領民0の土地を押し付けられた俺、生産スキルを駆使して最強国家を作り上げる (未来人A)
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第1話 転移

 六月一日。

 

 俺、鳥島善治(とりしまぜんじ)の五月病は一向に直る兆しを見せない。

 

 通った期間は僅か二か月だが、高校に行くのが憂鬱で憂鬱で仕方がない。

 特に今みたいに、教室前の廊下を歩いている時なんか、胃が痛くてなってくるくらいだ。

 

 今にも家に帰りたいという気持ちを何とか抑えて、俺は一年C組の教室へと入った。

 

 すでに大勢のクラスメイトが教室に来ており、雑談をしている。

 俺が教室に入って挨拶をしたりする者はいない。

 

 それどころか俺の顔を見るや否や、目を逸らしたり、侮蔑を含んだ表情を浮かべる。

 

 端的に言えば、俺はこのクラスで嫌われていた。

 クラスメイトほぼ全員が、俺に対して何かしらの悪感情を持っていた。

 

 原因は……ずばり顔である。

 

 俺は子供の頃から、可愛いとか愛らしいとかいうのと無縁の顔だった。

 何というか目つきの悪い、典型的な悪人顔なのである。

 

 大抵の人から生理的な嫌悪感を持たれるような、そんなどうしようもない顔なのだ。

 

 顔以外に、何か原因があるのかと思うかもしれないが、本当に顔が原因なのである。

 だって入学してから、特に良いこともしていなければ、悪いこともしていない。

 

 最初は嫌われるというより、怖がられるという感じだった。

 教室での態度で怖いやつではないと誤解は解けたが、そこから意外性で人気が出るなんてことはなく、怖いという感情は嫌いに変わったようだ。

 

 俺が薬をやったとか、女を襲ったとか、盗撮したとか、変な噂が流れだして、クラスメイトの嫌いという感情も高まってきたようである。

 

 事実無根な噂で、完全なデマであるが、話すのが苦手な俺は弁解など出来ずにいた。もしかしたら俺にもっとコミュ力があれば結果は違ったかもしれないが、コミュ力などかけらも持っていない俺は、全く弁解できずクラスメイトから嫌われる一方であった。

 

 誤解されたり、嫌われたりすることになれてはいるが、それでも毎日多数の人間から嫌悪や敵意のこもった視線を向けられると、流石に憂鬱になる。

 

 俺は急いで自分の席に向かった。

 ちょうど俺の席は角にある。俺にとっては最高の席である。

 

 席に座ると、

 

「ねぇ見た?」

 

 と横の席にいる生徒から声をかけられた。

 赤い短い髪の女子生徒である。

 顔は可愛いのだが、美人という感じではない。

 容姿には幼さが残っている。

 

 クラスメイトほぼ全員から嫌われている俺であるが、唯一例外が一人だけいた。

 

 それがこの女子生徒、桜町(さくらまち)メイである。珍しいカタカナ名である。

 

「お前のアホ面なら今見ているぞ」

「僕みたいな美少女を捕まえてアホ面とは何だね。今ゼンジに何を見たか聞くとするならば、『漆黒の双剣士』のアニメに決まってる」

「別に決まってはないけどな」

 

 そう言えばメイは昨日しつこく漆黒の双剣士のアニメを見ろと言ってきたな。

 ちなみに漆黒の双剣士ってのは、マイナーな漫画雑誌に載っている漫画を原作にしたアニメである。メイは原作の根強いファンで、アニメ化されると聞いて、飛ぶように喜んでいた。

 しつこく見るよう勧められるので、俺も何となく見ている。

 内容はとにかく中二病な描写満載である。

 メイは所謂オタクというやつで、特に少年漫画系が好きであるそうだ。女ではあるが少女漫画は苦手であるという。

 

「見た見た」

「どうだった?」

「普通」

 

 これは正直な感想だ。

 全くつまらないというわけではないが、メイほどドはまりするほど好きにもなれない。

 

「ぐ……いや、確かにそうなんだ……冷静に見てみれば普通のような気もするんだ……それでも、何か知らないけど凄い僕の琴線に触れてくるんだ。主人公のアルガはすごくかっこいいし」

 

 お前それ主人公好きなだけじゃね? という野暮なツッコミはしない。

 冷静に見ればそんなに面白い感じはしない、でもめちゃくちゃ好き、という気持ちは俺も分からないではない。

 

「そもそも俺、あーいう中二病っぽいのそんなに好きじゃないんだわ」

「じゃあゼンジはどういうのが好きなの?」

「うーん、最近流行りの異世界転生系かな」

「な、なんだと!」

 

 メイは大げさに驚く。

 

「い、いかんぞそれは!」

「嫌いなのか?」

「うん、嫌い」

「即答だな」

「だって異世界転生みたいな、努力もなしに強くなるなんて、あり得ないんだ僕としては。いい? 弱点を抱えた主人公が、努力して、頑張って、仲間に支えられて、それで一人前になっていく過程というが、面白いんじゃないか……!」

 

 メイは熱く語る。

 

「でも、漆黒の双剣士もたまたま得た暗黒の力とやらを使って、無双してね?」

「うっ……! ア、アルガは良いんだ。カッコいいから!」

「一貫性のない奴め」

 

 それから他愛のない話をメイと続けた。

 こんなにペラペラと話をしているメイであるが、実は俺を凌駕するほどのコミュ障である。

 俺以外の奴とは、ほとんど口がきけない。

 なので友達も俺しかいない。

 なぜメイが俺と友達になっているのかというと、漆黒の双剣士の主人公のアルガが、俺と似ているからという理由で、メイから俺に話しかけてきたのだ。

 

 アニメを見ていると確かに目つきが怖いところとかは、似ているような気がする。

 

 俺としてもメイは唯一の友達だ。

 恋心など抱いているわけではないが、メイと話をするのは楽しい。

 もしかしたらメイがいなければ、クラスメイトの視線や、嫌な噂に耐えかねて不登校になっている可能性すらあった。

 

 だからある意味、メイは俺の恩人ということになるな。

 

 

 

 しばらくすると、教室に黄色い声が上がった。

 

 毎日のことなので、特に気にはならない。

 クラスメイトの一人、坂宮徹(さかみやとおる)が登校してきたのであろう。

 

「皆、おはよう」

 

 笑顔でクラスメイトに挨拶をする坂宮の顔を俺はちらりと見る。

 

 相変わらずとんでもないイケメンである。

 

 坂宮は、それこそ芸能人にいても全く違和感がないというか、むしろ芸能人と比べても抜きんでていると言えるかもしれないというくらい、顔が整ってい

 た。その上、背も高く頭もいい。会話も上手である。

 

 ここまで抜きんでた存在がいると、ほとんどの女子は坂宮しか見なくなる。

 

 このクラスの女子は、一名を除いて彼に恋心を抱いているといってもいいくらいであった。ちなみに一名とはメイのことである。こいつは三次元に興味がないらしい。

 

 女子だけでなく、男子にも人気がある。

 というより、男子は坂宮と仲良くすると女子と仲良くなれると思って積極的に近付いている感がある。

 

「あれの何がいいんだか、僕には分らん」

 

 とメイが坂宮を見ながら呟いた。

 

「そうか? 男の俺から見ても超イケメンだと思うが」

「あんな少女漫画に出てくる男みたいなのの何がいいんだ」

「少女漫画に出てくる男みたいなのがリアルにいるのがいいんだろ?」

「むう、でも僕としてはゼンジの方がイケメンだと思うけど」

「え?」

「……っは! ち、違うんだからね! 単純に顔は良いと思っているだけで、べ、別に好きじゃないんだからね!」

「何だそのレベルの低いツンデレは」

 

 しかしメイは変わった感性をしている奴だ。

 どれだけ贔屓目に見ても、俺と坂宮の顔はまさに月とスッポンである。

 

 それから先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。

 

 

 〇

 

 

 午前の授業が終わり昼休みになる。

 

 昼食をとる。

 

 俺は教室の片隅に席を動かして、メイと二人で飯を食べている。

 メイは、自分で作ったという弁当を食べる。俺は購買で購入したカレーパンを一つ食べる。あまり食欲旺盛ではない俺は、これで十分なのだ。

 

 食べ終わった俺は、歯を磨き、トイレに行って再び教室へと戻る。

 

 すると、何やら教室が騒がしい。

 

「こ、怖いよぉ」

「誰がこんなこと! 許せないわ!」

 

 女子が一人泣いており、その女子の友達が怒っている。

 

 何があったのだろうか。

 

「メイ、何があったんだ?」

 

 まだ弁当を食べていたメイに尋ねた。

 

「あの泣いてる女子が体操着盗まれたらしいよ。よくやるよねー」

 

 そんな事やるやつが身近にいるとは。

 いや、身近とは限らんか。外部犯の可能性もある。

 いずれにせよ盗まれた女子は可愛そうだ。

 

 しかし、メイめ「あの泣いてる女子」って、まさか同じクラスの女子の名を知らんのか?

 

 ……俺も自信はないな。

 

 確か県の名前だった気がする。それも首都圏の。

 埼玉さんか、千葉さんだったような気が……

 珍しい苗字だなと思った記憶があるから、確か埼玉さんだ。千葉って結構いそうだしな。

 

「とにかく絶対にグンマーちゃんの体操着を盗んだ奴を見つけるわよ!」

 

 群馬だったようだ。グンマー呼ばわりされているようである。多分例のネタを知っているわけでなく、何となくで呼んでいるのだろう。

 

 しかし、犯人探しが始まったな。

 ……何となく嫌な予感が。

 こんな時いつも疑われるのは、そう、

 

「鳥島、君が盗んだんだろ」

 

 俺である。

 

 厄介なことに俺に疑いをかけてきたのは、クラス一の人気者坂宮である。

 

「そうだ」「鳥島だ」「そいつしかいない」

 

 クラスメイトから同調の声が上がる。

 

「俺じゃない」

「君は素行がどうもよくないようじゃないか。これも君がやったんだろ?」

 

 坂宮は完全に俺がやったと決めつけているようで、俺を蔑んだ目で見ながら言ってきた。

 

「俺じゃない。断じて違う」

 

 もっと喋りが上手ければ、上手く否定できたかもしれないが、これしか言葉が出てこない。

 

 すると、

 

「ゼンジは良い奴だ。素行も悪くない。絶対に違う」

 

 とメイが俺をそう擁護した――――――――俺にしか聞こえないほど、小さな声で。

 

 メイを責めないでやってほしい。コミュ障のこいつにやれるのはこれが精いっぱい。

 仲良くない男と論争するなんて、高難易度なことを出来るような奴ではないのだ。

 

「自分でないというのなら、その証拠を出せ」

「……どう考えても逆だろ。そっちが俺がやったという証拠を出せよ」

「それもそうだな。荷物を調べさせてもらう」

 

 そう言って坂宮は勝手に机にかけていたカバンを調べ始めた。

 

 勝手に手荷物を見るというデリカシーにかけまくっている行為であるが、止める物は誰もいない。俺がやったと全員信じているからだろう。

 中にやましいものは入っていないし見られても困りはしないが、勝手に中を見られて不愉快ではある。

 

「ないな」

 

 当然ない。あるわけがない。

 

「分かっただろ。俺じゃない」

 

 教室が静まり返る。犯人が俺ではないと分かったのが、そんなに嫌なのか。

 

「冷静に考えたら、自分のカバンに入れるなんて、バレそうなマネはしないか。たぶんどっかに隠しておいて、あとで取りに行くつもりなのだろう」

 

 坂宮がそういうと、再び俺を罵る声が再燃した。

 言いがかりも甚だしいが、それでもクラスメイトは坂宮のいう事を信じているようだ。

 

「もう一度いうが証拠はないだろ。見たやつがいるとでもいうのか?」

「一つ言っておくが、今は確かに証拠はないがそのうち間違いなく見つかる。今のうちに出して謝罪をすれば、大ごとでにはならないかもしれないぞ?」

 

 坂宮がそういうと、クラスメイト達も同調する。

 

「そうだそうだ」「早く出して謝れ!」「このクズ野郎!」

 

 と言いたい放題である。

 俺は思わずため息をついた。

 

「……とにかく俺はやってねぇ。証拠を出してからそういうことはいえ」

 

 少し睨みを聞かせてそう言った。

 

「あくまでしらを切るつもりなのは分かった。バレた時なんていうのかが楽しみだ」

 

 坂宮も今回はこれ以上追及はしなかった。

 流石に明確な証拠もないのに、先生に言ったり警察に言ったりはしないらしい。まあ、坂宮の中では完全に俺が犯人だということになっているようだがな。

 坂宮は被害にあったグンマーさんを慰めに行った。

 

 はぁ……

 全く顔が悪いってだけで、何で疑われなきゃならんのか。

 分かっていたが世の中って奴は、理不尽だ。

 

「ご、ごめん……」

 

 メイが突然謝ってきた。

 

「ゼンジがいわれなき非難を受けているのに、僕は何も言ってやれなかった。友達失格だ……」

 

 先ほど小さな声しか出せなかったことを、メイは悔いているようである。

 

「お前は俺が犯人ではないって思っているのか?」

「うん。だってゼンジはそんなことする奴じゃないでしょ?」

「ならそれでいいよ。擁護してくれなくても信じてさえくれたら、お前は俺の友達だ」

「……ゼンジ」

 

 メイは少し感動したように目を潤ませて、

 

「そのセリフなんて漫画のセリフ? 面白そうだから僕も読んでみたいな」

「オリジナルだアホ」

 

 確かに漫画に出てくるような、クサイセリフだったけどな。

 良いこと言ったんだから、そこは感動するだけで終わってくれ。

 

「とにかく今度こういうことがあったら、絶対ちゃんと声出すから。絶対だからね」

 

 念を押すようにメイは言った。

 

 メイのその気持ちだけで嬉しかった。

 実際に出してくれるかは……あまり期待はしない方がいいかもな……

 

 

 

 それから昼休みが終わり、教室にクラスメイトたちが集まってきた。

 

 クラスメイトの中では、疑いではなく俺が確実に体操着を盗んだ、ということになっているようで、「サイテー」だとか、「退学しろ」「というか死ね」だとか、俺に対する罵詈雑言が飛び交う。

 

 腹立たしいことこの上ないが、ここで反論してもどうせ聞く耳なんて持たないので、俺は聞こえないふりをしていた。

 

 そして教室に先生が入ってくる、その直前、

 

『君たちに決めた!!』

 

 男の声が教室中に響き渡った。

 

 何だこの声?

 

 決めたって何に決めた? 幻聴?

 

 でも俺以外の生徒も困惑している。幻聴ではないだろう。

 

「あれ、開かない。コラ! いたずらはやめなさい!」

 

 先生は教室に入ろうと扉を開けようとしているが、開かないようだ。

 しかし、誰かがカギをかけたところを見てはいないし、扉を内側から抑えているというわけでもない。

 

 色々不可思議な現象が続く。

 

 そして床のからまばゆい光が発せられた。

 

 驚いて目をつぶる。

 

 そして、次に目を開けた時、

 

 俺は一面真っ白の空間に座り込んでいた。

 

 



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第2話 神

 何だここ?

 

 意味わかんねぇ。さっきまで席についてたよな。

 

 俺は立ち上がって周りを確認する。

 クラスメイト達もこの謎の空間に来ていた。

 俺と同じく何が起こったから分からず、戸惑っているようだ。

 

「な、何これ?」

 

 俺のすぐ隣にはメイがいた。だいぶパニくっているようだ。

 

「ど、どうなってんのゼンジ??」

「俺も分かんねぇーよ。さっきまで教室にいたよな?」

「い、いたよね。てかどこだよここ」

 

 こんな真っ白い空間に一度でも来た覚えはない。

 クラスメイトたちも混乱しており、場がざわつき始める。

 

 すると、

 

「ようこそ、一年C組の皆」

 

 頭上から声が聞こえてきた。

 

 咄嗟に上を見てみると、男がふわふわと舞い降りてきていた。

 

 そのまま地面に降り立った。

 

 金色の長い髪の男である。

 

 今時の若者の服を着ている。

 顔は日本人でなく外国人だ。

 

 その場にいる全員が、その男を注視する。

 

「初めまして、僕は神様だよ。よろしくね」

 

 男は西洋の貴族がするような礼をしならがそう言った。

 

 頭がおかしい奴と普段なら思う自己紹介であるが、今は超異常事態。

 登場の仕方と言い、嘘とも断言できない。いや本当に神だと思うわけでもないんだけど。

 

 しかし、いきなりクラスメイトたちと一緒に変な場所に来て、そして神と名乗る男……これって、

 

「皆にはこれから異世界に行ってもらいます」

 

 やっぱり異世界転移ってやつなのか!?

 

 クラスメイトたちがざわつく。

 

「異世界ってどこだよ」「お前が連れてきたのか?」「教室に戻して!」

 

 とさっきまでは黙っていたが、次々にそう言いだした。

 

「な、なぁあいつ異世界とか言っちゃってるけど……ガチなのこれ?」

 

 メイがそう話しかけてきた。

 

「うーん……でも、今の状況が分けわからんのは確かだし、夢でも見てないんなら、ガチとしか……」

「だよねぇ……」

 

 夢じゃないのを確認しようとほほをつねるという、テンプレ行動をメイは取った。

 

「夢じゃないっぽい……」

「うーん……じゃあ、ガチなのか? 本当にこれから異世界に行くってのか? それって」

 

「チート能力貰って無双できるってことか?」「異世界で魔王を倒すため、正義の勇者になって異世界を冒険するってこと?」

 

 俺とメイの声が重なった。

 

「お前古くねぇそれ?」

「古くないやい! ゼンジこそなんだその気持ち悪い欲望丸出しの異世界象は!」

「これが今は流行ってんだよ! 気持ち悪い言うな!」

 

 こんな異常事態なのに、異世界について口論をしていると、

 

「はーい!! 皆静粛にー!! 今から詳しい説明をするよー!!」

 

 通常の声を何倍にも増幅させた声が鳴り響く。

 

 びっくりして俺たちは会話をやめて、神を名乗る男を見る。

 俺たち以外の騒いでいたクラスメイト達も、一旦静かになる。

 

「説明は良いから早く教室に返してくれ!!」

 

 男子生徒が叫ぶ。

 

「残念ながらそれは無理。戻せないよ。理由は僕に君たち教室に戻す気が現時点では一ミリもないからね」

 

 戻そうと思えば戻せるが、戻す気は一ミリもないという事だな。

 ふざけた話だ。

 

 反発する声が沸き上がると予想していたが、こうも言いきられると案外何も言えないのか、全員黙りこんだ。

 

「皆さんにはこれから異世界で領主になってもらいます」

「「領主??」」

 

 俺とメイの声が重なる。

 正直領主になれとは予想外である。

 

「初めにこれを見てみてね。これが今から君たちの行く異世界だよ」

 

 神がそういうと、空中に画面が現れた。

 地図のようである。

 

 ただ異世界の地図というより、どう見てもユーラシア大陸の地図である。日本も右端にあった。

 

「形はユーラシア大陸っぽいでしょ? 君たちにはなじみ深い日本もあるよね。でも魔法があったりこわーい魔物がいたり、ダンジョンがあったり、精霊がいたり、スキルがあったり、形は似ているけど、全く違う場所なんだ」

 

 ユーラシア大陸と同じ形の異世界なのか。

 日本はどんな感じになってるのだろうか。

 

「この世界では約六十の国があって、そこで色んな人たちが領主をやっているよ。君たちにはそれぞれ一つ領地を与えるから、その領主をやってほしいんだ」

 

 そんないきなり言われても、やれるわけない。

 

 いや、つーか、そもそも、元々領主やってたやつの代わりに、俺たちが領主やるってことなのか? それ相当不可解なことにならないか?

 まあ、神様だってんならその辺、何とかしてしまえるのかもしれないが。

 

 流石にクラスメイトたちも黙って聞いてはおらず、抗議をするが、

 

「ごめんね君たちには選択権はないんだ。やるしかないんだ。でも安心すればいい。ほとんどの領地には、それなりに詳しい補佐役の人がいるから、その人のアドバイスを聞いてやっていけば、何とかなると思う」

 

 と抗議を受け付ける気は全くないようだ。

 黙って聞くしかないってのか。

 

「これ本当にもう元の世界に帰れないのかな?」

 

 メイが尋ねてきた。

 

「分からんけど……こいつがこれから全部どっきりでしたって言って、教室に返してくれる可能性もゼロじゃないし……だってあいつが何を考えているのかさっぱり分からないからな」

「う、うーん。でも戻れなかったら困る。漆黒の双剣士の続きが見れない!」

「アニメが最優先かよ……」

 

 俺としても戻れなくていいというわけでもない。

 家族仲は決して良くはないが、それでも二度と会えないかもとなると、それは寂しいかもしれない。

 

「さらに皆さんにはスキルを一人につき一人与えます。全部、凄いスキル何だ」

 

 チートスキルキタコレ。

 まあでも、皆持ってるなら、無双感は下がっちゃうかもしれない。

 

「最後に領主をやってもらう期間は教えないけど、一応決まっていて、期間内に一番いい領地を作っていた者の願いを、なんでも三つだけ叶えてあげるよ。あ、願いを増やす願いとは例外として駄目だからね。領地のいい悪いの判断は、僕が独自に編み出した指標を基に決めるよ。領民の数とか、技術力とか、領土の広さとか、それらを総合してポイントにするんだね」

 

 願いを三つ叶えると来たか。

 ナ〇ック星の〇龍並みの条件だ。

 

 人間ってのは欲の塊で、願いをかなえると言われると、目の色が変わるやつが出てくるものだ。

 さっきまで批判していた何人かの連中が、目を輝かせて自分の願いを言い始めやがった。

 好きなアイドルの子と結婚するだとか、野球選手になってメジャーで四割打つだとか、欲を垂れ流しにしている。

 

 まあ、そんなことを言うやつは、所謂アホな奴だけで、普通の奴は胡散臭すぎるので真面目に受け取っていないようだが。

 

「僕は少年漫画の主人公になりたいなぁ……」

「ここにもアホがいたか……」

「ア、アホってなんだ! ゼンジは願いとかないの!?」

「あるにはあるが、あんなわけのわからん存在に願うほどアホじゃない。てか、作為的なものを感じる。仮に俺たちがこれから本当に領主をやることになったとして、普通はどうする?」

「えーと……僕なら平和に生きる」

「だろ? でも願いが叶うとか言えば、暴れる奴が出てくるだろ? たぶんあの神はそんなところが見たくて、俺たちを呼んだんじゃないか? うん、きっとそうだ。そうに違いない」

「な、何と。そんな歪んだ奴だったのかあいつは。ゼンジ! 奴の言葉に惑わされるなよ! あれは罠だ!」

「お前がいうかよ……」

 

 あくまで俺の行ったことはすべて推測で、事実かどうかは分からんがな。

 

 それから紙を配ってきた。神が紙を配ってきた。

 

 紙のあと、灰色の丸い石も配られる。

 

「この紙には君たちがこれから治めることになる領地の情報が書いてあるよ。ちなみに左上にSとかAとか書かれていると思うけど、それが領地の良さを意味しているんだ。Sが一番良くて、Gが一番駄目な土地だね。さっき配った紙を交換すれば、収める土地を変えることも出来るよ」

 

 神が紙の説明をした後、今度は丸い石の説明をしてきた。

 

「これはスキル石だよ。今は灰色だけど、異世界に行くとそれぞれスキルに応じた色に変色して、スキルが使えるようになるんだ。このスキル石も好感してもいいけど、今は何のスキルが使えるか分からないから、全く無意味だね。このスキル石がないとスキルは使えないから、絶対に取られたり、なくしたりはしないようにね」

 

 神から説明を聞いた後、俺は領地を見てみた。

 

 右上にはSランクと書かれている。

 

 面積や領民の数字が書かれており、地図上のどこにこの領地があるのかは、書かれていない。

 どれだけ凄い数値なのか、ほかの領地を見ていないので判断しづらいが、Sなので凄いのだろう。

 

「おお、Sだ」

 

 メイが俺の紙を見て驚いた。

 

「メイはどうなんだ?」

「僕はD。普通だと思う」

 

 見てみると領民の数とかが全然違う。

 俺のは二十万と書かれているが、メイのは5000と書かれている。

 

 これちょっと初期の強さ違いすぎないか?

 こんなん、強い領地を持っていたら願いをかなえてやるとか言ってるけど、最初から強い奴の方が断然有利じゃんか。運ゲーになってねぇかこれ。

 

「おい! ふざけるな!!」

 

 一人の男子生徒が叫び声をあげた。

 

 姿を確認すると、イケメン野郎、坂宮徹の声だった。

 

 立ち上がって鬼の形相で、神を睨み付けていた。

 

 あいつがあんな声出すの初めて聞いたし、さらにあんな表情をするのも初めて見た。

 

 いつも澄ましていて動揺することなんてない奴だから、非常に新鮮である。

 

 何があってあそこまで怒った表情をするのだろうか。

 

「俺の土地の領民が0ってどういうことだ! 領民だけじゃなく建造物なんかも当然ゼロだ! ふざけてるのか!?」

「あちゃー、領民0引いちゃったか。大外れ枠として一つ入れてたんだよねー」

「入れてたんだよねー、じゃないだろ! お前領主になってくれとか言っていたが、領民0の領主って存在するかそんなもん! 領民がいてこそ領主っていうんじゃないのか!?」

 

 もっともな意見だった。

 ただ何となくやり取りが漫才っぽい感じになっていたので、こんな状況なのに、少し笑いが起きる。

 

 それを聞いた坂宮が、

 

「何笑ってんだお前ら!」

 

 と怒鳴りつけた。

 クラスのリーダーに怒鳴られて、再びシンとする。

 

 坂宮は深呼吸をして、落ち着きを取り戻す。

 表情もいつもの澄まし顔に戻った。

 

「お前たちこれが現実だと、まだ認識できてないだろ。このままじゃ本当にわけわからん世界の領主にされてしまうぞ。そうなると、領民0の土地に行かされる俺は野垂れ時ぬかもしれない。危険な土地の領主にされたものは、戦争に巻き込まれて殺されることだってあり得る。現実をしっかり認識すれば、笑っている余裕なんてないと理解できるはずだ」

 

 意外に良いことを言ってきた。

 確かに何となく気持ちが緩んでいたところがあったかもしれない。

 

 異世界と聞くとどうしても都合のいい想像をしてしまう。

 

 若干わくわくしていたのも事実だ。

 

 しかし現実で異世界に行くとなると、そう甘いことばかりではないだろう。

 

 マジで死の危険はあると考えていい。

 

 Sランクの領主になる俺だって、例外じゃない。

 

 クラスメイト達は坂宮の言葉を聞いて、顔を青くする。

 

「なーに暗くなってんだろ。スキル貰えるし、たぶん何とかなるでしょ」

 

 メイはというとお気楽だった。

 

「いや、お前さ。コミュ障じゃん。会話できなくて領主なんて出来ないと思うぞ」

「……は!?」

 

 そこまで頭が回っていなかったのか、メイは蒼白な表情になる。

 

 冷静に考えればこいつが一番やばそうだな。

 俺のと交換してやるか?

