反逆者のヒーローアカデミア (レクレア)
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プロローグ

初投稿ではないですが初投稿です

そのうち文章は長くなるかと?


僕のヒーローアカデミア

 

人類の八割が個性を持っており、能力を悪用するヴィラン、そのヴィランを取り締まるヒーローのいる世界

主人公である緑谷出久がそんなヒーローになるため、日々努力をしていく物語である。

 

正史ではそんな内容なのだが、この物語はその平行世界。雄英高校1-Aの中に1人、普通なら交わらない存在が交わってしまったお話…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天邪鬼」

わざと人と逆らう言動をする捻くれ者という意味

又はそれらの行動を好む鬼の一種、妖怪

古事記に記されている天探女という神が所以

 

 

 

協調性を求められ、同調的になる日本の国民性からすると、場の空気を貶すような捻くれ者は大多数に迷惑がられ、指を差され、弾圧され、罵倒を受け、居心地が悪いだろう。

 

しかし、この日本社会で不幸にも個性として『天邪鬼』が発現してしまった少女がいた。

 

彼女の名は「鬼人正邪」

異形型なため、頭部に角の生えた以外は特に特筆すべき部分はない外見をしている。

 

彼女は個性が原因で、4歳以降の人間関係が全て悪い方向へと向かった。両親が極力彼女へと関わる事は無くなり、友人も彼女の捻くれ度合いを察すると皆離れていった。

小学校、中学校生活ではいじめの対象にすらされた。教師も教師で彼女を問題児扱いしていたために見て見ぬふり、酷い時は教師らすらもいじめに加担していた。

 

そんな生活を送れば彼女もこの世に嫌気が差し自ら命を…なんて事はなく、相手らを徹底的に無視し、自らの夢に向かって進んでいる。

 

中学3年生の入試シーズン

彼女は夢のために雄英高校ヒーロー科へ受験しており、ペーパー試験も終了。残るは仮想ヴィランを倒す実技試験のみとなった。

 

 

ここで、彼女の個性である「天邪鬼」を説明しよう。

 

個性:天邪鬼

能力:ありとあらゆるものをひっくり返せる!

ひっくり返せるものの大きさに応じて身体に何らかの負担がかかるぞ!

デメリットを考えなければひっくり返せるものは物理法則も無視出来る!

 

 

そんな能力で彼女は仮想ヴィランに挑むのである。だがここで疑問な点が1つ出る。

 

彼女の性格から試験のルールを守るだろうかということである。

結論を言おう、彼女は捻くれ者と言っても周りの空気を読まないだけであるのだ。

例えば、ある3人組芸人の様に「押すなよ!」と言われても絶対に押す事は無い。「俺がやるよ」と振られても絶対に彼女は「じゃあ、俺がやる」と言わない。そんな、KYな捻くれ者だった。

 

そもそも何でもかんでも真逆な事を行う捻くれ者なら即ヴィラン、犯罪者扱いされているだろう。

だが彼女はその扱いをされていない。つまり最低限のルールマナーは守るのである。

 

 

 

 

さて、そんな彼女の過去話などはやめてこれから彼女の現在から始まる物語の話をしよう。

 

これは、彼女がヒーロー学を学んだ末に反逆者、革命家へとなる物語




正邪可愛いよ正邪


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鬼人正邪という女

入試試験前のお話が出来ましたのでそちらを先に上げます


本当にこの数時間で書き直すことになるとは……
申し訳ない…


私は、ヒーローになりたかった

 

子供の頃の夢だ。他人に優しくすれば感謝をされる。それがたまらなく嬉しかった。

ありがとう、笑顔でその一言を言ってもらうだけで幸せになれる。だから、みんなに感謝される為にヒーローになりたかった。

両親も、幼稚園の友だち、先生も応援してくれた。私みたいな優しい子ならヒーローになれると言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個性が発現するまでは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個性、天邪鬼

異形型で個性黎明期に見られた、妖怪型(異形型の中でも天狗や河童等といった妖怪のような事が出来る。又はその妖怪にある特徴が身体的に現れる能力)に属するもので、身体も鬼の角が生えて来た。しかしそれ以外は大して人間と変わらなかった。あくまでも外見はであるが

 

個性が発現して以降、今までならばする筈のない悪戯が唐突にやりたくなった。

初めは我慢し、耐えていたものの、魔が差して小さな悪戯をした。そこから私の友好関係や両親との関係が崩れていった。

 

急に性格の変わった私を見て両親は医者へ連れて行った。曰く「個性の発現のせいである」との事だった。

 

どうやら、妖怪型の個性が発現した人らは性格がその元の妖怪へ引っ張られていくのだそうだった。つまりこの性格は天邪鬼の性格である「悪戯好き」「捻くれ者」へ引っ張られているせいであるという。

 

どうやら現在、処置をする事は出来ないらしく、私は両親や友だちらに迷惑をかけないように距離を置いた。独りでいれば悪戯心は抑制出来るからだ。

 

友だちも私の考えている事を理解してくれ、仲はいいが気を遣ってあまり喋らず、遊びにも誘わないでくれた。悪戯心が抑えきれずに多少の悪戯をした時も許してくれた。

 

しかし、小学校へ入学すると同時に幼稚園の友だちとは自然と離れ離れになった。

数人は同じであった幼稚園の子はいるものの、それでも大半は知らない人間だ。

 

私は幼稚園の頃と同じく距離を置いた。他人に危害を極力加えたくない一心で。

だが周りは説明をしても理解が出来ないのか何度も何度も接触してきた。担任も友だちを作るように言ってくる。

 

それでも私は距離を置き、独りでいた。

すると周りは私のことを虐めの対象にし始めた。内容は非常に陰湿だった。靴を隠され、画鋲を入れられ、教科書をズタズタに、机も落書きだらけ、周りに人のいない時は殴る蹴るのオンパレード

 

まずは教師に相談した。だが何も改善してくれなかった。私の妄言とまで言ってきた。

次に両親に相談した。すぐに学校へ抗議に向かってくれたが教師らは私が妄言を吐いてると言って両親を言いくるめた。きっと時折悪戯をしてしまっていたからそれが理由で私を信じきれないのもあったのだろう。それから両親は私に対して冷たくなった。本当に私は何もしていないのに

 

それなのに何故私は引きこもらずに学校に行っていたのか。それは幼稚園の頃からの友人がいたからだった。

 

だがある日廊下を歩いていると教室から声が聞こえた。最悪な内容だった。

 

虐めの首謀者は、その友人と思っていたやつだった。

 

かつて私はヒーローになりたいと言った。

友人だったやつはその夢に賛同した。

 

それなのに、そいつは周りと共にその夢を貶し、罵り、馬鹿にした。

 

 

私は泣いた。自室で喉が枯れるまで、目が腫れ上がり、涙が出なくなるまで泣いた。

そして、何を言われようと数日の間、自室から出なかった。私の心は変わり始めていた。

 

人間は信用しては行けない…それが両親だろうと、友人だった人物だろうと……

 

そして、何がなんでもヒーローになってやると決めた。虐めてきた奴らを、教師を、両親を見返すために……

 

 

 

もう、私の中にはかつての他人を思いやり、感謝を貰いたいと思うヒーロー像はなく、復讐のため、見返すため、そしてなにより、私のためにヒーローになろうとしていた。

 

 

何をされようと虐められようと無視し、学力や個性を伸ばした。全てはヒーローになるため、雄英高校へ入るために、周りの全てを見返してやるために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この私の物語は、凍ってしまった私の心が溶けていくまでの物語でもある。




どうしても文字数が稼げねぇ…


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入試試験(実技)

うちの世界の正邪は多分こんな感じで合ってるはず…
合ってる……はずや……


雄英高校

 

個性社会になり、ヒーロー科等と呼ばれる学科が出来た。その学科のある高校でも最高峰に位置する所がそこである。

 

 

私は、自身の目標のためにその最高峰と呼ばれる雄英高校へ受験していた。

 

 

元より独りでいる事の多い私は、その時間の大半を勉学や読書に費やしていたために、文系や社会を主として、学力は非常に優秀であった。

筆記試験は問題ない程度に解け、残すは実技試験のみとなる。

 

説明を聞いている分にはなんてことは無いただのロボット訓練のようなものか。こんなもの私の個性を以てすれば簡単にクリアできる内容だろう。

 

そう思いながらある程度聞き流していると、叫ぶような大声で質問するバカが現れた。さらにボソボソ喋るソバカスの男と、聞き流している私に向けて注意をしてきやがった。

 

ああ、ああいう真面目ぶってるやつは嫌いだ。普段から自分は当然のように真面目キャラを装っているのに、いざとなると多人数のいる方へと着く。本当に真面目なやつなんているわけがない。

 

 

試験会場は雄英高校敷地内にある訓練所?らしい

中に入ってみるとどれだけ予算があるのかと思う程リアルな市街地が建てられている。

 

周りはザワザワとしているがそんな事は関係ない。これはあくまでも自分の力を最大限に引き出す試験なのだ。深呼吸をして合図を待つ。

簡単だ、ポイントである仮想ヴィランのスイッチのON/OFFを、私の個性を使って変えるだけでいいのだ。そう言い聞かせる。

 

「はい、スタート」

 

瞬間、屈みこみつつ脚に目一杯の力を加えて飛ぶ。異形型なので常人よりもはるかに高い身体能力を駆使して試験者という人混みを飛び越え、仮想ヴィランの無力化へ向かう。

 

不意な開始宣言など、なんてことは無かった。日頃から親切に何かが起こる、何かをするなんて伝えられたりはしない。自身が虐められて気付いた教訓。他人を信じる事が出来なくなったため故の思考だ。

 

唐突な試験開始に戸惑う他試験者にざまあみろという顔をしながら次々に仮想ヴィランを無力化して行く。簡単な事だ、仮想ヴィランを視界に入れて具体的に何をひっくり返すのか念じるだけ。それで個性を使用できる。ただ個性を使用する度に己の身体が傷付いて行くが、大して痛くはない。

 

10…20…30…脳がアドレナリンを分泌してくれるお陰で怪我という痛みによる思考能力の低下は抑えられる。心配ない、この調子なら合格など容易いはずだ。

 

試験終盤。仮想ヴィランからの攻撃は1度たりとも受けていないのに全身打撲と切り傷だらけ、息も切れ切れではあるがまだ戦える。

 

突然地鳴りが響く。震源地であろう場所へ自然と目が行く。そこには巨大ロボが佇んでいた。

 

 

「…おいおい、嘘だろ……?」

 

思わず唖然と見てしまう。誰かの「逃げろ!」という叫び声で正気に戻り、私は逃げるために足を動かす。

 

途中瓦礫に挟まった少女を見た。きっと地鳴りのせいで瓦礫が降ってきて下敷きとなったのだろう。

そんなもの知らない、これは試験だ。態々助けるまでの事をしてなんの利益になるのだろうか。

だが、私の足は止まってしまった。虐められて以降、合理的主義で自分への利益が無ければ行動へ移すことはまずしない私が、足を止めた。

 

動け…!動け……!こんなやつを助けたってなんの得にもなりやしない…

 

 

 

だが、誰も助けずにあの巨大ロボに踏み潰されたら……?

 

脳内で答える前に私は動いていた。挟まった瓦礫に個性を使う。瓦礫を『重いもの』と見立て、『軽いもの』へとひっくり返したのだ

 

途端、私の身体に強い重力がかかる。いや、体重が何百キロも増加したと言った方が正しいか。

異形型で幾ら身体が人よりも頑丈とはいえ、思わず膝をついてしまう。

 

 

「ぐ、うぅ…おい、お前…!この私が個性を使ってまで態々手を貸してるんだッ!さっさと抜け出してこの借りを10倍にでもして返しやがれ……ッ!!」

 

「で、でもこの瓦礫のせいで脚が…折れたかもしれへん…ごめんね、ここまでしたのに…ウチ、動けへんわ……」

 

少女は苦笑いを私へ浮かべる。

……仕方ない、このままだと共倒れになる。それだけは私にとって不利益だ。生憎私の個性に解除という言葉はない。ひっくり返したらひっくり返しただけデメリットが私の身体に乗っかっていく。

 

「……しゃあねぇ、よく聞けッ!私の個性で、お前の足を治す。だがその後私は個性のデメリットで気絶、下手したら危篤になる……ッ!そこで、だ!お前の個性なり何なりを使って私と逃げろ!それで貸し借りチャラにしてやる!」

 

少女の返事を待たずに私は個性を使って重症の状態をひっくり返した。折れた足は綺麗に治っていく。だが、逆に私の両足が変な方向へと曲がって行く。駄目だ、意識が持たない。

 

 

個性で治した少女がなんとか瓦礫を抜け出した。私の姿を見てさぞ驚いてる…いや、心配…してるのか?段々と暗闇へと意識が向かう中、遠くで「SMAAAAAAAASH!!!!!!!」という声、そして何かの破壊音が聞こえた。




(百合展開は)ないです。
キャラにあまり喋らせないのは多分私の癖のようなもの
というか喋らせ始めたらグダグダと永遠に話すことになりそうだから控えているのかもしれない


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結果発表

( ˙꒳˙ ).。oO(少し間が空いたけどどうなってるかな)


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  _, ._
(;゚ Д゚) [評価]

というわけで初投稿です。


………………

 

 

…………

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た

 

 

 

鬼と小人が何かを話している

 

 

 

内容はよくわからない

 

 

 

だが鬼が何を目的とするかはよく分かる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この小人を騙すためだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼と小人が笑い合う

 

 

 

内容はよく分からない

 

 

 

だが小人の心情は表情でよく分かる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの笑顔は───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…知らない天井だ。

 

 

身体中がビルの屋上から地面へ落下し叩き付けられた様に痛い。アドレナリンも分泌されなくなり、本物の痛みが感じるようになったのだろう。

 

 

……最悪の目覚めと言えるだろう。痛む体を無理させて起こすが足が動く気配がしない。

いや、動かそうとすると激痛が走る。

 

思い出した。試験中のあの女、あいつの怪我を私の個性で治したからか。

 

「気がついたようだね」

 

隣から声をかけられる。そっちへ顔を向けると知らないクソババアがいる……誰だこのくそばばあ」

 

「目上の人に向かってクソババアだなんて言葉を使うんじゃないよ!」

 

ヤバい、途中から口に出ていたか。ババアが思い切り頭を何か固いもので殴りつけてきやがった。あまりの痛さに悶絶してしまう。

 

「ぐ、ぐおぉぉお……」

 

「…全く、疲労と全身打撲と両足の複雑骨折。よくもまあ試験でこんなにも無茶をしたねぇ?」

 

「うぐ……ぅぅ…うるせえな、私の個性のせいだから仕方ないんだよ」

 

殴られたから今の私は頗る不機嫌だ。さっさと帰りたい…だがこの足では歩くこともままならないから困ったものだ。

 

「おい、なんでもいいから車椅子を寄越せ。それに乗って帰る」

 

とりあえず帰るための足を何とかしよう。そう考え、車椅子を要求したのだがババアはその要求を突っ返した。

 

「何言ってんだい、アンタは入院だよ。一応ここ、保健室で安静にはしてもらってるけど、疲労が回復して、私の治癒の個性を使ってからも数日は病院で寝泊まりしてもらうことになるからね」

 

F○CK!めんどくさい事になった。独りで自由気ままに動けるから早く帰りたいのに…病院、病院だと?

