ヒーローには興味ないですが、弟がなってというのでヒーロー目指します。 (アリア・ブレイズ)
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第1話

お話スタート!!


「はあ、はあ、」

男は逃げていた。その手には高級そうな鞄を抱えている。そう男はひったくり犯であった。それも一度や二度ではない。かなりの回数ひったくりを続けていた。だからか、今回も成功するだろうと思っていた。だが、今回は運が悪く近くにヒーローがいた。

 

「くそっ、、」

悪態をつきながら逃げ続ける男。男の個性はただ足が速くなる程度の個性だった。それでも他の個性の者よりは確実に速く移動出来るのだが、今回は相手が悪かった。

ひったくり犯を追いかけていたヒーロー。

ヒーロー名『ダッシュ』最近この界隈で起こっているひったくり事件を解決するためにやってきたひったくり専門のヒーローだ。

 

「そこのひったくり犯止まりなさい!」

ひったくり犯に向けてダッシュが追いかけながら言うがひったくり犯は構わず逃げた。

まぁ、当然だろう。これで止まる馬鹿はいない。いるはずがない。

 

「誰が止まるかよ」

そう言いながらも、明らか距離は近くなっている。捕まるのも時間の問題だろう。それに男の体力も限界に近くなってきた。

 

「仕方ねぇ」

そう言って折りたたみ式のナイフを出すと通行人の一人を人質に取った。

 

「来るんじゃねぇ!! コイツがどうなっても良いのか⁉︎」

ナイフを人質に突きつける。

いくらヒーローと言っても人質を取られると弱い。しかもその人質が少女と有っては迂闊に手を出せなくなった。人質にされた少女も状況が理解できていないのかキョトンとした顔をしている。

 

「その子を離せ! これ以上罪を犯すんじゃない」

「うるせぇ! 近寄るな!」

ナイフを振り回し追い払う。そのせいで近寄る事も出来ず、膠着状態になった。

周りにいた通行人も蜘蛛の子を蹴散らすようにその場を離れ遠巻きにその状況を見ていた。そんな中、通行人の一人が笑い出した。

 

「あはは、姉ちゃん。捕まってやんの!」

「うるさい! いきなりだったから仕方ないでしょ、紫耀」

どうやら捕まっている少女とは、姉弟のようだ。だが、弟の方は姉の事を全く心配しておらず、それどころか笑って姉を馬鹿にしている。このやり取りにひったくり犯はキレて声を上げた。

 

「何を喋ってやがる! これが見えねえのか⁉︎」

「私の位置からは角度的に見えないですよ?」

ごもっともである。首筋のナイフは少女からは見えなかった。少女の空気の読めない発言に周りの者(弟を除く)は肝を冷やした。

 

「テメー、ふざけてるのか!」

「事実を言ったのにふざけてるとか言われるのは困るのですが?」

「ぐっ、」

少女の正論にひったくり犯は言葉に詰まった。

 

「さて、犯人さん。そろそろ離して」

「はい」

少女の言葉にひったくり犯は従った。

 

「「「「えっ⁉︎」」」」

一瞬意味がわからなかった。周りにいた通行人もダッシュにもひったくり犯が少女を離した事に。それもそのはずだ。せっかく人質にしたのにあっさり解放したのだから。

 

「ヒーローさん、早く捕まえないんですか?」

その言葉にダッシュはハッとなった後すぐにひったくり犯を捕まえた。

 

「君! 協力、、、あれ?」

ダッシュが少女に犯人確保に協力してくれた事にお礼を言おうとしたが、少女とその弟はその場にいなかった。

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

場所は変わって、

「姉ちゃん、そろそろ離して?」

「ダメ」

「悪かったよ、捕まってる時笑ったの」

「本当に。お姉ちゃん、怖かったんだから」

そう人質にされた時、びびっていた。力のコントロールが出来なくて犯人さんの骨を折ってしまわないかと。怖がる論点が違うがそれも仕方がない。飛耀の個性は強すぎるのだ。

拳を振るえば山河を割り、走れば誰も追いつく者はいない。

 

「それより今日は何を買うんだ?」

と姉に離れてもらうのを諦めて今日の予定を聞いた。

「特に決めてないんだ、面白そうな物があったら買うかもしれないけど」

それを聞いていつもの散策かと思いながら、これは帰るの夕方になるなと悟った。

(まぁ、姉ちゃんが楽しそうだからいいか)

 

「ほら行くよ、紫耀」

「ああ」




キャラ設定
主人公
逆廻 飛耀(さかまき ひよう)
個性 ラストエンブリオ


逆廻 紫耀(さかまき しよう)


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第2話

進路決定。後短い。


 

「えっ⁉︎ 姉ちゃんヒーロー科受けないの⁉︎」

 

事の発端は20分前に遡る。

 

「うーん、進路どうしようか?」

自室の勉強机に向かいながら高校の進路について悩んでいた。

「候補は雄英、士傑、傑物学園、勇学園の4校。うーん、よし、雄英にしよう。家から近いし」

近いからという理由で国立受ける人はあまりいない。まぁここにいたが、、、そう、飛耀は頭が良かった。全国模試でもトップ3に入るほど。

 

「あとは学科をどうするかだね? ヒーロー科とサポート科には興味ないし普通科か経営科のどっちかだね。まぁ起業したいと思ってないし第1志望は普通科、第2志望は経営科で決定だね」

サラサラと進路用紙に第1志望、雄英高校普通科、第2志望雄英高校経営科と記入する。

進路も決まったし、読みかけの本でも読もうかなと思っていると、

 

「姉ちゃん! あのさ!」

バァンという音が鳴りそうな勢いで紫耀が部屋に入って来た。

「びっくりした⁉︎ 紫耀ノックしてっていつも言ってるでしょ?」

「あっ、ごめん。忘れてた」

「それで何か用?」

まぁなんとなく予想はついているけど、と思いながら紫耀に聞く。

「進路の事なんだけどさ、姉ちゃんはどこ受けるのかなって参考にしようと思って」

因みに飛耀と紫耀は双子というわけではない。飛耀が四月、紫耀は三月生まれだ。

「私? 私はとりあえず雄英にしようかなって思ってるよ。家から近いし」

「なら俺も雄英にしよう。まぁ姉ちゃんのヒーロー科と違ってサポート科だけど」

「えっと、紫耀、私ヒーロー科は受けないよ?」

 

そして話は冒頭に戻る。

「えっ⁉︎ 姉ちゃんヒーロー科受けないの⁉︎」

と驚きの声を上げる。そもそもこの世代でヒーローを目指さない者は少ない。

「なんで⁉︎」

「なんで、って興味ないからね。ヒーローに」

「そんなの勿体無いよ! だって姉ちゃんの個性明らかヒーロー向きじゃん!」

「まぁ、そうだけど」

「ならヒーロー科受けた方がいいって絶対!」

と熱く語る弟。

そう言われても興味がないんだけどなぁ、と思いながら弟の言葉を聞いていた飛耀。だが次の言葉にその考えを改めさせられる。

 

「姉ちゃん、お願い。ヒーローになって?」

 

その言葉に雷が落ちた。実際には雷は落ちていないがそれくらいの衝撃が飛耀には感じられた。その言葉に飛耀の考えは変わった。そう、飛耀はブラコンだった。因みに本人の名誉の為に言うが、弟を性的に見るブラコンではなく、ただただ弟のお願いに弱いブラコンだ。どう違うのかはイマイチわからないが取り敢えず弟を可愛がっている姉という認識で納得するといいだろう。

「はあ、わかった。そこまで言うならヒーロー科受けるよ」

「やった! ありがとう姉ちゃん!」




ブラコンな姉はありだと思う。今日この頃。


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第3話

いきなり話が試験まで飛びます。
そして、飛耀は新たな仲間を手に入れた。


雄英高校のヒーロー科を志望することを決めてから一年が過ぎた。この日までに色々な事があった。

 

まずは、文化祭。

中学最後とあって、盛り上がりは凄かった。特に飛耀のクラスで行った男女逆転喫茶が一番盛り上がりを見せた。

 

夏休みには、飛耀の両親が所有する別荘でクラス全員で勉強合宿を行った。勿論、勉強だけだと息が詰まるのでBBQしたり、花火したり、川釣りしたりして楽しんだ。

 

体育祭では、飛耀の個性が強すぎる為か飛耀のクラス対三学年という構図で開催された。

結論から言うと飛耀無双だった。

 

冬休み、この頃になると高校推薦の内定をもらったクラスメイトが何人か出始めたが遊んだりせず、勉強の苦手なクラスメイトに教えたりしていた。

大晦日には、クラスメイト全員学校で年明けをしてから、近くの神社にお参りに行った。

 

 

そして、本日。

雄英高校の入試試験の日がやってきた。

「いい天気ね」

と緊張感もなく、ふわぁと欠伸を噛み殺しながら雄英高校にやって来た。因みに紫耀は一緒には来ていないサポート科の試験は数日前に行われたからだ。それに飛耀がこのくらいで緊張しない事を知っているのもある。

 

