不思議なアイテムだ。

 

セットした練習用の錬金釜は大きくなり、中身が満たされる。

錬金術って……この家を作るのが1番大変な気がする。

「さて、カテゴリパワーのある材料が重要になりますよ……」

ソフィーは材料を練習用の錬金釜の中に並べて行く。

おばあちゃんの錬金釜に比べて広い……使いやすい……

「材料が左右で反転、もしくは回転までしてくれるくらい柔らかくて、広いのがいいけど……材料のパワーが足らない……」

結局は妥協して作る。

……歯痒いけど……ダークマターしか出来なかったあの頃と比べれば……いいけど……

 

 

12時間の大調合、とは言うものの、ほとんど浸け置き時間なので暇だったりする。

お昼過ぎに、コルちゃんがやって来た。

「いらっしゃ~い。あ、これが中和剤石鹸(青)泡立ち重視なんだけど、それと汚れ取りふわふわゼッテルね」

プラフタとおしゃべりしながら、ティータイムのソフィー。

コルちゃんに、ちょこっと調合品を渡す。

「おおおお……これは増やしやすそうな……増やしやすければ……お安く提供出来て、お客さんにも喜んで貰えるです」

コルちゃんはコンテナへと行く。

 

そして1時間くらいして出てくると、増やしたふわふわゼッテルと中和剤石鹸(青)をくれた。

「増やしやすかったです……これならお客さんに提供しやすいです」

ふわふわゼッテルは10枚になり、中和剤石鹸(青)は3個になった。

「ありがとう。改良とかしてみるね」

ソフィーはふわふわゼッテルと、中和剤石鹸(青)を受けとる。

錬金釜浸け置き12時間は、まだ終わらない。

 

 

夕方、オスカーが来た。

「オスカー!待ってたよお」

ソフィーは例の如く体当たりすると、抱きつく。

「なんかモニカに話して来ようと思ったんだけどな。居ないんだよ」

オスカーは、いつものおとぼけボイスで呟くように言う。

「きっとジュリオさんと一緒にイイコトしてるんじゃない?あたし達も負けてられないね!」

ソフィーはオスカーのほっぺたに、ほおずりする。

背丈が同じくらいなので、ほおずりしやすい。

「錬金釜の出来上がりは、私が教えますのでごゆっくり……」

プラフタはそう言うと、本棚の方に行った。

 

「でも途中で、モニカが訪ねて来たりしないかな……」

ソフィーと、暖炉に並んで向かうオスカーは言う。

……確かにそうだ……とソフィーも思う。

「じゃ、寝るだけにしよっか」

ソフィーが言い、オスカーが頷く。

 

アトリエで夕食を食べて、暖炉の前で不思議な毛布でオスカーを洗う。

少し濡らして擦るだけで、みるみる汚れが落ちる。

「これ、すげえなぁ………知らなかったよ」

オスカーも驚きだ。

「あたしも知らなかったんだけどね」

身体を洗う時間が早くなった。

それに、より綺麗になる。

 

そうして、ベッドでイチャイチャする。

「やっぱり……」

オスカーが、ソフィーの下着に手を掛ける。

「えへへ……大人しく寝てられないよね?」

ソフィーは笑う。

イヤらしい匂いがするって言って、やたらワレメを嗅ぎたがるようになった。

……鼻を鳴らされるのは、さすがに恥ずかしいのだけど……

 

「マナの柱が現れてから……変わったよな」

オスカーが言う。

……確かにオスカーがギンギンになった……

「ん~……わかんないけど、オスカーが嗅ぎたがるから……そこが変わったかなぁ……」

ソフィーはオスカーにしがみついて、心地好くぴくんぴくんしながら答える。

「ソフィーのここの匂いだよ。凄く興奮するんだよな………」

オスカーは太ももの付け根を揉み、ソフィーをぴくんぴくんさせる。

「んあっ……あっ……それっ……んうう~っ……」

しがみついていたソフィーは力が抜けて、オスカーから離れ、後ろに倒れる。

……なんか凄く弱くなった……慣れたような感じだったり……めっちゃ平常心だった時もあったのに……

 

そしてオスカーのいいようにされて、ハジケまくる。

お腹マッサージまで追加でされて、ソフィーはふにゃふにゃにされる。

 

「まだこれが治まらないんだよなぁ……あとソフィーが、すげえ可愛くなったよな」

ふにゃふにゃになったソフィーをお腹の上に乗せて、仰向けのオスカーは言う。

……腰を撫でて、お尻のふくらみを撫でてやると、ソフィーは恍惚の表情でオスカーのほっぺたに頬をつける。

「オスカーギンギンすぎだよ……あたしもうダメ……」

抜かずに3発出して、それでもギンギンなのだから、何かあるんだろう。

マナの柱が現れるまでは、そんなんじゃなかったのだから。

「可愛いなぁ……ソフィーは」

イヤらしくキスをして、眠った。

 

 

「ソフィー……なんて格好で……錬金釜の出来上がる時間ですよ」

プラフタが声を掛けて、ソフィーは目を覚ます。

「も、もう!?」

ソフィーは身体を起こす。

オスカーも目覚めた。

 

不思議な毛布に頼って身体を洗う。

そして下着を着けて、錬金コートを着る。

「オイラは帰るかな。ソフィーの匂いがする限り、無駄にギンギンになってるからな」

オスカーも服を着る。

「もー!匂い匂い言わないでよ!」

ソフィーは顔を赤くしてそう叫ぶ。

 

 

かくして夜中に錬金釜の改良が終わり……

早速新しい錬金釜に、束ねた金糸を仕込む。

銀いもに付く「変異物質」を付ければ、後々これで装飾品などを作った時に、防御+10とHPバリア回復という、破格の恩恵を受ける特性となっている。

しかも、この銀いもは、現状であまり無い………

「金属」カテゴリーのアイテムとして扱えるのだ!

 

ソフィー特性ノートに特性も纏めたけれど、現状ではこの特性がピカイチだ。

そして「変異物質」束ねた金糸を使ってクロースを作成する。

……もちろん、「変異物質」の付いたクロースとなる!

 

……プラフタとそんな錬金生活をしていると、もうすぐ朝……

そんな時間にモニカが来た。

「ソフィーが起きててくれて良かったわ。寝てたら引き返すつもりだったのよ」

まだ朝方の暗い時間……モニカはそう言って笑う。

「えへへ~……錬金術に今日も夢中でして……」

ソフィーは胸の前で指を遊ばせて、言う。

近況を少し話して、モニカはぷにちゃんの部屋へと行く。

 

「ちょっとぷにちゃんにお世話になりたかったのよ」

棚の廊下でモニカがそう話す。

「へえ……でも綺麗になるもんねぇ……」

ソフィーは呑気に話す。

そして2人は、ぷにちゃんの部屋へと入る……

 

「よく来た。時間は膨らます……までもなく膨らみそうだな……」

ぷにちゃんはそう話し、口を開ける。

「モニカもエロエロしてきたの?」

ソフィーがモニカにしがみつく。

「まあ、女の子が楽しいってソフィーの話も今、身をもって知ってる所よね……」

モニカから、にやけてしまうオーラが出て、ソフィーもにんまりする。

「モニカもエッチだもんね?ジュリオさんには、あまえんぼさんだし!めちゃめちゃ可愛い!」

ソフィーは、モニカの身体をまさぐる。

「もう!」

モニカも負けじとソフィーの身体をまさぐる。

「ひゃんっ!そこ反則だから!」

 

2人はそんなこんなで時間を膨らませて、ぷにちゃんの部屋で色々とまったり過ごして……

 

 

「じゃあ、プラフタ行ってくるね~」

ソフィーとモニカは、アトリエを出る。

どんより曇っていて、雨がパラパラ降って来てる。

「行ってらっしゃい、ソフィー」

プラフタは今日も、お見送りだ。

そして2人は広場へと歩く。

朝早くて空がどんよりしているから、街灯が光ってる。

 

 

「やあ。今日もよろしくね」

広場でジュリオさんが合流。

ジュリオさんは噴水広場がお気に入りだそうで、朝イチはここに居る事が多くなりそうだ、と世間話をする。

3人になって、ストリートへと向かう。

 

……そして八百屋前に、コルちゃんと教会の子供達が居た。

「おお。ソフィーさんではないですか……一緒にどうです?……あとジュリオさんも……ミルク飲むです?」

ホルストさんのカフェで、ホットミルクがサービスで出るから……と今日は遠慮する。

朝のミルクタイムは、コルちゃんと教会の子供達の、毎朝の儀式みたいになっているそうだ。

マルグリットさんが、「お陰で売り上げも増えてね」と笑った。

 

 

カフェで、ホルストさんがモーニングサービスを出してくれる。

依頼を受ける人なら、誰にでも出してるらしい。

「アダレット教会の騎士様が一緒に居るなんて、頼もしいパーティーになりましたね。ソフィー」

ホルストさんが言い、依頼と噂の書類を出す。

以前より厚い。

「なんか、依頼も増えてません?」

ソフィーが尋ねる。

「最近、このキルヘンベルも人が増えてまして。ソフィーの錬金術が、噂になっているみたいなのですよ。錬金術士はこの辺りにはどうした訳か、居ないらしいんですよ」

ホルストさんが言う。

隣国アダレットにも居ないらしい。

「ほえ~……あたしとコルちゃんが居るこの街は……今話題の街って事ですか~……」

ソフィーは感心する。

 

それで、はるばる遠くから集まるなんて、情報って早いんだなぁ……と思う。

「僕も錬金術士の噂を調べていて、ここに辿り着いた1人なんだけどね」

ジュリオさんが言う。

「そ、そんな話だったなんて……で、あたしの作った何が人を呼んだんですか?納品したアイテムって……まだ山師の薬とソティーくらいしかないんですけど……」

 

ソフィーは言う。

まだ噂になるアイテムなんてないのに……いや……ソティーかも……個性バッチリの、ソフィーのオリジナルのお茶……

素人の味、と評判だ!

「まあ、マナの柱の覚醒と錬金術士はセットだからね。マナの柱が覚醒した地域からは、素晴らしい力の宿った鉱物植物等々が、豊富に採れるようになるんだよ。今はその噂だね。マナの柱を知らなくても、こんな鉱物植物があった!とか噂になるから」

 

……作った物では無かったようだ……てゆうか……錬金術士の噂……じゃ、ないじゃん……

「まあ、とにかく行く所を決めないとだよな。木の依頼が多いみたいだし、獣たちの寄合所……なんてどうだい?あそこは様々な芋がある美味しい場所でもあるし」

オスカーが言い、ソフィーとモニカが賛同する。

甘いお芋なんて、大好きに決まってるし。

そしてキルヘンベルを出発となった。

 

 

雛鳥の林を抜けて先、木々が日差しを遮る、木漏れ日の道をひたすら行くと、獣たちの寄合所………

となる。

「ジュリオさんは元々強かったんだろうけど……モニカとエッチして何か変わった?」

ソフィーが尋ねる。

もう女性の身体の扱い方まで習った人だし、何でも話せる的な所がある。

「はははっ……かなり変わったよ。これほどの力があれば……まあ、まだ育てないといけないけれどね」

何の能力を得たのかは分からないけれど、ジュリオさんはモニカを見る。

「そ、そうよね……頑張らないと……ね」

モニカは照れて顔を逸らした。

 

ぷにちゃんに会えたら、能力は分かるみたいだけど、男の人とは会わない仕組みをしてるので、オスカーとジュリオさんの能力は分からない。

……ひょっとしたら、聞いたら答えたりするかもだけど……

「ぷにちゃんの力って凄いんだねぇ……あたしの錬金術も、ぷにちゃんのおかげで……そしてプラフタのおかげだもんなぁ……」

ソフィーは呟く。

 

……4人は歩き……お昼くらいには目的地、獣たちの寄合所。

 

……なので目的地寸前で、ちょこっとだけ木漏れ日の森の街道を離れた所の、小さな泉で野営をする。

ここでは紅いも、銅いもが採れるので、それを食べる。

「甘い~……これ好き!」

銅いもは甘く、その銅の皮で焼く紅いもも甘い。

この優しい甘さに、ソフィーもモニカも大絶賛した。

「オスカー……これ沢山持って帰ったら、街の人皆喜ぶんじゃないかしら?」

モニカもノリノリだ。

「うん。でもこいつらは腐るのが早いんだよ。特に銅いもは早いな。だから帰りに掘れば、当日と明日は使えるかなぁ……」

銀いもは悪くならないんじゃないか、くらい日持ちするのだけど、銅いもは悪くなるのが早く、紅いもはそこそこ大丈夫なのだそうだ。

 

「なかなか難しいのね………」

モニカは納得する。

芋の中には古くなると毒になるやつもあるから、要注意なんだそうだ。

 

 

ともかく、獣たちの寄合所へと到着したのは昼。

それからは採取生活。

キーファ、銀いも土いも、妖精の毒草と……

荷車をたちまち満たして行く。

キーファがでかい。

敵としては、キメラビーストが当たり前のように出てくる。

しかも緑プニをお供に連れて。

フラム大先輩、レヘルン先生を使って撃退していく。

こちらのダメージも大きいけど、何とかなる感じ。

 

「……ここにも豚ネズミ居るんだな。しかもなんだあのサイズ……」

フラム大先輩の爆発に、地面から出てきてうろうろ、まごまごする豚ネズミ達を見て、オスカーが呟く。

中にはオスカーと同じくらいの大きさのやつが居た。

「この辺りの豚ネズミが大きいのかしら……」

モニカも豚ネズミ達を眺めて呟いた。

もはや100kgクラスまで居そうなのだ。

雛鳥の林の豚ネズミ10kgクラスも、でかいと思ったけれど、アレは小者だったようで……

 

……夜の野営は豚ネズミの肉となった。

雛鳥の林の奥でもあるし、居るのだろう。

丸々と太っていて美味しい。

「教会の者としては、心苦しくもあるけどね」

苦笑いしながら、ジュリオさんが言う。

「ネズミの命は心を痛めるけど、芋の命は心が痛まないって言うなら、オイラは単なる無知のこだわりだと思うな。命を頂いて生きるのがオイラ達、生き物の宿命じゃないか」

オスカーが言う。

ソフィーは頷く。

……でもなんか険悪な空気になりそうでちょっと怖い。

「これは手痛いな。でもオスカーの言う通りだね。これから考えてみるよ」

ジュリオさんが大人だった。

騎士様が庶民に手を上げる訳にも行かない、と言う事だろう。

ジュリオさんは「こだわりを抜くにも時間は必要だから……」と、豚ネズミは食べなかった。

 

 

更にキーファを採取し、キルヘンベルに帰ると朝。

緑プニ汚れが凄くて、お互い笑う。

ジュリオさんが特に凄かった。

「ジュリオさんもアトリエで洗います?不思議な毛布に、中和剤石鹸(青)で綺麗になりますよ。モニカと一緒に使うといいですよ。終わったらオスカーと洗うから……ね!」

汚れたソフィーがオスカーを見る。

オスカーもかなり緑色になっている。

「なんか、便利道具の感想を求めてるのか?」

オスカーが鋭い。

「えへへ……まぁそうなんですけどね」

ソフィーが笑う。そしてジュリオさんに迫る。

「そういう事なら、使わせて貰おうかな……いいかな?モニカ」

ジュリオさんも、そう話してモニカに向く。

モニカが頷いて、4人でアトリエに行く事に。

 

 

「なんか、ソフィーっておおらかよねぇ……あのアトリエ、ソフィーの家じゃないみたいだわ」

アトリエへの山道……モニカが言う。プラフタしか居なくても、コルちゃんが出入りしているし……

「そう?でも不便な場所だけど、立派な家だもん。頑張ってるジュリオさんとモニカにも、使って貰いたいってゆーか……ジュリオさん、新入りだから宿舎が不便だって、言ってたからね!」

ソフィーはそう言って、杖を振り振り歩く。

 

 

そしてアトリエに着くと……先ずソフィーとモニカと、調達品でアトリエへ。

ぷにちゃんに綺麗にして貰うのだ。

「プラフタただいま~!」

元気良く帰る。

「おかえりなさい、ソフィー……表に知らない方が居ますね」

プラフタは窓の付近をパタパタと飛ぶ。

「なんと教会騎士団のジュリオさん、って言うんだよ。なんとモニカがね……」

開口一番、ソフィーはにやけながら……

「こら!ソフィーは何を言おうとしてるの!」

モニカがソフィーの口を塞ぐ。

……コイツ、絶対会った途端にエッチした……とか言いそうな空気を、素早く察知した。

……プラフタには既に話したのだけども……

「モガモガ……」

「あまり待たせちゃ悪いから……早く行かないとね!」

モニカはソフィーを連れて、コンテナへの地下扉の閂を外す。

 

 

ぷにちゃんに綺麗にしてもらい、ソフィーがアトリエから出てきた。

「あはは……じゃあジュリオさん、どうぞ。モニカは中で待ってますので……」

出てきたソフィーは、服こそ汚れたままだけど、髪と顔色があまりに綺麗になっていて、ジュリオさんは驚く。

「本当に凄く早いんだね……しかも髪も肌も凄く綺麗になってる……驚いたよ」

そう言って、ジュリオさんはアトリエに入る。

 

アトリエの外のソフィーとオスカーは、少し離れた場所で待つ事にした。

「あの毛布、便利だもんなぁ……」

オスカーは朝の空を見上げる。

雨に降られたり戦闘したり掘り起こしたり……

旅から戻ると、結構汚れていたりするけど……

空は綺麗だ。

 

「いつかあたしも、あんな毛布作るもんね!今の所は、ふわふわゼッテルだけど……プラフタと鋭意研究中でございます!」

ソフィーは自分のメモを眺める。

旅をしたりすると、メモ帳もなかなかのダメージを受けている。

「頼りにしてるぜ、錬金術士様」

オスカーは空を見上げたまま、そう呟く。

「えへへ……やる気はあるよ~っ!」

ソフィーは足をバタバタする。

これからの錬金生活も、やりたい事が沢山あるのだ。

 

 

そうして2人で話をしてると、モニカとジュリオさんが出てきた。

「ありがとう。凄いねあの毛布。毛布は汚れちゃったけれど……本当にいいのかい?」

ジュリオさんは申し訳なさそうに言う。

「すぐ落ちるからいいんです。それよりも、また旅先で頼りにしてます」

ソフィーは笑顔で返す。

そして、モニカとジュリオさんが帰るのを見送った。

 

 

……ソフィーとオスカーがアトリエに入る。

不思議な毛布を先ず洗って外に干して……

もう1つの毛布を使う。

プラフタは本棚へと向かう。

ソフィーとオスカーも身体を洗い、洗濯をする。

そしてオスカーは帰って行き、錬金術生活。

遂にマイスターミトンの作成。

 

 

お昼になり、コルちゃんが訪れる。

「こんにちわ~……」

嬉しそうな表情。

「どうしたの?なんか売り上げでも良くなったとか?」

ソフィーもつられて笑顔になる。

「実は……ロジーさんと結ばれまして……」

毎晩押し掛けて、遂に結ばれたと言う報告だった。

そういえば……

コルちゃんとぷにちゃんの部屋には行かなくなったけど……

今日もモニカとフル回復したばかり……

でも更に寝ちゃうと、浸け置き時間をどう過ごしていいのか分からないし……

 

でも!コルちゃんとコンテナへと行く事にした。

「生々しい報告をするには、ぷにちゃんの部屋だよね?」

ソフィーはイヤらしい笑みを浮かべる。

「嬉し恥ずかし気持ちいい……色々とぐるぐるしました」

コルちゃんは、そう言って微笑む。

……ソフィーから見ても可愛い……

 

「でもコルちゃん……ゴリ押したね~……」

ぷにちゃんの部屋の前、棚の廊下で服を脱ぎながらソフィーは言う。

「かわされる事がありませんでしたので……ロジーさんが優しい人で本当に良かったです。金属の調達も出来て、思う存分打てると喜んでいました」

コルちゃんも服を脱ぎながら言う。

服を丁寧に畳んでて、ソフィーも畳む事にした。

 

 

ぷにちゃんの部屋で、コルちゃんの体験した嬉し恥ずかし気持ちいい……

初めての2人のエッチを堪能する事にする。

「なんか、随分とウキウキしてない?そのウキウキで飛んで行っちゃいそうなくらいだね」

そう言って、ぷにちゃんがぷるぷるしてた。

 

 

………

鍛冶屋ロジックスの地下の寝室の記憶……

ソフィーは初めて知る場所。

シックな部屋の作りで、黒いソファーと、低いテーブルに置かれた、古びた銅のランプが目立つ部屋。

「なんか、布団で一緒に寝るなんて、恋人みたいです」

コルちゃんとしても、初めて通された鍛冶屋の地下の寝室。

いつも1階のお店の傍ら、カーエン石が入った壺の側のソファーで寝てたけど、お互いベッドで……

と、誘われて……

2人で明かりを落として、コルちゃんはロジーさんとベッドに入る。

 

……

……うわぁ……めちゃめちゃドキドキしてるよぉ……きゅんきゅんしてるよぉ……

その時のコルちゃんの、苦しいくらいのドキドキに、ソフィーもコルちゃんも、ぷにちゃんの中でもじもじする。

息苦しいくらいにドキドキしてて、決めた覚悟もどこかに飛んで行きそうな感じ。

 

……

「なんだか俺もコル助を意識してきて……なんだかコル助のドキドキとか移ったみたいだよ……」

今まで子供扱いだったけれど、ロジーさんはそう耳許で話す。

「へへ……ロジーさんも……ドキドキしてくれたなら、嬉しいです……でも私は……もう、爆発しそうなくらい……」

そう言い掛けた時に、布の擦れる音と共に抱き締められた。

「んあぁ……っ……はぁぁっ……」

肌襦袢のコルちゃんが、ロジーさんに抱き締められて、いつもよりも高い声で鳴いた。

ぴくんぴくんして、強く目を閉じて身体に力が入る。

 

「だ……大丈夫か……?」

ロジーさんは驚き、離れて、コルちゃんを気遣う。

コルちゃんは目を開けて、ロジーさんに手を伸ばす。

涙が零れて目の辺りが熱くて、ロジーさんが滲んで見えた。

「爆発……しちゃいました……」

コルちゃんに覆い被さるように身体を起こしたロジーさんが、視線を外して困った顔をする。

ロジーさんも照れて、真っ赤な顔をしていた。

 

「そ、そうか……なんかごめん……俺もこんな事をするのは初めてで……」

少し戸惑いながら、ロジーさんは謝る。

「泣いちゃうくらい、嬉しいんです……嬉し過ぎて苦しいなんて気持ちは、初めてです」

コルちゃんは両手を口許に当てて、ゆっくり話す。

「そ、そうなのか……そんな事を言われるなんて……光栄だな……」

ロジーさんは照れながら戸惑い、コルちゃんは身体を起こす。

 

あれだけ苦しかったドキドキも、落ち着いて来た。

「また……ぎゅっ、てして欲しいです」

そう言って両手を伸ばす。

「俺も……コル助をまた……」

ロジーさんが近付いて、身体を合わせる。

また強いドキドキが戻って、熱い涙がじわっとして、1つ零れる。

「あの……ちゅ~して……下さい……」

顔がすれ違って抱き合う2人……ロジーさんの耳許で、コルちゃんが小さな声で言う。

ロジーさんがほんの少し身体を起こし、ロジーさんの顔の影が正面に来た。

 

……

「初めて、女の子の唇にキスしたな……」

薄く開いた唇と唇が触れて、離れる。

「初めて……男の人と……キスしました」

コルちゃんはロジーさんの瞳を見る。

暗がりで、でも僅かに光る瞳……

 

……

「なんでまた……コル助は俺が好きになったんだ?」

もう1度、顔がすれ違って抱き合って、ロジーさんが尋ねる。

「分かりません……とにかく好きになっちゃったんです……キスしたら……もっと好きになりました」

コルちゃんは答える。

そしてコルちゃんも、ロジーさんを抱き締めるように手を回す。

「そ……そうだったな……」

抱き合って、お互いのドキドキを感じる。

 

……

……

……

お互いに、長い沈黙。

その後でロジーさんは、コルちゃんの両肩を撫でる。

「はぁぁ……はぅぅ……」

……布の擦れる音……身体をふるふると震わせながら、コルちゃんは息を吐く。

……どうしようもない、爆発してる気持ちを吐き出す。

吐き出しても吐き出しても、その気持ちは吐き出しきれない……

するっ、と肌襦袢がほどけて肩が出て、コルちゃんは、ロジーさんにしがみついていた、両手を降ろす。

そうすると、更に肌襦袢はほどけて、おっぱいが少し出るくらいまでほどけていく。

 

……

「はあぁぁぁ……」

なんかソフィーがぴくぴくしだした。

……あたしもこういう便利な服欲しい……

「ひゃああっ……あのソフィーさん……?」

ソフィーがそのままコルちゃんにしがみついて、コルちゃんもぴくんぴくんする。

「なんか初めてなのに色っぽくてずるい!コルちゃん!」

「そんな事言われても……」

2人でうねうねする。

「ちゃんと集中したいのですが……」

「あ、ごめんごめん……あたしも集中したいけど思わず……」

 

……

コルちゃんは肌に温い空気を、熱を感じて、強く目を閉じる。閉じてから、目を開ける。

「ど……どうしたらいいんだ?」

ロジーさんが聞く。

「どうしましょうか……あの……ちゅ~して欲しいかな……と」

コルちゃんは答える。

一番して欲しい事……と思って、それしか浮かばなかった。

……もう一度、開いた唇と唇を合わせる。

今度はさっきよりも長くくっつけて、離れた。

「はあぁぁ……」

ぷにちゃんの中で、色々と予習してきたけれど、こんな気持ちにはなった事がない。

モニカの初めては、なんか凄く上手くリードしてくれて……

ソフィーは、あまり覚えてなくて……

でもそんなのも、今はうまく思い出せない。

そのくらい、ドキドキがはじけ飛びそうで……

息が荒いのが恥ずかしくて……

足が落ち着かなくて……

 

「触って、いいか?」

ロジーさんの顔の影が、そう聞いた。

「はい……大丈夫です……」

コルちゃんは、恐る恐るそう答える。

「ひゃうぅっ!?」

熱い手が肩に触れて、コルちゃんは上擦った悲鳴を上げて、強く目を閉じる。

「あ、大丈夫か?コル助……」

ロジーさんは手を引っ込める。

「好きで……嬉しい……のがもう、どうにも……」

コルちゃんはぽろぽろと涙をこぼしながら、そう言って身体を震わせる。

「泣いてるみたいだけど、大丈夫……なのか?」

ロジーさんが心配そうに聞いた。

「大丈夫……です。もっと……あの……」

そう言うコルちゃんの唇に、唇が重なって……ロジーさんのてのひらは乳房を覆う。

「はあぁっ!」

コルちゃんの唇は開き、重なってる唇も開く。

唇の裏を濡らし合うような、そんなキスと、熱いてのひらの感触に、コルちゃんは堪らず身体をかくん、かくん、と震わせた。

「あっ!あっ……あっ……」

 

足が開いて、お股が濡れて溢れて……ハジケてる……肌襦袢は左右にはだけて、完全にとろけた気分になって、身体から力が抜けて、ベッドに沈む。

 

……

……初々しい~っ……

ソフィーは思う。

でもソフィーも、そんなだったんじゃ……

いや、痩せてる身体を見られたくなくて、脱いで見られたのは、結構経ってからだったような。

 

……

ロジーさんの唇が離れて、ロジーさんは身体を起こし、ベッドから離れる。

そして服を脱ぎ出した。

暗がりの中、コルちゃんは肌襦袢で涙を拭いて、そんなロジーさんの姿を眺める。

……ハジケた後だからか、凄くぼ~っとしていて、影が少し色を付けたなぁ……

と、ぼんやり思う。

少しだけロジーさんに見える影……

 

「コル助……いいのか?」

脱ぎ終わり、その影は言う。

「明かりを……ロジーさんがよく見えないもので……」

コルちゃんはそう言って、左手をロジーさんに伸ばす。

「あ?……ああ、明かりか……」

ロジーさんはまた、ベッドを離れると低いテーブル辺りを探る。

 

そして古びた銅のランプに、火を灯した。

 

暗闇に慣れた目に、古びた銅のランプの灯りが刺さる。

「普通、消して、って言うもんじゃないのか?」

そしてロジーさんは、横たわるコルちゃんを覗き込む。

「へへ、ロジーさんです……暗くて……ロジーさんではない人なのかと……思ってしまいました」

すっかり毛布をかぶったコルちゃんが、ロジーさんに微笑みかける。

 

……

2人とも……可愛いよおおおおお……ソフィーがうねうねする。

「あの……ソフィーさん……だだもれ……」

「しょうがないじゃん!コルちゃん可愛いぃ!」

ぷにちゃんの中、ソフィーはコルちゃんに抱きつく。

「うぐぐ……ソフィーさんのきゅんきゅんと……私のドキドキで苦しいです……それに恥ずかしい……です……」

「あたしも同じだよおぉぉ……!」

2人でうねうねする。

嬉しくて恥ずかしくてドキドキして……

きゅんきゅんする。

 

……

それから、2人はたどたどしく肌を合わせて、ちゃんと繋がって……

ゆっくりゆっくりと。

でもエスカレートしていく。

「ふあぁぁっ……熱い……ぎゅっ、て……ぎゅっ、てして……下さい……」

ロジーさんに、ハスキー眠くなるボイスで言う。

 

……

……何この可愛い生き物ぉぉぉ……

「生き物……!?」

そんなこんなで2人して、もじもじうねうねする。

思った以上に濡れてしまい、時間を膨らませ過ぎた。

 

 

「13時間も……どうするんですか……」

「きゅんきゅんしたぁ……なんか……疲れたよ……」

……取り敢えず眠る。

 

 

……起きても、13時間なんて消化できるはずもなく……

「……なんか……惰眠という贅沢を……」

コルちゃんはよく眠る。更に起きても眠ろうとしてる。

「コルちゃんよく眠れるねぇ……あたしなんか……退屈で死にそうだよ……」

ソフィーは6時間くらい眠ったけど、眠れなくなった。

ぷにちゃんの中でふわふわしたり、ぼよんぼよんしたりして過ごしてる。

 

「ぷにちゃんぷにちゃん……」

ぼよんぼよん着地ごろごろして、うつ伏せになった所でソフィーはぷにちゃんを呼ぶ。

「何?ソフィー」

「オスカーとかジュリオさんの能力って……どうなってるのかな?」

「ん~……ソフィーから、モニカからの情報があるから分かるよ」

「分かるの!?」

「うん。えーと……」

 

 

オスカーの能力は……

 

魔法HPMPLP……HPMPLPバリアを得る。

ダメージを受ける時、魔法を行使する時、疲労を受ける時に魔法のバリアが肩代わりする。

魔法……魔法を使える。また、技として常人離れした攻撃ができる。

マナの伊吹……この能力を持つ者の近くに採取物が現れる。

識別(植物)……この能力はマナの柱でなく、生まれつき覚醒している能力。植物と会話ができる。

 

「マナの伊吹凄くない!?採取物が現れるって……どうゆうことなの!?」

ソフィーは驚いてぷにちゃんに尋ねる。

「外でどんな作用を及ぼしてるのか、我には……分からぬが……」

ぷにちゃんは、老人ぷにちゃんの真似をする。

「ぷふーっ!間がそっくり!」

ソフィーは笑ってごろごろする。

「あたしも会ってみたいんだけどねぇ……」

ぷにちゃんは呟くように話す。

「話した事ないの?」

「無いんだよねぇ……あたしが寝てる時は老人の人格だって伝わってはいるんだけど」

「あ。あとそうだロジーさんの能力も知りたい!」

 

 

ロジーさんの能力は

 

錬金術、力。……新しい物を作り出す事が出来る。

錬金術、技。……特性を移す事が出来る。

特性適用。……特性を自身に適用させる。

魔法HPMPLP……HPMPLPバリアを得る。ダメージを受ける時、魔法を行使する時、疲労を受ける時、魔法のバリアが肩代わりする。

魔法……魔法を使える。また、技として常人離れした攻撃ができる。

 

 

「錬金術士じゃん!」

「そうみたいだね。まあ錬金術っていうのが、なんか凄く個性豊かで、ソフィーみたいに釜を使う人も居れば、使わない人も居る……って記憶はあるなぁ」

「釜って必需品だと思っていたけど、そこからあたしの誤解だったんだねぇ」

「まあ、釜を使う事で出来る錬金術とかあるんじゃない?アレを作るなら釜必須。コレを作る時には釜いらない。みたいに」

「そうなのかなぁ……錬金術士って色々なんだねぇ……」

「そもそも皆色々だよね。音楽作ってる人、物語作ってる人、料理する人……誰しもが何かに決めるんじゃないかな?」

「ほほ~ぅ……ぷにちゃんも人に詳しいんだねぇ……」

「そりゃ、ソフィーとモニカ、コルちゃんを美味しく頂いてるからね。勉強になってます」

「なるほど……エリーゼお姉ちゃんも引き込めたら……ぷにちゃんすごい物知りになれそう」

「それ……いいね!」

「さて……ジュリオさんはどんなんなの?」

 

 

……ジュリオさんの能力は……

 

魔法HPMPLP……HPMPLPバリアを得る。ダメージを受ける時、魔法を行使する時、疲労を受ける時、魔法のバリアが肩代わりする。

魔法……魔法を使える。また、技として常人離れした攻撃ができる。

 

 

「以上だね」

「モニカと同じくらいシンプルなんだね?」

「そうだねぇ……」

そんな話をして、膨らみ過ぎた時間を過ごした。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[両ハナぶら下げてた話]
天真爛漫の証。ガチ天真爛漫だと、周りも引く。

[コルネリア露店]
化粧品や様々な器、謎の商品の並ぶ謎の店。見た目華やか。

[バーニィ先生]
教会の子供達を管理監督している先生。常にキルヘンベルをパトロールしている。

[ディーゼル先生]
教会の子供達を管理監督している筋肉先生。バーニィさんと行動を別にしている。常にキルヘンベルをパトロールしている。

ドナーストーン[伯爵]
雷の爆弾。ドナーストーン伯爵という名前の伯爵、どっかに居そう……

[汚れ取りふわふわゼッテル]
ちょこっと調合品。汚れ取り紙よりも低コスト。

[朝のミルクタイム]
子供達のテンションも上がる!

[エロエロ]
退屈な田舎街。夜に楽しい事と言ったら……

[森の街道を離れた、銅いもだらけの泉]
旅の道中に休憩ポイントが欲しくなったので登場。ゲームでも、ランダムイベントで泉が湧く。

[紅いも]
甘いおいも。旅をして良かった感じが、ここにある。

[銅いも]
銀いもの銅バージョン。紅いもよりも更に甘い。とろける甘さ。でも腐るのが早い。

フラム[大先輩]
凄い爆弾。お世話になりっぱなし。

[ジュリオさんのこだわり]
別にゲームに於いて、菜食主義者、という事でもない。というか、何かしら食べてるシーンがない。


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錬金術のアトリエ 11

錬金術のアトリエ 11

 

膨らみ過ぎた時間がようやく終わり、ソフィーとコルちゃんは、ぷにちゃんの部屋を出る。

時間は、お昼のままだった。

「これは……今晩は眠れないかも……です」

膨らみ過ぎた時間、眠りまくっていたコルちゃんが呟く。

「あたしは、錬金術生活だから、余計に本とか読んじゃうかなぁ……」

ソフィーはそう話し、コルちゃんを眺める。

……可愛い生き物……そんなイメージがコルちゃんに付いた。

やっぱ恋してると、可愛さが10割増し増しになるよなぁ………なんて。

そしてコルちゃんは帰って行く。

 

 

ソフィーはそのまま、アトリエで錬金術生活。

まずはマイスターミトンを決めて完成させる。

「遂に出来たよ!銀いもパワー付きの装飾品!」

ミトンなのに戦闘用の装備……

ミトンと言えど防御+10に回復効果が乗る「変異物質」が付いている。

なお、ソフィーの装備している……

「旅人のベスト」の防御力は4。

モニカの「ハードコート」で6。

ジュリオさんのプレートベストで10。

銀いもってば回復効果付きの+10なので、現状の防具全てが、銀いもに敵わないのである。

 

「やりましたねソフィー」

プラフタかパタパタしながら、マイスターミトンに近寄る。

……それからも錬金術生活は続く。

 

アトリエの掃除、錬金談義なんてしていたら、あっと言う間に夕方になり……

それでも更に色々と作る。

ちょこっと調合の品物なんかも、色々と企んだり。

あれ作ってみようこれ作ってみよう!

……で、時間は過ぎてゆく。

 

 

「プラフタ……ひょっとして……朝になる?」

ソフィーはふと、窓を眺めて気づく。

ちょこっと調合お菓子編とか企画してると、時間が過ぎるのが早い早い。

「どうやら、そのようですね……」

……朝になる時間だ。

「今日は種の日かぁ……お祈りに行かないとだね!ついでに作りまくったお菓子を振る舞って来ないと!」

ソフィーが、持ち帰った紅いも銅いもで作った、ちょこっと調合のお菓子をまとめる。

原材料もお菓子も、コンテナ永久保存とか出来るから、作りまくってしまった。

「お口に合えばいいですね」

プラフタも一緒に企画してたから、そう話すプラフタの声も、どこかウキウキしてる。

プラフタも、お菓子作りが大好きみたいだ。

 

 

そして、ソフィーはアトリエを出る。

……いい天気だ。

ヴァルム教会は人だらけで、後ろの方でお祈りをする事にする。

お祈りが終わり、広場にジュリオさんとモニカ、オスカーにマルグリットさんとホルストさん、ハロルさんにレオンさんとコルちゃんが集まる。

他の人達もお祈り後の井戸端会議ならぬ、噴水端会議をして、それぞれ別れて行く。

お祈りにかこつけて、情報交換の時間でもあるのだ。

 

「ソフィー、お祈りに来るなんて偉いじゃない」

モニカが言う。

「暇だからって来てるんだけど、後ろの方でお祈りする専門でして……」

ソフィーは髪を弄りながら答える。

今回はハロルさんが証人になってくれたんだけど……

「じゃじゃ~ん!あたし印のお菓子もあるんだよ!……でもハロルさんが教会にお祈りなんて、珍しいんじゃない?」

ソフィーがお菓子を振る舞いつつ、ハロルさんを見る。

「いや、レオンがな……教会好きらしくて連れて来られたんだ……まあ、悪くないがな」

なんか言い訳をしている。

さてはレオンさんと……レオンさんに気に入られてたからなぁ……

 

「ふふふ……そしてアタシのお店もオープンなのよ?生地が足らなくて困ってるんだけどネ」

レオンさんが振る舞われたクッキーを食べながら、ウインクする。

ハロルさんと並ぶと……お洒落カップルだ……

「あ。つい先日出来たクロースがありますよ!束ねた金糸も作りましたし。コルちゃんのお店に登録もしておきますね」

ソフィーが言う。

今必要みたいだし、登録しようと思ってた変異物質金の糸と、変異物質クロースを渡す。

「これ、あなたが作ったの?いい生地だわ!」

レオンさんが喜んで受け取り、なんかお金を多く貰った。

 

「ソフィー……オマエ中々やるな……良い物を作るじゃないか。クッキーも思った以上に旨い」

ハロルさんも誉めてくれた。

……作った物が好評なのは……

プラフタが神経質で厳しい性格だからかも……

ソフィーは思う。

「ともかく……これで開店できるわ!記念すべき最初のお客様は、あなたにしましょう!」

レオンさんも上機嫌だ。

 

 

ストリート、時計屋の前にレオンさんの露店があった。

外に出る4人のパーティーで、レオンさんの露店へと行く。

そこでソフィーは最初のお客様として……

峰綿花と魔鳥の羽、ケモノの毛皮をありったけ買った。

「オイラも普段着を注文しておこうかな……母ちゃん忙しくて頼みづらかったんだよ」

オスカーは呟く。

「私も、可愛い服は欲しいのよね……」

モニカもそう話す。

 

そうして、レオンさんのお店で、ジュリオさんが服を買う。

モニカも注文してた。

それぞれ依頼報酬も貰ってるし、お金はある。

使い道が無かっただけだ。

ソフィーは鉱石とかパメラのお札とか、コルちゃん露店の雑貨等で散財してるけど。

 

「あたしも……服買えば良かったかも……」

ケモノの毛皮を抱き締めて、ソフィーは呟いた。

……錬金術の事しか考えてなかった……

 

 

そして4人で、カフェのモーニングサービスを食べる。

今日も獣たちの寄合所に依頼があり、そこへ行く事にした。

 

 

「今日も銅いも紅いもが食べられるね!」

ソフィーは元気に先頭を歩く。

「それは、楽しみになっちゃうわね」

モニカも隣を歩く。

「さて、それもいいけれど、今日は陣形を気にして戦って行こうか」

獣たちの寄合所までの道、ジュリオさんに戦う時の陣形を教わりながら、打ち合わせしながら歩いてく。

「打ち合わせしようにも、この歩いてる時の陣形が……ねぇ……」

 

そうして話し合う中、モニカがオスカーの方に目を向ける。

植物への挨拶回りをしたくて堪らなかったみたいで、ジュリオさんが荷車を引いてる事をいい事に、かなり離れた街道の外れに居る。

 

「オスカー、植物回りを楽しみにしてたからね~。ゆくゆくは1人で、どこまでも旅をしたいって言ってるくらいだからね~………」

ソフィーも、オスカーの方に目を向ける。

「彼も旅をしたいのか……男は旅を求めるモノなのかな」

ジュリオさんは、そう言って微笑む。

「あたしも、旅をしてみたかったりするんですよ。今はまだまだ、そんな感じじゃないんですけど」

ソフィーも杖を振り振り、軽い足取りで話す。

そんな旅の道。

……おもり付きで近場の旅だけど。

 

そんなこんなで、森の中の道。

獣たちの寄合所近くに差し掛かった時に、遠く離れていたオスカーが、こちらに戻って来た。

「少し街道から外れた所に泉が湧いてたぞ。銅いも紅いもも生えてる場所だし、昼食にしようよ」

お昼も過ぎて、そこそこ経つ頃、オスカーがようやく顔を出した。

「待ってたよぉ!お腹ペコペコだよ~」

ソフィーが杖を高々と上げる。

そして街道外れに向けて草を刈り、荷車の通る道を作る。

それが、他の旅人も使える目印にもなるし、またソフィー達が使えたりもするし。

 

今回はジュリオさんの大剣が、ダイナミックに凪ぎ払われ、泉への道を作る。

「大剣、いいなぁ……刈る事も寝かす事も出来るもんなぁ……」

道を作るジュリオさんの背中を眺めて、オスカーが呟く。

「でも、凄く重いのよね。オスカーにも扱えないんじゃないかしら」

モニカが話す。

確かに、ひどく重い剣でソフィーでは、持ち上げるのがやっとだった。

 

 

ともかく泉まで荷車も連れて行き、野営にする。

「ふぅ……これだけ刈っても草は大丈夫なのかい?」

泉までの道を作ったジュリオさんが、オスカーにそう尋ねる。

根っこさえ残れば、大概平気なんだと話をされていたけれど、気になるみたいで。

「平気だよ。また来る頃には、また元気に伸びてるハズさ……おっ?銅いもだらけだなここ……」

オスカーが泉の側の、赤い茎の草だらけの場所を見る。

「ジュリオさんの剣、凄いねぇ………」

 

少し後ろから、ソフィーとモニカと荷車が、凪ぎ払われた道を歩く。見事に凪ぎ払われていて歩きやすい………

凄く濃い草の香りがする………

「ん~……この泉の水は大丈夫だな。ここにカマドを作るかな」

泉のすぐ側に、オスカーが何やら作業を始める。

 

「結構汗かいちゃったよ……泉の水かぶりたい……」

ソフィーは荷車から柄杓を出して来て、泉の水を浴びる事にする。

「わ、私はいらないわ……」

モニカが両手の手のひらをソフィーに向ける。

「汗臭いの、和らぐよ~♪」

ソフィーはそう言って、泉の水を柄杓でかぶる。

「ど、どうせ雨に降られたりするし……私もかぶっておこうかしら……」

汗の臭いが気になるモニカも、ソフィーの所にふらふらと吸い込まれていく。結局、ソフィーとモニカ、ジュリオさんも水をかぶって過ごした。

 

しかも泉の側に銅いもの群生地まであって、厳選銅いもにありつけた。

「ん~……♪旅はやめられないわね!」

めちゃくちゃ美味しい厳選銅いもに、モニカもご機嫌だ。

 

 

そして獣たちの寄合所での採取生活。

今回はキメラビーストも豊作で、やたらと襲われる。

そんな戦闘では………

結局はレヘルン先生、フラム大先輩頼み。

受けるダメージも大きく、これではそうそう知らない場所へ突撃するのは考え物だ。

 

 

……今回は銀いもがやたらと採れて、帰り道となる。

 

「モニカ、荷車あるんだから一眠りしておきなよ。何かあった時に、モニカに頑張ってもらわないといけないからさ」

帰り道で、オスカーがモニカに言う。

「モニカが乗ったくらいじゃ、荷車の重さも変わらないから、そうしなよ」

ジュリオさんもそう勧めて、モニカは少し渋っていたけれど、荷車で眠る。

「なんか、ソフィーは元気なんだね?」

その荷車を引いてるジュリオさんが、隣を飄々と歩くソフィーに尋ねる。

オスカーは少し離れた所で、植物に挨拶回りをしている。

一番元気なのは、間違いなくオスカーなのだろう。

「ふむ~……なんででしょうね?」

ソフィーは首を傾げる。

 

 

そんな旅の道は続き、夜も越えて朝になり、キルヘンベルへと帰って来た頃にはお昼。

キメラビーストのお供、緑プニアタックの汚れが相変わらずで……

荷車は八百屋さんの横に置いて、アトリエに行く荷物を持つと、4人でアトリエへと向かう。

ソフィーとモニカでアトリエに入り、洗濯したり、身体を洗ったり……

その後で、ソフィーとジュリオさんが入れ替わる。

 

「今回も充実の旅だったよね~……お昼も夜も、朝も甘々だったもんね~」

それを待つソフィーとオスカー。

ソフィーは空を見上げて呟く。

「今回も、元気な銅いもだらけだったからな。特にあの泉の所は2回使ったけど、とんでもなく銅いも地帯だもんな。増えすぎて生き残り合戦になって……お?コル助じゃないか?」

オスカーは話し、遠くの人影に気づく。

でっかい手甲が、ふらふらしてるので分かりやすいシルエット。

「旅から帰って来たのを見かけましたので」

 

そしてコルちゃんがやって来た。

錬金術の複の能力で蝕まれる身体を休めに、日々ぷにちゃんの所に来る。

ちゃんと元気にならないと、おちおちモノを増やしたり出来なくなる、という問題を抱えていたりするのだ。

「おお、コル助。お店はどうだい?」

緑プニ汚れのままのオスカーが尋ねる。

緑プニ独特の、少しフルーティーな匂いがする。

 

「はい……教会の子達が見てくれているので、順調です。……私よりもお客さんにもウケが良いかもです……そろそろ私も、ソフィーさんと一緒に採取の旅に行けそうですが……行ってもいいです?」

コルちゃんが言う。

露店に置く物も、もっと充実させたいらしい。

「おおー!でもコル助、戦えるのか?魔物も出るんだぞ?」

戦いの後、といった感じのオスカーは、そう言って笑う。

「大歓迎だよ!明日から一緒に行こうよ!」

一足早く綺麗になったソフィーも、そう言う。

「私も……マナの柱に力を覚醒させてもらいました……それに手甲を武器に……心得もあるです……」

旅の商人になる夢があったらしいコルちゃんは、身体に似合わない大きい手甲を使う、体術の心得があるそうだ。

 

 

「ソフィー、お待たせ……あら、コルちゃん」

モニカとジュリオさんが綺麗になって出てくる。

「明日から、コルちゃんも外に出るって。頼もしい味方が増えるよ!」

ソフィーは2人に笑顔で話す。

「仕込み鉄甲か……コルネリアは戦闘の心得がありそうだね」

ジュリオさんがそう話し、コルちゃんの手甲を手に取る。

「ジュリオさんはこの武器を知っているのですか?」

コルちゃんは、自分のルーツの手掛かりになりそうだと、ジュリオさんに尋ねる。

でもジュリオさんは見た事があるのと、書物で知ったらしく、あまりルーツの手掛かりにはならなそうだった。

 

モニカとジュリオさんが帰るのを見送って、そして3人でアトリエに入る。

「おかえりなさい。ソフィー……あら、賑やかなのですね」

プラフタは出迎える。

「ソフィーさん……3人でアトリエに入ったのでは……コンテナが開かないです……」

コルちゃんに言われて、確かにそうだな、と思う。

そしてオスカーと、また外で待つ事にした。

ぷにちゃんなら、ほんの数分だし。

 

 

「お待たせしました。次からは旅の方でも宜しくお願いします」

ほんの数分でコルちゃんは出てきて、ソフィーとオスカーはコルちゃんが帰るのを見送る。

「コル助の、あの手甲は飾りじゃなかったんだな」

見送るオスカーが、そう呟いた。

ケンカとかしてる所も見掛けないので、やたらとでっかい飾りとしか認識してなかったけれど、攻防一体の立派な武器だったようだ。

 

やっと2人でアトリエに帰る。

「おかえりなさい、ソフィー……」

プラフタがお出迎え。

「ただいま~♪旅はいいよねぇ……」

ソフィーはご機嫌で、プラフタもどこか機嫌が良さそうだ。

「そうですね。ジュリオにモニカ、コルネリアと……オスカーもそうですね。色々な方が帰って来るものだから、私も退屈しませんね」

プラフタはパタパタと窓の側を飛ぶ。

 

そしてソフィーはオスカーを洗う。

「中和剤石鹸、まだ課題が残るなぁ……」

ソフィーもハダカ族になって、オスカーを洗いながら呟く。

自分を洗うより、人を洗った方が良く分かるものだ。

「洗われ心地はいいんだけどな。それにこれだけさっぱりする感じがあるなら、やっぱり今までに無い、いいものだよ」

オスカーは言う。

コルちゃん露店でも売れてるみたいだし。

コルちゃんも増やしやすいみたいで、化粧品、ふわふわゼッテル……

ちょこっと調合のお菓子……井戸水の桶やお皿と……売れっ子露店だそうだ。

 

洗濯は、ふわふわゼッテルを試す。

不思議な毛布同様、服の汚れをみるみる吸い取る。

そうして汚れたゼッテルは、燃料にしかならなくなるけど。

 

ちょっとだけオスカーとイチャイチャして、オスカーは帰る。

 

 

そしたら……明日の朝まで錬金術生活!

 

 

……朝。蜂の巣が手に入らないので、ハチミツが未だに調合されていない。

ちょこっと調合……

というか、お菓子作りの幅が大いに広がりそうなのに……

ともかく出掛ける事にする。

恵みの森に蜂の巣はあるという話を、オスカーからは聞いた。

「錬金術でお菓子作りは……定番ですね。私もよくやりました……と思うのですがまだ定かではありませんね」

お菓子作り大好きなプラフタは、そう言ってた。

 

 

「じゃあ、行って来るね~♪」

ソフィーはアトリエを出る。

今日も旅立ちの朝。

しかも今日からは、コルちゃんが参戦だ。

「モニカおはよう!……あれ?」

いい天気のキルヘンベル。

爽やかな朝に、なんか疲れた表情のモニカ。

 

……ジュリオさんとエッチし過ぎて、というかジュリオさん時間かけてふにゃふにゃにして、更にじわりじわり悦ばすものだから………

ハジケすぎて、お疲れのようだった。

「腰は平気なんだけど……ね」

少しにやけたりノロケたりしつつ、モニカは言う。

そんな爽やかな朝のキルヘンベル。

 

「なんか……あたしも川沿いの宿で、ゆっくりじっくりしたいかなぁ……調合に時間使わなきゃ時間使わなきゃで……いじめられてないなぁ……」

ソフィーは呟き、モニカは笑った。

その後でジュリオさん、コルちゃんとオスカーと、5人集まって、ホルストさんのカフェへと行く。

「おやコルネリアさんも……」

ホルストさんは言う。

オスカー用モニカ用ジュリオさん用……

そしてコルちゃん用の依頼を出してきた。

 

総合して考えると……またもや獣たちの寄合所となった。

まあ、戦闘に課題が残ってるし、コルちゃんも銅いも、紅いもを食べたいだろうし……

木材需要がやたら多い。

そしてキルヘンベルの街を出る……

その前にレオンさんの露店に寄る。

 

「あらあら。この度、オーダーメイドの商品も取り扱いを始めたのよ。錬金術士だと……特性を移す事が気になるかも知れないでしょうけど……私は特性を3つまで移せるわ」

ソフィーに、レオンさんは言う。

お店を出した途端に、人気の高いレオンさんの露店。

ハロルさんがトーシとかしたらしく、イキナリ商品とか積まれていたり。

そしてレオンさんはなんか、とんでもないハイレベルな職人さんのようだ。

そして、レオンさんも他の国のぷにちゃんに能力を貰った1人なのだとか。

所謂、イミテーションのマナの柱だ。

 

「じゃあ、作ります!」

錬金術生活の賜物、変異物質クロースで防具を作るのだ。

そして変異物質付きのハードコート、旅人のベストを注文する。

パーティーの防御力をかなり上げる筈。

 

 

「3回目だね~……ここに行くのも」

そして獣達の寄合所に向かう森の道。

ソフィーが荷車に立ち、呑気に言う。

「そうだね。なかなかの強敵だから、気を引き締めて行かないとね」

ジュリオさんは荷車を引きながら歩く。

身体を鍛える事に御執心なので、今回はモニカとコルちゃんも荷車に乗っていたり。

「サポートガードやサポートアタックにも馴染んできたけど……頑張って行かないとね」

モニカも剣の技が気になる人だ。

盾の使い方とか、よくジュリオさんと剣術談義をしている。

 

 

ソフィー達は雛鳥の林を抜けて、獣たちの寄合所へと向かう。

ソフィーは荷車に揺られて眠り、モニカはジュリオさんの隣を歩く。

荷車に乗っているのにも飽きた。

「ん~……ははっ……穏やかな毎日だね……」

オスカーは道端の木々草花ばかり見ていて、時折独り呟く。

完全にアブナイ人だけど……そっとしておく。

「オスカーさん……誰と話してるです?」

その事を知らないコルちゃんが、地雷に飛び込んだ。

「ああ、いつも挨拶してくれるんだよ。あの木さ」

オスカーは何の変哲もない木を指差す。

「……オスカーさんの言葉で……木に通じるです?」

コルちゃんは聞く。

気になる所、そこだったのか……

「通じるさ。正確には思いが伝わってるんだろうけどな……」

オスカーは少し考えながら答える。

そんな2人のやり取りを、ジュリオさんもモニカも注目した。

「ふむぅ……草とか木は、動けないから……退屈してるんじゃないでしょうか……」

コルちゃんは続ける。

モニカは、ジュリオさんと何か話す事にした。

 

 

お昼の野営。

銅いもと紅いも鍋を食べる。

「美味しいです!壺屋で食べた物とは甘さが全然違います!」

コルちゃんが目を輝かせる。

やはりコルちゃんも大好きな味だった。

「この銅いも……ハチミツまでは行かないけど蜜が取れるかも!オスカー」

ソフィーも明るく笑って閃いた。

蜂の巣ないし……

銅いもは錬金術の図鑑レシピには無い物だけど。

「持ち帰るのは構わないけど、帰りに掘ろうか……これから長いかも知れないだろ?」

そりゃそうだ……

悪くなるのが早いみたいだし。

それにここはまだ群生地じゃないので、厳選銅いもは、まだ無い場所みたいだし。

 

 

そして獣たちの寄合所……

ここは雛鳥の林よりも木が多く、草も背丈がある。そんな深い森の中……

「なるほど……キルヘンベルよりも空気がおいしいです!」

コルちゃんは背伸びをして、深呼吸する。

「植物に溢れてる所ってのは、そういうモンだよな。近くに居るだけで安心できる空気と、空気感があるもんな」

そんなコルちゃんの側で、オスカーが話す。

 

「モニカ、あのヘビ……でっかい」

ソフィーは木の上ばかり探していて、でかいヘビを見つける。

「本当にでかいわね……何てヘビなのかしら?」

ソフィーに言われて、モニカも木の上を眺める。

青と茶色の複雑に混ざった模様のでっかいヘビが、枝の上で何かを狙っているのか、上を見ていた。

「猛毒コブラの偽物だね。しかしアレはでかいね……見れるなんて貴重な事だよ」

ジュリオさんも来て、でっかいヘビの居る枝を見上げる。

何でも砂地に住む猛毒コブラと同じ模様の、違う種類のヘビなのだとか。

猛毒コブラ特有のフードも無く、果物を食べて森に住むヘビで、人前に姿を見せる事は無いそうだ。

「本物はここには居ないのです?」

コルちゃんが尋ねる。

「文献によると……居ないハズ。としか分からないね」

大人しい、猛毒コブラの偽物を眺めて、ジュリオさんは答える。

「本物の居ない所で偽物だけが居る……不思議な話です」

コルちゃんは呟く。

「たまたま偽物っぽくなっただけなのかもね?」

ソフィーも呟く。

 

 

そして獣たちの寄合所の手前、銅いも地帯の泉で遅いお昼にする。

 

「……!!」

コルちゃんが赤いぬるぬるした何かを見つけて、素早くモニカにしがみついた。

「ど、どうしたの!?コルちゃん……ぅわ!」

赤い、何か溶けかけてる生き物が、芋を掘って食べていた。

「な、何だこれ……」

ジュリオさんも驚きだ。オスカーもよく知らない生き物みたいだったけれど、芋を食べると泉に入って行った。

「なんか溶けかけてるヘビのお化け?」

コルちゃんと共に、モニカにしがみつくソフィーも呟く。

あまりにも訳の分からない生き物だった。

「魔物じゃないみたいだったけどな……確かに不気味な生き物だったな……」

オスカーも呆気にとられて、そう呟いた。

 

 

そんな新発見をして、しっかり厳選銅いもは食べる。

溶けかけてるヘビのお化けは、もう出てこなかった。

「これは!美味し過ぎるです!」

厳選銅いもを食べて、コルちゃんは目を輝かせて立ち上がる。

銀いもみたいな金属の皮は、銅というだけあって錆びた銅の色。

その中身は、ハチミツ色のいもなのだ。

それはめっちゃ甘い。

「見た目は悪いんだけど、美味いんだよな、これ」

そんなコルちゃんを見て、オスカーも微笑む。

「ロジーさんも甘党なので、是非食べさせてあげたいです!」

そうは言うものの、銅いもは劣化が早いので、街に戻る頃には苦味も出ていたり。

堀りたてならではの味だったりもする。

 

 

ともかく、獣たちの寄合所での採取生活を始める。

キノコと薬草、キーファと言う木材を荷車に乗せる。

キメラビーストが襲い掛かって来るので、戦闘もある。

お供に緑プニ、マンドラゴラもどうにかしないといけなかったり………

ただ、ソフィーのパーティーも装飾品、マイスターミトンにより……

防御が上がり回復が付いてる分、前回よりもかなりラクだ。

また、コルちゃんがレヘルン先生もフラム大先輩も使う事が出来る。

防御があるなら、サポートアタック連打攻撃という手段も取れる。

そんな連打攻撃の中で、コルちゃん昇龍拳がキメラビーストを吹き飛ばしてた。

 

「コルちゃん凄い!強いね!」

ソフィーが喜ぶ。

「ぷにちゃんの力が凄いです。……以前は、こんなに空気とか風とか……まとわりついたりしなかったです」

コルちゃんは自分でも驚いていた。

そんなこんなしながら夜まで採取生活して、荷車を重くして帰り道となる。

 

 

「荷車、大丈夫かしら?」

今回、だいぶ重くなった荷車の車輪を見て、モニカが呟く。

そんなモニカの背中には、コルちゃんが眠っていたり。

……コルちゃんの増やす錬金術の能力は、自分自身を消費する都合で、睡眠時間を長く取らないといけない。

そんな訳でモニカの背中で眠っている。

「なんか、カタカタしてるよねぇ………」

ソフィーも車輪を見て呟く。

でも最初からそこそこカタカタしてたような……

「引いてる感じだと、そんなダメな感じじゃないけどね」

荷車を引いてるジュリオさんが話す。

「ジュリオさんも荷車重くないですか?交代したりしますよ?」

ソフィーが言う。

最近はパワーもあるので、荷車も引けるんじゃないかと思う。

「いい訓練になっているから、問題ないよ」

ジュリオさんは、そう言って爽やかに笑う。

どうせトレーニングに駆け回っているのだから、ちょうどいいのだそうだ。

……頼もし過ぎる。

 

 

……そんな採取生活からキルヘンベルに帰って来ると、朝だった。

八百屋前で、ジュリオさんとオスカーとは別れて3人でアトリエへと向かう道。

雨が降ってる。

 

「久しぶりですね……モニカさんのおっぱいに甘えるのも」

どしゃ降りのアトリエ前、コルちゃんが言う。

「……ま、まあそうね」

素直に喜べないモニカが言葉を濁す。

「コルちゃんの可愛い声、楽しみだなぁ」

ソフィーがそんな事を言いながらアトリエのドアを開ける。

「そ……そういう事は言わないで……言わなくても意味なかったですね……」

コルちゃんが呟く。

ずぶ濡れ3人でアトリエに帰って来た。

雷まで鳴り出した。

……キルヘンミルクスネークチャンスだなぁ……

なんて、ふと思った。

 

「おかえりなさい。ソフィー、モニカ、コルネリア」

プラフタが出迎える。

「ただいまプラフタ~っ!」

「ちょっ!やめなさいソフィー!」

ずぶ濡れソフィーがプラフタに触ろうとして、プラフタが逃げる。

「えへへ~……ついつい……」

3人は服を不思議な毛布に挟んだりして、ぷにちゃんの部屋へと行く。

 

 

「……よく来た……時間は膨らますか……?」

久しぶりのぷにちゃんの人格だ。

「なんか久しぶり?」

ソフィーが言う。

「時間の経過は……それほどしていない……ように思うが……久しいのか……それで……時間は膨らますか……?」

ぷにちゃんは言う。

……特に感慨深い物があるわけではないようだ……

そもそも、そんなに久しぶりな訳でもないみたいだし……

「あ。お願いします」

朝だから、朝のままの方がいい。

 

「分かった……では……」

ぷにちゃんの中で、3人が震える。

「んっ……んっ……ふあぁぁっ……」

コルちゃんの可愛い声……それがきゅんきゅんさせる。

モニカもきゅんきゅんしてるのが分かる。

そんな思いの重なりが、ひどくハジケさせる。

「ああっ……きゅうぅぅっ!」

ほんの少しの時間で、エロエロは止まる。

3人は脱力して横たわる。

 

「これ……どうなってるの……?」

散々されてるけれど、このどうにもならない感じにソフィーは疑問に思う。

「……身体の全てに……触れている……気持ちも伝わる……それと……我は長くこれを……している……」

ぷにちゃんは答える。

ずーっとやってきた事という訳だ。

 

「あぁ……眠くなる……です……」

コルちゃんは帰り道に寝てたり、採取生活の時も眠そうだったから、すぐに眠りに落ちる。

ソフィーもモニカも、疲れから眠りに落ちてく。

 

 

……3人は目を覚ます。

膨らんだ時間が終わりに近付き、ぷにちゃんの温度が低くなって、目覚めるという寸法だ。

「ふあぁぁ……これ休まるなぁ……」

ソフィーが起きると、ぷにちゃんはぺた~んとなっていて、既にモニカとコルちゃんが起きていた。

モニカのおっぱいに甘えてる。

「コルちゃん可愛い……でっかいおっぱい羨ましい?」

ソフィーはそんな2人に近寄る。

「私のおっぱいが大きくても……私は甘えられないです……」

羨ましい事は無いみたいだ。

 

「あ!前々から思ってたんだけど!」

急にソフィーが目を見開く。

「な、何?」

おっぱいをなでなでされながら、モニカが尋ねる。

「おっぱいって、カエルのお腹的な感触するよね!?」

ソフィーがそう言い出した。

「ソフィー……なんか昔も、そんな事言ってたわよね?」

モニカがジト目を向ける。

この話は、オスカーが言い出したらしい話なのだけど。

「確かに!カエルのお腹と考えると、似てる感触ではあります!」

コルちゃんが自分とソフィーのおっぱいも確認すると、その話に乗っかった。

 

……そして元気になり過ぎる感じなので、3人でぼよんぼよんして過ごすのも忘れない。

「空中横回転!」

「開脚縦回転!」

ぼよんぼよんしてるウチに、新技も開拓していくハダカ族3人なのであった。

 

 

……そして、3人でアトリエに戻る。

外は雷雨だけど、コルちゃんは教会の子供達は店番をしてるから……と帰って行った。

モニカはアトリエでゆっくりしていくようで、そのまま錬金術生活をする。

「そうだモニカ。今回の銅いもをぐるこんしたら……甘い蜜だけ抽出出来るよ!美味しいお菓子が出来るかも」

ソフィーは、もう苦味も出てしまったであろう銅いもの群れを、錬金釜の中に映す。

「ソフィー、そんな事も出来るのね」

アトリエにある本を読んでいたモニカが、顔を上げる。

「新鮮うには買い込んであるし、お菓子作りもバッチリだけど……何か食べようよ。豚ネズミの肉もあるから……」

ぷにちゃんからの評価で、豚ネズミの肉は栄養的に望ましいらしい。

「そうね。オスカーの調味料もやたら置いてってるし……いいわね」

モニカと食事を作り、錬金術生活。

プラフタと3人で色んな事を話す。

 

 

「エリーゼも呼ぼうかしら。本が好きなんだから、プラフタも大好きよ。きっと」

お昼を食べたぐらいで雨も上がり、モニカが窓から外を見て言う。

「エリーゼお姉ちゃん……いいねそれ!ちょうどお菓子もあるもんね」

ソフィーは大賛成だ。

「じゃあ、ちょっと行って呼んでくるわね。雨上がりって散歩したくなるもの」

モニカはそう言うと立ち上がり、アトリエを出る。

ソフィーは錬金術生活を続ける。

……そんな中、ソフィーは雨上がりの空を眺めてみたり。

エリーゼお姉ちゃんがアトリエに来るのは、かなり久しぶりだ。

 

 

「久しぶりね。ソフィーのアトリエにお呼ばれするのも」

エリーゼお姉ちゃんは、本屋の店終いまで従業員にお任せで、アトリエにやってきた。

「ダークマターの臭いが、エリーゼ本当に苦手だったものね」

モニカはそう話す。

半年ぐらいダークマターのアトリエだったから……それで久しぶりになったようだ。

「ソフィーはあの臭いの中、よく過ごせると感心したわ。……あれ?今はなんか凄くいい匂いなのね……」

エリーゼお姉ちゃんは目を閉じる。

「お菓子の匂いじゃないかな。お菓子と一緒にエリーゼお姉ちゃんを待ってたから」

ソフィーは、お茶の用意をしながら笑う。

「あなたが、本屋のエリーゼなのですか?」

ベッドで本の開きになって休んでいたプラフタが、パタパタと飛び上がり、エリーゼお姉ちゃんの前に現れる。

 

「……本当に……空飛ぶ本が……居るのね……」

エリーゼお姉ちゃんは驚きのあまり固まり、ぷにちゃんみたいな、ゆっくりな口調になった。

「空を飛んでいる訳ではありませんが。初めまして。プラフタと申します」

 

 

そうして昼過ぎからも、アトリエで楽しく過ごす。

エリーゼお姉ちゃんも慣れると、色々とプラフタに質問していた。

ただ、プラフタは記憶が無い場合が多く、色々な質問に答えられなかった。

……性別も覚えていないようだった。

けど、最近のソフィーの動向はバッチリ覚えていて、それで盛り上がる。

 

……夜遅くまで盛り上がるものの、エロい話は一切カットされていた。

プラフタもエリーゼお姉ちゃんもモニカも、そういう話は好きじゃないみたいだから……

 

そんな最中も、ソフィーは錬金術品を仕込む。

 

 

そしてモニカとエリーゼお姉ちゃんが帰り……

でも、とにかく朝まで錬金術生活。

浸け置き時間がいちいち発生するので、ソフィーはベッドに座ったり寝てみたり。

その側を、プラフタがパタパタとやって来る。

「エリーゼお姉ちゃん、プラフタにちょっと似てるよね~……」

そんなプラフタを眺めて、ソフィーは呟く。

「そうでしょうか?……まあ、コルネリア、モニカ、エリーゼと並べるのなら、エリーゼが1番私寄り、という事なのでしょう」

「それそれ~……プラフタが人間になったらさ~……師匠の錬金術を目の当たりに出来るね!」

「そうですが……人間になど、なれるのでしょうか?」

「むしろ本になった事が凄過ぎるんだけどね」

「なぜ私は、本になったのか……そこの記憶に戻って来て欲しいものですね」

「だよね~……」

色々と世間話とかしながら過ごす錬金術生活。

夜は更けて行き、朝になってゆく。

 

 

そして……朝にお出かけ。天気のいい日。

「行ってくるね。プラフタ」

ソフィーはアトリエを出る。

昨日モニカと作った、いもシロップのお菓子を持って。

銅いものシロップは、日持ちするのだ。

日持ちしなくてもコンテナの中なら不滅だけど。

「ほぉ……これをソフィーから私に?嬉しいですねぇ……テスの方が好きそうなので、私は味見だけ、させて頂きましょう」

ホルストさんに、お菓子をあげる。

そして依頼とか見る。

ホルストさんは、そのお菓子を1つ食べる。

「ん~……上品な甘さ……これは凄い物ですよ。芋ですね?ん~……」

なんか、ホルストさんが食べ尽くしてしまった。

美味しいみたいで良かった。

 

「今日は恵みの森に行きたい!」

ソフィーが言う。

「あそこ、行った事無かったわね。キルヘンミルクスネークのすみかなんだけど、魔物も居るからって」

モニカが呟く。

オスカーも頷く。

「じゃあ、その恵みの森という場所に決まりだね」

凄い近場なんだけど、ジュリオさんもコルちゃんも賛成してくれた。

そしてキルヘンベルを出発。

 

 

……そして朝10時には着く。近い。

「こんな近い場所だったとは……」

魔物も緑プニとマンドラゴラ。

もう攻撃連打の陣で倒すだけなので、随分と強くなった……というか……ジュリオさんとかコルちゃんとか、戦闘慣れしてる。

採取品はうに、蜂の巣、魔鳥の羽が採取できる。

白蛇、キルヘンミルクスネークが木に登っていて、あっさり捕まえる事が出来る。

近くの森よりも大物が沢山居た。

泥蛇、泥カエルも居る。

 

 

「白蛇の皮はレオンさんが喜びそうだなぁ……」

野営メニューの泥蛇、キルヘンミルクスネーク焼きを食べながらオスカーが呟く。

ジュリオさんも、蛇を食べる。

こだわりをどうにかしたみたいだ。

「どう?ジュリオさん、美味しいでしょ?」

ソフィーが尋ねる。

蛇の焼いたやつは懐かしい味がする……ような。

「まだ複雑な気持ちでね。安心して味わえないんだけど……美味しいんだろうね」

ジュリオさんは、そう言ってコルちゃんを見る。

モニカと一緒に、美味しそうな顔をしていた。

 

採取は夜を通して、蜂の巣を見つけて回る。

結構落ちてるけど、なぜかは分からない。

 

 

朝になったら、切り上げて帰る事にした。

「どうする?ジュリオさんもアトリエ来る?」

ソフィーが誘う。

3人でぷにちゃんの部屋で過ごした後で、ジュリオさんはモニカが、オスカーはソフィーが……

と順番に洗う計画だ。

「いや、汚れもそれほどでもないし、今日は帰るとするかな。ソフィーから貰った石鹸とふわふわゼッテル、凄く助かってるよ」

中和剤石鹸(青)とふわふわゼッテルは、ソフィーも量産して、コルちゃんも増やしたから、キルヘンベルにかなり出回り出す予定。

ソフィーの調合でも1回5分、25枚とか出来る。

コルちゃんに至っては100単位でどかすか増えるらしい。

ちょこっと調合……便利。

 

 

3人でアトリエに帰る。

「おかえりなさい。ソフィー、モニカ、コルネリア」

プラフタが出迎える。

いつものアトリエの光景。

「ただいま、プラフタ」

「また、お邪魔します」

「ただいまです……プラフタ……さん……どうしても……さんが付いてしまうです……」

今日もバッチリとプニ汚れた3人が帰って来る。

でもしっかり採取品を持ち帰って来て、コンテナに入れる。

 

「なんか、頼もしくなりましたね」

プラフタは言う。

「私達も、もう大人だからね!しっかりしないと」

「ソフィーからそんな言葉が出てくるなんて、意外だわ」

「私も……もう子供ではないのです……」

3人もそれぞれのリアクションをして、不思議な毛布に服を預けて行く。

「コルちゃんも採取に来るようになったら、3人仲良くぷにちゃんの部屋だね」

ソフィーは笑う。

……寂しく独り寝た夜が懐かしく思えるぐらい、独りの時って無くなった。

「また……モニカさんに甘えるです」

3人はぷにちゃんの部屋でまた、時間を膨らませて眠る。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[あたし印のお菓子]
ソフィーの作ったお菓子。プラフタ監督が優秀なので、その分クオリティーが高い。

[紅いも]甘い。
[銅いも]とろける甘さ。
[厳選銅いも]もう、とんでもなくとろける甘さ。

[緑プニ汚れ]
フルーティーな匂い。

[川沿いの宿]
少し時代を感じる建物らしい。

[コルちゃん用の依頼など]
ホルストさんの所に舞い込む依頼が、凄く多いんだとか。

[他の国のぷにちゃん]
他のマナの柱の事。発電所のように、魔力発生装置であるマナの柱は、そこかしこにある。

[イミテーションのマナの柱]
オリジナルとは違って、製作するに当たって全ての条件が整わず、代替手段を用いて作られたマナの柱。

[猛毒コブラの偽物]
砂地に居る、猛毒コブラに似てるヘビ。フードが無く、果物を食べて過ごしている。毒があるかは謎。

[赤い、溶けかけてるヘビのお化け]
いもを食べてた。金属の皮を持つ銅いもを、パツン、パツン、って音を立てて食べてた。

[ダークマターの匂い]
エリーゼお姉ちゃんが凄く近寄らなくなった。モニカは平気みたいだったけど、文句は言われた。

[いもシロップ]
銅いもの、甘さを抽出!ハチミツとは違った趣の甘さが嬉しい。
[いもシロップのお菓子]
甘くて美味しい。

[泥ヘビ]
ヘビって泥が大好き。色んな種類のヘビが泥を纏う。
[泥カエル]
カエルも泥が大好き。色んな種類のカエルが泥を纏う。
[キルヘンミルクスネーク]
キルヘンベルの守護神。……なんてね。
[白蛇の皮]キラキラ。


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錬金術のアトリエ 12

錬金術のアトリエ 12

 

ぷにちゃんの部屋で過ごして、そして3人はそれぞれ別れる。

 

 

モニカの夜は……川沿いの宿が満員だったり……という事で、鍛練デートの日々らしい。

コルちゃんはすっかり、鍛冶屋が家みたいになってるとか。

そんな近況も、ぷにちゃんの中で伝わったりしてる。

 

ソフィーはまた次の朝まで、プラフタと錬金術生活をする。

 

お昼前くらいに、エリーゼお姉ちゃんが遊びに来た。

プラフタと、すごく仲良しになってる。

「エリーゼお姉ちゃんも、ぷにちゃんの中に入る?すっごい力の覚醒……するかも知れないよ!」

ソフィーが勧めてみる。

「……得体の知れない物に身体を任せる勇気はないわ。せっかくだけど……」

そう断られた。

 

14歳の頃に、エロエロな話をして怒られた事もあるから、ソフィーもそれ以上は勧めなかった。

「なら、いいんだ。でも一応ね。黙ってるのも薄情かなって思ったんだ。夕食も食べてくよね?」

昼過ぎに、そう誘う。

「そうね……そうさせて貰おうかしら」

エリーゼお姉ちゃんは言う。

「お料理の腕も上がったんだよ?美味しいんだから!」

ソフィーはそう言って、コンテナの採取物を使う。

豚ネズミの肉でも紅いもでも……

色々な食べ物のストックが増えまくっているから、じゃんじゃん食べて減らさないと……

……しかも番人ぷにちゃん達が、丁寧に保管してくれているし……

……どのみち減らしきれなくて、ぷにちゃんが食べるしか無さそうだけど……

そしてまた、錬金術生活をして1日を過ごす。

 

 

……そして翌朝、ソフィーはアトリエを出る。

いつもの時間、今日もオレンジ足と鳩たちが飛び回ってたり、地面に食事を求めていたり。

オレンジ足、ってのは小鳥。

クチバシと、足が鮮やかなオレンジ色をしていて、1匹見かけると、探せば100匹ぐらい居るとか。

夕方には壮大な群れが飛び回り、その姿はまるで動き回る雲のように見える。

10万匹くらいが群れてるっぽい。

 

そして今日も5人でホルストさんの元へ。

依頼の精算と受注をして、噂話を聞きながら、モーニングのサービスを食べる。

そしてレオンさんのお店へ。

 

キルヘンミルクスネークの皮の売り先として、オスカーが選んだのがレオンさんのお店だった。

「蛇の皮なのに白いのね……それに磨けば幾らでも綺麗になるみたい。言い値で買うわ!」

めっちゃ飛び付いた。

「恵みの森に沢山居るみたいだから、こんなもんでいいよ」

オスカーが値段を提示する。

「そんなもんでいいの!?でも近所に居るならそうよねぇ……それをバラしちゃうなんて、欲が無いのね!」

レオンさんは驚く。

「高値ふっかけても、高い物が出回るだけじゃないか。それより買える値段のお洒落なモンが並んだ方が、みんな嬉しいんじゃないか?」

レオンさんのお店にキルヘンミルクスネークの皮を売って、それからキルヘンベルの街を出る。

 

 

……今日は北へ!岩こぶ山麓へと向かう。

 

「やっぱりオスカー、いい値段で売るよね~……これでレオンさんのお店からお洒落な服や鞄、靴なんかがお手頃価格で出回ったら……もっとキルヘンベルの街が賑やかになるよね!」

安く売った事で、ソフィーは喜ぶ。

「ソフィーはあれよね。お金入ると全部使っちゃう所を見ると、あまりお金に価値がないと思ってるんじゃないかしら?」

モニカは疑問に思う。

「僕はソフィーやオスカーの考え方、好きだな……確かに安く売ったなら、安く服を作れるはずだからね。そしてそれが人を呼んだりする……なんて、なかなか至らない考えだね」

ジュリオさんはにこやかにそう言って賛同してくれた。

「裕福なおばさんも……色々な素材を売ってくれるです……旦那様が目的も無いのに買うとか……私のお店では買い取りは苦手ですので、レオンさんのお店を紹介してるです」

コルちゃんもそう言う。

思い思いに語らいながら、岩こぶ山麓へと歩く。

 

 

「岩地だね……枯れ木と綿花とアードラ……食べ物への期待は薄いかなぁ……」

お昼前に着いたのだけど、ソフィーはお腹が減っていた……カリカリトーストもちゃんと食べたんだけど……

「今日はどうしたの?まだ10時じゃない」

不思議そうな顔をして、モニカが言う。

「緑プニは食べられるし、アードラも食べられるから、1つ倒したら料理するかい?」

オスカーが言う。

早速緑プニとアードラが襲って来たので、倒して野営とする。

 

 

……野営として囲んだ、頃合いの石の群れ。

ジュリオさんが作ったかまど、それぞれが座る石。

そこに乾いた風が吹く。

緑プニを煮込む鍋……

オスカーは少し離れた場所で、アードラを捌いて肉にしてる。

「こんなフルーティーな味なのね。プニ汚れって確かになんかイイ匂いなんだけど」

食べたモニカが驚く。

緑プニ……

キミも美味しかったのか……

ソフィーも驚く。

 

荒れ地での採取は続く。

ガラスの欠片が時折採れる。

そしてアードラが襲って来る。

アードラが好戦的過ぎる。

 

 

「綿花が採れるのはいいけど、夜は更に寂しい所だね~……」

夜の野営。

ソフィーが呟く。

枯れ木が多いので、野営の火には困らなかったけれど、もし雨なら最悪だ。

ソフィー的に、寂しい所は好きじゃない。

「緑プニは美味しいです……緑プニは何を食べているんでしょうか……」

コルちゃんは緑プニを、むに~んと食べる。

そしてそう話すと、また、むに~んと食べる。

気に入ったみたいだ。

 

「緑プニって鍋で熱を加えると……持って帰れるんじゃない?」

そんな事をモニカが閃いた。

「これは!早速やってみたいです」

コルちゃんもノリノリで、試しにやってみる。

倒すと、俯いて顔が無くなり、ゆっくりとろけて無くなってしまう緑プニが、熱を加えるとゼリー状に固まり、冷めても固まったままだ。

「これ、入れる物と燃料があったら、収穫として使えるかもなぁ……」

緑プニ君を茹でるオスカーが呟く。

「入れる物なら任せて下さい!色々と記憶しているのです」

コルちゃんは少し離れて、皆に背中を向けてしゃがみこむ。

「記憶していれば作り出せるって、凄いよね……」

ソフィーは呟く。

コルちゃんの錬金術は、物があって、その物を増やす……

のではなく、物を記憶して記憶した物を作り出せる。

始めにその物が無ければ作れないのだけれど、その物は、必ずしも手元に無くてもいいのだ。

 

そして少しして、お洒落な麦わら帽子……

を逆さまにしたような入れ物を作って戻って来た。

そこに緑プニを入れて……

そんな新発見をしながら、採取生活をする。

そして朝になったら切り上げて帰る。

 

 

「これ、露店で売るです!教会の子供達も喜ぶですよ!」

コルちゃんは緑プニの加熱ゼリーに、目をキラキラさせてる。

「ソフィー版加熱ブロックと、加熱鍋を作らないとだね!いよいよ……」

ソフィーは前々から作ろうとは思ってる道具に、思いを致す。

錬金釜は、加熱ブロックを寄せると沸き、離すと冷める。

なので絨毯の上に錬金釜がある。

絨毯と錬金釜もセットで、絨毯を折って陣を崩すと、錬金釜はセットが崩れて小さくなる。

 

……それはともかく、その加熱ブロックの、普通に調理に使えるやつを作りたいのだ。

「ソフィーさん……期待していますよ!」

ソフィーとコルちゃんはノリノリだけど……

味と食感が、イマイチ好きになれなかったモニカとジュリオさん、オスカーはそんな2人を遠巻きに見ていた。

 

 

「今回は寂しい場所だったけど、また次の旅……は明日だね!また朝に!」

夕方……キルヘンベルに到着。

ジュリオさんと別れる。

裏ストリートに用があるみたいで、街の入り口で別れた。

 

「オイラも色々な植物が見れて話せて……やっぱり旅はいいな!ソフィー、また朝な!」

そしてストリート、八百屋前で、オスカーと別れる。

レオンさんもマルグリットさんも、もうぼちぼち店仕舞いの時間。

 

コルネリア露店は、店仕舞いも子供達とロジーさんでやってくれるらしい。

意外と放任状態だ。

 

 

3人でアトリエに向かう。

街はずれに差し掛かると、いつもモニカと井戸端会議しているおばさんたちが集まって、造花を造っていた。

「あらあらソフィーちゃんもモニカちゃんも元気そうだねぇ……コルちゃんもまぁ……こんな汚れて……」

プニ汚れた3人を見て、おばさんたちは言う。

キルヘンミルクスネークを採ってる時から、ソフィーもモニカもコルネリアも、汚れてる事が多かったものだから、慣れた光景だ。

「はい!今日も元気に色々採ってきました!今度パーティーしましょうよ?豚ネズミ肉の鍋パーティー!」

ソフィーは笑顔で言う。

「あら……良いわねえ……最近出回っているものねぇ……」

おばさんたちは笑って言う。

……出回ってる?……

「最近、冒険者の方が……雛鳥の林で獲っているのです……私の露店で、その為のフラム大先輩も売れているのです」

コルちゃんが言う。

……なるほど……

「じゃあ、今度やりましょう!皆で!」

ソフィーが言い、おばさんたちも乗り気になる。

「今度回覧板作るわ!最近キルヘンベルも賑やかだからね!教会広場でやろうかね!」

 

 

そんな寄り道をして、3人はアトリエに帰る。

洗濯して……ぷにちゃんの部屋でゆっくり過ごして……そして……

モニカとコルちゃんは帰り、ソフィーとプラフタで錬金術生活を始める。

 

……ちょこっと調合で鍋と加熱ブロックを作ろうと思うものの……まだそんな調合は出来ないみたいだった。

出来る物を作る。

場数を稼がないと……マイスターミトンをもう1つ作り、パーティーの防御を更に上げるべし。

「でも、武器の改良とかもしたいんだよねぇ……」

錬金釜にマイスターミトンの為の素材を配置して、決まった後にソフィーが呟く。

「ですが……あまりいい特性が無いとか言ってましたが……何か見つけたのですか?」

プラフタは言う。

……確かに、「変異物質」が特に凄いってだけなんだけど……

武器に乗る特性、と考えると、これだ!

……ってものがない。

 

「見つかってないんだよぉ……インゴットだと現状と同じような武器になるみたいだし……」

ソフィーはそう言いながら、マイスターミトンの素材がゆらめく、錬金釜を眺める。

「ならば、防御からでいいのではないですか?そもそも、その防御も人数分揃っていないのですよね?」

プラフタはパタパタと窓の側を飛ぶ。

「確かに……まあ、攻撃は取り敢えずフラム大先輩で……」

悩みつつ、錬金術生活の夜は更ける。

 

 

「じゃ、行って来るね、プラフタ」

朝になり、ソフィーはアトリエを出る。

空の雲が厚くて、太陽の光を受けて輝いてる。

今日もオレンジ足と鳩達が、虫をほじくってる。

その中に黒い親分も居た。

……今日はどこに行こうかな……

ソフィーはいつもの道を歩く。

やせっぽちだった頃にも、こうしてどこかへと続く雲を見て、旅に出たいと思っていたんだ。

……この雲たちは、どこから来て、どこへ行くんだろう……

 

 

そしてソフィーはホルストさんのカフェに。

「おはようございます!」

元気良く入る。

既にモニカとジュリオさん、オスカーとコルちゃんが居た。

「おはよう、ソフィー。じゃあこれで揃ったから、依頼の精算とかしようかな」

ジュリオさんがそう言って微笑む。

そして色々と依頼の精算、受注をしてると、「引換券」を3枚貰った。

「あれ?これは……?」

ソフィー達は引換券を見る。

テスさんのカオが描かれている……ように思うのだけど、随分と絵心が感じられない。

「これはテスの引換えコーナーで使える、引換券です。まあ、レアなアイテムもありますので覗いて見て下さい」

ホルストさんはにこやかに言う。

 

 

今回、忘却のナーセリーで金色の蜘蛛糸の噂。

これが目を引いた。

粘銀の糸も丈夫で使えるのだけど、金色は……

きっと更に素敵素材に違いない!

そういう訳で忘却のナーセリーに行く、と決めてホルストさんのカフェを出る。

 

そこから村の出口へ行こうとするとあるのが、レオンさんの服のお店。

教会の女の子も、お店を手伝っているみたいで、お客さんも居る。

「さすがレオンさん、繁盛してるんだなぁ……」

ソフィーがそれを見て呟く。

「お店のお手伝いに……教会の子供達が手伝ってくれるから、私も助かっています。レオンさんのお店に八百屋さん……ホルストさんのカフェの、裏庭の掃除等々……働き者なので、みんな助かっているです」

コルちゃんが言う。

そのお礼を受けて、教会も潤っているのだとか。

それと、今はキルヘンミルクスネークカモン!

……は、やってないそうだ。

「つい最近だけど、あの頃はお店もなんもなかったもんねぇ……」

ソフィーはコルネリア露店、レオンさんの露店で働く子供達を見て呟く。

「そうね。でもキルヘンミルクスネークを追いかけた頃も懐かしいし、追いかけてないのはちょっと寂しいわね」

モニカもそう言ってキルヘンベルの景色を眺める。

 

「モニカ、行くぞー」

オスカーに呼ばれて、モニカは外へと向かう。

村の外へと向かう4人が、どんどんその時間を置いてってしまうみたいで、複雑な気持ちを抱いたまま、モニカもその時間を置いていく。

 

……時間はどうしたって進むから……どうせ置いて行くしかないんだけど……

 

 

「子供、出来たらどうしましょう?」

忘却のナーセリーへと向かう長い道。

コルちゃんはモニカに尋ねる。

「え?………ええ!?」

モニカは慌てる。

でも……子供出来るのは……時間の問題だろうと思う。

「ジュ……ジュリオさんが言うには、大丈夫だって言ってたけど……」

なんかそんな話を聞いた事があって、モニカはそう答える。

 

すると、コルちゃんはオスカーとソフィーと話してる、ジュリオさんの所へと行く。

「お。どうしたコル助?」

オスカーが気付く。

「モニカさんは、子供出来ないのですか?」

コルちゃんはジュリオさんを見て、そう尋ねる。

「そうだね。僕がそうした心得があるから出来ないとは思うけれど……確実ではないかな。ひょっとしたら、子供を授かるかも知れないね」

ジュリオさんはそう答える。

「あ。コルちゃんもしかして……おめでた!?」

ソフィーが驚く。

「さすがにそうではないですけど……ぷにちゃんが言うには、おめでたになるのも時間の問題ではないかと……」

コルちゃんはそう言って、ジュリオさんの引く荷車に乗り込んだ。

「ヴァルム教会に相談だろうなぁ……子供は教会で育ててるだろ?コル助の子供なら、パメラも神父様も歓迎してくれるんじゃないか?」

オスカーが言う。

 

オスカーもパメラをお母さんとして教会で育ち、マルグリットさんの八百屋へと戻った子供だ。

ソフィーもそうだ。

教会から、おばあちゃんの錬金術屋敷へと移った。

 

「ふむ……するとバーニィさん、ディーゼルさんに相談するのが良さそうですねぇ……」

コルちゃんは呟く。

コルちゃんは、教会で育てられた子供ではなかったようだ。

「でもそこに考えが至るなんて……コルネリアはしっかり者だね。いいお母さんになりそうだよ」

ジュリオさんが感心する。

ソフィーもそう思う。

 

「教会の子達を雇用していますので、バーニィさんには、既に色々と相談に乗って貰っているのです。それに雇用ですから……ちゃんと教会にお金をお支払いする契約してるです。ここの教会は……なかなかしっかりしてるです」

コルちゃん版、考える人のポーズで言う。

その服で胡座をかくと……

おパンツ見えるんだけど……

ソフィーは思う。

「そ、そうなの?パメラを見てると、とてもそうとは思えなかったけれど……」

ソフィーが言う。

「はい。パメラさんは、そんなしっかりしてる訳ではないです」

コルちゃんがそう言って、ソフィーはずっこける。

そんな話をして野営して……

忘却のナーセリーへの道を進んだ。

 

 

忘却のナーセリー、歩む者なきアベニュー……その先がお目当ての金の糸の噂の場所。

「あはは、今日もプニプニが歩んでるね。カップルかな?」

テンパった顔をしてないプニプニが2つ、歩んでいた。

そのプニプニをやり過ごし、金の糸があるとゆうその奥へと進む。

赤い悪魔、フレアデーモンがその場所を守る。

「パーティーの防御力……見せてあげるよ!」

攻撃陣、フレアデーモン袋叩き作戦で戦闘。

フレアデーモンからのダメージが、あまりないので出来る芸当だ。

防具と装飾品の銀いもパワーにより、かなり強くなった。

フレアデーモンはコルちゃん昇龍拳で飛んでく。

「逃がさないです!」

飛んでったフレアデーモンに、コルちゃん波動拳も襲い掛かってる。

マナの柱の力をよく理解しているのは、コルちゃんなのかも知れない。

敵を倒し、お目当ての金の糸もしこたま手に入れた。

 

 

「あっ!女王蜘蛛!?」

金色模様のシマシマ、黒い巨大な蜘蛛が遠くに居た。

明るい夜の眩しい星々の下、地面をのそのそして、くるくる回っているような……

「おおっ!あれがそうなのか!凄い綺麗なんだなぁ……」

キラキラ光る、金色模様のシマシマが目を引く。

オスカーがそう言って、遠くの女王蜘蛛を見つめる。

「そうだね。あんな綺麗な模様、中々見れないよ……」

皆で、感心してその姿を見る。

巨大蜘蛛はおしりをふりふりしながら、更に遠くに消えて行った。

「あんな遠かったのにハッキリ見えるなんて……凄い大きいんだね」

ソフィーが隣のモニカに言う。

「人食い蜘蛛だって言うから、こっちに来ないかドキドキしたけど……来なくて良かったわ……」

モニカはそう言ってため息をついた。

 

……でもこの場所も……昔は人が住んでいたのだろうと思う。

そうした建造物だけが残された魔物の巣なんだ……

色々と採取して、またキルヘンベルへと戻る時……

ソフィーはそう思って、忘却のナーセリーを眺めた。

 

 

キルヘンベルに帰ると夕方。

レオンさんにお土産、金の糸と銀の糸を渡す。

「貰っちゃっていいの!?なんかあなた達、本当に気前がいいのねぇ……」

レオンさんは微笑みながら呆れてた。

「巨大蜘蛛も居たんですよ!金色シマシマ模様が美しい蜘蛛だったから……きっと女王蜘蛛ですよ!」

お店の終わる時間に、レオンさんにお土産話をする。

レオンさんも旅をしてきた人なので、楽しい立ち話になって、それから、それぞれ帰る。

 

 

「お帰りなさい、ソフィー」

プラフタがお出迎えする。

ソフィーとオスカーで帰って来た。

 

いつものようにソフィーはコンテナへ行き、綺麗になってから、オスカーを招き入れる。

「なんだか、いい事あったような顔をしてますよ?何かあったのですか?」

オスカーを洗うソフィーに、プラフタが近づく。

「巨大蜘蛛の女王を見たんだよ!綺麗だったよねぇ……」

ソフィーは笑顔で報告する。

「野営の時にも、珍しい木の実があってさ。あれも旨かったよな……」

オスカーも、忘却のナーセリーで過ごした時間に、思いを馳せて呟く。

ソフィーはそんなオスカーの、でっかい身体を洗っていたり。

「あ。でもプラフタは食べる事が出来ないから……プラフタ!?」

そんな話をしていたら、プラフタが光り輝いた。

「うおっ!?眩しい!?」

オスカーが怯む。

確かに目の前で輝かれると、非常に眩しい。

 

「……また思い出しました。私は以前……500年前ですが錬金術士だったのです……錬金術の研究をしていたような……」

プラフタが記憶を取り戻し、錬金術士だった事を思い出す。そして、以前は人間だったそうだ。

「ん……そりゃあたしの師匠だし、錬金術士だったハズだよね……」

ソフィーはオスカーの身体を洗い続ける。

「いや、でもその頃を少しでも思い出したのなら……研究してた事柄なんかも思い出したりしたんじゃないか?」

オスカーはそう話す。

相変わらずのおとぼけボイスで。

「……それも、少ししたら輪郭を持つのでしょうけれど……取り敢えず新しい採取地を思い出しました」

プラフタは言う。

 

「地図に書かないとだね!」

ソフィーは素早く泡だらけの手の泡を落とし、机に向かう。

「なんか……もう裸に文句を付けるのも今更なのでしょうね……私もまさかそんな感じ……ではなかったと信じたい所です」

プラフタは、そんなソフィーをパタパタと追い掛ける。

「どうだろうなぁ……」

オスカーはそんなソフィーとプラフタを眺め、片眉を上げて呟いた。

 

 

ともかく新しい採取地を、地図にチェックする。

「プラフタも旅をしてた……って事なのかな?」

身体を洗うオスカーの隣に、ソフィーはちょこんと座る。

「おそらく……そうなのでしょうね」

プラフタも、ハダカ族2人の側をパタパタする。

「だとしたら……一人旅ってのは考えづらいだろうから……その時の仲間も居たんだろうなぁ……ソフィーにオイラやモニカ、コル助にジュリオさんが居るようにさ。それも思い出せたら……500年も経ってるから……もう居ないだろう人だから、悲しい話かもだなぁ……」

オスカーは語る。

 

そして身体を洗い終わって、泡を流す。

「そうですね……私の記憶……取り戻すのは少し怖い気もしますね……」

プラフタはパタパタと本棚へと飛んで行った。

 

「今日みたいな日は、出直すのがいいんだろうな……取り敢えず明日は休みみたいだから、明日また来るよ」

オスカーは服を着ると帰って行く。

ソフィーはそれを見送って錬金術生活に入る。

 

「さて、やりたい事は沢山あるよ~!」

下着姿で張りきるソフィー。

「オスカーは良いのですか?川沿いの宿……とやらに行くチャンスでもあったのでは?」

プラフタも本棚から出て来て、錬金釜の側に寄る。

「ん~……オスカーの気分が乗らないならしょうがないよ。あれで頑固者だから、気分が乗らない事はしないだろうし……明日は……まあ明日にならないと分からないし!」

ソフィーはプラフタと錬金術生活を始める。

 

 

そして朝。

……今日は種の日。

朝の教会から顔を出す事にする。

「じゃあ、行ってくるね!」

ソフィーは元気いっぱい杖を振り振り、朝は暗いうちからアトリエを出る。

 

 

……教会でのお祈りが終わり、噴水広場に皆で顔を合わせる。

ホルストさんにマルグリットさん、コルちゃんにハロルさん、オスカーとモニカ、ロジーさんにレオンさんとジュリオさんと集まるけれど、ロジーさんは農家の人々に呼ばれて、行ってしまった。

ハロルさんも、冒険者集団に呼ばれて行く。

 

「そうそう私ね、教会の子供を雇ったのよ。弟子入り希望って事もあってね。それであなたの採取の旅に行きたいんだけど……いいかしら?」

レオンさんに言われて、ソフィーもオスカーも歓迎する。

「これで更に頼もしいパーティーになるな。オイラも大歓迎さ」

オスカーはソフィーと一緒にガッツポーズを取る。

「マナの柱の力を持つレオンさんが来てくれたなら……更に旅が安定しますです。是非お願いしたい所でした」

コルちゃんも口許を隠して、ネコの目で笑う。

「これは……山積みの依頼も多く捌けていけそうですね?」

ホルストさんも高笑いだ。

「いずれ、あの頑固者も説得して見せるわね」

レオンさんは、冒険者集団の方を見る。

背の高いハロルさんが、頭1つ抜けて見えた。

 

「……へっくし!」

ハロルさんがくしゃみして、冒険者達が距離を置いてる。

 

「あはは!それも楽しみにしてますね!」

ソフィーはそんなハロルさんを見て、レオンさんに笑い掛ける。

 

 

噴水広場の噴水端会議も終わり、モニカに誘われて朝食。

街はずれから住宅エリアに向かう所に、新しいレストランが開店していた。

空き家を改造して造花で飾ったお店。

「こんなお店もあるんだね~……」

ソフィーは感心する。

モニカの家のペンタス達も、結構、こちらに来ている。

「ヴァルム食堂も壺屋もアレでしょ?男の人の集まる食堂じゃない?もっと女の子寄りの、でも庶民的なお店が欲しかったのよね!」

モニカはそう言って笑う。

近所の奥様方とモニカで相談して、行商人が乗っかって、エリーゼお姉ちゃんがお金の工面をして……

このレストランのオープンに繋がったらしい。

 

「このお店なら、プラフタと来れそう!明るくてお洒落でステキだね!」

そして朝食に、と訪れるレストラン。

ふとソフィーが客席を見ると、エリーゼお姉ちゃんの姿もあった。

「エリーゼ、いつの間に結構なお金持ちになったのかしら?大金がポンポン出てくるみたいで、私も驚いたわ」

華やかなレストランの店内、モニカがそう話す。

「本屋さんしてるから、お金はあるんじゃない?」

色んな所をきょろきょろ見ながら、ソフィーが答える。

中和剤石鹸(赤)(青)の姿も見かけられた。

……見た目キレイだもんね。

 

「エリーゼ、服も変わらないし、何か買ってるとか遊んでるとか、全然見ないし、聞かないものね」

モニカはそう話す。

そして、これまたお洒落な食事が出てきた。

「1番貧乏は、あたしかなぁ……」

エルノアさんの好きそうな……見た目も華やかな食事を前に、ソフィーは呟く。

「ソフィー、あるだけ使っちゃうものね。でも、ぷにちゃんが居たら、お金で出来る事なんて霞んじゃうわよね」

モニカも呟きながら、お洒落な食事を前に銀のフォークを手にする。

「それだよね~……錬金釜とコンテナが無かったら、お金貯めてたかも」

ソフィーも、お洒落な食事に目を輝かせる。

……こんなの食べてていいのかな……とか思う。

 

 

そんな美味しい朝食を終えて、モニカと別れる。

「はぁ~……めっちゃキラキラしてたよぉ~……」

モニカと別れた後で、ソフィーは1人ため息をつく。

あまりにも素敵な食事風景だったもので、思わずため息も出るというもの。

なんか、物語の王様とかの食事風景みたいだった。

 

 

そんな余韻にふわふわな気分で、ふらふらしていると、目の前にコルちゃんのお店。

眺めてみると、オスカーとお菓子コーナーを作っていて、大繁盛していた。

お手伝いの子供も、てんやわんやだ。

「うわぁ~…あれ?ロジーさんの所の剣マニアの……」

彼も今日は、コルネリア露店のお手伝いになっていた。

 

 

そんな風景を眺めて、ソフィーはホルストさんのカフェへ行ってみる。

種の日……テスさんが居るハズだし、引換券について聞いたりしないとだ。

「ああ!いい所にソフィー隊長!」

昼間から酔う冒険者に賑わうカフェで、テスさんに腕を掴まれる。

「隊長!?そんなんじゃないですけど、何かありました?」

ホルストさんの居るカウンターに引っ張られる。

「これはいい所にソフィー……かなり高額の依頼ですので、あなたに取っておいたのですよ」

 

 

……何でも巡礼街道の空き家に……幽霊が住み着いたと言う話で……不気味に思う行商人からの、高額依頼となっているらしい……

ついでに、巡礼街道に巨大な魔法の草がまた生えているらしい。

「なるほど……ジュリオさんも居るし、レオンさんも加わったし……で近場だから……行きます!お金ないし!」

ソフィーは快諾する。

行商人の皆が困ってるなら、近場だけど皆納得してくれそうだし。

「ソフィーの散財の噂は聞いていますよ。明日には、その辺りの依頼もまとめておきましょう」

 

 

巡礼街道行きを決めて、そしてそれを伝え歩いて、ソフィーはアトリエに帰る。

4枚花の芋煮とか、近くの川のナマズ……そして巨大魔法の草……おいしい場所でもある。

ともかく明日の朝までは、錬金術生活を続行だ。

更にパーティーの強化を考える。

 

 

……そしてアトリエに帰ると……

「ソフィー……実は……」

プラフタは今日、エリーゼお姉ちゃんの本屋に、お泊まりかも知れない計画があるそうだ。

昼前くらいに来たコルちゃんに、伝言を頼んだみたいで。

「そういうの、いいかも!記憶を取り戻せるキッカケも、エリーゼお姉ちゃんの本屋さんなら、いっぱいあるよね!」

ソフィーは喜んで送り出す。

 

 

夕方にエリーゼお姉ちゃんが来た。

プラフタは今日は、エリーゼお姉ちゃんの本屋にお泊まりだ。

「もう!私プラフタとゆっくりお話ししたかったのよ!コルちゃんに、こぼしてみるものね」

エリーゼお姉ちゃんはそう言って、プラフタを大事そうに抱いて行った。

 

 

そして、そのすぐ後にオスカーが来た。

「なんかモニカは今日行かないから……ってやたらと応援されたけど……プラフタはもう本棚なのか?」

オスカーはアトリエに来るなりプラフタを探す。

「なんか、皆に気を使わせちゃったのかもね?プラフタは、エリーゼお姉ちゃんの本屋さんに、お泊まりだって。オスカー本屋さんに行かなかったの?」

ソフィーは指を絡めて笑う。

「いや、本屋に居たんだけどさ、エリーゼさんが居なかったんだよな……最近居ない事も多いんだよ。新しい本の仕入れとかで、商人を訪ね歩いてるんだよな」

エリーゼお姉ちゃんも、ここ最近の賑わいに、しっかりと乗っているようだ。

 

「じゃあ……好意に甘えておこうか?ソフィー」

「うん……えへへ……」

2人はキスをする……

 

 

朝の4時……オスカーの料理の音で、ソフィーは目を覚ます。

夜になってすぐに2人で燃え尽きたものだから、朝が早い。

「おはよう。まだ暗いね~……」

ソフィーは起き出して、窓際のオスカーに近づいて外を見る。

オスカーはもうバッチリ服を着てた。

「お、ソフィー、腰とか平気か?」

既に元気なオスカーが、おとぼけボイスでソフィーを気遣う。

「結構イタイんだよね……昨日きゅんきゅんしたからなぁ……」

ソフィーは腰を押さえてヨロヨロ歩く。

「んじゃあさ……オイラちょっと外に居るからさ。ぷにちゃん頼って来なよ」

オスカーは外に出る。

こういう時に、ぷにちゃんに治して貰うのが、なんかフツーになった。

 

ソフィーは、ぷにちゃんの部屋へと行く。

さすがに、これで巡礼街道行きはツライ。

「お盛んなのね~……既に美味しくなっちゃってまあ……何もしなくても時間膨らんじゃうねぇ……」

ソフィーを取り込んだぷにちゃんが、そう思いを伝える。

「なんか嬉しそう?」

その伝わった思いが、なんか嬉しそうに思えて聞いてみる。

「そりゃ嬉しいよぉ……ソフィーも嬉しいみたいだし、そういう感情がご馳走だからねぇ……」

ぷにちゃんはソフィーの身体をマッサージして、腰を温めて治療する。

そんな膨らんだ5時間。

 

 

そしてバッチリ治ってコンテナを出て、外で待つオスカーを呼び戻す。

「さて……朝食の準備の続き……と」

ソフィーは掃除、オスカーは食事を作って旅の朝に備える。

これから旅立つ訳だし……

「あ。プラフタお迎えに行って来るね。アトリエが空っぽじゃ、良くないもんね!」

そんなこんなでキルヘンベルを出るのは、7時くらいとなった。

 

 

「最近ロジーさんが変態ぽくて困ってるです……」

巡礼街道への道。

荷車を引くジュリオさんに、荷車に乗るコルちゃんが相談を始める。

「……え?そんな相談しちゃうの?この子……」

レオンさんが呆れた顔をしてソフィーを見る。

「あはは……まあ、ジュリオさんは修練を積んだ達人ですので、そういう相談もしてるんですよ」

ソフィーは笑顔で答える。

「修練!?……なんか、初めから……凄いパーティーで驚くばかりだわ……私の常識を疑うべきなのかしら……」

レオンさんはそう言って悩む。

 

そんな2人を、コルちゃんが不思議そうに見ていた。

「うわあ!何ナニ!?」

そんなコルちゃんを見て、レオンさんは驚く。

「私……男の人の事をあまり良く知らないし、今まであまり興味も無かったので……教えて貰えると助かるのです。そして、中々に真剣な問題なのです」

コルちゃんは口許を隠し、少し悲しげな顔をする。

「まあまあ……レオンさんは都会から来た人だから……都会の子でそうした事を、男の子に相談ってのはあまりしないからね。……それとロジー君はコルネリアが初めての女性だとしたら……色々と求める所が、あるんだろうね……」

 

ジュリオさんが、コルちゃんの質問に優しく答える。

それとマナの柱の力を持つ女性は、やたらと男性を誘惑して、やる気にさせる匂いを発するのだから、慣れてない男の子は、余計にみっともない事になりがちだと話した。

……教会騎士団……も、マナの柱の力獲得の為に、そうした事を学ぶのだろうか……ソフィーはそんな事を思う。

 

「でも……寝てる所で色々とオモチャにされてしまうのは……なんだか怖くなります。それに、素敵な人だったのに……と幻滅してしまい、嫌いになってしまいそうなのです」

コルちゃんは泣きそうな顔をする。

「こ……これは切実だよジュリオさん!」

ソフィーも心配する。

「……なら、少し会わなければいいじゃないか。コル助は、お泊まりしすぎなんじゃないか?あんまりずっと一緒に居ると……悪い所ばかり目につくもんだって、母ちゃんも言ってたぞ?」

オスカーがそう言った。

「それはあるかも知れないね」

ジュリオさんも賛同する。

 

尚、ジュリオさんとモニカの場合だと、5日に1回くらいのペースで川沿いの宿に行くそうだ。

「……ためになるわね……私も思う所があるわ。……でも私の場合寝る所が時計店になっちゃってるから……どうしましょ……」

レオンさんも考え込む。

独り言がだだもれだ。

「ハロルさんも、変態な感じなんですか?」

コルちゃんがレオンさんに尋ねる。

「いや……ハロルは淡白で……物足りない感じがあって……うぎゃーーーー!!何言わすのこの子!!」

レオンさんはコルちゃんのほっぺたを左右に引っ張った。

「うにゅ~……ひっははっはへふ……」

そんな巡礼街道への道。

 

 

そして朝10時くらいに到着。

さすが雛鳥の林よりも近い採取地。早い到着だ。

またも小屋近くの木に、巨大な魔法の草がびっしり生えてる。

オレンジ足と鳩たちも、そこら中で虫をほじくっていて、トンビに鷺なんかも居たり。

「あっ!テケテケもいる!」

白い小鳥が、素早くテケテケと走っていく。

そんなのどかな巡礼街道。

 

 

……そして行商人の人が歩いていた。

「おはようございます」

「ああ、おはよう。ここのプニプニ退治かい?助かるねぇ……」

ソフィーが挨拶すると、商人のおじさんも、にこやかにそう挨拶して、足早にキルヘンベルの方へと消えて行った。

……不気味な声とやらは夜……なので採取とプニプニ退治で時間を潰す。

 

「うわぁ……おデブちゃん魚も捌けるの!?すごいわぁ」

川であっさりと釣れたナマズを捌くオスカーを見て、レオンさんは驚いて、その手元を眺める。

「ダテに太ってる訳じゃないんだよ。モチロン、美味しくなるから楽しみにしててくれよな」

オスカーはそう言って笑う。

「ふかふか緑もあったよ~♪」

ソフィーが見つけた、いい感じで若いふかふか緑も、追加される。

 

 

「なんか……もて余すわねぇ……」

夕方になり、暇だからって早めの夕ごはんもして……

モニカは空を見て呟く。

ソフィーはカーエン石を見比べてて、オスカーとコルちゃんも、カーエン石に群がっている。

「研究熱心なのねぇ……あの子達……」

そんなモニカの隣に、レオンさんが並ぶ。

「そうなんですよ。夢中になったら止まらないんですよね。そう考えると……ソフィーはオスカーがお似合いなのかしら……」

モニカはそう言って苦笑いする。

「え!?おデブちゃんってあの娘と付き合ってるの!?」

レオンさんが驚く。

「え?知らなかったんですか?……まあ……驚きますよねぇ……しかもソフィーの方が好きで、ラブラブ絶好調なんですよ」

そんな驚いたレオンさんを見て、モニカは言う。

モニカも驚いたクチだし。

「……ま……まぁ……分からなくもないわ。彼も彼なりの魅力がある訳だし。それでいつも自信に溢れてるのかしら……時折目障りよねぇ……」

「それ!分かります!」

2人は頷き合う。

 

 

そんなこんなで夜になり、怪しい笑い声のする空き家を探す。

この場所は空き家だらけで、どれがその空き家なのか……

「……夜、一晩中笑ってる訳じゃ……ないよね」

ソフィーはそう呟き、一行は忍び足で家々を巡る。

「なんか、オイラ達が1番怪しいような……」

オスカーが呟く。

「さて……どこの家からなのかな?」

ジュリオさんが家々を眺める。

そうして一軒一軒回って歩く。

 

 

「……ふふふふふ……」

「うわあああぁぁぁ!!」

明らかにすぐ側で笑い声が聞こえて、ソフィーは飛び上がる。

モニカもレオンさんも、オスカーも驚いた。

ジュリオさんは辺りを見回す。

「確かにすぐ側で声がしたのに……?」

「これ……本当にお化けが居るよ!しかもガチでヤバいのが居るよ……!」

木の柵……伸び放題の草……

明るい星の明かりにそんな寂しい景色が広がる巡礼街道。

……でもそれらしい人影は居ない。

一行は回りを見回す。

「お化けを探しに来たのかな?錬金術士の旅のご一行は………」

皆が振り向く。

6人の真ん中に、いつの間にか緑の服の2本の剣を差したおじさんが居た。

「うきゃあっ!で、出たぁぁぁ!」

ソフィーとコルちゃん、レオンさんは座り込む。

 

「……これは、少し冗談が過ぎてしまったのかも知れないな。私は旅の人形師、フリッツと言う。キルヘンベルの錬金術士、ならばソフィー……と言うのが君なのかな」

フリッツと名乗った髭のおじさんは、ソフィーを見る。

「あ……はい。そうですけど……」

ソフィーは座ったまま、そのフリッツさんを見上げる。

髭のおじさんは、優しく笑っていた。

 

「昼間に君たちを見かけてな。あまりにも楽しそうにしてるものだから、思わず観察していたのだ。キルヘンベルの錬金術士とやらにも、興味があったからな。……そしておそらく……夜の笑い声というのは私だろう。人形作りに夢中になると、笑ったりしているそうだからな……」

フリッツさんは、封のされた手紙を取り出すとソフィーに渡す。

「あの……これは?」

「これはおそらくだが……君たちはホルストから頼まれたのではないかな?彼は今も色々と依頼を繋いでいるそうだからな。それと、怪しい笑い声の話も綴っておいたから、伝わるだろう」

フリッツさんはそう言って笑う。

「ホルストさんの事も知ってるのですか?」

ソフィー達は驚く。

……有名になったものだ……

 

「この街道は商人の往来もあるからな。色々と情報を買ったりもする。彼らから仕入れた情報だが……それにホルストなら知らぬ仲でもない。向こうも思い出してくれるだろう」

……別に有名になっている訳でも、ないのかも知れない……

「コルネリア露店!コルネリア露店の話もありましたか?」

コルちゃんがフリッツさんに尋ねる。

「ふむ……その話は聞かなかったな……」

フリッツさんが答えると、コルちゃんはガッカリしてた。

 

とにかく、怪しい笑い声の一件は、この手紙に書いてあり、更にここの空き家の1つ……

人形師の物と思われる作業台なんかがあり、それを運ぶ為の車の依頼なんかもあるのだと話した。

 

「お化けにも会えた気分になれたし、キルヘンベルに戻るかな」

ジュリオさんが言って、皆で帰る事にした。

フリッツさんは作りかけの物があるそうで、ここに残るそうだ。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[川沿いの宿]
怖い人形が飾られてる階段があるのだとか………

[鍛冶屋、地下の寝室]
古びた銅のランプ明かりと黒いソファー。黒いベッド。ちょっとオシャレでカッコいい寝室。

[紅いも]
食べ過ぎると、おならが出る。
[豚ネズミの肉]
ヘビの肉よりも、美味しい。

[オレンジ足]
ムクドリ的な小鳥。

[キルヘンミルクスネークの皮]
貴重な感じは薄れて来たような。でも白くてキラキラでオシャレ。

[カリカリトースト]
外はカリカリ、中はふんわり。
[緑プニのゼリー]
あったかいフルーティー。あったかいと甘さがアップ。
[お洒落な麦わら帽子を逆さにしたような入れ物]
コルちゃんが作り出した、緑プニゼリーの入れ物。
[緑プニの加熱ゼリー]
ぷるんぷるん。

[加熱ブロック]
四角いブロック2つを寄せると、上に熱が生まれる。でも、ほんの少しの範囲。
[加熱鍋]
加熱ブロックでの調理に適した、底の分厚いお鍋。
[錬金釜の絨毯]
謎の絨毯。錬金釜が調合モードになる。

[裏ストリート]
スラムエリアへの道。ストリートも賑わっているけど、裏ストリートもまた、賑わっている。

[造花]
造られた花。枯れない腐らない、可哀想じゃない。

フラム[大先輩]
ボボーン。レベルが上がると活躍場所を失ってしまう。

[回覧板]
主婦の絆の源。

[黒い親分]
黒いニワトリ。トサカも尻尾も立派!

[引換券]
テスさんの弟たちの、絵心の感じられない絵が入っていて、量産防止されている。何枚かはテスさんが自ら筆を取った……とか。ホルストさんも何枚か描いた……とか。

[バーニィさん]
教会が誇る治安請け負い人。
[ディーゼルさん]
教会が誇る治安請け負い人。

[巨大蜘蛛]幻の蜘蛛。
[女王蜘蛛]幻の蜘蛛の、女王。

[レストラン]
女性向けの食事処。自警団の人もちらほら。

[ペンタス]
小さい可憐な花。

[ヴァルム食堂]
教会騎士御用達の食事処。自警団の人もちらほら。
[壺屋]
職人さん商人さん御用達の食事処。自警団の人もちらほら。

[4枚花の芋煮]
4枚花の香りが良い芋煮。今日のおいもは、どんな味?
[川ナマズ]
ヒゲが立派な黒くて丸い魚。

[鳩]
はと。白くて大きめの鳥。灰色とか茶色なのもちらほら。模様に個性がありまくり。
[鷺]
さぎ。コルちゃんくらいの大きさの白い鳥。灰色とか黒とか色んな模様付きのも居たり。もはや違う種類の鳥なのかも。

[テケテケ]
ハクセキレイ的な小鳥。
[ふかふか緑]
シソ的な植物。

[人形師の作業台]
フリッツさんのお気に入り。


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錬金術のアトリエ 13

錬金術のアトリエ 13

 

「あのフリッツ、という人……腰の剣からただならぬ気配を感じた……かなりの熟練剣士じゃないだろうか……」

夜の帰り道、ジュリオさんがそう言って何もない道を振り返る。

「それは私も感じたわ。私達に気付かれずに真ん中に立っていた事もそうなんだけど……ただ者ではないわね」

レオンさんもジュリオさんの隣をそう呟いて歩く。

 

「本当だ!フリッツさんが言う通り、ピンクの苔が生えた岩があるぜ!」

「おお!ここにピンクのミミズが……居るですか!?」

オスカーとコルちゃんは、フリッツさんに聞いた、傭兵がよく使ったとするミミズを探して、荷車から離れて歩いていた。

昼は緑色の苔なのだけど、夜はピンク色になる不思議な苔に、そこに住むピンク色のミミズ。

このミミズが薬になるそうだけど……

干して粉にしなければならないそうだ。

 

「フリッツさんの言った通り、これがマルカリナムル……?の巣だね!空っぽの巣があるある!」

ソフィーとモニカも、また別の所でマルカリナムルと言う蜂の巣を採取して歩く。

これもフリッツさんから聞いた蜂で、蜜は全くないけど、上質なロウが採れる巣で、しかも空っぽばっかりなのだとか。

木のこぶにしか見えないので、知らないと分からない巣だ。

驚かせたお詫びに、と……

傭兵の薬のもと、人形に使うロウを教わった訳だ。

どこかの国でマルカリナムル、と呼ばれていた蜂は、キルヘンベルでは何と呼ばれてる事やら……

そうして夜の12時、キルヘンベルへと帰り着いた。

ホルストさんのカフェに行くには……

ぷに汚れてるし……

なので、手紙だけ渡して、アトリエに帰る事にした。

ぷにちゃんに洗って貰いたくもあるし……

 

 

コルちゃんの悩みもあって、オスカーとジュリオさんとは別れて………

と、八百屋辺りを歩いてると、ハロルさんがカフェから出て来た所に出くわした。

「あ~!あなた!完全に飲んでるじゃない!」

レオンさんに発見されて、なんか怒られている。

ハロルさんはすっ、とクールに顔を隠す。

そして姿勢を低くすると……

カサカサと時計店へと逃げて行った。

「カサカサ早いわね……」

モニカが妙に感心する。

確かになんかやたら早かった……

「あはは、酔ってるみたいなのに、すっごく早かったね」

ソフィーもその姿に笑う。

 

 

そして3人でアトリエに帰る。

「おかえりなさい。ソフィー」

プラフタが出迎える。

「プラフタただいま~!」

ソフィーが抱きつこうとして、プラフタがかわす。

「どうしてあなたは私を汚そうとするのですか」

「いや~……なんか出来心で……」

ソフィーが頭を掻き、でも更にプラフタを狙うコルちゃんに気づく。

「ちょっと!コルネリア!」

まるでネコみたいに、低い姿勢から飛びついたコルちゃんも、プラフタはかわす。

こちらもかなりのぷに汚れだった。

「プラフタさん……かなり素早いです……」

 

そんなこんなで3人で服を毛布にくるみ、ぷにちゃんの部屋へと行く。

「全く……イタズラっ子なんですから……」

プラフタはそんな3人を見送る。

 

 

「ロジーさんがヘンタイねぇ……でもオスカーも結構ヘンタイなトコあるけど……」

ソフィーはコルちゃんの悩みについて考える。

寝てる時にオモチャにされてるとかなんとか。

コルちゃんも寝たら起きない所があるから……

 

そして3人でぷにちゃんの部屋に。

「……よく来た……あまり疲れていないようだな……」

ぷにちゃんは口を開ける。

その中に入りながら、コルちゃんは続ける。

「オスカーさんのヘンタイとは、また違うのです……ぷにちゃんから伝わる分知ってる……はっ!……ソフィーさんを通す事で……ヘンタイな事でも……そんな嫌じゃない……みたいな感じになるのでは……!」

ぷにちゃんの中でそんな思いが巡る。

「でも……何回もしてるうち、過激になっちゃう時とかあるよね……とくにぷにちゃんパワーでオスカーがギンギンになっちゃうと、尚更だよね……凄く激しく腰振っちゃう時とかあるもん……」

ソフィーのイメージも巡る。

 

オスカーもサービスいいものだから、ソフィーをかなり狂わせてハジケさせてる……

そんな最近の思い出。

「ケ……ケダモノです……!?」

「ソフィー……それはまずいわよ……そんなぶつけ合っちゃ……!!」

相変わらずのソフィーのイメージに、2人は混乱する。

「でも……コルちゃんみたいにきゅんきゅんして……なんか触られただけでドキドキしてる時は……そんなきゅんきゅんドキドキを楽しみたいよねぇ……あたしも大事にされたいのに……って時もあった……はずだけど……あれ……イマイチ思い出せない……」

 

ソフィーのイメージが柔らかくなって、コルちゃんもモニカもため息をつく。

「ソフィーさんにオトメゴコロが残ってて助かったです……」

「本当……知りたくないぶつかり合いエスカレートを体験しちゃったわ……なんか汚れちゃった気分……」

「ええーっ!?コルちゃんもモニカも……馴れてくとそうなってくって!!」

3人で思いをぐるぐるさせる。

 

 

……朝になり、コルちゃんの悩みも何かしら思う所があったみたいだし……

コルちゃんもモニカも帰っていく。

 

ソフィーは錬金術生活に。

マルカリナムルの巣からロウを取り出す錬金術……

「図鑑には無いね……」

「まあ、物を分けるだけですのでちょこっと調合ですね」

プラフタと錬金釜に向かう。

「ピンクのミミズの薬も……ちょこっと調合だね……」

ソフィーは、緑色のミミズ達の入った瓶を持ち上げる。

「見るからに緑色のミミズですけど……」

プラフタは少し離れて、そう言った。

「夜はピンク色だったんだよねぇ……不思議」

ソフィーは瓶ごと、錬金釜に入れる。

どうせ瓶とも取り分けてしまうので、瓶ごと入れても問題ない。

そんなちょこっと調合をして、それでも朝7時。

図鑑はまだまだ白紙ばかりだ。

 

 

図鑑を埋めないと錬金術の発展も頭打ち……ソフィーは悩みつつ、新しい錬金術を求めて、キルヘンベルをさまよう事にする。

 

噴水広場に差し掛かると、冒険者と子供達が、大きな荷車を準備していた。

「あれ?モニカも。これどうしたの?」

ソフィーはモニカに聞いてみる。

ディーゼルさんも居た。なんか、ワイワイしてる……

「なんかね、巡礼街道に荷物を取りに行くんだって。これ……フリッツさんの作業台とかってやつじゃない?」

モニカはそう話す。

ディーゼルさんも、この依頼の報酬を教会に納める為、また子供達を見守る為にも手伝うそうで、フリッツさんの話をモニカに聞いてた所なのだとか。

「じゃ、あたしも行くよ。なんか目新しい錬金術を探して、ふらふらしてるだけだったし」

賑やかなのは好きだし、参加する。

ホルストさんに渡した手紙から、こんなでかい荷車の出動になったみたいだ。

畑の収穫の時に使う奴を借り受けたみたいで。

 

「じゃあ、ヴァルム教会号、出動だー!」

冒険者の人が合図をして、子供達とモニカ、ソフィーが手を上げる。

「おー!」

 

 

「冒険者って儲かるのか?ねえねえ……」

子供の1人が辺りを警戒する冒険者に話す。

「……まあ……それも要領次第、腕次第だな……」

冒険者の1人はそう答えて、1人の悪ガキはソフィーを見る。

「ソフィー姉ちゃん、最近ふっくらしてきて美人になったよなぁ……」

そう声を掛けて悪戯に笑う。

「ふふふ。荷車押すパワーも、以前よりあるんだよー!」

ソフィーは荷車を見つめる。

誰よりも役に立たないと思っていた自分は、今やそうではない。

そんな自信がもたらす笑顔。

とはいえ、行きの荷車は空っぽなので特に頑張る必要もなく……

 

「おっちゃん、頑張れ~♪」

「ディーゼルさん、凄い!」

筋肉男、ディーゼルさんが引く荷車にソフィーと子供達が乗って移動してたり。

しかし、ジュリオさんにも負けないくらい力強い。

そんな感じで巡礼街道へと、荷車と冒険者と子供達は進む。

2時間程で辿り着く道のり。

子供達の仕事の話や、冒険者の豚ネズミ取りの話……

色々な話を聞けた。

 

 

巡礼街道の指定の家……

フリッツさんが作業台をいじっていた。

荷車とソフィー達を見ると立ち上がり、荷車にぼろぼろの作業台、机や棚を皆で乗せる。

 

「本当に1人当たり1000コール払うんだろうな?」

冒険者の1人がフリッツさんに尋ねる。

荷車押して巡礼街道の往復だけで1人1000コールは、破格だ。

「勿論だ。これから私もキルヘンベルに居着くつもりだからな。近所付き合いは大事だろう?子供とてキッチリ払わせて貰うつもりだ。ホルストの顔も潰したくはないからな」

フリッツさんはそう言って笑う。

冒険者3人に子供達8人……ソフィーとモニカとディーゼルさん……合計14000コール!?

「フ、フリッツさんてお金持ちなんですか?」

ソフィーが尋ねる。

「ん……少し手持ちがあるだけでお金持ち、というのは当たらないな……」

フリッツさんは荷車の上で揺れる作業台を眺めて、そう答えた。

 

 

キルヘンベル、本屋近くの空き家が手配されていて、荷物はそこに運び込む。

冒険者、ディーゼルさんにフリッツさんは約束のお金を支払う。

子供達とディーゼルさんの分は教会に納めるそうだ。

「さて……貴重な作業台をしっかり運んでくれて、すごく助かった。これは約束とはいえ、心ばかりの礼だ。また、この街の事も……色々教えて貰えると助かる」

モニカにもソフィーにも1000コールを手渡す。

このフリッツさんというおじさん……

紳士な感じ……

「ありがとうございます!あと、そこの本屋さんもキルヘンベル名物なんですよ」

お金を受け取って、ソフィーはエリーゼお姉ちゃんの本屋を紹介する。

「私も、暇してたから付いてっただけなのに、なんか嬉しいです。ストリートに壺屋さん、教会側にヴァルム食堂、ホルストさんのカフェでも食事が取れますので立ち寄ってみて下さい」

モニカも、そう言ってお礼する。

「少し作業台を見て……食事はそれからにするとしよう……」

フリッツさんは余程作業台が気になるのか家に入り、別れた。

 

 

まだお昼過ぎ……でもお腹減った頃合いだし、モニカとソフィーでホルストさんのカフェに行く事にした。

「コルちゃんは、今日はどうするのかな?ロジーさんのトコで寝るとまたなんか……イタズラされてイライラしそう?」

ソフィーがモニカに言う。

「……コルちゃんも起きたらいいのかしらね?」

そんな事を話しながらコルちゃん露店に行く。

 

「おお。ソフィーさんにモニカさん。フリッツさんの引っ越しはどうだったのです?……ぼろぼろの塊を3つばかり運んでいましたが……」

コルちゃん露店の前を通った訳だし、袖をパタパタするコルちゃんに、そう聞かれる。

「凄く大事そうだったよ?着くなり作業台に取りついてたもん。そして1人1000コールも貰ったんだ。あんな沢山居たのに、皆にだよ!?」

ソフィーはそう話す。

そしてそのまま立ち話に突入する。

作業台とフリッツさんの話をして、昼食を取りにカフェに行く。

 

 

「……あ!ロジーさんの話忘れてたね……」

結構立ち話してたけど……ソフィーはカフェを前に思い出して、モニカを見る。

「なんか……悩んでないみたいだし……お仕事中にする話でもなかったから……いいんじゃないかしら?」

モニカもそう話し、一緒にカフェで昼食。

ホルストさんは、なんか忙しそうだった。

「明日、どうしようかしら?」

モニカが呟く。

「考えてなかったけど、外に出て仕事しないと……みたいな感じはするよね」

一応、明日はカフェからスタートでどこかしら行く、と決めた。

 

 

そして錬金術生活……色々とコンテナが充実してきた。フラム大先輩を追加しておいたりする。

「ふと思ったんだけど……」

自分用のマイスターミトンを作り、ソフィーが呟く。

「どうしました?ソフィー」

プラフタがパタパタと近づく。

 

「……このミトンって見えざる手となって戦う時に助けになる訳ですけど……」

ソフィーはマイスターミトンを装備してみる。

するとミトンは消えて……ソフィーはてのひらを開いて見せる。

「レシピ通りに出来ると……そうですね。そうなりますね」

プラフタはパタパタとソフィーの手を向いて、浮かんでいる。

「ゴーストって魔物がね、胴体から離れて……こんな感じの手袋を2つ使ってるんだよね……」

「……?」

「絵に書くと……こんな感じ」

ソフィーはゴーストの絵を描く。

絵心が無くても、ゴーストは描きやすい。

 

「こんな可愛い顔をしてるのですか?」

ソフィーの絵を見て、プラフタはそう尋ねる。

「顔は……まんまこんな感じで可愛いんだけど、手が離れてるんだよね」

ソフィーはペンをゴーストの絵に向ける。

本体と手がバッチリ離れている。あと、舌がでっかい。

「ふむ……繋がってないのですか……」

「そうそう。だからプラフタも、このマイスターミトンを手のように動かせたりするんじゃないかと思ったんだ」

「……なるほど……訓練次第でやれるかも知れませんね……」

「でしょ?やっぱ間に合わせでも、手があると何かしら便利だろうし、プラフタ用に置いておくね」

プラフタはパタパタとマイスターミトンに近寄る。

マイスターミトンもふわっ、と浮いた。

「おおー!」

ソフィーはそのマイスターミトンを見つめる。

プラフタもマイスターミトンに集中する。

今回は少し動くだけだった。

そして消えそうになっている。

 

「少し改良の余地アリなのかも」

プラフタとソフィーで、また錬金術談義を始める。

プラフタ用、マイスターミトンの作成も企んで。

 

 

「じゃあ、行って来るねー!」

……朝になり、ソフィーはアトリエを出る。

「はい。あまり無理な所には行かないように」

プラフタはそんなソフィーを見送る。

思い出してきた採取地は幾つもあるし、錬金術の幅が広がりそうだけれど、雛鳥の林~獣たちの寄合所、でも魔物の強さがハネ上がる事を考えると、先に行くのにも準備が要る。

……プラフタの手の話とか……

錬金術を発展させたいのは山々だけれど、1番大事なのはソフィーがアトリエに帰って来る事……

と、錬金術談義で話していた。

 

 

ホルストさんのカフェに6人が集まり、どこへ行こうか相談する。

木材需要と、更にいわくつきの木材の噂……

獣たちの寄合所に決まった。

 

「銀いも♪銅いも♪紅いも~♪」

ソフィーは変な歌を歌う。

「おいもの名産地なの?」

レオンさんがオスカーに尋ねる。

「かなり採れるんだよな……腐るの早いやつだから、現地でしか食べられない味なんだよ。甘くて旨いんだぜ?」

一行は獣たちの寄合所へと向かう……

 

 

そして獣たちの寄合所の手前、街道外れの泉……

またもや、ぬめぬめした溶けたヘビの群れみたいなのが、芋を掘って食べていた。

「え!?タコなんて居るの!?」

レオンさんが驚く。

「タコ?」

ソフィーもオスカーもコルちゃんも、首を傾げる。

「これ、タコなのかい?もっと赤くてハッキリした形だとばかり思っていたな……」

ジュリオさんも注目する。

 

「海にしか居ない生き物なんだけど……なんでこんな所に居るのかしら……」

レオンさんが考え込む。

そんな一行を尻目に、タコは泉へと入って行った。

「海の水みたいにしょっぱいって事もないんだけどな。この泉は」

何度か使ってるので知ってるんだけど、普通に綺麗な水の泉だ。

 

「タコって言うんだ……とろけたヘビの群れみたいなの」

タコの潜った泉を眺めて、ソフィーが呟く。

しかし、芋を掘って食べてる姿、これで2回目だ。

ともかく、野営する。

ソフィーもモニカもコルちゃんも、銅いもの甘さにご機嫌だったけれど、レオンさんには甘過ぎるみたいで、そんなに評判はよろしくなかった。

「ソフィーとモニカ、コル助が好きなのは7番の子供とか、6番の子供なんだよな。オイラの方がレオンさんには好みかも知れないな」

 

オスカーはそう言うと、また芋を掘って芋煮を作る。

銅いもは、親玉から下に、1番の子供、2番の子供と深く芋が出来ていて、大体3番から5番で終わる。

たまに6番、7番と出来ているやつが居て、深い子供程甘いんだそうだ。

この6番芋、7番芋が厳選銅いも、と呼んでいたり。

オスカーとジュリオさんの食べるのは、3番までしかない株の1番。

こちらは甘さ控えめなのだそうだ。

 

「もう、初めからそっちを出してよ~……っていうか、そんなに違う物なの?」

芋を煮るオスカーにレオンさんが言う。

「いや、レオンさんが若い子同様甘いのが好き、って言うから………」

どうやらレオンさんの、まだ若い子なのよアピールが仇になったみたいで。

作り直した銅いもの煮物は、甘さ控え目でレオンさんにも美味しかったみたいだった。

 

 

そして……

獣たちの寄合所での採取ライフは、お昼~夜中まで。

プニプニとキメラビーストを倒したりしながら、いわくつきの木材を拾う。

 

それぞれが立派な太さで、荷車がすぐにいっぱいになり、プニ汚れに雨にも降られて、帰る事になった。

「しっかし、全部バッチリ呪いが付いてるけど……これで何するのかしら?」

レオンさんが運ぶ木材を眺める。

ソフィーから見ても呪いのオーラが見えるけど、ジュリオさんとモニカ、コルちゃんとオスカーにはオーラは見えないようだ。

オスカーにだけは、怨嗟の声が聞こえてくるらしい。

「教会でお清めしたら、大丈夫なんじゃないかしら?」

「なんか、ヘンな物を引き受けたもんだなぁ……」

モニカとオスカーも呟く。

 

 

ともかく夜中の森の帰り道を行き、朝にキルヘンベルに到着。

まだ雨が降り続いていて、プニ汚れもなんだか少し落ちてた。

……そして解散する。

荷車の品物は、オスカーがホルストさんに提出してくれるそうで、アトリエ行きの物も運び込んでくれると言う。

 

 

ソフィーとモニカ、コルちゃんはアトリエへと向かう。

コルちゃん露店は子供達が暇そうにしてた。

「雨が降る日は、あまり売れてないの?」

モニカがコルちゃんに聞いてみる。

「まだまだ商品に課題はありますが……こんな日はそんなに売れてないです。注文、お届けが本命ですので」

プニ汚れてるコルちゃんはそう言って、少し寂しい笑顔を見せる。

「まあ……あたしのアトリエはまだ商売以前だからなぁ……」

ソフィーも寂しい笑顔を返す。

 

そんな昼過ぎ……

「そうそうソフィーさん、以前欲しがっていた肌襦袢、ソフィーさんの分もモニカさんの分も作ったのです」

そう言うと、コルちゃんは鍛冶屋さんへと入る。

そして魔法の蔦を編んだツタ袋を手に出てきた。

「あの寝る時の上品な服!?本当に!?」

「私のまであるの?なんか嬉しいわ!」

汚れてる3人でツタ袋を見つめる。

中身は見えないけど、コルちゃんの肌襦袢は、憧れの寝間着だし。

「特にソフィーさんは、めちゃくちゃ欲しいって思ってましたから……」

アトリエへと向かう山道、コルちゃんは話す。

ぷにちゃんの中で、そういう気持ちが筒抜けなのだ。

それに、エロエロに展開しやすいな~……とか思ったのも筒抜け。

「確かに!めちゃくちゃ欲しいって思ったもん!コルちゃんありがとう!」

はしゃぎながらアトリエへ帰る。

 

 

「おかえりなさい。ソフィー、モニカ、コルネリア」

マイスターミトンをふらふらさせて、プラフタが出迎える。

「おおー!プラフタが使いこなしてる!」

ソフィーが驚く。

コルちゃんはプラフタのマイスターミトンに手を伸ばす。

 

「まずは服や身体を、洗うといいのではないですか?」

プラフタはその手をかわし、窓際にふわふわと戻る。

机には、プラフタが読んでたと思われる本も置いてあった。

「あ!プラフタ、本を読みたくて頑張ったんでしょ?」

ソフィーがイタズラに微笑みながら声を掛ける。

「それはもう……ここの本達にも興味はありましたし、魔物と同じ方式とはいえ……手があるというのは、便利ですね」

そうして本を読むプラフタを脇目に、3人はコンテナへと入る。

 

「着てみたいけど、綺麗にしてからにしよっか……」

ソフィーは蔦の袋を棚に置く。

やっぱりこういうのは、綺麗なカラダで着ないと……

「そうね。なんだかドキドキしちゃうわね……なんとなくエロい服みたいなイメージあるから……」

モニカはそう話す。

コルちゃんがハダカ族にこれ着てるから、エロい服みたいなイメージ。

まあ、下着着ければいいだけなんだけど……

「エロい服……それはあんまりな……」

コルちゃんもショックを受けていた。

そしてソフィーとモニカは、 棚に乗せたツタ袋を見る。

 

 

「いらっしゃい、時間は止める?」

ぷにちゃんの部屋へと入ると、ぷにちゃんは口を開ける。

「なんだか、今日のぷにちゃんは商人ぽいです」

裸の3人が口の中に入り、それぞれの舌の上に身体を預ける。

「時間は止める感じで!」

「はいな」

ソフィーが思うとぷにちゃんが返した。

 

「ん……っ!あうっ!……なんであたしだけ……!?」

ソフィーの身体だけ、イヤらしいマッサージをされて、ソフィーは不思議に思う。

「モニカはなんかそんな感じじゃないし、コルちゃんは昨日男の子にガマンさせちゃったから、自分だけ気持ちいいのしたくないみたいだし……」

「ずるいぃっ!やばっ!それっ!」

ソフィーはハジケて身体を伸ばす。

肩のマッサージから二の腕にぞわぞわさせて………乳首と背中でイヤらしい気持ちになって………お尻の穴へ………そう感じるソフィーの感覚はモニカにもコルちゃんにも伝わる。

「そんな気持ちいいの……私もジワってしてる……」

「ぷにちゃんは相変わらず凄いツボを……突いてくるです……」

2人はもじもじして、ソフィーは女性器の中の弱い所にトドメを受けてびくんびくんする。

「少し時間が膨らみすぎたかも。ゆっくり寝てってね」

ぷにちゃんは眠らせるようにマッサージして暖め、3人は眠る。

 

 

目を覚ますと、ぷにちゃんは平たくなっていてコルちゃんとモニカはまだ眠っていた。

ソフィーは少し考えて、やっぱりモニカのおっぱいに甘える事にする。

まだ膨らんだ時間が終わらないみたいだし。

「モニカのおっぱい、そんなに安心するの?コルちゃんのおっぱいじゃダメなの?」

ぷにちゃんが尋ねる。

思いが伝わるので聞く必要は無さそうだけど、質問をする事で更に「どうしてだろう?」と思わせて答えを引き出せる。

「やっぱり大きいおっぱいに、お母さんを感じるからかなぁ……コルちゃんだと妹みたいな感じなんだよねぇ……」

ソフィーは答える。

お母さんはおっぱいの大きな人だったのだろうか……?

そして元気になると、ぼよんぼよんタイムが始まる。

なんで人はぼよんぼよんすると、笑顔になるのだろうか。

 

「うおぉっ!天井近い!」

ぼよんっと飛び上がり、ソフィーはてのひらを天井に付けて、落ちていく。

「あははっ!はははっ!」

モニカも髪を振り乱しながら、ぼよんぼよん跳ねる。

「これはっ!やめられないです!」

コルちゃんは壁に向かって、ぼよんぼよんして、三角飛びでまた、ぼよんぼよんして、違う壁へと飛ぶ。

 

 

そんな、ぼよんぼよんタイムを過ごし、ぷにちゃんの部屋を出る。

「さて!綺麗になった所で肌襦袢!着てみるよ~♪」

ぷにちゃんの部屋の扉の前、ソフィーはツタ袋を開ける。

 

薄い青の肌襦袢と、薄い緑の肌襦袢が入っていて、青がソフィー、緑がモニカのやつ。

「これ!凄くお洒落じゃない?素敵だわ!」

殆ど白……そんな淡い緑の肌襦袢に、モニカがはしゃぐ。

「あたしも!これ本当に素敵だよね!もういっつも着て寝るもん!」

ソフィーも大喜びだ。

「着れば着るほど、馴染んで行きますので、ぜひ使って下さい。こんなに喜んで貰えて、この肌襦袢は幸せ者です」

そんな2人を、コルちゃんは猫の目の笑顔で眺める。

普段着に着替えてアトリエに。

時間は昼過ぎのままで、プラフタは本を読んでた。

「では、お店に行かなくてはなりませんので……」

「私も、なんかたまにはジュリオさんと会いたい気分かな」

 

コルちゃんとモニカはアトリエを出る。

「いつも会ってるじゃないですか……」

「それはそうなんだけど……そうじゃないのよ……」

そんな2人の声が遠くなっていく。

 

「あの丈夫そうな袋は、何だったのです?」

ソフィーと一緒に、2人を見送るプラフタが尋ねる。

「へへ~……新しいパジャマだよ!コルちゃんのパジャマがお洒落で羨ましいって思ってたら、作ってくれたんだ~♪」

「それはそれは。ソフィーは単に下着で寝ているようでしたから、パジャマがあるのはありがたいですね」

「だよね~……さて……何を作ろうかな……プラフタ師匠」

錬金釜の前に歩き、ソフィーはプラフタを見る。

プラフタは窓の方を向いた。

「それはともかく、お客様のようですよ?ソフィー」

ソフィーも窓を見る。

昼過ぎ、雨上がりの緑がキラキラしてて、荷車を運ぶオスカーとフリッツさんの姿が見えた。

 

「お客さんだね。それに今回の素材も届くみたいだし、お茶入れないとだね」

ソフィーはちょこっと調合、普通のソティーの準備をする。

これが1番得意かも知れないな……

と、ふと思う。

 

「どうぞ。今お茶の準備をしていますので」

マイスターミトンを使い、プラフタがドアを開ける。

「おおー!なんかドアが勝手に開いたように見えたな」

オスカーがアトリエ前に荷車を置き、雨に濡れた外テーブルを拭く。

「ここが錬金術屋敷……いやアトリエか……なかなかどうして立派なものだな」

フリッツさんはアトリエを眺めて頷く。

そして開いたドアから見えるプラフタを眺める。

「君がソフィーの錬金術の師匠、プラフタだな。オスカーから少し話を聞いた……私は旅の人形師、フリッツと言う。色々と頼みたい事がこれからもあるかと思う……是非とも宜しく頼む」

フリッツさんは丁寧に頭を下げる。

「な……なんと礼儀の正しい人なのでしょう……こちらこそ宜しくお願いします。……人形師……という事は人形を作っているのでしょうか?」

 

プラフタが尋ねるとフリッツさんは顔を上げる。

「今は人形を作る為の作業台を直している所だが……人形を作り、人形劇などをしたりしている。それでは生計が立たぬので、傭兵も生業としていたが……今は冒険者のような者かな……」

そう話す所に、お茶とお菓子を持つソフィーが顔を出す。

「えへへ~……ようこそフリッツさん。外れの山奥で驚きました?」

ソフィーは外テーブルにお茶とお菓子を並べる。

「いやいや、途中にコルネリアとモニカにも会った。いい所だと思うぞ。これからの生活も楽しみになるというものだな」

フリッツさんはにこやかに頷く。

 

「荷物、コンテナ前までは入れておくぜ?」

オスカーが荷車の荷物をアトリエに運び込む。

コンテナに入れるのはソフィーの仕事。

男の子が居ると、ぷにちゃんへの道でもあるコンテナは、開かなくなる。

「ありがとう、オスカー。じゃあ、ちょっとしまって来るね」

ソフィーはアトリエの中に入る。

荷物を運び込み、オスカーが出てアトリエのドアを閉める。

 

 

………

「なんか、マナの柱とやらが……って話しても良かったのかな……こんな事……」

外のオスカーが、フリッツを向いて……話しかけて止める。

「適当ではないな……だが私はマナの柱の事を良く知っている。この地に来たのもマナの柱の力に呼び寄せられて来ているようなものだ……」

フリッツはそう言うと、外テーブルに置かれたお茶を口にする。

「え……?それって……?」

オスカーは思う。

マナの力を受けた女性と交わる事で、覚醒する力がある。

……それが……目的……?

 

「ふふふ……マナの力が目覚めた土地で採れる素材は……そこから出来る人形をも、生き生きとさせるのだ。……更にこの地に残された名も無き人形師の作業台!……ふふふふふ……私は未だに見た事もない魂を持つ人形を!この手で……!作り出せるかも知れないのだな……!ああ……!」

なんか自分の世界に入り出した。

 

……

そんなこんなして……

荷物をコンテナに入れ終えたソフィーも、外テーブルに座る。

「雨上がりのキラキラした緑、綺麗ですよね……」

ソフィーはフリッツさんを見る。

何故か立ち上がったまま、両手を震わせる謎のポーズをしている。

 

「あ……おお、思わずまた……人形の事を熱く語ってしまったようだ……」

フリッツさんは我に返り、ソフィーを見る。

倒れた椅子を直して座ると、幸いにもこぼれなかったお茶の続きを口にする。

「あ……あはは……人形、お好きなんですね?」

ソフィーも座る。

「まあ……大好きだな。まあ……それはともかく、作業台の修復に錬金術で作る木材、スプルースがあれば……と思ったのだ。あれは初歩の錬金術で出来ると聞く。ひょっとしたらここなら手に入るかも知れない、と来てみたのだ」

意外にもフリッツさんは、他の国で錬金術士に出会っていて、錬金術の品物に詳しいみたいだった。

「図鑑が埋まらなくて少し困っていたんですよ!スプルースなら、銀いもパワー付きのがありますので、ちょっと錬金術の品物の話、聞かせて貰えませんか?」

ソフィーは目を輝かせる。

そしてアトリエに戻る。

 

「ありました、これで大丈夫ですか?」

スプルースを2つ持って、またソフィーは顔を出す。

「おお!これだこれ!しかも……良いな。これからの希望……分かるぞ……これから色々な物を作ろうとする期待……気合い……良い思いに満ちている。図鑑を見れば、何かしらヒント的な事は言えるかも知れないな。少し拝見してもよろしいかね?」

 

スプルースを抱いて上機嫌なフリッツさんに、中和剤(緑)中和剤(黄色)マナフェザー、リフュールボトル、モノクログラス、クラフト、シュタルメタルの話を聞かせて貰った。

 

 

「む?もうこんな時間だったとは……」

……長いお茶会になって夕方になり、フリッツさんは窓から外を見て、夕暮れに気付く。

そしてスプルースを大事そうに抱えて帰り、オスカーとソフィーはその後ろ姿を見送った。

 

「しかし、あのフリッツさんは錬金術にも詳しいんだな……色々と物知りみたいだ」

オスカーが、おとぼけボイスで話す。

その側をプラフタが、パタパタと飛んでる。

「そうですね。他の国、他の街での錬金術士の話、とても興味深い物でした。片田舎であるこの場所しか知らない自分を恥じる思いでしたね」

パタパタしながら、プラフタがそう答える。

「フリッツさんに色々な話を聞くのって面白そうだよね~……」

ソフィーはメモを見直しながら呟く。

「フリッツも時間を忘れて話していたみたいですし、ソフィーもオスカーも、彼とは気が合うのかも知れませんね」

「オイラとも気が合いそうな感じがしたな。植物の名前とか、詳しかったもんな」

季節の話とか、花の頃合いで話す辺りに、凄く知性を感じるオジサンだったから、オスカーは感心する。

「さて、夕食でも作るかな。今日は香りに一段とこだわってみたい気分だな」

オスカーが言う。

 

「じゃ、釜から香り材料も出すね」

ソフィーは錬金釜に向かう。

夕食の食材もリストアップしてくれるから、便利この上ないけど、調合浸け置き中は出せない。

夕食の献立を、芋のスープに焼いた豚ネズミ肉として、食材を取り出す。

豚ネズミってば、すっかり普段使いのお肉になった。

 

 

夕食後に身体の洗いっこして歯磨きして……

プラフタは早めに本棚に収まってる。

「今日からあたし、パジャマがあるんだよ!コルちゃんに貰ったんだ~♪」

暖炉の側で夕食に使った食器を洗いながら、ソフィーはそう話す。

「おお~……それは早速見てみないとだな!なんかどんどん貧乏生活イメージも無くなっていくな!」

ソフィーの洗った食器を拭きながら、オスカーはテンションを上げて言う。

「確かに。そう考えると、コルちゃんってお姫様なのかな?」

パジャマをくれたコルちゃんを思う。

カエルとか泥蛇とか皆で食べてたけど、コルちゃんだけは衣装が華やかだし。

「商人の家系で羽振りがいい、とかじゃないか?」

「ん?そうなるとオスカーもパジャマ着てないとおかしいじゃん?」

「オイラ、家じゃパジャマだろ?ソフィーも見た事あるハズだぞ?」

「あ!あの赤いやつだ!そっかぁ……アトリエまで持って来てないだけかぁ……」

そんな会話を繰り広げて、食器も洗い終わると、ソフィーはいつもの下着姿から、肌襦袢に着替える。

下着に肌襦袢を重ねて着てもいいんだけど、ハダカに肌襦袢の方がエロエロしやすいし、素敵セクシーだし、コルちゃんもそうしてたし。

 

 

「おお~!」

肌襦袢を着て、オスカーに見せる。

オスカーは青い三白眼を見開いて、感嘆の声を上げた。

「どう?可愛い?」

ソフィーは両手を広げて、くるりと回って見せる。

「すげえ、オイラびっくりしたよ。なんかオリエンタルな感じなんだな~」

オスカーは少し姿勢を低くして、ソフィーを見つめながら言う。

「オリ……え?」

ソフィーは聞いた事の無い単語に戸惑う。

「東の国の物語っぽいって事だよ。本屋の挿し絵なんかでたま~に見かける時が、あるんだよな。そんな挿し絵がさ、飛び出て来たんじゃないか、って思ったよ」

オスカーは方眉を上げて、顎に手をやるいつものポーズでそう話す。

「またまた~♪上手い事言い過ぎじゃない?」

ソフィーは照れ笑いを浮かべて、袖をぱたぱたする。

「そんな事ないさ。ソフィーも丁度さ、挿し絵に出てくる女の子くらい太くなってきたからな」

そう言われながら、オスカーに抱き上げられる。

「えへへ~……おっ?あれ……?」

「ああ~……やばい可愛いすぎるよソフィー……」

鼻の下を伸ばしたオスカーが、衿から覗く肌をすんすんしながらソフィーをベッドに運ぶ。

「えへへ~……」

そんな求めて来るオスカーに、ソフィーはニヤケ笑いして、頬をぺたぺたする。

そんなアトリエの夜、オスカーとイチャイチャラブラブして寝た。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ピンクの苔]
ふわふわの苔。昼は黄緑色で、夕方に黄色くなり、夜にピンク色になる。
[ピンクのミミズ]
ピンクの苔に住むピンクのミミズ。昼間は、ピンクの苔が黄緑色になるので、ミミズも黄緑色になる。夕方は黄色くなり、夜にピンク色になる。

[マルカリナムルの巣]
社会生活をしないハチ。小鳥のようにオスとメス、番で巣を作り、子育てをする。卵が孵ると親も子も巣を出て行って空っぽになるのだとか。

[物を分ける調合]
ちょこっと調合により、卵だと、カラと白身と黄身を分離したり出来る。基礎となる調合技術。

[ピンクのミミズの薬]
風邪に効くんだとか。

[大きな荷車]
畑の収穫の時に使う、5人くらいで押したり引いたりする荷車。収穫まで乗せたら、10人がかりなんだって!

[ディーゼルさん]
筋肉先生。

[タコの泉]
おいも大好きなタコが住む泉。
[タコ]
とろけた赤い……謎の生き物。

[怨嗟の声]
一体この木材に何があったのか……

[プラフタの手]
プラフタ用マイスターミトン。本が本を読むという、夢にも見なかった光景がここに。

[ツタ袋]
魔法の蔦の細かい所を、干して編んだ袋。
[ほんのり薄い青の肌襦袢]
ソフィー用にコルちゃんが用意してくれた肌襦袢。ほとんど白いけど、ほんのり青い。
[ほんのり薄い緑の肌襦袢]
モニカ用にコルちゃんが用意してくれた肌襦袢。ほとんど白いけど、ほんのり緑色。

[ちょこっと調合、普通のソティー]
その日の色んな葉っぱの香りを、錬金術によりあれこれして、いい感じになっている。

[オスカーの赤いパジャマ]
八百屋のオスカーの部屋で、オスカーが寝る時は赤いパジャマを着てる。ふわもこ。


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錬金術のアトリエ 14

錬金術のアトリエ 14

 

……朝は暗いうちに起きた。

オスカーが先に起きて、身体を起こすと、半分だけ上に乗ってたソフィーも起きる。

「おはよ~……」

乱れきった肌襦袢に毛布、片袖だけ通してるソフィーが寝ぼけまなこでオスカーにしがみつく。

「ははっ、今日も可愛いなぁソフィー」

オスカーは、そんなソフィーの頭を撫でる。

「夕べも可愛かったでしょ?めっちゃハジケちゃったもんね」

 

ソフィーは立ち上がり、肌襦袢を着ける。

「まあ、またぷにちゃんを頼っておいでよ。オイラ外に出てるからさ」

オスカーも暖炉前で身体を拭いて服を着ると、そう言って外に出ていく。

 

 

……お互いに普段着に着替えて……

オスカーは朝食を作り、ソフィーは調合を始める。

3時間掛かるクロースの作成。

これがスプルースの材料なので、銀いもパワーを宿らせて作る。

「フリッツさんの作業台、スプルース2つじゃ足りないくらいぼろぼろだし、コルちゃんの量産にも需要ありそうだし……喜ばれる木材……作るよ!」

「……それはいいけど、木材の呪いは大丈夫か?」

オスカーが食材を切りながら尋ねる。

「それは平気だよ~。引き継がなければ、いいだけだからね!」

ソフィーは即答する。

「まあよく分からないけど、ソフィーが言うならそうなんだろうな」

オスカーは料理を進める。

 

 

……朝食を食べて、オスカーはアトリエを出る。

ソフィーは、そのまま錬金術生活。

スプルース量産を始める。

 

「しかし、昨日もまた大きな声でしたね……」

漬け置きの時間、プラフタはソフィーと錬金釜の回りをふわふわと飛ぶ。

「えへへ~……女の子って楽しいよね?」

ソフィーはプラフタを見る。

「そ、そんな事……私には分かりませんっ!」

かくっ、と少し落下してから、プラフタはふらふらと飛び、ソフィーから距離を置く。

「あ!プラフタ動揺してる?動揺してるでしょ~!?」

そんなプラフタをソフィーは追いかける。

「全く!あなたって人は!能天気なんですから!」

そんなじゃれあいをしつつ、錬金術談義をして過ごす。

ちょこっと調合の幅が広がったりする、錬金術の理論の勉強なんかもする。

 

 

……お昼にコルちゃんがやって来て、せっかくなので一緒に、ぷにちゃんの部屋に。

時間が止まる分、気軽に行ける。

ロジーさん嫌いレベルが上がっていて、なんか近くに来るだけで、ぞわぞわしてる日々。

もう別れそうな感じで、今や悩みと言うと、住む所みたいだった。

 

少し時間を膨らませて、ソフィーとコルちゃんで眠る。

ソフィーとしてはそんな眠れなくて、ぷにちゃんとお喋りして過ごす。

 

 

……明日も旅はお休み、と伝えてコルちゃんが帰り、錬金術生活を続ける。

あっという間に夜になり、朝になる。

ぷにちゃん部屋で眠るから時間があるけど、追加フラム大先輩と、スプルース量産で朝になってしまった。

 

 

窓を見るといい天気。

「よし!キルヘンベル巡りしよっと。プラフタも行く?エリーゼお姉ちゃんの本屋に遊びに行ったら、エリーゼお姉ちゃんも喜ぶよ~……」

ソフィーがそう言うと、本を読んでいたプラフタはふわふわと飛ぶ。

「昨日ずっと錬金術談義でしたからね。中和剤(緑)しか幅は広がりませんでしたが……エリーゼの本屋なら……」

そしてプラフタはふわふわとソフィーに寄る。

……乗り気みたいだ……

「うんうん、マイスターミトンは持ってってあげる」

ソフィーとプラフタはエリーゼの本屋へと向かう。

 

 

「……もしや、今日はオスカーが……?」

アトリエの山を降りる道……

ソフィーの近くを、ふわふわと飛ぶプラフタはソフィーに聞いてみる。

「え?……今日は来ないんじゃないかなぁ……昨日の今日だもんね。プラフタ居なかったら寂しいから……でもエリーゼお姉ちゃんも、プラフタが側に居るといい夢見れるって言ってたなぁ……人気者だね」

ソフィーはそう答える。

 

 

そして噴水広場を通った時に、ジュリオさんとモニカが凄い早さで近くの森へと走っていく姿を見かけた。

「……なんだろ?よし!あたしもダーッシュ!」

ソフィーも駆け出す。かなり早い。

「もう!子供なんですから!」

プラフタも遅れながら、パタパタと追いかける。

旧市街を抜けて、近くの森へ。

エリーゼお姉ちゃんが木陰で本を読んでいて、その側でジュリオさんとモニカが立ち止まってた。

 

「とおーっ!」

ソフィーもジャンプして着地する。

「おお、ソフィーも走り込みかい?」

ジュリオさんが、さわやか笑顔で言う。

「え?走り込みだったの?」

ソフィーは、そんなジュリオさんとモニカを見る。

エリーゼお姉ちゃんは顔を上げて、3人とプラフタを見る。

「あら……!?プラフタまで居るの?」

少し遅れてプラフタが飛んで来た。

「あらま……なんか、集合しちゃったわね。くすっ」

モニカは笑う。

 

「何か事件かと思っちゃったよ。走り込みだったんだね。あたしはプラフタをエリーゼお姉ちゃんの本屋に案内して、街をふらふらしようと思ったんだけどね」

ジュリオさんとモニカは、走り込みの途中らしく、また走って行った。

ソフィーは、エリーゼお姉ちゃんとプラフタと、本屋へと行く。

 

 

本屋のカウンターにオスカーが座っていて、本を読んでた。

「……お?ソフィーじゃないか」

店に入ると、オスカーは顔を上げて立ち上がる。

「今日はプラフタも本が好きだし、ページを捲る事が出来るようになったから、来てみたんだ」

エリーゼお姉ちゃんがカウンターに戻り、オスカーは本棚を見る。

相変わらず勉強熱心だ。きっと植物関係だろう。

「なるほどねぇ……」

 

オスカーは気のない返事をする。

ソフィーは邪魔しないように、プラフタとマイスターミトンを置いて、本屋を出る。

 

 

カフェへと向かう。

明日は採取の旅に行かないと……

依頼も結構あるだろうし……

 

「ソフィーさん、ソフィーさん……」

コルちゃん露店を通り、コルちゃんを見ると、なんか嬉しそうに手招きをする。

「お!なんか嬉しそうだね、コルちゃん?何かあったの?」

「今日は掘り出し物があるです。ソフィーさんなら飛び付くかも……知れません」

1500コールとお高い値札……

伝説の逸品アカツキの毛皮!

……「肉体を強化する」「お日様のにおい」………

「な、なんじゃこりゃあぁぁ~!買うし!こんなの、買うに決まってるし!」

ソフィーは手持ちもあるし、そのアカツキの毛皮を買った。

あと地味にクロース素材であり、あまり手に入らないケモノの毛皮も、45コールとお手頃価格で売られていた。

 

「まいどです。こんなに買って貰ったのでは何かオマケでもしないと……これをどうぞ」

コルちゃん露店特製、コルちゃんクッキー☆を貰った。

「あ……素朴な優しい味がするね……」

なんか、ソフィーにはあまり美味しくないクッキーだった。

……なんかヘンに魚の匂いがするし……

「お酒に合うクッキーが、求められていたりしますので」

コルちゃんはネコ目で笑う。

常連の職人さん向けのクッキーなんだそうだ。

 

 

そして八百屋に行き、キルヘンミルクをコルちゃん露店のツケで飲んでいい……らしいので飲む。

「キルヘンミルクが、やたら売れるようになってねぇ……あの子、意外と商売上手みたいなんだよねぇ……」

マルグリットさんが、コルちゃんに感心してた。

八百屋の脇にミルク用のテーブル……代わりのたるが置かれていた。

「たる!」

……ソフィーはキルヘンミルクとクッキーを堪能して、カフェへと行く。

 

 

「やっほー☆」

今日はテスさんの日だった。

「あ!テスさんこの引換券……テスさんが描いたんですか?」

ソフィーは12枚の引換券を取り出す。

絵心がない絵の入った引換券は統一性もなく、描いてある絵も様々なのだ。

……自由を感じる。

「弟たちが描いてるんだよ。でもニセモノはあたしが姉としてバッチリ見分けるからね。セキュリティも万全なのさ」

テスさんは笑う。

 

そして引換券の商品棚……カフェの奥を見せてくれた。

「うわぁぁ……何これ何これ……凄い品物ばっかりじゃないですか~!」

……一体どこから手に入れているのか……錬金術の幅が広がりそうな品物に、錬金術で作られた装飾品まである。

「この!ピュアウォーター下さい!」

引換券10枚の水を選ぶ。

品質底上げ「出来がいい」が付き、キラキラオーラが強い。

その上で「薬を強化」とか付いてるチート品だ。

これをコルちゃんが増やせたら……

やばい、キルヘンベル全体がキラキラしてしまう。

「ほい。こんなんでいいの?」

テスさんはピュアウォーターを引き換えてくれた。

早速コルちゃん露店に登録を企んでみる。

 

 

「これを登録しますか……ふむ……1つ58コールで売りますね。それほど増やしづらい……的な物でもないので」

コルちゃんは、これを増やせるみたいだ。

しかもお安い。

キルヘンベルが、キラキラする予感がする。

「これをばんばん増やせるなんて……コルちゃん凄いね」

ソフィーは感心する。

「まあ……そういう錬金術ですので。それに、他の国にも、こうした量販店をする錬金術士……というより……私のような商人と……ソフィーさんのような、新しい物を作り出す錬金術士が居たりするそうです」

コルちゃんは例によって、口許を隠してそう話す。

「ほほ~う……商人の人から聞いたの?」

ソフィーは聞いてみる。

伝聞っぽいし。

「フリッツさんに聞きました。あまりあこぎにお金儲けして、国王に仕えていた錬金術士と量販店が、滅ぼされた話がいくつか、あるそうです。なので怖い話ですけれど……」

コルちゃんは伏し目がちにそう話す。

「えええ~っ!?」

ソフィーが驚くとコルちゃんもびくっ、と構える。

 

「……まあ……詳しくはフリッツさんに聞くといいです。それに……そうした物語が本になってたりもするらしいので、本屋さんにもあるかもです」

コルちゃんはそう言ってソフィーを見上げる。

「わ、私達もやばい!?」

ソフィーは両手を口に当てる仕草をしながら、ふと不安に思う。

「とりあえず……私もソフィーさんもお金持ちではありませんので……大丈夫かと思いますが……」

 

 

そんな話を聞いて、ソフィーはアトリエに帰る。

アトリエ前にはフリッツさんが居た。

「あれ……?フリッツさん?」

外テーブルに座っていたフリッツさんは、ソフィーを見て立ち上がる。

「ああ、スプルースを使いきってしまってな。しかも修復は終わっていないのだ。それでまた用意して貰えたら……と来たのだ」

1日で使い果たしてしまってる辺り、かなり御執心のようだ。

それに見事にぼろぼろな作業台だったから、なるほど足りない訳だし、もう作っておいたし。

「あ。じゃあ昨日作ったので良ければ……それと、コルちゃんにした話、あたしも聞きたかったんですよ。お茶も淹れますね」

ソフィーはアトリエにフリッツさんを招き入れる。

「ほお。既に出来ている、というのは非常に助かる。コルネリアにした話だな。聞いて損はなかろう」

 

 

フリッツさんもアトリエに入り、お茶とお菓子を前に、フリッツさんは話し出す。

「……さて、錬金術士の力と言うのは、マナの柱の力によるものが大きい。錬金術に限った事ではないのだが、あまりに急に人が力を持つのだ。……これは力を得ていない者にとっては……ずるい……と思う物だな……当然本人の努力もあるだろうが、不公平だと言えると思う。……世界なんて元々が不公平で当たり前なのだが……」

確かに、ソフィーの生活も激変。

痩せていたのも治ったし、錬金術が使えるようになって毎日がワクワクキラキラだ。

 

「……確かにそうですね」

世界が元々不公平、ってのはよく分からなかったけど……まあそうなんだろうかな……とだけ思いつつ、ソフィーは頷く。

ソフィー自身については、とんでもない幸運が舞い込んで来たようなものだし。

 

「そのような者が、力を得ていない者を弾圧する……そういう錬金術士も多く居たのだ。何せマナの柱は、来る者を拒まぬからな。ここのマナの柱も、悪人だと思ったら力を与えないのか、聞いてみるといい……そう話したらコルネリアが聞いたそうだ。答えは……善悪の判断を、マナの柱はしていない。そうだ」

フリッツさんは、静かな落ち着いた声で続ける。

 

「でも……なんか分かります。ぷにちゃんならそう言いそうだし、あたしの時もあたしが望めば……って言ってました」

ソフィーは思う。確かにぷにちゃんは誰であれ力を与えそうだ。

「ぷにちゃん?」

フリッツさんは不思議そうな顔をする。

「あ……マナの柱がプニプニみたいなんで、そう呼んでるんですけれど」

ソフィーは気付いて説明する。

 

「そうか……まあそうした物だと聞いた事はある。私も、マナの柱の力を得た者の1人だからな。オリジナルは1200程、イミテーションは5000程作られた、とされている」

フリッツさんは少しお茶を口にして、そう話す。

「そ、そんなに作られてるんですか!?」

ぷにちゃんは世界に1つ……なんて思っていたソフィーは驚く。

……しかも作られた……なのか……

 

「ああ、だが殆どは、焼き払われてしまっているようだ。また、どこかへ消えたオリジナルも多くあるだろうと言われている。イミテーションは消えたり出来ないらしいがな」

フリッツさんは続ける。

マナの柱1000年程の歴史は、争いの原因となって焼き払われているのが多いらしい。

「そ、それは滅ぼされた……と言う事ですか?」

ソフィーは身を乗り出す。

「そういう事だ。ソフィーもコルネリアも、この国では重宝されるだろうが……他国からすれば脅威でしかないからな。そうした争いが繰り返されて来たのだ」

フリッツさんはそう話して、窓を眺める。

この土地は穏やかなものだ。

 

「……ひどい話ですね?」

ソフィーもお茶に口をつける。

「……まあ、そうだが……力を持たぬ者からすれば、どうしようも出来ない存在が隣に現れる訳だ。それをどうにかしよう……と、思うのはその者が、その者なりに真剣に生きている証だろう。それに人の世は殺し合い、争い合いの連続だからな」

そんなキナ臭い話をしてアトリエで過ごすなんて、ソフィーとしては初めてだ。

 

「こ、ここは平和ですけれど……」

プラフタも居ればなあ……とソフィーは、いつもプラフタがパタパタしてる場所を見る。

今日はエリーゼお姉ちゃんの本屋さんで、お泊まり予定。

 

「滅ぼされたマナの柱は、魔物を産み出す。君も多く見ているだろう。強力な魔物が、ほぼ無限に現れて来る原因……それが滅ぼされたマナの柱だとされている。この地はそんな滅ぼされたマナの柱に囲まれていて、人の行き来が容易ではないのだ」

フリッツさんはソフィーを見つめる。

まっすぐな瞳……ソフィーとしては尚更怖くなる。

今日……モニカの所に泊まろうかな……

 

「フリッツさん……凄く詳しいですね……」

そんな不安に思いながら、ソフィーはフリッツさんに言う。

ジュリオさんも詳しいみたいだけど……

「……ここまで話すと勘づいても良さそうな物だが……」

フリッツさんは笑う。

どこか自信ありげな、でも優しい笑顔をするのだ。

この髭のおじさんは……

 

「え?何を勘づくんです?」

ソフィーは不思議に思う。

……勘づく……?