 

あんな監獄と同等な所、私は行きたくない!

 

「断る、あんな自由の効かない所に閉じ込められたくないね。なんでもいいから動ける程度に治せ、そうしたらここに完治するまで通院でも何でもしてやる」

 

勿論嘘だ。動ける様になればここに来るとかいう無駄な事はしない。それにある程度治れば私で後ははどうとでも出来るんだ。

 

異形型の中でも妖怪型に括られる個性持ちは常人よりも体力があり回復力も比較的に高いとされている。私も他の妖怪型の個性持ちに比べれば回復力こそ高くは無いが、体力はある程度の自信がある。このババアの個性で治らなかったものを私の個性で治す。

私の個性のせいで数日は疲れっぱなしになるだろうが、自由に動けるのなら安いものだ

 

「……仕方ないね、じゃあ治せるだけ治すよ」

 

そう言ってババアは顔を寄せてくる。

…ん?唇を……や、やめろ!来るな!私にその唇を近づけるなァァァァァ!!!!!!!!

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

「次、機械田操作」

 

 

「実技のポイントは申し分無いが、筆記が他受験者と比べて良くないな」

 

 

「では不合格で、よろしいですか?」

 

 

「異議なし」

 

 

 

…ここは職員室。現在は受験生の合否を判定する会議を教職員全員参加の元で開いている。

 

 

「次、鬼人正邪」

 

無精髭に手入れのされていない、伸びっぱなしの髪の毛をした顔の男が資料を手に取る。

 

「筆記、実技共に平均を超えています。中学での内申点が低いのは気になりますが、この生徒を落とすのは非常に惜しいかと思います」

 

宇宙服を着た人物が内申書を他教師に向け、内容を見せる。確かに筆記で良い点を取ったとは思えない程に、成績が悪い。

 

「内申点が低い事に関しては大した問題ではありません。むしろこのまま雄英で内申点の低い理由を探し出し、矯正させる方が我々にとっては有益かと」

 

外見、人間とは思えない四角い体をし、蒟蒻…いや、コンクリートの姿をする男が話す。

 

雄英高校の特色は自由が売りである。それは生徒に限らず教師も同様で、独断と偏見を以て退学にさせる等も容易く行う男も存在するほどだ。

 

また、ヒーローを育てるための高校であるが為に、強い個性を持つ受験生が合格点に届いているのなら、多少の性格難や中学等での内申点なんかは気にせず、入学後にこちらで矯正する方が余っ程に良いとされている…らしい。

 

前例は不明であるが、雄英を受かるほどの実力を持つ者が何かの拍子にヴィランへの道を歩むことがあった際、厄介になるのはヒーロー側…その為、ヒーローを夢見ているのなら性格などに問題があってもそれらを直すのが雄英の務めであると言った具合だ

 

「とりあえず合格、という事でいいかい?」

 

額に傷のある小さなネズミの一言で教師全員は異議なしと答える。よって鬼人正邪の雄英高校入学は確定したのだった。

 

 

 

 

…………

 

 

 

「えー、では次はクラス分けですが…」

 

 

「俺から1つ、お願いしてもいいですか?」

 

片手を上げた無精髭の男は他教師の許可を取ることなく淡々と話し始めた。

 

「ヒーロー科1-A組に、緑谷出久と鬼人正邪の2人は確実に入れてください」

 

「と、いいますと?」

 

「コイツらの実技を見ていると、合理的では無いのでそれを俺が担任をしている間に矯正させます」

 

緑谷と正邪の戦い方…どちらも自ら怪我を負いながら仮想ヴィランを倒している。しかも双方最終的に満身創痍で動けなくもなっている。

 

無精髭の男からすると、その点がヒーロー兼教師である自身にとって見過ごせない事態であった。

 

ヒーローとは守るべき市民にとっての希望の象徴だ。だがそんなヒーローが傷だらけのボロボロな状態になり、市民の目に入ったらどうなるか。

簡単な事だ、不安や疑心が産まれる。ヒーロー活動を行う以上市民に不安や疑心を持たせてはいけない。

 

ヒーロー科に入る以上、個性を自制させて、過度な怪我を負わない様にと無精髭の男は緑谷と正邪の言動を矯正するつもりなのだった。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

持ち前の体力で治癒を終えた私はこの数日の間、自宅に引きこもっていた。理由は単純であり、外に出る理由がないのと、クソババアの個性のせいでここ数日の気力が両足の治癒に根こそぎ持って行かれた為だ。

 

自室で惰眠を貪りながらパソコンを立ち上げ、某検索サイトで時事情報に目を通していく。

ガタリと玄関から物音がすると、私は一目散に自室から飛び出して手紙が来たかと確認する。

 

私宛の手紙が一通…雄英高校からのもの、遂に来た。さっさと自室へ戻ると適当に外側の紙を破いて中身を出す。

 

どうやら中身は映像端末の様で、起動してみると画面からオールマイトが映った。

 

「えっ、ちょ!?マジか…!」

 

生で見た訳では無いが、画面越しにでも有名人が自分の名前を呼んでくれ、話をしてくれるのには興奮する。どうやらオールマイトは今後雄英高校で教鞭を執る事になったらしい。

 

『それで、鬼人正邪少女!君は筆記と実技共に平均以上の成績だったからね!悠々に合格だよ!』

 

ふん、当然だろう。この日の為にどれだけ勉強をした事か。コレで受からない訳がない。

 

『ただし、実技試験の映像を見せてもらったけど、自分を犠牲にする戦い方はあまり良くないね。ヒーロー科に合格した以上はその点をしっかり直していくべきだ!』

 

…分かっている。個性の性質上仕方がないと思っているが、出来るのなら怪我などしたくない。

 

眉間に皺が寄り、口元をへの字にして端末の画面を眺める。もう既に端末には映像は映っていない。写っているのは今までで最も醜い顔をした自分自身だ。何とかしなければいけない、だがその手段が無い以上何も出来ない。

そんな、諦めた自分が大嫌いだ。これは自己嫌悪だ。オールマイトが私の個性の性質を理解して無いから言ってくる無茶振りに対してでは無い。

 

情けなく、向上心を無くし、悟ったように前進を止める自分への嫌悪…そうだ、全ては私の為に。

 

今までもそうだった。全て最終的に私がお釣り程度でも利益が出来るのならと行動に移してきた。

この、デメリットの大きな個性も…いつかそれを無くして……そう考えるといても経ってもいられなくなった。

 

そうだ、この高校生活3年間で何としてでも私の個性を使いこなしてみせる。

そう決意をし、顔を上げ、個性の鍛錬を始めるのだった。




そのうち個性がどうにかなります

知らんけど



追記…ちょっぴり文章を変えました。


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個性把握テスト

これ、私の思い描いてる正邪じゃない…
やはり正邪はステインポジションの革命家的な奴として出すべきだったか……?


雄英高校登校初日

 

私はのんびりとパーカーを中に着た制服姿で、フードを被りながら通学路を歩いていた。

 

そういえば私の事を散々虐めてた中学は私が雄英高校に受かったと聞くや否や生徒も教師も手のひらを返したように寄ってきた。アレは気持ち悪いを通り越して滑稽過ぎて笑えてきた光景だ。

 

どうせそんな奴らとはもう二度と顔も合わせないんだから全員適当にあしらってやった。どうも教師ら側が雄英高校ヒーロー科に受かった生徒のいた中学を推して行きたいだとか言っていたが、その内容が1番聞いて呆れた。とりあえず腹いせに今までの中学教師に受けたあれやこれやを匿名で教育委員会に送り付けてみた。

 

 

実家のあの空間にも飽き飽きして来たところだったので、通学は可能ではあるものの態々近くの賃貸マンションを借りて一人暮らしを始めた。

 

今日は朝飯を作ら無かった為、登校中に腹の虫が鳴り始める。仕方ないから道中にあるコンビニへ立ち寄りおにぎりと珈琲を買い、歩きながら胃の中へと放り込む。

 

時間もそこそこに雄英高校に到着。教室探しに右往左往しながらも1-Aへと到着する。そして勢いよく扉を開ける

 

 

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机のせいs…

 

 

そして教室に入らずに勢い良くそのまま扉を閉めた。

 

 

嗚呼、拝啓我が御先祖様へ

私は非常に面倒で面倒で過労で倒れてしまいかねないであろうクラスに通う事になりました。

 

天へ祈りを捧げるような動作をしていると後ろから「は、入らないのかな?」なんて遠慮がちな声がする。

 

「あー、ここのクラスメイトか?奇遇だな私もなんだ。見た瞬間に後悔と不安に駆られる以外はいいクラスだと思うぞ。スマンな進路を塞いでさ」

 

振り返り後ろにいたもじゃもじゃ頭のそばかす男子にペラペラと喋る。男は私の話を聞いて驚きとツッコミを入れてきた

 

「えぇ!?そのクラス、良いって言えるクラスなのかな!??」

 

こうしてツッコミを入れてくれるのは嬉しい事だ。気分よくヘラヘラと笑っていると男の後ろから声が聞こえる

 

「あ、君たちは入試の時のっ!」

 

誰だ思い見てみると、入試の際に私の助けた奴じゃないか。私とそばかす男へ両手を伸ばし、握手をして来る。

 

「いやー、二人のお陰でウチ助かったんよ!あの時はありがとうね!」

 

ブンブンと手を上下に握手をされるがままにしていると後ろから低い声が聞こえてくる。何故皆んな後ろから声を掛けるのが好きなのだろうか

 

「お友達ごっこがしたいのなら他所へいけ」

 

目の前にいたのは、無精髭でボサボサ髪の寝袋に入った明らかな不審者だった。私は瞬間近場の警報機へ目をやるが不審者はすぐさま話し出す

 

「警報機を鳴らそうなどという時間の無駄な事は止めておけ。そもそも俺は不審者じゃなくお前らの担任だ、早く席に着け」

 

…抜けた顔で自称担任を眺める。そして地味男と女がそそくさと教室へ入っていくのを見て、私も入って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

あの男は確かに担任の相澤消太という先生であった。担任の自己紹介が終わり、次に彼が指示した事は体操着に着替えグラウンドへ集合するようにという内容だった。

 

普通なら入学式や教科書配布等がある筈だと皆んな思っていたようで、次々に周りが質問を投げかける。相澤先生はその質問に対してひとつの回答で生徒らを黙らせた。

 

「この雄英高校は自由が売りだ。それは生徒に限らず教師にも通用する。入学式のオリエンテーション?そんなものに出るなど合理的ではない。そんなものに時間を充てるのなら俺にとって合理的な内容の事する」

 

そうして相澤先生は教室を出る。そのまま外のグラウンドへ行ったのだろう。合理的を求めているのならあの外見ももっと清潔な格好にして欲しいものだ。アレでは不審者に間違われても文句は言えないだろうに

 

 

 

 

体操着へ着替えるために現在女子更衣室にいる。

1-Aの女子生徒は男子生徒よりも少ない様で、私を含めて7人。その1人である、試験時に私が助けた…そして助けられた奴が話しかけてきた。

 

「ウチ麗日お茶子っていうん。試験の時に名前聞きそびれちゃったから教えてくれへん?」

 

「…鬼人正邪だ」

 

「正邪ちゃんね!よろしゅうなっ!」

 

何とも、元気と言うべきなのだろうか…そんな明るい性格だ。少し、私にとって苦手な性格かもしれない。

 

「あぁ…あの時は助かった。お前を助けるつもりなんて毛頭もなかったのに身体が勝手に動いてな、個性のせいで私を犠牲にしてって方法しか取れなかったんだよ」

 

「お、おぉう…正邪ちゃんってズバズバ言うタイプなんやなぁ…」

 

苦笑いを浮かべる麗日を見て、ついヘラヘラと笑う。そんな私らの会話を見て次々に自己紹介をしていく皆

 

 

 

 

……面倒臭い、どうせコイツらは私の素性を見せればすぐに距離を置いて来る。そんな苦しい思いをするのなら、私は初めから独りでもいい。

 

私はさっさと着替えを終え、これ以上他人と話すことも無くグラウンドへと向かった。

 

 

 

 

──────────

 

個性把握テスト

 

個性有りきで体力テストを行い、総合成績最下位の生徒は除名処分するらしい。

何人かの生徒は顔を青くしていたが、私にとってはこれくらいしてくれないとここに入学した意味が無い。除名処分と言われた以上、個性を最大限に皆んな活用するだろ。

私はその上で自分の個性が伸ばせるであろうと考えた上で入学しているのだ。この先生、見かけによらず生徒に対して発破をかけるのが上手いな

 

 

だが体力テスト…私の個性を最大限に生かせる種目が少ない気もする。まあ、最悪血反吐を吐いてでも個性を活用してやるとしよう

 

 

 

初っ端からハンドボール投げで緑谷と爆豪に一悶着あったが私には関係の無いことだ。

私の番になった。さてどうするか

 

異形のため素の身体能力は高いが、それだけではあの爆豪勝己のように相当な距離を稼ぐことは出来ない。だからといって、物理法則をひっくり返すなんて事をしたらその場で満身創痍、他種目を計測出来ずに退学なんてのはしたくない

 

とりあえず、今ひっくり返せるものの中でダメージの最小限なことをするしかないか。

そう考え、サークルの中に立つ…使用回数は2回、どちらともベクトルをひっくり返すだけだ

 

地面にボールを置き、そのまま見つめ、念じる

 

静のボールを、動に…上に、ひっくり返す…ッ!

瞬間、ボールが高速で上に登り出す。まだだ、そしてまだ動いていない横方向のベクトルを……!