「みんな、ピリピリしてるなぁ」

と他の受験者を観察していると斜めになってる少年を見つけた。えっ?、斜め?と思った。どうやらコケそうになっている所をあの少女が個性で助けた所みたいだった。

 

ーーーー

ーーー

ーー

試験会場。

受験番号と同じ席に着き鞄を降ろす。

入試説明までまだ時間があるから読みかけの小説でも読んで待つ事にした。

 

「あなた、本を読む余裕があるのね」

と少し小説を読み始めた頃、隣の席の子が話しかけて来た。まぁ、そうだ。普通は緊張で本なんか読んでる暇はないだろう。

 

「そう言う貴女も余裕そうだけど」

「ケロッ、そうでもないわ。これでも緊張してるのよ?」

そうかなぁ、緊張してるようには見えないけど、と思いながら、隣の子(蛙吹梅雨と言う名前らしい、梅雨ちゃんと呼んでって言われたし梅雨ちゃんと呼ぶ事にする)と話していると入試説明の時間になった。

 

会場の電気が消えると壇上にボイスヒーロープレゼントマイクが現れた。

「今日は俺のライヴにようこそー‼︎! エヴィバディセイヘイ‼︎‼︎」

あまりのテンションの高さに誰もついていけなかった。試験前でピリピリしてる人が多いから仕方ないと思う。

「それじゃあ、実技試験の概要をプレゼンするぜ‼︎ アーユーレディ⁉︎」

イエー!っと言える者は現れなかった。

「それじゃ、プレゼンするぜ‼︎ 入試要項通り! リスナーにはこの後! 30分間の模擬市街地演習を行って貰うぜ! 持ち込みは自由! 各自指定の演習場に向かってくれよな‼︎ オーケー⁉︎」

相変わらず返事はないが気にせずプレゼンを続ける。

「演習場には仮想敵を三種・多数配置してあり、それぞれ難易度に応じてポイントを設けてある。仮想敵を行動不能にしポイントを稼ぐのがリスナーの目的だ‼︎ もちろんアンチヒーローな行為はご法度だぜ⁉︎」

 

(なるほど、つまり敵を発見する索敵。他の人より早く敵のところに行く機動力、30分間動き回る体力とペース配分、そして、純粋な戦闘力を見るのかな。あれ? でもこれじゃあ、あ、そうか、競争させて他の人と協力したり、助けたりするのを減らすのが目的か!つまり救済力もポイントになるんだろうね。おそらく雄英教師陣による審査制かな。だってヒーローになるのに必要な事だもんね)

と試験の内容を考察していると他の受験者から質問の声が上がった。

 

「質問よろしいでしょうか⁉︎ プリントには四種の敵が記載されています! 誤載であれば雄英において恥ずべき痴態‼︎ 我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場にいるのです‼︎ ついでにそこの君、先程からボソボソと気が散る‼︎物見遊山ならここから去りたまえ!」

真面目が服を着て歩いているようなメガネをかけた男子がプレゼントマイクに質問した後、入り口の所で見かけた少年に注意した。

「すみません」

注意された少年は縮こまるように頭を下げて謝った。

 

「終わったかい? じゃあプレゼンを続けるぜ。四種目の敵、そいつは言わばお邪魔虫! 各会場に一体所狭しと大暴れしているギミックよ!」

「有難う御座います、失礼致しました!」

メガネくんが頭を下げながら言った。

 

「さて、他に質問のある奴はいるかい?」

そう聞かれたので手を挙げた。

 

「二つ質問いいですか?」

「オーケー⁉︎ なんだい女子リスナー」

「撃破ポイントについてなんですけど、例えば二人か三人がかりで倒した場合、トドメを刺した人だけがポイント加算されるんですか?」

「そうだぜ、女子リスナー。だから早く倒す事をオススメするぜ!」

「ありがとうございます。二つ目の質問はこの試験、ヒーローとしてやっていけばいいですか?」

二つ目の質問にプレゼントマイクは少し言葉を溜めてから笑顔で答えた。

「、、、ああ、それでやればいいぜ! 女子リスナー」

「わかりました。ありがとうございます」

 

飛耀の二つ目の質問に受験者全員が何を当たり前のこと質問してるんだと思った。そう、誰も飛耀の言葉の核心に気づけなかった。それもそうだろう、皆飛耀の一つ目の質問で早く倒さないといけない争奪戦と思っていたから。

 

「さて、試験の説明は以上で終了だ‼︎ 最後にリスナーへ我が校の校訓をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!」

「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者と『Plus Ultra』‼︎ それでは皆良い受難を‼︎」

 

ーーーー

ーーー

ーー

あれから、各自に割り当てられた試験会場に移動することになった。その際、更衣室で着替えを済ませた。

 

試験会場に向かう途中、梅雨ちゃん(試験会場一緒だった)に話しかけられた。

「飛耀ちゃん、さっきの質問の事だけど」

「ヒーローとしてって質問の事?」

「ええ、どうしてあんな質問をしたのかしら?」

「ああ、それは」

と答えようとして他の受験者が目に入った。

「梅雨ちゃん、耳貸して」

他の受験者に聞かれないよう耳打ちすることにした。

「この試験は協力するのが正解ってこと」

「えっと、言ってる事がイマイチわからないのだけどどう言うことかしら?」

「この試験、内容だけ見てると圧倒的に戦闘力がある人が有利でしょ」

「ええ、確かにそうね」

「戦闘力だけを見るならこんな競争さすような試験にはしないと思うんだ。だったらこの試験にした意味は? それを考えると自ずと答えは出てくる。つまりヒーローとして当たり前の人を助けること、それもこの競争を煽られた中、それを行うことも審査に含まれると思うんだ」

「でもそれは飛耀ちゃんの憶測よね」

「勿論憶測だけで言ってる訳じゃないよ、私がマイクに質問した時の事を覚えてる? 私の質問に少し溜めてから笑顔で答えてたでしょう。私の質問が的外れなら違うと言う筈、それを言わずに肯定したなら私の質問が正しかったということになる。だからこの試験は協力するのが正解なんだ」

「そこまで確信があるなら飛耀ちゃんを信じてみるわ」

「ありがとう。そこで提案なんだけどこの試験の間協力しない、梅雨ちゃん?」

「ええ、丁度同じ試験会場だからお願いするわ」

協力する事が決まった後、試験会場に着くまでの間にお互いの個性について教えあった。




試験開始まで行けなかった。

最近、バナナチョモランマの乱ばかり聴いてたせいか梅雨ちゃんを出したくなってしまった。

キャラ設定追加
逆廻 飛耀
cv.佐藤利奈


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第4話

試験開始。だが戦闘描写下手くそです。


個性について梅雨ちゃんと話しあった飛耀は開始の合図がなるのを待ちながら試験会場の街並みを眺めどう動くか考えた。数秒で作戦を立てると梅雨ちゃんに伝え開始の合図がなるのを待った。

 

「はい、スタート!」

 

突然の開始の合図に殆どの受験生が、「えっ?」となる中、梅雨ちゃんを背負った飛耀が飛び出した。その際、強く踏み込んだ地面には小さいクレーターが出来ていた。飛耀が考えた作戦はこうだ。飛耀の機動力を生かし試験会場を走り、敵を見つけたら協力して倒すというシンプルなものだ。

 

「梅雨ちゃん、敵いた?」

「今のところいないわ」

「じゃあ次の角曲がるね」

そう言って少しスピードを緩めながら曲がると敵がいた。しかも運が良く三体も。

飛耀たちが敵を発見してから、数秒後敵も飛耀たちを発見した。

 

「ぶっ壊す、ぶっ壊す」

「潰れろ潰れろ潰れろ潰れろ」

「ナタデココ!」

と奇声を発しながら襲いかかろうとする敵。

飛耀たちはそのまま敵に近づくと敵の一体が飛耀たちを迎撃する為、殴り掛かって来た。飛耀は避ける事をせずそのまま両手を前に出して受け止めた。その瞬間、受け止めた腕を伝い梅雨ちゃんが頭部に蹴りを入れ破壊した。

 

「ケロッ!」

「ナイス! 梅雨ちゃん、よし私も、よいしょっと」

梅雨ちゃんが破壊した敵の腕を抱え、真横に振り抜き、残りの敵をなぎ倒した。

三体を瞬殺した二人だが、倒した音に反応したのか、更に三体の敵が現れた。

 

「3ポイント二体に1ポイント一体が来たわ」

「梅雨ちゃん、3ポイント一体お願い、残りは私が倒すね」

「わかったわ」

梅雨ちゃんは自身の舌を伸ばし3ポイント敵を拘束すると先程と同様に頭部に蹴りをお見舞いした。

一方、梅雨ちゃんが倒している間に飛耀は残りの敵と戦った。その戦いは戦闘と言えるものではなかった。そこにあったのは一方的な蹂躙だった。3ポイント敵の攻撃を避けながら懐に潜り込むと蹴り上げ、数メートル上空に打ち上げると自身も3ポイント敵に追いつくように跳躍し、敵の真上に位置取ると地面に向かって殴り飛ばした。その衝撃で、落下場所の側にいた1ポイント敵は粉砕された。