「私は傭兵だ。この国から依頼を受けて来ている。ここのマナの柱が産み出す錬金術士を、他国の手練れから守るようにな。それと、その錬金術士の動向によっては始末するようにな。……とはいえ、ソフィーとコルネリア、ロジーに……レオンか……それとハロルにオスカー、ジュリオと……特に始末せねばならん、と言う事もなさそうなのでな」

 

フリッツさんはお茶を飲み、どうやら空になった。

「え……えええ!?」

ソフィーは驚く。

始末!?

……その必要はないみたいだけど……

「この国に仇なす事を、企んではいないだろう?」

フリッツさんはそう話して天井を見上げる。

「それはそうですけど……国がよく分からないのもあるけど……」

ソフィーがそう言うと、フリッツさんは立ち上がる。

「それでいい。だが、力を得た所で結局生きる苦労は変わらぬ、と言う事だな。出来る事をせねばならん。私は……そんな思いを断ち切る望みを、人形に見ているのかも知れないな」

そして木の板、的なジェスチャーをして見せた。

……そうそうスプルースを取りに来たんだった……

とソフィーも思い出す。

 

「あ。スプルース、持って来ますけど……コンテナ開かないんだった」

ソフィーは少し浮き足立ってコンテナに向かう。

出来上がった調合品もコンテナに戻るし……そしてコンテナは開かない。

「外で待とう、非常に助かる。お茶も良い香りだった。得難い時間を過ごせた。感謝している」

フリッツさんはアトリエを出て、ドアを閉める。

 

するとコンテナは開き、ソフィーはスプルースを取り出す。

アトリエ前で待つフリッツさんに、スプルースを渡す。

「このような穏やかな土地で、穏やかに暮らすのは悪くないな……」

フリッツさんはスプルースを受け取り、小さな袋をソフィーに手渡し、スプルースを大事そうに抱えて帰って行く。

ウメさんに挨拶をして……コルちゃんとすれ違ってた。

 

 

「あ!コルちゃん、怖い話だったよぉ~!」

ソフィーはコルちゃんに抱きつく。

「おお……よしよし……あれ、早速フリッツさんに話したのです?」

コルちゃんは、抱きつくソフィーの頭を撫でる。

「なんかスプルースを取りに来てたんだ。ぼろぼろの作業台の修復には足りないかもだけど……」

アトリエの外で、ソフィーに抱きつかれてコルちゃんは動けなくなった。

……でもこんな風にソフィーさんをなでなでするのも……いいかもです……

そんな事を思いながら、コルちゃんはソフィーの頭を撫で続ける。

 

「……まあ、そんなこんなを話すのも、ソフィーさんも私も……モニカさんジュリオさんレオンさんと

……ハロルさんに……

………………ロジーさんは、大丈夫だと感じたからだそうです。キルヘンベルの村に、良からぬ者が現れたら対処するのが……お仕事だから、安心していいみたいでしたが……」

 

……ハロルさん………………ロジーさんには間が長いなぁ……とソフィーは思う。

ハスキー眠くなるボイスでゆっくりなのに、更に間が入ると疑問に思う。

「コルちゃんは、ハロルさんとロジーさんには何か思う所がありそうだね?」

「そそそそそそんな事は……ないです!」

コルちゃんはイタズラっぽい笑顔を見せる。

 

ソフィーが少し落ち着いて、2人でアトリエに戻る。

お昼を過ぎていて、ソフィーはお腹が減ってお腹に手を当てる。

 

「なんか……お腹減った……」

ため息とともに、そう呟く。

「私はお昼に壺屋で食べましたので……紅いもスープだったのですけど……美味しかったですよ」

コルちゃんは、そう言うとコンテナへと向かう。

ソフィーは錬金釜に向かう。

ちょこっと調合で食事まで作る……

錬金術士の鑑……

とはいえ、オスカーが作る方が美味しいのは課題だ……

 

 

1人錬金術生活……鳥小屋オブジェのダイヤルを回す。

……おばあちゃんも、これで漬け置きして錬金術をしていたのだろうか……いや、してたからあるんだろうけれど。

 

 

「ポコポッポー!ポコポッポー!」

鳥小屋オブジェが鳴り出して……仕上げの時間。スプルースを決める。

「……次は何を仕込もうかなぁ……クロース行くかぁ……」

そう呟いた夕方ちょっと前。

オスカーがやって来た。

 

「オスカー!どうしたの?今日は」

ソフィーは思わず笑顔で迎える。

独りは寂しかったし。

「コル助からさ、1人寝るのは寂しいとか聞いて来たんだよ。プラフタがお泊まりなんだって?」

「へへ~……モニカの所に押し掛けようかと思っていたんだよね。フリッツさんから怖い話を聞いてね……」

 

 

夜……ソフィーはフリッツさんから聞いた話を、オスカーに聞かせる。

その物語は、オスカーは読んだりしてるそうで、ソフィーよりも、オスカーの方が詳しい話だった。

「あたしも、今日はコルちゃんみたいに、大事にされて寝たいかな……」

そしてオスカーとベッドに入る。

「ん?……ああ、明日早いからな……」

オスカーはそんなギンギンでもムラムラでもなかった。

 

「……頭撫でて?」

ソフィーはベッドの中で、オスカーに甘える。

「ああ……」

夜は更けて行く。

 

 

オスカーが朝は暗いうちに起き出して、ソフィーも起きる。

「おはよ……」

起き出すオスカーに掴まるも、するっ、と逃げられる。

「朝ご飯もカフェで食べるだろ?先に行ってるな。オイラ準備があるからさ」

ソフィーを安心させる、おとぼけボイスでオスカーはそう話す。

「へへ……オスカー忘れ物」

ソフィーはベッドの上で身を乗り出し、口をとがらせる。

「今日も可愛いなぁ……ソフィー」

キスをして、オスカーはアトリエを出る。

ソフィーはスプルースを抱えて本屋へ。

プラフタを迎えに行かないと……

 

 

種の日。

まずは教会でお祈り。

いつものように教会の外で、教会に向かってお祈りをする。

聖歌も少し遠く聞こえる場所。

「あ、エリーゼお姉ちゃん」

お祈りが終わり、職人さんや商人のおじさんに混ざってる、エリーゼお姉ちゃんをソフィーは見つける。

 

「あまりお祈りには来ないんだけど……今日はプラフタを、アトリエに返さないといけないじゃない?」

エリーゼお姉ちゃんはそう言うと、4枚花のワンポイントの紫の布に包まれたプラフタをソフィーに渡す。

「うおぉ……オシャレな布……!」

しかも手触りも凄く滑らか……

ソフィーはそんな布に包まれたプラフタを受け取り、中腰ガニ股で驚く。

 

「……しかし君は本当に天真爛漫だな……」

そんなソフィーに、フリッツさんが声を掛けた。

ハロルさんもレオンさんも、ホルストさんもマルグリットさんもお祈りに来ていた。

 

そんな訳で、モニカもパメラも合流して、噴水広場で立ち話をする。

いつもの噴水端会議だ。

フリッツさんに、作ってあるスプルースの話をすると、凄く喜んでいた。

やっぱり足らなかったみたいだった。

 

 

そしてカフェでモーニング。

カリカリトーストにホットミルクで優雅に朝食。

コルちゃんは冷たいミルク派のようだった。

 

まだ見ぬ新しい土地、境界の裾野へ行こうと決まる。

恵みの森から更に西の土地だ。

砂地と草原で綺麗に別れている場所のようだけど……

「そんな所まで行くのですか。では依頼も変わって来ますねぇ……ソフィーも頼もしくなったものです」

ホルストさんはニコニコして、境界の裾野用の依頼を調べる。

夜水晶、繊維鉱石ファーデンライト、妖精の毒草と採れるそうだ。

それと砂ヘビ、砂ヘビイチゴが主な依頼だった。

「砂ヘビかぁ……懐かしいなぁ……砂ヘビ皮の小物は、かなりの高級品なんだよな……キルヘンミルクスネークよりも丈夫なんだよ」

そんなオスカーの話に、レオンさんが目を輝かせる。

 

 

なんだかんだでカフェに長居してしまい、朝10時くらいの出発となった。

テスさんも、お昼ラッシュ前の休憩みたいで、村の入り口まで見送ってくれるそうだ。

「なんか最近お洒落なレストランが出来てさぁ……1人じゃ行きづらいんだけど……友達が忙しいらしくてねぇ……」

テスさんが、そんな話をしてた。

「今度ソフィーと私、テスさんで3人で行きましょうよ」

モニカがそう言って、テスさんに見送られて村を出る。

 

境界の裾野までは10時間程……それなりの道だ。

 

恵みの森を抜けた先の森の道を行く……

「なんか涼しいねぇ……」

荷車を引くモニカにソフィーが話す。

なんか太ったとか言って、コルちゃんとオスカーを乗せて荷車を引いている。

「私は暑いけれどね……ソフィーも太りすぎとかないの?」

「いや、ジュリオさんも言ってるけど……モニカ太ってないって。痩せたい場合も、ぷにちゃんに言ったら、余分を食べてくれるって言ってたよ?」

「そうなんだけど……なんかもっと頑張らないと的な気分なのよ……」

なんか複雑な気持ちの問題があるようだ。

「でもモニカ、食べるもんはしっかり食べないとダメだぜ?強くなるんだったらな!」

オスカーはそう話し、荷車に揺られながらお昼ご飯用に採った芋を剥いてる。

器用だ……器用過ぎる。

 

境界の裾野付近に差し掛かる頃には、オスカーは植物達に挨拶回り。

そんなオスカーが荷車の所へとやって来た。

「この先の街道外れ、泉があるぞソフィー!」

水の匂いとか植物達からの話とか……

またオスカーが泉を見つけて来たみたいだ。

 

「やった~♪」

水浴び出来て、煮物の水にもなるし、泉は本当にありがたい。

ソフィーは杖を高々と上げて喜ぶ。

ジュリオさんとレオンさん、モニカも明るい顔になる。

「おデブちゃん、本当に旅向きねぇ……あまりお水とか用意しない旅なのも、納得だわ……」

レオンさんも感心する。

そして槍と剣で草地を薙ぎ払って進む。

 

「……ここ、以前は道だったんじゃないかしら?なんかそんな感じがするわね……」

レオンさんが呟く。

そんな草刈りの先には、石に囲まれた泉があり、しかも崩れかけている石の高い所から、湧き水が泉に流れていた。

「これはまた立派な泉だね……」

ジュリオさんも驚く。

 

少し離れた場所に、幾つもの長い石が、木々に紛れて鎮座している。

「昔は、人で賑わっていた場所だったそうなんだけどね……また、エルポレ族の住処でもあった……って古い木々に聞いたよ」

オスカーがそう話す。

そんな話をしながら、星明かりと焚き火の野営。

夕食のスープを口に運ぶ。

 

「なんか神秘的だねぇ……大昔の人もエルポレ族も、こうやってスープを食べてたのかな?」

ソフィーが泉を眺めて呟く。

「エルポレ族は、歌と踊りを言葉として使っていたそうよ?だからもっと賑やかだったんじゃないかしら」

ヴァルム教会には、エルポレ族の逸話なんかが残っているらしく、モニカが詳しいみたいだ。

「スープが美味しかったです!」

コルちゃんは両手を頬に当てて、左右に揺れる。

そういう踊りみたいだ。

「あたしもあたしも!」

コルちゃんの踊りに、ソフィーも隣で左右に揺れる踊りを見せる。

「はははっ……旅がこんなに楽しいものだなんて、僕も思いもしなかったな……」

そんな2人を眺めて、ジュリオさんが微笑む。

エルポレ族の鎮魂の踊りや、これからの幸せの踊りを創作して、泉の側でみんなで踊った。

特にレオンさんがノリノリだった。

 

 

そんな野営を過ごし、更にソフィー達は進む。

境界の裾野には夜に到着。

 

赤プニがぷにぷにしてる。

特に襲って来ない性格のようで、やり過ごしやすい。

「何これ……ケーキみたい」

繊維鉱石ファーデンライトを手に、ソフィーが呟く。

「なんか上品な宝石になりそうね。これ」

モニカとレオンさんが夜水晶を見つめる。

プラフタが思い出した場所なのだから、プラフタもここに来たって事なのだろう。

 

「赤プニがこっちに気づいたです!」

「鈍感だっただけなのか!」

やたら近くに居た赤プニ達は、こちらに興味が無いのかと思いきや、普通に敵だった。

 

そしてそんな赤プニがガチで強い……銀いもパワーの防御力無かったらどうなるんだこれ……

「だ、大丈夫!?コルちゃん!?」

「え?まあ平気ですけれど……」

赤プニプレスを受けたコルちゃんが、ショッキングな見た目になっている。

「ははっ、コルネリアは頭が血だらけに見えるね。ピンクの髪に赤いプニプニの体液が付いたからね」

ジュリオさんがそう言って笑う。

……ジュリオさんは、戦闘になると生き生きする感じがある。

 

 

夜の間、採取と戦闘をして……

 

 

朝6時に境界の裾野を出て、キルヘンベルへと向かう。

赤プニ汚れの一行は途中の道、また古代の遺跡の泉に寄って服とか洗う事にした。

「なんかやたらと泉が湧いてるよね……」

服をざばざば洗うソフィーが、隣で靴を洗い出したオスカーにそう呟く。

「奥地に行くと温泉もあるとか本にもあったけど……まあキルヘンベルからは北なんだよな」

それを聞いたレオンさんは目を輝かせて、オスカーを捕まえる。

 

「ちょっと!なんでそれを知ってるのに西に!?しかもちょっと南だし!」

レオンさんも服を洗ってるので、半裸なんだけどお構い無しにオスカーを揺らす。

「え……?いや、レオンさん温泉好きなのか?」

靴を洗ってるオスカーが揺らされながらも、いつものトーンで話す。動じない男だ。

「好きに決まってるじゃない!温泉が嫌いなんて人、居ないわよ!」

そう言ってレオンさんは、オスカーのすぐ隣で服を洗う作業に戻る。

 

「あ!ここちょうどいい深さだよ~!」

ざぼざぼと入ったソフィーが、皆に手を振る。

「そう言えばこの泉……少し温いです。ならこれも温泉なのでは……」

服のまま泉に入ってるコルちゃんが言う。

「確かにそうだね。でも温泉と言うには物足りない温度だけどね……」

ジュリオさんも泉に入り、鎧を磨きながら言う。

「ふわふわゼッテルが再生したらいいんですけど……」

イマイチ誤魔化しきれなかった汚れを見つめて、コルちゃんが呟く。

「あ!ふわふわクロースを作ればいいんだよ!帰ったら作ろう!」

ソフィーが閃く。

……でも何回も繰り返し使えるようになるのだろうか……とも疑問に思う。

 

 

「行きは涼しい道だったけど……水浴びするには寒かったかしら……」

レオンさんが寒そうにしてる。

「荷車、変わりましょうか?」

荷車引いて、いい汗かいてるモニカが微笑みかける。

「いや、それはなんか……やりましょうか!レオンさんの実力見せてあげるわ!」

それからはレオンさんが、荷物とコルちゃんを乗せた荷車を引いて、キルヘンベルへと帰り着く。

もう夕方だった。

 

「最後まで僕は……」

荷車引く係、取られっぱなしのジュリオさんが呟いた。

 

 

ともかく解散して、モニカとコルちゃん、ソフィーのお決まりの3人でアトリエに帰る。

「あらおかえりなさい、ソフィー。お邪魔してるわよ」

エリーゼお姉ちゃんとプラフタが居て、エリーゼお姉ちゃんはお茶してた。

「エリーゼお姉ちゃん!エリーゼお姉ちゃんが居たらプラフタも寂しくないね」

ソフィーはそんな2人を見て喜ぶ。

「そうね。エリーゼが通ってくれたら、アトリエの留守も安心ね」

モニカも微笑んだ。

 

 

プニ汚れの残る3人もお茶会に合流する。

さすがに外テーブルを使う事にした。

「エリーゼとの会話、それに持って来て頂いた本から、ソフィーの新しい錬金術レシピの構築も出来そうですよ。フリッツに貰ったヒントもありますし」

 

シュタルメタル、マナフェザー、モノクログラスのレシピ構築が出来るようになっているみたいで、ふわふわクロースの、ちょこっと調合レシピ構築もしたい。

ソフィーのこれからは、大忙しになりそうだった。

そして更にプラフタが採取地を思い出したそうで。

女の錬金術士だった事をぼんやりと思い出し、その事を話してくれた。

「プラフタが人間に戻ったら……色々遊びに行けて楽しめるのになぁ……」

ソフィーはそんな事を口にする。

「それは楽しみです。プラフタさんと朝のミルクをするです」

コルちゃんも乗っかった。

 

プラフタが人間に戻れたら……

そんな話で夕方のお茶会は盛り上がる。

暗くなる頃にエリーゼお姉ちゃんは帰って行った。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[肌襦袢]
コルちゃんのお家に伝わる寝る時の衣装。パタパタできて、ゆったりしてる。

フラム[大先輩]赤い爆弾。

[コルちゃんクッキー☆]
お酒のおつまみとして人気。コルちゃん好みの味じゃないので、コルちゃんも食べられないみたい。お酒を飲むおじさんが好きな味。ふんわりと生臭い。

[引換券]
1枚1枚に描かれた絵に、自由を感じる。

[国王に仕えてた錬金術士と量販店の話]
調子に乗ると、報復されるお話。

[オリジナル1200]
魔力の源、マナの柱は世界中に沢山あるらしい。
[イミテーション5000]
魔力の源、マナの柱は世界中に沢山あるらしい。キルヘンベル付近にも、滅びたマナの柱ならば4つ程ある。それがオリジナルだったのか、イミテーションだったのかは分からないけれど。

[そうした争い]
魔力の源の所有権、主導権を巡る戦争の歴史。どの生き物でも弱い者が淘汰されゆく歴史。

[滅ぼされたマナの柱]
ぷにちゃんもアトリエを焼き払えば、いともあっさり滅びて消えてしまう。らしい。その後で、溢れる魔力が発生して、その魔力に色々な生き物が影響され、魔物となる。

[ウメさん]
アトリエ前の井戸の番人。ここの井戸の水が特別好きなんだとか。本当かな?

[壺屋の紅いもスープ]
紅いもが流通され出したので、早速作ってる。大人気だけど、紅いも派と土いも派が居て、壺屋さんでは土いも派が多いんだって。

[鳥小屋オブジェ]
調合の浸け置き、終わった事をお知らせする物。ポコポッポー!ポコポッポー!って鳴く。

[4枚花のワンポイント、紫の布]
どこかの商人が、本の代金として置いてったらしい。プラフタを包む布として、今回選ばれたオシャレ布。

[カリカリトースト]
今日もカリカリ。

[砂ヘビ]
砂の国に住むという、なんか立派な見た目のヘビ。猛毒を持っていて、噛まれたら凄い毒で死ぬらしい。でも、基本的に人を見たら逃げて行くんだとか。今回の依頼の砂ヘビは、砂地で地中生活してる少し硬い鱗を持つヘビ。境界の裾野には、立派な毒ヘビは居ないらしい。

[砂ヘビイチゴ]
境界の裾野の砂ヘビが好む、とされている赤いトゲトゲの実。トゲトゲが凄く柔らかい。

[砂ヘビ皮の小物]
灰色の皮の小物。水に強く、そして硬い。冒険者の装備品として人気なんだとか。

[境界の裾野付近の泉]
古代の泉遺跡。石造りの泉。
[エルポレ族]
大昔にキルヘンベル付近に居たとされる原住民。歌と踊りが得意で、色々と高度な建設技術を持っていたらしい。

[ふわふわゼッテル]
使い捨て汚れ取り紙。
[ふわふわクロース]
洗って繰り返し使える汚れ取り布。


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錬金術のアトリエ 15

錬金術のアトリエ 15

 

それぞれの服を不思議な毛布にくるみ、ぷにちゃんの部屋へ。

「いらっしゃい、今日も元気そうねー。時間は膨らませる?」

ぷにちゃんはお決まりの質問をする。

「レシピ構築したいから、時間膨らんだ方が都合いいなぁ」

ソフィーは思う。

「ロジーさんと晩御飯する話をしてきてしまいました……時間を膨らませるのをアテにして……」

コルちゃんも思う。

「今日はジュリオさんと川沿いの宿……って言っちゃったのよね……膨らませるのをアテにして……」

モニカも思う。

思った事は3人にも、ぷにちゃんにも共有される。

モニカなんて、夜にエロエロする事を期待してるのまで筒抜けなのだ。

 

「あ……じゃああたしもオスカーにコルちゃんかモニカに声かけてもらって……でもレシピ構築……お昼でいっか……いやオスカーよりレシピ構築な気分だし……」

ソフィーもそれを受けて思う。

そしてそれも筒抜け。

「ロジーさん、どんなヘンタイな事をするの?コルちゃん?」

モニカが意地悪く微笑み、尋ねる。

「え……なんか最近は……少し離れて寝ていたりします。お互いにギクシャクしてまして……」

思えば筒抜け……

質問されてコルちゃんは、そんな光景を思い浮かべる。

 

……嫌悪感と気まずさ……

イライラと自己嫌悪ばかりが……

凄く伝わって来る……

「これ……時間膨らまないね……」

ソフィーも苦笑いだ。

 

「ダメな所に振ってしまうから……私のせいではないです……」

コルちゃんはジト目をモニカに向ける。

「これはモニカに頼るしかないね」

ソフィーはイタズラな笑顔をモニカに向ける。

「ぬむむ……」

モニカはしまった的な顔をして、変な音を出した。

そんなモニカも可愛い。

「ジュリオさんは、やはり参考になるです。憧れのペアだと思います」

コルちゃんが両手を合わせて、いつにない女の子なポーズで言う。

やはり修練を積んだ達人、ジュリオさんは憧れ的な位置にある。

 

「ぬむむむ……」

そして結局、ジュリオさんとイチャイチャする、モニカのイメージで、ほっこりうねうねする事にした。

 

 

……3人でぷにちゃんに身体を任せて、そんなイメージにきゅんきゅんして、時間は膨らむ。

「さて!あまり膨らむと夜寝れなくて困るよ!私としてはフリッツさんから聞いた……マナの柱がたくさんあった話を知りたいかな~……」

ぷにちゃんが打ち切った。

放っておくと時間が膨らみすぎるから、エロエロを打ち切る事もある。

「今……どれくらい膨らんだです?」

「2時間くらいだよ。そんなに刺激してないからね」

 

それからフリッツさんの話と、モニカが読んだ本の記憶を、ぷにちゃんと辿ってみる。

あまり掘り下げようにも大した情報はないので、少し眠る時間になり、膨らんだ時間は終わる。

 

 

「あ、明日明後日は、旅はお休みで……いいかな?」

アトリエを出る2人に、ソフィーが話す。

「そうね。そのくらいゆっくりでいいんじゃないかしら。皆にも伝えておくね」

「……次は温泉目指して……北ですか?情報あれば聞いておくです」

まだ夕方。

アトリエのドアを開けて話し合う。

「そうだね~……温泉行きたいね!男の子の前で裸ってのも何だから……下着の換えとか持ってった方がいいのかな?」

ソフィーが話す。

 

「何だから……っていうかそれは無理でしょ……無理よね?」

モニカが話して、コルちゃんを見る。

「むむ!?めちゃくちゃ恥じらいないから、実は平気でしょ的なオーラを感じるです。実際に結構平気なんじゃないかとは思いますが」

コルちゃんが答える。

ソフィーも頷いた。

「……こういうのって天性の物なのかしら……?」

モニカは悩む。

 

「まあ、それはレオンさんに言うと、それ的な服がありそうだよね。ハダカ族よりはホラ、服あった方がいい訳だし」

ソフィーが手を叩く。

「それはそうです!服はあった方がいいです!」

そう話して別れる。

そして遂に!マナフェザー、モノクログラス、シュタルメタルのレシピ構築、ちょこっと調合、ふわふわクロースの作成だ!

 

「漬け置き6時間かぁ……マナフェザー……」

意外と早く錬金釜に漬け置きとなったマナフェザー作成。

夜中に完成予定だ。

更に特性を2つ移せるようになっていたので、マナフェザーに一応それっぽい特性を持たす。

……オスカー荷台に取り付けて、軽くなる計画だ。

 

「特性2つ……モノクログラスはパーティー戦力となるから慎重に……でもこれ……結構難しいねぇ……」

見える見えざる目……モノクログラスは装備すると消えて、装備した者は第3の目を付ける事になり、死角が「なんとなく見える」ようになる。

なので、防御力が上がったりする。

マスターミトンもそうやって「見えざる手」として装備した人を強くする。

 

「さすがにこれは12時間ぐらい漬け置いて……ソフィーのイメージがしっかりしてないといけませんね………」

マナフェザーの漬け置き時間、錬金術談義レシピ構築で過ごす。

 

「マナフェザー、仕上げるよ!」

錬金釜を沸かし、マナフェザーを決める。

荷車に取り付けるのは後回しだけど……

 

そして次はモノクログラス、12時間だ。

「今、朝の3時……出来上がりは、お昼の3時ですね」

「集中して錬金釜の中に材料を配置しないとだね!」

ソフィーは錬金釜に材料を配置する。

「銀いもが金属としてそのまま使えるから……変異物質、HP強化……そんなとこだねぇ……ぷにちゃんコンテナのリストアップが凄いね。モノクログラスには移らない特性まで教えてくれるんだもん……」

「その割には迷いまくってましたが……」

「可能な素材リストアップが多くてねぇ……おばあちゃんのこの家と、ぷにちゃんのコンテナ管理人の力……凄いなぁ……」

「凄く色々と錬金釜の中に映りますから……それは素直に凄いと思いますね」

ソフィーとプラフタは錬金釜を前に、語り合う。

 

 

漬け置いてすぐ……オスカーがやって来た。

朝の6時……もう1日の始まりだ。

「ソフィー、昨日のカレーパーティーのカレー、持って来てやったぞー」

「カレー?なにそれ?」

ソフィーはオスカーの持ってきた鍋を見る。

「すげえ旨い煮物なんだよ。オイラも昨日初めて知ったんだけどさ、食通商人ってやつが作ってくれてさ。皆目を丸くして食べたんだぜ?ソフィーも誘いたかったけど、この家遠いからさ。今持ってきたんだよ」

 

朝食は、温めたカレーとパンで食べる。

「なにこれ!?すっごい美味しい!!」

「だろ?プラフタも食べれれば……プラフタの分も持ってきたんだけどな……ごめんな?」

「いえ、実際に食べられませんので。そのお気持ちを、嬉しく頂きます」

 

……そして朝食を終えて、オスカーは洗い物をしようと井戸へ向かう。

ソフィーはそんなオスカーを追いかけて、後ろからしがみついた。

「お?どうした?」

ソフィーの体重ではびくともしない。

オスカーはいつもの調子でそう聞いた。

「今日、昼3時までヒマヒマなんだ……」

ソフィーは、オスカーが汲み上げた井戸水に手を伸ばす。

「ソフィーがヒマヒマなんて珍しいじゃないか」

オスカーは井戸の側に置いた鍋と皿を手に取る。

「そう?今、錬金釜が漬け置きだから…お昼だけど……しちゃわない?」

ソフィーは上目遣いでオスカーを見る。

でもオスカーはそんな可愛い攻撃にも動じず、鍋を洗い出す。

 

「オイラはいいけど……お客さん来るかもだぜ?フリッツさんが作業台直すのに、なんか求めて来るんだろ?……さすがにまずいんじゃないか?……あ!住宅区のラーメル宿行くか!」

鍋と皿を洗いながら、オスカーは三白眼を見開いた。

青い瞳が小さすぎて悪人顔でもある。

「なにそれ!?モニカの川沿いの宿みたいなやつ?」

ソフィーは聞いてみる。

「まあ、そんなもんだけど……お昼だし、運が良ければ今なら上部屋行けるかもだな。行ってみようぜ?」

 

 

……そんな訳でプラフタに留守番を頼む。

「ふむ……それはいいのですが……いかがわしい所に行くのであれば、その錬金コートは脱いだ方がいいのでは?」

プラフタにそう言われて、ソフィーは青の錬金コートを見る。

「……悪い事しに行く訳じゃないから、このままで行くよ」

そしてソフィーとオスカーは、キルヘンベル裏ストリートへと行く。

……お昼には帰って来る予定だ。

 

 

「初めて来たなぁ……」

オスカーに連れられて裏ストリートへ。

ガラの悪い的な冒険者、商人なんかが散見される。

なんか傷んだ石畳と少し古い……壊れそうな建物なんかがあったりする。

「オイラは野菜の配達とかで来るからな。……今はさ、教会の子供達が配達してるんだけどな……ソフィーは、本当に来た事なかったのか?」

……同じキルヘンベルとは思えない風景だ……

「あ!お酒屋さん……?」

ソフィーはきょろきょろと回りを見る。

雰囲気がキルヘンベルじゃないみたいで、なんか新鮮に思う。

「まあまあ、昼には帰らないとだろ?」

オスカーがソフィーを捕まえて、前を見るように促す。

「そうだね。意外と時間ないのかも」

そしてラーメル宿へと行く。

それは古い石造りの建物で、3階建てくらいの大きい宿だった。

 

「おや坊っちゃん、配達かえ?」

モップを持ったお婆ちゃんが中で掃除していて、オスカーを見る。

「今日は部屋を使おうと思ってな……今なら上部屋も空いてたりするかい?」

オスカーが言う。

ソフィーはそんなお婆ちゃんを眺めて、ぺこりと頭を下げる。

「ええ、これは可愛らしい子を連れて……こんな時間なら……坊っちゃんだし、100でええわ」

お婆ちゃんは微笑み、指で上を示した。

「今はホルストさんの依頼もこなしてるからさ、普通に1000取っていいよ。ばあちゃん……また怒られちゃうぜ?」

オスカーはお婆ちゃんにお金を渡し、上へと上がる。

ひと晩3000コールの部屋なんだそうだ。

お昼は1000コール。どちらにせよお高い!

 

 

「凄い!なにこれ!?ベッドでかー!王様の部屋!?」

広い3階の部屋。

広いベッドに……

水を湛えるでかい銀の器。

ふわふわゼッテルが沢山置かれた棚……

家具はどれも古いけど、なんか豪華で重みがある的な……

「結構新しくしてるんだなぁ……造花とか散りばめて……この植木鉢、やっぱりここのだったかぁ……」

 

2人で部屋を見る。

中和剤石鹸(赤)とか蒼剛石も、おしゃれオブジェとして飾られてた。

金の蜘蛛の糸も……上手く飾りとして使うもんだなぁ……と感心する。

「さて、今7時半……お昼までは結構長いな……」

オスカーは窓を閉めてカーテンを閉める。

部屋は暗くなって、ソフィーはベッドに座る。

「へへ~……こういうの、いいかも」

ソフィーはベッドに倒れ込み、両手を上げる。

ハクレイ石の受け皿がベッドの四角にあり、なんか涼しいベッド。

「だろ?」

オスカーはそんなソフィーの胸に手を置いて、キスをする。

 

 

……そしてする事して、お昼前にラーメル宿を出る。

「か、片付けなくていいのかな……?」

ソフィーは派手に濡らしてしまったベッドを思う。

しかし身体の方は、ふわふわゼッテルでスッキリ綺麗になった。

ふわふわゼッテル……

凄いやつだ……

「まあ、そういうもんだから平気だって」

 

……そんなラーメル宿事情なんかの話を、オスカーとしながらアトリエへ向かうと、その前にお洒落レストランを通り掛かる。

そこにコルちゃんとモニカが居た。

「あれ?ソフィーもここでお昼?お昼になっちゃうと混んじゃうから、ちょっと早めのお昼なんだけど、ソフィーもオスカーもどう?」

モニカに誘われてレストランに入る。

ソフィーはまた入る、お洒落なお店にキョロキョロする。

……造花……

モニカと奥様方の造花……

需要あるなぁ……

そして中和剤石鹸(赤)も……

虹色の水晶片も、なんか一際でかいラーメル麦が細いかごに入っていたり……

水晶のかけらも大活躍の、キラキラお洒落空間。

 

「うわぁ……なんかキラキラしすぎて落ち着かないや……」

オスカーはそう言って、女性客ばかりの店内をキョロキョロする。

外観の見た目よりも、中は広い。

「最近、コルちゃんは壺屋が落ち着かないみたいでね。それでたまには……って誘ったのよ」

食事の注文を終えて、モニカが話し出す。

「最近……商人の方々と冒険者の方々で……コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会……なるものが結成されてしまいまして……」

コルちゃんも子供達とセクシーポーズとかして、おじさん達から笑いと売り上げを取っていたらしく、悪ノリが高じて会合が出来たそうだ。

「ん?人気者なのはいい事なんじゃない?」

 

……むしろその会、私も入らねば……そう思いつつ、ソフィーは聞く。

ノロケ?……はさすがに違うか。

「はい。それは嬉しいのですが……やはり注目されるのは落ち着かない所がありまして……それと私は店主であって……看板娘ではないのですが……」

壺屋で食事をすると、ほぼ必ず常連客と言う状態なので、今日はこっちに避難したのだと言う。

「明日からもこっちで食べるの?」

そう聞いてみる。

お洒落なごはんだし……お昼前でも女の人で賑わってるし。

「いえ、さすがに晩の食事から、壺屋さんにするです。ロジーさんも……応援してくれる皆さんも、楽しみにしてるみたいなので」

 

そんな話をしながらレストランで食事を楽しむ。

そんな中でコルちゃんから、商人に伝わると言う……

伝説の軍手の話を聞いた。

「プラフタさんも、ミトンでは少し不便かと思いまして……色々な物を掴みやすいそうなのです」

……とはいえ、軍手だし……オシャレさは下がるなあ……

と、ソフィーもモニカもオスカーも、軍手で本を読むプラフタを思い浮かべた。

……ミトンがオシャレかと問えば、そんな事も無いのだけど……

 

 

お昼、ソフィーはアトリエに帰る。

モノクログラスはまだ少し掛かるので、プラフタと摘み取り軍手のレシピ構築をする。

「意外なところで閃くものですね……」

「でしょー?やっぱ外は出とくものだなぁ~……と思ったりしてるんだよね」

「愛は深まったのですか?」

「もうドン底まで深まってるよ~。今日は確認してきただけだよぉ~……」

「ドン底!?……それは少し違うのでは……」

15時にモノクログラスを決めて、次の摘み取り軍手作成、6時間に突入する。

 

「カテゴリパワーの要求高すぎて……妥協作になっちゃうなぁ……今ある物だとどうにも無理だねぇ~……」

「まあ……でもソティーとか中和剤なんかはカテゴリパワーMAXもあるのではないですか?」

「うに袋……MAX品やってみよっか?」

「危険物が出来上がりそうですね。やってみると、ソフィーの錬金術の発展も分かりやすいかも知れませんね」

 

夜の9時に摘み取り軍手が決まり、うに袋の作成……そこからクラフトのレシピ構築……ふわふわクロース作成……と夜は過ぎて行く。

 

 

「クラフト出来たぁ~!」

釜の中、素材配置が難しいクラフトを決めると朝……

温泉へ出発の朝だ。

……まあクラフト漬け置き6時間で眠ってるので、元気な訳ですけれど。

「プラフタ、行って来るね~」

ソフィーはアトリエを出る。

雨の降るキルヘンベル……

 

 

カフェに皆集まる。

そしてお楽しみ、カリカリトーストの朝食。

その中にハロルさんも居た。

「ハロルさんも来るの!?」

ソフィーは期待の眼差しを向ける。

「見送りだ。……店はどうせ午前中なんか、客は来ないからな……」

少し気に入らない、的ないつもの顔を見せるけれど、それは少し和らいだように見えた。

……ソフィーから見て……だけれど……

 

岩こぶ山麓から北西に行くとある材木小屋……

この地に当時使われていたという温泉がある……

との話で、その場所に決まった。

……というか前もって決まっていたようで、ホルストさんも依頼を整理してあり、スムーズに出て来た。

錬金術の素材にはならない材木が、今も沢山あるそうで、それが依頼となっていた。

オスカーの荷車大活躍だ。

 

 

「ふふふ~……ソフィーとモニカ、コルちゃんにジュリオ、おデブちゃんと……水着作って来たわよ~!」

そしてキルヘンベルを出た旅の道……

レオンさんがウキウキワクワクノリノリで見せて来た。

「凄い!オシャレ!」

モニカとコルちゃん、ソフィーが飛び付く。

「これで……皆で温泉入れるね!」

ソフィーもはしゃぐ。

「今は魔物も出る土地だろうから、皆で、というのはちょっと油断し過ぎじゃないかな」

今回は荷車を引くジュリオさんが言う。

そんな話をしながら材木小屋へと向かう。

 

 

「クコココココ……」

お昼過ぎ、野営での昼食の後で……

真っ昼間なのにゴーストとスカーレディが襲ってきた。昼間だからか、いつもより弱かった。

 

 

そして到着。13時。

お化け達は……ここで亡くなった人なのかも?

相変わらずコミカルな見た目だったけど……

「うおおお!」

アードラが空から緑プニを降らし、ついでに急降下とかしてきた!

そしてそのまま戦闘に突入する。

「なんと凶悪な……!」

でもアードラも緑プニも、特に強い訳ではないみたいで、銀いもパワーで固めたパーティーとしては、余裕で倒せる。

草モンスター、ホワイトルートの広範囲毒攻撃も、毒ダメージよりも銀いも回復の方が大きい。

銀いもパワー……強すぎる。

 

 

「温泉……どこかしら?」

みんなで温泉を探す。

そこら中にカーエン石が落ちてた。

 

「ここいらの木々が言うには、この滅びた小屋が温泉だったらしいぜ?今はまあ……見ての通りだけど……」

オスカーが木々に聞いて、そんな答えを知らせる。

「嘘……嘘よぉぉ!」

レオンさんが崩れ落ちた。

「な、何でもいいから泉はないかな?」

ソフィーがオスカーに聞く。

オスカーは木々に聞いて回る。

「……まあ、ここらの森の中も泉は沢山あるみたいだけど……帰り道の途中に泡立つ泉があるらしいぜ」

 

依頼品の木材を切り出して……木々に聞いて回って戦って……夜になってた。

 

「さて……晩ごはんだな……」

夜ごはん、近くの小さい泉に行く。

木材小屋からちょっと離れた、昼ごはんも食べた所。

オスカーは、ふわふわクロースを使って小さいカボチャを……?

 

「煮てる……んじゃないよね?」

ソフィーが尋ねる。

「蒸してるんだよ。蒸すと凄く柔らかくなるみたいだからな」

水蒸気がやたらと噴き出していて、暖かい。

「あの小さいカボチャ……凄く固そうだったけど、食べられるのかい?」

ジュリオさんが尋ねる。

「材木小屋の人達が蒸して食べた……って本にあったからね……んで味がないけど食感はいいらしいんだよ。昼も夜も豚ネズミじゃつまらないだろ?」

荷車にいつも住んでる大きな鍋は、水蒸気を出しまくってる。

 

「また食べた後になんかあるのは嫌よ?」

モニカがジト目をオスカーに向ける。

「蒼キノコ、やばかったな……でもいつの話を思い出したんだよ?」

オスカーが笑う。

そんなオスカーに寄りかかって、コルちゃんは眠ってる……

よく眠る子だ。

 

「本当だ……ホクホクしてて凄い口当たりいいのに、甘くないカボチャだね……」

少し塩して食べる。皮まで柔らかになってる。

「皮は……ほんのちょっと甘い……かも?」

モニカが首を捻りながら味に集中する。

「余程の事がない限り、このカボチャでお腹を膨らませたりはしない、と言うだけあって……旨くないな……ただ、付け合わせとしては頻繁に使われていた……みたいだけど」

オスカーも、考え込みながら食べてる。

「食感はいいからね。味は……粗食慣れしていた頃を思い出したよ」

ジュリオさんは笑う。

 

……それからも少し木材と採取活動をして、昼に泡立つ泉に辿り着けるように、木材小屋を出る。

 

 

「太陽バッチリ!」

結構広い泡立つ泉に到着した頃、晴れて暖かい日差しが降り注いでいた。

「しゅわしゅわですね……この泉……凄いです」

森の切れ目に炭酸水の泉……この泉の周辺には植物が生えておらず、魔物も居ないようだった。

「……植物はしゅわしゅわが苦手みたいだけど……毒とか大丈夫かな……」

オスカーが匂いを嗅いで、ちょっと飲んでみる。

泉の水をよく使うけど、こうしてオスカーが確かめてるのが常だし。

「おデブちゃん、飲んで平気なの?」

レオンさんが声を掛ける。

「入ってからどうのってなるよりは平気だよ。それに、これは平気な水だな……かなり綺麗な水だよ」

 

オスカー先生のお墨付きが出て、満載の荷車を固定させる。

「よし!レオンさんの水着に着替えないと!」

ソフィーとコルちゃんは服を脱ぎ出す。

「えええ!?ここで着替えるの!?」

レオンさんが驚き、モニカが頬を掻く。

……この2人……およそ羞恥心というものが……

「まあ、僕は警戒しているから、ゆっくり楽しんでおいで」

ジュリオさんは泉と、その2人に背を向ける。

「しゅわしゅわ……冷たいです!気持ちがいいです」

「うひゃ~!モニカもレオンさんもオスカーもおいで~!」

着替えた2人から入っていく。

そしてレオンさん、モニカにオスカーも服を着替える。

 

 

「結局皆で楽しんじゃったわね……」

夕方……しゅわしゅわの泉からキルヘンベルへと向かう。

魔物も出なかったので、しゅわしゅわ泉をバッチリ皆で楽しんだ。

「あまりに何も無いし、警戒を代わるのも酷だしで……なかなか楽しい場所だったね……」

いつになく綺麗な一行がキルヘンベルへと帰って行く。

朝5時……

しゅわしゅわの泉で身体も綺麗だし、朝食にカフェでも行こうか……

なんて話しながらキルヘンベルに到着する。

 

 

「いやあ、大変な事が……」

ホルストさんから、忘却のナーセリーから冒険者が帰って来ない依頼の話を受ける。

「大変!それは様子見て来ないと!」

ソフィーは外を見る。

「まあ、でも食べてからにしないかい?それと準備は必要だぜソフィー」

オスカーはそう言って、カフェの席に着く。

「そうだね。こういうのはまず……冒険者達がどのくらいのパーティーだったのか……詳しい話も聞かないとね」

 

……何でも冒険者6人で出掛けたらしい。

それがもう7日も帰って来ていないのだと言う話を聞いた。忘却のナーセリー、いにしえの厨の方へ行く依頼を受けていたので、そこに居るものと思われるそうだ。

 

「さて……皆、行くかな?帰ったばかりだし、それぞれ何かと忙しい人達なのだけど……」

ジュリオさんは食事の後に皆を見る。

「オイラは行くよ。ちょっと調味料と道具だけ補充しないとだけど、八百屋にあるからすぐ準備出来るよ」

オスカーはいつものトーンで言う。

「私も行くわ。少し強い魔物とか居そうだし、この槍技を披露できるかも知れないわ」

レオンさんもやる気だ。

カリカリトーストをお代わりしてた。

「私はさすがに眠いので……荷車でまた眠ってしまいますが……行きます!」

コルちゃんも眠そうだけど乗り気だった。

全員そのまま……荷車を空っぽにしてから、忘却のナーセリーへと向かう。

 

 

いつになく急ぎ足のジュリオさん。荷車が早い。

いつになくカタコトしまくる荷車の上で、コルちゃんは眠る。

 

 

「……?何この香り……」

お昼過ぎに忘却のナーセリーに到着。

……どこからともなく、香る風が吹いてる。

「何の匂いだろ?緑プニみたいな果実の香りがするけど………」

皆で辺りを見回す。

……特に何も無かったけれど、リフュールボトルを閃く。

 

そしていにしえの厨へと向かう。

……石造りの建物で、廃墟……そんな場所だ。

本が飛んでいる。

……魔物、マジックブックが飛び、緑プニがころころしてる。

そしてソフィー達がその姿を見ると、マジックブックは開き、青プニを召喚すると青い魔法ビームを撃ち込んで来た。

 

「うわあ!」

まだ廃墟に入ってなかったのが幸いして、ソフィーは青い魔法ビームを避ける。

「これは突撃して大人しくさせた方がいいわ!」

モニカが剣を抜く。

「待って!フラム大先輩が突撃するよ!」

ソフィーがフラム大先輩を取り出す。

「……冒険者達が居るなら、フラム大先輩はまずいぞソフィー!」

オスカーが止める。

結局、銀いもパワーを信じて突撃をする事にする。

戦うのにやりづらい場所だけど、乱戦を挑む事にした。

 

「強化の力を使ってから行こうか」

マナの柱の力……使って行く事にする。

 

ジュリオさんの魔法バリアでHPバリア強化。

モニカの魔法バリアで、攻撃力強化。

ソフィーの魔法バリアで、防御力強化。

レオンさんの魔法バリアで、なんとレベル強化。

 

スキルを全力で使い込み、マジックブックと緑プニの群れを倒していく。

マジックブックも殴るとモロい。

 

ドカスカ祭りの末に、いにしえの厨の魔物を全滅させた時には、緑プニ汚れと緑プニの香りが蔓延していた。

でも皆揃って無事だった。

あまり強くない魔物だったのは幸いだった。

いにしえの厨の床下、貯蔵庫から冒険者達を助け出して、ソフィー達は帰る事にする。

 

「荷車も改良したいかなぁ……」

冒険者達を積んだ荷車をソフィーは見つめる。

「大改造かぁ……夢があるよなぁ……」

オスカーも荷車を見つめる。

「もう少し持つ所が高くなると引きやすいかな」

そんな話をしつつ、感謝されつつキルヘンベルへ。

 

 

「おお!素晴らしいですソフィー!」

夕方に帰るキルヘンベル。

緑プニ汚れの酷い一行を、ホルストさんと冒険者達で迎える。

「……そんな姿になってまで……頑張ってくれたのですね……」

涙ながらにホルストさんが声を掛ける。

……腐った果物の……

妙な甘い匂いがする……

「はい……でもこんなんなってますので……明日の朝とかお昼でもいいですか?」

冒険者と荷車を置いて、一行はアトリエへと戻る。

レオンさんは別れた。

 

 

「プラフタただいま~」

ソフィーとモニカ、コルちゃんでアトリエに入る。

「あ。エリーゼお姉ちゃんが寝てる……」

ソフィーのベッドでエリーゼお姉ちゃんが寝ていた。

「本、増えたわね……」

モニカが床に並べられた、棚に並べられた本を見る。

「あ……ごめんなさいねソフィー……えっと……3人ともどうしちゃったの!?」

エリーゼお姉ちゃんが起きた。

「ちょっと魔物の巣に飛び込まないと行けない用事があってね……」

プニ汚れの凄い3人と、その変な甘い匂いにエリーゼは驚く。

「あら……こんな時間なのね……ちょっと帰らないと……」

そして慌ててアトリエを出ていく。

「まあ、服から毛布にくるんで……」

いつものように不思議毛布に3人の服を包み、ハダカ族の3人はぷにちゃんの部屋へと行く。

……時間を膨らませて身体を綺麗にして、ジュリオさんを、オスカーを洗う計画だ。

 

 

「……我に……気を使ったのか……随分と旨そうになっているな……」

ぷにちゃんはそう伝えて口を開く。

相変わらずの3つの舌……

それぞれその舌に身体を預ける。

時間を膨らませて、ひと眠りする。

特に髪にへばりつくプニ汚れも、ぷにちゃんにかかればとんでもなく綺麗になる。

 

そんな訳で膨らんだ時間をゆっくり休み、モニカを残してコルちゃんとソフィーでアトリエを出る。

「お待たせしましたジュリオさん」

ソフィーがそう言ってジュリオさんに声を掛ける。

「本当に早いね。それじゃ、遠慮なく……」

ジュリオさんはアトリエに入り、ソフィーは外テーブルに座るオスカーの向かいに座る。

 

「それでは……私は鍛冶屋住まいですので」

コルちゃんも帰って行く。

……明日、明後日は旅休み、と皆と話したから、ゆっくりだ。

「さすがに疲れたなぁ……あまり汚れがひどいもんだから母ちゃんも心配してたしなぁ……」

オスカーが星空を見上げて呟く。

「オスカーもカッコ良かったよ!スコップで叩きつけてから、なんか堂々と振りかぶってスコップビンタするの。そんなゆっくりで……当たるの~っ!?って感じで」

ソフィーが言う。

……超低空ロケットタックルもカッコいい………!

そんな事を思いながら。

「そ、そうか?まあ……ソフィーがそう思うなら、いいんだけどな……」

オスカーは頭を掻く。

そんなこんなでオスカーと仲良くしてると、モニカとジュリオさんが出て来た。

 

 

「お世話になったね……綺麗になって良かったよ」

ジュリオさんがお辞儀をする。

「いいんです、いいんです。いっつも頼りにしてますので」

ソフィーは立ち上がる。

そして星空の下、これからの旅休み予定なんかを話し合い、別れる。

 

「さて、オスカーも綺麗にしないとね♪」

オスカーとアトリエに入る。

 

「またオスカーも凄い汚れなのですね」

プラフタがお出迎えする。

新しい手、軍手が本を捲っていた形跡が机の上にあった。

「まあな。今回はプラフタも長く待たされたんじゃないか?」

ふと、そこに目を止めたオスカーがプラフタに尋ねる。

「確かに。ですがエリーゼが遊びに来てくれるようになりましたから……それに、彼女が新しい本も持って来てくれますので、だいぶ過ごしやすくなりました」

プラフタはそう話す。

どこかしら嬉しそうな……

「エリーゼお姉ちゃんが、ちょくちょく来てくれると嬉しいよねぇ……そんなエリーゼお姉ちゃん用にお菓子でも作っておこうかな……」

ソフィーは人差し指を口許に呟く。

「それはいいですね。エリーゼはキルヘンミルクが苦手だそうで、そこを配慮して頂けると」

「そうなんだぁ……」

そう話して、オスカーの服と身体を洗い出す。

 

……皆の汚れを受けまくりの不思議毛布も洗う……

「寝る布団……無くなったなぁ……」

2枚とも洗った事で、ベッドに毛布が無くなった。

ならば……と、更に敷き布団も洗い……

「あたしも、こういうの作れるようにならないとだね!」

ソフィーはやる気に燃える。

そしてプラフタとクロース改良を企み、オスカーも参加した。

 

……そんな夜は更ける……

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[川沿いの宿]
キルヘンベルの川の上流にある宿。森の中、という風情と川の風の涼しさで、人気の宿らしい。

[エロエロ]
ハダカ族同士の戦い。
[ヘンタイ]
ハダカ族同士の戦いの中、変則技を使う事。

[レシピ構築]
図鑑のレシピの謎解き。掛かる時間とか、使う材料の量とか。

[ふわふわクロース]ふかふか。

[カレー]
香り材料を多く入れた煮物。
[食通商人]
食べる事にうるさいらしいけど、痩せたおじさん。

[住宅区のラーメル宿]
大きな壺に入ったラーメル麦が目印の宿。裏ストリート寄りにある。
[上部屋]
広い3階の王様部屋。王様気分が味わえるけど、大体エロエロ目的での利用になるみたい。

[錬金コート]
ソフィーの一張羅。おばあちゃんから貰った、少し大きいコート。思ったより背が伸びなかったのが原因かと。

[お酒屋さん]
お酒が売られてる。味見も出来たりする、樽酒が積まれてるのが目を引くお店。

[ふわふわゼッテル]
コルちゃんが作りまくって納品しまくったみたい。宿の常備品となりつつある。

[中和剤石鹸(赤)]
オブジェにも使える!

[モップを持ったおばあちゃん]
八百屋の配達をいつも受け取る人みたい。オーナーじゃないんだけど、オーナー面をしてて、怒られる事もしばしば。らしい。

[ハクレイ石の受け皿]
涼しさを演出。実際にひんやりするように出来てる。ここに上等なハクレイ石を乗せると、寒くなりすぎるので粗悪品くらいが丁度いいのだとか。

[レストラン]
エルノアさんのオシャレ魂炸裂!キラキラ空間の食事処。

[コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会]
おじさん達に大人気。職人さんの道具とか、増やす錬金術が便利なんだって。更にお酒まで扱う予定。

[壺屋]
こちらは飾らない食事処。

[商人に伝わる伝説の軍手]
この軍手を使うと、収穫が不思議と増える……と言われている軍手があるのだとか。

[温泉]
あったか~い泉。温泉に宿が出来ている場所もあり、旅人の目的地となって賑わうのだとか。

[カリカリトースト]
今日も元気にカリカリ。

[水着]
水遊びの時に着る服。水の抵抗を少なくしつつ、男の子を悩殺するデザインなんだとか。

[温泉だった滅びた小屋]
木材を採取する作業所跡地。仕事明けに温泉を利用していたみたいだけど、今や基礎だったと思われる瓦礫のみが残る。

[小さいカボチャ]
凄く高い、大きな木から落ちている木の実。カボチャっぽい見た目だけど手のひらサイズ。

[しゅわしゅわの泉]
街道から離れた森の切れ目にある泉。しゅわしゅわしてる。

[忘却のナーセリーから帰って来ない冒険者]
イキナリ本とプニの魔物が現れたのだとか。

[エリーゼお姉ちゃんが寝てるアトリエ]
実は落ち着いて眠れるベッドが無いんだとか。このところ急に本が増えたから……
[不思議毛布]
汚れが落ちる落ちる。


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錬金術のアトリエ 16

ソフィーのアトリエDXで登場。
おばあちゃん、ラミゼルって名前らしい。


錬金術のアトリエ 16

 

「ふあぁぁぁ……」

まだ暗い時間、ソフィーが先に目覚めた。

……オスカーはまだ寝てる。

「おわぁっ!」

オスカーは起き出したソフィーに手を伸ばして、ベッドに引き寄せる。

ソフィーは驚きながらも、素直にオスカーに引き寄せられる。

「……おはよう、ソフィー……」

昨夜は絡み合うも、疲れからかあっさりとオスカーが眠ってしまったので、どちらもハダカ族だった。

「おはよ♪」

オスカーに捕まえられたまま、ソフィーは唇を寄せる。

「ホルストさんの所に8時……今は?」

 

オスカーの寝ぼけボイスにそう聞かれて、ソフィーは時計を見る。

「……4時だね……」

そう言って、またベッドに戻る。

……オスカーが眠い時は、なんか甘えられる……

ソフィーは少し嬉しく思いながら、オスカーに抱きしめられる。

 

……思えば貧相な自分に、「ソフィーはもっと食べないとな」とか言って付き合ってくれた……

そんな頃を思い出す。

……あと、やたらアトリエ前に植物を求めてうろついていたのもあって、ソフィーに近しい人だった。

……夜通しカワニレの木達と話していたり。

 

ソフィーには……

何も無かったし、だから将来の事もあまり考えつかなかったけれど……

 

 

「2人とも……もう7時ですよ。……いいのですか?寝ていて……」

プラフタの声にハダカ族の2人は起きる。

「……お?」

「うわぁ、プラフタ!ありがと!行かなきゃだね!」

ソフィーは飛び起きて、オスカーはまだ寝惚け眼だ。

ともかく、ホルストさんのカフェで冒険者救出のお祝いとかしないとだ。

 

 

雨の降る朝……2人はカフェへと急ぐ。

「あら。なんか慌ただしいのね?」

モニカが奥様方と雨の中……井戸端会議していた。

「モニカも、そろそろカフェ行かなきゃだよ?」

ソフィーに言われて、モニカと3人になる。

そしてカフェへと行くと、救出した冒険者達と、ジュリオさんにレオンさん、ハロルさんとコルちゃんもロジーさんも来てた。

「うわぁ……賑わってるぅ……」

朝から、お酒の匂いがやたらと………

ともかく、冒険者達と、ホルストさんに感謝されて、派手な朝食を食べる。

オスカーとコルちゃんで大食い競争しているような……

コルちゃんよく食べるな……あんな小さい口で……

 

「そうだ!遂に念願の荷車改造計画があるんだよ。オスカーもこれは手伝って欲しいんだよね」

マナフェザーを取り付ける改造で、軽くなりつつ、荷車を2階建てにし、更に車部分の改造……

もう設計図までがプラフタと作られている。錬金術生活の賜物だ。

「本当かい?それは僕も手伝っていいかな?」

ジュリオさんも加わった。

オスカーもやる気満々だ。

「さて、どんな設計図なのかも気になる所だよな」

オスカーがそう話す。

 

 

レオンさんに引っ張って来られたハロルさんも参加する事になり……

賑やかなアトリエ前、ソフィーはちょこっと調合版、荷車用スプルースを追加で作りつつ、荷車の改造。

エリーゼお姉ちゃんがアトリエに遊びに来てた。

レオンさんはなんか、注文が立て込んでいて帰ってしまった。

 

 

ソフィーとオスカー、ハロルさんにジュリオさんとプラフタで……

あーだこーだそーだこーだしながら……

夜には錬金荷車が完成した。

 

少し広くなった荷台、更に2階の荷台に、3ヶ所の梯子が横と後ろに付いて、更に屋根まで付けた傑作となった。

「これ、もう1個作れれば冒険者達も……ホルストさん管理で貸し出したりして……使えるんじゃないかな……オイラ達に続いて、特に豚ネズミなんか日々採ってるみたいだし……」

オスカーが言って、ジュリオさんも賛同して……明日、もう1台、錬金荷車2号を作る事にして、解散する。

オスカーからホルストさんに言っておくみたいで、その返事次第だけど。

 

 

「ふぅ……さて……」

ソフィーはアトリエに戻り、プラフタを見る。

「錬金術で木の加工とかしてましたから、今日は疲れているのではないですか?」

プラフタは、ふわふわと飛びながらそう言った。

「ぷにちゃん部屋で時間を膨らませて貰えば、休まるからね。ここで朝まで錬金術生活しないと………」

そんな裏技を使い、朝まで錬金術生活する事に。

錬金術生活すると、プラフタが生き生きするし!

 

 

ふわふわゼッテル(ほのかな青)作成。中和剤(青)をやたら薄めたやつを使って、オシャレにしてみた。

ふわふわゼッテル(ほのかな緑)

ふわふわゼッテル(ほのかな赤)と追加する。

リフュールボトルのレシピ構築、リフュールボトル作成!

3時間で出来上がる。

瓶詰めの液体だけど、瓶を開封すると回復の強い魔法の香りが対象に襲い掛かり、リフレッシュしたり、身体の回復力をどかんと上げる。

山師の薬の更に強くて便利版だ。

 

更に錬金毛布……アトリエの不思議毛布を作るべく、熱を帯びるクロースの作成計画。これ、結構遠い……

 

 

なんてやっていると朝になり、もう一度ぷにちゃんのお世話になる。

 

 

そして錬金荷車2号の作成。

「こんなの、もう1台作るなんて聞いて、見に来たよ~」

ジュリオさんが引いてきた錬金荷車に、オスカーもパメラもレオンさんもモニカも……

テスさんまで乗せて、アトリエにやって来た。

いつものどかな、このアトリエ前が賑やかで、ウメさんがびっくりしてた。

「ちょっとテスさんがイケメン過ぎるんですけど!」

ソフィーが普段着のテスさんに食い付く。

少しダメージのある皮のパンツに、白いシャツ、そしてショートジャケット。

「レオンさんの店のね、冒険者の払い下げだから、凄く安かったんだよね。ソフィーもこういう格好の方が似合うんじゃない?」

テスさんと服の話に脱線しつつ、皆でわいわいするも、荷車2号を作る事を思い出す。

 

 

「どうです?ジュリオさん、引き心地は?」

ソフィーが尋ねる。

荷車の調子を確かめつつ、ホルストさんにも見せないと……

って事で昨日引いて帰った荷車1号が、またアトリエに戻って来た感じだ。

「いやぁ……ちょっと物足りなく感じるくらい軽いね。高さはこれで丁度いいよ。バランスも、マナフェザーの位置をちょっと変えれば……だから自在だしね」

ジュリオさんは荷車を停めて、レオンさんが降りてモニカが降りて……わらわらと荷車を囲む。

「マナフェザーを付けると重さが無くなるんですけど……あたしはそこまでの錬金術じゃないから、少し軽くなるだけなんですけどね」

ソフィーは指を重ねて笑う。

オスカーが2階の底を見つめてる。

 

「これ、高い所から見るキルヘンベルも新鮮よねぇ~、こんなのあったら~、色々と~……月と太陽の原野からも持って帰れるのに~……」

パメラが2階からふわっ、と飛び降りて来た。

「……月と……?」

ソフィーが尋ねる。なんか素敵な名前の場所?

「あら~、知らないの~?お墓が沢山ある、ヴァルム教会の埋葬場所なのよ~?」

パメラはゆるふわ高音ボイスで話す。

声を聞くだけで癒されるような……

「いや、おばあちゃんのお墓は、近くの森にあるものだから……」

ソフィーが言う。

キルヘンベル近くの森に、訳ありなのか何なのか、おばあちゃんの墓だけがあるのは、キルヘンベルの誰もがよく知らない、謎だ。

「そう言えばそうよね~……」

パメラが月と太陽の原野の伝説と、場所を教えてくれた。

 

 

「それはそうと、全く同じ物を作るつもりじゃないでしょうね?もっとお洒落で、更に魔物からは目立たないようにしなくちゃダメなんだからね!」

レオンさんにダメ出しされた。

……確かにお洒落でもない……

「私が、キッチリお洒落で目立たない荷車にしてあげるわ!」

 

やる気満々だった。1号も見た目を手直ししてくれるそうだ。

 

それはそうとマナフェザーの作成はしないといけない………木材も心許ない………そんな悩みは、パメラとテスさんを乗せた荷車1号が、やたら素早く色々と調達してきてくれた事で、あっさり解決した。

 

ついでに、ウメさんは荷車1号に乗って帰って行った。

 

 

そしてシックでお洒落な錬金荷車2号……夜に完成。

コルちゃんも活用しまくって……

錬金釜もフル稼働で出来上がった!

 

……皆お疲れで、明日も旅休みになったので、テスさんとお昼に、レストランに行く約束をしてみたり。

その時間だけオスカーとジュリオさん、ハロルさんがカフェの働き手を、代行してくれるそうだ。

 

 

夜、熱を帯びるクロースの続き、モフコットを閃く。

そしてモフコットのレシピ構築、モフコット作成!

 

「これ、結構遠回りしたね~………」

しかも、これは別に不思議毛布ではなく、単に暖かい丈夫な毛布……

防具を作るのに向いているやつなので、また更にひと工夫しなければならない。

「しかし、ソフィーももう一端の錬金術士なのですねぇ……」

プラフタも感心したように言う。

「さて!明日はテスさんとお洒落なレストランに行けるかもだよ!とは言え……錬金術生活だね!ゆくゆくはプラフタを人間に戻すよ!」

ソフィーはガッツポーズをする。

「それは壮大な野望ですね……」

プラフタは少し嬉しそうな笑みを含んだ声で、そう言った。

そしてぷにちゃんに頼りつつ、錬金術生活をする。

 

 

朝、ホルストさんのカフェへ。

「やっほー☆ホルストさんも、仕事中ではあるけどいいってさ。デート券的な扱いにしてくれるみたいだから、お手伝いも要らないって言ってたよ」

テスさんがそう言ってウインクした。

「あはは……でももう、やる気みたいだから……」

ソフィーは胸元で指を重ねて笑う。

 

レオンさんが1番やる気で、オスカーとジュリオさんとハロルさんは、そんなレオンさんに引きずられる形ではあるんだけど。

「そうなのですか?今人気の、キルヘンベルのスター達ですから気が引けますが……」

ホルストさんがそう言って考え込む。

そんな話をしながら、朝食をカフェで食べてカフェを出ると……

レオンさんのお店が何か賑わってる。

 

「ん~?何かな?」

ソフィーも覗いて見ると……

「うわぁぁぁ!!オスカー!格好いいぃぃぃ!!」

 

黒いオーバーオールに緑のシャツ、かぼちゃの帽子はそのままで、超格好良くなってる!

元々もハイセンスだけど……これもいい……!

集まった人々の背後で黄色い悲鳴を上げたソフィーを、集まった人々が驚いて振り返る。

ジュリオさんはモニカみたいなスッキリキッチリした感じの服で、青ベースで赤のポイント。

こちらも格好いい。

 

「こ、これ高いんじゃないのかい?レオンさん……」

オスカーが自分の服を見てレオンさんに聞く。

「いいのいいの。ウチの広告塔みたいなもんだし、お世話になってるし!タダでいいのよ。その代わり旅がお休みなら、なるべくそれ着て宣伝してちょうだい」

ハロルさんは、なんか少しずつアクセサリーが増えて、貴族らしさに磨きがかかってる。

そして時計店に引っ込んでった。

……テスさんの代打……恐ろしく気合いが入ってる。

 

「ででで……デートしよう!オスカー!」

ソフィーが血眼を向けると、オスカーは怯む。

「どどど……どうしたんだソフィー?……まあ、でも昼前から仕事だから……ちょっと本屋に行くぐらいしか時間ないぞ?」

そんなオスカーにしがみつくと、ソフィーは人の集まりから、オスカーを引っ張り出す。

「それでもいい!なんかとにかく一緒に歩きたい!」

そんな有頂天のソフィーとオスカーで、本屋に向かう。

 

 

「おおおおお!?オスカーさん……!なんか格好いいです!新鮮さが凄い……!」

途中に通るコルちゃん露店で、コルちゃんが食い付く。

「いつもの服もいいだろ?」

オスカーはコルちゃんを見る。

こちらはレオンさんの露店に注目を取られて……

などと思いきや「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」のおじさん達が、近くのテーブルを占拠しつつ、溢れていた。

 

……果実の日……

種の日のお決まり……

コルネリア露店のお菓子おつまみで、お酒を飲む会だ。

すごくリーズナブルなんだとか。

「アレはアレでかなりの完成度……マルグリットさん恐るべしなのですが……オスカーさんのお腹が所々覗いてまして……小さくなった感がありまして……」

子供とおじさんで賑わう一角に、ディーゼルさんの姿もあった。

……お酒飲んで職人さんと話してる。

 

そんな事はよそに、コルちゃんとオスカーで話す。

「コル助も人の事は言えないだろ?……でもコル助の方が気合い入ってる感じするけどな……」

オスカーはそう言って「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」のおじさんを眺める。

「私も成長しているみたいで、ちょっと小さい感はありますね……」

コルちゃんも、太ももを眺めるおじさんに目を向ける。

 

 

……レオンさんが来て以来、コルちゃん露店のお手伝いは女の子ばかりになり、衣装もなんか……ソフィーはそんな教会の女の子達を見る。

……華やかになってきたもんだ。

「私の服は看板のような物でして……お店を開く前に、もっと足を出さない服にしとけば……などと思ってみたりもしています」

コルちゃんもそう言って「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」のおじさんをまた見る。

足を見てたおじさんが視線を外してた。

「ソフィーのも看板なんだよな……」

オスカーは本屋へと歩き出す。

ソフィーもそこについてく。

……でもおじさんの気持ちも解るかも……

今、オスカー見てるだけで幸せだし……!

「おばあちゃんが作ってくれた、錬金コートだからね!」

ソフィーはそう答えて、オスカーと本屋へ向かう。

 

 

「あら。ソフィーと……えええ!?オスカー!?」

本屋にはモニカが居て、本屋一同もオスカーに食いついた。オスカーってば本屋の常連だし。

「いやぁ……お昼にさ、カフェで手伝う事になったから、それ用にってレオンさんが夜なべして、ジュリオさんとオイラの分を……」

オスカーが言いかけた時、モニカは居なくなった。

……分かる……その気持ち……

 

「ふふふ。お昼……こうしてはいられないわね。本屋は今日、臨時休業にします!」

エリーゼお姉ちゃんが立ち上がる。

「ええええええぇぇぇぇ!?」

本屋を追い出されてしまった……まだお昼には時間あるのに、皆してカフェへと向かっちゃうし……

 

 

「……おや?」

フリッツさんが来た。

「あ、どうも。作業台の方は……」

……なんか久しぶりに見た……そう思いつつ、挨拶をする。

「ああ、おかげで良い物が出来た。今は人形作りに集中出来ているが……本屋に用があったのだが今は……臨時休業?」

臨時に作ったエリーゼお姉ちゃんの貼り紙を見て、フリッツさんは尋ねる。

相変わらずの落ち着いた、ナイスミドルボイスだ。

「はい……今日は……」

 

ソフィーは経緯を説明する。

オスカーの話だと、フリッツさんもまた、本屋の常連みたいだ。

「ふむ。楽しそうだな……私も乗り遅れぬように、足を運ばなくては……」

そしてフリッツさんもカフェへと向かって行った。

「……まだ9時なのに……」

ソフィーがそんな後ろ姿を見送りながら呟く。

 

「オイラはソフィーに連れ出されたおかげで……ジュリオさんには悪いけど気楽になったな。本屋まで閉まるのは残念だけど、近くの森の植物達にも、御披露目しとくかな」

オスカーと2人で近くの森へと行く。

……はぁ~……なんか幸せ……

オスカーと昔話とかしながら過ごす……晴れた森……

 

 

そしてお昼、モニカとソフィーでテスさんを迎えに行く。

カフェの賑わいが……凄い。

店内から溢れて、テラスと空き地までお客さんで賑わってる……

「これはあたしも、レストランとか行ってる場合じゃないと思うんだ……」

テスさんが呟く。

レストランも営業してるのか怪しい。

そんくらい、おばさん達がカフェに来てる……

「私も……こんなジュリオさんを逃しながら、レストラン行っても涙の味がすると思うのよ……」

モニカも言う。

コルちゃんはコルちゃん露店が忙しいし、レオンさんも服の注文が立て込んでたりしてる。

「あたしも、オスカーが頑張る姿、見ていたいよね~」

ソフィーも頷く。

まさかこんな事になるとは……

 

 

「ジュリオさん、私達、うに豚ランチ!3つね!」

結局、カフェ裏の職人ランチ場所に座る。

そしてモニカが注文する。

「あれ?レストランでオシャレな食事は……まあ……それはいいけど、なんかカフェってこんなに忙しかったんだね……」

スマートな佇まいの、ウェイターの似合うジュリオさんが注文を取りに来て、そう話す。

「今やソフィー達、キルヘンベルの注目の人だもんね……テスさん勝てないや……」

制服を脱いで私服になったテスさんが、頬杖をついてジュリオさんを見つめる。

私服……相変わらず格好いい……テスさんパンツ派で、髪とか短くしたらイケメンな感じ……

「いやいや、新鮮味ですって!でも……あれ?オスカー居なくない!?」

ソフィーはそう言って探し続けてるオスカーをまだ探す。

「オスカーはテーブルの間が狭いし……料理作ってるんでしょ?」

モニカが答える。

「せっかく格好いいのに~……!」

ソフィーはじたばたする。

それからもテスさんと色々と話して、注文が来るのを待つ。

 

「ところでソフィーってさ~……いっつも同じような服じゃない?せっかくカワイイんだから……お洒落とかすりゃ~い~のに」

頬杖のまま、テスさんは話す。

「あ、あたしのは……制服なんですよ。錬金術士としての……とか言いたいけど、貧乏なんですよ……だからかな……」

ソフィーは指を重ねて俯く。

「ホルストさんの依頼で稼いでるんじゃないの?まあ……八百屋とコル露店とレオン仕立て店で散財してるって聞いてるけど……それにあんな豪華な荷車とか作ってくれて……なのに自分には遣わないんだな~……ってテスさん、感心してるのさ」

テスさんは頬杖から顔を起こして微笑む。

 

「おい……お前らレストラン行くから、俺達が代行なんじゃないのか……それに……なんで今日に限ってこんなに繁盛してるんだ……」

ハロルさんがうに豚ランチを持って来た。

テーブルの隙間、お客の隙間をすいすいすり抜けてる身のこなし……

ハロルさんてば器用……

「あはは♪だってやっぱり格好いいトコ、見ないとね?」

ソフィーは答える。

ハロルさんはすい、すいとランチをテーブルに並べる。

「格好いいも何も、八百屋の倅は厨房だ。それにいつもの服だったぞ。……あいつは太いし、厨房のが得意だからな……」

そう言ってするすると戻って行った。

……早い。愛想ない。

 

 

「なんか……予定狂っちゃったね……」

お昼を終えて、カフェに戻るテスさんに、離れるに離れられなくなったジュリオさんを見て、ソフィーは呟く。

……なお、ハロルさんはいつの間にか居なくなってた。

……それでジュリオさんが離れられない感じもあるけど……

「そうね。でもなんか……やっぱりジュリオさん、格好いいわ~……」

モニカも、長いお昼ラッシュを捌くジュリオさんを眺めて、しみじみとそう言った。

 

 

せっかくなのでモフコットをコルちゃん露店に登録し、レオンさんに頼んで混合毛のシャツ……

防具を注文する。

コルちゃん露店で買ったアカツキの毛皮……

「肉体を強化する」の特性がモフコットに付いて、コルちゃんに量産されてゆく。

……それも73コールで。

なんか増やしやすいらしい。

そんなモフコットが、混合毛のシャツとしてコルちゃんとソフィーを守る計画。

パーティーの防御弱い所の補強となる。

 

そしてアトリエに帰る。

 

 

アトリエに帰ると、エリーゼお姉ちゃんとフリッツさんが遊びに来てた。

「おかえりなさい、ソフィー」

プラフタは軍手で本をめくりながら、帰って来たソフィーを出迎える。

「カフェで一緒しちゃって。そのままプラフタの話になったのよ。それでフリッツさんも……遊びに来てたんだけど……大丈夫かしら?」

少し心配そうにエリーゼお姉ちゃんが言う。

「全然平気だよ?むしろ大歓迎ですよ。あたしもお茶入れようっと……」

 

 

だけどせっかくの時間……

モノクログラス12時間は仕込む。

その仕込む間は、エリーゼお姉ちゃんもフリッツさんも、プラフタに誘われて外のテーブルでお茶してくれていた。

今日のカフェの話で盛り上がり、夕方には2人で帰って行く。

 

 

そして夜中にモノクログラスが完成して、素朴な焼き菓子を作って過ごす錬金術生活をする。

「取り敢えずカタチにしてる感じなんだけど……カテゴリーパワーMAXを目指したいとこ、あるよねぇ……」

ソフィーは錬金釜を見つめる。

……素朴な焼き菓子……

どうにか、にがいのはクリアしたけど、しょっぱい……

「確かに。ですが今ある素材の限界という物が……錬金釜はもう少し柔らかい空間を持っていると、幅が広がったりするのですが……」

プラフタも錬金釜の近くをふわふわする。

「それだよね……まあ……採取が大事、的な所なんだろうねぇ……」

 

素朴な焼き菓子……

ちょこっと調合の方は美味しくできるのに、1時間掛ける図鑑の調合では……

しょっぱい出来上がりになる。

この辺りが課題なんだろう……

 

 

朝……

種の日……

結構な雨……

雷まで鳴っている……

それでも皆で噴水端会議の日。

「うひゃー!」

ソフィーは教会へと行く。

中は満員……外でお祈りする事にする。

雷雨に打たれながらのお祈り集団……

なんかご利益ありそう……

 

 

さすがに噴水端会議まではせずに、皆足早に帰って行く。

そりゃそうだ。

 

ソフィーもカフェへと向かう。

今日は旅立ちの日だ。

 

……なので、カフェで朝食。

そしてどこ行くか会議をする。

今回こそ温泉を突き止めたらしく、朝凪のほとり、と話が決まっていた。

 

「今度こそ温泉なんですか?」

「今回は確かな情報よ。なんてったって旅の商人から仕入れた最近の情報なんだから!……2年前らしいけど……古文書から仕入れた木材小屋よりは、確かだわ!」

レオンさんが張り切ってる。

温泉への情熱がアツい。

そしてホルストさんからの依頼も、ちゃんとあった。

 

「しかし……大丈夫ですかね……などと心配するのは、ベテラン冒険者でもある、レオンさんやジュリオ君に失礼なのですが……」

ホルストさんはソフィー、オスカー、コルちゃんを見る。

この3人が特に……見た目的に強そうではない。

それにパーティーの防御力を担うのが、服とシャツ……

装飾品は消えてしまっていて見えない。

つまり、魔物の出る場所に冒険しに行くスタイルにも見えないのだ。

……モニカは、ギリギリ冒険者スタイルと言えなくもないのだけど。

 

「ははっ、錬金術士ですから……でも彼女はちゃんと僕らも守ってくれていますよ。すごく真摯に錬金術に取り組んでいますから……」

ジュリオさんはホルストさんにそう伝えて笑う。

「おデブちゃんの野営能力も凄いのよ。食事なんて楽しみになっちゃうんだから。私もいいパーティーに巡り会えたものだわ。ハロルにも勧めてるんだけどねぇ……」

レオンさんもホルストさんにそう伝えて、笑った。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ハダカ族]
一糸纏わぬ出で立ちだけどおヒゲ生えていたり。ずっとハダカ族で過ごしていたら、ひょっとしたら全身に毛が生えて猫みたいに……なるかも?

[貧相な自分]
痩せてたソフィー。人間の骨の場所が分かるくらい。

[冒険者救出のお祝い]
2日くらい床下に隠れていたみたいで、水と食事で復活した冒険者の方々と、お祝い。

[モニカと奥様方の井戸端会議]
エルノアさんの友達が凄く多くて、モニカもいつからかよく話すようになったのだとか。

[コルちゃんがよく食べる]
育ち盛りなので。

[荷車改造計画]
改造計画とはいえ、イチから作っていたりする。
[錬金荷車]
スプルースを参考にしたちょこっと調合、錬金木材が主な材料。車輪については、ハロルさんがやたらと詳しかった。
[錬金荷車2号]
色使いが地味な出来上がり。旅に使う荷車は、こういう少し地味な感じがいいみたい。

[ふわふわゼッテル(ほのかな青)]
ふわふわゼッテル、さやわかバージョン。
[ふわふわゼッテル(ほのかな緑)]
ふわふわゼッテル、お洒落バージョン。
[ふわふわゼッテル(ほのかな赤)]
ふわふわゼッテル、情熱バージョン。

[ウメさん]
旦那さんが屋根職人だったみたいで、錬金荷車の屋根では、色んな知恵を貰った。

[テスさんの普段着]
今回は腰の辺りの鎖のアクセントが、ワイルドな感じ。自分で作った服なんだとか。普段着は格好いい感じ。お下がりを弟たちが着るので、結構張り切って服作りしてるのだとか。

[カフェの働き手代行]
レオンさんがノリノリ!
[黒いオスカー]
シャツが少し短め。ズボン長め。ちょっとだけ足が長く見えてカッコいい。
[スッキリキッチリしてるジュリオさん]
なんか、凄く真面目そうになった。イケメンジェントルマン……ホルストさんの若い頃、こんなんだったんじゃないかと思われ……

[コルネリア露店のお菓子おつまみで、お酒を飲む会]
コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会の主な活動。コルちゃんの足が細すぎず、ふっくらしててあまりに素晴らしい!らしい。

[ディーゼルさん]
いつの間にか、コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会に混じってもいたり。

[カフェ裏の職人ランチ場所]
ふわふわゼッテルの利用で、もっと多くの人に使って貰える空間に!

[うに豚ランチ]
香ばしく甘い豚ネズミ肉料理。大人気の素敵ランチ。

[素朴な焼き菓子(ちょこっと調合品)]
ハチミツとか銅いもエキスとか使われていて、甘くて美味しい。でもHPLPバリアの回復効果なんかは、無くなってるバージョン。素朴からは離れて行く感がある。

[温泉]
あったか~い泉。病気も治るんだとか。

[オスカーの野営能力]
食べられる植物の知識、料理上手。泉発見能力、水質鑑定に戦闘までこなせる完璧超人!


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錬金術のアトリエ 17

錬金術のアトリエ 17

 

この日の雷雨はなんか長く続く。

そんな中、ソフィーのパーティーは、新しい2階建て荷車……

錬金荷車2号と、キルヘンベルを出る。

今回は遠征。

かなり遠い場所へと向かう。

 

 

「乗り心地……凄くいいです!」

荷車1階に乗るコルちゃんが、横を歩くレオンさんに言う。

乗る用に錬金毛布、ふわふわモフコットも完全装備!

「なんか、猫みたいねぇ……」

レオンさんはそんなコルちゃんを眺めて、そう言って笑う。

 

「あたしも!あたしもコルちゃんに癒されたい!」

荷車に乗り込んだソフィーが、コルちゃんに抱きつく。

「うおぉ!あまりどったんばったんすると、ジュリオさんに怒られます!」

寝技に巧みなコルちゃんは、素早く足を開き、ソフィーを足で捕まえる。

「あははっ!そこ反則だから!も~っ!はははっ!はあぁ~っ!」

そしてくすぐられるソフィー。

 

「うん、安定感抜群だね。これくらいじゃ車輪が沈むくらいで何ともないよ」

ジュリオさんは隣のモニカにそう話す。

「も~……はしゃぎすぎじゃない?」

モニカはうねうねしてる、ずぶ濡れソフィーとコルちゃんに振り返る。

 

 

巡礼街道~メーベルト農場……

さすがに昼には……

未だに雷雨が降っていた……

 

「もう……ずぶ濡れよぉぉ……」

荷車を引くレオンさんがこぼす。

「まあ、冷たい雨じゃないけど、火が起こせないからなぁ……さすがに昼食にできないなぁ……」

荷車1階のオスカーが顔を出す。

「だから……僕が引くよって……」

荷車の横を、ずぶ濡れで歩くジュリオさんが言う。

荷車乗らない派だ。モニカも強く勧められたのに、荷車の横をずぶ濡れで歩いてる。

荷車2階のコルちゃんはすやすや寝てるし……

ソフィーは1階で後ろを見てた。

「私はすぐ太っちゃうのよ……それに遠征の企画は私だからね!……頑張らないと!」

レオンさんに気合いが入る。

 

 

そしてメーベルト農場~三つ子橋の泉

この長い区間で夜になり、雨も弱くなった。

 

「ふふふ……私も荷車引いてみたかったです……思ったより軽いんですね……」

コルちゃんが荷車を引いて、その隣をソフィーが歩く。

寝れる強みを殺す事もないし……

ジュリオさんとモニカ、レオンさんは荷車で眠る。

ちょこっと調合品、もふもふモフコット大活躍だ。

 

「昼ごはん遅かったからなぁ……まだお腹減らないや……」

荷車の横を歩くオスカーが呟く。

「そうだね~……あたしもまだかなぁ……」

オスカーの反対側、ソフィーが言う。

コルちゃんが荷車を引いて、ソフィーとオスカーで押してたりする感じ。

 

「なんか、ソフィーに食事の心配しなくて良くなったよなぁ……いい感じで太って……まだ細いけどな……」

オスカーは荷車に手を掛けて、何となくコルちゃんの後ろ姿を眺めて話す。

「この辺り、美味しいもの無いのです?」

コルちゃんが振り向き、また前に顔を戻す。

「ここまで来たら、三つ子橋の泉で魚だろ?あの手網は、枕じゃないんだぞ?」

オスカーは1階で眠るレオンさんを見る。

モフコットに手網を乗せて、なぜか網を枕にしてる。

「あはは、眠るレオンさん、可愛い~」

パーティーは旅を進める。

 

 

そして三つ子橋の泉~朝凪のほとり……

 

夜中3時に到着となった。

雨上がりで、星明かりが一際眩しい……

景色の美しい場所……

時折妙な臭いがする。

「湖底の土の臭いだな……」

オスカーが地面の粘土の欠片を手に、臭いを嗅ぐ。

何かが腐ったような臭い……

でも湖からはさわやかな水の香り、そして緑の匂い……

そんなさわやかな空間に、変な匂いが混じってる所。

 

「なんか……不思議な場所だね……」

ソフィーも辺りを見る。

目的地だし、夕食からは皆して起きて、そんな景色にため息をつく。

「旅は止められないね。キルヘンベルも面白い事が多いのだけれど……こんな景色に、旅をして良かった、と思わずにいられない」

ジュリオさんが、ソフィーの隣で微笑んで語り出す。

星の眩しさに、やたら幻想的な景色のせいもあって。

ソフィーもなんだかしみじみとした気持ちになる。

 

 

そして採取生活をする。

赤プニ4匹がやたらぷにんぷにんしてる……

弾力が今までよりも凄そうだ。

凄そうなので防御陣形でレヘルン先生、クラフト御前を投げ込む。

……なんと!

レヘルン先生、クラフト御前を耐えた上で襲って来る。

 

ただ、こちらの防御力と銀いも回復が、更に強化された事。

更に防御陣形でコルちゃん大活躍!

……により、被害はほぼない。

それと、さすがに爆弾2発は効いてはいたようで、少し叩くと倒せた。

 

「本当に……ぷにちゃんの力が無かったらやばすぎるね……」

赤プニ汚れのひどいコルちゃんを見て、ソフィーは呟く。

「そうね。でも他の人ってどうしてるのかしら?」

モニカは疑問に思う。

でも、かなり大量にぷにちゃんが作られたみたいだから……

この力はそれほど特別、でもないのかも知れない。

 

「商人の皆さんは……免罪符を使ってるそうです。お隣の国で配られるお札で、街道で魔物と出くわした時に使うと……魔物は酔っぱらったような感じでフラフラして、街道から離れてくれる……らしいです」

コルちゃんはそう話す。

「教会のお札?」

ソフィーが尋ねる。

なんかちょこっと聞いた事があるような……?

 

「はい。キルヘンベルには免罪符がありませんが……パメラさんの作る謎めいたお札も、元々は効力を失った免罪符のようです」

商人事情なので、なんかコルちゃんが詳しかった。

街道には魔物を弱体化させる魔力が込められており、免罪符で追い散らす事も出来るそうだ。

なので、街道を外れてしまうと免罪符は効果を発揮できなくなる。

 

 

それからも島魚、一本角と戦闘になる。

どちらも陸に上がった巨大魚……

ゾウみたいな短い足が生えている。

攻撃陣形でポカポカ叩き、倒すまでポカポカ叩く。

そして魚を追い払う。

 

……朝食に、逃げ帰る島魚が残すヒレと、赤プニを煮て食べる。

そんな採取生活………

「凄い!前に食べたやつより美味しい!甘い!」

ソフィーとモニカが喜んで食べているが、コルちゃんとオスカー、レオンさんとジュリオさんは島魚のヒレの煮物を食べてる。

 

島魚、一本角はある程度攻撃すると逃げる。

……倒したとはいえ、殺してる訳ではなく、単に居なくなるのだが、ヒレがぽろっと取れる。

そして生え変わる。

同じ島魚、一本角が、懲りもせずに人間に襲いかかる……

と、いうよりじゃれついて来るらしい。

「遊んで遊んでーーーー!!」って感じで来るのだ。

可愛いのだが、危険な生き物である。

 

そのヒレを食べるレオンさんは思う。

……食事に赤プニは……

スウィートでフルーティー過ぎて……

ないわー……と。

 

……でも島魚のヒレは……

珍味な感じで、おじさん好みなんだけど……

なんと両極端な……

試される食事なのだろうか……

 

「コルちゃんも赤プニ美味しいよね?」

ニッコニコのソフィーとモニカと、いつの間にやらコルちゃんも赤プニ食べていた。

……なるほどデザートか……

レオンさんは目を光らせる。

 

「私も、もう1回食べてみようかナ~……」

「あ。レオンさんもどうぞ?」

モニカに器を渡され、レオンさんはひと口食べる。

……うっ

……甘過ぎる温か過ぎる……

コル助……なぜ食える……

 

そしてレオンさんは、島魚へと戻って行った。

 

 

今回、同一人物(?)の島魚と一本角のペアに3回絡まれた。

 

そんな採取生活の果てに……

遂に粘土岩的な洞窟を発見し、話に聞いた温泉を見つけた!

「凄い臭い……」

粘土岩が臭う……

それで出来てるのだから……

空気がもう、それなのだ。

魔物も近寄って来ない。

赤プニ君……

臭いわかるのか………

 

「この臭いが……身体の中まで綺麗にしてくれるそうよ?その商人の人が言ってたわ。その人は温泉入ってから、病気した事が無いって」

レオンさんがその洞窟を見つめる。

かなりデカい洞窟だけど、すぐに行き止まり。

青白く光っていて……

……臭い……

 

「皆!温泉に……入るわよっ!」

レオンさんを先頭に、採取品でそこそこ賑わってきた荷車も洞窟に入る。

温かい湯気が洞窟内に満ち満ちている。

……本当に温泉みたいで……

ソフィーの心臓も高鳴る。

 

「おおっ!温泉でかいっ!猿が入ってるな……」

なだらかな窪みに、広くお湯に満たされている湯気に満ちた場所。

そこに小さな猿が数十匹居て、オスカーが声を出すと奥の方に消えて行った。

 

「ふふふ……1番乗りです♪」

いつの間にか水着に着替えたコルちゃんが、オスカーの後ろにぴったり着いた。

「あーっ!あたしもあたしも♪」

ソフィーも服を脱いで水着を探す。

「もーっ!あなた達相変わらず早いわね!なんでそうあっさり服脱げるのよ!?」

レオンさんも服を脱ぎにかかるが、構造的にソフィーのが早い。

……あんまり堂々と脱ぎ出して、ジュリオさんは後ろを向いた。

 

「うん、安全な水だな。猿が入ってたから、安全だろうけど、一応な」

オスカーのお墨付きが出て、コルちゃんとソフィー、レオンさんが入り、モニカはオスカーを見る。

なぜか温泉とは反対へと歩いて行く。

……水着も着替えてないし。

そして眺めていると、オスカーは離れた場所で壁を探していた……

 

「皆、自由よねぇ……」

ジュリオさんと笑い合って、モニカも着替える。

 

「おおおおおおお……」

「ほおおおおぉぉぉ……」

熱めのお湯に、ソフィーとコルちゃんが仲良く震えて、変な声を出していた。

 

「もーっ!これよこれーーーーっ!」

レオンさんは満面の笑顔で身体を伸ばす。

結構浅い温泉で、少し寝た感じにならないと肩まで浸かれない。

 

「オスカー!膝枕~♪……あれ?」

ソフィーは立ち上がりオスカーを探す。

「なんか植物探ししてたわよ。湯気で見えないけど……あの辺りに居たわ……」

モニカが湯気を指差す。

……まあ……

湯気しか見えないけど、ぼんやりと……

モノクログラスの力で人影が分かる。

……凄く壁を見つめて、探っているので呼びに行く。

 

「……何か見つけたの?」

黄色い水着のソフィーがオスカーに近付く。

「おお。見ろよこれ……こんな場所で、粘土と同じ灰色の苔がさ、こんなに……しかも人間が来てはしゃいでてさ……可愛いんだよ……」

ふわふわしてる部分と、そうでない部分があって、ふわふわしてるのは苔のようだった。

「でも、あんまりそこに居るとあたし達のぼせちゃうよ?」

ソフィーはオスカーのほっぺたをつんつんする。

「そうか……すっかり夢中になっちゃったな。オイラも行くよ」

 

オスカーを連れて行くと、コルちゃんとレオンさんの間に、やたら……いやらしい表情の猿が2匹居た。

「お猿さん、可愛いです……」

コルちゃんは、そんなお猿を撫でる。

「もー、ここの温泉最高よ~♪」

2人はお猿に夢中……

モニカとジュリオさんも、なんかいい雰囲気で……

 

「オイラは猿を驚かしちゃうから、近づかないでおくかな」

……ソフィーもお猿の所へ行き、モニカも来た。

そして、とても素敵な温泉を楽しんだ。

 

 

「今回、最高に楽しかったけど、ライデン鉱って無いなぁ……」

帰り道、ソフィーは未だに作れていない、シュタルメタルを思う。

今回は地底湖の泥、地底湖の苔、湖由来の品……

と、豊作ではあるけれど、目的の鉱石は……

まあ、目的が温泉だったし、そんなそんな都合良くは無さそうだ。

 

「ライデン鉱だと、ロジーさんが詳しいかもです。言ってくれれば聞きましたのに……」

荷台の2階、コルちゃんが顔を出す。

「まあ……今回は素敵な温泉に入ったから、大成功なんだけどね!この泥と苔でキルヘンベルにも温泉作りたいよね」

ソフィーの野望は膨らむ。

なんか湖底の泥の臭いが、温泉の臭い。

ってイメージも付いてしまったけれど、どうなのだろうか?

 

 

帰り道は続く。

なんてったってかなり遠い訳だし……

「今回の戦いで結構閃く事もあったんだよね……どんどん連携の密度というか……力の重なりと言うか……」

ジュリオさんがそう話し、モニカと剣術談義をする。

 

「2人でどんどん、ってのもサクサク行けるし……更に1人重ねて……」

……更にスペシャルアタックの陣形を編み出した。

 

「長旅だったけど温泉の力かな……あまり疲れてはいないね」

キルヘンベルが近づき、荷車を引くジュリオさんがそう話す。

「……いつも疲れてないじゃない……走り込みとかしてたり見廻り隊に同行してたり……」

不思議そうな顔をして、モニカが返す。

「そ、そうだよね……ははっ……」

そんな不思議なやり取りをソフィーとオスカー、レオンさんで眺める。

「……ひょっとしてジュリオ君は……なんか戦い足りないのかにゃ~?」

レオンさんがジト目を向ける。

 

「じゃあ、ソフィーもなんか作る材料が足りないみたいだしさ、キルヘンベルでちょこっと整理したら、またすぐ出発するかい?オイラもそんな疲れてないから、いいぜ」

オスカーがそう話す。

……ソフィー、モニカ、コルちゃんは時間を膨らます、ぷにちゃんの都合で平気なんだけど……

 

 

そんな話をして、朝にキルヘンベルに到着。

明日も出掛けよう!

なんて話して、ソフィーとモニカ、コルちゃんはアトリエに戻る。

そんな汚れてもいなかったので、ストリート、カフェ前で解散した。

 

 

「おかえりなさい、ソフィー……何か雰囲気が……」

「なんか臭いわ……どこに行って来たの?」

アトリエに帰ると、プラフタとエリーゼお姉ちゃんが居て、エリーゼお姉ちゃんは地底湖の泥の臭いに鼻を摘まんだ。

……街はずれの奥様方もなんか遠くに行くと思ったけど……これか……ソフィーは思う。

アトリエのコンテナに物を詰め込む都合で、荷車も引いてきた。

 

「荷車に臭いがこびりついてるよ……ねぇ……」

ソフィーは窓から、錬金荷車2号を見る。

……まあともかく、コンテナに素材を運び込む事にする。

 

 

「……あたしたちも臭うのかな……」

ソフィーもモニカもぷにちゃんに入り、そして聞いてみる。

「……臭いの記憶はあるわけだから理解はできるけど……今現在はよく分からないみたいだから、そのよく分からない感じが伝わるだけだねぇ……で、時間膨らます?」

 

相変わらずのテンション……

最近、お爺さん的な人格じゃない事が多い……

ハジケて眠り……

結構深く眠れて、やたら元気になって起きてコンテナを出た。

 

 

朝……

まるっと1日、翌朝までは錬金生活……

「おや……また山師の薬を作るのですか?」

山師の薬を仕込み出すソフィーにプラフタが問いかける。

もうストックが8個ある。

使わないし、依頼でもないのに作るのだ。

 

「ふふふ……なんかこれ作るとね、錬金術士になれた時をリフレイン出来て……初心を思い出すような……そんな気分になれるんだよね」

ソフィーは錬金釜を見つめる。

「なるほど……」

「あーっ!閃いたっ!」

ソフィーは山師の薬で万能促進剤を閃き、メモを残す。

 

「いきなり叫ぶのですね……驚きました……」

「プラフタだって、いきなり光り輝くじゃん」

そう話しながら万能促進剤レシピ構築。

そして作成……

6時間。

肥料的な物だし……と、腐ってる痛んでる素材で作ってみる。

 

「この6時間……ちょっとロジーさんの所に行ってくるね」

ソフィーは未だに作れていないシュタルメタル……

その素材のライデン鉱の話をしないと……

と、ロジーさんの武器屋に向かう事にする。

 

そんな訳でソフィーはロジーさんの武器屋に行く。

……晴れたキルヘンベル。

「おや……ソフィーさんではありませんか」

「へへ~……どうにも漬け置きタイムで、晴れたキルヘンベルだとねぇ……じっとしてられないよねぇ……」

「それは分かります。青空の下は気持ちのいいものです」

お客さんの居ないコルちゃん露店。

……午前中は皆さんお仕事に勤しんでるから、平日はこんな感じで、まったりだ。

 

「ロジーさんにライデン鉱の出所も聞かないとな~、って思ってね~」

そう言うとコルちゃんがはっ、とした顔をした。

「なんと忘れていたです!……いや、お昼に卸してる商人の方に会える筈ですから、お昼を待っていた所でした」

「あはは、やっぱりコルちゃんは顔が広いね」

「この露店スタイルは、顔を繋ぎやすいのでお気に入りです。特に雨の日は苦労人同士、話も合うもので……」

 

 

コルちゃん露店での立ち話が長くなり、アトリエに駆け戻る。

ギリギリ万能促進剤の仕上げに間に合う。

 

「あら~……効果的には頑張ってもこのクオリティーだとおもうけど……品質がもう……不良品……」

出来上がった万能促進剤を、ソフィーとプラフタで眺める。

 

「……ふむ……いや……ふむ……なぜか何か心に訴える物が……何でしょうか……」

プラフタが、ふらふらと飛び回る。

そしてまた不良品の万能促進剤へと近づき、またふらふらと飛び回る。

なんかそれを繰り返していた。

「不良品の万能促進剤がカギ……そんな記憶があるのかな?」

ソフィーはそんなプラフタを見つめる。

「何か大切な記憶を失っているようですね……そしてこの万能促進剤が……関係するのでしょうか?」

 

それからも錬金生活は続く。

その中でプラフタが光り輝き、シルヴァリアのレシピ、新しい採取地を思い出す。

だけども、粗悪品の万能促進剤は関係していなかった。

もっと……深く失った記憶なのか……

 

とにもかくにも……

もふもふモフコット改良で不思議毛布を作る計画!

「ついにあたしの毛布!作らなきゃだね!」

やる気のソフィーは、プラフタと錬金術の夜を過ごす。

 

 

「やれました!不思議毛布あたし版!」

やけにあっさりと決めて、ソフィーは夜中に騒ぎ出す。

ふわふわゼッテル……

ふわふわクロース……

と作っていたりするので、結構お手の物だった。

「あなたもかなり理解してきていますね。頼もしい限りです」

プラフタも絶賛する。

 

……そんな錬金術生活は続き……

 

朝4時……

プラフタに起こされて、今回のラスト錬金術、インゴットを仕上げる。

そしてアトリエを出る。

 

カフェに向かう途中、いつもなら居そうなモニカが居なくて、噴水広場……

そしてすんなりとストリートへと出る。

 

「皆、早いねぇ~………」

こんな早いのに、ソフィーが最後だった……

そしてコルちゃんの背を伸ばす話で盛り上がっていた。

 

「おお、ソフィーさん……青葉の丘に良質なライデン鉱があるという話を仕入れているです。今回はそちらに行こうと言う話をしていました」

コルちゃんはソフィーに気付き、そう話す。

「でも強い魔物が常に居るとの事で、なかなか覚悟の要る場所だ……と話していた所なんだよ」

ジュリオさんが言う。

……コルちゃんの背の話をしていたような……

「……減らない山師の薬がまだ10回分あります!」

ソフィーはコートに装備した山師の薬を見せる。

銀いもパワーで回復するものだから、出番がないので減っていない。

 

防具+装飾品2つ。

今やトリプル銀いもパワーが全員標準装備なのだ!

……おかげで山師の薬、出番がない。

 

「それは更に心強いわね。ジュリオ君の戦い足りないのも解決しそうだし……決まりね!」

レオンさんがウィンクする。

 

ホルストさんの依頼をそれぞれ受けて、晴れたキルヘンベルを出ると、雨が降ってきた。

 

そんな巡礼街道~メーベルト農場への道。

 

 

「で、背を伸ばす秘訣、何かあったの?」

荷車と歩き出したジュリオさんに、荷車1階のソフィーが尋ねる。

……1番背が低いのはコルちゃんだけど、やたら高いポックリで底上げしてるので、ソフィーと同じくらいの背丈。

つまりソフィーも背が低いので、気になる所だった。

「背が低い方が、可愛くていいんじゃないかって結論だったけれどね」

ジュリオさんの背中は、そう答える。

「なんだ~……モニカくらいには背が高くなりたいな~……って思ったりする時あるんだよね」

 

夜な夜な注文をこなして服を作っていたレオンさんと、夜な夜な……

何をしていたのかモニカ、いつものように2階にコルちゃんが眠っていた。

オスカーとジュリオさんと話しながら、雨だけど明るい道を行く。

 

 

青葉の丘には、夜中に到着となった。

緑プニとキメラビーストをやり過ごし、丘を登って噂の洞窟へと入る。

星空の眩しいおだやかな丘……素敵な景色。

ただ、今回の目的は洞窟の中だ。

 

 

全体的に青く光る洞窟に、所々に黒い水たまり。

その黒い水たまりに近付くと、黒いプニプニがにょきにょきと出て来て、頭を上下に振る。

「ぎゅいんぎゅいんぎゅいんぎゅいん……」

そして飛び掛かって来た。

「うわぁぁ~!なにこれぇぇぇ!?」

黒プニとの長い戦いが始まる。

フラム大先輩、レヘルン先生、クラフト御前と投げ込むもまだ生きてる。

そして黒プニの攻撃もこちらのHPバリアを大きく削る。

 

黒プニブレス、黒プニ全体プレスと、こちらの防御力を削る中、こちらは攻撃の陣形を取る。

……なんと銀いもパワーの回復が大きく、黒プニの攻撃を上回るのだ。

……どこまで凄いんだ銀いもパワー……

 

「よし!スペシャルアタックの陣形だ!」

ジュリオさんの号令で、ソフィーとコルちゃん、ジュリオさんでターゲットを囲む。

ズドドドドドド……

魔法竜巻が起こり、黒プニにダメージを与える。

そして……

ドゴン!

ソフィーとコルちゃんのブーストを受けたジュリオさんの剣が、横に地割れを起こす!

バゴン!

今度は縦に地割れが起きて大きく飛び上がると、兜割り爆発を起こして大ダメージを与える!

「生きてるしーーーー!!」

 

1度も武器を改良していないので、このパーティー……

防御力と回復力はズバ抜けてるっぽいけど、攻撃力が全くの初期のままなのだ。

とにかく攻撃力はない。

 

それでも倒せた。

銀いもパワー……強い。そしてマナの柱の力が明らかに強くなる……

「この魔物……修行には最適だね!」

ジュリオさんの目が煌めいた。

 

黒い水たまりは消えて、また違う場所に現れる。

……無限?……まさか無限?

 

 

採取生活……スペシャルアタック生活となった。

あの……蒼キノコが生えてる……黒プニが煮ると美味しい。

ライデン鉱はあまり採れないものだし、黒プニとの戦闘とスペシャルアタックが楽しくて、思わず住み着く。

荷車がぷにぷに玉で満たされて行く。

………

………

………

………

………

………一体どれほどの時間が流れたのか……

5回は食事をしたような……

ぷにゼリーも閃いた。

 

……ともかく、お目当てのライデン鉱もしこたま手に入れて、帰る事にする。荷車が満タンだ……

 

 

「明らかに強くなっていくのが判ったよ!この洞窟に入る前と今じゃ、別人ぐらいに強くなったんじゃないかな!?」

黒プニ汚れ絶望レベルまで汚れたソフィー達……

行きよりも元気に荷車を引くジュリオさんが、モニカと話す。

「ちょっとジュリオさん……眼差しが眩しい……」

ジュリオさんの眩し過ぎる笑顔に、モニカも怯む。

今回で、もういい加減武器を改良しないと……

と、課題も出来た。

レオンさんのお店もコルちゃんのお店も、ソフィーの錬金術もやる事が溜まってる訳だし……

と、次の採取の旅は、未定と決まる。

 

 

黒プニ汚れ絶望レベルのソフィー達は、キルヘンベルに戻る。

キルヘンベルは種の日……そしてお昼も過ぎていた。

 

 

「じゃあ、まずは3人で行ってくるね」

コルちゃんとモニカ、ソフィーでアトリエに入る。

「おかえりなさい、ソフィー……凄い汚れですね……」

「なんか、腐った果物の臭いがするわ……どんな危険な所に行ったの?……まあ、なら私は帰るわね」

エリーゼお姉ちゃんが遊びに来ていた。

……かなり頻繁に来ているみたいで心強いけど……

本屋さんは大丈夫なのだろうか……

ともかく、ソフィーとモニカ、コルちゃんはコンテナの中に入る。

 

 

「おかえり……服と武器、靴なんかはこちらへ……服もこれからは棚に置くといい……番人なら服も綺麗に出来るようになったのでな……」

コンテナ……

棚が左右に並ぶ場所に、コンテナの番人が並ぶ……

なんか増えてる……?

しかもこの場所……

扉まで遠くなってる……?

しかも広くなってる……?

「あれ……?ここ長くなってる?服も綺麗に出来るの?」

ソフィーは番人に尋ねる。

 

「ソフィーの力が……引き出されているからな……ここも本来の大きさを……取り戻しつつ……ある……番人も器用になってきた……」

番人は答える。

今回はぷにちゃんの人格は、お爺さんのやつみたいだ。

ともかく、ぷにちゃんの部屋へと入る。

 

「うわぁ……ぷにちゃんの部屋が大きくなってる……ぷにちゃんも大きくなってる!?」

ぷにちゃんが更に見上げる大きさになっていて、でっかくなっていた。そして口を開ける。

「本当……なんかキラキラも少し強くなってるような……」

モニカも驚き、ぷにちゃんの口の中に入る。

「青いのが強くなって……濃くなってるです……」

コルちゃんもキョロキョロしながら、まん中の舌に座る。

 

「随分と……力を解放したのだな……時間は膨らますか……?」

ぷにちゃんはいつもの質問をする。

膨らませるのをアテにして待たせてる訳だし……膨らます。

そう決めると甘い香りがして、口を開けるとすぅ~っ、とぷにちゃんが入って来る。

……3人共軽くハジケて脱力する。

 

 

膨らんだ時間が終わる時に起きて、長くなった棚の廊下で服とか着る。

全部ピッカピカになっていた。

番人ぷにぷには棚のぷにぷに玉に混じって眠っていた。

「……洗うより凄いような……」

ソフィーは下着を着る。

コルちゃんも自分の下着を見つめていた。

「……まるで新品です……」

モニカも下着を見つめる。

いつもそんな汚い訳じゃないけれど、ここまで綺麗にはならない訳だし……

衝撃だ。

衝撃の白さだ。

 

 

ともかく服を着てアトリエを出る。

いつものパターンで、オスカーとジュリオさんを待たせているし。

「では……私は露店に戻ります……」

お昼過ぎのまま、明るい空……

コルちゃんは1人帰ってゆき、ジュリオさんとモニカがアトリエに入る。

 

晴れているからか、プラフタが出て来た。

「プラフタが出てくるなんて、珍しいね!」

出て来たプラフタをソフィーがお迎えする。

「……最近はそれなりにアトリエ回りくらいは、出ているのですが……それよりも、ソフィーが居ない間に、また1つ記憶が戻りました。光り輝いてエリーゼを驚かせてしまいましたが……」

プラフタはそう言ってぱたぱたと浮かぶ。

外で浮かんでるプラフタは、なんか久しぶりだ。

 

「おお~っ!どんな記憶が?」

ソフィーは喜び、尋ねる。

何故か錬金術が進むと戻って行くプラフタの記憶。

「私の居たアトリエについてです……とはいえ、ぼんやりと思い出しただけで、何処にあるのかも分からないのですが……」

プラフタはそう話す。

それと新しい採取地を思い出していた。

やたら冒険をしていたのだろうか?

……まあ素材事情的に、冒険しないと錬金術も進まないから……

錬金術士時代のプラフタも、冒険していたのだろう……

 

 

そんな話をしていたら、モニカとジュリオさんが出て来た。

「ありがとう。綺麗になったよ………」

「いえいえ、また宜しくお願いします、ジュリオさん」

いつもの挨拶を交わして、モニカとジュリオさんは帰って行く。

ソフィーとオスカーは、その後ろ姿を見送った。

「ソフィー?」

プラフタはドアを前に、動かない2人に声を掛けた。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[錬金荷車2号]
遂に始動!眠りながら移動する事にも適した、マナフェザーの力で重さカットの不思議荷車。重さが33%カット。しかも更に車輪にも秘密が………!

[錬金毛布、ふわふわモフコット]
もふもふモフコットとも呼ぶ。不思議毛布と同じように汚れを吸い取り、水で流すと汚れを吐き出す。

[荷車で眠る]
ふわふわモフコットも装備しており、初期井戸水も積んだり出来て、寝心地も良くなった。交代で眠る旅の道。

[手網]
白い芋虫が吐き出すという、絹縒り糸で作られた、少しお高い網。つい最近、オスカーが商人から購入したみたい。

[免罪符]
商人の人なら持ち歩いているお札。キルヘンベルの教会では作られていない。

[逃げ帰る島魚]
やられた~って顔をして水に帰る。そしてまた元気になると、遊んで~って感じで襲って来る。恐ろしい子。

[粘土岩の洞窟温泉]
腐った何かの匂い。慣れるまでがちょっとツライ。

[お猿]
コルちゃんよりも小さいお猿さん。でも温泉に残っておっぱい触ってるのはボス猿みたいで、ソフィーと同じくらいの大きさ。凄く人懐っこい。

[湖由来の品]
お魚とカニ、そしてもぞもぞ緑。色々と依頼の品があったりする。

[剣術談義]
ジュリオさんとモニカが、隊列とか攻撃のタイミングとか、色々と練っていたり。

[黒い水たまり]
黒プニが獲物を狙う姿勢なのか、寝ているだけなのか……

[黒プニ汚れ絶望レベル]
もはやあたしが……あたしが黒プニだ!

[大きくなったコンテナ]
ぷにちゃんの力を覚醒させると、なんとコンテナの中まで広く……!謎空間過ぎる。

[大きくなったぷにちゃん]
ぷにちゃんまで大きくなった!

[番人ぷにちゃんが洗濯も出来る]
番人ぷにちゃんは、前から服の汚れを食べたくて技術を磨いていた模様。ミクロの汚れまでしゃぶり尽くす事に成功!


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錬金術のアトリエ 18

錬金術のアトリエ 18

 

「さて……何日、休みになるのかしらね?」

ソフィーのアトリエのある山を降りるモニカが、隣のジュリオに声を掛ける。

「レオンの仕立屋が忙しいみたいだから……どうかな」

ジュリオはそう呟く。

「私はイエの方を見てくるわ。ジュリオさんは?」

 

モニカは言う。

モニカの家は気のいいおばさんとの2人暮らしで、そちらは「うち」と呼び……

新しくホルストに手配してもらったジュリオの家を、「イエ」と呼んでいた。

 

「本屋で調べたい事があるかな。バーニィに挨拶して何も無ければ……だけどね」

ジュリオは言う。

真面目な男だ……

でもバーニィは、いつも教会には居ない。

そして小高い山を降りると、街はずれと教会へと別れた。

 

 

……石畳の様子が変わる。そんなキルヘンベル裏市街……

キチッとした……

しかもやたらピッカピカになった服が浮いていて、気になる。

そう思ったら、向かいからバーニィさんと護衛の騎士2人がやって来た。

「あ。バーニィさんこんにちは」

何となく助かった気分になって挨拶する。

子供達の仕事の見回りをしている所だろう。

子供を働かせていて、感じ悪い人だと思っていたけれど、その働き先への口利きや、子供達の安全を担保する為に、見回りをしていたり……

最近は見直しているけど、愛想の無い人だ。

 

「こんにちは、モニカ」

バーニィさんはひょい、と手を上げて応じた。

挨拶したのは騎士の人……

最近はいつもそうだ。

……昔はもっと気さくだったのだけど。

そして通り過ぎて行く。

もう夕方に向けての準備……そんな時間だ。

 

 

そして裏市街の奥へと入る。

……冒険者が6人向かって来て、モニカは道の端に寄り、隙を見せない構えで止まる。

汗の臭いがやたらとして、見慣れない冒険者だと思って見送る。

見慣れない冒険者も、道の端に避けてモニカを眺め、通り過ぎて行く。

そして騎士の見回り組3人……

と色々すれ違いながら辿り着く、今まで空き家だった家……

この辺りは、ガラの悪い冒険者の住み処となっている区域だ。

 

ジュリオとの愛の巣……

と心弾ませたのも束の間、現実とはなかなか苦いものだ……

モニカはそう思う。

 

ともかく、モニカは家に入る。

少し古いけれどなかなか広く、職人のおじさんは良くしてくれて、補修の行き届いた家。

「うわぁ~……」

コルネリアに頼んだ大きなベッドは、もう運び込まれていた。

モニカ好みの布団まで……

コルネリア親衛隊の仕事は、いつも早い。

……ちょっと高いのだけど……

 

モニカは感嘆の声を上げて大きなベッドを撫でる。

確か布団2つ重ねで、下はジュリオ好みの、灰色一色の味気ない柄。

ベッドに座り、回りを見る。

木材剥き出しの補修壁に床……

灰色のカーテンに古いオイルランプ……

寂しい部屋……

このベッドだけが浮いてる。

 

 

モニカは掃除をする。

なんか砂埃がよく溜まるので、そうしないと落ち着かないのだ。

ジュリオ的には、こうした環境に慣れているのであまり気にならないみたいだけど、そう言いながらも掃除はしていた。

 

……ソフィーのアトリエが特別なのだ。

あの家は山の上にあって人が居ない。

昼間に井戸の番人、ウメさんが来るだけだ。

それにマナの柱が地下に住んでいるからか、埃とか無い。

……一時期ダークマター工場だったし、いつも本が散らかってるしで……

そんな綺麗なイメージも無いのだけれど。

 

……なお、裏市街の冒険者的には、未だにあの山の上の謎屋敷(ソフィーのアトリエ)は、悪臭放つダークマター工場だと思われている。

あんな山を好き好んで登る人も居ない。

 

 

ともかく、モニカのイエは、ソフィーのアトリエと比べると華やかさがまるでない。

あちらはあちらで灯りが消えない為、暗くならないと言う欠点はあるけれど。

……ソフィーって、明るい所でオスカーと絡み合ってるんだよな……

モニカは、ふと思う。

まあ、ソフィー的にはアリなのだろう。

恥ずかしいとか、むしろ気持ちいいみたいだし。

 

そしてヴァルム教会、噴水広場へと戻る。

夕食……

また外食で良いものだろうか……

以前よりも明らかにカネ遣いが荒いものだから不安になる。

 

 

日が沈む……

そんな少し寂しい時間。

まだ本屋は開いていたりするから……

と考えながら噴水広場で噴水を眺めていたら、エルノアが通りかかった。

 

「あらモニカ……今日はお家で食べる?」

エルノアは可愛らしい笑顔を見せて、そう尋ねる。

「ううん、ジュリオさんとね。教会の食堂で食べようかと思ってるの」

モニカは、そう答える。

エルノアの誘いを断る必要もないのだけど……

と思いつつ。

「騎士様ね?またウチで食べて行きなさいな。あんな好青年と食事出来るなんて、おばさん若返っちゃうんだから!」

エルノアはソフィーばりのガッツポーズを見せる。

……ソフィーと共に行く旅が長かったから……

エルノアを随分と独りにしてるんだよね……

などとモニカは考える。

「若返っちゃうなら行くしかないわよね?本屋に行って呼んでくるわね」

そしてそう答える。

……今日は「イエ」でジュリオと……

なんて考えていたけど……

「ええ、ええ……なら張り切って買い物しないとね」

エルノアと別れて、モニカは本屋へと行く。

 

 

本屋にはオスカーとジュリオ、フリッツと3人揃って本を読んでいた。

そしてエリーゼは居ない。

『エルノアを随分独りにしてるから、ジュリオさんもウチで食事しない?エルノアはもう、その気で張り切ってるけれど……』

モニカはそう、メモを書いてジュリオに渡す。

ジュリオはメモを一瞥すると、モニカを見て頷いた。

モニカは本屋を出る。

オスカーもフリッツも、本屋では真剣なものだから声を掛けづらい。

ソフィーならおかまいなしなんだろうけど……

 

 

「なんか、損な性格なのかしら……」

モニカは独り呟いて、星空になりつつある空を見上げる。

「そんな事ないよ、モニカ」

後ろからジュリオが追いかけて、そんな独り言を拾う。

「本はいいの?」

「まあ……丁度キリが良かったんだ」

2人は歩く。

噴水広場でエルノアを待ち、3人で「ウチ」に帰る。

 

 

「最近、ソフィーちゃんは忙しいの?」

3人で囲む夕食。

エルノアはお洒落に盛り付けた煮物を前に尋ねる。

お皿なんかも選ばれた物が揃っていて、レストラン顔負けの食卓。

「そうねぇ……いつもプラフタと錬金術に励んでるみたいだし、ダークマター工場の時よりも情熱に満ちてるわ」

ぷにちゃんで時間を膨らませたり、浸け置きタイムに寝ていたりして、ソフィーのアトリエは昼も夜もない。

「彼女はやりたいことが沢山あるからね。僕も負けていられないと思うよ」

シュタルメタルの作成、シルヴァリアの作成、そこから武器の改良と……

ソフィーはしたい事を、旅の道で話していたから……

2人も知る所だ。

「今回の旅休みは、長くなりそうね」

モニカは明日を思う。

旅休みとして……何をしたものか……

 

「さて、おばさんは今日もお泊まりなのよね。レストランもね、新しいメニューとか考えないとって皆集まるのよ?明日のお昼くらいに帰って来るわね」

エルノアは、そう言って外着を羽織る。

 

 

エルノアを見送って、モニカとジュリオは洗い物をしながら顔を見合わせた。

「気を使ってくれてるのかしら……」

「思ったよりもエルノアは頼もしい……そういう事なのかな」

そう話して、「うち」で過ごす事を決めた。

やはりあの場所だと、気が置けない所があるし。

 

 

「今日は本屋で、何を調べてたの?」

ジュリオも鎧を脱いでくつろぎ、窓から外を眺める。

モニカはお茶を準備しながら尋ねた。

今は雨が降ってきたみたいで、そんな音だけが聞こえる。静かな住宅街。

「1つの冒険譚を読んでいたんだ。やはり僕も冒険、というのに憧れて剣を始めて……騎士になっているからね。冒険に憧れて、童心のままに教会を離れてしまうのだから、とんだ不良騎士様なのだけど、これはこれで、人の役に立つ事が出来ればいいなと……」

ジュリオはそう言って、モニカの出すお茶に口をつける。

「ふふ。私も読んだ事のある話かも知れないわ。なんて本を読んだの?」

……お茶を挟んで2人の会話は続く。

 

 

……外の雨の音も続き……

 

 

お茶が終わると、ジュリオとモニカは部屋の灯りを落として、ベッドに入る。

「ふふ……こうしてモニカに近付くようになってさ、マナの柱の力もあるけど、そうではない強さを知ったんだ……」

ジュリオはそう言って、モニカの首筋に唇を寄せる。

「だとしたら、私も人の役に立ててるのかしら?」

モニカもジュリオの服に手を潜らせて、熱い肌を感じる。

「役に立ててるなんて、とんでもないよ。モニカが居なくなったら……なんて考えられないと皆が思っているよ。……僕はその中の新参者だけど……無くてはならない人じゃないか……」

ジュリオも、モニカの腰を撫でる。

 

 

……雨の音……布の音……

 

 

「ふぅん……っ……」

腰を撫でられて、首に吐息を感じる。

そしてジュリオの匂い……

モニカは思わず荒くなる息に声を混ぜた。

「可愛い声、聞けたね」

暗い部屋の……熱い肌と匂いの中、少し嬉しそうな声に、にやけてしまう感覚。

「もう……」

モニカの声も、嬉しそうな声になる。

……唇が重なる……

離れていく唇を追いかける……

 

 

……雨の音……

 

 

雨の音が段々と小さくなって、吐息と熱、そしてモニカの声が大きくなる。

「んっ……あぅ……」

少し開いた足にジュリオの膝があって……

服が乱れて……

モニカはジュリオの服を捲り上げる。

「ちょっと抜くね……」

ジュリオの身体が離れて、上着を脱ぐ。

そうして、また近寄るとモニカの上着を捲る。

モニカも手を上げて従い……

乳房が露になる。

……暗闇の中だけど……

「あ……っ……」

乳首に唇が触れて、モニカは声を上げる。

「子供みたい……んっ……」

そして唇を合わせる。

今度は口を開いて、唇の裏の濡れた柔らかい所を合わせるキスをして、モニカはジュリオの肌に手を游がせる。

 

ジュリオの掌はモニカの乳房に游ぎ……

「あんっ……はぁっ……はぁあん……」

モニカは下着を濡らすのを感じながら腰を動かす。女の声をジュリオに渡すように……

「綺麗な声だよ、モニカ」

声を渡す為に開いた口を、ジュリオの舌が撫でる。

それは頬に逸れて……

乳房で游ぐ掌が指を立てる。

「んあぁっ……それ……欲しくなっちゃう……」

モニカはジュリオの身体に游がせていた手を、抱き寄せるようにする。

ジュリオは素直に肌を合わせ……

そして身体を重ねた。

 

「あげる?」

モニカの身体はすっかりいやらしくうねり、ひくつき……

そんな中でジュリオの喉が動き、耳許でその声がする。

「まだ……怖いかも……」

モニカは強ばるように身体に入った力で、ジュリオを抱きしめる。

「そうだよね……もうちょっと楽しみたいよね」

嬉しそうな耳許の声……ジュリオもモニカを抱きしめて、モニカの身体は少しベッドから浮いた。

 

「んん……」

ジュリオにしがみつくように身体が起きて、ジュリオはモニカの長い髪を整える。

またベッドに倒れる時に髪を敷いてしまわない様に、左に纏めて……

「やはりモニカは軽いね」

右の頬を髪に撫でられるように、モニカはまた枕に頭を沈める。

「ジュリオさんの力が凄いのよ……そんな軽くもないわ……」

モニカは言う。

ジュリオの持つ大剣が、モニカより重いかも知れないけど

……さすがにそれはないか……

 

「……愛してるよ、モニカ……こうして君に触れて嬉しいよ……何度でも、そう思わずにはいられない」

ジュリオは、モニカの下着に手を掛ける。

そう言われて、モニカは頭から胸から湯気でも出ていくような……

気恥ずかしさと嬉しさの混ざった……

何かが心を、身体を巡るのを感じる。

 

「私も、何回かこうしてるのに、旅の時も……ジュリオさんの横顔を見ちゃうもの……愛して……る」

モニカは腰を浮かせて、下着を抜かれる。

そしてジュリオのパンツに手を掛ける。

「何度でも……モニカを抱きしめて、可愛い声の世界に……」

 

暗闇の中で、ジュリオは身体を起こし……

堅い皮のパンツのベルトを外す。

かなり大きいペニスを持っている都合で、厳重に封印されているような……

そんなパンツを脱ぎ、モニカの待つベッドに戻る。

「うん……恥ずかしいけど……聞いて?」

 

モニカはベッドに戻って来たジュリオを抱きしめる。

モニカとジュリオのお腹の間にある、熱い蛇みたいな感触……

ジュリオはモニカの頬を捕まえて、キスをする。

舌を絡めるような……そんなキス。

……ちゅっ……くちゅっ……

そう、唾液の音と吐息の音を聞く。

耳につく。

 

「んはぁっ……あん……」

背中を……脇を撫で合いながら吐息を交ぜる。

モニカの身体がひくひくして、声を漏らす。

熱い蛇が2人のお腹の間を、ぬるりと転がる。

モニカはジュリオの身体に指を游がせる。

「モニカ……可愛い……可愛いよ」

ジュリオの掌が身体の下を泳ぐ。

太ももにお尻に……そして乳房に戻ったりする。

「嬉しい……嬉しいの……んっ……はんっ……」

お互いに身体を撫で合い、舐めたりしながら過ごす。

 

 

モニカの身体のうねりが大きくなって、声も大きくなる頃にジュリオは身体を起こす。

「……入れるね……」

暗闇の声。

「うん……ジュリオさんの……下さい……」

モニカは足を開く。

もう何度か指を立てられてハジケて……

笑い合って……

30分くらい過ごしただろうか……

1時間程なのか……

楽しい時間を計るのは難しい。

 

「ぁああ……凄いの……はぁっ……はぁっ……」

熱い蛇がモニカの「お股の口」を押し広げる。

それは限界かと思うくらいに大きく広げるものだから、モニカは顎を上げて全身を震わせる。

ハジケながら受け入れる……

「頑張れる?」

ジュリオは太ももを掴んで、口を開くのを助ける。

モニカはその言葉を聞く事もなく、感覚に震えて……

顎を上げて身体を反らし、全身を震わせる。

 

……少し楽しい時間を過ごし過ぎたかな……

ジュリオはそう思いながら、腰を止めてモニカの首を、肩を撫でる。

そしてモニカから抜くと……

蛇を右手で掴む。

 

「………………………ふうっ……」

 

 

蛇の避妊具……

「ぷに皮」を外し、縛ってベッドの傍らに落とし……

ジュリオも眠る。

 

 

……キルヘンベルに朝が来て……

 

「さて、今日は朝から見回りに出る予定だからね……」

ジュリオは窓を開ける。

布団の中のモニカは窓から入る、まだ残る星の明かりに照らされたジュリオを見る。

「……うん……頑張ってね……私も見回りに出れたらな……」

モニカも見回りを申し出た事がある。

バーニィさんに断られて、見回りには行けないのだけど。

「キルヘンベルを照らす笑顔が曇るといけない……ってディーゼルさんも言ってたね。エルノアを手伝ってあげると喜ばれる……かもね?」

まだ朝は暗い時間に、ジュリオはキッチリと身支度を終えて出て行く。

モニカもベッドを降りた。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[イエ]
新しくジュリオに充てられた家。ガラの悪い冒険者の住む区域にあるが、近所にも騎士が住む。
[うち]
モニカとエルノアの住む、住宅街の山寄りの家。その山の上にソフィーのアトリエがある。

[バーニィ]
あまり話さなくなったような……噴水端会議の時には騎士の人達と談笑していたりもする。
[護衛の騎士2人]
バーニィさんにいつも付いて歩いている騎士の人。気さくな2人。

[裏市街の奥]
スラムエリアの住民の住むエリア。ガラの悪い冒険者の住む区域。裏市街の奥は、キルヘンベルの入り口を流れる川の下流でもある。

[コルネリア親衛隊]
職人さん90%、自警団の人5%、冒険者の人5%で構成されている。コルネリア露店の常連客も、そんな感じ。

[オイルランプ]
油で火を灯し、明かりとする日用品。

[ウメさん]
ソフィーのアトリエの側の井戸の番人。日に当たらないと長生き出来ないそうで、アトリエの山を登るのだとか。

[モニカ×ジュリオ]
2人とも剣術の探究者。

[ディーゼル]
職人さんと、仲が良かったりする。筋肉が凄い人。


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錬金術のアトリエ 19

錬金術のアトリエ 19

 

「おう……コル助」

夕食の壺屋……ロジーとコルネリアと、親衛隊の職人さん2人で食べていると、ハロルが通り掛かった。

ハロルも壺屋で食事を取る事は多い。

「今日は焼いたイモに合うと思うです」

コルネリアは手を上げて言う。

壺屋では、イモは煮るのか焼くのか蒸すのか選べる。

「最近は油がいいんだな。いっつも焼いてもらってるよ」

同じテーブルの「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」会員……

職人のおじさんも、そう言って笑う。

 

賑やかな壺屋の夕食時……

それがコルネリアにとっていつもの風景となった。

壺屋を出ると、ロジーは帰るが、コルネリアは壺屋前に残る。

壺屋前に順番待ちをしている職人さん、商人のおじさんと話す時間だから、見逃す訳には行かない。

それもいつもの風景だ。

 

この日は、丁度順番待ちが居なくなった時に、ハロルが出てきた。

コルネリアも鍛冶屋に行こうとした時だ。

「ハロルさん、おやすみです」

コルネリアが声を掛ける。

「おう……あ……お前、ちょっと時間あるか?」

ハロルも、いつものように裏酒場へと足を向けようとして、でも立ち止まった。

 

「……何か入り用ですか?お酒は飲みませんが……ホットミルクを飲みにカフェなら……付き合えるです」

コルネリアは何となく……

商売の話ではない予感がしたものの、付き合う事にする。

人付き合いは商人にとって凄く大事な事だし、夜のカフェは……

子供子供してるコルネリアとしては入りづらい。

 

 

……そして夜のカフェへ……

ホルストは寝ていた。

カウンターで座り、ガン寝している……

お客さんは居ないようだった。

「……最近は俺も、酒場つったら裏酒場だからな……こっちはこんなもんだ」

ハロルはカウンターに座る。

コルネリアは店内を見回す。

 

いつもならここは……

カリカリトーストとホットミルクを囲んで、旅はこれから……

依頼をさぐったり割り当てたり……

色々と初めて知る事も多い、旅を始める場所。

 

……ホルストさんの守るこの場所は、必ずしも賑やかではないのですね………

コルネリアはそう思いながら、がらん、としたカフェを見回す。

「酒と……ホットミルクを貰えるか?」

ハロルが声を掛けて、ホルストが起きた。

「おお……!……これは……コルネリアさんとは珍しいですね?」

ハロルとコルネリアはテーブルに移る。

ホルストは起きると、しっかりとした足取りで裏に消えた。

 

「何か……初めて来たカフェに、ドキドキです……」

コルネリアは目を輝かせて回りを見回す。

誰も居ないテーブル……

誰も居ないピアノ……

誰も居ないカウンター……

 

「誰も居ないからザワザワするんじゃないか?本当にそれはドキドキか?」

ハロルは天井を見上げて言う。

「ところで今日はどうしました?ハロルさんからのお誘いなんて……思ってもみなかったですけど……まさか……」

コルネリアは口許を隠して、色っぽいポーズを取る。

職人さんにウケるポーズ。

 

「……レオンから聞いてな……つまりはレオンの差し金だな……」

胸を突き出したコルネリアのポーズに、ハロルは胸に手を伸ばし、コルネリアは突き出した胸を引っ込める。

「すると……色っぽい話です?」

ハロルは伸ばしたままの手をわきわきと動かす。

思わずコルネリアは笑い、ハロルも少し笑って伸ばした手を収める。

「まあ、そんなトコだ……」

ハロルはホルストの消えたドアを見る。

「ど、どんな話になるですか?」

コルネリアは尋ねる。

何か秘訣でも教えてくれそうな空気……

悩みも解決に向かうかも……

なんて期待もしてみる。

 

「何か別れそうな雰囲気だから何とかしてくれ……と言われたが……俺にとってはどうでもいいと正直思っているな……ホルストは……裏で寝てないか?」

ハロルはホルストの消えたドアを見たまま、そう話す。

「ふむ……確かに……今まで好きだったロジーさんが……今は頑張って好きになろうとしてるです……」

別れそうな雰囲気……

傍目にもそうなのだろう……

いや、レオンさんには話したような……

 

「……じゃ、嫌いなんじゃねえか。まあ……あんなスカした童貞野郎、好きになっても続かないだろうな。さっさと別れちまえ。そしたら、何とかなった事になる」

ハロルは、そう言って笑う。

……何ともハロルさんらしい邪悪な笑みを浮かべて………

 

「ハロルさんは、ロジーさんが嫌いですか?……嫌いみたいですが……」

……まあ、ハロルさんに何か期待しても……

そして安心するくらいハロルさんらしい意見だし……

コルネリアはそう思いながら、あまり表情を変えずに聞いてみる。

 

「まあ、酒も飲めない鍛冶屋から出てこない……だからな。これで愛想も無ければ少しは話せたかもだが……あの童貞野郎はよく分からないからな」

ハロルは言う。

今や冒険者の求める武器、人気ナンバーワンはハロルのナイフ、手榴弾だったりする。

手榴弾と言っても音だけの品物で、魔物を驚かす効果があるらしい。

豚ネズミも出てくる。

そしてフラム大先輩よりも手軽に扱えて、軽いし安いし小さいし、オシャレなのだ。

 

……完全に時計屋ではない……

「ところで……ドーテーヤローってなんです?初めて聞いたです」

それはともかく、初めて聞く言葉に、意味を聞いてみる。

……なんとなく貶す言葉なのは分かるけど……

「……マジか……まあ……ソフィーにでも聞いておけ。調子狂うな……」

ハロルはそう言って頬杖をつく。

「……?ソフィーさんが詳しいのです?」

コルネリアは、ドーテーヤローについて考えながら、聞いてみる。

 

「……ホルストの野郎……さては寝てるな……よし、俺からは言ったからな。もう帰るぞ」

ハロルは立ち上がると、そそくさとカフェを出て行った。

……レオンさんの差し金……

ドーテーヤローだからしょうがない、別れちまえ……ってだけだった。

 

 

「……ドーテーヤロー……これが鍵なのかも知れない……と、言う事なのでしょうか……」

コルネリアはそんなハロルを見送って、ホルストの消えた裏へのドアを叩く。

……コンコンコンコン……

しばらく待つとホルストが出てきた。

「ははは……ついつい寝てしまいました。湯煎するミルクを眺めていたらついつい……」

そう言ってホットミルクをカウンターに出す。

コルネリアはカウンターの高い椅子に飛び乗り、座る。

「ホルストさんは……疲れてるのではないですか?昼も夜もカフェに居るのです?」

 

いつもなんとなく疲れた顔……

いや眠そうな顔をしているし、聞いてみる。

「まあ……そうですけれど……ハロル君は帰ってしまいましたか」

ホルストは言葉を濁し、がらん、としたカフェを眺める。

「はい……ところで、ドーテーヤローとは何でしょう?」

コルネリアは首を傾げて尋ねる。

 

「……ハロル君から聞いたのですね?童貞とは、女性経験の無い男性を言う言葉ですね。ドーテーヤロー……となると、傍目から女性経験がないのだろうな……と思わせる男性の事ですね」

ホルストは苦笑いしながら答える。

……子供には教えられない……

とか言わないのが、ホルストさんの良いところだなぁ……

と、コルネリアは感心する。

 

「ほほう……なるほどなるほどです……ハロルさんがロジーさんに言っていたのですが……なるほど……的を射ていると言わざるを得ないですね……」

コルネリアは納得する。

「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」のオジサン達、商人のオジサン達、ジュリオにオスカーと比べても、ロジーが段トツでドーテーヤローだ。

……いや、オスカーはドーテーヤローの素質アリかも……

 

「ははは、なかなか厳しいですね」

ホルストは更に苦笑いする。

……このコルネリアという子は、何かふっきれた所があるな……と再確認しながら。

 

「……私はロジーさんが好きで……押し掛け女房してたのですが……最近は好きでもないのです。頑張って好きになろうとしているのですが……どこをどう頑張ったらいいのやら……」

コルネリアはホットミルクを見つめて話す。

前に……ロジーにも話した事……

 

……ホルストはそんなコルネリアを眺める……

 

……少し沈黙があって……

コルネリアはホットミルクに口をつける。

 

少しして、ホルストは話し出した。

「さて……以前そのような女性が居ました。どの男性も続かない……そんな女性でしたが……別れた男に、また惚れてしまいまして……なかなかの修羅場となった事を思い出しました」

その話を聞いて、コルネリアは自分を思う。

……どの男とも続かない……

ってのは分からないけれど、何か当てはまりそうだと感じた。

「ふむ……私も、そういう性格なのでしょうか……」

コルネリアはホルストを見る。

「そうかも知れませんし、そうでないかも知れません。ですがこの話で大事なのは……今のロジー君を好きになれなくても、将来ロジー君がどう化けるか……!その時に惚れ直してももう、そのロジー君の隣には、誰か他の女性が居る、と言う事でしょう」

 

……別れた男に惚れ直した女を思い出して、ホルストは語る。

……確かにダメな男だったが、結婚して豹変した男……

それに惚れ直した女……

でもその時に男には妻が居て……

……ホルスト裏酒場で派手な喧嘩になっていた……

そんな、ホルストにとっては懐かしい話をした訳だ。

 

 

「惚れ直した時……ロジーさんは他の子と居るでしょうか……」

コルネリアはロジーを思う。

……いやらしい顔で自分を見るロジー……

あまり気の利いた話をしない人……

眠ってるのに起こすし……

今やあまり良いイメージが無い。

……なんかもう、側に寄るとぞわぞわイライラするし……

ただただ、残念なイケメンとしか……

 

「まあ……分かりませんが……大抵大化けする男性の傍らには、大化けさせる女性の影があるものですよ。コルネリアさんが、ロジー君をどう化けさせるか……そう考えると、頑張り方と言うのも見えてくるのではないでしょうか?」

大化けする男性……

この言葉に、コルネリアは自分の露店を思い出す。

コルネリア露店も……

いずれ大化けするはずなのだ……

ショボい露店……

ショボい男……

 

……そうか……

これからか……

何でかロジーさんについては、今しか見えていなかった。

「……なるほど……!さすがホルストさんです……なんと的確なアドバイスなのでしょうか……で、ホルストさんの傍らには……」

コルネリアは明るい顔になり、口許を隠してホルストを見る。

「ははは、それはヒミツです。もう帰ってあげないと心配するのではないですか?」

何か悩みも飛んだようなコルネリアを見て、ホルストは素直に笑う。

「今日はここに来て良かったです……ふふふ……ロジーさん改造計画……これで行くです!」

 

コルネリアは意気揚々とカフェを出た。

「さて……上手く行くと良いのですが……」

ホルストは、コルネリアの出たカフェの入り口を見つめて呟く。

 

 

コルネリアはカフェの横の井戸水を汲むと、鍛冶屋へと帰る。

鍛冶屋も火が消えて寂しい。

カフェはお洒落でいて……

それで寂しいから、何かコルネリアの琴線に触れる物があったけれど……

こちらには無かった。

……ともかく地下の寝室へと降りる。

 

「……ただいまです」

地下のドアを開けて、コルネリアはネコ目の笑顔で帰る。

「あれ?なんか機嫌がいいみたいだな。おかえり」

黒いソファーでくつろいでいた、ロジーが顔を上げる。

木材の細工をしていたみたいだった。

 

「ふふふ……今日はもう眠いのですけど……明日はぷにちゃんを頼って来るです。ロジーさん……明日はデートしましょう」

井戸水の桶を置いて、歯磨きの準備をしながら、コルネリアは言う。

……この井戸水の桶は随分と増やした。

おかげで返すのは明日でいいから、キルヘンベルの人々の水事情は随分良くなった。

「……そうだな……夜に行くのか?」

「夜でもいいですけど、お昼でもいいです」

コルネリアはコップと歯磨きセットを持って、地下室から出る。

歯磨きは鍛冶屋の外でするから、一苦労だ。

 

星空を見上げながら歯磨きをする。

キルヘンベルで1番可愛い歯ブラシも量産しまくったから、歯ブラシにシンボル描くサービス、なんてのもやってる。

 

ロジーの地下室へと戻り、着替える。

いつもの服と帽子を外して、髪も解いて……

……ロジーさんが黙って見てる……

コルネリアはそう思う。

その姿を見るまいと背中を向けたまま、白いつやつやコットンの肌襦袢を着る。

着てからロジーの座るソファーを見る。

……先に寝ると、ロジーさんはソファーに寝てしまうから申し訳ない……

そう思う。

 

「ロジーさんは、まだ寝ないです?」

コルネリアはロジーの座るソファーの、隣に座る。

なんだか触れ合うとイヤな、ぞわぞわがするから、少し離れて座る。

「まあ……いや……寝ようかな……」

ロジーも気まずそうに話す。

嫌っている話もロジーにしているので、ロジーとしても過ごし辛そうなこの頃。

 

「おさわりはダメですよ?起きちゃいますので……」

コルネリアは明るい声色でそう話す。

そんな声色を選ぶのにもやたら意識して、努力している感じだ。

「それは残念だな……」

でも少し安堵させたのか、ロジーの声も曇りが晴れる。

「それは明日、私も気合い入れてやりますです」

コルネリアはそう話して、つい先程のホルストさんとのやり取りを思い浮かべる。

そしてロジーの胸に身体を寄せて、ポカポカ叩く。

 

「気合い……?」

コルネリアの、なんだか可愛いポカポカを受けながら、ロジーはそう尋ねる。

「そうです。私は今……あまりロジーさんを好きではないのです……むしろ嫌いです」

コルネリアはロジーの胸に頭を付けて話す。

誰だか分からないくらい近くなると、嫌な気持ちがごまかせたりする。

「それは前も聞いたよ……」

少し呆れたように、ロジーは呟く。

勝手に好きになって押し掛けて来て、嫌いになったとか言いだしてるのだから、呆れた話ではある。

 

「ひょっとしたら私は、誰に対しても恋心の冷めるのが、早い人なのかも知れません。そして、私が決めたロジーさんを、私が好きじゃないなんて……あり得ないのです」

コルネリアはロジーの胸に頭を付けたまま、決意を込めてそう話す。

「ん?……おお……?」

ロジーさんはそう声を出した。

「私は……ロジーさんが大好きで、ロジーさん以外の人は考えられません。そう決めました……そして私は結構頑固なんです」

 

コルネリアはソファーに座り直す。

「コル助は……出会いからしてなんか普通じゃない気がしてたけど……今も普通じゃない気がするな……」

ロジーはそう呟くように言う。

「おさわりはダメですけど、ロジーさんが寝る時には抱っこして下さい……おやすみです」

コルネリアはそう言うとロジーに微笑みかけて、ベッドに眠る。

 

 

……朝に起きる。白いつやつやコットンの肌襦袢は乱れていて、帯も取れてる。

……時計は6時……

……もう7時になりそうだ。

……結局、おさわりしてジロジロ見てたんだろう……

とは思うものの、起きた訳でもないから、怒らない事にした。

そしてベッドに寝ているロジーは起きない。

 

「ロジーさん……朝ですよ」

乱れた肌襦袢のまま、コルネリアはロジーを揺さぶる。

「あ……ああ、おはよう……」

ロジーは起きる。

……寝癖が凄い。なんだか可愛く見える。

「今日は鍛冶屋の手伝いに来ます。まずは色々とありますので、お昼過ぎくらいから……だと思いますけど……」

コルネリアは例によって口許を隠して、言う。

「……そ、そうなのか?……分かった」

そして井戸水で顔を洗ったり……

そして1日が始まる。

 

 

「コルネリアさん、おはようございます」

教会の子供の女の子、エミーが挨拶する。

コルネリア露店を専門に働いてくれる事を決めてくれた子だ。

そして後3人、日替わりの子供が来る。

コルネリアは子供を多めに雇っているので、子供にとっては楽な仕事、の部類に入る。

椅子もあるしお客さんも優しいし……

表ストリートの仕事は人気だとか。

その中でも1番人気だ。

 

「おはようです。朝ミルクから行きましょう!」

朝の八百屋。

その子供達と朝のキルヘンミルクを飲む。

もはや朝の風物詩となっている。

「では、まずは色々と調達して来ます。お店はお願いします」

午前中、鍛冶屋の地下に行って、増やす物リストの物を調達する。

ロジーが窯の火を起こす頃……

コルネリアの家は引き払ってしまったので、今やこちらが家なのだ。

 

背負い籠に調達品を背負って出てくるのは1時間程後。

SPバリアの許す限り増やせるけど、この回復は遅い。

1日20%程の回復。

HPMPLPバリアと違って回復しづらいのだ。

ソフィーの登録した、フラム大先輩、レヘルン先生を増やすのが現状では1番辛かったりする。

増やし辛いものは売値が高く、増やしやすいものは安く設定してたりする。

 

……なのでコルネリア露店は売値が謎めいている。

高そうな物なのに安かったり、ゴミみたいな物なのに高かったりするので、値札が非常に大事になる。

そして、豚ネズミ調達用のフラム大先輩が、そこそこ売れたりするので油断ならない。

 

そんなコルネリア露店ワークだけど、平日なのでヒマヒマだったりする。

子供達は商品磨きしながら、お互いの話をしていたり。

そんなほのぼのした露店ライフ。

「コルネリアさんは、冒険行くの楽しいですか?」

子供の1人が尋ねる。

「それはもう……色々な景色……動物なんかを見られますし、ワクワクが止まりません」

 

前にも会った子ですね……と思いつつ、コルネリアはそう話す。

あまり見ない子供も居たりする。

「俺も冒険者になりたいんだよ。だから裏酒場の手伝い専門でやらせてもらってたんだけど……足をケガしちゃってさ……」

でも、コルネリア露店の手伝いは今日が初めてだと言う7歳の男の子がそう話す。

右足の骨を痛めたみたいで。

「ほほう。薬は塗ったですか?」

コルネリアはその子の足を見る。

「うん。火傷の薬みたいだけど、ケガにも効くって」

「ふむ。これを使うときっともっと効くです」

コルネリアは商品の棚から、山師の薬を渡す。

 

「これ、高いんだろ?」

男の子は意外そうな顔をして尋ねる。

「人の役に立つ為の物です。これは随分と出番を待っていまして……ちょっと待ちくたびれているくらいですから……あなたが使ってあげて下さい」

ヒマヒマなコルネリア露店、そんなやりとりをしつつ、午前中を過ごす。

 

 

「お昼です!ロジーさん!」

明るい顔をしてコルネリアが鍛冶屋に現れた。

いつもお昼は、カフェ裏広場で食べるのが常だ。

「おお……そんな時間か……」

ロジーは剣を仕上げていて、コルネリアの声に顔を上げる。

窯に寄っていて大汗をかいていた。

 

「やはり……窯の似合う男は格好いいです……」

コルネリアは、ロジーの汗を拭く為のふわふわクロースを取りに行く。

ついでに鍛冶場の片隅に干してある、肌襦袢も仕舞う。

ロジーはそんなコルネリアを優しい笑顔で見送る。

……少しギスギスして来たと思ったけれど……

そうでもなさそうだ……

そんな安堵を思う。

 

 

カフェ裏広場へと行くと、職人のオジサン達、商人のオジサン達も居る。

皆、ここが皆の昼食、定番の場所となる。

「おう、コル助」

「もー、女の子にコル助はないんじゃないの?」

レオンとハロルも、楽しそうに昼食を取っていた。

「何かコル助で馴れちゃいましたので……ハロルさんはもう、コル助でいいです」

ご機嫌のネコ目で、コルネリアは言う。

そして昼食のテーブルを一緒にした。

増やして欲しい物リストを追加するチャンスなので、聞いてみたりする。

そんな昼食タイム。

 

 

「さて、鍛冶屋のお手伝い、しますよ~……」

昼食が終わり、コルネリアはロジーと鍛冶屋に戻る。

「手伝いも何も、今は暇なだけだけどな……」

ロジーは呟き、窯の火を見る。

「注文も無いです?」

「ああ……ひとしきり皆の手に回った感じするからな。そうそう買い換えないだろ?」

「なら、デートするです。閉めちゃいましょう」

「いや、鍛冶屋ってのは……まあ……行くか……」

ロジーは窯の火を落とし、店を閉めて……

コルネリアに連れられて近くの森へと歩き出す。

 

 

「近くの森って言うけど、遠いんだな……」

ロジーは呟く。

「ロジーさんは遠出しないですから……私も最近は荷車に乗ってばかりなので……人の事は言えないですけど……」

そう言いながらも、コルネリアは汗もかいていない。

歩き辛そうな靴で、手甲をふらふらとさせながら器用に歩くのだ。

「……鍛冶屋もなんか、この村には合わないみたいだし……俺……なんか自信がないんだよな……」

 

コルネリアの後ろを歩くロジーは呟く。

ただ、その時に少し風が吹いた。

……コルネリアは聞こえてなかったのか、森への道を歩く。

時折茂みを見つめたりしながら……

 

 

「ロジーさんに勧めたい事があるです」

少し森に入った所の、大きな切り株にコルネリアは座る。

ロジーもため息をつきながら座った時に、コルネリアは言い出す。

「……何だ?」

ロジーはコルネリアの手甲を見る。

近いとこいつがごつごつと当たる。結構デカくて硬い。

「ロジーさんも冒険に出るです。ロジーさんは武器を扱えるように見えませんが……どんな武器を使うです?」

コルネリアはロジーを見上げる。

ポックリで派手な底上げをしてる分、座って並ぶとやたら小さくなる気がする。

「……剣……かな……」

ロジーはコルネリアから目を逸らして、答える。

 

「なら剣を使って行ってみるです。ソフィーさんのパーティーだと、今やトンデモな場所に行きますから……冒険者のパーティーででも行かないと……武器を作っても信用されないです」

コルネリアはそう話す。

その声は悲しそう……

と言うよりも悔しそうな……

ロジーはコルネリアを見ると、少し潤んだ目をしていて、悔しそうな顔をしていた。

「いや……俺はちゃんと鍛冶屋で修行してだな……」

ロジーは目を逸らす。

……逸らしてしまう……

 

「……行きたくないです?」

コルネリアは少し怒ったような顔で言う。

ロジーは目を逸らしたまま……

面倒な事になったな……

と頭を掻く。

「鍛冶屋はどうする?」

ロジーは呟く。

コルネリアみたいに、教会の子供を雇える程儲かってる訳でもない。

 

「今や、農具屋です……冒険者も、時折変わり者が来るぐらいです……」

コルネリア露店は鍛冶屋の目の前。

子供にお客さんのメモを取らせていたり、鍛冶屋事情にも詳しい。

「……コル助は……マナの力があるからいいけど俺は……」

言いかけて、前にこの話し、したな……

とロジーは思う。

 

「ロジーさんにも、マナの力があるです。私と交わって……マナの力があるそうです。でも……その力は魔物を倒さないと、ちゃんと目を開かないそうです」

ともかく、この場を抜けたいと思いながら、コルネリアの話を聞く。

「……そうだったな……考えてみるよ……」

ロジーはそう言って立ち上がろうとする。

ここに座っていてはいつまでもこの話だ。

 

「……今、腹を決めて下さい。ロジーさんの武器は命がけとは遠いんです……商人の人も……小手先の武器だと言います……」

コルネリアはロジーにしがみつく。

ロジーはまた座る。

「おい……」

色々と気に入らないし、怒りの熱を感じながらも、ロジーはよそを見て、しがみつくコルネリアの肩を抱くようにする。

……泣かれてはどうにもならない……

「お前は母親か……」

「……母親ではないです。でもこんなんじゃダメなんです」

コルネリアに取りつかれて、ロジーは切り株に背中を付ける。あまりにでかい切り株だ……

 

 

昼過ぎから夕方まで、コルネリアに取りつかれたまま過ごし、ロジーは根負けして従う事にした。

……確かに武器を使う現場に行かないと……

と言うのは一理ある。

 

 

そして2人はホルスト裏酒場へと向かう。

コルネリア露店に時折現れる冒険者がメンバー募集で、それでいて近場だけのフィールドワークをしてるのだと言う。

髪の乱れたコルネリアは、裏酒場の、そのオジサンにロジーを紹介する。

早速明日の朝に出発するらしく、そこに巻き込まれた。

 

「しかし、ヒョロい兄ちゃんだな……ちゃんと歩けるのか?」

冒険者のオジサンは酒を飲みながら、笑う。

裏酒場の隅にはハロルの姿もあった。

ロジーにとってはライバル……

だけど意識的に見まいとする。

 

「おい!グレイゴ……見つけたぞオラァッ!」

突然、ハロルが叫んだかと思うと、恐ろしい速さで裏酒場入り口へと走り、今来た冒険者4人組の1人に掴みかかった。

「うおお、狂犬ハロルだあぁぁぁ……」

そして店の外へと行ってしまった。

……時計屋……

もはや時計屋の面影もない。

 

「では、私はアトリエに寄ってから帰るです。ロジーさんを宜しくお願いします」

コルネリアは裏酒場を出ると、ソフィーのアトリエに駆け出した。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[壺屋]
今日も最安値で営業中。実はカフェのホルストさんと、八百屋のマルグリットさんを筆頭にしている集団、商工会から給料が出ていたり。利益度外視なのである。

[裏酒場]
ホルストさんの酒場、スラムエリア本店。ソフィーがよく訪れる、お洒落な方が後から出来たそうで。

[色っぽいポーズ]
コルちゃん曰く、「色っぽいポーズ」端から見ると、色っぽいかどうかは疑問符が付く。

[煮る、焼く、蒸す]
伝統の調理法。

[壺屋前の順番待ち]
あまりに安いけど、あまりに狭い壺屋さんでは、食事時の風物詩。皆それぞれ知った顔なので、情報交換のチャンスでもある。

[夜のカフェ]
基本、めっちゃ暇なんだとか。

[別れそうな雰囲気]
そういうオーラが、だだもれる時もある。

[手榴弾]
ハロル特製の爆発する卵型爆弾。爆発音がする代物だが、その音の大きさは運。ショボい時も多い。そういう事情もあって、かなり安い。なので人気。

[どの男性も続かない女性の話]
ホルストさんの思い出話。別れた数だけ大化けしてる可能性がある。

[ロジーさん改造計画]
コルちゃんの新たな野望。

[コルネリア×ロジー]
ゲーム内でも2人は近い場所に配置されている。

[歯ブラシ量産]
SP消費0.01%で増えまくった。コルちゃんと子供達で、ワンポイントを付けまくったので、見た目はそれぞれ違ったり似ていたり。

[白いつやつやコットンの肌襦袢]
繰り返し使ってると、つやつやしてしんなりしてくる。新品には無い良さが出るのだとか。ほんのりピンク色でもあるけど、ほぼほぼ白い。

[増やす物リスト]
コルちゃんの野望。SPバリアがスカスカ過ぎると、背が縮むのだとか。危険過ぎる。

[エミー]
教会の子供。愛想が良くて可愛いと、職人さん達にも評判がいい。

[家を引き払ってしまった]
ゲーム内でも、特に家は出て来ない。母親と暮らしていたりするのだろうか。この小説では、家は引き払い、鍛冶屋で暮らしている。

[SPバリア]
増やす錬金術に使う魔法バリア。回復が1日20%と遅い。しかも、これはマナの柱で眠った場合。旅の間の、荷車で眠る状態だと5%くらいになる。

フラム[大先輩]
増やすコストが高い爆弾。売れてしまうのも考えもの。
レヘルン[先生]
増やすコストが更に高い。扱いが難しいので、もう一般売りはやめようか商品。

[売値が謎めいているコルネリア露店]
最も謎なのは、謎の釜と謎の皮。やたら高いが、ソフィーが買って行く。

[豚ネズミ]
お肉が美味しいと評判。病気とか寄生虫も居ない事がほとんど。モグラネズミとはえらい違いである。

[教会の子供達]
ゲームでは、時折かくれんぼしてるだけなのだけれど、この小説では八百屋の手伝いや畑仕事、スラムエリアの商店の手伝い等大活躍。教会の収入も、かなりあると思われる。

[カフェ裏広場]
お昼限定の安い食事となると、ここ。

[ふわふわクロース]
ちょこっと調合品。生活雑貨として人気。

[あまりにでかい切り株]
旧市街の北、森の入り口にあるでかい切り株。凄く磨かれていて、すべすべ。

[ホルスト裏酒場]
夜のキルヘンベル、表ストリート沿いでは、賑わいを見せているのはここだけ。

[冒険者のオジサン]
コルネリア親衛隊なのに、スラムエリアによく出没する冒険者。近場しか行かず、豚ネズミや魔法の蔦、ハチミツに蜂の巣、キルヘンミルクスネーク等を専門に調達して日々を過ごしている。

[グレイゴ]
ハロルに良く追いかけられているらしい冒険者。腕利きではある。
[狂犬ハロル]
飛び掛かるその姿が、狂犬を思わせるのでついた渾名。


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錬金術のアトリエ 20

錬金術のアトリエ 20

 

ソフィーのアトリエは、相変わらず錬金術研究をしているようで、ソフィーとプラフタが黒板に色々と書きながらあーでもないこーでもないしてる。

 

「こんばんはー……です」

「コルちゃ~ん、いらっしゃい。ミルク入れる?」

コルネリアはお茶が苦手なので、ソフィーはそう言って微笑む。

「いえいえ。ちょっとぷにちゃん部屋へ……なのでおかまいなく……続けて下さい」

「そっかぁ……じゃ、今イイトコだから続けるね」

コルネリアはそそくさとコンテナへと入る。

オスカーと絡み合ってて諦める、というパターンでなくて安心した。

しかも今は……

服も下着も武器も棚に置けば、ぷにちゃんのコンテナ番人達が綺麗にしてくれる。

 

 

そしてコルネリアは裸になって、マナの柱の部屋へ入る。

ドアを開けると、空色から青に変わったマナの柱が居る。

……きっと水の色なのかな……

とコルネリアは思う。

「……コルネリアか……良く来た。……時間は膨らませたいようだな……」

巨大化したマナの柱は、コルネリアと思いを繋ぐ。

 

「はい……ゆっくり眠ってから……今日はロジーさんと、せいぜい仲良くするです」

コルネリアは手甲はしていないものの、口許を隠す仕草をする。

「そうか……8時間程止めるとしようか……」

水の中に飲まれるように、コルネリアはぷにちゃんの閉じる口に飲まれる。

……目に鼻に耳に、お尻の穴に女性器にヘソに、そんな所を入り口に、涼しい風が身体の中に入る感覚。

 

そしてドキドキする。

……ドキドキさせられる。

涼しい風に覚えがある。

まるで外でハダカになっているような気恥ずかしさ……

 

……乳首の刺激に、身体をうねうねする……

……ワレメを広げられて、中身を掻き出される。

敏感な所を捕まえられて、コルネリアは堪らずもがく。

「あっ!……ふあぁぁぁっ!あンッ!ああァッ!」

コルネリアは足をばたつかせて弾ける。

それまであっという間なのだ。

 

「おおお……ぉぉぉっ……」

ドキドキが消される。

身体が冷やされて、ついさっきの……

切り株にロジーを押さえ込んだ記憶が甦る。

不服そうなロジーさんを裏酒場へと促した……

日の傾いた少しオレンジ色の道……

 

「4時間程膨らませた……ゆっくり眠るといい……膨らんだ時間が終わる頃に起こそう……」

荷車に揺られてるようなガタガタがして、風が吹いた。

生ぬるい夜の風を感じて……

コルネリアは素直に眠りに落ちる……

 

 

「そろそろ膨らんだ時間が終わる……」

ぷにちゃんに身体をむにむにされて、コルネリアは目を覚ます。

「なんか……やはり凄く良く眠れるです……」

凄く深いため息が出ていくような……

不思議な感じで起き上がる。

やたら元気になっているのを感じて、やたらお腹が減ったのを感じる。

 

「夕食を食べ忘れてました……ロジーさんは裏酒場で何か食べてるでしょうか……」

コルネリアはお腹を押さえる。

「それは……我にも分からぬな……排泄物を頂き、空っぽになる分……余計に空腹を感じるの……だろうな……それと新しい命を育てているようだから……な……」

マナの柱はそう告げる。

 

「子供……出来ちゃってますか……」

コルネリアはそう思い、伝わる。

まあ……出来る事をしたのだから、出来ても不思議はない。

「まあ、その分空腹感が強い……のかも知れないな……」

マナの柱はそう答える。

「しかし、取り敢えずは目の前の事を……考えねばなりません……」

コルネリアは今日これから……

ロジーとイチャイチャする時の事を考える。

……出来るかどうかは謎だけれども。

 

「今は時間が流れている……考え事をする分……膨らますか?」

ぷにちゃんは気を利かせてくれる。

「そうでした!行かなくては!」

コルネリアはぷにちゃんの部屋を出ていく。

そして綺麗になっている服を着ると、アトリエに戻る。

 

「いや……これも違うのか……む~ん……」

黒板を前にソフィーが考え込んでいた。

「コルネリア、終わったのですか?」

プラフタがパタパタと飛び寄って来て、声を掛ける。

「はい。ではお腹もぺこぺこなので帰ります」

コルネリアはソフィーを見る。

「む~ん……」

何か真剣に考え込んでいて、気付いていないようだ。

ともかく、コルネリアは鍛冶屋へと走り出す。

 

壺屋はもう、行列の時間は過ぎたようで……

でも営業中ではあるみたいだった。

コルネリアは鍛冶屋のドアを開けようとする。

……カギが掛かっていて……

ロジーはまだ帰っていないようだった。

ならば1人で壺屋へと行く。

とにかくお腹ぺこぺこだし、迷う事もなかった。

職人のオジサンが1人、持ち込みのお酒と夕食をしていて、そこに相席する。

「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」の会員ではない職人さんで、親分の人だ。

 

「まだ食べれるでしょうか……」

注文を取りに来た、壺屋のオジサンに聞いてみる。

「大丈夫だよ。コルネリアちゃんは焼いたイモでいいかな?」

「はい。よろしくお願いしますです……」

注文をしてお酒とオジサンを見る。

「こんな娘さんも来るんだねぇ……花があるねぇ」

「どうも……コルネリア露店の「店主」のコルネリアと申しますです」

コルネリアは「店主」を強調して自己紹介する。

「ははは、君が噂の道具商かぁ……」

 

親分の人と話をしながら、ゆっくりと食事をする。

壺屋の人も同じテーブルに来た。

「コルネリアちゃんと、テーブルを一緒したかったんだよ。前からね」

壺屋のおじさんが笑顔で話す。

「いつも美味しいごはん、ありがとうです」

コルネリアはぺこりと頭を下げた。

 

……壺屋の話……

親分の話を聞きながら、少し長い夕食の時間を過ごす……

 

 

そんな壺屋の食事を終えて、コルネリアは鍛冶屋へと帰る。

まだロジーは帰っていない。

地下室で着替える。

「……さすがに寝たばっかりだから眠れないです……」

帰らぬロジーを待ちつつ、足をぱたぱたする。

暇つぶしするにも……

そういうのは無かった。

 

ホルストのカフェでホットミルク……

そう思い立って、嫁入り道具箱から、紫に金の刺繍のケープを出して、肌襦袢に羽織る。

ハダカに肌襦袢だからこのまま外出は……

でも下着着けるとホットミルク気分も冷めそうで……

そのまま行く事にしちゃう事にした。

 

そして書き置きして、ホルストのカフェへ。

鍛冶屋を出てキョロキョロすれど、ロジーは帰って来ない。

ともかく、ホルストのカフェへ歩く。

 

 

「あらぁ~!?あらあらあらぁ~!?」

カフェに入ると、レオンが出る所だった。

髪を下ろしてケープに寝間着……

そんなコルネリアを見て明るい表情で驚く。

そしてお客さんはレオンだけだった。

「……やはりこの格好……ちょっとダメでしたか……」

コルネリアは奥のホルストを見る。

「ちょっと~!コルちゃんこんなに可愛いなんて!もう一杯飲むわ!コルちゃんも何?お酒~!?」

レオンはコルネリアを抱き締めると、大はしゃぎする。

そしてお酒くさい。

そして人の話を聞いていない。

 

「いえ……私はホットミルクを……」

抱き締められて、そのままレオンにテーブルへと連れて行かれる。

「今日はいい日だわ!」

そんな2人の所へ、ようやくホルストがやって来た。

「いやいや、コルネリアさん……これほどの品性をお持ちとは……私も参りました。この一杯はサービスさせて頂きます」

ホットミルクにお洒落なクッキー、そしてハチミツの小ビン……

レオンには水と……

金色の泡の……エール酒。

それと乾いた肉……?

