自給自足で実力主義の学校生活 (たーなひ)
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一話

何番煎じかのよう実オリ主SS。
「えー!なにこれ信じられなーい!」みたいな描写は抜きました。


「俺は草元剛。関西出身やからもしわからん言い回しとかあったら言ってな!よろしく!」

 

はい。自己紹介イベントを終えました。

 

この後入学式とかの睡眠タイムが始まるのでそれから色々説明しますね。

 

さあ、まずは綾小路君!君の自己紹介をみせてくれ!

 

「えー……えっと、綾小路清隆です。その、えー…得意なことは特にありませんが、皆と仲良くなれるよう頑張りますので、えー、よろしくお願いします。」

 

おー!見事なほどに微妙な反応!

イケメン(平田)のフォローが光るね!

 

 

 

 

さて、入学式始まりましたので色々説明を。

 

まず、俺は転移した的なアレ。

というのも、気付けば教室の中。しかもなんかアニメで見たような人達が居ると。

 

ありふれた設定と状況だが、もちろん原作も全部読んだから流れは把握してる。

 

まあ、別にそれならそれで…って感じやな。

とりあえず卒業しないとどうにもならんから、学校生活頑張ります!

 

 

と、いうわけで一先ず目標を設定します。

まずキッチリ卒業すること。"俺"という存在がどうなってるにせよ、高校中退するわけにはいかない。

二番目はAクラスで卒業すること。とはいえ、これは主人公が居るから勝ちは確定。気にすることはない。ほっといたら勝手に上がってく。

 

この二つ…いやほぼ一つみたいなもんか、の目標をゴールとします。

 

 

しかし、原作を知っている俺は未来がわかっている状態だ。

つまり全知全能。どこのユーハバッハかな?

これはこのアドバンテージを活かさない手はない。

特に最初の一ヶ月で得られるアドは計り知れない。

 

この学校生活で私が目指すのは裕福な暮らしと安定した生活水準である。

 

しかし、Dクラスの俺には厳しい願望だ。

初手0ポイントムーブを変えてしまうと、原作の流れに支障が出るかもしれない。原作通りにいけば間違いなくAに上がれる…はず!

 

ここで、情報アドが生きてくる。

最初の一ヶ月、未来(のお金)のための出費、つまり一種の投資を行う事で、財源を確保する。

 

 

"財源"の確保。これが今月の目標や!!

 

 

 

 

 

 

とは言ったものの、どうするか。

 

この学校に株なんか無いしなー。

うーん、商売とか?何売るの?……無理やな…。

あ、有用なアプリ作る……も無理か。そもそも作れねぇよ。

 

方向変えるか。出費を抑える方向で行ってみよう。

出費は生活費はいらんから食費、日用品ぐらいか?

日用品も出費も無料のやつで代替できるけど、朝と晩ご飯は流石に抜けないやんな…。自炊にしても多少出費あるしなー。

うーーん。

自炊…食品……自分で用意できたらいいよな……

 

ん?自分で?…自給自足……はっ!!!!

 

 

そうだ!農業しよう!!

 

 

 

これはナイスアイデア!間違いない!自分で野菜を栽培して食費を浮かせられて、しかも売り飛ばすことで多少の収入も見込める!

この全能感が…神か…。

 

 

自らの発想力に驚いていると、入学式が終わったようだ。

 

この後は平田とカラオケイベント、須藤コンビニイベントがあるが、今日は遠慮しとく。

 

野菜を栽培するのに必要な物があるか確かめなければならない。種とか…あれ?なんか不安になってきた。種とかあんのかな?普通誰も使わんしな…。やべ、これは初手から躓くか?

 

 

 

 

 

杞憂でした。いやー!良かったあって!人参とかキュウリとかもあるし、なんならかぼちゃとかあったわ!かぼちゃて…誰が育てるねん…。

 

 

さて、種はあることはわかったので次は農地(部屋)の下見に行きましょう。

 

 

 

うーーーん。

思ったより、狭いな、この部屋。

アニメではちょっと出てたけど入ってみると思ってたより狭い…いや、一人暮らしならふつうこんなもんか。

問題はプランターとかをどれだけ置けるかやけど…まあ知れてる。

想像してたより雲行き怪しいな。そもそも素人の俺が農業出来るんかって話よ。まぁググればええか(適当)。

そういえば風呂ってどんなんよ?お、トイレと別々か。ふーん、やるじゃん。

 

ん?風呂………………はっ!!!!

 

またしても閃いてしまった。

 

管理人さんにちょっと質問した後、俺がきたのはお隣の904号室。そう、綾小路君の部屋。

スーパーにも寄ったから流石に時間的にはコンビニイベント終えて帰っててもおかしくない。

 

ノックしてみると、中から返事があってドアが開いた。

 

「綾小路君やんね。」

 

「えーと、確か草元だったか?」

 

「そうそう、お隣やねん。」

 

…コイツもしかして今の「えーと」とか「確か」とかも演技なんちゃう?なんでも一回聞いて覚えるレベルのバケモンやし覚えてても変じゃない。

 

「そうだったのか。なにか用か?」

 

「あー、そのー、なんよ、えーとやな…」

 

「?」

 

 

 

 

 

「………シャワー、貸してくれんか?」

 

「は?」

 

なんか聞き返された…てか綾小路君の驚いた顔って結構レアなんちゃうか?

 

「いや、別に構わないが…」

 

「え、良えの?」

 

「ああ。入っていいぞ。」

 

え?何言ってんのコイツ……。

 

「え?」

 

「え?って………借りたいんじゃないのか?」

 

んんん?あ、あー!そーゆーことね!わかったわかった!

 

「あーちゃうちゃう。今から借りたいんじゃなくて、これから借りたいねん。」

 

「…どうゆうことだ?」

 

「俺さ、家庭菜園始めたいねん。」

 

「あ、あぁ。」

 

「んでな?普通やったらグリーンカーテンとかやと思うんやけど、普通のプランターやと大根とかの根菜って出来へんやん?」

 

「あぁ。」

 

「でも、浴槽をプランターにすれば大根も出来ると思うんよ。」

 

「は?」

 

「もちろん管理人さんには『泥水とか流しても平気ですか?』って聞いといたから問題ない。後は綾小路君の了承を得て、毎日風呂入らせてくれたら万事解決よ。」

 

「待て待て、そもそもなんで家庭菜園なんてしようと思ったんだ?」

 

「種さえ買えば後は野菜買わんで済むやろ?極論0円で生活することだって可能になるからな。」

 

「節約のためってことか?」

 

「そうなるな。」

 

「毎月10万貰えるんだからそんな事しなくてもいいんじゃないか?」

 

うーんやっぱそうなるよねー。

どうするか…ここで察しが良い奴みたいな感じ出しちゃうと後が怖いな。でもこのままやと説得できそうも無いしなー。

 

「お金なんかどんだけあっても困らんやろ?それにほら、お隣のよしみでお裾分けとかもあるしさ!な!」

 

「えぇ…。」

 

……ふぅ。仕方ない。切り札を使うか。

 

「なんや、アカンのか。まあしゃあないな。もう一個隣に行ってみるわ。あーあ、友達になれるかと思ったんやけどなぁ…」

 

必殺。友達戦法。綾小路君は友達に飢えている。特に序盤は。この走りだしから友達を獲得できるチャンスを逃す主人公ではないはずだ。

 

「待った、気が変わった。貸そう。よろしくな、草元。」

 

ほらかかった。

 

「やったー!ありがとう綾小路君!」

 

よし、風呂場を獲得や。

 

 

 

 

 

 

 

さて、次は何を栽培するか決めよう。

オーソドックスなので行くとモヤシとかキュウリとかそんな感じ?

まあ折角風呂場使うんやし大根は確定でええやろ。あとはイモとかもしてみるか。

プランターは…うーんわからん。ググろう。

 

先生によると、ナスとかキュウリとかトマトとかその辺らしい。

 

勘違いしないで欲しいのは、俺は別に野菜が好きではないということ。なんなら普通に嫌いみたいなとこある。あーあ、豚とか育てれへんのかなぁ〜。

 

なので、キュウリは嫌や。うん。キュウリ嫌いやねん。

ナスは良えよ。素揚げとか結構好きやしフライにしても美味い。

あとトマトな…嫌いじゃないんやけど…育てる程には…って感じ。

 

他なんか無いかな…おっ!イチゴか!ええやん。

あとは…モヤシもするか、モヤシ炒めとかは無難に上手い。

あ、玉ねぎってどうなんやろ。玉ねぎより旨い野菜あんのか?無いやろ?玉ねぎさえあれば肉と炒めて毎日豚丼牛丼でとええわ。玉ねぎの種とかあったかな?まああれば買うか。

 

 

……よし、こんなもんやろ!

 

栽培マンするやつ決まりました!

大根、ジャガイモ、ナス、イチゴ、モヤシ、玉ねぎです!

 

さあて!買いに行きますか!!

 

 

 

 

 

 

 

普通に4万ぐらい飛んだんですけど………

土って…あんな高いんやな。てか浴槽ってのが馬鹿やねん。アホほど土いるやんけボケがぁ!!

 

はい、てな訳で買ったので用意しましょう!てか電気代かからんのヤバいな。冷暖房ずっとつけて温度できるの爆アドすぎる。

 

 

 

いやー!なんとか終わったね!もやしは1週間ぐらいで収穫できるらしいので1週間後はもやし炒めが確定しました。

 

 

 

ふう。一先ず落ち着いたので色々考えよう。

 

まず俺の名前は草元剛。これは変わってない。体格髪型顔も変わってない。

身体能力も何一つ変わってない。それこそ中の中と上の間ぐらい。頭もそんな良くない…けどまあ高校は一通りやり終えてるから実際頭良くなったみたいなところあるか。

特殊な力なんかも無い。身体能力チートとかあれば楽やったんやけどなぁ…。

 

ん?なんか……おっ!すげーすげー!前世(?)と違う所あった!特殊能力的な!

 

明朝体のレタリング超上手くなってる!すげー!

 

………………いつ使うねん。

 

 

さて、ちょっと考えたけど、俺が退学せずに学校生活を終えるために気を付けたい人物が今のところ2人。

南雲副会長と龍園くん。

南雲副会長はまあ関わることなんかないやろうけど、敵対でもしようものなら退学させられるから気を付けたい。

龍園くんやけど…まぁ退学させられるというか、ボコボコにされて死なないかみたいな懸念なんよな。ウチのクラスにちょっかいかけてくる時さえ乗り切れば大丈夫のはず。ヤンキー怖いねん。ちょっと心配やから手を打ちますか。

 

 

 

 

 

次の日、俺がした事は監視カメラの位置の確認だ。

というのも、もし何かしらで絡まれそうになっても監視カメラの元ならばある程度身の安全は保証できる(気がする)からだ。

そういえば龍園くんも監視カメラ全部確認したとか言うてたけどよう頑張ったな。俺じゃまあまあ広いし覚えきれへんわ。

 

 

手に持った地図に監視カメラの位置を書き込んでいたが、ふと気がついた。

今日って部活動説明会あるよな?

部活動か…。

そんなに頭も良くないし運動神経も普通やから結果なんか出せへんしナシやな。

 

 

 

 

 

 

 

さて、あれから1週間経った。

その間にあったことと言えば、綾小路君との距離が縮まったことと、平田達とも仲良くなったこと、そしてモヤシ。

 

モヤシは特に言うことないよ。いや、うん、美味かったよ。自分で作った野菜ってこんな美味いんやなって。

 

で、綾小路君ね。友達戦法使ったから友達になるのは必然なわけで、そうなるとお隣の堀北さんを間近に捉えることになるわけで、すごい可愛いな堀北ちゃん。黙ってれば美人やのになぁ…口がなぁ…あと心もなぁ。

 

あと平田君達ね、標準語圏では関西弁は可愛いがられるキャラらしい。少なくともこのクラスではね。

上手いことクラスの中心に組み込めたので、綾小路君を正妻に置いて、平田達を妾にする感じにしようかな。いやそうゆう意味じゃないよ。誰がホモや。誰が。

 

綾小路君と仲良くなってしまったのは多少不本意だが、仕方ない。そりゃ毎日風呂の為に部屋訪ねてるんやから仲良くもなるわな。まあ向こうがホンマに仲良いと思ってるんかはちょっと微妙やけどな。

てか綾小路君って感情がないみたいな感じやけど、心も無いんかな?「頭や胸を開けばそこにあるのか?」とか言い出さねえかな…。

最後の言葉は「そうか……この手の中にあるものが………心か」やね。間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。
前々から原作知ってるオリ主でSS書きたかったんですよね。
マジで農業とか家庭菜園とかした事ないんで細かい事は気にしないで下さい。
関西弁な理由は、俺が関西人やから書きやすいのと、なんかこう、胡散臭い感じというか、某三番隊隊長の死神ぽい感じというか…が出るからです!

好評なら続けます。


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二話

「お前達は本当に愚かだな。」

 

はい、来ましたね5月1日。

あれから今日までは特になにもしなかったです。

強いて言うなら綾小路君とかなり仲良くなったことぐらいか。

あ、そういえば監視カメラ全部探しました!

クッソ多かったんやけど。まあ入れへん所は行ってないけど普通に過ごしてて通る可能性のある場所は全部確認した。

 

てか結構お金使っちゃってねー。今もう4万ぐらいしかないのよ。

え?なんに使ったって?肥料だよ肥料!あと普通に食費。

は?我慢しろ?米とか買わんと生活できんやろが。

は?米食わんとおれるやと?テメェさては非国民やな?(名推理)

そうそう、米と言えば、米の研ぎ汁を野菜にあげるとエコだよって言うの知って実践中。この学校もしかして実力ある奴じゃなくてエコな人材育てたいんちゃうか?

 

さてさて、茶柱先生の話を聞き流していたらいつの間にかホームルーム終わってました。

 

放課後は平田君が対策会議を開くのでそれには参加しましょう。参加しとかないと協調性無い人間やと思われるからね。

 

 

さ、放課後や。『キンコンカンコーン』

お、これは綾小路君お呼び出しやな。

頑張れ綾小路君。女教師と生徒…なんかえっちだ…。(錯乱)

 

『1年Dクラス綾小路君、草元君、茶柱先生がお呼びです。至急職員室まで来て下さい。』

 

 

 

ふぁっ!!!!?????

お、俺も!!!?????

な、ななななななんで!??

 

「俺達なんかしたか?」

 

綾小路君が話しかけてくる。

 

「……もしかしてシャワー借りるとかアカンかったんかな。」

 

「いや、それなら草元の浴槽だろう。畑作ってるんだぞ?」

 

うーん心当たりがあるのがなぁ。

もしかして俺怒られるだけなんちゃう?

 

 

 

 

「ここに入れ。」

 

え、マジでこのイベント参加させられるの?

ちょっと怒られるだけやと思ってたんやけど…。

えぇ……マジで?

 

 

さて、堀北ちゃんが入って来たので聞き耳を立ててます。

 

うーん、原作通りの流れ。

なんで俺目付けられてんの?

入試…は俺じゃないからわからんけど、テストは別に普通やったやん?

うーん、菜園作るのって違反やったりするんかな?

てかそれしか心当たりないわ。

 

 

茶柱先生に呼ばれたのでさっさと出て50点すげー!の流れをする。

マジで全部50点や…すげぇな。

 

「さて、次はお前だ、草元。」

 

「いや、マジで意味わからんのですけど。なんかしましたっけ?」

 

「心当たりが無いなら見てもらった方が早いだろう。」

 

そう言って何枚かの写真をプリントアウトした紙を広げた。

 

「入学してから2日目、校内の全ての監視カメラにお前が写っていた。ご丁寧にマッピングまでしているようで感心したぞ。」

 

あ、え、あ……おぉーーーん。

確かに言われて見ればバッチリ写りこんでますねぇ…。

いや、ちゃうねん、言い訳させて!

画角とかも知らなあかんからちゃんと正面から確認せなアカンかってん!これは沼じゃないから許してくれ…。

 

「確かにそうすね。で、これが?」

 

まずはすっとぼけてみる。

 

「とぼけるな。それからの2週間ほどでほぼ全ての監視カメラを確認しているな?敷地内にあるほぼ全ての監視カメラを把握しているのはお前だけだ。」

 

んー、まぁそうだよね。

てか龍園君まだ監視カメラ確認してなかったんや…あくしてくれよ。お陰で俺がこんな目にあってるじゃねぇかよ。

 

「これは…褒められてる?んすかね?」

 

「さらにお前のポイントの使用履歴も調べさせて貰った。野菜の種に土、肥料、プランター…農業でもする気か?」

 

こっわ!!なんで知ってんの!??

マジで怖いんやけど!どうやって調べたんよ…

 

「あー、えーと、実は実家が農家でですね。」

 

「お前の実家は大阪の大都会だろうに。」

 

ばれてーら。

 

「てかよくそんなこと調べましたね。」

 

「生徒の行動を見守るのも教師の役目だ。」

 

うそだ!!こいつはAに上がりたいだけなんだ!

俺達を利用しようとしてるんだ!

 

「…別に趣味で家庭菜園しても良くないですか?」

 

「そうだな。本当に趣味ならな。」

 

えぇー…この人マジで怖い。

趣味とかも全部調べてるんちゃうか?この人絶対結婚できない!ヤンデレ…いやヤンヤンやもん!絶対!

 

「じゃあ趣味じゃないとしてなんの問題があるんですか?」

 

「問題は無いさ。しかしクラスの奴らが知れば野菜を求めて押しかけるだろうな。」

 

うーん、野菜を求めて押しかけるって言葉の響きが全然シリアスじゃないんよなぁ…。

 

「別に話してもええですよ。こっちは無料でお裾分けなんかする義理ないですし。

てか、何がしたいんすか?綾小路君が凄いかもしれない、俺がもしかしたら凄いかもしれない。それを堀北ちゃんの前で話して何の意味があるんですか?」

 

とりあえず結論を急がせる。これ以上とぼけても意味がないやろ。

 

「別に何も。ただ堀北がAクラスに上がりたいと言うからその手助けをしているだけだ。」

 

堀北が…ねぇ。

ふーん。

 

「さぁ、これから職員会議だ、さっさと出て行け。」

 

えー、どうしよー。言っちゃった方がええんかな?

でもなー、目付けられるしなー。あ、もうついてるか。

じゃあええや。

 

「そんなにAクラスに未練かおありですか?茶柱先生。」

 

「なに?」

 

弛緩しかけた空気が引き締まる。

 

「トラウマって…振り切るの大変ですよね。あと一歩だったのに届かない。もしもあの時、なになにをしてたら、なになにしていなければ。過去のたらればに捉われて生きるの大変ですよね。」

 

「な、何を言って…」

 

「リベンジしたいなら素直に頼めば良いのに。じゃ、さいなら。」

 

そう言って出て行く。

決まった…これは脳汁出ますわー。

 

 

 

 

決めてしまった高揚感から、鼻歌を歌いながら歩いていると、後ろを歩く堀北から声がかかる。

 

「貴方達、何者?」

 

「達って心外だな。俺は一般高校生だ。」

 

「ほんまやで。俺達のどこが変やっちゅうねん。」

 

「いや、草元はなんか違うだろ。」

 

え、それはショック…

 

「あなたもよ、綾小路君。全部50点なんておかしいわ。」

 

「いや、俺はたまたまだ。断じてこいつとは違う。」

 

「そうゆう言い方をされると傷付くんやけど…」

 

「それは悪かった。」

 

「許してやろう。てか全部50点取れる方がすごいと思うんやけど。」

 

「いや、だから偶々だって。」

 

「勝手に話を進めないでちょうだい。」

 

怒られちゃった…ご褒美です。ありがとうございます。

 

「あなた達に…協力をお願いしたいの。」

 

「「協力ぅ?」」

 

ここはしっかりと合わせた。

 

「そう。Aクラスに上がるための協力。どうかしら?あなた達は私の指示に従うだけでプライベートポイントが増えていく。悪い話ではないはずよ。」

 

残念だが堀北、俺にだって譲れないものがあるんだ。

俺の最も好きな事の一つは、自分より強いと思っている相手にNO!と言ってやる事だ!!

 

「…だが断る!」

「断る。」

 

「ありがとう2人とも。協力してくれると思っていたわ。」

 

無理でした☆

 

 

 

言いたいことだけ言った堀北はさっさと寮に帰ってしまった。

 

えぇ…なんでこうなったの…。

俺なんかただ知ってるだけで何の取り柄もないぞ?

しかもなんか原作改変ムーブ入ってるしよー!!

 

「どうする?草元。」

 

「…どうせ綾小路君暇やろ?俺は農業で忙しいから。」

 

「ちょ、マジで言ってるのか?」

 

「堀北には、Aに上がったらお裾分けしてあげるって言っといて。頼んだぞ。」

 

逃げるが勝ちよ。すまんなぁ綾小路はん。君には生贄になってもらうわ。

 

もう二度と会う事はない。サラダバー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上がったよー。」

 

「あぁ。」

 

今日もお風呂借りました草元です。

 

今気付いたけど風呂上がった後ずっと綾小路君の部屋おるからほぼ2人部屋よな。

流石に寝るときは部屋に帰ってるけど。

 

「…草元は戸惑ってないんだな。」

 

「戸惑う?何に?」

 

「今日の事だ。皆ポイントはゼロだと言われて、さらに不良品とまで言われて多少なりとも動揺してるのに草元はそんな様子がない。」

 

「いやいや、俺だって結構動揺してるんやで?」

 

「その割には茶柱先生が話してる時は上の空だったがな。」

 

見てたんかコイツ。いやー失敗やったな…一応驚いた風に演技しとけば良かった…

 

「なんで見てるねん。ハハーン、さては俺の事好きやな?」

 

「いや、断じてそんな趣味は無い。それに茶柱先生の事もだ。何を知ってるんだ?」

 

おぉ、踏み込んでくるね。もしかして俺の事見極めるムーブか?

どうしようかな…。

 

「………偶々よ偶々。偶々知ってるだけや。」

 

「……そうか。」

 

うーーん、一応切り抜けたか?グレーではあるけど黒ではない感じぽいな。

でもやられっぱなしは性に合わん!

 

「綾小路君ってさては凄い奴?」

 

「は?俺は凡人だぞ?」

 

「またその問答するの?たまたま全部50点に揃う奴なんかおらんねんて。ええ加減認めたら?」

 

「いや、認めるも何もたまたまなんだから…」

 

「ん、せやな、認めんでもええや。俺が君が凄い事を見抜いてて、君は俺が見抜いてる事を知ってる。それでオッケーや。」

 

「…もうそれでいい。」

 

勝った…

 

「そういえば堀北ちゃんの連絡先持ってんの?」

 

「堀北の?なんでだ?」

 

「だって堀北の手となり足となる訳やねんからメールぐらい出来んとアレじゃない?」

 

「あー、たしかにそうか。」

 

「てことはまだ伝言伝えてないんやんな?」

 

「そうだな。」

 

「んじゃ伝言取り消しでええよ。俺も手伝うわ。」

 

「え、手伝うのか?」

 

「気が変わってん。俺"も"手伝うから綾小路君"も"全力で頑張ろな。」

 

なんやかんやで話を終えて部屋に帰った。

 

 

協力することに意思を変えた理由だが、もう既に手遅れな事に気付いたからだ。

 

というのも、まず綾小路君と仲良くなっちゃったこと。

どう考えても毎日風呂に入りに来るから友情自然消滅戦法は使えない。この不景気(Dクラスだけ)で他のクラスメイトが風呂を貸してくれるはずもない。

つまり綾小路君と友好的な関係を築くほかに道は無いのだ。

二学期以降の軽井沢とまでは行かずとも、クラスに必要な存在だと認知されれば王の庇護(?)を受けられる可能性もある。

 

次に茶柱先生に目をつけられちったこと。

これが一番の想定外。

だってそんなんバレへん思うやん…監視カメラ全部見るなんか思わんやん?しかもポイントの使用履歴まで探してさ!

あれ、なんか茶柱先生の苦労が身にしみてきた気がする。ずっとカメラを早戻ししたり巻き戻ししたりして俺がどこに映り込んでるか探すなんか途方もない作業やし。

人事課とかゆう言葉もあるぐらいやからポイントの使用履歴もそうゆう特別な課に頭下げて聞きに行ったってことやんな?

俺のためにこんなにしてくれてたんか……苦労したやろうな…パソコンの前で目を血走らせる茶柱先生が目に浮かぶ。やべ、涙出てきた。ごめんな、2人の前であんなこと言ってもて。

今度モンスターエナジー奢ってあげよ。(奢るとは言ってない)

 

 

まあとにかく、既に原作ブレイクはしちゃってるわけよ。

ならもう玉の輿しかねぇよなぁ!?って感じや。

 

綾小路君おったら絶対勝つる。間違いない。

原作と多少変わったところで問題ないやろ綾小路君やし。

 

 

さぁ明日からお勉強会か…さっさと寝よう。




はい。
全員原作もしくはアニメ知ってる前提で書いてるから細かい説明とか全部抜いてるんですけど大丈夫ですかね?
さすがに船上試験からはアニメ勢のために一応書く気なんですけど、いらないっぽいなら書かないです。

ステータスって後書きに書くのと本文に書くのどっちが良いんですかね?とりあえず今回は後書きに書いときます。

草元剛 くさもと つよし

学力   Bー
知性   C+
判断力  C+
身体能力 C+
協調性  Bー

担任所見
綾小路君とよく一緒にいるようです。他のクラスメイトとも良好な関係を築けています。


こんな感じでええんかな?
実は過去の話とか全然考えてなくて、このまま何の深みもなく過ごしていく感じになりそうです。


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三話

はーい。ポケモンしてたら全然書けなかったです。申し訳ない。
二年生編始まったしモチベガン上がりしてるんで次は早めに頑張ります!


はい。

えー最初のテストイベントが始まりましたね。

 

考えたんやけど、今回なんもせんでよくないか?

だって綾小路君が過去問見つけてくれるんやから過去問覚えるだけのヌルゲーやし。

 

というかクラスのリーダー格ヤバくない?

 

小テストに2、3年の問題出たー!わかるわけないやーん!

2、3年の問題?………過去問か!!

 

いやそうはならんやろ。

頭おかしいで絶対。

 

 

とゆうわけで今回はなんの勉強もせずに行きましょう。

 

 

…とはいえこのみんなが勉強に集中していて動きやすい時間のうちに何もせえへんのもなぁ。

なんかやることあるかな?

 

うーーーん……

直近のイベントやと須藤君とバカンスか…

 

あ!

そうそう、ボイスレコーダーね。買おうと思ってたのよ。

この前の茶柱先生に呼ばれた時みたいにボイスレコーダーがあれば優位に立てる場面は多いやろうし、そもそも俺が喧嘩も出来へんからそうゆうとこでマウント取らんとアカンよね。

 

では電気屋さんへレッツらゴー!

 

 

え、結構高くない?まあまあのやつやと1万ぐらいすんねんけど…

辞めとこっかな……いや待てよ……

買おう!買おう!店員さん!コレ買います!!

 

よく考えたら全然痛くないわ!

 

というのも、須藤君イベントあるやないですか。

アレって動画と写真撮ってBクラスに渡してあげればポイントガッポガッポ稼げると思うんですよ。

アカウントいっぱい作って情報を少しずつ出していって搾取させて貰います。

いやー、これは天才!

これで当面の金策はOK牧場かなー。

 

 

 

 

 

そんなこんなで図書館にやって参りました。

アレですね。例の一之瀬さんとの初対面のイベント。

今までのイベントはただ綾小路君の近くに立ってただけやし省略するよ。そう、近くにね。

 

 

うーん、人多いな…。よくこんな中で大騒ぎできるわ。

須藤うるさい。山内うるさい!池黙れ!

 

 

「おい、ちょっとは静かにしろよ。ぎゃーぎゃーうるせぇな」

 

ほらー、そんなに煩くしてるからCクラスに絡まれるんやって。

 

ハイハイ、Cクラスで偉いねー、偉いねー。テスト範囲違うんでしょ?知ってる知ってる。

 

やー、それにしても一之瀬さん可愛いな。

マジで可愛い。

それにスゴく……大きいです。

 

瞼に焼き付けた一之瀬さんを堪能していると、みんなが立ち上がった。職員室に向かうようなのでついて行く。

 

 

「随分落ち着いてるんだな」

 

綾小路君が話しかけてくる。

うぇー、なんで話しかけてくんねん。すーぐそうやって人を見定めようとするやろ?そうゆうとこ悪いよなー。

 

「まぁ、少なくとも俺はそこそこ勉強してるからヤバくないしな。てかあの一之瀬さんめっさ可愛いくなかった?」

 

「わかるわかる!めっちゃ可愛いよな!」

 

池が入ってきた。

友達と話してる時に横から入ってくるあんまり仲良くないやつ、まさにその図。

 

「そうか?」

 

「そうだぜ綾小路。もしかしてあんな子でも眼中に無いのか?」

 

「この状況でそんな話が出来るなんて、貴方達は随分と呑気ね。」

 

綾小路君のタイプの話にシフトするかと思われたが堀北ちゃんに注意されちゃった。

 

 

職員室で衝撃の事実を告げられ、絶望する3バカ。

彼らに待ち受ける運命とは……?

 

って感じで、テストまで1週間を切りました。

 

ラスト1日にオールして覚えるとして……あれ?なんか不安なってきたな。

一応早めに見せて貰うか?うーん。

須藤君じゃないけど寝落ちしたら洒落ならんしな….

しゃあない。3日前ぐらいに過去問貰いに行こう。

どうせもう要警戒人物になってるんやろ?ちょっとぐらい鋭い感じ出しても変わらんわ。

 

 

 

はい、ではテスト3日前になりましたので、過去問貰いに行きます。

色々考えたんですが、方法はシンプルに『やべぇ!俺思いついちまった作戦』で行こうと思います。

風呂を借りて上がったときに仕掛けます。

 

「あ!」

 

「どうした?」

 

「過去問!」

 

「え」

 

「過去問やって!過去問!貰いにいこ!!絶対やっといた方がええって!」

 

そう。その名の通りさも今思い付いたかのように提案してみる作戦だ。

一応綾小路君はテスト前日まで公開しないスタンスで行ってるけど、流石にわざわざ俺にまた過去問買わすようなことはせん…と思う。

 

「あぁ、そういえばたまたま過去問を持っていてな。」

 

ふぅ…買わされたらどうしようかと思ってたんよ。

 

「え、なんでそれ共有せんの?」

 

一応追求はしておく。

 

「これが有効的な過去問だと聞けば、どうしても緊張が緩むし、折角の猛勉強に水を差す。何より信用しすぎるのも問題だ。中間テストも小テストのような同じ問題とは限らない上に、今年だけ違う可能性だってある」

 

うんうん。そだねー。

 

「はぁ、ほんで?」

 

「これは前日に共有する事で必死になって勉強させることが出来るというわけた」

 

「はぇー、なるほどなー」

 

ほんまによく考えてるよな。俺なんか脳死で「おら!過去問やるから感謝しやがれ!」ってしてるやろうしなぁ。

 

「もしよかったらくれへん?折角やしやっときたい」

 

「あぁ、いいぞ」

 

イェェェェス!!

 

「ただし、須藤達には見せるなよ」

 

「あいよ」

 

綾小路君ありがとう!これで俺は安心してテストを受けれるわ。

全部満点取ったるやで〜^_^

 

 

 

さて、当日になりました。

今んとこ英語以外終わったんですけど、ココで問題が。

須藤君が寝落ちしてて英語だけ過去問出来てないんですよね。

まあこれは原作と一緒んとこやから別にええんやけど、問題なのは俺が点数を上げてしまってええのかってこと。

 

もしかしたら赤点ラインが上がって点数を買うのに20万いるようになるかも知れんのよなぁ〜

まあ変わらんかもしれんけど…

 

「草元、ちょっといいか?」

 

「綾小路君?どうしたん?」

 

「須藤が英語だけ勉強出来てないみたいなんだ」

 

「おぉ、そうみたいやな」

 

「だから出来るだけ点数を落として欲しい」

 

ほー、そういえば綾小路君と堀北さんはちょっと点数下げてたな。

 

「おっけおっけ、ちょっと下げるわ」

 

「助かる」

 

これでちょっとでも変わったらええんやけどな…

 

 

 

 

テスト返却日がやってきた。

 

「正直、関心している。お前達がこんな高得点を取れるとは思わなかったぞ。数学と国語、それに社会は同率の一位、つまり満点が10人以上もいた」

 

そう言って貼り出した紙には、俺は英語以外は100点と書かれており、目標は達成出来ている。

 

しかし、当然の事ながら…と言うべきか、須藤君の英語の点数は39点。

 

「っしゃ!!」

 

須藤君が立ち上がり叫ぶが、俺は赤点であることを知っている。

 

 

茶柱先生から赤点が40点未満であるということを告げられ絶望するDクラス。

天国から地獄に叩き落とされるとはまさにこの事。

 

ーまあ、結局助かるんやけどな。

そう思えば、この重たい空気の中でも落ち着ける。

それにしても高円寺君はいつも通りやな。こんな空気なんやから鏡ぐらい置けや。

 

「……茶柱先生。少しだけよろしいでしょうか」

 

堀北ちゃんが挙手した事で先生とクラスメイトに驚きの声が上がるが無意味だ。

赤点の小数点以下は四捨五入。

平均点は79.4、2で割って39.7、四捨五入で40点未満が赤点。

 

んん??アレ?なんか平均点…下がってね?

原作やったら79.6やった気がするんやけど…

 

 

「なるほど。お前は須藤の点数がギリギリになる事を見越していたのか。それで英語の点数だけが極端に低かったんだな」

 

「堀北、お前…」

 

堀北ちゃんの英語の点数は51点。須藤君は堀北ちゃんが意図的に点数を下げた事に気付いた。

 

「ちょ、ちょっと!これ、草元君43点って!他全部満点なのに!」

 

「ま、まさか草元…お前も…?」

 

「え?あー、まぁ……うん」

 

「…ギリギリじゃない。貴方が退学になってたらどうしてたのよ」

 

そうは言っても平均点が40点を超す事は無いとわかってたしな…

正直出来レースみたいなもんやったし。

 

「須藤君と2人で退学なら別にええやん。1人よりかは2人のんがマシやろ」

 

と、ええヤツっぽい事を言っておく。

 

「草元…お前……」

 

ちょ!なんか「お前ええヤツやなー!」みたいな目向けるのやめて!心が痛むから!

なんかアレよ。ハズレが無いとわかってるロシアンルーレットたこ焼きのラスト一個を食べて英雄扱いされる感じ。

わかるかな?わからんよね。じゃあ良いです。

 

 

ホームルームが終わり、茶柱先生が退室してその後を綾小路君が追って行った。

 

はぁーやっとテスト終わったー!なんかテスト終わると開放感あるよな!

とは言える雰囲気では無く、まさしくお通夜状態。

誰も須藤に声を掛けることも出来ず、一言も喋ることなく顔を下に向けている。

 

ようやく堀北ちゃんが出て行った。

教室の空気重いから早く帰ってきてクレメンス…

 

 

________________________________

 

草元剛と言う生徒は、不思議な生徒だ。

入学初日にいきなり部屋に来て「風呂を貸してくれ」なんて言い出すのだから。

どことなく掴み所が無いが、まったくもって悪い印象は無い。強いて言えば風呂上りに冷蔵庫を勝手に漁るのはやめて欲しいぐらいだ。

 

 

それだけならただの「少し変なヤツ」で済むが、草元はそうではない。

5月最初のホームルーム。俺達にとって寝耳に水の情報が伝えられ、全員が驚いていた…と思っていたが、草元だけは驚いていなかった。元々そうなることが分かっていたかのような、結末の分かっている物語を見ているような、そんな風な顔をしていた。

放課後に茶柱先生に呼び出された時には、草元のここ一ヶ月の行動が明らかになった。

監視カメラのチェック。普通に過ごしていれば行わないであろう行動。この学校がどういうものか知っていたのだろうか。

極め付けは帰り際の事。茶柱先生に何かがあって、それを知っているという事。知り合いということもないようだし、草元が調べたということになる。

加えて先日の中間テストの結果発表では、須藤の赤点に全員の顔が沈む中、草元(と高円寺)だけは何食わぬ顔で平然としていた。それこそ、まるでこの後助かる事が分かっているかのような。

 

 

草元がどういう人間なのか。

人間性で言えば、特に問題は無い。間違いなく良いヤツの部類だし、仲だって良いはずだ。

しかし時折見せる何もかもを知っているような顔、アレだけが理解出来ない。

 

 

 

草元は俺の学校生活の障害になるのだろうか。




はい。これで一巻分終わりましたね。

ヒロインは誰にするんやろか…
櫛田ちゃんが一番タイプなんやけど裏が有るのがなぁ…アレ絶対メンヘラよ


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四話

サクサクっと進んで1話分ぐらいで2巻分終わるかと思ったけど、思いの外終わらなくてビビり散らかしてます。


テストが終われば次は須藤君事件。

 

とは言っても俺にとってはただの金策イベント。

事件現場に張り込んで写真、音声、動画を撮って少しずつBクラスに渡してあげる事でお金を稼ぐことのできるキョダイコバン並みの金策イベント。

え?キョダイコバン知らん?ポケモン剣盾をご存知ない?

 

 

では、事件現場と思しき場所に張り込んで行きます。

 

用意した物はスマホと先日買ったボイスレコーダー、そして水。

水は特別棟はめっちゃ暑いみたいな描写あった気がするから一応持ってきたけど正解やったな。めっっっっちゃ暑い。

張り込むのは月末の三日間。

いつ喧嘩したかという明確な描写が無かったので念のための三日間だ。

 

ボイスレコーダーは階段の手すりの裏側に貼り付けた。

流石にこれだけ近ければバッチリ音を拾えるはず。

 

 

張り込み2日目、須藤とCクラスの3人がやって来た。

 

あぁーやっと来たー…あっついねんここ。

 

喧嘩という名の須藤無双が終了し須藤が去ったあと、そのまま石崎が龍園君に電話をかけ始めた。

 

「龍園さん、石崎です。うまく行きました。…はい。……わかりました。」

 

え、コレここでしていいの?いいの?録音してるよ?いいの?コレは…ラッキー…なんか?ちょっと扱いに困るけども。

 

 

写真や動画、音声は問題無く取れていた。

これでしばらくの生活は安泰やー!

 

 

 

 

 

そしてやって来た月初め。

須藤君が先生に呼び出された日の夜の作戦会議に俺もお呼ばれされた。

 

と言っても、シャワーを借りて上がったら既に須藤君と櫛田ちゃんが来ていたという訳なんだが…

 

「なんで綾小路君の部屋でお風呂入ってたの?」

 

「色々あるねん」

 

「色々ってなんだよ」

 

こいつらっ!ホンマなんでこんなタイミングで来るんや!?間が悪すぎる!

 

「草元の部屋の排水管が詰まっててな。しょうがないから貸してやってるんだ」

 

ナァァイスぅ!!綾小路君!!君は最高や!今度もやし炒め食わしてあげる!

 

「なーんだ、そうゆうことだったんだ」

 

「そーゆーことやな。それで?何の話?」

 

「お前も聞いてくれよ草元!俺、停学になるかも知れねぇんだ…」

 

「は?停学?なんで?なにしたん?」

 

「Cクラスのヤツを殴っちまってよ…俺は悪くねぇんだぜ?アイツらが先に仕掛けて来たんだ」

 

「はー、ほんで?」

 

「それでアイツらが学校に報告してよ。俺が悪いって事になってて…」

 

「停学になるかも知れないっちゅうわけやな?」

 

「…あぁ」

 

さて、どうしようか。

正直コイツの被害者意識にはイライラする所があるけど、それを気付かせるのは堀北ちゃんの役割やしな…

 

「一応もうちょっと詳しい話を教えてくれへんか?」

 

ま、Bクラスが動き出すまではなんもやる事ないし、テキトーに綾小路君と一緒に行動しとったらええやろ。

 

 

 

次の日のホームルームで事件のあらましが発表され、クラスは目撃者の捜索に動き出した。

 

その日の昼休みに俺と綾小路君、池、山内、須藤君、櫛田ちゃん、堀北ちゃんで集まっていた。池と山内が呼び捨てなのは単純に舐めてるから。

 

「あなたは次から次へとトラブル持ってきてくれるわね、須藤くん」

 

ホンマそれやで。ええ加減にしてーな、俺やって金が絡まんかったら見捨ててたぞ!

言ったって下さいよ堀北さん!

 

「申し訳ないけれど、私は今回の件、協力する気にははれないわね」

 

バッサリと切り捨てましたね。抜刀斎かな?飛天御剣流教えて貰ってもいいすか?

 

 

「なんだよあいつ!くそっ!」

 

「アッツ!!」

 

テーブルに当たんなやボケェ!味噌汁かかったやんけ!

 

「だ、大丈夫?」

 

「火傷はしてないけど………っ……はぁー」

 

あっぶねー舌打ちしかけたー!今の須藤君にブチギレても2秒で殴られるから我慢したのは英断。流石俺。

 

 

堀北ちゃんへの愚痴が一頻り終わって櫛田ちゃんが離れれば、池が櫛田ちゃんへと想いを馳せ(妄想し)ている。

それにしてもあの挿絵ってメチャメチャエロいよね。あれはR18不可避。

 

 

綾小路君の好きな人談議から俺に狙いが変わった。

 

「草元って全然女子としゃべらねぇよなー」

 

「そう?授業の合間にちょくちょく近くの女子と喋ってるで?」

 

「確かに軽井沢とかとも仲良いもんなー」

 

「でも軽井沢は性格がキツそう」

 

「わかるわかる。顔は良いんだけどなー」

 

なんやコイツら…エライ上から目線で女子見てるやん。

フェミではないけどこうゆう男子はどうかと思います!

 

「で、草元は誰が好きなんだよ」

 

あ、その話するんや。なんで綾小路君は一番興味深々な感じなんや…すまんな綾小路君、俺はノンケなんや。

 

「好きではないけど良いなって思うのは一之瀬さんやな」

 

あえてちょっと遠いクラスの人を挙げる事で攻撃(口撃)のダメージを最小限に抑える高等テクニック。俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

「あ、その子知ってる!Bクラスの子だよな!」

 

「一之瀬?誰だそれ?」

 

「忘れたのかよ須藤、アレだよ、図書室の時に入ってきたあの子!」

 

「あー、そういやいたな」

 

「なんでその一之瀬の事が気になるんだ?」

 

なんで綾小路君は俺にだけ口撃してくるんや?

 

「いや、単純に可愛かったし」

 

「そっかー!草元のタイプはあーゆう子なんだな!」

 

「ま、そーゆーことやな」

 

ごめんな池。タイプな女子は櫛田ちゃんなんや。裏さえ無ければ確実に惚れてたぞ。

 

 

 

放課後はクラスで二手に分かれて情報収拾。

 

俺は当然櫛田ちゃんの方。いや、正直別に向こう行ってもええんやけど、平田ハーレムに気使うのしんどいねん。

わかるか?平田の後ろついて行ってたらしゃあなしで平田にありつけない女子に話しかけられるんやで?正直みーちゃんは憐みで話かけてくるので印象は最悪です。小動物みたいで可愛いんやけどな。

 

 

櫛田ちゃんと綾小路君が堀北ちゃんへの説得へと向かうが、失敗に終わって直ぐに帰ってきた。

 

「あれ、結局堀北ちゃんの説得は無理やったん?」

 

「うん、ごめんね、失敗しちゃった」

 

「悪いのは櫛田ちゃんじゃないよ。それに俺達がいれば戦力としては十分っしょ」

 

「期待してるね、池君も山内君も草元君も」

 

くぅ!そ、その目をヤメロォ!!

は、激しい動悸、荒くなる呼吸!これはまさか!恋…?

 

「じゃあ、どっから行く?」

 

はぁ、はぁ、危ない危ない。もうちょっとで落とされる所だったぜ。

この小娘…油断ならぬな。八幡先生を見習わねば!!

 

「もし皆が構わないなら、最初はBクラスに話を聞くのはどうだ?」

 

って事でBクラスに向かう事になった、

 

「早速Bクラスにレッツゴーー!」

 

「ストップ」

 

綾小路君が櫛田ちゃんの襟首を掴んで止める。

 

「にゃー!」

 

ぐばぁぁ!!

くっ……可愛い………が!騙されんぞ!!

演技なんや…そうや!全部演技なんや!

あざとい!あざといぞ櫛田桔梗!

 

櫛田ちゃんとの(精神の)戦いをしていると、いつの間にかBクラスに向かう方針にまとまっていたのでついて行く。

 

 

「そういえば、Bクラスって言ったら草元の好きな一ノ瀬がいるんじゃないか?」

 

お、池!なかなか鋭いやないか!

ちょっと突っ込まれるか微妙やと思ってたけど流石に分かってたか。

 

「いや、好きではないで。可愛いなって言っただけで」

 

「照れんなってこのこのー!」

 

クッッッソウゼェェー!!

女子の名前出すだけで好きな人扱いしてくるヤツ並みにウゼェェー!中学の頃の事は許さんぞ山本ォ!

 

教室に着いたが、一ノ瀬さんは居なかった。

まあ分かってた事なんやけどな。

 

……………………

……………はっ!気付いたら一ノ瀬さんを探してた!これはまさか!恋…?

 

「一ノ瀬が居なくて残念だったな」

 

なんで綾小路君は俺だけこんなイジってくるんや…

 

 

 

翌朝、二つのグループの情報交換に駆り出されてしまった俺はじんわりと汗を掻きながら会話を捌いていた。

こんな大勢の女子と話すの初めてなんやけど!やっべ喉渇いてきた。

俺が忙しい時にも綾小路君は一人で座っている。

 

くそ!なんで俺はこんな目に…

役得な気がしないでもないんやけど、いかんせん人が多い。

俺は別に女の子と2人でええねんって。ハーレムなんか求めてないの!

 

茶柱先生から『2000万貯める事で好きなクラスに行く事ができる』という情報が伝えられるが、まあ無理やろ。

それこそ現実的なのは龍園君の契約ぐらい。

あんな契約するの多分龍園君だけやろうし、そもそもそんなに貯めるヤツは目立つから、俺みたいにある程度平穏に生活を送りたい人間には向いてない。

 

 

 

放課後、佐倉が目撃者である事が堀北ちゃんから伝えられて、目撃者捜索ルートから佐倉攻略ルートへと進展した。




はい。今回は書いてて結構楽しかったです。
ちょうどキリがいいとこなんでここで切っときます。

一応言っときますけど別に櫛田と一之瀬がヒロインとかそうゆうのはまだ決めて無いです。今んところは。


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五話

連日投稿が止まらねえよ!!
モチベ高すぎて指が止まんねえんだよぉ!!


佐倉攻略ルートに移行した次の日、櫛田ちゃんが佐倉さんに話かけるが逃げられてしまう。そして案の定デジカメが壊れてしまった!