 

 

 

ボールは、そのまま下へ落下した。

 

 

「……あ、あ…れ……?」

 

 

失敗した。この15年間生きてきて初めて知ったことだった。この個性、一度ひっくり返した物に対しては、ひっくり返した内容のみ、ひっくり返せすことは出来なかった。

 

今回の場合、動作を無から有へ、止まっている状態から上へ動く様ひっくり返した為、個性を使用しても有から無へとしかひっくり返せなかったのだ

 

愕然とした。出来ると思っていた事が出来ないと分かり、私は膝をついて項垂れる。

 

 

仕方ないが、今やれる事だけをやるしかないか

そう思い立ち上がる。記録として1度目は0mとなった。これが最後のチャンスだ。

 

腕に力を入れ、ボールを思い切り投げる。大きな弧を描き、地面へ着く瞬間に私の個性を発動した。

 

下へ向かうベクトルをひっくり返し、上へ向かう様にする。しかし直ぐに重量に従い落下する。そして地面へと落ちた。

 

 

「記録、98m」

 

個性有りきでこの記録は決して高いとは言えない。麗日お茶子に至っては∞という記録を出しているのだ

 

だが、今の私はこれで一先ず満足をする。今後、私は成長して行く。何時か必ずここの誰よりも個性を最大限に活用出来るようになってやる…そう思った

 

 

 

……余談ではあるが、立ち幅跳びではハンドボール投げの応用した個性の使用で記録3mを超え、握力や50m、1500mは持ち前の持久力、異形型による身体能力の高さで上位に入ったのだった。




この作品のネタバレになりますが、なんで正邪で書いたのって、ステインとか、ヴィランとの絡みを書きたかったわけで
早くその辺書いて行きたいんですよね


やる気あげよ


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戦闘訓練その1

そういえば、なんで正邪の服装を苗木くんみたいなパーカーinにしてるのかは、某イラスト掲載サイトでパーカーな正邪が非常に似合っていたからという理由に過ぎません


個性把握テストから数日して、私は普通に授業を受けていた。雄英高校、その中で特別とも言えるヒーロー科も、ヒーロー資格を取ること以外は至って普通の高校なのだ。内容も至って普通で聞いてるだけでなんの面白味も感じられなかった。

 

だからといって、居眠りをすると科目担当に起こされ、担任の相澤先生に至ってはロン毛が逆立ち、明らかに激昴する。

 

そんな中、今日の最終時限にある『ヒーロー基礎』にはかなりの期待を寄せている。意気揚々と昼休みに昼食を腹の中に入れ、中学時代にはなかった得体の知れない科目に胸躍らせながら自席で待機している。

 

 

 

授業開始のチャイムが鳴ると同時に独特の低い、しかし何処かで必ず聞いたことのある声が扉越しに聞こえてくる。

 

 

「わ~~~た~~~し~~~が~~~…」

 

 

 

 

「普通にドアから来たッッッ!!!!!」

 

 

 

何故溜めるのだろうか。さっさと入って来ればいいものを…だが生オールマイトだ。大ファンとは言わないが、モニター越しに、紙媒体越しにしか見た事の無かった有名人を目の前にすると自然と興奮してくるものである。

 

初っ端から授業は戦闘訓練を行うらしく、それに伴いコスチュームに着替えろとの話であった。

個性把握テストと同様に女子更衣室へ向かいコスチュームへと袖を通す。

 

うわ、麗日のコスチューム体のラインがはっきり分かる。八百万とかいう奴はほぼ裸体丸出しじゃねえか…女子の衣装を見てドン引きしてしまった。

 

ちなみに私のコスチュームはと言うと、白の半袖シャツに矢印のデザインの施されたスカートというシンプルなものだ。

一応耐火性と防刃性のある素材で出来ているために衣服自体の防御力は高い。

 

なおスカート内はチラリズム防止のために黒のスパッツを履いている。覚えてる限りではクラス内に邪な視線を向けてくるやつが一人、二人?居た気がするため、仕方なく履いた。本音を言うならそんな奴がいなければ、こんな面倒な手間は取りたくない。いや、面倒と言うよりは動き辛くなるのだ。私は普段、羞恥心よりも機能性や利便性を優先的に取る

 

さっさと着替えたので真っ先に指定場所のビル前まで向かう。向かうと男子らは殆ど先に集合していた。やはり女子の着替えは比較的時間が掛かるのか

 

「もー、正邪ちゃんどうせなら待っててよー!一緒に行きながら話したかったんに!」

 

モチモチ肌の麗日がさらにモチのように頬を膨らませてプンスコしながらやって来る

 

「悪かったな。お前の着替えが遅すぎて先に行っちまった」

 

ケタケタと笑い、ビルの壁に寄りかかる。他とあまり関わりたくないとはいえ、こうして友人のような会話をするのは楽しくて仕方ない。特に相手を揶揄うようなものなんてついついやってしまう。

 

そんな麗日とのやり取りを楽しんでいると、眼鏡男子が私に向かって指を差しながら怒鳴り出す

 

「そこ!壁に寄りかかるな!授業中なのにそんな態度でどうするんだ!」

 

こいつの言葉で一気に機嫌が悪くなった。そういえばコイツは入試の時にも私にあれやこれやと言って来た奴だったか。

 

何度も言うが、私は真面目の振りをした奴が大嫌いだ。目上の目が光ってる時にはヘコヘコと頭を垂れ、規律や同調を重んじる。しかし目上からの目が無くなると途端に不真面目になる

 

不真面目になるなんて事が無くても、あたかも自分の主張が正しい。そう考えてるやつが大半だ。

 

「はぁ、まだ全員揃ってもいないのにエラく真面目な坊ちゃんだな?この数日でもうこのクラスの学級委員長にでもなったつもりなのかな?ん?」

 

ヤレヤレとした顔で煽ると眼鏡は茫然とした驚き半分、怒りの顔をしていた

 

「な、なんて口の悪い…よくそんな性格で雄英高校に受かったな!?」

 

バチバチとメンチを切り合う間で麗日は「ふ、二人ともやめた方がええんちゃう…?」とオロオロとしている。仕方ない、ここは私から折れてやろう。

 

「…はぁ、他の奴らも来た。ここは一つ大人な私が折れてやるよ」

 

「なっ…!?」

 

二ヘラと笑いながら麗日の手を引きその場を離れる。その途中、麗日に

 

「なー、せっかく同じクラスになれとんよ?仲良くしよーよ!」

 

と軽く叱られた。だがあれは私の苦手とする相手だ。こればかりは無理と伝えると

 

「ならウチが飯田くんと正邪ちゃんとの友好関係を取り持ったる!」

 

なんて言われて困惑している内にオールマイトが今回の戦闘訓練の説明をし始めてくれた。タイミングがいいぞオールマイト!

 

訓練の内容はシンプルなものだった。2人1ペアでコンビを組み、コンビ同士との対決…今回はヒーロー側とヴィラン側に分かれて戦うとの事だ。ヒーロー側はヴィラン側を捕獲、又は室内に隠された核爆弾という名のハリボテにタッチで勝利

ヴィラン側はヒーロー側を捕獲、又は時間内までに核爆弾を守り続ければ勝利

 

「先生、これではペアに一人余りますが、どうするのでしょうか!」

 

眼鏡が挙手して質問する。それに対しオールマイトはそういえばそうだったといった顔をして考え込む。そして数秒後に答えた

 

「1組だけ3人ペアになってもらう事にしよう!どんな状況においても人数に差がないとは限らないからね!」

 

成程、確かにそれはそうだ。いかなる状況においても戦闘なんて平等な時などない。必ずどちらかが不利でどちらかが有利だ

 

そう思っていると、ふと思い付いてしまった。自然と口角が上がっていってしまい、ニヤけたまま挙手をし、発言する

 

 

 

 

 

「私が、一人になります」

 

 

 

 

オールマイト含め、周りがざわめく。

 

 

「き、鬼人少女。何故一人になりたいのかな?」

 

「簡単な事です。確か、雄英高校って一般の他に推薦でヒーロー科に受かった奴らが各クラス二名いたはずです。どうせならそいつら二人を相手して、私が何処まで行けるのか…試してみたいんですよ」




飯田くんに対する正邪の評価爆下がり中
お茶子ちゃんは助けて貰った恩人補正も込みでもう既にお友だち認定されています

次回、鬼人正邪死す!

コンティニュー?

▹ はい

いいえ




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戦闘訓練2

推しの生放送がヤバかったので気合い入れすぎました

その結果どこで落とすか、何処で終わらせるかが分からなくなり、やばいことになりました。

これさらっと正邪の個性に変な規制掛かっちゃった気がする


生徒らがどよめく。中には舌打ちをした奴も一人いた。しどろもどろしているオールマイトに向けてさらに追い討ちの言葉を投げ掛ける

 

「それに、面白そうじゃないですか?3vs2の時、2という不利の中にいる方が燃えます。逆に3の方に入るのなら私はこの授業においてやる気が起きません」

 

段々と下衆な笑いになって行く。自分でもよく分かる程、心が昂っている

 

「それならば優等生二人に少しだけ無理をしてもらった上で私が単独で挑みたい。その方が私にとって楽しく、面白く、そしてなにより自分の実力がよく分かるんですよ」

 

「むぅ…し、しかしだな……」

 

オールマイトはあまり快く思っていない。だがハッキリとNOと言われない以上、もう一押しで了承を得られる。そう確信した

 

「まさか、この雄英高校で推薦を得られた生徒二人が断るはずも無いだろう?まあ、断ったら断ったで私はそいつの事を一生チキン野郎と罵ってやるがな」

 

煽り、蔑むように笑いながらペラペラと話す。すると、髪色が残念な染め方をした男が立ち上がって淡々とした口調で返してきた

 

「そこまで言われると嫌だとは言えない。八百万、お前も推薦だったな」

 

残念髪の男の視線にはあの露出の激しい女子が一人、その女子はというと戸惑った様子で

 

「え、えぇ…鬼人さんの提案でも、ワタクシは構いませんが…」

 

と答える。決まったな

 

「Umm…わかった!だが鬼人少女と推薦組二人の試合は最後にしてもらう!」

 

「それで、構いませんよ」

 

内心でガッツポーズを取る。満足したので残りのくじ引き等は遠巻きに眺め、オールマイトの指示通りに動くのだった。

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

圧巻の一言だった。序盤から緑谷麗日ペアvs飯田爆豪ペアの試合に度肝を抜かされた。

 

拳と拳のぶつかり合い、破壊、破壊、出血、ボロボロになりながらの戦い…痛々しい筈なのにどうしてここまで惹かれるのだろう。

 

この試合を皮切りに白熱とした、しかし一部一方的な試合が起こった。試合が最後というのも、待ち時間がつまらないと思っていたが中々楽しめている。

 

もっと言えば、これから戦うであろう残念髪こと轟焦凍とほぼ全裸の痴女の八百万百の個性が詳しく見ることの出来たのが少々予想外だった

 

ともかく長かった待ち時間も終わり、遂に最終試合である私の番が来た。抽選により私がヴィラン側に決まる。

 

建物内に入り、レイアウトを変更しながら考える。二対一という不利な中でどう動くべきか。轟はビル全体を一度に冷却する事のできる程の個性を持っていた。一方の八百万は、見る限り身体から様々な道具を作り出す個性。

 

真っ先に轟を無力化したいが、人数差的に考えると轟に気を取られている間に八百万が核を無力化される。それならば厄介な轟を一騎討ちで仕留め、そのために先に八百万を無力化するべき。そう結論付ける。

 

ハリボテの核を最上階に持っていき、自分は二つ下の階層に陣取る…これだけでいい。私は、ゆっくりとヒーロー側が攻めてくるを待つのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

─── 一方の轟、八百万ペア

鬼人正邪が室内のレイアウトを変更している中、彼らは突入の作戦会議を練っていた。

 

「さっきの時みたいに、俺がまずビル全体を凍らせる。だがアイツにはモニター越しで一度見られてる…そのまま用心しつつ中に入って、あいつの身動きが取れないならそのまま捕獲。無理だった時…八百万、個性を使って陽動出来るか?」

 

轟は冷静口調で淡々と脳内で考えた作戦内容を八百万へ伝えていく。八百万の方も真剣に轟の作戦を聞き、相槌を打ちながら自分の出来そうな事を考え、把握し、実行に移すと心掛ける。

 

「分かりましたわ。ワタクシはスタンガンとスタングレネードを制作して牽制、轟さんの援護に回ればいいのですね?」

 

「そうしてくれると助かる…問題はアイツの"個性"についてだ。個性把握テストでも鬼人の個性が何なのかは全く分からなかった…」

 

表情の豊かではないポーカーフェイスな轟ではあるが、その顔は明らかに疑念と不安の様子を浮かべた顔だった

 

「そうですわね…ボール投げでしか個性を使った様子はありませんでしたわ。あのボールの動きから見るに…重力操作系、でしょうか?」

 

八百万も、俯きながら思考を巡らせる。鬼人正邪の個性を使用したのを見たのはボール投げの一度だけであった。その為、ボールが上がり下がりしたものしか見なかったからか重力操作に関係するものかという考えに至る。

 

「俺もそう思う…だが一応警戒はしておこう。無闇に近寄らず、身動きを取れなくしたと思っても油断するな」

 

そう話していると、オールマイトの「開始」のアナウンスが聞こえた。轟はすぐさまビルの全域を凍らせ、その間に八百万はスタンガンを作成する

 

「轟さん、アナタにも一応渡しておきますわ。轟さんの個性を見ていると、あまり必要では無いかもしれませんが」

 

八百万はそう言ってスタンガンをもうひとつ作成し、轟へと渡した。轟は少し考えた後

 

「悪い、受け取っておく」

 

そう言い、ポケットへとスタンガンを閉まった

 

その後一階、一階クリアリングを済ませていくと以外にも三階で鬼人正邪が足元を凍らされた状態でいるのを発見した

 

「でかい口叩いた割にはあっさりと捕まってるんだな」

 

為す術なく捕まった。それならばそれでいい…だが正邪はなにか隠している筈だ。轟はそう思わずにはいられなかった

 

それは八百万も同じであり、スタンガンを彼女へ狙いを定めながら警戒し、近寄って行く。しかし、絶対絶命の当の本人はというと

 

「あーくそ…あの映像を見た時から喧嘩売らなきゃよかったって後悔してたんだよ……はーあ、こんな直ぐに終わるとかつまらない。つまらないよなぁ?お互いね……?」

 

初めこそ諦めた顔をして、俯き、煮るなり焼くなり好きにしろという様子をしていた。だがブツブツと独り言のように呟くにつれ、俯いているのに口角が上がり始めているのが分かってしまった

 

コイツ、何か企んで──

 

正邪は目を見開き、ヒーロー志望の高校生とは思えない。まるで、他人との友情を自ら否定し、煽る…蔑む…罵る……そんな時にするであろう。裂けそうな程まで口角を釣りあげ、八百万を見つめていた。

 

「ありがとう…今から最高の遊びが出来る……そんな、武器まで用意してくれてサ…」

 

正邪は轟と八百万に聞こえない程の小さな声で何か呟いた。瞬間、正邪の捕らえていた氷には八百万が捕らわれていた。正邪はというと、少々息を切らしており、何処で出来たのであるか不明の切り傷を頬に付けた状態で、八百万の持っていたスタンガンを八百万へと突きつけていた