 

現在の撃破ポイント

お互いに6ポイント

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

スタートの合図から25分が過ぎた。今でも、飛耀と梅雨ちゃんの快進撃は止まらず、現在の撃破ポイントは、飛耀58・梅雨ちゃん55である。

 

「飛耀ちゃん、そろそろ次の場所に向かいましょう」

「そうだね」

と返事しながら、目の前の2ポイント敵を破壊する。

 

「じゃあ向こうに、、、おっと」

行こうと言おうとした時、地震みたいに揺れた。

「今の揺れは何かしら?」

「もしかしてあれじゃない、試験も終盤だし説明の時に言ってたお邪魔虫が動き出したとか」

ズバリ正解である。

飛耀たちがいる100メートルは先に四種目の仮想敵が現れた。

 

「飛耀ちゃんの予想が当たったみたい」

「思ってたより大きい敵だったね」

と比較的冷静に話す二人を尻目に近くにいた受験生たちが悲鳴を上げながら逃げ出した。

 

「助けてくれ!」

「あんなのどうやって倒すんだよ!」

「待ってよ。置いてかないで!」

「無理無理無理無理!」

 

逃げ惑う受験生たちとは逆に飛耀たちは走り出した。

「梅雨ちゃんは逃げ遅れた人の救助を!」

「わかったわ」

ビルの壁に跳躍し逃げ遅れている受験生を舌で巻き取り、屋上に退避した。

「さて、でかいの私が相手だよ」

その声に反応したのかゼロポイント敵は自身の腕を飛耀目掛けて振り下ろした。

 

飛耀はその攻撃を腕を頭上でクロスして受け止めた。その衝撃で飛耀の体は膝あたりまで沈んだが飛耀がそれにやられた雰囲気はなく、それどころか全くの無傷である。

 

「じゃあ今度は私の番ね」

そう言ってゼロポイント敵の腕を跳ね上げバランスを崩し、頭部付近まで跳躍すると拳を振り抜いた。

 

「えい」

なんとも気が抜ける声かけだったがその威力は絶大だった。頭部は圧壊したようにひしゃげ、吹き飛んだ。

 

飛耀はそのまま地面に着地、、、

「いったぁぁ⁉︎」

出来なかった。無駄に回転やひねりを入れた所為で目測を誤り顔から落ちた。普通の人なら死んでしまうが飛耀にはたんこぶが出来たくらいだった。

飛耀が頭を抑えゴロゴロ悶えている間に試験終了の合図があった。

なんとも締まらない終わり方であった。




モニター室
「実技総合成績出ました!」
No.1 逆廻 飛耀 VILLAIN 60 RESCUE 80
No.2 蛙吹 梅雨 VILLAIN 55 RESCUE 40
No.3 爆豪 勝己 VILLAIN 77 RESCUE 0
No.4 切島 鋭児郎 VILLAIN 39 RESCUE 35
No.5 麗日 お茶子 VILLAIN 28 RESCUE 45
No.6 塩崎 茨 VILLAIN 36 RESCUE 32
No.7 拳藤 一佳 VILLAIN 25 RESCUE 40
No.8 飯田 天哉 VILLAIN 52 RESCUE 9
No.9 緑谷 出久 VILLAIN 0 RESCUE 60
No.10 鉄哲 徹鐵 VILLAIN 49 RESCUE 10

「今年の受験生は優秀ですね」
「ええ、特にこの子RESCUEポイントゼロで3位とはねえ」
「他の受験生たちが終盤失速する中、派手な個性で仮想敵を寄せ付け迎撃し続けたタフネスの賜物だ」
「対照的にVILLAINポイントゼロで9位」
「大型敵に立ち向かって行った受験生は過去にもいたけど吹っ飛ばしたのは久しく見てないな」
「ぶっ飛ばしたといえば一位の子も凄かったねぇ」
「確かに」
「凄いのはそれだけじゃないぜ」
「プレゼントマイク先生」
「あの女子リスナーだけがこの試験の仕組みに気づいていたぜ。その証拠に開始早々2位の子と組んでいただろう?」
「そうだね。それに状況判断も正確だ。最後の大型敵から逃げ遅れた受験生たちを助ける為に2位の子に指示を出してた」
「ただ最後の着地は残念でしたね」
全員苦笑しながら頷くのだった。


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第5話

個性把握テスト

描写下手なので大目に見てやってください。


本日、雄英高校の入学式です。

えっ、結果はどうだったってそんなの当然合格したに決まってる。二人とも。合格祝いをしたのが記憶に新しい。

 

「えっと、クラスはAだね。紫耀は?」

「俺はHだな」

とお互いの教室を確認しそれぞれの教室に向かった。

 

「Aクラスはあっちか」

自身の教室を見つけたが入り口のところで男子生徒二人と女子生徒一人が話し込んでいた。取り敢えず通れないので退いてもらうよう声をかける。

 

「通してもらってもいいかな?」

「えっ? あっ⁉︎ ごめん」

とボサボサ頭の男子生徒が退いてくれた。

三人の横を通ろうとした時、もう一人の男子生徒が声を掛けてきた。

 

「君も受かっていたんだな」

「えっと?」

誰だったかな?と思い記憶を探ってみる。

「ああ、確か試験の時のメガネ君?」

「メガネ⁉︎ 飯田天哉だ」

「天哉君ね。私は逆廻飛耀だよ。それで何か用?」

「逆廻君はあの試験の構造に気づいていたんだな、俺は気づけなかった」

「まあね、でも気づけなくてもいいと思うよ。だって私が気づかせないようにしたから」

「気づかせないってそれはどういう」

こと、と言う前に飛耀は言葉を切るように他の生徒に声を掛けていた。

「あ、久しぶりだね。梅雨ちゃんも受かってたんだ」

「ええ、おかげさまで受かったわ」

流石に会話に割って入る訳にもいかず飯田は後で聞こうと思いもう一人の男子生徒(緑谷出久)と女子生徒(麗日お茶子)との会話を再開する。

 

「今日って式とガイダンスだけなのかな。担任の先生ってどんな人だろうね」

とお茶子ちゃんが言った言葉に廊下から返答が返ってきた。

「お友達ごっこがしたいなら他所に行け。ここはヒーロー科だぞ」

寝袋に入った男性が栄養補助ドリンクをチューっと飲みながらそう言ってきた。

なんかいる、とクラス全員が思った。

 

ーーーー

ーーー

ーー

ゴソゴソと寝袋から這い出てきた男性がAクラスの教壇に立った。

もしかして、この人が担任?と思いながら全員が指定の席に着席した。

 

「はい、みんなが静かになるまでに8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性にかくね。担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

突然に辛辣なコメントをかけられてクラス全員が沈黙している中、寝袋から雄英指定のジャージを取り出した。

 

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ。物は各自のロッカーに入っている」

 

そう言って教室から出て行った。出て行く際、急げよ、と言葉を残して。

 

皆、手早く着替えを済まして雑談もなく、グラウンドに集合した。

 

「集まったな。それでは今から個性把握テストを行ってもらう」

「「「「個性把握、、、テストォ⁉︎」」」」

「入学式は⁉︎ ガイダンスは⁉︎」

と相澤の言葉に天哉君と話していた女子生徒が質問した。

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る必要はないよ」

「⁉︎」

「雄英は自由な校風が売り文句。それは先生側もまた然り」

つまり、先生がテストをするって決めたから、入学式が個性把握テストになったってことか。

 

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ?"個性"禁止の体力テスト、国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。合理的じゃない。まぁ、文部科学省の怠慢だよ」

 

私の場合、個性をコントロールしないといけなかったから大変でしたね、と思いながら話を聞いていると名前を呼ばれた。

 

「逆廻、中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」

「えっ⁉︎ なんで私?」

「お前が今回の入試一位だからだ」

へえ、私が一位なんだ、と思っていると不良っぽい男子生徒に睨まれた。私何かしたかな? 少し考えたけど理由が思い当たらなかったので、取り敢えず相澤先生の質問に答える。

 

「58メートルですね」

その回答にクラスメイトから、「おぉ」や「スゲーな」などの賛辞が送られる。

 

「じゃあ、個性を使ってやってみろ。円から出なければ何をしてもいい」

何をしてもいいと言われたので力のコントロールをしないでやってみる。取り敢えず全力でやってもいいか確認してからにしよう。

 

「全力でやってもいいんですか?」

「ああ、思いっきりな」

先生の許可も貰えたし全力で投げる。

 

「じゃあ、行きます」

踏み込んだ地面にクレーターが出来たが、体勢を崩すこと無く投げた。

 

投げた球は一瞬のうちに空の彼方に消えていった。途中、球が通ったと思われる軌道上の雲が丸く大きな穴が空いている。

投げ終わり振り返ると皆ポカンと口を開けて固まっていた。相澤先生も目を大きく開き驚いている。

あれ、もしかして私やらかした?と思っていると立ち直りが早かった相澤先生が声をかけてくれた。

 

