据え膳は美味しく頂いちゃう系のヤツ (輝く羊モドキ)
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朝起きたら添え膳

作者の東方知識はニワカ並なので期待し過ぎない方がよかとよ。


 唐突だが自分語りをさせてくれ。

 俺は魔法使いだ。長年童貞を守ってきたヤツのことではない。

 一応人間である。元居た世界……まあ、ここで言う外の世界で生まれ、何だかんだと色々あってここ幻想郷に迷い混んだ。生活基盤が安定するまでは大変だったが、今となっては良い思い出の一つだ。閉鎖された世界だというのに、外の世界よりも開放的にすごせる。幻想郷に永住する気になったのもすぐのことだった。

 

 さて、幻想郷。外の世界から来た俺から言わせてもらうと、はっきり言ってこの世界は異常である。もうとんでもなく異常。そんなんある?ってくらい異常な世界である。

 何が異常か。それはあまりにも偏りすぎな男女比である。人里内はちょっと女性が多いかな?程度の男女比だが、里の外はもう女性だらけである。外の世界では犬も歩けば棒に当たるが、幻想郷では男が歩けば女性に当たるってな位に多い。

 そこまで言う?と思うかもしれないが、自然の化身たる妖精はほぼ100%女の子、人を襲う妖怪も大抵女の子、襲わない妖怪も女の子、神様も女の子、幽霊も女の子、死神も女の子と来て、終いにゃ人間だって女の子である。女の子以外里の外に出ちゃいけないんですか?って位に女の子に会う。しかも可愛いor美しい。イタリア人じゃないが、会う人会う人口説きたくなるね。いや、別に本気で口説きはしないけど。

 

 ま、何が言いたいかっていうと、俺みたいに幻想郷中を歩き回るような男は数えるほどしかいないって事。そして、強くないと色々な意味で食べられるって事だ。

 エグい位の男女比、男に飢えている女も珍しくはないってな。

 

 

 さて、ここから本題。ここから語られるのは、俺が幻想郷を歩いてきた軌跡の話。会う女性会う女性にセクハラしたりしなかったりされたりされなかったりセクハラで済まない事ヤッたりしてきた話だ。

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 俺は幻想郷中を歩き回っていて、特に決まった場所で寝泊まりはしていない。何日か何処かしらに厄介になることも多いが、基本は野宿である。

 そんなことして大丈夫か、だって?勿論こうして会話出来る位に大丈夫だ。足だってちゃんとあるだろ?

 まあ、ちゃんと大丈夫なタネはある。俺は魔法使いで、『主に六属性を扱う程度の能力』を持っている。六属性ってのは、地・風・水・炎・光・闇の事だ。風雨や弱小妖怪の襲撃を防げる程度の拠点作りはお手のものさ。

 そこは重要じゃない。とにかくある日、夜が明けて拠点から出ると目の前に白……じゃなかった、宵闇の妖怪ルーミアが居た。

 

「なにやってんだお前」

 

「それコッチの台詞ー」

 

 どうやらルーミアは、ふらふらと飛んでいたら岩のかまくらが目に入ったらしく、気になって様子を見ていたらしい。

 岩のかまくらの正体は俺が作った拠点なわけだが、まあ確かにこんなもんが道端に突然出来てたら驚いてジロジロ見るわな。そーなのかー。

 

 さて、俺はかなりの綺麗好きだ。朝起きたら欠かさずシャワーを浴びて寝汗とかをすっきり洗い落とす。その習慣は幻想郷に迷い混んでからも続いているし、当然この日もシャワーを浴びる。

 何?どうやって外でシャワーを浴びるんだ……だって?そんなことは全て魔法が解決してくれる。

 

「『水・炎合成魔法:命の洗濯』」

 

「わー」

 

 やってる事を説明すると、魔力から生み出した水に魔力から変換した熱を加えて程よい温度のお湯を作っただけである。魔法の使い方が小市民すぎる?良いんだよこんなんで。

 パパッと服を脱いで汗を流す。ついでに服も洗っておく。

 ルーミアはどうしたかって?一緒にシャワー浴びたよ。一応言っておくがルーミアくらいの小さな子には欲情しないから。普段は。

 

 ルーミアと共に汗とか色々なものを流した後、これまた魔法を使って一瞬で洗った服と体と髪を乾かす。魔法便利。

 ルーミアと別れ、旅を再開する。旅といっても目的も何も無い、ただ幻想郷をぶらぶらと回っているだけだ。なんでそんな事してるのかと言えば、単純に一か所に落ち着いていられないタチだからとしか。

 

 そうだな、今日は東に向かうか。なんとなくという方針に沿って歩き出した。

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

 闇を纏いながら空を飛んでいると、夜を切り裂く強い光の気配を感じた。

 

「あー、もう夜明けかー」

 

 今日も獲物は見つからなかったな。まあそこまで餓えている訳ではないのだけど、こればかりは妖怪としての本能というか。

 纏っていた闇を払い、地上近くを浮くように飛ぶ。良さそうな寝床を探して。

 そうして少し移動したら、明らかに不自然的な形状をした岩を取り囲むように化生や人の形もとれない弱小妖怪が集まっていた。さて何事かと近づいてみたら、きゅん、と本能に響く様な匂いを感じ取った。ご馳走の様な匂い。絶世の美女の様な匂い。霊験あらたかな生娘の様な匂い。要するに、妖怪にとって毒の様に甘い香りだ。そんな匂いが幽かに漂っていた。

 なるほど、そこの弱小妖怪共はそんな匂いに釣られ、こうして太陽の元でも集まってきたのか。

 猿の様な妖怪が何事かを叫びながら、ついに岩に飛びかかった……が、その身体が岩に届く寸前に岩から巨大な棘が飛び出し、猿妖怪を貫き消滅させた。それに怯んだのか、飛びかかる寸前に身を竦めた犬型の妖怪だが、動きに反応したのか岩から弾丸が放たれ、犬妖怪を貫き消えた。犬妖怪は辛うじて一命をとりとめたのか、脚を引きずりながら逃走した。

 後に残った化生共だが、それでも諦められないのか安全圏からふらふらと様子を窺っていた。

 

 ……まあ、あんなモノ作る奴なんて私は一人しか知らない。バケモノみたいに強い()()()()

 また、性懲りもなく道端で野宿して。いつか悪い妖怪に食べられても知らないんだから。

 

「闇符『ディマーケイション』」

 

 鬱陶しく辺りを漂う化生を払う。深い意味は無いが、ただ邪魔だったから。

 そうして辺りが静かになり、太陽が完全に地平線から這い出てきた頃。

 

パキ、パキリ、パキキ

 

 半球状でつるつるに磨かれていて不自然だった岩から割れるような音が鳴ったかと思えば、ポコッと内側からくり抜かれたようにあっさり穴が開いた。

 そして、そこからのそのそと冬眠明けのクマの様に出てきたのは最近見知った顔で、同じく最近深く繋がりあった顔だった。

 

「なにやってんだお前」

 

「それコッチの台詞ー」

 

 くあっ……と欠伸をした時に蠢いた空気の流れに乗せられて、彼と共に岩の中で一晩中寝かせられた濃厚で甘い香りとツンとくる強いオスの匂いが私の鼻腔と本能を擽る。衝動そのままに彼を喰らい尽くしたいが、逆立ちしたって敵わないから止める。

 

 そうして私の本能と理性がせめぎ合っている目の前で、彼はおもむろに服を脱ぎだす。彼は、白黒とはまた違う『THE・魔法使い』といったゆったり目のローブをホイと宙に投げ、下に来ていた洋服も下着ごと脱ぎ捨てた。

 今私の目の前には、ガッシリとして無駄が無い、絞られた筋肉を纏った青年と少年の挟間の面影を持つ奇跡の男が全裸で無防備な姿を晒している。しかも寝起き故か、半勃起している逸物も隠す事無く曝け出されている。

 

「いやこれで食うなとか無理でしょ……」

 

「なんか言ったか?それよりシャワー浴びるんだが……」

 

「私も浴びる」

 

「お、おう」

 

 そうして私も着ていた一張羅を脱ぎ捨て、彼に密着する。あ~オス筋肉ぅ~

 彼が魔法で出したお湯を浴び、更に身体が火照っていく。彼に背中を向けて、さりげなく半勃ちの逸物を背中で味わう。ちょん、ちょん、とお湯より熱い逸物に触れるたびに私の中の熱量が上昇していく。

 

「ほら、体洗ってやるよ」

 

「ん……」

 

 どんどん熱くなってゆく背中の感覚に集中していた所為で彼の言葉を聞き流してしまった。そしてするりと彼の両腕が私の身体を弄ってゆく。

 

「あっ、ひゃっ!!?」

 

 背中だけでなく、彼に弄られてゆく腕や脚、腹までもどんどん熱くなる。その熱でのぼせそうになるが、時折吹く風によって限界ギリギリで意識を取り戻す。絶妙な力加減で仕上げられた肉体は、もはや全身が性感帯に変わったかと言う程に敏感に刺激を感じてしまう。だが、最も敏感な部分には未だ触られていない。

 

「ぅあ……あっ、はぁあぁ……♥」

 

 絶対に理解(わか)ってる癖に、決して触れはしない。僅か数ミリずれるだけで良いのに、焦らす。

 

「あっ……♥うぅ……うぁ……♥」

 

 彼は生粋のサディストだ。じゃなきゃこんなに小さい見た目の子供をこんなにも虐めたりはしない。人間に対する妖怪としてのプライドなんて知った事かとグチャグチャに壊してしまう。そして何より、彼にならグチャグチャにされても良いと思ってしまう自分が恨めしい。

 

「はぁっ、お、お願い……おっぱいも、おっぱいもいじめてぇ……♥」

 

 彼の眼を見ながらだらしなく、情けなく懇願すると、にやりと口元を歪めて私の願い通りにおっぱいを……!!!!?

 

「あ”あ”あ”あ”ッ~~~~!!!♥♥♥」

 

 きゅ、と摘まんだかと思えば、そのまま力いっぱい乳首を握りつぶされてしまった。

 甘い快楽に浸っていた所に、ナイフに刺されたかのような強力な刺激が脳天から背中、脚にかけて走り回る。視界はまるで雷が連続で落ちたかのような明滅を繰り返し意識が吹き飛んだ。

 

「お”お”お”お”あ”ッッ~~~!!♥♥♥」

 

 気を飛ばした瞬間、更に強い快楽で強引に引き戻される。乳首を強く潰したかと思えば、グリッと捻じられたり、ギュゥッと引っ張られたり、おもちゃのように弄ばれて。私の意識はまるで嵐の中に舞う枯れ葉の様に巻き上げられ、延々と絶頂に次ぐ絶頂を体に刻まれた。

 

「はぁー……はぁー……♥」

 

 股間をお湯では無い液体で濡らし、彼に身体を預けて放心していたら、彼の両手が私の腰を押さえて軽々と持ち上げた。

 放心してだらしなく開けられた口に捻じ込むように彼の接吻を受ける。

 ちゅる、と吸いだされた舌にかぶりつく様な気付けのキスに呼び起こされ、意識が戻ったら口淫の様に彼の舌をしゃぶりつくす。

 

 そうして口を離す、つぅ……と口と口を繋ぐ銀糸がとてもヤらしかった。

 ビクビクと震える彼の逸物が私の秘部に触れる。

 

「挿れるぞ」

 

「うん♥」

 

 彼の眼に映っている私の姿は、妖怪ではなく快楽に堕ちたメスにしか見えなかった。

 殆ど抵抗なく彼の逸物は私の膣内に入り込む。情けない事にそれだけでイッてしまう程に彼に参らされた私は、道具のように彼の性欲を満たすだけで何も出来なかった。

 彼の激しい抽挿の一回一回に絶頂し、意識を彼方の向こうへと飛ばしてしまった。

 

「っ、あー、ルーミア、そろそろ出すぞっ」

 

「あ”っ♥あ”っ♥ん”っ♥ん”あっ♥」

 

 

 

 もはや声になってない音を出すだけになってしまった私は、気が付けば全身を精液まみれにして岩のかまくらの中で倒れていた。

 

「んあー……」

 

 身体を動かす気力も無かったが、ふと股からぬるりと零れ出る感覚につい指を動かせば、濃い精液が指にくっついていた。

 

「うわぁー。こんな子供に中出しするなんて鬼畜だなー」

 

 言葉とは裏腹に、自分の雌としての部分がキュンキュンと反応してしまう。

 あー、私人食い妖怪なのになー。

 等と思いながら指についた濃い精液を舐めとり、彼の事を思いながら自身の秘部を慰めだした。

 

「んっ……んっ……♥」

 

 彼に攻められながらも、辛うじて残っていた意識から彼の逸物を思い出しては右手でナカを掻きまわす。

 左手は身体中にかけられた精液をかき集めては舐めとってゆく。彼の物を残さないように。

 

「んっ……んはっ……♥」

 

 そうして日が沈むまで私は彼の匂いに包まれて一人遊びを続けていた。

 

 




こんな感じのスタイルで書き進めていきます。
コイツまた新作かいてんなとか聞かない。あーあーきこえなーい。


・ルーミア
 宵闇の白パン妖怪。人食い妖怪とか言いながらあんまり人食ってない妖怪。とてもえっちですきです。

・主人公
 竿役。若いけど種付けオジサンの血を引いてるので強い。とても強い。


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地獄に落ちて殴り愛

べ、別にロリコンじゃ、ないんだからね!(迫真)
好きなように書いているので長かったり短かったり。


あ、エッチパートはないです。次回お楽しみに!(後書き感)


 前に一度、ちゃんとした拠点を作ろうと思ってこりにこった家を魔法で作ろうとしたことがある。

 基本的に魔力から何でも作ることは出来るが、魔力から作り出すよりそこにある物を操作する方が効率の良い魔力運用が出来る。

 だから俺は足元の土や岩を操って一軒家を作ってた訳だが……まあ、運が悪いのも有っただろうが単に注意不足だったな。浮遊感を感じたと思ったら、辺りの地盤ごと落ちていった。深い深い、地の底。旧地獄に。

 

 なに?地獄に落ちるのは妥当?うるせえ。

 

 

 さて、頑丈さがウリの俺は、近くの地盤ごと地獄の旧都と呼ばれるところの端の方に無傷で落ちた。

 上を見上げれば、遥か彼方にポツリと落ちてきた穴が見えるくらいである。俺は空を飛ぶことは出来るが、高く飛ぶのは苦手だったからあの穴までは届かないな、と考えた。

 と、いうことで辺りの探索である。地上への帰り道を探しながら、せっかく来た地底世界を見て回ろうとした、丁度その時に奴等が現れた。

 

「派手な音がしたかと思えば、何で人間がこんな所にいるんだ?」

 

 頭から、天を貫く様に伸びる二本角。細身ながらも岩の様にガチガチの肉体。そして肩に担いだ金棒。俺の知ってる知識から推測するに、彼女は鬼と呼ばれる妖怪だろう。

 

 なんでそんなこと知ってるかって?外の世界にゃ色んな創作物から得た知識に溢れてるのさ。そんなことはどうでも良い。

 

「ふうん、あんた中々に旨そうだ。丁度良い、酒のツマミに食っちまおう」

 

 と、まあ偏った知識にそぐわぬ話の聞かなさで俺を取って食うつもりのようだが、まあご存じの通り俺はこうして生きて話をしているわけで。

 つかみかかってくる鬼の腕を避けて、えいやと腹を殴れば面白いくらいにぶっ飛んでいった。

 そんな喧嘩事を嗅ぎ付けない地底の連中じゃ無かった。あれよあれよと言う間に鬼やなんだかよくわからない妖怪達が駆け付け、やれどっちが勝つかだの、やれ旨そうな人間だだの、好き勝手に騒ぎだす。

 そしてやはりここでも酷い男女比である。まあ人里よりか少し男が少ないか、程度なものだったけども。

 

「くそッ!最近の人間ってのはどいつもこいつもバケモン並かよ!」

 

 ぶっ飛ばされて出来た瓦礫の山を蹴り飛ばして現れた先程の女鬼。綺麗に吹き飛びながらも元気よく、ピンピンしてる様はやはり鬼か。偏見だけど。

 

 やれキョウカ!人間をぶっ殺せー!だの、人間、お前に賭けてんだ負けたらぶっ殺すぞ!だの、下品極まる野次が飛んでくるが、まあ気にしない。死ねだの殺すだの、強い言葉は聞き飽きている。

 

「ったく、どいつも勝手に賭けやがって。おい人間、アタシは今機嫌が悪い。弾幕ごっこで死んでも文句は聞かねえよ」

 

「弾幕ごっことは、なんだ」

 

 その一言でキョトンとした顔になり、その後上機嫌に嗤いだした。

 

「く、は、ははははは!人間が、弾幕ごっこを知らないで鬼に喧嘩を売ったのか?これはいい!アタシも手加減は苦手でね、ヤるなら本気の殺し合いに限る!」

 

 一応補足しておくが、当時の俺はスペルカードルールという名称は知っていたが通称弾幕ごっこと言うことは知らなかっただけである。

 そして始まる殺し合い。その流儀に則り互いに名前だけの自己紹介をした。何処からともなく落ちてきた一枚の銭硬貨、ちゃりんとなった瞬間、示し会わせた訳でもないのに同時に動き出す。

 鬼女は肩に担いだ金棒を振り下ろし、その衝撃が地面を走って俺に向かってくる。

 俺は地面を叩き、地底の更に底に溜まっていたマグマを呼び起こす。

 鬼女から放たれた衝撃が俺の体に直撃し、鬼女の足元から火を焼き付くすマグマが吹き出る。

 うおおおお!!と盛り上がる外野。ありゃ跡形もなく吹っ飛んだな。キョウカのヤツ生きてんのか?と好き好きに騒ぐ。

 

 そして飛び散った土煙と噴煙が晴れるとそこには無傷で佇む俺と、服が焼け落ちて全裸になった鬼女がいた。

 鬼女の皮膚には多少焼け焦げた痕があったが、煙のようなものが立ち上がるとしうしうとゆっくり治っていった。

 

「初手は俺の勝ちだな」

 

「ほざけ、こんなもん痛くも痒くもねえわ」

 

 と言いながらも持っていた金棒と片腕でデカい胸と秘所を隠す。眼福。

 少ない男妖怪は野太い声で歓声を上げるが、それを見た女妖怪達の冷ややかな眼で沈黙した。

 さてさて、眼福ではあるが流石にこのままでは死闘も何もないので、俺が着ていたローブを風魔法に乗せて女鬼に投げ渡す。ローブ自体はとんでもなく丈夫な程度のただの布だから別に惜しくはない。

 

「な、なんだよお前。……紳士なんだな」

 

 女鬼はローブを受け取って羽織る……かとおもいきや、体に巻く様に結びつけた。乳と股間だけ隠してれば良いやと言わんばかりのファッションスタイルに男妖怪共はスタンディングオベーション。縛られて強調された胸の谷間とチラリズムを醸す太ももが大変えっちで良いと思います。

 

「さあ、仕切り直しだ!」

 

 再度金棒を振り下ろし、地面を砕いた。だが、それはもう見た。

 

「『地・水合成魔法:マッドトリック』」

 

 自身と相手の足元の地面をまるっと泥沼に変える。硬い地面を通るはずだった衝撃は、沼の水分によって分散され、ぽこぽこと辺りの泥沼から気泡が立つ程度に弱められた。

 

「な、妖術使いか!?」

 

「魔法って言え。『地・炎合成魔法:チェーンブラスト』」

 

 呪文を唱えると、泥沼から魔方陣が現れ、そこから鉄の鎖が女鬼に向かってギャララギャララと耳障りな音を立て飛び出す。

 

「っの、小賢しい!」

 

 手に持っていた金棒で幾つかの鎖を弾け飛ばすも、無数に飛び出す鎖に追い付けなくなり遂に右足に鎖が巻き付く。

 巻き付いたところから引っ張られ、沼に片足を沈められた女鬼は、連鎖するように左足を、左手を、金棒ごと右手を鎖に捕らわれる。

 完全に拘束された女鬼は、鎖に引っ張られたことによって胸から上だけを泥沼から出している状態だ。

 

「さてチェック。もがけばもがくほどに沈む底なし沼で、両手足を縛られた。どうやって現状を打破するんだ?それとも諦めるか」

 

「……舐めるなよ、鬼を!見くびるなよ、怪異を!!数多もの人間の畏れを受けた鬼は、全てをぶっ潰す!!」

 

 バギンッ!と泥沼の中で鎖が弾ける。

 反動でズブッと首まで沈んだが、その両腕を振り上げた。

 

 バギンッ!

 

 バギンッ!

 

 続けて音がなる。

 束縛から逃れ、憤怒に染まった表情は、正に悪鬼羅刹。沼を殴り飛ばすという奇想天外な脱出方法で俺に近寄り、くびり殺そうと腕を伸ばす。

 なるほど。女鬼の言う通り俺は鬼という存在を舐めていた。見くびっていた。ゾクリと、久方ぶりに感じた恐怖が背筋を走る。

 

 

 だがそれは、俺が死力を尽くす理由にはならない。

 

 

 砕けた鎖に火が灯る。灯った火は炎となり、炎は爆炎となり、爆炎は獄炎となって砕けた鎖全てを繋ぐ。

 そして、繋がった獄炎の鎖は女鬼の四肢に再び絡みついた。

 

「っぐうううううう!!!」

 

 溶岩では焼き尽くせなくても、魂の罪科ごと焼く地獄の炎ならばその身を焼くに至るようだ。筋肉を携えた白い細腕には、炭化する程に燃え尽きた鎖の入れ墨が刻まれる。

 

 それでも、鬼は歩みを止めない。

 

 一歩。

 

 また一歩。

 

 四肢が燃え尽き、崩れ落ちようともなお進む。曲がらない意地と畏れをそこに見た。

 既に首に手が届く距離。見上げるほどに強大な畏れの化身に俺は……

 

 

 

もにゅん♡

 

 

 

「…………何やってんだお前」

 

「そこに山が二つあったから……」

 

 いや、これはもうしょうがない。女鬼と俺の身長差は大体頭一つ分女鬼の方がデカい。つまり首に手が届く距離ということは、そのデカい山はもはや揉めるほどに近づいている訳だから。怖いわー、魔性のおっぱい怖いわー。さっきから暴れるたびにばるんばるんしよるおっぱいを前に鼻の下を伸ばさないよう気張って真面目顔してたのに怖いわー。おまんじゅう怖い。

 鬼女は俺の行動に気が抜けたのか、再び鎖に引かれ泥沼に突き刺さった。仰向けで、手足は沼に沈められて、まるでヘタクソなブリッジみたいな恰好を見せる。俺の視界には、脚と脚の間の割れ目がとてもよく見えた。

 うん、まあ……けがなくて良かったね。

 

 うがー!だのまだ負けてねえ!だのと、可愛そうに思える程様になっている負け犬の遠吠えを聞きながら女鬼に近づく。

 鎖によって仰向けに転がされているが、首だけでも何とか俺の方を向いて必死に抵抗するも、誰がどう見ても勝敗は決していた。そして俺は勝利の美酒を味わうように女鬼のおっぱいの感覚を楽しんだ。

 

「おま、ふざっ、何しやがる!!?」

 

「勝利者特権」

 

 衆人観衆の中で行われる拘束プレイ。と言っても、先程の業火の勢いで殆どの観客は逃げ、辺りの建物はほぼ全焼してしまっている。ぎゃあぎゃあと騒がしいだけの地底の連中は居なくなり、遂にはそのデカい山を両手で存分に攻略していると背中がゾクゾクする程に濃い妖気を感じた。

 

「んっ、勇儀姐さん!」

 

 思わずその手に掴んだ栄光を強く握ってしまったが、鬼故か痛みも無く丈夫らしい。いや、そうじゃない。

 心臓に氷の針を刺し込まれたかと思う程に冷たい殺意にも似た熱い闘気に満ち溢れる一本角の鬼が其処に居た。デカい。

 

「……へえ。アンタかい、この惨状を起こしたのは。……まだ子供じゃないか」

 

 そりゃお前等みたいなデカい鬼と比べりゃ誰でも子供だろうが。俺は平均値だコノヤロー。とは声に出さない。

 怪力乱神の鬼、星熊勇儀と名乗った女鬼は、この辺りの元締めみたいな役割らしい。こうして騒ぎが起きたら出向くのが仕事だと言う。

 

「まあ喧嘩は旧都の華だ。一々止めやしないがねぇ……アンタは少し暴れ過ぎた。隅っこの方とは言え、旧都の一角を焼き落とすなんざやり過ぎだ。それにアタシの妹分が世話になったようだからねえ」

 

「それで落とし前を付けろって?知ったこっちゃないね。コイツに関しちゃいきなり人を食いに来たんだ。逆に食われたって文句言えねえだろ。周りの家に関しちゃ、まあボロ屋だったんだから立て直すいい機会だろ。壊す手間を省いてやったんだから感謝されこそすれ、文句言われる筋合いはねえな」

 

「はっ、アタシ相手によく吠える奴だ。さて、その正体は強者か愚者か、どっちかねぇ?」

 

 そう言って懐から大きな盃を取り出し、酒を注いで呑み始める星熊。おいその盃どうやってしまってた。お前の胸は四次元ポケットかと。

 えっ?四次元ポケットを知らない?ああ、そう……まあ何でも入るカバンだと思えばいいよ。

 

「勇儀姐さん、コイツよく分からねえ妖術使いです。油断すると……」

 

「狂華、アンタはいつアタシを心配できる程に強くなったんだい?」

 

「う、すみません」

 

 そう言ってショボンと沼に沈む女鬼。

 

「さて、それで人間。お前は何の目的があって此処に来たんだい?言っておくが、アタシは嘘は嫌いだよ」

 

「お前さんの好みなんて知らんが、色々やってたら落ちたんだよ。あの上の穴から。目的なんて無いね」

 

「……ふぅん、嘘じゃないみたいだね。まあ、何でもいいや。狂華を倒したんだろう?小手先の技術や小細工に負けるような鍛え方はしてないからねぇ。アタシも楽しませてくれるんだろうね?」

 

「……いや、コイツ小手先だけで倒したようなもんだぞ」

 

「ああっ!?おい人間テメェテキトーな事言うな!」

 

「乳揉んだだけで倒れたのは何処のどなただったかね?」

 

「は、はあっ!?何言ってんだふざけんな!アレは違うだろうが!」

 

「でも結果的に乳揉まれて倒れましたよね」

 

「だから違……く、はないけど……そうじゃねーじゃん!」

 

「狂華?」

 

「ヒエッ。ちちち違うんですよ勇儀姐さん!コイツは」

 

「下らない事言えないように徹底的に扱いてやるから覚悟しとけ」

 

「ひゃい」

 

 とても言葉では説明できない様な顔をしている星熊と、可愛そうなまでにシワシワになった女鬼のコントも終わり、星熊が改めて俺に向きなおる。

 

「あの馬鹿弟子にはキツイ灸を据えてやらないといけない……が、それは後だ。アンタがこの後どうするか知らないが、アタシ達にも面子ってモンがある。ぽっと出の人間に良いようにやられました、じゃあ面子が立たない。分かるね?」

 

「……ふぅー……、鬼ってのはアレかね」

 

「?」

 

 

 

「下らない御託を並べなきゃ拳一つ振るえねえのか?」

 

「……面白い奴だ、気に入った!本気で殺してやるから死力を尽くしてついてきなよ!」

 

「逆だバカ。死ぬ気で来なきゃ無様に終わるぞ?」

 

「吐いた言葉は飲み込めないぞ!」

 

 

 

 星熊が地面を割る勢いで踏み込み、大振りで殴りかかってくる。技術も何もあったもんじゃないテレフォンパンチだが、大気が圧縮される唸り音が聞こえるほど強力な一撃である事がうかがえる。俺はその拳を土手っ腹で受け止めた。

 星熊が驚愕の表情に染まる。成程、大した威力だ。並の人間なら、掠っただけで致命傷に至るだろう。直撃なんて食らったモンなら、当たった所が消し飛ぶ威力だ。

 だが、お生憎。俺は並の人間じゃない。お返しのストレートを星熊の細い腹に叩き込む。

 膝こそつかなかったものの、予想以上のダメージに少し困惑している様子なのは明らかだった。成程、嘘が吐けない性格らしい。

 

「アンタ、本当に人間かい?人の形をした山なんじゃないのか?」

 

「そんな例えされたのは初めてだが、残念な事に人間だぜ。ま、ちょっと混ざり物があるがな」

 

 お互いの息を交換し合えるような距離で見つめあう。そして次の瞬間、足を止めての乱打、乱打、乱打。拳と拳の応酬。お互いに防御を忘れたかのように拳を相手に叩き込み、叩き込まれる。

 ドォン、ドォン、とまるで大砲が撃ち込まれたかのような轟音が地底に響き渡り、拳の衝撃が辺りの地面を砂状に粉砕してゆく。

 

「は、ははははは!!人間とこんなに殴り合ったのは初めてだよ!!」

 

「美人さんの初体験を奪えて果報者だよ俺は!」

 

「ははは!!アタシの事をそんな風に言う人間はお前が初だ!」

 

「そいつは何より!お礼に一晩シケこまない?」

 

「アンタがアタシに勝てたらなぁ!!」

 

 殴る、殴る、殴る。一発ごとにエンジンが掛かってきたのか、威力と速度が上昇していく。物理的な法則を無視する存在と、物理的な法則に囚われない存在がただ殴り合っていくだけで世界は悲鳴を上げているようだ。

 ふとした拍子に拳と拳同士がぶつかり、反動で意図せずとも互いに間を開けた。

 

「ああ、このままじゃらちが明かない。一つ提案なんだが、互いに全力の一発を懸けないかい?」

 

「名案」

 

 互いの衣服はボロボロ。全身血だらけ傷だらけ。だけど両者ともに瞳に灯った炎は陰りもしないから、冗長な勝負事など御免だと、超短期決戦に切り替える。

 

「アタシの全力の一発を受けて、立ってられたらアンタの一発をアタシが受ける。先にぶっ倒れたほうが負けって事で」

 

「異議なし」

 

 ギラリ、と獰猛な笑みを浮かべ、関取が四股を踏むように地面を踏み抜いた。意識、一転。

 星熊から、ゴオオオオ、とまるでジェットエンジンの駆動音の様な呼吸音が発せられる。その二つ名の如く、訳の分からない、妖力でも魔力でも無い力が星熊から発せられ、全身にみなぎってゆく。

 

「せめて人の形を残しておきなよ……!『三歩必殺』ッッッ!!!」

 

 一歩。地面を踏み抜く力で、周囲一帯を大地震の様な衝撃を巻き起こす。

 二歩。全身の力全てを、全力で前に進む(はや)さに変える。

 三歩。音を置き去りにした拳が、振り抜いた直線状全ての物を塵にする破壊力に変える。

 

 本来ならば三歩の距離に届く物全てを壊す必()技だが、それをたった一人の人間を倒すためだけに全ての破壊力を一か所に集めた。

 

 そんな技が直撃して、神ですら生きていられはしない。人間なら、肉片の一つでもこの世に残れば奇跡である。

 

 ましてや、原形を残して生きている等、ありえはしない。

 

 その筈だった。

 

 

 

「腹に穴が開いたのは二回目だ」

 

「……アンタ、実は人間じゃないだろ」

 

「失礼な、生まれも育ちも人間だ。滅茶苦茶丈夫で、滅茶苦茶強い人間さ」

 

 風穴開いた腹を魔法で治療しつつ、再び星熊の前に立つ。

 もし、ここが地底では無く地上だったら、死にはしなかっただろうが地に伏していたのかもしれない。此処が地の底で、地属性のマナが溢れている場所だったからこそギリギリ防ぎきれた。

 魔法のタネは至ってシンプル。攻撃を食らう前に。腹を守る盾を作っただけだ。

 その盾が、地球の内核並にぎゅうぎゅう圧縮して出来た理外の盾だったからこそ辛うじて腹に拳一つ分の穴が開いた程度で済んだ。

 

 先程の獰猛な嗤いとは打って変わって、全てを絞りきって乾いたような笑いを零した後、じゃあ次はアンタの番だよ、と言った。

 全てを込めて放った一撃が防がれ、もはや立っているのがやっとなのだろう。

 まあ、だからといって手を抜く気はないのだが。

 

 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、心臓が拍動する。

 心臓の拍動を、意図的に強める。血のめぐりが速くなり、魔力が全身に再度満ちる。水の魔力が血液と共に巡り、炎の魔力が身体を加熱する。風の魔力が意識を加速させ、地の魔力で肉体を操る。光の魔力が肉体の崩壊を防ぎ、闇の魔力が力を意図的に暴走させる。

 全ての属性の魔力を纏め上げ、押し固め、加圧し、極限状態に至る。

 世界は、一色(カオス)に染まる。

 

 渾身の一撃が、星熊勇儀の意識ごと吹き飛ばした。

 

 




次回、温泉でえっち。


・狂華
 オリキャラ。男口調でばるんばるんしよる二本角の鬼。金棒使い。勇儀の弟子。

・勇儀
 体操服も好きですが着物のほうがおっぱいがえっちなのでそっちに。

・主人公
 逆にコイツ何やったら死ぬんですかね。

・全力の三歩必殺
 相手は死ぬ(死なない)


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地獄に落ちて添え膳

えっち次元では混浴以外認められないので。
というか地底の温泉って男女分けられてなさそう。
そして魔法って便利だなぁって話。


 星熊と殴り合いをしてから約一週間。俺は地底に滞在していた。

 と言うのも、半強制的に旧都の復旧作業を命じられていたからだ。唯我独尊を地で行く俺だが、星熊との殴り合いの余波で旧都の一角どころかその半分の建物が全壊或いは半壊してとても住めるような状態ではなくなった。さらに旧都の中心部にある地霊殿までにも被害があったと言えば、その規模の大きさは理解できるだろうか。

 まあ、そう言う訳で俺と星熊は旧灼熱地獄の管理者である古明地さとりにもの凄く怒られた訳だ。内容についてはほぼ地霊殿の事だけだったが。

 そして罰として旧都が完全に直るまで地上に帰さないとまで言われ、監視役の猫と鳥が交代で見張る事になった。

 

 とまあ、そんなこんなで土木作業をしては流した汗を源泉湧きだしの温泉で流し、飯を食って酒を呑んで眠って起きてはまた土木作業……と非常に汗臭い一日を繰り返していた。汗臭いって言っても、俺じゃなく周りが汗臭いって意味な。俺は地盤固めとか建材運びとか、全部魔法でちょちょいのちょいだったから。

 罰故に俺と星熊と狂華、人間一人鬼二人で旧都半分以上を直せと言うのだから中々に無茶な事であった。ただ外の世界では考えられない速度での復旧作業ではあったが。

 五日間程旧都復旧作業に従事して、結果的には旧都中を見て回ることが出来たのでまあ良しとする。

 ……何?日数が合わない?五日で旧都復旧させて、残り二日を旧都以外の地底を回ってたんだ。まあすったもんだあれど、有意義な旅だったといえよう。一番最初の目的であった家作りはどっかにいった。

 

 そうして、地底に落ちてから一週間後に俺は地上に戻ったのだった。

 地上は地上で俺が行方不明になったという烏天狗の記事が出回っていて、それはそれは面倒な話に繋がっていくが、まあそれはまた今度ということで。

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

 旧都が半壊した。まあアタシも悪いとは思ってるし、そこは素直に復旧作業に従事する。

 復旧作業は鬼が総出で行えば2日程度で終わるのだが、それじゃあ罰にならないとさとりは言った。偉そうに。

 まあ、それは良い。結果的にあの男とそれだけ長くいられると考えれば問題はない。

 

 そう、あの男。人間では考えられない程に強い男。アタシの全力の一撃を、真正面から受け止めた唯一の男。

 本気で戦って、負けた。そして胸に渦巻くこの想い。

 

 欲しい。

 

 あの男が欲しい。

 

 鬼らしく、彼を攫ってしまえば良いと心は騒ぐ。

 復旧作業の時にふ、と彼がそばに来た時に感じた、僅かな彼の汗の匂いにどうしようもなく心がざわつく。すぐにでも食ってしまいたい。

 だが、頭では分かっている。私よりも強いのに力ずくでどうにかなる相手ではないと。

 一日の作業が終わり、かいた汗と心に溜まったわだかまりを流す様に温泉に浸かる。

 

「あ~……疲れた体に効くぅ~」

 

「オッサン臭い事言ってんじゃないよ狂華」

 

「いや、アタシは勇儀姐さんみたいな体力お化けじゃないですから。何だったらあの時の死闘の後すぐにでも寝たいくらいに死にかけですから今」

 

 アタシと人間が死闘を繰り広げていた時、狂華はすぐ近くの地面に埋まっていた。何やってんだと思っていたら、あの時人間の魔法によって地面に拘束されていたらしい。まあ死闘の余波で死ななかっただけ御の字だと思っておけ。

 

 いつもなら温泉に浸かれば、酒の一升でも呑みたくなるのだが、今日は不思議とそんな気にもならなかった。

 ぼんやりと地底の空を眺めていると、しきりに自分の胸をいじる狂華が気になった。何やってるんだい。

 

「いえ……やっぱ男って大きい胸が好みなのかと……」

 

 言われて、はたと思い出す。そう言えばあの男と対面した時、狂華の胸を無遠慮に揉んでいた。

 アタシも自分の胸を見る。鬼に限らず、今まで出会ってきた奴と比べても特に大きな胸だ。確かにこんな乳ぶら下げていると男共から不愉快な視線を受ける。勿論そんな目で見てくるヤツは例外なく殴り飛ばしてきたが。やはりあの人間も大きな胸が好みなのだろうか、そう思うと少し嬉しく思った。

 狂華を見る。胸に人の頭でも突っ込んでるのかと思う程にでかい胸だ。今まで出会ってきた誰よりも大きいし、私よりも一回り以上大きい。何処かの酒場で、ある男妖怪が「おっぱいはデカけりゃデカいほど良い」と豪語していたことを思い出す。あの人間もそうなのだろうか。そう思うと少し悲しく思った。

 

 そうして狂華と揃って自分の乳をいじっていると、温泉の入口をカーン!と乱暴めに開けて入ってくる誰かが居た。

 おいおい、今日此処はアタシ達で貸し切りだと言うのに、誰だ?とそちらを見れば、先程まで想っていた男が全裸で堂々と立っていた。

 

「……は?」

 

 突然の事で頭が動かないが、そんなことお構い無しに掛け湯をして、当然のようにアタシと狂華の間に入る。いや、ここ女湯……。

 

「いやいやいや!おい人間お前、ここアタシ達の貸し切りだぞ!?ってか女湯って書いてたろ!?えっ、何で入ってくるんだ!?お前女だったのか!?」

 

「そうはならんやろ」

 

 混乱しまくってる狂華をよそに、じっとアタシを見つめてくる人間。な、なにみてるんだよぅ……。

 

「約束」

 

「や、約束ってなんだよ……」

 

「勝ったら一晩中好きにしていいって言っただろ」

 

「一言もそんな事言った覚えはないんだがねぇ!?」

 

「そうだったか?まあ、良い。勝利報酬ってことで」

 

 そういって温泉の中で無遠慮に私の胸を揉みしだく男。まるで手で噛むように乱雑に、激しく揉まれる。

 こういった行為自体は初めてでは無いものの、今まで受けたことの無い程に強い愛撫に思わず息を吐いた。

 

「はぁん♥️」

 

 そしてすぐに両手で口を塞ぐ。なんだ今の声は。もしかして、アタシが出したのか?鬼の四天王と呼ばれ、力の勇儀と畏れられるこのアタシが!?