 いやでも、人が多いほうがメイには逆効果かも。

 難しい話だ。

 

「でも、どうすればいいの?」

 

 女子生徒の一人がそう尋ねた。

 

「この神とやらを力ずくでいう事を聞かせて、教室に返してもらうしかない。人数ではこちらに分がある」

 

 これはちょっと頓珍漢なことを言ってる。

 仮にも神と名乗っているのなら、俺たちに勝てるわけないだろう。

 

 ただその言葉に何人かが触発されたのか、神に殴りかかった。

 

「無駄だよー」

 

 避けも反撃も防御もしなかった。

 ただただ佇んでいた。

 男子生徒のこぶしは神の体をすり抜けた。

 

「僕をやるのは、む、り。君たちはあと二十分後に異世界に転移します。イケメンの君が言った通り、これが君たちに与えられた現実だよ」

「くっ……」

「確かに大きく間違いを犯したり、運が悪ければ死ぬかもしれないけど。でも基本的には面白い場所だし、領主になると割と贅沢できるし、ポジティブに考えようよ」

 

 神はあくまで領主になるのは、悪くないことであると言った。

 

 それから約十五分間、坂宮たちはあの手この手で、神をどうにかしようとしていたが通用せず。

 

 俺はというと、もう覚悟を領主になる覚悟を固めていた。

 

 すると、

 

「くそ駄目だ……」

 

 坂宮は諦めたようだ。

 

「でも徹君、このままだと領民0の土地に……」「可愛いそう」「わ、わたしのと交換……」

 

 こんな時にも女子たちに心配されている。

 

「いや…………俺の身代わりにするわけにはいけない」

 

 土地の交換には応じない構えである。

 だが明らかに強がりと分かるくらい、動揺していた。

 

 すると、坂宮はハッとした表情を浮かべ、誰かを探すように周囲を見る。

 そして、俺と目が合う。

 坂宮はこちらを指差して、

 

「こいつだ! 体操着泥棒! こいつの領地と取り換えればいい!」

 

 そう叫んだ。 

 

 

 

 

 



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第3話 草原の真ん中で

 はぁ?

 

 何で俺が坂宮と領地を交換せねばならんのだ。

 

 ふざけるなと思ったのだが、クラスメイト達は、

 

「それいいわね!」

「そうだ! あいつは犯罪者みたいなだから、罰を与えられるし一石二鳥だろ!」

「いいアイデアだ! 流石に領民0よりはましな土地を持っているだろうし」

 

 次々と賛同する声をあげやがった。

 

 ……そういえばこいつらの中では、俺は体操着泥棒になってたんだったな。

 

 だがこんな無茶なこと飲めるわけがない。

 誰が行くかよ領民0の土地なんかに。

 

「おい! こいつの領地Sランクだぞ!」

 

 男子生徒が俺の領地が書かれた紙を覗き見て、そう叫んだ。

 

「マジか!?」

「あんな奴にはもったいないわ。絶対取り換えましょう」

「そうよそうよ。坂宮君が領民0の土地で、あの犯罪者がSランクって理不尽すぎでしょ」

「そうだそうだ。奴は領民0の土地にお似合いだ」

 

 いやいや、だからふざけんなよ?

 何なんだこいつら。

 なぜ何の証拠もないのに、俺が悪人だと決めてかかりやがる。

 

「そういう事だ。その紙を俺によこせ」

「どういうことだよ。ふざけんじゃねぇ」

 

 俺は怒りを込めて返答した。

 いつもは悪人扱いされても、実害を加えられたわけではなかったが、今回は加えられそうになっている。

 黙っているわけにはいかない。

 

「時間がないよ坂宮君! 強制的に取り上げたほうがいいでしょ!」

「ああ、手伝うぜ!」

 

 とクラスメイト達が、俺を囲むようにして集まってきた。

 

 おいおいマジか。

 

 逃げ場がないし、抵抗してもこれじゃどうしようもない。

 

「さあ渡せ」

「ぐっ……あのなぁ……前も言ったが俺は体操着なんて盗んでねぇ! 無実だ! 無実の奴を陥れる気かお前らは!」

 

 俺は必死に叫ぶが、誰一人聞く耳を持たない。

 

「嘘を付け! お前がやったんだ!」

「そうだ、お前万引きして捕まったんだってな!」

「中学じゃいじめの主犯だったって話も聞いたぞ」

「人間は顔じゃないっていうが、お前性根が腐っているところが、顔に出てるんだよ!」

 

 万引きもいじめも全部嘘である。デタラメである。

 どっかの誰かが適当に話した嘘が伝わったのだろう。

 

 しかし、ここで反論しても無意味だ。

 こいつらの中で俺が悪党であるという結論はもうすでに出ているのだ。

 この理不尽すぎる仕打ちだって、正義のため友達のためにやっていることだと、本人たちは思っていることだろう。

 

 諦めて差し出すしかないのか……?

 

「全部デタラメだ! ゼンジはそんなことしない!!」

 

 そう思っていると、メイがそう叫んだ。

 

 顔は涙目、震えに震えている。

 

「お前らよく思い出してみろよ! ゼンジがお前らに何かしたのか!? 何か悪いことをしているところ直接見たのか!? 見てないだろ馬鹿野郎! ゼンジは良い奴なんだよ!! そんなゼンジがこんな目に合うなんて、そんな理不尽なこと許されないんだよ馬鹿野郎ぉぉ!!」

 

 メイのその叫び声に、クラスメイト達は少し気圧される。

 普段喋ったことない奴がいきなり大声を出してきて驚いているのだろう。

 

「君いつもこいつと一緒にいるけど……脅されてるんだろ?」

 

 そんなメイを見て坂宮がそう言った。

 

「そうかだから必死でこんな奴かばおうとしているのか」

「恥ずかしい秘密でも握られているのかしら……可哀そう……」

 

 クラスメイトたちが少し同情したような表情でそう言った。

 見当違いな心配をされて、メイは呆気に取られている。

 

「こいつは領民0の土地に行くし、我々は異世界に行くんだから、怯える必要は何もない。安心するんだ」

 

 坂宮が笑顔を浮かべ、メイの肩に手をかけた。

 

 その態度が癪に障ったのか、メイの顔が怒りで赤くなっていき、

 

「領民0の土地に行くのはお前だぁ!!」

 

 そう叫びながら坂宮の腹に蹴りを入れた。

 

「な、何するの!」

「ま、待て、彼女は悪くない。俺としたことが配慮にかけていた。男に触られるのがあいつのせいで怖いんだろう。可哀そうに」

「ちがぁぁう!!」

「とにかく女子は彼女を取り押さえておいてくれ!!」

 

 クラスの女子たちが何とかメイを取り押さえる。

 

 メイは相当怒っていたが、俺も怒りでどうにかなりそうだった。

 

 俺とメイは間違いなく友達だ。親友と言ってもいいと思う。

 それを俺が脅しているだとか、知りもしないくせに言いやがって。

 メイが暴れていなければ、俺が暴れていただろう。

 

「異世界に出発まであと三分だよー」

 

 神がそう告げた。

 

「ま、まずい! 早くしないと!」

「皆、体操着泥棒を取り抑えて、力ずくで紙を取れ!」

 

 坂宮の命令で、クラスの体育会系が俺から紙を奪おうと近付いてくる。

 俺は何とか取られまいと、紙を丸めて、抱え込みうずくまった。

 

 しかしその抵抗も意味はなかった。

 力ずくでひっくり返され、握っていた指を強制的に開かされて、紙を奪われてしまった。

 

「これは君にふさわしい」

 

 そのあと、坂宮が自分の持っていた紙を俺の目の前で、落とした。

 

 見てみると確かに領民0と書いてあった。ランクは当然のごとく最低のG。

 

「……ちくしょう」

 

 あまりに理不尽な出来事に、俺は立ち上がることが出来ず、うつ伏せになりながら、拳を握りしめ呟いた。

 

「何を悔しそうにしている。これは当然事だろうが。君みたいなクズが領民0の土地に行って、俺のようなクラスをまとめ上げる存在が、Sランク領地に行く。これ以上ないくらい正当な出来事だ。悔いるなら今までの悪事を働いてきた、君の人生そのものを悔いるんだな」

 

 もう怒る気すら湧いてこなかった。

 

 どうせもう取り返せない。

 

 もう、神様の言っている事とやらが、真っ赤な嘘であるということに賭けるしかない。

 

 メイは暴れるのをやめて、解放されたようだ。

 

「く、くそ……なんなんだよあいつら、何でゼンジのことをあんなに悪人だって決めてかかるんだ。そして、僕がゼンジに脅されてるって……何なんだよ。あいつらが何を知っているっていうんだよ……ゼンジ、取り返しに行こう」

 

 相当メイも悔しそうにしていた。

 

「あの人数相手の取り返すのは、無理だ……」

「そんなのやってみないと」

「残り三十秒だよー」

 

 と神様が言った。

 時間が短くなると余計に難しくなる。

 

 メイは焦りだして、

 

「そ、そうだ。僕のと交換すればいいんだ!」

 

 と言った。

 

「は?」

「だ、だってほら、僕コミュ障だし……領民0くらいがちょうどいいっていうか」

「メイ……その気持ちだけで十分だ」

「でも……」

 

 ここでメイに領民0の土地を押し付けるわけにはいかなかった。

 

「残り十、九、八」

 

 神がカウントダウンを始めた。

 奴の言っていることが本当であるならば、俺はもうすぐ領民0の土地、どんなところかは行ってみないと分からないが、下手をすれば死地に行かされるかもしれない。

 

「ゼンジ! 絶対探し出すからね! 君を一人になんかさせないから!! 絶対だからね!!」

「――0」

 

 メイの声と、神様の声をほぼ同時に聞いた瞬間、俺の視界は真っ暗になった。

 

 そして、視界が戻った時。

 

 

 俺は一面緑の草原に佇んでいた。

 

 

 周りには誰もいない。

 

 人っこ一人、建物一つない。

 

 空を見てみると、見知らぬ紫色の鳥が飛んでおり、少し遠くの方では翼の生えたウサギが草をもぐもぐと食べている。

 

 

 ――本当だった。

 

 

 神とやらの言っていることは、本当だった。

 

 俺は領民0の誰もいない未開拓の土地に、飛ばされてしまったんだ。

 

 覚悟はしていたが、現実としてその光景を見て、俺の胸に絶望感が襲ってきた。サバイバル経験ゼロ。日本の首都圏からほとんど出た事のない俺が、今から一人でこの世界を生きていかなければならない。

 

「俺が何をしたってんだよ……」

 

 膝をついて、茫然と空を眺めながら呟いた。

 

 しばらく眺めていると、先ほどの出来事を思い出してきた。

 

「ふざけんなよあいつら」

 

 怒りが高まってくる。

 

 あの糞どものせいでこうなったんだ。

 

 特に坂宮の奴が許せん。

 

 あいつがクラスの馬鹿どもを扇動した。

 

 

「ふざけんなよ!! 俺が何をしたってんだよ!!」

 

 

 空に向かって俺は叫んだ。

 あまりの怒りで、叫び声で敵がよってくるかもしれないだとか、そんなことは頭になかった。幸い寄ってくることはなかったが。

 

「――――見返してやる」

 

 頭に浮かんでいるのは、俺を理不尽に責め立て、ごみを見るような目で見てくるクラスメイトの表情。

 

 

「絶対見返してやる!! 絶対に生き延びて吠えずら書かせてやるからな!! 覚悟しやがれ!!」

 

 

 そいつらに向かって、全ての感情を吐き出すようにあらん限りの力を込めて、そう叫んだ。

 

 

 

 

 



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第4話 行動開始!

「しかし生きてやるって言っても……」

 

 俺は現状を正確に確認しようと、周囲を確認する。

 

 見事に草原だけである。

 

 ここで生き残るって可能か?

 

 緑あふれる場所ではあるので、何だかんだ言って食い物は見つかるかも……

 しかし、異世界だし不用意な物を食べれば、毒でお陀仏という可能性も……

 

 って……ん?

 

 足元に何かあった。

 大きめのリュックサックが落ちていた。

 

 もしかして支援物資か!?

 

 遠くを気にしていて、足元を見ていなかった。まさに灯台下暗し。

 

 うきうきした気持ちで中を見てみるが、一瞬でテンションが下がる。

 

 携帯食料などを期待していたのだが、中に入っていたのは本が一冊だけであった。

 

 期待させやがって……

 

 ただまあ、リュックサックがあると、必要な物を見つけた時収納できるので、あった方がいいというのは間違いない。

 

 俺は本を見てみる。

 

 表紙に『生産スキルのレシピ』と書かれた、五十ページくらいのノートであった。

 

 ――生産スキル?

 

 そういえば、全員に一個ずつスキルが貰えると書いてあったな。

 スキル石とやらを貰ったんだった。

 

 確かズボンの右ポケットにしまったはずだ。

 

 ポケットから石を取り出す。

 

「お」

 

 貰った時は灰色だった石が、綺麗な緑色に変色してた。

 神の話だと、スキルによって色が変わるらしいが、俺の場合は緑色だったか。

 

 それで、このスキル石ってののおかげで、生産スキルってのが使えるようになったのか……?

 

 ……生産スキルねぇ?

 

 物を作ったりするスキルだろうか。

 

 まあ、何もない今必要な能力であるのは間違いないが、ここは異世界である。

 

 危険な生物がうようよいそうな場所だ。

 

 どう見ても戦闘には使えそうにないこのスキルでは、あっさり死んでしまうかもしれない。

 

 どうせなら戦闘系のスキルの方が良かったなぁ……

 

 はっきり言って喧嘩に自信はない。

 

 もっとも多少喧嘩に自信があるやつだったとしても、異世界の生物相手に勝てるとは思えないが。

 

「はぁー……」

 

 思わずため息を吐くが、それで何か解決するわけはない。

 

 この生産スキルで何とかするしかない。

 

 えーと、いや、つーかどうやって使えばいいんだろう。

 

 もしかしてスキルって、ほかの誰かに聞いて使い方とか知るもんじゃないんじゃないだろうな?

 

 だったら早速詰んだんだが。

 

 この本はレシピって書いてあるけど、使い方は書いてないだろうか?

 

 俺は本を読んでみる。

 

 一ページ目。

 

『生産スキルとは!!』とポップな字体で題名が書いてあった。

 

 一ページ目の内容は、生産スキルの使い方に関することだった。

 速攻で積むのは回避できそうだな。

 

 書いてあることを要約するとこうである。

 

・本のレシピに載っているものを、約十秒ほどで作成するスキル。普通に作ればどんなに時間がかかるものでも、材料さえあればすぐに作れる。

 

・レシピには作れる物と、それに必要な材料が書いてある。材料が揃うとレシピに書いてある『作る』の文字が光るので、それに手で触れると、そのものが作成される。

 

・スキルレベルが上昇すれば、作れる物が増える。物を作っていれば経験値がたまり、スキルレベルが上がる。スキルレベルの確認は、このノートの裏表紙に書いてある。作成難易度が高いものを作れば、貰える経験値が増える(作成難易度=素材獲得難易度)

 

 レシピに書いてあるものを即座に作れるというのは、便利な能力ではある。

 しかし、素材が必要があり、それを集めるのは一筋縄ではいかないだろう。

 命懸けになる可能性だってある。

 

 人里に行ければいいかもしれないが……

 

 それはやはり危険か。

 下手に物資も持たぬまま移動するのは危険すぎる。

 

 せめてここで、食料などを集めてから動くのが得策だ。

 

 現時点で生産スキルで作れる物を調べてみる。

 

 俺はレシピを読んでみた。

 

 武器や建造物など使えそうなものから、マタタビスプレーとかいう、どう使えばいいのか分からないものまで載っている。製作物の説明は最低限しか書いておらず、マタタビスプレーの説明は『猫が好んでいる』だけであった。

 

 材料として必要な物の、絵が描いてある。絵とっても物凄く上手いので、写真とほとんど変わらない。

 

 材料がよく分からない物でも、これを見ながら探せば見つけやすくなるな。

 

 俺はレシピに一通り目を通し、今作りたいものを選別した。

 

 まずは小屋だ。

 住める場所はやはりほしい。

 ただ木材が結構必要そうなので、簡単には作れないかもしれない。

 

 次に木の剣と木の盾だ。

 最低限の武器と防具は持っておきたい。

 木を少量で作れるので、これは割と簡単に作れそうだ。

 

 そして、生命力ポーションと栄養ポーション。

 ポーションもどうやら生産スキルで作れるようだ。

 生命力ポーションは傷を治す効果があるようなので、是非とも作っておきたい。

 命の草という赤い草が必要なようだ。

 周りを見てみたが、それらしく草はどこにも生えていない。

 

 栄養ポーションは飢えを癒すポーションだ。これもぜひとも欲しい。

 栄養草という黄色い草が必要であるが、これまたどこにもそんな草は生えていない。

 

 一番気になったのは、低級ホムンクルスというやつである。

 説明には主のいう事を聞く、人造生命体と書いてある。

 つまりホムンクルスを作れば、労働力できる可能性があるということだ。

 材料は小さな魔石と、肉10㎏と書いてある。

 

 小さな魔石とやらはよくわからん。

 肉10kgに関しては、何の肉でもいいのだろうか?

 

 十キロなら小動物を数体狩れば用意できるかもだが、狩れるか分からんし、それに仮に狩れたとしても、食べたいよな。

 

 余裕が出来たら作ってみよう。

 

 よし、素材集めと食料集めをしようじゃないか。

 

 絶対に生き残ってやるんだ。

 

 中々厳しい状況であるが、絶対ネガティブにはならないと決めて、行動を開始した。

 

 

 



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第5話 森へ

 俺はリュックサックを背負い、生産スキルのレシピノートを片手に持ちながら、草原を歩き回り素材を探す。

 

 基本草しかないが、所々木と低木が生えている地帯がある。

 

 下に木の枝が落ちていたので、それを拾い集めて、リュックサックに収納していく。

 

 たぶんだけど、これで木材を集めたという事になると思う。

 普通なら木の枝を集めるだけで、剣や盾など作ることは不可能であるが生産スキルなら可能かもしれない。

 

 俺はそう思って集め続ける。

 

 すると、レシピノートがピカっと一瞬だけ光った。

 

 もしかして集め終わったのか?

 

 開いて見てみると、木の剣のレシピが乗っているページに書いてあった、作るという文字が淡い光を放っていた。

 

 確か触れれば作れるんだったな。

 

 俺は作るの文字に人差し指で触れる。

 

 すると、リュックサックが軽くなり、それと同時に目の前に木の剣がポンッ! と現れて、地面に落ちた。

 

 木の剣を拾う。

 

 きちんと作れていると思う。

 これがあったからといって、剣技など身に着けていない俺はそこまで強くはならないが、手ぶらで戦うよりましであろう。

 

 この草原には見たところ敵がいなさそうなので、とりあえず剣はリュックサックに入れた。

 なるべくすぐ取り出せるように、柄の部分だけ外に出している。

 

 そのあと草原を歩き回る。

 

 赤い実がなっている低木を発見した。

 大きさはイチゴと同じくらい。

 十個くらいなっていた。

 

 食べられるかどうかは不明であったが収穫してみた。

 

 念入りに匂いを嗅いでみるが、美味しそうないい匂いがした。

 それから皮を剥いて少しだけ口に入れてみたところ、リンゴに近い味のする実だった。

 

 これなら食べられると判断して一個丸ごと食べた。

 

 うん、おいしい。

 

 さっきから少し腹が減ってきていたので、これは良い発見となった。

 

 リンゴのような味だが、大きさはイチゴ程度なので、一個食べただけでは腹は膨れない。

 なっている実を全部取って、全部食べた。

 

 いくつか取っておいて方が良かったかな。

 美味しかったので全部食べてしまった。

 次見つけたら気を付けよう。

 

 それから草原を少し歩くと、森が見えた。

 

 ――森か。

 

 草原よりもはるかに危険そうな場所というイメージである。

 視界が狭いので、危険を察知しにくいし、森というと危険そうな生物も多く住んでいそうだし……

 

 しかし、森の方が木の収集するのに最適だろう。

 なるべく今日のうちに、小屋を作っておきたい。

 そうしないと今日野晒で寝る羽目になるからだ。

 

 今の季節はたぶん春の初めくらいなのか、若干肌寒さを感じる。

 夜になるともっと寒くなるだろう。

 

 少なくとも小屋くらいはないと風邪をひくかもしれん。

 

 この状況で風邪をひいて体を弱らせるという事は、致命的な結果につながりかねない。

 

 小屋を作るために必要な木材の量は200㎏と書かれている。

 

 200㎏ってどんなもんか分からないが、たぶん小さいよな。

 

 恐らく物置小屋くらいの大きさかな。足を延ばして寝ることが難しいかもしれない。

 

 それでもないよりかははるかにましではあるだろう。

 

 200㎏の木材を集めるとなると、森にでも行かないと難しい。

 

 森には枝ではなく、木の幹なども落ちているだろうし、案外200㎏くらいなら頑張れば集められるかもしれない。

 

 木材だけでなく、森でしか取れない素材もあるかも。

 

 現時点で生命力ポーションの素材である命の草や、栄養ポーションの材料である栄養草を発見することは出来ていない。

 草原には生えておらず、森に行かないと入手できないのかもしれない。

 

「よし……行くか、森に」

 

 俺は危険を覚悟で森に入ることを決めた。

 

 

 森は薄暗く、正直言って怖い。

 

 リュックサックから剣を引き抜き、ノートをリュックサックに入れて、両手で剣を構えながら歩く。

 

 あまり奥の方にはいかず、浅いところだけを捜索すると決めて歩き続ける。

 

 地面に太めの木の枝が落ちているのを発見。

 リュックサックに収められる大きさだったので、拾って入れる。

 結構な重さだが、運べる重さである。

 

 それからいくつか枝を拾ったら、森を出て草原に集める。

 何キロかは分からない。多分五キロくらいか?

 

 まだまだ先は長そうだ。

 

 森を探していると、緑色の実を見つけた。

 食べられるだろうか……いや、これはなんか見たことあるな。

 確かついさっき……

 

 そうだレシピノートで見たんだった。

 

 何かを作るための素材になっている実だった。

 

 えーと、この実で作れる物は何だったっけ、確か……

 

 俺はレシピノートを取り出して、確認してみる。

 

 マタタビスプレーだ。

 

 レシピを見てみると、マタタビスプレーのページに、この緑の実と全く同じ物の絵が載っていた。

 

 たぶんマタタビの実なのだろう。

 

 マタタビスプレーって何に使うか分からないけど……

 

 でも生産スキルは作れば作るほど、レベルが上がるのだったな。

 

 五つ集めれば作れるらしい。

 

 いっぱいなってるので、スプレーはたくさん作れるだろう。

 

 そんなに時間はないし、二つほど作るか。

 

 俺は十個マタタビを採る。

 

 レシピを見ると、マタタビスプレーの作るの文字が光っていたため、それを押した。

 

 すると、スプレー缶がポンッと出てきて、目の前に落ちた。

 

 これ容器の材料は特に持っていなかったが、それでもあるのか。

 どういう理屈か分からんが、あるならいいかそれで。

 

 スプレーを手に取って吹いてみると、ぷしゅと霧が吹かれた。

 正直匂いは感じない。

 確か猫が好きなんだっけこれ。

 人間には分からない匂いを猫は嗅げるのだろう。

 

 もう一つ作ったら、レシピノートが緑色の光を発した。

 

 さっきの材料が揃って時の光と違う。

 

 どうしたのかと調べてみたら、裏表紙の数字が2になっていた。

 

 そういえば確認はしていなかったが、レベルはノート裏表紙に書いてあるらしい。

 初期のレベルは普通に考えると1であると考えると、今のでレベルが上がったのだろう。

 

 まだ作ったものは三つだったが、あっさり上がったな。

 まあ、最初だからな。

 

 レベルが上がったということで、作れる物が増えたのだろうか?

 

 レシピノートを確認してみる。

 たぶんだけど、作れる物が増えるという事は、レシピノートに新しいページが追加されるという事だろう。

 そうじゃないと、作ることが出来ないからな。

 

 全てのページを確認してみたが増えていなかった。

 

 一定のレベルになって一気に増えるって感じなのだろうか。

 

 スプレーは何かに使えるかもしれないので、一個だけ持ってもう一つは捨てることにした。

 

 リュックサックにマタタビスプレーを一個収納し、木材集めを再開した。

 

 



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第6話 一日目終了

 頑張って木材を集めていると、黄色の草を発見した。

 これは……

 俺は急いでレシピノートを取り出して、確認する。

 

 開いたのは栄養ポーションのページ。

 作成に必要な素材を見ると、俺の目の前にある黄色い草と全く一緒の草の絵が載っていた。

 

 よし、やっぱりこれは、栄養草みたいだ。

 必要量は一個作るのに十本。

 三十本ほど生えている。

 これで栄養のポーションが三つ作成できる。

 飢えを癒すと書いてあったから、今日の夜空腹に悩ませることはなくなるだろう。

 

 俺は急いで栄養草を収穫して、栄養ポーションの作成に取り掛かる。

 

 三つ作成した。

 

 これも先ほどのスプレー同様、入れ物は素材がなくても勝手に用意されていた。

 厚めのビンに入っている。液体の色は黄色である。

 

 一本がオロナ〇ンC程度の量なのだが、これで本当に腹が膨れるのだろうか。

 正直疑問であるが、ここはレシピノートに書いてあった説明文を信じるとしよう。

 

 栄養ポーションを作成した後も、木材集めに勤しむ。

 

 だいぶ集まったと思うのだが、まだ作れないようだ。

 うーん、斧でもあればもっと楽に集められるのだが、斧は現時点では作成不可のようだ。

 

 日が沈みだして来ており、もうすぐで夜になる。

 流石に夜、森に入る勇気はない。

 

 まだ日があるうちに、集めきらないと。

 

 俺は急いで収集を再開した。

 

 近くにある木の枝はだいぶ取ったので、少し奥の方に行くことにした。

 

 だいぶ落ちているのたので、拾い集めていく。

 

 すると、

 

 ガサッと音がした。

 

 俺は咄嗟に身をかがめて、音のした方を確認する。

 

 何かいる。

 

 小柄で角が生えている毛むくじゃらの二足歩行生物だ。

 

 石斧と丸い木の盾を装備している。

 

 それが三体、少し遠くで屯していた。

 

 何て生物だあれは。

 

 毛が生えているというイメージはないが、それ以外はゴブリンという魔物のイメージと全く一致している。

 

 奴のことはゴブリンと呼ぶことにしよう。

 

 ……のんきに呼び方なんか考えている場合じゃない。

 

 幸い奴はまだこちらに気づいていない。

 

 敵が三体で、さらに武器を持っている以上、俺が勝利するのは不可能だろう。

 

 気づかれないように逃げよう。

 

 俺は身をかがめながら、ゆっくりと奴らから距離を取っていく。

 

 バキッ!!

 

「あ」

 

 初歩的すぎるミス、木の枝を踏んでしまうを俺は犯してしまう。

 

 その音は静寂の森に響き渡り、ゴブリンたちが一斉にこちらを向いた。

 

 バレました。完全に目が合っております。

 

 あいつらが、人間を見ても襲ってこない、善良な存在であるという可能性は……

 

「グギャア!!」

 

 なかった。

 声をあげて、三体同時にこちらに走ってきた。

 

「うわっ!」

 

 俺は情けない声をあげながら逃げる。

 

 手に持っていた木の剣は、落としてしまった。

 

 捕まったら食われる!

 

 その思いで一心不乱に俺は森を走った。

 

 しばらく走り続けると、ゴブリンどもの声が後ろから消えた。

 どうやら諦めたようである。

 

「はぁはぁ」

 

 長い距離をはしって息が切れた。

 

 調子に乗って奥に行き過ぎたのが悪かったな。

 今度からは浅いところで素材集めは行おう。

 

 俺は森をでる。

 

 木の剣は投げ捨てたが、集めていた木材は背負ったままだった。

 これも捨てれば楽に逃げ切れたかもしれないが、咄嗟に俺が出来た行動は手に持っている木の剣を捨てるという事だけだった。

 

 周囲は日が沈む寸前の、茜色に染まっている。

 

 今回集めた量で足りなければ、今日は野宿確定だ

 

 何とか足りているようにと祈って、木をリュックサックから取り出して、置いた。

 

 すると、ノートが光を放った。

 

「お!」

 

 急いでページをめくり作れるかどうか確認。

 

 小屋のページの作成の文字が、光り輝いていた。

 

 ほっ……よかった。

 

 俺は作成の文字に触れて、小屋を作成した。

 

 小さな小屋が俺の前に出現した。

 

 扉を開けて中に入ってみると、まあ、分かっていたことだが狭い。

 

 足を延ばすことくらいは出来るが、寝返りをうつのは難しいというくらいの広さだ。

 

 リュックサックを枕にして寝転がってみる。

 

 木だし、布団など当然ないので固い。

 これでは眠れん。

 

 周囲にある草をいくつか集めて、敷き詰めたらいくらかマシになった。

 

 あまり草の匂いは好みではないので、別の理由では寝苦しくはあるが、硬いよりかはマシである。

 

 腹が減ってきたな。

 

 俺は体を起こして、栄養ポーションを飲むことにした。

 

 瓶のふたを開けて、飲む。

 

 に、にがっ!!