「まさか、初めからこんな大記録が出るとわな。記録は∞だ」

 

その言葉を皮切りに固まっていたクラスメイト達が騒ぎ出した。

 

「∞って何っ⁉︎ スゲー‼︎」

「パワー型の個性なのか?」

「見ろよ。雲に穴空いてるぜ!」

「面白そう!」

 

と先程までの沈黙が嘘みたいに騒々しくなった。だが、、、

「静かにしろ」

相澤先生の一喝で全員黙った。

 

「まず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段。因みにトータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分とする」

 

「「「「はああぁ⁉︎」」」」

「生徒の如何は教師の自由。ようこそ、雄英高校ヒーロー科へ」

 

「最下位除籍って、、、!」

「入学初日だぞ! いや、初日じゃなくても、、、」

「理不尽過ぎる!!」

生徒の反発も仕方ない。苦労して入学出来たのに初日から除籍されるかもしれないからだ。

 

「流石に理不尽よね、飛耀ちゃん」

と皆が騒ぐ中、梅雨ちゃんが飛耀に同意を求めた。

「えっと、何が?」

「何がって成績最下位は除籍される事よ?」

「理不尽、、、そうかな? だって皆がなろうとしてるのってヒーローだよね。自然災害、大事故、身勝手な敵たち、そういう理不尽(ピンチ)を覆していくヒーローになろうとしてるのに、今先生が言った理不尽を覆せないならヒーローになるのは諦めた方がいいんじゃない?」

飛耀の言葉に相澤先生が答えた。

「逆廻の言う通り、この程度の理不尽を乗り越えられないようじゃ、ヒーローになる資格はない。これから三年間雄英は全力でお前たちに苦難を与え続ける。Plus Ultraさ。全力で乗り越えて来い」

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

個性把握テストが始まった。第1種目は50m走だ。出席番号順に走る人が決まる中、飛耀は相澤先生に話しかけた。

 

「先生、最後に走ってもいいですか?」

「いいだろう」

「ありがとうございます」

 

お礼を言ってから待機場所に戻った。

 

「飛耀ちゃん、相澤先生と何を話していたのかしら?」

今しがた走り終えた梅雨ちゃんに声をかけられた。

「ああ、相澤先生に走る順番を最後にしてもらっただけだよ」

「君、何故そんなことしてもらったんだい?」

と梅雨ちゃんとの会話にさっきビームを出していた男子生徒に声をかけられた。

「それは、私の番になれば分かるよ。じゃああと少しで私の番だし行ってくるね」

そう言って走る準備をする。まぁ、走る準備と言っても特にする事はないのだが、、、

 

「最後。逆廻」

相澤先生に呼ばれスタート位置に着き、クラウチングスタートの体勢になる。相澤先生の合図があった瞬間、スタート位置から飛耀は消え去った。スタート地点にクレーターを残して。

 

「0秒01」

その機械音声に全員の視線がスタートからゴールに向いた。それと同時にゴール地点で爆音がなり、砂煙が舞う。

 

「えっ? 今、何が起きたの?」

「いや、俺に聞かれても分かんねぇよ」

「相変わらず、凄い個性ね」

「さっき言ってたのはこういうことか、でもどういう個性だろう?」

飛耀の個性に疑問を持ちながら第1種目の計測が終わった。

 

その後も飛耀の無双は続いた。

握力では、ある男子生徒が500㎏越えの記録を出す中、飛耀は握力計を握りつぶした。

立ち幅跳びは、グラウンドの端まで跳んだ。反復横跳びは、背が低い男子生徒が好記録を出す中、砂煙が舞うほどの速さでその記録を抜き去った。

因みに他の人が測定している間は暇だったので飛耀はクラスメイト全員と自己紹介をしておいた。

 

第5種目 ソフトボール投げが始まった。

皆、個性を使い大記録を出す中、飛耀と同じ∞を出す生徒がいた。麗日お茶子ちゃん、なんでも重力を軽くする個性らしい。

そして、それとは逆にあまり好記録が出せない生徒もいた。緑谷出久くん、今までの種目を見てきても一度も個性を使った形跡がなかった。このままだと彼が除籍になるなと思ったので飛耀は出久に声をかけた。

 

「出久くん、少しいいですか?」

「えっ、あっ、はい」

「そんなに緊張しなくてもいいですよ? ちょっと出久くんに聞きたい事があったので話しかけただけですから」

「あの、聞きたい事って?」

「出久くんの個性って使うと身体を壊したりするのかな?」

「えっ、なんで」

わかったのと言う前に飛耀が話す。

「私の推測なんだけど、これまでの種目を見てる限り個性を使った形跡はなかったから何かサポート系の個性かなっと思ったけどそれなら使えばいいと思うし、ならもしかしてパワー型の個性で使うと身体を壊して行動不能にでもなるのかな、と思ったんだけど合ってる?」

「えっと、合ってます。僕の個性使うと骨がバキバキに砕けてしまうので」

「つまり個性を発動すると行動不能になると、、、なら指先に」

考え込んでいた飛耀がアドバイスを言う前にに出久の番が回ってきた。

「次、緑谷」

「はっ、はい⁉︎」

相澤先生に呼ばれて慌てて位置に着く。呼吸を落ち着け緊張しながらソフトボールを握り、大きく振りかぶって投げた。

 

「46メートル」

機械音声が出久の記録を読み上げた。

「えっ、今個性を、、、」

 

「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠く。お前のような奴も入学できてしまう」

髪が逆立ち、赤い目をした相澤先生がそこにいた。

 

「個性を消した、、、‼︎ あのゴーグル、抹消ヒーロー イレイザーヘッド‼︎」

 

「見たとこ、個性を制御出来ないんだろ? また行動不能になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」

「そんなつもりじゃ、、、」

「どういうつもりでも周りはそうせざるを得ないって話だ。一人を助けて木偶の坊になる。緑谷出久、お前の力じゃヒーローにはなれないよ」

抹消の個性を解除して出久に二投目を促した。

 

(どうする、どうすれば、力の調整は、僕にはまだ出来ない。この一投でできる可能性に懸ける? いや、無理だ。それにオールマイトも言ってた一朝一夕にはいかないって、、、ダメだ、ダメだ。今の僕にはワンフォーオールを0か100でしか使えない。もう全力で投げるしか)

と一人で思考の海に沈んでいると声をかけられた。

 

「出久くん。落ち着いて!」

その言葉に現実に引き戻された。

 

「逆廻さん、そうだ落ち着け、何か方法を、、、!」

 

『つまり個性を発動すると行動不能になると、、、なら指先に』

(指先? そうだ。それなら行動不能にならなくて済む。でも、やれるか? 違う、やれるかじゃない、やるんだ‼︎)

 

そう思いながら指一本で投げたソフトボールは遥か彼方に飛んでいった。個性を使った証拠に指先が腫れている。

 

「先生、まだ、動けます」

「こいつ、、、!」

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

出久くんが投げた後、勝己くんが出久くんに掴み掛かろうとしたのを相澤先生が止めるって事があったけど、それ以外の種目はつつがなく終了した。

 

「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」

 

順位

1位 逆廻 飛耀

2位 八百万 百

3位 轟 焦凍

4位 爆豪 勝己

5位 飯田 天哉

6位 常闇 踏陰

7位 障子 目蔵

8位 尾白 猿夫

9位 切島 鋭児郎

10位 芦戸 三奈

11位 麗日 お茶子

12位 口田 甲司

13位 佐藤 力道

14位 蛙吹 梅雨

15位 青山 優雅

16位 瀬呂 範太

17位 上鳴 電気

18位 耳郎 響香

19位 葉隠 透

20位 峰田 実

最下位 緑谷 出久

 

「因みに除籍は嘘な。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

「「「「はーーー‼︎‼︎??」」」」

その言葉に驚愕した。

 

「あんなのウソに決まってるじゃない、、、ちょっと考えればわかりますわ、、、」

百ちゃんの言葉に数名、気づかなかったと思った。

勿論、飛耀は気づいていた相澤先生が言ったウソにも、、、




「相澤くんのウソつき!」
「オールマイトさん、見てたんですね。暇なんですか?」
「合理的虚偽て! エイプリルフールはもう終わってるぜ。君は去年の一年生一クラス全員除籍処分にしている。そんな君が前言撤回。それってさ。あの子に可能性を感じたからだろう」
「ゼロでは無かった。それだけです。半端に夢を追わせる事ほど残酷なものはない」
「やっぱり、除籍は本当だったんですね」
「逆廻か、やはりお前は気づいていたか」
「流石に気づきますよ、出久くんの個性を止めた時に除籍が本当だってだから出久くんに声を掛けましたよ。一人でも欠けたら楽しくないですから」
そう言って、失礼しますと言ってから教室に戻った。


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第6話

ヒーロー基礎学までの話


次の日、朝? 午前2時は朝とは呼べない。日付は変わったが飛耀はまだ寝ていない。

 

「ここでこうして、次はこのスキルを」

独り言をぶつぶつと言いながら、パソコンでゲームをしていた。昔、友人から勧められやり始めたが。今では自身の方がやり込んでる時間は長いだろう。

 