 

「サンキュー、こんな良いものをくれちゃって」

 

そのまま正邪は八百万へ電流を流し込んだ。

避ける事すら出来ない八百万はそのまま電流を流されてしまい、強烈な吐き気と痛み、痙攣を起こしたまま気絶し、八百万は倒れてしまった。

 

しばらくの間、確実に気絶させたいためなのか電流を流し続けている正邪。しかし轟はその隙を見逃さず、正邪を捕らえるため行動していた。

 

スタンガンを使用した直後、八百万の救出を断念し正邪の全身凍結させるために個性を使用する。しかし正邪もそれを予知していた様に自身のいた場所から動き、凍結を回避する。

 

回避をしつつ正邪は轟へとスタンガンを向ける。それに対し轟は氷を作り上げ、その攻撃を阻む。だが轟にとって電流を阻んだ氷は死角となってしまう

 

正邪はそこを付いた。死角を駆使し、轟に本気の蹴りを入れる

 

「ぐ、ぅ…ッ!」

 

両手で防御姿勢を取ったため間一髪致命傷を受けずに済んだ。しかし正邪は異形型である。普通の人間よりも身体能力は高い。轟はその場に留まることは出来ず、蹴られた方向へ吹っ飛ばされた

 

「は…ッ……はぁ…ッ!これで一人脱落だ…ァ!!」

 

息を切らしながら正邪は八百万にテープを巻くと、轟の吹っ飛ばされた方へと歩を進めて行く

 

「はん…推薦組も、思った以上に大したことないんだな……へ、へへへ…!」

 

吹っ飛ばされ、倒れている轟に対して煽る様な目線に、嘲笑う表情をしている。だが身体を凍結された時に体力をかなり持っていかれた様子ではある。

 

「…心配するな。俺はまだ戦える」

 

轟は砂埃で汚れた服を払い、立ち上がる。

しかし、轟は歯を食いしばって悔やんだ表情を浮かべている。彼にとって人数的有利が無くなったのが痛い。そして、正邪の個性が何なのか予想とは全く違い、対策をどうとるかと必死に考えているのだ

 

正邪は余裕のある表情で轟へ近づいていく。このまま捕縛テープを巻くつもりなのだろう。だが、そこがいけなかった。正邪は余裕では無く、油断を持っていた

 

轟が深く息を吐くのと共に、足元から氷が飛び出し、正邪へと迫っていく。今度も身体の身動きを封じるためのものだろうか

 

「そう何度も、引っかかる訳無いだろうがッ!」

 

素早く迫ってくる氷を避け、そのまま轟へと接近する。だがそれが轟にとっては好都合であった。

 

「…大したこと無いのはそっちだったな」

 

正邪の油断を利用した。接近する正邪へ、轟も正邪へと近づいて行った。そして身体に触れ…

 

 

 

口元までを一気に凍らせてしまう

 

 

 

油断しきっていた正邪へ、轟は一言告げた

 

「悪ぃ、早く終わらせたいんだ」

 

そして氷の上から捕縛テープを巻く…筈だった

 

何故か正邪に触れている氷が溶け始めた。いや、正邪に触れた氷だけでは無い。ビル全体を凍結させたはずの氷が溶けていくのだ

 

轟はその異変に気づき、一度正邪から距離を取る。正邪は、溶けきった水上に倒れ込み、口から血を吐き出してしまった。地面に両手を付き、立ち上がるが、壁で身体を支えていなければ立っていられない様子だった

 

「ゴ…ッふ…ぅ……これ、だ…っけは…ぁは…使いたく、無かったんだ…!」

 

『き、鬼人少女!?流石に無理をし過ぎだ!これ以上は君の命に関わると判断して訓練を中止に…』

 

スピーカーからオールマイトの声が入ってくる。しかし正邪はオールマイトの言葉に反論する

 

「断り、ます…!楽しい……んは、ここ…からなんで…へ、へへ…!」

 

さらに正邪は轟に対してペラペラと話し始めた

 

「お前の、作った氷……氷に効いてる物理法則を"ひっくり返して"溶かしてやった…!見ての通り……私もこうなっちまうから使いたくなかったんだけど…お前を倒せるなら使ってやるよッ!!!!!」

 

足の震えが止まったのか、轟へまたも特攻を仕掛けていく正邪。しかし、正邪は轟のポケットにスタンガンが閉まってあることは知らなかった

 

「…八百万、お前のおかげでこの勝負に勝てた」

 

正邪を個性で氷のドーム作り上げ、自分ごと囲い込む。そしてポケットからスタンガンを取りだし、氷の溶けた水へと電流を流す。電流は水に濡れている正邪へと流れていき、感電させる

 

「ぐ、が…アァッ!!?」

 

正邪はもがき、苦しみすぐに白目を向き倒れてしまった。正邪が気絶すると、水の形状を保っていたものが固まり出し、すぐ様凍ってしまった

 

轟はすぐに氷を溶かし、正邪と八百万を救出。オールマイトを呼び、二人を保健室へと連れて行った

 

戦闘訓練の勝敗は度の過ぎた内容だったため中止、しかしそのまま続けていたら推薦組二人の勝利となるという結果に終わった




ランキング乗りてぇ…

そんな筆者の本音はいいのです。
正邪の物理法則ひっくり返しについてご説明します

今回の場合、正邪は現在自身を含めたビル全体の凍ったH2Oの温度による状態変化という物理法則をひっくり返しました。それにより、ビルに存在する氷(水)が常温では常に固体の状態となります。そして-1℃~-99℃までは液体、-100℃以降は気体となるのです。
しかし、このひっくり返した状態のままになるとどうなるのか、後処理がかなり面倒になります。それならば物理法則をひっくり返した場合、正邪が気絶した際、ひっくり返したものの性質が元に戻る様にしたら…なんて考えた訳なのです。
あくまで物理法則のみなのは、全てにおいてになると、今頃お茶子ちゃんの両足が複雑骨折になり立てなくなっております

とりあえずご都合主義ということで勘弁してくださいお願いします何でもしますから!


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戦闘終了から得たこと

遅くなりました。
内容は大まかに決まっていたのですが、いや…モチベがちょっと…


アンケートに関してはあれです。全部結果がどうなろうと決まっているので()


──────────

 

──────

 

──

 

 

 

 

 

 

 

『──んだいいんだ、──。一緒に────う。───の──達は敵対し─────』

 

 

少女と言うにはあまりにも小さく、人間と呼ぶよりも小人と呼ぶべき…そんな奴が私の対面で話してくる。

 

私は…趣味の悪いマントを羽織り、腰には折り畳み傘や人形をぶら下げ、片手には小槌を握りしめている。

 

私はこんな経験をした覚えはない。ましてや、知り合いに小人などという変わり者もいない。だが、何故かこの光景が懐かしく感じてしまう

 

『お言葉ですが……やなこった!誰───なんかするもんか』

 

私は舌を出し、小人の情けと取れる言葉を一蹴した。

 

『ま、あんたならそう言うと思ったけどね』

 

小人は私の言葉を聞き、呆れた様で…しかし、予想通りで安心したといった顔をしながら私に向けて話した。彼女は私の言葉を私らしいと言ってくれた。

 

何故、彼女は今の今まで騙してきた私に対して手を差し伸べようとしたのか。普通ならば利用してきた奴に対して復習や憎しみを感じるだろうに。

 

小人は覚悟を決めた顔をする。だが少し寂しげな表情で私に対して敵意を向けた。だが、これでいい。これでよかった。

 

私は天邪鬼だ。捻くれ者の私にはあまりにも敵が多すぎる。そんな厄介者に、こんなにも純粋な奴が関わっていいわけがない。

 

ただ、まぁ。こいつとの関係は、私が利用するための仮初な関係ではあったが。それでも私自身が利用しているという事を一時は忘れられる程度には楽しめた。

 

願うのなら、こいつともう一度……

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…見慣れない天井だ。あぁ、またやったのか

 

体が痺れ、体内の骨が軋む音が聞こえながらも身体を起こす。記憶は曖昧だが、確か授業中にほんの少しだけ無茶な事をした気がする。

 

とりあえず動けないことはないので教室に戻るとしよう。私はふらつきながらも立ち上がり、リカバリーガールに一言お礼を言うが、リカバリーガールは私に対して一喝

 

「こうも何度も怪我をするなんて、治療する私の身にもなって欲しいものだねッ!」

 

相当にカンカンであった。仕方ないだろう…個性のデメリットが自分の怪我なんだから

 

周りをキョロキョロとすると緑谷も保健室で眠っていた。彼の利き腕は明らかな重症の処置の仕方で、そのボロボロの姿を見てやっと曖昧だった記憶がハッキリとした。そうだ、私が推薦組2人に態々勝負を吹っ掛けたのに…

 

もう日が沈みかけている。推薦組2人には明日謝罪を言うとして、荷物を取りに教室に戻るとしよう

 

多少身体がふらつく事があったものの、無事に教室まで到着。中を伺うにまだ数人ほど教室に残っている様ではある

 

「うぃーっす…わ、わ、わ、忘r…」

 

「正邪ちゃんッ!身体大丈夫やったん!?」

 

麗日の奴が私が扉を開けた瞬間に駆け寄り、話しかけてきた。すると次々に教室に残っていた連中が私を囲み、各々な感想を述べていく

 

「態々2vs1とかいう不利な状況を作り出して、しかも途中まで善戦してるとかスゲーよ!超漢らしいじゃねーかッ!!!」

 

「ねーねー!正邪ちゃんの個性って何?あっ、私芦戸三奈!モニターで見てても全然分かんなかったよー!」

 

「俺は君の事を見誤っていた様だ。あれ程までの向上心があるなんて…それに気付かなかったb…俺はヒーローの卵失格だよ!」

 

皆好き好きに話しかけてくる。非常に面倒だ。そして騒がしい

 

「シャラップ。轟と八百万はいないな、いないんだな?なら用はない。私は怪我人だ、とっととお家へ帰って安静にしたいんだ。ほらどいたどいた!」

 

そう言うと周りは一瞬しんと静まる。そして何人かが一言謝罪を述べ、体調に気を遣った言葉をなげかけた。

 

「いいからいいから、談笑中に失礼したな」

 

さっさと荷物を取り教室を出た。廊下を歩いていると麗日が走ってこちらへとやってきた

 

「正邪ちゃん、もう少し言い方とかあったんちゃう?」

 

「生憎個性が発現してからひねくれた性格なんだ。こればっかりは直らなくてね」

 

こいつ、このまま一緒に帰ろうとか言ってくるんじゃないだろうな?

 

「正邪ちゃんたちがいない間にな?クラスのみんなで反省会やろーって言ってたんよ?だから正邪ちゃんも戻って来たら誘おう思ってたんけど…帰るんなら、せめてLINE交換しよっ!」

 

そう言って麗日はスマホを取りだした。

 

「なんだ、まあそれくらいなら…」

 

LINEを交換した後、麗日は

 

「じゃっ、デクくんも気になるし!反省会して帰るからまた明日ねー!」

 

と、廊下を走って教室へと戻って行った。

…デクって、誰だったか……そういえばあの目付きの悪い爆発男が緑谷のことをデク…とか言ってたな

 

あの冴えない男は如何せん興味が湧かない。何より言動がイライラしてくる。独り言を初めとして自己犠牲を前提とした立ち回りや行動。まるで無意識に行動してしまった時の私を─────

 

…いや、考えるのはよそう。さらにイライラして来るだけだ。今日はゆっくり休み、身体を治すのに専念しなければ…

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

何時もの時間に登校していると校門が騒がしい。

 

「うわ。なんだあのクソみたいな人混み」

 

どうやらマスコミがオールマイトに関してのインタビューを行ってる様である。普段ならばどうでもいいと一蹴してインタビューに答えるなんてことはしないが、あの人混みを掻き分けて敷地内に入るなんてのは御免だ。

 

ここは一つマスコミに対して嫌味でも言わないとという使命感に駆られ、気ら進まないが人混みの中へ向かって行った。

 

「そこの君、オールマイトの授業風景について…」

 

「ノーコメント。さっさとどけ」

 

「そんな事言わないで、一言でもいいの」

 

これだ。事実を述べてもどうせ他生徒にも話を聞き周り、つまらない内容ならば面白おかしく虚偽を混ぜ込んで偽造する。大抵のマスコミなんてこんなものだ

 

フェイクニュースを報じて金を受け取る。この行為、詐欺と何ら変わりなんてないだろうに

 

「ノーコメントと言ったはずだ。お前らは質問に答えたくもない人間に対して、自分らの目的のために強引に話を聞き出そうって言うのか?それ、私欲のために個性使って暴れてるヴィランとどう違う?教えてくれよ。お前らの解釈をよ?」

 

ココ最近溜めに溜め込んでいた負の感情を自然とこのマスコミに対してぶつけてしまった。若干狼狽えているマスコミに対して、さらに追い討ちをかけようとした時、背後から肩を叩かれた

 

「その辺にしておけ鬼人。コイツらもよくはないが、これ以上のお前の言動は担任として見過ごせない……悪いですが彼は非番です。お引き取り下さい」

 

相澤先生が声をかけてくれる。教師に、プロヒーローにそこまで言わせてしまい、少しもうしわけなくなる。

 

「あぁ、すいません…」

 

相澤先生について行くと、マスコミの一人が走り、侵入してきた。途端、正門に壁がせり上がり、封鎖された。

 

「うわ…なんだぁあれ……」

 

「雄英バリアーだ。学生証だったり、入館許可証の持ってないやつが入ると作動する」

 

なんだそのハイテク技術。そこまでする事あるのだろうか。

 

 

 

今、相澤先生と共に1-A教室に向かっているが、そこまでの距離を無言で歩くのは少々気が引ける。というか私が耐えられなかった。そこで、私の現在の課題であると考えている、個性のデメリットについて質問をする事にした

 

「…成程。昨日の戦闘訓練の録画を見たが、確かに大きなデメリットではあったな」

 

他にも言いたい事があるがな、と言いながらも相澤先生は私への質問に対して答えてくれた。

 

「個性のデメリットを消すという事は無理なはずだ。だが負担を軽減することなら可能だろう。サポート科の生徒がサポートアイテムを研究、開発する教室がある。時間がある時にでもそこへ行ってみろ。もしかしたら解決するかもしれない」

 

成程、確かにプロヒーローの中にはそういう道具を使う人がいる。相澤先生も普段付けているあのマフラーのようなものもサポートアイテムの1つだ。

 

教室へ到着しホームルームが始まる。昨日のヒーロー基礎のVTRを観たという話から始まり、緑谷と爆豪が怒られていた。

 