 

「エッロい声だな。口なんて塞ぐな勿体ない」

 

「ふざけるな、だれがんふぁ♥️」

 

 ぎゅうっと握られ、男に良いように胸の形を変えられる。痛みを感じるほどだったが、それ以上の快楽の波が頭に打ち付けてくる。

 

「ふっ、ふーっ、んー♥️ふー♥️」

 

 声を出さないように必死に口を抑えるが、両手から漏れでた快楽の吐息が耳に入る。胸の痛みは、完全に快楽に変わってしまった。握りつぶされ、引っ張られ、ぐにぐにと芯まで噛むような揉みかたに、思わず腰が浮いてしまった。

 

「んー♥️ふぅー♥️ふぅー♥️んぐぅ♥️」

 

 乳揉みと言うよりも、乳搾りと言った方がよさそうな愛撫に、浮いた腰がカクカクと無意識に震える。温泉よりも熱い液体が、股の割れ目から溢れ出てくる。鬼の四天王と畏れられた自分の情けない姿に涙が出てきた。

 

 激しい愛撫を胸に施していた男が、はっと乳から手を離す。私の白かった肌は、男の手によって胸だけ朱色に染まってしまった。あんなに酷い事をされたというのに、私の心はこの人間に染められたという喜びが溢れ出す。

 両手で塞いだ口は、その両手の裏でニヤニヤと歪んでいたがすぐに別の形に歪んだ。男は、今度は尻を激しく揉みしだいてきた。

 

「もっとエロい声を聞かせてくれよ」

 

 人間は左手でグリグリと尻を弄り倒しながら、右手は私の両手を掴んで持ち上げた。

 そのせいで、アタシと人間の身体の距離が先程よりもぐっと近づく。吐息がかかり、男の瞳に写る私のだらしない姿が見える。

 

「んあぁっ♥️はあぁっ♥️」

 

 抵抗するも、鬼よりも強い力で押さえつけられて生娘のように身をよじるくらいしか出来ない。ぐっと抱き寄せられ、温泉の中で胡座をかく男の上に対面向きで座るように引き寄せられた。

 男の剛直がアタシのへそに当たる。アタシの角より大きくないか?

 

「よし、挿れるぞ」

 

「ま、待った!こんな大きいのいきなり入る訳ないだろ!」

 

「ははは、嬉しいことを言ってくれるな。よーし、もっと本気出しちゃうぞー」

 

 ぐ、ぐ、と男の剛直が更に大きくなり、遂には私の水月の辺りまで大きくなる。

 

「嘘だろ……?あっ、こんな、馬並みじゃないか……」

 

「お前がエロいからな。誇って良いぞ」

 

「ふ、ふざけんな!こんなもん入れたら裂けちまうよ!無理だって、な!お前の好きな胸で幾らでも奉仕してやるから!」

 

「まあそれは後で楽しもう。俺は胸も好きだが、一番好きなのはコッチなんだ」

 

 脚に手を回され、軽々と持ち上げられては剛直をアタシの割れ目にあてがわれる。

 ぞわぞわと背筋が悦びと恐怖が混じった感覚が走る。さっきまで胸にされていた乱暴な行為が、この剛直で行われるというのか。冗談じゃない。

 ぐぐ、とゆっくり力を入れられ、剛直の先っぽがアタシの割れ目に入ろうとしてくる。貫かれてなるものかと、膣に力をいれてがっちり閉じる事で抵抗する。

 

「た、頼むからさ……せめて優しくして……じゃないと壊れちゃうじゃないか……」

 

 ああ、本当に情けない。かの力の勇儀が、人間の男に生娘のような懇願しか出来ないなんて。

 

「……仕方ない、なら奥の手だ」

 

 一瞬、止めてくれるかと思ったが次の瞬間に希望は打ち砕かれた。

 

 ガブッ!!

 

「あハッぎぃッッッ♥️」

 

 胸の先っぽに強く噛みつかれ、まだ痛みが鋭い快感に変わってしまうアタシは、それだけで達してしまい……わずかに緩んだ膣にイチモツをねじ込まれた。

 

「あぐぅッッ!!!?」

 

 一番奥の大事なところまで一気に突き刺さり、快楽の衝撃がそのまま脳天まで貫いていった。

 その勢いのまま、何度も何度も力任せの抽挿によってごりゅ、ごりゅと内臓全てがかき回されるかのような乱暴な行為だと言うのに痛みや不快感など無く、むしろその全てが快感に書き変わってしまったのか、一突き毎に絶頂を繰り返していた。

 

「あ"っ♥️やめっ!お"っ♥️ぎぃッ♥️」

 

 じゅっぷ、じゅっぷ、とゆっくり、そして強い抽挿に思考のほぼ全てが飛び、残った僅かの思考がこれ以上は危険だと膣を締め付ける事で抵抗する。

 

「くっ、子供マンコ以上に締め付けてやがる」

 

 だがそんな事はお構い無しにごりゅごりゅと貫き続け、一撃一撃が残った意識を飛ばしかける。

 このままでは壊されると、温泉の緣の岩にしがみついて逃げようとするが、男はそんな事許してはくれなかった。

 体位が変わり、より深く繋がる後背位になってもその激しさは変わらない。もはや自分の意思とは関係なく力一杯に男の剛直を食い千切らんと締め付ける膣だが、全くこたえること無く、むしろ楽しそうに膣内で暴れまわるイチモツに意識が千切れそうになる。

 

「あー、出そう。出る出る、中に出すぞ」

 

 飛びかけた意識の隅で人間の言葉を理解する。駄目だ、今中に射精されたら完膚なきまでに負けてしまう。もうこの男が居なければ生きてられなくなってしまう。鬼の四天王星熊勇儀が、ただのメス妖怪になってしまう。

 

「あっ中に射精、アンタの子供、欲しいっ♥️」

 

 残った理性ではなく、本能からの言葉。鬼らしく、自分に愚直な言葉が口から溢れる。肩書きなんてどうでもいい。ただ、欲しいモノを奪っていく。

 先程までただ強く締め付けていた膣も、精液をねだるようにきぅ、きぅ、と脈動する。

 すると、アタシの腰を掴んでいた手を放し、覆い被さるように姿勢を変えた人間が

 

「今のお前、最高にエロいぞ」

 

 耳元で囁き、アタシの耳を強く噛んだ。

 

「ひっ♥️ぎゅううぅぅぅ!!!?♥️」

 

 そして潰されるくらいに強く胸を握られ、ただでさえ精子の受け入れ体制が整っていた子宮口が更に大きく開き、遂には男の剛直が子宮口を突破して、更に奥の壁に鈴口を擦り付ける。

 

「絶対孕ませてやるからな、覚悟しろよ」

 

 そう言って下腹部に手を回され、ぐっ、ぐっ、と外側からも子宮を刺激する。内側からぐりぐりと虐められ、外側からぎゅっぎゅっと押され、子宮全体が焼けた鉄のように熱くなる。

 もうその頃には家畜のような喘ぎ声しかあげられなくなってしまったアタシは、与えられた快楽によって正気を失っていた。

 

「出すぞ、こぼすなよ……っ!」

 

「おッ!あっ♥️ああああ♥️♥️♥️」

 

 間欠泉のようにグツグツ煮立った精液が大量に吐き出され、すぐに子宮をいっぱいに満たしていった。

 彼の言葉通り一滴もこぼすまいと、子宮口と膣全体で締め付けるが、あまりの多さに逆流していった精液がぶぴぶぴと結合部から漏れ出る。

 

 アタシの中に大量射精した彼がイチモツを抜いた時、最後の出しきりの射精がびゅるびゅるとアタシの髪から尻にかけて白く染める。完全に吐精が終わると同時にアタシは完全に意識を失った。

 

 

 

 

 どろっ、と精液が膣から漏れ出る不快感で意識が戻ると、彼は狂華の喉奥に射精するところだった。

 

「お前戦ってる時からずっとデカい乳揺らし続けやがって、ずっとチンコイライラしてんだよ!責任とれ!」

 

「ん~!んぐぅ~♥️♥️」

 

 狂華の角を掴んで、喉奥に捩じ込むように腰を打ち付けて射精する。逆流した精液が口や鼻から飛び出し、酷い顔になってしまった。

 喉奥に射精した後、狂華の顔に塗りつけるように精液を出して、ようやく狂華の角から手を離す。

 狂華は意識を失ったのか、そのまま後ろに倒れた。よく見たら、顔だけでなく胸や髪まで精液まみれになっていて、アタシが気絶してから数回は射精を受け止めている事が伺えた。

 

 何度も犯してようやく満足したのか、男はさっと身体を洗って温泉から出ていった。後に残されたのは、腰が砕けて立ち上がれないアタシと、執拗に上半身を犯されて意識が朦朧としている狂華だけだった。

 

 

 

 それから少し経って、温泉から這い出るように出てきたアタシ達はふらふらと近場の飯屋に入り、失った体力を取り戻すように酒を浴びるように呑んで飯を食った。

 

「姐さん!今度はアタシ達がアイツのチンポ勃たなくなるまで搾り取ってやろうぜ!」

 

 ぷりぷりと怒りながら、あの人間に復讐すると意気込む狂華。名案だ、やられっぱなしはアタシの性根に合わない。キンタマ空っぽになるまで搾精してやる。

 ……とは言うものの、肝心のあの男は何処に消えたか見当たらない。まあ、明日になれば旧都の復旧作業で会うんだ。搾り取って骨抜きにするのはその時で良い。

 飯と酒を腹に入れ、明日への活力に変えたところで家に帰る。狂華の住処は先の喧嘩で半壊しているので、アタシの家に泊めてやる。

 そうして揃ってアタシの家に帰ると、何か違和感があった。まるで昔、猪口才な陰陽師に罠に掛けられた時のような、精度の高い隠形のような空気をアタシの家から感じた。

 狂華も感じたのか、険しい顔をしてアタシの顔を見る。

 ……生意気だ。例え人間に負けたとしても、アタシの力は揺るがない。どうせ何処かの馬鹿が名を上げようと、人間に負けたアタシの首でも取りに来たのだろう。鬼を甘く見た代償はその首と思い知れ。

 と、自宅の扉を破るように開けたら

 

 

「んぎぃぃぃ!!?♥️お"っ、お兄さんっ♥️もう勘弁しておくれっ♥️♥️アタイのおまんこ、お兄さんのじゃないとダメになるからぁッッ♥️♥️♥️」

 

「うにゅっ♥️♥️あっ、ひぅんっ♥️熱いよぉっ♥️おまんこ、すごい熱いぃ♥️♥️」

 

「うるせえっ!クソ生意気なお前らの元ご主人様にボデ腹ペット見せびらかしてやるから覚悟しろよっ!」

 

「やだぁっ♥️赤ちゃんダメぇっ♥️さとり様の許可なし孕ませセックスだめぇ♥️」

 

「うああっ♥️おにーさんとフュージョンっ、好きぃ♥️奥コリコリされるの、好きぃ♥️」

 

「ペット寝取り最高っ、おらっ、新しいご主人様の精液ねだれっ!」

 

「あ"っ♥️はぁん♥️ごめんなさいさとりさまぁ♥️アタイもうおちんぽ無いと死んじゃうぅ♥️」

 

「おにーさん♥️おにーさんっ♥️いっぱいせーしちょうだい♥️アツアツの赤ちゃんの元、いっぱいうつほにちょーだいっ♥️♥️♥️」

 

「強制発情ザーメンっ、しっかり受け取りやがれ!首輪代わりのガキ孕めっ!」

 

「ほおおおっ♥️精液熱いっ♥️産んじゃう♥️絶対赤ちゃんできちゃうっ♥️」

 

「ああああっ♥️好きっ♥️エッチ好きぃ♥️おにーさん大好きぃ❤️」

 

 

 なんだこれは。なんでさとりの所のペット共と人間がアタシの家で交尾してるんだ。というかこの男、アタシ達を手篭めておいて更に他の女にも手を出すのか。

 

 男の長い射精が猫と烏の子宮を満たし、更に半身を白く塗りたくる程大量の精液が辺りに強烈な匂いを撒き散らす。

 そこで、ようやくアタシ達に気がついたのか男がこちらに顔を向けて、いきり立ったイチモツを指差す。この野郎、アタシの家で好き勝手しておいて、更に奉仕しろというのか。

 

「あんた、こんなことしておいてタダじゃおかないからね。ん、じゅる、じゅ、ちゅる」

 

 男の前に跪き、精液まみれの肉棒をしゃぶる。精子一匹たりとも残さないように丹念に飲み込む。

 

「お、お、おい人間!お前さっきは好き勝手にしてくれたな!アタイ達がお前のチンポを蹂躙してやるからな!泣いたって許さねえぞ!」

 

 狂華が、メスの匂いをプンプン撒き散らしながらアタイと同じように跪き、男の玉を舐め転がす。

 

「覚悟しろよ……♥️この中身全部……絞り出してやるからな……♥️ん、ふ、れろ、んむ……」

 

 アタシが竿を、狂華が玉をねぶり、くりくりと舌で堪能すると突然角を掴まれて引き剥がされる。

 

「ふぁ、な……なんだい?まさかもう出そうとでも言うのかい?」

 

「はっ、さっき迄の威勢はどうしたんだ?この早漏野郎♥️」

 

「胸を出せ」

 

「「はい❤️」」

 

 アタシは着ていた和服を、狂華は胸と尻だけ隠していたような一枚布?を脱ぎ捨てる。つん、と剛直で胸をつつかれれば、男の意図を察した。

 アタシと狂華の乳が男の剛直を挟む。散々虐められた借りを返さなければならない。

 ぎゅ、ぎゅ、と乳越しに刺激を与えたり、先っぽだけを円を描くようにグリグリこね回したり、根本からずり上げるように胸でしごいたり、アタイと狂華は息を合わせてチンポを攻める。

 

「おおっ……鬼のダブルぱいずりやばっ……」

 

「ははっ、今が攻め時だよ狂華!」

 

「了解です姐さん!」

 

 男の腰が少し浮わついてきたのを見計らい、狂華が脚を掬い上げ、アタシが両腕を掴んで、二人掛かりで男をうつ伏せに引き倒す。

 狂華が引き倒した男の下敷きになるように潜り込み、男の股から顔を出し、その胸で男のイチモツを挟む。アタシは男の顔を胸で挟み、逃がさないように両腕を回して抱きつく。

 

「はは、どうだ?踏ん張りが効かないだろ?精液びゅるびゅる漏らしちまえ♥️」

 

 狂華の胸に収まりきらない剛直の鈴口を脚でしごく。男の息が荒くなってくるのを胸で感じた。

 

「ほらほら、さっさと出せ!チンポがヒクついて射精近いのまる分かりだぞっ♥️ん、ちゅぷ、れろ」

 

 狂華が男の尻穴に舌を這わす。ぎゅっぎゅと胸と脚で刺激して、剛直を仕上げに掛かる。

 

「出せっ♥️出せっ♥️出せっ♥️出せっ♥️」

 

「んふ、ちゅ、くちゅ、つぷっ」

 

 狂華が舌を尻穴に入れ、激しく舐め回す。ビクッと男の身体が跳ね、勢いよく精液が吹き出した。

 

「はっ♥️まだまだこんなもんじゃないぞ!」

 

 射精している肉棒を脚でしごき続けながら男をうつ伏せから仰向けにひっくり返し、その顔に跨る。

 

「ん、つぷ、くちゅ、にゅる」

 

 狂華は尻穴に舌を這わしながら、長い射精を続ける剛直を両手で虐める。

 アタシの両足と狂華の両手で激しく扱かれたイチモツは精液ではない潮を勢いよく噴き出した。

 

「はっはは♥このままキンタマ空っぽになるまで搾ってやぁっ!?♥♥」

 

 突如アタシの尻に歪な何かが突き刺さり、一瞬腰が浮いた隙を突かれて男が拘束から抜け出す。

 

「好き勝手やってくれやがって。こっからは俺のターンだ」

 

 アタシの尻に入り込んだ何かが蠢き、膨れ上がる。どんどんお腹が圧迫されて苦しいまでの快楽が背筋をなぞる。

 尻に入り込んだ何かを掴んで引きずりだそうとするも、出しても出してもずっとお腹の中に残り続けている。

 

「お”っ、ぐぅぅっ!?♥な、なんでコレずっとぉ♥♥」

 

「ほらほら、そのアナルパール全部抜かないと大変な事になるぞー」

 

 既に大変な事になっている。玉のような物が一つ、また一つ引きずり出す度に背筋に突き刺さるような快楽が走り、床に這いつくばる姿を晒してしまう。

 

「ふっ♥ふぎっ♥くるひっ♥」

 

「どうした?もう力が入らないのか?仕方ない奴だ、なら手伝ってやろう」

 

「あぅ、待っ」

 

 男が尻穴から出てくる玉を掴み、一気に引きずり出す。

 

「ほお”お”お”お”お”お”ぉ”ぉ”ぉ”~~~♥♥♥」

 

 尻穴から玉が出ると同時に、口からは汚い喘ぎ声が出る。ぶちゅっ、ぶしゅっ、と割れ目から悦び液が漏れだす。

 

「まだ残ってますねー」

 

「待ってッ!待っあ”あ”お”お”お”お”オ”ッ♥♥♥」

 

 無限に出てくるのではないかと言う程に何度も何度も一気に引きずり出され、視界が焼けついた様に白く染まった。

 背骨が快楽によって折れるのではないかと言う程に反り返り、粗相が飛び出して恥ずかしい姿を惜しげもなく晒す。玉を全てひり出された時には、穴という穴から液体を漏らして気を失った。

 

「さて、次はお前の番だな」

 

「っ……♥はっ上等だ!テメエのザーメン全部受け止めてやるよ!」

 

「ほう、その意気込みは良し。潮吹かされた借りは返してやるよ」

 

 

 

 はっ、と意識が戻れば、地底の朝の時間だった。

 まだクラクラする頭を振って起き上がれば、濃い性臭が鼻につく。

 

「おっ、起きたか。……ん?もうこんな時間か」

 

 男の声が耳に入り、そちらに顔を向けると衝撃的な光景が広がっていた。

 まるで妊娠したかのように腹が膨らんでいる狂華とさとりの所のペット二匹。何かをされたのか、胸からは母乳が噴き出しびくっ、びくっ、と痙攣していた。

 

「三対一でかかって来たからな、つい本気を出した。……さてもう朝だし、また風呂にでも入る……前にちょっとチンコ綺麗にしとくか」

 

 ガッ、とアタシの角を掴み、顎を押さえて口を強引に開かれる。あっと言う前に喉奥まで一気に肉棒を突っ込まれた。

 

「ごっ!!?おぇっ!!ぐぶっ!」

 

「あー、やっぱ喉フェラ良いわぁ……」

 

 角を掴んだまま、手を喉に回し首を絞める。意識が朦朧としてされるがまま。血が頭に上らず、息も出来ず、視界が徐々に暗くなっていく。

 そして、ひときわ深く喉奥に肉棒を突き刺し、吐精する。それと同時に首を強く締め付けられ、再度意識を失った。

 

 

 

 そして全員の意識が戻って少し経ち、アタシ含めそこに居た四人で朝飯を食いに行った。人間は温泉にでも行ったのか居なかった。

 

「ううっ……お腹重い……」

 

「アタイもお空もしこたまブチ込まれたからねえ……というかお股のコレ外れないんだけど」

 

 さとりのペット二匹の股には貞操帯のような物が付けられ、膣内に射精された精液が零れないよう蓋のような役割をしていた。

 

「……っつーか、何なんだあの人間。あっ、風呂でヤッたの除いたとしても妖怪四人相手にどんだけ出すんだよ。絶倫ってレベルじゃねえ……あっ」

 

 狂華も同じように膣内に大量に射精されて腹が膨らんでいるが、それ以上に大きな変化は胸から乳が出る様になってしまった事だ。それはどうしたのかと聞けば、電撃が走ったかと思えば出る様にさせられた、との事。そんなん有りか?そのせいで抑えてないと絶えず零れ出し、気を抜けば吹き出るそうだ。今はサラシを巻いてガチガチと固めてるが、それでも敏感になってるのか時々肩を揺らす。

 

 アタシだけ何もされてない気がするんだが!

 

「いや勇儀の姐さん。首もとめっちゃキスマークつけられてますよ」

 

 マジか。思わず首もとを押さえる。そう言えば先程思いっきり喉絞められたな。その痕も残っているのだろうか。

 こうして痕を刻まれて、嬉しいと思ってしまうなんて。昔じゃ考えられない程にあの人間に首ったけだなあ。

 

 そうして飯を食ったら、男も戻ってきて昨日の復旧作業の続きである。だが仕事は全然捗らなかった。まあある意味当然で、夜通し性行為をしていた為鬼のアタシ達でも体力がほとんど残っていなかった。だってのに何故かあの男は昨日と同じように働いていた。体力どうなってんだ?

 昼休憩や仕事の合間合間に胸や尻を揉まれたりは当たり前。路地裏に引っ張りこまれ、男の性処理をしたり、膣奥に射精されたり。散々な日だった。

 

「ちょっとマンコ借りるわ」

 

「馬鹿じゃないのかい」

 

 それでもあっさり中出しを許すくらいには男に堕ちていた。

 そうして夜は共に温泉に入り、男にとっては前戯だがアタシ達にとっては本気行為のセックスを行い、寝る前に更に激しい性行為を行って、意識を失うように眠る。

 

 そんな性活を二日行い、アタシ達は限界だった。

 

「このままだとあの人間にハメ殺されちゃうよぅ……」

 

「うにゅ……」

 

「何なんだマジであの人間……」

 

「鬼のアタシらでも身体が持たないね」

 

 そこでアタシ達は一つの作戦を実行する。本当はこんな事なんてしたくないが、背に腹は代えられない。

 

「お燐、お空、貴方達覚えてなさいよ……!」

 

「ゴメンなさいさとり様……アタイらもまだ死にたくないんです……!」

 

「妬ましいわね狂華、後で殺してあげるから」

 

「本当に悪いパルスィ。今はとにかく人数が必要なんだ」

 

「勇儀ぃ……アンタ、こんな事しておいてタダで済むと思ってんのかい?」

 

「悪いな萃香。後で幾らでも殴られてやるから、せめて今晩だけでも……な?」

 

 アタシ達の作戦。それは彼を相手取る人数を増やす、だけ。いくら絶倫とはいっても、流石に妖怪7人相手なら何とかなるだろう。

 

 

 

 何とかならなかった。

 

「ふっ、人間如きが私を孕ませようなどと100年早いんですよ」

 

「流石サトリ妖怪、気持ちいい所を的確に探ってきやがる。だけどゴメンな、お前の弱点も反応でまる分かりなんだわ」

 

「おっ♥奥っ♥奥らめぇっ♥人間チンポらめぇ♥」

 

「妬ましいわ。好き勝手ハーレム作るなんて妬ましいわ。背中を刺されて死ねばいいのに」

 

「スマンな、刺されたくらいじゃ死なないし、刺されるより女にチンポ刺す方が好きなんだ」

 

「ふっ♥ふぐっ♥こんな、知らないっ♥こんな大きなチンポ知らないっ♥ね、妬ましいっ♥」

 

「ふん、デカいだけじゃ女は悦ばないよ。技が無いとね、技が」

 

「オナホみたいなサイズ感しやがって。おら、とっとと子宮開け」

 

「ほぎぃっ♥こんにゃぁ♥壊れちゃう♥私の鬼マンコ貴方専用になっちゃうぅ♥」

 

 全員で掛かっても、男の魔法によって的確に弱点を突かれ、結局意識を失うまでの時間が延びるだけで男を倒すには至らなかった。

 とは言っても、僅かながらに余裕が出来たので壊れる前に何とか間に合ったと言えよう。

 

「ったく、どんだけ射精すれば気が済むんだこのチンポはよぉ♥おら、アタシをこんな身体にした責任取れ♥今日もザーメン一番奥に出して孕ませろ♥」

 

「変態おにーさんのおちんぽ♥死んだら絶対アタイがおにーさんの死体貰うんだからね♥」

 

「うにゅ♥赤ちゃんいっぱい作ろうね♥」

 

「アタシは嘘が大嫌いなんだ。一度孕ませると言ったんなら実行してもらうからな♥」

 

 そうして、男が地底に落ちてきて約一週間。時折メンバーが入れ替わったり増えたりしたが、毎日毎晩激しい交尾を繰り返し続けた。

 五日で旧都が直り、約束通り地上に帰ろうとする男をあの手この手で地底に残そうとしたが、その度に激しいセックスで抵抗され、結局二日しか滞在を伸ばす事が出来なかった。だが、必ずまた地底に来るという約束をもぎ取った。

 

「もう絶対に逃がさないからな……♥」

 

 腹の子が生まれる前にもう一度会えたらいいな。そう思う女たちによる包囲網は着々と作り上げられていった。

 




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ピンク!(頭の中的な意味で)
ピンク!(スケベごころ的な意味で)

おめでとう!(r-18日間ランキング一位的な意味で)


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紅き宵闇で殺し合い

ふへへ、週間ランキングにも載って……載って……えっ、3位?おち、おち、おちちおちちおちつちつちつおちつけつけけふぅ。(早漏感)

あ、ヤベエ今回もえっち話じゃない!?おちおちつけふぅ。(早漏感)
と言う訳で血生臭い話。


 何の気なしに幻想郷を歩き回っていると、大妖怪と遭遇することもまま有る事だ。

 とある日の宵、本来なら既に寝床を作って寝ている時間だったのだが、まあ色々あって食事を作っていた。

 なに?料理する姿が思い浮かばない?うるせえ。

 とにかく、普段なら寝てる時間に偶々料理作るために火を使って、偶々そこが開けた場所だったからまぁ空から目立つこと目立つこと。

 空からメイド服を着た女とコウモリ翼の幼女が降ってきた。

 

「こんばんは、運命の迷い子さん。こんな明るい月夜で火を炊くなんて、襲ってくれと言ってるようなものよ?」

 

 一目見て分かった、こいつはヤベー奴だと。古傷を抉るようなイタさが胸を襲う。止めてくれ、その口調は俺に効く。

 

「ご忠告ありがとう。だが俺はそこらの妖怪に襲われても返り討ちにする程度の実力は有るから心配には及ばねえよ」

 

 言外に俺は忙しいからとっとと帰れと言うが、そんな程度で怯むような、ましてやノコノコ帰るようなら幻想郷で妖怪はやっていない。

 ニヤニヤと嗤いながら、こちらを品定めするかのように目を細める。

 

「ふふふ、なるほど。言う程度には実力があるみたいね。決めたわ、今宵のダンスのお相手はあなフスッ!臭っ!?くっさっ!!?」

 

 突如威厳をブレイクして鼻を抑えてメイドの後ろに回る幼女。こらこら、メイドスカートで鼻を拭くんじゃありません。ナイスガーターベルト。

 というか、えっ、俺ってそんな匂う?

 

「お嬢様は吸血鬼なので、ニンニクの匂いは苦手なんです」

 

「そうか、俺とは相容れないようだな」

 

 何の運命のイタズラか、真夜中に出会った相手が吸血鬼で、しかも丁度ニンニク料理を作っている所に来るとは。イエス様でも思うめえよ。

 ちなみに俺はニンニクが大の付く好物である。無論口臭には気を付けているが、流石に食ったばかりでは対策も何もない。

 と、言うか俺は吸血鬼が大っ嫌いなのである。外の世界にも吸血鬼は存在し、外の魔法使いは吸血鬼が天敵なのだ。まあ俺は天敵とかそういう意味で嫌いと言う訳ではないのだが。むしろ俺が吸血鬼の天敵というか……話が逸れた。

 要するに珍しく俺が欲情しない女。それが吸血鬼だ。さあ話を戻そう。

 鼻を押さえ、メイドの後ろからこちらを睨み付ける吸血鬼。メシを食ったらとっとと寝るつもりだったというのに、こうして無為に時間を取られるのは有体に言ってイライラする。

 

「それで、俺に何の用だ?吸血鬼なんぞに割く時間は無い」

 

 吸血鬼から視線を外し、食事作りを再開する。作りながらちょくちょく摘まんでたとはいえ、腹がペコペコなのである。

 

 と作り途中の料理に目を戻せば、既に完成していた。

 えっ、そんな事ある?

 

「これで割く時間が出来ましたね?」

 

 何コイツ怖い。催眠術とか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃない何かを味わったぜ。

 まあ腹が減ってるしどうでもいいか。出来上がったニンニク料理を食う。Buono!。頬を指でくりくりする仕草も忘れない。

 

「恐縮ですわ」

 

「待ちなさいよ貴方達、特に男。順応早過ぎじゃない?」

 

「メイドが割く時間を作ったのに言いたい事はそれでいいのか?」

 

「良い訳無いでしょ!あーもー何で幻想郷の人間共はこんな感じなのよ!」

 

 生憎だが俺は幻想郷人というより外来からの旅行者である。幻想郷に来てからの日数的な意味で。

 そんな吸血鬼はさておいて、この料理マジで美味いな。俺の専属料理人にならない?

 

「貴方がウチで働くのなら三食作って差し上げますよ?」

 

「あー、血としょんべん臭いガキが居る所はちょっと……」

 

「はあああ!?こっちこそアナタみたいなニンニク臭い男真っ平なんだけど!?本当にムカツク人間ね!」

 

 どうにかしてこのメイドを寝t雇えないか頭を捻るが、それを察したのか殺意を漲らせる吸血鬼。

 

「話題の男がどんなものか見に来たけど……想像以上の下衆ね。咲夜」

 

「御意」

 

 まばたきする間も無しに、瞬時に視界いっぱいに銀のナイフが展開される。

 瞬時というのは些か語弊があるか。パッ、と。本を捲ったら全く違う内容が書いてあるみたいに一瞬の間もなくナイフが現れた。

 

「地に這いつくばりなさい。許しを乞いなさい。そうすれば命だけは助けてあげるわ」

 

「吸血鬼ってのは本当に偉そうだ。その首捥いで地に叩きつけて踏みにじってやりたい位にな」

 

「遺言はそれでいいのね?咲夜、殺せ」

 

 メイドの女が指を弾く。すると光の如き速さで俺の身体に無数のナイフが突き刺さり、気味の悪いオブジェと化す。

 

 ……何?流石に死んだろって?お前今の俺がどういう状態か見えてる?

 ナイフは俺に刺されども、俺を貫きはしなかった。少なくとも、俺を殺したかったら銀製の柔らかいナイフじゃなくてタングステン合金ぐらい用意しろってんだ。

 ……普通の人間なら銀製でも死ねるって?普通じゃなくて悪うござんしたね。

 まあ、ともかくメイドと吸血鬼にとって俺が死んでないのが予想外だったのか、壊れた銀のナイフのオブジェから無傷で出てくる俺を見て僅かにたじろいだ。

 

「さて、殺しに来たって事は、殺されても良いって訳だ。吸血鬼を殺すなんて何度目かねぇ」

 

 魔力を練り上げ、辺りに漂わせる。幸いな事に吸血鬼殺しの小道具は辺りに散らばっていた。

 

「地・光合成魔法:封魔の鎖」

 

 壊れた銀のナイフが、ジャララと宵闇に輝く銀の鎖に変わり、繋がり、鎌首を擡げる。

 弾幕ごっこの様なお遊びじゃない。魔を殺す為の、遊びの無い狩りの魔法。

 鎖が鞭のようにしなり、吸血鬼に向かって振り下ろされる。何度も、何度も。風を切る音、鎖が擦れる音、そして、吸血鬼に何度も直撃する音。

 

「お嬢様!!」

 

「下がってなさい咲夜!くく、ふふふ、あははははは!!!ああ懐かしいわねぇこの感覚!人間と妖怪が殺し合うこの快感!弾幕ごっこも楽しいけど、やはり命のやり取りも楽しいわね!!」

 

「殺し合い?馬鹿言うなよ、これは一方的な狩りだ。お前等吸血鬼が大好きな、大好きな狩りだ。一方的に命を食い、弄び、放り捨てる。その人間と吸血鬼の立場が入れ替わっただけだ。違うか?」

 

「私が人間に一方的に狩られるだけの存在だと?面白い事を言うわね。ならば貴方が死ぬ前に伝えておきましょう。私の名はレミリア・スカーレット!気高き夜の女王にして、貴方を殺す吸血鬼の名よ!」

 

 吸血鬼、レミリア・スカーレットがその右手に一本の槍を具現化した時、辺りの空気が変わった。

 

 神槍、スピア・ザ・グングニル

 

 一筋の紅い雷が光銀の鎖全てを破壊し、俺の心臓を貫いた。

 

 え?だから死んでねえって。心臓一個潰れたくらいで死んでたまるか。

 普通の人間ならそれで死ぬ?だから俺は普通じゃねえってんだろいい加減にしろ。

 

「吸血鬼なんぞに膝をつかされるとはな。反吐が出る」

 

「……何故死んでないんですか?人間ではないと言うの?」

 

「心臓貫かれて死んでりゃ俺は此処に立っては居ねえなぁ。あーあー、血ぃぶちまけちまったよ全く」

 

 さて、ここで俺が吸血鬼が大っ嫌いな理由の一つを語ろう。俺の血は非常に特殊で、普通の人間以上に魔力に満ち溢れている。これがどういう事かと言うと、普通の人間に比べて妖怪にとっての栄養価が非常に高い、言うなればご馳走な訳だ。外のとある漫画で言う所の稀血って呼ばれるヤツだな。……誰がインキュ柱じゃい。

 ともかく、そんな訳で吸血鬼にとって猛毒の様に甘美な罠。一口飲めば、他の人間の血が飲めなくなる程に極上の甘露。そして飲んだら最後、死ぬまで餓え渇く狂気の劇薬。

 何故なら、吸血鬼の牙は俺の肌を通さない。そして俺はそうそう死なないし、寿命のある人間。つまり俺の血肉を得る手段が非常に限られている。弱い吸血鬼は耐えられなくなった吸血衝動で俺の前に屍を晒し、強い吸血鬼は俺から逃れても、満たされることの無い飢餓によって狂気に溺れ死ぬ。

 心臓を穿たれ膝をついても修復して立ち上がる俺とは対象に、吸血鬼レミリア・スカーレットは地に膝をつき、狂犬の様な目つきでこちらを睨み付けてヨダレを食いしばる。

 

「どうした誇り高き吸血鬼。無様に地に這いつくばって、土に染みた俺の血を舐めても良いんだぞ?俺が許す」

 

「ぐっ……ギッ……甘く見るなよ人間風情がっ……!この私がそんな犬の様に這いつくばるとでも?」

 

「くくく、いいねえ吸血鬼犬。吸血鬼は嫌いだが、ペットとして飼うのは面白そうだ。ああ、丁度目の前に良さげな犬候補が居るなあ。どんな首輪が似合うかな?」

 

「お嬢様を汚らわしい目で見るな!!」

 

 また、切り取ったかのように刹那の間もなくメイドが斬り込んでくる。銀のナイフでは傷一つ負わないと分からないのか……ッ!?