「よし、クリア〜♪」

ふ〜、と一息ついて、そういえば今何時だろう、と時計を見た。

 

「うわ、もう2時か。流石に寝ないといけないね」

パソコンの電源を落としベッドに横になった。時計のアラームをセットしてから寝た。

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

「紫耀、もうじき朝ごはん出来るからお姉ちゃん、起こして来て。多分いつものだから」

「わかった」

母親から姉を起こすよう言われた紫耀は姉の部屋に向かった。

 

トントンとノックしてから、姉に声をかけた。

「姉ちゃん、もうじき朝飯出来るって!」

「、、、、、、」

返事が無かった。またか、とため息を出しながら紫耀は姉の部屋に入った。

 

「(( _ _ ))..zzzZZ」

そこには、すやすやと布団に包まり、寝ている飛耀がいた。それだけを見ると何の変哲も無い光景である。だが、飛耀の枕元には粉々に壊れた時計があった。

そう、母親が言っていた、いつものとはこの事である。飛耀が寝てる間、無意識に自身の眠りを妨げる時計を壊してしまう事。

 

「姉ちゃん、朝だぞ」

「後、5、、、」

「5分?」

「年、、、」

「長いわ!」

ツッコミを入れながら布団を剥ぎ取った。

 

「あっ、紫耀ぉ。おはよう、、、ふわぁ、ん、どうしたの紫耀? そっち向いて?」

「おはよう、姉ちゃん。取り敢えず服直して////」

紫耀の言葉に自身の服装を確認する。シャツのボタンは外れ、年相応に発育の良い胸が見えていた。

 

「あはは、ごめんごめん」

謝りながらシャツのボタンを留めた。

 

「朝飯出来たから早く用意しろよな」

「りょうか〜い」

冗談交じりに敬礼をしながら返事した。

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

「「いってきます!」」

「いってらっしゃい」

 

バタバタと急ぎながら家を出た。

 

「姉ちゃんの所為で時間ギリギリだ!」

「仕方ないでしょ! お母さんのご飯美味しいんだから」

「だからって、炊飯器空にするまで食べるなよ!」

因みに逆廻家の炊飯器は飛耀と父親がよく食べるので業務用の炊飯器を使っている。

 

「これ間に合うのか?」

携帯で時刻を確認しながらも走る速度は落とさない。

「大丈夫よ。中学校よりは近いんだし」

「近いって言っても三駅分の距離あるだろ!」

「仕方ないな、ほら掴まって」

差し出された手を掴むと抱き抱えられた。

普通逆だろうと思うが、そんな事を気にする様子もなく飛耀が地面を蹴った。それだけで地上30メートルもの高さまで上がると空中を走った。地面でもあるかのように走る。

 

「直線距離なら5秒!」

 

5秒後、雄英高校に着いた。

紫耀とは校舎が違うので入り口で別れると飛耀は自身の教室に向かった。

廊下を駆け足で進み、ガラガラと教室の扉を開けた。

 

「セーフ!」

「あら、飛耀ちゃん。そんなに慌ててどうしたの?」

「遅刻しそうだったから」

「始業のチャイムまで10分あるわよ?」

時計を確認すると始業のチャイムまで10分あった。どうやら直線距離を走ったから早く着いたようだ。

それから間もなくチャイムが鳴った。

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

「全員いるな」

相澤先生が教室を見回し出欠確認すると連絡事項を伝えた。

 

「逆廻、昼休み職員室に来るように」

「わかりました」

その返事を聞くと教室から出ていった。

 

「飛耀ちゃん、呼び出しなんて何かしたん?」

隣の席のお茶子ちゃんが話しかけて来た。

 

「何もしてないと思うけど、、、(もしかして、あれの事?)、、、」

心当たりがあった。だが、流石にこの事では無いだろうと思う。

 

「違うか。特に何かしたってことはないね」

「そっか〜、なら何なんやろね?」

「だね〜」

とのほほんとする二人。

そうこうしている内に一限目の授業が始まった。科目は英語である。

 

 

まず、結論から言おう。普通だと。

英語教諭はプレゼントマイク先生だった。入試試験と同じテンションで入ってきて自己紹介をしたから、このテンションで授業をするんだと皆(飛耀を除き)思った。だが、実際の授業はとにかく真面目だった。言い換えれば普通。時折「盛り上がれ!」と言うが、盛り上がる要素がない。期待していた分、落胆は大きいが授業は分かりやすく、雄英が最高峰と言われるだけの事はあった。

 

そんな感じで授業は過ぎ昼休み。

飛耀は朝に呼ばれていた件で職員室に来ていた。

 

「失礼します」

職員室に入るとキョロキョロと相澤先生を探す為に見回した。

 

「逆廻、こっちだ」

そうしていると相澤先生が気づいてくれて呼ばれた。

「相澤先生、一体何の用ですか?」

「ああ、話があるのは俺じゃない。付いて来い」

取り敢えず、相澤先生に着いて行く。

向かった先は校長室だった。

 

「あの、相澤先生。ここ校長室ですよね?」

「校長室だな」

「私何も悪いことしてませんよ?」

「取り敢えず、俺が聞いているのはお前を連れて来いって事だけだ。後は校長から聞いてくれ」

そう言ってから飛耀を置き去りにして立ち去った。

 

「さて、どうしようって言っても判断材料が少ないからなぁ。よし女は度胸って言うし中に入ってから考えるか」

ノックをすると中から「どうぞ」と言う声が聞こえたので「失礼します」と言ってから入室した。

 

「やあ、久しぶりだね、飛耀ちゃん」

「えっ? もしかして、根津さん?」

中に入ってビックリした。昔、あるイベントで知り合った根津さんがいたから。

 

「えっ、どうしてここ、、、もしかして、昔話してた学校の先生やってるって」

「その通りさ、雄英の校長をやってるよ」

「凄い偶然ですね」

「そうだね。私も資料を見た時、驚いたよ」

 

と思い出話を咲かせている時、ある音が鳴った。

くぅ〜〜〜、と飛耀のお腹から。

 

「すみません////」

「いや、こっちこそ急に呼んですまなかったね。丁度、私もお腹すいて来た頃だから食堂にでも行こうか。再会祝いに今日はご馳走するよ」

「いいんですか⁉︎ ありがとうございます!」

二人は食堂に向かった。因みに歩く速度が違うので根津は飛耀に抱えられている。子供がぬいぐるみを抱えるように

 

ーーーー

ーーー

ーー

食堂に着くと料理を注文した。

根津はチーズを。飛耀は最強超大盛りMAX Special定食を二つも。最強超大盛りMAX Special定食は総重量10キロもあるメニュー内最高の大盛り飯である。数多の大食いが食べきれず残してしまうほどの大盛り飯を二つも頼んだ。それを知っている雄英生にどよめきが走った。

 

「また、あれの挑戦者が現れたぞ」

「マジかよ。しかも女子じゃん」

 

そんな言葉を気にも止めず飛耀は厨房から料理を受け取ると席を探した。

 

「逆廻くん、もう話は終わったのかい?」

キョロキョロと席を探していると天哉くんに声を掛けられた。

 

「天哉くん達も食堂に来てたんだ」

「飛耀ちゃん、その両手に持ってるのは何なん?」

お茶子ちゃんから引きながら質問された。

 

「えっ、昼ご飯だけど?」

「逆廻さんはよく、、、食べるんだね」

「そうだね、結構食べるね。隣いいかな?席二つ空いてるみたいだし」

「二つ?」

「そろそろ話は終わったかい?」

「「「⁉︎」」」

 

飛耀の両手の料理に目を取られていて気づかなかった。

 

「えっ、ねずみ?」

「ねずみなのかクマなのか、言われたら校長さ!」

と自己紹介をしながら席に着く。

 

「何で校長先生と一緒におるん?」

「根津さんとは同好の士でね。今朝の呼び出しあったでしょ。実はあれ、相澤先生が私に用があった訳じゃなくて、根津さんから連れて来るように頼まれてたからだったんだ」

「それで折角だからお昼一緒にどうってわけさ」

「なるほど」

納得すると各々食事を再開した。

 

 

15分後

「ご馳走様でした」

大盛り飯を完食した飛耀に皆が驚愕した。




次回、ヒーロー基礎学
果たして、飛耀は手加減出来るのか⁉︎
乞うご期待。


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第7話

久し振りに投稿。見てくれてる人いるのだろうか?