おつまみが出てきた。

「エールにホットミルクです。レオンは少しチェイサーで落ち着くと、美味しく召し上がれますよ」

 

ホルストは伏し目がちに品物を出して、そしてカウンターに戻る。

「ごめんね~……なんか別れろって言われたらしいじゃない。アイツは……全く……」

レオンは水を揺らしながら言う。

「いえいえ、ハロルさんらしいアドバイスでしたし、それがキッカケで前に進めた気がします」

コルネリアは水を飲むレオンを見て、ホットミルクのカップを指で確かめる。

……コルネリアの好みの温度までは……

もう少し置いたくらいか……

 

「前に!?どういう事!?」

レオンは明るい顔をする。

「やはり欠点も見つめなければならないと……そして私は、意地でもロジーさんを好きになると決めたのです」

コルネリアはそう言って、ネコの目で笑う。

「なるほど~……そういうの好きだわ~……コルちゃんも頑張って!諦めない姿勢って大事よ!そうしないとね、どんどん自分が嫌いになっちゃうのよ。きっと……コルちゃんもロジー君もそうだけど……そんな自分が好きなのよ!」

 

そう話すと、レオンはエール酒を少し口にする。

「ふむ……それはまた……的を射ています」

コルネリアは頷く。

……レオンさんもハロルさんを好きになると……

決めたクチだろうか……

などと、ふと思う。

 

「まあ、ひと安心かなぁ……」

カフェで、コルネリアはレオンと、長いひとときを過ごす。

やたらとハロルの悪口を聞かされた。

かなり自由人みたいだ。

 

そしてゆっくりカフェで過ごして帰ったものの、ロジーは現れず……

夜中になって鍛冶屋に帰ると、既に帰っていて眠っていた。

……時計は5時に目覚ましセットされていて、いつもより早い朝だ。

 

コルネリアはベッドに潜り込み、寝てるロジーの脇に手を入れる。

深く抱き合う格好……

「ん……コル助……?」

ロジーは寝起きの曇った声で言う。

「おやすみです」

ロジーの頬にキスをして……

胸を合わせて、ロジーと眠る。

 

 

朝5時の目覚ましで起きる。

昨日は冒険者のオジサンとウマが合ったそうで、ロジーは思いの外……

冒険に出るのを嫌がっていなかった。

「まあ……色々と見てくるよ……これも修行だろうから……」

迎えに来た冒険者のオジサンと仲間達に、ロジーが合流する。

 

冒険者のオジサンと仲間達は、5時に迎えに来てた。

「これはお守りです。薬とフラム大先輩が入ってますので、使って下さい」

コルネリアは肌襦袢にケープ姿で見送る。

5時では準備する時間があまりにも無くて、そうなった。

……なんで5時にセットしたのか……

 

「おほーっ♪コルネリアちゃん……いつもと違うのも可愛いね!」

冒険者のオジサンと仲間達がやたら沸いた。

「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」の会員が2人居るパーティーなのだ。

「とんでもない奥様貰いやがって優男が……へばったら承知しないからな!」

 

ヒラの荷車と、冒険者5人……

そしてロジーで雛鳥の林、日帰りで豚ネズミ取り……

コルネリアは見送る。

『鍛冶屋ロジックス、注文はコルネリア露店で受付します』

貼り紙を貼っておく。

コルネリアはいつもの衣装に着替えて、また1日が始まる。

 

 

……夕方……

明日は旅に出る話が出た。

……とりあえず何時ものようにソフィーのアトリエ、マナの柱の部屋に行く。

 

……ロジーさんが居ないかもなのに、鍛冶屋の炉の前で身体を洗うのも……

ロジーさんが居ても、鍛冶屋の炉の前で身体を洗うのも……

そう思う。

 

この日はオスカーがアトリエに来ていて、でもコルネリアがコンテナ出入りの間、外してくれる。

オスカーとソフィー、プラフタに見送られて、この日遊びに来ていたエリーゼと帰る。

 

 

噴水広場でエリーゼと別れて、コルネリア露店に戻り、閉店準備。

その頃にロジーが帰って来た。

冒険者のオジサンも一緒だ。

「おかえりなさい……どうでした?」

コルネリアは冒険者のオジサンに聞いてみる。

「まあ……これからよこれから。なぁ?」

ロジーはヘトヘトに疲れていて、鍛冶屋に戻る。

明日も恵みの森に日帰りコースだ。

 

「……正直……どうでした?」

コルネリアは尋ねる。

「まあ……慣れないと歩き疲れちまうわなぁ……始めのウチはちょっとお荷物だけどな……コルネリア親衛隊として、ちゃんとモノになるようにしてやるぜ?ウチは荷車もあるし……な」

冒険者のオジサンは帰って行く。

芳しくないみたいだけど、きっと今だけだ。

なんてったってHPMPLPバリアが育ったら、疲れに対しても有利に働くのだから。

 

そしてコルネリアはロジーを呼びに行く。

壺屋で夕食の時間だし……お腹ぺこぺこだし……

「ロジーさん!お腹減ったです!ロジーさんは何か食べて来ましたか?」

火の無い炉の前に腰を降ろしているロジーの背中に、コルネリアは話し掛ける。

「いや……皆帰ってから行き付けの酒場料理を楽しみにしていたからな。……そうだな、行こうか」

ロジーは立ち上がる。

 

「今日の壺屋さん、お肉だといいのですが……」

コルネリアはそう話す。

「そうだな。疲れもあるからそういう濃いものが欲しいかな」

ロジーはそう話しを返し、2人は壺屋へと向かう。

……すぐ隣なのだけど。

 

 

「さて……お疲れ様です……慣れてないから大変だったんじゃないですか?」

夕食も済んで、鍛冶屋の窯の火を起こして、コルネリアはロジーを洗う。

靴も服もぷに汚れもあって大変だけど、コルネリアはご機嫌でネコの目の笑顔になる。

「正直、明日は休みたいよ……行くと言ってしまったけど」

裸のロジーに、コルネリアも裸で髪をまとめ、ふわふわクロースで身体を拭う。

 

……薄暗い鍛冶場……

「荷車に乗ってしまうといいです。……そうして休んでる人は居ますか?」

ロジーはいつになくコルネリアの裸ではなく、窯の火を見つめてた。

鼻の下を伸ばした残念なイケメンではなく、コルネリアにもイイ横顔に見えた。

「いや……皆歩いてたな……」

ロジーは窯の火を見つめて答える。

「無理はしないで……でも頑張って下さい……休んであれば……いざと言う時に頑張れるです……旅は危険な事もありますし……マナの柱の力は……彼等には無いんです」

 

ロジーにふわふわクロースを渡し、コルネリアは靴やズボンを洗う。

「俺も……特別なのか……ハロルも……特別なのか?」

ロジーはコルネリアを見る。

そしてまた窯の火を見つめる。

疲れからか、ムラムラして来ない。

それに悔しさ……

不甲斐なさ……

冒険者達は鍛冶屋があることすら知らなかった。

なのにハロルは有名なのだ。

冒険者で知らない者は居ないらしい………

 

「マナの力は、マナの力を受けた女性と交われば……得られるそうです……フリッツさんもぷにちゃんも言ってました。ハロルさんも……レオンさんがイミテーションの……マナの柱の力を受けているそうですから、おそらく……」

コルネリアはそう話す。

 

そして立ち上がり、肌襦袢を着る。

「フリッツ?」

……イミテーション?

……レオン……は防具屋だ。

鎧の調達は専らあの店……

防具のレオン、武器のハロル……

ロジーは色々とぐるぐるする。

 

「旅の人形師のおじさんです……国の監視役と言ってました……キルヘンベルに現れた、マナの力を見張るのがお仕事だと……言ってました」

コルネリアはそう話す。

……しかし、恐ろしく何でも知ってるな……

と、ロジーは思う。

 

「俺は見聞が狭すぎだな……尊敬するよ」

身体を拭い終わり、ロジーは立ち上がる。

「あれま。服を着たのか?」

そして肌襦袢のコルネリアを見て、ロジーは呟く。

「お疲れでしょうから……無理は良くないですよ?」

コルネリアはそう言ってネコの目で笑う。

……裸よりも……

その笑顔が見れて、ロジーの顔も綻ぶ。

「寝ないとな」

2人はそうして、地下の寝室へと行く。

 

 

「きゅ~っ、って……抱いて下さい……」

ベッドで、コルネリアはロジーに覆いかぶさり、胸を合わせる。

「寝ると……眠ってしまいそうだ……」

ロジーもコルネリアを捕まえるように抱き締める。

 

「お疲れですから……眠って下さい……今日はロジーさん……惚れ直しました……私はロジーさんが好きな私も、好きなのです……だから嫌いになった時……自分も嫌いになってしまいました」

コルネリアはロジーの目を見つめる。

「そう……なのか?」

ロジーはそんなコルネリアの目を見る。

そして重そうな瞼を落とす。

「はい……だから、ロジーさんをまた好きになって、本当に嬉しいです」

コルネリアはロジーの頬に頬ずりする。

「なら……良かった……頑張るよ」

ロジーは眠り、コルネリアは眠るロジーにキスをして、ロジーに抱きついて眠った。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[コルちゃんはお茶が苦手]
ゲームでも苦手だと言う話。

[オスカーと絡み合ってて諦める]
声が聞こえて引き返した日もある。

[マナの柱]
魔力発生装置。キルヘンミルクスネークが白いのも、マナの柱の力……かも。

[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエの地下の、マナの柱の愛称。

[膨らんだ時間]
マナの柱の部屋で止まる時間の事。血を受けると時間を止められるらしい。エロエロすると血に準ずる体液が出るので、時間が止まる。

[コルちゃんの子供]
エロエロすると、子供も出来る。

[壺屋]
コルネリアもロジーも自炊しないので、もう頼りっきり。頼りっきりの職人さん、商人の人も多い。

[コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会]
種の日には、お酒を持ち寄って楽しめるコルネリア露店には、オジサンのファンも多い。スラムエリアに住んでるけれど、実は表ストリートの空気感も好む冒険者も来ていたり。

[親分さん]
職人さんの親分さん。仕事を受けたり段取りを整えたりしてる頭脳労働者。

[焼いたいも]
ほくほく。最近はバターがちょこっと付いて、塩味が利いて素敵。みんな大好き焼いた土いも。

[嫁入り道具箱]
引っ越しの荷物箱に命名。
[紫に金の刺繍のケープ]
絹織りの高級品。父親が買ったものらしい。
[肌襦袢]
パジャマ。

[エール]
ビール的なお酒。
[チェイサー]
水。

[目覚まし時計]
おそらくハロルさんの親父さんの作品。この屋敷にロジーさんが来た時には、地下室は寝室で、この時計もあったのだと言う。

[薬]
キルヘンベルに古来より伝わるというキズ薬。すーすーする。
フラム[大先輩]
錬金術品。なぜ大先輩……

[ヒラの荷車]
車輪が2つの荷車。囲いの部分はちゃんとあったりする。

[マナの力]
マナの柱から受け取る力。様々な魔法を扱えるようになるが、人によってその魔法のカタチはさまざま。

[イミテーションのマナの柱]
外国のマナの柱。ぷにちゃんはオリジナルのマナの柱らしい。


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錬金術のアトリエ 21

錬金術のアトリエ 21

 

朝5時に、ソフィーは起きる。

青葉の丘の黒プニワールドから帰って……

そして2日の旅休み。

シュタルメタルは出来るし「量産品」の特性を付けると、コルちゃんが増やしやすい……

というプニゼリー、リフュールボトルと……

そしてフリッツさんの依頼で人形師の糸と……

充実の錬金生活を送るも、結局武器の改良に至らなかった……

 

今日は開花の日、旅立ちの朝となる。

「オスカー、朝だよ♪」

いつも早起きのオスカーを、この日はソフィーが起こす。

「ああ……おはよう、ソフィー……なんか凄く深く眠ったなぁ……あああぁぁぁ……」

「すっごいアクビ!」

 

どこに行くのかは無計画なのだけど、支度して……

2人でアトリエを出る。

プラフタはエリーゼお姉ちゃんの所にお泊まりだ。

……そしてホルストさんのカフェへと向かう……

 

 

モニカとジュリオさんと合流して、コルちゃんレオンさんと合流して、2階建て荷車、錬金荷車2号を準備する。

 

カリカリトーストとホットミルクの並ぶテーブルで、行き先をどうしようか話す時に、またも食通商人が……

忘却のナーセリー、いにしえの厨から帰って来ない依頼を受けた。

「……またなの?」

モニカは不思議そうな顔をする。

「……本がビームしてた所だよね……」

ソフィーも首を傾げる。

ともかく、今回は忘却のナーセリー行きに決まり、キルヘンベルを出る。

 

 

「いにしえの厨……食通商人としては、そこに何か食通が唸るレシピがあるんじゃないかしら……」

レオンさんが言って、ジュリオさんが頷く。

今回も6人の冒険者で固めて行ったそうだけど……

「何にせよ、少し急がないといけないね」

 

3時間程で恵みの森……

ロジーさんの居るパーティーと一緒に到着した。

既にロジーさん側の古びた荷車には、魔法の蔦とか、石なんかも入っていた。

「あらロジーさん……」

なんか疲れた顔をしているロジーさんを見つける。

「ソフィー、今はいにしえの厨へ急がないと」

ジュリオさんは立ち止まらずに、荷車を引いて行く。

2階建てで大きめなものだから、ロジーさんのパーティーと比べると、ジュリオさんって恐ろしく力持ちだと見える。

……実際に凄い力持ちだけど……

「戻らない冒険者パーティーの救援なんです……急がないとですので……」

コルちゃんも、荷車を降りて挨拶すると、荷車を追いかける。

 

 

恵みの森を抜けて、忘却のナーセリーへ。

 

そしていにしえの厨……

今回はなんか平和そうだったけれど……

冒険者の2人が外に居て、ソフィー達を見つけると……

しまった!

……という素振りをした。

「救援に来てくれたんだよね?……いやぁ……ありがとう!」

今回は、ただこの場所から食通商人のおじさんが帰らないだけで、特に大事は無かったそうだ。

「いや、無事なら良かったです」

ソフィーはそう言う。

まあ……そう言うしかない。

 

「ヤーペッツさん!キルヘンベルが心配して、救援来ちゃいましたよ!ホラぁ!」

冒険者がいにしえの厨へと行く。

ソフィー達も、せっかくだし……付いて行く。

 

「おお……そうか……」

食通商人のおじさんは壷の破片なんかを調べていて、立ち上がるとソフィー達を見る。

「コルネリア達だったか……2回も足を運ばせて申し訳ないな……メモする物はあるかね?」

 

ヤーペッツさんは、リフレッシュオイルのレシピと、忘却のナーセリー、歩む者なきアベニューの先、主を待つガゼーポに住むという、死告花の精の話を教えてくれた。

「来るのなら君達かな、と思っていた。だが、壺に付着した物が目当てだからな……持って帰ると状態が変わってしまう……そして今回で調べ終わったからな……もう手間はかけないだろう……ありがとう、ホルストにも伝えておこう」

ヤーペッツさんは、壺屋、ヴァルム教会食堂、レストラン、裏酒場……

それにホルストさんのカフェまで、キルヘンベルの食事が美味しくなった、という商人の人だ。

ソフィー達からしても、元々恩人だった。

 

「もう、帰れるのですか?」

コルちゃんが尋ねる。

「ああ、冒険者の方々には退屈な思いをさせてしまったが……もう1時間程で終わる」

「また、美味しいレシピがあったですか?」

コルちゃんは口許を隠すいつものポーズで、そう聞いてみる。

ヤーペッツさんが広めたレシピというのは幾つもあって……

近所のおばさん達とか、裏酒場なんかでも広まっていたりする。

 

「ああ、それもバッチリだ……ここの厨は元々大金持ちのお抱え……当時の料理エリートの職場だからな……期待してくれ」

ヤーペッツさんはそう言って笑った。

呑気なものだけど、無事で良かった。

 

 

そして、ソフィー達は主を待つガゼーポへと進む。

死告花の精は、普通の冒険者で倒せる相手ではないと言うが、ドナーストーン伯爵、3人連携SPアタックと使える、ソフィーのパーティーなら、倒せる相手かも知れない。

そしてジュリオさんが目を輝かせている。

 

歩む者なきアベニュー……

今日はプニプニとマンドラゴラが歩んでいた。

そしてこれはやり過ごす。

 

叫びを聞くと死ぬという……

死告花の精……

主を待つガゼーポに行くと、小屋の近くでふらふらしてる。

マンドラゴラと同じようなフォルムの魔物で、背が低くで目が大きくて、お腹がぽっこりしてる。

このお腹ぽっこりが、可愛いポイントの魔物。

歩く姿もまた可愛い。

「なんか、普通に居るのね……」

そんな死告花の精を見て、モニカが呟く。

マンドラゴラみたいな魔物だけど、なんか頭に立派な花が咲いてる。

 

「女王蜘蛛の金の糸を取りに来た時は、居なかったのにね」

ソフィーも答える。

 

そしてソフィー達を発見すると、叫びながら爆発する種を飛ばし、襲い掛かって来た!

ついでにイフリートも、メテオ降らせながら襲い掛かって来た!

「ちょ~っ!!」

ソフィーは驚いて声をあげるも……

叫びながら種を飛ばす死告花の精の姿………カワイイ………と思ってしまう。

「防御陣形だ!荷車を離せ!」

 

コルちゃんとオスカーで荷車を逃がし、ジュリオさんにレオンさん、モニカとソフィーで戦闘体勢に入る。

しかしレベルが上がり、HPMPLPバリアも厚く、防御に全てを掛けているパーティーには……

レオンさんのHPバリアが尽きそうになってる……

更にモニカも………

イフリートの攻撃は、大して効かないのだけど……

死告花の精は、恐ろしく高い攻撃力をしていた。

 

「守りに入るのは良くない!集中攻撃で怯ませる!」

攻撃の陣形に切り替えて、死告花の精を集中攻撃する。

怯ませた時間で、銀いもパワーがみるみるHPバリアを立て直して行く。

 

 

そして押しきった。

……普通に居て、カワイイ割に強敵だった……

 

そしてソフィーが中和剤(黄色)、小悪魔のいたずらを閃いてメモを走らせる。

更に不思議な花、ドンケルシュテルンを入手した。

ソフィーが見るドンケルシュテルンには、「偽りの花」という特性が見える……

「錬金術に使えるの?」

モニカが尋ねる。

「もう痛んでて……枯れちゃいそうだけど……凄まじい力を感じるよ……」

ソフィーはドンケルシュテルンを見つめて、そう呟く。

「枯れてしまいそうなのに、あれだけの力があったのか……やはり強敵というのは危険だね」

ジュリオさんがそう言って笑う。

今回、収穫がデカい。

依頼の柱と虹の石を少し拾い、帰る事にする。

 

荷車の2階で、オスカーとコルちゃんでドンケルシュテルンを見守りながら、キルヘンベルへと帰る道。

「ところで、どんな力があるんだい?」

行きよりもゆったり歩く帰り道、ジュリオさんが尋ねる。

荷車はレオンさんに取られてしまい、少し手持ちぶさたな感じ……

「全ての能力を引き上げて……更にピンチになると回復の炎が燃え上がる……そういう力ですね……山師の薬に付けたりできるけど……これ付けちゃうと量産は厳しいかなぁ……」

荷車を引くレオンさんの後ろ姿を眺めて、ソフィーは話す。

「僕らは、とにかく防御がどこまでも伸びるね……」

ジュリオさんがそう言って微笑む。

まずは防御から強くする、というのはソフィーの方針なのか……

ジュリオさんはそう思ったりもする。

「武器が、苦手なのかなぁ……武器にしたい特性はイマイチ……というか、銀いもパワーが強すぎるんですけどね」

 

ソフィーはジュリオさんを見て話す。

武器に使いたい特性があるにはあるけど、どかんと強くなる!

……って感じの特性って、まだ無かったりする。

「それはあるね。でもこれは……ソフィーが近くに居ないと発揮しないみたいなんだよ……」

ジュリオさんがレオンさんの方を向いて、そう言った。

「ええっ!?……そ、そうなんですか?」

ソフィーは驚く。

銀いもパワー……ソフィーの近くでしか……いや、実はそう見せかけて、オスカーの近くでしか効果が無いとか……?

「ハロルがね、その銀いもパワーの装備で冒険者に混じって出掛けたりしてる……ってこれはレオンから……あれ?……」

ジュリオさんはレオンさんを見る。

ソフィーもレオンさんを見る。

(ふふふ……痩せる!……いい汗かけてる!)

何か自分の世界に入っていた。

 

「じゃあ、僕から……ソフィーの近くに居ないと、銀いもパワーは発揮されないそうだよ。……という話なんだけどね……」

しかも戦闘中にしか発揮されない。

というのはソフィーも知る所なんだけど……

「そうだったんですか……それは重大な話ですね……」

ソフィーのパーティーの防御を担保しているのは、ほとんど特性なのだけど……それが効いてないとなると、これからの調合品の扱いに、影響してくる。

 

「詳しい事が分かったら、この件については教えて欲しいかな……ソフィー抜きで外出する事があった場合、重要だからね」

ジュリオさんがそう話す。

「はい!急ぎ調べてみます!」

ソフィーは元気良く返事して、メモを走らせる。

 

 

キルヘンベルには果実の日、15時に到着となった。

「ドンケルシュテルンは、大事に持ってってやらないとな」

ドンケルシュテルンを大事に持っている、オスカーが呟く。

「そ、そうだね。結構大事なものだし、くたびれてるし……」

ソフィーとオスカー、コルちゃんでアトリエ行きの荷物を纏める。

荷車と依頼品は、モニカとジュリオさん、レオンさんにお任せとなった。

「オイラ入れないからさ、大事に使ってくれよな」

アトリエ前で、オスカーはドンケルシュテルンをソフィーに渡す。

「取り敢えず中和剤にする予定かな。そしたらこの子の力は、色々な物に移ると思うから」

ソフィーはドンケルシュテルンを受け取り、オスカーは帰って行った。

また夜にオスカーが来る話には、なっているのだけれど。

 

 

そしてソフィーは、コルちゃんと一緒にコンテナの中へドンケルシュテルンを入れる。

「これは……ソフィー、凄い物を見つけましたね?」

プラフタもコンテナの中に付いてきた。

「知ってる?プラフタ」

コンテナの中にプラフタが来る、というのは珍しい。

それほどの品物……

もしくは、あまりに丁寧に扱われているから気になった、のか。

「これはドンケルハイト……とは違いますが……仲間ではあるようですね……」

プラフタは棚の廊下でパタパタと飛ぶ。

そしてそう話す。

 

「物知りですねぇ……プラフタさん」

コルちゃんがプラフタを見て、2人とプラフタでドンケルシュテルンを棚に置く。

「これは……いいものですな……」

番人ぷにちゃん隊長が、ドンケルシュテルンをぺたぺた触る。

「おお?隊長知ってるの?」

ソフィーは尋ねる。

「遠い昔に……この花をこの場所で見た事がある、というのを今、思い出しました」

番人ぷにちゃん隊長はそう答える。

そして続けた。

「それと、錬金術士様……ご懐妊おめでとうございます」

番人ぷにちゃん隊長が、ぴょこぴょこをぴょこぴょこさせながら言う。

「え?……ええええええ!?」

「なんと!?」

「それは……本当ですか……!?」

ソフィーもコルちゃんもプラフタも驚く。

 

「今、コンテナに人の命が5つありますので……詳しい話は奥で……」

番人ぷにちゃん隊長は、ドンケルシュテルンをぺたぺたしながら、マナの柱のドアに、カワイイ手を伸ばした。

……3本目の手を……何本でも出せるのか……

 

「プラフタも行く?」

「いえ、私は後でゆっくり話を聞く事にしましょう。蓋だけ開けて下さい」

プラフタをアトリエに戻し、ソフィーとコルネリアはぷにちゃんの部屋へと入る為、服を脱ぐ。

 

「私も……子供が出来たそうで……」

コルネリアは、小さな帽子を外しながらソフィーに話す。

「なるほど……それで命が5つ……だったんだね。コルちゃんおめでとう!」

ソフィーは能天気に笑う。

 

 

ともかく、2人はぷにちゃんの部屋へと入る。

部屋ごと大きくなったぷにちゃんが口を開ける。

「赤ちゃん出来たって本当?」

ソフィーが聞く。

「おめでとう!……って言っても、少し嫌みに聞こえちゃうのかな。戸惑いもあるでしょうからね。でも私にとって、凄く嬉しい事なんだけどね」

ぷにちゃんはそう答える。

ソフィーとコルちゃんが口の中に入り、ぷにちゃんは口を閉じる。

「さて、説明しないとだね……時間掛かるし、時間を膨らますのを、先にするね?2人とも忙しいものね?」

ぷにちゃんはそう伝えて、2人は頷く。

 

 

ひとしきり膨らませた時間の中で、ぷにちゃんは2人に思いを伝える。

子供の出来る仕組みを。

……まず女の子は、卵を持って産まれてくる。

卵は大体500個ぐらい。

その卵が、1個ずつ発車する。

発車した卵はお腹の中で出会いを待つ。

出会わせる為には交尾する必要がある。

ソフィーならオスカーと、コルちゃんならロジーさんと……

エロエロしてるから、出会った訳だ。

 

出会わない場合……

生理、月の物として発車する。

出会わない……

というだけでその卵は死んで、要らないものとして出てくるのだ。

 

出会った場合……

お腹の中で赤ちゃんとなって成長を始める。

そして出て来ても生きていける状態になると、発車する。

つまり産まれる、という事になる。

出会っても、お腹の中で赤ちゃんの出来損ないとなる事もある。

命を終えた時点で発車するかも知れない。

……その場合は、死産、として出てくる。

 

どうであれ、発車した場合、次の卵の番になる。

そして更に次の卵の番になる……

これを7歳~15歳?初潮から、閉経まで繰り返す。

そういう仕組みになっている。

閉経は40歳くらい?個人差が大きいので、何とも言いづらいところ。

 

そして、ぷにちゃんに発車する、という選択がある。

……お腹で10ヶ月育てる必要も無く、マナの柱に向けて産んでしまう事になる。

それも発車。発車したなら、次の卵の番になる。

 

「おめでとう、なのはね……ソフィーもコルネリアも、出会った命が女の子なんだよね」

ぷにちゃんは嬉しそうに思う。

それはまるで、マナの柱に出会って、力を得られると知ったソフィーや、コルネリアのような喜び。

ソフィーの子供も、コルネリアの子供も、貰えると信じていた。

そして、ソフィーもコルネリアも……

子供をぷにちゃんに渡したとしても、来月には次の卵が発車する。

 

……なお、妊娠1ヶ月に満たない状態で、マナの柱に産む事は出来る。

マナの柱が取り出すからだ。

 

……そしておそらく次の卵は、ロジーさんと……

オスカーと出会う事になるだろう……

そしたら、またご懐妊となるのだ。

2カ月に1つ貰えるんじゃないかと思えても、責める筋合いの事でもない。

 

ただ、赤ちゃんの行き先で男女差がある。

女の子の場合……

ぷにちゃんの中で人格として生きるか、新しいぷにちゃんとして独立できる。

更にマナの柱の力を大きく増幅する。

 

男の子の場合……

ぷにちゃんに排出した時点で殺され、単に養分となる。

ぷにちゃんにとって、生きている男の子は、例えそれが赤ちゃんとしても毒……

そういう扱いなのだ。

 

「あたしの場合……遅れて遅れてどうにかなりそうなのを……ぷにちゃんが解決して初潮に導いたんだね……そして初潮から出会ったから赤ちゃんになれた……」

ソフィーの場合、食べるのしんどい……という体質をマナの柱が解決して食べれるようにし、初潮に導く結果になっている。

その事がソフィーにも伝わって来た。

 

「何となくね……やっぱり赤ちゃんを差し出す……って気持ちにはなれないよね……お母さんとして、自分の命よりも大切に思うのが子供だもんね」

ソフィーとコルネリアが言うまでもなく、ぷにちゃんはその気持ちを読み取る。

「えへへ……ごめんね?」

「何もかもお世話になっているのに……申し訳ないです……」

「でもね、色々と考えて考えて……マナの柱に捧げる、って決断をして欲しいんだよね。その為にソフィーや、コルネリアに力を与えてる……って訳じゃないよ?マナの柱は、単に来る者拒まずってだけだからね」

ぷにちゃんはそう伝えて、2人の肩を揉む。

 

「さて……マナの柱が大きくなった事でね、止める時間を調節できるようになったよ。例えばエロエロしすぎて60時間、時間が膨らんだとしても、8時間だけ膨らませて……残り52時間はストックする……という芸当がこれからは可能だよ。ストックがあるうちは、エロエロしなくても時間を膨らます事も出来るね」

ぷにちゃんはそう伝える。

「おおおおお……それは便利です」

コルちゃんは素直にそう思う。

「凄いね……じゃあ今まで遠慮してた、コルちゃんをオモチャにしてメッチャ楽しんでも大丈夫……って事かぁ……」

ソフィーはそんな思いを巡らせる。

「ソ、ソフィーさん?そんな野望が……」

コルちゃんは驚く……

けどその欲求も既に伝わって知ってる事なのだけど……

今もその野望……

あったのか……

「モニカの方が野望凄いよね。あたしもコルちゃんもハジケさせまくって遊びたいもんね?」

ソフィーはそんな思いを巡らせる。

ぷにちゃんを介して、その辺りの思惑もだだもれだし……

でもモニカにいじめられちゃうのも……

気持ちいいならアリかも……

でもさすがに恥ずかしいかなぁ……

 

「ううう……でもソフィーさんはともかく……モニカさんに遊ばれちゃうのは……いいかもです……」

コルちゃんも、そんな思いを巡らせる。

……どんだけモニカさん……

黒い満足感を見せるのだろうか……

「なんであたしはともかくなの?コルちゃんもあたしをオモチャにしたい欲求あるの、解るんだからね!」

ソフィーは足をじたばたさせる。

……でもそう思ってもらえるのも……

やせっぽちだったのが治ってきたからだろうなぁ……

と思う。

コルちゃん……いい感じで太くて……

だからカワイイんだもんなぁ………

 

「今は赤ちゃん問題で……その気持ちにはなれませんが……」

コルちゃんは、ジト目の思いをぶつけてソフィーの思いを邪魔する。

「うん……どうしようか迷うよね……オスカーに話す事も躊躇うもん……ううう……あたし……イヤな子……」

はっ……そっちで悩まなきゃ……とソフィーは切り替える。

 

「私は……ロジーさんに話すなら……産む事を決めてからですけど……無用の悲しみを与えてしまうので……産む事を決めるのが難しいですけれど……」

コルちゃんはそう思い……ソフィーの様子を伺う。

「無用かなぁ……オスカーにも悩んで欲しい……でもオスカーなら凄い喜んでくれて……ぷにちゃんに渡せなくなりそう……あたしは……捧げられないかも……」

 

「ともかく、渡すにしても、今は赤ちゃんが小さすぎるのね?後1週間……2週間で渡せるかな……今のところは寝ておくといいよ。少し疲れもあるみたいだし……」

……ぷにちゃんの中で温かくなっていく……

そして2人とも眠りに落ちて行った……

 

 

ソフィーが目を覚まし、コルちゃんはぐっすり眠っている。

「ソフィーは休まったみたいだね。コルネリアはもうしばらく掛かるかな。時間をストック出来るから……ソフィーは先に出ていいよ?」

ぷにちゃんの中から、にゅにゅ~ん……

と追い出されて、ソフィーは地面に足を付ける。

これからは、休まったら、休まった人だけ出て行く事も可能となったみたいだ。

そしてソフィーが棚で服を着ていると、コルちゃんが出てきた。

……服を着ているうちに、コルちゃんの更に休む1時間も経過したのだ。

……時間が膨らむのは、ぷにちゃんの部屋だけで、コンテナの中、棚の廊下は時間は膨らんでいないみたい……

 

「スッキリシャッキリです!」

コルちゃんはハダカ族のまま、片足を上げて、両手を広げる謎のポーズを取る。

「あはは……スッキリシャッキリの構え?」

ソフィーは笑いながら聞いてみる。

「はい。ソフィーさんもどうぞ!」

ソフィーもそのポーズをしてみた。

 

 

コンテナを出て、コルちゃんは帰って行った。

 

「ソフィー……子供が出来たのですか?」

プラフタが近寄ってくる。

「そうなんだけど……ぷにちゃんが欲しがってるんだよね……恩もあるし、そうすると来月にはまた子供が出来るだろうしで……悩む所……オスカーに相談しなきゃだけど……それも悩んでるんだよね……」

ソフィーはそう言って俯く。

「……なぜ来月には子供が出来るのです?あなたは今まで生理が無かったのではなかったですか?」

プラフタはぱたぱたと浮かび、ソフィーに近寄ったり離れたりしながら、そう尋ねる。

「ぷにちゃんが言うにはね……なんか栄養不足とかで、生理が止まってただけでね……」

 

 

ソフィーはぷにちゃんに教えて貰った事を、プラフタに話す。

「卵を500程……そのうちの1個、という考えなのですね。マナの柱としては……」

プラフタにも理解は出来る。

ロマンの無い話だけど、マナの柱はロマンなど無縁の生き物、と言う事だろう……

それに女の子なのがもう判っているのも凄いが……

疑わしい。

 

「ソフィー……あなたの子供ですから、私がどうこう言う筋ではないかも知れません。ですが……マナの柱の言葉に、嘘は無いのでしょうか?あなたにとって、その子供が最後の子供……なんて事は?……もう少し確認してみるのが良いかも知れませんよ?」

プラフタがそう話すと、ソフィーはプラフタを捕まえて、胸に抱き締めた。

「あたしとオスカーの子供……!もう感激だよおぉぉ……だめだ夜にオスカー来るもん。話さないなんてできないよぉぉ……」

そして振り回す。

凄くおっぱいを押し付けて回りだした。

「ちょっ!……離しなさいソフィー!?私はあなたの子供ではありませんよ!折れる!折れますから!」

プラフタは開いたまま抱き締められて慌てる。

 

 

「も~……ばぶぅとか言ってよ……」

ソフィーはプラフタを手放し、プラフタは飛んで行く。

「そんなキャラではないでしょう……私は……それより、ドンケルシュテルンはよろしいのですか?」

プラフタはソフィーにそう話す。

ソフィーは頭に引き出しが1つしかないのか、何かに向かうと他を忘れるような所がある。

「あっ!あまりの衝撃に忘れてたよ!早いとこ中和剤に移したりしないと……だね!」

ソフィーは錬金釜に向かう。

プラフタはため息をついて窓際の机に横たわり、折れてしまったページを整える。

 

パラパラパラパラ……

パタン☆

パラパラパラパラ……

パタン☆

パラパラパラパラ……

パタン☆

「……折れちゃった?」

「少しですが……気をつけて下さい」

「は~い……」

ともかく、中和剤を作る。

ここからゼッテルにすれば……

そのゼッテルを燃料として他の調合品に特性を移したりできるようになる。

「偽りの花」の力を……

 

そしてリフレッシュオイル、小悪魔のいたずら、中和剤(黄色)のレシピ構築……

アトリエは動き出す。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ソフィー×オスカー]
今日も仲良し。

[プラフタのお泊まり]
エリーゼお姉ちゃんがプラフタのファンで、運動不足気味だから……と、アトリエにやって来たりする。

[錬金荷車2号]
2階建ての立派な荷車。

[食通商人]
食べる事にうるさい商人の人。その割には痩せている。

[魔法の蔦]
丈夫な蔓植物。干すと更に丈夫になる。燃やすと灰になるけど、その灰を洗濯に使えるし、身体を洗う時にも使える。

[石]
少し柔らかいレンガ色の石。壺を作ったり出来る。職人さんがよく扱う材料の材料になる。

[ヤーペッツさん]
食通商人の名前。冒険者の人からも、食事処のレベルを上げる人として敬われているそうだ。

ドナーストーン[伯爵]
狭い範囲に雷の一撃!この小説では、ソフィーが勝手に肩書きを与えている。

[防御に全てを懸けているパーティー]
銀いもパワーである、変異物質が付きまくっている。あとはついで。武器はまだ作っていない。

[依頼の柱と虹の石]
こちらも、職人さんの扱う材料の材料。

[ソフィーが近くに居ないと発動しない]
マナの柱の力は地域に及ぶけれど、マナの柱の居る場所が特に力が強い。そして、その中で1番の友達……主とする人の周囲も力が強くなる。

[番人ぷにちゃん隊長]
コンテナに住む顔の無いプニプニ。番人ぷにちゃんは幾つも居るけれど、ぷにちゃんの人格。この番人ぷにちゃん隊長だけが、違う人格。

[ご懐妊]
子供が出来たって事。

[ぴょこぴょこをぴょこぴょこさせながら]
番人ぷにちゃん……顔の無いプニプニから、細い触手が、右手、左手みたいに伸びる。それがぴょこぴょこするので可愛い。

[マナの柱]
魔力の発生装置。はるか大昔に作られたそうだ。

[ぷにちゃん]
ぷにぷにしてたり、ちゃぷちゃぷしてたり、ぼよんぼよんしてたりするんだけど、なんとなくぷにちゃんで定着した。

[子供を取り出す]
マナの柱の中でその身を預ければ、身体の中の赤ちゃんをマナの柱が取り出す事も出来る。なお、痛みも痒みも感じないそうだ。

[モニカの野望]
ソフィーもコルちゃんもエロエロして、泣かせたい的な野望。

[赤ちゃん問題]
どうしようか……
[スッキリシャッキリの構え]
コルちゃんの編み出したポーズ!やる気がみなぎる。


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錬金術のアトリエ 22

錬金術のアトリエ 22

 

いつになくプラフタは早い時間に本棚に納まり、折れたページを直す。

ソフィーは、お腹を空かしてオスカーを待ちながら、リフレッシュオイルを仕込む。

「オスカーまだかなぁ……お腹減ったなぁ……」

 

 

そうこうして待っていると、オスカーが来た。

ソフィーはアトリエのドアを開けて、顔を出す。

「お腹減ったぁ~♪」

「へへへ、良い物持って来たぞ♪」

オスカーは持って来た食材をひょい、と上げて見せる。

夕焼けの赤い光を背に、なんか勇ましく見えた。

「えへへ、待ってました~♪リフレッシュオイルもね、もうすぐ仕上がりだよ♪ちょこっと調合の方はもう出来てるし!」

いにしえの厨で、食通商人ヤーペッツさんに習った調理法と、その油……

「衣を付けて揚げる」と言うレシピの夕食。

ヤーペッツさんの事だから、これからキルヘンベルでも流行って行くのだろう。

 

 

「うおおぉぉぉ!これが古代大富豪の愛した……」

「すっごい美味しいぃぃ!」

オスカーとソフィーがあまりに騒がしいので、プラフタがふらふらと出てきた。

「何ですか!?このギトギトした空気は!?窓を!窓を開けなさい!!」

そう言うと、また本棚に納まった。

 

「そっかぁ……油汚れかぁ……」

プラフタに怒られて、オスカーは井戸水に中和剤石鹸を溶かす。

「さすがプラフタ……課題もあるんだねぇ……」

ソフィーとオスカーは、ふわふわクロースで掃除をする。

「油と水は混ざりませんから、水拭きなどの掃除では綺麗になりません。ちょこっと調合の中和剤石鹸なら、水と油を中和して、水として扱う事が出来ます。特に本棚周りは綺麗にして下さい。それと、アトリエでその調理はしないで下さい。大体、いにしえの厨は、調理専用の場所です。そういう所も考慮して設けられた場所なのですよ?」

 

プラフタに説教されながら、ソフィーとオスカーは後始末をする羽目になった。

 

 

「いやぁ~……参った参った……」

夕食が中途半端になったので、今の体験をみやげ話に、ソフィーとオスカーでホルストさんのカフェへと向かう。

「でも、プラフタ居なかったら気付かなかったかも。空気に敏感なんだよね~……助かるよ」

2人は街灯の光るキルヘンベルの街を歩く。

「確かに。ソフィーの錬金術で作るモンも、ギトギトしてるんじゃ、やる気も失せるもんなぁ……」

「プラフタが居なかったら……あたしの錬金術なんて、さっぱりなまんまだもんね~」

「やっぱり、気難しい……しっかりした錬金術師だったんだろうなぁ~……と、なると……都会に住んでた……のかもなぁ……」

「都会と言えばレオンさん!レオンさんもしっかり者だよね!」

「なんとなくスッポ抜けてる所もあるんだけどな。基本的にはしっかりしてる人だよなぁ……」

そんな語らいをしながら、ソフィーとオスカーはカフェへと向かう。

 

 

賑やかなカフェに、フリッツさんとパメラ、エリーゼお姉ちゃんが居て……

テスさんも制服のまま、同じテーブルに座っていた。

「あれ?どうしたんですか?」

ソフィーが近寄る。

「ソフィーちゃ~ん、明日ね~、お祈りの後で人形劇をするのよ~♪」

パメラは微笑みながら言う。

「はっはっはっ……ついに登場人物の人形が出来上がってな……明日開演、となった訳だ」

フリッツさんは得意気に笑う。

エリーゼお姉ちゃんも、人形劇を演じるのだと言う。

 

「あたしもね、明日は朝のお祈りから行って、人形劇を見に行くんだ♪なんか楽しみだよ……」

テスさんもそう言って笑った。

「それは楽しみです!あたしも絶対行きます!今日はもう……食べたら寝ないとですね!」

ソフィーもじたばたして喜ぶ。

人形劇、というのを見た事も無いし、わくわくが止まらない。

「じゃあ、オイラも行かないとな」

オスカーも明るい顔をする。

「ふふふ。この街の人々それぞれにプレゼントも用意しているからな。是非来たまえ」

フリッツさんは得意気に笑う。そしてソフィーとオスカーは、カフェで夕食の時間を過ごして……それぞれ帰る事にした。

 

 

オスカーと別れて、アトリエへの帰り道……

……子供の話……すっかりタイミング無かったなぁ……

なんて思いながら帰る。噴水広場……

裏酒場やレストランに続く道の所に、ハロルさんが寝てた。

「どどどど……!どうしたの!?ハロルさん!」

ソフィーは慌てて駆け寄る。

するとハロルさんに抱きつかれた。

「おぉ……ソフィーじゃねぇか……こんな夜にどうした?……ウゲェェェェ……ェェェ……」

ハロルさんは、恐ろしく長いゲップをソフィーに吐き付ける。

「うわぁぁ……お酒やばいよぉぉぉ……くっさぁぁ……」

ソフィーはもがく。

ハロルさんは立ち上がると、ソフィーから離れて、ストリート方向へとフラフラ歩き出した。

 

「時計屋は親父だ……俺は時計屋じゃねぇぇぇ……オラァ……」

そしてどこか消えて行った。

……昼間から飲んでた……

そんな感じだ……

レオンさん………アレの何がいいんだろ?

……そう思いながら、ソフィーはアトリエへと向かう。

 

 

……その途中に、普段着のモニカが居た。

フレアースカートにロングソックス、なんかお嬢様ムード全開で驚きのコーディネート。

丁度ジュリオさんと別れた時で、ジュリオさんも居た。

カフェ手伝いの時の、細い感じのファッション。

「ソフィー……こんな時間に外で会うなんて奇遇だね。それじゃ……って……お酒飲んでたのかい!?」

ジュリオさんは驚き、足を止める。

「あら。どうしたの?」

お嬢様ムードのモニカも寄って来る。

 

「ううう……途中でハロルさんに絡まれて……ゲップされたんだよ……きっとその臭い。すっごく臭かったもん……」

ソフィーは項垂れて話す。

「そもそも、ソフィーがこの時間にうろついてるなんて、珍しいじゃない?」

モニカが不思議そうな顔で話す。

……モニカは夜にうろついてるなんて、珍しくないのだろうか……

そしてジュリオさんは帰って行った。

明日は早いみたいで……

 

 

そしてモニカとソフィーで立ち話になる。

「なんか、モニカお嬢様……って感じ?」

ソフィーはモニカのファッションの話をしてみる。

「おばさん達の話からね、こういう服装になったのよ?なんか都会で学校に通う女の子って、こういう服装みたいなのね?」

「へぇ~……モニカの服じゃないの?」

「そうなのよ~エルノアもノリノリでね~?おかげでバーニィさんにも笑われちゃったわ。食い付きが良かった、とも言えそうなんだけどね?」

「バーニィさん、都会に娘さんとか居たんじゃ無かったかなぁ……」

「え?そんな話あったの!?」

ソフィーとモニカの立ち話は続く。

 

「アトリエでいにしえの厨の新しい調理法やったんだけど……」

そんな立ち話の中……

ソフィーはプラフタに怒られて、カフェでの夕食になった経緯を話した。

「アトリエが油まみれになる所だったから、助かったんだけどね……でもお腹減って……」

「呆れた!アトリエの中で油を沸かしたの?散らかってる本とか、全部に油が付いちゃうじゃない!」

モニカは口許に手をやって驚き、そう話す。

「……そうなんだ。プラフタが怒るのも当然の事だったんだねぇ……」

 

……ソフィーはそれから、人形劇団がカフェに居た話、カフェで夕食を取った話……そして酔っ払いに絡まれた話をする。

「そうだったのね……でもこれからお店に、その衣の揚げ物?……も出てくるようになると思うと……素敵ね」

モニカも、教会で人形劇の準備をしてた話、ヤーペッツさんが帰って来た話……

そして教会食堂のメニューは、代わり映えしなかった話をする。

「オスカーも、旅先の食事にその調理法と、新しい調味料を作らないと、って張り切ってたんだよ。それで今日はエロエロしてるどころじゃないんだ」

ソフィーは苦笑いして見せる。

「ふふふ。期待しちゃうわよね?男の子ってもうちょっとイヤらしい物かと思ってたけれど、そうでもないのよね」

お嬢様モニカは、ソフィーから目を逸らして呟く。

「ジュリオさんなんて、紳士を極めてるんじゃない?それに鍛練に勉強に教会に……忙しいみたいだし」

イヤらしい……

という感じもしない。

モニカから誘うと、何とか都合をつけてくれる……

という感じなのは、ぷにちゃんを介してソフィーも知ってる事だ。

 

「そうね。私の理想の人……でもなんか……まあいいわ。ところでジュリオさんも気にしていたんだけど、銀いもパワーの話って何か分かったの?」

モニカはソフィーに尋ねる。

「あーーーーっ!?」

ソフィーは、全く忘れていた事を思い出した。

子供の話とか人形劇の話で、もうすっかりどこかへ飛んで行ってた。

「忘れてたの!?結構大事な話って、言ってなかった?」

モニカは苦笑いを浮かべる。

まあ、そんな感じだろうと、少し思っていた。

「聞いてみなくちゃ……だね!」

「私も行くわ。ぷにちゃんに聞くんでしょ?」

「うん。ぷにちゃんが詳しいだろうし!」

モニカとソフィーで、アトリエへと向かう。

 

 

「おかえりなさい、ソフィー……モニカも」

お嬢様なモニカと、いつもの格好のソフィーをプラフタが出迎える。

機嫌は悪くないようだった。

「ただいま~……ぷにちゃんに聞かないといけない事があったんだよ……結構重要な事」

ソフィーはモニカとコンテナに入る。

 

 

「……よく来た……時間は膨らませるか?ストックは3時間程あるぞ……」

ぷにちゃんがソフィーとモニカにそう伝える。

モニカにも時間ストックの話が伝わった。

「膨らませる。それと、あたしの作る錬金術の品物の特性なんだけど、あたしが居ないと効果がないの?」

ソフィーは尋ねる。

そして開いた口に入る。ぷにちゃんの舌も大きくなって、ソフィーとモニカはその舌に身体を沈めて、寝る体勢にする。

 

「特性適用の能力があれば……その特性の能力の……恩恵を受ける……もしくは……特性適用、業。……を……持つ者が近くに居れば……その特性の能力の……恩恵を受ける……」

ぷにちゃんは答える。

……ソフィーとモニカの肌に、身体の中に向かって風が吹く感覚がする……

「その特性適用……って誰が持ってるの?」

目を閉じてソフィーは尋ねる。

目の中に……裏にまで風が吹く感覚。

……目まで凄く癒される……

 

「ソフィー……が特性適用、業。……を持っているな……あとはロジーか……コルネリアの……慈愛を受けた者が……特性適用を持っているな……」

ぷにちゃんは答える。

モニカが時間ストックを理解して……

ソフィーに対しての野望を抱くのが解る……

「特性適用が無いと……銀いもパワーは……?」

ソフィーは尋ねる。

ぷにちゃんの中でモニカがソフィーの所へ来た。

「適用されないな……従って防御も回復も得られない……」

ぷにちゃんは答える。

答えながらも、モニカに抱きつかれて……

ソフィーも、そんなに嫌じゃないものだから……

そんなモニカに流される。

 

「あの……モニカ?ちゃんとジュリオさんにも伝えて……んんんっ……ひゃぁああんっ……」

ソフィーもモニカのおっぱいに手をやる。

この際だし……モニカのおっぱいに甘えるの好きだし……

 

「んんんっ……ソフィーが感じて……その気持ちで私も気持ち良くなるの……時間が膨らみ過ぎて遭難みたいになっちゃうから……ずっとガマンしてたの……知ってるでしょ?」

モニカはソフィーに髪を絡めて……

お股に指を立てる。

ぷにちゃんがモニカの指を導いて……

にゅるっ……と滑り込ませる。

ソフィーの中を拡げる。

「でもこれっ!凄過ぎっ!くうぅっ……!はぁぁあっ!あっ!あっ!あっ!」

2人は絡んでハジケる。そしてハジケまくって眠った。

 

 

「ストック45時間……はしゃいじゃったね~……」

ソフィーが起きると、ぷにちゃんに言われる。

「えへへ……エロエロするのって気持ちいいし……なんかモニカがエロエロだと、嬉しいんだよね……」

ソフィーが答える。

モニカは、ぐっすりと眠ったままだ。

 

「なんかそういう気持ちが、凄く私を温かくするんだよね。ここでなら、どんどんやっちゃって構わないから……で、部屋を出る?」

ぷにちゃんが聞く。

部屋を出るとモニカの為にまた時間が膨らむから、ソフィーだけ部屋を出ても、1分もすればモニカが出てくる。

……部屋を出た1分で、モニカは何時間でも休まる仕組みだからだ。

「そうだね……すっごい元気になっちゃったし」

ソフィーは、ぷにちゃんの部屋を出る。

……ドアを閉める。

 

そして棚の服に、番人ぷにちゃんが群がっていた。

「こちらでは、脱いだばっかりだからね。間に合わなかった訳だけど、あと1分くらいで綺麗になるよ?」

番人ぷにちゃんの群れが、服の汚れを食べてる途中だったみたいだ。

「うん。見守ってるよ」

ソフィーは蠢く番人ぷにちゃんの群れを見つめる。

うにうに動いてカワイイ。

 

「は~……なんか癒され具合もパワーアップしてる感じするわ……」

ドアを閉めてすぐに、モニカが出てきた。

番人ぷにちゃんの群れが服から離れて行き、ピッカピカになってる……

「なんかここでエロエロしちゃうと……オスカーの時に物足りなく思っちゃうかも……」

ソフィーがモニカに笑い掛ける。

「そうね……でもジュリオさんは忙しいし……私は気絶しちゃうからなぁ………」

モニカも、お嬢様ムードな服を着ながら呟く。

「えへへ……モニカ寂しいんだ?」

「もう!冷やかさないでよ……」

2人はコンテナを出る。

 

 

コンテナを出ると夜のまま……

そしてやたら元気になってしまった……

お嬢様ムードなモニカにプラフタが食い付き、話は弾む。

そんな光景を脇に、ソフィーは錬金釜に向かう。

ミネラルエキス、小悪魔のいたずら、中和剤(黄色)と錬金術生活をする。

錬金術生活の合間合間に、そんなモニカとプラフタにソフィーも混じる。

「人形劇もその服で行くの?」

ソフィーが尋ねる。

「そうねぇ……番人ぷにちゃんがピッカピカにしてくれたから……貸してくれたおばさまも喜んでくれそうだし……それに聖歌にも似合わない訳じゃないものね?」

「大多数の人々が学業に向かう服装なのであれば、やはりそうした服装は、尊い物なのかと思うのです。こう……自らを控え目にしているような感じもありまして……」

プラフタがぱたぱたと浮かびながら、そう熱弁する。

 

「プラフタはなんか、凄いお気に入りみたいだね?」

「でも、プラフタみたいな真面目な人が食い付く感じがあったわね。バーニィさんも、真面目な人じゃない?」

「ディーゼルさんは?食い付いた?」

「ディーゼルさんはね、そういうのもいいね、って言ってただけで、どっか行っちゃったわ」

「忙しかっただけなのかな?それともディーゼルさんは、そんな真面目じゃないのかも……」

「ハロルさんには会わなかったのよね?」

「なんか、ずっと飲んでたみたいだし……」

話は弾む。

 

 

そして、あっという間に朝になった。

 

「よし!今日はお祈りから人形劇!行って来るね~♪」

お嬢様モニカとソフィーは、アトリエを出る。

晴れた、爽やかな風の朝!

思わず足取りも軽くなる。

 

……そしてヴァルム教会へと向かう。

人形劇……

楽しみ過ぎて、歩く足どりが軽過ぎて浮いてしまう感じがする。

 

……そわそわしながら、お祈りをする。

晴れたキルヘンベルの噴水広場には、どこから来たのか丸太が幾つも運び込まれていた。

そしてお祈りにはいつも見られない職人のおじさん、自警団の人達が……

丸太のそばでお祈りをしていた。

 

コルちゃんもロジーさんと、丸太の場所に居て、いつものようにソフィーは教会の中へと入れない。

子供達が前を固める都合で、すぐいっぱいになる。

 

 

お祈りが終わり、晴れているから噴水広場に集まる。

「さあ!皆さん人形劇の開演……の前に人形師である私からプレゼントがあるぞ!まずは子供達から……と行きたい所だが、子供達の分は神父様へ預けた!今日帰ったら、それぞれ受け取ってくれ!」

 

いつも少し小さいダンディーボイスのフリッツさんが、大声でそう話す。

しかもその大声、慣れてるみたいで通りがいい。

「職人の皆さんも、親方に渡してあります!ここで渡すのはキルヘンベルの有名人!まずは皆さんの食事を支えている八百屋さん、マルグリットさん!前へどうぞ!」

フリッツさんは演劇台に箱を乗せる。

箱の上には木の棒が横たわり……

そのまま木の棒を持ち上げると、人形が出てくる仕組みになっている。

 

「アタシが1番なんて……なんか照れるねぇ……」

マルグリットさんはそう言って……

説明された通りに棒を持ち上げる……

 

 

「はーっはっはっはっ!」

「あはははははは!」

「ひいーっ!」

皆が笑い出す。

クオリティーの低い人形が、でも特徴をしっかり押さえて誇張してるのが出てきたのだ。

「ア……アタシこんなんかい?」

マルグリットさんも、盛大に苦笑いする。

「さて、お次は同じく八百屋……息子のオスカーだ!」

 

 

丸い!カボチャにちょこっと顔があるみたいな人形が出てきた。

カワイイ……でも皆が大笑いだ。

「ふふふっ……これ……呼ばれるの怖いわね……っ……はーっ……はーっ……」

隣のお嬢様モニカも、お腹を抱えながらソフィーに話す。

 

 

「さあお次は……カフェとかコルネリア露店とかそういう順番じゃないぞ!?噴水を守る美人騎士、モニカ!どうぞ!」

順番も意外を突いてくる。

「えーーーっ!?無理無理!!」

モニカは立ち上がり、首を横に振る。

「ならばこちらで紹介しよう!」

フリッツさんが、箱からモニカ人形を取り出す。

髪長い!長すぎる!

クオリティーの低い人形が、メガネをくいっ、……ってしてるのがまた笑える。

 

 

「さて……余興はここまで……ここからは人形劇の開演となります!皆さん、まずはお昼まで、どうぞごゆっくり!」

ソフィーにもレオンさんにもハロルさんも……

キルヘンベルの商店、教会の人々に人形プレゼントした後、人形劇を始める。

もう既に、クオリティーの低い人形達に、結構みんな惹き付けられていた。

更に……

あの2階建ての錬金荷車1号がやって来て、テスさんとホルストさん、いつものお姉さんが飲み物の販売を始めてた。

 

カン!

 

フリッツさんが、カネを叩くと人形劇のプロローグを話し……

 

カン!

 

カネを叩くと、パメラが最初の人形の台詞台本を読む。

パメラの持ち上げた可愛い女の子の人形を揺らし、その女の子の台詞、と分かる。

 

カン!

 

パメラが読み終わると、またカネを鳴らし、次の台詞……

フリッツさんがぼろぼろのカカシの人形を揺らして、台詞台本を読む。

そうして物語は進んで行く。

台詞は覚えていなくても良いみたいで、進むと本を捲ったり人形を変えたりする。

どれも、それぞれが持つ本に書いてあるみたいだった。

 

捨てられる事になったぼろぼろのカカシと、農家の娘が旅に出る話。

いつの間にか皆大人しく人形劇を見守り、すこしじわっ、とくるエンディングを迎える。

 

 

「さて!お昼になりましたので、まずは午前の部……終了となります!午後の部にご期待下さい!」

生き生きとした顔で、フリッツさんが言うと……

ソフィーも、はっ!と我に返る。

「え!?もうお昼なの!?」

モニカも口許に手を当てて驚く。

人形プレゼントの余興で、随分と時間が経っていたようだ。

「なんか……あっという間にお昼になったね~……びっくりだよ……」

コルちゃんとロジーさん……

レオンさんとも合流したけど、旅ではなく、午後も人形劇を見る事に決めた。

エリーゼお姉ちゃんも一緒に、レストランへと行く事になった。

 

 

お昼ごはんを食べて、午後も人形劇を見に行く。

職人さん達や自警団の人達は随分減って、午後の部は少し落ち着いて見れるようになった。

 

……銀いもに恋する土いもの話……

……月を目指す旅人の話……

……目の見えない学者の話……

 

台本を読めば演劇が出来るので、ソフィーもモニカもレオンさんもオスカーも、演者となった。

そしてクオリティーの低い……

なのにカワイイ人形を揺らして……

……エリーゼお姉ちゃんが、誰よりも夢中だったように思う。

そして夕方になり、人形劇はお開きとなった。

台本も人形も、全て教会へ寄付するので、好きな時に好きなように、人形劇をする事も出来るようになった。

 

 

「1日が……あっという間でした……」

夕食は、皆でホルストさんのカフェへと行く。

お昼もお店……

夕食もお店で凄い贅沢だけど……

ソフィーは手持ちすっからかんがデフォなので、なんかコルちゃんが出してくれた。

 

……「ソフィーさんは、常にすっからかんで良いのです!……コルネリア露店は……ソフィーさんのおかげ部分が大きいですから……是非お任せ下さい」……

そう言って、コルちゃんが払ってくれる。

 

人形劇の話が飛び交い、カフェで盛り上がる。

今日のカフェは凄く賑わっていた。

 

 

「コルちゃん……本当に大丈夫なの?」

カフェを出て、ソフィーが不安そうに尋ねる。

「そうですね……ではぷにちゃんの所に行きましょう……本当に大丈夫かどうか……本当に分かりますので……」

明日は旅に出る話をして、解散する。

そしてソフィーはコルちゃんとアトリエへと向かう。

 

「おかえりなさい、ソフィー。人形劇はどうでした?」

アトリエに帰るとプラフタが出迎える。

「楽しかった!1日がね、あっという間だったよ!」

「私も……不覚にも時間を忘れてしまいました……」

お土産のソフィー人形と、コルちゃん人形を飾る。

「ふふっ……はははっ……」

杖とプラフタだけ何故かクオリティーの高い……

クオリティーの低いソフィー人形。

杖に見合わない体格、手足が細すぎる……

でもどこかカワイイ人形。

「プラフタも笑うよねこんなん……皆笑ってたもんね」

コルちゃん人形は、ジト目だけクオリティーが高くて……

やたら小さい人形。

可愛さ全開なのに何か企んでる顔で……

明日からは、コルちゃん露店に飾るそうだ。

 

「この絶妙なやっつけ感……フリッツさんはセンスがあるです。なかなかこういう出来上がり……というのは難しいのです」

2人はぷにちゃんの部屋へと向かう。

 

 

「……よく来た……ストックした時間は残り39時間だ……」

ぷにちゃんの部屋に入ると、ぷにちゃんはそう伝えて、口を開けた。

「随分と増えて……まさかソフィーさん!?」

コルちゃんはソフィーを見る。

「あはは……前回モニカとね……ハジケちゃって……」

ソフィーは気まずく笑いながら伝える。

「まあ……時間が膨らんでいる分には……私にとっても都合の良いことなので……大丈夫です」

コルちゃんはそう思いながら、ぷにちゃんの口の中へ入る。

 

「そうなんだ……とは言え今回は人形劇の余韻でエロエロしてる気持ちでもないよねぇ……月に……行きたいなぁ……」

ソフィーもそう思いながら、ぷにちゃんの口の中へ。アトリエに帰る道でも、人形劇の物語ばかり考えてた。

それが………だだもれた。

「月に行ってみたいと思いました……あの劇……また見たいです……ソフィーさんの演技はへっぽこでしたけれど」

コルちゃんも、ほっこりしながら思いを致す。

「……うはぁ!?やっぱり!?」

ソフィーは気まずく笑う。

「それよりも、マルグリットさんにお店の極意を聞きまして……あの八百屋さん、ほとんど利益が無いのです。仕入れた値段と、売る値段があまり変わりません」

 

……身体の中に風が吹く感覚……

その中でコルちゃんは思う。

「なんかそんな話……前にしたことあるような……」

ソフィーも思い出す。

八百屋から色々と貰いまくってた日々で、そんな話があったような……

「オスカーさんもそうですが、マルグリットさんもお店で儲ける事を第一としていないのです。なんと、お父様までがそうなんだと言います」

コルちゃんは、とある日の……

閉店する八百屋への突撃取材を思い出す……

 

ついでに、その時に飲んだミルクの味も思い出す。

朝1番のミルクは冷たくて新鮮な、甘いミルク。

だけど閉店間際のミルクは、すっかり温くなって妙な匂いが鼻につく、変なミルク。

……でもその変なミルクも、変な中に良さがあるみたいで、需要もあるそうで……

 

「ほぇ~……コルちゃん突っ込んで調べたんだねぇ……」

ソフィーは素直に感心する。

「……そんなマルグリットさんをリスペクトすると……ソフィーさんは色々便利な物を作り出しているのに……儲け方を知らなくて、いっつもすっからかん……ソフィーさんの食事代なんて、私が出しても、全然足らないくらい、お礼しないといけないのです」

 

コルちゃん露店の課題は、売り物……

それをソフィーのちょこっと調合品が埋めて、露店に並べきれないくらいになった。

しかも増やし易いものだから……

安い値段で出してるけど……

元手がコルちゃんの錬金術……

SPバリアの消費だけなので、儲けがデカい。

「そ……そんなに……あたし……何かしたっけ?」

ソフィーは今までのちょこっと調合品とか、あまり振り返らない物だから……

今一つ心当たりが無かったりする。

 

「流石です……私も儲けが多くはありますが……そのお金でコルネリア商会を開き……物流をもって沢山の人を笑顔にしたい……そんな野望にお金は遣います」

 

コルちゃんはソフィーに感心する。

損得勘定が完全に欠落している……

まさかそんな……

でも常時すっからかんになれるのも才能だ。

全額、錬金術に投資してしまう……

それだけかもだけど。

「な、なんかコルちゃん……立派すぎるよ……」

コルちゃんの思惑が、ソフィーにはなんか難しいみたいで、ソフィーが悶え始める。

 

「そんな本心です。当面は……ケチくさい鍛冶屋ロジックスの設備に投資……職人の方へのお仕事のお礼として……お金を遣う予定ですが……」

そうコルちゃんが思う時には、ソフィーはもう難しい事は考えたくないモードに……

 

「……もう眠らせた方が良い……かな……?」

ぷにちゃんがそこを汲んでくれた。

「はい……お願いします」

 

……身体を抜ける風が温かくなって……ソフィーとコルちゃんは眠りに落ちて行く……

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[衣を付けて揚げる]
古代のお金持ち貴族の、雇っていた料理人達の用いていた調理法。ザクザクふわふわになると美味しい。

[空気に敏感なプラフタ]
何でも目が無いプラフタは、空気を通して見ている都合で、空気の状態は常に目につくらしい。ギトギトしてるのには、凄く敏感。

[中和剤石鹸]
水と油を中和して、汚れを落としやすくする。汗とかも、ほんのわずかな油分で、水だけだと落としづらいのだとか。

[ふわふわクロース]
雑巾的な風格が漂う物も現れてきた。いつまでも新品、という訳には行かない。

[人形劇]
人形で劇をするなんて!

[子供の話]
子供が出来たなら気になるお年頃。

[裏酒場]
ホルストさんのメイン酒場。だけどホルストさんの雇った冒険者が、切り盛りしてるんだとか。

[レストラン]
エルノアさんとヤーペッツさんの作ったお洒落な食事処。エルノアさんの飾り付けが暴走しがちなので、セーブするのに大変なんだとか。

[裏酒場やレストランへ続く道]
広場からストリートへ続く道のお隣。ゲームでは、そこには入れないので、色々と出来上がってみたり。

[銀いもパワーの話]
変異物質。防御6の防具の防御力を10上げる。実に166%上がるのである。更に毎ターンHP回復が付く。防御0の装飾品にも付き、そちらでも防御力が10上がる。

[教会食堂]
ヴァルム教会の食堂。安いけどストイックなメニューしかない。教会騎士の人も非番の時には、裏ストリートの屋台とか裏酒場とか行くみたい。

[ハジケる]
ヤバいところをくちゅくちゅすると、ピクピクしてハジケる。

[噴水広場の丸太]
観客席。ふわふわクロースが乗ってる。

[クオリティーの低い人形]
1日に30体という、意味不明なペースで作られたらしい可愛い人形。みんなそれぞれお気に入り。かも。

[錬金荷車1号]
2階建て。マナフェザーで重量を誤魔化している為、積んだ荷物と、荷車そのものの重さが30%くらいカットされる。お洒落な装飾が目立つ。

[ソフィーさんの演技はへっぽこ]
人形劇してみるも、演技力というのは必要みたいで。

[お金と投資]
難しい話。でもお金を使うと、使われた方は嬉しい。


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錬金術のアトリエ 23

錬金術のアトリエ 23

 

目を覚ましてぷにちゃんの部屋を出る。

エロエロしないで眠って……

こうして出てくるのはイイ。

エロエロしなきゃいけない、ってのはやっぱり不便だったんだなぁ……

とか思う。

 

ソフィーが服の汚れを食べてる、番人ぷにちゃんを見守ってると、コルちゃんも出てきた。

「スッキリシャッキリです!」

コルちゃんは片足を上げて両手を広げる、スッキリシャッキリのポーズを取った。

「あたしも!スッキリシャッキリ!」

ソフィーも同じポーズを取る。

「ところでソフィーさん……最近、夜に占い師が居るの、ご存知でしょうか?」

コルちゃんは、最近コルネリア露店の隣の場所で、夜専門の占い師が開業した事を伝える。

「占い師って……なに?」

ソフィーは尋ねる。

キルヘンベルで、そんなの見た事ない。

 

「占い師とは……未来を予言する人の事を言うのですけど……行ってみませんか?」

コルちゃんに言われて、ソフィーはスッキリシャッキリのポーズを取る。

「面白そう!行く行く!」

もう完全に元気だし、行かない手はない。

ソフィーは迷わずそう答えた。

「お代の方は任せて下さい。きっとソフィーさんも何か新しい閃きがあったりしますです」

コルちゃんはそう言って、服に靴に帽子に取りつく番人ぷにちゃんをつんつんする。

「任せちゃおっ♪」

コルちゃんの本心も伝わったし、錬金術頑張ってる限り、お金を払って貰っても、堂々としてた方が……

コルちゃん的にも良いみたいで。

 

 

「かくかくしかじかなのですが……プラフタさんも、行きますか?」

コンテナを出て、コルちゃんはプラフタに話す。

「その占い師の心を乱してもいけませんから……私は次回にでも行くとしましょうか」

プラフタはソフィー人形の側を飛びながら、そう答えた。

 

そしてソフィーとコルちゃんはアトリエを出て、ストリートへと向かう。

 

その途中、噴水広場にフリッツさんが居た。

「フリッツさん!今日はすっごく楽しかったです!」

ソフィーとコルちゃんは駆け寄って声を掛ける。

「そうだろう!そうだろう!まだまだ色々な台本をこれから起こすからな!楽しみにしているがいい!」

フリッツさんは胸を張って笑顔で答える。

 

「……ところで、ここで何をしていたのです?」

コルちゃんが噴水広場を眺めながら聞く。

「いい質問だ。これから人形劇をするに当たって……場所の見直しをな。それと、舞台の片付けをしていた……あと、色々と思う所があってな……」

フリッツさんは真剣な眼差しで噴水広場を見る。

人形劇に真剣な人だった。

……出会った時からそうなんだけど……

「人形、ありがとうございます……大事に露店に飾ります……」

「あたしも!アトリエに飾ってます!そしてプラフタも気に入ってました!」

2人はそう言ってお礼をする。

クオリティーの低い、でもだからこそ?

謎の愛らしさをしている人形は、きっとずっとお気に入りになりそうだ。

 

「喜んで貰えたなら、何よりだ。ソフィーにもコルネリアにも……この街にも世話になっているからな」

そんな世間話をして、ソフィーとコルちゃんはストリートへと行く。

フリッツさんはまだ噴水広場を眺めていた。

 

「おお……これが占い師の人……」

ストリートに入ってすぐ、箱に座って、机にしてる箱に水晶玉を乗せた女の人が居た。

「占い……してもらってもいいです?」

コルちゃんが声を掛けて、ソフィーを見て貰う。

ソフィーはその水晶玉を見て……

未来が見えるのかな……と考える。

 

「……道が見える……一軒家への道……光る水……そして……妖精の人形……本……墓……」

ソフィーはメモを取る。

「金運は上々、恋愛は上々……何が起きても前向きに捉えられる性格のようですね……その性格であるうちは、全て上々と捉える事でしょう……貴方の求める物は……メモに残した事がヒントになるでしょう」

占い師は水晶玉から視線を外す。

 

「そんな感じです」

そしてイキナリ口調と声が緩くなった。

コルちゃんがお代を払う。

「このヒント、モノにしないとだね!プラフタにも相談しないと……」

ソフィーはメモを見る。

ついでに水晶玉も作ろうと企んだ。

 

 

ソフィーはアトリエに帰る。

「プラフタ~♪占って貰ったら、こんなんでました♪」

そしてメモを開いて見せる。

 

「水晶玉……墓……道……本……光る水……妖精の人形……ああっ!」

プラフタは光り輝く。

「おおおおお~っ!?」

そして錬金術生活。

先見の水晶玉、妖精の道標、万物の写本を閃いて、レシピ構築となった。

それと、例によって新しい採取地を思い出した。

 

「う~ん……本は、万物の写本……道と妖精の人形と光る水は、妖精の道標……墓ってなんだろ?」

ソフィーはメモを眺めて考える。

「なんか……凄い占い師なのでは……墓も何かありそうですね……」

 

そして万物の写本の作成。

6時間……

かなりの難易度に、錬金釜がぷくぷくして、品質が下がる下がる……

でもなんとか形になった。

 

「なんとかなった~!仕上げの時に溶けてなくなるかと思ったよ~……」

何とか出来上がった万物の写本を眺めて、ソフィーがため息まじりに言う。

万物の写本とか言いながら、読む事の出来ない本。

扱う人も限定される。

……使うと本が開き、魔力ビームを浴びせて生命力と防御力を奪い、更に攻撃力と素早さもダウンさせる。

つまりは危険物だ。

「しかし……万物の写本まで作れるとは……あなたの錬金術も、相当ハイレベルになって来ましたね」

プラフタが誉める。

「そ、そうかな~……えへへ……ギリギリだったけどね……」

 

ソフィーは顔を緩ませながら頬を掻いた。

「更に妖精の道標……これは材料が足りませんが、材料が揃えば作れそうですね」

もう2時……旅立ちまではあと数時間だ。

 

 

その数時間も錬金術生活をする。

妖精の道標は、ぼんやりとしかレシピが出て来てない。

旅先の帰り道の節約になるという、もはや時間を超える代物……

「この図鑑……凄い図鑑だよね……こうしたレシピが次々と出てくるんだもん……それに、まだ白紙部分がこんなに……」

ソフィーはプラフタの内容を見る。

まだ半分も……

いや3分の1も埋まっていない。

 

素朴な焼き菓子を作り……

朝を待ってソフィーはアトリエを出る。

旅立ちの朝だ。

 

 

ホルストさんのカフェに、今日もソフィーのパーティーが集まる。

「墓のあるところ……月と太陽の原野には、教会と墓所があるそうだね」

ジュリオさんがそう言って、今回は月と太陽の原野へ行く事になった。

 

 

「ホルストさんのカフェにも、ホルストさん人形飾ってたね」

今回は西へ行く旅の道……

ソフィーがそう話す。

「え?どこにあったんだい?」

荷車を引くジュリオさんが尋ねる。

「ピアノの所にありましたよ」

ソフィーが答える。

「今日もロジーさんは雛鳥の林に……しっかりやってるでしょうか……」

荷車の2階で、コルちゃんが呟く。

「おお……今日も元気そうだな……そうそう恵みの森を抜けて……」

荷車から少し離れて、オスカーが植物と話していたりする。

そんな旅の道……

 

 

もうすぐ夕方……

月と太陽の原野には、そんな時間に到着した。

墓が並ぶ、祈りの絶えた教会……

蛇の草が凄い繁ってる。

食べると美味しい肉厚な草で、日持ちもするらしい。

今回の依頼はひたすらこの草だ。

夕食もこの草を予定してる。

 

「これは……美味しそうです……しかし……どれだけ生えてるのでしょうか」

地面から直立する蛇みたいに延びていて、背丈がジュリオさんよりちょっと高い。

枝分かれしてる部分が無く、にょろにょろした感じで上に伸びている草。

先端には2つ、目みたいな部分があり、この目玉っぽいのが花。

これが地平線まで埋めてるのだ。

オスカーが言うには、2つの花は姉弟で、姉に当たる花の方がほんのちょっと大きく、おしゃべり。

弟に当たる花は無口なんだそうだ。

 

どの蛇の草も、姉と弟。

姉がおしゃべりじゃないのもあるそうだ。

「そんな話を聞くと、刈り取りづらくなります……」

ともかく、蛇の草を掻き分けて、刈り取って、ソフィー達は進む。

 

 

「小悪魔と死神がめっちゃうろうろしてる……」

魔物の巣だった。

でもそれぞれの魔物は思い思いにふらふらしてる。

ガーゴイルが花の香りを楽しんでいたり?

アポステルが空を見上げていたり……

蛇の草は密度を減らしていて、墓所方面はよく見えたりする。

死神も、リッチが墓石を巡っていたり……

 

「……なんか、やり過ごせそうだね」

魔物と距離を置いて、奥へと進む。

蛇の草集団で所々見えないのもあり……

何体かとは戦闘になるものの、銀いもパワーを凌ぐ攻撃力はなかったので、時間は掛かるものの、危なげなく倒せる。

弾けるベリーとかカーエン石とか拾える……

 

 

そして奥へ……もう夜になって、月見の墓所へと進む。

「夜の墓所……ちょっと怖くない?」

ソフィーがオスカーにしがみつく。

「そうか?星がやたら明るいし、なんか平和な感じの赤プニがころころしてるし……」

墓石が並び、凄い数の赤プニがうろうろしてる。

こちらも思い思いに過ごしてるだけみたいで、やり過ごす方針で歩く……

 

「ん?この水たまり……」

ソフィーは墓の側に……

不思議な水たまりを見つける。

やたら光ってるのだ。

「墓……光る水……これの事かい?」

オスカーもそちらを見て、そう話す。

反射だけじゃないように思える輝き……

 

「なんか、そうみたい?なのかな?」

夜光水を汲んで、荷車に乗せる。

そこら中の墓石にあるみたいだった。

星の光を遮ってみても、光ってる。

 

そして先へ……

と進むと、青い死神がそれを阻んだ。

「これ……なんか強そう……」

ソフィーが青い死神のオーラに気づく。

「防御陣形スペシャルで行くよ!」

味方への強化魔法と防御の陣形……

その後で攻撃に転じる作戦……

旅の道で打ち合わせしていたのを、早速!試す時が来た。

 

ソフィーの防御力強化!

レオンさんのレベル上げダンス!

モニカの攻撃力強化!

ジュリオさんのHPバリア強化!

 

……そんな下準備付きの、防御の陣形。

シャドウ2体の攻撃を凌ぎ……

後は全力攻撃をする。

戦闘も慣れたモノだ。

それからは、時折、赤プニの群れに絡まれながら先へと進む。

 

 

陽待ちの円環、と呼ばれる石サークルに出た。

ふわふわの苔、蛇の草……

お墓の無い場所。

「サークルの中に粉がふわふわしてるね……」

ソフィー達は太陽の粉を集める。

その作業で朝になった。

結構時間掛かるけど……

粉が熱を持って、集めるとほかほかしてくる。

 

「これ、結構危ない粉じゃない?」

鍋に集めてたけど、なんか集まるにつれて熱が……

上がっていく。

「今、小ビンを増やしてますので、ちょっと待って下さい……」

 

コルちゃんの増やした小ビンに分けて、事なきを得た。

そして荷車もそこそこ満たしたので、キルヘンベルを目指す。

月と太陽の原野入り口の蛇の草で、満載になるのだから。

月見の墓所……

祈りの絶えた教会……

と戻る。

赤プニの群れや、小悪魔達は……

朝から思い思いに過ごしていて、別に夜だから居るのではないみたいだけど、青い死神は居なかった。

全てやり過ごして、蛇の草を採って……

キルヘンベルへと向かう。

 

 

「しかし、こんな強敵……商人の人とかどうしてるんだろう?」

帰り道、ソフィーが呟く。

「私の場合は……冒険者と街道を歩くから……さすがに魔物の巣に殴り込んだりはしなかったわ……」

レオンさんが答える。

レオンさんも、キルヘンベルへと辿り着いた商人の1人だ。

 

「僕の場合も、騎士団と街道だね……魔物避けの聖水とか……免罪符で追い払う事もあるけど……街道でしか効果が無いみたいなんだよね」

ジュリオさんはそう答える。

魔物の巣に殴り込む……

なんて事は基本的にしてないみたいだ。

「魔物って……なんで出てくるんだろ……?」

ソフィーは口許に指を当てる。

「……え?」

「……え?」

「……え?」

レオンさんとジュリオさん、コルちゃんが意外そうな顔をした。

 

「……あれ?なんか……常識なの?」

ソフィーはそう聞いてみる。

「フリッツさんから聞いたけど、滅ぼされたマナの柱から、魔物が湧いてくるんだよね」

ジュリオさんがそう教えてくれた。

……そんな話……

されたかも……

 

 

そして……夕方……

キルヘンベルに到着となった。

 

赤プニ汚れもあり、レオンさんは別れて、5人でアトリエへ帰る。

「ただいま~♪」

「あらソフィーに……えっと……赤プニ汚れなのかしら?」

今日もエリーゼお姉ちゃんが居て、プラフタと仲良くしてた。

そして、エリーゼお姉ちゃんは帰る事にするみたいで、アトリエを出て行く。

 

 

ともかく、まずはソフィーの荷物をアトリエに運ぶ。

広くなった棚の廊下。

番人ぷにちゃん達が今日も、わっしょいわっしょいしてる。

わっしょいわっしょいしてる……

という事は、女の子の人格の方だ。

「おかえり。ストックの時間は34時間あるね」

番人ぷにちゃんがそう伝える。

 

棚に荷物を置くと、番人ぷにちゃん達は荷物をわっしょいわっしょいしていく。

汚れを食べて、更に整理していく。

ソフィーとモニカ、コルちゃんで扉の方へと行き、装備品を外して棚に置いていく。

こちらでも番人ぷにちゃん達が、わっしょいしてる。

 

「赤ちゃんの話……私は結論が出たです……ぷにちゃんにあげるです」

コルちゃんは結論決めるのが早かった。

そして服を脱いで棚に置いていく。

脱ぐスピードは、コルちゃんが断トツで早い。

 

「そ、そうなっちゃうの!?」

モニカが驚く。

「あたしも……でもまだ……うんにゃ、あたしもぷにちゃんにあげるよ。まだ子供産むには早い……ようにも思うし……」

ソフィーも服を脱ぎながら、コルちゃんに続いた。

 

「まあ……冒険を続けて、魔物の攻撃にさらされて……お腹の中で耐えられない……よりは私の中で……って方がいいかもね。よく決めてくれたね」

番人ぷにちゃんはそう言って、脱いだ服とか装備品に取り付く。

 

「そ、そう言われてみるとそうよね……今回も死神アタックが凄かったし……でもあれ?2人ともつわりとかって無かったようだけど……」

モニカがようやく下着に手を掛けながら、そう話す。

 

「マナの柱で寝るとね。子供も安定するんだよね。それにHPバリアLPバリアも子供を守るよ」

番人ぷにちゃん達が答える。

生理痛に関しても、100%~80%ぐらい、痛みが軽減するそうだ。

 

「100%軽減って……痛みなくなるじゃない」

モニカが言う。

「まあ、そうなるよね。便利でしょ?」

番人ぷにちゃんは、あっけらかんと答える。

ともかく、ハダカ族となった3人でぷにちゃんの部屋へと入る。

 

 

いつものように、ぷにちゃんの中へと入り、3人は身体を任せる。

「ぷにちゃんで寝るのは……気分いいです……」

コルちゃんが一安心して、眠りに落ちようとしている。

「さて、お休みする?」

ぷにちゃんは尋ねる。

色々ごちゃごちゃ考えてるのも、ぷにちゃんの中で眠りに落ちると、無くなるように感じる。

 

……そんな訳で3人は眠りに落ちる。

 

 

モニカが最初に目を覚まして、ぷにちゃんから出る。

そして棚の廊下で服に取り付く番人ぷにちゃん達を眺めていると、ソフィーが……

コルちゃんが出てきた。

眠る時間は違えど、ここで合流出来る。

 

そしてモニカを残してアトリエを出ると、外にハロルさんが来ていた。

エリーゼお姉ちゃんもここで足を止めて、世間話をしていたみたいだ。

ジュリオさんがアトリエに入り、ソフィーとコルちゃんはハロルさんに近寄る。

「あれ?ハロルさん、今日はどうしたの?」

ソフィーが能天気に言うと、ハロルさんはソフィーとコルちゃんの頭に手を伸ばす。

「オマエら、髪に油でも塗ってるのか?随分とシャレっ気が出てるじゃないか……」

2人がハロルさんに捕まった。

 

汚れたままのオスカーは、外テーブルでそんな4人を眺めている。

「あうあう……も~!あたしも立派なレディーなんだから、気安く掴まないでよ……」

「そうです……ソフィーさんはともかく、私は色々と手間が……あうあう……」

ソフィーもコルちゃんも、ハロルさんに掴まれて軽く振られている。

「ちょっとハロルさん……女の子をそんな風に扱っちゃダメですよ……」

エリーゼお姉ちゃんが少し笑いながら言う。

「このくらいで丁度いいだろう……ソフィーとコル助だからな……」

なんか、ハロルさんは凄く平常心でエリーゼお姉ちゃんに答える。

 

「そうだ……そんな話じゃなかった……実はオマエ達に、銃の火薬の調達をして来て欲しい、と思ってな」

ハロルさんはソフィーとコルちゃんの頭を掴んだまま、ここに来た用件を思い出す。

「火薬?カーエン石を粉にした感じのやつ?」

頭を掴まれながら、ソフィーは言う。

「太陽と月の原野の、あの粉も火薬として優秀な気がします」

コルちゃんも頭を掴まれながら、口許を隠すいつものポーズで言う。

「しかし、こんなに触り心地のいい髪は中々ないぞ……一体どういう事だ?」

 

 

ハロルさんにぷにちゃんの話をすると、なんかあっさり納得して2人を離す。

「今までの火薬は……どうしてたです?」

そして今回のハロルさんの、依頼の話を始める。

「商人から買っていたんだがな……どうにも品質が良くなくてな……何でもこの山で採れるらしいんだがな」

ハロルさんは地面を示す。

「ここのやつかい?……そんなもん売るなんて……なかなか逞しいなぁ……」

ソフィーとオスカーは驚く。

 

キルヘンミルクスネークカモン!

時代に、このアトリエの山も探し尽くしていて、詳しい。

……ここのカーエン石はボロボロのやつばっかりだ。

しかも、ごく稀に見つかるくらいなので、レアアイテムだ。

「まあ……それでも爆発音さえしてくれれば事足りたんだが……今回は銃弾を撃ち出す火薬が欲しくなってな……」

ハロルさんの銃と、弾の構造をソフィーとコルちゃん、オスカーで見つめる。

「これは……プラフタも呼んでみようかな」

 

 

モニカとジュリオさんが出てくるのを待って、プラフタを呼ぶ。

エリーゼお姉ちゃんはこのタイミングで帰って行った。

 

……皆でハロルさんの銃と弾の構造を見て、あーでもないこーでもない言い出す。

 

「……カーエン石か。それの質のいいのが手に入れば、火薬は俺が作るんだが……」

その結果、ハロルさんが作るから、カーエン石の調達をする依頼、となった。

 

……皆それぞれ帰って、ソフィーとオスカーでアトリエに帰る。

明日はカーエン石調達、という事で、巡礼街道へと行く予定にした。

 

「さて、お腹減ったし……オスカーも綺麗にしないとね!」

ソフィーはアトリエに戻り、オスカーを洗い出す。

「ハロルさんの銃も、実用まであと少しなのかな……」

オスカーはそう呟きながら、汚れた服を脱ぐ。

ソフィーもピッカピカになった服を脱いで、ベッドに乗せる。

 

そうしてハダカ族になる時に、赤ちゃんの事を思い出した。

……まだぷにちゃんには渡していない。

……今日はそうするつもり、と伝えただけだ。

……来週くらいに、ぷにちゃんが引き受けられるくらいの大きさになる。

……その時に、赤ちゃんを渡す事になるんだ……

 

「ソフィー?」

固まったソフィーに、オスカーが声を掛ける。

「あ、あはは……ちょっと深刻な考え事してた……」

ソフィーはオスカーの座る暖炉の前に行き、ふわふわコットンを手に、井戸水の桶を見る。

「深刻な考え事……生理が来た……とかか?」

オスカーは考えるポーズをすると、いつものトーンでそう言った。

「いや……ぷにちゃんが言うにはね、子供が出来てるんだって」

「お!?おおお!?本当かソフィー!?」

いつものトーンじゃなくなって、オスカーがソフィーを見る。

そしてそれは、喜びの声だった。

「喜ぶよね……ぇ……」

ソフィーはオスカーの身体を洗い出す。

 

 

事情を話しながら、オスカーと夕食を作る。

オスカーはカフェで働いた時に、レオンさんに作ってもらった服を替えの服として、アトリエでは着てる。

その服のオスカーと、いつもの格好のソフィー。

「あたし、赤ちゃんは嬉しいんだけどね。錬金術を止めたくないんだよね。それで、ぷにちゃんに渡す事に決めたんだ」

ソフィーはそう伝える。

妊婦さんしながら……

さすがに旅先で、魔物の巣に突撃してる訳には……

行かないと思う。

 

「考えたら、いずれオイラとソフィーは……別の旅をする、って決めてたもんな。オイラも……いずれ旅立つつもりなのに、無責任に喜んじまったけど、そうやって渡せるのは……いい事なんじゃないか?」

オスカーは夕食を食べながら、そう話す。

「いい事かな?」

ソフィーは尋ねる。

「だってさ、もしぷにちゃんが子供を引き取ってくれないとしたら……妊婦さんするしかないじゃないか?そうなったら……錬金術を止めるしかなくなるんじゃないか?」

オスカーはそう話す。

……言われてみればそうなる……

ソフィーもスープを飲む。

 

「オスカーは……賛成してくれる?」

少し間があって、ソフィーはそう聞いてみる。

「オイラも、子供よりもソフィーと旅をしてるのが、今はいいからな。自分勝手だけど……賛成なんだよな」

オスカーはそう言うと、夕食を食べ進める。

「でも、それって結構……薄情じゃない?」

ソフィーはそう言うと、スプーンを置いた。

……子供が産まれるって……

なんか不利だと思った。

 

「まあ、薄情だよな。でもオイラ、植物と話ができるだろ?その上で八百屋なんてやってるからな……オイラの命も含めて、特別な命って無いと思うんだ。そして、ソフィーのお腹の子供も、特別じゃないから……タイミングが悪かったんだと思うな」

タイミングのとこだけ、やたらカチンときて、ソフィーはオスカーを睨む。

タイミングの前に……

なんて言ってたのか……

そんな事は頭に残らなかった。

 

「タイミング?タイミングが悪かっただけで……産まれて来れないんだよ?」

涙をこぼすソフィーに睨まれながら、オスカーはそれでも夕食を食べ進める。

「……いや、タイミングが悪かっただけで、死なないといけない命ばっかりだろ?産まれた場所が悪いだけだったりさ。この人参だってさ……畑に産まれたばっかりに……なんて言ってたらキリがないぞ?」

 

人参とソフィーの子供が同列なのは……

オスカーもどうかと思うけど……

ソフィーは子供を産みたい育てたい……

なのかとも思う。

「……オスカーの意見は分かったよ。……なんか久しぶりに感情的になっちゃった……」

ソフィーは夕食も途中に立ち上がり、また座る。

……いつ以来だろ……

こんな気持ち……

 

「オイラも、もう少し考えないとだな……」

オスカーもスプーンを置いて、アトリエの窓を眺めた。

 

 

オスカーは帰り、ソフィーは夕食の途中のテーブルを見つめる。

……嫌な気持ちがぐるぐるしてる……

涙がぼろぼろこぼれる……

「ソフィー?」

本棚からプラフタが出てきた。

「涙もろいから……涙が出てるだけ……あたし……赤ちゃんが可哀想とか……思ってないんだ……なんかそれが……気持ち悪い……」

ソフィーはそう言って、夕食の途中のテーブルを睨むように見つめる。

オスカーの分はちゃんと食べられていた。

 

「………」

プラフタは言葉もなく、窓の側の机に着地する。

 

 

夜になって……

ソフィーは言葉もなく後片付けをする。

プラフタも着地したまま、窓の側に居る……

 

 

そして夜が更けると、寝間着にケープ姿の、コルちゃんがやって来た。

プラフタは、すぐ側の窓にぱたぱたと浮かぶ。

「ソフィー……コルネリアが来ましたよ?」

プラフタはパタパタと飛び上がり、ソフィーはため息を付いた。

「はああぁぁぁぁ……息苦しかったぁ……」

そしてはぁはぁし出して、呼吸を整えると、ドアへと行く。

 

「……やはりソフィーさんは、起きてましたか……」

いつもの感じとは違う、肌襦袢に金の刺繍の紫のケープ、髪を下ろした格好のコルちゃんがアトリエに入る。

「なんか、凄いオシャレ……しかも可愛い!」

テンション低かったソフィーも、急にテンションを上げる。

プラフタもパタパタと2人の間に入って来た。

「いつもよりも大人の女性、と言った風情ですね」

息苦しい空気もどこへやら、オシャレな出で立ちのコルちゃんの服装に、ソフィーとプラフタは夢中になる。

 

 

「ごめんねプラフタ……息苦しくしちゃって……」

ともかく、息苦しい空気からは解放されて、ソフィーはホットミルクを2つ用意する。

いつか使うだろうとか言って、余らせてる錬金術の材料なんだけど……

 

「ソフィーさんもお悩みでしたか……私も気持ちの上で整理出来なくて、ぷにちゃんを……頼ろうと思って、来たんです」

ソフィーとコルちゃんでプラフタを見る。

コルちゃんは、ロジーさんに言ってないそうだ。

 

「……産むにしろ渡すにしろ、笑顔でいられない選択ならば、するべきではないかと思いますが……」

プラフタはそう言って、ベッドに着地した。

「ぷにちゃんなら……笑顔になれる理由とか、ありそうなので……頼りに来たんです」

そう言ってホットミルクを飲む。

ソフィーも口をつけた。

 

 

そしてぷにちゃんの部屋へと行く。

プラフタはため息をついて、ベッドに寝た。

……アトリエの中、ベッドの上に開いた本が置いてある……

そんな感じで。

 

 

棚の廊下、番人ぷにちゃんは皆揃って寝てる……

2人はハダカ族になって、ぷにちゃんの部屋のドアを開ける。

「よく来た……ストックの時間は28時間だ……」

ぷにちゃんは口を開く。

ソフィーとコルちゃんはその口の中、舌の上に座る。

 

「赤ちゃんの事なんだけど……」

ソフィーが思いを伝える。

「赤ちゃんを渡すのに……やたらもやもやします……渡すのは決まっていますが……この気持ちはどうしたら……」

コルちゃんの方が、しっかりしてた。

 

「母親とは……そうしたものだ……もし我が……猿から子を奪おうとしたなら……犬から子を奪おうとしたなら……決して理解はされない……だろう……本能は……子を手放す事を……良しとしない……人間も……本能が許さぬ……だろう」

ぷにちゃんは答える。

生き物としての、本能。

「なら、どうにもならない……ですか?」

 

「だが……子を死なす……事は良くある。猿であっても……悲しみの果てに……次の子を迎える……ソフィー……コルネリア……子を我に託しても……その子は死なないぞ?……我の人格の1つとして……生きる……それは不幸な事では……ないぞ……」

ぷにちゃんは答える。

……そうだ女の子の赤ちゃんだから……

死なないのだ。

 

「それは安心するのですが……欲を言うと……赤ちゃんも欲しかったり……」

コルちゃんがそう思う。

「それも……我に捧げても……翌月にはまた……子を為すだろう……だが……子で膨らんだ腹では……旅に不都合だと……ソフィーも……コルネリアも……思っている……そして……生活を……曲げたくないと……思っている……どちらの生活を選ぶか……決めねばならないの……ではないか?」

 

「あ、あたしも……翌月には子を為す?」

ソフィーが尋ねる。

「ソフィー……お前の卵は……ちゃんと……人並みに……持っている……翌月には……出会いを求めて……出てくるはずだ」

「ご、500個くらい?」

「……そのくらいだな……栄養状態も良い……卵も……元気に1つ1つ……膨らむだろう……」

 

「あの……若い女の子の人格は、ひょっとしておばあちゃんの子供なの?」

ソフィーはふと思って聞いてみる。

「それは……我は知らぬ……おそらく……記憶を……封印……されているな……錬金術で施した……封印ならば……錬金術で……解く事も出来る……かも知れぬ……名前も……知らぬのだ」

ぷにちゃんは答える。

錬金術による封印……?

そしておばあちゃんの名前……確かに誰も口にしない。

そして、お墓にも名前は刻まれていないのだ。

 

「封印……ですか……ちょっとこの部屋に秘密がありそうです……」

コルちゃんはぷにちゃんから抜け出す。

抜け出そうと思えば、ぷにちゃんは出してくれる。

ソフィーとコルちゃんは壁を見て歩く。

床も……天井も……でもそれっぽい物は見つからなかった。

 

「そういえば、おばあちゃんの記憶って……すごく断片的なんだよね……」

ソフィーはふと、そう思う。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[エロエロ]
心身共に疲れる日もある。

[番人ぷにちゃん]
棚に住む、頭くらいの大きさのプニプニ。顔がない。そして沢山居る。どんどん増える。

[スッキリシャッキリのポーズ]
実は番人ぷにちゃんも、ポーズを決めていたりする。人の形に変形する事も出来るみたい。

[台本を起こす]
フリッツさんの知ってる色々な物語。キルヘンベルの本屋さんにも、物語が多数あるので人形劇用に仕立て上げるだけなんだそうだ。

[クオリティーの低い人形]
ゲームで言うと、妖精の道標にくっついてる人形みたいな感じ。

[ホルストさん人形]
あのクオリティーでホルストさんが済まし顔。

[蛇の草]
肉厚なヘンテコな草。しかも硬い。煮ると凄く柔らかくなる。少し甘い香りがする草。

[ガーゴイルが花の香りを楽しんでる]
蛇の花を頭からパクっとやるんだけど、食べる訳ではなく、パクっとするだけ。これが、香りを楽しんでるのだとか。

[アポステルが空を見上げている]
ガーゴイルもアポステルも、猫みたいに可愛い小悪魔。ぽ~っと口を開けて空を見てる姿は、可愛すぎる。

[凄い数の赤プニがころころしてる]
ころころしてる赤プニは、こちらから殴りかからないと戦闘にならなかったり。魔物なのに平和な感じの赤プニが多い。

[ふわふわの苔]
ビロードのクッションのよう。

[魔物避けの聖水]
街道で効果を発揮する聖水。街道から離れていると、効果が出ない。
[免罪符]
街道で使うと魔物が街道から離れて行くお札。街道から離れると、効果が出ない。

[滅ぼされたマナの柱から魔物が出てくる]
マナの柱は魔力を発生させる。焼かれたりして滅んだ場合は、魔物を発生させるようになる。

[赤プニ汚れ]
ぺとぺとしてる。ベリー的な香り。

[ストックの話]
止める時間を調節できるようになり、余った時間をストックする。

[赤ちゃん]
産まれたばかり。

[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエ、地下室に在るマナの柱の愛称。

[記憶を封印されている?]
なんかそんな感じがするらしい。

[おばあちゃんの名前]
ソフィーのアトリエDXでは、モニカがラミゼルと話すのだけど、無印では出て来ない。結構活躍していたらしいのだけど……


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錬金術のアトリエ 24

錬金術のアトリエ 24

 

夜のまま、ソフィーとコルちゃんはアトリエに戻る。

ぷにちゃんの中で深く眠りに落とされると、気持ち悪かったモヤモヤも、スッキリしたりする。

 

……単純なものだ。

ソフィーは我ながらそう思う。

 

 

「ごめん!プラフタ師匠!……なんかイライラモヤモヤして……」

コルちゃんが帰り、ソフィーが勢い良く謝る。

「まあ……気分が良くなったのであれば、それでいいです……さすがに私も、ソフィーがイライラモヤモヤしてしまう気持ちも、分かりますし……」

プラフタは、なんだかんだでいつものソフィーに戻って、安堵する。

ソフィーは8時間程、ゆっくりと過ごして休まったのだけど、プラフタからするとものの5分程だ。

 

「……さて、錬金術しますか……」

ソフィーは錬金釜へと向かう。

「時間の掛かる物は、朝になってしまう時間ですよ?」

「時間との折り合いもつけないとだね」

巡礼街道行きへの時間は迫る。

 

 

「プラフタ~♪行って来るね♪」

ソフィーはやけに明るくアトリエを出る。

巡礼街道行きの朝。

「行ってらっしゃい、ソフィー」

プラフタはそんなソフィーを見送る。

 

 

そしてカフェから始まる旅立ちの日。

いつも通り依頼を受けて……って、巡礼街道行きの依頼は無かった。

「最近は冒険者の方や、自警団の方、騎士の方等に片付けられてしまいまして……でもソフィーが旅立つようになって、新しい荷車の貸し出しも好調ですよ」

ホルストさんは笑う。

そんな訳で今回は依頼を受けてないけれど、モーニングはサービスだった。

武器を作るにも手持ちが無さすぎるので、錬金術品の依頼を受ける。

……研究ではなく、お金の為に錬金釜をぐるこんするのは……

ちょっと気が引けるのだけど……

 

そして巡礼街道へ。

曇り……雷が鳴り出した。

 

「そういえば、ここのカーエン石って……あるときはポコポコ落ちてるけど、無い時は無いんだよねぇ……」

ソフィーが呟く。

コバルト草、魔法の草ばかりが採れる……

 

そして青プニの群れが転がって来た。

「おおお……なんかやる気に溢れてるです!?」

コルちゃんもびっくり、青プニ10体。

戦闘に危なげこそないものの、やたら時間を使わされる。

 

ヌルヌル魚が釣れて、オスカーとモニカが調理する中、ソフィー達はカーエン石を探す……

食事はうまうまニコニコなんだけど……

カーエン石は芳しくないうちに、夜になってしまった。

「あったぞ、ソフィー」

星空の眩しい巡礼街道……

オスカーがまとめて見つける。

 

 

「デカイ塊があったぞ、ソフィー」

そろそろ朝日が空を照らす時間……オスカーがまたも見つける。

「オスカーばっかり見つけてズルいよ!」

ソフィーはコバルト草を握りしめて言う。

「いや、そんな事言われてもな……そろそろ足りる量じゃないか?」

そして朝ごはんを食べて、ヌルヌル魚の為のかまどを片付けて、切り上げる事にした。

 

 

そしてお昼前に、ソフィー達はキルヘンベルに帰る。

……果実の日。

 

「はああぁぁぁ……今回はオスカーにいいところみ~んな持ってかれたぁぁぁ……」

ソフィーはキルヘンベルのカフェに向かって、伸びをしながらそう呟く。

「そうだね。彼は色々と見つけるのが得意なようだからね」

ジュリオさんは笑いながら荷車を引いて、言う。

「今回はあまり汚れてもいないし、早速ハロルさんに渡しておいでよ。今回はヌルヌル魚が旨かった……まるでピクニックみたいな癒される旅だったな」

オスカーに言われて、ソフィーは時計屋に寄る事にする。

「じゃあ、アトリエ前でお昼……準備しておくです」

コルちゃんとモニカ、オスカーとジュリオさんは、先にアトリエでお昼の支度なので、先にアトリエへと行く。

 

 

「ハロルさ~ん」

「ただいま~……巡礼街道がカーエン石の産地って聞いたけど、あんまり無いのねぇ……」

ソフィーはレオンさんと一緒に、時計屋へと入る。ハロルさんは銃とナイフを眺めていた。

……お客さんは居ない。

「……ソフィーも一緒とは珍しいな……カーエン石は揃ったのか?」

ハロルさんは銃を置いて、カウンター越しにソフィーに近寄る。

「アタシは裏で、身体洗って来るわね」

レオンさんは、時計の並ぶ店内の奥、裏口に消えて行った。

 

「へへ~……数はバッチリ揃ったよ?」

ソフィーはカーエン石を、ごろごろとカウンターに並べる。

「……なんだこれは!?」

ハロルさんは、カウンターに置かれたカーエン石を手にすると、目を見開いた。

「え……アトリエの山のカーエン石よりは、いいやつだと思うけど……」

ハロルさんの気難しい顔に、ソフィーは怯む。

「こんなに良質なものなのか?最近は巡礼街道に行く冒険者も居てな……そいつらからも受け取っているのだが……まるで違うぞ……」

ハロルさんはそう言って、手にしたカーエン石を眺める。

 

「えへへ……見つけたのはオスカーだったりするんだけどね……」

「あの倅か……まあ、これだけの物だ。報酬も弾んでやらないとな。それと、良ければまた、仕事を頼む事になりそうだな」

ハロルさんはそう言うと、報酬に1000コールもくれた。

「こんなに?いいの?」

1000コールも入った金貨袋。

……なんか一気にお金持ちになった。

「驚きの品質だからな。贔屓なしで、その値段だ。またよろしくな」

ハロルさんは、どこか機嫌良さそうに言う。

 

「ところでハロルさん、そろそろお昼だし、アトリエでお昼しない?レオンさんは来る予定なんだよ。巡礼街道産、巨大長いも大親分を食べるんだ」

今回、荷車の1階にずっと鎮座していた、川沿いで掘れた巨大長いも大親分が、昼食だ。

これもヌルヌル魚やカワナマズを釣ろうとしていた、オスカーが見つけた。

「カーエン石がこの品質……その芋も、さては未知の品質の予感がするな。……呼ばれておくか。確かに昼時だからな」

ハロルさんはそう言って頷いた。

「そうこなくっちゃ!」

ソフィーはガッツポーズする。

 

 

そしてレオンさんとハロルさん……

ソフィーと3人でアトリエに帰る。

……お腹減ったし。

「ハロルさん、貰った人形、飾ってないの?」

ふと気になって、ソフィーは尋ねる。

フリッツさんが配った、クオリティーの低い人形。

……皆の前で、イヤそうな顔で人形を引き上げたら、人形もイヤそうな顔をしていて、かなりの笑いを取ったやつ。

「店の入り口に飾ってあるぞ。オマエは背が低いからな……気付かなかっただけだろう」

ハロルさんは、そう言って歩く。

少し油断すると、すいすいと先に行く。

歩幅が大きくて歩くのが早い。

 

「捨てそうになってるのを、アタシが止めたのよ?まあ……気づき辛いトコに飾ってるんだけどね」

「人形見たさに店に来るやつが居てな……おかげで、その分だけ、商売繁盛してる事になるな」

そう話しながら歩き、アトリエ前に着く。

 

 

「な……!?」

デカイ木の棒に長いも大親分が縦に通され、横倒しで丸焼きになっているアトリエ前。

プラフタもパタパタと飛んでる。ウメさんも微笑みながら傍らに座っていた。

ハロルさんもレオンさんも、ソフィーもびっくりの光景だった。

「途中でヤーペッツさんに会ってな。こういうのはインパクトある調理がいいらしいんだよ」

オスカーが言う。

……度々、いにしえの厨に籠ってた食通商人、ヤーペッツさんも居た。

「これはドキドキしますな!」

いもの棒をくるくる回しながら、ヤーペッツさんは笑顔で言う。

……すごい楽しそうだ。

 

「この……飛んでる本は何だ!?」

ハロルさんは、プラフタを見て驚く。

「いつだったかしら?教会のお祈りに来た事あるわよね?その時に見なかったのかしら?」

レオンさんはプラフタを眺めて微笑む。

「あたしの錬金術の師匠、プラフタだよ~」

 

「つい先日、銃弾の火薬について色々と話をしていましたが……その時は気付かなかったみたいですね。紹介が遅れましたが、プラフタと申します」

そういえばそうだ。

「うむむ……?そうだったか?……まあ、俺はハロルだ。詳しい事はソフィーから聞くのがいいだろう」

ハロルさんはそう自己紹介する。

 

 

そしてヤーペッツさんの焼き上げた芋を皆で食べる。

「なるほど……いつも食べる芋と勢いと匂いが全然違うな……昔、1度だけだが、こんなのを食べた事があるな」

ハロルさんは大親分を食べて、そう感想を言う。

「年寄りでデカいやつってのは、そこそこ見かけてさ、もう食べられないやつなんだけど、若い株でこのサイズってのはオイラもびっくりだよ」

ヤーペッツさんとオスカーで、皆のお代わりに対応しながら、オスカーが話す。

「なんか、行く先々で食事がびっくりなのよ。ヌルヌル魚も身がプリップリだったのよ?」

レオンさんもご機嫌でそう話す。

オスカーのおかげで、色々と美味しい物に出会えているし。

「なるほど……俺も銃の完成を急ぎたくなるな」

ハロルさんは、そう呟きながらお代わりしてた。

皆で食べ過ぎるくらい食べたし、楽しく話しながらの素敵な時間を過ごす。

 

 

楽しい昼食を終えて、解散する。

ジュリオさんの引く錬金荷車2号に乗せて、ヤーペッツさんと焼き台、調理器具……

ハロルさんにレオンさん、オスカーとウメさんが帰って行く。

「……錬金荷車3号とか作ってさ……キルヘンベルの中をくるくるするのも、名物になりそうだよね」

その姿を見送るソフィーは呟く。

「ソフィーさん……それは素敵な思いつきです!3号さえ作ってしまえば、実現出来そうです!」

コルちゃんが賛同した。

 

「錬金荷車3号がくるくるしたとして……アトリエはコースに入らないわね。きっと」

モニカが呟く。

……確かにちょっと人里離れた山の上だし……

コースに入らないだろう。

そして3人とプラフタは、アトリエに帰る。

 

 

「さて、身体を清めてから錬金術を……」

ソフィーはアトリエに入ると、錬金釜を見る。

「ソフィーさん……燃えていますね」

そんなソフィーに、コルちゃんが話す。

「そりゃあ、依頼品をこれから作らなきゃだし、錬金荷車3号も……作りたいし、時間を超える必殺調合もいよいよだし……」

ソフィーはガッツポーズをする。

依頼品はともかく、妖精の道標のレシピ構築……

完成が近い。

 

「錬金荷車3号も作るの!?」

モニカは驚く。

ソフィーのやる気が溢れまくってる。

「錬金荷車は皆で作らなきゃだから、下準備ぐらいしか出来ないけどね。……先に必殺調合かなぁ」

ソフィーはそう言いながら、地下の扉を開ける。

ぷにちゃんの部屋で、身体を清めるのが先だし。

 

「まぁ……あまり張り切り過ぎも良くないから、ちょっと寝て、落ち着くのがいいと思うわ」

モニカとコルちゃんも、地下の扉へと入って行く。

 

 

「よく来た……時間はあと21時間……ある……」

ぷにちゃんの部屋……

ぷにちゃんは口を開ける。

「今日もよろしくね。エロエロしなくていいと思うと、なんか贅沢だね」

ハダカ族のソフィーは、そう言ってぷにちゃんの中に入る。

「なんか夕食が楽しすぎて疲れちゃったわ。明日は種の日だから……お祈りと……あとまた時計を調整しなきゃ……」

ハダカ族のモニカも続く。

「眠いです……なんかやたらと眠いです……」

ハダカ族のコルちゃんも続く。

なんか温泉みたいな感じでもある。

「モニカ……時計を棚に預けると……棚のあるあの場所は……時間が曖昧な場所だ……時計は狂う事に……なる……」

ぷにちゃんはそう言うと、モニカは慌てて時計をコンテナから出すべく、アトリエに戻る。

 

 

……そして帰って来た。

「まあ、どうせ狂っちゃったから調整はしなきゃなんだけどね……」

時間を止めて、3人は眠る。

 

 

そしてコルちゃんとモニカは帰って行く。

「さて!遂に妖精の道標用、スプルースを!」

ソフィーは錬金釜へと向かう。

プラフタも本と軍手を置くと、パタパタと錬金釜へと寄る。

スプルースの素材の準備をして……

 

 

「まあ……浸け置き時間で暇になっちゃう訳ですが」

ソフィーは素材のゆらめく錬金釜を見て、離れる。

「私の錬金術も……そうして浸け置いていたのでしょうか……まあ……混ぜ続けていたとは考えづらいのですが……」

プラフタは、ソフィーの側でパタパタと浮かびながら、そう呟く。

「プラフタの場合は、一瞬でババーン!と出来上がったりしたとか……誰でも時間掛かるものなのかな?」

ソフィーはそう尋ねる。

錬金術は人それぞれ……

ならば、使う時間も人それぞれ……かも。

 

「記憶が無いというのは歯痒いですね。あいにく思い出せません」

プラフタはそう言うと、暖炉の方へとパタパタ飛ぶ。

プラフタと色々と話しながら、スプルースを決めると……

もう朝になる。

 

 

種の日……

プラフタのお気に入りの万能促進剤をソフィーは眺める。

依頼品がこれ3つなんだけど、不良品品質のコレも提出する所だった。

……もう1個、作らないとだ……

 

「じゃ、お祈り行って来るね!そのまま旅立つかも!」

ソフィーはアトリエを出る。

エリーゼお姉ちゃんが来てもいいように、ちょこっと調合のお菓子なんかを暖炉の側テーブルに用意した。

「行ってらっしゃい、ソフィー」

プラフタは見送る。

 

 

朝の教会前、噴水広場……

今日も人形劇をしていて、思わず見てしまい、演じてしまい……

午前中が吹っ飛ぶ。

旅に行かない日となってしまった。

 

 

そしてエリーゼお姉ちゃんとモニカ、コルちゃんとお昼を食べにレストランへと行く。

「ああぁぁぁ……働かなくて良かったのかなぁ……」

ソフィーは頭を抱える。

人形劇……恐るべし。

種の日の教会にお祈りに行くと、人形劇とセットみたいだから、毎回……

これからも毎回……

 

「種の日は休日だから……それもいいんじゃないかしら?」

モニカは微笑む。

レストランでゆっくりと食事をする。

その中でエリーゼお姉ちゃんから「大地の傷痕」という場所の話を聞いた。

 

 

そしてアトリエに帰る。

妖精の道標と、ホルストさんに提出する用の万能促進剤を作らないと……

 

そして妖精の道標を仕込む。

なんと浸け置き12時間……

なので噴水広場に行って、人形劇を堪能しているエリーゼお姉ちゃんの隣に戻る。

 

「やっぱり人形劇……いいわぁ……」

夕方の閉演まで楽しんでしまった……

エリーゼお姉ちゃんは、ため息をつきながら、しみじみと呟く。

「エリーゼお姉ちゃん、人形劇大好きだもんね?あたしも好きだけど、エリーゼお姉ちゃん、目の輝きがダントツでキラキラしてるんだもん」

前回見たのと同じ演目だけど、フリッツさんの演劇は凄く夢中にさせる。

さすがに初日に比べると人は減ったのだけども。

「そ、そ、そ、そ、そうかしら?」

エリーゼお姉ちゃんはソフィーから顔を逸らして、少し慌てて言うと、ストリートへと歩き出す。

「そうだよぉ」

ソフィーは、そんなエリーゼお姉ちゃんの後をついてく。

 

「まあ、夕食はカフェにしましょう。ホルストさん人形を、また見たいのよ」

エリーゼお姉ちゃんは微笑む。

人形劇後で、やたらゴキゲンだ。

「へへ~……そのお金すら無くて……あ、あった」

ソフィーは財布を見る。

残金44コールかと思いきや、なんか1737コールもあった。

テスさんの引換券も33枚ある。

 

「散財の噂は本当なのね?まあ、そこはお姉ちゃんにお任せでいいのよ♪」

やたら足取りの軽いエリーゼお姉ちゃんに、ソフィーもついていく。

「なんか、1737コールもあったよ!」

「いいのよ。お姉ちゃんにお任せで♪ソフィーのそのお金は、またどこかで散財しないといけないでしょ?」

なんか、有頂天だった。

人形劇……凄すぎる。

 

 

「やっほー☆」

カフェはテスさんの日。

夕食の時間も落ち着いた感じの店内。

「夕食と、引換券貯まったんで……」

ソフィーはテスさんと一緒にカフェの奥、ヒミツの引換券ショップへと行く。

そして竜のウロコを30枚で引き換えて、エリーゼお姉ちゃんのテーブルへと戻る。

「な、な、な、なにこれ!?」

ソフィーの顔よりもでかい1枚の青いウロコ。

エリーゼお姉ちゃんは驚く。

 

「へへ~……テスさんの引換券ショップで買っちゃいました!」

「竜鱗の守り」という防御40上昇の、本格的チート特性を持つ、ステキアイテム。

ソフィーはご機嫌で竜のウロコをテーブルに置く。

「……散財……なるほどだわ……」

感心するエリーゼお姉ちゃんと、夕食を食べる。

エリーゼお姉ちゃんの食事の傍らに、金色の泡の液体……

お酒なんだけど、カフェの照明を受けてキラキラ輝いてる。

 

「エリーゼお姉ちゃんも、お酒飲むの?」

ソフィーは金色に輝く、小さなグラスを見つめる。

カフェの夕食、ソフィーにもホットミルクにハチミツ、と飲み物がセットで来てるけど……

「嗜む程度だけどね」

エリーゼお姉ちゃんは、グラスを傾ける。

エリーゼお姉ちゃんの唇に、金色の液体が吸われて行き……

ちょっとだけ減ってグラスを戻す。

「ちょこっと味見させて!」

ソフィーは足をパタパタさせながら言う。

「ここではダメよ……ホルストさんもテスさんも見てる前じゃない」

あっさり断られる。

でも言われてみればそうだ。

 

「うう~……早く大人になりたいなぁ……」

ソフィーはホットミルクを飲む。

甘い……美味しい……

「ちなみに、苦いのよ?」

エリーゼお姉ちゃんはぽそっ、と言う。

「え!?苦いの!?薬なの!?」

ソフィーは驚いて身を乗り出した。

……金色だから、ハチミツ的な甘さを想像していたけど……

苦いのは好きじゃない。

「薬とは違う、大人の苦さだから、今のソフィーが口にしても、うへえぇぇ~っ、てなるだけよ?」

 

そんな話をしながら、カフェの夕食を食べた。

……成人って16だから、ソフィーはもう大人なんだけど……

エリーゼお姉ちゃんは伏せておいた。

 

 

そしてソフィーがアトリエに帰る頃は、すっかり夜になっていた。

妖精の道標の仕上げは、夜中1時。まだ時間がある。

「じゃじゃ~ん!」

ソフィーは竜のウロコで顔を隠して、謎のポーズでアトリエに入る。

プラフタがパタパタとやって来た。

「竜のウロコなど……どこで手に入れたのですか?しかしまた立派な……竜のウロコですね」

プラフタは感心しながら、竜のウロコ族となっているソフィーの回りを飛ぶ。

「テスさんの引換券ショップで交換したんだ。防具に竜鱗の守り、変異物質と付けたら……完璧だよね!やること増えちゃったぁ~」

ソフィーは竜のウロコをコンテナに入れる。

そしてすぐアトリエに戻り、錬金釜を見る。

 

「武器がまた、遠のきますね」

プラフタは、ソフィーの近くを、またパタパタと飛ぶ。

「そうなんだよねぇ~……」

ソフィーは呟き、朝まで錬金術生活を始める。

 

 

朝7時……

1時から始めた万能促進剤を仕上げて、決まる。

つまりカフェ遅刻の時間……

「よし、行って来るね!プラフタ」

ソフィーはアトリエを出る。

今日が1週間の始まり、双葉の日だし、どこかしら行かないと!

「行ってらっしゃい、ソフィー……」

プラフタはソフィーを見送る。

今日もいい天気……

最近はずっといい天気続きだ。

 

 

ソフィーのアトリエからカフェまで、1時間半の道……

急いでカフェに向かうと、カフェの入り口、八百屋さんでオスカーとジュリオさん、レオンさんが忙しそうにしていた。

「あれ!?マルグリットさんは?」

ソフィーは足を止める。

今日も繁盛の八百屋さんに、何故かマルグリットさんが居ない。

「今、コル助が呼びに行ったんだけど、母ちゃん教会で、朝のお祈りから戻って来てないんだよ。あ、ラーメル麦ね、まいど」

オスカーが、お客さんを捌きながら言う。

教会の子供たちも働いてるんだけど、マルグリットさんが居ないと、てんやわんやみたいだ。

「よ~し、あたしも教会に行ってみよっと」

ソフィーは広場に向かおうとすると、コルちゃんとマルグリットさんが慌てて来た。

「ごめんねぇ、つい長話しちまって」

マルグリットさんが戻り、ソフィーたちはホッと胸を撫で下ろしてカフェへと入る。

 

 

「アトリエで錬金釜仕上げ7時だったから、完全遅刻だったんだけど、マルグリットさんのおかげで助かったよぉ……」

ソフィーは自白しながらカフェへ入る。

「必殺の調合とやらは、完成したのかい?」

オスカーが尋ねる。

「妖精の道標、バッチリ装備でございます。ふふふ……これで帰り道はアトリエまで瞬間移動だよ!」

ソフィーは皆に妖精の道標を見せる。

木の矢印に、妖精カップルが座る、そんな見た目の魔法の道具。

「フリッツさんの作った人形みたいに、クオリティーの低い、雑だけど可愛い人形なのね」

 

レオンさんとモニカで、その妖精カップルを見つめる。

「フリッツさんの影響を受けてますので。可愛いでしょ?」

そんな話をしながら、カフェでの朝食。

「さて、今日はどこに行くのですか?ソフィー達は……」

ホルストさんが尋ねる。

 

「実は今回はノープランなんだよね……何か需要に合わせて目的地を決めるのはどうだい?」

ジュリオさんが言う。

「それ、いいね!今回から遠くても、帰り道はあっという間だよ!強気でどこでも行けるよぉ~」

魔物が強くなる事を失念して、ソフィーが能天気に言う。

 

「需要ですか。最近ははじけるベリーと、獣の骨の需要が多いですねぇ……それに原っぱ遺跡の巨大水たまりの水が……美容にいい、なんてよく分からない伝説が流行りでして……」

ホルストさんは答える。

「原っぱ遺跡?」

ソフィーは首を傾げる。

なんか、すごく近くにありそうな名前だけど……

 

「悟りの岩山の先になりますから、かなり遠いのですけれどね。報酬はこんなもんです」

報酬は18000コール程度……!

6人で割ると……

1人3000コールくらい……遠いだけに高い!

なんでか伝説の水がやたら高い。

 

「……そんなに原っぱ遺跡の水って、美容にいいのかしら?」

レオンさんが尋ねる。

「それが……謎なのですよ。ですが、ソフィーのパーティーならば、ただの水だとしても、原っぱ遺跡の水を持って来るでしょう?信用のおけるパーティーにしか紹介できない仕事なのです」

……川の水だとしても井戸水だとしても、分からない……

という事をホルストさんは話す。

「それなら任せて下さい!モニカとジュリオさんの目が黒い限り、インチキは出来ません!」

ソフィーは胸を張る。

「僕の瞳は水色だけどね。モニカも輝かしい琥珀色だし。ですが……伝説がインチキ臭い分、僕らは正直に、原っぱ遺跡の水を汲まないといけない訳ですね」

 

今回の行き先は、原っぱ遺跡に決まった。

 

 

「さて!原っぱ遺跡……どこ?」

キルヘンベルを出て、ソフィーは尋ねる。

「ホルストさんのメモに寄ると……岩こぶ山麓から西、温泉で残念な思いをした材木小屋……そこからさらに先が、悟りの岩山だね。その岩山から更に西に行くと……原っぱ遺跡だよ。山の街道、森の街道がほとんどだから、険しい道でもあるね」

 

ジュリオさんは、ちゃんとホルストさんと打ち合わせをしていて、メモを出した。

「色んな植物に出会えそうだな!」

オスカーはにんまりする。

「泉のたくさんある森だから、楽しくなりそうね」

レオンさんも目を閉じて思いを馳せる。

 

 

ともかく、キルヘンベルを10時に出発。

それから岩こぶ山麓を13時に通過、炭酸水の泉に14時に通過するも、この時……

雨が降っていた。

「しゅわしゅわしたかったです」

コルちゃんが呟き、レオンさんを見る。

「ちょこっと寒いから帰り……って、今回から帰り道が無いんだっけ?」

「材木小屋のカボチャサラダ用調味料があるから、材木小屋で遅いお昼にしようよ。へへ……」

オスカーがヤーペッツさん印の調味料を見せる。

「さすがおデブちゃん、やる気出るわね!」

錬金荷車2号とソフィーのパーティーは、歩を進める。

 

 

材木小屋に16時。

雨は止んで、温泉跡地のぼろぼろ小屋を眺めながら、硬いカボチャを蒸したサラダを食べる。

「魚ね!魚の味がすっごいするわ!」

ヤーペッツさん印の調味料、う

すぎる!

 

「これは……もう何もかもこれで食べられる、まであります!……ヤーペッツさん恐るべし……」

やたら沢山食べれた。

 

そして悟りの岩山に23時~逸れて原っぱ遺跡到着!……

夜中の2時だった。

「下調べが出来なかったからな。雨も降ったり止んだりだし……今回の遅い夕食は……銀いも、土いもと……コイツだ!」

オスカーが用意したお弁当は、銀いもの皮に包まれたでかい塊……

豚ネズミの肉だ。

あまりによく使う、普段使いのお弁当。

 

「もう……銀いもの皮が繰り返し焼かれてまくって真っ黒ですね……」

コルちゃんが火の用意をしながら、炭化した銀いも皮の塊を眺める。

「そろそろ新しいのにしないと、かな?」

オスカーが軍手をして、銀いも皮の塊を扱う。

「しっかり食べて……採取生活しないとだね」

「そうだなぁ……次の食事は現地調達だからなぁ……頑張らないとな」

またも、ヤーペッツさん印の調味料が活躍した食事をして、いざ原っぱ遺跡へと乗り込む。

お肉も別物くらいに美味しくなって、びっくりだ。

 

 

最初にお出迎えするのは、強敵ミニデーモン……

銀いも回復を凌ぐ攻撃力を持っていないので、危なげなく倒せる。

 

倒すと、ミニデーモンは地面に落ちて、どこかへと帰って行く。

飛んでるミニデーモンはやる気満々だけど、地上をうろうろしてるのは可愛いだけだったり。

「気まぐれいちごが沢山採れるのねぇ……」

レオンさんが、気まぐれいちごを荷車に乗せる。

この原っぱ、気まぐれいちごだらけだ。

「ピカピカの骨も、やたら見つかるです……」

コルちゃんは、やたらと獣の骨を見つける。

なんかやたらと状態の良い、丈夫な骨が見つかる。

 

「もう朝焼けが見えるわ……なんか緑が綺麗よねぇ……」

モニカは地平線に見とれていた。

 

そして一際でかい鳥、セイバークロウが襲って来る。

カイゼルピジョンもお供についてる。

「これは……!くうぅっ……」

このセイバークロウの一撃が強い。

レオンさんのHPバリアを一撃で8割削る、急降下貫通アタックが脅威だ。

 

「新兵器、万物の写本………」

ソフィーが万物の写本を取り出す。

ふわっ、と真上に飛び上がる万物の写本が……開く!

セイバークロウのHPバリアを吸収し、更に防御やら攻撃やら、弱体化させる。そして本が閉じると、ソフィーの頭にぽとっ、と落ちる。

「痛い……」

そして鳥のくせに、やたら低空を飛んでる為、ソフィーの杖、ジュリオさんの剣、モニカのレイピア……

攻撃が当たる当たる。

 

「ソフィー必殺!ソフィー落とし!」

ツープラトンアタック!

ソフィーが杖を振りかざし、プニを召喚!

ぼとぼと落としてダメージを与える。

そんな手数で戦う、ぽかすかの末に、倒す頃には銀いもパワーでHPが立て直されている。

攻撃で相手を怯ませる都合でそうなる、攻撃の陣形。

ジュリオさんのテンションも上がる。

 

 

朝……原っぱ遺跡の真ん中、崩れた神殿みたいな場所に、確かにでかい水たまりを見つける。

「これが……美容にいい水なのかしら?」

レオンさんが水に触れる。

「……普通に水だけどなぁ……魚とかも居ないみたいだし、水たまり……だなぁ……」

オスカーも調べて、そう呟く。

「まあ……でもこの水が伝説……と言う事らしいからね……井戸水の桶に入れてしまうと、井戸水にしか見えないけれど……」

ジュリオさんも不思議な顔をして呟く。

「崩れた神殿の破片を入れておくと、それっぽくなるです……この石……じっくり見ると綺麗です……」

コルちゃんが閃く。

というか、水的な材料と紛れると分からなくなる恐れもある。

ソフィーたちは神殿の破片を拾い、水を汲む。

もはや依頼人の思い込みの力を信じるしか……

 

 

採取生活は続く。

ミニデーモンを倒しつつ、セイバークロウを倒しつつ……

はじけるベリーが、ちょこちょこ見つかる。

「こんな遠くまで来て……はじけるベリーがたまに見つかる程度……結構貴重品だったのねぇ……」

レオンさんは、ようやく見つけたはじけるベリーを眺める。

……気まぐれいちごは沢山採れたんだけど……

 

「ん?」

そんなソフィーたちが、何かに気づく。

「あそこに……なんか黒い、円環があるわね」

モニカが指差し、行ってみる事にする。

小さい黒い塊が5つ、何かを囲んでるような……

「これ……アレじゃないかしら……」

レオンさんが気づいた頃には、小さい黒い塊は、にょ~んと伸びて、上下に揺れ始める。

「ぎゅいんぎゅいんぎゅいん……」

「黒プニだぁぁぁ!!」

強敵、黒プニとの戦いになる。

しかも5匹……

 

先制黒プニプレス!

黒プニ強化!

黒プニ強化!

黒プニ強化!

黒プニ強化!

と、黒プニ側は高まっている!

 

万物の写本、ジュリオさんのHPバリア強化、モニカの攻撃強化、レオンさんのレベル強化ダンス、とこちらも高まりつつ、銀いもパワーで黒プニプレスのダメージを回復する。

そして怯ませにかかる攻撃の陣形。

 

ツープラトンアタック!

モニカのチョッピングレフト!

ジュリオさんの剣圧アタックと、黒プニ1匹を集中攻撃して、1匹倒す。

 

そこからが……

恐怖の黒プニプレス!

黒プニプレス!

黒プニプレス!

黒プニ強化!

……3連打が襲いかかり、ソフィーが倒れた。

「きゅううぅ……」

「アイツを集中攻撃だ!」

ジュリオさんの指示で、そこからも攻撃の陣形を続行。

皆揃ってHPバリア9割削られているのだけど、突撃は続く。

「こういう時、引いたら負けるわ!上手く引けばいいかもだけど、ソフィーが倒れたんじゃそうも行かないし、ね!」

レオンさんもモニカもノリノリで突撃を続ける。

銀いもパワーでHPを立て直しながら、黒プニを怯ませ、倒して行く。

 

結局、ソフィーが倒れてからは、黒プニ側が引いた為に、銀いもパワーの回復で立て直しつつ、全部倒した。

 

 

「これは……アツい戦いだったね!」

ジュリオさんが額の汗を拭う。

「オイラも荷車お守り役じゃなかったらなぁ……いいとこ持ってかれたよ」

オスカーが黒プニを拾う。

朝ごはん、コイツだ……

「私も……いや、ソフィーさんより打たれ弱いので何とも……」

コルちゃんは倒れたソフィーに、山師の薬を使う。

コルちゃんのHPバリアは、誰よりも薄い。

ソフィーよりも薄いのだ。

 

「はあぁ……でも閃いたよぉ……」

ソフィーはメモを走らせる。

転んでもただでは起きない。

勝者のお守り、新緑の羽飾り、と閃いた。

 

「美味しいでふ……」

茹でた黒プニを食べながら、コルちゃんは上機嫌だ。

「強かった分、甘さ控え目な気がするな。青葉の丘の黒プニとは、ちょっと違う味だよな」

オスカーも食べる。

黒プニ汚れの激しいソフィー達も、なんかさわやかな甘さの黒プニ君を食べる。

「……上品な甘さをしてる気がする」

ソフィーが呟く。

……これほど遠くに来ると、戦闘も危険度が上がる。

今回の黒プニ君みたいに、3連打とかされると、全滅の恐れも出てくる。

……今回は危なかった訳だし……

 

「強い魔物は強いのねぇ……しっかし、あたしには甘々で……」

レオンさんは黒プニ君の甘さが苦手のようだ。

でも塩をかけると、更に甘くなるから不思議だ。

 

……なんか遠くに死神君がうろついてるのが見える。

「じゃあ……水も汲んだし、帰ろうか!」

ソフィーはジュリオさんを見る。

「そうだね。少し背伸びし過ぎたかも知れないし、帰ってまた、準備しないといけないかな」

ジュリオさんの許可が出たし、ソフィーは妖精の道標を取り出す。

「さて!初めて使うからどうなる事やら……ほいっ!」

妖精の道標を高く掲げる。

掲げた矢印はくるくる回り、東に向いて止まった。

 

皆で東を見る。

……原っぱに、なんとなく道っぽい跡が見える。

……獣道?

「……これを行くと帰れるのかい?」

オスカーがソフィーに尋ねる。

「きっと、そうなんじゃないかな?」

ソフィーが答えて、皆で東へ歩く……

 

……山を上る道が出てきた。

……ソフィーのアトリエへの道……!?

「嘘……!?これって?」

モニカが口許に手をやり、驚く。

「ソフィーのアトリエの道じゃないか?」

オスカーは振り返る。

振り返ると、キルヘンベルの市街地へと向かう道が見えた。

 

「成功だね!やったー!」

ソフィーは喜んで駆け出す。

ソフィーのアトリエが見えて来た。

……そんな朝の3時。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ヌルヌル魚]
うなぎ的な魚。煮ても焼いても美味しい。
[かまど]
即席で作る、石を重ねたやつ。
[巨大長いも大親分]
実は土いも。
[カワナマズ]
あまり釣れない。レアな魚。

[ヤーペッツさん]
食べる事に命を懸けるオジサン。オスカーもびっくりの料理上手。商人のハズなのに、貧乏らしい。

[エロエロ]
ハダカで絡み合う事。……ってことはあのプニプニ君は……もしや……って場面はそこそこ見かける。

[ハダカ族]
服を着ていない状態の人が、複数居る状態。植物達も動物達も魔物も、ハダカ族だったりする。

[ちょこっと調合]
図鑑調合とは違う感じの調合。大抵5分で出来上がり!

[人形劇]
誰よりもエリーゼお姉ちゃんがハマっていたりする。

[ホルストさん人形]
愛嬌たっぷり?お澄まし顔らしいホルストさんの人形。クオリティーの低さが絶妙。

[金色の泡の液体]
ビール的なお酒。エリーゼお姉ちゃんは飲んでもいいみたい。

[謎のポーズ]
竜のウロコ族の踊り。ふんはっ!ふんはっ!ふんはっ!ふんはっ!

[原っぱ遺跡の水]
美容にいいらしい?

[炭酸水の泉]
なんか、余計に冷たい泉でもある。

[ヤーペッツさん印の調味料]
東方に伝わる製法で作られたという調味料。

[普段使いのお弁当]
何かの食事にプラスされると嬉しい、豚ネズミのお肉。銀いもパワーで長持ちするよ!

[銀いもの皮]
分厚い皮の銀いもは珍しいみたいで、選ばれし銀いもの皮。
[炭化した銀いも皮の塊]
歴戦のアイツ。オスカー曰く、繰り返し使うといいことあるみたい。

[ソフィー落とし]
高く飛び、召喚したプニプニをぼとぼと落とす。真下に落ちる為、目標の真上をソフィーが飛ばないといけない。

[さわやかな甘さの黒プニ君]
甘さの強いスイカ的な味わい。



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錬金術のアトリエ 25

錬金術のアトリエ 25

 

新鮮な黒プニ汚れの酷い4人、オスカーとコルちゃんでアトリエに帰って来た。

錬金荷車2号も、無事に帰れた。

妖精の道標……

なんという便利道具なんだ……

ただ、使用回数は2回。

今使ったから、あと1回だ。

 

「ソフィー……あなた……凄い人なのね!?」

レオンさんが目を輝かせる。

「いやぁ……あたしが凄いんじゃなくて……ぷにちゃんとプラフタが……あとおばあちゃんの作ったこの、アトリエがですね……」

黒プニ汚れの酷いソフィーは頬を掻く。

 

「そうだったわね。でも、あたしは色々と秘密があるから……ちょっと、ここのぷにちゃんにお世話になれないのよね……」

レオンさんは寂しそうな顔をする。

……ぷにちゃんを使うと、思った事やら過去やらだだもれになるから……

レオンさんは使えない……

一緒の旅の道で、そんな話をした。

そしてレオンさんは、黒プニ君が口に合わない都合でお腹減ったし、1人帰る事にする。

 

するとオスカーも、黒プニ汚れの酷いレオンさんが1人で帰るのもナンだから……

と、錬金荷車2号に乗せて帰る事になった。

「依頼品も渡しておくな」

オスカーは、そう言って帰って行った。

……もうそろそろ……朝になる時間。

ソフィーとモニカ、コルちゃんが、まずはアトリエに帰る、いつものパターンになる。

 

 

「プラフタ~♪妖精の道標、バッチリ成功したよ!帰り道あっという間だった!」

ソフィーの取り分の採取品と、3人は帰る。

「やはりソフィー、あなたの錬金術は確かなものの様ですね……しかし、凄い汚れですね……」

黒プニアタックの雨の跡が凄い、ソフィーとモニカを見て、プラフタは言う。

「HPバリアは銀いもパワーで立て直すんだけど……汚れの方はねぇ……」

ソフィーは苦笑いする。

そして3人は採取品と共にコンテナへと入る。

 

 

「これはこれはまた……じゅるり」

番人ぷにちゃん達が、採取品と、ソフィー達の服、靴なんかに群がる。

「なんか凄く嬉しそうね?」

下着を棚に乗せながらモニカが話す。

今回も番人ぷにちゃん達がわっしょいしてる。

「やっぱり吸収する物が来るといいよねぇ……その土地の色々な事が流れ込んで来るから……退屈しないんだよね……」

番人ぷにちゃん達が、わっしょいしながら答える。

「喜んで貰えると、嬉しいよ」

ハダカ族のソフィーが、番人ぷにちゃん隊長をつんつんしながら言う。

 

……そして3人はぷにちゃんの部屋へと入る。

 

 

「さて、時間のストックはあと12時間あるよ。ゆっくりしていってね」

ぷにちゃんは口を開ける。

「なんだか……いつもご機嫌なんだけど、いつもよりご機嫌?」

モニカが尋ねる。

「それはそうよ。もうコルちゃんの方は、赤ちゃんを取り出せるからね。私がどんな進化を見せるのかワクワクしてるよ。今回寝て、起きたら……また次の卵の番になるよ」

ぷにちゃんは答える。

「なんと……なんか早いですね……でも決めた事ですし、旅先も危険ですので……それでお願いするです」

コルちゃんは、その思いを伝える。

少し迷いがあって……

それがブレる感じがする。

「大丈夫。私が大事にするから……ともかく眠りましょうか。皆疲れてるみたいだもんね」

3人はぷにちゃんの中で眠る。

 

 

「ふあぁ……むむ?」

コルちゃんが始めに起きる。

「おはよう♪」

ぷにちゃんが反応する。

「おはようです……もう、赤ちゃんは?」

コルちゃんは、そう聞いてみる。

……さすがぷにちゃんの中。

身体の調子はすこぶるいい。気分もいい。

「貰ったよ。また出会うといいね」

ぷにちゃんは答える。

「それは……なんとなく複雑です……男の子だったら死んじゃいますし……」

コルちゃんはそう思う。

 

「あら。出会わなかったら、生理というカタチで死んでいくじゃない。生き物ってね、死ぬ事の連続だよ。死んでアタリマエ。その中に、コルちゃんやソフィー、私もそうだけど……例外が居るってだけよ?」

ぷにちゃんはそう伝える。

「……確かに……長生きできるのは例外、と言われればそうですね……」

蟻も猫も人も……植物、産まれなかった卵、出会えなかった花粉とかまで……

「同じ命、在り方が違うだけ」

……というぷにちゃんの感覚が伝わる。

花粉の一粒、葉っぱの1枚……

とんでもなく細かい所まで「命」という感覚のようだった。

 

「コルちゃんの次の卵が長生きできるのは……女の子だった時だけ、私の中で……かもね。だから、胸を張ってロジー君とエロエロしちゃいなさいな」

ぷにちゃんはコルちゃんを追い出す。

ふわっ、と浮いて地面に着地するような感じで、コルちゃんは部屋を出る。

……しかし、子供が出来た自覚もなければ、取り出された感じもない……

 

コルちゃんが服を着る時に、モニカが出て来て、最後にソフィーが出てきた。

「スッキリシャッキリです!」

コルちゃんは、スッキリシャッキリのポーズを取る。

「あはは、あたしも、スッキリシャッキリ!」

ソフィーも同じポーズを取る。

「な、なにそれ!?」

モニカはそんな2人を見て、苦笑いする。

 

 

ともかく、キルヘンベルはこれから朝。

開花の日。コルちゃんとモニカはアトリエを出る。

ソフィーは錬金釜へと向かう。

「さて、便利アイテム妖精の道標、だけどあと1回で終わっちゃうからね。使用回数+の妖精の道標を作るよ!」

ソフィーは錬金釜へと向かう。

「ほほう。なかなか頼もしいですね。それに更に錬金術にも馴染んで来ています……そういう空気は、何か言い知れぬ心地好さがありますね」

プラフタも、ぱたぱたと近寄って来る。

錬金生活を始めるも、使用回数+の特性を持たせたゼッテルを仕込む事により、6時間のヒマヒマタイムとなる。

 

 

「遊びに来たわよ~」

そんな午前中、エリーゼお姉ちゃんが遊びに来た。

「いらっしゃい、エリーゼ」

「いらっしゃい、エリーゼお姉ちゃん」

ソフィーとプラフタで顔を出す。

「あら。今日はソフィーも居るのね?なんか旅しているかと思っていたわ」

また新しい本を持って来たエリーゼお姉ちゃんを迎えて、お茶の準備をする。

プラフタも軍手をふわふわさせて、窓際の机に乗せる。

 

……ゼッテルが出来上がる12時まで、エリーゼお姉ちゃんと、お茶タイムをして過ごす。

……と、思いきや……

なんかエリーゼお姉ちゃんは疲れていて、アトリエのベッドで寝てしまった。

 

「……プラフタ、エリーゼお姉ちゃんって……実は寝に来てる?」

ソフィーはプラフタに聞いてみる。

「それはありますね。何でもエリーゼの寝室は書斎と化していて、何となく休まらないとか。1時間、2時間程度休む事が多いですね」

プラフタは答える。

「……なるほど……でも、新しい本も読めるしプラフタも退屈じゃないし……寝に来てる、でも歓迎なんだけど……なんか疲れてるような……」

ソフィーは、エリーゼお姉ちゃんの顔を思い浮かべる。

……とはいえ、こんな山の中のアトリエに来た事で、疲れたのかも知れないけれど。

「夜に眠れていないのかも知れませんね」

 

お昼ごはんの準備をしながら12時を待つけど、なんとなく暇をもて余して……寝ているエリーゼお姉ちゃんに、ソフィーは忍び寄る。

「!!」

そしてかさかさと錬金釜へと戻る。

「どうしましたか?」

「ヤバい!寝てるエリーゼお姉ちゃん……めちゃくちゃ美人!」

ソフィーはプラフタに囁く。

「眠っていても、エリーゼはエリーゼでしょうに……」

そう言いながら、プラフタもエリーゼお姉ちゃんの眠るベッドの方へと行く。

……今まで寝顔覗いたりしなかったのかな……

とソフィーは不思議に思う。

 

「……なるほど確かに……メガネを取っているからでしょうか……」

プラフタは戻り、そう感想を述べる。

あの黒縁メガネが無いと、かなりの美人な上に、長い黒髪から覗く眠る顔が……

品がある。

 

「よし、ゼッテル仕上げだね!」

ソフィーがゼッテルを取り出す頃に、エリーゼお姉ちゃんが起きて来た。

「はぁ……ソフィーのこの家は広くて明るくて……いいわねぇ」

黒縁メガネをかけて、いつもの感じのエリーゼお姉ちゃんが、ため息をつきながら出てきた。

「おはよう♪エリーゼお姉ちゃん……昼食も出来てるよ。ちょっと錬金釜に束ねた金糸を仕込んだら、一緒に食べようよ」

ソフィーは微笑んで迎える。

「なんか……そこまでしてもらうのも悪いわ……」

エリーゼお姉ちゃんは、少し戸惑うような顔をした。

「そんな事ないよ!色んな本が読めて……ね!」

ソフィーはプラフタを見る。

「そうです。エリーゼが来てくれるようになって、感謝してもし足りないくらいですから……昼食は私が作った訳ではありませんが……」

プラフタも、パタパタと飛びながら言う。

「……このゼッテル……ソフィーが作ったの?」

エリーゼお姉ちゃんは驚きながら、今出来たばかりのゼッテルを手にする。

 

4枚出来て……

そのうちの1枚が、釜の中で燃料として、束ねた金糸の素材となる。

「へへ~……まあ、ね」

ソフィーは頬を掻く。

「出来がいい」「増殖」

と特性を付けた最高級品質のゼッテル。

錬金術もさくさくと品質を上げられるようになった。

 

「錬金術って凄いのね……こんなゼッテル見た事ないわ……」

エリーゼお姉ちゃんがゼッテルに見とれてる間に、束ねた金糸を仕込み終える。

「じゃ、食べようよ?」

2人でお昼をアトリエで食べる。

 

 

「最近、プラフタの記憶が戻らないみたいなんだよね……」

お昼ごはんを終えて、ソフィーは呟く。

……なんだかプラフタが何かを思い出す、という話が無くなったような感じがして、プラフタとも話していた事。

「そうなの?つい最近に、プラフタが光り輝いて眩しいって言ってたように思うけど……」

エリーゼお姉ちゃんはプラフタを見る。

「つい最近……とはいえ、何となく記憶が甦りそうな感覚というか……細かく思い出したりしていたのですが……シルヴァリアのレシピ構築辺りから、さっぱりなのです」

プラフタもそう話す。

……思い出す事が出来ない感覚もあるらしい……

「それは難題ねぇ……」

エリーゼお姉ちゃんはそう言って窓を眺める。

 

 

エリーゼお姉ちゃんが本を読み出して、ソフィーとプラフタは勝者のお守りのレシピ構築をする。

束ねた金糸が仕上がり、勝者のお守りを仕込む。

こちらも3時間。

 

そんなお昼過ぎ、コルちゃんがやって来た。

「いらっしゃい♪」

ソフィーとプラフタ、エリーゼお姉ちゃんがお出迎えだ。

「エリーゼさんが居ましたか……来週くらいにはエリーゼさんの待っている商人のおじさん、来るかも知れないって話が出てました」

コルちゃんはそう話して、コンテナに入って行く。

「待ってる商人のおじさん?」

ソフィーは、エリーゼお姉ちゃんに尋ねる。

……何か新しい物とか来るのだろうか?

「本の仕入れね。あと絵を描く為の……蝋絵の具を仕入れてくれるそうで、待ってるのよ」

エリーゼお姉ちゃんは、そう話す。

フリッツさんがよく知る商人のおじさんで、蝋絵の具も、フリッツさんの注文のようだ。

そしてコルネリア露店で量産される予定……

と話した。

 

色々とコルちゃんが活躍しそうな……

「エリーゼお姉ちゃん、絵を描くの?」

ソフィーは尋ねる。

「傷んだ本の補修とか出来るといいわよね。黒の蝋絵の具が使われてる本も多かったりするわ」

エリーゼお姉ちゃんは、そう言って微笑んだ。

 

 

……夕方が近付いた頃に、オスカーがやって来た。

しかも緑のシャツ黒のオーバーオールを着て……

「ソフィー、カレーの材料持って来たぞ?お?エリーゼさんも居たのか。じゃあエリーゼさんもカレー、食べて行きなよ」

食通商人、ヤーペッツさんが広めてる煮物、最近オスカーもソフィーもハマッてるカレー……

「豪華夕ごはんだね!」

ソフィーは喜んで窓を開け、調理の準備をする。

「もうこんな時間だったのね……本屋の方はどうだったか知ってるかしら?」

 

エリーゼお姉ちゃんはオスカーに尋ねる。

オスカーは、今日も本屋は静かだった話をする。

それと、新しい服の話。エリーゼお姉ちゃんも、なんか新しい服とか注文しようかとか考えているけど、派手になりそうで躊躇っているそうで。

「まあともかく、エリーゼさんもカレー食べて行きなよ。旨いんだよコレが」

 

そんなこんなで、夕食もエリーゼお姉ちゃんと一緒に食べる。

ヤーペッツさんが、カレーのスパイス研究に余念がないらしく、前回とはまた違う新作だとか。

「へぇ~……凄い香りなのねカレーって……それに本で読んだ限りでは辛いみたいなのに、これは甘いのね」

エリーゼお姉ちゃんも気に入ったみたいだった。

パンに凄く合うから、ついつい食べすぎるメニュー。

 

「キルヘンベルだと、辛い物って無いからさ、ヤーペッツさんも、辛くならないスパイス研究らしいんだよ。土地土地で味の好みってあるらしいからさ」

しかも煮物にスパイスを入れたらカレーになるそうで、具はなんでもいいらしい。

「本当は辛いの?あたし、辛いのはちょっと苦手かな~……」

ソフィーも夢中で食べる。

 

 

「じゃあ、プラフタも預って行くわね」

夕食も終わり、エリーゼお姉ちゃんはプラフタを抱えて本屋へと帰る。

ソフィーは次の調合、妖精の道標を仕込む。

これが使用回数+の妖精の道標となる。

浸け置き12時間だ。

「なんか、妖精の人形とか作ってるのかと思ったけど、そうじゃないんだな」

オスカーは仕込み終えた錬金釜を見て、言う。

 

「うん。あとは釜を沸かした時にね、あたしのイメージ通りに妖精になる感じなんだよね。フリッツさんの人形のイメージがどうしてもあるから、それっぽくなるけど」

ソフィーは錬金コートを脱ぐ。

2人の夜はこれからだ。

 

 

………

「カレーは美味しいし、ソフィーのアトリエはなんか……何でも出来る所、みたいになってきたわね」

ソフィーのアトリエからの帰り道、エリーゼは抱えている本……プラフタに話し掛ける。

「錬金術とはそういう物ですが……ソフィーは特に才能に恵まれていたようです」

プラフタはエリーゼに答える。

「羨ましいけれど……私は錬金術の力があった所で、錬金術の勉強をする気にはなれそうもないわね」

ソフィーのアトリエのある山を降りて、街はずれ……

そこから教会、噴水広場……

旧市街へとエリーゼは帰る。

2時間程かかる道のり……

 

本屋に帰り、プラフタは閉まっている本屋の中、本を物色する。

操っている軍手では取り出し辛いのだけど、本を少し吸い寄せる事が出来るので、問題ない。

エリーゼは本屋の裏、柵囲いの井戸で水浴びをして、ふわふわクロースで身体を洗う。

……もうそれが日課だ。

最近は旧市街も人が増えてきたらしいから、この柵も壁にしないと……

そう思うけれど、柵のままだ。

 

「うぅ……すご~……」

すぐ近くでフリッツの声といびき……

エリーゼは辺りを見る。

……エリーゼの場所から井戸を挟んで裏側に、フリッツが寝ていた。

「!!………」

寝てる訳だし……とエリーゼは身体を拭く。ゆっくりするつもりが、ゆっくり出来なくなった。

……このオジサン、何をしているのか。

 

 

髪を拭いて身体を拭いて……

服を着たエリーゼはフリッツを起こす。

「フリッツさん、フリッツさん……」

揺すっても起きない。

……どうやら、かなり飲んだみたいな……

つまりは酔っぱらいのオジサンだ。

 

……ざばあぁぁぁ……

……ざばあぁぁぁ……

……ざばあぁぁぁ……

「うおっ!……雨か……?」

3回水を掛けると、フリッツは起き上がり、眩しい星空を見上げる。

「……どれだけ飲んだんですか?」

エリーゼは、そう言って呆れた顔をする。

フリッツはエリーゼを見る。

「……はははっ……懐かしい料理に懐かしい酒があってな……ついついあの頃に戻ってしまった……ここは……そうか井戸で力尽きたのか……」

ずぶ濡れのフリッツは立ち上がり、そう説明する。

エリーゼからすると、人形、人形劇の台本……

それに素晴らしい絵も描ける、尊敬できるオジサンだけに、今回の井戸で酔いつぶれている姿は、見たくなかった。

 

……しかも、井戸まで来て力尽きた……

のではなく、この場所で独り、酒盛りをしていたようなのだ。

酒の残る瓶に、食事の器があった……

「ちょくちょくここで飲んでいるんですか?」

フリッツにジト目を向けて、エリーゼは尋ねる。

「ふぅ……今回が初めてだ。この酒と出会う事は、そうそうないからな……戦友の好きな酒でな……幾度も倒れるまで飲んだものだが……それももう昔の事だ」

フリッツは少し寂しい笑顔を見せると、食事の器と酒の残る瓶を拾い、帰って行った。

 

……フリッツさんの使う井戸も……そういえばここだったわね……

エリーゼは身体を洗う用に、小屋の増設を心に決めて、本屋に帰った。

 

「何かあったのですか?」

閉まっている本屋のカウンター。

プラフタが本を読んでいて、エリーゼが来ると尋ねる。

「フリッツさんがね、酔っぱらって寝ていたのよ。水浴びしている時に見つけたから、驚いたわ」

エリーゼはそう話す。

……そう話す相手が居る、という事に自然と笑みが浮かぶ。

「フリッツはエリーゼがここで水浴びをするのを知っていて……それで?」

ページを捲る軍手を止めて、プラフタはそう話す。フリッツの家は、本屋からほど近い。

「……そんな感じではなかったわ。完全に意識が無いみたいだったから。でも水浴びをする場所くらい、増設しないといけないのかしらね?」

エリーゼは伏し目がちに言うと、書斎と化した寝室へと入る。

プラフタもそれについていく。

 

「今日も絵を描くのですか?」

机に向かうなり、エリーゼはペンで絵を描く。

「子供みたいでしょ?でもね、なんか描きたいのよね……なんでかしらね」

蝋絵の具が待ち遠しい……そんなエリーゼの夜は更けて行く……

 

 

………

「えへへ、おはよ♪」

ソフィーのアトリエでは、朝の3時……

まだ暗いうちから2人とも起き出した。

夜に寝るのが早かったので、そうなった。

 

 

「今日は出掛けるんだろ?オイラはまた弁当でも準備するかな……」

ハダカ族2人で毛布とか纏めてから、オスカーの身体を洗う。

ソフィーの分はぷにちゃんが居るので、暖炉で洗うのはオスカーだけだ。

 

「あたし、妖精の道標の仕上げが6時だから……そこからカフェに行くよ♪」

服を着るオスカーに、ハダカ族のままのソフィーが言う。

「アレ、本当に便利だよな……帰り道がないなら……って無茶しそうだけどなぁ」

オスカーは緑のシャツに、黒いオーバーオールを着る。

「えへへ、それやっぱり格好いいよね。よそ行きって感じするもん」

ソフィーは微笑む。

「まあ、大事に着たいから、旅は母ちゃんの奴にするけどな。それじゃ、カフェでな」

 

オスカーはアトリエを出る。

コンテナが開かない都合で、さっさと出ないとソフィーの身体は洗えない。

ソフィーは不思議毛布なんかの洗濯物も持って、コンテナに入る。

 

 

ポコポッポー!ポコポッポー!

ぷにちゃんに綺麗にしてもらって、毛布とか整えてアトリエ掃除……

6時が待ち遠しい感じだったけど、ようやく6時になり、ソフィーは妖精の道標の仕上げに入る。

仕上げはものの5分。

 

……使用回数5回、妖精の道標が完成した。

そしてソフィーはアトリエを出る。

そんな果実の日。休日だけど旅立ちの朝。

 

 

朝のカフェに神父さんが居て、ハロルさんも居た。

なんか賑やかな朝のカフェ。

「遂に!遂にこの人、来る気になったのよ!」

ソフィーが来るなり、レオンさんがそう言って笑う。

「本当ですか!?やったぁ!」

更にパーティーメンバーが増える事になる。

 

「そんなに喜ばれるとはな……まあ、錬金荷車で移動はラクだし、帰り道はテレポートするとか聞いてな。それに銃の準備も整ったからな……ひとつ頼む事にした訳だ……」

ハロルさんはそう言って、ホットミルクを飲む。

レオンさんのマナの柱の力を受けているから、即戦力……

なのかも知れない。

 

「ところで今回はどこへ行くんだい?」

ジュリオさんが尋ねる。

ソフィーはカリカリトーストを口にしたところだった。

「ホルストさんの噂とか聞かないと……依頼とか……」

ソフィーには特にプランが無かった。

 

 

そして食べ終えて……

依頼の物色する。

蛇の草需要に、砕け散った星が降ってきた話が出てきた。

「太陽と月の原野だね……」

ソフィーは呟く。

お墓が並ぶ場所で、ソフィーとしてはあまり行きたくない場所だ。

「蛇の草かぁ……アレ普通に旨いよな」

オスカーは呟く。

「蛇の草か……酒に合うな……」

ハロルさんも呟く。

……ソフィー的には、あまり蛇の草は好きじゃないけれど……

カレーの中に入ってるやつは美味しい。

 

「砕けた星が降ってきた場所って事は……星の欠片とか拾えるのかしらね?」

モニカとコルちゃんでそう話す。

「んじゃっ!太陽と月の原野に行こう!」

ソフィーは星の欠片には興味があって、そう声を上げる。

お墓ばかりの場所に、行きたくはないけれど。

 

キルヘンベルを8時に出る。

そして恵みの森~太陽と月の原野へと向かう道。

「ハロルさんは荷車でラクが出来るから来たのに……乗らないのです?」

コルちゃんが荷車の2階から顔を出す。

「本当にイキナリ乗り込んだら……格好悪いだろう?お前みたいなマスコットが羨ましいが……」

そう言いかけて、ハロルさんはオスカーを眺める。

いつも通り荷車から少し離れて、植物に声を掛けて回っている。

「……あの倅はいつもあんな感じなのか?」

 

歩き始めてからかれこれ3時間……

オスカーは生き生きとした顔で植物達に挨拶回りだ。

「いつもあんな感じよ。おデブちゃんは」

レオンさんが微笑む。

ハロルさんが来て、やたら嬉しそうだ。

 

 

お昼。

恵みの森~太陽と月の原野の途中、前回もお世話になった泉でお昼ごはんにする。

「ここの雛鳥の芋、今日も沢山あるなぁ……畑みたいだよ」

オスカーとモニカ、ソフィーとジュリオさんで芋を掘る。

 

「よし!よしよし!」

ハロルさんは泉の向こう側で何か探していて、見つけたらしく帰って来た。

「何か見つけたの?」

ソフィーが聞くと、ハロルさんは赤いトカゲを数匹刺した、ナイフを見せる。

「ヤブトカゲの赤いやつが居たぞ……旅もしてみりゃウマい目を見るんだな」

いつも不機嫌そうな顔をしてるハロルさんが、にんまりしてる。

「薬になったりするの?」

ソフィーは尋ねる。

……なんかレオンさんが目を輝かせてる。

「あなたさすがだわ!よく見つけたわね!」

そうして食事の時間。

ハロルさんは荷車に入れた道具箱から、細い串を出して来るとトカゲを刺して、焼き始める。

6匹、串にして6本……

 

「ハロルさん、そのトカゲは食べられるのかい?」

オスカーが尋ねる。

オスカーも知らない料理のようだ。

「これがウマいんだよ。ヤブトカゲの赤なんて、なかなか値が張るもんだから、そうそう口にしないがな」

オスカーの芋スープと、ハロルさんのトカゲ串……

皆で味見をする。

「にがぁ……あたし無理だこれ……」

ソフィーは囓りかけをハロルさんに返す。

「私もこれはちょっと……」

モニカも口を押さえて、串をハロルさんに返す。

「僕も……あまり趣味に合わないかな……」

ジュリオさんはそう言いながらも、食べる。

 

「これは……美味しいです!」

「なかなか……イケるんじゃないか?」

オスカーとコルちゃんは食いついた。

「コル助が食えるのは意外だな……」

ハロルさんとレオンさんは好物のようだ。

コルちゃんもパクパク食べてる。

 

そんなお昼ごはんを過ごし、ソフィー達は太陽と月の原野へと向かう。

 

 

そして夕方……

もう夜になる時間に太陽と月の原野に到着した。

「相変わらず、蛇の草がスゴいなぁ……」

なんかやたら生い茂る蛇の草の群れが、風にそよいでいる。

そんな祈りの絶えた教会……

死神と小悪魔をやり過ごし、目的地である月見の墓所へと向かう。

 

 

月見の墓所……

ここも赤プニと死神、思い思いに過ごしているだけなので、やり過ごしやすい場所。

「魔物って、こんなに穏やかだったのか?」

空を眺めてぼ~っとしている死神君を見て、ハロルさんが呟く。

「ここの魔物は、なんかそんな感じみたいだね。こちらに気づいても、あまり近付いて来ない、って感じなんだよね」

ジュリオさんが答える。

 

「おおっ!ソフィー……あれ……」

オスカーが指差す。墓地の横……

ぽつぽつとしか墓石の無い場所に、光の粉が低空飛行しているような……

そんなキラキラがあっちへこっちへ……

「幻想的だわ……何これ素敵……」

レオンさんが思わず呟く。

「輝く小虫の群れみたいだな……」

その隣でハロルさんが、そう言ってしまう。

「ハロルさん……それを言ってしまっては……」

 

ソフィー達はそんな光の粉を見守る。

死神君がふらふらしていて、その上を光の粉があっちへこっちへ……

その粉は地面に落ちて行くのもある。

死神君の頭にも、降りかかってる。

「あの辺りに星の粉って事なのかな?」

ソフィーはそんな死神君を見つめる。

「ようやく試し撃ちの時間になった……って事だな」

ハロルさんは胸のホルダーから銃を抜いている。

 

 

青い死神2体……

出会った事のあるやつに、ミニデーモンがついてきて、戦闘となった。

まずは防御の陣形、そんな中、ハロルさんは銃を空に向ける。

ダン!ダン!ダン!