まさかカメラが壊れてしまうだなんて思わなかったー。綾小路くーん、修理について行ってあげなよー。

 

 

「君は退学しておいた方が良かったんじゃないかな?君の存在は美しくない。いや、醜いと言ってもいいだろう。レッドヘアーくん」

 

お、ここやったか。久々の高円寺の登場は。

 

「…何だと?もう一度言ってみろよオイ」

 

「何度も言うなんて非効率。ナンセンスだ。物分かりが悪いと自覚して言ったのであれば、特別にもう一度だけレクチャーしてあげても構わないが?」

 

こいつ一回も顔上げずに喋ってやがる。マジで煽りスキル高すぎるやろ。ナンセンス…いい響きやからどっかで使いたいな。

 

怒り食らう須藤ジョーが机を蹴り飛ばして、教室の空気が凍りつく。

ちょ、俺の机蹴り飛ばすなや!もーホンマコイツ最悪…

なんで須藤君が怒ったら俺に被害が及ぶん?呪いかな?

 

「そこまでだ。二人とも落ち着いて」

 

おぉイケメン!君ならこの場を収めてくれると信じていたZ!

 

「須藤くん。君も問題だけど高円寺くんも悪いよ」

 

「フッ。私は生まれてから悪いと思うことはしたことないのでね。君の勘違いだ」

 

「上等だ。ボコボコにして顔面潰してから土下座させてやる」

 

「やめるんだ」

 

やめておいた方が賢明だよ須藤君。君ではこの高円寺には勝てない(ラスボス感)。

 

「もうやめようよ。私、友達同士で喧嘩するところなんて見たくないよ…」

 

「櫛田さんの言う通りだ。それに高円寺くんがどうあれ、僕は君の味方だよ須藤くん」

 

おぉ神々しいまでの光が平田君の後ろに見える!!

神はここにいたのか…

 

「この場は僕が収めておくから。須藤くんは大人しくしていた方がいい。今騒ぎを大きくすれば学校からの心証が悪くなる。そうだろう?」

 

「………ちっ」

 

舌打ちを残して教室を出て行ったかと思えば、廊下で大きく吠える声が聞こえた。

こ、こえぇぇ!!早く丸くなってくれよー。怖すぎて喋りかけられへんよー。

 

 

「ねぇ」

 

堀北ちゃんによる須藤批評会が開催されている中で、櫛田ちゃんが喋りかけて来た。

 

「ん?なに?」

 

「草元君は……須藤くんの味方…だよね?」

 

ち、近い近い近い近い近い!!!

いい匂いするし上目遣いやし。あーー、ヤバイ!万乳引力で視線が胸に吸い寄せられるぅ!!!

 

「ぉ、おん。」

 

な、なんとか絞り出せた…くっ!早く離れてくれ!目が…吸い寄せられるんだ!俺が理性を保っている間に、早く!

 

お、やっと離れた。危ない危ない。もう少しで手のひらまで吸い寄せられるところだったぜ。

 

「私頑張って佐倉さんの説得するよ。そしたら、きっとこの悪い流れも変わるはずだし」

 

「そうかしら。この際だから言うけれど、佐倉さんが証言しても効果は薄いと思うわ。恐らく学校側も突然湧いて出た目撃者の存在を疑うはずよ」

 

「んじゃあどんな証拠なら確実なん?」

 

「奇跡を信じるのなら、他クラスか他学年で事件が起こる前から一部始終を見ていて、学校側からも信頼の厚い目撃者がいれば可能ね。だけどそんな人物は存在しないわ」

 

甘いな堀北ぁ!俺は一部始終を見ていたどころか録音してるんや!奇跡は起こったんだよ、既になぁ!!

この謎の優越感に浸る瞬間が一番気持ちええんじゃあ…

 

「今回の事件が教室の中で起こった喧嘩だったなら話は別だったんだけどな」

 

「どうゆうこと?」

 

「いや、だって教室には様子を観察する監視カメラが仕掛けられてるだろ?だから何が起ころうと証拠はばっちりだったんだけどな。Cクラスの連中の嘘も一発で暴けたんだが」

 

「……マジで?俺、知らなかった……!」

 

「私も初めて知ったよ……カメラなんてあったんだ」

 

「意外と気付かないものなのね。私も最初のポイント発表まで気が付かなかったから」

 

「俺も初めて知ったわー」

 

そう言うと綾小路君と堀北ちゃんが「えっ」という顔で俺を見てくる。

な、なんやお前ら。あ、そうか二人とも知ってるんか。

 

「……貴方は知っていたで「普通はカメラなんか気にせえへんもんな!知らんのが普通やろ!」…」

 

あっぶな!このアマ皆に暴露しようとしとったで!

油断も隙もないなこのアマ!

 

 

「綾小路君達、一緒に帰らない?」

 

その言葉に綾小路君は堀北の額に手を当てる。

まあ、たしかに正気を疑うよな……ん?達?

 

「え、もしかして俺も?」

 

「当然でしょう?」

 

「いや、帰りたいんですけど…」

 

「監視カメラ」

 

「ハイハイ喜んで協力させて頂きます!」

 

クソ、コイツマジでタチ悪いな。

 

 

「帰る前に一ヶ所寄りたいんだが、いいか?」

 

「長くならないなら構わないわ」

 

「俺もええで」

 

「多分10分ぐらいで済む」

 

一ノ瀬さんとの邂逅イベントやな。一応関わりもてるのは有難いぞ。

 

 

 

「あっついな……」

 

「ほんまそれ。ようこんなとこで喧嘩できるわ」

 

ついこの前放課後ずっと張り込んでたから見慣れた場所ではあるんやけどな。

 

「ここには無かったのね。残念だわ」

 

「え?なにが」

 

「教室にあるような監視カメラよ。もしカメラがあれば確実な証拠が手に入ったのに。この特別棟の廊下には見当たらない」

 

「ああそうか。監視カメラがあれば一発解決だったな」

 

「わざわざ見にこんでもカメラの位置なら俺が教えてあげたのに」

 

わざわざ一つ残らずマッピングしてるんやし。

 

「いや、俺が来たのはカメラを見に来たんじゃなくて事件現場を見に来ただけだぞ」

 

そういえばそうやったな。表向きはただの事件現場の視察やもんな。

 

「それで、須藤くんを救う策でも思い浮かんだ?」

 

「浮かぶわけないだろ。策を講じるのは堀北の役目だ。須藤を救ってくれとは言わないが、Dクラスにとって良い方向に転ぶ手助けをしてほしい」

 

「一応聞いておくけど、草元君は?」

 

「一応ってなんなん?なんか舐められてる気がするんやけど。いや、別になんも思い付かんねんけどさ」

 

そう言うと堀北ちゃんはため息を吐いた。

オォイ!!聞こえたぞ!今ボソっと使えないわねって言ったやろ!!

 

 

ある程度見終わったので帰ろうとしたら、曲がり角で綾小路君が佐倉さんとぶつかってしまった。

 

「ねえ君たち、そこで何してるの?」

 

綾小路君の俺は味方だぞアピールが終わって、佐倉が去った後一之瀬がやって来た。

…おい、俺を小突くな綾小路君。俺ん時だけ強気にイジリやがって!軽井沢とええ感じなり始めた時覚えとけよ!!

 

「ごめんね急に呼び止めて。ちょっと時間いいかな?もし甘酸っぱいデート中だったら…と思ったんだけど3人だしそれはないか」

 

「そうね。例え二人だとしてもあり得ないけど」

 

「あはは」

 

苦笑いしてるやんけ。そんなんやから友達出来へんねんで…

 

「私たちに何か用かしら」

 

「用って言うか……。ここで何してるのかなーって」

 

綾小路君が何となくと答えた。

 

「何となく、かあ。君たちってDクラスの生徒だよね?」

 

「……知ってるのか?」

 

「君たちとは2回ぐらい会ったよね。話はしてないけど。そっちの子も、図書館で一度見た覚えがあるんだよね」

 

綾小路君ったら覚えて貰ってて嬉しそうやな。かく言う俺も実は結構嬉しい。

 

 

なんだかんだで協力することになり、一之瀬さんの連絡先がアドレスに追加された。やったね!ひゃっほぅ!

 

 

 

ここからは特に何事も無く話は進展した。

買い物イベントがあったが、それにはついて行かなかった。そもそも佐倉さんがお呼びじゃ無かったしね。

別に櫛田ちゃんの私服見たかったとは思ってない。俺は制服の櫛田ちゃんが一番可愛いと思ってるから。

 

 

捜査からフェードアウトしつつ、学校のホームページの掲示板に張り付く。

掲示板が動き出したらすぐに動画に付いている音声と写真を投下。

どうしてボイスレコーダーの音声を使わないのかと言うと、動画が思っていたのより音声が拾えていなかったので、より薄い証拠として出せると思ったからだ。因みに声が響き過ぎて何言ってるか殆どわからんぐらい。

もちろんそれらは別々のアカウントで投稿した。

 

お、ポイント振り込まれてるぅー。

ではでは続きまして目撃情報投下ー!!

 

 

裁判の前日に目撃情報分も振り込まれた。

んーーウマウマー!

 

そして裁判当日、次の日にもう一度裁判か行われる事が決定したので、さらに動画を投下ぁー!!!

 

すぐに返信付きでポイントが振り込まれた。

ボイスレコーダーの音声も掲示板で貼ろうかと思っていたが、せっかく返事が来たんだし、その返信に音声を送ってあげよう。もちろんその分のポイントも頂きます。

 

 

結果として、Cクラスの悪質な証言と正当防衛が認められて無罪放免!

…となる事もなく、原作通り事件が隠蔽される事で収束した。

ただ、監視カメラを使った工作ではなく、単純に俺の動画を使った脅しになったようだ。

まあ、殴った事は変わらんし、万が一の停学を防ぐための一手やったってことかな。

 

ふー!良かった良かった!ガッポリ稼げたわ!

こればっかりは須藤君に感謝感謝!

 

 

これで次はようやくバカンスイベントや。

特になーんもする事ないし、夏休みを満喫しとくだけやなー。

 

それにしても2週間のバカンスか…船の上で何泊もするの初めてやけど酔ったりせえへんかな……一応酔い止めとかも買っていくか?

いや、いらんか。船の物は全部無料やし酔い止めもあるやろ。

 

うーん後なんかあったっけ?

 

…………ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ!

 

 

 

 

 

あーー!!!!!

 

 

 

 

 

 

2週間誰が水やりすんの!?????

 

やばいやばいやばい!!エアコンとかで多少気温がコントロール出来ると言っても水はどうにもならんぞ!?

どどどどどどどどどうすrrるぅぅー……

 

な、何とかせな!

なんか定期的に水をあげる仕掛け作る……無理や!思い付かん!

うーーーん、管理人さんに頼んでみるか!

 

………

 

無理でした☆

 

どうしよ…も、もう人に頼むしか無いか…

となると誰やろ。

名前知ってる先輩って言えば生徒会の人ぐらいか…

堀北会長…無理やろ。橘先輩……うん、無理。南雲先輩…………無いな。他……アカン思い付かん!なんで他は皆モブみたいな先輩ばっかなんや!!印象薄いねん綾小路君か!

 

えーとえーと、ほかに誰かおらんか?

 

 

 

 

 

………あ

 

 

 

 

 

 

おるやん!!

 

一人!!

 

タメで!!

 

バカンスに参加しない!!

 

生徒が!!

 

あの子しかない!!

 

 

坂柳有栖。彼女以外に適任は居ない(思い付かない)!

 

 

 

 

次回、『草元、ロリと交渉する』の巻!!




はい。ようやくオリ展開っぽいのに行きますね。
最近の悩みがあるとすれば片手間に書けない事でしょうか。
原作の小説片手に打ってるのでゲームしながら書いたり出来ないんですよね。…何の話これ

誤字報告あざす! 一ノ瀬→一之瀬に直しました。


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六話

うぉぉー!!鬼の1日二本投稿じゃあー!!!
感想が嬉しすぎて指が止まらんのじゃあー!!
はい、感想ありがとうございます。有り難く読ませて頂いておりますのでドンドン下さい。いずれ1日3本投稿し出す…いやそれは無いな。



残る行事が夏休みとなったある日の放課後。

一人の男がある教室の前に立っていた。

 

男の名は草元剛。ある教室とはAクラスの教室。

その要件は至ってシンプル、「バカンスの間水やりだけやってくれへん?」だ。

問題となるのはその言う相手がかの坂柳有栖であるということ。

 

あー、っべー…緊張する〜。

面接ばりに緊張すんねんけど…

 

喉渇いてきた…この教室の前に立ってから5回目ぐらい水やり飲んでもた。

情けない!情けないぞ草元剛!たかがタメの教室に女の子呼ぶだけやん。そう、何も恐れる事はない!

 

ええい!ままよ!!

 

 

「失礼します〜。坂柳さんおる?」

 

教室にいる全員の視線が俺へと向かう。

 

…か、かぼちゃや!かぼちゃやと思うんや!

………よし、おっけ。全員かぼちゃに見える。え、Aクラスはハロウィンなのかな?笑笑(精一杯の強がり)

 

 

「私に何か御用でしょうか?」

 

これが…生の坂柳さんか。可愛いな、シンプルに。でもごめんな、タイプちゃうねん。ロリコンでも無いしマゾでも無いから坂柳さんとは付き合えません。ごめんなさい(錯乱)。

 

「ちょっとお話があるんやけど今から大丈夫?」

 

あの日から、坂柳さんと話す事だけを考えていた。毎日毎日イメージトレーニング(妄想とも言う)していたが、このお誘いだけはどうにも失敗する気がしなかった。

というのも、坂柳さんは罠を避けるタイプではなく罠にハマって踏み潰すタイプだから、こうゆう誘いにも一先ず乗ってくる。

 

「………………構いませんよ」

 

よし。第一関門突破ァ!

 

「出来たら場所変えたいんやけどええかな?」

 

これは正直どっちでも良い。ここで話す事になっても、既に予約して席を取っておいたカフェで話す事になっても良い。

そもそも俺の話は全くやましい話では無いしな。

 

「構いませんよ。…少々お待ち下さい、準備して来ます」

 

「あいよ」

 

そう言って自分の席に戻って行った。

 

………ふぃー、ここまでは予定通り。

俺達の戦いはこれからだ!

 

 

「お待たせしました。では行きましょうか」

 

そう言ってやって来た坂柳さんには二人の側近、橋本正義君と神室真澄さんがいた。

これもシミュレーション通り。一人は必ず付いてくると思っていたので想定の範囲内。

とは言え全く触れないのもおかしいので、一応触れておく。

 

「そっちの二人は?」

 

「お友達の橋本正義くんと神室真澄さんです。私は体が弱いので付き添ってくれています」

 

これ俺が告白とかやったらどうしてたんやろ…

他人二人に囲まれながら告白なんかもうほぼ公開告白みたいなもんやからな。黒歴史確定よ。

 

「ほーん……んじゃ行こか」

 

 

 

 

カフェに到着した俺達は、予め予約しておいた4人掛けのテーブルのある個室に入った。

 

「随分と用意がよろしい様ですね」

 

「まあ、席が埋まってて座れんくて恥かくよりマシかと思ってな」

 

「それもありますが、4人分の席を用意している事です」

 

ほ?そんな事気になるか?

普通に2人だけやとしても隣の席にカバンとか置いたりするから不自然じゃない気がするんやけど…

 

あ、坂柳さんは2人が付いてくること分かってて4人席取ったんじゃないの?って聞いてるんか!

そーーれはちょっと買い被り過ぎやと思うけど。

 

まあ折角勘違いしてくれそうな所やし、得体の知れない奴感出しといた方がええかな?

 

「ただのたまたまや。そっちが3人で来ることが分かってた訳とちゃうで」

 

「……………まぁ良いでしょう」

 

そう言って真ん中に座った。

真ん中、つまりわざわざ俺側から一つ椅子を持って行って両脇に座らせたという訳だ。

 

「エライ個性的な座り方するんやな。普通2:2じゃない?」

 

「そうでしょうか?そう言えば、名前を聞いて無かったですね」

 

「そういえばそうやね。Dクラスの草元剛や、よろしく」

 

「よろしくお願いします。それで、お話とは?」

 

よし。

 

「まずは確認から。夏休みに2週間のバカンスがある事は知ってる?」

 

「えぇ、もちろん知っています」

 

「その事なんやけど…」

 

続けようとした瞬間、坂柳さんが獲物を見つけた様な目を俺に向けていた。

こっえぇ…マジでなんでも知ってそうな雰囲気あるんやけど。

 

「………坂柳さんってそのバカンス行くの?」

 

「………私はこの体ですので、バカンスは医者の方に行かない様に言われています」

 

そう言うと、橋本くんと神室さんが驚いた様な顔を見せた。

どうやらまだ2人には伝えていなかったようだ。

 

「よし。んじゃあお願いがあるんやけどさ…

 

 

 

…俺の代わりに"水やり"やってくれへん?」

 

 

「「「は?」」」

 

おぉ、ハモった。

てか坂柳さんこんな間抜けな顔すんのや…ギャップでちょっと萌えます。

 

「……水やり…何かの比喩……でしょうか?」

 

よし、完全に場を呑んだ!(監獄学園感)

 

「あぁ、まぁ端折り過ぎたよね。一から説明するな?」

 

ー説明ちうー

 

「なるほど。つまり2週間のバカンスの間、あなたの部屋の野菜に水をやればいいと」

 

「そうゆうことやな。もちろん毎日とは言わんで。3日に一回…いや4日に一回でもええから、頼まれてくれへんかな?」

 

さあ、どうなる?ここからは考えたパターンが多すぎて逆に未知、殆どアドリブになる。

 

「話は分かりました。…いくつか質問をさせて貰っても?」

 

「どうぞ」

 

「まず、どうして私にこの話を?他学年の先輩にでも頼めば良かったんじゃないですか?」

 

「それが出来たら苦労してへんわ。部活もしてないし全く関わりなんか無かったしな」

 

「…なるほど。では次の質問です。

そもそもどうして野菜を育てているのですか?」

 

「趣味なんや。とは言ってもどっちかっていうと料理が趣味なんやけどな。自分で作った野菜やと美味しく感じるからな」

 

自分で作った野菜が美味しいのはマジ。そうゆう補正で美味しく感じるんかちょっと微妙やけど、市販のよりも美味しく感じるのは確かや。

 

「では次の質問です。

あなた、いつから私がバカンスに行かないと知っていたんですか?」

 

き、きた!「いつから知っていた」系の時に一番使いたいランキング1位のあの言葉が使える!

 

 

「お前が母ちゃんの子宮ん中居るときからや」

 

 

…………………………え、なんか喋ってくれへん?スルーは流石に傷付くんやけど。

おい、橋本くん笑い堪え切れてないぞ!もっとしっかり笑ってくれ!

 

「なんやノリ悪いやっちゃな」

 

「………ノリ?」

 

横で神室さんが溢した。おいおいまさか君達BLEA○H知らない?

俺は平子隊長めちゃくちゃ好きやで。卍解見せて欲しかった感はあるけどな。

 

「まともに答えるつもりは無いと?」

 

「ま、そうゆう事やな。知りたかったら俺の頭でも覗いてみたら?」

 

んー、ペース掴めてるからめちゃくちゃ強気になってまうんやけど大丈夫かな?こうゆうのってもうフラグ立ってたりするんやけど…あ、これもフラグか!

 

 

「…まあ良いです。それで、その水やりを引き受けて私に何のメリットがあると?」

 

それは予想したパターンのうちのひとつ。

 

「メリット?なんか勘違いしてないか?これはお願いや。俺が坂柳さんにお願いしてそれを叶えてくれるかどうかってゆうな」

 

「今日会ってばかりの人間のお願いを何の見返りも無しに聞くと?」

 

「坂柳さんは見知らぬ人に『ちょっとペン貸して下さい』って言われたら『それで自分にメリットあんの?』とか言うんか?」

 

「…………………」

 

たしかにビジネスライクな"取引"をするんやったら坂柳さんの姿勢が正しいけど、俺があくまで"お願い"ってゆうスタンスやからそちらの主張は通らない。

というかそもそも此方に交渉出来るカードが無い。

ポイントは明らかに向こうの方が持っているので、こっちが出そうとしたところで突き返されるのがオチだ。

 

とは言えこのスタンスを貫いていても、何のメリットも無い話を坂柳さんが飲む訳がない。

 

「話になりませんね。2人とも帰りましょう」

 

そう言って席を立とうとするがそうゆう訳にも行かない。俺は何としても水やりをやってもらわねばならない。

 

俺の武器は一つ。情報だけ。

 

 

「葛城派、そろそろ潰しときたくないんか?」

 

坂柳さんの動きが止まる。

 

「こんな学校や。2週間がただのバカンスで終わる筈がない。何かがあるのは確実やろな」

 

坂柳さんが座り直した。

よし。なんとか食いついたな。

 

「もしお願い聞いてくれたら特別試験の最中に坂柳さんからのお願いとか聞いてあげれるかも知れへんなぁ?」

 

これが今出せる俺の最大限の自分の価値。

これ以上の情報は出せない。今この時が一番の勝負所という訳でもないのでこれぐらいが限界だ。

 

 

「…良いでしょう。あなたの"お願い"、引き受けます」

 

「え、マジで?」

 

出せる情報は限界って言ってたけど正直無理やと思ってた…

綾小路君の話とか出そうと思ってたんやけどこれはラッキーか?

 

「ええ、構いませんよ。3日に一回でよろしいですか?」

 

「ああ、うん」

 

えー!やったやった!!これで俺の野菜たちは救われた…

 

「注意する事はありますか?」

 

注意する事……あ

 

「もやし、多分2週間の間に収穫出来るようなってると思うから取って帰ってええで。後は……イチゴも何個か取って行ってええよ。……それぐらいかな?」

 

流石に部屋を汚したりはせえへんやろ…

 

「…はい、分かりました」

 

「ふぅ、んじゃそうゆう事で」

 

いやー!良かった良かった!この前稼いだポイント全部吐き出すつもりでおったかほんっまに良かった!

 

「では、ここでお願いしておいても?」

 

安堵に浸っていると、坂柳さんが話しかけてきた。

 

「おん?別にええけど」

 

 

「あなたはどこまで知っているんですか?それを教えてください」

 

おーーーーん。

 

「どこまで…とは?」

 

「先程、あなたは『特別試験』と言いました。今まで聞いた事のない単語ですが、あなたはさも当然のように使いました。つまりバカンスの間にその『特別試験』があるという事を知っているんですね」

 

あ、あれ?ガバッた?そう言えば特別試験って言ってたか?

これはめんどくさいぞ…

 

正直に話す…のは絶対無い!

知らんぷり…はそんなんしたら水やりしてくれへんかも知れへんから無し!

適当にでっち上げるしか無い……か。

でもまだ粘れるからもうちょっと粘ってみよう。

 

「そんなん言ったっけ?」

 

「あくまでもシラを切りますか…ならもう一つ。この4人分用意された席、私が普段から2人連れている事を知っていたんでしょう?初対面にも関わらず2人に何の意識も払う事なく話していましたし、何も口を挟まないのも分かっていたようでした」

 

へ、へぇ〜…や、やるじゃん。

そう言えばホットリーディングだとかコールドリーディングだとかが使えるとか言ってたし、嘘を見抜いたらするのもお手の物なんやろなぁ…

 

だが俺だって隙を見せる訳にはいかない。

"色んな情報を握ってる得体の知れない奴"感出しとかなアカンねん!

 

「なるほど…流石やな坂柳さん。聞いてた以上に鋭いみたいや」

 

「フフ…ありがとうございます」

 

「それで、どこまで知ってるのか…やったな」

 

「はい」

 

「全部や」

 

「……はい?」

 

「別に学年全員のスリーサイズから家族構成まで知ってる訳じゃ無いけど、ある程度の事は知ろうと思えば知れる。そうゆう立場におるんや」

 

「具体的には?」

 

「それは言えへんな。俺の武器は情報だけや。みすみす捨てるような真似は出来んわ」

 

「学校側に内通者が居ると?」

 

「さあね。リーク元も重要な情報やからな。教える訳にはいかんわ」

 

「…………」

 

「もうこれで満足出来たか?」

 

「……まあ良いでしょう。一先ずこれで満足しておきます」

 

「ふぅ……んじゃあお金は払っとくから、2週間の間よろしくねー」

 

そう言ってカフェから出た。

 

 

ふぁーーーー!!!あっぶねぇー!!冷や汗かくわ!

嘘ついても全部バレてる気がしてヒヤヒヤするねんってー…

もう二度と坂柳さんとはお話ししない!!絶対!!

 

こうして、何とか水やりをお願いすることに成功した。

 

ーMISSION COMPLETE‼︎

 




はい。今回はちょっとシリアスめでした。

平子さんは藍染のせいで弱い感じなってたけど、俺は強いと思います!というかあの強者感が好きです!!…何の話これ

全然誤字報告無くて逆に心配なんですけど、ほんまに無いんですか?(疑心暗鬼)


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七話

まだ俺寝てないから実質連日投稿やな。いや、別にだから何?って話なんやけど。

ほんのちょびっっっと長いかな?


青い空、青い海。俺達は船の上でバカンスを楽しんでいる。

束の間の休息なわけだが、生徒達が知る由もない。

 

かく言う俺も楽しませて貰っている。

ずっとステーキ食ってるわ。お前ら肉の有り難み知らんやろ?毎日毎日もやし炒めしか食ってないからな……牛肉なんか久しぶりなんじゃあ!!!

 

 

そういえばこの前、池からプールのお誘いがあったがお断りさせて頂いた。原作ではバカンスの後だったが、アニメの方に合わせたようだ。

断った理由は一つ。あそこがカオスになるから、というか坂柳さん来るから。二度と会いたくないわホンマに。

 

 

まあ、そんなわけでこのバカンスにやって来た。

今回のバカンス…というか無人島でも、ただただ過ごすだけの予定では無い。

俺の目的、それはスイカ。どうにも調べたら、普通にスイカの種を植えたらワンチャン育つらしいやん?種を回収しまくって一山当↑ててハ↑ワイ旅↑行や!

ってなわけで俺の今回の目的はスイカの種の回収。

 

 

『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒達は30分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れず持ちデッキに集合してください。それ以外の私物は全て部屋に置いてくるようお願いします。また暫くお手洗いに行けない可能性がありますので、きちんと済ませておいてください』

 

肉の旨味と有り難みを噛み締めていると、アナウンスが鳴った。

……そろそろか。

試験の始まりを感じ取った俺はペースを上げて腹一杯にお肉を詰め込んだ。

 

 

 

 

外に出ると、夏の日差しが俺達をステーキにしようと猛威を奮っている。うわー海冷たそうやなー。

 

 

『ではこれよりーー本年度最初の特別試験を行いたいと思う』

 

真嶋先生から試験の概要が伝えられ、試験がスタートした。

 

今回の試験は、暮らしの質を向上させるだけで他には特にすることが無い。ほっといても勝手に試験は勝ってるしね。

暮らしの質の向上というのは、具体的にはBクラスの作戦のパクリだ。ビニールとかを敷き詰めて寝心地を良くしたりね。

後は料理スキルを披露するぐらい?

十傑に数えられる俺の料理で腰を抜かさずにいられるかな?因みに残りの9人は"もやし炒めの神"の俺とか、"大根の煮物の王"の俺とか…全部俺です。

 

 

今は目の前でトイレ論争が繰り広げられている。

俺は正直立ちションでもええんやけど、流石に女子にそれを強要する気にはなれないんでこのトイレ論争は女子側に付きます。ま!何も喋らないんですけどねー!!

 

 

一先ず日陰に入る為に移動する事になったので、なるだけ重くて大きい荷物を持つ。少しでも女子からの好感度を上げておくと、下着泥事件の時に多少は疑われずに済む……はず!

 

 

「あなたもAクラスを目指している訳では無いのよね」

 

歩いていると、堀北ちゃんに話しかけられた。

"も"?あぁ、綾小路君と話してたんか。

 

「まあーせやなー。より良い暮らしをする為にポイントは増やしておきたい所ではあるんやけどな」

 

勝手にAクラスに上がってるはずやから気にせんでもええんやで。

 

「というかあなた、協力するって言っておきながら結局何もしてないわよね」

 

「は?それは嘘やって!テストだって協力したし須藤君の時やってそこそこ動いたやん!」

 

「何の役にも立ってないけれどね」

 

このアマー!!(御手洗友人A感)

俺がおらんかったらどうなってたと思っとんねん!

須藤君の時なんかあれやぞ?俺がおらんかったら証拠も集まらんと裁判挑むことなって…………あ、そう言えば俺が何もせんくても解決するんでしたね。

 

「くっ…!何も言い返せへん!」

 

 

堀北ちゃんと話していると、平田君が立ち止まって幸村君への説得を始めた。

…平田君がただ喋ってるだけで女子は顔赤らめるんですかねぇ。ペッ!気に入らねえ野郎だぜ!

 

説得に成功し、拠点の捜索をする事になったが俺はパス。

理由は単純、12人集まる事は確定してるんやしわざわざ端数つくる必要もないから。

 

「綾小路君は行くのにあなたは行かないのね」

 

「なんなんその綾小路君の付属品みたいな言い方」

 

「あら、違ったの?」

 

ふ、ふーーん。俺に喧嘩売るとはええ度胸しとるやないか。俺と喧嘩なんかしたらどうなるか教えたろか?

お前は2秒後には返り血で真っ赤に染まってるんやで。

 

というか、最近綾小路君との関わり少なくない?って思われるかもしれへんけど毎晩風呂借りてるからね?

 

「…ねぇ、あなたは彼の事を知ってるの?」

 

「彼?綾小路君の事?」

 

「そう」

 

うーん、どう答えたもんかな。

 

「と、言いますと?」

 

「彼の事が理解出来ないの。茶柱先生が言うには優秀な生徒らしいけれど、私にはそうは思えない。あなたの目から見て彼はどうなの?」

 

「せやなー、まあ大枠では普通の生徒なんちゃう?点数が全部50点やったってぐらいしか俺はあいつの凄いとこ知らんしな」

 

「…………そう」

 

これで満足したかな?

実は須藤君の件でちょっとだけビクビクしてたんやけど気にしすぎやったかな?まあバレるような要素も無いしな。

 

 

暫く森を眺めていると、3バカ達が帰ってきた。

ふう、ようやく川を見つけたか。流石にちょっと喉渇いたわ。

 

3バカの発見したベースキャンプに到着した。

そう言えばここでまた川の水論争が始まるんか…

まあ普通に考えたらちょっと心配よな。草元、飲みます。

 

「うん、美味い!」

 

「だ、大丈夫なの?衛生面とか…」

 

篠原が話しかけてくる。

 

「多分大丈夫。学校が水源とかも管理してるんちゃうかな?」

 

一応それらしい理由も付けておいた。原作では最初に池が飲んで「有り得ないんですけど〜」みたいな事言われて可哀想なので助けてあげた。女子の「気持ち悪い」とか「キモい」は思った以上に応えるからな…(経験談)

 

「もしアレなんやったら一回沸騰させたらええと思うで」

 

須藤君が言うセリフも取らせて貰う。スマンな須藤君。池を救った代わりに俺の好感度を上げさせて貰うわ。

 

「うん、そうだね。一度沸騰させてから飲むようにしよう」

 

平田君の一声で水問題が解決する。

いやー、険悪ムード回避出来て良かったわ!

 

その後、なんやかんやで堀北ちゃんがリーダーになった。

 

 

 

さて、ようやくテントなんかを設置し終えてベースキャンプの設備が整って来たので、ビニール敷き詰め作戦を決行する。

 

「なあ平田君」

 

「ん?どうしたの?草元くん」

 

「ビニールが無料って話やったから、たくさん貰って地面に敷いたら寝心地とか良くなると思ったんやけど、どう?」

 

「…うん、いいんじゃないかな。皆硬い地面の上じゃ寝にくいだろうし」

 

「おっけー、んじゃ貰ってくるわー」

 

 

「茶柱先生、ビニール下さーい」

 

「ああ、一つでいいか?」

 

「うーん、一先ず200個で」

 

「200?何に使うつもりだ?」

 

「ただ地面に敷くだけですよ。別にルール違反でも無いですよね?」

 

「ああ、わかった。少し時間がかかるからそのつもりでいてくれ」

 

「あーい」

 

よし、これで一先ずおっけーかな。

 

 

後は……

 

坂柳さんとの交渉の後、俺はちょくちょくサバイバル系の動画なんかを調べていたが、暮らしに必要最低限の物を揃えるような物が多く、元々ある程度必要な物は揃っているからあまり役立ちそうも無かった。

しかしもちろん役立った知識だってある。

例えば火。原作では山内がマッチをアホほど無駄にして醜態を晒していたが、今回は俺がしっかりと火をつける事に成功した。

…すまねぇな池。お前の唯一の見せ場を奪いまくってて心が痛むぜ!

 

とは言っても流石に木の実なんかを調べたり覚えたりする時間は無かったので、そこは池の活躍の場となった。

木の実とかオボンとかオレンとかあのへんしか見分けつかへんなぁ…あ、違う?

 

 

なんやかんやでみんながええ感じに纏まって、伊吹がやって来て、高円寺のリタイヤが発覚して1日目が終わった。

 

 

 

2日目の朝、気付いたら外で結構な話し声が聞こえる。

テントの中には誰もおらず、どうやら一番遅くに起きたようだ。

まあ、そこそこ寝心地は良かったな。ビニールの上に草を敷き詰めたりもしたし、キャンプなら上等な寝心地やろ。

 

「お、やっと起きた!早く早く!もう点呼始まるぞ!」

 

どうやらもう8時前だったようだ。危ない危ない。

ってか別に起こしてくれても良くないか?

 

点呼を終えるとCクラスの2人がやって来て、Cクラスのキャンプへとお誘いを頂いた。

綾小路君と堀北ちゃんは向かう様やけど、俺はパス。

わざわざ龍園君との関わりを作る必要は無い。

なんならもう他の誰とも関わり持ちたくないわ。ちょくちょくポイント稼ぐだけでいいし。

 

てな訳で今日の予定は森の探索。煙が上がってるから迷う心配も無いし、安心して探索できる。

 

こうして5日目を迎えるまで特に他クラスと関わる事もなく過ごしていた。

 

 

事態が急変したのは5日目の朝。

もちろん分かってたことやけど、下着泥事件。

 

軽井沢さんの下着が盗まれた訳やけど、俺を疑うのはやめとけ。俺は盗むなら櫛田ちゃんのパンツを盗むからな。

 

 

荷物検査、そして身体検査を終えて男子の潔白が一応証明された。

それにしても平田君イケメンやな。俺なら綾小路君を晒し首にしてたで。

 

 

その後「下着泥と一緒の部屋に居られるか!」と言った死亡フラグを建てた女子達。

被害者の地位をふんだんに利用した女子が生活スペースを半分に分ける提案を出した。

もちろん男子達は猛反対。俺は正直妥当な処置な気がせんでもないから、中立っぽい感じで平田の近くに立っておく。

 

あーあー、醜いねぇ!と高円寺感を出して場を見守っていると、どうやら俺は容疑者から外され気味らしい。

え、いや嬉しい事は嬉しいんやけど…なんか居心地悪いわ。

好感度上げてたのが裏目に出たか?正直矢鱈に立たされるような事にさえならんかったら良かったんやけどな。

確かに男子の中で言えば軽井沢らへんとはそこそこ仲良くさせて貰ってるけど、そんなに信用あったんやな…

 

それにしてもホンマ胸糞やな。特に軽井沢さん。インパラ佐倉さんにお前ライオンが威圧振りまいて恥ずかしく無いんか?「え?もしかして佐倉さん綾小路君の事好きなの?www」は流石にイラつきました。

 

 

結局男女別れて生活する事になって、親善大使として活躍する平田君の補佐に回る事になった。

 

正直こうゆう女子あんまり好きちゃうんよな…なんか偉そうなのが気に食わん。

「被害者なんやから気ぃ使えやオラぁ!」みたいな強気で来る女子は十中八九冤罪仕掛けてるってそれ一番言われてるから。

 

因みに女子が強請った扇風機とかその辺はなんとか食い止めました。出来たら女子の怒りは買いたく無かったけど、どうせ試験が終われば伊吹ちゃんが盗んだ事が発覚するから今我慢するだけって事で。

 

 

6日目の朝、綾小路君の叫び声で目が覚めた。

何があったか聞いたら、「須藤に…いや、なんでもない」って。あぁ、アレか。可哀想に…。

 

 

今日は雨が降って過ごしにくくなるので、前々からちゃくちょく作っておいた雨除けの屋根を完成させる事にした。せいぜい縦1メートル、横2メートルぐらいだが、無いよりかはマシなハズ。

残っていた男子にも協力してもらい、三つぐらい作って女子には無い男子だけのアドバンテージを得た。

これで女子にもマウントが取れる。「君たち濡れてるけど寒く無いのー?」ってね!俺が言わずとも池辺りが言ってくれるやろ。

 

 

それにしてもようやく明日で試験も終わりかー。はー。

そうそう、目的のスイカの種ね。なんとか回収出来ました。

ちゃんと育つかは運やけど、まぁ無料のボーナスみたいなもんやし正味どっちゃでもええわ。

 

 

ボヤ騒ぎが起き、伊吹ちゃんが消え、堀北ちゃんがリタイアして6日目は終了。

 

原作通りの流れである事に安堵し、俺はぐっすりと睡眠を取った。

 

 

 

7日目、試験最終日。

なーんにもやる事無いので片付けを手伝ってお仕事は終わり!

後は結果発表待つだけやな!

 

 

砂浜に集まると、初めて見る龍園君が居た。

おー、すげぇ。野性味が溢れてワイルドやね!え?ヒゲ剃ってないからそう見えるだけって?確かにそうかも…

 

 

試験の結果は、

Cクラス 0ポイント

Aクラス 120ポイント

Bクラス 140ポイント

Dクラス 237ポイント

となった。

 

原作より少し多いのは、女子達に扇風機とか買わせんかったからかな?

 

 

ま、結果の分かってる出来レースみたいなもんやしな。

ちょっと結果が変わるのは次の船上試験か。

次の試験は、ガッポリプライベートポイントを稼がせて頂きます。




はい。まさか無人島編が一話で終わるとは思わんかった。
サクサク進んで良かった……かな?

次の試験のルール説明とかっていりますかね?
文字数使うし、しょーみ読まんかなーって思うんですけど。


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八話

ディスカッション飛ばしたら一話で終わるんですけど、流石にそれは手抜きかなって思ったんで考えてみました。
うーん。なんかチート感出ちゃったか?


さて、お次は優待者当ての試験な訳やけど、これは原作知ってればヌルゲーもええとこやな。

この優待者当ての試験は、優待者の法則を見つけ出せば勝ちは確定、つまり俺はもう既に勝っているのだー!!フハハー!

 

なんてステーキを頬張りながら考えていると、キーンという高い音で学校からのメールが届いた。

ずっとステーキ食ってるなって?君達はまだ肉の素晴らしさを知らないだけなのだよ。

 

『生徒の皆さんにご連絡いたします。先ほど全ての生徒宛に学校から連絡事項を記載したメールを送信いたしました。各自携帯を確認し、その指示に従ってください。また、メールが届いていない場合には、お手数ですがお近くの教員まで申し出てください。非常に重要な内容となっておりますので、確認漏れのないようお願いいたします。繰り返しますーー』

 

放送に従ってメールを開くと、次の事が書かれていた。

 

『間もなく特別試験を開始いたします。各自指定された部屋に、指定された時間に集合して下さい。10分以上の遅刻をした者にはペナルティを科す場合がありす。本日20時40分までに2階206号室に集合して下さい。所要時間は20分ほどですので、お手洗いなどを済ませた上、携帯をマナーモードか電源オフにしてお越し下さい』

 

ふむ…20時40分……流石に時間までは覚えてないから同じグループの人が誰かはわからんけど、遅めでよかった。ゆっくり食事を堪能出来るわ。

 

 

 

20時半ごろ、指定された部屋に向かった。

なーーーんか、嫌ーな予感すんのよなぁー。

なんなんやろ。同じグループに橋本君がおるとか…アルベルトとかおったら気まずいやろな…

 

 

集合場所のフロアに到着した俺は、自分の予感が間違っていなかった事を知る。

 

 

 

 

「俺はお前の非道さを許すつもりはない」

 

「あ?非道さ?一体何のことだよ。身に覚えがねーなあ。具体的に教えてくれよ」

 

「……まあいい。今回同じグループになったとしたら、ゆっくり話す時間もあるだろう」

 

そこでは葛城君と龍園君が睨み合っていた。

 

 

は?は?は?は?は?は?は?は?は?は?

 

「な、な、なんやこれ」

 

「草元くん!君も20時40分組?」

 

平田君が話しかけてくる。

 

「お、おぉ。そうやけど…」

 

なんで俺が死のグループなんや!??

全くクラスの中心みたいなことは無いのに…

 

はっ!まさか茶柱!?貴様か!貴様が俺を嵌めたのか!!おのれ茶柱ぁ!!孫子の代まで許さんぞぉぉ!!!

 

 

茶柱先生への恨みを馳せているうちに説明が終わったようだ。

てか、櫛田ちゃん来んかったんやけど。もしかして…入れ替わってる!??キミノゼンゼンセカラボクハ~

 

なんって事や…。これは想定外。まさか茶柱先生、俺を殺す気か?俺は退学する時は君も道連れにするからな?覚えとけよ!

 

ま、まあ、俺が優待者当てれば話し合いの場は終了するわけやし、問題無いかな。はぁー、さっさと優待者当ててお肉食べよ。

 

あれ?

 

 

 

あれれれ?

 

 

あれれれれ?

 

 

 

ま、まさか……

そう思って急いでメンバーを確認する。

A 葛城康平、西川亮子、的場信二、矢野小春

B 安藤紗代、神崎隆二、津辺仁美

C 小田拓海、鈴木英俊、園田正志、龍園翔

D 草元剛、平田洋介、堀北鈴音

 

これを名前の順に並び替えて

 

安藤、小田、葛城、神崎、草元、鈴木、園田、西川、平田、堀北、的場、矢野、龍園

 

の順番となって、俺たちは辰グループなので、干支では5番目。

つまり優待者は

 

 

 

☆お   れ☆

 

 

 

い、や。いやいや、ま、まだ!まだワンチャンある!この際ポイントなんていらないですから!なんとか優待者だけは!勘弁してください。ほんま茶柱先生すいませんでした。ちゃんと協力するから!なぁ、お願い!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれました。グループの一人として自覚を持って行動し試験に挑んで下さい。本日午後1時より試験を開始いたします。本試験は本日より3日間行われます。竜グループの方は2階竜部屋に集合して下さい』

 

 

神は………死んだ……………

 

翌日の朝8時、優待者を告げるメールが届き、俺は絶望していた。

 

まあ、そりゃね?嫌な予感はしてたよ。櫛田ちゃんと入れ替わってる時点で「あれ?櫛田ちゃんと俺の間に人おらんくね?」って薄々気付いてたよ。「コレフラグじゃね?」って思ってたよ。

でもさ?でもさでもさ?まさか俺を優待者にするとは思わんやん?

どうしたらええんや?

 

 

考えろ!どうやったら試験を乗り切れるのか!

 

まず、この試験は龍園君が勝つ。これは確定事項。

勝敗を下手に弄るとこれからの動きに支障が出るかもしれへんしな。

で、その龍園君は今回の試験、原作では櫛田ちゃんと取引をして、優待者を教える事で法則を見つけ出した。

つまり俺が優待者だとバレなければこの試験は終わらない。はず。

 

問題は俺が隠し通せるかどうか。

葛城君は沈黙を貫くはずやからほっといて良い。

神崎君は…どうやろ。まあ、ええ奴やし優待者を炙り出すようなマネはせえへん……と信じたい。

で、問題の龍園君やけど……うーーん。炙り出しとかするんかな?そうなったら綾小路君が取ったような策が必要なんやけど…。でもあれか。今回は標的がAクラスやから、俺が狙い撃ちされるような事は無いかな?

となれば葛城君と神崎君にさえバレんかったらオッケー…って事でええかな?

でもなー。俺が申し出てあげへんかったら法則が見抜けずに、Aクラスが落ちへんかもしれへんのよなー。いや、龍園君に限ってそんな事ないか。

俺的には結果2か4でプライベートポイントを得たいところやけど、変に変わるよりかは結果1で終わる方が得策やんな、きっと。

 

よし。

一先ず堀北ちゃん達に俺が優待者の事教えとくか。

流石にクラスの人が知らんのは不味い気がするしな。

 

 

っはぁーヤダヤダ。なーんであんなカオスな空間に行かなアカンねん。ホンマに。もう龍園君に教えてあげちゃう?いやそれは無いか。

 

 

考えを一通り纏めて、一度目のグループディスカッションに向かった。

 

 

 

 

「お、神崎君達Bクラスはもう来てたんか」

 

「草元か、お前も早いな。まだ20分前だぞ?」

 

「いやー、ちょうどキリが良い所でな」

 

もちろんちょうど肉を食べ終わった所、という意味なんやけど。

 

しばらく雑談に花を咲かせていると、平田君が入って来て、続いてAクラス、ちょっと後に堀北と来て、最後はCクラス。

 

あー、なんか緊張してまうわ。

 

 

「一先ず、自己紹介をしようか」

 

試験が始まり平田君が切り出すが、反応が薄い

 

平田君が自己紹介を始めたので隣の俺が続けて自己紹介をした。自己紹介って言っても名前言っただけやけど。

この流れでぐるーっと自己紹介が回っていき、一通り自己紹介を終えた。

 

 

気まずい沈黙。

 

静寂とか、なんつーの?ワビサビ?みたいなんは嫌いじゃないけど沈黙は流石に居た堪れなくて辛いです。

その沈黙を切り裂きたいのは山々だが、この面子で喋り出せるほどの強靭なメンタルを持ち合わせていない。

 

 

沈黙を切り裂いたのは、葛城君だった。

選ばれたのは、Aクラスでした(綾鷹感)。

 

「俺達Aクラスは沈黙を貫かせてもらう」

 

「理由を聞いてもいいかな?」

 

「単純な話だ。結果1、もしくは2なら俺達Aクラスにデメリットはない。わざわざ話し合いをして裏切り者を出す必要は無いという事だ」

 

「クク。随分と保守的な考えだな。そんなんじゃ坂柳には勝てねぇぜ?」

 

「…………」

 

お、もしかして空気ちょっと軽くなってる?いや、重くなってるか?何にせよ会話はしやすくなった。

 

「坂柳?って誰?」

 

小声で平田に聞く。もちろん知ってるけど、これは会話を広げる一手。別に「Aクラスのリーダーの坂柳だ」なんて言わせて葛城君を煽る目的なんか一切無い。

 

「Aクラスの子だよ。この船には乗ってないみたいだけどね」

 

「ほーん。そう言えばAクラスが派閥に分かれてるだとかなんとか聞いた事あったな」

 

「そのリーダーの一人がその坂柳だ」

 

Bクラスの神崎君が答えてくれる。

ん?ここもしかして煽りポイントか?