 ゾッ、と背筋に悪寒が走る。勘に従って首を反らし、メイドの攻撃を回避する。

 銀のナイフが俺の首肉を数センチ斬り、血が噴き出す。即座に首を押さえ、魔法で治療する。ただの銀のナイフの筈だ。その筈だった!なのに俺の身体を斬るなんてありえない。つまり、ありえない現象が銀のナイフに起きている。

 ふぅー。一息ついて精神を落ち着ける。もしあのメイドが、真に戦う者だったなら今の一撃で俺の首が落ちていた。まあ、首が落ちてもまだ死なないんだが。

 そう、ただの銀のナイフが俺を切り裂くに至る硬度を持ったタネを見破らなければならない。それと瞬間移動したかのような移動速度や、始めのナイフを大量展開したタネも探らないと良くないと勘が告げる。

 

 神槍、スピア・ザ・グングニル

 

 再度紅き雷が落ちる。辛うじて回避に成功するも、代償は左肩から先。千切れた左腕が空を舞う。

 そして千切れ飛んだ肩に銀のナイフが突き刺さる。めっちゃ痛い。

 

「貴方、本当に人間?神経に直接ナイフが刺さってるのよ?」

 

「痛みにゃ強いもんで」

 

 飛んだ腕……回収してる暇はないか。左肩に刺さった銀のナイフを再構成、臨時の義腕として使う。作った腕をそのまま振るい、地面に叩きつける。

 

「地・風・炎合成魔法:殺生石の正体」

 

 地面が僅かに裂け、そこから高圧のガスが吹き出る。意志無き自然の殺意。大地の奇跡の悪意。生命を殺す、殺戮のガスが漂い始めた。

 

「っ咲夜!離れなさい!!!」

 

 吸血鬼レミリア・スカーレットの声とほぼ同時にメイドは遠く離れていった。あのメイドの手品のタネがただの超高速移動だった場合、これでメイドは封殺できる。違う場合でも近づくことは出来ないだろう。一呼吸でも吸えば、待っているのは死だ。

 

「分かっているのかしら。貴方、同族を殺しかけているのよ?」

 

「同族だから、ってのは情けを掛ける理由にはならないな。まあ顔は良いからつい手心を加えちまったが」

 

「そんな毒ガス使っておいて何を言うのかしら」

 

「綺麗な身体のまま死ぬんだ。マシな方だろ?」

 

 少なくとも身体がバラバラになったり、判別の付かない程に焼け焦げだり腐り落ちたりするよか遥かにマシだろうに。

 しかし辺りに撒かれたガスの影響で俺の血の匂いが薄れたのか、幾分狂気が晴れてきた吸血鬼。しかし先程よりも瞳に殺意の炎が激しく燃えていた。

 

「それよりいいのか?こっちばかりに気を取られて」

 

「はあ?何を言って」

 

 言い切ることは出来なかった。物理的にその口を閉ざされたのだから。

 吸血鬼レミリア・スカーレットの死角から飛んで来た俺の本物の左腕がその頬を殴り飛ばした。

 吸血鬼がダウンした隙を見計らい、義腕と本物の腕を付け替え、治療する。

 物体浮遊マジックのタネは非常にシンプルだ。俺の血がほぼ魔力で構成されている以上、斬り飛ばされてもその腕に血が残っている限り、魔法的に俺と腕は繋がっている。ならば魔法を使って自在に操る事なんて造作もない事だ。

 そして左肩から溢れた血を大量に浴びた銀の義腕もまた同じ。自在に動き回る第三の腕となり、必要ならば攻撃、防御、魔法の発射台に、自在に姿を変えられる。

 

「一夜に二度も地に跪いたのは、いつ以来かしらね」

 

「そんな事気にしなくても良いぞ。何故ならお前は初めて人間に屍を晒すんだからな」

 

「ふふふ、良い……良いわ、人間!本気で殺したいと思った相手はお前で三人目よ、そして今まで殺したいと思った相手は必ず殺してきたわ。光栄に思いなさい!」

 

「良い事教えてやるよ。今まで俺の事を殺したいと思った吸血鬼はごまんと居たが、その全てが無様な死に様晒してたぜ」

 

「なら私がお前を殺す初めての吸血鬼ね」

 

「お前は他の吸血鬼となんも変わんねえって事教えてやるよ」

 

 吸血鬼に限らず、妖魔の類を殺すのに銀の弾丸も木の杭も要らない。真に殺すという祈りに似た所作こそが妖魔を殺す無二の刃である。

 故に魔法の補助こそ有れど、武器は携えない。魔法使いの杖すら必要ない。

 殺すと祈り、殺すと願い、殺すと実行に移す。

 武器は、自然とついてくる。

 

「光属性魔法:回天の光陣」

 

 大地を仄かに照らす月と星明かりが束ねられ、自身を照らす。大空の魔力が何度も血を失った肉体を癒し、強化し、頑強に作り変える。

 更に追随する効果として、夜の眷属共の強化を剥ぐ事が出来る。

 

「月明かりまで奪うとは……人間はどこまでも強欲で傲慢ね」

 

「悪魔が大罪を語るなよ。地属性魔法:地球の護り」

 

 頑強になった身体に、更に高圧の鎧を纏う。どこまでも重く、自分から動く事は難しいがそのデメリットに対し、余りあるメリットがこの魔法にはある。

 

「っ!?引っ張られる……!」

 

 引力の発現。それは空を征く者に対する特効性を持つ。翼を持つ相手を殺す事に特化した魔法。

 回天の光陣も限定された点のみに効果を持つ魔法で、地球の護りと非常に相性が良い。

 自身を強化し、相手の力を落とす。そして相手が近寄って来た所を叩く。例え異常に高い不死性を持つ満月の夜の吸血鬼相手でも、死ぬまで殴り殺す。

 頭から、堕ちる様に向かって来る吸血鬼レミリア・スカーレットの顔面を殴り抜く。ばぎゃり、と硬く鈍い音が響く。まず、一回目。

 突風に煽られた枯れ葉の様に舞い飛ぶレミリア・スカーレットだが、地に叩きつけられる事無く再び俺に向かって堕ちてくる。

 二回目。顔面を殴り抜く。ぶじゅっ、と何かを潰すような手ごたえを感じたが、まだまだ死なない。

 

「がっ、アアアアアア!!!」

 

 神槍、スピア・ザ・グングニル

 

 紅き雷が三度落ちてくる。だが、その速度にはもう慣れた。左手を伸ばして掴み取る。紅雷を握った代償に左半身の鎧が剥ぎ落ち、辺りを血に染めたが光が俺を照らし、すぐさま修復してゆく。そして三回目。ぶぢゃっ、と額が割れる感覚が手に残る。

 大抵の吸血鬼ならもう死んでいるのだが、成程中々にしぶとい。吸血鬼レミリア・スカーレットの評価をやや上昇させる。だが、これまでだ。

 

 四回目。バギャン、と音が鳴り響いた。

 

 

 

 俺の、頭から。

 

 

 

 気が付けば俺は地面に崩れ落ち、レミリア・スカーレットは少し離れた地面に投げ出されていた。何をされた?いや、理解は出来ている。レミリア・スカーレットは引力によって俺に堕ちてくる時、俺に向かって羽ばたき、俺の拳が届くより先に自身の拳を俺の額に撃ち付けたのだ。

 今まで引力から逃れようと藻掻き飛ぶ吸血鬼など幾らでも居た。引力に引かれ、カウンターを合わせようと足掻いた吸血鬼も幾らでも居た。

 だが、引力に引かれ、更に加速してくる吸血鬼は居なかった。ましてや、俺の額を砕く者なんて、誰も。

 

 認めよう、レミリア・スカーレット。お前は今まで出会った吸血鬼よりも、遥かに強く気高いと。だからこそ、なればこそ、お前を殺す。

 

 突如、束ねた光が霧散する。月明かりが再び妖の時間の到来を告げる。

 これは、反魔法(ディスペル)!?と思った次の瞬間、灼熱の炎が辺り一帯を焼く。漂っていた猛毒ガスごと、空間を焼く。

 

「あらまぁ……話には聞いてたけど随分手ひどくやられてるじゃないのレミィ」

 

「……ハッ、こっから私が華麗な逆転劇を演出するところだったのよ。邪魔をするなパチェ!」

 

「頭かち割れて何言ってんのよ貴方。その上った血を静めてあげましょうか?物理的に」

 

 ギャーギャーと騒ぎだす吸血鬼。隙だらけ故に左手に持った紅雷の槍を投げる……直前、隕石が降ってくるような気配が無音で頭上に現れる。

 転がる様に回避すれば、先程まで頭があった場所が爆発した様に弾け、そこには一本の脚が突き刺さっていた。

 

「ありゃ、気配は完全に消した筈なんですが。勘は良いんですね」

 

 血が滴る額を押さえながら跳ねるように立ち、爆心地を見ると一体の龍が居た。

 否、それは龍の迫力を持った人型の妖怪だった。

 

「どうも。紅魔館の門番、紅美鈴です。貴方の事は新聞で良く見ますよ。本来ならもっと違う形で会いたかったのですが……まあ、これも運命と言う事で、よろしくお願いします」

 

「なにがヨロシクだコノヤロー。思いっきり暗殺術使いやがって」

 

「おや、外の世界では挨拶前のアンブッシュは一度だけ認められてると聞いたのですが」

 

「それ何処のネオサイタマ!?」

 

 ふざけた空気が辺りを包むが、俺も吸血鬼も、突如現れた魔女も紅美鈴と名乗った妖怪も、全員が一切の気を抜いておらず臨戦態勢を取り続けている。

 そしてこの場に見えないが、確実にこちらを捕捉しているあのメイドの存在も忘れていない。

 魔女、妖怪、メイド。……ちょっとキャラ濃い過ぎるくないですかね?

 魔女から魔力糸が吸血鬼と妖怪に伸びる。この状況で使う魔法なんて通信魔法くらいかと当たりをつけ、気合を入れ直す。割れた額を止血するまで治療し、心臓の拍動のギアを上げる。血液と共に魔力が増幅され、思考が加速する。

 邪魔な奴等全員を倒すのが、ベスト。無事にこの状況から脱出できれば、ベター。後腐れを無くすために全員倒しておきたいが、まあ流石に命あっての物種。最低限死ななければ安い。逃走経路を確保しつつ、攻める。これで行こう。

 攻撃の前兆を感じたのか、魔女が表情を変える。何かを呟き、吸血鬼と妖怪に指示を出そうとしているようだが遅い。

 俺の魔法は、発動の速さに定評がある。

 

「水属性魔法:メイルシュトローム」

 

 俺の足元から大量の水を召喚し、強烈な水流となって三人を襲う。吸血鬼は流水に弱いから対処しなければまず一人落ちる。

 

「水……レイジィトリリトン」

 

 地面を隆起させ、大量の水をせき止められた。成程、なら次だ。

 

「風属性魔法:晴嵐の竜巻」

 

 地に溜まった水を竜巻が吸い上げ、飛びあがり、雨となって降りそそぐ。

 

「風っ……アグニシャイン!」

 

 猛火の輝きが雨と化した水を蒸発させ、大量の水が一気に蒸発した事による爆風が竜巻をかき消す。やってくれるね。

 

「炎属性魔法:灼熱大地」

 

 地面に届いた魔女の僅かな炎が爆発的に燃え広がり、辺りを炎の明かりに染め上げ、更に地面がマグマのように赤熱してゆく。

 

「今度は熱っ!?ケホッ……ベリーインレイク!!」

 

「パチェ!無理しないでよ!?」

 

 今度は冷たい水が大地の炎を消火し、赤熱した地面を冷ます。辺りには蒸気が漂い、地面はぐしょぐしょと湿っている。

 

「地属性魔法:サンドインパクト」

 

 大地が爆発し、水に濡れた砂……即ち泥が飛び散る。魔力が染み込んだ泥だ、さぞ不気味であろう。

 

「ぐっ、ゲホッ、ゲホッ!!」

 

「パチェッ!く、紅魔『スカーレットデビル』!!」

 

 飛び散った泥が吸血鬼によって消し飛ばされる。が、まあ最低限の仕事はした。あの魔女はかなりの魔力総量を持ち、しかも器用に様々な属性を使う事が出来るのだろう。だが肝心要の自分自身が貧弱に過ぎる。

 気配無く後ろから正拳突きが来るが、背中で受け止めて反撃の蹴りを掠らせるように当てる。

 

「っ!?ぐぅ、これは……毒!?」

 

「正確には金属毒だ。妖怪には効果が薄いみたいだが、少しでも十分効いてるみたいだなぁ?」

 

 チィッ!と鋭い舌打ちをして吸血鬼の所まで瞬時に引く妖怪。殴られた背中は、多少痺れる程度で大きな問題は無い。

 あの龍の迫力を持った妖怪も、頭や心臓に強い一撃を貰わなければ大丈夫そうだ。

 

「生きるか、死ぬか。闘争は楽しいなぁ?」

 

「ゲホゲホッ……唯の人間が、どうしてこんなにも魔力を持っているのかしら?」

 

「まるで巨大な山を殴ったかの様な感覚でした。生半可な攻撃では通用しないでしょうね」

 

「本当に生意気な人間ね。一対多は人間側の特技でしょうに……!」

 

 夜明けが近づいてきた。少しばかしハイペースに攻めすぎたか、それとも回復に魔力を割きすぎたか、その両方か。残りの魔力量が半分を切った。万が一逃走する場合に備えて、せめて四分の一程度は残しておきたい所。そして逃げる時、追っかけられても困るから手傷の一つや二つ負わせておきたい。吸血鬼の頭は既にカチ割った。なら後は魔女と妖怪か。

 ……よし。

 左手に持っていた紅雷の槍を魔女に向かって投げる。高速で魔女の喉元に向かって行く……が、刺さる前に吸血鬼レミリア・スカーレットによって止められる。

 

「グングニルの持ち主は私よ。本来の力で穿ちたければ先に私を殺すべきだったわね」

 

「そうだな、本来の力で穿つ必要があれば、な」

 

「何?」

 

 槍の先から一閃の水と弾が出る。魔女は咄嗟に魔導防御をしたが、水圧が防御を突き破って魔女の喉に弾が突き刺さる。

 

「っか……ハッ……ヒュッ……」

 

「パチェッ!!?」

 

 防御のお陰で喉を突き破りはしなかったものの、的確に喉を潰した。そして魔女に意識が向かった隙を逃さず、即席で作った唯の鉄鎖の鞭が妖怪の左脚を砕き、続く二振り目で頭を砕く

 

「っ、ガアァッッッ!!!

 

 寸前に気合で鎖が弾かれ、砕かれた。声だけで鉄を破壊するかね普通。

 だが、とりあえず最低限の目的は済んだ。後は残りの魔力を総動員して安全な場所に生きて逃げる。

 

「待て人間ッ!!!」

 

 神槍、スピア・ザ・グングニル

 

 来るのは分かっていた。残った魔力の5分の4程を割き、両手で槍を受け止める。勢いが余り、両腕が大きく裂けてなお止まらず、俺の腹に拳程の大きさの穴が開いた。

 かなりきついが、まだ、生きてる。なら足を動かせ。

 

 

 吸血鬼に背を向けたその時、目の前に銀のナイフを振りかざすメイドの姿。

 そのナイフの軌跡は、確実に首を跳ねる軌道。

 戦場に銀線が一筋走った。

 

 

 

 

 戦場から走り去る俺。後方には、服が大きく裂けほぼ全裸を晒す元メイドの少女。

 何が起きたかというと、メイドが姿を現したタイミングで今まで存在を隠していた銀の義腕を走らせてメイドの服を剥いだ。言葉にするとそれだけだが、ただ俺はメイドの奇襲を予測していて、メイドは俺の奇襲を予測していなかった。その意識の差が結果に現れただけだ。何で服を剥ぎ取ってきたのかと聞かれれば、なんとなくとしか言えない。ただ服と一緒に不思議な懐中時計も剥ぎ取り、それ以降瞬間移動をしていない事からコイツが手品のタネなんだろうと当たりを付けた。

 

 手に持っていた高濃度の魔力の塊である紅雷の槍を捨て、妖怪の山に身を隠す。妖怪の山は侵入者に対して非常に排他的であり、吸血鬼連中が仮に追ってきたとしても騒ぎになるだろうからその混乱に乗じて逃げやすい。

 

 久々に味わった、死線に立って敵と戦い生き残るこの感覚。夜通し戦って腹が減った、夜通し戦って眠い、生存本能が刺激され、猛烈に子孫を残したくなる。

 だがとりあえず全ての欲求に蓋をして、安全な場所を確保する。排他的な妖怪の山は、当然俺に対しても同じなのだから。天狗に見つからないように遠くから魔法で土の中を移動する。

 適当な場所まで移動し、土を岩に変えて安全な寝床に変える。そうして、意識を失うように深く、深く眠った。

 

 

 

 ちなみに布団は無かったが、枕はメイドから奪った衣服と下着だった。いいにおいでした。

 

 




安心してください。予定上ではちゃんと紅魔館勢とおセックス致しますわ。
週間3位ありがとう!頑張ってんだからお礼の感想寄越すんだよホラホラ。

・主人公
えっ血のインキュ柱。そして別名吸血殺し。某女の子の様に存在感は薄くない模様。

・レミリア
消えぬ傷が額に刻まれた。あーキズモノにしたせきにんをとらないといけませんねーこれはー。

・ぱっちぇ
喉が潰され、まともに詠唱出来なくなってしまった。あーこれはいけませんねーおんなのこをキズモノにしたせきにんとらないといけませんねー。

・めーりーん
しなやかな脚線美に深い傷を負った。あーこれはせきにんとらないといけませんねーおんなのこキズモノにしてただですむとおもわないでくださいねー。

・さっきゅん
全裸ガーターベルト。


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妖怪の山で据え膳

ふふふ、四半期ランキングにも乗るなんて、もはや一流二次創作者といっても過言ではない(過言)
みんなエッチ好きなんですねぇ。
ちょくちょくオリキャラ出ますし、特に血生臭い話ですが深く考えないで。


 先の殺し合いから明けて、寝床を守る岩塊が外側からカリカリと削るような音で目が覚める。魔法で出来た岩の拠点は、害意を持った相手が接近すると自動で迎撃する魔術機構を組み込んでおり、表面を削る程に近づけば発動している筈である。つまり、今岩の表面をカリカリ削っている相手は少なくとも俺に対して害意を持っていないということになる。

 さて俺に用がある妖怪か、それとも妖精のイタズラか、蓋を開けてみれば、目の前には顔見知りの白狼天狗が2人居た。

 

「起きたね、おはよう」

 

「いつまで寝てるつもりだこの寝坊助め」

 

 妖怪の山は天狗の縄張りであり、侵入者に対して非常に排他的である。本来なら外来人及び里の人間に対してもそうであり、当然俺に対してもそうなのだが、この二人に関しては例外である。

 俺に対して柔らかい視線を向けるメッシュ髪の天狗の名前は犬吠埼楓、そして俺に対して鋭い目を向ける白髪の天狗は犬走椛。

 なぜこの二人が例外かと言うと単純な話、二人にとっての番が俺だからだ。既に二人の腹には新しい命が宿っている。

 

「全く貴様は。いつかやらかすと思っていたが、まさかこんなすぐにやらかすとは思ってなかったぞ」

 

「無事で良かったわ」

 

 二人はかなり対称的な性格で言葉も対称的だが、揃って俺の首もとに顔を埋めてフンフンと匂いを嗅ぐ仕草をする。

 

「どれだけ血を流した。貴様が強いことは知っているが、だからと言って心配しない理由にはならないんだぞ、分かってるのか」

 

「吸血鬼に目をつけられるなんてね。一度お祓いでも受けたらどう?」

 

「なんだ、見てたのか」

 

「当たり前だ。貴様の事を見ていない日なんてない。あれから何人の女を抱いたか教えてやろうか?」

 

 言葉と視線とは裏腹に、マーキングをするようにすりすりと身体を擦り付ける犬走椛。嫉妬深いが、起こす行動は非常に愛らしい。

 

「強き者が何人も女を囲う。それも生き物の定めよ。さあ、腹が減っているでしょう。水浴びの前に食事にしましょう」

 

 達観したかのような物言いだが、楓は内心では正妻の座を勝ち取ろうと手を尽くす女だ。現にこうして胃袋を掴もうと手料理を振る舞っている。味は、まあ俺が料理をするよりマシだが。

 食事を終えたら、いつものように魔法を使ってシャワーを浴びる。

 その後、受けたダメージや魔力を完全に回復させるため、しばらくここら辺に滞在する旨を二人に伝えると、

 

「ふん、ちょうど良い。どこかの馬鹿と吸血鬼のせいで山の哨戒任務が無くなったところだ。貴様の身の回りの世話を出来るだけの時間なぞいくらでも作れる」

 

 内心嬉しいのかしっぽがふりふり揺れている。愛い奴め、うりうり。

 構って貰えるだけでも嬉しいのか、ふんふんと鼻を鳴らす。

 

「椛は貴方が山に駆け込んで来るのを見てすぐに上司に談判しに行ったの。自分が自由に動けるように、そして一分でも貴方に長く会えるように」

 

「少し黙れ楓。そういうお前こそ自主的に警戒任務についたふりしてここにきているだろう」

 

「妻だから、夫と長く居たいと思うのは当たり前でしょう?」

 

「ぐっ、こいつ……」

 

 まあ、なんにせよ腹も満たされたことだし、今日はこの二人と共にぐーたら回復に努める事にした。

 

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

 

 2ヶ月程前の事、山の哨戒任務に当たっていた時だ。

 山に何人もの侵入者が現れたという一報を受け、一番近い現場に飛んで応援に向かった。するとそこには、たった二人の人間に襤褸切れのように乱暴にされていた楓が居た。

 

「おっ、おい見ろよ。またベッピンがのこのこやって来たぞ」

 

「ひひっ、ヤベエなここ。あの糞野郎を追うとか貧乏くじかと思ったが、ガチで当たりだろコレ!」

 

「貴様ら、ここが我ら天狗の縄張りと知っての狼藉か?さっさとそいつを放せ」

 

「はっ?」

 

「天狗?」

 

 天狗という言葉に反応して間抜け面を晒すが、直後に腹を抱えて醜い笑いを見せた。

 

「ギャハハハ!!マジで言ってんのこいつ!?」

 

「天狗とか実在するわけ無いだろバァーカ!!」

 

 その言葉と服装から奴らは外来人と断定した。外来人ならば例え殺しても咎められる事はない。もはや問答無用と手に持った太刀で男らの内の片方の首を斬り落とした。

 

 しかし次の瞬間、私の背中がばっさりと斬られ、斬った筈の男の首は何事もなかったかのように何の痕も残っていなかった。

 

「うわー死ぬかと思ったわーギャハハ!!」

 

「馬鹿が!オレらマジックに、ただの剣で勝てるわけ無いでしょー!?」

 

 その後もマジックがどうとか、マナシがどうとかを言いながら何度も斬られ、刺された。

 

「ひひっ!あ~いいわぁ、女をいたぶるこの快感!止められねえ!」

 

「特に美人が苦痛に顔を歪める瞬間がたまんねえっ!あ~、あぁ~、勃ってきた。血塗れの女を更にぶち犯すこの瞬間マジサイコー。おら、口を開けろ駄犬がっ!」

 

 傷口を指で裂く様に掻き回され、痛みで口を開けた瞬間に股間のモノを口にねじ込まれた。

 私は、即座にそれを食い千切った。

 

「あっ、ギャアアアアアっ!!!?こいつっ、オレのチンコ食いやがったッッッ!!」

 

「ブハッ!!マジ受ける!お前何いきなり女になったわけ?バーカ!」

 

「ッッ!こいつゼッテー殺す!生まれたことを後悔するまでぶち犯してから殺すッ!」

 

 その後、毒でも盛られたのか指一本動かすことが出来なくなり、何度も殴られ、蹴られ、食い千切った筈のモノで犯され、私の太刀で腹を貫かれた。

 楓も大きな外傷こそ負ってないものの、口からは意味のならない言葉と泡を吐き、手足は蚯蚓がのたくっているかのように不自然に蠢き、石でも詰め込まれたのか腹が歪に膨らんでいた。

 女としてどころか生き物としての尊厳を徹底的に踏みにじられた狂宴は突如として終わりを告げる。

 

「はっ、はっ、なんなんだコイツら……普通ならとっくに死んでるっつーのに」

 

「まあそのせいで生き地獄が長引いてるがな、ギャハハ!」

 

 そう言って嗤っていた男の顎がパギャッと音をたて吹き飛び、先程とは打って変わってその命をあっさり手離した。

 

「久し振りだな屑共。相変わらず性癖が歪んでるようで何より」

 

「……よお吸血鬼喰らい!テメエに会いにこぉんな辺鄙なクソ田舎に来てやったぜぇ!!テメエの首を持って帰って一生遊ぶ為になぁ!!!」

 

「ならそれだけのために動くべきだったな。こんなところで魔力垂れ流しやがって、見つけてくれと大声で叫んでるようなもんだぜ」

 

「そのお陰でテメエがのこのこ現れてんだろうが馬鹿が!」

 

 新たに現れた人間と嗤う男が会話している時に、ふと全身を貫いていた痛みが無い事に気がついた。優しい光が私と楓を包み、癒す様に漂う。

 

「テメエを取っ捕まえる算段はもうついてんだ!精々無様に命乞いをしろや!!」

 

「なんで俺より弱い奴に命乞いをしなきゃなんねえんだ。性癖と一緒に頭までねじ曲がってんのか」

 

「はっ!テメエがデカイ顔出来んのもこれが最後だ!見ろ!この魔法具はオレの魔法を増幅し、しかも怪我を負うような攻撃を検知して自動で回避するように因果を曲げる!テメエを取っ捕まえる為に里のジジイ共が作った神話級のアイテムだ!」

 

「ほーそりゃすごーい」

 

「……なめやがって!這いつくばれ!命乞いをしろ!テメエの脳と心臓さえ持って帰りゃ生死は問われねえんだ!」

 

「……はぁ、お前って本当に馬鹿なんだな。頭の出来も、顔も、魔力も、チンコの大きさも何もかもがお前より勝ってるのになんでお前に殺されなきゃならんのだ。いい加減その短小チンチン仕舞えよ見苦しい」

 

「てめっ……ブッ殺す!死ね!!地・炎合成魔法:チェーンブラストォ!!」

 

 地面から鎖が伸び、新たに現れた人間の方に巻き付く。カチン、と音が鳴った直後、鎖が燃え盛り人間を呑み込んだ。

 

「ギャーハハハハハ!!!あれだけデカイ口叩いておいて、何も出来ずに死にやがった!!」

 

 ゲラゲラと大嗤いする男は次の瞬間、違う意味で大口を開ける事になった。

 パン、と手を打ったような音が山に響くと、先ほどの猛火が嘘だったかのように何事もなく炎が消え、そこから煤一つとて汚れていない男が立っていた。

 

「……は?」

 

「魔力増幅してコレとか、マジック止めたら?チェーンブラストの使い方もなっちゃいないし、そもそも何もかもが杜撰でナンセンスだ。脳の足りないお前に分かりやすい様に実演しながら教えてやる。相手を這いつくばらせたいなら言葉でなく行動で示すべきだ」

 

 地・炎合成魔法:チェーンブラスト

 

 辺り一帯の地面から複数の魔方陣が浮かび上がり、そこから更に複数の鎖がギャララギャララと音を響かせて舞う。

 

「鎖は太く、大きく、強靭に。数は多く、最低でも10本。逃げる空間を埋めるように囲んで、拘束する。このようにな」

 

 ジャラッと鎖が鳴った瞬間、相手を埋めるように鎖の群れが取り囲み、巻き付いた。

 

「ギッ……ガアッ!!?馬鹿なッ何で回避出来ねえ!?」

 

「自分で言っただろう、怪我を負うような攻撃を避けるって。今はただ拘束しただけだ。怪我一つ無いだろ?そして鎖は巻き付くだけが能じゃない。相手を引きずり落とし、倒すことも可能。さあ、這いつくばれ」

 

 ギャン!と甲高い悲鳴のような鉄の音が鳴り、男を地面に埋める程に強く引く。

 

「鎖が頑強な程、炸裂した時の反動で敵に深い傷を負わせられる。ましてや首に巻き付いた鎖が爆発したら……わかるよなあ?」

 

「ひっ、や、ヤメロ!」

 

「……と、まあ命乞いをしろなんて言わなくても相手は勝手に命乞いをする。よぉーく理解できたか?」

 

「分かった!オレが悪かった!もう二度とお前に近づかない!頼む、助けてくれ!」

 

 ふんと人間が鼻を鳴らし、大量の鎖全てがバラバラに解けるように撒き散らされた。地に這う男に興味を無くしたかのように振り返り、私達の方に歩いてくる。

 

「よお、大丈夫……じゃないわな。流石妖怪と言うべきか、丈夫だなぁ」

 

 怪我の様子を診るために片膝をつき、私と楓を抱き起こす。

 

「悪かったな、俺の同郷共が好き勝手して。怪我は……まあ、少なくとも目立たなくなるように治療するよ」

 

「……ァ、……ゥ」

 

 そのときの私は、長く続いた痛みや暴行によって乾ききった喉で必死に目の前の男に何かを伝えようとしていた。

 

「どうした、水か?魔法で創った水で良ければ有るが」

 

「チ……ゥ……」

 

 死角から、黒曜石の様に鋭い刃物を突き立てようとする男の存在を伝えようとして……失敗した。

 

「ギャアアアアァーーーッ!!!!」

 

 

 

 

 

 まるで始めからこうなることが分かっていたかの様に、叫ぶ男に対して一瞥もせずに私に水をゆっくりと飲ませた。

 

「良いことを教えてやるよ。命乞いするクズは隙を見せると、判で押したかの様に同じことする」

 

 先ほどの炎が、まるでマッチの火と思える程の業火の鎖が敵を焼く。

 

「チェーンブラストの魔法は、ただの攻撃魔法でもなければ拘束の為の魔法じゃねえ。相手を地獄に引きずり込み、断罪するエゴイストの魔法だ。お前みたいなクズは、死ぬまで炎で焼かれるのがお似合いだ」

 

 ごうごうと空間ごと焼き付くさんと炎が猛る。それでもなお焼き付くされない男から僅かに優しい光が洩れる。私と楓を包んだ癒しの光が、業火と共に男を包んでいた。

 

「まあ、だからと言ってすぐに死ねるとは思うなよ。誰に喧嘩を売ったのか後悔し続けろ。死ぬまでな」

 

 そうして延々と焼かれ続ける男を尻目に、私と楓を抱き抱えた人間はその場を離れた。

 

 

 

 

 あれから数日、私達の地獄はまだ終わっていなかった。

 助けてくれた男が言うには相当酷い猛毒を打たれたらしく、肉体も精神もグズグズに壊されているとのこと。

 

「自分の身体ならともかく、他人の……しかも妖怪の身体はなぁ。解毒は……まあ地道にやるしかないな」

 

 旅が好きだと言う男は、私達を置いて何処にでも行けばよいものを、何故か付きっきりで治療に当たってくれた。

 

 私達白狼天狗は、他の妖怪とは少しばかり体の構造が違う。普通の妖怪は肉体を持っているものの、非常に精神的で霊的な存在だ。仮に身体が真っ二つに斬れようとも、自身の精神や畏れが無事であれば致命に至らない。しかしその精神や畏れに傷を受けてしまえば、擦り傷ですら致命に至る。

 しかし私達白狼天狗は少し違う。どちらかと言えば普通の生き物に近く、精神が傷ついても肉体が生きているのなら生き続けられるし、生半可な怪我では死なない。しかし妖怪としての面もある以上、精神的なダメージの許容範囲は存在する。

 私の身体も、楓の身体も、明らかに異常な状態になってしまった。全身を貫かれ、甚振られ、すりつぶす様に物理的に壊された私の身体は、天狗でありながら空を飛ぶことが出来なくなり妖術の類もまともに使う事が出来なくなった。

 楓はもっと酷い状態だ。外傷こそ少なかったが、猛毒を打ちこまれた上に精神を犯す事に特化した薬を投与されたらしく、幻覚や幻聴に襲われている。更に残酷な事に、腹に詰め込まれた石を自分の子供と認識しているようで、取り出そうとした人間の腕に爪を刺したり噛みついたりと抵抗する。

 

 精神的に衰弱しきって死んでいないのは、人間によるいっそ強引なまでの治療と看病のお陰だった。たとえ食べる事を拒否しても、口に無理矢理食物を突っ込み、噛ませ、飲み込ませる。糞尿を撒き散らしても、あっという間に湯を用意して綺麗に洗い流す。幻覚に襲われて発狂しかけても、電撃を浴びせて気絶させるように眠らせる。そして起きる時には必ず傍に居て、安心する匂いを発している。

 彼のお陰で私も楓も回復に向かっていった……だが、私も楓も完全に回復することは無い。妖怪として潰された心と、生き物として立ち直ってゆく心の二つが分かれ、せめぎ合い、葛藤する。意識が解離し、自身の身を割って違う自分が生まれそうになる。いわゆる多重人格障害という奴だ。

 天狗社会は長く、広く続いてきた。ある文献に多重人格障害を患った妖怪の事が乗っていた事を覚えていたのは幸運か、不運か。

 妖怪は心で生きる生き物だ。その心が分かれたのなら……それはその妖怪、ひいてはその存在の終焉と言えよう。人に退治されるのとは訳が違う。死してなお無理矢理生き永らえさせられる……事に近いのだろうか。その文献には多く語られてはいなかった、ただ良い方向にならない事は確かだ。

 死んだ樹が腐り落ちるように自分の心が、想いが、感情がばらばらに千切れて霧散する感覚。怖い。とても怖い。

 人間の恐怖は『未知』に由来するなら、妖怪の恐怖は『意思』に由来するのだろう。時間が経つにつれ、身体が癒されるにつれ、心が回復するにつれ、恐怖は心に巣食い、広がり、いずれ風船のように弾けて、終わってしまうのだろう。

 

 妖怪としての心を繋ぐため、千切れていく意思を飲み干す為、私と楓は最期まで彼に甘える道を選んだ。

 ……あるいは、それもただの拙い言い訳なのかもしれない。

 

「……俺との子供が欲しいだと?」

 

「ええ。私達は、もう妖怪として生きていくことは出来ないわ。それはつまり生きる意味を失う事。……だから、新しく生きる意味を見つけたいの」

 

「貴様の様な人間なぞ本来なら願い下げなのだがな。……近くに手ごろな男が居ないから貴様で妥協してやる」

 

「椛はこう言っているが本当は貴方にぞっこん。遠慮なく子を成してほしいわ」

 

「黙れ楓。貴様はいい加減腹の石を出せ」

 

「……それは……まだ、出来ない。ごめんなさい」

 

「こら椛」

 

「ぬっ……ぐっ……すまん、言い過ぎた」

 

「いい。……本当の子を孕めばきっと、出せるから」

 

「俺でいいのか?」

 

「貴方が良いの。遠慮するなんて貴方らしくないわ」

 

「いや、まあそうなんだが……正直言うと、ここ数日性欲処理してないからかなり溜まってるんだが大丈夫か?」

 

「ふん、この身は妖怪なんだ。多少の乱暴なんて問題ない」

 

「滅茶苦茶に犯されたいって「黙れ楓」モゴモゴ」

 

「そうか……じゃ遠慮無しに行かせてもらう」

 

「ああ、それでこそ男だ…………っ!?」

 

 人間がバサッと一息に衣服を脱ぐと、太刀かと見紛うほどに大きな逸物が眼前に出された。無論太刀よりも太いのだが……これが鞘に納まった太刀なら、噛み切った男の逸物なぞ折れた剃刀であった。

 

「き、貴様。こんな凶器を押し付けて何をするつもりだ」

 

「これで凶器なら、全力出したら大量破壊兵器だな。まずは口でして貰おうかな」

 

 口に差し出されて思わず噛んでしまったが、人間はそんな事を意に介さず「おお、ちゃんと口に入ったな」と呑気な始末。

 今度は歯が当たらないように口に含み、舌で裏側を舐める。

 

「ん、ぐ、れろ、ふぐ、んむ」

 

「椛、先だけじゃなく根元の方まで咥えると男はよろこぶわ」

 

「無理しなくていいからな?」

 

「むぐ、ふむむん」

 

 馬鹿にするな、この程度で無理な訳が無い。

 喉奥に刺すように逸物を飲み込む。肉棒がビクッと震えて喉を圧迫する。

 ……苦しい、辛い、でも、人間に気持ちよくなって欲しい。頭がズキズキと痛み出した、その時。人間に肩を掴まれ、強引に引きはがされた。

 

「んぶっ、はっ……はっ……何を……?」

 

「無理をするなと言っただろう。奥まで咥えずとも、先を舐めるだけで十分気持ちが良いんだから」

 

 ……お人好しめ。目頭から一筋の液体が流れ落ちる。頭の痛みはスッと収まり、代わりに胸がドキドキと鼓動する。

 これは、無理じゃない。ただ、そうしたいから行うことだ。

 肩を押さえていた腕を軽く払いのけ、再び喉奥に人間の逸物を押し込んだ。ぐっ、ぐっ、と喉奥が圧迫されるが、辛さも苦しさも感じず、むしろ熱を持った快楽がじわりじわりと喉奥から全身に広がってゆく。

 ぐぷっ、ぐぷっ、と喉奥に逸物を抽挿する度に快感が広がり、より激しさを増してゆく。

 ぽん、と私の頭に手が置かれ、ゆっくりと撫でられる。

 

「よく頑張ったな。凄い気持ちいいぞ」

 

 頭を撫でられ、褒められて。まるでそれだけで全身が性感帯になったかの様に激しい快感が全身を支配する。自身の尻尾が激しく揺れる。まるでこの人間に奉仕するためだけに生まれ、その存在意義を満たされたかの様な中毒性のある喜びに支配され、自分でも止められなくなってしまった。

 

「っ、椛っ……そろそろ出る……!」

 

 人間の快楽の息遣いが聞こえて、更に激しさを増す。口全体で吸い付く様にしゃぶりつき、舌を伸ばしてちろちろと玉を舐める。

 逃がさないように人間の腰に腕をまわし、力いっぱいに抱きつく。すると人間は限界を迎えたのか、煮え立ったような熱い精を私の胃に直接叩き込んだ。

 大量の精が人間から放たれるが、その全てを吸い、飲み干した。射精が終わり、ぬぽっと喉奥から逸物が抜かれる。と同時に噯気が出てしまい、独特な匂いと共に口から下品な音が漏れる。

 

「すんすん。椛のげっぷ、とてもいやらしい匂いがするわ」

 

「嗅ぐな馬鹿」

 

 一度出しても萎えない人間は、私を優しく押し倒して秘部に指を這わせる。

 

「処女じゃないんだ、さっさと入れれば良いだろう」

 

「馴らさず入れても痛いだけだ。ましてや俺のならな」

 

 そう言って手に自身の逸物を握らせる。両手合わせてもなお収まりきらない大きさもを感じ、つい人間から目をそらす。

 

「図星」

 

「黙れ……」

 

 始めはゆっくりと優しく、秘部全体を撫でるような手つきだったが、次第に中の弱点を攻めるような手つきに変わり、さらに外側から子宮を揉むような按摩を施された。それは中をほぐすと言うより、女を溶かすような刺激となり、外側から子宮を揉まれる度に子宮口から熱い粘液が漏れ出る。

 

「あ"っ!ふぅ"っ♥️待てっ♥️ま"てって♥️」

 

「子を産むんだろ。前戯をしっかりやると元気な子が産まれやすいそうだ」

 

「やめっ♥️あ"っ!!♥️死ん、で♥️しまうっ♥️♥️♥️」

 

「椛、天狗はそうそう死なないわ」

 

「だっ、まれぇ♥️♥️」

 

 太刀で腹を貫かれた時よりも熱い感覚が私を支配する。今まで味わったことのない快楽の波が押し寄せ、絶え間無い絶頂を味わった。

 

「しっかりほぐれたようだな」

 

 解しすぎだ馬鹿者。

 