 

 物凄く苦くて、吐き出しそうになった。

 

 俺は苦いものが嫌いなのである。

 

 でも、この状況で好き嫌いだとは言ってられない。

 普段なら絶対に飲まないが、ここは我慢してポーションを飲みきった。

 

 物凄くまずかったが、確かに空腹がなくなっていくのを感じる。

 

 空腹以外にもさっきから感じていた、のどの渇きもなくなった。

 

 水の代わりにもなるようである。

 

 夜出歩くは危険だし、やることもない。

 

 もう寝るか。

 

 俺は横になる。

 

 はぁ~……しんどいな……

 

 一日目であるが、だいぶ心が折れそうになっていた。

 

 木材集めは疲れるし、危険はあるし、食べ物はまずい。

 風呂も入れないし、寝床は硬い。

 いつまでこんな生活を送る必要があるのだろうか?

 そう考えると、憂鬱で仕方がない。

 

 めぐまれていなかったと思っていた、日本での生活も、今思えば天国にいたのだと思った。

 

 

 俺がこんな目にあっているのも、全てクラスメイトのせいである。

 

 本来ならば俺はSランクの領地で、もっとちゃんとした生活が出来るはずだったのに。

 

 そうだ。あいつらを見返すためにも、こんなところで心を折ってはいけない。

 

 俺は折れかけていた心を再び奮い立たせた。

 

 異世界生活の一日目はこれで終了。

 とにかく今の俺の置かれている状況は、最悪であるという事を思い知った一日目であった。

 



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第7話 遭遇

 翌日。

 

 草の匂いを嗅ぎながら俺は目を覚ました。

 

 起きたら全部夢で、自宅のフカフカベッドで寝ていた……何てことはなく、狭苦しい部屋で草をベッドに寝ていた。

 

 昨日さんざん素材を探して歩き回ったせいで、体中筋肉痛がする。

 こんなことになるんなら、もっと運動していればよかったな……

 

 狭い部屋にずっといるのも何なので、外に出る。

 

 当然草原である。いきなり隣に町が出来ているなんてことはない。

 

 一旦背伸びをする。

 

 腹が減ってきたので、俺は昨日飲んだ栄養ポーションを飲んだ。

 

 相変わらずまずい。まず過ぎる。

 

 もっとうまいもん食べてーな……

 

 生産スキルでも料理は作れるようだが、材料とそれから調味料が必要である。

 砂糖とか塩みたいな。

 

 これらの調味料は現在のレシピでは作成不可能。

 生産スキルのレベルを上げていけば、作れるようになるのかも不明だ。

 

 あのリンゴみたいな赤い実は、珍しいみたいで最初に見かけたやつ以降、一度も目にしていない。

 

 まあ、今は味なんて求めている場合じゃないか。

 

 とにかく今日やることを決めよう。

 

 今、必要な物はやはり食料だ。

 

 食べなければ人は生きていけない。当たり前のことである。

 

 最初に作成した栄養ポーションは三つ。

 二つ飲んだので、残りはあと一個。

 

 まずいけどこれさえあれば空腹で死ぬことはないので、もっと大量に作成しておきたい。

 

 食べ物があるという安心感は、やはり違うだろう。

 

 それから、スキルレベルも積極的に上げていきたい。

 

 1から2になった時はレシピは増えなかったが、間違いなくレベルが上がると作れる物が増えると説明に書いてある。

 

 5とか10とかのきりの良いレベルになった時に、増えると予想している。

 詳しいことはレシピノートを見ても書いていないので、上げてみるまでは分からない。

 

 スキルレベルを上げるには、スキルを使って物を作りまくる必要がある。

 

 木の剣を落としたので作ってみるか。

 

 いや、剣より盾の方を作ろう。

 正直剣はあっても何の役にも立たない気がする。

 盾ならまだ役に立つ場面がありそうだ。

 

 ほかにも低級ホムンクルスを作るため、魔石とやらを捜索したいが、それは食料がたまってからにするか。

 

 行く場所は森の中にする。

 

 昨日ゴブリンに襲われたので、恐怖心はあるものの素材は森の中の方が多く落ちている。

 

 特に栄養草は森の中で収穫したものだ。

 草原には生えていないかもしれない。

 

 栄養ポーションが当面の食料となる。

 大量の栄養草を集めるためにも、生えているということが確認できた、森の中に行かないとならないだろう。

 

 俺は森の中に入る。

 

 落ちていた木を使用して、盾を作った。

 

 丸い木の盾が完成した。

 

 これで防御することが可能になった。

 

 攻撃手段がないので、敵と出くわしたら逃げるしかないのだがな。

 

 木はそこら中に落ちているので、片っ端から拾い集めて剣や盾を作成し、スキルレベルを上げようとも考えたが、まずは食料確保をしないといけない。

 

 レベル上げに時間を使いすぎると、日が暮れた時、栄養ポーションが無いなんて事態になりかねんし、ここはやめておこう。

 

 俺はなるべく深いところに入り込みすぎないように気を付けて、森を歩き続ける。

 

 すると、赤い草を発見した。

 

 あれは……

 

 レシピノートを確認。

 

 間違いない、生命力ポーションの作成に必要な命の草である。

 

 よく見たら命の草の隣に栄養草も生えていた。

 

 かなりの量は得ており、それぞれ四十本くらい生えている。

 

 ラッキー! 早速収穫するぞ!

 

 栄養ポーションと一緒で、生命力ポーションも一個作るのに必要な草の数は十本だ。

 四つずつ作れるな。

 

 俺は急いで命の草と栄養草を地面から引っこ抜いていった。

 

 まずは生命力ポーションを作成する。

 

 栄養草と同じく瓶に入った状態で作成された。

 液体の色は栄養ポーションとは違い、赤色である。

 

 次に栄養ポーションを四つ作成。

 

 最初の一個目を作成したところで、スキルレベルが上昇し3になった。

 

 まだ、製作可能な物は増えないようである。

 

 ポーションをリュックサックにしまい、探索を続ける。

 

 生命力ポーションは四つあれば結構頼もしいけど、栄養草は四つだとまだ物足りない。

 

 もっともっと集めておきたい。

 

 途中ゴブリンなどに出くわす。

 

 今回は前のように木を踏むというへまはせず、バレずに済んだ。

 

 まあでも、ゴブリンはあんまり早くなかったし、見つかっても逃げればいいといえばいい。

 追いかけられるのは、非常に怖いので出来れば見つかりたくはないがな。

 

 その場から離れて探索を再開。

 

 中々、栄養草は見つからない。

 だが、あのリンゴの味のする実がなっている低木を発見した。

 

 あの実は美味い。

 

 ラッキーと思って近づいて、実を収穫した。

 

 まずい栄養ポーションしか食べていない俺にとっては、かなりのごちそうである。

 

 とりあえず二つ食った。

 

 めっちゃうまい。

 

 最初に食った時よりうまく感じた。

 栄養ポーションを飲みすぎたからだろうか。

 

 三つ目……はやめておいた。ここは取っておこう。

 

 十五個、赤い実を収穫した。

 

 赤い実というのもなんだし、名前を付ける。

 

 リンゴの味のする小さなみだし、小リンゴでいいか。ちょっと安直すぎるきもするがな。

 

 ほかに小リンゴの実がないか探していると、

 

「グルルルル……」

 

 獣の唸り声が聞こえた。

 

 心臓がビクッと高鳴る。

 咄嗟に声が聞こえたほうに視線を向ける。

 

 茂みの中に、凶悪な顔のネコ科の猛獣がいた。

 

 顔と完全に虎であるが、大きさと色が違う。

 

 まず虎に比べて一回り小さいような気がする。まあ、虎を間近で見たことはないので、確証は持てないが。

 

 色は虎とは違う。

 虎の特徴的な模様は全く同じであるが、オレンジ色の部分が白で、黒の部分が赤色である。歌舞伎っぽい色合いだ。

 

 普通の虎ではないとはいえ、虎は虎だ。

 睨み付けられたら、恐怖しか感じない。

 

 に、逃げるか?

 

 いや……こういうやつは、背を向けたら追いかけてくるってよく言うよな。

 

 ゴブリンには走り合いで勝てたが、こいつのは流石に負けるだろう。

 

 背中から襲われて、食われる未来が見える。

 

 ならどうする?

 

 このまま睨み合っておくしかないのか?

 

 俺は盾を構えて虎と相対する。

 

 こいつが空腹でないなら、たぶん逃げてくれるはずだ。多分。

 

 虎が腹を空かせていないことを祈りながら、睨み続ける。

 

 心臓はどくどくと暴れ、ほほに一筋の汗が伝って地面に落ちる。

 

「グルルルル……」

 

 !?

 

 後ろから虎の唸り声が聞こえた。

 

 振り返ると、二匹目の虎が。

 

 こいつ仲間がいたのか!?

 

 虎って群れないイメージがあったが、異世界の虎は別だったというのか。

 

 俺は近くにあった木に背中を預けて、とにかく背後を取られないようにする、

 

 二体の虎がぐるぐると俺の周囲を回り始める。

 

 クソ、全力で俺を狩ろうとしてるじゃねーか。

 

 どうする、どうする?

 

 考えていると、

 

「ガアアアアア!!」

 

 一匹の虎が飛びかかってきた。

 

 俺は咄嗟に盾を前に出して、防御。

 偶然、その盾が虎の顔面に直撃し、虎を一度後退させることに成功した。

 

 あ、あぶねー……今ので撤退してくれたりしねーかな?

 

 そう願望を持ったのだが、それはただの願望に終わった。

 

 再び俺の周囲をぐるぐると回り始める。

 狩りの姿勢をやめる気配はない。

 

 クソ……どうすりゃいいんだ。

 

 さっきのは完全の偶然で二度目はない。

 

 それに多分さっきのは、虎が連携を失敗して一匹で飛びかかってしまったんだ。

 本来なら二匹同時で飛びかかってくるつもりなのだろう。

 

 そうなると、ラッキーがあったとしても死は免れない。

 

 クソ……ここでこいつらに食われて死んでしまうのか俺は。

 

 そんなの嫌だ。

 

 何か、何か方法はないか。

 

 こいつらがただの猫だったら、こんなビビらなくていいんだが、虎だからな……

 

 ……猫?

 

 そう言えば、俺はマタタビスプレーという物を所持していた。

 

 マタタビは猫を酔わせる効果がある。

 虎と言っても所詮はネコ科の動物。

 

 同じく酔うはずだ。

 

 ……確証はないけど……虎も酔うってテレビかなんかで見た覚えあるし。

 

 酔うと、俺を攻撃してこないという保証もないが、少なくとも何もしないよりかは、逃げ切れる可能性は上がるはずだ。

 

 問題は取り出せるかだが……

 

 リュックサックの中に入ってるからな。

 取り出している隙に襲われるかもしれない。

 

 危険であるがやるしかない。

 

 俺はまず、リュックサックを背中から地面に下ろした。

 

 そして、盾を構えながら片手でリュックサックを開いて、中をあさり手の感触でマタタビスプレーを探す。

 

 中にはポーションの瓶も入っていて、すぐには見つからない。

 

 少しもたついていたら、虎二匹が今度は同時に飛びかかってきた。

 

 あった!!

 

 寸でのところでマタタビスプレーを発見。

 

 急いで取り出して、俺はスプレーを吹きかけた。

 

 

 

 

 

 

 



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第8話 スプレーの効果

「グルルルルル……」

 

 マタタビスプレーを吹きかけた瞬間。

 

 虎二匹の動きがぴたりと止まった。

 

 俺に攻撃するのをやめたあと、お座りの態勢をとった。

 

 な、なんだ?

 

 予想外の行動だったので、呆気にとられる。

 ネコ科の動物はマタタビを嗅ぐと酔うという話だったが、酔っているという様子ではない。

 

 よく分からなかったが、今が逃げる大チャンスなのは間違いない。

 

 俺はリュックサックを背負い、その場から逃げ去る。

 

 すると、虎二匹が俺を追いかけてきた。

 

「うわ!」

 

 そしてすぐ追い付かれる。

 

 やばい食われる!

 

 俺は咄嗟に盾でガードするが、

 

「グルルルル」

 

 虎二匹は俺を見たまま、再びお座りをした。

 

 え? どういうこと?

 

 何で襲う気はないのについてくるんだこいつら。

 

 ……まさか俺に懐いたとでもいうのか?

 

 この世界のマタタビには、猫を酔わせる効果ではなく、人に懐かせる効果でもあったのか?

 

 俺は恐る恐るだが、虎の頭を撫でてみる。

 

「ガルル……」

 

 全く抵抗せず、黙って俺に撫でられている。

 

 表情を見る限り、俺に撫でられて気持ちいいみたいだ。

 

 もう一匹も撫でてほしいのか、すり寄ってきて俺に頭をこすり付ける。

 

 リクエスト通りもう一匹の頭も撫でてやった。

 

 こ、これは間違いないない。

 

 まじで俺に懐いている。

 

 さっきまで俺を狩ろうとしていたのに、この変わり身の早さ。

 本当にマタタビスプレーには、懐かせる効果があったようだな。

 

 何かに使えるかもしれないと思って持っていて、良かった。

 

 さっきまで怖く感じていた虎も、懐かれているとなると可愛く見えるものだな。まあ、言ってしまえば大きな猫だからな。俺は犬派か猫派かどちらかと聞かれたら、猫派と答えるタイプだ。

 

 少し愛着が湧いてきたので、名前を付けてやろう。

 

 この二匹、尻尾の長さがそれぞれ違う。

 

 尻尾の長いほうを「チョウ」短いほうを「タン」と名付けよう。

 

 ……もっと考えて付けてやった方がいいか? 

 いや……名前を考えすぎると無駄に時間を使ってしまうタイプだからな俺は。

 ゲームとか始める前に、名前を考えるだけで数時間使ってしまうタイプなんだ。

 こういう時は、パッと浮かんだ名前を付けるに限る。

 

「お前はチョウで、お前はタンだ」

「「ガウ!」」

 

 二匹に名前を付けた。

 

 ……と勢いで名付けてしまったが、今の俺は自分の食い扶持を稼ぐので精一杯。

 こいつらの食料を確保してやる余裕はない。

 しかし、もうかなり懐かれているようだしなぁ。

 早いので置いていくことも不可能。

 邪険にして嫌われた場合、俺が殺されるだろう。

 

 うーん、まあ、こいつら虎だし、自分で食料くらい取れるんじゃなかろうか。

 

 森には結構小動物や、草食動物を見かけることはある。

 今の俺では狩ることは出来ないので、スルーしていたが。

 

 俺がそいつらの近くに行ったら、勝手に狩ってくるのではないか。

 

 一旦森をうろうろしてみよう。

 

 そう思い、俺はチョウとタンの二匹を連れて、森を歩いた。

 

 しばらく歩くと、群れとはぐれた様子の、イノシシのような動物を見かけた。

 ようなとは、姿はイノシシっぽいのだが色が青いのだ。

 まだ成長しきったイノシシではなく、小さい。

 これでも俺一人の力で狩ることは不可能である。

 

 チョウとタンはイノシシを見つめているのが、狩りに行くようすはない。

 

 腹減ってないのか?

 

 でも、俺を襲ったってことは、食って腹を満たしたかったてことだろ?

 腹は減っているはずなんだが。

 

 俺は試しに、

 

「あいつを狩ってこい」

 

 と命令してみた。

 

 すると、物凄い速度で動き出して、イノシシに飛びかかる。

 

 反撃を受けないよう二匹で連携をしながら、まずは足を使えないようにして、動きを封じた。

 

 そのあと、首元に噛みついて絶命させた。

 

 仕留めた獲物は食べることなく、俺の元へと持ってきた。

 

「くれるのか?」

「「ガウ」」

 

 チョウとタンは頷く。

 

 いやこいつら俺の言葉理解しているのか?

 もしかしたら、マタタビスプレーには人と虎の気持ちを通じ合わせる何か特殊な効果でもあるのかもしれない。

 

「食べていいぞ」

 

 俺がそういうと、チョウとタンはイノシシを食べ始めた。

 

 いや、これはガチで俺の指示を聞くようになっているな。

 

 チョウとタンはイノシシを食べ終わる。

 

 間近で見ると結構グロい光景である。

 動物が出る番組なんかよく見るので、こういう獣の食事風景は結構見慣れてはいたんだけどな。

 

 ただこれでこの二匹に俺の指示を聞かせることが出来ると判明した。

 そうなると、肉を確保することが出来る。

 苦いだけのまずい食事が、少しはマシに出来る。

 

 でも肉を食うには焼かないと駄目だ。

 生で食う勇気は流石にない。

 火ってどうやってつければいいんだろう。

 

 レシピにライターなんてものはないし……

 サバイバル知識と経験がないから、火の起こしかたも分からない。

 

 付ける方法を見つけるまで、当分食事は栄養ポーションだけになりそうだな……

 

 チョウとタンが仲間になったことで、危険な生物に襲われても何とかなりそうだ。

 

 だからいつもより行動範囲を広げて、素材を採っていこう。

 

 俺は森を歩く。

 

 途中見つけた獲物なんかは、命令をして狩らせた。

 今、俺は食えないが、チョウとタンの夜のエサは必要だからな。

 

 そして、歩いているとゴブリンに遭遇した。

 

 あいつには勝てるのか?

 

 石の斧を持ってるしな。殴られたら結構いたそうだぞ。

 

 勝てるかどうか分からないので、狩りを命じるのはやめようと思っていると、ゴブリンがこちらに気づいた。

 

 すると、恐怖の表情を浮かべて一目散に逃げだした。

 

 少しでも早く逃げられるよう、武器を置いて逃げ出した。

 

 チョウとタンを見て逃げたんだろうが、あれ? あいつもしかしてスゲー弱い?

 

 あれもチョウとタンのエサに出来るかもしれない。

 

「あれを狩ってきてくれ」

 

 ゴブリンを指さしながら、俺はそう頼んだ。

 

 すぐさま走り出して、ゴブリンを追いかける。

 

 俺に逃げ切られるほどなので、ゴブリンの足はかなり遅い。

 あっさりと追い付かれ、そしてあっさりと仕留められた。

 

 ゴブリンの死体をくわえて持ってくる。

 

 俺はよくやったと二匹の頭を撫でた。

 

 ゴブリンは身長140㎝くらい。そんなに小さいわけではない。

 すでに獲得済みの獲物は何匹かいるが、これ運びきれるかな。

 

 少し悩みながらゴブリンを見ていると、胸のあたりに何かがあることに気づいた。

 

 近付いてよく見てみる。

 

 小さい灰色石がゴブリンの胸に埋め込まれていた。

 石には真っ黒い六芒星が刻まれていた。

 

 これって……

 

 見覚えがあった。

 

 俺は急いでレシピノートを開く。

 

 やっぱり間違いない。

 

 これは『魔石』だ。

 

 低級ホムンクルスのことが書かれているページに、必要な材料として小さい魔石の絵が載っていた。

 

 よく見比べてみるがほぼ同じ。

 恐らく間違いないだろう。

 問題は大きさだが小さいので、たぶん小さい魔石なんだと思う。

 

 このゴブリンは10キロくらいの重さはありそうだし、もう一つの素材の何らかの肉にも使えそうではある。

 

 今のところレシピノートは作れるようになっていない。

 もしかしたら一度、この魔石をゴブリンから抜き取らないといけないのかもしれない。

 

 最初自分の手でやろうとしたが、かなりきっちりと埋め込まれていたので、無理だった。

 

 タンに石を抜き出してくれと、命令する。

 

 爪を器用に使いタンは魔石をゴブリンから取り出した。

 

 俺がその魔石を拾った瞬間、レシピノートが一瞬だけ光を放つ。

 

 作れそうだな。

 

 低級ホムンクルスが書かれているページを開き、『作る』の文字を指で触った。

 

 

 

 

 

 

 



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第9話 ホムンクルス

『作る』の文字を指で触った瞬間、ボンと音がして俺の目の前に何かが現れる。

 

 身長五十㎝くらいの人型の生物が現れた。

 

 これが低級ホムンクルスか。

 

 全体的に色は青色だ。

 額に魔石に描いてあった六芒星が刻まれている。

 

 髪はなく頭はまん丸だ。

 

 大きな目玉が二つに、口がある。鼻はない。

 耳はあるがエルフの耳のようにとんがっている。

 

 裸で服は着ていない。性器はついておらず、胸が膨らんでいたりもしてない。

 

 頭身は人間と大きく変わらない。

 かなり頭が小さいのだ。

 

「私は命令を欲しています」

 

 といきなり言われた。

 

 命令をしろということか。

 

 やってほしいことはまずは素材集めの手伝いだが、出来るのだろうか?

 

 こいつ何が出来るんだろう?

 

 言葉を話せるようだし、とりあえず何が出来るかを教えてもらおう。

 

「お前に何が出来るのか教えてほしい」

「出来ることなら命令をされ次第、直ちに遂行します」

「いや、そうじゃなくて……お前は何がやれるの?」

「素材集め、料理の手伝い、建築の手伝い、低級魔法の使用、低級魔物の討伐、などです。ご主人様の命令は何でしょうか? 私には疑問があります」

 

 若干言葉遣いが変だが、一応会話は可能だし気にしないでおこう。

 

 結構できることが多くて便利そうだ。

 これは作ってよかったようだ。

 

 あと、一つ気になることがある。

 低級魔法の使用だ。

 

 魔法ってどんなものがあるのだろうか。

 

 聞いてみよう。

 

「低級魔法ってどんなものが使えるんだ?」

「私はスモールフレイムが使えます。私はアイスボールが使えます。私はウィンドが使えます」

「それぞれどんな魔法なんだ?」

「スモールフレイム。小さな火を起こして飛ばします。アイスボール。小さな氷の球を飛ばします。ウィンド。風を起こします」

 

 火を起こせるのか。

 どうやって火を起こせばいいのか悩んでいたが、その問題が一気に解決したぞ。

 

「魔法は一日に三回まで使用可能です。それ以上の使用は出来ません」

 

 三回か。

 

 火を起こすのに使うだけなら、三回あれば十分ではあるな。

 

 ほかにもいろいろ質問をしていった。

 

 まずは食料がいるかどうかである。

 

 ホムンクルスはいらないと答えた。

 しかし、五十日ほどで寿命を迎えるらしい。

 

 めちゃくちゃ短いわけではないが、早く死んでしまうのは愛着を覚えていた場合は、少し悲しいかもしれない。

 

 戦闘力はどれくらい? ゴブリンは倒せるのかとも質問した。

 

 石の剣や石の盾などの武器を装備させてもらえれば可能であるらしい。

 

 こいつを作るのにゴブリンが必要だから、まだまだ狩りたいが、石の剣や石の盾は現時点では作成不可能。

 

 ゴブリンならタンとチョウでいとも簡単に狩れるし、問題はないか。

 

 このホムンクルスはすぐ死ぬという事で、名前は付けないことにした。

 愛着を持ちすぎると、死んだとき悲しくなるためである。

 

 とにかく相当便利なやつを作ることが出来た。

 今後は素材集めなど、かなり楽になるかもしれない。

 

 俺は一旦拠点へと戻ることにした。

 

 

 〇

 

 

 拠点に戻った俺は、収穫物を確認した。

 

 まず栄養ポーションと生命力ポーションがそれぞれ四つずつ。

 小リンゴが十五個。

 

 それから帰るときに、木をいくつか拾ったりした。

 持つのは自分だけでなく、ホムンクルスにも持たせた。

 

 俺はこの木を使って火を起こし、料理をしたいと思っていた。

 

 だが俺に料理の経験などない。

 火を起こせるようになったとはいえ、そう簡単に料理など出来ない。

 

 今回チョウとタンには鹿っぽい動物と、イノシシっぽい動物を狩ってきてもらったのだが、こいつらを食べるには解体する必要がある。

 

 解体なんてそんなこと出来んしな。

 

 そういえばホムンクルスは出来るのだろうか?

 

「お前、この動物の死体解体できる?」

「刃物があれば可能です」

 

 うーん、それは現時点ではやれないっぽいか。

 

 仕方ない。俺はしばらく栄養ポーションと小リンゴで我慢しよう。

 肉は全部チョウとタンの餌だ。

 

 俺はホムンクルスにレシピノートを見せて、

 

「この栄養草っての採ってこれるか?」

「私にはそれを採ってくることが出来ます。いくつ必要ですか?」

「持ってこれるだけ持ってきてほしいんだが、あのリュックサックは使ってもいいぞ」

「かしこまりました」

 

 そういうと早速リュックサックを背負って出発しようとする。

 

「あ、ちょっと待って、この命の草ってのと、こんな感じの赤い実があったら、それも持ってきてほしいんだけど」

「かしこまりました」

 

 ホムンクルスはそう言って、一体で森に行った。

 

 そのあと俺はチョウとタンに、

 

「さっきの毛むくじゃらの生物覚えてる?」

 

 と尋ねた。

 二匹は頷いた。

 こいつらガチで俺の言葉分かるんだな。

 

「あれを狩ってきて、ここまで持ってきてほしいんだ」

「「ガルル」」

 

 そう唸って、二匹はすぐに森の方へと走っていった。

 

 ちゃんと帰って来るかな?

 

 いや、これで素材獲得出来たら、ホムンクルス作りまくって、そんで素材集めまくって、俺はわざわざ危険な森とかに行く必要がなくなるぞ。

 

 死にそうな目にあったが、案外これからは何とかなるのか?

 

 ……いや、よく考えたら俺のいるこの場所って安全なのかね?

 

 草原の真ん中。

 周りに魔物はいないし、昨日は草原では出くわさなかったが、これからも出くわさないとは限らない。

 

 そう考えると、チョウとタン、どっちにも行かせたのは間違いだったか? 

 いやでも一体だけってのは、失敗しそうだし。

 

 チョウとタンとは一緒に行った方が良かったかもしれんな。

 

 俺は家に入り、栄養ポーションと小リンゴを食べて飢えをしのぐ。

 何かやばい奴が来ないことを祈りながら、狭い家の中でじっとしていた。

 

 

 

 

 

 



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第10話 スキルレベル5

 俺は家で昼寝をして、休息をとっていた。

 

 そして、起きて夕方。

 

「ガルルルル……」という声が聞こえる。

 

 タンとチョウが帰ってきたと思い、ドアを開けようとするが、別の奴だったらまずいとも思う。

 

 俺は慎重にドアを開けて、確認する。

 

 すると、外見だけでは分からないが、ゴブリンを二体狩ってきて持ってきていたので、確実にタンとチョウであると分かった。

 

 俺は外に出て二匹の頑張りをたたえて、撫でる。

 

 それとほぼ同時刻にホムンクルスも帰還。

 

 リュックサックの中には、大量の栄養草、命の草、小リンゴが入ってきた。

 

「私は任務を達成しました。これで満足がありますか?」

「よくやってくれた」

 

 一応ねぎらいの言葉をかけた。

 

 まずは、ゴブリンから魔石を取り出して、ホムンクルスをまた作ろう。

 

 先ほどと同じように、タンとチョウに魔石を取り出してもらう。

 

 そして二体ホムンクルスを作成した。

 

 全く同じ見た目、同じ喋り方をするホムンクルスが二体増える。

 

 ちなみに使用される肉は十キロで、いくらかゴブリンの肉は余る。

 それはタンとチョウの餌にした。

 普通においしそうに食べていた。

 人型なので、イノシシが食われるよりグロく感じたが。

 

 二体作ったことで、生産スキルレベルが3から4に上昇した。

 まだ作れる物は増えない。予想だと増えるのは5か10だが、果たして……?

 

 それから俺はホムンクルス1号が持ってきた素材を使って、ポーションを作る。

 

 まず栄養ポーションを十五個作成。

 

 これで結構、十日くらいは飢えをしのげそうだ。

 そういえばこれっていつまで持つのだろうか?