 

「へー、そうなんや。じゃあもう片方のリーダーは誰なん?」

 

「そこの葛城だ」

 

そう言って腕を組んで目を瞑った葛城君を指さした。

 

「へー!そうやったんや!人って見かけによらへんのやね!」

 

「ぷっ」

 

「クク」

 

とてもじゃないけどリーダーっぽく見えないよね!って意味を込めて言ったが、みんなに伝わったようで何よりだ。

 

Aクラスの一人が目を開けて俺を睨んでいる。名前なんやったっけ。まあ所詮モブやし覚えてんでもええやろ。

じゃああの子は葛城派って事かな?

 

「言われてるぜ葛城」

 

龍園君が葛城君を煽ったので追撃。

 

「あぁ、ちゃうねん!そうゆう意味じゃなくて、バカにしてるとかじゃなくて、その……感性って人それぞれやん?」

 

サンドバッグ殴ってるみたいで楽しいなぁ!?

 

「草元くん、あなたもう喋らないで」

 

「………ウッス」

 

堀北ちゃんに止められちった。おいおい堀北ちゃん、頬緩んでるで?ちょっと楽しかったんやろ?許可さえくれたらAクラスを煽り散らしてもええんやで?

 

 

結局許可は降りず、俺が喋らなければ平田がちょくちょく口を開く程度で、一度目のグループディスカッションは終了した。

 

 

 

……あ、俺自分が優待者な事忘れてた。

目立ち過ぎたかな?

ま、ええか。何にも喋らんくてもバレる時はバレるしな。

 

 

 

続いて二度目のグループディスカッションがスタート。

今回はステーキにニンニクを乗せて食っていたせいで口臭が気になるのでマスクをつけて行った。

 

「草元くん、どうしてマスクつけてるの?」

 

早速平田が聞いてくれた。いぃ〜い質問だぁ。

 

「あー、うん。さっきまでステーキ食ってたからちょっとニンニクがね。誰かブ○スケアとか持ってない?」

 

見回すが誰も反応がない。流石にドラえもんばりになんでも持ち歩いている人は居ないようだ。

 

「クク。"臭いものに蓋"だな」

 

ホンマにその通りやわ。上手いな。座布団一枚!

 

「歯磨きぐらいして来たらどうなんだ?」

 

お?なんや葛城ぃ!1回目の事を根に持ってるんか?

 

「え!まさか葛城くぅん、ニンニクの性質をご存知ない!??ニンニクって腹から臭いがする食いもんやから歯磨きしても治らないんやで?常識やと思ってたんやけどなぁ??」

 

ウハハハハ!マウント取りの草元と呼ばれた俺を舐めるなよ?

 

「ぷっ…く、草元くん、や、やめなさい…ぷふっ」

 

「おい!お前!Dクラスのくせに調子に乗るなよ!」

 

葛城派と思われる子が突っかかってくる。

 

「Dクラスのクセにって…ここの二人は多分君よりずっと優秀やで?」

 

「なんだ、自分では無理だから他人の手を借りるのか?まさに虎の威を借る狐だな」

 

「あれ?意外やな。Dクラスって見下す割にはこの二人を"虎"やと認めてるんや。なんなら俺も狐やったら上等やろ。日本の食物連鎖で言えばキツネだってほぼトップやしな」

 

「ふ、ふん。それは日本という狭い世界での話だろ?広い世界で見れば狐より優れた捕食者は大勢いる」

 

「確かにせやな。つまり狭い世界…それこそこの学校ならほぼトップってことやな」

 

「くっ…屁理屈を!」

 

「もうやめておけ」

 

「葛城さん!でもコイツが!」

 

「こういう人間に口で勝とうとしても無駄だ。どうせ口先だけだ。放っておけ」

 

「…………はい」

 

ふむ。これは自分、論破しちゃったの方よろしいか?

 

 

「Dクラスにも随分面白い奴がいるみたいだな」

 

「そうね。彼が初めて役に立った所を見れて良かったわ」

 

え、アレで役立ったの?ただ堀北ちゃんがスカッとしただけじゃないですかねぇ?

 

「おい、お前名前は」

 

「人に名前を聞く時は自分から名乗るのが礼儀やろ?」

 

「……クク。龍園翔だ」

 

「草元剛、よろしく」

 




はい。うーん、このマウント取ろうとする感じがイキリインキャっぽいな。
前書きにも書いたけど若干チートぽくなってない?一応一周回ってハイになってる感じなんですけど、上手いこと噛み合って口喧嘩が上手い人みたいになってます。

あと、なんか誤字報告機能あるじゃないですか。
あれちょくちょく貰うんですけど、どうやって見たり直したりするか分からないんで有識者説明求む。ます。


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九話

今日の午後だけで二話投稿してるので気を付けて下さい。

なんかWi-Fiには繋がってるのにネットには繋がらんくてポケモンHOME使えへんからコレ書くしかやること無いんで書きました。かつてないほど早く書けたんやけどコレってバグか?


特別試験は2日目に入り、三度目、四度目のグループディスカッションも終了した。

あの後は特に何事もなく、たまーにBクラスと雑談をする程度で三、四度目のグループディスカッションは過ぎて行った。

 

そろそろ綾小路君が軽井沢さんの懐柔に着手している頃だろうか。

 

「よう」

 

そんな事を考えながらヒレ肉を口に運んでいると、龍園が話しかけて来た。

 

「おう、どした?なんかよう?」

 

ビビった〜。喧嘩しようぜ!とか言わんといてや?

 

「お前に用があって来た」

 

うーん、これはもう優待者ってバレてるんかな?その確認とかそんな感じか。

 

「ようここが分かったな」

 

「この船でステーキを食える所は限られてる」

 

「俺がいつもステーキ食ってる保証は無いやろ」

 

「だが、お前はここに居た」

 

はぁ…

 

「付けてたん?」

 

答えずにこちらに笑みを返す。

 

「…まあええわ。ほんで、どうしたん?まさか俺と一緒にステーキ食いにきた訳じゃ無いやろ?」

 

「それもいいかもな」

 

そう言って一つ開けた隣の席に座った。

え、マジで食うの?話あるなら一旦止めようと思ったんやけど。んじゃもう一個頼も!

 

追加でいちぼを頼んだが、龍園君は頼む様子は無い。

あれ?食わんの?かな?

 

 

「お前、優待者なんだろ?」

 

ま…そうだよねぇ。

 

「さあね」

 

「隠さなくてもいいぜ。既に全クラスの優待者は暴いた」

 

ほっ…俺が教えてあげんでも優待者見抜いてて安心したわ。

 

「へぇ〜、やるやん。

それで?なんでこの話を俺に?」

 

そこが分からん。優待者を見抜いて、それを俺に言った意味がわからん。

 

「取引がしたい。俺が竜グループを結果1にしてやる。そのかわりに

 

 

Dクラスのスパイになれ」

 

あ、そこで俺にシワ寄せがくんの?

なんでや。そんな俺二枚目みたいな風に見えるんか?

 

「それって俺にメリットあるんか?」

 

「単純な話だ。お前は優待者を当てられずに済んで、クラスポイントを吐き出さず、さらにはプライベートポイントまで貰える」

 

「なるほど。でも俺がスパイとして動いてクラスポイントが下がればその分メリットが薄れるんちゃうんか?」

 

「スパイとして動くなら金を払ってやる。言い値でもいい」

 

破格の条件やな。

いずれ敗北する龍園君のスパイとしてほんの数ヶ月我慢すればプライベートポイントがガッポガッポ手に入る訳か。

当然龍園君は負ける気なんかないからどちらかが見限るまでこの契約が続くと思ってる。

 

「コレを飲まなければクラスポイントが減るだけで大したデメリットにはならんやろ。そこんとこはどうなん?」

 

「いや、お前は飲むしかねえのさ」

 

そう言って入り口の方をさせば、アルベルトと石崎が待機していた。

こーれは不味いな。この3人相手じゃ100%逃げ切れへん。

 

「えらい物騒やな」

 

「だが、もちろんまだお前にもメリットがある」

 

「メリット?」

 

まだあんの?

 

「今この場で飲めば40万。どうだ?」

 

……マジで言うてんのコイツ。

破格過ぎるんやけど。

どうしよ。

 

まず考えないとアカン事は、スパイ活動のリスク。

バレたら村八分どころかリンチされる可能性だってある。

でも幸い俺には情報という大きなアドがあるから、先の展開を見据えればなんとか回避出来ない事はないはず。有用性さえ示し続ければ見捨てられるような事もないはず。

しかも龍園君はいずれ必ず沈む船。

龍園君が沈む時に一緒に沈まないように生命線さえ作っておけば問題無い。

なんなら、『負けたらこの契約は終わり』みたいな条件を付けたって大丈夫なはず。龍園君は負ける事なんか考えて無いから、多分通せる。

 

そう考えればここで受けておいた方が無難か?というかそもそも断る選択肢が用意されてない。携帯で助けを呼ぶような隙も無いし逃げる事もできない。ほぼ詰んでる状況。

 

ただそうなると、ペーパーシャッフルの時に櫛田ちゃんみたいに出来るかどうかが問題になる。正直それほど成績が良くないし。悪くもないけど。

それに櫛田ちゃんのイベントがまるまる無くなると、これからの展開に支障が出る可能性がある。

後で個別に櫛田ちゃんが協力を申し出る可能性だってあるけど、出来れば原作通りの流れには持って行っておきたい。

そうなると俺の仕事がどんな物になるか全くわからなくなるけど、櫛田ちゃんほどリスキーな仕事になる事は少ないはず……

 

 

 

 

よし。決めた。

 

「おーけー。スパイになったるわ」

 

笑みが一層深くなった。

 

「交渉成立だな」

 

「まだや」

 

「あ?」

 

「細かいとこまで詰めたい。基準を決めよう」

 

「例えば?」

 

「クラスメイトの情報は一口1000。満足出来なければ払わなくても良い。試験なんかの際の戦略は最低10万。これ以下の報酬なら受けない」

 

「……良いだろう」

 

よし。後は…

 

「もしお前が負けたらこの契約は無かった事にすること。俺やってお前と一緒に心中するのは嫌やしな」

 

「あぁ。構わないぜ」

 

「…それと後もう一つ」

 

「言ってみろ」

 

「櫛田桔梗、彼女にも声をかけること」

 

「櫛田?あのいい子ちゃんか?」

 

「そうや。アイツは堀北を死ぬ程恨んでるからな。それを交渉材料にでもしてスパイ活動をするように持ち掛けたら間違いなくのってくるやろ」

 

「…本当か?」

 

「もし無理やったらこの事全部バラしても良い。というかどうせこれも録音してるんやろ?」

 

龍園君が首を竦めて見せる。

 

息を吐いて続ける。

 

「多分俺よりも使える幅は広がるやろ。ただし、俺が斡旋した事は秘密にしてもらう。俺がスパイな事も秘密や」

 

「随分注文が多いな。全部蹴ってやったっていいんだぜ?」

 

「自分で言うのもなんやけど、俺みたいなヤツ嫌いじゃないやろ?」

 

さぁ……どうや?

 

「……いいぜ。交渉成立だ」

 

 

こうしてまことに不本意ながら、龍園君とコンタクトを取る事になって、その上スパイまでやらされる事になった。

 

 

 

 

それから特別試験は滞りなく進んで、すべてのグループのディスカッションが終了した。

残すは結果発表を残すのみだが、この結果だってもちろん知っている。

非常に申し訳ないが、堀北ちゃんの勝ち誇ったような顔はなかなか滑稽で笑えました。ごめんね。

 

 

現在俺は綾小路君と、カフェで人と試験結果を待っている。

 

「どうだった?」

 

「んー、龍園君がちょっと怖い所やけど、一先ずは大丈夫…かな?知らんけど」

 

そう答えた所で、軽井沢さんがやって来た。

 

「……お待たせ」

 

原作通りに懐柔出来たようで何よりやな。

 

「遅い時間に呼び出して悪かったな」

 

「ううん、それはいい……けど…」

 

そう言って俺に視線を向ける。

まあ、そりゃクラス運営にほとんど関わって無かった人がおったらそうなるよな。

 

「安心してくれ。コイツは信頼のおけるパ………仲………友達だ」

 

なかなか適切な表現が思いつかんかったみたいやな。

「パ」は………パーティ?…ではないか。ならパートナーとかその辺かな?

 

「そうなんだ……」

 

そう言って一度俺に視線を向けた後、様子を伺うように綾小路君を見て切り出した。

 

「あ、えっと……本当に、上手く行ったのかなって思って」

 

「大丈夫だ。間違いなくAクラスの人間がオレの名前を書いてメールを送っている」

 

「どうしてそう言いきれるわけ?」

 

「それは僕に渡した紙に意味があったんだよね、綾小路君」

 

瞬間、軽井沢さんが背後に置かれたきゅうりを見つけた猫のように肩を飛び跳ねさせて驚いていた。

まあ、ブチ切れてもた後に会ったら気まずいよな。

 

「試験お疲れ様三人とも。座ってもいいかな?」

 

「もちろんだ」

 

「そろそろ時間だね。堀北さんはまだなのかな?連絡してみたほうがいいんじゃ」

 

「あいつは意外とギリギリにくるヤツだからな。あと4分は待ったほうがいい」

 

「あ、きたみたい」

 

綾小路君が堀北ちゃんは思っているより早く到着したらしい。

 

「はぁ……目の前でこの集まりを見ると、ちょっとため息が出るわね」

 

「やっと来たか。てかその背後霊みたいなヤツは何なん?幻覚?」

 

「そうね。幻覚だと思ってくれて構わないわ」

 

「そりゃないぜ堀北。試験中は気を使って話しかけなかったんだぜ」

 

須藤君の幻覚が、堀北ちゃんの背後に立っていた。

一体いつから、そいつが須藤だと錯覚していた?

うーん、どうみても須藤君やわ。間違いない。鏡花水月の能力者がおらんかったら大丈夫。

 

 

しばらく話していると、龍園君が現れた。

 

「やっぱりここにいたのか」

 

「龍園…………!」

 

須藤君が立ち上がるが、見向きもせずに堀北ちゃんの近くに腰を下ろした。

 

「おまえと結果を楽しもうと思ってな。分かりやすい場所にいてくれて助かったぜ」

 

「ええ。頭の悪いあなたがわかりやすいようにこの場所を選んであげたの。感謝して」

 

「それにしても鈴音。おまえにしちゃ随分と大所帯だな。どうゆう心境の変化だ?」

 

「あなたにしつこく付き纏われている。その相談をしていたのよ」

 

軽口と辛口を飛ばしあいながら会話が繰り広げられる。

 

「……だったら教えてもらおうかしら、竜グループの優待者が誰だったのか」

 

「草元剛」

 

「え……?」

 

そらひびるわなぁ。絶対バレてないと思ってたんやし。

俺ももちろん硬直するのを忘れない。

 

「悪いが俺は2日目の時点から気づいてたぜ。草元が優待者だってことにな」

 

「ウソ……だろ……」

 

「冗談、でしょう……。それならー」

 

信じられない堀北ちゃんが必死に問い詰めている。

 

「何を……何をしたっていうの、あなたは」

 

「その答えはすぐに分かる」

 

11時を迎えて、一斉にメールが届いた。

全員が結果を知るべく携帯に目を落としている中、折角なので一つ布石…というか自分の有用性を示しておいた方がいいかと思って、龍園君に一枚の紙を渡した。

 

 

そして結果はもちろん原作通り。

つまり集計すると

Aクラス -200cl +200万pr

Bクラス 変動無し +250万pr

Cクラス +150cl +550万pr

Dクラス +50cl +300万pr

となった。

 

 

「Cクラスが………トップ……」

 

愕然とする堀北ちゃん達。

 

満足気な龍園君は堀北ちゃんに宣戦布告をした後去っていった。

 

 

 

解散した後、一本電話が鳴った。

 

「もしもし?」

 

「一体何の用だ?」

 

電話の相手は龍園君。

先程渡したのは電話番号のかかれた紙だ。

 

「折角やし、オレの価値でも示しとこうかなって思ってな」

 

「あ?」

 

龍園に優待者の法則を懇切丁寧に教えてあげた。

 

「ーってわけやな。合ってるやろ?」

 

「……クク、ハハハ!いいぜ!お前の価値は証明された!」

 

「なら良かった」

 

「随分頭が切れるみたいだな」

 

「そうかもしれへんな。んじゃ、おやすみ」

 

そう言って電話を切った。

これだけ出来るヤツ感出しといたら切り捨てられるような事にはならんやろ。

 

はぁー…最悪。龍園君なんか一回も関わる事なく終わると思ってたのに。

 

全部ぜーんぶ!茶柱先生が悪い!!




はい。いやー、いつの間にかCクラスとDクラスの核を握ってる状態になっちゃってますね。

あと、軽井沢さんのポニーテールとかを消してショートにして見たらどストライクな事がわかりました。今日から俺は櫛田派からショート軽井沢派に転向します。「お前ただショートの女子が好きなだけやん」って?悪い?(開き直り)
因みに伊吹ちゃんも好みではあります。性格はアレやけど。


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十話

ば、爆速の投稿によって爆速でお気に入りとUAと評価が増えていく…!
そうか……これが世界の心理か。

本日午後3本目の投稿となるので、まだ読んでない方は気を付けて下さい。


夏休みも終わり、二学期が始まった。

バカンスの後は特に何事も無く、平穏な日々を過ごしていた。

もちろん、部屋に引きこもってただニート生活をしていたわけではない。これからの行動の方針を考えたりしていたわけだが、いかんせん不確定要素が多い。

龍園君の依頼によっては、原作とは全く違う方向に動く可能性もなくは無い。なるだけ気を付けていきたいところだ。

 

次のイベントは体育祭。

正直運動も別に不得意ではないので、練習なんかせんくても最下位になったりはしない。はず。

かと言って上位を狙えるほどの身体能力も無いので、一位を狙えるのはせいぜい借り物競走とか障害物競走とかぐらいやな。

自慢じゃ無いけど、中学の頃は障害物競走でポックリ(地域によって呼び名違ったりするんかな?ググってどうぞ)で全学年最速ラップを叩き出した。もちろん誰もラップタイムなんか測って無いから、目算で。

 

 

まあそんな訳で、二学期最初の日には体育祭の説明のホームルームがあった。

体育祭は紅白対抗で、個人の結果に応じて個人に報酬が与えられる仕組みだ。

 

全員参加種目は

100メートル走、ハードル競走、棒倒し(男子)、玉入れ(女子)、男女別綱引き、障害物競走、二人三脚、騎馬戦、200メートル走。

推薦参加種目は

借り物競走、四方綱引き、男女混合二人三脚、3学年合同1200メートルリレー

 

改めて見るとめちゃくちゃ多いな。

 

 

加えて参加表という物があり、これには全種目の参加者が記入されクラスにとっての生命線ともなりうる存在だ。

それが流出したら、大変な事になるわけだ。

 

 

 

続いて、全学年の顔合わせが行われる。

一年生から三年生まで赤組と白組にわかれている。

でもあれやな。全部で合計12クラスしかないからめっちゃ少なく感じるな。

 

あ…!はぁーそうかーー、Aクラスと組むから坂柳さんとも顔を合わせなアカンのか。嫌やなぁ…。

視線を向けた先には坂柳さんが座っている。

とにかく喋りたくない俺は、目も合わせないようにしよう……と思っていたが、バカンス明けから一度も会っていない。礼も言わずに避け続けるのは野菜の神の怒りに触れる可能性がある。何せまさに命の恩人なのだから。

 

俺は嫌な事はさっさと済ませる男。意を決して坂柳さんへと歩を進める。

取り巻きの橋本君を含む数人が行く手を阻もうとするが、近づくのが俺である事を理解すると橋本君が引いて、次いで周りの人も引いて行った。

 

「よ、坂柳さん」

 

「ええ、こんにちは」

 

「この前はありがとうな。お陰で助かったわ」

 

「いえいえ、気になさらないで下さい。もやしもイチゴも大変美味しかったですよ」

 

…自分で作った野菜を褒められると嬉しいな。しかもそれが坂柳さんって言うね。

…ハッ!まさかこれは!告白か!?「毎日一緒にあなたの野菜食べたいなぁ♡」ってゆう遠回しな!……でもごめんな。この前も言ったけどロリコンじゃないねん。こめんなさい(錯乱)。

 

「そかそか、なら良かった」

 

「いえいえ」

 

「んじゃ」

 

そう言って立ち去る事に成功した。

ふぅ。なんとかお礼を済ませれた。これで野菜の神の怒りを買わずに済むわ。

 

 

「おい!草元、どうゆう事だよ!」

 

クラスの場所に戻ると、池がなんでか突っかかってきた。

 

「は?何が?」

 

「惚けんなよ!なんでお前はAクラスの女子と知り合いなんだよ!」

 

うーん。これ、池とか山内じゃ無かったら「Aクラスと通じてるんじゃないんか」って言われてると思うんやけど、こいつとか山内に聞かれると「なんで他クラスの女子と仲良いんだよ羨ましいぃ〜!!」ってなるから不思議よな。

 

「いや、前にちょっとお世話になってな」

 

「せ、世話になったぁぁ〜!??」

 

いや、それは曲解しすぎやろ。ガチでお世話して貰ったわけないやん。

やっぱコイツは…

 

「バカやったか…」

 

「なんだとコイツー!!」

 

癇癪を起こす池を尻目に堀北ちゃんが近づいて来た。

 

「あなた、坂柳さんと知り合いだったの?」

 

「何?嫉妬?」

 

「……刺すわよ」

 

「じょ、冗談やん」

 

コイツはマジで刺すからヤバい。コンパスとかシャーペンとかでな。

 

「まあ、この前にちょっと世話になっただけやで」

 

「その詳細を聞いてるのだけれど」

 

正直に言いたいのは山々なんやけど、この場で部屋に招き入れてたみたいな事がバレると良くないやろ。

 

「ンー、後でまた言うわ。今は場が悪い」

 

「ちょっと、まだ話は「話し合いをするつもりはないってことかな?」…?」

 

みんなの視線が声の主である一之瀬さんに向かったので、その隙にさっさと端まで移動して腰を据えて耳を傾ける。

 

「こっちは善意で去ろうとしてんだぜ?俺が協力を申し出たところでお前が信じるとは思えない。結局端から腹の探り合いになるだけだろ?だったら時間の無駄だ」

 

振り返ってそう言ったのは龍園君。今のところなんの依頼も無いが、どうゆうつもりだろうか。まあ確かに今回は櫛田ちゃんが参加表さえ写真に収めれば万事解決やし、やることもないか。

 

「なるほどー。私たちのことを考えて手間を省こうとしてくれてるんだねー。なるほどー」

 

「そういうことだ。感謝するんだな」

 

そう言って龍園君はCクラスを連れて去って行った。

不気味やな。ホンマに。

正直、クラスの奴を怪我させろとか、下剤ぶち込めとか、そうゆう類の依頼が来ると思ってたから気が気じゃなかったんやけど……考え過ぎか?

 

この後は特に滞りなく話し合いが終了した。

 

 

 

それからは毎日2時間の時間が設けられ、その時間を話し合いに使おうが、練習に使おうが、雑談に使おうが自由というわけだ。

 

そして、ついに依頼がやって来た。

仕事の内容は、Dクラスの戦略、出場メンバーとその詳細。

これは恐らく、櫛田ちゃんにあてられた物と何ら変わり無い。

情報の質を上げようとしているのか、それともどちらが有能か見極めようとしているのか、詳しい事は分からないが報酬は25万。十分にやる価値はある。

 

依頼を受けた日にある人物に一つ頼み事をしておいて、後は話し合いのたびにボイスレコーダーを使って話し合いの声を録音した。

これで戦略と出場メンバーに関しては概ね完了したも同然。

後はメンバーの詳細だが、これは流石に厳しい。

櫛田ちゃんほど関係が広い訳でもないので、その点においては確実に負ける。まあ、それはしょうがない。

 

 

話し合いは着々と進んで行き、まず最初に決まったのはメンバーを決める方法。

単純に勝ちを取りに行く効率的な方法に決まった。

 

翌日の体育の時間に握力を測るイベントがあったが、俺は47。まあぼちぼちやな。

 

その後に決まった借り物競走には、おしくもジャンケンで負けてしまい不参加となった。別に出んでもええなら出る気ないしな。

なんや綾小路君、そんな代わって欲しそうな目して。安心してくれ、代わらんから。

 

 

次の日から本格的に練習がスタートした訳だが、別に手を抜く理由も必要も無さそうなので、少しでも良い記録を目指して練習する。

 

練習が始まると、もうボイスレコーダーの出番も無くなってしまった。

ほぼほぼ仕事はやり終えたので、適当に私的な見解を渡すだけでええかな。

 

 

 

体育祭まで2週間を切った土曜日の朝、俺は3バカに呼ばれて綾小路君の部屋にやって来ていた。因みに今日綾小路君は櫛田ちゃんと堀北ちゃんで偵察に向かう予定がある。

 

みんながラーメンすすっており、俺は無難なカップヌードルのカレー。うんうん。カレーが一番美味いな。

 

「なあ健。おまえって堀北に告る予定とかないの?」

 

「は?んだよ急に」

 

「いや、気になるじゃん。そういうの。なか春樹?」

 

「だ、だな」

 

なんか山内気まずそうやな。

そういえば佐倉さんに振られたっていう話を聞いたような聞かなかったような…

 

「体育祭の結果次第ってとこだな。公認貰えたらそんとき言うかもな」

 

「あー、例の呼び捨て宣言のことね」

 

そう。学年で一位を取れば、堀北ちゃんが須藤君に呼び捨てを許可するという約束。

鈴音ちゃん……うーん、なんか微妙やな。やっぱ堀北ちゃんがしっくりくるわ。

 

「正直俺より運動神経がいい奴はいねーからな、1年で」

 

「唯一の対抗馬の高円寺も、本気ではやんねーだろうしなぁ」

 

高円寺君な……本気になったらどんだけ凄いんか知りたいわ。マジで綾小路君とかといい勝負しそうな感じある。

 

「ま、俺としちゃ、ある程度真面目に参加すりゃ文句はねぇ」

 

話が一区切りついたところで、綾小路君がそういえばと切り出した。

 

「Aクラスの坂柳って生徒いただろ。足の不自由な子。覚えてるか?」

 

「あの美少女だろ。そりゃ覚えてるに決まってるし」

 

……なんで池はそんなに得意げなんや。

 

「あの子の噂とか聞いてないか?」

 

「噂って男として?何つーかあの子って影薄いっつーか、全く話題にならないんだよな」

 

影薄いはヤバいやろ!透明感が凄いと言え!

 

「その子の事なら草元が良く知ってるんじゃないか?世話して貰ってたみたいだし」

 

は?

 

「あ!そうだそうだ!お前あの子とどうゆう関係だったんだよ!」

 

お前ら……未だに世話になったの意味を間違えてるのか。

 

「世話になったってそうゆう意味じゃないと思うが」

 

「「え?」」

 

ナイス綾小路君!君ならやってくれると信じてたで!

 

 

「なーんだ、そうゆう意味かよ。つまんねーの」

 

「面白がって損したぜ」

 

綾小路君が誤解を解いてくれたと思ったらそんな事を言い出した。

う、うぜー…そっちが勝手に勘違いしてただけやんけ!

 

「それで、坂柳って子はどうなんだ?」

 

あ、それが聞きたいからコイツらの誤解を解いたのね。

 

「ちょっと喋っただけやったけど、すごい上品な感じやったな。それこそどっかの国のお姫様みたいな」

 

当たり障りの無い事を言っておく。

どうせ体育祭終わったら会うんやし自分の目で見て確かめろ。

 

綾小路君が出て行った所で、俺も用事と言って部屋を抜けた。

別段用事なんて無い。ただ須藤君の妄想を語り聞かされるのが嫌なだけだ。

 

 

 

体育祭まで一週間を迎えた所で、全競技の最終組み合わせを決める話し合いが行われた。久しぶりのボイスレコーダーの使い所で、ちょっとだけ嬉しい。

 

 

そしてついに、体育祭当日を迎えた。




はい。ちょっとキリがいいところまで行けるか不安やったんですけど何とかいけました。

1日に三本も投稿すると、後書きに書く事無くなって困りますね。
この後すぐ続き書き始めるから、もしかすると深夜にまた投稿するかも知れません。知らんけど。


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十一話

ふぅ。日にちを跨いだとは言え、実質1日四本投稿は鬼やと思うんです。
まあWi-Fiがバグってて使えへんからコレしかやること無いってのはあったんですけど。

ってな訳で11話です。
感想でもいたただいていたんですが、本日これで4 本 目ですので、「あれ?なんかこれ飛んでない?」ってならんようにお気をつけ下さい。


ついに体育祭当日となった。

 

あれ以降は追加の依頼も無く、平穏な日々を過ごした。

報酬は既に払われており、オデノサイフハユルユルダ!!

 

 

さて、初っ端の100メートル走1組目…つまり須藤君がスタートを切り、ぶっちぎりの一位となった。

因みに俺は3組目だったが、4位だった。8人いる内の4位ならまあ順当やろ。

 

須藤君が高円寺君に突っ掛かるアクシデントがあったが、どうにか収束し、二種目目のハードル走が始まった。

俺は2組目だったが、なんでか知らんけど一位取れてしまった。アレやな、実質障害物競走みたいなもんやし、そんなもんやろ。知らんけど。

 

続く競技は棒倒し。

殴る蹴るなどの暴力行為は禁止だが、ある程度の組み合いなんかは容認されている。

つまり喧嘩なんて一度もした事のない俺にとっては一番の難関。

 

だが俺はこの時の為に一つ戦略を考えていた。

その名も"アルベルトファイヤー作戦"。

説明しよう。アルベルトとはその名の通り山田アルベルトとかいう怪物の事である。ファイヤーはポケモンで、技"睨み付ける"か有名なポケモンである。

つまり、ずっとアルベルトと睨み合って、この棒倒しを乗り切ろうという作戦である。

もちろん立ってるだけだと怪しまれるので、ちょくちょく近づいては離れる、名付けてクローズ&アウェイを繰り返す。ヒット&アウェイではない。ヒットなんかしたら多分ボッコボコにされる。

 

これを繰り返す事でなんとか攻めを乗り切ったが、棒を倒されてしまった。

守りに入る時はとにかく安全地帯を探って移動する。とにかくCクラスの正面には入らないようにする。

なんとか怪我する事もなく棒倒しを終えたが、須藤君のイライラは最高潮に達している。マジで怖い。

 

女子の玉入れは何とか勝っていたようだが、次は綱引きだ。

龍園が綱引きの途中にいきなり手を離すという悪魔の所業をする事がわかっているが、ならば手を抜いておけば良いのかと言われればそんな事もない為、一先ず全力で勝ちに行くしかない。

まあ、結果は俺達の勝ちだが、良いようにやられたせいで気持ちは良くない。

 

次は障害物競走。これもなんとか一位をとれた。

二回も一位取れるのはおかしいはずなんやけど、龍園君が一枚噛んでるのか微妙なところやな。

 

次は二人三脚。因みにペアは三宅君だ。

その準備をしている間に女子の障害物競走が行われており、そこでは堀北ちゃんと木下さんとの事故が起きて二人は転倒、。堀北ちゃんはなんとか走りきったが、木下さんは続行不可能となって最下位で終わった。

 

で、二人三脚やけど残念ながら5位となった。

まあ、こればっかりは時の運やな。

 

 

休憩が明けて次は女子騎馬戦。Cクラスの徹底した堀北ちゃん狙いであえなく堀北ちゃんは脱落。

続く男子騎馬戦は赤組有利かに思われたが須藤君が挑発に乗ってしまったこと、そして龍園君のハチマキが何故か滑る事が敗因となって赤組は敗北した。

ハチマキにローションを塗ったようやけど、それって実質頭にローション付けたって事やろ?気持ち悪くないんかな?

私、気になります!

 

 

良いようにやられて、イライラと不安が募るDクラス。

 

須藤君が平田君を殴った事で場を追われた須藤君は、学校を出て寮の方へ帰って行ってしまった。

 

午前の部が終了し昼休憩を迎えて、綾小路君、平田君、軽井沢さんと裏切り者、つまりスパイの話をしながら昼食を共にした。

 

 

続く午後の部は推薦競技。つまり俺の出番は無い…と言いたいところだったが須藤君と堀北ちゃんの不在によって嫌でも出なくてはならなくなる可能性がある。

 

最初の借り物競走は、池の豪運で一位をもぎっとったが綾小路君は惨敗。後で聞けば『友達を10人連れてくる事』、『好きな人』、『置き時計』やったらしい。ご愁傷様。

 

そして、続く四方綱引きは最下位となってしまった。

 

ここまで、須藤君と堀北ちゃんの分の代役は全て平田君が払っている。

流石に俺も、プライベートポイントを多く所持している身として出さない訳にはいかない。

 

「平田君、携帯の番号教えてくれん?」

 

「え?良いけど…」

 

教えてもらった番号に、15万振り込んだ。

 

「え?ちょ、草元くん!これは…」

 

「気にせんといてくれ。ある程度持ってるのになんにも出さへんのは悪い気がするから」

 

「………わかった。ありがとう」

 

しばらく考えてたけど、どうにか納得したみたいやな。

 

「ん」

 

これで俺の罪悪感は多少拭えた。後は傍観やな。

見れば、綾小路君と櫛田ちゃんが二人三脚の用意を始めている。確かここで、綾小路君が櫛田ちゃんに裏切り者の確認を行なっている。

あーあ、ええなー綾小路君。心安らぐ一時とは言えへんけど女の子と合法的にくっ付けるのは役得よな。

じゃあ代わりたいかって聞かれればそう言う訳でも無い。

女の子とくっ付けば緊張するし、変に気使うから女の子の体を堪能する事は出来んからな。…ちょっとえっちな響きですね。

 

 

 

後半戦の最後、花形である1200メートルリレーが行われるまであと少しというタイミングで、須藤君と堀北ちゃんが戻って来た。

なんとか間に合ったみたいで良かった。実はちょっと冷や冷やしてたんやで。

 

なんやかんやで綾小路君がアンカーを走る事になってぶっちぎりの足の速さを見せたが、運悪く(これはホンマに)邪魔が入って、競走していた堀北生徒会長には負けてしまった。

 

これで綾小路君は一躍時の人。

足の速さでモテモテになるなんて、小学生かな?

 

 

で、体育祭の結果だがこれも原作通り。

赤組の勝利で、一年生は

一位 Bクラス

二位 Cクラス

三位 Aクラス

四位 Dクラス

となった。

 

赤組の勝利、白組の敗北と合わせてクラスポイントの増減は

Aクラス -50

Bクラス -50

Cクラス -100

Dクラス -100

で、全員が後退する結果となった。

 

因みに一年最優秀選手賞はBクラスの柴田君。

これによって須藤君の名前呼びの夢が潰えたかのように思えたが、堀北ちゃんなりの落とし所で、須藤君に名前呼びを許可した。

うんうん。良かったねぇ。ホロリ

 

 

で、この後は綾小路君は坂柳さんとの対面。

堀北ちゃんは龍園君、櫛田ちゃんとの対面を果たして今日のイベントは終了となる。

 

原作通りなら。

 

 

 

 

 

原作通りに体育祭が終了し、これで長い1日が終わりかと思ったら、そうはいかないらしい。

 

 

俺は体育祭の後、カラオケルームで人を待っていた。

代金はむこう持ちなので、待ってる間に何曲か歌ってても別にええやろ。

 

そう思って『アンパンマンのマーチ』を再生。

すると伴奏が流れ始めた所で待ち人、龍園君がやって来た。

 

「クク。良い趣味してるな」

 

「いや、ちゃうねん!言い訳させて!龍園君が来た時にコレ熱唱してたらどうゆう反応するか見たかっただけやねん!ホンマに!」

 

いや、これだけは勘違いしてもらっては困る。これからアンパンマンマーチで弄られる事になれば耐えられない。

 

龍園がソファに腰掛けた。

 

「さっさとその曲を止めろ」

 

「……なんや連れへんなぁ」

 

折角歌ったろと思ったのに…

 

「で?用件はなんや?あの後こうやって会うのは初めてやし、さぞかし重要な話なんやろ?」

 

「……さっき送って来たメール。アレはお前か?」

 

 

…これで俺はようやく確信した。

龍園君は、最初から俺のスパイとしての活躍を期待してなかった。

 

そもそもコイツは、無人島試験が堀北ちゃん以外の誰かの手によるものだと確信していた。

それが後にXとされる人物な訳だが、俺をそのXだという疑いを持って俺に接触して来た。

 

その時の俺はただただ俺の利益を最大に、不利益は最小にするように立ち回っており、クラスの勝敗は微塵も気にしていなかった。

そのおかげで、その時は無人島でDクラスを一位に導いたXでは無いと結論付けられたのだろう。

 

ならなぜ俺とスパイ契約を結んだのかは分からないが、ある程度動かせる駒を用意しておくのも悪くないと踏んだのだろう。多分。知らんけど。

 

 

そして体育祭終了後に届いたメール。

そこには情報の漏洩、Dクラスの完全敗北、堀北の挫折の全てを見透かした上で、この結末を容認したという意図、意思が含まれている。

つまり、Cクラスの作戦を全て見透かした人物の仕業となる。

そうなれば、ある程度の情報が与えられたスパイが、二重スパイとして最も疑われるのは必然だ。

 

もちろんそれがXであるかどうかは別の話だが。

 

 

「メール?なんの事や?」

 

龍園君は薄い笑みを崩さない。

俺は溜息を吐いてから続ける。

 

「どうしてもその情報が欲しいなら金を払えば良いやろ。そうゆう依頼を出せば俺はそれに答える」

 

「クク…なら依頼だ。あのメールを送ったのは誰だ?」

 

知らないと答えるのが適切だが、最適では無い。

そもそも…

 

「そのメールってなんなん?それも知らずに答えられへんやろ」

 

カマをかけていることが見え見えやったしな。

すると、携帯を取り出して弄り始めた。

少しして、携帯をテーブルに置いて画面をタップした。

Cクラスの作戦会議と思われるものの音声が入っており、それが先程送られたという。

 

「で、このメールを送って来たのは誰だ?」

 

今は「知らない」と、そう答えるのが最適なはず。

しかし龍園君はそれを許さない。例え本当に知らなくともボッコボコに殴られてトラウマを植え付けられる事になるだろう。

 

ならば、この場合の返答は…

 

「100万」

 

「あぁ?」

 

「依頼料。先払いや」

 

「テメェ…ふざけてんのか?」

 

「ふざけてるのはそっちやろ。スパイとして俺を雇ったのはお前や。これは正当な権利のはずや。お前は言い値で良いとも言ったしな」

 

「……バカが。わざわざそんなもん払わなくても、俺がお前に力尽くで言わせられることを考えてねぇのか?」

 

龍園君が立ち上がる。

 

「そうゆう手段に出る事を、俺が予想出来ている事を考えてへんのか?」

 

睨み合う。

お、お、お前舐めんなよ!こ、こちとら体育祭でアルベルトと睨みあっとんじゃい!!

 

「ちっ……80万だ。それ以上は出さねえ」

 

そう言って座り直す。が、もう一声欲しいな…

息を吐いて答える。

 

「…残念やったな。またポイント貯まったら聞いてくれ」

 

そう言って少しよろけながら席を立つ。

 

「…クク……ハハハ!待てよ!わかった。100万出してやる」

 

「…………おーけー。ええ買い物したな」

 

「ククク…大した野郎だ。そんだけ足が震えてるのに俺相手にそれだけの啖呵を切るとはな」

 

そう。俺の足はガックガク。ホンマに情け無いレベルで。

ソファに座り直して、足の震えを誤魔化す。

 

「しゃあないやろ。喧嘩なんかまともにした事ないし、お前がどうなったかを知るのは俺が殴られた後やからな」

 

「そうかよ。……ほら、ポイントだ」

 

確かに100万ポイントが送られている。

それを確認して、大きく息を吸って、吐き出した。

 

「……よし、教えてあげるわ。メールの送り主。

 

 

 

 

 

 …………………俺や」

 

沈黙。

それを破ったのは龍園君だった。

 

 

「……………クッククク…ククク…ハーッハッハッハ!!そうか!お前か!無人島の時も!盗聴したのも、お前だったのか!!」

 

最高だ、そう言い終えた龍園。

 

 

 

 

でも、一つ、いや、致命的な間違いがある。

 

 

「待てや龍園。俺はメールを送ったのが俺やって言っただけで?」

 

「…………………あ?」

 

龍園君の笑みが次第に薄くなっていく。

 

 

「依頼は達成したやろ。俺は帰る。腹減った。今度呼ぶ時は焼肉でも奢ってくれな」

 

そう言って部屋を出た。直後、龍園君の高らかな笑い声が聞こえたのは、きっと幻聴では無い。

 

 

 

事実だった。俺がメールを送ったのは。

しかし、本当はそれを言う予定は無かった。そもそも俺が呼び出された事が予定外で、その内容がそうゆう話だった時点で、俺は正直に話す事を決めていた。

 

 

俺があのメールを送る事になったのは、単純な話だ。

頼まれた。

呼び出しがかかり、そのメールを送れない可能性があれば、誰だって信頼のおける暇な人間にそのメールを送るようにお願いする。

そういう訳で、俺がメールを送る役に抜擢されたという訳だ。まあ抜擢って言っても、選択肢はほぼ無かったんやろうけどな。

 

この後、恐らく依頼が来る事はない。俺としては聞くことも吝かではないんやけど、向こうはそうは思わない。

 

 

これで漸く、平穏な日々に戻れる…と思ったけどまだ冬休みの前にペーパーシャッフルがあったか。めんどくせ!

 




誤字報告のやつあるじゃないですか。あれって誤字修正って押したら勝手に治るってことで良いんですかね?
よく分からんので感想の方で誤字報告して頂いた方が、モチベも上がるし、俺が分かりやすいので一石二鳥かなと。
別に感想を稼ぎたいとか、そうゆうのは一切無い(ある)。


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十二話

昨日はWi-Fiの原因探しに奔走してました。1日に4本も投稿したし、ええかなって。


体育祭が終わって10月に入り、少し肌寒く感じるようになってきた。

二学期の残りの行事と言えば、生徒会の総選挙と交代式、そしてペーパーシャッフル。

まあ生徒会関係は、俺に何一つ関係の無い話なので気にする必要は無いやろ。

で、問題のペーパーシャッフルやけど、これも何一つ出来る事はない。

なんか、それこそ龍園君からの依頼の様な物があれば動かざるを得ないけど、原作通りに進んで行くのが最善のはず。

とにかく勉強しまくってなんとかするしか無い。

 

 

交代式を終えたある日の昼休み、綾小路君に佐藤さんが話しかけるという事件が起こった。

騒がしい昼休みの一幕やからそれほど注目されていた訳では無いんやけどな。

 

佐藤さんな〜。足の速さだけで惚れた割にはなかなか一途で好感持てる。

と言うのも、俺は佐藤さんから相談を受けていたのだ。

「綾小路君堀北さんとどうなの?」みたいな感じの。

そこで察したね。ついに綾小路君に春がやって来たって。凍えるような北風(堀北)を超えて、ついに綾小路君にも春(普通の女子)がやって来たと。

 

顔を真っ赤にして教室に帰って来た佐藤さんを一言労っておいた。

いやー!可愛らしいね!なんか初々しい感じで!こうゆう感じの子が良いね、付き合うなら。別に裏がヤバヤバな櫛田ちゃんが嫌いとかそうゆうのでは無い。

 

 

風呂を借りた後少し綾小路君の部屋でゆっくりしていると、綾小路君に電話がかかってきた。

 

「答えてやれるようなことがあると良いんだが」

 

と言ったかと思えば、相手からの言葉にフリーズしてしまった。

これはあれか?軽井沢さんか。相手は女の子みたいやし。

 

「は?草元まで知ってるのか?」

 

電話を耳に当てたままこちらを向いて来たので、サムズアップしておく。

安心しろ綾小路君!俺は君の青春に花を飾ってやろうと思ってるんやで!

 

少しの会話の後、履歴を消すように言って電話を切った。

 

「軽井沢さん?」

 

「そうだ……というか、なんで草元が知ってるんだ?」

 

佐藤さんの事だろう。

 

「いやー、佐藤さんに相談されてな!中々面白そうやったから協力させて貰いました!」

 

グッとサムズアップしておく。

 

「協力って……まだ何かあるのか?」

 

「いやいや、人の恋路を邪魔するわけにもいかんし、ただ相談に乗っただけやで」

 

「……そうか」

 

「そうや」

 

いやー、恋愛相談なんか初めてされたけど中々楽しいな!

ただそれが実らない恋やってわかってるのが悲しいな…

 

「そうゆう草元はどうなんだ?」

 

「へ?俺?何が?」

 

「そういう話」

 

「なーんも無いわ。別に女の子に興味ない訳でも無いんやけどな」

 

俺だって普通にムラムラします。だって……ねぇ?そこら中にメロンが揺れてたら……ねぇ?

 

「一之瀬狙いなのか?」

 

「あれ?言ってないっけ?俺別に一之瀬タイプでも何でもないで」

 

「…そうなのか?」

 

「いや、もちろん可愛いとは思うけど、それで言えば櫛田ちゃんとかのんがタイプやわ」

 

「へぇ」

 

「まあ、タイプかどうかなんか正直どっちでもええんやけどな。結局フィーリングの問題よ」

 

フィーリング、感覚って言っても別に体の相性とか、そうゆうのじゃなくて、居心地とかそうゆうの。

 

その日は恋愛トークで盛り上がった。

まさか綾小路君が恋愛トーク出来るとは思わんかった。「少しでも理解出来たらええな」とか思ってたんかな?

 

 

 

数日して、中間テストが返された。

赤点は無し、つまり退学者も無し。因みに俺の平均点は70点ぐらい。ボチボチやな。

その後にペーパーシャッフルの概要が伝えられて、作戦会議が開かれる運びとなった。

 

学校内にあるカフェ『パレット』で作戦会議をする事になったが、櫛田ちゃんも参加する事になった。

ほんま、裏切り者がおるって厳しいよな。

 

俺としては、これからの事を考えればさっさと退学させておいた方がええと思うんやけど堀北ちゃんはそう思わんらしいしな。

櫛田ちゃんの地位を叩き落とすのは簡単なんやけど、その後が心配やな。原作と違う流れになるのも困るし、そもそも櫛田ちゃんが握ってる秘密が多くて大きすぎる。それを公開したら簡単にクラスが崩壊するやろうし。

 

もし、俺が標的になって追い込まれるような事になれば問答無用でバラすんやけどなぁ…

 

 

堀北ちゃんと綾小路君がようやく到着して、会議がスタートした。

まずはペアの法則性、続いて指名クラスの決定が話され、決定された。

 

そう言えば、今日は確か龍園君がCクラスのスパイを炙り出している日だ。

それを受けて依頼を持ってくる可能性もなくは無い。

ある程度準備はしといた方が良さそうやな。

 

 

次のホームルームでは、クラスに法則の説明と戦略が話されて、相手は攻撃防衛共にCクラスで決定した事が伝えられた。

 

そして小テストを受けた翌日の4時間目に早くも返却され、ペアが決定した。

えー、注目はもちろん、綾小路君&佐藤さんペア!!