……ババババババ……

炎の雨が相手に降る。

「スゴい!ハロルさん強い!」

相手の攻撃も、スイスイとフォローして受けてくれるし。

恐ろしく戦い慣れている。

そして攻撃の陣形、ミニデーモンにコルちゃん波動拳、コルちゃん昇龍拳と決まっていく中でも、ハロルさんの銃撃が入る。

 

ババババババ……

炎の雨が定期的に降りそそぐ。

この技は1回ではないみたいだ。

死神とミニデーモンは危なげなく倒せた。

「あなた!なんでこんなに強いの!?」

ソフィー達が光の粉を採取する中、レオンさんがハロルさんに尋ねていた。

「ふふふ……やっと俺の銃が出来上がった訳だからな……張り切ってるだけさ」

ハロルさんも光の粉を集めながら、レオンさんにそう答えていた。

 

 

「星の欠片って……虫の死骸の粉みたいだな……でもまた熱を帯びてるし光ってるし……」

大量に集めると危険なやつで、コルちゃんの作り出す小ビンに入れる。小ビンだらけになった。

 

「インテリアに重宝しそうです……」

コルちゃんが呟く。

「さて……これで用が済んだかな……ところで僕は祈りの絶えた教会の、地下に興味があるんだけど……」

ジュリオさんが言い出す。

「……地下?そんなのあるんですか?ジュリオさん」

ソフィーは尋ねる。

……あの教会の地下……

鳥肌レベルで怖い。

 

「そういえば、教会の脇に地下に続いていそうな扉があったな」

ハロルさんも言う。

……これは……

地下がある率が上がった……

 

 

とはいえ、まずは腹ごしらえ……

夕食は蛇の草の煮物となった。

 

 

そしてソフィー達は祈りの絶えた教会へと戻り、教会の脇にある、地下への扉へと行く。

教会の入口……

跡地はなんか、死神君が守ってるみたいなんだけど、この扉はノーマークだ。

そして地下へ行く。

荷車も入れる……

大きな扉の先に、広い下り階段……

皆で荷車を運ぶ。

 

「しじまの寝室……とはここか……なんでも錬金術士のアトリエでもあった……とエリーゼの本屋で見つけたんだよ」

ジュリオさんが言い出す。

ソフィーはそれを聞くと、恐怖もぶっ飛んで目を輝かせた。

「へぇ~……!あたしやる気が湧いてきました!」

「はははっ、ソフィーは現金だなぁ……」

オスカーが笑う。

 

 

コッ……

コッ……

しじまの寝室に入り、ハロルさんがナイフを投げて黒いトカゲを貫いて歩く。

しかし、恐ろしく正確に投げるもので、荷車にトカゲが採取されてゆく……

「ふふっ……やはり旅はいいな……高価なつまみがタダで採れるなんて、素晴らしいな……」

コッ……

やたら居るトカゲに、ナイフが刺さる。

 

しじまの寝室を進むも、魔物はむしろ外のやつよりも弱く、スイスイ進む。戦闘もスムーズだ。

 

 

「これ……!錬金術に使えそうなパワーを感じるよ!」

ソフィーが出来損ないの欠片を見つけて喜ぶ。

「……なんだこのゲテモノは!?」

ハロルさんが怯む。レオンさんも怯む。

「なんでそんな物にパワー感じちゃったのよ……この子は……」

 

そんなこんなでソフィー達は奥へと進む。

しじまの寝室での採取品は、古い石板や鉱石なんかと、ハロルさんが仕留めるトカゲだった。

「さすがにこういう場所だと、オイラは出番が無いや……」

オスカーが呟く。

そうして行き止まりまで奥へと進むと……

 

 

「錬金釜!?」

祭壇に、小さくなっている錬金釜が鎮座している。

ソフィーが手に取る。

……少し古びた骨董品だけど、何となく気難しいオーラを感じる。

「冒険した甲斐があったね。ここの魔物は物足りないばかりだったけど……」

ジュリオさんは微笑んで言う。

素早さ的な都合で、コルちゃんとソフィー、ハロルさんが活躍する感じだったし……

 

「さて……」

ソフィーは妖精の道標を取り出す。

「それは、こんな場所でも使えるのかい?」

ジュリオさんは尋ねる。

「それは分かりませんが、使っちゃってもいいかな……?」

ソフィーが尋ねると、皆で頷く。

ここからは戻るばかりだし、荷車はそこそこ満ちて来ているし。

「じゃあ!使ってみます!」

ソフィーが妖精の道標を掲げると、今来た道を示した。

そしてその道を見ると、この地下室の天井が、すぐに終わっていて、森への道が見える。

 

「これ……ちゃんとアトリエに続いてるような道がちょっと遠くに見えるわ……」

レオンさんが驚く。

ソフィーも内心、驚いてるんだけど……

 

ともかく、ソフィー達は歩く。

振り返ると、錬金釜のあった祭壇が見える。

先には、昼の日差しの小路……

アトリエのある山の景色……

 

そしてアトリエに向かって歩き……

アトリエ前に到着した。

 

……種の日。

12時……

空は明るいけれど、小雨が降りだした。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[新鮮な黒プニ汚れ]
新鮮だと黒が薄い。放っておくと黒いのが濃くなる。

[ぷにちゃん]
魔力の発生源。ぷにちゃんの魔力の色の世界になるんだとか。

[採取品]
調合に使える素材とか、調合には使えないけど、食べられる物とか、綺麗な物とか。

[HPバリア]
ダメージを受けると、そのダメージを肩代わりしてくれる魔法バリア。骨を折ったりしなくなるので、ちょっと強気で冒険できる。

[銀いもパワー]
銀いもの皮が持つ、防腐能力と回復力、そして防御力。銀いもは腐らないんじゃないか……くらい長持ちする。

[番人ぷにちゃん達]
プニプニしてる。汚れを食べるのを待ち構えている。

[吸収する物]
ソフィー達の汚れや、採取品の汚れなんかの事。黒プニの人生とか土の知る情報とか、様々な物を吸収しているので、汚れた物、大歓迎。

[若い女の子の人格]
ぷにちゃんの人格は2つ。女の子の人格は明るくて好奇心旺盛で、エロエロ大好きで、食いしん坊。

[赤ちゃんを取り出す]
妊娠した赤ちゃんを、マナの柱が取り出し、マナの柱の命とする。これをするとマナの柱がより強く大きくなれる。

[スッキリシャッキリのポーズ]
コルちゃんの編み出したやる気のポーズ。

[ヒマヒマタイム]
図鑑調合の、長い時間。この時間に寝たり逆立ちしたり、杖を振り回していたりする。

[カレー]
スパイス的な材料を入れた煮物。

[ヤーペッツさん]
食通商人のオジサン。美味しい物を求めてこのキルヘンベルへと来たらしい。そして、この場所は凄く良いらしく、ハイテンションな日々を過ごしているのだとか。

[本を少し吸い寄せる事が出来る]
プラフタの能力。字を書いたりも出来るけど、なんか大事なモノを失うらしく、ちょこっとした事にしか使わない。

[本屋の裏、柵囲いの井戸]
エリーゼお姉ちゃんの付近の井戸。

[ハダカ族]
服を着ていない状態。

[蛇の草需要]
魔法の草スープよりも、蛇の草スープの方がお腹に溜まるとか。

[ヤブトカゲ]
冒険者屋台のレアアイテム。お酒に合うのだとか。


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錬金術のアトリエ 26

錬金術のアトリエ 26

 

昼の12時、雨が降るも明るいキルヘンベル。

ソフィーのアトリエに入れる品物を荷車から分けて、解散となった。

 

ソフィーとモニカ、コルちゃんはアトリエへ。

オスカーとジュリオさん、ハロルさんとレオンさんは荷車と共にストリートへと帰る。

 

 

「おかえりなさい。ソフィー」

プラフタがパタパタとお出迎え。

エリーゼお姉ちゃんは朝に来たけれど、お昼前にはストリートの方へと出掛ける用事があったそうで。

「ともかく、綺麗にしないとだね~……」

今回はしじまの寝室の、古い埃だらけの3人がコンテナへと入っていく。

 

 

「さて……あと6時間、ストックがある……」

ぷにちゃんはそう伝えて口を開く。

「そろそろエロエロして増やさないとだね……」

ソフィーが思う。

同じ事をコルちゃんもモニカも考えた。

「モニカは……ジュリオさんとエロエロするの慣れて来た?」

ソフィーはふと思う。

初々しいきゅんきゅんな2人も、慣れて来ちゃうと……

みたいながっかり感も孕ませて、モニカに向ける。

 

「くっ、先制攻撃早いわねソフィー……」

この中では思った事をぶつけたもん勝ちな所があって、モニカは怯む。

「だって、あたしとオスカーがどうのこうのってのは……相変わらずな訳だし気にならないんじゃない?コルちゃんの方は、なんかぞわぞわイライラが始まって時間増えないし」

ソフィーがコルちゃんの乳房に手を伸ばし、モニカも足に抱きつくようにする。

 

「え……なぜ私なのです?」

抱きつかれて困惑するコルちゃん。

モニカとジュリオさんの話だったような……

「コルちゃんが1番可愛いんだもんね?」

そして思いをぶつけられると、そう言えば……

と思い浮かべてしまう。

その思いを火口(ほくち)に、ソフィーもモニカもコルちゃんの身体を撫でる。

ぷにちゃんも、コルちゃんの身体に感覚を走らせるように蠢き出す。

 

「あうぅ……」

ジュリオさんの相変わらずの達人交尾風景。

それに便乗して、ソフィーとモニカがコルちゃんを責める。

「やっぱりジュリオさんの女性の扱いは、いいよねぇ……騎士様ってそういうものなのかな?」

ソフィーはコルちゃんの乳房を、乳首を撫でながらそう思う。

コルちゃんの、ふっくらとしたお腹もお気に入りで……

「んうぅっ……ぷにちゃんまでぇぇ……っ!……っ!……あぁっ!あっ!あっ!あっ!」

 

色々とぐるぐるさせられて、コルちゃんは大きく身体を震わせる。

身体を反らして、びくんびくんする。

ぷにちゃんが身体の中のキモチイイ……

弱い所をふにふにしてくる。

 

……ぷにちゃん恐るべし……

「コルちゃん、可愛いよぉ……」

ソフィーは目を細めてにやける。

「確かに、小さくてピンク色でふっくらしてて……可愛いわよねぇ」

モニカもコルちゃんのお腹に頬を寄せて、そんな事を思う。

「あうぅ……しっかりクセになっちゃいまして……でも今はダメです……」

ぷにちゃんの中で、宙に浮くような感じでコルちゃんは余韻に震える。

「……モニカは……しっかりと交尾をしているのか……?」

ぷにちゃんが尋ねて、今度はモニカがひくひくする番になる。

 

モニカとしては……

あの時こうしとけば……

ああしとけば……

なんて思いが湧くのだけれど、何故か星明かりの窓に向けて、ジュリオの一物に揺らされた時の記憶が甦る。

火口になる記憶を、ぷにちゃんが与えて来るのだ。

「モニカも可愛いよおぉ……」

 

モニカも、その後にソフィーも、ぷにちゃんにハジケさせられて行く……

 

 

その後もハダカ族の赤裸々な女子会は長く続き、止める時間のストックは増えて行った。

 

なんかコルちゃんとロジーさんのギスギスは、緩和しているみたいで。

 

 

「ストックは31時間となった……」

3人はゆっくり眠り、最後に起きたモニカに、ぷにちゃんはそう伝える。

「なんか、イヤらしい子になっちゃって……これでいいのかしら……って思うわ……」

モニカは自己嫌悪に悩む。

「モニカが……イヤらしい子になって……喜ぶ者ばかりならば……良いのではないか?」

ぷにちゃんはそう答えて、モニカは部屋を出る。

 

ぷにちゃんの部屋の中で起き出す時間は、3人ズレているものの、部屋を出るタイミングは、時間が止まる都合でほぼ一緒。

モニカが部屋を出てみれば、ハダカ族のコルちゃんとソフィーが、門番ぷにちゃん達が群がる服を眺めていた。

 

 

「モニカもおかえり。もうちょっとかかるみたいだよ?」

ハダカ族のソフィーが笑う。

部屋に入った途端に出てくるようなものだから、これは仕方がない。

 

「今日はどうしようかしらね……」

ハダカ族のモニカは呟く。

髪の毛に指を通す仕草がカッコいい。

「今日は防具研究するよ~……竜鱗の守りをどうにかして防具に乗せて……」

ソフィーもモニカの髪に指を通す。

スルッスル指が……スルッスル通るので楽しい。

 

「では、登録品がまた増えますね。期待していますが……武器はまだ作らないのです?」

コルちゃんも便乗する。

コルちゃんは自分の髪も長いのだから、モニカに群がらなくて良さそうだけど。

「シュタルメタルの登録まで終わってるのにね~……」

3人で話し込み、服が綺麗になると番人ぷにちゃんは離れて行く。

下着やら服やらコートやら……

それぞれ身に着けて、アトリエに戻る。

そしてコルちゃんはコルちゃん露店に、モニカはレストランの内装なんかをエルノアさんと、近所のおばさん達としているそうで、そこに顔を出すそうだ。

 

「さて、あたしはやっぱりモフコットかな。パーティーの防御力、更に強烈に上がるハズ!」

ソフィーは錬金釜の中に竜のウロコを呼び出す。

そしてそれを手にすると、錬金釜から取り出してみる。

「……大きいウロコですね」

プラフタはパタパタと飛びながら、竜のウロコの側を飛ぶ。

「あたしの顔くらいあるもんね。でっかい!」

 

ソフィーはモフコットの調合を始める。

変異物質、竜鱗の守りを付けて、防御+50という、もはやぶっ壊れ性能の防具を作り出すのだ。

 

 

「……6時間かあ……」

ソフィーは呟く。

浸け置きの長いモフコット作成。

窓を見るとお昼のいい天気……

緑の眩しいアトリエ前……

「夕方まで時間あるし、いい天気だから……ちょっと外の風に当たろっか」

ソフィーはプラフタを見る。

 

「そうですね。健康にも良さそうですし」

「健康?プラフタ、おばあちゃんみたい」

ソフィーは冷やかしの笑いを浮かべる。

「こら!なんてことを!」

プラフタがぱたぱたとソフィーに近寄り、ソフィーは逃げる。

「だってぇ~……」

ソフィーとプラフタでアトリエの外へと出て、追いかけっこをする。

 

そんな感じで、木漏れ日の気持ちいいアトリエ前で、ソフィーはプラフタと過ごす。

 

「モフコットの次は、記憶が戻るかもだし、深緑の羽飾りを作ろうと思うんだけど……」

ソフィーがそう呟いた時、2人の人影に気付いた。見慣れぬ人影、褐色の男女が訪れた。

「あら?いらっしゃい~」

ソフィーは手を振る。

プラフタはパタパタと飛びながら、ソフィーの肩辺りへと寄る。

 

「……旅人の方でしょうか?」

プラフタが呟く。

「やあ。外で過ごしているなんて……まあ、今日は外の風が気持ちいいもんね?」

男女の、男の子の方がそう話して微笑む。

「初めまして、キルヘンベルには旅行で来たんですか?」

ソフィーが挨拶する。

「旅行かぁ……そうだね。僕らは旅行で来た感じだね。僕はメクレット、こちらはアトミナって言うんだ」

男の子はそう自己紹介して、アトミナを示す。

……どこか人間とは違う空気がする……

うまく言えないけれど、人間とは思えない何かがある。

 

「あたしはソフィー、そしてプラフタって言います。そしてここは、あたしの錬金術のアトリエなのです!」

ソフィーはそう自己紹介する。

そしてメクレットとアトミナを眺める。

「ん?どうしたんだい?」

訝しげに近寄るソフィーに、メクレットは問いかける。

 

「……なんか、人間じゃないような……そんな匂いがして……」

ソフィーはそう話す。

「ちょっ!ソフィー!」

プラフタが慌てる。

……コイツ、言ったーーー!!……

 

「ほほう……さすがは錬金術のアトリエの主人だね~……それが分かるなんて。へへっ、事情があってこんな姿なんだよね。そして僕らは人に戻る為の方法を探して、長い旅をしているんだ」

メクレットはそう話す。

「……もう随分長い旅をしてるわ。でも錬金術のアトリエなら、何か手掛かりがありそう」

アトミナは、無表情のまま、そう話す。

「お茶、いかがです?旅の話は大好物なんです!何なら夕食もご馳走しちゃいますよ!」

ソフィーはそう言って笑う。

「……初対面でこんな歓迎されるなんて、思っても見なかったなあ……甘えちゃおうかな」

ソフィーはメクレットとアトミナを、アトリエに招き入れる。

 

「へぇ~……」

アトリエに入ったメクレットは、そう言ってアトリエの中に入ると、辺りを見回す。

その目から涙がつ~っ、と零れた。

「いいアトリエだね、ソフィー。是非、錬金術で作った品物を、何か見せて貰えるかな?」

そしてそれに気づいてないように、メクレットはソフィーにそう話した。

「いいですよ~♪」

ソフィーは、お茶の用意をしながら答える。

「メクレット……涙が……」

プラフタがそう伝える。

 

「え?ああ……これは失礼。あまりにもこのアトリエが、希望に満ちていたからね。僕らはちょっと不遇で、思わず……じ~んと来たんだよ」

メクレットは涙を拭う。

「じゃあ、長旅お疲れ様のお茶で……今錬金釜は使ってるから普通に入れたやつだけど……」

ソフィーが暖炉の所のテーブルに、お茶とクッキーを並べる。

「私たち、錬金術は出来ないけれど、錬金術の情報を探して歩いているの。色々と憧れていてね」

メクレットとアトミナは、暖炉前のテーブルに座る。

「そうなの?ならあたしと同じだね」

お茶をしながら、ソフィーとメクレット、アトミナとプラフタで色々と話す。

 

ソフィーはぷにちゃんとプラフタのお陰で、錬金術士として調合出来てる事を話し、メクレットとアトミナは、今は人形の身体に魂を宿しているけれど、それまではしがない錬金術士だった事を話した。

「僕も錬金術の研究をしたいんだけどね……この身体ではそれもままならず、旅をしてるんだよ。諦めなければ……夢は叶うからね」

 

 

ソフィーのアトリエで長話……

夕方になってモフコットが仕上がり、メクレットとアトミナの為にちょこっと調合、もふもふモフコットを作る。

そして夕食も作る。

「なんだか食事まで頂いちゃって、悪いね」

すっかりほのぼのとして、メクレットもアトミナも、テーブルの夕食を食べる。

出来上がった夕食は、甘いカレーとパン……

ソフィーの大好物だ。

 

「いいのいいの。メクレットとアトミナのお陰で、プラフタの記憶を取り戻す計画も、なんか閃きそうだし……ふふふ」

ソフィーも夕食を食べながら、近くを飛ぶプラフタを見る。

「ソフィー……?何か企んでいるのですか?」

「あたしはいっつも何か企んでいるんだよ~……でも錬金術士って、そういうものじゃないかな?竜鱗モフコットにしても、シュタルメタルにしても、依頼品にしてもね」

ソフィーは笑顔で言う。

「そうね。私たちも、錬金術の研究を企んで旅の日々を送っているんだものね」

アトミナも、そう言うとメクレットを見る。

「ここに来たのは正解だったみたいだね。ここのマナの柱に会いたい気持ちはあるけれど……僕らは他のマナの柱からの影響があるから、そうもいかないんだけどね」

「他のマナの柱……レオンさんも、それでぷにちゃんに会わないのかな?」

ソフィーは疑問に思う。

とは言え、メクレットは男の子だから、コンテナが開かなかった……

「言われてみると、不思議な話ですが……それはマナの柱に聞いてみるとよろしいのではないですか?」

プラフタが答える。

そんな、ゆっくりとした夕食の時間……

 

 

「さて、星が綺麗な夜になりそうだね。僕らは次の手掛かりを求めて……行かなくちゃ」

食事を終えて、メクレットとアトミナは立ち上がる。

「どこか思い当たる場所はあるの?」

ソフィーも見送りについてく。

「大地の傷痕辺りか……地底湖か……隣の国まで足を伸ばそうか……気ままな旅なんだけどね」

「気ままな旅……だけどここで貰った元気で、良い足取りになりそう。ありがとう、ソフィー、プラフタ」

メクレットとアトミナはそう言って、キルヘンベルの街の方へと歩いて行った。

 

 

そして図鑑を埋める事も忘れずに、深緑の羽飾りの調合6時間……

「プラフタを人間にする手掛かりを思い付いたよ!」

深緑の羽飾りを仕込み終えて、ソフィーはコンテナから「友愛のペルソナ」を持って来る。

「……嫌な予感しかしないのですが……」

どこかの部族の儀式用の笑顔の仮面……

友愛のペルソナを見てプラフタは呟く。

 

「顔はこれ、手は軍手……足はどうしよう?」

「ソフィー……そんな合体はさすがに気乗りしません。間に合わせもいいところじゃないですか」

「まあ……そうだよねぇ……等身大の人形とか作って……本体は本!みたいにするのがいいのかなぁ……」

そんな錬金術生活に、夜は更けて行く。

 

 

「朝になりましたね……」

「お腹減ったかな~……シルヴァリア作成のソウルストーンの情報も欲しいし……今日は旅休みだし……ちょっと出掛けて来るね」

ソフィーはアトリエを出る。

モフコットとシュタルメタルの登録もしないとだけど……

シュタルメタルは既に登録したものが優秀だったかもだ。

……武器が優秀になると、トリプルアタックの陣形チャンスの前に、敵が倒れてしまうかも……

そもそも武器の作成に回すお金がない……

と、思う所もあって、今もなお、後回しになっている。

 

 

晴れたキルヘンベル……石畳の眩しいいい天気だ。

噴水広場に、バーニィさんとディーゼルさん、護衛の騎士の人達に……

ジュリオさんと神父様に、パメラとモニカが居た。

 

「おはようございます♪」

ソフィーが挨拶する。

「おはよう、ソフィー」

「おお、今をときめく錬金術士じゃないか。あの頃とは見違えたな、ソフィー」

ディーゼルさんがソフィーの肩をぽん、と叩くと笑って見せる。

そうしてそれぞれ、挨拶を返す。

「なんか、大事件でもあったんですか?」

ソフィーが尋ねると、皆は顔を見合わせた。

「あー、あぁ……そうだな、そう見えてしまうなこれは。なるほどなるほど、バーニィ、ディーゼルはもう行きなさい」

神父様がそう言って笑い、バーニィさんとディーゼルさんは護衛の騎士と一緒にそれぞれ離れて行った。

 

「僕が見て来た、各地の教会の活動の話をしていたんだよ。皆も興味のあるところでもあって、思わず集まってしまってたんだね」

ジュリオさんはそう言って笑う。

神父様もパメラも教会へと帰って行った。

「なるほど~……邪魔しちゃったかも?」

「いやいや、ソフィーに限らず皆が思うだろうからね。悪戯に不安を煽ったままになるところだったね。ソフィーのお陰で助かったよ」

ジュリオさんが、そう言って苦笑いする。

 

 

そしてストリート、コルネリア露店へと行く。

平日、双葉の日のコルネリア露店、ちらほらとお客さんが居て、でも子供達が応対しているからコルちゃんは暇そうだった。

「コルちゃん、これ登録したいんだよぉ……あとシュタルメタルは新作と見比べたいんだけど」

そんなコルネリア露店の登録品とのにらめっこをする。

「シュタルメタル製の武器は、2つくらいグレードが上がりますので好評です」

コルちゃんはそんな近況を話す。

コルネリア露店でシュタルメタルを買い、更に武器の作成依頼も出来る。

そして後日、その武器が出来上がるという流れなので、結構注文もあるみたいで。

特性は冒険者に乗らないので、単に品質が重要になるみたいだ。

 

 

「そうかー。新しい奴はダメージ還元するのはいいけどその分、攻撃ブースト寂しいから……今回の更新はモフコットだけだねぇ……」

そんなやりとりをして、レオンさんに1着だけ防具の注文をして……

カフェの錬金術品の依頼を覗いて……

ソフィーはアトリエに帰る。

 

……ともかくお金が無い……しょんぼり。

 

 

そしてアトリエに帰ると、エリーゼお姉ちゃんが来てた。

「エリーゼお姉ちゃん、いらっしゃい~♪」

そう言ってソフィーはアトリエに入る。

「おかえりなさい、ソフィー。ソウルストーンの話は聞けたのですか?」

窓の机で本を開いていたプラフタが、ふわふわとソフィーの所へとやって来る。

「……えへへ、忘れてた」

ソフィーは笑顔で頭を掻く。

 

「大地の傷痕に、ソウルストーンの話が出てくるわね。大地の傷痕に行くとあるんじゃないかしら」

エリーゼお姉ちゃんが言う。

大地の傷痕の場所も、エリーゼお姉ちゃんから聞いた場所だ。

「わお!じゃあ明日の旅先は、大地の傷痕を目指してみようかなぁ……エリーゼお姉ちゃん、お昼食べた?」

ソフィーは思わぬ情報を貰って、笑顔もこぼれる。

「え?もうそんな時間なの?……今日はなんだか時間が経つのが早いわねぇ……」

エリーゼお姉ちゃんは時計を見る。

気兼ねなく本を読んだり寝れたりして、このアトリエは凄く居心地がいいみたいで。

更に気の合う友達、プラフタも居る。

 

「えへへ、エリーゼお姉ちゃんの分も作っちゃうね。あたし最近お腹空いてばっかりなんだよねぇ」

ソフィーは錬金釜に向かう。

……それからも錬金術生活。

達人の錬金釜24時間チャレンジは企画するも、素材の力が足らなすぎて、ロクな物にならない………としか結論が出ないので、中止となる。

 

 

……昼過ぎにコルちゃんが来た。

「スッキリシャッキリしに来ました」

「いらっしゃい~♪エリーゼお姉ちゃんが寝てるだけだから、ゆっくりして行って~」

ソフィーはリフュールボトルの仕上げをしながら答える。

 

……次は……

特性保存用のリフレッシュオイルでも……

そしてコルちゃんが出てくる。

時間が止まる都合で早い。

 

「エリーゼさんと言えば、本の修復なのですが、この前しじまの寝室で手に入れた古臭い素材達からは、いい修復用のクレヨンと蝋絵の具が作れそうです」

錬金釜の前で悩むソフィーに、コルちゃんがそう話す。

「ほほう!……クレヨン?蝋絵の具?絵を描くやつ?」

ソフィーはそう尋ねる。

なんか商人が新しく持って来るとか言ってたけれど……

「はい。本の修復用ですので、少し硬めのやつですけれど」

コルちゃんとプラフタ、ソフィーでちょこっと調合のレシピとイメージを作る。

 

出来損ないの欠片、古代の石板、妖精の泥だんご、マルカリナムルの巣で作れそうな……

「品質は良くもなく悪くもなく、といった所が良さそうですね……」

プラフタもノリノリだ。

そしてコルちゃんは帰って行く。

エリーゼお姉ちゃんは、よく眠っていた。

 

 

「おはよう、エリーゼお姉ちゃん!エリーゼお姉ちゃんの本の直し用にね、コルちゃんから入れ知恵されて作ってみたんだけど、どうかな?」

起き出したエリーゼお姉ちゃんに、ソフィーはちょこっと調合品……

出来損ないのクレヨン、古代のクレヨン、妖精のクレヨン、出来損ないの蝋絵の具、古代の蝋絵の具、妖精の蝋絵の具を渡す。

 

硬めの古い粘土みたいな、見た目的にはあまりよろしくないクレヨンと蝋絵の具が、しかも大量に出来てしまっていた。

「なんか作ってて楽しかったりして、ノリノリで……あと材料も中途半端に残したくないし……で、こんなにたくさん出来上がっちゃったんだけど……」

小さい木箱満載のクレヨンと蝋絵の具を渡す。

エリーゼお姉ちゃんはそれらを手に取り、見つめる。

「凄いわね。これって1つ1つ違う出来上がりなの?」

 

同じようなクレヨンと蝋絵の具だけど、プラフタのアドバイスにより、泥だんごの比率が違ったり、古い石板の部分部分で違っていたり……

敢えてそういう出来上がりとなっている。

見た目的には、あまり変わらないけれど。

 

「それは、プラフタのアドバイスでね。全部キッチリ混ぜてから……じゃなくてそれぞれ違うトコを使ってたり気まぐれで……」

ソフィーはそう話す。

「さすがエリーゼ、よく見抜きましたね」

それからも、ちょこっと調合にしては時間が掛かった品物、クレヨン達をエリーゼお姉ちゃんは吟味しつつ、更に錬金術生活は続く。

 

 

夕方頃に、オスカーがやって来た。

「ソフィー、食い物あるか~?」

「あるある~♪」

アトリエの外でオスカーの声がして、ソフィーは飛び出す。

オスカーは本屋から、こちらに来たみたいだ。

「あら?もう夕方なのかしら……」

暖炉のテーブルで、クレヨンと蝋絵の具の選別をしていたエリーゼお姉ちゃんが、顔を上げる。

 

「ん~……コンテナの中に食料品が結構あるもんね……全然使いきれそうもないもん」

そして夕食。

暖炉テーブルが、クレヨンと蝋絵の具で占拠されてるので、エリーゼお姉ちゃんも加えて外テーブルで食べる事にした。

 

 

「へぇ~……ソフィーが本の直し用のクレヨンかぁ……でもそれは使えるのかい?」

オスカーが言う。

「あたしが作っただけだと怪しいけどね。プラフタ監督が居たから、大丈夫だとは思うけど……」

ソフィーが答える。

そしてエリーゼお姉ちゃんを見る。

「そうね。本当に使えそうな物ばかりだわ。どのクレヨンをどの本に使おうか、悩んでる所なのよ」

星空の明るいアトリエ前で、夕食を囲む。

その後は出来上がり過ぎたクレヨンと蝋絵の具を運びつつ、皆で本屋へと行こうとしたら……

雨が降りだした。

「困ったわねぇ……」

エリーゼお姉ちゃんは考え込む。

「ふふふ……今やもふもふモフコットがあるから、どこでも寝れるよ!泊まっていきなよ」

ソフィーは箪笥を開ける。

ソフィー版不思議な毛布、もふもふモフコットの群れが出てきた。

「いや、それならオイラはアレだよ。夕食も食べたし明日の準備もあるからさ、帰るよ。明日は旅に出る訳だしさ」

そう言って、オスカーが帰って行く。

 

 

「なんか悪いわね……せっかくの夜だったんじゃないの?」

エリーゼお姉ちゃんはまた、暖炉のテーブルに向かってそう呟いた。

「確かに……でもそれならそれでいいんだ。調合したいものもある訳だし!」

そしてソフィーは朝まで錬金術生活を続ける。

……とは言え、待ち時間に寝てたりするのだけど。エリーゼお姉ちゃんも、クレヨンと蝋絵の具の選別を続けてたり、寝てたりして過ごした。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[エロエロ]
ハダカ族の戦い。
[時間を増やす]
マナの柱に血を捧げると時間が止まる。エロエロすると、血に準ずる物が出るみたいで、それで時間を止めているみたい。

[思った事をぶつけたもん勝ち]
ぷにちゃんの部屋では、思った事が筒抜け。先に思った事をぶつけると、その感想が現れるので、ぶつけたもん勝ち的な感じになる。

[ぷにちゃん]
古代の錬金術によって生まれた魔力の塊。
[ぷにちゃんにハジケさせられていく]
血を得る為の技術。びくんびくんする。
[ストック]
止める時間を止めずに置いておく能力。
[番人ぷにちゃん達]
調達品と装備品の汚れを、今日も待っている。

[レストランの内装]
華やかオシャレなテーブルに椅子、壁の飾り付け。華やか過ぎて眩しくもある。
[エルノアさん]
華やかオシャレが大好きな、モニカと住んでるおばさん。
[近所のおばさん達]
色々と作り出すのが大好きなおばさん達。造花とか作っていたけど、壺とか桶なんかも作っていたり。最近はレストランの強化に余念がない。

[錬金釜の中に呼び出す]
番人ぷにちゃん達の力により、コンテナから錬金釜の中に素材を移す。

[メクレットとアトミナ]
人間ではない兄妹。錬金術士だった過去があるみたいで、錬金術を求めて旅をしている。なお、メクレットとアトミナはゲームの方にも出てくる。
[人間じゃないような……]
かなり人間と見分けのつかない感じなんだけど、オーラというか匂いと言うか……人間特有の物が無い感じ。
[しがない錬金術士だった話]
メクレットも、錬金術士だったみたいで、色々と研究していたりしたみたい。アトミナは無口な感じ。

[プラフタを人間にする計画]
友愛のペルソナ族として人間になれる計画。プラフタの気が乗るハズもなく失敗。

[武器が後回し]
防具と装飾品ばかり作った結果。

[バーニィさん]
キルヘンベルの平和を守る、ヴァルム教会の先生。
[ディーゼルさん]
キルヘンベルの平和を守る、ヴァルム教会の先生。
[護衛の騎士の人達]
いつもパトロールしてる。

[防具の注文]
大体1日で完成!

[スッキリシャッキリ]
ぷにちゃんの部屋で休むと、じたばたしたくなるくらい、元気になる。

[クレヨン]
字を書いたりする道具。本に使われてる事もあるみたい。
[蝋絵の具]
クレヨンと似てるけど、もう少し硬い感じ。
[出来損ないのクレヨン]
出来損ないの破片が原料。灰色っぽい黒。
[古代のクレヨン]
古代の石板が原料。すこし茶色っぽい黒。
[妖精のクレヨン]
妖精の泥だんごが原料。少し明るい茶色。
[出来損ないの蝋絵の具]
出来損ないの破片が原料。灰色と黒が落ち着かないせめぎあいをしているような色。
[古代の蝋絵の具]
古代の石板が原料。黒なんだけど赤黒い所がちらほらある、みたいな感じ。
[妖精の蝋絵の具]
妖精の泥だんごが原料。明るい茶色と黒のせめぎあい。

[もふもふモフコット]
ソフィー版、不思議な毛布。汚れを吸い取り、水で流すと汚れを吐き出す。


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錬金術のアトリエ 27

錬金術のアトリエ 27

 

「プラフタ~、行って来るね!」

朝7時になって、ソフィーはアトリエを出る。

完全カフェ遅刻の時間だけど、ゼッテルの仕上がりの都合でこうなった。

……仕込む段階で分かってはいるのだけど、どうにも……

ついやっちゃう的な感じだ。

そしてソフィーはカフェに向かう。

 

 

「やっと来たわね」

カフェの前に到着すると、みんな既に居た。

しかもカフェの外で……

「あれ?フリッツさんも。おはようございます」

ソフィーは挨拶する。

……ひょっとして、一緒に来てくれたりするのだろうか?

……そんな事を考えながら。

「恥ずかしながら……人形劇では生計が立たなくてな……また冒険者稼業をしようと思ったのだが、1番熱い所まで行くパーティーとなると、ソフィー……君のパーティーだった、という次第でな……」

フリッツさんがそう説明する。

「頼もしいメンバーが増えるって事ですか?大歓迎ですよ!」

ソフィーは喜ぶ。

フリッツさんの手を取って小躍りを始めた。

 

「フリッツさんが来てくれると、傭兵ならではの植物や虫なんかの知識もあるから、頼もしいな」

オスカーが言う。

誰も反対してなかったみたいだし、すんなりとパーティーに1人増えた感じだ。

「ともあれ、今日はどこに行くのかな……そこがまだ分からなくてね」

ジュリオさんが尋ねる。

「そうそう!ソウルストーンが必要で、大地の傷痕に行きたかったんですよ!」

ソフィーはそう答える。

「じゃあ、大地の傷痕の依頼を探して貰いましょう。大地の傷痕ってどこにあるのかしら?」

レオンさんを筆頭にカフェに入る。

 

 

モーニングのサービスも8人前……

「ホルストさん、8人分もサービスして大丈夫なんですか?」

ソフィーが尋ねる。

「はい、依頼も8人分ですからね。全然平気ですよ?それどころか、依頼の手間賃で私はほくほくですよ。……ですが大地の傷痕での依頼、となると少し寂しい所がありまして……途中になる彩花の園の方に調達してきて欲しい物がある……と、言った所ですねぇ」

 

 

依頼を受けてモーニングのサービスも食べて……そしてソフィー達と錬金荷車2号は、キルヘンベルを出る。

 

 

「昨日は夜に雨だったから、エリーゼお姉ちゃんと一緒に錬金術生活してたんだよ~……」

ソフィー達は北へと向かう。

レオンさんと仲良く話すソフィー、ジュリオさんに相談してるコルちゃん、思い思いに歩く旅の道。

 

 

…………

「傭兵生活って、長かったんですか?」

モニカがフリッツにそう尋ねる。

「ああ、ほとんどの人生が傭兵だったからな……人形劇と妻と出会えてからは、気ままな旅人となったが、しがらみは幾つかある……そんな所かな」

フリッツはそう答える。

「しかしモニカ……君の髪は実に素晴らしい色をしているな。……などとこのようなオジサンが言うと、イヤらしく聞こえてしまうのかも知れないがな」

フリッツはそう言うとニカッと笑い、荷車を少し離れて歩くオスカーの所へと走り出した。

「イヤらしく聞こえてはなかったけど……」

モニカはそんなフリッツを見送る。

…………

 

 

……そんな道、お昼には岩こぶ山の麓、ハロルさんが好む、美味しい虫が沢山採れる。

手前の街道沿いの森の芋と合わせて、お昼ごはんにする。

「4枚花の芋か……懐かしいメニューだな……色々と思い出してしまう」

フリッツさんがしみじみと語る。

駆け出しの傭兵生活の中で、戦死してしまったけれど、やたら臆病な傭兵がよく探して来たのが、この4枚花だったそうだ。

そんな話を聞きながら、お昼を食べた。

 

 

……それより更に北へと行き、彩花の園へと辿り着く。

依頼品の花のタネ探しをしたり。

蛇を捕まえたり。

 

 

そして更に北へ。

大地の傷痕に到着したのは夕方だった。

ソウルストーンは高い所に転がっているらしいけれど、先に夕食にする事にした。

 

「……しかしこの荷車は凄いな。こんなに大きさに見合わぬ軽さをしている荷車だと、錬金術の凄さ、というものも解るという物だな」

オスカーとハロルさん、レオンさんとモニカ、コルちゃんが夕食の準備をする中、フリッツさんがしみじみと話す。

落ち着いた、優しい声。

「えへへ、でも皆で作ったんですよ。1号はホルストさんが日々貸し出してるみたいですけれど、役に立っているといいのですけど……」

 

ソフィーは荷車に付いてる羽に手を伸ばす。

届かない所に付いてる羽。

手を引っ込めて笑う。

「それと、これほど女性の多いパーティーとは思わなかったな。華やか過ぎて眩しいくらいだ。それに、それぞれ頼りになるみたいで、驚く事は多いな」

フリッツさんは、夕食の準備をする5人を眺めて微笑む。

「プラフタも、仲間に入れて旅がしたいんですけど……ああああああっ!」

ソフィーはそう言い掛けて、急に閃いた。

メクレットとアトミナ……

彼らみたいな人形を作ってプラフタの魂を移せたら!

 

「イキナリみ、耳許で……どうしたと言うのだっ?」

フリッツさんは怯む。

夕食準備の5人組も、ソフィーを見る。

「人形を作ってプラフタの魂を移せばいいんですよ!?そうすればプラフタはより人間に近くなりますし、錬金術でできる範囲だと思うんですよね!」

ソフィーはガッツポーズをする。

「それは……面白そうな計画だな。人形師として聞き流してはおれんな……それに魂の器に足る出来映えの人形を作らないといけない訳か……面白い!実に面白いぞ!」

フリッツさんも笑い出した。

 

「……夕食、もう出来るぞ~……」

オスカーが2人に虚しく声を掛ける。

 

 

ともかく、夜はソウルストーンを目指して大地の傷痕、穿たれた痕へと登る。

その途中……

カイゼルピジョン、グスタフと言う鳥の魔物との戦闘になった。

「コル助!」

鉄壁の防御に変異物質の回復……

と、思いきやそれをあっさり貫くあまりの火力に、コルちゃんが倒れる。

HPバリアを抜かれると、魔法が弾けて気を失う。

 

「これは……こちらも面白くなってきたな!」

フリッツさんがテンションを上げて笑う。

こういう時、ジュリオさんとモニカ、レオンさんのやる気もみなぎってくる。

しかもこのカイゼルピジョンにグスタフ、タフなのだ。

ソフィー達のダブルアタックも2回耐える。

 

 

……それからも、この鳥の魔物との戦闘になる。

ソフィーとコルちゃんが時折HPバリアを抜かれながら、穿たれた痕へと登る。

何とかギリギリで倒せている感じだ。

 

山師の薬とリフュールボトルをやたら使う。

ソフィーとコルちゃん以外はタフなので、そうそう抜かれない。

なので、パーティーとしては勝てる相手だった。

 

 

「うわぁ~……何この景色!」

星の眩しい夜に、穿たれた痕へと登ると、もうカイゼルピジョンもグスタフも居ない。

そして高い場所だけに絶景なのだ。

「凄い宝石ばかりだわ!ここ!」

そして魔物の居ない採取生活。

ガラスの破片、蒼剛石、ソウルストーンと……

やたら高品質なのが、じゃんじゃか採れる!

 

 

「これは……ロジーさんも大喜びしますね」

少し苦労して登った、錬金荷車がたちまち満たされて行く。

「チッ……別れてなかったのか……アイツは宝石が好きなのか?」

ハロルさんも、ひょいひょいと石を入れて行く。

「宝石……というよりは鉱石が好きなのですけれど。石マニアみたいな所がありまして」

コルちゃんは、ネコの目で微笑む。

「まあ……あまり興味はないがな」

ハロルさんは、その顔を見る事もなく石を探す。

「私はあのドーテーヤローを、凄い男にするのです。もう随分と変わって来ていますよ?」

コルちゃんは、そう言うと笑う。

もうすでに鍛冶屋としても、目つきが変わった感じもするし、そろそろ近くだけをフィールドワークにするパーティーは卒業……

かも知れない。

「……確かに、少し客入りが良くなってるみたいだがな……そのうち俺の銃も預けられるなら、頼もしいんだがな」

魔物の居ない、絶景の採取生活。

ハロルさんとコルちゃんは、石を集める。

 

 

「さて、ソフィー……プラフタの魂を人形に移すというのは本気なのかな?」

絶景の中の採取生活……

フリッツさんはソフィーに問いかける。

「もちろん、本気ですよ!方法も何も無いんですけどね……」

ソフィーはガッツポーズをする。

「人形師として、人形を作る事は出来るからな。だが魂を移す方法、精密な部品は私の領分ではないが……」

フリッツさんに言われて、ソフィーは妖精の道標を取り出す。

「いやでも……こんな感じの人形じゃ、ちょっと……いや……悪くないかも……」

ソフィー人形、ハロルさん人形と……

ソフィーの中でフリッツさんが作る人形のイメージは、クオリティーの低い、だけど可愛い人形だった。

人形劇で活躍する人形も、こんな感じだし。

 

「……ふはっ!はっ!はっ!はっ!なるほどなるほど!それは人数分配る物だったからな!そのくらいの出来映えで良かろう、としたのだ。プラフタの魂の器たる人形ならば、本格的な物を設計図から作る。案ずるな」

フリッツさんは大笑いして、そう話した。

人間と見紛う程の人形も作れるし、その為の作業台なのだそうだ。

「さっきから随分と仲がいいじゃない?」

レオンさんがやって来た。

ジュリオさんとモニカが、あまりいい雰囲気だったから、逃げて来たそうだ。

 

「プラフタを人形に、という話をしていてな。久しぶりの本気の仕事の予感に、年甲斐もなく燃えている所だったのだ。そうだ!その人形の服は……」

フリッツさんは、レオンさんに手を伸ばす。

「人形だろうと服は服よ。任せて!そこが得意なんだから!」

レオンさんはその伸ばした手を握る。

 

「……まだ設計図も起こしていないのだがな。身体のライン、背丈なども相談に乗って貰えると助かるな。オジサンの趣味で出来上がってしまうのも、偲びないだろう」

フリッツさんとレオンさんで、凄くノリノリだ。

「でも、人形を動かすのって大変よ?……まあ、そういう悩みは後にして、今は鉱石に集中しないといけないんじゃないかしら?」

「そうだったな……しっかり働かなくてはな」

採取生活は続き、回復した所で、わざわざカイゼルピジョン達に挑む。

ジュリオさんとモニカ、フリッツさんの戦士魂に火がついたみたいで……

 

 

そしてまた穿たれた痕で採取&休息。

荷車も一杯になったので、朝日を拝んでから妖精の道標で帰る事にした。

「これは……ここまでの錬金術だったとは驚きだな、ソフィー。なるほど人形に魂を移すなどと言い出す訳か」

 

 

妖精の道標で帰るアトリエ前。

フリッツさんは高笑いする。

「魂を移す……?ソフィー、そんな錬金術まであるのかい?」

ジュリオさんが食いついた。

「いやぁ~……それが出来たらいいな……ってだけで方法とかはさっぱりなんですよね……」

ソフィーは頬を掻く。

「でもそれなら役に立てるかも知れないな。魂にまつわる道具、という事になるだろうからね」

ジュリオさんはそう言って微笑む。

「ほ、本当ですか!?」

ソフィーは驚いてジュリオさんを見る。

「ちょっと知り合いに尋ねてみるよ。きっと収穫はあると思うよ」

 

……なんかトントン拍子で話が進む!

……これはもう、プラフタを人間にするしかない!

 

ともかくアトリエにソフィーの取り分の素材を入れて、モニカとコルちゃん、ソフィーを残して皆は帰って行く。

荷車2号一杯の宝石……

キルヘンベルが本当にキラキラしてしまう予感がする。

特にレストランが更に眩しくなる事は、請け合いだ。

 

 

「プラフタ、ただいま~♪」

朝10時の晴れたキルヘンベル。

3人はアトリエに帰る。

「おかえりなさい、ソフィー」

アトリエに入ると、プラフタが飛び上がる。

「いや~……魔物が凄い強かったよぉ……」

今回のカイゼルピジョンを思う。

竜鱗の守りを付けたのはソフィーだったけれど、そこを抜かれるという恐ろしい攻撃力だった。

取り敢えずコルちゃんに、竜鱗の守りを付けるのは急務だろう。

「そんな危険な場所だったのですか……」

「私とソフィーさんが打たれ弱いだけかも知れないですけれど……」

そんな話をしつつ、ぷにちゃんの部屋へと行く。

 

 

「よく来た……あと29時間あるな……」

「そういえば……何かぷにちゃんに聞きたい事があったんだけど……なんだっけ……?」

ソフィーは思い悩む。

「ふむ……マナの柱の力を受けた者が……他のマナの柱に干渉する……話ではないか……?メクレット……アトミナ……の事だな……」

ぷにちゃんがソフィーの情報を読んで、思い出してくれた。

 

「そうそれ!それ!」

「ぷにちゃんが思い出してくれるのね。ソフィーがおとぼけでも大丈夫なのね~……」

ハダカ族モニカは、ハダカ族のソフィーを眺める。

白いキラキラのぷにちゃんの中で見ると、やたらキラキラして見える。

「えへへ……考える事が多過ぎて」

ソフィーは宙に浮かぶようにして、ぷにちゃんの中で遊ぶ。

そう思えばそうなる。

今やソフィーの背丈の10倍ぐらいあるから、めっちゃ遊泳できる。

 

「マナの柱によるな……他のマナの柱は、我と同じ……ではないから……な……男でも干渉出来る……物もあるだろう……」

ぷにちゃんも、あまり詳しくないみたいだった。

他のマナの柱の干渉された人、との干渉が無かったのか、それとも封印された記憶の中にそれがあるのか……

 

ともかくソフィーとコルちゃんで、モニカに甘えて眠る事にした。

 

 

「次は双葉の日の朝に旅立ち……ゆっくりなのね」

アトリエ前で、そう話す。

「装備品作るのが間に合ってない感じするし……種の日に出発するのは避けたいもんね」

ソフィーはモニカの髪に指を通す。

サラツヤ過ぎて指が心地好い。

「種の日は人形劇の日ですし……お休みでもお店が忙しかったりもしますので、退屈はしないです」

コルちゃんもモニカの髪を撫でる。

「化粧品も、改良点の要望集まってるから、作り直したいもんね」

ソフィーがふと思い出す。

やりたい事が多すぎる……

「それは、私も一緒にやりたいですね」

プラフタもパタパタとソフィーの肩辺りを飛ぶ。

「プラフタも歓迎だよ。今からやる?どうせ1時間もあれば出来るけど」

ソフィーはコルちゃんを見る。

「メモがお店なので……明日がいいです」

ソフィーとモニカ、コルちゃんで話すアトリエ前。

そしてモニカもコルちゃんも帰って行く。

 

 

「さて、錬金術生活しますか!」

ソフィーはアトリエに戻る。

「シルヴァリアは作れるようになったのですか?」

プラフタも、パタパタと動き出す。

「ソウルストーンもバッチリだよ。品質も凄くいいのがごろごろしてたんだけど、そこまでのカイゼルピジョンが険しかったんだよね~……」

ソフィーの錬金術生活が始まる。

まずはシルヴァリア作成の時に、持たせたい特性を付けたゼッテルの作成。

6時間だ。

 

 

「エリーゼお姉ちゃん来るかなぁ……お昼ごはん用意するけど……」

ソフィーは窓から外を眺める。

6時間待つのは、なかなか長い。

「今日のエリーゼは、朝の暗いうちにアトリエを出ましたね。本の直しをするので本屋に籠ると言ってましたから、来ないと思われます」

「……1人で食事かぁ……」

 

 

ゼッテルが16時に仕上がり、そしてシルヴァリアの作成。

9時間と長い。

「明日は武器屋も行かないとだなぁ……」

……いいかげん、武器の話もしないとだ……

 

 

そしてアトリエ前で杖の素振りとかしてる夜に、オスカーがやって来た。

「お?なんか素振りとかしてるなんて、珍しいじゃないか」

ソフィーを安心させる、おとぼけボイス。

しかも9時間も浸け置きあるから、ゆっくりラブラブ出来そう……

と、ソフィーは企む。

「えへへ、新しい武器を作るに当たってね。1番の火力不足はあたしなもんで……それにこの杖、長すぎるとかロジーさんに言われてるし、でもこの長さで慣れちゃってるし……」

ソフィーは杖を振り上げて、その杖を眺める。

「なるほどなぁ……」

「オスカーは本屋さんから?」

「ああ、今日はソフィーを苛めたくてな。エリーゼさんも、今日は本屋で寝るってさ」

「空いちゃったもんね。プラフタ居るけど、気合い入っちゃうかも!」

ソフィーはオスカーとアトリエに帰る。

 

「ソフィー、もうシルヴァリアの仕上げの時間ですよ」

「はうぅっ……ありがと、プラフタ~……」

夜中の0時……

ソフィーは、へろへろと起き出して、ベッドを降りると尻もちをついた。

「……子供が居たとしたらどうなっているのか……気になる所でしたね……」

プラフタはそう言ってパタパタと錬金釜へと向かう。

「大丈夫か?ソフィー?」

オスカーも起き出す。

「へへへ……大丈夫大丈夫」

「まあ……ぷにちゃんを頼っておいでよ。その前に錬金釜に向かわないと、なのかい?」

オスカーは身体を拭いて、いそいそと服を着る。

「一応、1時間前に起こしましたので、あと1時間猶予がありますよ」

「ちょっと出てるな」

オスカーは外に出て、ソフィーはよろよろとコンテナに入る。

 

 

ぷにちゃんに暖められてマッサージされて……

すっかりスッキリシャッキリして、ソフィーが出てくる。

「お待たせ、オスカー」

アトリエから顔を出す。

「相変わらず早いな。なんか雨が降って来たよ」

 

そしてシルヴァリアの仕上げ。

銀色のインゴットが出来上がる。

「どう?オスカー」

出来たシルヴァリアの1個を渡す。

そしてお茶の時間にする。

「詳しくは分からないけど、硬くて綺麗なんだな……ソフィーの錬金術で出来上がる1品、って訳かぁ……」

暖炉のテーブルで、出来上がったシルヴァリアを眺めながら、素朴な焼き菓子を食べるひととき。

 

そのまま錬金術生活に入る。

オスカーは、たまには八百屋の手伝いでもしないといけないみたいで、明日の朝に備えて、雨なのに帰って行った。

 

 

朝6時……

カフェの依頼品で、お金稼がないと的な所もあるし、武器の相談もしなくちゃ的な所もあるし……

雨の中、ソフィーは出掛ける。

 

 

「鍛冶屋ロジックス、注文はコルネリア露店でお受けしますです」

……なんか冒険とか行ってるんだっけ……

ソフィーは張り紙を見て思う。

「コルちゃ~ん……武器の相談なんだけど~……」

貼り紙にもあるし、コルちゃんに相談する。

 

「おやソフィーさん。武器の注文でしたか。インゴット品とシュタルメタル品で、それぞれ作れますし、ソフィーさんの杖だと……これこれこれこれが必要になるです」

コルちゃんがノートを出す。

もはや予習済みだし、値段やら何やら網羅されていた。

「シルヴァリアって使えないのかな?」

ソフィーは、出来たばかりのシルヴァリアをコルちゃんに見せる。

 

「シルヴァリアですか……今の炉では扱えない素材ですね。まだ溶けやすい金属でないと……」

そんな所まで予習していたコルちゃんは、あっさりと答える。

シルヴァリアもルビリウムも、商人が扱っている場合もあるので、鍛冶屋業界では有名な金属なのだそうだ。

「そっかぁ……シュタルメタルを作らないとかぁ……」

ソフィーは考える。

炉の都合……

そんなのが変わるのは、明日明後日の話じゃないだろうし……

やはり武器は作らないと、強敵世界に行けないし……

 

「それよりも木の部分ですが、苔むした流木が必要になるです。結構前に調達しただけの素材ですから……今はコンテナにも1つしか無かったですし、その1つもなんか……しょぼしょぼでしたよ?」

さすがぷにちゃんの部屋に通ってるだけあって、その途中にあるコンテナ事情に詳しい。

「じゃあ、次の旅先は苔むした流木を求めて……どこだっけ?」

ソフィーはガッツポーズをしようとして、コルちゃんを見る。

 

「温泉の場所とはズレてしまうのですが、山師の水辺……そのあたりで採れる木材です」

「温泉かぁ……また行きたいねぇ……」

……可愛いお猿さん、一面のお湯、一面の湯気……

ソフィーは行った温泉を思い浮かべる。

「山師の水辺も、水着が活躍する場所ですけれど……もふもふモフコットの準備があれば、身体も冷えないんじゃないでしょうか?」

「行きたい所が出て来なかったら、山師の水辺を狙う事にしよっか」

「そうですね。水遊びは楽しいですし、お魚とか貝なんかも食べられますし……」

コルちゃんはそう話して、ソフィーの向こうを見る。

冒険者風の人が、鍛冶屋のドアを眺めていた。

 

「どうぞ、鍛冶屋のご注文でしたら、こちらで伺います」

コルちゃんは手甲のぶら下がる袖を上げて、ふらふらさせる。

ソフィーはカフェへと向かう。

 

 

ふと、レオンさんのお店にフリッツさんが居て、ソフィーはそっちに顔を出す。

「あら、いい所に来たわね」

「おはようございます、レオンさん。フリッツさん」

何でも……

新しい生地を作らないと、プラフタの服とか出来上がらないそうで、レシピを貰う。

「レシピがあるなら、出来ると思います。それと次は山師の水辺に行こう、なんてコルちゃんと話していたんですよ」

「山師の水辺!?そこならアダールクロス、急いで欲しいわね……新しい水着を作るのにも、その素材があったらステキなのよ……」

伸縮性の高い布、アダールクロスのレシピと、注文を貰う。

 

 

そしてカフェの依頼を見に行く。

「おはよー、ソフィー♪そして、いらっしゃ~い」

今日は果実の日。

テスさんがご機嫌だった。でもお客さんは居ない……

「ソフィー、朝食は食べましたか?」

ホルストさんがにこやかにグラスを拭いている。

「へへへ……食べてなかったり……」

「ソフィーの錬金術を見込んで、ちょっとお願いがありまして……なのでモーニングはサービスしますよ。食べて行って下さい」

「いいんですか!?」

ソフィーはカウンターに座る。

 

「実はシュタルメタル……ですか。あれで武器を1つ調達したくて……冒険者からの頼まれ事なのですけどね……」

カリカリトーストにハチミツ、卵焼きまで出てきた。

「それなら、コルちゃんの露店に登録してあるから、コルちゃん露店で売ってますよ。それに、ロジーさんの武器屋で武器は作れちゃうから……ホルストさんが行っても、テスさんが行っても買えますけど……コルちゃん露店に相談すると、詳しいですよ?」

ソフィーはそう言って朝食を食べる。

 

「なんと!今やそんな事になっているのですか……早速行ってみる事にしましょう」

少し古びた感じのスプルースの調合、友愛のペルソナに買い手があるみたいで、その依頼を受ける。

 

そして八百屋で食材の買い物をして、アトリエに帰ると、エリーゼお姉ちゃんが来ていた。

「エリーゼお姉ちゃん、いらっしゃい」

プラフタと話しながら、暖炉のテーブルで本の直しをしていた。

「仕事を持ち込んじゃってごめんなさいね。プラフタにアドバイスとか貰えたらなって」

「あはは、大丈夫ですよ。でも錬金術の師匠なので……これからアダールクロスを!調合します!」

ソフィーはレオンさんに貰ったレシピを取り出す。

「では、ちょっと錬金釜の方に行って来ます」

プラフタが錬金釜の方に来た。

「エリーゼお姉ちゃんの方は大丈夫なの?」

ソフィーはエリーゼお姉ちゃんの居る、暖炉のテーブルの方を見る。

「エリーゼは慣れた手つきで、自分でやっていますので。ですがこういう所を見るのも勉強になりますね。さて、レシピ構築……既に出来上がったレシピのようですね……」

ソフィーとプラフタで錬金釜の前に。

そしてアダールクロスを仕込む。

仕込んでしまえば後は待ち時間。

……6時間だ。

出来がいい、ジャンボサイズで2枚出来る予定だ。

 

 

そしてエリーゼお姉ちゃんの本の直しを見つめる。

掠れてしまった文字を、古代の石板クレヨンでなぞって濃くする。

「クレヨンはいい感じ?」

ソフィーは尋ねる。

「沢山あって、どれも違う調整だったからかしら……この本にピッタリなのもあって、重宝してるわ」

エリーゼは答える。

地味な作業だ……

「プラフタの言った通りだね~……」

ソフィーはそう呟いて、机の上に立って……

時おりカタカタしてるプラフタを見る。

「エリーゼの本屋も、これから直す本達も見ていますからね」

カタカタしながら、プラフタは答えた。

 

 

そんなこんなでまったり過ごす。

そして14時、アダールクロスの仕上げだ。

「よし!出来たよジャンボサイズ!」

早速レオンさんの所へ持って行く為、ソフィーはアトリエを出る。

「相変わらず、慌ただしいのね」

「まあ……それがソフィーの良いところですので……」

そんなソフィーを、エリーゼとプラフタは見送る。

 

 

「出来ました!」

ソフィーは駆け足でレオンさんの店へ。

そしてジャンボサイズキラキラの、アダールクロスを渡す。

「この伸び!やるわねあなた!双葉の日が出発の山師の水辺……!これは忙しくなるわね!」

レオンさんは、アダールクロスをみにょんみにょんしながら言う。やる気に燃える目をしていた。

「プラフタの服の素材でもあるんですよね?」

「……そうだったわね。設計図も出来てないものだから……イメージも出来ないのよね……だから今はまだ燃えられないんだけど……じゃあ、2枚貰っちゃおうかしら」

プラフタの服については、そんなに燃えていないみたいだ。

イメージが湧くと燃え上がり、イメージが湧かないと燃えない感じ。

「はい!お願いします!」

「先ずは水着!そして設計図にもよりけりだけど、プラフタの服と……レオンさんの腕の見せ所ね!」

そしてソフィーは、アトリエに帰る。

 

 

「ただいま~……」

16時……ぼちぼち夕方だ。

エリーゼお姉ちゃんはお昼過ぎくらいに帰ったみたいで。

「おかえりなさい、ソフィー」

プラフタがお出迎え。

「よし、武器に使いたいシュタルメタル……作っちゃおう!」

ソフィーは錬金釜に向かう。

これも6時間だ。そして錬金術生活がまた始まる。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[傭兵ならではの植物や虫の知識]
フリッツさんの傭兵時代には、色々と植物に詳しい人とか虫に詳しい人が居たみたいで。根っこが食べられる草とか、薬になる根っことか、虫とかキノコとか。オスカーの知らない事も結構あったりする。

[モーニングのサービス]
ホルストさんのカフェのサービス。依頼って儲かるみたい。

[美味しい虫]
蜜でお腹をパンパンにしてるアリさんとか、焼くと美味しいだんご虫とか。

[4枚花]
香りが強くて、なんかふんわりな気分になれる。

[錬金荷車1号]
ホルストさんのカフェで貸し出したりしてるけど、主に噴水広場に出張って来る露店として活躍してる。
[錬金荷車2号]
ソフィーの冒険のお供として頼りになる相棒。眠りながら移動出来るのも素敵。

[HPバリアを抜かれる]
戦闘不能になる。でもケガとかしないで済むので、魔法バリアってすごい。

[レストラン]
女性向けのお食事処。エルノアさんの飾り付け魂により、キラキラしてる。

[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエにある、マナの柱で魔力の源泉。強力な魔物も、キルヘンベル近辺に来ると青プニとか緑プニにされるとか。

[マナの柱]
魔力の源泉。そこかしこにあるみたい。
[ハダカ族]
服を着ていない状態。

[お猿]
なんかイヤらしい顔をするお猿。でもでかいから、ボス猿かも。けどソフィーよりちょっと小さいけど、めっちゃがっしりした体格で、皮膚とか硬い。

[温泉]
腐ったタマゴの臭い。
[少し古びた感じのスプルース]
木材の依頼だけど、ちょっと細かい注文があったりする。
[古代の石板クレヨン]
ちょこっと調合品。使えるやつみたい。


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錬金術のアトリエ 28

錬金術のアトリエ 28

 

夕方……

エリーゼは旧市街の本屋へと歩く。

持ちなれない、補修用のクレヨンと古い本の入った鞄を抱えて歩く、石畳の道。

……夕食を思い足を止める。

本の住む屋敷である都合で台所はなく、常に外食……

今はモニカ、エルノア達と商人ヤーペッツの開くレストランが行き付けだし、そちらの方へと足を向ける。

 

 

「エリーゼさん、いらっしゃいませ」

レストランに入ると、教会の子供が挨拶する。

まだ彼らが働く、少し早い時間だ。

「ちょっと早くてごめんなさいね」

エリーゼはそう呟き、そしていつも座る壁際の、奥のテーブルへと座る。

商人ヤーペッツが調理場から出てくると、エリーゼに水を持って来る。

 

「今日、蝋絵の具届いたよ。人形師のフリッツの家に納品したようだね。今日はしっかり食べられそうかい?酒とつまみで軽く済ませるかい?」

ヤーペッツはそう尋ねる。

エリーゼが来た時には、ヤーペッツかエルノア、決まってレストランの経営陣が対応するのだ。

 

「どうしようかしら……まだちょっと自分と相談するわ」

エリーゼは少し悩み、答える。

「食前酒くらい飲むかな?少し怪しい、好みの別れそうなワインなら入ってるよ」

「ちょっとだけ、貰おうかしら」

そう話し、ヤーペッツは調理場へと戻る。

そろそろ商人の人、家族連れが訪れ始めた。

エリーゼは教会の子供が持って来た、爽やかさの乏しい、甘いワインを口にして、その光景を眺める。

 

 

……思えば、ヤーペッツとモニカ、エルノアからレストランの相談を受けた時に、エリーゼの貴族的な食事事情は始まった。

女性が入りやすい、でも敷居の低いレストランを作る計画に、モニカとエルノア、ヤーペッツでは金が無かった。

ヤーペッツも営利第一どころか、営利度外視の商人なので、やたら金がない。

そこで3人は、エリーゼに相談を持ちかけたのだ。

長らく本屋をしていて、思うような仕入れは出来ず、金ばかりが貯まっていたエリーゼには、いい話だった。

店の常連兼従業員達にも相談して、金を出す事を決めた。

 

「8万コールよね?それなら何とかできるわ」

そう話すエリーゼに、ヤーペッツは首を横に振った。

「確かに8万コールだけど、そうした金を一括で渡すのは良くないよ。そんな事をされては、私でもその金を抱えて雲隠れしたくなってしまうよ。……まずは5千コールを預かりましょう。そしてレストラン建設の進み具合を、エリーゼさんに見て貰って、その続きを預かりましょう」

「預かりましょう……なの?」

エリーゼは不思議そうな顔をする。

 

「そりゃそうだ。金を出して欲しい、とは言ったが、金をくれ、とは言ってないだろう?レストランの評判が良ければ、その売り上げからエリーゼさんには少しずつ返して行く。8万コールを超えても、少しずつ返し続けて行くのは終わらないんだ。都会ではよくある話だよ」

ヤーペッツは、そう言って笑う。

しかも、出来たレストランでの食事はタダでいいと言うのだ。

エリーゼも、常連兼従業員達も、出資者だからタダだと言う。

 

「そんなうまい話あるの?信じられないわ……」

エリーゼは驚く。

「まあ、それも状況次第だけれどね。状況が悪ければ、売り上げが出ないから、エリーゼさんに返すお金も無い。という事になる。エリーゼさんは損をし続ける事になるからね」

ヤーペッツはそう話し、だがキルヘンベルはこれから人が増えつつある事を付け加えて、レストラン需要は伸びそうだと話す。

 

「……まあ、そうよね。それに私もそうしたお店が出来たら嬉しいわ」

エリーゼはそう言うと、まだ見ぬレストランを思い浮かべる。

「僕もね、故郷に帰ると、そうした店が2つ3つあるんだよ。僕は出資する訳じゃないから、金が無いんだけどね。美味しい料理を提供する場所を作るのが趣味みたいなものだからね」

そうヤーペッツに言われて、レストランに来る度に、ヤーペッツやエルノア達が、フォローしてくれるようになった。

 

 

……そんな事を思いながらワインを飲む。

あまり出来の良くないワインだと思う。

けれど、何となくまたグラスを傾けてしまう……

……出資者であることを鼻にかけちゃいけないって言われたけれど、こんな扱いされちゃうと、鼻にかかっちゃうものよね……

「……ヤーペッツさんを呼んで貰ってもいいかしら?」

エリーゼはヤーペッツを呼ぶ。

 

「……どうしました?」

少し待つと、ヤーペッツがやって来た。

「……このワイン、人気ないの?」

エリーゼは尋ねる。

「……ええ、クセの悪いワインだし、一口でそれと分かる粗悪品だからね。でもね、僕はこの銘柄、好きなんだけど……キルヘンベルでもイマイチだねぇ」

ヤーペッツは苦笑いする。

「あまり長居すると、鼻にかかっちゃいそうだけど、このワイン気に入ったのよ。ボトルを持って帰ってもいいかしら?」

エリーゼは飲みかけのボトルを示す。

「余らせてるからね。その1瓶、包みましょう」

 

エリーゼは、ワインと揚げカレーパンなる物を入れた籠袋を持って、レストランを出る。

レストランは、これから忙しくなる時間だった。

 

 

そして帰る旧市街。

もうすっかり夜なのに、フリッツと見慣れない女の子、そしてレオンを見掛けた。

丁度フリッツの家に入った所で、エリーゼはそれを見送って本屋へと戻る。

 

……何かしら?

……こんな時間に……

少し考える。

あまり考えなしに、ワインと揚げカレーパンなる物を持たされて帰って来たけれど、この本屋の中に食べる場所なんて無かった。

 

 

……なので外に出る。

あまり偉そうに、レストランの一角を陣取っているのが申し訳なくて、こうして出た訳だけど……

本屋の外で、ゆっくりワインなんていうのも……

グラスも満足に無かったりする。

……ふと井戸端で酔いつぶれていた、フリッツを思い出した……

 

 

……フリッツの家が気になるけれど……

レオンも居るみたいだし、おそらく人形劇の打ち合わせじゃないかしら……

……あと届いた蝋絵の具も欲しいし……

エリーゼはそう思って、フリッツの家にふらふらと向かう。

手土産もあるし、人形劇の打ち合わせなら、見てみたいし、たまには押し掛けても……

そうして、フリッツの家の前まで来てしまっていた。

……何て言ってノックしたらいいのか……

 

そう思っていると、ドアが開いてレオンが顔を出した。

「きゃあっ!」

エリーゼは驚いて後退りする。

「あら?エリーゼさん、どうしたのかしら?」

水の桶を持ったレオンが、不思議そうな顔をする。

「あ、あの……グラスが無くて……に、人形劇の打ち合わせなら興味があって……」

エリーゼは慌ててそう話す。

「?……まあ、ちょっと水を汲みに行く所なのよ。エリーゼさんと同じ井戸みたいだけど、知らないのよね。案内して欲しいわ」

レオンはそう言うと、ドアを閉めた。

そしてエリーゼの肩を叩く。

「今ね、ソフィーの師匠、プラフタの魂の器となる人形を作る所なのよ。あのオジサン、人形の事となると目の色変えてノリノリなんだから」

 

そんな話をして、井戸に向かう。

「見慣れない女の子も居たけれど、誰なの?」

「裏市街で冒険者の相手をしている子よ。……プラフタのモデルとして一晩買ったのよ。……あたしが選んだのよ?あのオジサン、すぐ太めの子に目が行くんだもの」

そして井戸水を汲む。

汲み置きが無くて、飲み水にも事欠いてる話もされた。

「人形劇の打ち合わせじゃなかったのね?でもプラフタの魂の器を作ってるなんて、それはそれで興味があるわ。……まあ、このワインと夕飯の場所を探していただけなんだけど……」

「エリーゼさんには刺激が強いかも知れないわね。でも見学も食事も大丈夫じゃないかしら。あのオジサン、あまりにも夢中なんですもの」

そして、レオンとエリーゼでフリッツの家へと戻る。

 

 

「ぎゃっはっ!はっ!はっ!ひー……フリッツ面白い!それ無理っ!はー……っ」

帰ってみると、裸の女の子が笑い転げていて、フリッツはいつも通りの格好で、床の紙に女の子の身体の太さ、厚さなどを記していた。

「転げては型が取れんだろう……あーあ、こんなに皺が寄ってしまって……」

レオンとエリーゼが帰ると、フリッツはそちらに顔を向けた。

「おやエリーゼも?まあレオン、この子を押さえてくれないかな。なかなか型が取れんのだ」

 

「フリッツが笑わすからだよ!ひーっ……顔芸ずるいよぉ……」

随分と若い娘で、細い。

「オジサン、サービス精神が邪魔してるんじゃないのかしら?まあ、こんな楽しい型取りとは思わなかったわ」

レオンはその娘の所へと向かう。

 

……プラフタの人形は、人と同じサイズでリアルな物を作る。

その為のモデルとして、裸商売をしている女の子を一晩買って来た訳だ。

レオンはその型に合わせて服を作るので、今日はこっちに来ているのだと言う……

「お尻はもうちょっとボリュームがあるといいんじゃないかしら?ナルちゃんはお尻小さいわねぇ……」

レオンが女の子を押さえて話す。

床に敷いた紙の上で寝かせて、フリッツが紙に身体に合わせて線を引いている。

 

「良く言われるんだよ……ぷぷっ……だめっ!変顔で待たれてると思うと笑っちゃうよぉ」

押さえられながら、女の子は笑う。

「今は真面目な顔で採寸しているぞ?」

フリッツは微笑みながら線を引く。

丁度腰の辺りの作業。

「嘘!声が嘘だもん!」

女の子は笑いながら顔を隠す。

 

 

……見てていいものなのかしら?……

エリーゼはそう思いながらもその場に立ちすくみ、フリッツとレオンは、何枚もの紙に身体のラインを描き積み重ねて行く。

「君は指が少し長いんじゃないかね?」

フリッツはそう言いながら足の指、形などの採寸を始める。

「そうかな?」

「レオン、君の足も見せては貰えまいか?……ああ、エリーゼもどうだろう?指の長さのバランスを少し見ておきたいのだ」

フリッツは立ち上がる。

 

「まあ、足の指くらいはいいけど、改まって言われると恥ずかしい感じがするわね……」

レオンは靴を脱ぐ。

エリーゼも、あまりにも何もしていないし……

と、靴を脱ぐ事にする。

 

 

「さて、足の型まで採れたなら……君はもう寝ていてもいい。寝てる所でまた確認はしたくなるかも知れないからな。服の方は朝に着てもらう事になるが……」

フリッツはそう言うと、裸の女の子を寝室へと促し、纏めた紙の束を持って机に向かう。

「レオン、設計図の前に、もう1度確認をしておこう」

「足の指……どうしましょうか?」

「爪の形も気になったな……」

フリッツとレオンは、皺が入った紙の群れを見つめ、そう語り合う。

エリーゼは裸足のまま、その姿を眺める。

 

 

「ふぅ~……これで終わり?」

皺が入った紙達の全部に修正を入れて、レオンは腰を伸ばす。

1つ1つの作業は早く、それでもかなりの枚数があり、1時間程掛かった。

「……ああ、これで設計図を作る作業に入れるな。感謝する」

フリッツはにこやかに話す。

「さて、それじゃあ……あたしは帰るとするわね。エリーゼさんは、随分と待たせちゃったみたいだけどね……それじゃあね。素敵な人形、期待してるわよ」

 

そう言うと、レオンはあっさり帰って行った。

「あ……私ももう充分見れたし、帰りますね」

フリッツに顔を向けられて、エリーゼは少し慌ててそう言う。

「……差し入れではないのかな?」

フリッツはエリーゼの持つ、ワインとカレーパンなる物の入った籠袋を指差した。

「あ……」

エリーゼもその籠袋を見る。

 

「恥ずかしい話ですけれど、本屋には食事をする場所が無くて……なのに持って帰って来ちゃったんです……」

そう、俯いて話す。

「それならば、器を用意しようか。君とこうして食事ができるとは、私も果報者だな……」

フリッツは玄関先すぐの暖炉、そこのテーブルに食器を並べると、優しい笑顔を向けた。

「果報者だなんて、そんな……」

エリーゼは照れて目を伏せる。

フリッツは、それぞれのグラスにワインを注ぐ。

 

「もし君が良ければ、是非ともこうして食事をする機会が増えたら、と思う。こうして飲み交わせる事に乾杯しようではないか」

フリッツはグラスを浮かして、エリーゼも合わせてグラスを浮かせる。

「……これは……私には合わないワインだな……これをどこで……?」

少し傾けて、フリッツはグラスを置く。

ワインとは思えぬ甘い香りに、浮いた甘さ……

フリッツにしても、初めて味わう奇妙なワインだった。

 

「あ……そうなのよね。私もそう思うんですけど、何でかしら気に入っちゃって……レストランでも評判悪いみたいだから貰って来たのだけど」

フリッツは違うコップに井戸水を汲む。

「パンを頂いてよろしいかね?」

フリッツは1つしかないパンを眺める。

「ええ、どうぞ」

……ワイン飲めないパン食べられないじゃ、あまりに意味もないし……

エリーゼは答える。

フリッツはパンをナイフで切り分ける。

 

「カレーのパンか……これは……夕食とするかな……」

切り分けたパンを半分ずつ取り分けると、フリッツはお互いに寄せる。

「……夕食なら、半分で足りるんですか?」

エリーゼは尋ねる。

それほど大きなパンでもないのだ。

「はっはっはっ、人形の話があると寝食を忘れる質でな。だがこうして、人形の話があるのに距離を取って過ごせる……その事が貴重だと感じている。これで充分だ」

フリッツは、そう言ってエリーゼを見る。

そして手元のパンに視線を落とした。

 

「あの……それって?」

フリッツの瞳に絡められて、エリーゼは俯く。

……なんだか熱い視線……

「……この村で色々と見てきた。そして女性として私に叶うのは……君くらいかと思っていた」

フリッツはそう話す。

エリーゼは目を伏せたまま、手に持つワイングラスを見つめた。

 

「いえ……ソフィーもモニカも……結構居ますけど……」

エリーゼはそう濁してみる。

「私に彼女達は幼いだろう。娘を見るような気持ちになるな。今寝ている彼女もそうだが……」

フリッツは困って俯き、少し落ち着かないように揺れるエリーゼを眺める。

「私も……同じような年頃ですけれど……」

「女性は年が分からぬ物だし、詮索してどうこう考えるものでもないだろう。……ピッ、と思う物だ。そして君には思う所がある」

「それで……この前井戸で?」

「ああ……あれは不覚だったな……あれは昔を偲んでいただけだった。やたらと思い出してしまったのだ」

「なんか、男の人にそう言われるのって、初めてで困りますね……」

「困らせてしまったかな。だがまた、こうした時間が過ごせると光栄だ。……このグラスは私が傾けるには辛い物があるが、次は何かしら置いておくとしよう」

フリッツはそう言って立ち上がり、暖炉に薪を足す。

 

「……あの……はい……」

断るのも変だし、エリーゼは返事をする。

ワインとかパンどころでもなくて、固まってるばかりだ。

エリーゼの憧れる、素敵な物語を幾つも持ち……

人形劇なんて、夢に溢れる事を専門にしているオジサン……

そのオジサンに、好意を寄せられるとは思ってもみなかったけど……

エリーゼはグラスを傾ける。

 

 

……残して帰るのもおかしいし……

飲まないと減らないし……

甘い、どこかエリーゼの琴線を揺らす拙いワインは、余計に染みる。

「……っはぁ……」

深いため息が出る。

……意識させられる……

胸が苦しい……

ふとフリッツを見ると、エリーゼの方を向いてはいるけれど目を閉じていた。

エリーゼは少しラクなため息をついて、また少しグラスを傾ける。

……残ったワインの瓶、どうしよう……

そう考える。

 

グラスに残る、フリッツのワインも気になる。

……捨てちゃうのかな……

そう思う。

パンの皿を手に、ワイングラスを置く。

フリッツは目を閉じたままだ。

 

「……さて、少し外の風にでも当たって来るか……食事に気兼ねさせてもいかんからな」

そう呟き、フリッツは立ち上がる。

「いえ、すぐに終わりますので……」

エリーゼは少し慌てる。

「いやいや、是非とも落ち着いて味わって行って欲しいのだ。私の飲めなかった分も、捨てるには偲びないが……次に一緒に食事をする時には、もう少しラクな空気になれると、更にありがたい」

フリッツはエリーゼを制して、そう話す。

そして出て行った。

 

……なんか、とんでもなく邪魔だったような……

エリーゼはそう思いながら、作業台に積まれた紙を眺める。

そして自分のワインを飲み干す。

……なんで瓶で貰って来てしまったのか……

まだ半分以上残るワインを見る。

 

 

……まだ帰って来ないかな……

帰るにしても、黙って居なくなるのも申し訳ないし……

エリーゼは燃える暖炉を眺める。

カチャッ……

そうしていると、ドアが開いた。

エリーゼはドアの方に目をやる。

「あれ?」

……誰も居ない……

なのにドアは更に開き、開ききった状態で止まった。

 

「さて、食事が済んだのなら送ろう」

エリーゼの背後から声がして、振り向くとフリッツが立っていた。

「え!?」

不可解な所に居るフリッツに、エリーゼは驚く。

フリッツは意地悪な笑みを見せた。

「はっはっはっ……明日は種の日……人形劇の日だな……」

そんなエリーゼをよそに、フリッツは外に出る。

せっかくの帰るチャンスだし、エリーゼも立ち上がり、フリッツに付いて行く。

 

「明日も人形劇、楽しみにしています」

エリーゼが声を掛ける。

「……それなのだが、台本も人形もあるのでな。パメラと神父様には話したのだが、私は必ずしも参加する訳ではないのだ。それに、明日はプラフタの設計図に時間を割かなくてはならん」

フリッツは足を止めて、エリーゼが追い抜く。

そしてエリーゼも足を止めた。

 

「え?それじゃ人形劇は……」

エリーゼはそう問いかけると、フリッツはゆっくりと歩き出し、エリーゼの背中を押す。

「パメラと……エリーゼ、君にやって欲しい。それに子供達も演者となれるだろう」

フリッツとエリーゼ、並んで歩き、本屋へと向かう。

「そんな……」

エリーゼはガッカリしながら歩く。

「そのため息、明日になれば納得に変わるだろう。私にしか出来ない事は、私の作る人形を作る事だ。人形劇は誰でも演じられるし、そうでなくてはならんからな。何、午前中だけと話をしてある」

そう語るフリッツの話を聞きながら歩くと、もう本屋の前……

 

「残るワインは預かっている。また明日も来てくれると、私も嬉しい」

フリッツは振り返り、帰って行った。

エリーゼは何も言えずに、その後ろ姿を見送る。

……イキナリ後ろに居たから、びっくりして忘れてたわ……

そして残してきたワインを思いつつ、本屋に帰る。

 

 

種の日の朝。エリーゼは本屋を開ける。

そうすると、アナミがやって来た。いつも本屋の番人をしてくれるインテリ女性で、魔物学者を名乗ってもいる。

「今日は教会の方に顔を出して来るわね」

「あら。エリーゼさんも忙しいですね?」

アナミに言われて、エリーゼは笑う。

少し歩くと本屋の番人その3、ソフィーダちゃんとすれ違う。

「メガッタは教会でお祈りするって!」

ソフィーダちゃんはそう言って笑う。

本屋の番人その2、メガッタは種の日、ちゃんとお祈りに行く人なのだ。

 

 

そしてエリーゼは教会へと行く。

種の日の朝、聖歌の聞こえるヴァルム教会で、エリーゼも教会の外の人々に紛れて祈る。

……なんか以前よりも、お祈りの人々が増えたような……

 

 

お祈りが終わると、噴水端会議の時間。

人々が思い思いのグループに別れて、立ち話をする。

「あら~♪エリーゼちゃんじゃな~い。今日は北の人形劇するのよ~♪」

パメラがやって来た。

その後ろから、ディーゼルと教会騎士の人、子供達が人形劇の準備を始める。

人形も台本も、教会に預けてあるのだ。

「北の人形劇?」

 

「そうよ~♪南の人形劇はね~……オジサン達がオジサン達向けにやるって話なのよ~♪」

パメラは何かを思い出そうとして、何かを諦めて話す。

……これは何か抜けてる話なんだな……

と、エリーゼは思う。

「やあエリーゼ、おはよう。僕も北の人形劇の付き添いだから、楽しい人形劇になるといいね。北はお昼までだけど」

ジュリオがお辞儀をして、人形劇の舞台へと向かう。

「エリーゼも人形劇、好きだものね。今日は私の役もあるみたいだから、ちょっと緊張するわ」

モニカも、そう言って笑い、人形劇の舞台へと向かう。

 

……フリッツが居なくても、人形劇はちゃんと動き出すみたいだ……

 

 

人形劇の準備はすぐに整い、噴水端会議の人々が離れていくのを待つ。

……あくまで後から来た催し物だし、噴水端会議を尊重して、そういう段取りになっているそうだ……

 

 

北の人形劇はパメラとディーゼルと子供達、観客も子供達とレストランでよく見かけるおばさん達、商人の人と集まって、人形劇が始まる。

南の人形劇は、芸人師匠と弟子、商人のオジサン、職人のオジサン達とコルネリア……

南の方も同じくらいの人が集まっていた。

 

カン!

 

キン!

 

劇の節目、台詞の終わり始まりを報せる鐘の音が、噴水広場の北で南で響く。

 

北の人形劇、2つ目の話で、エリーゼも演者として参加して、3つ目の話ではメガッタが参加して……

あっという間に、お昼を報せるヴァルム教会の鐘が鳴った。

 

 

……楽しい時間はあっという間……

エリーゼは人形劇の片付けを手伝って、教会へと運び込む教会騎士の人と子供達にエリーゼも並ぶ。

「本屋のお姉ちゃん、すごく上手だったよ!びっくりしたもん!」

子供達に誉められて、エリーゼは照れて笑う。

「そ、そうかしら?でも必死で夢中だったわ」

 

少し長い時間並び、エリーゼの番になったので手に抱えた人形を神父様に渡す。

「お疲れ様」

神父様は優しく声を掛けて人形を受け取り、人形を眺めると、傍らの教会騎士見習いと見て取れる子供に渡す。

そして、片付けられて行く。

 

エリーゼは列を抜けて教会の外へと出る。

昼休みのテスと目が合った。

「やっほ~☆」

 

 

噴水広場、南の人形劇の座席……

布の掛かった丸太に座るテスが手を振るものだから、エリーゼも隣に座る。

「テスも人形劇を見に?」

エリーゼは意外に思う。

お昼時の今、カフェは忙しい筈なのに……

しかも今は人形劇は昼休み。

……やっていない。

「いやぁ~あたしは仕事だよ。なんとお昼に休憩なんだけど、午後の1時間だけ、勢いづけにってさ。ソフィーの作った錬金荷車1号に、食べ物とか飲み物とか積んで売るのさ☆」

うさみみ制服のテスは、空を見上げる。

「お昼、食べたの?」

エリーゼは尋ねる。

エリーゼも空腹を感じてた。

 

「じゃじゃ~んです♪」

そこに、ストリートからこちらに向かうコルネリアの姿が見えた。

大きいカゴを抱えている。

「おぉ~♪勢いづけその2が来たよ~!お昼はここで食べるのさ☆」

「私が勢いづけその1なのです。エリーゼさんも食べてくれると助かります。オスカーさんのお弁当が、さすがにこの量は無理です」

コルネリアは大きいカゴを開ける。

サンドイッチとキルヘンミルクが入ってるのだけれど、サンドイッチの量が多い。

 

「3人でも……食べきれないんじゃないかしら?」

エリーゼは呟く。

「まあまあ、あれ?キルヘンミルク、冷え冷えじゃ~ん!」

「カゴの上に、ハクレイてるてるボーズが居るです」

砕いたハクレイ石を包んだふわふわクロース、それがてるてるボーズとなってカゴ蓋の裏に吊られている。

 

 

やたら美味しいランチを食べる。

コルネリアが大食いで、大量のサンドイッチはちゃ~んと無くなった。

 

その頃には、カフェ横で壺屋で、お昼を終えた職人さん達がこの広場の南を通りかかる。

「お?コル助なぜここに?」

職人のオジサン達は棒読みで尋ねる。

休日の憩いの場、コルネリア露店に貼り紙と案内があるのだから、ここに流れてる親衛隊も居るのだけれど。

「ふふふ、南の人形劇は、人形劇ではなくなり、また午後もあるのです!なので……帰らせません!」

コルネリアは謎のポーズを取る。

「うへぇぇ……帰って寝ようと思っていたんだけどなぁ~……」

職人さん達はのけ反る。ノリがいい……

「寝るには早いよ~、奥さんに煙たがられちゃうぞっ☆それよりも!お土産話の1つでもお持ち帰りすれば、株もあがるよっ☆」

テスもオジサン達をブロックする。

 

「ちゃ~んといつものお値段で、お酒もクッキー☆も秘伝のおつまみも……やって来るのです!飲むにヨシつまむにヨシ財布にヨシ売り上げにヨシなのです!」

「売り上げにもヨシかぁ~……!」

午後に向けて、コルネリアとテスは、お客さんを捕まえて行く。

「じゃあ、カゴはついでだから、八百屋さんに返して来るわね」

エリーゼは大きなカゴを抱えて、八百屋へと向かう。

 

 

「おお、エリーゼさん、そのカゴはウチのヤツかい?」

八百屋では、マルグリットとオスカー、教会の手伝いの子供2人、と何だか暇そうにしていた。

「そう。コルネリアちゃんは何だか忙しそうで……それとお願いがあるんだけど……」

エリーゼはフリッツの話をして、夕飯にサンドイッチでも持って行ければ……とオスカーに話す。

「なるほどね。ちゃちゃっと作れるけど……まだ日が高いなぁ……今作っちゃうかい?」

オスカーは尋ねる。

「今が都合良さそうなら………」

エリーゼはそう答える。

八百屋も暇そうだし、今が都合良さそうだ。

「じゃあ母ちゃん、ちょっとカゴ埋めて来ちゃうな?」

オスカーはカゴを受け取り、八百屋の奥へと入る。

 

「人形オジサンに差し入れなんて、どうしたんだい?」

マルグリットが目を光らせる。

大好物を見つけた微笑みが浮かんでいる。

「いえ、そんなんじゃないんですよ?でも今、プラフタを人形にする為に頑張ってるから……せめて少し応援を、って思いまして……」

エリーゼは少し慌てて、赤い瞳をぱちくりさせながら話す。

「プラフタ……あのソフィーちゃんのトコの空飛ぶ本かい?へぇ……またどんな不思議な事が起きるのかねぇ?」

マルグリットは、遠い目をしながら考える。

 

 

ともかく、エリーゼはフリッツに届けるお弁当……

カゴを抱えて広場へと歩く。

また3人分以上ある重さだけど……

広場に差し掛かると、オジサン達が南側の人形劇?

を、眺めながら飲んだり話したりしていた。

もう人形劇ではなく、歌とか歌っていたり……

笑い声が噴水広場に響いている。

エリーゼは旧市街、フリッツの屋敷へと向かう。

 

……やっぱりそう見えちゃうわよねぇ……

マルグリットの会話を思い出す。

人形のオジサンにご執心……

端から見れば、そう見えてしまうのだ。

本屋の番人達も、そんなエリーゼをどう思うのか……

「はぁ……」

エリーゼはため息を吐く。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[補修用のクレヨン]
ちょこっと調合品。古い本の掠れた文字を読みやすくする。

[エルノア]
モニカと一緒に住むおばさん。綺麗好きで飾り付け大好き。
[ヤーペッツ]
食通商人。美味しい物を人に食べさせるのが生き甲斐。

[レストラン]
キルヘンベルの、女性向けリーズナブルな食堂。エルノアさんの飾り付けが輝きまくる。

[教会の子供]
ヴァルム教会の働く子供たち。働く事で色々な人と仲良くなれる。あまりこきつかうと、巡回の騎士に睨まれる。

[蝋絵の具]
蝋と染料で作られる色とりどりの画材。
[ワイン]
葡萄のお酒。
[揚げカレーパン]
パンを揚げて、且つ中にカレーを仕込むという、必殺料理。

[ナルちゃん]
プラフタ人形のヒトガタのモデル。いつもは冒険者を相手にお酒を飲んでたりする。

[アナミ]
本屋の番人。魔物に詳しいみたい。
[メガッタ]
本屋の番人。小説大好き。
[ソフィーダ]
本屋の番人。あまり本は読まないらしいけど……

[ディーゼル]
ヴァルム教会の子供たちの先生。
[北の人形劇]
子供たちによる、子供たちの為の人形劇。お昼まで。
[南の人形劇]
少し大人向けの人形劇。お昼まで。だけどお昼からは芸人師匠と弟子による催しものがある。


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錬金術のアトリエ 29

錬金術のアトリエ 29

 

双葉の日……

「よ~し、行ってくるね!」

ソフィーは元気良くアトリエを出る。

曇っていて、今にも雨が降りそうだ。

「キルヘン!ミルク!スネーク!カモン!」

謎の掛け声と共に4回ジャンプ。

その4回ジャンプの先には、このアトリエの山に時々来るおばあちゃん、ウメさんが今日も居た。

「ソフィーちゃん、今日も元気だねぇ……」

「えへへ……行ってきますね」

ソフィーはアトリエの山を降りる道を行く。

 

 

カフェに行き、皆集まって……と、思ったらフリッツさんが居ない。

取り敢えずモーニングサービスを食べながら、依頼を見る。

今回の行き先は、山師の水辺。

そしてフリッツさんの家に皆で迎えに行く。

窓から覗くと、すごく細かい設計図を描いていた。

「フリッツさ~ん、旅に行きますよ~」

ソフィーが呼ぶけど、ニヤニヤして設計図を見つめている。

ノックにも気づかないものだから、家に入る。

鍵は掛かってなかった。

「フリッツさ~ん」

「おお!?……出発の時間か……キリのいい所で切り上げるとしよう」

フリッツさんは顔を上げて、そしてまた図面に向かう。

……そこから10分程で合流して、出発となった。

そしてキルヘンベルの街の入り口……

メーベルト農場の馬車が、ちょうど出る所だった。

 

 

「おじさ~ん」

キルヘンミルクを納めた帰りと言う馬車に、その後ろを行く錬金荷車2号。

「ふふふ。私はもうブレストと仲良しなのです」

3頭の馬はゆっくり歩き、そのすぐ隣をコルちゃんが歩く。

ブレストと仲良く歩く。

「そんなに馬がお気に入りだなんて、珍しい冒険者なんだなァ……」

そんなコルちゃんを、おじさん達は微笑ましく眺める。

ソフィーはロザリと仲良くなろうと近寄るけれど、ロザリに警戒されて離れる。

 

……そしてそ~っ、と近寄るけれど、やっぱり警戒されて離れる。

レオンさんはマレフとあっさり仲良くなったのに……

フリッツさんは設計図作りで寝ていないそうで、錬金荷車2号の2階で寝ていた。

 

そんな自由な旅路……

目指すはメーベルト農場……

の更に先、山師の水辺だ。

 

 

夕方、メーベルト農場でおじさんとブレスト、マレフ、ロザリと別れて、更に北を目指す。

「最後の最後、やっとロザリに触れたもんね」

荷車を引くジュリオさんの隣で、ソフィーが話す。

「コル助、馬の臭いしかしないぞ……」

ハロルさんがそう言って離れた。

錬金荷車に乗ってラクが出来るとか言ってたけど、ハロルさんはあまり荷車に乗らない人だ。

 

「馬の臭いのせいで、荷車に乗れないのは残念ですけれど、ブレストはおっきくて可愛かったです」

コルちゃんはいつになく歩き続けている。

高いぽっくりで歩きづらそうだけど、ひょいひょいと軽快な足取りで早い。

「お……?あの辺りから水の匂いがするな……夕食時だし、どうだい?」

 

離れて歩いていたオスカーが、荷車に寄って来た。

そういう時は決まって、綺麗な泉があったりして、おいしい食事にありつけるのだ。

「腹が減っていた所だ……俺は賛成だ」

ハロルさんが言って、オスカーの示す方を見る。

「おデブちゃんがそう言う時って、いいことあるのよね」

レオンさんもやる気の顔になる。

街道を離れるので、魔物も居たりするから。

そしてちょっと街道を離れて夕食にする。

 

 

そんな一行が三つ子橋の泉を過ぎたのが夜中1時、山師の水辺に2時に到着した。

「雨が降ってる夜中だから、さすがに寂しい景色になってるわね……」

モニカが呟く。

「水着を用意して、水浴びで楽しむのは夜中ではあるまい。昼に晴れる為にも、今は降っていても問題なかろう」

フリッツさんが不敵に笑う。

かなり眠ったままだったけど、さすがに起きたみたいで。

「採取もしないと!ですから今、片付けちゃおう!」

そして一行は魔物と戦う、採取に励む。

山師の水辺、山師の狩り場……

ここは広い採取地でもある。

緑ぷにがやたらコロコロしてる。

妖精の泥だんご、苔むした流木……

そして山師の水辺から、宝のみぎわへと移動する。

 

更に妖精の泥だんご、苔むした流木を採取。

 

 

朝になり、雨は続く。

 

 

「キターーーーーー!神様ありがと~っ!」

昼辺りから晴れてきて、午後。

宝のみぎわ、浜の壊れた舟の場所。

この辺りは何でか魔物が居ないポイント。そこでお日様が顔を出した。

 

「腹が減ったな……朝は火が起こせなくて食べてないからな」

ハロルさんが荷車に乗せた貝を取り出す。

フリッツさんと採取そっちのけで取っていた、砂の宝貝たち。

「ソフィー達は水浴びしておいでよ。貝が焼けたら呼ぶからさ」

オスカーとジュリオさん、ハロルさんにフリッツさんは、貝を焼く準備。

レオンさんとソフィー、コルちゃんとモニカは水浴びする準備となった。

「では!ぽかぽか陽気の今が勝負どころです!」

コルちゃんが着替え始める。

「よ~し!あたしもこのチャンス、逃さないよ!」

ソフィーも着替え始める。

「……おい、お前らよく俺の目の前で裸になれるもんだな……」

ハロルさんが少し面白い嫌な顔をして、ソフィー達を見ていた。

「あなた!なんでバッチリ見ちゃってるの!」

そしてレオンさんに怒られる。

「イヤ、目を逸らしたらなんか負けた気分になるからな、仕方ないだろう……ここはむしろ目を逸らしたらダメだろう。男として」

「どんな理屈なのよ……」

そんなハロルさんとレオンさんを尻目に、ソフィーとコルちゃんは、新しい水着に着替え終わる。

「先に行ってるよ~!」

今回も黄色いビキニデザイン、赤の可愛いポイント。

アダールクロスの伸縮性バッチリのソフィー。

「行ってるです~♪」

コルちゃんは競泳仕様の紫に金のポイント。

 

「目を逸らしたら負けとは良く言ったものだな……モニカ、怯んだら君の負けと言う事だな?」

「も~!フリッツさんは負けておいて下さい!」

どさくさ失敗したモニカが叫ぶ。

楽しい時間が始まる。

 

 

「気持ちいいーっ!」

ソフィーは水辺を泳ぐ。

とはいえ、泳ぎ方を知っている訳もなく、深い所へ行っては浅い所へ戻る……

それを繰り返す。

 

「モニカさん、やっと着替え終わったみたいです……」

コルちゃんは、悪戯っぽく笑うフリッツさんから離れて、水辺に入るモニカを眺めて呟く。

「もーっ!拍手とかしなくていいから、こっち見るな!」

最後に服を脱ぐ事になったレオンさんも、男どもに取りつかれて、顔を赤くして叫ぶ。

脱いだ所で、皆して拍手していた。

「レオンさん、脱いでも色っぽいな!」

オスカーが拍手する。

「子供とは格が違うな、格が」

ハロルさんも拍手する。

「水色の髪の美女の全裸など、そうそう拝める物ではないからな!はっはっはっはっ!」

フリッツさんが大笑いしながら拍手する。

ジュリオさんだけは、真面目に貝を焼こうと準備していた。

耳まで真っ赤にして、レオンさんも水に入った。

 

 

「おーい、砂の宝貝、旨いから食べにおいでよ」

オスカーに呼ばれて、水遊びしてはしゃいでいたソフィーもモニカも、レオンさんも荷車2号の所へと戻る。

コルちゃんはなんか、既に食べていた。

「あははっ!コルちゃん、早いね♪」

ビキニのソフィーが、火の場所へと戻る。

「しかし……あの痩せてたソフィーがここまでふっくらするとは思いもしなかったな……ほれ」

ハロルさんが煮物に焼いた貝の中身を入れて、ソフィーに渡す。

「えへへ~……あたしもびっくりしたもんね♪でもこうなると女の子って、嬉し恥ずかし楽しい感じで、いいよね♪」

ソフィーは煮物の器を受け取る。

 

「ほい、モニカも。モニカは意外にも子供っぽいデザインなんだな」

モニカには、オスカーが煮物の器を渡す。

「ソフィーが嬉し恥ずかし楽しいとか言ってるけど、恥ずかしいとかあるのかしら?……全く……」

モニカは照れながら受け取る。

「これがあったりするんだよな。恥ずかしくても飛び込んでいく性格なんだよ。貝、小さかったから2つ3つ入ってるからな」

オスカーはそう言うと、ソフィーの方を見る。

 

「レオンさんには、僕から。冒険に出てこれほど楽しいひとときが過ごせるなんて、衝撃的だよ。ハロルさん、フリッツさんも感謝の気持ちだって」

ジュリオさんが、そう言ってレオンさんに煮物を渡す。貝の中身が入りまくって山になっていた。

「……これ、絶対多すぎじゃない?アタシ、こんなに食べないわよ……」

てんこ盛りの煮物の器に、レオンさんはソフィーとモニカの方へと向いた。

 

「さすがにこの量は無理よね?減らしてもらえる?」

そうして、コルちゃんとソフィー、モニカと分け合う。

 

 

食べて泳いで釣りをして……夕方。

お日様は寂しい赤を纏って沈んでゆく。

「水着の上に服を着ておけば良かったわ……」

モニカは伏し目がちにそう呟いた。

「それだとなんか暑苦しいですよ?蒸れちゃいます」

「だよね~……」

コルちゃんとソフィーは水着を脱いで、また着替える。

もはや一緒になって脱いでおけばいいや、とモニカもレオンさんも一緒になって着替える。

「でも男の子の前で着替えるのって、抵抗あるのよね……さすがに」

そう言ってレオンさんが振り返る。

ハロルさんとフリッツさんは、火の跡の片付けをしていた。

オスカーとジュリオさんは、これから依頼品になるであろう、大爆発砂ガマの穂を採取していて、こちらを見てはいなかった。

「……飽きたのかしら?さすがに……」

 

 

そしていつもの格好になった所で……

山師の水辺、出会いの浜へと進む。

早速島魚がじゃれついてくる。

それにホワイトルート、マンドラゴラ、青プニがころころ……

 

採取生活で夜を明かし……

 

採取生活で昼も過ぎて……

 

「何か……あの獣がこちらを狙っているような……」

そんな中で、モニカが気配に気づく。

「なんか、いつもと違う空気の魔物です……」

コルちゃんも警戒する。

「よし!まずは陣形を整えてあの獣を倒そうか……背中を向けて過ごすには危険だからね」

ジュリオさんが言って、沈黙の魔獣に戦いを挑む。

 

 

「上手くダメージが通らないわ!」

「なんだか、攻撃すると誤魔化されてるような……」

戦ってみると、防御が硬い魔物だった。

が、銀いもパワーを凌ぐ火力が無いので、時間はかかるけど危なげなく倒した。

「アカツキの毛皮だ……」

戦利品と、その背後のハクレイ石を採取して、妖精の道標で帰る事にする。

 

 

アトリエ前に差し掛かると、16時……

「今回、楽しかったね~♪苔むした流木で、武器も作り出すよ~っ!」

これからは武器作りの計画だ。

「ならば、ロジーさんを、明日は鍛冶屋を開けるように仕向けないといけませんね……」

 

コルちゃんは微笑む。

……ようやく、本当にようやく鍛冶屋の出番が来た訳だ。

「旅は暫くお休みかな?それなら僕は、魂の道具の相談に、少し出掛けて来るけれど」

 

蕾の日16時……

そこから開花の日、果実の日、種の日……

と、旅はお休みに決めた。

 

……そう相談して、それぞれ解散となる。

ジュリオさんとモニカで、知り合いを訪ねて行く。

フリッツさんはプラフタ人形の設計図。

レオンさんは仕立屋に、プラフタ人形のデザイン監督、服を作る。

 

プラフタ人間化計画が動き出す。

 

 

「ただいま~♪」

ともかくソフィーとモニカ、コルちゃんでアトリエに帰る。

帰ってみると、エリーゼお姉ちゃんとウメさんで本の修復をしていて、プラフタは窓際に居た。

「おかえりなさい、ソフィー、モニカ、コルネリア」

プラフタがお出迎えする。

「あれ?ウメさんも本の修復してるの?」

ソフィーが暖炉テーブルを覗き込む。

「まだ初日だからかね、楽しくやれてるもんでねぇ……」

でも16時、という話を聞くと、エリーゼお姉ちゃんもウメさんも帰り仕度となった。

ソフィー達は、ぷにちゃんの部屋へと行く。

 

 

「なんか楽しかったオーラを感じるね♪あと22時間あるよ♪」

ぷにちゃんは戻った3人にそう伝える。

「水遊びって、思ったよりも後から疲れが来るね~……」

ソフィーとモニカはそう思う。

コンテナに色々と仕舞い込む作業も、なんかいつもよりも辛かった。

「それは私も思ったです。今日はもう、モニカさんに甘えて眠るです」

そして3人はぷにちゃんの中で眠る。

3人とも、あっさりと眠りに落ちた。

 

 

ぷにちゃんに癒されて、アトリエに戻る。

モニカは明日からジュリオさんと冒険者の人と、知り合いの所へと行くらしい。

「特性が適用されないと……防御の恩恵が無くなるから、なんか心配だけど平気?」

ソフィーが尋ねる。

「まあ……ジュリオさんも私も、そこは心得ているわ。それに恩恵がない状態にも、慣れておかないとってのがジュリオさんの考えなんだろうし……」

そう話してモニカと、コルちゃんと別れる。明日は朝イチに鍛冶屋へと行く予定だ。

 

 

「さて、錬金術生活しないとね!装飾品も強化したいもんね!」

ソフィーは、プラフタと錬金術生活に入る。

明日持って行く、武器の材料を準備する。

装飾品の素材となる、束ねた金糸に「全能力ブースト」を付けて作り……

……朝になる。

 

 

「ソフィー、起きてるかしら?」

レオンさんがやって来た。

「は~い♪」

ちょうどお出掛け準備万端だったソフィーは、すぐに顔を出す。

「これからフリッツおじさんの家で、服のデザインとかするんだけど、プラフタを借りてもいいかしら?」

「私……ですか?」

プラフタがパタパタとやって来た。

「そうそう、服を作るにも、趣味とかあるでしょうから……色々と話を聞かないと決まらないものじゃない?ちゃ~んと包んで持って行くわ」

レオンさんはプラフタに向けて、オシャレな布を開く。

「そういう事でしたら……」

プラフタはその布を持つ、レオンさんの両手に着地すると、本を閉じて横たわった。

 

……なるほど……

そう扱えば良かったのか……

ソフィーは、包まれるプラフタを眺める。

「あ、あたしも今から鍛冶屋に行きますから、広場までは一緒に行きましょう」

そうして、久しぶりにアトリエに鍵を掛ける。

 

 

「ロジーさん!」

レオンさんとは教会前広場で別れて、ソフィーは朝イチに鍛冶屋ロジックスへ。今日は開いていた。

「ソフィー、遂に武器を作る気になったんだってな」

ロジーさんが笑い掛ける。

「前々からやろうやろうとは思っていたんですが……防御にばっかり壊れ特性が出て来てしまいまして……」

「まあ、そこはコルネリアから聞いているよ。さて、フローリッシュハートの特性と素材の話を詰めないとな」

 

ロジーさんはそう言うと、ソフィーの持ってきた素材を眺める。

「あーっ!」

ソフィーはそう叫び、ニヤリと笑う。

「ど、どうした?」

ロジーさんは驚いてソフィーを見る。

「コル助じゃなくなってる!」

ソフィーはそう言うと、ロジーさんを指差す。

「そ、それは重要じゃないだろう?」

ロジーさんは少し困ったような顔をして、でも照れ臭そうに微笑んだ。

「重要ですよ!」

 

ともかく、フローリッシュハートの打ち合わせをする。

今日の夕方には出来上がるそうなので、明日の朝イチにオスカーと来る事にする。

明日はオスカーの武器を作る計画なのだ。

 

 

そしてオスカーに明日の話をして、アトリエに帰る。

そのまま装飾品、マイスターミトンとモノクログラスを作る計画を立てる。

 

マイスターミトンに6時間、モノクログラスに12時間……

これは1日が終わる……

 

「……プラフタ居ないんだっけ……昨日休んだりして、ぷにちゃんの残り時間も少なくなっちゃったんだよなぁ……」

ソフィーはモノクログラスを仕込み、お昼ご飯の準備をしつつ、アトリエのドアを見る。

……お昼過ぎくらいに、またコルちゃんが来るハズ……

コルちゃんを巻き込んで、ぷにちゃんの時間を回復させる計画だ。

 

 

そしてお昼過ぎ、ソフィーが食器を洗い終わり、アトリエの掃除なんてしていると……

コルちゃんがやって来た。

「コルちゃん!待ってたよお!」

ソフィーはコルちゃんに抱きつく。

「ど、どうしました?ソフィーさん……」

ソフィーを受け止めて、抱き合う格好でコルちゃんが尋ねる。

「実はもう……ぷにちゃんの残り時間がね……」

そう言われて、コルちゃんはソフィーの背中を撫でる。

「なるほど……もうそろそろそんな感じなのかとは、思ってもいましたが……1人で増やすのはしんどい所もありますから……頑張りましょう」

ソフィーとコルちゃんは、ぷにちゃんの部屋へと向かう。

 

 

「あと4時間だねぇ……増やさないとだね?」

番人ぷにちゃん達は、相変わらずわっしょいわっしょいしながら、そう伝える。

そしてぴょこんの片方を伸ばすと、ぷるぷると震わせた。

「はっ!ははっ!それはエロいです!」

「エロエロダンス?」

ソフィーとコルちゃんは、そんな番人ぷにちゃんの集団ダンスに笑う。

「へへへ~……覚悟はよろしいか!?」

番人ぷにちゃん達は、またわっしょいわっしょいに戻る。

 

 

「ソフィーさんと抱き合って……40時間程頑張ります」

コルちゃんはそう伝える。

服を脱ぐコンテナで、ソフィーと相談して決めた時間……

「任せておいて♪40時間ね♪」

なんかいつになくぷにちゃんがノリノリだ……

 

 

……コルちゃんを抱いて、肩とか腰とかに掌を滑らせる。

「ソフィーさんが、すごく私の太さがいい!いい!っていっつも思ってるから……なんか痩せないといけないのかなーって思っていたのですが、このままでいいみたいだな~……って思えるようになりました」

コルちゃんは、そんな思いをぶつける。

「んっ……コルちゃんは今のままがベストだと思うんだよね……可愛いもんなぁ……」

「ロジーさんも……太ももが好きって言ってくれますけど……はんっ……」

「今の声、可愛い!」

「えへへ……ソフィーさんも腰のラインとかステキだと思います……それにっ!ひゃうぅんっ!」

「んううっ……」

ぷにちゃんに任せて、コルちゃんとソフィーは身体を震わせる。

 

 

……そして、ぷにちゃんの中で浮かび上がっていく。

「ソフィーさんからは、外が見えないんでしたっけ?」

ハジケた余韻に身体を震わせて、コルちゃんが目を開ける。

深い青い水の中から、ぷにちゃんの部屋を見渡すような……

「ソフィーは私が黒く見えちゃうからね~……」

ぷにちゃんがそう伝える。

「いまぁ……っ!あっ!あっ!あっ!」

小刻みに震えてたソフィーが、大きく震える。

コルちゃんは、そんなソフィーの身体に、強くしがみついた。

「ソフィーさん……っ!私もっ!ふあぁ……っ!っ!……っ!」

強くハジケて、2人は抱き合ったまま目を閉じる。

 

 

「ソフィーもコルネリアも可愛いね?このままもうちょっと頂くよ……40時間だもんね?」

ぷにちゃんは嬉しそうに思う。

そして抱き合った2人を、ぷにちゃんの中で泳がせる。

 

 

「はぁ~……エロエロ凄かったぁ……でもオスカーのが激しいんだよね……」

ソフィーが目を覚ます。

いつの間にかコルちゃんと離れていた。

「おはよう♪それはそうよ。私が全力でソフィーをしゃぶり抜いちゃったら、男の子としたくなくなっちゃうからね?男の子としないと、卵は出会わないでしょ?」

ぷにちゃんはそう伝える。

「手加減してるんだね~……」

「まあね~……ともかく、残り46時間になったよ。コンテナに戻る?」

「そうだね……錬金術生活しないとね!」

ソフィーはぷにちゃんの部屋を出る。

 

 

そしてソフィーとコルちゃんはアトリエに戻り、コルちゃんは帰って行く。

ソフィーはモノクログラス、マイスターミトンと錬金術生活をする。

 

 

果実の日……

朝になると、フリッツさんとプラフタが来た。

「おはようございます、フリッツさん」

「ふふふ……設計図がおおよそ出来て来たのだが、ソフィーに作って貰いたい物があってな……」

プラフタとフリッツさんでレシピ構築したという、錬金粘土のレシピをソフィーは受け取る。

「これから更にソフィーと煮詰めて……完成する事も出来るかと思います」

プラフタはそう話しながら、パタパタと錬金釜の側へと戻る。

「おお~……朝イチで鍛冶屋に行って来ますけど、その後にでも、早速取り掛かりますね!」

ソフィーはガッツポーズする。

「頼んだぞ。その素材が無くては、人形作りに取り掛かれないからな。出来たら出来次第、持ってきてくれ」

そう言うと、フリッツさんは帰ろうと、踵を返す。

 

「あ、あたしもこれから鍛冶屋に行くので、広場まで一緒に行きましょう」

「そうか……」

ソフィーとフリッツさんで、一緒に山を降りる。

「それと……人形のネジ巻きが必要になるかと思うのだ……以前、自立行動する人形を作った事もあるが、魔法のネジ巻きと言う道具が必要となった」

「……自立行動する人形……作った事があるんですか?」

「マナの柱の力を使えば、人形は命を持てるからな。ソフィーのアトリエのマナの柱も、オリジナルならば尚更、その技を持っているだろう。だが……命を持つ、では駄目なのだ。プラフタの魂の器となるのであればな……」

そう話した所で、鍛冶屋に着いた。

フリッツさんは、折角だから、と壺屋で朝食にするみたいで、別れた。

 

 

「ロジーさん!おはようございます!」

鍛冶屋に行くと、既にオスカーが待っていた。

「フローリッシュハート、出来てるぞ。今日はオスカーの武器……武器というか、シャベルだな……」

ソフィーはまた、昨日の内に準備しておいた素材を並べる。

「よし、また夕方には出来るからな」

ロジーさんは微笑む。

オスカーと相談しつつ、完成させる新しいシャベル……

ソフィーは錬金粘土を作るべく、アトリエに戻る。

 

 

「お腹減ったぁ~……」

ソフィーはアトリエに帰る。

「おかえりなさい、ソフィー」

プラフタがパタパタとお出迎え。

窓際で本を読んでいたみたいだった。

「さて、錬金粘土……作るよ!」

ソフィーはやる気満々で、錬金釜へと向かう。

「マナの柱との親和性の高い粘土であり、熱を加えると鉄のように固くなり……それでいて加工難易度は低い……これはかなり難しい調合になりますよ」

「……確かに……じゃあ、先にご飯にしようかな……」

「それがいいですね」

ソフィーはそうして、プラフタと過ごす。

 

 

錬金粘土の仕込み。

浸け置き9時間……

「これで上手く行くハズ!」

ソフィーは錬金釜を見つめる。

「上手く行くハズですね。本当に人間の姿になれるのかと……そう思ってしまうと、私もワクワクしますね……」

「……可愛い人形になるのかなぁ……どんな人形が出来上がるんだろうなぁ……プラフタ見てきたんでしょ?」

「設計図なので……ですが思った以上に細部まで作り込まれた設計図でした。フリッツとは、とんでもない人形師だと、伺えました」

プラフタはそう言って、ソフィーは壁のソフィー人形を見る。

 

「……ソフィー……錬金粘土でふと思ったのですが……」

プラフタがパタパタと浮かび上がる。

「……どうしたの?」

 

「中和剤……ゼッテル……束ねた金糸……クロース……先見の水晶玉……錬金粘土……中和剤、で輪が出来ましたね」

「輪?」

「特性を移して増やして重ねて……中和剤に戻れるのです」

「おお~!特性研究捗るね!……でもそれ……何時間掛かるんだろ……」

 

ソフィーは図鑑を眺める。

中和剤1時間、ゼッテル6時間、束ねた金糸3時間、クロース3時間、先見の水晶玉6時間、錬金粘土9時間、中和剤1時間……

 

「29時間……!」

「まあ、形になれば中断できますからね。特性を重ねて、装備に移せば……より濃い恩恵を味方に出来ます」

「なんか……師匠!やっぱ流石です師匠!」

ソフィーはプラフタに抱きつこうと、飛び掛かる。

「ちょっ!やめなさい!また折れますから!」

そんな追いかけっこがはじまった。

 

 

お昼過ぎ、コルちゃんがやって来た。

 

「コルちゃ~ん!」

アトリエに入るなり、ソフィーに抱きつかれる。

「おおぅ!?ど、どうしましたソフィーさん?」

「特性研究にとんでもない光がね!」

ソフィーはそう言いながら、喜びに任せて抱き締めて、うねうねする。

「ふう……コルネリアが来てくれて、助かりました……」

プラフタは追いかけ回された疲れからか、ベッドに落ちて横たわった。

 

「あうあう……良く分かりませんが、ソフィーさんが嬉しそうで何よりです」

コルちゃんはされるがまま、うねうねされて呟く。

 

 

コルちゃんも帰って19時、錬金粘土を仕上げて、特性を考え出した時、ジュリオさんとモニカ、オスカーが来た。

「出来上がったシャベルを見せに来た所、ジュリオさんとモニカに会ってなぁ……」

「いらっしゃい、今お茶入れますね♪」

モニカをぷにちゃんの部屋に通す為、アトリエ前のテーブルにジュリオさんとオスカーは座る。

「ソフィーにこれを渡しておくよ。魂を移す道具のレシピだね」

ソフィーがテーブルにお茶を並べると、ジュリオさんは古びた本をくれた。

 

「ほおぉ……プラフタはアトリエの中だから、後でじっくり見る事にしますね」

ソフィーは本を膝に置く。

星空の綺麗な夜……

少し涼しい風が吹いた。

 

「でもさ、知り合いの錬金術士ってどこに居るんだい?キルヘンベルから遠い場所……でもそんなに離れていない場所だろ?」

オスカーが尋ねる。

「今回は月と太陽の原野まで出て来ていたから、早くに会えたんだよ。あそこより少し深い所に住んでる人なんだ」

 

「……てことは……その錬金術士の知り合いって……お化け!?」

ソフィーは言う。

死神君とかゴースト的な感じの魔物が、ソフィーの錬金コートを着てる感じ……

そんなイメージが湧いた。

「なんでそうなるんだい?……でもソフィー的にはお化けの巣だもんな、あそこ」

片方の眉を上げて、オスカーは笑う。

「まあ……キルヘンベルに来れない理由が、魔物になる発作があると言っていたからね。お化け、というのも全くのハズレじゃないかも知れないな」

ジュリオさんは、お茶を飲みながら言う。

「……なんか、本当に魂を移せそうな……そんな方なんですね……」

 

「お待たせー♪」

モニカがアトリエから出て来た。

「ああ、じゃあ確かに渡したからね。明日は種の日だから……人形劇の日だね」

モニカとジュリオさんは帰って行く。

 

「オスカー、もう夕食食べた?」

ソフィーはオスカーを見る。

「いや、食べてないよ。一緒に食べようと思って来たからな」

「えへへ、だよね!」

ソフィーはオスカーとお茶の片付けをして、アトリエに入る。

 

「プラフタ~♪これ、魂を移す道具の本だって。ジュリオさんから貰ったんだ」

ソフィーは古びた本をプラフタに見せる。

「どれどれ……」

ソフィーとプラフタで本を眺める。

……こうなると長いんだよなぁ……

とオスカーは思う。

 

「魂結いの石……核となる素材が未知のものですね。これではレシピ構築しようもありません」

「確かに……魂結いの石……それを調べる所からだねぇ……」

「纏めたい特性の束ねた金糸を仕込む、その予定通りですね」

「よし!オスカー、夕食にしようっ!」

 

……長くならなくて、オスカーはほっとする。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[キルヘンミルクスネーク]
白い蛇。近くの森を駆け回る日々。
[ウメさん]
アトリエ前の井戸の傍によく居るおばあちゃん。

[ブレスト]
メーベルト農場~キルヘンベルに往復するミルク納品の馬車の馬。でっかい!
[マレフ]
メーベルト農場~キルヘンベルに往復するミルク納品の馬車の馬。ブレストよりは、ちょこっとだけ小さい。
[ロザリ]
メーベルト農場~キルヘンベルに往復するミルク納品の馬車の馬。マレフよりも更にちょこっとだけ小さい。

[水の匂い]
オスカーだけが分かる匂い。この匂いの時点で大丈夫な水なのか、ダメなのかが8割くらい分かるとか。

[砂の宝貝]
てのひらより少し大きい貝。中はそこそこの大きさ。万に1つ、宝石を抱えているのだとか。
[大爆発砂ガマの穂]
油を仕込んで火を付けると、大爆発するらしい。油を仕込まなければ、なかなか燃えない不思議な穂。

[ぷにちゃん]
黒いのか、白いのか、青いのか……おじいさんなのか女の子なのか……不思議の源。
[エロエロ]
気持ち良くて刺激的。


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錬金術のアトリエ 30

錬金術のアトリエ 30

 

「朝ですよ、ソフィー……」

種の日の朝。

プラフタはソフィーを起こす。

あまり根を詰めても良くないから、オスカーとのラブラブに絞って寝る事になったので、プラフタもゆっくりしていただけだ。

 

「ん~っ!はうぅ……」

ハダカ族のソフィーとオスカーは起き出す。

昨日は特に絡む事もなく、イチャイチャして眠った感じ。

足取りもしっかりさんだ。

「おお!びよんびよんだな……」

オスカーは、朝勃ちのちんちんを指で左右に揺らす。

「あははっ!も~っ!オスカーケダモノなんだから~っ♪」

ソフィーはハダカ族のまま、錬金釜の方へと逃げて来た。

「……これ、なんでだろうな?オイラすっげえ冷静なのに、こうなってる時って不思議なんだよなぁ……」

オスカーはいつものおとぼけボイスで、ちんちんみつめながら、のそのそ歩く。

「オスカーは、早く服を着て下さい!私も居るのですよ!」

 

プラフタは、ソフィーの近くをパタパタする。

プラフタ的にも慣れてきた感じはあるけれど。

「お……おお、そう言われてみればそうだな……」

オスカーは、のそのそと暖炉前へと行く。

「ソフィーも、服を着て下さい……」

「え、えへへ……」

2人は服を着る。

 

 

「じゃあ、出発~!」

ソフィーは、もふもふモフコットに包んだプラフタを抱えて、オスカーとアトリエを出る。

そして、アトリエに鍵を掛けた。

 

「なんか、赤ちゃん抱いてるみたいだよね~……」

そして歩き出す山を降りる道。

ソフィーは呟く。

「……それはプラフタに失礼じゃないか?錬金術の師匠なんだろ?」

オスカーが周りの木々を眺めながら呟く。

「オスカーの方が、そういう所を弁えているようですね。ソフィーはそういう、思った事を考えなしに言ってしまう所が良くありません……」

「うう……」

プラフタに怒られながら、広場へと向かう。

 

 

朝のお祈りの時間、賑わうヴァルム教会。

ソフィーとオスカーは噴水広場でお祈りをする。

モニカも歌う聖歌が聞こえてきて、ソフィーは目を閉じる。

……やっぱりモニカ、歌声いいよなぁ……

そんな事を思いながら、お祈りの時間を過ごす。

 

 

そして噴水端会議。

ハロルさんやらレオンさんやらマルグリットさんやら……

皆集まって、わいわいする時間……

ロジーさんとコルちゃんは、職人さんの集まりの方に居たり。

「こんなに賑やかなのですね」

プラフタがそう呟く。

思い思いに語らう人々の時間。

その後に、人形劇の時間がある。

お祈りの時間のすぐ後に人形劇をしたのは、最初の1回だけだったのだ。

 

 

エリーゼお姉ちゃんとパメラがやる、子供向けの人形劇に、ソフィーとオスカー、コルちゃんは演じる側で参加する。

噴水広場の北側、南側で人形劇が2つあった。

 

エリーゼお姉ちゃんは北側の人形劇。

南側は、芸人師匠と弟子、自警団のお兄さんと一流冒険者が演じているけど、芸人の芸とかもあり、職人さんやおばさんに人気だった。

……むしろ南側のが賑わっている……

 

 

そんなこんなでお昼。

カフェごはんして、錬金粘土をコルちゃん露店に登録して……

明日は旅に行く事を伝える。

 

そしてフリッツさんに錬金粘土を届けないと……

と、エリーゼお姉ちゃんと一緒に歩き、また教会前、噴水広場にさしかかる。

北側の人形劇は午前だけ。

南側の人形劇は午後もやっていた。

……人形劇ではないけど……

笑いを取りまくっていて、コルちゃんはそっちで楽しんでいる。

錬金荷車1号は、相変わらず飲み物を売っていたり、お酒を出していたり。

賑やかなキルヘンベルだ。

 

 

そしてフリッツさんの屋敷に。

お昼も一緒だった、エリーゼお姉ちゃんと一緒に歩く。

エリーゼお姉ちゃんはカフェで買い求めた、フリッツさんの分の食事も携えて……

「エリーゼは、フリッツと仲がいいのですか?」

プラフタが尋ねる。

「人形劇の打ち合わせとかするじゃない?食事もせずに人形に打ち込んでるのよね……それで食べ物くらい差し入れてあげないと……ってだけよ?ソフィーは?」

エリーゼお姉ちゃんはそう話す。

「あたしは、この錬金粘土を届けに行くんです。プラフタの人形を作るのに、この素材が必要なんですよ!」

ソフィーは背中の鞄いっぱいの錬金粘土を、エリーゼお姉ちゃんに見せる。

1個でこのサイズなのだ。

でっかい!

 

ともかく、フリッツの住む民家に入る。

広場に現れなかったフリッツさんは、なんか沢山の紙に更に書き加えていた。

「ふう……あまり包まれているのも、落ち着かなくなるものですね」

プラフタがパタパタと浮かび上がる。

「おお、プラフタにエリーゼ、それにソフィーか。頼んだ物は出来上がったのかな?」

「バッチリ!これです!もうコルちゃん露店にも登録してきました!」

ソフィーは錬金粘土を鞄から取り出す。

 

「ほほう……」

「フリッツ、エリーゼから食事のお届けもありますよ。まずは食べないと悪くなってしまいますよ?」

プラフタが、パタパタとフリッツさんの目の前を飛ぶ。

「あ、ああ……これはありがたい。どうにも目の前に仕事があると……まあ、いつもの口上だな」

フリッツさんは、プラフタに促されて……

まず食事を取る事にした。

錬金粘土を渡したら、また食事を忘れるのだろうから………

「それと、明日は旅に行く予定なんですけれど、フリッツさんはどうします?」

「ふむ、錬金荷車2号で眠る事をアテにさせて貰って、ついて行く事としたいが……勿論、それでもいいのなら……だな。いや、魔法のねじまきの話をハロル君にせねばならんな……是非とも行かねばだ」

 

フリッツさんはそう答える。

まあ……大部分の時間は移動なので、寝ていて問題ないけれど……

「じゃあ、また誘いに来ますね!」

ソフィーは元気よく言う。

「すまん!助かる。その変わり、プラフタの人形は任せてくれ。君達の期待以上のものを作り上げてやる」

フリッツさんは自信満々に微笑んだ。

「はい、楽しみに待ってますね!」

そしてソフィーはフリッツさんの屋敷を出ようとして……

もふもふモフコットを手にする。

「プラフタ、どうする?エリーゼお姉ちゃんの所に行く?」

「今日は特性を詰めた装飾品などを、見守らねばなりません。帰ります」

プラフタはソフィーの手の、もふもふモフコットに着地すると、横たわる。

「じゃ!またアトリエに帰るね、エリーゼお姉ちゃん、フリッツさん」

そうして、ソフィーは元気良くアトリエに向かう。

 

 

「ソフィーも……楽しみつつ、色々と忙しいのですねぇ……」

プラフタを抱えて帰る道、プラフタは呟く。

広場には、まだコルちゃんが南側で人形劇をしていた。

ソフィーは後ろ髪を引かれながらも、足を止めずに、アトリエへと向かう。

「ダークマターしか作れなかった時は、そうじゃなかったんだけど……これもぷにちゃんとプラフタのおかげかな!」

そうして歩いていると、後ろからコルちゃんが来た。

「ふふふ、アトリエが閉まってると思いまして、ソフィーさんが通りかかるのを待っていました」

「また特性研究……忙しくなるね!コルちゃんも錬金粘土は、増やしづらいんじゃない?」

「あれは厄介ですね。ですが……なんとか都合するです」

コルちゃんは、ネコの目で笑う。

「さすがコルちゃん露店店主!」

「明日は旅に出るです?」

「うん、なんか小悪魔討伐の依頼がね、結構あるみたい。だからそんな突っ込んだ場所じゃないと思うけど……」

「それは楽しみです。ちょっと旅のお休みが長かったもので」

そう話しながら、アトリエへと帰る。

 

 

そして錬金術生活……

「全能の力」の特性を纏めた所で双葉の日……

朝になった。旅立ちの朝だ。

 

「よ~し、行ってくるね!プラフタ!」

ソフィーは朝の暗いうちからアトリエを出る。

フリッツさんの所に寄って行かないとだし……

ソフィーは、爽やかな夜明けのキルヘンベルの景色を眺めながら歩く。

まさに今、夜が朝になってゆく。

そして晴れたいい天気なのだ。

 

「キルヘンベルの……夜明けぜよ……」

ソフィーがそう呟く時、丁度モニカが居る場所……

広場の前だった。

「……なにそれ?」

モニカがメガネをくいっ、と上げる。

「え?えへへ、なんとなく、ね!ちょっとフリッツさんを呼んでからカフェに行くね!」

ソフィーは、そそくさとフリッツさんの屋敷に向かう。

 

 

そして皆で集まるカフェ。

それぞれホルストさんのモーニングを食べる。

 

「青葉の丘に小悪魔の儀式……それに大星魚の討伐……結構遠くなるね、ソフィー」

ジュリオさんとソフィー、モニカで依頼の相談をする。

行き先はジュリオさんとソフィーにお任せで、コルちゃんもフリッツさんもレオンさんも、ホルストさんから離れたテーブルで食事していたりする。

 

「遠くに行かないとパワー素材ってないから……遠ければ遠い程アツいけど……魔物もパワフルになるんですよねぇ……」

色々とあーでもないこーでもないして……

結構、東の方角……

静寂の湖畔を目的地とした。

大星魚の討伐だ。

 

そしてアポステルの儀式……

アポステル討伐は青葉の丘……

黒プニ天国の洞窟がある場所だけど、今回は洞窟の外だ。

錬金荷車2号と、ソフィー達はキルヘンベルを出て旅に向かう……

 

 

「ふふふ。見てくださいこれ!あたしの新しい武器を!」

旅の道、ソフィーは荷車を引くレオンさんにフローリッシュハートを見せる。

「へぇ……いつまであの杖なのかしら?とは思っていたけれど、遂に新しくしたのねぇ~……」

「とはいえ、ちょっと急いで作り過ぎた感じがありまして……もっと良い特性が出たから……また作り直しになっちゃうんですよね……」

 

「全能力ブースト」「攻撃力ブースト」

……と付けている武器だけど、フローリッシュハート作った後に「全能の力」を発見してしまい、悔いの残る1品となってしまった。

「どれどれ、斧みたいな作りだな………」

ハロルさんがその杖を見て、ソフィーの所へ寄って来た。

そして手を出すので、ソフィーはフローリッシュハートを渡す。

「そうなんですよ……強そうでしょ?」

「ふん……軽いし、しっかりした作りだな……これをロジックスで作ったのか?」

「はい!ロジーさんに作って貰いました!」

「レオン……ちょっと荷車変わろう」

 

ハロルさんはレオンさんにフローリッシュハートを渡し、荷車を引く。

今度はレオンさんがフローリッシュハートを眺める。

「いい出来だわ……まだ拙い所はあるけど、ここまで出来るなら、鍛冶屋としては一流じゃないかしら」

そしてソフィーにフローリッシュハートを返す。

「オスカーのシャベルも作ったんですよ!ねっ!……て……あれ?」

ソフィーはオスカーを探す。

相変わらず1人離れて、植物に挨拶回りしていた。

 

 

巡礼街道を抜けて、メーベルト農場へと向かう道。

フリッツさんは、人形の両手の設計図と材料だけは持ち込んでいて、眠ったり人形の手を作っていたり……

「……これは……なんと美しい手なのでしょうか……」

コルちゃんが、その手を見て呟く。

「まだ荒く削り出しただけだがな……女性の手だからな……まだまだこれから……ふふふ」

そんなお昼の野営。

ものの1時間、荷車が止まった時間にしか作業をしていないのに、フリッツさんの仕事は早い。

 

お昼の野営が終わり、また荷車を動かして移動になると、2階で眠っていた。

 

 

「なんか、ああして寝られるとダメ親父な感じがあるわねぇ……」

荷車を引くジュリオさんに、レオンさんがこぼす。

「確かにそうだね。でも、フリッツさんはそれだけプラフタの人形の事を、まっすぐに考えているんだろうね……」

ジュリオさんは、そう言って微笑む。

「すっごく頼もしいですよね!」

荷車1階から、ソフィーが顔を出す。

「おデブちゃんも、まっすぐに考えているわよねぇ……」

レオンさんは、またも離れて植物に挨拶回りしているオスカーを見る。

「あははっ!そうですね!」

笑って、ソフィーもオスカーを見る。

 

 

そしてメーベルト農場から有閑広場へ……

森の中の街道に、夜に突っ込む。

しかも雨が降り出した。

モニカが荷車を引いて、ジュリオさんも荷車の1階に乗せられて……

「ジュリオさんを休めるべく、バッチリ捕まえておくです!」

そんなジュリオさんに、コルちゃんとソフィーがしがみつく。

「あたしも!だからモニカ頑張って!」

「……もう逃げないから離れてくれないかな……」

荷車の横で歩くハロルさんは、時折銃を眺めながら歩く。

むしろ雨の中を歩き、それでも銃が使えるのか、そこを研究したいそうだ。

 

……なんだかんだでハロルさんも、荷車乗らない派だった。

「なんか、皆元気よねぇ……」

荷車の横、反対側をレオンさんが歩く。

 

 

そして静寂の湖畔……

24時の到着となった。

雨は長く続いていて、もうずぶ濡れだったり……

 

「静寂の湖畔!ここに来れるなんて夢でも見てるみたいだ!ダラダラの木!フジフェアリー!アカシアモドキ!巨大な生きる宝箱の中に居るみたいなものだからなぁ!は~っ!はっ!はっ!」

少し離れた場所で、ずぶ濡れオスカーは生き生きと駆け回る。

「……あの倅、いつ活動を停止するんだ?」

ずぶ濡れのハロルさんが、嫌そうな顔で言う。

「あはは……植物の無い場所だと、しおれて大人しくなりますけど……」

荷車2号の1階、ソフィーが顔を出す。

コルちゃんとジュリオさんは眠っていた。

「……じゃあ、ずっとあの調子なのか……」

「時折、目触りよねぇ……」

ずぶ濡れでも涼やかなレオンさんも、ハロルさんみたいに嫌そうな顔をする。

「そうなんですよねぇ……」

そこに荷車を引く、ずぶ濡れモニカも加わった。

 

 

「夕食にしようよ……コイツでさ!」

なんかソフィーの顔くらいの大きさの種?

……を、拾って来る。

やたら遅い晩ごはんだけど、皆揃ってお腹減ってるし、街道を離れて静寂の湖畔に突撃する前に、野営にする。

 

「これは……なんなの?」

ソフィーが尋ねる。

「フジフェアリーの種だよ!沢山落ちてるけれど、ずっしりしてるヤツは珍しいんだよな。フジフェアリーって同じ名前の付いた虫が食べちゃうからな」

オスカーがそう言うと、ハロルさんが立ち上がる。

「コル助、レオン……サポートしてくれ……」

そして森へと消えて行った。

「え?何?何?」

ソフィーはオスカーと焚き火を見る。

フリッツさんは、相変わらず人形の手を削ったりしていた。

 

 

そしてハロルさん達が帰って来る。

でかいカマキリみたいなのを捕まえて来た。

……コルちゃんより少し小さいくらいなので、カマキリとしては凄く大きい。

「幻の珍味、フジフェアリー……捕まえて来たぞ……」

ハロルさんがフジフェアリーの首を掴み、高く持ち上げている。

巨大カマキリ、フジフェアリーは太い足をわさわさしてる。

「……珍味なの?」

動じないレオンさん。

ソフィーとモニカは、素早く距離を置く。

「すぐに食べられる物ではないが……」

 

ハロルさんとレオンさん、コルちゃんとオスカーでフジフェアリー(カマキリ)の調理も始めた。

 

 

そんな野営を過ごし、静寂の湖畔へと突撃する。

大星魚が居るという噂の場所……

そして入るとすぐに、それっぽい巨大な魚が陸に居る。

青い島魚的な……ちなみに島魚はきみどり色だ。

「……こんな所で暇そうにしてるのに、一体どこの誰が討伐依頼を出したんだ?」

ハロルさんが囁く。

大星魚は、水に向かって大アクビしてる……

そして目をぱちくりする。

ソフィー達はゆっくり慎重に近寄る。

 

……近寄る……

……近寄る……

……近寄る……

「なんか、触れるくらい近いんだけど……」

大星魚に気づかれないまま、触れる所まで来てしまった。

大星魚はどすんどすん、と跳ねたり、またアクビしたりしてる。

「バカか!お前!下がれ下がれ!」

そこまで近寄ったのはソフィーだけだったみたいで、少し離れた場所で皆して慌てていた。

「うぉぉぉ……ん~~♪」

そうこうしてると大星魚がそう鳴き出して、戦闘になる。

「うわぁぁ!」

「うわぁぁ!……はコッチの台詞だ!」

 

隊列を整えて戦闘になる。

「うぉぉぉ……ん~♪」

なんか嬉しそうな顔をして大星魚が跳び跳ねる。

バゴォォォォン!

ドゴォォォォン!

ドゴォォォォン!

地震が起きて、錬金荷車2号までダメージを受ける!

「なにこれぇぇぇ!」

「いいから黙らせるぞ!」

ハロルさんが銃を構える。

雨でずぶ濡れでも、いつも通りに使えてるみたいだった。

 

 

2回程地震を起こされるも、集中攻撃をしたら魚のヒレを落として水に帰って行った。

「はぁぁ~……びっくりした~……」

地震は凄いんだけど、パーティーの防御力が勝った。

銀いもパワーの回復が上回る。

「ああぁ……錬金荷車2号が……」

傾いた錬金荷車2号を見て、コルちゃんがため息をつく。

「車輪が、地面に埋まってるだけではないか?」

ハロルさんが埋まった車輪を持ち上げる。

別に壊れてもいないみたいだ。

 

「あ♪なんか見っけ♪」

ソフィーは、なんか煙を出してる砂利を見つける。

くすぶる鍛石を手に入れた。

「うぉぉぉ………ん~~♪」

また出てきた!

 

 

……3回目の大星魚を撃退して、パーティーは静寂の湖畔を後にする。

アポステルの儀式とやらにも行かないと……

それに何度でも「遊んで~♪」って感じで出てくるものだから、キリがない。

 

 

そして青葉の丘に戻る。

ジュリオさんが荷車を引いて、散々頑張っていたハロルさんとレオンさんは、仲良く荷車の1階で眠る。

荷車の左右を、ソフィーが、コルちゃんが歩く。

オスカーは、相変わらずだ……

 

 

途中で朝の野営をして、青葉の丘到着は12時だった。

赤プニがころころしてる。

「……悪魔の儀式だから……夜だよね?」

荷車を引くジュリオさんに、ソフィーは尋ねる。

「そうだね。しかし、晴れたねぇ……暑いくらいだよ……」

ジュリオさんは空を見て、眩しそうにする。

「夜まで時間を潰すのなら、こういう場所なら、サカサキノコを探すのがいいかな……」

いつの間にやらフリッツさんが、ソフィーの後ろに居た。

「うわあっ!」

さすがに驚くと、フリッツさんは微笑んだ。

 

フリッツさんの言う、サカサキノコ……

草花の葉っぱの裏にくっついている、キノコみたいな形の虫を探す。

先端がぬるぬるしていて、そのぬるぬるが強壮剤として強力なんだそうだ。

「ん?キノコみたいな形で先端がぬるぬるしてるの!?……恐ろしく卑猥な虫ねぇ……」

モニカは気づき、回りを見る。

「あははっ!ちんちんだよぉ!これ、ちんちん!」

ソフィーが見つけて笑い転げている。

「これはっ!はははははっ!うねうねするのは反則です!はははははっ!」

コルちゃんも大笑いして、そんな所をライトニングが襲い掛かって来る。

 

「気づかれたなら仕方ないな……」

フリッツさんとジュリオさん、ハロルさんですぐに隊列を組む。

ソフィーも参加して、ライトニングを倒す……

もはや格下の魔物だ……

そのまま、サカサキノコを探す。

先端のぬるぬるを小ビンに取って、虫は放す。

そこらじゅうの葉っぱの裏に居た。

カーエン石や峰綿花、気まぐれいちごもよく採れた。

 

そんな中、ウシガエルも見つける。

小さなツノがチャームポイントの、様々な色になれるカエル。

「大物です!大物です!」

コルちゃんが捕まえて、抱えて見せる。

コルちゃんと比較すると、尚のこと大きく見える。

「お腹♪お腹♪」

ソフィーが食いついて、ウシガエルのお腹をさする。

「ウゲッ……ウゲェェッ……ウゲッ、ウゲッ」

ウシガエルが鳴く。

「これは……モニカのおっぱい的な感じ!」

ソフィーはウシガエルのお腹に、そんな感想を漏らす。

「単に大きさ的に、そんな感じですね……」

コルちゃんも、それに乗っかる。

 

「しかし、本当に天真爛漫だな……あの2人は」

そんな2人を眺めて、フリッツさんが呟く。

「カエルがお似合いよねぇ……」

レオンさんも呟く。

ソフィーとコルちゃんは、そんな事はお構いなしに、ウシガエルのお腹に夢中だったり。

 

 

そして、穏やかな晩ごはんの野営……

そしてアポステルの儀式を叩く……

「なんか、寒くない?」

ソフィーが呟く。

なんだか足下から冷えるみたいな……

「ちょっと!何してるのよコイツ!」

レオンさんの足許から、アポステルがブリザードブレスを弱~く吐いてた。

 

今や格下の魔物……

危なげなく倒す。

「なんか……リスっぽくて可愛いですね……」

倒れたアポステルを、コルちゃんがつんつんする。

尻尾の宝石も綺麗な感じだ。

倒れたアポステルが気付いて、のそのそと動き出してコルちゃんから離れて行く姿は、なんだかネコっぽくて可愛い。

 

ソフィーとコルちゃんは、そんな倒れたアポステルへの追い討ちも忘れない。

「ふかふかです〜♪」

アポステルのお腹も、ふっくらやわらか。

「可愛いよね〜♪」

抱き上げてみたり。なでなでしてみたり。

そんなされるアポステルも、まんざらじゃない顔をしていたり。

それからもアポステル討伐は続く。

なんか飛んでるアポステルは狂暴なんだけど、飛んでいないのは穏やかな感じで、むしろ逃げていく。

「滅びたマナの柱から産まれる魔物……って……大星魚といい、アポステルといい、プニプニといい……可愛くない?」

モニカが呟く。

「ぷにちゃんも可愛いからかな……」

ソフィーも呟く。

ともかく、朝まで戦闘と採取をして、妖精の道標で帰る。

 

 

開花の日、晴れたキルヘンベルの早朝……

アトリエ前に帰って来た。

「さて、私はまたプラフタの身体を作らなくてはな……」

フリッツさんは仕事道具と、作りかけの両手を持って帰って行った。

……帰るの早い……

皆でその後ろ姿を見送る。

 

そして、いつものように解散して、ソフィーとモニカ、コルちゃんはアトリエに帰る。

 

 

「おかえりなさい。古本の補修も捗るそうで、エリーゼが寝ていますが……」

プラフタがそう言ってお出迎え。

コンテナの入り口は、ベッドとベッドの間にあるから……

寝ているエリーゼお姉ちゃんの真横を通って、素材を運び込むのだけど、エリーゼお姉ちゃんは起きなかった。

そして3人はぷにちゃんの部屋へと行く。

 

 

「おかえり~♪」

番人ぷにちゃん達が、わさわさと素材に、ソフィー達が脱ぐ服に取りつきながら、そう言う。

相変わらずのわっしょい具合だ。

「ただいま~……なんかゆっくり寝たい気分だよ……」

そしてぷにちゃんの部屋に入る。

「30時間あるね。まずはお疲れみたいだし、ゆっくりしてってね♪」

3人はぷにちゃんの中で眠る……

 

 

「ん~……はふぅ~……」

ソフィーが最初に起きた。

「おはよう♪なんかプラフタの人形を作ってるんだってね。ソフィー、夢にまで見てたよ」

ぷにちゃんがそう伝える。

「そうなの~?あ、ぷにちゃんにも伝えなきゃだったね?」

「まあ、結構伝わってるから大丈夫だけどね。でも魂空っぽで人形に力を与える……ってのはちょっと難しい注文なんだよねぇ……プラフタの魂を一旦私の所に……というのも無理だし……」

「そうなの?」

「まあ、人形が出来たら、私の所に入れておいて。フリッツさん……とやらの行動言動から察するに、それも工程に入ってるっぽいけどね♪」

「そうだったんだ………」

「ともかく、朝から元気に色々としたい事あるみたいだし、魂結いの石も探さないとね。忘れてるっぽいけど」

「ありがとう!実際に忘れてたなぁ……」

ソフィーは、ぷにちゃんの部屋を出る。

ソフィーが服を綺麗にする番人ぷにちゃん達を眺めていると、コルちゃんが、モニカが出てくる。

 

「魂結いの石の話の事、聞いて回らないとだったんだけど……モニカ、コルちゃん、何か知ってる?」

ソフィーは、ただ服を眺めてるだけの時間に、コルちゃんとモニカに聞いてみる。

「私は聞いた事もないのですが、ロジーさんは石マニア……賢者の石からさざれ石まで、結構詳しいみたいですから……聞いてみましょう」

コルちゃんがそう言って胸を叩く。

ハダカ族だから、おっぱいが揺れた。

「賢者の石……は究極の錬金術だよね!?さざれ石??それは何?」

番人ぷにちゃんの1つを抱き締めて、ソフィーは尋ねる。

抱かれてる番人ぷにちゃんは、ぴょこんをぴょこぴょこしてる。

「私も知らないけど、きっと凄い石からくだらない石までって事でしょうから……くだらない側の石ね」

ハダカ族モニカは、棚に並ぶ蒼剛石を眺めて、そう言って笑う。

「モニカさん、惜しいです。貴重な石からありふれた石まで……という感じです」

コルちゃんも、モニカの眺める蒼剛石を見る。

採取した時は結構汚れてたりするんだけど、番人ぷにちゃん達が汚れを食べ尽くして、ピッカピカになってる。

「さざれ石ってありふれてるの?」

モニカは蒼剛石達を撫でて歩く。

「土とか埃みたいなのが固まった石で、アトリエ前にもたくさんあります。砂粒の大きいやつ、みたいな石なんです」

コルちゃんは隣のカーエン石を撫でる。

いつも熱を持ってるカーエン石も、ここの棚に乗ると、ほんの少しあったかいだけになる。

 

「そんな名前があったんだ……」

ソフィーは、そんな2人を追いかけてみたり。

棚に並ぶ採取品を眺めてみたり。

「ロジーさんなら、魂結いの石も知ってるんじゃないかと」

コルちゃんは、ソフィーの抱いてる番人ぷにちゃんのぴょこぴょこに指を出して、ぺちぺちされてみたりしながら言う。

「知ってそうだね!」

ソフィーはぺちぺちされてるコルちゃんの指を見て、抱えてる番人ぷにちゃんをコルちゃんの胸に寄せる。

コルちゃんはすいっ、とかわした。

 

 

アトリエに戻り、コルちゃんとモニカは帰る。

エリーゼお姉ちゃんは寝ている……

「古本の直し、捗ってるみたいだね?」

テーブルの上に、少し開いて立つプラフタにソフィーは話し掛ける。

テーブルには、作業途中の本とクレヨン、蝋絵の具が置いてあったり。

「はい、ウメさんが頑張っていまして」

プラフタは飛び上がり、ソフィーの眺めている暖炉前のテーブルに向いた。

 

「まあ……錬金術生活するかな!何か仕込んでお出掛けして、ロジーさんに魂結いの石の話を聞かないといけないよね!」

ソフィーはくるり、と錬金釜に向いた。

 

「……今日は天気がいいですねぇ……」

プラフタが窓際をパタパタ飛ぶ。

……天気がいいからお散歩したい……

そんなソフィーの気持ちを見透かしているようだ。

 

 

コンコン……

とドアをノックされて、ウメさんがやって来た。

今日もアトリエで、古本の直しをする予定だったみたいで。

「いらっしゃい~♪」

1つ錬金釜に仕込み終えた所で、ソフィーが顔を出す。

「あらあらソフィーちゃん、またまた2日もどこに行ってたんだい?」

ウメさんはにこやかにそう言って、お辞儀をする。

ソフィーはウメさんを招き入れる。

「えへへ……今は冒険もしてまして……静寂の湖畔で大星魚討伐と、青葉の丘で小悪魔の討伐をしてました……」

ソフィーはお茶の準備をする。

どのみち3時間、待つ時間だし……

「なんか、ソフィーちゃんは野山を駆け回ってばっかりだねぇ……」

ウメさんは暖炉のテーブルに着く。

そして古い本を少し眺めて、置いた。

「エリーゼお姉ちゃん……起きないのかな?」

ソフィーは寝ているエリーゼお姉ちゃんの方を見る。

 

 

ウメさんが古本を眺めて、ソフィーとプラフタとおしゃべりしていると、エリーゼお姉ちゃんも起きた。

賑やかな朝食になる。

「誰かと一緒の食事って、いいですよね~♪」

遠くの森で採れた土いもの煮物を前に、ソフィーは能天気に笑う。

「なんか、夜遅くまで頑張っちゃって……プラフタに誘われるまま生活しちゃったけど、いいのかしら……」

エリーゼお姉ちゃんも、煮物を前にそう話す。

「寄りつかなかった頃よりも、全然いいよお姉ちゃん。ダークマターのアトリエの頃なんて……オスカーしか来てくれなかったもんなぁ……」

ソフィーはそう話し、笑う。

「あたしも、あの臭いは苦手だったわぁ……」

ウメさんも苦笑いして見せる。

 

そんな話をして過ごす朝食。

そして、なんか今日はソフィーが居る、という事で、エリーゼお姉ちゃんは古い本とか、道具を纏めて帰る。

ウメさんも帰って行った。

 

そして錬金術生活。

お昼を過ぎた頃にコルちゃんがやって来た。

「ソフィーさん、魂結いの石の在処は……山師の水辺だったみたいですけど……20年に1度しか出てこないとかなんとか……」

コルちゃんがそう教えてくれた。

山師の水辺……

つい最近に行って水遊びしたけど……

つるつるの丸い石なんて、見掛けなかったけど……

 

「魂結いの石は、ダウジングロッドを使って探すと見つかるとか。ロジーさんが作ってくれますので、次の旅にでも、それで探しに行きましょう」

コルちゃんはそう言って、ぷにちゃんの部屋へと入る。

「なんか、トントン拍子に進むね!」

「ソフィー、キルヘンベルという場所は、頼りになる方々に恵まれていますね……」

「よ~し、今は全能パワー装飾品、作らないとね!」

錬金術生活は続く。

 

 

夕方、雨が降ってきて、雷まで鳴り出した。

ソフィーは錬金釜に向かい、次なる装飾品を仕込んでいる真っ最中、窓が稲光で光る。

ドドーン……

そんな雷の音も聞こえた。

「あーっ!」

「イキナリ叫ぶのですねソフィー、どうしました?」

「特性、3つ移せた!」

悪天候をものともせず、ソフィーは錬金釜かき混ぜ棒、人呼んでぐるこん棒を手に、勝利のポーズになる。

 

「なんと!あなたの錬金術は、本当に急成長しますね。ついこの前まで、山師の薬しか作れなかったとは思えない成長ぶりです」

「へへ~……プラフタの教え方が、なんかあたしの錬金術にピッタリなおかげだよぉ~」

錬金術生活は続く……

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ハダカ族]
産まれたままの姿……というと何か違和感があるけれど。赤ちゃんの事をハダカ族とは言わないし。

[もふもふモフコット]
ちょこっと調合品。もふもふ!

[北の人形劇]
ソフィーも楽しみにしている人形劇。パメラとエリーゼお姉ちゃん、子供達でやっていたり。
[南の人形劇]
コルちゃんが商売していたりする人形劇。芸人師匠と弟子が、切り盛りしてる。

[植物に挨拶回り]
旅のオスカーのいつもの行動。皆より余計に歩きまくって、食べられる物とかじゃんじゃん持って来るのに、不思議なくらい疲れない。

[ダラダラの木]
葉っぱがダラダラしてる木。キルヘンベルから離れないと、生えてない木。

[フジフェアリー]
紫の花がダラダラと吊り下がる様は、美しいの一言。なのだけど、この時期はもう実になっていたりする。

[アカシアモドキ]
白い花がダラダラと吊り下がる。花が食べられるみたいだけど、凄く蜂の巣だらけ。しかも狂暴な蜂が飛び回るので、危険な植物。

[フジフェアリー(カマキリ)]
フジフェアリーと共に生きる緑の巨大カマキリ。フジフェアリーの葉っぱに紛れると、どれがカマキリでどれが葉っぱか分からなくなる。

[サカサキノコ]
ちんちんみたいな芋虫。葉っぱの裏にくっついてぶら下がってる。
[ウシガエル]
牛みたいなツノを持つ大きめのカエル。ツノは柔らかい。

[ぷにちゃん]
魔力の源。植物とか動物にも影響を及ぼしていて、魔力のある世界とない世界では生態系も違う。
[番人ぷにちゃん達]
コンテナの番人達。ぴょこぴょこがぴょこぴょこするのが可愛い。

[古本の直し]
文字が掠れていたりする本。仕入れた時からこんな感じ。という物も多いんだって。
[クレヨン]
ちょこっと調合品。古本の直し用。
[蝋絵の具]
ちょこっと調合品。古本の直し用。

[ウメさん]
アトリエの前の井戸によく居る。お住まいは住宅区。

[土いもの煮物]
土いもの良さを味わえる1品。

[ダウジングロッド]
魂結いの石を寄せる、とも言われる2本のハリガネ。昔から伝わる製法でロジーさんが作ってくれた。何でも恐ろしく簡単な物なのだとか。


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錬金術のアトリエ 31

錬金術のアトリエ 31

 

果実の日、朝……

ソフィーの錬金術生活は続く。

 

「全能の力」「攻撃強化系なにか」「ダメージ還元系なにか」

と、3つの特性を持つシュタルメタル作成の為、その燃料となるゼッテルを目指す。

「なんか……特性特性で、ゼッテルばかり作ってるよねぇ……」

「特性を移せるとなると、ゼッテルは重宝しますからね」

ソフィーとプラフタは相談しつつ、錬金粘土を仕込む。

錬金粘土~中和剤(黄)~ゼッテルの流れだ。

そして中和剤(黄)の材料の錬金粘土は、錬金粘土なので完成まで9時間掛かる。

 

「ん~……朝になったし雨は上がったし……ちょっと出掛けてくるね♪」

「まあ……遅れぬように帰って来て下さい」

ソフィーはアトリエを出る。

 

 

「おはよう。ソフィーちゃん」

ウメさんが挨拶をして、ソフィーは足を止める。

「おはようございます。今日もエリーゼお姉ちゃんと、古本の補修するんですか?」

そう聞いてみる。

「いえね、アトリエを使うのは、ソフィーちゃんが出掛けてる日だけなのよ。だから暫くお休み。今日はね、もうちょっとここで過ごしたら帰るわ」

ウメさんは、そう話す。

エリーゼお姉ちゃんも、毎日古本の補修をしている訳でもないみたいだ。

 

 

「う~ん……またライデン鉱無かったっけ……」

ソフィーは山を降りる道で考える。

そして、ついでに鍛冶屋に向かう事にした。

シュタルメタルの材料であるライデン鉱が、また無くなって来てるのだ。

「おや、ソフィーさんではないですか」

アトリエの山を降りた所でコルちゃんに会った。

「あれ?朝からどうしたの?」

そう聞いてみる。

「……今日はお昼から、お得意様回りが忙しくなりそうですので……」

コルちゃんは口許を隠し、ネコの目で笑う。

そしてアトリエへと歩いて行った。

「……ふ~む、コルちゃんどんどん商人になって行くんだなぁ……」

ソフィーは感心しつつ、広場へと向かう。

 

 

鍛冶屋に行く前に、ソフィーはその隣、壺屋を眺める。

食事代くらいは、この手持ちで足りそうだし……

気付いたらお腹も減ったものだから、入ってみる。

「おはようございます~……」

朝早すぎたのか、お客さんは居ない。

アトリエよりも狭い店……

いや、同じくらい?

 

「いらっしゃい。こんな時間に……おや、錬金術士の……名前は何だっけか……」

薄暗い店の、更に薄暗い奥の方からオジサンが顔を出した。

「はい。ソフィーっていいます。お腹減って……今、やってます?」

薄暗い中のオジサンの顔に、ソフィーはちょこっと怯みつつ、聞いてみる。

「へへ、やってないけど、作るよ。珍しいお客さんだからね。芋は煮るかい?揚げるかい?焼くかい?」

オジサンは笑い、ソフィーは安心する。

悪いオジサンでは無さそうだ。

「揚げたのがいいです!」

アトリエではご法度の調理法、揚げを注文する。

「若い子はそうだね。ちょっと待っててな」

オジサンは奥へと消える。

ソフィーはテーブルの1つに着いた。

 

 

……ソフィー1人きりの寂しい店内で、しばらく待つとハロルさんが来た。

「お?ソフィーか。ここで会うなんて珍しいな?オヤジ、焼いてくれ」

ハロルさんもソフィーの席に着く。

奥から「あいよー」なんて返事が返って来た。

「なんとなく1回はこのお店、来てみたかったんですよ」

ソフィーはそう言って微笑む。

寂しい場所だから、ハロルさんが来てくれてほっとした。

「そうか。俺もプラフタのねじまき作りなんて頼まれてな、徹夜明けだ」

ハロルさんは嫌そうな顔をして呟く。

そして店の奥を眺める、遠い目をした。

「そうなんですか?」

ソフィーはそう尋ねる。

……そう言えば魔法のねじまきが必要とか……

言ってたような……

 

「お前は聞いてなかったのか?……まあ、フリッツのオヤジから、レオンに頼んで、俺に回って来たんだがな……」

「あはは、レオンさんに頼む所が上手いですね!」

「……全く、食えねえオヤジだ」

そんな風にハロルさんと話して食事をして、別れる。

凄く安い店だった。

 

 

その後はロジーさんの鍛冶屋へと行く。

すぐお隣だ。

「鍛冶屋ロジックス、注文はコルネリア露店で伺います」

……旅に出ているみたいだ。

 

果実の日の朝、コルちゃん露店は、コルちゃんクッキー☆でお酒を飲む職人さん、冒険者の人、自警団の人で賑わっている。

華やかな衣装の教会の女の子達が、忙しそうにしていた。

そんな中でも、ライデン鉱3つは、普通に買えた。

ロジーさんの売る鉱石も、委託販売してるそうで。

 

 

賑わうレオンさんの仕立屋、マルグリットさんの八百屋……

オスカーも今日は、お客さんを捌いていた。

ソフィーは、なんとなくカフェに行ってみる。

「お?いらっしゃ~い☆」

テスさんが微笑み掛ける。

お客さんは居るけど、こちらは落ち着いた感じだった。

「なんか、み~んなお酒飲んでて楽しそうなんですよねぇ……あたしもお酒下さいっ!」

ソフィーはテスさんとホルストさんに注文する。

「はっはっはっ、ダメです」

ホルストさんは笑って断った。

「ちぇ~……」

「まあまあ、最近はこの辺りで素晴らしいお茶が取れてまして……味で言うならこちらの方がソフィーに向いていますよ?」

キルヘンベル周辺の採取品が、人を呼ぶ。

それだけ魅力的な物が生えてくるだけあって、ホルストさんのカフェのお茶も、香り高いのが揃っている。

 

「え~……甘いの?」

ソフィーは聞いてみる。

苦いのはそんなに好きじゃないし……

「甘いのはハチミツですが、そこに良い香りが乗りまして、飲み慣れないお酒よりは、良い時間が過ごせますよ」

ホルストさんは笑顔で話す。

「じゃあ、そっちを下さいっ!」

ソフィーはカウンターに座る。

「少々お待ちを」

ソフィーはカウンターの、ちょっと背の高い椅子に座る。

「ソフィー、旅はどうなの?」

テスさんが尋ねる。

「今はちょ~っと装備不足で、足を伸ばすのは怖い感じなんですよね……今も作ってる所なんですけど~……」

 

そんなこんなで、ソフィーはカフェで楽しく、優雅な時間を過ごす。

……壺屋の代金より、カフェのお茶の代金の方が、全然高かった。

 

 

………

……そんなソフィーを、カフェ横広場でエリーゼは眺める。

なんか財布を見つめてため息をついてる……

みたいな後ろ姿は、教会広場へと向かって歩いて行った。

「今日はちょっと無理を言っちゃったかしらね……」

エリーゼは呟く。

八百屋にフリッツと一緒に食べるバスケットを注文して、待っているのだ。

そしてエリーゼは、持って来た本に視線を落とす。

 

「エリーゼさん、出来たよ。フリッツさんによろしくな」

そうして八百屋の忙しい中、オスカーがバスケットを持ってやって来た。

「今日は無理言っちゃったんじゃないかしら?なんか忙しそうだったのに」

エリーゼは、ずっしりしてるバスケットを受け取り、お代を渡しながらそう話す。

「忙しいのは慣れてるけどな。それよりもプラフタが人形とはいえ、人の姿で動き出すんだろ?……楽しみだよなぁ……」

オスカーはそう話すと、八百屋へと戻って行った。

エリーゼもバスケットを抱えて歩き出す。

 

 

「おお!これはまた助かるな!ならばここだけ仕上げてから食事にさせて頂こう」

エリーゼは、フリッツの屋敷にバスケットを届ける。

フリッツ1人では食べきれないものだから、エリーゼの朝食も、このバスケットにするつもりだ。

……うわぁ……

エリーゼはフリッツの作る人形を見る。

右の肩から肘……

その部分が作業台に乗っているのだけど、完全に人の身体の一部分にしか見えない……

それに机には、膝から下の右足、左足……

膝から上、太もも部分左右、臀部から腰にかけて……

そして胸から鎖骨辺り、と出来上がった……

のかは判断つかないけど……

出来上がりだと思われるのが、置かれている。

 

「さて、食事とさせて頂こうかな……」

エリーゼが人形のパーツに見とれていると、フリッツは立ち上がる。

「そ、そうですね。でも八百屋のオスカーが作るサンドイッチが、こんな美味しいなんて……先週初めて知りました……」

「ほう、まあ……旅先の食事は専ら彼が作るからな……」

 

人形の話、旅の話……

エリーゼはフリッツと食事をして、バスケットの中の冷えたお茶を飲む。

フリッツの食べる姿は、なんだか堂々としていて品があって……

思わず目が行く。

そして2人してあまり食べないものだから、半分も減らなかった。

 

「……まあ、昼も夜も食べられると考えれば……バスケットが冷えている、というのは有難いものだな……」

フリッツは苦笑いして、またエリーゼを本屋へと送った。

 

 

エリーゼは本屋へと帰る。

……冒険者も職人さんも、教会騎士の人に自警団の人……

果実の日は休日だから、本屋も賑わう。

そして更に明日は人形劇……

エリーゼの住むキルヘンベルも、賑やかになるものだ……

………

 

 

ともあれ果実の日は終わり、種の日……

 

 

「ふふふ、出来た~♪」

種の日の夕方……

ソフィーはシュタルメタルを取り出す。

「全能の力」「猛獣の力」「HP吸収」

と、特性を持たせたシュタルメタル。

これで作れば、壊れ性能の武器が出来上がる!

 

「全能の力」は、防具と装飾品にも付けられる!

錬金釜から取り出したシュタルメタルを手に、ソフィーは踊り出す。

「ふふふ……はーっはっはっ!……完成したぞ!」

「えーっ!?いつの間に!?」

アトリエのドアが開いて、フリッツさんが高笑いしていて、ソフィーは驚く。

 

「ソフィー……君も何かしら凄い物を完成させて喜んでいたようだが……これを見るがいい」

フリッツさんは外へ出る。

外には錬金荷車1号があり、その1階には、たるを抱えたコルちゃんが居た。

「今日はお昼に来れませんでしたので、今来ました」

コルちゃんは口許を隠してネコの目で微笑む。

「あ、そうなの?……そういえばお昼過ぎに来てないね」

思わずそんな世間話をする。

 

「それよりも、樽の中身だ」

フリッツさんは、たるを降ろす。

そして開けると……

「うわぁぁ!死体!?」

ソフィーは驚いて飛び退く。

コルちゃんは口許を隠しつつ、たるの中身を見つめていた。

「これは見事な……良く出来過ぎていて、まるで人の様です」

たるの3階だけが見えていて、そこにはたるの蓋を向いた人の顔があった。

ごろごろしないように、ふわふわクロースも詰まっていて、生首に見える。

 

「これ……これがプラフタの顔……」

飛び退いたソフィーがたるへと戻る。

アトリエのドアが開きっぱなしなので、プラフタもやって来た。

「これは……この髪は……」

そしてその頭部分は、髪に糸を使っていて、白髪が延び放題、みたいな感じで、怖い出来上がりなのだ。

 

「人形を動かす場合、最後にマナの柱の力を借りる事になる。髪はそこで完成するだろう。今はバラバラだがな、それを繋げるのもマナの柱で繋がる」

フリッツさんはそう言うと、アトリエの外テーブルに腰を下ろした。

「そ、そうなんですか……」

「ぷにちゃんはそんな事も出来るのですか?」

ソフィーとコルちゃんは、たるの中身を眺めながら話す。

 

「そこで、何かしら不足があるかも知れぬからな、1つ聞いてきて欲しいのだ。不足があれば、そこをまた作らねばならんからな。あと、魂は入れないように話して欲しい」

フリッツさんに言われて、ソフィーはフリッツさんにお茶を出し、コルちゃんとソフィー、たるでぷにちゃんの部屋へと入る。

 

 

ぷにちゃんの部屋に入るのだから、コンテナでハダカ族になる。

棚に置いた服に、食いしん坊な番人達が群がって来る。

 

たると共に扉を通る……

「ほほう……これが魂の器……か……布があるな……人形だけを……我に入れると……いい……あと残りは……14時間だな……」

ぷにちゃんは口を開ける。

コルちゃんとソフィーは、女体感生々しい、人形のパーツを入れて行く。

髪に使われている糸も、つるつるした謎の糸なので、大丈夫そうだし……

「おお~……!合体していくです……!」

コルちゃんは、ぷにちゃんの中で繋がって行くパーツを見つめる。

「うう……あたしには見えない……」

ソフィーには、ぷにちゃんが黒く見える為、中が見えない。

 

「不足か……動力維持に……相当する部分が……欠けている……それだけだ……」

ぷにちゃんは壁にその巨体を押し付けると、また中央に戻る。

壁には、全て繋がったプラフタ人形が、ハダカ族となって壁に寄りかかって立っている。

「え~!?もう繋がったの!?」

ソフィーは驚く。

しかも繋ぎ目みたいなのは無いのだ。

髪も紫がかった白に変わり、綺麗な髪となって腰の先まで伸びている。

 

……あんなに怖かった顔も、目を閉じている顔を見ると可愛くも知性的で、どこかあどけない……

そして整った顔だった。

「うわぁ~……美人さんです……」

コルちゃんも見とれている。

「ちょっと……こんな所まで良く出来てるよ」

ソフィーはプラフタ人形の股の所を、撫でて見つめる。

「おお~……こんな所まで美人さんです……」

コルちゃんもソフィーと並ぶ。

「命はまだ……入れていない……」

 

ぷにちゃんはそう言うと、人形の説明をする。

 

人形に、ぷにちゃんから命を吹き込むと、その人形が、命と魂を持てる。

ただ、魂を入れない、との注文なので命を吹き込む訳にも行かないそうだ。

命だけを持った人形は、ぷにちゃんの中ででも生き続けるのが困難なのだそうで。

それと、魔法のねじまきが、ぷにちゃんの外へ出ても生き続ける為の道具なのだそうだ。

そしてもう一度ぷにちゃんは、その巨体を壁に押し付け、人形は消えた。

ぷにちゃんの中に保存されるようだ。

 

 

コルちゃんはぷにちゃんの中で眠り、ソフィーとコルちゃんでアトリエへと戻る。

そして外で待つフリッツさんの所へ。

「ねじまき以外で足らない物は無かったか……ならば、後はハロル君のねじまきを待つかな」

フリッツさんはそう言うと、空っぽになったたると、コルちゃんを乗せた荷車1号と共に帰って行った。

そしてオスカーとすれ違って、オスカーがやって来た。

 

「オスカー♪」

ぷにちゃんの部屋でゆっくりしたばかりの、綺麗MAXのソフィーは手を振る。

 

 

「すっごい可愛かったんだから!」

オスカーの持って来た夕食を食べるテーブルで、ソフィーはオスカーとプラフタに、人形の話をする。

錬金釜には、もうしっかりとモノクログラスが仕込まれている。

12時間掛かるので、朝に出来上がり、それから旅立つ計画だ。

「そして明日は魂結いの石を探す為……山師の水辺かぁ……あの辺り楽しみだよな」

オスカーはそう呟くと、食事に視線を落とす。

「フリッツの手際……恐ろしく確かな人形師なのですね」

プラフタは、ソフィーの肩に乗ってそう話す。

「本当に、あんな人形を作っちゃうし、その上ぷにちゃんが命を吹き込むってのも知ってるんだもん。……凄すぎるよねぇ……」

ソフィーは食べる手を止めて話す。

オスカーはそんなソフィーを見て、もぐもぐしながら頷く。

「フリッツ自身も、マナの力を持っているようですし……」

「ジュリオさんと同じくらい強いんだよねぇ……ジュリオさんは防御に偏っていて、フリッツさんは早さと攻撃力が凄い感じかなぁ……」

 

そんな話をしながらの夕食。

そして夜は、オスカーとラブラブして眠る。

 

 

……双葉の日の朝……

「じゃあ、オイラ先に行ってるな?」

4時ぐらいにオスカーが帰る。

「……昨夜は随分と燃えてましたね……」

プラフタはパタパタと、ソフィーの近くへとやって来る。

「オスカーが上手いんだよねぇ……どんどん好きになってっちゃうもん」

ハダカ族のソフィーは、頬を染めながら呟く。

「私も……そうした経験をしていたのでしょうか?記憶が戻るのも怖い気がしますし、記憶が戻らないのも歯痒い思いですね……」

「ともかく、ぷにちゃんの部屋に行って来るね」

ソフィーはフラフラと、コンテナへと向かう。

 

 

モノクログラスの出来上がりが7時なので、ソフィーはちょっと遅れたカフェ到着になる。

そして朝7時にソフィーが出る時、ウメさんとエリーゼお姉ちゃんがアトリエにやって来た。

ソフィーが旅の時は、古本補修のアトリエになってるみたいで。

プラフタも退屈しないだろうし、安心出来る。

 

 

そしてカフェ到着は、ソフィーが最後だった。

ソフィーの希望は、オスカーが話してくれていたので、皆食事も終えて、依頼関係の話も終わっているみたいだった。

メーベルト農場小悪魔退治、朝凪のほとり温泉でリフレッシュしつつ依頼品。

そして山師の水辺で魂結いの石探し、海底の土採取と依頼品。

そこで天気が良ければ、水遊び!