 

 そして生命力ポーションを五個作成したとき、生産スキルレベルが4から5に上昇した。

 

 すると、レシピノートが光りながら俺の手から離れ宙に浮いた。

 

 強い光で直視できず俺は目をつぶる。

 

 しばらくすると光は消え、レシピノートが地面にドサッと落ちる。

 

 何だ今のは?

 俺の予想通り、レベル5になって作れる物が増えたのだろうか?

 

 確認してみよう

 

 レシピノートをを拾う。

 

 明らかにさっきより厚くなっている。

 

 これは予想が当たったっぽいな。

 

 中を開いてみると、前は五十ページだったのが、百ページに増加していた。

 

 俺は中を見て、有用そうな物が作れるようになっていないかを調べる。

 

 石の剣、石の盾、石の包丁、石の斧、石のクワ、石のツルハシなど石を使った道具が作れるようになっていた。

 

 あと、リュックサックしか荷物入れがなかったが、木のかごや木のバケツなど、入れ物を作れるようになった。

 それからタンスや椅子、机、ベッドなどの家具も作成可能に。

 

 それから、何らかの実や草を素材にして種を作り出すことが出来るようになったようである。

 

 栄養草や生命力ポーション、小リンゴなどの栽培が可能になるのか。まあ、小リンゴは育つまで時間がかかりそうであるが。

 

 あと家を作れるようになった。

 

 必要な木の量は今ある小屋の四倍である。

 それだけ大きい建物になるという事だろう。

 これを作れば、寝返りくらいは打てるようになるな。

 

 そして一番気になるのは「特殊ホムンクルス1号『ベルフェ』」というやつだ。

 

 大きな魔石と何らかの肉100kgがあれば作成可能。

 限定一体までしか作ることが出来ないらしい。

 

 説明によると、かなり強力なホムンクルスのようだ。

 

 肉100㎏は用意しようと思えばできるだろうが、大きな魔石とやらはどこで入手できるのか分からない。

 

 ホムンクルスに大きな魔石を入手してくれと頼んだが、不可能であると返答された。

 相当入手が難しい物なのだろうか。

 

 現時点での作成は無理だろうな。

 もし大きな魔石を入手出来たら、その時は真っ先に作ろう。

 

 新しく作れるようになったものでは、道具を最初に作りたい。

 包丁を用意すれば、獲物を解体してもらえるかもしれない。

 まあ、石の包丁なのであまり切れない可能性もあるが。

 

 石の斧は是非作っておきたい。

 木を集めるのがスムーズになるからな。

 

 材料となるのは石と、それから少量の木材だ。

 

 石は森にも結構落ちてるし、集めるのにそう時間はかからないだろう。

 

 道具を作り、木材集めが楽になってから家を作るための木材を集めようか。

 

 あと畑作りだな。

 

 水源がないと畑は出来ないよな。

 森に川とか流れてそうだけど、それを発見する必要があるだろう。

 

 育てるのは栄養草が良さそうだ。

 それから小リンゴもな。

 

 ほかになんか作物を見つけたら、積極的に種にして栽培していこう。

 

 今後の目標を決めたところで、もう夜だ。

 

 栄養ポーションを飲んで早く寝てしまおう。

 

 夜の間、タンとチョウは寝るとして、ホムンクルスたちには働かせてもいいような気がした。

 

 こいつら疲れたりするのだろうか?

 

 俺は尋ねてみる。

 

「疲れを感じるはないです。その代わり私はすぐに死にます。一秒でも無駄にせず使う事をお勧めします」

 

 と働かせることを勧められた。

 

 本人がそう言うのなら……ここは働かせるか。

 

「じゃあ、石と木材を集めてきてくれ。俺が寝ているあいだは、ずっと集め続けてきてくれ。敵に出会ったりなんかしたら、すぐ逃げろよ」

「「「了解しました」」」

 

 作った三体のホムンクルスは全く同時に返事をして、素材集めに行った。

 

 俺は相変わらず苦くてまずい栄養ポーションを飲む。

 それから、小リンゴで口直しをして、腹を満たした。

 

 チョウとタンは、ゴブリンの肉で十分だったようでうとうとして、眠りそうになっている。

 

 今、家は一つしかなく、俺とチョウとタンと一緒に寝ることは不可能だ。

 もふもふの毛があって、寒さをしのげそうなチョウとタンは、外で寝たほうが快適そうだから、中で寝る必要もないだろうけど。

 

 俺は小屋の中に入り、眠りについた。

 

 

 



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第11話 役割分担

 異世界生活三日目。

 

 朝、俺は目覚めて背伸びをする。

 

 昨日までの暗い気持ちは、少しはなくなってきた。

 

 何とかこれから生きてはいけそうな気がしているからな。

 異世界なのでこれから何があるかは、予想は出来ないが……

 

 あんまりネガティブに考えすぎて暗くなるのはよそうか。

 

 俺は外に出る。

 

 すると、ホムンクルスたちが頑張って集めたと思われる、木材や石が結構あった。

 

 うーん、これは便利だ。

 

 ホムンクルスたちは素材集めに行っているみたいなので、今はいない。

 

「グルルルル」

 

 チョウとタンが目覚める。

 

 猫科は夜行性というイメージがあるが、この世界の虎は普通に夜に寝て朝起きるようだ。

 昨日狩ってきた動物の死体が二つあるので、そいつを食べるように言ったら、美味しそうに食べ始めた。

 

 俺はチョウとタンが食べている間、生産を始める。

 

 家を作るのは現時点で集まっている木材では不可能のようだ。

 石材を中心に集めてきているので、そこまで木材は集まっていない。

 

 俺は石の斧を作成。

 三つ作ろうと思ったが一つにした。

 

 ホムンクルスには役割分担を行ってもらう。

 木を集める役と、それから栽培に必要な水源を探す役、そして周辺の土を耕して畑を作る役である。

 

 人里を探して来てもらうというのも考えたのだが、よく考えたら今の俺はこの世界の金も何も持っていない。

 異世界は厳しい場所だろうし、金目のものを持たないものに何かを得られることはないだろう。

 

 生産スキルで金になりそうなものを大量に作って、それを持って街に行くというのが一番いいだろうな。

 

 生命力ポーションなど、価値は分からないが需要はあるだろうから、売れると思う。

 

 自分ではそんなに大量には使わなそうな気がするので、大量に作って売るのもありだろう。

 

 いずれにせよ今は数が足りないし、先に水源を探して来てもらうことにした。

 

 もう一体ホムンクルスを作成すれば、人里を探させよう。

 

 ちなみに俺はチョウとタンと一緒に出掛けながら、栄養草などの畑で育てられそうな植物を集めてくる。チョウとタンには動物を狩らせたり、ゴブリンを狩らせたりする。ホムンクルスは増やせるだけ増やすつもりだ。

 

 包丁や石の剣、石の盾、石のクワ、木のバケツなども作成した。

 バケツは水源を探すホムンクルスに持たせて、見つけたら水を持ってこさせるためである。

 

 ホムンクルスたちが戻ってくる。

 それぞれに必要な道具を持たせて、一体一体に命令を出した。

 

 水源を探すホムンクルスと、木材を集めるホムンクルスは森に向かい、畑を作るホムンクルスはクワで土を耕し始めた。

 

「よし、じゃあ俺たちは狩りに行くぞ」

「「ガウッ!!」」

 

 俺は、リュックサックを背負い、一応剣と盾を手にもって、チョウとタンと共に、森に向かった。

 

 

 〇

 

 

 チョウとタンと一緒に森を歩く。

 やはりこの二匹と一緒に歩くと、安心感が全然違う。

 一人で森を歩いていたときは、おっかなびっくりだったからな。

 

 歩いているとマタタビの実を見つけた。

 

 チョウとタンがいるし、もうマタタビは必要ないか。

 いや……そうでもないな。

 

 チョウとタンと同じ虎やほかの猫科の猛獣と、また出くわさないとは限らない。

 

 さらにこれは考えたくないことだけど、マタタビスプレーには効果時間みたいなものがあって、時間が経てば切れてまた襲われる可能性もある。

 

 やっぱ一応作っておいた方がいいだろう。

 

 俺はマタタビを採取。

 

 マタタビスプレーを二つ作成した。

 

 それから森を歩き続けて、栄養草を発見。

 

 引っこ抜く。

 

 そしてレシピノートを取り出して、種作成のページを開き栄養草の種を作った。

 

 一個の草から種が二つ作成できた。

 

 その後も何度も草を引っこ抜き、種を作っていく。

 

 栄養草の種を計四十個作った。リュックサックに入れておく。

 

 それから歩いていると、ゴブリンには出くわさなかったが、鹿っぽい動物に出くわした。

 鹿のような角を生やしている動物だが、体に豹のような模様がある。

 豹鹿とでも呼んでおこう。

 

 性格は普通の鹿と変わらず、臆病ですぐに逃げる。

 

 俺たちを見た瞬間、逃げ出したのですぐに狩るよう二匹に命令した。

 

 チョウとタンは非常に優秀なハンターだ。森を走り回るのが抜群にうまく、スピードも速い。

 豹鹿も決して遅くないのだが、呆気なく捕まって首をかまれて絶命した。

 

 肉食動物って狩りの成功率そんなに高くなかった気がするが、今のところ逃しているところを見ないな。

 チョウとタンはかなり優秀なのかもしれない。

 

 豹鹿は結構大きいのでこれでチョウとタンの今日の餌は十分だろう。

 

 一旦帰るか。

 

 俺は森を出て拠点まで戻った

 

 



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第12話 三日目終了

 俺はチョウとタンの二匹を連れ、森から出て草原に出る。

 そして家を目指して歩き出した。

 

 その道中、親とはぐれたと思われる、シマウマみたいな動物の子供がいた。

 みたいというのは普通のシマウマと違い、頭に角が生えているからだ。

 まるでユニコーンである。

 シマウマのユニコーンなので、シマコーンと呼ぶことにしよう。

 

 はぐれておろおろしている。

 

 子供なので可哀想だし親を探してあげよう……とはならない。

 

 甘いことは言っていられない。

 狩れる獲物は狩っておかないといけない。

 

 俺はチョウとタンにシマコーンの子供の狩りを指示した。

 

 狩りは成功。シマコーンは呆気なく捕まりのど元をかまれて絶命した。

 

 シマコーンの子供と、鹿をチョウとタンに引きずらせて、家まで戻る。

 

 結構重かったのか、チョウとタンは着いた時、少し疲れていた。

 

 家に戻ったので、ホムンクルスたちの仕事の進捗を確認する。

 

 最初は畑の確認だ。

 

 それなりに大きな畑が出来ていた。

 もう少し大きくしたいので、作業はやめさせないが今日中にある程度大きな畑が出来そうである。

 ホムンクルスは恐らく体力をあまり消費しないのだと思う。

 

 だからずっと耕していても問題ないため、作業速度が速いのだ。

 

 とにかく畑は作れそうであるが、これで水源を見つけて、種を埋めれば栄養草を育てることが出来るだろうか?

 

 仮に成功したら、わざわざ外に行って集める必要もなくなる。

 

 そのうち栄養草に頼らず腹を満たせるようになれたらいいな。

 

 木材集めの方も順調そうだった。

 

 石斧で伐られたと思われる木が、何本か家の近くに置いてあった。

 

 木を伐るのにも運ぶのにもパワーは必要なので、あの小さな体で可能なのか心配だったが問題ないようだ。

 

 結構太い木の幹も運ばれていることから考えるに、ホムンクルスはかなり力持ちなのだろう。

 

 本当に便利な奴らを作れたな。

 

 水源の方はまだ見つけてきていないようで、戻ってきていない。

 

 腹が減ってきたので俺は栄養ポーションを飲む。

 チョウとタンに鹿を食べていいよと、合図をして一緒に食事を取った。

 

 しかし相変わらず栄養ポーションまじぃ。

 

 まともな飯が食べられるようになったら、絶対飲まんなこんなの。

 

 めちゃくちゃ健康にいいとしても、絶対に飲まんだろう。

 

 食事を終えて、少し休憩をとる。

 

 そのあと、再び森に出かけた。

 

 今回はゴブリンをとにかく狩りたい。

 ホムンクルスをもっと大量に作りたいからな。

 魔石は今のところゴブリン以外の生物から入手できていない。

 ゴブリンを狩れば肉も足りるし、すぐ作れるのは効率的だ。

 

 ホムンクルスは三十体くらい作りたいと思っている。

 

 あと、寿命があるので魔石は何個か生産に使わずにとっておきたい。ここぞという時、一匹もいなくなったら困るからだ。

 

 俺はゴブリンを狩りに出かけた。

 

 

 森に入り、ゴブリンを探す。

 

 しばらく探し回る。

 

 その間に命の草を発見した。

 

 これはそこまで必要ないが、まああってもいいので全部引っこ抜いて、全部種にした。命の草の種を四十四個入手した。

 

 その際、生産スキルレベルが6に上昇した。

 

 それから歩き続けて、数分後、ゴブリンを発見した。

 

 三体が鹿を背後から襲おうとしている状況である。

 

 俺たちはその背後にいた。

 

 これは格好の標的である。

 狩りをするのに夢中で、こちらに気づく気配がない。

 

 俺はチョウとタンに命令して、ゴブリンを背後から襲わせた。

 

 襲われる寸前に気づくが、ゴブリンたちが逃げられる時間などチョウとタンが与えるはずもない。

 

 三体のゴブリンたちは、あっさりとチョウとタンに狩られた。

 

 俺はゴブリンから魔石を取り出す。

 

 今回は石のナイフを持っていたため、自分の力で切り取って取り出すことが出来た。

 

 三個取り出して、三体のホムンクルスを作成した。

 

 ホムンクルスたちに余ったゴブリンの死体を運ばせて、俺は家に戻った。

 

 

 戻ると水源を探しに行っていたホムンクルスが、戻ってきていた。

 

 バケツに一杯水を汲んできていた。

 

 結構綺麗な水だった。飲み水としても使えそうである。

 

 俺はチョウとタンに飲んでいいと指示を出す。二匹は勢いよく飲みだした。

 

 獲物の血である程度のどは潤せていた思っていたが、少しのどが渇いていたようだ。

 

 俺は木材でバケツを十個作り、水を汲んでくる役を新しく作ったホムンクルスと、水源を探していたホムンクルスに与えた。

 

 バケツを作ってたら、生産スキルレベルが7に上昇した。

 

 俺は新しく作った一体のホムンクルスに、人里を探してくる任務を与えた。

 もしかしたら近くに町なんかなくて、戻ってこないかもしれない。

 

 ……あまり後ろ向きに考えるのはいけないか。町はあると信じておこう。

 

 そしてもう一体のホムンクルスには、木を集める役目を負わせた。

 斧を新しく作成する。

 

 すっかり日が暮れてきた。

 

 夜になると外に出るのも嫌なので、栄養ポーションと小リンゴを食べて寝よう。チョウとタンの餌は余ったゴブリンを食べさせた。

 

 俺は眠りについた。

 

 三日目もホムンクルスも作れたし、結構前に進んで終わることが出来た。 

 

 

 



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第13話 順位

 四日目。

 

 朝起きて、いつも通りまずいまずい栄養ポーションを口にする。

 

 はぁー、日本の料理が恋しくなる。

 美味い飯が食えるって、幸せなことだったんだなぁ。

 

 まあ、一応腹を満たせているという時点で、最悪の状況というわけではないか。

 

 栄養ポーションの残りは十四個である。

 一日三回飲むとして、これで暮らせるのは今日も入れて五日か。飲むのを一回だけに抑えたとしても、今日も入れて十四日が限界だな。

 

 そんなにめちゃくちゃ余裕があるわけではない。

 

 栄養草の種は四十個あるが、育ち切るのに時間がかかるだろう。

 そもそも最初は育てた栄養草はすべて種に変えるつもりである。

 

 なので、もっと集める必要があるな。

 ホムンクルスに行かせるか。

 

 と言っても空いているホムンクルスは現時点ではいないが。

 

 そう思っていたら、木を採ってきていたホムンクルスが、ちょうど木の幹を持って戻ってきた。

 

 引きずりながら持ってきている。

 

 そう言えば結構木材たまってるよな。

 

 これなら作れるんじゃないのか、家。

 

 俺は一旦ホムンクルス二体に作業をやめるように命令。

 

 そして、レシピノートを手に持ち木材を集めている場所に近付いた。

 

 すると、レシピノートが光を放つ。

 

 作れるっぽいな。

 

 レシピノートを開いて確認。家のページの作るの文字が光を放っていた。

 

 俺はその文字に人差し指で触れた。

 

 その瞬間、目の前に家が出来上がる。

 

 今まではどんなものでも一瞬で完成してたが、この家だけはじわじわと作られていく。

 

 十秒くらい経過して、家が完成した。

 

 巨大な家ではないが、十分な大きさである。

 

 扉を開けて中を調べてみると、中は八畳くらいの広さだった。

 広くはないが、前の家よりかは遥かにましである。

 前に住んでいた家は、物置として使用。

 道具などは地面に置きっぱなしになっていたので、それをあの小屋に収納する。

 

 ふう、家が出来たな。

 

 マジでホムンクルスは役に立つな。

 木はまだ割と残っていた。

 

 残った木で椅子、テーブル、タンスなどの家具を作成する。

 木はそれで全部使い果たした。

 

 これで生産スキルレベルが8に上昇した。

 

 テーブルやタンスを家に配置したら、良い感じの部屋になった。

 

 ベッドがまだ作れないのが痛いが、少なくとも寝返りくらいは打てるようになった。

 

 あと割と寝るスペースは取れるので、チョウとタンと一緒に寝ることも可能である。あのもふもふと一緒に寝てみたくはあったので、今日は一緒に寝てみよう。

 

 家を作ったので、俺は畑を見に行く。

 

 畑はかなり大きくなっていた。

 

 これだけの規模があれば十分だな。

 

 俺はホムンクルスに耕す作業をやめさせて、種を蒔く作業を開始させた。種を蒔いた後は、水をやれともついでに命令しておいた。

 

 これで畑で栄養草と命の草が育てばいいのだが。

 

 それから先ほどまで木材を採っていたホムンクルス二体に、栄養草の採取を命じる。

 

 必要な物ではあるからな。

 

 きちんと住めそうな家が完成して、畑も作れており水源も確保できた。

 最初想定していたより、だいぶ生活レベルが上がってきた。

 

 このままもっともっと上げていければいいのだが。

 

 ん?

 

 ふと空を見上げたら、ひらひらと紙が落ちてきた。

 

 俺の顔に落ちる。

 

 何だ?

 

 紙を手に取り何なのか確認する。

 

『現在のトップ5を発表するよ!』

 

 と題名が書かれていた。

 

 何だトップ5って?

 

 続きを読む。

 

『一位 坂宮徹 二位 平石誠二 三位 山宮霧子 四位 工藤晶子 五位 大原孝明』

 

 これ……クラスメイトの名前だ。

 

 そういえば競わせて順位の高い奴の願いを叶えるとか、神の奴は言っていたな。定期的にこうやって順位を送って来るのか。

 

 一位 坂宮徹。

 

 本来なら俺が治めていたはずの領地で一位になってやがる。

 

 ……チッ、クソが。

 

 ふつふつと悪感情が湧き上がってくる。

 

 もし坂宮がこのまま一位になったら、神の言う通り願いを叶えてもらう可能性があるということか。

 

 それは虫唾が走るような出来事だな。

 

 逆に俺が坂宮が一位になることを阻止したら、それは復讐になるだろう。

 

 ……こんな生活している俺に出来るのかよって話だけど。

 

 やれるだけのことはやってやろうじゃねーか。

 そうしないと俺の怒りは収まらん。

 

 そのうちこの土地に、凄い領地を作り上げてみせる。

 

 そう心に誓い、チョウとタンと一緒に森へとゴブリン狩りに行った。

 



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第14話 桜町メイ

「絶対だからね!!」

 

 そう叫び終えた時、僕、桜町メイの視界は真っ暗になった。

 

 ついさっきまで、神を名乗る人物から異世界で領主になってもらうと説明されていた。

 

 僕は半信半疑だったけど、本当にそうなるのかな?

 

 視界が戻る。

 

 僕はなぜか仰向けで寝ており、天井が目に入った。

 

「知らない天井だ……」

 

 一度は言ってみたかったセリフが、こんな時に出ちゃった。

 

 僕は本当に異世界に転移させられたのかな?

 

 どうやらベッドに寝ているようだった。

 ふかふかで気持ちがいい。

 

 体を起こす。

 

 周りを見てみると、周囲には誰もいない。

 

 部屋は自分の部屋ではなく、西洋風の置物がたくさん置かれた部屋だった。

 

 僕は慌てて立ち上がり、窓の外を見てみる。

 

 日本じゃなかった。

 

 中世ヨーロッパ風の景色が眼前に広がっていた。

 

「本当だったんだ……異世界転移……」

 

 ぽつりと呟いた。

 

 覚悟していたとはいえ、本当にそうだと分かると、平常心ではいられない。

 

「そ、そうだ。あの神が言ってたことが本当なら……ゼンジ!」

 

 僕の唯一の友達のゼンジは、あのクラスメイトたちのせいで、領民0の土地に行かされる羽目になったんだった。

 もしかしたら、今頃たった一人で苦しい生活を強いられているのかもしれない。

 

 た、助けに行かないと!

 

 でも、どうやって……

 外に出ても死ぬだけというか……

 

 そう言えばスキルって奴を貰えるって、神は言ってたよね。

 

 僕は神から貰ったスキル石を取り出す。

 

 灰色だった石は、真っ黒に変色していた。

 

 ……で、これでどうやってスキル使うの?

 

 ……えー??

 

 そこで僕は部屋にリュックサックが置かれていることに気が付いた。

 

 明らかに不自然な現代風なリュックサック。

 

 中を確認してみると、真っ黒いノートがあった。

 

『魔剣ノート』

 

「ま、魔剣?」

 

 何かカッコいい響き。

 僕の好きな奴だ。

 

 中を見てみる。

 

 何か書いてある。

 ページは一面真っ黒で、字は白色で書かれてあった。

 

『スキル・魔剣の説明! まず「いでよ! 〇〇〇〇」と言って魔剣を出してください。名前は自由に決められます。一度決めたら変更できないので注意。剣をしまう時は、「もういい、〇〇〇〇、戻れ!」というとしまえます。魔剣は使用者の身体能力をあげます。魔剣のレベルが上がれば上がるほど、より上がるようになりますよ。何かを斬ることで経験値を貰い、それを貯めればレベルが上がります。レベルは裏表紙に書いてあります』

 

 と書かれてあった。

 それ以外は何も書かれていない。

 ほかにもページがあるんだけど、真っ黒でどこにも何も書いてない。これノートの意味あるのかな。

 最後のページを確認したら、1って書かれてた。最初だし当然レベル1だよね。

 

 でも、シンプルなスキルだね。

 身体能力が上がるだけって。まあ、案外こういうのが一番強いのかもね。

 戻すときの掛け声が、ポケ〇ンっぽいのが何か気になるけど。

 

 僕としては魔剣ってのはカッコいいから、好き。

 

 早速出してみようか。

 いでよって言った後、好きな名前を言うんだっけ。

 

 魔剣って言ったらやっぱり魔剣グラムだよね。

 

 よしグラムで決定!

 

 早速出してみよう。

 

「いでよ! グラニュゥ」

 

 あ、最後噛んだ!?

 

 魔剣が出てきて、僕はそれを握る。

 

 シンプルデザインの黒い剣だけど、カッコいい。

 剣なのに軽い。木の棒を持っているみたい。

 僕の身体能力が強化されたからかな。

 そういえば、体が物凄く軽い気がする。

 これなら凄い速度で走れそうだ。

 

 カッコいいのはいいだけど、僕さっき噛んでグラニューって言わなかった?

 気のせいだよね。ちゃんとグラムって言ったよね。

 グラニューなんて甘そうな名前つけてないよね。

 

 えーと、戻すときはポケ〇ンっぽく……

 

「もういい、グラム、戻れ!」

 

 戻らない。

 グラムは僕の手にある。

 

 もう一度言っても戻らない。

 

 …………

 

「も、もういい……グラニュー……戻れ」

 

 ぼそっと言ったら、魔剣は消えた。

 

 魔剣の名前はグラニューに決まった。

 

 僕も心に悲しみが溢れ、絶望に打ちひしがれた。

 

 はっ! 

 い、いやいや、こんなことで打ちひしがれている場合じゃないでしょ!

 

 ゼンジを探しに行かないと。

 

 僕はリュックサックを背負い、意気揚々と部屋を出る。

 

 すると、怖い顔をした男の人が扉の前にいた。

 

 あまりに驚いて、悲鳴すらあげることが出来なかった。

 

「申し訳ありませんメイ様、驚かせてしまいましたね」

 

 と男の人はいった。

 

 何で僕の名前知ってるの? 外国の人に見えるけど、言葉分かるし、てか日本語? 色々聞きたいことはあるが、何も言葉に出来ない。

 だって僕コミュ障だし、こんないきなり出会った怖そうな人と会話するなんて難易度ナイトメアなミッション、クリアできるわけないよ。

 

「中々お越しにならないから、心配していたのですが、さあ来てください」

 

 腕を取られて連れていかれる。

 

 僕は混乱して全く抵抗できなかった。グラニューを出せばよかったのかもしれないけど、そんなことに頭が回らなかった。

 

 人がたくさんいる部屋に連れてかれる。

 

 そこから何の説明もなしに、色々質問をされた。

 税率をどうするだとか、一揆が発生したけどどうするだとか、罪を犯した家臣をどうするだとか。

 

 いきなり領主として仕事をさせるきなの!?

 神は誰か説明してくれる人がいるって言ってたけど、どこにもそんな人いないんだけど!?

 

 と、とにかく状況に流されちゃいけない。

 僕はゼンジを助けに行くんだから。

 

 でも領主のままだと、それは難しいかも……

 

 なら、話は早い。

 

 やめればいいんだ。

 

 僕は勇気を出して、息を深く吸いそして、

 

「僕は領主をやめます!」

 

 と宣言した。

 

 すると、冗談だろ? と言われたので、今度も力強く「冗談じゃないです!」と返した。

 

 部屋の中にいた人たち、たぶん今は僕の家臣となっている人たちか、その人たちはしばらく黙った後、大笑いし、

 

「それはいいやめちまえ!」「せいせいするぜ!」

 

 と予想外のことを言われた。

 何だか知らないけど、僕家臣から嫌われてたらしい。

 そういえば、領地を書いた紙に家臣からの初期好感度って項目があった気がする。確か悪いって書いてあった。

 ようは最初嫌われている状態でスタートして、それで今やめると言ったから、喜ばれてるのか。

 

 簡単にやめられそうだと思ったら、家臣たちが剣を抜いてきた。

 

 え、えーと、これどういう状況?

 もしかして殺すつもりなの?

 辞める奴は生かして出すつもりはないと? 

 

 ちょ! それは勘弁してくれ!

 

 剣を持った男たちが近づいてくる。

 

 そ、そうだ。

 

「いでよ! グラニュー!!」

 

 グラニューを僕は手に取り、そして部屋を駆け出した。

 

 物凄いスピードが出て、男たちは僕に全くついてこれない。

 今のグラニューはレベル1だけど、ここまで上がるんだ。

 レベルが99とかになったら、とんでもないことになりそうだね。

 猛スピードで走り、ベランダに出る。

 結構高い。

 

 普通なら落ちたら死ぬと思うような高さだけど、今の僕は大丈夫だと何となく確信できた。

 

 飛び降りて地面に落ちた。

 

 ちょっと痛いけど、本当にちょっとだ。怪我はしていない。

 ベランダには、間抜けな顔で僕を見る、男たちの姿が。

 

 僕は全速力でその場から立ち去った。

 

 

 だいぶ逃げた。

 

 街中にいるのだが、ここまで逃げれば大丈夫だろう。

 

 よし、これでゼンジを探しに行けるぞ!

 待ってろゼンジ!

 

 僕は歩き始めたが……その時、僕はとある間違いに気が付いた。

 

 …………あれ?

 

 よく考えたらさぁ……領主をやめる必要ってもしかしてなかったのかな?