いやー!これは運命やね!そうとしか思えない!

因みに俺は小野寺さん。まあ中間層やし、ボチボチやな。

 

ペアが決定して、その後の方針を纏めていると、三宅君と長谷部ちゃんが話しかけて来た。

因みに〜さんと〜ちゃんには特に違いはないで。ただ語感で呼びやすい方選んでるだけな。

聞けば、点数事態はそこそこ取れていて問題無いように見えるのだが、苦手な科目や問題傾向が全くと言っていいほど同じなのだと言う。

 

勉強会に参加しては?と聞いてみたがパスされてしまった。

なんなかんやで幸村君が指導役を引き受ける事になって、綾小路君がその補佐…管理?を任される事となる。

 

 

……ハズだった。

 

「草元くん、あなたもお願いできる?」

 

「えっ?」

 

「教えるほど出来る訳でも無いんだし、少数の方が何かと都合が良いでしょう?」

 

「いや、確かにそうやけど…」

 

「お願いね」

 

そう言って平田君と作戦会議を始めてしまった。

えぇ…なんでや…。

い、いや!まだや!まだ綾小路グループを回避出来る可能性がある!勉強会の後少しずつフェードアウトしていけば……あれ?そもそもなんで俺綾小路グループ回避する必要があるんや?あるかなぁ?うん。ないな。ならば良し。

 

 

放課後、勉強会を行うためにパレットに向かった。

 

なんでか知らんけど俺がお誕生日席に座らされた。お誕生日席ってあんまり使わんくなったよな。

 

 

「一応何か質問があれば先に受け付けるけど」

 

綾小路君がそう切り出すと、長谷部ちゃんが手をあげて言った。

 

「綾小路君って喋るんだ」

 

「ブフッ!」

 

やっべ吹いてもた。

 

「………最初にでてきた質問がそれか」

 

「なんていうか、全然印象無かったから。休んでても気づかない生徒みたいな?」

 

長谷部ちゃん中々辛辣やな。悪気が無い所がさらにひどい。

 

話題が体育祭、部活、そして勉強へと移った。

 

「2人とも見事な理系だな。文系教科の殆どが壊滅的だ」

 

「2人とも仲が良いとは思ってなかったが、得意不得意が被ってると良く知ってたな」

 

「前に図書室で勉強してる時長谷部に声をかけられた。その流れだ」

 

「私もみやっちも比較的、孤独組だしね。クラスに馴染みきれないんだよねぇ」

 

「そういう意味じゃ俺も同じだ。基本的に今存在するグループには違和感がある」

 

「じゃあなんで今回はグループ作ることに賛成したわけ?」

 

「別にグループってほどじゃない。ただの勉強会だ。それに少数なら静かだろ。自分自身が勉強するのに邪魔にもならない。そういうわけでこれから勉強方法を考えていく。悪いが少し時間を貰うぞ」

 

「了解。適当にお茶して待ってれば良いんでしょ?」

 

そんなわけで早速携帯を取り出して寛ぎ始めた。

と思ったら思い付いたかのように喋り出した。

 

「そういえばさ、草元くんも割と孤独組じゃない?」

 

ほ?それはまた意外な評価やな。

結構色んな人と喋ってるつもりなんやけど…

 

「いやいや、そんな事無いだろ。草元は教室でもよく喋ってるぞ?」

 

「いや、そうなんだけどさ。なんか、こう、1人が板についてるというかさ、1人でも違和感が無いというか…」

 

なんやそれ。まさか俺が真性のボッチやとでも言いたいんか?いや、確かにボッチやったけどさ…

 

「もしかして俺バカにされてんのかな?」

 

「多分違うから安心しろ」

 

そうやんな!俺の奥底に眠るボッチを感じ取ったとか、そうゆう訳ではないやんな!

 

 

それから30分を過ぎた頃、長谷部ちゃんがそういえばと切り出した。

止めようとする三宅を押し切って、こう聞いた。

 

「綾小路君って堀北さんと付き合ったりしてんの?」

 

「してない」

 

「即答?なんか随分手慣れた模範解答って言うか、逆にちょっと怪しかったり?」

 

「色んなヤツに聞かれるからだ。堀北とは常に一緒に行動してるってワケじゃない」

 

「そうかもしれないけどね。恋愛の噂は半分は真実で半分は嘘だったりするからなぁ」

 

お?ここもしかして(綾小路君への)アタックチャンスか?

 

「あ、でもこの前コイツさtムグムグ」

 

くっそ!綾小路君のやろう!自らの反射神経をフルに使って口止めして来やがった!

 

「なになに?綾小路君がどうしたの?」

 

目を輝かせて長谷部ちゃんが聞いてきた。

 

「何でもない。な?草元」

 

「ふー。おお、せやな。んでな、コイツがこの前sムグムグ」

 

…ッ!ハヤイッ!まだ子音しか言ってねぇよ。

 

「……何もなかった。そうだよな?」

 

「…おん」

 

この時、俺は初めて綾小路君には絶対に勝てないと言うことを身をもって実感した。

 

勉強会の方針なんかを纏めて、この日は終了、お開きとなった。

 

 

 

その日の夜、俺は久々の外食に来ていた。

 

目の前で焼けたヘレをタレにつけ、口に運ぶ。ついで白飯を投入し、久々の牛肉を堪能する。

 

「ふぅ…うま」

 

「貧乏のDクラスにはなかなかありつけない飯だったか?」

 

目の前に座る龍園君が問いかける。

そう。この龍園君、この前に残した捨て台詞通りに焼肉を奢ってくれると言うのだ。

もちろんただ奢ってくれるだけで済む訳が無いが、折角の焼肉を堪能しない手はない。

 

「まあ、Dクラスが貧乏なんは否定せんけど俺はそんな事ないからな」

 

「の割には随分質素な生活を送ってるようだが?」

 

「いきなり生活水準が上がったらクラスのヤツが怪しむやろ」

 

「確かにな」

 

「あ、ミノ2人前下さい。後ヘレ追加で3」

 

「………少しは遠慮したらどうだ?」

 

「貧乏人のDクラスには中々ありつけない飯やからな…あむ」

 

そう言って牛タンで米を包んで口に運ぶ。

 

「そういえば今回の試験Cクラスは厳しいんちゃう?」

 

「あ?」

 

「勉強だけで言えばDクラスの方が出来るんやし、中々厳しいやろ?それとも何か策でもあるんか?」

 

「クク…さあな」

 

「ほーん」

 

 

 

…ふぅ。お腹いっぱいや。

 

「あ、このイチゴパフェ下さい」

 

「女々しい野郎だな」

 

「そろそろ本題聞いてもええか?」

 

「ああ、そうだな。Dクラスの答案を寄越せ」

 

えらいシンプルな依頼やな。それにコレも櫛田ちゃんと対して変わらん依頼やし…

 

「報酬は?」

 

「20万だ」

 

「25」

 

「…クク、いいぜ。25万だ」

 

「一応確認しとくけど、茶柱先生に提出された問題の答案を龍園君に渡せばええんやな?」

 

「ああ」

 

よし。言質は取った。

 

「オーケー。……ところで、櫛田ちゃんの使い勝手はどうや?」

 

「中々良い女だ。どっかの誰かよりもよっぽど信頼出来て扱いやすい」

 

「へぇ。そりゃ良かった」

 

 

しかし、この依頼をしてきた意図がホンマに全く分からない。

少なくとも、俺が二重スパイに近い役割になってる事には気付いているはず。

わざわざ櫛田ちゃんとの二段構えにする必要は無いと思うんやけど…

 

「んじゃね。御馳走様」

 

ま、ええか。なるようになるわ。




はい。ちょっと今メンタルブレイキング中で、暫く投稿が滞るかも知れません。

それにしてもRTA系って異様に人気高いですよね。俺もめっちゃ好きなんで書いたみたい感はあるんですけど、イマイチ淫夢系に明るくなくてですね。
あと気付いたのは、取り敢えずクロスオーバーはやり得やなって。二つのタイトルから人を引っ張って来るから、オリ主だけの作品よりも人の集まりが良いってようやく気付きました。


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十三話

一番最初のところ、別に前の話に突っ込んでても良かったなって。


龍園にとって、今回の依頼はさして大きな意味を持つものでは無かった。

櫛田のすり替えが成功すればそれで良し、失敗していたなら草元が持ってきてくれればそれでも良し。

ついでに、もし草元がXなのであれば、こちらの意図を勝手に深読みしてくれでも良い。

そもそもあのカラオケルームでの発言を鵜呑みにも出来ない。黒幕であるXである可能性はともかく、メールを送ったという事すら嘘である可能性だってある。

 

強いて理由を言えば、こちらがスパイである事をバラす際に、加担した事実が多い方が良いから、というぐらいだった。

未だに姿を見せないX。

いずれXへと近づく時に、揺さぶる材料は多ければ多い程良いはずだ。

 

 

_________________________________

 

今日の放課後、綾小路君に図書館で勉強しないかと誘われた。

当然一緒に勉強をする事になっている佐藤さんへの気も使わないといけないわけで、絶賛キューピット中…とまでは行かずとも応援している身としてはその場に居るのはよろしくない。

 

ついでに言えば、そろそろ櫛田ちゃんの暴露の時期だったはず。

俺は表向きは櫛田ちゃんの事を性的な目で見ている健全な男子高校生だが、その実櫛田ちゃんの事をクラスでもトップレベルに把握している。

若干龍園君が、俺が斡旋した事をバラしてしまう可能性もあってその辺のリスクヘッジが甘かったと反省。

まあ、そん時はそん時やろ。それこそ最悪櫛田ちゃんを道連れにする事ぐらいは多分出来る。

 

 

そんなわけで、なるだけこの話に関わりたくない俺は自室で勉強している。なぜ勉強会に参加しないのかと聞かれるが、俺は音楽をかけて口ずさみながら勉強するタイプだ。実際効率悪いんかも知れんけど……まあ、それ程成績悪くないしええやろ。

たまに綾小路グループの方の勉強会もあるので、そちらには参加している。いつのまにか俺だけ仲間外れになってる…とかは避けたい。

 

 

そんなカフェでの綾小路グループの勉強会の一幕。

 

「随分楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ」

 

長谷部ちゃんが落としたカップを踏みつけて登場した龍園君に、俺達の警戒はマックスとなった。

 

 

「どうだ?何か引っかかることはないか?ひより」

 

少しのやり取りをした後に、龍園君が引き連れていた少女へと問いかけた。

ほぉ…かわええやん。なんか不思議ちゃんって感じがするな。物腰が柔らかそうやし、ヒロインのSSが多かったのもうなずけるわ。

 

「どうでしょう。現段階ではなんとも申し上げられません。

…どちらも印象の薄い顔で、すぐ忘れそうです」

 

……。コイツって喧嘩売ってるよなぁ。顔薄いねって言われたら流石にイラってこん?

てかコレあれか、綾小路君と幸村君に向けて言ってるんか…なんか怒りが鎮まってきた。

 

「ククク、そう言うな。今後長い付き合いになるかも知れない相手だからな」

 

「幸村さん…綾小路さん…高円寺さん、あとどなただったでしょうか」

 

「平田です平田」

 

「そうでした。平田さんでした。どうしてこう、顔と名前は覚え難いんでしょうか」

 

いやー、ホンマに不思議な子やな。ポワポワしてるってゆうか、掴み所が無いというか…。

てか、俺の事触れられてないけどなんで?結構重要警戒人物ってゆう自覚はあったんやけど…

 

「流石に高円寺のことだけは覚えたようだな」

 

「あの方は非常に独特なので覚えやすかったですね」

 

「…まぁ、アイツのインパクトやしなぁ…」ボソッ

 

「あなたは確か……、………。……あ…草元くん…でしたか?」

 

…なんか、絞り出すように出てきたな。

 

「おぉ。合ってるけど、なんで俺の事なんか知ってんの?」

 

「ほら、たまに図書室にいるでしょう?顔は覚えていたのでその内名前も覚えました」

 

へー、図書室ねー。確かにたまーに野菜の本とか料理本とかそうゆうの見てるけど、それも見られてたんやな。流石は図書室の番人。利用者の顔は忘れないってか。

 

「ほぇー……………まてよ、覚えたって言ってた割には名前出るのに結構時間かかってなかった?」

 

「すいません。覚えてもすぐ忘れてしまうので」

 

は?コイツまさか、俺も印象の薄い顔とでも言うんか?

(確かに)そうだよ(便乗)

 

 

「一体なんなんだよ龍園。俺たちは忙しいんだ、用件があるなら手短に済ませてくれ」

 

椎名ちゃんにはらわたを煮え繰り返していると、痺れを切らした三宅君が龍園君に突っかかった。

 

「何もねえよ。今日はただの挨拶だけだからな。おまえらに伝えておくぜ。近いうちに改めて会おうってな」

 

「どういう意味だ」

 

食ってかかる三宅君を無視して、一行は去って行った。

 

 

「………で、なんでまだおんの?」

 

「なんなの?そこに居座ってられると邪魔なんだけどさ」

 

未だに残る椎名ちゃんに問いかけると、機嫌の悪そうな長谷部ちゃんが続けて言った。

てか、長谷部ちゃんも結構肝座ってるよな。龍園君に物怖じしない女子なんかだーいぶ少ないと思うし。

 

溶け残った砂糖の量から算出した云々とか言い出した電波ちゃんからCクラスが黒幕探しに躍起になっているという事実を聞いたが、俺達にはまっったく心当たりの無い事()だった。

 

 

 

電波ちゃんが去った後も勉強を続けて、今は帰宅途中。

電波ちゃんという呼び方はしばらく変えるつもりは無い。アイツは頭おかしいぜぇ…絶対。

 

コンビニに寄って4人は買ったアイスを頬張る中、俺はフライドチキンにかぶり付いていた。

 

「あー、良い匂いがする。良いなーくさもん」

 

このくさもんは俺のあだ名。クマモンかな?

 

「この時期にアイスを食うやつの気が知れへんわホンマに。おでんとか買った方が絶対良かったやろ」

 

「…ちょっとやめてよ。食べたくなってきたじゃない」

 

「唐揚げもええなー…肉まんもええなー…」

 

「ゆ、誘惑には負けないんだから…」

 

「それも保存料と着色料のオンパレードだがな」

 

「お、流石はthe・健康志向やな。そんな幸村君に朗報や!そろそろ玉ねぎも食える頃やし、モヤシも安く売ったるで!」

 

そう!ついに玉ねぎが食えるようになったのだ!というのも玉ねぎは収穫の後干さないといけないらしい。それで中々食えなかったんやけど、ようやく食える状態になった。あぁ…玉ねぎの甘みが恋しい…。

あ、ちなみにこの人達には農業の事を話しました。なんか面白い話ないの?みたいな無茶振りが来たので思わず言ってしまいました。まあ、言いふらすような奴等でも無いし大丈夫やろ。

 

「どこの八百屋だ」

 

お、中々小粋なツッコミやな。…うーん、60点!関西人のお笑いの採点は厳しいんやで。

 

 

その後なんだかんだで綾小路グループの結成が決まった。

いやー、なんかむず痒いね!下の名前で呼ばね?ってとこから下の名前で呼び始めるのって結構恥ずくない?

 

はるちゃん(波瑠加やから)じゃないけど清隆って結構呼びにくいから俺もきよぽんって呼ぶ事にするわ。ちょっとぐらい恥かいて貰わんとアカンと思うんですよ俺は。

明人やからあっきーと、啓誠……。けーちゃん……川サキサキさん家の幼女が思い浮かんでしまうからなんか嫌やな。けーぽん…けー…けーちん?…よし。けーちんにしよう。

後は追加で入った佐倉さん…愛里…無難にあいちゃんとかか?あいりん……あいりす…あいあい……微妙やな。まだあだ名付けるのは早いか?まあ、馴染んでしばらくしたらまた考えるか。

因みにあだ名を付けるのに意味は無い。ただきよぽんって呼ぶのは確定してるから、どうせなら全員付けたるか!って感じ。

 

てな訳で、6人の綾小路グループが結成された。

 

 

そしてその日の夜、明日グループで映画に行く事になったわけだが、どうにも参加を決めかねている。

 

そろそろ櫛田ちゃんが既に問題を渡してるやろうし、早いうちに問題文を確認して置いた方がええやろ。試験問題の写真撮ったらアカンとも言われてないし、その情報を龍園君に送るのは造作も無い事だ。

ただ、それが万が一Dクラスの子にバレでもしたら俺は魔女裁判にかけられて縛り首にされる可能性がある。

そうなると、映画の後カラオケでの作戦会議の入ってる明日が一番Dクラスの人が少ないはず。確率論で言えば明日が一番安全。

なら答えは決まってるな。断りの連絡だけ入れておいて……

と思ったら綾小…じゃなくてきよぽんからメッセージが来ていた。

 

『明日20時から試験に向けての打ち合わせがあるんだが、剛にも声をかけておいてくれと堀北が。用事があって来れないなら俺から堀北に伝えておくが』

 

20時なら流石に用事は終わってるし問題無いかな?

 

『おーけー。多分20時までに用事は済んでるから間に合うわ。後で場所だけ送っといてな』

 

了解と返ってきたのを見届けて、ベッドに身を投げ意識を手放していった。

 

 

 

 

放課後になった。

本当は学校に残っておきたいが、用事があると言って断った以上学校でブラブラしている訳にもいかない。

一度帰って、しばらく時間が経ってから学校に向かった。

 

 

「失礼します。茶柱先生に用があって来ました」

 

いつになっても職員室は緊張するわ。特に部活の顧問が怖いとそれに比例して緊張も増します(俺調べ)。

 

「草元か。どうした?」

 

「提出されている問題文を見せてもらいに来ました」

 

そう言うと、一瞬茶柱先生が怪訝そうな顔をした後奥に引っ込んで、すぐに出てきた。

 

「別に構わんが……」

 

そう言って渡してくれた問題文を床に広げて、1ページずつ写真を撮り始める。

 

「な、何を……している…?」

 

「見て分かりません?写真撮影ですよ。別に写真撮ったらアカンとかそうゆう決まりないですしね」

 

「いや…そうだが……」

 

まあ、そりゃ茶柱先生から見たら全く理解出来へんよな。

 

「お前も……なのか………?」

 

も…櫛田ちゃんの事かな?大丈夫大丈夫。今回はちゃんと堀北ちゃんが手を打ってるし、三学期が始まる頃には俺はこんな事してないから。

一通り撮り終えたので、封筒に戻して茶柱先生に返す。

 

「大丈夫です。俺はただ小遣いを稼ぎに来ただけで、クラスの邪魔はしてないですよ」

 

「…………………」

 

「…心配せんくても今回はDクラスが勝ちますよ。そうですよね?」

 

「…………………」

 

俺の事を怪訝そうに見つめた後、何も言わずに帰って行ってしまった。

正直、また「気付いていたのか…一体いつから気付いていた」→「お前が母ちゃんの子宮ん中おるときからや」が出来るかと期待してたんやけど、そうはいかんらしいな。

 

ふぅー、これでお仕事終了か。

軽井沢さんが謎癇癪を起こすカオスなカラオケに参加しといたら今日は終わりかな。

あ、龍園君に送ってあげとかなアカンか。

 

 

 

_______________________________

 

試験問題の最終提出日。私と綾小路くんは職員室の前で、茶柱先生と話をしていた。

 

「それにしても難儀なことだな。これまで受け持ってきたDクラスでも、聞いたことのない要望だ。学校のシステム上クラス内でここまで警戒、騙しあうことなど想定の外。いつまでもこう上手くは行かないぞ堀北。クラスメイトに裏切り者を抱えたままでは勝てる試験も勝てない」

 

「分かっています。ですが、それもこの期末試験で終わらせるつもりですから」

 

櫛田の裏切りを警戒し、先手を最速で打っていた事が功を奏して堀北の思い通りに事が進んだ。向こうは問題がすり変わっているなんて微塵も思っていないはずだ。

 

「そうか……」

 

だが、茶柱先生の様子がおかしい。どこか顔が晴れないようだ。

 

「…どうかしましたか?」

 

 

「…お前には、お前達には話しておく。ついこの前、お前達が来るより前に、櫛田が提出した問題を見せるよう言ってきた生徒がいた。そしてその生徒はその問題を1ページも残さず撮影した」

 

 

 

………………は?

 

「………そ、それは……本当ですか?」

 

「残念ながらな」

 

「櫛田さんではなく?」

 

「櫛田とは全く別の生徒でだ」

 

 

 

櫛田さん……ではない人物が?

 

裏切り者が………もう1人……?

 

どこからかやってきた目眩をなんとか堪えて、茶柱先生に問う。

 

「誰……ですか、その生徒は」

 

 

 

 

 

「……草元剛だ」

 

 

期せずして、というかなんというか、龍園の寝返りを待つまでも無く、裏切り者の烙印を押されてしまったようだ。




はい。ガバガバですね。一体なぜ茶柱先生がチクってしまう事を考えられないのでしょうか。

玉ねぎの話ですけど、一応ちゃちゃっと調べたんですよ。でもどんくらいで育つかイマイチわからんくて、でも干さなアカンって事は知ってました。
玉ねぎは一番旨い野菜やと思ってるんですけど、そこんとこ異論あるか?異論あるやつは豚肉と玉ねぎを砂糖と醤油で炒めて、ご飯に乗せて上に卵落とせ。ただの豚丼の完成や!


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十四話

いつの間にかUA一万超えててビビリ侍。

感想もたくさん頂いていて、とても励みになっております。


期末試験は滞りなく終了した。

原作通り1人も退学者が出ることは無かったし、堀北ちゃんも櫛田ちゃんとの勝負に勝ったようだ。

 

これで後は、龍園君の黒幕探しで二学期は終わり。

龍園君との契約も今回の敗北で切れるし、一先ずは裕福で安全安心な暮らしに戻れるかな。

 

そして12月に入りポイントが支給された。

5月当初と比べるとかなりクラスポイントが増えており、他クラスとの差も縮まっている。

俺はその金で毛布を買った。めちゃめちゃフワッフワであったかい。てか今年の冬寒いな。毛布に包まって登校したいレベル。

 

これからちょっと雰囲気がピリっとするけど時期に収束するし、平和も同然やな〜。

 

 

 

 

なんて思っていたのに…………

 

今俺は、病院のベッドの上で痛々しい姿を晒している。

 

「なんで…なんでこうなったんや………」

 

 

時は昨日の12月2日、その放課後に遡る……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日俺は、龍園君からの呼び出しを貰っていた。

期末試験の事とか、これからの事についての話するんやろなぁ〜。

思えば、これがバカやった。

どうせ今回も焼肉奢って貰うだけやと思ってたし、せいぜいめんどくさい依頼があるぐらいやろとも思ってた。

 

 

待ち合わせは、7時に寮から遠く離れた人気のない道……なんで俺はこの時点で気付かんかったんや。人気ないとか怪しすぎるやん。

いや確かに、焼肉屋の通り道でもあったし分からんでもないよ。でもさ、いっつも「席取っとるから行っといて」方式やん?いつもと違うとこに警戒しとかなアカンかったやろ……

 

 

待ち合わせ場所に行くと龍園君が先に待っており、2人で焼肉屋への道を歩く。

 

「今回の試験は残念やったね」

 

「全くだ。使えねえスパイのせいで大金をドブに捨てちまった」

 

「それは申し訳ないなぁ。ウチの堀北ちゃんがエラい優秀やったみたいで」

 

「桔梗も役に立たなかったし、この試験は俺達Cクラスに何のプラスも無かった。

 

 

………だが、それも今回で終わりだ」

 

そう言った直後、龍園君に蹴飛ばされた。蹴られたのではなく押し込むように、蹴飛ばされた。

次にものすごい力で路地裏に引きずり込まれる。

当時は何が起こっているか全くわからなかったが、俺を引きずっているのはアルベルトだった。

 

かなり奥まで引きずり込まれ壁に投げつけられた。

肺の空気が一気に出て、ぐふぅと声が漏れた。

 

顔を上げると正面に龍園君、さっき通っていた道路方面にはアルベルト、その反対側には石崎。

 

これは………もしかしてヤバイやつ?

はい。ヤバイやつです。誰がどう見ても万事休す。全俺が死を覚悟した。

 

 

好戦的な笑みを浮かべる龍園君が徐に口を開く。

 

「さっさと黒幕を吐け。そうすりゃ少しは手加減してやる」

 

うわぁ…だよねぇ……。この時期でこの場面ならそうゆう話だよねぇ…。

 

「い、いや、知らん……あ。そ、そうや、ポイント!ポイント払えば教えたるやん!」

 

やっべこっっわ!マジで声が震える…

 

「あ?テメェ状況わかってんのか?あぁ!?」

 

石崎が凄んできた。マジで怖いんで勘弁して下さい!

石崎が胸倉を掴んで来た。え、ちょ!ちょちょちょ!ちょ、おまっ…ブヘェ!!

 

な、殴られたんやけど!!なんでなんでなんでなんで?

なんで龍園君止めないの?嘘やろ?もう俺ダメなの?

 

「オラ、さっさと吐けよ!オラァ!」

 

もう一発!?

 

「オラァ!!」

 

さらにもう一発ぅ!??

 

クッソ痛い…ウッソやろ…?口がめっちゃ血の味するしジンジンするんやけど。

 

今回俺はバラすつもりはない。

というのも、軽井沢さんを手駒にする…なんか言い方悪いな……まあええや。手駒にするには、あの屋上みたいな状況を作る必要がある。一種の極限状態みたいな、そうゆう心理状態。

で、そのためには屋上イベントまで黒幕の正体が完全にバレてない事が条件となる。それまでにバレてたら原作とは違う感じになってもて屋上イベントが無くなるからね。

きよぽんに軽井沢さんが居ないとなるとかなりこれからの動きに支障が出るから、軽井沢さんを手駒にするのは外せない。

後々の事を考えれば、ここで俺がボッコボコにされてでも黒幕をバラさない方が良い………………はず。

 

 

「ほう…言わねえ気か?その胆力だけは認めてやるが、利口な選択とは思えねぇな」

 

………てかクッソ痛いんやけど…もうサイッアク…!

 

「言っても変わらんやろ…?ホンマかどうかもわからんねやし、どうせ言ってもボコボコにされるだけやん」

 

「クク…確かにな。だが言わねえよりはマシだ。軽傷で済むぞ?」

 

「もう俺の中やと重傷やわ…マジで血吐く事なんか無いと思ってたし……」

 

「……そうかよ。石崎、いたぶってやれ。やり過ぎるなよ」

 

「はい」

 

俺に喋る気がない事が分かったのか、会話を打ち切り石崎に指示を出した。

 

「悪く思うなよ。さっさと吐けば楽だってのに」

 

指を鳴らしながら石崎が近づいて来た。

 

「……はぁ。一つだけ、良い事教えたるわ」

 

「あ?」

 

「喧嘩した事ないとは言ったけど、こうゆう場面が初めてな訳では無いんやで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい。そんな訳で、三週間の入院生活を余儀なくされました。

いやー!ボッコボコにされたね!あの後記憶ないし。気が付いたら3人とも倒れてるとかやったら良かったんやけど、残念ながら目が覚めたのは病院やったわ。

最後カッコつけたけど、もちろんハッタリや。なんか揺さぶりみたいなやつでワンチャン作れへんかな?って思ったんやけど無理やったわ。

はぁー、身体中打撲だらけで痛い……。くそったれがぁ!!

 

因みに、三年生の先輩が通りかかって人を呼んでくれたらしい。あのままやと下手しい死んでたね。夜やし…。

…いや、それはないか。流石に人が死ぬと本格的な調査が入ってあの3人がお縄やから、そうなる前に何かしらの手はうつやろ。

 

まあ、手が使えるのは良かったわ。何かしらで時間潰せるし、ケータイも使えるからな。しかも食費が無料なんは爆アド。漫画でも買ってきてもらおかな…。

 

……………あ、野菜!…はきよぽんに頼めばええか。

 

 

それにしても3週間か…ギリ終業式には間に合うぐらいかな?

別に間に合ったかて何かある訳じゃないんやけど、クリスマスを病院で過ごすのは…こう…嫌やん?

 

 

「おい草元!無事か!?」

 

そう言ってあっきーが飛び込んで来た。

 

「お、あっきー。わざわざ来てくれてありがとーな」

 

その後ろから綾小路グループ達が入って来た。

 

「お、皆来てくれたんか」

 

「よっ。随分大怪我だね」

 

「痛そう…だね。大丈夫?」

 

「見舞い品だ。適当に食べてくれ」

 

けーちんが見せた袋の中には大量のお菓子が入っていた。

 

「あらあら。お気遣いどーもー」

 

みんな割と言葉は軽い感じやのに、どうも渋い顔をしている。

あっきーが口を開いた。

 

「……龍園…か?」

 

 

これがまためんどくさいんよな。

俺が龍園君達にボコられたって言えば間違いなく裁判になる。今回は俺が被害者やから須藤君みたいにはならんやろし、向こうが罰則を食らうのは目に見えてる。

ただそうすると証拠が無いから裁判が長引いてその上で裁判に勝ったすると、屋上イベントが潰れる可能性がある。俺はどっからどうみても大怪我やし、証拠が無くても軽く3週間は絶対停学になる。屋上イベントを起こしたい俺は向こうの停学なんかは避けたいわけよ。

だから、俺は今回の事を訴えたりするつもりはない。

龍園君がなんでこんなハイリスクな事をしたんかは分からんけど、俺が事を荒げる必要はないやろ。

 

 

「いいや、階段から足滑らしてもてな。いやー、ドジやったわホンマ」

 

「階段から落ちて全身打撲にはならないだろ」

 

やっぱあっきーは分かってんのかな?こうゆう怪我もいっぱい見てきたんやろうし。

 

「なったんやからしゃあないやろ」

 

「ねえ…先生に言った方が…いいんじゃない、かな?」

 

「階段から落ちましたって?ハハ…それは恥ずかしいやろ」

 

「…なあ、なんで隠すんだ?クラスのみんなも、もうお前の為に動き始めてる。後はお前が訴えでもすればアイツらを追い込める」

 

え、もうそんなに大事なってんの!??

まいったねぇ…ちょちょっと話題に上るぐらいやと思ってたのに……好感度上げすぎたかな?(嬉しい)

 

「階段から落ちただけやのに大袈裟やなぁ。みんなにも言うといてや。ドジ踏んだだけでここまで騒ぎが大きくなるとホンマに恥ずかしいから」

 

「なんでホントの事言わないわけ?もしかして…脅されてるとか?」

 

待て待て、そんなわけないやん。てかそこまで行くと収拾つかんくなるやん。シャレになってないって〜…

 

「いやもうホンマにちゃうから。もうええやろ?俺がただドジっただけやって」

 

うーん。どうにも納得してくれそうもないなぁ…。かと言って事情を説明するかって言われるとなぁ…。

クソダルファンタスティックエブリデイやわ。

 

 

「……………わかった」

 

「啓誠!?」

 

けーちん!?分かってくれたの?いやー、インテリは理解が早くて助かるわ!

 

「そろそろ行こう。ゆっくり休ませた方が良いだろう」

 

そう言ってけーちんが出て行き、渋々と言った感じで残りの4人も出て行った。

 

ふぅ。とんだ災難やな。まさかクラスぐるみで動き出すとは…。クラスメイトの優しさが身に染みるわ。物理的に。もうやめてくれホンマに。頼むから殴り込みするとか辞めてくれよ?

 

んー……一応…きよぽんに釘刺しとくか…

 

________________________________

 

病院を出た綾小路グループ一行。

 

「啓誠、いいのか?」

 

綾小路が幸村に問いかけた。

 

「アイツはきっと俺達を守ろうとしてるんだ。Dクラスのみんなが同じ目に合わないように関わるなと、そう言ってるんだ」

 

「じゃあやっぱり…龍園君達が……?」

 

「そうだろうな。何でアイツが狙われたのかは分からないが、卑怯な手を使ったに違いない」

 

「じゃあどうするの?」

 

「俺達で剛の仇を討ってやるんだ」

 

「いや待て。剛が関わるなという意味で言っているなら、その意思を汲んでやる方がアイツの為なんじゃないのか?」

 

「…いや、アイツは分かってない。友達が傷つけられて大人しくしてられるほど俺達は優しくない」

 

綾小路のやんわりとした静止も受け入れられず撃沈された。

周りを見ると、みんなが覚悟を決めたような表情をしている。

 

(そういう意味で言ってるわけではないんだけどなぁ)

 

綾小路の心の声は、友情に燃える彼らに届くことは無かった。

 

_______________________________

 

 

『……そうゆう訳で、なんか戦う感じになった』

 

 

……………………………………は?

 

い、意味がわからんのやけど?

深読みしすぎやて……てかきよぽんマジで何してんの?

 

『いや…悪い』

 

はー、つっかえ。

何とかしてーや。

 

『もう手遅れだ。もう既にクラス全員に伝わってる』

 

ファーーーー!www

 

なんで…なんでなんや…!

なんでこいつらアオハルっぽいことしてるんや…

ボコられた仲間の仇討ちって…ごくせんかな?青春ヤンキードラマかな?茶柱先生がジャージツインテ眼鏡は似合わんよな?

 

……そ、そうや!平田君と櫛田ちゃんに伝えてーや!クラスの中心が呼び掛ければ収束していくやろ?

 

『言ったろ。既にクラス全員だ。今から伝えた所で収束しないだろうし、ついでにBクラスまで出張ってきた。もう学年全体の問題だ』

 

デデドン(絶望)

 

なぁ…おかしくないか?いや、みんな何にも悪いことしてないし、どっからどう見ても美徳なんやけど…ねぇ?こう…申し訳ない気持ちもあるし……そもそも動いて欲しくないし…被害者本人の意思を無視するってどうなん?僕!そうゆう仲間外れみたいなの、良くないと思います!!

 

もう終わりか…俺が何言っても無駄なんや……。

 

 

これが……スパイやってたツケなんか……?

 

 

ん?

 

 

 

んん?

 

 

 

 

これさ。

 

 

 

 

 

もしかして…

 

 

 

 

 

いや、もしかしてなくても………

 

 

 

 

 

 

今スパイってこと龍園君にバラされたらヤバくない?

 

 

いや、こんだけ大騒ぎになってさ。ほぼ学年全体の問題になってさ。その被害者が実はスパイでしたって…コレ……晒し上げられませんかねぇ?クラス全体からぶち殺される未来しか見えへんわ。

ヘイトが龍園君から全部俺に向きそうでめっちゃめちゃ怖いんやけど……大丈夫か?

 

いや、大丈夫ちゃうやろ。

マジでヤバイ気がしてきた。コレ…マジで俺ヤバイぞ。

ど、どどどどどうするぅぅ!!

 

 

 

コンコン

 

 

未来を案じて遺言を考えていると、病室の扉がノックされた。

 

返事をすると、入ってきたのは堀北ちゃん。

 

 

「やぁ。いやー、ドジってもてね!」

 

包帯を見せつけておちゃらけて見せるが、黙って俺を睨みつけて一向に喋ろうとしない。

あれ?こうゆう雰囲気の話ではない…ってこと?

 

 

「単刀直入に言うわね」

 

 

おん?

 

 

「あなた、Cクラスのスパイだったのね」

 

 

 

 

 

 

……………………オワタ\(^o^)/

 




はい。
俺的には展開とか思考とかは自然というか、違和感無いかなって思うんですけど、読んでる側ってどうなんですかね?なんか無理矢理ってゆうかご都合主義に見えてるならちょっとアレかなーと、思たろう。

実はちょくちょく次の作品考えてるんですけど難しいね。面白そうな設定とかは思いつくんやけど形にしようとしたら全然上手くいかんわ。設定というかベースだけあげたら小説書いてくれる人とかおらんのんかね?


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十五話

今回はちょっとわかりにくかったりする…かな?
早めに修正入れるんで「どゆこと?」ってなったら教えてね♡


「あなた、Cクラスのスパイだったのね」

 

 

あぁ…終わった…………

 

「………はぁー。うん。そうやで」

 

隠してもしゃーないよな…どうせ龍園君が音声付きとかでばら撒いてるんやろうし。

 

「言い訳しないのね」

 

「隠したってしゃあないやろ?事実なんやから」

 

「理由を聞いても良いかしら?クラスを裏切ってまで龍園君に協力した理由を」

 

「…いや、別に大したことじゃ無いねんけどさ。お金くれるって言うし……しかもめちゃくちゃ額多いんやで?流石にちょっと揺れてまうわ」

 

「ポイントのため……という事で良いのかしら?」

 

「おん」

 

これはあれか。櫛田ちゃんが個人的な恨みで裏切りをしてたから、俺もそうゆう理由なんかって疑ってるってことか?安心しな。ただの守銭奴や…。

 

 

 

「……………なら、私もポイントを払えばあなたは引き受けてくれる…ということね?」

 

「……………は?」

 

………………は?何言ってんだコイツ…

 

「ど、どうゆう意味?」

 

「言葉通りよ。私があなたにポイントを払って、あなたは依頼を遂行する…なにかおかしいところがある?」

 

いや、同じクラスなんやからポイントなんか払わんでも良くないか?……ちゃうちゃう。おかしいのはそこちゃうわ。

 

「いや……おかしくは無い…けど…マジでどうゆうこと?」

 

マジ理解不能なんやけど…?

 

「二重スパイになって欲しいのよ」

 

んうぅん??

 

おお。いや、わかるよ。「ポイントが欲しいなら私に協力したらもっと旨い思いさせたる」ってゆうスタンスなのはわかる。

そこじゃなくてさ。もうスパイってことが龍園君に公表されて全員にバレてるのに俺を二重スパイにした所で意味なくないか?

 

「どうゆうつもりなん?」

 

「私はただDクラスがAに上がるために必要だと思うことをしているだけよ」

 

そんなこと聞いてんちゃうねん!!

 

「いや、そうゆう事が聞きたいんじゃなくて…」

 

「何?」

 

…なんていうんや?「スパイってこと全員にバレてるんやから二重スパイなんかできるわけないやろ」って言いたい所ではあるんやけど…あれ?てかそもそもどうやってバレたんやろ?

 

「一応聞いとくんやけどさ、なんで俺がスパイやってこと知ってんの?」

 

「茶柱先生に聞いたのよ。期末試験の問題を撮影しに来たって。残念ながらあなたが撮影した問題は採用されていなかったけれど」

 

 

…………………え?

 

え?え?え?え?

どうゆうこと?

 

ってことは別に龍園君がバラした訳じゃない…ってこと…?

 

「え?あの、じゃあ、その…茶柱先生から聞いたって事はみんな俺がスパイってこと知らない?って感じ…なんですか?」

 

「?何を言ってるのか分からないけれど、この事を知ってるのは私と綾小路君だけよ」

 

 

 

 

はぁぁぁぁぁー………

 

なーんや!そうゆうことか!

なるほどなぁ…だからちょくちょく会話噛み合って無かったんか!

いやー!ほんまにただの勘違いで良かったぁぁぁ!

絶対龍園君がバラしたからやと思ってたけど違ったんやな。まさか先生からバレるとは思わんかったけど…公開された訳じゃなくてホンマ良かったわ。

 

 

「ちょっと、聞いてるの?」

 

安堵のあまり心の中でハレルヤコーラスを歌っていると現実に引き戻された。

 

「…あぁうん。聞いてる聞いてる」

 

「で、どうなの?」

 

「どうって何が?」

 

何の話してたっけ?マジでさっきの事実がデカ過ぎてその前の話覚えてないわ。

 

「二重スパイよ…あなた、頭もおかしくなったの?」

 

「あー、ニジュウスパイね。おーけーおーけー。別にええで」

 

「…二重スパイを引き受けてくれるという事?」

 

「あーちゃうちゃう。無料でええってこと」

 

そりゃそやろ。自分のクラスのために動くのにおんなじクラスのリーダーからポイント集ったら悪いやろ…

 

「……ポイントが欲しいのではないの?」

 

そりゃ欲しいけど…あ、俺がポイントが欲しくてやったんやからってことな。いや、大枠はそうなんやけどさ。うーん、ある程度話しちゃった方がええかな?

 

「……あー、そもそもな。俺はDクラスを裏切った訳じゃないねん」

 

「……は?」

 

「行為は間違いなく裏切り行為やねんけど、実質Dクラスのマイナスは無いように動いたし実際そうなってるやろ?むしろ龍園君のお金をむしり取れたんやからプラスやん」

 

「……意味が分からないのだけれど」

 

「うーん…一から説明してまう方が早いか。うん。

えっとな。まず俺がスパイ活動してたのは体育祭と期末試験。ここまでおけ?」

 

「えぇ」

 

「で、その間俺が受けた依頼は二つ。一つは体育祭の時にDクラスの情報を教えること。でもこれは俺がなんもせんくても櫛田ちゃんのせいでDクラスは負けてたやろから実質マイナスは無いやろ?」

 

「……あなた、どうして櫛田さんの事知ってるの?」

 

…あっ…いっけね。

 

「あー、それはアレよ。龍園君に教えてもらってん」

 

「…そう」

 

ふぅ。危ない危ない。またガバるところやったわ。

 

「で、二つ目はご存知の通り期末試験の問題を撮影すること。これも堀北ちゃんの作戦通りにいったからDクラスのマイナスは無い。『体育祭の時にDクラスを勝たせたら良かったやん』って思うかもしれんけど、長い目で見ればこの早い時期に堀北ちゃんと須藤君が大きく成長することは大事やからな。なんなら綾小路君も分かってて見捨ててたし」

 

「……体育祭の時のことも知ってたの?」

 

「まあね。まあ要は俺は龍園君から金をむしり取っただけで、なんのマイナスもしてないってこと」

 

どうやろ…?あんまりツッコミどころ無い感じやと思うんやけど…

 

「信用出来ないわね。後から聞いて辻褄を合わせているように思えるわ」

 

「あぁ…そりゃそうやな。でもさ、今俺がこの状態になってるって事がCクラスの味方じゃ無いって事の証明にならんか?」

 

「確かにそうね。でも確実にそうとも言い切れないわ」

 

「どゆこと?」

 

「龍園君ならこうゆう事をさせる作戦でも平気でしそうだもの」

 

ああ、つまり「スパイじゃ無いと思わせるためにボコボコにしたけど、実はまだスパイなんちゃうの?」ってことな。

確かに龍園君ならやりそうやな…

 

「それにあなた、どうして訴えないの?この状況なら間違い無く龍園君に罰則を与えられるのに。私からすれば、龍園君を庇ってるとしか思えない」

 

…あー。うーん。どう言ったらええんやろ…。

正直に話すわけにもいかんし、龍園君を庇ってるようにしてもアカンのよな…

 

「……せやなぁ。有り体に言えば、みんなを巻き込みたく無い…って感じかな?下手に手を出して俺みたくボコボコにされて欲しくないねん」

 

「建前は良いわ。本当のことを言ってちょうだい」

 

えぇ……なんか…俺冷たい人間やと思われてんのか?建前って酷くない?いや、まあ建前ではあるんやけどさ。

 

「うーーん………なんて言えばええんやろ」

 

いやー、これむずいぞ。ニュアンスとしては「龍園君は綾小路君に倒して欲しい」とかそんな感じで伝えたいんやけど難しいな。

 

「…………計画があんねん」

 

「…え?」

 

「今月中に龍園君を倒す計画。その一環と思ってくれたらええわ…って言えば納得出来る?」

 

計画ってゆうか予定なんやけどな。

 

「…それを信じろと?」

 

「んじゃあ今月は様子見てーや。特別試験も無いからスパイ活動なんかあんまり意味ないし、第一俺がこの状態やから動けへんしな。来月になって何にも変わらずに龍園君が動いてたらそん時はどうとでもしてくれ」

 

「………………………………」

 

 

どうや?割と良い感じに持っていけたと思うんやけど…

 

 

「………良いわ。今月は様子を見てあげる」

 

 

イェェェェェス!!

 

「ただし、もし変わっていなかったら…来月は覚悟することね」

 

「………ウス」

 

……いや、大丈夫やろ。流石に。これで原作通りに行かんかったらヤバいけど…まま、ええやろ。

 

 

 

堀北ちゃんが退室したので一息つく。

 

はぁー…ホンマ災難やわ。それもこれもぜーんぶ龍園君のせい!

嫌がらせで毎日メールしたろっかな……アカンわ。ボコボコにされそう。基本チキンなんで…許してや。

でも流石に溜飲が下がらんから、激おこスタンプを龍園君に送っておきます。

 

…送信っと。ふぅ、スッキリした。

 

色々あって疲れたし、やる事もないんでもう寝たいと思います。おやすみ〜!

 

 

 

 

 

 

おはようございます。

現在朝の9時なんですけど、俺起きてるんですよね。

いや、何当たり前の事言ってるん?って思うかもしれへんけど、入院して学校にも行かんでええんやったら普通に10時ぐらいまでは寝えへん?え、寝ない?…じゃあ忘れてくれ。

 

でね?10時まで寝るつもりでおったんやけど、今起きてるのには理由があってね?

なんとこの高校!病院も学校と連携してるから、モニター使って入院中でも授業受けれるんですよー!

 

 

…………いや、授業休めると…思うやん?ずっとゴロゴロして漫画でも読んどけるって…思うやん?

 

ホンマなんやねんこの学校…。

 

しかもね!病室にもカメラ付いてるからちゃんと受けてるかどうかも分かるようになってるんですよ。

…なんでこんなハイテクにしてもうたん?こんなとこにカメラ付けるんやったら特別棟にもカメラ付けてや。

 

いや、確かに後でノート見せてって頼む必要無くなるからメリットはあるんやけどさ。なんか…こう……ねえ?

まあそれでも土日が暇な事には変わりないんやけどね。

 

 

 

 

病院食の昼飯を食べながら今後について考える。

 

 

考えないといけない事は退院後の動き。

 

終業式の2、3日前ぐらいに退院する事になってるから、龍園君との接触がある可能性がある。最悪休んでもええんやけど、なんか余計に心配されそうやからなぁ…。

でもそれぐらいなら下手に龍園君に絡まれるよりかはマシか?

龍園君が沈むまで学校に行かない方が無難やんなぁ…うん。そうしよう。

終業式まで休みます!決定!

 

 

龍園君がなんで俺をボコったんかがイマイチわからんのよなぁ。気に入らんからって言ってボコるような奴じゃない……事も無いな、うん。でも無意味にしてるわけじゃないはずやから何かしらの意味はあるんよな。

 

 

ありそうな流れなら

俺がボコられる→みんなで俺のために動き回って龍園君を訴えようとする→士気が高まってきた所に俺のスパイ音声を投下→俺はしぬ!!