「ほら見ろ。椛の痴態をみて俺も本気を出したぞ」

 

 そう言って、倒れている私の股に腰を合わせ、その剛直を見せつける。

 

「っ!!!?♥️フーッ♥️フーッ♥️」

 

 明らかに人の大きさではない逸物が私の腹に置かれる。こんなモノで突かれたら、内臓が滅茶苦茶になってしまう。

 絶望か、あるいは期待からか。自分でもよく分からない感情から熱い息が漏れ出る。

 くっ、と腰を引かれ、その鈴口が秘部にあてがわれた。それだけで私の中はじくじくと、まだ入れていないというのに逸物に吸い付くように蠢く。

 

「すごい、椛のお股ひくひくしてる。とってもエッチね」

 

「黙れ黙れっ!じろじろ見るな馬鹿者ッ♥️」

 

「椛は昔から口じゃ素直じゃないのに尻尾は正直ね、そういう所好きよ」

 

 尻尾が勝手にふりふりと揺れ、人間の腰を撫でる。ただほんの僅かな触れ合いなのにどうしようもなく心がざわめく。

 

「悪い椛、お前可愛すぎて我慢出来ねえわ」

 

「何を馬鹿げた事をいひゅぅぅッッッ!!!?♥️♥️♥️」

 

 入るはずがないと内心で思っていたが、そんな思いとは裏腹に逸物は根本まで中に入ってしまった。

 膣だけでなく子宮まで使って彼の逸物を咥え込み、それでもなお足りない長さに膣と子宮が伸びる。

 物理的に中から肺を押されて、強制的に息を吐き出される。

 丹念に解されたからか、規格外の大きさの逸物が入っても痛みは感じず、内臓をかき回されているのに一切の不快感が無い。

 ただ一突きされただけで気が何処かに飛んでいってしまいそうになり、思わず手を人間の指に絡めてしまった。

 

「椛の中、全力で絡み付いてくるのに先だけちゅっちゅっと吸い付いてきて凄い気持ちいいぞ」

 

「うぁ、言うなぁッ♥️」

 

「悶える椛も可愛いわ。ちゅ、ん」

 

「ふむっ!?ん、んぅ」

 

 昂って我慢できなかったのか口付けをしてくる楓。ちゅる、にちゅ、と舌を絡めていやらしい音がたった。

 

「っ、エロ過ぎだろお前ら……もう我慢できん」

 

「んむふぅッ!?♥️」

 

 逸物を挿入して膣と子宮が拡がりきるまで待っていたのか止まっていた人間は、その抽挿を開始した。

 じゅぷ、にゅちゅ、といった水音と、ぱん、ぱん、と肌肉がぶつかり合う音が鳴る。

 ずん、と一突きされると、股から脳天まで抑えられない快楽の雷が落ち、ずる、と逸物を抜かれると、内臓と共に脳まで引き抜かれるのではないかという快楽の波に襲われ、一度の抽挿毎に自分が彼の色に塗り潰されてゆく。

 もはや自分は彼に身を委ねて快楽を受けとめる事と、意識が飛ばないように両手を使って彼と繋がる事しか出来ない

 

 数えられない程に絶頂させられ、何度も気をやりそうになった時、彼は私と繋がった両手を私の顔の横に押さえつけ、その唇と唇の距離がゼロとなった。

 

「っ、椛……出すぞっ……」

 

「お"っ♥️このっ、遅漏ッ♥️♥️はやくっ、はやく出せ♥️私の中にっ、いっぱい、射精してぇ♥️♥️♥️」

 

 射精寸前の口付けに、残っていた理性と共に天狗の矜持を溶かされてしまい、彼専用の雌に堕ちてしまった。

 もはや彼の子を孕む事にしか頭にない身体と子宮は、精の一滴も残さず受けとめるように脚を絡め、膣全体で逸物を締め付ける。

 今度は自ら口付けを求め、濃厚に舌を絡めたと共に彼は射精し、私は灼熱の溶岩の様に熱い精液を受けとめた瞬間、快楽と幸福感に溺れた。

 

 そのまま精を出しきるかの様に子宮壁に鈴口を擦り付けて吐精しきり、人間が一息ついた時には私は余りある快楽と幸福感によって意識を白く染めていた。

 

 

 

「あ"っ♥️わふぅッ♥️んはぁ♥️♥️」

 

 10分か、20分か、暫しの間意識を飛ばしていたら、盛りのついた獣のような喘ぎ声によって意識を戻した。

 肉と肉がぶつかり合う音の方を向けば人間と楓が深く繋がり合っており、楓は人間の肉欲を一心に受けとめていた。

 楓の近くにはビタビタに濡れた大きな石が転がっており、彼と交合する前に腹から無事に出すことができたのだろう。

 今までただ景色を映していただけの楓の瞳は、彼の事しか写っていないかの様に彼だけを見ていた。

 

「楓、出すぞっ!」

 

「はいっ♥️貴方のザーメン♥️全部おまんこに出して下さい♥️♥️♥️」

 

 パンッパンッと激しい交合ののち、彼が楓の腰を掴んで逃がさないように自身の腰を押し付ける。

 びゅぅ~、びゅるる、と射精音が聞こえるほどに大量の精液を吐き出し、楓はただ喘ぎ声を出すだけの孕み袋となる。

 そうして彼が一息ついて楓から離れると、いきり立った逸物を再度私に向けてきた。まだ出来るのか。

 

「あっ♥️」

 

 今度は私を後ろ抱きにし、再びその大きな逸物を私の秘部に挿入した。

 

 

 その後、丸一日かけて私と楓を交互に抱き、時には二人同時に相手をし、あまり口には出来ない様な事もされ、全身を余すこと無く彼に味わい尽くされた。

 まさに夢のような出来事ではあったが、いつまでも彼と繋がり続ける訳にもいかない。精神は完全に一人の女、犬走椛として統合されても、だからと言ってすぐに白狼天狗としての立場を捨てて生きられる程には私は強くはなかった。

 それは楓も同じで、怪我も精神も治った今、山に戻らなければならない時が来た。

 伝令用のカラスが飛び回って、動ける者は動けなくなった仲間を探し、治療に当たるように指示を出している。

 忘れていたが、妖怪の山に侵入してきた者は複数人居たのだった。侵入者共は好き勝手に暴れ、多くの同胞達が傷を負ったようだ。治療のために少し山から離れた場所に居るが、じきに此処にも同胞が探しに来るだろう。

 そして同胞達の治療が終わり次第、間違いなく大規模な山狩りが行われる。その時にこの人間が見つかってしまったなら、大変なことになってしまうだろう。

 

「そういう訳だ。貴様はしばらく山に近付くな」

 

「貴方が強いのは分かっているわ、でも無意味に天狗と敵対する必要は無いの。分かってくれる?」

 

「……そうか、俺はどのくらい山から離れていれば良い?」

 

「そうだな……ざっと1~2ヶ月程度は妖怪の山に近付くな。私達はもう大丈夫だ」

 

「貴方のおかげよ、私達を救けてくれてありがとう」

 

 本当は、彼と一時だって離れたくはない。だが、それは許されない。もう山に戻らなければ。

 

「待て」

 

 彼に呼び止められる。彼の方に振り向くと、私と楓は彼に抱き締められた。

 

「無理はするなよ」

 

 様々な意味で捉えられる様な言葉が耳に届く。……このタイミングでそんな不器用で優しい言葉は卑怯だ。

 くっ、と抱き返す。

 

「……貴様も無理をするな」

 

「勝手にのたれ死なないで下さいね」

 

 強く、苛烈で、優しい彼はこの幻想郷で様々なトラブルを起こすのだろう。妖怪の心を惹き付けて止まない彼は、気がつけばふらりと何処かへと消えてしまうように思えてならない。

 

「……じゃあ、また会おう」

 

 あれだけ激しく、長く交合していたにしては、あっさりとした別れだった。彼は土を踏みしめて東に消えていった。

 

 いつか、この日みたいにフッと彼が居なくなってしまうのだろうか。

 

「楔が必要ね。彼をとどめ続けるだけの楔が」

 

「……ああ」

 

 私と楓は、昔から性格こそ対称的だが考えることは似ていた。

 私達だけでは、彼を繋ぎ止める楔にはなり得ない。

 ……子供が産まれれば、彼はとどまってくれるだろうか。あるいは、彼に首輪を着けることが出来るのなら……

 

 ……なんて、強い彼を打ち負かすなど大妖怪クラスでもなければ不可能だし、ましてや彼が大人しく飼われ続けるとも思えないけども。

 

 そうして私達も妖怪の山に戻っていった。

 

 

 それから、約2ヶ月。彼の子を孕み、徐々に目立ってきた腹を同胞達から隠しきれず誰の子だと詰め寄られていた時、夜だというのに南の空が赤く燃え上がっていた。

 皆は呆然としていたが、私はすぐに能力を発動して赤い空の下を確認する。するとそこには、紅魔館勢と死闘を演じている人間がいた。

 伝令のカラスが現れ、警戒体制に入るように指示を出す。未だに2ヶ月前の襲撃で負った傷が癒えておらず、また保守的な大天狗らしい指示であった。

 周りがバタバタと駆け回っている頃、紅魔館勢から無事に逃走出来たのか山に向かってくる人間。まず間違いなく妖怪の山の麓辺りで休息を取る筈だ。それを察せられた瞬間に大天狗の元へ駆け、明日の朝一から山の哨戒に出る旨を伝える。

 

 そして、朝。私の行動を嗅ぎ付けた楓が同じように哨戒の任務をもぎ取って来た。

 

「抜け駆け禁止よ」

 

「そんな協定結んだ覚えは無いな」

 

 彼は寝る時いつも不自然なまでに丸い岩を作るから分かりやすい。すぐに見つけてそこに向かう。

 その岩の元にたどり着いた時、何処にでも現れる弱小妖怪が岩から飛び出た刺に貫かれて消滅しているところだった。

 また、彼に会える。そう思えば、無意識に持っていた太刀で岩の表面をガリガリと削っていた。

 はっ、と気を取り戻したと同時に岩に穴が開き、中から思い焦がれていた彼が現れた。

 

 

 

 日が登り、そして日が沈み、また日が登って日が沈む。ゆっくりとした時間を私と楓と彼との三人で過ごす。時折彼に優しく抱かれ、満たされる。

 そうして3日後、完全に回復した彼は再び旅に出た。

 私達も妖怪の山に戻る。……と、沢山の同胞に囲まれた。

 

「も、も、椛ぃぃぃ!!!あ、あんたいつの間にあの人間とネンゴロしてんのよ!!」

 

「楓先輩に男……大ニュース!大ニュースだわ!」

 

「まさかそのお腹の子も……」

 

 喧しい。山は今警戒体制なのを忘れてるのか。

 

「それいの一番にあの人に会いに行く算段をつけた椛が言う言葉ではないわ」

 

「黙れ」

 

 私達も警戒体制に戻る。

 

 

 

 まだ、マジックと名乗った謎の集団が幻想郷に隠れ潜んでいるのだから。

 




次回、猫巫女霊夢。

・楓
 オリキャラ。表情薄い系美女。スレンダー。

・椛
 口悪いけど顔に出る子って可愛いと思うの。尻尾は正直。

・主人公
 とある烏天狗が密着取材(意味深)しているせいで天狗達には結構有名人。

・マジック
 外の世界で「忘れられなかった神秘」の総称、及び神秘を扱う人間を差す。そういえばどっかの教授がオカルトを探してましたねぇ。


◆「ぐへへ、女の子が可哀想な目に会うのは良きかな」
「またれよ!」
◆「貴様、何奴!?」
「拙者、いちゃラブ好き好き侍。安易なレイプは見逃さないでゴザソウロウ」
◆「ええい、このハッピーエンド厨め!ものども、であえ!てあえー!」
も「わー」
ぶ「わー」
「ふん、貴様らなど物の数ではないわ!くらえ、純愛剣・幸せなキスをして終了切り!」
も「ぐわー」
ぶ「ぐわー」
◆「くそっ、これだからモブは使えん!こうなれば我輩が出る!死ねぇ!ヤク漬けレイプビーム!」
「ぐっ!?なかなかやりおる……だが、拙者は負けるわけにはいかんのだ!両思い幼馴染み突き!!」
◆「甘いっ!幼馴染みNTR返し!」
「ぐわぁぁぁっ!!!?」
◆「ふん、まだ生きてるか、しぶとい奴め。これで止めを刺してやる。必殺、催・眠・レイプ斬!!」
「くっ、ここまでか……」

諦めないで……!

「っ!うおおおお!!!」
◆「バカなっ!?貴様、何処にそんな力を残していたっ!?」
「拙者は、決して!!もう間違えるわけにはいかんのだぁぁぁ!!!催眠にかかったフリ純愛おせっせ突きィィィ!」
◆「ぐはぁぁぁぁ!?まだ、まだだ、我輩はまだ死ねんのだぁ……!」
「これで、終わりだぁぁ!!最終奥義、最終的におにゃのこが笑っていればよいのだキック!!!」
◆「ばっ、ばぁかぁなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「終わった……か」

◇「ふはははは、どうやら四天王の一人を倒せたようだな」
「なっ!?貴様は!!?」

続かない。


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神社で据え……膳……?

俺はケモでもイケるぜ。


「なあ、神話級のアイテムってなんだ?」
「文字通り神が使うような理外の現象を引き起こすバケモノみたいな道具の事だ。使うには資質が必要だったり、死ぬ程燃費の悪い代物だったりするが効果は折り紙付きと言えるな」
「へー、じゃあそんなもん作れる外の世界の魔法使いはバケモンだらけなのか?」
「まさか。そんなことが出来る人間なんて外の世界には何処にも居やしない。それこそ神のような神秘が作ることが出来る物だ。まあ大方、例の男は良いように担がれたんだろ」



 幻想郷に来てからそれなりのある日の事。仲良くなった妖怪に、東の果てに有るハクレイ神社に紅白のお目出度い巫女が居る、と聞いた。

 お目出度い巫女ってなんぞや。そう思って早速東に向かう。ハクレイ神社は東の山の山頂付近にあって目立つからまあ迷うことはない、とのこと。

 そうしてトコトコ歩いて、長い階段の参道に到着した。

 いや、まじで長くない?まあ登るけども。

 長い階段を登っている最中、何度か低級の妖怪に襲われる。いつもの事ではあるのだが、幻想郷の神社近辺なんだから多少なりとも妖怪避けの結界的なサムシングは無いのか?

 

 そうして、多少古ぼけた石階段を登りきりハクレイ神社に到着。漢字を確認。博麗神社ね、博麗神社。

 参拝の作法は知らないので、とりあえず賽銭箱の中に硬貨を投げ入れる。入れる硬貨は勿論5円玉。外の世界の金銭は使えないみたいだから何も惜しくはない。

 

 チャリンと音が響くと、神社の中から凄い勢いで何かが飛び出てきた。

 

「おさいせーん!」

 

「なにごと」

 

 飛び出た何かは賽銭箱に引っ付いたと思ったら、フンヌと賽銭箱の蓋を開けて中身を見る。こいつやベー奴では?

 

「何よ、5円玉じゃない。シケてるわね」

 

 しかもものすごい無礼。ムカついたので財布をひっくり返し、中身を全て蓋の開いた賽銭箱に投下する。

 すると、何かはギョッとした目を俺に向けた。

 

「貴方が神か」

 

 神社で言うセリフじゃーねーなー。

 

 さて、いい加減現実を見よう。先ほど神社から飛び出し、賽銭箱の蓋を勝手に開けて、挙げ句俺に向かって神とのたまう存在。茶っ毛のもふもふとしたしゃべる動物。なぁにこれ。

 

「……で、俺はこの博麗神社にいる紅白のお目出度い巫女に会いに来たんだが」

 

「誰がお目出度いよ。博麗神社の巫女なら私の事だけど、貴方外来人よね?何、外に帰りたいの?」

 

「そういう訳じゃないが……えぇ~……猫じゃん」

 

 なんなの?幻想郷は猫が巫女やってんの?

 と幻想郷のあんまりにもあんまりな非常識さに頭を抱えたところで、テシテシと前足で叩かれる。

 

「あ、あんた今私の事どう見えてるの!?」

 

 あまりにも必死の形相で訪ねてくるから、俺も見たままを正直に答える事にする。

 

「前足に白い巫女袖を付けた、二足歩行してる茶色毛の猫」

 

「貴方が神か!!」

 

 いやもう本当に何事だよ。頭に疑問が並ぶが、嫌な予感がするのでこの猫巫女と腰を据えて話をすることにした。とりあえずいつまでも賽銭箱の前でつっ立ってる訳にもいかないので、猫巫女を抱えて縁側に移動する。

 

「……ってなに自然に抱きかかえてんのよ!」

 

「駄目か?」

 

 外の世界では……というか、幻想郷に来てからもなんだが、俺は何故か動物の類に好かれない。動物から変化した妖怪とかは別なのだが、普通の動物は俺に寄ってこないのだ。

 だからこういう機会でもないと毛玉をもふれないのだから許して。

 

「嫌よ離しなさい」

 

「賽銭」

 

「……仕方ないわね」

 

 ちょろい。

 そういう訳で境内を回って神社の居住区の縁側に座る。猫巫女を膝に抱えながら簡易的に自己紹介を済ます。

 

 で、本題。

 博麗霊夢と名乗った猫巫女は、ある日起きたら()()なっていたとのこと。しかも何故か他人はこの姿じゃなく、元の少女の様に見えているそうだ。

 

「こんな姿になって、空を飛ぶことも出来なくなっちゃったし、勘も働かないしでどうしようもなくなってたのよ……こういう異変に一早く気づく紫でさえいつも通りだし」

 

「ふむ」

 

 本来なら幻想郷で起きた異変は博麗の巫女である霊夢が解決するらしいが、解決する巫女がこのざまである。

 

「つまり今幻想郷で大規模な異変が起きたら……」

 

「ヤバイわね。まあ、魔理沙とか早苗とかがでしゃばるからなんとかなると思うけど」

 

 それで良いのか博麗の巫女。

 

「で、困っていたところに現れたのがあんたよ。このままだと料理もろくに出来ないわ」

 

 お野菜を生で齧るのも限界よ……と悲壮感溢れる表情で嘆く霊夢。

 そのうちネズミとか取って食べそうである。それはあんまりにもあんまりなので早いところ何とかしてあげたい。

 

「というわけで身体中を余すこと無くもふらせろ」

 

「どうしてそうなるのよ!」

 

 いや、まあ冗談無しに身体中を探るのは原因を特定するためである。俺の勘が正しければ、こんな事を仕出かすのは外の世界の神秘の力、すなわちマジックが関係している筈だ。探知の魔法はあまり得意ではないから、直に触れなければ分からない。それに原因が霊夢に残っているかも分からないから、まずは触れなければ何も始まらない。

 

「ぐ……わ、分かったわよ。でも乙女の身体に触る代償は高いわよ」

 

「今は猫じゃん」

 

「心は乙女よ!」

 

 冗談はさておき、原因究明である。優しく、かつ無遠慮に余すところ無く全身をもふり倒す。

 

「ちょっ、まっ、あっ……ふあ、……んんっ、んにゃぁ……」

 

 良い毛並みだ。感動的だな。ここがええのんかぁ。

 と、わりと容赦なく頭の先から尻尾まで指先で撫でくり回した、霊夢は顎と尻尾の付け根がお気に入りらしい。

 

「んゃ、ふゃあ、あ、ふぁぁ……」

 

「うわっ、霊夢が男を連れ込んでるぜ!」

 

「んぎにゃッ!!?」

 

 顎や尻尾の付け根をワシワシと撫でていたら、空から白黒のTHE・魔女スタイルの少女が降ってきた。……箒に乗って。

 いや、いくらなんでもそんなステレオタイプな魔女なんて居る普通?

 

 ……えっ、俺はどうなんだって?俺は良いんだよ、俺は。

 

 ともかく空から魔女っ娘が降ってきて、境内に凄い勢いで着弾した。

 ところで今の状況なんですが端から見たらどんな感じですかね。俺視点だと膝に抱えた猫の顎と尻尾の付け根をもふもふしてるだけなんですが。

 

「ってか、霊夢お前何真っ昼間から盛ってるんだぜ!巫女なのに男に膝枕させて尻触らせるなんて罰当たりも良いところだぜ!」

 

「ち、違うわよ!これはあれよ……外来人の按摩師の腕を試してたのよ!」

 

 あーはいなるほどね。魔女っ娘にはそう見えてるのね。……どういう事だよ。

 

「おい魔女っ娘、今俺の両腕は何処にある?」

 

「はぁ?何処って……霊夢の顎と尻を揉んでるだろ。というかいい加減セクハラやめるんだぜ」

 

「じゃあ今俺の両腕は俺の膝より外側に有るように見えるか?」

 

「何言ってんださっきから……どうみても膝の上に両手が有るだろ」

 

「なら寝ころんでる筈の霊夢の顎と尻をどうやって触ってるんだ?」

 

「どうやって……って、あれ?なんで霊夢の顎と尻を触れてるんだぜ?」

 

 認識障害起きてますねこれは……。俺がよっぽど豪快に股を開いて座り、その股の上に霊夢が寝ころべば出来なくもないが、そんな状況なんてあまりにも不自然すぎる。これ以上質問責めをすると魔女っ娘がアイデアロールでサンチピンチになりかねないので止めるんだぜ。

 霧雨魔理沙と名乗った少女は、普通の魔法使いらしい。魔法使いに普通とかあるのか?

 

「幻想郷じゃぶっ飛んだ魔法使いが多いからな。それと比べりゃ私は普通なんだぜ」

 

 ニカッと笑う魔理沙。笑顔が男前な少女である。

 

「んで、お前は何者だ?外来人なのに魔力が豊富っつーのは珍しいを通り越して不気味だぜ」

 

「失礼な奴だな。忘れ去られた神秘は幻想郷に移っていったが、粛々と受け継がれ、洗練されていった神秘もまだ外の世界に残っているだけだ。……まあ、俺の場合は少し例外だが」

 

「へえ?つまりお前は……やれるのか?」

 

 そう言って懐から一枚のカードを突き出す魔理沙。やれるってのは、スペルカードルールの事か。

 

「女子供の遊びに良い年した野郎を巻き込むんじゃねえよ」

 

 それよりそろそろ俺の膝の上で爪を立てる猫巫女を何とかしてほしい。痛くはないが服に穴が開きそう。

 

「あーそうだった!お前!結局霊夢とはどういう関係なんだぜ!!?」

 

「それは「身体だけの関係だ」ややこしい言い方すんな!!」

 

 な、なっ……、と言葉を失って顔を真っ赤に染める魔理沙。なーに想像してるんですかねぇ。そして俺の身体で爪研ぎを始める霊夢。

 

「なんであんたこんなに硬いのよ!全然爪が立たないじゃない!」

 

 知らん。

 

「うわ、うわー!霊夢が私より先に大人になったぁ~!!」

 

 みょうちきりんな事を叫びながら箒で空を飛んで行く魔理沙。うーん、面倒なことになってしまった。

 

「あんたの所為でしょうが!!」

 

 ごめんね、同年代の人間相手にするとついからかいたくなるもんで。

 まあそんなことより霊夢の身体の治療である。原因を探って、魔理沙の言葉を聞いて、何となくだが特定は出来た。

 

「えっ本当に!?治るの!?」

 

「治る……と、言いたいところだが、そこは霊夢次第だ。大きく分けて治す方法は二つある。一つ目は、霊夢の姿を変えた元凶を探して倒す。二つ目は、霊夢の身体に魔力的な耐性を着ける」

 

「そんなの元凶をぶっ倒す一択じゃないの!」

 

「まあ聞け。霊夢の姿を変えて、しかもそれをわざわざ高度な隠遁術で隠す。しかも変えた姿が猫となれば元凶は猫の神、或いはその御子だろう。だがそいつらが幻想郷に居るのか、それとも外の世界に居るのかは分からん上に探して倒すのにも時間が掛かる」

 

「っ、神様が関わっているって訳ね」

 

「神降ろしとかの関係で巫女に強いんだろう、詳しくはないけど。んで二つ目の方法は、時間は掛かるかもしれないが確実に治ると断言しよう」

 

「魔力的な耐性を着ける……って、具体的にはどうするのよ」

 

「俺が霊夢をもふり倒す」

 

「結局そこに行くのか!!」

 

 わりと冗談抜きで、接触することによって魔力を霊夢に譲渡し、霊夢に魔力を溜めることで耐性を着けることが出来る。

 

「それ本当に大丈夫なの?」

 

「外では何度も実験されてきたが、普通の人間に魔力を譲渡しても大きな問題は起こらない。ただ限度はあるがな」

 

「私魔法使いにはなりたくないわよ」

 

「魔力を譲渡しても、それだけじゃ自然に身体から流れ出る。心配しなくても魔法使いにはならん。ただ魔力的な耐性が着くだけだ。理解できたか?」

 

「……まあ、大丈夫なら良いわ。それでどれくらい掛かりそうなの?」

 

「そうだな……まあどんぶり勘定になるが、こんな感じで触っているだけだと一月くらいかな」

 

「はあ!?一月なんて待ってられないわよ!」

 

「なら接触を増やすか、譲渡する魔力を濃くするかのどっちかだな。全身をもふり倒し続ければ……二週間前後か」

 

「……譲渡する魔力を濃くするのは?」

 

「より魔力の多い方法での譲渡。粘膜接触……要するにキスだな。眠り姫を王子のキスで起こすみたいなもんだと思えばいい。あるいは俺の体液を飲むとかだが、まあ体液の方は俺が嫌だから無しの方向で」

 

「にゃっ……な、なぁ……」

 

「言っておくが冗談の類いじゃねえよ。まあ好きな方選びな?」

 

 そう言って俺は膝の上で頭を抱えてる霊夢の背中を撫でる。

 

「ゴロゴロ……はっ!?ちょ、ちょっと何すんの!?何か変な声が出るじゃない!!?」

 

「本格的に猫化が進んでるな。とは言え完全に猫になる前には間に合うとは思うが……どうする?」

 

「う、うぅ~……」

 

 そうして、霊夢は俺にもふり倒される事を選んだ。

 

「うりうり」

 

「あ、やぁ……ふにゃん……」

 

 指先から魔力を放出し、霊夢の身体に浸透させるように全身をなで続ける。日が沈むまで延々と撫でくり回し、霊夢が気を失うように縁側に伸びる。

 腹が減ったので、悪いとは思ったが勝手に台所を借りる。ニンニクが好物ではあるが、猫にニンニクは大丈夫かよく分からなかったので止めておく。

 グルングルン、とよく分からない鳴き声をあげながら台所に霊夢が現れた。

 

「ちょっとは加減しなさいよ……」

 

 じとっとした目を向け、次の瞬間に、ぱっと目を輝かせた。

 

「なによあんた、料理できるの!?」

 

 旅が好きだが、文明生活を捨てた覚えはない。とはいえ人並みに料理が出来る程度の腕前だが。

 ……そうか、そういえば霊夢はしばらくの間その文明生活を捨てざるを得ない生活を余儀なくしていたのだった。

 いたたまれなくなった俺は料理をちゃぶ台に運んで、霊夢を膝に抱えて食事を与える事にした。霊夢が元々人とは言えども、今はほぼ完全に猫である。箸も持てないので俺が代わりに料理を口に運んで食べさせる。

 少しの間霊夢は黙って食べていたが、そのうちポロリポロリと涙を流した。

 

「ぅ、ひぐっ……もう、暖かい料理が、食べられないんじゃないかって思ってた……ぐすっ……」

 

 博麗の巫女だなんだと囃されても、霊夢は普通の女の子だった。突然野性的な生活を強いられて心が傷付かない訳がない。

 俺はゆっくりと霊夢の口に料理を運び続けた。

 

 食事も終わり、次は風呂である。猫の身体じゃ火を炊くことも水を汲むことも出来ないから久しぶりとの事。

 

「だからって一緒に入る事ないでしょ!?」

 

「溺れかけた癖に……」

 

「ぐぬぬ……」

 

 魔法で風呂桶に湯を溜めたら霊夢が家主権限で先入るわね、と素早く風呂に飛び込んでいった、そして溺れかけた。

 

「猫の身体で泳いだことないし……そもそも多く湯を溜めすぎなのよ……」

 

 ブツブツと文句を言う霊夢。まあ湯の量に関しては俺が浅慮だったが。

 びしょびしょに濡れた猫を抱きかかえながら風呂に浸かる。

 湯の中で霊夢をマッサージしていたらほろほろと垢が

 

「フシャーッ!!!」

 

 素肌に爪を立てるのは止めろ。

 風呂の中でそのまま霊夢を洗い、全身を泡まみれにする。

 

「ちょっと!?変なところ触らないでよ!そこは自分で洗うわよ!!」

 

「……その肉球で?」

 

「うるさい!あんたは私を支えてなさい!!」

 

 そうして両腕で霊夢の身体を支えるが、何が悲しくて猫がせっせと自分の胸や股をいじるところを見なければならんのか。

 

「見るなっ!!」

 

 見ずに支えろとは理不尽。

 霊夢の身体を洗い終え、風呂から上がる。魔法を使って自身と霊夢の身体を乾かす。

 

「便利なもんね、魔法って」

 

「ああ。魔法はなんでも便利にした反面、容易く人を堕落させるがな……」

 

「?ふーん……」

 

 体感三倍フッワフワになった霊夢は風呂場から寝室に移動し、前足で器用に押し入れを開けて布団を引っ張り出す。

 で、俺は何処に寝ろと?

 

「縁側で寝てなさいよ。ってか乙女の寝室にまでついてくんな!」

 

「賽銭」

 

「んぬっ……ぐっ……いや、存分に身体を触らせてあげたでしょ!?」

 

「身体を触るのは治す手段であって報酬じゃない。だいたい二週間近く居ることになるってのにずっと縁側で寝てろと?」

 

「っ~……!で、でも布団は一つしかないし!」

 

「人一人と猫一匹が寝るには十分では?」

 

「だから心は乙女だって言ってんでしょ!?なんでお、お、男の人と一緒に寝なきゃならないのよ!」

 

「一緒に風呂に入ってるのに今さら何を言ってるんだか」

 

 フギャーッ!と叫ぶ霊夢を意図的に無視してぺっしゃんこのせんべい布団に潜り込む……いや、まじで薄くない?畳の上で直寝してるのとあんまり変わらんぜ。

 

「文句あるなら布団からでなさいよ!もー!!」

 

「文句と言うか心配してるんだ。これでよくまあ身体を冷やさないな……ちんから」

 

 ほいっ。と布団に魔法を掛ける。すると布団はむくむく、もこもこ、と変化し、あっという間にフカフカと厚みのある布団に早変わり。

 俺は地面に直寝でも慣れてるが、普通の女の子には辛いだろうに。まあ、なんにせよこれでゆっくり寝られるだろう。特に深い意味は無いが、驚きで硬直してる霊夢を腹に乗せて寝る。

 おやすみ。

 

「なんなのよもう!…………おやすみ」

 

 

 

 軽い息苦しさと不思議な匂いによって目を覚ましたら、顔の上に猫が乗っていた。

 持ち上げるように顔から退かしてもスピスピと鼻をならして寝続けている。よく見なくても、昨日一日で見慣れた猫巫女、霊夢だった。

 にしてもよくまあ寝よる奴だ。まだ少し眠いが、外を見れば空が白んできたところだった。つまり早朝である。

 まあ起きちまったものはしょうがないとシャワーを浴びて服を洗濯、乾燥させた所で霊夢が起きてきた。

 

「おはよう。ずいぶんと早いじゃない」

 

「……そういうお前もな。巫女ってのは早起きするもんなのか?」

 

「今日は偶々よ」

 

 お前のせいで早起きしたんだよ。という言葉は飲み込んで、外に出て早朝の世界を見下ろす。博麗神社は景色が良くて空気も澄んでるから居心地が良い。

 …………境内に落ち葉や枯れ枝が散乱してる事を除けば、だが。

 

「し、仕方ないじゃない!こんな身体じゃ箒を持てないんだし」

 

 まあ仕方ないといえば仕方ないだろうが、なんだかそもそもの性分な気もするのは気のせいか?

 

「違うわよ!いつもはちゃんと掃除してるし!」

 

 ……そういうことにしておこう。しばらくの間世話になるから掃除くらいはやってやることにした。

 

「風属性魔法:瘋癲のつむじ風、弱」

 

 ひうと風が鳴り、境内のごみをあっという間に集めた。

 

「合わせて炎属性魔法:炎王の一撃、種火」

 

 指先から一閃の赤火が出て、集まったごみに火を着ける。

 風に煽られてパチパチと燃えだし、少しの間で全て燃え尽きた。

 

「こんなもんか」

 

「……あんた、ずっと此処に住まない?」

 

「嫌だね。俺は旅が好きなんだ、一ヶ所にとどまり続けるのは性に合わないな」

 

 それより飯にしよう、と台所に行く。昨日はあまり気にしなかったが、あまり食材が残ってないなぁ。

 

「こんな身体じゃ買い物にも行けないし……」

 

「お前それ只の言い訳にしてないか?」

 

「しょうがないじゃない!霊力を扱えないのにそこら辺ほっつき歩くなんて危なくて出来ないわよ!」

 

「わかった、わかった」

 

 まあ、無くなる前に買い物に行くとして……とりあえず簡単なものを作る。

 いただきます。

 

「……ちゃんと私にも食べさせなさいよ」

 

「分かってるよ」

 

 あーん、と食べさせる。

 そして食事が終わったら縁側に座り、霊夢を膝に抱えて撫でる。

 

「本当にこれで治るんでしょうねぇ……」

 

「神の力に抵抗するには魔力を得るのが手っ取り早いんだが、魔力耐性を着ける事でも神の力に抵抗できる。魔力ってのは要するに訳の分からん力の事だからな」

 

「それで同じように訳の分からない神様の力に抵抗出来るってことね……」

 

「そういうこと。霊夢は賢いなあ」

 

「あっ、ちょっ!また変なところ触らない……ふにゃあ!」

 

 霊夢の全身をもふり倒すと、霊夢はにゃごにゃご鳴きながらも膝の上で溶けるように伸びる。

 日が高くなるまでずっとにゃーにゃー鳴いていたら、何処からか猫が集まってくる。日が頂点に立つ頃には、博麗神社は猫の集会会場になっていた。

 

「ちょ、んきゅ……はぁ……なんなのよこの状況は!っはぅ……」

 

「発情雌猫につられて来たのかね。良かったな霊夢、モテモテじゃないかはっはっは」

 

「はぁん!わ、笑い事じゃないわよぉ!んにゃひぅ!?」

 

「しかしコイツらには今の霊夢はどう見えてるのかねぇ?猫?人?」

 

「ふぅっ!!ど、どうでもいいわよ……ひにゃぁん!!」

 

 霊夢が一段とやらしい声で鳴いたその時、群れのボスと思わしき大きな猫がずんずんと寄ってきて、俺の膝の上で伸びてる霊夢の後ろにのしかかった。

 

「えっ!?嫌っ!何するのよ!?」

 

「そういえば知ってるか霊夢。猫のチンコはトゲトゲしてて、交尾の時に雌猫の膣内をズタズタにするらしいぞ」

 

「冷静に何言ってるのよ!?嘘でしょ!?嘘よね!?」

 

 ボス猫の股間からトゲトゲのチンコが伸びる。

 

「なるほど。猫には今の霊夢は猫に見えるわけだ」

 

「分析してないで助けてよ!嫌っ!やだやだ!!初めてが猫なんてやだぁ!!!」

 

 霊夢は腰が抜けてるのか、暴れはするけども膝の上から逃げることが出来ない。そうこうしてるうちに猫のチンコが霊夢の股に挿入……される寸前に物理的に止める。

 

「おふざけは此処までだ。さあ、とっとと帰りな」

 

 全身から魔力を軽く放出すると、ボス猫と共に辺りにいた猫達は一目散に何処かに消えていった。

 俺が動物に好かれない理由はきっとこれなんだろうな。動物にとって圧倒的な捕食者のオーラにでも見えるのだろう。

 すんすんと泣く霊夢をひっくり返し、今度は腹をワシワシと撫でる。

 

「バカ!!このバカ!!」

 

「悪い悪い。猫にとってどう見えてるのか知りたかったからな」

 

「方法ってものがあるでしょ!?」

 

「ははは。もう良い時間だし昼飯にするかぁ」

 

「誤魔化すなっ!!まっ、待ちなさい!!ちょっと!?腰が抜けて立てないんだけど!?」

 

 見てないうちに霊夢が猫にレイプされるのは不本意なので抱き抱えながら料理をする。しかしその間ずっと霊夢に爪を立てられ続けていた。

 

 食事を終え、再び縁側で霊夢をにゃごにゃご言わせる。

 

「にゃ、うぁ、ん、は……ぁ……」

 

 魔力を込めながら全身を撫で回す。昨日と比べて、霊夢は若干人っぽい体つきになってきた……ような気がする。

 

「ゴロゴロ……にぅ……んゃ……」

 

 しかし仕草はどんどん猫っぽくなっていってる……ようにも感じる。

 尻の方を撫でると、ピクンと尻尾が跳ねた後緩やかに尻をふりふりと振るう。

 腹の方を撫でると、もっと撫でろと手をぺしぺしと叩いて催促する。

 

「……いま私何やってた?」

 

「もっと撫でろと催促してたな」

 

「あああああああ!!!違う!違うからね!!治すために仕方なく触らせてあげてるだけなんだから!!!」

 

 頭を抱えながらゴロンゴロンと回り悶える霊夢。喋ってなければどう見ても子猫の遊びにしか見えない。

 

「というかアンタね、もっと強く撫でなさいよ!指を立ててしっかり撫でなさいよ!優しすぎてなんか、背中がゾワゾワすんのよ!」

 

「おねだりかな?」

 

「ち・が・う・わ・よ!」

 

 煩いので霊夢の言う通り、指を立てて強めに尻を撫でる。

 

「あっ!?んひゅ!ちょぉ、まっ!にゃんっ♥️そこだめぇっ♥️」

 

 そういえば猫の尻尾の付け根は性感帯らしい。軽く叩いたり強めに撫でると非常に良いのだとか。と、今思い出した。

 霊夢は尻尾をピンと立て、尻がぐんぐんと上がっていき、息も荒くなっていく。

 

「にぁっ!なによこれぇ!?♥️変になっちゃうぅ……!!」

 

 時に掻くように。時に突くように。あの手この手と刺激を変えて霊夢を撫でる。

 

「やっ、あぅ、んにゃぁ♥️はっ、ひにゃぁぁ♥️」

 

 ビクッビクッと身体を揺らし、快楽に悶える姿は猫と言うより1匹の雌だ。身体はどんどん昂っていく。

 

「にぅっ♥️あっだめえっ♥️にいゃぁ♥️イくっ♥️イっちゃう♥️…………?」

 

 昂って、絶頂を迎える寸前に違うところを撫でる。

 

「あぅ……にゃぁ……なんでぇ……」

 

「いやあ、霊夢が駄目だの嫌だの言うからな」

 

「にっ……このぉ……ちゃんとなでなさいよぉ」

 

「ん?どうした?何処を撫でてほしいんだ?」

 

「っ……!覚えてなさいよ……!お、お尻……私のお尻をいっぱい撫でて……」

 

「はいよ」

 

「はっ♥️あぁっ!!これ凄いっ♥️あっ♥️あっ♥️にゃぁぁっ♥️」

 

 かくかくと腰が大きく震え、声もまた大きくなっていく。

 

「イくぅっ♥️イっちゃう♥️イっちゃうからぁ♥️止め、止めないでぇっ!!♥️ふぎっ、ふにぃっ♥️あっ♥️あっ♥️ああああああっ♥️♥️」

 

 手足をピンと伸ばし、ビクビク震えて絶頂を味わう霊夢。

 

「あっ!?♥️へぇっ♥️♥️にゃ、やぁっ!!?♥️待ってぇっ♥️イッてる!!♥️イッてるからあっ♥️♥️♥️お尻止めてぇっ♥️♥️ふにぃぃぃっ♥️♥️♥️」

 

 絶頂を迎えてもなお攻めることを止めず、魔力を霊夢に流しながら軽い電撃に魔力を変換して徹底的に虐め倒す。

 

「あ"っ♥️ふに"ゃあ"♥️お股ビリビリしてるっ♥️♥️♥️に"ぃぃっ♥️♥️♥️止められないよおっ!!!イくの止められないのぉッッッ♥️♥️♥️」

 

 ガックンガックン震えながら、股から小水やら何やら漏らして必死に快楽から逃げようとする霊夢に追い討ちをかける。

 

「う"に"ぃ"ぃ"ぃ"~~ッッ♥️♥️♥️」

 

 両手を使って尻側と腹側から膣内まで揉み解すような愛撫で、霊夢はだらしなく舌を伸ばして気を失った。

 

「あ、にぁぁぁ……♥️」

 

 ふと空を見ると太陽が大きく傾いていて、まもなく夕刻になるだろう。それほど長く霊夢で遊んでいた訳だが……うん。

 

 やりすぎた。

 

 辺りには濃厚なフェロモンが漂い、相当な匂いになってしまってたので風魔法で吹き飛ばす。

 そして気絶した霊夢を抱き抱えて風呂場に直行。入る前からびしょびしょになっている霊夢を洗う。

 

「……覚悟してなさいよあんた……!」

 

 底冷えするかのような怨嗟の声が風呂場に響く。

 ……聞こえなかったことにしよう。

 

 楽しい楽しいお風呂の時間を終えて夕食。残っていた食材全てを食べて、明日の朝イチに買い出しに向かうと算段を立てる。

 遊び疲れてふらっふらの霊夢を再び抱き抱えて就寝。

 

「おやすみ霊夢」

 

「……おやすみ」

 

 

 そして次の日の朝。今日も軽い息苦しさと匂いによって起こされる。

 ……何故にこうも的確に俺の顔の上に乗るのか。スピスピ鼻をならしてる霊夢を退かし、起床。風呂場でシャワーを浴びていると、いつの間に起きたのか霊夢が風呂場に入り込んできた。

 

「俺が入ってるんだが」

 

「今日は私も朝風呂したい気分なのよ。というかもう今更じゃないの」

 

 まあそれもそうか。

 寝汗を軽く流したら、さっさと服を洗い身体と共に乾燥させる。

 さて、今日は朝から買い出しに向かうわけだが……

 

「私もついていくわよ。あのでかい猫に襲われたら嫌だし」

 

 そういう訳でその日はずっと霊夢が引っ付いていた。

 




長くなりそうなのでとりあえずこの辺で切っておく。

次回、いよいよ霊夢と……?