そんな所まで計画されていた。完璧すぎる。

 

「さて、ソフィーはゆっくり食べてて。街の入り口にメーベルト農場の馬車が来てるから、僕らはそっちで待ってるから」

「今やソフィーの作る装備品に頼る所が大きいから、遅刻に文句も言いづらいわ。まあ、どのみちお馬さんの出発に合わせるから、いいんだけどね」

ジュリオさんとモニカに言われて、ソフィーは食事をする。

メーベルト農場に戻る馬車に合わせると、更に時間が掛かるので、結局ゆっくりだ。

コルちゃんとハロルさんは、いち早くブレストの所に居るみたいだし。

 

 

そして9時。

皆揃ってキルヘンベルを発つ。

「お前さん達、洒落た服なのに馬が好きだな」

馬車のおじさんはソフィーとコルちゃんにそう、声を掛ける。

ソフィーはロザリに嫌がられながらも、徐々に距離感を縮めて行く。

コルちゃんはブレストと仲良し。べったりだ。

レオンさんも、マレフに乗ってぽくぽく歩いてる。

「ロザリはどーして懐いてくれないかな~?」

ソフィーは色々と試行錯誤しながら歩く。

そんな旅の道。

 

 

メーベルト農場に到着は夕方。

おじさん達と馬車とはここで別れて、ソフィー達は小悪魔退治に黒の鍾乳洞へと入る。

「やっとロザリに触れるようになってきたよ~……」

ソフィーは呑気に呟く。

そして青キノコと蒼剛石、ころころしてるプニプニを総スルーして、ぼけ~……っとしてる小悪魔を叩く。

 

ガーゴイル……

もはや格下すぎる小悪魔を倒して、一行は黒の鍾乳洞を出る。その為だけに立ち寄った場所。

 

そして北へ続く街道を行く。山師の水辺へと行く道。

 

 

野営もしつつ、三つ子橋の泉に到着したのは夜中。

「じゃあ、今回は寄り道をしないとだね。朝凪のほとり、あの温泉の依頼品があるからね」

ジュリオさんが東へと舵を切る。

「温泉!臭いんですけどなんかスッキリするんですよねぇ~……」

ソフィーもその隣を歩く。

今回、魔法の荷車2号の2階は、疲れてるハロルさんが寝ていた。

 

 

そして朝凪のほとり……から更に逸れて、温泉には朝4時に到着。

「今日もお猿さん、居るでしょうか?」

コルちゃんが、早速服を脱いで水着に着替える。

今回もブレストと遊び過ぎて、馬臭いと評判だった。

「おお!?な、何するです!?」

ハダカ族になった所を、フリッツさんに捕まる。

「男を男と思わぬその行動、咎めずにはおけんな!」

「あははっ!はーっ!ダメです!そこはっ!あははっ!はーっ!はーっ!」

めっちゃくすぐられて、笑い転げるハダカのコルちゃん。

 

「1番乗り!」

「うふふ、温泉!また来たかったのよ!」

そのスキに着替えたソフィーとレオンさんが、温泉1番乗りを果たす。

 

 

何はともあれ、荷車を繋いで皆で温泉に浸かる。

相変わらずの臭いの中で、やっぱりお猿さんが居た。

「このお猿さん、また会えたです♪」

コルちゃんとモニカで、またあのイヤらしい顔をするお猿を挟んで温泉に入る。

「……あまりにムカつく顔をしてるな……この猿は……」

ハロルさんがその猿を見る。

水着のモニカのおっぱいに、手を入れてやがる。

「肩とかガッシリしてるです」

「本当ねぇ……首とかも筋肉なのかしら?皮が厚かったりするのかしら?」

2人は意に介さず、お猿の身体を探っていた。

どうやらお互い様で、ヨロシクやってるみたいだから、ハロルさんは2人から離れ、背中を向ける。

レオンさんとソフィーも、同じようにお猿と遊んでた。

 

「温泉……キルヘンベルにも作りたいなぁ……」

お猿を撫でて撫でられてしながら、ソフィーは呟く。

 

朝凪のほとりの採取生活。

それと、何度か温泉でゆっくりと過ごす。

朝になるとお猿はどこかへ行き、ウサギがやって来て、昼前になるとウサギはどこかへ行き、カラスが来た。

「……どいつもこいつも人に懐いてるのは、どうした事なんだろうか……」

フリッツさんが呟く。

すぐ後ろでカラスがお湯をバタバタしてる。

「だが、あの倅の所には寄り付かないのも不思議だな……」

頭にカラスが止まっているハロルさんも、呟く。

 

 

ともかく、朝凪のほとりにて依頼品を回収。

そして雨の中、三つ子橋の泉へと戻る。

 

 

そうして夕方に三つ子橋の泉、山師の水辺へと入る。

雨は長く続き、雷まで鳴り出した。

「ダウジングロッドで、魂結いの石を!見つけるよ!」

ソフィーはそう言うと、2本のハリガネをオスカーに渡す。

「……まあ、大体オイラが見つけるんだけどな……」

オスカーはダウジングロッドを構える。

 

「お?……こっちだ!」

早速、反応があってそちらへと向かう。

「なんかインチキ臭いハリガネだが、確かな物だったのか!?」

ずんずん進むオスカーとソフィーの後ろ姿を眺めて、ハロルさんは呟く。

「おデブちゃん、何でも見つけちゃうのねぇ……」

ソフィーはオスカーに続く。

その先には、島魚がぼよんぼよんしていて、アクビしてたりする。

「ん……?」

「こっちだ!……こっちだな……」

……ぷすっ……

オスカーの持つハリガネ2本が島魚に刺さる。

「……うぉぉぉぉ……んん……」

そして島魚がこちらに気付く。

 

「そのコントは、せねばならんのかな?」

フリッツさん達が戦陣を組んでいた。

 

今や格下……危なげなく島魚を撃退する。

「脅威となる魔物が居ない、というのも考え物だね」

ジュリオさんが苦笑いする。

「装備の加護が飛び抜けてるのよね。錬金術の装備が、ここまで強いなんて、初めて知ったわ……」

レオンさんもため息がちに話す。

確かに、特性で伸びる能力値とか、防御力が凄過ぎる感じはする。

今やフラム大先輩もレヘルン先生も、クラフト御前も出番が無いし。

ともかく、島魚の居た所に丸いつるつるの石があった。

 

「これが、魂結いの石……なのかな?」

ジュリオさんが石に気づいて拾い、眺める。

「ロジーさんの言う、石の特徴とピッタリですから……これが魂結いの石だと……思いますが……」

コルちゃんもその石を眺めて言う。

「島魚が持ってたのかしら?20年に1度見つかるとかいう話だったらしいけど、あっさり出てくるものなのね?」

魂結いの石を眺める2人に、モニカが呟く。

 

「さて、海底の土の依頼もあったから、それも採取しないとだね」

ジュリオさんはソフィーに石を渡すと、ここからの行動を話す。

……なんかスケジュール詰め込んでいた。

「海底の土に紛れて、魂結いの石も出てきたりするかも、なんて期待したんだけど、まあ一応気を付けて探しましょう」

レオンさんも、ある程度採取物が入った荷車を眺めて、言う。

 

「おー!粘土みたい……そして湖底の土と違って臭くないんだねぇ……」

止まない雷雨の中、ソフィー達はプニプニを撃退しつつ、採取作業をする。

「海底の土って粘土なのかな?」

手頃なカタマリを手に、ソフィーがジュリオさんに尋ねる。

「粘土部分しか、流れ着かないとか……ここに留まっていられない……という事じゃないかな」

ジュリオさんも土を掘りながら、そう話す。

 

「ふふ……虹フナムシ!」

コルちゃんは石をどけたり流木をどけたりして、巨大だんごむし……

虹フナムシを探していた。ハロルさんの入れ知恵で、この虹フナムシ……

美味しいらしい。

そして光の加減で、緑に見えたり赤く見えたりするので虹、と名前に付いてるそうだ。

「おー!タマゴ蛇が!釣れたぞ~っ!」

オスカーは頃合いの枝を拾ってあって……

それで釣りをしていた。この水辺に住むタマゴ蛇を釣り上げていたり……

そんな思い思いの採取生活。

 

 

そして山師の水辺、宝のみぎわ……

壊れた舟のある砂浜に差し掛かると、雨は止み、晴れて来た。

朝日が顔を出してくる、素敵な景色。

「来たからには!」

「泳ぐしかないです!」

コルちゃんが水着になるべく、服を脱ぐ。

「旅の醍醐味というやつなのだな……」

フリッツさんは虹フナムシの瓶を眺めて、そう呟いた。

「なんか、泳ぐのが好きなんだね……」

ジュリオさんも、瓶に入ったタマゴ蛇を眺めて、ソフィー達を一瞥して、そう呟いた。

 

「さて……この俺の泳ぎを見せる時が来たようだ……」

ハロルさんは水着に着替えていた。

と、いうか脱いだら水着だった。

そしてバチャバチャしてるソフィーとモニカ、コルちゃんにレオンさんをロックオンする。

「……ハロルさん、泳げたのかぁ~……まあ、キルヘンベルにも、川はあるからなぁ」

フリッツさんとジュリオさんと並び、オスカーもそんな水遊びを眺める。

ハロルさんは潜ると、すい~っと進み、コルちゃんを肩車して立ち上がる。

 

「おわぁ!」

肩車されたコルちゃんは驚き、モニカとソフィーも、髪で顔が隠れてるハロルさんに驚く。

楽しそうな水遊び風景。

 

 

例によってお昼まで過ごし、先へと進む。

沈黙の魔獣がまた居て……

だけど危なげなく倒す。

そしてその奥でハクレイ石を採取して、妖精の道標を使う。

 

 

アトリエに戻ったのは、15時……

キルヘンベルは雷雨だった。

「まあ……これほど雨に打たれる、というのも貴重な経験なんだろうな……」

ハロルさんが呟く。

雨に濡れるハロルさんも、お化けっぽくて怖い。

ともかく解散となり、ソフィーとモニカ、コルちゃんはアトリエに帰る。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ウメさん]
細かい書き仕事が好きみたいで、井戸に来る頻度も増えた。
[古本の補修]
エリーゼお姉ちゃんの本屋さんの本、薄くなっちゃってる部分も多いみたい。

[壺屋]
朝にもやってた。お昼は閉まるみたい。

[コルちゃんクッキー☆]
お酒に合う、おじさんに人気のクッキー☆

[バスケット]
遂に完成!八百屋、オスカー特製のサンドイッチバスケット。3人分くらいある。

[ハダカ族]
ぷにちゃんの部屋に入る時は、ハダカ族と決まっている。

[マナの柱]
この世界、地域の魔力の源。そこかしこにある。
[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエの地下にある、マナの柱。プラフタ人形の制作もしているけれど、不思議パワーは都合良くみんなぷにちゃんのせい、としてる。魔力発生装置だし、しかたないね。

[朝凪のほとり温泉]
あったかい泉で、お猿さん達が住んでる。腐ったタマゴ臭が凄い温泉でもある。

[ブレスト]
メーベルト農場~キルヘンベルを往復してる馬車のお馬。お年寄りみたいだけど、元気。
[マレフ]
メーベルト農場~キルヘンベルを往復してる馬車のお馬。キルヘンミルクとラーメル麦の粉を運んでいる。
[ロザリ]
メーベルト農場~キルヘンベルを往復してる馬車のお馬。気難しくて、なかなか懐いてくれない。

[お猿]
朝凪のほとり温泉に住むお猿さん集団の、ボス猿四天王(3匹)人懐っこい。可愛い。
[ウサギ]
朝凪のほとり温泉に、ウサギも出没。赤茶色のウサギ。
[カラス]
朝凪のほとり温泉に、カラスも住んでるみたい。魔物なんじゃないかと思うくらいでかいのも居るけど、側に来たのは子供のカラス?

[ダウジングロッド]
魂結いの石を探す為に、ロジーさんが用意してくれた2本のハリガネ。

レヘルン[先生]
氷の爆弾。魔物の動きも遅くする効果があったりなかったり。
クラフト[御前]
うに爆弾レベル2。範囲がめっちゃ広くなったりするみたい。

[虹フナムシ]
見る角度で色が変わる、湖畔に住む巨大ダンゴムシみたいな虫。
[タマゴ蛇]
頭から胸くらいまでめっちゃ膨らんでる、湖に住む蛇。背ビレも胸ビレも無いので、蛇なんだとか。エラ呼吸らしい。


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錬金術のアトリエ 32

錬金術のアトリエ 32

 

「なんか、粘土ばっかり拾って来てるのね……」

ソフィーとモニカ、コルちゃんで素材をコンテナに運び、棚に乗せて行く。

今回は湖底の土、海底の土、くすぶる鍛石ばかりが目についた。

余分を食べる為に、番人ぷにちゃん達は素材に群がる。

「この素材調達が楽しみなのよねぇ……色んな情報がごろごろ吸収されるもの」

番人ぷにちゃんは、服を脱ぐ3人にそう話す。

今回は女の子の人格のようだ。

 

そしてぷにちゃんの部屋へと入る。

「おかえり。残りは9時間あるね」

ぷにちゃんはそう言う。

コルちゃんが安定して日々消費してる、的な所がある。

ソフィーは調合の待ち時間、眠って時間をやり過ごす事が多いので、それほど消費していない。

 

モニカは……

と、コルちゃんとソフィーで考える。

そう言えば、先週帰ってから姿を見なかった気がする。

ジュリオさんも見かけなかった。

「これは……さてはモニカ……」

ぷにちゃんの中でソフィーが思う。

そしてモニカにしがみつく。

 

「ま……まあ……ソフィーが思う通りよ……なんか目一杯遊んでました……って言うのが申し訳ないけれど……」

モニカはその思いをぶつけられて、ジュリオさんとハダカ族で過ごした2日間を思い浮かべる。

ソフィーがオスカーと行った事もある、3階の王様部屋を2日借り切るという……

「え?ソフィーも行ったの?あそこ……」

モニカは、抱きついたソフィーの頬と、髪を撫でながら聞く。

「お昼に空いてる時に、オスカーが掃除のおばあちゃんに言って借りてたんだよね……」

ソフィーは、モニカのおっぱいに甘えながら答える。

 

「……これは……私もそこで過ごしてみたいです……!」

モニカの反対側のおっぱいに甘えるコルちゃんにも、その部屋の感じが伝わり、コルちゃんも考えて、だだもれる。

3人で仲良くうねうねしながら、色んな思惑を巡らせる。

「ん~……時間増やすマッサージしとく?」

ぷにちゃんに言われて、3人して頷く。

残り9時間じゃ、すぐなくなっちゃうし……

モニカのただれた2日間をサカナに、きゅんきゅんしとくのは悪くない。

 

 

……そして3人はエロエロして過ごして、ぷにちゃんの部屋を出る。

時間は大きく膨らみ、でもゆっくり眠り……

出てきた時は元気なんだけど、やたらとお腹が空いた。

「なんか……いつもよりもお腹ぺこぺこです……」

コンテナで服を着る時、コルちゃんが呟く。

「今……何時だっけ?」

モニカは考える。

かなり長い時間ハジケてたものだから、分からなくなる。

 

「もう……アトリエに出てみないと分からないね。きゅんきゅんしすぎたよぉ……でもモニカはジュリオさんとラブラブで、ジュリオさんもちゃ~んとモニカを好きみたいで安心したよ」

ぷにちゃんの部屋で、モニカのただれた2日間を存分に味わったソフィーが、呑気に言う。

それもモニカフィルターを通したものだけど……

 

「あんまり言わないでよ……複雑な思いで反省中なんだから……」

モニカはにやけた顔を、両手で隠しながらそう話した。

 

 

開花の日15時。

アトリエで時間を確認する。

……山師の水辺から帰ってきたばかりなんだった……

と、思い出す。

 

そして、ソフィーは錬金術生活。

モニカとコルちゃんは夕食の話をしながら帰って行く。

「さて……エリーゼお姉ちゃん、早くに帰ったんだっけ?」

ソフィーはプラフタに尋ねる。

「ええ、13時に、ウメとエリーゼは遅いお昼を食べながら帰る、と話して切り上げました」

プラフタはパタパタと飛ぶ。

ソフィーの旅が、最近は双葉の日の朝~開花の日の昼、と読み易いので、プラフタがそう案内しているそうだ。

 

双葉の日は、エリーゼお姉ちゃんとウメさんでアトリエに泊まって、蕾の日は、エリーゼお姉ちゃんは本屋に行ったりおでかけして、ウメさんは古本補修をひたすらしていて……

と、プラフタは退屈せずに過ごしていた話をした。

 

「それはともかく、魂結いの石ですね」

「そうそう!魂盟の針……ついにレシピ構築だよっ!」

「……その前に、ロジーに見せて来た方が良いのではないですか?それが本物かどうか、定かではないと話してませんでしたか?」

「さすがプラフタ!行って来るね!」

「ええ、行ってらっしゃい、ソフィー」

 

ソフィーはアトリエを出る。

……こんなだったら、モニカとコルちゃんと一緒に歩けば良かったなぁ……

と、思いながら。

 

 

「ふむ……」

フリッツさんが鍛冶屋に居た。

ソフィーの作った「全能の力」「猛獣の力」「HP吸収」シュタルメタルが登録されてる都合で、新しい剣の注文をしていたみたいで。

 

「結構バランスが難しいんですね……」

ロジーさんは、フリッツさんの双剣の設計図を手掛けてる所だった。

「……あたしのフローリッシュハートも……その金属でやり直さないとなんですよね……そう言えば……」

ソフィーが呟くと、フリッツさんもロジーさんも気付いた。

 

「ソフィーじゃないか。ライデン鉱は1個だけ入荷してるぞ」

「あ、じゃあ買います。それと、ロジーさんに魂結いの石を見てもらおうと思って来たんです」

ソフィーは魂結いの石を取り出す。

つるつるした丸い石。

「実物は見た事が無かったけれど、伝説の通りなんだな……こんなに丸いとは……」

 

そうして鍛冶屋で過ごす。

フリッツさんの剣と、魂結いの石を使った道具の話なんかをして、ソフィーは鍛冶屋を出る。

 

八百屋で夕食の買い物をして……アトリエへと帰る。

魂盟の針を作らなくては!

 

 

アトリエに帰ると、夕方……

ソフィーはプラフタと錬金釜に向かう。

魂盟の針作成に6時間……

色々と導き出して、錬金釜に仕込む。

そして夕食……

八百屋の新発売人気商品、マルグリットサンド(緑)を食べる。

「新作で人気商品なんだって!も~……食べながら来ようかと思うくらいお腹ぺこぺこだったよぉ~……」

「まあ……仕込みが終わればゆっくりですからね」

ソフィーはゆっくりと食事をする。

どのみち6時間過ごさないといけないし。

 

「プラフタ、モニカがね……」

その時間で、ソフィーはモニカの話をする。

ジュリオさんとハダカ族で過ごした2日間……

ソフィーもそんな2日間、過ごせたらいいなぁ……

と、無邪気に思ったりもして………

 

「生真面目なモニカとジュリオですから、1度集中したかった……とか、まとまって場所が取れた……とかそういう事なのではないですか?」

プラフタは答える。

「そうなのかな~……」

「ソフィーの場合、場所はある訳ですし、私が居ても憚らず集中出来るようですから……2日もあった所で、もて余してしまいますよ」

「もて余す……うん、もて余す自信ある!」

もて余してる時間に、ソフィーは王様の部屋で時間をもて余す2人を思う。

「……ん?プラフタも生真面目な性格だから……」

ソフィーはプラフタを見る。

 

「まあ……そうであったのかも知れませんけれど……記憶にはありませんね……」

パタパタしていたプラフタは、かくっ、となる。

「いや……プラフタの場合思い出しても、言わないと思うんだよね……」

ソフィーはジト目でにやける。

「そんな顔で私を見ないで頂けますか?」

「本当は思い出してるでしょ!」

「知りません!思い出したとしても、そんな過去はありません!」

ソフィーとプラフタの追いかけっこが始まる。

 

 

そして夜中に魂盟の針が出来上がる。

ソフィーとプラフタは早速、幽世の羅針盤のレシピ構築に入る。

「……ん?」

「……ふむ……」

レシピ構築の紙に色々と書き、ソフィーとプラフタは唸る。

「……これ、魂盟の針……1つじゃダメじゃん!?」

「これは……どうやってもそうなりますね」

どう組み立てても、4つ必要なのだ。

「コルちゃんに頼るしかないね……」

そんな訳で、「全能の力」「竜鱗の守り」「変異物質」の特性を移す錬金術に切り替える。

 

 

錬金術生活……

すぐに朝になって果実の日、ソフィーは朝からお出かけだ。

「……雨ですね……」

「まあ、すぐ止むと思うし、行って来るね」

魂盟の針を持って、ソフィーはアトリエを出る。

 

 

「ふむ……これはかなりの物ですね。複製が無理な物です」

雨なので少し寂しい、休日コルちゃん露店。

コルちゃんに一刀両断される。

「すると……魂を移す事を諦めるか……それとも……大昔に湧いたけど使われなかった、と思われる魂結いの石を探すか……」

ソフィーは考える。

 

「全く同じで無くても良ければ、量産出来ます。その劣化品でもなんとかなれば……と言う話なら、受けられます」

コルちゃんは魂盟の針を見つめて、言う。

「それで行こう!」

ソフィーは明るい顔をする。

「時間は掛かりますが、スペシャルな劣化品を作ってみます。なんとかなると良いのですが……」

時間は掛かるけど、ここはコルちゃんの出来上がりを見てから、どうするか決める事になった。

 

「おお、ソフィーにコルネリアではないか」

そんな話をしていると、フリッツさんに声を掛けられる。

「フリッツさん、おはようございます。今日はコルちゃん露店で飲む会とかですか?」

ソフィーは雨が弱くなり、地味に増えていくオジサン達を眺めて言う。

「ふむ……人形が取り敢えず完成した今、そうした息抜きも良いかも知れないな……だが、今日は武器の新調をしたくてな……ここでその原料となる金属を扱っていると聞いて来たのだ」

フリッツさんはそんな青空座席を眺めて、相変わらずの、落ち着いたナイスミドルボイスで話す。

「それなら、登録したのがあるハズですよ!ね、コルちゃん?」

「まだ増やしてないですが、1個ならあります」

 

コルちゃんは「全能の力」「野獣の力」「HP吸収」のシュタルメタルを取り出す。

「それ!それだよぉ~」

早速その1つを買って、フリッツさんの武器を作ろうという話になり、ソフィーも鍛冶屋へと行く事にした。

 

 

「ロジーさ~ん♪」

ソフィーとフリッツさんで訪れる、鍛冶屋ロジックス。

ロジーさんは既に数人の冒険者の注文を受けていた。

「ほう。閉まっている事が多いのだが、開いているとなると人気の店のようだな……」

フリッツさんは呟く。

「金属と、なんかそれ以外の材料も必要なんですよ。コルちゃん露店でリストもあるんですけど、見つけました?」

「ふむ、そうだったのか……それは気付かなかったな……」

フリッツさんは呟く。

ソフィーの前に並ぶ冒険者の方々も、金属はあれど他の材料は無かった……

そういう人も居るようで、次々に退散していく。

 

フリッツさんの剣も設計図が出来た所で、シュタルメタル、クプルフ鉱、何らかの粘土、何らかの布。

と要求される原料がある。

「クプルフ鉱は、青葉の黒プニ地獄産のが!粘土は山師の水辺産、海底の土が!布はコルちゃん露店登録品が、あります!」

 

ソフィーは、早速アトリエのコンテナに取りに帰る事に。

 

 

「……何だか手間を掛けてしまっているようだな……」

そんなソフィーを見送って、鍛冶屋に残るフリッツは呟く。

「あなたの活躍はコルネリアから聞いていますよ。物凄く強いんだとか………」

ロジーがそう話す。

「まあ、長年傭兵をしていたからな。だがソフィーのような人物に関わるのは初めての事だが」

「ソフィーのような?」

ロジーは尋ねる。ソフィーのイメージというと……

今ひとつロクなモノが無いのだけど、フリッツはさすがに、その時代は知らないだろうし……

 

「オスカーの影響があるのか何なのか……あれほど他者の為に走り回れる人物、というのは珍しいように見えるな」

「僕の鍛冶屋も、金属にはお世話になってますね。コルネリアの量産も、ソフィーの開発なしでは回らないそうですから」

「君もまた、冒険に出ているんだったな」

「ええ……」

2人はそんな世間話をしながらソフィーを待つ。

 

 

素材を届けて……ソフィーは鍛冶屋を出る。

後はフリッツさんの注文で、ロジーさんが武器を作る訳だし……

特性の注文だけしといたし……

雨上がりの晴れたキルヘンベルは、また休日の景色になって来た。

「防具も注文しなきゃだなぁ……」

ソフィーは飲み客に賑わう、コルちゃん露店を眺める。忙しそうだ。

 

そして、帰って錬金術生活に戻る事にした。

 

 

「さてさて……お昼かぁ……」

ソフィーは錬金釜を眺める。これから翌朝まで、錬金術生活だし、何を作って行こうか……

「防具も装飾品も全能の力で適用させて行きたいね。金糸、ゼッテル、錬金粘土……ちょっと退屈な錬金術生活になっちゃうなぁ……」

「ふふっ………贅沢な悩みですね」

そんな錬金術生活が始まる。

 

 

………

「おお、エリーゼさん、夕飯の買い物かい?」

何となく歩く午後の八百屋、エリーゼはふと立ち止まる。

そこにオスカーが声を掛けた。

「ふふっ……ちょっと何となく歩いてるだけなのよ?」

エリーゼは、オスカーの八百屋弁当をふと思う。

今やプラフタ人形は完成して、ソフィーのアトリエへと持って行ったそうだから、もう必要ない。

それが少し寂しく思う。

フリッツの家には、エリーゼの好む物語や、絵本から飛び出した人形達が居たからだ。

 

「お、いらっしゃい。今日は白丸大根がイイよ!」

オスカーは他のおばさんに声を掛けて、エリーゼから離れる。

エリーゼは教会広場の方へと歩き出した。

賑わうコルネリア露店の、おじさん達をふと眺める。

今日は果実の日、コルネリア露店の飲み客で賑わうストリート……

「おお、エリーゼではないか」

そうフリッツに声を掛けられて、エリーゼは驚いて飛び上がる。

「あ!あれ?フリッツさん……?」

どこから現れたのか、急に出て来るおじさんだ。

「ロジー君に新しい剣を打って貰っていてな。これからは、本格的な冒険になりそうだからな……」

フリッツはエリーゼの肩に手をやると、すすっ、と道の端に寄せる。

そこを職人のおじさん達が通った。

 

「ごめんよ?」

「へへ……裏も行くか?」

そんな会話が通過していく。

「何か、悩み事でもあるのかな?あまり上の空で歩いては危ないぞ」

そうフリッツがたしなめる。

肩を掴んで寄せた分、顔が近い。

「い!いえ……あの、どうも……」

よく分からない返事をして、エリーゼは固まる。

 

「明日は人形劇の日だな。明日は私も参加出来そうだが、人形がまだ足らなくてな……また作らなくては、代わり映えのしない話ばかりをせねばならなくなる」

エリーゼから離れながらそう話すと、フリッツは微笑む。

「八百屋のバスケットでも囲んで、また手伝って貰えるとありがたいが、いかがかな?」

そして、そう付け加えた。

「はい……ぜひ」

エリーゼは、そう答える。

「ならば今日は私が買って行くとしよう。世話になりっぱなしだからな……」

フリッツは八百屋の方へと歩き出す。

エリーゼは、やたら深いため息をついた。

 

そして顔を上げる。賑やかなコルネリア露店前……

これから夕方になるにつれて、人が減っていくストリート。

「見てしまいました。エリーゼさん……」

コルネリアが口許を隠し、エリーゼの真横から声を掛けた。

「ぅわぁっ!」

エリーゼはまた飛び上がる。

そしてコルネリアを見る。

「ちょっ!そんなんじゃないのよ?」

裏返った声で言う。

「そんなんじゃない顔を、してはいないような……」

コルネリアは口許を隠しつつ、エリーゼを見上げる。

 

「あ、明日は人形劇がね、ほら……あるじゃない?そのお手伝いをね?その話をしてたのよ」

エリーゼは慌てつつ、そう話す。

話しながら落ち着いて来た。

「恋をしている顔をしていたような……私もそんな事がありましたので、ピーンと来たのです」

コルネリアがズバリ言う。

 

「……コルちゃんも、そんな事があったの?」

また1つため息をついて、エリーゼは尋ねる。

「今ではロジーさんの押し掛け女房をしてるです」

コルネリアはそう答えて、エリーゼは仰け反る。

「え!?ええっ!そ、そうなの!?」

エリーゼは、そんなコルネリアを見る。

あどけない顔、コドモコドモしてる感じは、相変わらずだ。

「結構有名なのですが……だからエリーゼさんも応援してあげたい……そんな余計なお世話です」

コルネリアはそう話して、露店へと戻って行く。

 

……何だか、キルヘンベルは本当に色々と変わって行くのねぇ……

エリーゼはそんな事を思いながら、コルネリア露店のコルネリアを眺める。

教会の子供達と一緒に、楽しそうに働いている姿からは……

押し掛け女房とか伺い知れないけれど……

……でも、そういう物なのかも……

 

そんな事を考えながら、エリーゼは教会の噴水広場へと歩き出す。

このままフリッツと並んで歩くのも、なんだか憚られる所だと気付いた。

そして噴水広場で待つ事にする。

思えば恋愛なんてして来なかったものだな……と思う。

そのまま、17になってしまった。

 

13歳、ガリガリのソフィーがオスカーとラブラブしてる話に、やたらと驚いたものだ。

だけど元気に飛び回るソフィーを見ると、なんとなく納得するものはあったような……

なかったような……

でも、フリッツはかなり年上……

エリーゼの2倍を越えていそうだし……

むしろお父さんぐらいだ……

 

 

そんな事を考えて待っていると、でかいバスケットを手に、フリッツがやって来た。

「待たせたな……台本は起こしてあるのだが、やはり人数分持たせねばならんからな。エリーゼには写しをしてもらえるとありがたい」

声の届く距離になると、フリッツはそう話す。

「はい。今度はどんなお話なんです?」

「今度のは少し長い、本格的な話だな。人形の素材は揃っているが、まだ出来ていないのが2つあってな……」

エリーゼとフリッツは、そう話しながら、フリッツの家へと向かう。

 

 

「……あ、あのプラフタ人形は、顔と髪が怖かったんですけど……あれ大丈夫だったんですか?」

エリーゼが問う。

見てしまうと、あれはやたらと気になる。

そしてそう聞いた所で、フリッツの家に着いた。

「それは大丈夫だったな。やはりマナの柱が仕上げを掛けるからな。そこで完成となるように出来ている」

フリッツはそう答えながら、本棚に置いてある紙の束を手に取る。

 

「ソフィーとかマナの柱の力で……なんだか色々と変わったみたいだし、プラフタも人形で動き出したり……」

そうエリーゼが話した所で、フリッツは台本を並べる。

「マナの柱の話をするとなると、そちらに集中せねばならなくなるな。そして今は少し人形劇に集中せねばならん。その話は後でもいいかな?」

フリッツは、そう言うと作業台へと向かう。

エリーゼも台本の写しを始める事にした。

 

 

「そろそろ夕食にしませんか?」

夜になり、作業台に集中するフリッツに、エリーゼが声を掛ける。

そうでもしないと、このおじさんは食事を忘れたままになりそうなのだ。

そして既に夜の8時。

そしてそんな時間まで一言もなく、黙々と作業する時間で、台本も1冊半写し終えた。

エリーゼも物語に集中して過ごしていたので、退屈はしなかったけれど。

 

「そうだな……この工程だけ終わったら食事にしよう」

フリッツはそう呟き、エリーゼもまた台本に向かう。

この物語だと5冊は欲しいので、これは完成が朝になりそうだ。

 

「よし、食事としよう。すっかり集中してしまったな……」

フリッツは腰を上げる。

エリーゼも顔を上げる。

「台本、いい物語ですね。書き写す事でクスっとしたり、うるっとしたりしました」

立ち上がったフリッツを見上げて、エリーゼはそう話す。

「ああ、今回のは少し長めなのだがな。もう少し時間が経てば、衣装を揃えて劇としたいとも考えているな。いつの時代でも、演ずる事に興味を示す者もあるだろうからな。それにこのキルヘンベルでも、心当たりのある者もある」

 

フリッツはそう話すとサンドイッチに手を伸ばす。

バスケットの中に冷えた花茶まであり、キルヘンミルクが苦手なエリーゼとしてはありがたい。

「衣装……?衣装まで作っているのですか?」

「ああ……レオン程ではないが、長らく人形の衣装を作っているからな。だがレオンに注文するのが早いかも知れないな……」

そう話して遅い夕食を過ごす。

 

 

そして種の日、人形の方が早く出来上がり、フリッツも1冊、台本の写しをする。

夜中に出来上がり、外は雷雨……

エリーゼも、フリッツの寝室で眠る事にした。

家族で暮らしていた家だったみたいで、寝室のベッドが4つあり、人形が幾つか、既にベッドに寝ている部屋だった。

 

そうして朝……

雷雨の中、教会へと行く。

人形劇は、雨なら中止になる。

台本も人形も、雨に耐えられる作りではない。

教会、噴水広場に溢れた人々と共に祈りの時間を過ごし、人形劇は中止となって帰る。

 

 

「エリーゼお姉ちゃん、凄い眠そうだよ?」

ずぶ濡れの教会前広場、ソフィーが心配そうに声を掛けた。

雷雨は続いている。

「あまり寝てないのよ……人形劇の準備でね……」

エリーゼはそう答える。

自分の濡れた髪が重い。

「でも、今日は中止かな?この雨も続きそうだもんね」

「そうね。台本が濡れてしまうと、ダメになってしまうものね」

エリーゼはそう言って微笑む。

濡れた髪の張り付いた、ちょっと怖い笑顔。

 

「中止なら、アトリエ来る?あたしも錬金術生活だから、どうせまったりまったりだし」

その言葉に甘えて、エリーゼはアトリエに寝に行く事にする。

ソフィー版不思議な毛布、ふわふわモフコットを使えば……

ずぶ濡れ状態もすぐ乾くみたいだし。

 

 

「よっ!ほっ!はっ!……と~う!」

そして起きると午後。

晴れたキルヘンベルになっていた。

「晴れてる!?」

エリーゼがそう言って顔を出すと、ソフィーが逆立ち歩きでプラフタを追いかけていた。

ソフィーはごろん、と転がって普通に立ち上がる。

「お昼前から晴れてたよ?」

「じゃあ、人形劇してるかも知れないわ!」

エリーゼは慌ててアトリエを飛び出す。

 

 

………

「エリーゼお姉ちゃんも、忙しそうだねぇ……」

ソフィーはプラフタに呟く。

「ソフィーも、昨日注文したとか言う、防具が出来上がったりするのではないですか?」

「全能の力」を入れて作り直している防具。

それに今は、12時間掛かるモノクログラスが浸け置き中だ。

「晴れた訳だし、ちょっと行って来ようかなぁ……人形劇にふらふらしそうだから、やっぱりここでウネウネしてようかなあ……」

ソフィーはアトリエの外を眺める。

明日は旅立ちの日だし、モノクログラスの仕上がりが4時間後と、出掛けるには中途半端だし……

 

「よっ!」

ソフィーは逆立ちをする。

「何故逆立ち歩きの練習に余念がないのですか!?」

プラフタは、パタパタとソフィーから離れる。

ソフィーは、足でプラフタを捕まえようと追いかける。

 

 

……コンコン……

「きっとコルネリアですよ?ソフィー」

長らく逆立ちをし過ぎて、ソフィーは床にダウンしていた。

「頭ふらふらするぅ~……」

プラフタが軍手を取り上げドアを開けると、コルちゃんが入って来る。

そんな午後。

「ソフィーさん、どうしたのです?」

スカートもコートも、捲り上がったソフィーを見て、コルちゃんが尋ねる。

「逆立ち歩きのしすぎで、ダウンしてるのですが……」

プラフタが答える。

「じゃあ、ぷにちゃんに頼るとスッキリしますので、一緒に行きましょう」

コルちゃんとソフィーは、ぷにちゃんの部屋へと行く。

 

 

「はあぁぁ~……凄いスッキリする~……」

ぷにちゃんの中でソフィーは心地好いため息をつく。

「でも何だって、逆立ちブームが来ちゃったのかしらね?」

ぷにちゃんが尋ねる。

「プラフタが逆立ちした時のお尻でウケたものだから……ついつい、ね」

ソフィーが答える。

そしてプラフタが笑いだした時の事を思い浮かべた。

 

「サービス精神ですねぇ……」

コルちゃんがソフィーに抱き付いて、おっぱいを揉みながら思う。

ソフィーとしても、今や揉まれ馴れてて、ぷにちゃんが介入しない限り平常心だ。

「コルちゃんも逆立ちしたら、大ウケかも!パンツV字じゃん!?」

ぷにちゃんの中でも、ソフィーは逆さまになる。

抱きついているコルちゃんごと、逆さまになる。

「プラフタさん、そんなにお尻で笑うのですか?プラフタさんなら一肌脱いでもいいですが、そんな小さな子供みたいな事がある……というのは信じられないです」

それに、今や馴れちゃってるかも……

と、コルちゃんは思う。

「コルちゃん、おっぱい大きくなった?」

ソフィーがコルちゃんのおっぱいを揉みながら思う。

「どうでしょうか?服が小さいから、大きくなってしまうと苦しくなったりしそうですけど、そんな事ないから……変わらないんじゃないでしょうか?」

コルちゃんはそう思いながら、逆さまからまた戻る。

そんなまったりな、相変わらずな時間。

 

 

「ふぅ……スッキリしたよ……」

すぐに出たソフィーと、8時間程眠ったコルちゃんが、一緒にコンテナから出てくる。

眠ってしまうと、また浸け置き時間をもて余すと思って、ソフィーは眠らずに出て来た。

「モノクログラスの仕上がりはどうなるのか、ひやひやしました。あまり逆立ち歩きはしないようにしないと……」

そんな2人をプラフタが出迎える。

「やはり、逆立ちはよろしくありません……」

コルちゃんがそそくさとアトリエを出ていく。

「あ~!」

ソフィーは裏切られた気分で、コルちゃんを見送る。

 

 

そのまま、朝まで錬金術生活……

ちょこっと調合品も作ってみたりする。

もふもふモフコット辺りは、コルちゃんが増やすにも、需要とSP事情が釣り合っておらず、間に合わないそうで……

ソフィーの錬金術生活も、段々忙しくなってきているけど、図鑑調合は相変わらずの浸け置き6時間、寝て過ごす的な錬金術が柱である。

 

 

そして双葉の日、朝……

旅立ちの朝となった。

「何だか運動不足になりがちなんだよね~……やっと冒険だよ~♪」

ソフィーはアトリエから出て空を見上げる。

今にも雨が来そうな曇り空。

「逆立ちでウロウロするくらい、ヤキモキしてましたからね……」

プラフタも見送りに出てくる。

今日もエリーゼお姉ちゃんとウメさんが来て、古本補修のアトリエになるのだろうか?

プラフタの退屈も紛れるといいのだけど……

「さて!行って来るね!」

まだ朝の明るさが来る前に、ソフィーはカフェへと駆け出す。

 

 

カフェには皆が集まっていて、今日の最後はフリッツさんだった。

遅刻ではなく、皆が早すぎただけなんだけど……

「ソフィー、死神退治と黒プニ退治でいいかな?なんかこれらが急務だそうだし」

ジュリオさんとレオンさんで依頼の話を吟味して、行き先が決まる。

しかも、欲しかったライデン鉱もカバーされている!

「それで行きましょう!……ところで……他に依頼を受けてる人って見かけないんですけれど」

ソフィーはカフェの店内、辺りを見回す。

 

「冒険者の方々は、その住まいからも近くなる、裏酒場で依頼を受けていますね。その都合で、ソフィー宛てには近場が無くなってしまうのですが……」

ホルストさんは、相変わらずにこやかに答える。

 

 

「天気よし!朝食よし!今回は2部構成!張り切って行こう!」

ソフィーは元気にキルヘンベル入り口の橋を渡る。

「果実の日、種の日の休みが長いもんなぁ……」

オスカーはそう呟いて曇り空を見上げる。

ぽつぽつと雨が降って来た。

「やたら張り切ってるです……」

コルちゃんは荷車を引くジュリオさんと、その隣のレオンさんを見る。

「まあ、僕らも同じ気分だよ」

「私もね、マナの柱の力が目を覚ます旅だしね」

 

 

ソフィー達は、キルヘンベルを出て東へ。

先ずは青葉の丘へと向かう道。

今回は帰ってから更に月と太陽の原野へ行き、死神退治……

2回、旅に行く予定だ。

いつもの巡礼街道~メーベルト農場~有閑広場~青葉の丘……

この道を歩くのに1日掛かる。

 

 

蕾の日が始まった瞬間……

つまり0時の夜中に、黒プニの巣、ライデン鉱の産地へと辿り着く。

「ジュリオさんが大好きな場所だね!」

ソフィーが笑顔でジュリオさんを見る。

「力を求めて止まない戦士なら、こうした場所は好きなんじゃないかな……」

オスカーもそう呟いて、ジュリオさんを見る。

「そうだけど……今はもう、強敵でも無さそうだね。そんなに強い気配は感じられなくなったから……とはいえ、油断はしないようにしよう」

ジュリオさんは冷静にそう言って、真っ直ぐに黒い水溜まりを見ていた。

 

 

そして採取生活……

それと黒プニを倒して行く。

今回は依頼なので、証として黒プニの赤い石を集めて行く。

ただ、もう黒プニ達は、こちらの空気をあまり震わせて来なかった。

余裕で倒せてしまうのはいいけれど、マナの柱の力もあまり強くはなれない。

ただ、撃退までは少し掛かる。

黒プニプレス!

黒プニブレス!

黒プニアタック!

……と、存分に食らう。

結局、黒プニ汚れは凄い事になる……

 

 

「ぷにちゃんの力が無かったら、こんな所絶対に来れなかったよね……そんな場所なのに、少し退屈だなんて、なんか変な気持ち……」

そんな洞窟の中での野営に、ソフィーが呟く。

そのソフィーの言葉に、フリッツさんが顔を上げた。

「……マナの柱の力は、みるみる育って行くからな。そしてその力は、他のマナの柱の領域に踏み込む力となる。踏み込めば踏み込む程、更に深く踏み込む力となって行く……」

黒プニの煮物を食べつつ、フリッツさんが話す。

 

「……更に深く踏み込むと、どうなるです?」

黒プニの煮物のおかわりをする、コルちゃんが尋ねる。

「滅びたマナの柱に、辿り着けるのだろうな。魔物を産み出し続けるパンドラの箱の中へ……」

黒プニの煮物片手に、フリッツさんは遠い目をして話す。

「……そんな所に辿り着く為に、この力はあるんですか?」

ジュリオさんも、フリッツさんに近付いて来た。

「まあ、そうなのだろう。そしてパンドラの箱の中は、宝の山があるな……大いに魔力を含み、輝く物で溢れ返っている……」

フリッツさんはそう話して、目を伏せる。

少し寂しい表情になった。

 

「フリッツのおっさんは、そんな所まで行った事があるのか?」

ハロルさんが尋ねる。

「傭兵時代に、な……だがあまりいい思い出ではないな……戦友はそのパンドラの箱に、呑まれた」

フリッツさんは話す。

 

 

……今回はソフィーの錬金術が、大いにパンドラの箱へ近付く力となっている。

「全能の力」「変異物質」「竜鱗の守り」

……そうした特性を持たせる錬金術。

特性を適用させるマナの柱の力……

傭兵時代は、それとは違う……

でもそれに匹敵するような力があったそうだ……

その力は、強い魔物の元へ誘う。

パンドラの箱となった、滅びたマナの柱の元へ行ける力なのだ。

その力が無い者は、近付く事も出来ない場所。

 

滅びたマナの柱は、その力を魔物を産み出す事に費やす。

魔物は、滅びたマナの柱から離れれば離れる程、その力を失う。

キルヘンベルから離れた、この辺りの滅びたマナの柱は……

ちょうど魔物が、キルヘンベルに辿り着けない距離にあるのだ。

 

街道には、先の錬金術師の施した守りがある。

街道でだけ、その守りの中でだけ扱える免罪符が使える。

そして免罪符を使う以前に、魔物がそうそう居ない。

その街道を使えば、人は滅びたマナの柱の近くであっても行ける。

ただ、それは街道の中だけだ。

 

 

「魔法の世界……それは夢のような世界かも知れぬが、結局は我々人間はちっぽけだ……魔法の源、マナの柱という大いなる存在がある」

フリッツさんは、そう語った。

パンドラの箱となったマナの柱に挑む事は、まるで湖や海に挑むような物だと。

どれだけ水を克服しても、少し海が荒れたりすれば、人の命など儚い物だ。

「大丈夫!パンドラの箱の中に、興味はないから!でも近付く事はしたいかな!色んな世界を見たいし!」

ソフィーは立ち上がる。

そしてガッツポーズする。

 

「……どこからパンドラの箱の中か……その場所まで辿り着く事があれば、私が案内しよう」

フリッツさんは、そう言うと微笑んだ。

「オイラ達、危険な力を持ってるんだな……」

オスカーは隣のモニカに言う。

「あまり急に不可解に強くなったもんだから、ケンカもしづらくなったな……」

ハロルさんは頭を掻きながら呟く。

「この人、最近全然ケンカしなくなったのよ?」

レオンさんも言う。

「ケンカ相手が居なくなっただけだ……口ゲンカまでは今もよくやるがな……」

マナの柱の力で強くなってしまい、冒険者や酔っ払いと殴り合っても、あまりに差がありすぎて、面白くならないらしい。

フェアじゃないケンカは、したくないそうだ。

 

「……分別があるわよねぇ……」

レオンさんが呆れたように言う。

「そんなにケンカばかりしてたんですか?」

モニカが尋ねる。

「さあな。それより、そろそろ戻って2回戦、西へ行くんじゃないのか?」

ハロルさんに言われて、ソフィーは妖精の道標を取り出す。

「じゃあ、行くよー?」

そうしてソフィー達は一旦、キルヘンベルへ帰る。

 

 

蕾の日17時……

採取物だけコンテナに預け、またキルヘンベルを西へ出発。

今度は月と太陽の原野へと向かう。

蛇の草と死神討伐の依頼だ。

 

「お腹減った……」

朝に黒プニの煮物、昼くらいに黒プニの煮物……

悪くはないけど、あまり食が進まなかったソフィーが呟く。

「そうそう腹一杯にする訳にも行かないからなぁ……でも豚ネズミでも仕留めるかい?」

オスカーが言う。

荷車の2階でコルちゃんが目を輝かせる。

「賛成です!」

キルヘンベル付近の街道を離れて、豚ネズミを1匹仕留める事にする。

 

 

あまりにキルヘンベルに近くて、使わなかった泉での野営となった。

「なんか、以前より4枚花って増えた気がするね~……」

ソフィーが4枚花を摘んで来る。

小さくて香りが強くなってるような……

「気のせいじゃない?そんな変わらないように思うけど……」

モニカも摘んで来て、花の香りに目を閉じる。

この泉には、野営の跡がやたらとあった。

よく使われる場所ではあるようだ……

 

「ここは野営がしやすいなぁ……」

オスカーは相変わらずのおとぼけボイスで呟き、豚ネズミを捌く。

「他の冒険者は、よくここを使っているようだな」

かまどの跡に火を起こしながら、フリッツさんは呟く。

黒くプニ汚れたままのフリッツさんは、なんだか凄味が増しているように見える。

「まさかこんな近場で野営するとは思ってもみなかったわね……」

モニカはジュリオさんを眺めて呟く。

黒プニ汚れは、ジュリオさんもモニカも同じだ。

 

 

野営も済ませ、ソフィー達は月と太陽の原野へと向かう。恵みの森を抜けて西へ……

 

 

そして朝の4時に到着。

蛇の草と死神退治……

ギリギリまだ暗かったので、死神君がふらふらしてた。

1つ倒すと、明るくなって依頼の死神君は居なくなった。

変わりに赤プニがコロコロし出す。

そして採取生活もする。

依頼の蛇の草を採りまくり、地面魔法を試す事に。

 

……パキーン……

ソフィーが杖を立てて音を響かせる。

「うわぁぁ!」

その足元が盛り上がり、巨大蜘蛛が出てきた!

ソフィーの5倍程もある黒い蜘蛛。

それがソフィーを持ち上げて転ばせ、人の居ない方へと移動したかと思うと、また地面に潜って行った。

「人食い蜘蛛……本当に人を食べないんだね……」

ジュリオさんもフリッツさんも、皆でそんな蜘蛛を見送る。

こちらの空気を震わす事も無く、敵対的な雰囲気も無かった。

でも地面がボコボコになった。

 

「びっくりしたぁ……地面魔法、あまりどこでもやるのは考え物かも……」

黒プニ汚れがあっても、人は食べないようだ。

ともかく、まだ朝も早いのだけど……妖精の道標を使い、アトリエに帰る事にした。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[番人ぷにちゃん達]
今日も装備品と採取品の汚れを、両手をぴょこぴょこさせながら待っている。

[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエの地下のマナの柱。柱って名前だけどプニプニみたいなフォルムをしている。

[3階の王様部屋]
ラーメル宿の3階にある、お高いけど凄い部屋。こんな所でエロエロするのは、なんか特別な気分になる。

[ハジケてた]
きゅんきゅんしてビクンビクンする感じ。

[マルグリットサンド(緑)]
八百屋特製サンドイッチバスケットが始まって、マルグリットさんも張り切ってるみたい。

[ハダカ族]
ぷにちゃんの中ではハダカ族。

[エリーゼ×フリッツ]
ゲームでも、2人の配置は近い。

[冷えた花茶]
八百屋特製サンドイッチバスケットには、飲み物も付いてくる。

[裏酒場]
ホルストさんのメイン酒場。今は表の方がメインみたい。裏酒場の方は冒険者上がりの人が切り盛りしているとか。

[マナの柱の力が目を覚ます]
他のマナの柱の力が弾けると、その力をソフィー達が受ける。そうする事でレベルが上がってHPバリアが厚くなったりするみたい。

[黒プニの赤い石]
黒プニを倒した証。
[黒プニの煮物]
黒プニ君も煮るとぷるんぷるんになる。なんか上品な甘さだけど、倒したすぐ後じゃないと溶けて無くなってしまう。

[パンドラの箱となったマナの柱]
魔力発生装置であるマナの柱を焼いたりして殺すと、それでも魔力発生装置として機能し続ける。そして魔物発生装置となる。

[街道の守り]
商人の人が移動する為に設けられた街道には、魔物を寄せ付けない魔法が掛かっているのだとか。なので魔物が居たとしても、追い払う事が出来る。なので商人の人とかメーベルト農場の馬車とかが移動出来る。

[蛇の草]
にょろにょろしてる緑の草。良く見るとうぶ毛みたいなのがびっしり生えていたり。食べると美味しい。

[豚ネズミ]
地中生活している、大型のネズミ。耳が発達していて、地面で爆発音とかすると、混乱して出てくる。お肉がっしりで、美味しい。

[4枚花]
香りの強い花。キルヘンベル近辺だと、そこらじゅうに咲いてる。

[巨大蜘蛛]
そこらじゅうに巣を作る、地中生活の巨大蜘蛛。忘却のナーセリー辺りに女王蜘蛛が居て、キルヘンベルも含む広大な地域を社会とする蜘蛛。人食い蜘蛛と呼ばれているけれど、人は食べない。巣の糸は頑丈で、利用価値バッチリ。



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錬金術のアトリエ 33

錬金術のアトリエ 33

 

黒プニ汚れた一行は、アトリエへと帰って来る。

月と太陽の原野とキルヘンベルが同じ天気……

どちらも晴れていた。

「ふい~……帰って来たよぉ~……」

ソフィーは伸びをする。

そしてまた、ハロルさんとレオンさん、フリッツさんはここで解散となった。

 

お約束、まずはソフィーとコルちゃん、モニカの3人でぷにちゃんの部屋へ。

 

 

「あと30時間ある……」

汚れたハダカ族3人に、ぷにちゃんが伝える。

「ああ……最近なんかコルちゃんのおっぱいに癒されるんだよなぁ……」

コルちゃんの後ろから、ソフィーが抱きついて癒されてるようだ。

「そろそろSPバリアが回復して、魂盟の針の劣化版を増やす事が出来そうです」

あまり動じないコルちゃんが伝える。

「おお……!ねじまきと幽世の羅針盤……それがあればプラフタが……!」

ソフィーはそう言うと、コルちゃんから離れて浮かび出す。

 

「劣化版ですから、その調合に使えるのかどうかは分かりませんが……」

そんなソフィーを眺めて、コルちゃんはそう話す。

「プラフタの人形も、本当に動き出すかも知れないのねぇ……」

モニカは2人から少し離れて、身体を横にしてふわふわ浮かぶ。

「モニカさん、なんか優雅でカッコいいです!」

「え?そ、そう?」

何となくいつもしている事に誉められて、モニカはコルちゃんを見る。

「あたしはぷにちゃんが黒いから、あまり見えないんだよねぇ……」

ソフィーはコルちゃんに戻ると、おっぱいを確認しつつ、そう思う。

 

「……ソフィーは目を閉じているからな……目を開けても閉じても……我の中ではあまり変わらぬ……風が吹く感覚がする……だろうが……目を開けないと……見えぬ……」

「え?嘘!?」

モニカは思う。

目を閉じておきながら「見えない」とか言っていたのか……

「あ~!!見える!見えるじゃん!」

ソフィーは目を開けて驚く。

黒いテカテカが、中で目を開けると薄い灰色っぽくなっていて、コルちゃんもモニカも見えるのだ。

「ソフィーさん……ぷぷっ……何というお間抜け……」

コルちゃんも笑い出す。

 

「まあ……我の中に居ながら……周りが見れるようになったのは……黒く見えたなら……最近だろう……」

ぷにちゃんがフォローしてくれた。

ソフィー的には見えなかった時間が長い。

「そ、そうだよ!初めは見えなかったハズだよね!ぷにちゃんっ!」

モニカは白く輝いて見えるのだけど、中で目を開けると輝いていない。

そして最近になって灰色っぽくなった白で、更に目に優しくなった。

コルちゃんからは外から見ても青く透き通っていて、中から見ても透き通っているので最初から中でも見えていた。

 

「そのハズ……だ……」

「あ!じゃあ、この中でプラフタ人形見たい!凄く良くできてるし、これからプラフタもぷにちゃんの中で仲良くうねうねするもんね!」

ソフィーは思い立つ。

するとプラフタ人形が現れた。

 

「これ、本当に良く出来てるわよね……だって寝てるようにしか思えないもの」

モニカもプラフタ人形に寄って来た。

「歯も舌もあるもんね。私達と何が違うの?」

ソフィーが尋ねる。

「感覚が無い……我の中では痛み……触った人の温もりも……感じる事が出来るだろうが……我の外に出れば……それは無くなる……」

 

プラフタ人形は、ぷにちゃんから命を受けて、プラフタの魂をこの人形に導いて……動き出す。

動き出したとして、ぷにちゃんの中ではプラフタには痛みも痒みもある。ここではあまりソフィーと変わらない。

が、外に出るとその感覚は失われる。

食事をする事で動力とするのだけれど、それも消化される訳ではなく、ぷにちゃんの中に入る事で消化され、動力に変わる。

つまり、マナの柱ありきで活動が可能になる。

 

ねじまきが無いと、ぷにちゃんの外での活動が一切出来なくなる。

巻き巻きする訳ではないのだけど、必要な部品、という訳だ。

プラフタ人形のお尻の上くらいに、ねじまきを取り付ける穴が空いてる。

 

ぷにちゃんにそう説明されながら、3人でプラフタ人形の身体を撫で回したりする。

体温が無いけど、触り心地がもう……

人なので驚く。

 

そんな膨らんだ時間を過ごして、眠って……

3人はアトリエに戻る。

 

 

モニカがジュリオさんを洗う番になり、ソフィーはアトリエ前の外テーブルで、オスカーとプラフタと、お茶の時間にする。

いつものように、コルちゃんはコルちゃん露店へと帰って行った。

「プラフタが人形になる日も近い訳かぁ……」

黒プニ汚れの凄いままの、オスカーが呟く。

ハロルさんのねじまきも、ほぼ完成してるそうだし、コルちゃんも回復して来た所で、魂盟の針が4本揃いそうだし……

で、ソフィーの調合、幽世の羅針盤の完成が最後になりそうだ。

「プラフタが人形とはいえ動き出したら……どうしようかなぁ~……」

ソフィーはプラフタを見る。

「コルネリアの魂盟の針は、複製出来ない物……強引な複製になるのですから、使い物にならない可能性があります。……まだ喜ぶのは早いのではないですか?」

プラフタは冷静にそう言った。

「さすが師匠、ソフィーみたいに浮かれてないなぁ~……」

オスカーは笑う。

 

 

ジュリオさんとモニカも帰り、ソフィーとオスカー、プラフタでアトリエに入る。

 

 

「しかし、マナの柱ありきで活動するのはいいのですが……マナの柱の中では感覚もあるのですか……」

オスカーが黒プニ汚れ全開の服を脱いでる所で、プラフタはパタパタと飛ぶ。

「感覚あるなら、ぷにちゃんの中でうねうねできるね!」

不思議な毛布にオスカーの服を並べて、ソフィーは毛布を折る。

カドを内側に入れていくような感じで。

「確か、ハジケないと時間が止まらないとか言ってたな……モニカとコル助とソフィーでエロエロしてるって事か?」

オスカーは暖炉の前に陣取り、相変わらずのトーンで尋ねる。

「えへへ~……浮気しちゃってごめんね?」

ソフィーも服を脱ぐ。

着てるとせっかく綺麗になった服がまた、番人ぷにちゃん好みになってしまうし……

「それって浮気なのか?」

オスカーがそう言いながら、ふわふわクロースを手に取る。

ソフィーはオスカーの背中を拭う。

 

 

「私も晴れてハダカ族……となると……どう振る舞うか、心の準備が難しい所ですね……」

プラフタはそう呟いて、パタパタしていた。

 

オスカーも帰り、朝8時……

ソフィーは錬金釜に向かう。

 

「アダールクロス作っておこうかな……特性は金糸任せで、風来人のシャツ……防具作らないとだし……」

ソフィーはアダールクロスを仕込む。

「出来上がりまで6時間かぁ……」

ソフィーはアトリエ前に、汚れた不思議毛布を洗って干す事にする。

 

「私に身体があれば、洗濯や掃除……出来る事が沢山出てきそうですね」

プラフタも、パタパタとソフィーの側を飛ぶ。

「ところで……ソフィーはよくモニカやコルネリアとも……その……マナの柱の中でイヤらしい事をしてるのですか?」

プラフタが尋ねる。

 

「まあね~……それをしないと時間が膨らまないからね~……でも最近は時間をストック出来るとかで、しなくても大丈夫だから、エロエロしない時の方が多いよ?」

「そ、そうなのですか?」

「オスカーともハダカ族で付き合ってるけど、そうそうエロエロしてる訳じゃないじゃない?時々うねうねしてるけど、いっつもうねうねしてる訳じゃないからなぁ……」

洗濯をして、ソフィーはアトリエに戻る。プラフタが思うよりも平静で、少し拍子抜けした気分になる。

 

それからもハダカ族の生態談義をして13時、アダールクロスが完成する。

……外は曇り出した。

「ハロルさんが、ねじまきほぼ完成とか言ってたし……ちょっと散歩してくるね」

ソフィーはアトリエを出る。

 

 

曇り空を歩き、コルちゃん露店にふらふらと歩いて行く。

コルちゃん露店にハロルさんが居て、コルちゃんと話していた。

「ハロルさんこんにちは~♪」

そこにソフィーが訪れる。

「おお、ちょうどいいのが来たな」

ハロルさんがソフィーを見る。

「どうしました?」

「ハロルさんの銃の弾の注文を受けていたのです」

コルちゃんが鍛冶屋注文リストを片手に話す。

シュタルメタル武器カテゴリー、全員分が書き記してある。

「鍛冶屋さんはお休み?」

 

ソフィーは、コルちゃん露店のすぐ斜向かいの鍛冶屋ドアを見る。

いつもの貼り紙がされてるのが見える。

「はい、ロジーさんは昨日から修行の旅をしてますので、こちらで受けているんです」

コルちゃんはハロルさんからの注文を書き控えつつ、そう話す。

「レオンさんの槍もあるんだねぇ~……」

ソフィーはシュタルメタル武器リストを眺めて呟く。

「必殺のシュタルメタルが登録されましたので、戦力アップも目指して、売り込んでいたりするのです」

 

「本当に作れるとしたら、かなり頼もしいからな。半信半疑だが、一応注文してみようと思った所だな。それと、プラフタのねじまきが完成してるが、フリッツのおっさんに渡せばいいか?」

「あ。私が貰って行くよ~……プラフタ人形も、もう預かってるし」

ソフィーはハロルさんと時計屋へと行く。

その途中で、冒険から帰って来たと思われる、ロジーさん一行を見掛けた。

「あ、これで今日にでも作れるんじゃない?ハロルさん!」

ソフィーはその姿を見送り、ハロルさんに言う。

「アイツも疲れていそうだからな……明日にでも作って貰えればいいさ……」

そしてハロルさんの時計屋で、ソフィーは魔法のねじまきを受け取った。

「おお~……宝石みたい……」

「そういう設計図だったからな……かなり手を焼いた品だ。問題はないだろうが……」

ソフィーは、ねじまきを受け取る。

 

 

そして一応、ねじまきを見てもらおうと、フリッツさんの家へ向かう。

向かう途中のヴァルム教会前……

雨が降りだした。

「ん?」

なんか、ヴァルム教会の横……

今まで空き地だった場所に、煙が立ち上る家がある……

ソフィーは足を止める。

煙突から煙が出てる……

のではなく、家全体から煙が出ていて、それを教会騎士の人達が見守っているのだ。

「……火事じゃないんですか?」

ソフィーは、騎士の人の1人に聞いてみる。

「ああ、そう思われそうだから我々が見守っているのだ。こういう料理なのだそうでな……」

火事ではないようだ。

騎士の人達は落ち着いてる。

ふと、行列を作るこぢんまりとした屋台?

みたいなのがあって、ソフィーはそこを覗く。

 

教会の子供と、ヤーペッツさんが何かを売っている。

燻製肉、袋燻製肉と木の欠片と焦げたラーメル麦を売っていた。

よく分からないし……

こういうのはオスカーに任せて、ソフィーはフリッツさんの家へと向かう。

 

フリッツさんの家に着く頃には、雨は雷雨になっていた。

……プラフタ復活を祝福する雷雨かも……

とか思うものの、なんか魔王の復活っぽいな……

と思い直してもみたり。

 

……コンコン……

稲光を浴びる不審な錬金術士が窓から見ている……

とかやろうかな、と思うものの……

意外にも明るいので止めておいた。

ソフィーは普通にノックする。

 

返事がない……

ソフィーは窓から覗いてみる。

エリーゼお姉ちゃんが何かを書いていて……

フリッツさんは作業台に向かって何かを作っている……

どうやら集中し過ぎて気付いてないようだ……

ぷにちゃんに聞いたら使えるかどうか分かりそうだし、アトリエに帰る事にした。

 

 

「ただいま~♪」

ソフィーがアトリエに着く頃には、夕方。

雨は止んでいた。

「おかえりなさい、ソフィー」

プラフタが出迎える。

「プラフタのねじまき、ハロルさんが作ってくれたの貰って来たよ!ほら!」

ソフィーは、ねじまきを取り出す。

「ねじまき……?そのようには見えないのですね……」

プラフタはパタパタとねじまきに寄る。

確かに、宝石のしっぽ的な部品なのだ。

 

「まあ、ぷにちゃんに預けてあるプラフタ人形に着けてみるね」

ソフィーはぷにちゃんの部屋へと行く。

 

ぷにちゃんの部屋のドアの前、棚の廊下でハダカ族になっていると、番人ぷにちゃんに声を掛けられる。

 

「へぇ~……これがねじまきなんだねぇ……随分と色んな思いの染みたねじまきだこと」

「へぇ~……どんな思惑?」

「完成への執念だね。作れる筈なのに作れない……でも作らないといけない……そして生半可な物じゃ納得しない……これはいい物だね」

「ハロルさん、苦労したんだなぁ……」

ともかく、ソフィーはねじまきを手に、ぷにちゃんの部屋に入る。

「これでプラフタ人形にねじまきが付くの?」

ぷにちゃんの中にあるプラフタ人形のお尻の上……

背骨の延長的な場所に、ねじまきを入れる。

 

「少ししたら馴染むかな。あとはプラフタの魂を人形に移すだけだね。でも……プラフタの魂が辿り着くのに時間が掛かるんだよね……その時間は、膨らませた時間の中で過ごせるんだけど……残り22時間じゃちょっと足らないかなぁ……」

ぷにちゃんはそう話す。

「ふむ……プラフタの為に一肌脱がないと的な感じなのね?」

「まあ、そういう事かな」

そんな話をして、ソフィーはアトリエに戻る。

ねじまきは問題なくプラフタ人形に使えるみたいだし。

さすがハロルさんだ。

 

 

「さて……」

ソフィーは錬金釜の前に立つ。

モニカとコルちゃんを呼んで、時間を増やしたいトコではあるけど、今慌てて訪ね歩いても……

幽世の羅針盤も、針すら出来ていないし……

「何を作るのですか?」

プラフタがパタパタとやって来る。

「さて……今回は図鑑モノの開発をするよ~……」

ソフィーの錬金術生活。

ハチミツに錬金ドロップ、山師の薬と作り、夜は更けて行く……

 

 

そして朝……

コルちゃんがやって来た。

「さて……魂盟の針3本、出来ましたが、どうでしょうか?」

ソフィーはその3本の針を受け取る。

しっかりと使えそうな感じの魂盟の針。

「おお~♪行けるよコルちゃん!」

「一目で判るものなのです?」

「判るよ~♪これで……いやいや、浮かれちゃうとダメだね……それよりも、いざ魂を移す時にね、ぷにちゃんの中で膨らませた時間を使うみたいなんだけど、今のストックだと足らないみたいなんだよね」

 

「ほほう……どのくらい必要なのでしょうか……」

「それは聞かなかったなぁ……」

「そこが大事かと思いますが……まあ今聞いてみましょう。あ……モニカさんとすれ違いましたので、モニカさんも協力してもらいましょう」

コルちゃんはそう言うと、駆け出して行った。

「ふふん♪あたしもダーッシュ!」

ソフィーも後を追う。

「……浸け置きで、うだうだしてましたが……走るのが好きですねぇ……」

そんな2人を、開けっ放しのドアからプラフタが見送る。

 

 

モニカは朝イチの洗濯物を、エルノアさんと、2人で干していた。

「モニカさん!」

「モニカ~!」

そんな所をソフィーとコルちゃんで直撃する。

「どうしたの!?なんか事件でもあったの?」

途中で競争になり、全力疾走で現れた2人に、モニカもエルノアさんも、驚く。

「コルちゃんが早くて……追い付けなかったよ……」

「結構、僅差でしたが……」

ソフィーとコルちゃんは立ち止まり、足踏みをする。

「事件じゃなさそうね?」

「2人とも相変わらず元気いっぱいなのね!」

モニカとエルノアさんは、そんな2人を微笑ましく迎えた。

「ところでソフィーちゃん、コルちゃんは朝は食べたの?うちはこれからなんだけど……」

エルノアさんは、そう言って笑う。

「食べてないですね……」

「あたしも、すっかり忘れてたよ~……」

そしてモニカの家で朝食、という成り行きになる。

 

 

朝食を食べて、3人でアトリエに行く。

「やはりモニカさんも頼りにしないと……」

「何時間必要なのかも分からないもんねぇ」

ソフィーとコルちゃんは、そう話す。

「まあ……多い方が時間は増えるんだけどね……」

モニカはそう呟きながら付いて行く。

「モニカ、明日はジュリオさんとまた……」

ソフィーは振り返り、モニカを見る。

「そうそう毎週……ジュリオさんが忙しいからね……イチャイチャしてられないのよ」

モニカはソフィーから視線を外し、小さな声で話した。

「ならば好都合!モニカさんには、頑張って貰うです!」

コルちゃんが素早くそう言って、イタズラっ子な笑顔で笑う。

「ちょっと!なんでそうなるの!?」

モニカは声を大きくして、コルちゃんは駆け出す。

「そうなるよね~♪」

3人はアトリエに戻り、ぷにちゃんの部屋へと行く。

 

 

「で、何時間必要なの?」

そしてハダカ族3人は、ぷにちゃんに聞いてみる。

「ふむ……今は22時間……魂がどれだけ迷うかによるが……最悪のケースでも……100時間もあれば……辿り着くだろう……」

ぷにちゃんは答える。

 

「時間が足らなかった場合は……?」

「我の中で……魂が惑う間……我と番人はそこに……集中しなくては……ならん……錬金釜とコンテナが繋がらなく……なる」

「身体を洗ったり眠ったりも出来なくなりそうですね……」

「その通りだ……」

「じゃあ、100時間ストック目指して頑張らないといけない訳なのね」

「ちゃんと食事は……取ったのか?」

ぷにちゃんが尋ねる。

 

 

「さて……2日もジュリオさんと何してたのか……バッチリ聞かないとね!」

ソフィーはモニカの後ろに回ると、モニカに抱きつく。

大きなおっぱいに、締まった太ももに掌を当てる。

「2日……私もロジーさんと2日……と思いましたが、過ごし方が分からないです……」

コルちゃんは前から、モニカに取りつく。乳首に唇を寄せて、細い腰を掴むように……

「ちょっと……もう!やる気満々じゃない!」

モニカはそう言いつつも、まんざらでもない気持ちでコルちゃんに手を伸ばす。

 

 

既に1度体感した2日間……

それはソフィーにとってもコルちゃんにとっても、とても参考になる男女の絡みだったので、何度でも反芻したかったりして……

 

 

………

「じゃあ……始めようか……」

ラーメル宿の2階部屋。

少し明るい時間に、ジュリオは両手を広げてモニカに向ける。

「うん。2日も取れちゃったし、取っちゃったんだから、すぐしなくてもいいのにね。私もジュリオとしたい……」

モニカは向けられた両のてのひらに、てのひらを合わせて指を絡める。

「光栄だよ、モニカ」

両手の指を絡めたまま、2人は顔を寄せて唇をくっつける。

キスする、という感じじゃなくて、少し乾いたままの唇を触れあわせて、すぐに離す。

そういう、恋人同士の挨拶みたいな、でも確かにキスをした。

「ふふっ……」

 

モニカは嬉しそうに笑い、ジュリオも嬉しそうに笑う。

そんな微笑み合いから、ソフィーもコルちゃんも、モニカもきゅんきゅんする。

てのひらの熱さが、ソフィーにもコルちゃんにも再現されて、指を絡めた熱さにドキドキさせられる。

 

……ジュリオさん素敵すぎるよおぉぉ……

ソフィーは両手を絡ませたまま、じたばたする。

……ロジーさんもこんな始め方してくれたら……

私ももう、メロメロになるですけど……

コルちゃんも両手を絡ませたまま、その熱さにもじもじする。

 

そんな軽い始まり、嬉しそうな微笑み合い……

そして服なんかの品定め合い……

と、続く。

服もモニカの大切な物。

ジュリオの大切な物。

2人とも脱ぐ迄が長い。

でも新しくした方がいいのか、直した方がいいのか、細かい所まで2人で眺めていたりする。

 

……素敵すぎるです……

ロジーさんなんて、私の服に何の話もした事ないです……!

コルちゃんがうねうねする。

……オスカーは結構服も見てくれてたりするけど……

やっぱりそういう時間って嬉しいよねぇ……

裏地くんくんしたりするのは、恥ずかしいんだけど……

 

ソフィーは思わず微笑みながら、そう考える。

そして脱ぎ終えると、2人で湯浴み場へと行き、加熱ブロックを寄せて湯を作る。

こんな所でも、ちょこっと調合品が活躍していたり。

 

エロエロ前でハダカ族なのにリラックスしてて、談笑していたり。

ソフィーとオスカーよりも日が浅いハズなのに、なんだか……

ベテランカップルみたいな感じで過ごす。

ジュリオの筋肉が凄く硬くて熱くて……

モニカも腕とか足とか誉められて……

どちらも戦士なんだなぁ……

とか思ってもみたり。

 

そうした後にベッドへと向かう。

明るい部屋……

ハダカ族の2人はてのひらを合わせて、指を絡めて……

今度は長くキスをする。

そうして始まる2人の絡みの進行に合わせて、ぷにちゃんが3人をマッサージする。

 

ジュリオの長く太いちんちんを入れる時には、そうしたマッサージをする。

限界まで押し開かれて奥を突かれて……

3人ともハジケてダウンする。

絡めた両のてのひら……

絡めた指を握り、ハジケてダウンした後のキス……

身体を開く格好に顔が熱くなって……

でも手を繋いでる安心感もあって……

「段々と僕ら、相性を良くしてるかな?」

ジュリオがそう尋ねる。

あまり大きすぎるのを気に病んでいて、そう話す。

 

「うんっ……はぁぁぅ……大きいの……気持ちいいわ……」

ひどく顔を熱くしながら、モニカはそう言葉にする。

ジュリオを安心させたい為に。

……ひどく恥ずかしい言葉……

 

そして、てのひらを合わせて指を絡めたまま、ひどく敏感になっている身体に、熱い唇を寄せる。

「はっ……あんっ……はぁんっ……はぁんっ……んっ……」

てのひらを握り、甘い声を上げて身体をハネさせる。

イヤらしくうねり、小さく何度もハジケて、息を荒くして濡らして……

始まって……

エスカレートして暴れて……

愛を確かめあって……

終わっても、小さく何度もハジケるキスを色んな所にされて……

でもそれが気持ち良くて……

 

乳首が勃ってるのを見られて転がされて……

恐ろしいまでに、モニカの中のエロい気持ちを呼び起こされて、そのままそのエロい気持ちを出して良さそうで。

 

2日……

何度も絡み合って、モニカを大胆にさせてハジケさせる。

それが嬉しくて……

恥ずかしいのに、どんどん恥ずかしい女にさせる。

 

そんな絡み合いを、3人ともぷにちゃんの中で味わい、悦びに染められ倒す。

 

……それでもまだ、100時間には足らない……

 

なので更に頑張る事に。

コルちゃんがオモチャにされたり、ソフィーがオモチャにされたり。

何度か食事休憩を挟み、ぷにちゃんの部屋で頑張る時間になった。

こういう時の食事は、サカサキノコの強壮剤、大白玉ニンニク皇帝、豆とお肉……

そしてフジフェアリー(カマキリ)なんかが良いみたいで、そういうのを食べたり。

 

 

「ストックは……152時間だ……」

長いエロエロ生活が終わり、ぷにちゃんはそう話す。

ノリノリで頑張ってしまった……

「モニカばっかり達人セックスずるい!」

「バラバラになっちゃいそうでした……達人セックス……あまりにも危険すぎるです!」

「も~!ソフィーもコルちゃんも、ちゃんとドキドキワクワクしながら、よろしくやってるじゃない!」

3人でうねうねする。

そんな長いエロエロワールドも、ダウンする度にぷにちゃんに癒されるから、3人とも元気バッチリなのだ。

 

 

「さて!遂に幽世の羅針盤を作るよ!」

モニカとコルちゃんは帰って行き、ソフィーは錬金釜の前に立つ。

「何だかドキドキしますね……」

プラフタもやって来る。

既にレシピは構築済み。

ソフィーのイメージも固まっているだけに、後はカタチにするだけだ。

 

「あたしの錬金術……きっと上手く行くよ!」

そして錬金釜が動き出す。

 

幽世の羅針盤、漬け置き9時間……

 

「ああぁぁぁ……!これはヤバいドキドキするよおぉぉぉ!」

「だとしても!私に抱きつこうとしないで下さい!折れますから!」

恒例の追いかけっこをする。

 

「配置して決めたのであれば、今さらジタバタしても始まらないでしょうに……」

「うあぁぁぁ……失敗したらど~しよ~……」

ソフィーはうろうろする。

いつもの調合と違ってやり直しの効かない調合……

材料もこれきりだ。

「見た限り、いつものように力強い調合でしたし、場数も充分のようですから、安心して見ていますが……」

プラフタは、ふわふわと飛びながらそう伝える。

 

 

そして夕方……

幽世の羅針盤は完成する。

「きっちり出来上がっているじゃないですか」

プラフタも、ソフィーの手の中の幽世の羅針盤の近くを飛ぶ。

「果たして……でもそれもぷにちゃんに聞いた方がいいのかも……行ってくるね」

ソフィーは出来上がった幽世の羅針盤を持って、コンテナに入る。

 

 

「おお~!これで揃った訳だね!でも私の時だと、良くないかな。おじいちゃんの時の方が導いてくれそうだから、その時に始めるのがいいんじゃないかな」

ぷにちゃんは、あっけらかんとそう話す。

 

「そうなの?まあ、確実にプラフタを人形にする為には、そうした方がいいならそうしとこうかな」

ソフィーもあっけらかんと言う。

「そうだ。モニカとコルちゃんを呼んで、夜中にもっかい来てみるね」

「そうだね。夜中くらいならおじいちゃんだよきっと」

ソフィーはぷにちゃんの部屋を出て、コンテナに戻る。

 

「あ、幽世の羅針盤は置いてってね。じっくり見ておくから」

番人ぷにちゃんがそう話す。

「うん。置いておくね」

そしてソフィーはアトリエに戻る。

 

 

「どうでした?幽世の羅針盤は」

プラフタが尋ねる。

「ぷにちゃんが女の子だったから、ちょっと詳しくないみたい。また夜にコルちゃんとモニカと行ってみるよ。ひょっとしたらその時……プラフタの魂を移すかもだね!」

ソフィーはそう答える。

プラフタが人間になる時も、きっともうすぐなんだ。

 

「そ、そう言われてみれば、そうですね……私も迷わずに人形にたどり着けるのか……緊張します」

プラフタはふわふわと飛びながら、そう話す。

ソフィーも不安に思う事がある。

魂がもしも、さ迷い続けてたどり着く事が出来なかったら……

「人形とは言っても……もうほとんど人間なんだから!これで本当にプラフタと遊びに行けるんだなぁ~♪」

ソフィーは明るく言い、アトリエのドアへと向かう。

「さて!コルちゃんとモニカ、呼んで来るね」

「行ってらっしゃい、ソフィー」

ソフィーはアトリエを出る。

木々の間から見える空は、仄かに赤く、そろそろ夕方になる時間。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[黒プニ汚れ]
黒プニプレスなんかを食らうと汚れる。黒プニの服を汚す能力は一級品。フルーティーな香りが、どんどん発酵してゆく、恐ろしい汚れ。

[ぷにちゃん]
どんな汚れもバッチリ食べ尽くして綺麗にしてくれる!そんな魔力の発生源。

[ハダカ族]
服を脱いだ状態。

[マナの柱]
世界中に点在する、魔力の発生源。現代日本で言う所の発電所みたいな感じ。こちらの世界では電力の代わりに魔力がある。

[うねうね]
抱き合ってうねうねしてる感じ。
[エロエロ]
抱き合ってエロエロしてる感じ。

[燻製小屋]
ヤーペッツさんの新しい調理法。教会のお金と、商人の人達のお金で建てた模様。ここから保存の効く食べ物を生み出し続ける事で、儲かるんだって。
[ちょこっと調合品]
ソフィーのちょこっと調合が産み出し、コルちゃんが増やしまくった化粧品とか。中和剤石鹸とかふわふわゼッテルとか。



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錬金術のアトリエ 34

錬金術のアトリエ 34

 

モニカとコルちゃんと合流して、レストランで夕食を済ませて、3人でアトリエへと向かう。

「遂にプラフタさんが人間に……なるのかも知れないなんて、凄すぎるです」

「人形だけど、あれはもうほとんど人間と変わらないわよね。マナの柱って凄すぎるわよね………」

3人、そう話しながら歩くアトリエへの道。

すっかり夜の空になっている。

 

 

「うわ!ぷにちゃん!?」

ハダカ族になって、ぷにちゃんの部屋に入った3人は驚く。

ぷにちゃんが家の形をしていて、ドアの前に丸く囲われた場所もあるのだ。

「プラフタが……人形まで迷わぬ様に……アトリエを……再現してある……今はプラフタ以外は……入れぬ……」

ぷにちゃんの方が準備万端だった。

 

そして、これからの打ち合わせをする。

 

 

「じゃあ、プラフタの魂を移すの……始めちゃおう!」

ハダカ族3人はコンテナに引き返し、脱いだ服を見る。

まさに今、番人ぷにちゃん達が取りついた所だった。

……長い打ち合わせも、時間が止まっていたのだから一瞬だったのだ……

 

「じゃあ、色々と準備しないとだね!まずはプラフタを呼んで来ないとね!」

ソフィーはハダカ族のまま、アトリエに顔を出す事にした。

「あまり大急ぎでなくても、いいと思うのですが……」

コルちゃんはそう呟いて、ソフィーの後ろ姿のお尻を見送る。

……モニカも隣で見てる。

 

広くなって長くなった廊下の向こう、階段の上がアトリエの扉なのだけど、ハダカ族のまま、ソフィーが上半身と顔を出してる。

モニカとコルちゃんで、そんなソフィーのお尻を眺める。

 

「プラフタ~……」

ベッドの隙間から顔を出したソフィーが呼ぶと、プラフタはふわふわと飛び、その場所へと近寄る。

「ソフィー……何だってあなたはそんな姿で……」

「ぷにちゃんがもう、プラフタの為に準備万端なんだ。だから呼びに来たんだけど……」

呆れるプラフタの言葉を遮って、ソフィーが話す。

「アトリエに誰も居なくなるのであれば、鍵を掛けないといけないのではないですか?」

プラフタは、ふわふわと飛ぶ。

 

「言われてみればそうだね」

ソフィーはハダカ族のまま、ベッドの扉から出る。

「もう!横着なんですから……」

アトリエのドアに鍵を掛けて、ソフィーはプラフタとコンテナに入る。

「……あなた達までハダカ族なのですか?」

ソフィーとプラフタは奥へと進み、モニカとコルちゃんの待つ、ぷにちゃんの部屋の扉の前に着く。

そしてプラフタは呆れたようにそう言った。

「まあ、まだ汚れを食べてる所だから……しょうがないのよね」

「はい。袖が無いのは落ち着かないのですが……仕方ない話なのです」

モニカとコルちゃんはそう言うと、汚れを食べてる番人達をツンツンする。

 

「いよいよ始まるのですか……ハダカ族の前ではありますが、緊張しますね……」

プラフタは扉の前をパタパタと飛ぶ。

 

 

3人が汚れの食べ終わった服を着て、プラフタとも打ち合わせをする。

……プラフタの魂が本と人形に別れる事。

その状態で、コンテナで服を着せて、アトリエの錬金釜の前に移動。

その場所で、幽世の羅針盤を使い、全ての魂を人形に移す。

「魂とは、分けられる物なのですか……?」

プラフタが尋ねる。

 

魂のカタチなど、思い描いた事は無いものの、糸の束のようなモノなんて、誰が思い描いただろう。

「ぷにちゃんが言うには、そんな感じみたいなんだよね。人形の命に、あたしの子供の命を使うみたい」

 

打ち合わせされた事を、ソフィーは話す。

ぷにちゃんに子供を預けていない場合、何らかの子供を提供する必要が出てきた。

今回はソフィーの子供、コルちゃんの子供を提供した事で、ぷにちゃんは人形に命を使う事が出来るそうだ。

「人形だけでは……やはりダメなのでしょうね……」

プラフタの声が少し曇る。

「人形だけでも行けるみたいですけど、命を使った方がプラフタさんの負担が少ないみたいです」

コルちゃんがそう話す。

ぷにちゃんから聞いた話。

 

「それと、あたしの子供が受けるだろう能力……魔法バリアとか錬金術なんかも、使えるようになる可能性が出てくるんだって。人形だけだと、その能力は受け取れないんだって」

ソフィーも話す。

どれも、ぷにちゃんに聞いた話。

 

ゆくゆくは旅にも出れる、なんて望むのなら……

命を使うのは、必要な事みたいなのだ。

「それに、もしプラフタが次の段階……本当に人間の身体になれる場合……その命に魂が入れられるとか……言ってたわね」

モニカも話す。

錬金術が進んだ場合、そういう事も考えられるそうだ。

 

「そんな事まで……つまり命を借りて、ゆくゆくはソフィーの子供も自立できる望みがあると……」

「へへ~……あたしに似た感じの子なのかな~……その頃にはあたしはお婆ちゃんになってるかもだけど……」

3人とプラフタで語り合う。

 

少し語り合った所で、モニカが扉を見つめる。

「ぷにちゃんが待ってるのよね……」

「そうですね。私も覚悟を決めなくてはいけませんね」

「じゃあ、扉を開けるね?」

ソフィーとコルちゃんで扉を開ける。

 

 

開けた扉の先には、アトリエの形をしたぷにちゃんが待っているのが見える。

 

「……いよいよなのですね。色々と関連する品物に触れていたり、話もしていたのですが……」

プラフタはそう呟きながら、ぷにちゃんの近くへとふわふわと飛んで行く。

ソフィー達3人も、プラフタについて行く。

「さて……今のこの部屋に……魂が複数あるのは……良くない……プラフタ以外は……出ていてもらおうか……」

ぷにちゃんはそう話す。

今や3人とも、触れずともそう伝えるぷにちゃんの思いが分かる。

 

 

「さて……では説明するか……」

3人が出ていき、プラフタとマナの柱だけになった部屋で、マナの柱が語る。

……魂とは、束になった糸のような物であること……

……その束を本の身体に7割程残し、3割程を人形に移す事……

その後で、この場所ではなく、ソフィーのアトリエで魂の全部を人形に移す事……

……アトリエで魂の全部を移す時に、幽世の羅針盤は使われる事……

 

 

「さて、扉は開くのかなぁ……」

扉の外、3人は心配そうに扉を眺める。

「158時間を使いきらない限り、すぐ開くのよね」

モニカが呟いた時、扉は開いた。

「おおー!」

そして本のプラフタと、あのプラフタ用の人形が出て来た。

「ちょっと……大丈夫!?」

あまりにも頼りない足取りの、目を閉じたままの人形を、モニカとコルちゃんが抱き止める。

「今……魂を分けている状態ですので……早めに錬金釜の所へ」

プラフタの、本の方がそう話す。

「服を着せないとです」

「……よろしく……お願いします……」

 

3人は人形のプラフタに服を着せて、コンテナを出る。

人形のプラフタは目を開かず、なんとか歩いている……

という感じで身体を動かしていた。

そんなアトリエまでの道のり。

棚に挟まれたほんの短い道のりで、ソフィーは堪らなく不安に思う。

……果たして本当に……

……本当に……

プラフタは人形に……

 

 

プラフタの人形が錬金釜の前に立ち、本もパタパタと浮かぶ。

ソフィーはなんとなく窓を眺める。

夜の星明かりが照らすいつもの景色。

 

そして手に持つ幽世の羅針盤……

プラフタの魂を人形へと導く道具……

……やれるはず……

 

「……じゃあ、やるよプラフタ」

意を決して、ソフィーはプラフタに、笑顔を向ける。

 

……絶対大丈夫……

プラフタは必ず人形に辿り着く……

 

「はい。お願いしますソフィー」

ソフィーは幽世の羅針盤を持つ両手を、人形のプラフタへと向けて、真っ直ぐに伸ばす。

 

アトリエの部屋が一瞬暗くなり、また元の明るさに戻る。

 

……「なぁソフィー……ちょっと脱いでみてくれよ。オイラ最近、興味あるんだよ」

オスカーの声。

 

……「ソフィーや、ちょっと暖炉に洗濯物を干しておいて」

おばあちゃんの声。

 

……「凄い臭いわね……また爆発させたの?」

モニカの声。

 

……「私もこの臭いは、苦手だわ……」

ウメさんの声。

 

このアトリエで起きた事、このアトリエで話した事が巡る。

幾つも幾つも……このアトリエで起きた色々な事が、このアトリエの中に渦巻いていて、それらは気まぐれにソフィーに語りかける。

 

ソフィーは目を閉じたまま、プラフタに伸ばした手に集中する。

 

……プラフタの本から魂が消えたのを感じる……

ソフィーの両手が、急に軽くなった。

……!!

ソフィーは怯む。

 

………………プラフタの魂を探そうと思うけど、すぐに止めて、そのまま手を伸ばす。

 

……信じるんだ……

 

風が吹いた。

光が風となって吹き抜けた。

……魂の世界の風……

なぜか……そうなんだと感じた。

 

「ソフィー……成功しましたよ」

プラフタがソフィーの肩に触れる。

「ソフィーさん、プラフタさんは人形に移ったみたいです」

「やったわね!ソフィー!」

……このアトリエの記憶?

 

……これは惑わす為の……

 

散々流れ続けている、このアトリエの記憶の海。

でもこれは何か今までのと違う……

 

そう感じて、コルちゃんとモニカの声に、ソフィーは目を開ける。

 

プラフタは目を開き、ソフィーを見ていた。

ソフィーは力が抜けて床に座り込む。

「あ、あはは……」

そう笑うソフィーの目から、涙が零れた。

「もう!本当に成功して……安心しちゃったよぉ……あはは……」

「ソフィーが必死に導いてくれましたから。魂を合わせる時、ほんの僅かに揺れただけでしたから、こうして魂を移せました。心配掛けましたね」

プラフタはソフィーの頭に手を置くと、そう言って微笑む。

 

「ヤバかったよぉ……ふぇぇ……良かった!……良かったよぉ……」

ソフィーはプラフタにしがみついて泣き出す。

そんな2人を、モニカとコルちゃんは見守っていた。

 

「ところで、プラフタさんめちゃくちゃ可愛いです!」

コルちゃんが見守っているのにも飽きて、プラフタをぺたぺたする。

「服も凄い露出よねぇ……レオンさんてば究極攻めてるわよね」

モニカもぺたぺたする。

「……ぺたぺたされても、触られてる感覚というものはありませんので……ですが何か気恥ずかしい感じがしますね……」

 

プラフタはしきりに自分の身体を見ていたけれど、コルちゃんとモニカと鏡の場所へと向かう。

べそべそするソフィーは置いてきぼりで、そんな3人を眺める。

「これは何と大胆なカットなのでしょうか……色遣いといい、華やかですね……」

プラフタは、鏡に映る自分を眺めて呟く。

股の所の露出がビキニみたいな……

ヘソも見えてるし。

「これは鼻血が出そうです」

コルちゃんもそう呟き、プラフタはコルちゃんを見る。

「その感想は……」

 

そして後ろからソフィーもひっついた。

「プラフタ、めちゃくちゃ可愛いよぉ~……」

そして鏡の前で、4人はファッションチェックして過ごす。

 

 

「さて、随分と遅くなりましたし、私達は帰ります。明日は種の日。プラフタさんの御披露目も楽しみです」

「ぷにちゃんにも、ちゃんと忘れずに報告しなさいよね?」

モニカとコルちゃんは帰って行く。

「そっか。ぷにちゃんにも報告しないとだね~」

「そうですね。マナの柱にはお世話になりっぱなしですし、私も晴れて中に入れるのでしょうから」

ソフィーはベッドの間、コンテナへの扉を開ける。

「アトリエが空になってしまいますね……鍵を下ろして来ましょう」

プラフタはしっかりとした足取りで、アトリエのドアへと向かう。

ソフィーはそんな後ろ姿を眺める。

宝石のしっぽ、ねじまきが揺れていた。

 

「さて、行きましょうか」

「プラフタ、あまりコンテナとか入りたがらなかったもんね?少し嫌なんでしょ~?」

ソフィーは意地悪な笑みを浮かべる。

本の時にも、プラフタはコンテナに入れたし、ぷにちゃんにも会えた。

だけど、あまり行かないのだ。

「無い記憶が疼くので、そこに不快感がありますね。不思議な所です」

プラフタはソフィーに続く。

 

コンテナの中、広くなった両側の棚は、番人ぷにちゃんと採取してきた物で賑わっている。

その棚は突き当たりの、ぷにちゃんの部屋の扉まで続き、半分手前ぐらいまで賑わっている。

「あまりこの場所は見なかったのですが、材料で溢れ返っているのですね」

プラフタは素材のひしめき合う棚を眺めて言う。

図鑑調合で材料枯渇!

なんてするには、軽く1ヶ月とか掛かりそうな量があるのだ。

 

「そうだね~……でも旅が面白かったり、新しい錬金術の為には、まだ見ぬ世界へ!……なんてあーだこーだそーだこーだで、出掛けちゃうんだよね」

そんな話をしながら、棚の廊下を歩く。

歩いて行くと、ぷにちゃんの部屋の前へとたどり着く……

 

「さて、ぷにちゃんはどんな反応なのかな~……」

ソフィーが服を脱ぎながら呟く。

番人ぷにちゃん達は、みんな揃って眠ってるみたいだった。

「脱がないといけないんでしたね」

プラフタも服を外し始める。

「んむ?」

そしてつっかえる。

「なんか、着せるのも難しかったんだけど、脱ぐのも難しそうだよね~……」

ソフィーも手伝い、プラフタの服を脱がせて行く。

 

……苦労して脱ぎ、そしてぷにちゃんの部屋へと入る。

 

「おお……プラフタも無事……魂を……移し終えたのか……残り時間は……155時間ある……プラフタの動力は……10%程だ……」

ぷにちゃんは口を開く。

「本の時には、マナの柱は灰色だったように感じましたが、鮮やかなオレンジ色なのですね」

プラフタはぷにちゃんを前に呟き、ソフィーに続いて口の中へと入る。

「オレンジ色かぁ……いいなぁ……あたし黒の強い灰色みたいに見えるんだよね。なんでだろ?」

ぷにちゃんは口を閉じる。

ソフィーにとっては灰色の、ぷにちゃんの中。

プラフタにとってはオレンジ色の、ぷにちゃんの中。

 

プラフタの感覚が、人間のように感じ出す。

そしてプラフタは自分の手を見る。

「あまりにも鮮烈な……」

風を受ける肌の感覚、そして身体の中まで通り抜ける風……

プラフタは驚き、オレンジ色の回りをきょろきょろする。

 

「今まで……感覚は無かったようだから……新鮮に思うのだろう……我の外に出れば……その感覚は無くなる……さて……プラフタに命を使っている……事により……力を与える事も出来る……」

ぷにちゃんはそう伝える。

 

「力……?錬金術の力ですか?」

「そうだ……が……どの力を受け取れるかは……今の命次第……だと思われるが……」

「おお~!でも、その為の命だったんだもんね……そっかぁ~……プラフタもエロエロ儀式かぁ……」

ソフィーがそう思い浮かべると、プラフタに伝わり、プラフタは顔に熱が上がるのを感じる。

 

「!?ええ!?ここで……今は痛みも感覚もあるのにそんな事を……!?」

プラフタはうろたえる。

「心の準備が……出来てからにしよう……それに……今はまだ……ゆっくり眠るといい……だろう……」

ぷにちゃんはそう伝える。

そして少し暖かい風が吹いた。

 

 

……充分に眠り、ソフィーが目を覚ます。

「あうぅ……スッキリシャッキリ~……」

そして妙なポーズでぷにちゃんの外側へと、ふわふわ進み、外に出る。

プラフタはまだ夢の中みたいで。

「……プラフタの眠りは……少し長くなるだろう……とはいえ……それも1時間……2時間ぐらいの……話だ……」

ぷにちゃんに言われて、ソフィーは頷く。

 

棚の廊下に出て、ソフィーが服に取りついてる番人ぷにちゃん達を見ていると、プラフタも出て来た。

「おはよう、プラフタ。外に出ると夜になったばかりの時間のまんまだけどね」

ハダカ族のソフィーが、棚の廊下の果てを見る。

「人間になった途端にハダカ族……というのは少し想定外でしたが。久しぶりに眠る、という感覚を味わいました。いいものですね」

プラフタは、プラフタの服に取りつく番人ぷにちゃん達を眺める。

「本の時、眠ってる時あったでしょ?」

ソフィーは話す。

結構、本の開きになっていたり、閉じて横たわっていたり、本棚に収まってみたりしていた訳だし。

「そうなのですが……やはりそうでもないのです。休んでいるのと、眠っている……というのがこれほど違うとは……と、認識を改めています」

「ふむふむ。でもぷにちゃんの中で寝るのは格別だよね~……通っちゃう1番の理由は、それかも!」

 

そうして2人の話しは続き、服を着るとアトリエへと戻る。

 

錬金術生活をして過ごすと、すぐに朝になる。

 

「お祈りから!行くよプラフタ!今日はあっそぶぞぉ~!」

朝のキルヘンベル。

起きたソフィーが窓を眺める。

 

プラフタと2人で山を降りる道を行く。

そして教会。もう人で一杯だから、後ろの方で。

 

 

「こ、これがプラフタなの!?本当に信じられないけど、こんな事もあるのねぇ……」

恒例の噴水端会議。

エリーゼお姉ちゃんが、プラフタをぺたぺた触りながら言う。

「うむ……完璧だな……しかしこれほどまでの出来上がりとなると……私も感慨深い物があるな」

フリッツさんも、プラフタを凝視しながら呟く。

「何だか、髪の色的に妹が出来たみたいじゃない?ほらほら~♪」

上機嫌なレオンさんも取り付く。

服のセンスも相まって、オシャレ姉妹のようでもある。

「コホン、私は500年前から生きています。そうなると、あなたが妹なのでは?」

プラフタは言う。

見た目的には、プラフタの顔の幼さ具合、あどけなさ具合が、妹!……って感じがするけど。

「も~……こんな可愛い子が居るのに黙ってるなんて~……ソフィーもつれないわ~♪」

パメラも取り付いてる。

そんな噴水端会議。

北の人形劇チームへの御披露目となった。

 

そして人形劇。

プラフタも参加して、人形劇をして過ごす。

演技へっぽこのソフィーは今回、ひたすら観客だった。

 

 

「もうお昼なのですか……」

北の人形劇は午前中のみ。

片付けもして、エリーゼお姉ちゃんとモニカ、フリッツさんとレストランでお昼ご飯、となった。

プラフタは食事してもしなくても平気なんだけど、食事した方がいいみたいだ。

 

「……しかし、フリッツはいつまで観察するのですか?」

背中を眺めている変なオジサンに、ようやくプラフタが突っ込む。

「いや、あまりの出来の良さに痺れている所だ。案ずるな」

「あはは、案ずるな言われても……ねえ?」

「あまり感覚が無いからでしょうか?恥ずかしい、みたいな感じも無いので、構わないのですが、周囲の目というものがあるのでは?」

プラフタは冷静にそう言って、困った顔をする。

 

 

「コルちゃんがアトリエに来たら、閉まっててびっくりしちゃうから、南の人形劇も見に行っておこうよ」

午後は南の人形劇。

テスさんとコルちゃん、それに自警団の人達に職人のおじさん達への御披露目となった。

「あは!ははははっ!なんと……」

南の人形劇の午後……

南側は、もはや人形劇ではなく、芸人師匠と弟子の漫才に、コント。

プラフタはやたらツボってて、笑い転げていた。

「笑いの浅い姉さんだな~……」

隣の職人さんが苦笑いしてる。

「あまり見に来れなかったが、これほど面白いとは……こちらも研究する余地があるな……」

フリッツさんとエリーゼお姉ちゃんも、便乗して楽しんでるし。

 

でもソフィー的には、漫才コントはちょっと分からない感じだった。

「ようソフィー、ひょっとして、あの笑い転げているのは、プラフタかい?」

サンドイッチ販売のオスカーと会う。

ソフィーが席を外したら、職人さんに取られてしまい、途方に暮れてた時だ。

「うん。あたしにはちょっと難しいんだけどね……プラフタには分かるみたい」

ソフィーは胸の前に指を絡めて、話す。

 

「なんだか、楽しんでるみたいで安心したよ。退屈な、何もないキルヘンベルじゃなくなってて、良かったなぁ……」

オスカーは遠い目をして、南の漫才を眺める。

「それはあるよね。まだ!これから温泉を作る野望もあるんだよ~♪」

ソフィーはガッツポーズをする。

なんかホルストさんに聞いたら、大浴場の計画はあるみたいで、そこに乗っかれそうだし。

「そうだったな。お湯はどうするのか、さっぱり分からないけどな」

旅立ちのカフェの光景を思い浮かべて、オスカーは呟く。

「ふふ~ん、あたしの錬金術が更にレベルアップすれば!フラム大先輩がこう……どう……?」

 

ソフィーはガニ股になって、手をこう……こう……どう?と動かす。

「まあ、楽しみにしてるぜ。オイラはまた店に戻らないとだな」

オスカーは笑って、去って行った。

 

 

夕方、南の漫才も終わって、コルちゃんとジュリオさんとモニカの家に。

エルノアさんとモニカで、パーティーの準備をしてくれているそうで。

エリーゼお姉ちゃんとフリッツさんとは別れた。

 

「まさか、パーティーまで準備されているとは……何だか悪い気もしますね」

プラフタはそう話す。

「私は……アトリエに向かうだけの筈が、パーティーにご相伴出来るとは……これぞ棚ぼたです」

コルちゃんも、ジュリオさんの背中を追い掛ける。

「タナボタ?」

ソフィーが聞き慣れない言葉に、プラフタに尋ねる。

「……私も縁のない言葉ですね」

プラフタも首を傾げる。

「こちらでは馴染みの無い言葉でした。思いがけない幸運、という意味の言葉です」

コルちゃんがそう説明してくれた。

 

……元々は、「棚からぼたもち」というらしい。ぼたもち、というのがなんか美味しいお菓子みたいで、そんな美味しいお菓子が棚から降って来るんだそうだ。

「……プラフタも、棚から降って来たみたいな感じだったような……」

ソフィーは呟く。

「……確かに、棚に居たらソフィーに会った……そのような出会いでした。ぼたもちとは……まさか私の事なのでは……」

プラフタも考え込む。

「ぼたもち、というのが何者なのか、気になる所だね」

ジュリオさんはコルちゃんに尋ねる。

そんな住宅街へと向かう坂道。

 

 

モニカの家に来たら、食通商人のヤーペッツさんも来ていた。

「何度も助けて貰った縁がありますからな!どうぞどうぞ、お待ちしてましたぞ?」

モニカの家の前で待ってたらしい、ヤーペッツさんがドアを開ける。

 

「こんなパーティーまで……うわぁ!?」

ソフィーが入り、中を見て驚く。

「一体何が……ええええ!?」

ジュリオさんも驚き、仰け反る。

造花がとんでもなく集められていて、お花畑なのだ。

更に装飾の群れがとんでもない。眩しい。

「……これが……エルノアさん暴走の全力……」

ソフィーは思わずそう呟く。

レストラン事情の、エルノアさんの話はそこそこ聞く話なんだけど……

確かにこれは眩し過ぎる。

 

プラフタもジュリオさんと共に、呆然とする。

「一度、どこまでも飾って飾って、飾り尽くしてみたかったのよ~♪あなたがプラフタなのね?こんな飾りにも負けないくらい可愛い子ね!」

エルノアさんが出てきて、プラフタと握手すると席へと促す。

「エルノアさんは、レストランの飾り付け部の部長さんですからな!油断するとここまでやってしまうから、セーブするのが一苦労ですが……」

ヤーペッツさんにも促され、とんでもないキラキラワールドで、夕食。

出てくる夕食も、凄くキラキラしてた。

 

 

そんなキラキラの夕食で、ヤーペッツさんに「ぼたもち」とは何者なのかを聞く。

麦の仲間に、米というのがあって、その米を使って作る縁起物のお菓子なのだと言う。

でも、黒くてむにゃむにゃしてる……

のだそうだ。

「……ダークマター?」

ソフィーは閃く。

「ソフィーさん……それは流石に……」

コルちゃんが呆れた顔をする。

「私は、そのダークマターというのを見た事がないので、興味ありますな。話ではよく出てくるので、幻の物体なのですが」

ヤーペッツさんが興味を示す。

「ダークマターなら、今でもさくっと作れるかも!」

ソフィーは立ち上がる。

……そう言えば最近、作っていない。

「後片付けが本当に大変だからやめて!」

モニカも立ち上がる。

……そんな楽しいパーティー。

 

 

「これ、今日はこの中で寝るのよね?そう考えるとそのまま天国へ行っちゃいそうだわ……」

楽しい夕食が終わり、別れ際にモニカはそう言って、苦笑いしてた。

 

 

そしてコルちゃんとプラフタ、ソフィーの3人でアトリエへと向かう。

モニカは後片付けしつつ、仲良く家族3人で寝るのだとか。

いつの間にやら、ジュリオさんも家族の一員に……

 

「なんか、バッチリ御披露目しちゃったね♪」

こちらも仲良く帰る3人。

ソフィーとプラフタ、そしてコルちゃんで手を繋いで歩く。

「はい。笑い転げてましたので、職人さん達のプラフタさんの評判は、バッチリです」

コルちゃんはネコの目で笑い、プラフタを見る。

「色々と驚きの1日でしたね。それに新しい発見も遊び場も出来てしまいまして……アトリエに鍵を掛ける事も増えるのかな、と予感します」

プラフタがそう話す、星明りの眩しい夜。

3人でアトリエに帰る。

 

そしてぷにちゃんの部屋へ。

コルちゃんとしては、やたら遅い時間になってしまった。

「あと……153時間残っている……時間は膨らませるか……?」

ぷにちゃんはそう言って、口を開く。

 

「膨らませたいです!もはや遅い時間になってしまっていますので!」

元気良くコルちゃんが答える。

「ゆっくり眠れるのは、ありがたいですね。ハダカ族なのは気に掛かる所ですが……」

プラフタも乗っかった。

「今日はなんか、疲れたよね~……楽しかったんだけどね♪」

そしてぷにちゃんの中……

3人はあっさりと眠りに落ちる。

 

 

プラフタが最初に目覚めた。

「目覚めたか……」

「はい。凄く休まりました」

「そうか……その間にも……我はプラフタの……身体を探っていた……」

マナの柱はそう伝える。

エロエロ儀式の為……

プラフタの身体を休める為……

色々と探らねばならない、という事がプラフタに伝わる。

 

その結果。

まず、エロエロ儀式が出来ない。

プラフタに使った命は、ソフィーの子供で、まだ赤ちゃんにも満たない命。

これでは無理なので、せめて10年程度待たないと難しい。

だが、プラフタの魂が抱えてる時間がある。

プラフタの魂に溜まっているというか、時間を抱えてしまっている。

その時間を取り出せば、その10年20年をプラフタに使えるのだ。

マナの柱としても、抱えてる時間を取り出す、なんて事は未知の領域。

まず時間を抱えてる、という状態が不可思議な現象。

 

「色々と問題があるのですね……」

「我は錬金術については……知らぬ事も多い……それに錬金術についての知識は……抜けてしまうのだ……それに……記憶にも……封印が施されて……いる……」

マナの柱はそう伝える。

プラフタにとってそれは、SOSにも感じた。

 

「そうですね。私も自分を思い出したいあなたの気持ち、痛い程良く分かります」

「マナの柱を殺すのは……怒り……妬み……そうした激情が……渦巻く事……我の……封印された記憶は……もしやそうした……記憶かも知れぬ……」

マナの柱は伝える。

記憶を取り戻したとして、その記憶は良いものとも限らない。

悪い記憶だった場合、記憶を取り戻してしまう事で、マナの柱は魔物を産み出し続ける、パンドラの箱となるのかも知れない。

 

「この土地でも、そうした記憶だとしたら……あまりに悲しく思います」

「ともかくまずは……プラフタの抱えた……時間を取り出す為の……何かが……必要だろう……それは……錬金術の……領分だと思われる……」

そう話していると、ソフィーとコルちゃんも、目を覚ました。

 

「おはよ~……」

「ふあぁぁ……何だかほわほわしてます……」

プラフタはそんなハダカ族2人を見る。

素直に可愛いと思える仕草で、起きるなり動いてる。

 

そしてぷにちゃん+3人で、その話をする。

エロエロ儀式しないと、プラフタが旅に出る事は出来ない。

 

 

「長く過ごしましたが……夜のままなのですね。不思議な気分です」

アトリエに戻り、帰るコルちゃんを見送って……

ソフィーとプラフタは錬金釜の所へと向かう。

「へへ、なんか今は錬金術したくないや……プラフタを見ていたいかな」

ソフィーがそう言って笑う。

「ふふ、そうですね。何だか私もそんな気分でした」

プラフタも笑う。

「ぷにちゃんの部屋に行くと、何もかもバレちゃうよね?何か今のうちに言っちゃいたい事ある?」

ソフィーはそう言うと、机の上に置いてある本と軍手を眺める。

プラフタだった本と軍手……

 

「確かに。どうしても隠しておきたい事は無いかと思いますが……言い出すには辛い、みたいな事柄はあるかも知れません」

プラフタは窓を眺めて笑う。

「あたしも、オスカーの事で悩んでたんだよね。でも言い出せなかったかな……結局ぷにちゃんの所で知ったんだけどね」

ソフィーは話して、痩せていた自分を思い出す。

あの頃からそれほど時間は経ってないけれど、なんだか遠くなってしまった……

あの頃の自分。

 

「オスカーの事……どんな事です?」

プラフタは暖炉の方へと歩く。

ソフィーも暖炉テーブルへと向かう。

「あたしがね、オスカーと恋人になった時に、モニカには恋人って居なかったんだよね。だから、出し抜いちゃったのかなって思ってたけど、言えなかったんだ」

ソフィーは暖炉の火を眺めながら、テーブルに着く。

「ほほう……それは言い出し辛いですね。で、どうだったんでしょうか?」

プラフタも暖炉の火を眺める。

「本当にな~んとも思ってなくてね。ほっとしたよ~……ホラ、オスカーってあれだけ魅力的じゃない?だからドキドキしたんだけどね~」

ソフィーはそう話すと、目を閉じて椅子に寄りかかった。

「ふふふ、そうですね。あまりモテるタイプではないかと思いますが、知性的であり、タフでもあるみたいなので、頼り甲斐もありそうですね」

そんなソフィーを眺めて、プラフタは笑う。

「プラフタも、何かない?なんかそんな話」

 

「あまりに記憶が曖昧なのですが、話すには良いタイミングですね。私にも恋人が居たように思います。ですが、その当時から特にラブラブ……ではなく、仕方なしに付き合っていた……そんな記憶です」

「へぇ~……でもラブラブじゃないのに恋人なの?」

「さあ……ラブラブの時期もあった……と思いたいですが、あまりにも曖昧で……ソフィーにおけるコルネリア……モニカ……ジュリオ……レオン……と仲間も居たように思いたいのですが、その辺りはさっぱりでして」

 

「そっかぁ~……でも恋人の事は思い出したんだ?」

「そうですね……恋人とも呼べるのかどうか……ですが、私の側に何者かは居たと記憶しています。ほんの僅かに、その記憶が影を持った……だけなのですが」

「何だか、ぼんやりだねぇ……」

「そうですね。こんな事を考えるよりも、抱えてる時間とやらを取り出す錬金術の話をした方が良いのでは?」

 

そんな話を繰り広げる暖炉テーブルの2人。夜は更けて行く……

 

 

ソフィーがうとうとして、テーブルに突っ伏して眠っていたりすると、プラフタはふらふらと歩く。

本を読んでみたり、なんとなく落ち着かない。

……ソフィーは、テーブルに突っ伏して眠ってるフリをする事にした。

すると、プラフタがベッドの方へと行く。

その足音を聞いて、こっそりとプラフタを見る。

 

「ふふふ……」

鏡を見てにやけてるみたいだった。

レオンさんの服……

オシャレで大胆だもんな……

ソフィーはそう思いつつ、眠る。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[レストラン]
女性に人気の、リーズナブル価格から仰天価格のコース料理までを提供する食事処。食通商人のヤーペッツさんが思うまま、腕を奮っている。教会の子供達の中に、このレストランで料理修行してる子も居るとか。

[マナの柱]
古代の錬金術で産み出されたとされる魔力の源。世界中に点在している。
[ぷにちゃん]
マナの柱のひとつ。ソフィーのアトリエの地下に居る。記憶を封印されていて、おばあちゃんの事とか、錬金術の記憶なんかが抜けている。

[ハダカ族]
服を着ていない状態。髪をセットしていないコルちゃんも可愛い。

[番人ぷにちゃん]
コンテナに住むコンテナの番人のぷにちゃん。素材の汚れを食べ尽くすので、いつもピッカピカ!

[ベッドの扉]
ソフィーのアトリエから、地下のコンテナに続く床にある扉。コンテナの1番奥が、ぷにちゃんの部屋。

[魂のカタチ]
糸の束のようなカタチで、ほどけて細くなってしまう魂もあるんだって。怖い……

[あたしの子供の命]
ぷにちゃんが取り出したソフィーの赤ちゃん。産まれてないから赤ちゃんでもないけれど。

[コルちゃんの子供]
ぷにちゃんが取り出したコルちゃんの赤ちゃん。産まれてないから赤ちゃんでもないけれど。

[噴水端会議]
井戸端会議の、噴水バージョン。種の日にお祈りで集まる流れで発生する。

[北の人形劇]
種の日午前中、噴水端会議の後から始まる子供達向けの人形劇。パメラとエリーゼお姉ちゃんが主催。
[南の人形劇]
種の日午前中、噴水端会議の後から始まるおじさん向けの人形劇。芸人師匠と弟子が主催。午後には南の漫才。歌広場と、お酒飲み会場となる。

[芸人師匠と弟子]
ゲームでも登場するが、南の人形劇とかしてる訳ではない。

[大浴場]
キルヘンベルにも温泉欲しい計画。

フラム[大先輩]
オレンジ色の爆弾。温泉の火力にならないか画策中。

[エルノアさん]
モニカと一緒に住む可愛いおばさん。華やかな飾り付けが趣味。
[ヤーペッツさん]
食通商人。美味しい料理を作るのが人生。

[エロエロ儀式]
ぷにちゃんにエロエロされて、体液を食べられる事。そうする事で魔力の受け皿が目を覚ます。血液を抜き取る、では時間は膨らむけれど受け皿は目を覚まさないそうだ。



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錬金術のアトリエ 35

錬金術のアトリエ 35

 

「よ~し!今日もお出掛けするよ~!」

「うわぁ!?」

朝の5時、突然起き出してポーズを取るソフィーにプラフタは驚く。

「なんであなたはそう、いたずらに人を驚かそうとするのですか!?」

鏡を眺めて、ベッドに腰掛けていたプラフタは、飛び上がる程驚き、怒ってソフィーを追い掛ける。

「驚くプラフタが可愛いから!」

「あなたという人は!」

ソフィーはアトリエのドアの外に出て、プラフタはそれを追い掛ける。

ソフィーは急に止まると、プラフタを受け止める構えを取った。

 

「きゃあっ!?」

「大物、捕まえた~!」

ソフィーはプラフタを抱き締めると、草地に倒れ込む。

「今日、カフェからまた、旅に行くんだけどプラフタも来る?」

「……それは考えましたが、古本補修のアトリエとなりますから……そうも行かないでしょう」

「エリーゼお姉ちゃんとウメさんが……あら」

プラフタを抱いて倒れ込んでいるソフィーが、既に来ていたエリーゼお姉ちゃんに気付く。

 

「その……わざわざ外でやらなくても……」

エリーゼお姉ちゃんは少し笑いながら横を向き、なのに演技慣れしていて、照れ臭そうにそう言った。

「こ!これは違うのです!ってか、離しなさい!ソフィー!」

大いに慌てふためくプラフタ。

「違くないもん!違くないもん!」

ソフィーは足まで絡めてうねうねし出す。

「こら!本当にあなたって人は!」

もがくプラフタ。

 

 

「ソフィーったら、本当にプラフタが人になって嬉しいのね」

ともかく……

もう6時になり、旅立ちのソフィーを、エリーゼお姉ちゃんとプラフタで見送る。

「あ、ウメさんおはようございます!」

ウメさんとすれ違いながら、ソフィーはカフェへと向かう。

今日は少し曇ったキルヘンベル。

 

 

「あれ?」

教会前、噴水広場に差し掛かったソフィーは足を止める。

オスカーとハロルさん、コルちゃんにヤーペッツさん、バーニィさんとエルノアさんと、なんか集まって噴水端会議していて、解散する所だった。

「よお、ソフィー」

オスカーがひょい、と手を上げる。

 

「なんか楽しい話?」

ソフィーは尋ねる。

コルちゃんとハロルさん、オスカーとカフェへと向かいながら。

「ん?商店会の会合なんだよ。オイラは母ちゃんの代わりなんだけどな」

いつものトーンで、オスカーが話す。

「お店かぁ……憧れるなぁ……ケーキ屋さんになるのが夢なんだよねぇ……」

ソフィーは口許に指を置いて、ぼんやりとそんな事を思い出す。

「お前、小さい頃にそんな事を言ってたな……」

そんな話をハロルさんが拾った。

「裏市街入り口のパン工房で、ケーキも焼いてるけどな。今はレストランでちょっとだけ使ってるくらいじゃないか?」

オスカーが話す。

ラーメル麦なんかの納品もあるから、詳しい。

 

「確か……そんな感じでした。キルヘンベルは甘い物が人気なのに、ケーキはあまり人気ないみたいです」

コルちゃんもそう話す。

パン屋にも、何かしらの営業ルートがあったりするのだろうか?

 

……そんな話をしながら、ホルストさんのカフェに。

 

 

「ケーキですか?また風変わりな物をお求めですねぇ……ソフィーのだけ、パンをケーキにして出しましょう」

その話を引きずりながら、朝のカフェ。

モーニングのサービスの、ソフィーの分だけ、焼いて焦げ目を付けた、パウンドケーキがパンの変わりに出てきた。

「おおおお~!お洒落!」

焦げ目パウンドケーキに、バターひと切れとハチミツ。

それに気まぐれいちごが1つ乗っかった1品に、大いにはしゃぎ、左右に揺れるソフィー。

 

ジュリオさんとコルちゃん、レオンさんで依頼内容と冒険の場所を吟味する。

今日も、メーベルト農場行きの馬車と一緒に出発できそうなので、ゆっくりだ。

「でもこれはお高い感じするね!」

ソフィーはおしゃれナイフとおしゃれフォークで、パウンドケーキを切りながら、ホルストさんに輝く瞳を向ける。

「まあ、モーニングのサービスですので。パンの変わりにケーキにしただけですから」

ホルストさんは、そんな微笑ましい光景に顔を綻ばせながら、そう答えた。

 

 

……ともかく、今回は巨大ハクレイ石の噂に需要が絡み、青葉の丘へ。

それとそこだけでは、魔物との戦闘が物足りないハズなので、更に森の奥へと足を伸ばすコースとなった。

「ぬっふっふっふっ……」

馬車の後ろで、フリッツさんが新調した剣を少し抜き、怪しい笑いをする。

「ん~……」

時々、ハロルさんも新調した銃を眺めていたり。

 

「しっかし、あんたら本当に馬が好きだなぁ」

マレフに乗るレオンさんに、ブレストと仲のいいコルちゃん、ロザリにようやく触らせて貰えてるソフィーを眺めて、おじさんは微笑む。

そんな旅の道……

 

 

メーベルト農場で馬車と別れる頃、夕方から夜になる。

森に差し掛かる道……

雨が降り出して来た。

メーベルト農場から、有閑広場へと向かう道。

 

「ほぉ……今日は巨大ハクレイ石が依頼品なんだねぇ……」

錬金荷車2号を引くジュリオさんの横で、ソフィーが呟く。

旅の目的地を、今更知る。

「ソフィーはケーキに、ロザリに夢中だったからね」

ジュリオさんは話す。

「まあ……それもありますけど、プラフタの抱えてる時間を取り出す錬金術を考えないと……で考えてたりするんですよね」

ソフィーは寂しい森の道を歩きつつ、呟く。

ジュリオさんはその顔を見て、自信がありそうだと見て取り、微笑む。

「抱えてる時間、というのが良く分からないけど、ソフィーには何か思い当たる所がありそうだね」

暗がりの森の中の道。

ジュリオさんの横顔のシルエットは、そう話す。

「さすが、見抜いちゃったりしますね」

ソフィーは空を見上げる。

森の木々の覆う天井に、時折出来てる隙間の星の光を探して。

 

「でも、それは過信かも知れないかな。詳しくは分からないけれど、僕にもそうした、結局裏切られてしまう自信っていうのは経験したからね」

ジュリオさんのシルエットは、話を続ける。

「そうなんですよね~……でもあたしの抽出錬金術、ちょこっと調合編ぐらいしか思い当たらなくて……あ!フリッツさんなら何か分かるかも!」

ソフィーは錬金荷車2号の後ろを歩く、フリッツさんのシルエットへと向かう。

 

「なんだか忙しそうなのね?旅に無関心なのかと思ったら」

ソフィーの居た場所に、モニカがやって来る。

「そうだね……ソフィーはなんだか、いつも何かを目指しているみたいで……僕も頑張らないと、と思わせるね」

「私も、何か頑張らないといけないわね」

ジュリオさんとモニカは、少しだけ顔を見合わせて、前を向いた。

 

 

「フリッツさんフリッツさん……」

星明かりが木々で遮られてしまい、暗い森の道。

ソフィーはフリッツさんの歩く場所へと、姿勢を低くしてやって来る。

「ふむ……プラフタが動き出してはしゃいでいるみたいだな」

そんなソフィーを見て、フリッツさんは微笑む。

「えへへ……分かります?」

そしてソフィーは、プラフタの抱えてる時間の話をする。

 

「ふむ……命まで込めたとなるとそうか……失念していたな……」

フリッツさんはそう言うと、手帳を取り出して、あざやかにふわっ、と荷車に乗り込む。

「お、おお~!これはあたしも……とうっ!」

ソフィーも荷車に頭から飛び込む。

フリッツさんがそれを受け止めて引き寄せ、すとん、と1回転してフリッツさんの膝に乗れた。

「今をときめく錬金術殿を、お姫様抱っこ出来るとは、光栄ですな」

フリッツさんはそう芝居がかった台詞を言うと、微笑む。

 

「あざやかなキャッチですね……」

ソフィーは、もう一度やりたいな~……

とか思いつつ、言う。

荷車の床に置かれて、フリッツさんは手帳と、懐から光る石を取り出す。

「おお~……オシャレ……」

ソフィーはその姿を眺めて、フリッツさんは手帳の内容を探る。

 

……しばらくして……

「これだ……メクレット、アトミナという人形を手掛けた時のメモによると……魂の抱えてる時間の抽出にはだな……大型ガラス瓶、ハクレイ石のメビウスリング、夜光石の蓋……星の粉とガラスの破片を合わせて作った……『砂』を用いた砂時計を媒体として、抽出錬金術を行う、とあるな……」

フリッツさんは手帳を眺める。

「メクレットとアトミナ!?あたし、アトリエで会った事ある!」

ソフィーは驚き、フリッツさんを見る。

あの2人もフリッツさんが作ったとは……

 

「ほほう……彼もまた太古の魂だったようだが……プラフタも太古の魂だと思われる魂……と、話には聞いたかな」

「500年前って話していたから、太古の魂ですね!ひょっとしたら、知り合いかもですね!」

「ならば、ソフィーの錬金術次第、という事なのかな?」

「あ、メモ取らせて下さい。大型ガラス瓶……ハクレイ石で作るメビウスリング……夜光石で作る蓋……星の粉とガラスの破片で作る砂……そして砂時計……」

ソフィーはメモを取る。

まさか、これほど具体的に知っているとは思わなかった。

 

……これも図鑑にある錬金術なのだろうか?

 

 

夜中、有閑広場に到着。ここから青葉の丘までは3時間掛かる。

「サカサキノコの強壮剤が取れた所だよね?」

「ぷっ!あれは完全に、ちんちんでした」

荷車を引くソフィーと、その隣のコルちゃんで他愛の無い会話をしながら歩く。

「もっと他にも取れていたハズなんだけどな~?あなたたちの思い出は、それなのかしら~?」

レオンさんも、荷車の横を歩き、2人にジト目を向ける。

「あれほど笑ったのも無いもんね~?」

そんなジト目にも気付かず、ソフィーはコルちゃんを見る。

「はい。まさしくちんちんで、もう大爆笑でした。しかも先っちょが……ぷぷ」

あの時笑い転げていたコルちゃんは、そんな思い出し笑いを見せる。

「ぷっ!も~!思い出しちゃうじゃん!」

そしてまた笑い出す2人。

……コドモなんだよなぁ……

と、思いながらレオンさんは、そんな2人を眺めて歩く。

 

 

「さて!目的の巨大ハクレイ石……と黒いアイツだね!」

夜中3時……

黒プニ洞窟に入る頃には朝になろうとしている。そしてジュリオさんの目が輝き出した。

 

「ぬっふっふっふっ……」

フリッツさんが新しい剣を少しだけ抜いて怪しい笑いをする。

「さて……」

ハロルさんも、新しい銃を眺める。

「オイラも、新しいシャベルだったな……土を掘る段階でもう、なんだかとんでもないシャベルなんだけどな……」

オスカーも、シャベルを地面に刺してポーズを取る。

「あたしの斧も、きっと強いよ!」

 

そしてソフィーも杖を掲げる。

三日月を模した先端のフローリッシュハートは、その三日月部分が斧っぽい刃物なのだ。

目を輝かせたものの、ジュリオさんは剣が大き過ぎて新調間に合わず、最前線はフリッツさんとなった。

 

 

「はっ!はっ!」

あの日、ジュリオさんのスペシャルアタックにも耐えた黒プニは、フリッツさんの斬撃1回で倒れる。

「よし、ソフィー……あれだ」

ズドン!ズドン!

「と~うっ!」

ハロルさんの銃撃、ソフィーの追い打ちでも倒れる。

あの日のぽかすか祭りは、もはや無い。

あっさり倒されまくる黒プニ達。

戦闘はあっさりだ。

 

 

「でかい!これはでかいね!」

巨大ハクレイ石を荷車2号に乗せていく。そして次なる目的地、の前にサカサキノコの強壮剤レシピの昼食となった。

「最初はあんなに可笑しかったのに、今はそうでもないです……」

葉っぱの裏のサカサキノコを眺めて、コルちゃんが呟く。

「確かに、あまりにも小さいもんね……」

ソフィーも呟く。

またゲラゲラ笑おうと思っていたけれど、アテが外れた。

 

サカサキノコのヌルヌル入りの黒プニ君のスープが、お昼ごはんとなった。

「なんか、変な気分になったりしないでしょうね?」

モニカが疑う。

モニカとレオンさん、ジュリオさんとフリッツさん、オスカーは掘りたての芋のスープだ。

ちょっと小さい芋しか無かったので、コルちゃんとソフィーのごはんは、朝食にも食べた黒プニ君になった。

「黒プニ君も元気が出るよね~♪更にサカサキノコパワー……鼻血が出るかも?」

 

ソフィーがスープの器を高く掲げる。

「まあ、サカサキノコの強壮剤が強烈になるには、もうひと手間必要だからな。普通に使っただけだと、元気が出るくらいだよ」

オスカーはそう言って、スープを傾ける。

「黒プニ君、いただきます!」

ソフィーもスープを傾けた。

 

 

そして昼過ぎには有閑広場に戻り、更に森の奥深くへ目指す。

戦闘が物足りないので、このルートの奥……

困惑の迷い道を目指す。

有閑広場~静寂の湖畔への道。

太陽がギラギラしているみたいで、森の中の道もやたら暑い。

 

「……なんか、コルちゃんが歩いてるのは珍しいね?」

荷車2号の横を歩くソフィーが、その横を歩くコルちゃんに声を掛ける。

「まあ……たまにはこういうのも悪くないと思うのです」

コルちゃんは口許を隠し、ソフィーから視線を外す。

「しかし、暑いな……陽が通ってやがる……」

ハロルさんが呟き、歩く。

今回、誰も荷車に乗っていない。

サカサキノコの強壮剤のパワーで、眠れなさそうだし、こうして汗をかいて歩いてるぐらいがちょうどいい……

みたいな感じなのだ。

 

 

静寂の湖畔に着いた時、雷雨だった。

夕方なのに暗くなり、荷車2号から霧が出ている。

「なんだか、今回は波乱に富んだ旅だね」

ずぶ濡れジュリオさんが笑う。

「巨大ハクレイ石からの冷気が気持ちいいのよねぇ……」

「なんか、不思議な感じだわ~……」

モニカとレオンさんは、荷車2号を見つめる。

湿り気を受けて霧を大発生させている巨大ハクレイ石……

その霧はちょうど涼しくて、心地好い。

 

「せっかくの湖畔なのに、こんな雷雨と霧……残念だけど、なんか新しい感じですね……」

「確かに、こんな場面にはそうそう会うものでもないな……」

ソフィーとフリッツさんも、そんな雷雨と冷たい霧を浴びながら湖畔の方を眺める。

 

「夕食、ゲットです!」

コルちゃんが暗闇に呼吸を向ける。

するとほんの少し暗闇が揺れた。

「でかしたコル助」

ハロルさんがナイフを数本投げる。

そして大きな蛇を仕留めた。

……そんな連携技が……

「なんか、自由よねぇ……」

相変わらずの挨拶回りしてるオスカーと、仕留めた蛇を持つコルちゃんとハロルさんを眺めて、レオンさんが呟く。

 

夜、菌糸の楽園に着く頃に、雷雨が終わった。

 

 

「こんなでかいタランバ、よく捕らえたなぁ……」

オスカーが感心して、ハロルさんとコルちゃんの仕留めた獲物を捌く。

菌糸の楽園付近には雨が降って居なかったみたいで、乾いた木材がやたらとあり、野営もしやすい。

 

タランバ、って名前らしい蛇の丸焼き料理にみんなで舌鼓を打ち、そして更に先、困惑の迷い道へと向かう。

「しかし、汗臭いわ……」

レオンさんが自分の腕を嗅ぐ。

「雨に打たれた分、薄まってるみたいだがな……」

ハロルさんがその近くを歩く。

「湖畔をアテにしていたけど、あまりに冷えてるから敬遠しちゃったからね」

ジュリオさんも加わる。

今回、この巨大ハクレイ石の冷気のおかげで、いつもと勝手が違う。

 

 

ともかく夜中、もはや開花の日となって、目的地である困惑の迷い道に、到着となった。

 

「コルちゃん……完全にダウンしてるね……」

ソフィーは、オスカーに背負われて眠るコルちゃんを見る。

今回、荷車が冷え過ぎている為、荷車で眠る事が出来なかった。

眠そうなコルちゃんを見かねて、オスカーが背負った訳だけど、そんなオスカーは普通に元気だったりする。

 

「ああ……自分を消耗する錬金術らしいし、何かあるんだろうな」

オスカーは相変わらずのおとぼけボイスで言う。

そして荷車2号を離れて、また植物に目を向ける。

「子供できたら、こんな感じなのかなぁ……」

コルちゃんを背負うオスカーの後ろ姿を眺めて、ソフィーは呟く。

 

 

困惑の迷い道……

サンダラスという黄色い悪魔と、ヘルゲートという青い悪魔が今回の目的。

攻撃力も備えてしまったフリッツさん、ハロルさん、そしてオスカーとソフィーで迎え撃つ。

意外とあっさり倒せてしまい、邪な核石がぽろぽろ手に入る。

 

採取生活の賜物としては、クプルフ鉱石、妖精の毒草、土いも……

うに、赤うに。

と、ありふれた何気ない物ばかりで、物珍しい物は取れないみたいだ。

でも、品質が凄い。

うにならうにの、理想形みたいなのが採れる。

特性的にも、キルヘンベルでは絶対取れない特性を持っているのだ。

 

「なんとハンサムな土いもなのでしょうか……」

コルちゃんが土いもの1つを高く掲げる。

「こんなに香りが強い土いも……オイラも見た事ないぞ?それにでかくてみっちりしてるなぁ……」

オスカーも大絶賛の一品ばかりが採れるのだ。

「パンドラの箱の中に近い……ってことなのかしらね?オジサン?」

レオンさんが芋掘り中のフリッツさんに尋ねる。

「そういう事だろうな……だがこれはまだ入り口付近、とした所だろう」

フリッツさんはそう呟きつつ、芋を掘る。

そんな採取生活……

 

 

お昼には荷車2号がいっぱいになり、妖精の道標の出番となった。

 

開花の日のお昼……帰り道が無いというのは本当にありがたい。

「じゃ……それ♪」

一行はキルヘンベルへと帰る。

 

 

「しかし、こいつは便利だな……」

「そうよねぇ……とんでもないアイテムとしか言いようがないわねぇ……」

アトリエ前。

ハロルさんとレオンさんは、レストランへと向かう。

丁度お昼だし、ステキ食材満載だし……

という事でヤーペッツさんを誘う予定となった。

ソフィーとモニカ、コルちゃんはアトリエに荷物を運び……

オスカーとジュリオさん、フリッツさんはアトリエ前の井戸の側……

調理の準備をする。

 

ソフィー達がアトリエに入ると、今はまだ古本補修のアトリエとなっていた。

「おかえりなさい、ソフィー」

プラフタがお出迎えするその奥には、エリーゼお姉ちゃんとウメさんが、古本補修をしていた。

「なんだか、深い森の匂いがするのね。嗅いだ事は無いけれど、そんな匂い……」

エリーゼお姉ちゃんが気付くと、荷物を持ち込むソフィーとモニカ、コルちゃんを見る。

「エリーゼさん、大当たりです!」

ハーブになるという、色々な木の枝を抱えたコルちゃんは言う。

「エリーゼお姉ちゃん、鋭い!」

リュックいっぱいにピカピカ芋、かごいっぱいに虫とか草とか根っことか入れてるソフィーも感心する。

 

「……というか、そうした感じの匂いしかしないんじゃないかしら?」

妖精の毒草でもっこりしてるかごを持ったモニカが言う。

「そりゃそうだ」

「そりゃそうです」

ソフィーとコルちゃんは、口をあんぐりさせながら、モニカを見る。

「うふふ、そんなに沢山持って来ていたら、そうよね。少し飽きて来た所ですし、キリのいい所で片付けるわね」

エリーゼお姉ちゃんは、そう言って微笑む。

 

「あ。お昼、皆で外で食べようよ!森の奥地の、とんでもないハンサムな土いもが、おいっし~んだから!」

旅汚れたソフィーは、モニカと共にエリーゼお姉ちゃんとウメさんを誘う。

そしてお昼は、皆で囲む食事となった。

 

 

「なんだか、私も旅に来てるみたいな気分だわ」

エリーゼお姉ちゃんが、旅汚れてるソフィーを見て言う。

お昼の食事はハンサム土いものスープ。

香りの葉っぱ付きだ。

「こんな気分で食事が出来るなんて、私も幸せな気分だわ……」

オスカーの隣で、ウメさんが呟く。

「も~……こんな汚い姿なのに食事なんて……慣れて来たけどね……」

旅汚れたレオンさんとハロルさんも、お互いを見ていたり。

 

 

そしてお昼の食事が終わって解散してく。

帰ろうとするジュリオさんを引き止めつつ、まずは時間を止めてソフィー、コルちゃん、モニカを綺麗にする計画。

プラフタはオスカーとジュリオさんの話相手、という事になった。

「よし、行ってくるね~♪」

オスカーとジュリオさん、プラフタでアトリエに入る3人を見送る。

「ところでプラフタ、食事をしても大丈夫なのかい?」

無表情で食べていたプラフタに、気になったジュリオさんが尋ねる。

 

「はい。香りだけ、わずかに感じるだけ……なのですけれど、マナの柱に入った時に、消化される構造となっています」

プラフタは答える。

答えてから、ふと考える。

「ジュリオとしては、今回の食事はいかがでしたか?何分、味を感じないもので」

「香りが凄く強い感じかな。苦味もあって大人の味……という感じだから、コルネリアのは葉っぱは乗せていなかったね。彼女はお茶も苦手みたいだから」

 

そうこう話しながら待つ5分……ぴっかぴかになったソフィーとコルちゃんが出てくる。

「ジュリオさん、お待たせしました~♪」

髪を上に縛り、サムライヘアのソフィーがジュリオさんに微笑みかける。

「ああ、そういう髪型もアクティブでいいね」

「えへへ~♪」

ジュリオさんはアトリエへと入る。

「私はお店に戻るです」

コルちゃんは、そそくさと帰って行く。

オスカーとプラフタ、ソフィーで荷車2号の側、思い思いに語らう時間。穏やかな風が吹いた。

 

 

「さて!錬金術やるよ~!」

ジュリオさんとモニカを見送り、オスカーを綺麗にして……

オスカーはまたまた本屋へと。

そしてソフィーは錬金釜の前に立つ。

「ふふふ。なんだかワクワクしますね。人の姿で錬金術の側に居ると、見え方も気分も違うものです」

プラフタはそんなソフィーの側で微笑む。

「記憶も蘇っちゃうね♪」

「そうですね」

そして、防具用アダールクロス!

……の特性用のリフレッシュオイルを仕込んだ所で、プラフタが思い出す。

 

「私の好きな食べ物は、土いもの入ったシチューでした……なぜか今、思い出しました」

「ん?お昼に食べたよね?」

「そうですが……そうではないのです。あれほど立派な土いもですと、別物というか……」

「確かに。あそこまでツヤピカぎっしりだと、ちょっと違うよね。せっかくだし、再現してみよっか?」

ソフィーとプラフタはコンテナへ入り、土いも在庫を見る。

「イメージに一番近いのは……これでしょうか?」

プラフタは、1番みすぼらしい土いもを手に取る。

 

「それ~?……でもプラフタってば植物用栄養剤も不良品のやつに反応してたよね~?」

「言われてみればそうですね……どうやら私は貧しい村にでも住んでいた……と言う事でしょうか……」

「貧しい……かぁ。なんかあたしも最近はぴっかぴかごはんだけど……昔は……そんな貧しくもなかったような………でも食べるのがしんどくて……」

2人は土いもを前にそう話す。

でもプラフタの記憶は、それ以上は具体的に思い出せなかった。

 

「あ~!あたしが思い出した!」

ソフィーはメモを取り出す。

「騒がしい人ですね、相変わらず」

フリッツさんから聞いた時間を取り出す媒体、ハクレイ石の砂時計のメモをプラフタに見せる。

「これなんだけど……」

「これはかなり難しい調合ですね。星の粉を更に細かくしつつ、爆発はさせない……という錬金術になりますし、図鑑にはない、応用力を試される錬金術になりますね」

 

プラフタはメモを見てそう話す。

ともかく、リフレッシュオイル仕込み中の時間……

みっちり錬金術談義となった。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[うねうね]
抱き合ってうねうねしてる感じ。ラブラブ!

[ウメさん]
アトリエ前の井戸によく訪れるおばあちゃん。最近はエリーゼお姉ちゃんと古本補修してる。

[ヤーペッツさん]
食通商人のおじさん。でも痩せてる。
[バーニィさん]
キルヘンベルの治安に目を光らせる、ヴァルム教会の先生。
[エルノアさん]
レストランの飾り付け部長。飾り付けがキラキラ眩しい!

[裏市街入り口のパン工房]
パンとケーキを作って納品している工房。メーベルト農場から麦の納品が来る。

[モーニングのサービス]
ホルストさんのカフェの、ソフィー達へのサービス。依頼で稼げるんだって。

[メーベルト農場行きの馬車]
キルヘンミルク、麦を運ぶ馬車。結構大きい。
[マレフ]
メーベルト農場の馬車のお馬。茶色でハンサムなお兄ちゃん。
[ブレスト]
メーベルト農場の馬車のお馬。黒っぽい毛並みに風格のあるおじいちゃん。
[ロザリ]
メーベルト農場の馬車のお馬。白い毛並み、美人で気難しい妹ちゃん。

[錬金荷車2号]
2階建ての荷車。今回は積み込んだハクレイ石から冷気と霧がもわもわしてた。

[メクレット]
褐色の男の子。錬金術を求めて旅をしている。
[アトミナ]
褐色の女の子。錬金術を求めて旅をしている。

[サカサキノコ]
葉っぱの裏から逆さまにぶら下がってる、ちんちんみたいなフォルムの芋虫。
[タランバ]
森の奥に住む蛇。あまり大きくないけれど、大きいものだとソフィーの背丈を超える長さになる。毒は持っていないけれど、凄い跳躍をするらしい。

[ハクレイ石の砂時計]
ゲームには登場しない。ちょこっと調合品としては、難易度の高いシロモノ。


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錬金術のアトリエ 36

錬金術のアトリエ 36

 

昼過ぎにリフレッシュオイルを仕上げて……

ハクレイ石の砂時計は、ちょこっと調合。

浸け置きなどはなく、ものの5分で出来上がる。

ただ、その難易度が高く、ものの5分で失敗となった。

 

「あっ!やばい!」

……ボゴーン!

錬金釜から炎が吹き上がる。

「星の粉を細かくする時に爆発しちゃうねぇ……」

HPバリアを削られつつ、結構無事なソフィーは、暖炉の側に避難しているプラフタに笑いかける。

 

「なんだか、楽しそうですねぇ……」

「難易度が高いのは、ワクワクするんだよね。まだあと……7回失敗出来るけど……ダメージは回復してくるね」

ススだらけのソフィーは、コンテナの方を見る。

「私は片付けでもしておきましょうか。掃除が出来る、というのも新鮮な気分になります」

プラフタは、そんなソフィーを見送る。

ともかく、ダークマターが生産されたので、興味があるというヤーペッツに向けて、箱詰めしておく。

 

「なんだか申し訳ないね……」

そしてソフィーはコンテナに入る。そして5分程で出てくる。

 

 

……そして2回目には、ハクレイ石の砂時計作成に成功した。

「出来ました!ギリギリだったけど……粉はちゃんと細かくなってるかな~?」

夜光石の蓋のガラス瓶、中にはねじれたハクレイ石の滑り台に、星の砂が落ちてゆく仕組み。

細かい砂が、10分掛けて落ちれば、これは成功品となる。

「この繊細な加工、あなたらしからぬ出来上がりと言わざるを得ませんが……時間を計れるのかが肝ですね」

プラフタはそう話して砂時計を手に取る。

 

「そこは自信あるよ!砂が時間を通るように出来てるからね!こう……こっちからあっちへ……行く時に帰る時に……こう……うまく説明は出来ないんだけど……」

ソフィーは説明し始めて……

こんがらかる。

「あなたは本能とイメージの錬金術ですから……説明するのは難しいのでしょう。しかし、時間を通る錬金術まで使いこなしているとは、やはりあなたの錬金術は計り知れないものがありますね」

プラフタは微笑み、砂時計を窓際に置く。

砂はゆっくりとこぼれ始めた。

「これが上手く出来てたら……プラフタも錬金術が出来るようになるかもね!」

ソフィーも砂時計を見つめる。

 

「エロエロ儀式ですか……そう考えてしまうと、複雑なモノがありますね……」

プラフタは口許に手を置いて考える。

「確かにそうだよね~……あたしもちょっとためらったもん」

ソフィーはそう話し、そんなプラフタを眺めてニヤニヤする。

「……あなたは、ためらったのですか?」

プラフタはニヤニヤソフィーに、ジト目を向けた。

「あ~!疑ってる~!その目は完全に疑ってる~!」

ソフィーはプラフタの腰に抱きつき、頭をぐりぐりする。

「もうっ!なぜ抱き付くのですか!?離しなさい!こんな事をしていたら時間が計れません!」

2人はまた、じゃれあって過ごす。

 

 

「さて……キッチリ10分ですね。完璧な出来上がりです」

砂時計の時間を計ってプラフタが呟く。

「な~んか手応えあったんだよね~。これでバッチリ的なのが」

プラフタの側で、正座してるソフィーが頬を掻く。

「では、私もいよいよ……エロエロ儀式を覚悟しないといけない訳ですね……」

プラフタは砂時計を手に考え込む。

マナの柱で過ごすと……

体験した事が共有される。

 

 

……ソフィーが旅に行っている間、夜はマナの柱で過ごしたのだけれど、プラフタの興味のあったコルネリアの恋愛事情とか、モニカの恋愛事情とか……

あまりにも赤裸々に、本人の気持ちまで分かる。

まるで自分自身で再現しているような感じで、伝わって来るのだ。

プラフタの事も、このように何もかも知られてしまうのだろう。

けれど1度マナの柱で過ごしたのなら今更だ。

それに人形に命を受けた身の上ならば……

選択肢は無いのだろう。

 

だが考えようによっては、説明せずとも伝わる……

と、いうのは便利でもある。

自分の恥を知られるのは嫌だけれど、それを自分で説明する……

と、考えるともっと嫌な事だし、そんなタイミングもそうそう無いのだから、便利……

なのだろうか……

 

 

「時間を過ごして……年を重ねる……ソフィーも居ると……ソフィーは若さを通り越してしまうぞ……」

ハダカ族2人で、ぷにちゃんの部屋へ。

そしてぷにちゃんにそう言われる。

「あ……じゃあ、外に出てるね」

プラフタをぷにちゃんの部屋に残し、ソフィーは外に出る。

 

 

「まあ……ソフィーが突然おばさんになっても驚かせてしまうでしょうし……」

マナの柱の部屋の中、プラフタは呟く。

鮮やかなオレンジ色の巨大ぷに……

マナの柱は口を開いている。

 

「プラフタ……1つ眠れば……20年程の時が……流れる……エロエロ儀式は……その後に始めるとしよう……」

もう何度か使ったベッド……

そんな感じで、プラフタは口の中に入る。

この中だと、感覚が敏感になる。

温かさを感じ、やたらと眠くなる。

「あなたもエロエロ儀式……と呼ぶのですね」

プラフタはそう話す。

思えば伝わるのだけれど、言葉にした方が良いそうだ。

「ここではそう……名前が付いている……付けたのは……ソフィーだが……」

マナの柱は言う。

プラフタにもお爺さんだと思わせる声が、耳からではなく聞こえる。

「私は少し気が乗りませんが……」

そう言って、プラフタは自分の肩を抱くように身体を閉じる。

 

「ならば止めておこう……気乗りせぬなら……我もエロエロ儀式はしない……」

マナの柱は言う。

優しいお爺さんの声……

「そうですか……そうですよね……私がお願いする立場でしたね……」

プラフタは呟く。

エロエロ儀式するのは、マナの力が欲しいからで、まだ受胎1ヶ月のこの命では、マナの力は受け取れない。

ねじまきに蓄える動力も、1日も保てない。

 

星の砂時計を媒体として、プラフタの命だけ時間を進め、ソフィーと同じ年齢ぐらいにする事で、マナの力を受け取れるようになるし、ねじまきに蓄える動力も増える。

その為のハクレイ石の砂時計……

その為のエロエロ儀式……

「良い……気乗りする時が来たら……」

マナの柱は言う。

マナの柱の気持ちが伝わる。

あまりにも無機質で、プラフタの気持ちに、葛藤に、あまり興味がないみたいな……

そんな気持ち。

「このハクレイ石の砂時計は、使えそうなのですか?」

プラフタは聞いてみる。

 

「充分だ……あとは……プラフタの抱えた……時間を使い……命の時間を進め……成長させる事が出来る……その命は……時間が追いつく……までは……時間的に……凍結される……」

マナの柱は答える。

プラフタは抗えない眠気に瞼を閉じる。

 

 

「……命って言ってもお腹の中で1ヶ月、みたいな赤ちゃんなんだよね……だから外では命は眠ってるのがほとんどかな。マナの柱の中だと、肉体と精神、魂がリンク出来るけれど、肉体は眠ってばっかりなんだよね」

以前、女の子の声の人格のマナの柱は、そうプラフタに話した。

夜に寝る生活だったので、お爺さんの人格が殆どなのだけれど……

 

 

「んっ……」

プラフタは目覚める。黄緑色の世界の中……

「目覚めたか……命の時間は……21歳となった……動力は……およそ60日程であれば……我の所に来なくても……活動出来るだろう……」

マナの柱は言う。

優しいお爺さんの声……

「色が変わりました……」

プラフタは呟く。

マナの柱の色が黄緑色になっているのだ。

 

「プラフタの……目が変わったのだ……人形の瞳は変わらぬが……胎児の目は……今や大人の女性の……目となったから……な……」

やはり耳からではなく聞こえて来る声。

この声は変わらないみたいだ。

「私の身体の状態……ですか……」

プラフタは呟く。

「今や……完成された命……だからな……」

マナの柱は、さも当然、という空気で答える。

 

「エロエロ儀式……お願い出来ますか?早くソフィーの力になりたいと思います」

プラフタは覚悟を決める。

マナの柱の力に頼るのならば、とっとと頼ってしまうべきだろうと思うし、あまりうだうだ言ってるのもみっともない話……

どちらにせよ、みっともない話になるのだ……

「ならば……始めよう……」

マナの柱は少し温まり、既に侵入しているプラフタの敏感な所を揺らす。

「ひうっ!」

プラフタはびくん、と身体を震わせて身体を閉じる。

マナの柱は、それ以上は感覚を送らずに止まった。

「……はあぁ……なるほど……私にこれほど弱い所があったのも驚きですが……それを掴まれているような……」

 

プラフタに合わせている、マナの柱の気分が分かる。

ほんのわずかに揺らして、休ませて……

また揺らして……

プラフタがちゃんと慣れていくように……

そうした思惑も伝わって来る。

 

「プラフタも……500年前の生活に於いて……そうした営みも……あったのではないか……」

マナの柱はそう話す。

「そうですね……ただあの頃は……」

プラフタはそう話して止める。

そして昔の思い出に輪郭を持ったのを捕まえた。

……そう昔……

錬金術をしていたプラフタのアトリエには、もう1人居た。

それは男で身体を繋ぐ事もあったのだ。

ただ、マナの柱が揺らした本当に敏感な所は、揺れなかったように思う。

恋もしていなかったし、ソフィーとオスカーのような愛情も無かった。

営みはあった……

けれどそれは、寂しい思い出……

 

「あまり……急ぐのも良くないだろう……だが今は……恋をしている相手が……居るようだ……」

マナの柱が冷めて行く。

今回は、プラフタが思い出した昔の記憶を消化出来るように、これで終わるようだった。

 

 

「ソフィーやコルネリア、モニカが通うのが分かる気がします。お願いしておいて何ですが、これで終わって貰えると助かります。それと……この気持ちはやはり恋なのでしょうか?女同士だと言うのに……」

プラフタはソフィーを思う。

そしてソフィーもプラフタに恋をしているのでは、と思ってしまうのだ。

しかし、マナの柱の情報を見る限り、そんな事は無さそうなのだけど。

「また……何度でも我の所に……来て欲しいからな……」

マナの柱はそう話し、プラフタをふわっ、と出す。

プラフタは絨毯に足を乗せて立ち、少しふらついた。

 

 

「お化粧品の改良とか、しておこっか!」

コルちゃんが来て、でもぷにちゃんの部屋に行けないもので、ちょこっと調合をする事に。

材料は沢山ある訳だし。

「おお~!色々とお客さんから要望もあるのです。このメモを……」

コルちゃんはメモを取り出す。

「めっちゃいっぱいあるんだねぇ……」

ソフィーは、そのメモの内容の多さに驚く。

「ですが、1つずつ考えるのがいいと思います。口紅の色の劣化……これが優先かと」

コルちゃんはそのメモから、優先したい物をピックアップする。

「ふむふむ……でもこれは入れ物で解決しそうだよね……」

 

 

……そうこうしていると、コンテナからプラフタが出てきた。

「あ、プラフタさんが帰って来ました」

コルちゃんが出てきたプラフタを見る。

ソフィーは錬金釜に集中している。

「ちょこっと調合だと、気を抜くヒマがありませんから……何を作っているのですか?」

プラフタは、そんなソフィーを眺めて、そう話す。

「はい。お店の、お化粧の品を幾つか作っていたら、エンジンが掛かりまして。ぷにちゃんの所へ行って来ます」

 

コルちゃんがプラフタと入れ替わりで、コンテナへと入る。

プラフタはその姿を見送り、錬金釜に集中しているソフィーの所へと歩く。

 

 

「……よ~し!出来たぁ!」

5分後、ソフィーは錬金釜から口紅を取り出した。

プラフタと、ぷにちゃんの部屋から帰って来ていたコルちゃんは、出来上がった口紅と、出来たポーズのソフィーを見てる。

「あれ?いつになく近いね………」

ソフィーはそんな2人に気付くと、コルちゃんを見て、反対側のプラフタを見て……

コルちゃんに抱きついた。

 

「おおう!?ど、どうしましたソフィーさん?」

コルちゃんは手甲をふらふらさせながら、大人しく捕まる。

「あんまり近いから捕まえてみた!へっへっへっ……」

ソフィーはコルちゃんの首と肩辺りに、頬ずりしながらゲス笑いをする。

「ソフィー……その怪しい笑いは……」

うねうねするソフィーとコルちゃんを見て、プラフタはため息をつく。

「ふあぁっ!?」

コルちゃんが色っぽい声を上げたかと思うと、ソフィーを床に組伏せた。

鮮やかな体さばき。

 

「ふぅ……危うくエロエロされる所でした……」

そしてソフィーの脇に、脇腹に指を立てる。

「きゃはっ!あははっ!降参!降参!うひ~っ!あははっ!だめだめっ!は~っ!」

そしてソフィーに、くすぐり地獄の刑を執行しだす。

 

「は~っ……なんかお腹空いたなぁ……」

くすぐり地獄が終わり、ソフィーが呟く。

「そういえばそんな時間でした……私も帰らなくては、ロジーさんがお腹ぺこぺこで待っています」

仰向けソフィーに座るコルちゃんが、窓を眺める。夕暮れの時間……

 

「明日は果実の日……鍛冶屋さんのお手伝いをするのです」

「へぇ~?忙しいの?」

コルちゃんを乗せて仰向けのまま、ソフィーは尋ねる。

「ジュリオさんの大剣に注文を受けまして……それにモニカさんの細剣、私の仕込み手甲も……で、大忙しだったりします」

コルちゃんは、やっとソフィーから身体を外して、すっ、と立ち上がる。

何となくな動きも、鮮やかな体さばき。

プラフタとして、これほど視野が広くなって「なんとなく見る」という事が出来るようになったのは、新鮮な気分だ。

 

「そっかぁ……途中だけど、お化粧品はまた今度だねぇ~」

ソフィーは起き上がりながら呟く。

コルちゃんのメモだけだと、具体的なイメージに繋がらないモノが多く、コルちゃんも一緒に居ないと、なかなか商品開発は出来なかったりする。

 

そして、ぱたぱたと急ぎ足で帰るコルちゃんを見送ると、ソフィーは加熱ブロックと鍋、井戸水を眺める。

「夕食にしよっか」

今日の夕食はプラフタチョイスの土いも、巡礼街道の側の川に住む小ガニ達のシチューだ。

「そうですね」

プラフタも、まな板ナイフを手に取る。

 

 

夕食の後片付けをしている時に、ジュリオさんが来た。

大剣の金属以外の素材を探しているそうで、コンテナにあったのを渡す。

「ありがとう!助かるよ!」

そしてすぐに帰って行く。

明日は大剣が新しくなる特別な日みたいだし、大剣の事しか頭にないみたいだった。

夜にアダールクロスを錬金釜に仕込み、そしてヒマヒマな時間となった。

 

「エロエロ儀式……した?」

ぼそっ、とソフィーが尋ねる。

さすがに聞きづらい話。

 

「ちょこっとだけ、しました。そうしたら昔の記憶を思い出しました。寂しいアトリエの情事なのですが……ソフィーとオスカーのような楽しい感じも、愛情も無かった……まるで砂を噛むような記憶でした」

プラフタは苦笑いをして話す。

「それなら……ラブラブする相手が現れたら……プラフタも、あたしの事を言えなくなっちゃうね?」

ソフィーはプラフタに肩を寄せる。

「なぜ、そうなるのですか?」

プラフタは特に動じる事もなく、尋ねる。

「ラブラブじゃなかったんでしょ?だったらラブラブ初体験じゃん?するともう……浮かれまくるプラフタも見てみたい!」

ソフィーはプラフタに抱きつく。

抱きつかれて、プラフタは平静でいられる自分を思う。

身体の感覚、触られている感覚。

ソフィーの体温……

そうした感覚はあるにはあるが、鈍く、まるで自分の身に起こった事ではない、みたいに思えるのだ。

 

「マナの柱に伝えた以上、今、私から話さなければならないのでしょうけれど、私はソフィー……あなたに恋をしています」

プラフタはそう告白する。

ドキドキしたけれど、それも鈍く、無機質な告白となってしまって、違和感を覚える。

 

「……からかってる?」

ソフィーは少し顔を赤くして、尋ねる。

 

「……私も、今の告白には違和感があります。全ての感覚が鈍いもので、感情もままならない所がありますが……からかってる訳ではありません」

「あたしも!プラフタの事をね、師匠としても好きなんだけど、ラブラブもしてみたかったんだ!」

ソフィーは、ぱ~っ、と明るい表情でそう言った。

「あ、あなたこそ、からかっていますか?」

そんなソフィーを見て、プラフタは動揺する。

ソフィーはプラフタを、もっと深く抱き締める。

「からかってないよ。もうずっと一緒だし、これからもずっと一緒に居たいもん」

「ソフィー……」

アトリエの中で、2人は抱き合ったまま、ひとときを過ごした。

 

 

アダールクロスの仕上がりは1時。

ソフィーとプラフタは、暖炉の前のテーブルでお茶の時間とした。

「アダールクロス完成したら、一緒にエロエロ儀式しちゃっていい?」

ソフィーは目を細めた笑顔で言う。

「ぶっ……開口一番それですか……」

お茶を飲もうとしていたプラフタが、狼狽える。

「プラフタがあひんあひんするとこ、1番最初に見たいもん。あたしのは見たんでしょ?ぷにちゃんの中でさ……」

ソフィーはそう言って、プラフタを見る。

目を細めた笑顔……

からかうような、愛おしいような……

そんな優しい笑顔。

「体験型ですし……興味もありましたから……それは……見ましたけれど……」

プラフタは目を伏せる。

嘘をついても意味はない。

マナの柱で、何もかも伝わってしまうのだから。

 

「凄くなんかね……オスカーを好きになってくんだよね。身体を合わせる前も好きだったけれどね。もっとこう……知られたくない所を分かりあえるというか……ね?」

ソフィーは少し顔を赤くして、お茶を口許に運ぶ。

「……確かに、特にソフィーとオスカーは、お互いの悪い所も良く知っているような……」

プラフタは2人の絡みに思いを致す。

ソフィーはイタズラっぽい笑みを浮かべる。

 

「コルちゃんとモニカはどうだったの?」

そうソフィーが聞くと、プラフタは目を見開き、顔を真っ赤にした。

「そ、それは……!あの……まぁ……コホン……」

そんなプラフタを見てソフィーは微笑み、深呼吸する。

 

 

……しばらくして、プラフタも深呼吸する。

「コルちゃんの恋がなんか、1番意地を感じたかなぁ……凄くドキドキした最初の後、ひたすらロジーさんをキライになって、触られるのもイヤって感じだったけど、今はほんわかした感じだもんね……」

プラフタが落ち着いた所で、ソフィーが話す。

「……感覚が戻らない時に体験したもので、少し距離がありましたが……コルネリアの苦い時期はかなり激しかったように思います」

「もはやイライラムカムカしかしてないもんね~……そんな気持ちになった事も無かったから貴重かなぁ……」

そんな話をして過ごす夜のアトリエ……

 

 

そして夜中、アダールクロスを完成させる。

「完成!さて……」

ソフィーはプラフタを見る。

「ま、まあ……6時間もありましたから、心の準備も出来ていますよ」

プラフタは苦笑いをして見せた。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ハクレイ石の砂時計]
ちょこっと調合品。プラフタの中のソフィーの赤ちゃんの命を、20歳程にするシロモノ。

[エロエロ儀式]
マナの柱にエロエロされる事で、魔力の受け皿を目覚めさせる。

[マナの柱]
魔力の源。その地域に広範囲に影響を及ぼす。

[ソフィー×プラフタ]
ソフィーとプラフタは、「フィリスのアトリエ」「リディー&スールのアトリエ」でも出てくる仲良しさん。ゲームにおいて、別に百合的な設定はない。

[ちょこっと調合]
5分程で出来上がる、図鑑にはない調合。
[うねうね]
抱き合ってうねうねしてる感じ。ラブラブ!
[エロエロ]
きゅんきゅんしてビクンビクンする感じ。18禁!


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錬金術のアトリエ 37

錬金術のアトリエ 37

 

「さて、あと136時間あるけど、時間は止める?」

ぷにちゃんの部屋。

ぷにちゃんは口を開ける。

「止める!じっくりゆっくりエロエロ儀式したいから!」

プラフタへの劣情渦巻く、ハダカ族ソフィーは元気に答える。

「張り切ってる所ナンだけど、受け取る能力によっては慎重にしないとだからね?」

ぷにちゃんがたしなめる。

「明日はオスカーと、エロエロ儀式ではないのですか?」

プラフタは楽に笑って、言う。

「む~……なんか水を差されるなぁ……」

ソフィーは指を交差して顔を曇らせる。

せっかく渦巻いてた劣情も、散ってしまった。

 

「さて、でもエロエロ儀式はするけどね~。また美味しくいただきます」

ぷにちゃんがそう言うと、少し涼しくなって、弱く風が吹く。

その弱い風が肌に触れて、今ハダカ族なんだとプラフタに自覚させる。

プラフタは途端に、頬を赤く染めて身体を閉じた。

「んっ?……」

ぴくん、とプラフタが反応する。

「エロエロ始まった?」

プラフタを見つめるソフィーが尋ねる。

「そうですね……今は足の裏がエロエロされてる感じですが……本の時には無かった感覚ですね。リラックスしているような……はうっ……!肩も……」

プラフタは目を潤ませて、目を細める。

「プラフタのエッチな顔、凄く可愛い♪」

ソフィーは微笑む。

ぷにちゃんはプラフタの足裏、肩を揉むだけで、落ち着いた感じが続く。

「そんな顔をしましたか……不覚です」

プラフタはソフィーを見る。

「いやいや、不覚とかじゃなくって、そうなっちゃうって」

ソフィーも、真顔になったプラフタを見る。

「感覚がしっかりあるというのは……色々と怖くなりますね」

 

足もみ、肩もみに慣れて来たプラフタが、落ち着いた呼吸で、気持ち良さそうな顔を時折見せてみたり。

「でしょ~?あたしもおっかなびっくりだったもんね」

ソフィーはオスカーとの初めてを思い出す。

結構忘れていたりするのだけれど、ぷにちゃんの中で意識すると思い出せたりして。

……オスカーが興味津々で、ソフィーのおっぱいを見たり触ったりしたのが始まりで、ソフィーとしては好きな人だったし……

 

 

そんな事を考えながら、ソフィーはプラフタのおっぱいに手を伸ばす。

「あの頃のあたしのおっぱいは、プラフタみたいに綺麗でも豊かでもなかったと思うけど……」

「ソフィーのイメージからすると、そうなのかも知れませんね。今は立派なおっぱいですけれど……んっ……」

プラフタは触られた事に反応しながら、ソフィーのおっぱいに手を伸ばす。

 

「いや……!あの頃もなんでかおっぱいだけはぷりんぷりんだったよ!思い出した!オスカーと一緒に不思議に思ったもんだったよ……」

ソフィーは目を見開く。

色々とあの頃の事を忘れてしまっているもんだなぁ……

と、思う。

「ふふ、やはり思い出した感覚、というのは良いものですね。私もそうして色々と思い出して行きたいものですね」

プラフタはそう言って微笑む。

 

 

そうこうして……

触れ合う時間……

時折指を立ててみたり。

プラフタもそれを真似ていたり。

 

「ああっ!……はぁ……はぁ……」

プラフタが先に音を上げた。

その声を聞いて、その思いを受けてソフィーは微笑む。

「プラフタのあたしへの恋が弾けてる……そんなに想って貰えて、本当に嬉しい……」

ソフィーはプラフタの唇に、唇を寄せる。

……ソフィー……っ!

……おっぱいを弄るのを……

今は……っ!

 

プラフタはびくん、びくん、と感覚に身体を震わせながら、キスに応える。

……だ~め……

ここが楽しいトコなんだから……

もっとあたしにプラフタを見せて?