 

 ……だってさ……家臣とか使えば探しやすくなるし、情報も手に入りやすくなるというか。

 

 ん?

 

 あれ? 僕いきなり盛大に選択ミスった?

 

 今更戻るわけにも……いかない……よね? 

 

 

 ………………………………………………………

 

 

 こ、こういう時こそ、僕の大好きな漆黒の双剣士のアルガのセリフを思い出すんだ!

 

 

 後悔するくらいなら、一歩でも前に進め。

 

 

「そ、そうだ! もう領主には戻れない! ならこの身一つで探しにいくしかない! さぁゼンジを探すぞ! 待ってろゼンジ!」

 

 異世界でゼンジを探す旅が始まった。

 



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第15話 坂宮徹

「ハハハ、最初は異世界に行くって最悪だと思ってたけど、案外悪くないな」

 

 坂宮徹は、心底愉快そうな表情でそう言った。

 

 異世界に転移した彼は、フラメリウムと呼ばれる大都市の領主となっていた。

 

 フラメリウムはラマク帝国と呼ばれる国の南に位置する都市だ。ラマク帝国の中でも最大級の都市のひとつである。

 

 この異世界はユーラシア大陸とほぼ同じ形であり、ラマク帝国はヨーロッパがある場所に位置している。

 巨大な帝国で、地球でいうとフランス、ドイツ、イタリア、スペイン辺りを合わせた場所が領土となっている。フラメリウムは、スペインのマドリードがある場所に位置していた。

 

 フラメリウムはとにかく豊かな場所で、人も多く、資源も多い、作物もよく育つ、特産品もあり商売も盛んにおこなわれていた。

 

 そんな土地の領主となっている徹は、贅沢三昧をしており自由気ままに暮らしていた。

 

(領主と言っても部下に任せておけば、何でもやってくれるし、正直やることはないからな。しかしこの都市には元々は俺以外の領主がいたのだと思うんだがな。なぜか俺が以前から領主をやっていたかのように全員が振舞っている。あの神が違和感を抱かせないように、何かしてるんだろうな)

 

 徹はあまり深く考えないようにした。

 

(うまい飯は食えるし、女は抱き放題。まあ、悪くはないが……女なんて現実でも誰でも抱けたし、飯も食いたいもんは食えた。この世界は娯楽が少なくて、正直これなら地球にいたほうがよかったかもしれないが……そういえば神は一番いい土地を治めていた奴の願いを何でも三つ叶えるとか言ってたよな。本当か分からないが)

 

 そう考えた徹の頭に何かが舞い落ちる。

 

 何だ? と思いながらそれを取った。

 

 徹の頭に落ちてきたのは、紙であった。

 それには現在の土地の順位が書いてあった。

 

(俺が一位ね。ふーん、初期の土地ではここ以上のはなかったのか)

 

 良い土地に来たが、クラスメイトにはここ以上の土地を引き当てている者もいる可能性もあると、徹は考えていたが、フラメリウムが最高の領地だったようだ。

 

(というとこのまま行けば、俺が一位で願いを叶えることが出来るわけか)

 

 最高のリア充である坂宮徹であるが、願いはそれなりにある。

 

(まず元の世界に戻るというのは、欠かせないな。あとはやっぱ、サッカーの才能を上げるとか、頭を良くするとかか?)

 

 基本的になんでも優秀な徹だが、あくまで優秀で一番ではない。

 

 彼は小学生の時は、サッカー選手になって海外のクラブに行って大活躍するという夢を持っていた。

 

 小学生までは一番だったのだが、中学生になると本当に凄い人物を目の当たりにして自分には才能がないということを思い知った。

 

 勉強でも一位になりたいのだが、中学生時代からだいたいいつも三位で、上には上がいるということを思い知っていた。

 

 人気という意味では常に一位だった徹だが、ほかのことでは一位になることは出来なくなっていた。

 

(クラスの連中にまともに領地経営なんて出来ないだろうし、最初に優秀な土地を引いた俺がたぶんこのまま行くじゃないのかな? それで本当に願いが叶えられるのか……)

 

 徹はそう予想した。

 

(あの体操着泥棒には感謝しないといけないかもな。あのクズがこのSランクの土地を引いてくれたおかげで、俺はこの土地に入れたんだからな。奴が平凡な土地を引いてたら、一位になれないところだった

 それであいつは領民0の土地か。もう死んだかなもしかして。まあ、同情はしないけどな。罪を犯した罰だ。ざまぁって奴だな)

 

 クックックと徹は心底愉快そうに笑い出した。

 

 

 〇

 

 

「さぁて、どうなるかなぁ?」

 

 遥か異空間。複数の画面が映し出されていた。

 

『神』はその画面を見て、異世界に転移させた人間たちが領主になっている様子を観察していた。

 

「意外と領民0の土地に行った子が、上手くやってるね。一歩間違えたら死んでた場面もあったけど、何とか機転を利かせて乗り切ったし、それで仲間を増やしたりもしてたし。生産スキルってのが案外良かったのかもね」

 

 善治が健闘している様子を見て、神はそう呟く。

 

「そして、フラメリウムの領主になった子。思った通り凄く浮かれてるね。自分の勝利を確信しているみたいだ」

 

 にやにやと笑いながら、徹の様子を観察する。

 

 神だけが知っていたのだ。

 

 この領地にはこれからとんでもない災厄が訪れるという事を。

 

「どういう反応をするのか、凄く楽しみだなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 



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第16話 肉

 それから四日目と五日目、ゴブリンを狩って狩って狩りまくった。

 

 計九体のゴブリンを狩ることに成功した。

 

 魔石は一個はいざという時にとっておき、残り八個でホムンクルスを八体作成した。これで合計十一体だ。

 

 これで生産スキルレベルが10に上昇。

 それによりレシピノートがまた厚くなり、作れる物が増加した。

 

 鉄を使った装備を作成可能になる。

 さらに鉄鉱石さえあれば、鉄のインゴットを生産スキルで作ることが可能なようだ。

 

 家も、普通の家から大きい家が作成可能になった。

 俺的には今の家で十分なのでまだ作成する気はない。

 必要な木材量も多いしな。

 

 特殊ホムンクルス強化ポーションというのも作れるようになっているみたいだ。

 素材は低級ホムンクルス一体で一個、中級で二個、高級で三個と作れると書いてある。

 ホムンクルスを犠牲にしなければ作れないポーションってどうなんだ……?

 まあ、寿命間際のホムンクルスを使うのが合理的かもしれないが……流石に抵抗を感じるよな。

 

 あと、弓と矢が作れるようになった。

 糸がないので今は作れない。

 

 糸は羊毛や亜麻、木綿などを集めると作れるようだ。

 

 ちなみに糸を使うと、布を作成可能である。

 布を作れば、服の作成も出来る。

 

 現在俺は転移したときに着ていた学生服を身に着けている。

 

 まだ洗ったりはしておらず、当然クサイ。

 

 水はあるので洗ってもいいのだが、その間、全裸で寒い思いをしなければならないので、我慢しているという状況だ。

 

 汚い以前に、森を歩き回ったおかげで、枝などに引っ掛けて所々ボロボロになっている。

 

 新しい服は早く作りたいところだ。

 

 俺は新しく作ったホムンクルスに命令を与えた。

 

 まず鉄鉱脈の捜索と、見つけたら鉄鉱石を持ってくるように命令した。

 二体に同じ命令を与える。石のツルハシを持たせて探しに行かせた。

 

 次に、木綿、亜麻、羊の捜索だ。

 

 木綿と亜麻は植物なので種を作って栽培も出来るかもしれない。

 まあ、でもそんなに大量にはいらないか。

 食う物を優先にしたいので、栽培はしないでおこう。

 二体のホムンクルスに捜索を命じた。

 

 残りのホムンクルスは四体。

 二体に石材と木材集めを命じた。

 

 俺だけが住むのなら、大量に家は必要ないがここに一番になるような領地を作るという目標を達成するには、家は必須である。

 

 なので木材をまだまだ集める必要がある。

 

 そして、残りの二体には狩りを手伝って貰うことにした。

 

 これで一回の狩りで、運べる量が多くなるな。

 そろそろ栄養ポーションと小リンゴだけの食事には飽き始めてきていたので、狩りで運べる量が多くなればもっと色んなものを食べることが出来るようになるだろう。

 

 とにかく六日目の今日も狩りを行う。

 森にいるゴブリンを根こそぎ狩りつくしてやる。

 

 

 〇

 

 今日は不猟でゴブリンと出くわさなかった。

 豹鹿を二匹と、角の生えたウサギに出くわして、それを全部狩った。

 

 角の生えたウサギといえばアルミラージなので、アルミラージと呼ぶことにした。

 

 収穫物を家に持ち帰る。

 

 ゴブリンの肉も結構余っているし、これだけ獲れれば自分もいくらか食ってもいいだろう。

 

 俺はホムンクルスに解体をお願いした。

 

 石のナイフとそれから斧を使って解体をする。

 割と切れ味があり皮や肉も切ることは可能のようだ。

 

 首と足を斧で切り落とし、それから皮を剥がしていく。

 

 石なのでナイフの切れ味はあまり良くなく、かなり苦労していたが何とか剥がすことに成功。

 

 そして肉を切り分けていく。これも相当苦労していた。

 解体には数時間かかったが、最終的に真っ赤な美味しそうな塊肉がいくつも出来た。見た目は牛肉っぽい。

 

 全部は一人では正直食べられそうにないな。

 

 肉を干して干し肉にすれば、長持ちするかもしれないが、どうやればいいか全くわからん。生産スキルのレシピにもないし。

 

 そういえば、ホムンクルスは氷の球を出すアイスボールって魔法を使えるんだったな。

 一日三回しか魔法は使えないようだが……何体かのホムンクルスに保存用のアイスボールを出す役を与えるのもありかもしれない。

 まあ、今のところは余裕はないけどな。

 

 さて焼くために火を点けないといけないよな。

 

 俺はホムンクルスが採ってきていた木を組む。

 燃えやすいよう、細い木の枝も置いた。

 

 これに魔法を使って火をつけるよう、ホムンクルスに指示をした。

 

「了解」と返事をして、スモールフレイムを使用した。

 

 小さい火の球が木に当たる。

 まずは枝から燃え、それから太い木に火が燃え移り、火が点いた。

 

 よし、火を付けられたな。

 

 これで………肉を焼くがどうやって焼くか………?

 

 そう言えばレシピに、石槍ってのがあったな。

 

 これを作って、槍の先端に肉をさして焼くか。

 

 俺は石槍を作成する。

 

 先端に肉を突き刺して、それを火にくべて肉をあぶった。

 

 肉の焼ける美味しそうな匂いが漂ってくる。

 野生動物だし、変な病気を持っていそうで怖いので念入りに焼いた。

 

 そして数分焼き続けてもう良さそうだった。

 

 少しだけ冷まして、肉にかぶりつく。

 

 うまい。

 

 生臭い感じもするものの、美味しかった。

 味はほぼ牛肉である。結構高級な肉も食べたことはあるが、これが人生で食べた肉の中で一番うまく感じたかもしれない。よっぽど肉に飢えてたんだな俺は。

 

 それから肉を腹いっぱい食べた後、夜になったので寝た。

 

 六日目は久々の肉を食べられた幸せに、幸福感を感じながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第17話 来訪者

 七日目、家の中で俺は目覚めた。

 

 家が出来てからはチョウとタンと一緒に寝ている。

 寝息が聞こえるので、まだ目覚めていない。

 

 起き上がり俺は背伸びをした。

 

 昨日の余った肉は一旦アイスボールを使わせて、氷と一緒に貯蔵庫に寝かせておいた。

 冷たい場所で保存したとはいえなるべく早く食べておきたいので、朝も豹鹿の肉を食べることにした。

 

 ホムンクルスに肉を焼かせて食べる。

 流石に二日連続だと、肉の質があまり良くないことが気になるが、栄養ポーションだけの生活よりは数倍マシだ。

 

 焼いているとチョウとタンがやってきたので、二匹にはアルミラージと余った豹鹿の肉を上げた。

 いつもゴブリンだがそれだけだと二匹も飽きるだろう。

 ほかの肉も食べさせないとな。

 

 今日はホムンクルスに採ってきてもらっていた栄養草がかなりたまっていたため、これらを栄養ポーションと種にすることにした。

 

 栄養草は全部で五百四本あった。

 二十五個の栄養ポーションと五百個の栄養草の種を入手。

 

 これにより生産スキルのレベルが12まで上昇した。種を作るのは生産スキルレベルを上げるには結構いいかもしれない。

 

 作っているだけで結構時間がかかり、もうすでに昼である。

 一旦栄養ポーションを飲んで腹を満たした。

 チョウとタンには昼はゴブリンの肉を与える。

 ゴブリンの肉もアイスボールで冷やしていたので、少し温めてから与えた。

 

 昼飯を食べた直後。

 ホムンクルスが二体帰還してくる。

 

 手に黒い石のようなものを持っている。

 あれは……

 

「鉄鉱石を持ってまいりました」

 

 そう言った。

 意外と早く鉄鉱石を見つけてきたようである。

 俺は石を受け取る。さすがに結構重い。

 

 本物かどうか分からないので、レシピノートを確認してみると、アイアンインゴットのページの作るの文字が光っていた。

 

 本物に間違いないだろう。

 

「よくやった。そういえばツルハシはどうした」

「壊れました」

 

 採掘する過程で壊れたのか。

 そもそも石で出来ているから岩石を掘れるか疑問だったが、一応採れはしたようである。あまり質のいい鉄鉱石ではないのかもしれないな。

 

 量はあまりないので、剣や盾などの武器、斧、ツルハシなどの道具は作れないだろうが、ナイフくらいは作れそうだ。

 昨日の調理で分かったが、石のナイフで調理をするのは非常に面倒だ。

 鉄のナイフがあれば、もっと楽に切れて簡単に調理が出来るだろう。

 

 俺は生産スキルで、鉄鉱石からアイアンインゴットを作成した。

 二本作ることが出来た。

 

 そのあと、鉄のナイフを作成する。俺の予想通りナイフ以外の物を作るには、インゴットの数が足りないようだ。

 

 ナイフは一本で作成可能であるので、早速作成した。

 

 これで肉を切りやすくなったな。

 

 鉄鉱石を採って貰ってきたホムンクルスたちには、もう一度同じ鉄鉱脈まで行って鉄を採ってきてほしいがツルハシがない。

 作ろうと思ったが石材が枯渇していたため、最初に石を集めて来るよう命令を出した。

 

 石を集めてくるまで待っているのも何だし、一旦狩りに行くか。

 

 そう思っていると、リラックスしていたチョウとタンがいきなり「グルル……」と唸りながら牙を剥いて臨戦態勢をとった。

 

 もしかしてマタタビスプレーの効果が切れてたか!?

 

 ビビる俺であったが、二匹の視線の先にあるのは俺ではなかった。

 遠くの方に何かがいる。視力があまり良くないのでくっきりとは見えない。

 

 徐々にこちらに近付いてきて、正体が明らかになってくる。

 

「あれは……人か?」

 

 人影のように見えた。

 ここで人と出会えるのはありがたいことである。

 町の場所などを教えてくれるかもしれない。

 でも、そもそも言葉とか通じるんだろうか?

 

 本来は家臣などがいる領地の領主をするはずだし、言葉が通じなければ務まらないので、神の力で言葉が通じるようにしているとは思うけど……

 ただ、領民0の土地に飛ばされた俺だけは例外で、通じないかもしれない。

 

 人影はこちらに近付いてくる。

 

 人数は九人。

 剣や弓などを持って武装しており、格好はボロボロの服を身に着けている。

 全員男でお世辞にも上品そうな人間には見えない。

 顔がごつくて髭を生やしている白人だ。

 

 ……こいつら山賊とか盗賊だとかいう良からぬ輩なんじゃねーのか?

 

 いや見た目で判断するのも……

 

 そう思っていると、集団の一人が弓を構えてこちらに射ってきた。

 

 うお! や、やべ!!

 

 咄嗟に俺は家の中に逃げ込んだ。

 さっきまで俺がいた場所に矢が突き刺さる。

 

 あいつら絶対盗賊かなんかだろ! 完全に殺す気じゃねーか!

 金目のものはないぞ俺の家に!

 

 ど、どうする? 九人もいるぞあいつら。

 

 俺はまるで戦えないので、こちらの戦力はチョウとタンと、ホムンクルスだけだ。勝てるのか??

 

 問答無用で殺しにかかってくるような奴らだし、話し合い何て出来そうにない。

 

 悩んでいるとチョウとタンが盗賊たちに飛びかかっていった。

 命令はしていないが向こうから攻撃してきたので、敵と判断して排除しようとしているのだろう。

 

 慌てて外に出て止めようと思うが、時すでに遅し。

 二匹は盗賊に接近。

 

 チョウとタンがやられる! という俺の心配はどうやら杞憂だったようで、あっさりと盗賊の一人を爪で切り裂く。

 死んではいないようであるが、大けがを負い倒れた。

 

 仲間が倒れ盗賊たちは動揺している。

 

「ホムンクルス! チョウとタンの援護をするんだ! 一番威力のある魔法を使え!」

「了解しました」

 

 ホムンクルス二体はアイスボールを使用し、盗賊たちを攻撃。

 頭に直撃し、盗賊は倒れる。死んだのか気絶したのかは分からない。

 

 反撃を予想していなかったのか、盗賊たちは武器や怪我人を置いて一目散に逃げだして行った。

 

 

 

 

 



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第18話 袋の中に

 盗賊たちは逃げていった。

 

 しかし、あんなにあっさりやられるのなら、なぜ戦いを仕掛けてきたのか。

 

 遠くからではチョウとタンが虎だという事が分からなかったのか。

 もしくは、チョウとタンの実力を甘く見ていたのか。

 

 まあ、どっちでもいいが、怪我している盗賊どもはどうしようか?

 ちょっと様子を見たが、死んではいないが気絶しているようである。

 あのまま放置……というわけにもいかないし……

 

 生命力ポーションはあるし、治療してみてから町の場所などの情報を尋ねてみることも出来るが……

 

 いや、危険だろう。

 ちょっと隙が出来て危害を加えられるかもしれない。

 

 そもそも、個人的に助けるという事をしたくはない。

 こっちが何もしていないのに、いきなり命を取ろうとしてくるような連中だ。

 碌な人間じゃないだろう。

 

 しかし、自分の手で殺すというのも流石に気が引ける。

 チョウとタンの餌に……は駄目だな。グロいし。そもそも人の味を覚えさせないほうがいいだろう。

 

 少し悩んで、ホムンクルスたちに森のど真ん中に捨てに行かせる、という方法を思いついた。

 

 これなら俺が直接殺すわけではないし、死ぬところも見ずに済むので抵抗感もない。

 確実に死ぬわけではないが、まあ生き残るのは難しいだろう。

 

 俺はホムンクルスに、なるべく森の深いところに捨ててくるように命じた。

 

 倒れている盗賊は四人いたので、一旦木材集めを行っているホムンクルスの作業を中止させて運ばせた。

 

 とりあえずこれで盗賊は処理できたな。

 

 そのあと、俺は連中が落として行った武器などを拾う。

 

 鉄の剣や槍をゲットした。

 

 これは割といい収穫であった。

 

 あとは……ん?

 

 何やら大きな袋を発見した。

 

 これも連中の持ち物だったのか?

 

 近付いてみるといきなり袋がもぞもぞと動いた。

 俺は驚いて思わず「うわっ!」と声を上げる。

 

 びっくりした。何が入ってるんだこれ……

 

 生き物が入っていそうだけど……何か危険な奴でも入ってるのか?

 

 確認……してみるか、怖いけど……

 

 念のためチョウとタンを近くに呼び寄せて、袋を開けることにした。

 

 袋の口は紐で縛られている。

 

 恐る恐る紐をほどき、中に入っているものを見た。

 

 最初に見えたのは白い肌と……それから金色の長い髪……

 水色の瞳……布でふさがれた口……

 

 に、人間じゃん!!

 

 しかも、女性だ!

 

 怯えたような目つきでこちらを見ている。

 

 この女性だけでなく、もう一人金髪の幼女もいた。

 

 あ、あいつら人攫いのような真似もやってたのか。

 

 かなりの外道だったようだ。

 

 口を縛られてかなり苦しそうである。

 早く解放してあげよう。

 

 俺は袋から女性と幼女を袋の中から出して、二人の口をふさいでいた布を取る。

 

 すると、苦しそうに咳をしながら口から布の塊を吐いた。口の中に押し込まれていたようである。

 

「え、えーと、大丈夫ですかー?」

 

 俺がそう尋ねるが、二人は怯えた表情でこちらを見ている。

 

 女性の方は長い金髪の白人の美女だ。年齢は二十代前半くらい? よく見ると胸が大きく凄くグラマーな体型をしている。

 幼女の方は同じく金髪で髪は短い。この子も将来は美人になるんだろうなぁと思うくらい顔は整っている。

 

 同じ金髪で顔も似ているので、恐らく親子だと思う。

 

 俺の問いに返事はしてこない。

 

 言葉が通じていないのだろうか?

 それとも返事も出来ないほど怯えているのだろうか?

 

 しかし、なぜこんなにも怯えられているのか。

 

 ……そういえば俺は怖い顔をしていたな。

 

 さっきの連中の仲間だと勘違いされているのかもしれない。

 

 若干傷ついていると、よく見ると二人の視線は俺に向けられていないことに気が付く。

 

 チョウとタンを見ているようだ。

 

 そういえばチョウとタンって虎じゃん。俺はもう慣れたけど、普通なら初見だとちびるくらい怖いよな虎って。

 俺の顔なんかにビビってる暇はないよな。

 

 俺は安心させるため、最初にチョウとタンの頭を交互に撫でて、

 

「こいつら懐いてるから、人間には危害を加えないから安心してください」

 

 とチョウとタンの安全性をアピールした。

 言葉が通じているのかは分からないが、通じていなくてもある程度言いたいことは伝わっているはずだ。

 

「とらさんさわっていいの?」

 

 幼女がたどたどしい口調でそう言った。

 完全に日本語だった。

 どうやら言葉は通じるようである。

 何で日本語なのかというツッコミはしないでおこう。

 多分神が何かしてるんだろう。

 

「ああ、触ってもいいぞ」

 

 恐る恐る幼女が近づいてくる。

 さっきまで震えていたのに、この変わりよう。中々肝の据わった子である。

 

「ちょ、ちょっとマイナ!」

 

 母親と思わしき女性が止めようとするが、マイナと呼ばれた幼女はチョウの方に近付いてくる。俺はチョウに絶対に危害を加えないよう、念を押した。

 

 幼女がチョウの体に触る。

 

 最初は少し怖がってもいたが、触っても何もしてこないと分かると、

 

「わ~もふもふだ~」

 

 チョウの体に抱き着き始めた。

 

「ねーねー。おなまえなんていうの?」

「そいつはチョウだ。こっちがタンだ」

「チョウちゃんっていうんだ。のっていい?」

「乗りたいのか……? 良いぞ」

「わーい」

 

 幼女はチョウの体にまたがる。

 そして、「はしれー!」と命令し始めた。

 チョウは少し面倒そうであるが、いう事を聞いて草原を走り始める。幼女の笑い声が草原に響いた。

 走り出す前にあまり遠くにはいくなと、チョウに命令した。

 

 いやあの幼女順応早くないか。子供なんてそんなものなんかな。

 

 母親と思わしき女性は唖然としてその様子を見ていた。

 

「あ、あの本当に大丈夫なんですか?」

「ええ、懐いてますので。ていうか、結構簡単に懐いたんですが、ほかに飼っている人いないんですか?」

「いや、私の記憶する限り一人も……」

 

 そうなのか? マタタビスプレーをかけただけで懐いたのだが。

 マタタビの効能が知られていないのか、もしくは生産スキルを使って加工しなければ、懐くという効果が得られないのかどちらかだろうな。

 

「……あの、もしかしてあなたは私たちを助けてくれたのでしょうか?」

「俺っていうか、チョウとタンなんですけど。とにかくその袋を持ってきた盗賊っぽい連中は追い払いましたよ」

「そ、そうなんですか。あ、ありがとうございます。ほんの数時間前、いきなり捕まって、口をふさがれてからマイナと一緒に袋に詰められて……これから奴隷にされるか、もしくは慰み者にされるか、どちらかだと思って絶望していたんです。本当にありがとうございました」

「いえいえ、助けられたのなら嬉しいです」

 

 そう言っていると、チョウが幼女を乗せたまま戻ってきた。

 

「たのしかったー!」

 

 と笑顔で幼女はそう言った。

 話を聞く限りトラウマになってもおかしくない目に遭ったのだと思うのだが、相当切り替えの早い子だなこの子。

 

「あ、そうだ、私はアイナで、この子はマイナと言います」

「俺は鳥島善治です」

「トリシマゼンジさん? 長い名前ですね」

「え? いや、善治が名前で鳥島は苗字です」

 

 もしかしてこの世界には、苗字という概念がないのか?

 

「あ、そ、そうですか。うっかりしてました」

 

 この人が天然なだけのようだ。

 

「ねーねー、タンちゃんにものっていい??」

 

 マイナが尋ねてきた。

 

「こらマイナ、迷惑でしょ!」

「えー、たのしかったのに。おねぇちゃんものれば?」

「駄目です。虎さんも乗られたら重くて苦しのよ」

「そっかー」

 

 母親に怒られてマイナちゃんは少し反省を……

 

 いや? あれ? さっきおねぇちゃんって……

 

「姉妹なんですか?」

「はい、そうですよ。マイナは私の妹です」

「あ、そうなんですか」

「……あの、もしかして親子と思ってましたか?」

「お、思ってませんよ?」

「それならいいのですが。私、十五歳なのに二十歳くらいに見られることが多くてですね」

 

 十五なのか?