・猫巫女霊夢
 メスケモって良いよね。現在霊力縛り中、喋る以外はただの猫と変わらないわ。

・魔理沙
 携帯で一発変換できない不具合ががが。イケメンスマイル持ち。いまの博麗神社にはちょっと近づけないんだぜ……。

・主人公
 ムラムラしたけど、流石に動物には手が出なかった。
 主人公目線ではまだ手を出してないのでセーフ!!!


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これは添え膳なのか?(哲学)

感想欄で霊夢が雄猫にレイプされるIFをご所望の方が居たので気が向けば書きます。
ただなぁ……猫の交尾って……数秒で終わるんだよなぁ……

霊夢「あああ痛ぁぁいッッッ!!!」

で交尾終了。それじゃあ味気ないですね。
そこはファンタジー小説の如く無いこと無いこと盛って盛って盛りまくりなさいって話ですが。


 博麗神社から人里に降りる……前に、香霖堂なる場所に寄る必要があるらしい。霊夢曰く、そこなら外のお金を換金してくれるのだとか。

 

「で、場所は?」

 

「魔法の森の入り口に在るわ。飛んで行けば結構近くよ」

 

「……飛んで行けば、ね」

 

「何よその目は!今の私が飛べないのは仕方ないでしょ!?」

 

「分かってるっての……」

 

 空を飛ぶのは余り得意ではないのだが、まあ四の五の言ってる場合ではない。まだ朝食にありつけていないのだ、腹が減る前にさっさと霊夢を肩に乗せて飛んで行くことにする。

 

「ていうか、あんた飛べたのね」

 

「そりゃあ魔法使いだからな、飛べるさ。……こう、BOMB!!と」

 

「……は?」

 

「しっかり肩に捕まってろよ。落ちても知らん」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。嫌な予感しかしない

 

 地・炎・風合成魔法:爆圧加速

 

「わあああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 耳元で叫ばないでほしい。いくら俺が丈夫とはいえ、耳は普通の人間並みに聞こえるんだから。

 霊夢の身体に掛かる圧力を風魔法で軽減する。自分一人ならこんな面倒な事しないでも良いんだが、流石に普通の人間が生身で爆風を受けたら致命傷だ。

 今の俺達は風よりも速く飛んでいる。まあ風というか、音速を超えている訳だが。そのせいでソニックブームが発生しているが、これまた風魔法で被害を無くしている。

 まさにあっ、と言う間に魔法の森の入り口……らへんに到着。これまた俺一人だけだったら地面に着弾しても良いんだが、霊夢の身体が粉々になってしまうので風魔法でゆっくりと着地する。

 

「か、身体中がミシッていった……ミシッていった……」

 

 ゆっくりカッコ俺目線。……なんかスマン。回復魔法を霊夢にかける。

 

「っていうか、普通に飛びなさいよ!!」

 

「風属性魔法単体で飛ぶのは不安定なんだよ。ならいっそ高速ですっ飛んで行った方が速いし安定する」

 

 ついでに言うなら、この方法でも高く飛ぶことは難しいんだよな。博麗神社が山の頂上付近にあって助かった。

 ……ちなみに、本物の爆薬じゃなくちゃんとした魔法で飛んでいるので、出発点の博麗神社は反作用で大惨事にはなっていない。

 

「で、香霖堂はどっちだ?」

 

「納得いかないんだけど……香霖堂はアッチよ」

 

 霊夢が指差した……より正確に言えば腕で指した方を向いて歩きだした。その時、悍ましい程の殺気を叩きつけられた。

 

 ブゥン

 

 白い何かが視界に入った瞬間地面を蹴り跳び、霊夢を庇う。

 白い何かは、傘だった。傘が上段から振り下ろされ地面に叩きつけられた。その衝撃で地面が爆発したかのように吹き飛び、その礫が容赦なく俺達を襲う。

 

「何!?何が起きたの!!?」

 

「分からん……が、敵襲のようだな」

 

 爆発の中心地には、緑色の髪の背の高い女が紅い目で睨み付けている。

 

「うふふ、今の私はとおぉ~っても機嫌が悪いの。外来人を全員殺してやりたい位にね」

 

「幽香!?あんたこんな所で何してんのよ!」

 

「……あら、その声は霊夢かしら?……そう、貴女も()()なってるのね」

 

 ふむ。幽香と呼ばれた女の言葉通りなら、アイツにとって今の霊夢はただの猫に見えているのだろうか。

 

「あー。機嫌が悪いのはまあ結構な事なんだが、それで俺等に八つ当たりされても困る」

 

「貴方が困ろうが知った事じゃないわ。とにかく外来人は全員殺すって決めたの」

 

「……それは、アレか?その絶望的に似合ってないネコミミと何か関係が」

 

 ブ ヂ リ

 

 太い綱が千切れるような音が聞こえた。

 

「ふふふふ、やっぱり殺すだけじゃ駄目ね。私の腹の虫が収まらないわ。生きたまま腸引きずり出して、お花の養分にしてあげましょう」

 

「凄い笑顔でなんて事を言ってるんだお前さんは」

 

 ダァンッ!!と地面を踏み抜いた音が聞こえたと思ったら、その直後には手に持った傘を俺の心臓に向けて突き出していた。

 とりあえず霊夢を空高く投げ飛ばし、心臓を突いてくる傘を両手で掴んで抑える……も、掴んだ両手ごと俺を突き飛ばす。見た目に寄らずパワータイプなのね。

 

「だが俺を殺すには至らない訳だが」

 

「丈夫なのね。壊し甲斐があるわ」

 

 ダァンッ!!と地を蹴り、音速並の速度で肉薄してくる幽香。手に持った傘を横薙ぎに払い、真空波が放たれる。そして本人は真空波と共に俺に斬りかかってくる。うせやろ。

 

「無駄に器用な事しやがる。風属性魔法:瘋癲のつむじ風」

 

 俺の周囲の空気が一気に動き回り、真空の嵐となって真空波をかき消す。その勢いに乗じて斬りかかってくる幽香を投げ飛ばす。

 

 一度距離が離れたところで、空から投げた霊夢が降ってきたので受けとめる。

 

「急に投げないでよ!!?」

 

「すまん、つい咄嗟に投げちまった。危ないから離れてろ……と言いたいところだが、どうやら不幸は続くらしいな」

 

 なぁ~ご。

 

 なぁ~ご。

 

 何処からか猫の鳴き声が響く。

 

 なぁ~ご。

 

 なぁ~ご。

 

 猫の鳴き声はどんどん増えていき、彼方此方から響き渡る。

 気がつけば、俺達と少し離れた幽香とを囲むように猫の群れが現れた。

 

「にゃはははは!ご機嫌麗しゅうお三方!今日は皆様方をお迎えに来たのにゃ!」

 

 そんな使い古された口調ある?ってな声が響いたと思ったら、猫の群れが割れて一匹の三毛猫が二足歩行で歩いてきた。

 

「にゃは!我輩は神の御子、鍋島と申しますにゃ!お嬢さん方ははじめましてだにゃぁ!」

 

 二足歩行のまま、ペコリとお辞儀をした猫は、次の瞬間幽香から放たれた極太のビームに飲み込まれた。

 

「五月蝿い猫ね。猫なら猫らしく媚びながらにゃーにゃー鳴いていればいいのよ」

 

 その光景に周囲の猫はドン引きである。だが、ビームがパンッと弾かれ、鍋島は無傷で立っていた。

 

「にゃはは!元気で健康的で大変結構なのにゃ!それでこそ我輩の番に相応しいのにゃ!」

 

「な、何よあの猫……幽香の攻撃を食らって無傷!?」

 

「霊夢、あれが前言っていた猫の神、その御子だ。霊夢と……多分幽香を変化させた元凶だ」

 

「っ!じゃぁあいつを倒せば!」

 

「にゃーにゃー吸血鬼喰い!お久し振りですにゃあ!いい加減我輩の神様の番になるのにゃぁ!」

 

「ふざけんな誰が臭い猫の番になんぞなるか」

 

「にゃにゃ!神様はいつもマタタビキメてるとは言え、臭いとまで言われる筋合いはないにゃー!」

 

「腐った死骸みたいな匂い撒き散らしててなに言ってんだ」

 

「それが良いと何で分からんかにゃぁ?」

 

 その匂いを良い匂いと言えるほど啓蒙高くないぜ。

 鍋島という猫はマジックの世界ではかなり知られた存在だ。神の力を十全に使いこなし、長らく猫の世界を牛耳っている。

 

「というか、迎えに来た?番?何を言っているの?」

 

「にゃは!言葉通りにゃぁ!博麗霊夢、風見幽香、お二方は強く美しいにゃ!我輩の嫁にぴったりにゃ!是非とも我輩の子を産んでほしいにゃあ!」

 

「なんで猫なんかの子を産まなきゃならないのよ!」

 

「弱っちい雄は嫌いなの。他を当たりなさい」

 

「……はーやれやれだにゃ~。優しく言っているうちに頷いていれば手間がかからにゃいのに……。誰がお二方に選択権が有るって言ったにゃ?お二方は我輩の子を孕む。それはもう確定事項だにゃ~!にゃおーん、にゃおーん!」

 

 鍋島が声をあげると、回りに取り囲んでいた猫達から光が空に放たれる。咄嗟に鉄鎖を振り回して回りの猫を吹き飛ばすが、一歩遅かった。

 猫達から放たれた光が空で収束し、その中心から降ってきた。まるで太陽が落ちてきたかのような眩しさに目を閉じ、再び目を開いたときには周囲が大きく変わっていた。

 

「くっ、眩しいわね…………は?」

 

「に、にゃにゃぁ~!?」

 

 大きく変わったのは、先程まで戦っていた幽香が緑毛の猫に変わり、霊夢は完全に人の言葉を喋られなくなっていた所だった。

 

「にゃはははは!猫化の奇跡のお味はいかがかにゃ~?でもなんで吸血鬼喰いは変化してないにゃ~?」

 

 変化はしてる。頭と尻がむずむずすると思ってフードを脱ぐと、ぴくぴく動く猫の耳が。そして尻に手を触れると、ふりふりと動く猫の尻尾が。……おえっ、似合わなっ。

 

「にゃは!!まあ良いにゃ!とりあえず吸血鬼喰いはおいといて、まずは我輩のお嫁さんにゃー!さあ野郎共、その雌猫二匹を取り押さえるにゃ!」

 

 掛け声一つで、まるで一つの生き物のように蠢く猫共。取り敢えず霊夢は抱えて逃げるとして……さっきまで戦っていたとはいえ、幽香を見捨てていくのは気が引ける。鉄鎖を幽香に飛ばし、ぐるりと巻きつけて引き寄せ、霊夢とは反対の腕で抱き抱えて逃げる。

 

「っの、離しなさい!」

 

「身体能力が猫並みに落ちてるのに、妖怪並みに強化されてる猫の軍勢相手取るのは無理だ!」

 

「だからと言って人間に情けをかけられるなんて私のプライドが許さないのよ!」

 

「いまのお前ただの猫じゃん!んなプライド捨て置け!」

 

「にゃぁん!!」

 

 肩に抱いた霊夢が俺の顔を叩く。霊夢の方を向き、霊夢が指し示す方向を見ると虹色に輝く空飛ぶ猫が高速で何匹も迫ってきた。

 

「にゃん!?」

 

「キャットおおお!?クソっ、本気目に飛ぶぞ!地・炎・風合成魔法:爆圧加速!」

 

 爆風の速度で空を飛ぶ。飛んでいく俺達を追うように猫の集団も飛んでくる。

 

「というか貴方あんな奴相手に何逃げ腰になってるのよ!さっさと殺せば良いじゃない!」

 

「鍋島は神の力が有る限り不死身だ!あの大群相手にしながら、鍋島の相手をして、更に猫二匹守れって?冗談じゃない。まずはお前達を安全な場所に逃がしてから鍋島を倒す」

 

「……私が、人間に守られる……ですって?面白い冗談ね……笑えないということを除けば最高のジョークよ」

 

「お前さん今の自分の姿分かってんのか?」

 

 直後、尻尾が逆立つような感覚に襲われる。視界が白く染まり、バチッと身体に静電気が走ったかのような予感に従って全力の魔法障壁を肩の猫二匹に張る。

 

 リィン

 

 鈴の音が鳴った。それと同時に俺の身体は地面に墜落した。

 

 

 

「にゃー……にゃー!!」

 

「起きなさい!起きろっ!」

 

 黒い瞳と紅い瞳が俺を見下ろす。

 バッと身体を起こし、臨戦態勢を取る。

 

「俺はどれだけ寝てた!?」

 

「1分程度よ。白い雷が貴方に直撃したのよ」

 

 白い雷……まじか。状況は最悪を通り越して地獄だ。

 空を見上げれば、巨大な白猫が嗤いながら此方を見下ろしていた。

 

『にひひ。鍋島ちゃんがキミを見つけたって言ってたから、つい会いに来ちゃった♥️』

 

「俺は会いたくなかった」

 

 奴はマジックの世界で最も有名な猫の神。魔法使いにとって、猫は切っても切れない縁で結ばれてる。元々は使い魔だった猫が主人を喰い、町を喰い、国を喰って神に成り上がった悪神。それがあの巨大な白猫であった。

 

『にひ、幻想郷って言ったっけ?中々居心地が良さげな場所だね。思わず食い散らかしたくなっちゃうよ』

 

 ……これは、覚悟を決めなきゃな。

 心臓の拍動を強め、魔力を全身に漲らせる。

 

「先に謝っておく。守れなくなったら、ごめん」

 

「笑えない冗談は嫌いなの。誰が、誰を守るって?」

 

「あの猫の神は俺が全力だして、ようやく撃退できた位にクソ強い。さらに鍋島、猫の軍勢……まあ、アイツに好き勝手されるのはそれこそ死んでも御免被る。最終手段として……」

 

「うなんな」

 

「……あー、霊夢。いきなり初めて聞く鳴き声出すな。反応に困る」

 

「うなんな!!」

 

「なっ、おい!?」

 

 霊夢が突如俺に向かって駆け出し、飛び掛かる。あまりにも想定外な動きにビックリして硬直したら、俺の身体を蹴るように駆け登り、俺と霊夢の口と口の距離がゼロになった。

 

 ポン

 

 と軽い音が鳴り、俺の目の前には猫ではなく、巫女装束を着た一人の少女が立っていた。

 

「……えーと、あー……霊夢?」

 

「せぇいッ!!!」

 

 霊力のこもった拳の一撃が俺の鳩尾に突き刺さる。

 痛いとか痛くないとかそういうのではなく、無音で地面に崩れ落ちた。

 

「取り敢えず言いたいことは一旦全部置いておくし、今までの貸しは今ので帳消しにしてあげるわ!!!」

 

 息が出来なくなる感覚なんて初めてだ。

 

「……へえ?なるほどねぇ……そういう感じで戻れるのね?」

 

 幽香が品の有るキャットウォークで倒れてる俺に近づき、そっと口づけを落とす。

 

 ポン

 

 とまた軽い音が鳴り、幽香が人型に戻る。

 ……あっ、赤……

 

「えい」

 

 ドゴォッ!!

 軽い掛け声に一切合わない衝撃音が響き、俺の腹が蹴り抜かれる。おいこれ普通の人間なら腹がミンチですわよ。

 

「私を勝手に守ってる気になった事、私の唇を奪った事、あと私の下着を見た事はこれでチャラにしてあげるわ」

 

 最初はともかく、後二つェ……。

 

「……さてと、じゃ私はあの馬鹿でかい猫をぶちのめすわ。猫軍団は幽香、あんたがやりなさい」

 

「私に指図しないで頂戴。でも良いわ、今の私は少しだけ気分が良いから言う通りにしてあげる。いつまで寝ている気かしら人間、貴方はさっさとその気色悪い二足歩行の三毛猫を去勢なさい」

 

「お前らさあ、もっと思いやりってもんを持とうぜ」

 

 いまだに鈍い痛みが腹に残っているが、転がっている空気じゃなくなったので立ち上がる。

 

『にひひ!巫女とはいえただの人間風情がでしゃばるなぁぉーん。ハラワタ食い散らかしちゃうよ?』

 

「荒御魂をどうにかするのは巫女の仕事よ。それに今の私は誰にも負ける気がしないわ」

 

「にゃはー!我輩のお嫁さんを寝取りやがって!貴様はいっつもいろんな雌を侍らせてるにゃー!」

 

「あら、面白そうな話ね。詳しく聞かせなさい?」

 

「おーい幽香さんや。傘を向ける方向が違くないですか?」

 

「貴方の後ろにいる猫共から焼き払おうとしてるだけよ」

 

 助けて霊夢。

 

「て言うかそもそもお前の嫁じゃねえし、寝取ってもねえし、自然と女を寄せちゃう程に良い男なだけだし」

 

「あら、その冗談は面白いわね」

 

 人を三枚目かのようにお前……。

 

「我輩を差し置いてイチャイチャすんじゃ無いにゃー!!!野郎共、八つ裂きにしてやれ!!にゃー!にゃおーん!!!」

 

 鍋島の掛け声で猫の群れが光り出す……が、無数の極太ビームが幽香から放たれ、その射線上にいた猫の群れは全て吹き飛んでいった。

 

「あらあら、ちょっと小突いただけで逃げ出すなんて躾のなってない畜生共ね。もっと根性見せないと暇潰しにもならないわ」

 

 ニタニタと嘲笑う幽香の顔を見た猫が恐怖のあまり逃げ出す。

 

『にひ、顔を見ただけで逃げ出すなんて、君らは勇猛な戦士じゃなかったのかにゃーん?』

 

 猫の神の一言でピタリと止まり、油の切れたブリキの玩具のようにガクガク震える。

 

『君らの家族の未来は、君らに掛かってる!さあさあがんばれがんばれー、にゃー』

 

 にゃー、にゃー、と自らを鼓舞するかのように吠え、幽香に向かって玉砕特攻を仕掛ける猫共。

 

「呆れた。ただ突っ込んで来るだけの弾幕に美しさなんて無いわ。散って美しいのは花だけよ」

 

 傘を広げ、弾幕を放つ幽香。一つ一つが猫に当たり、自身は優雅に突進を回避し続ける。

 

『にゅふん。これはちょっと分が悪い……かにゃ~?しょーがねーなー、ちょっくら手を貸してやろう』

 

「あんたの相手は私よ、この似非神」

 

『……にひっ。やっぱり生意気な巫女は頭からバリバリ食べてやろうね!』

 

「にゃはっ。みんな目一杯身体を動かして楽しそうだにゃ!」

 

「んなら身体が動かなくなるまで遊ぼうじゃねえか」

 

「にゃはは!さっきまで逃げ回ってたくせに何を生意気な!にゃにゃにゃぁぁぁご!!」

 

 鍋島が爪を振るうと鋭い斬撃が飛び、その直線状にある物を両断していく。

 

「そりゃさっきまでは守るモンがあったからな」

 

 地・光合成魔法:磁槍クロガネ

 斬撃の射線上に一本の槍と、槍を挟むように二本のレールを作り出す。魔力を電気に似た力に変え、槍を電磁誘導によって撃ち出す。いわゆるレールガンと呼ばれる物だ。

 燃費が非常に悪いが、調子に乗っているクソ猫の去勢には成功した。

 

「っ、ぎ、ぃに”ゃ”あ”あ”あ”ッ!!?」

 

「さっきからブラブラとムカツクもん見せやがって。狂った頭にネジは嵌まったかよ?」

 

「ぎ、ひひ!あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”!!これだから人間共は嫌いなんだボケがぁぁぁ!!!テメエらは好き勝手生きてる癖にオレらには不自由を押し付けやがってええええええ!!!!死ね!死ね!!死んじまえぇ!!!テメエらがオレらにしてきた事を全てそっくり返してやる!!!殺す!犯す!ボロボロのゴミクズみたいに腐れ死ね!!!」

 

 発狂したかのように叫ぶ鍋島。だが、それが本来の鍋島の姿だ。

 俺が初めて鍋島と対面した時の口調で、血走った鋭い目で睨み付ける。

 

「馬鹿野郎が、お前は永く生きすぎた。何が正しくて何が間違えてるか、もう判断できるほどに理性は残っちゃねえんだろ。神性を浴びすぎて狂っている事にも気が付けなくなった哀れな奴。昔のお前は、もうちょっと仲間想いだったぜ」

 

「黙れ黙れ黙れ!!!喋るな!囀るな!!人間は全て敵だ!何が幻想郷だ!!!忘れ去られた物の理想郷!?そんなモンなんて存在する訳が無い!!ここは所詮泡沫の夢!!すぐに儚く弾けて消える!!我らが神様が喰い荒らす!!何も残らない!!残さない!!理想郷なんて、それこそ幻想なんだ!!そんなモンがあって、何で……何で!!!アイツが、何で……何でなんだよッ!!!」

 

 喚き散らし、魔力を解き放って周囲を薙ぎ払う。それは皮肉な事に、奴が嫌う人間の子供の癇癪のようだった。

 

 リィン

 

 鈴の音が鳴った。白い雷が無数に降りそそいできた。

 

「嘘過ぎない?」

 

 あんまりな光景に思わず口に出た。魔力を総動員して全力で防御する。

 白い雷は、猫の神の食事行動だ。()()()という結果を残す、神の力。それが俺達の周囲一帯に降り注ぐ。

 俺も、幽香も、鍋島も、その破壊と暴虐の嵐に全力で耐えることしか出来なかった。

 

 

 ただその嵐の中でも、まるで散歩に出かけるように空を飛んでいる一人の巫女がいた。

 

『にひっひひひ、お前本当に人間かよぉ!!?』

 

「さっきからリンリン五月蠅いのよ。無駄な抵抗しないでさっさとぶっ飛ばされなさい」

 

 

「……や、嘘過ぎない?」

 

 畜生が成りあがったとはいえ、相手は神である。言葉通りに生物としての格が違う。

 だと言うのに、霊夢は雷が降り注ぐ嵐の中を漂うように飛び、何気なく放った弾幕全て急所に叩き込んでいる。普通に俺より強くね?

 白雷が霊夢に直撃した。と思ったら霊夢の身体をすり抜けて、地面に当たる。霊夢の放った弾幕は避けられた。と思ったら吸い寄せられるように神の核に当たる。

 神VS人間という構図でありながら、その内容は圧倒的なワンサイドゲーム。危ない事も無く、淡々と決着が着きつつあった。

 霊夢が大技を放ち、それが猫の神に直撃した。それで、終わり。宣言通り神を叩きのめした霊夢は、そのまま外の世界に繋いで猫の神を叩き出した。

 

「さて、終わったわよ。それで?そいつ等も幻想郷から叩き出すの?」

 

 そいつ等というのは、先程の白雷の嵐に耐えられなかった猫の群れと、耐えはしたが満身創痍の鍋島の事だ。

 鍋島は自身の力の供給源である猫の神があのザマだったから、現在はちょっとした魔法が使える猫程度の危険度である。ぶっちゃけそんな危なくない。そして猫の群れだが、同じように力の供給源だった猫の神と鍋島が()()だから全然危なくなくなった。

 

「要するに叩き出さなくても別に害はないって事ね」

 

「むしろ下手に叩き出したら猫共の信仰心で猫の神が復活する時期が早まるかもしれん」

 

「じゃ放置で良いわね」

 

 こいつ、サボる口実があれば当然の顔してサボるタイプだ。

 と思った瞬間頬をガッ!と掴まれる。

 

「変な事考えてるわねあんた」

 

「なんえそーおおっは」

 

「勘よ」

 

 勘やべえ。

 と霊夢とじゃれてたら、未だに変化したまま残っている俺の尻尾をギュッ!!!と握りつぶさんとする存在が。

 もの凄い不快感に眉をしかめながら幽香の方を見れば、先程の白雷でやられたのか扇情的なまでにはだけて、ボロボロの下着が丸見えだった。……あ、ピンク。

 

「それじゃあ私はこの人間に用があるから」

 

「待ちなさいよ幽香。コイツに出会ったのは私が先なんだけど?」

 

「あらそう。それで?」

 

「言わなきゃ分からない?頭大丈夫?」

 

 チラチラ見える幽香のピンクと下の緑を楽しんでると猫化した耳が千切られんばかりに引っ張られる。痛いし不快感が凄い。まるで梅雨の時期に加湿器とストーブつけて眼前に40代のピザデブがシャツ一枚でヨタヨタ踊ってる様を見せられているかのような不快さだ。

 

「なに堂々とガン見してんのよ!!乳か!男の人はやっぱ乳の大きさか!」

 

「霊夢は貧相だものね♪」

 

「成長途中なだけよ!」

 

 確かに幽香のおっぱいは目を引くが、美しさと言う意味では霊夢も負けていない。胸は控えめだがしっかりと有るし、腰回りの細さは脱がした時にグッと来そうだ。それに胸の大きさに関しては育てようと思えば幾らでも大きく出来るから全体的にスレンダー体型の霊夢の方があ"あ"あ"痛だだだ!!尻尾が取れるッ!!

 

「私の美しさが分からないと言うつもりかしら?」

 

「あらー仕方ないわよねぇー?だって幽香って()()だし!」

 

 ビキリ

 レンガの壁にヒビが入ったかのような音が幽香から聞こえた。後そろそろ俺の尻尾が嫌な音を立てて千切れそう。

 

「…………デブじゃないし、ちょっと骨が太いだけだし」

 

「いや重要なのはバランスだから、仮に幽香並みの胸の大きさで霊夢並みに腰が細かったらちょっと怖い。むしろ幽香はもっと腰回りに肉を付けた方が絶対エロい"っだだだだだ!?耳ッ!!耳に穴開くからヤメレ!!」

 

 嫌もう。コイツら俺が丈夫だから痛いで済んでるってこと忘れてない?これが本当の猫ならもう耳取れてるし尻尾もつぶれてるからな?

 尻尾と耳を潰されんばかりに握られている痛みと不快感に俺の前の尻尾も萎え萎えである。

 ……この魔法は使いたくなかったが、非常事態だ。四の五の言ってられない。

 

 水属性魔法:ローションボディ

 

「っ!?なによこれ!?すごいぬるぬるする!?」

 

「っあ、この、待ちなさい!!」

 

 全身の汗腺から多量の汗を出し、それをぬるぬるのローションに変える。何に使うんだこの魔法と思っていたが、まさか役に立つ時が来るとは……。

 拘束から逃れ、全力で逃走する。あのままアイツら二人に捕まってたら何されてたか分かったもんじゃない。最悪死んでたな。

 

 べたべたの身体を引きずって、そういえば結局朝飯食ってねえなあと思い出した。

 

 

 

 で、後日。人里で飯を食った帰りがけに霊夢と幽香にばったり会い、ぶん殴られて里の連れ込み宿に強引に引き込まれたのはまた別の話。

 




Q.エッチシーン無いやんけ!それ目当てで小説みてんの!
A.気分で書いてるのでそういう日もある。
Q.気分で書く小説って何なんですか?
A.ぜんぜん分からない。俺は雰囲気で文章を書いている。


・霊夢
 堕ちたな(確信)

・ゆうかりん
 最初に白雷から守られた時に主人公に対する好感度がストップ高状態。当人強すぎて守られる機会なんて今まで無かったからキュンと来た。だがそれはそれの精神。

・鍋島
 雄の三毛猫という超珍しい存在ゆえに神に目をつけられた、ある意味不幸な猫。長く生きすぎて狂ってる。

・猫の神
 『面白そうだったから』という理由で博麗の巫女と最強と呼ばれる妖怪に手を出した。好奇心は猫を殺すんですねぇ。

・主人公
 後日猫の尻尾と耳は取れました。痛かったそうです。


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Ifルート:ルーミアに敗北逆レ

月の煩悩「精力はそのままによわよわオス化させる薬が出来たわ」
宵闇妖怪「言い値で買うわ」


 

「っ……くそっ」

 

「あはっ♪簡単に貴方を組伏せることが出来ちゃった♥️」

 

 凄い、本当に彼に勝つことが出来るなんて良い買い物したわ。今や彼はただの人間以下の力しか出せず、片手で簡単に拘束することが出来た。

 彼に跨がり、見下ろす。普段からでは考えられない程に傷だらけで、身体のあちこちから血を流している。

 強い彼の芳醇な香りに、ほんの僅かにトッピングされた恐怖の匂いがどうしようもなく私の本能を刺激し、理性をトロトロに融かす。

 大きく切れた彼の頬から流れる血を舐めとると、どうしようもない程に強い支配欲に襲われた。彼の全てを自分のモノにしたい。髪の毛一本、血の一滴に至るまで、その全てを自分だけのモノに。

 

 ザワリザワリと闇が蠢く。闇は質量を持った物質となり、彼の両手両足に突き刺さった。

 

「ガぁっ!?」

 

 痛みに悶えるその表情が愛おしい。痛みを堪えるその涙が愛らしい。実体を持った闇が何度も彼を突き刺すが、彼に痛みを与えるだけで一滴たりとも血を流させない。何故なら彼の血は私のモノだから、地面なんかに落とさせはしない。

 質量のある闇が私と彼を包む。闇は結界となり、世界から私達だけを切り離した。ここには、私と彼の二人しかいない。

 

「あはぁ♥️」

 

 二人しかいない世界。二人で完結した世界。なんて素晴らしいのだろう。

 闇に包まれた世界に、彼の汗、血液、恐怖、絶望、本能の匂いが充満する。

 腹を空かせた獣のように、彼の口内を貪る。舌と舌が絡み合い、自身と相手の唾液を交換する。

 今まで彼と行っていた男女の交合に比べれば、ほんの挨拶に過ぎない程度の情交だと言うのに、既に彼の逸物は臨戦態勢に入っていた。散々与えた痛みによって、彼の生存本能が刺激されたのだろう。本能が未来に子孫を残そうと躍起になっている。

 

 いつもならこんな巨大な逸物を前に散々彼に犯されて、トロトロに仕上がったメスの部分で一方的なまでの強い快楽を味合わされ続けるのだが、今日はそうはいかない。

 ギンギンに怒張している逸物を、そのまま私の秘部に挿入する。

 

「あ、あああああ♥️♥️♥️」

 

 いつもとは違う、彼を一方的に犯しているという事実が、雌としてではなく妖怪として満たされていく。彼を貪っていくたび、彼を蹂躙していくたびに自分の中の妖怪が大きく育っていく。

 いつもの狂い死んでしまうかもしれない程に与えられる快楽とは違い、まるで人間を食べたかのような充実感が溢れる。

 彼の上で大きく腰を振り、逃げ場のない快楽を与えながら彼の口内を犯し、絶え間なく自分の唾液を飲ませ続ける。彼の中に自身の一部が混ざり合うことに昏い歓びを覚え、彼の血肉が闇と同化していくのに堪えきれない悦楽を感じる。

 

「んっ♥️ちゅ♥️んふぅ♥️ちゅる♥️じゅる♥️」

 

 腰を振る毎に彼の逸物がピクピク動き、子宮口にコリコリ当たる。彼の感情が手に取るように分かる。彼の鼓動が耳元で鳴るように分かる。

 焦点が合わなくなってきた彼の瞳を、闇で舐め尽くす。

 

「あっ♥️はぁっ♥️好きっ♥️好きっ♥️大好きぃ♥️」

 

 愛を囁きながら、彼の手足を闇が食らう。流れる血を闇が舐めとり、彼に愛で返す。

 彼の全てが闇に染まっていき、私の全てが彼だけのモノとなる。もはや彼と私を隔てるものは薄皮一枚とて無い。

 

 

 私と彼はこの闇の世界で、本当の意味で1つになった。

 

 

「がっ、あっ……ぁぁ……」

 

「出るのね♥️射精するのね♥️♥️いっぱい射精してぇっ♥️♥️♥️」

 

 ぶびゅぅぅぅ!!びゅるるるる!!

 

 脳天まで突き抜けるような勢いで熱い精液が子宮に注がれた。彼の寵愛を受けるのは私だけだ。彼に愛を囁くのは私だけだ。彼と性交するのは私だけだ。彼に求められるのは私だけだ。

 

 

 

 彼は、ワタシだけのモノだ。

 

 

 

 

 

 何度も何度も性行為を繰り返し、彼の意識が消えようとも、彼の身体が闇に失せようとも、彼の魂が無に還ろうとも、この闇の世界は二人だけを囲い続けた。

 

 

 永遠に。

 

 

 




本編書いてたと思ったらねこみこれいぷ書いてた

と思ったらルーミア書いてた。やっぱ純愛だよね!!


・闇の妖怪 ルーミア
 すごく強いエッチな妖怪だよ!ねっとりとしたキスや愛情のこもった前戯でおちんちん元気にするのが得意だよ!おまたでおちんちんちゅうちゅうして、精子を子宮でゴックンするのが大好きなんだって!