……あたしも見せちゃうんだから……

 

それから2人は、どんどん熱く高まって行き……

 

 

「いやぁ……ご馳走さまでした」

ソフィーとプラフタが目を覚まして、ぷにちゃんに言われる。

「何も言い訳など出来ないくらい……恥ずかしい所を……」

プラフタが落ち込む。

「でもそれが気持ちいいんだよねぇ……」

ソフィーが呑気に言い、プラフタにくっつく。

「でもソフィーはフライング気味だったよね?錬金術の複とかあったら止めたけど……」

ぷにちゃんが言う。

そしてプラフタが得た能力は……

 

 

魔法バリアHPMPLP、魔法、慈愛。

と、モニカ同様にシンプルだった。

「錬金術はありませんでしたか……」

プラフタは少しガッカリする。

「でも、かなり大きく力を受け取れる感じがするね」

ぷにちゃんがそう話す。

「これでプラフタも旅に参加出来るんだね!」

ソフィーは能天気に喜ぶ。

「まあ……そうですね」

ソフィーにつられて、プラフタも綻ぶ。

ともかく、2人は長く過ごしてしまったぷにちゃんの部屋を出る。

……とはいえ時間は止まっていたのだけど……

 

 

「なんだか……凄く恥ずかしかったのですけれども……軽蔑されていたりは、していないものなのですね……」

アトリエに戻って、プラフタが呟く。

「まぁ……不安には思うよね?ぷにちゃんの部屋だから相手の気持ちも筒抜けで、安心できちゃったりするんだけど」

「あんなみっともない状態で、でもそうですね。ソフィーのワクワクウキウキばかり感じていました」

 

夜の1時……

ソフィーとプラフタは、ベッドに腰かけて肩を寄せる。

「プラフタ、凄く可愛かったし、恋心の爆発でめちゃくちゃドキドキしたよ。こんなに好きになってもらっちゃうと、あたしも好きになっちゃうよぉ」

ソフィーは、プラフタのおっぱいに手をやる。

「今はマナの柱の中ではありませんから、感覚は鈍くなってしまっていますが、素敵な体験でした……私からもまた……お願いしたいくらいです」

プラフタはおっぱいにはあまり動じず、でも顔を赤らめてそう告げる。

「へへ~……こちらこそ♪プラフタ」

アトリエの2人に、甘々な時間が流れる。

「あまり浮かれていては良くありませんね。引き締めて行かないと……」

「無理だよ~……浮かれちゃうよぉぉ~……」

ソフィーはプラフタに抱きついて、うねうねする。

プラフタもそれを受け止めてつい、にやけてしまっていたり。

 

「そ、それはそうですけれども……!もう!あなたって人は!」

そしてうねうねする。

 

 

「さて、それはさておき、何を作ろうかなぁ……」

ひとしきりうねうねして、うねうねに飽きる頃にソフィーは錬金釜に戻り、中を見つめる。

「……!図鑑を進めるレシピを思い出しました!」

遅れて錬金釜に向かうプラフタが、目を見開く。

 

「おお!じゃあ……またレシピ構築だね!でもその前に……この浮かれた気持ちで素朴な焼き菓子を仕込みます!」

「……そのココロは?」

「いつも苦い、しょっぱいな焼き菓子も……今なら甘々になるような気がします!」

「……そうはならないと思いますが、やってみる価値はありますね」

ソフィーは素朴な焼き菓子、図鑑の調合編を仕込む。

ちょこっと調合編だと、芋の蜜で甘く出来るやつなんだけど、図鑑の調合だと厳しい。

 

仕込んで1時間、プラフタとレシピ構築。

メルクリウスの瞳と、最高級ホットミルクのレシピ。

 

 

「……?」

いざメルクリウスの瞳の調合……

という時に、ソフィーの動きが止まる。

「どうしました?」

「なんでか分からないんだけど……素材の中でね……メルクリウスの瞳になりたがってるのがあるんだよね……」

ソフィーは錬金釜を見つめる。

「そうなのですか……しかし、なんだか見事に粗悪品のようですが……」

「それなんだよね……なんでだろ?……って思うんだけど、なりたがってるからなぁ……これで行きます!」

 

ソフィーはメルクリウスの瞳を錬金釜の中に仕込む。

これは浸け置き12時間……

長い。

 

「よし!より丁寧に配置したよ!」

ソフィーは錬金釜から離れる。

「果たして……どんなメルクリウスの瞳が出来上がるものでしょうか……」

プラフタも錬金釜を眺める。

「う~ん……やる気に溢れてるのが出来ると思う!」

ソフィーはそう言いながら、プラフタにそっと抱きつく。

「……どうしました?」

「なんか、イチャイチャしたいよぉ……」

「……錬金術談義してる気分ではないみたいですね」

プラフタも、ソフィーの身体に手を回す。

「へへ~……なんだか幸せな気分♪」

「ソフィーにそう言って貰えると安心しますね」

また甘々な時間が流れる。

メルクリウスの瞳の浸け置き12時間、食事だったり掃除だったり……

ぷにちゃんの部屋に行ってみたり……

 

 

「こんにちはです~……」

14時……

コルちゃんとモニカがやって来た。

丁度、メルクリウスの瞳が出来上がる時。

「あれ?プラフタもソフィーもどうしたの?」

 

 

モニカは訪ねる。ソフィーは錬金釜に向かい、プラフタは暖炉のテーブルで本を読んでいる。

……なんだか険悪な空気……

「どうもしないよ。この調合終わらせたら、出掛けて来るから」

メルクリウスの瞳を完成させると、ソフィーはアトリエを出る。

「……ソフィーさんがあんなに怒るなんて、初めて見たです」

「プラフタ、どうしたの?」

 

コルちゃんとモニカは尋ねる。

そしてケンカの原因は朝食を作る時の、ソフィーのナイフの持ち方で、それだけのようだった。

「……確かにソフィーってなんか危なっかしい感じになる時あるわね?」

モニカが同意する。

「そうなのですか?ソフィーさんがナイフ持つ所は、見た事ないです」

コルちゃんは口許を隠して、不思議そうな顔をする。

「旅ではオスカーがやっちゃうものね」

3人、アトリエでまったり話し込んでいたり。

 

 

ソフィーは1人、噴水広場へ。

少し雨模様のキルヘンベル。

ふと教会へと足を向けた。

お祈りの時間ではない教会は空いていて、椅子にも座り放題。

ぽつぽつとしか人が居ない。

そして、パメラが神様の1番近くでお祈りをしていた。

「……やっぱり教会のシスターたるもの、神様へのお祈りは欠かせないんだなぁ……」

ソフィーはそう小さく呟いて、最前列の椅子に座る。

隣にはまだ小さな女の子が座っていて、ニヤニヤしてる。

 

パメラから聞こえてくる懺悔の声……

お菓子を食べ過ぎたとか、お祈り中に居眠りしてたとか、つまみ食いしてたとか……

ソフィーも女の子と一緒ににやけてしまう。

……パメラらしい……

 

そしてパメラ印のお札と聖水を貰う。

結構なお金を寄付してみたり。

「ソフィーちゃん……ソフィーちゃんは、そこかしこで散財しまくってるって噂……本当なの?」

パメラに聞かれる。

「え……まぁ……」

なんかパメラが真剣な顔で言い出すものだから、ソフィーは怯む。

「お金は大事よ~?」

なんか説教される。

ソフィーはお人好しで騙されやすいから、パメラとしては心配しているみたいで。

 

 

そして八百屋へと行ってみる。

今日はオスカーと……

なんて思ってみたりするけれど、プラフタとケンカしてるし……

なんか複雑な気持ち。

「おおソフィー……すげえいい所に!ちょっと裏に来ておくれよ!」

オスカーは青い三白眼を見開いて、ソフィーの肩を掴む。

「え?なになに?」

 

そして最近、八百屋に届く野菜の元気がない話をする。

豊作続きの反動で土が痩せていると思われるから、土の栄養剤を作って欲しい、という話だった。

「それならアトリエに、ミネラルエキスがあるからそれが効くんじゃないかなぁ……」

ソフィーは思い出しながら話す。

「本当か!?ソフィー!オイラ今からアトリエに取りに行ってさ、農家の人に配って来るよ!」

オスカーは嬉しそうに話し、落ち着かなく地団駄を踏んだ。

「いや、そんな配る程はないよ?コルちゃんに言えば増えるかもだけど……ちょっと時間かかっちゃうんだよね?」

「そ、そうだよな……でもそれでもじっとしてられないからな。プラフタはアトリエに居るのかい?」

「うん、居るはずだよ?」

「そうか!ありがとな!ソフィー!」

オスカーは走り出す。

八百屋の野菜の事になると、他は見えないぐらい必死になるもので。

 

……これじゃ、今日の夜は忘れてるよなぁ……

そう思いながら、ソフィーはしょんぼりする。

とはいえ、何となくアトリエに帰るのも気が乗らなくて……

ふとレオンさんの仕立屋さんに、ふらふらと行ってみたりする。

相変わらずの人気だ。

そして人気過ぎて近付けなかったりするのだけど、その裏……

ハロルさんの時計店に、お客さんぽい人が入っているものだから、ソフィーもちょっと入ってみる。

 

「……デザインがいいね。この懐中時計、新しいのに風格があって……」

時計店に並んでいる時計達を見る夫婦が、そう話していた。

「古い時計なんだが、修理を頼みたいんだが……」

そして、また別のお客さんが時計の修理を頼んでいるみたいだった。

「ええ、今は受けていますよ。これは……ゼンマイが切れてしまっていますね。明日の夕方には、直してお渡し出来ると思います」

ハロルさんが凄く柔らかな物腰で接客をしていた。

 

 

「おい、ソフィー。そんなツラで固まっていられると営業妨害なんだがな」

ハロルさんに言われてソフィーは、はっ、と我に返る。

「あ、あはは、ハロルさんがあまりにも時計屋さんしてて。あはは……」

ソフィーはごまかし笑いをする。

「お前は今まで俺を何だと思っていたんだ。……今までも時計の調整とか、出来る事はしていたぞ」

ハロルさんはため息をつき、でも優しく微笑んだ。

 

「まあ……プラフタのねじまきで苦戦したせいもあるな……ほんの少しだが、客に喜ばれるのも悪くはないからな……」

ハロルさんは少し気に入らない、みたいな表情を見せる。

「皆頑張ってるんだなぁ……あたしも頑張らないとね!」

ソフィーはガッツポーズをして見せる。

「そうだな。プラフタを人形にしたようだし、錬金術とやらにも力が入るんだろう。こんな所で油売ってていいのか?」

ハロルさんは少し古びた時計を手に取る。

他のお客さんからの預かりものだろうか。

ソフィーは時計店から出る。

 

そしてアトリエに帰ろうとするも……

途中の鍛冶屋さんに寄り道。

コルちゃん露店にコルちゃんが居ないと思ったら、鍛冶屋さんに居たり。

「おお、丁度いい所にソフィーさん!」

なんかお客さんは居なくて、コルちゃんとロジーさんで何やら研究してた。

「へへ~……なんかピーンと来て立ち寄ってみたんだよね!」

ソフィーはそう言って笑ってみる。

「プラフタさんとケンカしたので、帰りづらいんじゃないですか?」

コルちゃんはジト目を向けて、あっさりとソフィーの本当の所を抉る。

「うぐぐ……」

わかりやすく怯むソフィー。

「でももう、プラフタさんも怒ってはいないようでした。なので帰ったら仲直り出来そうですが……ソフィーさんもナイフの扱いがちょっとアレなので、指が切れてしまうかと心配するあまり、怖くなったそうですよ?」

 

「そんなにソフィーはナイフの扱いがアレなのか?」

ロジーさんも聞いて来た。

「いえいえ?いつも通りだから……そんなにアレじゃないですよ?」

ソフィーは、てのひらを横ぶんぶんする。

「まあ、ウチは台所が無いから実演してもらう訳にも行かないが……ひとつ相談があったんだ」

ロジーさんが話し出す。

何でもコルちゃんの武器を作るのに、ドナーストーン伯爵を使いたい、という話だった。

「コルちゃんの仕込み鉄甲の中に、仕込む用の、ドナーストーン伯爵……分かりました!バッチリ作ってみます!」

ソフィーは快諾する。

そしてアトリエに帰る事にした。

オスカーは……と気にしてみたりするけど、農家の人と肥料の研究に行ってしまってるんだろう。

 

 

「ただいま~……」

アトリエに帰ると、プラフタが夕食を作って待っていた。

「お帰りなさい、ソフィー。味付けを手元でするのならば、切って煮てるだけですので、作ってみました」

特に機嫌が悪い、という事もなくプラフタはソフィーを出迎える。

「……なんか、朝はごめんね?ついはずみで……」

なんか今なら謝りやすそうで、ソフィーは頭を下げる。

「その原因も、マナの柱に行くと、よりお互いの気持ちが分かるのではないでしょうか?私も、冷静さを失っていましたので、お互い様です」

プラフタは少し、ぎこちなく微笑む。

「そ、そうだよね……ところで何を煮たの?」

加熱ブロックの上の鍋に、ソフィーは歩み寄る。

お腹ぺこぺこな時間。

「豚ネズミの肉とにんじん、土いもと……大白玉にんにくに、ふかふか緑です」

 

プラフタは加熱ブロックを寄せる。

鍋はまた熱を帯びていく。

「ご、豪華~……」

ソフィーはそんな鍋を見て、食器を用意する。

「コンテナに食材を余らせ過ぎてますから……本にあった組み合わせではありますので、美味しく食べられるかと思います」

見た目にも美味しそうな煮物に、ちょこっと調合の麦パンを添えて、いつになく豪華な夕ごはんを食べる。

「凄い!オスカーが作ったみたいに美味しい!」

ソフィーは美味しそうな顔をして、煮物を食べる。

「本当に味付けは、その粉だけで良かったのですか?」

味付けと言えば、オスカー印の粉だけだったし、それもほんの少ししか振らないものだから、プラフタはソフィーに尋ねる。

「え?大白玉ニンニク皇帝に、にんじんの味とかあるから、オスカーも粉振ってるくらいだよ?味付けは。やっぱ豪華だと違うよねぇ……」

満足そうなソフィー。

 

「大白玉ニンニクは……皇帝なのですか?」

良く分からないけれど、ソフィーは色んな物に役職みたいなのを付ける。

フラム大先輩、レヘルン先生、ドナーストーン伯爵、そして大白玉ニンニク皇帝……

「なんかね、オスカーの話だとね、大白玉ニンニク大好きな皇帝が居て~……食べ過ぎて、頭が破裂して死んじゃったんだって」

ソフィーは、あっけらかんと残酷な話をする。

「……それで……皇帝ですか……」

ちょっと引きつつ、プラフタは相槌を打つ。

 

 

そしてコルちゃんの武器用となる、ドナーストーン伯爵の作成!

武器に欲しい特性は、大体金属の方にあるので、品質の高さに重点を置く事にする。

「6時間かぁ……」

ソフィーは材料ゆらめく錬金釜を眺めて呟く。

 

「昼間にオスカーが、ミネラルエキスを取りに来たのですが、そのミネラルエキスに興味深い特性がありまして……それと残りが1つになってしまいましたね」

ソフィーとプラフタは、そこから次の錬金術計画を立てる。それでもあと5時間……

 

「寝ないと……だねぇ……」

ソフィーはコンテナを眺める。

「ベッドではないのですか?」

そんなソフィーを眺めて、プラフタは言う。

本の身体だった時、ソフィーはベッドで寝ていたし。

「プラフタの食べたもの、ぷにちゃんの部屋に行かないと消化されないんでしょ?それに、やっぱ一緒に寝たいかな~……なんて」

ソフィーは胸の前で指を絡めてそう言う。

 

「……一緒に寝る……やはりそれは素敵ですね……」

プラフタは顔を綻ばせる。

 

 

そしてハダカ族となってぷにちゃんの部屋に。

「……任せて貰おう……来客がこのアトリエに……近付いて来る時……もしくは……錬金術の……品物が完成する……辺りに起こそう」

ぷにちゃんは口を開ける。

「オスカーが来る時って、分かるの!?」

ソフィーは尋ねる。

「今……アトリエからは離れた場所に……居るようだ……アトリエの近くに……人は居ない……」

「そんな事まで解るのですか………」

「我は……ソフィーのおかげで……色々と能力を……思い出している……こうして外の状況が……見えるようになったのは……最近だ……」

「おお~……でも今は眠いよ……」

ソフィーはプラフタに抱きついて、眠ろうとしている。

ぷにちゃんの中で、ふわふわと浮いているみたいな2人。

 

「プラフタも……ここでは肉体を眠りに落として……意識を落とす……睡眠も出来るだろう……」

「そうですね。アトリエを空っぽにしているのは非常に気がかりなのですが……私も眠るのが良いのでしょう……」

「それも……我に任せて……良い……」

抱きつくソフィーを受け止めた格好で、プラフタも瞼を落とした。

 

 

……少し寒くなり、ソフィーは目を覚ます。

そしてプラフタから離れると、プラフタはぷにちゃんの中で浮いたまま、ソフィーに絡めていた両手をほどき、それでも眠りの中みたいで……

「じゃあ、ちょっとドナーストーン伯爵の仕上げと、ミネラルエキスの特性を増やしてみたりしてくるね」

ソフィーはアトリエに戻る。

そんな夜中の0時。

そしてミネラルエキスを仕込み、ぷにちゃんの部屋に戻る……

 

 

「朝だよ~♪」

ぷにちゃんに言われて、ソフィーとプラフタは目を覚ます。

「おお~……立って寝てたの、初めてかも」

ぷにちゃんの中で、2人は直立して抱き合う姿勢で眠っていて、ソフィーは驚く。

「どんな姿勢であれ、私の中ならラクな姿勢なんだけど、プラフタ的に夢の捗る姿勢がコレみたいだったからね」

ぷにちゃんはそう話す。

若い女の子の人格。

「さて、確かドナーストーン伯爵を仕上げて……でしたね?」

ぷにちゃんから出て地面に着地しながら、プラフタは話す。

 

「あ、それはプラフタ寝てたから、あたしが仕上げて、今はミネラルエキスだよ。6時に仕上げて教会でお祈りの日だから~……人形劇の日だね♪」

ハダカ族の2人は、そう話しながらぷにちゃんの部屋を出る。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[エロエロ儀式]
18禁!でも生まれつき備わってるモノなのに18禁!というのも変な話。
[ハダカ族]
服を着ていない状態。プラフタは服を着てる方が過激な感じするけど……

ドナーストーン[伯爵]
なんか偉そう。そして怒ると怖そう。

[豚ネズミの肉]
みんな大好き豚ネズミのお肉。コンテナに置くと、寄生虫とか居た場合、番人ぷにちゃんが食べるので安心度が上がる。

[大白玉ニンニク]
ソフィー曰く、大白玉ニンニク皇帝。
[ふかふか緑]
シソ的な葉っぱ。シソ程に香りは強くない。
[麦パン]
ちょこっと調合品。錬金釜の中でこんがりさせるのが難しい一品。


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錬金術のアトリエ 38

錬金術のアトリエ 38

 

コンテナの番人ぷにちゃん達が汚れを食べ尽くして、ピッカピカになった服をそれぞれ着て……

そしてアトリエに戻る。

 

夜中の3時……

ミネラルエキスを仕上げて、そのミネラルエキスで中和剤を作る。

品質を大きく上げる特性、「超クオリティ」が増えていく。

「ふむ~……この特性があれば、少し残念な品質の素材達も、5割増しで輝く……素敵な特性だけど、なんかズルい……みたいな気もするなぁ……」

輝く中和剤を眺めて、ソフィーは呟く。

「まあ……手を加えている訳ですし、ズルい感覚も分からないではありませんね」

プラフタも輝く中和剤を眺めて、呟く。

「それはともかく!今日は種の日!コルちゃん用のドナーストーン伯爵を持って……休日のキルヘンベルを満喫しなきゃ!」

ソフィーは杖を持ち、鞄を背負う。

「そうですね。私もこの街に馴染まないといけませんから」

アトリエに鍵を下ろし、まだ薄暗い外へと出る。

 

 

そして山を降りて市街地へと差し掛かった時、オスカーがやって来た。

「おお、早いなソフィー」

相変わらずのおとぼけボイスで、オスカーは片手をひょい、と上げる。

「オスカー!どうしたの?こんな時間にこんな所で」

ソフィーはオスカーに体当たりして、そう尋ねる。

「昨日は忙しくてさ、ソフィーの事忘れてたから、今から行く所だったんだよ」

そしてオスカーは踵を返し、3人で並んで歩く。

「今、思い出したって事なの~?でも嬉しい!今日はこれから、教会から人形劇から鍛冶屋さんから……キルヘンベル満喫コースなんだよ!」

凄くご機嫌なソフィーがそう話す。

「へぇ~……オイラはまた農家さんの所でさ、ソフィーの栄養剤をヒントに、栄養剤の量産計画なんだけど、八百屋に寄ってくれたらさ、特製バスケットを用意しておくよ。昨日のお詫びにな」

オスカーは、そう話す。

プラフタは、そんなオスカーを眺めて思う。

……足は短いのに、歩くのは早い……

 

「お詫びなんて、いいよ~。農家さんの野菜のピンチじゃ、しょうがないもん。でも特製バスケットは楽しみかも!」

「だろ?張り切って作っておくからさ、顔出してくれよな!」

オスカーはそう言うと、走って行った。

「……彼は太っている割には素早いのですね」

プラフタはそんなオスカーの後ろ姿に、呟く。

「へへ~……昔っからそうなんだよね~」

ソフィーとプラフタは、教会へと向かう。

 

 

モニカ達の聖歌を聞いて、教会の外でお祈りの時間。

教会の中は子供達と、そのお母さんとかでいっぱいだから、いつもの光景。

 

そして噴水端会議。

ホルストさんとテスさん、レオンさんとコルちゃん、モニカとジュリオさん、ソフィーとプラフタで世間話グループを作る。

ハロルさんは、いつもの冒険者集団の世間話グループに居て、フリッツさんとエリーゼお姉ちゃんは、北の人形劇の準備をしていたり。

 

「エリーゼさん、あれは……ついに少女から脱皮したわね」

レオンさんが言い出して、皆で北の人形劇の方を見る。

歩く姿に違和感があって、これは……

昨夜誰かとエロエロしたな……

と、いう話になった。

「……そうなの?それって分かるものなの?」

ソフィーが口許に指を置いて首を傾げる。

「まあ……確かにあからさまではありますが……彼女にもそうした相手が出来た……という事なのでしょうねぇ……」

ホルストさんが、しみじみと話す。

「ん?ひょっとしてあたしも……あからさまだったり……!?」

ソフィーは初体験の頃を思い出す。

あまり思い出せなかったけれども。

「ソフィーも果実の日でしたね。そしてこの時間に、マルグリットと話したりしたものです。今や懐かしい話ですが」

「ソフィーの場合、私に報告して来て、何て答えていいか、全く分からなかったわ」

ホルストさんはしみじみと語り、モニカがソフィーにジト目を向ける。

「あ、あはは……そうだっけ?と、とにかくエリーゼお姉ちゃんの相手……誰だろ?」

ごまかし笑いのソフィー。

 

「こんな詮索は気が引けるのだけど……僕としてはフリッツさんじゃないか、と思うな。彼女と釣り合う程の知性がある男性……で、更に彼女の憧れる物語を幾つも持ち合わせている人だからね」

ジュリオさんが話す。

「あのオジサン~?でも確かにエリーゼさん、最近はあのオジサンのトコに出入りしてるみたいだったわね……」

レオンさんが、にやけて話す。

「エリーゼがフリッツと……騙されてるのではないでしょうか?」

北の人形劇準備を眺めて、プラフタが呟く。

そんなプラフタを見て、また北の人形劇の方を眺めるレオンさん。

「そうと決まった訳でもないんだけどね。何だか一生バージンで居そうな人だから、これはこれで良かったんじゃないかしら。朝から微笑ましい話ねぇ」

にやけるレオンさんが話して、それからもエリーゼお姉ちゃんをサカナに世間話は続いた。

 

 

噴水端会議が解散になり、ソフィーとプラフタは八百屋へと顔を出す。

特製バスケットを貰って、北の人形劇を見る。

今日もフリッツさんとエリーゼお姉ちゃん、それと教会の子供達で人形劇が始まる。

 

銀いもに恋する土いもの話………

旅する学者と砂と月の話………

ピエロと歌姫の話………

 

人形劇に夢中になる2人。

回りのおばさんやパメラ、観客側の子供達とヤーペッツさんにエルノアさん……

みんな夢中で人形劇を見て、終わるとお昼になった。

「エリーゼお姉ちゃん、演技に磨きが掛かってるよぉ……」

「確かに。凄く引き込まれてしまいました。まさかもうお昼になっているとは……」

「あ~ん、午後もやって欲しいわ~……」

パメラとソフィー、プラフタ3人で特製バスケットを囲み、人形劇の感想を言い合いながらのお昼。

北の人形劇の観客席……

丸太に座って昼食、という人は、結構居た。

 

「お飲み物はいかがでしょうか~?」

やたら可愛く飾られた錬金荷車1号と、コルちゃんとテスさんがやって来た。

「わお!コルちゃんとテスさんは人形劇、見てたの?」

ソフィーが尋ねる。

「あたしはそういうの、刺さらないんだよね~……ドライな女なのサ」

テスさんは答える。

「私も、ドライな女でして……他の物語よりも、私の物語に夢中と言うか……利己的というか……」

コルちゃんも口許を隠しながらそう話す。

 

「あら……昨日といい今といい、私の物語、ってのがキーワードなのかしら?」

そんなソフィー達の所に、エリーゼお姉ちゃんがやって来た。

「お!来たね噂の人!」

テスさんが、にやけて言う。

「お、お相手は……やはり!?」

コルちゃんも、エリーゼお姉ちゃんに迫る。

「フリッツさんよ……歩く姿がアレだから、って理由で人形劇を休む訳にも行かないものね。それに、そんな私の物語は……滑稽であっても、そんなに嫌がられる物じゃ無さそうだし……」

エリーゼお姉ちゃんは顔を赤くして、そう答える。

凜と答えようとして失敗したみたいな……

「特製バスケット、お届けです。お代は既に終わってますので、どうぞ」

キラキラ飾りの錬金荷車1号から、コルちゃんがバスケットを渡す。

「手間を掛けるな」

フリッツさんがバスケットを受け取る。

……いつの間に……っ!

 

「素敵な物語に、私からキルヘンミルクをプレゼントです」

エリーゼお姉ちゃんには、お茶の入ったミルク瓶。

ソフィーとプラフタ、パメラにも配って行く。

「職人さん達、南にも行かないとだね!ごちそうさまでした~☆」

そしてテスさんコルちゃんは、荷車1号と共に南へと行った。

「さて、人形劇の方はいかがでしたかな?今日が初お目見えの話もあったのだが……」

フリッツさんがそう話すと、ソフィーは切り替わる。

「凄く良かったです!もう、感動モノでした!」

エリーゼの話よりも、全然食い付きが違う。

そして、人形劇の感想を言い合いながらのお昼となった。

 

 

「さて……コルちゃんのドナーストーン伯爵を届けたりしないとね!」

お昼が終わると丸太の片付け。

フリッツさんと子供達、教会騎士の方々と張り合って丸太を運んだりする。

そんな後に、ソフィーはドナーストーン伯爵を思い出した。

「ソフィー……あなたは、結構怪力なのですね」

プラフタは感心しながら話す。

丸太片付けでソフィーが張り切っていて、教会騎士の方々も驚きのパワーだったものだから。

「旅先で呪われたキーファとか……採取生活だったし、装備品の能力強化も大きいのかなぁ……HPMPLPバリアも、それぞれ育ってるし……」

「旅で強くなっているのですね。筋肉は感じられませんでしたけど」

「痩せてひ弱だったあの頃とは、全然変わったんだよね!」

2人そう話しながら南へと歩くと、歓声が聞こえて足を止める。

 

 

「はっ!やっ!とっ!」

モニカとジュリオさんが戦っていて、鮮やかなモニカの剣さばきを、ジュリオさんが受け止めて前進している。

南の人形劇の午後、こんな格闘劇に……

「モニカの剣はあれほど速いものなのですか……」

プラフタは感心しながら、戦う2人を見る。

「はあっ!」

守りながらもジュリオさんが詰める。

モニカが横にかわすと、ジュリオさんの剣が1回転して、モニカは後ろにかわす。

その剣は速く、モニカを掠めてHPバリアを削る。

「ジュリオさんが鉄壁すぎるよぉ……モニカはどうしたら勝てるんだろ……?」

1回転して、すぐにジュリオさんは大剣を構えて、にじり寄る。

 

カン!ギン!ギギン!

ジュリオさんがモニカの攻撃を受け止める。

あの大剣を盾に、ジュリオさんは進んで……

急にしゃがみ、低い所で大剣を後ろに構える。

モニカが飛び、ジュリオさんを上から襲うも、大剣は上に振られ、ジュリオさんは大きく後退。

モニカは大剣を受けて、くるくると空へ飛んで行った。

 

息を飲む攻防戦の結果は、ジュリオさんの勝利だった。

強い。

「うわぁ~……モニカも凄い剣だったんだなぁ……」

ソフィーは呟く。

「旅先というのは、こうした実力が無いと難しそうですね。特にソフィーのパーティーは、なんかとんでもない場所へ行くとか……」

プラフタが尋ねる。

「そうだね~……あ、そうだお届け物をしなくちゃだった」

「確かに。思わず忘れる所でした」

2人は、鍛冶屋へと行く。

 

 

ドナーストーン伯爵を、ロジーさんの鍛冶屋にお届け。

「次はこれか……なんか試される素材を使う武器なんだな……」

ちょうど一仕事終わったみたいで、ロジーさんはドナーストーン伯爵を受け取る。

「これは……これもロジー、あなたが作ったのですか?」

プラフタが尋ねる。

あまりにもきらびやかで、目を引く槍なのだ。

「まあ……そういう注文を受けたから……作ったんだが……やはり変かな?」

ロジーさんは、少しバツが悪そうに頭を掻く。

「とんでもない!こんな物まで作り出せる職人が、この街に居るとは……コ、コルネリアの!?」

プラフタは急に顔を赤くして、やたらと距離を置いた。

さては……

ぷにちゃんの中での、コルちゃんとのラブラブエロエロの相手だから……

その体験を思い浮かべてしまったな……

と、ソフィーはにやける。

 

「な、コルネリアが何か?」

ロジーさんは戸惑う。

そりゃあ、プラフタのリアクションに戸惑うだろう。

「いえ……これは……何でもありません。ちょっと昔の記憶に似た人が居まして……」

プラフタはごまかし、髪をかきあげる。

……最近のロジーさんたら、ハダカのコルちゃんを装飾なんかしてエロエロしてるもんだから……

この見事な槍も、そんなエロエロ欲求の賜物……

みたいに見えてしまう。

「と、とにかくコルちゃんの武器も、頑張って下さい!では!」

ソフィーはプラフタを連れて退散する。

 

 

「めっちゃ思い出しちゃったよぉ……プラフタのせいだからね!」

ソフィーは苦笑いして話す。

「彼としても、別に悪い訳ではないのですが……ついつい思い出してしまいました。コルネリアは、ここの鍛冶屋の青年と、恋仲なのでしたね……」

鍛冶屋の前で、そんな話をする2人。

オスカーの特製バスケットは、まだ半分くらいあるから、晩ごはんもサンドイッチなんだけど……

鍛冶屋に忘れて来ていたり。

「特製バスケット忘れた。……ちょっと取ってくるね」

ソフィーは鍛冶屋へ。

プラフタは鍛冶屋の前で1人待つ事に。

 

 

……

……目の前はコルネリア露店。

おつまみで飲むおじさん達がちらほら。

少し遠くにはレオン仕立て店。

ソフィーを待つプラフタは、賑わうキルヘンベルのストリートを眺める。

……

 

「お待たせ~……なんか夕食がね、チケットに変わっちゃった」

ソフィーはキルヘンベルの裏酒場横、冒険者の営む料理屋のチケット2枚を手に、出てきた。

「どういう流れだったのですか?」

プラフタは尋ねる。

「なんかね、コルちゃんの武器を作るのに釜を離れたくないみたいで。サンドイッチだとちょうどいいし、あたし達は昼も夜も同じってのもアレだし……そんな流れで交換しちゃった」

ソフィーは説明して、手に持つチケットを見る。

プラフタも、その2枚のチケットに注目する。

「そのお店は、どこにあるのですか?」

チケットに店の場所は書かれておらず、プラフタは尋ねる。

「それ、コルちゃんに聞かないとなんだよね」

ソフィーも店の場所を聞かなかったものだから、首を傾げる。

「すると、今アトリエに戻るのも時間が無いですね……」

プラフタは噴水広場の方を眺める。

外で食べるなら、アトリエに帰ると夕食時に近い。

 

「ホルストさんのカフェで、テスさんチケットの交換品でも見てみようかな……」

ソフィーは鞄を開いて、テスさんのチケットを取り出す。

絵心のない絵がそれぞれ描いてある、自由を感じるチケット。

「それはそれは……私も外に出ないと……この街の事も、知らない事だらけですね」

ソフィーとプラフタは、ホルストさんのカフェへと向かう事にした。

その途中、レオン仕立て店の横に、レオンさんとフリッツさんが話し込んでるのを見かけて寄り道をする。

 

「こんにちは~……」

「おお、ソフィーにプラフタか!身体の調子はいかがかな?」

フリッツさんが振り向く。

「あら、2人仲良くデートの1日なの?あたしもそんな1日を過ごしたいわぁ……」

レオンさんも笑顔でそう話す。

フリッツさんがレオンさんに、人形の服の作り方に磨きをかけるべくアドバイスを貰っていたそうで。

フリッツさんてば、人形の服まで自分で作っているのだそうだ。

色々と話して、ついつい長居するも、ホルストさんのカフェへと向かう。

 

 

「テスの店でしたか……テスは南の人形劇で売り子をしていまして……リストはこれですね」

ホルストさんのカフェは落ち着いた感じで、ソフィーは交換リストを眺める。

「ペンデグリュンなんてあるのですね。ペンデロークはよく見る素材ですが……それにハルモニウムなんて……この品物、あまりにもスペシャルな……」

プラフタがリストに食い付く。

「そうなんだ……あたしにはちんぷんかんぷん過ぎて……じゃあ、ペンデグリュン下さい!」

ソフィーは意気揚々と手を上げる。

「もう少し考えても良いのでは?」

リストを手に、プラフタはそんなソフィーに驚き、振り返る。

「ペンデグリュンを見てから、手にとってから、聞いてからじゃないと、考える事も出来なかったり。てへへ……」

「なるほど……」

チケット20枚を渡すと、ホルストさんは奥へと消える。

そして緑色のペンデローク……

ペンデグリュンを持って来た。

 

「結構、大きくて綺麗なものなのですね。では、これを」

持ってきたホルストさんは、ペンデグリュンに感心しながら、それをソフィーに渡す。

ソフィーはペンデグリュンを手に取ると、上に持ち上げて眺める。

「でっかい!どんな力が宿っているんだろうな~……」

「本屋で調べたり出来そうですね」

「それだ!」

ソフィーとプラフタは、ペンデグリュンをソフィーの鞄に入れて、ホルストさんのカフェを出ていく。

 

 

本屋に向かうと、途中に噴水広場。

南の人形劇は、師匠と弟子の漫才の時間。

キラキラ飾り錬金荷車1号と、コルちゃんとテスさん、モニカとジュリオさんがその漫才を眺めていたり。

「あ!このチケットのお店で夕食にしようって流れになったんだけど……」

せっかくコルちゃんが居るし、ソフィーは経緯を説明して、聞いてみる。

 

「ロジーさんがこれを……なるほど。でもソフィーさんとプラフタさんで行くには物騒な場所ですので、オススメは出来ない所なのです」

コルちゃんはチケットを見ると、残念そうな顔をした。

コルちゃんも行くには、ハロルさんも一緒じゃないと……

という、危険な場所なのだとか。

「ジュリオさんと私なら、まあ平気だから貰っておこうかしら。夕食ならウチで食べて行けばいいわ。エルノアも、プラフタに会ったら喜ぶんじゃないかしら」

モニカは手を出し、ソフィーはチケットを渡す。

「そうだね。キルヘンベルの裏酒場の隣じゃあ、少し物騒だからね。僕も今日はエルノアさんの夕食に呼ばれているから、少し食材を追加したら、彼女も喜ぶんじゃないかな」

ジュリオさんもチケットを眺めて、そう話す。

「食材なら、アトリエに余らせている物を使えそうですし。キルヘンベルの街中を見るには良さそうですが、何分、私がまだ戦える状態ではありませんし……」

 

夕食が、モニカの家に決まった。

でもまだ夕食にはまだ早い時間……

「じゃあ、夕食時に行くね。ちょっとエリーゼお姉ちゃんの本屋で、調べものして来ないとだから」

ソフィーとプラフタは、本屋へと向かう。

 

 

「エリーゼとフリッツの噂……気になる所ですね」

本屋への道。プラフタが呟く。

「そういえば、そうだね~……でもさすがに聞きづらいよねぇ……」

なんとなく上の空で、ソフィーは相槌を見せる。

……こういう時、ソフィーは違う事を考えていて、それにしがみついてるのだ。

今はおそらく、ペンデグリュンの事ばかりになっているのか……

「あなたは、錬金術の事となると他の事は見えなくなりますからね」

プラフタは微笑む。

プラフタとしても、そんなソフィーが望ましいと思うのだから。

 

旧市街へと続く石畳、幾つかの階段を登る時、日の傾く感じと、風が髪を揺らした。

少し寂しい景色に、プラフタは振り返ってみたり。

 

 

「あれ?ハロルさん?」

本屋に入ると、ハロルさんがちょうど出てくる所だった。

「おう。店を開けてるもんでな。ちょっと急いで帰る所だ」

そう言うと、ひょい、ひょい、と素早く帰って行く。

「相変わらず早いなぁ……」

ソフィーは振り返り、そして本棚を眺める。

探そうにもどう探したものか、さっぱりだ。

今回はエリーゼお姉ちゃんが居たので、現物を見せてみる事にした。

「これを調べてみたいんだけど……」

プラフタに合図して、プラフタがソフィーの背負った鞄から、ペンデグリュンを取り出す。

「凄く大きいペンデローク……とは違う物みたいね?」

エリーゼお姉ちゃんは驚きながらも、ペンデグリュンを少し触りながら見つめる。

 

「本を探すには時間がかかるわ。それと、ペンデロークマニアであるパメラか、人形にもよく使う素材だから……フリッツさんが詳しいんじゃないかしら」

「さすが知の番人!」

ソフィーは明るい笑顔で言う。

その声がでかい。

完全にいつものトーンだ。

「本屋では静かにお願いね」

エリーゼお姉ちゃんは苦笑いする。

本屋の紙切れをちょこちょこ買って、ソフィーは本屋を出る。

「あれ?早いのですね………」

プラフタも、そんなソフィーを追いかける。

 

 

「フリッツさん、家に居るかな……」

ソフィーは本屋を出て、向かいの民家に一直線。

そして窓に張り付いた。

「これ!行儀悪いですよ……」

プラフタがたしなめる。

「確かに、行儀が悪いが、ソフィーらしくもあるな」

その背後から、フリッツさんが現れた。

「うわぁ!」

ソフィーは驚いて飛び退く。

「どうやらソフィー……君の中で私は、同年代の友達みたいな位置付けなのかな?」

フリッツさんは頬を掻く。

「プラフタ!」

ソフィーは背負った鞄を指差す。

「はいはい……」

プラフタはまた、ペンデグリュンを取り出す。

「どうやらいいコンビになっているようだが……それはウォー・ハークではないか」

フリッツさんはそう言って、ペンデグリュンを撫でる。

 

「ウォー・ハーク?」

「ああ、こちらではペンデローク……ペンデグリュンと言うと正しいのかな」

フリッツさんはそう言って名前を言い当てた。

なんか詳しそうな……

「なぜこのような物にも詳しいのです?」

プラフタが尋ねる。

「マナの柱が人間の味方をしている地域に転がる、魂の欠片がワー・ハーク。マナの柱が人間を敵視し、魔物の巣窟となっている場所に転がる、魂の欠片がウォー・ハークだからな。1つの目印として覚えがあるのだ」

フリッツさんは事も無げにそう話す。

フリッツさんの中で当たり前の話みたいに。

 

「ワー・ハークというのがペンデローク、ウォー・ハークというのがペンデグリュンなのですね」

ペンデグリュンを手に持つプラフタが、そう話す。

「ほぉ……なんで呼び方が違うの?」

ソフィーが不思議そうな顔をして尋ねる。

「国が違えば言葉も違って来るからな。私は傭兵時代に、砂漠の国の傭兵とパーティーを組んで、数年を過ごした経験がある。その言葉にも、馴染みがあったりするな」

フリッツさんはそう説明して、鍵を取り出した。

ソフィーもプラフタも、家の中へと招かれて入って行く。

「少し珍しいお茶を手に入れてな。1つ、楽しんで行くといい。いつも世話になっているしな」

玄関先にテーブルがあり、フリッツさんはそこにお茶を並べる。

 

「魂の欠片……なんですかぁ……何か錬金術にも使えたりするかなぁ……」

ソフィーはテーブルの上にペンデグリュンを置いて、考えるポーズを取る。

「錬金術に関してはあまり詳しくないが……宝石として綺麗で、加工もしやすいからな。人形の服の装飾に重宝しているな」

フリッツさんは部屋の中央に陣取る人形を示す。

人形劇には使わない、リアル路線の人形が幾つか居る。

 

「おお~!王子様とお姫様……馬まで!すご~い!」

ソフィーとプラフタは、その人形を見つめる。

プラフタは遠かったので、人形に歩み寄る。

「これは見事な……」

そして部屋の壁の所にある大きな鏡を見る。

「私も、またフリッツの作品なのでしたね。少し毛色が違うようにも見えますが……」

プラフタの映る大きな鏡に、フリッツさんも映る。

 

「それは、プラフタの魂を反映した、マナの柱の作品……なのだろう。私は土台となる人形を作ったに過ぎんからな。私の思惑とは、いささか違う出来となっているので、余計に興味深いのだが」

フリッツさんは、プラフタの肩に手のひらを置こうとして、大袈裟に手のひらを上げる。

「だが、このようなオジサンに……あまり興味を示されても迷惑だろうからな。控えておくとしよう」

そしてプラフタを残して、ソフィーの座る玄関先のテーブルへと、戻って来た。

「む~……」

ソフィーはテーブルの上のペンデグリュンを見つめて、唸っていたり。

「お茶が冷めてしまうぞ?あまり見つめ過ぎても、見えなくなってしまうのではないのかな?」

フリッツさんはそう言って微笑む。

「……そうですね。鞄にしまっちゃいます」

ソフィーはそう言ってごまかし笑いをすると、お茶のカップを傾ける。

 

「他の事……そうだ!エリーゼお姉ちゃんとのロマンスはどうなんですか?」

ソフィーはペンデグリュンを鞄に仕舞いながら、急に明るい表情になった。

プラフタもぴくっ、とフリッツさんの方を見る。

「そう来たか……」

フリッツさんは大いに苦笑いして見せた。

「そう来ちゃいますよ。エロエロ大嫌いなエリーゼお姉ちゃんを……一体どうやって……と興味あります!」

ソフィーは鞄を抱き締めて、前のめりになる。

 

「そうだな……私には妻も娘も居るのだが……彼女はそうした事で、憧れを諦める人物では無かったようだ。また、私はそうした物語を幾つか紡いでいるからな。彼女の事も受け止めるにやぶさかでも無かった、と言う事だな……」

フリッツさんはお茶を手に、冷静に話す。

「……?プラフタ、翻訳して」

ソフィーはプラフタを見る。

「どうやらエリーゼからのアプローチだったみたいですね。それも、フリッツが妻子持ちである事を承知の上だった、と。それと、そうしたロマンスは、傭兵であるフリッツとしては、あまり珍しいものでも無い……という所でしょうか」

プラフタはそう話してフリッツさんを見る。

「本当にいいコンビだな君たちは」

フリッツさんは呆れて笑う。

そしてプラフタのカップを手にすると、プラフタに向ける。

 

「……ありがとうございます」

プラフタは受け取り、ソフィーの隣に座った。

「しかし、これでは説明としては1つ、大事な所が抜けているな。……私も、エリーゼを魅力的だと思って居るし、そう仕向けた所もある。決してエリーゼの片思いではないが……私は結局は妻の元に戻る男だ。それほどに妻との物語は深く、私を惹き付けるものでな」

そう話して、フリッツさんはお茶を飲む。

「プラフタ、翻訳を」

ソフィーはプラフタを見る。

「今のも必要かな?」

苦笑いのフリッツさんはずっこける。

「……フリッツの方も、エリーゼが好きだと。ですが、妻の元に戻る……という事だと」

プラフタは冷静に話す。

「じゃあ、おめでたい話……なの?」

ソフィーはプラフタを見て、フリッツさんを見る。

「それはおめでたい話だろう。エリーゼは勇気を出して歩み寄って、その思いが成就しているのだからな。私にとっても、めでたい話だな」

フリッツさんは微笑む。

「それじゃあ、おめでとうございます!エリーゼお姉ちゃんに何かプレゼントでも送ろうかなぁ……」

ソフィーは口許に指を置いて、遠い目をする。

「プレゼントならば、絵の画材を欲しがっていたな。今は商人から取り寄せた物を使っているようだが、どうにも色が暗い、と話していたし、私もそうした画材はあるとありがたいな」

フリッツさんはそう話す。

 

「画材……それならちょこっと調合でばんばん作れちゃいますから、明日にでも用意できちゃいますよ!夕食後にでも、やるだけやっておきますね!」

ソフィーは明るい顔で引き受ける。

明るい色付きのクレヨンと蝋絵の具。

ちょこっと調合で作るのは、なかなか楽しかったりするし。

 

 

「エリーゼは私と似ているように思いまして、そうした女性の認める相手というのは、気になるものでしたが……」

フリッツさんの家を出て、アトリエへと向かう道。

プラフタはそう話す。

「ガッカリ?」

「いえ、フリッツに対してはガッカリではありませんし、納得も出来るのですが……私が何も感じない事にガッカリ……なのでしょうね」

プラフタは空を見上げる。

……肌の感覚も、匂い的な感覚もないからだろうか……

そう思いながら。

「だって、プラフタには恋人が居るからね。さて、コンテナから食材ゲットして、エルノアさんの手料理を食べなきゃ~♪」

ソフィーはプラフタの手を取り、歩く。

「……そ、そうでしたね」

プラフタも、手を取られて歩いてく。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[番人ぷにちゃん達]
コンテナに住むソフィーの頭サイズのぷにちゃん。色もそれぞれ見える色が違い、ソフィーには灰色がかった黒、プラフタには黄緑色、コルちゃんには透き通った青に見える。どんどん増えてる。

ドナーストーン[伯爵]
フォン・ゲオルク・ドナーストーン伯爵みたいに、更にカッコいい名前にしたくもある。

[噴水端会議]
噴水の回りでの雑談会。色んな話が飛び交う。
[北の人形劇]
種の日のお楽しみ。これぞ休日!って感じ。

[フリッツ×エリーゼ]
エリーゼお姉ちゃんにもお相手が!でもエリーゼお姉ちゃんは冷やかしづらい。
[エロエロ]
18禁!なので全年齢対象のゲームでは一切出てこない。誰もが禁欲生活なのだろうか。

[ヤーペッツさん]
食通商人。レストランで腕を奮っている、凄腕料理人でもある。
[エルノアさん]
ヤーペッツさんの元で料理の腕も上げているのだとか。華やか素敵な盛り付けの料理が得意。

[特製バスケット]
オスカーの特製サンドイッチの詰まったバスケット。豚ネズミの肉を乾燥させた、乾燥肉と特製調味料の合わせ技で、美味しさ満点!

[コルネリア×ロジー]
意外とケンカする事も多いんだとか。
[テスさんのチケット]
ゲームでも登場するチケット。絵心のない絵が描かれている、という設定はない。

[南の人形劇]
芸人師匠と弟子が主催する、漫才と歌なんかの催し物。お酒を飲む場所にもなっているので、錬金荷車1号とテスさん、コルちゃんがお酒とおつまみを売っていたり。八百屋特製のサンドイッチも好評。

[ウォー・ハーク]
ペンデグリュンの外国語版。完全に造語。
[ワー・ハーク]
完全に造語その2。ペンデロークの事。
[マナの柱]
魔力の源。色んな事が出来る。


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錬金術のアトリエ 39

錬金術のアトリエ 39

 

「さて、ちょっとアトリエに行ってきます」

ヴァルム教会前、噴水広場。

南の人形劇も日が傾く頃には終わる。

後片付けの人々で賑わう中、コルネリアはテスにそう言って、アトリエへと歩くソフィーとプラフタを追いかける。

「お~よ☆……コル助はやいなぁ……相変わらず」

テスはそう言ってコルネリアを見送ると、キラキラ飾りの錬金荷車1号を引いてカフェへと帰る。

 

 

「本屋さんですか?」

コルネリアは、旧市街からやって来たソフィーとプラフタに、そう話し掛ける。

「コルち~ゃん♪実はね、フリッツさんの所でエリーゼお姉ちゃんの事を聞いてたんだよ~」

ソフィーは笑い、そう話す。

「これ、ソフィー……そんな広めるような……」

プラフタがそんなソフィーをたしなめる。

「エリーゼさんとフリッツさんですか……言われてみれば気になる所です……」

コルネリアは考えるポーズをして、呟く。

そして色んな話をしつつ、アトリエへと向かう。

 

 

「ようこそ~♪あと140時間あるね♪」

なんかやたらゴキゲンな、番人ぷにちゃんの群れがお出迎えする中、扉の側で服を脱ぐ。

今回もマナの柱はゴキゲンみたいで、早くエサ寄越せオーラ全開で、脱いだ服を棚に置かれるのを待って、ぴょこんとした手?をふらふらさせる。

しかも集団で。

つまり、わっしょいわっしょいしてる。

「も~……脱がせたがりなんだから~……」

ソフィーはそんな番人ぷにちゃんの群れに、脱いだ服を渡していく。

「今日もめちゃくちゃ可愛いです♪」

コルネリアも、番人ぷにちゃんに脱いだ服を渡していく。

 

マナの柱の部屋で、ソフィーとコルネリアでプラフタのおっぱいに甘えて眠る。

エロエロは疲れるし、ストック140時間もあるから、余裕だし……

2時間くらい眠るのが凄く都合がいい。

「2人ともまだ子供なんでしょうか……」

プラフタは思ったりもする。

 

 

「おはよう♪」

コルネリアが起きた時、ソフィーもプラフタも居なかった。

マナの柱によると、コルネリアだけ5時間、ソフィーとプラフタは30分程で起きて出ていったみたいで。

「錬金術、複。の能力を使ってると、疲れが出るものね。眠る事は凄く大事だからね」

マナの柱はそう話す。

繰り返し、言われてる事。

「ここで寝ると、凄くスッキリシャッキリするです」

コルネリアはそう言って扉を出る。

扉を出ると、服に取りつく番人達を待つ時間に、食材をまとめてる、ハダカ族ソフィーとプラフタが居た。

 

「スッキリ……シャッキリです!」

コルネリアは片足を上げて両手を広げる、スッキリシャッキリのポーズを取る。

「スッキリ……シャッキリです!」

プラフタが、そんなコルネリアを見て、同じポーズを取る。

「むう!?まさかプラフタさんが……!?」

コルネリアは片足でぴょんぴょん飛びつつ、ポーズを維持して近寄る。

「あたしも!スッキリシャッキリ!」

ハダカ族3人で、上げた片足の膝を付き合わせて、スッキリシャッキリ争いをしてみたり。

棚の廊下が広いので出来てしまう芸当だ。

「もう!なんですかこれは!」

プラフタが大いに苦笑いをして、上げていた片足を落とした。

「元気!元気の証です!」

コルネリアも笑う。

そうした後にピッカピカになった服を着て、3人でアトリエを出る。

ソフィーとプラフタは、モニカのお家で晩御飯だそうで。

 

 

コルネリアは、モニカのお家で別れて1人で歩く。

……今日はロジーさんと……

そんなワクワクしながら、軽い足取り。

 

 

……

「鍛冶屋ロジックス、注文はコルネリア露店で受付中」

新しくした、可愛いカラフルな貼り紙が出たままで、もうコルネリア露店は終わっている時間。

コルネリアは貼り紙を剥がして中に入る。

「ただいまです~」

中に入ると、汗だくのロジーが注文の品々を完成させて、釜の火を落としている所だった。

その中に、コルネリアの手甲もある。

「おかえり。コルネリアの手甲も完成してるぞ。しっくり来るか、着けてみてくれ」

ロジーはそう言って笑う。

コルネリアは貼り紙をドア裏に貼ると、汗だくのロジーに近寄る。

「長らくこの手甲でしたが、新しい物でも馴染むでしょうか……」

ロジーに近寄ると、コルネリアは後ろを向いて、背中の帯止めを向ける。

「あ!……先にお水を汲んで来ます。ふわモフタオルも用意しないとでした」

コルネリアはばっ、と袖を開くように両手を広げると、そう気付く。

「2度汲んだ水も、もう無いか……」

ロジーとコルネリアは、鍛冶屋の裏口を出てすぐにある、井戸広場へと行く。

壺屋と八百屋、並びの家と共同で使う井戸。

そして4つの桶を水で満たして、鍛冶屋へと戻る。

 

「じゃあ、解くぞ……」

桶を置いて、ふわモフタオルを用意して、ロジーはコルネリアの側に寄る。

「はい。お願いします」

ロジーは帯を解く。

コルネリアのいつもの服は、するっ、と落ちるとすぐにショーツだけになる。

ロジーもソフィーも、最初はびっくりの構造だった。

 

服を落とすと、すぐにVショーツと乳帯だけの、肌着姿になる。

「服に縫い付けて仕込む……感じか……」

そしてロジーは服を持って、作業台の方を見る。

「あまり新調の予定が無かったもので。でもやはり縫い付けてしまって、使って行きたいかな……と」

コルネリアは答える。

「まあ、極力変わらない使い勝手にするよ。俺はそういう職人だからな」

ロジーは慣れた手際で手甲を外し、新しい手甲を取り付けて行く。

そしてものの5分で取り替えて、コルネリアに服を着せる。

 

「さすがロジーさん!しっくり来てるです!」

手甲をふらふらさせてみて、コルネリアは言う。

なんとなく、新調した今のやつの方が安定している感じもある。

「実戦になると、更に仕込まれた金属が電撃を放つから、危険なまでに威力もある。コルネリアは手甲をふらふらさせて日常生活をしているから、少し危ないけれど、日常でも実戦でも使って行けるハズだよ」

ロジーはそう言って手甲を撫でる。

「それはそうと……お腹減ったです!」

コルネリアは外を見る。

「地下室に特製バスケットがあるから、食べてしまおうか」

「なんと!それは素敵です!食べるです!」

コルネリアはそそくさと地下の寝室へと行く。

その後ろ姿を見送り、ロジーは微笑む。

こうした姿はまるで子供のように思えて、ついつい微笑んでしまう。

「はんは、はんほひはははっはへふ」

サンドイッチを咥えながら、コルネリアが戻って来た。

 

「ははっ……そうか昼に食べたんだったな……壺屋にでも行かないとだな」

そんなコルネリアに思わず吹き出しながら、ロジーは手を出す。

3切れのサンドイッチの一つを受け取り、それを口に運ぶ。

「もぐもぐ……」

コルネリアは食べながら頷く。

最後のサンドイッチも口に運んだ。

口は小さいのだけど、食いしん坊だったりする。

 

空のバスケットを置いて、2人は壺屋へと行く事にした。

「しかし……汗臭くないか?」

ロジーは自分の体臭を気にする。

コルネリアはその胸に顔をくっつける。

頭の陰陽飾りの帽子がロジーの顔に当たる。

「おおっ!飾りが……」

そんな2人を、順番待ちしているオジサン達が眺める。

「特に平気ですね……」

コルネリアが近づいたまま、ロジーに向けて顔を上げる。

陰陽飾りの帽子は、ロジーの顔から遠ざかって行った。

「そ、そうか……」

ロジーは既に並ぶオジサンを見る。

4人だけど、4人ともこちらを見ていた。

 

 

ともかく、食事を終えて壺屋の外で歯磨き。

オジサン達も歯ブラシ持参で、塩軟膏で歯磨きする。

そうして鍛冶屋へと帰る。

コルネリアは行列のオジサン達の所に少し残り、商売の話をする。

ロジーは1人鍛冶屋に帰ると、まだ熱の残る釜に向かい、身体を洗う事にする。

少し洗った頃には、コルネリアは戻って来る。

壺屋で食べる時の、いつもの光景。

 

「壺屋のおやじさん、どんどん煮物も芋も美味しくなっているです!今は豚ネズミの骨を煮込んで、更に美味しくなっているそうで、おやじさんもノリノリなんだとか」

コルネリアはそう、ロジーに話しながら服を脱ぎ、陰陽飾りの帽子も外す。

これもいつもの光景になった。

 

「そうか……確かに揚げ芋を浸けたスープ、旨かったもんな。おやじさんもノリノリか」

コルネリアに中和剤石鹸の泡付き、ふわモフタオルを渡し、ロジーは話す。

「井戸の桶掃除、最近やってないのでやって欲しいと言われてしまいました」

ロジーを洗いながら、コルネリアは話す。

お互いに旅に出てたりするので、忘れたりする事もあったり。

「そうだな……明日、俺は日帰りだから、やっておくよ。コルネリアは?」

洗われながら、ロジーは呟く。

「未定ですが、双葉の日、蕾の日と旅先で。開花の日に帰ってくるのかと思います。強敵を求めて遠くへ行きますので」

コルネリアはロジーの背中を、首の後ろを洗う。

解いたピンクの髪が、少しくっつく。

「まあ、そうだよな。新しい手甲は今までとは違うから、そこは気を付けてくれ」

ロジーは顔を上げて、コルネリアに振り向く。

「はい。着け心地からなんだか良くなりました。さすがロジーさんです」

 

中和剤石鹸の泡を、ひとしきりロジーに付けて。

コルネリアは、熱の残る釜で温かくなった桶の水に、ふわモフタオルを浸ける。

今度は泡を流すのだけど、少し中和する時間を置く。

「明日は何時です?」

コルネリアは身体をくっつけて、尋ねる。

「5時に迎えが来るな。近くの森で、豚ネズミ取りのパーティーの護衛を頼まれてるな」

ロジーは、おっぱいをくっつけて来たコルネリアの、首に掌を当てる。

コルネリアはロジーの頬をぺろっ、と舐めた。

 

「今日もエロエロしたいのか?」

「はい。エロエロしたい……というかイチャイチャしたいです」

コルネリアは少しにやけて言う。

昨日散々ハジケて鳴いて過ごしたのだけど……

と、ロジーは思うものの、まんざらでもないし、むしろ大歓迎だ。

「俺もだ。眠くはないのか?」

泡だらけのロジーは、コルネリアの頬と頬をくっつけるように、コルネリアを引き寄せる。

「はい。ぷにちゃんの所で寝てきていますので。もう、好き好きってしたいです」

コルネリアはネコの目で笑う。

甘い、誘うような可愛い声が、ロジーの耳許で聞こえてくる。

 

 

……そして昨日の事を思い出す。

「ひあぁっ!あっ!ロジーさんっ!ハジケてっ!はじぃぃぃっ!」

花柄の細い銀の布を首に、左腕に、右の太ももに。乳首には、金の糸で作られたリングで彩られたコルネリアが、甘い悲鳴を上げる。

人より小さな身体は敏感で貪欲で、ロジーの欲望を受け止めてハジケて、ピンクの髪を振り乱して震えて身体を反らした。

「ちゅ~……ちゅ~してください……」

コルネリアはロジーの顔に手を伸ばす。

女の子が皆そう望むのかは、ロジーは知る由もないが、コルネリアは頻繁にキスを求める。

キスをすると嬉しそうな顔をして、頬を赤らめるし、ハジケやすくなるみたいに感じる。

コルネリアの手はロジーを捕まえて、舌を絡めるキスをする。

ロジーもコルネリアの頭を捕まえて、そのキスに応える。

もう何度こうした事か……

「こうしてるの、素敵です」

キスしている唇をわずかに離して、コルネリアは可愛い声を向ける。

涙に濡れた瞳は微笑むように細めて、ロジーをときめかせる。

「可愛い……綺麗だ……」

ロジーはそんな気の利かない台詞を吐き、また唇を合わせる。

「はんっ……はんっ……んちゅっ、ちゅっ……」

お互いに身体をもじもじうねうねさせながら、唇を吸い合う。

お互いの愛おしさを擦り合わせるように。

ロジーの所へコルネリアが押し掛けて来てから、冒険者に色々と男女の話を聞いた。

 

曰く、チンコをしゃぶらせてからどうの。

曰く、ワレメを舐めてどうの。

曰く、後ろから尻の穴をどうの。

曰く……

 

コルネリアは下半身に唇を寄せるのも、寄せられるのも嫌う。

尻の穴をどうの。

は、成就したものの、後ろからを嫌う。

とにかく、キスを中心に回る。

イチャイチャする時もエロエロする時も、キスが凄く多い。

顔と顔が近いと安心するみたいで、ご機嫌にもなる。

涙に濡れた目を細めて、ロジーに微笑む。

そんなコルネリアとのイチャイチャにもエロエロにも……

お互いに溺れてる。

 

 

………

ふわモフタオルで身体を流して、そして乾いたコルネリアはロジーの肩を、胸を撫でる。

「バッチリです!ロジーさん、考え事です?」

正面で目の前に、ネコみたいなコルネリアの瞳があった。

「あ、ああ……昨日の事を考えていた。こんなんじゃロクな鍛冶屋になれないよな……」

ロジーは正面のコルネリアを抱き締める。

コルネリアは抵抗なくロジーと胸を合わせて、ロジーの唇のすぐ横にぱくついた。

「はむっ……」

コルネリアの唇の温かさが、耳の下の方へと滑る。

「そんな事ないです!鍛冶屋さんにも、素敵で可愛い奥さんは居ても平気です」

コルネリアもロジーに抱きつき、そう話す。

「素敵で可愛い奥さんか。確かに、素敵で可愛い奥さんが居るんだから、仕方ないな」

ロジーはコルネリアを抱きしめたまま、その手をお尻に降ろし立ち上がる。

お姫様抱っこになった。

「おおう!?パワフルです」

「コルネリアは軽いから、パワフルでもないだろう」

「意外と重いと思っていましたが」

「そうでもないよ」

ロジーはそのまま、地下室への扉に向かう。

そして膝をつき、コルネリアは手を伸ばし、右の扉を、左の扉を、と持ち上げる。

「愛の共同作業です」

「はは……まあ、そうなのかな」

そして地下の寝室へと降りて行く。

 

 

「明日は早いから、無理しないで寝てしまってください」

コルネリアはロジーにひっついて、頭をベッドに沈める、眠る構えになった。

「コルネリアは、もう眠いのか?」

ロジーはコルネリアの乳房に手をやり、ふにふにと軽く押してみる。

「ふふ、ロジーさんが元気なら、私も元気ですけど……今日は汗だくで頑張っていたんじゃないですか?」

コルネリアは身体をうねうねさせる。

「まあ、そうだよな。眠らないと明日に響くよな」

「昨日頑張って頂きましたので。それに、こうしてるとほんわかして、幸せな気分です」

「そうか……」

ロジーは目を閉じる。

コルネリアもロジーの腕に額を付けて、目を閉じた。

 

 

朝、コルネリアが先に目を覚まして、身体を起こす。

ロジーはぐっすり眠っているけれど、まだ目覚まし時計が鳴る前……

コルネリアはロジーから離れて、ハダカのまま階段を上がり、地下の寝室から鍛冶場へ。

そしていつもの服を着る。

ネコ耳シルエットの髪型にして、陰陽飾りの帽子を装着!

そしてもふもふモフコットに挟まれた、ロジーの服をチェックして、まだ残る汚れをやっつける。

 

ロジー冒険用の服を抱えて、また地下の寝室へ。

 

……ポコッ!ポコッ!ポコッ!ポコッ!

コルネリアが階段を降りてる時に、目覚まし時計が鳴り出した。

そしてハダカ族のロジーが身体を起こす。

「おはようございます」

コルネリアはロジーの服を抱えて、ネコの目で微笑み、ベッドへと向かう。

……なんか、素敵な奥さんの動き……

そんな事を思って、思わず笑みがこぼれる感じ。

「おはよう。なんか、ステキ奥さんだな……コルネリア」

気の利かない話しか出て来ないロジーの口から、そんな言葉が飛び出した。

「おおう!?」

コルネリアは後ろに飛びのいて驚く。

「………?」

「いえいえ、何でもありません。近頃はキルヘンベルの近くにも、何だか突然変異プニが見掛けられたりしていますので、お守りにこの、ぷにゼリーハウスを用意しました」

 

コルネリアは平静を装って話す。

ぷにゼリーは、ソフィーが作り出した回復アイテムで、勝手に飛び出して回復してくれるのだとか。

ただ、現状ではそんなことはないので、取り出し易くて食べやすい、バスケットになってるのだけど。

「なんか、いつもありがとうな」

ロジーは服を着ながら言う。

「へへ、そう思うなら、ごほうび下さい」

コルネリアはロジーに両手を伸ばす。

新しい手甲がふらふらと揺れる。

ロジーはコルネリアに近寄ると、上を向くコルネリアを抱き締めて、その小さな唇に軽くキスをする。

 

「寝癖のままだろうけど、大丈夫かな?」

キスが離れて、ロジーは尋ねる。

「うへへ~……全然大丈夫です♪」

コルネリアは嬉しそうにネコの目でにやけて、口許を隠す。

ロジーもその姿に、思わずにやけて、コルネリアから顔を背ける。

「ま、まだ時間……あるんだな」

ロジーは顔を背けた先の時計を見て、呟く。

まだ30分ほどの時間があった。

「留守にしてしまう分、少し早めにお店を見ないと、それにキルヘンミルクの納品は、もう終わる頃ですので」

 

コルネリアは、鍛冶屋を出る。

ロジーは冒険者の一団が来るのを、鍛冶屋で待つ。

 

 

「おや?ソフィーさんにプラフタさん……お早いですね?」

八百屋前、マルグリットにオスカー、ソフィーにプラフタと揃っていて、コルネリアと教会の女の子達と鉢合わせする。

「お?今朝のキルヘンミルク、バッチリ用意してるぞ」

オスカーがミルク飲む用のタルを示す。

コルネリア露店御一行様は、毎日朝ミルクの契約があるし、八百屋のお客さんが来るより早く、このミルクを飲みに来るのだから、いいお客さんでもある。

「プラフタさんも、いかがですか?」

コルネリアは、そう尋ねる。

「私とソフィーは、カフェでホットミルクを……と計画しておりますので、せっかくですが」

プラフタはそう言って頭を下げた。

 

コルネリア露店御一行様がミルク儀式をして……

カフェで冒険の旅路と依頼の話を、ジュリオとレオン、ハロルとホルストで話し合い……

そしてソフィー達を見送る。

プラフタはまだ、冒険には行けずに、キルヘンベルで留守番。

 

 

「お?綺麗な姉さんだけど、ここの人かい?」

キルヘンベルの街の入り口、出口でもある川沿いで、プラフタは5人程の男達に声を掛けられた。

「はい。プラフタと申します。ソフィーのアトリエで一緒に住んでいる者です。あまり外に出ていなかったものですから、お初にお目にかかります」

プラフタはそう言って頭を下げる。

「お、俺達は自警団の……」

男達はそれぞれに自己紹介をして、聞いてもいないけれど近況を話したりする。

妻の話をする者、広場の酒の話をする者、『コルネリア露店の看板娘コルネリアを応援する会』の会員活動を話す者……

 

それらの話をプラフタは時折笑いながら、聞いた。

「ふふ、外にも出てみるものですね。明日以降もこうした話を聞けるかと思うと、楽しみにもなりますね」

そんな談笑をして、プラフタはアトリエに帰る。

 

 

アトリエ前では、エリーゼとウメが外テーブルで、古本補修をしていた。

「おや。エリーゼは、アトリエの合鍵を持っていると聞いたのですが」

プラフタは、そんな2人に歩み寄る。

「確かに貰ったけれど、さすがに返したのよね。ソフィーったら、返した事は忘れていたのかしら」

エリーゼはそう言って笑う。

外テーブルで古本補修するにも、今日はいい天気だった。

「ともかく、アトリエを開けますね。それと、ソフィーと私で蝋絵の具など、画材を更に作っていたりします。エリーゼの感想があると、助かるのですが」

プラフタはアトリエのドアを開ける。

「本当に!?そんな事を今、言われちゃったら……古本補修に集中出来なくなるわ……」

エリーゼは凄く喜び、顔を綻ばせる。

「なら、今日は古本は置いておけばいいんじゃないかしら?」

ウメはそう話す。

「そうですね。心ここにあらずでは古本の補修もままならないでしょうし、力加減の難しい私では、古本補修には手が出せませんし」

プラフタも、そう言ってエリーゼを見る。

あまりにも嬉しそうなのだ。

 

 

「明るい、綺麗な色だわ!」

エリーゼは、おおはしゃぎで絵を描く。

女の子の絵、男の子の絵、木々、草花……

プラフタも、土いもの絵、錬金釜の絵を描いてみる。

あまりにも絵心が無い……

ウメの絵が凄く良く出来ていて、拙いながらもセンスを感じる出来上がりとなった。

「エリーゼは、本当に楽しそうに、夢中で絵を描くのですね」

ウメとお茶をしていたりするプラフタが、夢中で絵を描くエリーゼを眺めて呟く。

「今日のエリーゼさんは、昔の、私の娘を見るようで懐かしいですねぇ~……」

ウメもしみじみと呟く。

 

 

お昼ご飯は、プラフタがウメとエリーゼの分も作る事に。

ソフィーに材料の許可も貰ってあるし、特に煮るだけなのだけれど、誰かに料理を振る舞う、というのは気持ちの良いもので。

「何だか時間を忘れて絵を描いていたなんて、恥ずかしい所を見られちゃったわね」

目の色を変えて絵を描いていたエリーゼが、しつこく呼ばれて、ようやくプラフタの作ったお昼ご飯(ウメ監修)の並ぶテーブルに着く。

 

「しかし、夢中で可愛らしい絵を描くものですから、なんかエリーゼへの認識を改めました」

プラフタは微笑みながら言う。

今日ほどエリーゼが可愛く見えた時もない。

「え~!?そ、それほどの事だったの?……これ、凄くシンプルだけど、美味しいわね」

エリーゼは驚きつつ、土芋まるごと+肉と植物のスープを口に運ぶ。

「なんか、本屋さんの主人として、少し厳しい印象がありましたからねぇ~」

ウメもスープを口に運びながら話す。

食がすっかり細くなっているとかで、土芋は無しのスープ。

「そんなイメージなら……改めて貰っても大丈夫かしら」

エリーゼは苦笑いを浮かべて、そう話した。

 

 

エリーゼは午後も絵を描き、プラフタも絵を描く。

ウメは娘を思い出したと、家へと帰って行ったのが15時頃。

あまり上手く絵を描けないプラフタは、ふと錬金釜へと行き、窓を眺めたり、マナの柱の部屋で休んでみたり。

 

 

「何だか、何もかも放ったらかしで、夢中になっちゃったわ……」

夜の20時。

エリーゼは顔を上げる。

「今日は画材と出会えた記念日ですから、それにそこまで気に入って頂けると、作った側としても嬉しい限りです」

プラフタは微笑み、エリーゼの描いた絵を眺める。

可愛い、好みの絵柄。

明るいけれど、少しシュールな世界。

「何だか、みっともないわ……」

エリーゼはため息をつく。

「……?何がですか?」

プラフタは尋ねる。

「昨日はフリッツさんとの事、今日はこんな絵を描いて……思わず本性をさらけ出したみたいだから……ね」

エリーゼは画材をまとめながら、そう話す。

 

「この場所は不思議な場所です。私もまた、みっともない本性をさらけ出してしまいました」

プラフタも、それを手伝いながら話す。

「え?プラフタも何かあったの?」

エリーゼは少し驚いて、プラフタを見る。

「何だか、この話をすると、少し話が長くなりそうです。夕飯も作りましょうか?煮るだけの料理には、なりますが」

プラフタはそう言って微笑む。

マナの柱で、ソフィーに何もかもさらけ出す事になったからだろうか。

何だか開き直れるような、そんな気分がする。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[南の人形劇]
職人さんのお仕事も溢れ返る最近のキルヘンベル。休日の憩いの場。
[コル助]
コルちゃんと呼ぶのは気恥ずかしい人達の、コルネリアの愛称。

[番人ぷにちゃんの群れ]
どんどん増えてるコンテナの番人。
[マナの柱]
どんどんでかくなる。部屋ごとでかくなる。
[スッキリシャッキリ]
マナの柱の部屋で眠ると、元気になれる。

[ハダカ族]
服を脱げば、誰もがハダカ族。
[コルネリア×ロジー]
ラブラブ絶好調。
[ふわモフタオル]
ちょこっと調合品、ふわふわモフコットの白バージョン。

[井戸広場]
ソフィーのアトリエはぽつんと一軒家なので専用みたいなものだけど、普通は共有。
[壺屋]
ロジーとコルネリアも良く使う食事処。狭い店だけど大人気。
[塩軟膏]
歯みがき粉的な日用品。

[陰陽飾りの帽子]
ゲームでもかぶっているコルネリアの帽子。名前は出てこない。

[エロエロ]
ラブラブな証。ロジーも色々と勉強していたりする。

[ぷにゼリーハウス]
ロジーの身を案じてコルネリアの作った、回復アイテムを使いやすくする仕掛け。

[コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会]
皆に愛されるコルネリア露店。ファンも多い。
[ウメ]
料理センスも光るおばあさん。キルヘンベルを出て行ってしまった娘が居る。


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錬金術のアトリエ 40

錬金術のアトリエ 40

 

エリーゼと一緒に、うに+肉と野菜のスープを作る。

甘いうにと、そうでもないうにで順番になっており、それほど甘い物好きじゃないエリーゼ向きのうにを、番人ぷにちゃんが案内してくれる。

「ところで、プラフタのみっともない話って……」

スープを並べながら、エリーゼは尋ねる。

「そうした話をするには、まだ少し勇気が必要でして……何から話せばいいものやら」

そして暖炉テーブルに、エリーゼと差し向かいに座る。

 

「でも……何かしら?プラフタのみっともない話……想像もつかないわ……」

エリーゼはそう呟いて考える。

「実は……私とソフィーは恋仲に……なりまして……」

 

プラフタは思い切って話す。

……自分のみっともない話、などと言い出したさっきを、少し悔やみながら。

「……!?ソフィーもプラフタも、女の子じゃないの?……あと、ソフィーにはオスカーが……」

プラフタが思う以上に、エリーゼは驚き、エリーゼのスープが溢れた。

「マナの柱に入ると、全て考えた事、思う事が筒抜けになりまして……」

「そ、そんな所なの!?ソフィーに誘われた事があるけれど」

「また、ハダカで入らねばならない場所でもあります」

「そ、そんな……とんでもない場所なのね」

エリーゼは驚き通しで、スープの器を持つ手も震わせる。

「この話は、ちょっと食が進む話でもないみたいですし……今は止めて、後にしましょうか」

プラフタは、自分のスープを口に運ぶ。

プラフタにとっては……味のしないスープ……

 

 

それからは描いた絵の話、画材の話をして過ごす。

お茶の淹れ方なんかに、更に磨きをかけてみたり。

今日、声を掛けられた自警団の人々の話などもして、時間を過ごす。

そういう何気ない話は、時間の経つのも早く感じるくらい、軽く楽しげに弾む。

話が弾む。

 

 

「ちょっとトイレに行ってくるわね」

夕食の後片付けをしている時、エリーゼが出て行く。

このアトリエ、実は裏の離れにトイレがある。

マナの柱が出て来てからは、使われていないのだけど。

「はい。どうぞ」

プラフタは、出て行くエリーゼを見送る。

……トイレなんてのもあったのですね……本であったり人形であったりするものだから、忘れていました……

ソフィーも、排泄物はマナの柱に食べられてるそうなので、トイレは使っていない。

 

……トイレ……

どうなっている場所だったろうか……

そんな事を考えていると、エリーゼが戻って来た。

「ごめんなさいね。もう、随分と遅い時間なのね?」

外から帰って来たエリーゼに言われて、プラフタは時計を見る。

22時になろうとしていた。

「まあ、私1人では特に何もありませんので。お気になさらず」

プラフタは事も無げに言う。

「……もう、泊まって行っちゃおうかしら。こんな時間に出歩くのは、物騒だし」

エリーゼは、ため息をつく。

「それがいいかと思います。私はマナの柱の部屋でしか、眠る事が出来ませんので、ベッドも広く使えますよ」

「……そうなの?」

「はい。意外にも人形だと……眠る、という事が出来ません」

「……意外だわ……不便なのね」

「本の時と比べると、格段に便利になりましたが、人と同じ、とは行かないようです」

「それと、前から気になっているんだけど、かなり露出の多い服よね……もうそれは服なの?ってくらいだけど……」

「肌が、空気に触れている必要があるようです。外での魔力は、空気中にありますから」

「な、なるほど……何だか趣味なのかと思っていたわ」

「私の好みの服は、裾の長いローブなのですが、こうした格好もまた、新鮮でいいかと思うようになりました。エリーゼもひょっとしたら……」

 

「ま、まあ……この格好は地味よね……分かってはいるんだけどね。レオンさんにも言われちゃってるし……」

ともかく、明日は早くに本屋へと戻る予定にして、エリーゼはベッドに横になる。

「眠るまではここに居るとしましょう。結局、エリーゼとフリッツの事は聞けませんでしたけど」

「プラフタとソフィーの事もね。でも、話すのも聞くのも、まだ抵抗あるのよね」

「私も同じです」

エリーゼは目を閉じる。

プラフタも、エリーゼが眠るとマナの部屋で眠る事にした。

 

 

プラフタはコンテナに入り、棚の廊下を奥へと進み、扉の前で服を脱ぐ。

「……脱ぎ辛い服なら……手伝うか?」

番人ぷにちゃんが、ぴょこんをゆらゆらさせて、そう尋ねる。

「そのような事も出来るのですか?ならば、後ろの留め具等をお願い出来ると……」

プラフタは番人ぷにちゃん達に背中を向ける。

番人ぷにちゃん達はひょいひょいと飛び、プラフタの背中にくっつくと、留め具を外す。

そしてまた、ひょいひょいと飛んで棚に戻る。

 

そしてぷにちゃん番人達が、ぴょこんと伸ばした手をぴょこぴょこさせて、留め具を外されて零れそうな服を渡され、受け取る。

「あなた方は気が利きますね」

プラフタはそんな番人ぷにちゃん達に、思わずそう話す。

「まあ……何度でも……我の所に……来て欲しいからな」

番人ぷにちゃん達はそう話す。

 

……私はなぜ、そもそも本だったのでしょうか……

ふとそんな疑問を抱きながら、プラフタはハダカ族になり、扉を開ける。

部屋の中に入ると、黄緑色のマナの柱が、口を開ける。

まだ中に入る前から、肌に感覚が現れる。

……少し温い空気……

「良く来た……プラフタ……」

マナの柱はそう言って、プラフタを迎える。

「眠る、というのは癖になりますね……ついつい通ってしまっていますが……」

「眠る……というのは……良い事だ……儀式もそろそろ出来る……が……まずは眠るのが……良いだろう」

マナの柱はプラフタが中に入ると口を閉じる。

そしてプラフタは意識を落として行く……

 

 

「じゃあ、今日は画材とかは置いて行くけれど、本屋をバッチリ見ないとだし……」

朝になり、エリーゼは雷雨の中、本屋へと帰って行った。

1日絵を描いて、お泊まりなんてしたから、その分働かないと、とやたら気にしていて。

アトリエにはプラフタが1人……

とりあえずエリーゼの置いて行った絵と、画材を眺める。

1人で絵を描く気にもなれず……

アトリエの掃除をして過ごす事にした。

 

 

「こんな所に食べカスが!?」

ふわふわクロースで拭き掃除をして回ると、意外な所に意外な汚れが見つかったりする。

 

 

「ただいまー!」

18時、ソフィーとコルネリア、モニカでアトリエに帰って来た。

「あれ!?もうそんな……まさか!?」

プラフタは慌てる。

掃除に夢中過ぎて、時間が経つのが早い。

「今回、原っぱ遺跡まで行ったのですが、蕾の日に帰って来てしまいました」

コルネリアがそう、プラフタに声を掛ける。

「新しい武器、凄く強かったから、戦闘に時間掛けなくなってるわ。とはいえ、敵もさるもの、楽はさせて貰えないんだけどね」

モニカも、意気揚々と話す。

今回はミニデーモン、セイバークロウが強敵で、ジュリオもモニカも大満足みたいで。

 

「プラフタも、ぷにちゃんの所に行こうよ。その後でモニカがジュリオさんを洗うパターンなんだけど」

「今日、ジュリオさんはそれほど汚れてないし、あまり綺麗な状態で帰るのも、宿舎で噂されるから、って帰ったじゃない」

「あれれ?そーだっけ?」

「今日はオスカーさんだけが、アトリエ残りです」

 

ソフィー達はわいわい話しながら、コンテナへと入る。

外で待っているのは、今日はオスカーだけみたいだ。

扉の前、番人ぷにちゃんの群れに服を渡してハダカ族になり、ぷにちゃんの部屋へと入る。

 

 

「残りは……135時間だ……」

ぷにちゃんは口を開ける。

「プラフタさんの為に貯めた時間でしたけれど、あまりにも使わなかったものだから、エロエロしなくていいのがステキです」

コルネリアが、すいすいと入っていく。

「すんなりと眠れるのはいいわよね」

モニカが後を追う。

「今日はオスカーと、イチャイチャする展開になりそうだし!」

ソフィーも能天気に続く。

「少し私は寂しい感じですけれど、こうして感覚がある状態で、男の子と絡むなんて……勇気がありますね」

プラフタは呟く。

「それは、解る所です。私も1年くらい体験予習していましたが、いざロジーさんと……という時の衝撃と言ったら……何も考えられないくらいでした」

コルちゃんはそう話し、目を閉じる。

「再現……とはいえ……全て完全ではない……少し鈍く出来ている……」

ぷにちゃんはそう話す。

「そんな感じあるよね。確か、その方がラブラブイチャイチャが楽しいって話をしてたような……」

ソフィーが言う。

プラフタにぴたっ、とくっついた。

 

 

ともかく、みんなで眠りに落ちる。

モニカもコルちゃんもソフィーも、それぞれこれからのラブラブイチャイチャに、ワクワクしたりしながら。

 

 

モニカが最初に起きる。

コルちゃんが抱き付いていて、おっぱいに甘えていたり。

ソフィーはプラフタと、がっつり抱き合っていたり。

「1人じゃないって、素敵な事ね……」

モニカは呟き、扉を出る。

そしてそのすぐ後にソフィーとプラフタ、コルちゃんと出て来る。

 

「服に取り付いてる番人ぷにちゃんも、可愛いよね~……」

ソフィーは番人ぷにちゃん達をつんつんする。

「それは私も思うです。見てて飽きないです」

コルネリアもモニカもプラフタも、棚で服の汚れを食べる番人ぷにちゃんを眺める。

 

 

………

ツヤツヤピカピカになった服を着ると、コルちゃんとモニカはコンテナを出て行く。

ソフィーは肌襦袢を着て、ワクワクそわそわしてる。

「私は、またマナの柱に入っておきますか」

プラフタは服を着る事なく、そう呟く。

「なんか、恋人が2人ってゆーのはズルいような気もするね。オスカーもプラフタも好きなんだけど」

ソフィーは頭を掻く。

「どちらも本心なのは知っていますので。それに、ゆくゆくはオスカーとは別の道……そう考えているようですし、オスカーも、植物の方が大事みたいですし」

プラフタは微笑み、扉の中へと入って行く。

ぷにちゃんの中で、ソフィーの思う事も、プラフタに伝わるのだから、知る所になる。

 

……オスカーはいずれ旅に出る人……

お互いがお互いを縛らない約束……

ソフィーは閉まる扉を眺めて、アトリエへと戻る。

 

 

「オスカー、お待たせ」

アトリエのドアから、ソフィーが顔を出す。

オスカーは少し離れた木の所で、何やら話しているみたいで、ソフィーに気付いていない。

ソフィーは肌襦袢姿で外に出て、オスカーに後ろからしがみつく。

「お?おお。なんかほんの少しの時間だったけど、また今度な」

オスカーは木に別れを告げて、ソフィーを背負って立ち上がる。

「へへ~、お話しててもいいんだよ?」

ソフィーはオスカーの首に捕まる。

「カワニレの木も、ちょっと付き合ってくれただけだから、いいのさ」

オスカーはソフィーを背負ったまま、アトリエへと向かう。

すぐそこだけど、ちょっとだけ距離がある。

「そうなんだ~……カワニレの木とは、もう長いよねぇ」

ソフィーはオスカーの首筋に頬を寄せる。

……安心する、幸せ気分……

少し汗の匂いがする。

「そうだなぁ……時間が経ってさ、オイラも大人になったのかなぁ……とか思ったりするよ」

アトリエのドアを開けながら、オスカーは相変わらずのおとぼけボイスで話す。

 

「あたしのおヒゲも長くなって来た感じあるから、バッチリ大人になってるんじゃないかな」

そして暖炉に向かうオスカーの背中で、ソフィーは言い、背中から降りる。

「ぷにちゃんの力もあるし、少し飛び越えてる感じあるよな」

オスカーは眉を片方上げて笑う。

「錬金術も成長が凄く早いもんね!オスカーはどう?」

ソフィーは汲み置きの井戸水を確認しつつ、ふわモフタオルを探し、うろうろしながら言う。

「オイラも、植物との会話が捗る感じするよ。それに疲れが全然来ないんだよな。寝なくても平気過ぎて、自分で驚いてるよ」

オスカーは服を脱ぎながら言う。

「わお~!これは……寝かせて貰えない感じ……!?」

ソフィーはふわモフタオルを手に、井戸水の桶の場所に膝をつく。

「いや、ちゃんと程々にするさ。ソフィーが辛いんじゃ意味ないだろ?」

オスカーは服を脱ぎ、床に落として行く。

まずは服を洗わないとだ。

「ふふふ、ジェントルマンだもんね!」

薄い青の肌襦袢のソフィーと、ハダカ族のオスカーで服を洗う。

「そ、そうかな?」

オスカーは服を洗いながら、顔を上げた。

 

 

服を干して、今度はオスカーの身体を洗う。

青の肌襦袢を濡らしながら、今度はオスカーの身体が白い泡だらけになる番だ。

「これ、しゅわ~ってするよな。それが気持ちいいんだよ……」

ソフィーは首筋から肩へと、ふわモフタオルを滑らせる。

オスカーがそう話すと喉が動いて、ソフィーはそれを眺める。

「これが、決定版の中和剤石鹸粉になりそうなんだよね~……香りも好き」

肌襦袢のソフィーは身体を寄せて、オスカーの背中にくっつける。

……なんかちょっとドキドキしてくるのを感じる。

「爽やかだよな……これが青キノコから、とは思えないよなぁ……」

オスカーは呑気に呟く。

「だよね~♪ステキ調合品だけど、プラフタが発見なんだよね。やっぱり理論とか成分とか詳しいんだよ」

ソフィーはオスカーの身体を洗っていく。

全部ソフィーがやる、と決めたりして……

お腹とか胸とかも、ふわモフタオルを滑らせる。

しかし、身体がでかいし、がっしりずっしりしてる。

「そんな感じするな。ソフィーはプラフタと二人三脚がハマってるもんな」

オスカーの前に座ったり、立ち上がったりしながら洗う。

なんか既にギンギンで、ソフィーは頬を染める。

 

「ふふふ、師匠無しじゃ、錬金術も出来ておりません!」

頬を染めたまま、ソフィーは目を閉じて言う。

「ははは、そうだよな?凄くいい出会いがあったもんだよな」

オスカーが話す。

確かに不思議ないい出会い。

……でもなんで本だったのか、色々と謎のままだけど……

「そろそろ顔と髪、行くよ~♪」

ソフィーはオスカーの目の前で、ふわモフタオルを構える。

「おお」

オスカーは大袈裟に強く目を閉じた。

 

 

身体を綺麗にして、オスカーは肌着を着る。

そして夕食の時間。

オスカーが夕食を作り、ソフィーはシルヴァリアの仕込みをする。

依頼品のシルヴァリアなんて受けていた。

 

これが漬け置き9時間……

 

 

夕食を終えて歯磨きして、暖炉の前でオスカーに抱かれる。

脱ぐにも、濡れた肌襦袢はベッドにあると気になるし。

「えへへ、ちゅ~♪」

ソフィーは脱がされながら、オスカーとキスをする。

 

肌襦袢はほどけて落ちて……

ソフィーは背中と腰を撫でられる。

ギンギンのちんちんがやたら熱くて、お腹に当たる。

「今日もソフィー、可愛いなぁ……」

ソフィーのてのひらも、オスカーの肌を游ぐ。

「オスカーも、凄くがっしりずっしりして来てるよね?なんか、凄く強そうな感じになったよ?」

背中を撫でる熱い手に、腰からお尻を撫でる熱い手に、ソフィーは目を細める。

「そうか?それはぷにちゃんの力かな?ニガテだった戦闘も慣れて来たもんな」

オスカーはそう言いながら、ソフィーの身体を撫でる。

「んっ……手つきエロいよぉ」

ぴくっ、となってソフィーはオスカーの身体を撫でる手を止める。

「エロいの、嫌か?」

オスカーがそう尋ねる。

こうしてオスカーと肌を重ねると、なんとなく昔を思い出す。

頼りたくないけど、オスカーを頼らざるを得なかった頃を……

「ううん、エロいの、好き。オスカーにまた、へろへろにされたいもん」

ソフィーは甘えた声を出す。

 

……今はもう頼らなくても大丈夫だけど、好きな人なんだから頼っていたい。

「ソフィー、腰の辺りが敏感になってないか?」

オスカーはソフィーの腰を撫で上げる。

「んっ……あんっ、そうかも……」

また、ぴくっ、と身体が反応した。

「次、どうして欲しい?」

オスカーは意地悪い笑みを浮かべる。

「それ聞くのヤダよ」

ソフィーは首を横に振る。

「へへへ……」

オスカーはソフィーの首筋にキスをして、顎を濡らしながら唇へと寄せる。

「ちゅっ……はぁぁっ……ちゅっ、ちゅ~♪」

ソフィーはそのキスに応じて、気分も高まる。

そんな時に腰の手が股へと伸びた。

「ひゃあぁっ!もう?」

びくっ!と身体がハネて、ソフィーは上擦った声を上げる。

「濡れたか確認だよ。匂いがあるから解るんだけども、一応な」

ソフィーにびっくりされて、オスカーはソフィーの首に唇を寄せる。

「もう、でもイイんだけどね♪」

ソフィーのてのひらは、またオスカーの身体を游ぎ出す。

「知ってる。今日もぷにちゃん上がりだから、お尻からほぐして……」

オスカーの太い指が、ソフィーのエロ汁を纏ってお尻の穴をつつく。

「はぁぁっ!くにゅくにゅされてるぅ……」

ソフィーはしっかりオスカーの頬に両手を添えて、開いた口をオスカーの口に寄せる。

そして舌を絡める。

 

エロ汁を掬われて、お尻の穴をくにゅくにゅされて、ソフィーは身体を震わせながら舌を絡める。

息を混ぜる。

 

「お尻も、気持ちいいか?」

「うん……そろそろ入っちゃうよぉ……ちゅっくちゅっ……」

 

暖炉の前、オスカーはソフィーの左足を乗せた右足を近くの椅子に乗せて、指を深く入れる。

ソフィーは腰を前後に揺らし、ぴくぴくさせながらオスカーの頬にしがみつく。

荒くなった吐息をオスカーの口に吐く。

お尻の穴まで許したのは、ぷにちゃんが出て来てからで、綺麗だし気持ちいいし……

昔の子もやってたみたいで、ジュリオさんから習った。

 

オスカーとしては思いもしなかったけれど、こうして絡むのが癖になった。

……ちゅっ……ちゅくっ……

「あぁんっ……うぅぅんっ……あはぁ……はぁぁっ……」

……くちゅっ……くちゅっ……

「んっ!あっ!はぁぁっ……はぁぁっ……はぁぁっ……」

……ちゅくっ……ちゅぷっ……

ソフィーのハジケ声と、エロ汁の音だけが響く。

 

「エロ汁凄いな、ソフィー……オイラの手もトロットロだよ……」

涙目で恍惚とする表情のソフィーに、オスカーが言う。

長くこの体勢で弄り続けて、オスカーの指も2本入り、更に拡げるように動かす。

 

「あはぁぁ……だめっ……あふうぅぅっ!……これっ……本当ダメにっ!ひゅうぅぅんっ……なっ……ちゃうっ……よぉ……っ!」

散々ハジケた後、余韻に震えながら、ソフィーは腰を前後に揺らす。

オスカーのちんちんのトロトロを、ワレメとへそに塗りつけながら、弱音を吐く。

「オイラも、もうソフィーのお尻に入れてさ……ふにゃふにゃのソフィーを可愛がりたいんだよな……」

「んっ!……もう……ふにゃふにゃだよぉ……はぁぁっ……はぁぁっ……」

オスカーが、ソフィーを抱えながらベッドへと移動する。

そしてゆっくりと、ソフィーをベッドに寝かせる。

その時も、右手はお尻をくにゅくにゅし続けていて、ソフィーは身体を震わせる。

「可愛いなぁ……」

そんなソフィーを眺めて、オスカーはにんまりする。

そしておっぱいに顔を寄せた。

「ふぅぅ……んっ……おっぱいっ……えへへ……」

ソフィーは微笑みながら、おっぱいに顔を寄せたオスカーの頬をむにむにする。

「んあっ!はぁんっ!んあっ!ううぅぅ……ひゃんっ!ひゃんっ!」

オスカーの指が更にお尻の穴を拡げるように動き、ソフィーは顎を上げて鳴き上げる。

「このパターン好きだよな?ソフィー……そろそろ入れていくぞ?」

もう何度かしてるパターンで、オスカーはちんちんを構える。

「あう……はっ!……ちゅう……ちゅうして?」

涙で濡らすソフィーが、オスカーに微笑みかける。

オスカーはソフィーのお尻にちんちんを入れながら、ソフィーとキスをする。

ソフィーの手はオスカーの頬を捕まえて、オスカーはソフィーの乳首を捕まえて……

 

「んあぁぁ~っ!はあぁぁんっ!……くぅんっ!……はんっ!はぁんっ!」

キスが離れてソフィーが鳴き上げる。オスカーは動くのを止めて、ソフィーの頬を撫でる。ソフィーの身体がひくん、ひくん、と脈打っている。

「ソフィーの匂いでいっぱいだよ……オイラもクラクラしてる……」

ソフィーの髪を、耳を撫でて、顔を愛でるとソフィーは微笑む。

ソフィーもオスカーの頬を撫でる。

「うんっ……はぁぁっ……はぁぁっ……ハジケるの……止まんないよぉ……っ!」

ソフィーはハジケてるエロ顔を、オスカーに向ける。

声も、もう甘く誘うエロ声しか出てこない。

「こんなイヤらしいソフィーを見る度に、オイラもっとソフィーを好きになっていくよ」

オスカーは微笑み、ソフィーの唇を、髪を指で確かめて回る。

 

「えへへ……っ……あたしもっ……オスカー大好きっ……」

ソフィーもオスカーの顔を撫でるけれど、オスカーはちんちんは入れたまま、身体を起こす。

「おヒゲ、確かに長くなってるな……」

そしてソフィーのワレメを指でつんつんしながら、しみじみと言った。

「あっ!……今見るのだめっ!……はぁぁっ……ふあぁぁ……っ!」

ソフィーは途端に顔を真っ赤にして、手を游がせる。

身体もひくん、ひくん、と震えた。

「恥ずかしくてビクンビクンしたのか?」

オスカーはそんなソフィーの顔に目を移す。

「うん……っ!……今はっ、凄い事になってるもんっ!……絶対……」

ソフィーは力尽きてベッドに沈む。

 

オスカーはまた目を戻して、つんつんする。

 

「開いて、欲しがってるよ」

そしておヒゲをつまんだり……

「今は……もうふにゃふにゃだから……っ!だめだよぉ……」

ソフィーは両腕で顔を隠す。

「大丈夫さ。見て楽しむだけだから」

オスカーは意地悪く笑い、お腹を撫でてみたり。

「う~……っ!……はうぅぅ……」

身体を起こせないソフィーは、両腕で顔を隠したまま。

そしたらおっぱいを揉まれて、脇の下に指を立てられて……

小さく何度もハジケる。

 

「おヒゲも匂いも……ソフィーはすっかりエロ可愛くなったよなぁ……」

オスカーはソフィーの太ももを掴み、しっかり開かせる。

ソフィーは足をふらふらさせる。

「もぉ……っ!……はうぅぅ……っ!……ちゅう……ちゅうしてっ……っ!」

いよいよめちゃくちゃにされる予感に、ソフィーはキスをねだる。

まだ無防備に全部見られたくなくて、オスカーに手を伸ばす。

「なんで今日はこんなにチョロいんだい?いつももうちょっと頑張ってたりするじゃないか」

なんかいっぱいいっぱいのソフィーを眺めて、オスカーは唇を寄せる。

 

「わかんないよぉ……っ!……きゅんきゅんしてるんだもん……っ!……」

キスをしてうねうねして……

 

 

少し休んでから、今度はオスカーが仰向けになる。

お尻に入れる時はオスカーが上だけど、普通にする時はソフィーが上、というのがなんとなく決まっている。

お尻の時にソフィーが上だと、オスカーのお腹でひっくり返る、というのが理由。

 

「ビンビンだねぇ~……」

オスカーのちんちんを拭きながら、ソフィーが呟く。

お尻に入れたちんちんなのに、綺麗なもんだ。

……でも一応洗うのだけど。

「ソフィー、うんちとかしないのかい?」

オスカーも、拭かれてるちんちんを眺めて、呟く。

「ぷにちゃんが全部食べてるみたいだから、ぷにちゃんから出てくると、綺麗になってるって。旅先でも……最近してないよねぇ~……アトリエのトイレも使ってないもんねぇ~……」

元々、痩せてた頃も1週間に1回くらいしかトイレ使ってなかったけれど……

とかソフィーは思い出す。

おしっこなら、適当にどっかでしちゃってたなぁ……

とも思う。

「それが便利だよなぁ……」

オスカーは感心する。

 

「うんち産み落とす事、もう2年くらい?してないような……」

ソフィーは拭き終わったちんちんを、てのひらでぺたぺたしながら、トイレの思い出を考えてみる。

ダークマター時代が長いのだけど、もうそのくらい経つ……のだろうか?

「すげえなぁ……」

オスカーは呟く。

そしてソフィーのてのひらは、オスカーのお腹へと移る。

「言われてみると、凄いよね~……でもなんでそんな話になったの?」

オスカーのお腹をさわさわしながら、ソフィーは尋ねる。

「いや、ソフィーが少し冷静になるかな~って思ってさ。ハジケすぎるみたいだから」

オスカーは頭を沈めて、天井を眺めた。

 

「えへへ~……なるほどなるほど……あたしのお腹!」

ソフィーは笑顔で、オスカーのお腹をぽんぽんする。

「オイラのお腹だけどな」

ぽんぽんされて、オスカーは苦笑いする。

ソフィーは本当に、オスカーのほっぺたとお腹が大好きなのだ。

「今日も立派だよね~……ちゅっ」

髪の乱れたソフィーは、お腹に頬ずりして、キスをする。

「またおっぱいと勝負するか?」

オスカーは、お腹に取りつくソフィーに言う。

「えへへ~……とうっ!」

ソフィーはお腹におっぱいを押し付けてぐりぐりする。

そんな髪の乱れたソフィーを眺めて、オスカーは片方の眉を上げる。

「これ、どうしたら勝ちなのやら……」

 

オスカーは、お腹の上のソフィーに手を伸ばす。

「オスカーのお腹には勝てないよぉ……でもリラックスできたかも」

ソフィーも、オスカーの首に手を伸ばす。

「オイラも、ハジケさせておくれよ」

「えへへ、頑張るよ」

お互いの唇を寄せる。

 

キスをする。

……んにゅっ……んちゅっ……

……ぺろっ……

「えへへ……」

んちゅっ……

お互いが求め合って唇を合わせる。

「オスカーのちんちん、食べちゃうね?」

キスが離れて、ソフィーは微笑む。

「あんまチョロいのは勘弁してくれよ?」

オスカーはソフィーの頬にてのひらを当てて、ソフィーもオスカーの頬にてのひらを当てる。

「オスカーと、ずっとこうしたかったから……しょうがないんだよね?」

ソフィーはちょこっと舌を出す。

「入れて、動いちゃうぜ?」

オスカーはソフィーの身体を掴み、ちんちんを入れようと動かす。

ソフィーも少し腰を浮かしたりして、トロトロのワレメでちんちんを狙う。

 

「うん……んっ……エッチ……」

熱い塊が、ソフィーのワレメを押し拡げて、上手く頭を入れた。

ソフィーは目を閉じて、口を固く結ぶ。

「へへ……熱くてきゅんきゅんだな……」

ソフィーはオスカーの胸に手を置いて、更に入れるように力を入れる。

「オスカーの方がっ……熱いからっ!……はぁんっ……ぁんっ……」

ソフィーは身体を起こして、ちんちんを奥まで飲み込む。

「ソフィー……もうビクンビクンしてるぞ?」

オスカーの腰が動き、ちんちんがずりずりして、ソフィーは口を開く。

「だってぇ……っ!……オスカーっ!ギンギンなんだもん……っ!」

ソフィーも腰を動かして揺らして、ちんちんを締める。

「くぅぅっ……んっ!んっ!んっ!」

ソフィーもオスカーも、合わせて腰を動かす。

ソフィーはオスカーのお腹に手を置き直して、足を閉じるようにしたり、開くようにしたり……

「オイラもっ……」

「あっ!ぷくっ、てしたっ!」

「おおっ!……ふうぅぅ……」

「はぁぁぁ……っ!熱いの出てるっ!う~っ!ふ~っ!」

「オイラもチョロかったみたいだよ」

「そんくらいでいいよ……」

「ここからは、めちゃくちゃにしてやるからな?」

「えへへ……そうこなくちゃ……」

オスカーは身体を起こす。

 

 

「あーーーーーっ!あおぉっ!おぉぉっ!ほおぉぉっ!」

横向けに片足を掴まれて、ソフィーはオスカーにハジケさせられる。

上擦った声は叫びになって、頭をパチパチさせる。

オスカーもソフィーの身体を揉みしだき、トロトロのワレメで、ギンギンの終わらないちんちんを扱き、存分にハジケた。

 

 

「はうぅ……はぁんっ!……はぁんっ!……もうっ!……ぁんっ!……」

汗まみれ汁まみれのソフィーは、すっかり参ってオスカーに無防備に開いたワレメを晒し、身体をびくんびくんさせてベッドに沈む。

「ふうぅっ……本当に可愛いなぁ……ソフィー……」

散々ハジケ合った後で、オスカーはそんなソフィーの姿を愛でる。

太ももを掴んでおヒゲを撫でてみたり、おっぱいを愛でてみたり。

ソフィーはぴくんぴくんしながら、そんなオスカーに手を伸ばし、微笑みかける。

 

「めちゃくちゃに……されちゃったよぉ……ぁんっ……もおぉっ……」

「オイラも、ハジケまくっちゃったなぁ……」

オスカーはソフィーの唇に唇を寄せる。

「ケダモノだったよ……あたしもハジケ倒しちゃったもん……ちゅっ……」

「ソフィー、すげえ欲しがりでエロかったよ……今もすげえエロいもんな……」

「可愛い?」

「めちゃくちゃ可愛いよ」

「オスカーも、可愛いよ?」

「ありがとな……」

2人は身体を重ねて寄せ合って、眠りに落ちる。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[番人ぷにちゃん]
素材の味まで案内してくれる。
[ハダカ族]
服を着ていない状態。

[黄緑色のマナの柱]
プラフタから見たマナの柱の色。人形に使った命が幼い時はオレンジ色だったが、成長した事で黄緑色となった。

[マナの柱]
錬金術により作られた魔力の発生装置。人により見える色が違う。
[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエの地下にあるマナの柱。全ての条件が揃ったオリジナルのマナの柱なのだとか。

[カワニレの木]
ソフィーのアトリエの近くにある木。幼い頃からこの場所にある木でもある。

[ふわモフタオル]
ちょこっと調合品。もふもふモフコットの白バージョン。
[中和剤石鹸粉]
ちょこっと調合品。泡立ちと汚れ落ちを追及した最新バージョン。

[青キノコ]
甘~いキノコ。だけど食べると……
[ソフィー×オスカー]
ラブラブ絶好調!
[オスカーのお腹が大好き]
ゲームでは、痩せたらいいじゃんとか言ってる。
[ハジケる]
ビクンビクンする感じ。


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錬金術のアトリエ 41

錬金術のアトリエ 41

 

「もう、ぼちぼちシルヴァリアの完成なのではないですか?」

夜中の2時、コンテナから出てきたプラフタに、ソフィーは起こされる。

「おおっ……プラフタ!?」

事後ハダカ族のソフィーは身体を起こす。

オスカーも起きて、身体を起こした。

「マナの柱が、錬金釜の状況を心配して、私に知らせてくれたのです。寝過ごす勢いみたいでしたから」

プラフタはそう告げると、錬金釜へと向かう。

「なんか、プラフタは動じないんだなぁ……あれ?オイラが居るのにコンテナから出れたのかい?」

オスカーはハダカのまま、暖炉へと向かう。

 

「お忍びで開ける事は出来るみたいですので。今回は一大事だから、と。今はもう開きませんが。それと、私は本の頃から目の当たりにしていますので」

プラフタは錬金釜を眺めて、言う。

「えへへ……やばかったねぇ……」

 

ソフィーはそのまま肌襦袢を着て、錬金釜へと向かう。

「オスカーと充実して白熱するのは結構な事ですけれど、今後は気をつけて下さい」

「は~い。でも本当に助かったよぉ……」

汗とエロ汁で肌襦袢をぺたぺたさせながらも、ソフィーはシルヴァリアを完成させる。

オスカーは暖炉に向かって身体を洗い、服を着た。

 

 

「さて、旅はまた双葉の日だから……今回は時間があるな。ともかく、また農家さんの所で肥料研究してくるな」

服を着たオスカーは、アトリエを出ていく。

そんな朝3時。

「オスカーはオスカーで、やる事があるのですね」

プラフタはそそくさと出ていったオスカーを見送り、呟く。

「旅先の植物の予習と、八百屋の手伝い、今は土が痩せちゃってる農家さんの所で肥料の研究と……結構忙しいみたいなんだ」

 

そんなプラフタの後ろ姿に、ソフィーが説明する。

「ともかく、ソフィー。あなたもマナの柱の所で綺麗にした方が良いのではないですか?」

プラフタはソフィーを見て、言う。

何故かこのまま、次の調合計画を考えていた。

「えへへ……ちょっと眠りたいかも……一緒に行こ?」

ソフィーは乱れた頭を傾げて、プラフタに言う。

「……まあ、それはいいのですが……」

ソフィーに色目を使われて、ベッドの不思議毛布を持って、プラフタもコンテナへと付いて行く。

 

扉の前の棚に、ソフィーとオスカーの汚れがついた毛布を置く。

棚には奥行きも広いので、毛布を広げて置いて、尚余裕がある。

番人ぷにちゃん達が、毛布にも取りつく。

今や毛布も時間がかかるけど、汚れを食べ尽くせる。

「番人ぷにちゃんも可愛いよねぇ……」

ソフィーは肌襦袢も脱ぎつつ、番人ぷにちゃんの群れをつんつんする。

プラフタは服の構造が複雑で、脱ぐのには少し時間がかかる。

 

 

「……よく来た……残りは128時間だ……」

ぷにちゃんは口を開く。

「さっきの今で来てしまったので、あまり汚れてもいませんが……」

プラフタはそんな所を気にしながら、ぷにちゃんの中へと入る。

「プラフタのエロエロ儀式って、もう終わったのかな?」

ソフィーはプラフタに抱きつきながら思う。

そう思うと、その思いが響き渡ってプラフタにも伝わる。

「あ……つい先程……」

プラフタも思わず真面目に応える。

しかもソフィーとオスカーとのエロエロ再現で……

「あ、あはは、あたしとオスカーのエロエロ儀式の間、ホラ、ヒマヒマだもんね?」

ソフィーはプラフタを深く抱き締めて、頬を頬に寄せる。

「まあ……それもあるのですが……」

プラフタもそんなハグに応えて腕を回す。

もう既にきゅんきゅんしてて、落ち着かなく腰や足をうねうねさせる。

「それも?」

 

ソフィーは意地悪い所に食い付く。

「そんな所、気にしないで下さい!」

プラフタはソフィーを抱き締める力を入れて、照れをごまかした。

「えへへ……でもあたしね、プラフタとうねうねするよりも、オスカーの時の方がきゅんきゅんして、ふにゃふにゃになるんだよね……」

ソフィーは思う。

プラフタは、ソフィーに対してきゅんきゅんして、ソフィー程じゃないけどふにゃふにゃしてくる。

 

……好きって気持ちは、人によって違う……

そんな好奇心。

「それは知っています。ソフィーにとって2番でも、私にとっては、ソフィーが1番なのも。こうした気持ちは……不思議ですね」

でも、エロエロ儀式明けだからか、プラフタはそんなふにゃふにゃしてなかった。

 

「コルちゃんだと、ロジーさんにメロメロだけど、ハジケ合ってるあたしとかモニカは、そんなでもないもんね」

ソフィーはコルちゃんを思い浮かべる。

ロジーさんにだけ特別メロメロで、モニカがほわほわしてお母さんみたいで好き。

次にソフィーで、なんと妹みたいな気持ちで好き。

「そうですね。コルネリアは好きな人が多いのですが、その差が歴然でわかりやすいですね」

プラフタはくすっ、と笑う。

 

「えへへ……ともかく、プラフタとこうして眠るのも、しあわせなんだよねぇ……」

ソフィーはプラフタを抱き締めて目を閉じる。

「私も、まさかあなたとこうして抱き締めて眠れる、というのは幸せです……」

プラフタも目を閉じる。

……ソフィーは疲れていたのか、すぐに眠りに落ちた。

……でもプラフタは眠ったばかりで、眠れない……

「ソフィー……あなたは恋人のようでもあり、娘のようでもありますね……」

プラフタはソフィーを抱き締めて、目を閉じる。

 

「私は……女の身でありながら……女であるソフィーに恋をしているのでしょうか……」

プラフタは1人、呟く。

 

 

ぷにちゃんの中で、3時間程でソフィーは目を覚ました。

「おはようございます、ソフィー」

「おはよう、プラフタぁ~♪」

ソフィーはプラフタの頬に頬ずりする。

「ちょっと!どうしたのですか」

プラフタは慌てて、ソフィーから離れようとする。

「えへへ~……なんか起きたらプラフタが居るって、嬉しいんだよね~……」

すっかりピカピカのソフィーは、にへら~、と笑って見せる。

そんな笑顔に、プラフタはどきんとしたり。

「そ、それは……そんな事を言われてしまうと、私も嬉しいような……」

プラフタは思わず顔を綻ばせて、そう言って顔を逸らした。

 

 

そしてアトリエに戻る。

ソフィーは錬金コートをバッチリ着て、錬金釜へと向かう。

「さて、何を作ろうかなぁ……」

ソフィーは錬金釜の前で、図鑑を開く。

目新しい調合は、達人の錬金釜だけど、カテゴリ力が足らなくてあまりいい出来上がりにならない。

なのに24時間浸け置き……

なので、ひたすら後回しになっている。

「特性持ちを増やす錬金術になるのでしょうか?」

「む~ん……新しい錬金術をしたいよねぇ……よし!街にお出かけしようよ!」

ソフィーはパンッ、と手を叩く。

 

「ですが、まだ朝の3時……外は暗いみたいですけれど」

プラフタは窓を眺める。

「すぐに朝になるから平気だよ~。本屋さんで調べものもしたいんだよね」

ソフィーは杖を取りにうろうろして、錬金術士のトレードマーク、杖を持つ。

特に使う事は無いのだけど、外出の時は必ず持って行く。

「まあ、私も本屋には行きたいと思っていた所です。行きましょうか」

2人はアトリエを出る。

 

 

まだ暗いキルヘンベルを2人は歩く。

住宅街にさしかかると、モニカが家から出てくる所だった。

「あらソフィー、プラフタも……こんな時間にどうしたの?」

バッチリキッチリいつもの格好のモニカは、2人に尋ねる。

「あたし達は本屋で新しい錬金術を探そうと思って!それと、依頼品のお届けだよ。モニカこそ、まだ暗い時間だけど、何かあったの?」

輝く街灯の並ぶ住宅街の白い道を、そう話しながら歩く。

「私はいつもはこの時間に出て、剣術稽古してるわ。それと、教会へ行くのよ」

モニカはそう話す。

「ほえぇ~……」

そんなモニカにソフィーは感心する。

……さすがキルヘンベルの模範女子……

 

「ソフィーだって日がな1日、錬金術してるんじゃない?それに比べるとまだまだよ」

呆けているソフィーに、モニカはそう、付け加えた。

「モニカの上昇思考は見習うべき部分ですね。私も色々と考えさせられます」

プラフタは口許に手を置いて、そう呟く。

……そんな話をしながら、3人は教会へと向かい、ソフィーとプラフタはその先、旧市街へと向かう。

 

 

本屋の前に着いた時、まだ暗かった。

……さすがにアトリエを出るのが早すぎたのか。

「む~ん。でも、清々しい朝だね!お空がぼちぼち朝になる感じだし!」

旧市街の大木、オスカーの師匠の傍らで、ソフィーとプラフタは空を眺める。

「こうした時間の、こうした場所もいいものですね。味わいのある景色と言いましょうか」

プラフタは空を眺める。

ソフィーはふと、旧市街の街並みと師匠の大木を眺める。

「この木がね、オスカーの師匠なんだって。あたしとオスカーが出会った所が、この時間の、この場所だったなぁ……」

ソフィーはそんな昔を思い出す。昔って言ったって10年くらい前ってだけなんだけど。

 

 

………

痩せていた小さなソフィーは、色々と考えて、でも何を考えていいのか分からない頃、なんか落ち込んでた時に、ふらふらとキルヘンベルを歩いていて、この時間のこの場所でオスカーに出会った。

 

……この頃、オスカーは師匠の大木にご執心だったのだ。

 

それまでも、よく顔は見ていたし、アトリエ前によく出没していたのだけど、話すようになったキッカケはこの時間のこの場所……師匠の大木の前だった。

 

オスカーとしては、ちょうど色々とやりたい事があって、子分が欲しかった時だった。

そこに、ちょうど良く宙ぶらりんのソフィーが現れた訳だ。

それからは、オスカーと近くの森へ通う日々となった。

食べられる草とか花とか、芋とかを探す日々。

オスカーの子分ってだけで、周りからは一目置かれる感じになった。

いつからかモニカも加わると、冷やかす子供たちも近づけなくなって、いつからか子供達を引き連れて、キルヘンミルクスネークを追いかけるようになったんだ。

 

 

………

ソフィーはそんな話をプラフタにする。

6歳ぐらいからの付き合いで、恋人になったのは13歳くらいか。

「そんな頃からの付き合いだったのですか。オスカーは昔から変わらない、みたいな感じがしますけれど、やはり変わってないのでしょうか?」

プラフタはソフィーに尋ねる。

「ん~……昔は口うるさかったような気がするなぁ……それであんまり友達も居なかった感じだし、人より植物の方が大事だったからなぁ……」

ソフィーはそう話す。

でも、オスカーのおかげで元気になれたし、錬金術は出来なくても、蛇とか捕まえる為に杖を振っていたし……

そんな昔話をしていると、プラフタが頭を押さえた。

 

「あうっ……!これは……っ!」

「プラフタ!?どうしたのプラフタ!?」

しゃがみ込んだプラフタに、ソフィーが寄り添う。

しばらくプラフタは呼吸だけをしていて、ソフィーはそれを見守る。

「私の……昔の記憶……何かを守る為に……何かと戦っていました……思い出したくない記憶が……今……」

プラフタはよろよろと立ち上がり、ソフィーが身体を押さえる。

「大丈夫?プラフタ……?」

「もう少ししたら、大丈夫になりそうですが……何という記憶が……」

それからは、あまり話さずに師匠の大木の所に座って過ごす。

朝焼けが来て、エリーゼお姉ちゃんが通りかかった。

 

「あっ!朝帰り!」

ソフィーは立ち上がり、プラフタはずっこける。

「も~!何だってこんな時間に居るの!?」

エリーゼお姉ちゃんは顔を真っ赤にして驚き、本屋に逃げて行った。

「プラフタ!これは……放っておけないよ!」

「あなたも、昨日はお楽しみだったのですけれど……」

ソフィーは本屋へと行くものの、鍵がかかっていた。

「うぬぬ……ここで待つしかないっ!」

 

ソフィーは座り込む。

そこに小説好きな女の子ソフィーダちゃんと、ちょっとオトナなお姉さん、アナミさんが出勤してきた。

「あれ~?ソフィーじゃん!どうしたの?」

ソフィーダちゃんは、カン高い声で尋ねる。

「実はね……エリーゼお姉ちゃんが朝帰りしてきてね……」

ソフィーは素早く立ち上がると、ソフィーダちゃんに寄り添い、そう説明した。

「ソフィー!こんな女の子にあなた!」

そんなソフィーに、プラフタは慌てて突っ込みを入れる。

「人形のおじちゃんでしょ?知ってるよ!それに昨日は本屋の閉店から、2人一緒におじちゃんの家に行ってたもん!」

ソフィーダちゃんは、事も無げに話す。

 

「まあ……おかげで私達も、堂々と恋の話も出来るようになりましたから……人形のおじさまには感謝なのですけれど」

アナミさんも、そう話した。

 

それからも話は弾む。

どうやらエリーゼお姉ちゃんが、フリッツさんとイイ感じになってからというもの、ソフィーダちゃんもアナミさんも、彼氏を本屋に呼んだり、そういう話も出来たり、イイ感じなのだとか。

少し遅く開いた本屋に入り、錬金術関係の本を探す。

プラフタは何か夢中になる本があったみたいだけど、ソフィーは特にそういう事もなく、プラフタを置いてカフェに依頼品を渡しに行く事にした。

 

 

途中、コルちゃん露店を通る。

そこにロジーさんも居たり。

「おはよう!ロジーさんも露店のお手伝いですか?」

ソフィーは能天気に声を掛ける。

「ソフィーか。今、露店の受けた注文を鍛冶屋に持って帰る所だよ。露店の手伝いする程暇だったら、いいんだけどな」

ロジーさんは注文書きのメモに落としていた顔を上げる。

「そんなに暇だったら、不安になって情緒不安定になってしまうのです」

コルちゃんが苦笑いしながら、そう話した。

「ま、まあ……そうかな。剣を打つ需要が無い日々って事だもんな」

ロジーさんは頭を掻く。

「それよりもこの度、地底湖の噂を聞いているのです。危険な魔物と、良質な鉱石が眠る……ジュリオさんモニカさんも納得の場所を!」

コルちゃんがテンションを上げる。

「おお~!これは新しい錬金術の予感もビンビンだね!」

ソフィーもテンションを上げる。

原っぱ遺跡のミニデーモン、セイバークロウの戦闘も危なげなく突破していたし、新天地大歓迎だ。

「あまり油断しないようにな。ソフィー、コルネリア」

ロジーさんはそう言うと、鍛冶屋へと帰って行った。

 

「確かに。まずは無事に帰らないとだから……妖精の道標の回数は確認しておこうかな……」

ソフィーは腕組みをして考えて、そう閃いた。

「それは、凄く大事な所です」

コルちゃんも納得する。

「それ以上は皆で相談だね!取り敢えず依頼品を渡しにも行かないと……」

ソフィーは手をひらひらさせて、コルちゃんと別れる。

 

 

そして八百屋にてマルグリットさんと立ち話をして、依頼品を渡しにカフェへ。

なんかホルストさんは忙しそうで、すぐにカフェを出る。

レオンさんの仕立て屋さんの前を通ると、レオンさんから手招きをされた。

「おはようございます。どうしました?」

そのにこやかなお誘いに、ソフィーはホイホイとレオンさんの所へ行く。

 

「どう?ここの新作達は。ソフィー、あなたならどれがお気に入りかしら?」

「う~……あたしはこの服がお気に入りだから!」

ソフィーはその服たちに背中を向ける。

「頑ななのねぇ……」

「あたしがそういう服を着たら……なんか錬金術が使えなくなっちゃいそうで……」

ソフィーは背中を向けたまま、そう呟く。

「なるほどねぇ~……でもでも、普通の女の子としては、どれがお好み?アタシが錬金術士風に仕立てて上げようかって思ったのよ。結構ずっとその服でしょ?」

レオンが言うと、ソフィーは振り返る。

「うぐぐ……変なこだわりでしょうか……」

「変なこだわりこそが、服なのよ!変なこだわりがあればあるほど、服にうるさいのよ。アタシは、そんな服にうるさい変なこだわりのある人にこそ、服を作る職人なのよ?」

レオンさんはそう話す。

 

「確かに……」

「あなたは青が好きなのかしら?何となく、その色じゃないように思うのよね」

レオンさんはにやけ顔でソフィーを眺める。

「……これかな……」

ソフィーは鮮やかな黄色い服を指差す。

「いい趣味だわ!やっぱりこういう色よね!でもこの服のデザインは、ソフィー向きじゃないわねぇ」

レオンさんはそう言うと、ソフィーをじろじろ見る。

「プラフタみたいな露出は……さすがに……」

じろじろ見られて、ソフィーは照れ笑いする。

「あれは必要みたいだからそうしたまでよ。さすがにあそこまでの露出は……この地域ではちょっと目立ち過ぎるわよね」

レオンさんは顎に指を置いて、少し考えながら話す。

「ですよね~……でもそう考えると、あれは上手く出来てますよね」

「でしょ?かなり悩んだんだから!あら、いらっしゃい」

そう話した所でお客さんが来て、ソフィーは退散する。

 

 

「プラフタはまだ本に夢中かなぁ……」

ソフィーは旧市街へと向かう。

少し雨が降ってきて、急ぎ足で本屋へ。

……そして本屋に着くと、雷雨になっていた。

「うひゃあぁ……危なかった~……」

ソフィーは本屋に入り、ため息をつく。

「あらまぁ、外は雨みたいねぇ……」

エリーゼお姉ちゃんは、ふわモフタオルを持って来て、ソフィーの頭を拭きに来た。

お客さんは、プラフタしか居ない本屋さん。

「でも雷が鳴る前にはここに到着したから、そんな濡れてないでしょ?」

 

エリーゼお姉ちゃんに拭かれながら、ソフィーはにへへ、と笑う。

「これはこれは……」

そこにフリッツさんが入って来た。

「あらまあ……こちらはずぶ濡れで」

エリーゼお姉ちゃんが驚きの声を上げた。

「ふわモフタオル、まだある?」

「あるわよ。本は水を嫌うから、沢山用意したのよ」

エリーゼお姉ちゃんはカウンターの方へと行き、プラフタは1冊の本を手にフリッツさんとソフィーの所へと、歩み寄る。

「フリッツ、この本のこの記述なのですが……」

プラフタはフリッツさんと難しい話を始めて、ソフィーはエリーゼお姉ちゃんと一緒に、フリッツさんを拭く。

 

なんか、コールリングで離れた何かを動かす話をしていた。

ソフィーも、邪魔をしないように聞くだけ聞いていたけれど、何の話かはよく分からなかった。

フリッツさんは自分の調べ物をしていて、プラフタはまだその本を眺めている。

本を読んでる……

というよりは、本を手に何か考え事をしているような……

 

 

ソフィーは雷雨が続く音を聞きながら、端っこに座っているだけだったり。

「ソフィー!私も作って欲しい物が出来ました!」

そんなソフィーの所に、プラフタが来た。

「おお~!どしゃ降りだけど、帰る?」

ソフィーは立ち上がる。

どしゃ降りの中を出歩くのは、全然気にならない系女子だ。

プラフタが嫌がると思って、本屋さんに留まっていただけだったし。

「どしゃ降りだけど、帰りましょう。雨も克服しなくてはいけませんから」

プラフタはくすっ、と笑ってエリーゼお姉ちゃんに振り返ると、手をひらひらさせてドアを出る。

むしろソフィーが追いかけて行く。

 

 

雨のキルヘンベル。

ソフィーとプラフタは、アトリエに帰る。

「雷雨バリバリだよぉ~……」

ずぶ濡れソフィーとプラフタは、アトリエのドアに鍵を入れて、ドアを開ける。

雨の滴るプラフタの手に、ソフィーはやたらと目を奪われた。

「暖炉の側で乾かさないと、ですね」

「このままぷにちゃんの所で喜ばれるよ。新鮮な雨水も好物だから」

「では……」

ソフィーとプラフタはそのままドアに鍵をしてコンテナへと入り、ぷにちゃんの部屋の扉の前で服を脱ぐ。

相変わらず棚の番人達が集まると、細いぴょこんをぴょこぴょこして服をねだる。

番人ぷにちゃん達が、脱ぎ辛いプラフタの服に飛び乗り、留め具を外すと棚へとジャンプする。

「そ、そんな技まで……」

ソフィーはそんな番人達に驚く。

番人ぷにちゃん達は、戻った棚でわっしょいわっしょいしてる。

 

 

「残り128時間だね。時間を止めるのがお望みみたいだから、止めてるよ」

ぷにちゃんの部屋に入ると、ぷにちゃんは口を開ける。

「そうそう、需要な事なんだけど、私もおじいちゃんの人格に会えたんだよ。今までで1番マナの柱の力が強くなってるんだね」

ぷにちゃんはそう言って笑う。

「へえぇ~♪やっぱり知ってる人だったりしたの?」

ソフィーが尋ねる。

なんか、知ってる人だった的な思いも伝わって来たけれど。

「うん♪知ってる人だね。でも、どう知ってる人なのかは、記憶に辿り着けないんだよね」

ぷにちゃんはそう話す。

記憶に辿り着けないと言うけれど、そんな事はあまり気にならないみたいにあっけらかんとしていて、なんか上機嫌だ。

「記憶に辿り着けない?」

プラフタが尋ねる。

 

「そう。記憶があるのは解るんだけど、その記憶には辿り着けないんだよね。何かの細工をされているみたいで。まあ、それよりも何か……強くなりたいオーラが凄いね♪」

そんなプラフタに、ぷにちゃんは応える。

しかも辿り着けない記憶にはあまり興味ないのか、プラフタのやる気を刺激してきた。

「そうなの!?それで苦手な雨も突き抜けてアトリエに帰って来たんだ~」

ソフィーはプラフタを見る。

「まあ、そういう事ですね。それに私の武器にも心当たりがありまして……」

プラフタは伏し目がちに答える。

そこからは、新しい錬金術のイメージも伝わって来た。

 

「……!?何か、チョー難しい調合イメージ来たけど、なんじゃこりゃあぁ~……」

ソフィーは頭を抱えて苦しむ。

「……落ち着いて理解出来るように、ちゃんと紙に書きますから……」

プラフタは苦笑いしながら、ソフィーを眺める。

「と、ともかくちょっとシルヴァリアの調合をしてから、またまったりしに来ようかな」

「シルヴァリアの調合は、特性などは必要ありませんが、ともかく品質高めでお願いします。品質を犠牲にして形にする事になりそうです」

ソフィーはアトリエに向かい、プラフタはぷにちゃんの中で瞑想する。

 

 

ソフィーはハダカ族のまま、シルヴァリアを仕込んでいると、コンテナからプラフタが出てきた。

ぷにちゃんの部屋に残ったプラフタは、時間が止まった世界で8時間程、ゆっくりじっくり構想を練って、それから服を着て、アトリエに戻って来たのだけど……

ソフィーは錬金釜の中に配置を決めて、1つため息をついた。

「ふう……これで、よし!……あれ?」

ハダカ族のまま、錬金釜にシルヴァリアを仕込み終えたソフィーが、コンテナに戻ろうとベッドの方を見ると、そこには呆れ顔のプラフタがソフィーを見ていた。

 

「ソフィー……あなたと言う人は!」

「わぁお!ちょっとタンマ!すぐに戻ろうと思っただけだって!」

「だとしても!肌襦袢を着ればいいじゃありませんか!」

アトリエのドタバタが始まる。

 

そしてひとしきりドタバタして、雷雨も止んだ頃、ソフィーとプラフタはレシピ構築を始める。

シルヴァリア完成までは9時間………

 

 

ヘクセ・アウリスと名前のあるそれは、腕輪と連動して動く巨大な腕。

駆動機兵という、錬金術が作り出す機械であり、腕は消えたり現れたり出来る。

そして更に成長する腕なのだ。

なので形にさえなれば、自ずと時間を掛けて魔力を補充し、完成品となる。

「うへえぇ……これは厳しいよぉ……でもなんとか形には出来そう……かな」

「ソフィー、あなたの作るシルヴァリアの品質はズバ抜けていますからね。錬金術レベルが足りないのは承知の上で、挑戦して貰えると助かります」

「まあ、失敗しても素材を失うだけだから、全然やるけどね!それにこういうハードな錬金術、したかったし!」

そんな事を話していると、ソフィーのお腹が鳴った。

「ん~……お昼だね」

「もう14時ですが……食事は大事ですね」

 

そう話していると、コルちゃんがやって来た。

「こんにちは~……今日もぷにちゃんを頼りに来ました」

「コルちゃんいらっしゃ~い。今からお昼なんだよぉ~」

ソフィーはプラフタと煮物を作っている。

「ソフィーさんは今日も、食事を忘れるくらい錬金術に夢中なのですね。頼もしいです」

コルちゃんはネコの目で笑って、口許を隠すいつものポーズで言う。

「まあね~♪今回の調合から、ちょこっと調合の方もだいぶ凄い事になりそうなんだよね!」

ソフィーも笑う。

けれど頭からは、知恵熱から来る煙が出ている。

「くれぐれも無理はなさらぬように」

コルちゃんはその煙を見て言うと、コンテナの中へと入って行って……

5分くらいで出てくると、帰って行った。

 

 

それからも錬金術生活は続く。

ヘクセ・アウリスのレシピ構築にはやたらと時間がかかり、開花の日、10時に仕込んだシルヴァリアは19時に仕上がったものの……

 

 

翌日、果実の日、朝の9時にヘクセ・アウリスのレシピはようやくまとまった。

それからヘクセ・アウリスの作成!漬け置き24時間!

「決まった……!後は祈るだけ!」

配置完了後に、頭から煙を出しているソフィーは、くるくるふらふらとベッドに移動すると、ベッドに倒れた。

「お疲れさまです。暖炉の所なら、井戸水で頭を冷やせますよ」

「ぷにちゃんの所で冷やすのが……いい!」

ソフィーとプラフタは、ぷにちゃんの部屋で休む事にした。

 

 

「人が来るねぇ……」

アトリエに向かう山を登る人を察知して、ぷにちゃんが教えてくれた。そんなお昼過ぎ。

「お腹も減ってきたし、アトリエに移動しなきゃ!」

プラフタに甘えながら頭を冷やしていたソフィーは、すっかり元気になってぷにちゃんの部屋を出る。

プラフタも後に続いた。

「ああ~!釜が泡立ってる!」

いつになく、しゅわしゅわ感のある錬金釜を見て、ソフィーは慌てて言い出した。

「品質を落としながらの調合だと、こうした感じになりますよ。ソフィー、あなたの錬金術だとこういう事は初めてでしょうけれども」

プラフタは落ち着いて錬金釜を見る。

しゅわしゅわ感はあまりに弱く、成功出来るパターンだと思いながら。

 

「う~……ドキドキするよぉ……」

ソフィーは錬金釜を見守る。

そんなアトリエにやって来たのは、オスカーとコルちゃんだった。

「こんにちはです。ぷにちゃんを頼りに来ましたので、オスカーさんは外ですが」

プラフタがお出迎えして、コルちゃんが入って来た。

ソフィーは、錬金釜にしがみついて見守っている。

「……?どうかしたんです?」

コルちゃんはそんなソフィーを見て、プラフタに尋ねる。

「いつになく難しい調合でして……ピンチでもないのですが、気になる展開でして……」

プラフタが答えると、コルちゃんは首を傾げつつも、コンテナへと入って行く。

そして5分程で出て来て、オスカーと入れ替わる。

コルちゃんは帰って行った。

 

「いよう。昨日の雨で農家さんの栄養剤も行き渡ったみたいでさ……今日はゆっくり出来そうなんだよ……って……」

入れ替わりで入って来たオスカーは、そう言いながら、のしのしとアトリエに入って来て……

錬金釜にしがみついているソフィーと目が合った。

 

「今、なんか危なっかしい調合が成功するようにね、祈ってる所なんだ……」

「そうか……でも危なっかしい感じはしないけどな。ダークマターのアトリエの頃にさ、色んな失敗パターン見てきたけれどな」

オスカーは暖炉の側のテーブルに手を置いて、そう話す。

「ほう。オスカーはその頃に詳しいのですか?」

そんな話にプラフタが食いついた。

「そうだなぁ……」

オスカーはダークマターのアトリエの頃の話をする。

ソフィー以上に、やたら詳しかった。

 

 

……そんな話に花を咲かせて、まったりと過ごして……

オスカーはお茶受けのクッキーまで焼いてくれて……

夕方になる。

完成は明日、種の日の朝だ。

 

「オスカーはソフィーとエロエロしに来たのではないのですか?」

何かの話の調子に、プラフタがそう尋ねた。

「昨日、したばっかりだからなぁ……でもこうしてのんびりしてるのも、贅沢な時間だろ?錬金釜にしがみついてるソフィーも、なんか懐かしい感じするよ。そういうのも、いいんだよなぁ……」

オスカーは、いつものおとぼけボイスでそう話す。

 

……暖炉のテーブルでうとうとしたりするオスカー……

 

……錬金釜にしがみついたまま、うとうとしたりするソフィー……

 

プラフタは、そんな2人を眺めたりしながら、アトリエの本を読み進めていたり。

そんなまったりのんびりな夜は更けて行く。

 

 

「じゃ、教会で皆に伝えておくよ」

朝になり、オスカーはアトリエから教会に向かう。

ソフィーとプラフタは錬金釜に張り付いている。

そろそろヘクセ・アウリスの完成だ。

「うん、上手く行ったら今度の旅はプラフタも行けるかもだよ!」

胸の前で指を絡めて、ソフィーはオスカーを見送る。

結局錬金釜にひたすらしがみついて、朝になった。

 

「行けるといいよな。でもあまり急ぎすぎは……そこらへんはジュリオさんとか、フリッツさんに任せるけどな」

オスカーはひょい、と片手を上げて歩き出す。

 

 

「よし!出来た!……なんか溶けかけてる感じだけど……」

朝の9時。ヘクセ・アウリスを取り出す。

銀の両腕は溶けかけていて、それでも一応、形にはなった……のか。

「まあ、これもマナの柱仕上げで、形になるのかと。そういう話もしてありますので」

プラフタは落ち着いてヘクセ・アウリスの片方を持つ。

ソフィーも片方と、腕輪を持つ。

「なるほど!プラフタもぷにちゃんの仕上げ前は、顔とか髪とかちょっと怖かったもんね」

「あまりしっかり見てないのですが、そうだった気もしますね」

そんな話をしつつ、ぷにちゃんの部屋へ。

 

 

「話していた武器が出来たんだね♪あと、残り115時間あるよ」

ぷにちゃんの部屋の扉の前、番人ぷにちゃん達が、ぴょこんをぴょこぴょこしながらそう言った。

「結構残念な出来上がりなんだけどね」

服を脱ぎながら、ソフィーが話す。

「それでも、ヘクセ・アウリスを形に出来るなど、目覚ましい成長をしているのですね。頼れる錬金術士になったものです」

プラフタも服を脱ぎ、番人ぷにちゃんに渡しながら話す。

「ともかく、仕上げも含めてお任せあれ♪」

今回もぷにちゃんは上機嫌だ。

 

 

ヘクセ・アウリスを持って部屋に入ると、ぷにちゃんは口を開ける。

どんどん大きくなって、また更に大きくなっているような……

「今回のエロエロ儀式で、プラフタの能力も完成するよ。旅に行く野望も、これで叶っちゃうね」

「ええ!?あたしの時は1ヶ月以上かかってたけど……プラフタ凄い!」

「マナの柱の力が、あの時よりも解放されてるからね。それに慎重にならないといけない能力も無かったし」

「む~……ともかく、エロエロ儀式で凄い力、ゲットなんだね!ここは気合い入れて……」

「……1つ、お願いしましょうか……」

プラフタも乗り気だった。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[事後ハダカ族]
ハダカ族の更に上位版。
[マナの柱]
魔力の発生源。色んな事が出来る。
[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエの地下にあるマナの柱。
[番人ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエ、コンテナの番人達。汚れを食べまくっているので、コンテナの中はピッカピカ。

[エロエロ儀式]
マナの柱できゅんきゅんしてビクンビクンすると、魔力の器を得る事が出来る。

[師匠の大木]
旧市街、本屋のほど近くにある大木。オスカーが色々な事を教わった、物知りな木。

[ソフィーダちゃん]
本屋の店員さん。小説好きで若い。
[アナミさん]
本屋の店員さん。魔物に詳しいお姉さん。
[ふわモフタオル]
ちょこっと調合品。ふわふわモフコットの白バージョン。

[ハダカ族]
服を脱いだ状態。誰もが、服を脱いだらハダカ族。

[ダークマターのアトリエ]
錬金術の力を得たソフィーが、方法はないまんま錬金術をしまくった時期。ダークマターしか出来上がらなかった、釜爆発の日々。


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錬金術のアトリエ 42

錬金術のアトリエ 42

 

気合い入れてエロエロ儀式……

それは5時間程じっくりゆっくりまったり……

 

ヘクセ・アウリスも最適化され、完成形となってプラフタの腕輪と連動して、消えた。

 

 

2人がアトリエに戻っても、まだ朝の9時……

「お腹減ったあぁぁ……」

ソフィーは座り込む。

朝食も食べずに、頑張り尽くしてしまった。

「私も、マナの柱の中では空腹感がありました。食事をしてから、ヘクセ・アウリスの試運転をしてみるとしましょうか」

プラフタは微笑んで言う。

 

 

特性を増やすべく調合して、食事をして……

漬け置きの時間にアトリエの外に出る。

「駆動機兵……ワクワクするね!」

ソフィーは呑気に言い、プラフタは試運転に入る。

ぷにちゃんの部屋で最適化されたから、溶けかけだった両腕も格好良くなった。

「では……」

プラフタは浮き上がり、あの付箋だらけの錬金図鑑を片手に、巨大な両腕を呼び出す。

1つの腕が、プラフタ本人くらいでかい!

「でっかくなってる!」

驚くソフィー。

巨大な腕をふわふわさせて、わきわきさせるプラフタ。操作も万全みたいで。

「これで私も、戦えそうですね」

そう言って、プラフタと腕がひゅっ、と消えると、すぐ側にぱっ、と現れる。

でかいのに速い。

「でもHPMPLPバリアとかは、大丈夫なの?」

ソフィーは尋ねる。

見るからに大丈夫そうだけれども。

「マナの柱の話では、ソフィーよりも厚い感じですね。ジュリオといい勝負なのかと」

 

ほんのわずか宙に浮いたまま、プラフタはガードしてみたり腕を前に伸ばしてみたりする。

「うひょおぉ……強いんだね……強そうにしか見えないけれど」

ふわっ、と移動したり、踏み込みワープしたりするプラフタを目で追いかけ、ソフィーは感心する。

「私も、こんな駆動機兵を編み出した頃も、作り出した頃も……操っていた頃もあったのでしょう。その全ての記憶がありませんけれど、使い方だけは魂が覚えていた、みたいですね」

プラフタは消えて、ソフィーの頭上近くに現れると、ソフィーの目の前にゆっくりと降って来る。

「む~ん……それで色々な採取場所を覚えていたんだね~……」

ソフィーも考えるポーズを取ると、そう呟く。

「そうした採取場所も、ひょっとしたら懐かしい風景なのかも知れませんね」

プラフタは伏し目がちにそう言って、両腕を消すと、ゆっくりと地面に着地した。

 

「明日は確か~……地底湖に行くって言ってたなぁ……新しい鉱石が発見できるかもだけど、強い魔物も出て来そうなんだけど……プラフタなら大丈夫そうだね!」

ソフィーは能天気にそう話す。

ともあれ、明日皆に相談、というのは変わらないけれど。

 

 

錬金術生活をして、試運転をして……

錬金術生活をして、試運転をして……

種の日も終わる。

この日は珍しく、種の日のキルヘンベルをふらふらしなかった。

 

 

コンコン……

朝の4時。アトリエに誰か来た。

ソフィーとプラフタは、ぷにちゃんから聞いてアトリエに戻っていて、妖精の道標を仕込んだ錬金釜の所に居た。

 

「は~い」

ソフィーがドアを開ける。

そこには大荷物のレオンさんが居た。

「もう起きてるなんて、やる気溢れる錬金術士って話は本当なのね。上がってもいいかしら?」

レオンさんはウィンクして挨拶する。

「えへへ~……どうぞどうぞ。今、妖精の道標を仕込んで待ってる時間なんで」

ソフィーはレオンさんを迎え入れる。

「遂にあなたの服が完成したのよ!それで大急ぎで着せてしまおうと思ってね!錬金術士としても、新しい感じよ!あなたもきっと気に入るわ!」

遂に着せ替えおばさんが、アトリエまで攻めてきた。

ソフィーはそんな顔をして後ずさりする。

 

「うへぇ……」

そしてソフィーは変な音を出しながら逃げる。

アトリエの中で、逃げる所もないのだけれど。

「ふむ……確かに少しソフィーの服は、着られてる感もありますし、新しい服、というのもいいと思いますね」

プラフタもレオンも、そんなソフィーににじり寄る。

 

「へっへっへっ……大人しくしなさいソフィーちゃん」

両手をわきわきさせて、怪しい笑いのレオンさん。

「ここはひとつ、しばらく目を閉じていて下さい」

プラフタもどうやらレオンさんの味方のようだ。

 

「うきゃ~!ちょっとご無体な!」

2人に捕まり、服を脱がされるソフィー。

「ちょっと!いつも水浴びとか温泉とかで、躊躇わず脱いでるじゃない!あなたとコル助は!」

「あなたという人は、外でもそんな感じなのですか!」

なんか怒られながら、着替えさせられるソフィー。

 

 

「おお~!これは……オシャレ!」

アトリエの鏡に映る新しい服に、ソフィーはテンションを上げる。

「なんだか、豪華で明るく、可愛い仕上がりですね!」

プラフタも大絶賛、凄く明るい笑顔でソフィーを見る。

「帽子と髪止めも追加で、更にオシャレになるのよ!も~!完璧!想像以上に明るく可愛くなってるわよ!」

「でもこれで旅に行くのはなんか……気が引けるかなぁ……」

「何言ってるの!動きやすさ、丈夫さもバッチリ!旅にも行ける服なのよ!」

着替える空気でもなし、ソフィーとしても、もうこのままで全然いいや状態で、アトリエを出る事になった。

 

 

「へぇ~……いいね!」

「これは私も負けられないわ!」

噴水広場で、ジュリオさんとモニカに会う。

ソフィーの新しい服は、とても評判がいいみたいで。

「も~……この子ったら、捕まえて全部脱がさないと、新しい服にならないんだから。世話が焼けるわ」

レオンさんに言われながら、カフェに向かう。

 

 

「へぇ~……キルヘンベルの看板娘も、遂に模様替えかぁ!プラフタもレオンさんのデザインだから、2人並んだ姿も、眩しいくらいだな!オイラもびっくりだよ!」

オスカーも青い三白眼を見開いて、褒めてくれた。

「この半ズボンがこう……男の子っぽい所もあるソフィーさんにバッチリです!」

コルちゃんは、よく分からない褒め方をしてくれた。

「えへへ~……何だか気恥ずかしいね。嬉し恥ずかしな感じ」

ソフィーは顔を緩ませながら、照れ笑いをする。

「いやあ、さすがレオンですね!ソフィーをこれほど眩しく見る日が来ようとは……いやいや、参りました!テスの制服も新調しようかと考えてしまいますね!」

ホルストさんも大絶賛だ。

「あら、酒場のマスターが新調してもいいのよ?テスも喜ぶんじゃないかしら?」

賑やかなカフェ。

今日は地底湖に向かう、との事だから、メーベルト農場経由。

ブレスト、マレフ、ロザリの馬車の出発に合わせる感じの出発計画。

のんびり過ごす時間があったりするので、プラフタも今回の旅の打ち合わせを、じっくりゆっくりしていた。

 

 

「では、出発~!」

意気揚々、ブレストとマレフ、ロザリも一緒にキルヘンベルを出る。

「新しい服、ロザリもお気に入りみたい!すっごく仲良しになれたぁ!」

ロザリに頭を甘噛みされながら、ソフィーは大喜びしつつ、旅が始まる。

ブレストにはコルちゃんが乗り、マレフの隣にはレオンさんとプラフタが歩く。

「お嬢ちゃん達は、凄い冒険者パーティーだって話だけんど、相変わらずブレスト達が大好きだんなぁ」

馬車のおじさん達はそう言って笑う。

「お馬さんは……なんか素敵です!」

ブレストに跨がるコルちゃんが、楽しそうな笑顔で振り返る。

 

 

馬車はゆっくりゆったりと進む。

コルちゃんは、ブレストの首にしがみつくようにして眠り、顔がたてがみに埋まっている。

「コルネリアは、いつもこうなのですか?」

プラフタは隣のレオンさんに尋ねる。

「まあ、そうね。ブレストの鐙も上手く出来てるのよね」

レオンさんが答える。

のどかな旅の道。

ソフィーもロザリと一緒に歩く。

 

 

メーベルト農場で馬車と別れて、ソフィー達は北へと向かう。

「せっかく新しい衣装なのに、ロザリの匂いが凄いなぁ……ソフィー」

オスカーが片眉を上げて、苦笑いしながら言った。

「う~……完全にそれを忘れてたけど……どうせ汗臭くなるから、まあいっか……温泉もあるし!」

ソフィーは自分の匂いを嗅ぎ、苦笑いする。

「ソフィーは馬が大好きだけど、べろべろ舐められていたし、甘噛みされていたからね。特に髪が匂うのかな」

錬金荷車2号を引いてるジュリオさんも、苦笑いだ。

 

「ここらにも泉はあっただろう。水でもぶっかけとくか。俺も念のための酔い覚ましに、付き合うぞ」

今回、ハロルさんは二日酔いみたいで、錬金荷車2号で寝ていたんだけど、でも夕方くらいには復活した。

そのハロルさんが言う。

「そうね。荷車にふわモフ毛布あるから、行っておこうかしら」

レオンさんが言って、一行は泉へ。

そしてから北へ、三つ子橋の泉へと向かう。

 

 

「三つ子橋の泉から、山師の水辺に行くなら、朝凪のほとり温泉だね!」

錬金荷車の1階、疲れの感覚もないから、と大事にされたプラフタにソフィーが話す。

「お猿さん、居るでしょうか……」

ソフィーの隣を歩くコルちゃんが呟く。

「温泉ですか……どんな所なのですか?」

プラフタがそう聞いた。

「臭い所だな……」

荷車を引くハロルさんが答える。

「そうだな。だがその臭いもまた、元気になれるような……年寄りにもいい場所だな」

荷車の隣を歩くフリッツさんも答える。

「元気になれる臭い所……ふむ……」

プラフタは考えるポーズを取る。

 

 

「さて!温泉です!」

もうすっかり夜。

しかも雨……

温泉洞窟に到着して、コルちゃんは相変わらず素早く服を脱ぐ。

そして水着を着ると、温泉へと向かった。

「……もしや……」

ソフィーはフリッツさんを警戒する。

「そんな毎回、婦女子を咎めていては、あらぬ噂も広がりそうなのでな」

フリッツさんは、壁の苔に挨拶するオスカーの場所へと行く。

「さっさと着替えて入ってしまえ……」

ハロルさんも、ついて行く。

そこに温泉洞窟のカラスがやって来た。

何故かハロルさんに、やたら懐いているカラス。

レオンさんとモニカも、ゆっくり着替えて、温泉へと入る。

「プラフタはいいのかい?」

錬金荷車2号の引き手の所に居るプラフタに、ジュリオさんが声を掛ける。

男衆も水着に着替えていた。

「私には感覚がありませんので。次の機会には、水着も用意しておこうかと思いますけれど、気にせずゆっくりして来て下さい」

 

 

……そして思い思いに過ごす温泉の時間……

プラフタは温泉に浸かるソフィーを眺める。

どこからともなく現れた、お猿達が合流していた。

「ひょっとしたら、ここに住んでいるお猿さんの、おうちかも知れないです」

相変わらず鼻の下を伸ばして、おっぱいに手をやる猿に、コルちゃんは閃く。

「結構年寄りなのかも。シワが凄いものねえ」

レオンさんとモニカも、違う猿達におっぱい触られながら、大注目している。

「おお!今日はお母さんも!」

ソフィーの所には子供を抱いた猿が来ていて、ソフィーの髪の毛を、ソフィーは猿の毛をもしゃもしゃしている。

「しかし……何だってオマエは俺に懐いたんだ」

ハロルさんは、1羽のでかいカラスに呟く。

頭に乗ろうと狙うカラスと、そうはさせまいと睨みをきかせるハロルさん。

……温泉洞窟で、少しゆっくり過ごして……

 

 

「元気になったです!元気になったらお腹が減ったです!」

温泉を出て、近くの川で食事の時間となった。

「とはいえ、腹いっぱいにする訳にも行かないからな……」

オスカーとハロルさん、フリッツさんが食事の用意をする。

道中集めた草花、芋、虫と捌いて火を通す食事。

あまり時間はかからない。

「魔物は見かけないのですね」

プラフタが呟く。

「街道には魔物避けが仕掛けられているからな。商人達が行き来できるようにそうなっている。免罪符もこの魔物避けとリンクして効果を発揮するな……」

フリッツさんが答える。

「いつもこんな感じですか?」

プラフタが辺りを見回しながら尋ねる。

あまりに静かな夜の草原。

遠くには湖が見える。

「地底湖に行く時には、街道を外れるからね。その場所には魔物が居るかな。山師の水辺の、地下トンネルから地底湖へ出るみたいだけど」

ジュリオさんが答える。

 

 

食事の後、山師の水辺から地下トンネルを行く。

この先が地底湖……

という話みたいだけど……

「ほわぁ~……でっかい!」

ソフィーは辺りを見渡し、荷車の後ろを歩く。

岩肌にキラキラした鉱石や植物が生えていて、地下トンネルは青白い明かりと紫の光で明るい。

オスカーは壁沿いに挨拶回りをしている。

「……キルヘンベルを出て、彼はずっと荷車からは離れて動き回るのですね」

プラフタが、その姿を見て呟く。

「あはは、そうなんだよねぇ……食べられる植物とか、ばんばん持って来るから、道中の食事が充実するんだけど、疲れないみたいなんだよねぇ……」

ソフィーは胸の前で指を絡めて笑う。

「あれほどアクティブに動き回るおデブちゃん……そんな人を見るのは初めてだわ。彼が太っている事が不思議なくらいなのよね」

レオンさんも、そう話す。

コルちゃんは荷車2階で寝ている。

「ふむ……コルネリアは寝ている事が多いのですね」

荷車1階のプラフタが呟く。

コルちゃんは荷車2階で寝ている事が多い。

「コルちゃんの増やす錬金術は、自分を消耗する錬金術だから、眠る時間がとっても大事みたいなんだよね」

ソフィーがそう話す。

広く、明るく、長いトンネル。

「……よし!」

ハロルさんは、投げ網で虫を捕まえていたり。

なんかやたら太っている蝶をゲットしている。

 

 

……そして朝。地底湖に到着した。

「眩しいね~……」

天井……

この場所が地底なので、あの天井は地面になるのだろうけれど、そこに大穴が空いていて、朝日が差し込んでいる。

その光をキラキラ鉱石と岩肌が反射して、やたら眩しいのだ。

「ここの暗い物陰とかに……あった!」

オスカーが走る。

暗い場所にだけ咲くという、シロヒメクサを採取する。

 

「ふむ……ついでに黒いプニプニも住んでいるみたいだな……」

フリッツさんとハロルさんが身構える。

後ろからは魔獣キメラビースト、ライトニングを従えたファングという魔獣まで……

「さて……」

プラフタも駆動機兵で構える。

「攻撃班は各個撃破!防御班は時間を稼ぐ!」

ジュリオさんとプラフタで敵の攻撃を受け、誤魔化しているスキに、フリッツさんとレオンさん、コルちゃんにソフィーのパーティーで片方を攻撃する。

ファングが硬く、ライトニングとキメラビーストはあっさりと倒せる。

「ふははは!そら!そら!そら!」

やたらイキイキとしている、フリッツさんの攻撃力が高い!

「攻撃にっ!参加するよっ!」

ソフィーのジャンピングぷに落としもバリバリ当たる。

そこにコルちゃん波動拳、コルちゃん昇龍拳が襲いかかる。

 

「カッコよく決めるです!」

そしてトリプルアタック!

「どんどん作ってどんどん投げて!」

コルちゃん爆弾雨あられ炸裂!

黒プニも倒す。

なんと凄い技を持っているのか。

 

「よし!採取、頑張ろう!」

そしてジュリオさんのスイッチが入る。

地底湖での戦いが始まった。

 

 

「しかし、いい景色よねぇ………」

お昼時、食事の時間に真っ黒モニカが呟く。

黒プニが強くてしぶとくて、しかも荷車防衛パーティーなので、ひどく汚れている。

黒プニ特有の甘い香り……

「そうだなぁ……水が良ければ水浴びも出来たんだけどなぁ……」

真っ黒オスカーもおとぼけボイスで呟く。

水浴びも企んだけれど、ここの水は危ないとの判断で、ヤメになった。

あと、すごく冷たい水だ。

 

プラフタのヘクセ・アウリスは汚れても、1回消えると、また現れると綺麗になっている不思議。

プラフタ自身は真っ黒なんだけど。

「旅はいいものですね。このような景色を見ると思います。記憶は戻らないようですが……」

皆それぞれに地底湖の絶景に見とれていた。

 

 

「ほお……こんな物が大量にあるのか」

フリッツさんが黒の燃球を見つけて、ソフィー達を呼ぶ。

「黒い粘土みたいな……?」

ソフィーとプラフタはその黒の粘土を見つめる。

キラキラ光る石で地形を作っている場所なので、むしろ目立つ。

そんな炭みたいなカタマリ。

「大砲の火薬等に使われる、爆発可燃物だな。このままでは爆発はしないが、かなりとんでもない威力の爆発を起こせる物だ」

フリッツさんはそう話すと、兵器開発の錬金術士の話をする。

死の商人と呼ばれた、ソフィーのような錬金術士と、コルちゃんのような錬金術士の話。

 

 

……最初こそ、人の望む物を作っていた2人。

だけど、2人の作った爆弾や武器で争いが起こり、大勢の人が死んだ。

そうなると2人は人々の恨みを買い、立場が危うくなってきた。

その時、戦士集団が2人の護衛を買って出た。

話はそこから始まる。

ソフィーからすると、ジュリオさんや、モニカ、フリッツさんのような頼れる人々が、2人の前に現れたのだ。

 

……当然、2人の錬金術士は戦士集団の元へ身を寄せた。

戦士集団は自分たちの国を持ちたいと考え、2人に武器を、盾を、食事を頼むようになり、2人はそれに応えた。

戦士集団と、その隣の人の集団。

戦士集団は隣の人の集団と交渉して、自分たちの仲間を増やした。

隣の人の集団は、戦士集団を見ただけで「戦っても勝てない」と思い、従った。

 

……そうして人の集団は大きくなっていき、戦士集団の国が出来た。

すると、隣にも同じような戦士集団の国があり、2つの国はどちらも譲らずに、戦争へとなっていった話。

しかも、その2人の戦士集団は、2人を暗殺され、戦争に敗北した……

という経緯だった。

 

 

「怖い話ですけれど、大丈夫です!キルヘンベルの街は、隣に人の集団がありませんから!」

ソフィーは胸を叩く。

「ええ!?隣の人の集団、ありますよソフィーさん!?商人の方々も来てるじゃないですか」

コルちゃんはずっこけながら話す。

ジュリオさんもモニカも、笑ってた。

「ええ!?じゃあ……戦争になるの!?」

ソフィーは驚く。

そしてそう声を上げると、ファングに気付かれて、ファング達が駆け寄って来た。

しかも尻尾の蛇が毒を吐きながら。

「話は後だな……」

 

パーティーは素早く戦闘態勢に入り、防御陣形でファング達の攻撃をやり過ごす。

その後で、ファング達の隙を突くように攻撃に転じて倒す。

いつものパターンで危なげなく魔物を倒した。

 

「さて、少し話が長かったかな。ここではまだ色々な物が採れるのだから、まずは採っておかなくてはな」

フリッツさんが言って、採取生活に戻る。

銀霊結晶、湖底の土と豊作で、戦闘も手応えのある魔物に、ジュリオさんとモニカ、フリッツさんがイキイキとしている。

夕食を食べる時は、夜の絶景も見る。

黒プニ汚れがどんどん濃くなっていく。

「なんか、夢の中に居るみたいだわ……」

星明かりを受けて、眩しいくらいにキラキラしてる地底湖を眺めて、レオンさんが呟く。

「俺にはキラキラし過ぎて、食傷気味だがな」

その隣で、ハロルさんが言う。

黒プニ汚れた2人。

そんなこんなで、朝の光が地底湖を照らす頃、錬金荷車2号がいっぱいになって、一行は帰る事にした。

 

 

「これはぷにちゃんも大忙しだね~……」

「喜ばれるだけではないかと思いますが」

今回は、ジュリオさんの鎧と剣なんかも持ってコンテナへと入る。

フリッツさんとハロルさん、レオンさんは帰って行く。

ソフィーとモニカ、コルちゃんにプラフタで、大荷物と共にコンテナへと入る。

「おお~!凄いね凄いね!」

棚の番人ぷにちゃんの群れが、ぴょこんをぴょこぴょこさせながら、そう言った。

今はあの女の子の人格みたいだ。

「えへへ~黒プニが凄くてね~」

「魔獣の毒ブレスも凄かったです」

「粘土取るのに、汚れるのよね。臭う粘土なのに、錬金術に使えるみたいだけど」

「ふむ……臭いがあまり感じられませんので、気付きませんでしたが。肌で感じる魔力は濃いように感じました」

思い思いに語らう4人はハダカ族となって、ぷにちゃんの部屋へと入る。

「ようこそ~♪」

ぷにちゃんは口を開ける。

 

 

………

真っ黒オスカーとジュリオは、アトリエの外で待つ。

今回は服の汚れと、ジュリオの鎧やらオスカーのスコップやらの汚れを綺麗にするのに、少し時間が掛かると言われていた。

「オスカー……君は……」

旅でもあまり話さない2人だけど、このアトリエ前では話すチャンスでもある。

チャンスではあるけれど、あまり話さない2人だった。

オスカーは汚れてるのをいい事に、地面に大の字で寝て、空を見ていた。

「お?なんだいジュリオさん?」

ジュリオも汚れてはいけないから、と地面に座っている。

オスカーはムクッ、と起き上がる。

「いや、待ってる時間に無言というのも、と、思ってね。君は何か体術の心得とかあるのかい?」

ジュリオはそう言うと、真っ黒オスカーを見る。

今回、同じ防衛パーティーとしてオスカーと共に戦っていた。

 

「ん~……特に無いんだけど、なんかこうしたい~……みたいな何かがあるんだよな」

オスカーは空を眺めてみたり、そこらの木々に顔を向けてみたり。

「それでスコップで空を飛ぶのかい?」

ジュリオは尋ねる。

色々と変な立ち回りで、大味なのに的確なのだ。

そんなスコップでの戦闘に、興味はある。

「まあ、そうなるんだよなぁ……マナの柱の力ってのは凄いもんだよなぁ……」

オスカーはジュリオを見る。

黒プニ汚れがどちらもひどい。

「ソフィーのおばあ様も、その力があったのだろうか?しかし、このキルヘンベルのどの人に聞いても、彼女の記憶はさっぱりなんだ。オスカー、君にも以前聞いたけれど、知らないようだったし……」

 

ジュリオはオスカーを見ながらそう話す。

「ジュリオさんは、そう言えば助けたい人が居て、薬を求めて来たとか言ってたよなぁ」

オスカーも、ジュリオを見て話し、また木々の方へと振り返ってみたりする。

「それも、そろそろソフィーに頼んでも良いのかも知れないな」

ジュリオさんが空を見上げた時、アトリエのドアが開いた。

………

 

 

モニカがジュリオさんを綺麗にする番になり、ソフィーとオスカー、プラフタは外で待つ事に。

「私は、帰らなくては!」

コルちゃんは片足立ちになり、合掌しながら挨拶をする。

どうやらこれが、帰らなくては!……のポーズらしい。

「あははっ!なんでそのポーズになったの?」

ソフィーは真似てみる。

右足を上げて左足のヒザの上に乗せるようにして、少し腰を落とす。そして合掌!

「なんとなく、閃いたのです」

コルちゃんは合掌の後、右手を真上に上げると、帰る方向にその手と、上げた足を下ろして行く。

ソフィーも同じように、コルちゃんの指す方へと手と足を下ろして行く。

「なんか、姉妹みたいですね」

「凄い元気そうだよな。ぷにちゃんの部屋から戻るとさ」

プラフタとオスカーが、そんな2人を眺めて微笑む。

そしてコルちゃんは帰り、そんなこんなしていると、モニカとジュリオさんが出てきた。

 

 

「剣と鎧、凄く綺麗になるから助かるよ。僕も早めに、キルヘンベルのパトロールにも行けるからね」

ジュリオさんがそう話す。

「最近、少し裏市街は物騒なのよね。ジュリオさんも私も、なるべくなら姿を見せておかないとね」

ジュリオさんとモニカはそう話し、帰って行く。

そして次は、オスカーを洗う番……

黒プニ汚れの凄い、オスカーとソフィーがアトリエに入る。

「旅の道でも、ジュリオとモニカは裏市街を案じていましたね」

プラフタがそう話し、3人でアトリエに帰る。

 

「治安かぁ……オイラあまり配達に出なくなったから、ちょっと疎くなってるなぁ……」

オスカーはそう話し、暖炉前に服を脱いで並べて行く。

「マルグリットさん、怒るんじゃないの?」

ソフィーもそう話し、番人ぷにちゃんにピッカピカにしてもらった服を脱いで、ベッドに置く。

「いやぁ、最近は色々と旅に行くからな。本屋で研究するのも忙しい、って言ったらさ、あまり怒られなくなったんだよな」

 

暖炉前、ハダカ族のオスカーをソフィーが洗う。

プラフタは錬金釜のそばで、窓を眺める。

「食事の支度に荷車の護衛に、採取と……確かにオスカーは活躍していましたから。それも日頃の勉強の賜物なのですね」

プラフタは窓を眺めてそう言うと、ソフィーとオスカーを一瞥し、また窓を眺める。

 

「そう言えばさ、ソフィー。月と太陽の原野あるだろ?その先にさ、でかい屋敷があるらしいんだよな」

オスカーが身体を洗いながらそう話すと、ソフィーの手が止まる。

「……更に怖い場所かな?」

そしてソフィーは尋ねる。

また手を動かし始める。

「まあ、そうなんだとは思うよ。キルヘンベルから少し離れるし、かなり大昔に人は居なくなってるハズだからなぁ……」

オスカーは身体を洗いながら、そう呟く。

「あのお墓の先……なんか怖そうな感じだね……」

 

ソフィーが怯えながら呟く。

あのお墓も怖いのに、それ以上の場所……と考えると、乗り気はしない。

「ジュリオも、そんな知り合いが居るのですね。病気とやらは、会ってみないと分かりませんが」

プラフタもそう話す。

ともかく、今は図鑑を埋める錬金術をして、錬金術を高める方針で行こうと話す。

 

 

オスカーは帰り、そして新素材、黒の燃球を使って錬金術!

炎帝の粉の作成。

新しいとんでも火薬。

朝8時に仕込んで、6時間……

完成は14時となる。

 

「さて、冒険帰りでゆっくりしたい!あ、あと夜にオスカー来るって言ってたんだよぉ~」

ソフィーはくるくると回る。

そしてドアに向かう。

「これから休むのに、なんか元気ですねソフィー」

そんなソフィーを眺めて、プラフタはため息がちに言う。

ついさっきも、モニカとコルちゃん、ソフィーとプラフタでゆっくりしたばかりでもある。

「お外で日向ぼっこしよう!ウメさんも来てるかも!朝もお外で食べたい!」

 

アトリエのすぐ外で、ぽかぽか陽気の中のんびり。

でも少し話を始めると、結局錬金術の話になった。

フリッツさんの話していた、武器を作った2人の錬金術士の話も気になる所……

「今回は凄い火薬を作ってる訳だけど……やっぱりこういうのは、納品とか量産とか……しない方がいいよね?」

ソフィーは不安そうな声でそう話す。

「どうでしょうか。既に金属で武器を作ってしまっていますけれど。錬金術には……というか人の営みには、常にリスクがありますから」

 

青空の下、ソフィーとプラフタで話をする。

……戦う、という手段を捨てても、それで安穏とした日々が訪れる訳ではない……

と、プラフタは話した。

爆弾が人を殺す。

でも爆弾は人を守る存在でもある。

ただ、そうした物は神父さんやバーニィさん、ディーゼルさん……

色々な人と相談した上で渡すか、隠すかした方が良いとの結論になった。

 

 

お昼にウメさんが来て、一緒に昼食にする。

今回は、アトリエが開かなくてガッカリしてたみたいで。

でも来週からも、プラフタは旅に出るから……

と、エリーゼお姉ちゃんから返された合い鍵を渡すも、ウメさんからも返された。

 

14時に炎帝の粉完成!