昼休みも終わり、多くの生徒が眠気と戦う午後一の授業。

だが、Aクラスの面々は眠気と戦っておらずそれどころか授業の開始を今か今かと待っていた。

 

「わ〜た〜し〜が〜、普通にドアから来た‼︎‼︎」

バンッとドアを開けながらオールマイト先生が入ってきた。

 

「オールマイトだ!」

「あれって、シルバーエイジのコスチュームよね?」

「画風違いすぎて鳥肌が」

と皆がリアクションする中、

「えっと、有名なヒーローなんですか?」

と飛耀が口にした。そう飛耀は知らなかったあのオールマイトを。

 

「「「「えっ⁉︎」」」」

「飛耀ちゃん、流石に冗談よね?」

「だよな。オールマイトを知らない奴はいないだろ!」

「ヒーロー科にいてオールマイトを知らないはないよね」

と飛耀に対して皆が驚愕の言葉を口にする。

 

「ごめんなさい、私ヒーローには疎くてね」

マジだった。

 

2分後

「おほん、改めて私の担当はヒーロー基礎学。ヒーローの素地を作る為様々な訓練を行う科目だ。単位数も最も多いぞ。早速だが、、、今日の授業はこれ‼︎」

どこから取り出したのかBATTLEと書かれた札をバァンっと見せた。

 

「戦闘訓練‼︎」

 

戦闘と聞いて一部ざわつくも先程の事もありすぐに静かになる。

 

「それに伴ってこちら!」

 

これまた何処から取り出したのか、リモコンをピッと操作する。すると壁の一部から数字の書かれた箱が出てきた。なんでも箱の中身は入学前に送った各人の要望に沿ったヒーロースーツが入っているとの事で何人かの生徒が興奮を抑えられず自分と同じ数字の箱に駆け寄った。オールマイト先生は特に注意する事なく、ヒーロースーツに着替えたらグラウンドβに集合するように伝え教室を出て行った。

 

更衣室にて

 

「それにしても飛耀ちゃんがオールマイトを知らないのは驚いたわ」

「そうやね、驚いた」

着替えながら梅雨ちゃんとお茶子ちゃんが話しかけて来た。

「私さ、元々ヒーロー科受けるつもりなかったんだ」

「「「「えっ?」」」」

飛耀の言葉に全員着替えの手が止まった。

「ん、みんなどうしたの。鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔して?」

「いやいやいや、どうしたのじゃないよ⁉︎」

とクラスメイトの三奈ちゃんが飛耀に声を掛ける。

「ヒーロー科受けるつもりなかったってどういう事なん?」

全員の疑問を代弁するようにお茶子ちゃんが飛耀に理由を聞いた。

 

「どういうも何も言葉の通りよ?」

「それは分かってるんやけど、その」

「ああ、もしかして受けるつもりなかったのに何でヒーロー科にいるんだって事が聞きたいの?」

「そうそれ⁉︎」

いつのまにか飛耀の周りを囲むように全員集まった。

「そうね、簡単に言うと」

少し考える素振りをしながら言葉を紡いだ。

 

「可愛い弟にヒーローになってってお願いされたからだね」

(えっ、逆廻さん(飛耀ちゃん)ってもしかしてブラコンなの?)

そう思われても仕方がない、それを言った飛耀の表情があまりにも緩んでいたから。

 

「それより皆、早く着替えた方がいいよ」

と着替えを済ました飛耀が声を掛け、先にグラウンドに向かった。

それを見て皆も急いで着替えて後を追った。

 

 

グラウンドβにて、

「集まったな!有精卵供‼︎ 戦闘訓練のお時間だ‼︎」

「先生!ここは入試の演習場ですがまた市街地演習を行うのでしょうか⁉︎」

(ああ、天哉くんだったんだ。あの白い鎧)

 

「いいや! もう二歩先に踏み込む! 屋内での対人戦闘訓練さ‼︎」

その後のオールマイトの説明はこうだ。

敵組とヒーロー組に分かれて2対2の屋内戦をするとの事だ。

 

「でも、先生。うちのクラス21人すよ?」

「、、、、、、」

切島の一言にオールマイトは「しまった〜」という顔をした。どうやら気づいてなかったらしい。

取り敢えず助け舟を出すことにする。

「先生、それなら1チームだけ3人にすればどうですか?」

「でもそれじゃ、3人のチームが有利じゃね」

最もな意見を言う電気。

「その辺りはハンデでもつけたら大丈夫だと思うよ。例えば敵組が3人ならインカム無し、ヒーロー組ならインカム無しと突入場所が違うとか、どうですかオールマイト先生?」

「そうだな、逆廻女子の意見を採用しよう」

「ありがとうございます。まあでも授業の用意はしっかりとしないといけませんよ」

「すまない」

これじゃあどっちが先生かわからない。




あつ森、SAOAL、テイクレ楽しい。


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第8話

今回は模擬戦です。戦闘描写下手なので大目にみてください。


気を取り直して、くじでチーム分けした。

結果、

A 緑谷出久 麗日お茶子

B 障子目蔵 轟焦凍

C 八百万百 峰田実

D 逆廻飛耀 爆豪勝己

E 青山優雅 芦戸三奈

F 佐藤力道 口田甲司

G 上鳴電気 耳郎響香

H 蛙吹梅雨 常闇踏陰

I 葉隠透 尾白猿夫 飯田天哉

J 切島鋭児郎 瀬呂範太

になった。

 

「よろしくお願いしますね、勝己くん。お互いヴィラン頑張りましょう」

と声をかけると睨まれた。そして、文句を言われた。

「なんでヴィラン側だって決めつけてんだ!」

「えっと、見た目と言動?」

そんなやり取りをしている中、オールマイト先生が話を進めた。

「それじゃあ、第1戦目!」

手元の箱からくじを二つ取り出した。

「ヒーロー側 Aチーム、ヴィラン側 Dチーム」

発表された瞬間勝己くんが無言になった。

「・・・・・・」

「ほら、やっぱり、ヴィラン側だった」

「チッ、クソがっ!」

「そういう事を言ってるからヴィラン側になったんじゃない?」

「うるせぇ‼︎ さっさと準備すっぞ‼︎ 大食い女‼︎」

「大食い女⁉︎ 事実だけど、それはちょっと酷くない!」

暴言を吐く勝己に反論しながら所定の位置に向かった。

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

場所は変わって、二人は建物の5階に核を設置することにした。

 

「取り敢えず作戦だけど、、、」

「いらねぇよ‼︎ んなの」

「いらないって、、、はぁ、わかった。じゃあ勝己くんがオフェンス、私がディフェンスね」

「わかってんじゃねぇか。足引っ張んじゃねぇぞ、大食い女」

「勝己くんもね。出久くんとどんな因縁があるか知らないけど油断して足元掬われないようにね」

お互いに釘を刺しながら開始の合図を待った。

 

 

 

side Aチーム

「建物の見取り図覚えないとだね、相澤先生と違って罰とかないし安心したよ」

「そ、そうだね、、、」

産まれたての子鹿かと言いたくなるほど震えている。

「安心してないね‼︎」

「いや、その、相手がかっちゃんだから身構えちゃって、」

「爆豪くん、バカにしてくる人なんだっけ」

「凄いんだよ、嫌な奴だけど、でも僕なんかより何倍も凄いんだ。だから今は負けたくないなって」

「男の因縁ってヤツだね‼︎」

「うん」

「じゃあ頑張ろう。そして爆豪くんを見返そう」

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

作戦を立てた二人は現在1階の窓から建物に潜入していた。

「潜入成功!」

「死角が多いから気をつけて進もう」

廊下を警戒しながら進む二人。曲がり角に差し掛かった瞬間それは現れた。

「危ない!」

間一髪でお茶子を庇い避けるが、少し掠ったのか顔の部分のスーツが破けていた。

「麗日さん、大丈夫‼︎」

「うん、ありがと」

「デクこら避けてんじゃねぇよ」

「かっちゃんが敵ならまず僕を殴りに来ると思った!」

「一撃読めたからって調子乗ってんじゃねぇぞ‼︎」

殴りかかる勝己。だがそれを出久は読んでいた。大振りで繰り出される右に合わせるように掴み打撃の勢いを利用しながら投げた。

「ガハっ、、、!」

「かっちゃんは大抵最初は右の大振りなんだ。どれだけ見てきたと思ってる。いつまでも雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ、、、僕は『頑張れ‼︎』って感じのデクだ‼︎」

「ビビりながらよぉ、そういうとこがムカつくなあ」

起き上がった勝己は、爆破の個性を使いながら出久に殴り掛かる。

「麗日さん! 先にっ、、、!」

「よそ見とは余裕だなぁ、デク!」

これは出久しっかりとガードした。それを見た勝己は焦ってしまった。焦りからか次の攻撃は単調になってしまった。だから出久にまた読まれた。

(次は何だ⁉︎ かっちゃんなら焦ってまた!右の大振り!)

「ーーーー‼︎」

避けた勢いで勝己から距離を取った。

(大丈夫、動きは読めてる。でも一筋縄ではいかないよね。取り敢えず今は距離を取る!)