…とか?X探しにどう影響及ぼすんかはわからんけど。

まあ普通に考えたら、俺をボコってXの反応を見る…とかか。はぁー、飛んだとばっちりやでホンマ。

 

……またイラついてきた。

龍園君に激おこスタンプまた送っとこ。

 

 

_________________________________

 

 

龍園の計画は、草元の予想したものとほぼ同じだった。

 

しかし、現在龍園の計画はズレが発生している。

 

理由は、草元が学校に訴えを起こさないこと。

 

当初の計画では、草元をボコって、学校に訴えさせる。

こちらは証拠を残していないし、向こうも本人の目撃情報だけなので、須藤の件と同様に泥仕合になる。

 

しかし、クラスメイトからのヘイトを集めまくっていた須藤と違い、草元はある程度の信頼を得ていた。

実際、須藤の時は消極的だったが今はクラス全体で積極的に動いている。

 

そこで龍園が草元のスパイ活動をバラす事でクラスメイトからのヘイトを集めて精神的に殺す…というものだった。

 

 

もちろんそれは手段であって、目的ではない。

 

目的とは、黒幕であるX探し。

 

草元はそこそこ優秀である。能力は平均的だがDクラスにおいては優等生の部類だし、口も達者で駆け引きもそこそこ上手い。肝も座っており、強かさを持ち合わせている。

その草元が、Xとある程度関わっている事はわかっている。

Dクラスにおいて優秀な駒は、少なくとも今の時点では切りたくないはずだ。

 

つまり、この計画が進めばXは動き出す。その手口を見る事も出来、あわよくば正体に辿りつければ…

 

 

 

だが、計画は破綻した。

草元が一向に学校へ訴える兆しを見せない。

喧嘩をした事がないと自称した通り、まさに素人の動きだった。

荒ごとに慣れている訳でも無いはずなので、ビビり散らかして早々に学校へ訴えると高を括っていた。

 

 

 

こうして、草元は龍園の計画の一つを停滞させる事となった。

当然、草元はそんな事を考えて訴えていないわけではないのだが。




はい。
病院の下りは自分で考えて見たんですけどどうでしょう。割とありそうな感じがして個人的には満足というか、許容範囲かなって。

ホンマはこの最後の三者視点の説明?みたいなのは決着がついた後のネタバラシの時に一気にする予定やったんですけど、今回ちょっと文字数少なくて何足せばええかわからんかったんでぶち込みました。悔いはない。


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十六話

UAが20000超えまして、感謝の念を申し上げまする。
なかなか読んでてクスっと笑ってしまうような展開にならなくて困りんティヌス。まあ…二学期のクライマックスやし…多少はね?


えー、入院してから入院してから2週間が経ちました。

この間にあった事と言えば原作と何ら変わりなく、高円寺イベントとちょっかいかけられたりしたぐらいらしい。

らしいって言うのは俺が実際目にした訳じゃないから。まあ入院してたんやし当然なんやけどな。

 

みんな証拠集め頑張ってくれてたみたいやけど今は停滞気味らしいな。そもそも本人が訴える気無いし、証拠も本人同士の証言しか無いからどうにもならんかったんやってさ。きよぽんが言うには「友達を龍園の毒牙から守る為に怒りを押し殺す男の中の漢!」みたいな美談になっちゃってるらしい。なんでやねん。

 

 

あと、嬉しい事がありました。

毎日とまでは行かんけど、ほぼ毎日綾小路グループのメンバーがお見舞いに来てくれたんよな。

いやー、これは嬉しいね。まあカフェとかで過ごしてたのが病室に変わっただけな気もするんやけど。

 

 

この二週間であった事って言えばこんなもんか。

はぁー、ドラゴンボーイとリトルガールの掛け合いはめちゃめちゃ興味あったんやけどな………今度どさくさに紛れて呼んだろ。

 

 

 

で、明日ついに退院を迎える訳でありましてね。

久々の学校にちょこっとテンションが上がってるんですよ。いや、だって実質クラスの人気者やろ?二週間振りに学校来たら多少は声かけられまくる…やんな?いや、少なくとも櫛田ちゃんは声かけてくれる!絶対になぁ!!

 

明後日には終業式で二学期終わるから連休明け特有のダルさも少ないし、今月最高やな。

 

 

 

 

 

 

 

はい。おはようございます!

きよきよしい朝ですね!えー、空は晴れ渡り太陽が燦々と……ってなんやねん曇ってるやんけ!クソが!!気分悪くなったわ!もう今日は学校行かへん!

 

朝から曇り空に心の中で愚痴を零していると、きよぽんがやって来た。

 

「おはよう」

 

「おう、おはよう」

 

「わざわざ2人で合わせて行かなくても良くないか?」

 

「いやー、ちょっと教室入るの緊張するやん?2人やったらなんか気楽やし」

 

「…あぁ、たしかに」

 

「それにしてもひっさしぶりやな、学校行くの。二週間ベッドの上やと中々体が重たいわ」

 

「あと2日の辛抱だ」

 

「……なんかそう考えたら体が軽くなってきた気がする!」

 

 

綾小路君と学校への道を歩いていると、不意に俺の携帯が震えた。

メールみたいだ。

 

差出人は堀北ちゃん。

 

文面はシンプルで『どうゆうこと?』とだけ。

その下にどこかのURLが貼ってある。

 

URLをタッチすると、画面が変わってロードが始まった。

 

これ……動画?かな?

 

綾小路君と携帯を覗き込む。

 

 

 

ロードが終わって再生された。

 

 

 

 

 

 

 

『おーけー。スパイになったるわ』『交渉成立だな』

 

 

 

 

 

 

 

………………え?

 

 

 

「これは…掲示板にもあるみたいだな。グループでも話題になってる」

 

掲示板……?

 

これ……………アレか?龍園君か?それともまさかドラゴンボーイ?どっちや………いや、どっちも一緒やわ。ドラゴンガーデンボーイやわ。クッソ!どうなってんねん!

 

これって船上試験の時のやつやんな?ヤバいぞ……スパイ容疑…いや、スパイ罪か。で袋叩きにされるぞ。

まずいまずいまずいまずい!!

 

 

「ど、どど、ど、どうするぅぅ…!」

 

マジでどうしよ!ホンマにやりおったな龍園君!!

作戦は予想してたから実質俺の勝ちでええか?ええやんな?

 

もう大人しく負けといてくれやぁぁぁ!!なんでこんな死に目の癖にに爆弾投下してくんねんってぇぇ!こんなんもう道連れやぁぁん!!そんなんできるぅ!??

 

「…どうするんだ?」

 

「どうするって言っても……」

 

えー…どうしたらええんや?

 

 

まて…まずは状況を整理しよう。

 

まず今の問題は、俺がスパイやとバラされた事。

掲示板にバラされたって事は学校に行けばみんな知ってるやろうし、教室で問い詰められるのは間違い無い。それだけならまだ良かった。ただ時期が最悪過ぎる。

今龍園君のせいでピリピリしてるから、龍園君へのヘイトがバカにならん事になってる。その上俺がボコられた件でみんなが動いてくれてたからその高低差分のヘイトも俺に向かう……と。

 

うん。これはヤバいぞ。

誰が見てもわかる絶体絶命。ボコられる瞬間よりもなまじ籠城とかゆう苦肉の策があるせいで精神的なダメージがデカい。あれよ、ボコられる時はもう完全に詰んでたから諦めてたみたいなところあったしね。

 

 

………いや。籠城は別にアリか?

 

んーーー…………

 

 

 

 

うん。

 

「悪い、俺帰るわ。一先ず自分の力でなんとか出来るか試してみるわ」

 

「ああ。わかった」

 

という訳で今回は籠城作戦で行きます。

 

 

あれ?でもアレか。もうコイツクラス上げに手を貸す理由無くなったから俺を助ける理由も無くなるんか……?

……いや………一応友達やし……多少はね?

 

 

 

 

きよぽんと別れて、寮に向かう所で知ってるヤツと会ったらめんどくさい事なるから通学路から外れた所で時間を潰す。

 

その間に欠席連絡だけしといて、今からしないといけない事を考える。

 

籠城に必要なのは食料。娯楽は部屋に本とかがあるから一先ず大丈夫やし、風呂も学校行ってる間に借りれば良い。水は水道水あるしね。

 

 

まずはスーパー。

ある程度腹持ちの良いもんを多めに買っておいて…後は……お菓子でも買っとくか。堅揚げポテトの関西だし醤油味はマジで美味い。オススメやで。

 

買い物してたらとっくに登校時間も過ぎたので部屋に戻って作戦を考える。

 

 

 

まず、今回の勝利条件は、俺が無罪放免で終わる事。

 

そのために必要なのは

 

まず原作通りに龍園君が負ける事。そんでその上で「俺は二重スパイで、Dクラスの為に動いてたんだよ」って示す事。

 

原作通りに負けてもらう必要があるのは今まで何回か説明してたけど、軽井沢さんの手駒化の為な。屋上イベントから外れてしまうとどうなるか全くわからんくなるからね。

それに原作から乖離し過ぎると俺の知識が通用せんくなってまうからそれは不味い訳よ。

 

で、俺が今日明日中にこの問題を解決するとなると、堀北ちゃんとか平田君とかに俺の無実を発信してもらわなアカン訳なんよな。そしたら龍園君が軽井沢さんをほっぽってこっちでイベントを始める可能性がある。

そうなると原作と乖離してまうから龍園君が負けるまで動けないってわけ。

 

だから、まず原作通りに龍園君が負ける事が前提となる。

 

 

で、二つ目やけどこれは手段の問題よな。

さっきも言ったけど、安杯は堀北ちゃんとか平田君の力を借りる事。というか他に作戦なくないか?

きよぽんは最悪頼ったらなんとかしてくれるかもしれんけど、極力頼りたくない感じはある。

俺が自力で無実を証明……は無理やろ。そもそもが真っ黒やのに白を足した所で真っ黒には変わりないわ。

 

てな訳で堀北ちゃんに頼もうと思うんで、メールを送っときますね。

 

『話があるから朝4時に俺の部屋の前に来てくれ』

 

ふぅ。

 

 

…なんやったっけ。あ、そうそう。

そうゆう訳なんで、龍園君が負けるまで…つまり終業式のある明日まで籠城が決まった訳なんですよ。

 

よし。こんなもんかな?

後は上手いこと詳細考えといたらええかな?どうゆう筋書きにしよっかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝の4時、ドアを開けるとちょうど堀北ちゃんが来ていたので部屋に入れる。

 

 

ん?

 

 

そう言えば俺さ、部屋に女子入れるの初めてじゃないか?

男子もきよぽんぐらいしか入らんし……なんか緊張してきた。

 

 

「それで、話って?」

 

「その前に聞いときたいんやけどさ、今日のクラスはどんな感じやった?」

 

これは割と気になる。

 

「そうね……本当に大変だったわよ。当然よね。つい昨日まで同情の対象だった人間が裏切り者に変わるんだもの」

 

「やんなぁ……」

 

「貴方の部屋にも来たんでしょう?」

 

「あー…うん」

 

平田君とかけーちんとかあの辺な。いや、あの辺は別にええねん。「信じてるよ!だから開けて話をしてくれ!」みたいなスタンスやから。

でも3バカも来たんやけどアイツらはマジで許さん。クッソみたいに暴言吐き散らしやがって!許さんぞ!俺は池と山内は絶対に許さない。櫛田ちゃんにあらぬ事吹き込みやがったらしいからな。

 

 

「作戦がある…と言っていたわね。これもその作戦ということ?」

 

「うーん…ちょっとイレギュラーではあるけど支障はないはずや。堀北ちゃんにしてもらいたいのは明日…いや、明後日かな?まあ連絡するわ。で、俺が二重スパイやって事をクラスのみんなに話して欲しいねん」

 

「……まだ信用出来ない貴方の言うことを私が聞くと思う?」

 

「それは明日になればわかることや。その結果を聞いた後でも構わんで」

 

「…明日?」

 

「色々あんねん」

 

「……まあ良いわ。約束が果たされれば貴方の依頼も聞いてあげる」

 

あら。もっと根掘り葉掘り聞かれると思ってたんやけど…。

まあええか。

 

「んじゃあ、よろしく」

 

「一応聞いておくのだけれど、私はいつも通りに振る舞っていて構わないのね?」

 

「おん」

 

「わかったわ。それじゃ」

 

そう言って堀北ちゃんは部屋を出て行った。

よし。これで後は原作通りに明日…いや、もう今日か。龍園君が負ければオッケーやな。

 

はぁー、ホンマ最悪やな龍園君は。

今度焼肉奢らせよう。

 

 

 

 

 

 

 

あの後一眠りして、寮が騒がしくなってきたので起きました。

今日は午前中で学校が終わるからな。みーんな遊びに行くんやで。俺は部屋で籠城やけどなぁ!!

って思ってたんやけど、きよぽんから連絡来た。

内容は『学校の屋上に来てくれ』

 

おーーーん??

 

なんでや?

戦力として数える気なら残念ながらその期待には答えれへんぞ?

まあ……行くんやけどさ。

 

 

 

 

 

学校の階段登ってるナウ!

二週間ぶりに校舎入ったけどなんか楽しいね!この後のカオス不可避なイベントさえ無ければ校内探検でもしてたんやけど…

 

 

おろ?茶柱先生と生徒会長さんやん。ここで待ってたんやな。

 

「……草元?どうしてここに?」

 

茶柱先生がめちゃめちゃ驚きながら聞いてきた。まあそりゃビックリするやんな。教師にも俺のスパイ行為は伝わってるやろうし、学校も休んでたしな。

 

「あー…屋上に用がありましてですね…」

 

「残念だが今は屋上は立ち入り禁止だ」

 

堀北会長が答えた。

言いつけ通りに無関係の人が行かへんようにしてるんか。なかなか律儀やな。健気で好感持てますね!(♂)

 

「いや、あのー、あ、綾小路君に呼ばれて来たんですけど…」

 

堀北会長威圧感ぱないねんけど!ぱないの!!

 

「綾小路に?」

 

「はい」

 

そう答えると2人とも顔を見合わせた後、俺を通した。

 

 

あ、どうもどうも。すいやせんすいやせん…と手刀で間を切って行く。

 

 

検問を潜り抜け、一先ずドアの前で聞き耳を立てると、何やら話し声が聞こえる。

 

あんまり聞こえてこうへんけど、多分龍園君と綾小路君。あれ?でもこの時話してるのってほぼこの2人やからそれだけじゃ状況わからんくないか?

 

 

なんか空気読めてない所で入ってもたらヤバいやんなぁ……。でもずっとここで待っとくのもなぁ…。

 

 

あ!そうや!

急いで階段を駆け下りる。

 

「すいません!綾小路君が上がってからどんくらい経ちました?」

 

茶柱先生が驚いたように俺を見た後、時計を確認してから時間を教えてくれた。

 

「だいたい10分かそこらだ」

 

「あいざいます!!」

 

10分か…それならもうほぼ終わってるやろ。してたとしてもせいぜい馬乗りになってる辺りかな?

じゃあ特に緊迫した空気とかは無いやろ!

 

 

そう思って屋上の扉を開いた。

 

 

 

 

すると、そこにいた全員が俺を見た。

 

もう一度言う。"全員が'俺を見た。

 

全員がピンピンした状態で、俺の到着を待っていたようだ。

 

「遅かったな」

 

きよぽんが俺に声をかけた。

 

 

 

 

 

「…………………………ゑ??」

 

なんでコイツらまだ喧嘩始めてないの?




うーん。よく感想で頂いている『読みやすさ』を結構意識してるんですけど、今回とか前回みたいな割とシリアス目な所ってどうなんですかね?冬休みあたりはぼちぼちクスっとなるシーンとか入れていきたい感じはあるんですけど。


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十七話

(なんかよう実のSS無いかな〜。おっ!なんか赤バーのやつあるやん!どれどれ…『自給自足で実力主義の学校生活』?俺のやつやんけ!!)
って事で一瞬ではございましたが、赤バーに到達致しました。誠に嬉しく思っており、感謝の念を申し上げます。


ウィィィィィィィィッス!!ドーモ、クサモトデース!

えー、現在、きよぽんに呼ばれて屋上に来ているんですが…。

倒れている人は誰一人……いませんでした。

 

なにが………いけなかったんですかね…(困惑)

 

 

ホンマなんでこんなカオスな所に呼ばれたん?

おかしくない?俺なんかしたか?あ、スパイしたわ。

 

あんまりだよぉぉ…

 

「草元!?学校休んでた筈じゃなかったの!?」

 

伊吹ちゃんが聞いてくきた。

 

「いや、ちゃんと休んでたよ。どっかの誰かのせいで学校なんか行けんくなってもたからな」

 

某龍園君の方を見ながら中指を立てて言う。

ふぁっきゅー!!!

 

「誰のせいなんだろうな。全く心当たりがないぜ」

 

…はぁー、ホンマコイツ最悪やんけ。

 

「まあええや。で、俺なんでよばれたん?」

 

「答え合わせだ」

 

きよぽんが答えた。

 

「…ぱーどぅん?」

 

「答え合わせだ」

 

「いや、それはわかったから詳細を説明して欲しいんやけど」

 

「あぁ」

 

説明を聞くと、どうやらきよぽんが入ってから答え合わせが始まったが、向こう(特に伊吹ちゃん)が中々信じてくれず、話が進んでいく中で俺の話になったので読んだ…と。

 

……把握した。納得はしてないけど。

 

「でもさ、俺を交えて答え合わせなんかする必要なくない?きよぽんのやった事全部説明すれば終わりやろ?」

 

「俺もそう思ってたんだがな。龍園の方はお前に聞いておきたい事があるらしいぞ」

 

「はあ…」

 

聞きたいこと…なんでしょうか…?

 

「草元、どうして訴えを起こさなかったんだ?俺はお前が訴えてくる前提で計画を立ててたから計画が狂っちまった」

 

あぁー。それか。確かに客観的に見たら不可解な行動やんな。

どうして…って言われてもな……あ。

 

「あー、それはアレよ、ただチキっただけ。闇討ちまで考えるとよう出来んかったわ」

 

「よく言うぜ。闇討ちまで考えるようなヤツは俺にこんなメールは送らねぇ」

 

そう言って見せた携帯の画面には、画面一面の激おこスタンプが。しかも毎日だ。

 

「毎日毎日送って来やがって。迷惑だとは思わねぇか?」

 

思います。

まさか龍園君に迷惑について説かれるとは思わんかったけど…気付いてるか?それ、ブーメランですよ?(小声)

 

「ちょっと可愛げある悪戯やろ?病院やと暇で暇でしょうがなくてなぁ…」

 

だってやる事って言ったら授業受けてラノベ読んでってするぐらいやからな。ずっと読んでられるほど本の虫じゃないわ。

 

 

「クク…それで?そろそろどういうつもりだったのか教えて貰おうか」

 

んーなんて答えよっかな。この場面でこれ以上シラを切るのはアカン気がするんよなぁ…。

もうホンマの事言ってまうか…うん。そうしよう。

 

「始めから、この場でこうゆう状況になる事を目的としてた」

 

「……あ?」

 

「ホンマは俺はここにおる予定は無かったんやけどな。君らがこの場でこうして集まる状況にする為に、俺は訴える事なく今日まで過ごして来た。訴えて君達Cクラスが停学にでもなったら今のこの状況は無かったかもしれへんからな」

 

「……?…ど、どういうこと?」

 

伊吹ちゃんが疑問を溢した。

 

「…クク…ククク…ハーハッハッハ!!笑えるな!ハッタリもここまで来ると笑えてくるぜ!なあ?」

 

「……ハッタリちゃうわボケェ」

 

「…ほう?ならハッタリじゃない証拠でも見せてみろよ」

 

えぇ……

 

…難しいな。

てか無理じゃない?ハッタリじゃない事の証明とか不可能やろ。うん、無理無理。

 

「そんなんある訳ないやろ。まあ信じへんならそれは君らの自由やし。俺はホンマの事言ったからな?」

 

「……なるほど。なら仮にこの状況を作るためにお前が訴えを起こさなかったして、この状況を作り出してどうなるってんだ?」

 

「…ちょっと察しが悪いんちゃう?

単純な話や。龍園君は今日負ける。ここは君を引き摺り下ろす為のステージや」

 

「…ハーハッハッハ!面白え冗談だな。クク…お前が俺を負かすのか?」

 

「いいや。俺はここにいる予定は無かったって言ったやろ。君らを負かすのはコイツの仕事や。ほれ、任せた」

 

トンと肩を叩いてきよぽんの後ろに回る。

 

きよぽんが信じられない様な物を見る目で俺を見た。

いや、忘れたんか?二週間前にコイツらにボッコボコにされてるんやで?だから任せた!

 

きよぽんの背中を押すと、それを合図に龍園君も石崎に指示を出した。

 

例の如くユルユルパンチをきよぽんに捕まれ、悲鳴を上げる石崎をアルベルトが助けに入る!

うわぁ…屈強なオトコ3人…ホモォ…

 

 アルベルト のアームハンマー !

 

 綾小路 は攻撃から身を守った !

 

おぉ…すげぇ。アレやん、リアルで刃牙の龍やんけ。

 

 

ガッツリ喧嘩始まっちゃったんやけど…自分、トンズラこいてよろしいか?

だってなーんも出来へんねんで?戦力として数えることも出来へんし…それこそ出来ることと言えば伊吹ちゃんのパンツを見るぐらい……………あ、やっぱりここで見るわ。うん。決してパンツ見たいからとか、そうゆうことじゃない。ホンマに。

 

でもここでずっとパンチラ狙って突っ立ってるのもな…なんか無いかな?

お、軽井沢さんいるじゃーん。

上着ぐらい掛けてあげに行くか。流石にこの時期にずぶ濡れは寒すぎるやろ。

 

「ほれ。寒いやろ?貸したるから着とき」

 

近づいてコートを渡してあげる。

 

「ちょ!そんなことよりヤバイって!助けないと!清隆がやられちゃう!」

 

「いやいや、大丈夫大丈夫。絶対負けへんって。見とけよ?」

 

まあ、俺が入ったところで助けになるか微妙な所なんですけどね!!

 

見ると、ちょうど伊吹ちゃんが飛びかかっている所だった。もうアルベルトと石崎はK.O.されたらしい。

 

お!お!パンツ見えた!!

 

ちょっ!パンツ見えたんやけど!!って誰かに教えてあげようと思って周りを見回したけど軽井沢さんと龍園君しかおらんから、この感動を伝える事が出来んくて残念です。俺の心のアルバムにしまっておきます。

いや〜、眼福眼福〜。

 

「…すごい」

 

「ほらな?言った通りやったやろ?」

 

言ってる間に、龍園君との一騎討ちも始まった。

 

 

素人目やけどすごいレベル高いのはわかる。

てかマジできよぽんバケモンやな。全く顔色とか変わらんのヤバタクスゼイアンやわ。そこに痺れる憧れるぅ!

 

でもな。きよぽんが攻撃食らう度に軽井沢さんが「お前行けよ」って感じでめっちゃ見てくるから、タフさ自慢するのは後にして貰って良いですか?

てか軽井沢さんのビショビショシャツ&上目遣いは犯罪級にエッッ過ぎる。俺じゃなかったら襲ってたね。

 

 

 

馬乗りからの意識を刈り取る一撃で決着が着いた。

 

「おつかれー」

 

「ああ。軽井沢も辛い状況で待たせて悪かったな。怪我はないか?」

 

「それは大丈夫だけど…」

 

座り込んだ軽井沢さんにきよぽんが手を差し出し、軽井沢さんがそれを弱々しく掴んだ。

 

「…オレに幻滅したか?」

 

「当たり前、でしょ……最初から裏切ってたんだから」

 

「そうだな。なら、どうして龍園に売らなかった」

 

「……自分のため。ただ、それだけ」

 

そう言ってきよぽんの胸に倒れこんで泣き始めた。

 

「怖かった……怖かったよぉっ……!」

 

うんうん。わかるで。龍園君容赦ないもんね。

うーん、この蚊帳の外感。流石の俺もこの空気をぶち壊す様な事はやらへんで?

 

 

一頻り泣いた後、待機している堀北会長と茶柱先生の元へと

軽井沢さんを送り出した。

 

 

「これからどうすんの?学校に訴えたりするん?」

 

一応、原作と違う展開にする気があるか確認しとく。

 

「いや…少し考えがある」

 

じゃあ大丈夫かな?

 

「ほーん。ならええや」

 

「これから龍園達を起こすからお前も残っておいてくれ」

 

事後処理イベント俺も入るんか…それやったら今のうちに筋書き共有しといた方がええやんな?ホンマは後で適当に流すつもりやったんやけど本人のお墨付きなら信憑性も増すやろ。

 

「あいよ」

 

そう答えると、きよぽんは敗北者達の頬を軽く叩いて起こし始めた。

手伝いたいのは山々なんやけど……ちょっと怖いんで…ハイ。

 

 

「この問題が……これで終わったと思ってんのか、綾小路」

 

最後に起こされた龍園君がきよぽんに問いかける。

 

 

まあなんやかんやで、龍園君が退学するかも…みたいな流れになった。

それをきよぽんが引き止める。

因みにここまで俺は一言も喋って無い。いや、だって入るとこ無いんやもん。まだ…まだ焦るような時間じゃない。

 

 

「……だったら筋書きはこうだ。働きの悪いおまえらに制裁を加えようとしたが、逆に返り討ちにあい、俺は一線から退くことを決めた。そうゆうことにしておけ」

 

「あんた……そんなんでいいわけ?」

 

「ここにいる全員が綾小路一人にやられたんだ。今更見栄もへったくれもあるか。それに俺一人が消える方がよっぽどダメージが少ない」

 

そう言って去ろうとする龍園君。俺はようやくその背中に声をかける。

 

「ちょっと待ってや。俺だって被害者の会やねん。ちょっとぐらい俺の言う事聞いてくれてもええやろ?」

 

「……なんだ?」

 

おろ?随分参ってる感じなんかな?いつも通り「アァ?」ってドス効かせて言われると思ってたわ。

 

「さっきの筋書きの話。アレをさ、俺が仕組んだってことにしてーや。そしたらきよぽんの存在も二重に隠せるし、俺が二重スパイって分かればクラスの立ち位置も回復する。そんでCクラスはなんの危険も無くこの事件を終わらせれる。一石三鳥やろ?」

 

「…勝手にしろよ」

 

ふぃー。良かった良かった。これでようやくクラスのみんなに顔向け出来るわ。

 

 

 

 

『計画は達成出来たわ。クラスのみんなに説明するの任せてもええか?』

 

堀北ちゃんにメールを送信した。

 

出来れば噂が広まった辺りから言った方が良かったかもしれへんな。ほら、櫛田ちゃんが龍園君にメール送るみたいな事があったし、若干ズレが出てまうねん。まあ、誤差か。

 

すると携帯が鳴った。メールでは無く電話だ。

堀北ちゃんからのようだ。

 

「はいはいもしもし?」

 

『……本当に?』

 

「おん。信じられんならきよぽん……後は軽井沢さんかな?ぐらいに聞いてみ」

 

『ちょっと待ちなさい』

 

そう言って電話が切れた。

 

 

三分ぐらい経ったころだろうか。再び電話がかかってきた。

 

『……本当の様ね。詳しい話はしてくれるのかしら?』

 

どっちに聞いたんやろ…まあ十中八九きよぽんか。

 

「うーん。ちょっとそれは難しいかな」

 

正味ある程度までは話しても別にええんやけど、俺の事やからどうせ取り繕う所でボロが出るからな。それなら何も話さん方がマシや。

 

『そう…わかったわ。明日、クラスのみんなを招集して説明するわ』

 

「助かる」

 

明日とは中々早いな。いや、早いに越した事は無いんやけど…もうちょっと精査というかさ、した方が良いんちゃいますかね?

 

『それじゃ』

 

それで会話を終えた。

 

あぁーー。ここ数日堀北ちゃんしか女子と喋って無いな…。これがクリスマス前の男子高校生の日常なのか?それでいいのか?いや、そんなはずはない。まだ……まだワンチャンあるかもしれへん!スパイ容疑がかかってても俺を思ってくれる様な女の子が居る可能性が…!(無いです)

 

 

 

こうして、長い1日は終わりを迎えた。




最近よく感想で「全然自給自足じゃねぇじゃ〜ん。農業どこいった」って貰うんですけど…
じゃあ聞くが「肥料はこの種類がねぇ…」とか、「玉ねぎを育てる時のコツは…!」とか、「端から端まで使える大根料理講座!」とか要りますか?って話。

って言うのは建前で(建前っていうかまあ思ってる事ではあるんですけど)、そもそもこのタイトルになったのってあくまでアイデンティティとしてであって、当初はそこまで意識して付けたわけじゃ無いんですよね。見切り発車の弊害が出てしまいましたね。
タイトル詐欺とかになるなら流石に変えたいんですけど、それほどでは無いかな〜と。

でもちょくちょく足枷(水やり)とか手札(差し入れ)として機能するし……まあ、若気の至りって事で(適当)


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十八話

入院ぐらいからの日にち感覚がガバガバなんやけど、なんとか冬休み側から逆算して下さい。冬休みの初日、つまりこのスタート時点が23日なのであしからず。


『草元君についての話があるわ。今日の10時、集まれる人は集まってちょうだい。場所はー……』

 

朝起きると、そうゆう旨のメールがクラス全員に送られていた。因みにここで言う全員に高円寺は含まない。

 

まあ、そうゆう訳で俺の無実が証明される訳なんやけど、俺がこの集まりに行っても良いんかちょっと悩み所よね。当の本人が行かんかったら不誠実な気もするし、俺がおったらおったで収拾つかんくなる気もする。

って言ってもリターンの方がデカいから行った方が得かな?うん。行こう。

でも時間通りに行ったらそれこそ詰め寄られて収拾つかんくなるかもしれんから、堀北ちゃんが粗方話終わったぐらいに行った方がええやんな。

 

 

 

 

 

 

 

10時15分頃、俺はみんなが集まっている場所に到着した。団体で纏まって座っているから分かりやすかった。その席に向かって行くと、俺に気付いたらしい池が声を上げた。

 

「あ!草元!」

 

クラス全員の目が俺に向いた。

…なんか居心地悪いな。やめてくれ…そんなに見ないでくれ…

 

「…あー、え、えっと、みんな久しぶり?」

 

すると、平田君が立ち上がって俺の前に立った。

え、なに?殴られるの?公衆の面前で?

 

 

 

 

「すまなかった!!!」

 

そう言って平田君は頭を下げた。

 

「全部堀北さんから聞いたよ。クラスの為に動いてくれたんだろう?なのに…俺達は君を疑って……」

 

……こうは言うけど平田君って絶対「そんな訳ない!何かの間違いなんだ!」とか言って俺の事を庇ってたんやろうな。

俺なら「ほれ見ろ!俺の言った通りやったやろ?」ってマウント取ってまうのに、自分も疑ってたって事にしてクラス全員の分まで謝ってる。

聖人かな?こんなやつが世界に20人もおったらアカンで。平田洋介、お前がオンリーワンだ。

 

「いやいや、気にせんでええよ。こうなる事は薄々わかってたし。むしろ心配かけてごめんな。」

 

これは正直どうしようも無かったしな。事後報告になっちゃうのはしょうがなかった。

 

 

「俺は最初から信じてたぜ!」

 

黙れ山内ぃぃ!!!テメェら3バカは許さんからな!!掌クルックルしやがって!!山内は3学期覚えとけよ!?地獄見せちゃるわ!!

 

「わ、私も!草元君のこと信じてたよ!」

 

く、櫛田ちゃあん……ええんやで。俺がスパイしてたこと知って、自分の事知られてないか心配してるんやろ?大丈夫大丈夫。初めから知ってたで。だから気にせんでええんやで。

 

「あ、じゃあ俺も!」

 

じゃあってなんやねん。

てかなんやこの流れ。みんな「実は俺を信じてたんやで」とかゆうクソ三文芝居か?

 

乗るしかねぇ!このビッグウェーブに!!

 

「み、みんな……」

 

みんなの暖かさに感動してる感じ出しといたらさっさと話終わるやろ。ほら、早く帰らせろよ。こんな主役みたいな扱い受けるの嫌やねん。あ〜帰って早くプリキュア見てえ〜。

 

 

 

まあ、そんな感じで俺の疑いが晴れましたとさ。

はぁ〜、これで平穏な冬休みを送れるわ〜。

 

 

 

 

 

さて、クラスメイトからの疑いも晴れ、自分の部屋に帰って来たのでこれからの事を考える。

 

3学期に待ち受けているのは混合合宿、クラス内投票、選抜種目試験の三つ。

 

クラス内投票は、俺がなんもせんくても堀北ちゃんがなんとかしてくれるからなーんにも考える必要は無い。

 

選抜種目試験も自分の種目だけ真面目にこなせば問題無い。

 

で、最後に混合合宿。これには大きな問題がある。

7泊8日の混合合宿。しばらく学校から出ると言う事。つまり、夏休みのバカンスと同じように水やり問題があるわけだ。

夏休みの時と違うのは、まずその期間。一週間ぐらい雨が降らん事なんかザラにあるし最悪ほっといても大丈夫やろうけど、流石に心配やから一回か二回ぐらいは水やりしときたい。

で、さらに違うのは全学年全クラスが合宿に参加するということ。これが何を意味するかと言うと、他学年の先輩に頼むという最終手段を取ることも出来ないということだ。夏休みと違って坂柳さんも合宿に参加するし、学校に残ってるのなんか用務員さんとかその辺やろ。

 

となると、生徒に頼むのは無理。

夏休みの時は断られたけどワンチャン無いかな?と思って管理人さんに聞いてみても失敗。

先生方はみんな合宿に行くやろうから先生も無理。

 

………あれ?詰んでね?

 

はー、無理無理。こんなん無理やわ。ちょっとだけ蛇口から水垂らしとくぐらいしか思いつかんわ。もうそれでええや。うん。

なんでこの学校は家庭菜園マンに厳しいんやろ。なんか恨みでもあんのか?許して下さい何でもしますから!

 

ん?

 

 

学校の農家虐めに恨み辛みを述べていると、携帯が鳴った。

電話では無く、メールのようだ。

 

差出人は櫛田ちゃん。

櫛田ちゃんか。中々珍しいな。昨日の今日で連絡するってのは中々…

で、内容は……………

 

 

 

 

 

『明後日の25日一緒にお出かけしたいんだけど…ダメかな?』

 

 

 

 

 

 

…………え?

 

え、ナニコレ。

さ、さ、さては池のイタズラやな?俺とした事が池と櫛田の名前を読み間違えてもた見たいやわ!HA HA HA!!

 

えーと、差出人は…と

 

櫛田ちゃん…

 

アレー??おっかしいなぁ………

 

 

え、マジで言うてる?

 

 

や、や、ややややややべぇよ。ふ、震えが止まらねえよ!

 

なんか落ち着かねぇよ。やべぇよ。っべー。マジっべー。

 

興奮しすぎて壁倒立しちゃってるよ……。

 

やべぇ。マジやべぇ。

 

ま、まてまて。まだだ!まだ落ち着け!焦るな草元剛。Be cool………フラットに行こうじゃないか。

 

まずは本気か確認せな…アカン、やんな?

 

『マジで?』

 

送信っと。やっべ手めっちゃ震えたんやけど…

 

 

うおっ!もう帰って来た!

 

『うん。』

 

 

なん…だと…。

い、いや、まだ!まだだ!みんなと遊ぶのに呼んだだけかもしれへんやろ!!焦るな!!

 

『メンバーは誰なん?』

 

そ、送信!!

なんて奴だ櫛田桔梗!ただのメールの文面ですらが可愛く思えてしまう…!こ、これが櫛田ちゃんの力……

 

『私と草元君の2人きりだよ!』

 

 

 

ふう…なんっって事だ全く。

この魔性の女め!俺を舐めるなよ!!この程度でなびくと思うな!!

危ない危ない。もう少しで罠にハマるところだったぜ…

油断も隙もあったもんじゃないな……

 

 

『ダメ……かな?』

 

 

『行きます』

 

…………ハッ!!い、いつの間に!!こ、この指が勝手に送信してしまったぁぁ!!!

 

 

 

 

…………………ちょっと散髪行ってくるわ。服も買わな。

 

 

 

 

 

 

 

ふぅーーー。スッキリした…(事後)

 

とは言え、この、デ、デ、デデデデートについて何か考えない訳にはいかないよなぁ!????

 

まずはレストランを予約して…じゃなくて。

 

まず向こうの思惑やけど、まあまあ見え透いてる。

 

大方、俺が龍園君から何か聞かされてないかを探るため。とか、そんな感じやろ。

 

俺としては俺が櫛田ちゃんを斡旋した事がバレるのが一番不味かったんやけど、態々こうやって探りを入れてくるなら多分大丈夫。

だって斡旋した事を知ってたら態々探りを入れるまでも無く退学させるための動きをしちゃってもええはずやからな。

………あ、これが退学させるための動きって可能性もあんのか。

 

ま、ええや。

 

どうせこんなん考えたって、俺は知らんぷりするしかない。

まあ、疑わしきは罰せよ方式でまだ疑惑の時点やのに退学させられるかも知れへんけど、それはまた考えたらええやろ。

段階を踏まずにいきなり即退学させられるような事にさえならんかったら大丈夫やし、時間かかるならなんとかそれを止めるための“手札”は持ってるしな。

 

 

つまり、俺はこの…デ、デートをぉ!!!

ただただ楽しむだけで良いということだぁぁぁ!!!

マリオカ-トエイィィッッッッ‼︎イヤッフゥゥゥゥ‼︎(マリオ感)

 

 

 

 

テンションが上がって小躍りしてると、またしても携帯が鳴った。

お!櫛田ちゃんかな!??

 

 

チッ!!佐藤かよ!!期待外れやわ!!チッ!チッ!…ペッ!!

 

…で、用件はなんや?

 

『クリスマスに綾小路君とデートに行くんだけど、何かアドバイスとかくれないかな?』

 

 

……ほう。タイミングが良かったな佐藤よ。今俺はかなり、かーーーーーなーーーり、すこぶる気分が良い!この私が直々にアドバイスをしてやろう!喜べ佐藤!!

 

 

『アイツ感情が顔に出えへんから全然笑ってなくてつまらなそうに見えるかもしれへんけど、実際結構楽しんでたりすると思うから気にせんくてええと思うで』

 

こんなもんか。送信と。

はー、佐藤さんこんなに健気やのに振られるの可愛そうよな。ままならんなぁ…。

 

『ありがとう!!』

 

すぐに返事が返ってきた。

はぁ〜。せめて、デート中ぐらいは幸せな気分で過ごしてくれ…。

 

 

 

 

さて、一夜明けて、本日はクリスマスイブの24日。

このクッソ寒い朝っぱらから俺はきよぽんと並んでベンチに座っていた。

 

「なあ」

 

「なんだ?」

 

「クッソ寒いんやけど」

 

「知ってる」

 

「はぁぁ〜」

 

このイベントってあれやんな…龍園君とか堀北会長と集まるイベントやんな。

 

 

「こんな朝っぱらから人を呼び出してんじゃねえよ」

 

はあ。やっぱりそうやんね…。

めんどくさ。寒いし眠いから早く帰って寝たいんやけど……。

 

しばらくきよぽんと龍園君は会話をしていたが、途切れたので少し聞きたかった事を聞いてみる。

 

「なあなあ龍園君」

 

「……なんだ、いたのか」

 

イラ…無視じゃ無視ぃ!

 

「結局俺が櫛田ちゃんを斡旋した事って櫛田ちゃんに言ってないん?」

 

昨日自分で結論付けたけど、一応確認のために聞いときたかった。

 

「…そう言えばそうだったな。安心しろ、俺は何も言ってねえよ」

 

……うーん。自分で聞いといてなんやけど、全然信用出来へんな。

 

「ほーん。あの子から連絡来たりもしてないん?」

 

「あぁ、噂は本当か…みたいな連絡が来てたが無視してやった。……随分桔梗の事が気になるみたいだな。惚れたか?」

 

…別に隠す事でもないか。どうせ遅かれ早かれ櫛田ちゃんとデートした事なんか学年中に広まるしな。

 

「いやー、櫛田ちゃんから明日デートに誘われたんよなぁ…」

 

「…マジで?」

 

きよぽんが大層驚いた顔で聞いてきた。

ごめんな佐藤、ちょっと嘘ついたわ。コイツでもビックリする事ぐらいはあるらしい。

 

「クク。良かったじゃねぇか。ちゃんと毛の処理していけよ」

 

「…笑えへんわ。ホンマに。まともな目的な訳がないんよなぁ…」

 

マジで笑えへん。他人事なら上手いこと下品なジョークにも返してあげれたのに…。

あ、ちゃんと毛は剃っていくので安心してね!!

 

 

「わからねぇぜ?案外テメェに惚れてるかもしれねぇ」

 

「ジョークが過ぎるやろ。いや、それならそれでもちろん嬉しい……いや、むしろその方が良いわ」

 

はーー、ワンチャン無いですかねぇ??無いですよね。理性は分かってるんやけどなぁ…。

 

 

 

この後堀北会長が来て、南雲会長についての依頼をして行った。

俺?俺はなんもせえへんよ。協力はするけど目をつけられたくは無いからな。必要ならちょっとぐらい手貸すで。

 

 

 

 

さて、明日はデート!!

気張っていくぜ!!

 

 

次回、『櫛田の一閃、草元の心臓を穿つ!』

デュエルスタンバイ!




櫛田「アイツスパイやったんか!バレてるかも…殺すか」
草元「デート?うっひょー!!うれぴー!!」

次はデート回やけど俺にそうゆうのが書けるのか…。

後俺最近ワンピースがアツくて、書きたいとは思うんですけどワンピースってめっちゃ人気に差が出ません?なんか敷居高いイメージある…ない?


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十九話

目標にしてる目安の五千字を軽く超えそうだったので二話分に分けますね。今回ちょっと短めです。書いててまあまあ楽しかったし、読んでても楽しいんちゃうかな?と思います。

今日(3/13)の夕方ぐらいにも投稿してるんで間違えないように気をつけてくださいね。


えー私、草元剛は今、ケヤキモールにてクラスのアイドル櫛田ちゃんを待っている最中でございます。

と言いますのも、本日私、櫛田ちゃんとデートすることになっておりまして…ゲヘヘヘヘ!

 

はあ〜……マジで緊張するんやけど……

 

向こうにどんな思惑があったとしてもデートはデートやしなぁ……

 

 

「あ!草元くん!お待たせ!!」

 

お、来たか……………っ!????

 

エッッッッッ!!エッッッッッ!!エッッッッッ過ぎるんやけど!!なんでセーターなの??…わかった!俺を悩殺する気なんやな?だが甘いな櫛田ちゃん!この俺がセーター如きで悩殺されると思うなよ!!

…あっ…視線が胸の方に吸い寄せられて…

 

 

「待たせちゃったかな?」

 

「…………………………いや、全然待ってないで」

 

危ねぇ…。何とか帰ってこれたぜ…もう少しでピンク色の世界に堕ちるところやったわ。

 

 

「じゃあ行こっか!」

 

「おん」

 

 

………ち、ち、近い近い近い近い!!!めっっっっちゃ良い匂いすんねんけど!!なにこれ!??エッチな気分にさせる香水とか使ってないか??

これは不味い!早急に煩悩を払わねば!!お母さん!お母さん!!先生………はまあまあ若くてエッチぃな。お母さん!お母さん!!おばあちゃん!!おばあちゃん!!

……………ふぅ…落ち着いて来た。

 

「ど、どこいくか決めてんの?」

 

やっば声裏返ってもた。

 

「んー、あんまり決めてないんだよね。一緒に居れたらいいやって思ってたから……」

 

あ、あざと……!こんな分かりやすい女の子に引っかかる男なんかおる訳が

 

「俺も一緒に居れたらなんでもええわ!!」

 

居ました。俺です。

 

「えぇっ!そ、そうなんだ…」

 

そう言って櫛田は俯いてしまった。

 

マジで可愛いんやけど。計算されてたとしても可愛いもんは可愛いからな?

お前らは「コイツなにやっとんねん!そんなんに騙されんなや!」って思うんかもしれへんけど目の前になったらマジで頭真っピンクになるからな?

 

 

「えっと……どこに行くとか決めてないんやったら一先ずカフェとか入らん?」

 

歩きながらのこの沈黙は気まず過ぎるわ。

櫛田ちゃん、なんか恥ずかしがってる感じに見えるけど内心「このカス野郎さっさと会話回せや!気ぃ効かんなぁ!」とか思ってるんやろなぁ…。

…あ、なんか急に冷静なってきた。

 

「え、あ、うん。そうだね!じゃあこっちにオススメのお店があるんだ!」

 

そう言って櫛田ちゃんは俺の手を握ってグングン進んで行く。

もう一度言う。手を握って。

前言撤回。全然冷静じゃないです。ドキドキします。

 

 

「…あ!ご、ごめんね!勝手に手握っちゃって!…その……嫌?…だったかな?」

 

「全然嫌じゃないです」

 

いやー、実はちょっといきなりお触りするような女性はちょっと……って言おうと思ってたのにー。思った事と反対の言葉を言ってしまったーー。

 

というか……これ……ホンマに演技なんか?だってこんなに可愛いんやで?演技には見えへんねんけど……

 

…アカンアカン!これじゃこのクソビッチの思うツボや!平常心、平常心……ふぅーーーーー。

 

 

 

 

カフェに到着し、向かい合って席に着く。

 

 

「暖房効いてて暑くなってきちゃった」

 

席についてすぐ徐に胸元をパタパタしながらそう言った。

ヤメッ!ヤメロォォォォ!!…ホンマにやめてくれ。目がどうしても吸い寄せられるから。

 

…………なんかずっとやられっぱなしじゃない?ちょっとそれは釈やな。

俺を誰やと思っとるんや?あの坂柳さん相手に交渉のテーブルで勝利した男、さらにあの龍園君に数度焼肉を奢ってもらった男やぞ?

このままやられっぱなしで終わる訳にはいかんやろ!!

 

「…櫛田ちゃんはさ、なんで今日俺を誘ったん?」

 

「…え?」

 

「今まで櫛田ちゃんの特定の噂とかって無かったやん?あんまりそうゆうの気にしてないって言うか、ならんようにしてると思ってたんやけど…?」

 

「な、なんでって…そ、その………は、恥ずかしいよぉ!」

 

そう言って両手で顔を覆ってしまった。

 

 

…は?なにそれ…

 

超可愛いんやけど。え、もう良くない?結婚しません?毎日味噌汁作って貰っても良いですか?もう騙されてても良くないか?

 

だってさ、裏の顔にさえ気付かんかったら絶対クッソ幸せライフ送れるやん?いや、俺はもう気付いてもてるんやけどさ。でもさ、ワンチャンガチで普通に好きな可能性もあるわけで、その裏の顔での俺の評価を知ることさえ無かったら可能性があるという点においては俺が裏の顔を知ってたとしても問題ない訳やし。

 

…あれ?なんか俺もう櫛田ちゃんルート入る気になってないか?