「あと鬼人、ここまでの道中では言わなかったがお前も個性のデメリットを恐れずに個性使ってる節がある。その辺もっと考えろよ」

 

うわ、私も怒られたよ。だがその点に関してはさっきまでの相談事で解決出来るはずの答えが出たのだ。気にする必要は無い。

 

 

今日の授業は、というと学級委員を決めるとかいう内容だった。そんな人の上に立つことなどやりたくないので相澤先生に一言了承を得て授業を抜け出す。時間を有効利用したいと言ったら簡単にOKを出してくれた。

 

私はサポート科が普段アイテム開発をしている教室へと向かった。扉越しにもわかるほどの油と鉄の臭いに思わず顔を顰める。だがそれが嫌と言うだけで室内へ入らないのもおかしい話だ。

 

扉を3度叩き横へスライドする。更に強烈な鉄と油の臭いが鼻腔を貫いていく。嫌な顔をしながらここに来た理由を話す。

 

「あー…ヒーロー科1年の鬼人正邪なんですけど……開発してるサポートアイテムの見学っていうか、提案しに来たんですけど…先生とかいないっすかねぇ?」

 

私の声に反応し「はぁい、先生はいないけど私でよければその提案聞くよ」と聞こえてくる。とりあえず人はいるのかと安心し、中へと入る。しかし教室内どこを見渡しても人の影すら見当たらない。

 

なんだ、録音かなにかでからかっているのか?そんな疑念を浮かべていると、開発途中であるだろう物の積まれた机から声がする。

 

「こっち、こっちだよ。よく来たね、えっと…鬼人正邪さん?お茶も出せないけどゆっくりして行きなよ。担任にはここに行く事伝えた?伝えてないならまずは伝えてからの方がいいと思うから今すぐ伝えて来なさいよ?」

 

そこに居たのは人と呼ぶには遥かに小さい。

お椀を被り、紫髪のショートボブ。初めて会ったのに何処か懐かしく感じる。

 

そうだ、あの夢で見たアイツと似ているのか。そんな理解しきれない事が起こり、しばらく固まってしまった。

 

 

 

これが私と少名針妙丸との初めての出会いであった。




そういえばこれって言ったかな…

八百万百の装備はスタンガンの案の他に、暴徒鎮圧用のゴム弾採用をしたポンプ式ショットガンやテイザーガン等といったどこの特殊部隊の装備だよという内容の物が候補にありました。
何故スタンガンになったかは、私の厨二病化がふとした時に正気にさせられたからです。


近いうちに続き書きます。死なない限りエタらせるつもりは無いです。ただちょっと別作品格とかいう浮気はします


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妖怪型の特異性

久々に深夜のテンションで書き上げてしまった
そのうち読み返した時に支離滅裂なところがあったら修正加えます


現時点では…よく書けたと思ってるよ。うん

最近掲示板形式の作品をよく見るんですよ。ああいうやつ好きでして、なによりあの世界に自分も入り込みたいと思ってしまう


「ふむ…それでここに来たってわけねー…とりあえず、アナタの個性について、もっと詳しく教えてくれないかな?」

 

指で摘めるサイズの湯呑みを啜りながら、私の話を聞いている彼女…少名針妙丸は個性に関して質問してきた。

 

「詳しく、と言ってもなぁ…。個性は天邪鬼で異形型、ありとあらゆる物事をひっくり返せる、デメリットに自傷するか体力が消費される。これで十分か?」

 

「なるほどねー、それでアナタ…あー、正邪でいっか。正邪はそのデメリットの負担を軽くするために来た…確かに個性を使わざる負えない以上、ちょっと大きいデメリットよね」

 

むむむ…と腕を組み、両目をキュッと瞑りながら何か考えている。やはり相澤先生が言っていたように個性のデメリットは打ち消すのが難しいのだろう。だが予想に反して、針妙丸の返答は「無理だ」という言葉ではなく、さらに質問をするという形で返ってきた。

 

「正邪の個性は異形型の中でも、妖怪型の括りに入るわよね?」

 

急に何故そんな話をするのだろう。確かに私の個性は妖怪型に括られている。針妙丸は私の個性が妖怪型であると聞くと、やはり…という顔で話を続けた。

 

「正邪のその個性、使い方が間違っているのよ。だから能力の割に合わないデメリットが発生するの」

 

「使い方が…間違っている……だって?」

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

針妙丸が言うには他の個性には無く、妖怪型の個性にだけ共通するものが一つだけあるという。

 

 

霊力…分かりやすく言う所のMPのようなものであり、個性を使用する際、消費する事により割に合わないデメリットを受けずにいる事の出来るものらしい。霊力は他にも使用用途があるらしく、身体強化、再生能力、外見の人外化…これらの全てがこの霊力が体内に循環することによって起こるものらしい。

 

「…で、なんでお前がそんなのを知ってるわけ?お前の個性も妖怪型なのか?」

 

割愛はしたものの、現在の時刻は11時を過ぎている。この説明が始まったのが大体10時くらいであり、約1時間ほど長々と霊力に関して話されると気が滅入ってくる。ぐったりとしながら針妙丸へ質問を投げた。

 

「ええ、そうよ。と言っても妖怪って括りになるのって思っちゃうけどね」

 

そう聞くと、大方個性「小人」と安直な名前なのだろう。能力としては『小人っぽい事なら何でもできる』といったところか

 

「私の個性は『一寸法師』ね。能力は打ち出の小槌を霊力を使って精製する。さらに霊力を使って…色々出来るって感じかな?」

 

一寸法師…?ありゃ妖怪の類じゃないだろう。針妙丸にそう返すと、曰く「霊力が使われる個性は一括りに妖怪型になるのよ」だそうだ。

 

霊力に興味を持った私は、針妙丸にさらに詳しく霊力について聞くことにした。

 

 

 

「そうね…話すなら、ここからかしら?妖怪型って個性はね、本当は異形型に括られるべきでは無いのよ」

 

発動型でも、変形型でもないわ。そう言い、針妙丸は真面目な顔つきで話を続ける

 

「だってそうでしょう?外見が異形型なのに、発動型のような何かしらの能力を持っている…だから大まかな3系統の何処にも属せないのよ。それこそ、第4の系統として妖怪型と分類出来る程にね」

 

成程、しかしそうなると疑問が出てくる。何故私は個性を診断して貰った医師からは霊力についての説明を聞けなかったのか。何故異形型に分類されたままなのかという点だ。針妙丸に聞くと、真面目な顔から、今度は怒りに満ちた顔で話し出した。

 

「そうなのよ!そこなのよ!学会でも度々話題に上がるし、なんなら論文だって出てるわ!それなのに医学界でも個性を専門にしてる有名な教授は『霊力などというものは非科学的であり、存在しない』の一点張りなの!かつて個性が出現された時だって非科学的だって言われた、のによ!?」

 

なんだコイツは、急に熱く語り出した。

その様子を見て若干引く私。それを見て頭が冷えたのか、針妙丸は1つ咳払いをした。

 

「…ごめんなさい。つい、やっちゃったわ。私が雄英に入った理由の一つだったから、つい…」

 

「理由だって…?」

 

聞くと、針妙丸は一部の妖怪型個性を持つ教授が、医師が論文を提出しても認められない界隈を変えたいために雄英高校に入学をしたらしい。

 

「妖怪型の個性持ちの人間は霊力の扱いを知らない。知らないせいで死んじゃってる人が大勢いるの。私は、そんな残酷な世界間違ってると思うの」

 

段々と寂しそうな顔へとなっていく。それはこいつ、針妙丸の問d─────

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━

 

「さあ、弱者が見捨てられない楽園を築くのだ!」

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

唐突に頭の中にノイズが走る。

 

知らない

 

違う

 

これは、私の記憶じゃない

 

なのに何故こんなにも懐かしく感じるのだろうか

 

 

 

何故こんなにも寂しく感じるのだろうか

 

 

 

何故こんなにも……

 

 

 

 

 

 

 

…………じゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

………いじゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正邪や!どうしたのよそんなにぼーっとして」

 

針妙丸の声が耳に入る。なにか大切な事を考えていた筈だったのだが、忘れてしまった。

 

「ああいや、何でもない。それで、お前の目的が教授になるためなら、何でまたサポート科にいるんだ?」

 

そう、教授になるのなら勉学に専念の出来るであろう普通科に入るのがベストだろう。態々サポート科に入ったのだろうか

 

「それは、単純に私の個性が有用に扱えるから。それに、そういうモノを作るのが好き…だからかな?」

 

 

 

暫く針妙丸と話していると午前の授業が終わったチャイムが鳴った。昼を食べるために私は席を立ち、教室から出る。そして去り際に一言

 

「また顔を出すよ。その時はお前作のサポートアイテムの一つ二つ、見せて欲しいね」

 

そう告げた。

 

 

 

昼食を取りに学食へ向かう。何時ものように日替わり定食を購入し、着席。ゆっくりと食事を堪能する。すると私が目に入ったのか切島鋭児郎、上鳴電気等の1-A男子数人が声を掛けてきた。

 

「よー、正邪じゃん!お前なんで学級委員決める時教室にいなかったんだよー、飯田がうるさかったんだぞ?」

 

どうやら学級委員は緑谷と八百万の2人で決まりらしかった。てっきり飯田のやつがやると思っていたのだが、投票で決定したらしい。

 

「あんな時間の無駄な役職、私がやると思うか?嫌だね。それなら昨日の戦況を分析して色々やってた方が遥かに有意義だ」

 

そう言って私はそれから黙々と飯を食べる。

 

「ストイックだなー、そんな轟との対決で負けたのが悔しかったのか!くぅ〜〜っ!アッツイ漢だなぁぁ!!!」

 

女なんだけど…なんてツッコミはしない。男たちが昨日の戦闘訓練の話題で盛り上がっていると、唐突にサイレンが鳴り響いた。

 

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに避難してください』




少名針妙丸
個性:一寸法師

霊力を使って打ち出の小槌を出現させるぞ!
さらにその打ち出の小槌と霊力を使用することで様々な事が出来る!
一番の使用方法は霊力を全て消費することで、その消費に応じた願いが叶う!但しどんなにしょぼい願いでも消費した霊力は帰ってこないし、その逆で消費した霊力以上の願いは叶えられない上に、やはり霊力は帰ってこない!
さらに、自分の霊力や他人の霊力を打ち出の小槌を利用して道具に振り分けることが可能!自我を持ったり、特殊な力を持ったりする!
さらにさらに、打ち出の小槌を経由する事で他人に霊力を分ける事も可能性!



と、少名針妙丸の個性についての解説でした。


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霊力の活用方法

特に書くことないんだよなぁ……
正邪が覚醒しました。


現在、私は慌てふためく生徒の波に飲まれる…なんてことは無く、避難するのも面倒なので机の下に隠れていた。

 

雄英生徒、特に普通科の人間らはパニックに陥っている為か非常口なんかある所は押し合い圧し合い状態になっているためここから出る事は諦め、早いところ沈静化するのを待っていた。

しかしどうやらこの机の下に潜っていたのは私だけではいなかった様だ。

 

「おや、正邪。また会うなんて奇遇だね」

 

机の下…の私の横に針妙丸が体育座りをしていた。確かに、その図体ではあのぎゅうぎゅう詰めの空間では踏まれ潰されてぺちゃんこ…いや、グロテスクに言うなら全身複雑骨折に加えて内臓破裂、いやそんなものは生温いだろう。肉片が散らばりに散らばって死んだ事すらも気づかれない状態になるに決まっている。

 

その事を理解した上で針妙丸は冷静に机の下へ潜り、人がいなくなるのを待っていたのだった。

 

「私もあんな人混みに紛れる、簡単にパニックを起こす無能どもとは違うのさ。まあそのうち収まるだろうからそれなら人が来るはずがないここに身体を潜めてればってね」

 

ヘラヘラとしながら、軽口を叩く。出会って数時間のはずなのに、いつも以上にリラックスしながら彼女と話せる。疑問として浮かびはするが…悪くない気持ちだ。

 

「どうする、アンタはこのままずっと机の下にいるか?それとも、私の個性を使って楽して教室に帰るか?」

 

ふと、針妙丸から霊力の使い方を教えて貰っていない事を思い出した。どうせならこの状況で教えてもらい、ついでに個性を使ってさっさと食堂から出ようと考え付く。

 

「なによそれ、個性を使って…?なるほど、ひっくり返して私たちだけ『天井を地面にして』ここからでるってわけ…ナイスアイデアね!」

 

針妙丸は私の作戦のようなものに食いついた。

とりあえず彼女から簡単に霊力の使い方を教わる。

 

曰く、霊力というものは元々誰の体内にも存在するだけのもので、妖怪型の個性が発現した途端、体内でこの霊力が循環し出し、身体増強なんかが起こるという仕組みらしい。

 

そして肝心な霊力を消費しての個性の使用は、単純に霊力を消費すると考えるだけで簡単に使える様であった。

 

「大体分かったが…本当に意識して何とかなるものなのかねぇ…」

 

一先ず針妙丸の制服をつまみ上げて私の肩へと乗せる。そして机から身体を出す。

 

 

 

循環している霊力を意識…これを消費して個性を発動させる。

 

範囲は私の周りのみ。効果は重力のベクトルをひっくり返す…

瞬間身体から何かが抜ける様な感覚が走る。そして能力通りに私たちは天井へと落下して行った。

 

「おお、こりゃ便利だな」

 

華麗に着地を見せ、身体が無傷でしかも体力の消耗もしていない事に感化していると針妙丸が話し始めた。

 

「この霊力って便利なのよね。霊力を使えば空だって飛べるし、でも使いすぎ注意ね?度が過ぎると霊力使い果たしちゃって身体能力が人間並みになっちゃうわよ?それに妖怪型特有の再生力の高さも無くなっちゃうから」

 

「ちょ、ちょちょ…それは早く言え!こんなくだらない事で霊力を消費してたらスグ無くなっちまうじゃないか!」

 

サラッと言われた重要な事にツッコミを入れる。だが流石に霊力の回復手段はあるようで、単純に寝れば一定量回復するとの事だった。

 

生徒が押し合いになってる中、楽々と天井を歩く。その姿を見てた生徒の一部が指をさしたり何か言ってきた気がするがよく聞こえない。

 

 

 

 

どうやらセキュリティを突破したのはマスコミの奴ららしく、ヴィランの襲撃などでは無かった。

とりあえず人気のない所へさっさと行き、個性を解除する。思えばこいつ、霊力を使って飛べば何ら問題なく移動できたよな…

 

「え?あんな人混みの中?上?飛ぶの嫌だったんだもん」

 

ちょっとだけ針妙丸の評価が私の中で下がった。

 

 

 

 

──────────

 

 