・主人公
 ルーミアの肉バイブ。
 ねっとりとしたキス(酸欠)や愛情のこもった前戯(両手足に穴が開く)でおちんちん元気(本能)に。


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迷いの竹林で据え膳 前編

 IFルートと本編分けるの面倒だしこのまま投稿しようそうしよう。
 世間ではコロナウイルスが流行していて大変ですね。私は花粉症持ちですのでマスクとティッシュが買えないとこまるのです。


 凄い関係無い事ですが「コロナ」ってカリ首の意味もあるらしいですね。
 ニュース番組で女子アナがカリ首ウイルスを連呼したり国会で真面目くさったおっさん共がカリ首ウイルスがどうのと議論していると思えば平和になると思います。頭が。



 ある時気がつけば竹林の入口に立っていた。思うがまま気の向くままに歩き回ってると、時折妖精がイタズラしてきてこういうこともある。

 幻想郷の竹林と言えば、迷いの竹林である。

 そして迷いの竹林と言えば、妖怪の巣窟である。

 そしてこの場所の妖怪達も例に漏れず女ばかりである。

 質の良いタケノコが年中食えるのは良いんだが、気を抜けばいろんな奴に食われる怖い場所である。

 そんなわけで竹林から離れようとした時、竹林の奥から香ばしくも旨そうな匂いが漂ってきた。匂いに釣られて腹の虫が騒ぎだしたので、匂いの元に向かうことにした。

 

 迷いの竹林は、普通の人間にとって非常に危険な場所だ。一度出口を見失うと二度と自力で竹林の外に出られないとのこと。

 当然そんなところで開いている屋台なんて普通の人間を想定してない物なのだが、品揃え自体はいたって普通の屋台である。

 

「いらっしゃい~♪会いたかったわ~」

 

 歌うように出迎えたのは、この屋台の女将ミスティア。夜雀という、人を夜盲症にする妖怪だそうだ。竹林で会う奴の中では比較的マシな方だが、料理の代金を身体で支払わせようとするヤベー奴でもある。しかも時価。

 

「趣味みたいなものだから良いのー♪」

 

 まあ妖怪だし、金が無くても生活できるからこそだろう。

 まあ、俺も金が無くても生きていけるが。

 

「しってる?そういう人間をマダオって言うんだって」

 

「誰がホームレスだコラ」

 

「じゃあヒモ?」

 

「人を自活力皆無みたいに言うな」

 

「でも色んな女の所に転がり込んでるでしょ?」

 

 ぐうの音もでないとはこの事か。

 悔しいので酒を注文する。

 

「はいまいど~♪お代はカラダでいいわよ~」

 

「今日はちゃんと金持ってるわい」

 

「遠慮せずに~」

 

 めっちゃグイグイ来るなぁ。結局いつも身体で払ってて若干申し訳ないと思っているんだが。

 酒のつまみにヤツメウナギの蒲焼きを食べる。特別美味しいというわけではないが、時折食べたくなる味だ。

 ……ところでさっきから気になってたんだが、このおでんの玉子って

 

「あー!芳しいまでの雄臭さを辿ってみればやっぱり居たウサ!!」

 

「あ、あの、えっと、そ、その節はどうも……」

 

 うわでた。

 竹林の子供兎がむっつり助平の兎を連れて現れる。

 子供兎の名前は因幡てゐといい、360度子供の見た目で幻想郷の中でも指折りの年長者……らしい。どうみてもそうは見えない。合法ロリウサ、とは本人の言。

 むっつり助平兎の名前はレイネン・花京院イバラと

 

「鈴仙・優曇華院・イナバですっ!」

 

 冗談だ、冗談。

 兎に角、当人はえっちいのは嫌いです!って態度を取ってるクセにそういう行為を隙有らば覗いてくる超むっつり助平。

 

「やーこんなところで会うなんて奇遇ウサ、アタシも一杯呑んでこ」

 

「お前匂いを辿って、とか言ってなかった?」

 

「細かいことはいーのいーの!女将、アタシにも熱燗と蒲焼きちょーだい」

 

「ごめんなさいね?今はもう満席なの~♪」

 

「いや、どうみても席空いてるウサ」

 

「定員は店主の私が決めるわ~♪」

 

 お互い笑顔なのに見えない電撃がバチバチと放たれているように感じる。

 

「まあまあ別に良いだろう。俺もたまには複数人で呑みたい気分だ」

 

「……まあ、貴方がそう言うのなら……」

 

「流石ダンナ、話が分かるウサ!」

 

 ウサウサと笑いながら俺の膝に座るてゐ。あまりに自然な動きすぎて座られるまで反応できんかった。

 

「ちょ、ちょっとてゐ!?貴女どこ座ってるのよ!?」

 

「ん~?鈴仙も座る?」

 

「座るっ!……わけ無いでしょ!?ほら、迷惑になるから離れなさい!」

 

「葛藤が見える見える」

 

 嫌ウサ~♪と俺にしがみつき、その小ぶりな尻を俺の腿に擦り付ける。

 

「は~い、焼きたて熱々の一品よ~」

 

「だぁっつい!!?ちょっと!?いきなり何するの!!」

 

「他のお客様に手を出す、マナーの悪い客に相応しい一品のお味はいかがかしら~♪」

 

 ミスティアが火のついた炭をてゐの顔に当てる。わりと容赦ないと思う。

 また炭を投げられたらたまらんと腿上から退いて、俺の右側に座るてゐ。ちらちらと俺の腿を見ながら、俺の左側に座る鈴仙。両手に花かな?

 クッと呑みながら熱い大根を頬張る。身体の芯から暖まる感覚が心地よい。

 

「しかし何でまたこんなところに来たんだ?お前ら里に薬売りに出る以外は引きこもってるんじゃないのか?」

 

「そんな人を社会不適合者みたいに……」

 

「まー、アタシ達にも色々あるウサ。特にこれからの時期はねー」

 

「何かあるのか?」

 

「何かあるというか、何もないというか。要は冬籠もりの支度ウサ。特に最近はこの辺りの食料の減りがすごい早いからねぇ、普通の兎達用に食料を確保してるウサ」

 

 兎って冬眠するのか、と思いながら熱燗一本を呑みきる。するとミスティアがすぐに熱燗を用意してくれた。助かる。

 

「あ、お酌しますね!」

 

「どうもどうも」

 

 鈴仙がススッと寄ってきて酌をしてくれる。その際に、その小ぶりながらも主張をしている胸が軽く俺の肘に当たる。

 

「あー!鈴仙が『読んで分かる意中の男をオトす10の方法』を実践してるウサ!」

 

「流石兎ねぇ~、アザトさに掛けて右に出るものが無いわ~♪」

 

「やめたれやお前ら」

 

 ほら見ろ鈴仙の顔が耳まで真っ赤に染まってるやんけ。

 

「あの……違うんです……これは違うんです……」

 

 ポショポショと小声で呟く鈴仙。首もとまで赤く染まって、むしろ青く見え出したので左手で鈴仙の頭を抑え、俺の膝の上に寝転ばせる。

 

「この話は終了、はーい止め止め」

 

「膝枕なんてズルい!アタシにも膝貸して!」

 

 頭から飛び込んで来ようとするてゐを右手で抑え、そのままワシワシと頭を撫でる。

 

「む、にぅ……ん、ま、まあこれで許してやらんでもないウサ……」

 

 俺の膝の上でガチガチに固まってる鈴仙の胸を左手で程よく揉みながら、右手でてゐの耳の付け根をコリコリ撫でる。

 

「……貴方のその手際の良さはある意味感動的ね~」

 

「それほどでもない」

 

 じとっとした目を向けてくるミスティアに、両手が塞がってるから食べさせてくれとお願いする。

 

「えっ……?それってもしかしてあーんってやつ……?

 

「嫌か?」

 

「やります」

 

 ミスティアが焼きたてのヤツメウナギを持ち、俺の口に持ってくる。俺はあっ、と口を開けて、まるで雛鳥の様に食事が口に入り込んでくるのを待つ。

 

「あ、あ~」

 

 ミスティアが頬を赤く染めながらもニッコリと笑い、俺の口にヤツメウナギを近づけていく。実に眼福。

 

 が、次の瞬間俺の頭が押し退けられ、後ろから長い白髪が飛び込んで焼きたてのヤツメウナギをかっさらって行った。

 

「がぶっ!むぐむぐ……ん!」

 

 そしてヤツメウナギの脂がべっとり着いた唇を俺の口に合わせ、その中身を移してきた。うーん情熱の味。

 

「……て、ちょっと!!?貴女何してるのよ!!」

 

「うるさいなぁ。夫婦の時間に水を差すんじゃないよ」

 

「は、はぁっ!?誰と、誰が夫婦ですって!?」

 

 ミスティアの甲高い叫び声によっててゐと鈴仙の身体がビクンと跳ねる。

 

「はぁっ、えっ?あっ、えっ!?なんで私おっぱい揉まれてるの!!??」

 

「いきなりビックリさせるんじゃないウサ!……て、ゲッ、藤原妹紅」

 

 さて、突如乱入してきた者の名前は藤原妹紅。不死者らしい。不死と聞いて俺の中の吸血鬼殺しの血が騒いだが、吸血鬼とは全く違うモノとのこと。落ち着け俺の血、ステイステイ。

 色々となんやかんやがあった結果として俺の嫁を自称している。この話は長くなりそうだからまた今度な。

 

 ……で、なんで君こんなところに来るん?

 

「お前の気配を感じたからな」

 

 蓬莱人は気配察知スキル持ちですかそうですか。

 妹紅は俺の背中からローブに入り込み、二人羽織のように一枚の布の中で密着する。鈴仙よりやや控えめではあるが張りのある感触が背中に当たる。

 

「妹紅おまえ……ブラ着けてないな?」

 

「邪魔だもの。ほらほら、嬉しいでしょ?」

 

 すりすりと柔らかなモノを擦り付け、更に妹紅の両腕が俺の脇の下から回り込んで抱き締めてくる。

 見た目の割に子供っぽい仕草だが、まあこれはこれで……と思ってたら、唐突に右側からてゐが抱きついてきた。

 

「アタシにも堪能させろぉ!」

 

 そのままてゐは脇の下に潜り込んで、俺の脇の匂いを嗅ぐ。止めろ恥ずかしい。

 そのやり取りを見ていたミスティアが顔に青筋を立てながら湯気の立った餅巾着を箸で取って俺の顔に近づける。

 

「うふふ、仲がよろしくて結構ねぇ~?」

 

 明らかに食べさせる目的じゃないだろコレ。

 餅巾着を箸で揺らしながら近づけるミスティアだが、「あっ」と手元を滑らせて餅巾着が俺の膝に寝転んでいた鈴仙の顔に直撃した。

 

「あ"ッッッッづぅ!!!!?」

 

 外の世界の某リアクション芸人の如く悶えのたうち回る鈴仙。スカートが捲れて中が丸出しになっている。……白は清潔感の色。

 

「……なによこのカオス空間は」

 

 長い黒髪を携えて新たに現れたのはかの有名なおとぎ話、かぐや姫の主役である当人、蓬莱山輝夜である。傾国の美女という肩書きに恥じぬ美少女であるが、蓬莱人故にこれ以上成長も老いもしないらしい。俺としてはもう少し妹紅並みに

 

「何か変なこと考えてる?」

 

「……いや、妹紅より無いなあと思って」

 

「そこ普通誤魔化すパターンよね?なんで正直に言うの?」

 

 細い腕が俺の頬に伸び、渾身の力で引っ張られる。その細腕の何処にそんな力があるんですかね?

 かなり丈夫な俺でも頬に鈍痛を感じてきた頃、背中でモソモソしていた妹紅が俺の首もとから顔を出した。

 

「わっ、妹紅貴女そんなところに居たの?」

 

「なんだ、居ちゃ悪いか?」

 

 悪いだろ常識的に考えて。

 今俺の右手は脇をくすぐりだしたてゐを抑え、左手は餅巾着で火傷を負った鈴仙を治療し、頬を輝夜に引っ張られながらミスティアによって次から次へと口に運ばれる料理を食べ、背中で妹紅の感触を楽し……

 

「妹紅、一つ聞きたいんだが」

 

「ん、なんだ?」

 

「なんかさっきより背中に感じる感覚がぷにぷにしてるんだが」

 

「おう」

 

「お前、服どうした」

 

 俺がその言葉を発した次の瞬間、妹紅以外の少女全員が戦慄する。俺のローブを一枚捲った、その先を想像して驚愕する。俺も正直ビックリしてる。

 

「脱いだ」

 

 妹紅の言葉に、場に衝撃が走る。

 

「お前をオトすならこれくらいしなきゃな」

 

「身体張りすぎだろ。唐突な野外プレイにびっくりだわ」

 

 えっ?野外プレイってなんだって?外で大人の遊びをする事だ。

 ともかく今はそういう気分ではなかったというのに、超肉食系妹紅の凶行に半臨戦態勢になる。そしてソコに伸びてくる両手を払うも、今度は両隣から飛び付いてくる肉食系ロリ兎と負けず嫌い姫。

 

「妹紅に先を越されてたまるものか!」

 

「今がチャンスウサ!」

 

 助けて。とミスティアに視線を送れば、

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!いま火を落としてるからおっ始めるならその後にして!」

 

 あダメだこれ飛び入ってくるヤツやこれ。

 一縷の望みを懸けて鈴仙を見る。助けてくれ。

 

「あ、ぅ……えっと、皆さん流石に外じゃぁ……」

 

「鈴仙もいい加減処女を捨てるチャンスだよ。いつまでも覗いてるだけで満足するなウサ!」

 

「お前処女だったのかよ」

 

 思わず素で言ってしまった。いやだってお前あれだけ……いや、でもむっつりだしそんなこともあるのか?

 と思ったら鈴仙はワナワナと震え、

 

「し、処女で悪いですか!?」

 

 とブチギレてその赤い目を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふ、と気がつけば死屍累々の惨状。前もこんなことがあったな……と思い、色々と考えるのが面倒臭くなって、結局寝ることにした。

 ……やっぱ複数人で呑むのは稀にで良いや……寝よ。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 微睡みの中、あいつと出会った日の事を思い出す。

 初めて出会った時、私は輝夜と殺し合いをしている最中だった。人間のクセに竹林の奥地まで歩いて、襲ってくる妖怪を蹴散らしていた。

 丁度そのとき放った必殺技の炎が、運が悪いことにその男に直撃してしまった。焦って男の元に向かうと、炎を払いながらいきなり何すんだ、と閃光の様な魔法の炎を打ち出した。

 その男はとても強く、流れ弾に当たってイラついてた輝夜と二人で相手をしてもなお勝てず、殺す気で放った弾幕に直撃してようやくダメージを与えることができたくらいに丈夫だった。

 何度か死にかけたが本当に殺されることはなく、頭に上った血が冷えてきた頃に「何でこんなことやってんだっけ」と呟かれた声によって馬鹿馬鹿しくなって止めた。

 

「貴方人間なのにとても強いのね」

 

「そう言うお前らはガチで容赦ないな。俺が普通の人間だったら何度か死んでたぞ」

 

「死んでないから良いじゃない」

 

 男の何かが気に入ったのか、輝夜がニコニコと男に話し掛ける。なんかむかつく。

 特に意味もなく竹林に来たと言う男は、これまた特に意味もなく竹林をさ迷っていたらしい。聞くところによると道中に因幡てゐに出会ったらしいが、竹林から出られてないところを見るに本当に歩き回ることが目的らしい。コイツは大物かただの馬鹿だな。

 特に目的もないのならウチに来なさい。と輝夜が誘い、そのまま輝夜に着いていって別れたのが初めての出会いだった。

 

 それからあいつは時折竹林に来ては何かをしていたり、ただ歩き回っていたり、妖怪を蹴散らしていたり。その際に会えば軽く言葉を交わす程度の仲になった。

 

「藤原、お前さんは火の妖術を使うんだって?」

 

「そうだな。首の無い不死鳥を模した炎だ。首がないから生きてない、だが不死鳥だから死んでもない。私にピッタリだろ?」

 

「お、おう」

 

 そんな関係が大きく変わった切っ掛けは、マジックと名乗る集団に襲われたときの事だった。

 ある昼下がり。人里に用があってその帰り道に、迷いの竹林の入口辺りで見かけない服装の三人組が居た。その集団は竹林側を見ていたが、人里側から歩いてきた私に気がつくとザワザワしだした。

 

「おい、アレかみ?」

 

「んー、見た目はそれっぽそうじゃの……」

 

「……ま、ダメ元で試せばいいわな」

 

「お前達、迷いの竹林になにか用でもあるのか?道案内なら」

 

 その後の言葉が続かなかった。何故なら私の首が胴体からいつの間にか離れていたからだ。

 私の首が地面に落ち、その後一気に燃え尽きる。そして立っていた胴体も同じように燃えて、炎の中から復活を果たした。

 

「……お前ら、いきなり殺しに来るなんて随分な挨拶じゃない」

 

「見たかの?」

 

「見たわな」

 

「燃えたの?」

 

「燃えみ」

 

「生き返ったわな」

 

「生き返ったの」

 

「てことは、だわな」

 

「ということは、だみ」

 

 

「「絶好の素材だ!」」

 

 

 ぎゃあぎゃあと騒ぎだし、喜色の声を一通りあげた後に再度私に向き直る。なるほどな……コイツらはそういう手合いか。

 なら、遠慮はいらないな。

 猛火の弾幕を打ち出し、集団を焼き払う。あっさりと弾幕が直撃して、集団を燃やし尽く……様子がおかしい。

 

「ほお!魔力由来の火じゃないようだが、熱量は素晴らしみ!」

 

「ワシらのスペシャルアーマーに火を入れる手間が省けたわいの!」

 

「持って帰って研究……いや、このままアーマーの燃料にするだわな!」

 

 炎が消えると、一見鎧兜の様なゴテゴテした金属製の服?に身を包んだ三人組が謎のポーズをしていた。

 よく分からない事を言う三人組だが、炎の効きが悪いようだ。なら他の弾幕でなぎ払うだけだ。

 

「ひっひっひ、ワシらに弾幕勝負を挑むなど100年早いわいの!」

 

「エネルギー充填!モードチェンジ・(ガンモード)!」

 

接続器(コネクター)オン!光魔法装填!」

 

「食らえ、光の弾幕!「「『極熱太陽光線(ジェノサイド・ソーラーバルカン)!』」」」

 

 なんだそのふざけたネーミングは。

 と思った瞬間、身体が蒸発した。

 

 すぐに生き返るが、さらに次の瞬間には身体が蒸発する。

 何が起きているか理解できない。理解できないままに何度も死に続ける。

 

「ひっひっひ、光速で最高威力の弾幕だわいの。射程と燃費が最悪じゃが殲滅力が段違いだわい!」

 

「ふひ、不死者を燃料にするなんて夢がひろがりんぐだみ!」

 

「だわいの。さぁ、とっととふんじばって炉に押し込めるだわいの!」

 

「誰をふんじばるって?」

 

 復活した瞬間に再度身体が蒸発する、なら復活しなければいい。魂を燃やし、実体を伴わない状態で甦る。

 

 パゼストバイフェニックス

 

 蓬莱人の不滅の魂を燃料に、業火を上げる。

 火が効かないなら、効くまで燃やす。

 熱して、熱して、熱して、熱して、熱して、熱して、熱して、熱して、熱して、熱して。

 燃やして、燃やして、燃やして、燃やして、燃やして、燃やして、燃やして、燃やして、燃やして、燃やして。

 もっと熱く、太陽より熱く。苛烈に。優雅に。

 全て、燃やして、紅になれ。

 

 

 

「ぐはは!肉体が亡くともこの火力!研究すれば様々な魔道機工の小型化が出来そうだわな!」

 

 ……これでもまだ、届かないのか。

 

「随分楽しそうなことしてるじゃねえか三馬鹿」

 

「……あァ?」

 

 竹林方面から現れたのは普通じゃない普通の人間、いつもの黒いローブを身に纏い、とことこと歩いてきて三人組に近づいていく。

 

「貴様、吸血鬼殺し!ひっひっひ、貴様の首があれば一生研究三昧で暮らせるわいの!」

 

「老い先みじけえジジイが何言ってるんだ?それよりそんなところでドンパチやるんじゃねえよ、迷惑だ」

 

「ふひ、迷惑だぁ~?知ったこっちゃねえみ!こんなド田舎の片隅で何しようがべぶぅッ!!?」

 

「分かりやすく言ってやるよ。邪魔だ馬鹿」

 

 鎖付きの分銅が喋ってた男の腹に直撃し、勢いそのままに吹き飛んでいった。

 その分銅がジャラジャラと音を立てて動き、三人組の残り二人の頭と腰を的確に撃ち抜き、すっ飛ばしていった。

 

「よう藤原。どうしたんだお前、自分の身体を何処に落としてきた」

 

「別に落とした訳じゃないよ、落としたのは命だ」

 

「洒落になってねえ」

 

 軽口を叩きながら肉体を甦らせる。お前、あいつらと顔見知りっぽいがどういう仲だ?

 

「まあ、お互い外じゃ有名だからな。アイツらは……まあ幻想郷で言うと、カッパみたいな奴らだ」

 

「なんとなく理解した」

 

 要するに馬鹿の集まりというわけか。

 

「ンどぅわぁれが馬鹿だ貴様ァ!!マジック1の天才魔道学者、石見を掴まえて馬鹿とはなんだ馬鹿とわいの!!」

 

「その天才弟子、魔工の潮見も馬鹿ではないみ!!」

 

「そして天才のパトロン兼助手、先見の熱海とはワシの事だわな!」

 

 コイツらはあれだ、カッパとチルノを足してウザさで掛ければこうなる。

 

「我らを馬鹿にして、後悔しても遅いわいの!諸君、フォーメーションΔ(トライアングルオペレーション)だ!」

 

「了解!「「フォーメーションΔ(トライアングルオペレーション)融合合体(フュージョンアーツ)!!」」」

  

 三馬鹿の鎧が光り、二人が両手を広げて並び、一人がその二人の肩に乗る。

 

 大

大 大

 

 仰々しく叫んで光った割には、ただ肩に乗っただけの合体で些か拍子抜けする。

 

「炎・風・地属性魔法装填完了!」

 

魔力同調機(エネルギーリンクシステム)オールグリーン!マナ共鳴開始!」

 

「食らえィ我らの集大成!「「ΔMAX(デルタマックス)極彩主砲(レインボーカノン)!」」」

 

 空間が融けるような音が響き、3人から虹色……と言うには色が足りなすぎる三色が混じりあった光線が放たれる。

 その光線はまっすぐ伸び、触れるもの全てを破壊していった。

 

 ……なぜこんな悠長にいられるのか、それは放たれた光線がそのまま闇に消えていってるのを見ているだけだからだ。

 光線は触れるもの全てを破壊していった。だがそれが私達に届いているとは言ってない。

 

 闇属性魔法:マナグラビティ

 

「お前ら魔法1つ撃つのにどれだけ時間掛ける気だよ。前も同じように防がれてただろうが」

 

「ぐぬぬ……おのれ吸血鬼殺し!こういう時はあえて食らってみるもんだわいの!」

 

「ボケてんのかお前、今時当たらないロマン砲とか流行らねえよ。地属性魔法:チェーンインパクト」

 

 地面から鉄球が飛び出し、馬鹿の一人に直撃した。鉄球には鎖が繋がれており、自在に操って残りの馬鹿二人をなぎ払った。

 

「……おかしい」

 

「何がよ」

 

「今までの経験上、既にアイツらは尻尾巻いて捨て台詞を吐いて逃げていく筈なんだが……妙にタフだな」

 

「そうなの?」

 

「ああ。アイツらの鎧は熱エネルギーによって強化される。人体程度の熱源じゃぁちょっと強い一般人程度にしか強化されない。溶岩を浴びて漸くマジックの平均値程度。あれだけタフなら、相当な熱量を浴びてないと……」

 

 そこで言いやめて私を見るのは止めろ。なんだよその目は。

 

「藤原、お前まさか……」

 

「誰にだって間違うことはあるわ。肝心なのはそれを許容することだと思うの」

 

「どうせ火が効かないなら、効くまで燃やす。とか思ったんだろ」

 

 コイツは覚妖怪だった……?

 

「めんどくさい事になったな……アイツらは馬鹿だが装備がヤバイ。下手に大暴れされたら近くの人里が大変な事になりかねん」

 

「じゃあどうする?燃やすか?」

 

「だから燃やせねえんだって……。仕方ない、ボコボコにして鎧に貯まってるエネルギーを空っぽにするしかないか……っあぶねえ!」

 

 いきなり突き飛ばされた。

 軽く目をまわしながら、いきなり何しやがると文句の一つでも言おうとして目を向けると、男の左腕に大きな穴が開いていた。

 

「……お前、それ……」

 

「ぐはははは!相変わらず貴様は女に弱いだわな!」

 

「ふひっ!お前が守った奴は不死身だみ?なのに庇ってどうするんだみ?」

 

「ひっひっひ!如何に強固な肉体に守られようとも、天才のワシが作った魔弾を受けて無事であるはずもないだわいの!」

 

 ドクドクと赤い血が男の左腕から絶えず流れ出る。そして腕の皮の下でナニカがモゾモゾと蠢いている様な気配がする。

 

「お、おい……ソレ、大丈夫なのかよ……」

 

「……問題ない」

 

 眉間に力を入れて不快感を我慢するかのような表情を浮かべる男。

 

「な、なんで私なんかを庇ったんだよ……私は蓬莱人なんだぞ?何があっても死なないんだぞ!?」

 

「咄嗟に身体が動いたんだよ。お前が蓬莱人だからとか考えていられるかっての」

 

 男の腕がポウ……と光り、腕に開いた穴が塞がっていく。だがその光を浴びて、左腕の中のナニカがより激しく蠢く気配がした。

 

「ひ~っひっひ!貴様の腕に寄生した毒蟲は回復魔法に反応してより強く暴れるだわいの!お得意の回復魔法のごり押しは死期を早めるだけだわいの!」

 

「あ~うるせえな」

 

 そう言って拳を握った男は、躊躇なく自身の左腕を殴り抜いた。

 

「……ひょ?」

 

「っ~……っあ~ったく、鬼の脳筋が伝染ったか……まあ、これで遠慮なく回復できるな」

 

 腕が半分挽き肉になり、内側から骨が突き出すような大怪我が逆再生されたかのように戻っていき、すぐに元の腕の形に戻った。

 左腕の一部が黒い輝きを放ち、内側からムカデの様な姿の緑色の蟲の死骸が引きずり出された。

 

「ぬぬぅ!まさか特製の毒蟲がそんな力技で殺されるとは!これは対物理耐性を持った呪い蟲の開発を急がねばならんわな!」

 

「それよりも先に対魔力耐性の呪い蟲を仕上げる方が先だみ!?あんな駆除方法なんて吸血鬼殺ししかやらんみ!」

 

「いや、それよりも攻撃性能をもっと高める方向で育てるべきだわいの!」

 

「いや、先に対物理耐性を持った蟲を開発するべきだわな!」

 

「だからその前に対魔力耐性を持った蟲を仕上げるべきだみ!?」

 

「じゃから最優先は攻撃性能の高い蟲を育てるべきだわいの!」

 

 ギャーギャーと大きい声で騒ぎ議論を交わす三馬鹿。

 それを眺めている傍ら、ぐらりと倒れそうになった男を咄嗟に支える。その際に触れた肌の温度がまるで氷のように冷たかった。

 

「お、おい!?なんだよこの冷たさは……」

 

「クソ……厄介な毒を残されたようだ……解毒魔法は得意じゃねえんだド畜生が……」

 

 男の身体からどんどん命の灯が抜け出ていく気配がする。このまま放置してたら……。

 

「ッチ!おい、今から永遠亭に運ぶぞ!絶対に死ぬなよ!」

 

「ンな事あの三馬鹿がほっとくかよ。先にあいつらを何とかするのが先だ」

 

「だけどっ……!その前にお前が死んじまうぞ……!?」

 

「……俺は……死なない……絶対に……っ!」

 

 すると男は自分の心臓を押さえ、深呼吸をした。

 どくん。どくん。心臓の鼓動が私にまで聞こえるほどに大きくなる。青くなっていた身体に赤みが戻っていく。

 ……これは、ダメだ。よく分からないが、これはダメな奴だ。

 

「馬鹿野郎ッ!お前、何をしてるんだ!!?」

 

「何でもいいだろ、俺は今を生きてるんだ。未来(さき)の事はその時考えればいい」

 

「ふざけるな!!ただでさえ短い寿命の人間が、更に寿命を削るような真似をするなっ!!」

 

「はっ、馬鹿言え。短い命をダラダラ伸ばしまくった人生に何の意味がある。一瞬でいい、鮮烈に焼き付く様な一瞬の為に、命を燃やすような生き方こそが俺の……俺の美学で生き様だ」

 

 なんて、蓬莱人のお前さんに言う事でもねえか。そう続けた男の横っ面をぶん殴った。

 ふざけるな。ふざけるな。そうやってお前達は、遺される者に消えない傷を負わせて逝くと言うのか。

 

「お前の意地なんて知った事じゃないわ。一瞬だけ輝く為の生き様?お生憎!長く生きて、生きて、生き続けて幸せを享受する生き方ってモノもあるのよ!」

 

「長く生きて幸せを享受する?理解出来ないね。幸せは享受される物じゃない、闘争の果てに勝ち得る物だ。妥協して生きる事に何の意味がある」

 

「妥協なんてしなくていいのよ!というか言わせてもらうけど、アンタは目的と手段が入れ替わってるわ!アンタの言う闘争は、幸せを手に入れる手段の一つでしか無い!!なのに闘争こそが幸せを手に入れる唯一の方法みたいな考え方して、その先に真の幸せは存在しないッ!」

 

「真の幸せって、なんだ?そんなものが存在すると?この世に生まれ落ちたのなら、ただ現在(いま)を生き続けるだけだ!命を燃やし、戦い、争い、望むモノを勝ち取る!それこそが人生であり人の歴史であり俺の生き様だ!」

 

「100年も生きてない若造が人生語んなボケェ!!」

 

 燃え盛る感情を拳に乗せ、男の顔面を殴り抜く。2、3歩踏鞴を踏んで耐えた男の顔に指を突きつける。

 

「良いわ、アンタに真の幸せってモノを教えてあげる。伊達や酔狂で1300年も生きてないのよ私は!」

 

 妖怪に恋した人間が居た。人間に恋した妖怪が居た。神を求めた人が居た。人を愛した神が居た。誰を愛さず、数多の捨て子を育て上げた者が居た。

 その全てを看取った私が居た。

 艱難辛苦あれど、その最期は皆笑顔で逝った。生の最期に笑顔を浮かべられるのなら、その生き方は真の幸せであったのだろう。無論、望むモノを手にする為に剣を持った者も居た。しかしその生全てにおいて剣を手にしていた者は居なかった。

 拳を握っていると、恋する人と手を繋げられない。

 剣を握っていると、愛する人を抱きとめられない。

 鎧を着ていると、誰かの体温も感じられない。

 

「だから、戦いは人生の全てじゃない」

 

 少なくとも、眉間に皺寄せてる間は幸せにはなれないわよ。

 

 

「ひっひっひ!何を言うかと思えば、人外が人の幸せを騙っておるわいの!!」

 

「ぐはは!貴様の幸せは、我等が歴史に名を刻む礎になれることだわな!!」

 

「ふひひ!吸血鬼殺しを仕留め、絶好の燃料を手に入れるみ!」

 

 三人組がそれぞれ武器を手にして飛び掛かって来た。延々と議論していればいいものを。邪魔をするなと手に炎を溜めると、横から腕が伸びる。

 

「だから炎は止めろと言っている。……少なくとも俺はこんな所で野郎に囲まれて死ぬつもりは一切無い」

 

「だけど今のお前は死にかけだろ!?」

 

「口調安定しないなあお前さん……。言ったろ?死ぬつもりは無い。死ぬなら腹上死が良い」

 

「馬鹿じゃないの?」

 

「それより()()、その炎……一度俺に貸せ」

 

「……はっ、何か良い案があるんだな?」

 

 男の言う通りに、手に溜めた炎を一度男に渡す。その熱量が余す事無く男に吸収され、……反転した?

 

「ひ~ひっひっひ!ワシらのスペシャルアーマーはどんな熱量も吸収し尽し駆動エネルギーに変える!理論上なら太陽の中でも活動可能だわいの!」

 

「それが魔法製だろうとも関係ないだわな!熱くなればなるほど、より大きなパワーとなるだわな!」

 

「吸血鬼殺し!今日こそお前に引導を渡してやるみ!!」

 

 白く長い髭が生えたジジイが手に持った杖から雷が、黒い顎鬚が生えそろった中年の両腕から大量の剣が、メガネをかけた若いデブの腹部から巨大な砲が、それぞれ放たれた。

 

 

 

「光・闇合成魔法:アンチノミーインジェクション」

 

 

 

 私の炎が反転して生まれた、蒼い炎が世界のエネルギーを奪っていった。砲撃の運動エネルギー、大量の剣の位置エネルギー、魔法の雷の電気エネルギー、魔力、風、音、熱、全てを。

 飛んでいた全てが地面に転がり、輝いていた金属のような鎧も今はくすんだ色合いで地面に落ちている。

 蒼い炎は霧散して、後には私と彼、それと全裸で倒れている三馬鹿だけが残った。

 

「……死んだ、のか?」

 

「魔力とか諸々を根こそぎ奪っただけで死んではいない。それよりも後、頼んだ」

 

「は?え、おい!?」

 

 そのまま地面に倒れるように脱力した男を支えると、先程よりもなお冷たい体温が手に移る。

 

「ン、の馬鹿野郎!ここで死ぬつもりじゃないんだろ!?」

 

 見た目以上に重い男をしっかりと背中に担ぎ、竹林に飛びこむ。目指す先は永遠亭だ。

 

「真の幸せを教えるって言った手前こんな所で死なせないからな!生きろ!絶対に諦めるな!」

 

「……」

 

 小さい唸り声しか聞こえない男に、火を灯すように声をかけ続ける。まるで死体を担いでいるかのような重さだ。絶対に死なせない!

 跳ぶ様に地面を駆け抜けて永遠亭を目指す。ようやく永遠亭の入り口が見えた。

 

「もうすぐだからな!絶対に死ぬなよ!!」

 

「……」

 

 その時ぴくっと男の手が動いたかと思ったら、わしっと私の胸を揉んできた。

 駆け抜けた勢いそのままに永遠亭の玄関に男を投げる。ガシャァンと玄関を破って男が叩きつけられた。いっその事そのまま死んでしまえ。

 

「妹紅、俺、瀕死」

 

「セクハラ出来るだけ元気がありゃ十分だ馬鹿野郎!」

 

「何事!?何事ですか!!?」

 

 中から鈴仙が飛び出てくるが、半死半生の男の姿を見るとギャアアと叫び声を上げ、すぐさま男を抱え上げて奥に消えていった。

 ……まあ、これで死ぬことは無くなっただろう。たぶん。

 大丈夫だと思い、帰ろうと考えるも腰は中々に永遠亭から離れようとしない。

 そうこうして日が沈んで、ようやく奥から永琳が現れる。

 

「あら、まだいたのね。……丁度いいわ」

 

「永琳、アイツの容体は……」

 

 あの男の容体について尋ねたら、永琳は静かに目を閉じた。……おい、まさか。

 

「今は姫様の力で悪化を抑えてる。でもまだ根本的な解決には至ってないわ」

 

「なっ……どういう事だよそれは!」

 

「どうもこうも言葉通り、今の私では手の打ちようがないと言う事よ」

 

「っ……ふざけるな!」

 

 思わず永琳の胸倉をつかんでしまった。

 

「ふざけるなよ月の賢者……!アンタなら、アンタなら何とか出来るだろう!?」

 

「……人の悪意というものをもし、集めて具現化することが出来たのなら……きっと彼を蝕んでいる呪いになるでしょうね。それほどに常識外のモノよ、()()は。全く、一体どこで貰って来たのか教えてほしい位だわ」

 

「なら、どうすればアイツを助けられる!?人が作り上げた物なら何とかすることが出来る筈だろ!?」

 

()()が、人が作った物?冗談でしょう?神代の祟り神が人間を嫌って、恨んで、憎んで、長きに渡って集めた呪いみたいな物よ?如何に死なせず、永く苦しませるかを考え続けて編み上げた拷問染みた手法。悪意の塊よ」

 

 その言葉を聞いて、居てもたってもいられなくなってアイツの所に走る。

 扉を蹴破る様に入れば、目を赤く腫らした鈴仙とアイツの右手を祈る様に掴むてゐ、そして膝にアイツの頭を乗せてぼぉっと虚空を見つめる輝夜と、全員に囲まれて眠っているアイツが居た。

 

「……妹紅」

 

 輝夜の何も映してなかった瞳が私を見ると、次第に光が戻っていき、透明な雫が一つ流れ落ちる。

 

「……永琳でも、どうしようもないんですって。イナバの幸運でも、治せないんですって。私は、ただこうして時間を伸ばす事しか出来なくて、永遠苦しみ続ける様を見る事しか出来なくて、私は……」

 

 輝夜の表情が、悲痛に歪む。

 ムカつくその顔を正面から殴り倒す。

 

「……って、姫様!?」

 

「ちょ、藤原妹紅!?アンタいきなり何やってるウサ!?」

 

「うるさい!どいつもこいつも、勝手に諦めて、勝手にすがり付いて、馬鹿じゃないの!?特にお前だよ!グーグー寝る前にさっさと治せ!さっきセクハラした元気は何処行った!!」

 

 寝てる男の腹を踏んづける。岩を踏んでいるかのように固いが気にしない。

 

「鈴仙、てゐ!アンタ達は巫女と魔女と、あと守谷の祟り神連れてきな!呪いだってんならその道の専門家を呼んだ方がマシでしょ!?」

 

「ひぃ、は、ハイ!!」

 

「ウサギ使いが荒いウサ~!」

 

 バタバタと部屋から飛び出るウサギ達。

 部屋から飛び出た後、輝夜が起き上がって私の腹を殴り抜く。

 

「……いきなり飛び込んできて、随分な挨拶ね?」

 

「はっ!びーびー泣いてるだけのお嬢様にはちょっとキツかったか?」

 

「……お前ら、瀕死の重症人の前で喧嘩するんじゃねえよ。お陰で目が覚めちまった」

 

 全く寝心地の悪い枕だ……。と文句を言いながら腕を伸ばし、輝夜の尻を揉む男。

 

「お前はお前でなに盛ってんだ!燃やすぞ!」

 

「男の元気はスケベ心から来るんだよ」

 

 尻を突然揉まれて顔を真っ赤に染める輝夜のスカートを脱がし、下着に顔を突っ込む男の背中に蹴りを入れる。

 

「流れるようにナニやってんだ!」

 

「いやー、死にかけてどうにも性欲を抑えられなくなったもんで」

 

「ひゃぁっ、ちょっと……あっ、そういうのは因幡の役目でしょ!?やぁ、こんのぉ……」

 

「薬」

 

 自分の尻を弄られて拳を握った輝夜だが、男の一言でその動きを止めた。

 

「そ、それは……永琳がやった事じゃない!」

 

「兎を集めたのは姫様だー、っててゐが言ったが?」

 

「なっ!?因幡ァ!裏切ったわね!!?」

 

「嘘うさ」

 

 追加の一言で完全に動きを止めた輝夜。

 

「どうやらマヌケは見つかったようだな」

 

「ち、違うのよ……ちょっとした好奇心じゃない?」

 

「好奇心は猫を殺すと言う」

 

「い、イナバ達も貴方もスッキリしてWINWINでしょ?」

 

「なら黒幕もスッキリさせておくのが対等だろ?」

 

 何の話か分からないが、流れにおいてかれるのは腹が立つ。起き上がって輝夜の足を引っ張りこむ男の頭をシバいて何の話か話させる。

 

「食事に精力剤を混ぜ込まれたぁ?」

 

「い、イナバ達の発情期が大変そうだから良い感じの男をね~?」

 

「嘘つけ絶対娯楽目的だろ」

 

「それで竹林中の兎妖怪達を相手しちゃってて……ねっ?」

 

「ねっ?じゃないが。アレ俺が相手じゃ無ければ絶対人死にが出てたからな?」

 

「竹林中の兎妖怪と交尾して生き残ってるアンタ何者よ」

 

 私が知ってる限り人型の兎妖怪は20や30なんてものじゃないんだが。

 …………まさか人型に成りきれてない奴も含めちゃいないだろうな。

 

「と言う訳でいっその事黒幕のかぐや姫に一発でもブチ込んでおかなきゃ気が済まん。さあおいでおいで」

 

「無理無理無理よッ!!貴方のデカい逸物だけで内臓全部潰れちゃうでしょ!!?」

 

「お前より小さい兎に入ったんだ大丈夫」

 

「アレは経産婦だから大丈夫なのよ!常識的に考えて出産経験の無い女の子に馬並のモノは要る訳無いでしょ!?」

 

「なら解せばいいのか?」

 

 バチッと指先に電撃を走らせる。それを見た輝夜の顔が引き攣り、這うように逃げる。

 

「い、嫌よ!私はあのかぐや姫よ!?あんな獣みたいに喚き散らすのなんてプライドが許さないわ!」

 

「パンツ丸出しでケツ振って逃げながら言われてもなぁ」

 

 尻を男に向けて逃げようとする輝夜だが、すぐに尻を両手で掴まれて男の下に引き寄せられた。

 

「うん、安産型の良い尻だ。ところで蓬莱人って子供を産めるのか?」

 

「そ、そういう事したことないし分からないわよぉ……」

 

「蓬莱人は子供を産めないぞ。少なくとも私は産んだことが無い」

 

「あら、産める様にしてあげましょうか?」

 

 部屋の扉を開けて永琳が入ってくる。

 

「えーりん助けて!犯されちゃう!」

 

「ふふふ、ところで姫様。私が作った精力剤の件なんですけど」

 

「……はい」

 

 

 

「私はまだ許してませんから♪」

 

「 え ー り ー ん !!!? 」

 

 

 

「……どういう事よ」

 

「さっきの兎の件だが、兎だけが相手じゃ無かったって事だ」

 

「あっ……そう……」

 

「ふふ。ところで貴男、吐精による呪いの排除……なんて、随分面白い発想ね」

 

「は?」

 

「貴方に刻まれた呪いは肉体と精神、及び魂すべてに根付いて蝕む悪意の塊のようなモノ。貴男自身の魔力による肉体活性と、快楽を得ることによる精神回復。更に精を放つ事で自身の汚染された魂を放出することで、あらゆる面からいっぺんに呪いに対処する。まさに画期的とも言える発想ね。しかも放出した呪いは蓬莱人の不滅の魂によって浄化、還元される。月の頭脳が効いて呆れるわ、魔法による除去方法や外科手術、薬物による浄化方法とか、色々模索したのに……こんな簡単な方法があった事を見落としていたなんて……ね?」

 

「おっおう……」

 

「と言う訳で遠慮なく姫様にぶち込んじゃいなさい」

 

 ウインクをしながら親指を人差し指と中指の間に入れて握るジェスチャーを行う永琳。なんて下品な。

 

「えーりん!?嘘でしょ?嘘よね?」

 

「ああ、そうそう。大事な事を忘れていたわ」

 

 はいコレ。と永琳は胸の中から幾つか薬剤を取り出した。何処から出してる。

 

「姫様用に調整したスタミナ剤とか精力剤とか……その他諸々よ!」

 

 二人で彼の相手は無理ですからねー。と呑気に言い放つ永琳。……二人?