……いや、まあ…流石にね。いくら可愛いからって付き合うかどうかは別……やんな?

 

 

「ちょっとお手洗い行ってくるね!」

 

「あ、うん」

 

…逃げた。

 

あーーー、冷静なってきた。

マジでヤバいな。普通に墜とされそう。いや、もう堕ちてるな。Yes!Fall in love!!……まだ冗談言えるだけマシか。

舐めてたわ。そもそもハナからそんな気がしてたやん。演技ってわかってても今までキュンキュンしまくってた訳なんやから、当然こんな目の前やったらキュン死しない訳がないんだよなぁ…。

 

…いや、そもそも俺は櫛田ちゃんに墜とされたとしても、演技やとわかった上で堕とされてるわけやから、実質勝ちやん?(暴論)

 

 

「お待たせ!」

 

「ん、おかえり」

 

「ただいま!」

 

なんか口をついておかえりって言ってもた。これは重症か?

 

「エヘヘ、なんか今のやりとり夫婦みたいだね!…あっ」

 

 

なんで自分で言って顔赤くするんですか!???バカなの!??それにキュンっとした俺はもっとバカですか??はいバカでしたすいません知ってました!

 

コイツマジであざといんやけど。これは流石に堕としにきてるで絶対。こんなん素でやってて女子に嫌われへん訳がない。ソースはカゴメ。

 

 

「毎日味噌汁作ってくれ……」

 

「…ええっ!??」

 

ほらぁーー!夫婦とかソースとかそうゆうこと言いだすから変な事口走っちゃったやん!!!

は、早く取り消さな!

 

「ああ、いや、嘘…では無いけど……冗談……って訳でもなくて………えっと、えーっと……」

 

ど、どれもアカン気がする。嘘でも冗談でもそう思って無いことになってまうから櫛田ちゃんが傷付いてまうわ。

 

「え、えっと…じゃあ……ホント……って事?」

 

 

 

 

 

 

…………どーーすんねんこの空気ぃぃ!!!!!!

 

 

 

なんでお互い上辺だけで適当に流すだけの会話やったはずやのにこんな事なってんねん!!

 

誰やねんこんな会話の口火切ったの!!…………あ、俺か。

数分前の俺にドロップキックかましてぇ……。

 

 

や、やだよぉこの空気。顔見れないよぉ……向こうは本心から見れへんと思ってるかちょっと怪しいけど。

 

 

だ、誰かこの空気を打破してくれぇ……

 

 

 

 

 

「あれ?櫛田さんに草元くん?」

 

 

ハッ!!!

 

後ろを振り向くと軽井沢さん、平田君、佐藤さんにきよぽんのダブルデート組が居た。

 

ナァイスゥゥゥゥ!!!!そうやんそうやん!!今日はコイツらもデートしてるんやん!!!ラッキーラッキー!!助かったぁぁ!!

 

声をかけてきたのは軽井沢さんだったようだ。

 

「あれ?なんで2人とも顔赤い………あ、お邪魔だったみたいね。あっちに行こっか!」

 

ま、待て待てぇ!!勝手に変に気ぃ使うな!!今は空気を変える千載一遇のチャンスなんや!!

 

「ちょ!待って待って待って!いや、俺ら全然気にせえへんからさ!ほら、一緒にお茶しようや!な!!な!!!」

 

「え、でも邪魔しちゃ悪いし…」

 

「別に櫛田ちゃんも良いやんな!!な!!な!!!」

 

「う、うん!せ、折角集まったんだし一緒にお話したいなーなんて……」

 

ホッ。一応櫛田ちゃんもあの空気は耐えきれんかったみたいやな。

 

「ど、どうする?」

 

軽井沢さんが他の3人に確認を取る。

 

「2人が良いって言ってるんだから別に良いんじゃないか?」

 

ナイスきよぽん!!!今度ジュース奢ってあげる!!!

 

「………じゃあ、お言葉に甘えて。」

 

よーーし!!なんとか合流出来た!

ふぅーー、ようやくあの空気から解放されたわ。ん?流れ変わったな(唐突)

 

 

 

 

………これはこれで失敗やった気がする。

俺らがロックオンされて会話の的になるから恥ずかしさは対して変わらんのよなぁ…。いや、確かに気まずさはいくつか軽減されたけど…。

 

「2人は今日どっちが誘ったの?」

 

「あー………櫛田ちゃんから」

 

「「「おー!」」」

 

なんやお前ら…。

 

「じゃ、じゃあなんで櫛田さんは草元くんを誘ったの?」

 

「え?な、なんでって…その……は、恥ずかしいよぉ…」

 

その技はさっき見た。でも可愛いね。何回見ても可愛いさは一緒ってハッキリわかんだね。

 

「「「oh……」」」

 

だからお前らなんやねんその反応!!

 

 

…クッソォ!!反撃や!!

 

「平田君と軽井沢さんはわかるけどそっちの2人って中々見いへん組み合わせやんな!どっちが誘ったん?」

 

2人とも「知ってるくせに!」って顔してるけど、知るか!俺の受けた辱めを貴様らに返してやる!!

 

「それは……その……私が綾小路くんを遊びに誘っただけでさ……」

 

これには櫛田ちゃんが鋭い返しを見せる。

 

「へー!!そうだったんだ!あんまり話してるイメージ無かったから意外だね!どんな風に誘ったの?」

 

「え!?ど、どんなって…え、えーっと……その…」

 

ハッハッハー!!!そうだ!困れ困れ!そして恥ずかしがれ!!

 

「なあ、そろそろ映画館に行った方が良いんじゃないのか?」

 

「ああ、そうだね。そろそろ行こうか」

 

「じゃあねー」

 

困った佐藤さんを見兼ねてか、きよぽんが助け舟を出した。

 

ふん。逃げおったか。腰抜けどもめ。

 

 

「それにしても意外だね。佐藤さんって綾小路くんの事が気になってるんだ」

 

「そうか?俺は前から知ってたからなぁ…」

 

「え?そうなの?じゃああの質問は……」

 

「ただからかいたかっただけや」

 

「ふふっ。イジワルだね!」

 

「そうゆう櫛田ちゃんだってノリノリやったやん」

 

「あはは、確かにそうだねー。…………ねえ、草元君」

 

「…ん?」

 

「…剛くんって、呼んでも良いかな?」

 

「じゃあ俺は桔梗ちゃんって呼べばええんか?」

 

「うん!よろしくね!剛くん!」

 

「ん、よろしく。桔梗ちゃん」

 

 

 

 

 

2人の距離は縮まっている。

 

少なくとも、表面上では。




はい。
実は櫛田ちゃんへの好意(らしきもの)に対して受容的になっていってるんですけど伝わりますかね?まあ伝わらなくても何の問題も無いですけど。

今回は書いててすごい楽しかったです。こうゆうラブコメ回見たいな感じやと心理描写ではっちゃけれるのが大きいんですかね。

あと、誤字報告が最近無くて逆に心配なんですけど、無いですよね?べつにあって欲しい訳じゃ無いんですけどね。


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二十話

さて、そろそろお昼時ですね。

 

「お昼どうする?」

 

「んー…どうしよっか」

 

「もうこのままここで食べちゃう?」

 

「そだね、そうしよっか!」

 

このままこのカフェで済ます感じになったので適当に注文してお昼を食べる。

 

「お。おいしいな」

 

「でしょでしょ!私もよくここ来るんだ〜」

 

「へー」

 

と言った具合に適当に会話を挟みつつ、お昼を平らげた。

 

「「ごちそうさまでした」」

 

ふぅ。中々美味しかったな。しかも財布に優しい。

 

「これからどうしよっか」

 

うーん…特に行きたい所も買いたい物も無いしなぁ…

あ。

 

「俺らも映画行く?確か前から見たかったのが公開されてたはず」

 

…いや、プリキュアじゃないから!流石に俺もデートでプリキュア見に行く程ヤバい奴じゃないわ!

 

「そうなんだ!どんなやつなの?」

 

「あれや、てんキノコ」

 

「あー!それ知ってる!私も見たかったんだー!」

 

ってな訳でてんキノコ見に行くことになりました。

今から晴れるお!(^ω^)

 

 

 

 

ふーん。まあまあおもろいやん。てか絵めっちゃ綺麗やな。

 

 

っ!??ひ、肘当たったんやけど!なんで俺が最初から手置いてるのに後から置こうとするの??

 

お、おいおいおいおいおいおいおいおい!!!!

 

手ぇ握ってんじゃねぇよ!!

ヤバイヤバイヤバイ!!キュン死する!キュン死するから!!あっ、手柔かぁ………

 

 

 

 

………全然映画集中出来んかったんやけど。

スゴく…柔らかかったです。

はぁ〜………尊い…。

 

 

「面白かったね!剛くん!」

 

「…あー…うん。そうやね」

 

「あ、あれ?そんなに面白く無かった…?」

 

いや、もう内容覚えてないんですけど…どんな映画やったっけ?

 

「…いや、面白かったで。面白かったけど…」

 

「?……けど?」

 

やめろ。小首を傾げるのをやめろ。その技は、俺に効く。

 

「いや。何でもない。これからどうする?」

 

今でだいたい4時ぐらい。この後もまだまだ時間あるな。

 

「あ、あの!剛くん!」

 

「な、なんですか?」

 

なんや改まって。

 

「その、晩ご飯ってどうするか決めてたりする?」

 

晩ご飯は普通に自炊する気やったし特に決めてるってほどでもないかな?

 

「いや、特に何も決めてないで」

 

「そうなんだ……。それじゃあさ………

 

 

 

 

……ウチに来ない?」

 

 

 

 

 

 

 

「……!!!!!?????????」(声にならない声)

 

 

 

これは夢か何かですか????

 

 

 

 

「ダメ…だったかな……?」

 

口をパクパクさせて驚いていると、櫛田ちゃん…じゃなくて桔梗ちゃんが上目遣いで聞いてきた。だからそれヤメロって言ってるやろ!!

 

「全然ダメじゃないです。行きます行きます!」

 

ほらぁ!全く思っても無い事言ってもたやん!()

とんだ魔性の女だぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔します〜」

 

「お茶入れるからゆっくりしててね!」

 

「…………」

 

そこはお前「邪魔すんねやったら帰って〜」「あいよ〜」ってするとこやろうが!空気読めんやっちゃな!!カーー…ペッ!!

 

てゆーか…何気に女子の部屋入るの初めてじゃないか?

なんならきよぽん以外の部屋に入るのも初めてやわ。

……なんか虚しくなってきた。あとついでに緊張してきた。

 

とりあえず床に座って、部屋を眺める。

なんか…いや、普通なんやけどなんか意外と普通の部屋やわ。もっとピンクっぽい感じになってるんかと思ってたわ。

 

「はい。どうぞ!」

 

「お、さんきゅ」

 

「…そんなに部屋を見られると恥ずかしい…な」

 

「ああ、わ、悪い!」

 

クッソなんでコイツこんな可愛いんや…顔赤くして俯くだけで人殺せるぞ??

つまり桔梗ちゃんは殺人鬼。Q.E.D.証明終了。

 

………ヤバイ。なんか落ち着かんわ。めちゃめちゃソワソワする。めっちゃええ匂いするし…

 

 

「なんだか緊張するね…」

 

「…せやな」

 

うーん。気まずい。

俺が気まずく感じへん為に気ぃ遣えや!何のための猫被りやねん!

な、なんか話題出さな……

 

「あー…そういえばさ。はるちゃん…って言ってもわからんか。長谷部ちゃんって桔梗ちゃんの事キョーちゃんって呼んでるけどアイツ人の呼び方独特よな」

 

会話下手くそかよ。話題が微妙過ぎるわ。もっとなんかこう当たり障りの無い話題で良かったやろ…

 

「確かにそうだね。剛くんはなんで呼ばれてるの?」

 

流石はコミュニケーションモンスター櫛田。俺のクッソ微妙な話題も上手いこと返してくれるの素晴らしい。

 

「"くさもん"やな。どうにも下の名前やと言いあだ名が思いつかんかったらしいわ」

 

「へー…そうなんだ…」

 

………あら?

 

またここから会話広げてくれるんかと思ってたんやけど途切れてしもた。

まいったねぇ…もう俺に"話題"という名の手札は無いぞ?

だってさ……朝から今までずっと話してたらさ。話題も無くなってくるやん?

それこそ後はCクラスの話題ぐらいしか無いぞ?でも流石に自分からは言えんやろ。なんか自慢げに語るみたいになってカッコ悪いし。

 

 

 

…と思ってたんやけど、どうやら向こうがその話題を出してきてくれるらしい。

 

「そういえば、二重スパイってどんな事したの?」

 

「大層な事してないけど……適当に情報流してお金毟り取ったぐらいやわ」

 

「へー!なんか…スパイ映画みたいだね!」

 

「いや、実際なってみるとマジで緊張するで?いっつもバレへんかヒヤヒヤしてたし」

 

「でも、しっかりとやり遂げてて凄いよ!そうゆうのカッコイイと思うな!」

 

え?そう?か、カッコイイですか?

シンプルに嬉しいマンなんやけど。美少女に褒められるとか誰得?役得です。

 

ただな〜…こう露骨な探りが入ってくると………なんかこう、冷めていく感じがあるよね。

 

 

 

 

桔梗ちゃんの探りを適当に流しながら、これからの事を考える。

 

まず、確実に言えることがある。

 

それは今日、もしくは近い内に俺が桔梗ちゃんに告白されるという事。

…………待って!自意識過剰とか言わんといて!!ちゃんとそう考えた理由があんねんって!!

コホン…で、そう考えた理由なんやけど。

今までは、桔梗ちゃんが“クラスのアイドル”像を演じる上で特定の誰かを作る事は無かった。普通の女の子として1人の男性に評価してもらいたいんじゃなくて、どれだけの数が評価してくれてるか、やからね。

 

その桔梗ちゃんが男をクリスマスデートに誘った。

デートに踏み切ったのは、一時期恋人が出来る事による周りの評価と過去を知られている可能性を天秤にかけて過去の方が重たいと思ったからやと思う。

で、好きでもない男を2人きりのクリスマスデートに誘った……って言うのは桔梗ちゃんのイメージに多大なる悪影響を及ぼす。

 

だから、今日じゃなくてもいずれ思いを伝えるような事が必要になってくる。

 

ついでに言えば、もし俺がシラを切ってたとしても恋人にまでなってしまえば付け入る隙も出てくるから、より深く探る事が出来る……とか。

 

 

そんな訳で今日じゃなくても近い内に告白されるんじゃないか…と睨んでる訳よ。もちろん多少願望は入ってるけど筋は通ってる。

 

 

……じゃあ「そこまで考えてるんやったら告白の返事はどうするんや?」って話な。

 

それがまだ微妙なんよなぁ……。

だってさ、俺ほど沼晒すようなヤツならどっかでボロ出してもおかしくないわけやん?

そこまで警戒するんなら断るんが正解に思えるんやけど、断ったら断ったで勝手に疑惑が膨らんでいったりする可能性がある。しかも"あの"櫛田桔梗を振ったとなれば、山内を筆頭に男子勢から猛烈なバッシングを受ける事は想像に難くない。池は最近篠原さんとええ感じやから「いや別に……」って感じかもしれへんな。

 

……そうなると付き合っちゃうが優勢か。

そもそもボロさえ出さんかったらええわけやし、なんなら普通に桔梗ちゃんと付き合いたい。

 

 

まあ、されるかどうかもわからん告白の返事なんか考えてもしゃあないんやけどな。

これで告白なんかされんかったら黒歴史不可避なんやけど!……頼むでホンマ!

 

 

 

 

桔梗ちゃんが晩ご飯を作ってくれると聞いて、テンション爆上がりマンになりました。

希望を聞かれたので、「めちゃめちゃご飯がススムやつ」って答えた。

実際これってめちゃめちゃ大事よね。子供とかに作るってなったらとにかくオカズになるやつを作らんとアカン…って思ってる。

正直俺はもやし肉炒めとかでも良い。女子力としては減点かもしれへんけど、一男子として見ればポイントは高い。男の趣味嗜好を理解してる感じが良い。

もちろん王道の唐揚げハンバーグ辺りも中々高ポイントやで。…って俺は一体何様やねん。

 

 

 

「出来たよ〜」

 

お〜、めっっちゃええ匂いするわ〜。

 

コトンと置かれた皿を見ると、そこにあったのは豚の生姜焼きだった。

 

「ほお。生姜焼きか」

 

「うん!あんまり作った事ないから自信無いんだけど…」

 

「へー。めちゃめちゃおいしいそうやけどな…」

 

ハーハッハッハ!なんか高揚感があるわ!だってあれやで?桔梗ちゃんの手料理食った男子とか多分まだおらんで?実質処女やん!

 

では、実食致します!

 

「じゃ!いっただっきまーす」

 

一切れを箸で掴んでまずは米をかきこまずに生姜焼きだけで味見を。

 

 

「うま」

 

「良かった〜!料理を食べてもらうなんて初めてだから緊張したよ〜」

 

「マジで美味いわこれ。毎日食いたいレベル」

 

いや、マジで比喩無しで毎日食える。

めちゃめちゃ米ススムわ〜。

 

……?なんか桔梗ちゃん黙っちゃったけどどうしたんや?

 

「ま、毎日食べたいって…その……そういう…?」

 

 

いや……確かに言ったけど……いや、別に食いたいんやけどさ。いや……あざといわ。

流石に今の拾うのは目敏過ぎるんちゃうか?普通に聞き流しといて良い所やったやろ。

もし今ので俺を堕とすつもりだったんなら失敗だったな!!

 

 

 

なぜなら、もう既に!堕ちているからだ!!

 

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

「お粗末様でした」

 

「いやー、美味かった!」

 

「そんな〜大袈裟だよ〜」

 

「いやいや、マジで」

 

ホンマに普通に美味かった。桔梗ちゃん補正があった可能性はあるけどそれでも普通に美味かった。

 

 

「ふぅー…そろそろ門限やし帰ろっかな」

 

女子の階の方が門限が早いってのは有名な話。……男子の部屋ならイイって事なんですかねぇ……。

 

「あ、うん!今日はありがとうね!」

 

「こちらこそ今日は楽しかったわ。また誘ってや。ほな、おやすみ〜」

 

 

「…………………………待って!」

 

ドアに手をかけ部屋を出ようとすると、後ろから呼び止められた。

 

「あっ、え、えっと……、その……きゅ、急にこんな事言われても困っちゃうかもしれないんだけど、その……えーっと……」

 

俯いていた顔を上げて言った。

 

「わ、私と付き合って下さい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「上がったで〜」

 

「おう」

 

きよぽんの部屋で風呂を借りて、冷蔵庫から牛乳を取り出して一気に飲み干す。

 

プハッ!!キンッキンに冷えてやがるぜ!

 

 

そういえば今日きよぽん達もデート行ってたんやったな。

 

「きよぽんは結局どうしたん?」

 

「断った。後ヒゲついてる」

 

「おっと、いっけね」

 

危ない危ない。歯磨きするまで気付かんところやった。

 

そっかー。やっぱり断ったかー。佐藤さんはまあ次頑張ってって感じやな。

 

「草元の方はどうなったんだ?」

 

「あぁ、桔梗ちゃんと付き合う事になった」

 

「そうか……………………………………………………………………………は???」

 

え?

 

「……すまん。もう一度言ってもらっていいか?」

 

「桔梗ちゃんと付き合う事になった」

 

「…すまん、もう一回」

 

「いや、合ってるから。嘘じゃないから。聞き間違えてもないから」

 

コイツ過去一驚いてないか?こんな目見開いてるの初めて見たんやけど。

 

「……正気か?」

 

「…そりゃもちろん信用してるわけでもされてるわけでもないけど、ひとまずは付き合った方が良いかなって思ったんだけや」

 

「………」

 

「あぁ、別に気にせんと退学させるつもりでええで」

 

「…良いのか?」

 

「まあ、爆弾である事に変わりはないしな。ワンチャン導火線握れたらな〜って思ってるぐらいやし」

 

出来ればホンマにそうなって欲しいとは思ってる。

まあ、無いとは思うけど……希望としてはね。

 

「じゃ、そうゆうことやから。ほな、お休み〜」

 

「ああ、お休み」

 

はぁ〜〜…。まーた原作から離れてもたなぁ……。

 

 

 

 

  一度乗ったレールは止まらない。




櫛田「草元ちょろすぎワロリンティーヌwww」
綾小路「あの女の本性知ってて彼氏になろうとするのヤバすぎファンタスティックエブリデイwww」

これで冬休みの話は終わりです。次回から3学期に入ります。

なんか深夜テンションみたいな感じで書いてるから展開が不自然やったらごめんなさい。


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二十一話

なんか順調に評価の平均が下がってってるんですけど、やっぱアレですかね、櫛田ちゃんルートはアカンかったんですかね?やっぱ椎名ちゃんがええんか?


オッス!オラ剛!

あれからちょくちょくデートしたりしたんやけど、何の探りとかも入れて来てなくてちょっと不安やったりする。

俺がうっかり口を滑らせてしまったとかならすぐに手を打てるんやけど、知らん間に先手打たれて気付いたらもう手遅れ…なんてことになれば最悪やからな。

その点を考えても、付き合うって判断したのはええ判断やったとやったと思うわ。さすが俺!

 

 

 

で、今俺らD…じゃなかったCクラスは今バスに揺られているわけであります。

そう、3学期最初の特別試験、その名も『混合合宿』。

 

3学年が7泊8日の間集団生活を共に過ごす…難易度が低いようにも思われる試験だが、今まで互いに歪み合い競い合っていた敵と同じ部屋で暮らす…というのは中々に難しい試験な気がする。

 

俺は高円寺とかとおんなじグループになりさえせんかったらどこでもええわ。普通にこなしてたらなーんにも問題無いしな。強いて言えばクラスメイトとまではいかんくても誰か知り合いと一緒になりたいぐらいか。最悪龍園君でもええわ……いや、流石にジョークやけど。

 

 

まあそんなわけで茶柱先生からの説明が始まりました。

 

あ、ちなみに水やりの話やけど、結局蛇口からちょっとだけ出す方向に落ち着きました。最悪もやしは死んでもいいからそれ以外のやつに上手いこと紐を通して水が伝わるように頑張りました。年明けからはほとんどその自動水やり機の試行錯誤に時間を費やして、なんとかゴミとかだけで出来たから費用が0円に抑えられたのは中々デカい。

 

 

さて、今回の試験で必要な対策なんかはほとんど無いし、これからの為に手を打っとかなアカンようなイベントも特に無い。だから一生徒としてただただ課題をこなすだけで良い。

出来るならプライベートポイントなんかも得たい所ではあるけど…まあ周りのメンバー運次第やろ。

 

 

茶柱先生から資料が渡されて回ってきた。

なるほど……原作だけやとどんな場所かイマイチわからんかったけどこうゆう感じか。思ってたよりしっかりしてるわ。なんかボロボロの…それこそ某教室のE組の校舎みたいな感じかと思ってた。

 

 

茶柱先生の説明も終わってクラスの話し合いを進めていると、林間学校に到着した。

広!めちゃめちゃ広い!ちょっと…日本さん金かけすぎちゃうか?規模が一学校じゃないんよなぁ…

 

趣のある校舎を通って体育館に行くとA、Bクラスは既に入っていた。その後にDクラス、2、3年が入って来てグループ決めの時間がスタートした。

まあ………流れに身を任せるスタンスでええか。勝手に平田君とかが決めてくれるやろ。

 

 

 

 

 

 

 

……………あれぇぇ??なんか雲行き怪しくないか?

もうCクラスで残ってるのが綾小路グループの俺ら4人と鬼塚君と高円寺の6人。他にはもちろん龍園君も溢れてる。

絶対にきよぽんとおんなじグループにはなりたくない。だって…石崎にアルベルト、橋本に高円寺ってどう見ても厄ついてるやん。絶対入りたくないぞ?

 

じゃあ鬼塚君となるかって言われると……あんまり話した事ないんよなぁ……。じゃああっきーこと三宅君と龍園君のグループに入るかと言われると……はぁー…

 

なんで俺は黙ってたんや!さっさと適当にグループ組めば良かったのに……最後まで残ってまうなんか…思わんやん?

 

 

はぁぁー最悪………待てよ、選択肢は三つ。

一つ目はきよぽんのグループ。デメリットはこの先の展開を知らなくとも察せる程の不和。

二つ目は鬼塚君と同じグループ。デメリットとしては、残念ながら他のクラスに知り合いが居らん上に鬼塚君ともほとんど話した事無いから居心地がヤバい。ついでに鬼塚君は他のクラスに知り合いがおるらしいから完全に孤立マン。

三つ目はあっきーのグループ。あっきーがおるから孤立するような事はまあ無いと思うんやけど、なにしろ龍園君がおるからなぁ……。いや、何にもせえへんって分かっててもついつい避けてまうやん?

 

こう考えると、まず一つ目のきよぽんのグループは無い。明らかにめんどくさいからな。

 

これで二択。まあ一週間あれば仲良くなれん事もないやろうけど……なんかパッとせえへん面子なんよなぁ……。

いやでも龍園君がなぁ………ま、ええか。むしろ龍園君は知り合いみたいな所あるし。ちょっと怖い感じはあるけど今は大丈夫やろ。

 

 

あっきーが龍園君を引き取る事を申し出たので、俺もそれについて行く。

 

「俺も一緒に行くわ。友達がおった方が何かと楽やし」

 

「剛……助かる」

 

まあ下手に居心地悪い所に行くよりかはマシやろ。知らんけど。

 

 

 

 

 

 

南雲会長と堀北会長…元会長にしよか。堀北元会長の間で色々あったが一先ず全グループが結成された。

 

体育館を出てまずグループが寝泊りする部屋に向かった。

そして、まずは最初の試練とも言えなくも無い"ベッド決め"が始まった。原作では初っ端から高円寺と石崎が不協和音を奏でていたが、俺たちはちゃんと決めれるんかな?

 

「まず、どこで寝るか決めるか?」

 

「せやな」

 

あっきーが仕切ってくれるみたいなので賛同しておく。

 

「じゃあ、希望があったりするか?」

 

「……………」

 

誰もないみたいやな。やっぱみんな遠慮しちゃうか。因みに俺は遠慮とかじゃなくてどこでも良い感じかな。

 

誰も言い出さずにいると、龍園君が歩き出して奥の二段ベッドの上を陣取った。それを皮切りに適当にベッドを陣取り始めた。どこでも良い俺は最後に余った所でええかな〜って思ってたら、案の定龍園君の下が空いたままだった。ま、ええやろ。むしろ龍園君の上とかじゃなくて良かったわ。物音一つ立てるのも命がけやし。

 

 

その後は適当に自己紹介をして、食事の時間となった。

全生徒が収容できる食堂…と言うだけあってバカみたいに広い。式場かなんかみたいやな。

 

さて、この食事の時間が唯一の女子と関わることの出来る時間な訳やけど、桔梗ちゃんとはなーんにも約束してない。理由としては、桔梗ちゃんは堀北ちゃんと共にリーダーのような立ち位置なので平田君とかとの情報交換にこの時間を使うと思うから。小さい理由を言えば、公衆の面前で桔梗ちゃんとご飯を食うのは恥ずかしい。

 

 

そうそう桔梗ちゃんと言えば、池やらのDクラスの面々の反応が気になるのではないでしょうか。

 

クリスマスにデートしていた…なんて噂は風よりも早く伝わる。まさに音速!ガブリアス!102!(連想ゲーム)

次の日には男子(主に山内)からたくさんのメールが届いた。意外やったのは池は何にも言ってこんかった事。まあ今は篠原さんといい感じやしな。もう櫛田ちゃんLOVEは卒業したんやろ。いやー、池が何にも言ってこんかったのは良かったね!アホみたいに騒ぎ立ててたやろうな。

3学期初めて学校行った時は男女問わず冷やかされたけど、それ以外には特にコレといった事は無かった。

こんぐらいかな?思ったよりもなんか変わった事も無くて安心したね。

 

 

「櫛田と食べなくて良かったのか?」

 

一緒に食事を取っているあっきーが聞いてきた。

 

「今回の試験中は色々大変やろうし別にええかなって」

 

「ふーん…」

 

「そう言えば、グループのやつってどこ行ったんやろ」

 

「さあな。龍園に限って言えば食堂にいるのかどうかも怪しい」

 

「あぁ、そっちじゃなくて綾小路グループの方な」

 

「なんだそっちか…そういえば見ないな。女子2人はともかく啓誠と清隆はどうしたんだ…」

 

「まあ…あの面子やからなぁ……アレに比べたら龍園君はアタリの部類やろ」

 

「…それ本人の前では言うなよ」

 

「言わんわ!普通に殺されるやろ」

 

「違いない」

 

その後、遅れて来た2人の苦労話を「ご愁傷様です」と言いながら慰めて、食事を終え部屋に戻って初日は終了だ。

 

 

 

 

 

 

2日目の朝6時、スピーカーから流される音楽に叩き起こされた。

クッソうるさいんやけど…てか朝早すぎる!しかも寒い!

んでしかも今から外出て清掃やろ?ホンマキツいって…しかも明日から朝飯も作らなアカンねやろ?もう嫌や…部屋に返してくれ……

 

 

クッソ寒い中の清掃を終え、次は座禅。それも朝飯食う前やから体が起き切ってないんよな。

 

一晩過ごしたが、未だに龍園君が口を開く事はない。別に無視しまくっているわけではなく、周りが龍園君を避けているというのが実情である。あっきーも引き取る事はしても特に馴れ合うつもりも無いらしい。

 

そんなふうに考え事をしていると座禅の時間が終了した。

朝食についての説明を受けて、朝食を取った後は座学やら持久走やらをやらされた。

うーん。この学校、さては仏教色強いな?どっからどう見ても悟りを開く訓練にしか見えない。見えなくない?え、見えない?そっか…仏教の修行舐めてたわ。修行はもっとキツいか。

 

 

最後の座禅で痺れた足をなんとかほぐして今日の授業は終了した。

 

 

ようやく夕食の時間がやって来た訳だが、何やら騒がしい。見れば、坂柳さんがゆっくりと立ち上がっている所だった。

あー、このイベントね。山内とぶつかっちゃったやつな。可哀想に……こんな事で目つけられちゃって…ご愁傷様。

 

 

「あら、草元くん」

 

山内のご冥福をお祈り申し上げていると、当の死神本人が話しかけて来た。

 

「よ。一悶着あったみたいやな」

 

「いえ、それほどの事でもありません」

 

ウッソだぁ〜…だってコレキッカケで山内退学させられるんやろ?じゃあそれほどの事やろ。

というかなんで俺に話しかけてくるんや?何かしたっけ?

……なんか怖くなってきた。

 

「そんで、何か用?」

 

「そうですね…用と言いますか、世間話でもしようかと思いまして」

 

「世間話…?」

 

「ええ。

 

 草元くんは龍園君がCクラスのリーダーを辞めたという噂をご存知ですか?」

 

あっ(察し)

これ絶対バレてるやん。誰や?誰がバラしたんや?口止めなんかはせんかったけど流石にもらさんと思ってたのに…3バカか?いや、そうじゃなくても誰かが言う可能性があるか。

……まあ…ええか。そっちが真実やと思って貰った方がきよぽん的には都合が良いやろうし。

 

「まあ、噂程度には」

 

「私の知り合いが言うには、Cクラスの仲違いを裏で手引きしていた人物がいるというんですが…なにかご存知ですか?」

 

やっぱバレてるやんけ!

確信があるのにこうやって逃げ場無くして行くの嫌らしいわ〜。

てかもうお話しするの嫌なんやけど…人目につくしさっさと終わらせたいなぁ…

 

「いや、そんな風に言わんでもそれぐらいならちゃんと答えるで?」

 

「…そうですか。では単刀直入に聞きます。貴方がCクラスの仲違いを手引きしていたというのは本当ですか?」

 

「ホンマやで」

 

「…………なるほど。答えてくれてありがとうございました。それでは」

 

…あれ?終わり?

 

「え、なに、そんだけ?」

 

「それだけですが、なにか?」

 

「いや、なんかもっと根掘り葉掘り聞かれるもんやと思ってたんやけど…」

 

「早く会話を終わらせたいようにお見受けしましたので」

 

「………………………」

 

なんでわかるの??この子まさか…エスパーやったか…。

 

「では」

 

一礼して、去って行ってしまった。

……もうやだよ。坂柳さん怖い。二度と話したく無いよぉぉ…。とんだサイコエスパー少女やんけ。今度会ったらリトルガールって呼ぼうとか思ってた俺を殴りたい。

 

 

「どうしたんだ剛、そんなとこで突っ立って」

 

今やって来たらしい啓誠が話しかけて来た。

 

「…………いや、女の子怖いなって」

 

「は?」




はい。
実は原作に無いシーンとか考えるのめんどくさいんでダイジェスト方式でちゃちゃっと終わらす予定だったんですけど、無人島試験の二の舞を起こす訳にはいかんと思ったんですよ。まあアレはアレで良かったと思ってるんですけどね。

同部屋のモブ達の名前とかは流石にスルーでもええやんな?


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二十二話

誰だよ仁王なんか買ったヤツ……むずすぎて息出来ねえよ。
誰だよ海賊無双買うとか言ったヤツ……仁王もクリア出来る気しねえのに…


いくつかの授業をこなして過ごしていた3日目の夜、大浴場の脱衣所で服を脱いでいると、何やら言い争いが聞こえてきた。

やれ葛城さんがうんたら〜だの、アルベルトがどうだの…と言った内容だ。

 

…これはアレか?あの風呂イベントか?

嫌やぞ?あんなクソカオス空間で自分のオテンテン晒すのは。…自分、ちょっと収束するまで待ってよろしいか?

 

 

 

「お、来たかTレックス」

 

英雄の凱旋である。

 

「…その呼び方はやめてくれ」

 

「中々盛り上がってたみたいやな」

 

「剛ってさっき風呂場に居たか?」

 

「いや?外から観戦させてもらったわ。巻き込まれたく無かったしな」

 

「見てたなら助けてくれても良かっただろ」

 

「バカめ。俺が入った所で焼け石に水だということが分からんか?」

 

「……とにかく、その呼び方はやめてくれ。流石に嫌だ」

 

「うーん……いいキャラ付けになると思ったんやけどなぁ……」

 

「どんなキャラだソレ…」

 

「え、えーと……きょ、"巨根キャラ"とかどう?…痛い!ちょっ!痛い!無言で叩くな!素肌やから痛いねんって!ちょ、まじごめんって!なあ!ごめんって!いたっ!…」

 

 

脱衣所で行われる叩き合い(一方的)に、さすがの葛城も言葉を失った。

 

 

 

 

 

さて。この合宿もそろそろ終盤に差し掛かろうと言う所だが、特にめぼしいイベントは無かった。

変わったのは授業内容ぐらいで、ちょっと座禅の時間が伸びたりした程度だ。

いや、無い方がええに決まってるんやけどさ。ちょっと…つまらんやん?

 

 

そして試験5日目。午前中の授業が全て運動に割り当てられ、試験本番で走る18キロの道のりを実際に走らされる。

ただの18キロなら、まあ何とかならんことも無い。だがここは山。普通にキツい。

 

後ろを見ると、余裕そうな龍園君がグループの最後尾について来ていた。

この試験中、事務的な会話以外で一度も会話をした所を見た事が無かったが、意を決して話しかけてみることにした。

 

「余裕そうやな」

 

ペースを落として龍園君の横に並んで話しかけた。

 

「まあな」

 

………………え、終わり?なんか会話繋げてくれへんの?

えぇ……いや…なんか……いや、そりゃそうなんやろうけどさ……流石にちょっと気まずいわ。

なんか会話の種ないか…?

あ。

 

「料理出来るんやな。意外やったわ」

 

そう。この男、料理も出来るのだ。まあコイツのスペック考えたら当然な気もするけど、きよぽん出来へんしな。良かったな!きよぽんに勝てる所あったぞ!

 

「まあな」

 

っ!こいつっ!手強いっ!

なんやこいつコミュ障かよ。「まあな」しか言えへんって何やねん。

「勉強してる?」って聞かれて「まあまあ」とか、「ぼちぼち」としか答えへんヤツみたいやな。俺の事やねんけどさ。

 

「そう言えば無人島でも一人でサバイバルしてたんやっけか?あの時って何食ってたん?」

 

これは「まあな」じゃ返せへんやろ!

 

「…そこら辺のヘビとか昆虫だ」

 

…勝った!!

…………これ何の勝負やねん。

 

「はえー。でも最終日の前日雨やったやろ?大丈夫やったん?」

 

「てめぇらと一緒にすんな。あの程度じゃ体調崩さねぇよ」

 

あ、そーすか…。

さっすが龍園君!龍の名を冠する者は体が丈夫になるんですね!厨二病かな?

 

 

「……………桔梗と付き合ってるらしいな」

 

お?向こうから会話振ってくるとはどうゆうことや?

しかも割とホットな話題。

 

「おん。それがどしたん?」

 

「どうゆうつもりだ?」

 

「……と、言いますと?」

 

「お前は桔梗の本性を知ってる。その上で距離を縮めるって事は何か裏があるはずだ」

 

あー…………ちょっと申し訳ないんですけど、そんな罠張ってるみたいなんじゃないんですよねー。

 

「いや、そんなに嵌めるみたいな意図がある訳じゃなくて、ただ防衛策の一つとしてそうゆう選択肢を取っただけやで」

 

「防衛策?」

 

「そ。と言っても大層なもんじゃなくて、ある程度目の届きやすい所の方が動きが掴み易いかなって」

 

断じて櫛田ちゃんが可愛いから「役得やん!」ってなったわけではないぞ!違うからな!

 

「なんだ、ちゃんと考えてやがったのか」

 

……?

 

「どゆこと?」

 

「いや、あの顔を見たら完全に惚れてるようにしか見えなくてな」

 

………………え、なに?

…え?………もしかして………

 

「………もしかして俺らのデート見てたん?」

 

「ああ」

 

なん……だと……?

はっず!はっず!はっずぅぅ!!

なんかはずい!龍園君に見られてたってのが何でかわからんけど恥ずかしい!!

……………あれ?

 

「…………………え?何?もしかして俺の事心配してくれてたん?」

 

だってそうじゃない?わざわざこうやって確認する必要なんかなかったやんな?

 

「クク…バカ言ってんじゃねえよ。ただ、あんなヤツにやられたらつまらねぇと思っただけだ」

 

……なんか俺妙に龍園君に買われてない?

最初の質問も俺に意図がある事を確信してる風やったし、なんならあのデート中のあのデレデレ顔を演技やと思ってくれてる可能性まである。

 

 

「つまらんって…俺龍園君を楽しめれるようなヤツやったか?」

 

だって俺ちょっとイキって金せびってボコボコにされただけじゃない?

 

「………綾小路のような怖さはねぇ。坂柳のような風格もねぇ。だが、お前はどこか得体が知れねぇ。胆力一つ取っても俺相手に啖呵を切れる程だ。それに確実に保険をかけて大胆で豪胆な一手を打って確実に利益を捥ぎ取れる強かさもある」

 

………え、何何何?褒めてんの?なんで俺褒められてんの?

 

「え、えー…っと……?」

 

「…要は、お前も俺の獲物って事だ」

 

そう言って正面に目を向けて黙って走り出した。

 

 

………え、何それ……告白かな?

「お前は俺の獲物だ…」って告白やんけ!ごめんな。俺はノンケやねん。伊吹ちゃん送り込んで来て、どうぞ。

 

 

……まあ、龍園君なりに認めてくれてるって事を伝えてくれたって事やろ。

………龍園君に敵として認めてくれてるってのは嬉しいもんやな。

だって一之瀬さんとか堀北ちゃんとか葛城君は敵として見られてないやん?いや、堀北ちゃんは今どんな印象なんか知らんけどさ。

そう考えたらなんか自信持てるな。

有り体に言えばライバルとして見てくれてるって事やろ?そりゃ嬉しいなぁ……。うん。普通に嬉しい。どうせ眼中に無いんやろうなと思ってたし。

まあ、今は特に何かする気は無いんやろうけどな。

 

あれ?敵として認識されたって事は学校生活危ないってことじゃね?って気付いたのは走り切って休憩している時の事だった。

 

 

 

 

その日の夕食は、久々に綾小路グループ全員で集まっていた。

 

 

「それより、みやっちとくさもんは大丈夫なわけ?龍園と一緒なんでしょ?」

 

「ま、何とかな。俺も警戒はしてるが特に変わった様子は無い。授業だって至って真面目に参加してる」

 

龍園君の話題は俺にとってかなりタイムリーな話で、ちょっと変な気分だ。

 

「座禅とか駅伝とかも?」

 

「ああ。怖いくらいに普通だ。むしろ下手なヤツよりよっぽどしっかりしてる。ただ、何度か話しかけたりしてみたが、誰かとつるむつもりは全くない様子だ。……そういえば剛は今日結構話してなかったか?」

 

「え、大丈夫だった?何かされてない?」

 

ただ話しただけやのにエラい言いようやな。まあ龍園君の所業を考えたらそりゃそうなるか。

 

「別に何もされてないで」

 

「な、何の話してたの?」

 

佐倉さんが聞いてきた。やっぱり龍園君の話は皆気になるらしい。

 

「いや、別に大したことじゃないで。試験中の事とか、ちょっとした雑談とか」

 

「りゅ、龍園君と雑談……」

 

佐倉さんが恐々としている。因みに龍園君と世間話が出来るのが俺だけってのは俺の数少ないマウント取れることの一つになった。

 

一応俺の工作で龍園君が失脚したってことになってるんやけどそこんところ思う事無いんかな?

…………あ、流石にこの場では話せへんか。どこに目があるかわからんしな。一応他クラスには秘密ってことになってるし。

 

それぞれのグループの話題の後は、他愛無い雑談に花を咲かしながら食事を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

さあ、この混合合宿も最終日。めんどくさい試験の日となりました。因みに昨夜龍園君橋本君と会長達が会談するイベントがあったけど、流石に行く気にはなれんかったわ。そもそも眠いし、そんなカオスな場所おったら絶対チビるわ。

 

 

試験の内容は『禅』『筆記試験』『駅伝』『スピーチ』の4つで、この順で行われる。

 

って言っても、適当にこなせば終わる試験で難易度自体は普通の期末試験とかの方が高い気がする。

強いて言えば駅伝がしんどいのと、スピーチで緊張するぐらいか。

 

思っていた通りの割とヌルゲーの試験だったので卒なくこなすことができた。グループ自体の成績も、そんなに悪くないはず。てか龍園君がめちゃめちゃ優秀やった。スペック高すぎるんよなぁ…。

 

 

 

 

 

初日のように体育館に集められ、結果発表が始まった。

俺らのグループの結果は3位。まあまあボチボチって感じやな。

 

 

この試験の裏では南雲会長が堀北元会長の相棒的ポジションである堀茜を退学させる動きがあったがどちらのグループも全く関わりが無かったし、そもそも大して興味も無かった。

 

 

 

 

 

 

そんな訳で3学期最初の試験は終了。

 

お次は一之瀬さんの禊イベント。

って言っても今回も何かする必要は無い。勝手にきよぽんが何とかしてくれるし、なんなら一之瀬さんはどうでも良いみたいな所はある。

まあ、もし何かきよぽんから依頼でも来たら動くんやけどね。

 

____________________________________

 

 

私、櫛田桔梗にとって、過去を知る人間は確実に排除すべき者だ。

中学の頃のあの失敗はこのクラスから退学者を出そうとも、龍園君のような信頼ならない悪魔の手を借りようとも秘匿せねばならなかった。

 

そして、その過去を知る人間は堀北と綾小路君の二人だけだった。"だった"と言うのも、新たな警戒対象が増えていたのだ。

 

それは二学期の終わり、12月の事。

協力関係にあった龍園君が、草元君という男子とも協力関係を結んでいたという事が分かってしまった。

 

草元剛という男子は、はっきり言って大した事の無い男だった。大して勉強が出来るほどでも無いし、大して運動神経が良くも無い。ただ堀北だったり綾小路君とかとのパイプがあるぐらいで、ちょっと近づけば私の胸に下卑た視線を向けてくる。どっからどう見ても健全な男子高校生、良くも悪くも普通。それが草元剛という男子の評価だった。

 

しかし、それが一気にひっくり返ったのだ。

龍園君との協力関係にあるとは言え、何度聞いても龍園君が私に草元君の情報を渡してくれることは無かった。

 

そしてそのまま龍園君が失脚。

 

さらに草元君が二重スパイであった事が明かされた。

事の真偽を龍園君に問おうとメールを送るも返信は無い。

 

龍園君は過去を知らない。だが本性を知っている。本性も私にとっては絶対に隠さなければならないものだから、本性が知られている可能性を警戒せざるを得なかった。

 

だから、私の容姿を利用して接近する方法を使って探ることにした。

成果は上々。まんまと私の告白を受けて付き合う事となった。肝心の過去や本性を知っているかどうかについては、まだなんとも確信を得られていない。

 

だが、何一つ警戒すべき点は認められなかった。

数度デートをする内に無駄骨だと悟ってしまった。

どこからどう見ても私にメロメロだ(多少は気分が良い)。どこにも手強いと思える要素が無いのだ。

 

 

早々に別れる事を決めたがまだ付き合って一月もたってない。

こちらから告白しておいてこの短い期間で振るというのは軽い女だと思われる可能性があるため、少しでも心象を良くする、下げないためにもう少し我慢する事に決めた。




はい。
思ってたより短くなったので櫛田ちゃんの独白を足しました。

というか3学期って綾小路君がなんとかするヤツばっかりやから動かしにくいんよなぁ。


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二十三話

ホンマ三学期難しいわ。綾小路君の裏工作無双やからかな?
だから三学期のSS少ないんか。また一つ、賢くなってしまったか…


合宿を終えて、今は2月上旬。学年末試験も迫って来た。

ちらほらと一之瀬さんの嫌な噂が流れ込んできたぐらいだ。

 

ちなみに合宿の後はいつも通りの日常……あ、週末にデートしたわ。いやー!目の保養になるね!「月曜から頑張ろう!」って気になるわ!

でも探りを入れてくる感じが一向に無いのがやっぱり怖い。

疑いが晴れたならさっさと別れてくれた方が安心出来るんやけど……いや、やっぱりこのままでええわ。しばらくリア充としてマウント取りに勤しむ方向で。だってこのまま行けば「あの櫛田桔梗と付き合った」で一生マウント取れるんやで?

 

そうそう、その手の話題で言えば平田君と軽井沢さんが別れたらしいな。そういえばこの辺やったなって感じ。

 

 

 

そんなある日の放課後、我らの教室に珍客がやって来た。

 

「お、坂柳さん」

 

「あら、草元君。こんにちは」

 

やっべついつい声かけてもた!くっそ!なんで俺は知らんぷりせんかったんや!!

 

「えっと……山う…………いえ、少し話があるので来てもらえますか?」

 

チラッと山内の方を見たかと思えば、俺に話があると言う。

HA・NA・SHI?