昼休みが終わり、教室に戻る。席に着こうとしていると相澤先生に声をかけられた。

 

「どうだ、何かお前にとって便利に働くサポートアイテムはあったか?」

 

「いいえ、ありませんでしたよ。ですが、もう個性で傷付くなんてことはありませんよ」

 

ヘラヘラしながら相澤先生と話す。先生は不思議そうな顔をしているが気にせずに席に着く。

 

午後の授業はというと、緑谷が飯田へ学級委員の座を明け渡し、今後の係を決める事となった。

 

 

 

 

因みに私は毎日の学級日誌を書く係となった。




くっそ文字数すくねえ
でもキリがいいのでここで終わらせなければ行けない

次話から5000文字とか10000文字の本気だすから許して……


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打ち出の小槌

どうも、遅くなりました事をお詫び申します。
エタらせません。私の書きたいシーンを書くまでは

実はあるヒロアカクロスオーバーを見て正邪の結末が決まった(?)感じではあります。それがハッピーエンドかバットエンドかは…まあ今後わかるんじゃないですかね


今朝のホームルーム

 

「今日のヒーロー基礎学は人命救助訓練だ。それに伴ってこっからバスで移動するからな」

 

相澤先生が淡々と本日の日程を話す。

コスチュームはそれぞれの自由で着る様にとの事らしい。勿論、私はコスチュームで行く。個性をサポートするための機能はまだ着いていないが、体操着よりも遥かに動きやすくした衣装があれなのだ。着ないわけには行かない

 

また、針妙丸にコスチュームの話を挙げると、彼女は私のサポートアイテムを作成してくれるという。曰く『私の個性で作ったアイテムを正邪みたいな人が使えば1番宣伝になる』との事だ。なんて言うか、非常に目立つ問題児だって言われている気がする

 

 

授業も面倒なので聞き流し、午前が終わる。昼休み、食堂へ一番に到着し席を確保、そして針妙丸が来るのを待つ…マスコミ騒ぎ以降、これが日課となった。

 

「待ってたよ、そういえばお前に言われてたあれ、一応やって来たが。本当にサポートアイテムの制作の手助けになるのか?」

 

針妙丸を座らせ、食事を取りながら私の使うであろうサポートアイテムの話に入る。というのも、前日に「これで個性持ってる人たちを叩いて来てくれない?」等と言われて小槌を渡されたのだ。その為、態々1-A生徒に頭を下げて小槌で軽く叩かせてもらった。

 

爆豪を除いて

 

爆豪に関しては最初からYESの反応を貰えるわけないと判断し、不意打ちにポコッとした。

 

 

丸一日追い回される事となった。

 

それはもう某ゾンビゲームにおける追跡者並にしぶとく、執着的に。こればかりは私が悪い。無断で叩いた事に関してのみしか認めないが

 

 

 

それから20人という少ない人数だったため、唯一我々のクラスとおなじヒーロー科である隣のB組へお邪魔して「サポート科で用途不明だが個性持ちを叩くと何かしらの変化が起こるらしい道具の実験に付き合ってくれ」と話し協力を依頼。大方の人らは快く承諾。しかし物間とかいう男だけはNOと言ってきた。それはまだいいのだが、純粋にウザ絡みして来る奴だったため、面倒になって思い切り平手を食らわせ、小槌で何度も頭部を狙って叩いてやった。

 

閑話休題

 

 

そんな訳で、現在その例の小槌を針妙丸へと返している。

 

「あら、ご苦労様正邪……うん、結構な人数に協力してもらったのね。大体40人…くらいかしら?」

 

彼女が小槌を受け取るとそんな事を話す。曰くもう少し少ない人数かと思っていたという。私はコミュ力に関してはさほど問題はないんだよ

 

「んで、何でそれで叩く意味がある訳?結構苦労したんだから理由くらい教えてくるよな?」

 

カレーうどんを勢いよく啜りながら問いかける。因みに、汁の跳ねが嫌なため個性を使って跳ねる現象をひっくり返している。個性の無駄使いである。

 

「この小槌はね、私の個性で作った小槌なの。この小槌に接触したら人間の霊力を貰えるって訳」

 

 

そう言って受け取った小槌を振り回す。私からしたら手のひらサイズな物なのだが、針妙丸からしてみれば身長と同じくらいの道具を軽々と振り回している。こいつ、モンスターをハントする人かなにかか?

するとそれぞれ色に特徴を持った光の玉が小槌から飛び出し、小槌の周りを規則性を持って浮遊し出す。

 

彼女が言うには、人間の持つ霊力は個性と同じようにそれぞれ違ってくるらしい。それこそ、個性自体が霊力に作用して発現しているのだとか。

その霊力を彼女の個性を使って道具に封じ込める事により、道具自体に個性に似た力を持たせることができるらしい。

 

「例えば…そうね、この霊力は爆発系か何かの個性が発現する性質があるわ。用途としては…爆竹なんかにこの霊力を込める、そして使用する際に自分の霊力を込めて起爆。爆発時に霊力で練られた球を四方八方に飛ばしたり、敵の飛び道具を消し飛ばしたり、そんな事ができるのよ」

 

中々面白い、要は簡易個性発現器が出来る感じか。ただ聞いてる限り全てが全て有用とは限らないらしい。帯電の個性なんか、霊力を流すと電流が走るだけらしい。なんとも使えない…ビリビリペンよりも使えないじゃないか

 

 

「そうだ、正邪ってば今日ヒーロー基礎の実習あるでしょ?確か救助訓練。なにかに使えるかもしんないから、これと…これ」

 

そう言って彼女はチェック柄の風呂敷と先程とは別の小槌を渡してきた。

 

「…あーん?なんだこれ、こっちはお前さんの個性で作ったものって分かるが…この風呂敷は」

 

「名付けて『ひらり布』。正邪の霊力をそれに込めて作ったんだけど、思ったより面白い挙動をするのよね。持ってる本人が"触れられる"って状態からひっくり返って"触れられなく"なっちゃうのよ」

 

そう言って実演してみせてもらった。針妙丸が少しばかり風呂敷を持つ手に力を込めると触れられている手がみるみるうちに消えていく。そして数秒経ち元に戻った。

 

「霊力の流し過ぎは禁物よ。多少、感覚を開けて霊力を流し込むのは問題ないけど、長い間霊力を流し込みすぎると、霊力の循環に引っ張られて定着した霊力が剥がれちゃうから」

 

もし霊力が道具から剥がれてしまうと、彼女がもう一度霊力を込め直すまでタダの物となるらしい。

 

「ああ、ありがとな。だが今日に限ってはこれを使う機会…あるか分からんがな」

 

ケラケラと冗談交じりに笑いながら席を立つ。食器を返してまた明日と昼休みの昼食の約束を取り付けて教室へ戻るのだった。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

「あなたの個性、オールマイトに似ている」

 

バスでの移動中、個性についての話題があがる。

蛙吹……あー、梅雨ちゃんが緑谷に対してそんな事を言った。

緑谷の奴はアタフタとしていたが、隣にいた切島がが「オールマイトは怪我しねぇぞ」と言って否定していた。

 

「案外わからないぞ?私は今まで血を吐き出したり体力を消耗するデメリットがあったが、サポート科のやつにアドバイス貰って無事デメリット無しで個性が使えるようになったしな」

 

ケタケタと笑いつつ、個性を使いその場で天井に座ってみたり、座席に戻ってみたりを繰り返してみせる。そうしているとチビ男が「み、みえ…」とか言ってきたため、不快に感じて笑顔で近寄る。そして2本指で両目を潰してやった

 

周りが自業自得だと彼を眺めつつ個性についての話題が続く。

 

「にしても個性が派手なヤツはいいな!」

俺の個性は対人戦は強いが地味なんだよな…と切島が個性を使い、腕を硬化させながら話した。それを緑谷は「プロでも通用するし、すごいかっこいい個性だと思う」と否定する。

 

しかし切島は派手な個性を羨ましいのかこのクラスで派手で強い個性持ちの話へと移っていく。派手さ、強さ両方を兼ね備えた奴なら爆豪と轟じゃないか。そう言った。

轟は大して反応はしなかったものの、爆豪は満更でもないのか切島の方をちらりと顔を見て直ぐ舌打ちをし、窓の外の景色を眺め始める。

 

しかし、何でも思ったことを直ぐに行ってしまう梅雨ちゃんから容赦のない一言が贈られた。

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかりだから人気はでなさそうね」

 

その言葉に緑谷は恐怖で、爆豪は怒りでぴくりと反応。緑谷の方は我関せずと気配を消していき、爆豪は席を立ち上がりキレ散らかしている。

 

「まあその爆豪と轟よりも遥かに強いのがこの私、鬼人正邪サマな訳なんですけど?」

 

爆豪のキレぶりが面白かったため、さらに油を注いでみる。この言葉に轟は何か言いたそうにこちらを向いたが、爆豪が彼より先に私の釣り針に噛み付いてきた

 

「ンだとこら!俺はてめぇより何万倍もつえーわ!大体てめぇ半分野郎に負けてんじゃねーか!」

 

「チョットナニイッテルカワカラナイナー!ありゃあ個性の間違った使い方をしてたからあーなったんだよ。個性を正しい使用用途で使える今の私はここの誰にも負ける気はしないね」

 

そう言って私は煽り返した。その後も爆豪は何か喚いていた気もするし、周りの生徒も「お前らになんて負けねえよ」なんて言われては少なくとも気分は悪くなる。じろりとコチラを睨む奴が数人

 

「正邪ちゃんは何処にいても周りを敵に回しそうね」

 

梅雨ちゃんからの一言。自分でもよく理解しているし、痛いところを突かれたため目を背けて口笛を吹いてやり過ごした。

 

そんなこんなで訓練施設に到着。この施設担当のスペースヒーロー13号が出迎え、施設の説明をしていく。誰かが「USJじゃん」なんて施設内の設備、規模を見て言った。

 

「この施設は嘘の災害や事故ルーム、約してUSJです」

 

一度ユニバーサルスタジオに怒られてしまえと思った。

 

 

 

その後、13号が小言を少し…との事で話し始めた。要約すれば個性を使えば簡単に人は殺せる。それを持っていることを意識し、人を救うための個性として、どう扱うか考えましょう。なんて話だった。

 

皆その言葉に感激し、拍手をする。私も形だけは拍手をし、内心何を当たり前な…と思う。こういう、当たり前の事をさも大切だというように語られるのは大嫌いだ。

 

「よし、そんじゃあまずは…」

 

相澤先生が指示を出そうとしたその時、室内の照明から電流が漏れ出して次々に落ちてしまう。そして、中央広場の噴水から黒いモヤが出現、そこから人が次々に現れて来る。私を含め、生徒らはこれも授業の一環であると勘違いしているが、先生らは流石はプロのヒーローと言ったところか。

本来起こりえない事に迅速に対応。私らを集団でかたまらせ、戦闘態勢をとる。

 

こんなやり取りを見たら自ずと分かる。ヴィランが徒党を組み、攻めてきたのだと




次回ヴィラン戦。
梅雨ちゃんが思ったよりサバサバ系でビックリしました。なんか、もっとフレンドリーな感じだと思ってた
峰田は…峰田です


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新訳:反逆者のヒーローアカデミア
本当の友だちとは


遅ながら執筆しました。
何年ぶりでしょうか…読み返すとどうも解釈違いや矛盾点を感じてしまったため新訳版を書こうと筆を取りました。

本当に今後も不定期的に執筆するかと思われます。すまない


友情…共感や信頼の情を抱き合って互いを肯定し合う人間関係、もしくはそういった感情のこと

 

辞書や検索エンジンで調べればこれと同じような内容がさらりと出てくるだろう。本来ならば「友情」という単語はこれ以上でもこれ以下でもない。

しかし、私にとっての友情とは「自分、若しくは他人が相手に対して一方的に関係性を決めつける際に用いられるものの一つ」である。そう思う理由は簡単だ、現在の私がそういった出来事に出会ったからに過ぎない。

 

 

 

 

何処から話せばいいのだろうか。時は現代、世界中の大抵な人間は一人一つ超能力を持ってして産まれてくる。その超能力を使い、悪事を働く悪人もいれば、その悪人を成敗する善人も存在する。

その悪人の事をヴィラン、善人をヒーローと呼び、社会へと浸透して行った…と、こんな所だろうか。

 

現在、私こと鬼人正邪は中学三年生の受験生。ヒーローとなるべく、有名なヒーロー科の存在する高校に入るべく、独り日々精進している。

 

 

私は今、校内で参考書とノートを広げながら、誰と話すでもなく静かに問題を解いていた。模試試験の結果では悪くない成績ではあったものの、残り一年弱残っているということは慢心していると足元をすくわれかねない。

 

教室内、周りは昼休みという事もあるためか騒がしい他人の会話が嫌でも耳に入る。これくらいはしょうがない。

黙々とノートへ記入をしていると急に目の前が影で暗くなった。

 

「ねぇ〜、アンタいい加減にそんな事やめたらぁ?アンタみたいなやつが雄英の、しかもヒーロー科に受かるわけないじゃ〜ん」

 

「そーそー、奈子ちゃんの言う通り!そもそも雄英のヒーロー科に受かるのは奈子ちゃんだしね〜?」

 

目の前に現れた女が罵ってくる。面倒くさい。

頬杖をつきながら、面倒くさそうに奈子へ目を合わせた。

 

「お前、毎回飽きないね。」

 

「は?まじウザいんだけど。そ〜いう態度取っていい訳?」

 

嫌なら関わらなきゃいいのに…本当に面倒だ。私が話を切り上げたいというのにずっと話しかけてくる。

 

暫く無視を決め込んでいると不意にノートが私の視線から消えた。

 

「…はぁ、さっきからなんだよ。構って欲しいなら他所当たれ。」

 

予想通り、奈子にノートを取り上げられた。何ともまあ、ヒーロー科を目指す人間とは思えない良い笑顔をしていらっしゃる。

 

「あんたみたいな無能が夢見ないようにさ〜、友だちとして忠告してあげてるの。それなのにずーっと無意味なことばっかしてさ、可哀想だし〜、態々止めてあげてるだけじゃん。私ってば優し〜♪」

 

奈子は手に持った私のノートを目の前で切り刻み始めた。ノートだって1冊購入するのが馬鹿にならないというのに、よくもまあ資源を無駄にするような事が出来るものだ。

 

「あっそ、用が済んだなら帰れ。散れ。そして二度と私の視界に入らないように努力しろ。私もお前を視界に入れないように努力するから」

 

ノート程度、切り刻まれて捨てられるなんていつもの事だ。そんな事をされ慣れたせいで何も感情が湧かない。やる事が無くなったので持ってきていた携帯小説を取り出し、読む。