その時にコルちゃんがやって来た。

「こんにちはです~」

「おお、さっきぶり~」

「実は悩み事がありまして……鍛冶屋の炉の火力が足らないそうで、ロジーさんがイライラしてるです」

口許を隠しながら、コルちゃんはそう話す。

「ふむ……次はルビリウムの作成……と話し合っていた所ですが、鍛冶屋の炉の火力が足らないのでは、ルビリウムの加工など出来ませんね」

プラフタも、本で口許を隠しながら呟く。

「炎帝の粉を使えば火力上がりそうだよね」

ソフィーは、つい今しがた出来たばかりの炎帝の粉を見る。

「なんと!」

既にある事に驚くコルちゃん。

「危険な気もしますが、ロジーもプロですから、大丈夫ではないでしょうか」

コルちゃんに炎帝の粉を渡す事にした。

使えるようならコルちゃんが量産出来るし。

 

「ロジーさんならば大丈夫ですが……フラム大先輩の火力が上がりますと、家とか街とかぶっ飛びそうで物騒ですね……」

炎帝の粉から、フラム大先輩の強化版、オリフラム公爵の話もすると、コルちゃんは呟く。

「そのような使い方をされてしまう恐れは、ありますね。作るのは錬金術の通過点ですが、やはり慎重に相談しないといけませんね……」

プラフタも呟く。

裏市街に出回ってしまうと、もはや手に負えないシロモノかも知れないし。

「なんか、あたしの錬金術が恐ろしいレベルになってる……」

ソフィーは胸元で指を絡ませて、少し困った顔をして呟いた。

ともかく、コルちゃんはぷにちゃんの部屋で一休みして、炎帝の粉を手に帰って行った。

 

 

そしてルビリウムの作成。

こちらは9時間。完成予定は23時。夜中だ。

 

「お昼も食べたし……浸け置き9時間だし……街をふらふらして来ようかな……」

ソフィーはまだ明るい窓を眺める。

「何か新しい発見もあるかも知れませんし、いいのではないでしょうか」

プラフタも賛成した。

 

……今は、空っぽのアトリエで調合に失敗した場合、爆発ごとぷにちゃんの番人達のエサになるみたいだから、アトリエを空っぽにしても大丈夫だ、というぷにちゃんの話もあるし……

ソフィーとプラフタはコンテナへと入る。

番人ぷにちゃん達は、それぞれ採取品やら、不思議毛布やらに取りついていた。

「ちょっとお出かけしてくるね?錬金釜で調合中なんだけど」

ソフィーがその内の1つに声を掛ける。

「どうぞ~♪出来上がりに帰って来れない場合は、食べておくね♪」

番人ぷにちゃん達が、相変わらずわっしょいわっしょいしながら、答える。

今は女の子の人格みたいで。

「うん。そこまでには帰って来るけど……それでよろしくね」

そして、ソフィーとプラフタはキルヘンベルの街へと出かけて行く。

 

 

「しかし、とんでもなく便利ですね。私も錬金術士だった頃、そうした感じだったのでしょうか?……記憶がないというのは歯痒いですね」

アトリエの山から下りる道、プラフタが呟く。

「そうかもねぇ……プラフタも休憩がてら仲間と……ムフフな関係だったのかも!」

デリカシーの無いソフィー。

「まあ……あのような場所ですと、そうなっていたとしても納得出来る所ですね。ソフィー、貴方もコルネリアやモニカと、あの場所以外ではそんなにくっついても居ないみたいですし」

旅先でも、ソフィーはコルネリアの寝顔を弄る事があるぐらいで、あまり近い訳でもない。

モニカともそうだ。

プラフタが思うに、プラフタと近い事が多かったように思う。

……そして一番遠かったのは、錬金荷車2号からも離れて歩くオスカーだろう……

プラフタがそう考えていたら、住宅街を抜ける辺りでオスカーに出会った。

ちょうどエルノアさんと、ヤーペッツさんのレストランから出て来たみたいで。

 

「お。ソフィーとプラフタじゃないか」

そしてオスカーは、八百屋印の荷車に手を掛ける。

「あれ?オスカー、配達なんて珍しいね」

明るい笑顔でソフィーは言う。

「まあな。今日は配達の子が風邪で休んじまってさ。オイラが代行してるんだよ。じゃあ、またな」

オスカーはおとぼけボイスで答えると、荷車を引いて裏市街へと消えて行った。早い。

「オスカーは不思議ですね。旅ではあまり食べないみたいですし、それでいてほとんど休んでいないのに、なぜ太っているのでしょうか?」

プラフタは、そんな後ろ姿を眺めながら呟く。

「あ、あはは……レオンさんも言ってたね~。でもあたしオスカーが痩せちゃったら……やだな~」

ソフィーはそう言って、ふと想像すると少し青い顔になった。

「ソフィー……あなたは本当に太っているオスカーが好きなのですねえ……」

 

 

キルヘンベルを2人でふらふらして、神父さんに炎帝の粉の話とかして、アトリエに戻ると夕方だった。

アトリエの近く、カワニレの木の所に、既にオスカーも居た。

「あ。オスカーただいま~♪」

ソフィーはオスカーに声を掛ける。

「おう♪じゃあ、またな」

オスカーはカワニレの木に別れを告げて、ソフィーの所へと歩み寄る。

 

アトリエで夕食。

プラフタはぷにちゃんの部屋へ行き、ソフィーはオスカーとラブラブイチャイチャして過ごす。

 

 

「よし!ルビリウム完成!お次は……」

……23時。

新しい衣装のソフィーは、錬金釜からルビリウムを取り出す。

ピンク寄りの赤……そんなルビー色の金属。

「へえ……なんかピッカピカだなぁ……オイラもびっくりだよ」

黒い服のオスカーもそう呟く。

キルヘンベルに出回り出した新商品、乾き豆をポリポリしながら。

「お次はオリフラム公爵!炎帝の粉もまだあるし、ぐるこんしとくよ~……」

ソフィーは次の調合へと入る。

こちらは朝の8時に完成予定なので、本格的にラブラブイチャイチャするのはこれからだ。

 

 

色々とやることやって、2人でベッドに入る。

向かい合って横になって……

そんなラブラブな2人。

「あ~!ヒゲ!」

オスカーの頬をすりすりするソフィーは、オスカーのヒゲを顎に見つける。

1本だけぴろ~んと伸びてる。

「お?ヒゲ生えてるか?」

パンツ一丁のオスカーが、肌襦袢のソフィーに顎を向ける。

「1本だけ。柔らかいのが出てるよ!オスカーのおヒゲよりも柔らかいね~」

ソフィーはその1本をなでなでしつつ、言う。

「1本だけなやつって、そうだよな~」

相変わらずのおとぼけボイス。

「ふふふ……可愛い!」

ソフィーはテンションを上げる。

「1本目って、そうだよな~……ソフィーのおヒゲも、1本目の時あったじゃんか?」

オスカーは、ソフィーに顎を向けたまま、そう話す。

「え~?」

ソフィーは目を細めて笑う。そんな事覚えてないし、思い出せない。

「忘れたのか~?ヘソの下辺りでさ、おヒゲなのか腹毛なのか~って」

オスカーはソフィーの肩を、肌襦袢越しに撫でながら言う。

「あ~!思い出した!あれ、まだ居たかな~」

ソフィーは不思議毛布を少し浮かして、肌襦袢を開けるとその場所を見る。

「あれ、今は2本になってるよ。弟と一緒にさ、ぺとぺとソフィーの時に、くるくるしながら貼り付いてるからな」

オスカーはソフィーの肩を撫でながら言う。

「どれどれ……?」

ソフィーは自分のお腹を見ようと身体を丸くする。

「これだな。短い方が弟君だな」

オスカーはその場所の更に下を指で押す。ほとんどワレメ的なトコロ。

「あははっ!本当に短い!」

ソフィーはぴろ~んと伸びてる毛と、その側に生えた短い毛を見つける。

そんなイチャイチャな夜……

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[エロエロ儀式]
愛を確かめ合う儀式。

[駆動機兵]
ゲームでも登場する。品質、特性に関係なく完成さえすれば、プラフタの戦力となる。

[コル助]
コルちゃんの愛称。レオンさんもコル助派。

[メーベルト農場行きの馬車]
キルヘンベルに色々と運んでくる馬車。なのでメーベルト農場に戻る時は荷物が軽い。
[ブレスト]
気さくなおじいちゃんな馬車のお馬。コルちゃんが乗っても、乗って寝てても大丈夫。
[マレフ]
おっとりお兄ちゃんな馬車のお馬。マレフも乗れたりする。
[ロザリ]
気難しい妹ちゃんの馬車のお馬。新しい衣装にしたら、ソフィーにも懐いてくれた!

[ふわモフ毛布]
ちょこっと調合品、もふもふモフコット。ふわモフ毛布とも呼ばれていたり。

[朝凪のほとり温泉]
お猿とカラスの住む、腐ったタマゴの臭いのする洞窟温泉。なんか元気になれる!
[温泉洞窟のカラス]
温泉の洞窟に住むカラス。ハロルさんに懐いてるのはおそらく子供のカラス。親はあまり近寄って来ない。でもすごく大きい。

[錬金荷車2号]
2階建て素敵荷車。
[お猿]
温泉洞窟に住んでるお猿。めっちゃおっぱい揉んでくる。こちらもお猿の毛をわしゃわしゃしたりするけど、動じない。

[免罪符]
教会が扱っている魔物避けのお札。何故かヴァルム教会では扱っていない。

[番人ぷにちゃんの群れ]
コンテナで汚れを待っている。ソフィーの頭くらいのサイズのぷにちゃん。
[ハダカ族]
汚れて帰ったら、ちゃんと綺麗にしないと。

[ウメさん]
古本補修とか絵を描くとか、なんかデスクワークにポテンシャルを見せるおばあちゃん。でもプラフタも旅に出るようになって、アトリエを閉めてるので、古本補修のアトリエにはなっていない。

オリフラム[公爵]
上品な響き。おそらくイケメン。
[カワニレの木]
ソフィーとオスカーを見守り続けている、アトリエ前の木。

[エルノア]
飾りの達人。お花を育てるのも趣味で、レストラン付近にこぢんまりしてるけど、花畑も出来てる。
[ヤーペッツ]
調理の達人。最近は新しく出来た燻製小屋の監督に忙しいんだとか。

[レストラン]
キルヘンベルのオシャレな食事処。
[八百屋印の荷車]
八百屋の配達に使う荷車。
[乾き豆]
燻製小屋から出来た、カラごと食べられる豆。美味しくて、お酒のおつまみとしても人気なんだって。


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錬金術のアトリエ 43

錬金術のアトリエ 43

 

「さて、八百屋の配達、今日もオイラかも知れないからな。帰らないとだ……」

既に服を着たオスカーが、凄い寝相のソフィーにそう言って、ソフィーは目を覚ます。

「ほえ~?」

寝惚け眼のソフィー。

そんな朝4時、オスカーは帰って行く。

ソフィーは乱れた肌襦袢のままに、2度寝する事に。

 

 

「ソフィー、そろそろオリフラムが完成しますよ」

ぷにちゃんの部屋から出てきたプラフタに起こされて、ソフィーは起きる。

「あら。あなたが服を着てるなんて珍しいですね」

そう言ってプラフタは笑う。

「え~?そんな事ないでしょ~?」

ソフィーは起きて、ベッドから降りる。

何だか良く眠れた。

 

ともかく、朝食と錬金術生活。

新しい錬金術品、クリアドロップ作成に雪花結晶の作成。

充実の錬金術生活により、果実の日も過ぎてゆく。

 

 

種の日の朝……

「雨だねぇ……」

雪花結晶の作成が終わったのは朝の5時。

ソフィーは窓から外を見て呟く。

「人形劇は、中止になるかも知れませんね……」

ソフィーのすぐ隣で、プラフタも窓から外を見る。

「ともかく!お外に行きたいっ!お祈りに行かねばだよ!」

ソフィーは杖を手にして、突撃のポーズを取る。

そしてお祈りのポーズになる。

 

「なるほど。昨日は1日、アトリエでしたから、外の空気にも触れないといけませんね」

2人は、アトリエを出る。

雨のキルヘンベル。

 

「キルヘン!ミルク!スネーク!カモン!」

跳び跳ねるソフィー。

「しかし、あなたは元気過ぎますね……」

それを追いかけるプラフタ。

 

 

「お?笑いの浅い姉さんじゃないか」

ヴァルム教会の外。

雨の中祈りの群れに加わってみると、すぐ隣のオジサンがプラフタに笑い掛ける。

「北の人形劇は雨に弱いけどよ、南の方は師匠と弟子が頑張るからな、寄って行きなよ」

 

「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」のオジサンも、いつになく結構来てる。

そしてプラフタは「笑いの浅い姉さん」として、なんか人気だった。

モニカの歌声響く祈りの時間。

 

南の人形劇(もはや人形劇ではない)も、お祈りの時間と噴水端会議の後に開始なので、その都合でお祈りに来る職人さんと商人さん、冒険者の方々が増えた。

そんな中、ソフィーは杖を立てて、祈りのポーズを取る。

最近、お年寄りにも人気がでてきて、真似る人が出てきた。

 

そして噴水端会議。雨は降り続けていて、北も南も人形劇は中止になりそうな空気。

でも南の芸人師匠と弟子、歌のステージは多少の雨でもやるみたいだ。

 

 

「あははっ、はーっ……はーっ……」

師匠と弟子のコントに、プラフタは笑う。

やたら笑う。

「本当に笑いの浅い姉さんだなぁ……」

周りのオジサン達が、そんなプラフタを眺める。

「あれ?あれはアメリアじゃないか?」

ソフィーの後ろで見慣れない冒険者が、そう話し出した。

「お前がよく言ってるなんたら品評会か?俺は興味がないから……」

「アダレットの服飾品評会だよ。それに優勝したやつだよ。アメリア・レオンマイヤーってったら、かなりのブランドだぜ?」

そう話す見慣れない冒険者が指差す方には、レオンさんとコルちゃん、テスさんと錬金荷車1号が居た。

 

「アメリア・レオンマイヤーの服は俺も知ってるけどなぁ。だが、そんなデザイナーがこんな田舎町に居るかぁ?ぁあん?」

「おおお俺、店でも探してみるかな……アダレットに持って行けば高く売れるに違いねぇよ……」

そう言って冒険者2人は、どこかへと去って行った。

「ん?……う~ん……」

ソフィーは考え込む。

プラフタは笑いまくっている。

 

 

「レオンさん!レオンさんって、アダレットで有名な人なんですか!?」

考えた結果、噴水の所で商売をしている錬金荷車1号に、突撃する事にした。

「ん?何の事かしら?」

レオンさんはそう言うと、めっちゃ不自然な感じで、ぐりん!と、あさっての方を向いた。

「私も聞きました。アダレットの服飾品評会で優勝。今をときめく服飾ブランド、アメリア・レオンマイヤー……その人と、そっくりだと」

コルちゃんが口許を隠しながら言う。

「ほほーぅ……マスターも言ってたんだよね。レオンさんの服は、アメリア・レオンマイヤーブランドを名乗ってもいいぐらいの出来映えだって」

テスさんもその話に乗っかった。

「うぐぐ……なんでそんなにバレてるのよ!」

レオンさんが怒り出す。

「うわ~!なんか怒られる~!」

「これは避難です!」

ソフィーとコルちゃんは素早い身のこなしで、レオンさんから逃げ出した。

「全く……子供みたいな逃げ方なんだから……」

レオンさんは逃げなかったテスさんを見る。

……いつの間にやら消えていた。

「……どいつもこいつも……」

 

 

「でも、雨が止まないねぇ………」

噴水広場の北側を眺めて、ソフィーが呟く。

「確かに。今日はしつこい雨ですね」

コルちゃんも呟く。

南の劇場の観客席、オジサンに紛れて隠れている2人。

「一体誰に追われてるんだい?コルネリアちゃんは」

どうやら「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」の会員のオジサンみたいで。

「でも、あの有名な……とか言われても知らなかったですが……」

コルちゃんは置いてきた荷車1号の方を見る。

「でも、アメリア・レオンマイヤーブランド!って名前が乗るとカッコいいよね。あたしの服もレオンマイヤーブランド!って事だもんね」

足を開いて座るオジサンの、その足の間にしゃがむソフィーが能天気に言う。

「なんか、都会っぽい名前だな」

お酒を片手に、そのオジサンが笑いながら言う。

「んだんだ」

隣のオジサンが相槌を打った。

「……どんな隠れ方なのよ……それは」

そしてレオンさんに見つかる。

「あ……」

 

「さすがに突っ込み入れたくもなるわよ、それは。コル助も、荷車が誰も居ないわよ?」

「わお」

コルちゃんは荷車1号を見る。

賑わう噴水の側に放置された荷車に、お客さんも待っていた。

「わお~!すぐに行かないと!」

コルちゃんは荷車1号に飛んで帰る。

 

 

「全く……バレちゃうなんて、この街も賑やかになったものねぇ……」

雨の中、噴水広場中央に移動して、ソフィーの隣でレオンさんはボヤく。

「あはは……でもレオンさんは、実はアメリアさんだった、って事ですか?」

コルちゃんとテスさんで、また商売を始めた荷車の横で、ソフィーは尋ねる。

「まあ……そういう事ね」

レオンさんは言う。

雨の中なのに、荷車1号にお酒のおつまみを買いに来るオジサン達はやって来る。

「レオンさん、って名前の方が男らしい感じはしますね!」

ソフィーは胸の前で指を絡めて、言ってみる。

「そこは重要じゃないんだけどね」

レオンさんは苦笑いする。

そして仕立て屋さんの方へと帰って行った。

プラフタはまだ劇場に夢中みたいだし……

 

「む~……」

ソフィーは、錬金荷車1号……

コルちゃんとテスさんの横で暇そうにする。

取り敢えず新しい錬金術にでも、思いを致してみたり。

「この前貰いました炎帝の粉で、炉の火力が上がったみたいです。新しい武器も作れるかと思いますので、ちょっと鍛冶屋さんに行ってみてはどうでしょう?」

とすん、とコルちゃんがソフィーにくっつくと、そう話した。

「おお~!行ってみるね!」

ソフィーは早速、鍛冶屋ロジックスへと向かう。

 

 

鍛冶屋ロジックス、冒険者3人と、ロジーさんがなんだか楽しそうに話していて、割り込みづらい。

ロジーさんも冒険者と一緒に出掛けていて、そんな冒険の話をしていた。

でもソフィーに気付くと、ロジーさんはソフィーの所へとやって来る。

「おお、ソフィーじゃないか。おかげで炉の火力が上がって助かってるよ。シルヴァリア、ルビリウムも加工出来るようになってるぞ」

にこやかに近づくロジーさん。シルヴァリア、ルビリウムから出来る武器は見た目もオシャレで、かなり人気が出るそうだと話された。

「この辺りだとシルヴァリア、ルビリウムも上質な物が期待出来るからな。はるばる来た甲斐もありそうなんだよ」

「俺も更に稼いで腰にスペシャルな武器を携えたいもんだぜ」

冒険者達も口々に、新しい武器への期待を話す。

「私も!スペシャルな武器にしたい!」

ソフィーはフローリッシュハートを掲げる。

「それ、武器なのか?」

「あう~……」

冒険者に突っ込まれて、ソフィーはずっこける。

「ともかく、ソフィーの場合はこだわりの自作金属が出来たら、また来てくれ。コルネリアにも、色々とリストを出しておくよ」

ロジーさんはご機嫌でソフィーに案内する。

更に冒険者も交えてお喋りして……

 

 

そうこうしてると、プラフタが現れた。

「ソフィー、そろそろ昼食時かと」

そう言って現れたプラフタに、冒険者達は目を向ける。

大胆な格好だし、こんな格好してるのは、キルヘンベルではプラフタしかいない。

「おお~……そういえばお腹減った……」

ソフィーもプラフタに向く。

皆が大注目状態だ。

「武器の話でしたら、私の武器も改良を加えたいかと思いますので。ところでロジー、あなたはどこでお昼を?」

皆大注目にも気にしていないプラフタは、そのままロジーさんに歩み寄り、そう尋ねた。

 

「ああ、隣の壺屋頼みかな。種の日は昼も開けてくれてるし……」

プラフタに歩み寄られて少し戸惑いつつ、ロジーさんはそう話す。

炉の火も落ち着いている時間。

「これからなら、一緒に行こうよ♪冒険者の皆さんも一緒に、どうです?」

ソフィーが能天気な笑顔で言う。

冒険者の人達も頷いた。

 

「じゃあ、昼の間だけ炉を見ておくよ。俺はタードリッツが昼食を用意してるだろうから」

冒険者の1人がそう言って、椅子に座る。

「じゃあ、昼食の間だけ頼むよ」

ソフィーとプラフタ、ロジーさんと冒険者の人2人で、壺屋で昼食となった。

 

 

「なるほど。これは複雑だな……」

壺屋でプラフタのコールリングを見ると、ロジーさんの目付きが変わる。

昼食が終わり、鍛冶屋へと戻り、更に設計図を詰める。

インゴットで作るやつ、シュタルメタルで作るやつ、ルビリウムで作るやつ、と設計図を作って行く。

そんなこんなを見守ってアトリエに帰ると、夕方だった。

 

 

「さて、冒険帰りには武器の新調もしたいから~……シルヴァリアかな!」

アトリエに帰ると、早速錬金釜に向かうソフィー。

「そうですね。私の武器も更に強力になって貰えると、旅先でも助かります」

プラフタは巨大な腕を出すと、その手のひらに座る。

「わお!それ格好いい!」

ソフィーは目を輝かせて言うと、座るプラフタに座る。

「こら!あなたは調合をするのではなかったのですか!」

2人乗っても巨大な腕はびくともしない。

でも落ちないように、ちょっと角度が変わった。

「あたしも巨大な腕に乗るのが夢だったから!しょうがないんだから!」

ソフィーはじたばたするプラフタに座り、じたばたする。

そして、プラフタとイチャイチャしながら、錬金術談義しつつ、錬金術生活をする。

 

 

「……むぅ……」

ちょこっと調合、プラフタの武器、オーラバングルの元のレシピ構築をする。

「どうしました?」

「これ、錬金釜じゃない調合の予感がする……」

ソフィーはそう言うと、周りをキョロキョロと見回す。

「ふむ。鍛冶屋のような、そういう特殊な空間が必要……とか炉が必要……とかでしょうか」

「それだ!特殊な空間、特殊な部屋が必要な感じがするんだよね!」

ソフィーは目を輝かせてプラフタを見る。

「コンテナの中……ならば広いですし、特殊な空間ですけれども」

「それだ!しかも番人ぷにちゃんがいい感じのうにょうにょで手伝って貰えそう!」

 

ソフィーとプラフタでコンテナへと入る。

「ねえねえ、ここで調合しても大丈夫?」

ソフィーは番人ぷにちゃんの群れに聞いてみる。

「空いている……棚もある……使うといい……」

かなり広くなり、長くなった棚の廊下。

ぷにちゃんの部屋側に、空いている棚スペースがかなりある。

 

「ん~……さて……流石に箱的なモノは欲しいかなぁ~……」

「そうですね。ただ平たいテーブルの上で……というのは……」

ソフィーとプラフタでそう話す。

「錬金術士殿。ここの中は釜の中でもあるのです。試しに何か1つ、宙に浮かせてみてはいかがでしょう」

番人ぷにちゃん隊長が、ぴょこんをぴょこぴょこしながら言う。

「ほほう……」

ソフィーが棚のうにを選ぶと、コンテナの中全体の空気が虹色っぽくなった。

そして選ばれたうには、ふわふわと浮かび、ソフィーの近くへとやって来る。

 

「なるほど~!これなら行けるよ!……でも今は錬金釜は浸け置き中……ここで調合してもいいのかな?」

「お任せあれ、錬金術士殿。我々が円になり、最後の溶け合わせをやりますので。それと、浸け置き中ならば平気ですな」

番人ぷにちゃん隊長は言い、番人ぷにちゃん達は円を描いて並ぶ。

その場所が、ちょこっと調合の物と物を混ぜ合わせる場所になるようだ。

そしてちょこっと調合品、素朴な焼き菓子を作ってみる。

円を描いて並ぶ番人ぷにちゃん達が、ぴょこんをぴょこぴょこしながら、物の混ぜ合わせをすると、その中だけ空間が沸いて、錬金釜と同じ感じで調合が出来た。

 

「なんと!これは……この番人達は、錬金釜を務める事も出来るのですか!」

プラフタもびっくりだ。

「プラフタを……囲めば……素材の力を……乗せる事も……出来る……」

円を描いて並ぶ番人ぷにちゃんの1つが、そう話した。

「まさか……そんな……」

「ぷにちゃん……!どこまで凄くなるの!?」

ソフィーも驚きだ。

 

 

ともかく、ちょこっと調合、オーラバングルの元を作り、明日の旅に備えて眠る事にする。

錬金釜に仕込んだシルヴァリアの完成を見て、まだ暗いうちからアトリエを出る事にした。

 

「いやぁ~……錬金術がこんなにも凄かったなんて、あたしの予想を遥かに超えてるよぉ~……」

ソフィーは呑気に話す。

そんなカフェへの道。

晴れたキルヘンベルとなりそうだ。

そして皆が集まり、依頼の話……

もはや毎週の朝食風景。

今回は封印された寺院に行く話となっている。

 

「おぉ、プラフタの姉さん、錬金術士パーティーだったのか。気をつけて」

自警団のお兄さんに、挨拶されながら出発する。

「あれ、プラフタいつの間に自警団のお兄さんと仲良しさん?」

「ソフィーをここまで見送った日ですね。色々とお話しをさせていただきました」

錬金荷車2号を引くジュリオさん、それを追いかける最後尾に、ソフィーとプラフタが歩いて行く。

 

 

キルヘンベルを西へ。

お昼には恵みの森へとたどり着く。この辺りでお昼となる。

「今回は境界の裾野を越えた先、封印された寺院か……太陽と月の原野もそうだが、封印された寺院には滅びたマナの柱が眠っているな。1つのパンドラの箱の入り口、ともなっている場所だ」

出発の時、コルちゃんと共に眠っていたフリッツさんは、昼時に起こされ、皆で囲む野営の食卓にて呟く。

 

「キルヘンベルから近い所でもありますけど……そんな怖い所なんですか?」

ソフィーは尋ねる。

「まあ、まだ入り口よりも手前だが。まあ、魔物の住み着く寺院だからな。君には怖い場所だろう」

フリッツさんは答える。

オスカーが食事の器に煮物を入れている。

レオンさんとモニカが配る。

「まあでも、ソフィーには私達が居るから大丈夫よね。私達にも、ソフィーが居るし」

モニカが言う。

「まあ、こんな所はソフィーの特性適用の力が無いと厳しいわよね」

レオンさんもそう話す。

「装飾品も改良しないと今一つ安心できない、みたいな所はありますけれど」

ソフィーは食事の器を手に、話す。

武器の改良、防具の改良、装飾品の改良……

出来ても3日では2つか3つくらいだ。

なのに、これから薬の開発……

ちょっと急ぎ足過ぎるかも?

……ふと、そんな事を思う。

 

「でも、そんな所に行かせてしまう事になるのは心苦しいんだけどね。どうにも申し訳ない成り行きで……」

そんな時にジュリオさんが言う。

「いえいえ、プラフタの魂の移し方を教えてくれた人ですので。駆けつけるのは当然です!」

ソフィーは胸を叩く。

取り敢えずオリフラム公爵も居るし……

強敵を弱くする小悪魔のいたずらの君もあるし……

強敵に向けた会議をしたりして、先へと進む。

 

 

夕方から夜……

フリッツさんが引く荷車の横にハロルさん。

左右をソフィーとオスカーで、後ろにジュリオさんが歩く。

「ん?」

ふと、ハロルさんが横を見る。

「なんだかこっちからいい匂いがするな」

オスカーもそちらを見る。

境界の裾野を越えた辺りの街道はずれ……

 

夕食がまだだったし、行ってみる事にすると、街道をはずれてすぐ、大きな泥水の水たまりがあった。しかも煙がでている。

「うう……なんか怖そうな所……」

荷車1階のソフィーは怯む。

ところが、真っ赤ガニ、真っ青ガニ、ヌルヌルトカゲと採れて、ハロルさんもレオンさんも、皆ご機嫌な夕食となった。

 

 

そして夜21時。

封印された寺院に到着した。

「結構立派な建物ねぇ……」

レオンさんが感心する。

「なかなか味のある屋敷だな。ソフィーの好きそうな……」

モニカにしがみつくソフィーのすぐ隣で、ハロルさんも呟く。

「ううう……祈りの絶えた教会の地下よりも怖い雰囲気だよぉ……」

モニカにしがみつき、ソフィーは言う。

「確かに雰囲気あるわねぇ……なんか悪魔みたいな魔物が入り口を固めてるみたいだし……」

正面入り口、グレートデーモン、スカーレディの群れがやたら居るし。

 

「さて、戦闘と言う事なのかな……」

「そうだね。気を引き締めてかかるとしよう」

「戦いの記憶を取り戻す為、やりましょう」

ジュリオさん、フリッツさん、プラフタとやる気オーラ3人が前に出る。

 

「オ、オイラは背後の警戒をするな」

「私もオスカーさんの警戒をするです」

「まあ、前を取られちゃったなら、警戒しないとね」

「荷車でも見ておくか……」

「仕方ないわね」

オスカー、コルちゃん、モニカ、ハロルさん、レオンさんは周囲の警戒の配置につく。

「これなら、オリフラム公爵も投げ込めるかも……」

そしてソフィーは前衛の後方。

パーティーの中央ぐらいが固定位置となる。

そしてグレートデーモン達との戦闘。

なぜかしら、あまり危なげもなく勝てる。

 

 

正面入り口は閉まっていて、封印された寺院の周囲を探して歩く。

赤いうにがころころ落ちている。

しかもつやぴかキラキラで、美味しそうなやつばかり!

「なんか……赤いうにの名産地なのかも!」

ソフィーのテンションも上がる。

「現金だなぁ、ソフィーは」

オスカーも一緒に拾い集める。

「ふむ……窓も無いです……中に入るには……」

 

コルちゃんとハロルさん、レオンさんとプラフタで入り口探しをしながら、一行は封印された寺院をぐるっと回る。

そんな中、メタリックなぷにぷに?と、グスタフとカイゼルピジョンとの戦闘も。

戦闘は危なげもなく勝てるので、こちらのぷにちゃんパワーがかなり強くなっているみたいだ。

 

 

……朝。オスカーが1つの木に聞いて、地下への入り口の情報を掴む。

そしてお昼くらいに、草で隠されていた地下への階段を見つけて、お昼の食事を取ってから、ようやく中に入る。

「うわぁ……中はまた……」

ソフィーは、またもやモニカにしがみつく。

封印された寺院の周囲は、明るくなってみるとそんなに怖くなくなったけれど、中は雰囲気ある。

 

「もう。お化けも悪魔も倒して歩いてるのに、何が怖いのよ……」

「それはそれ、これはこれなんだよぉ……」

やたら広い所。

錬金荷車2号も何とか入れる。

でも、この錬金荷車2号もそろそろ改良が必要な感じがする。

本棚が並ぶ部屋……

本が飛んでいる。

飛ぶ本の魔物は、どうやらこちらに気づいていないみたいで、やり過ごす。

部屋を出ると廊下……

次の部屋、次の部屋……

と、見ていく。

 

悪魔が飛んでる部屋をそっとやり過ごし、小悪魔が飛び回っている部屋をそっとやり過ごす。

そして次の部屋を見ると、赤いマント?のおじさんが本を立ち読みしていた。

「ナザルスさん!」

ジュリオさんが声を掛ける。

おじさんは本を戻すと、ジュリオさんの方を見る。

「おお。これはこれは大所帯で」

そして自己紹介したり、この辺りの本の内容を話したりする。

気さくなおじさんだけど、強力な魔物の毒を受けて、魔物になりそうになるらしく、街に顔を出せない、と話した。

 

「強力な魔物の毒を……1人で戦っているんですか?」

ソフィーは聞いてみる。

見る限り1人しか居ないし、仲間の話も出てくるのかも……

そう思いながら。

「強力な魔物に毒を受けるまでは、仲間も居たのだが……この毒を受けてからは、私が暴走してしまうからな……仲間を失ってしまったのだ」

ナザルスさんは話す。

マナの柱の力を受けて、錬金術士として過ごして来た日々。

そして今まさにソフィーが感じているように、魔物との戦闘に危なげは無く、錬金術の素材を手に入れ、研究する日々……

ただそれに慣れて行き、パンドラの箱……

滅びたマナの柱へと近付いていく。

それはまるでパン屑の道を行く鳥のように。

その先に、手に負えない強力な魔物が待ち構えていた……

と、そう話した。

 

「うわぁ……」

ソフィーはモニカにしがみつきながら、その話を聞く。

あまりにも自分と重なる所のある話。

 

「うぉ……っ!おおおぉぉっ……!」

ナザルスさんは胸を押さえ、魔物となった左腕を振り回し始めた。

「ナザルスさん!」

ジュリオさんが大剣を盾にナザルスさんに詰め寄る。

振り回す左腕を防ぎ、ナザルスさんを押して行く。

「うゴォォ……ゴゴォォォォォ!」

ナザルスさんは完全に魔物となって、ジュリオさんに殴りかかるも、距離を詰められ過ぎてうまく行かず、掴もうと両腕を広げる。

「はあっ!」

そこを押されて、後ろに倒れた。

バキッ!バキバキッ!

「ウゴオォォォ……ォォォ……」

そして後ろに転倒させられ、床が抜けて地下へと落ちて行った。

 

「うわあぁぁ……」

一応戦闘配置に付いたものの、杖にしがみつくソフィーが変な悲鳴とため息を漏らす。

ジュリオさんのすぐ後ろには、やる気のプラフタと、フリッツさんが構えていた。

「倒す訳にも行かぬ相手なら、落ちてくれたのは助かるな。あのような毒に効く薬など、あるのかね?」

穴を見つめたまま、フリッツさんが問いかける。

「心当たりはあります。ですがすぐに出来る、というシロモノでもないのですが」

プラフタはソフィーに向き直り、そう話す。

「わ、忘れないうちに帰ろうか?」

ソフィーは杖にしがみついていた。

「ソフィーが怯えきってるみたいだなぁ……帰ろうかジュリオさん」

オスカーは。そう言ってコルちゃんを見る。

コルちゃんは平然としていた。

「ん?どうしました?オスカーさん」

「いや、コル助もビビったりしてるかな、と思ってな……」

ともかく、妖精の道標を使ってアトリエへと帰る。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[肌襦袢]
コルちゃんから貰ったオリエンタルなパジャマ。薄い青がオシャレ。
[錬金術生活]
図鑑の調合とか、ちょこっと調合とか錬金術談義とか、色々してる時間。
[キルヘンミルクスネーク]
初心を忘れてはいけない。

[北の人形劇]
雨で中止になることもしばしば。雨で中止だと、子供達は勉強の時間になるんだって。
[南の人形劇]
雨でもやるけど、雨の時は人形劇はしない。雨でも、お酒は飲む。
[コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会]
お酒を飲むオジサンの集まり。
[錬金荷車1号]
2階建て、飾り付け華やかな噴水広場屋台。お酒とおつまみ、サンドイッチが売られていたり。

[コル助]
コルちゃんの愛称。コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会のオジサンは、そう呼ばないみたい。
[タードリッツ]
炉の火を見てくれるらしい冒険者の、奥さんと思われる。

[番人ぷにちゃん]
なんとコンテナ内ちょこっと調合にも、ぴょこぴょこをぴょこぴょこさせながら手伝える!恐ろしい成長と増殖をしているコンテナの番人。
[番人ぷにちゃん隊長]
特に隊長、という訳でもないけれど、この番人ぷにちゃんだけ、ぷにちゃんとは違う人格。

[錬金荷車2号]
冒険の友。2階建て荷車。
[滅びたマナの柱]
何らかの原因で魔物を産み出し続けているマナの柱。人の住めない地域となっている。

オリフラム[公爵]
強敵用、トンデモ爆弾。威力は未知数。
小悪魔のいたずら[の君]
強敵用、弱体化の呪い。威力は未知数。

[真っ赤ガニ]
でかいザリガニ。泥水や沼に住む。なのにこんがり焼くと凄く美味しい、高級食材。
[真っ青ガニ]
でかいザリガニ。泥水や沼に住む。こちらもこんがり焼くと凄く美味しい、高級食材。
[ヌルヌルトカゲ]
甲羅を持たない亀なのだとか。トカゲと言うにはしっぽが短いし、亀と言うには長い……妙なしっぽをしている。煮物にすると無駄に元気になれるという、高級食材。



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錬金術のアトリエ 44

錬金術のアトリエ 44

 

ナザルスさんが落ちて、床が抜けた古い部屋を出ると、古い廊下ではなく、アトリエへの道となっていた。

妖精の道標……

相変わらず凄い……

 

そして少し赤い太陽の照らす道を通って、アトリエへと帰る。

蕾の日の夕方。

「はぁ~……安心するなぁ、この場所」

ソフィーは安堵する。

とんでもないお化け屋敷に冒険してしまったものだけど、ここで解放された気分になる。

そしてコンテナの外に、持って来た素材達を運び入れて行き、空の錬金荷車2号と、フリッツさん、ハロルさん、レオンさん、ジュリオさんは帰って行く。

 

 

カワニレの木の場所で、オスカーは待ち、ソフィーとコルちゃん、モニカとプラフタでコンテナの中に素材をしまう。

「ん?なんか番人ぷにちゃんが更に増えてるような……」

コンテナの中で、ソフィーはふと思う。

「うわあぁぁ!ちょっと!天井!」

上を指すモニカ。

天井を見ると、番人ぷにちゃん達が天井一面に張り付いてぷにぷにしてる。

 

「うわあぁぁ!」

「なんと!」

「これは!」

ソフィーとプラフタ、コルちゃんも驚く。

こんな広大な天井を埋めているのだから、とんでもない数なのだ。

「ええ!?これって……結構前からこうだったの?」

ソフィーは棚の番人ぷにちゃん達に聞いてみる。

「いえいえ、錬金術士殿。つい先日、こうなりました」

番人ぷにちゃん隊長が答えた。

「この場所での調合もあるし、もっと大きい調合の予感もしたからね。ど~んと増えておいたよ」

 

番人ぷにちゃんも答える。

今のぷにちゃんは女の子の人格みたいだ。

そして服を脱げ脱げダンスしてる。

今コンテナに入れた素材もぺたぺたしてるし。

「ソフィーさん、ここでも調合してるですか?」

コルちゃんは、脱いだ服を番人ぷにちゃん達に渡しながらソフィーに尋ねる。

「あはは……ついこの前から、ね」

ソフィーは指を絡めて笑う。

ともあれ4人は、ハダカ族になってぷにちゃんの部屋へ行く。

「お帰り~。時間はあと114時間あるよ」

今日もご機嫌、とんでもサイズのぷにちゃんが口を開ける。

「いやぁ~……今回は本当に怖かったよぉ~」

ソフィーは頭を掻きながらその口の中に入る。

不安とか悩みなんかも、ぷにちゃんの中なら涼しい風が忘れさせてくれるし。

 

「ソフィーは怖がり過ぎなんじゃないかしら?」

モニカは言う。

「確かに。特に帰る間際の怖がり方は尋常ではなかったように思います」

コルちゃんもそう言って首を傾げる。

でも、そう話してから繰り広げられた、ソフィーのイメージを見てしまった。

 

 

………

フリッツさんも、言っていた。

パンドラの箱の中に入り、仲間を失った……と。

ナザルスさんも、1人でこの封印された寺院の魔物を、どうにかできるくらいの強さを持っている。

でも、そんなナザルスさんの手に負えない程の強敵と戦い、今は1人……

魔物と人間の合間をさまよっていて……

ソフィーも、このまま新しい調合……

新しい調合……

新しい強敵……

と進んだ先に、まるで待ち受ける罠のように、何かいけない場所に踏み込むのかも知れない……

その結果……

左腕から魔物になり、1人でさまようナザルスさんの姿は、そのままソフィーには他人事ではなかった。

そう考えると、プラフタも……

きっと錬金術を進めた末に……

本になり、記憶を失って……

そんな風に思えてならない……

 

……罠に踏み込めば……

 

モニカを失い、コルちゃんを失い、オスカーを失って……

ソフィーもたった1人で……

ナザルスさんの姿かも知れないし、プラフタのように、本の姿かも知れない。

フリッツさんは……

でもフリッツさんも1人で、ふらふらとこのキルヘンベルへと来た。

………

 

 

「確かに怖いわ………」

モニカは理解する。

ナザルスさんであれフリッツさんであれ、プラフタであれ……

一体何が起きたのかは分からないけれども……

でもモニカもソフィー同様にぷにちゃんの力で、驚異的に強くなったのだ。

 

……その強さの先にあるもの……

 

「確かに怖いですね……封印された寺院だって、既にソフィーさんの特性適用が無ければ……とても手に負える場所ではありません」

コルちゃんも考える。

「私も……でもそうですね。1人で色々な採取地に行っていた、とは考えづらいですね。そう……私もナザルスのように……そう考えるのが自然なのかも知れません……」

プラフタも思う。

「ふむ……いつになくシリアスだね?でも、眠るには邪魔だねぇ……吹き飛ばしておく?今、悶々とする?」

ぷにちゃんは尋ねる。

そして時間を止めてゆっくり悶々としてから……

結局は吹き飛ばしてもらって眠る。

 

 

起きて、4人でコンテナを出て……

モニカとコルちゃんと共に、ソフィーはカワニレの木の所に居るオスカーの所へと行く。

「じゃあ、また旅は双葉の日で!」

そして帰るモニカとコルちゃんを見送る。

「そうね。そこまでは調合で忙しいみたいだし」

「難解な薬も目指さないとなんですよね」

モニカとコルちゃんは帰って行く。

そしてソフィーはオスカーとアトリエに帰る。

ソフィーの中の、あれだけ怖いイメージも、ぷにちゃんに吹き飛ばしてもらうと、ほとんど戻って来なかった。

 

「腹減ったなぁ……」

オスカーは肌襦袢で出てきたソフィーの肩に手を乗せる。

「赤いうに、どう食べようか?」

ソフィーはオスカーのお腹を手のひらで叩く。

そうして2人で帰るアトリエ。

 

 

ともかく、暖炉の側でオスカーを洗う。

プラフタはぷにちゃんの部屋に残っていて、アトリエには居ない。

「なんかやたら怖がってたから心配したけど、平気そうだな。ソフィー」

まずは服から洗ういつもの流れ。

ソフィーとオスカーでオスカーの服を洗っていく。

 

「まあね~。ぷにちゃんの部屋で寝ると、寝るのに邪魔なモヤモヤとかウキウキワクワクとか、吹き飛ばしてくれるんだよね。それにかなり長い時間過ごしてるからかなぁ……」

肌襦袢を少し濡らしながら、ソフィーはオスカーのズボンを洗う。

草の汚れがとにかく多い。

「オイラからするとものの10分くらいだから、不思議に思う、ってだけかぁ……」

オスカーが相変わらずのおとぼけボイスで話す。

聞くと安心する声……

「でもね、あたしも危険な場所に突撃しまくってるから、ナザルスさんみたいに手に負えない強力な魔物に出くわすのかな、って考えたんだ」

安心しながらも、ソフィーは不安を話す。

いや、安心したから話せた話なのかも。

「なるほど。封印された寺院も、知らない所への突撃だったもんなぁ」

オスカーはそう話すと、少し手を止めた。

「うん。ナザルスさんも、そんな感じで冒険したのかな、って。そしてプラフタも、フリッツさんも」

ソフィーも手を止めて、オスカーを見る。

 

「なるほど。そう考えられるなぁ……悪い方に考えてるなんて、ソフィーらしくない、とオイラは思ったけど、これからは慎重さも必要かもだなぁ」

オスカーは泡だらけの手を顎に置いて、遠い目を少し上に向ける。

「なんか、3人で雛鳥の林に冒険してから……全然時間なんて経ってないのに、こんなに強くなってさ、それは嬉しいけど、不思議なんだよね。ぷにちゃんパワーの都合も良すぎるし、夢みたい」

ソフィーはまた、オスカーの洗濯物に手を付ける。

「痩せてたのも、解決したもんなぁ?」

「ダークマターのアトリエは長かったんだけどね?」

「あぁ……それに比べると、トントン拍子過ぎるよなぁ」

そんな話をしつつ、ソフィーもハダカ族になって、自身も泡に濡らしながら、次はオスカーの身体を洗う。

 

そして、さすがにエロエロする気分ではなくて、夕食を食べると、オスカーは帰って行った。

オスカーが帰って行くと、コンテナからプラフタが出てきた。

「さすがに気分ではありませんでしたか」

ベッドに横になったソフィーに、プラフタは話し掛ける。

新しい錬金術衣装のソフィー。

「まあ、ねぇ……」

ソフィーはベッドから飛び出てる足をぱたぱたさせて、ベッドの天蓋を眺めて呟く。

「邪魔をしないように気を遣ってしまいましたが、やはりマナの柱の中の方が、万能厄除け香のレシピも、記憶を辿るのに良いみたいですね」

プラフタはそう話すと、ソフィーの乗るベッドに座る。

「ナザルスさんを治せるやつ?」

ソフィーは身体を起こし、プラフタを見る。

「まあ、治せる公算はありますが、やってみない事には……」

そしてソフィーとプラフタで万能厄除け香のレシピ構築。その主成分である、万薬のもとのレシピはわからず、なので作れない。

 

なので、普通に装飾品でのパワーアップを目指す錬金術生活、と方針が決まる。

モノクログラスを更にハイクオリティーにする為、雪花水晶の作成6時間。

これを仕込む。

「寝たばっかりだからなぁ……夜なのに眠れないよぉ……」

ソフィーがボヤく。

そして、長い錬金術生活が始まる。

 

 

………

「ふむ……今日は遊びに出るか……」

所は変わり、時計屋。

ハロルが遊びに行く服を着る。

少し破れたふくらはぎまでのパンツ、腹を見せる短いシャツ。それに帽子と短いマント。

旅の吟遊詩人をイメージした服装。

それに装飾品がチャラつく。

旅に出ていたのは双葉の日、蕾の日。

それも蕾の日の夕方には帰って来たものだから、時間もある。

 

「あら、飲みに行くのかしら?」

アメリアが尋ねる。

アメリアは今、身体を洗ったりした後なので、白い短パンにそれを隠すくらいの長いシャツ。

こちらはあっさりスッキリなスタイル。

「酒と、地下室が取れれば地下室だ」

ハロルはニヤリと笑う。

ラーメル宿が持つ秘密の地下室、これの常連の1人がハロルだ。

商売の女の子を連れては、欲望を吐き出してきたそうで、今はアメリアがそこに行っている。

「もう、じっとしていられないんだから……」

アメリアもいそいそと準備をする。

何もかも吐き出させられるハロルの責めに、クセになっている感じがあって……

「お前も好きだな?だがまずは腹ごしらえだがな」

ハロルは怪しい笑みを浮かべる。

その向けられた笑顔に、アメリアはきゅんと来て胸を押さえた。

 

 

そして2人は裏ストリート、ラーメル宿へ。

ガラの悪そうな冒険者連中も、ここ最近で随分増えた。

「ローンは空いてるか?」

ラーメル宿にそう尋ねる。地下室を指す合言葉。

「空いてるよ。今は夕食で外してるがね。ハロルはこれから夕食かい?もう済ませたのかい?」

ラーメル宿の受付のオヤジが応える。

「これからだ。じゃあ、いつもの屋台か、その隣に居る」

「伝えて、向かわせるよ」

ラーメル宿も混む程に、賑わっている。

そんな人々を縫って、ハロルは出ていく。

 

 

「ソレオマール入荷あと2つだよ~!早いモン勝ち1000コールだ!」

ガラの悪そうな冒険者で賑わう屋台。

ハロルとアメリアは空いてる席に座る。

「ローンも食うだろう多分。ソレオマール、こっちだ」

ハロルは手を上げる。

「あいよ!うおぉ……ハロルか……」

屋台のオヤジは近づき、ソレオマールが小物であると明かす。

「どんぐらいだ?」

ハロルは尋ねる。

「こんなもんよ」

オヤジは両手で示す。

大エビ、ソレオマールとしてはやたら小さい。

「まあ、それでいい。ソレオマールと煮物だな。それとラーメル酒」

「あたしも、ラーメル酒ね」

注文をして座って待つ。

「あのオヤジさん、あなたに怯えてるんじゃない?」

アメリアが微笑む。

「随分と暴れたからな。今回は罪滅ぼしだ」

ハロルはそう答える。

あまり待つ事もなく、ラーメル酒と煮物が出てきた。

喧騒の中、2人の時間が流れる。

 

 

こんがり焼けたソレオマールが出て来た頃、ハロルとアメリアは2杯目の酒を頼む。

「お待たせしました~」

その時に、ローンが来た。地下室の案内人であり、身体を売る女で、22歳。

あまり客に受けない女だ。

顔がやたら長い。

「おお。お前も食え。ソレオマールとはいえ、小物だけどな。酒も頼んでいいぞ」

ローンはラーメル酒を注文する。

地下室の案内人となったのも、顔の長い客ウケのしない女を、抱き合わせで売りつける為だった。

 

屋台でゆっくりと食事をして、お楽しみの地下室へと行く。

これがスラム住宅の中にあり、そのボロ屋だけ、深い地下室がある。

 

 

アメリアの服を脱がすのはローンの役目。

女を縛ってハジケさせる、この場所の番人だ。

「ふ~ん……今日も綺麗になってるな」

初日にローンを殴り倒したハロルが呟く。

地下室の番人のクセにあまりにも地下室が汚く、思い知らせてやったのだが、1年前の話だ。

「まあ……客もないので……」

ローンは小さな声で言う。

そして繊維布、革のベルト、ふわふわクロース、ロープと鞄から道具を取り出す。

「さて、今日もハジケ飛んで貰うとするか、アメリア」

服を脱がされているアメリアに、ハロルが微笑む。

アメリアは頬を染めて俯いた。

 

 

………

オシャレ貴族な風体のハロルにアタックしたのは、レオンと名乗るアメリアだった。

面倒臭そうな顔をしていたものの、酒を飲みに行き、色々と話す。

そうして話して判った事は、アメリアが、嘘が下手だと言う事だった。

「お前と付き合うのは構わない。悪い奴じゃなさそうだからな。だが、嘘と付き合うのは気持ちが悪い。見え透いた嘘だからな」

ハロルはそう言った。

レオンという名前が偽名であることも、ほんの少し話しただけで、ハロルは嗅ぎ付けた。

恐ろしく嘘に敏感なのか。

アメリア・レオンマイヤーと名乗ると、ハロルは納得をした。

誰に広める訳でもないし、嘘も尊重する、とハロルは約束してくれて、人前ではアメリアとは呼ばないと言った。

 

旅人だから、と時計屋で寝かせて貰える事になった。

時計屋……

だけどハロルは銃を作る。

あまり器用な人ではないみたいで、銃も粗末な物だった。

そして打ち明けてはみたものの、ハロルはアメリア・レオンマイヤーのブランドも、マナの柱の事も知らなかった。

程なくして、アメリアからベッドに誘うと、乗って来た。

が、それはアメリアが満足出来る程には、ハジケたり出来ないものだった。

「俺の専門は地下室だからな。悪い気はしないが、ここで、となるとあまり気乗りはしない」

ハロルはそう言って、程々で目を閉じる。

「地下室?ここに地下室があるの?」

アメリアは尋ねる。

「ない。ラーメル宿が持つ部屋だな。俺も男だし、裏ストリートの常連だからな。女は一晩買う専門だ。その時に地下室を使う」

目を閉じたまま、ハロルは話す。

「そ、そうなの……」

アメリアは言葉に困る。

「どうしても満足するまでハジケたい、と言うなら今度、地下室に案内しようか。そうでもないなら、こんな感じだ」

目を閉じたまま、ハロルはそう話した。

あくまで、ハロルが引きずり込んだりはしないみたいだった。

 

 

それからの日々も、言葉は交わす。

そんな中にマナの柱の話になった。

「ついさっき殴られたんだが、全く身体に影響が無かった……これがマナの柱の力か?」

ホルストの裏酒場で、冒険者と出て行ったハロルが戻り、そう言った。

「え……?マナの柱の力って事かしら……?」

アメリアは驚く。

マナの柱の神殿の外でも、この力は男の人に移る、という事を始めて知ったからだ。

 

「どういう事だ?」

「ここでは話せないわ……」

アメリアは喧騒の酒場を見る。

 

 

そして時計屋に戻り、アメリアは話す。

マナの神殿、と呼ばれる場所で力を得る事が出来た事を。

ただ、そのマナの神殿と呼ばれる場所は、薄汚い、神父やら神官やら、そういう役職をもつ男達に守られていた。

仕立屋として社交界に入り、無能な男共を内心蔑んで生きてきて……

その先で、マナの神殿に入る許可を得る事が出来た。

1人の神官に取り入って、結婚までして、ようやく……

それまで2年程かかった。まだ19歳の頃……

そしてマナの柱の力を得る為の契約をする。

それは1年の間、自分を神殿に捧げる事だった。

 

結婚相手は没落し、自分を捧げるのだから離婚となった。

アメリアの1人娘は、そこに仕えていた、人の良い商人が引き受けてくれたそうだ。

 

 

それからの1年……

今まで蔑んでいた神父神官、何らかの色々な肩書きのある男共に、慰み者となって生きて……

それが終わると放逐された。

健康であったし、中々の金を受けた。

そして、マナの柱の力を得た。

契約は、ちゃんと守られた訳だ。

アダレットへと流れて来て、仕立屋として働き、アダレット服飾品評会で優勝となり、レオンマイヤーブランドとして店を持つに至り……

でもその生活になぜか満足出来ず、こうして1人旅としてキルヘンベルへと流れ着いた。

今、24歳になった。

……そう話した。

 

 

「マナの柱の力ってのは、身体を重ねた男に移る……それで俺は殴られても痛くなかった訳か」

暗い時計屋の寝室。

一通り話を聞いたハロルは呟く。

「実は子持ちだったなんて、ガッカリした?」

「そんな所にこだわりはないな。だが波乱に富んだ人生で、俺なんて田舎で暴れてるだけだからな……恵まれているというのも考え物だ」

ベッドで寝る2人。

ハロルはアメリアの肩を撫でる。

どこからともなく訪れたアメリアは、すぐに懐いた猫のように、すっかり寝床を共にするようになった。

 

「波乱……ねぇ……」

アメリアは枕に頭を沈めて、ため息を吐いた。

「お前は力を勝ち取った訳だからな。俺は、気付いたら貰っていた、というだけの話だ」

「ふふん、それがキッカケで、貴方も何かを勝ち取らないといけなくなるんじゃないかしら?」

アメリアは目を閉じる。

「そうだな。ともかく、俺もお前に興味が出てきたな。明日、是非とも地下室に連れて行きたくなった」

ハロルは身体を起こし、アメリアの胸に手を置いた。

「それは……どういう事かしら?」

アメリアは薄く目を開き、置かれた手に、手を重ねた。

「お前は、地下室に行きたくはないか?1年も慰み者になったのなら、ハジケ足りない……そう思っているんじゃないか?」

ハロルは少し乳房を握る。

そしてアメリアの頭のすぐ横に、顔から沈める。

 

「それは……思っているけれど……」

アメリアは目を閉じる。

「どうせ今じゃない。今は寝るだけだ」

ハロルはそう言って寝転がり、ベッドに身体を沈める。

 

 

「さて、どうする?」

後日、ハロルは朝の1番に時計屋を閉めながら聞く。

まだ仕立屋も始めてない、コル露店も無い頃……

特にやらないといけない事も無い。

「お手並み、拝見しようかしら?」

アメリアは笑う。

元々そのつもりで、ハロルもアメリアも裏ストリート行きの服装だった。

そして地下室案内人、ローンと共に朝食を取り、地下室へと向かう道を行く。

「この子は?」

「助手だ。身体を重ねて俺が満足する……そういう事じゃないからな。それにこうして地下室に連れ込む女は、お前でもう……何十人目かだ」

ハロルは答える。

地下室の常連、という話であり、なんと、女から金を取ってやる事の方が多いのだ、とローンは話した。

「そ、そんな人なの?あなた……」

アメリアは怯む。

「俺がそんな紳士に見えたのか?」

ハロルは微笑んで見せる。

そして、地下室を持つスラムの民家へと来た。

民家には貧しい服装のオヤジが寝ている。

そして酒臭い。

これも、この地下室をカムフラージュする為の、ここに住むオヤジらしい。

……手が込んでいる。

 

「あなたの他にも使う人が居るの?」

「……さあな。それは詮索するべき話でもない」

3人は地下室へと降りて行く。

深い地下室に入ると色々な道具があり、その為の場所だと判る。

「さて、始めようか?アメリア」

ハロルは微笑む。

 

 

「んっ……」

ハダカになり、アメリアは椅子に座る。

両方の手首に繊維布、革のベルト、小さな毛布と巻いて、太い紐の輪を掛ける。

その金具からは縄となっていて、天井に掛ける。

まずは両手を広げるように……

ハロルはアメリアの乳首に銀の糸を巻く。

その糸の感覚に、アメリアは少し声を立てた。

「アメリア、お前は1年もの間、慰み者になったと言ったな……こうして縛られる事もあったんじゃないか?」

ハロルは手際よく乳首に糸を巻き、ほんの小さな金具で縛る。

それを左右に掛けながら、そう尋ねる。

「まあ……そうね……」

アメリアは答える。

もっと豪華な部屋で、縄の跡がつくぐらいに縛られて……

そんな事を思い出す。

「人に話したくない事が沢山ありそうだ……秘密があればあるほど、お前はそれを吐いた時に気持ち良くなれる」

ハロルはそう言って、乳首の糸をもみ込む。

「んっ……これっ……」

その感覚にアメリアは声を立てる。

肩が震えて、途端に息が荒くなる。

糸が食い込む感覚は優しくて、それでいてハロルの指遣い、力加減が上手いのか、目を細めて口を開く。

 

「敏感だな、アメリア……」

ハロルが言う。

アメリアは身体を捩らせるように動き、広げて繋がれた縄を引く。

ローンはアメリアの足首にも同じベルトを掛ける。

少し開くように、床に固定されていく。

「あなた……こんな上手いなんて……」

アメリアは顔を上げる。

ハロルは平然とした、でも真剣な顔つきでアメリアを見ていた。

「女が金を払う程だ。技術は磨いているさ。何もかも吐き出して、気持ち良くなれば、美容にもいいらしい。俺はそうして吐き出す役目、ここはその為の場所だ」

ハロルはそう言って、乳房に手のひらを広げる。

乳首の糸は食い込んだまま、乳房のマッサージをされると、アメリアはまた顔を下げて口を開く。

唇の端から涎が垂れた。

「思ったよりも溜まってるみたいだな。こうされる事を知ってる身体なら、尚更か」

ハロルの手のひらは乳房に広がり、背中に、肩に游ぐ。

そうされる手のひらの熱に、アメリアは身体を捩らせ、震わせる。

 

……乳首に食い込んだままの糸が、あっさりとアメリアを降参させる。

「うっ……はぁんっ……はっ……」

「しかし、可愛いな……1年の慰み者生活の時も、さぞや人気だったろう?代わる代わる男に抱かれて遊ばれて……」

身体を揺らし、震わすアメリアにハロルが尋ねる。

耳許で、落ち着いた声……

「あ……あっ……」

耳許の声に、アメリアは顔を赤くする。

ローンはそんなアメリアの腰を掴み、両手を繋ぐ縄を引き、立つように促す。

「代わる代わる抱かれた日々を、お前の身体は忘れてやしないんだな?だからここに来たんだ……」

アメリアは立ち上がり、ハロルは背中をさする。

腰に游ぎ、お尻の割れ目に指を游がせ、背中に戻る。

 

「そっ……あっ!……んうぅっ!……」

不意にワレメを撫でられて、アメリアはびくん、びくん、と身体を震わせてハジケる。

その手はすぐに引っ込み、お尻を撫でる。

「で?どうだ?代わる代わる遊ばれて、こうしてハジケ回ったんじゃないのか?」

肩を、頬を撫でるハロルが尋ねる。

 

「こ……こんなもんじゃなかったわ……」

そんなハロルに、アメリアは言う。

「こちらも、心得てる。ちゃんと何もかも吐き出させてやれるように、な」

ハロルは微笑み、アメリアに唇を寄せる。

そして唇を求め合うようなキスをする。

 

「あなたも、こうして色んな女の子と?」

唇が離れて、アメリアは言う。

「キスの話か?そりゃそうだろ。だがアメリア、お前はいい味がしたな」

お互いの髪が触れ合う距離で、ハロルは言う。

いつもの声に、アメリアは少し安心する。

「嘘よ」

アメリアは微笑み、明るい声で言った。

「どうだろうな」

ハロルも微笑み、顔が離れていく。

………

 

 

「さて、もう何度目かな……」

ハロルはアメリアの乳首に銀の糸を巻きつけ、そう言った。

「あたしも好きよね……呆れちゃうわ」

アメリアはちろっ、と舌を出して見せる。

……コル助が露店を開く前にこうして……

コル助が露店を開いて……

ソフィーのパーティーに参加するようになって……

レオンの仕立屋を開いて……

錬金荷車1号2号を作って……

 

 

気が乗った時に、こうしてこの地下室へと来る。

その度に色々な事を白状した。

言ってはいけないだろう事を白状する度に、より強く……

より激しくハジケ飛んでしまえる。

1年、代わる代わる色々な男にオモチャにされた時よりも、優しく激しく狂わせて……

何もかも吐き出させてくれる。

「こうする度に、アメリア……俺もお前に吸い込まれていくようだ……お互い様だな」

 

そして地下室の情事は続く……

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[錬金荷車2号]
2階建て荷車。荷物も沢山積める。そろそろ空間を誤魔化す錬金術を施して、更に沢山積めたり小型化したりしたいと、企む所。

[カワニレの木]
ソフィーのアトリエの側にある木。オスカーが待ち時間によく話す木。

[番人ぷにちゃん達]
遂に天井に張り付くようになっていたり。その天井も高い。
[番人ぷにちゃん隊長]
見た目、番人ぷにちゃんと何も変わらないので、見分けるのは不可能。
[ぷにちゃん]
更にでっかくなった!もはやアトリエよりも、ぷにちゃんの部屋の方がでかい。天井も高いし。

[肌襦袢]
オシャレオリエンタルなパジャマ。エロエロしやすくもある。

[ハロル×アメリア]
ゲームでも、2人の配置はやたら近い。なお、レオンの身の上話は、ゲーム上では全く全然そんな設定はない。「アダレットの服飾品評会で優勝」「社交界に触れる生活」というのだけは、ゲームでも語られる。

[秘密の地下室]
ラーメル宿が持つ貸部屋。その場所はラーメル宿から離れた民家の地下室。離れた場所に点在する。ハードなエロエロをする需要にも応えている。
[ローン]
1番地下室の案内人。客受けしない容姿の女。

[ソレオマール]
真っ赤ガニに似たザリガニ。こんがり焼くと凄く美味しい高級食材。
[ラーメル酒]
ビールとウィスキーの中間みたいな酒。アルコールの強いビール、といった感じ。



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錬金術のアトリエ 45

錬金術のアトリエ 45

 

種の日の朝……

「人形劇!行くしかない!」

ソフィーとプラフタはアトリエを出る。

蕾の日の夕方に帰り、開花の日、果実の日……

と、錬金術生活して、プラフタの新しい武器、オーラバングル完成!

更に進化版モノクログラス、ソフィーの新しい武器、さすらいの杖!

……と、完成させていた。

 

 

さらに万薬のもと、の手掛かりも掴んだ。

オスカー曰く、薬ってのは植物から作られるハズ。

だからそれっぽい植物を調べておいてくれるそうだ。

ともかく、ソフィーは新しい杖、太陽と翼が先端に付いた、さすらいの杖を立ててお祈りをする。

そんな種の日、お祈りの時間のヴァルム教会。

 

 

「次の旅の話をオスカーにされたよ。ナザルスさんを治せる薬の手掛かりかも知れない、って話だったけれど、月と太陽の原野と、山師の水辺みたいなんだ。2つは逆方向なんだけどね」

ジュリオさんが話す。

お祈りが終わると、噴水端会議の時間。

ソフィーもパーティーメンバーで集まって、おしゃべりの時間。

「それは大丈夫です。妖精の道標を2回使えば」

新しい武器とか、鍛冶屋のロジーさんスケジュール事情の話とか、山師の水辺ならまた水遊びの話と泳ぎの話……

温泉の話と、噴水端会議は充実する。

 

そして北の人形劇……

お昼はモニカの家で、エルノアさんとジュリオさんと一緒に。

そしてアトリエに帰るお昼過ぎ。

そのすぐ後にコルちゃんがやって来た。手甲が青い。

「コルネリアも新しい武器になったのですか……動いています!?」

プラフタが近付いて、驚く。

「プラフタさんの武器を作った事により、ロジーさんの鍛冶屋魂もレベルアップ致しまして」

 

仕込み手甲:プニ。と、いうらしいけれど、蠢いている……

「あはは!すっごいぷにぷにしてる!」

そんなコルちゃんの手甲を、ソフィーがめっちゃ揉みながら、凄く幸せそうに笑う。

「あたしの杖もプニが良かった!」

そして思い立つと、壁に立て掛けてあるさすらいの杖を見る。

「ソフィーさんはすでに、ぷにぷに落とし!とか……してるじゃないですか」

コルちゃんは口許を隠して、ジト目でソフィーを見る。

「でも、やっぱりコルちゃんのおっぱいの方が柔らかい……はっ!……ほっ!」

コルちゃんが鮮やかな体裁きでソフィーを投げようとして、ソフィーがそれを綺麗にかわす。

「なんと!」

「へへ~♪」

そして2人で戦い出した。

かと思うと……

「2人とも!」

ソフィーとコルちゃんを、プラフタの悪魔の手が掴むと、ドアを開けてアトリエの外に放り出す。

「そういう事は外でやって下さい!全く……」

2人はうまく着地する。

「プラフタの手が……」

「ナザルスさんよりも凶悪な感じになってるです……」

どうやらオーラバングルになると、ヘクセ・アウリスも全く違う見た目になるみたいだ。

「よく見せてプラフタ!」

「すっごい夢に出てきそうな腕でした!」

2人はプラフタに突撃する。

「もう!なんでそんな子供っぽいハイテンションなのですか!」

2人に取りつかれて、プラフタは苦笑いする。

 

 

そして夕方……

錬金術生活しつつ、ぷにちゃんの部屋でプラフタとイチャイチャしていたら、ぷにちゃんから誰か来るコールが。

その人物が、アトリエのある山に差し掛かった時に言われて、アトリエで待ち構える事に。

 

「誰でしょうか……」

「オスカーじゃない誰か……う~ん……」

ぷにちゃんの力を得ている人だと分かるんだけど、そうでない人の場合、分からない。

ソフィーもプラフタも、予想してみるけど、分からない。

そして、やって来たのはフリッツさんだった。

「ソフィー、君の格好も変わり、プラフタも本ではなくなったからな。プレゼントとして2人分、人形を作ったのだ。いつも世話になっているからな」

ソフィーもプラフタもプレゼントを貰う。

この場合の人形って……

ソフィーは飾ってあるソフィー人形を見る。

クオリティーの低い、だけど可愛い人形。

 

「おお~♪いつもお世話になっているのは、あたしの方ですけど……あ!ちょうど夕食の時間ですね!一緒に食べて行きます?」

プレゼントの箱を窓際テーブルに置いて、ソフィーは尋ねる。

「ふむ……だがすぐに帰らねばならん。好意だけ、受け取っておこう」

フリッツさんは、手のひらを見せてそう言う。

「さては……エリーゼお姉ちゃんと夕食?」

ソフィーは腰を曲げてニタリと笑うと、フリッツさんを低い所から見る。

「まあ……そんな所だな。ではまた明日、まずは錬金荷車に揺られる旅になりそうだが……やはり旅は楽しみになるな」

フリッツさんは、そそくさと帰って行った。

「さて!どんな人形なのかな~?」

ソフィーはプレゼントの箱を開ける。クオリティーの低い、でも新しい衣装の人形が出て……

「ちょ~っ!?こんな能天気な顔してないし!あとヘソ出しどころか胸も出てるし!」

「ふっ!あ~っはっはっはっ!」

2人して笑い転げる。

そして次はプラフタ人形……

 

「頭でっかち!頭でっかちさんだ!」

「これは……っ!はっ!あ~っはっはっはっ!はははっ!」

頭でっかちで大爆笑しているプラフタが出てきた。

凄く幸せそうな、でもクオリティーの低い人形。

 

そしてアトリエに飾る。

そんな人形に見守られながら翌朝まで、錬金術生活!

ギリギリまで調合をするのが常な2人の時間は流れる。

 

 

そして朝一番。

まだ暗いうちにソフィーとプラフタはカフェへと行く。

オスカーもモニカもジュリオさんも、カフェの前に既に居た。

「おや?今日は早いんだね、ソフィー」

ジュリオさんが微笑みかける。

いつもよりも2割増しくらいに、めっちゃ好青年なのは天気がいいからなのか。

「後は誰が?」

プラフタが尋ねる。

コルちゃんは既に八百屋にて、朝ミルクの儀式を終えた所だった。

「ハロルとレオンがまだかな」

ジュリオさんは時計屋の方を見る。

「ともかく!依頼の話とカリカリトースト!お腹減ったよぉ~」

ソフィーはモニカとオスカーの手を引いて、カフェへと入る。

そして依頼の話をしながら朝食を食べて、そして月と太陽の原野へと向かう。

 

 

「コル助、最近はどうなの?ラブラブなの?」

荷車1階に乗ってるコルちゃんに、横を歩くレオンさんが尋ねる。

晴れた旅の道。

「ふっふっふっ、バッチリラブラブです!お陰で私は、自信満々なのです!」

コルちゃんは口許を隠すいつものポーズで、妖しい笑顔で答える。

口許を隠してる青い手甲が、蠢いている手甲が気になる、端から眺めるソフィー。

「ほほ~う。結構夜も充実してたりするの~?」

レオンさんが尋ねる。

旅の道だと、こういう話が弾んで楽しかったりする。

「それは勿論です。私も女の子の端くれですので、ロジーさんもメロメロなのです。この前なんて……」

コルちゃんもノロケたかったりするのか、そう話す。

 

そしてそういう話をすると、決まってハロルさんが馬車から距離を取る。

今回も、そそくさとオスカー側へ離れていく。

そこにソフィーが突撃して、肩をくっつけていく。

「ハ~ロルさんっ!」

恐ろしく可愛い声でのアプローチに、ハロルさんはめっちゃ嫌そうな顔をして見せた。

「うおおっ!ハロルさんっ!その顔は反則でお願いしますっ!」

さすがに距離を取るソフィー。

「……なんだ?レオンとの話なら、レオンに聞いておけ」

そんなソフィーに、ハロルさんは言う。

「う……そ、そうじゃなくてあの~……時計屋!最近ホラ、時計屋さんが人気だな~……って思いましてぇ……」

レオンさんとの話を聞くつもりだったけれど、牽制されたので、時計屋さんの話にしてみるソフィー。

「まあ……おかげで教会から人を頼む事になったな。生意気なガキだが、使える奴だから助かっているな」

ハロルさんは言う。

そしてまた離れていく。

 

そんなまったりのんびりな旅路。

荷車に花とか蜂の巣とか、魔法の蔦なんて増えていく。

お昼と夕方の間くらいに、月と太陽の原野に着いた。

 

 

「よし!皆、じめじめした所を探すんだぞ。太古の昔に、薬に使われているという伝説の、アルタルって名前の苔があるんだよ!緑色に輝く、ふわふわの宝石みたいなのがアルタルだ!」

恐ろしく元気なオスカー。

「石の回りとかにありそうだよね~……」

一面のヘビの草々を掻き分けて、ソフィーとモニカ、ジュリオさんチームで謎のでかい石の根本を探す。

コルちゃん、ハロルさんとレオンさんチームと、プラフタ、オスカー、フリッツさんチームと……

手分けして探して歩く。

 

 

「ここは石碑とか、色々とあるわよねぇ……なんか槍とか持ってる原住民の話、あったじゃない?」

「エルポレ族!エルポレ族の槍が天空を貫いて、恵みの雨が降るやつ!」

ソフィーは目を輝かせる。

人形劇の1つの題目にもなっている。

髭の立派なエルポレ族人形、髪の長い、エルポレ族の娘さん人形の織り成す、あまりにも滑稽な生活の、ちょっと悲しいお話。

 

「この場所に、エルポレ族も居たのかも知れないね。それに、その後の時代にも教会があったみたいだし、興味深い場所でもあるね」

ジュリオさんは石碑を見上げる。

翌朝まで探し歩いて……

結構沢山のアルタルが採れた。

そして妖精の道標で帰る。

今回はそこから、山師の水辺も目指す!

 

 

そして辿り着いたアトリエ……

そのまま荷車だけ空っぽにする為、皆でコンテナに素材を運ぶ。

「おっ?これは新しいソフィー人形だな?なんか……ぷぷっ……」

ベッドの側に飾ってあるソフィー人形とプラフタ人形に、オスカーが気付いた。

「へぇ……ぶっ……あ~はっはっはっ!何コレ!ちょっと!」

皆それぞれ笑っていたけれど、レオンさんが1番笑い転げていた。

 

 

ともかく、錬金荷車2号を空っぽにして、もう一度キルヘンベルを出る。

今度は、山師の水辺へ!

何度も通った森の道。

冒険者6人組とすれ違った。

ロジーさんは居ないパーティーだったみたいで。

そして夜に朝凪のほとり温泉に寄る。

折角来たなら、温泉で過ごさないと!

 

 

「夜だからここで羽を休めている……そういう事なのかも知れんな……」

ハロルさんに寄ってくるいつものカラスに、ハロルさんは呟く。

そして一緒に温泉に入る。

「そのカラスと、本当に仲良しよねぇ」

そこにレオンさんが近寄る。

ソフィーとコルちゃん、モニカはいつものお猿さんがどこからともなくやって来て、仲良くしてるし。

「お前も、いつもの猿が来てるぞ」

レオンさんにも、お猿さんが来る。

ガッツリ雄で、おっぱいめっちゃ触るんだけど、欲情はしないみたいで、レオンさんとモニカ、コルちゃんは髪の毛もめっちゃ触られる。

 

「ソフィーさんだけお母さんで、ずるいです」

「子ども可愛い~♪」

コルちゃんとモニカは、ソフィーに懐いた母ザルの背中にしがみつく、子ザルに夢中だったり。

少し離れて浸かるフリッツさんとプラフタの所には、20匹以上、タヌキが行ったり来たりしてたそうだ。

 

 

そして真夜中、星が眩しい山師の水辺に到着!

オスカー情報によると、ここから地底湖にかけても、薬の材料伝説の植物があるのだと言う。

「凄い星が綺麗ねぇ!」

「しかも今日はなんか、あったかい風が吹いてるです!」

「素敵な日ね!なんか私達の為の日みたい!」

いっそ水着のままのモニカとコルちゃん、レオンさんが荷車2階から顔を出す。

何かあった時の戦闘メンバーだったソフィーとプラフタは荷車の護り役で、これから水着だ。

 

 

「なるほど、あの頃とは見違える程立派になったもんだ……」

せっかく荷車の影で着替えようと、ソフィーが服を脱いだ所で、ハロルさんがソフィーの着替えのすぐ側に立つ。

「うん、まだあどけなさが残る感じが、素敵じゃないかな」

ジュリオさんまでが、ソフィーの着替えを見張る。

めっちゃ目が合ったけど、凄くいつもの爽やか笑顔だったりして……

「いつも見てはいるけど、この満天の星空の下だから……ミステリアスな感じが、いいよな」

オスカーまでも……

「もう!ちょっと!着替えらんないよぉ!」

さすがのソフィーも顔を赤くする。

この男共、脱いだ所で瞬間移動ばりに間合いを詰めて来たし。

 

「ソフィーさんも遂に餌食になりましたね」

水着になって水に入ると、コルちゃんに慰められる。

「もう、なんであたしの時はジュリオさんまで……トホホだよ」

ともかく、水遊びをして……

しかもダクスターというでかいカニをゲットした!

「海じゃないのに、こんな大物が居るなんて……凄いな」

ジュリオさんが感心する。

「こいつは凄いな。しかも子持ちだぜ。キルヘンベルじゃ、まず見る事も出来ないご馳走だな」

鼻息を荒くしながらオスカーが、テンションを上げる。

そして、皆で食べるこんがりダクスター。

めっちゃ殻の所をちゅーちゅーした。

凄い美味しい。

 

 

ともかく、紅草の採取をして……

やはり戦闘物足りないと言う事で、地底湖へと足を伸ばす。

地底湖の奥へ奥へと進む……

以前の時よりも冒険する感じで。

でもファング様御一行、黒プニ君との戦闘は危なげなく勝てていく。

「何かあったら小悪魔のいたずら、防御陣形だよ、プラフタ、コルちゃん!」

でも怯えるソフィー。

オリフラム公爵は、まだ出番がない。

 

そんな時、なんかイキナリ稲妻がパーティーを襲う。

それは直撃するも、HPバリアを僅かに削るのみで、金プニとの戦闘が始まる……

スーパー早い!

 

……でも早いだけで、普通に倒せた。

何だったのか……

なんかブリッツライトを閃く。

そんな採取生活をしていると、突然空気が震えた。

ファング御一行様だけど、明らかに強そうな獣が混じる。

しかも2匹いる!

 

「今までとは違う難敵だな!防御陣形で慎重に行くぞ!」

フリッツさんが剣を構える。

「こ、小悪魔のいたずらの君、オリフラム公爵の出番……来たね!」

ソフィーも身構える。

錬金術生活で、強敵との戦闘となった時の、錬金術アイテムの使い方も予習していたのだけど、どうにもこの小悪魔のいたずらの君が、強敵に対しては強力。

というプラフタの記憶。

それを信じて!

 

まずは小悪魔のいたずらの君を、コルちゃんが使う。

難敵、ツインヘッダー1匹のレベルを下げて毒にして呪いをかけて……

恐ろしい弱体化が入る。

何これ怖い。

プラフタも、もう1匹の方に小悪魔のいたずらの君を使う。

恐ろしい弱体化、ガッツリ入る。

それでも、防御陣形のこちらのHPバリアを大きく削る。

更に銀いも回復の阻害まで入れて来た!

 

防御陣形は続行。

ソフィーのオリフラム公爵を投げ込み、プラフタの悪魔の手シャワーをかけたり、フリッツさんの氷の剣を炸裂させたり……

それでも相手が元気いっぱいだったり!

 

そして攻撃陣形!

そろそろ怯ませられる、との公算と、黒プニ洞窟スペシャルアタック生活の時にやってた、スペシャルアタックチャンス。

ぷにちゃんパワー渦巻くこの時に勝負をかける!

 

ツインヘッダーを怯ませ、そしてソフィーのスペシャルアタック、本召喚からの、ソフィー超絶ビームがツインヘッダーに炸裂する!

「結局生きてるしー!!」

また防御陣形から仕切り直す。

コルちゃんのHPバリアがかなりヤバい。

「す~っ……はいっ!」

なんと深呼吸でHPバリアを全部立て直して、更に防御力まで上げてた。

コルちゃん優秀すぎる。

 

ソフィーバリアをかけ直したり、プラフタが回復と強化の雨を降らせたり……

ツインヘッダー1匹がダウンしてからはこちらの流れとなり、御一行様を倒す。

「は~っ……ヤバかったよぉ……」

倒してから、ソフィーがへたりこんだ。

小悪魔のいたずらの君のスペシャル弱体化で、これほど強いって事は……

無かったらどれだけ強いのか……

ともかく紅草も結構採れたし、ヤバそうなので帰る事にした。

 

 

真夜中……

ダクスター食べてからは、1日経って帰って来た。

もう果実の日になった、という事。

今回はちょっと長い旅だった。

そしてアトリエ前に行く手前に、パメラが歩いていた。

「あれ?パメラ~♪」

「あら~……こんな夜中に帰って来たりするのね~」

相変わらずのゆるふわ高音ボイスで、パメラは言う。

夜風が気持ち良くて、散歩していたみたいで。

「夜のパメラ、格好良く見える!」

ソフィーが言い、皆して頷く。

黒い豪華ドレスに、紫のふわっふわロングヘアー、あまりにも夜が似合う。

お昼にしか会わないので、気づかなかったけれど。

「なに~?全くも~……ほめられると照れるわ~……」

そう言って、教会方面に帰って行った。めっちゃ早い。

「パメラって、あんな走り辛そうなドレスなのに、無茶苦茶早いわよね」

それを見送る一同。

モニカが呟く。

「彼女は飛んでいるのではないでしょうか?私みたいに」

プラフタが言う。

確かに、飛んでるみたいな早さだし。

 

「さすがにそんな事はないだろ?パメラは人間……じゃないのか?もしかして……オイラもビックリだぜ……」

オスカーが青い三白眼を見開いた。

 

そしていつもの4人でぷにちゃんの部屋に。

そして時間を止めてがっつり眠り……

ピカピカキラキラになって別れると、ソフィーとオスカーでイチャイチャラブラブな時間。

 

 

「どうだい?万薬のもと、ってのは出来るようになったかい?」

オスカーが尋ねる。

「シロヒメクサ、アルタル、紅草……薬になる材料3種類ゲットだけど……これがさっぱりなんだ……」

ソフィーは答える。

「そうかぁ……なかなか難しいなぁ?」

「新しい錬金術を目指していくしかないよねぇ」

「まぁ……オイラも調べておくよ」

「それよりも!イチャイチャしたい!」

「お、おう……」

2人の夜が始まる。

 

 

「ソフィー……朝ですよ?」

プラフタが揺さぶる。

ハダカ族ソフィーはがばっ、と起きる。

オスカーは、もう居なかった。

「……あまりにも事後……といった感じですので、マナの柱の部屋行きですね」

プラフタがジト目でソフィーを見る。

めちゃくちゃハジケました感が漂っている。

そして敷布とふわモフモフコットと共に、ソフィーはハダカ族のまま、ぷにちゃんの部屋へと行く。

 

「ふぅ……しかし、イチャイチャするというのも、部屋を汚すものですね……」

プラフタは井戸水を汲み、掃除の準備を始める。

 

 

「プラフタ大変!」

少しすると、事後ハダカ族ソフィーがコンテナから出てきた。

「あなたはまた!なんでハダカのまま出て来るのですか!」

プラフタは顔を赤くして、微妙な叫び声を上げる。

「そんな事より!プラフタをパワーアップして衣装変更も出来るって!番人ぷにちゃんサークル&ちょこっと調合で!」

ソフィーはそう言って両手をぱたぱたさせる。

そこそこのおっぱいも、ふるふるしてる。

「だとしても……服を着て下さい……子供じゃないんですから……」

 

 

そして錬金術生活。

中和剤の特性充実を狙い、浸け置きタイムにはコンテナにて、ちょこっと調合が始まる。

プラフタの衣装も若葉スカートに花飾り、露出がめっちゃ抑えられて、プラフタもお気に入りの出来上がりとなった!

 

しかも空気中の魔力を取り込む為の露出……

というのも、この服の不思議材料ならばクリアなのだと言う。

そしてお昼過ぎ、コルちゃんがやって来た。

「おおっ!これはプラフタさん、素敵な衣装ではないですか!」

めっちゃ食いついて身体をゆらゆらさせる。

「そ、そんなにですか?」

プラフタは少し怯みながら言う。

「この色……素敵です!オシャレなロングソックスも、いいです!」

コルちゃんはそう言って、ゆらゆらさせながらぱたぱたしだした。

「そう言えば!あたしのこの服のお礼、してないんだよね。最近は錬金ドロップ!クリアドロップ!ノーブルサファイア!と宝石も作れるようになったし、何か作ろうかなぁ……」

ソフィーも新しい衣装で、ゆらゆらする。

「そう言えばソフィーさん、レオンさんに荷車で色々と聞いてましたね。何やらメモもしていましたけれど」

コルちゃんが口許を隠すいつものポーズで言う。

 

「そうそう!どこだっけ……ふむ……青色……ブローチ……以上!」

ソフィーはメモを閉じる。

「青……レオンと言えば青、で決まりですよね……」

プラフタも、そう呟いた。

 

 

……そしてレシピ構築。

コルちゃんはぷにちゃんの部屋へと行き、そして帰る。

そしてエアリスブローチの作成となった。

エアリスブローチ用インゴットと合わせて14時間。

 

 

夕方……

錬金釜は浸け置き中。

種の日、朝の4時まで。

すっかりアトリエの掃除も済んで、アトリエ前で素振りをしていたり。

「ソフィー、あなたの杖捌きは、中々キリッとしていますね」

プラフタがソフィーの杖攻撃を受け、程よくHPバリアが削れた後で、言う。

「まあね~♪錬金術出来ない時なんか、こればっかりだったもんね」

ソフィーは杖をすっ、と振り、空を見る。

 

夕方の空……

杖の振り方を教えてくれたのはバーニィさんだった。

「なんか、思い出したい事が出来た!ぷにちゃんの部屋に行こうよ!あと眠りたいかも」

ソフィーは駆け出す。

「あなたは、本当に元気ですねぇ……」

プラフタはソフィーの後に続く。

 

 

………

「杖に限らず、何でもそうだが……走ってからなら走った勢いが加わる。それをうまく加えてやる体捌きってのがある」

バーニィさんは通りかかりに、ソフィーにそう教えてくれた。

杖を振る、という事は専門ではなく、剣の方が馴染みがある人。

それに剣も専門ではない人。

それでも、何かをする時、例えば杖を振る時に腰が入ってなければ、腰の力を損なう。

足が出ていなければ足の力を失う。

と、教えてくれた。

どう腰を回すのか、どう足を出して行くのか、それはソフィー自身が獲得していく事。

バーニィさんは詳しくは分からない、とも話した。

ついさっき見た夕焼けの空に、よく似た空の日、夕方の時間。

アトリエ前……

………

 

 

ぷにちゃんの部屋の中で、ソフィーはよりくっきりとその事を思い出した。

それはプラフタにも伝わったのだろう。

「なるほど……いい教えですね」

ぷにちゃんの中、ハダカ族のプラフタは少しふわふわとしながら腕組みをする。

「それであたし、オスカーに全力アタックする事にしたんだよね……っと」

ソフィーも逆さまに浮いて、ぷにちゃんの頭限界みたいな場所に居たけれど、そこからプラフタに突撃する。

 

「うわっ……!それとこれと何の関係が!?」

プラフタは驚きながらも、ソフィーを受け止める。

そして深く抱き合う。

「今も、あたしは全力でプラフタとイチャイチャしたいんだよね♪あたしの全部、好きな事にぶつけていたいんだ♪」

ソフィーはそう言って笑う。

あの時、オスカーにもぶつけたんだ……

恥ずかしいって気持ちと、嫌われたらどうしよう、って気持ち……

あの時の自分の全部。

 

そう考えると、ぷにちゃんの中は気持ちも何もぶつけやすいように思う。

「ソフィー……でもそう言われると……あなたはいつも全力……こら!……んっ!」

ソフィーの思いを受けて、ぷにちゃんがプラフタのお尻に撫でる感覚を伝える。

ぞわぞわっ、とする感覚にプラフタは驚き、でも素直に身体を揺らす。

「プラフタ好き!その声も、凄く恥ずかしがり屋さんな所も!……はぁっ……んっ!」

深く抱き合ったまま、ソフィーもぷにちゃんの愛撫を受ける。

オスカーよりも涼しい感じで、それでいて気分とリンクして敏感な所を揺らされるような……

「そんな突然……っ!ダメっ!ダメですっ!」

ほんの1分程で、プラフタが顎を上げる。

そしてぷにちゃんは敏感な所を揺らすのを止める。

「プラフタあたしよりも敏感…っ!可愛い……んっ!……んぅっ!」

ソフィーもプラフタにしがみついて、思いと声をぶつける。

声を出して!声を出して!

……って思いがお互いにしていて、ソフィーもプラフタもそれに応える。

 

 

「今はぁ……っ!本当にっ!……あっ!あああぁっ!」

ソフィーに太ももを捕まれて拡げられて……

プラフタはすっかり降参する。

その感覚は、ソフィーがオスカーとエロエロする時に、よくあるやつ。

「幸せ感じてるのっ!分かるんだからっ!あたしのっ!幸せもぉぉっ……!」

ソフィーも身体を震わせてハジケる。

そしてプラフタのお尻を撫でて、背中に手のひらを游がせると、深く息を吐いた。

 

 

それからも休んではハジケて、を繰り返す。

弱くハジケて笑い合ったり、激しくハジケて力尽き合ったり……

ぷにちゃんの愛撫は、そんな気分にバッチリリンクして、色々な風が2人を撫でていく。

そんな長いエロエロイチャイチャも、プラフタが責めてソフィーが鳴かされる事が多い。

そしてそれは、止まった時間を増やしながら、止める時間も消費して、でもなお増えた。

 

 

「へへ~♪……ちゅっ……」

そんなエロエロの果てに、ソフィーがプラフタのお尻と背中を撫でながら、キスをする。

「もう……あなたは本当に能天気で……無邪気なんですから……」

プラフタも、ソフィーの頬を髪を撫でながら応える。

にやけてしまう感覚。

ソフィーを可愛いと思って、更に好きにさせられる感覚。

ここでは、いつも感じないからなのか、敏感にそうした感じが渦巻いてる。

 

そして2人は眠った。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[錬金術生活]
特性を移したり増やしたり、装備品に磨きをかけたり、図鑑を更に進めたり……1日があっという間に過ぎる。

[噴水端会議]
種の日のお祈りの時間の次は、皆で情報交換の時間。ソフィーのパーティーも、明日からの冒険の予定とか話したりする。

[北の人形劇]
ソフィーも常連の人形劇。午前中だけで終わる。

[朝ミルクの儀式]
コルちゃん露店で働く子供達と、コルちゃんによる朝のミルク飲みタイム。朝が1番新鮮!なお、ゲームでも、八百屋のキルヘンミルクは夕方は品質が下がっている。

[エルポレ族]
太古にキルヘンベル周辺に住んでいたとされる民族。建築技術が高く、そして信心深かったらしく、色んな遺跡を残している。

[錬金荷車2号]
2階建て荷車。フリッツさんが寝ていたり、二日酔いのハロルさんが寝ていたりもする。
[朝凪のほとり温泉]
腐ったタマゴの臭いたちこめる洞窟の温泉。お猿さんやカラス、タヌキまで。動物たちの憩いの場所でもあるみたい。

[ダクスター]
毛ガニ的な生き物。幻の最高級食材。

小悪魔のいたずら[の君]
強烈デバフが頼れるアイテム。ゲームでもお世話になりました。
オリフラム[公爵]
フラム大先輩の強化版。

[スペシャルアタックチャンス]
スペシャルなアタックチャンスではなく、スペシャルアタックのチャンス。

[ハダカ族]
ぷにちゃんの部屋で眠る時、身体を洗う時、エロエロする時もハダカ族である。
[事後ハダカ族]
エロエロした後もハダカ族で気絶してたりもする。

[バーニィさん]
幼い頃のソフィーの先生でもあった。
[ぷにちゃん]
巨大ぷにちゃんの中で、浮いたり逆さになったり超スロー1回転とか出来るので、楽しい場所でもある。

[エロエロ]
そんな気持ちになる時もある。
[ハジケる]
そんな気持ちになると、なんかエロい所が敏感になってビクンビクンする。


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錬金術のアトリエ 46

錬金術のアトリエ 46

 

朝の4時、エアリスブローチが完成して、ソフィーとプラフタはアトリエを出る。

今日は種の日、人形劇の日だ!

「エアリスブローチ出来たのはいいけど、今日は仕立て屋さん忙しいからなぁ……」

仕立て屋さん、種の日事情を思い浮かべてソフィーは呟く。

「まあ、旅の時にでも、落ち着ける時に渡すのが良さそうですね」

プラフタも、アトリエの戸締まりをしながら話す。

 

……雨の降るキルヘンベル。いつ止むかは分からないし、雨でも何でも行ってるものだし、2人は教会のお祈りに行く。

「あらソフィー、今日は早いんじゃない……プラフタ!何そのお洒落!いいわねそれ!」

モニカの家を差し掛かった時に、モニカが出て来た。

今日も模擬戦の話はあったのだけど、あまり力を見せるのも良くない、とモニカとジュリオさん、フリッツさんは出場を見合わせた、と話をされた。

それと旅の話、プラフタの服の話、ソフィーがバーニィさんに杖の振り方を教えて貰った話……

そんな話をしながら歩いていると、ヴァルム教会はあっという間だ。

 

 

そしてお祈りの時間……雨は続く。

そして噴水端会議の時間に雨は止み、晴れた!

プラフタの服の話……

今日の人形劇の話……

最近鍛冶屋ロジックスが忙しい話をする。

シルヴァリア製の武器、ルビリウム製の武器がお高いのに人気で、ロジーさんもコルちゃんも忙しいそうで。

 

「最近は、依頼も結構こなされてる冒険者パーティーもありまして……今日はデート券をゲットされてしまいましたので、テスがデートなのですよ」

ホルストさんもそう話す。

カフェも賑わって忙しいみたいで……

そんな流れで、ソフィーは錬金荷車1号で、売り子をする事になった。

 

「人形劇……でもこっちも面白そうだよね~♪」

早速、南の人形劇でお酒とおつまみを売る。

おつまみも……

『初代コルちゃん☆クッキー川魚編』

『2代目コルちゃん☆クッキーかにとかげ編』

『新発売☆たこあし』

……と、種類があったりする。

 

「味見……してもいい?」

ソフィーはコルちゃんに聞いてみる。

なんかやたら売れゆくクッキー達。

それもオジサン達に大人気みたいで。

……あまり美味しそうな色合いではないんだけど……

「どうぞ。でもソフィーさんのお口に合うかどうか……」

コルちゃんは、口許を隠すいつものポーズで答える。

そしてソフィーは初代コルちゃん☆クッキー川魚編を食べてみる。

「うへぇ……」

ソフィーの口には合わない味……

『コルちゃん☆クッキー川魚編』は、ほんのり生臭い。

 

次に……

2代目を食べてみる。

「うやぁ……」

『コルちゃん☆クッキーかにとかげ編』は、ほんのり、にがじょっぱい。

でも、これが1番人気なのだそうだ。

 

そして……

たこあしも食べてみる。

こちらは串に刺さった赤いぷるぷるした何か。

「へやぁ……」

変なすっぱさに、ソフィーは舌を出す。

全部口に合わない……

「嬢ちゃん、面白い音が出るなぁ……」

その様子を眺めていた職人のオジサンが笑う。

既にほろ酔いっぽくて、ご機嫌みたいだ。

「いらっしゃいませ~」

コルちゃんが、ぱっ、と両手を広げて笑顔になる。

「コルちゃん、ラーメル麦酒と、2代目」

そして、ほろ酔いのオジサンはそう注文する。

「まいどです~」

コルちゃんは明るい声で応対して、ソフィーは、にがじょっぱい顔をする。

 

 

……お昼くらいに、笑い転げていたプラフタとオスカーがやって来た。

「ソフィー!プラフタの新しい服……いいな!凄くいいよ!必要とはいえ、お尻バッチリ出てるの、気になってたんだよな。これ、お昼のバスケットな」

コルちゃんが注文したらしい、でかいバスケットを置いて、オスカーは八百屋さんへと戻って行く。

八百屋さんも忙しいみたいで。

「私も、レオンとフリッツに、そしてエリーゼに会いに行こうと思います。衣装が変わったのもありますし、聞きたい事もあったりしますので」

プラフタは、終わって片付けをしている北の人形劇の方を見る。

「今日はあたし、テスさんの代わりだからね!しっかりやっておくよ!」

張り切ってるソフィーは、ガッツポーズで言う。

 

 

「……ソフィーさん……」

「ん?何?コルちゃん」

夕方頃、コルちゃんが険しい顔をしてソフィーを見る。

「おつまみが売れる度に、その味の顔になっていませんか?」

何となく引けの早いお客さんを見て、コルちゃんは気になった。

「え?だって……そんな味だったんだもん!コルちゃんは食べれるの?」

ソフィーは言う。

「私も、全然食べれませんけれど、お客さんはお気に入りなのです」

 

コルちゃんは呆れた顔をする。

どうやらそういう事らしい。

とんだ人に頼んだものだ、と今更思う。

「やっぱり食べれないんだ~♪コルちゃんもお子様だもんね!」

ソフィーはニカっと笑いコルちゃんを指差す。

悪気はないみたいだし、やる気が無い訳でもない。

そこが、タチ悪い。

「も~!そういう話ではないです!でも、もうそろそろお客さんも少なくなってきましたし、ソフィーさんはもう、ここは離れて大丈夫です。今日はありがとうございました。こちらの勝手に付き合って下さいまして」

コルちゃんはそう言うとニカッ!と笑う。

「え?そうなの?……でもそろそろ夕方かぁ……今日は楽しかったよ!色々あったもんね!」

ソフィーはそう言って、荷車1号に預けた杖を手に取る。

そろそろアトリエに帰ろうか、みたいな時間だし。

 

 

そしてプラフタを探しに本屋さんへ。

長居するなら本屋さんだろうと思って行ってみる。

「いらっしゃいませ~……」

脱力系ゆるふわボイスの店員さんが、カウンターに居た。

「あ、あれ?エリーゼお姉ちゃんは?」

ソフィーは聞いてみる。

……新しい店員さんだろうか………

 

「エリーゼさんは、人形劇作りでフリッツさんの所に行ってるよ~……」

脱力系ゆるふわボイスで、新しい店員のお姉さんは答える。

プラフタも居て、ソフィーダちゃんに聞いてみると、新しい本屋さんの戦力として加わった、シェリルさん……だそうだ。

ともかく、プラフタとアトリエに帰る。

明日は旅の日。

 

 

夜、雷雨が降りだした。

アトリエの中で、ソフィーは窓を見る。

特性研究でやたらと中和剤ばかり作っている、錬金術生活。

 

「明日はどこに行くのですか?」

そんな錬金術生活の中、色々な会話の中でプラフタがふと尋ねる。

「あ!それを言っておくの忘れたぁ!」

ソフィーはプラフタに振り向く。

「一応、レオンとフリッツに聞かれましたので、ソウルストーンの在庫が無くなった話は、しておきましたけれど」

「さすがプラフタ!明日は是が非でも1番乗りしなくちゃだね!」

ソフィーは能天気な笑顔を見せる。

「よし、時間をうま~く使うべし!」

……錬金術生活は続く。

 

 

朝の4時……

雷雨は止んでいて、晴れてる感じになっている。

「よし!ソウルストーンを是が非でも調達しなくちゃ、だね!」

ソフィーとプラフタでアトリエから出る。

カフェに向かう道。

途中、ジュリオさんとモニカと会った。

 

「おや、今回は早いんだね?ソフィー」

ジュリオさんはそう挨拶する。

エルノアさんとモニカ、ジュリオさんで3人で過ごし、夜には眠り……

この時間なのだそうだ。

「エルノアさんの食事、美味しいですもんね!」

ソフィーは能天気に笑う。

「なんか、しっくり来る家庭、って感じなのよね」

モニカは言う。

なんかゆとりのある穏やかな表情。

今日これから行く場所とか話しながら、カフェへと歩く。

 

コルちゃんの朝ミルクの儀式を眺めて、カフェへ。

今日の行き場所をホルストさんと話し合う、朝食の時間。

いにしえの厨にて、強力な本の魔物がうろつき回り、その近くに金の糸の噂……

今や強さ的には物足りない場所、忘却のナーセリー行き。

その後、ソウルストーンを求めて北への山越えルート、大地の傷痕……

と、予定を立てた。

そしてレオンさんとハロルさんが来て全員揃い、錬金荷車2号とキルヘンベルを出る。

「さて、今日はのどかな旅ね!」

何故かジュリオさんはオスカーの護衛となり、レオンさんが荷車を引く。

「そうですね~……天気もいいし、もうすっかりこうして、街の外に出るのがクセになっちゃったわ」

 

その隣をモニカが歩く。

ソフィーもオスカーを追いかけて、今回はオスカー3人組で荷車から離れて、植物達に挨拶回りだ。

そしてお昼、ソフィーとプラフタからレオンさんに、エアリスブローチをプレゼントする。

「種の日は忙しそうでしたので、今になってしまいましたが……」

「へへへ~……気に入って貰えるといいんですけど……」

そんな贈呈式。

プラフタ監督のもと、ちゃんとふわふわクロース(水色)に、香り花びらの布留めも付けて、しっかりとプレゼント然としてる。

「……あなたたち、中々ハイセンスなんじゃないかしら~?でも、今はプラフタの服は違うけど、凄く笑顔になっていたし……ソフィーもその服、看板として認めてくれたみたいだから、良かったわ」

レオンさんはプレゼントを受け取る。

 

そうしてまた歩き出す旅の道……

オスカーとソフィー、ジュリオさんは、また植物と挨拶回り。

荷車よりも急ぎ足なもんだから、ジュリオさんもいい汗かいてた。

「今日はどういう風の吹き回しだい?」

オスカーに続くソフィーとジュリオさんに、オスカーは振り返る。

「今日はオスカー観察だよ!でも、そんなブツブツ話してないんだねぇ……って感心してるトコだね」

ソフィーは振り返ったオスカーにずずい、と近寄る。

「お、おお……まあ、最近話さなくても伝わるって感じの時も多いからな……」

あんまり近いソフィーに、オスカーは少し身体を引いた。

 

「しかしオスカー、君は足が早いんだね。いつも変な所をスタスタしてるのは見てるけど、道じゃない所なのに、スイスイ行けるのは、感心するよ」

ジュリオさんは、少しお疲れな感じで話す。

荷車のペースよりも、倍くらい早いのだ。

立ち止まる時間があると、走り出したりするし。

「それも、何でか全然疲れないんだよな。皆の話とか面白いからかな~……」

オスカーはおとぼけボイスで言う。

ソフィーもジュリオさんも草まみれで、服の汚れも凄い。

 

 

そしてお昼過ぎ。

忘却のナーセリーに到着。

そしていにしえの厨へと行ってみる。

緑のプニプニ達が、なんかリッチオーダーという本の魔物を崇めていた。

「……なんかの信仰があるのかしら?」

モニカが囁く。

「冒険者の話によると、ずっとああしているんだとか。よく分からないんだけどね……」

ジュリオさんも囁きに応えて囁く。

「これは召喚の儀式だな。まだ充分な力を得てはいないようだ。早めに摘み取っておくとしよう」

フリッツさんが言い、戦いを挑む事に。

 

そして危なげなく倒した。

この辺りにしては強いんだろうけれど……

「こうした現象が起きた、というのは由々しき事態だな……おそらく各地でこうした召喚が行われる筈だ」

フリッツさんは消えたリッチオーダーの跡を見て、そう呟いた。

「え……?って事は……ひょっとして世界がヤバい!?」

ソフィーが反応する。

「世界……というよりはこの地域、だろうがな」

フリッツさんが考えるポーズで言う。

ともかく、忘却のナーセリーでは目的がもう1つ。

金の糸を探しに行く。

 

 

金の糸をぼちぼち見つけつつ、また死告花の精を倒し……

夜営をする頃は、雷雨になった。

疲れからソフィーはコルちゃんと眠り、そして翌朝になる。

 

 

「うわぁ!……あれ!?朝!?」

すっかり寝過ごして、ソフィーは起きる。

「金の糸、バッチリ採っておいたぜ」

オスカーが荷車に乗った、素材の山を指差す。

「コルちゃんの足にしがみついて眠っているの、可愛いかったわよ~♪姉妹みたいに見えたわ」

レオンさんもウィンクする。

ともかく、一旦キルヘンベルへ道標して、それから第二部、北の山越えとなった。

 

 

錬金荷車を空っぽにして……

北の山越えルートの街道を錬金荷車2号は行く。

ジュリオさんとモニカ、レオンさんハロルさんが眠る錬金荷車2号。

オスカーが引いて行く。

「なんか、3人で街を出てる時の事、思い出すなぁ……」

相変わらずのおとぼけボイスで、オスカーが言う。

「そうだね♪あの頃は植物に挨拶回りしてなかったもんね♪」

隣を歩くソフィーが上機嫌でそう応える。

「確かになぁ……」

そんなまったりな旅の道……

 

 

お昼の夜営からは、オスカーは相変わらずの挨拶回り。

ジュリオさんが荷車を引くいつものスタイルとなった。

「ぜひ、もう1度寝てくれ、ソフィー!コルネリア!」

何かインスピレーションがあったみたいで、荷車の1階でフリッツさんが頼み込んでいたり。

「眠くないし~……」

ソフィーも困った顔で頬を掻く。

「そんな改まって言われると、さすがに眠るどころじゃないです。そろそろ汗臭いですし」

そしてソフィーとコルちゃんは、フリッツさんから逃げる為に荷車から飛びだして、オスカーの所へ避難した。

「なんか、オイラの所が今回は賑やかだなぁ……コル助は、草で足を切ったりするんじゃないか?」

オスカーは相変わらずのおとぼけボイスで呟く。

 

 

夕方になる前に、大地の傷痕に到着。

そしてソウルストーンを探し歩く。グスタフ、カイゼルピジョンも、今や退屈な魔物……ぷにちゃんパワー強すぎるんじゃないか……

 

 

「あ~!!」

今回は谷底も調べた夜中過ぎ。

レオンさんが叫んだ。

「どうしました!?」

「何があった!?」

「どうした………?」

恐ろしいスピードで駆けつけるジュリオさん、フリッツさん、ハロルさん。

ソフィーは、あまりにも鮮やかに飛んでいった、ハロルさんを見送ってた。

「この巨大宝石と巨大宝石の間!」

皆揃ってそちらを観察すると、アポステルが這い出てくる。

飛んでないと猫みたいな小悪魔だけど、ほかほかしてる。

飛んでるアポステルを倒すと、地面に落ちて猫みたいに逃げて行くんだけど、逃げる先もここなのだ。

「ほかほかしてるよね……?」

這い出すほかほかアポステルを見て、ソフィーが呟く。

ほかほかアポステルも、ソフィー達の事を見て、どこかへ歩いて行く。

「温泉があるに、違いないわ!」

そして、ここは錬金荷車2号は入れないので、番人としてフリッツさんとジュリオさんとプラフタを残して奥へ。

 

宝石の洞窟に、広大な湖!

それがなんとほかほかしてる!

アポステル達がめっちゃ沢山居て、泳いでいたりくつろいでいたり、寝ていたりする。

「わお~!!」

湯気が凄い。

そしてその湯気の大部分は、今ソフィー達がくぐったスキマではなく、真上へと登っている。

「すげぇなぁ……あと、この湯気の感じだと、綺麗なお湯だな……」

オスカーが鼻をひくひくさせる。

そしてお湯を調べる。

「アポステルが沢山居るんじゃ、服は荷車に置かないと取られてしまうわね」

 

レオンさんが呟く。

綺麗な物を持ってってしまう習性があり、小悪魔モードでも猫モードでも、手癖は悪いのだ。

結局、錬金荷車2号の所で水着に着替えて……

温泉を楽しむ事にする!

「ここは臭いがいいわねぇ……朝凪のほとり温泉はお猿さんが可愛いけど、臭いものねぇ……」

 

巨大温泉のほとり、仰向けで寝ていたアポステルの一匹を捕まえて、レオンさんは温泉を堪能する。

アポステルは手足をぱたぱたさせている。

可愛い。

「熱くて入れないですけど……レオンさんは平気なのです?」

コルちゃんは温泉のほとり、これまた仰向けで寝ているアポステルのお腹をさすさすしながら聞く。

アポステルは手足をぴくぴくさせている。

可愛い。

「おおおおおおおお……」

ソフィーは変な声を上げながら温泉に浸かる。

その変な声に、アポステル達が離れていく。

「ふ~っ……なんか染みるわねぇ……」

モニカもアポステルの一匹を抱いて、足だけ浸かる。

モニカの抱いているアポステルは大人しい。

皆揃ってアポステルを捕まえてしまうくらい、アポステルは可愛いのだ。

「しかし、何だってこんなにアポステルだらけなんだ?しかも人に慣れてやがる……」

ハロルさんも温泉に浸かる。

一面、アポステルだらけなのだ。

上を見上げると、グスタフとカイゼルピジョンも羽を休めていたり。

何故かそんなグスタフを見て、ソフィーはハッスルベルトのレシピを閃き、メモを走らせた。

そして朝……

錬金荷車2号もいっぱいになり、またも道標でアトリエに帰る。

 

 

開花の日、朝……

温泉帰りみたいな感じなので、皆揃って綺麗だったりする。

「じゃあ、オイラも帰るかな。また夜に来るよ」

オスカーも帰って行く。

今回は外で待つ人は居ない。

そして4人でゆっくり眠る。

 

 

「スッキリシャッキリです!」

コルちゃんがスッキリシャッキリのポーズで出て来る。

既に3人が、服と運ばれた素材達に取り付く番人ぷにちゃん達を眺めていたり。

「スッキリシャッキリ!」

モニカも片ヒザを上げて両手を開く。

「やっぱモニカ、ダントツだよねぇ」

ソフィーが顎に手を置いた、感心する人のポーズでハダカ族モニカを見つめる。

「そうですね。あまりにも女性的な身体かと」

プラフタも同じポーズで、ハダカ族モニカを見つめる。

「ちょっと!そういう目で見ないで!それにプラフタは充分大きいんじゃない?」

モニカは怯み、身体を閉じる。

そんなハダカ族4人の日常……

 

 

「さて、では……錬金術を前に進めて行きますか!」

コルちゃんとモニカは帰って行き、ソフィーとプラフタの錬金術生活は始まる。

「カテゴリパワーも充実した素材も増えて来たし……素朴な焼き菓子……ついに甘くなるかも!」

ソフィーは釜を混ぜる棒を手に、錬金釜を見つめる。

「しかし、凄いこだわりますね焼き菓子に……」

そんなソフィーの横で、プラフタは呟く。

「この浸け置き1時間で、マッスルベルトのレシピを詰めるよ!」

スッキリシャッキリなソフィーは錬金釜を見つめる。

素朴な焼き菓子、何の素材で作ったものか……

「おお~地底湖産、シロヒメクサが!これは絶対甘くなる!」

配置を決めて納得しつつ、ハッスルベルトのレシピ構築をする。

……そんな錬金術生活。

 

 

そして昼食。

カレースパイス使った煮物を食べていると、ジュリオさんがやって来た。

「ジュリオではないですか。どうしました?」

プラフタがお出迎え。

ソフィーは食事しつつ、ジュリオさんを眺める。

「食事時だったかな……なんか変なタイミングで来てしまったね」

ジュリオさんはバツが悪そうに頭を掻く。

「いえ、それは気にせずとも。それよりも何かあったのではないのですか?」

プラフタが尋ねる。

熱いとかないみたいで、プラフタの食事がやたら早かった。

ソフィーはまだ冷めない煮物を、ふーふーしてる。

「錬金術を進める手掛かりがあったからね。忘れないうちに伝えに来たんだよ」

そしてジュリオさんは地底湖の奥底に眠る、同調の錬金釜の話をすると、帰って行った。

 

「新しい錬金釜……達人の錬金釜も、手に入れただけで使っていませんけれど」

プラフタはようやく食事を終えたソフィーを眺める。

「24時間かかっちゃうのが痛いよねぇ……それとカテゴリパワー足らないんだもんなぁ……それよりも地底湖の奥底……危険な場所だよねぇ……ツインヘッダーの巣だったりしたら……」

ソフィーは考える。

もっと防御的な錬金術アイテムを……

 

 

帰って来た開花の日が終わり、果実の日の早朝……

そう言えばオスカー来なかった……

「よし!分裂発動ぷにゼリー!偽りの花の精霊織りの帳!これさえあればツインヘッダーと言えども……安定した戦いが出来そう!」

ソフィーは錬金術を進めて、更に強力アイテムを作り出してため息をつく。

「なるほど……これは恐ろしい品物ですね。これの加護があればツインヘッダーと言えども、そうそうこちらの防御を突破出来ないでしょうね」

 

ついに出番となったドンケルシュテルンの特性、「偽りの花」

一時的に全ての能力が上がり、更に戦闘不能になっても、復活できるようになる!

更に精霊の帳パワーで防御アップなのだ。

 

そして分裂発動。

こちらは1回使うと3回効果が出るというシロモノ。

これで更にパーティー強化になるので、地底湖の奥底にも、行きやすくなる。

 

 

更に昼過ぎに来たコルちゃんが、武器と防具の強化の話と、その為の素材のレシピ表を持って来た。

「なんと!こんな物をロジーと研究していたのですか!」

プラフタがその表を見て驚愕する。

しかもレオンさんとも相談した所、似たような感じなので防具の分もあるのだ。

 

「クロースとシュタルメタルが、最高峰ではないにしろ、扱い易い感じになるみたいですので、こういう特性を持たせた物が、更に能力を上げるみたいです」

コルちゃんがオススメ的な所も紹介する。

強化できるロジーさんとレオンさんも、こうした強化をした事があるので、特性も詳しいみたいだ。

「と、いう事はここの他の地域でも、そうした特性やら魔物やら、というのはあった……という事なのでしょうね」

 

プラフタは考える。

でもレオンさん曰く、あんな猫みたいなアポステルの群れとか、仲良く歩むマンドラゴラと緑プニとか、おっぱいだけ触るお猿とか、不思議みたいなんだとか。

「ぷにちゃんにも聞いてみようかなぁ……」

「それはいい考えです!」

そして会議は、ぷにちゃんの部屋へと移る。

 

 

「ふむ~……危険なパンドラの箱……仲間を失った人達……まあ色々と悩みがあるのは解っているけどねぇ……」

ぷにちゃんは相変わらず、あっけらかんとしてる。

「ぷにちゃんの力も強くなってるから、大丈夫ではあるんだけど、不安なんだよねぇ……」

ソフィーが悩む。

 

「それも解るんだよね?フリッツおじさんも、ナザルスおじさんも、そして過去のプラフタも、ぷにちゃんパワーがあったハズ……だもんね。でもプラフタはともかく、ナザルスおじさんもフリッツおじさんも、私の力ではないよね?プラフタはひょっとしたら……的な所あるけど……記憶ないもんねぇ……」

 

ぷにちゃんの中で、不安定な風が吹いた。

そして彼らに何が起こったか分からないので、ぷにちゃんにもよく分からない……

「地底湖の奥底……行くしかないかぁ……手に負えない事が起こらないといいんだけど」

ソフィーが悩む。

この悩みが根深いのだ。

「でも、そういう場所に近づいたら、フリッツのおじさんが教えてくれるんでしょ?なら安心なんじゃない?」

ぷにちゃんがそう伝える。

「ん?そんな仕組みなの?」

ソフィーの意識が前向きになった。

「ソフィー、言われてるの忘れてるね~……でもそれならそれで、不安なら確認しとけばいいじゃん」

ぷにちゃんも交えた会議で、どうやらソフィーのうだうだしてる原因も取り除けそうだ。

「でも、ソフィーさんの不安から、パーティーは更に強くなりそうですので、つまづいて転ぶ、みたいな事はきっと大丈夫です」

コルちゃんは胡座をかいて、ふわふわしてる。

ともかく、ここはキッチリ休んでスッキリシャッキリする事にした。

 

 

「よし!武器強化と、防具強化用のクロース、シュタルメタルを作らないとだね!」

コルちゃんが帰って行き、ソフィーは錬金釜の前に立つ。

更に錬金術生活が続く。

 

 

「昨日はごめんソフィー!なんか母ちゃんが具合悪くてさ」

夕方、オスカーがやって来て、そう話す。

「マルグリットさんが!?大変じゃん!お見舞い行きたい!」

ソフィーは手を上げる。

これまでマルグリットさんが具合悪くする事なんて、なかった。

「いや、今はコル露店で買った薬が効いてさ、元気過ぎるくらい元気なんだけどな」

オスカーは笑って話す。

ソフィーは上げた手を降ろす。

「なら良かったぁ……でもマルグリットさんも具合悪くなる時、あるんだねぇ……」

ソフィーは感心したように話す。

「それは、少し失礼では……」

プラフタが苦笑いする。

「だなぁ……オイラもびっくりだぜ」

オスカーも、そう話す。

マルグリットさんが具合悪くする時なんて、今まで無いし。

 

「ともかく、私はマナの柱の部屋に行っておくとしましょうか」

プラフタが言うと、ソフィーがプラフタに飛び付いた。

「早いから!まだこれから夕食だから!」

そしてプラフタの腰辺りにしがみつくと、うねうねする。

「もう!なんで抱きつくんですか!」

プラフタは苦笑いしながら、ソフィーを振りほどこうとする。

「オイラ、ちゃ~んとプラフタの分も食材持ってきてるんだぞ?つれない事を言うなよ」

オスカーはそんな2人を眺めて、窓際テーブルへと行く。

そして加熱ブロックと鍋、まな板を取り出す。

 

 

そしてゆったりまったり過ごす錬金術生活。

夜も遅くなると、プラフタはぷにちゃんの部屋に行かないと眠る事が出来ないので、ぷにちゃんの部屋へと。

そしてソフィーは、オスカーとゆったりまったり過ごしたり。

 

 

「さて、オイラは帰らないとな」

特にエロエロする事なく、朝の3時にオスカーは服を着る。

ソフィーも服のまま、オスカーにひっついて寝ていたけど、調合仕上がりの時間なので起きたタイミング。

「今日も種の日だし、人形劇を見に行くね!」

ソフィーは、ぐるこん棒を片手にオスカーに笑いかける。

「そうか、オイラは八百屋だな。コル助に昼食バスケットの注文受けてるし、ソフィーの分も作っておこうか?」

オスカーはそう尋ねる。

最近、種の日は八百屋バスケットの時が多いし。

「お昼は、そうだね!コルちゃんと一緒がいいよね!」

ソフィーは謎のポーズで答える。

「コル助とソフィー、姉妹みたいに仲良しだもんなぁ……じゃ、お昼前には荷車1号に届けておくよ。プラフタの分もな」

そう言って、オスカーは帰って行った。

ソフィーは時計を見る。

もうちょい錬金術生活出来る……

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[バーニィさん]
キルヘンベルの治安を守る子供達の先生。ソフィーやオスカーが子供の頃の先生でもある。

[錬金荷車1号]
種の日の賑わう教会前広場を彩る、2階建てハデハデ屋台。色々と売ってる。

[シェリルさん]
脱力系ゆるふわボイスの、本屋の新しい店員さん。
[エルノアさん]
レストランで張り切る、モニカと住む可愛いおばさん。飾り付けも料理も華やか。

[錬金荷車2号]
軽く引けるようにマナフェザーを装備した2階建て荷車。モニカもレオンさんも引いたりする。

[大地の傷痕、アポステル温泉]
大地の傷痕のくぼんだ先の巨大宝石の隙間から入れる、アポステルの群れが住む巨大温泉。魔物がわんさか居るけれど、ここでは襲って来ない。

[ぷにちゃん]
ぷにちゃんの中には、やたら心地好い風が吹いてる。涼しかったり暖かかったり。それでいてふわふわ出来たり眠れたりして過ごせる素敵空間。



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錬金術のアトリエ 47

錬金術のアトリエ 47

 

種の日の朝、ソフィーとプラフタはアトリエを出る。

今日は教会でお祈りからの、人形劇の日だ。

 

 

ソフィーは北の人形劇に。

プラフタは南の人形劇へと行く。

ソフィーは子供達と仲良くなってるし、北の人形劇の方が楽しみだし。

でもプラフタは、なんかオジサン達の評判が良くて、南の人形劇、演劇と笑い転げていたりするし。

師匠と弟子のファンとなったプラフタだけど、師匠と弟子も、プラフタのファンなのだとか。

 

 

……そしてお昼、フリッツさんとエリーゼお姉ちゃんも加わり、テスさんコルちゃんと、プラフタと賑やかな食事となった。

「このハム、というのが新しいわね。燻製小屋から出来上がってるとかヤーペッツが言っていたけど」

エリーゼお姉ちゃんはそう言って、教会の横にある燻製釜。

噴水から見える場所なので、そちらの方を見る。

種の日は、煙はほんの僅かに出るだけだ。

「ハム、いいよね~。でもお高いんだよなぁ……この特製バスケット、高いやつなの?」

テスさんが言う。

なんか色合いもオシャレだし、最近は旅のお弁当として、オスカーが持ってくるので、ソフィーとしては結構口にしてるけれど。

「え?お高いの?ハムって」

ソフィーは驚く。

「そうなんです。なのにオスカーさんてば、ばんばん入れてますので、本当に太っ腹なのです」

コルちゃんも、そう話す。

楽しいおしゃべりをしながらの昼食を過ごして……

 

 

そしてソフィーは、強化用のシュタルメタルとクロースをコルちゃんに渡す。

「アトリエに帰ります?」

プラフタに聞かれる。

ソフィーは悩む。

まだキルヘンベルをふらふらしていたいし……

万薬のもとは、手掛かりもないし……

ここはキルヘンベルふらふらの方がいいし、何か錬金術のヒントもあるかも!

「んむっ!このまま色々と錬金術の手掛かりを探して歩く!」

ソフィーは考え込み、そして目を見開いて顔を上げる。

「なるほど、それなら私も一緒に探して歩きましょう」

プラフタも、やる気になった。

……あれ?

そうじゃなくて……

なんかこう……

あれ?

そして、自由にフラフラする目論見は外れて、まずは2人で本屋さんへと行く。

 

 

そして本屋さん……

本を探すプラフタを眺めているソフィーは、なんとなく近くに居たシェリルさんとお喋りをする。

何でも、ヴァルム教会のシスター見習いとして、新生児の保育所で働いていたのだけれど、そこでの人間関係がギクシャクして、ここの本屋さんで働く事になったみたいだ。

「結構大変なんですねぇ……」

「まあ~、私はおっとりしてるから~……」

脱力系ゆるふわボイスで、シェリルさんは話す。

どうもこの感じにイライラする人も居たみたいで。

シスターになると、老若男女、海千山千の強者信者を相手しないといけない……

おそらくそんな事は出来そうもないし……

と、シスターの道は諦めて、働く事になったみたいだ。

 

「ところで、新しい錬金術のヒントになりそうな……」

そんな会話をして、錬金術についての話もしたりして……

そして、そう聞いてみる。

 

「そうねぇ~……お酒を飲んだら強くなるお話がどこかにあったわよ~……飲むと~、火ぃ吐きながら戦うのよ~……エポプレゾク?みたいな人がね~……」

「エルポレ族ですね。なるほど……」

思いがけない有力情報に、ソフィーはメモを走らせる。

 

 

本屋を出ると、雨が降っていて、もう夕方手前……

本屋さんで長居をしてしまったみたいで。

噴水広場を通ると、コルちゃんがやって来た。

ぷにちゃんの部屋に行くのも日課だし、3人で帰る事にする。

 

「今日はロジーさんも、夕食は冒険者の方と、賑やかな食事みたいなのです。壺屋さんの行列にも挨拶しないとなのですが……」

コルちゃんは悩みつつ、歩く。

「じゃあ、今日の夕食はお肉だね!」

コルちゃんは焼き肉が大好きな肉食系女子だし、ソフィーもたまにはお肉ガッツリ食べないと、コンテナの中の豚ネズミ、減らない……

「おお~♪豚ネズミです?」

コルちゃんが目をキラキラさせる。

「豚ネズミのでっかい塊を、お外で焼くべし!」

ソフィーは持ってる杖を高々と上げる。

「また1つ増えてましたね。豚ネズミ肉」

プラフタもそう話し、3人は意気揚々とアトリエに帰る。

 

 

途中にモニカとジュリオさんも居て、エルノアさんは今日、レストランで忙しい上に、お泊まりなのだとか。

なので、アトリエ前で一緒に夕食にする事になった。

賑やかな夕食となった。

 

そして今、あどみらプニと言うプニの親分が、巡礼街道に出没しているとの話を聞く。

なんか色んな色のプニが崇拝しているみたいで、あどみらプニを中心に、プニたちがふらふらしていて、商人達はそこだけ遠回りしているとの話。

「なんか、この前のリッチオーダーと言い、最近そういうのが増えるのかなぁ……」

上手に焼けた骨付き肉を見つめて、ソフィーは呟く。

「その話は、マナの柱もよく分からないって言ってましたね。マナの柱も、自身がここまで強烈に力を持った事は、今まで無いそうです」

プラフタが言う。

そんなアトリエ前の夕食。

小さい口で骨付き肉にかぶり付く、コルちゃんが可愛い。

そしてジュリオさんから、何かやる気になるはちまきを作って欲しい、と何となくな希望を言われた。

額にぎゅっ、と巻いてやる気になる!

……的な物があると嬉しいのだそうだ。

モニカも、そういうの大歓迎だと話した。

 

そして4人でぷにちゃんの部屋へ。

ジュリオさんはアトリエ前の片付けをしながら、待っててくれるそうで。

 

 

「あ~……モニカさんのおっぱい……」

「モニカのおっぱいは、なんかお母さんを感じるよねぇ……」

コルちゃんとソフィーで、モニカに取り付く。

そんなぷにちゃんの中。

「……何事なのよ……もう……」

モニカは戸惑い、そんな3人をプラフタは眺める。

「子供なんですから……」

ともかく、ゆっくり休む。

どうせコルちゃんがゆっくり眠るから、便乗した方がおトクだし。

 

 

そしてコルちゃんとモニカを見送って、プラフタとの錬金術生活が始まる。

そんな錬金術生活で、白熱はちまき、火竜の気付け薬のレシピ構築をする。

これでまたナザルスさんの薬に近づけたのか……

どうなのか……

 

 

そして朝、ソフィーとプラフタはアトリエを出てカフェへと向かう。

今回は超絶無敵バリア、偽りの花付き精霊織りの帳の守……

これをプラフタが使う!

コルちゃんとソフィーは、小悪魔のいたずらの君を使って、パーティーの安全を上げて行くのだ!

「おはようございます!」

元気いっぱいのソフィーは、カフェでジュリオさんとモニカ、フリッツさんに挨拶する。

今回は地底湖の奥底まで行き、同調の錬金釜を取りに行くのだ!

 

 

ともかく、カリカリトーストの朝食を食べつつ、巡礼街道のあどみらプニの話も出てくる。

目撃例が多い理由としては、見ても別に襲い掛かっては来ないらしい。

でも近づくと襲い掛かる構えを見せる。

そして免罪符が効かないのだとか。

「ん~……あの巡礼街道の広場って、街道から外れてるからなぁ……」

その話に、オスカーが呟く。

ともかく、巡礼街道を経由して、朝凪のほとり温泉、そして地底湖の奥地を目指す予定で、キルヘンベルを出る。

 

 

……青く輝く能天気な笑顔……

あどみらプニが居て、その回りには色とりどりのプニ達が、あどみらプニに体当たりして転げている。

「なんか、すっごい能天気笑顔なんだけど」

遠目でその姿を見てるソフィーが呟く。

「アトリエにあった、ソフィー人形の顔そっくりだね」

ジュリオさんが余計な事を言う。

「ぷっ!確かに……っ!」

モニカが笑う。

こちらの空気を揺らして来ない所を見ると、それほど脅威、という相手でもないみたいで、気持ちにもゆとりがある。

「とりあえず倒しておこうか。そういう依頼だし」

そしてあどみらプニ達に戦いを挑むと……

回りのプニ達は逃げて行った。

あどみらプニ……

恐ろしく人望が無いみたいで……

 

そして危なげなく倒す。

倒すと、ころころ転がって……

ぴよ~んと空へ消えて行った。

「……一体……なんだったんだろ?」

なんか凄い品質のプニ体液と、金のプニプニ玉を残して飛んで行った……

そんなあどみらプニの姿を見て、ソフィーは新しい錬金術、プニプニ弾を閃く!早速メモを取った。

 

 

そして雨の降りだした夕方手前。

メーベルト農場に差し掛かると、いつもは見かけない、派手な屋根が見えた。

近づいてみると、オジサン達とおばさん数人、子供さん2人で酒盛りしていた。

そして呼ばれたので行ってみる。

 

馬車のオジサンから噂が流れてるみたいで、やたら友好的で、それにでっかい犬とか、でっかい羊、牛も居たりして、思わず夜まで過ごす。

「牛さん、めっちゃ可愛いよおぉぉ……」

「牛さん可愛いです!」

ソフィーとコルちゃんは、犬にも羊にも飛び付いて、1番懐いた牛に夢中になっていたり。

なので、ハロルさんとフリッツさん、レオンさんは、酒盛りに混ざる……

 

 

そんな道草を食って、温泉にたどり着いた時には朝だった。

雷雨の湖畔………

「うひゃ~……ずぶ濡れだよぉ~……」

朝凪のほとり温泉の洞窟に入り、雷雨をやり過ごす。

お猿さんの群れと、カラスが4匹居た。

そしていつもよりも温泉が深い。

「……なんか、大人しいです」

コルちゃんがしゃがみ、お猿さんを撫でる。

お猿さんもアクビしてたりする。

30匹ぐらい居て物々しいと思いきや、そんな事もないみたいで。

そしてお猿の大部分は、ソフィー達に興味がないみたいで、外へと出て行った。

カラスも、3匹は飛んで行った。

「いつもと同じメンバー……という事なのか?」

懐いたカラス、ソフィーやモニカと一緒のお猿さんを眺めて、ハロルさんは1人呟く。

 

「お猿さんの中で、このお猿さんが1番おっきいんじゃない?」

モニカのおっぱいに取り付くお猿さんの背中を撫でながら、ソフィーが話す。

「確かにそうかも。なんだかイヤらしい顔してるのに、ボス猿なのかしら」

モニカも、いつも通りお猿さんを触る。

お猿さんはゴツゴツと硬い皮膚の手で、モニカの乳房を夢中でふにふにしてる。

 

 

そんな温泉ライフを満喫してから、地底湖へとまた歩き出す。

今回、水遊びはなしだ。

 

 

地底湖の入り口、色んな魔物をやり過ごして進む。

高品質の水、鉱石がぼろぼろ採れる!

更にハロルさんの好きなトカゲも採れるし、オスカーも色んな草花を採っていたり。

「この金プニ、早すぎなんじゃないか?」

オスカーが呟く。

まるで瞬間移動ばりの、コロコロを繰り返す金プニを脇目に、地底湖の奥へと目指す。

特にこちらに詰め寄って来る訳でもなく、コロコロとどっか遠くへ行ったりする。

 

「でっかい!何あの魚……」

ソフィーが驚く。地底の湖畔で、大星魚の大物がアクビしてる。

なんか退屈そうだけど、遠目で見てる分には問題なさそうだ。

 

ともかく奥へ……

意外と野営できるくらい、魔物が居ない場所もちらほらあった。

 

 

「これは……華水晶だな……滅びたマナの柱の跡地となった場所で、見掛ける事の出来る物だ……と、言う事は……ここにはもう、滅びたマナの柱も無い、と言う事だな」

フリッツさんがそう話す。

強敵を予感させる空気に変わった、地底湖の奥地にたどり着いたのは夜中。

とんでもなく広い洞窟だ。

きらびやかな巨大水晶がたくさん見えて、きらめいているものだから、夜、って感じもしない。

……強敵を前に食事も程々。

ほんのひとくちふたくちだけだ。

 

「来る!プラフタ!」

ソフィーが敏感に察知して、襲い掛かって来たツインヘッダー×2との戦闘になった。

「はいっ!」

プラフタが使うのは、精霊織りの帳の守。

ソフィー達のパーティーに白いもやもやが掛かり、一気に楽な呼吸の出来る空気に変わった。

「これは……何と言う加護の力だ……凄過ぎる……」

ジュリオさんが呟く。

そして恐ろしいダメージ軽減により、戦闘は長くなるけど危なげなく勝てる!

「なんと!……これほど凄い効果を発揮する物だったとは……ソフィー、あなたはとんでもない物を作りましたね」

プラフタもびっくりだ。

「偽りの花」の特性が強烈過ぎる。

それからもツインヘッダー達と、更にタイラントホルンという巨大魚とも戦うも、精霊織りの帳の守が強烈過ぎて、危なげなく倒せる。

 

 

そして最奥に控えるのは、死者の魂を操り、リッチを生み出すリッチの王、ノーライフキング。

だけど、ノーライフキングは何故かツインヘッダーよりも弱く、しかも単独で出てくるものだから、いっそ精霊織りの帳の守も必要なく、あっさり倒す。

そして、ジュリオさんの聞いた通り、同調の錬金釜と、何かの本を手に入れて、帰還となった。

 

 

……開花の日、早朝。雨の降るアトリエ前に到着する。

「今回、かなりぷにちゃんの力が増えたような……」

ソフィーが呟く。

「確かに、強敵との戦いに勝つと、ぷにちゃんの力が強くなって行きますし、かなりとんでもない力になっているとしか思えません」

コルちゃんも口許を隠して呟く。

そのまま、アトリエで朝食、という事になった。

パーティーで、この強さの不思議について話そう、という事になったのだ。

「錬金術で作る物って、凄過ぎるよねぇ……ここまで凄いと、なんか怖いよね……」

ソフィーが話す。

オスカーは達人の錬金釜がちょうどいい大きさだと、達人の錬金釜で煮物の調理をモニカ、レオンさんとコルちゃんとで始める。

「特性を乗せる、という能力と特性を適用させるという能力が、特に凄いのかと」

プラフタも言う。

雨は小降りになって来た。

 

「僕の居たアダレットの騎士団も……と、言いたい所だけど、僕は第一線の事情は分からないんだよね。恥ずかしながら……」

ジュリオさんは頭を掻く。

「ジュリオさんの剣も人間離れしていますけれど……」

ソフィーはそんなジュリオさんを見る。

「まあ……そう感じるのも無理はないが……アダレット騎士団の第一線、となると今の我々では遠く及ばない強さをしているな。彼らは全員、マナの柱の力を獲得している」

フリッツさんがそう話す。

……とんでもない強さの集団……

って事らしい。

そして主にフリッツさんの話を聞く朝食となった。

 

第一線の強さを持つ人の話を、フリッツさんだけが知っていたからだ。

そもそもマナの柱の加護の強さ……

と、いうのは、ソフィーのパーティーで言うと、逃げ隠れせずに叩き合う強さ。

……になる。

それとは違う、気取られない強さ、だったり相手の攻撃の範囲よりも外から攻める強さ、だったり様々なのだと言う。

 

……朝食を食べながら聞くその話は、少し怖いものだった。

マナの柱が多数現れて、その魔法の力は、世界中に充満している。

その魔法の力の有効活用も、ソフィーが思う所とは、また別次元と思えるぐらい研究されているみたいだ。

……強くなりすぎてるんじゃないかと思ったりもしたけれど、そうでもないみたいなので、安心して更なる錬金術を研究して良さそうだった。

 

 

そしてアトリエ前で解散。

ソフィーとプラフタ、モニカとコルちゃんで、ぷにちゃんの部屋へと、ぷにちゃんの中へと行く。

「……残りの時間は……60時間だ……」

ぷにちゃんはお決まりの台詞を言う。

「なかなか減ったわねぇ……でもまだまだあるのは助かるけど……」

モニカが思う。

最近は、ジュリオさんとご無沙汰みたいで。

そんなのも、この場所だとだだもれだ。

「ふむ……ご無沙汰なのに言い出せない……モニカさんらしいです……」

コルちゃんが思う。

コルちゃんはロジーさんが程々な感じになってきて、好都合な感じ。

「む~……あたしも先週はまったりのんびりしてただけだけど……今週はどうなんだろ?」

ソフィーも思う。

別にまったりのんびりでも、全くもっていいんだけど、プラフタとはガツガツしてたし……

「そういえば、ソフィーだけ恋人が2人なんてズルい感じするわね……」

モニカが目を光らせる。

……けど、別にどうこうしたい的な欲も湧かず、光った目も瞼が落ちて、やっぱ寝たいオーラが出る。

コルちゃんもソフィーも、プラフタもそんな感じで。

 

 

そして休んで解散。

ソフィーは早速、同調の錬金釜の調合に入る。

「お~♪カテゴリーパワーバッチリな素材あるある!」

ソフィーは錬金釜の中を眺めて、テンションを上げる。

「これは、長らく練習用の錬金釜でしたが、更に良い環境での調合となりそうですね」

プラフタもその調合を見つめる。

 

 

「よし!なんと全て完璧!これからはこの錬金釜で更にいい物が作れそう!」

ソフィーは配置を決めて、1つため息をつく。

とは言え、浸け置き24時間!

今日はもう、錬金釜は使えない……

 

でも、レシピ構築したいアイテムはあるので、錬金術生活。

同調の錬金釜と共に、持ち帰った本をプラフタと読み解き、心眼のモノクル、原初の種火、シュタルレヘルン、プニプニ弾、とレシピ構築する。

 

 

それがお昼まで。

そんな錬金術漬けの時間に、プラフタが記憶を取り戻した!

「ソフィー……!遂に私のアトリエと、その鍵を思い出しました!」

目を見開き、嬉しそうな顔のプラフタ。

「おお~!」

錬金術漬けの午前中の疲れもぶっ飛び、飛び上がるソフィー。

 

そして真理の鍵のレシピを書き記す。

分からない素材×3のレシピなので構築など出来ず、メモに留まる。

「ソフィー……大地の傷痕に行きましょう。そこで話したい事があります」

そしてプラフタが遠い目をして、その目を伏せて話す。

かなり多くの記憶が戻って来たみたいだ。

「ふむ~……アポステル温泉、気に入ったんでしょ?めっちゃ可愛かったもんねぇ……毒の爪も、猫モードの時は引っ込んでるし~……」

ソフィーはにやけて、プラフタにジト目を向ける。

「なるほど……そう来ましたか……」

プラフタはかくっ、とずっこける。

「また行く……としても、重要な用事なら皆に言っておかないとだね!真理の鍵の材料の聞き込みもやらないと、だし~……錬金釜は24時間使えないし~……」

ソフィーはそう話して、コンテナに入り、ちょこっと調合、耐水性でかゼッテルを作ると、そこに品目を書いて行く。

 

朧草の花弁……日輪の雫……久遠の竜鱗……ソフィーは紙にそう書き記す。

「なるほど……貼り出して情報を集めよう、と言う事ですか」

プラフタは言う。

「ん~……初耳3種類だと忘れそうだし、こういうのあった方が聞くの忘れたりしないし!」

ソフィーはごまかし笑いしつつ、その紙を折り畳むと、杖を手に取る。今日はキルヘンベルをふらふらするのだ!

 

 

そしてアトリエを出るソフィーとプラフタ。

今日は晴れたキルヘンベル。

「プラフタのアトリエにも、錬金釜はあると思うんだけど、どんな錬金釜を使っていたの?」

噴水広場に向かう道。

ソフィーが聞いてみる。

「知識の大釜、という錬金釜でした。錬金術の能力を持たない者でも調合が出来る、という代物でして」

プラフタはそう話す。

錬金釜にマナの柱の力が宿り、そして命と魂が宿っているので、錬金釜が話す。

プラフタは本だったけれど、それが錬金釜……

みたいな感じ。

「ってことは……飛ぶの!?」

ソフィーは目を輝かせる。

「はい。飛びますね」

プラフタはそう答える。

そうして噴水広場まで、色々とおしゃべりして歩く。

 

 

噴水広場に、モニカとジュリオさんが居た。

それにバーニィさんと教会騎士の方々が居たり。

「おはようございます!」

ソフィーは元気いっぱいに挨拶しつつ、あの紙を広げる。

 

……ジュリオさんとモニカはこれから、裏ストリートの見廻りに出るみたいで、その話をしていたらしい。

そうして行ってしまったのだけど、日輪の雫はモニカに心当たりがあったみたいで、久遠の竜鱗も、ジュリオさんに心当たりがあった。

 

ジュリオさんは、夕方ぐらいにはその心当たりを色々確定させて、アトリエに顔を出してくれるそうで。

モニカはうろ覚え過ぎてよく分からないけど、思い出したらアトリエに顔を出してくれるそうだ。

「イキナリ2つ、終わったよおぉ!」

ジュリオさんとモニカ、バーニィさん一行をお見送りして、ソフィーはガッツポーズを取る。

最後は朧草の花弁だけだ。

植物の事ならオスカーが何か知っていそうだ。

 

「オスカーなら、本屋さんかな!いや……流石に寝てるかなぁ……」

ソフィーは口許に指を置いて呟く。そしてやはり本屋さんへと行く事にした。

 

 

「……うわぁ!雨が来る!」

旧市街、師匠の木の場所でソフィーは指差す。

森から噴水広場に向けて、雨の境界線が移動している。

「よく降りますねぇ……」

ともかく、2人で本屋さんに駆け込む。

ほんのちょっと濡れただけで済んだ。

 

「あら、ソフィーとプラフタじゃない」

「お~、ソフィーとプラフタじゃんか」

「お?笑いの浅い姉さんじゃないか」

「あ~!ソフィーだぁ!」

「いらっしゃ~い」

 

本屋さんに入ると、なんかエリーゼお姉ちゃんとオスカー、職人のおじさんにソフィーダちゃん、シェリルさんと揃っていた。

何でも、この本屋さんから裏の井戸に向けて、エリーゼお姉ちゃん達、本屋の番人達の詰所、兼、倉庫を作る話をしていたみたいで。

「へぇ~……ん?結構お金かかるんじゃない?」

ソフィーは口許に指を置いて呟く。

そして疑問に思った。

 

「レストラン収入と本屋の収入で、何とかなりそうなのよ。それに本も増えちゃって増えちゃって……」

ひとしきり増築の話をする。

地下室が本の倉庫、地上はベッドと暖炉、そんなシンプルな作りだけど、日程とか材料とか……

働く人とか……

色んな話が飛び交う。

そしてソフィーが例の紙を出して、探し物を聞いてみる。

「お~……朧草なら、今オイラ育ててるぞ」

知ってるどころか持ってた……

でも栄養状態が余程よろしくないと、花が咲かないみたいで、オスカー印の栄養剤も空しく、花が咲いていないみたいだ。

 

ソフィーは錬金術製の、新しい肥料をメモする。

「あっさりと!3つとも手掛かり掴めたかもだね!……でも明日の朝まで錬金釜は使えないんだよなぁ……」

ソフィーは頬を掻く。

「ふ~ん。じゃあ、ソフィーは珍しくヒマヒマって事かぁ……キルヘンベルはここ最近、色々と新しい店とか出てるから、案内しようか?」

オスカーが言う。

「それ、いいね!プラフタも行こうよ!」

そして3人で雨のキルヘンベルを……

しかも裏ストリートへと歩いて行く。

 

 

「あ、ジュリオさんとモニカだ!」

裏ストリートに差し掛かった時に、ジュリオさんとモニカに会う。

今はパトロールに歩いているみたいで。

 

「あら、珍しい所で会うわねぇ、ソフィー」

「ついに裏ストリートの散策かい?」

裏ストリートの注意点なんかを教えてもらい、3人は奥へと進む。

 

 

「ここがレストランに対抗して作られた偽レストランだな。冒険者の人が始めた冒険者達に人気の店で、安くて大雑把な料理が出てくるし、お酒も喧嘩もある感じだな。お昼だから、そうでもないけどな」

オスカーが案内して、ソフィーとプラフタがその建物を眺める。

レストランとは違って、ただ普通の家にしか見えないけれど、正面は確かにお店、って感じ。

「ふむぅ……もうすぐお昼?」

ソフィーはオスカーに尋ねる。

……食べ物屋さんなんて見たらお腹減った……

「もう14時だぞ?ソフィー、昼食食べなかったのか?」

「お昼くらいにアトリエ出ちゃったもんねぇ……食べてなかったり」

「じゃあ、入ってみるか。大雑把な料理だけど、旨いんだぜ?」

3人で偽レストランに入る。オスカーはお昼食べたけど、別に食べられるそうだし。

 

「いらっしゃい!今日は豚ネズミのいい所、入ってるぞ!」

筋肉質で、年季の入ったオーバーオールだけ着てるオジサンが暇そうにしていたけど、ソフィー達が来ると笑顔でお出迎えしてくれた。

オジサンは、今日は冒険者が冒険に出てる時間だから暇なんだ、と話してくれて、ソフィーとプラフタ、オスカーも自己紹介する。

なんか優しそうなオジサンだ。

「お嬢ちゃん、肩がぬらーっと出ていて色っぽいな、おい」

そんな中で、オジサンがそう言ってプラフタが笑っていたんだけど、ソフィーは……

ぬらーっと出てるのか……

と、思う。

思いつつも、あんまりオジサンの笑顔がいい笑顔なもんだから、つられて笑った。

 

そして出てくるお湯と豚ネズミ肉。

結構でかい。

お湯は草湯と言って、確かにほんのり何か香りがあるだけのお湯だ。

豚ネズミ肉はちょっと塩が強くて、お湯が進む的な所があった。

「はっはっはっ!なんていい食べっぷりだ嬢ちゃん、気に入ったぜ」

ほっぺたを肉の油でテカらせてるソフィーを見て、オジサンは笑う。

ソフィーとコルちゃんは、塊肉を食べるとこうなる。

「なぜあなたは、切り分けた物が大きいのですか……」

プラフタは呟く。

言っても治らない所で、なんか塊肉が出ると、塊肉で食べないと気が済まないみたいで……

そして食事を終えて店を出る。

店の近くの井戸で歯を磨く。

顔も洗う。

「もう……オスカーに拭いて貰うあなたの姿は、まるで子供でしたよ?もう少し品性と言うものを……」

プラフタに説教されながらの、歯磨きとなった。

 

コルちゃんも来るだろうから、と教会騎士の人に便乗して、アトリエに帰るプラフタとは別れて、オスカーと2人でキルヘンベルの裏ストリートをデートで歩く。

教会騎士の人達も頻繁に見かけて、そしてディーゼルさんに出会った。

「あ~!ディーゼルさんだ!お~い!」

遠目に見つけて、ソフィーが叫ぶ。

「お、おいおい……あんまり大声出したらまずいぞソフィー……」

周りのスラムな方々に目をつけられながら、でもソフィーはディーゼルさんと教会騎士の一団へと行き、オスカーも続く。

「ソフィー……相変わらず元気そうだが……あまりこっちには来ない方がいいんじゃないか?お前は人一倍空気が読めないのだから」

ディーゼルさんは渋い顔でそう話す。

そして教会に戻るから、と連行される事になった。

 

「最近、色々な物を作っているそうじゃないか。ダークマター工場ではなくなったみたいだな」

連行するディーゼルさんは和やかな感じになって、ソフィーの肩に手を置いてそう話す。

「えへへ~、そうなんですよ!役に立てる物が作れるようになりまして」

ソフィーは答える。

「私も、また教会騎士の1人。マナの柱の力を研究もした……ソフィーがマナの柱の力を得ている、と知ってもいる。だからこそ、裏ストリートには入らない方がいい」

ディーゼルさんは穏やかに話し、そしてオスカーを見る。

「な、なんかオイラが軽率だったよディーゼルさん」

オスカーも、しおらしく言う。

ディーゼルさんはどんな顔をしていたのか……

 

「でも、あたしもそこそこ強くなって来たんですよ!だからきっと、オスカーも案内してくれたんじゃないかな~、と思うんです」

ソフィーがフォローする。

「確かに。そうだなぁ……」

ディーゼルさんはそう話すと、ソフィーに顔を近付けた。

「私は、マナの柱を研究してはいるが、恩恵は受けていない。この魔物だらけの世界で、不自由な男だ。どうだろう?ソフィー……1つ助けては貰えないだろうか?」

そしてそう話した。

「え……?」

ソフィーは答えに困る。

マナの恩恵の話で、助ける、となると……

ソフィーもオスカーも思う。

 

「……そういう事だ。ソフィーのその力で、これだけのお人好し。こういう悪漢につきまとわられると、困るだろう?」

噴水広場が見えて来た所で、ディーゼルさんはソフィーから離れる。

そして教会騎士の人と、裏ストリートの方へと引き返して行った。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[北の人形劇]
ソフィーのお気に入り、子供達の子供達による人形劇。演技派の子供達が、どんどん腕を上げていたりする。午前中だけ開催。
[南の人形劇]
プラフタはこちらがお気に入り。芸人師匠と弟子の漫才なんかもやっていたり。人形劇もちょっと面白いアレンジが入っていたりする。

[ヤーペッツ]
食通商人のおじさん。レストランと燻製小屋を主に監督していたり。美味しい物を作り出す人生。
[シェリルさん]
めっちゃおっとりしている、眠そうな目のお姉さん。女の子女の子してる、可愛い人。

[エルポレ族]
お酒飲んで火を吐きながら戦っていたという記録が、どこかにあるみたい。罠とか待ち伏せとか、色んな戦い方をしていたらしいから、火も吐いていたかも。

[豚ネズミ]
コンテナに預けると、なんと番人ぷにちゃん達が食べられる所だけ残して、皮とか爪とか内臓なんかを食べ尽くしてくれたりする。なので預けるだけでお肉になる!

[番人ぷにちゃん達]
コンテナの番人。預けた物からソフィーに不要な物。使わない部分とか、汚れとかを食べ尽くす食いしん坊達。

[エルノアさん]
仲良しのおばさんも沢山居るので、モニカと住んでるけど、他のお家に泊まって来る事も多い。

[錬金術生活]
色々な企みをカタチにする時間。妖精の道標を作る時間でもあったり。実際にソフィーのアトリエをプレイしながらこの小説は書いている。コルちゃんの使用回数回復はOFF。

[メーベルト農場の酒盛り]
商人の人とかも、よく参加してるみたい。牛や羊、犬が沢山居る。

[朝凪のほとり温泉]
近くに寄ったら入って行く。もはや普段使いの温泉。相変わらずのお猿さんが今日も住んでいる。

[華水晶]
滅びたマナの柱は、魔物を産み出し続けるのだけど、マナの柱そのものはゆっくりと溶けていくみたいで、無くなる。無くなっても魔物は生まれ続ける。そういう場所でこの華水晶が多く出ている。

[達人の錬金釜で煮物の調理]
錬金釜の下の絨毯に乗せないと、コンテナとも繋がらないし、錬金釜として機能しない。なので普通の釜としても使えたりする。錬金釜サイズにもならないけれど、それでもそれなりに大きい。

[キルヘンベル裏ストリート]
スラム的な区域。荒くれ冒険者の方々とかいっぱい居たりする。表ストリートよりも広い区域。

[偽レストラン]
スラム的な女子向けのレストラン。飾り気はない。

[バーニィさんと教会騎士の方々]
キルヘンベルのパトロールをしているバーニィさんと、その護衛?の騎士の人3人。荒くれ冒険者も黙る強者の騎士の人なのだとか。教会の子供達には人気の人でもある。

[師匠の大木]
旧市街のシンボルでもある、古い木。大木という程には大きくない。

[ディーゼルさん]
バーニィさんと同じようにキルヘンベルの治安を守る、子供達の先生。筋肉マン!


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錬金術のアトリエ 48

錬金術のアトリエ 48

 

オスカーと一緒に、アトリエへと帰る。

ディーゼルさんの言ってた事について色々と話しながら……

魔物だらけの世界。

マナの柱の力があれば、ソフィーみたいに冒険出来る……

でも、今でも冒険者達が冒険していたりするし……

アトリエに戻ると、プラフタも交えてその話となった。

 

「ふむ……取り敢えずソフィー、あなたは裏ストリートへ行くのは止めた方が良さそうですね」

「まあ、そうなんだけどねぇ……」

「オイラも軽率だったよ……反省しないとだよな」

少し落ち込む2人。

夕食時を過ぎて、アトリエにバーニィさんとディーゼルさんがやって来た。

しかもモニカとジュリオさんもやって来た。

 

 

「え?バーニィさん!?」

ソフィーは驚く。

バーニィさんもディーゼルさんも、アトリエにやって来るなんて珍しい。

しかも神父さん的な服装じゃなくて、普段着みたいな……

「ディーゼルが少しキツイ事を言ったみたいでな。少しフォローしておこうと思って来たんだが……」

シャツに上着、何だかさっぱりしてるバーニィさんはそう話す。

「お、お茶の準備しますのでっ!ちょっと外で待ってて下さい!」

 

ソフィーは、オスカーを追い出してコンテナの中に入り、ちょこっと調合でお茶の用意をする。

「バーニィさんもディーゼルさんも……いつもと違う格好だからオイラびっくりしたよ。追い出されたのにもびっくりしたけどさ……」

オスカーが頭を掻く。

「ソフィーの方が、ただならぬ驚きようだったみたいだけどな」

バーニィさんとディーゼルさんは、肩を竦める。

モニカは日輪の雫のレシピになりそうな本、ジュリオさんは久遠の竜鱗の話で来たそうだ。

 

 

「お待たせしましたぁ~♪」

ソフィーがアトリエから顔を出して、オスカーとモニカ、ジュリオさんにバーニィさん、ディーゼルさんを迎え入れる。

お茶とお菓子の準備もバッチリだ。

「ほぉ……!なんだか熱烈歓迎な感じだな、ソフィー」

バーニィさんは、そう言って驚く。

それから、プラフタの自己紹介とかして、ソフィーの服の話、プラフタの服の話……

八百屋で働く問題児の話なんてする。

 

ジュリオさんは、久遠の竜鱗が大地の傷痕、ドラゴネアという凶暴なドラゴンの鱗なのだ……

と、言う話をしてくれるし、モニカは日輪の雫のレシピになりそうな本まで届けてくれて。

「なんか、本当に色々知ってますね!」

そんな色々な話に、すっかり夢中になるソフィー達。

バーニィさんもディーゼルさんも、キルヘンベル情報に詳し過ぎる。

伊達にいつもパトロールしていない。

それに、モニカとジュリオさんまで、色々と間違った噂が流れるのを防いでもいるみたいで、キルヘンベルがキナ臭くならないように、日々頑張っている話も聞けた。

 

 

……ソフィーのアトリエも、魔女屋敷とか、ダークマター工場だと噂されているらしいけれど、黄色い能天気娘と、笑いの浅いプラフタの家、と修正されているそうだ。

「笑いの浅い……この評判は凄く広まっている気がしますけれど、皆が笑っている事を考えると、適当ではないかと」

プラフタが反論すると、皆で意外そうな顔をした。

 

「……まあまあ、お陰で師匠も弟子も新ネタの仕入れに余念がないようだし、アトリエの評判も良くなる、と思えば」

ディーゼルさんが話す。

師匠と弟子は嫁も彼女も居ないみたいで、裏酒場で女の子を買う常連さんらしいけれど、女の子をバンバン笑わせるサービス精神に溢れているらしく、人気なのだとか。

「また、生々しい話だなぁ、バーニィさん」

そんな話を聞いて、オスカーが呟く。

「まあ、そこはソフィーは大丈夫だろう。オスカー、君と生々しい関係な訳だし」

バーニィさんは答える。

「まあ……そうだけどさ……」

ソフィーとオスカーの仲は、13歳の頃に知れ渡っていたりするので、あまり動揺もないのだけど、モニカとプラフタが、くすくす笑っていたり。

 

……それはともかく、マナの柱の話になった。

バーニィさんは、他国の兵士をしていたと言う。

ディーゼルさんも同じ国で武器屋を営んでいたのだけど、マナの柱の間、という場所でマナの柱の祝福を受けた巫女を抱いた、と話した。

そうしてマナの柱の力を得たバーニィさんは、兵士として仕え、マナの柱の力を得られなかったディーゼルさんは、武器屋を手伝う事になったのだと言う。

兵役を終えて、2人して旅人となり、このキルヘンベルへと流れ着き、今は教会に仕えている訳なのだと、自身の経緯について話した。

 

 

「ディーゼルは、その巫女と交わったにも関わらず、マナの柱の力を得られなかったのですか?」

プラフタが尋ねる。

「そうなんだよ。そういうパターンは俺以外だと、1人しか居ないそうなんだよ」

ディーゼルさんはそう答える。

そしてマナの柱について語り出した。

 

 

……まずマナの柱の主が居て、巫女が居て、兵士が居た。

キルヘンベルの場合、ソフィーがマナの柱の主。

ぷにちゃんの1番の友達、となるみたいだ。

そしてマナの柱は主の性格も乗せて、その地域に影響を及ぼす。

……巫女に当たるのは、コルちゃんとモニカ、プラフタ。

主以外の女の子が巫女に当たり……

……兵士に当たるのは、オスカーとロジーさん、ジュリオさん……

って事になりそうだなぁ……

と、ソフィーもモニカもプラフタも思う。

 

ネコみたいにふらふらするアポステル、じゃれついてくる島魚。

やたら可愛い顔のお化け。

そしてプニプニ。

魔物は特に大きく、マナの柱の影響を受けるから、分かりやすく変化する。

なんかゆるふわな感じになるのは、主の影響が大きいのだと話した。

人食い蜘蛛なんて、人を食べないし。

猿も人に懐いていたりするし。

蜘蛛も猿もカラスも、魔物だったのかも知れない。

 

 

「なんかあたし、この辺りの支配者みたい……」

「そうだなぁ……オイラもびっくりだよ」

2人は呑気なリアクションをする。

「この辺りを支配するのは、マナの柱だけどな。そのマナの柱の性格付けをするのが、主なのかと思うのだ。特にこのキルヘンベル回りを見ると分かりやすいだろう?」

ディーゼルさんが話す。

プラフタも頷いた。

「すると……ソフィーが主になっている間は、プニプニはコロコロしながらニコニコしてるって事なのかしら?」

モニカが呟く。

「一応、テンパッた顔で襲って来るのも居るけれどね」

ジュリオさんが言う。

「……まあ、主がどうの、というのはディーゼルの仮説だけどな。ソフィーの影響を受けてゆるふわしてる分には、我々も過ごしやすい」

バーニィさんはそう言って、更に個人特性と戦術について話した。

 

 

バーニィさんの場合だと、個人特性として「針」が使えるらしく、それは遠距離から暗殺に向いた魔法なのだと話した。

その一撃はHPMPLPバリアを数千抜いて、相手を死に至らしめる。

ただ、それはソフィーの近くだと使えないと言う。

ソフィーは周囲の個人特性を殺して、ソフィーの特性を適用させる能力なのだと話した。

モニカも、ジュリオさんもコルちゃんも、それぞれに個人特性があるはずだと教えてくれた。

そしてそれは、マナの柱と主、それに他の人も……

本人が打ち明けない限り、分からないのだそうだ。

 

戦術、というのは……

その分からない能力同士で、お互いに戦う歴史を積み重ねた結果、セオリーとなる立ち回りなんかを指す。

 

バーニィさんとディーゼルさんは、今回……

もしソフィーが人と戦う場合、魔物との戦闘とは全くもって勝手が違って来るハズだから、人と争うなんて事があった場合に、軽率な行動に出ないように。

と、忠告をしに来たのだと話し、帰って行った。

 

 

バーニィさんとディーゼルさん、モニカとジュリオさんを見送った時には、もうすっかり夜になってた。

 

「ふむぅ……て、事はオスカーもプラフタも、あたしの知らない能力が、あたしから離れると使えるようになる……って事なんだね?」

バーニィさんもディーゼルさんも帰ったアトリエで、ソフィーは口許に指を置いて呟く。

「なんか、凄い話だったよなぁ……オイラの秘められた力……一体なんだろうなぁ……」

オスカーは考える。誰にも分からないって事は教えてくれる人も居ない……

と、いう事みたいだ。

「私も、どういう能力なのでしょうか?能力がシンプルなのではなく、秘められた能力の部分が大きい……そういう事なのでしょうか?」

プラフタも、腕を組んで考え込む。

でもともかく、もう夜だし寝る事にした。

朝5時に、ついに同調の錬金釜が出来上がるし。

 

そしてソフィーは、オスカーと能天気にラブラブして眠る。

 

 

「さて……もはや言葉を失う光景な訳ですが」

朝の4時半、事後ハダカ族のソフィーを眺めてプラフタがため息をつく。

オスカーはもう既に居ない。

「なぜ昨日の話から、そういう展開になれたのか、不思議でなりません。ソフィー!起きなさい!」

プラフタはソフィーのお尻をぺちぺちする。

「あうぅ……」

ソフィーは起き出し、ベッドの寝床セットと共にコンテナへと向かう。

プラフタは掃除を始めた。

 

 

ともかく、同調の錬金釜が完成!

広くて柔らかくて、これからは幾らでもスペシャルな調合が出来そうな、そんな逸品が出来上がった!

「よ~し!これからはステキ錬金釜でステキ錬金術!練習用の錬金釜も卒業だね!」

ソフィーはテンションを上げて、ガッツポーズを取る。

「確かに。これだけの物が出来上がれば、そうも言えますね」

プラフタも頷く。

そしてレシピ構築して、調合していなかったアイテムの調合を始める。

でも、心眼のモノクル作成の水晶玉が足りず、これを2つ調合。

 

6時間×2……

12時間かかる。

そして外はいい天気!

そしてルビリウム作るとしたら……

9時間………

ノーブルサファイア作るとしたら……

12時間………

 

24時間とかあっという間に、しかも準備だけで飛んで行く!

 

 

「人形劇の時間だ~!」

気が付いたら種の日。

お祈りの時間、人形劇の時間、明日の冒険、大地の傷痕行かなくちゃの話をしないと!