 

「えぇ……まあ……ええけど」

 

これアレか?俺が目をつけられたやつか?

 

…………いや、別に大丈夫か。

 

たまたま俺が一番最初に声かけたから捕まっただけやろ。多分。

 

 

坂柳さんに連れられて教室から離れた所に連れてこられた。

 

こうゆう時は先手を打った方が良いはず。知らんけど。

 

「悪いけど、俺はそうゆうのいらんで?」

 

「そうゆうの…とは?」

 

「こうゆうのの事。別に邪魔せえへんからさっさと山内呼んできて良い?」

 

そう言うと、坂柳さんは驚いた表情を見せた。

 

「……驚きました。私の意図が読めていると?」

 

「うーーん……まあ、そうゆうことにしといてくれ。俺が呼ばれたのは山内を間接的に呼んでもらうため、そうゆうことでええやろ?」

 

「……どうして山内君に用があると思ったんですか?」

 

「だってさっき『やまう…』って言った後言い直したやん。俺がこうして呼ばれてるのは予定外なんやろ?今のうちに元の路線に戻った方がええんちゃうんか?」

 

まあ!「やまう…」って言ってなくても分かってたんですけどね!

 

とにかく早く坂柳さんとの会話を終わらせたい俺と、どこか納得していない様子の坂柳さん。

 

 

「……良いでしょう。山内君を呼んで来てもらえますか?」

 

向こうとしては思惑が見破られようとも支障は無いとでも思ったのだろう。

思いの外さっさと折れてくれた。

 

ふぅ〜緊張した〜。

なんでこの人は俺に絡んで来るんですかね?与し易いとでも思われてんのかな?いや、実際その通りやと思うんやけどさ。

だが甘いな!原作から外れた動きをしない限り俺の裏を取ることは出来んのだよ!諦めてさっさと山内を堕としに行くんだな!!

そして俺を警戒して二度と手を出してくるな!!話しかけるな!!

 

 

 

教室に戻るために角を曲がると、池、博士、はるちゃん、佐倉さん、きよぽん、けーちん。原作通りかと思ったけど、その後ろになんと桔梗ちゃんも居た。あ、その後ろに山内もおったわ。

 

「えと…なんの話だったの?」

 

桔梗ちゃんが聞いて来たが、どこか空気が重い。というか視線が痛い。主にはるちゃんとバカコンビやけど、「事と次第によっちゃあ……」って雰囲気やな。

 

「あぁ、えーっとな……山内、坂柳さんが話あるんやって。行ってくれへん?」

 

…って言い終わったらもう走り出してるし…。堀北ちゃんの注意イベントすっ飛ばしてるけど別にええやろ。どうせ教室戻ったら説明させられるんやし、状況はそう変わらんはずや。

 

「……つまり、山内を間接的に呼んでもらうために剛が呼び出されたって事か?」

 

「そーゆーことやな。まあ顔見知りやし、近かったから声もかけ易かったんやろ」

 

それっぽい理由を並べ立てておく。

 

「でもくさもん、女の子の誘いにホイホイ乗っちゃうのはちょっと減点ポイントかな〜」

 

減点って何ですか?知らぬ間に採点されてたってマ?

 

「いや、それは…ごめんやん」

 

アカンなんも反論思いつかへんわ。

ってかこうゆう時の女子は強いからな。大人しく非を認めるほうが無難か。

 

「キョーちゃんがいるんだから!これからはそうゆう事しないように!」

 

キョーちゃんってのは桔梗ちゃんの事ね。キキョーちゃんやから。

 

「あー…悪かった」

 

「ううん!全然良いよ!」

 

とにかく猛省の意思を見せつけてこれ以上の追撃を防いだ。

 

 

 

 

 

 

「さっきの山内くんと坂柳さん、あの茶番劇の真相は何だと思う?」

 

あの後、部活に向かったあっきーを除く綾小路グループがカフェに集まっていた。

 

そこから「男ってあんなんに騙されんの?ウケる!」みたいな話になって、ちょっとだけ耳が痛かったです。

いや、お前らあの桔梗ちゃんが裏であんな事思ってるなんか考えられへんやろ?桔梗ちゃんのアレ、全部演技なんだぜ?

 

 

「そう言えば、あの時坂柳さんに何て言われたの?」

 

「えーっと、『山内君に特定の誰か居ますかー?』みたいな話をしただけで大した事話してないで」

 

「ふーん…」

 

「坂柳と顔見知りとかって言ってたな。いつ知り合ったんだ?」

 

けーちんが聞いて来た。

 

「夏休みのバカンスあったやん?あの時に水やり誰かに頼めへんか探し回ってたら偶々引き受けてくれたってだけや」

 

「別に先輩とかに頼んでも良かったんじゃないのか?」

 

「仲良い先輩なんかおらんしな。他学年は余計とっつきにくい雰囲気あるし」

 

「だが、あの坂柳が引き受けたのか?」

 

「ま、俺のウルトラ交渉テクにかかればその程度は楽勝やったって訳よ」

 

そう茶化すと、それ以上は追求して来なかった。

 

 

 

そうして2時間ほど過ごした後、あっきーからの連絡で橋本君と神崎君が喧嘩寸前だと言うことがわかったので止めに入ってその日は終了。

 

…そう言えば、橋本君は目ぼしい人には唾をつけるんやったな。

俺に尾行を感知する能力なんか無いからアレやけど、もしかしたらどっかで尾行されてたりしたんかな?

まあ特に見られて困るような事なんかしてないし大丈夫やろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

2月。冬。クッソ寒いと愚痴を垂らさずにはいられない季節だが、唯一、唯一、ただ一つだけ嬉しいイベントがある。

それは、そう。男の希望、そして同時に墓場でもある“バレンタイン”だ。

 

もちろん俺にとっては墓場などではない。

桔梗ちゃんから本命(表面上は)チョコを貰える人間は間違い無く勝ち組だ。原作ではきよぽんも貰ってたけどどうなんやろか。………いや、妬いてないぞ。

 

後は綾小路グループの二人から貰えたぐらいやな。

 

因みに桔梗ちゃんからのチョコは毒とかハバネロとか、そうゆうの入ってなくて安心した。

メチャメチャ美味かったです。お返し楽しみにしててね♡

 

 

 

 

 

 

 

そして一夜明けて仮テスト当日となったわけだが、どうにも教室が騒がしい。

どうやら根と葉があったり無かったりする噂がばら撒かれているらしい。

俺としては自分に全く関係ない噂やし、別にええかなー。

 

 

「あっ!!草元!櫛田ちゃんを脅して付き合ってるってホントなのか!?」

 

 

 

 

 

 

ふぁっ!!???

 

 

 

 

どうやら、原作の4つの噂に加えて俺の事まで書かれているらしい。

その内容は山内が聞いてきたとおり『俺が桔梗ちゃんを脅して付き合ってる』というものだが、俺の中ではあながち間違いでもない気がする。こっちが一方的に首根っこ掴めてるわけやしね。まあそれを向こうは知らん訳やけど。

 

とは言え、そんな事を言いふらされて怒らない訳にはいかない。という演技をせざるを得ない。

 

 

「……は?なんでそんな事になってるわけ?」

 

ちょっと声を低くして怒ってる感じを出していくぞ!

 

「いや、今朝掲示板に書かれてたからよ、その真偽をと…」

 

「はぁー…そんなわけ無いやろ?冗談してはタチが悪いし、そんなん信じる方もどうかと思うで?」

 

言外にお前ちょっとヘイト溜めすぎやからもう喋るなって意味を込めたんやけど伝わるかな?伝わらないよね。うん、知ってた。

早速篠原さんにちょっかいかけに行ってるし。

 

 

はぁーホンマ山内頭悪いよな。どうやったらアレでこの学校入ったんや?なんの取り柄も無さそうやけど。プラマイを合わせる為の大きなマイナス要因として呼ばれたって言われるとかなり可哀想に見えて来たな。

 

 

 

 

 

そこからDクラスの椎名ちゃん達とAクラスの橋本君との喧嘩があったりしたが、原作と変わったような点は無かった。

また伊吹ちゃんのパンツ見れて良かったって思った事は内緒やで。

なんで短パンとか履かへんのかな?別にオシャレしたがってるようにも見えへんから履いた方が良いと思うんやけどなぁ………やっぱりええや。このまま時たまのパンチラを楽しむわ。

 

 

 

 

 

で、学年末試験まで残り1日となった日の昼休み、ついに坂柳さんがBクラスに突入して一之瀬さんの禊が始まった。

 

 

罪の告白をする一之瀬を見ていて、思った事がいくつかある。いや、原作読んだ時から思ってた事がある。

 

所詮万引きやろ?しかも常習犯とかでもなくて数百円の小物やろ?ついでに言えば妹の為にやったわけやろ?別にそこまで非難されるような事じゃ無いと思うんやけどなぁ…。

 

そもそも「私は罪を犯しました」って涙ながらに語られて、「なんや、一体どんな悪ぅぅい事したんや!?」って期待(?)してたら「それは万引きです」ってめちゃめちゃ拍子抜けじゃない?

「薬物してた」ぐらいの闇深い話やったら「おぉぉーん…」ってなったんやけどせいぜい万引きやろ?

気にしすぎやと思うんやけどなぁ…俺なら「それもう反省したから良くね?」って彼方に忘却してるわ。

 

 

 

そしてそのまま原作通りに学校の介入で事態は沈静化。

長かった誹謗中傷合戦も終わりとなった。

 

 

 

 

 

さて、今回唯一原作と大きく外れたと言える俺の噂。(坂柳さんに呼び出された事については原作通りに戻せたのでノーカン)

 

その噂の出所は他でも無い櫛田桔梗によるものだ。

おそらく揺さぶりや探りの一種だろうが特に気にする必要は無い。何の意図があるのかは分からんけどな。

強いて思う事があるとすれば、この噂を流す事にしたきよぽんを小一時間は問い詰めたいぐらいだ。

 

………なんかちょっとムカついて来たな。どーゆうつもりで流したのかOHANASHIしなきゃ!!

 

 

 

 

_________________________________

 

 

あの噂を流した事に特に意味は無い。

もし私達の間に亀裂やらわだかまりでも残れば別れやすくなる…と思って綾小路君に渡してみたが何の効果も無いようだ。

 

 

やはり、どう考えても彼を警戒しなければいけないようには思えない。

坂柳さんと知り合いだったのは驚きだけど、せいぜい顔見知り程度らしい。というのも、あの後長谷部さんに一応聞いてみたが、奇妙な縁の単なる顔見知りと言われたのだ。

 

となると、やはり警戒に値する人物では無かった。

 

 

はぁー。とんだ無駄骨だったなぁ……。

龍園君のスパイとして動いていたって言うからどんなもんかと思っていたけど……。

 

あんな奴が龍園君にスパイとして雇われていたなんて信じられない。

 

そもそもどうやってあんな奴が龍園君と関わりを持ったのだろ………………う……………

 

 

 

 

 

 

 

………待て。待て待て待て。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

どこかで見られていた?いや、それは絶対に無い。綾小路君に見られてからは最大限に警戒している。

 

綾小路君がバラした?…それも無い。私が裏切り者だったことも分かっていなかったみたいだし、船上試験の時点では龍園君と全く関わりは無かったはずだ。

 

 

…………なら、草元君か?あの時龍園君と同じグループだったはずだから、スパイになる為のパイプとしてはなくも無い。

しかし、ならば何故私の裏の顔を知っているのか…となる。

 

………綾小路君がバラした?ありえる。

綾小路君が手強いという事は理解出来た。その綾小路君が裏で草元を操り……いや、あの時はまだ裏切り者の存在には気付けていなかったはずだ。

 

堀北がバラす事も有り得ない。

 

あの時点で知っていたのは綾小路君と堀北の二人だけだったから犯人はどちらかに絞られる。

 

 

……………いや、もう一つある。

草元君が一人で全て知っているという可能性が………なーんて、そんな訳無いか。




櫛田「草元がヤバイヤツ説………んなわけ無いか!あんな雑魚にそんな能力あるわけないわ!HAHAHA!」

海賊無双勝ったらそれと並行してワンピのSS書こうかと考えてるんですけど、面白そうな設定が思いつかないんですよね。ストーリーと並行させんでもいいならちょっと面白そうなのあるんですけどね。


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二十四話

はいはい。お待たせしましたー。
何となく流れは決めてたんですけど、原作を開いて時間軸を確認しながら描く…ってのがめんどくさくてですね。気付けばこんなに時間経ってました。


学年末試験を終えて、その結果に一喜一憂していた俺達。

テストを終えた安心感に浸る間もなく、テストを返却した翌日の今日、3月2日の朝のホームルームではどこかピリピリした様子の茶柱先生に、俺達Cクラスは雰囲気を重くしていた。

 

「ーーーお前たちに、伝えなければならないことがある」

 

そう切り出した茶柱先生から告げられたのは、3月8日が今年最後の特別試験だったが、急遽追加で特別試験が行われる…という事だった。

 

その内容は『クラス内投票』。

クラスで賞賛に値する生徒と、批判に値する生徒をそれぞれ3名ずつ選択し、4日後の試験当日に投票する…というもので、そのプラスとマイナスは相殺される。つまり、賞賛票が2つで批判票が3つならば、合わせて批判票1つとなるわけだ。

そして首位、つまり賞賛票を最も多く集めた生徒には『プロテクトポイント』というものが与えられ、一度だけ退学を無効にすることとができる。

当然最下位、つまり批判票が最も多い生徒は問答無用の退学となる、血も涙も無い試験だ。

さらに、他クラスの誰かへ賞賛票を入れる事が出来るので、クラス全員に嫌われて39票の批判票が集まっても、他クラス全員分の賞賛票を集めれば、差し引きで賞賛票が80票集まる、というものだ。

 

 

シンプルな試験だが、鬼畜過ぎる試験だ。

この試験はきよぽんを退学にさせるという陰謀によって生まれた試験だが、問題無い。

原作通り堀北ちゃんが何とかしてくれるし、坂柳さんもなんとかしてくれる。

その犠牲が山内やって言うのは……まあ、しゃあないやろ。

 

 

で、今回の俺の動きやけど、まあ傍観よね。

何にもせんくても山内が退学させられる動きになるはずやし、もし何らかのアクシデントで堀北ちゃんがやらんかっても最悪俺が山内を退学にさせる。

だから今回も傍観。なーんにも出来る事無いしな。

人間の醜さでも観察しとこうかな!(ゲス顔)

……あ、でもどうせやったら龍園君に焼肉奢って貰っとこっかな。この後はちょっとずつ王政復古の兆しが出てくるから声かけにくくなるしな。サイフの紐も緩々やろうし。

 

 

 

 

 

その日の放課後、俺は早速龍園君にメールを送った。

内容は至ってシンプル。

 

『焼肉奢ってくれ』

 

正直、別に奢ってくれんくてもどっちでも良い。肉が食えるなら食っときたいってぐらいやからな。それっぽい理由を付けるとしたら………あ、龍園君に積極的に近づく得体の知れないヤツ感を出したいから…とか?…………ええやん。コレで行こう。

 

『7時』

 

シンプルで素っ気ない感じが龍園君っぽいね。場所の指定が無いって事はこの前奢って貰った所やろ。多分。

 

てかオーケーなんか…。ガン無視覚悟やったんやけど……でもそうか、俺龍園君に若干気に入られてる説あるんか。

…折角やし、色々根掘り葉掘り聞きたいな。

 

 

 

「よっ」

 

「よう」

 

先に席に着いていたらしい龍園君が読んでいた本を仕舞う。

 

「たまに図書室におるみたいやな」

 

「まあな」

 

「最初入ったとき皆『ビクゥッ!』ってしてたんちゃう?」

 

そんな風に軽口を叩きながら肉を焼いて食べていく。

 

 

「それで?俺を呼び出した理由は何だ?」

 

「………んー、お金持ちに集りに来た…って理由はどう?」

 

「よく言うぜ。散々俺から毟り取ったくせに」

 

「確かに…………んーっとな、あんまり覚えてないけど、後一回くらい焼肉奢る約束してた気がしててな。おらんくなる可能性があるから最後に〜って思ってさ」

 

「……約束なんかしたか?」

 

「いや、知らんよ。でもしてた気がする」

 

え、してないんかな?………まま、えやろ。

 

「……まあ良い。どうだ?今回の試験は」

 

「それは俺の方が聞きたかったんやけど………まあ今回は特に何にもする気無いかな。ほっとっても何とかなるやろうし」

 

「ほう…自分は安全だと?」

 

「まあな」

 

「その根拠は?」

 

「そんなん俺が人気者やからに決まっとるやろ?…ってのは冗談で。俺が何にもせんくても堀北ちゃんがやってくれるやろうしな」

 

「…アイツに出来るとは思えねぇが……」

 

「まあ…最悪俺がやるわ」

 

「クク…そうか」

 

「…で?」

 

「あ?」

 

「龍園君はどう思ってるわけ?」

 

「…………俺にはどうしようもねぇ試験だ。なんとかしようとも思ってねぇしな」

 

あら?意外やな。堀北ちゃんと話した時はなんとかなるって言ってた気ぃするんやけど。

 

「え、何にも手無いの?」

 

「いや、あるにはある。俺がやる気にならねぇからどうしようもねぇってだけだ」

 

「ほーん……」

 

……なんか…………まあええや。

きっとその手ってのは綾小路君が取った手段と一緒やろな。

 

 

「…そういえば、龍園君って桔梗ちゃんと連絡取ったりしてないやんな?」

 

「いや、特にはしてねぇが…どうした?」

 

「いやね、最近なーんにも探り入れてきたらせえへんから逆に心配なんよ。ゴリゴリに入れて来てくれたら判断つくんやけどなぁ」

 

「……それなら話は早えじゃねえか」

 

「へ?」

 

「さっさと脅しちまえばいい。早えとこ脅しちまってこっちが首輪をつけておけば気にする必要は無くなる」

 

「えぇー……」

 

確かにそりゃ全く気にする必要無くなるけど………ねえ?

 

「…なんだお前、まさか桔梗に惚れてるのか?」

 

「いや、それは無い」

 

……と思う。

いや、確かに可愛いとは思うし好悪で言えば好きやけど……例えるなら猫を愛でるみたいな、そうゆう感じ?多分。

 

「まあ…上辺だけの付き合いでもそこそこ楽しいからな。向こうが何かして来たりせんかったらこのまま楽しんどこっかなって思ってる」

 

そう、普通に楽しいのよ。可愛い子とデート出来るしな。

向こうが何か仕掛けて来たら即首輪を付けることも辞さないって感じなんやけどなぁ…

 

「…そうかよ」

 

 

 

それにしても、最近よく龍園君と話してるな〜って思うんよな。流石にスパイしてた時の方が回数とかは多いんやけど、話の内容とかは今の方が濃いしね。

 

こうして雑談なんかも出来るようになったし、こうやって誘えば会ってくれるし…………あれ?これもう友達じゃない?

すっご〜い!龍園君は俺とフレンズなんだね!

 

 

「………なあ」

 

「あん?」

 

「これからは本読んだりするだけでどうせ暇なんやろ?」

 

「そうだが…それがどうした?」

 

「俺の話相手になってや。クラス中が疑心暗鬼で雑談もろくに出来へんのよ」

 

「………正気か?」

 

「もちろん」

 

綾小路グループは毎日何か話してたりするんやけど、なんかこう、腹割って話せへんというか、まだちょっと気遣うみたいな?

その点龍園君は俺がどんくらいの人間か分かってるし、俺のして来た事を大概知ってるから話しやすい感じはあるんよな。

そうゆう訳で、もう退学する気満々の龍園君と沢山お話ししたいなーって思ったわけよ。こんな風に雑談するヤツなんかおらんかったやろうしね。

 

「…何が目的だ?綾小路の差し金か?」

 

「いやいや、アイツはなーんにも関係無いで。ホンマにただ単純に暇なら話相手になって欲しいだけや。強いて言えば、龍園君と話してる所を見られたら“得体の知れないヤツ感”が出てこれから先有利になるかなーって思ったぐらい」

 

ここでそれっぽい理由を考えてたのが活きたな。それっぽい理由付けが出来たわ。

 

「…別に良いぜ。確かにお前の言う通り、読書ばっかで退屈してた所だ」

 

おぉ、なんやええんか。これはガチで気に入られてる説濃厚じゃないか?まあ最後の晩餐的な意味合いとかもあるんやろうけどな。

 

そんな訳で、今回の試験中は龍園君と雑談をして過ごす事になりました。

 

 

 

 

 

 

さて、放課後は龍園君とお話ししたりして2日目、3日目と経過していったのだが、ここで問題が発生した。

問題って言っても、それほど危険性のあるもんでも無いんやけどな。

 

で、その問題って言うのが、俺を退学させる動きがあるって話。

言うても、きよぽんを退学させるってゆう動きと並行してるみたいやから正直大した問題じゃない。

きよぽんの代わりに…ってなってたらヤバかったけどな。

 

それを知ったのはついさっきで、きよぽんから送られてきたメールに書いてあった。

 

 

でもこの問題は堀北ちゃんが解決してくれるし、俺が特になんかする必要は無い。

一応矢面に立たされる訳やから、それなりに話す事考えとくぐらいか。

 

 

 

…え?そんだけで良いんかって?

ダイジョーブダイジョーブ!

こんなん犯人分かり切ってるやん。

わかるやろ?

俺を退学させたいと思ってる人間なんか一人やし。

坂柳さんは…ちょっと怪しいけど多分大丈夫。多分。知らんけど。

他に恨みとか買ってるヤツなんかおらんやんな?……うん、多分おらんな。

 

ってな訳で犯人は一人に絞られる!!

試験終わったら覚悟しとけよー。グヘヘヘヘ…

 

 

 

 

 

 

試験前日の放課後、堀北ちゃんが前に立ち退学すべき人間について話し始めた。

 

原作通りの流れで、特にコレといった変化は無かった。

スペック的に劣っている事、精神的な面で成長が見られない事、そして極め付けは他クラスである坂柳さんに利用されている事。

それらを踏まえ、退学すべきだと主張する堀北ちゃん。

平田君には可哀想だが、この流れを変える事は出来ない。既にクラス中が山内にヘイトを向けている。

 

しかし、ここで原作との乖離が現れた。

 

 

「じゃ、じゃあよ!お、俺がスパイだって言うんなら、草元はどうなんだよ!」

 

……わっつ?

 

「………どうゆうことかしら?既に二重スパイであった事は伝えているはずだけど」

 

堀北ちゃんがどうゆう事かと聞くと、突破口を見つけたのが嬉しいのか、笑みを浮かべて俺に向かって言った。

 

 

「知ってるんだぞ!お前がここ最近龍園と密談してるの!」

 

 

………あー………おぉーーん。なるほどなー。

密談ってつもりでは無かったんやけど……そう見えたんかな?

 

「どうゆうこと?」

 

堀北ちゃんが俺に聞いた。

 

…うーん……そうゆう方向で攻められるとは考えてなかったんよなぁ…。

どうしよっかな……

 

それっぽい理由……理由…………あ。

 

 

「えー…っとな、みんな知ってると思うんやけど龍園君が今回の試験で退学するのは確定やん?」

 

そう聞くと、みんなうなづくなりして肯定の意を示してくれた。

ま!あの人は退学しないんですけどねぇ!

 

「やから、どうせ退学するんやったらポイントとか、龍園君が持ってる情報とか、そうゆうの貰えたりせえへんかなーって思って接触してたんやけど………まあ、ご察しの通り失敗やったわ」

 

これどう?中々良くない?即席にしては良い感じの理由やろ?

 

みんなの反応を見てみると、中々好感触だ。

だが、山内はそれを認めない。

 

「……う、うそだ!龍園にそうやって言えって言われてるんだろ!」

 

こいつバカか?

 

「さっきも言うたけど、もう龍園君は退学するんやで?その龍園君と手を組んでなんのメリットがあるん?」

 

まだ女子やったら一緒にお茶する〜とかでもええけど男子やったらホンマ誰得やねんって感じよな。

 

「っ……で、でも俺は本当に裏切ってなんか無いんだって!信じてくれよ!」

 

 

まあ、山内にしては中々良い目の付け所やったんちゃうか?坂柳さんから情報渡されてたんかもしれへんけど…

 

結局山内はこの状況を覆す事は出来ないって訳よ!

 

 

 

そんな感じで、原作通りに平田君がブチギレて話し合いは終了。

 

因みに今日の放課後は龍園君とのお話しは無し。

その理由としては、今日あるはずの伊吹ちゃんが龍園君の部屋を訪ねるイベントを必ず起こすため。それが無かったら龍園君退学しちゃうしな。

 

 

後は………一応、桔梗ちゃんとメールのやり取りしたぐらい?適当にそれっぽい事話しただけやけどな。

 

 

 

で、結果は原作通り。

Aクラスは戸塚弥彦くん。

Bクラスは無し。

Cクラスは山内。

Dクラスは真鍋さん。

 

 

俺の票の内訳は、賞賛にきよぽん、堀北ちゃん、高円寺。

批判は山内、平田君、桔梗ちゃん。

他クラスへの賞賛票は適当に戸塚君に入れといたで。

 

別に大した理由は無くて、一応確実にきよぽんが一位になれるように賞賛入れて、平田君と桔梗ちゃんはきよぽんの対抗馬やから一応下げといた…って感じ。

戸塚君に入れたんは……まあ、坂柳さんが変に警戒してくれたらなーって感じ。俺が入れたかどうかは分からんと思うけどな。

 

 

そんな訳で、一番鬼畜な特別試験はしゅーりょー!

後は最後の特別試験で一年生はしゅーりょー!

 

 

 

 

……でもその前に!やらなアカン事があるよね!

 

皆さんお待ちかね!

 

 

明日、櫛田桔梗ぶち殺し劇場開演となります!

 

 

乞うご期待!

 

_________________________________

 

『ごめんね。私…何も出来なくて……』

 

『いや、全然ええよー。堀北ちゃんのお陰で何とかなりそうやしな』

 

試験前日の夜、念のため草元くんと連絡をとった。

その懸念は、綾小路くんと並行して広まった草元くんの退学の動き、それが私の仕業であるとバレていないかどうか…というものだ。

 

 

いくつかやり取りをした感じ、特に変わった所は無い。

メールから伝わる前のめりな感じは相変わらず完全にほの字だ。

 

 

少しリスキーな手であったかもしれないが、万が一綾小路くんが退学を切り抜けた際に退学して欲しかったのは草元くんだ。もちろん堀北が一番退学して欲しいが、どう頑張っても今の状況で堀北を退学させる事は出来ないだろう。

 

まあ、堀北のせいでどちらも残ってしまうという結果になってしまったが…。

 

草元くんは、誰かが自分を退学させようとしているとわかっても何も出来ないだろう。私が直接呼びかけたのではなくて別のルートを介して広がったものなので、何一つ私が主導したとわかるものはない。

まさか彼女である私が主導していたなんて思いもしていないだろう。




マジで三学期難しい。
だってぜーんぶ綾小路パイセンがやってくれるやん。何して動かしたらええかわからんのよなぁ…。

後、龍園君と草元君は普通に友達です。今のところは。
距離の詰め方としては割とそれっぽいかなーって思ってたんですけど…どうでしょう?


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二十五話

原作に追いつきそうやけど大丈夫か?って質問あったんで答えます。
二年生編は伏線とかの回収が始まらんと書きにくいんでまだ書けなくて、二年生になってからの対策とかを最後の特別試験と春休みとで打ったりしたいなーって思うんですね。
つまりどうゆうことかと言うと、今回でしばらくお休みって事ですね。


「おじゃましま〜す」

 

「適当に座っといて〜」

 

特別試験が終了した次の日、俺は桔梗ちゃんを部屋に呼んでいた。

最後の特別試験がすぐ始まっちゃうからさっさと終わらせんとアカンしな。

 

 

えー……っと、携帯の録音スタートして…ボイスレコーダーも……おっけー。ちゃんとついてるな。

 

今回は携帯+ボイスレコーダー5個体制で挑むことにしました。

部屋中に仕掛けたから最悪どれか一個でも生き残れば大丈夫やわ。まあバレんとは思うけどな。

 

 

「それで、話って何かな?」

 

呼び出した桔梗ちゃんが俺に聞いてきた。

 

「単刀直入に聞くんやけど……」

 

さあ!開戦じゃい!

 

 

「俺に批判票集まるように誘導したん…お前やろ?」

 

 

 

「…………えっと……どうゆうことかな?」

 

ほう。まずはしらばっくれるわけね。オーケーオーケー。

 

「別にしらばっくれる必要は無いで。もう全部知ってるし」

 

「……ごめん、ホントに何のことか分からないんだけど…」

 

……強情やな。さっさと自白してくれよー。自白するのにそんなに時間かける気無いねんけど。

めんどくさいし、もうさっさと詰めてしまおか。

 

 

「そっちの顔じゃ話し難いやろ?とりあえず裏…いや、本性?まあどっちでもええや。裏の顔の方で話しようや」

 

そう言うと、桔梗ちゃんは呆けたように声を出した。

 

「…………………え?」

 

「いや、だからクラスのアイドル櫛田桔梗じゃなくて、自己承認欲求オバケの櫛田桔梗を見せてくれって言うてるねんけど」

 

日本語が通じて無いのかなぁ〜〜???

 

 

「………………な、なんで………知ってるの…?」

 

『なんで?』と来たか。

そう聞かれると答えに困るよね。小説読んだからです!とは言えへんし、何故知ってるかと聞かれると理由の説明が出来へんよな。『いつから?』って聞かれたらそん時の答えは決めてるんやけど……

 

「ヒミツやヒミツ」

 

とりあえずは秘密にでもしとけばええか。良い理由も思いつかんし。あ、でもきよぽんから聞いたってゆう風になると不味そうやからそうはならん様にせなアカンな。

 

「……誰から聞いたの?綾小路くん?それとも堀北?」

 

「残念やけどその2人は関係無いで。2人とも俺にその情報を渡すメリットが無いしな」

 

「………確かに、その通りだね。でも私の事を知ってるのは2人だけ。ならどちらかが漏らしたって考えるのは普通だよね?だってそれ以外に出所なんてないんだから」

 

……あれ?君忘れてな〜い?

 

「いやいや、他に出所はあるやろ」

 

「どこにあるっていうの?」

 

え、マジで分からんの?これは本格的にあんまり強くない説出てきたな。まあ俺の格付けランキングではスペックで言えば各クラスのリーダー格には及ばないってイメージなんよな。龍園君とかにも良い様にあしらわれてるし。

あ、そういえば龍園君も知ってたか…………ま、ええや。

 

「え?普通に学校ってのがあるやろ?」

 

「…は?」

 

ここで学校って出したのはちょっとだけ意味があったりするんやけど、それにはまず一学期の坂柳さんとの交渉を思い出して欲しい。そこで知り得ないはずの情報を俺が知ってる理由について聞かれた時、俺は学校側の内通者の存在を仄かしたんよね。

そん時は適当に思いつきでそれっぽい事言うただけやったんやけど、今になって考えてみたら使えるなって思ったんよ。

学校側の内通者のリークによるものって事にしといたら、知り得ない情報を知ってる事の理由になるやん?

そうゆう訳で、これからは学校側に内通者がいる感じを出していきたいと思います。

 

 

「…学校側に…内通者がいる……ってこと?」

 

「さあね?」

 

「……嘘でしょ……?……そんなの反則じゃない!」

 

おーおー、ええ感じに信じ込んでくれてるやんけ。

 

というか反則って言われると確かにってなるよな。別に内通者かおるわけじゃないけど、こんなん誰がどうみても反則やろ。

 

「まあまあ、そんなんどうでもええやん。一先ず俺が聞きたいのは、俺に批判票集めるように誘導したのはお前やろ?ってだけやねん」

 

「……はぁ…そう。誘導したのは私。あーあ…こんな事になるんなら手を出さなければ良かったなぁ…」

 

「ホンマそれやで。俺に危害を加えるような動きさえせんかったら平和やったのにな」

 

藪蛇ってやつやな。まあでも、蛇で良かったやんけ。虎とかなら終わってたぞ。いや、もう虎の尾踏んでるか?まだギリセなんかな?

 

_________________________________

 

 

軽い気持ちでこの部屋にやって来た私は、早々に自らのピンチを悟った。

 

明らかに雰囲気が違った。いつもの様に目線が胸に向かうような普通の男子高校生ではなく…………あ、今胸見たわ。絶対見た。

 

とにかく、批判票の誘導がバレてしまったのはしょうがない。そう思ってとにかく上手い言い訳を考えていた。だがまさかバレるとは思っていなかったので、すぐにそんな理由が出てくる筈もない。

 

しかし、そんな理由を考える必要も無くなった。

それは全くもって嬉しい事ではない。むしろ由々しき事態だった。そして緊急事態だった。

まさか私の裏の顔がバレているとは思わなかった。

私の裏の顔を知っているのは2人で、綾小路くんと堀北。龍園君にもバレてはいるが、草元くんにバラすメリットは無い。だがメリットどうのこうので言えば、先程草元くんが言った通り先の2人にもメリットが無い。

 

なら誰が?と考えていると、草元が言うにはまだ知っている生徒がいると言う。と言うことはそいつが草元くんにバラしたという事だ。

その生徒に打たなければいけない対策について考えながら続きを聞けば、思わず耳を疑った。

なんとそれは学校。確かに学校であればあの忌まわしい事件を知っている可能性もある。ありはするが……と荒唐無稽だと切り捨てようとしたが、ふと内通者という存在が思い浮かんだ。内通者によってリークされているのならば、私の過去などを知ることなど意図も容易いだろう。

だが、それはあまりにもズルイ。ズルすぎる。まさに反則級のカードだ。学校側と繋がりがあるというだけでどんな試験だろうが乗り切ることが出来る。

 

 

そうなると、私がここから惚けたところで何のメリットも無い。

さっさと認めて、コイツに対する手立てを何か講じなければならない。

やられっぱなしは性に合わないし、何より舐められるのは大嫌いだ。

 

 

 

「それで?これからどうするの?まさか今の状況でこのまま付き合っていこうだなんて思わないよね?」

 

とりあえず、私が彼に近付く理由は無くなった。

成果もクソもないが、このままコイツと恋人ごっこを続けるなんてまっぴらごめんだ。

 

「ん?あー、別にどっちでもええよ」

 

「そっか。なら別れよっ!」

 

所詮は偽りの関係だが、私にかかるストレスは絶大だった。今はとにかく一分でも早くこの関係を終わらせたい。

 

「あいよ」

 

サクッと別れを済ました私は足早にこの部屋を出て部屋に帰る………………所で、草元くんに呼び止められた。

 

 

「まだ何かあるのかな?」

 

早く帰ってこの溜まったフラストレーションを発散したい。そう思って呼び止めた用件を話すように急かした。

 

 

_________________________________

 

 

「ちょっと待って」

 

別れを済ましてさっさと部屋を出ようとする桔梗ちゃんを呼び止める。

別に『あれ?恋人が別れる時ってこんな風にサクッと終わるもんなの?もうちょっとなんかない?』って思って引き止めた訳ではない。

 

 

「まだ何かあるのかな?」

 

声音から察するに結構イライラしていらっしゃるようだ。

 

でも残念ながらまだ帰す気はない。

今夜は…返したくない(『結婚したのか…俺以外のヤツと』感)。

 

というのも、今日の俺の目的は自白を取るだけじゃない。

俺の目的は完全勝利。俺に逆らう事のない従順なメス豚野郎(矛盾)を得る所までだ。

 

「まあ、とりあえずこれを見たまえよ」

 

そう言って机の上に置いてあった封筒から数枚の写真を取り出し広げた。

 

「…………っ!????これ……!!」

 

その写真に写っていたのは、桔梗ちゃんがきよぽんの手を掴んで自分の胸に持っていく所だ。

そう。あの時俺は屋上できよぽんの“近く”に居た。

覇気使いなら気付いてた可能性もあったけどそうじゃなかったみたいやな。

 

「まぁ、これもあるし……」

 

そう言ってベッドと壁の隙間に手を伸ばすと、そこからはボイスレコーダーが出てきた。

そこには今日の自白が全て入っており、社会的に抹殺するには充分だろう。

 

「…………なるほどね。私は最初っから嵌められてたって訳か」

 

「そうゆうことやな」

 

まあ、これはしょうがない。自他共々認めざるを得ないチートやから勝てる訳がない。

 

「それで?私をどうする気?胸でも触らせればいいの?」

 

ぜひお願いします!!!

 

 

 

………ハッ!?違う違う。

 

「………いや、今日はただ俺が優位にある事を知って欲しかっただけやから何かしてもらう気はないで」

 

あ、あっぶねー!あっぶねー!もうちょっとでおっぱいの魔力にKOされるところやったわ。これが万乳引力か!

 

「…ふーん」

 

 

因みにさっきはメス豚だとか性奴隷だとか肉便器だとか言うたけど(言ってない)エッチなお願いとかをする気は無いぞ。

というのも、俺の目的が学校の卒業である以上道連れとかをされる訳にはいかんわけよ。

脅してエッチしたとかがバレたら退学やろうし、そうじゃなかったとしても社会的に死ぬからそれはまずい。

だから俺は道連れにされるような弱みを握られたらアカンつんてことよ。

 

 

……と、いうところで桔梗ちゃんがおもむろに服を脱ぎ始めた。

 

「………は!??ちょ!え、ぁ、な、何やってますん?」

 

何?なんで?なんで服脱ぎ始めたの?

エッッッッッッ!てかおっぱいでか!肌白!

 

もしかして…ご奉仕してあげるから許してニャン♡みたいな展開か!?

それはアカン!アカンぞ!向こうから言ってきたとしても結局弱みは弱みやし、そもそもこの小説R-15やから!(そうゆうのは)まずいですよ!

 

 

「…ここで私がレイプされそうになったって部屋を飛び出したらどうなると思う?」

 

 

 

……………あ、そっち?そうゆう感じ?

……なんやねん…期待して損したわ。

 

部屋にはまだ4つもボイスレコーダーあるから今の音声も録れてるし別に問題無い。

さっさとボイスレコーダー出してあげてもええんやけど、折角活路を見つけたっぽいんやからもうちょっと付き合ってあげるか。

 

「なん…………だと…………?」

 

「ふふ。草元くんは私を脅してるつもりかもしれないけど、例え私が退学することになっても君を道連れにするぐらいは出来るんだよ?」

 

「…冗談やろ?一年かけて気付いた地位を無駄にするんか?」

 

というか服着てくれません?ブラジャー丸見えやから目のやり場に困るんですけど!

 

「また新しい場所で一年かければ良いだけだよ。それに…………冗談だと思うなら、試してみる?」

 

「え?」

 

そう言うと、歩き出して部屋を出ようとし始めたので慌てて止める。

 

「ちょ!待て待て!マジで待って!それはやめとけって!」

 

いや、ホンマに部屋を出られるとまずい。

冤罪かけられたらボイスレコーダーを引っ張り出すしか無いけど、そんなんしたら桔梗ちゃん退学ルートまっしぐらやん?

まだ原作で桔梗ちゃんが退学する感じが無い以上ここで桔梗ちゃんを退学させる訳にはいかんのよ。

だから出られると本気でまずい。

 

そう思ってマジになって引き留めたんやけど、そこが攻め所に見えたのか桔梗ちゃんが笑みを深めた。

 

「でも筋書きとしては完璧だよね。私と別れたくない草元くんが私をレイプしようとしたって」

 

「……ぐっ!」

 

「どうしようかな〜。写真とボイスレコーダーを消してくれたらそんな事しないんだけどなぁ〜?」

 

「……クソッ!」

 

そう言ってボイスレコーダーの音声を消して、次は写真を手に取る。

 

「ちくしょぉ……!」

 

写真を破り捨てようと力を込めて………

 

 

 

 

 

「…なぁんちゃって♪」

 

「…………」

 

笑みを浮かべていた桔梗ちゃんが真顔に戻る。

 

「いやー、中々やるやん。窮鼠猫を噛むってやつやな」

 

そう言ってテーブルの下に貼りつけてあったボイスレコーダーを出す。

 

「…………ぇ?」

 

「どうやった?俺の演技は。でもホンマに部屋を出ようとした時は焦ったわ。そしたらコレを出さないとアカンくなるからな。まだ桔梗ちゃんを退学させる気は無いし」

 

理解が追いついていない様子の桔梗ちゃんを見れば、俺の事をどれだけ侮っていたかが分かる。自分がきよぽんと交渉する時は携帯とボイスレコーダーで二重にしたりしてたから警戒しててもおかしくないんやけどな。

まあそれは俺にとっては好都合か。

 

 

「………またまんまと嵌められたってわけね」

 

どちらかといえば嵌められたって言うよりは自分から嵌まりに行ったんやけどな。

 

 

 

 

 

そんなこんなで俺と桔梗ちゃんとの一騎討ちは終了。

終始俺のペースで物事が進むなんかこの学校初めてじゃないか?ほとんどイレギュラーに翻弄されまくってたしな。

 

まさに完全勝利!おっぱい万歳!




はい。一先ずこれで休憩にしようかなと思います。
当初は二年生編は二年生になってから考えたらええやろって思ってたんですけど、思いの外一年生が濃いメンツみたいなんで色々対策とか事前に打ちたいなーってなりました。

次はオーバーロード書こうかなーって思ってるんで、見てくれる方は是非見てくだされば嬉しく思いますまる


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二十六話

皆さんお久しぶりです。
二年生編の二巻が出ましたので、とりあえず更新しておきます。
久々の更新なんで自分が書いたの全話見たんですけど、なんかわかりにくい所多いね。文章力は多少上がったと思うんで、見やすくなってくれてると嬉しいです。かなり文の感じ変わってる?かな?

後書きの方にて、感想でたくさん頂いたタイトル詐欺状態についてのお話をしますので気になる方は見てください。


3月8日。

 

俺達Cクラスは大人しく席に座って茶柱先生の入室を待っている。

雰囲気は非常に重たい。その理由は、40あったはずの机と椅子が39しかない……一つ欠けた事にある。

前回のクラス内投票にて、大事な大事なクラスメイトである山内春樹が退学してしまったのだ。

 

そんな彼らにとってみれば、これから発表される一年生最後の特別試験には並々ならぬ緊張感を持ってしまうことは仕方のない事だ。

 

 

………ま!俺にとっては全く全然関係無いんですけどね!

なにせ試験内容も結果も知ってるからね。なーんの心配も無い。

 

 

しばらくすると茶柱先生が入って来て、特別試験の説明を始めた。

 

最後の試験は『選抜種目試験』。

5種類の本命ともう半分のダミーを合わせた10種類の種目を公表して、本命である5種目を対戦するクラス同士で集めた10種目の内から7種目を選び勝敗を競う。因みにその7種目は学校側のシステムによってランダムに選ばれる。

そして、この試験では『司令塔』を立てなくてはならない。司令塔は直接種目には参加せず、監督のような立ち位置になる。その権限は大きく、例えばチームスポーツだと選手の交代の指示、囲碁や将棋では競技者に代わって指すことが出来る。事前に司令塔が関与できる内容はあらかじめ設定される事になるが…。因みに負けたら司令塔は退学になる。

 

一先ず、まとめるとこんな感じだろうか。細かいルールは沢山あるがこんなもんだろう。

 

 

さてさて、今回の試験での俺の動きについて改めて考えよう。

 

まず、望む着地点は原作通りの敗北だ。

 

理由としては、単純に原作改変による影響が怖い。

確かに俺のせいで歪みを発生しているが、きよぽん自身への変化は殆ど無い。もし今回勝ったとして、プロテクトポイントを保持しているせいで試験の内容がより鬼畜なものになると俺の原作知識が通用しなくなる可能性があるのだ。

何度も言ってるけど、俺なんて原作知識が無かったらただのパンピーやからな?舐めるなよ?

 

そんな訳で、今回の試験で勝ちに行く必要はない。

しかも、俺個人が頑張った所でどうこうなる戦力差でもないからどうしようもない。せいぜい戦犯にならないように頑張るぐらいかな?

というかそもそも、俺らが勝ちそうになったら月城理事代行様が『調整』するやろうしな。

 

とは言え、何もせず試験まで無駄な時間を過ごす気は無い。

 

この先に待つバケモン一年生達に万が一でも頃されないように何かしらの手段を取っておきたい。

…………ま!なーんにも思いつかないんですけどね!

 

まぁ、またそれぞれのイベントの時に考えるわ。まだ後一ヶ月もあるし、なんとかなるやろ。

 

 

今回の試験について考えていると、前回の試験についての説明を堀北ちゃんが終わらせていたようだ。

俺からすれば山内はただのバカやから必要な犠牲と思えるんやけど、そんなこと言うたらボコられるから言わなーい。

 

 

昼休みの話し合いでは平田君と高円寺君が早々に退出。

話し合いなんか関係無いぜ!という強い意志を感じた。っょぃ。

 

そして放課後、きよぽんが対戦相手を決めに行き、原作通りAクラスと対決することになった。まぁ予定調和やな。

 

因みに、今日は軽井沢さんの誕生日だ。

別に覚えていた訳じゃ無い。きよぽんから相談を受けていたのだ。「誕生日プレゼント、何を贈れば良い?」ってな。

そこは当然俺も「ググれカス」って返したやったぜ!(ドヤァ)

なお、ハートのネックレスを贈ったと聞いてニヤついてしまったのは内緒である。

 

 

 

次の日の放課後。

 

「平田くん!」

 

「ひ、平田くんっ!」

 

チッ!ひらたくぅん(はぁと)…じゃねぇよ。イケメンだからってチヤホヤされやがって。ペッ!ペッ!

 

と言っても、無視されても構わずアタックし続ける女子達を尊敬したいと思います。コレ男子が女子に同じことやられてたら二、三回で心折れるからなぁ…。

 

今日の話し合いは、殆どが高円寺君についてだ。

実際、高円寺君が本気の本気で何かをしたところはついぞ見たことがない。なのに負ける想像がつかないのはどうしてだろう。

 

 

 

 

その日の夕方、話し合いを終えた後の事だった。

 

ある人物からメールが届いた。ご丁寧に場所の指定までされている。

二度と連絡してくることはないと思っていただけに、どういう話なのか非常に興味があるので、向かってみることにした。まぁ、興味が無くても念のために行ってたやろうけど。

 

 

「久しぶり…?いや、ついこの間会ったか」

 

「そうだな……まぁ座れよ」

 

いつも通りの焼肉……では無い。俺を呼び出した龍園御用達のカラオケだ。

 

「どしたん?俺の歌声でも聴きたくなったん?」

 

「フ…冗談は止せ。耳が悪くなったらどうすんだ」

 

「あ、俺の事舐めてるな?俺そんなに歌下手くそちゃうで?」

 

そんな風に軽口を言い合う。

正直な話、もう二度とこうして話すことはないと思っていた。今回の試験を機に、またクラスを引っ張っていく立場になるのだから、綾小路とつるむ俺と接触する事はないだろうと思っていた。

 

このタイミングでの接触………あれ?そもそももう石崎達からのお願いイベントあったんか?