 

「ちょっとまて、おい永琳」

 

「ああごめんなさいね、薬の材料が切れて妹紅の分は無いのよ。……まあ、頑張って?」

 

 そう言って部屋の扉を閉める永琳。おい。

 おい。

 

「ふざけやがってアイツ外から結界張りやがった!!」

 

「これがホントのセックスしないと出られない部屋ね!」

 

「輝夜が壊れた」

 

 いつの間にか服を脱がされて、全裸になった輝夜が男の胡坐の上に抱き寄せられた。

 

「う……あ、あの……本当にヤる気……?」

 

「ヤる」

 

「っ……ぅぅ……は、初めてなんだから優しくしなさい」

 

「善処はする」

 

 

 

 




 話が長過ぎ謙信だったので急遽エッチパートと分けました。永遠亭組が出ると話が延びるのが困りもの。
 感想はモチベに繋がりますのでいっぱいマス掻きしてください。よろしくお願いします。


・主人公
 おぐしゅりセックスの被害者(?)。暑さ熱さには強いが、寒いのは苦手。

・みすちー
 主人公LOVE勢。寒いのは苦手な主人公のために秋口から春先までおでんを作っている。

・因幡ァ!
 ウサギの性欲は凄いらしい。子供体力でスゴイが、もっとスゴイ主人公にメロメロ。

・うどんげ
 スーパーむっつりウサギ。能力を使って堂々とこっそり覗きをするウサギ。

・えーりん
 IFルート加害者の会会長(嘘)。主人公の事は好ましく思っている。具体的にはどうにかして永遠亭で飼えないか模索してるくらい。

・もこたん
・ひめさま
 次回ご期待下さい!


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迷いの竹林で据え膳 後編

エッチパート

前回のあらすじ

輝夜「絶対にチンポなんかに負けたりしない!」


 そうして僅か数十分程。

 

 

「っ~あ”♥ん”ん”っ~♥ふっ”ぐっ♥あ”っ、もう……イッ♥いれてぇ”っ……!!」

 

「指3本でギチギチじゃないか。まだまだ解さないと」

 

「う”う”ぅ~ッッ!!奥ッ……♥奥が切ないのッ♥♥」

 

「なら外からイジメてやるよ」

 

 男は指の腹を輝夜のヘソの下に当てて、グッと押し込んだ。

 

「あ”っ♥あ”あ”あ”あ”あ”~~~ッッッ!!!♥♥♥」

 

 ビリビリと電撃が流れ、輝夜の股から白く泡立った粘液が零れ出る。

 

「ひィ……♥ふひぃ……♥死んじゃう……気持ちよすぎて死んじゃうぅ……♥」

 

「まだ前戯でコレなら本番だと脳が焼き切れるかもな」

 

「あぅっ……♥」

 

 男の胡坐の中で散々にイジメられた輝夜は、もはや普段の姿からは想像もつかない程に長い髪を振り乱し、快楽に狂っていた。

 そして、そんな痴態を見せつけられて平常でいられる程私の精神は頑強じゃなかった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 輝夜が胸を弄られてよがり狂っていると、私も胸を触られている様な気になる。

 輝夜の秘部に指が入ると、私の中に指が入ってくる様な気になる。

 目を背けようとも、いやらしい水音と嬌声が耳を刺す。耳を塞ごうとも、濃厚な淫臭が鼻を通る。

 直接触れられずとも、身体はどんどん()()()()()いた。

 

「んひゃぁあ♥️!?」

 

「ほら、輝夜もコレをさわってみろ」

 

 男が胡座の体勢からズボンと下着を脱ぎ、輝夜の股を通して逸物を眼前に突き付け……で、デカいな。

 

「ぁ……熱い……♥️」

 

 輝夜が両手でたどたどしく逸物に触り、小さい声で感想を言う。

 

「熱くて……硬いのね……こんな大きいのが付いてると邪魔にならないの?」

 

「別に四六時中でかいままじゃないからな。輝夜のまんこもずっとぐちょぐちょじゃないだろ」

 

 いや、その例えはおかしい。輝夜も輝夜でそういうものなのね……と感心顔になるな。

 

 輝夜が男の逸物を触っていると、次第に輝夜の表情が変わってきた。例えるなら、さっきまでは初めて見る大きな牛をおっかなびっくり触る子供のような顔から、淫靡な夜の蝶である花魁のような顔に、徐々に変化していった。

 

「ふふ……♥️ココが気持ちいい……みたいね♥️」

 

「っ、才能開花しすぎだろ……」

 

 輝夜は、その大きな逸物を太股で締め付けながら左手で包むように鈴口を、右手指の腹で裏筋とカリ首を愛撫する。

 時折つばを逸物に滴しながら、にっちゅ、にっちゅと男を攻める。男が息を荒げる度に輝夜はにんまりと笑みを深めていった。

 

「ふふっ♥️すっごいエッチな匂いがしてきたわ……そろそろイキそうなのね♥️」

 

「調子に乗るな」

 

「えっ、ひぁん♥️♥️」

 

 男が輝夜の耳を舐め、気が逸れた隙に輝夜の秘部への攻めを再開した。

 

「んっ♥️ひぁっ♥️くっ……負け、ない……わよ……♥️」

 

 輝夜が両手を合わせ、カリ首を包むようにしごく。だが、男の攻めによって次第に手の動きが緩慢になり、ついにはただ逸物にしがみついているだけとなった。

 

「ふぅーっ♥️ふーっ♥️まっ、まだぁ……♥️」

 

「しぶとい奴め、さっさと降参しろ」

 

「あぁっ♥️ふっ♥️ふぅ♥️まだ負けないもんっ♥️♥️♥️」

 

 輝夜は必死で絶頂するのをくいしばっているが、男がわざと絶頂させないギリギリのラインでイジメ続けていることに気がついてはいないようだ。性格の悪い奴。

 

 ……仕方ない。射精させないとアイツの身体の中に呪いが残ったままだ。輝夜が相手だといつまで経っても射精には至らないだろうし、私も協力してやろう。

 男の逸物に近づき、鈴口に吸い付く。

 

「っうお、!?」

 

「ふーっ♥️ふーっ♥️も、妹紅?」

 

 ちゅっ、ちゅっ、とわざと音をたてながら、左手指は玉スジを弄り、右手で竿をしごく。

 舌を鈴口の中に入れるように舐めたり、両手で玉を優しく揉んだりする。すると輝夜も攻め方が分かってきたのか、太股を使って竿を挟みながら指で突くように刺激する。

 

「っ……く……このっ……」

 

「んひゃっ♥️あっ♥️はぁっ♥️きゃぅっ……♥️♥️♥️」

 

「ん、ちろ、ちゅっ、ちゅ、んっ♥️くっ……♥️」

 

 男は器用なことに、輝夜を指で攻め立てながら私の秘部を足で刺激する。更にただでさえ敏感な所に、弱めの電撃を放っているせいで意図せず腰がかくかく震え出す。

 

「あっ♥️っうぁ♥️ん、ふぅーっ♥️ふっ♥️んあっ!あーっ♥️♥️♥️」

 

「んっ♥️ふっ♥️くぅっ♥️ちぅ、ちろ、ちゅっ、ちゅ♥️んっ♥️」

 

 びくびく震える逸物を更に激しく愛撫されながらも、一切攻めの手を休まない男はついに本気をだし始める。

 輝夜がイカされ、股から熱い粘液が溢れるがそれでも攻めることを止めない。腰が抜けた輝夜を更に攻め、終わらない絶頂天国を見せる。

 

「うぁ"っ♥️♥️♥️あ"あ"あ"っ♥️♥️♥️ふぎぃっ♥️♥️♥️う"う"ぅ"♥️♥️♥️」

 

「くぷっ♥️んぷっ♥️じゅるっ♥️じゅるるっ♥️」

 

 輝夜がイキながらも太股を擦り合わせて逸物を攻め、私は足の指で激しく犯されながらも口淫を止めない。

 

「っ……!出すぞ!」

 

「ふぅっ♥️♥️♥️んっ♥️♥️♥️出しなさいっ♥️♥️♥️いっぱい射精しなさいっ♥️♥️♥️」

 

「んむっ♥️はっ♥️出せっ♥️出せっ♥️出せ出せ出せっ♥️♥️♥️」

 

 びゅーっ!!びゅるるるるっ!!

 熱い精液が大量に噴き出し、私の顔と輝夜の脚を白く染め上げる。顔に掛かった精液を指で掬って舐めとった瞬間にガクガクと腰が震え、経験したことの無い深い絶頂に襲われた。

 

「っあ♥くぅっ♥♥あっ♥♥♥あ”っ♥♥♥あ”あ”あ”あ”あ”♥♥♥♥♥」

 

 精液を舐めた瞬間に絶頂してしまうなんて、絶対ヤバい成分が含まれてる。

 

「はぁ~♥♥私達の勝ちのようね♥」

 

「そういう勝負だったか?」

 

「そうよ♥イキ死ぬ前に貴方を射精させれば勝ちよ♥」

 

「ぐぅぅぅ♥♥♥私を無視すんなっは♥♥♥あ”っ♥♥♥」

 

 身体の中が沸騰した様にグツグツと煮え立ち、子宮から大量に愛液が溢れる。まるで身体が作り変えられていくような快楽の波が引くことなく私の頭と体を溶かしていく。

 

「薬の副作用がまだ残ってるじゃねえかオイどうすんだよコレ」

 

「……大丈夫よ♪永琳が言うには飲まなきゃ効果無いみたいだし」

 

「ふぐっ♥♥♥な、るほどなァっ♥♥♥」

 

 輝夜の脚にかかっている大量の白濁液を舐めとり、口に含んだモノを輝夜に強引に飲ませる。

 

「あっ、もこ、んむっ……ッッッ♥♥♥」

 

「ちゅっ……ん♥♥♥」

 

 輝夜は大きく震えると同時に秘部から更に熱い粘液を噴き出す。

 

「ふっッッッ♥♥♥あ”っ♥♥♥きっ♥♥♥くひゅっッ♥♥♥」

 

「はっ♥はーっ♥ざまあみろ♥一人いい気になりやがって♥」

 

 快楽に狂う輝夜を見下ろしながら、射精してヒクヒク震えてる逸物を見る。大量に射精してもなお大きくそそり立つ逸物に目が釘付けになってしまった。欲しい。欲しい。一度意識してしまったら、もうそれ以外の事が考えられない。あの大きな逸物でドロドロに溶かされた膣内を抉ってほしい。

 男の膝の上でイキ狂ってる輝夜を退かし、男の逸物に跨る。大きく、硬く、そして熱い。知る中では最も大きい逸物だった。

 

「はーっ♥はーっ♥はーっ♥」

 

「っ……そんな目で見るんじゃねえよ……本気でブチ犯したくなるだろうが!」

 

「っあ♥」

 

 足を掴まれ引き倒されたと思ったら、ビチャビチャのズボンを裂かれ、その巨大な逸物が捻じ込まれた。

 

「あ”っ♥♥♥♥♥か”っはっ”♥♥♥♥♥」

 

「っ……!熱っ……!!」

 

 一息で根本まで突き刺さり、他の内臓ごと肺を押し潰して呼吸も出来なくなった。

 ただ一突きされただけで視界が真っ白に染まってしまう程に絶頂してしまった。

 

「くぅ……妹紅の中、熱すぎだろ……火でも焚いてんのかっ」

 

「ひゅっ♥♥♥♥ひっ♥♥♥♥かはっ♥♥♥♥ひゅゥ♥♥♥♥」

 

 ジュプ♥ジュプ♥と音を立て逸物が私の中を暴れまわる度に肺の中の空気を押し出し、まともに呼吸が出来ず視界も意識も真っ白になった。それでも気を失わなかったのは、暴力的なまでの快楽が私の全身を支配していたから。

 どちゅっ♥どちゅっ♥と激しい抽挿によって駆け巡る快楽によって指先一つとて自分の意志で動かせない。ただ狂いそうになる程の刺激で脳が灼ける。全身の穴という穴から熱い液体を流しながら、意味も無く許しを乞う。

 

「ヒッ♥♥♥きっ♥♥♥ひュッ♥♥♥許してっ♥♥♥ゆるしてぇ♥♥♥」

 

「ふざけんなっ!ンなエロい目でチンコ求めやがってっ!チンコイライラすんだよ!収まるまで孕ませセックス止めねえからなっ!死んでも止めねえからなっ!」

 

 ばちゅっ♥ばちゅっ♥

 更に抽挿の勢いは激しくなり、快楽の波も更に強く押し寄せる。一度貫かれるたびに絶頂し、ブチブチと脳内でナニかが切れる音が鳴り響く。

 

「ギっ♥♥♥♥♥あ”っ♥♥♥♥♥ほぉ”ッ♥♥♥♥♥ふぎュぅ♥♥♥♥♥」

 

「くっ、このっ!熱い上にギュウギュウ締め付けやがってこのスケベマンコめ!」

 

 激しすぎる交合に壊されていく身体、ブチブチと脳内で鳴り響く音、それでもなお意志はもっともっとと快楽を、彼を求めてしまっている。

 トビかけた意識を総動員して両腕を彼の首に回し、自身の腕が千切れんばかりに力を入れて彼の頭を抱き寄せて熱い、熱いキスを交わす。

 

「んっ♥♥♥♥♥はふ♥♥♥♥♥じゅる♥♥♥♥♥んぷ♥♥♥♥♥」

 

 ただでさえ苦しい呼吸が更に苦しくなる。真っ白に染まった視界の端から黒が侵攻してくる。身体が意識と関係なく硬直していく。脳からブチブチと絶え間なく音が鳴り響く。全ての感覚が、死を導く。

 

「ん♥♥♥♥♥んぅ♥♥♥♥♥んむ♥♥♥♥♥んぷっ♥♥♥♥♥」

 

 今まで色々な死を経験してきたが、本当にイキ死ぬのは初めてだ。視界の白の殆どが黒くなり、黒の隅は赤い血の色を示した。脳からはブツッ、ブツッ、と太いナニかが引き千切れる音がする。脚は彼の腰を逃がさないと抱いて、自身の力で骨が砕ける感覚がする。

 死で意識が消える直前まで、痛みではなく快楽に犯される。快楽に犯され、頭には今日起きたことが走馬燈となって巡っていた。

 彼の逸物から灼熱の精液が噴出されると同時に、深く、深くまで逸物に抉られ、心臓まで抉られたかのような感覚と共に私は息絶えた。

 

「ぐっ……!はっ……!ありえねえ程に搾り取られるっ……」

 

 リザレクション

 

「あっはぁ……♥♥♥すげっ♥死ぬほど気持ちよかったぁ♥♥♥」

 

 脚と腕は彼の身体をがっちりと拘束したまま、大量の精液が子宮に送り込まれてもなお離さない。射精音が脳内に響く。その音と共にまた深い絶頂に襲われ、口からはよだれが、目からは血が混じった涙がダラダラと流れ出す。言葉通り脳まで犯された証拠が永遠亭の一室の畳に広がる。

 長い射精が終わっても、折れんばかりに力が込められた四肢は彼を解放しない。もっと、もっとと不死身の貪欲さで彼の精を欲しがる。

 

「なあ、もっと、もおっと深く繋がろ♥死ぬほど深く♥潰れるほど深くっ♥」

 

 ミシッ、ミシッ、と手脚の骨から音が鳴る。しかし限界以上の力を出しても男を捕まえ続ける事は出来なかった。

 バチッと電撃が流れ、半強制的に腕と脚が離された。その後全身がぼんやりとした光に包まれ、じんわりと脳内が癒される。

 

「落ち着いたかよ」

 

「…………忘れてくれ」

 

「無理だな」

 

 ああああああああああああああああ 

 恥ずかしい、恥ずかしすぎる。なんて表情(かお)してたんだ自分は。なんて事をヤッてんだ自分は!男と目を合わせる事すら恥ずかしく、両手で顔を覆って床に転がる。死ぬほど快楽を貪るなんて私のキャラじゃないだろ。死にたい。

 

「あ~……まあ、なんだ。薬を盛られた時に、俺の精液を飲んだ奴に発情期が来るってな副作用が出てな。普通の奴なら凄いエロくなるだけなんだが……」

 

「それ私が異常性癖だって言ってんのかあああああああああああ」

 

 自分でそう言って、自分で自覚した。はい、異常性癖持ちですごめんなさい。殺される程に愛されたいとかヤバい。顔どころか全身が真っ赤に染まってる感覚がする。もう無理。死ぬ。

 顔を覆って蹲っていると、ぐっと持ち上げられた。

 

「……へ?」

 

「恥ずかしがってる妹紅が可愛すぎてヤバイ」

 

「へ、あっ、お”ふぅ♥♥♥」

 

 男に抱えられ、そのままその剛直を私の秘部に挿入させられた。

 

「あ”っ♥♥まっ♥♥待てっ♥♥待ってぇ♥♥」

 

「駄目だ、お前が動くとまた死ぬまで全力だすからな」

 

「あ”ぅっ♥♥これっ♥♥だめっ♥♥力入らないぃ♥♥♥」

 

 私は今、男に両足を持って抱きかかえられながらセックスする体位、所謂駅弁体位と呼ばれる状態で繋がっている。踏ん張りが効かず、力も入らない。ただ一方的に犯され、崩れ落ちそうになる全身を辛うじて男の首に回した両腕で支える。

 

「口開けろ」

 

「う”ぅっ♥♥あー……んにゅ♥♥んっ♥♥ちゅぅ♥♥ちゅ♥♥」

 

 先程の息を止めるほどのキスとは一転して優しいまでの柔らかなキスは、身を焦がすほどの快楽ではなく溶けるような悦びに心が満ち溢れる。

 先程よりも更に深く繋がっているのに身体が壊れるような快楽ではなく、トロトロと中心から融けるような熱が生まれる。身体の中でグツグツと沸騰して何もかもを委ねてしまいたくなる。

 

「出すぞ」

 

「ふーっ♥♥♥ふーっ♥♥♥中っ♥♥♥中にぃ♥♥♥」

 

 ドロドロに溶けて入らない力を何とか総動員して膣をきゅ、きゅ、と締め付ける。精液をねだる様に舌を絡ませ、舌に吸い付く。

 

 びゅぅぅぅぅ♥びゅるるるるっ♥

 

「あ”あ”あ”あ”~~~っ♥♥♥♥♥」

 

 熱い精液が深い所に撃ち出され、その全てを飲み干そうと子宮がちうちうと蠕動する。思考が溶けるような深イキによって子宮と膣以外の力が抜け、男に支えられながら半分眠る様に意識を手離した。

 

 

 体感30分程度意識を飛ばして、起きた時には輝夜が男の上に跨って腰を振っている所だった。

 

「あ”っ♥♥♥う”ぁ”♥♥♥お”っ、お姫様のオマンコの味は如何かしら??♥♥♥♥♥おちんぽに奉仕してあげるなんて貴方だけよっ♥♥♥♥♥光栄に思いなさいっっ♥♥♥♥♥」

 

「っ!イキながら精液絞りダンスするとかとんでもない変態姫だっ……!」

 

「ひぅん♥♥♥奥ぅ♥♥♥きもちいい♥♥♥セックス凄いよぉ♥♥♥♥♥」

 

 ぱん♥ぱん♥と蕩けながらも月の姫のプライドを壊さない輝夜に、更に強烈な快楽を浴びせて崩そうとする男。

 

「ひぁぁぁっ!!♥♥♥♥♥おっぱいつねるのらめぇ♥♥♥♥♥おとなしくおちんぽだけ気持ちよくなってなさい♥♥♥♥♥」

 

「そんな勿体ない事出来るかっ……!」

 

 輝夜の小さな胸を指でコロコロ弄りながら、腰を突きあげる様に輝夜を攻め立てる男。

 輝夜は円を描く様に腰をグリグリ動かしながら、胸を攻める男を両手を掴む。

 

「あ”っ♥♥♥♥ひぃん♥♥♥♥う”ぅ”ぁ”……♥♥♥真っすぐ起きてられないよぉ♥♥♥♥♥」

 

「くっ……」

 

「んひゅぅッ?♥♥♥あ、はぁ♥♥♥♥♥もしかして、()()、きもちいい??♥♥♥♥♥」

 

「っぁ……ッ!」

 

 バランスを崩した輝夜が倒れ腕を伸ばして身体を支えたが、その時偶々男の胸に手をついた。その際指が男の乳首に触れ、思わず呻いてしまった男を見てニタリと笑みを深めた。そのまま指をくりくりと動かして男の乳首を攻める。

 

「んひゃっ♥♥♥おちんぽ凄い暴れてるぅ♥♥♥()()、好きなんだぁ♥♥♥♥♥ん、ちゅ♥れろれろ♥♥

 

 先程自分が虐められたように男の乳首を指で愛撫し、反対の乳首にキスをする。

 

「ぐぅっ……!?マジで開花し過ぎだろお前ッ……く、はっ」

 

「んふー♥♥♥いいのよ?さっきまで生娘だった女の子のおまんこにびゅぅ、びゅぅ~って射精しても♥♥♥なさけな~く射精しなさいっ♥♥♥♥♥」

 

「んっぐ……!な、めんなよコラ!」

 

「んピィ!!?♥♥♥」

 

 男の手が輝夜の尻を、輝夜の尻穴を攻める。バチバチと電気が走っているのが見え、本気で刺激している。

 

「ほぁ”ん♥♥♥ソコぉ♥♥♥やぁぁ♥♥♥汚い所やめぇ♥♥♥♥♥」

 

「一瞬でケツアクメ出来る奴が何言ってやがる!オラっ生意気娘ケツイキしろっ!」

 

 腕を回され、がっつりと上から男に抱えられた輝夜はガクガクと腰を震わせ、結合部から白く濁った愛液が噴き出す。

 

「あ”っ♥♥♥♥ひ”ぃ”っ♥♥♥待っ♥♥♥はぎゅぅ”ぅ”ぅ”♥♥♥♥♥」

 

「連続でイキまくってる癖に調子に乗るなっ!ケツだけでイケる様に調教してやるっ!」

 

 男の指先に細い棒が生み出され、そのまま輝夜の尻穴に挿入される。

 そのまま細い棒がごちゅごちゅと暴れ、中で男の逸物と挟まれて想像以上の快楽に潰されかける。

 

「お”っ♥♥♥ほぉ”ん”ん”ん”♥♥♥あ”あ”あ”あ”あ”♥♥♥ひぃ”ぃ”ぃ”♥♥♥」

 

 ひぃひぃ喘いでいる輝夜もなんとか腰を動かして男の逸物を攻めるが、男は余裕を取り戻したのか更に深く攻め続ける。

 

「う”う”う”う”う”う”♥♥♥♥♥ん”ん”ん”ん”ん”ん”♥♥♥♥♥」

 

 ずっと絶頂しっぱなしなのか男の胸に倒れ込んで、食いしばっている口から泡を吹く。精神がもう限界なのかまともな言葉も喋れなくなってしまっている。

 ……輝夜に花を持たせるのは癪だが、このまま男に良いようにさせ続けるのはもっと癪に感じたので加勢する。男の股下に這って移動し、男の尻に顔をうずめる。

 

「っ!?な、妹紅お前……何を」

 

 そして男の尻穴に舌を突き入れた。

 

「っっっ!!?」

 

 じゅる、じゅる、じゅぷ、じゅ、じゅぷぷ。

 尻穴を舐めながら男の玉を両手で揉み、射精を促す。

 

「ふぅ”ぅ”ん”ん”♥♥♥ま、負けないんだからぁ♥♥♥♥♥」

 

「っぎ、いっ」

 

 輝夜も辛うじて復活し、男の乳首への攻めを再開する。

 顔に輝夜の愛液がビシャビシャかかるが、その愛液を潤滑液として尻穴に人差し指を突っ込む。グリグリと弄りまくり、玉を舐って攻めまくる。

 

「ふぅっ♥♥♥ふぅぅぅ♥♥♥ちぅぅぅ♥♥れろれろ♥♥」

 

「っく……ぐぁっ……出るっ……!!」

 

 ぼびゅるるるるる♥びゅるるるるるる♥びゅくびゅくびゅくっ♥

 

 大量射精の音が耳に届き、あっという間に輝夜の子宮を満たして溢れだし、私の顔をベトベトにした。

 逸物が輝夜の膣から抜けても、なお射精が続いて輝夜の長い髪を白く染めていく。

 

「……こんな疲れる射精は初めてだ」

 

「ひっ♥♥♥ひっ♥♥♥にゃ、なら私の勝ちね♥♥♥」

 

「そうはならんやろ……」

 

 ごろりと床に転がる輝夜の代わりに寝ている男に再度跨り、逸物をまた挿入する。

 

「はっ、はあっ♥あっ♥やっぱ深っ……♥」

 

「あっ、妹紅ずるい……私のぉ……♥」

 

「るせっ♥順番……順番だから……♥」

 

 ゆるゆると腰を動かしていると、外が騒がしくなった。

 

「アイツは何処に居るの鈴仙!!」

 

「霊夢を若くして未亡人にする訳にはいかないんだぜ!」

 

「そんなに酷い呪いなのかい?」

 

「こっちの部屋です皆さん!」

 

「師匠じゃどうにもできない呪い、頼んだウサ!」

 

「……これなんだかヤバイ気がするわ」

 

「同感」

 

 部屋中濃厚な性臭。私達は全裸。服はベトベトで……満貫だわ。

 ダァン!!と部屋の結界と部屋の扉を破り、中に飛びこんできたのは私が兎二人に呼べと言った巫女、魔女、それと祟り神。後を追うようにその兎二人が部屋に駆け込んできた。

 その全員の視線が全裸でまぐわっていた私達に向けられる。

 私達三人は死を覚悟した。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「……なあ妹紅」

 

「何よ」

 

「蓬莱人が入院するってどんな気分?」

 

「……死ねたらリザレクション出来るのに……!」

 

「……」

 

「……ねえ」

 

「ンだよ」

 

「あんたに真の幸せを教えてあげるってのは、本気だから」

 

「……」

 

「だから勝手に死ぬような真似しないでよ。戦いの中で死ぬなんて絶対に許さない。子や孫に囲まれて、老衰で大往生して死なせてあげるんだから」

 

「……なんだそりゃ」

 

「周りが泣いて、あんたは笑って。それで死ねたらそれは一つの幸せよ。ま、私はそんな死に方した事無いけど」

 

「……ふん、笑って死ねりゃあ上等だわな。ま、俺は早々死なないけど」

 

「当たり前よ、簡単に死なせはしないわ。……ねえ」

 

「……なんだよ」

 

「結婚式って和式が良いかしら?外だと洋式が流行ってるのよね?どっちが良い?」

 

「……え、いきなりなんの話?」

 

「私とあんたの結婚式の話よ」

 

「なんで幸せを教えてあげるって話から結婚式になったんですかねぇ?」

 

「結婚式って言ったら女の子の幸せでしょう!?それを教えてあげるってんだから当然の話でしょうが!!」

 

「俺男なんですけどぉ!?」

 

「……貴方達、此処にもう一人寝てるって気が付いてる?」

 

「輝夜、居たの?」

 

「妹紅、表出なさい。流石の私もブチギレちゃったわ、トドメさしてあげる」

 

「上等よ。正妻の座は渡さないわ!」

 

「ボケてんのかお前さんは」

 

 スパァン!

 

「正妻の座と聞いて!」

 

「霊夢、帰れ」

 

「結婚式なら是非守谷神社(ウチ)で!」

 

「早苗、ゴーホーム」

 

「出来ちゃった婚ですか!?これは特ダネ!」

 

「文、失せろ」

 

「赤ちゃん出来たくらいで結婚してたらもう何回結婚してるウサ?」

 

「俺ほぼ動物みたいな妖怪達とも結婚しなきゃいかんのか?」

 

「ちょっとケモノ感強いだけウサ♪」

 

「ちょっと(90%)なんだよなぁ」

 

 気合いで全員叩き出した。俺だって偶にはぐっすり休みたい時だってある。

 

 




感想全然来ないのでモチベーションサゲサゲでした。
感想、全然来ないなぁ。

感想来ないと書く気しないよなぁ……チラッ
あ、違うんです。これは感想の督促じゃないです。ただ感想が来ないと書く気が起きないなあって事実を何の気も無く書いているだけであって、感想が来ても書く気が起きるかって言ったらそうでもないのでこれは感想を強要している訳じゃ(殴

ちなみに私は評価★より感想を気にしてます。でも一言評価★が来ると凄い嬉しいです。評価入っただけだとメインページで分からないし……


・ひめさま
 黒髪ロングのえちえち姫、処女でありながら気風が攻め向き。胸は無に近い微。無論私はそれくらいも好き。おっきいのも好き。

・もこたん
 白髪ロングのいやらし娘。死ぬほど激しいのが好き。この小説では色々経験している設定。胸は美。

・主人公
 精液が媚薬とかいよいよ人外染みてきましたね。


眠い!寝る!なんか最終回近づいてきた感じするけど寝る!
IFルートは思いついたら適当に書く!なんかいいネタ降って来ないかなぁ!


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Ifルート:風見幽香に敗北逆レ

エロガッパ「全自動で搾精する超高性能オナホが完成したよ」
ドS「面白そうね、寄越しなさい」


 

「ぐっ……あ"っ……っ!」

 

「ふふっ……♥️これで10回目ね。ずぅっとちゅぽちゅぽ搾られる気分はどうかしら?」

 

「っ……覚えてろ……」

 

「当たり前でしょ?貴方の痴態を忘れるわけないじゃない♥️」

 

 彼に打ち勝ち、気を失った所で逃げられないように厳重な封印術を使って雁字搦めに拘束してから約1日。彼は縛られながら延々吐精するだけの人形となった。

 彼の股間には河童から奪った道具が取り付けられており、ずっと動き続けて精液を絞り出す。既に辺りは彼の精液の匂いが充満し、妖精や弱小妖怪がひしめいて自慰を続けている異様な光景が広がっていた。

 だが、彼と私の周囲には決して近づけない。ある一線を超えた妖精も妖怪も等しく消したのを目の当たりにして近づいてくる勇気は奴等には無いようだ。

 

「ぐっ……ふっ、ぅ……っっっ!!」

 

「11回目……どうかしら?こんな玩具に射精するのはきもちいい?」

 

「ふ、ざけんな……!」

 

「うふふ♥やっぱり良いわねぇ……その反抗的な目、どうやって心を折ろうかしら?」

 

 河童の玩具が彼の弱点を覚えたのか、最初よりも更に早く彼を射精に導く。地面には精液が飛び散り、遠くまで飛んだ精液が偶々其処に居た妖精の顔に当たる。すると近くの妖精と妖怪が一斉にその精液を奪い合う醜い争いが繰り広げられていた。

 

「はっ、はっ、っ、ふっ、くっ……」

 

「ああ、そう言えば……そろそろお腹が空いてきたんじゃない?そうね……貴方に餓死されてもツマラナイし、木の実か何か取ってきてあげるわ」

 

「っ、な、ンのつもりだ……!」

 

「善意よ、善意♥人の善意は素直に受け取る物よ?」

 

「んならこの拘束を外せや……!」

 

「それは私の趣味だから駄目♥」

 

 そうして男を放置して木の実を取りに行く……その前に、近くに犇めいていた妖怪達に声をかける。

 

「彼に触れたらコロスから」

 

 それからその集団から離れていく。さあ、ゆっくり時間をかけて木の実を探しに行きましょう。

 

 

 

 あれから約一時間後、沢山の食料を籠に入れて彼の場所に戻って来た。するとそこにはある意味予想通りの光景が広がっていた。

 

「はっ♥はっ♥せーし♥せーし飛ばして♥」

 

「こっちに頂戴♥くっさいのいっぱい頂戴♥」

 

「っ、ぐ……っっっ!」

 

「んはぁぁ♥精液きたぁ♥熱っ♥」

 

「ずるいずるい♥私にも精子頂戴♥」

 

 縛り付けられた彼の前で複数の妖精や妖怪達が醜い求愛ダンスを踊って、彼の精液をねだる。たった一時間程度だと言うのに、彼が射精した回数はもう合計で20回以上にのぼるようだ。

 一部の妖精は、飛んだ精液を身体で受け止めて必死にしゃぶりつく。妖怪は激しい自慰行為をして、身体に掛かった精液で彼の子を孕もうと必死に自身の奥に掻き入れる。

 実に醜い光景がそこに広がっていた。

 

「邪魔よ」

 

「っ!!!」

 

 私の一言で、妖精も妖怪も跳ねるように彼から離れていった。残ったのは雁字搦めに縛られた彼だけ。

 

「ふふふ♥あんなに沢山の女の子に寄られて楽しかった?みっともなく精液絞られちゃった?」

 

「ぐっ、ふっ、ふぅっ、ふっ」

 

 彼の呼吸が荒くなり、身体に限界が近い事を指し示す。それでも玩具は止まらない。彼から精液を無慈悲に絞り出す。

 

「お腹すいたでしょ?一杯食べさせてあげるわ」

 

 彼の目の前で木の実を一つ取り、それを私の口で噛み砕いて彼に口移しをする。ゆっくり、ねっとり、何度も何度も舌を交わらせる。

 

「貴方は私のモノだから、勝手に他の女と子作りしちゃ駄目よ」

 

 もう一度木の実を取り、先程行ったようにねっとりと口移しを行う。じゅる、じゅる、じゅる。

 

「く、あ、あ、あ、」

 

 びゅぅぅぅ♥びゅるるるる♥

 

 一つ前の射精より濃い精液がどぴゅどぴゅ放たれ、ぐちゃぐちゃの地面を更に白く染める。

 

「……こういうのが好きなの?」

 

「くっ、ふっ、ふっ、違、ぅ……」

 

「説得力無いわねぇ。私は貴方とこうしてねっとりキスするのは好きよ♥」

 

 ビクッと彼の逸物が跳ねる。実に分かり易い。

 

「好きよ♥好き♥好き♥大好き♥」

 

 彼の耳元で愛を囁き続ける。彼の逸物を玩具だけでなく、私の手で虐める。彼の亀頭に五指を這わせ、ぬるぬると刺激する。

 

「愛してるわ♥貴方の強くてカッコいい所♥弱くて情けない所♥全部私に見せて♥私だけのモノになって♥」

 

 彼の耳を舐める様に囁きながらちゅくちゅくと亀頭を攻める。

 あっという間に彼は果て、精液を大量に出して私の手をべたべたにした。

 

「……♥」

 

 その大量射精が切っ掛けとなったのか彼は気絶し、地面に崩れ落ちた。

 ぐちゅぐちゅと未だに動いている玩具を破壊し、彼を担ぎ上げて帰路につく。後に残された妖精や妖怪が乾き始めた地面の精液を奪い合っているが、知った事ではない。

 

 泣く程に悦んだ彼の涙を舐めとりながら、次はどうやって彼と遊ぼうか……と、考えながら帰宅した。まあ、焦ることは無い。

 

 

 私と彼の時間は、まだまだ始まったばかりなのだから。

 

 

 





感想がいっぱい来たので怒涛の更新作業。ただしIFルートだがなぁ!!
IFルートが敗北逆レだけみたいな感じになってるけど他にも案があるからね。ただ本編主人公がつよつよ種付けオジサンムーブかましてるから敗北=逆レに繋がり易いだけで。

いやー怖いわーなんだかんだで純愛しか書けない文才が怖いわー


・風見幽香
 すごくエッチで強い妖怪だよ!好きな人と外でイチャイチャするのが大好きなんだって!乙女チックだね!