奈子は暫くの間、私の目の前で如何に自分が素晴らしい個性であるか、反面アンタの個性は役に立たないだ、生きている意味無いだ、さっさとヴィランになって私のヒーロー活動の踏み台になれだ、しょうもない事を散々言った後に何処かへ行ってしまった。五月蝿い奴がいなくなってやっと自分の時間ができると思ったが、昼休みはもうすぐ終わりのようだ。

 

 

 

奈子とは小学生からの同級生だった。1年生からの付き合いのため、初めこそ仲が良かった。一緒に遊んだり、一緒にお泊まりしたり、班分けのグループも一緒だった。

それが、何時からだろうか。奈子が私に対しての態度を変えたのは。

 

思い出したくない事を思い出し、少しだけ嫌悪感を抱く。一応だが、奈子とは距離を置きたいと思っているだけで、復讐してやりたいとはあまり思ってはいない。だが、毎度毎度あんなやり取りをされては恨みや呪いの感情を多少抱くのは普通である。私はそれほど出来た人間でもなければ、聖人君子でもないのだ。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

学校の帰り道、破られたノートを新たに買いに書店へ立ち寄った。ノートを買いに来ただけであったはずなのに、ふと売り物の本棚へ目が吸い込まれると暫くの間その場から動けなくなった。全く、どうしてこんなにも面白そうな題名をした本が揃っているのだろうか。お金が足りない。

 

買う予定のない物も買ってしまったが、こればっかりは仕方がない。クラスで浮いている私にとっては読書が娯楽のひとつなのだ。

帰路に着いていると、少し外れた方に人集りが出来ている。あの騒がしさを見るにヴィランとヒーローの戦闘だろうか。

 

興味本位で向かう。人をするりするりと避けて手前まで出て見る。どうやら流体の個性を持つヴィランが私と同い年くらいの男を人質に取っている様子だ。それをヒーローが助け出す光景が…と周りを見る。しかしヒーローこそ周りにいるが手も足も動かさずにたじろいでいる。それを見て若干の嫌悪感を覚えた。

思っていた光景が見れなかったため、ついため息をついてしまった。つまらない。帰るかと背を向けようとした時、野次馬を押えていた警察の目をくぐり抜け、飛び出した少年が1人。動けずにいたヒーローらは「無駄死に」だの、「自殺志願者」だの言っているがそんなことはどうでもいい。これだ。こういう光景を私は見たかった。

ヴィランに向けてカバンを投げ、怯んだスキに人質を助ける算段だったのだろう。しかしまとわりついたヴィランは引き剥がせなかったようだ。

 

 

周りのヒーローが何も出来ない中、無謀にも飛び出してしまった少年を見ていて、思わず笑いが込み上げてきた。久々に大声を上げながら笑ってしまった。しかもこんな大勢人のいる前でだ。

そんな姿を見せられては、私が何もしない訳には行かない。

 

シンと静かになり、私に皆が注目しているのが何となくわかる。私はため息をひとつ付くと、ニヤニヤしながらヴィランと少年ふたりの元へ歩いていった。

 

 

「いやはや、面白い光景を見させてもらったよ。ありがとう」

 

1歩、1歩とヴィランへと近づく。ヘラヘラ顔をしている私を見て同年代の少年2人は困惑、ヴィランはキレている。

 

「テメェ!何笑ってやがるんだ!止まれ!さもないとコイツの命はねーぞ!!」

 

「脅しですか。生憎と彼と私にはなんの接点も無いんだがなぁ…そんな事よりもヴィランの君に朗報だ」

 

この私が彼の代わりになろう

 

そう一言を発した。

 

 

「いやなに、何を隠そう私はヴィラン志望でね、ここで一つ二つくらい悪さをしてもいいかなと思ったのさ」

 

どうも笑顔が元に戻らない。楽しくて仕方ない。頭が全力で回転すると同時にどんどんと言葉を発してしまう。

 

「そんな抵抗丸出しのヤツよりも、無抵抗の人間を人質にするほうが君は得だろう?」

 

「アァ?確かに…確かにそーだな。じゃあ有難くお前の身体ツカワセテもらうぞ!」

 

そういうとヴィランは捕らえてた少年から私へまとまり先を変えた。うむ…ドロドロで生臭いし、なんか入り込んでる感じが不快感全開だな。

今の今まで笑顔だったのがスっと無の顔になったのが自分でも分かる。

 

「…あー、そーだオッサン。アンタに幾つか嘘ついてたんだわ」

 

「何だ急に。だがもう遅いぞ!もうあと10秒すればお前の身体の支配権は俺のものだ!!」

 

ドロドロしたものが私の身体の穴という穴から入り込もうとしている。しかしそれを私は「個性」を発動して阻止した。

 

「1つ、私はヴィラン志望じゃねーんだわ」

 

私の個性は「天邪鬼」異形型ではあるが、発動型の個性も使用可能という特殊な個性だ。

「天邪鬼」は何かしらものものをひっくり返す事が出来る。今回の場合はヴィランの「入り込んでくる」をひっくり返し「自ら出ていく」とした。

 

「2つ、悪さしてもいいかなとは考えたことも無い。生憎と私の親の教えでは『しっかりとした道徳心を持て』って言われてるんだ」

 

まとわりついているヴィランがスルスルと私の目の前へ集まっていく。ヴィランも自分が何故意思と反した動きをしているのか分からずに戸惑っている様子だ。

 

「な、なんで…!?確かに俺はお前に入り込もうとしたはず…」

 

ヴィランの言葉など気にせずにどんどんと私は言葉を発していく。しかし、個性を使ったせいで肩で呼吸しながらではあるが。

 

「入り込もうと?あー、そりゃあアレだ。私が個性を使ったからに決まってるだろう?」

 

ゼェゼェと呼吸を整えようとしている。疲れのせいで両膝に手を付く。しかし顔はヴィランに向け、してやった顔を見せた。

 

「私の個性は『天邪鬼』発動するとこうして体力をごっそり持っていかれたり、デメリットがでかいが大抵の物、行動、現象、ありとあらゆる物をひっくり返せるのさ」

 

ふん、とドヤ顔を見せると、やはりというかヴィランは再度私の事を人質にしようとして襲おうとした。

 

「この…クソガキが!!体力ごっそり持ってかれたってことは、もう個性は使えねーって事だろうがよぉ!!!もう一度まとわりついてこんどこそ乗っ取ってやらぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無理だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は?」

 

「無理だって言ったんだ。お前、頭悪いのか?周りには手を出せずに傍観していた『クソ』ヒーロー共がいるんだ。手を出せなかったのは人質がいたから。で?今のお前の状況見てみろよ」

 

やっと呼吸が整った。汗を拭う。私が周りへ目をやると、チャンスだと言わんばかりに立ちすくんでいたヒーロー共は今なら確保出来るとすぐにでも仕掛けようとしていた。

そんな空気を壊す人物が大声を張り上げて飛び出してくる。

 

その通りだ!!!!

 

人集りを大きく飛び越し、筋肉モリモリのドデカい人間が降って来た。

 

 

「何故かって?

 

 

私が来たからだ!!!

 

筋肉モリモリはオールマイトだった。これは完全に予想外だった。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

それからのヴィラン捕獲は迅速だった。オールマイトがヴィランに対してパンチの風圧で吹き飛ばし無力化。途中飛び出した少年はヒーローに怒られ、人質になっていた少年はタフネスさから賞賛されていた。私はと言うと…

 

「君もだ君!あんな危険な中に突っ込んで、しかもワザとヴィランに取り込まれようとしてたでしょう!!」

 

「はぁ…なんも手出しできなかったアンタらに言われたくない。じゃあ、私はこれで」

 

「あ、おい君!」

 

ホントに、何も出来なかったヤツにアレこれと言われる筋合いなどない。そんな事を言うのなら私や無謀行為少年が行動をする前に、何か行動を取るべきなのだ。

 

すっかり日が暮れてしまい、とんだ一日になってしまったなどと思いつつ、私は帰宅した。

 

 

 

思えば、これが同じクラスになる奴らとの初対面になるのだが、分からないで当然だろう。

 

これは、私が心から友と呼べる仲間と出会う、そんな物語である。




特にないです。


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雄英試験(実技の部)

新訳版なのでやはり多少変わってますね。
以前より彼女のツンケンした性格が軟化したような気もしなくもないですが…
そんなことはどうでもよいのです。
私は、彼女のパーカー姿を所望します。何処かで見た気がしたのですがpixivで調べても出てこないんですよね…残念(´・ω・`)


時は流れて3学年末。現在雄英高校入試、実技試験の説明会場に私はいた。

筆記試験に関しては、前日まで奈子らに邪魔こそされ続けられたが、模試結果で筆記のみなら余裕で合格出来るであろうラインを維持し続けた。事実、試験中もスムーズに解くことが出来た。

 

しかし問題なのはこの実技試験だ。私の個性がどれだけ通用するのか…実際のところ不安で仕方ない。

個性は制限が掛かっている以上、実技を最後までやり抜くには、この異形型特有の一般よりもやや高い身体能力のみで戦わなければならない。

 

 

 

…考え続けても答えは出ない。とりあえずは試験前の説明がある。それを聞きながら作戦を練るのが今1番出来ることだろう。

やや足早に説明会場へ向かい、指定席へ座る。暫くすると奈子が隣に座った。失念していた…同学校の受験希望者なのだから隣になるのは必然だった。

 

「アンタ、ホントに雄英受けるとかさ〜、マジ馬鹿だよね〜?アンタみたいなつっかえない個性持ちが受かる訳ないのに〜???無謀すぎってゆーか?ウケるわ〜」

 

うわでた。ここでも絡みに来るのか。素行も見られてるかもしれないというのに、よく突っかかりに来ようと思うものだ。面倒極まりないので奈子へ背を向ける。スマートフォンにイヤホンを繋げて耳栓代わりに音楽を流し聴く。

奈子の言葉を無視しながら延々と実技の立ち回りを考え続ける。そうして10分くらいだろうか、受験生が集まり試験の担当教師が説明を始めたためイヤホンを外して閉まった。

 

 

要約すると、各自にポイントが割り振られた仮想敵を破壊して点数を稼ぐ。というのが実技試験らしい。それならばまだ私にもやりようがあるのかもしれない。

最悪個性を使って点数の高い仮想敵のON/OFFを切り替えれば点数を稼げるだろう。問題はそれにどれ程の体力を取られるかであるが。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

会場へ移動し、試験開始の合図が出るまで身体を解す。肩を回し、膝を曲げ、ジャンプし、太ももやふくらはぎを伸ばす。

準備運動をしていると、不意に近くのやり取りが耳に入ってきた。

 

 

「君はなんだ?妨害目的で受験しているのか?」

 

 

眼鏡で、明らかに真面目そうな男とモッサモサ髪で気弱そうな男とのやり取りだ。普通なら気にも止めないやり取りなのだが、あの気弱な男には見覚えがあった。ああ、そういえば何時だったかの無謀にもヴィラン相手に飛び出して行った少年だっただろうか。

そう分かると、どうしても絡みたくなるのが私の性である。

 

「よぅ、死にたがり少年君。約10ヶ月振りくらいかな?」

 

ヘラヘラとしながら声をかける。モサ髪男も私の顔を見て思い出したのか「あ、あのヘドロ事件の…」と蚊の鳴くような声で話している。

 

「アンタも雄英受けてたのは予想外だったよ。まー、困った人はほっとけないみたいな性格してるからヒーロー科志望は当たり前か。兎に角、だ、お互い頑張ろうじゃあないか。な?」

 

肩を組み、親しく話す。何かブツブツと言ってはいるが良く聞こえない。気にせずに私が言いたいことだけ言う。「ま、私は絶対受かってやるけどな」と一言、そうして離れてから周りの様子を見渡す。先程からヒソヒソとモサ髪男に対してのdisが聞こえて微妙な心境だったのだ。

 

「お前らさ、他人を下げて保身に走ってると本当に下の人間に足元すくわれるぞ。私みたいな人間にな」

 

イケナイ、気に入った人間を貶されると喧嘩を売ってしまう性格はどうも直らない。周りがザワザワとしていて私にヘイトが向こうとした時、試験監督の「スタート!」合図があった。

それを聞き、呆然としてる周りを他所に

 

「お先♪」

 

全力ダッシュで演習市街地へ私は駆け出した。

 

 

 

 

──────────

 

 

 

「標的!ブッ殺ス!」

 

私は今、1P仮想敵に対して戦闘中だ。

私の建てた作戦は開始序盤から音を立てて崩れた。仮想敵をもう少しばかり小さいものだと思っていだのが間違いだった。流石にあの機械の塊を人間の身体に、ちょっとばかしバフのかかった状態で破壊は厳しい。

しかし、やらざるを得ないため半ば強引に破壊してポイントを稼いでいるのが現状だ。

両方の拳は機械を殴り壊したせいでズダボロ。血が滴っている。幸い、アドレナリンが分泌しているからか痛みはそれほどではない。

 

反転能力も本来なら3Pの仮想敵のみに使うつもりだったのだが、そうは言ってられなかった。状況が状況になると、1P相手にも能力を使用しなければならない。

能力を5度程使用した段階で汗が止まらず、息切れを起こし、膝に手をつかなければ立ってられなくなった。それでも仮想敵はお構い無しにと襲いかかってくる。

 

「今、これ…で、17…P目ぇ……っ!」

 

呼吸が難しい。意識が保てない。目の前がぐにゃりと変形して見える。それでも私がヒーローになる、それだけのために自身を鼓舞して何とか立っていられた。

 

 

「あと3分〜!!!」

 

 

時間のアナウンスが聞こえた。不味い、非常に不味い。このポイントだと確実に落ちる。しかし体力は底を尽き欠けている。周囲に仮想敵は存在しない。

大きく息を吸い込み、自分の身体に鞭を打つ。そして今出せる全力で走りながら仮想敵を探す。

 

 

 

ズシン────!