 

 

「…まぁそれはさておいて。どうゆう用なん?」

 

もう既に6時を回っており、そろそろ帰らないと7時からの番組を見逃してしまう。出来たら早く用を済ませたいんやけど…。

 

「まぁ待てよ。もう少し雑談でも楽しもうじゃねぇか」

 

「……………良えけど」

 

怪しい。俺は龍園君という男をかなり信頼している。だが信用はしていない。

そして龍園という男をかなり買っている。綾小路清隆とかゆう化け物の最初の犠牲者になってしまい噛ませ犬の汚名を着せられたが、俺は龍園という男は坂柳にすら勝ち得る存在だと思っている。

 

まあ早い話、この雑談によって何が起こるのか…それが不安で仕方ないっちゅうこっちゃな。

 

 

雑談をしているうちに、時刻は8時を回った。

めちゃめちゃ警戒していたが、特に何も起きる様子は無い。

警戒し過ぎやったか?ほんまに雑談楽しみたかっただけ…?

いやいや、龍園に限ってそんなこと無いやろ。無いよね?あったとしたら俺の好感度がマックスハートするんやけど……。

 

 

「…そろそろ行くか」

 

時間をチラリと確認すると、立ち上がって荷物を持つ。

 

「行くって…帰るってこと?」

 

「良いからついて来い」

 

「…はぁー、へいへい」

 

まさかこの後に及んでボッコボコにされてこの前の復讐をされるなんて事はないやろうしな。

 

……後に、俺はこの時の甘い判断を呪った。

邪智暴虐の王リュウエンティヌスは、俺の想像通りに動くような人物では無かったのだ。

 

 


 

 

「もう限界!」

 

カラオケルームの一室に、伊吹の大声が響く。

龍園を呼び出し、特別試験の話をしようと約束したのが4時半。

しかし時刻は既に8時を回っており、すっぽかされた以外考えられない。

 

「なんだかんだ、おまえも10曲くらい歌ったじゃねえか」

 

「伊吹さんの限界は、まだまだこれからのはずです」

 

椎名ののほほんとした声は伊吹の苛立ちを加速させる。

 

「それが限界に限界を重ねたってことよ!」

 

「では限界突破を目指しましょう」

 

「冗談じゃない!」

 

「プリプリ怒りやがって……。いっつも怒ってて疲れないのか?」

 

「あんたの顔見てると百万倍疲れるのよ」

 

止めようとする石崎の手を振り払い、出て行こうと扉に手をかける直前でひとりでに扉が開く。

 

 

「なんだおまえら、まさか本気で来ると思って待ってやがったのか?」

 

 

笑いながら入って来た龍園に、石崎と伊吹は身体が硬直する。

もはや来るはずがないと思っていたからだ。

 

「遅刻ですよ龍園くん」

 

「それにしちゃ、随分と楽しそうだな」

 

「ええ。私カラオケに来たの初めてなんです、とても楽しくて楽しくて」

 

「なら俺は帰るとするか。精々楽しめよ伊吹」

 

邪魔だろ?と扉を閉めようとするのを伊吹が止める。

 

「私をこれ以上カラオケ地獄に落とすならあんたをぶっ飛ばす」

 

「クク。怖ぇよ」

 

石崎に炭酸水を注文させてソファに腰を下ろすと、入口の方へ視線を向ける。

 

「おい、何やってんだ。とっとと入ってこいよ」

 

 

「…………帰って良い?」

 

 

「草元!??」

 

「あら、これは珍しい客ですね」

 

驚くのも無理は無い。

龍園が来ただけでも割と驚きなのに、あの綾小路と同じクラスである草元まで来ているなど驚かずにはいられない。

 

 

「いや、マジでナニコレ……俺なんかやっちゃいました?」

 

「良いから座れよ」

 

「いや……えぇ……」

 

草元は渋々と言った感じでソファに腰掛ける。

 

「俺このC…じゃなかった、Dクラスの集まりに居る意味ある?というか俺他クラスやぞ?」

 

「後で話してやるから待ってろよ」

 

「えぇー……うそやん……」

 

軽ーく会話を繰り広げる二人を、伊吹と石崎は半ば放心状態で見守っていた。

 

我を取り戻したらしい伊吹が、即座に龍園を睨み付ける。

 

「ちょっと!どうゆうこと!?なんでコイツがいるのよ!」

 

当然の疑問だろう。

 

「後で話してやるから、コイツについては黙ってろ」

 

「っ!あんたねぇ!!」

 

「お、おい落ち着けよ伊吹。龍園さんに噛みついたって良いことないぜ」

 

ヒートアップする伊吹を収めようと石崎が口を開く。

 

「あんたはあんたで、いつまで腰ぎんちゃくやってんのよ」

 

「いつまでって、俺は……俺は、龍園さんについていくって決めたんだよ」

 

「よく言うわよ。最初は散々嫌ってたくせに」

 

「そ、それは、余計なこと言うなよ!」

 

二人の火花を尻目に、草元は椎名とタブレットを覗きながらなにやら話をしている。

 

 

「このバカはあんたの口車に乗せられて、折角の指名権でBクラスを指名したのよ?」

 

「らしいな」

 

「コイツはあんたに心酔してる。つまり発言したあんたにも一定の責任はあるってことよ」

 

「クク、それなら仕方ねーな。俺も迂闊な発言をしたもんだぜ」

 

笑って龍園は話し出す。

 

「俺が入学当初、Bクラスに仕掛けた内容は覚えているか?」

 

石崎はチラリと草元を見やるが、気にしないことに決めたのか答えを口にする。

 

「……確か仲間割れをさせようとしたんですよね?」

 

「結果はどうなった」

 

「効果ありませんでした。あのクラスは早々に結束力は高かったですよね」

 

「そうだ。あいつらはどのクラスよりも結束力、団結力が高い」

 

「だからこういった総合戦は、対戦相手として避けたいクラスなんじゃないの」

 

「俺も、まだそう思ってます。リーダーの一之瀬も、それを慕う連中も厄介ですよ」

 

「…草元、テメェはどう思う?」

 

「え、俺!?うーん……」

 

唐突にボールを投げられた草元は、驚きながらも考えている。

 

「有り体に言えば、量産型優等生の集まり……とか?」

 

知らんけど、と付け加えた。

 

「椎名、おまえはBクラスをどう分析する」

 

「そうですね……先のお二方の言うようにBクラスは強いです。全ての能力がアベレージより上ですし。何よりあれだけ仲睦まじいのは羨ましいことではあります、が……。ただそれだけのクラスとも言えます。特別な脅威を持たない、単なる仲良しクラス、と」

 

それぞれの意見を聞いた後、龍園は自らの評価を口にする。

 

「俺に言わせればBクラス最大の欠点は一之瀬……いや、リーダーの不在にある」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。意味わかんないんだけど。一之瀬がリーダーでしょ?」

 

「一之瀬も神崎も、本来リーダー向きじゃない。そうだろ?」

 

そう言って草元に目を向ける龍園。

 

「また俺?何?俺のこと好きなん?」

 

「良いから答えろ」

 

「えー…まぁ、そうやろ。纏める力と導く力は別やしな。それにああゆうタイプは理想を追い求めて潰れるタイプや。ソースは平田」

 

「ま、そうゆうことだ」

 

「しかし相性としては最悪なのに変わりないんじゃありませんか?」

 

「どこと戦っても勝てる可能性は数%前後ってところか」

 

「……そ、そんなに開きがあるんですか俺たち」

 

「だが……少しやり方を工夫するだけで、1割に満たない勝率が5割近く、場合にやっちゃそれ以上に跳ね上がることもある」

 

一枚の折り畳まれた紙を、龍園は椎名に手渡す。

 

10種目の名前と本命の印が5つが書かれてあるが……。

 

「当日はこの試験をぶち込む」

 

「ちょっと!これ全部……」

 

「そうだ。その種目は全て力で捻じ伏せるだけの種目だ」

 

そこに書かれたあったのは、空手や柔道、テコンドーなどの肉体を酷使する10種目だった。

 




キリが良いんで一旦ここで切ります。

さて。ではタイトルの話を。
休止している間にも有難いことにたくさんの感想を頂きまして、そこでタイトル詐欺状態になってるのは不味いんじゃないの?ってご指摘を多数頂きました。言い訳ならいくつか思いつくんですけど、納得せざるを得ないのは確かなんで、流石にどうにかせんとアカンなと、思ったわけであります、えぇ。
ならばどうすると。ただの知識チートマン系と差別化を図るためにこんなタイトルにしたわけで、それを完全に消してしまうのもなんかなぁ…と考えたわけですよ。
と、言うわけで
『野菜を育てて始めるよう実生活』
みたいな感じにしたいんですけどどうでしょう?
もっと良い感じのがあったら案を出して貰えると嬉しいです。
次かその次ぐらいで特別試験終わったらまた暫く休止かな?って思うんで、それまで代案は受け付けたいと思います。

後、密かに花山薫をよう実にぶち込むのを考えたんですけどどうでしょう。ただの思いつきやけど。


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二十七話

前回タイトル案募集?みたいなやつしたと思うんですけど、活動報告の方でやった方が良いってご指摘を頂いたので、案があれば活動報告の方に書いて下さい。
活動報告なんて書いたの初めてやからやり方が合ってるんかどうか不安です。


全ての種目が肉体を酷使する種目と聞いて、石崎は口を開く。

 

「待って下さい。確かに、その、俺たちのクラスには喧嘩自慢が何人かいます。俺やアルベルト、小宮に近藤。それに伊吹……だけど、その他はそうでもないっスよ?」

 

「そうよね。Bクラスにも運動神経の良い生徒は少なくないし。全部1対1に出来るなら話も違うけど、必要人数は全部変えなきゃなんないのよ?」

 

「だからどうした」

 

「え?」

 

「必要人数なんてもんに捉われすぎなんだよ。勝ち抜きルールを採用すれば一人で済む。仮に10対10で柔道をやっても、アルベルト1人でこと足りる」

 

「でも……学校側が認める?勝ち抜き戦なんて」

 

「筆記試験や球技みたいな種目じゃ勝ち抜きの採用はまず無理だろうな。だが空手や柔道のような競技には勝ち抜き戦形式はありふれたもの。逸脱したルールとは言わねえよ。危険性で弾かれないように、空手なんかは寸止めルールを採用させときゃ問題もない」

 

「いけます、これならいけますよ龍園さん!」

 

石崎の目に希望が灯る。

 

そんな彼らを尻目に、草元はオムライスを注文している。

 

「それなら、確かにDクラスの選んだ種目は全部勝てるかも……でも、運が向こうに偏ったら?Bクラスの種目が多く選ばれたらどうすんのよ」

 

「5割で勝てるだけでも不服か?」

 

「……あんたに協力するんなら、確実な勝ちを要求したいところね」

 

「クク、もちろん手は打つ」

 

Dクラスが選ぶ種目なら兎も角、Bクラスが選ぶ種目は勉強などのDクラスに勝ち目のない種目だろう。

それに勝つにはどうしたら良いのか…。

 

「…………私たちに何をしろって言うの?」

 

「勝つための悪逆だ」

 

当然、『龍園らしい手段』を取ることになる。

龍園は笑いながら続ける。

そして草元はオムライスを食べる。

 

「これから試験前日まで、毎日執拗にBクラスの連中に絡む。最初は付け回すだけでいい。そのうち連中も、自分たちが追い掛け回されてることに気付く」

 

「なにそれ。それで相手にストレスでも与えようっての?」

 

「Bクラスの連中はその行為を稚拙だと笑うだろう。実害が無いのなら放っておけばいいと判断を下す。一之瀬はそういうヤツだ。結局俺の狙いには気づけない」

 

「……狙い?」

 

「本命の一つは情報だ。無数の絡みの中でBクラスの生徒から情報を盗み出して、試験当日に選ばれる5種目を一足先に手に入れる。クラス内じゃ当然、どの5種目にするかの意思統一は早い段階でされている。メールでもチャットでも、誰かしらはその5種目について話し合うもんだ。事実おまえらもしてるだろ?」

 

「え、ええ。10種目は何が良いか、適当な時間を見つけて話し合ったりはしてます」

 

オムライスを食べ終えた草元は、続いてパフェを注文している。

 

「そう。口を堅く結んでいても、携帯は無防備なんだよ。勝手に見られたりしないと思い込んでるからな。それが試験間近になれば方針も固まってる。誰がどんな種目に出るかまで手に入れられるかもな」

 

「簡単に言うけど……そう上手く行くわけ?」

 

「運任せにするんじゃない、こっちからそう誘導してやることが必要だな。そのための布石が明日からの執拗な絡みにある。それと情報を奪う以外にも手段は講じる。例えばコイツだ」

 

「なにそれ……って、下剤?」

 

「これは遅効性の下剤で、48時間以降に効き始める。何人かにこいつを飲ませれば、当日1人か2人ぐらいは体調を崩してくれるかもなぁ?」

 

「あ、あんた。反則でしょそんなの。バレたら………というかコイツの前で話していいわけ!?」

 

そう言って伊吹が指差したのは、この場で唯一の部外者である草元だ。

 

「え、何?なんの話?」

 

「どうやら何も聞いてないみたいだぜ?」

 

龍園が面白そうに言うが、聞いてないはずはないだろう。

 

「な訳ないでしょ!コイツにバラされたらどうすんのよ!」

 

当然の懸念だろう。

これをバラされるだけでDクラスの作戦の龍園は破綻する。

 

 

「なんだ、草元。バラすのか?」

 

「いや?特にバラす気はないけど?」

 

「だってよ」

 

「はぁ!?ホントにコイツを信じてるわけ!?二学期に何されたかわかってるの!?」

 

「キャンキャンうるせぇヤツだな……」

 

「そう言ったるなや。龍園君を心配してくれてるんやで?」

 

「そんなんじゃないから!」

 

敵同士なはずなのに気楽に話すこの2人に、伊吹は苛立ちが募る。

 

 

「…というか、そもそもなんでソイツがいるわけ?」

 

「あ、それは俺も気になってました」

 

初めから気になっていた疑問を、改めて伊吹が問う。

 

「ホンマそれな。俺なんかやっちゃいました?」

 

少し間を置いた後、龍園が口を開く。

 

「……契約の更新がしたい」

 

「契約…?……内容は?」

 

「お前のクラスのスパイ。報酬はAクラスへの移動権だ」

 

「…………つまり、2000万ポイント?」

 

「ま、そうなるな」

 

「…………必要無いわ。既にAクラスへの移動権は持ってるからな」

 

そう言うと、龍園以外の面々が驚きの表情を見せる。

既に2000万を手に入れてるという事なら、驚くのも無理はないだろう。だが、草元が言ったのはそういう意味ではない。

 

「ほう……随分と綾小路を買ってるみたいだな」

 

つまり今のクラス、CクラスがAクラスに上がる事を確信しているということだ。

 

「買ってるってゆうか………まぁそれでええや」

 

「…それだけ綾小路を買ってる理由はなんだ?お前は綾小路の何を知ってる?」

 

「なんでか……って聞かれると……うーん……」

 

そう言って暫く考え込んだが、ようやく纏まったのか口を開いた。

 

「なんというか、アイツ多分負けへんからなぁ……というか、俺が敵対したとしたら容赦無く退学とかさせられそうやし」

 

「クク…確かにな」

 

「要は、単純にリスクがデカすぎる。俺がどうにか頑張ったところでアイツに勝てるようにはならんしな」

 

「でもあの時は私達に協力してたじゃない」

 

伊吹が口を挟む。

 

「あん時はちゃーんと綾小路と連絡取りながらやってたし、最終的に俺ら……いや、綾小路が勝ったやん?」

 

「今回もそうすりゃいいじゃねえか」

 

「バカ言うなや。またお前らに殴られるのはゴメンやで?」

 

「そりゃ残念だ」

 

「……まあでも」

 

「あん?」

 

「お前に協力するのはやぶさかでもない……かな」

 

「……………つまり?」

 

「綾小路と敵対する時以外は協力したっても良い」

 

「肝心なところで働かねぇヤツを雇えと?」

 

「それはそっちで何とかしてや…。櫛田ちゃんおるからそっちを上手く使えば何とかなるやろ?」

 

「桔梗か……そういえばーーーいや、それは後で良いか。……話にならねぇな。お前はCクラス以外を相手にする時にどう役に立てるってんだ?」

 

 

草元は、スペック的に大した人間ではない。確かにそこそこ頭の回転は早いが、リーダー格のように高い性能が無い。

 

だから、例えば橋本のように尾行したりする能力も無い草元が、他クラスを探ることなど出来ないだろう。前回スパイ活動が出来たのは、あくまで自分のクラスの情報だったからだと言っているのだ。

 

 

「………一応言うとくと、多分、お前よりも知ってる情報は多いと思うで?」

 

「ほう…?」

 

「君が知らんことならいくつも知ってるしな」

 

「例えば?」

 

「せやな…例えば……………次の試験でウチのクラスが負けるとかな」

 

 

「……………は?」

 

 

龍園が間の抜けた顔で間の抜けた声を出した。

 

そんな表情を見せるのは初めてだなと、椎名ひよりは場違いな感想を抱いていた。

 

 


 

 

「オイオイ、冗談だろ?綾小路が負けるってのか?坂柳に?」

 

「あくまで結果としてね。結果として」

 

これは多分どう頑張っても避けようがないからな。理事長が手を出せば試験なんてどうとでもなるし。

これを邪魔しようとして、仮に今回邪魔に成功出来たとしても次に俺自身が潰されるかもしれへんからなぁ…。

バグで堀北ちゃんが坂柳さんに打ち勝つみたいなことがあったらワンチャンあるけど。

 

 

「……ふざけてんのか?」

 

「それが分かるのは試験が終わってからやろ?違うか?」

 

「……チッ。そりゃそうだ」

 

「で?どう?雇い主さんのお眼鏡に叶いそうか?」

 

綾小路(アレ)が化け物なのは分かってるから、アレにさえ敵対せえへんなら龍園に協力したって大丈夫やろ。多分。

 

「……いいぜ。合格にしといてやる」

 

「やったぜ」

 

やったぜ。

 

「報酬は?」

 

月給100万……って言いたいところやけど、後々葛城を招き入れるために大量にポイント吐き出すこと考えると、あんまり多額の要求が出来へんのよなぁ……。

龍園のおサイフに優しく、かつ俺が豪遊出来るぐらいの収入……。

 

「…………月給20万で」

 

「……俺の聞き間違いか?お前はこういう時に100万とか吹っかけてくる男のはずだぜ?」

 

おうふ…。なんで考えてたとこドンピシャで当てられるんですかねぇ?

 

「んー、でも良心的な方が良いやろ?」

 

「いや、良くねぇな。何を企んでんのか不安になるぐらいだ」

 

「や、マジでなにも企んで無い…って訳じゃ無いけど、別にそっちに損無いんやから別に良くない?」

 

「…………………まぁ良い。契約成立だ」

 

「よろしくー」

 

そう言って手を出すと、握り返してくれた。

 

うんうん。やっぱり友達っていいねー!昔なら握ったりしてくれんかったのにな!

 

ふと周りを見ると、伊吹ちゃんが信じられないような物を見る目で俺達を見ていた。

 

 

「どうしたん、伊吹ちゃん」

 

「龍園が……いや、なんでコイツを………いや、というかいつから………はぁ、もういいや」

 

諦めたように溜息を吐き出す伊吹ちゃん。

 

突っ込みどころが多すぎたんかな?

龍園がこんな風に差し出された手を握るようなヤツやと思ってなかったし、俺とまた協力関係になるのも謎やし、俺らがいつからこんなに仲良かったのかも謎やし…って感じか。

 

 

「お二人って仲良かったんですか?」

 

椎名ちゃんがバッサリと切り込んできた。

 

いやー、ソウルフレンズってゆーかさ!な!龍園クン!

 

「別に仲は良くねぇよ」

 

ふぁっ!?

 

「え、嘘やろ?俺結構仲良いと思っててんけど?」

 

「お前と?…冗談はよせよ」

 

「うわー、無いわー、無いわー」

 

信じられんねんけど。あんだけ2人で話して、焼肉食ってんのに友達じゃないとか……。

と、ここでピンと来るものがあった。コイツ、恥ずかしがってるんとちゃうか、と。

 

「別に友達がおることは恥ずかしい事じゃ無いんやで?そんなに恥ずかしがらんとさ!なぁ!」

 

「そうですよ龍園くん。友達が居るのは良いことです」

 

「ほらー、椎名ちゃんもこう言ってるぞ?」

 

「ウゼェ……」

 

「はー!強情やな!どう思うよ石崎君?」

 

「は?俺?いや、俺は……その……」

 

どこか複雑な表情をしていた石崎にボールを投げるとしどろもどろになってしまった。

 

 

 

暫く椎名ちゃんと龍園をキャッキャと弄っていると、限界が来たのか龍園はカラオケを出て行ってしまった。

 

その後は、椎名ちゃん達とカラオケをしていたのはいうまでもない。

限界限界と言っていた伊吹が思いの外歌っていたのが印象的だった。

因みに、石崎は意外と歌が上手い。

後、椎名ちゃんが楽しそうやったのは中々見てて微笑ましかったです。ぴょんぴょんしてて可愛かったなぁ……。

…あ、俺?俺はプリキュアしか歌ってなかったで?そんで思ったよ、女子はやっぱりプリキュア見てたんやなぁ…って。




新刊でも龍園君出て来て、普通に龍園好きなキャラなんで舞い踊りました。龍園贔屓が凄いとは思うんですけど許してくれ。
……コレここまで来たら『ヒロインは龍園翔』って書いたほうがええんちゃうか?


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二十八話

こっからまた暫くお休みかな?
何日かしたらタイトル募集は締め切るんでなんか案があれば活動報告の方にお願いしまーす。


Cクラスの子達とカラオケを楽しんでからは、実に平凡な毎日を送ることになった。

種目の話し合いに参加したりしながら、ダラダラと日々を過ごしていく。俺も得意な事を書き出すように言われていたから、とりあえずしりとりって書いといた。「ぷ」攻めの恐ろしさを思い知らせたるわ。因みにやけど、プルトップで「ぷ」カウンターが出来るから覚えといた方がええで。……なんの豆知識やコレ。

 

ある昼休みには、BクラスがDクラスから嫌がらせを受けているという愚痴を聞かされることもあった。うんうん。ちゃんとこなせてるみたいで安心したわ。

白々しく「えーそうなのー?」「やばーい」と相槌を打ちながらちょくちょく会話に入っていく。こんなに白々しく嘘吐けるの俺だけちゃうか?……いや、そんなことないな。

 

 

 

 

さて。本日、3月14日。

ここで非常に重大なイベントがある。

そう、ホワイトデーだ。

 

原作ではサクサクっと流されていたが、俺にとってはそんなにサクッと終わらせられるようなイベントでは無い。

 

バレンタインで貰ったチョコは3つ。長谷部波瑠加ことはるちゃんと佐倉愛里ちゃん、そしてあの櫛田桔梗。

最初の二人はまぁ良いよ。適当にチョコ買って渡しても問題無いやろうしな。

 

問題なのは櫛田桔梗。

思い出して欲しい。俺が櫛田ちゃんと別れたのはついこの間、三月頭のことだ。しかしバレンタインは2月14日……つまり、バレンタインチョコを貰ったのは付き合っている間の話なのだ。

これは非常にシビアな問題で、返さなければ女子のネットワークで恩知らずだと囁かれるだろうし、返そうものなら「復縁を狙っている」だの「未練がある」といった噂がばら撒かれる可能性だってある。

俺の内心では返したくないぐらいなんだが、それはそれで外野(池とか池とか)がうるさい。となれば当てつけの意味を込めてチロルチョコ辺りが無難かと思ったが、それはそれで最低男子のレッテルを貼られる。

 

つまり、八方塞がりというわけだ。

 

そもそも、どうして日本はホワイトデーなんて文化を作ったんだろうか。そんなんバレンタインデーをお菓子交換会にすれば済む話やんけ。なんで一ヶ月も空けるねん。その間にカップルが別れたらどんな気持ちになるか考えたこと無いんかオォン?

いや、普通の社会なら別に問題無いと思うんやけど、ココは高校生でしかも超閉鎖都市やで?会うやつ会うやつ殆どが知り合いなんやから噂もすぐ根付くやん?そうなったら、ホラ、レッテル祭りやん。

南雲会長にホワイトデー廃止の規則作ってもらおっかな……。

 

 

閑話休題。

とにかく、櫛田ちゃんへのお返しをどうするかを考えなければいけない。幸い今日は休日だから、買いに行く時間も渡すチャンスも沢山ある。

 

まず、返さないという選択肢は除外する。

タダで食い物を貰うのはなんとなく罰当たりな気がするし、そもそも俺はやられたらやり返すタイプなので何かしらのお返しはしておきたい。

 

なら何をあげるのか…って話なんやけど……どうしよ。

当てつけ的な意味を込めるならチロルチョコとかチョコボールみたいな安っぽいお菓子をいっぱいあげれば良いんやけど……。

あ、そうや!こうゆう時は龍園くんを頼れば良いんや!やっぱ、困ったときは龍園なんだよなぁ…。

 

では、早速電話を…

 

数回のコールの末にようやく電話に出てくれた。

 

 

「もしもし龍園君、今暇?」

 

『……なんの用だ?』

 

「あのさ、相談に乗って欲しいんやけどさ」

 

『………………』

 

「櫛田ちゃんへのホワイトデーのお返し何が良いと思う?」

 

『…は?』

 

「いや、一応本命チョコとして貰ったわけやん?返さんのは不義かなーって。でもどんくらいのもんを返したら良いか分からんやん?で、こうして聞いてるわけよ」

 

『…切るぞ』

 

「え?おい、ちょ、待てよ!おい!おーい……あ、切りおったアイツ」

 

俺のキムタク風「ちょ、待てよ」が通じんとは……中々やるじゃん。

 

じゃ、もっかい掛けるやでー!

 

 

『………なんだよ』

 

「いや、それでさ、俺としてはちゃんとした物じゃなくて、嫌がらせっぽい物が良いのよ。嫌がらせとか姑息って言えば龍園君やん?」

 

『殴るぞテメェ』

 

「だから性格最悪野郎筆頭の龍園君にアドバイスを貰おうと………あ、また切りおった」

 

フン、この程度で尻尾を巻いて逃げ出すとはな…豆腐メンタルめ!

そんなんじゃ坂柳にも勝てんぞ??(虎の威を借る狐)

 

じゃ、自分三度目(の掛け直し)良いっスか?

 

 

…………………

 

…………………

 

…………………

 

…………………

 

……さてはアイツ着信拒否しよったな?

 

あーあ、頼みの綱が途切れてしまった……。

 

結局なんの役にも立たんかったし……他に誰か性格悪いやつおったっけ?考えろ……。坂柳さん………いや、流石に聞けへんわ。悪そうなヤツと言えば南雲会長もあるけど接点すら無いしなぁ……。

なんでこの学校性格極悪でまともなヤツおらへんのや?(矛盾)

きよぽんは俗世から切り離されてたせいで役立たんし……修行僧かな?

 

どーしよっかな……ま、ここで考えててもしゃあないか。

適当にスーパー行ってから適当になんか買ったらええやろ。

 

 

 

歩きながら調べたところ、どうやらマシュマロには「貴方が嫌い」という意味が込められているらしい。美味しいのに……。

んじゃ、マシュマロでも買ってあげますか。

 

 

 

 

「あ」

 

「お」

 

Aクラスの橋本正義がいた。

 

「よう。買い物か?」

 

「そ。ホワイトデーのお菓子を買おっかなーって思って」

 

「へぇ…」

 

…そういえばコイツ誰かからチョコ貰って無かったっけ?

 

「橋本君は?」

 

「俺?俺はただブラブラしてるだけだよ」

 

「一人で?」

 

「そうだが…」

 

うーん…坂柳さんの御付きってイメージがあるから、坂柳さんもおるかなって思ったんやけどそんなことないんかな?というか、コイツ割と一人で目ぼしいヤツをストーキングしてたりするんか。今日も誰か追ってたりしたんかな?って思ったけど、こうして話してるんやからそれも無いか。

 

 

「そういや、櫛田と別れたって聞いたぞ?」

 

「どっからそんな情報仕入れてくんねん…」

 

なんで他クラスまで……いや、そりゃそうか。もはや一年生で知らぬ者無しやし、なんなら他学年にも知れ渡ってるんやからそうゆう話もすぐ広がるか。

 

「もしかして復縁狙ってたりすんのか?」

 

「んな訳あるかい」

 

「と、言いながら本音は?」

 

「だから、無いって」

 

…アレ?そう言えばコイツもボチボチ性格悪く無かったか?いや、根は良いやつではあると思うんやけどさ。

マシュマロって決めたけど、他の人の意見を聞いといて損はないやろ。

 

「……ちょっと相談があるんやけどさ」

 

「うん?」

 

「櫛田ちゃんへのお返しって何が良いと思う?」

 

「…やっぱ狙ってるじゃねぇか」

 

「だから違うって!」

 

コイツ、ホンマ…!

いや、マジでちゃうから。どんくらいちゃうかって言ったらピザとピッツァぐらい。あれ完全に別もんやからね?

 

「いやーそれならそうと早く言えよ!照れちゃってまぁ」

 

「いや、そうゆうんじゃなくて……もうええや」

 

もう別にええや。何贈っても変わらんやろうし、選んでくれるんやったらそれが一番やな。最悪なんか言われても人のせいに出来るし。言い訳は大事ってそれ一番言われてるから。

 

「…なんでも良いから何が良いか教えてくれ」

 

「任せろ」

 

グッとサムズアップする橋本君。

爽やか風の印象なのにそこはかとなく軽薄そうに見えるのはどうしてだろうか。

 

 

結局、5000円ぐらいのお菓子を買った。

元カノに5000円かけるの明らかにやべーやつな感じはあるけど、まぁ俺からすれば端金や。多分ウチのクラスで一番金持ってるから(唐突な富豪自慢)。

 

 

オラ、コイツ(5000円)やるからもう連絡してくんじゃねぇぞ?

 

お菓子を渡すと、表櫛田で受け取って礼まで言ってくれた。

うーん、ずっと表なら可愛いんやけどなぁ……。

 

 

 

 

週明けには対戦相手が選んだ10種目が発表された。

まぁ、俺が何かを考える必要は無い。選ばれたら普通にこなすだけだ。

 

それから数日経って突然平田君が復活した。

裏事情を知ってる俺からすれば大したことではないが、他の生徒からすれば突然の豹変に驚愕するのも無理はない。

 

一先ず、これでイベントは殆ど終わり、残すイベントは試験本番のみとなった。

 

 

ある日綾小路グループの面々と放課後集まっていると、ふとはるちゃんが口を開いた。因みにだが、はるちゃんと愛里ちゃんのホワイトデーはキチンと渡してある。

 

「ねぇねぇくさもん、噂で聞いたんだけどさ」

 

「おん?」

 

なんや改まって…。

水を口に含みながら話を聞く。

 

 

 

 

「キョーちゃんとの復縁を狙ってるってマジ?」

 

ブーーッ!!

 

やっべ盛大に吹いてもた。

 

「…今何つった?」

 

「え、いやだから、キョーちゃんとの復縁を狙ってるって…」

 

「おい波瑠加、人の恋路に口出しするもんじゃないぞ?」

 

「なによ、あっきーだって気になってたじゃん」

 

「それはそうだが…」

 

「いや、それデマやねんけど」

 

「…なーんだ。デマだったんだ」

 

「え、もしかして結構広まってるん?」

 

「キョーちゃん人気だしねー。割と広まってるよ?」

 

「なん……だと……」

 

ば、馬鹿な…。一体どういうことだ…。

どこからそんな噂が……。

 

「その噂のソースは?」

 

「んー、別に証拠とか根拠が出回ってる感じじゃないっぽい?かな?」

 

「………じゃあ、いつぐらいから?」

 

「どうなんだろ……割と最近だと思うんだけど……」

 

「誰から聞いたん?」

 

「んーっとねー、私は他の人が話してるのを聞いちゃっただけなんだけど…」

 

「それ誰か分かる?」

 

「名前は分かんないんだけど、確か……Aクラスの子だったかな?」

 

「…Aクラスね」

 

Aクラス………あ、アイツやな。

 

分かった、犯人はアイツや!

許さんぞ橋本正義!根も葉もない噂ばら撒きやがって!!ふぁっきゅー!!アイツ絶対許さんぞ!

 

 

草元は、密かに復讐を誓った。

 

 

 

 

 

 

 

試験当日、晴天に恵まれ、非常に爽やかな1日が始まった。

 

試験は進んで行き、結果は原作通りで何一つ変わりはない。

 

因みに、2勝1敗で迎えた4戦目の数学で俺の出番がやって来た。まぁ、俺が入ったところで大勢に影響があるわけじゃないから普通に負けたわ。

 

原作通りに最終戦までもつれ込み、最終種目であるチェスが始まった。

ルールをかじったことがある程度の俺でもすごいレベルが高いことが分かって、スゲーなーって思いました。まる。

カメラの向こう側では、あの二人がイチャイチャしてるんだろうなーと思うと何となく殺意が湧いてくる。

 

 

こちらも原作通りに敗北して、一年生最後の特別試験は終了。

 

月城半端ないって!生徒同士の試験に無理矢理割り込んでくるもん!そんなん出来る?言っといてや出来るんやったら!

 

そんなわけで、後は終業式や卒業式を残すのみとなった。

 




はい。龍園さんマジ好き。
肝心の試験はサクっと終わっちゃったけど別に良いやろ?
二年生編マジで先の展開が分からんから全く書けへんな。コレ一年ぐらい放置することになるってマ?

ポケモンのSS書きたい。


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草元剛について(間話的な)

感想の方で要望頂いてたんで書いてみました。

ようやくアンケートの取り方が分かったんでアンケートつけました。
良かったら答えてみて下さい。


草元剛について

 

 

〜綾小路清隆の場合〜

 

Q.草元くんについてどう思いますか?

 

「普通にいいヤツだと思うぞ」

 

 

Q.毎日草元くんが部屋に来ているみたいですが…

 

「風呂を貸してるんだ。アイツは風呂が使えなくなってるからな」

 

 

Q.キマシタワーって感じの関係ではないんですか?

 

「…?どういう意味か分からないが多分違うんだろうな」

 

 

Q.結構仲良いんですか?

 

「少なくとも俺にとっては一番仲が良い男子だな」

 

 

Q.草元くんって結構得体の知れない感じあると思うんですけど、そこんところどうですか?

 

「確かに不気味ではあるが…今のところ俺に被害は無いからな」

 

 

Q.と、言うことは綾小路くんに被害が及ぶと…?

 

「何かしらの手は打つと思うぞ」

 

 

Q.………具体的には?

 

「そうだな……最悪退学させることも視野に入れている」

 

っべー……絶対敵対させないようにしないと……

 

「なんか言ったか?」

 

い、いえ!なんにも!!

……え、えー、では次の質問です。

 

 

Q.最近草元くんが龍園くんと仲良くしてるという目撃証言がありますが、どうおもいますか?

 

「初耳なんだが……まぁ、交友関係は人の勝手だからな」

 

 

Q.二学期には龍園くんのクラスにスパイとして協力していたこともありますが…?

 

「つまり、今度は本当に裏切る可能性がある…と?」

 

はい。

 

「どうだろうな……アイツは俺と敵対するのを避けている印象がある。二学期のスパイ活動も俺に報告しながらだったからな」

 

つまり、裏切る可能性は低いと?

 

「俺はそう考えている」

 

 

Q.では、草元くんが櫛田さんとの復縁を狙っているという噂についてはどう思いますか?

 

「それならこの前アイツが否定してたぞ?」

 

そうなんですか?

 

「あぁ」

 

 

Q.綾小路くんも櫛田さんの本性を知っている数少ない生徒の一人ですが、草元くんと違ってそれほど嫌われてるわけではないみたいですね?

 

「…アイツ嫌われてるのか?」

 

えぇ。それはもう、とびっきりに。

 

「何をやったんだ……」

 

櫛田さんをボコボコ(精神的)にしたらしいですよ?

 

「草元ェ…」

 

 

えー、質問は以上ですかね。

他に何か草元くんに言いたいことはありますか?

 

「そうだな……『これからも仲良くしよう』と伝えておいてくれ」

 

りょーかいしましたー!

本日はどうもありがとうございました。

 

「ありがとうございました」

 

 

 

〜堀北鈴音の場合〜

 

Q.草元くんについてどう思いますか?

 

「そうね……普通に優秀な生徒よ。学力や身体能力は突出するほど高くもないけれど、非常に出来のいい生徒と言った印象ね」

 

 

Q.随分と好印象ですね?

 

「…そうかしら?ウチのクラスを客観的に見れば彼は十分優秀な生徒よ。定期テストも毎回上位だし、運動神経も中の上、そこそこ頭も回るみたいだし、評価としては妥当だと思うけれど?」

 

 

Q.えー、では、戦力としての評価は分かりましたが、人間的な部分についてはどう思いますか?

 

「別に普通…なんじゃないかしら。平田くんのように聖人君子でも無いし、須藤くんのように荒っぽくもない。高円寺くんのように自分勝手でもないし、綾小路くんのようにめんどくさくもない。だから普通といったところね」

 

なんか……比較対象が個性的過ぎません?

 

「しょうがないでしょう。ウチのクラスはまともな人間が少ないんだから」

 

辛辣ですね。でも、綾小路くんは割と普通だと思うんですが…。

 

「それは無いわね」

 

え、でも、問題児というわけでもないですよね?

 

「彼も十分問題児よ。非協力的だし、実力は隠すし、オマケに私を思い通りに動かそうとするし……」

 

……もしかして、綾小路くんの事嫌いですか?

 

「もしかしなくても嫌いの部類よ」

 

 

Q.彼って結構好き勝手に動いているんですけど、そこのところはどうですか?

 

「正直に言えば、あまり勝手に動いて欲しくはないわね。でも、今のところはウチのクラスの為に動いているみたいだし、特に止める気は無いわ」

 

 

Q.最近草元くんが龍園くんと仲良くしてるという目撃証言があるんですけどどうですか?

 

「誰と仲良くするかは人の勝手……と言いたいところだけど、龍園くんなら話は変わってくるわね。でも彼には彼の考えがあって行動しているんだろうし、止める気はないわ」

 

 

Q.結構信頼してるんですね?

 

「どちらかと言えば信用ね。二学期にはあんなにボコボコにされてまでクラスの為に動いていたんだし、それ相応に信用したくなるわよ」

 

 

Q.最近は龍園くんが復活したという話で持ちきりですが、他クラスのリーダーと通じているというのは不味いのでは?

 

「それはそうだけど……でも、さっきも言ったように彼にも考えがあっての行動のはずよ。はぁ…また何かあった時は庇わされるのかしら…」

 

 

Q.では、最後の質問です。

 恋愛対象として見るなら、草元くんはどうですか?

 

「私は色恋にうつつを抜かす気はないわ」

 

うわー、バッサリですね。

じゃあ、客観的に見て草元くんは異性として魅力的だと思いますか?

 

「別に普通じゃないかしら?」

 

…と、言いますと?

 

「平々凡々、取り柄といった取り柄も無いけど、欠点らしきものも無い。魅力的かと聞かれれば「いいえ」と答えるでしょうね」

 

そ、そうですか……。

 

え、えー、質問は以上になります。

本日はありがとうございました。

 

「ありがとうございました」

 

 

 

〜櫛田桔梗(表)の場合〜

 

Q.草元くんについてどう思いますか?

 

「え、え〜…ちょっと答えにくい……な」

 

(可愛い)あー、そういう意味じゃ無くて、クラスメイトとして客観的に見てどうかって話です。

 

「あぁ、そういう…。凄い生徒だよね!勉強も出来るし、運動神経もそこそこ良いし、それにスパイなんて映画みたいなことが出来るってホント凄いよね!」

 

(お ま え が い う な)

 

 

Q.草元くんと付き合っていたと思うんですが、その間の思い出を聞いてもいいですか?

 

「え、え〜〜…恥ずかしいよぉ……」

 

(あざと可愛い…)

 

「うーんとねー…特にコレ!ってのは無いんだけど、デートはいっつも楽しかったよ!」

 

結構普通のカップルだった…って感じですね。

 

「そうだね」

 

 

Q.そもそもなんで別れたんですか?

 

「そ、それはちょっと答えられないかな……」

 

そこのところをどうにか答えて頂けないでしょうか……。

 

「結構イヤな事聞くんだね…?」

 

まぁ、仕事ですから。

 

「う、うーん……強いて言えば、何となく?二人ともが何となく違和感を感じて、付き合っているのは違うなって思ったから別れた……みたいな感じ?かな?」

 

 

Q.草元くんからホワイトデーを貰ったそうですが…?

 

「うん。貰ったね」

 

彼が復縁を狙っているという噂についてはどう思いますか?

 

「ただの噂……なんだよね?」

 

そうですね。

 

「ならそれはデマだよ。私達は互いに理解し合った上で別れたんだから、未練があるってことは無いんじゃないかな?」

 

円満離婚…みたいなものですかね?

 

「結婚してたわけじゃないけどね」

 

 

Q.付き合い始めたのは櫛田さんが告白してからと聞いていますが、どのあたりが好きだったんですか?

 

「なんだろ……気が付いたら好きになってた……みたいな?」

 

 

Q.もし告白されたらもう一度告付き合いますか?

 

「うーん……多分付き合わないと思うな」

 

それはどうして?

 

「なんでだろ……分かんないや」

 

つまり、なんとなく?

 

「そうゆうことだね」

 

なるほどなるほど。

 

「……もしかして、みんなにこんなこと聞いて回ってるの?」

 

いえいえ、櫛田さんは特別ですよ。元カノですしね。

 

「ふーん…」

 

 

Q.えー、では最後の質問です。

 恋愛対象として見るなら草元くんは魅力的だと思いますか?

 

「うん!」

 

即答ですね。

 

「是非他の人と早く付き合って欲しいです!」

 

(「弱み見せろゴラァ!」って言ってる気がする……)

そ、そうですか。

 

では、質問はこれで以上となります。

ありがとうございました。

 

「ありがとうございましたー」

 

 

 

〜櫛田桔梗(裏)の場合〜

 

Q.草元くんについてどう思いますか?

 

「殺したい人間ランキング堂々の1位ですね!」

 

いや、いい笑顔でそんなこと言われても……いえ、なんでもないです。

 

え、えー、具体的にはどの辺に殺意を覚えているんですか?

 

「全部です!」

 

……え?

 

「全部です!」

 

……そ、そんなに殺したいんですか?

 

「はい!」

 

スゥー…ソッスカ。

 

 

Q.で、では気を取り直して次の質問です。

 そこまで殺意を覚えることになったきっかけはなんですか?

 

「やっぱり、私の本性を知っていることが暴露されたあの時ですね。本気で殺そうかと考えました」

 

……真顔で言うのやめてくれません?怖いんですけど。

 

「仕方ないじゃないですか。あの時の事を思い出すと今でも腸が煮え繰り返りそうです」

 

 

Q.それまでの草元くんの印象はどうだったんですか?

 

「『それまで』と言うと、あの日暴露されるまでってことですか?」

 

はい。

 

「普通の生徒…と言った感じでしたね。突出した能力があるわけでもないですし……まぁ、悪くも無いんですけど」

 

 

Q.そこまで殺意を覚えていた草元くんと付き合うことにした経緯を聞いても良いですか?

 

「まず最初に疑問に思ったのは、夏休みのクルーズ船の時に龍園くんが接触して来た事だったんですよね。私の本性なんて綾小路くんと堀北しか知らないはずなのに、龍園くんは知っていた。当時は龍園くんが得体の知れない生徒だったのでそこまで疑問では無かったんですけど、二学期に龍園くんが負けてそれが草元くんの仕業だって分かったんですよね」

 

堀北さんの指示で二重スパイとして動いていたって話でしたよね?

 

「そう。そこで初めは気にしていなかった“私の本性を龍園くんが知っていた理由”が草元くんである可能性が出て来たんですよ。彼は綾小路くんとも仲が良かったですし、私の本性を知っている可能性は十分に考えられました」

 

そこで近づいて探ろうとしたんですね?

 

「はい。でも、彼の優秀さだけは誤算でした。どこからどう見ても惚れているように見えたし、私に向ける視線は熱と性欲がこもった男子のそれでした。…それがまさか全部演技だったなんて、思いもしませんでした」

 

(演技じゃなくて素で性的な目で見てたんだよなぁ……)

 

「……で、その後は知っての通りですね」

 

なるほど…。

 

 

Q.個人的な感情を抜きにして、草元くんの評価とか印象を聞いても良いですか?

 

「そうですね………。なんというか、得体の知れない感じですね」

 

と、言いますと?

 

「外から見えるスペックはある程度底が知れてるんですけど、なんて言うんでしょう……思考力?みたいなものは分からないんですよね。……あ、というか、アイツ反則なんですけど!」

 

え?何がですか?

 

「学校側に内通者がいるって言ってたんですけど!そんなのズルくないですか?」

 

あー…それが()()()()大変ですね。

 

「でしょー?」

 

 

Q.因みに、堀北さんと草元くんならどっちが嫌いですか?

 

「……難しい質問ですね。生理的な嫌悪感は堀北だけど、腹の底から湧き上がる殺意は草元くんの方が上だし……」

 

結構同率って感じですか?

 

「ですねー」

 

嫌いと殺意は違うんですか?

 

「私も嫌いが行き過ぎると殺意になるんだと思ってたんですけど、どうやら違うみたいですね」

 

 

Q.今一番退学させたいのは?

 

「草元くんですね」

 

目処は立ってるんですか?

 

「今のところは無理ですね。忌々しいことに、向こうは切り札を持っているわけですから」

 

つまり、それに対抗出来るカードがあれば…って感じですかね?

 

「そうですね。現状一番良いのは私を性欲の捌け口に使おうとするとかなんですけど…」

 

…………それって一番良いんですか?

 

「だってレイプ魔と被害者なら明らかに立場が違ってくるじゃないですか?そうなれば例え真実を暴露されてもレイプ魔の言うことなんて誰も信じないですよ」

 

でもそれだと、結局本性かバラされて白日の元に晒されることきなりません?

 

「……あ」

 

え?

 

「…殺意が高すぎて肝心なことを失念してました」テヘペロ

 

言葉の内容と仕草が合ってないんですけど……。

 

 

Q.では最後の質問です。

 恋愛対象として見るなら「無いです」……

 

「無いです」

 

……別に二回言わなくても良いんですよ?

 

「無いです」

 

 

…………で、では質問は以上となります。

本日はありがとうございました。

 

「ありがとうございましたー」

 

 




こんな感じでええんか?

刃牙風のイメージでやりました。この書き方結構書きやすいな、質問内容考えるの面倒いけど。


タイトルの方で、変えなくても良いって意見も一定数いて、どうすりゃ良いのか分からなくなったんでアンケートにしてみました。これで最終稿(?)にします。


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