・主人公
 痛みには負けないが愛に負けちゃうラスボスみたいな耐性してんなお前。

 ゆうかりんに耳元で愛を囁かれたいなー俺もなー
  (なお身体が無事である事は保証されない)


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人里で添え膳

お久しぶりです。
感想と一言コメントが久々に来てたので思わず更新しました。
カリ首が云々言ってたのがもう二か月前ってマ?


「紅魔館って所に吸血鬼殺しを追い詰めた吸血鬼が住んでいるらしいニャ」

 

「彼奴の血は吸血鬼にとって天の雫に等しいわな。どうにかして協力を取り付けられないかだわな」

 

「だが所詮田舎に逃げ隠れた雑魚吸血鬼だみ?そんなんで役に立つのかみ?」

 

「幻想郷のパワーバランスの一角を担っている存在のようです。十分な力を持っているでしょう」

 

「はっ、こんな片田舎のパワーバランスとか気にしてられるかだわいの」

 

「使える物は何でも使う。それが我等の根幹」

 

「にゃん。吸血鬼殺しが幻想郷に来てからというもの、メキメキ力を伸ばしてるニャ。手が付けられなくなる前に確実に仕留めるニャ」

 

「……では、そのように。各自、足を引っ張らない程度に目的へ邁進しましょう。では、解散」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 人里って所は程よく人情味が有り、俺みたいな人間にとって兎角過ごしやすい場所だ。ただしそれは誰にでもすごしやすい場所であると言う意味ではない。

 後ろ暗い過去を持つ奴。何の仕事もしない奴。あとはそう、『人間味の無い奴』なんかは人里ではすごし辛いだろう。外来人はともかく、外の()()()()()()は人里ではロクに生きていけなさそうだ。

 

「よう兄ちゃん!今日もうどん食ってくか!?」

 

「おー……そうするか」

 

 大通りを歩いていた俺に声を掛けてきたのはうどん屋台の店主。少し前に里の外で彼の娘さんを救けた縁から、格安でうどんを食わせてくれる気の良いおっちゃんだ。

 

「オレの娘を救けてくれた礼だ!兄ちゃんは好きなだけタダで食わせてやる!」

 

「いやそう言う訳には」

 

 と言った問答を経て、結果今のように格安でうどんを作ってくれる事になった。『金は要らない』とは言うが流石にそう言う訳にはいかない。

 まあ、元々うどんは嫌いじゃない。蕎麦よりかうどん派だし。有り難く食う。

 うどん屋台できつねうどんを食べてたら隣に子供が座った。

 

「おっちゃん!あたいに冷たいうどんちょーだい!」

 

「なんだチルノテメェ!金持ってんだろうな!?」

 

「無い!おごって!」

 

 俺の顔を見ながら堂々と奢ってと言うヤツの名前はチルノ。氷の妖精だ。バカな癖に妙な事ばかり覚えているヤツである。

 そして何を隠そう、俺はコイツが非常に苦手なのである。そのくせコイツに好かれている。謎だ。

 

「……奢ってやるから離れろ」

 

「へへっ、ありがと!」

 

 さて、妖精。妖精というのは自然の化身らしく、『自然』がほとんどない外の世界ではまずお目に掛かれない物だ。俺も幻想郷に来て初めて見た妖精には驚いたものだ。まあ、それはともかく。

 何で俺がチルノを苦手としているかといえば、単純な話。俺は寒いのが苦手なだけである。

 暑い、熱いなら平気だ。それこそ炎の中で眠れるくらいには。だが寒いのは駄目だ。無論人並みには耐性があるとはいえ、苦手な物は苦手だ。つまり氷の化身であるチルノも苦手なのだ。

 というか妖精ってモノ食うんだ。

 

「おら、冷たいうどんだコノヤロー!ったく、冬真っ盛りに態々こんなモン頼みやがって!」

 

「好きだからいーじゃん!」

 

 そしてちゅるちゅる冷たいうどんを啜るチルノ。よっぽど腹が減ってたのかあっという間に食べきった。

 

「ごちそーさま!美味しかった!」

 

「うるせーバカやろう!次はちゃんと自分の金で食いやがれコノヤロー!」

 

 なんというか、お互い根は良い人(?)なんだよなぁ。俺もきつねうどんをダシまで呑み干して勘定を払う。

 

「また来るぜおっちゃん」

 

「おう!悪いなチルノのアホの分まで」

 

「良いさ。元々そんな高いものでもないし」

 

「ねーねー!一緒にあそぼ!」

 

 俺の首もとにチルノが飛びついてきた。離れろ冷やっこい……。

 

「そう言えば、今日はお前一人なのか?いつも一緒に居る奴等はどうした」

 

「リグルはなんか冬眠の準備してるんだって。ダイちゃんはよーせーかい?ってのに行ってる」

 

 それで何で人里に来るのか。ぎゅうぎゅうと首に抱き着くチルノを引きはがしながら里を歩いていると、物影でコソコソしている知った顔を見つけた。

 

「何やってんだ烏天狗」

 

「ほひゅっ!?お、驚かさないでくださいよっ!……って、貴方でしたか」

 

 キャスケット帽をかぶったヤツの名前は射命丸文。俺が幻想郷に来たばかりの頃に付き纏われて、思わず手を出してしまった相手だ。それ以降あまり近寄られなくなった。

 烏天狗ってのは特に上下関係に厳しいらしい。まあ、それはともかくだ。

 

「で、何やってんだ?」

 

「しー……アレをご覧ください」

 

 アレ。

 視線を向けると、人里の守護者である上白沢慧音が雑貨屋の店頭で何かを物色していた。

 

「さっきから男物の小物を物色しているんですよ。あの教師に遂に男が出来たと思いまして……!」

 

「それで覗きをしてると」

 

「取材していると言ってくれませんか?」

 

 じとっとした目で睨まれるが別に怖くも何ともない。まあ射命丸の邪魔をするのも悪いからこの場を離れるとしよう。

 

「それで何故ワーハクタクの方にむかうんですかねぇ!?」

 

「いや、俺はお前を見なかった事にして移動するだけなんだが」

 

 首根っこを引っ掴まれ物影に引っ張りこまれる。首に抱き着いてたチルノが勢い余って振り落とされた。そして物影に連れ込んでナニをする気だ。

 

「ぶぇっ!?別にナニもしませんよ!」

 

「ちょっと射命丸!痛いじゃない!!」

 

「ああすみませんチルノさん、それもこのアホが……」

 

「……何をやっているんだ君達は」

 

 あ。とマヌケな顔を晒す射命丸と、射命丸の頭を掴む慧音。そりゃあれだけ騒げば余程鈍感でなければ気が付く。

 

「あ、えと、その~……」

 

()()盗み撮りか?」

 

「けーねに男が出来たんじゃないかだって」

 

「ちょっ!?チルノさん何言ってるんですかねーアハハ!!」

 

 それを聞いてか、慧音が無言で頭を振りかぶって射命丸の頭に落した。いわゆる頭突きだ。とんでもない音が路地に鳴り響き、射命丸の空っぽの頭を粉砕した。かわいそう。

 

「全く、余計なお世話だ!」

 

「で?結局何してたんだ慧音。コイツが言うには男物の小物を漁ってたらしいけど」

 

「あ、いや……その、なんだ。……キミが好きそうな小物があってな……つい買ってしまった」

 

「……俺?」

 

 そう言って渡されるとんぼ玉のストラップ……というより根付か。ガラス玉の中に燃え盛る炎のような文様が浮かんであり、好きか嫌いかで言えばめっちゃ好き。

 

「くれるのか?ありがとう」

 

「い、いや、良いんだ。この前の礼だ」

 

「気にしなくていいのに」

 

 慧音には元々、俺が幻想郷に来たばかりの頃に二週間ほど泊めてもらった恩があるから本当に気にしなくてもいいのに。その二週間で色々あったが……。

 と、気付けばチルノが『私、不満です!』と言った顔で俺を睨んでいる。

 

「……なんだよ」

 

「別に!アタイ帰る!」

 

「あっ、おいチルノ!里の中で飛ぶんじゃない!」

 

 ぴゅーっとチルノが空を飛んで何処かに行った。……子供の機嫌は分からん。

 

「……どいつもこいつも……ハァ……すまん、最近ちょっとな」

 

「気にすんな。教師やってるとまあ色々あるだろう」

 

「そう言う訳じゃないんだが……まあいいか。……なあ、その、今日、泊まっていかないか?」

 

「良いのか?じゃあお言葉に甘えて」

 

「い、いつもスマンな……」

 

「だから気にすんなってのに。俺も役得なんだから」

 

「う、む……」

 

 そうして俺は慧音と共に多くの食材を買って、慧音の家に向かった。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 彼に初めて出会った時。あの子は森の中で、数多もの獣妖怪の返り血を浴びていた。後ろに小さな子供を連れて。

 

「けーねせんせぇ!!」

 

「……アンタがこの子の保護者か?」

 

「君は……」

 

 聞けば彼は外来人でありながら魔法を使い、偶々妖怪に追いかけられていた子供を救けて人里に連れていく最中だったとの事だ。

 すぐさま私は彼と子供を人里に案内しようとしたが、異常な数の獣妖怪に襲われ続けた。だが、彼はそんな数を物ともせずにあっという間に妖怪達を殲滅していった。

 

「……この辺はこんなのばかりだなぁ。いつも()()なのか?」

 

「い、いや……普段はもっと静かな森なんだが……君は外の世界の退魔師か何かか?」

 

「退魔師?いや、普通に魔法使いだけど……」

 

 聞けば、幻想郷には何らかのトラブルで迷い込んだとの事。良ければ外の世界へ戻る手伝いをしようか?と提案しても、折角だし一通り旅してから考えると暢気な答え。確かに幻想郷を歩き回るには十分な実力を持っているようだが……。

 

「すぐに帰りたいとは思わないのか?」

 

「いや別に。どうせ向こうの世界でもやる事は変わんないし」

 

 まだ若いのに達観しているものだなぁ。

 そうして何度も獣妖怪の襲撃を受けたが、子供は無事に里に戻ることができた。

 

「ありがとう、お陰でこの子が無事に家に帰れそうだ。……なんで里の外に出たんだこの馬鹿者!」

 

「えーん、だってぇ~」

 

「全く、後で説教だ。……ゴホン。さて、君には礼をしなければならんな。今日泊まるあてはないだろう?良ければうちに泊まっていけ」

 

「けーねせんせーが男つれこんでる!」

 

「下らん事を言うな!」

 

 子供に制裁の頭突きを食らわす。

 

「……なんというか、豪快だな。上白沢せんせー」

 

 そうして彼と共に子供を家に帰す……道中に騒ぎが起きた。

 

「物盗りだ!!」

 

「きゃぁ!誰か捕まえてっ!!!」

 

 私達の目の前で物盗りが行われた。すぐさま捕まえるために飛び出す……直前に犯人の男の両足に鎖が巻き付き、丁度私達の目の前で倒れた。

 

「人里ってのはいつもこんな治安なのか?」

 

「いや、そんなことはないんだが……今のは君が?」

 

「あー、まあ()()()じゃ茶飯事だからな」

 

「外の世界は凄いところだな……」

 

 そしてうつ伏せで倒れもがいている下手人の顔を改めるためにひっくり返せば、見たことのない顔だった。

 

「なっ!?テメぇ吸血鬼殺し!!なんでこんなところに!!」

 

「……君の知り合いか?」

 

「知らん。だけどこいつは『同郷』のようだ。俺は()()()では結構顔が知られてたからなぁ……、こいつが一方的に知ってるだけだろ」

 

「クソッ!解きやがれ!」

 

「慧音先生!すみません、助かりました!」

 

「あぁ、いや私は何もしていないんだがな」

 

「こいつ外来人か?人様の物を盗もうなんざふてぇ野郎だ!オイ、連れてくぞ!」

 

「あ、ちょっと待った。土・闇合成魔法:解魔の縄」

 

 彼が呪文を唱えると、彼の掌から黒い縄が飛び出して物盗りの男を更に縛り上げた。

 

「あ、アンタは……?」

 

「俺もコイツと同郷でな。こんな『魔法』を使って逃げるかもしれないから、その黒い縄は外さないように」

 

「盗人の仲間か!?」

 

「待て!彼は子供を救けてくれたんだ!悪い人じゃない!」

 

「……慧音先生がそういうのなら……」

 

 そうして、警ら隊の男が物盗りを引き連れていった。

 

「へぇ、随分慕われてるんですね」

 

「けーねせんせーはスゴいんだ!」

 

「止めんか。……その、もうすぐこの子の家だからな」

 

 そしてようやく無事に子供を家に連れていき、空を見上げれば日がかなり傾いていた。もうすぐにでも夜になるだろう。

 彼を連れ、自分の家に戻った。

 

「……一人暮らしなのか?」

 

「うん?まあな」

 

「一人暮らしの女性が男を家に招くなんて……」

 

「なっ、別に()()()()目的で家に招いた訳じゃないぞ!これはただの礼であって……それにこう見えても私は大の男よりも力強いからな!もし夜這いにでも来たら張り倒すからな!」

 

「ふーん?じゃあ俺がいきなりこうして慧音を押し倒しても大丈夫だって?」

 

 そう言って彼は言葉通り私を押し倒し、私の両腕を抑えつける。差し込む夕日が彼の端正な顔を照らす。

 

「……へ?」

 

 ぐっ……と力を両腕に込めても、びくともしない。ゆっくり、ゆっくり、彼の顔が私に近づいてくる。もはや彼の眼に映る自分が確認出来るほどに近づかれ、『彼がこんな事をするなんて』や、『男らしい体付きだな』や、『廊下じゃなくてせめて寝室で』といった事が頭の中をぐるぐる回る。顔に熱が集まり出してきた頃に彼の顔が離れていき、両腕も解放された。

 

「なーんちゃって。そんないきなりレイプする程女に餓えてないよ。でも俺が()()()()()()()()()油断してると……食べられちゃうかもよ?」

 

 ニヤッと気障に笑う男。その時になってようやく私の頭が再起動し、今度は怒りが頭を支配した。

 

「そ……こに直れっ!!!!」

 

 ズゴン!!

 硬く重い物同士がぶつかり合う音が人里内に響いた。

 ただ一つ言える事は、石頭とよく呼ばれる私の頭よりも固い頭があったと言う事だ。

 

 

 そうして、私と彼との奇妙な生活が始まった。

 私が寺子屋で生徒達に授業を教えている中、彼は里内を歩き回っているようだった。初めこそ『外来人』という事で敬遠されがちだったが、彼の人柄が良かったのかすぐに里に馴染んでいった。

 

「よお魔法使いの兄ちゃん!今日もちょっくら木材採って来てくれ!」

 

「まほーつかいのにーちゃん!あそぼー!」

 

「あらお兄さん、今日はウチによっていきません?」

 

 ……まあ何人かは不純な意図で彼に声を掛けているようだったが。それはともかく、彼は外来人でありながらあっという間に里の者達と仲良くなっていた。

 

 そして、彼が家に泊まって一週間。彼の事を理解してきた。彼は何というか……精力が旺盛だ。たった一週間で、何人もの遊女を()()()()()。『潰した』というのは何も再起不能にしたという意味ではなく……いや、ある意味再起不能にしたとでもいうか。要するに遊女でありながら彼の()()にしたという事だ。既に彼が魔法で立てた家に住まわせているらしい。

 

「全く、普通では考えられんな……。いや、別に君が()()()()()()を利用するのは構わない。私も女とはいえ、まあまあ長く生きているから男の欲には理解があると思っている。……だが、『このままじゃ遊女全員が外来人に()()()()()から何とかしてくれ』と泣きつかれる身にもなってくれないか?」

 

「いやー俺もビックリ。なんか幻想郷に来てから精力絶倫と言うか。無限にイケる気がするんだよね」

 

「そういう生々しい話は止めてくれ……」

 

 頭が痛くなってきた。何が問題かというと、彼自身に悪気があってやっている訳ではないという事。()()()()遊女をキチンとした手順で買い取っている事。代金は払っているのだから問題は無いと言えば無いのだ。とはいえ限度はある……。

 

「じゃあこうしよう。俺が慧音と寝る」

 

「何故そうなる……!」

 

「慧音も男日照りが続いてるんだって?里の御長寿会で聞いたぞ」

 

「余計なお世話だ!!」

 

「一度火が付いたら、男が枯れるまで攻め続けるとか」

 

「何で知ってるんだ!!?」

 

 確かに昔は()()()()()もあったが……

 

「俺は性欲解消する。慧音は久々に男を味わう。WINWINの関係じゃないか」

 

「そうはならんだろう……」

 

 だが、しばらく男日照りが続いているのも事実。私も女だ。()()()()()だって有る。

 ……まあ、仕方ない。彼の有り余る性欲を解消することで問題解決に向かうのなら。と、ある種の軽い気持ちで彼と()()

 

 その夜は、一生忘れられない夜となった。

 

 

 それから毎晩毎晩、彼に徹底的な上下関係を教え込まれ、ただただ彼の成すがままに全身を犯され尽した。時には昼間、授業が終わってすぐの教室の隣の部屋で激しい性交をしたし、夜中とはいえ外でも性交をした。満月の日ですら、彼にスタミナで敵わずに徹底的に犯された。

 

 そして、彼が幻想郷のあちこちに旅をするようになっても、時折フラリと里に戻ってきては私に種付けをする。それは今日も例外ではなかった。

 彼を自宅に連れ込んだら、スグに彼のズボンを引き下ろしてイチモツをしゃぶる。半勃ちだったイチモツは、口の中でガチガチに硬く、大きく成長した。

 

「そんなに待てなかったか?」

 

「んっ♥んむっ♥ぷぁ、はぁっ♥早くぅ……チンポ、私のメス穴に入れてくださいっ♥」

 

 彼のイチモツを口に入れた時から受け入れ態勢が整っていた女陰を広げ、彼にオネダリをする。

 

「すっかり俺好みのエロい女になったな慧音」

 

「あっ♥あはぁ♥♥♥」

 

 彼の大きなイチモツが一息で最奥まで突き入れられる。全身が悦んでしまっているのがわかる。そのまま玄関で激しい性交を行う。一突き一突きが私の弱い所を貫き、一切の抵抗を許さない。

 

「中に射精してっ♥奥っ♥一番奥にぃ♥」

 

「っ!おらっ、最奥で射精すぞ!子宮で飲み干せ!」

 

 そして熱い精液が直接子宮に注がれる。人間とか妖怪とか、一切関係なくメスを孕ませる事だけに特化した精液。射精しながらもゴリゴリと子宮口を抉じ開け、更に激しい快楽を叩きつける。

 長い射精が収まれば、未だに硬さを保っているイチモツで貫かれたまま彼に持ちあげられて寝室に運ばれる。その間も遠慮なくガンガン奥まで犯され続け、口からは快楽の吐息しか漏れ出ない。

 魔法で布団がサッと敷かれた後、その上にうつ伏せで転がされる。

 

「さて、ちょっと本気でヤるか」

 

「はぇ……?ほ”ぉ”ぉ”っっっ!!!?♥♥♥♥」

 

 後ろからのしかかる様に挿入され、膣内からガチガチの剛直によって押された内臓が布団によって抑えつけられる。頭の中がチカチカと明滅し、呼吸すらままならない。

 そのままゴリュゴリュとイチモツで内臓をすり潰される感覚によって天上を更に超える絶頂に導かれ続ける。全身の筋肉が切れたかのように一切動かなくなり、それでもなお与えられる快楽によって口からは泡と無意味な喘ぎ声しか出てこなくなった。

 

「お”お”お”っ♥♥♥ふき”ゅ”ぅ”ぅ”♥♥♥」

 

「くっ、イキ死にかけマンコキツっ……おら、また射精するぞ!」

 

 そして熱い精液が追加で大量に注がれる。内臓からじくじく火傷するかのような快楽が焼き切れている脳に更に重大なダメージを与える。膣内のヒダ一つ一つに精液を塗り込まれるようにじっとり擦られ、精液を出し切られた。

 

「っふぅー……」

 

 こぷっ、ぷぷっ、と女陰から精液と共に音が漏れ出る。身体に力が入らないが、何とか首だけで後ろを向くと視界の端に未だにいきり立ったイチモツが見えた。

 

「ふっ……♥ふっ……♥」

 

 ゆっくり左手を尻に回し、自身の尻穴を彼に見える様に尻肉を広げる。

 

「……はっ、今度はケツマンコを犯されたいってか?」

 

 彼の言葉で、私の耳まで紅く染まるのがわかる。そうだ、なんてはしたないオネダリをしているのか。尻穴はただの排泄用だというのに、そんな所まで彼に犯されたいのか。

 脚に力を入れ、尻を彼に突き出すように持ち上げる。

 

「私のケツ穴もズポズポ犯してください……♥」

 

「ケツアクメキメろオラぁ!」

 

 彼の巨大なイチモツに塗りたくられた精液と愛液の混合液によって、一切の抵抗を許さず私の尻穴に挿入された。異物感と激しい快楽が電撃となって脳に直撃する。

 

「お”ぅ”っ♥♥♥ふ”く”ぅ”♥♥♥」

 

「しっかり気合い入れて締め付けろオラ!」

 

 パンッ!パンッ!と激しく尻肉と腰が当たる音が響く。更に時折私の尻が強く叩かれる。

 

「ひっ”♥♥♥はぁ”ん♥♥♥」

 

「腹タプタプになるまでケツでザーメン飲ませてやる!感謝しろオラ!」

 

「あ”っ♥♥♥あ”りがとうございま”すっ♥♥♥♥♥」

 

 肩を掴まれての強引な吐精。大量に吐き出された精液が身体の中を上っていくのが理解させられる。そしてそのまま何度も何度も抜かずに腰を打ち付けられた。

 

 そうして全身が汗や涙、零れ出た精液や愛液、腸液等でぐちょぐちょにされたところで完全に気を失った。

 

 

 そして朝。目が覚めれば、本当に妊娠したかのように腹がぽっこりと膨れ上がっていた。彼と()()次の日はいつも()()なっている。本当に精力絶倫と言うか……はぁ……♥

 起き上がるにも子供一人を抱えるような腹の重さに、朝一から一苦労だ。そしてこの腹に溜まった精液を全て()()()()にはそれこそ昼までかかってしまうだろう。こんな腹のままで授業を行う訳にはいかないので、昨日の痴態の『歴史を食べる』。私から見た自分の腹の大きさは変わらないが、他から見たらいつも通りに見えるだろう。

 未だに寝ている彼を起こさないように朝食の準備をする。私の分は……まあ、ほんの僅かで良い。なんせ昨日大量に腹に注がれたからな。

 そして朝食が出来たと同じくらいに彼が起きて来た。

 

「おはよう慧音」

 

「ああ、おはよう。朝食は出来てるぞ」

 

「……んー、その前に」

 

「?」

 

 なんだ?と声を上げる前に彼に唇を奪われる。

 そしてその勢いのままに彼のイチモツが私の膣内に挿入された。

 

「んふっ!!?♥♥♥」

 

 じゅ、じゅる、ちゅ、じゅるる、ちゅぷ

 唇を奪われたまま、彼に膣内を蹂躙されて激しく乱暴に犯される。ねっとりと口内も蹂躙され、頭が一瞬で溶け落ちた。

 ぱちゅっ、ぶちゅっ、ずちゅっ

 グリグリと強引に子宮口を抉じ開けて、朝一精液を大量に注がれた。

 

「お”っ♥お”お”ぉ”ぉ”~♥♥♥」

 

 そしてそのまま再度腰を振られ、彼にしがみつく事しか出来ないまま良いように使われた。

 

「慧音、俺の子を孕め。いや、孕ます。絶対孕ます!」

 

 既に脳内は溶けて何も考えられない状態なのに、更に大きなイチモツで突かれながらそんな事を囁かれたら。半獣人がどうとか考えられないじゃないか……。

 

「産むぅ♥♥♥元気な子供いっぱい産むからぁ♥♥♥何回もぉ♥♥♥何回も孕ませてください♥♥♥♥♥」

 

「っ!出すぞっ!孕め慧音!俺の子孕めっ!!」

 

 彼の手が服の上から子宮部に当てられ、ビリビリチクチクとした電撃が流される。そしてその感覚で更なる絶頂を迎えたと同時に熱湯のように熱い精液が大量に注がれた。

 

 ぷちゅっ♥

 

「ぁ……(受精したっ♥いま受精した感覚したっ♥)」

 

 そして今までにない程に幸せな感覚に包まれ、また意識を手離した。

 

 

 再び意識を取り戻した時既に太陽は頂点近くまで昇っており、急いで授業の仕度をして教室に飛びこんだが、そこには毅然と授業をしていた彼の姿と比較的真面目に授業を受けていた子供たちの姿が見えた。

 

「けーねせんせーよりおもしろいじゅぎょーだったー!」

 

「おう、そういう事は思っても言っちゃダメな事だぞ」

 

 私はショックで膝から崩れ落ちた。

 もう君がずっと授業するといい……くすん。

 

「あー、けーねせんせー泣かせたー」

 

「お前の言葉のせいだろうが!あーもー泣くな慧音。よーしよし」

 

 そして抱っこされて赤ん坊のようにあやされた。更に違う意味で泣きそう。

 




先生の調教シーンはカットじゃらぁッしゃ!!!
主人公の身長は大体170~180前後、けーね先生は150~160前後をイメージしてます。先生ちっちゃいって?それが良いんじゃないか!身長差カップルぅぅぅぅぁぁぁあぁああああ!!!

寒さに人並みに耐性がある→南極の海に全裸で飛びこんでもノーダメージだが寒いものは寒い程度の耐性。

外では真面目系で通ってますが、一旦家に入るとズブズブのドスケベになる子って良いですよね。私そういうの大好きです。
外でビッチ系で通ってますが、家の中でもめっちゃエロい子も好きです。要するにエロい子が好きです。


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霧の湖で殺し合い

そろそろ物語も終盤。


 霧の湖と言えば妖精達の住処というイメージがある。現に氷の妖精チルノはここをナワバリにしているらしい。そしてクソ忌々しい吸血鬼も近くに住んでいるとか。

 本来ならそんな場所には近寄りたくも無いのだが、そうこう言っている場合ではなくなった。

 

「……真っ赤だな」

 

「みたいだぜ」

 

 今俺は偶々合流した魔法少女霧雨魔理沙と共に霧の湖の畔に立っている。そして目の前の湖は真っ赤に染まっていた。

 

「なんだなんだ?今度は霧じゃなくて水を真っ赤にする異変か?」

 

「前にも似たような事が有ったのか?」

 

「ああ、紅霧異変って言ってな」

 

 そう言えば聞いた事あるような気がする。あの吸血鬼が大暴れした異変だとか何とか。……で、今度は湖を紅くするって?

 

「ま、なんにせよ怪しい奴はぶっ飛ばず。異変解決のセオリーだぜ」

 

「そう言って俺に武器を向けるのは止めろ」

 

「犯人は現場に戻るって言うだろ?」

 

「ただの野次馬の可能性も有るだろうが」

 

「怪しい奴は皆そう言うんだぜ!」

 

「普通の人も皆そう言うからな」

 

 あー、弾幕ごっこは苦手なんだがなぁ。と思った次の瞬間、霧の中から誰かが飛び出して、魔理沙に向かって一直線に飛んで行った。

 

「へっ?」

 

 ガキィン!!!

 鋼鉄と鋼鉄がぶつかり合う音が響く。硬化した俺の腕と一振りの刀が、魔理沙の首の前で交差していた。

 

「……いきなり横入りしてきて、しかも殺しに来るなんて随分穏やかじゃねえな?」

 

「……吸血鬼殺し」

 

 刀の持ち主は、人里で何度か見かけたことのある白髪の少女だった。

 

「なっ、妖夢!いきなり何するんだ!」

 

「……」

 

 魔理沙への返答は刀で返し、魔理沙の衣服の一部を裂いた。

 

「ちっ!前みたいに問答無用ってか!?いいぜ、ならお前からやっつけてやる!!」

 

「待て魔理沙、コイツなんか様子がおかしい!」

 

 妖夢と呼ばれた少女から歪な魔力を感じる。その魔力は両手首と両足首、そして頭から感じ取れた。

 

「……吸血鬼殺し……殺す……殺す……」

 

 ブツブツと小さい声で何かを言い、二刀で俺に斬りかかってくる。

 硬化した腕で受け止める……事が出来ず、左腕が斬り飛ばされた。

 

「なっ!!?妖夢テメェ!!」

 

「落ち着け魔理沙」

 

 斬り飛ばされた腕を魔法で操り、妖夢と呼ばれた少女の腹を殴り跳ばす。まるで枯れ葉のように飛ばされる少女を後目に、斬り飛ばされた腕を繋げ治す。

 

「お、お前腕大丈夫なのか?」

 

「自己回復魔法はそこそこ得意でな。それよかアイツは?」

 

「アイツは魂魄妖夢、半人半霊の二刀流剣士だ。普段は冥界って所に住んでるんだが……」

 

「剣の腕はかなり高いな……俺の腕が斬られるとは思わなかった。魔理沙、探知魔法は使えるか?」

 

「あん?まあ一応使えるけど……」

 

「俺の勘が正しければ、アイツは『人形遣い』に操られている。ソイツを探してほしい」

 

「『人形遣い』?アリスの事か?」

 

「アリス?いや、多分ソイツじゃない。『人形遣い』は男だ。ああやって適当な人間を操る魔法が得意なクソ野郎だ」

 

「……成程、つまり最近騒がしい『外来人』だな?」

 

「まあそうだ。俺より機動力の高い魔理沙が探すのに適してる。……たぶんだが、アイツ以外にも操られてる奴が居るだろう。気を付けろよ」

 

「ハッ、私は天下の魔理沙様だぜ?そっちこそ気を付けろよ!」

 

 そうして箒に跨り、空へ飛ぶ魔理沙。後を追うように妖夢が駆けるが、魔法でその脚を止める。

 

「お前の相手はコッチだ、半人半霊」

 

「……吸血鬼殺し……」

 

 ヒュッと風を切る音が聞こえたと思ったら、すぐ目の前に妖夢が刀を大上段に構え、振り下ろしてきた。

 

「地属性魔法:金剛鉄の鎧」

 

 ガィィンッ!

 魔法で出来た鎧が刀を弾いた。

 

「折れるかと思ったら、随分丈夫な刀だなぁオイ」

 

「……」

 

 ダイヤモンド並に硬く、竹のようにしなやかな魔法の鎧に深い傷が残っている。仮に同じ場所を斬られたら鎧ごと身体が断ち切られるな……。

 そのまま何度も神速の斬撃が放たれるがその全てを紙一重で躱し続け、その攻撃の合間に魔法で出来た針を地面から飛ばす。身体に刺さって動きが鈍ればこっちのモノ……。と思ったが、飛ばした針全てを斬り落とされた。明らかに死角から飛んで来た針にも対応するとはかなり強いな。

 ……なら、水ならどうだ?

 

「水属性魔法:ウォーターバイツ」

 

 霧の湖の水が大量に押し寄せ、俺ごと妖夢を湖に引きずり込む。

 湖の中は荒れ狂う水流によって上下左右が滅茶苦茶になっている。俺は自身の魔法によって水流の影響は受けず、暴れる水流内に居る妖夢を見続ける。

 すると妖夢は長い刀から短い刀に持ち替え、水流を()()()()()

 

「嘘だろ?」

 

 水の中でも、空中を駆けるような速さで俺に向かって斬りかかってくる。殺意高いな。

 

「水・光合成魔法:水龍の加護」

 

 水龍の加護によって、水の中でも高速で移動できるようになった。妖夢が刀を振り下ろす速度よりも速く鳩尾を掌底で撃ち、妖夢の肺に入っている空気を押し出す。

 

「ガボッ……!」

 

 大量の空気が妖夢の口から吐き出されても、水面に向かわずそのまま俺に向かって斬りかかる。ダメージを受けても水中の中でも尚神速を保つのは凄いが、それでも当たらなければ意味がない。斬る瞬間に刀の間合いの僅か外側に移動し、刀が振り下ろされたと同時に蹴りを妖夢の胸部に入れる。

 

「ゴボッ」

 

 物理的に肺を押され、残っていた空気ほぼ全てが吐き出された。それでも呼吸の為に水面に上がるでもなく俺に向かって来る。既に見える顔色は真っ青だ。だというのに目には殺意の色しか見えない。

 

「水・風合成魔法:水竜巻」

 

 高速で妖夢の周りを回り、物理的に渦を作り上げる。

 妖夢は短い方の刀で渦を斬るが、渦は掻き消されずに妖夢を拘束した。どうやら魔法由来の水流は斬れるが、物理的なモノは斬れないようだ。

 水上では竜巻が起こり、霧の湖の水が引っ張り上げられる。その流れに引かれて妖夢も水上の竜巻に巻き上げられた。

 それを水中で確認してから俺も同じように竜巻の中に飛びこむ。

 

「ガホッ!ゴホッ!」

 

 つむじ風に巻き上げられる枯れ葉のように飛ばされている妖夢はまともに刀を振れない程度に呼吸が乱されている。『人形遣い』によって操られてる者は()()()()こき使われる。解呪するにも一苦労だ。竜巻の中で妖夢に近づき、両手首、両足首、そして頭にあった魔力塊を順に破壊して、竜巻を解除する。

 俺も妖夢も全身が紅い水に染まっているが、まあ仕方なかった事としよう。

 

「う……ぐっ……ゴホッ、ここは……?」

 

 正気に戻ったのか、妖夢が起き上がって俺を見る。

 

「あ……貴方は……っ、どうやら、助けてもらったようですね……」

 

「大丈夫か?操られていた時の事は覚えているか?」

 

「はい……貴方を殺すように何度も暗示を……そうだ!他の人は!?」

 

「ん?今は妖夢だけだったが……」

 

「私以外にも操られてる人が……ッ!」

 

蛇符「バインドスネークカモン」

 

「季節外れのバタフライストーム」

 

瀑符「シライトフォール」

 

 大量の弾幕が視界いっぱいに降りそそぐ。

 

「水・地・闇合成魔法:グラビティボルテックス」

 

 空中に浮かんだ魔法の大渦が弾幕全てを吸い込み、圧縮する。

 

「っ、早苗さん……」

 

「リグルと河童……しばらく見ないと思ったらコレか……操られてるのはこいつらだけか?」

 

「いえ、まだ他にも居る筈です……!」

 

 すると魔法の大渦の向こうでは更に妖怪達が集まって来た。中には見た事があるヤツだったり大妖怪と呼ばれるヤツも混じっていた。

 

行符「八千万枚護摩」

 

龍魚「龍宮の使い遊泳弾」

 

法灯「隙間無い法の独鈷杵」

 

「サブタレイニアンローズ」

 

「色々来過ぎだろ!!」

 

 魔法の大渦に更に魔力を注ぎ、更に密度の高くなった弾幕全てを吸い込んでいく。既に手元の大渦には膨大な妖力が溜まっている。吸いこんだら、何処かに吐き出さなければならない。

 

「炎・風・光合成魔法:ブレイクブラスター」

 

 吸い込んだ弾幕全てを解放して集まって来た妖怪達を薙ぎ払う。霧の湖の霧が全て消し飛ぶ程の威力で妖怪達が湖に墜落していく。唯一の人間だった東風谷早苗のみ回収し、湖全体を凍結させて妖怪達を氷の下に一時的に封じ込める。

 

「だ、大丈夫なんですかコレ!?」

 

「一日くらい水の中にいても妖怪なんだから死にはしない。あんな数操られて、一人づつしか解呪出来ない上に暴れられるんだからこうして封じておいて、先に元を叩いた方が良い。……それで、元凶は何処に居るか分かるか?」

 

「……すみません、気が付いたら操られていたもので……」

 

「そうか……じゃあ怪しそうな紅魔館に行ってみるか」

 

 結局霧の湖が紅く染まっている理由も分かんないままだ。魔理沙に人形遣いの行方を追って貰っているが、捕まえることが出来るのかは分からん。

 凍った湖を渡り、紅魔館に向かう。氷の下では弾幕を張り続ける妖怪が見えたが、分厚い氷に阻まれて届かない。空は太陽が沈んでいくところだ。

 

 

 そうして紅魔館に到着して目に見えた光景は、破壊され尽した門だった。

 

「これは……いったい誰がこんな事を?」

 

「……マジックの奴等の仕業か」

 

 魔力の残滓が感じられた。吸血鬼は魔法使いの天敵だ、態々吸血鬼の館に襲撃を掛ける意味が解らないが……。

 そうして破壊された門を素通りして、館の内部に入ると激しい戦闘音が聞こえた。

 

 館の内部は、門以上に酷い有様だった。




早く紅魔館組とおせっせしたいので巻き&短めクオリティ。
怪獣大戦争っぷりが表現できると良いなぁ。


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