勝己が攻撃に入ろうとした隙をついて走り出した。

「待てコラ!デク‼︎」

勝己が後を追うもそこに出久はいなかった。どうやら出久はうまく撒けたようだった。

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

side飛耀

勝己が出て行ってから少し時が経った。

「さて、私も迎え撃つ準備をしようかな」

部屋に散らかっているドラム缶や鉄骨などを部屋の隅に運び終えた時、

「よし、これでいいかな」

ドォンという音が聞こえた。

「おっ! 戦闘始まったね」

取り敢えず現状を聞くために勝己に連絡したが、、、

「返事がない只の屍のようだ」

返事が返ってこなかった。

「はあ、仕方ない。勝己くんの言動から考えて出久くんを狙うだろうから私はお茶子ちゃんを相手にすればいいね」

そう言って核の前で待つ。

 

一方、出久と別れたお茶子は今、飛耀のいる部屋の入り口から様子を伺いながら入り、柱の陰に隠れた。

(発見! 後はデクくんが来るまで見つからないように、、、)

「それにしても、勝己くんには困ったものだね。せめて無線には出て欲しいよ、そう思うでしょ、お茶子ちゃん?」

「ーーー⁉︎」

隠れていたお茶子の前に一瞬で現れた。

いきなり現れた事といることがバレていた事の二重の意味で驚いたお茶子はすぐに飛耀から距離を取った。

「あはは、なんでバレたんだって顔してるね。さて、私はどうしていることがわかったのでしょうか?」

「隠れる所を見られてた?」

「残念、不正解。答えは反響定位」

「反響、、定位?」

聞きなれない言葉に疑問符を浮かべるお茶子。

「そう、反響定位。エコーロケーションって言ったらわかるかな?」

「エコーロケーション、、、その言葉ならわかる」

「で、音の反響を使ってお茶子ちゃんの位置を特定したってわけ」

「飛耀ちゃん、そんな事も出来るんやね。流石にチート過ぎひん」

「反響定位は訓練すれば誰でも出来る技術だよ、まぁ音を聴き分ける能力によっては距離とか正確性に違いはあるけど」

「そうなんやね」

お互い話しながらも警戒を怠らない。

その時、下の階から地震にも似た揺れと大きな音が響いた。

「うわっとと」

いきなりの揺れに驚き態勢が崩れた。

その隙をついてお茶子は自身の体を軽くして飛耀を飛び越え核に迫った。

「お茶子ちゃん、そんな事も出来るの⁉︎」

「負担の大きい超必です。ーーー解除!」

核に触れようとした瞬間目の前から核が消えた。

「ーーー‼︎」

「でも残念。私の速さを失念してたね」

お茶子が触れるより早く飛耀が核を回収した。

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

「さて、このまま核を持って逃げ回ってたら勝てそうだけどそれじゃあつまらないよね。だから掛かっておいで、ヒーロー?」

さっさとおいでよ、と言わんばかりに手招きしながら挑発したがお茶子は挑発に乗らず身構えた。

 

「あれ、来ないの? ならこっちから行くよ」

と言いながらお茶子に一瞬で近づき殴るもすんでのところで避けられた。

「お茶子ちゃん避けないでよ?」

「いやいやいや、避けなかったら死ぬわ!」

そう反論するのも仕方ない。飛耀の拳は柱の一つを粉砕していた。

「大丈夫、大丈夫。ちょっと上半身と下半身がお別れするだけだから」

「そやね、それなら大丈夫、、、ってなるかい⁉︎ 上半身と下半身がお別れしたら死ぬわ!」

「あはは、そうだね。だから頑張って避けてね?」

「理不尽⁉︎」

「でも私、ヴィランだから」

そう言って攻撃を再開する。

 

「それにしてもお茶子ちゃん、避けるの上手いね」

かれこれ数回殴っているが未だ飛耀の拳は当たっていない。

「当たったら死ぬんやから当然や‼︎」

必死だった。

「あはは、確かに。さて後2分くらいかな。このまま足止めすれば私達の勝ちですね」

飛耀の言葉にお茶子は気付いた。

「もしかして、初めから時間切れを狙ってたん?」

「そうだよ。それに勝己くんと出久くん、なんか因縁ありそうだったからね。ならこの機会に払拭してもらおうかなって」

 

お茶子と会話しているその時、お茶子のインカムから声がした。

 

『行くぞ‼︎ 麗日さん‼︎』

その声と同時にお茶子は近くの柱にしがみついた。

その後すぐに、下の階から破砕音と共に飛耀とお茶子の間の床が吹き飛ばされた。

これには流石に飛耀も驚き判断が遅れたが直ぐに状況を把握するとお茶子が柱を振りかぶっているところだった。

 

「即興、必殺! 彗星ホームラン!」

下から吹き飛ばされてきた瓦礫を飛耀に向かって打った。

流石の飛耀も大丈夫とはいえ、当たると痛いので咄嗟に顔を守ってしまった。つまりお茶子から目を離してしまった。その隙をお茶子は見逃さず自身を軽くし瓦礫と一緒に核兵器に迫った。

 

「解除、回、、、うわぁぁぁ」

後少しで核兵器に触れる瞬間、お茶子は吹き飛ばされた。

 

「モード鷲獅子(グリフォン)、此れを使わされるとは思わなかったよ」

そう言った飛耀の背中には一対の翼が生えていた。

 

その瞬間、試合終了のブザーが鳴った後、アナウンスが流れた。

 

『勝者、Dチーム!』

 




直前までどっちを勝たせるか迷いましたが飛耀ちゃんに勝って頂きました。

用語説明
モード鷲獅子
飛耀の個性の一つ。見た目は一対の翼が出現する。
風を操る事が出来る。


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第9話

話が上手く纏まらず長くなってしまった。
駄文ですがどうぞ。


 

「さてと、皆の所に戻ろうか、えっと大丈夫?」

「だ、大丈夫、、、ちょっと個性使い過ぎただけやから、、、」

とは言っているが明らかに顔色が悪かった。

なので飛耀は手を貸すことにした。

 

「お茶子ちゃん、ちょっと失礼」

そう言ってお茶子を抱き上げた。俗に言うお姫様抱っこである。

「うわぁ!」

いきなり抱き上げられたから変な声が出た。

「ひ、飛耀ちゃん⁉︎ いきなりなにっ⁉︎」

「明らか無理してそうだったからね。良くなるまで運んであげるよ」

「あ、ありがと、、、////」

「どういたしまして」

今更だが一つ言っておく事がある。飛耀は美少女だ。中学の時、本人は知らないがファンクラブがあった。それも男性より女性の方が多かった。割合で言ったら2:8くらいだろうか。つまり何が言いたいかと聞かれたらこう答えよう。飛耀は天然な女誑しなのだ。

 

「さて、下に降りようか」

そう言った飛耀が向かった先は窓だった。

「あの、飛耀ちゃん、、、まさか、、、」

お茶子が予想した通り飛耀は窓枠に足を掛けるとお茶子を抱き上げたまま5階から飛び降りた。

「うわあぁぁ⁉︎」

お茶子の悲鳴が上がった。

「お茶子ちゃん、そんなにしがみ付かなくても大丈夫だよ」

グライダーで滑空するように背中の翼を操作し緩やかに地面に降り立った。少し歩くとオールマイト先生がいた。どうやら勝己くん達を迎えに行く途中みたいだ。

「オールマイト先生、二人のことお願いします。特に勝己くんを」

「ああ、分かっているよ。逆廻女子」

どうやら、オールマイト先生も同じことを思ったらしい。私のお願いを理解してくれた。

 

「今のお願いってなんやったん?」

と私とオールマイト先生のやり取りを見てお茶子ちゃんが質問してきた。なので私は簡単に説明した。

 

「二人の関係の事だね」

「?」

簡単に説明し過ぎてお茶子ちゃんの頭の上に疑問符が浮かんだ。どうやら理解はされなかったみたいだ。

 

「つまりね。この模擬戦で勝己くんと出久くんの関係が悪い方にいかないかお願いしたんだよ」

「ああ、そう言う事か!」

ポンと手を叩いて納得する。

 

(まぁ、オールマイト先生に頼まなくても勝己くん達なら問題なさそうだけどね、女のカンだけど)

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

「さて今から講評の時間だが、まあ今回のベストは逆廻女子だ‼︎」

「当然ですね」

さも当たり前のように答える。

「では、逆廻女子が何故ベストだったかわかる人‼︎?」

「はい、オールマイト先生」

クラス1胸の大きい生徒、八百万百が手を挙げた。

「それは逆廻さんが一番状況設定に順応していたからです。爆豪さんの行動は私怨丸出しの独断、それに屋内での大規模攻撃は愚策。これは緑谷さんも同様の理由です。麗日さんは中盤までは良かったのですが最後の攻撃が乱暴すぎたこと、以上のことから逆廻さんがベストだと判断しました」

「(思ったより言われた‼︎)、、、まあ、正解だよ、、、」

「常に下学上達! 一意専心に励まねばトップヒーローにはなれませんので!」

 