……そんな時間だ。

「昨日はアトリエ前で暴れてましたから……あなたは元気過ぎますねぇ……」

プラフタは呆れて言う。

調合の待ち時間の度に、ソフィーはアトリエの外で杖を振り回していたり。

逆立ちしてみたり。

 

 

……そんな訳で雨模様のキルヘンベルだけど、ソフィーはアトリエを飛び出す。

プラフタも追いかける。

南の人形劇と演劇で笑ってると評判上がるみたいだし……

プラフタとしても、何故か行かなくちゃと思わせる、種の日の噴水広場。

 

 

……お祈りの時間。

ソフィーは杖を立てて、お決まりのお祈りのポーズを取る。

 

そして噴水端会議の時間。

ソフィーとプラフタ、ジュリオさんとモニカ、コルちゃんとホルストさん、マルグリットさんとレオンさんとパメラで集まる。

 

今回はもっぱら、秘められた各々の力の話で、会話は弾んだ。

「なるほど……マナの柱の力ですか……冒険者の方々や商人の方々には、正規兵の儀式と聞いていましたが、そんな物がソフィーのアトリエにあるのですねぇ……」

ホルストさんが感心して頷く。

「おばあちゃんの時も、マナの柱の力が活躍していたハズなんですけど……あたしも含めておばあちゃんの記憶って、無いんですよねぇ……」

ソフィーはそう呟いて、考え込むポーズを取る。

「個人個人の秘められた力か……あまりにも夢がある話だね。僕は一体どんな力があるものやら……」

ジュリオさんはそう言うと嬉しそうに微笑む。

「私も、なんだかウキウキしてくる話よね!」

モニカも満面の笑顔だ。

「そんな力があると~、何だか物騒な事になりそうで怖いわ~」

パメラが頬に指を当てて言う。

確かにツインヘッダーとの戦闘とか、黒プニの群れとか……

厳しい戦いもあった……

 

「あたしもゴメンだねぇ……八百屋での戦いだけで充分だよ……」

マルグリットさんもそう話す。

そして話は、新しく生まれ変わったらしい大白玉ニンニクの話になったり、カフェによく来る、迷惑なお爺さんの話になったり。

 

 

そして人形劇の時間になると、雨は止んでソフィーは子供達に混ざって北の人形劇を堪能する。

プラフタは南の人形劇で、冒険者やらオジサン人気の中、ゆったりと過ごす。

 

そしてお決まりのお昼は、八百屋バスケットのサンドイッチを噴水の側、錬金荷車1号にて。

コルちゃんとテスさんと4人で食べる。

そんな日常の時間が流れる。

 

 

午後はプラフタは南の演劇、ソフィーは教会に行ってみる。

人形劇用の人形達と台本なんて読んでたら、夕方になった。

 

 

そして夕焼けの光に染まるキルヘンベル。

今日もぷにちゃんに綺麗にしてもらうコルちゃんとソフィー、プラフタでアトリエに帰る。

「ああ~……人形達がめっちゃ可愛かったよおぉ……コルちゃんも可愛いけれど」

ソフィーはコルちゃんに抱きつく。

「ソフィーさんは人形の可愛さに骨抜きです。フリッツさん恐るべしです」

人形劇の人形は、みんなクオリティーの低い可愛い人形なんだけど、それがソフィーにはたまらなく可愛くて、同じ台本の物語も、何度でも見れてしまう。

 

ぷにちゃんの部屋の中でも、ソフィーはコルちゃんに抱きついてうねうねして過ごし、ぷにちゃんに眠りに落とされる。

 

 

「はぁ~……冷静さを取り戻せたよぉ~……」

ぷにちゃんの部屋の前、ソフィーとプラフタは、呟きながら服を見る。

そしてコルちゃんが出て来た。

「ふむぅ……スッキリシャッキリです!」

そしてスッキリシャッキリのポーズを取る。

「あははっ!あたしもスッキリ~……シャッキリっ!」

ソフィーもプラフタも、スッキリシャッキリのポーズを取る。

コルちゃんはご機嫌そうに笑う。

「明日は大地の傷痕……そこから第2回もありそうですね。妖精の道標は残っています?」

それぞれ服着るタイムに、コルちゃんが言う。

「そうだ!無かったんだ!作らなきゃだね~」

ソフィーが気づく。

その為に特性研究と称して「増殖」ゼッテルとか作っていたのに、忘れていた。

「先の錬金術ばかり考えていましたね。コルネリア、いい所に気づいてくれて助かります」

プラフタもそう話す。

コルちゃんは服の隣に置いてある、使用回数残り0の、ぼろぼろの道標を眺める。

「ともかく、無いと困る物ですので……作っておくといいです」

そしてコルちゃんは帰って行った。

さっそく妖精の道標の作成に入る。

 

 

……朝の6時。

浸け置き長いからって、ぷにちゃんの部屋でプラフタとイチャイチャエロエロしてたりしたら、あっという間に朝になった。

 

「お腹減ったよぉ~……カリカリトースト食べたい!カフェに行かないとだね!」

出来上がったばかりの妖精の道標を握り締め、ソフィーはアトリエを飛び出す。

曇っていて、雨でも降りだしそうなアトリエ前の山の中。

「こんな生活でいいのでしょうか……幸せの後に、なんだか複雑な思いがします……」

元気いっぱいのソフィーに、プラフタが呟きながら続く。

 

 

そしてカフェに。

皆揃っていた。

妖精の道標の完成に時間が掛かる、と聞いていて、もう依頼の話も目的地も決まっていた。

「妖精の道標は、出来上がったのかい?」

ジュリオさんが尋ねる。

「はい!おかげさまで遅れましたけれど」

ソフィーは元気いっぱいに答える。

そしてカリカリトーストを食べる。

今回の目的地は、大地の傷痕を経由して西へ。

「失せし者たちの都」へと行く予定となっていた。

昔はキルヘンベルよりも大都市だった場所だけれど、今は魔物の巣となっている場所だ。

 

ここの文献等が依頼となっていた。

結構高額の依頼だし、ここの情報を知る事でキルヘンベルも、何をどう警戒して過ごせばいいのか分かる。

重要なお仕事。

そして第2回も計画されていて、こちらも西方面。

「淀の小島」の側にある、「願い無き供物台」という場所。

 

 

「なんと完璧な計画!ジュリオさん凄いです!」

ソフィーは能天気に喜ぶ。

そんな旅の道。

「今回はコルネリアがね、旅の商人から仕入れた話があって、それでこういうルートがいいんじゃないかってね」

荷車を引くジュリオさんが、そう話す。

コルちゃんはスタートから、「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」の商人のおじさんのプレゼントだと言う、トマトのぬいぐるみを抱いて、錬金荷車2階で寝ていたりする。

「錬金術の話も、コルちゃんなら顔が広いからなぁ~……」

ソフィーは呟く。

今回は北へと向かう道。

「ソフィーは錬金術で忙しいものねぇ。そこまでは手が回らないんじゃない?」

モニカも言う。

「それはあるね!出来上がりには帰らないとダメだもんねぇ……でもあたし、顔が広い訳じゃないし、裏ストリートは出入りしない方がいいって言われてるし……」

ソフィーはそう話す。

思い思いにおしゃべりして歩く旅の道は、やっぱりなんだか癒される。

 

 

そして夕方、少し手前くらいに大地の傷痕に到着する。

プラフタが言うには、この場所は錬金術によって穿たれた傷痕。

谷みたいになってるから、どんだけの規模の爆発なのか……

恐ろしい話を聞いた。

「でも、一体誰がこんな事をしたんだろう……」

ソフィーは呟く。

「案外、プラフタだったりしてな?500年前に物凄い錬金術士だった訳だろ?」

オスカーが片方の眉を上げて、そう話す。

「まさか……ですが記憶が完全ではない以上、違うとも言い切れない所が辛い所ですね」

プラフタは深い渓谷を眺める。

「さて、ドラゴネアとやらを倒したら、早くあの温泉に入りましょう!」

レオンさんが言う。凶暴なドラゴン、ドラゴネアとこれから戦うと言うのに、何だか気楽な雰囲気。

「プラフタ、相手の空気感、よろしくね」

ソフィーはプラフタに身体を寄せて言う。

色々と感覚がないプラフタが、何故か戦闘の空気感には敏感で、相手の力量を計るのに長けていたりする。

 

「はい。これから誘き寄せる訳ですが……空気を感じたら警告します」

伏し目がちに、プラフタは答える。

そして一行はソウルストーンがよく採れた、高い所へと向かう。

その途中でアポステル4匹と出会う。

飛んでいて、目が血走っている。

とはいえ、格下も格下。

ソフィーの杖でさえ一撃で倒せる。

倒すと地面に落ちて、ネコみたいに歩いて帰って行った。

行き先はきっと、あのアポステルだらけの温泉なんだろう。

アポステル達は下へと向かい、ソフィー達は上へと向かう。

「戦闘準備を取ってから呼び出せるのは有難いね」

 

 

ソウルストーンの採れる場所。

高い所でジュリオさんが準備する。

ドラゴネアの好む干し草と、道中に採った、死んだ豚ネズミ達を置く。

少し待つと、白い巨大ドラゴンが飛んで来た。

食べてる時に襲ってはいけないらしい。

豚ネズミを丸のみしてるドラゴネアを見守る。

隠れて見守ってる訳でもないのに、ドラゴネアは食事に夢中。

全部食べると、ドラゴネアがため息を吐いた。

 

 

……ボホーオオオォォォ……

巨大なため息。

凄く新鮮な草の香りがした。

凶暴……

というより、何だか呑気なドラゴン……

その後でドラゴネアがソフィー達を見る。

目が合うと両の翼を広げて吠えた。

「ウギャアアア……!クギョオオオォォォ!」

やる気満々のドラゴネアを相手に、ソフィー達は身構える。

「やっと来るか……」

戦闘パーティー最前列、フリッツさんが構える。

「どう?プラフタ?」

ソフィーが尋ねる。

ソフィー的には、あまり空気も震えない。

それほど強敵ではない感じがする。

「それほどでもありませんね。攻められる時に攻めてしまいましょう」

そしてぽかすか祭り戦法で叩く。

 

「グギャアアアァ……」

ドラゴネアからは何もされずに、ドラゴネアは倒れた。

そしてごろごろすると、どっかに飛び去って行った。

「あれ?なんか……あっけなく勝っちゃったけど……」

ソフィーはそんなドラゴネアを見送る。

ドラゴネアがごろごろした所に、久遠の竜鱗は落ちていた。

「フリッツおじさんの剣がとんでもなく強いとか、なのかしら?」

レオンさんが首を傾げる。

 

「ドラゴンまでも、こうもあっさり退ける……となると、不思議になるな……」

ハロルさんも疑問に思うみたいだ。

ともかく、目的の久遠の竜鱗を手に入れたので、ソフィー達は大地の傷痕の渓谷を降りる。

今度はアポステル温泉へと向かう。

 

 

今回は、荷車2号の番人をフリッツさんとオスカーが引き受けてくれて、アポステル温泉へ。

「本当に!ソフィーの旅に来るようになって良かったわぁ……こんなの、夢にも見た事ないもの!もう幸せったらないわ!」

アポステルの1匹を抱いて、めちゃくちゃ笑顔のレオンさんが言う。

「確かに。こんな温泉で過ごせるなんて、本当に夢のようです!」

コルちゃんも、アポステルの1匹を抱きしめて話す。

相変わらず、まだそこいら中にアポステル達が転がっていて、ごろごろしてる。

「なぜこんなに大人しいのか……毒の爪もすっかり引っ込んで……」

ハロルさんもそう呟いて、アポステルの肉球をぷにぷにする。

ぷにぷにされてるアポステルはその大きな目を細めて、口をパクパクさせてる。

めちゃくちゃ可愛い。

 

そんなアポステル温泉を満喫し、大地の傷痕から更に西へと一行は進む。

 

 

真夜中12時、骸の森を通る。

そこから悟りの岩山を通過して……

原っぱ遺跡。

ここのミニデーモンが依頼だと言う話なので、ミニデーモン探しが始まる事になった。

 

「清々しい朝~♪」

晴れ渡る原っぱ遺跡。

黒プニがころころしてて、カイゼルピジョンがバッサバッサしてる。

ミニデーモンの角が、なんか薬になるみたいでそれが依頼となっていたみたいなので、探すけれど居ない。

 

「美容にいいという噂だったこの水溜まりは、結局は迷信だったのでしょうか……」

原っぱ遺跡の水溜まりを眺めて、コルちゃんが呟く。

今日は黒プニ君が半身浴をしていた。

「襲っては来ないみたいだね。なんだか魔物なのに穏やかな……」

コルちゃんの隣でジュリオさんも呟く。

そしてミニデーモンが見つからない。

 

 

昼くらいにやっと3匹見つけて倒す。

ミニデーモンは倒されて地面に落ちると、アポステルみたいにどこかへ歩き去って行く。

ヤギの角みたいなのが付いてるんだけど、それの先っちょだけポロリと落ちている。

 

ここの依頼目的も達成したし、と一行は更に西に向かう。

この先が今回の目的地のその1……

「失せし者たちの都」だ。

「都ねぇ……雅な響きだわ……」

錬金荷車を引くモニカが呟く。

もう夜の道。

星明かりはここでも眩しく輝いて、辺りを照らす。

 

「キルヘンベルは田舎、とはいえこの辺りではキルヘンベルしか街がないから……でもこの先が都会、って事になってたのかなぁ……」

モニカの隣でソフィーも呟く。

そして歩く旅の道。

失せし者たちの都が近付くにつれて、道の端に看板がにょきにょきしてる。

「おお……酒蒸し屋オープン28コールより……なんか美味しそうなお料理屋さんって事かな」

ソフィーは看板の1つを読む。

「本屋さんに仕立て屋さんもあったみたいね。仕立て屋さんなんて、何軒もあった……みたいな感じかしら」

折れた看板やら風化した看板……

かろうじて文字が読める……

そのくらいの看板を、モニカも眺める。

「俺の親父の頃にも、ここの都は既に魔物の巣だったみたいだからな……」

ハロルさんもそう呟く。

そしてもう読む事も出来ない、朽ちた看板の群れを眺めて歩く。

 

 

そうして、失せし者たちの都へと着いたのは、夕方だった。

これから夜……

寂しい場所で寂しい時間……

「ん?」

ともかく、それぞれがあまり離れないようにして、採取生活に入る。

戦闘もあって、ヘルゲート、すーぱーぷにとの戦いがちらほら。

 

そんな採取生活の一行……

ふとソフィーが、物陰から覗く目に気づいた。

虹色のプニ、すーぱーぷにがこちらを見ていて、ソフィーが見ると、物陰に引っ込んだ。

ちょっと目を離す。

そしてまた同じ物陰を見ると、またすーぱーぷにがこちらを見ていて、物陰に引っ込んだ。

「捕まえました~!」

コルちゃんが反対からすーぱーぷにを捕まえる。あっさりと捕まって、抱き上げられてる。

「この子、魔物なのに大人しいのねぇ……アポステルみたいな感じなのかしら?」

レオンさんがすーぱーぷにをつんつんしながら言う。

すーぱーぷには、つんつんされながらも、ぷるんぷるんしながら笑っていたりする。

 

敵として出てくると恐ろしい防御力をしているすーぱーぷに。

ただ、攻撃力が無いのと、必ず単独で現れるのと、ブレイクさせると防御力が剥がれる為、危なげなく勝てる相手だったりする。

そして倒されると、他のプニは顔を無くして死ぬのだけど、ぷにぷに?

と、すーぱーぷには、地面に吸われて消えてってしまう。

……黄金のプニプニ玉、虹色の体液を残す事がある。

 

とりあえず、敵対してないみたいなので、すーぱーぷにを離す事にすると、ソフィーの後をついてくる。

「ん?なんだろ?なんでついてくるのかな?」

ソフィーはすーぱーぷにを抱き上げる。

「懐いてるのかしら?」

モニカも、すーぱーぷにを覗き込む。

すーぱーぷにと、バッチリ目が合った。

 

「……凄く引き込まれるけれど、笑っちゃうくらい何を考えているのかわからないわ……」

顎に手を置いて、モニカは言う。

ともかく、採取生活をして、朝になった頃に荷車が満載になったので帰る事にした。

 

 

開花の日、朝5時……アトリエ前に一行は道標する。

「あれ?すーぱーぷにも荷車に乗ってるじゃない!」

モニカが驚く。

そしてすーぱーぷには何だか苦しそうな顔になると、頭をふるふる振り回して、青プニになった。

「ふむ。違うマナの柱のテリトリー、しかも中心地に踏み入ったからだな。みるみる力を失ってしまったみたいだな」

フリッツさんがそんなプニを眺めて呟く。

「ぷにちゃんに鑑定して貰う……という事で、一緒にコンテナにしまっちゃいましょう」

コルちゃんに持って行かれて、荷車満載の採取物と共に、すーぱーぷにだった青プニは、コンテナ行きとなった。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[ディーゼルさん]
マナの柱の力についてもよく知っているみたい。
[バーニィさん]
マナの柱の力についてもよく知っているみたい。マナの柱の力も持っているのだとか。

[八百屋で働く問題児]
教会の子供達も、いい子ばかりじゃないみたい。

[事後ハダカ族]
幸せきゅんきゅんの、後遺症。

[噴水端会議]
皆で話したりするのだけど、おばあちゃんの話は一向に出てこない不思議。本当にキルヘンベルにおばあちゃんが居たのだろうか……

[秘められた力]
マナの柱から得られる能力。魔力を用いて人を殺す能力でもある。ソフィーだって、オリフラム公爵を誰かに使えば、人を殺す能力、としても使える。

[八百屋での戦い]
納品、販売、雇用、金銭のやりとり……毎日が戦いなのである。
[大白玉ニンニク]
更に臭いが強烈な、茶色バージョンが出回っているとか。もう、白玉ニンニクと呼べない……
[迷惑なおじいちゃん]
最近、引っ越して来たんだって。

[北の人形劇]
なんか、人形の後ろに背景が出てきた。色とりどりの蝋絵の具、恐るべし。
[南の人形劇]
歌うまお姉さんや、歌うまオジサンの歌の時間もちょこちょこ挟まるようになったとか。

[錬金荷車1号]
種の日の噴水広場に現れる屋台。コルちゃんとテスさんが売り子として頑張っていたり。
[八百屋バスケットのサンドイッチ]
燻製小屋の余り物を、八百屋さんで、ごっそりと引き取っているんだって。

[イチャイチャエロエロ]
終わると、こんなんでいいのかな的な虚しさが胸をよぎったりする。

[錬金荷車2号]
2階建て荷車。もふもふモフコットやふわモフタオル、隣の国からやって来たトマトのぬいぐるみ、そうしたアイテムも増えて、寝心地も良くなっていたりする。

[トマトのぬいぐるみ]
太陽の果実。みんな大好きトマト!キルヘンベルではあまり馴染みがなかったりする。

[アポステル温泉]
大地の傷痕の谷にある、無数のアポステルがごろごろパチャパチャしてる温泉。

[失せし者たちの都]
ゲームにもあるマップ。朽ちた看板の群れはない。

[すーぱーぷに]
ゲームにも居る魔物。ついてくる、というイベントはない。


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錬金術のアトリエ 49

錬金術のアトリエ 49

 

そして第2回の旅に出る。

もう帰りは果実の日になるか、種の日になってしまうか……

今回は西へと向かう道。

新しい錬金術の手がかりがあると言う、淀の小島へと向かう。

まずはぷにちゃんの所で眠って元気なソフィー、コルちゃんとモニカ、プラフタが錬金荷車2号を固めて歩く。

ジュリオさんとハロルさん、レオンさん、フリッツさんは荷車で眠る。

オスカーは相変わらず、荷車から離れて植物たちに挨拶回りして歩く。

疲れ知らずの化け物だ。

 

 

朝9時には恵みの森を通過、15時には月と太陽の原野を通過……その頃にはジュリオさんとハロルさんが完全復活していて、コルちゃんが荷車で眠る。

「オスカー……本当にどこまでも元気だよねぇ……」

ソフィーはジュリオさんに呟く。

トイレと言えば穴を掘って準備し、野営と言ったら料理をする。

移動となったら植物に挨拶回りして、変なルートを急ぎ足で歩く。

そんなオスカーが、旅立ちから今まで全く止まらない。

「確かに。彼のそういう所は驚異的だね。しかも目がギラギラしてるからね」

ジュリオさんも頷く。

「本当に、なんであんな元気なのかな~……」

ソフィーは口許に指を置いて呟く。

「オマエも大概、元気だけどな。そこから力を覚醒したから……いっそ壊れて止まらなくなったんじゃないか?」

すぐ後ろで、ハロルさんがそう話した。

「……あれ?そうかも?」

ソフィーは首を傾げる。

「冗談だ。あの倅が、そういう星の元に産まれてるんだろうな」

ハロルさんはそう言うと、離れて行った。

ハロルさんも、そんなに寝ないのだけど……

 

 

「大変だソフィー!こっちに来てくれ!」

月と太陽の原野を通過したくらいで、オスカーが走って来た。

「どうしたのオスカー?」

ソフィーもモニカも、オスカーを見る。

しかし、どこまで元気なんだ……

「赤い蛇の草の群れがあったんだ!赤い蛇の草温泉、ってのはこの場所かも知れないぞ!」

オスカーが言って、そちらへと行く。

蛇の草を掻き分けて進み、赤い蛇の草の群れは、街道を外れたらすぐに出て来た。

赤い蛇の草の群れも、掻き分けて進む。

とにかく密度が凄いものだから、掻き分けるのに苦労する。

「温かい風が今……」

皆で風上を見る。赤い蛇の草の群れしか見えないけれど、そちらへと進む事にした。

「この地方は、温泉が多いのか?」

ハロルさんが呟く。

「一応、本に残ってる物であと6つあるよ。近くに来たら探してみるけどな」

オスカーが答える。

いつも勉強してるだけある。

そして温かい風の方へ行くと、赤い蛇の草の群れの中、地面に穴が空いていた。

 

 

「温かい風がここから来てるわね……あたしの水着、出番が多いわねぇ……」

レオンさんがにんまりして、言う。

そして錬金荷車2号と共に入ると、キラキラした壁が辺りに多く埋まっていて顔を覗かせていて、夜でも明るい場所みたいな……

「ほぇ~……ん?」

壁に埋まる綺麗な宝石を眺めていたソフィーは、ふと足元を見る。

凄い小さな赤プニの群れが、1列になってどこかへ向かっている。

「赤プニの赤ちゃんとか?」

レオンさんもその行列を眺める。

ジュリオさんもハロルさんも、その行列を眺めて、みんなして踏まないように歩く。

 

 

「アリみたいだな……」

ハロルさんが呟く。

確かに、アリっぽい行列。

壁づたいに続いてるけど、時折壁から離れてる行列……

そうして奥へ進むと、温泉と、巨大な赤プニが居た。

その回りにも大きい赤プニと、いつもの赤プニ、少し小さな赤プニが、温泉に浮かんでいたり泳いでいたりする。

 

「赤プニ天国だね……」

ソフィーは呟く。

巨大赤プニは、いつもの何を考えているかわからない笑顔を、ソフィー達に向けている。

「温泉です!1番乗りです!」

いつの間にやら着替えていたコルちゃんが、荷車2階から飛び出す。

新しい、青いフリフリの水玉の水着。

そしてソフィー達が止める間もなく、温泉に入った。

 

「警戒心というものが欠けているな……しかし」

フリッツさんが構えて見守る。

赤プニ達の大部分が逃げて、少しだけがコルちゃんに寄って来る。

「あはははっ!あひゃひゃっ!これはっ!無理です!ひゃ~っ!」

赤プニを全身にくっ付けて、コルちゃんが出て来た。

みんなして、コルちゃんにくっついた赤プニを剥がす。

小さい赤プニがやたらくっついてる。

「これじゃ入れないわねぇ……」

血とか吸ってるんじゃないかと思ったけれど、そんな事はないみたいだ。

そしてお湯はぬるいらしい。

仕方ないので諦めて、ソフィー達は先へと進む事に。

 

 

そして西へ西へと目的地に向かう。

せせらぎの忘れ物、という不気味な遺跡群を通過して、淀の小島に到着したのは、夜中の2時。

もう果実の日だ。

涼しい風が吹く……

そんな感慨に耽る場所……

凶暴な魔獣に襲われて、戦闘だらけになった。

ジュリオさんが生き生きしてる。

 

結局、銀いもパワーの回復の方が強かったりする。

 

 

そしてそこの近くの山に造られた洞窟……

願い無き供物台へと入る。

「遠い昔だけどね、ここに錬金術士が住んでいたようで、幾つか書物も残っているらしくてね……」

ジュリオさんがそう話す。

錬金術製と思われる照明が、今もこの洞窟の中を照らしている。

「なんか、錬金術士が居たとしても……不気味な感じの錬金術士が居たのかしらね?」

モニカもそう話す。

お化けの魔物がやたら襲いかかってくる場所。

だけどやはり、銀いもパワーの回復の方が強かったりする。

「錬金術士……そうだね。僕が会ってきた錬金術士は、男の人でどこか気難しい人が多かったかな。ソフィーみたいに、目をキラキラさせている女の子、というのは初めて会ったね」

ジュリオさんがそう話す。

「ん?錬金術士と言ったら女の子、じゃないの?」

ソフィーが反応した。

「僕が出会った錬金術士は、ナザルスさんよりも気難しい感じの男の人に、縁があったかな」

ジュリオさんは話す。

ナザルスさん……

随分と時間が経ってしまったけれど、未だ万薬のもとが作れていない。

 

「あ……プラフタ、ナザルスさん大丈夫かな?」

ソフィーはプラフタに聞いてみる。

「あの地下に何があるかも分からないので、分かりかねますが、彼よりも強烈な魔物が居る場合、よろしくないかと」

プラフタは答える。

「じゃあ、大丈夫かな。ナザルスさんは1人で竜も倒す猛者だからね」

ジュリオさんが言う。

……そんなとんでもない人だったのか……

 

 

「ここが行き止まり……?」

一行は突き当たりに進む。

探してみると、1冊の本があった。

特に錬金術っぽい物……

釜とか箱とか机とか棚とか……

まるで無かったけれど……

ともかく、行き止まりなので帰る事にする。

今回はこれが2回目だから、もう果実の日になってしまっていたりするし。

勿論、妖精の道標を高く持ち上げて……

 

 

……そして、アトリエ前。

お昼も過ぎている時間のキルヘンベル。

「どうだい?土いもの凄いのが採れているけど、ここでお昼にするかい?」

オスカーが言う。

錬金荷車2号には、オスカーがいつの間にやら採った土いも、赤い蛇の草、蛇の草、キノコ、香り花に野良白玉ニンニク、野良黒玉ニンニク……

と、いつも通り揃っていたりする。

「帰って身体を洗ったら、ひと寝入りしたい所だからな……食べておくか」

「そうね。これだけ役者が揃ってるんじゃ、食べないと勿体ないわ」

ハロルさんとレオンさんが賛同して、みんなで遅い昼食になる。

ちょうどウメさんも居たので、ウメさんも一緒に昼食を囲んだ。

 

 

昼食が終わり、ソフィーとプラフタ、モニカとコルちゃんでコンテナへと入る。

今回の採取品を入れてる時に、青プニになったすーぱーぷにを思い出した。

青プニ君は、番人ぷにちゃんにぺたぺたされながら、またすーぱーぷにに戻っているみたいで、棚でぷるんぷるんしてる。

「ん~……プニ助と名付けようかなぁ……」

ソフィーが、すーぱーぷにをぺたぺたする。

「え~?プニ君、がいいんじゃないかしら?」

モニカも、すーぱーぷにをぺたぺたする。

「魔物を置いて行くとは、錬金術士殿……思いもしませんでしたな」

番人ぷにちゃん隊長が、ぺたぺたしながら言う。

「砕けたマナの柱みたいだね。記憶はほとんど残ってないけど、おかげで色々と勉強になってるよ」

番人ぷにちゃん達も、ぺたぺたしながら話す。

今のぷにちゃんは女の子の人格のようで。

「砕けたマナの柱……なのです?」

コルちゃんは、そんなぺたぺた集団をプラフタと眺めながら、服を脱ぐ。

ぺたぺた集団とは別に、服を脱げ脱げ集団も居たり。

「プニ助、持ってく~」

ハダカ族ソフィーが、すーぱーぷにを抱える。

「ただでさえ覚束ない記憶が、蒸発しそうだから持って来ないでね。コンテナもあんま良くない感じだからなぁ……」

 

番人ぷにちゃんに言われて、やっぱり棚に置いておく事にした。

すーぱーぷにには、ほんの少しの記憶が残っていて、その記憶すら、ぷにちゃんの中に入ってしまうと飛んでしまうみたいだ。

ぷにちゃんの部屋に行って綺麗にして、モニカとコルちゃんと別れて……

 

 

そして錬金術生活!

願い無き供物台から持って帰った本から、精霊の涙とガイストアイゼンのレシピを構築出来た。

「プニ助~♪」

ソフィーが呼ぶと、すーぱーぷにがぴょん、と跳ねて応える。

そしてぷるんぷるんしている。

「懐いたものですね」

そんなソフィーを眺めてプラフタが感心する。

滅びて、砕けてしまったマナの柱の欠片が、このすーぱーぷになんだと言う。

 

 

「おお!バッチリ懐いてるじゃないか。でも大丈夫なのかい?すーぱーぷには、結構暴れたら手が付けられないぞ?」

夜にオスカーが来て、ソフィーに懐いてるプニ助を見て、言う。

「へへ~♪大丈夫。なんかね、このプニ助はマナの柱の欠片なんだって。それで~……別のマナの柱の力を獲得出来る核の部分みたい」

暖炉のテーブルに乗せたプニ助に頬ずりしながら、ソフィーは答える。

「ん?よく分からないけど、それって大丈夫なのか?」

オスカーはプラフタを見る。

「こほん、もはやソフィーが夢中ですので……」

プラフタは答える。

「まあ、そこだよなぁ……ともかく、プニ助の分も夕食作るかな」

「そう来なくっちゃ!」

 

 

そして3人とプニ助で夕食になった。

プニ助は口のすぐ横から、にょきにょき生やした猫のヒゲみたいな6本の触手?

で、器を持って口に運んだり、スプーンを掴んで口に運んだり……

ちゃんと器用に食べる。

「おお~!プニプニって……そうやって食べてたんだな……」

オスカーがやたら注目していた。

そしてプニ助、ネコ舌みたいで、めっちゃふーふーしてた。

そしてオスカーを洗って、イチャイチャして眠る。

オスカーがすぐに寝てしまい、ソフィーは調合とか始めたり。

むしろプニ助とイチャイチャして眠った。

 

 

「種の日!お祈り!人形劇!」

種の日の朝3時。

オスカーとソフィーが起き出して、アトリエを出る。

アトリエを出ないとプラフタが出て来れないから、とそうなった。

晴れたキルヘンベル。

「さすがにこの時間は早くないか?」

「まあ、もうちょっとゆっくりしてから行くんだけどね」

肌襦袢のソフィーがへへへ、と笑う。

昨日はオスカーがすぐに眠ったので、いっそ調合していたり。

オスカー爆睡すると起きないし。

「また、特製バスケット作って行くよ。今日はコル助のリクエストで、肉々サンドになるけどな」

そう言ってオスカーは帰って行く。

ソフィーもアトリエに戻る。

プニ助も眠ったままで、プラフタもまだ起きてなかったっぽい。

 

 

そして朝の5時、プニ助とソフィーとプラフタはアトリエを出る。

お祈りの時間と噴水端会議、そして人形劇!

今回、噴水端会議はちょっと珍しいメンバーで集まった。

ヤーペッツさんにエルノアさん、エリーゼお姉ちゃんとコルちゃん、ジュリオさん、ホルストさん……

オスカーとモニカ、ロジーさんと仲間の冒険者の人まで。

今までで1番、ソフィーの所に大人数で集まった感じに、更にパメラとレオンさんが加わった。

プニ助にちょっと驚くも、なんか馴染んだ。

そして、皆での話は……

獣たちの寄合所から、北へと草を掻き分けて行くと、山に阻まれる。

その山に洞窟があって、温泉があるのだという話なのだ。

キルヘンベル温泉計画もあって、是非とも商隊+エリーゼお姉ちゃんとホルストさん……

これの護衛をソフィーのパーティーと、ロジーさんのパーティーに頼みたい、との話だった。

 

勿論、そんなのソフィーとしては大歓迎なんだけど、ジュリオさんが洞窟の場所や規模、準備する物なんかを話して、少し緊張感が走る。

ソフィーのパーティーには格下の相手……

寄合所の獣も、商人の人やエリーゼお姉ちゃんにとっては一撃が命取りになる。

そして噴水端会議は解散して、ソフィーはジュリオさんとモニカと、北の人形劇へと向かう。

「でも魔物なのに、こんなに懐くなんて驚いたよ」

人形劇の席に座り、プニ助を見てジュリオさんが言う。

「えへへ~、もう一緒に寝た仲なんですよ~……もう可愛いですよねぇ~……プニ助!」

ソフィーはジュリオさんの間に鎮座した、プニ助をなでなでしながら言う。

「さて、今度の双葉の日に、温泉計画となった訳だけれど……ソフィーがそんな感じで大丈夫かな?」

ジュリオさんはデレデレするソフィーを見て、困った顔をする。

 

「大丈夫です!バッチリ切り替えますから!……と言ってしまいたい所なんですけれど……不安です……」

ソフィーはガッツポーズを取り、そのガッツポーズを崩してうなだれる。

「一応、決まってはいないからね。これからフリッツさんに相談しないといけないだろうし」

ジュリオさんはそう言って、空を見る。

「なんかこういう時、ソフィーってダメだった時の事ばっかり考えちゃうのよね」

ソフィーの隣に座ったモニカが言う。

ソフィーは頷く。

「はぁ……今から帰って何か作らないとかなぁ……」

ソフィーは遠い目をして呟く。

何故か、プニ助も遠い目をして俯いてた。

 

「まあ、そう言う気分じゃソフィーは真価を発揮しないのよね。今は人形劇を見てなさい。護衛の詳しい話は、ジュリオさんとフリッツさんと詰めておくから!」

モニカは微笑んでそう話すと、ソフィー越しに、プニ助に手を伸ばす。

「え?いいの?」

ソフィーとプニ助は、モニカを見る。

「なんで、すーぱーぷにとリンクしてるのよ!護衛は、私とジュリオ、ロジーさんとフリッツさんの専門なんだから、任せておきなさいって事よ!大体、頼られてるのはソフィーじゃなくて、その辺りなんだからね!」

モニカはそう言うと座席を立ち、ジュリオさんとどこかへ歩いて行った。

そしてソフィーとプニ助は、人形劇が始まると夢中になり、お決まりのお昼。

噴水の所でコルちゃんとテスさんとプラフタで食べる。

お決まりの種の日ライフ。

午後は、プニ助と子供達と、追いかけっことか、かくれんぼとかしてた。

 

 

「あ!夕方じゃん!」

近くの森で、木の上の子供達を捕まえながら、ソフィーは、ほんのり赤くなった空を見て気づいた。

教会に子供達と戻ると、プラフタとコルちゃんが待っていて、モニカとジュリオさん、パメラも居たり。

「えへへ……木のてっぺんに隠れてるもんだから探しちゃって……」

ソフィーは頭を掻く。

「なんか、あの頃と変わらないのね」

モニカはそう言って優しく微笑む。

「ソフィーは、なんかそんな感じがいいね」

ジュリオさんも微笑む。

「え?何?何かあったの?」

戸惑うソフィー。

そしてなんだかんだ談笑して、ソフィーとプラフタ、コルちゃんはアトリエに向かって歩き出す。

 

 

「今日はすっかり遅くなってしまいました」

コルちゃんが空を見て、言う。

もう夜になろうとしてる時間。

「えへへ……なんかプニ助人気から、かくれんぼまでする流れになっちゃいまして……」

ソフィーはごまかし笑いしつつ、今はプラフタが背負う、プニ助を見る。

「確かに、心奪われる可愛さですね。コルネリアも心を奪われてみますか?」

プラフタは背中のプニ助を、コルちゃんに向ける。

コルちゃんもぷに助に背中を向けると、プニ助は飛び移る。

「おおお……なんかひんやりするです……」

コルちゃんも、なんか緩んだ顔をした。

そんな帰り道。

 

 

プニ助はアトリエのベッドに置いて、3人でコンテナへと入る。

……ゆっくり眠る時間……

コルちゃんの睡眠時間の都合で、ソフィーとプラフタも眠る事にする。

 

 

そして夕食。

コルちゃんも、プニ助が器用に食器を使って食べるのを見て驚いていた。

人形劇の話をしていたら、プニ助が頷いていた。

言葉が分かるみたいだ。それにも驚いた。

 

 

コルちゃんが帰り、錬金術生活……

そして旅立ちの朝……

カフェ前に錬金荷車1号と2号が並び、既に商人の方々、冒険者の方々が居た。

「うわぉ……賑やかだねぇ……」

ソフィーも思わず呟く。

「確かに。なんか、これなら大丈夫な感じもありますね」

プラフタも呟く。

しっかりとプニ助も連れて来たので、冒険者の注目の的になった。

「ソフィーは食事をしておいて下さい。私はあまり必要がありませんので」

プラフタに言われて、ソフィーは朝食にありつく事にした。

でも出発は9時みたいで、皆して全然早いだけだった。

 

 

ジュリオさんとロジーさん、フリッツさんとモニカを先頭に、足並みを揃えての出発となった。

雛鳥の林の北にも温泉があるらしいけれど、洞窟が崩れて塞がっているそうだ。

なお、やたら猿が居る朝凪のほとりの温泉も、同じ山なんだけど反対側で、結構北にある洞窟。

その際、ソフィーとプラフタはあまり活躍しないように言われて、ソフィーもモニカもプニ助も、錬金荷車1号と2号に乗ってるだけだったりする。

 

変な噂になると良くない、との話で。

「魔物、居るのねぇ……」

ソフィーの横で、エリーゼお姉ちゃんが呟く。

「そりゃあ、居るよぉ。ジュリオさんが格好いいんだよねぇ……」

その隣で、ソフィーも能天気に呟く。

緑プニを冒険者の人が倒していた。

そんな調子で、危なげなく獣たちの寄合所まで辿り着く。

辿り着くと、ハロルさんが少し遠くに何かを投げた。

 

トパンッ!

……と音が鳴る。

やたらデカい豚ネズミがわらわらと出てくると、ハロルさんに撃たれて3匹ほど倒れる。

「これで獣は、こっちを食べるだろうさ。行くぞ」

そのまま、獣たちの寄合所……

森を進む。

キメラビーストは見かけないで、プニとマンドラゴラが時折、遠くに居るくらいで、目的の洞窟に到着した。

 

「おお~……キメラビースト居なかったね」

ソフィーが錬金荷車1号を降りる。

エリーゼお姉ちゃんも降りて辺りを見回した。

もうすぐ夕方。

そんな時間。

「こんなに遠い所だったのね。話には聞いていたんだけど、みんな歩き通しで大丈夫なのかしら?」

エリーゼお姉ちゃんが周りの冒険者の方々、フリッツさんなんかを見る。

「いつも歩いてますからね」

「鍛え方が違うからな」

「歩いてるだけみたいなもんだから、ラクなもんだがな」

冒険者の方々は、それぞれに答える。

「さて、噂の通りいい匂いですなぁ……」

錬金荷車2号から降りたヤーペッツさんも、洞窟を眺めて呟く。

あの、タマゴの腐った臭いがする。

「初めて来たけど、朝凪のほとり温泉の匂いだね~……お猿さんも居たりするのかな~?」

ソフィーは能天気に話す。

 

まず洞窟へは、フリッツさんとオスカー、レオンさんで入って行った。

温泉は朝凪のほとりの温泉と同じだけど、朝凪のほとりの温泉よりも、少し深いらしい。

そしてお猿さんは居ないんだけど、猫とタヌキ、亀が居るらしい。

 

 

安全ぽい、という事で、まずはレオンさんとモニカを護衛に女の子チームで温泉に入る。

「うわぉ!カメ……デカい!」

ソフィーは温泉の脇に居る亀に近寄る。

亀は欠伸をして、また口を閉じた。確かに害は無さそうだ。

「おおお……ぽんぽこぽんぽこです」

コルちゃんは太ったでっかいタヌキを撫でる。

何故かタヌキは寝転がり、お腹も撫でていたり。

しかも他のタヌキ達も寄って来て、コルちゃんにすりすりと身体を寄せた。

「動物って……そうなの!?」

エリーゼお姉ちゃんが、水着に着替えてるモニカを見る。

「本当は違うんでしょうけど、ソフィーが居るとね、ソフィーのマナの柱の能天気パワーに当てられて、能天気になっちゃうみたいなのよ。魔物も、冷静で居る時は能天気になるわね」

モニカがそう話す。

「なんか、凄い力なのね。マナの柱ってひと地域の空気をまるごと変えてしまうらしいから……ひと地域まるごと能天気って事なのかしら?」

エリーゼお姉ちゃんも、レオンさんの用意した水着に着替える。

「それも、なんかどんどんパワーアップして、今じゃプニ助なんて、元々人懐っこくて、ついてきちゃってるんだものね」

モニカはプラフタの側で、タヌキに寄り添ってるすーぱーぷに、プニ助を見る。

相変わらず能天気な笑顔だ。

「何だか、私が思っていた世界とは違う世界……って事なのかしら。ま、まあ……能天気な世界は悪くないけれど……」

エリーゼお姉ちゃんも、水着に着替えて温泉に入る。

レオンさんは、一応槍を持ったまま温泉に入り、プラフタが見張りをしていた。

 

 

温泉から出て着替えて……

今度は商人の方々に冒険者の方々が洞窟に入る。

ソフィーだけは動物達を能天気にさせる為、と言う事で洞窟に残った。

 

 

洞窟の土と粘土をしこたま錬金荷車1号と2号に乗せて、妖精の道標でキルヘンベルに帰る。

妖精の道標は、コルちゃんの店でも売られているものではあるけれど、ソフィーにしか使えないそうで、売れない高額商品となっているそうだ。

しかも増やすのに苦労するらしい。

 

 

あっと言う間にアトリエ前。

朝の5時だった。

土と粘土を採る作業は時間が掛かる……

そしてソフィーのパーティーは、依頼も受けているらしく、更に旅立つ。

商人の方々、冒険者の方々とはお別れとなった。

 

 

「ふぅ……キルヘンベルの人が外に興味を持つ、というのは頼もしい事だね」

旅の道……

メーベルト農場へ向かう道でジュリオさんが呟く。

「そうだけど、なんか落ち着かなかったわね。肩が凝っちゃったわ」

モニカも、そう話す。

今回は東の森林地帯へと向かう道。

連理の樹門が目的地だ。

木材需要もあって、こっちへの旅となったみたいで。

ソフィーとプラフタは、錬金荷車2号の後ろを歩く。

「温泉の匂いがするなぁ……」

教会の横に、土も粘土も下ろして来たけど、残り香がする。

そんな残り香にソフィーは呟いた。

荷車の2階では、トマトのぬいぐるみとプニ助を抱いて、コルちゃんが寝ていたり。

 

 

お昼過ぎて、メーベルト農場を通過。

雨が降りだして、メーベルト農場には誰も見えない……

牛に挨拶して、先へと進む。

そして西への道、有閑広場へと向かう。

この道で広大な森林地帯に入って行く。

「メーベルト農場から有閑広場って遠いよねぇ~……」

荷車1階から、プニ助を抱いたソフィーが顔を出す。

荷車の横を歩くコルちゃんが、空を眺める。

「そうですねぇ~……でも有閑広場には色々と人が往き来しているみたいで、道がしっかりしてるです」

手甲をふらふらさせながら、コルちゃんはそう話す。

このふらふらのバランスで、歩くのがラクになるとかなんとか。

「鳥イチゴ、またあったぞ~……」

オスカーがやって来て、荷車に黄色いブドウみたいな実、鳥イチゴを入れる。

小さい実で、これが甘酸っぱくて美味しい。

「おぉ~♪ありがとうオスカー、甘い?」

荷車1解で、ソフィーが四つん這いになり、頭を上下する。

メーベルト農場のでかい犬の構えだ。

「ポトスかぁ~……会いたかったな」

オスカーはポトスと名前のついた、でかい犬のマネをするソフィーを見て呟く。

「凄い高速だもんね!この……これが!」

ソフィーは高速腕立て伏せみたいにして、ぶんぶん頭を上下させる。

プニ助も上下してる。

 

「あなたは、本当に動物が好きねぇ……でも女の子なんだから、そういうのしちゃダメよ?」

レオンさんが苦笑いしてソフィーを見てた。

そして皆で鳥イチゴを食べたりしながら、旅の道は進む。

深い森に入る。

静寂の湖畔に差し掛かった時、遠くに2匹の島魚が居て、なんか凄くどすんどすんしてた。

「子作りかしら?」

そのどすんどすんを見て、モニカが呟く。

「雌を巡って争っている……のかも知れないな」

荷車を引くフリッツさんが一瞥して、そう言った。

実際はなんだろうか?

 

 

そして菌糸の楽園を越えて、困惑の迷い道……

ぼちぼち朝になる頃、深い森の中の街道に、馬が居た。

街道と言っても、こちらの方向は草の丈も高く、街道なのか森の一部なのかわかりづらいんだけど、お母さん馬と3頭の子供……

と、言った感じで、お母さん馬が立ったまま、寝てた。

「さすがに子連れで能天気もないだろう」

ハロルさんが小さな木の枝を馬に投げる。

パタッと軽い音がして、お母さん馬が起きると、こちらをめっちゃ警戒しだして、どこかへ行った。

 

 

困惑の迷い道を抜けて、朝の野営は泥ヘビ。

ついさっき、ハロルさんのナイフで仕留められたやつだ。

「泥ヘビは懐かしいわ。こんな大物、見た事ないけど」

モニカが呟く。

ソフィーとしても思い出深い食事になった。

 

その先が今回の目的地、連理の樹門。

広大な森の中、色々な所に色々な名前が付いたものだ。

上質なキーファ、丸太が転がっている。

こんな深くまで来ると、それなりにジュリオさんも納得の魔物も現れて、採取生活になる。

「あたしが更に強くなったら……この辺りの動物とか魔物が更に能天気になる……って事かな?プラフタ~」

ソフィーがプラフタにくっつく。

プラフタは妖精の毒草を片手に、そんなソフィーの方を向く。

「おそらくはそうなのでしょうね。あどみらプニも、書物を見る限りでは……」

プラフタが話す。

 

何でも、どこにでも現れる影のように水溜まりが現れて、人を飲み込んでしまうのだと言う話で、全くもってあんな目立つ姿ではないし、あんな能天気な顔……

どころか顔もないそうだ。青プニだって顔なんて無いハズだし。

「ふむ~……青プニ君なんて、でもその頃からぷにちゃんパワーが炸裂してる訳かぁ」

口許に指を置いて、ソフィーは呟く。

更に妖精の毒草も、近づけないくらいの危険植物なのに、かなりマイルドになっているみたいだし……

 

ともかく、ひとしきり採取生活をして、アトリエに帰る事にした。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[錬金荷車2号]
作って良かった錬金荷車。空間の改造はまだだけど、充分に広い。旅の大部分は街道の移動なのである。

[植物に挨拶回り]
ゲームでは、特に道中のイベントというものが、ほとんど無い。この小説では、オスカーは疲れ知らず知らずの化け物となっている。一応、ゲームにおいてもオスカーのLPは特に高い。

[赤い蛇の草]
蛇の草と同じように葉っぱがなく、茎だけにょろにょろっと伸びてる草。肉厚で食べられる。蛇の目に当たる部分に丸い花が咲いてるのだけど、花には見えない。こちらは、にょろにょろっと伸びてる部分が赤い。

[赤プニ温泉]
月と太陽の原野の少し西。大小さまざまな赤プニが占拠する温泉。ヒルみたいにくっついてもにゅもにゅされるので、入れない。

[ウメさん]
アトリエ閉めてるので、古本補修のアトリエはやっていないけど、やはりアトリエ前の井戸、この場所が落ち着くみたい。

[プニ助]
付いて来たすーぱーぷに。砕けたマナの柱の欠片のなれの果てみたいだけど……ともかく可愛い!

[噴水端会議]
種の日のお決まりイベント。色んな人達が思い思いに談笑する時。

[ヤーペッツさん]
食通商人のおじさん。最近は羽振りがいいみたいで、夜にカフェでお酒を飲んでいたりもするみたい。
[エルノアさん]
モニカと住む可愛いおばさん。華やかな飾り付け大好きで暴走気味らしいけど、服装は地味だったりする。

[北の人形劇]
毎週のソフィーのお楽しみ。エリーゼお姉ちゃんとパメラ、教会の子供達が今日もノリノリ!

[能天気パワー]
キルヘンベルのマナの柱の魔力。主をソフィーとするぷにちゃんの力は、魔物も含めて生態系を能天気な感じにする、との事で名付けられた。地域によっては、プニプニだってスライム、とかウーズという名前で液体のモンスター。いとも容易く人の命を奪う存在だったりもする。それが、能天気笑顔付きのプニプニになるのだから、能天気パワー恐るべしである。

[鳥イチゴ]
鳥達が大好きな木の実。甘ずっぱい。

[泥ヘビ]
泥水によく居るヘビ。キルヘンミルクスネークを取る日々でキルヘンミルクスネークの百倍は取ったヘビ。洗うと茶色だったり青だったり緑だったりするので、色んな種類が居たのかも。食べてどうこう、ってヘビは居なかったので、どれも食べられる。



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錬金術のアトリエ 50

錬金術のアトリエ 50

 

果実の日、朝の5時……

妖精の道標でアトリエ前に帰って来た。

 

 

森の奥地で採れた芋……

ハロルさんの採る虫も、美味しそうに太っていたりするので、アトリエ前で朝食になる。

「しかしこの焼き台、火からの調節が便利で感心するな」

ハロルさんとレオンさんで、虹トカゲを焼き台に掛けながら話す。

虹トカゲって名前なのに茶色いんだけど、緑になったり青くなったりするやつだ。

「ん~……森の奥地なら万薬のもと、手掛かりもあるかな、と思ったんだけどなぁ……ナザルスさんの薬が出来ないねぇ……」

ソフィーはがっくりする。

「そうですね。更に錬金術を進めるしか……」

プラフタも腕を組み、考える。

「それでも、望みがあるのは頼もしいよ、ソフィー」

ジュリオさんはそう言ってくれるけれど、既に結構時間が経っているので、気に掛かる所だった。

 

 

ともかく、朝食も終えてパーティーは別れる。

「プニ助は、待っててね~」

不思議と汚れたりしない、プニ助をアトリエに残して、ソフィーとモニカ、コルちゃんとプラフタ、4人でぷにちゃんの部屋へと向かう。

プニ助が悪さをしないか少し心配だけど、ぷにちゃんがプニ助の動向を察知出来るので、何かすれば分かるみたいだし、時間を止める都合でものの5分くらいだし……

プニ助だけを残す事にした。

「ところで、ひとりぼっちのプニ助、何してるんだろ?」

服を脱ぐソフィーが呟く。

「ん?今は床に寝てるね」

番人ぷにちゃんの群れの1つが、プニ助の真似をして、仰向けになって少し広がる。

「結構、気疲れしてるとか……あるのかしら?」

その番人ぷにちゃんを見て、モニカが言う。

「そんな風に見えますね。果たして本当の所はどうなのでしょう?」

プラフタが言う。

そして4人、ハダカ族になってぷにちゃんの部屋へと入る。

 

 

スッキリシャッキリしたコルちゃんとモニカが帰り、ソフィーとプラフタは、錬金術生活を始める。

レシピ構築出来てるけど、作ってはいない物が結構溜まって来てるので、中々忙しかったりもする。

「素材は沢山あるけど、特性で悩むよねぇ~……初めて品だから、出来上がりそこそこでも、まずは作ってみるのが大事って思うんだけど……」

錬金釜を挟んで、ソフィーとプラフタで悩む。

悩みながらも作るのだけど、1つに9時間とか掛かったりもするので、1日あってもすぐに終わってしまう。

 

 

そして浸け置きの時間に、ソフィーは外に出て杖を振ったりする。

 

 

そんな午後に、エリーゼお姉ちゃんがやって来た。

「あら、なんか張り切ってるのかしら?」

全力杖アタックの練習をするソフィーを見て、エリーゼお姉ちゃんが声を掛ける。

「エリーゼですか。錬金術の置き時間が長いもので、こうして戦闘の訓練もしていたりするのです」

ソフィーの杖を受け止めて、プラフタはそう言うと、ソフィーもエリーゼお姉ちゃんを見る。

「なんかね、オスカーから調べものを頼まれていて、それを見つけたんだけどオスカーが居ないのよ。だからこっちに届けようと思って、本を持って来たわ」

エリーゼお姉ちゃんは抱えてる本を、少し持ち上げて見せる。

「ひょっとしたら!万薬のもとかも!」

ソフィーは汗かいたまま、軽業ローリングすると、アトリエのドアを開ける。

もうすっかりあったまっていて、身体が動く動く!

「ソフィーもプラフタも、こういう姿を見ると、なるほど冒険してるのね、って思うわ」

ヘクセ・アウリス状態のプラフタと、やたら動くソフィーを見て、エリーゼお姉ちゃんは呟く。

「オスカーもすっごいんだよ!シャベルに乗って空を飛んじゃうんだから!」

ソフィーはそう話しながら、エリーゼお姉ちゃんを迎える。

 

 

そしてエリーゼお姉ちゃんは、少しの時間、お茶しただけで、そそくさと帰って行く。

「フリッツさんと、ラブラブなんだねぇ……」

アトリエ前で、エリーゼお姉ちゃんを見送るソフィーが言う。

「こちらも、夕食にはオスカーが来るのでしたね?」

プラフタも、山を降りるエリーゼお姉ちゃんの後ろ姿を眺めて、そう呟く。

「まあね~……それまではプニ助とイチャイチャしなきゃ!」

ソフィーはアトリエへと戻る。

「全く……どれだけプニ助とイチャイチャすれば気が済むのですか……」

プラフタも、アトリエに戻る。

 

 

錬金術が1つ完成して、次を仕込む。

そんな夜……オスカーはまだ来ない。

「どうしたんだろ~?」

ソフィーはプニ助に飛び付いて、床をゴロゴロする。

プニ助が嫌そうな顔になった。

「床ゴロゴロだめだったね~……ごめんごめん」

ソフィーはプニ助に顔を寄せて、頭をぺたぺたなでなでする。

プニ助が笑顔に戻った。

「オスカー……遅いなぁ……」

ソフィーは、プニ助を抱えて呟く。

 

 

「ごめんソフィー!遅くなったっ!」

もはや夜中にオスカーがやって来た。

そんなオスカーに、ソフィーはフライングボディーアタックをする。

「めっちゃ遅~い!」

「ぐは!」

そして抱き合うように捕まえる。

「なんかあったの?」

ソフィーはオスカーに抱きついて尋ねる。

解放されたプニ助がため息をついて、ベッドの下へと隠れて行く。

「配達先でなんかいざこざがあってさ。駆けつけていたらこんな時間になったんだよ」

オスカーが話し、抱きついたソフィーの背中に手を回す。

「あっ!まさぐってる場合じゃないよ!お腹ぺこぺこだもん」

ソフィーは離れて、コンテナに向く。

「じゃあ、オイラも腹ぺこだからな……ちょっと出てるな」

オスカーはコンテナが開くように、アトリエの外で待つ事にして、ドアを閉める。

そして遅い夕食。

プニ助もオスカー特製甘口カレーと、ちょこっと錬金術製、杖パンに口を付ける。

「いやぁ、裏市街のさ、この前ソフィーと食べた屋台あるだろ?あそこのトラブルでさ……」

オスカーは経緯を話す。

あの屋台の主人、注文を覚えてないのか、注文していない物が届いてない、と文句を付けて来る事が多かったらしく、しかもつい最近出来た屋台なのだと言う。

 

あまり料理の評判も良くなかったけれど、ヤーペッツさんが食べて、草湯を付ける事を始めてマシになった、との話。

「う~ん……あの辺りだとあんな感じなのかなって思ったけど、お湯が進むくらい味が濃かったよね」

ソフィーも頷く。

「調味料が適当なんだよな。それでいて基礎が出来てる訳でもないから、美味しいかどうかは運、みたいな屋台らしいんだよ」

オスカーは話す。

相手次第で味も違ってくるとか、そういう評判の屋台らしい。

「でも、なんか初めて食べる感じで、悪い感じじゃなかったけどなぁ……」

ソフィーは杖パンをカレーに沈めながら話す。

プニ助も、見よう見まねでそうして食べてる。

プニ助のヒゲ、結構伸びる……

 

そして今回、そのオヤジさんが子供を怒鳴り付けてる所に、フリッツさんが居合わせたようで、そのまま屋台を畳んでしまったらしい。

「え!?そ、そうなの?もう無いの!?」

ソフィーは驚く。

「この場所で子供を怒鳴り付けてるような店は、無い方がいい、ってフリッツさん……スゲー怖かったらしいんだよ。あのオヤジさんが震えてたもんな」

オスカーは居合わせた訳じゃなくて、注文された品物が売れない状態になったので、引き取りに行ったらしく、その時に剣を2本差した、緑の服の人形劇のオジサンと聞いたらしい。

「フリッツさん……怒らせると怖そうだよね」

ソフィーはプニ助を眺めて言う。

「みんな、怒ったら怖いと思うけどな。オイラの杖パン、でかすぎるよな……」

オスカーが言う。

パンはまだ半分なのに、手元のカレーは無くなっていたり。

「カレー、もうないの?」

ソフィーは丁度よく、フィニッシュを迎えられそうだった。

「朝に、って思って作った分、食べちゃうか」

オスカーは立ち上がる。

「そうしなよ~……あ、プニ助もお代わりだって」

ソフィーはヒゲを立ててるプニ助を見て、微笑みながら言う。

「はいはい……」

そんな2人の夜は更けていく……

 

 

「で……またこういう感じなのですか……」

事後ハダカ族のソフィーと、その隣のプニ助を眺めて、プラフタが呆れたように呟く。

「今日はあれ、なんと言うか……騙されたというか……」

ボサボサ頭のソフィーは照れ笑いしつつ、毛布を抱えてコンテナへと退散する。

仕上がりは、30分後。

そんな種の日の早朝……

 

「プラフタも、昨日はコルちゃんで悶々としてたんじゃん!」

ソフィーはぷにちゃんに綺麗にしてもらうついでに、プラフタの昨夜も探っていたり。

プラフタったらコルちゃんのラブラブで、ぷにちゃんとエロエロしてたりしたもんだから、冷やかし笑いになった。

「もう!その話はいいですから!」

プラフタは顔を赤くして叫ぶ。

すっかり筒抜けなのを失念していた。

「い~や!良くないもん!あたしだけエロエロしてたみたいに言っちゃって~」

 

 

ソフィーは、プニ助を抱き締めて歩く。

コルちゃんもラブラブ絶好調、愛はドン底まで深まってるみたいで。

まだ朝焼けの時間。

教会広場に向かう2人は元気に騒がしく歩く。

「……ソフィー、もう市街地だから……」

そんな言い合いに夢中の2人に、ジュリオさんが寄り添った。

モニカの家に差し掛かっていたみたいで。

「わお!」

ソフィーはプニ助で、口許を隠す。

「だからさっきから言ってるでしょう……」

プラフタは呆れた顔をする。

祈りの時間に向けて、他の家からも色々な人が出てくる時間でもある。

「朝から元気ねぇ……でも元気が溢れすぎてるんじゃないかしら」

モニカがジト目を向ける。

「そういうモニカだって、今日はエルノアさんが見えない所を見ると……むぐっ」

ソフィーがそう言いかけて、モニカにプニ助を口許に押されて黙る。

「もう!思った事を何でも口に出さないで!」

モニカは顔を赤くして、プニ助を押し付ける。

そんな種の日、朝の風景。

 

 

お祈りの時間が終わり、噴水端会議。

次の冒険の話は、東の深い森エリアの東の端、古き妖精の森への道の跡を通り、古き妖精の森へと行く話になっていて、その話になった。

また、ロジーさんの話に寄ると、西に堕ちた神殿があるらしく、その話にもなった。

 

冒険できるエリアが増えるのは嬉しいけれど、東西に2つ……

まだ調合出来てない新レシピもあって、なんか目が回る忙しさになりそうな……

更に願い無き供物台にて、なんか凄いお化けが現れた、という話しと、あどみらプニがまた出てるという話があり、この世界……

どうなってるんだ……

「なんか……色々ありすぎてよく分からなくなったよぉ~……」

そしてソフィーが、頭を抱えて苦しみ出した。

「ソフィー、大丈夫だよ。ルートは僕らが考えておくから。妖精の道標だけ、使えるようにしておいてくれれば」

ジュリオさんが優しく微笑み、ソフィーに言う。

「今までも、ソフィーはあまり考えてなかったじゃない」

モニカは腕組みをして、メガネに手をやる。

 

 

ともかく、今日は人形劇を楽しんで、いつものように過ごせばいい、と北の人形劇に促され、ソフィーはプニ助を抱いて北の人形劇へ。

 

 

お昼はコルちゃんとテスさんの露店で、八百屋バスケットを食べて、アトリエへと帰る。

「ソフィー、そう言えば南の人形劇で、職人の方からこんな手紙を頂きました」

アトリエへの帰り道、プラフタは貰ったと言う手紙を取り出す。

「ほほ~う。さてはデートのお誘い!?職人さんには奥さん居るのに……これは……不倫だね!」

ソフィーとプニ助が、目をキラキラさせる。

「なぜプニ助まで、目をキラキラさせるのでしょうか……」

 

ともかく、プラフタは手紙の中身を取り出す。

「コルネリア露店の看板娘、コルネリアを応援する会」として、なんか不思議な道具を募集していたみたいで、その結果、風に溶けたロウソクと、なんか大袈裟な笛が描かれていた。

「こんな内容でしたが」

プラフタはソフィーに見せる。

「なんと!……む~……?」

ソフィーはその手紙を手に取って唸る。

唸った結果、新しい錬金術……

そよ風のアロマと、魔法使いの笛を閃いた。

 

 

そしてアトリエで錬金術生活……

夕方くらいにコルちゃんがやって来た。

「あ、コルちゃん!コルちゃんの会のオジサンから手紙を貰ったよぉ」

ソフィーが伝える。

「おお!?どんな手紙です?」

コルちゃんは目をキラキラさせる。

どうやら知らないみたいで。

「こんな手紙だけど……」

ソフィーは風に溶けたロウソクと、大袈裟な笛の描かれた手紙を見せる。

「ほう……そんな募集があったのですか……これはひょっとすると、プラフタさんがなんとなく話した事に食いついた感じがします。何かしらお礼を期待してるかも知れませんので、それとなく聞いておくとしましょうか」

 

コルちゃんは口許を隠して、そう話す。

そしてぷにちゃんの部屋へと入って行く。

ソフィーも折角なので、便乗しておく事にしてみたり。

 

 

そして双葉の日。

ソフィーとプラフタは朝の暗い時間からアトリエを出る。

なんか色々と忙しくなりそうな、旅立ちの日。

「キルヘン!ミルク!スネーク!カモン!」

雨のキルヘンベル。ソフィーはジャンプして歩く。

「そう言えば、その呪文は何です?」

プラフタはアトリエのドアに鍵を掛けて、ジャンプしてるソフィーに尋ねる。

「初心を忘れない為のおまじない、かな?」

ソフィーはそう言って笑うと、駆け出す。

「もう!また走るのですか……」

プラフタも、ソフィーを追い掛ける。

 

 

そして朝のカフェ。

たまごの入荷が多かったみたいで、白たまご黄たまごの乗った、カリカリトーストが出てきた。

「ホルストさん!今日はなんかスペシャルな日になるかも!」

ソフィーは大喜びでカリカリトーストを高々と掲げる。

隣でコルちゃんもルンルンしてた。

「たまごの納品がやたらとありましてね。雛鳥の林のすぐ北らしいのですが……まあ、ソフィーのパーティーですと近場過ぎるから、あまり行かないと思いますが……」

そんなソフィーのパーティーを眺めて、ホルストさんは照れ笑いしながら、そう話した。

「さて、まずは巡礼街道に行って、そこから踵を返して恵みの森、だね」

キルヘンベルを出ると、ジュリオさんとモニカ、フリッツさんで計画したルートを進む。

まずはあどみらプニの撃退だ。

 

 

……あっさりと、あどみらプニは空へと飛んで行く。

またもや人望が無かった。

それでも、普通の冒険者パーティーだと、ひどくタフで危険な相手なんだとか。

 

 

そして踵を返して恵みの森へと行く。

恵みの森に着いた時、もう夜だった。

「うわ!夜の恵みの森って来た事無かったけど、キルヘンミルクスネークが!」

ソフィーは木の上を指す。

モノクログラスの力もあって、キルヘンミルクスネーク、白い蛇がそこら中の木の上に居る!

「おお!凄いなぁ……それと、カエルの鳴き声が凄いなぁ……」

カエルの大合唱の中、ソフィー達は夜の恵みの森を通過する。

ハロルさんのナイフが、キルヘンミルクスネークを10匹程仕留めていた。

ソフィーはそんなキルヘンミルクスネーク達を見て、メモを走らせる。

ヴェルヴェティスのレシピを閃いた!

 

 

そして夜中……

蛇の草の群れ、月と太陽の原野に差し掛かり、そのまま西へ進む。

朝焼けの頃には、せせらぎの忘れ物、泉と沼の多い地域へと来た。

 

「雨が……ここもカエルの大合唱だねぇ~……」

朝焼けを眺めて、荷車を引くソフィーが呟く。

ジュリオさんはプニ助とコルちゃんに捕まって、荷車の2階でお休み中だ。

「凄いわねぇ……やっぱり旅はしてみるものね。カエルは気持ち悪いけど、精一杯生きてるのかな、って思うと、この声は悪くないわね」

ソフィーの隣を歩くモニカも、そう話す。

オスカー曰く、雄と雌が出会う為に鳴いてるらしいけれど、これだけ鳴いてると、もう何が何だか分からなくなりそうだけど……

ともかくソフィーのパーティーは進む。

 

朝の6時には、淀の小島に到着して、野営にする。

今回も芋がメインの、キルヘンミルクスネーク料理だ。

「おデブちゃん、料理の腕上げてるわねぇ……」

レオンさんが言う。

「仕留めた獲物も、料理によっては台無しになるからな。その点、この倅の作る料理は俺も、舌を巻くばかりだな」

ハロルさんも絶賛してたし、みんなして頷く。

「まあ、そう言って貰えると作り甲斐もあるよな。本屋での勉強も頑張らないとだなぁ」

朝の少し涼しい風に吹かれながら、オスカーは照れ臭そうに笑った。

 

 

そして淀の小島の洞窟、願い無き供物台へと進む。

「お化け……かぁ……」

ソフィーとプニ助が、コルちゃんにしがみつく。

「ちょっと!さすがに歩きづらいです!」

コルちゃんに振り払われて、今度はオスカーにしがみつく。

「ソフィー、あそこに淀きのこがめっちゃ生えてるぞ」

オスカーは淀きのこと名付けた、黒くて細い、禍々しいきのこを指差す。

「いらない!淀きのこはいらない!」

ソフィーはしがみついて、オスカーは笑う。

変な毒があるきのこで、しかもめちゃくちゃ硬い。

そして禍々しい胞子がポロポロしてる。

ポロポロした胞子から更に淀きのこが生えるので、淀きのこエリアが出来上がる。

 

 

そして奥に進むと……

漆黒の乙女と呼ばれる、いつもの可愛いゴーストが居て、ひどくあっさり倒す。

「黒いだけでした……強い事は強いのですが、こちらが強過ぎて、あっさりと倒せました」

コルちゃん昇龍拳で天井に激突させられて、落ちて転がった所で、コルちゃんキックバックと波動拳が炸裂してた。

「コル助……なかなかやるな」

ハロルさんはそう言ってコルちゃんを捕まえる。

コルちゃんはじたばたしてた。

そして漆黒の乙女の跡に、黒い本が落ちていて、それを拾う。

恨みを力に昇華する方法が書かれているみたいで、アンブロシアの花冠のレシピを閃く。

「さて、ここで1回キルヘンベルに戻ろうか」

ジュリオさんの号令で、ソフィーは妖精の道標を使う。

 

 

雷雨のアトリエ前になり、荷車の荷物を降ろす。

そしてキルヘンベルを出る時、丁度メーベルト農場へと向かう馬車が出る所だった。

「おお~!ジュリオさん!こんなタイミングまで!?」

ソフィーとコルちゃん、モニカまで驚く。

「いや、それはたまたまなんだけど……」

ともかく、ロザリとマレフ、ブレストと共にメーベルト農場へと向かう。

ソフィー達の目的地も、メーベルト農場の先なので、バッチリ一緒だ。

「こんな天気なのに、元気だなぁ~……」

馬車のおじさんも笑顔になった。

「ロザリが乗せてくれたよ~♪」

ソフィーはロザリに乗って、気難しかったロザリも、普通に歩いている。

お昼の野営も、ソフィーはロザリの側で食事をしていたり。

「かなり仲良くなったみたいじゃないか……おおっ!」

ハロルさんが近付いたら、ロザリは威嚇し始めた。

「ハロルさんはお馬に嫌われてるよね……」

そして退散するハロルさんを眺めて、ソフィーは呟く。

ブレストにもマレフにも好かれていないのは、ハロルさんだけだったり。

「カラスには好かれているのですが」

マレフと一緒のコルちゃんも、そんなハロルさんを眺めていたり。

 

 

「じゃあ、またね~♪」

夕方、メーベルト農場に到着して、ソフィー達は更に深い森へと進む。

馬車とはお別れだ。

「しかし、プニ助もイヤな顔をしているとは……匂いも解る、という事か」

フリッツさんが、そう言ってプニ助を見る。

例によって、コルちゃんのお馬臭が凄かったり。

今回は、ソフィーのお馬臭も凄い。

「また、あそこの泉だなぁ……」

有閑広場へと向かう途中の泉で、ソフィーとコルちゃんを洗いつつ夕食、となった。

よく使う定番の泉。

「ここ、タコが住んでるんですよね……」

レオンさんに服ごと洗われてるコルちゃんが呟く。

そこらじゅうの芋が掘り起こされて、食べられていたりする場所でもある。

 

「淡水にタコが住む、というのも不思議な話だが、まあ……不思議な地域だからな……」

そんな姿を眺めながら、フリッツさんが言う。

今回は古き妖精の森が目的地。

深い森の道をひたすら行く、長くなる旅だ。

 

 

「さて、行くわよ~!」

張り切ってるレオンさんが荷車を引いて、ジュリオさんはプニ助とコルちゃんに捕まって休む。

「なんか、ジュリオさんを休ませるのがお決まりになったわねぇ……」

モニカも荷車の1階で、レオンさんに話し掛ける。

オスカーも2時間程寝ていたけれど、また離れた場所で植物達に挨拶回りをしている。

「以前よりも疲れたりしなくなったからかしら。必要ない……とは思うんだけど、一応ね」

レオンさんは、そう話して荷車を引く。

そんな森の道。

 

 

夜中に有閑広場を抜けて、さらに静寂の湖畔を抜ける。

この辺りで、またカエルの大合唱が聞こえる。

カエルの大合唱の中を更に進み、朝になる頃に、菌糸の楽園へと入った。

「さて、遂にフジフェアリーの房、中身入りを見つけたから、朝食はこいつだな!」

オスカーが張り切って料理を始める。

静寂の湖畔に差し掛かった時、雨だったけれど、中身の入ったフジフェアリーの房を手に入れたのだ。

房1つが、モニカの片足サイズ!

……だけど種はモニカの親指サイズ。

めっちゃ沢山入ってる!

 

フジフェアリー(巨大カマキリ)が大体食べてしまっているので、空っぽばっかりの、幻の食材だ。

「あ、これ美味しい!」

緑の豆の煮物を食べて、ソフィーは驚く。

「味付けは、ほとんど無しなんだけど、旨いなこれ……」

オスカーも驚く。

素材の味を見る為に、ほんのわずかな塩だけの煮物。

ただ、煮ただけだ。

 

「フジフェアリーとかいうカマキリが、夢中で食べ尽くす訳、という事なのかな」

ジュリオさんも美味しいみたいで、顔も綻ぶ。

そんな素敵な食事。

 

 

そして更に進む。

困惑の迷い道を抜けて、連理の樹門、常霧の樹海と入って行く。

「暑いね……」

お昼、1番明るい時間帯。

ジュリオさんが森の木々を見上げて呟く。

「確かに。なんか蒸し暑い感じするね……」

荷車の横を歩くソフィーも、やたら汗をかいてる。

「ソフィー、これ、この道が古き妖精の森に続く道だろうな……」

汗だくのオスカーが先を示す。

単に草が塞いでる場所……

もはや道ではない所の草を倒し始めた。

「なんでオスカーさんには、分かったのでしょう?」

コルちゃんが不思議そうに尋ねる。

「匂いだよ。少し粉っぽい匂いがあるんだよな。この先には、ちゃんと道が出てくるハズだぞ~」

オスカーは草を倒しながら、事も無げに答える。

 

「むう……汗の匂いと、虫の匂いしかしないですけれど……」

コルちゃんは鼻をひくひくさせて、そう言うとモニカに近寄る。

「ちょっと!匂い嗅ぎながら来ないで!」

モニカは近寄るコルちゃんから逃げる。

ともかく、ソフィー達は、草を倒して進む。

ほんの少し進むと、結構幅もある、しっかりした道が現れた。

「おお~!オスカー凄い!」

ソフィーは喜び、その先を見る。

アルラウネの、更に強烈版、キンモクジュが大勢ふらふらしている。

「……なんか、ヤバい感じ……かな?」

ソフィーは呟き、ジュリオさんは前に出て身構える。

 

「おっと!ジュリオさん!身構えちゃだめだ!襲われてから対応する感じにしないと、全部が襲って来るぞ!」

オスカーは慌ててジュリオさんの更に前に出る。

「そ、そうなのかい?」

ジュリオさんは剣を仕舞う。

キンモクジュが6匹程近寄って来て、右に左に、首を傾げた。

「どうやらセーフみたいだ……」

オスカーがため息をつく。

コルちゃんが近寄って手を出すと、キンモクジュはその手を取って、頬擦りすると、口を開いた。

「ぼぐ……ぼぐぼぐ……ぼぐぼぐ……」

そう言うと、ソフィー達から離れて行く。

「へへ、ようこそ旅の人、だってさ」

オスカーが言う。

「なんか、能天気オーラの力なんでしょうか?」

コルちゃんは、オスカーを見る。

「それもあるんだろうけれどな。キルヘンベルの人達みたいに、ここのキンモクジュ達も穏やかに暮らしてる、って事なんだろうな。でも襲って来るのも居るハズだから、油断は禁物だぞ?それぞれをよく見ておかないとな」

オスカーはそう話すと、道の端、更に向こうのキンモクジュを見る。

 

「つまり、敵意のあるヤツとそうでないヤツを見分けないといけない、ってワケか……どれも一見、同じに見えるけどな」

ハロルさんも、オスカーの見る方向とは逆の、道の端向こうのキンモクジュを見る。しかし、沢山居る。

そしてオスカーのキンモクジュ講座が始まった。

本屋の情報によると、キンモクジュは毒が得意な魔物。

回復の阻害、強烈な毒。戦う際には、とにかく時間を掛ければ掛けるほど不利となる魔物らしい。

 

 

「……さて、ここはまだ、古き妖精の森ではないな。更に進まなくては辿り着かないだろう。行かなくてはならんな」

フリッツさんに言われて、ソフィー達は更に奥へと進む。

キンモクジュ達は沢山居て、どれもぼ~っとしているだけみたいだ。

「……採取とかしてると、夜になるよね……」

ソフィーが呟く。

そんな午後。

「そうねぇ……更に油断ならない感じになりそう……あら」

レオンさんが言いかけて、ミニデーモンと、更に強烈な小悪魔、トリッカーが木の根本で寝ている。

「そろそろ古き妖精の森、って事かしらね……」

近くを通っても、ミニデーモンとトリッカーの2匹は起きない。

猫モードみたいだ。

 

 

ソフィー達は先に進む。

そして空気を震わせる、明らかに敵意剥き出しのキンモクジュが立ちはだかる。

「2匹か……何にせよ、分かりやすいのは助かるな」

フリッツさんが前に出て、戦闘になる。

空気の震わせ方から、それなりに強い……

と言うことも解る。

 

「キンモクジュは、防戦に回れば相手のペース……駆け抜けなければならん……だったな」

攻撃の陣形で速攻で叩く。

時間を掛ければ強烈な毒と、回復阻害でパーティーはジリ貧になるのが、このキンモクジュだと予習済みだ。

 

速攻が効いて、キンモクジュ達は倒れる。

ここでも通用するくらい、ソフィーのパーティーも強くなっていたりする……

倒れたキンモクジュの1匹は起き上がると、なんだか軽い足取りで、森の茂みの中へと消えて行った。

 

「倒したキンモクジュが……何故か幸せそうな足取りでした……」

コルちゃんは、そんなキンモクジュを見送って呟く。

「魔物って……魔物モードと猫モードがあるけど、倒すと猫モードになるのねぇ……」

レオンさんもそう考え事をだだ漏らしていたら、もう1匹が起き上がり、レオンさんの足を捕まえて頬擦りしだした。

「うひゃあっ!何っ!?」

驚くレオンさんをよそに、頬擦りすると、また軽い足取りで森の茂みの中に消えて行った。

「さすがに驚いたわ……」

そんなキンモクジュを、レオンさんは見送る。

 

 

それからは採取生活。

トンデモ品質の五日ヅル、魔法の草に魔法の蔦、土いも……

魔物モードの魔物も分かりやすく、キンモクジュ、トリッカーとの戦闘が続き、そしてかなり奥まで踏み込んだ。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[虹トカゲ]
カメレオン的な色の変化をするトカゲ。クリスタルなんかに取り付くと、クリスタル的な輝きとなる。

[プニ助]
ソフィーに付いてきたすーぱーぷに。可愛い。

[錬金術生活]
アトリエでのライフワーク。

[スッキリシャッキリ]
ぷにちゃんの中で休むと、なんか元気になりすぎる感じがあるので、思わずスッキリシャッキリのポーズをとってしまう。そんな感じ。

[杖パン]
無発酵式、こんがりなパン。杖のカタチ。
[噴水端会議]
明日の冒険の話、このタイミングでするようになった。
[白たまご黄たまご]
たまごを焼いた、白いところと黄色いところ。

[夜の恵みの森]
ゲームにおいては、キルヘンミルクスネークから出てこないので、こんなイベントも勿論、ない。

[淀キノコ]
どんよりしてる黒いキノコ。食べられるかは謎。でも食べる気にもならない。

[メーベルト農場の馬車]
ブレスト、マレフ、ロザリの3頭のお馬が引く馬車。キルヘンベルが景気良くなって、おじさんもお馬もホクホクなんだとか。ロザリだけ、緑ニンジンが好きなんだって。
[緑ニンジン]
人は食べない、緑ニンジンの木にぼこぼこ生えるニンジン。ソフィーぐらいの高さの木に、逆さに出来上がる。普通のニンジンは地中に出来る根っこだけど、緑ニンジンは木の実。

[タコの泉]
メーベルト農場~有閑広場の間にある、銅いも群生地帯にある泉。なんかでっかいタコが住んでいて、いもを食べて暮らしている。

[フジフェアリー]
フジフェアリー(大木)とフジフェアリー(巨大カマキリ)が居る。フジフェアリー(カマキリ)が居ないと、フジフェアリー(大木)はうまく成長できないらしい。共依存の関係。

[魔物モード猫モード]
襲って来る状態の魔物と、襲って来ない状態の魔物。どちらにせよ、見た目が可愛い。



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錬金術のアトリエ 51

錬金術のアトリエ 51

 

夜になった古き妖精の森……

少し草の無い広場に出て、そこには涼しい風が吹いて回っている。

「今度はちょっと寒いくらいだね……」

ソフィーが呟く。

コルちゃんも頷いた。

壊れた建造物らしき物が、そこら中に散らばる場所に入り、相変わらずトリッカーとミニデーモンが猫みたいにふらふらしている。

「ここも、元々は人の住む場所だったようだが……今や何も残ってはいないな……」

落ち着いた声で呟きながら、フリッツさんは、そんな瓦礫達に触る。

 

「森に住む、美しい女王の治める国だったみたいだな……木々がまだ覚えているみたいだよ」

オスカーは話す。

マナの柱もあり、錬金術士も居た平和な国は、鋭く入り込んだ悪意に狂わせられ、滅びたのだそうだ。

そう話していると、土の中からキンモクジュとアルラウネが生えて来た。

そして敵意を剥き出してる。

 

 

「マナの柱の悪意が、どうやら弱まっている、と言う事でしょうか……」

普通にキンモクジュ達を倒すと、それぞれキンモクジュ達は起き上がり、また土の中に帰って行った。

身体は丈夫みたいで斬られても元に戻るし、なんか土に戻る姿は元気そうだ。

底知れぬ強さを感じる。

 

2本の樹が門のように立つ、雨宿り出来る……

ぐらいしかない浅い洞窟に、錬金釜が落ちていた。

その中に文字の掘られてる石が入っている。

「魔法の草を束ねて……」

それぐらいしか読めない石。

「魔法の草を束ねる……これですね万薬のもとのレシピは」

プラフタが閃いて、ソフィーはメモを走らせる。

ともかく、収穫上々で、朝にアトリエに帰る事にした。

 

 

……帰って来たアトリエ前、朝食はこの場所でとる事にした。

ギラギラしてる銀いも、土いもが美味しそうで、こういうのは焼くのが美味しいし。

「ソフィーとプラフタ、モニカとコル助はぷにちゃんを頼って洗っておいでよ。終わる頃には朝食も出来てるだろうからさ」

オスカーに言われて、4人はぷにちゃんの部屋へと行く。

コルちゃんと一緒に眠り、綺麗になって出てくると、朝食はもう少しで出来上がるタイミングだった。

こういう所を見ると、時間が本当に止まってるんだなぁ……

と、実感する。

「いよいよ、万能厄除け香まで完成させられるような感じになりました!ジュリオさん!」

 

朝食を食べながら、ソフィーは明るく話す。

まだ万薬のもとのレシピも詰めてないし、万能厄除け香も作れるか分からないのだけれど……

でも万薬のもとさえ作れれば、万能厄除け香は合わせるだけだ。

なので、もはや出来たも同然!

……という頭だ。

 

「おお~!それがあればナザルスさんを……」

ジュリオさんも喜ぶ。

「こうして能天気が伝染するのでしょうか……」

プラフタは、ため息をついて話す。

まだ万薬のもとのレシピは、構築に手も付けていない事。

万能厄除け香が作れるかはまだ分からないし、ナザルスさんの状態に万能厄除け香が本当に効くのかどうか、それも分からない、そういう話をした。

 

「ま、まあ……でもやれる事があるかも知れないなら、やっぱりソフィーに頼んだのは正解だったな。僕には成功を祈る事しか出来ないけれど、少し光が差して来た気分だよ」

プラフタの話を聞いて、ジュリオさんはそう言ってソフィーに笑い掛ける。

「あたしも!プラフタに負けずに頑張ります!」

ソフィーは得意のガッツポーズで、気合いを入れる。

「なぜ私を悪役に……」

プラフタは呆れた顔をした。

 

 

そしてやる事やって、錬金術生活!

まずは万薬のもとの「毒材料」用に、中和剤(青)を作る。

その1時間で万薬のもとのレシピを詰める。

 

「ん……案外簡単に出来そうだね。これなら……ただ、9時間掛けないと、駄目だね」

あっさりとレシピを詰めて、中和剤(青)を完成させると、万薬のもとの仕込みに入る。

「ソフィー、あなたの錬金術はどんどんしっかりしてきますね。本能型の天才を見る気分です」

プラフタは微笑んで、言う。

「プラフタ……なんか当たった?」

ソフィーは意外そうな顔をして尋ねる。

 

「当たった……とは……?」

プラフタも不思議そうな顔をする。

「いや、あの……ほら、古き妖精の森のお芋とか食べたから……なんかプラフタのだけ……」

「私があなたを誉めるのは、そんなに意外なのですか?これは、真意を判らせる必要がありますね」

 

浸け置きで9時間……

ソフィーとプラフタはぷにちゃんの部屋へと行く。

誰か来たら教えてくれるし、時間があるとアトリエ前に行くか、ぷにちゃんの部屋に行くか……

 

 

お昼過ぎて、ソフィーとプラフタはぷにちゃんの部屋から出てきた。

「も~……プラフタがケダモノ過ぎるよぉ……」

6時間程……

じっくりまったりエロエロした後で、ソフィーはそう呟きながら錬金釜を見る。

順調に浸け置かれてるので水面は静かに光っていたり。

「ま、まぁ……マナの柱の時間もそろそろ増やさなければ、というのも……」

プラフタは俯いて、ごにょごにょ話す。

 

「でも、どんどんプラフタの本性が分かったりして、嬉しいかなぁ……」

そう話して、ソフィーはプラフタに抱き付く。

「それはそれとして、万能厄除け香のレシピ構築もしないといけませんから……」

抱きついて来たソフィーの頭を抱いたりして、プラフタがそう話す。

「そうだった!しなきゃいけない事をしないとだよね!」

ソフィーは思い立ってプラフタから離れる。

もう随分とイチャイチャした訳だし……

次は万能厄除け香の調合をしたい。

そして錬金術生活……

 

 

万能厄除け香まで仕込んで夕食時、コルちゃんとモニカがやって来た。

「いらっしゃ~い!これから夕食だけど~」

ソフィーが出迎える。

コルちゃんとモニカの素材も、大部分はコンテナにあるので、実は食べ放題だったりするけども。

「今日はロジーさんは、冒険者仲間と悪いお店に行くみたいなので、こちらで夕食を、と思いまして」

肌襦袢に紫のケープ、髪を下ろしたコルちゃんがそう言ってネコの目で笑う。

「私も、ジュリオさんもエルノアも、今日は夜まで忙しいみたいだし、ぷにちゃんの時間も残り少なくなってるって聞いて……来ちゃったのよね」

モニカも、襟のお洒落な短いジャケットにスカート、という出で立ちで現れた。

でもクリーム色で華やかな感じ。

 

「おやおや、モニカは礼服としても着ていけるような……」

プラフタが食いついた。

「レオンさんが作ってくれたんだけど、最近のお気に入りなのよ。パトロールが多いから、着る機会はあまり無いんだけどね」

モニカはそう話す。

ジュリオさんと出掛ける時も、ジュリオさんの隣でこの服なのも浮いてしまうので、いつもの服になるみたいだ。

 

「ジュリオさんは、いつも鎧姿なのです?」

「そうなのよ……」

色々なおしゃべりをしながら、ゆっくりと夕食の時間を過ごし、そしてぷにちゃんの部屋に行く。

 

「あ、そう言えばモニカ、最近教会の聖歌じゃないのも練習してるでしょ?それ聞きたい!」

番人ぷにちゃんの脱げ脱げダンスの場所で、ソフィーは服を脱ぎながら言い出す。

「ちょっ……そ、そうだけど……!」

モニカが顔を真っ赤にした。

「職人界隈でも、モニカさんの歌声は評判が高いのです。是非私も聞いてみたいです」

素早くハダカ族になっていた、コルちゃんも食いついた。

「我も……歌などに触れるのは……無い事……是非……触れてみたいものだ……」

ぷにちゃんまで食いついた。

「もう!無理よ無理!歌なんて人前じゃ歌えないもの!」

脱ぎかけのモニカが悶え出した。

ともあれ、4人はぷにちゃんの部屋へと行く。

 

 

「残り……34時間だ……」

ぷにちゃんの中に入った4人に、ぷにちゃんが告げる。

「まあ、減ったわよね……」

モニカが思う。

主にコルちゃんが減らしてるのだけど、増やす錬金術の弊害なので仕方ない部分もあるし……

「さて、コルちゃんとロジーさんのエロエロでも……この身体に聞いてみますか!」

ソフィーもノリノリで、コルちゃんに取りついた。

 

 

そんなこんなで、ぷにちゃんの中でじっくりまったり、エロエロして過ごす。

そんなエロエロの後で、ぷにちゃんに説得されて、モニカが歌ってくれた。

恥ずかしい、って気持ちもぷにちゃんの中でなら、抑えてくれたりするし、人前で歌えないなら、歌の価値って無くなるし、歌う事で色々な歌が集まってくる……

そういうモノなのだと悟されて……

そして歌に合わせて風が吹いて回った。

少し涼しい風は、4人を包み込むように吹いて集まって、そして吹き上がるように上へと昇る。

 

「やっぱりいい歌声だよね~……」

ソフィーは目を閉じて思う。

コルちゃんもプラフタも、ぷにちゃんもそう思って穏やかな時間を過ごした。

 

 

「こんな遅い時間に大丈夫?コルちゃん……」

中途半端に時間を止めて過ごしたものだから、夜中になって帰る事になった。

「ふふふ……このまま裏市街へと行って、ロジーさんのお迎えも行きますので、この時間が都合がいいのです」

 

ニセレストランに顔見知りの護衛が居るみたいで、コルちゃんとモニカは帰って行く。

勝手の知らないソフィーやプラフタが来ると、あまり良くない、との事で結局は見送る事になった。

「いやぁ~……女の子って楽しいよね♪」

アトリエに戻り、ソフィーはプラフタに言う。

「そう……ですね。すっかり楽しんでしまいましたから、言い訳も出来ません」

「おおう!堂々としてるぅ~♪」

「もう、開き直るより仕方ありませんからね」

そして更に錬金術生活は続く。

 

 

「種の日!人形劇!万能厄除け香バッチリ!更にオスカーの究極栄養剤、緑を育む活性土も………持った!」

意気揚々と、ソフィーはアトリエを出る。

雷雨のキルヘンベル。

「くおぉぉぉ~……でも、人形劇する頃には止んでるハズ!」

変な声を出して、ソフィーはプニ助と歩き出す。

「まあ……何であれ行くのですけれどね……」

プラフタも、後に続く。

 

 

雷雨の中でお祈りの時間。そして噴水端会議をする頃には、雷雨は止んで晴れた!

「晴れた~♪祈りは……通じました!」

ソフィーは高々と杖を掲げて、そして北の人形劇の場所を見る。

「それよりソフィー、ジュリオとオスカーに渡す物があるのではなかったのですか?」

プラフタに言われて、万能厄除け香と緑を育む活性土の存在を思い出すソフィー。

そして思い出したので、ジュリオさんとオスカーに伝える。

「じゃあ、この次はナザルスさんの所、でいいのかな、ソフィー」

雷雨ずぶ濡れの、ジュリオさんの顔も綻ぶ。

「そうなるわよね。もう随分と待たせてしまっているものね」

そしてモニカも、そう話す。

教会の中で歌っていたものだから、もう乾いていたり。

「そうですね!ナザルスさんが治るかどうか、試してみないと分かりませんし、でも治るハズですから!」

噴水端会議は、次の冒険の話で盛り上がった。

 

 

晴れたので、北の人形劇を教会の子供達と一緒に見る。

プニ助も子供達に大人気だったりするし。

 

 

そしてお昼。

噴水のテスさんとコルちゃんの屋台、錬金荷車1号の所で、オスカーの特製バスケットが届くのを待つ。

そんな時に、オスカーよりも先に髭の商人の人が来た。

「この箱だが……どうにも装飾の感じがね……コルネリアが居たという、東方の国のものじゃないかと思ってね……」

髭の商人の人は、そう言うと綺麗な箱をコルちゃんに渡す。

「おお……確かにこの装飾は……これは是非欲しいです。おいくらでしょうか?」

コルちゃんはその箱を手に、少しの間見とれていたけど、髭の商人の人に向けて顔を上げる。

「エールと2代目を1つ、もらおうかな。壊れ物だから、それでいいよ。いつもお世話になっとるし」

髭の商人の人は、それだけを手に南の人形劇の方へと歩いて行った。

「ふむ~……その箱は、何が入ってるの?コルちゃん」

ソフィーが食いつく。

「ボタンがありますが……開きません……」

開かない箱を見つめて、コルちゃんが呟く。

 

 

「それ、オルゴールじゃない?ハロル時計店で直るかもだよね」

テスさんが、ひとしきりお客さんを捌いて、戻って来た。

その時、オスカーもやって来た。

「特製バスケットお待たせ~」

商人の人達と職人さん達、おばさんに冒険者、賑やかな噴水広場。

晴れた青空の下にみんな居て、そんな穏やかなキルヘンベル。

「オスカー!お腹ぺこぺこだったよぉ~♪」

いつになく甘えた声で、ソフィーはオスカーに駆け出す。

晴れたキルヘンベルの噴水広場。

今日はそんな気分。

「お?どうしたんだソフィー。何かいい事でもあったのかい?」

オスカーは少し驚きつつ、うまくソフィーをいなして特製バスケットを置いて、そして八百屋へと帰って行った。

 

 

「昼食が終わりましたら、ちょっとハロルさんの所へ行ってみます」

コルちゃんはサンドイッチを手に、そう話す。

 

 

ソフィーとプラフタは、昼食過ぎに本屋さんへと行く。

なんとなく足を向けたのだけど……

本屋に行きたいのはプラフタで、ソフィーとしてはあまり本、って気分ではなくて………

「あれ?」

本屋のドアで、ソフィーは振り返る。

「どうしました?」

プラフタは、そんなソフィーに尋ねる。

「なんか、あれ。凄い絵を描いてる人がいるんだよね……」

 

ソフィーは崖っぷちのベンチ2つの場所を指差す。

イーゼルを使った絵描きの人が、何か描いてた。

そして、ソフィーはそちらへと走り出す。

 

「ソフィーがゆっくり本を読んでる、というのは見た事がありませんね……」

プラフタは1人呟いて、本屋に入る。

 

「何を描いて~……うわぉ!」

ソフィーは絵描きさんの絵を見て驚く。

まるで鏡に映したかのように、めちゃくちゃ上手い絵が描かれているからだ。

「つい先日、この街に来ました、イコラと申します。エリーゼさんの本屋でお世話になっていますけれど、あなたは?」

絵描きの人がそう尋ねる。

「あ、あたしはソフィーって言います。錬金術士をしています」

ソフィーも自己紹介をする。

エリーゼお姉ちゃんの所に……

また1人増えたのかな?

……そう思いながら。

 

見事な絵を眺めながら、ソフィーはイコラさんと話をして過ごす。

イコラさんは、絵を描いて旅をしているみたいで、今は絵に凄く興味を示したエリーゼお姉ちゃんの紹介で、フリッツさんの家で寝泊まりしているそうだけど、もうじき市街地の空き家に入れそうなんだと話した。

 

そして錬金術で知る話としては、時操りの砂時計の話を聞く。

その話だけでは閃かなかったので、ソフィーは本屋へと行く。

「プラフタ!ちょっとハロルさんの所に行ってくるね!」

そう伝えて、ソフィーはハロル時計店へ。

 

途中の噴水広場では、南の人形劇が賑やかで、お酒臭い。

そんな場所を駆け抜け、ストリートも駆け抜けて、ハロル時計店へと行く。

 

 

ハロル時計店では、1番弟子として時計店の店先を任された、テッド、という青年が居た。

ハロルさんは居ない。

「いらっしゃい」

背の高いテッドは、ソフィーを見下ろす。

12歳にして、ソフィーよりも背が高い。

「ちょっと壁掛け時計を見に来たんだ。ちょっとお邪魔するね」

ソフィーはそう言って、壁掛け時計の並ぶ一角へと行く。

それぞれの時を刻む音が聞こえる。

「よし!」

ソフィーはメモを取り出すと、新しい錬金術のレシピを記す。

そしてハロル時計店を後にする。

 

 

ソフィーが噴水広場に来た時、プラフタも噴水広場に訪れて、遠目に見えた。

「プラフタ、本屋さんは終わり?」

教会のすぐ前で、ソフィーはプラフタを捕まえる。

「ええ、ソフィー。あなたも時計店は終わったのですか?」

「うん。バッチリ閃いたよ!」

そして2人はアトリエへと帰る。

そしてまた、錬金術生活だ。

 

 

そして夕食時……

コルちゃんとオスカーがやって来た。

コルちゃんはいつものようにひと休みしに、オスカーは緑を育む活性土で元気になった朧草の報告と、夕食しに来たのだそうで……

取り敢えずコルちゃんを待つ、という事でアトリエの外、カワニレの木の所でオスカーと待つ事にした。

 

「長くこうしてなかったね」

ソフィーは呟く。

アトリエ前のカワニレの木の場所は、崖になっていてキルヘンベルの街を見下ろせる。

「そうだなぁ……」

オスカーはおとぼけボイスで呟く。

ここはよく風が吹く。

 

……あたしは、何にもなれない……

そう悩んで、だけどオスカーに言われた場所。

……ソフィーは、ソフィーになれるだろ?

オイラも、ソフィーにはなれないけど、オスカーにはなれる。

そして、オスカーにしかなれないんだよ……

 

……カワニレの木は、カワニレの木。

……オスカーは、オスカー。

……あたしは、あたし。

 

植物も、そうして伸びるのだそうだ。

だけど細く高く伸びて倒れる者。

伸びずに太陽に当たらなくなり、徐々にその身体を弱くして朽ちて行く者。

その植物の数だけ、伸びた者も朽ちた者も、様々。

その中に、ソフィーの見る木と草花達がある。

景色を埋め尽くす沢山の植物達。

だけどソフィーの見る事の無い、朽ちて果てた草花、木々もある。

それは、景色を埋め尽くす大量の植物よりも、更に沢山……

朽ちて果てている……

 

……あの時、オスカーはそう話した。

 

「ソフィーは、オイラが立派に見えてるのかも知れないけどな。ほんの少し大きさの違う土いもみたいなもんだ。これから、ソフィーがどれだけ大きくなるかなんて、オイラにもソフィーにも、誰にも分からないじゃないか」

やせっぽちで、これからの事なんて考えたくもなかったソフィーに、オスカーはそう話した。

 

 

「ソフィーさん、終わりました」

コルちゃんがやって来て、そう挨拶すると帰って行く。

コルちゃんを待つ10分くらい……

カワニレの木の側で、ソフィーもオスカーも、あまり話さずに過ごしてた。

「オイラも、冒険に出ないとなぁ……でもそれはまだ背伸びなのかも知れないよなぁ」

コルちゃんを見送ってから、オスカーが呟く。

「あたしもプラフタも居るじゃん……」

ソフィーは弱い声で呟く。

「オイラはオイラの、勝手気ままな旅をしないとだから、ソフィーは連れて行けないよな。ソフィーはソフィーの旅をしなきゃだろ?」

オスカーはカワニレの木を見上げて、そう言う。

昔からの、そういう約束。

 

「……だよね~……あたしは、オスカーと離れたくないけど……」

ソフィーはそう言ってみる。

昔から、一応はそう言ってみるんだ。

「オイラの旅の先には、またソフィーが居る気がするけどな。でもその時、ソフィーの隣に誰か居ても、それはしょうがないよな」

オスカーも、お決まりの答えを言う。

「まあ、プラフタは居るよ!絶対に!」

ソフィーは笑顔でそう話す。

これは今回、変わった事。

「そうだな。プラフタも一緒の錬金術だもんな」

オスカーはそう言うと、笑って見せる。

「そうだ。食材用意しないと、お腹減ったもんね」

ソフィーは明るくそう言うと、歩き出す。

これから夕食だった。

ちょうどプラフタが、入って来ない2人に疑問を持って、アトリエのドアを開けた所だった。

 

 

夕食を済ませて、プラフタはぷにちゃんの部屋へと行く。

そしてオスカーを洗おうとした時……

コンテナからプラフタが出て来た。

「ソフィー、なんかオスカーもコンテナまでは入れるそうです」

「嘘ぉ……更に成長したんだねぇ……」

ともかく、汚れ物も任せられる、との事でソフィーとオスカー、プラフタでコンテナの中へと入る。

「あ、でも思ってる事が全部伝わっちゃうんだけど……オスカー、何かあたしに隠し事とか、ない?」

一応、聞いてみる。

「ん~……無いな」

ちょっと考えて、オスカーは答える。

なんか、凄くあっさりだ。

 

「ん?って事は……ソフィーも、オイラに隠し事とか無いか?」

そして更に考えて、そう尋ねた。

「無いよぉ~……無いよね?……ん~……無いと思うけど……無いかなぁ~……」

ソフィーは思い当たる事を探すけれど、別に何も思い付かなかった。

 

 

「おお~……これ、アトリエよりも広いんじゃないか?」

ともかく、入り口の階段を降りたオスカーは、感嘆の声を上げる。

「あ。そう言われてみればそうだね」

ソフィーも、口許に指を置いてそう答える。

相変わらず、棚いっぱいの番人ぷにちゃんの群れだ。

「これが、ソフィーの言う番人ぷにちゃんってやつか……すげぇ沢山居るんだなぁ……」

オスカー近くの番人ぷにちゃん達は、オスカーに向けてぴょこんをぴょこぴょこしていて、オスカーはそこに指を伸ばしてみる。

すると番人ぷにちゃんの1つが、オスカーの指にしがみついた。

「ソフィーの……恋人の青年だな……」

ぷにちゃんはそう、オスカーに語り掛ける。

「おお……師匠の樹と同じ声だ……師匠の樹も、あんたなのかい?」

オスカーは目を見開いて驚き、そう尋ねる。

「それならば……師匠の樹より……そうだと伝えている……我と……師匠の樹は……別だ……」

番人ぷにちゃんはそう、答えた。

更にぷにちゃんがパワーアップして、オスカーとロジーさん、ジュリオさんは、コンテナまでは入れるようになったらしい。

それと、預かる子供が男の子だった場合も、殺さずに預かれる、との事だった。

 

ソフィーとオスカーはハダカ族になって、コンテナの棚の廊下に座り、服に群がる番人ぷにちゃん達を眺める。

プラフタはぷにちゃんの部屋の、閂の杖が外れないので、アトリエの方へと行った。

 

「すげぇ……すげぇキレイになってくぞオイラの服……」

オスカーは立て膝になって、番人ぷにちゃん達に汚れを食べられて、キレイになる服を見つめる。

ソフィーはそんなオスカーのお尻を眺めていたり。

「オスカーは番人ぷにちゃん、何色に見える?」

ソフィーが尋ねる。

「濃い緑だな。まるで勢いのある葉っぱみたいな色だよ。ソフィーは……灰色だっけ?」

オスカーは棚の下段にしがみついて、キレイになる服を見つめながら答える。

「うん。まあ、キレイな灰色だよ……雲の影みたいな感じ」

ソフィーはそう答える。

そう言ってみると、天井に常に張り付いてる番人ぷにちゃんが、雲みたいにも見えて来た。

「雲の影かぁ……」

オスカーは呟く。

 

 

それから、キレイになった服を持ってアトリエに戻る。

ハダカ族2人を見たプラフタが、呆れた顔をしていたけれど、オスカーの身体には取り付けないみたいで、それは仕方ない、という話に……

「コンテナには、モフコットがあったでしょうに……隠す、という考えがそもそも無いのが問題です」

仕方ない……

という話には、ならなかった。

 

プラフタがコンテナへと入り、これからはどうやら、オスカーがアトリエに居ても、コンテナにもぷにちゃんの部屋にも入れるみたいだ。

「色々とぷにちゃんがパワーアップしてるんだなぁ……」

ソフィーに洗われながら、オスカーがおとぼけボイスで呟く。

「確かに、番人ぷにちゃんの数も、もう数え切れないもんね」

オスカーの背中に泡を擦りながら、ソフィーも呟く。

「気になったのは、あのコンテナさ、何の匂いも無かったんだよな。匂いの無い場所ってのは初めてだよ」

オスカーはそう話す。

 

そしてぷにちゃんの力がパワーアップするにつれ、匂いの色や形も分かるようになってきたんだと話した。

「そ、そんな事になってるの!?」

ソフィーは手を止めて驚く。

「なんだか、こんな事話す機会無かったのと、ソフィーの匂いの色と形を聞かれるのは、ちょっと答えづらかったからなぁ……」

オスカーは身体を洗いながら話す。

相変わらずの耳に心地好いおとぼけボイスは、平静にアトリエに響く。

「……うっ……さすがにそれは聞くのもなんか……」

ソフィーはまた手を動かし出す。

 

……夜は更けて行く……

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[錬金術生活]
計画と実践。でも漬け置き時間が長いので色んな暇つぶしをしていたりする。

[ぷにちゃん]
時間まで止まるし、凄く便利な空間。時間を止めないで過ごす事も勿論可能。

[ニセレストラン]
裏ストリート裏酒場の程近くに出来たらしいレストラン。飾り付けが華やかみたいだけど、エルノアさんの飾り付けに比べると、かなり劣るのだとか。

[イコラ]
絵描きの人。旧市街を抜けた、見晴らしの良い場所で絵を描いている。最近、キルヘンベルへやって来たのだとか。
[テッド]
時計店で働きたい、教会の男の子。イケメンで落ち着いていて、品がある。


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錬金術のアトリエ 52

錬金術のアトリエ 52

 

「さて……どうした事でしょうかね……」

双葉の日、朝の4時、あまりにも事後ハダカ族のソフィーを見て、プラフタは呆れて呟く。

「んぅっ……あぅ……」

そしてソフィーはピクピクし出した。

ベッドの下のプニ助はどうやら爆睡中のようで、あまりにも能天気な寝顔をしている。

「さて、仕方ありませんので、運びますか……」

プラフタは1つため息をついて、ソフィーを抱えると、コンテナへと入って行く。

 

 

コンテナの1番奥、ぷにちゃんの扉を開け中に入り、プラフタはソフィーをぷにちゃんに渡す。

「全く……なぜ夜の営みは普通だったのに、その後でハジケてたのですか?」

プラフタから見て黄緑色のぷにちゃんの中で、ソフィーはふよふよと浮かび、そんなソフィーに向けて、プラフタは手だけをぷにちゃんに入れて、尋ねる。

「違うんだよぉ……なんかオスカーがね、いつものオスカーよりも格好良くてさぁ~……」

ソフィーはそんな思いを反芻して、能天気に笑う。

「事情はマナの柱の部屋で見たのですが、よく分かりませんでした。なぜ1人になってからあのような……マナの柱も不思議がっていましたよ」

プラフタはただ不思議に思う。

2人交わっている時には、それほどでも無かったのに……

そして気に掛かる。

 

 

ともかく旅立ちの日。

遂にナザルスさんに薬を使う為に、封印された寺院へと行く予定だ。

ソフィーとプラフタで、カフェに向かう途中にモニカとジュリオさんと合流して、晴れたキルヘンベルを歩く。

「そうだ。ぷにちゃんの部屋は入れないけれど、ジュリオさんも、コンテナの中に入れるみたいだよ!」

そうジュリオさんに話す。

でも、番人ぷにちゃんにでも触れれば、隠し事とか出来ない、という話もする。

モニカも詳しい話。

 

「そうか……それなら、しっかり考えてから入らないといけないね」

ジュリオさんはそう言って笑う。

 

 

そしてカリカリトーストの朝。

カフェで依頼の話をしている、ジュリオさんとフリッツさんを眺めながら、ソフィーは呑気にカリカリトーストを食べる。

いつもの風景。

ソフィーの隣で、オスカーもカリカリトーストを食べていたり。

 

依頼が纏まった所で出発!

今回は封印された寺院が目的地。

1回だけ予定だ。

……と、言うのも新しい錬金術、モニカの教えてくれた日輪の雫の調合に72時間掛かる、との事なので、プラフタとジュリオさんで旅を調整していたみたいで。

 

「雨降りそうだねぇ~……」

ソフィーは空を眺めて、呑気な声で呟く。

とびきりご機嫌で、気持ちがいい風が吹いてる。

「なんか、凄くご機嫌だね、ソフィー」

すぐ隣で荷車を引くジュリオさんが言う。

「へへへ、まあ、いつもの事ですよ。でも怖い場所なんですから、怖い場所に着く頃には、ピリッとします!」

ソフィーはごまかし笑いをする。

 

「ナザルスさん……本当に大丈夫だろうか……まあ、しっかりとした足取りで行かないと、いけないね」

ジュリオさんは唇を結び直し、ソフィーを見る。

「そうですね!」

ソフィーもガッツポーズをする。

 

 

ソフィー達は恵みの森を抜け、境界の裾野へ。

境界の裾野を通過する頃には、夕方だった。

 

 

「プラフタ、あたし気付いたよ!ナザルスさんの居る所って、キルヘンベルを朝に出ると、夜に着くんだよ!」

荷車の後ろを歩くプラフタの、更に後ろを歩くソフィーが言い出した。

「あの場所は朝に到着したとしても、中は不気味なのではないでしょうか?」

そう言ってプラフタは振り向くと、両足を浮かせてふわふわ~っ、と進む。

「それ、あたしもやりたいな~……」

そんなプラフタを見て、プニ助を肩に乗せたソフィーが呟く。

「あなたも魔力があるのですから、やれば出来るかと思いますが……あと、ラクそうに見えてラクではないのです」

プラフタは言う。

このパーティー、みんな魔力がある!

「……レオンさんも、出来たりする!?」

ソフィーはプニ助と共に目を輝かせて、荷車の後ろを歩くレオンさんを見る。

「スパ~ッと動くのは出来るけど……ふわ~っとやるのは無理ねぇ……」

レオンさんは、苦笑いしながらそう答えた。

ソフィーもふわふわ~っ、と進む事は出来なかったりする。

 

そしてこの後に控える72時間の大調合、日輪の雫の話をして歩く。

「モニカのくれたレシピだと、どうしても72時間の漬け置きが必要なんですよ~……」

ソフィーは、カフェでジュリオさんにもした話をする。

「言ってたわねぇ、そんな事。だから今回の旅は1回だけなんでしょ?まあ、今回はゆっくりするわ。新作の服とか作りたいものもあるし」

レオンさんはそう言って微笑む。

 

 

20時……

夜に封印された寺院に到着。

寺院に入る前に野営をして、ここの赤うにが夕食となる。

「ここの赤うには、侮れない旨さをしているからな……」

オスカーが、不気味な空に向けて伸びるうにの木を眺める。

「確かに、他には無い美味しさがあるのよね」

そんな野営準備をするオスカーを手伝いながら、ハロルさんとレオンさんが話す。

「ここの赤うには、土がいいんだろうなぁ……それと、風かな……」

オスカーもそう話しながら、煮物の準備をする。

ソフィーとプラフタは赤うに拾いをしたり。

 

 

野営で一息ついてから、ソフィー達は封印された寺院へと入る。

「やっぱり不気味だよね、ここ……プニ助もほら、怯えてるもん」

ソフィーは荷車1階の隅に居る、プニ助を撫でながら言う。

「プニ助が怯えている……というよりも、ソフィーさんが怯えているから、怯えているのではないでしょうか?」

コルちゃんが口許を隠して言う。

プニ助は、やたらとソフィーとリンクしているので、そう思う。

荷車を引くジュリオさんも頷いた。

 

そしてナザルスさんの落ちた穴……

よく見ると急な斜面になっており、元々はここから行き来出来る場所だったみたいで、ソフィー達は荷車と共に降りて行く。

 

「坑道……だな」

フリッツさんが呟く。

「悪魔の魔物がふらふらしていますね……」

ジュリオさんも辺りを見る。

それと、メタルなプニプニ、ぷにぷに?

が、転がっている。

「まずはナザルスさんは……居ないみたいだね」

そして奥へと続く道へと向かう。

アークデーモン達と戦闘になるも、こちらの防御を抜けないので、あっさりと倒す。

 

「ここまで強敵が居なくなってしまうと……なんか拍子抜けするわね……」

モニカが呟く。

なんかHPMPLPバリアが厚くなり、防御が厚すぎて、並大抵の魔物では敵わない集団となってしまった。

「絶対に、とんでもない魔物のハズなのにねえ……」

完全にソフィーにとって場違いな場所なのに、脅威ではなくなっている。

そんな倒れたアークデーモンを見て、ソフィーも呟く。

 

「そうした気持ちは大事にするといい。この場所は、ソフィーのマナの柱の領域。魔物は出会った時には、マナの柱の力にやられている……そういう事なのだろう」

フリッツさんはそう話し、先へと進む荷車を追いかける。

 

 

石畳の地下室……

その内の1つの部屋に出た。

ドアみたいなのは無く、部屋を出た廊下と、向かいの部屋が見える。

「……プニ助が居るね」

ソフィーが呟き、荷車のプニ助を確認する。

「すーぱーぷにでしょ?」

モニカが言う。

向かいの部屋で、すーぱーぷに達がころころしてる。

そしてそれぞれは別の場所へと転がっているけれど、部屋からは出て来ないみたいだ。

 

「……部屋の中央に……何かあるわね……」

レオンさんが言って、皆で部屋の中央を見ると、紙きれが落ちている。

この辺りは紙きれが落ちてるのは珍しくないのだけど、部屋の中央の紙きれだけは、なんか新しい。

「確かに、気になるね」

ジュリオさんも賛同して、部屋に入ってみると……

すーぱーぷにが1匹ずつ襲い掛かってきた!

 

……相変わらずの防御力……

時間は掛かるけど、危なげなく倒せる。

そして1匹が終わると、もう1匹が襲い掛かってきた!

合計3匹……

なんか時間ばかり掛かって、ソフィー達は、すーぱーぷに達を倒した。

 

「ふぅ……なんで1匹ずつ挑んで来たのかしら……」

モニカが呟く。

「能天気オーラにやられた魔物ってのは、分からないわね」

レオンさんも疑問に思う。

ともかく、部屋の中央の紙きれを手に入れた。

「これは……装飾品のレシピのようです。ソフィー、どうですか?」

プラフタが目を通して、ソフィーに渡す。

「わお。レシピ考えたりする必要がないやつだね。生命のバングル……装飾品だねぇ~」

ソフィーはメモに挟んで、懐に入れる。

 

「さて、ともかくナザルスさんが気になるから……先に進もうか」

他の部屋はちょっと見るだけにして、ソフィー達は奥へと進む。

 

 

そして進むと、荒れ果てた錬金術の工房に辿り着いた。

「これは……炉ですね……」

「こっちは錬金釜だった、みたいな……」

だだっ広い石造りの工房。

ソフィーは、ひび割れた丸い錬金釜だったと思われる釜を、撫でる。

「大昔には、この辺りも錬金術の屋敷があり、教会があった……そういう事なのだろうが……」

ハロルさんが呟く。

「ソフィーとは違う錬金術士が、勤めていた……若しくは働かされていた……そんな感じの部屋だな」

フリッツさんも、そう話す。

「……ん?……そりゃあ、あたしはこんな所知らないし……」

その話にソフィーが言う。

「錬金術士になりたくて仕方ない、錬金術が楽しくて仕方ない……というのがソフィー、あなたですが、ここの錬金術士はおそらく……やらされていた……という話ではないでしょうか?」

そう言うと、ソフィーの後ろでプラフタが話す。

 

「これは……ニトロ水か。コル助、入れ物を作れるか?危険物だが」

ハロルさんが、部屋を調べて煙の出る水?を見つけた。

「ふむ……ガラスを溶かさなければ、厚いガラスのコップがありますので、今用意するです」

コルちゃんも荷車の2階で、何やらごそごそと作り出す。

人に見られるのは困るらしく、コルちゃんがどうやって物を作っているのか、見た者は居ない。

とはいえ、ぷにちゃんの中に入って、気になった事のあるソフィーとプラフタは知っている。

両手の掌の間に、光の「壺」を呼び出し、壺から物を産み出す。

その時にSPバリアを消費する。

 

 

「これでどうでしょうか?」

少し待つと、コルちゃんがコップを作ってニトロ水を入れてみたりする。

採取品が液体だったりすると、入れ物も考えないといけないので、大変だ。

コルちゃんが解決してくれるので、さくさく集められるけれど。

「これは!錬金術パワーを感じるよ!」

ソフィーは焦げた欠片にパワーを感じて、プラフタと集める。

今回、少し変わった素材は錬金術にかなり使えそうな感じだ。

「確かに。これは中々……」

プラフタも真剣な眼差しで焦げた欠片を拾い、荷車に入れて行く。

レオンさんは不思議な顔をして、そんな2人を眺める。

 

「なんか色々と残ってるものなのねぇ……見る人が見れば……」

そうこうしながら奥へ奥へと進んで行く。

 

「この先……強力な魔物の気配がします!」

プラフタが言い、ジュリオさんと前に出る。

錬金荷車2号を引くハロルさんが、少し下がる。

視界を遮る壁の向こうに、なんか赤オレンジのナタが飛んでるのが見えた。

壁の向こうはなんかやたらと明るい。所々に錬金術製と思われる照明が光っているのだけど、少し明りの強い場所みたいだ。

 

「ルゥゥ……ワンマァァ……」

そう声が聞こえて、4本のナタが飛びまわり出した!

「どうやら、こちらに気付いてるみたいですね」

そのナタを防ぎながら、プラフタとジュリオさんが前に踏み込む。

ナタを叩き、防ぎ、ナタは力なく、くるくると回って宙を舞う。

ソフィーも前進し、真っ赤なザリガニ人間みたいな魔物が長い白髪を振り乱していた。

「ナザルスさん!」

大剣でガードを固めながら、ジュリオさんが近寄る。

「うごおぉぉ……スッッ!プッツェエェ!」

ナザルスさんが持っている剣を振り下ろす。

ジュリオさんのガードに引っ掛かり、ジュリオさんが少し後ろに下げられる。

「とにかく、薬を使おうにも、まずは無力化しないとどうにもなりません!」

プラフタがそう言って、コルちゃんとソフィーが前衛に加わる。

ナザルスさんの攻撃は、凄く近寄ってガードを固めるジュリオさんに阻まれ、一方的に叩いて倒す事になった。

 

 

「ウゴオォォォ!!」

ザリガニ人間みたいなナザルスさんよりも、ジュリオさんの方が化け物だった。

ともかく、ザリガニ人間みたいなナザルスさんは倒れ、眠っているみたいな感じになり、プラフタが万能厄除け香を使う。

部屋全体に回復の煙がどこからともなく現れ、その煙はソフィー達の誰も回復する事なく、すぐに消えた。

 

「あれ?失敗作……?」

実際に使った事は無かったのだけど、広範囲に強力な回復を振り撒くハズ……

なのに何も起きなかったので、ソフィーは呟く。

「いえ、万能厄除け香は、異質な魔力がある場合、その異質な魔力に呑まれてゆくのです。今回の場合は成功なのかと思いますが……」

プラフタは話す。

そう話しているうちに、ザリガニ人間だったナザルスさんが、片腕だけを残してナザルスさんに戻った。

 

「おお~!大成功!?」

ソフィーとプニ助が目を輝かせて、すぐ後ろに居たモニカを見る。

「すーぱーぷにとリンクしすぎじゃないかしら?」

モニカはダブル能天気笑顔に怯む。

「ナザルスさん!」

ジュリオさんがナザルスさんに声を掛ける。

長い間気にしていたみたいで、泣いてるみたいな声でナザルスさんと話し、ともかく道標する事にする。

 

 

……蕾の日、お昼過ぎのキルヘンベルは少し雨が降っていて、錬金荷車2号の物を降ろす。

「じゃあ、ちょっと待ってて下さいね。このタイミングで日輪の雫を調合しますので」

ソフィーはプラフタとモニカ、コルちゃんとスッキリシャッキリした後に錬金釜へと向かい、日輪の雫の調合を始める。

錬金釜の中に素材を配置するのは、ほんの5分程で終わる。

 

……あとは漬け置き72時間だ。

 

 

「ナザルスは取り敢えず、このアトリエの側に居るのが良いのではないでしょうか?」

プラフタがそう提案する。

マナの柱の力の発生源であるこの場所ならば、魔物の力も暴走しづらいだろうし、やはり魔物のひしめく封印された寺院に居ては、治るものも治らない、と説明した。

「確かに、プラフタの言う事には納得できるね。それに、暴走した後だし、少しはゆっくり出来る環境がいい……」

ジュリオさんは、そう呟きながら考え込む。

 

 

ナザルスさんは、ソフィーのアトリエの側に錬金荷車2号を置いて、そこで寝る事になった。

プラフタとジュリオさん、モニカの見張り付きだ。

 

 

「こんな肉料理、見るのも久しいな」

そして夕食の時間には、すっかり目も覚めて、ナザルスさんは元気そうな笑顔を見せる。

ソフィーとプニ助も出て、5人で囲む夕食となった。

「ナザルスさん、いつも何を食べていたんですか?」

ソフィーが尋ねる。

雨は止み、眩しい星空の夕食タイム。

「赤うに、それとヴァイツェ粉が採れたりするからな。パンを焼いたりも出来たな」

ナザルスさんはそう話す。

錬金術士という話だから、錬金釜を使ったりしていたのだろうか。

「1人であの場所に住むなんて、ナザルスさんは凄く強い人なのかしら?私はソフィーの力ありきで旅をする身だから、信じられないわ」

モニカもそう話す。

錬金釜は漬け置き72時間だし、旅で過ごす事も多くなったもので、なんだかのんびりしても良さそうな、そんな時間。

「まあ、その場所に身を置けば、どう立ち回るか見えても来る……とも思うが、君は若いからな。焦らずに精進するのが大事、としか言えないな」

ナザルスさんはそう話す。

それからはじっくりゆっくり、ナザルスさんの錬金術、旅の話を聞いて、ソフィーの錬金術、旅の話……

そしてぷにちゃんの話をしたり、軽業を見せたり……

 

 

そんな夜中、プラフタも錬金荷車2号の番をしているので、アトリエにはプニ助とソフィーだけ。

そしてプニ助はベッドの下で爆睡中。

なんか目が覚めてしまって、でも錬金釜は使えないし……

ソフィーはなんとなく外に出てみる。

少し雨の降っているアトリエ前、錬金荷車2号は少し離れた場所に止まっていて、車輪が回らないように地面に埋められていたり。

 

「……」

皆寝ているのか、ただ錬金荷車2号が止まっているだけだ。

せっかく杖まで持って来たし、ソフィーはパメラでも探そうかと山を降りてみる事にする。

夜に1人歩きなんて、初めてかも知れないな……

と、考えてみたり。

そして山を降りて市街地に差し掛かると、人の気配に振り返ってみる。

すぐ近くにモニカが居た。

 

「じっとしていられないのねぇ……」

ソフィーに気付かれて、モニカはそう呟く。

「へへ~……錬金術も出来ないし、ふらふらしたくて。パメラでも居ないかな~……ってね」

ソフィーはそう言って笑う。

「そんな、人をカブトムシみたいに……」

モニカも苦笑いして見せる。

そうして2人で歩き、誰も居ない噴水広場へと出る。

ソフィーが空を見上げると、まだ雨は降っているけれど、眩しいくらいの星空が輝いていた。

「なんか、旅にでも行きたい気分。錬金術が進みまくっちゃって嬉しいんだけど、なんかさ……」

杖を持つ両手を拡げて、ソフィーは星空に向けて呟く。

 

「そうね。なんか目まぐるしいくらい、色々と変わっちゃったから、心の整理をしないと……なんて思ったりもするわ」

モニカも、そう呟く。

そんな夜の散歩……パメラは居なかった。

 

 

開花の日を1日潰し、果実の日も、そんなまったりのんびりな1日となる予定。

街に居て暇になるのなら、とナザルスさんがお酒を求めたので、オスカーが持って来たり。

キルヘンベルのラーメル酒と、秘密のシェリー、幸せのワインを八百屋荷車1号改に積んで持って来た。

「うおお!こんな山奥なら、ちょっと……ひと口……」

ソフィーはウキウキダンスする。

「まあ、秘密のシェリーはソフィー向けのお酒だし、気に入るのかもな」

オスカーは布が詰まった箱を開ける。

1本足丸グラスが沢山入った箱だった。

たるの中にも、お酒の瓶。なんかお洒落な感じ!

1本足丸グラスに、ちょこっとずつ秘密のシェリーを入れて、アトリエ前のテーブルに並べる。

「普通に飲む時も、香りを楽しむくらいだから、秘密のシェリーはこんな量だな。もう10年くらい寝かせたやつらしいけどさ」

オスカーがそう紹介する。

そしてその作法通り、グラスに口を付けて、香りを楽しみ、唇を濡らすくらいだけ、飲む。

「凄い!甘い!ぶどう大爆発!」

興奮さめやらぬソフィー。

プニ助もやってみると、目をキラキラさせる。

「こんな甘い香り、甘い味なの?」

不思議がるモニカとジュリオさん。

「ぶどう農家はワインとビネガーも作ってるからな。オイラの調味料師匠のとっておきシェリーだよ」

ラーメル酒は、普通にキルヘンベルに出回っている物らしいので、ナザルスさんに。

ソフィーも味見だけしてみる。

 

「うへぇ……」

コルちゃんクッキー☆かにとかげ編的な味に、ソフィーは苦い顔をする。

プニ助はそんなソフィーを不思議そうな顔で見る。

お酒の匂い!

……って感じに苦いピリピリ。

ソフィーは、よろよろとステップを踏むと座り込む。

 

「おお……!秘密のシェリーも酒的な香りをしていたが、私が求めていたのはこちらだな!」

ナザルスさんは笑顔になる。

秘密のシェリーは、甘過ぎるワインなので、ケーキに垂らして食べたりする、いわば調味料的なお酒なんだと言う。

唇を濡らすだけ、なんて飲み方も、このお酒ならではの作法なんだって。

 

そしてこの場所は、ぷにちゃんのお膝元。

魔物に変化してしまう力が恐ろしく弱まり、ナザルスさんも凄く安定していて気分もいい、と話した。

「そう言えば、そうだね?特に自警団の人と騎士の人が警戒してるだけだけど、魔物は寄り付かないもんね」

ソフィーはそう話す。

魔物が来る、という話もないキルヘンベルなのだ。

そんなまったり過ごす果実の日も過ぎる。

ちなみに、幸せのワインも渋い感じで、ソフィーには合わなかった。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[事後ハダカ族]
ハダカ族の戦いの後。女の子の側が事後ハダカ族になる。男の子の側は、そうはならない。

[プニ助]
元はマナの柱だったとゆう、すーぱーぷに。虹色の可愛いヤツ!

[マナの柱]
この世界の不思議の根源。不思議パワーが渦巻いてる。
[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエの地下にある、マナの柱。人格が2つ。

[カリカリトースト]
ホルストさんのカフェで出てくる厚切りのパン。焼き具合がいい感じにカリカリ。

[荷車]
錬金荷車2号。2階建て屋根付き、マナフェザーで重量を不思議パワーでごまかしているので、軽い。

[能天気オーラ]
ソフィーを主とする、マナの柱が地域に与える不思議パワー。スライムはプニプニに、小悪魔はネコみたいに、水棲モンスターは、「遊んで~♪」って感じになっていたりする。

[SPバリア]
コルちゃんの物を増やすポイント。枯渇すると背が縮む。
[光の壺]
ゲームにおいても、どう増やしてるのかは謎。

[ナザルスさん]
ゲームでも登場する。だけどアトリエで過ごしたりはしていない。

[秘密のシェリー]
干しブドウ的な甘さのワイン。濃い!
[幸せのワイン]
ブドウから作るワイン。渋みが強かったり弱かったり。





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錬金術のアトリエ 53

錬金術のアトリエ 53

 

種の日、14時に日輪の雫も完成予定。

なので、北の人形劇には行けない1日となってしまう。そして朝から雷雨………

 

「こんな雨も降るのだな」

錬金荷車2号、1階に座るナザルスが呟く。

「そうですね。1日中これが続く日もあるんですよ」

ジュリオが応える。

「ジャーン!雨だー!」

 

そんな時に、アトリエからソフィーが出てくる。

雷雨の中、元気爆発状態だ。

「ソフィー!こら!用もないのになぜ外に出るのです!」

プラフタもドアから顔を出す。

「ほら!朝食も用意しなきゃだから!」

「作ってもいないでしょう!それに今日の朝はエルノアが持って来ると!昼もオスカーが用意する予定でしょうに!」

ナザルスとジュリオは、そんなやりとりを眺める。

「はは……暇をもて余してると、じっとしていられないから、ソフィーは」

ジュリオはそう話す。

「若い、というのは羨ましい限りだな……」

そんな微笑ましい光景に、ナザルスとジュリオは顔を綻ばせる。

 

 

……雨は弱くなり、モニカとエルノアさんがウメさんを乗せてやって来た。

種の日の噴水広場の賑わいに、レストランからも出店を企み、レストラン荷車1号の試運転も兼ねてるらしい。

「飾り付けすご~い!お花屋さん?」

結構離れた場所から発見したソフィーが、絢爛荷車レストラン号に取り付く。

2階建て荷車なんだけど、2階部分は全て飾り付けとお花という、あまりにも目立つ造りで、屋根もピンクの布にフリフリヒラヒラの白い布を散りばめて。

 

高機能版マナフェザーの注文、コレの為だったか……

と思いながら、ソフィーとプニ助は絢爛荷車レストラン号を眺める。

「造花、お花も売る予定なのよ!」

少し重そうに荷車を引いてる、エルノアさんがそう話す。

引き心地も確かめるみたいで、モニカはそれを見守っている。

「レストランから広場じゃ、こんな上り坂ないのに、エルノアったら聞かないんだもの。重いんじゃない?」

荷車を安定させる為に、荷車の後ろに手を掛けているモニカがそう話す。

 

 

「これは、あまりにも華やかな……驚きだな」

錬金荷車2号に近寄る、絢爛荷車レストラン号。

ジュリオさんとナザルスさんが出ていて、驚いた顔で出迎える。

「ソフィーのアトリエ前だと、浮いてしまうばかりだけど、種の日の噴水広場で使うものだから、張り切っちゃって……あなたがナザルスさんなのね?」

エルノアさんはそう話して微笑みかける。

華やかなレストラン号、華やかなレストランに華やか大暴走のモニカの家……

だけどエルノアさん本人は、地味な服装だったりする。

 

 

……そして華やかな朝食を取る。

ナザルスさんが驚きながら食事をしていた。

 

朝食が終わり、雨上がりのアトリエ前。

緑に雨の雫がキラキラする中で、ナザルスさんの旅の話を聞く。

他の国では残酷な話も多くて、魔物も砂に潜って待ち構える罠みたいな虫とか、実体のない風みたいな魔物で、包まれると身体を切り刻まれるとか、怖い話が多かった。

それと比べると、キルヘンベル周辺の魔物は、本当に魔物なのか疑いたくなるくらいなんだとか。

危険は危険なんだけど、ナザルスさんの危険ハードルが、どうにかなっているような……

 

そんな話をしていると、お昼前になっていて、オスカーとコルちゃんがやって来た。

 

「なんか、凄い荷車が!これがレストラン号なのですか!?」

絢爛荷車レストラン号に、コルちゃんは食い付く。

「八百屋バスケットは、どちらでも売る予定だからなぁ。こりゃあ、母ちゃんも手伝いの子供を増やす訳かぁ……」

 

八百屋荷車3号改を引いてるオスカーも、そう言って笑う。

あまりにも飾り気のない荷車。

……と、いうか壊れたのを直してるだけだから、1号の頃から、ひと回り大きくなったくらいしか、違いはなかったりする。

「更に昼の食事とは……私はそれほど持ち合わせは無いのだが……」

思わず怯むナザルスさん。

「ナザルスさんのお話には、それくらいの価値がアリアリなのです!冒険のお話を聞かせて頂ければ、全く問題ないのです!」

コルちゃんが両手を広げるポーズを取ると、そう話す。

夜には教会騎士の面々と、ディーゼルさんも来る予定なんだとか……

 

そしてお酒まで入り、更に賑やかになるアトリエ前。

フリッツさんも、旅の話はやたらと聞かれるそうで、色々な場所で人気者だったりするみたいだ。

そんな話も聞いた。

 

「なんか、みんな旅の話に飢えてるんだねぇ……」

アトリエ前の賑わいから少し距離を置いて、ソフィーとオスカーは、カワニレの木の場所で、風に吹かれてる事にした。

「オイラも、旅に出る予定なんだから、聞いておかないといけないんだろうけどな」

オスカーは、そんな賑わいを眺めて話す。

もう少しで14時、日輪の雫も仕上がりの時間だ。

「そろそろ日輪の雫、完成させないとかなぁ」

ソフィーが呟くと、オスカーが目を見開いた。

「そうだ!ソフィーの土が効いてさ、朧草も花を咲かせそうなんだよ!多分明日の朝イチには咲く感じだからさ!持って来るな!」

急にテンションを上げるオスカーに、さすがのソフィーも怯む。

「あ、あはは……でもこれでプラフタの言う、真理の鍵の調合も出来ちゃうね……」

朧草の花をコンテナに預ける算段を話して、ソフィーはアトリエに戻る。

 

遂に日輪の雫も仕上げの時間だ。

 

 

「よし!日輪の雫、完成!」

黄色い宝石を錬金釜から取り出して、ソフィーはその宝石を見つめる。

「真理の鍵の、正に中心となるアイテムですが、見事な出来上がりですね!私の居たアトリエにも繋がりそうな……」

プラフタは感心して、そして振り返った。

その向かう先にはアトリエの2つのベッド……

その間のコンテナの入り口。

「なんか………変な感じがしてる………」

ソフィーも、コンテナの入り口を見る。

 

「日輪の雫は、真実を照らし出す装置としての存在です。その日輪の雫が出来上がり、今まさに……色々な謎が解けようとしているのでは……」

このアトリエ、特にマナの柱の部屋とコンテナには、色々な謎がある。

特におばあちゃんに関して、色々な謎があった。

 

……なぜソフィーのおばあちゃんは、他の人の記憶にも現れないのか……

……錬金術の力を与えたハズのマナの柱でさえ、おばあちゃんの記憶は抜け落ちている……

……色々と思い出せない記憶……

でもそれは、知らない方がいい事なのかも知れない……

 

ソフィーとプラフタは、コンテナの入り口へと向かう。

「日輪の雫は、置いて来た方がいいかな?」

ソフィーが呟く。

「そうですね。あまりよろしくないかも知れませんから、置いておきましょうか」

ソフィーとプラフタはベッドを整えて、日輪の雫を置く。

そうして閂を外して……

と、いつもの動きをしてみるも、開かない。

 

「あれ?開かなくなってる……」

ソフィーとプラフタで何度か挑戦するも、閂が外れるだけで開かなくなっていた。

「どういう事なのでしょうか?」

プラフタはアトリエの外を見ようと、ドアへと行く。

 

プニ助も、絢爛荷車レストラン号に居たハズだけど……

 

「なんか、空気が変わったよね………」

ソフィーはベッドに置いた日輪の雫を手に、プラフタの後を追う。

アトリエのドアは、プラフタが手を伸ばすよりも先に開き、青い錬金コートを着た女性が入って来た。

 

「さて、本格的に困った事になって来たね」

プラフタに気付かず、プラフタに重なり、そしてソフィーにも気付かずに、その女性はベッドへと向かう。

その後を2人の男性が付いて来た。

 

「ギリアムの奴、完全に街を牛耳っていたからな。ホルストの時間稼ぎも、もう持たないだろう」

「どうすればいい?ラミゼル?」

2人の男はそう話す。そしてアトリエのドアは閉まり、中に入る。

「……おばあちゃん?おばあちゃんだ!」

ソフィーは両手を口許に、青い錬金コートの女性を見る。

ラミゼル・ノイエンミュラー。

ソフィーのおばあちゃんの錬金術士。

そして男性の1人は、ブライト・ジーメンス。

天才時計職人。ハロルさんのおじいちゃんだ。

3人は声を出したソフィーにも気付かず、話を続ける。

 

「仕方がないからね。マナの柱まで抑えられてしまう訳には行かない。この地域をねじ曲げるしかないね」

ラミゼルはベッドに座り、ため息をつく。

「まさか爆弾騒ぎからこうなってしまうとは。広報紙とは怖いものだな」

3人は話を続ける。

その話をソフィーとプラフタは、黙って聞いている事にした。

 

……フラムの作成依頼から、どうやら殺し合いが起きて、その製造者としてキルヘンベルの街に広く知られる事になった。

ギリアム・ドレスデンはその広報紙を日々配り、ラミゼルはすっかり悪者、魔女として悪者とされた。

その悪者。魔女の討伐を正義とする者が集まり、ラミゼルの肩を持つ者に襲い掛かる。

そうした事件が繰り返され、ラミゼルはすっかり追い詰められている……

そうした話だった。

 

「とにかく、あたしは世界からマナの柱と共に消える事にするしかないね。ブライトにも世話になったけれど、うまく消える筈だから」

そう話して、3人は消えた。

 

 

がらん、としたいつものアトリエだけど、照明が暗い。

いつもの少し明る過ぎるくらいの明るさとは、全然違う空気。

「これは……どういう事?プラフタ?」

ソフィーが尋ねる。

少し暗い照明に照らされた、灰色がかったプラフタ。

ソフィーにとって見慣れない色のプラフタは、考え込むポーズで窓を眺めていた。

「日輪の雫がこの世界に顕現した事で、ソフィー、あなたのおばあちゃん……ラミゼルの隠した過去が、ここで起きた出来事が見えている……そういう事なのでしょう」

プラフタはそう話す。

「世界から消える……って、どういう事なんだろ?ホルストさんは知っていたりするのかな?」

ソフィーがそう呟くと、勢い良くドアが開いた。

 

 

「ソフィー!ソフィー!」

幼いソフィーを抱えたラミゼルと、また2人の男。

その3人が駆け込んで来た。

抱えられた幼いソフィーは焼け焦げて、顔の半分が無くなっているような……

呼び掛けて答える筈の無い状態で、入って来た男達は、ドアを開けて引き返し、ドアを閉めた。

ラミゼルはベッドの閂を外し、コンテナへと入って行く。

「……!」

ソフィーは驚き、閉じた床の扉を見つめる。

「これは……?」

 

プラフタも言葉を詰まらせ、ソフィーと共に床の扉を見つめる。

暫くすると、血と炭に汚れたラミゼルだけが出て来て、アトリエのドアを開け、男2人を引き入れた。

「市街地のこのアトリエの山、麓で起きた爆発に巻き込まれたみたいだ。教会騎士団がストリートにごった返してる。おそらくバーニィか、ディーゼルがこちらにも来るぞ」

男はそう話す。

「他の子には被害は無かったのかねぇ……ソフィーはまだ魂があったから、マナの柱の中で持ち直す筈だけど、これで儀式は大きく遅れる事になるね」

ラミゼルはそう話しながら、血と炭に汚れた上着を脱いでいく。

「本当に平気なのか?このままだと、どんどんこちらの分が悪くなるぞ」

怒りの表情で、ブライトが言う。

「刺激して、このアトリエに来られるのが1番都合が悪い。どうにかしてその手前で抑えないとね」

ラミゼルは上着を着替えて、アトリエを出る。

男2人もそんなラミゼルに続き、出て行くと、ドアは閉まった。

……ドン!

 

爆発音が鳴り、ソフィーとプラフタは窓から外を見る。

3人組の男が、ラミゼルと2人の男に爆弾を投げ、ラミゼルが爆発を防いだみたいで、歪な爆発の形跡が見えた。

ブライトが何かを投げて、3人とも倒れ、そしてその人影はみんな消えた。

 

 

薄暗い空……

アトリエ前の草地、井戸の辺りもひどく暗い景色。

「……なんか、あたし死んでたし……これ何?こんな事が起こったの?」

ガクブル涙目のソフィーは、そう言ってプラフタにしがみつく。

「どうやら、そのようですね。しかし、なぜこんなにもラミゼルは、敵視されてしまったのでしょうか?」

プラフタはソフィーを受け止め、何もない暗い景色を眺める。

 

 

……また暫く時間が過ぎる……

 

 

……何も起こらない。

プラフタはソフィーと共にベッドの方へと移動して、ソフィーを座らせる。

「顕現した日輪の雫は、真実を照らし出す光として作用します。それと以前持ち帰った久遠の竜鱗は、過去に遡る効力を発揮するのです。そうしたアイテムが相互作用してこんな事が起こった……という事なのでしょう」

プラフタはそう話す。

「おばあちゃんの記憶が無かったのは、この記憶を消して姿を消したって事なのかな?」

ソフィーは顔を上げて、プラフタを見る。

「儀式、と言ってましたね。マナの柱の記憶もあいまいな所がありますので、記憶を消して……というのは当たっているのかと思いますが」

プラフタはそう話し、アトリエの窓を見つめる。

「外に出れたりしないかな?」

ソフィーは、窓のある壁に手を伸ばしてみる。

ラミゼルや男2人みたいに、すり抜けたり出来るかと思ったけれど、そんな事は無かった。

 

 

それからもソフィーとプラフタで、アトリエの中をうろうろする。

そうこうしていると、窓を見た外の景色の遠くから、明るくなって来た。

朝が訪れた、みたいな感じではなく、記憶の世界を押し退けて、ソフィーの見慣れた世界がやって来る……

そんな感じで、明るさがこちらにやって来るのだ。

 

朝と共にその明るさがやって来て、アトリエの中も明るくなる。

明るくなると、アトリエのドアが開いた。

「おお~♪」

早速、外に出るソフィー。

そんなソフィーに、心配していたジュリオさんとモニカ、ナザルスさんにプニ助を乗せたコルちゃんが駆け寄る。

 

「急にアトリエの電気が消えて、閉まってしまったので驚きました。何かあったのです?」

コルちゃんが尋ねる。

「暗いアトリエの中で、おばあちゃんが居たんだけど……あれ?」

ソフィーはそう話して、首を傾げる。

記憶もすっぱり抜け落ちて、思い出せないのだ。

「しかし、どうして明るさを取り戻したのでしょうか?」

プラフタもキョロキョロと辺りを見回す。

 

 

昨日のお昼、日輪の雫の仕上げをする、とソフィーとプラフタでアトリエに入ると、アトリエの灯りが消えて、アトリエは閉じてしまったのだと、ジュリオさんとモニカが話す。

そして一晩中閉まったままで、朝の7時くらいになった今、灯りが点いてソフィーが出てきた。

そういう経緯を話していると、オスカーがやって来た。

「ソフィー!みんなも見てくれよ!朧草が花をつけたんだ!ほら!」

植木鉢を大事そうに抱えてやって来た、ハイテンションなオスカーは、ソフィーにその植木鉢を見せる。

「なるほど……朧草の花でしたか……」

プラフタは顎に指を置き、朧草に顔を寄せると微笑んで見せた。

朧草の花は弱い植物なので、急いでコンテナに仕舞う事にする。

コンテナも普通に開き、そしてオスカーも入れるようになっているので、一緒に入る。

 

棚に、地面に、天井に……

丸い影が無数にあるコンテナの中に入ると、その影からぽんぽんぽんぽん、と、番人ぷにちゃんが現れた。

「朧草の花は、奥に置いておいて」

ぴょこんをぴょこぴょこさせて、番人ぷにちゃんはソフィーに言う。

いつもとは違う、掠れた声。

言われた通りに1番奥、ぷにちゃんの部屋の扉の側に朧草の花を置いた。

 

「はぁ~……なんかいつもな感じだねぇ……急に息苦しいもやもやした感じがして、どうにかなりそうだったよぉ……」

番人ぷにちゃんはそう言って、ぴょこんをふらふらさせる。

オスカーが居るから、今は開かないぷにちゃんの部屋の扉。

「……そうですね。日輪の雫の完成から、この朧草の花が届くまで、色々ありましたから」

プラフタはそう言うと、足早に歩き、コンテナから出て行く。

「プラフタ?」

ソフィーは不思議に思いながら、プラフタを見送った。

 

「朧草の花、好きなのか?ソフィーの錬金術のおかげとはいえ、オイラも花が咲いてくれて喜びもひとしおなんだよな。預けて行くけど、よろしくな」

オスカーは朧草が花を付けた事で、ただただ喜びに浸っているみたいだった。

そして、ソフィーとオスカー、コルちゃんもコンテナを出て、アトリエの外へと出る。

 

 

「双葉の日の朝なのですよね。ナザルスはどうしましょうか?」

ソフィーが外に出ると、その前に出ていたジュリオさんとモニカ、ナザルスさんとプラフタが話していたり。

「とにかく、皆で集まらないのに話を決めてしまっては良くないから、カフェで合流はしないといけないかな」

ジュリオさんは言う。

「そうね。ソフィーのアトリエの灯りが消えて……なんて少し穏やかじゃないから、旅に出るのは少し考え物、よね?」

モニカもそう話す。

「私もあまりここに留まっている訳にも……とは思うのだが、少し思う所もある。今しばらくこの辺りで過ごさせて貰うとするかな。荷車は持って行って貰っても構わんよ」

ナザルスさんは伏し目がちにそう言って、プニ助を肩に乗せたソフィーを見る。

「ん~……とにかく、カフェに行って来ますね。皆で決めないとだし」

錬金荷車2号と、ソフィー達はナザルスさんを残してカフェへと向かう事にした。

 

「夜の間、コルちゃんも心配してたのよ?何かあったの?」

カフェに向かう道すがら、モニカがソフィーに尋ねる。

「アトリエの中でね、おばあちゃんに会ったような……なんか曖昧な感じになってるんだよね。夢を覚えてない、みたいな感じ」

ソフィーはそう答える。

錬金荷車2号の1階で、コルちゃんはプニ助と共に眠っていた。

日差しの穏やかな、晴れたキルヘンベル。

「ソフィーは大きく忘れてしまったみたいですが、私は覚えています。ですが、その事を伝えて良いのか……悩んでいる所ですね」

プラフタが、そんな2人に向けて言う。

そしてカフェに着くと、ハロルさんとレオンさん、フリッツさんが外で待っていた。

それと、深い紫のローブにフードを深く被った見知らぬ人……

 

ソフィーとプラフタが近寄ると、深い紫のローブの人は、深く頭を下げた。

そして、まるで空気に溶けるように消えて、ソフィーの頭に涼しい風が吹いた。

「……あれ?今誰か……」

涼しい風が、今見た筈の人を忘れさせる。

ソフィーは、思わず手を伸ばした。

「ソフィー、君らを今まで見張っていた、我が国王の使いの者だな。そして、これは我らが国からの願いとなる」

そう言うと、フリッツさんはアシタバの帰舟のレシピと、手紙をソフィーに渡す。

 

「旅には行けなくなったが、とても良い経験だった。まだまだこうした日々が続けばと思うが、こうした日が来るのもまた、仕方がないのだろう」

ソフィーに渡すと、フリッツさんは少し寂しそうに微笑んだ。

「え?……あれ?……プラフタ!翻訳」

ソフィーは戸惑い、プラフタにその困惑した顔を向ける。

「どうやら、急に色々と事情が変わった……という事かと」

プラフタは、そう答える。

 

「まあ、朝メシくらいは食って帰れ。お前がそこまで優秀な錬金術士、なんてのは信じられないが、ワープするフザけた道標なんてのも使っていた訳だし、そうだったんだろうな」

ハロルさんはそう言うと、戸惑うソフィーとプラフタをカフェへと誘う。

 

 

「話は聞いていますが、モーニングのサービスはありますよ。どうやら錬金術士として、認められるどころか飛び越えてしまったみたいですね」

カフェで、ホルストさんがにこやかに話す。

「この手紙とレシピ……何が書いてあるんだろ」

ソフィーは手紙とレシピを取り出すと、テーブルに置いた。

「国王のサインと大紋……本物か?」

その手紙を見たハロルさんが、ホルストさんを見る。

「おそらくは……しかし、綺麗な字ですね。この字も国王陛下のものなのでしょうか?」

ホルストさんもその手紙を見る。

その内容は、アシタバの帰舟のレシピを携え、キルヘンベルから離れるように……と、そう書いてあった。

 

……また、プラフタの記憶を取り戻す、封印されたアトリエ……

プラフタのアトリエの封印は、今は解かないように、とも記されていた。

 

「ソフィーは、マナの柱の影響の外には出た事が無い……その状態で、マナの影響の外、しかも強烈な魔物の巣に踏み込む事を危惧してもいるみたいですね」

プラフタも、その手紙を眺めて呟く。

「新鮮な葉っぱ4枚だけで、このアシタバの帰舟が作れる……とんでもレシピなんだけど……こんなの出来るかな……?」

ソフィーは手紙よりも先に、アシタバの帰舟のレシピを眺めていたり。

 

そうしてカフェで過ごし、ソフィーとプラフタは、アトリエへと帰る事にした。

 

帰り道のコルちゃん露店。

コルちゃんが居なくて、子供達がお店番。

儲かってるから、と子供も3人雇っているみたいで、職人さんが買い物をしてる。

「なんか、離れなきゃいけないなんて話をされちゃうと、何ともない景色が目についちゃうね」

ソフィーは呟く。

「確かに、そういう気持ちにはなりますが……離れる為には、アシタバの帰舟という調合をしなくてはならないのでは?」

プラフタは伏し目がちに答える。

「なんか、究極難しいんだよね……こんなの作れるのかなぁ……」

ソフィーはそれを聞いてうなだれる。

ただ、素材の気楽さ、時間のかからなさから、失敗し放題ではある。

「しかし、このようなレシピを成功させるのも驚きですが、作り出した者が居るというのも驚きですね。一体どのような錬金術士が……と興味は湧きます」

プラフタはそう話し、2人はアトリエへの山道を登って行く。

 

 

そして早速、アシタバの帰舟の調合!

「あうぅぅ~……」

シュポンと煙が昇り、錬金釜から焦げた葉っぱが出て来る。

MPバリアとLPバリアを大きく消耗する上、品質がほんの僅かでも下がると、途端に失敗になるという、あまりに無理ゲーなレシピだった。

時間は掛からないし、素材もすぐ目の前の葉っぱでいいのだけど、これでは連続チャレンジは出来ない。

「無駄な力が入りまくっていたのが敗因かと。しかし、これは手強いレシピというか……可能なのでしょうか?」

プラフタも首を捻る。

 

「む~……とにかくなんか凄い疲れたし、ぷにちゃんが気になるし、ぷにちゃんに癒して貰いたいし、コンテナに行かなきゃだね!」

アシタバの帰舟に、おばあちゃんの出来事、ナザルスさんに、旅立つ話……

なんか急に忙しくなったもので。

 

取り敢えずソフィーとプラフタは、コンテナへと入る事にした。

 

 

「ともかく、このアシタバの帰舟……何をするアイテムなのかが分からないんだよねぇ……」

ソフィーは呟く。

「……確かに、見た事も聞いた事もありませんからね。アシタバの帰舟について、どうにか調べないといけませんね」

プラフタもそう話す。

「アシタバの帰舟?聞いた事あるなぁ……でも……思い出せないなぁ……」

番人ぷにちゃん達が、わっしょいしながら言う。

そしてソフィーとプラフタは、ぷにちゃんの部屋へと入る為、服を脱ぐ。

 

……ぷにちゃんとも色々話して、眠って……

起きてからも色々と話すも、アシタバの帰舟の話をぷにちゃんが思い出す事は無かった。

 

 

「……ん~……とにかく、ぷにちゃんの封印をどうにかしないと、アシタバの帰舟がどんなものか、分からない訳かぁ……」

アトリエに帰って来て、錬金釜の前に立つソフィーは呟く。

窓を見ると晴れたキルヘンベル。

これからお昼になる時間だ。

 

アトリエの外には、冒険には行かずに帰って来た錬金荷車2号。

そこにナザルスさんとジュリオさんが、まったりと過ごしている姿があった。

「取り敢えずナザルスさんに聞いてみようかな」

ソフィーはアトリエ前の錬金荷車2号へと行ってみる事にした。

 

すぐ目の前、固定された錬金荷車2号。

ナザルスさんは土を眺めていて、そんなナザルスさんとジュリオさんで昔話に花を咲かせていたようで。

「やあソフィー。旅に出ないとなると、少し退屈だね」

ジュリオさんはそう話し、寂しそうな顔をする。

「確かにそうですね。アシタバの帰舟を作り上げて、キルヘンベルを離れないと行けない……って話なんですけど、アシタバの帰舟が……さっぱり分からないんですよね」

ソフィーはそう話す。

 

「……僕も初めて聞くね。ナザルスさんは、アシタバの帰舟なんて聞いた事がありますか?」

ジュリオさんはそう話を振る。

「ふむ……私も分からんが、レシピがあるならレシピの作者が居るのでは……その作者なら心当たりがあるかも知れないな」

ナザルスさんはそう話す。

「作者……誰だろ?まさか国王?」

ソフィーは考える。

ともかく、貰った手紙を見直すべく、アトリエに取りに帰る。

 

「国王?」

ナザルスさんはジュリオさんに尋ねる。

「いえ、実は……」

ジュリオさんは説明する。

1回話したのだけど、このオジサン空返事だったみたいで……

そう説明していると、プニ助を背負ったソフィーが戻って来る。

「ナザルスさん!これです!作者は書いてないけど!」

 

「どれどれ……」

ナザルスさんは手紙とレシピを眺める。

「何か分かります?」

ソフィーは手紙を見るナザルスさんに尋ねる。

「ふむ……アシタバの帰舟を作る……のではなく、このレシピを携えて……とあるな」

ナザルスさんは顔を上げる。

「え?あれ?」

ソフィーは驚く。

「作れ」とは書いていない。

 

「じゃあ……もう旅立てる……って事?」

ソフィーはナザルスさんに尋ねる。

「まあ、そうではあるが……旅の準備というのが必要だろう。君はアトリエ以外で調合が出来たりするのかね?」

ナザルスさんは苦笑いして、そう話す。

「あと、いつまでに旅立たないといけない、というのも無いんじゃないかな?ソフィー」

ジュリオさんも、そう話した。

そして、確かにそうなのだ。

 

 

……ともかく、なんかのんびりとした昼食を食べて、ソフィーとプラフタは、フリッツさんに会いに行く事にした。

「なぜ、キルヘンベルを離れないと行けないのでしょうか?そこの理由もまた、書かれていないのですが……」

プラフタはそう話す。

「確かに。でも、錬金術の力が他の人から疎まれる……って話を幾つか聞いたからなぁ」

ソフィーはそう言って、背中のリュックをふるふると振る。

振るとプニ助がにょ~ん……

と出てきて、プニ助を捕まえて頭に乗せる。

頭に乗せるにはデカい。

そしてやっぱり抱く事にするけど、抱くにもデカい。

「それで、逃げるようにこの場所を離れる、という話なのでしょうか?」

プラフタは少し苛立ち、そう話す。

「戦う訳にも行かないんじゃないかな?街の人と戦うくらいなら、旅に出る方がいいんじゃないかな?」

ソフィーはそう言って、歩く。

……フリッツさんは、何を知っているのやら……

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[錬金荷車2号]
2階建て荷車。しかも屋根付き!更に寝たりするので、ふわふわクロースとか、もふもふモフコットとか完備。
[絢爛荷車レストラン号]
エルノアさんが飾り付けをした、めっちゃキラキラの荷車。レストランも荷車販売をするみたいで作られた。高性能マナフェザーにより、重量のほとんどを不思議パワーでごまかしている、錬金荷車3号。

[エルノアさん]
モニカと一緒に住んでる可愛いおばさん。飾り付け大暴走の人。あかん、キルヘンベルがキラキラしてしまう。
[手伝いの子供]
ヴァルム教会が派遣する、ヴァルム教会で育てられてる子供達。働く場所には、バーニィさんとディーゼルさんの目が光る。
[バーニィさん]
神父さんの格好をしている、ヴァルム教会の子供達の先生。
[ディーゼルさん]
神父さんの格好をしている、ヴァルム教会の子供達の先生。筋肉マン。

[八百屋荷車3号改]
元々は八百屋荷車1号なんだけど、バージョンアップを繰り返していたり。ver3.0.2みたいな感じ?

[日輪の雫]
72時間掛かる、凄いアイテム。
[プニ助]
失せし者達の都に居た、元々はマナの柱だった……らしい、すーぱーぷに。

[ギリアム]
昔の人?
[ラミゼル・ノイエンミュラー]
おばあちゃん。
[ブライト・ジーメンス]
ハロルさんのおじいちゃん。
[深い紫のローブの人]
何者?

[アシタバの帰舟]
この小説ではエンディングの調合。

[国王のサインと大紋]
綺麗な文字。美しいハンコ模様と黒と灰色の混じった不思議なインク。



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錬金術のアトリエ 54

錬金術のアトリエ 54

 

ソフィーとプラフタは、旧市街へとやって来た。

エリーゼお姉ちゃんの本屋の前で、フリッツさんは立っていて、道行く人を観察していた。

「フリッツさ~ん」

プニ助を抱えて、ソフィーは能天気に声を上げる。

「おお、ソフィーとプラフタか」

フリッツさんは、ソフィーとプラフタに顔を向ける。

「何をしてるんですか?エリーゼお姉ちゃんを待ってるとか?」

ソフィーは尋ねる。

フリッツさんは振り返る。

「なるほど……このような場所だったか……少し落ち着かない気分でな。人の動きを眺めていた」

フリッツさんはそう話す。

 

……そして知識の大釜の場所を押さえる任務があり、フリッツさんにも国王からの任務が来ている……

との話をされた。

「……知識の大釜の場所?」

ソフィーは尋ねる。

「そうだ。まだソフィーがそれの鍵を作っていない。作ると、その場所の封印は危うくなるからな。まだ完成させて貰っては困る物だな」

フリッツさんは答える。

 

……知識の大釜は、錬金術の能力の無い者でも、錬金術を行使出来るという、生きている釜。

釜そのものがマナの柱なのだと言う話で、フリッツさんも国から聞かされているのだと言う。

ただ、そのマナの柱は既に滅びており、それでも知識の大釜として在る。

そして錬金術は行使出来る。

ただ、その錬金術は恐ろしく強烈で、強烈にする為のパワーを、周囲の地域、世界から奪い取るのだと言う。

……

 

 

「……知識の大釜……ヤバい釜じゃないですか!?」

ソフィーは驚愕する。

「大昔、他のマナの柱を滅ぼしながら、その錬金術を行使した……とあるな。正にパンドラの箱の発生装置である訳だから、監視の者があり、私は傭兵としてその応援に来ているのだ」

フリッツさんは、そう話す。

「まさか……そんな……」

プラフタも衝撃を受けている。

 

「今回、ソフィー……君を遠ざけたい理由は、今現在の封印を維持するのに不都合だからだろう。それの鍵の材料は揃ってしまったからな。その材料は、それぞれに共鳴を始めてしまっている。それの鍵を作らずとも、もう世界は……幾つものマナの柱は、あの時の記憶を思い出そうとしている」

フリッツさんはそう話す。

「私は……どうすれば……」

プラフタは頭を抱える。

「プラフタ……」

そんなプラフタを、ソフィーとプニ助は心配そうな顔で見つめる。

 

「まずはこの地を離れて貰えるとありがたいな。その後に案内人を送る事になるだろう。ソフィー……君は今はまだ若いが……いずれまた、この場所に戻り、知識の大釜を何とかして欲しい」

フリッツさんはそう言って、ソフィーの肩を叩く。

「……追い出される訳じゃないんですか?」

ソフィーはそう尋ねる。

「勿論だ。色んな人がソフィー……君を求めている。それはここを離れた旅先でもそうだろう。その先に、もう一度この場所もある。今は少し離れるだけで、更に錬金術を極めて戻って来るのだ。それまで、知識の大釜の封印は、守っておこう」

フリッツさんは、そう言って笑った。

 

「分かりました!でも、旅もなんかワクワクします!」

……ソフィーはアトリエに帰る。

 

 

「さて、どういった準備をすれば……」

アトリエに帰る道。

プラフタはそう呟く。

「ふふふ、プニ助は持ってく!」

「ソフィー!?」

ソフィーはなんと、あまりにもノープランだった。

 

 

アトリエに戻る途中、モニカが奥様方と立ち話をしている。

ソフィーとプラフタは、そこに通り掛かった。

「あらソフィー……なんかプニ助も凄い能天気笑顔なんだけど……」

モニカはそう尋ねる。

「国王様の手紙の通り……あたし、旅に出るね、モニカ。だから、アトリエとぷにちゃんをよろしくね、モニカ」

笑顔のプニ助を抱えて、ソフィーはそう話す。

「え?今から行くの?」

モニカは驚く。

「うん。プニ助は持ってくけど、これから行くんだ」

ソフィーは普通に言う。

「そ、そんな急に行くの?」

モニカは慌てて言う。

「へへ~♪少しの間だけ、ね」

ソフィーはそう答える。

 

少しでも早くこの場所を離れる事で、フリッツさんと、この地域を見張ってる……

という誰かがラクになれるというなら……

いち早くキルヘンベルを離れる、というのも1つの戦いとも言えるし。

それに、素材に溢れる恵まれたアトリエの状態だと、アシタバの帰舟は出来上がらない気がするのだ。

 

 

ソフィーとプラフタは、アトリエへと帰る。

アトリエ前には、深い紫のローブの人が立っていた。

 

……空間が少し歪み、暗くなる……

 

「ソフィー……東へ……」

 

そう言葉を残すと、いつもの明るさになり、深い紫のローブの人は消えた。

「……?」

ソフィーは足を止めて、また今の光景を忘れる。

「……ソフィー、東だそうです」

プラフタはそう話す。

「東?」

ソフィーはプラフタに尋ねる。

「あれは……誰なのでしょうか?ともかく、東とだけ言い残して消えて行きましたが……」

プラフタは答える。

 

ともかく、ソフィーとプラフタはアトリエの中へ。

そしてプニ助をベッドに置いて、コンテナの中へと入る。

 

……広い、棚の廊下。

番人ぷにちゃん達は、ゆらゆらしている。

「あたしたち、旅に出ないと行けなくなって……なんかぷにちゃんにしばらく会えない、って考えると寂しいね……」

ソフィーはそう呟く。

「……なるほど……ともかく……中へ……」

番人ぷにちゃん達は、ゆらゆらしながらそう話す。

 

 

……ともかくハダカ族となって扉の中へ。

もうアトリエくらいのサイズとなっている、巨大ぷにちゃんが口を開く。

そしてソフィーとプラフタは、巨大ぷにちゃんの中へと入る。

 

「……なるほど……ただ……我も……色々と……整理する……事がある……まずは眠ると……良い……」

ぷにちゃんはそう話し、温かい風が吹く。

止まった時間の中で、ソフィーとプラフタは眠りに落ちる。

 

 

……ソフィーが目を覚ます。

「……起きたか……」

「うん。おはよう」

めっちゃプニ助感覚で、プラフタを抱き締めてた。

そしてせっかくなので抱き締めっぱなしにしておく。

「……アシタバの帰舟……我のもう1つの人格は……覚えていないようだが……」

ぷにちゃんは話を始める。

プラフタも目を覚ました。

 

……アシタバの帰舟は、マナの柱の主が、マナの柱の元へ戻る為の道具。どこへ居ても、このアトリエの地下へと戻る事が出来るのだとか。

「おお……!でも、そもそも作れそうもないんだけどねぇ……」

ソフィーはそう思う。

「……ふむ……だが……ソフィーの中に……方策はありそうだが……色々と……試して行くしか……あるまい……」

ぷにちゃんはそう伝える。

「作れたら、またぷにちゃんに会えるんだね」

「……そういう事だ……我の主なのだから……な……」

 

 

ぷにちゃんと話して、ソフィーとプラフタはアトリエに戻る。

「ソフィー、もうこれから出掛けるのですか?」

プラフタは尋ねる。

「うん。アシタバの帰舟のレシピと、プニ助を持てば!後は旅先で考えて行こう!」

ソフィーは杖を持ち上げる。

「一応、少し特製バックパックに詰めて来ますね」

プラフタはアトリエに戻る。

ソフィーはしばらく待ち、そしてプラフタは特製バックパックを背負って出てきた。

「何を持ったの?」

「取り敢えず手当たり次第……ですね」

 

そしてソフィーとプラフタは歩き出す。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。

[プニ助]
元々はマナの柱だったらしい、すーぱーぷに。今日も虹色レインボーな笑顔。
[国王]
アダレットの国王。
[国王の任務]
傭兵であるフリッツさんは、国に雇われているらしい。

[知識の大釜]
この小説では、マナの柱が錬金釜となっている。自分で動き、自分で飛ぶ。本のプラフタ状態の錬金釜。マナの柱が滅びているので、封印された厄災となっている。

[監視の者]
人前に現れない?現れてる?謎の人。
[案内人]
謎の人。

[アシタバの帰舟]
葉っぱで作られた舟。あまりにも謎のレシピ。

[深い紫のローブの人]
謎の人。
[ハダカ族]
服を着ていない状態。

[番人ぷにちゃん]
コンテナの棚とか床とか天井とかに無数に住む、顔の無いプニプニ。ソフィーの顔くらいの大きさなので、魔物プニプニよりも少し小さい。
[ぷにちゃん]
ソフィーのアトリエの地下……どれだけ広いんだ……もうアトリエよりも遥かに広い。
そしてアトリエ屋敷レベルでぷにちゃんがデカい。



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錬金術のアトリエ 55

錬金術のアトリエ 55

 

ぷにちゃんの部屋の扉の前に、朧草の花が置いてあり、番人ぷにちゃん達がそこに固まっているコンテナ。ソフィーとプラフタが近寄ると、番人ぷにちゃん達は道を開けた。

「なんか、もう道も番人ぷにちゃんでギッシリなんだね~………」

ソフィーがそう、呑気に声を掛ける。

「どんどんマナの力が強くなってるからね~♪最盛期よりも更にパワーアップしてたりするよ」

番人ぷにちゃんの1人が、そう話す。

今は女の子の人格。

「ぷにちゃんは、一体どこまで凄くなるんだろ?」

ソフィーは呟きながら奥の扉へと進む。

それまでの距離も、かなり長くなっていたりする。

 

……ともかく服を脱いでハダカ族になり、ぷにちゃんの部屋に。そして身体を休める事にする。

「随時とお疲れなのね~………こんなに消耗してるなんて、珍しいんじゃない?」

ぷにちゃんはそう伝えて、ソフィーはだら~んとなって浮かび上がっていく。

 

「トンデモすぎる錬金術でねぇ………失敗する事に成功したからいいけど、失敗する事に失敗してたら………と思うと今更だけど怖いよね~」

ソフィーはそう言って、プラフタへと手を伸ばす。

「アシタバの帰舟とは、そんなに凄いものなのですか………?」

そう尋ねるプラフタに、ソフィーの失敗の記憶が流れて来る。葉っぱ4枚には何の力も無い。そこに魔力を注ぐ事でアシタバの帰舟にする事を目指すのだけど、注いだ場合に、注ぎ過ぎて吸われて行くような感じになる。そのまま吸われてしまえば、命に関わる危険な錬金術が、このアシタバの帰舟のレシピだった。

 

「これは………!何と危険な………恐ろしい錬金術ですね………それも今のソフィーでは手に負えない勢いがあるような………」

プラフタも、その記憶に触れて怯む。

「うん。今のあたしでも手に負えない感じするんだけど、これってさ、錬金術を更に重ねて行っても、結局は命がけなんだと思うんだよね。やってる事が普通とは違うから。どんな気持ちで臨むのか、って所が大事なんだと思う」

ソフィーはアシタバの帰舟のレシピを思う。理論を積み重ねて出来た………というよりは、なんか勢いで出来たような感じがするレシピ。

「確かに………もう少し、作戦を練る必要がありそうですね」

そして2人に立ちはだかる壁………アシタバの帰舟のレシピと向き合う日々となった。

 

 

………数日の時は流れて………

「あら、ソフィーの所?」

ソフィーのアトリエの山から、オスカーが降りて来て、それを見つけたモニカが尋ねる。

「ああ、なんかいつもと同じ感じだったけど、アシタバの帰舟ってのが出来たら旅に出る………んだよな?」

オスカーは不思議そうな顔をして話す。

「そうねぇ………オスカー、貴方も旅に出るって話だから、留守のアトリエとぷにちゃんをヨロシクされたんだけど………大丈夫かしら?」

モニカも首を傾げるばかりだ。

あまりふらふら出歩く、という事は無くなったものの、アシタバの帰舟は作っていないみたいだし、でもアトリエに籠ってはいるみたいだし………

ぷにちゃんの記憶を辿っても、アシタバの帰舟は作っていないみたいで、計画だけがあるみたいで………

 

不思議に思うオスカーとモニカは、アトリエの方を見る。

そこに少し強い風が吹き抜けた。

その風だけが、少し冷たくて2人は顔を見合わす。

「何かあったな……アトリエの方だ!」

そしてオスカーはアトリエへと走り出す。

「何!?何!?」

モニカもその後を続いて走り出す。

 

アトリエには誰も居なくなっていて、オスカーはカワニレの木に尋ねる。

「……え?……そんなハズ……」

そしてオスカーは戸惑う。

「何?何て言ってるの?」

モニカはオスカーに尋ねる。

「もう半年くらい前に、ソフィーは旅立ったって……そんなハズないよな?」

オスカーはそう言ってモニカを見る。いつになく困惑した表情に、モニカも怯む。

「え?……そんなハズないわよ……半年なんて」

2人はそう話し合い……

 

モニカはアトリエの中へと入る。

無数の番人ぷにちゃんのコンテナ、巨大なぷにちゃんは、巨大なまま……地下にある。

見慣れた光景に、モニカは胸を撫で下ろす。

 

「ソフィーはいる?」

モニカは番人ぷにちゃんに尋ねる。

「ソフィー?ずっと前に旅に出たよね?ちょくちょく来てるけど、今は居ないよ」

わっしょいしている番人ぷにちゃんは、そう答える。

「え?嘘!?ここで……葉っぱの舟の研究をしていたじゃない!?からかわないで!」

モニカはそう言い放つ。

「ん〜?……そうなの?アシタバの帰舟の事かな?」

番人ぷにちゃんワールドは、全員一斉にわっしょいを止める。

部屋の時間が止まったかのように、ピタッ、と停止してそう話した。

「そ、そうそれ!アシタバの帰舟てやつ!……は、ともかく、最近ソフィーがそれの研究してたでしょ?」

モニカは言う。

「ふむ〜?半年くらい前から、旅先からアシタバの帰舟でこちらに立ち寄ったりしてるけどね〜?」

番人ぷにちゃんは答える。

「そ、そんなハズない!だって……」

モニカは言いかけて止める。

ぷにちゃんは別に嘘を言ってる風でもないし、今までも素直に話すだけなのだから。

「……きっとソフィーが何かをしたんだわ。それでなんか時間的に混乱してる……きっとそんな感じなのね」

モニカは言う。

素直なぷにちゃんを疑うよりも、ソフィーの錬金術を疑う方が疑いやすい。

「ふむ〜……急になんか、変わったみたいだね〜……」

番人ぷにちゃんの群れは、またゆっくりとわっしょいし始める。

 

アトリエの山を降りたオスカーも、ソフィーの記憶が曖昧なキルヘンベルの街を歩き回った。

植物達までが、曖昧なのだ。

オスカーの思うソフィーだったり、かなり前に旅に出ていたり。

そして段々とソフィーの事を話す事を止めて行った。

 




ここには、ゲームには無い勝手に付け加えた設定を書いておく所。
そもそもエンディングが全く違うのだけども。

[ぷにちゃん]
この世界の魔力の源となる存在。巨大なプニプニ的な形だったのでこの愛称となった。

[番人ぷにちゃん]
コンテナに住む、ミニぷにちゃん。コンテナに預けた素材や服、武器なんかまで汚れを食べてくれる。

[ハダカ族]
毎度お馴染み。

[アシタバの帰舟]
究極のちょこっと調合。旅先に居ながらアトリエへと帰る事が出来る。そしてアトリエを出ると旅の続きが出来る品物。




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