 俺と同い年じゃないか。

 凄く大人びてて、全くそうは感じなかった。

 

「……いま、驚きませんでした?」

「き、気のせいです」

 

 何とか誤魔化した。

 

「改めて今回はありがとうございました。ほらマイナもお礼を言いなさい」

「おにぃちゃんありがとう」

 

 二人はペコリと頭を下げてそう言った。

 



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第19話 初めての領民

「あの、ところでここはどこなのですか?」

 

 アイナがそう尋ねてきた。

 確かにいきなり袋に詰められて連れてこられたのでは、ここがどこだかなんて分からないだろう。

 

 しかし、俺は転移させられてここに来たので、自分でもここがどこだか知らないしな。

 

「俺もここがどこだかは、分からないんですよ」

 

 俺は正直に答えた。

 

「どういうことですか?」

 

 異世界転移してここに来たと言っても信じるか分からないし、ここに来る前の記憶を失っているという事にしておこう。

 

「実はここに来る前の記憶を失ってしまっていて……気づいたらここにいたというか」

「ええ!? それは大変じゃないですか」

「はい、結構大変です」

「この家はどうなされたんですか?」

「これは自分で作ったんです。便利なスキルがあってですね」

「スキル……ですか。確か使える人が限られている珍しい力と耳にした記憶があります」

 

 スキルは一般人は持っていないようだな。

 

「正直どこに町があるかなんてのは分からないのです。家に帰りたいでしょうに申し訳ないです」

「あ、いや、家に帰りたいというわけではなく、純粋にここがどこだか気になっただけなんです。帰る家なんてどこにもありませんし……」

 

 アイナの表情が少し暗くなる。

 迂闊には聞いてはいけないような事情がありそうだ。

 

「あの、助けてもらってお願いをするのは恐縮なのですが、しばらくここに置いてもらえないでしょうか?」

 

 そうお願いをしてきた。

 

「ここにですか? でも……」

 

 領民を増やしたいという思いはあったが、今は本当にまだまだ生活のレベルが低いため、もっと生活レベルを上げてから増やそうと思っていた。

 

 現在は飯も美味くないし、服も替えがないし、そもそも食料は足りるのかも疑問だ。

 

「私たち少し事情があって、住んでいた町に居場所がなくなってしまい、新しい場所を探して当てもなく彷徨っていたんです。頑張って働くので、ここに置いてもらえないでしょうか?」

「え、えーと、ここは正直飯も上手くないし、生活も不便だし、正直暮らしにくいと思いますよ」

「あ……やっぱり迷惑ですよね……」

 

 俺が色々理由を言って断ろうとしていると思ったみたいだ。

 いや迷惑ではないんだが……うーん、やっぱり行く当てもないってのに、断るのは可哀そうだしな。

 

「いえ、そんなことはないです。あの、こんな場所でいいのなら、いくらでもいて構いませんよ」

 

 俺は二人を受け入れることにした。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 俺以外誰もいなかった土地に、新しい領民が住むことになった。

 

 

 〇

 

 

 アイナとマイナが住むことになったので、俺は家を作ることにした。

 ちょうどホムンクルスに集めさせていた木材があれば、家を一軒作ることが可能だったので、作成した。

 生産レベルが家を作成して13になる。家のような大きいものを作ると、経験値が上がりやすくなるようだ。

 

「す、すごい、一瞬で家が……」

「すごーい。どうやったのおにぃちゃん」

「生産スキルを使ったんだ」

「今のがスキルなのですか……家を一瞬で作るなんて、大工さんがいらなくなりますね」

 

 アイナとマイナは俺のスキルを見てかなり驚いている。

 

「これからはここに住んでいいから。家具も作れるけどベッドとかは作れないから、過ごし辛いかもしれないけどさ」

 

 歳も同じで、この領地に住むということで、ため口に変えた。アイナの方は相変わらず敬語のようだが。

 

「住まわせていただけるのですか?」

「まあ、だから作ったんだし」

「ありがとうございます……住む家まで作ってくださるなんて……」

「あの木は家を作るために集めていたものだし、気にしなくていいよ」

 

 一緒に住むというのも色んな意味でまずいしな。

 

 家を作っていると、盗賊どもを森に放置しに行ったホムンクルス四体が帰還してきた。

 

「な……何ですかあれは……」

「これはホムンクルスって言って、スキルで作った奴なんだ。働いてくれる凄い便利な奴らだ」

「へ、へー」

「マイナよりちっさい。かわいい」

 

 とマイナはホムンクルスの頭を撫で始める。

 

 俺は木材を集めていたホムンクルスに、再び木材を採ってくるように命令した。

 

「あの私にも何か仕事を頂けませんか? 何もしないのに住むわけにはいきません」

「仕事か……」

 

 うーん、そうだな。

 素材集めなどはやってもらいたけど、森は危険だし行かせるべきではないよな……

 

 となるとどうするか。

 

 何もお願いしないとなると、アイナも居づらいだろうしな。真面目そうな子だし。

 

 そうだ。畑仕事をお願いするか。

 

 さっき種を大量に作成したので、現在狩りに付いてきてもらっているホムンクルスを一体使い、畑を広げて植えるつもりだったのだが、アイナに任せられるのならやってもらいたい。

 力仕事になるけど大丈夫だろうか?

 

「実は畑を作るつもりなんだけど、力のいる仕事なんだけど大丈夫かな?」

「畑仕事ですか? 経験はないですが、大丈夫でしょうか?」

「えーと、俺も正直これでちゃんと生えてくるのか分からないけど、とりあえず耕して植えて水をやってる。耕すのが力がいると思うんだけど、やってみる?」

「やります!」

「マイナもおてつだいする」

 

 畑を耕すのは難しいだろうけど、マイナにも種を蒔いたり水をやったりは出来るだろう。

 

 一旦ホムンクルスがどうやって土を耕しているのかをアイナに見せて、同じことをやってもらった。

 結構力はあったようで、きちんと耕しているようだ。

 

 これならできそうだな。

 

 畑仕事はしばらくアイナとマイナにお願いしよう。

 

 

 

「あの、ところでここはどこなのですか?」

 

 アイナがそう尋ねてきた。

 確かにいきなり袋に詰められて連れてこられたのでは、ここがどこだかなんて分からないだろう。

 

 しかし、俺は転移させられてここに来たので、自分でもここがどこだか知らないしな。

 

「俺もここがどこだかは、分からないんですよ」

 

 俺は正直に答えた。

 

「どういうことですか?」

 

 異世界転移してここに来たと言っても信じるか分からないし、ここに来る前の記憶を失っているという事にしておこう。

 

「実はここに来る前の記憶を失ってしまっていて……気づいたらここにいたというか」

「ええ!? それは大変じゃないですか」

「はい、結構大変です」

「この家はどうなされたんですか?」

「これは自分で作ったんです。便利なスキルがあってですね」

「スキル……ですか。確か使える人が限られている珍しい力と耳にした記憶があります」

 

 スキルは一般人は持っていないようだな。

 

「正直どこに町があるかなんてのは分からないのです。家に帰りたいでしょうに申し訳ないです」

「あ、いや、家に帰りたいというわけではなく、純粋にここがどこだか気になっただけなんです。帰る家なんてどこにもありませんし……」

 

 アイナの表情が少し暗くなる。

 迂闊には聞いてはいけないような事情がありそうだ。

 

「あの、助けてもらってお願いをするのは恐縮なのですが、しばらくここに置いてもらえないでしょうか?」

 

 そうお願いをしてきた。

 

「ここにですか? でも……」

 

 領民を増やしたいという思いはあったが、今は本当にまだまだ生活のレベルが低いため、もっと生活レベルを上げてから増やそうと思っていた。

 

 現在は飯も美味くないし、服も替えがないし、そもそも食料は足りるのかも疑問だ。

 

「私たち少し事情があって、住んでいた町に居場所がなくなってしまい、新しい場所を探して当てもなく彷徨っていたんです。頑張って働くので、ここに置いてもらえないでしょうか?」

「え、えーと、ここは正直飯も上手くないし、生活も不便だし、正直暮らしにくいと思いますよ」

「あ……やっぱり迷惑ですよね……」

 

 俺が色々理由を言って断ろうとしていると思ったみたいだ。

 いや迷惑ではないんだが……うーん、やっぱり行く当てもないってのに、断るのは可哀そうだしな。

 

「いえ、そんなことはないです。あの、こんな場所でいいのなら、いくらでもいて構いませんよ」

 

 俺は二人を受け入れることにした。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 俺以外誰もいなかった土地に、新しい領民が住むことになった。

 

 

 〇

 

 

 アイナとマイナが住むことになったので、俺は家を作ることにした。

 ちょうどホムンクルスに集めさせていた木材があれば、家を一軒作ることが可能だったので、作成した。

 生産レベルが家を作成して13になる。家のような大きいものを作ると、経験値が上がりやすくなるようだ。

 

「す、すごい、一瞬で家が……」

「すごーい。どうやったのおにぃちゃん」

「生産スキルを使ったんだ」

「今のがスキルなのですか……家を一瞬で作るなんて、大工さんがいらなくなりますね」

 

 アイナとマイナは俺のスキルを見てかなり驚いている。

 

「これからはここに住んでいいから。家具も作れるけどベッドとかは作れないから、過ごし辛いかもしれないけどさ」

 

 歳も同じで、この領地に住むということで、ため口に変えた。アイナの方は相変わらず敬語のようだが。

 

「住まわせていただけるのですか?」

「まあ、だから作ったんだし」

「ありがとうございます……住む家まで作ってくださるなんて……」

「あの木は家を作るために集めていたものだし、気にしなくていいよ」

 

 一緒に住むというのも色んな意味でまずいしな。

 

 家を作っていると、盗賊どもを森に放置しに行ったホムンクルス四体が帰還してきた。

 

「な……何ですかあれは……」

「これはホムンクルスって言って、スキルで作った奴なんだ。働いてくれる凄い便利な奴らだ」

「へ、へー」

「マイナよりちっさい。かわいい」

 

 とマイナはホムンクルスの頭を撫で始める。

 

 俺は木材を集めていたホムンクルスに、再び木材を採ってくるように命令した。

 

「あの私にも何か仕事を頂けませんか? 何もしないのに住むわけにはいきません」

「仕事か……」

 

 うーん、そうだな。

 素材集めなどはやってもらいたけど、森は危険だし行かせるべきではないよな……

 

 となるとどうするか。

 

 何もお願いしないとなると、アイナも居づらいだろうしな。真面目そうな子だし。

 

 そうだ。畑仕事をお願いするか。

 

 さっき種を大量に作成したので、現在狩りに付いてきてもらっているホムンクルスを一体使い、畑を広げて植えるつもりだったのだが、アイナに任せられるのならやってもらいたい。

 力仕事になるけど大丈夫だろうか?

 

「実は畑を作るつもりなんだけど、力のいる仕事なんだけど大丈夫かな?」

「畑仕事ですか? 経験はないですが、大丈夫でしょうか?」

「えーと、俺も正直これでちゃんと生えてくるのか分からないけど、とりあえず耕して植えて水をやってる。耕すのが力がいると思うんだけど、やってみる?」

「やります!」

「マイナもおてつだいする」

 

 畑を耕すのは難しいだろうけど、マイナにも種を蒔いたり水をやったりは出来るだろう。

 

 一旦ホムンクルスがどうやって土を耕しているのかをアイナに見せて、同じことをやってもらった。

 結構力はあったようで、きちんと耕しているようだ。

 

 これならできそうだな。

 

 畑仕事はしばらくアイナとマイナにお願いしよう。

 

 

 

 

 

 



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第20話 町探し

 俺は狩りに行こうとしたが、よく考えればアイナとマイナだけを残して狩りに行くのは危険なので、ホムンクルスを二体護衛に置いていくことにした。

 

 結果的にホムンクルスの手伝いに狩りを手伝って貰う事は出来なくなったな。

 もっとゴブリンを見つけて、ホムンクルスを増やさないといけない。

 

 残ったホムンクルスには盗賊から取った剣と弓を持たせ、いつでも対処できるようにした。

 

 俺はチョウとタンを引き連れて、狩りに出かける。

 

 昼から狩りを始めたので、そこまで森を歩き回ることは出来なかったが、ゴブリンが七体共同生活している巣を発見し、チョウとタンで一網打尽にした。

 七体にでも圧勝する辺り流石である。

 

 ホムンクルスはもうその場で作成した。

 七体作成して、余ったゴブリンの肉運びを手伝わせる。

 

 ゴブリン以外の獲物は取ることは出来なかった。

 

 日が暮れ始めてきたので、急いで拠点に戻る。

 

 拠点に異常はなかったようで、アイナがまだ土を耕して畑を作成している。

 

「あ、お帰りなさい」

「ただいま」

 

 誰かにお帰りと言われたのは、この世界に来てから初めてだったので凄く感慨深いものがあるな。

 

「な、なんですかその死体は……?」

「ああ? ゴブリン……っていうのか分からないけど、毛むくじゃらの人型の生物の肉だよ」

 

 あくまでゴブリンは俺が勝手にそう呼んでいるだけだからな。

 

「毛むくじゃらで人型って、たぶんゴブリンだと思いますよ。見たことないけど、冒険者さんがそんな生き物の話をしていたのを聞いたことがあります」

 

 どうやらゴブリンで間違っていなかったようだな。

 

「それ食べるんですか?」

「いや……俺は抵抗あるし、人型だから。チョウとタンは喜んで食べるから、こいつらの餌にしてるんだけど」

「そうなのですか」

「あれ? そういえばマイナは?」

 

 周りにマイナがどこにもいない。

 どうしたのだろうか?

 

「マイナは疲れちゃって家の中で寝ています」

「そっか。頑張ってくれたんだな」

「いや……最初は頑張ってたんですけどすぐに飽きて、それからゼンジさんが残していったホムンクルスに興味が引かれたようで、色々お話していました。喋るんですね」

「喋るけど、俺以外の人とも喋るんだ」

「そういえば、ホムンクルス増えてませんか?」

 

 アイナは俺の後ろにいるホムンクルスを見ていった。

 

「ああ、こいつらゴブリンを倒したら、一体作れるんだ」

「そうなんですか。七体倒したんですね」

 

 ホムンクルスの数をアイナが数える。

 

 すると、家の扉がガチャっと開き、

 

「おねぇちゃんおなかへった~」

 

 と言いながらマイナが家から出てきた。

 

「あ、おにいちゃんおかえり~。チョウとタンもおかえり~。あ、あのかわいいのがふえてる!」

 

 さっきまで空腹で元気がなさそうだったが、俺とチョウとタン、ホムンクルスを見て少し元気が出たようだ。

 

「俺も腹が減ったし飯にしたいが……正直ここの飯はまずいからな……栄養ポーションって知ってる?」

「栄養ポーションですか? 生命力ポーションや魔力ポーションは知っていますが……」

 

 どうやら栄養ポーションはあまり広く知られていないようだ。

 アイナが無知なだけか、本当にあまり作られていないのかは分からないが。

 

「とにかくその栄養ポーションを飲んで腹を満たすんだけど、それがまずくてさ」

「食べ物で味がどうかなんてここ数年は気にしたことないので大丈夫ですよ」

 

 アイナが若干闇が深そうな発言をした。

 

 この子の人生には何があったか気になるが、まだ出会って一日も経過していないのに深く踏み込み過ぎない方がいいだろう。

 

「じゃあ、持ってくるから」

 

 俺は物置に保管しておいた栄養ポーションを三つ持ってきた。

 あと、小リンゴもいくつかホムンクルスが収穫してきていたので、三つ持ってきた。

 

「これが栄養ポーションですか? 一人一本ですか?」

「ああ」

「こんなんじゃおなかいっぱいにならないよ」

「それがこれ一本飲めば不思議と腹が満たされるんだ」

「うそー」

 

 マイナは疑っているようだ。

 俺は瓶のふたを開けて、マイナに栄養ポーションを渡した。

 

 マイナはごくごくと栄養ポーションを飲み干す。

 

「あ、ほんとだ! おなかいっぱいになった! どうして!」

 

 驚いている。

 あれ? 味に関しては全く何も言わないな。

 

「それまずくなかった?」

「え? うーん、おいしくはないけどきのうたべたのよりはおいしかったよ」

 

 一体昨日何を食べたんだ。

 

「私も飲んでみていいですか?」

「ああ」

 

 俺はふたを開けて、アイナに栄養ポーションを渡した。

 

 アイナはそれを飲む。

 

「あれ? 全然おいしいじゃないですか。あと、本当にお腹いっぱいになりましたね。不思議です」

 

 えー? 美味しいのか?

 

 俺が苦いの嫌いなだけで、ほかの人はそこまでまずく感じないのか? 

 いや、でもそんなレベルの苦さじゃないと思うけどな。

 俺も栄養ポーションを飲むが、やはりまずい、と再確認した。

 

 それから小リンゴも一緒に食べた。

 

「これはおいしいー」

「うん、おいしいね。私これは昔食べたことありますよ」

 

 案外レアなのか小リンゴは。どこにでもなっている実だと思っていたが。

 

「もうだいぶ暗くなってきましたね」

 

 食べ終わったら日が沈みきった。

 月あかりが眩しい満月の夜だったので、真っ暗というわけではない。

 

「おねえちゃんねむい」

 

 マイナが腹を満たして眠くなってきたようだ。

 

「じゃあもう寝るか。だいたい暗くなってきたら俺は寝てるしな」

「そうですね」

 

 俺たちはそれぞれの家に戻る。

 

 眠る前に新しく作成したホムンクルスの使い方を俺は決めた。

 

 まず拠点の防衛用に二体のホムンクルスを使ったので、二体狩りの手伝いに連れていきたい。

 

 あとは五体だが……実はさっき盗賊が来たことから、割と近くに人里があるのではと思い始めていた。人里がはるか遠くにあるのに、盗賊やる奴なんてたぶんいないと思う。

 

 生命力ポーションを作るための命の草もだいぶ溜まっているし、これなら作って売れば金にもなりそうだ。

 

 よし、三体のホムンクルスにどこかに町がないかを探して来てもらおう。

 

 残りの二体は……草原で狩りをしてきてもらおう。

 ホムンクルスの使うアイスボールが意外と強力であると分かったので、狩りに使えるかもしれない。

 領民が出来たので、食料をもっと採りたい。

 栄養ポーションをおいしいとは言っているが、やはり肉も食べさせてあげたいしな。

 

 俺は早速、ホムンクルスたちに命令をしたあと、眠りについた。

 

 

 



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第21話 町の名前

 八日目、相変わらず床の硬さには慣れない。

 早くベッドを作りたい。

 

 俺は外に出る。

 

「あ、おはようございますー」

「おはよう」

 

 朝早くアイナが挨拶をしてきた。

 

 アイナは畑を耕していた。

 

「いや、アイナ。頑張ってくれるのは嬉しいんだけど、こんな朝早くからやらなくても」

「いえ! 頑張らせていただきます! ここに置いてもらっている以上、サボることは出来ませんので!」

「いや、頑張って体壊しちゃったらまずいし、朝だから腹も減ってるだろ? せめて栄養ポーション飲んでから作業しなよ」

「あ、お腹は確かに減っていますが……分かりましたそうします」

 

 どうもアイナは真面目過ぎる性格のようだ。

 あまり働いて体を壊されたら正直困る。

 病院なんてないし、病気の知識もゼロ。

 生命力ポーションが治療に使えなかったら、どうしようもない。

 

 マイナはまだ寝ていたようで、アイナが起こしに行った。

 

 まだ寝るとぐずるマイナの声が家の中から聞こえてくるが、アイナが問答無用で叩き起こす。割と妹には厳しい性格をしているな。

 

 俺はアイナが起こしに行っている間、栄養ポーションを取りに行った。

 

「おにぃちゃんおはよー」

「おはよう」

 

 マイナに挨拶をしたあと、栄養ポーションを配り皆で飲んだ。

 

「さて、お腹も膨れた事ですし、頑張って耕します!」

「マイナはたねをうめるのー」

 

 二人で畑仕事をしに行った。

 

「あ、ゼンジさん。これ見てください」

 

 アイナが手招きをする。

 

 何だろうか?

 

 畑に行ってみる。

 アイナは地面を指さした。

 

 小さい芽が出ていた。

 

「お、生えてきてるじゃん」

「ゼンジさんが以前に植えていたのですよねこれ」

「うん。これで育つのか正直分かんなかったけど、良いんだなこれで」

「そういえば、これは育ったら何になるんですか?」

「栄養草って言って、さっき飲んだ栄養ポーションの原材料の草になるんだ」

「じゃあ相当大事じゃないですか! これはもっとやる気を出してやらなくては!」

 

 アイナはさらに張り切って作業を開始したので、「あまり無理はするな」と言っておいた。

 

 今日もホムンクルスを作るために狩りに行きたいが、その前に石材が割と集まっているので、ツルハシを十個作成した。

 

 石材集めを命令していたホムンクルスがちょうど戻ってきたので、一旦辞めさせる。

 

 そしてツルハシを持たせて、鉄鉱石を集めてくるよう新しく命令をした。

 

 ツルハシは使い捨てにして、集めさせ、ツルハシがなくなれば石材集めを行うよう命令した。少し複雑な命令のような気がするが、何も問題なく開始した。

 

 その後、狩りに行く。

 

 朝はゴブリンを発見できないどころか、ほかの動物とも出くわさなかった。残念である。

 

 一度拠点に戻る。

 

 まだアイナとマイナが畑仕事をしていた。

 一度やめるように行って、一緒に栄養ポーションを飲む。

 

「そういえば、アイナとマイナは町で居場所がなくなって、当てもなく彷徨ってたって聞いたけど、いつ頃町を出たんだ?」

 

 これを聞けば二人が住んでいた町が、ここからどのくらいの位置にあるのか、ある程度分かるので尋ねてみた。

 

「えーと、今日から四日くらい前ですね」

「え? じゃあ、ここからそんなに離れてないのか? てか、じゃあこの草原が何て呼ばれている場所かは心当たりあったりするんじゃないのか?」

「すいません、私地理には疎いんです。町から出たのも四日前が初めてのことで……」

「そうか。まあでも近くにあるって分かっただけでも嬉しいよ」

 

 これならホムンクルスも早いところ、町の情報を持ってくるかもしれない。

 

「ところでそこはどんな町なんだ?」

「フラメリウムという町です。かなり大きい町なんですよ」

「ふーん」

 

 大きな町か。

 それなら必要な物が色々売ってあるだろう。

 

 アイナから町の話を聞いた後、夜再び狩りに行く。

 

 今回もゴブリンは見つからず。際限なくいるというわけではないようだ。

 だいぶ狩りまくったので下手したら、この森のゴブリンたちを根こそぎとってしまった可能性も……いや、流石にまだ八日目だから全部狩ってしまったというわけではないだろう。

 

 収穫は豹鹿一匹と低調だった。

 

 暗くなってきたので拠点に戻ると、草原に狩りに行かせていたホムンクルスがシマコーンを二体狩ってきていた。

 以前狩ったシマコーンより大きい。

 前のは子供だったが、これは大人だろう。

 

 この大きさなら俺たちが食べる分の肉も、確保できるだろう。

 

 ホムンクルスにナイフでシマコーンの解体をさせて、火で焼いて食べる。

 

 肉は正直硬くてあまりおいしくはなかった。鹿の方が美味しかったな。

 

 でも栄養ポーションよりはましだ。

 

 アイナは美味しそうに食べていたが、マイナは硬すぎて食べられなかった。

 馬は刺身にして食うのが美味いんだが、流石に野生の馬を生で食う勇気はない。もしかしたら、野生でも安全なのかもしれないけど。

 

 飯を食べた後、アイナとマイナは眠りについた。

 俺は寝る前に一仕事する。

 

 鉄鉱石をホムンクルスが集めてくれていたので、それをアイアンインゴットにする。

 

 四つ作成できた。

 

 そして鉄のツルハシを二つ作成した。

 これなら石よりかは持つし、鉄鉱石も取りやすくなるだろう。

 

 あと、生産スキルが14に上がった。

 もう一レベル上がったら、15である。今までのパターンなら、作れる物が増えるはずだ。

 

 鉄鉱石を採りに行っているホムンクルスはまだ戻ってきていないので、ツルハシを取り換えるのは明日にしよう。

 

 今日の活動はここまでにして、俺は自分の家に戻った。

 



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第22話 スキルレベル15

 九日目と十日目はいつも通り森に行き、ゴブリンたちを狩っていった。

 二日間で狩ったゴブリンは三体。

 ホムンクルスを三体作成する。

 

 一体を拠点の防衛用に使用し、残り二体はアイナ達の畑仕事のサポートをお願いした。

 

 アイナたちには引き続き畑仕事をお願いしている。

 これから人を増やす場合、畑はあればあるだけいいから、広げられるだけ広げておきたい。

 

 そして11日目の朝、栄養草と命の草がだいぶ溜まっていたため、栄養ポーションと生命力ポーションを作成することにした。

 

 命の草は種は作らず全て生命力ポーションにして、栄養草は栄養ポーションと種にする。

 

 生命力ポーション33個、栄養ポーション32個、種を百個作成した。

 

 これで生産スキルレベルが15に上がった。

 

 これでレシピノートが厚くなり、作れる物が増えた。

 

 中級ホムンクルスというのが作れるようになったようだ。

 今、俺が作っていたホムンクルスたちは低級である。

 たぶん中級だと性能がいいのだろう。

 何らかの肉三十キロと、魔石が材料として必要だそうだ。

 

 低級ホムンクルスの作成に必要だったのは、小さな魔石で、中級には小さなという言葉が抜けている。

 ゴブリンから取れる物より大きい魔石が必要なのだろう。

 ゴブリン以外に魔石が採れる生物に心当たりはないし、現状では作成は不可能である。

 

 次は柵、防壁、タワーが作成可能になった。

 

 柵は木材が必要で、防壁には石材が必要だ。

 タワーは木材でも石材でも、どちらでも作れるようである。

 アイナとマイナが来たことだし、拠点の守りは固くした方がいいだろう。

 柵だと頼りないし、防壁と石のタワーを作るか。

 

 大きな家が作成可能になった。

 今住んでいるより一回り大きな家である。

 住民を集めるためには、家はまだまだ作成しないといけないので、この家もいずれ作ってみるつもりだ。

 

 魔力ポーションと、魔法の地図、服、靴下、鎧、小手、ジョウロ、網、釣り竿、など一気に色々作れるようになったのだが、現時点ではまだほとんどの物が作成不可能である。

 

 布や糸がないと作れないものばかりだからだ。

 魔法の地図は聖水五個と魔力紙一枚という、手に入れ方がまるで分からないものを材料としている。

 

 ちなみに魔法の地図の効果はレシピに書いてあり、地図がある場所から半径10㎞圏内の地図が書き出されるらしい。

 地図がある場所が動いたら、描きだされる場所も動く。

 便利な物なのでぜひ作成したい。

 

 町を探しに行かせたホムンクルスが戻ってこないことには、作るのは無理だけどな。

 

 それから特殊ホムンクルス二号『レヴィ』というのも作成可能になっているようだ。

 一号の『ベルフェ』を最初に作成しなければ、作成不可能のようである。

 同じく大きな魔力石が必要なので、まだ作成は不可能だ。

 

 新しく作れるようになったもので、現時点で作ることが可能なのは防壁だけだ。

 拠点の防衛力を上げるのは重要なので、ぜひ作っておきたい。

 

 今拠点にある石材の数では足りないので、狩りの手伝いをするホムンクルス二体に、石材集めをさせることにした。

 

 それからいつも通り、俺はチョウとタンを連れて狩りに出かけようとすると、ホムンクルスが一体戻ってきた。

 

 何の仕事をさせているホムンクルスか最初は分からなかった。

 

 そのホムンクルスは俺に近付いてきて、

 

「町を発見しました」

 

 そう言った。

 



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第23話 報告

 おお!

 

 このタイミングで町を発見してきたか。

 

 ……いや、でもちょっと早すぎないか?

 探しに行かせてから、まだそんなに時間経ってないぞ?