 

 

なにか巨大なものが落ちてきた。地面を揺らし、市街地のビルを破壊していく。

 

0P仮想敵だ。あんな規格外を相手にする程私は馬鹿じゃない。というか0Pな以上戦闘なんてするべきでは無いのだ。試験監督もそう言っていた。

周りの受験生が逃げる中、私もあの巨大仮想敵から逃げ出そうと踵を返…

 

 

「いったぁ…」

 

 

巨大仮想敵の目の前に下半身を瓦礫の下敷きにされた女の子がいた。

あのままでは0P仮想敵に踏み潰されるだろう。そんな後味の悪い展開などあってはならない。

私は女の子の元へ駆け寄る。

 

「おい、お前。光栄に思え…!この私が直々にお前を助けてやる…ッ!」

 

そういいながら瓦礫の重さを逆転させる。重いものを軽いものへ…しかし反動は私の身体に来る。

数十キロ、下手をしたら百キロ以上ある瓦礫の重さが私の身体に加算される。膝をつき、潰されそうになるのを耐える。

 

「早…く、そこから、抜け……だし、やが、れ…ッ!!!」

 

「ごめん…ここまでしてくれたのに、ウチの足…折れてるかもしれへん…。動こうとしてるのに、動けへんのよ…!」

 

あー、くそ。そこまで考えていなかった。このままだと2人諸共、仮想敵にペシャンコにされる。それだけは避けねばならない。

 

「くそ…っ、たれ……!!!よく、聞け…!私が、その足、治して…やるから、治った瞬間……その瓦礫から、抜け出して…私担いで、逃げ…ろよ…いいな…?」

 

そう言って女の子へ触れる。彼女の怪我を…ひっくり返す。

ボキリと嫌な音が体から響く。瞬間、激痛が身体中を走る。

 

「あ、アァァア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァア゙!!!??」

 

思わず悲鳴を上げ、地面へ張り付けになる。百キロを超える体重の増加に加え、折れているであろう足の怪我を私に移し替えたのだ。当然と言えば当然だ。

 

今にも意識を飛ばしそうな中で無理やり意識を保つ。意識を失った瞬間、瓦礫の重量は戻る。そうなると彼女は瓦礫から抜け出せない。

 

「早゙ぐ!!!早゙ぐじろ゙!!!!!」

 

そう叫びながら女が瓦礫から脱出するのを確認する。その瞬間、プツリと音がして目の前が真っ暗になった。

 

 

 

しかし、私が意識を手放す瞬間、聞いた事のある声が叫んでいる気がした。恐らくはあのモサ髪男だろう。

 

 

 

…ああ、これは私、不合格だな。奈子の言う通り、私はヒーローにはなれないのかもしれない。




若干ネガティブキャラにもなった気がしなくもありません。


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私の中の辞書

はい、1年ぶりの投稿です。
待たせてしまいまして大変申し訳ありません。
だって色々面白いものが多すぎてあっち見たりこっちみたりしてて…

い、いえいい訳では無い…です。
ゆっくり進めていきます


──────

 

 

 

ここは、何処だろうか

 

 

 

ぼんやりとした背景だ

 

 

 

恐らくは…屋敷の中、だろうか

 

 

 

目の前に誰かが2人いる

 

 

 

1人は、私だろうか

 

 

 

もう1人は…よく見えない

 

 

 

だが、なにか懐かしい。

私…?が、よく分からない相手のことを「姫」と呼んでいる辺りこの屋敷の主との会話、なのだろうか。

 

 

 

ふと、私の顔を見て不快に感じた。

これは、人を騙そうとしている表情だ。

 

何故城の主を騙そうとしているのか。何故そんなにも楽しそうな顔をしているのか。何故心にも思ってないことを平然として言えるのか。

 

…何故だ。何故なんだ。今の今まで私の積み上げてきた善行はどうしたんだ。ヒーローになりたいという願望はどうしたんだ。この個性で、人の役に立ちたかったんじゃないのか

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

知らない天井が目に入る。

身体中が悲鳴を上げる。先程の夢の続きを見たいが、一度意識が覚醒してしまうと意識を手放そうにも痛みで無理やり夢から現実へ引き戻される。

 

やっとの思いで体を起こす。アドレナリンもとっくの昔に切れていて、痛みで涙が出そうだ。自分の体の状態を確かめるため、腕や身体へ目をやるとどこもかしこも包帯でぐるぐる巻きにされていた。

 

…無理もないか。頑丈なロボットを両手がボロボロになりながらも殴り壊していたせいで、両腕の筋肉は限界なのだろう。包帯が巻かれているのも両手拳の出血を抑えるためや、負荷をかけすぎた筋肉を休ませる為の包帯なのだと、湿布特有のひんやりとした薬品の匂いがしたため、何となくそう感じた。

 

「気がついたかい?」

 

カーテン越しに声がする。老婆のような声から察するに、この病室の看護師か。

カーテンが開き、看護師が私の様子を見に来た。予想通り、老婆であるが…どこか見覚えのある顔だ。

 

「全く、やり過ぎだよアンタ。両足は粉砕骨折、その上全身に打撲が見られたよ。オマケに両手の裂傷は仮想敵を腕力だけで殴り壊してたせいだね?」

 

試験とはいえそこまで無茶して、死んだら元も子もないよ!等と説教を聞かされた。

 

「うるせーよババア。その試験のせいでクソデカいロボットに踏み潰されて死にかねない奴がいたからこうなったんだよ。文句言うなら雄英の試験官に言え」

 

悪態つきながら言葉を返す。そして自身の両足を確認するために布団を捲る。粉砕骨折と言われたが、アニメやドラマのように足を吊るされているなんてことも無く、なんならギプスも取り付けられていない。

 

「両足の骨折はこっちで治癒したよ。婆に対してそこまで口悪く話せるならもう十分みたいだね。ほら、さっさと帰りなさい」

 

そう言われ、部屋から追い出され…いや、蹴り出された。ベッドの中だったから分からなかったが、身体中が痛いだけでなく、非常に気だるい。窓があり、ちらりと目をやるともう既に夕方近くなっていた。

何とかゆっくりと廊下を歩いていると、見覚えのある女の子がいた。私の顔を見るや否や心配しながら駆け寄ってきた。

 

「あっ!!試験の時の、大丈夫やった!?」

 

「…全身打撲に両足の粉砕骨折だとさ、個性である程度治癒してくれたらしいけどな。まだ身体中が痛いし、だるくて仕方ないよ」

 

自嘲するような顔で笑うと、彼女は「途中までになるけど…ウチの肩貸したるから!助けてくれたお礼したかってんよ!」そういい、私の断る間もなく片腕を担がれ、身体を支えられた。

 

「でもさ、なんであん時助けてくれたん?試験的にはライバルが1人減るやん?」

 

彼女が不思議そうな顔をして問いかけた。私は正直に話すのが恥ずかしく感じ、ただ「別に…」としか返せなかった。そこから少しだけ無言の時間があったが、しんとした時間に耐えられないのか彼女の方からどんどんと話をかけてきた。

 

 

「…そういえば、名前聞いとらんかった。ウチ、麗日お茶子ってゆーんよ」

 

「……鬼人正邪だ」

 

「じゃあ、正邪ちゃんやね!折角だしさ、連絡先交換しよーよ!ウチ、また今度会った時にお礼したいからさ!」

 

「お礼言われるほどの事してねえって言ってんだろ。お前私がさっき言いづらい雰囲気作ったの見て察しろよ。というかこれがそのお礼なんだろうが。これ以上貰うつもりもねーわバカがよお」

 

「またまたー、もしかして正邪ちゃんって誤魔化す時とかどんどん口に出しちゃうタイプなんやね?」

 

「違うっt…アイタタ……」

 

「そんな大声出そうとしたらアカンよ!全身打撲って言っとったやん」

 

 

──────────

 

 

「雄英の試験、ウチら受かってたらええな」

 

「……」

 

「2人でヒーロー科入れたらさ、仲良くしよーな?ウチと正邪ちゃん、もう友だちやし!」

 

「……」

 

「なんで黙っとるん?もしかして、正邪ちゃんウチと友だちと思っとらんの!?えー…ショックやわー…折角こうしてお話出来とるんやし、もうお友だちやろ〜?」

 

「まだ受かるって決まってないからライバル同士だろうが。それともなんだ?お友だちになったとして片方しか受かってなかったら慰めるなりなんなりしよーなってか?」

 

「うっ……そういうつもりやなかったんやけど…」

 

「…連絡先は交換してやるよ。私が気絶した後、ちゃんと安全圏まで連れてったんだろうしな。その礼だ」

 

「……もしかして正邪ちゃんって、ツンデレなん?」

 

「ちがわい」

 

 

──────────

 

 

結局、お茶子は最寄り駅まで肩を貸してくれた。彼女が一方的に話していた内容から考えるに、待つホームが違うはずなのに私が電車内に乗り発車するまで手を振っていた。

 

…お人好しの馬鹿にも程がある。試験を受けたライバル同士だというのに、私の気まぐれで助けただけだと言うのに、会って1時間も経ってないだろうに。それでも私を友だちだと言っていた。

 

麗日お茶子、彼女の思考が私は理解出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

「……次、鬼人正邪。」

 

「彼女のヴィランポイントは17ポイントと例年で比較した場合、ヴィランポイントオンリーで見るとギリギリ合格出来る数値ではありますが…」

 

雄英高校の会議室、教師陣の全員が集まり、実技試験の映像を早送り、巻き戻しを繰り返しながら評価を下していた。

 

「今年は粒揃いですからね。ヴィランロボットの破壊だけで見たら…残念ですが不合格です」

 

「個性を上手く使いこなし切れていないな。異形型特有の上がった身体能力だけでロボットを破壊してる印象がある」

 

正邪がヴィランロボットを拳で力いっぱいに殴り付け、破壊してる様子が流れる。

教師人的には正邪の戦闘面の評価的には『ヒーローの卵としては心もとない』という結論に至っていた。

 

「でもよぉ、アレが出た時に俺ら側の不手際で負傷しちまったリスナーを助けた能力を見るに…複合型だよな?」

 

「そうなのさ。彼女の情報を見るに、異形型と発動型の複合した個性みたいなのさ」

 

サングラス金髪の男が疑問気に話し、それを肯定するようにネズミが口を開いた。

 

「どうやら個性名は『天邪鬼』と言うみたいだね。鬼のような見た目に、何事もひっくり返せる力があるみたいなのさ」

 

正邪がお茶子を助け出すシーンへと切り替わり、唐突に正邪が片膝を着いて重苦しそうにし始める。かと思いきや、べシャリと倒れ込み、両足が曲がってはいけない方向に曲がり、両足からちらりと覗く肌の色が人がしていい色ではない色へ変わっていく光景が映し出されていた。

 

「この映像を見るに、レスキューポイントを含めた場合は合格圏内…いえ、それどころか成績TOP10にも行けそうですね」

 

異議なしと他教師陣も肯定した。

 

「コイツについては、俺が担当に持つ。如何せん個性を使いこなせてないのが映像からハッキリとわかる」

 

「それについては私も同意です。先輩が心配になるのも分かります」

 

「そういえば、彼女と同学校からもう1人受験生が居ましたね。たしか…この子」

 

…………こうして、会議は進んでいく。

 

 

──────────

 

 

 

試験から数日が経過し、雄英高校から封筒が届いた。

この数日はお茶子からメッセージが鬼のように送られて来たり、学校では奈子がいかにも受かったように実技試験について自慢げに語っていた。正直なところ、何方もウザったらしくて仕方がなかった。

 

実を言うと、つい先程のお茶子からのメッセージで彼女が受かった事は既に知っていた。なので今日中には結果が届くのだろうと思っていたのだ。

とはいえ、やはり緊張はするものだ。封筒を自室へ持ち込み、封を開けると、そこには投影機がひとつ入っていた。

 

『私が投影された!』

 

映像が映され、デカデカとオールマイトが現れた。

 

「うわ、まじかよ雄英、ここまでするのか」

 

態々オールマイトを雇ってまで合否判定を彼に話させるのかなどと思っていたが、次の彼の一言でそれを否定される。

 

『実は今年から私は雄英に勤めることになったんだ。ま、それはいい。結果を話そう。』

 

ゴクリと生唾を飲む。筆記に関しては何も問題はなかった。だが実技は終盤のあの失態もあったため、受かっている気がしなかった。行けても普通科になるのだろうとネガティブに考える日が何日も続いた。

私は、全身に力を無意識に加えつつオールマイトを見ていた。

 

『筆記は十分合格圏内。だが実技が17ポイント。この点数では不合格、ヒーロー科には入れない…』

 

スっと身体中の力が抜けていく。ダメだったか…と燃え尽きたように身体をだらんと垂れた。

悔しさもある。だが、昔からの夢だったヒーローに、一歩遠ざかってしまったと思うと、悲しくて堪らなかった。自然と涙が零れてしまう。

 

『だが、それだけならの話ではあるがね』

 

その言葉を聞き、服で涙を拭きながらオールマイトへ再度目をやる。

 

『こちらのVTRをどうぞ!』

 

そう言って映し出されたのは麗日お茶子の姿だった。

 

『2本角の生えた、試験終わりに大怪我してた女の子と…頭モッサモサした地味目の〜…その人たちに私のポイント分けるって出来ませんか?』

 

お茶子が私ともう1人、誰かに自分の持つポイントを分けたいと教師に伝えている光景だった。

…何をそこまでしているのか。赤の他人だと言うのに、お人好しにも程があるだろうと、そう感じた。

 

 

曰く、ヴィランポイントだけでなく、教師陣の審査制でレスキューポイントもあるということだった。そして、私が獲得したレスキューポイントは50ポイント。合計67ポイントで、実技試験6位という結果だった。つまりはぶっちぎりの合格である。

既にこの時には、目から零れる涙は悲しさからではなく、喜びと安堵から出てくる涙になっていた。

 

 

──────────

 

 

「…もしもし」

 

「正邪ちゃんから連絡、しかも電話なんてそれ程の事あったん?」

 

「まあ、そんなとこだよ」

 

「へー…もしかして正邪ちゃんも受かったん?」

 

「…そうだな。打算的にお前を助けたおかげでな」

 

「もー、またそー言って。やっぱり正邪ちゃんはツンデレやなー」

 

「……もうそれでいい」

 

「あ。あと電話はもうちょっと時間経ってからでもよかったんよ?」

 

「あん?どういうことだよ…」

 

「正邪ちゃん、鼻水啜る音聞こえる。合格聞いてすぐに電話かけたやろ?」

 

「っ……ち、違うわ。これは花粉症だわ」

 

「…そーいうことにしてあげるわー」

 

「気分悪い、切るわ」

 

「うん、じゃーね正邪ちゃん。次は雄英でやなー」

 

「……ありがとな」

 

「えっ、正邪ちゃん今なんt(プツッ…

 

 

──────────

 

 

友情、私にとっては自身で、または他人が相手へ勝手に押し付ける関係性のひとつ。そんな認識だった。

実際、幼少からの腐れ縁であった奈子との関係がそんなものだった。だからこそ、私にとって友情や友人、友だちなんて言葉はクソ喰らえだと思っていた。

 

しかし、彼女…麗日お茶子と出会ったことで、私の中の辞書にある友情や友だちという言葉の意味が変わりつつあるのが分かった。




どーせ次も1年後なんだよきっと…
モチベーションはあるのでもっと早く執筆出来たらと思ってます。
新訳は私としても納得出来る内容を今のところかけてるし、旧訳は消そうかな…?


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