続いて第ニ戦、Bチームがヒーロー側、Iチームがヴィラン側になった。

開始まで時間があったのでお茶子ちゃんと話しているとお茶子ちゃんが質問してきた。

「飛耀ちゃんは、この試合どっちが勝つと思う?」

「うーん、そうだね」

と考える素振りを見せてから答えた。

「ヒーロー側、焦凍くん、目蔵くんの方が勝つと思うな」

「飯田くんの方の3人チームじゃなくて?」

「確かに3人の方が勝率は高そうに見えるけど、今回だと個性の相性が悪いね。まず透ちゃんの個性は見えないのは武器になるけど、目蔵くんみたいに索敵に優れた個性持ちがいると強みを生かせないし見えない事のアドバンテージがなくなれば無個性みたいなもの。猿夫くんと天哉くんの個性も攻撃方法は中・遠距離より近距離戦闘が主体だから焦凍くんの個性で遠距離から攻撃されたら対処の仕様がない。それに天哉くんの速さもあのフロアじゃ存分に活かせないね。あと焦凍くんの個性がビル全体に及ぶ程強力だったら入口から建物全部を凍らせれば一瞬で勝負はつくんじゃない? ってあれ、皆どうしたの?」

飛耀が言い切って辺りを見ると皆飛耀に注目していた。どうやら皆飛耀の予想を聞いていたようだ。

「いや、悪い。逆廻の予想が合ってそうだったから聞き入っちまった」

と鋭児郎が皆の思いを代弁するように答えた。周りのクラスメイトもウンウンと頷いている。

「まあ、あくまで個性の相性から見る予想だから間違ってるかもしれないけど」

 

飛耀の言葉とは裏腹に第2戦目は飛耀の予想した試合展開になった。焦凍の個性で建物全体を凍らしての圧勝だった。

 

「おお、焦凍くんの個性は凄いね」

皆が焦凍の個性を見て寒い訳ではないがガクガクと震えている中、飛耀は率直な感想を述べた。

「仲間を巻き込まず、核兵器もダメージ無し、尚且つ敵も弱体化!」

「最強じゃねぇか‼︎」

飛耀の感想に続くようにオールマイト先生、鋭児郎が発言する。

 

「私はどちらかといえば飛耀ちゃんの予想通りだった事に驚いているわ」

「確かにな!」

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

あれから戦闘訓練も終わり放課後。

因みにその後の戦闘訓練でも飛耀の予想は悉く当たり、皆の戦闘の解説やアドバイスなどをしていたせいか、オールマイト先生よりよっぽど先生ぽかった。その姿にオールマイト先生がショックを受けて部屋の隅でいじけていたのが記憶に新しい。なんかもっとイジry、、、。なんかいじけてる姿がクマみたいで可愛い?いや、面白い?違うなウケるが正しいかな?まあどうでも良いや、、、

 

閑話休題

 

現在は戦闘訓練について皆で話し合っていた。

「逆廻くんなら轟くんのチームとどう戦ったか聞いてもいいだろうか?」

「あっ、それ、私も気になる!」

と天哉の質問に三奈が便乗する。

「うーん、そうだね。私なら焦凍くんの個性を無効化しながらの持久戦かな?」

「無効化って⁉︎ 轟のあのスゲー個性をか⁉︎」

「だな! 逆廻の個性って身体強化系だろ⁉︎」

「飛耀ちゃんの個性を見てると出来るとは思えないのだけど?」

実、鋭児郎、梅雨の順に返答した。

「えっ?」

何を言っているのと言わんばかりに飛耀はポカンとした顔を見せた。その表情を見て皆も頭に疑問符を浮かべた。

しばし、沈黙が流れた後、飛耀が疑問点に気づき答える。

 

「一応言うけど私の個性って身体強化系じゃないよ」

少し間を置いてから皆の絶叫が響いた。

 

「私の個性はラストエンブリオって名前です」

「うん」

「、、、」

「、、、」

ポク、ポク、ポクとどこからか木魚の音が聞こえそうな程、皆飛耀の次の言葉を待ったが、、、

 

「えっ、それだけ⁉︎」

と痺れを切らした三奈が聞き返す。

「それだけって分からなかった?」

素でそう思っていたのかキョトンとしていた。

「「「「わかるかっ‼︎」」」」

全員からツッコミが返ってきた。

そして、一呼吸置いてから飛耀が皆が分かるように説明しだした。

 

「そうだね。じゃあ系統樹の操作って言ったら分かるかな?」

「なるほど、そう言う事でしたのね」

「俺も理解した」

「チッ」

どうやら飛耀の説明で百、焦凍、勝己はわかったようだ。勝己だけは舌打ちだったが、、、

「つまりどう言うことだ?」

「逆廻さんの個性は系統樹を操作して生物の能力を自分の物に出来るって事ですわね」

「それも人に限らずいろんな生物の能力を使えるんだな、戦闘訓練のやつもその一つだったと」

「大まかに言えばそう言うことだね」

「大まかにってことは厳密には違うってこと?」

「まあ多少ね、でも間違ってもいないからその認識で良いよ。てか細かい説明は面倒だし」

 

その一言で一旦飛耀の個性については話が終わった。一部の生徒が気になってはいたがそれはいいだろう。些末な問題だ。

 

「勝己くん、帰るの?」

飛耀の個性に興味が無くなったのか勝己が鞄を持って帰ろうとしていた。

「爆豪! 緑谷を待たないのか?」

「ああん、何で俺がデクを待たねぇといけねぇんだ!」

そう言って教室を出て行った。引き止め失敗である。

「じゃあ、私も帰ろうかな」

勝己に続くように飛耀も教室から出て行った。鞄も持たずに、、、

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

「あ、いたいた、勝己くん!」

と先に教室を出た勝己を呼び止めるが、、、

「、、、」

無視された。

「無視は酷いよ。勝己くん」

何度も呼びかけるが無視される飛耀。

「作戦だけど、、、いらねぇよ‼︎ んなのっと言ってナメてかかって出久くんに出し抜かれた勝己くん!」

この一言に勝己は反応せずにはいられなかった。

「だあぁぁ‼︎ テメーはさっきからなんなんだ‼︎」

「なんなんだ‼︎ って人が呼んでるのを無視するからでしょ」

正論だった。流石の勝己もこれには言い返せず舌打ちした。

「チッ、、、でなんだ?」

「折角だから一緒に帰ろう?」

「何で俺がテメーと一緒に帰らねぇといけねぇんだ‼︎」

「そんなの私が勝己くんを揶揄う為に決まってるよ!」

ドーンと効果音が鳴りそうな程堂々と答えた。

「ふざけてんじゃねぇぞ‼︎ ゴラァ!‼︎」

今の勝己の顔を見たら子供が泣き出しそうな程人相が悪かった。ヒーローやなくてヴィランか、と言いたくなるくらいには顔が恐かった。

「ふざける? 違うね。私言ったよね油断はしないように、足元掬われないようにってなのに出久くんに出し抜かれて負けそうになったのは誰だったかな?」

上目遣い気味に指を指しながら真剣味が強い口調で答えた。流石の勝己も苦虫を噛んだような表情をしながら口籠るしかなかった。

 

「取り敢えず、勝己くんは反省も兼ねて出久くんと話をした方が良いと思うよ。じゃっ、私は忘れ物したし取りに戻るね」

そう言った飛耀の目線の先。校舎の入り口の方から出久が走ってきていた。飛耀は出久とすれ違う時、「頑張って」と声を掛けてから教室に戻っていった。

 

side出久

 

少し前、勝己が帰ったと聞いて急いで追いかけた。

「あっ、いた!」

校舎の入り口から少し進んだところで飛耀と話しているのを見つけた。二人に近づいていくと飛耀が勝己に何か言った後こっちに向かって来た。

「頑張って」

すれ違う時飛耀にそう言われた。出久は心の中でありがとうと思いながら勝己の名前を呼んだ。

「かっちゃん‼︎」

「ああ?」

「これだけは君には言わなきゃいけないと思って」

僕の個性。母にも言ってない秘密。

「僕の個性は人から授かったものなんだ」

「、、、、、、」

「誰からかは絶対に言えない! 言わない、、、でもコミックみたいな話だけど本当で、おまけにまだ全然モノにできてない状態の借り物で、使わず君に勝とうとした! けど結局勝てなくてソレに頼った! だからいつかちゃんとモノにして僕の力で君を超えるよ」

 

言ってからハッと気づいた。騙してたんじゃないって言いに来たのに宣戦布告みたいになってしまった。

 

「なんだそりゃ? 借りモノ? わけわかんねぇ事言って、これ以上コケにしてどうするつもりだ、、、なぁ⁉︎」

そういうつもりじゃと反論するより早く勝己が口を開く。

「だからなんだ⁉︎ 今日俺はてめェに負けた‼︎‼︎ そんだけだろが! そんだけ、、、氷の奴見て敵わねぇんじゃって思っちまった! ポニーテールの奴の言うことに納得しちまった。逆廻には試合の尻拭いをされて勝たせてもらった。クソが‼︎‼︎ なあ、てめェもだデク‼︎‼︎」

拳を握りしめ悔しさに打ち震えながら話続ける。

「こっからだ! 俺はこっから、いいか‼︎ 俺はここで一番になってやる‼︎‼︎ 俺に勝つなんて二度とねぇからな‼︎ クソが‼︎」

涙目になりながらも宣言した後、勝己は踵を返し帰って行った。

 

side出久 end




鋭児郎が使いやすい

次回更新は年内中を目指します。


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