 

 まあ、ホムンクルスは不眠不休で動けるからな。

 それに常に駆け足ペースで移動できるようなので、移動速度も速い。

 早く見つけられても案外おかしくはないが……でもそれにしても早すぎる気がする。

 少し確認してみよう。

 

「その町は何日ほどで行けるんだ?」

「何日で行けるかは定かではありません」

「どういうことだ?」

「私が見つけて来たものは、看板です。分かれ道に、この先、大都市フラメリウム、と書かれた看板を発見しました。比較的新しかったので、正しい情報である可能性が高いと判断し、戻ってまいりました」

 

 町自体を見つけたわけじゃないのか。

 

 そういえば命令する時、見つけたらなるべく早く戻ってこい、的なことを言ったような気がするな。

 

 それを曲解したというのか。

 

 命令の解釈が俺の考えと違う場合、いつか何らかのミスをする可能性があるが、今回はでかした。

 

 大都市フラメリウムと書かれていたという事は、その先にアイナがいた町があると考えていいだろう。

 

「看板がある場所までは、ここからどれくらいでいける?」

「昨日の夜看板を見かけ、そこからついさっきここに到着しておりました」

 

 ホムンクルスの場合は休憩なしで走り続けてだから、人間が行く場合はもっと時間がかかるだろう。朝に行って夜になるころには着いているというくらいか。

 

 問題は看板がある位置から、フラメリウムまで距離だが……まあ、看板があるくらいだしそこまで遠くはないだろう。

 三日以内でいけると思う。

 

 町に行くとなると色々問題がある。

 

 まずチョウとタンをどうするかだ。

 アイナとマイナの最初の反応を見る限り、懐かせる方法が周知されていないから多分猛獣として見られると思う。

 町に入れてもらえるか正直分からない。

 殺される危険性もある。

 

 まあ、この二匹はお留守番をさせても、自分たちで何とか出来るか。

 そもそも俺が狩りに付いていってるのは、離れたら危険な気がするからだったからな。

 

 ホムンクルスが拠点を守っている今は、荷物持ちとして付いていっている。

 別に俺がいなくなったから、狩りが出来なくなるというわけではない。

 

 それから食料だ。

 今所持している栄養ポーションの数は五十一個である。

 

 一日三回飲むなら、三人合わせて一日九個消費する。五日しか持たない。

 少し我慢すれば一日二回に抑えることは出来るので、十日までなら普通に持つだろう。

 

 帰りはフラメリウムから、食料を仕入れる事ができれば何とかなると思うが……

 

 問題は生命力ポーションが売れるかどうかだな。

 

 一度アイナに値段を聞いてみるか。

 値段以外にも近々町に行くための準備の相談をしておく必要があるしな。

 

 アイナは畑仕事をしている。

 一旦中断してもらって、俺は町に行くという話をした。

 

「フラメリウムに行くんですか。今からですか?」

「今からではないけど、明日くらいには出発したいかな。あ、でも、何か事情があって街を出たんだろうけど、行っても大丈夫か?」

「そうですね……行きたくない場所もあるんですけど、フラメリウムは広いのでそこに行かなければ大丈夫です」

「そうか」

「お気遣いありがとうございます」

「ところで生命力ポーションをフラメリウムで売ろうと思うんだが、これの値段って分かるか?」

「生命力ポーションですか。冒険者の方達が買うもので、私のような一般人には馴染みの薄い物でして……正確には分かりませんが、結構高いという話を耳にした覚えがあります」

 

 不確定な情報なので鵜呑みには出来ないが、高い可能性があるようだ。

 

 値段は知らないが需要はありそうだな。

 

「よし、じゃあ準備をするか」

 

 最初に持っていたリュックサックに、栄養ポーションを詰めるだけ詰めて、そして、アイナとマイナが入っていた袋に生命力ポーションを詰めるだけつめた。

 

 リュックサックは俺が背負い、袋はホムンクルスに運ばせる。

 

 ホムンクルスは、俺と一緒に狩りをしていた二体、草原で狩りをさせている二体、鉄鉱石集めをしている二体、そして俺に町の場所を報告してくれた一体の計七体を連れていく。

 

 これだけ連れていれば、道中の安全を確保できるだろう。

 

 俺は準備を完全に済ませた。

 

 明日の朝に出発しよう。

 

 

 

 



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第24話 フラメリウム

 翌日、俺は拠点を出発する前に、チョウとタンに暫しの別れを告げる。

 

「しばらくここを空けるから留守を任せたぞ。餌は自分で獲れるな?」

「「ガウ」」

「拠点を襲うやつがいたら追い払ってくれ。ただし、相手が強すぎる場合は逃げるんだ。お前たちの命の方が大事だからな」

「「ガウガウ」」

 

 チョウとタンはかなり賢くて、俺の言葉を理解するから言いつけはきっちりと守るだろう。

 

 拠点はチョウとタンと、それから防衛用に三体のホムンクルスに任せよう。

 

 別れ際に「行ってくる」と告げて、アイナとマイナ、ホムンクルス七体と共に、拠点を出発した。

 

 

 〇

 

 

「チョウちゃんとタンちゃんといっしょにいきたかったなぁ」

 

 フラメリウムまで行く道中、マイナがそう呟いた。

 マイナはだいぶチョウとタンと仲良くなっていたようで、一時的とはいえ別れるのが少し辛いようである。

 

「町にいきなり連れて行ったら、騒ぎになるかもしれないから仕方ないわ」

 

 そう言って、アイナが慰めた。

 

 拠点を出発してから、現在数時間経過。

 看板を発見したホムンクルスを先頭にして歩いている。

 

 元々体力のない俺であるが、狩猟に採取にと毎日森を歩いたおかげで体力が上がっており、長距離を歩いてはいるが、そこまで疲れてはいなかった。

 

 アイナとマイナ、特にマイナは長距離を歩けるのか少し心配だったが、二人も結構苦労してきたからか、余裕で歩いていた。

 

 ここまで歩いて、敵と遭遇することはなかった。

 

 日が暮れてきたころ、看板に到着した。

 

「あ! この看板見覚えがあります!」

 

 看板を見てアイナがそう言った。

 

 アイナはフラメリウムから出て当てもなく彷徨っていたとのことで、道を歩いてここまで来てもおかしくはないのか。

 

「ここからフラメリウムまでどれくらいかかった?」

「三日くらいですね」

 

 三日か。

 栄養ポーションは全然足りる。

 遠すぎる場所じゃなくて良かった。

 

 それから少し歩き、暗くなってきたので野宿することにした。

 

 栄養ポーションをアイナとマイナと一緒に飲む。

 

 寒かったので焚火のそばで寝ることにした。

 

 敵が来たら対処できるように、ホムンクルスは常に臨戦態勢にさせて寝た。

 

 敵が来ることはなかったが、正直あんまり眠れなかった。

 

 アイナとマイナはぐっすりと眠れていたようだ。

 

 俺はかなり疲労がたまっていたが、アイナとマイナは元気に歩いていたので何とか気合を出して歩いた。

 

 二日目はある程度なれて、きちんと眠りに付くことが出来た。

 

 拠点を出発してから四日目。

 

 高い門が道の先に見えてきた。

 

「あそこがフラメリウムですよ! フラメリウムは町全体が防壁で囲まれているんです」

「中に入ることは誰でも可能なのか?」

「ええ、戦時中はそうはいかないと思いますけど、今は平和なので誰でも入れますよ」

 

 若干平和ボケな気がするが、それだけこの町が長く戦争をしていないということなのだろう。

 

 俺たちは門をくぐり、フラメリウムの中に入った。

 

 フラメリウムの通りにはたくさんの人が歩いていた。

 

 かなり人口は多そうだ。

 大都市と看板には書いてあったし、大きな町なのだろう。

 

 異世界の町の風景はやはり独特で、人間じゃない違う種族の者も歩いていた。

 

 デカい緑色の奴がいるのだが、こいつを初めてみた時は魔物だ!? と肝を冷やした。

 アイナに尋ねてみると、「オーク」と呼ばれている種族らしい。

 オークと言えば豚の魔物で、敵というイメージがあるのだが、この世界では割と温和で優しい種族であるようだ。

 

 オークのほかにもいろいろな種族を見た。

 

 アイナには自分の顔の怖さについて一切指摘されず、その理由が気になっていたのだが、人間以外の種族がたくさんいる環境で育ってきたので、俺の顔自体にはそれほど強烈なインパクトを受けなかったからなのかもしれない。

 

「懐かしいなぁ……ってここを出てからそんなに時間たってませんでしたね」

 

 アイナが町並みを見てそう言った。

 

「そういえば、この町の中で行きたくない場所があるって言ってたけど、どこなんだ?」

「えーと……貧しい人が住んでいる区画があるんですが、そこには行きたくはないです。この門からはかなり遠い位置にあるので、行くことはないと思いますけど」

 

 貧しい人が住んでいる区画か……もしかしてアイナとマイナはそこに住んでいたのだろうか。

 そこで何かトラブルが起きて、町を出ざるを得なくなったということか?

 

「とりあえず市場に行こうか、場所知ってる?」

「はい、案内しますよ」

 

 俺たちは市場へと向かった。

 

 

 

 

 



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第25話 ポーションの値段

 市場へと向かう途中。

 

 煌びやかな服を身に着けた集団と遭遇した。

 全員が人間のようである。

 

 ほとんどが女性であるが、中央に一人だけ男がいる。

 

 って、あの男……

 

 坂宮じゃないか!

 

 あのイケメン顔は間違いない。

 

 制服ではなく、中世ヨーロッパ貴族が着るような豪華な服を身に着けている。

 女に囲まれて実に楽しそうだ。

 

 あいつフラメリウムの領主になってやがったのか?

 というか奴が強引に俺の紙を取り換えなければ、この都市の領主だったのか。

 

 女に囲まれている姿を見て、正直腹が立った。

 

 こちらに向かって歩いてくる。

 文句の一つでも言ってやろうと思ったが思いなおす。

 

 奴の中では俺は犯罪者である。

 

 生きていると分かれば何をされるか。

 牢屋に入れられる可能性もあるし、殺される可能性だってある。

 

 俺にはホムンクルスがいるとはいえ、こんな大きな町の領主に勝ち目はない。

 

「ちょっとこっち来て」

「え?」

 

 俺はアイナとマイナの腕を引き、道の隅っこに隠れた。

 

「どうしたのおにぃちゃん」

「ごめん、ちょっとだけ隠れないといけない」

 

 二人は顔に疑問符を浮かべていたが、俺が必死な表情をしていたからか詳しく理由は聞いてこなかった。

 

 俺は見つからないよう物陰に隠れて、坂宮が通り過ぎるのを待つ。

 

 坂宮は女性たちと話すのに夢中で、道の脇になど全く気にしていない。

 これなら見つかることはないだろうと安心していると、坂宮の会話が耳に入ってきた。

 

「それでさ、女の服を盗んだ男がいたんだよ。もろ悪人顔の男で、実際悪人なんだけど」

「その方はどうなりましたの?」

「俺が天罰を下してやった。今頃どっかで野垂れ死んでるかな? まあ、当然の結果だけどな」

 

 その会話を聞いて俺は怒りで我を失いそうになる。

 

 ふざけんなよ……何が天罰だ……

 

 飛びかかって殴りたいという強い衝動が湧いてきたが、何とか抑える。

 

 ここで殴りかかってもいいことは何もない……!

 

 今の俺は一人じゃなくアイナとマイナがいるし、拠点ではチョウとタンも待ってる!

 

 拳を強く握りしめ、何とか怒りを抑える。

 坂宮たちは通り過ぎていった。

 

「あのゼンジさん……」

 

 怒りで怖い顔をしていたのだろう。

 アイナとマイナは少し怯えている。

 

「ごめん、ちょっとお腹が痛くなって」

 

 俺は咄嗟にお腹を押さえた。

 

「ま、まあそれは大変です」

「あ……もう、良くなった。何だったんだろうアハハ」

 

 俺が笑うと二人も安心して笑う。何とか誤魔化せたようだ。

 

 とにかくあの坂宮にはやはり何か仕返しをしてやらんと、腹の虫がおさまらない。

 

 そのためには今は市場に行って物資を手に入れる。

 

 俺は決意を新たにし、アイナの案内に従って市場へと向かった。

 

 

 〇

 

 

 市場までは結構遠く一時間ほどかかった。

 

 かなり賑わっている。

 フラメリウムで一番人が集まる場所であるそうだ。

 

「ポーションなんかを売るときは、どこに行けばいいのな?」

「うーん、私も分かりませんね。ちょっと尋ねてみましょうか」

「そうだな」

 

 俺は近くの商人風の格好の男に尋ねた。

 

「ポーション? なら冒険者御用達のアーシャンって店があるからそこにいけよ。ってかあんたホムンクルス連れてんのか珍しい。そんな格好して高度な錬金術師なのか?」

「え? 違うけど」

「違うのか。ポーションも錬金術で作れるもんだし、てっきりそうだと思ったが。あれか、錬金術師のパシリってわけか」

 

 それも違うがこれ以上会話をするのは面倒だったので、反論はしなかった。

 

 ポーションだとかホムンクルスって本来は錬金術で作るものなのか。

 高度なって言ってたから、簡単にホムンクルスは作れるようなものではないみたいである。

 

 場所を尋ねると、こっちの道を行ったらあると、指を差しながら言ってきたため、俺はお礼を言ってその道に向かった。

 

 言われた道を歩く。

 するとアーシャンと書かれている看板を発見。

 

 中に入る。

 

「いらっしゃい」

 

 中年の男が店番をしていた。

 店の棚には色々な道具が置いてある。

 その中に生命力ポーションも確かにあった。

 色が少し違う。

 俺のポーションは真っ赤だが、これはピンク色である。

 

 栄養ポーションは置いていなかった。

 冒険者にも携帯食として需要はありそうだが、店にないということは、あまり出回っているものではないかもしれない。

 

「ここって生命力ポーション買い取ってくれるか?」

「売りに来たのか? 生命力ポーションは需要があるから、ドンドン買い取るよ」

「そうか良かった」

「ランクは何だね?」

「ランク?」

「何だ知らないのか。生命力ポーションには最低F最高Sまでの七ランクで、ランク付けされている。当然ランクが低ければ低いほど安い」

「分からないんだが」

「色の濃さで分かるんだが……まあ、俺が見るのがはえーから見せてみな」

 

 俺はそう言われて、生命力ポーションが入った袋を男に渡す。

 

「こんなにいっぱいかい。どれどれ…………!! Aランクじゃないか! これもこれも……どれもAランクだ! 全部Aランクじゃないか。こいつは凄いぞ」

「いくらなんだ?」

「Aランクは上級の冒険者が使うような代物だからねぇ。一個2万ゴールドはするね」

 

 それがどれだけ高いのかピンとこない俺。

 アイナは「えええ!?」と叫び声をあげる。

 

「高いのか?」

「高過ぎますよ! 2万ゴールドあれば一年は生活できますよ!?」

「それは大袈裟だろう。まあ、一般人の一か月の収入がそんなもんだな」

 

 それは結構、いや相当高いのでは?

 だって一個だぞ。ポーション一個。

 

「ポーション一個がそんなに高いのか?」

「こいつを買う上級の冒険者って奴らはスゲー金持ちなのさ。一回のダンジョン攻略で大量に消費するから需要は高いが、作れる錬金術師が少ない。あんたホムンクルス連れているし、凄腕の錬金術師なのかい?」

「いや違うが……これ全部買い取って貰えるか?」

「全部は無理だ。十五個なら買えるぜ」

「売った」

 

 即断で十五個ポーションを売って、計三十万ゴールドを手に入れた。



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第26話 買い物

「も、物凄い大金です……」

 

 三十万ゴールドは一つの袋には入りきらないので、三万ゴールドの入った袋を十個貰った。

 アイナがその袋を見て、目を丸くして驚いている。

 

「きんきらだぁ……」

「すごいです! ゼンジさん大金持ちじゃないですか!」

 

 2万が一般人の一か月分の稼ぎと言ってたから、三十万ゴールドは一般人の年収を少し超えたくらいなのだろう。

 

 日本の感覚で見ると、五百万円くらいだろうか。

 

 それだけあれば相当色々買えそうだな。

 残りのポーションも売ってもいいが、正直今回はこれだけあれば十分だ。

 ゴールドは重いし容量を取るので、これ以上売ったら買える品物が少なくなってしまう。

 

「まずは布だな。服は生産スキルで作れるから原料を買った方が安上がりだろうし。それから野菜を買って、種にしよう。ほか何か欲しいものある?」

「え? 私ですか? ゼンジさんのお金だし、ゼンジさんが買いたいものを買えば……」

「いや、これは俺の金ってよりあの拠点にいる人全員の金にするつもりだから。だからアイナとマイナのお金でもある」

「ええ!? 悪いですよそんな大金! 私何もしてないのに」

「いやいや、俺だけのために使う方が悪いよ。そう言えば話してなかったけど、俺はあの拠点にもっと人を集めて、村を作って、それから町にするつもりなんだ。これはそのための資金でもある」

「人を集めるんですか……確かに私たちだけでは少し寂しいですもんね」

「だろ? どうすれば集めれられるのか分かんないけどな」

 

 この町で居場所のない人を集めればいいだろうか。

 町中に募集の看板を立てたりするのが効果的だろうか。怒られそうではあるな。

 道を作る必要もあるだろう。

 

 まあ、まだ今の状態で人集めは不可能なので、今日やる必要はない。

 家を増やしたりしてから、方法は考えておこう。

 

「それでアイナとマイナは何か欲しい物はないか?」

「私は……やはり服でしょうか、それとベッドとか……」

「マイナはつえがほしい」

 

 杖?

 意外な物を欲しがっている。

 

「いやいや、ダメでしょ杖は。ほかのにしなさい」

「えー? マイナつえがほしいー」

「何でマイナは杖が欲しいんだ?」

「まほうつかえるようになりたいから」

 

 杖は杖でも、魔法の杖が欲しいのか。

 

「何で魔法が使いたいんだ?」

「おかあさんみたいになりたい」

「え? お母さんは魔法使いだったのか?」

 

 アイナとマイナの両親の話は、聞いてはいけないことのような気がしたので、全く聞いていなかったが、どうやら魔法使いの母がいるようである。

 

「確かに母は魔法使いでしたよ。でもマイナは母には会ったことないんです。だから憧れてて」

「そうなのか。アイナは憧れていないのか?」

「母と関わったことある人で、母に憧れている人なんて絶対にいませんよ」

 

 つまり性格に難があるという事だろうか。

 

 マイナは会ったことがないと言ったが死んだわけではなく、もしかして二人を放ってどこかにいったから、という可能性もあるようだ。

 

「魔法を使うには杖が必要なんですが、正直高いものですからね。初心者用の安い杖でも一万ゴールドはしますし。そんな高い物買ってもらわなくて結構ですよ」

「いや、でも魔法をやりたいってなら、やらせてあげたいな。三十万あるし一万ゴールドくらいは、使ってもいいぞ」

「かってくれるの?」

「ああ」

 

 俺は頷く。

 

「やったーありがとうおにぃちゃん!」

「ちょ、ゼンジさん! 本当にいいんですか!?」

「いいよ。二人には畑仕事もしてもらってるしな」

「いや、あれは住まわせてもらっているお礼なので、ここまでしてもらうわけには……」

「てか、今からダメって言ったらマイナ泣いちゃうぞ」

「うぅ……」

 

 アイナは最後は折れた。

 

 そのあと、俺は必要な物資を買い始めた。

 

 まず服などを入れる箱を購入する。

 

 行くときは袋とリュックサックがあれば十分だと思っていたが、これだけの大金があれば、新しい入れ物が必要だ。

 

 これに入るだけ入れて、ホムンクルスたちに運ばせるつもりだ。

 全員を運搬係に使ってしまったら、守りが心細くなるので二個購入した。

 二体でひと箱を運ばせるつもりだ。

 ゴールドは一度すべて箱に入れておく。

 

 その後、布や糸を売っている店を探し、発見した。

 

 布と糸を購入し、服を作成する。

 服は男用と女用が作成可能だ。

 

 男用は割とシンプルな上着とズボンで、女用は村娘が着るような素朴なデザインのワンピースである。

 

 服などの身に着ける物は、レシピノートで大きさを選択可能で、それぞれに合う大きさの服を作成した。

 

「結構可愛い服ですね! ありがとうございます!」

「おにぃちゃんありがとう」

 

 今のところ同じデザインの服しか作れない。

 替えの服としてもう一つ作成した。

 

 あとベッドと毛布を作成するため、羊毛と布を購入する。

 羊毛は意外と高かったが、大金を持っているので買えた。

 あとは木材があればベッドを作れる。

 

 ベッドはダブルとシングルが作れて、ダブルは普通の1.5倍の素材で作成可能である。俺にはシングルをアイナとマイナにはダブルを一個作成するつもりだ。

 

 ベッド用の素材にはだいぶ容量を取られた。

 箱半分くらい使うことになった。

 

 それから野菜などが売ってある市場に向かう。

 

 知らない野菜ばかりだった。さすが異世界。

 ニンジンっぽいけど、色が青色だったり、ナスっぽいけど赤色だったり、もしくは形からしてなんじゃこりゃと言いたくなる野菜もあった。

 

 アイナの話によると、『ロズ』という実が美味しいらしい。

 野球ボールくらいの大きさの実で、硬い緑色の殻に覆われており、中には食べることの出来る黄色い粒粒の種が大量に入っている。

 フラメリウムではこのロズを主食として食べているようだ。

 

 ロズは実を埋めて水をやっていれば、数か月後実を複数付けるよう成長すると売っている人に聞いたので、これは生産スキルで種にする必要はなさそうである。

 

 俺はロズを二十個購入した。

 

 それから青いトマトのような野菜『ミンフス』と、甘い味の四角いピンク色の実『ラクラ』を購入した。

 

 どっちとも二十個購入し、種をそれぞれ四十個作成した。

 

 話によると特別なことをしなくても、種を植えて水を上げていれば生えてくるそうだ。

 

 時期的には今育つ植物のようである。

 まあ、そうじゃないと売っていないか。

 

 栄養ポーションが残っているので、帰りの食材に必要な物を買う必要はない。

 全て種にした。

 

 ここまで消費した金は四万ゴールドだ。

 箱にはあまり余裕がなくなってきている。

 

 次はマイナに魔法の杖を買ってあげるか。

 

 杖は魔法店に売っているようなので、道行く人に場所を尋ねて向かった。

 

 

 

 

 



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第27話 杖

「いらっしゃい……」

 

 魔法店に訪れると、老婆が暗いトーンでそう言った。

 

 店の中は薄暗く、棚にはよく分からないが、何か怪しい感じのするものや、気持ち悪いものがいくつも置いてある。

 

 魔法の杖が置いてある場所を見つける。

 先端に宝石が付いている木の杖だ。

 

「マイナこれがいいー」

 

 凄く豪華そうな杖をマイナは指さした。

 かなり大きくてマイナに持てるか疑問である。

 

「出来ればマイナの買って欲しいものを買ってあげたいけど……それは大きすぎないか?」

 

 高い買い物なので慎重に選ぶべきだ。

 俺は店番の老婆にどれがおすすめか聞いてみることにした。

 

「この子用の杖が欲しいですけど、どれがいいですか?」

「随分と小さい子だね初心者かい……?」

「ええそう……そうなのか? 魔法使ったことないんだよな?」

「うん、ないよ」

 

 一応確認してみたがやっぱりないようだった。

 

「ちょっとこれを見てごらん……」

 

 老婆は鏡を持ってきてそれを見るようにマイナに行った。

 

 マイナは言われた通り鏡を眺める。

 

 すると鏡の色が赤く変色した。

 

「炎属性かい……ならこれだね……初級火の杖……」

 

 赤い宝石の付いた杖を老婆は選んだ。

 属性って言ってたな。

 人にはそれぞれ属性があって、それをさっきの鏡で判別した、みたいな感じか?

 

「呪文は知ってるかい……?」

「あ、呪文は私が知ってるので教えられます」

 

 アイナがそう言った。

 

 母親と暮らしたことのあるアイナは、魔法の呪文は知っているのだろう。

 杖がないから使えないのだろうけど。

 

「そうかい……一万二千ゴールドのところ九千ゴールドに負けてあげるよ……」

 

 俺はゴールドを支払い、杖を購入する。

 

「やったーつえだー!」

「マイナ、ゼンジさんにありがとうと言いなさい」

「うん、おにぃちゃんありがとう!」

 

 マイナがペコリと頭を下げてお礼を言った。

 俺は「どういたしまして」と返答する。

 

 店を出ようとすると、棚に気になるものを発見した。

 

 これは……

 

「あんた魔石が気になるのかい……まあ、ホムンクルス連れているくらいだからね……」

 

 七芒星が描かれている黒い石があった。

 レシピノートで見たぞこれ。

 

 魔石だ。

 小さい魔石じゃなくて普通の魔石。

 

 小さい魔石は六芒星だったが、これは七だ。

 レシピノートで見た時は気づかなかったな。

 

 これがあれば、中級ホムンクルスが作れるじゃないか。

 

「これいくらですか?」

「一個2000ゴールドだよ……十個ある……買ってくかい……」

 

 全部で二万ゴールドか。

 決して安くはないが……中級は強そうだし買っていこう。

 

「全部買います」

「毎度あり……」

 

 俺は二万ゴールドを支払った。

 

「それ、ホムンクルスちゃんの材料になるんですよね。いつものよりも大きいですけど」

「ああ、今作っているホムンクルスより、高性能なのが作れるんだ」

「今のホムンクルスちゃんも凄く頑張ってますけど、それより高性能なんですか……ますます私の存在意義が……」

 

 若干アイナが凹んでいる。

 いや、ホムンクルスは確かに凄いけど、自分で考えて行動できない。

 人間には人間にしかできないことも多くあるだろう。

 

「あ、そうだ。これより大きい魔石ありませんか?」

 

 特殊ホムンクルスとやらを作ってみたい。

 

「大きい魔石かい……? あるよ……」

「本当ですか? いくらでしょうか?」

「50万ゴールド……」

「「高っ!?」」

 

 俺とアイナが値段を聞いて叫んだ。

 さっきの普通のは2000だったよな!?

 何でそんなに跳ね上がるんだ。

 

「大きいのは滅多に取れないからね……買うかい……?」

「うーん……」

 

 今の残金では買えない。

 

 しかし、それだけ高いものを使って作成する特殊ホムンクルスに、さらに興味が増してきたな。

 ぜひ作ってみたい。

 この様子ならバリバリ金は稼げそうだし、いずれ五十万払うくらいの余裕が出来るかもしれない。

 

「今は買いませんが、いずれ買いたいです。それ取り置きは可能ですか?」

「んー……? 早い者勝ちさね……それは……でもそんなに頻繁に欲しい奴が現れるもんじゃないから簡単に売れはしないと思うよ……」

 

 取り置きはしてくれないようだ。

 まあ、今日初めて来店した奴に普通そんなサービスしないか。

 あまり売れる品物ではないとのことだが、ゴールドが貯まったらなるべく早く買いに行こう。

 

 俺は店を出た。

 

 

 これで現在必要な物はあらかた買ったか。

 もう箱の容量も限界に近いし、何か必要になったらまた街に来て買おう。

 

 町に出る前に確認すべきことがある。

 

 ホムンクルスだけで行っても、商人は取引に応じるのか否かだ。

 

 最初に行った店アーシャンに立ち寄り、尋ねてみた。

 

「ああ? ホムンクルスだけで売り買いできるかって? 会話は出来んのか?」

 

 俺は頷く。

 

「ならできる。恐らくほかの商人も同じ考えだと思うぜ」

 

 店を出てほかの商人にも尋ねてみたが、答えは同じで出来るだった。

 

 それならばこれからはホムンクルスだけで町に行かせてポーションを売って、必要物資を買ってきてもらう形でもいいな。

 

 ホムンクルスは不眠不休で移動可能だから、俺たちより時間がかからず移動できるだろう。

 

 中級ホムンクルスを行かせたら、さらに早く往復できるかもしれない。

 変な詐欺などに引っかからないか心配ではあるが、ホムンクルスは余計なことをしなさそうだから大丈夫か。

 

 聞きたいことは聞けたので、宿を取り一泊。

 

 その後、フラメリウムを後にした。

 



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第28話 難民

 フラメリウムを出ると十人のボロボロの服を身に着けた集団が、門の近くに座っていた。

 

 大人が八人、子供が二人だ。

 

 大人は全員、若い女性に見える。

 子供は一人が男の子でもう一人は女の子だ。

 どちらもマイナとそう変わらなそうな年齢である。

 

 全員悲しそうな表情をしており、何か深刻な事情を抱えているように思える。

 

 事情が気になったが、俺は知らない人に積極的に声を掛けられるタイプではない。どうしようか迷っていると、

 

「あの、どうかなされましたか?」

 

 アイナが声をかけた。

 

「……あなた達も私たちと同じ難民なのですか?」

 

 女性が逆に質問をしてきた。

 

「え? 難民……ではないですね。ちょっと前までは難民だったかもしれません」

「そうですか……」

「あの、皆さんは難民なのですか?」

「はい……数日前……最近噂になっていたブラックドラゴンが村に襲撃してきて、村の男たちはみな私たちを逃がすため囮になって殺されてしまい、女子供だけで逃げたのですが、道中で魔物に襲われたりして、結果私たちだけが生き残りました。

 もうお金もなく住む場所もなくて、この町に助けてもらえないか頼みに行ったのですが、無理でした」

 

 ブラックドラゴンが村を襲撃……

 この世界にはドラゴンがいるんだな。

 

 しかし、この人たち行く当てがなさそうだな。

 俺の拠点で受け入れてみるか?

 

 数日拠点を開けた間も木材集めは続けさせているので、家を作れるくらいの木材が溜まっていると思う。

 行く前に鉄の斧を作って持たせていたので、たぶんかなりの量の木材が取れていいるはずだ。

 

 食料は……

 数日空けているし、栄養草はだいぶ溜まっているだろう。

 今後はホムンクルスに頻繁に町に行かせて、生命力ポーションを売らせて物資をここに運ばせれば食料も十人くらいなら何とかなりそうである。

 畑もいい調子で育っているし、案外早く収穫可能になるかもしれない。

 そうなったら、もう食料の心配はあまりしなくてよくなりそうである。

 

 何とか十人くらいなら大丈夫そうだし、人を増やすという目標のためにもここは逃せないのではないか。

 

「あの、ゼンジさん。この人たちを拠点に呼んでみたらどうでしょうか?」

「俺もそう考えていた」

 

 あ、でも待て。

 一度拠点に戻るの結構時間かかるけど、食料は持っているのだろうかこの人たちは。

 現在所持している栄養ポーションだけでは足りないからな。

 まあでも、ない場合は一度町に戻って買えばいいか。ゴールドはまだ結構あるしな。

 

「あの、皆さんは食料を持っていますか?」

 

 俺は訊ねてみた。

 

「食料ですか? 五日分しかありません。これでは次の町に行くことも出来なくて……」

 

 五日分か。

 

 それなら問題ないか。

 ここから拠点までは四日で到着するからな。

 

「あの行く当てがなければ、俺が住んでいる場所に来ませんか? 実は人を集めて村を作ろうと思っているんですよ」

「え……?」

 

 最初は怪しいものを見る目で見られた。

 

 まあ、当然か、だって俺って悪人顔だしな。

 いや、顔のことを除いたっていきなりこんなこと言われて、信用するのは無理か。

 

 難民の人たちの表情を見て俺を怪しんでいると察したアイナが、

 

「ゼンジさんは良い人ですから、怪しい人じゃ絶対にありませんよ! 実は私も、盗賊に攫われたときゼンジさんに助けられたんです!」

 

 説得をした。

 

 同じ女のアイナが説得すると、徐々に女性たちの警戒がゆるんできたようだ。

 

「あの、本当に私たちに居場所を与えてくれるんですよね? 嘘じゃないですよね?」

「約束します」

「分かりました。私たちには行く当てなどありません。あなたを信じましょう」

 

 こうして難民たちを俺の拠点に連れていくことになった。

 

 

 

 

 拠点まで戻る途中、狼に遭遇する。

 

 四匹に襲われたのだが、ホムンクルスがあっさりと撃退。

 二匹の狼を仕留めた。

 

 ちょうどいいから、俺は中級ホムンクルスを作成することにした。

 

 30㎏の肉が必要だ。

 レシピノートを開き、中級ホムンクルスが書かれているページを探す。

 かなりページが増えているため少し時間がかかけて探し出した。

 

 作るの文字に指で触れる。

 

 目の前に中級ホムンクルスが作成された。

 低級ホムンクルスをそのまま大きくしたような外見だ。

 身長は130㎝前後だ。

 

 俺の生産スキルを見て、難民の人たちは驚いたり少し怖がっている人もいたので、説明をしておいた。

 

 一体中級ホムンクルスを作成したら、ちょうど狼が骨だらけになった。骨とかを抜いたら、ちょうど三十キロほどだったのだろう。

 もう一体の狼も、最初に材料にした狼とほぼ同じ大きさだったため、そいつを使っても中級ホムンクルスをもう一体作成した。

 

 中級ホムンクルスに何が出来るか尋ねると、低級とだいたい同じ答えが返ってきた。

 

 ただ使える魔法は違っており、ファイアーランスとウォーターキャノンの二種類が使えるようである。

 種類は減ったが、魔法の威力はたぶん上がっているのだろう。

 あと魔法の使える回数も上がっており、十回使えるようだ。

 

 寿命も尋ねてみた。

 八十日と低級ホムンクルスよりは長く生きるようだが、それでもすぐに死んでしまうようだ。

 

 戦いになるとかなり働いてくれそうだな。

 魔石は残り八個あるので、早めに作ってしまおう。

 

 それと、狼を見て拠点にいるチョウとタンのことを事前に話しておくべきだと思いたった。

 

 いきなり会わせたら驚くだろうからな。

 

 一応説明したのだが、全員半信半疑という感じだった。

 虎が人に懐くというのは、かなり珍しいことのようであるな。

 

 それからは特に敵と出くわすことはなく、拠点へと無事帰ることが出来た。

 

 

 

 

 

 



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第29話 拠点に戻り

 拠点に着くとチョウとタンが嬉しそうに駆け寄ってきた。

 

 その様子を見て難民の人たちは驚くが、懐いている姿を見て本当の事だったと別の意味で驚いていた。

 子供二人はマイナと同じくチョウとタンに興味津々で、撫でていた。

 

 拠点に溜まっている木材を見たが、かなりの量があった。

 

 よし、これなら作れそうだ。

 

 俺は大きい家を一軒、作成した。

 

「ええ!? 家が一瞬で!?」

「嘘!?」

 

 大きな家は初めて作った。

 生産スキルで作れる普通の家の倍くらいの大きさだ。

 もう一軒作成した。

 

「凄いですね……」

 

 みな生産スキルを見て驚いている。

 

「まだ二つしかないけど、この家は自由に使っていいです。木材が溜まったらあと二軒くらい作りますよ」

「あ、あの正直、二軒あれば十分なんですけど……ここに住んでいいんですか?」

「はい」

 

 俺は頷いた。

 

「ありがとうございます。ありがとうございます……」

「このご恩は必ず働いて返します……」

 

 涙を流しながら難民たちは俺に言ってきた。

 

 相当きつい目に遭ってきたのだろう。

 異世界は日本ほど甘い場所ではないようだ。

 

 それからベッドを作成した。

 

 作れるベッドは二つだ。

 

 一つは俺用と思っていたのだが、子供が二人いるのでその子たち用にすることにした。小さいベッドだが子供二人なら寝ることが可能だ。

 もう一つのダブルベッドは、予定通りアイナとマイナに使ってもらう。

 

 ふかふかのベッドで寝れると、買ったときは興奮していたが今日はお預けになったな。

 まあ、すぐにホムンクルスたちを町に向かわせるつもりなので、近いうちにベッドで寝られるようになるだろう。

 

 戻ってから色々やることが山積みだ。

 

 まずポーション作りだ。

 

 大量の栄養草と命の草を収穫してきていた。

 数を数えるのも面倒になるくらいだ。

 

 栄養草は全てポーションに変え、命の草は半分をポーションに半分を種に変えた。命の草は金になるから、これも大量に栽培しておいた方がいい。今育てているのは全て、栄養草だからな。

 

 栄養ポーションは二百二十個作成できた。

 二千二百本もあったようだ。あとでホムンクルスに確認したのだが、どうも栄養草が大量に生えている地帯を発見したようだ。しばらくは収穫効率が増えそうである。

 

 生命力ポーションは二十個作成。種を四百個作成した。

 生命力ポーションの合計は現在三十五個だ。

 全部売れば七十万ゴールド手に入れることが可能である。

 

 これで俺の生産レベルが一気に18まで上昇した。

 

 俺がポーションを作成している間に、中級ホムンクルスとチョウとタンに、それぞれ別の場所へ狩りに行ってもらった。

 

 村の防衛は低級ホムンクルスがいるので問題ない。

 

 チョウとタンは俺たちがいない間、だいぶゴブリンを狩ったようで十二個小さい魔石をゲットした。

 賢い二匹はちゃんと魔石を俺が欲しがっているのを分かっていたようだ。

 

 新しい領民たちには畑仕事をお願いした。

 

 アイナとマイナがいない間は、ホムンクルスに任せていたが、これだけ働き手が来るとホムンクルスを畑仕事に回す必要がなくなるだろう。

 

 元々村で畑仕事をしていたという女性が多く、町で買ってきたロズ、ミンフス、ラクラを育てた経験もあるみたいなので、この辺は育てられそうである。

 

 畑を大きくすることで、水の消費量が上がる。

 川から水を引くのは……正直凄い手間がかかりそうだな……

 行ったことはないんだが、割と遠くにあるっぽいからな。

 畑を大きくするとは言え、そこまで今はまだ大量の水は必要ない。

 水を汲みに行くホムンクルスの数を増加させれば何とかなるはずだ。

 

 まあ、おいおい水を引くため、木材集めをしているホムンクルスには、川がある場所までの木を伐らせておこう。

 

 水を貯める容器も必要になって来るな。

 大きな樽というのが作れるようになっていた。

 これを大量に作って水を貯めておこう。

 樽の材料は木だから、これを作ると家を作る時間が遅くなるのだが、二軒あれば何とか住めるだろう。

 水を貯める物の方が重要なので、樽を優先して作ることにした。

 

 二十個作成。

 これだけあれば大丈夫か?

 足りなかったらまた作ろう。

 

 作っているうちにチョウとタンが戻ってきた。

 獲物を狩ってきたようだ。

 

 豹鹿二体だ。

 結構大物である。

 

 食べるといいと促すと、首を振った。

 

 どうやら腹が減っていないようだ。

 自分たちの分は現地で食べてきて、俺に渡す分だけを持ってきたのだろうか?

 

 腹減ってたら食べるしな。

 

 よし、じゃあこいつを使って、まずは低級ホムンクルスを作るか。水を汲みに行く用だな。

 

 豹鹿一匹から七体作成できた。

 五体に水を汲みをさせて、残り二体には木を伐ってもらう。

 用水路を造るかどうかはともかく、川までの道のりは整備しておいた方がいいだろう。

 

 もう一匹の豹鹿で、中級ホムンクルスを二体作成する。

 

 こいつら二体には町に行って取引に行ってもらう。

 

 運搬用の低級ホムンクルス四体と、防衛用の中級ホムンクルス二体の計六体で町まで行ってもらう。

 不眠不休で動けるホムンクルスなので、何もなければ六日ほどで戻ってくると予想している。

 

 中級ホムンクルスには盗賊から獲得した剣を装備させた。

 

 ほかにも生命力ポーション十個と五万ゴールドを持たせた。

 ポーションは売れる店を探して売れと命令する。五万ゴールドは仮に売れる店がなかった時の保険として持たせていた。

 この前、俺が行った店はまだ買い取り不可な状態だろうからな。

 

 買ってこさせるものは、羊毛や布などベッドを作る素材、それから食料だ。

 

 俺はホムンクルスたちに指示を出す。

 指示に従いホムンクルスたちは、フラメリウムへと出発した。

 

 

 

 

 



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第30話 着替え

 狩りに行かせていた中級ホムンクルスが戻ってくる。

 

 大人のシマコーンを見事二匹狩ってきた。

 

 凄いデカくて重そうだが、中級ホムンクルスは普通に持っていた。

 かなり力がありそうだな。

 

 俺はシマコーンも中級ホムンクルスを作るための材料として使用する。

 

 一匹に付き、三体の中級ホムンクルスを作成できた。

 六体作成して、ちょうど持っていた普通の魔石がなくなった。

 

 そこで俺の生産レベルが19まで上昇する。

 あと1で20だ。

 また作れる物が増えるかな。

 

 この中級ホムンクルスたちには、二体を拠点の防衛用に置いておくことにした。

 それから残り四体は、フラメリウムに行かせることにする。

 こいつらにも前に町に行かせたホムンクルスと同じく、生命力ポーションと五万ゴールドを持たせた。生命力ポーションの数は二十個とちょっと多い。

 

 生命力ポーションを売り、色々な物資を買って来いと命令した。

 場所案内をさせるため、最初に町に行ったホムンクルス一体を同行させた。

 

 生産スキルで大きな箱を作成しそれを持っていかせた。

 箱は生産スキルで作れるのだが、町で購入していたのは単純に近くに箱が売っていたからだった。

 かなり安かったのであの時は作るより、買うことにした。

 大きな箱は、その名の通り非常に大きく運べるか心配だったが、軽々と一体で持ち上げていた。

 

 もう一個箱を作成して、二体に箱を持たせて、それ以外で防衛するという形でフラメリウムに行かせた。

 

 夜になり夕食を取る。

 

 栄養ポーションを皆で飲むことにした。

 二百個あるし、栄養草が大量に生えている地帯を見つけたとのことで、しばらく食料の心配はないだろう。

 

 栄養ポーションの味は、皆そんなに悪くないと言った。

 やっぱ俺の味覚が変なのか……?

 

 栄養ポーションを皆飲み終わった。

 

「あの……ゼンジさん……本当にありがとうございます。私たち本当に困っていて……家と食べる物をくれて感謝してもしきれません」

 

 そうお礼を言ってきたのはマリーナである。

 

 帰る道中、全員の名前は聞いておいた。

 当然俺とアイナ、マイナも自己紹介はしている。

 

 マリーナは真面目そうな顔の女性で、実際真面目である。

 頭がよくリーダー的な存在だったようで、村から逃げるときも彼女がどうするか方向性を決めていたようだ。

 最初に俺たちと受け答えをしていたのも、マリーナである。

 

 栄養ポーションを飲んだ後、俺は一度体を水で洗って服を着替えることにした。

 

 樽に貯めた水は農業用だけでなく、生活用にも使うつもりだ。

 

 女性だらけなので、水で体を洗ってくるといって、俺は家の裏側に隠れて体を洗った。

 

 アイナとマイナも俺と同じく洗うようである。

 

 新しい領民たちは服など持ってくる余裕がなく、替えの服は持っていないようでホムンクルスが布を買ってくるまではそのまま過ごすことになった。

 

 今まで着ていた制服は……正直もうボロボロなので捨てたほうがいいかな。

 

 新しい服の着心地はそんなに悪くはなかった。

 問題は下着がないという点だ。

 生産スキルでは下着が作れなかった。

 

 元々履いてたやつは、今の今までずっと履いていたので、表現を控えたいくらいの状態になっている。

 

 水で何とか洗う。

 

 洗った瞬間、着るのは嫌なので、今日はノーパンだな。

 

 俺はノーパンなんだが、そう言えばアイナもノーブラ、ノーパンになってしまうのか。

 そもそもこの世界の下着って、どんなのはいているのだろうか。

 中世っぽい感じなので、現代日本で使われているようなものはないだろうし……

 そもそも庶民は下着なんて履いていないという可能性も……

 

 俺が作成してアイナとマイナに上げた服は、スカートが長いので見ることは出来ないだろうが……

 それでもノーパン……

 

 ノーパン……

 

 はっ、ダメだ。

 これ以上考えてしまうと、嫌らしい目でアイナを見てしまう危険性がある。

 ただでさえ顔の悪い俺が、女子を嫌らしい目つきで見ようものなら、その時点で犯罪者である。

 考えないようにしなければいけない。

 

 新しい服を身に着けた。

 パンツをはいていないので、若干気持ち悪い感じはあるが、まあそんなに着心地は悪くない。

 

 自分のパンツを見られるのは恥ずかしいので、なるべく目立たない場所に干すことにした。

 木の物干し台を生産スキルで作成して、それを家の裏に置き干した。

 

 俺はアイナとマイナが着替え終わったという声を聞いて戻る。

 

 アイナとマイナも元々来ていた服はもうボロボロなので、捨てるようだ。

 

「下着はどうするんだ?」

 

 そう尋ねると、

 

「やだなぁ、庶民は下着なんて履けませんよー」

 

 当たり前のことのように返された。

 

 特に恥ずかしがってもいないようで、下着を履かないことなど当然のことのようだ。

 

 つまり、アイナのスカートの下はやはりノーパン……

 というかここにいる女性たちは皆……

 

 駄目だ駄目だ考えたら駄目だ!

 

 俺は首を横に振る。

 

「どうしたんですかゼンジさん」

「い、いや、何でもない。なんでもないぞ。もう眠くなったから俺は寝る、おやすみ」

「は、はい。おやすみなさい」

 

 俺は急いで家に帰って眠りについた。

 

 

 

 



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第31話 十数日経過

 それから十数日経過した。

 

 この期間中に色々なことをやった。

 

 まずホムンクルスたちが帰って来る前、生産スキルでポーションなどの作成を行っていたら、スキルレベルが20になった。

 

 20になって作成可能な物が増える。

 今回はノートのページが増えるのではなく、レシピノート2というのが新しく出現した。これに新しく作成可能になったものの情報が書いてある。

 

 これにより荷車、馬車、クロスボウ、クロスボウ用のボルト、水車、風車、コンパス、ロウソクなど少し技術力がいる物が作れるようになっていた。

 下着も作成可能になった。

 これで拠点の女性たちがノーパンにならずに済む。

 

 あとホムンクルス(馬)と近接ホムンクルス、遠距離ホムンクルス、魔法ホムンクルスと呼ばれるものが作れるようになっていた。

 

 ホムンクルス(馬)どうも馬の形をしたホムンクルスのようだ。

 馬車が作れるようになっているので、ホムンクルス(馬)を作れば非常に運搬が楽になるだろう。

 てか、ホムンクルスって人造人間的な意味だったと思うのだが、馬の形のも作れるのか。

 この世界でのホムンクルスの定義は、人造人間ではなく人造生命体なのかもしれないな。

 

 ほかの三つのホムンクルスは、それぞれ戦闘に特化したホムンクルスのようである。

 戦いに関すること以外の命令は聞かないと、レシピノートに書かれてあった。

 

 普通の魔石と何らかの肉30キロが必要になる。

 ホムンクルス(馬)だけは、200㎏必要なようだ。

 さすがに馬だから必要な量が多かった。

 

 普通の魔石は町に行かせたホムンクルスに買いに行かせていた。

 

 そいつらが帰ってきたとき、すぐにホムンクルス(馬)を作成できるよう、狩りをして肉を大量に貯め始める。

 

 多少鮮度が落ちていても使えるだろうから、物置用の小屋にとにかく余った死体を放り込んで置いた。

 

 そして新しい住民用の家を作成した後、馬車を作成する。

 馬車と言っても色々な種類があるようで、選択して作成できた。

 俺が選んだのは、大型の荷物運搬用の馬車だった。

 

 木材以外にも動物の革が必要なようだ。

 シマコーンの革でもいいようなので、それを使った。

 結構一台が大きかったので、一台だけ作成した。

 

 作ってから数日後、ホムンクルスが拠点に戻ってくる。

 

 その材料を使い、ベッドや服、ホムンクルス(馬)を一体作成。

 服やベッドはまだ全員分はない。

 

 ホムンクルス(馬)は青色の馬という外見だ。

 普通の馬より当然大人しい。命令には完全に従う。

 言葉を話すのでそこは少し気持ち悪い。

 

 肉が余ったので、近接ホムンクルス、遠距離ホムンクルス、魔法ホムンクルスをそれぞれ作成した。

 

 普通の中級ホムンクルスの見た目に近いが、近接ホムンクルスは目つきが怖く、遠距離は逆に目つきが柔らかい、魔法は体の色が紫色になっている。

 

 ホムンクルスたちに売らせに行ったポーションは、以前行ったアーシャンでは売れなかったが、売ることは出来たという。

 どうも冒険者ギルドの前で、冒険者に直接売ったらしい。

 市場の人に尋ねてみたら、その方法を勧められたのでやったようだ。

 命令を遂行するためには、色々な方法を試そうとする知能が案外あるみたいだ。

 冒険者は生命力ポーションを一つ三万ゴールドで、買っていったようである。

 持って行かせたポーション全てが売れて、全部で三十万ゴールドの収入があった。

 

 ホムンクルス(馬)を出動させる。

 中級ホムンクルス二体と低級ホムンクルス二体を一緒に行かせた。

 

 作っておいた生命力ポーションをほぼすべて馬車に乗せて、フラメリウムに向かわせた。

 生命力ポーションは多少値下げしても構わないから、とにかく全部売れと指示した。

 当然物資も買ってくるように命令する。

 もしかしたらゴールドを大量に運ぶことになって、物資は運べないかもしれないな。

 

 もう一隊フラメリウムに向かわせているホムンクルスたちがいるので、そいつらが物資を持ち帰ってきたら足りると思うので、大丈夫だろう。

 

 馬車が拠点から出発した。

 

 

 その日の夕方、もう一隊のホムンクルスたちが帰還。

 

 こいつらにはベッドや服用の布を中心に買ってくるよう命令していた。

 これで服は全員に行きわたったが、ベッドはまだ足りていなかった

 

 俺がベッドで寝れる日が来るのは、また先延ばしになってしまう。

 

 このホムンクルスに持たせていたポーションもきちんと売れたようだ。

 二十個持たせていたので、六十万ゴールドを獲得した。

 

 気遣ってアイナが代わる代わるベッドを使おうと言ってくれたが、悪いので遠慮しておいた。マイナもアイナと一緒に寝たいだろう。

 

 中級ホムンクルス四体には、再びフラメリウムに行かせる。

 今回はポーションは一個も持たせず、五万ゴールドを持たせて行かせた。

 とにかく物資を買ってきてもらう。

 

 

 それからさらに数日後。

 

 ポーションを売らせに行った馬車が帰還してきた。

 

 どうも運よく上級の冒険者が良く冒険者ギルドに訪れる日だったらしく、到着したその日のうちに完売したようだ。

 

 俺はその時の金を見て、この目を疑った。

 

 馬車一面のゴールド。

 

 もはや数えることが出来ないほどの数だ。

 

 ホムンクルスが言うには、全部で三百万ゴールドはあるようだ。

 

 物資は入らなかったから買ってこなかったと謝られた。

 ベッドがない生活は続くがこれだけ金が入れば嬉しい限りである。

 

 しかも、これで大きな魔石を購入しても大金が残るようになった。

 

 どうするか? 俺は悩んで買ってみると結論を出した。

 

 流石に五十万ゴールドの買い物となると、ホムンクルスだけに任せるのは怖いので、自分も行くことに決めた。

 

 

 

 

 



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第32話 大きな魔石購入

 フラメリウムまでに行くのは、俺一人とホムンクルスたちだけにするつもりだった。

 

 攻撃用のホムンクルスとチョウとタンに町を守らせるので防衛はばっちりだし、生産スキルで事前に栄養ポーションも大量に作っておいたので、食料も問題ないため、わざわざほかの者たちを連れていく必要はなかった。

 

 ポーションを作ったことで生産スキルレベルが二十一まで上がっていた。

 なんかいきなりスキルレベルが上がる速度が、落ちた気がする。

 二十から必要な経験値がかなり増えるようだ。

 

 持っていくものはゴールドと栄養ポーションだけだ。

 七十万ゴールドを持っていき、五十万ゴールドで大きな魔石を買って、残りの二十万で物資を買おう。

 

 最近狩りで獲物に出くわす確率が落ち始めている。

 だいぶ狩ってきたし、無理もないか。

 これからは肉は町で買う必要もあるだろう。

 それと、塩を買うと食材の保存が出来るようなので、大量に買ってこよう。

 

 塩は生産スキルで作成可能なのだが、海水が必要となる。

 近くに海がないので、今は買うしかないだろう。

 

 あと前回行ったとき、魔法の地図の材料を買うのをすっかり忘れてしまっていた。今回はその材料を探してみるつもりである。

 

「あの、いってらっしゃいませ。怪我など気を付けてくださいね」

 

 出発する直前、アイナに心配するような表情でそう言われた。

 

「大丈夫、無茶はしない。じゃあ行ってくる」

 

 俺はそう返答した。

 アイナ以外の領民も少し不安そうな表情で俺を見送っている。

 現時点でここでは俺は唯一の大人の男だし、生産スキルで村の食料などを生み出しているので、いなくなると不安なのだろう。

 仮に俺が死んだら、食料事情が厳しくなるし、ホムンクルスはそのうち寿命を迎え守りも手薄になる。

 領民たちもただでは済まないだろうから、絶対に生きて帰ってこないとな。

 

 俺は中級ホムンクルスを二体と低級ホムンクルス二体と一緒に、馬車に乗り拠点を出発した。

 

 

 〇

 

 

 馬車の乗り心地は悪かった。

 揺れに揺れる。乗り物酔いはしないタイプの俺も、今回は酔いそうになったくらいだ。

 

 今回町に行って、それから大きな魔石と、魔法の地図の材料探しなどをするのだが、領民集めも今回行うかどうか少し悩んでいた。

 

 金もこれだけ稼げばしばらく物資には困らない。

 

 畑の栄養草はもう完全に育っており、収穫可能に近くなっている。

 栄養草を安定して収穫できるようになれば、食料問題もだいぶ解決する。

 作成自体は、文字を連打していれば物凄いスピードで作れるので、百個でもそれほど苦労はしない。

 千個くらいとなると流石に億劫なので、最終的に栄養ポーションを食料源とするところからは脱却するつもりではあるが、領民がそんなに多くないうちは栄養ポーションでやっていくつもりだ。

 

 現時点で五十人くらいなら、領民がいても問題ないだろう。

 

 町に行ったら、領民を増やすために何かしてみるか。

 看板を作ってみるという案を考えてはいたのだが、そうなるとフラメリウムに目を付けられかねんし、行く当てのなさそうな人を、自力で探して勧誘するか……

 

 勧誘の方法を考えていたが、ふと、本当に領民を増やしていいのか不安が沸き上がってきた。

 

 今のところ自分の顔を怖がったりするものはいない。

 行く当てのないところを俺に助けられたということであったり、ここが異世界であるなど様々な要因があるだろう。

 

 しかし、さらに領民が増えてもなお、このまま行くのかどうかは正直不安である。

 

 日本にいた時のように、顔が原因で犯罪者扱いされ始めないか、正直心配である。

 物資が増えて、人が増え、裕福になってくれば、俺という存在なしに領地が成り立つようになってくるだろうし……自分が育ててきた領地から追い出されるという可能性もある。

 

 ……ネガティブになりすぎるのは良くないな。

 ここは異世界だから、日本とは違うんだ。

 今のところ顔のことでとやかく言われてはいないので、これからも言われないはずだ。

 

 俺はそう思い込んだが、芽生えた不安を完全に消し去ることは出来なかった。

 

 

 〇

 

 

 フラメリウムに到着する。

 馬車に乗っているので歩きの時よりも二日ほど早く到着した。

 

 早速最初に行ったときに立ち寄った魔法店に向かう。

 

「いらっしゃい……」

 

 店に入ると、相変わらず低いトーンの老婆の店員が対応してきた。

 

「あの、この前の魔石買いに来たんですけど、まだ売れてませんか?」

「ん……? もう五十万ゴールド溜まったのかい……それは恐れ入ったね……まだあるから持っていきな……」

 

 良かったまだ残っているみたいだ。

 仮になくなっていたら見つけるまで時間がかかりそうだったからな。

 

 俺は五十万ゴールドを払い大きな魔石を購入した。

 大きな魔石には八芒星が書かれていた。

 結構重いので、ホムンクルスに持たせた。

 

 目的の物を購入できたが……魔法の地図の材料を探していたんだったな。

 ここに売っているかもしれない。

 確か聖水五個と、魔力紙一枚だったな。

 

「ここに聖水と魔力紙は売ってませんか?」

「魔力紙は売っているよ……一枚五百ゴールドだね……聖水はこんなところにゃ売っていないよ……」

「じゃあ魔力紙を一枚買います」

 

 俺は五百ゴールドを支払い魔力紙を購入した。

 キラキラしている紙である。

 

「聖水はどこに売ってあるか知ってますか?」

「あーいうのは聖堂で売っているもんだ……」

「ありがとうございます」

 

 俺は店を出て聖堂の場所を聞き向かった。

 

 小さな聖堂がフラメリウムにはあったので、そこでシスターから聖水を入手。

 

 俺はレシピノートを開き、最初に魔法の地図を作成してみた。

 

 フラメリウム周辺が表示されている地図が作成された。

 

 ただ地形が書かれているだけでなく、特別な何かがある場所にはその場所の名前が地図に書かれている。

 

 例えばフラメリウム北には、アメールダンジョン(初級)と書かれている場所がある。

 

 ここにダンジョンがあるという事なのだろう。

 初級ということは簡単な場所である可能性が高い。

 

 そのほかにも地図にいくつかダンジョンが表示されていた。

 フラメリウム周辺にはダンジョンが結構あるようである。

 

 ダンジョンには何があるのだろうか?

 冒険者というのはダンジョンに行って金を稼いでいるみたいなので、金目のものが獲得可能であるとは思うのだが。

 

 まあ、今は行かなくていいか。

 

 さて、塩やほかの食材を購入してから、そのあと新しい領民になってくれそうな人を探そう。

 




【重要なお知らせ】
突然で申し訳ありませんが、
事情がありハーメルン版の連載はここで終わりにします。
なろう版で続きを書くつもりです。
すでになろう版では、ざまぁの所まで書いておりますので、
続きを読みたい方はそちらでお読みください。
下になろう版作品ページのURLを載せておきます。
https://ncode.syosetu.com/n6300fz/


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